○池田
政府委員 四月一日の
委員会で辻
先生から示唆されました資料について、調査しました結果を御報告させていただきます。
まず、この資料でございますけれども、これは、昭和五十年十一月に米国のサンディア
研究所で開催されました、
高速増殖炉の
事故分析に関する
研究成果を交換する
会議で報告されたものでございました。
この内容でございますけれども、ナトリウムとコンクリートの反応を主眼に置いた実験の報告でございます。一部に、ライナー、これは鋼板でございますけれども、ライナーの腐食に関する記述があることは事実でございました。
この実験でございますけれども、ナトリウムを蓄えましたタンク、それとコンクリートの壁の間に鋼板によるライナーを設けておりますが、ナトリウムにつきましては摂氏七百五十度で加熱をして十九時間置いた、これが
一つの実験でございますし、もう
一つは摂氏八百八十度C、これは沸騰する温度でございますが、これで三時間置いた、そういうそれぞれ加熱したナトリウムが鋼板を隔ててコンクリートとどういう反応をするかといったことについて調べた実験結果でございます。
ただし、この鋼板、ライナーには人工的に穴があけてございました。直径が七ミリの穴あるいはスリット、長さが二・五センチ、幅が六ミリといったような穴が、ちょうどナトリウムの液面の下あるいは上、両方にそれぞれニカ所ずつの穴が設けてございました。
したがって、これだけ加熱されたナトリウムがコンクリートとその穴を通して接しますと、御案内のように、コンタリートからは水が放出されます。この水が加熱されて水蒸気となって、ナトリウムの液面よりも上の穴、人工的にあけてございました穴からナトリウムのタンクの方に噴き出すといったことでございまして、結果的に、人工的に設けておった上部の穴が腐食によって大きくなったといったことでございました。
ただ、この報告におきましては、こういう欠陥つきのライナーによる実験の以前に、この著者は、これまでに行われました数多くの同種の実験についてのレビューを行っております。
そして、それまでに行われた多数の実験において、例えばナトリウムをこぼしましたときに、鋼板でつくったような受け皿、キャッチパンといっておりますけれども、それで受けとめて反応を調べるわけでございますけれども、そういう実験をした過程でキャッチパンが腐食により損傷したという報告はないとその
報告書に記載されております。
また、こういう実験結果を記しました後で、この資料の結論部分を見ますと、「適切に設計されたライナやキャッチパンは、水の放出、水素生成とコンクリートの損傷を制限する上で効果的となりうる。」と述べているところでございます。なお、腐食のメカニズムについては一切の記述がございません。
なお、この
会議には当時
動燃の職員が参加をしておりました。この職員にも確認をいたしました。その職員によりますと、当時は、ナトリウムが漏れたときに、これは当然、加熱されるわけでございますから、ライナーの下からの圧力でライナーが変形する
可能性があることが問題になっていました、腐食が問題になったという記憶はありません、なお、「
もんじゅ」では、床ライナーの下は密閉空間ではございませんから、対応する必要はないと結論したと記憶している旨述べております。
なお、辻
先生からは、この資料は国会図書館にも置かれているといった旨の御
指摘がございました。図書館は、こういう学術文献につきましては商務省の下部組織でございます米国
技術情報サービスといったところが刊行しておりますが、この刊行資料の中から入手をした、図書館の独自の措置として入手をしたといったことでございました。
さて、この資料を
原子力安全委員会でどう受けとめるかといったことでございますが、
原子力安全委員会は、「
もんじゅ」の原因究明の一環で、昨年の十二月でございますけれども、第二次の
報告書というのを発表してございます。そこでは、「
もんじゅ」の
事故、それからその後に行われました実験等で発生しました、ナトリウムと酸素と鉄の間の界面反応による腐食の知見がどういう
状況にあったかということを調査したわけでございます。
その結果、このような知見は、当時、他
分野の少数の専門家には知られていたという程度であって、高速炉
開発の関係者ですとか安全審査の関係者にに知られていないことがわかった。したがって、当時の知見の
状況を踏まえればやむを得なかったという旨の
委員長談話を発表したわけでございます。
これについて、辻
先生からは、このレポートの存在を見れば知見がなかったとは言えないのではないかといった御
指摘があったと承知しております。
この資料につきましての安全
委員会の見解でございますけれども、本資料は人工的にライナーに穴等をつけた場合の実験の報告でございまして、また、結論としては「適切に設計されたライナやキャッチパンは、水の放出、水素生成とコンクリートの損傷を制限する上で効果的となりうる。」と述べているため、健全なライナーを使用する実際の
状況にかんがみれば、本資料によって腐食に関する問題意識を生ずることは困難である。さらに、腐食のメカニズムについての記述がないために、本資料によって界面反応による腐食に関する知見を得ることは考えられない。
したがって、安全
委員会が
委員長談話において、当時の知見の
状況を踏まえればやむを得なかったと言ったことにつきましては、この資料につきましては当時の調査結果に
影響を及ぼすものではないという判断でございまして、この
委員長談話に示された、当時の知見の
状況を踏まえればやむを得なかったとの結論は変わらないというのが
委員長の見解でございます。
以上御報告させていただきます。