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1998-03-13 第142回国会 衆議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年三月十三日(金曜日)     午前九時五分開議 出席委員   委員長 中馬 弘毅君    理事 福田 康夫君 理事 牧野 隆守君    理事 茂木 敏充君 理事 森山 眞弓君    理事 玄葉光一郎君 理事 松沢 成文君    理事 坂口  力君 理事 東  祥三君       柿澤 弘治君    阪上 善秀君       櫻内 義雄君    下地 幹郎君       菅  義偉君    田中 昭一君       滝   実君    野呂田芳成君       森  英介君    八代 英太君       矢上 雅義君    島   聡君       藤田 幸久君    丸谷 佳織君       山中 燁子君    西田  猛君       古堅 実吉君    松本 善明君       伊藤  茂君    井上 一成君  出席国務大臣         外 務 大 臣 小渕 恵三君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 佐藤  謙君         外務大臣官房長 浦部 和好君         外務大臣官房審         議官      海老原 紳君         外務省総合外交         政策局長    加藤 良三君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部長    上田 秀明君         外務省アジア局         長       阿南 惟茂君         外務省北米局長 高野 紀元君         外務省欧亜局長 西村 六善君         外務省経済局長 大島正太郎君         外務省経済協力         局長      大島 賢三君         外務省条約局長 竹内 行夫君  委員外出席者         大蔵省国際金融         局国際機構課長 玉木林太郎君         外務委員会専門         員       宮本 吉範君     ――――――――――――― 委員の異動 三月十三日  辞任         補欠選任   河野 太郎君     菅  義偉君   宮本 一三君     矢上 雅義君   八代 英太君     滝   実君 同日  辞任         補欠選任   菅  義偉君     河野 太郎君   滝   実君     八代 英太君   矢上 雅義君     宮本 一三君     ――――――――――――― 三月十三日  海洋航行安全に対する不法な行為防止に関  する条約締結について承認を求めるの件(条  約第一号)  大陸棚に所在する固定プラットフォーム安全  に対する不法な行為防止に関する議定書の締  結について承認を求めるの件(条約第二号)  千九百七十一年九月二十三日にモントリオール  で作成された民間航空安全に対する不法な行  為の防止に関する条約を補足する国際民間航空  に使用される空港における不法な暴力行為の防  止に関する議定書締結について承認を求める  の件(条約第三号) 同月十二日  日米防衛指針慎重審議憲法の理念に基づ  く自主的な外交に関する請願(伊藤茂君紹介)  (第六〇六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第二七号)  海洋航行安全に対する不法な行為防止に関  する条約締結について承認を求めるの件(条  約第一号)  大陸棚に所在する固定プラットフォーム安全  に対する不法な行為防止に関する議定書の締  結について承認を求めるの件(条約第二号)  千九百七十一年九月二十三日にモントリオール  で作成された民間航空安全に対する不法な行  為の防止に関する条約を補足する国際民間航空  に使用される空港における不法な暴力行為の防  止に関する議定書締結について承認を求める  の件(条約第三号)      ――――◇―――――
  2. 中馬弘毅

    中馬委員長 これより会議を開きます。  内閣提出在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。阪上善秀君。
  3. 阪上善秀

    阪上委員 おはようございます。自由民主党の阪上善秀であります。  今回、アメリカデンバーに新たに総領事館設置されます。既にアメリカには十六の総領事館設置されておりますが、アメリカ我が国との関係や、アメリカの国土の広さ、邦人企業及び邦人進出状況から見ても、かなり我が国総領事館設置が充実しているのではないかと考えますが、デンバー総領事館を新設される理由と、総領事館を新たに設置する場合の設置基準についてお伺いをいたします。
  4. 小渕恵三

    小渕国務大臣 お答え申し上げます。  今回のデンバーにおける総領事館設置理由でございますが、当地はハイテクの産業や研究開発活動の振興を背景に、コロラド州のアメリカ合衆国における重要性は一層高まっておると考えております。一九九七年の六月に、同地で先進国首脳会議が開催されたのも、その証左の一つだと考えております。  また、デンバー総領事館が管轄する四州には、百八社の我が国関連企業進出をいたしておりまして、四千七百二十人の在留邦人が滞在しておりまして、我が国との関係もますます密接化いたしておるところでございます。  しかし、現在は近隣に総領事館設置をされておりませんで、今委員指摘のように、大変広い地域でございますので、デンバーを管轄しておりますのは現在、在サンフランシスコ総領事館でございますが、ここから二千百キロも離れております。かかる状況でございますので、在デンバー総領事館設置することが必要であると考えたものでございます。  設置基準につきましては、事務当局から御答弁をさせていただきます。
  5. 浦部和好

    浦部政府委員 総領事館設置する一般的な基準についてお答えをいたします。  まずは、在留邦人とか日系企業進出状況一つでございます。また、邦人保護の面で、最寄りの公館からどの程度の困難性をもってカバーできるか。ただいま大臣申し上げましたように、デンバーの場合は、現在の総領事館は、サンフランシスコから二千百キロと非常に遠いところにあるわけでございます。  また、情報入生地として、つまりそこに非常に貴重な情報がたくさんあるかどうかというようなことも、我々にとっては大事だろうと思います。さらに、相手国に対するやはり世論形成一つの拠点ということになるわけでございますから、そういう観点から意味があるかどうかということ。  それ以外には、主要国が置いているようなところについては、やはり積極的に置いていきたい。また、これは本質的なことでございますが、先方の要望があればそれも十分カウントしたい、かように考えております。
  6. 阪上善秀

    阪上委員 先月、アゼルバイジャンアリエフ大統領が来日されたときに、橋本総理との会談において、橋本総理は、両国関係の基礎を定着させるため、できるだけ早くアゼルバイジャン大使館をつくりたい旨表明されたとの報道がございました。  現在、中央アジアからカスピ海にかけての一帯には、中東に次ぐ規模の石油天然ガス資源が埋蔵されているということが判明いたしてまいりまして、アゼルバイジャンにおいても、次々に新たな油脈が発見され、欧米やロシア油田開発パイプライン建設利権争奪にしのぎを削っておるのが現状でございます。  我が国からも、石油公団や商社など民間企業石油開発に参画いたしておりますが、今、アゼルバイジャン我が国関係強化を図ることは、エネルギーの大部分を海外に依存している我が国といたしましては、エネルギー供給先多角化という面からも大変有意義であり、その第一歩として我が国大使館設置するということは、アゼルバイジャンに対する我が国の姿勢を表明する良策であると考えますが、小渕外務大臣見解をお伺いいたします。
  7. 小渕恵三

    小渕国務大臣 まさに阪上委員指摘のとおりでございまして、旧ソ連邦から独立をいたしました現CIS各国に対する我が国対応は、かつてソ連邦ということでございまして、そうした形で一括考えておったわけでありますが、最近のこの地域重要性というものにつきましては、極めて重大、重要なものと認識をいたしております。  さすれば、橋本総理施政方針演説等で申し上げておりますようにユーラシア外交、あるいはシルクロード外交というような言葉が起こっておりますけれども、この地域、すなわちカスピ海周辺地域重要性にかんがみまして、一日も早くこの大使館等公館を置かなければならないという認識はひとしくいたしております。今回は御審議願うことに相なりませんでしたが、できる限り早い機会設置のできるように努力をいたしていきたいと思っております。  お話しのように、先般アリエフ大統領我が国を訪問されました。あのコーカサス地域におきまするアゼルバイジャンの地位といいますか力といいますか、あるいは鉱物資源その他たくさん保持しておるということにかんがみましても、我が国としても、極めて重要な地域として今後とも緊密な関係をつくり上げるためにも、公館必要性は認めておる次第でございます。
  8. 阪上善秀

    阪上委員 次に、昨年十一月の日ロ首脳会談によるクラスノヤルスク会談以降、日ロ関係の発展には目をみはるものがございます。二〇〇〇年までの平和条約締結に向け、大きく動き出しておるところであります。このように、日ロ関係が好転し始めた一方で、本年二月、政府は、八〇年に設置された特命全権大使北海道担当廃止を決定されました。日ロ交渉の本格化するこれからが、これまで以上に北海道大使の果たす役割が重要であったのではないかと思われますが、北海道大使廃止された理由及び北海道大使が担ってきた役割を今後どのようにフォローアップしていくのか、説明を願います。
  9. 小渕恵三

    小渕国務大臣 外務省では、国民理解と支援に基づいて外交を推進する見地から、国内における広報活動も進めるとともに、国内各方面と幅広く意見の交換を行っておりまして、こうした観点から、昭和五十五年以来、待命中の大使北海道の要請に応じ臨時出張させてまいりました。外務省としては、このような活動を通じまして、北海道の政財界、報道関係者、道民の方々から国際問題についての理解を得ることができまして、非常に意義ある制度であったと考えております。  この二月、これまでの有益な経験をもとにして、我が国外交政策及び国際情勢についての広報活動を行わしめるために、北海道だけでなく全国の都道府県を対象とする外交政策広報担当大使設置することといたしたところでございます。  阪上委員指摘のように、現下、日ロ間の関係が極めてこれから進展をいたさなければならない時期に廃止をするのはいかがということでございますけれども、もとより、この大使がそういった点で、旧ソ連との関係も含めまして北海道のいろいろな意見の聴取その他に大きな役割を果たしてきたと思っておりますが、今回は、この一両年の動きの中で政府としても本格的に取り組みまして、もちろん大使の存在も大切ではございますけれども政府みずから積極的に取り組むことによりまして、その大使の果たした役割が決しておろそかにならないように対処いたしていきたい、このように考えております。
  10. 阪上善秀

    阪上委員 日ロ平和条約締結は、東京宣言基づ領土問題を解決することによって達成することになっております。これはまさに、北方領土主権の問題でもございます。  ロシア側は、平和条約締結交渉において、北方領土における共同経済活動提案し、その実現を強く求めておるところでございます。共同経済活動の検討について我が国政府は、日ロ双方主権を害さないことを前提としておりますが、主権に触れないならば、ロシア北方領土を支配しているという現状が維持されるわけであり、共同経済活動に深入りすれば、肝心の領土返還の妨げになりかねないものと危惧するものであります。  そこで、共同経済活動とはどのような活動が想定されておるのか、同提案によるロシア側のねらいはどこにあるのか、また、共同経済活動がどのように領土問題の解決、そして平和条約締結に向けての環境整備となるものと考えられるのか、外務大臣見解をお伺いいたします。
  11. 小渕恵三

    小渕国務大臣 北方四島の共同開発ということでございますが、これは九六年の十一月にプリマコフ外務大臣が来られまして、当時の池田外務大臣との会談の中でこの考え方提案されたわけでございます。  私も、先般の訪ロの折にも、こういったお話も相手方からお聞きいたしましたが、正直なことを申し上げまして、その共同開発なるものの具体的な点につきましては、双方考え方が一致しておるということと相なっておりません。もちろん、このあり方の問題につきましても問題がありますけれども、同時に、内容についてもまだ確たる話し合いが進んでおるわけではありません。  お尋ねでございますので、どういう問題を提起されておるかにつきましては、事務当局から答弁させていただきます。
  12. 西村六善

    西村(六)政府委員 今、大臣お話しになられましたとおり、共同経済活動につきましては、プリマコフ大臣自身提案でございます。九六年の十一月に日本に参られましたときに、日本ロシアの間で四島におきまして何らかの活動をしてはどうかといったようなことを、一般的な提案として話が提起されたわけでございます。それ以来、私ども、今大臣が御答弁になられましたとおり、幾つかの機会におきまして議論をしたわけでございますけれどもロシア側考え方は、それ以降必ずしも明白な、提案といったような形で出てきているわけではないわけでございます。したがいまして、その話し合いは、協議は続けていくということになっているわけでございますけれども、実体的な進捗というものはないわけでございます。  私どものこの問題につきましての考え方といたしましては、領土問題の、今先生自身がおっしゃられましたとおり、私どもの国の立場を害さないような形でやらなければいけないというふうに思っているわけでございまして、そういう基本的な立場対応しようと思っている次第でございます。  しかしながら、どういう考えであるのかということを、ロシア側からさらに提案といいましょうか話がありますれば、その話を聞かないというわけでは決してありませんで、そういう立場でこれからも対応していくという気持ちでいるわけでございます。
  13. 阪上善秀

    阪上委員 先月二十一日、日ロ間で北方領土周辺水域安全操業枠組み協定設置されましたが、領土問題についての双方立場を害さないという前提から、管轄権を明示しない手法がとられました。ロシア側は、海でできたことは陸でもできるとして、北方領土における共同経済活動を推し進めようとしておると聞いておりますが、管轄権あるいは主権を明示しない手法は陸ではとれないことを、この場で小渕外務大臣から明確に述べていただきたいと思うのであります。  と同時に、北方領土周辺水域における管轄権の問題については、それを明示しないという手法現実的な解決策であり、やむを得ないものと言えるけれども、今後、我が国漁船に対し、ロシア側銃撃など無法な行為を行わないということが確保できたのかどうか。小渕外務大臣から、この点を明確にお聞きいたしたいと思います。
  14. 小渕恵三

    小渕国務大臣 北方水域安全操業の問題につきましては、二年余り両国交渉を続けてまいりましたが、先般、私の訪ロの節、ネムツォフ第一副首相と私の間で署名が行われました。  この十二海里水域日本の領海であることは言うまでもないことですが、ロシア北方四島の不法な占拠を続けているために、ロシア側との調整を経ずし日本漁民当該水域において漁業を行うことは、事実上不可能な状況でありました。時にいろいろな形で、この水域での漁業に関しまして、今御指摘のような銃撃事件その他も起こりましたし、あるいは拿捕というようなこともありまして、大変不幸な歴史がありました。何とかこれを解消したいということで念願をして取りまとめたのが、今回の協定でございました。したがいまして、この協定は、日ロ双方立場を害さないという大前提で、日ロ両国間の信頼に基づいて作成されたものでありまして、領土問題解決のための環境整備として大変意義のあるものだというふうに考えております。  今御指摘のように、この地域協定が結ばれましたので、じゃ四島においてはどうなのかというお尋ねでございますが、まず、この環境が整備されましたので、日本の権利を侵すことなく何ができるかということは今後検討していかなければならぬと思っておりますが、率直に申し上げて、海の上でこうした両国の難しい問題を解決できたことは大変よかったと思っておりますが、これをどのように陸に及ぼすかということについては、これから大いに検討いたさなければならない課題が残っておるというふうな認識をいたしております。
  15. 西村六善

    西村(六)政府委員 海から陸に上がったときにこの共同活動日本立場を必ず害するのだ、そういうふうに断言しろという御趣旨の御意見だったと思うのでございますけれども、今大臣が申しましたとおり、海におきましての問題と陸におきましての問題は、非常に大きな差があるように私どもとしては考えている次第でございます。  明らかに陸上におきまして長期間何らかの活動をするというようなことが仮に想定されますとすれば、その関係で、先生自身が先ほど来御主張になっております我が国立場、法的な立場を害する可能性が非常に高い、そういうことが起こってくる可能性は高いというふうに一般的には言えると思うのでございます。  しかしながら、その点はそうだと思うのでございますけれども、現在まだ、何をどういうふうにするかといったようなことを話し合う、その手前のところにいるわけでございまして、現在の段階におきましては、そういう可能性が高いということが想定されるということを申し上げさせていただきたいと思います。
  16. 阪上善秀

    阪上委員 最近、北方領土において諸外国経済活動が展開されているというテレビの報道に接しました。特にアメリカ人大量移住が目立っておるという報道でもございました。  目下、日ロ両国政府北方領土主権あり方を検討しているときに、第三国経済利権北方領土にあることは、北方領土問題の解決にも、また北方領土返還実現後も問題を生じると考えますが、北方領土における第三国経済活動現状について、外務省はどのような情報を入手し、どのような対応をとっているのか、お伺いをいたしたいと思います。
  17. 西村六善

    西村(六)政府委員 今、先生が御指摘になられました、北方領土の四島におきまして外国企業がどのような活動をしているか、あるいはそういう活動をしょうとしているかということにつきましては、鋭意、あらゆる手段を使いまして、調査をしたり情報収集をしたりしているわけでございます。  過去に起こりました事例といたしまして私どもが承知しております事例は、平成四年の段階におきまして、香港の企業が国後島の当局者と一定の契約を交わしたといったような状況があったわけでございます。それから、さらに平成七年におきましては、韓国の企業が同様の経済的な活動につきましての契約をしたといったような情報がございましたけれども、いずれの場合におきましても、我が国がその双方企業ないしは政府当局に対しまして、我が国立場説明いたした次第でございます。  その結果といたしまして、これらの企業が実際上活動をしている、四島において活動しているという実態は、現在のところはないわけでございます。
  18. 阪上善秀

