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1998-04-01 第142回国会 衆議院 科学技術委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年四月一日(水曜日)     午前九時三十一分開議 出席委員   委員長 大野由利子君    理事 小野 晋也君 理事 河本 三郎君   理事 三ッ林弥太郎君 理事 山口 俊一君    理事 辻  一彦君 理事 吉田  治君    理事 斉藤 鉄夫君 理事 菅原喜重郎君       今井  宏君    小野寺五典君       岡部 英男君    奥山 茂彦君       木村 隆秀君    田中 和徳君       田村 憲久君    平沼 赳夫君       宮本 一三君    村井  仁君       近藤 昭一君    佐藤 敬夫君       島津 尚純君    鳩山由紀夫君       近江巳記夫君    吉井 英勝君       辻元 清美君    保坂 展人君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      谷垣 禎一君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     沖村 憲樹君         科学技術庁長官         官房審議官   今村  努君         科学技術庁原子         力局長     加藤 康宏君         科学技術庁原子         力安全局長   池田  要君  委員外出席者         原子力安全委員         会委員長    都甲 泰正君         法務省民事局参         事官      揖斐  潔君         参  考  人         (動力炉核燃         料開発事業団理         事長)     近藤 俊幸君         参  考  人         (動力炉核燃         料開発事業団理         事)      中野 啓昌君         参  考  人         (動力炉核燃         料開発事業団理         事長)     菊池 三郎君         科学技術委員会         専門員     宮武 太郎君     ――――――――――――― 委員の異動 三月三十一日  辞任         補欠選任   大島 理森君     岡部 英男君 四月一日  辞任         補欠選任   木村 隆秀君     田村 憲久君   杉山 憲夫君     今井  宏君   村井  仁君     宮本 一三君   望月 義夫君     小野寺五典君   佐藤 敬夫君     島津 尚純君   辻元 清美君     保坂 展人君 同日  辞任         補欠選任   今井  宏君     杉山 憲夫君   小野寺五典君     望月 義夫君   田村 憲久君     木村 隆秀君   宮本 一三君     村井  仁君   島津 尚純君     佐藤 敬夫君   保坂 展人君     辻元 清美君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  原子力基本法及び動力炉・核燃料開発事業団法  の一部を改正する法律案内閣提出第二九号)      ――――◇―――――
  2. 大野由利子

    大野委員長 これより会議を開きます、  内閣提出原子力基本法及び動力炉・核燃料開発事業団法の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、本日、参考人として動力炉・核燃料開発事業団理事長近藤俊幸さん、同理事中野啓昌さん及び同理事菊池三郎さんの出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大野由利子

    大野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  4. 大野由利子

    大野委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。奥山茂彦さん。
  5. 奥山茂彦

    奥山委員 おはようございます。自由民主党の奥山茂彦でございます。  このたび原子力基本法並び動燃改組に関する法律が出されておるわけでありますので、それに基づきまして、四、五点質問をさせていただきたいと思います。  動燃は、一九五五年に原子力基本法が制定されまして、その平和利用三原則、第二条の、平和目的に限り、原子力研究開発利用を行う、こういった趣旨にのっとって、その開発のために長期計画は立てられてきたわけであります。そして、一九六七年からウランの探査、それから採掘、それからウランの濃縮、そして高速増殖炉、そしてまた、再処理、高レベル廃棄物処分等々についての研究開発、そしてまた、実用化における中核としての役割を果たしてきたわけであります。  しかし、この間、特に九五年の十二月、高速増殖炉の「もんじゅ」がナトリウム漏えい事故を起こして、そしてまた昨年は、動燃東海事業所アスファルト固化処理施設での火災爆発事故等が起こって、そして一年が経過してきたわけであります。その後も、動燃においては、「ふげん」の重油漏えい事故とか、またウラン貯蔵ピットの不適切な管理問題が発覚をいたしまして、動燃に対する国民不信感は募るばかりであったわけでありますし、そしてまた、科学技術庁における原子力行政不信もまた同じように募ってきたわけであります。  特に、我が国は、昨年十二月に行われました地球温暖化京都会議でうたわれました温室効果ガスのCO2を中心とした削減に相当思い切って取り組んでいかねばならない、そういう責任を負わされておるわけでありますけれども、そのためにも、いわゆる化石燃料と言われる石炭、石油あるいはまた天然ガスによる発電はこれからは抑制をしていかなければならない。そういうこれからの政策を推進しなければならぬわけでありますけれども、それにかわる、代替燃料として今日考えられるのはやはり原子力エネルギーしかないわけであります。原子力エネルギー開発を先導する動燃が与えた国民不信感というものは、まさに救いがたいものがあったわけであります。しかし、我々はこの問題を乗り越えていかなければならぬわけでありまして、日本国民の生きる道は、いかにしてこれを乗り越えるかということにかかってくるかと思います。  そこで、お尋ねをしたいのですけれども国民の、原子力政策、特に動燃中心とした不信感の払拭のためには、今回のこの改正に当たって、動燃をどのように変えて、その新法人が今後どのような安全対策を講じようとしていくのか。そしてまた、公共部門を受け持つ動燃がこれからも引き続き継続して開発に関する役割、そしてまた民間に果たしてもらわなければならない役割、そしてそこで言えることは、特に、今まで動燃改革と  いうことが言われておるわけでありますけれども、その頭がかわるだけ、あるいは外面が変わるだけでは許されないわけであります。こういった課題について長官はいかがお考えでしょうか。
  6. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 きょうから動燃改革法原子力基本法の御質疑に入っていただくことになりまして、私としても全力を尽くしてこの委員会で御議論をさせていただきたいと思っております。最初に、委員皆様方によろしくお願いを申し上げたいと思っております。そして、きょうの質問トップバッターとして、私と同じ京都御選出の奥山先生質問をしていただく友情を大変うれしく思っておりますし、真剣に奥山委員と御議論をさせていただきたいと思っているわけであります。  それで、今御指摘になりましたように、最近の一連動燃のいろいろな問題によりまして、日本原子力政策というものが国民の中で、その信念が大変揺らいできたといいますか、信頼性が揺らいできたということは、これはもう大変なことでございます。  ただ、今御指摘のように、日本でこの原子力エネルギーというものを利用せざるを得ない、そしてそのために核燃料サイクルというものを確立する必要があるという前提に立てば、私はもちろんそういう前提に立って議論をさせていただくわけでありますけれども、今までいろいろな問題はあったにしても、動燃というものがその推進をする中核的な機能を担っていた、そういうことは疑いを持たないところでございますし、長い間にいろいろな技術を蓄積してきたということも間違いないところでございます。  そういたしますと、この動燃をやはり抜本的に改組をして、国民信頼をもう一回取り戻して、そして核燃料サイクルの確立に向けて中核機構としての信頼機能を回復してもらう、これが今回提出させていただきました法律の最大の眼目でございます。  それで、これからいろいろ、おいおい御議論をいただくわけでありますけれども、やはり動燃運営とか経営業務というものを抜本的に見直しまして、安全確保第一義にいたしまして、情報公開を初め社会に開かれた体制をつくり、そして地元重視基本として核燃料サイグル開発機構というものに改組をしていこうということでこの法案を出させていただきました。  しかし、これは、いろいろな方々の御議論の中で、またこの委員会で今までいただいたいろいろな御意見も踏まえてこの法案を出させていただいたわけでありますけれども法案だけですとあくまで器でございますから、仏つくって魂入れずということにならないように、私、科学技術庁ももちろんでございますけれども動燃職員の一人一人が意識改革して、仏に魂を吹き込むような気持ちでもってこれから当たっていただかなければなりませんし、私どもも今までその環境づくりのために努力をしてきたつもりでございます。  また、安全対策が大事ではないかという御指摘がございました。  これにつきましては、動燃改革検討委員会報告書で、開発への偏重などによって安全確保危機管理という面に不備があったということが指摘されているわけであります。  それを踏まえまして、今回、本社機能現場に移して現場責任を徹底していこう、あるいは、運転管理部門研究開発部門からの独立的な運営をしていこう、あるいは、老朽化施設もいろいろあるわけですが、老朽化施設改善や、もう動いていない施設を撤去して安全対策を徹底していこう。平成十年度の予算でも、動燃全体の予算は九%減でありますが、こういう老朽化施設改善等安全対策については百三十七億を計上しているところであります。それから、毎年必ず全施設設備の安全総点検を実施していこう、それから、運転部門にも電力等からの人材の受け入れを拡大して、要するにいろいろな知恵や技術を入れて安全確保を図っていこう、それから、緊急時の情報伝達のインフラを整備していこう、こういうような措置を安全対策として講ずることとしているわけであります。  機構業務運営に当たっては、安全確保が最優先であることは言うまでもございません。今後とも、職員意識改革を含めまして、国民信頼される法人に徹底的につくりかえていきたい、このように思っております。
  7. 奥山茂彦

    奥山委員 私も当然、長官がおっしゃるように、動燃、新法人が果たしていかなければならない役割というものはさらにこれからも大きくなると思います。  ただ、それであるならばなおさら、これから新法人が果たす役割として、先日の東北大学名誉教授西澤先生の話の中にもありましたが、安全確保のための設備組織のこともありますけれども、一番肝心なのはそれに従事している職員意識が変わってこなければならなかったわけでありまして、今回の事故職員のたるみから起こっているということが言われているわけでありますので、職員管理と、それからさらに規律、そしてまた監督官庁である科学技術庁責任というものをどのように考えていかれるのか、それもあわせてお尋ねをしたいと思います。
  8. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 先生指摘のように、意識改革がまさに重要でございます。  今回の一連の問題と申しますのは、社会安心感を持つ、安心して動燃事業を見守る、そういうことが重要であるにもかかわらず、技術的な安全とかそちらの方に少し偏っていまして、そういう意味で、意識面におきまして一般社会とのギャップがあった。それから、みずからいろいろとわかっていただくための情報を発信すべきところを怠っていました閉鎖性、それから、内部での意思決定のプロセスが不明確でございまして、責任所在があいまいであった。そういうようなものが大きな問題であると考えておりますので、そういうような問題を抜本的に改善しなければいけないということで、動燃事業団の中で職員意識改革が進められているわけでございます。  一つは、徹底した教育研修というのがございまして、これまで既に延べ六千三百人についてそういうのをやっているわけでございますし、職員の心構えやとるべき行動を示します行動憲章、そういうものをつくりまして、そういうものを目標とした意識改革もやっておりますし、そういう成果を見るために理事長みずから診断会によりまして調べる、そういうようなことを含めました改革が具体的に進められているわけでございます。  それからもう一点、先生指摘ございました科技庁の問題でございますが、第一義的責任は当然動燃にもございますけれども、その動燃を指導監督いたします我々科技庁責任も重大であったと認識しておりまして、既に昨年八月一日には、そういう当庁の問題点も明らかにして、今後の我々自身改革をこのようにしていこうという方針も明らかにしております。  その中身は、一つはやはり、動燃事業団関係におきましては、適度な緊張感を持ちながら、なるべく結果を重視する、任せて結果を重視するような体制にしなければいけないとか、あるいは安全面関係では、二十四時間の連絡通報体制を整備する、これは既にしておりますし、抜き打ちの立入検査、そういうものを通じまして安全監視強化もしております。それから、現場の把握がよくできなかったという反省に照らし合わせまして、これから、現場重視法人監督強化する、そういうことで具体的な改革を我々自身も進めているところでございます。
  9. 奥山茂彦

    奥山委員 いずれにいたしましても、技術的な向上はあったとしても、それを扱うのは基本的には人間でありますので、人事管理というものは時間がたつとどうしても緩んでしまうものでありますので、この辺は十分またこれからも研究をしていただきたいと思います。  ところで、「もんじゅ」は実は現在運転が凍結されたままになっておるわけでありまして、新法人になっても、聞くところによると、なかなか再開の見通しがないという話もいろいろ聞いておるわけであります。この「もんじゅ」の運転再開、これからどういう手順でもって進めようとされるのか。  それとあわせて、原子力開発のある意味先進国と言われておるフランススーパーフェニックス開発の放棄をもう既に決定したということであります。アメリカ等においても、高速増殖炉開発する予定はないというような話もいろいろ聞くわけでありまして、それらの国々においては開発のメリットがどちらかというと余りない、こう  いうふうなことが言われておるわけでありますが、我が国においては、その中ででも増殖炉開発をまだこれからも推進しようとしておるわけであります。それであるならば、それなり国民に対する有効な説得力がなければならないと思うわけでありますが、こういう点についてはいかがで  しょうか。
  10. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 御指摘のように、海外の状況でございますが、フランススーパーフェニックス、これは今の軽水炉と同じ大きさの百二十万キロワットのものでございまして、これは経済的な観点からやめたということでございますけれども、「もんじゅ」と同じような原型炉、これは運転を続けておりまして、やはり高速増殖炉開発は進めようとしております。  それからロシアでございますが、ロシアは非常に高速増殖炉開発に積極的でございまして、この前の協議のときにもロシアの方から、高速増殖炉についての協力をしたい、そういう話が出ておりますので、それも話をしていきたいと思っております。  米国におきましては、米国の事情によりまして、核不拡散の問題から、プルトニウムを商業利用に使わない、そういう政策高速増殖炉はやめておりますけれども日本のように、エネルギー資源がほとんどない、技術を完成すればエネルギーが手に入る、そういうような国におきましては、高速増殖炉開発はやはり非常に重要だと考えております。  そういうものがこの前の高速増殖炉懇談会西澤先生に座長をしていただきましたが、その場で取りまとめられまして、高速増殖炉は非化石エネルギー源の有力な選択肢として実用化可能性を追求する、そのための研究開発を進めるのだ。「もんじゅ」もその研究開発の場として位置づけられているところでございます。  もちろん、「もんじゅ」につきましては、今後、安全審査をするなり、いろいろとステップ、段階を踏みまして、安全性について、地元方々あるいは国民方々についても御納得いただくような御説明をしていかなければいかぬと考えておりますが、いずれにせよ、段階を踏みながら進めたいと思っている次第でございます。
  11. 奥山茂彦

