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1998-05-20 第142回国会 衆議院 外務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年五月二十日(水曜日)     午前九時五十二分開議 出席委員   委員長 中馬 弘毅君    理事 福田 康夫君 理事 牧野 隆守君    理事 茂木 敏充君 理事 玄葉光一郎君    理事 松沢 成文君 理事 東  順治君    理事 東  祥三君       小此木八郎君    柿澤 弘治君       河井 克行君    河野 太郎君       園田 修光君    田中 昭一君       戸井田 徹君    宮本 一三君       森  英介君    森田 健作君       渡辺 博道君    家西  悟君       島津 尚純君    田中  甲君       藤田 幸久君    丸谷 佳織君       山中 燁子君    久保 哲司君       平賀 高成君    古堅 実吉君       伊藤  茂君    井上 一成君  出席国務大臣         外 務 大 臣 小渕 恵三君  出席政府委員         外務大臣官房審         議官      海老原 紳君         外務省総合外交         政策局長    加藤 良三君         外務省総合外交         政策局軍備管         理・科学審議官 阿部 信泰君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部長    上田 秀明君         外務省アジア局         長       阿南 惟茂君         外務省欧亜局長 西村 六善君         外務省経済局長 大島正太郎君         外務省条約局長 竹内 行夫君         海上保安庁長官 相原  力君  委員外出席者         内閣官房内閣外         政審議室内閣審         議官      宇野  裕君         外務大臣官房領         事移住部長   内藤 昌平君         外務委員会専門         員       宮本 吉範君     ――――――――――――― 委員の異動 五月二十日  辞任         補欠選任   阪上 善秀君     渡辺 博道君   櫻内 義雄君     小此木八郎君   下地 幹郎君     園田 修光君   野呂田芳成君     戸井田 徹君   八代 英太君     河井 克行君   島   聡君     家西  悟君   藤田 幸久君     田中  甲君   権藤 恒夫君     久保 哲司君   松本 善明君     平賀 高成君 同日  辞任         補欠選任   小此木八郎君     櫻内 義雄君   河井 克行君     八代 英太君   園田 修光君     下地 幹郎君   戸井田 徹君     野呂田芳成君   渡辺 博道君     阪上 善秀君   家西  悟君     島津 尚純君   田中  甲君     藤田 幸久君   久保 哲司君     権藤 恒夫君   平賀 高成君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   島津 尚純君     島   聡君     ――――――――――――― 五月二十日  投資の促進及び保護に関する日本国とパキスタ  ン・イスラム共和国との間の協定締結につい  て承認を求めるの件(条約第一八号) は本委員会に付託された。 本日の会議に付した案件  社会保障に関する日本国ドイツ連邦共和国と  の間の協定締結について承認を求めるの件  (条約第一九号)(参議院送付)      ――――◇―――――
  2. 中馬弘毅

    中馬委員長 これより会議を開きます。  社会保障に関する日本国ドイツ連邦共和国との間の協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮本一三君。
  3. 宮本一三

    宮本委員 日独社会保障協定の問題について質問をさせていただきたいと思います。この種の協定我が国にとりまして初めてということを伺っておりますが、今回のドイツとの協定、これからの人的交流という観点から見ても非常に大事な協定だと思いますが、ちょっと要点だけ、その概要と、メリットといいますか意義といいますか、そこら辺をかいつまんで御説明をお願いしたいと思います。
  4. 内藤昌平

    内藤説明員 この協定要点だけを御説明申し上げますと、現在、ドイツ在留邦人あるいは本邦在留ドイツ人につきましては、ドイツ日本も、年金保険制度は、それぞれの国内で雇用されている者については、海外で勤務する場合にも加入義務がある、強制的に加入されているわけでございます。そこで、その年金保険制度への二重加入という問題が生じております。  さて、この協定締結されますと、この強制加入に関する法令の適用の調整、それから保険期間を通算するというこの二つの柱によって両国制度間の調整を行うことができ、結果として二重加入等の問題が解決が図られます。そうしますと、保険料を払っております被用者及び雇用者それぞれの負担が軽減される、その結果、さらに日独問人的交流が円滑化されるということが期待されております。
  5. 宮本一三

    宮本委員 これは現在、ほかの国とも交渉が進んでいるようでございますが、どんな見通しになっておりますか。
  6. 内藤昌平

    内藤説明員 現在、アメリカ及びイギリスについて、協定締結に向けた協議を鋭意進めております。
  7. 宮本一三

    宮本委員 この協定、本当に大事な協定でございますし、これを出発点にしてぜひ、アメリカイギリスといったような国ももちろんでございますが、もっと広範にこの協定を広げていただくようにお願いをいたします。  この問題、いろいろとまだ聞きたいことがたくさんあるのでございますが、インドネシア情勢、あるいはインド核実験という大きな問題がございます。あと十分の時間が与えられておりますが、大臣、ひとつその点について、最初にインドネシア情勢についてお伺いしたいのでございます。  実は私、三十年近く前でございますが、ちょうど今のスハルト政権が誕生した直後に、IMFの方から派遣されましてジャカルタに二年近く駐在した経験がございます。それだけに最近の動き、非常に心配をしているわけでございますけれども、きのうの大統領記者会見では、直ちには辞任しないということを言われております。まあしかし、できるだけ速やかに総選挙を行って一国民協議会で正副大統領を選ぶ、自分は再選は望まないとはっきり述べておられますが、こういった流れを見まして、G8特別声明におきましていろいろと注文をつけた経緯があるわけでございますが、そういった経緯に照らし合わせましく最近のこの動き大臣、どのように評価されておられますか。ひとつ大臣の認識をお伺いしたいと思います。
  8. 小渕恵三

    小渕国務大臣 現下のインドネシア情勢につきましては、極めて憂慮をいたしておるところでございます。  今委員指摘のように、昨日、スハルト大統領声明をいたしました力要約しますと、一点は、現時点では辞任しない、第二は、改革委員会をつくって内閣改造を行う、そしてこの委員会を通じまして新しい議会をつくるための可及的速やかな総選挙実施、そして実施によりまして新しい正副の大統領を選出する、そしてスハルト大統領みずからはその出馬は行わない、こういう声明を発せられまして今日を迎えているわけでございます。  実は、今日は、御案内のように国民覚せいの日ということで、大変な記念日でありまして、昨日の大統領声明態度に対してどのように国民あるいは学生の皆さんが対応するかということが今は最大の関心事でございます。一番新しい報道によりますと、きょうを迎えまして、インドネシアイスラム教組織ムハマディアアミン・ライス議長、この方はどちらかというと反スハルトのイスラムの指導者と聞いておりますが、きょう国営テレビ、ラジオを通じまして、暴力を回避するため、ジャカルタなど全土で予定している反政府街頭行動を中止することを発表した、議長は、衝突と流血を避けるため、改革を支持する人々に街頭行動を中止することを呼びかけたという報道がなされておるわけでございまして、そういった意味で、今日、インドネシアにおきまして大きなデモないし暴動、また危惧される流血事件というようなことが起こらないことを今ひたすら祈っておるというのが、現在のインドネシアの把握しておる状況でございます。
  9. 宮本一三

    宮本委員 非常にアップデートな情報をありがとうございました。  何とか大変な事態にならないことを心から念願する次第でございますが、インドネシアには非常に多くの日本人が在住をしておられます。その安全の問題はこれは何といっても大事なことでございますし、ぜひとも、邦人国外退去の問題について十分な注意を払い、対応考えていただきたいと思いますが、これまでに邦人国外退去状況がどうなっておるのか。つまり、何人ぐらいがもう退去され、また、現在まだ何人ぐらい残っておるのかというような状況も、ちょっと現時点で、わかっておれば教えてもらいたい。  それから、やはり不測事態に備えていろいろと手を打っておられると思いますが、今後事態が悪化しないことを望むことももちろんでございますが、しかし、そういったことに備えて、事態が悪化した場合にはどのような行動をとるつもりなのか。飛行機も、あるいはいろいろ船の方もどういうふうになっておるのか、お伺いをしたいと思います。
  10. 内藤昌平

    内藤説明員 先生御指摘のとおり、インドネシア国日本国と極めて深い関係がございまして、在留邦人もかねてから極めて多数に上ります。長期滞在者は、この危機の前に大使館及び総領事館を挙げて調査したところ約一万三千名、それに加えて観光客を初めとする短期滞在旅行者、これが非常に把握が困難でございますが、推定値で約五千、したがいまして、危機が始まったときに一万八千名ぐらいの方がインドネシア国内におられたと推定されるわけでございます。  それ以降、政府といたしましては、この危機の進展に伴いまして、順次出国の便宜を計らいまして、かつ出国をできるだけ促すアピールも、海外危険情報のレベルを上げることによって行ってまいりました。その結果、この十四日間に約一万三千名の方が出国されております。こういう事態でございます。  さらに、今後の事態に備えまして、現在定期便が運航してございます。それに加えて、臨時便も手配してございます。さらに、今後の不測事態に備えて、自衛隊機派遣、さらには海上保安庁巡視艇派遣をそれぞれの所管官庁に依頼したところでございます。
  11. 宮本一三

    宮本委員 最後に、インド核実験の問題について大臣に伺いたいのですけれども、G8サミットでそれなりのメッセージは送っているわけでございますが、インドに対するメッセージを見ておりますと、どうも強いメッセージにはなっていない。警告はしているけれども、それでは具体的などういう措置をとるのかということもはっきりG8の特別声明では出ておらないし、非常に、はっきり言って、緩いというか、ぬるいというか、そんな感じを受けるわけでございます。  我が国として、インドに対する制裁、そしてまた今のようにこういうG8の緩い対応では、パキスタンに対する説得も弱いと思うのですけれども我が国としてはどのような説得をするのか、我が国としてはインドに対してどのような制裁をするのか、この点について、最後に御質問させていただきたいと思います。
  12. 小渕恵三

    小渕国務大臣 このたび行われましたインドにおける核実験につきましては、我が国としては、これは許さざるものとして、強い抗議を申し上げておるところでございますし、また、現地平林大使を帰国させまして状況説明を行わしめ、また任地に戻ることにはなっておりますが、これからも我が国立場につきまして強く主張いたしていくところでございます。  我が国として対応いたしましたことは、経済協力の面におきまして、かなり厳しい措置を講ずることといたしておるわけでございまして、そういった意味で、インドとの関係におきまして、我が国としては極めて、対抗手段、これに対する対応としてはかなり強い態度をして臨んでおるわけでございまして、本件につきましても、インド政府といたしましても、若干、我が国対応につきましては、予想以上に強い、厳しい態度と受けとめておるようでございます。  なお、サミットにおきまして、御指摘のように、強い一致した態度がとりにくかったということは、顧みますれば、この八カ国の中に四カ国の核保有国もこれあり、またそれぞれインドパキスタン等に対する対応につきましても、いろいろ異なっておる考え方がございまして、そういった点では、我が国ほどの経済的な制裁について、一致して対応のとれなかったことは残念なことだ、こういうふうに認識いたしております。
  13. 宮本一三

    宮本委員 ありがとうございました。以上で質問を終わります。
  14. 中馬弘毅

    中馬委員長 続いて、田中甲君。
  15. 田中甲

    田中(甲)委員 民主党の田中甲です。どうぞよろしくお願いします。  核実験の問題が前段の質問者から出されましたから、私も、冒頭はインド核実験問題について御質問させていただきたいと思います。  今後、パキスタン核実験を強行するようなことがあるならば、これは完全に核拡散に歯どめがきかなくなる、NPTの体制というものは実質的に崩壊していく、そういう状況になろうとしている、そんな危惧を持つわけでありますけれども外務大臣、御見解を賜れればと思います。
  16. 小渕恵三

    小渕国務大臣 まさに御指摘のとおりでございまして、インド核実験に誘発されたという形で、パキスタン核実験実施するというようなことになりますれば、まさに収拾のつかない形になるわけでございまして、年来の核に対する世界の大きな流れを逆流させることになりかねないということでございますので、我が国といたしましても、パキスタン政府に対して強い自制を求め、先般、総理の特使を、登外政審議室長パキスタンに送りまして、首相、外相等我が国立場を強く申し上げておるわけでございます。もし、そのようなことを実行するというようなことになりますれば、日本としては、当然それに対する対応考えておるということを申し述べておりますが、その段階では、やるともやらないとも、こういうことも相手方は申されないと聞いております。  世界のそれぞれの国と相協力して、パキスタン実験については、これを行うことのないように、我が国としてもリーダーシップをとって努力をしていきたい、このように考えております。
  17. 田中甲

    田中(甲)委員 まずインドに対する制裁、これはきっちりと行っていかなければならないと同時に、今御質問させていただきましたパキスタンに対しての自制、これもやはり我が国戦闘による唯一被爆国である日本が、核を持たない国、非核保有国の中で、しっかりとリーダーシップを発揮していかなければならないんだろうと思います。まさにこのことは、日本がすべての世界の国々のリーダーに立って行うべきこと、そしてそれを世界じゅうが期待していると私は認識しております。  さらに、核保有五カ国、常任理事国が、現在の核政策の転換を明確に表明して核廃絶に向けてのスケジュールを発表してくる、そしてまた、日本はそのことを強く求めるということが必要になると思いますが、いかがでしょうか。
  18. 阿部信泰

    阿部政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、現在、米、ロシア、おのおの一万以上の核弾頭をまだ保有しているわけでございまして、それらの縮小を促進するということが大変重要な課題でございます。アメリカロシアの間では、戦略兵器削減条約第二次条約が、現在批准が課題となっておりますが、この間バーミンガムで、ロシアがこれを早期に批准するということで、クリントン大統領エリツィン大統領の間で合意したようですが、これを我が国としても、できるだけ早期に実現するよう、またその上で、第三次の削減交渉早期に開始するよう、両国に働きかけてまいるという考えでございます。
  19. 田中甲

    田中(甲)委員 簡単に申し上げると、核保有が許される国と許されない国がある、これがまず根本的に不平等であるということをはっきりと指摘していくべきだと思いますし、私は、我が国日本が現段階において常任理事国になりたいというそんな姿勢を見せることは、この事態というものを改善していくことはできないのだろうと思いますが、外務大臣の御所見をいただきたいと思います。
  20. 小渕恵三