    阪上委員 もう少し情報収集を的確にしていただきたい。それが返還後の問題を生じないようにお願いいたしたいと思います。  次に、平和条約締結交渉が昨年十一月のクラスノヤルスク合意から始められましたが、当初から日ロ間には思惑の差があったのではないかと思います。領土返還を希求する我が国に対し、ロシア側は、領土問題を棚上げしつつ経済協力を推進したいと考えているといったマスコミの論調が多く見受けられるのであります。かつてロシア国内では、領土問題と平和条約締結問題は別問題であるという論調が一般的であったと思います。  しかし、このところロシア国内世論は、北方領土返還に九二%が賛成するという一つ世論調査の結果が出てまいりましたり、また、有力紙領土問題を含む平和条約締結は不可避と報道したり、かなり軟化兆しを見せていると思われます。このようなロシア国内世論の変化について外務省はどのように認識されているのか、お伺いをいたしたいと思います。
  19. 西村六善

    西村(六)政府委員 今、先生がおっしゃられましたような世論調査は、最近特に、九一年にソ連が崩壊いたしまして現在のロシアの体制になったわけでございますけれども、その過程におきまして、言論の自由といいましょうか、そういうものが非常に強く社会的な現象としてあらわれているわけでございまして、そういうことも背景にありまして、ロシア世論というものが、世論調査の形によりましてかなりわかってきているという事実はあるわけでございます。それで、かなり多くの数のロシア人世論が、今先生がおっしゃったような意見を持っているといったような調査の結果が出ているということは、私どもも承知いたしている次第でございます。  しかしながら、世論調査の常でございますし、世論調査のやり方についてのいろいろな意見、いろいろな分析も必要かと思います。  そういった点からしまして、世論調査一つの重要な参考として、私どももそのとおり受け入れなければいけないというふうに思う次第でございますけれども、同時に、この問題につきましては、従来のロシア世論におきまして非常に強い意見でありました、領土を返すべきでないという考え方ロシア世論も非常に強いということは、一方において事実であろうと思うのでございます。そういう現実を私どもはそのまま受けとめて対応していくべきではないかというふうに考えている次第でございます。
  20. 小渕恵三

    小渕国務大臣 一点付言いたしますと、先般のモスクワでの、エリツィン大統領と私、会談をいたしました折、大統領みずから、やはりロシアにおける世論というものは極めて重要だ、そういった意味で、みずからもこの点については国民によく説明をしていく努力をしたい、こういうことをおっしゃっておられたわけでありまして、このことを推測すれば、大統領みずからも、国民世論背景にして日本との関係をぜひ決着したいという意思のあらわれと私は拝察いたしたわけです。  ぜひこの世論といいますか、やはりロシアにおきましても、当然これから条約が結ばれ、批准行為ということになりますれば、議会の支持も得なければならぬわけでございますので、引き続いて全力で、我が国としても、世論形成についてできる限り努力をしていかなければならぬ、このように考えております。
  21. 阪上善秀

    阪上委員 ロシア国内世論軟化する一方で、ロシア政界には残念ながら軟化兆しが見られないというのが現実ではないかと思います。  ロシア議会は、先月二十日、外国への領土割譲を基本的に禁止する領土保全法案を可決いたしました。そのほかにも、ロシア政府が、日本政府との北方領土交渉に備え、領土保全を定めたロシア憲法など国内法に照らして、島を日本に移譲する法的根拠はないとの内部見解をまとめたことを複数のロシア政府筋が明らかにしておるのであります。  ロシア議会及びロシア政府のこのような動きは、日ロ両国首脳が陣頭に立って進めている平和条約締結交渉を阻害する要因にもなり得るものと考えますが、事実関係について外務省収集されておる情報を提示していただき、小渕外務大臣の所感と、対応あり方について答弁を願いたいと思います。
  22. 西村六善

    西村(六)政府委員 今先生がおっしゃられました領土保全法案は、先月の二十日にロシアの下院を通過したわけでございますが、したがいまして、連邦院という上院の審議が今後必要になっている、そういう状況にございます。  この法案で規定しておりますことは、次のようなことでございます。  第一は、外国への領土の割譲については、同等の地域ないしは同等の水域を交換する場合を除いては禁止するということを規定しているわけでございます。  一方におきまして、諸外国との領域紛争があるということはこの法律前提としておるところでございまして、その領域の紛争についてはどう解決すべきかということを規定しております。  領域紛争につきましては、国連憲章、国際法上の一般原則、法規及びロシア連邦が締結した国際条約、つまりロシア連邦が外国締結した国際条約に従って解決されるということを規定しているわけでございます。したがいまして、国際条約ロシア外国と結ぶ場合におきまして領域紛争というものは解決されるということを規定しているわけでございます。  さらに、この関連におきまして、ロシアには国内法がございまして、現行の国内法でございますロシア連邦の国境に関するロシア連邦法というものがあるわけでございますけれども、その法律におきましては、国際法上の関係において正式な手続がなされていない隣接国家とロシア連邦の国境は、双方条約により画定されなければならないというふうに規定しているところでございます。  先生がおっしゃられました内部見解との関係は、そういう内部見解なるものが出されたという報道が出ていることは私どもも承知しておりまずけれども、この点に関しましては、基本的に、クラスノヤルスクにおきまして日本ロシアの最高首脳が、二〇〇〇年までに平和条約東京宣言基づいて締結するために全力を尽くそうということを宣言されたわけでございまして、その具体化に向けて、私どもは鋭意努力をしている最中でございます。したがいまして、内部見解との関係では、そのことを申し上げざるを得ないというふうに考える次第でございます。
  23. 小渕恵三

    小渕国務大臣 今御説明申し上げたロシア議会における立法の件でございますが、これはひとえに、一般的にロシア領土に関しての問題の諸点について定めようというものだろうと思います。特に四島に的を絞ってということではないと理解をいたしております。  しかし、極めて重要な、関心を持たなければならないロシア側法律でございますので、今後とも注目をいたしていきたいと思いますと同時に、我々としては、我が方の基本的な四島の問題については、十分これらの問題について、そうした障害にならないように、今後とも、ロシア側議会の皆さんの動向等についても注目いたしてまいりたいと思っております。
  24. 阪上善秀

    阪上委員 最後に、いよいよ来月の十一日から十三日、エリツィン大統領を伊豆半島の川奈に迎えて首脳会談が行われるわけでございますが、クラスノヤルスク会談のように、目に見えるような大きな成果があることを期待いたしております。  そこで、首脳会談に向けての準備状況、議題等を説明していただきたいと思います。あわせて、川奈会談の成功に向けての政府の決意を小渕外務大臣からお聞かせ願いたいと思います。
  25. 西村六善

    西村(六)政府委員 川奈におきます会談は、クラスノヤルスクにおきまする会談と同じように、ネクタイをしないで、両首脳の間で個人的な友好関係を深め合う、確かめ合う、それをより強くするというのが趣旨でございます。したがいまして、今回におきましても、いわゆる向かい合って会談をするというような雰囲気ですらございませんで、非常にそういう打ち解けた雰囲気の中でお話をされるというものでございます。  したがいまして、その議題といったようなものを今定めておらないわけでございますが、日ロ関係の全体の問題を、それから将来の展望といったようなものをお二人の首脳がお話しになるということが、一番想定される会談の内容であろうというふうに思います。
  26. 小渕恵三

    小渕国務大臣 十一、十二、十三と参られますが、主要なのは十二日の首脳会談ではないかと思います。私は、余人を交えず、橋本総理エリツィン大統領との人間的関係は極めて濃密になってきておると思いますので、こうしたことを背景にいたしまして、将来に向けての方向をさらに確実なものにしていくことが重要だと思いますし、申し上げておりますように、二〇〇〇年までに東京宣言基づいての平和条約締結ということを何度も何度も確認していくことが重要ではないかというふうに考えております。  そして、非公式、公式にかかわらず、この一両年、できる限り、数次にわたって行うことがそのことを達成できるゆえんだろうと思いますので、願わくば、ことしの秋には公式に我が方から、また、来年九九年、いよいよ二〇〇〇年を前にして、エリツィン大統領が公式に日本を訪問されることのできるように、何とか話し合っていただければと思っております。  本件につきましては、私が訪ロしたときにも、プリマコフ外務大臣からもそのような御趣旨の御提案をいただいておりますので、首脳会談において、ここ一両年、何回も顔を合わせて、話し合いを積み上げるということが極めて大切だ、そういうことが今度の川奈の会談で行われれば大変幸いだと願っております。
  27. 阪上善秀

    阪上委員 終わります。ありがとうございました。
  28. 中馬弘毅

    中馬委員長 続いて、玄葉光一郎君。
  29. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 民主党の玄葉光一郎です。  在外公館に勤務する職員に対しましては、それぞれの地域において適切な給与と待遇を保障していくということは必要不可欠なことであるということを、この在勤法改正案を審議するに当たって冒頭申し上げて、関連質問をさせていただきたいと思います。  日本人は私は大変忘れっぽい国民じゃないかなというふうに思います。ある大事件が起きると、その大事件に向かってみんなわあっと騒いで、それが解決されると潮引くように、忘れたかのような、そんな状況が生まれる。今回、この在外公館法律案でありますから、ペルーの人質事件の教訓をこれからどう生かしていくのかという観点から、最初、二、三質問をさせていただきたいというふうに思います。  今回の予算案に、先般のペルーの人質事件の教訓を具体的にどのように生かしているか、まずお聞かせいただきたいと思います。
  30. 小渕恵三

    小渕国務大臣 御指摘のように、大事件が発生をいたしまして、そのときには朝野を挙げて問題意識を強く持ちますが、その後忘れがちな点も反省しなければなりません。  実は、このペルーの事件につきましての教訓は、何といっても、この危機管理体制ということについて、従来の考え方を踏襲しただけでいいかという反省にのっとって対処しておるわけでございまして、平成十年の予算案におきましても、この在ペルー大使公邸占拠事件の教訓を踏まえまして、外務省といたしましては、その重点事項の一つとして、危機管理体制を強化するために、総額約五十八億二千万円、前年度十四・六億円増を計上いたしまして、人的な面、危機管理・安全体制の強化、これは定員増でありますが、と同時に、物的措置として、いろいろ近代的な探知機その他を購入することによりまして、二度と再びペルーでのような事件が発生をされないような措置、万が一そうしたことが起こりましても、適時適切に対応のできるような体制をできる限り整備しようということで、現在予算の検討もお願いをいたしておる、こういうことでございます。
  31. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 私、最初、予算の要求内容を見たときに、率直に申し上げて、ペルーの人質事件のあの報告書に書いてあるような抜本的な、今おっしゃったような警備員の、いわゆるハード面の体制をしっかりしていくのだ、早急にやるべきことがたくさんあるみたいな表現をされていた割には、正直、これは予算の制約もこれありということであると思いますけれども、物足りないなという感じを持ったのが正直な気持ちであります。  同時に、これは予算書にはなかなか反映されないかもしれませんけれども、私は、あのペルーの事件というのは、一言で言えば、情報収集と分析の失敗だったというふうに思いますし、それは報告書にもそのような反省が書かれているようでありますけれども、この対策について、外務省、今どのように考えておられるか、また、今どのように進めておられるか、その件についてお尋ねをしたいと思います。
  32. 浦部和好

    浦部政府委員 委員指摘のように、最初はまずは情報収集、それからそれの評価ということが、こういうものを予防する上の一番のポイントだろうというふうに考えます。そのために、あのペルー事件以降、直後に、我々としては、省内にそういう特別のテロ関係情報収集分析、評価のチームをつくって稼働させております。また、平成十年度の予算要求におきましても、そういう情報収集面での強化のための人員というのを特にお願いをしてございます。  ただ、警備官が一番その比重は大きく、その次に情報収集の人員、人員的にはそういう順序でお願いをしておるところでございます。
  33. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 今おっしゃった警備官というのは、結局防衛庁とか外務省とか警察庁とかから来るということだと思うのですけれども、なかなか外交上の身分が高くなくて、情報収集ができないというところが私はあるのじゃないかと思うのです。  この間のあのペルーもそうなんですけれども、結局は大使みずからが情報をとってくるということが極めて私は大切だし、その意識改革、心構えが何より重要だというふうに考えていますけれども、そういう体制というのは外務省の中で今どうされているのですか。
  34. 浦部和好

    浦部政府委員 当然のことながら、大使館としては全体としてやはり一番、その情報収集に当たるということがまずは基本なんだろうと思います。もちろん、大使としても、一番向こうのトップとコンタクトができるというような利点があるわけでございますが、やはりそれの動くためのベースになる情報というのもあわせて重要なわけでございまして、大使館全体として努力をするということが基本だというふうに思っております。  ただいま申し上げました警備官につきましても、確かにその地位からして、なかなか情報がとりにくいという面が実はございました。したがって、そういうところを改めるために、例えば警備官という名前と同時に、その出ております、例えば防衛庁から出ているとか警察から出ている、そういうものの名前もあわせて使って、先方の情報当局との関係がより密接にできるようにするとか、いろいろこれから工夫を凝らしていこう、かように考えております。
  35. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 この報告書は、実は要旨しか今ここにありませんけれども、とにかくペルーの場合でも、ペルーの治安当局は事件前のテロ組織の動きについて情報を有していた、しかし大使館はその情報は入手していなかった、情報源について、情報機関関係者との人脈は十分でなかったと、それぞれ今申し上げたような反省が、これは私、素直に書かれていると思うので、とにかくこの種の問題というのは事前対応が九九%だと思っていますから、とにかく危機抑止、事前対応、それは情報収集と分析だということで、さらに外務省内で検討を加えていただきたい、そのように考えております。  それと、私、報告書の要旨を読んで物足りなかったのですけれども外務大臣にぜひもう一度検討したらどうかとおっしゃっていただきたいなと思うのは、今回のペルーの事件を振り返って、いろいろな識者の方々からも御意見をいただいたのですが、率直に言って、危機管理と起こってからの対応と両方の面で言えるのですけれども、専門家がいないということが、私は痛切に感じた。それぞれ役所の中に一人とか二人とかいるのかもしれません。あるいは、民間人、学者、研究者、中にはいらっしゃるのかもしれませんけれども、この種の問題の専門家が極めて少ない。ほとんどいないのじゃないかと申し上げても過言ではないのかなというぐらいの、私は気持ちでおりました。  そういう意味では、このテロの専門家の養成というのを考えていかなければいけないのじゃないだろうか。これは、経験も要れば、心理学もできなければいけない。社会学もできなければいけない。いろいろな面でトータルが問われるというところがあって、外務大臣あるいは外務省の中だけではできないかもしれませんけれども外務大臣から私は政府の中にもう一度投げかけていただいて、この件についてもっと真剣に考えたらどうかということをおっしゃっていただきたいと思いますけれども大臣、いかがでしょうか。
  36. 小渕恵三

    小渕国務大臣 大変いい御指摘だろうとは思います。またそういった専門家といいますか、そうした情報収集や分析等に大変高い意識を持っておる方も探せば実はおるのだろうと思いますけれども我が国の今の実態から考えまして、現在の国内の治安とか、そうした問題については、少なくとも世界の中では後列に属しているのだろうと思います。そういった意味で、みずからこういう問題についての適任な、あるいは研究をしておる方々を探すということは、非常に大変だろうと思います。もとより、政府の中では警察を初めとしてそれぞれ専任の者はおるわけですが、国内のことが中核じゃないかと思います。  そういった意味で、今世界にこれだけの日本人の方が多く活躍している時代に、それぞれの国の事情というものは千差万別です。特に、テロが発生をされるとおぼしき地域については、より一層神経を払っていかなければならない。そのための専門官というものの養成、これは本当に真剣に考えていかなければならないのじゃないかと思います。  現在の段階では、それぞれの国々といかに情報交換ができる人材がおるかまでが精いっぱいでありまして、みずからその地域の中に潜り込んでそれぞれの生の情報というものを取り込むというまでの専門家は、なかなか今おらないのじゃないかと思いますので、御指摘は、そうした者をこれから大いに養成せよ、こういう御指摘ですから、勉強させていただきたいと思っております。
  37. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 前も申し上げたのですけれども、何か、CIAは親子二代で情報マンをつくるんだという話でありまして、そこまでいかなくとも、私は唖然としたのです、ペルーの事件のときに。ありとあらゆる方々にお話を聞きましたけれども、しかし、正直これだという方には私は当たっていないというふうに思いますし、だからこそ政府もなかなか迷いもあったというところがあると思うのです。ですから、ここはおっしゃるとおり、なかなか難しいと思います。  法律にとらわれてもいけない、あるいは前例にとらわれてもいけない、縦、斜め、横、全部、いろいろな面で柔軟に物が見られる人ということですから大変ですけれども、ここはぜひ私は、指示していただいて、どこかできちっともう一回検討していただきたいなというふうに思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。  次に、一言だけ、在外公館の関連の法律ですから、私も感じていますし、これまで委員の方々から何回か出ていますけれども、在外職員の数は、確かに委員の方々が御指摘されたとおり、どうもアメリカの三分の一だ、あるいはフランスの三分の一だ、ドイツの二分の一だということでございます。やはりこの在外職員の数というのは、今の公務員削減の流れの中で大変厳しい。  もっとも、我々民主党は中央省庁の機能を極めて限定して、つまり外交、安保、ナショナルミニマム等々に極めて限定するので、全体の公務員の数は減るけれども外務省の在外職員の数はふやそうというのが我々の案ですけれども、今回外務省の在外職員、公務員の削減の中でどのように対応されていかれるおつもりか、お聞かせいただきたいと思います。
  38. 浦部和好