    奥山委員 「もんじゅ」の運転再開をする上においても、やはりそれなり情報をまた国民に十分提供していかなければならないわけであります。  そこで、動燃がこれまで高速増殖炉開発を進められてきた中において蓄積された技術的な成果というものは非常に大きなものがあったと思います。この情報、ノウハウというものは、民間原子力発電事業者を初め社会に大きく貢献するものでありますので、一つは、そういう面からの情報提供を十分にしてもらいたいと思います。  さらにまた、新法人情報を積極的に今後公開する、これが原子力エネルギー開発安全性国民に理解してもらうこれからの道であろうかと思います。これまでの動燃の閉鎖的な体質、これが原子力行政不信という非常に大きな国民不信を呼んだわけでありますので、この辺もあわせて、情報公開をどういう形で進めていかれるのか、お尋ねしたいのです。
  12. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 国民信頼を得ていくためには情報公開を積極的に推し進めろという御趣旨、全く私賛成でございます。  昨年まで原子力委員長代理をお務めいただいた伊原先生が最近お書きになりました本に「安全から安心への原子力」、たしかそういう副題をつけておられると思うのです。先ほどから御議論いただいているように、原子力を進めていく上では安全確保第一義であることは言うまでもありませんけれども、安全だということだけで当事者が満足していては足らないのではないか。やはりそれを国民によくわかっていただく、信頼していただく、安心感を持っていただくということが極めて必要なのだろう、そういう意味合いを込めて、伊原先生がそういう書名をおつけになったのだろうと私は思います。ですから、私どもも、単に安全確保をするというだけではなくて、そのことを十分に理解していただくための積極的な情報公開をしていくことが必要だろうと思います。そのことが同時に、今御指摘になった、今までの動燃の閉鎖的な体質を打破していくことにもつながっていくのだろうと思います。  ですから、自分から積極的に情報を開示していくということと同時に、広く国民の声にも耳を傾けていく、そういうことが今度の動燃改革においても基本的に必要ではないかと思っておりまして、今回の法改正におきましても、適切な情報公開ということを機構の責務として明確に規定をしております。  現在動燃でやっております。その具体的な取り組みについてちょっと触れますと、動燃の中で情報公開指針というものを作成しておりまして、ここで積極的な情報発信を志向していくということでございます。それから、広報に関しても、人材の育成や組織体制強化を図っていこう。それから、公開情報の内容をできるだけわかりやすいものにしていかなければならない。わかりにくいものを公開してもしようがないということで、ビジュアルに、あるいはできるだけわかりやすく簡明に、理解してもらえるような情報を発信していくことに努める。あるいは、インターネットなどの最新のメディアも使っていこうというようなことに努めているわけであります。  今後ともこういう方向を拡充していかなければならないと思っております。
  13. 奥山茂彦

    奥山委員 今、動燃科学技術庁に課せられた課題は、国民にわかりやすい情報を提供することによって原子力行政国民信頼を回復する、このことに尽きるのではないかというふうに思いますので、その辺は十分に心して臨んでほしいと思います。  ところで、もう一つ大きな課題は、今度の新しい法人処理技術処分を担当し、その研究開発をされる、こういうことであります。そこで、高レベル放射性廃棄物処分計画を推進する中で、特に東海処理工場の昨年のアスファルト固化体火災爆発事故、そしてその後の隠ぺい工作というものが、橋本総理をして動燃の名前も聞きたくない、ここまでおっしゃったわけであります。  しかし、この処分世界各国ともに共通の深刻な悩みであるわけでありますが、この東海事業所アスファルト事故処理とその責任所在は、中間的な報告はなされてきたわけでありますが、この処理責任はどのように明らかにされるのか。  そして、この処理工場長期にわたる操業停止ということになりますと、日本原子力発電は総発電の三分の一を占めておるわけでありますが、この原子力発電事業が将来この処理が進まないということによって操業を停止しなければならぬ、こういう事態にも陥りかねない重大な課題であるわけであります。  そういうことで、再処理事業を今後再開するスケジュールというのですかプログラム、それと、やはり住民の納得を得なければならないわけでありますが、こういうこともあわせて、どういうことでこれから臨んでいかれようとするのか、お尋ねをしたいのです。
  14. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 東海の再処理工場の問題でございますが、アスファルト固化処理施設事故の後、原因調査をずっと調査委員会を開いてやっていただいたわけでございまして、一応その原因調査を終了しているわけでございます。  それで、現在の東海の再処理施設は、再処理工場本体は何でもないのですが、最後の液体を処理するところがちょっと壊れましたので全体の流れがとまっているわけでございまして、本体の方は現在運転を停止いたしまして、計画停止と申しまして、その間いろいろなメンテナンス、取りかえなければいかぬ部品を取りかえるとか、定期的にしなければいけないようなことをしておりますが、できるだけ運転再開を早く行いたいと考えております。それに当たりましても、やはり地元自治体ともいろいろ御相談しなければいけませんので、今いっとは申せませんが、いずれにしてもなるべく早く運転再開したいと思っております。  そのアスファルト固化処理施設にかわる施設は、これはアスファルトを使わない新型の施設でございますが、平成十四年ごろにできる予定になっておりますけれども、その間は、廃液をためる装置を少しふやす、あるいは既存の装置を使う、そういうことで運転早期再開も可能ではないかと考えている次第でございます。  それからもう一点、東海の再処理工場は現在停止しておりますが、それがほかの原子力発電所に与える影響でございます。  東海の再処理工場は、どちらかというと非常に小さい再処理工場でございまして、年間数十トンぐらいを処理していたわけでございますが、片や、六ケ所村に現在建設中の再処理工場年間八百トンぐらいつくるものでございまして、東海工場がとまっているからほかの原子力発電所がとまる一そういうことはもう全くございません。ほかの原子力発電所はプールにも余裕がございますL、それから六ケ所村の再処理工場の方にも工事ができれば運ぶということで、別の体系になっておりますから、普通の原子力発電所に与える影響はほとんどないと考えている次第でございます。  それから最後に、高レベル廃棄物の問題もちょっとお触れになりましたが、新しい機構は、高レベル廃棄物研究は一生懸命やっていきたいと思いますが、処分自体は、二〇〇〇年ごろに処分の実施主体をつくるということでございますので、機構研究開発事業の方はまた別の主体で行う一そういう体制になって進めていこうと考えております。
  15. 奥山茂彦

    奥山委員 もう時間がありません。  そこで、再処理の問題ですが、実はこの間も青森県の六ケ所村で知事さんが異論を言われて接岸できなかった。再処理の行政に大きな不安を持っておられる、そこにこういう問題が起こっておるわけであります。しかもまた、先ほど御指摘もあったように、処分地がなかなか確保できないし、高深度の地下に埋める、これもまだこれから日本が始めるということでありますので、そういった開発、将来の処理計画が日本は非常におくれておるというところにやはり国民の大きな不安感の一つが私はあると思います。こういう点を少しでも強力に進めてもらって、この処理安心したものとして国民に受け取ってもらえるような方向で、これからも一段の努力をしなければならないかと思います。  そういった点で、これから科学技術庁並びに新法人の皆さん方が、さらに国民信頼を得るためにより一層の努力をしていただくように御注意を喚起をいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  16. 大野由利子

    大野委員長 辻一彦さん。
  17. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私は、民友連を代表して質問したいと思います。  今まで何回か論議をしてまいりまして、FBRの懇談会の西澤座長にも、また吉川前検討委員会の座長にも、参考人としていろいろ御意見を聞きました、また、大臣の所信に対する質問、あるいは本会議等を通して、かなり政策的な論議を重ねてきたと思います。きょうは、少し技術論に入りますが、具体的な問題で論議をいたしたい。そして、最後は、まだずっとあるわけでありますから、地方公聴会等を踏まえて地方の声を取り上げて、もう一度政策論議に取り組みたい、こう思っております。  そこで、比較的具体的な問題から入りたいと思いますが、「もんじゅ」の事故が起きたのは平成七年の十二月だったのですが、発端は温度計のさや管が破損して、そこからナトリウムが漏れて、それが火災事故に至って、ある意味では日本原子力行政の根幹を揺るがすところまでこの問題はいりたと思っております。そういう意味で非常に重大な事故であったと思います。そういう中で、具体的な出発点というのが温度計でありますから、このことについて若干お伺いしたい。  大体、液体であるとか、ナトリウムも液体ですが、あるいは空気や水という流体、流れるものの中に長いものを突っ込めば抵抗があって、振動したり折れたりする心配が十分ある。これはだれが考えても普通わかるわけです。流体の中にかんざしのようなものを突っ込むという温度計自体が、長ければ問題がある、短いほどいい、また、先がとがっているような形では非常に影響が出るし、丸みを帯びている方がいい、そういうことは「常陽」の経験からも十分学び得たはずであると思うのですが、どうも、ごく素人が見てもわかるようなことをやっている。工学をやった人ならば、設計のイロハのイで、こういう細長いものは問題がある、それが二段にもなればなるべく丸みをつけなければいかぬということは、設計のまず当初の問題であろうと思うのですが、こんなことをなぜ見逃しておったのかということ、そこをちょっとお尋ねしたい。
  18. 菊池三郎

    菊池参考人 現在、「もんじゅ」の所長をやっております菊池でございます。  設計当初においては、あのような方法による温度の測定というのは、一般技術といいますか、一般計装品の範囲であるという認識が非常に強かったということで、ちょっと専門的になりますけれども、今回のようないわゆる対称渦による振動というものは、その時点においては我々の世界では一般的ではなかったということからそれを見逃しておったというのが直接的な原因でございまして、そのほかの、当時における一般計装品としての温度計の設計基準は満足したものでもあったし一そのような確認はしておりました。
  19. 池田要

    ○池田政府委員 このような温度計のさやの設計について、なぜそういうことになったのかといったことについての御質問がございました。  本件につきましては、一事故が起こりましてから、科学技術庁でも、専門家を動員しましてその経緯を調べてまいりましたので、私ども規制の立場からも、これに対してコメントさせていただきたいと思います。  こういう破損するようなさやの設計がなされた経緯でございますけれども、そもそもメーカー自身が温度計さやの評価に当たりまして、基準の間違った適用をしたといったことでございます。段つき構造の温度計のさやに違った基準の適用をした。この設計に問題があったために、配管中を流れておりますナトリウムの流体力によってその細管部に高サイクル疲労が生じたといったことでございます。  そもそも、こういう不適切な設計が見逃されたといったことは、これは品質管理の問題でございます。  動燃とメーカーとの間で契約の仕様書が交わされているわけでございますけれども、ナトリウムの温度でございますとか流量、それから圧力、こういった条件が定められて、この設計の構造図がメーカーから動燃に提出されているわけでございます。この間に、動燃では、熱応力の緩和といった点では改善すべき点についてコメントをつけて返却している。ただし、今先生からも御指摘がありましたような段つき構造、この部分についてはコメントがされなかったといった経緯がございました。その結果、メーカーはこの構造そのものを変更することなく、これが取りつけられることになったわけでございます。  そうした意味では、メーカー及び動燃において、この設計についてそれぞれ品質管理の規定というものがあって、実施したわけでございますけれども、これが結果的には生かされなかった。その動燃のコメント以外で変更が求められるような機会がなかったといったことまで私ども確認した次第でございます。
  20. 辻一彦

    ○辻(一)委員 そういうことは、よくよく今までも聞いております。  そこで、フランスの方では、一九八五年にスーパーフェニックス事故が起きて、そして、ニカ月かけて、大体、温度計四十五本のうち八本を除いて三十七本を取りかえておるのですね。ニカ月にかけての工事をやっておった。そういう実態を直ちに、これは資料で、すぐ手に入ってわかっていることですから、調査にも行かず、そうして放任をしておいて、十年もたって、一九九五年の十二月に事故が起きて、明くる年の一月に慌てて現地に調査に行っている。こんなことで、外国の情報やこういうことをどうとらえておったのか。  私は、事故があり、今言った四十五本中三十七本も温度計を取りかえている、そのために二カ月も工事をやっている、これを見れば、直ちに現地に調査に行って対応を考えるのが当然であると思うのですが、そういうことをやらずにおったのはなぜなのか。長い答弁は要りませんから、ポイントだけちょっと聞かせてください。
  21. 菊池三郎

    菊池参考人 お答えいたします。  先生指摘の点につきましては、一九九〇年、我々の方としても情報はつかんでおりました。  基本的に、スーパーフェニックスと「もんじゅ」とは炉の構造が違います。といいますのは、一次系、二次系とあるわけでございますけれどもフランスの方では一次系の中に、一次系というか格納容器の中に二次系も入っておるわけでございますが、そこの部分について窒素雰囲気でなかったというようなこともありまして、そのような対策を講じていったというふうに我々は承知しております。  基本的には、我々の「常陽」等の経験からもいいまして、フランスと炉の構造が違うということから、直接今「もんじゅ」で反映する必要はないという判断をしたわけでございまして、現在においてもその判断は正しかったというふうに思っております。
  22. 辻一彦

    ○辻(一)委員 こういうので長くやることはやめますが、フランスの方で二カ月かげて工事をやって、その資料を、普通なら一年ほどで、何年か後に入手しているわけですね。現地を見に行って、そして調査をするのが当然で、資料はわかっていました、しかし現地を確認したのは十年後であったと。  そして、その調査の報告書動燃が出したのを見ると、その中に短尺効果、温度計を短くした効果がちゃんとはかられて、報告されている。そのときの短尺効果ということを早く知れば対応の道がもっとあったはずなのだが、そういうことについては十年も放任しておいて、炉の構造が違うから。それは違いますよ。だけれども、これは、流体の中に長いものを差し込めば折れたりするというのは普通考えることだから、当然やるべきであったと思うのですが、このことで論議を長くやりたくないから、これで切り上げます。  そこで、今総点検をやっている中で、長いものを流体の中、ナトリウムの配管の中に差し込むよりも、もっと新しい方法で温度をはかる、随分進歩しているのですから、そういうことを総点検の中でも検討をしているということ。あるいはまた、ことしの二月に民間放送でそういう問題を放映したこともあるのですが、具体的に総点検の中でどういうふうに点検をされているか。これも要点だけで結構だから、伺いたい。
  23. 菊池三郎