    小渕国務大臣 我が国国連安保理常任理事国入りするということにつきましては、私は今の委員のお考えとは実は逆でございまして、むしろ安保理常任理事国として、安保理の中におきまして、もちろん常任理事国と非常任理事国に差があるわけではありません、あるといえばビートの問題がございますけれども、そういう形で、常任理事国入りすることによって、さらに核の問題につきましても我が国立場を強く主張するのに、むしろその立場というものは極めて有効に働くのではないかと実は私は考えております。  そういった核の問題のみならず、世界の平和に貢献をいたしたいという意味で、安保理におきましても常任理事国としての働きをより十分いたすために、むしろそこに入っておることが望ましいと私は考え、また、今の時点ではなかなか見通しがついておりませんけれども、この安保理におきましても我が国立場は、主張すべきことは主張して、言ってきておるつもりでございますが、さらに努力をいたしてまいりたいと思っております。
  21. 田中甲

    田中(甲)委員 私の考えは違います。ですから申し上げているのですけれども、今回のこの核実験インドの問題、また、三年前のフランスのあのムルロア環礁での核実験問題等を通じて、自分が核兵器を持つのはよいけれども、おまえは危険だから持ってはいかぬというような考え方を示しているにほかならないこの常任五カ国の姿、また、五カ国は同時に通常兵器も販売しているという、そんな売りさばいているという姿が、果たして今この中に日本が入っていって、非核保有国である日本発言ということが内部からできるのか。  つまり、世界じゅうは、非核保有国であり、唯一戦闘によって被爆を受けた我が国日本が、日本という国が、今どういう姿勢をとってくれるかということに注目しているのだろうと思います。今この時期に外務大臣が、常任理事国に入ることを、ある意味では積極的に進めていきたいというような御答弁をされるということは甚だ遺憾であると、私はあえて申し上げたいと思います。  もし御所見があればお聞かせをいただきますが、簡潔にお願いします。
  22. 阿部信泰

    阿部政府委員 たまたま現在、常任理事国がすべて核保有国ですけれども、歴史的に申し上げると、安保理常任理事国が決まったときはアメリカしか核を持っていませんで、事後的にたまたまそれが一致したということでございまして、今、日本常任理事国を目指しておりますけれども、これは核を持っていない国が常任理事国になることに意味があるということで私どもはキャンペーンをしておりまして、その意味においては、インドが勘違いをして、常任理事国を目指すために核を持たなければならないと考えたとすれば、これは大変私どもは不幸なことであったというふうに考えております。
  23. 田中甲

    田中(甲)委員 この問題だけに余り時間を割きたくないので、私の方から少し簡潔にお話をさせていただいて終了いたしますが、当初アメリカしか持っていなかったという話、つまり、そこから、核を持つことによって核保有国の仲間入りをしていく、その姿がいまだに変わっていない。結局、歯どめがかけられないままでいるということが現在の国連の姿の実態、事実だろうと思います。非核保有国の中で日本がどのような発言をしていくかということが重要であって、非核保有国国日本が今常任五カ国の中に、あるいは常任理事国の中に加わっていくということがプライオリティーがあるとは私は考えておりません。  今後もこのような機会をいただけるならば発言を続けてまいりたいと思いますが、世界が、あるいは世論がどのように考えているか、判断をしているかということをしっかりと耳にして、声を聞いて、今後の対応というものを進めていただきたいと思います。  インドネシアの問題、今非常にタイムリーな問題点でありますから、私も一点質問をさせていただきたいと思います。  現在、シンガポールに待機している自衛隊機の問題でありますけれども、今後インドネシア派遣するタイミングについて、具体的に現段階外務大臣はどのようにお考えになられているのか。つまり、どのような事態に至ってから、どういうところでこの判断決断をするおつもりでいるのか、ぜひお聞かせをいただきたいと思います。
  24. 小渕恵三

    小渕国務大臣 現在、六機シンガポール派遣をいたしまして、万が一のことに対処すべく、対応いたしておるところでございます。  現時点におきましては、まだ民間航空飛行機が飛んでおりますので、そうしたものを利用していただくと同時に、日本に帰国する方々もおりましょうし、また、万が一のときには難を避けて隣国に移るという人もおられますが、それは現時点におきましては民間航空もございますし、政府といたしましても外国飛行機を現在チャーターいたしておりまして、万が一のときには備えておりますが、現在、自衛隊機が利用されることのないような事態というものが望ましい、こう願っておるところでございます。
  25. 田中甲

    田中(甲)委員 適切な対応というものをぜひしていただきたいと思います。必要なときには、そのような措置をやはり決断を持って行っていただきたいという意見もつけ添えさせていただきます。  さて、この一時間、六十分の時間をいただきましたのは、ドイツとの社会保障協定に関しての条約であります。この協定に関しまして、私は基本的に賛成でありますし、我が党も賛成であります。言うならば、随分時間がかかってしまった、ある意味では遅過ぎたのではないかという思いも持つわけでありますけれども、この協定に関して一、二点、御質問をさせていただければと思います。  今後ドイツ以外の国と協定締結を行っていく見通しが、現在、おありかどうか、この点をまずお聞かせいただきたいと思います。
  26. 内藤昌平

    内藤説明員 現に我が国に対しては、ドイツ以外にも、これまで数カ国から協定締結交渉開始の申し入れがなされております。我が国といたしましては、外国相手国との人的交流状況、及び相手国年金保険制度仕組み等を総合的に勘案の上、優先度の高いものから順次対応していく  こととしております。  その観点から、当面、とりわけ在留邦人が多く、従前よりこの問題についての意見交換等を行ってきた経緯のあるアメリカ及び英国について、協定締結に向けた協議を鋭意進めていくこととしております。
  27. 田中甲

    田中(甲)委員 さらに質問をさせていただきますが、アジア諸国欧米先進国協定締結をしていない今までの理由について簡潔にお伝えをいただきたいと同時に、また、日本アジア諸国との協定締結をしていくことが必要ではないか、このように考えますが、御所見をいただければと思います。
  28. 内藤昌平

    内藤説明員 社会保障協定と申しておりますが、実態年金の二重加盟の防止でございます。  年金の二重加盟というのは、両国の間の年金制度強制加入の場合、義務的な場合に生ずるわけでございます。相手国日本人が行った場合、相手国強制加入制度がなければ、それは日本制度年金をそのまま維持できるわけでございます。そういう観点で、相手国年金制度というのがこの場合、非常に重要になってまいります。  その点、一般に申し上げますと、アジアの国では、協定締結の前提となる年金制度が十分には発達していない、それから人的交流が今までは比較的多くなかったということから、先ほど申し上げた意味優先度は高くなかったということがございます。そのような事情は欧米諸国も同じだと承知しております。(田中(甲)委員アジアについてはどうですか」と呼ぶ)日本アジア関係は、そういう意味では、欧米諸国と比較しますと、優先度は低いということになります。
  29. 田中甲

    田中(甲)委員 随時、諸外国との対応ということで、人的交流その他、時期を失することのないような今後の対応ということをぜひ期待しております。どうぞよろしくお願いいたします。  皆さん方に、委員の方々に資料を配付させていただきました。四月、第五十四回国連人権委員会で、私も時間をいただきましてスピーチをさせていただいたのですけれども、大変僭越でありますが、それが表紙になっております。  二枚目、これは同じ人権委員会で、特別報告官でありますクマラスワミさんの報告です。かなり多くのページ数の報告書で、たしか四十八ページと記憶をしておりますけれども、その中の一ページ、第二次世界大戦中の元従軍慰安婦の方々にかかわる記述であります。  パラグラフ三十七、これは一九九六年に国連人権委員会で報告されたときには、かなりの量がこのような内容で記載されておりました。つまり、具体的にどのような形で元日本軍慰安婦としてのおぞましい過去が自分の人生の中に生じたのかということが書かれているものであります。今回はそれは一つだけでありました。  そしてパラグラフの三十八では、日本政府は、ファーストステップとして、アジア女性基金と呼ばれる私的基金という形をもって、犠牲者個人に対して義援金を支払うということを実際に努力を積んできたのだということが書かれています。この辺を、日本政府あるいは外務省が今回、クマラスワミ特別報告官の報告というものは非常に日本を評価したというふうに発言をしたゆえんだろうと思っております。  そして、注目していただきたいのは三十八の下から三段目、「しかし、日本政府は、法的責任についてはまだ認めていない。おそらく日本政府は、国内の裁判所で争われている六つの訴訟の司法判断が出るのを待っているのだろう。」ということで結んであります。これが、ことしの四月六日、ジュネーブで行われた国連人権委員会でのクマラスワミ報告でございました。  次にお配りした資料は、全く同じ日でありましたが、四月六日、韓国政府発言した内容であります。  その裏のページには、日本政府が、また同じ四月六日、これはもう九時を回っておりまして、ぎりぎりのところで、日本発言ができるかどうかというところ、赤尾全権大使が努力をされまして、韓国の発言だけできようの会議を終わらせたくないという思いもおありになったのでしょう、日本発言というものをその日のうちにスケジュール的には組めた。そんな、四月六日というのは、クマラスワミ報告から始まりまして、韓国政府日本政府発言があったという、人権委員会日本にとってはかなり山場の日であったと思います。  私も一日、この会議の中同席をいたしまして、赤尾全権大使ともいろいろお話をさせていただきましたが、この内容、両国間ではかなり元日本軍慰安婦の問題に対する認識の違いがございます。また後ほど指摘をさせていただきたいと思います。  四月八日、中国政府の代表からのスピーチがありました。そして四月九日、北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国からの文面の中では、日本政府の過去の戦争における不完全な解決という内容をもって、かなり厳しい口調でスピーチがされた。  今回の人権委員会の中では、簡単に流れをお話しさせていただきましたが、もちろん私の目で見た、そして私が感じた内容をお伝えしたわけでありますけれども、こういう内容で、私たちが日本の中にいて、国内でこの日本軍元慰安婦の問題を考えている以上に、国連の舞台において、人権委員会のこの会議の中においてはこの問題というのは重要視して扱われているのだということを改めて感じてきた次第であります。  さて、二枚目のクマラスワミ報告の、先ほど読ませていただきました下の三行です。国内の裁判所で争われているこの司法判断を待つのだろうということでありますが、この結論がことし四月二十七日、出されております。  山口地裁下関支部の判決でありますけれども、国会議員は、慰安婦とされた女性がこうむった数々の苦痛について、被害回復の措置をとるための賠償立法をすべき憲法上の義務があるのに、これを怠ったと。いわゆる立法の不作為ということを理由といたしまして、この原告団は国家賠償を求めることができる、そして具体的には、三十万円の慰謝料ということで判決が下されたわけであります。  当時の河野洋平官房長官が、一九九三年八月、慰安婦問題が重大な人権侵害だと認める談話を発表した時点で、賠償立法の義務が憲法上の義務に具体化されたとして、合理的期間として定められた三年間を経過しても国会議員が立法をしなかったのは違法だと、国家賠償義務を認めたものであります。この判決に対しての外務大臣の御所見をまずお聞きしたいと思います。
  30. 小渕恵三

    小渕国務大臣 御指摘の判決につきましては、国といたしまして、八日、山口地裁下関支部に控訴状を提出いたしまして、控訴いたしておるところでございます。  控訴理由の詳細につきましては、後日、裁判所に提出する準備書面において主張することとなりまずので、現段階ではお答えすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、判決内容を関係省庁で検討した結果、国としては承認できない部分のあったことから、法律上の手続をとって、現在、控訴いたしておるところでございます。
  31. 田中甲

    田中(甲)委員 大臣としての御所見をいただいたわけでありますが、国会の中における大半の法案というものが閣法で提出されているにもかかわらず、こういう判決の中では、やはり国権の最高機関であり、唯一の立法機関であるという国会、あるいは立法の不作為という指摘がされる、これは当然でありますけれども、されるわけであります。  大臣も、一国会議員として、その立場として、今回の判決というものをどのようにお受けとめになられているかを再度お聞かせいただきたいと思います。
  32. 小渕恵三

    小渕国務大臣 もとより私も本院に議席をいただいておる者でございますが、現在、国の、政府外務大臣としての立場におりますので、立法措置を講ずるべきかどうかにつきましては、これは本院でお考えをいただくことでございますので、そのように御理解をいただきたいと思っております。
  33. 田中甲

    田中(甲)委員 下稲葉法務大臣は、下関の裁判官は果たして法律を御存じなのかとコメントされたんですね。また、村岡官房長官は、政府が主張してきた内容が一部認められず残念だ、関係省庁で判決内容を十分に検討した上で対応を決めたいというコメントでありました。  私は、この問題、さかのぼること、当時の官房長官でありました河野洋平官房長官談話というものがやはりもう一度確認をされなければいけないんだろうと思います。そして、あのとき官房長官が談話を発表したにもかかわらず、なぜ立法措置というものが十分にとられてこなかったのか。そして、九三年八月四日のこの談話をもとにして政府はどういう対応をして、そして、なぜ今回立法不作為という判決を受けてしまったのか。  これは、やはり国会議員として眼を開いてこの問題に対して真剣に対応しないと、それこそ国会の権威というものは失墜してしまうという思いを私は持っているんです。国内のみならずアジアの諸外国から、さまざまな国々から、日本が、この判決をもとにして立法府がどういう行動をとるのかということが注目されているというふうに思っております。  しかしながら、基本的に私は、歴史認識というものを偏ってとらえるつもりはありませんし、人それぞれ、国々、歴史認識の違いというのはあって当然だと思います。しかし、公平中立に物事を考えていく中で、果たして日本という国が、あるいは国会というものが真摯な態度でしっかりとした対応をしてきたかどうかということを、外務大臣に御答弁をいただきながら少しお話をさせていただきたいと思います。  最後に、時の官房長官、河野洋平官房長官は、「なお、本問題については、本邦において訴訟が提起されており、また、国際的にも関心が寄せられており、政府としても、今後とも、民間の研究を含め、十分に関心を払って参りたい。」という言葉で締めくくっています。この「民間の研究を含め、」ということは、私は、後の、戦後五十年問題プロジェクトチーム、また従軍慰安婦問題小委員会という、五十年の節目ということで設けられましたこのそれぞれのセクションにおける基金の設立ということにつながってきたんだろうと思うんです。  少し話を早送りして恐縮でありますけれども、今回の立法不作為というのは、いろいろなとらえ方ができるんですけれどもアジアにおける諸外国の中では、韓国や台湾という国の中では、この基金の対応では十分とは言えないという思いを持っている国もあり、基金という形で民間が元日本軍慰安婦に対して謝罪の気持ちを込めて誠意の、償いのお金というものを渡しているということだけでは十分な国会の対応とは言えないんだということの指摘を下関裁判でされたんだろうというふうに思うところであります。  この問題に関しまして、まず確認をさせていただきたいのは、一部の新聞紙面や、あるいは新しい歴史教科書をつくる会、あるいはこれらを問題にしている会から、河野洋平官房長官の談話というものが正しい談話とは言えない、しっかりとした資料その他がつぶさに調べられての発表とは言えないんだということで、否定するような発言というのが随分あるんですけれども政府としての、一九九三年八月四日の官房長官の談話というものは公式な見解であるということをぜひここで改めて確認をさせていただきたいと思います。
  34. 小渕恵三