    浦部政府委員 委員から外務省の定員に対して大変力強いお言葉をいただきまして、大変にありがたいと思います。  外務省としましても、もちろん公務員全体の削減という非常に大きな制約があるということは踏まえますと同時に、あわせて、外交需要が非常に増加しているということに政府部内でもぜひ御理解をいただくべく努力をいたしまして、その結果、平成十年度におきましては九十三名の増員の要求で政府原案をつくっていただいて、今御審議をいただいているということでございます。  実は、この数は非常に大きな数でございまして、今回、そういう増員の予算をつくっております省庁といいますのはほかに三つ四つございますが、いずれの省庁も一けたの要求でございます。それに比しますと、外務省の九十三名というのは大変大きな要求ということだろうと思います。  また、今後とも、とりあえずは、イギリスが七千名、ドイツが九千名という体制を持っております、できるだけそういう先進国に近い体制づくりを着実にやってまいりたい、かように考えております。
  39. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 それじゃ、ODAの問題に話題を移させていただきたいと思います。  今、在外公館の話をしていたわけですが、その在外公館が中心となって行っているのが、草の根無償というプログラムであります。今回ODAの質問をするに当たって、基本的なスタンスとしては、全体の額を減らしても効果をふやすという観点から、どういうことを考えていったらいいのかということで申し上げたいと思うのですが、その草の根無償は、私はよいしょするわけではありませんが、基本的にヒットプログラムだというふうに思っているのです。  スピーディーだし、なかなか多様なニーズにこたえられるプログラムなんじゃないかというふうに思っていますが、額が、平成五年から、一・五倍から二倍のペースでふえているということなんですが、ことしは、五十億円から五十七億円にしか伸びていない。全体が減らされているからというわけではありますが、私は、ここはもっと伸びをふやしてもよいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  40. 大島賢三

    大島(賢)政府委員 NGOの支援策の一つとして、いわゆる草の根無償の制度を設けておりますが、先生指摘のとおり、この草の根無償は、執行も早くできますし、かつ、いわゆる草の根レベルに幅広く届き得るということで、私どもも大変力を入れてきておるわけでございます。  基本的には大使館がその執行に当たっておりますが、アフリカ等を含めまして、必ずしもその陣容が十分でない、むしろ非常に手薄のところもございます。そういう状況の中での執行でございますので、私どもとしては、できる限り予算的にはふやしていきたいと思いますけれども、執行の面にも十分目を配りながら対応していくということでございます。  そういう制約を抱えながら、しかしできるだけふやしたいという気持ちのあらわれとしまして、近年予算の増額にも努めておりますが、平成十年度におきましては、五十億円から七億円増ということを要求させていただいておりまして、これも、今申し上げたようなことをいろいろ考えながらやっておるところでございます。
  41. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 同様の性格を持つのに国内のNGOに対する補助金というのがあると思います。これは、NGOが途上国で行う事業費の二分の一を補助するということであります。  私は、ここで御注文を申し上げたいと思っているのは、これはあくまで事業に対してその二分の一を補助するということでありますけれども、一言で申し上げれば、この使い道を人件費とかあるいは事前の調査費とか、そういったものにも使えるようにしてあげたらどうかというふうに思っておりますけれども、いかがでありましょうか。
  42. 大島賢三

    大島(賢)政府委員 NGOの事業補助金につきましては、基本的には、制度からいたしまして、NGOがやっております開発関係の事業に対しまして、今御指摘のように二分の一をめどに支援をするということでございます。  その事業支援という枠の中でもできるだけ、例えば管理にかかわる費用でございますとか、あるいは人件費にかかわります費用ですとか、こういつたところにもできるだけ支援が及ぶように、運用におきましては柔軟に対応していくということでやっておりますが、基本的には、しかしその事業に関連するという制約があるのは先生指摘のとおりでございまして、事業を離れましてNGOの組織とか、管理費全体に対する支援もやったらどうかという御趣旨だと思いますが、これにつきましては、現在のNGO事業補助金制度のもとでは十分対応できないということがございます。  他方、先般、外務大臣に御提出をいただきました21世紀に向けてのODA改革懇談会の最終報告の中には、まさにこの点につきまして一つ御提言をいただいておりまして、個々の開発協力事業支援のみならず、NGOの事務管理・運営費の一部を必要に応じて支援することも検討に値するという内容の提言をいただいております。  こういう提言をどこまで生かせるか、私ども早速検討に入っておりますので、この辺につきましては、ぜひ私どもも、できるだけNGO支援という基本姿勢に立って、何とかならないかの検討を重ねていきたいと思っております。
  43. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 外務大臣、私は、外務省はNGOを育てていく義務があるのではないかというふうに思っているのです。というのは、例えば、アメリカは援助疲れがあって、ODAの額をどんどん削減をしている。しかし、アメリカは各国にNGOが根を張っていて、もちろんアメリカそのもののパワーがありますから存在感があるんですけれども、私は、アメリカのODAの存在感というのは、アメリカのNGOによるところがかなりあるのではないかというふうに思っているのです。  しかし、残念ながらこの国のNGOは、歴史が浅かったり、税制上の優遇措置がなかったりしてなかなか育たない。別件で税制上の優遇措置を講じていくということを我々考えていきたいと思っていますけれども外務省としても、今申し上げたように、今財政基盤そのものが非常に薄いという状況ですから、NGOを育てるという観点で、今御答弁にあったような懇談会の報告書の提言をしっかり実行していただきたいというふうに考えておりますけれども、御決意のほどをお願いしたいと思います。
  44. 小渕恵三

    小渕国務大臣 日本外交を進めていく上に、NGOの果たす役割というのは非常に大きいと理解をいたしておりまして、外務省としても、それなりにそのための協力を惜しまず努力をしていくべきだという認識に立っておりまして、NGOの事業補助金が、平成元年に一・一億が十年に十一一・五億、政府原案ではございますが、十倍、これでいいかと言われれば、そういうわけではないのだろうと思います。  NGOにつきましては、その昔は、AGOじゃないか、アンチ・ガバメント・オーガナイゼーションじゃないかということも時に言われたのですが、今やそういう時代じゃなくなったというのは、私も、この職につきましてから、COP3とかあるいはまた対人地雷の禁止条約が生まれるゆえんのことをいろいろと見ていますと、こうした問題に対してNGOが極めて積極的に対応しておるということを認識いたしておるわけです。  したがって、そういった意味で、NGOのこれからの努力というものを多としていかなければならぬと思いますが、育てるというのはちょっと言葉の問題ですが、相協力してやっていけるような形の中で、政府としてNGOにどういうことができるのか。今、税法上の問題もお取り上げでございますけれども、予算的にもどういう形ができるのかということについて真剣に取り組んでいき、相協力して、外交の面では国際社会に対する貢献を果たしていかなければならない、それができるような体制をつくっていく努力をいたしていかなければならぬ、このように考えております。
  45. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 大臣、誤解のないように改めて申し上げておきますと、NGO補助金の額は額でもちろんふやした方がいいと思いますが、その中身の使い方について、今は結局事業費の二分の一を補助しているという状況なんですけれども、その補助金をもっと自由に使わせてあげてほしい、事前の調査費とかそういうものに自由に使わせてほしいということを実は申し上げたわけで、これは私は、大臣が一言事務当局にやれということをおっしゃれば、大分事務当局の作業は進むんじゃないかというふうに思っていますから、ぜひ検討してほしいと思います。  次に、ODAは有償、無償、技協と三本柱なわけでありますが、その技協の他省庁分の予算、私はこれを見てがっかりしました。  それはなぜがっかりしたかといえば、例えば技協の他省庁分の予算が、例を挙げて一番額の大きい文部省と通産省を申し上げますけれども平成八年度が五百八十四億円、平成九年度が五百九十九億円、平成十年度が五百五十億円、通産省は五百六十六億円、五百八十五億円、五百四十二億円、ODA全体の比率に応じて大体その比率も変化している。はっきり言えば、配分シェアが固定化しているということが、もう一目瞭然なわけです。  これは一度指摘もさせていただいたこともあったんですけれども、私は、まさに外務省の援助の一元化なんということが言われている中で、とてもじゃないけれども、途上国のニーズに応じた政策的なイニシアチブが発揮されているような予算の配分とは思えないわけですけれども、その点いかがですか。
  46. 大島賢三

    大島(賢)政府委員 御指摘のODAの中の技術協力につきましては、まさにその技術協力の多様性からくることだと思いますけれども、ほとんどすべての省庁が何らかの形で関与をいたしております。かつ、そういう関与がなければ幅広い技術協力を日本として展開することができない、こういう状況でございます。  そういう中で、技術協力の一番大きな問題は、そういった他省庁が絡むだけに、やはりできるだけ重複とか非効率がないようにしていくということだろうと思っておりまして、そのために、中心的には外務省が全体の調整に当たるべきだということでございまして、関係省庁との間の連携等に努めながらやっております。  その中で、予算の配分でございますけれども、これは各省庁とも、文部省の留学生事業、それから通産省がやっております、主として民間部門を関与させつつ産業技術協力を中心にやっていく、こういうことで予算が計上されておるわけでございますけれども、それぞれ創意工夫を凝らしながら毎年予算をとって事業を展開しておる、こういう状況でずっと来ました。  その結果、全体の数字を見ますと、確かに今御指摘のような側面があるいはあるかもしれませんけれども、少なくとも、これからにつきましては、予算がしばらくは削減を余儀なくされておる状況でございますので、全体のめり張りをつける、各省間の所管の枠を超えた総合調整を行うということで、平成十年度の原案におきましてはかなり思い切った調整が加えられている、そういうことでございまして、引き続き、外務省としましても、そういう削減の中でめり張りがついた執行ができるように役割を果たしていきたいと思っております。
  47. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 率直に申し上げて、公共事業のシェア配分より固定化していると思っていて、平成十年度でもそうなっていますね、通産、文部とか、特に四省庁とか見ていると。ですから、ここは真剣に考えていただきたいと思うのです。  私が危機感を持ったのは、結局十九省庁体制とか四省庁体制というのをつくったわけですね、つくってやり出したのです、やり出してこの程度かと思ったから危機感を持ったのです。やり出す前にこのぐらいだったらそうは思わなかったのだけれども、やり出してこの程度か。  それだったら、やはり外務省に一元化するなり経済協力庁をつくるなり、そういうことを考えていかないと、縦割りによるむだ遣いが出てくるんじゃないのというふうに申し上げたくなるわけであります。  外務大臣政府・与党と申し上げてよろしいのでしょうか、中央省庁の再編の中で、この援助の一元化の問題というのをどのように位置づけて考えておられるのか、経済協力庁のようなものをつくるということを考えるべきだったのではないか、考えたのかどうか、その点についてお伺いをしたいと思います。
  48. 小渕恵三

    小渕国務大臣 ODAの一元化につきましては、委員も行革会議その他の経過につきましてもほぼ御承知のところだろうと思いますが、各省庁が経済協力事業を行っておることによりましての重複や非効率という事態が生ずることのないようにということで、今まで外務省としても関係省庁間の連携の強化に努めてきたところでございます。  昨年十二月取りまとめられた行革会議の最終報告で、経済協力に関する全体的な企画については、外務省がコアになって総合調整を行うという方針が打ち出されたところでありまして、中央省庁等改革基本法案において同趣旨の規定が盛り込まれております。  この最終報告の趣旨を最大限尊重し、また、国会での審議を経て法案が成立いたしますれば、その規定に従いODA実施体制の見直しを行うとともに、今後とも、ODAの一層効率的、効果的実施に努めていくということでございます。  今、委員はその経過のことについてというお話でございましたが、これはかねて来、いろいろ御議論のあるところでございました。やはりこのODAにつきましても、一元的に実施するためにはどういう行政が、あり方が最も望ましいかということにつきましては、外務省としては外務省としての考え方をその会議におきましても申し述べたところでございますが、今、冒頭申し上げましたようなこととして決定をいたしましたので、これが通りましたら、その範囲の中で最善の努力をいたしていきたいと思います。  御指摘にありましたように、省庁が二省今度少なくなることになりますが、いずれにいたしましても、それぞれが権益を維持するということだけでなくて、もっと効率的な連絡、協調をしながら効果を上げていかなければならないということを考えて、これから努力をいたしていきたいと思っております。
  49. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 私は、個人的には経済協力庁をつくった方がいいと思っています。それは最も重要な外交手段だと思っていますので。  今おっしゃったように、十九省庁体制、四省庁体制、あるいはその連絡体制でいくのであれば、それぞれの省庁が既得権益のように持っているところにきちっとメスを入れる、踏み込むというところまでやらないと、一元化の意味はないと申し上げておきたいと思います。外務大臣外務大臣だけではなくて自民党の最大派閥の領袖でもございますから、そこはリーダーシップをぜひ発揮していただきたいというふうに思います。  次に、ODAの最大の供与先というのはアジアでございます。そのアジアが今経済危機に陥っているわけでありますけれども、このアジアの経済危機を受けて、当然ODAのアジアに対するあり方というのも変わっていく必要があるのではないかというふうにも考えますが、このアジアの経済危機を受けてのODAのあり方について、一言お伺いをしたいと思います。
  50. 小渕恵三

    小渕国務大臣 現下アジアを襲っておる経済危機は、もともと通貨・金融の制度をめぐりまして、大変厳しいこの金融の状況にかんがみまして、それに端を発しておるわけでございます。そういった意味で、各国とも非常に経済の状況が厳しくなっておりますが、それぞれの国におきましても全力で努力をしますと同時に、金融につきましては、IMFを中心といたしまして、我が国も応分の協力をしながら、その打開に努めておるところでございます。  今御指摘は、それと経済協力についてどうかということでございますが、全く無関係という問題でないことは申すまでもないと思いますが、経済協力は、あくまでもそれぞれの国々の経済的な基盤をレベルアップして、よってその国々の国民の生活を高めるということにおいてお役に立てればということでございますので、現下の状況とのかかわり合いを直接打開するためにどのようなことをODAを通じてできるかということにつきましては、なかなか困難な問題があるのではないか、こういうふうに理解しております。
  51. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 いや、私はかなり関係があるのじゃないかと思うのです。それは、供与先にしてもプロジェクトの中身についてもこれは当然関係してくるわけで、例えばインドネシアだったら、これは私は関係するかどうかわかりませんが、十二の大きなインフラ整備のプロジェクトが、IMFのプログラムによると中止をされる。仮に、仮に何かODAが関連していたら、当然そこは大きく関係をしてくるわけであります。  また同時に、きょうの新聞にも出ていたようでありますが、食糧援助にも絡みまずけれども、今、御存じのように、打ち壊しとか暴動とか略奪がインドネシアにおいては起きていて、いつ広がるかという不安があります。この社会不安というのは、やはり当たり前の話ですけれども、ばかにできないのは、特に今インドネシアは、御存じのとおり、華人、華僑にそのアタックが行っているわけでありますけれども、その華人も六百万人いて、その華人は、不安だから結局ルピアを金とかあるいはドルにかえていく、また通貨危機になっていくみたいなところがあって、これは社会不安の克服なくして経済危機の克服もないなという感じが私はインドネシアについてはいたしますけれども、その社会不安に直接撃ち込む政策というのが必要ではないかというふうに思っています。  その意味では、米の援助の話が、最近ちらほらと新聞報道でございます。インドネシアはどうも米不足が深刻化するのではないかというふうに言われているようでございますけれども外務省としてはこの食糧状況に対する認識をどう持っていて、同時に、外務大臣はこの米の援助を決断するのかしないのか、決断されるとしたらどういう仕組みで実施をされるおつもりか、その辺、お聞かせいただきたいと思います。
  52. 小渕恵三

    小渕国務大臣 先ほど、ODAと現在のアジアにおける経済の不安定な状況に対して、関係が非常にないようにおとりになりますと、私ちょっと舌足らずではなかったかと思っております。  と申し上げますのは、今回も、例えばインドネシアにつきましても二百億円の供与を申し入れておるわけでございますし、またその他、タイとかマレーシアの留学生について、今厳しい環境の中で、その派遣が難しくなっておるというようなところにつきましても、このODAを通じてそれを解消するような趣旨の手当てはいたしておるわけでございますので、その点はちょっと舌足らずであったと思います。ただ、経済協力だけでこの難関を突破するということにおいては、そういうことでなく全体の、日本政府としてもあらゆる手段を講じて協力をすべき問題だろうというふうに考えております。  そこで、米の問題につきましては、インドネシア等におきましても、私あてに外務大臣からも強い要請も参っております。エルニーニョ現象によりまして、このインドネシアにおきましても従来、米が自国ですべて賄えるというような大きな成果を上げてきておるわけですが、現下、非常に厳しい環境だというふうに聞いておりますので、どのようなことでお手伝いができるかどうかということにつきましては、現在与党内でも検討いたしておりますが、現時点における対応につきましては、ひとつ事務当局から答弁させていただきます。
  53. 阿南惟茂