    菊池参考人 お答えいたします。  事故が起きた当初から、私が赴任して方々から、なぜ外からはかれないんだという御指摘は受けまして、その時点から、超音波による方法なのですけれども、外からはかる方法はできないかということでの検討、研究開発を続けております。基礎的な実験に入る段階にまで来ております。  ただ、これは重要な機器でございますので、信頼性それから耐久性の問題がございますので、そのような実証をあわせて行った後に採用するということになりますので、今回の「もんじゅ」の直接的な改善には間に合わないというふうには思っておりますけれども、併用して実証性を確かめていくということは検討していきたいというふうに思っております。
  24. 辻一彦

    ○辻(一)委員 内容は、超音波により温度を外側ではかるというものというふうに聞いておりますが、それはどれぐらいの研究開発をやって、いつごろそれを使うつもりでいるのか、簡単に伺いたい。
  25. 菊池三郎

    菊池参考人 お答えいたします。  耐久性とか信頼性には比較的時間がかかりますので、いつからというふうには申し上げられませんけれども一現在の方法と併用しつつ実績を積んでいくということは可能ではなかろうかというふうに考えております。
  26. 辻一彦

    ○辻(一)委員 簡単に聞きますが、併用するということは、今の差し込む温度計と、そのほかに超音波のを一緒に使いながらやっていくということですか。
  27. 菊池三郎

    菊池参考人 お答えいたします。  現在、基礎研究中でございますので、それが間に合えば、補助的にそういったものを取りつけて、現在の方法との比較検討をしながら実績を積み、耐久性、信頼性を高めていくというような活用になるのではなかろうかというふうに考えております。
  28. 辻一彦

    ○辻(一)委員 新しくて有効なのがあれば、大いに採用してやってみればいいと思います。  そこで、本論にこれから入りたいのですが、ナトリウムが漏れて、そして火災が起きて、これは安全審査の中でも小中規模のナトリウム漏れ火災は余り想定していなかったというか、必ずしも安全審査で十分意を尽くしたというようには思えないというふうに思いますが、ともあれ、現実にナトリウムが漏れて、そしてそれが空気と反応して火災が起き、あれだけの事故に拡大された。  その後、動燃はいろいろ実験をやっていますね。それを再現するための実験をやっている。ⅠとⅡがあって、Ⅰの実験で、床に張っている鋼鉄の板に穴があいたという結果が出ました。  これは、私は非常に大きな問題であると思うのですね。というのは、漏れたナトリウムがコンクリートと接触をすると、コンクリートの水分を吸い取って、そこで反応を起こして水素ガスが出る。直接触れれば爆発に至るわけですから、非常に危険なことなので、これをどう防ぐかということが、フランスは十八カ月間にわたるずっと工事をいろいろやっていましたが、その一つの重要なポイントであったと思うのです。  普通は、漏れたナトリウムを鋼鉄の板で、床ライナーと言っておりますが、そこで受けとめて、下のコンクリートと接触しないようにしている。それに穴があけば、これは今度は、ナトリウムとコンクリートの接触は今言ったように水素ガスの発生になっていく。だから非常に大きな問題になる。  私も、去年の一月に、フランス原子力庁とそれから原子力施設安全局へ行っていろいろな論議をしましたが、安全局のメンバー、専門の連中は、穴があいたというようなことは驚くべきことだということを二回私に繰り返して言ったのですね。ただ、実験の条件が違うから一様には言えないけれども、しかしフランスは、スーパーフェニックスの中でいかにしてナトリウムとコンクリートが接触しないようにするか、一年半もそういう工事を、それだけじゃないですが、非常に力を入れてやってきた。だから、そういうことが起これば驚くことだ、中身は詳しくわからないから日本の方とまた連絡をとって情報交換を詳しくやりたい、こう言っておりました。  やはりスーパーフェニックスの後の、ナトリウム漏れ火災後の状況を見ると非常に大きなポイントだと思うわけですね。いわゆる穴があくということは鉄がいろいろな作用によって腐食をしたということですが、安全審査の記録等を見るときに、腐食の問題はその当時はなかなかわからなかったというので審査の対象になっていないということがしばしば報告されておるし、口頭でも科技庁や安全委員会から聞いている。だけれども、その当時どの程度この問題についての認識が科学技術庁としてあったのか、まず科技庁の方に伺いたい。これは順序がありますから。
  29. 池田要

    ○池田政府委員 今回の、今先生指摘がございましたようなナトリウムと酸素と鉄との間の高温における化学反応、こういった知見につきましては、当時行政庁の側では持ち得なかった、持っていなかったということでございます。  これは、御指摘ございましたような今回の事故の後に大洗でこういう実験を行った結果、こういう新しい事実関係事故の原因解明の過程で出てきたといったことでございまして、そういう知見に照らして調査をした結果、この分野の知見については、限られた分野ではございますけれども、ほかの分野に一部あったといたことは、これも専門家を動員しました調査の過程で明らかになった次第でございます。
  30. 辻一彦

    ○辻(一)委員 今のは行政庁、科学技術庁の安全局長としてのお答えと受けとめますが、いいですね。  ではもう一つ原子力安全委員会としてどういう見解を持っておったか。必要ならば事務局長から伺ってもいいと思いますが。
  31. 都甲泰正

    ○都甲説明員 お答えいたします。  安全審査段階におきまして、鋼材のナトリウムによる腐食反応の知見がなかったというのは事実でございます。  その当時、文献等あったのではないかという御指摘でございますが、実は、安全委員会のもとにつくりましたワーキンググループで「もんじゅ」の事故調査を行いましたときに、電気化学会に調査を依頼いたしまして、詳細な調査をお願いいたしました。その結果、当時たしか四件ほどのナトリウムと鋼材腐食に関する論文がございました。そのうち直接高速炉の設計に関係あると思われる論文が、フューバーというドイツの方の論文があったようでございますが、当時といたしましては、この知見は他分野の少数の専門家の間には知られておりましたが、高速炉分野の専門家には知られておりませんで、特に重大な問題になるという問題意識がなかったというのが実情であろうかと思います。
  32. 辻一彦

    ○辻(一)委員 動燃にお伺いしますが、動燃は、これについて当時も、今行政庁や安全委員会が言ったような見解であったのか、どういう認識をしておったか、伺いたいと思います。
  33. 菊池三郎

    菊池参考人 動燃事業団としても同様の見解でございます。  それから、その後動燃で行いましたいろいろなナトリウムに関する実験を再確認した時点においても、腐食した事例はございませんでした。
  34. 辻一彦

    ○辻(一)委員 ちょっと委員部、これを皆さんに差し上げてください。  伺いますが、その資料の表題、内容については知っていらっしゃるかどうか、ちょっとお尋ねしたい。まず、行政庁の方はどうですか。
  35. 池田要

    ○池田政府委員 ただいまいただきました資料は、これまでの調査の過程で私どもが見た資料の中には入っておりません。
  36. 辻一彦

    ○辻(一)委員 安全委員会はいかがですか。
  37. 都甲泰正

    ○都甲説明員 原子力安全委員会としても承知いたしておりませんでした。
  38. 辻一彦

    ○辻(一)委員 動燃は。
  39. 菊池三郎

    菊池参考人 これはアメリカの国立研究所のレポートでございますから、当然動燃とも交流がございましたので、私自身は存じ上げておりませんけれども、うちの専門家はこういうレポートが存在しているということは知っていると思います。
  40. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これは、一九七七年、アメリカのハンフォード技術開発研究所の報告なんですね。この中身は要するに、一九七〇年代はアメリカが国連をかけて高速増殖炉開発に、プルトニウムを使えるかどうかというのでかかり切っておった、膨大な予算やそういうものを使っておった時代ですね。そのときにライナーが、ナトリウムと鉄板が触れて穴があいたという実験をやっておるのですよ。これは当時、非常に大きなナトリウムと鉄板との腐食の問題を明確にこういうふうに報告しておるのですが、そういうことについて動燃情報を知らなかったのですか。
  41. 菊池三郎

    菊池参考人 今の、ハンフォードで行われた実験の結果については承知していなかったと思います。ただ、このレポートそのものの存在については、当方としては専門家は承知していたと思います。
  42. 辻一彦

    ○辻(一)委員 では、どういう中身であるか、ごく大事なところだけ訳してありますから読みますが、「ナトリウム-コンクリート反応、床ライナの役割、及びナトリウム火災の消火について」という表題ですね。米国ハンフォード技術開発研究所、発表場所は、事故発生後の熱除去に関する第二回目の情報交換会、一九七七年ですね。訳文は、  ライナの損傷部分の近くはひどく腐食されていた。図十四は、そうしたライナの写真である。穴のあいたところに、反応でできた物質が詰まっているのが写されている。明らかに、コンクリートから出た水分のほとんどは、損傷部分を経てナトリウムと反応している。ライナは炭素鋼であってもステンレスであっても、ひどく腐食された。最悪の場合には直径約七ミリの穴が四・五センチ掛ける四センチの大きさに広がり、幅が一・六ミリで長さ二・五センチの傷が幅二・四センチで長さ四・一センチにまで広がった。試験用のライナの重さは八百五十五グラムから九十グラムにまで減り、減った分の鉄は反応でできた物質中に見出された。反応でできた赤褐色の結晶状の物質の写真は図十五に示したとおりである。その成分はNa2O、酸化ナトリウムとFeO、酸化鉄が二対一の割合で含まれている物質であり、その融点は五百八十度Cであることが分析の結果判明した。その物質に含まれているコンクリート成分はわずがで、反応でできた物質のほとんどはライナの腐食でできたものであった。 ということ承書かれているのですね。  しかも、このときの研究会に動燃研究者が参加している。これは、目次の一覧表を見ると、PNCというのは動燃でしまう、PNC・オブ・ジャパンとなっている。だから、日本動燃研究者がそこに参加して、同じこの研究会に行っておるわけですね。  そして、この記録は国会図書館に昭和五十五年の二月何日かに、日は表に書いてありますが、おさめられておるのですね。だから、昭和五十五年からこういう七七年の試験結果が国会の図書館にもあり、しかも、最も重大なこのライナーの損傷、いわゆる腐食を明確にこれは指摘しておるのですね。  こういうものを知らなかったということは、それは一体どういうことか。国会図書館にもあるのですよ、今、調べてみましたら。どういう研究をやったのか知らないが、一緒に研究者が参加しておって、当然その人たちはこういう報告書をもらうはずなのですよね。それが、こういう重大なことが、しかも安全審査にかかわり、あれだけの国費をもって調査あるいは研究しているのに、何も動燃自体が知らなかったということを私は理解しがたい。いかがですか。
  43. 菊池三郎

    菊池参考人 これは国際的には一般的な会議でございますので、当然、当時の動燃の専門家も出席していたと思います。その様子について、調べさせていただいて御報告させていただきたいと思います。
  44. 辻一彦

    ○辻(一)委員 いや、私はその中身はもうわかっているのだから。国会図書館に行けばあるのだから、それを今コピーをもらって訳しているのだからわかるのだが、一九七七年というと今から二十一年ほど前ですね。そのときにアメリカは、FBRは今はもうやめたけれども、当時は非常な経費をかけて実験等もやって、こういう中身を持っておったのですね。それを天下の動燃、行政庁、原子力安全委員会等が知らずに過ごしておったということは、いかにも理解しがたいことだと思いますね。  それで、何か私の理解できるようなことがあったら発言してください。どうぞ。
  45. 菊池三郎

    菊池参考人 繰り返しになりますけれども、当時の、二十年前の参加者等に経緯を聞きまして、そのハンフォードの実験の内容が先生指摘のように見逃されておったのか、ほかの事情があったのか、その辺をもう一度よく調査させていただきたいと思います。
  46. 辻一彦

    ○辻(一)委員 そういう情報を知らずにおった日本原子力関係者全体は非常に遺憾なことだと思いますね。まだ論議をしましょう。  それで、動燃は、安全審査は大体一九八〇年から八三年、昭和五十五年から五十八年まで行われたと思うのですが、そのときに、こういう問題、ナトリウムの鉄との反応等について、これは重要だというような問題意識はなかったのですか。
  47. 菊池三郎

    菊池参考人 ナトリウムの漏えいについては、やはり高速増殖炉をやっていく上では極めて重要なことであるというふうな認識で設計等対応してまいりました。
  48. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これは動燃からきのう資料をもらったのですが、「ナトリウムスプレ燃焼試験成果報告書」というのがありますね。これは受託研究であるけれども一ナトリウムが噴霧状、スプレー状に、この間起こったのはスプレー燃焼なのですが、起こったときに大変な高温になるというデータを動燃自体は持っておるでしょう。実験したのでしょう。  この中身は、紹介しますと、時間は十八秒や五十七秒と短い時間ですが、七百四十度Cに上がっていますね。それから、もう一つは八百八十度C。安全審査で、二百二十何度かに余裕を見て四百六十度ぐらいに設定しておるのですよ、こういうのが起きたときの温度をですね。その倍、約四百度も高いこういう実験が出ている。  この中に、解析を見るとこう書いておるのですね。もっとも動燃の出してきた資料にはこの解析は出していないのですね。資料は、言ったらちゃんと出してもらわなければいかない。まあ、これは詳しく言わなかったから、それはいいとして。  壁の温度は、モルタルについては解析結果と実験結果はほぼ一致したが、スティール・ライナについては補正係数を一〇〇〇にしても実験結果の温度変化幅の約四五から五三%と過小評価であることがわかった。 「過小評価であることがわかった。」ということは、実験の方がはるかに温度が上がって、設定しておった安全審査等における基準は非常に過小評価されておるということを言っておるのですね。そこで、こう言っておるのですね。  これらの結果から、窒素雰囲気におけるガス圧力、ガス温度についてのSPRAYコードによる評価は妥当なものであることが確認されたが、壁の温度や空気雰囲気における評価については、非安全側であることが判明した。 「非安全側」というのは安全でないという方ですね。それはそうでしょう、四百六十度で設定したのが実際は八百八十度にも温度が上がれば、もう余裕どころではないのだ。危険な方に実験結果が出ている。だから、基準の方が非常に過小評価であったということですね。  SPRAYコードは、「もんじゅ」の設計評価用コードとして用いられている為、今後SPRAYコードにおける燃焼モデルと熱伝達モデルについて重点的に改良と検討及び検証を続け、「もんじゅ」の二次系におけるナトリウム・スプレー燃焼を再評価する必要があると考えられる。 だから、設定基準が低いから、これはもう過小評価してあるというか、実際やった実験では温度が倍ほどに上がってしまった。八百八十度という温度は、もし高速が、この間も一時は千度前後になったところがあると思うのですが、上がれば、溶融塩における、ちょうどアメリカが実験してやったと同じようなことを今安全委員会や検討チームで検討していますが、それが起こる可能性のある温度ですね。ですから、重大なデータですよ。  五十五年から五十八年、安全審査を「もんじゅ」についてやっているときに、動燃はこういう重大なデータを実験で手に入れながらどうして行政庁にも安全委員会にも報告しなかったのか。それはどうなのですか。
  49. 菊池三郎