    小渕国務大臣 河野官房長官の談話に関しましてのお尋ねでございますが、平成五年八月の調査結果は、政府として全力を挙げて誠実に調査した結果を全体的に取りまとめたものであります。政府としては、この調査結果を公表するに際して、歴史的真実を回避せず、むしろ歴史の教訓として直視していくという立場から官房長官談話を発出して、慰安婦問題については政府の基本的な認識と方針を示したものでございます。
  35. 田中甲

    田中(甲)委員 今改めて外務大臣から正式な見解という確認の発言をいただきました。ありがとうございます。にもかかわらず、これは調査が不十分であったという、それは歴史認識をどのように持たれている団体ということにかかわらず、まだまだ十分とは言えないという声がございます。公開性が欠けていたのではないか。関係者からの聞き取りを行ったけれども、その対象人数というものが少ないのではないかということ。  このとき、調査の対象機関になっている警察庁、防衛庁、法務省、外務省、文部省、厚生省、その他旧内務省にしても、拓務省にしても、その他の機関からの資料というものがすべて調べられたとは言えないということなど、しっかりとした真相究明ということが行われた上での談話だったのかどうかということが、歴史認識のどのような見解を持っているにもかかわらず、さまざまな団体からこのような指摘がされているんですけれども、そのことについてはどのような御所見をお持ちでしょうか。
  36. 宇野裕

    ○宇野説明員 御説明いたします。  先生御案内のように、いわゆる従軍慰安婦問題につきましての政府の調査でございますけれども、平成三年十二月以降、政府といたしまして、誠実に調査を行いまして、これまで平成四年七月及び平成五年八月の二度にわたり、その結果を公表しております。  第一次調査では、調査対象といたしましては国内の省庁だけであったものでございますが、第二次の調査におきましては、対象を国外に広げるとともに、公文書等の文書、資料のほか、関係者からの聞き取り調査も行っております。このように、政府といたしましては、全力を挙げて誠実に調査した結果を取りまとめたものでございます。
  37. 田中甲

    田中(甲)委員 私ごときと申しますか、まだまだ専門知識が不足していると思いますけれども、それでも、警察庁、警察大学、警視庁、県警本部所蔵の非公開資料、まだ多数残っている状況だと思います。防衛庁あるいは外務省、BC級戦犯の判決の資料等、あるいは厚生省援護局の所蔵の資料、あるいは女性の引き揚げ関係資料、公開されていません。法務省においても非公開の資料というものがまだまだたくさんあります。このことについてはいかがですか。
  38. 宇野裕

    ○宇野説明員 御説明いたします。  事実関係といたしましては、第一次調査におきましては、警察庁、防衛庁、外務省、文部省、厚生省及び労働省の六省庁の資料について調査いたしましたが、第二次調査につきましては、上記の六省庁に加えまして、法務省、国立公文書館、国会図書館、またアメリカの国立公文書館等々の調査も加えまして調査しております。  この調査におきましては、いわゆる従軍慰安婦、慰安婦という事柄、名称につきまして記載のあるものすべてを調査いたしましてまとめたものでございます。また、その資料につきましては原則としてこれを公開するということで、その資料を保管しております省庁等におきまして、プライバシーの保護に留意しながら閲覧に供しておる。また、内閣におきましても、そのコピーを一元的に集めまして供覧に供しております。
  39. 田中甲

    田中(甲)委員 この話は幾ら質問をしても同じ答えしか返ってこないんだろうと思います。十分であったという答弁なんですね。
  40. 宇野裕

    ○宇野説明員 御説明申し上げます。  今まで申し上げましたように、第一次、第二次という調査を……(田中(甲)委員「簡潔で結構です、十分であったという答弁なんですね」と呼ぶ)はい。ただし、事柄の性格上、その後も新しい資料が発見される可能性は否定できないというふうに考えておりまして、事実……(田中(甲)委員「わかりました」と呼ぶ)  そういうことでやっております。
  41. 田中甲

    田中(甲)委員 今、今後新しい資料というものが発見される、あるいは出てくるかもしれぬということで、今は了承いたしました。  今までの対応の中では、十分に日本政府は、誠意を持って資料というものを調べ上げた、そして聞き取り調査というものも行って対応を行った、そして河野官房長官談話につながったんだということですね。  そして、対応してきた日本のこの姿に対して、諸外国は、今、事態というもの、どのような評価ということをしておりますか。具体的に申し上げるならば、女性のためのこの基金、正式名称は後ほど、アジア女性基金と略して申し上げますけれども、これに対して韓国は、台湾はどういう対応をしている、どういう認識をして、そして日本政府にどのように伝えてきているか、ぜひ御答弁をいただきたいと思います。
  42. 阿南惟茂

    ○阿南政府委員 改めて申し上げるまでもございませんが、従軍慰安婦問題も含めて、請求権問題というのは法的に解決している、そういう中で、日本国民の歴史の反省、こういう方々に対するおわびの気持ちを込めてアジア女性基金の事業が行われているわけでございまして、これに対しましては、先生御指摘になられたような面もございます。  韓国では、なかなかこの事業の趣旨、誠意が理解してもらえないということでございます。台湾でもそういう状況が一部ございました。ただ、フィリピン等の国においては、基金の事業が理解され、実施をされている、こういうのが現状でございます。
  43. 田中甲

    田中(甲)委員 かなり努力をされているということは、国連の人権委員会でもクマラスワミ特別報告官が伝えてくれました。それは事実だと思います。  しかし、現状、韓国あるいは台湾では、受け取り拒否という状態が発生しています。韓国においては、政権が交代してから金大中大統領のもと、韓国が独自に支援金というものを支給しております。そして、それは日本が拠出する金額よりも多い。具体的に、これによって元日本軍慰安婦韓国人は、日本からの基金というものを受け取る必要はなくなったんだということまで、団体や、これは挺対協という韓国における元日本軍慰安婦の支援団体といいますか、このような団体がかなり過激な発言ということもされているところでありますけれども、これらの、国によっては行き詰まった状況ということをどのように御認識されているのか。  そして、日本が官房長官談話に基づいてこの基金というもので誠意ある対応を行っているにもかかわらず、なぜ韓国や台湾からは受け取り拒否をされなければならないのか。非常に不名誉なことをされている。フィリピンからは、総理のおわびの手紙を返却するという事態も発生している。なぜ、このようなことを日本がされなければならないかということを、もう一度確認をさせていただきたいのです。  先ほど申し上げたように、私は公平中立な立場でこの問題をとらえようと努力をしているつもりです。そんな私の立場というものを御理解いただきながら、さらにもう一点。  韓国の国会議員の発言、李美卿さんという国会議員ですけれども、慰安婦問題を考える国会議員の会議議長を務められているのですが、「支給決定は大きなニュース。」これは、韓国が元日本軍慰安婦に支給を決定したということです。日本の女性のためのアジア平和国民基金による償い金よりも額が多いし、これで国民基金は存在基盤を失った、というところまで言っている、韓国の国会議員がですよ。真相究明なしに行われている総理の謝罪やお金は解決に結びつかないと話し、日本の国会での真相解明を求めた、こういう新聞記事でありますけれども、ありました。  答弁をいただく前に、私の考え方、一端申し上げますと、やはり私は、日本において十分な真相究明ということを行う姿勢というのが欠けているのではないかと思うのですけれども、その点も踏まえて御答弁をいただければありがたいと思います。
  44. 阿南惟茂

    ○阿南政府委員 まず、真相の究明ということに関しましては、もちろんこういう歴史の事実の究明でございますので、完全ということはなかなか難しいかと思いますが、先ほど関係部門から御答弁がございましたように、誠実に全力を挙げて調査をしたという経緯、その結果を踏まえて河野官房長官の談話、そしてそれに続いての施策が講じられてきているわけでございます。  先生がおっしゃいました、韓国、台湾で御不満のある、この方たちは、もちろんそういう主張を持っておられるわけで、日本が国として反省とおわびの気持ちから補償をすべきだという主張をしておられる。これは私どももよくわかっているわけでございますが、先ほども申し上げましたように、日本政府立場は、こういう従軍慰安婦の問題も含めて請求権の問題というのは既に法的に解決済みである、そういう状況のもとで、そういう枠の中で何ができるか、どういう形で日本政府国民の真摯な気持ちをあらわすことができるか、そういうことからアジア女性基金の事業が出てきたわけでございます。  確かに、韓国政府が自国のこういう従軍慰安婦の方々に支援金を給付するという措置をとったわけでございまして、当事者の方々は、先ほど先生もおっしゃったような挺対協というような関係団体の人たちは、アジア女性基金の事業はもう不必要じゃないかというようなことを言っておられるということを仄聞しておりますけれども、私どもは、この事業の意義にかんがみて、何とか韓国の方々にも理解していただくように努力をしていく、こういうことで話し合いも続けているところでございます。
  45. 田中甲

    田中(甲)委員 無理に、もらいたくないと言っている国に対して強引に押しつけるということは、私はいかがなものかと思います。また、同時に申し上げておきたいのは、私は、それらの国々に対して、自虐的なと言われるような謝罪の姿というものを何度も何度も日本が繰り返す必要もないというふうに思っております。  やはり今必要なものは、真相を究明するということをしっかりと日本が、ある意味では私たち立法府が法案を上げて対応していくということが本質的な部分なんだろうと認識をしておるのです。そして、その真相を究明したものを次の世代にしっかりと伝えていく、ある意味では我が国日本の恥部というものが出てくるのかもしれませんけれども、そういうところもしっかり次の世代に伝えていくというその姿が、まさに憲法の前文である恒久平和ということを実現させていくことにほかならない。ドイツという国を見ましても、かなりそういうことに努力をしている。こういうことに対しては、我が国日本もしっかりとした反省、自国の中の今までの対応が不十分であったという反省と、そしてそれに対する前向きな対処ということを行っていかなければならないだろうと考えております。  大臣、この韓国が受け取りを拒否してきたという姿、これはやはり日韓間の外交問題にも私は発展しかねないと思っておるんです。そして、これは与党三党でスタートさせて女性のための基金というものをつくったわけですけれども、この協議、なぜ受け取らないか、あるいは受け取っていただくための自分たちが今行わなければならないことは何なのかということを、三党間で協議をされているんですか。
  46. 小渕恵三

    小渕国務大臣 既に政府としては、この問題につきましては、民間の行われておりますアジア女性基金におきまして対処いたしておりまして、そういった点で、この基金がそれぞれの国の対象者の皆さんに御理解を得るべく努力をする過程で、総理のお手紙とともにこの慰労金もお渡しをしておるということでございまして、そういった意味では、政府としてはなすべきことはいたしておるというふうに認識をいたしております。
  47. 田中甲

    田中(甲)委員 三党間の協議は行ったのでしょうか。
  48. 小渕恵三

    小渕国務大臣 その後はいたしておらないと承知いたしております。
  49. 田中甲

    田中(甲)委員 ここに平成六年の、一九九四年十二月に記載されたものがございます。与党戦後五十岸問題プロジェクト従軍慰安婦問題等委員会「いわゆる従軍慰安婦問題についての報告(案)」ということ、そして時の官房長官、そのときは五十嵐官房長官でありましたが、申し入れをしたメモというものがあります。政府が個人補償を行うことは極めて困難であるということから始まりまして、二番目は名称が書かれています。「名称 女性のためのアジア平和友好基金(仮称)」というふうになっております。三番目「なお、実施上新たな問題が生じた場合は政府と与党三党で協議する。」と明確にうたっているペーパーが残っているのですが、このことに関していかがですか。
  50. 阿南惟茂

    ○阿南政府委員 基金の実施に関しましては、韓国との間で、韓国政府がとった措置というのは最近のことでございますが、こういう状況下で韓国政府が自国のいわゆる従軍慰安婦の方々に支援金を給付したという中で、基金の事業が円滑に行われていくように、現在まだ私どもは側面支援という形で韓国政府とも話しておりますが、基金の事業が円滑に行われるようにということで日本政府と韓国政府で話をしている、そういう状況でございます。
  51. 田中甲

    田中(甲)委員 答弁にはなっていなかったのですが、大臣、この約束したペーパーを後でお渡ししても構いません。実施上新たな問題が生じたときには政府と与党三党で協議をするということでスタートしたのです。このことを的確にやはり対応していただきたい。そして、なぜこういうことが書き込まれたかといえば、アジアの国々から日本が信頼される国でなければならぬ、もし相手の国の都合によって受け取ることが難しい、あるいは受け取りが拒否されるというようなことがあった場合には、即刻協議をして、重要な問題として対応していただくべきだと思います。大臣の御所見はいかがでしょうか。
  52. 小渕恵三

    小渕国務大臣 当時の五十嵐官房長官からそのような書面が発出されておられるということでございまして、したがって、その官房長官と三党との話し合いというものを行うということは、今委員お読みになられたとおりだろうとは思いますけれども、並行的に、今の各国との関係におきましては、今、この基金が努力をされておられる最中でございまして、直接的に今日本政府に対してそのような指摘がされておるという状況ではございませんので、側面的にこの問題についての解決努力政府としてはいたしていくということでございますので、今の時点で政府と与党三党との話を改めていたすべき時期ではない、このように考えております。
  53. 田中甲

    田中(甲)委員 そうかたくなにならずに、話し合うということは大事なことですから、まだ三党で政権を持っているわけですから、当時村山政権下でつくり上げたこの基金、今後どういう対応をしていくのだ、そしてどういう改善点が必要なんだということで話し合う機会というのをぜひともつくっていただきたい。私からの重ねてのお願いでございます。  基金ができまして、先ほどのその判決の問題ともかかわってくるのですけれども、財団法人女性のためのアジア平和国民基金理事長原文兵衛氏の名前のもと、「政府見解」というのが書かれて、台湾と韓国の両政府に出されています。  特筆すべき点は、   アジア女性基金からお渡しされる償い金は、  アジア女性基金が従軍慰安婦問題について、道  義的な責任を果たすという観点から、国民の啓  発と理解を求める活動を行い、募金活動を行っ  た結果、広く国民各層から募られた償いの気持  ちの表れである。そして二点目、ここが問題なんですが、   したがって、日本政府としては、アジア女性  基金からの償い金は、法的な問題とは次元を異  にするものであり、償い金を受け取ることが、  個人がこの問題について日本の裁判所に訴訟を  提起し、その判断を求めることを妨げるような  ものではないと考えている。と明確にうたって、両国政府に「政府見解」として提出をしているのです。  つまり、訴訟が行われて、そして日本政府の立法不作為ということが言われたにもかかわらず、控訴するということでありましたか、さらにこの問題というものは裁判所の判断ということを重ねて求めていくということであっては、果たして隣国であります韓国やあるいはその他の国々から日本の誠意というものをしっかりと受けとめてもらえるのかどうか、そこが私は最大のポイントだと思います。御所見を賜りたいと思います。
  54. 阿南惟茂