    ○阿南政府委員 インドネシアの経済不安、そして社会不安、今委員の方から、社会不安が華僑の心理等に影響を与えて経済不安を呼び起こしているのではないかという御指摘がございましたが、ここは、経済不安から社会不安が起こったというような面もございます。  そういう困難の中で食糧事情も悪化しているということでございまして、私どもが聞いておりますのは、米がことしの九月ぐらいの時点で三百万トンから三百三十万トンぐらい不足をするというような数字もございます。現在、WFPが調査に入っていまして、今月末ぐらいに実態の調査結果が出てくるということで、私どもも、そういうことも参考にしつつ、ただいま大臣が御答弁されましたように、先方からの要請にこたえて、どの程度の米の支援ができるか、また、どういう仕組みでやっていくか、目下検討をしているところでございます。
  54. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 まだ検討中ということでありますが、私は、何らかの形で援助した方がいいというふうに思っています。  総理があしたからインドネシアを訪問されるということでありますけれども、現時点において、総理はインドネシアにおいてスハルトさんにお会いをして何をどう語るおつもりなのか、お聞かせいただきたいと思います。
  55. 小渕恵三

    小渕国務大臣 今回の橋本総理は、我が国と緊密な関係にありますインドネシアを新体制発足に際し訪問いたしまして、同国経済の安定化、今後の二国間関係のさらなる発展に向けて、首脳間で率直な話し合いを行うことといたしております。  特に、経済困難の中でインドネシアがさらなる改革を進め、現在の困難を克服することへの期待を大統領に直接伝えるとともに、このような改革努力に対し、我が国としても変わらぬ支援を行うという姿勢を示していきたいと考えておると思っております。  今回の、総理が急速、土日をかけてインドネシアに参られるということにつきましては、総理自身がスハルト大統領と多年の友人関係を通じまして、恐らく我が国としての考え方を明らかにいたしますと同時に、この困難の状況に際してどのようなことができるかということにつきましてもお話し合いをされると思いますが、いずれにいたしましても、総理がみずからインドネシアに参りまして、七選されたスハルト大統領と本当に腹蔵なくお話し合いをされるということ、そのことは大変意義深いことだというふうに認識しております。
  56. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 大蔵省の方、きょう来ていらっしゃいますね。  IMFのプログラムについて少しお聞きしたいのです。というのは、幾つか指摘もされていて、このIMFプログラムは、どうもメキシコなどの中南米のプログラムと一緒ではないか。しかし、中南米の状況とアジアの状況というのは、そもそも危機に陥った原因について違うし、そのときのファンダメンタリズムが違い過ぎるというふうに、私も思っている一人であります。  つまり、中南米の場合は、放漫な財政赤字があって、ハイパーインフレがあって、そして国際収支も赤字で、しかし一方で、タイ、韓国、インドネシアの場合は、おおむね抑制的なインフレだったし、健全な財政と言ってもまあおかしくはない状態だったし、国際収支の赤字も少しずつ改善していたというところがあって、そういう違いがあるにもかかわらず、ほぼ同じプログラムをアジアにも当てはめてしまったのではないかという問題が私はあると思っています。  基本的には、私も、この構造改革プログラムというのは中長期的に正しいと思いますが、かなり柔軟に対応していかなければいけないんじゃないかというふうに思います。IMFには政府から一人理事が行っているわけですし、第二位の出資金を日本は支払っているわけでありますから、影響力を行使できるのではないかと思いますが、いかがでありましょうか。
  57. 玉木林太郎

    ○玉木説明員 アジアでの金融・通貨面の危機、これを現在の局面を克服し、そしてアジアの諸国が持続的な成長を達成するためには、言うまでもなく、各国が適切なマクロ経済運営と構造調整努力をし、そして特に重要なことは、市場の信認回復に努めていくことが必要なわけですが、こうした観点から、我々としても、各国がIMFと合意したプログラムを着実に実施していくことが必要だと考えております。  今御指摘のアジアの状況を反映したプログラムをつくるべきではないかという点でございますけれども、プログラムを作成していくに当たり、IMFとしても、各国の直面している経済困難、どんな危機に直面しているか、そして、それぞれの国の経済情勢の違いに配慮して、各国の状況に即したプログラムを作成するよう努めているところでありますし、プログラムを実施していく過程で、定期的にレビューを行い、必要であればプログラムに調整を施してきております。  インドネシアにつきましても、プログラムの策定当初、九八財政年度の財政収支の黒字化を義務づけておりましたけれども、一月のプログラムの見直しの際、当財政年度の財政収支の一定の赤字を容認するよう修正を加えたところでございます。  御指摘のとおり、我が国としましても、アジア諸国に対するプログラムの策定、そして、そのレビューを行う理事会等の場で、第二位の出資国、単独理事を出しているという立場を踏まえ、プログラムがアジア各国の経済情勢に必要かつ十分なものになるよう、積極的に発言してきておりますし、これからもその努力を続けてまいりたいと思います。
  58. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 一月二十三日ですか、IMFの合意を盛り込んだ新予算案がインドネシアでできたということなんですけれども、この合意どおりやるとやはりなかなか、これは正しいのですよ、基本的には、中長期的には正しいと私も思っているのですが、ただ、現時点での国民の不安というのになかなかこたえられないというところがあって、だから、私はさっき、直接撃ち込むODAみたいなものも必要だということを申し上げたのです。おっしゃるとおり、韓国もタイも少し緩めましたね。財政赤字をGDP比の割合で緩めていっているわけですけれども、私は、今まさに通貨の供給量をふやすということの方が大事だと思っていますので、ここは、私は、アメリカとか欧州諸国はかなり原則論で来ると思うのですけれども日本はかなりアジアの実情、当然アジアの一員であるわけですから、アジアの立場にも立ちながら、しっかりIMFの中で、これはあるいは外務省、大蔵省だけではなくて、政府全体として、もう少し国の実情に即してプログラムを改定していくことも考えるべきだ、そして実現可能な案にしていくべきだということを率先しておっしゃった方がいい。  どうもこのIMFはアメリカ主導だと。確かにそうなっているわけですけれども、アジアの危機に対しては日本は極めて大きな責任があるわけで、私は、橋本総理が、こういうIMFのプログラムについても何らかのメッセージを送り、また内需拡大についても、実現をしていないだけできちっとメッセージを送っているとは思いますが、そういうことをし、そういうことをしないと、私は、責任を果たしたとは言えないというふうに思っていますけれども、その点について、いかがでありましょうか。
  59. 玉木林太郎

    ○玉木説明員 当然、アジアにおける最大のIMFの出資国として、我が国は、アジア諸国に対するIMFのプログラムの策定において大きな影響力を及ぼすことができ、かつ及ぼしたいと考えているわけでございます。  今、例に挙げられました金融面につきましても、果たして無条件に金融引き締めを続けていくことがよいのかといった点についてはいろいろな議論があるところでありまして、それは、一方では為替相場の動き、他方では引き締め過ぎによる金融セクターの脆弱性の深刻化の問題、あるいは国内経済の活動水準の問題といった点をさまざまな角度から議論する必要があると思います。  御指摘を受けて、今後とも、IMF理事会等の場で積極的に、アジアの立場を踏まえ、実情を認識した国としての発言を続けてまいりたいと思います。
  60. 小渕恵三

    小渕国務大臣 IMFが期待をすることは、それぞれの国が経済的に自立し、安定し、通貨・金融が安定をするということだろうと思います。そのためには、それぞれの国々のよって立つ事情が必ずしも一つではありませんので、そのことを十分心得て、IMFのコンディショナリティーというのはフレキシブルに提案されているのだろうと思っております。  今御指摘にありましたように、インドネシアにつきましては、今回、総理が明日から参られますが、恐らくお気持ちとしては同じアジアの一員として、また、特に日本としても大変関係の深いインドネシアがこうした難しい環境にある中で、財政金融の専門家としての経験を持つ現総理が、本当にそれぞれの地域状況について十分認識をして、いろいろ率直なお話ができるのだろう、こう思っておりますので、今回のインドネシア訪問がそうした意味からも有益であることを私としても心から念願しておるところでございます。
  61. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 何か報道によると、村岡官房長官が、先ほど大臣がおっしゃった二百億円分の円借款について、IMFに歩調を合わせて実施を先送りするようなことをおっしゃっているわけでありますけれども、何かよくわからないのですね。  ミャンマーの援助再開なんかを見ても、日本は、いわば北風と太陽だったら太陽になって、建設的関与をしていくのだということなんだけれども、今回は、切り離さずに、がちっとして、タイアップしてやるというような発言があるわけでありますけれども、私は、ここは柔軟にして、スハルト大統領にいろいろ物を申した方が今までの態度からすれば正しいのではないかと思いますが、いかがでありましょう。
  62. 大島賢三

    大島(賢)政府委員 委員からただいま御言及がございましたインドネシアに対します二百億円の追加的な円借款の貸し付けにつきましては、この二百億円は、インドネシアがIMFと合意をしたところに従いまして、別途、世界銀行あるいはアジア開発銀行がインドネシアの国内における構造調整を支援する、そういうプログラムを用意しておる、それと歩調を合わせる形で合意をしたものでございます。  そういう考え方で発想され、かつインドネシア側とも話し合いをして合意を見ているものでございますので、そういう意味で、IMFあるいは世界銀行、アジア開発銀行等がインドネシアとの間で今後行っていくであろうこととある意味で連動しながら貸し付けの実行がなされていく、こういう了解に立っております。  そこで、現在のところは、世界銀行、アジア開発銀行ともみずからの融資の実行を暫時様子見、こういう状況でございますので、我々としても同様の見地から現在のところは様子を見ておる。たまたま、今の時点で申しますと、新しい政権が発足する過渡的な時期でもございますので、あわせて、全体の様子を見ている、こういうことでございます。  他方、完全にIMFあるいは世界銀行、アジア開発銀行との歩調の度合いが、いわば完璧な形でこれをやっていくかどうかという点につきましては、我々のこの二百億円の話につきましては、あくまでも二国間の援助でございますので、その点については多少前後することもあり得るということもあろうかと思いますけれども、いずれにしましても、現在はそういう考え方に立って様子をしばらく慎重に見守っている、こういうところでございます。
  63. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 もう時間がありませんから、最後に大臣に、予算委員会で総理が聞かれていることを一言お聞きをして終わりたいと思います。  今まさに、アジアの経済危機のためにも内需拡大が日本は求められているというふうに思います。各国の輸出を我々の輸入として受けとめていく責任が私たちの国にはあると思っていますけれども、我々、六兆円減税を盛り込んだ組み替えを要求していくということでございますけれども大臣、その点いかがでありましょうか。
  64. 小渕恵三

    小渕国務大臣 総理大臣、大蔵大臣答弁を復唱する以外ないのだろうと思いますが、いずれにしても、十年度予算を一日も早く国会で御承認をいただいて、予算を執行できるという体制をまずつくり上げていただきたい、心から念願いたしておるところでございます。
  65. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 終わります。どうもありがとうございます。
  66. 中馬弘毅

    中馬委員長 山中燁子君。
  67. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 山中燁子でございます。  今の玄葉先生の半分の三十分でございますので、私も簡潔に申し上げようと思いますが、答弁の方もできるだけ簡潔に、明快にお答えいただければと思います。  まず、きょうの法案でございますが、日本を代表し、海外に赴任する外交官の方々に対しては、適切な給与と待遇を保障し、十分な活動をしていただきたいと思うのは当然でございます。しかし、今回のように二五%を超える改正の提案ということ、金額をぽんと提示され、そして、これは米国、国連あるいは当地の物価、あるいは為替レート、こういうものを勘案して出しているとおっしゃっても、正直申し上げて、これが本当に適切なのかどうかということがわかりません。多分、国民の、一般の方たちもおわかりにならないのではないかと思います。  それで、この法案に私は賛成をいたします。つまり、明確な反対もできないわけですが、ですから、条件をつけたいというふうに考えました。伏魔殿などと言われないためにも、改善が必要と思われる二点について、わかりやすさ、透明性を高めるという意味で、ぜひ御検討いただきたいと思います。  まず第一点目でございますが、この給与の費目というのが日本の場合には俸給、扶養手当、在勤基本手当、配偶者手当というふうに四つあるわけでございますが、これはいつの時点で見直した費目でございますでしょうか。
  68. 浦部和好

    浦部政府委員 実は、今、二五%というお言葉がございましたけれども、今回、在勤手当の改正をお願いしておりますのは……(山中(燁)委員「その点じゃなくて、この基準がいっかというその点だけお願いいたします」と呼ぶ)これは平成五年度でございます。平成五年度の基準を変えて、今度平成十年度に新しい基準をつくってくださいというお願いをしております。
  69. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 多分意味が違っているのだと思うのですが、この四つの費目によって計算をしているのはいつからかということをお聞きしたつもりでございます。
  70. 浦部和好

    浦部政府委員 ベースになりますのは、平成九年度の数字をベースにして計算をしてございます。
  71. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 日本語が不十分なのかどうか、話が通じませんので、このお答えは後で書面で出していただくことにいたします。私がお聞きしたのは、先ほど申し上げました日本の算定の基準になっている四つの費目、項目がございますね、もう一度申し上げますと、俸給、扶養手当、在勤基本手当、配偶者手当、こういう形で算出をし始めた、その最後の見直しはいつだったのですかということでございます。後ほど書面でもお答えいただきたいと思います、時間がもったいないですから。  実は、なぜこのことをお聞きしたかと申しますと、一九八〇年代に、私は大学人としてリサーチでいろいろなところに行っていましたときに、日本の場合には配偶者手当というのが四〇%もついていて、ほかの国から見て非常に多い。日本外交官の奥様たちはどういうことをしているのだろうかということをいろいろな国で聞きまして、私自身国内で全く知らなかったことを海外に行って聞いたということがございました。  それで、そのことに関しまして、今回ちょっと調べてみましたけれども、配偶者手当というのがついている主な先進国としてはドイツとフランスがございます。しかし、ドイツもフランスも扶養手当というのはございません。扶養者の手当はないために、例えばドイツの場合ですと、これは外務省からの資料によりますと、連邦児童手当と配偶者手当が一〇%。それからフランスの場合には、子女手当、子供のための手当と配偶者手当、やはりこれが二〇%。日本の場合には、扶養手当もあって、配偶者手当が二〇%。四〇%より随分少なくなったので、私はちょっとほっとはしたのですけれども、こんな大まかなくくりでいいのだろうかというふうに考えました。  この点で、例えば米国が一つ基準になっているとすれば、米国は費目が実際七つに分かれておりまして、本俸とそれから在外手当と特殊勤務手当、これは著しく困難な生活環境の場所。そのほかに住居手当と別居手当、これは任地が非常に危険なところであって配偶者が一緒に行けない場合。そのほかに教育手当、これは高校生までの子女の手当でございます。それから危険地手当、これはテロその他のあるところというような分け方であります。  ちなみに、英国の例を見ますと、英国の場合にも非常にきめ細かい分け方で、十一の項目に分かれておりまして、本俸、外交官手当、在勤手当、特殊勤務地手当、これは先ほどのアメリカと同じ発想でございます。特別勤務地手当、それから接待手当、住宅手当、それから在外子女手当、子女世話手当。在外子女というのは任地に一緒に伴っていく場合であり、子女世話手当というのはベビーシッターなどを雇う金額でございます。そのほかに交際手当、十一番は在外教育手当ということで、全寮制の学校に子供を残していく場合にそれを負担する。こういうふうなことを比較してみますと、米国も英国も非常にきめ細かく、必要な人に必要な手当が行き渡るということになっています。  つまり、なぜこの人とこの人が金額が違うかというのは、配偶者が別な仕事を持っているからであり、もしくは子供の数が違う、子供の年齢が違う、あるいは現地で教育をしているか、本国に置いているか、そういうような状況を勘案した、非常にアカウンタビリティーの高い、それから透明性も高いことになっております。  私は、ここで一つ申し上げたいのは、日本の平等というのは、一つのことをみんなに当てはめると平等であるという発想が戦後随分長く来たと思いますけれども、もうこれからは個の確立の時代でございます。配偶者といっても、配偶者が夫の場合もあります。それから、もしかしてその配偶者、例えばある外交官の奥様がとてもエンターテインメントの上手な方でパーティーをするのが上手な方であれば、そういう役割をきちっと与えて、そしてそれは在外公館として手当を出す。  そういう発想だってあり得るわけですから、例えば、子供のいる方もいない方もここの地域の教育にかかる比重が高いから少し高目に全体で計算しましょうというようなラフなやり方ではなくて、私は、これからの時代に向かって、そういった意味で、この基本的な費目の見直しということをぜひお考えいただいて、個々さまざまな形態の家族に適用する。そして、だれが聞いても、国内の人が聞いても、海外の人が聞いても、きちっと仕事をしている人にはきちっと行っている、あるいは環境をきちっと整えているということ、そういう方向性を今後検討していただけないかということでございます。  大臣、いかがでいらっしゃいますか、御所見を伺いたいと思います。
  72. 小渕恵三