    菊池参考人 お答えいたします。  原子炉の安全性については、まず、炉心の安全性といいますか、プルトニウム燃料が入っておりますそこが大きな破壊を生じないかどうかということを安全の基本にしております。したがって、ナトリウムの漏えいにつきましても、そのような大きな損傷を与えるものとしては大漏えいを中心に考えて対応しておるわけでございます。  したがって、温度につきましても、ナトリウムが大量に漏れた場合ということの方が炉心に対する影響も大きゅうございますので、その際の温度というものが中心に評価されております。そういうスプレー火災といいますか、そういったもので部分的には高温になるということは我々も承知しておりましたけれども、大量の漏えいの方が炉心の損傷に対しては大きな影響を及ぼすということで一それを中心安全性の評価をしてきたわけでございます。
  50. 辻一彦

    ○辻(一)委員 この「もんじゅ」のナトリウム漏えいは、では百五十トンという大量のナトリウムが漏れておったらどうするか。ナトリウム漏えい後の安全委員会指摘した措置の中身を見ると、とにかく百五十トンもナトリウムが降ってきて、固まったからそれを削って取るとか、そういうことですが、その前に火災が起こる、ナトリウムが外へ出れば。それについての対応がされていない。それは私は後で論議しますが、安全審査をやっているときに、百五十トン、大量の場合だけ想定するというのは、それは、動燃安全審査を申請しておるのでしょう、その判定は、まず第一次には行政庁の科技庁がやって、ダブル審査で安全委員会が検討すべきことで、あなたが判断することではないのですね。そういう重大なデータがあったら直ちに安全委員会に、行政庁に報告して、この結果を分析するべきです。そうすれば、安全委員会は、当時そんなことは知見もなかったし、何か問題意識もなかったと言うけれども、こんな重大な問題を、具体的にこれだけ動いている中で問題意識もなければ知見もなかったというようなことは許されない、こう思うのですね。だから、そういうことを報告すべきでなかったのか。どう思うのか。
  51. 菊池三郎

    菊池参考人 現時点において、私の判断とすれば、当然御報告されるであろうし、それは一般に情報として公開されてしかるべきものであったというふうに思います。
  52. 辻一彦

    ○辻(一)委員 実際に報告もされていなければ、安全委員会も、行政庁、科学技術庁もそれを知らずに、それでそういう問題は安全審査の対象外にしたということのようですが、まず、第一次審査をやった行政庁、安全局に伺います。これは行政の方ですよ、間違えないように。  そういう状況把握がなぜできなかったのか。動燃のこのデータは当時において重要な問題を含んでいるというように理解しないのですか、どうなのですか。
  53. 池田要

    ○池田政府委員 お答え申し上げます。  動燃事業団は、「もんじゅ」のような原子炉の設置者でございますと同時に、FBRに関しますおよそ研究開発の最先端を担う当事者でございましたから、今回御指摘のような、最先端の研究者が情報交換をするような場においてそういう知見に接したとすれば、こういったものが適切に反映されなかったといったことは大変残念なことでございます。  これは、こういう研究者の最先端の情報であっても、原子力施設安全確保については十分活用されるということが私ども極めて大事なことだと思っておりますし、私ども安全審査において他分野の専門家を動員しておりますのもその理由であるわけでございまして、今回のように、「もんじゅ」の安全審査にあるいは間に合っただろうときにこんな情報があったとすれば,これが的確に反映されなかったということは大変残念なことでございます。せっかくの今の御指摘もございますし、この経緯等については十分私ども調べさせていただきたいと思っております。
  54. 辻一彦

    ○辻(一)委員 「もんじゅ」の総点検とかいうのは、そういうところまでさかのぼって、場合によれば設計思想にまで及んだ点検をやるということが大事なのです。それはたくさんのことをやっていらっしゃる、資料も膨大ですが、こういう大事なことが自己反省もされず、責任所在も明らかにされず、うやむやになっていく。こんなことで点検が終わったわけではないし、報告書の中を見てもそういうことについての反省が何も書かれていないのですが、これは私は動燃に対してもそう思います。  まず、原子力安全委員長の見解というものが去年の十二月十八日に、「もんじゅ」の検討等を踏まえてなされておりますが、その中に、恐縮ですが,こう書いてある。「ナトリウム燃焼に伴う鋼材の腐食の知見は、設置許可当時においては、」いわゆる昭和五十五年、五十八年においては、「鉄鋼精錬等の特定分野の少数の専門家に知られていたに止まり、高速炉の分野では、これが安全上重要であるという問題意識がなく、また、その知見が知られていなかった。これは、当時の状況からやむを得なかったと考えるが、」これからひとつこれを教訓にしてちゃんとやりますというのですが、ちゃんとやるのは当たり前であります。  この見解は、アメリカの一九七七年におけるハンフォードの実験データ等を踏まえ、そして、恐らく動燃は、ライナーのスプレー燃焼によって鉄鋼に及ぼす影響、腐食等を考えて、腐食という言葉を使っていたかどうかわからぬが、問題意識の中にはそういう問題があってこの実験をやったと私は思うのです。ライナーの健全性をいかに確認するかというために行われた実験だと思うのですね。  そういう点からいえば、その問題の重大性は、七七年のハンフォードの実験は知らなかったにしても、その後の経過の中で動燃自体がやっている実験の中ではそういうことの大事さということを認識してやっていると私は思うのですね。原子力安全委員会の委員長談話ですが、これは恐らく原子力安全委員会の事務局において作成、まずはたたき台をつくったものと思いますが、安全委員会を担う事務局の責任者からこれについての見解をひとつ聞きたい。
  55. 池田要

    ○池田政府委員 今先生指摘の今回の安全委員長談話につきましては、安全委員会が専門家を動員しましてワーキンググループというものを構成して、原因調査から再発防止策まで議論いただいた過程で、事実関係を把握し、それに基づいて委員長談話として出されたものでございます。  したがいまして、私ども事務局といたしまして、この作業の経過につきましては、当然ながら作業が円滑に進むようにこれについては参画させていただきましたけれども、ここに盛り込まれております事実関係の認識、それからそれに対しての意見につきましては、専門家の御意見、それから安全委員会自身がこれについての見解を述べられた、そういうものであることを御理解いただきたいと思います。
  56. 辻一彦

    ○辻(一)委員 どうも答弁していることがよくわからないですね。  私が聞いておるのは、原子力安全委員会が委員長談話として示された中身は、「もんじゅ」の安全審査の当時、設置の許可当時、昭和五十五年から五十八年にかけて、鉄鋼の分野だけしか知らない、高速炉の分野では安全上重要であるという問題意識もなく、その知見は知られていなかった、当時はやむを得なかったと言うが、今ハンフォード以来動燃がやっている事実を並べたときに、こういう見解をとることはおかしいのではないか、どうなんだ、それを私は聞いているのです。
  57. 池田要

    ○池田政府委員 この点につきましては、今回のワーキンググループの作業自身が、当初の安全審査の過程にまで踏み込みまして、当時必要な知見が反映されていたかどうか、こういったことまでも議論された結果明らかにされたところでございます。  その結果、こういったナトリウム燃焼による腐食といったことについての知見のありよう、これにつきましては、先ほど委員長からも御指摘がございましたように、電気化学会等外部の機関にも意見を照会した上でこの事実関係を把握するようになった、そういう経過がございます。
  58. 辻一彦

    ○辻(一)委員 外部に聞いた、電気化学会に尋ねて、それは一部しか知らぬと言ったというのですが、それはそれで事実かもしれないが、肝心の動燃がそういう問題意識を持ってやっているという事実が片方でちゃんとあるんですよ。その中でこんな見解を出して、高速増殖炉の分野では知見もなければ問題意識もなかったというようなことはおかしい表現じゃないか。こんなことは私は認められないと思うが、いかがですか。
  59. 池田要

    ○池田政府委員 ただいま先生が御指摘のように、安全審査自身は、設置者自身が申請をしますときにあらゆる知見を動員して、その内容については安全確保上十分な内容を盛り込むべきでございますけれども、規制の私ども役所の立場におきましても、その際多くの専門家を動員いたします。この過程では、そういう知見についてまた客観的な評価というものを試みるわけでございますし、その過程で、そのときに利用可能な限りの情報検索というものがなされて、必要な反映がされることが前提でございます。  今回、そういったところまで振り返って調査をいたしましたときに、この分野の、特定のナトリウムと酸素と鉄、こういったものの反応につきましては、その当時、規制の側においても、動員する、使うべき知見というものを持ち合わせていなかったといったことが事実関係として明らかになったわけでございます。
  60. 辻一彦

    ○辻(一)委員 いや、そのときに科学技術庁がそういう知見も問題意識もなかったというなら、それは反省だ。だけれども、片方では、ハンフォード以来こういう実検が行われ、動燃が具体的な鉄板におけるスプレー燃焼、そういうものをやっているという事実があるでしょう。  そういうものを無視して、高速増殖炉の分野ではなかったと言うけれども、まさにあなた、動燃高速増殖炉のためにやっておったのですよ。その高速増殖炉の最も先端的な、中心的な動燃がこういうことをやっている。そんなものを、いや実際はもうFBRの範囲ではだれも知見も問題意識もなかったと言ったって、そんなことは通らない。これを書きかえるかどうか。どうなんですか。
  61. 菊池三郎

    菊池参考人 私の説明が不十分だったかもしれませんけれども動燃としてやった実験は、今局長が説明したような反応による腐食を目的としてやった実験ではございませんで、基本的には、スフレー状の火災が少量であっても部分的に高温になる可能性があるということから実験をやったわけでございまして、その結果、高温になることがわかりました。  したがって、安全対策上、鉄板に対して、そういったものも含めて、五百三十度という温度でもって評価をしようということになったわけでございます。
  62. 辻一彦

    ○辻(一)委員 現実に起こっている実験の結果が、スプレーで燃焼して、そして鉄板と、受け皿ですね、接触をして、そして八百八十度になった。その設定温度というのは四百八十度。それが八百八十度まで上がったということは、これは非常に具体的な問題ですよ。そんなことは安全審査をやっている行政庁に知らせて、こういう問題が実険の結果出ました、検討すべきだとやるのが当然じゃないですか。  だから、あなたたちの方は一つこの実験を具体的に重ねている。それから、国際的にも、アメリカ等ではもう二十一年も前にそういう問題意識を持ってやっている。行政庁、科学技術庁は知らないのかどうか私は知らないが、具体的にそういう事実がなされている中で、こんな表現で、何回も言いますが、高速炉の分野では安全上重要だという問題意識もなくその知見が知られていなかったと言うが、少なくとも、アメリカにおいてはこの実験の中に、詳しく言えばいろいろありますが、要するに第二の実験と同じようなことが起きているのですよ、この中身を見ると。  というのは、鉄板に小さな穴をあけて、そして上からナトリウムを通してみたら、下のくぼみから、下のコンクリートと接触をして、急速に横に穴が広がった。ちょうど動燃がやった第二の実験、穴がかなり大きく幾つかあいていますが、それと似たような現象が起きている。写真を見ても表面がぎざぎざになっている。  動燃は、全面腐食じゃない、選択腐食と言っているのでしょう。どうなんですか。
  63. 菊池三郎

    菊池参考人 お答えいたします。  先生指摘のハンフォードの実験につきましてはもう少し詳細に調べさせていただきたいと思うのです。我々がやった実験は、鉄板と化学的に反応して穴があく、腐食をするということを目的にしてやった実験ではございません。  それから、ハンフォードの実験も、題名だけを見ますとコンクリートとの反応と言っておりますので、恐らく穴をあけてコンクリートと反応させるような実験を考えられたのだと思います。したがって、今回我々の大洗でやった実験で起こったような、いわゆる溶融塩腐食といいますか、そういったことであったかどうかということは、今回問題にしておりますのは、そういう溶融塩的な腐食が新しい知見であるということに絞っておるわけでございまして、穴があく要因はそのほかにもいろいろあるわけでございます。  したがって、当時、我々がスプレー火災で高温になるということの実験をやった目的は、鉄板の温度が上がる、そうした場合に大量に漏れて鉄板が熱膨張する、そういうことによって原子炉の建物等が破壊されるというようなことを評価するために鉄板の温度は評価しておるわけでございまして、問題の新しい知見というのは、そういう化学的な反応による腐食があったかどうかということが最大のポイントでございますので、穴があいたかどうかというのは単純にすべてが腐食であるというふうには言い切れないと思いますので、詳細に実験の方を調べさせていただきたいと思います。
  64. 辻一彦