    ○阿南政府委員 韓国、台湾で基金の事業が理解されていないということが現実にあるわけでございますから、そういう方からは、基金の事業に込められた誠意というものが受けとめられていないということでございますが、先ほども申し上げましたように、日本政府としての法的立場、そしてそういう枠組みの中での日本としての反省とおわびを誠実に表明する方法として、こういう事業をやっているわけでございますので、その点については、今先生が引用されました通報の内容、そういうことも含めて、日本政府の誠実な姿勢を示したものであるというふうに考えております。
  55. 田中甲

    田中(甲)委員 もう基金をつくったからいいじゃないか、あるいは誠実に調査を行ったということが九三年の段階でもう伝えてあるのだから、もういいじゃないかということで区切りをつけたいという気持ちは日本人だれしも一緒なんです。しかし、現実にさまざまな国々から、このような日本措置ということに、十分ではないという声が上げられているわけですから、それに対してどのように対応していくかということを、ともに考えていかなければならないということなんだろうと思います。  今訴訟を起こされているのは約四十、数え方によっても変わってくるのですけれども、これから次から次へこの問題というものの判決が出てまいります。その都度どのような政府の見解が出されるのか。また同じような見解をして、裁判所は全く今までのいきさつを知らないのじゃないかというようなみっともない発言政府の要人から発言されるということがないように、日本政府はこのような対応というものを行っているのですということをしっかりと胸を張って言えるような国になりたいと私は思いますし、次の世代のためにそういう国にならなければいけないというふうに思うのです。  次から次へ訴訟が起きてくるこの一覧表も、もし委員の皆さん方に見ていただく機会があればよろしいかと思うのですけれども、今回のは初めての判決ですから、これからずっとつながってくるわけですから、しっかりと外務省を初め政府考えてもらわなければ困る。  私は、自虐的に日本が謝罪することを何度も繰り返すべきではないと思っている一人です。それは、しっかりと真相を究明するということを行って、日本アジアの国々のさまざまな方々からある意味では聞き取り調査を行うなり、日本がまだ公開していない資料というものをオープンにしていくなり、そして、そこで事実、日本政府として、軍として関与した部分があるとするならば、それに対して心からの対応ということを行っていく、そういう正直な国に日本はなっていかなければならないと思うんです。「大事なことは、日本が率直に歴史的事実を認めた上で、深い後悔の念を示し、誠意ある謝罪をすることです。」と言ったのは、ジュネーブの人権委員会で、中国の代表の方のスピーチでありました。  北朝鮮の文面というものは、あえてお読みしません。かなり過激に話していますから、私は、引用することを今回は避けたいと思います。  これは韓国政府でありますけれども、「特別報告者は」という主語で始まりますが、「日本政府が法的責任を認め、政府から被害者への補償金の支払うように勧告しました。」九六年です。「これに関して我が国は、日本政府がこの勧告に基づいて被害者の要求に見合う適切な措置をとるよう、再度」求めたところでありますが、「生き残ったすべての被害者が、彼女たちの存命中に彼女たちの名誉と尊厳が回復されますよう、強く願っています。もし彼女たちの存命中にその願いに答えず、勧告を実施しないとすれば、日本政府は過去の罪を悔い改める機会を永久に逃すことになるでしょう。」という、そのスピーチの締めくくりは、韓国政府のものであります。  大臣、私は、国会議員の皆さん方にもアンケートをとらせていただいて、確認をいたしました。七百五十二名すべての皆さん方にアンケートを配付させていただきました。十分な回答率ではありませんでしたけれども、回答数というものは八十四名という限られた方々でありましたが、「「女性のためのアジア平和国民基金」の対応が、従軍慰安婦問題での関係国に十分理解されているとお考えですか。」「理解されている」のはわずか二・四%でありました。もちろん、関心のある方々が答えてくださったということも加味していかなければならないのですが、「十分とは言えない」五八・九%、「理解されていない」三九%。そして、「アジア近隣諸国との関係において、未来志向が必要とされるところですが、今後も歴史的事実に対する真相究明が必要であると思いますか。」という設問に対して、「必要である」六六・七%、「どちらとも言えない」二二・六%、「必要でない」一〇・七%ということでありました。  こういうことをもとにして、私は、立法機関、つまり私たち議員の立場から真相を究明していくための、国会内の新しい部署というものをつくっていく必要があるのではないかという考えを持つようになりました。これはもちろん、議員が議員立法で提出をしていくというものでありますし、自民党という最大与党の皆さん方の理解や御指導というものもいただかなければなりません。  自虐的に謝罪をするというような国の姿ではなくて、歴史の事実というものを明確に次の世代に伝えていくという日本の新しい姿というものをつくり出していくために、調査会法という、憲法の前文にあります恒久平和という名称、まさに目的はそこにあるのですから、目的を法案の名称にするということは珍しいそうでありますけれども、衆議院法制局とのやりとりの中で、それもクリアできました。恒久平和調査会法という議員立法を、ぜひとも提出をさせていただきたいと思います。  大臣の御所見、その他御意見がありましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  56. 小渕恵三

    小渕国務大臣 本問題につきまして、田中委員が熱心に御研究、また御意見等お述べになられ、そのことをもって、院としての調査局その他の設置についていろいろ御提言もあるようでございますが、本問題、すべからく議会の、議院の問題でございますので、それぞれの政党間でお話をいただければありがたいと思います。
  57. 田中甲

    田中(甲)委員 再度、よし、議員立法でやってみろ、若いんだからやってみろというような大臣のお言葉がいただければ、次期総理と目されている大臣のお言葉がいただければ大変にありがたいのですが。
  58. 小渕恵三

    小渕国務大臣 今政府立場ですから、政府として議案を提出するというような予定はございません。
  59. 田中甲

    田中(甲)委員 では、質問を変えますけれども、議員立法というものに対する御所見をお聞かせいただければありがたいと思います。
  60. 小渕恵三

    小渕国務大臣 重ねてでございますが、これは院の問題でございますので、議員間におきまして御検討いただければありがたいと思います。
  61. 田中甲

    田中(甲)委員 持ち時間が終了いたしました。  サンフランシスコのシンポジウムの呼びかけ人の一人であります、日米安全保障条約の解消論者として知られている方でありますけれども、チャルマーズ・ジョンソン日本政策研究所所長が発言した内容で、非常に印象的な言葉がございました。  最後にそれを述べさせていただきますが、太平洋戦争に関する日本の政治家の集団的健忘症は、日本が安全保障面で保護されているところに原因がある、という言葉が、私は非常に印象に残りました。  この政治家の集団的健忘症といいますか、事実ということを忘れようとしている、意図的に葬り去ろうとしているという日本の姿が、アジアの中から信頼される国家醸成、国家間の醸成ということができ上がらない大きな要因ではないかと思うのであります。  そして、これが安全保障面その他でも関係してくるという発言をとらえるならば、外務委員会において今後も、この真相究明ということ、特に、近隣アジアから今どのように日本が見られているということに常に目を向けながら、敏感に対応していく。そして、信頼される日本というものをつくっていただきたい。心からお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  62. 中馬弘毅

    中馬委員長 山中燁子君。
  63. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 山中燁子でございます。  本日は、三十分時間をいただいておりますので、まず、ドイツとの社会保障協定について、そして、今進行中のことではございますが、インドネシア情勢について、もし時間が許せば、少しロシアについてということで、御質問させていただきたいと思います。  まず、ドイツとの社会保障協定についてでございますが、先ほど、目的その他はもう述べられておりますので、基本のところに入っていきたいと思います。  ドイツから昭和四十年代に、最初に年金協定の話がありましてから、実際には平成七年から協定交渉に入り、三十年の歳月がかかっているわけでございますけれども、これはどういう理由によるのでしょうか刀例えば制度的な、事務的な問題だったのでしょうか。それとも、政治的な意思が余りなかったのでしょうか。もしくは、担当者がしょっちゅうかわるというようなことで、継続的な、実務的な協議が行われなかったのでしょうか。あるいは、アジア的な風土と申しましょうか、少しゆっくりというようなことだったのでしょうか。なぜ三十年かかったのでしょうか。
  64. 内藤昌平

    内藤説明員 双方、日独とも、それぞれの制度改革が行われておりました。やはり高齢化の進展というのが、その際の現象面で大きかったと思います。  日本の場合は、一九八五年に基礎年金制度を導入いたしましたし、今度の協定は、期間通算の結果、年金の給付ということにかかわってきます。そういう点、それぞれの国民の権利義務にかかわる事項を、専門的、技術的な見地から、細部にわたって両国間で調整を行う必要があったというのが大きな事情でございました。同時に、私どもにとっては初めての協定交渉という意味では、確かにほかの主要国と比べればおくれをとっているということは認めざるを得ないと思います。  私どもとしましては、この日独の協定で得た経験を生かしつつ、今後、順次、他の各国とも鋭意取り組んでいきたいと思っております。
  65. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 双方の事情によるということでございますけれどもドイツではもう既に二十七カ国と協定を結んでおりますし、これも初めてのときがあったはずでございます。英国は二十八カ国、カナダと英国は今話し合い中、そして一番遅くスタートした米国でも十七カ国、しかも米国からは、日本は昭和五十年代にやはりこの締結についての打診がされているわけでございます。  そういうことを考えますと、幾ら初めてといっても、あるいはお互いの制度の問題といっても、三十年というのは余りにも長いというのが私の印象でございます。しかも、これから先、今のところ韓国、ベルギー、オランダ、イタリア、カナダ、フランスなどから続々と申し出があるわけですが、それぞれ制度は違うわけでございます。その制度を全部整合性を合わせていくとなれば、今の御答弁によりますと相当な時間がかかることになります。米国五十年代から、英国は三年前から、もう協議に入っているということでございますが、これからの予定といたしましては、この米国、そして英国とはいつごろ結ばれる可能性を目途としているのでしょうか。
  66. 内藤昌平

    内藤説明員 アメリカとは、平成八年五月、関係当局間の予備的協議を開始しました。近々政府間の協議を開催する方向で、現在は日程につき調整中でございます。  イギリスとの間では、平成九年五月、関係当局間の予備的協議実施しまして、本年二月に東京において政府間の予備協議実施いたしました。
  67. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 私がなぜ長い長いと申し上げているかということのもう一つの理由は、外務省からいただいた資料によりますと、ドイツとの掛け捨ての金額というのが、これは推定というふうに伺っておりますので正確な数字ではないと思いますけれどもへ年三十億円ということなのでございますが、それは大体、およそそういうものでございますか。
  68. 海老原紳

    ○海老原政府委員 ただいま委員が御指摘になりました三十億円という数字は、我々の推定でございますけれども日本人ドイツに行って、ドイツの保険で保険金を払っている額というのを大体一年に一人百万といたしまして、それで三千人を掛けて三十億円ということでございます。ただ、それが全部掛け捨てになるかどうかというのは、それはそれぞれの事情がございます。向こうも、例えば老齢年金につきましては、五年間保険期間に入れば支給を受けられますので、これからどのくらい入るかとか、そういうことにもかかわりますので、それが全部掛け捨てというわけではございません。
  69. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 そのうちのどのぐらいが掛け捨てかということについて、その調査が十分はできていないということであるとしても、この概算で、ドイツに在住の日本人というのが約二万四千人ぐらいですね。そして、英国は五万五千人、アメリカに至りますと二十七万四千人。単純に掛け算をするわけにいかないとしても、しかし、ほかの国も全部合わせますと年間数百億の単位の、これは企業のお金になるか個人のお金になるか、政府のお金ではないにしても、日本の企業か個人からお金が出ている、そういう推定がされるわけでございます。  ですから、そのことを考えますと、今こういった財政の逼迫している折に、それがむだにならないような形というのは、何よりも早く提携を結んで、むだを省くというところの努力をなお一層していただきたい。  そして、今お話ありましたように、アメリカイギリスとはめどが立っているということでございますが、これがどんどん進行していきますと本当に次々と、先進七カ国、恐らく二十を超える国から次々と要請が来ると思います。それにどう対処していくかという態勢も含めて、今のこういう財政逼迫の折、行政のお金ではないということではなく、日本全体のむだを省くということも含めまして、その当事者の利益にもなることですし、簡便な事務手続にもなるということで、デメリットはないというレクチャーを私は受けましたので、それを信じますと、少しでも早くこれは実現していっていただきたいというふうに思います。  大臣の御決意をお願いして、この問題は終わらせていただきたいと思います。
  70. 小渕恵三

    小渕国務大臣 順次進めてまいりたいと思います。
  71. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 速やかにお願いいたします。  それでは、インドネシア情勢で、今多分もう十一時を過ぎましたから、いろいろ独立記念公園などは封鎖されているようでございますし、進行中のことでもあり、最悪の事態にならないようにということを祈りながら、少し質問をさせていただきたいと思います。  その前に一つ、五月十五日に小渕外務大臣主催で、ペルー事件の人質の方をお招きになって懇談をなさいました。これは外務委員会意見を取り上げていただいてこういう実施の運びとなりましたこと、私は外務委員の一人といたしまして大変その御努力に敬意を表したいと思います。まあそうなのでございますが、本来は、一年前にやっていてくださったらよかっただろうというふうにも思います。これは前大臣のことでございます。  そして、そのときに実は、いろいろな方と懇談した中で、こんな声を聞きました。日本政府からの情報が遅かったりなかったり、伝達の方法が不十分であったとか、あるいは具体的な説明、指示がなかった。大きな企業は独自に情報収集その他、家族への対応をした。しかし、そのかかった金額というのは大変なものであって、このようなことがたびたび起こると、中小企業は対応ができない。それから、日本人学校など孤立している民間人への対応が不十分で、在宅の配偶者の方が、マスコミの報道、それから中への差し入れからすべてのことを一人でしなければいけなかったという心細さというものも話していただきました。また、人質の経験に基づくレポートを提出なさっているそうですが、その返事をもらっていない、これは次のためにぜひ政策に反映してもらいたいと思ったものであったというようなことを述べていらっしゃいました。  この日、たしか外務大臣は、その後、インドネシアのオペレーションルームの方へおいでになられたかというふうに思いますが、ちょうどそのとき、幾つかの会社の方々が、これから会社のインドネシアの対策本部に戻るんだということをおっしゃっておりました。  そういう関連もございまして、新聞をざあっと見ておりましたところ、今申し上げたような声が結構新聞の中で報道されております。私はちょっと事実関係を確認させていただきたいと思うのですが、一月三十日に危険度一というのを日本政府は出しているわけです。そして、二月二十七日に危険度一を再確認しております。そして五月四日、これは公共料金の値上げによっていろいろな動きが起こり始めたころですが、五月八日になりまして危険度一を再発出ということになっております。つまり、危険度一を三回発出しているということでございます。  その後、五月八日に華僑系の住民の方々がもう市外への脱出を図り始めておりますし、それから、五月九日付の報道によりますと、インドネシア国内政府軍と合同演習していた在日の米軍が、政情不安により演習の続行は不適切ということで演習を中止しております。  このころ、五月九日、ロンドンで小渕外務大臣はオルブライト国務長官とお会いになりまして、報道によりますと、インドネシア情勢について一般市民への影響を懸念しており、インドネシア政府にも事態の安定化に向けた自制を呼びかけたいとおっしゃって、それに対してオルブライト国務長官は、インドネシアには懸念すべき動きが見られ、日米の親密な連絡が必要だというふうに答えられたということですが、ここまでのところは相違ございませんでしょうか。
  72. 内藤昌平