    小渕国務大臣 今、委員の御説明をお聞きしまして、私自身もイギリスの例として十一費目に分かれての手当があることを実は今承知をしたような次第でございます。アカウンタビリティー、説明ができるということ等を含めて、どのようにこの問題を取り扱うかということは、大変検討に値することではないかというふうに思っております。  これは話が違いますが、一方、日本における自治体の諸手当が何十にも及んでいるということを予算委員会で私御指摘しておるのを聞いておりました。これとそれとは違うものだろうとは思いますけれども、費目がどんどんふえていくというようなことがあっても、またこれはいけないのじゃないかと思いますので、説明がし切るという意味を十分勘案しながらいく必要があるのではないか。ただ、これを本当に行うためには、かなりの人事管理とまたそれを行うための調査その他を行いませんと、今度不公平が及んでくるということもまたなきにしもあらず、こういうことを、諸点を考えながら、今御指摘のあった点も、私も初めてお聞きする点もありますので、勉強させていただきたいと思います。
  73. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 二十一世紀はバランスの時代ですから、今おっしゃったように、総合的にどういう方向にするかというのは時間もかかると思いますが、ぜひプロジェクトチームなどを発足させられて取りかかっていただければと思います。  もう一点、直接は関係ないのですけれども、二月十三日の藤田委員の方からの質問に関連したものですけれども外務省が管轄していらっしゃいますアソシエートエキスパート等の派遣制度の見直しについてという質問がありました。  それで、これに関して、例えばニューヨークの国連日本人職員会から、国連の事務局やあるいは国連機関で働く日本人の職員で構成されている会なのですが、そこから二重払いの問題を、職員間の人間関係にもたらす影響が非常に大きいという指摘を公的に出されておりまして、非常にその点に関しまして実は各省庁からの出向者がいろいろな御努力もあって、九七年度に関しましては五十五人中六名というふうに減ってはおりまずけれども、この二重払いについて、実は小渕外務大臣答弁の中で、その処遇、待遇が余りにも日本公務員との差があると、これはやはり大きな問題であるということで、再検討をするということも含めたお答えがあったように記録には残っております。  そのときに、いろいろな諸外国の例も勘案しながらということをおっしゃったのですけれども、私は、非常に単純に、簡単にわかりやすくすることというのが肝要だとすれば、諸外国の例を勘案するよりも、まず納税者にとってわかりやすくするためには、二点。  つまり、一つは、給与の二重払いの規定を廃止する。これは、私が申し上げるまでもなく、国家公務員の処遇等に関する法律の第五条によって、その派遣の期間中、俸給などの百分の百以内を支給することができるということは、丸々支給が可能であって、そして外地でまたその担当の機関からもらう、こういうことのないような形で、これは全面廃止するというふうには私は申し上げておりませんが、これを見直すということは非常に大事なことではないか。  もう一点は、その派遣をする場合、現在は、既に国連関係のところで働いている各官庁からの出向者は百名に近い数字になっていると思います、ちょっと今数字が見当たりませんが。かなりいらっしゃったと思いますけれども、派遣のときには、その国際機関等に派遣されている職員の純粋な身分を証明する、つまり派遣期間が終わったら必ずもとの部局に帰れる、その身分の保障をすべきであって、お給料を二重に払うということとそれが一致するということにはならないと思いますので、私は、これを分離してきちんと見直す、これもまた、ぜひプロジェクトチームなどを発足させて早急に取り組んでいただきたい。  こういうことがいろいろなところで報道されますと、国内、国外問わず日本外務省の姿勢が、誤解もあるかもしれませんが、非常にイメージが悪くなります。この点について、やはり小渕大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  74. 上田秀明

    ○上田政府委員 事実関係等についてまず御説明させていただきたいと思います。  国連諸機関、狭い意味での国連の諸機関でございまして、世界銀行その他の機関を含みませんが、御指摘のように、日本人の職員の方々、専門職以上の方々が四百七十八名、昨年の調査でおられます。そのうち、今御指摘の国家公務員のいわゆる国際機関等への派遣法、これにのっとって各省庁から派遣されている方々が七十三名でございます。その他の方々は、直接国連その他から採用されているわけでございます。  御指摘のように、国家公務員を派遣します場合に、年金あるいは保険等の面で、その職員がそれぞれの省庁に戻ってまいりますが、その際に不利な扱いを受けないように身分保障をするという点が、まさにこの派遣法で定められているところでございます。その間、国連憲章に定める国際公務員としての忠誠義務を負うということになっておりますので、その点は明確になっているかと思います。  他方、日本人の職員を、いろいろな国際機関で大いに、働いていただいて、ふやしていこう、そしてその方々の待遇も改善されなければならないという点についてはまた御指摘のとおりでございまして、私たちといたしましても、先般、邦人国際公務員の増加のための施策に関する懇談会という懇談会の報告を大臣に御提出いただきまして、例えば、民間の皆様に適当な職務についていただけるように、人材ネットワークというようなものをつくって、そして発掘と、それから仲介と申しますか、そういうことを行うということを着手しております。  先般の大臣の御答弁にありましたように、いろいろな角度から検討をさせていただきたいと思っております。
  75. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 目的もわかりますし、ただ、私が今、再度申し上げましたのは、かなりの人が各省庁に戻っているということが一点。それは、もしかしたらたまたまこういう制度を官庁のトレーニングの機会ととらえているのではないかというような誤解を招かないようにすること、それが一つ。  もう一つは、同じ職員の間で、官公庁をやめて入った方それから出向している方との、実際に手当その他の待遇が違う状況。この根拠になるのが、先ほど申し上げましたお給料の担保なわけですから、そういうことで、そこで働く人たちの本当の目的は、国際公務員を日本がもっと育てようという、そこのところにあるわけですから、そういう気持ちのある人たちが、自分たちはとても待遇が、官庁から出張してきている人よりも悪いというふうに思うような、そういう中からのいろいろな意見というものが出ない形にしてほしい。  つまり、そういう意味でもう一度見直す必要があるのではないかというふうに申し上げているので、細かくどうしろということは、それは内部で御検討いただけばいいのですが、大臣、その辺のところの、全体の、国際公務員を育てるという意味でも、私の申し上げていることに関して御意見を例えればと思います。
  76. 小渕恵三

    小渕国務大臣 私が先般答弁申し上げましたのは、私の知る範囲の実態論といたしまして、国連職員について、特に日本人としての職員がますます少なくなってくる。  もとより、先般、国連に行きましたときに、若い女性も含めまして、かなり若手の皆さんは国連職員としての責任と自覚においてお仕事をされておりまして、いずれこういう方々が育っていけばという気もしますが、一方、本邦から行かれた皆さんの給与等を見ますと、彼我の感が非常に大きい。国連職員の中では、国連職員になることが自国のベースに比べて非常に高いという国も多数ありますが、日本はその逆でして、そういった意味での今日的問題があるのではないかということでございます。  それから、国連憲章に関しての点については、これは忠誠義務に違反しないということになっております。しかし、それぞれの国々から、百分の百認められているということは、その国の公務員として、者として動くのではないかという誤解を受けやすい点もあるのではないか。  そういった点で、現地で採用され、国連職員として一生をささげるという方々と、現実には国家公務員としてその国内において処遇を得ている者と格段の格差が及んでいくということについても、これまた現実問題としては考慮しなければならぬ点もあります。  しかし、御指摘でございますので、この点も含めまして、国民世論にも納得がいき、かつ国連においても理解が求められ、かつ今度国連職員と国家公務員との関係も含めまして、総合的にどうすることが望ましいかということにつきましては、前回御答弁申し上げた趣旨と変わりなく、勉強していきたいと思っています。
  77. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 それでは、時間が迫ってまいりましたけれども、イラク問題についてちょっとお聞きしたいと思います。  実は、イラク問題に関しましては、一昨日、島委員、それから東委員からいろいろ突っ込んだ御質問がありましたので、私もこれは省かせていただこうかと思っていたのですが、ちょっと答弁その他をお聞きしていてもう一つお聞きしておかなければいけないというふうに感じた点がございますので、聞かせていただきます。  イギリスのクック外相から小渕外務大臣の方に、共同決議案の、共同の提案国という形の御依頼があって、そのときの内容の詳細は承知していないけれども、全体の流れとしてはいいということで、あとは現地に詰めを任せたというふうにおっしゃっていたようですけれども、当然、決議文そのものはその時点でお目を通されたわけですね。
  78. 小渕恵三

    小渕国務大臣 クック外相との間に、事実関係を申し上げますと二回ございまして、当初は、国連決議を行って何とかこの事態を打開しなければならぬということで、私の方から英国クック外相に御提案を実は申し上げました。しかし、その以降に、御承知のようにアナン事務総長とイラク側との調停ができ上がりまして、これをいかにバックアップするかという意味でクック外相から御提案がありまして、私自身、その共同提案国になることについて原則、承知をいたしました。  しかし、その段階では、まだ基本的なドラフトすべてに目を通すということではありませんでしたので、小和田大使に、十分国連の中におきまして英国の代表とそれを突き合わせて、お話し合いをして、そしてその結果を最終的に了承した、こういう経過でございます。
  79. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 そうしますと、その最終段階でこの原稿が大臣のお手元に入手なさったのはいつになるのですか。
  80. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 それは、時間的には、極めて小渕外務大臣とクック大臣との電話会談に近接した時点でございます。  なお、経過をちょっと申し上げますけれども、既に、事務総長がバグダッドを訪問される前から、日本はイギリスとの間にも非常に緊密な協議を行ってまいりまして、そういう協議を通じて、このイラクの事態を打開するためにバランスのとれた決議案を出すのがいい、そういう認識をともにしていた。その上で、今のような展開があったということでございます。
  81. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 経過もわかりますし、その努力も私は大変高く評価申し上げていますが、この間ひっかかったのは、結局、この文案を大臣はいつお目を通されて最終オーケーをなさったのですかということ、それだけをお聞きしているのでございます。
  82. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 時間的に申しますと、ほとんど同じなんでございます。すなわち、決議案はニューヨークにおいて二月六日に手交されております。
  83. 小渕恵三

    小渕国務大臣 二月六日にクック外相と話をいたしまして、それで、原則、基本的な方向については電話でお互い了解し合ったわけですが、詳細にわたる文面についてのすり合わせが必要だということでありましたので、それは現地にお任せした、こういうことです。
  84. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 私が申し上げているのは最終の原案でございます。これはいつお手元に届きましたかと大臣にお聞きしているのです。
  85. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 二月六日に出てまいりました案は、最終的な決議一一五四の議論の根っこになったドラフトでございます。そして、その上で三月三日にその決議に合意を見た、そういう経過でございます。
  86. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 大臣のお手元にこれが入ったのはいつでしょうかとお聞きしているのです。これは非常に大事なことだと思うのです。  というのは、やはり現地の方たちが一生懸命詰めていらっしゃるにしても、最終的にこれでいくぞということを、この文案を見られて大臣がオーケーを出されたのか、文案は小和田大使にお願いした上で、すっかりできてしまって公表されてから大臣のもとに届いたのか、これはどちらですか。
  87. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 済みません、その前に一つ事実関係を訂正いたします。小渕大臣とクック外務大臣の電話会談、二回目は二月二十六日でございました。  ただ、いずれにいたしましても、今委員が言っておられる決議というのは、最終的にまとまった一一五四の文言でございますね。そのことでありますとすれば、その二月二十六日に我が方に電話会談を受けて手交されたドラフトというのをベースに、安保理の中で連日のように、ほとんど夜を徹して議論が行われてまいりましたから、我々はその経過を全部承知いたしております。
  88. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 加藤局長が承知なさっているのは十分承知しております。  最高責任者の外務大臣のもとにこの最終案が届いたのはいつですか。幾らお答えいただいてもお答えいただけないのであれば、大臣の方での御記憶で、いつごろこれは手に届かれましたか。つまり、ニューヨークで決断した後なのか、それともその前にこれでよろしいですかという、それがあったのかないかという点でございます。
  89. 小渕恵三

    小渕国務大臣 外務大臣としての責任において私が承知をした上で最終的な決定を伝え、そのことによってイギリスとともに共同提案国になり、各国との、十五カ国のすべてにわたっての了承を得て、これが採択されたものでございます。
  90. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 なぜ私がこれほどしつこくお聞きしているかといいますと、その詰めの段階でいろいろな文言の変化が多少ずつあって、それによって解釈がいろいろに分かれる。  つまり、重大な結果というような言葉も、どこから出てきたかということも含めまして、それを武力行使とするかしないかというその判断も含めまして、いろいろな国がいろいろな判断をしているという状況の中で、この最終的な文言を大臣がきちんとごらんになって、このあたりの解釈はそういうことを呼び起こすということも含んだ上でオーケーを出されたのかどうかという点でございます。  この決議案というのは、日本がイラクに対してどういう対応をとるかという非常に難しい選択を追られた中で、最終的なぎりぎりの努力を、現地の方もまた多分本省の方もなさった上でここまで来たというのは十分承知なんですが、私がこの資料を要求いたしました。一昨日、これを聞こうと思って要求いたしました。英語の原版と日本語をお願いいたします、外務省からは、日本語はありませんと言いました。皆さん英語がどれほど堪能かわかりませんけれども、日にちを考えてみましても、これの日本語がないというのは考えられないのです。もし日本語がおありになったとしたら、私が要求したときになぜそれが出なかったのか。どちらなんでしょうか。
  91. 小渕恵三

    小渕国務大臣 何日の何時何分までは、私、記憶しておりませんけれども、その経過の中で委員も英語堪能でございますけれども、御承知の重要な問題になった点がありますね。最終的にはシビアレスト・コンセクエンシズに至る間の状況につきましては、逐次大使から私あての電報が届きまして、その考え方も含めて了解を求めてまいりましたので、最終的な話し合いの最後の段階の経過につきましても、これを了承の上、現地においてこれを決定することを認めた、こういうことでございます。
  92. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 日本語がないということについてのお答えは大臣ではないと思うのですが、そのことを一言、最後にもう一度お聞きしたいということと、それから、報道などによりますと、リチャードソン国連大使が来日したのは日本からの要請であったというふうにも報道されております。日本からの要請で来てもらったということが事実なのかどうか。  その二点について最後にお伺いして、この問題がこれで私自身は納得がいかないというのは、これほど大事な決議案を、日本が共同提案国となって、この英語の文言に詰められたその努力があるにもかかわらず、日本語が、国会議員が要求したときに、どういう訳になって出てきているか、どういう訳として日本で通用しているのか、またアメリカの解釈がなぜ違うのか、その辺を詰めたいと思っても出てこない。これは、大変に私は立法府に対する、もしあるとすれば軽視ですし、ないとすればそのような能力のない外務省ではないと思いますので、この点、大変気になりましたものですから、最後に質問させていただきました。お答えいただければ幸いです。
  93. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 第一の点につきましては、これまでも累次、国連決議というものが英文のテキストで採択されておりまして、それはそういうものとして扱われております。すなわち、それについての正式な日本文訳というものはないということで、今回の決議もその例外ではございません。  もちろん、その英語を作業として日本語に変えるということは、執務の便宜上、それは当然必要になることでございますけれども、私、今先生がおっしゃられたやりとりというのは、正文は英文であるということがポイントになってのお話ではないかというふうに思います。  それから、第二の点でございましたが、アメリカと解釈が違うというような事実は実はございません。先ほどの御議論にもちょっとございましたようですけれども、この決議が採択されてから、それぞれの国の代表がステートメントを行っております。日本の小和田大使は、日本の国連の代表、そしてその共同決議案の国を代表する人間としての立場で、この決議についての解釈を明確に述べておりまして、そのことについて何ら異論はない、そういう前提の上で、十五対ゼロの採決が行われております。
  94. 小渕恵三

    小渕国務大臣 お許しいただければ、私の名誉のためにも申し上げますが、逐一電報で、英文とそれに対する諸外国考え方、あるいはまた解釈というものもすべて報告を求めた上で、最終的に私が判断させていただいたという経緯でございますので、それぞれの国々の方が、いろいろこの決議が成立した以降も発言があることは承知をいたしておりますが、我が国対応につきましては、私自身が判断をして、このことを決定させていただいたということでございます。
  95. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 大臣の御努力について申し上げるつもりはありません。  もう時間が参りましたけれども、私は、軍事力というものの最大の役割は抑止力であるというふうに思っておりますから、今回の場合は、大変それがいい形で機能したと思っております。しかし、読んでいきますと、文脈から見ても、最上級を使った最も厳しい結果、成り行きというのは、当然武力行使を含んでいるというふうに解釈するのは当然だろうと思いますが、どういう英語の文面であったかということと同時に、どういう内容の決議案を日本提案したかということを国会議員にも国民にも説明するとしたら、それは日本語でしかできないわけですから、そこのところは、私は、外務省はきちんとその準備はすぐになすべきことだと思いますし、要求されたときに、仮訳であろうと、それは仮の訳とお書きになれば何もいいわけですから、そういう努力をするのは当然のことと思います。ぜひこれからその辺のところを善処していただきたいと思います。  リチャードソン大使への招請についてはお答えがいただけなかったというふうに認識して、終わらせていただきます。ありがとうございました。
  96. 中馬弘毅