    ○辻(一)委員 いや、それは言いわけは言いわけであるでしょうが、そうはいかないですね。  行政庁の科学技術庁は、安全審査の最中に、こういうような実験によって八百度を超えるような温度が上がった、そういう事実が知らされなかったことは遺憾だ、極めて残念だと言っておるのですよ。だから、そういう問題というのは非常に重要な問題なんですよ。  だから、高速増殖炉の分野でそういうことは知見もなければ問題意識もなかったというようなことは私は言えないと思うのですが、これを書き直すべきだと思うのですが、いかがですか。
  65. 池田要

    ○池田政府委員 まず、冒頭に先生から御指摘がございましたハンフォードのレポートにつきましては、中身をよく精査させていただきたいと思います。なかなかに、大洗の実験とそのまま比べるには違った内容のようでございますし、私ども、専門的な検討をさせていただいてからコメントさせていただきたいと思います。  それからもう一つは、そういう必要な知見について反映をしたものに改めるべきだといったことでございますけれども、今回、こうした事故を経験し、安全性総点検をやってまいりました。その過程で、このナトリウムの腐食対策といったことは、「もんじゅ」の安全性につきましても大事な部分であるといったことについては見きわめがついてきたわけでございますし、この総点検、それから事故原因究明結果、これについて、事業者として動燃事業団がどういう対策を講ずるかといったことにつきましては、私ども行政庁、安全委員会、それぞれの専門家を動員した議論の結果を踏まえた上で、事業者として必要な判断をされるものと考えております。
  66. 辻一彦

    ○辻(一)委員 さっき読み上げたとおり、ナトリウムと鉄が接触して腐食が起こったということ、これは明確にこの中に書いてある中身ですよね、その何ページかに。だから、当時においてそういう問題が非常に大事な問題であった。アメリカもFBR開発を断念するまでは非常な努力をし、実験とかいろいろなことをお金をかけてやっておった時代ですね。だから、そういうものは既にいろいろと検討されておった。それを、高速増殖炉の分野ではこういう問題は全然問題意識もないし知見もなかったというように言うことは私は認められないと思うのですが、同じ答弁を繰り返すのなら、これ以上もう質問はできない。いかがですか。
  67. 池田要

    ○池田政府委員 そもそも、今回、温度計のさやの設計ミスに始まりまして、私ども事業者の自主保安というもの、かなりそれを重要視しておったといったことがございます。そのために、こういった不幸なミスがそのまま見逃されるというようなことも経験いたしました。  現在、先生指摘のような、必要な知見があったにもかかわらず反映していないじゃないかといったことにつきましても、これは事業者はもちろん、規制当局の私どもとしましても、必要なこういう知見が的確に反映されるように、今後事業者と行政庁、私どものそれぞれの役割といったものもわきまえながら、我々は懸命の努力をさせていただきたいと思っております。
  68. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私の求めていることの答弁にはならない。これが明確にされるまでは質問はできない。
  69. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 今、辻先生の御研究成果が大変あらわれた御質問であって、私も正直申しまして、ハンフォードですか、その行われた実験あるいは論文の中身を十分評価する能力がございませんので、わかりませんが、この中身については、科学技術庁としても、今局長が答弁しておりますように、どういうものであったか、きちっともう一回精査をしなければならないだろうと思っております。  それで、今私はそれ以上のことを御答弁する準備がございませんけれども、一般論として申し上げますと、いろいろ、当時の学問的な知見、研究上の知見、こういうものをできるだけ幅広く収集する体制はつくらなければなりませんし、これからも努力をしていかなければならないのだと思っております。  今回の、今先生が取り上げられた論文がどういうものであったか、これは科学技術庁としても調査をさせます。また、そういうものが十分に共通の知識、経験として蓄積されていなかったことがどこに問題があるのか、こういうようなことも私ども研究させていただきたいと思っております。ただ、今のところはちょっと、そこらのところを精査させませんと、私もこれ以上の御答弁はできないわけでございます。
  70. 辻一彦

    ○辻(一)委員 もう一回だけ質問します。  報告書がいろいろ出されておりますが、私は前々から言っておったのですが、こういう問題もえぐって、それから「もんじゅ」の設計思想までさかのぼるような覚悟で点検をしなければ、そんなものはだめですよと。そして、その報告書の中には、動燃責任もあります。しかし、監督しておった科学技術庁責任、第二次審査というかダブルチェックをやった安全委員会責任、これもあるのですよ。こういうことを、その当時どうであったかまでさかのぼって明確にして書き上げて報告書というのは完結するのであって、ゆうべも私はこの安全点検チームがまとめたのを一晩かかって見てみました。努力はいろいろされていると思いますが、それはそれとして、この報告書にしても、今言ったような問題がどのぐらいまで討議をされたかということについて、私はまだ非常に不十分であったと思うのですね。だから、似たような答弁は私としてはもう何回聞いても同じだから、できない。だから、この対応をどう政府に求めるか、理事会を開いていただきた。以上です。
  71. 大野由利子

    大野委員長 ただいまの件につきましては理事会で協議をいたします。  速記をちょっととめていただきたいと思います。     (速記中止〕
  72. 大野由利子

    大野委員長 速記を起こしてください。  ただいまの辻一彦さんの質疑に関しましては、次回の委員会の冒頭において答弁をいただくことにいたしまして、今回の質疑はこのまま続行をさせていただきます。  辻一彦さん。
  73. 辻一彦

    ○辻(一)委員 「もんじゅ」の火災、ナトリウム対策にもう一遍返りますが、フランスの方は、一九八六年前後にスーパーフェニックスのナトリウム漏れがあって、それから随分と対策をいろいろやっていますね。一九九二年から四年にかけて三回にわたる公聴会、その記録も全部配付されているのですね。  これは、私は予算の分科会かどこかの機会で論議をしましたから詳しくは避けますが、そのときの報告書はそれぞれ科技庁動燃が一カ月後に入手している、それをいろいろ検討したと言われておるのですが、その中身を見ると、夕ベ私も動燃から来た資料をずっと見てみましたが、網目をかけて、今後改善する事項がずっと並んでいる。  これは、もう既に、一九九二年に、フランススーパーフェニックスのナトリウム火災の後に対策を講じて、その中身がずっと並んでいるのですね。そういうものを今、改善策としてやる。それはやることは私は必要だと思いますが、大事なのは、一九九二年ごろに内容がはっきりしているのになぜ、一カ月後に資料を手に入れながら、現地に行って調査をして検討するということを、さっきの温度計と同じことになりますが、やらなかったのか。  その調査に動燃が行ったのは、「もんじゅ」の事故が起きた明くる年。だから、三年半という間は、その問題については、資料は見ている、検討したと思いますが、出かけていない。  あの中に幾つもありますよ、いろいろなことが並んでいる。三年半前に手当てをすれば、今、改善策で挙がっている、いわゆる手順書の大幅な改定、あるいは、ボタンを一つ押せばドレーンで全部ナトリウムが外に取り出せる、こっちは随分変わってきたのですよ。  そういうことであるとか、明かり窓をつけてすぐ白煙が目視できるようにするとか、テレビカメラを中に入れてわかるようにするとか、コンクリートとの熱の反応を避けるために断熱材を部屋の中やコンクリートに張りつけるとか、今、改善策としてはずっと並んでいるけれども、それはもうフランスは随分前に書き上げていましたね。公にしている。そんなことをなぜ、事故が起きた後に飛んでいって調べて、これだけのお金をかけてやっている「もんじゅ」について対応していないのか。  三年半後に見に行って、答弁では、いや、それはもう資料としてはちゃんと承知していましたと。しかし、あなた、資料としては承知していても、今やっている改善策というのは、三年半前に手をつければあの「もんじゅ」の事故は起こらずに済んだかもわからないし、起きたとしても何分の一かにとめることができたはずと私は思うのですね。  ここらについて、動燃科技庁、安全委員会のそれぞれの見解を伺いたいと思います。
  74. 菊池三郎

    菊池参考人 お答えいたします。  当時、我々としては、情報は入手しておったわけですけれども、当時の高速炉開発の状況におきましては、これは比較的競争的な関係もありまして、必ずしもフランス側からスムーズに詳しい情報が入るという状況にはございませんでしたし、我々としても接触してまいりましたけれども、非常に多額の情報に対する提供料とか、そういったことも言われたこともございます。事故が起きた当時はそういった関係にあったということで、我々も努力してまいりました。  「もんじゅ」の事故が起きたころの高速炉開発の状況につきましては、日仏が中心となったということで、比較的交流を深くやるという状況に両者の関係がなってきたということから、快く調査に我々のエンジニアを受けていただいたというのが事故後の状況でございます。  そういう経緯もございました。
  75. 池田要

    ○池田政府委員 「もんじゅ」の事故につきましては、確かに先生の御指摘のように、当初、ナトリウム漏れの規模についての的確な判断が行われれば、この事故を大きくするといったことでは十分な防止策ができたのではないかと思います。  これは、私ども平成八年五月にまとめました報告書におきましても、当初の漏えい規模の判断を誤った、そのときに、緊急に炉を停止することでございますとか、あるいはドレーンをする、パイプの中のナトリウムを即座に取ってしまうとかいったことをすれば漏えい量も三分の一ぐらいにおさまつたのではないかといったことも含めて、明らかにしているところでございます。  この点、確かにフランススーパーフェニックス自身が溶接部分からごく少量のナトリウムが漏れたといった経験もいたしました。それから、すぐ隣のスペインの太陽熱発電所でナトリウム漏えいといったことも経噴いたしましたから、御指摘のように、九二年から九四年にかけまして、こういうナトリウムがスプレーのような格好で漏れるといったことに対しまして、例えば壁に保温材を張ってそれにライナーをつけることでございますとか、小型の監視カメラを設置するとか、こういった対策を講じてございます。  これにつきましては、私どもも、フランスの規制当局との間では情報交換の機会がございました。九二年、九三年にかけましてこういったフランス当局からの情報入手もしてございます。ただし、ナトリウムがスプレーのように漏れるといったことにつきましては、もう既に「もんじゅ」の安全評価においても考慮されておりました。したがいまして、配管からのナトリウム漏えいを探知するといったことの対策につきましても、「もんじゅ」一の当時の対策でこれは十分なものである、特段の改善をする必要はないという結論になったと承知してございます。  しかしながら、これは、現在の知見から見ますと、確かにナトリウム漏えいにつきましてあらゆることを考えて、随所に小型の監視カメラを配置するとか、そういったことを仮にやっておれば当初のナトリウム漏れについてのより的確な判断といったことはできたとも考えられるわけでございますし、そうしたことについては、私ども、この経過を考えますときに大きな反省事項であると考えているところでございます。
  76. 辻一彦

    ○辻(一)委員 反省は必要、大事なんですね。  問題は、科技庁動燃の方から出された資料の中身を見ると、海外の事故例等と対比をして、どういう点を改善をしたかということがずっと書いてありますね。  だけれども、この中で改善策としてあるのは、上から見てくると、今言ったテレビカメラを配置するということが一つですね。  それから、緊急ドレーンを行う。これは今まで、スーパーフェニックスやフェニックスは九分から十三分、十分前後の時間。日本の場合は五十分、それに補助冷却設備の空気冷却器の部分を後からドレーンする場合は八十分かかっている。これはこの報告のとおり非常に時間に大差がある。それを今度は二十分に縮めた。それから緊急ドレーンができるようにしている。しかし、これはみんなフランスの公聴会で明らかにされた資料に書かれているのですよ。  それから、ナトリウムの飛散についても現場点検で摘出しており、飛散ナトリウムとの接触を防ぐ対策。これはそちらの出した資料ですよ。  それから、この間は、ナトリウムが漏れているのに空調を動かして空気を入れかえるからどんどん広がっていったわけだけれども改善策では空調の早期停止、ループ室の区画化とか、区域内への窒素注入を行うとかを挙げている。しかし、これも皆書いてある。  それから、部屋コンクリート壁に断熱材を使うということ。  それから、漏えいの早期検出後、漏えいの大小にかかわらず空調の自動停止、手で原子炉をトリップする、とめるのですね。それでナトリウムドレーンを開始して、後、退避云々。これらの主要な改善策というのを見ると、これは皆フランスがそういうことを指摘して、皆さんの方には一カ月後に公聴会のそういう資料は全部手に入っておった。  私の言うのは、その時点でそれを点検をし、さらに現地まで行って調査をして対応すれば、もっと違った対応ができたはずだ。それを、今改善しますからということだけでは済まない。そのときになぜそういうことが点検できなかったのか、なぜ現地にすぐ飛んでいくことをしなかったのか。温度計では十年後、それから、このナトリウム火災対策では三年半後に現地へ見に行っているのですね。そして、こういうことをやっていますと言う。  もっと早く確認するということが動燃の仕事であり、それを監督する科技庁、行政庁のやるべきことではなかったか。それについていかがですか。
  77. 都甲泰正