    内藤説明員 私どもは、現地の情勢の進展状況をできるだけ国民にお知らせするということから、危険度一の同じレベルではございますが、その都度出来事に従ってやりまして、今まで先生がおっしゃったようにその都度繰り返していたところでございます。
  73. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 多分この危険度一が三回出されたというあたりから、私は対応が少しおくれたのではないかというふうに認識しておりますのは、このオルブライト国務長官とのお話の後、日米の情報交換というのは実際にどのような形で行われたのでしょうか。簡単で結構です。
  74. 内藤昌平

    内藤説明員 現地においては大使館同士、それからワシントンにおいてその都度取材しております。
  75. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 五月十三日になりまして、インドネシア調整大臣関係者の自制を求めるということを大臣がおっしゃいましたけれども、この時点で六人の死亡が確認されておりますときに、オルブライト国務長官は、デモ隊に直面しても暴力を行使しないよう治安部隊に自制を強く求めるという発言があります。  少しニュアンスの違いがここで出てきているような気がいたします。つまり、死者が出た時点で民主主義への挑戦というふうに受け取り始めているかの発言をしている米側と、とりあえずスハルト政権を支えながらという日本対応というのがずれてきているのではないかというふうに思うわけでございます。  なぜかと申しますと、五月十四日、日本は危険度を二に上げましたね。しかし、この時点というのは、カナダは出国勧告をしております。イタリアは渡航延期及び出国勧告をしております。危険度二というのは観光旅行の延期の勧告でございます。  それで、十五日に危険度三に日本は上げました。これは渡航延期勧告でございます。この十五日に、米国はジャカルタまたはスラバヤに退避の勧告をしておりますし、フランスは出国検討勧告、ドイツは退避勧告、オランダはチャーター機三機を派遣、それから、オーストラリア、ニュージーランドともに同じ行動ですが、バリ島を除き退避の検討を勧告し、フィリピンは民間機による出国を勧告しております。シンガポールは非常に近いところもあって、非常に知恵を働かせて、公式には退避勧告をする予定はないと言っておりますが、実際には、シンガポール航空に対して十五日以降、増便をするとか、機材の変更つまり大きなボーイングの747に変えるというような要請をしているわけでございます。  十六日に至りましては、アメリカとカナダとが共同で両国チャーター機二機をチャーターして未明にジャカルタから脱出しておりますが、その経緯を見ますと、ジャカルタ市内の三カ所にEメールなどで連絡をして集合させて、バスに分乗している。このバスは地元の警察の先導で、ジャカルタの普通の空港ではなくてハリム空軍基地に行っているわけですが、チャーターされているのは軍用機ではなくて民間機でございます。しかし、そういう措置を既にとっております。  十六日に、NHKとか連絡網とかそういうもので呼びかけて、日本は空港にカウンターを設置しました。十五日の日には、こちらの外務省にも緊急対策の本部を設置しております。  こういう流れを見ますと、この間に、片道千ドル近く、つまり四倍ぐらいに値段が上がって、銀行閉鎖で預金もおろせないとか、なかなか大変な脱出劇が繰り返されてきているというふうなことでございます。  このような事実を見ますと、私は、もっと本当は情報というものがどうあるかということも検討いただきたいと思いますけれども、少し日本対応の認識が甘いのではないか。幸い、今のところ、うまく脱出がきょうまでにかなり完了しているようではございますけれども、もう少し、例えば五月四日の時点で対策本部を発足させて、何事もなければ解散すればいいわけですが、あるいは、危機管理監が任命されたにもかかわらず、その方はいつどのような判断ができる立場なのか、どういうことをなさったのか、それも不明でございます。  私は、自国民の安全ということを第一に考えた場合には、五月八日、九日の段階でやはり政府は危険度を三に上げるとか、あるいは危険度三を飛ばしてもう十四日には四に上げるとか、そういった対応で、私はどういう調査をしたかはあれですけれども、一体大企業で自分の力で脱出できる可能性はどのぐらいの企業があって、できない企業や個人はどのぐらいいてというようなことの把握がされていたのかというのが一点と、それから、五月十三日ぐらいにはもう具体的に着手をして、基準によりますと十四日に危険度四というような判断が下されるべき状態ではなかったかと思うのでありますが、その辺のところ、なぜそうならなかったかということを簡単に御説明いただけますか。
  76. 内藤昌平

    内藤説明員 御承知のように、インドネシア我が国は極めて深い関係にございまして、現地におきましても、それぞれの邦人はいろいろな形で現地とかかわって生活をしておられます。また同時に、我が国の場合は、この密接な関係を反映して航空便も連日、複数便飛んでおります、定期便が飛んでおります。  そのような状態においては、私どもは、まず大切なことは、現地において身の安全を図っていただくため連絡を密接にするということで、自宅待機というのが基本的な対応でございました。その後、現地の状態に即応して、その都度危険度を上げてまいりました。  各国それぞれ、その国の自国民の状態とかかわる、それを踏まえたそれぞれの判断をしているものだと思います。それぞれの国によってそれぞれが判断をしていることは、必ずしも同じ時刻に起きるということではないかと思っております。
  77. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 まさにそのとおりだと思います。私どもは、ペルーも含めていろいろ経験をしてまいりました。非常に大きな経験をした、例えば日商岩井なんかは、もう危険度の察知の仕方から対応の素早さということも、これもいろいろな今までの事件から学んだと思います。  私が申し上げたいのは、今回幸いで、これで終わったとしても、同じような事態が起こってほしくはありませんが、世界中今まだまだ不安定な時代であれば、どこでどういつだことが起こるかわからないときには、早目にきちんと対策本部を設置して、早目に手を打っておいて、それは使わないで済めばいいというくらいのことでやりませんと、外にいて働いている六十万を超す日本人の人たちが、日本政府に対して、あるいは日本の国というものに対して非常に不信感を持つというような事態に至らないようにというために申し上げているわけでございます。  ですから、私は、この議論が始まりますと、自衛隊機を出すか出さないかとか戦艦を送るか送らないかとか、すぐそういう話になりがちですが、もし、先ほど申し上げましたようなタイムのスパンで、オルブライト長官と協議して、アメリカと密接な、まあアメリカが一番軍の関係もあって、情報インドネシアに関しては持っているというふうに判断されるわけです。というのは、そこのインドネシアの海峡を通らないとインド洋まで行けないということがありますから、これは、アメリカのペルシャ湾岸に関する安全保障の船の上での一番の一つのポイントになっているわけです。  そういったことがありますと、アメリカが危険だということで演習を中止するとか、それからチャーター便の動きがあるとか、そういうことをもし日本政府としてきちっと認識していれば、こちらもやはりそれに即応した、例えば最初からもう民間機のチャーターを二日早くやっていて、そして外国機のチャーターもまた二日早くなりますでしょう、そのほかに自衛隊の飛行機ももっとありますけれども政府専用機の可能性、まあ一台は残しておかなきゃいけませんが、一機はどうかとかあるいはほかの国との、複数の国との共同の救出作戦、これはアメリカとカナダが一緒にやったような形で、例えば日本飛行機にもほかの国も乗せるということも今後どこかでいろいろなことが起こったときにあり得るかもしれませんから、そういった発想も入れて、やはりきちんと情報を察知したらそれを早目にどこが判断して、そして邦人の安全を第一に考えるかということ、この点をもう一度きちっと私はぜひ考え直していただきたいというか、またいつも参考にするんですが、その次のときになるとまた同じことが起こるということの繰り返しはもうこの辺で終わりにした方がいいのではないかというふうに思っています。  そういった意味で、私もう一つ質問申し上げたいのは、情報の収集、分析、判断、それによって具体的な計画、戦略、実行という、それがきちんと事務的に十分行われていたかどうかということの検証はありますが、もう一つは、国際的な視野で、一体このスハルト政権というのがどういう状態に置かれているのかとか、民衆の気持ちとか、今世界じゅうで起こっている世界の大きな動きの中で果たしてその辺の認識に日本は少しのんびりしたところがなかったかどうかということを私は感じております。  スハルト政権に関しては、これは五月十四日のバーミンガム発の報道によりますと、インドネシア問題で日本は支援の継続を主張した、しかし、英国とそれから米国は強い懸念を示したと。これは、インドネシアの人権問題というものを英米がかなり気にしていて、そして日本は、スハルト政権を何とかサポートしないと、日本が一番たくさん経済的な援助もしておりますし、また大変活発な民間活動もしている。そういう国だからこそ、私は、救出については早目にしないと、人数がほかの国の倍もいるわけですから、ほかの国よりもおくれるということ自体が非常に不安感を招くというふうに思います。  そういう意味で、このインドネシアというものに対する、これはバーミンガム・サミットの、外務省で訳してくださった仮の訳ですけれども、今般の暴力の高まりと人命の損失を深く懸念する、我々は死者の発生を遺憾とし、当局に対し最大限の自制を示し、殺傷力の行使というものを控え、個人の人権を尊重するように求めるという、人権民主主義ということを訴えておりますし、同時に、インドネシアでは政治的改革の必要性は広く認識されている、我々は当局に対しインドネシアの民衆の願望にこたえる対話を開始し、必要な改革を行うことにより迅速に対応するように要望するというような、これは政治改革ということは、ある意味スハルト離れということになってきております。  そして十五日の段階でございますが、十五日の段階で、アメリカでは、アメリカの軍事協力のプログラムというのが余りにもスハルト大統領の娘婿である軍の司令官に利益を与え過ぎてきたというような反省の弁とか、あるいは、インドネシア政府と市民と、改革について対話を至急開始してほしいと強く要請するということはインドネシア人が決定すべきことであるが、政治的改革は極めて重要であるというルービン氏のコメントもございまして、こういう形で、非常に今まで近い関係であった政権との距離を置き始めております。  IMFはヒーローになれるかまたは悪役かというのが十八日付のこれはアジアンのウォールストリート・ジャーナルに出ておりまずけれども、IMFのアドバイスもどうだったかということもあります。  ですから、この事件が、日本人も、それからインドネシアの人々も、ほかの国の人々も何とか無事に終わったとしても、実際に突きつけられた課題というのは、どういう政権のあり方あるいはどういう国のあり方ということをもう一度、大国、経済支援をする国、IMF、そういったものに反省を促しているというふうに受け取っている国々が、特にアメリカも含めて出てきておりますが、その辺のところについての現在の認識を大臣にお伺いできればと思います。
  78. 小渕恵三

    小渕国務大臣 いろいろな貴重な御意見を交えてのお尋ねでございまして、それぞれに参考にさせていただくべき点だろうと思いますが、インドネシアの政局、政治改革の問題についても、各国の対応についても若干お触れになったようでございます。  本件につきましては、政治改革のみならず、インドネシアの全体の趨勢について、私自身が出席したサミットにおける外相会談におきましても、かなり厳しい意見が提起されておりました。  ただ、日本といたしましては、従来から、インドネシアとの関係を考慮いたしまして、その政権の推移について我が国から申し述べる立場にはありませんけれどもインドネシアがより安定をしてほしいという立場から、日本としてとるべき態度についてはそれなりに考え方を申し述べてきたところでございます。  そういった意味で、一日も早くインドネシアが正常な姿に戻って安定されることを心から祈念をいたしておるわけでございます。現実、きょういろいろデモその他が想定されておる中でございますが、何はともあれ、現在、国会前あるいは広場前の大統領宮殿で予定されている記念式典も中止となりまして、そういった意味ではそれに呼応してのデモの強行というものも中止されておるようでございまして、今日、このことをもうて安定した形でインドネシアの姿が戻られることを心から期待をしておる、こう考えております。
  79. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 時間でございますが、三月十八日に、私が予算委員会のときに、多分外務大臣お記憶にあると思いますけれどもインドネシアへの総理大臣の訪問について触れさせていただいております。そのときに、総理大臣スハルト大統領といろいろお話をなさっても、IMFの基準に従うような努力をなさるということで、大変その辺は評価させていただきましたけれども、ひょっとしたら、インドネシア国民から見て、もしかしたら日本の首相はインドネシア大統領を支援しているのであって、国民を支援しているのではないかもしれないという疑念を抱かせなかったかというふうに懸念をしているというようなことで、ああいうような場合には、最終的な一手、つまり、きちっと政治改革をするということが条件として三十億円を用意しているというような、例えばそういったことができなかったかということを申し上げたと思います。  私はやはり、この独裁、だれであろうと、独裁という政治の終えん、時代の流れの認識不足、またIMF経済援助のあり方の問題点、そういったものが顕在化したことと、もう一つは、正確な情報、分析する力、それをどう認識し、判断し、洞察していくか、そういうことによって生まれる対策の実効性、そういった客観性、迅速性ということが非常に今回問われたと思っております。  インドネシアがおかしくなれば、大変困るのは日本でもあります。ぜひ、このたびいい形でおさまったとしても、今のような問題を突きつけられているということの認識をしていただいて、これからの外国政策をぜひいい形に持っていっていただきたいというふうに思っています。日本の主体性が問われております。ありがとうございました。
  80. 中馬弘毅