    中馬委員長 次に、西田猛君。
  97. 西田猛

    ○西田(猛)委員 自由党の西田猛でございます。  ただいま議題となっております在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案について、まずお尋ねをしたいと思います。  本改正案の中身は、デンバー日本総領事館を新設するをも含んでおりますけれども、特に、バルカン半島における在ユーゴスラビア日本大使館名称を在ユーゴスラビア連邦共和国日本大使館に変更するという内容を含んでおります。  そこで、この新ユーゴの情勢を中心にしてお伺いをいたしたいと思うのであります。  先月以来、新ユーゴのセルビア共和国のコソボ自治州においては、多数派を占めるアルバニア人の武装勢力が勢いを増しておるので、セルビア治安当局はその掃討作戦を展開している。それで、ユーゴ側が依然アルバニア人武装組織の壊滅作戦を続ける構えであり、コソボ自治州の情勢は予断を許さないものとなっておるところでございます。  それから、アメリカ合衆国も、決定しておったばかりの対ユーゴ連邦制裁緩和措置の撤回を表明しております。九日には、ロシアとか欧州主要国による緊急閣僚会議が開かれて、コソボ情勢への対応の協議が行われたとも聞いております。  このような新ユーゴ内の動きに対して、今後我が国は、どのようにまずこの現状認識しており、いかにこの情勢に対処していかれるつもりであるかということを、バルカン半島全体の情勢、それからロシアを含む欧州主要国の反応、そして米国の反応をも含めてお答えを願えればと思います。
  98. 小渕恵三

    小渕国務大臣 当地域は安定に向かっておるという認識もいたしておりましたが、今般のコソボ情勢の悪化は、バルカン情勢全体の不安定につながり得る重大な問題であると改めて認識をいたしております。  このような立場から、先週末、在京ユーゴスラビア大使館臨時代理大使外務省に招致をいたしまして、コソボ情勢の悪化を深く憂慮しておること、またセルビア当局による人権抑圧もアルバニア人側によるテロ行為もともに容認できないこと、そして対話を早期に開始することを申し入れたところであります。  本件につきましては、現在、国連安保理におきまして議論が行われておりますので、我が国も、安保理非常任理事国として、問題解決のため安保理の議論に積極的に参加いたしていく考えでございます。さらに、政府は、コソボ問題解決のためのイニシアチブをとっております米英独仏伊ロ六カ国との協議を今後とも緊密に行っていきたい、このように考えております。
  99. 西田猛

    ○西田(猛)委員 このユーゴでありまずけれども、これは九一年六月のスロベニアとクロアチアの独立宣言を契機といたしまして、民族間の紛争が発生して、今のような事態を招いているわけであります。その結果、旧ユーゴを構成していた共和国のうち、スロベニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ及びマケドニアが分離独立をしたわけでありまして、さらに九二年四月にセルビア及びモンテネグロにより新ユーゴ、今のユーゴスラビア連邦共和国が樹立されたという経緯でありまして、そこに我が国が新たにユーゴスラビア連邦共和国大使館を置くという本法律案となっているわけなんですね。  ところで、今度ユーゴスラビア連邦共和国大使館名称を変えて置こうとしているその新ユーゴは、新ユーゴみずからは、かっての旧ユーゴと継続性を有する同一の国家であるというふうに主張しているのであると思いますけれども、これに対して我が国はどのような態度をとっているのでしょうか。
  100. 西村六善

    西村(六)政府委員 今先生がおっしゃられましたような経緯によりまして、新ユーゴ、ユーゴスラビア連邦共和国でございますけれども、できているわけでございますけれども、この新ユーゴ共和国は、旧ユーゴと我が国との間で結びました条約につきまして、昨年の五月二十日でございますけれども我が国外交関係を設定したと同時に、ユーゴとの間で条約が継承されております。そういう事実が既に起こっている次第でございます。
  101. 西田猛

    ○西田(猛)委員 ということは、我が国は、新ユーゴが旧ユーゴの継続している唯一の国家だということを認証しているということでありましょうか。
  102. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 先生指摘の点につきましては、ユーゴスラビア連邦共和国、いわゆる新ユーゴでございますけれども、新ユーゴ自体は、先生の御指摘のような主張、すなわち継続性ということを主張しておりましたが、ただ国際社会一般の認識といたしましては、例えば国連におきまして、この新ユーゴなるものが新規の加盟という手続が必要であるということが認定されております。  すなわち、旧ユーゴの国連加盟国としての地位を自動的に引き継ぐというようなことはできないというような認識が国際社会一般にございまして、日本といたしましても、かかる認識基づきましてそのような国連の決議にも賛成したものでございまして、日本といたしましては、これは、ほかの四カ国と同様、新たに独立した国家である、こういう基本的な認識でございます。
  103. 西田猛

    ○西田(猛)委員 そういたしますと、かなり話は錯綜してくるのですけれども、かっての旧ユーゴが我が国と結んでいた条約あるいは我が国と持っていた債権債務などについての我が国との今の時点における継承関係はどのように理解したらよろしいのでしょうか。
  104. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 先生の御指摘の問題はいわゆる国家承継の問題でございます。条約とそれからいわゆる債権債務、二面、二つの面がございます。  まず条約に関しまして、一般的な国際法上の原則といたしまして、このように、一つの国家が分裂といいますか、分離した独立の国家に分かれるというような場合におきましては、国際法上、いわゆるコンティニュイティーの原則と申しまして、もとの先行国の締結しておりました条約というものは後行国に承継されるというのが一般的な原則でございます。そういう原則を踏まえまして、日本とこれらの国家の間で承継ということが確認されているというところでございます。新ユーゴとの間ではそういう措置がとられたということが、先ほど欧亜局長から御説明のあったとおりでございます。  債務の承継につきましても、これは基本的な原則といたしましては、先行国が負っておりました債務というのは承継国、すなわち後から独立した国家の間で引き継がれるというのが一般的な原則でございます。ただ、その場合に、五カ国の間で今回の場合にはどのようにそれが分担されるかということにつきましては、これは現在五カ国の間で話し合いも行われている。国際法的に言えば、衡平の原則から見て分配が決められるだろうということでございます。ただし、原則として、新しくできました独立国によって債務が引き継がれるということは一般的な国際法上の原則でございます。
  105. 西田猛

    ○西田(猛)委員 おっしゃるとおりだと思うのですけれども、そうしますと、少し細かいことに入っていくかもしれません、あるいは御用意しておられないのかもしれませんけれども我が国が旧ユーゴに対して持っていた債権と申しますか、援助の中で、毎年いわば我が国返還しなければいけない部分が幾らかあるのだと思います。それらについては今の時点でどのような手続あるいは状況になっているのでしょうか。  さらにもう一つ違うことをお聞きすれば、新ユーゴについてはユーゴスラビア連邦共和国大使館ということで館を置くのですけれども、じゃ、他の四国については、この新ユーゴ連邦共和国大使館が管轄するというふうに考えてよろしいのでしょうか。
  106. 西村六善

    西村(六)政府委員 債権債務の承継につきましては、今条約局長からも御説明をいたしましたとおり、協議が行われている最中でございます。これまでのところ、旧ユーゴが所有しておりました債務を、旧ユーゴの承継国の間でいかに、どういうふうに分担していくべきかということについて合意が見られていない状況でございます。  この話し合いは、現在、公的債務の管理機構でございますパリ・クラブと称する機構がございまして、このパリ・クラブにおきまして、債権国とそれから債務国でありますところの旧ユーゴの承継国の間で話し合いが行われているというのが現状でございます。  我が国のユーゴに対します円借款などによりまして債権があるわけでございますけれども、この債権につきましても、この協議の結果を経まして解決が図られるということになる次第でございます。
  107. 浦部和好

    浦部政府委員 大使館の、どういう形で兼轄をしているかということの御質問についてお答えをいたします。  まず、クロアチアについては、この一月から新しい大使館を実質的に開設いたしました。また、スロベニアとマケドニア及びボスニア・ヘルツェゴビナ、この三つにつきましては、実は我が方のウイーン、オーストリアの大使館で兼轄をしております。
  108. 西田猛

    ○西田(猛)委員 今まさに官房長言われたように、スロベニアそれからボスニア・ヘルツェゴビナ、マケドニアについてはウィーンの大使館が兼館しておられるようであります。  そこで、新ユーゴの隣国で、独立をしたアルバニアにおいて、独立したのじゃなくてアルバニアは前からあったわけですけれども、このアルバニアにおいて、昨年、ネズミ講式の投資機関の破綻をきっかけに起きた争乱がございまして、その際には、アルバニアに我が国大使館総領事館がなく、混乱に巻き込まれた日本人が欧米各国の大使館に逃げ込んだ。さっきおっしゃったウィーンにあるオーストリア大使館がアルバニアについてもカバーしているわけですけれども、その在オーストリア日本大使館が、残念ながらその緊急事態に適切に対処し得なかったのではないかということがかなり報道されていたわけであります。  このときには、日本の方には幸運にしてけが人もなく、無事アルバニアを脱出できたものでありますけれども在外公館がない外国での邦人保護について、あるいはその救出等の対応あり方について問題を呈する結果となったわけでございます。  このような経験を踏まえて、何かと国家財政緊急緊縮の折から、在外公館、ふやせばいいというものではないのであると思いますけれども、資源の有効的な配分という観点からも、今後どのようにしていったらいいというふうにお考えでしょうか。
  109. 浦部和好

    浦部政府委員 委員指摘のように、アルバニアについては我が方のオーストリア大使館が兼轄をしておりまして、先般の事態の際には、直接館がないものですから、友好国にいろいろと協力をいただきまして、具体的にはあの際にはドイツにいろいろと支援をしていただいた。その結果として、たしか十人弱だったと思いますが、邦人が無事に救出を、むしろ脱出ができたということでございます。  第二点でございますが、今確かに財政事情が大変厳しいことは全くそのとおりなのでございますが、先ほども別の先生に申し上げましたが、外交需要については非常に大きくなっていることも、これまた事実でございます。その間をうまくとりながら、できるだけ在外における需要にこたえるために、外交活動の基盤を、大使館総領事館を含めて積極的に強化をしてまいりたい、かように考えております。
  110. 西田猛

    ○西田(猛)委員 このように、外国における邦人保護の問題は非常に大切なことでございますので、今後とも積極的に国会としても取り組んでいかなければならないのではないかというふうに思っております。もとより、在外の邦人保護だけではなくして、当然我が国自体をどのように安全保障を行っていくのかということが考えられなければならないわけでございます。  そこで、きょうは防衛庁の局長にもおいでいただいておりまして、それから、この日米安全保障を基軸とした日本安全保障問題について非常に長年携わってこられた小渕外務大臣にお伺いをしたいと思うのでありますけれども、まず、日米防衛協力のためのいわゆる新ガイドラインでございます。  この新ガイドライン、私せんだって、お尋ねと申しますか、通告しておりましたことは非常にアバウトな概念でありますけれども外務大臣、この新ガイドラインの性格といいますか、その文書の性質なり性格については、大臣はどのように認識をしておられますでしょうか。新ガイドラインの文書としての性格、あるいはガイドラインというものの外交上の性格、これについて大臣はどのように認識しておられますでしょうか。
  111. 小渕恵三

    小渕国務大臣 委員もお勉強されておられると思いますが、旧安保から現安保までの歴史的な経過があるわけでございますが、いずれにしても、一九七八年の旧指針ができまして以降、いろいろとその肉づけをいたしてきたわけでございます。  大部分は五条の事態の研究ということで、これはまだ研究の成果がすべて発せられておりませんが、一方、六条の事態につきましても、当時、旧指針では将来の課題として行ってまいりましたが、九七年、新指針につきまして、これ日米の首脳の間でも話し合われまして、この安保条約をきちんと法的にも国民理解が得られますように、枠組みとしてこれを確定していく、こういうことで新指針がつくられてきたわけでございます。
  112. 西田猛

    ○西田(猛)委員 ただいま大臣は、法的な枠組みとしてもきちんとしていかなければならないから、こうおつしゃつたのです。そのためにもガイドラインをつくって国民理解を得なければ、こうおっしゃったわけですが、確かに、このガイドラインの策定に基づいて、今、国内法を整備しなければいけないという議論が出ております。いわゆる米軍活動支援法とか緊急事態法とかいろいろと言われておりますが、そのような国内法の整備、これは進めていかなければならないと思うのであります。  しかしながら、その前提となるガイドラインの、言うならば法律の枠組みの中における位置づけ、憲法があって条約があって法律があって、あるいはエグゼクティブアグリーメンツ、政府間取り決めがあってとかいうふうな形の段階でいえば、このガイドラインはどのようなものだと認識しておられますかということなんです。
  113. 高野紀元

    ○高野政府委員 新ガイドラインの性格でございますが、この新ガイドラインによって両国政府は立法、予算ないし行政上の措置をとることを義務づけられたものではないということは新指針に明記されているとおりでございます。そういう意味におきまして、新指針により日米両国の間に国際法上の権利義務関係が生じているということではございませんので、これはいわゆる国際約束ということには当たらないというふうに考えております。  いずれにしても、この新指針に書いてございますいろいろな措置あるいは認識、この問題につきまして、今後日米間で共同で作業していくという政治的な意思を表明するための文書というふうに理解しております。
  114. 西田猛

    ○西田(猛)委員 そうすると、当局からでも結構なんですけれども平成八年四月十七日の橋本総理大臣アメリカ・クリントン大統領の間における日米安全保障共同宣言の性格はどのようなものでしょうか。
  115. 高野紀元

    ○高野政府委員 今のお話は、日米安全保障共同宣言の点でございますが、これもやはり日米両国安全保障に関する基本的な認識を記しました政治的な文書でございまして、国際約束というものには当たらないということでございます。
  116. 西田猛

    ○西田(猛)委員 平成九年の九月二十九日に「日米防衛協力のための指針の実効性の確保について」という閣議決定がなされております。この閣議決定の根拠となっているのが日米防衛協力のための指針であります。それと、その閣議決定の一の中には、「「日米安全保障共同宣言」を踏まえて、」、こういう文言があるわけです。今のお答えですと、その指針もこの共同宣言も両方ともいわばいわゆる政治的な文書であって、何ら国際的な約束事を決めたものではないというお話であります。  それを踏まえて、行政を行う内閣が閣議決定をして法的な整備も進めていこうということなのですけれども、それじゃ、これが政治的な文書であるということであれば、この間の政治的なプロセスについて、責任者としての外務大臣はどのような政治過程を経てきたというふうに御説明していただけますでしょうか。プロセスですね。  要するに、国際約束でもない文書が二つある、それを踏まえて国内的に法的な整備を進めていかなければならないということを行政府が内閣として閣議決定をしたわけですね。だから、この過程でどういう議論があって、どういう意思決定が行われたのかということであります。
  117. 小渕恵三

    小渕国務大臣 少なくとも、日米の首脳がお話し合いをされて共同宣言が発せられたわけです。これは政治的な、先ほど答弁のありましたように、このことは大変重要なことと心得て、そして政府としてはそれを受けて対応しておる、こういうことだと思います。
  118. 西田猛

    ○西田(猛)委員 今大臣からは、淡々と簡明にお答えをいただきましたけれども、それでは、今かまびすしく国内法の整備について言われているわけですけれども、ある報道によりますと、政府内では、当初外務省などには新規立法に消極的な意見が強かったという報道がなされておるのですけれども外務省は、当初こういういわば国内法を整備していくことについて消極的であったのか積極的であったのかについて少しお考えを述べていただけますでしょうか。
  119. 高野紀元

    ○高野政府委員 外務省といたしましては、新指針にございますとおり、これは立法上、予算上、行政上の措置をとることをお互いに法律的に義務づけたものではないという認識ではございますけれども、このガイドラインに書かれました共通の認識あるいはとっていくべきいろいろな作業自体は大変重要なものであるというふうに考えております。指針自体にも書いてございますが、「日米両国政府が、各々の判断に従い、このような努力の結果を各々の具体的な政策や措置に適切な形で反映することが期待される。」ということでございます。  それを受けまして、先ほどの、御指摘ございましたような、去年の九月、新指針の最終報告が出た後に閣議決定をいただいたわけでございますが、新指針のもとでの取り組みや国内における指針の実効性確保のための検討状況を踏まえて、指針のもとでの日米協力を効果的なものにするためとの観点から、政府の判断として、法律の制定、改正等を行う必要があると考えております。  その出てきた結果というものは、当然国会にお諮りすべき問題だと考えておりまして、外務省は、このような政府全体としての閣議決定を踏まえた作業に積極的に参加しているところでございます。
  120. 西田猛