    ○都甲説明員 お答えいたします。  ただいまの、フランススーパーフェニックスにおいてナトリウム火災対策等々の改善を行ったということでございますが、このような設置許可後に得られました新しい技術的知見をその施設に適切に反映するというのは、これは、原子力安全委員会といたしましては、従来、設置者の自主保安努力の一環として適切になされるべきであるという考えでおりました。  それで、実は、私どもの「もんじゅ」の事故調査のワーキンググループも幾つか指摘しておりますが、このほかにも動燃におきましては幾つかの新しい技術的知見を適切に反映していなかったということが「もんじゅ」の事故の原因の背景にあるということが明らかになってまいりまして、原子力安全委員会といたしましても大変反省いたしておるところでございます。  それを受けまして、最近、「研究開発段階原子力施設安全確保対策について」という原子力安全委員会の案をまとめまして、現在意見公募中でございますが、その中におきまして、設置許可後に得られた国内外の技術的知見を施設の設計ないしは運転等に確実に反映するために設置者は努力すべきだということを明示したところでございます。  今後、私ども原子力安全委員会といたしましても、園内外の技術的知見、新しく得られた技術的知見のデータベース化を行う等、積極的に対処していくことによりまして、今後安全確保に万全を期してまいりたい、このように考えておるところでございます。
  78. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私の言っているのは、これからやりますということは、それはわかりますよ。やってもらわなければいけない。だけれども、そういう情報が手に入ったときに直ちに対応してやるべきでなかったか、その対応が何年も後に、事故を待たなければ日本は調査にも行けないというのは、それはどうしてなんだと。  公聴会の資料は一カ月したら手に入るということを科技庁動燃が言っているのですから、私はその資料ももらって中身をよく見ましたが、そういうものが手に入ったときに対応するということが大事なのです。これからこうしますと言うよりも、まずは、そのときにどう対応したか、なぜそれがやれなかったかということを明らかにして、そういうものの責任を明確にするところから出発しなければ、また新しい何か事故が起きたら、いやこれは足りなかったのでこういうふうにやりますということを繰り返しかねないと私は思いますね。  そういう点で、そういう心構えをきちっとやらなければ、あすから、今回はこうしますよと言うだけでは済まされないと思うのです。その点について、重ねて見解をお伺いしたいと思います。
  79. 池田要

    ○池田政府委員 御指摘のように、安全性につきましてはあらゆる情報を入手して万全を期すということが私ども大事だと思っております。そういう意味では、フランスの経験に照らして、ナトリウムにつきましてもあらゆる漏えいについての対策を即座にいろいろ考えるべきだったといった点は、先生の御指摘はそのとおり承りたいと思います。  ただ、スーパーフェニックスにつきましては、私どもこの経緯を調べましたときに、スーパーフェニックス自身で起こっています漏えいというのは、いずれも溶接部分からの漏えいでございました。そういった意味では、「もんじゅ」につきましても、彼我を比べましたときに、溶接部分についての安全性といったことについては、その当時万全を期したと私ども理解しております。  ただ、いかんせん今回の温度計の問題は、溶接部分ではございませんで、段つき構造にした温度計のさや自身が設計に誤りがあったといったことでございました。そうしたことにつきましては、今考えましたときに、スーパーフェニックスの経験に基づいて、当時私ども役所の立場でもこれを反映すべく懸命に努力をしたと理解しておりますけれども、この「もんじゅ」につきましての段つき構造にこういう設計が導入されることについて防ぐところまで至らなかったといったことは事実でございます。  私ども、この経緯を振り返りましたときに、規制当局の立場でどういったことを今回の経験にかんがみて反省するかといったこともございますし、先ほど申しましたけれども、当事者、設置者自身のこういう努力、設置者責任としての情報の収集でございますとか、あらゆる場合を考えた上での安全対策といったことについての取り組みに対して、私ども今後は、こういう教訓を踏まえましたときに、先生の御指摘により近い対応ぶりというのはやらせていただきたいと思っているところでございます。
  80. 辻一彦

    ○辻(一)委員 「もんじゅ」がさや管からの漏れ、それからフランスのスーパーが溶接部から漏れたということは、それはそのとおりでしょう。しかし、漏れたナトリウムが第二次配管の経路をたどって燃焼したりすることが起こることは、それは溶接部から漏れようが、さや管から漏れようが、漏れた場合は同じことが起こるのですね。だから、やはりナトリウム火災対策については、構造が違い、あるいは漏れた場所が違っても直ちに対応するということが必要だ、その点についての欠けた点があると私は思うのです。  そこで、今の論議の中で、私は、科技庁が出している報告書は、そこまでさかのぼって点検をせずにその報告書は完結しない、こう思うし、また、総点検チームがやっている問題も、必ずしも今私が取り上げた問題についての論議はそれほど深まっておったとは思えない。私は、それは時間があれば、能力があれば、いろいろな分野について全部調べてみたいが、それはなかなか容易でないけれども、この一カ月ほど調べてみた中身では、極めて問題があり、論議は尽くされていない。そういう意味で、科技庁の出した報告書はなお完結していない、それから、総点検チームの出した報告書はそれでは終わっていないと私は思いますが、ひとつそれについての見解をお伺いいたしたい。
  81. 池田要

    ○池田政府委員 安全性総点検チームの報告書についての御指摘がございました。このチーム自身は一昨年の秋から発足いたしまして、専門家を動員して調査をしてまいりました。  主たる任務は、今回のような動燃自身の自主保安活動にゆだねた温度計のさやの設計、これに誤りがあったわけでございますから、こうした誤りがほかの今の設備にないかどうか、これは私ども水平展開と言っておりますけれども、そういった意味で、現有の「もんじゅ」の設備については徹底的に点検をさせていただいたということがまずございます。  それから、事故が起こりましたときに、その対処につきましては十分なものでなかった。この判断から、ナトリウムドレーン、こういった必要な措置に至るまでのマニュアル等の用意にも十分でないものがあったといったことがございますから、こうした点につきましても、改善のあるべき姿について専門家を動員して検討させていただきました。  それからもう一つは、こういう調査の過程で、ナトリウムの漏えい対策といったことにつきましては、今後この安全性を見きわめる上で非常に重要な部分でございますから、これについての基本的な方向についての専門家としての議論をいただいた。こういった作業を一年以上にわたって議論をしてきていただきました。  この過程は、こういう作業に対する国民の関心の高さから考えまして、全工程を公開のもとにやらせていただきました。専門家の皆さんにはそういう意味では大変厳しい雰囲気の中での作業を強いたと私ども思っておりますが、そうした作業を積み重ねた上で、これは今週の初めでございますけれども、チームとしての報告書をまとめていただいた次第でございます。  ただ、私ども、これで「もんじゅ」の安全性を見きわめる作業が終わったとは思っておりません。これからまだまだ、安全性を見きわめていく過程では、行政庁としてする手だては幾つもの段階がございます。例えば、主要な設備について事業者の側から許可の変更といった措置がされるかどうかといった点もございますし、施設の一部を手直しするにしましても、例えば二次系の温度計は全部取りかえるといったことを既に一昨年の五月の報告書で明らかにしたところでございますけれども、そういったものにつきましても、きょう先生から御議論をいただいたようないろいろな要素を考えた上で、どんなものが適当かどうかといったことについでも、これから詳細な設計、あるいは安全性についての議論をさせていただくわけでございます。  そうした意味では、このチームの報告書はこの月曜日の段階でまとめていただき、私どもちょうだいしたわけでございますけれども、これをもとに実質的な安全確保のための手だてはこれからむしろ緒につくということで私ども受け取っておりますし、そうしたことで取り組みをするという事情を御理解いただきたいと思います。
  82. 辻一彦

    ○辻(一)委員 大体時間が近くなりましたから、これ以上はきょうはとどめたいと思います。  安全局長に一言聞きたいのだけれども、あなたがここで答弁されているのは、科技庁、行政庁の原子力安全局長の答弁であるが、もう一つ原子力安全委員会の、独立した別の機関の規制当局の事務局長も兼ねておるということを聞いていますが、答弁していて何か矛盾を感じませんか。
  83. 池田要

    ○池田政府委員 私自身、きょうの先生からの御指摘に対しては、科学技術庁の安全局、行政庁の立場で、そういう整理をした上でお答えをさせていただいております。これは、「もんじゅ」につきましては、専ら行政庁としての安全審査から設工認、そういった規制まで担当しているわけでございますから、そういう立場でさせていただいております。  ただ、こちらにきょうは安全委員長の都甲先生もお見えでございますし、私、こういうお答えぶりを用意する過程でも、安全委員会としてのお考えを最大限出していただきたいということをお願いしてございますし、安全委員長がお答えになる内容について特段の違和感というものはもちろんございませんし、私ども事務局として、その必要な御下間に対してはお答えするといったことで、この辺の整理は、それほどに悩まずに取り組ませていただいているということを御理解いただきたいと思います。
  84. 辻一彦

    ○辻(一)委員 安全委員長にお伺いしたいのですが、私は、何回かこの論議をしておりますから、その締めくくりに当たって一言聞きたいのです。  日本は、これでアメリカ、フランスと並ぶ大きな、内容のしっかりした研究施設を持っているし、原子力発電所の数も五十一か二になっていますから、その三国というのが並んだところだと思いますね。そうなりますと、原子力政策の推進という問題と原子力の安全規制というものを一つのところでやっているところにだんだん難しさが出てくるのではないか。  アメリカは、かつて私は何回も行っていろいろ見ておりますが、原子力規制委員会で三千人のスタッフを持って強大な行政委員会として独立をしてやって、フランスはまたフランスで、原子力庁、推進歳関とそれから施設安全局が分かれて役所としてやっている。そういう意味では、これから原子力安全委員会の独自の論議、それから調査、そういうものを権限を持って論議をしていくということをやっていかなくてはいかない。  そういう意味で、現在の原子力安全委員会は第八条の諮問委員会なんですが、三条の行政委員会に移して、強力な権限を持たせて、調査も自分でやる、それぐらいのスタッフを持ってやるべきだ。そういうことで、これからの日本のこれだけの原子力行政を、片方では政策を推進する、片方では安全規制を厳しくやっていく、これがつり合っていくのではないかと思います。  委員長にこういうことをお尋ねするのはちょっといかがかと思いますが、もう任期、長い間御苦労いただいて、おやめになるので、はっきりそこらのことを遠慮せずに一言聞かせていただきたいと思います。
  85. 都甲泰正

    ○都甲説明員 お答え申し上げます。今、辻委員の御指摘いただいた点でございますが、私ども原子力安全委員会といたしましては、行政庁とはっきり独立した立場で、厳正な安全確保の諸施策をやってきていると自負しておるところでございます。今まで、行政庁の長であります安全局長からも、それからまた、大臣を前にしてなんでございますが、大臣からも指示をいただいたことは一度としてございませんので、安全委員会としては、十分にその独自性を保ちながら.厳正な安全確保に努力してきたつもりでございますし、今後もそれで十分にやっていくことができると確信しておるところでございます。
  86. 辻一彦

    ○辻(一)委員 この問題は、また後日ひとつ論議をしたいと思います。質問を終わります。ありがとうございました。
  87. 大野由利子

    大野委員長 午後零時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。午前十一時三十九分休憩     ―――――――――――――午後零時三十分開議
  88. 大野由利子

    大野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。斉藤鉄夫さん。
  89. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 二年数カ月前に「もんじゅ」の事故が起こりまして、それからこの間、原子力、また動燃に対していろいろな議論がありました。今回の法律案はこの二年半のいろいろな議論一つの結果としてあるわけでございまして、私自身、この間、終始一貫科学技術委員会委員でございました。そういう意味で、この法案審議をするということについて私自身も感無量のものがございます。そういう意味で、新しく生まれ変わる動燃、そして原子力行政そのものが国民から信頼され安心されるものになるために、本当の意味でこの法律案を実効あるものにしなくてはいけない、そういう立場から、疑問点についていろいろ質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、今回の法律案のもととなったと思われる、科学技術庁がつくりました動燃改革検討委員会の「動燃改革基本的方向」という報告書、それからもう一つ原子力安全委員会の「高速増殖炉研究開発の在り方」という報告書、この二つの報告書と今回の法律案関係、位置づけについてお伺いをいたします。  私がこの質問をする問題意識というのは、新しい法律案というのはお役所がつくった審議会の答申にのっとってつくられる、こういうことがよくあるわけで、この審議会のあり方についてはいろいろな批判があるわけですけれども、今回の二つの報告書というのはその審議会答申みたいなものなのかどうか、それとは全ぐ違う新しいやり方なのかどうかということも含めて、この両報告書と新しい法律案との関係をお伺いいたします。
  90. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 今回の二つの報告書でございますが、まず、昨年の三月のアスファルト固化の事故の後、とにかく動燃を何とかしなければいけない、そういうことで、科技庁長官の直轄ということで吉川先生をヘッドの委員会をつくっていただきました。それで、当時は別に法律改正するとかそういうことではなくてとにかく動燃の問題をきちっと国民に、当時は解体をしろとか出直せとかいろいろな意見があったわけでございますが、とにかく動燃の問題を何とかしなければいけないということで、検討委員会を設置して、大臣もみずから出られまして意見の集約をされたわけでございます。  実はその前に、FBRの問題につきましては「もんじゅ」の問題がございましたから、高速炉の開発につきましては西澤先生に御検討をお願いしていたわけでございますが、その間、動燃改革検討委員会が開かれまして、その結論が一応出ました。その結論を見ますと、やはりきちっと法律改正して出直すべきだ、そういうことで、その結論を尊重いたしまして今回の法律改正に至ったということでございます。最初からこういうことにしたいということでそれを審議会に諮問するとかそういうことではなくて、真っさらの状態から動燃をどのように改革したらいいかということの議論を進めさせていただきまして、そして今こういう結論になっているということでございます。  したがいまして、今回の法案の内容が報告書に拘束されるとかそういう話ではなくて一報告書を尊重してこの法案をつくらせていただいた、そういう趣旨でございます。
  91. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 よくある審議会答申と法律との関係とは違う、真っさらな関係から議論してもらってその意見を尊重すると。そうすると、一〇〇%この報告書の内容に縛られるものではない、法律案も多少報告書の内容と異なっているところがある、そうあってもいいのだ、こういう理解でよろしいでしょうか。
  92. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 検討委員会報告書の内容はかなり幅広いものがございまして、法律に反映すべきものと、実施ベースと申しますか、そういうところでやらなければいけないものがあると思います。それで、法律に反映すべきところにつきましては反映させていただきましたし、特に意識改革とか、職員みずからが改革しなければいけないようなところは法律でできる話でもございませんので、我々それから動燃事業団も、意識改革、それは別途進めているところでございます。したがいまして、法律面におきましてはそれを尊重させていただいたということでございます。
  93. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 それでは次に、原子力委員会委員長でございます大臣にお伺いいたします。  原子力長期計画責任をお持ちの原子力委員会として、今回の内閣から出てきた法律案をどのように評価をされているか。内閣の一員でもいらっしゃいますから、自問自答のような形になりますが、原子力委員会としての評価をお伺いいたします。
  94. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 今原子力局長から御答弁申し上げましたように、この案は、吉川委員会、それから西澤先生高速増殖炉の懇談会、こういうような今までの検討を踏まえて出されたもの、基本的にその方向を尊重してつくられたものというふうに見ております。原子力委員会としましては、やはり一連事故が起きまして、非常に国民の間から原子力政策に対する不信の念が出てきている、このことを重く受けとめるといいますか危機感を持って受けとめると同時に、去年八月一日に、これは私がなる前の近岡委員長の時代でございますけれども、ちょうど「動燃改革基本的方向」が出ました八月一日付、同じ日付で委員長談話を出しておりまして、そこで、経営とか安全管理体制、それから事業等の抜本的見直しを内容とする動燃改革検討委員会の提案は十分理解できるという趣旨委員長談話を出しております。  その後、委員会としては、政府の中での動燃改革の作業状況、これを聴取しまして、その業務の整理縮小についても関係機関から意見を聞きながら慎重に審議を行ってきたわけであります。  これを踏まえまして、ことしの二月六日に、法案提出に先立ちまして原子力委員会の決定をいたしました。それは、「動燃事業、経営体制等を抜本的に見直し、我が国原子力開発利用の計画的推進に寄与することを目的とする新法人を設立するため、原子力基本法及び動力炉・核燃料開発事業団法改正を行うことが必要と考える。」こういう原子力委員会決定でございます。  それで、今御審議をお願いしております法案、それに今局長からも申し上げましたけれども、吉川先生のレポートは法案だけにとどまらない広範な内容も含んでいるわけでありまして、こういう動燃改革を着実にやはり行いまして、原子力に対する信頼回復を図っていきたい、こう考えております。
  95. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 次に、都甲先生にお伺いしたいと思いますが、行政から独立した立場にある原子力安全委員会として、規制の立場から今回の改革案をどのように評価をされているか、率直な御感想をお願いします。
  96. 都甲泰正