    中馬委員長 この際、暫時休憩をいたします。     午前十一時四十一分休憩      ――――◇―――――     午後一時四十四分開議
  81. 中馬弘毅

    中馬委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。東祥三君。
  82. 東祥三

    ○東(祥)委員 自由党の東祥三でございます。三十分間にわたりまして四月二十日に東京で調印されましたこの社会保障に関する日本国ドイツ連邦共和国との間の協定について質問させていただきますが、その前に、二、三時事問題について若干外務大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。  まず初めに、今お配りさせていただいておりますが、これは先ほど私のところに入ってきましたので、事前の通告がおくれてしまったのですが、インディペンデント・オン・サンデーというイギリスの有力紙だと聞いております。五月三日付の新聞でございますが、ここに「キャン ユー フォーギブゼム」という、天皇陛下と、三人の異常殺人者の写真が掲載されている新聞があります。  ここに書かれていることは、天皇陛下を除くこの三人が異常殺人者であり、もう既に刑期を終えているのですけれども、刑期を終えたとしても、イギリス社会として彼らを許すことができないと。それと比較対照して、今回天皇陛下が訪英された折には、エキストラ・ナイト・オブ何とかという勲章が与えられるというふうになっているけれども日本は戦後処理をちゃんとしていない、プリズナー・オブ・ウォーに関連してだと思いますが、ちゃんとした戦後処理をしていない日本国の象徴である天皇陛下も許すことができない、そういう内容だと私は理解します。  もちろん、言論の自由ですから、どのようなことが報じられようが、それに対して、その内容に関してとやかく言うことはできないのかもわかりませんが、明らかに日本国のイメージとして、異常殺人者三名が天皇陛下と一緒に掲載されている、これに対して、外務省としては、イギリス大使館あるいはまた本国に何らかの形で問い合わせをしているのかどうなのかというのが私の第一番目の質問でございます。  ただ、先ほど申し上げましたとおり、今緊急に質問させていただいておりますので、この点に関して情報がそちらへ集まっているのかどうか定かでありませんが、その辺も酌量いたしますので、もしこの点について何かアクションをとられているということであるならば、それについて御答弁願いたいと思います。
  83. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 今、先生からこの記事をいただきましたところでございます。担当の欧亜局等の方とまだ連絡をいたしておりませんので、ここで今まで外務省が検討しております状況ということを私から現段階で申し上げることはちょっとできないのでございますが、いずれにいたしましても、この記事、よく研究させていただきたいというふうに思います。
  84. 東祥三

    ○東(祥)委員 その後、外務省としてどういう見解をお持ちになるか、またそれについてもう既に何らかのアクションをとっているのかどうなのかも含めた上で、御報告していただきたいと要請しておきます。  それから、インド核実験問題に関連してでございますが、核の連鎖というものが当然考えられます。もう既に総理大臣の特命を受けて登特使がパキスタンに行かれて、パキスタン外務大臣ともお話されているということも聞いております。また、日本政府の意向として、核実験をしないように、自粛するように、そういう要請を出していることも理解しております。  それに対して、パキスタン政府の方は、いろいろな要素を考えた上で、そして最終的な判断をすると。問題は、このインド核実験が行われた後に、この委員会の席上でももう既に申し上げさせていただいたとおり、問題は、いわゆる核軍縮あるいはまた核管理という一つの潮流、それに対するインド政府の今回の行為というのは、まさにそういう流れに対する国際社会への挑戦だ。別の言葉で言えば、まさに核不拡散体制、これが崩壊してしまっている。では、それに対して日本政府としてどういうアプローチをとっていったらいいのか、これは極めて難しい問題であると私も承知するわけでございます。  それは別の言葉で言えば、冷戦構造が国際社会において崩壊してしまっている。冷戦構造下における日本の外交政策、とりわけ核の問題に関してのとらえ方というのは、これはそれなりの一つの筋論を持っていたというふうに思います。ところが、冷戦構造が崩壊してしまって、いわゆるNPT体制、核を持つ国と持たざる国、持てない国というのは、持っていない国はもう一生持ってはいけませんよ、それに対しての挑戦なわけです。まさに冷戦構造下においては、東西の二極において、核も含めた上でどちらかに所属していればいい。別の言葉で言えば、いい核そして悪い核、これで選別することができたわけですけれども、今は、そういう思考ができない難しい状況に入ってきているということなのだろうというふうに思うのです。  そうしますと、その上で、核の軍縮の問題あるいは核の管理の問題をどういうふうに考えていったらいいのか、それを、まさに日本の外交政策上、どのように考えていったらいいのかという全く新しい問題を提起されているのだろうというふうに思うのです。したがって、今にわかに、それに対して外務省がどういうふうに考えているのかということを出すことすらもひょっとして難しいのではないのかというふうにも私は推察いたしますけれども、そういう問題だと思います。  したがって、一生懸命インドに対して何らかの制裁措置をとる、あるいはまたパキスタン政府に対してもそれなりの、もしやるならばこちらも考え方がありますよということを幾ら言ったとしても、事は安全保障の問題ですから、安全保障の問題に対して考えているパキスタン政府がちゃんと得心のいく形での理論づけをやらない限り、それは必ずやるのだろうというふうに思います。さらにまた、近隣の国々、中国とは申しませんけれども、一番僕らが心配しなくてはいけないのは、北朝鮮がどういう反応をしてくるかという問題です。  そうすると、そういうものを総合した場合、今パキスタン政府に対して政府がいろいろやろうとされておりますけれども、そこで多分やらなければならないことは、結局、アメリカに対して日本は何を言っていくのか、さらにまた、前回のこの委員会において提案をさせていただきました、中国に対して、日本はこの問題をどのように議論の俎上に上げて、そして交渉を煮詰めていくのか、全く新しい課題を突きつけられているのではないのか、このように私は思うわけでございますが、外務大臣、この点について、いかがですか。
  85. 小渕恵三

    小渕国務大臣 委員指摘のように、インドが今度地下核実験を行い、それと相呼応してパキスタン実験するのではないか、こういう事態でございます。御指摘のように、アメリカあるいは旧ソビエトという二大核大国を中心にいたしましてあと三カ国が核保有国となって、ある意味で、一定のその範囲において、これ以上はもう核は拡散すべきではないという形で、CTBTやそうしたことの活動の中で現実的に核の問題について処理していこうというのが我が国の基本的考え方でございました。  確かに御指摘のように、今度の実験が行われ、かつまた世界の中でそうした実験が許されるということになりますると、他の、核に対する保有を考慮されておると思われるイラクとかあるいはまた北朝鮮とかという問題が起こってまいりますと、これまたもう無限の広がりを持ってくるということでありまして、この点は、最も、今回の事態を重視して、さかのぼって、核の不拡散というような問題についてきちんとした対応を改めて考えなければならない時点ではないかというふうに考えております。  そこで、中国の問題について触れられましたが、中国は、NPTの締約国でありますと同時に、CTBTの署各国でございまして、今般のインドによる核実験につきましては、これを強く批判しつつ、事態を見ながら冷静に対応しておるというふうに認識いたしております。  現時点で重要なことは、国際社会が結束してパキスタン自制を促すべく働きかけていくことであると考えております。中国の動向が地域の安定にも影響を及ぼし得ることを念頭に置きながら、他の関係国とも協力しつつ、事態の推移に注意を払い、地域の平和と安定が維持されるよう、我が国と中国との間でも緊密な意見の交換を行ってまいりたい、このように考えております。
  86. 東祥三

    ○東(祥)委員 外務大臣の御指摘は、すべての問題を考慮した上で適切な御答弁をしてくださっていると思うのですが、もう一歩入りますと、パキスタン政府は何と言っているかというと、あらゆる要素を考慮に入れて、いかなる対応が国益にかなうか、検討しているところである。あらゆる要素を考慮に入れてというのは、これは角度は、私たちが、パキスタン政府自制しなさいよと言っている論理と全く違う論理なのだろうと私は思うのです。それは、パキスタン政府にとっての安全保障上の考慮なのだろうというふうに思うのですね。  そうしますと、問題は、一番初めに私はこの委員会で申し上げましたとおり、日本というのはアメリカの核の傘に入っているわけです。他の国々が安全保障の問題を考えた場合、どこかの核の傘に入っているならば、それは同じ土俵で議論することができるのだろうというふうに私は想定することができると思うのです。そうすると、日本の核の傘に入れということは言えないわけですから、したがって、パキスタン政府核実験への自制を促すとするならば、日本政府として、アメリカの核の傘に入るようにさせるという行動をとるのか、それとも別のものを考えてあげない限り、これは説得できる論理は持たないということになるのではないのか、そういうふうに思うのです。  したがって、私は、なぜ中国との協議を、日本はここで踏ん張ってやったらどうなのですかということを言っているのは、もう既に周知のことですが、パキスタンの核技術は大半が中国から来ている、このように言われている事実がございます。そうすると、当然中国からパキスタンへの、自制を促す何らかのシグナルを送っていただくと同時に、問題は、パキスタンにとってみれば、ここであらゆる要素というのはパキスタン政府にとっての安全保障上の問題なのですから、それに対して日本として何を言うことができるのか、これにかかってくるのではないのかと私は推論するのですけれども外務大臣、いかがですか。
  87. 小渕恵三

    小渕国務大臣 核による抑止力という形で、今日、二大核大国も、人類すべてが滅亡しても足りないような核兵器の軍拡競争をやめて、核削減の努力に入ってきておるわけでございまして、そういう中で行われた実験ではありますけれども、必ずしも、その国の安全保障につきましては、核の傘に入っておらなければ、安全が確保されるというものではないと思います。  もちろん、パキスタン側から言わしめれば、隣国インドがこのような実験を成功しておるということにおきまして、極めてシビアな考え方を持つことは、私はある意味では当然だと思いますけれども、さりながら、国際的な観点から考えますと、そうした不安その他を除くことは、必ずしもどこかの核の傘のもとに置かなければならない、あるいはパキスタン自身がみずから開発して対抗手段を講じるということでなくして、一方には、インドの核に対してきちんとした世界全体の抑制を働かせるということも含めて、隣国のそうした不安を取り除くということも必要なことであって、そのための努力日本として何ができるかという形の中で、インドに対する日本側の強いメッセージを伝えておると同時に、対抗手段考えて対処しているわけでございます。  これは日本だけでできることでないかもしれませんが、世界全体の声を集約しようということで努力をしていくことが、ある意味ではパキスタンがそうした核を保有しなくてもみずからの安全保障を確保できるようなことを日本ないし世界考えていくべき課題だ、このように考えております。
  88. 東祥三

    ○東(祥)委員 安全保障とのかかわりでいえば、必ずしも核の傘に入っているかどうかではないという御指摘はそのとおりなのかもしれません。  しかし、インド政府が今回核実験をやるに当たって、その後の各国の反応が自分たちが予想していたよりきつかったあるいは甘かったという、それはインド政府自体のいろいろな考え方があるかもわかりませんが、日本から過去に中国に対してもフランスに対してもそれなりの非難決議をやっているわけですから、それも当然知った上でインド政府核実験をやっているわけです。日本から制裁のいろいろなものが出てくるだろうということを織り込み済みで必ずやっているはずですよ。  そしてまた、それに対して、今度は連鎖としてパキスタン政府がどういう判断をとるかというのは極めて慎重に見守る必要があると思いますが、そこでの観点というのは、インド政府核実験をやったから、我々としてどうしたらいいのか、我々というのは、パキスタン国民がどのように思うかというところにも、当然政治家なのですから、パキスタン政府の要人たちはそのことも考えているはずです。  それは、究極は、すべては核の傘にあるかどうかということではないという御指摘はそのとおりだと思うのですが、間違いなく、安全保障上の観点で、自国政府としてどういうふうに考えたらいいのかということが究極のポイントになってくるのじゃないですか。それに対しては外務大臣、いかがですか。
  89. 阿部信泰

    阿部政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のように、パキスタン政府、軍関係者の目下の最大の関心は、国の安全保障をどうやって保つかということで、核実験をすべきかどうかということを内部で真剣に議論しているようでございます。  ただ、その点につきましては、日本としては、直接パキスタンの安全保障に対してどういうふうに協力するかということは、残念ながら我が国の国のあり方としてできないことでございまして、そこは率直に申し上げて限界かと思います。  ただ、日本としましては、できますことは、パキスタンという国も、結局やはり民生を安定して国の繁栄を保つということが国の安定に資するわけでございまして、その点においては日本は大変な協力をしているわけで、それが、もし実験をすれば、日本としてはそこは大変な抑制をしなければいけませんということを明確に伝えて、パキスタンメッセージを送っているという状況にあります。
  90. 東祥三

    ○東(祥)委員 今の阿部軍備管理・科学審議官が率直に答えてくださっていますので、多分そういうことなんだろうと思うのです。  パキスタン政府の安全保障に対して、日本が直接的に関与することはできない、しかし、間接的にインド政府の今回のこの核実験の問題が投げかけているものというのは、多分ある意味で、これはまた逆に教えていただきたいのですけれども、冷戦構造が崩壊してしまっている、それからNPT体制に対して挑戦している、では、その後、核の管理あるいは核軍縮という問題に対して、とりわけ核軍縮、持たない国がもうずっと持つことができない。では、持てる国の間における軍縮がどれだけ進んでいるのか。  つまり、アメリカロシアと中国とイギリスとフランス。とりわけ、今STARTⅡが今後どういうふうになっていくのかというのも注目しなければならない問題です。では、アメリカが持っている兵器をどれだけ削減させていくのか、それに対してロシアがどれだけ削減していくのか、それを見て中国あるいはフランスも当然反応していくわけです。  そういうことに対して、日本が積極的に、一番言いづらいところかもわかりませんけれども、そろそろアメリカに対しても言うべきことを言っていかなくてはいけない、そういう時期に差しかかっているのではないのか。それともう一つは、核の不拡散体制に対して、日本というのは直接的にいろいろな影響力を行使することはできないけれども、間接的に、いろいろな国際会議を開いたり、あるいは地域会議を開いたりして、それなりに日本の外交的イニシアチブを持っていく必要性が今来ているのではないのか。  このように整理できるのじゃないのかというふうに思うのですけれども阿部議官、いかがですか。
  91. 阿部信泰

    阿部政府委員 お答え申し上げます。  最初に、NPT体制、CTBTの体制が崩壊に瀕しているというような御指摘がありましたが、私どもは、まだそこまでは行っていない、確かに挑戦は受けておりますけれども、まだNPTというのは重大な存在意義を持っているし、大多数の国の支持を受けているということで、これを堅持するということで引き続き努力をする、また、すぐは無理かもしれませんが、それにインドパキスタンを入れるように努力を続けるということが基本でございます。  またしかし、同時に、御指摘のようにアメリカロシアという大変な量の核兵器を依然として持っている国がありますので、その核軍縮をできるだけ進めるように働きかける、これが恐らく二番目の私ども課題かと思います。  同時に、その体制から漏れてくるいろいろな最近の核物質、あるいは一説によりますと爆弾そのものが出回っているという話がありますけれども、そういったものの管理を徹底する。ニューヨークでは、今、核テロ条約というものを交渉しておりますけれども、そういった面で日本が積極的に動いて、各方面から核軍縮、核の管理を推進するというのが日本の外交の課題ではないかと考えております。
  92. 東祥三