    ○西田(猛)委員 作業に積極的に参加しておられるのはよくわかります。それはもちろん行政府の一部の責務として当然だと思うのですけれども、ガイドラインがある、そしてそれをいろいろな意味で担保していかなければならないというときに、新規立法化することは難しいのではないかという議論もあったのではないか。  では、新聞報道で、どうして外務省は消極的だった、少なくとも積極的ではなかったというふうな報道がなされたのかという点についてお考えはいかがでしょうか。なぜそういうふうに書かれたとしたら書かれたのだろうかと。
  121. 高野紀元

    ○高野政府委員 外務省といたしましては、この指針の実効をあらしめるための措置をあらゆる点から研究し、またそれを具体化していかなければならないということでは一貫した考え方を持っております。  今の御指摘報道がどういう理由でそういう報道になったかというのは全く私ども理解できないところでございますけれども、いずれにしても、そういう角度から、法整備あるいは必要な日米間の取り決めを含めて、外務省としてはできる限り効果的な措置になるような努力をしてきているところでございます。
  122. 西田猛

    ○西田(猛)委員 恐らく国内法の整備と申しますか、法律に限らないと思うのですけれども、その中で重要なものの一つに、いわゆるガイドラインに書いてある周辺事態、周辺事態というのはどういう事態なのかということの神学論争はもうやめにしまして、周辺事態の認定の手続はいかにあるべきだろうかということが最も重要なもののうちの一つになってくるのですけれども、この認定手続については、どういうふうなものであったらいいというふうにお考えでしょうか。  ちょっと大臣、突然のというか、包括的なお尋ねをしていて、その中の一つで、御用意していただけるかなと思っていたのですが、いかがでしょうか。
  123. 高野紀元

    ○高野政府委員 周辺事態に関しては、この指針にもございますが、日本周辺地域における事態で、日本の平和と安全に重要な影響を与える場合をいうということになっておりますが、それでは、ある事態が周辺事態に該当するか否か、その事態の態様、規模等を総合的に検討して、日本、米国それぞれ別に、主体的に判断するということになるわけでございます。  それでは、それぞれの国がどういう国内手続によってそういう判断に至るかということは、まさにそれぞれの国がまた決めるべき問題でございますが、その問題を含めまして、現在政府部内で慎重に検討しているというところでございます。
  124. 西田猛

    ○西田(猛)委員 今おっしゃったように、ガイドラインは政治的な文書であって、何ら両国に法的な、あるいは行政的な義務を課するものではないが、しかしながら、それを国民の皆様に理解していただき、それを日本国で担保していくためには、国内的に、やはり国会に諮って、法律化していかなければならないだろうというお話でありました。  であれば、そのガイドラインの根幹をなす周辺事態の認識という点についても国会に、個々の周辺事態の認定については承認を求めるということになるのですね、論理的な帰結として。
  125. 高野紀元

    ○高野政府委員 周辺事態の認定と申しますか判断、これは非常に重要な問題であると私ども認識しております。  それについていかなる国内的な手続をとるかということは、まさに、先ほども申し上げましたとおり、現在慎重に政府部内で検討しておりますので、この段階ではそれ以上のことを申し上げることは困難でございます。
  126. 西田猛

    ○西田(猛)委員 今検討中だということなんですけれども大臣、いかがでしょうか。これは非常に大切な話であります。  要するに、ガイドラインも大切ですし、ガイドラインの中身を実行していくためには、各種、地方自治体が管理する港湾の使用ですとか、そういうものについてはそれぞれ法的な措置を必要としてまいりますから、国内立法を必要としてまいります。それらの中でも一番重要と思われる周辺事態の認定については、やはり国民の代表である国会が大きく関与するべきだと考えますけれども、やはり、長く議会活動してこられた大臣としても、そのようにお考えになられませんか。
  127. 小渕恵三

    小渕国務大臣 どのようにこの周辺事態に関しての認定を行うべきかということにつきましては、今北米局長から答弁申し上げたとおりでございます。  政府として、政府の責任においていたすべきことなのか、あるいは、立法をもって国会の御判断をいただくことかどうか、そしてまた、その場合にはどういう内容に至るかについては、現在検討いたしておりますので、現段階では申し上げかねます、こういうことでございます。
  128. 西田猛

    ○西田(猛)委員 残念ながらちょっとお答えをいただけていないので、私も非常に残念なんですけれども、もちろん、お立場としてなかなかおっしゃりにくいんだと思います。  先ほど、外務省は新規立法に消極的だったのではないかという報道があったということを私申し述べました。これは、非常に微妙な外務省立場を示しておられたのだと思うのです。  その報道は続けていわく、しかし、それに対しては内閣法制局が、憲法が禁じる集団的自衛権の行使につながらないよう、あるいは、米軍の武力行使とは一体化しないことを新法でむしろ規定する必要があると。これは、内閣法制局はやはり憲法のことを考えて、むしろ新規立法は、こんなことまでできるよということじゃなくて、ここまでしかできないよという形で新規立法をしていくべきだろうということを提唱したと思うのです。  だけれども、それに対して外務省が消極的だったということは、逆に言えば、ガイドラインというのはあるのですけれども、これは、内容は非常に機微にわたるものを含んでいるけれども、これでわざわざ新規立法等をすることによって、国民の目の前にその内容の危険性というか、内容のある意味での先取り性を熟知してもらうのは得策ではない、このままなし崩し的に、行政権の行使として実行していけるのではないかというふうにお考えになったようなところがあったのではないでしょうか。もしそういうことがあったとすれば、それは、私は非常に残念に思うのですね。  私は、ガイドラインは、これはこれでいいならいい。しかし、やるならば徹底的に議論をして、そして明確な形で、日本国としてするべきこと、あるいはやるべきことをちゃんと法律で書いて、そして世界の国々に、日本はこういうことをやるんだということを明確にしていく必要があるのだと思います。なし崩し的にこそくにやっていくのはいけない。ですから、見直すものであれば、憲法だって条約だっていろいろなものは見直して、やるべきことはやっていこうということを世界に明言しておくべきではないかなと思うのです。  時間が参りましたので、大臣、最後にそのあたりの、日本は世界に自分たちがするべきことを明確に宣言して、アピールしていく必要があるのではないかという点について、いかがでしょうか。
  129. 小渕恵三

    小渕国務大臣 日本政府は、刻々、日本政府立場を世界に明らかにしながら、極めて適切に対応してきたという認識をいたしております。  そこで、お話しのような、いろいろ経過についての論調もあったかもしれませんが、現政府、特に外務省といたしましては、この閣議決定以降、特に旧指針から新しい指針に向けて行うことにつきましては、法治国家としてきちんとした対応をしていきたい、こういうことで現在努力をいたしておるところでございます。
  130. 西田猛

    ○西田(猛)委員 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。
  131. 中馬弘毅

    中馬委員長 続いて、松本善明君。
  132. 松本善明

    ○松本(善)委員 まず、法案の研修員手当の問題ですが、これは在勤基本手当の基準額の引き上げ率と比べますと、はるかに高い。例えば一号で、五十万七千百円だったものが七十八万二千七百円。伸び率でいいますと五四・三%ということです。在勤基本手当の増額の中でインドの大使の基本手当は一番高いと思いますが、それと比べてもさらに高い。  国内財政状況とも関係がありますので、なぜこう高いのか、御答弁をいただきたい。
  133. 浦部和好

    浦部政府委員 お答えをいたします。  現行の研修員の手当の額というものは、実は、昭和五十七年にその基準額を改定して以来十六年にわたりまして、その額の範囲内で物価とか為替の変動等を考慮して、法律の委任により、省令によって毎年改定をされてきました。ただ、何分にも十六年前に改定された基準額でありまして、現行の手当額では対応できなくなることがありますものですから、改定をお願いしておるのでございます。前回改定した手当基準額に比べれば約五〇%強ということになりますが、実は十六年間分ということでございます。  ちなみに、大使の方の在勤基本手当の方につきましては、その基準額は、実は平成五年度に基準額を決定いたしまして、それを現在五年ぶりに見直しをさせていただいている、こういうことでございます。
  134. 松本善明

    ○松本(善)委員 在外公館活動というと、日本外交あり方ということに直結をするわけですが、今、日本外交というのは、国際紛争の平和的解決ということにやはり徹するべきではないか。これは、日本外交の顔ということも再々本委員会でも議論されていますが、私は、やはり紛争の平和的解決、これが日本憲法の根本精神ですし、国連憲章の根本精神でもあると思います。  この観点から、ちょっとイラク問題についてお聞きをしたいと思います。  外務大臣は四日の予算委員会で、国連決議の性格について、「イラクの違反があれば自動的に武力行使に至るという性格のものでないという前提で、各国との話し合いが成立した」というふうに答弁をされて、これについて私どもが聞きましたのに対して、加藤総合外交政策局長、武力行使を容認するとか容認しないとかいった問題を取り扱うことを意図して作成された決議ではない、ほかのところでは、そういう仕組みでつくられたのではないという答弁ですね。これは、予算委員会以来政府答弁として一貫している。ただ、これは一言で言えばそういうことで答えるんだけれども、問いにはなかなか答えないんですよ、外務大臣答弁であれして。  先ほど来、他党の同僚議員も何遍もこれを取り上げるのはなぜかといえば、聞いていることにまともに答えられないで、今言った、そういうことを考えた仕組みではないのだということだけを言って、加藤さんは顔が優しいから、優しい顔でそれを長々とおやりになって、実際には中身はそれだけのことなのですね。やはりそういうことではいけないのではないか。  私は、国会で論議をするということは、やはりそれでは疑問があるから質問をするわけで、それに真っ正面から答えるという答弁でないと国民の期待にこたえるものにはならないのだ。  そこで、聞きますが、自動的に武力行使に至る性格のものではないというと、日本語で言いますと、自動的に武力行使はできないということになるのです。ところが、何か違った、自動的に武力行使を容認するものではない、そういう容認するとかしないとかいう問題を言う仕組みではないのだ、こういうわけなのですが、自動的に武力行使に至る性格のものではないというのと、自動的に武力行使を容認するものではないというのと、どこが違うのですか。これは日本語ではほとんど同じです。どの日本人が聞いてもこれは同じだと思う。どこが違うのですか。外務大臣、こんなことは責任者が答えるべきことです。
  135. 小渕恵三

    小渕国務大臣 しばしば御答弁申し上げておりますように、今回のイラクをめぐるこの問題の解決方法としては、日本政府としてはあくまでも平和的、外交的手段によって行うということでありまして、そのことの結実した結果が先般の決議案になっておるわけでございますので、武力行使を認めるとか認めないとかいうことではなくて、日本政府としては、外交的手段をもって解決するための決議案をつくり上げ、これをイラクに提示して、強いメッセージによってそうしたことが解決する方向のために全力を挙げて対処してきた、こういうことでございます。
  136. 松本善明

    ○松本(善)委員 やはり質問にはお答えにならなかったけれども、決議はとにかく大事なのです。私は、この決議の中身、なぜこういう質疑が再々行われるかということは、決議のやはり第五項との関係だと思います。  私は、前回、ロサンゼルス・タイムズで、イラクが合意事項を守らなかった場合は米軍の空爆を事前に承認しているものではないという点を提案国である英日両国が保証することを条件に多くの安保理事会メンバーが同意したとか、ブラジルが同様趣旨のことを発言したとかいうようなことを外務大臣に聞いたところが、外務大臣は、各国の発言やメディアの表現は承知をしているが、加藤局長が言ったとおりだと。私から言えば、これはまともに答えたとは言えないのです。それで私は不満だということを申し上げました。  こういう各国の意見が出たり報道が出ますのは、やはり日英共同提案に第五項が追加されたことが明らかだったからです。三月二日の安保理事会の決議は、第五項が追加、修正されたことで、日本と英国が提出した原案の性格が私は百八十度変わったと思います。  第五項についてお聞きしたいのでありますが、安保理事会は、国連憲章に基づく責任に従って、この決議の実施を確実にし、この地域の平和と安全を保障するために、問題を積極的に掌握し続けることを決定すると。英文では「アクティビリー・シーズド・オブ・ザ・マター」ですから、まさに問題を積極的に掌握するというのが私は的確ではないかと思いますけれども、この規定は、安保理事会がイラクが違反したかどうかの判断を行う、あるいは武力行使が必要かどうかの判断を行う、あるいは武力行使を決定する、こういうことを含んだ規定だと思いますけれども外務大臣は、責任者としてどのように御理解をされていますか。
  137. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 委員から第五項をめぐるやりとりにおいて百八十度転換があったという御指摘がございましたけれども、それは私ども認識と相当違っております。  この第五項は、「国連憲章の下での責任に従って、本決議の履行を確保し、この地域の平和と安全を確保するために、この問題に引き続き積極的に関与することを決定する。」といういわば一般的なことを明確に述べているというだけでございまして、このことは、この決議が、将来安保理がとるアクションを決定する、そのことを予断するものでは全くないということでございます。 ・  そして、今私が申し上げました趣旨は、まさにこの決議に対する投票が行われる直前の事前説明理由説明において、我が方の小和田大使から明確に述べている次第でございます。
  138. 松本善明

    ○松本(善)委員 三月二日の安保理事会でのフランスの代表の発言を私ども検討をいたしました。  これによりますと、フランスの代表は、しかし、しかるべき形で安保理事会の権限を確認することも重要であった。それは一切のオートマティシティー、日本語で国会はやることになっていますが、言うならば自動性、自動的にやれるようになる状態、こういうことでしょうか。一切のオートマティシティーの考えを排除するものである。実際に特定の措置はその重大さのゆえに安保理事会がそれについて論議することを正当化する。ある国の行為を評価し、必要な場合には潜在的な違反について確認し、その結果として決定を行うのは理事会の権限である。これは私は非常に明快だと思います。  イラクの問題については安保理事会が判断し決定する、勝手にアメリカが判断し決定することはできない、これがフランスの代表の言ったことであろうと思います。常任理事国でありますフランスの見解は極めて重要だと思います。  日本政府はこれに同意しているのかしていないのか、反対なのか賛成なのか、はっきりお答えをいただきたい。
  139. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 まず第一に、ただいまの論点というものはこの決議の五項を含む内容と直接の関係がございません。別の言い方をいたしますと、確かにフランス代表のステートメントの中に、同時に自動性の概念を完全に排除することを確認するものであるというくだりがあることはそのとおりでございます。でもそれは当たり前なのでございます。  すなわち、この決議というものはイラクに向けた警告のメッセージでございます。例えば決議の六七八、武力行使容認決議と言われる決議は、あれは安保理のメンバーが、あるいは国連の加盟国がとる措置を申し合わせるといったところに力点のある決議であろうと思いますけれども、これは、そういうふうに安保理がとる行動は何であるということを予断した上で、仲間同士で申し合わせをするというところに力点があるわけではなくて、SG、事務総長がイラクとの間に達成した了解覚書というものを支持して、イラクに義務を履行してもらう、それを確保するための外交努力の結実ということで出てきた決議でございますから、あて先がイラクなのでございます。  したがいまして、フランスの代表が言っていることを間違いだと申し上げるつもりはございませんけれども、それはこの決議について私どもが申し上げてきたところと全く矛盾するものではございません。  それから、ちなみに、事実関係としてでございますけれども、三月十一日に事務総長とクリントン大統領会談が行われまして、その後この点をめぐるやりとりがございます。  クリントン大統領との会談後に、武力行使の際の安保理の承認必要性についてクリントン大統領との間に意見の相違はあるかというふうに聞かれまして、事務総長は、クリントン大統領と自分とは意見を異にしていない、自分は既に何らかの協議が必要であろうと述べており、右に変更はない。  さらに質問があったのに対して、安保理会合での投票が必要であると自分は言っていない、自分は何らかの協議が必要であろうと述べたのであるということを申しております。そして、イラクとの間に停戦をもたらした合意は、武力行使が一時停止されたことを意味するものであって、したがって、必要があれば引き金が引かれる可能性があるということだ。  それから、私自身、公式に、次に何かあれば外交に第二のチャンスは与えられるかそれは定かでないというふうに述べた。私はまた、イラクが遵守しないようなことになれば、安保理の雰囲気は全く違ったものとなり、武力の行使に対するコンセンサスがはるかに容易になるだろうと述べた。  以上がクリントン大統領との会談を終えた後の事務総長の認識でございますが、事実関係としてそういうことがございましたので、あわせて御説明させていただきました。
  140. 松本善明