    ○都甲説明員 お答えいたします。  今回の改革案につきましては、新法人原子力安全確保に果たす役割の重要性にかんがみまして、私ども原子力安全委員会におきまして、科学技術庁からその内容につきまして報告をいただいたところでございます。  これに基づきまして、当原子力安全委員会は、新組織におけるセーフティーカルチャーの醸成ですとか、あるいは技術やノウハウの円滑な継承、さらには安全研究の一層の充実、施設の廃止に伴う措置における安全確保への配慮等々を求める旨を、ことしの二月でございましたか、原子力安全委員会委員長談話として公表したところでございます。  今後、委員長談話の趣旨を十分に踏まえまして、動燃一連事故で高まりました原子力安全確保に対します国民の不安感、不信感が払拭できるよう、動燃改革が進められることを期待しておるところでございます。
  97. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 わかりました。原子力安全委員会としても評価をしているということかと思います。  それで、条文一つ一つについて後で議論をしていきたいのですが、その議論に入る前に、非常に全体にかかわる問題意識として、科学技術庁に次の質問をさせていただきます。  それは、「動燃改革基本的方向」、その報告書の二十五ページに、「改革の実現に向けて」という文章、第三部ですが、その中に次のような表現があります。  今回、国民一般に対し、原子力に対する不信不安を惹起したことの根源的責任は、動燃のみならず、それを指導監督するとする科学技術庁、および動燃の使命を決定する原子力委員会も等しく負うべきことは当然である。この三者が責任を負うべきことは明らかであるが、それぞれの持つ裁量が明確な輪郭を与えられていないために、責任の輪郭も不明となり、従って取るべき行動も明解に定められない。このことは、今回の改革をどうするかの難しさの原因を成すのみならず、今回の一連事故および処理の不備の根源的な原因を成すと考えられる。今回の二年半、原子力の世界といいましょうか、動燃一連の不祥事の根源の原因は、動燃科技庁原子力委員会、その三者の責任の輪郭の不明確にある、こういうふうにこの報告書には書かれているわけでございますが、今回のこの改革案によってその責任の輪郭は明確になったのかどうか。その点が番重要だと思いますけれども、その点についてはいかがでございましょうか。
  98. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 そういう三者の輪郭が不明確だったということでこういうことになってしまったということにつきましては、我々非常に反省しているわけでございますが、それでは、そういうようなものをどのようにしたらいいのかということでございますけれども それも吉川先生報告書にございますが、根本的原因としましては経営の不在という問題がございましたので、機構に移行するに当たりましては、裁量権を十分付与する、そして経営機能強化するというのが事業団の一つの大きな責任でございます。  それから、国の方の示す事業目標を非常に明確化し、科学技術庁は厳正な業務の評価、監査をする、そういう必要性が指摘されているわけでございますので、科技庁としましては、これまでのように経営、業務運営の詳細に指導監督するということはやめまして、業務運営の結果を重視した行政を行う、そういうふうに移ることになるわけでございます。  具体的には、機構の業務執行に除しまして、国はまず事業目標の明確化を図るわけでございますけれども、それは、基本方針というものを定めるとこの法律でなっております。それは原子力委員会の議決を経て定めるわけでございますので、原子力委員会は、そういう基本目標といいますか基本方針の中身、それを示す、そしてそれに基づきまして理事長が裁量権と責任を持ちまして事業を遂行する、国の方は、その業務を監査する、現場での調査、そういうものを含みまして監査する、そういうような役割分担で今後進めていかなきゃいけない、そう考えている次第でございます。
  99. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 そのとおりなんですが、今局長がおっしゃったことは、ある意味ではこれまでもそうだったんじゃないか。今回この改革案によって、今まで不明確だった責任範囲、その輪郭がどうやったらその明確化につながるか。今までとここが違いますというものがもしあれば、それを説明していただくとわかりやすいのですが、今のお話は、どこそこが計画を立て、それについて実行するのが例えばこの団体でということについては今までと変わらないというような気がするのですが、いかがでしょうか。
  100. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 我々の意識の中ではかなり違うというふうに自分では感じておるのですが、例えば、国が基本方針をつくりますと、その後事業団が、自分たちで職員を引っ張っていくための中期業務目標、そういうものをつくります。それは具体的でありまして、理事長職員をぐっと引っ張って、それに基づいてみずからを評価し職員の評価をする、そういうような中期事業計画、そういうものを今度つくっていただく。それは国の方は口出しをしない、事業団の自主性を尊重してつくっていただく。ただし、その中期事業計画は、国の基本方針といいますか長期計画と申しますか、そういうものの内容を達成するための一つの中間的なものでございますが、職員を引っ張っていくという意味ではそれが目標になる。そういうものをつくっていただいて、職員を叱尾激励して進んでいただく。そういうものの結果がどうなるかということは我々も非常に注意深く見守り、現地、現場での調査、そういうものを含めながらやっていきたいというようなことも一例かと考えております。
  101. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 では、この議論につきましては、また後ほど二十二条、二十三条のところで議論をしますので、ちょっとおいておきたいと思います。  それからもう一点、科学技術庁役割というものがこの報告書の三十二ページに出ております。これは「新法人への改組の要点」というところで、その「経営の刷新」というところに出ているのですけれども、「科学技術庁役割」として、  新法人の業務遂行については、基本的に自らの  裁量で行うこととし、科学技術庁は、その業務  の結果について厳正な評価・監査を行うことを  基本とする。   科学技術庁は、現場としての新法人が最大の  効率で資源を利用できるような環境を設定する  ためのサービスを行うとともにまた国民の血  と汗の結晶である税金から賄われる国の資金を  使っているという意味で、この資金が無駄な形  で使われていないかを常に国民に代わって監視  していると考えるべきである。科学技術庁役割がこの報告書でこのように表現されているのですけれども、これを、先ほどの質問とちょっとダブるかもしれませんが、具体的方法としてどのように達成されようとしているのか。それが今回の法律の中でどのような形で出ているのか。  また、先ほどの責任の明確化ということとも関連するのですけれども、ではどこまで関与して、ここから先は新機構責任、そういう基準を明確にするということがその責任の輪郭をはっきりさせるということになるかと思うのですが、この報告書に示されている科学技術庁の新しい役割についてどのような形で達成されるのか、その点についてお伺いします。
  102. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 基本的には先ほどお答えしたとおりでございますが、具体的にどんなことがあるのかという話でございますけれども、我々、毎年業務の執行状況の監査と申しますか、そういうものをこれからは定例化しまして、事業の遂行状況、そういうものをチェックしたいと思っておりますし、例えば予算との関係におきましては、新しい法人から要求があるわけでございますけれども、それにつきましても、それまでにやってきたところを、なるべく現場も見ながら、よく評価をしながら予算の編成について対応していきたいと考えております。  それで、法人と監督する側との責任の基準というお話がございますけれども、そこはなかなか難しい問題でございまして、我々、理事長にできる限り裁量を持ってやっていただく。それは、我々自身の日ごろの基本的な考え方といたしましてやろうと思っておりますし、指導するような場合はなるべく文盲でやるとか形を残して、知らない間に何か言ったとか言わないとかならないように、そういうこともけじめをつけてやりたいと考える次第でございます。
  103. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 ではこの問題についてはまた後ほど議論を続けたいと思います。次に、条文について御質問します。まず、原子力基本法改正部分、第七条、ここで新しい機構の名前を核燃料サイクル開発機構、このように定められたわけですけれども研究という文字が入っていない。これを入れるかどうかでいろいろ議論があったというふうに聞いておりますが、なぜ研究がないのか。世間一般には、そこは研究開発を行うところ、こういうふうに認識しておりますが、なぜ研究という文字がないのかについて御質問します。
  104. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 動燃事業団研究開発法人であることには変わりがございませんが、名称は開発となっております。これは、法律の中を見ていただきますと、業務の規定としまして「開発及びこれに必要な研究」というのを、それを開発と言っているわけでございますので、開発と申しましても当然研究が入っているということでございます。  今回の改正におきまして、業務の整理縮小等は行いましたけれども基本的な業務の行為としましては従来と変わりませんので、法文上、業務の規定では「開発及びこれに必要な研究」ということになっておりますし、これは動燃事業団の場合と書き方は同じでございます。そういうことで、名称も従来どおり開発という文言を使わせていただいている次第でございます。
  105. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 研究という文字を入れるべきだという議論もあったというふうに聞いているのですが、その点についてはどんな議論があったかというのを御紹介いただけませんでしょうか。
  106. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 新しい法人研究開発法人だ、そういう一般的な概念でございますので、研究開発という名前をつけるという考えもございました。しかしながら、法律の文言をいろいろ精査していきますと、先ほど申しましたように、開発という言葉にも研究が入っているわけでございますし、新しい法人も基礎的な研究はするわけではございませんので、従来の開発という名前が適当であろうということで、そういうことになったわけでございます。
  107. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 よく、今回の新しい法人は基礎研究は一切行わないんだ、その性格を明確にするために研究という字は使わない、こういうふうにおっしゃる学者先生もいらっしゃるのですが、その点についてはいかがでございましょうか。
  108. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 そこは繰り返しになりますけれども、今回動燃事業団の仕事の整理をしたときに、吉川先生のレポートで、現在の動燃事業団の業務をレベルの0から4までに分けて、その業務の形態ごとに分けていただきました、レベルの0と申しますのは、余りその実用性がはっきりしないような基礎研究、そういうものはやはり動燃事業団でやるべきじゃないということで、そういうものも原研に移させていただいたわけでございます。  そういう意味で、新しい法人は目標のはっきりしたところをやるんだ。ですから、それは開発でございますけれども、かといって開発志向でやるだけではなくて、それに必要な研究も十分にやるということでございますが、その開発に必要な研究を十分にやるということも当然開発の中で十分読めるわけでございますので、そういうことで対応させていただいた次第でございます。
  109. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 何となくわかりました。  次に、この第七条の中に、原子力研究所と核燃料サイクル開発機構、この二つを置くというふうになっております。この原子力研究所と核燃料サイクル開発機構機能の違い、この基本法第七条の具体的な解釈として、わかりやすく簡単に説明をいただきたいと思います。
  110. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 今回の法改正案におきましては、動燃事業団のこれまでの業務の中で、新型転換炉あるいはウラン濃縮、海外ウラン探鉱などの業務の整理縮小、それを行いますとともに、核燃料サイクル技術的に確立するために必要な高速増殖炉、それから再処理技術、それから高レベル放射性廃棄物の問題もございますが、そういうことに重点化することになっておりますが、片や原研は、従来と変わらずに、原子力開発利用の広い分野にわたって基礎的、一般的な研究を行うということになっております。  したがいまして、機構と原研との関係につきましては、基本的には従来と変わっているものではございませんが、先ほど申しましたように、動燃事業団の業務の整理の一環として、基礎的な部門、それは原研の方に持たせていただいたということでございますので、より明確に整理ができたのではないかと考えている次第でございます。
  111. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 そうしますと、この第七条に規定される原子力研究所が基礎的な研究を、それから核燃料サイクル開発機構開発研究を行うという理解だと思います。それでよろしいですね。  それで、この報告書の中にも、これまで動燃という一つ組織の中に、基礎研究的な部門、応用研究的な部門、開発研究的な部門、それぞれある意味でやり方の異なる、異空間が存在していたので経営の不在を招く一つの原因になったというふうな問題意識が書かれております。ですから、そういう問題意識に従って、今回は開発ということに限定した、ある意味でその手法を同じくする研究フェーズだけを動燃一つ組織として受け持とう、こういう流れになったのかと思うのですけれども、最近の一つのまた技術論の中の説として、いわゆるリニアモデルは本当はよくないんだという説がございます。  リニアモデルというのは、基礎研究があって、その基礎研究成果を応用研究が受け持ち、その成果開発研究が受け持ち、その成果が商品になるという一本の線で結びついた研究開発の過程、これをリニアモデルというのだそうですけれども、これまでの研究開発の歴史を見てみると、リニアモデルというのは本当はよくない、それぞれの過程からフィードバックがあって、例えば応用研究段階が基礎研究に返るとか、また開発研究の経験や知識が基礎研究や応用研究に返るとか、そういうフィードバック機能があってこそ初めて、有用な技術として、また社会に認められる技術として生まれてくるんだという、リニアモデルに対する批判がございます。  私もそれも一理だなと思うわけですが、今回の動燃改革案はそのリニアモデルをまさしく実践されたわけですけれども、このリニアモデル批判に対してはどのような反論をされるのか、お伺いします。