    ○東(祥)委員 また、この点については別の機会で、議論させていただきたいというふうに思います。  次に、インドネシア情勢でございますが、海外危険情報危険度を出すに当たって、日本政府側と現地にいらっしゃる在留邦人の間の連携がなされていないのじゃないのかというふうに思わざるを得ません。  それは、十四日の段階日本政府は、海外危険情報危険度二というのを出しているわけです、観光旅行延期勧告。そして、十七日の段階で、海外危険情報危険度四、家族等退避勧告。明らかにグレードが全然違うわけですね。きょうの午前中、領事移住部長からの答弁がございました。それは、状況の変化によってこの海外危険情報危険度を出していると。  十四日と十七日の状況を比べたときに、明らかに事態状況が悪いのは十四日ですよ。現地に住まわれている人から、多分後から報告を受けられればいいと僕は思うのですけれども。もし、自分自身がジャカルタに住んでいる、そのときに、政府から危険度二の情報が発信された。十五日、十六日は、十四日に比べれば鎮静化しているわけです。そして、十七日の段階で、今度はいきなり家族等退避勧告、これがぽんと出る。  そうすると、何を考えるかといえば、間違いなく、どうもこの十四日で起こっている大変な事態にもかかわらず、そのときには観光旅行延期勧告だけだ。十七日は十四日に比べればぐっと状況は鎮静化されているにもかかわらず、危険度がアップしている。これは、ひょっとして何か私たちが知らない情報が隠されて、日本政府はこういう危険度四のグレードで言っているのじゃないのかと。つまり、間違ったシグナルを送ってしまうことになるのではないのか、これが私の質問したいポイントです。  問題は、十四日に出されている危険度二というのは、日本国から、あるいはインドネシアにいらっしゃらない日本人、つまり日本にいる日本人日本国民に対して、インドネシアに行かない方がいいですよ、こういう話です。  ところが、十七日にこの危険度を発表しているその対象というのは、そこに住んでいらっしゃる方々ですよ。つまり、出される情報が間違ったシグナルで送られてしまうのじゃないのか。この点についてはいかがですか。
  93. 内藤昌平

    内藤説明員 御質問の点でございますけれども、確かに十四日にあの事件はありました。しかし、あのレベルでは私どもは危険度の四のレベルほどの危険ではないという認定でございます。  問題は、きょう、この二十日に向けてどういう準備をするかというのが最大の課題でございました。というのは、二十日に向けて、問題が鎮静化する方向に動いているのであれば、それは危険度四を上げる必要はなかったわけですが、やはり本日の最後のぎりぎりまで、この危険が存在していた、不測事態が恐れられたということで危険度の四を十七日の段階で上げて、それで十八、十九の家族等の退避を徹底的に進めるという、そういう趣旨で危険度の四が出されたわけでございます。
  94. 東祥三

    ○東(祥)委員 十四日の段階では、二十日に国民覚せいの日ですか、それが行われるということは知らなかったということですか。
  95. 内藤昌平

    内藤説明員 それは、その後にスハルト大統領が帰国されて事態の改善に乗り出すということで、まだスハルト大統領対応策というのは私どもとしても見きわめる必要があるという立場でございました。
  96. 東祥三

    ○東(祥)委員 いや、私が質問しているのは、五月二十日に国民覚せいの日というのが、十四日以降に決められたことなのですか、どうなのですかと聞いているのですよ。
  97. 阿南惟茂

    ○阿南政府委員 インドネシア情勢そのものでございますので、私の方からちょっと御説明申し上げます。  十四日と十七日、十七日は週末だったと思いますが、瞬間風速的に、そのときにどっちがどうだったかという面と、もう一つ、全体の流れがあるわけでございまして、御案内のように、十四日の夜から十五日の朝にかけて、日本人小学校の子供たちが七百五十名、通学路に当たっている市中でああいう暴動が起こって家に帰れなかったという大変深刻な事態があったわけでございます。  そういう状況の中で、今領事移住部長からも御説明がございましたように、十五日の早朝、スハルト大統領がカイロから帰ってこられる。どういう対応策を打ち出すかということも一つの焦点でございましたし、国民覚せいの日というのは毎年記念行事がある、そういう事実は知っておりますが、それがこの事態の中でどういう意味を持って、反体制派がそれを一つのきっかけにどう盛り上げていくかというのも、そのときは流動的な情勢であったわけでございます。  ですから、十四日からずっと趨勢があるわけでございますので、十四日の時点と十七日の時点の、瞬間風速と勝手に定義していいかどうかわかりませんが、そのときに、十七日日曜日は穏やかであったじゃないかという、そういう比較だけでは判断がなかなかできないということを申し上げたいと思います。
  98. 東祥三

    ○東(祥)委員 これで終わってしまうときょうの委員会の本題に入れなくなるのですが、私の言いたいのは、外務省として、午前中の議論というのは、この海外危険度というのはそのとき起きている状況対応して出すものだ、そういう御答弁がございました。私は違うんじゃないかということを言いたいがためにわざわざこれを出しているわけです。  今アジア局長の方から、その旨も含めた上での御答弁がありましたので、引き下がりますけれども、問題は十七日の退避勧告を出す、退避勧告というのはどういうことかというと、日本政府が退避勧告を出すならば、自分たち、つまり現地に住んでいる方々が退避できる状況をつくってくれているのかどうなのか、ここが問題になるわけです。当然十四日の日に出したかったのかもわかりませんけれども、もしそういうものを出したとするならば、日本政府としてどのような準備をしてくれているのか。準備がおくれているのですよ。だから、こういうふうになったのじゃないのかと私は推察するのです。その証拠に、ほかの国々は別の対応をちゃんととっているわけです。  だから、それはその問題点だけを投げかけて本題に入らさせていただきますけれども外務大臣、僕の意図はわかっていただけますでしょうか。イエスかノーかでいいです。
  99. 小渕恵三

    小渕国務大臣 まだ経過途中でございますが、結果が出ませんが、政府としては適宜適切に対応してきたつもりでございますし、ある種の事件が仮に相当頻発に行われた、であるがゆえに直ちに危険度四、こういう形でなくて、諸般の情勢を十分勘案をしながら対応してきた、私は最終的判断者としてそのように思っておるわけでございます。  今委員の御指摘によりますと、準備が不行き届きなので、危険度の高いグレードのものを出せなかったというニュアンスにちょっと聞こえたのでございますけれども、準備の方は私ども事務当局と相談をしながらやっておりまして、その危険度に応じた対応というものは適宜行われ、飛行機の手配その他も行われておるというふうに私どもは感じておるところでございます。
  100. 東祥三

    ○東(祥)委員 その点についてはまた金曜日でも、別の機会があればやらさせていただきたいと思います。  最後に、この本題でございますが、日本ドイツとの間で他国に先駆けて、初めて社会保障に関する協定が結ばれた。遅きに失した感があるわけでございますが、少なくとも大変評価したい協定だ、このように思います。ただ、その上で、なぜ初めにドイツなのか。どういう視点でもって、この年金協定を結ぶ優先順位をつくっているのか。  外務省がまとめた九七年版の海外在留邦人人数調査統計によりますと、九七年の海外在留邦人の総数は約七十六万人です。内訳として、アメリカ在留邦人は二十七万人、全国の中の三六・二%、その次にブラジルで一二・五%、イギリスが七・一%、カナダが三・五%、シンガポールそしてオーストラリアと続いていて、ドイツが三・三%。在留邦人の数からいくならば、七番目に位置するのがドイツであります。さらにまた、貿易統計からいきますと、日本と他国との経済関係のウエートからいったとしても、ドイツというのはこれも七番目になっている。  そういう視点で考えますと、この年金協定社会保障に関する協定を結ぶに当たっての優先順位というのは、何に基づいてドイツを選んだのかということが出てきてしまいます。  ちょうど時間が来てしまいましたので、これで最後質問で、お答えいただいて終わらさせていただきます。
  101. 内藤昌平

    内藤説明員 ドイツアメリカは並行して進めてまいりましたが「端的に申し上げて、ドイツとの話し合いが順調に進んだということでございます。
  102. 東祥三

    ○東(祥)委員 以上で終わります。
  103. 中馬弘毅

    中馬委員長 次に、古堅実吉君。
  104. 古堅実吉

    ○古堅委員 最初に、日独社会保障協定について、一点だけお伺いします。  協定は、日本ドイツとの間の交流を一層活発にする上からも必要だと考えています。これまで、ドイツに五年以内の滞在で帰国する者は、ドイツで掛けた年金は掛け捨てになっていましたが、その掛け捨てになった期間は本協定によって遡及して日本年金計算の上で加算されることになるかどうか。その一点だけです。
  105. 内藤昌平

    内藤説明員 協定発効前に払い込まれた保険料は有効に扱われます。その限りにおいて遡及いたします。ただし、年金の受給権が発生する事由は協定発効後ということにしてございます。
  106. 古堅実吉

    ○古堅委員 次は、インドネシア情勢にかかわってお尋ねします。  政府は、インドネシアにおる邦人救出に備えるということで、本月十八日と十九日に航空自衛隊のC130六機をシンガポール派遣し待機させるという措置を強行しています。この間の経過を見れば、政府態度はまず自衛隊機派遣ありきで、この機会に是が非でも自衛隊投入の実績を得たいという思惑だったというふうに思います。というのは、邦人救出は外交措置と民間利用で十分対応できる状況にあったと思われるからであります。  そこで、日時を追って事実関係を確認していきたいと思います。まず、五月十四日午後の時点です。在インドネシア日本大使館は、十四日午後、大使館内に緊急事態対策本部を設置したが、この時点で、政府日本民間航空機のチャーターあるいは民間船舶のチャーターを検討されたかどうか。
  107. 内藤昌平

    内藤説明員 十四日は定期便が三便、十五日、十六日と、定期便は四便、五便と続いております。その時点ではチャーターの手配はしておりません。
  108. 古堅実吉

    ○古堅委員 政府は、インドネシア政府に対して邦人の安全確保の措置を申し入れたかどうか、その点と、申し入れたのであれば、その中で邦人救出のためのガルーダ航空の活用の要請を行ったかどうか。
  109. 内藤昌平

    内藤説明員 五月十六日、川上駐インドネシア大使は、現地政府の当局の責任者に対して、在留邦人及び渡航者の安全確保につきしかるべき措置をとるよう申し入れております。  ガルーダの問題につきましては、五月十五日のジャカルタ市内において交通が一時遮断されたために、ガルーダの一部フライトがキャンセルされることがございました。そのため、当初チャーター便の交渉はガルーダ以外の会社といたしました。しかし、十五日の午前、インドネシア政府のギリ運輸通信大臣と会談した川上大使は、在留邦人退避の場合のインドネシア・ガルーダ航空の利用の問題も話し合っております。
  110. 古堅実吉

    ○古堅委員 十四日の午後四時の時点で、在インドネシア日本大使館は、邦人に対して、ジャカルタ近郊の高速道路はほとんどすべて閉鎖されており、空港へのアクセスは極めて困難であること、引き続きその場待機で状況を見守るようなどとお知らせしております。  この時点で、ガルーダ航空あるいは周辺国の航空機、あるいは船舶等の借り上げについて、どこかと交渉をしたところがありますか。
  111. 内藤昌平

    内藤説明員 私どもは、シンガポール航空、マレーシア航空、タイ航空、キャセイ・パシフィック航空等と交渉を始めまして、最終的にはマレーシア航空及びキャセイ・パシフィック航空及びガルーダ航空、この三社のチャーター便を運航いたしました。
  112. 古堅実吉

    ○古堅委員 私が日付を言って質問をしておるのですが、その日付の時点でというお答えですか、今は。これまでにやりましたとかいうことじゃなしに、十四日の午後四時の時点とか、そういうふうな形で言って質問をしておるのです。
  113. 内藤昌平

    内藤説明員 先ほど申し上げたように、十四日にはしてございません。十五日からでございます。
  114. 古堅実吉

    ○古堅委員 正確なお答えをしないと、何か私が言った十四日の午後にそういうことをやりましたという答えになってしまうのですようそを言ったことになりかねない答えになりますから。  十四日午後の時点はやってないね。さっきの答弁はどうなんです。
  115. 中馬弘毅

    中馬委員長 もう一度ちょっと。意味がおわかりにならない……。
  116. 古堅実吉

    ○古堅委員 安全について申し入れをしたか、そのときにガルーダ、という質問をいたしました。  それも、そのときの話じゃなしに、これまでにということですか。
  117. 内藤昌平

    内藤説明員 安全についての申し入れは十六日でございます。(古堅委員「十六日ですね」と呼ぶ)はい。そのときには、これは治安当局のものでございますから、ガルーダの話は出ておりません。
  118. 古堅実吉

    ○古堅委員 緊迫した事態が続く、そういう状況の中で、なぜ民間機や船舶は活用する準備をしなかったのですか、外務省。
  119. 内藤昌平

    内藤説明員 インドネシア日本の間には日本の航空会社による定期便が運航されておりまして、その定期便をさらに臨時便という形で便数をふやすという措置をとりました。  それから、一般の船舶につきましては、運輸省を通じて現地近海を航行する船の情報を集めてございます。
  120. 古堅実吉

    ○古堅委員 これもいつの話なんですか。十四日の時点のことを質問して、それとの関連で、今、緊迫した事態が続いておる、なぜそういうこともしなかったのかという質問をしたつもりなんですが。  今言ったのはいつのことなんです。十四日のことじゃないね。
  121. 内藤昌平

    内藤説明員 十四日ではございません。十四日は……(古堅委員「やってない」と呼ぶ)はい。
  122. 古堅実吉

    ○古堅委員 十四日付朝日には「防衛庁が、インドネシアからの邦人救出のための政府専用機や自衛隊輸送機の派遣に向け、発着に適した同国内の空港五カ所を選定するなどの準備を進めていることが十三日、明らかになった。」と伝えておるのです。防衛庁だけがいち早く準備に入ったということになるが、その時点では、外務省は民間航空機や船舶の活用さえ検討していないということなんです。なぜ自衛隊だけが準備に入ったのか。そうするような情報を外務省が流したのですか。
  123. 内藤昌平

    内藤説明員 インドネシア日本の間の交通は、先ほど申し上げましたように定期便がございます。一方、防衛庁の研究は、いわゆる自衛隊機のいろいろある中の、物によっては準備に時間がかかることがあるやもしれず、そういう準備と承知しております。
  124. 古堅実吉