    ○松本(善)委員 私が聞こうと思ったことに関して先に言われましたけれども、先ほどの質問についてもう一回確認をしていきます。  フランスの立場は矛盾をしない、これは間違いとは言わないということは、この見解日本政府見解と矛盾しないということですから、これは肯定的に答えられたと受け取っていいですか。
  141. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 私はそういうことは申しておりません。私が申し上げたのは、フランスの声明の中に自動性の概念を完全に排除することを確認するものだという言及があることは事実である、この認識が間違っているというわけではない、なぜならば、もともとこの決議というものの内容が、自動的に武力行使をこれをもって容認するとかあるいは容認しないとかというところに着目してつくられたものではないからだ、こういうことを申し上げた上で、ここでフランスの代表の言っていることがこの一一五四という決議との関連において間違った理解かといえば、そういうことではないと申し上げただけでございます。
  142. 松本善明

    ○松本(善)委員 やはり安保理事会の決議に関していろいろ各国のとり方が違うということならば、私は、安保理事会でまた議論をしなければならぬ性質のものだと思います。  今、加藤さんが紹介をされましたけれども、ある程度報道もされておりますので繰り返しはしませんが、クリントン大統領はアナン事務総長との会談で、何らかの協議は必要、もちろん協議はすると、一面アナン事務総長の顔を立てるような発言はしたようでありますが、安保理事会の決議の最も重要な問題であるイラクの行為を見きわめることだ、武力行使の決定は安保理事会の責任だということを認めた発言は、クリントン大統領の発言の中にはないようであります。  今、総合政策局長答弁の中でも紹介がされましたが、アナン事務総長は、イラクが約束を破れば安保理事会の空気は違うことになるだろう、コンセンサスは得やすくなるだろう、こういう趣旨のことを紹介されました。その趣旨は報道もされておりますが、要するに、事務総長はコンセンサスを得ることを前提に述べているようです。アメリカが勝手にイラクがどうかと行動について判断をし、勝手に武力行使ができないと。クリントン大統領も協議はすると言っています。  私は、アメリカが勝手に判断して、勝手に武力行使ができないということだと思いますけれども日本政府は、イラクに違反があるとアメリカが判断をすれば、他の安保理事国がすべて反対でもアメリカが武力行使をしてもよいと考えているのでしょうか。
  143. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 イラクについてのもろもろの決議がございます。その決議について、私が有権的解釈はかくかくしかじかであるということを申し述べるのは差し控えさせていただきたいと思いますが、前にも国会の場で御答弁申し上げておりますとおり、今までの一連の諸決議というものは、皆今日に至るも有効でございます。  ただ、そういう状況の中で、こういう緊張が遺憾ながらイラク側の義務の不遵守によってもたらされた。それを今是正して、イラクに国連の関連諸決議のもとでの義務を誠実に履行させるための外交努力が行われているというところでございます。  その点につきましては、これまた三月十一日の先ほどのクリントン大統領と事務総長との会談において、クリントン大統領はその会談に関連いたしまして、アナン事務総長がイラクとの間で査察の継続及びこれまでUNSCOM査察官の立ち入りが禁止されていた区域へのアクセスの付与に関して合意に達したことを喜ばしく思っている、これらは皆希望を与えるものであるということも述べているわけでございます。  アナン事務総長はまた、今回の合意が真剣であることを自分たちは示したと思う、この合意の署名後、スコット・リッター率いる査察団は五日間の査察を問題なく実施した、そして過去七年間入ることのできなかった国防省の建物にも入ることができた、これはよい兆候ではあるが、引き続き彼らに、すなわちイラクでございますが、圧力をかけ続けなければならない、こういう認識を示しております。そして、UNSCOMによる特別査察の手続というものを表明されました。  そういう意味の前向きでの進展があるというときに、今の御質問に対しお答えするという段階では実はないだろうと私どもは思っております。
  144. 松本善明

    ○松本(善)委員 日本は常任ではないけれども、安保理事会のメンバーです。ほかのところがどうこうというより、日本政府の態度が重要なんです。それが世界じゅうから注目をされているのです。  安保理事会の決定なしに、自衛の場合以外に武力行使はできないことは国連憲章で明白であります。外務大臣とリチャードソン・アメリカ国連大使との共同発表で、すべての選択肢をとる余地が残されているという米国の見方を共有すると言っている。これについては、二月二十五日の本院予算委員会外務大臣は、すべての選択肢ということは武力行使は排除されてないと述べた。これはアメリカの武力行使を支持するものだということを事前に明らかにしたものであります。  日本政府は、安保理事会で同意なしに、あるいは理事会のメンバーがすべて反対でも、アメリカが武力行使をするというのに賛成をするというのが日本政府立場ですか。また同時に、いかなる安保理事会の決定によってアメリカは武力行使をするというのか、それは日本政府は支持できるのか、この点についてお答えをいただきたい。
  145. 小渕恵三

    小渕国務大臣 リチャードソン大使との会談における決定につきましては記者会見でも申し上げたとおりでございまして、その二項においてそのような考え方を申し上げました。ただ、三項でそうした事態が現在考えられないということも申し上げておるところでございまして、そういう経過を経ながら、最終的に外交的手段をもちまして、今次問題についての最終決着に向けて進んでおるということでございますので、我々としては、一連の経過の中で、アナン事務総長が調停をいたしたことが今回の警告決議によりまして実効性が上がるものと現時点では確信をいたしておるところでございます。
  146. 松本善明

    ○松本(善)委員 もう時間が来ましたのでここで終わりにしますが、先ほども申しましたように、今までの、湾岸戦争停戦後のイラクに対する国連決議で、イラクに対する武力行使を容認するものは一切ありません。このままで、アメリカが単独での判断で軍事攻撃をするとするならば、国際紛争の平和的解決、武力の不行使を原則として明記している国連憲章を含む国際法へのやはり重大な違反になるのではないか。やはり安保理事会の中での意見がいろいろあるわけですから、当然討議を経てやらなければならないことだろうと思います。  日本政府は、やはり米国に対して、そういう不法な軍事力行使をやらないよう厳重に申し入れるべきだと思います。特に我が国は、言うまでもなく、憲法九条で戦争と武力による威嚇または武力の行使を放棄しているのです。あくまで武力行使に反対して、外交交渉による解決を追求することをすべきだということを申し上げて、外務大臣答弁があればお聞きをしたいと思いますが、これで終わります。
  147. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 我が国といたしましては、この事態を招いたのはイラクに責任がある、これは我が国のみならず、安保理十五カ国を含めて、世界の責任ある主要な国々は皆その認識をともにしております。そして、物事は、イラクが義務を誠実に履行しさえずれば解決するわけでございます。それを外交的な解決ということに第一の優先順位を置いて実現しようという思いは、アメリカも含めて共通でございます。  ただ、その合意履行を確保するという外交努力といっても容易なものではない。それだけに、すべての選択肢が残されているといったようなことも明確にしながら、外交的な交渉というものに一種の、迫力というといい言葉かどうかわかりませんけれども、それをつける必要がある、そういう思いでこれまで努力してきているわけでございます。  そして、日本はただイラクに圧力をかけるということばかりを言っているわけではございません。まさに決議一一五四の第四項を見ていただきますと、ここでイラクが義務を誠実に履行するのであれば、経済制裁というものを軽減し、ないしは解除して、イラク国民の苦痛を和らげるということだってあるんだということを日本としても明示し、それが決議にも出ているわけでございます。
  148. 松本善明

    ○松本(善)委員 終わりますが、私の聞いたことに答えないで反論的なものだから、ちょっと一言だけ言っておきますが、私たちもイラクが決議を守るべきだということについては全く同じなんです。それは世界じゅう同じだと思います。それを武力でやるか、それとも平和的な解決でやるかという違いなんだということを強調して質問を終わります。
  149. 中馬弘毅

    中馬委員長 次に、伊藤茂君。
  150. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 予定時間が延びておりますが、質疑の最後に貴重な十分間をちょうだいしましたので、二点だけ質問をさせていただきます。本法律につきましては、当然ながら私どもも賛成の立場でございまして、在外公館の皆さんが、より意欲的に立派な活動ができるようにさまざまな努力をさらにしていかなければならないという気持ちから一、二思うわけであります。  一つは、伺いましたら、いわゆる実館、兼館ですね、今、たくさんの兼館と申しましょうか、一カ所からさまざまなところに出張して仕事をするという形での在外公館がございます。実館百十三、兼館七十五、結構な数字ですね。予算とか人員の問題もございますから、一挙にこれらの問題を改善するというのは難しいと思いますが、これは大体この程度でオーケーとお考えなのか、できるだけこれから努力をして、どういう方向に持っていこうとしているのか、お考えはいかがだろうかというのが一つであります。  もう一つは、最近伺いますと、これは公選特の方になるわけですが、在外邦人の皆さんの選挙権の問題につきまして、何か打開しようではないか、与野党ともお互いに協議が進んでいるということも伺うわけであります。何年から始まるか、何の選挙から始まるかということまではまだ確定はしていないようですが、いずれ近い時期にこういうことは実現しなければならないというのが、私どもの共通の願いとしてやってきたということだと思います。  となりますと、外務省、自治省、いろいろな意見交換とか共通の検討とかはなさっているということだと思いますが、外務省が非常に大きな責任、それから在外公館の皆さんが非常に、実務を含めました仕事ができるということになるわけでありまずから、何かそういうものを実現する方向に、やはりいい準備あるいは検討、共同検討なさるのが必要ではないではないだろうか。細かいことは別にいたしまして、どんな対応姿勢でおられるかということだけお伺いをいたしたい。
  151. 小渕恵三

    小渕国務大臣 我が国在外公館と、いまだその公館を持たない国々がございますので兼館ということになっておるわけでございますが、我が国としては、一層各国との相互依存関係が深まっておる中で、かつまた国際的な地位も高まっておりますので、在外公館重要性が非常に大きくなっておりますし、また、業務量も増加の一途をたどっておると認識をいたしております。  こうした行政需要を踏まえまして、我が国としてはそれぞれ各国との、動きを十分見きわめながら、国際的な地位に見合った体制をつくり上げていかなければならない、このように考えております。  例えば、アゼルバイジャンども、この間大統領が参られましたけれども、これから我が国としてはあの地域に非常に注目していかなければならぬということでございます。こうした地域がエアポケットのように残されておるということは大変よろしくないことだと思いますので、できる限りこうしたところを埋めていく努力をいたさなければならないと思っておりますが、これはやはり予算との関係もございますので、そうしたことを十分見きわめながら努力をしていかなければならぬと思っております。  この在外邦人の選挙権の問題でございますが、これは在外選挙制度が在外邦人の選挙権を行使する機会を保障するという観点から極めて重要なものでありまして、外務省といたしましても、これにかかわる職員の研修等も含めて十分な配慮を行っていきたいと思っております。  特に、在外選挙は新規の多大な追加業務でございますので、その円滑かつ適正な実施のため必要な予算を確保することが重要でありまして、各方面の理解と協力を得つつ適正な措置もとってまいりたいと思っておりますし、また諸外国の例等も参照させていただかなければならぬと思っております。  新聞の伝えるところによりますと、先般デンマークでも総選挙が行われた、国内における投票は与党、野党が全く接近しておりましたが、海外における有権者の動向によっての選挙結果によって与野党の差が決まるというようなこともございますので、政治に大きな影響力ももたらすことでございますので、いかなる選挙方法がいいかということも含めまして、慎重かつ重要な問題として対応しなければなりませんけれども日本国民の権利をいかに国政に反映させるかという意味でもこれまた重要な問題でございますので、引き続いて関心を持って努力をいたしていきたいと思っております。
  152. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 よろしくお願いします。  もう一つ伺いたいのは、日米安保条約の運用、特に事前協議の問題でございまして、私の住んでおります神奈川県、不幸にしてという言い方はあれなのですが、沖縄が第一の基地県、うちが第二の基地県でございまして、先般来議論ございましたイラクの問題にも関連をいたしまして、横須賀を母港とする空母インディペンデンス、湾岸に作戦行動で配備をされて、テレビでもその物々しい状況、日夜聞いて見ていたわけであります。  その出動に際しまして、NLP、離着陸の訓練が突然大規模に行われまして、協定その他に基づく事前のお知らせとかいうものと違った状況がありまして、地元の住民も県の方としてもこれは非常に怒っているというふうな事態が発生しているわけであります。  私、ちょっと不勉強なんですが、軍事問題を勉強している人に聞きましたら、何か空母は、任務につく、出動する一週間前に昼間夜間の離着陸訓練を行わなければならないという規定があるようでありまして、言うならば、事実上の出動命令があってこのような異常な事態になったということではないだろうかというふうにも思うわけでございます。ガイドラインとの関係もございますけれども、やはり地位協定日米安保条約関係する事前協議というものにつきまして、きちんとした対応をするということが大事なことではないかというふうに思います。  それから、結局、私はこういう問題を見ても、やはり日米間は我が国にとりましても極めて重要な、基幹をなす良好な二国間関係でありますし、友好と国民的な信頼感がある、そうでなくてはならぬと思います。現実にある日米安保条約の運用につきましても、やはり住民、市民の皆さん、国民的な理解がなければ安定した運用もできない、そういう状況を常につくっていく努力というものが非常に大事ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  153. 小渕恵三

    小渕国務大臣 伊藤先生の御説、全くそのとおりでございまして、協定があれば協定をお互い遵守することから始まりまして、その地域の皆さんの理解、協力があればこそ、両国の信頼が醸成され、条約並びに協定そのものが意義あるものとなるわけでございます。  ちょっとお話のありましたNLPの問題につきましては、これは通報がありましたのが直前でございまして、大変、この件につきましては、コーエン国防長官も参られた折、防衛庁長官並びに私に対しましても遺憾の意が漏らされたわけでございまして、こうしたことを考えますと、きちんと約束は約束として対応していただきませんと、両国の信頼がうせるということであってはいけないことだろうと思いますので、今後ともさらにいろいろな立場を通じまして、我が国立場も明らかにしていきたいと思っております。
  154. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 ちょうど十分たちましたので、終わります。
  155. 中馬弘毅

    中馬委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました     ―――――――――――――
  156. 中馬弘毅

    中馬委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  157. 中馬弘毅

    中馬委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  158. 中馬弘毅

    中馬委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  159. 中馬弘毅

    中馬委員長 次に、本日付託になりました海洋航行安全に対する不法な行為防止に関する条約締結について承認を求めるの件、大陸棚に所在する固定プラットフォーム安全に対する不法な行為防止に関する議定書締結について承認を求めるの件及び千九百七十一年九月二十三日にモントリオールで作成された民間航空安全に対する不法な行為防止に関する条約を補足する国際民間航空に使用される空港における不法な暴力行為防止に関する議定書締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。  これより政府から順次提案理由説明を聴取いたします。外務大臣小渕恵三君。     ―――――――――――――  海洋航行安全に対する不法な行為防止に関   する条約締結について承認を求めるの件  大陸棚に所在する固定プラットフォーム安全   に対する不法な行為防止に関する議定書の   締結について承認を求めるの件  千九百七十一年九月二十三日にモントリオール   で作成された民間航空安全に対する不法な   行為防止に関する条約を補足する国際民間   航空に使用される空港における不法な暴力行   為の防止に関する議定書締結について承認   を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  160. 小渕恵三

    小渕国務大臣 ただいま議題となりました海洋航行安全に対する不法な行為防止に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この条約は、昭和六十三年三月に国際海事機関の主催によりローマで開催された国際会議において作成されたものであります。  この条約は、船舶の奪取、破壊等を犯罪として定め、その犯罪についての裁判権の設定等につき規定するものであります。  我が国がこの条約締結することは、海洋航行安全を増進するとの見地から有意義であると認められます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、大陸棚に所在する固定プラットフォーム安全に対する不法な行為防止に関する議定書締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この議定書は、昭和六十三年三月に国際海事機関の主催によりローマで開催された国際会議において作成されたものであります。  この議定書は、大陸棚等に所在する固定プラットホームの奪取、破壊等を犯罪として定め、その犯罪についての裁判権の設定等につき規定するものであります。  我が国がこの議定書締結することは、大陸棚等に所在する固定プラットホームの安全を増進するとの見地から有意義であると認められます。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。  最後に、千九百七十一年九月二十三日にモントリオールで作成された民間航空安全に対する不法な行為防止に関する条約を補足する国際民間航空に使用される空港における不法な暴力行為防止に関する議定書締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この議定書は、昭和六十三年二月に国際民間航空機関の主催によりモントリオールで開催された国際会議において作成されたものであります。  この議定書は、国際民間航空に使用される空港における不法な暴力行為等を犯罪として定め、その犯罪についての裁判権の設定等につき規定し、民間航空安全に対する不法な行為防止に関する条約を補足するものであります。  我が国がこの議定書締結することは、国際民間航空に使用される空港における安全を増進するとの見地から有意義であると認められます。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。  以上三件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願い申し上げます。
  161. 中馬弘毅

    中馬委員長 これにて各件に対する提案理由説明は終わりました。  次回は、来る十八日水曜日午前十一時四十五分理事会、正午委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時二十五分散会      ――――◇―――――