    ○古堅委員 防衛庁は準備に入った。最も責任ある外務省はその検討さえもやらぬ。それはなぜなのか、問われることが当然です。防衛庁が検討を始めたのに、外務省は手を打とうとしなかった、こういうところにやはり問題があるのです。問題はここにあるのです。この時点で、政府外務省は、国内外の民間航空機と船舶の利用可能状況について調査くらいはしておったのですか。  また、政府専用機の使用について、天皇の訪欧問題が予定されていることは前からも知っておったわけで、これはちゃんと日程に入っているわけです。それでも、報道によれば、防衛庁が十三日の時点では、政府専用機はそれについての検討対象に含めてあったというのですね。利用が可能である状況を示すものだというふうに思います。なぜ、邦人救出という一大事なのに、政府専用機の使用を検討しなかったのですか。
  125. 内藤昌平

    内藤説明員 外務省といたしましては、商業便をまず第一に十分に活用するという立場でございます。その意味で、定期便に加えて臨時便、さらにチャーター便ということで考えております。
  126. 古堅実吉

    ○古堅委員 質問に答えられないのかしらぬけれども政府専用機の使用についてはなぜ検討しなかったのかという質問なのですよ。民間利用を考えておったというのですけれども、民間利用もしっかりやっていないということは今まで指摘してきたとおりです。  十五日付産経夕刊によりますと、アメリカ政府は十四日、外交官のうち緊急を要しない者についてインドネシア出国するよう勧告し、民間機のチャーターを予定していると伝えています。今回のインドネシア事態は、軍隊の間の武力衝突ではないわけで、民間航空機などの活用で十分対応できたはずであります。なぜそうしなかったのか。自衛隊機の出番を故意につくったのではないかと疑われても仕方がないのではないかと言う人もいます。お答えください。
  127. 内藤昌平

    内藤説明員 各国にはそれぞれの考えがあろうかと思います。我が国インドネシアの間には、先ほどから申し上げております定期便の運航が非常に密に行われております。いろいろな交通手段の差が、また各国の立場にもあらわれることもあろうかと思います。  なお、防衛庁に所属する航空機の派遣を依頼しましたのは、商業便で最善を尽くしてもなお予期せざる不測事態があった場合に備えてということでございます。
  128. 古堅実吉

    ○古堅委員 それは事実にもとるよ。十五日午後になって政府は、日本航空と全日空に十七日をめどに臨時便派遣するよう要請したということだが、この時点でも周辺諸国民間航空機の借り上げ交渉ができたはずであります。それをやったのですか。
  129. 内藤昌平

    内藤説明員 十五日に、インドネシア・ガルーダ航空及びシンガポール航空、マレーシア航空に対し交渉をいたしております。十六日には、さらにタイ航空及びキャセイ・パシフィックに交渉をしております。
  130. 古堅実吉

    ○古堅委員 ところで、日本の民間船舶あるいは周辺諸国の民間船舶の借り上げ交渉はやっていないように今聞いております。大量に輸送できるというのに、どうして交渉もしていないのですか。
  131. 内藤昌平

    内藤説明員 民間機は三種類の飛行機便があると言えます。一つは定期便でございます。二つ目は臨時便、増便という形で行われます。三番目にチャーターです。臨時便とチャーターの違いは、臨時便は……(古堅委員日本の民間船舶、周辺諸国の民間船舶。大量に輸送できるのです」と呼ぶ)  私どもは、まず航空機による輸送が一番邦人のために役に立つと思っております。民間船舶については情報を集めておりますが、まずは航空機で、という立場でございます。
  132. 古堅実吉

    ○古堅委員 今、船舶関係は使う予定がなくて民間航空などの利用で十分間に合わせられる、そういうふうに受け取れるような感じのことを言っていますが、実際には海上保安庁の巡視船を派遣するなどというふうなこともやっているのだよね。  日本民間航空機と外国民間航空機、あるいは民間船舶などですべて賄ってしまったら、自衛隊の出番がなくなる。そのために、あらゆる努力を展開して民間関係の利用の方向を切り開いていくというふうなことに向けるのではなしに、日本航空と全日空だけの臨時便でとどめよう、そういう方向が今の回答の面でも明らかになってきたというふうに思います。  船舶という点でいえば、民間船舶の借り上げ交渉は一切しないで、逆に自衛隊の艦艇は出動させようという動きがあるようにも聞かれます。これでは‘ますますアジア諸国に、日本は軍隊を性懲りもなく派遣しようとしているというふうな警戒心を抱かせるだけのことであります。  大臣民間航空機と民間船舶による確実な邦人救出を展開して、アジア諸国に警戒心を抱かせない行動をとることが必要ではないか、このように考えます。大事な点ですから、大臣からお答えください。
  133. 小渕恵三

    小渕国務大臣 移住部長から答弁申し上げておりますように、航空機によりまして、危険度に応じまして適宜準備をいたしまして、現時点におきましては、ほぼ満席の形で着いてまいりましたが、今の時点では若干の空席も考えられるということでございます。これを考えますと、やはり航空機に対する準備はほぼ適正に行われておるのではないか。  それから、船舶につきましては、御案内のように航空機と違いまして現地までの時間が大変かかることでもございますので、一般の船舶を利用するというようなことは特に考えてはおりませんでした。
  134. 古堅実吉

    ○古堅委員 自衛隊機派遣の問題とのかかわりで今の質問を申し上げたわけです。  昨年七月に自衛隊機をタイに派遣したとき、韓国や中国などから厳しい声が相次いで出たことを忘れてはならぬというふうに思います。今回も、十九日の毎日によれば、インドネシア外務省スポークスマンは十八日、日本政府が自衛隊輸送機C130のシンガポールへの派遣を決定したことについて、「「国内情勢は正常化に向かっており、現段階で軍用機を派遣する必要はない」と述べ、不快感を表明した。」ということであります。  かつての日本軍による侵略等、甚大な犠牲をこうむったインドネシア自衛隊機派遣に敏感に反応することは、至極当然だと申さねばなりません。アジア諸国にかつての軍国日本を想起させるような自衛隊のアジア進出はきっぱりやめるべきではないか、こう考えます。今回の問題ともかかわって、そこが日本政府がとったことにかかわる一つの反省すべきことではないか、このように思いますが、外務大臣、お答えください。大臣から。
  135. 小渕恵三

    小渕国務大臣 今回の自衛隊機C130をシンガポールまで送りましたことに対して、インドネシア政府、今先生御指摘のようなことは、報道としてはあるいはあったのかもしれませんが、政府としてはそういうようなことは承っておりません。
  136. 古堅実吉

    ○古堅委員 時間が参りました。終わります。
  137. 中馬弘毅

    中馬委員長 伊藤茂君。
  138. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 最後質問になりましたが、日程、また大臣の時間もあるようでございますから、まとめて二間だけ質問をさせていただきたいと思います。  一つは、本協定に関しての問題でございますけれども、私は、日独間でこのような協定がされるということは、遅きに失したという話もございましたが、非常にいいことだと思います。また、これを契機に、さまざまの新しい展望もぜひ持つ必要があるということだと思います。  先ほど、なぜドイツかという話がありましたら、アメリカと一緒に勉強したのですが、ドイツが先にまとめましたからという非常にわかりやすい答弁がございましたけれども、この際、この日独間の協定から、どのようにこういうものを発展させていくという展望を持つのか。  長期滞在邦人の多い国も必要性はあるでありましょうし、それから、制度上お互いに話をしやすい関係ということも必要だろうと思います。これは、現実、具体性が必要ですから、これからどういう展望をお持ちになって御努力をしていかれるのか。厚生省はもちろんでしょうが、外務省としてどうお考えかということ。  それから、私は、ボーダーレスというのが、国境のない交流の時代がどんどん広がっていくという時代でございますから、こういうものを両国で勉強しながら制度をつくっていく、また、それを通じまして世界的に社会の大きな目標である福祉の時代をどうつくっていくのか、さまざまの交流がなされることも非常に望ましいことだと思います。  間もなくスタートする介護保険にせよ、世界唯一先行しているドイツなどの例とかいろいろな議論もあったわけではございますけれども、やはりそういうことを身近に交流し合うという意味で、意義のある努力をしていくというふうなことも大切なことではないか。年金制度以外のことも含めましてそういう努力に入っていくべきだと思いますが、それらの面についてのこれからの外務当局としての展望とか、あるいは努力の方向について、どういうお考え方を持っておられるでしょうか。
  139. 内藤昌平

    内藤説明員 このドイツとの社会保障協定の関連で、今後の見通しにつきましては、私どもも先生御指摘のような点を考慮に入れて考えております。  すなわち、我が国年金制度を国際化時代に対応したものとするために、各国と年金協定締結に向けた取り決めを進めていく必要があると考えております。したがいまして、この日独社会保障協定締結は一つの契機として、他の国との間でも、今後順次、鋭意進めて取り組んでまいるつもりでございます。  既に、実はドイツ以外の国からも数カ国、協定締結交渉の開始の申し入れがございます。そこで、我が国としては、相手国との人的交流状況及び相手国年金保険制度仕組み等を総合的に勘案の上、優先度の高いものから順次対応していくつもりでございます。  具体的には、先生御指摘のとおり、在留邦人がとりわけ多く、従前よりこの問題についての意見交換を行ってきた経緯のあるアメリカ及びイギリスについて、鋭意取り進めていくことにしております。
  140. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 これからの時代ですから、さらに前向きの努力を積極的に、外務省も、また政府としても展開されるように要望したいと思います。  もう一問、これは大臣にお伺いしたいのです。日本ドイツということもございますし、日本ドイツの戦後の歴史などさまざま、中山太郎さんも含めて書いたものなどを大変参考に私どもは読むのですが、ヨーロッパとアジアということも非常に考えさせられます。  御案内のように、統一通貨ユーロのスタートということが決まりまして、随分いろいろ難航し、各国ともそれぞれ大変な努力があったわけでございます。通貨というのは主権の象徴的な一部でありますけれども、何か国家主権の一部を共有するような新しい実験の時代に入っているということになるわけであります。著名な学者であるドラッカーさんが書いた「ポスト資本主義社会」の中でも、今までのように国家、国が唯一の物差しである時代ではない、国際的なさまざまの機関、あるいは国連とか、それから地域、自治体とか、いろいろな物差しがある、そういう時代に入っていくということを言っておりますが、私もそういう時代の大きな変化の象徴の一つというふうな気持ちがいたします。  それはそれとして、ユーロがスタートをするということと、それからドル、二大通貨圏になるのではないか、やはり円は一向に国際的な権威とか、あるいは決済手段としての大きなウエートとかというのが出ないのじゃないかという悲観的な見方がこのところ強いわけであります。  そういうものをどう考えたらいいのだろうかというふうに思いますし、それから、今我が国の経済も非常に難しい時期にございますけれども、やはり我が国のポジションとか、我が国の能力とか、我が国の持っている知恵というものは、将来とも悲観的になるべきではないというふうにも思うわけでありますが、ユーロのスタートに関連をいたしまして、さまざま評論をされております。  それからもう一つは、アジアということを考えます。先ほど来も論議がございましたインドネシア危機的な今日の状態、あるいはインド、あるいはインドパキスタンの問題とか、いろいろございます。非常に難しい面があるのですが、やはり中長期的には、世界でも大きな成長の可能性を持った、またさまざまの新しい可能性を持ったアジアという基礎条件といいますか、構図は私は変わらないというふうに思っておりますし、そういう地域だというふうに思っております。ASEMとかの努力ども進んでくるというふうな時代にも入ってまいりましたし、それから例年行われるAPECにしても、だんだん新しい時代、段階に入ってくるというふうなわけでありまして、非常に難しい困難なことはあるけれども、中長期的には変わらぬ可能性を持った地域というふうにも思うわけであります。  ちょっと難しいことを、通貨のこととか通貨圏のこととかアジアとか申し上げましたが、やはりそういうことを含めながら、希望のあると申しましょうか、展望のあると申しましょうか、そういう姿勢を持って対応することが、我が国としては、国際的な信頼を高める意味でも、友好を高める意味でも、非常に大事なことではないだろうかというふうに思うわけでございまして、経済論や何かは別にいたしまして、外交の責任の立場でどういう姿勢で臨まれるか、それを私は、常に積極的なイニシアチブと役割というものを示せるような国でありたいと思うわけでございますけれども、いかがでございましょう。
  141. 小渕恵三

    小渕国務大臣 アジア地域におきましては、多角的自由貿易体制の補完、強化を含む、経済面で協力を進める枠組みとして、ASEANやAPECという多国間の地域経済協力をさらに強化していくことが極めて重要でありまして、我が国としてもそのために積極的に貢献していく必要があると考えております。  ただ、伊藤先生御指摘のように、ヨーロッパが、すべての国が参加しておりませんが、新しいユーロ、統一通貨ということでスタートするわけでありまして、これはドルを基軸通貨として世界ドル体制になっておる中で、新しいこういう体制が生まれるということは非常に大きなインパクトがあるのではないかと思いますと同時に、御指摘のように、アジアにおいてどう考えるかということでございまして、特に円圏というようなことを申し上げるつもりはありませんけれども、やはりこのアジア地域において、こうした地域がどのような通貨をお互い持ち得るかというようなことも大いに検討に値するのではないかという気がいたしております。  最近アジアを回ってまいりましたが、それぞれ国々によって状況が違っております。特に、いわゆる華人経済というものがありまして、タイなどは極めてこうした経済力を持つ中国系の方々と合協力して経済を興しているようでございますし、マレーシアの方は逆に、いわゆるマレー人中心の国家ということでやっておりまして、シンガポールと分かれた原因はそこにあったのだろうと思いますが、シンガポールの方はいわゆる華人中心の経済というような形でありまして、インドネシアもこの問題をめぐって、いろいろと国内にデモ、その他が起こる原因の一つもあったやに聞いております。  いずれにいたしましても、そういった意味で、これからのアジアにおける通貨の姿というようなものも大いに検討しなければならぬと思いますが、実は、こういった点については、先生のこれからの御指摘等もひとつちょうだいしながら、私自身も勉強させていただきたいと思います。何はともあれ、このアジア地域の協力というのをいろいろな形で、またいろいろの会合を通じまして、より緊密な関係をつくり上げる努力は常々していかなければならぬ、そのように認識いたしております。
  142. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 これで終わらせていただきます。ありがとうございました。
  143. 中馬弘毅

    中馬委員長 これにて質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  144. 中馬弘毅

    中馬委員長 これより本件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  145. 中馬弘毅

    中馬委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  146. 中馬弘毅

    中馬委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  147. 中馬弘毅

    中馬委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時五十四分散会