  112. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 まず、リニアモデルで代表的なものは、原子炉の開発というのは、臨界実験装置をつくって、実験炉をつくって、原型炉、実証炉、そういうことになるかと思います。こういう大きな、しかも安全とか技術的な確認をしなければいけないようなものにつきましては、やはり小さいものからだんだん大きなものにしていくということは必要ではないかと考えておりますが、一般の科学技術の世界では、先生指摘のように必ずしもそれにこだわることもなくて、フィードバックをさせるとか連携をしながらやるとか、いろいろな方式があるかと考えております。  それから、今回の動燃改革に関してのリニアモデルとおっしゃっていますのは、多分、業務をレベルの0から4までに分けて、レベルの0が基礎研究的なもの、それから1、2、3ぐらいが開発的なもので、4が民間技術を移転するような分野だ、そういうようなレベル分けをしたことを指していらっしゃるのかと思いますが、これはまさしく先ほど先生指摘されましたように、基礎研究におきます経営というのは、研究者の発意をなるべく出して自由に研究させる、競争させてやらせるような分野でございますし、それから実用化民間技術を移転するようなところは、相手がありまして、相手のニーズにうまく合わせて経営をやっていくというものでございます。  それで、動燃事業団は、そういうものと開発と、三つのタイプのものをやっていますので、そこの真ん中の開発と申しますか、組織的に全員が開発に従事する、一つの明確な目標を持ってやっていく、そういうところに整理いたしますと経営が単純化するわけですね。そういうことで、今の経営の不在とか、そういうものもかなりカバーできるし改善できるだろうということで、両サイドを切って真ん中のところを進める、そういうことにしているわけでございますので、リニアモデルが今回採用されているというふうにはちょっと理解しておりませんが、先生指摘のように、経営の形態に応じて本当に必要なところに絞った、そういうふうに御理解いただければと思う次第でございます。
  113. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 確かに、経営形態は区切る、しかしフィードバック機能は十分働くというふうな形にすればベストなのかもしれません。  そういう意味では、日本原子力研究所の役目がまた非常に大きくなってくると思うのですが、今回の法律改正によって、七条で定められる原子力研究所、その役目、機能に変化があるのか。また、先ほど言いましたように、日本原子力研究所、基礎研究を受け持つ研究所とのフィードバック機能を十分持たせるということが、新しい機構の、オープンで透明で、かつ研究開発の環境としてすばらしい環境になるためには、それが必要だと思うのですが、その点についてはいかがでしょうか。
  114. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 先ほど申しましたように、原研の役割は引き続き基礎的な研究あるいは一般的な原子力に関する研究をするということで、役割は変わっておりませんが、今回、新しい機構は、機構という名前を言っている意味もございますが、なるべく関係の機関と連携してその研究開発を進めたい。当然フィードバックもさせるし、いただくものはいただくし、成果も普及して出す、そういう研究成果研究過程も含めまして、いろいろな交流を盛んにしなければいかぬということでございまして、機構と言っている意味合いにも、そういう意味合いが少し含まれているかと思いますが、先生指摘のように、そういう連携をとりながら、原研だけでなくて大学、民間、そういうところとも連携を十分しながら、フィードバックをお互いにしながら、研究開発を進めていくようにした、と考えた次第でございます。
  115. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 その点はよろしくお願いします。  それでは次に、その新しい法律ですけれども、これは質問通告していなかったのですが、大臣にぜひひとつお伺いするのですが、第一条、目的のところに「技術開発を計画的かつ効率的に行う」という文章がございます。この計画的というところでございますけれども、計画的に行うのは当たり前なんですが、よく原子力政策の批判の一つに、長期計画というのが、これはまさしくソビエト型の第何次五ヵ年計画という長期的な社会主義的手法であって、一たん決まった計画についてはそれがなかなか変更されない、変更の見直しについても非常に頻繁に行われているというわけではないというふうな批判がございます。私は、計画を立てるのは当然ですが、それを頻繁に見直していかなければいけないというふうな意識を持っておりますが、この原子力長期計画について、それが社会主義的な手法でもう時代おくれだという批判に対しては、突然の質問で申しわけないのですが、どのようなお考えでしょうか。
  116. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 いわゆる長期計画のあり方については、いろいろな議論があり得ると思うのです。それで、今斉藤先生がおっしゃったような、やや旧時代の社会主義的な考え方だという議論も、これは硬直化していけば当然そういう議論は強くなっていくと思いますし、他方、ああいうものをもってうんと議論して、一つの明確な方向づけを持っているのはうらやましいという議論も、現在においてもなおあり得るのだろうと思うのです。  我々としては、これはまだ科学技術庁で十分議論は進んでおりませんけれども長期計画のあり方というものは、これから十分に考えていかなければならないことの一つであろう、長期計画にどういうものをこれから盛り込むのかということを十分に議論する必要があるのじゃないかなと思っております。  そこの中で考え得ることは、今やはり斉藤先生が御指摘になったような、余り硬直化したことでいいのか、それから余りにもいろいろなものを盛り込み過ぎていないかとか、そのあたりのところ、これは実はまだ私も科学技術庁の中で議論したわけじゃありませんで、私の頭の中にある、きょう初めて申し上げるようなことなんですが、そういうようなことを議論していく必要があるのかなと思っております。  今おっしゃった弾力性ということは、西澤先生高速増殖炉の懇談会におきましても、かなりその柔軟な対応ということは指摘をされておりまして、我々としてもそのあたりは十分今後頭に入れておかなければいけないのじゃないか、こう思っております。
  117. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 この問題については、また引き続き議論をしていきたいと思います。  次に、第四条「事務所」「機構は、主たる事務所を茨城県に置く。」こうあります。地元重視ということで理解できるわけですが、当然デメリットもあると思います。考えるに、情報過疎になるのではないかとか、社会の動向に敏感でなくてはいけないのに、かえってそれのキャッチができなくなるのではないかとか、ちょっと素人が考えただけでもそういうデメリットが思い浮かぶのです。当然そのデメリットも考えられて、結論として茨城に置くということに決められたと思うのですが、どういうデメリットを認識されて、それを認識した上で、どうそれを克服できるということで茨城県に決められたのか、その点についてお伺いします。
  118. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 新しい法人が円滑に業務を遂行するという意味では、その原子力施設の立地地域の理解と協力が不可欠でございまして、そのために、今回主たる事務所を茨城県に移したわけでございます。そこで積極的な地元との共生を図るということと、現場責任現場と直結した経営ができる、そういうようなことを図っていきたいと考えてございますが、先生指摘のように、デメリットと申しますと、事務所が茨城県にあるわけでございますので、従来に比べ、科技庁を含めまして、それからメーカー等も東京近郊に多いわけでございますので、そういう機関との連絡体制、そういうものが少し遠くなる、そういうような問題があるわけでございます。  御指摘のように、情報過疎と申しますか、どこかに引きこもってしまって、社会に対して敏感性をなくすとか、そういうようなおそれもないわけでございませんが、最近は情報通信分野が非常に発達しておりますので、そういう通信網も使って業務を円滑にするような措置は可能ではないかというふうに考えております。  そういうようなデメリットはあるわけでございますけれども、やはりこういう原子力開発というのは地域社会安心感を持っていただかないと結局前に進まないわけでございますので、日ごろから地元への説明会を開くとか懇談会も開いたりして、地域とうまく密接な関係を持ちながら、安心していただくように進めることも可能ではないかと考えておりまして、こっちのメリットは非常に大きいのではないかと考える次第でございます。
  119. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 それでは次に、第十一条に役員が規定されております。理事定数が八から七に一つ減っておりまして、行政改革の折、これは評価できるのですが、新しい機構の業務が動燃に比べてかなり縮小されるということを考えれば、もう少しこの役員についても減らすべきだ、こういう意見があります。  また、この「動燃改革基本的方向」の中にも、経営の不在ということが言われて、それに対する一つの答えに、トップのリーダーシップが必要だと書いてあります。そういう意味では、余り役員が多いのは、船頭多くして船山に登るという言葉もありますし、役員もスリムにした方がいいかと思いますが、そういう批判に対してはどういう見解をお持ちでしょうか。
  120. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 今回、法律上、役員の定数一名を削減しているわけでございますが、さらに、昨年の十二月の二十六日に閣議で決定されたものとしまして、「特殊法人等の整理合理化について」というのがございまして、常勤の役員が十名以上の特殊法人につきましては、いずれかのときに一名削減をするということになっておりまして、動燃事業団もその対象になっているわけでございます。  議員の方から、さらに役員を減らせないかという話がございますけれども、逆に、これまで経営の不在と言われたところを経営機能強化をしなければいけない。数が多い方がいいか少ない方がいいかという話もあるかもしれませんが、法人が十分の裁量権を十分発揮するためには、責任も当然増大するわけでございますし、これからの新しい方向として、やはり現場を重視するというのがございます。  それから、やはり地域との関係を密接にうまくやっていかなきゃいけないということで、新しい法人動燃事業団もそうですが、事業所が全国いろんなところにございます。やはりなるべく経営者クラスがそういうところにいつもいて地元に対応できるというのは一つのこれからの姿ではないかとも思いますし、もしそういうことをしますと、やはり東京にいる経営者が逆に少なくなってしまう。そういうこともございますので、そういう役員の定数の問題につきましては、またいろいろと御理解いただきたいと考えている次第でございます。
  121. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 職員定数についてはどうでしょうか。業務の縮小にかかわらず、職員定数、これは急激に減らすというわけにはいきませんけれども長期的にもう少しスリム化を図るという方向が見えた方がいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  122. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 職員につきましてもスリム化をしたいと考えておりまして、今回新しい機構が発足する場合でございますが、来年度におきましては、現在動燃事業団本社が約五百人、四百八十人ぐらいの人がございますけれども、新しい機構ではそれを三百人ぐらいに、百八十名ぐらい本社の機能としては削減したいと考えておりまして、定数的にはそういうもので安全管理とか広報体制とか、いろいろなものを強化しながらしたいと考えております。  事業団全体としましては、ことし五十人ぐらい減っておりますが、やはりなるべくスリム化して、筋肉質の法人と申しますか、なるべくそういう法人にすべきだろうと考えておりますので、長期的な観点からもスリム化には努めてまいりたいと考えておる次第でございます。
  123. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 またその十一条の役員の規定のところに戻りますが、この役員の人選についてお伺いします。  この基本的方向、報告書には、理事会メンバーの人選として、「従来の構成にとらわれず、幅広い分野から人材を登用する。」「また、その構成は、新法人と特定の利害関係のある者や関係省庁からの出向者が大半を占めることなどは適当ではない。」こういうふうにございます。この報告書の内容は私は極めて妥当だと思うのですけれども、この報告書の提言を、理事会メンバーの人選ということで具体的にはどのように実現をされるのかについてお伺いをします。
  124. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 先ほど、来年度五十人削減と申しましたけれども、きょうから四月ですから、予算を認められますと今年度ということになりますので、訂正させていただきます。  それから、役員の問題でございます。  役員につきましては、基本的には、まず理事長は内閣総理大臣の任命になりますけれども、ほかの役員につきましては理事長が選んでいくということになるわけでございますが、いずれにせよ、強力なリーダーシップを発揮しまして、国民信頼されるような業務運営ができるような人、そういう人をトップに据えながら幅広い分野から選んでいくとなると思いますが、先ほどの検討会の報告書、そういうものも十分勘案しながら人選されるものと考えている次第でございます。
  125. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 理事長は内閣総理大臣、現実的には科学技術庁が人選してお決めになる、こういうふうにみんな思っているわけです。そこで、一つ国民から見て問題があるかなと思うのは、その理事長を選任するときに、科技庁の意向を一〇〇%聞くような人を人選する、そういうことであれば、今回の科技庁と新しい機構との責任の明確化、また、できるだけ科技庁が新しい機構の経営にくちばしを入れないという基本精神から反すると思います。そういうことにならないという担保はどこでとられているのでしょうか。
  126. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 今斉藤先生指摘になったように、先ほどから私、仏つくって魂入れずというようなことをたびたび申すわけですけれども、この魂を入れるためには、やはり動燃の新しい執行部体制、その中核になる方の人事というのは一番大事なんだと思っております。  それで、ここのところは実は、人事の話でございますし、今ここで申し上げられるような段階ではないのでございますけれども、私は、今斉藤先生指摘のように、今まではしの上げおろしまで科技庁がやってきた、そのことが、言うなれば、両者の、あるいは原子力委員会も含めて、権限と責任を明確にさせないところがやはり問題があった。この反省に立ちますと、科学技術庁に対してもあるいは原子力委員会に対しても、場合によっては通産省や電気事業者に対しても明確にやはり物を言える、そういう方を選んでいくということが私は一番根本ではないか、こう思っております。
  127. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 どこから見てもそういう人選をされたと思われるような措置をぜひお願いしたいと思います。  それから、理事のことですが、改正法附則第五条に、経過措置として、動燃の現在の役員の方、その方は、新しい機構になるときに、任期がたとえ残っていたとしてもというのは矛盾するのかな、動燃そのものがなくなるわけですから、すべて動燃役員は任期満了とする、こういうふうに書かれているわけですが、その動燃の前の役員の方が新しい機構理事に再任されるということはあるのでしょうか。
  128. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 今回こういうような規定を設けましたのは、できる限り、動燃事業団を解散するわけにいきませんので、それに近いような気持ちで再出発していただく、心機一転して新法人改組していただく、そういう意味でこのような規定を設けさせていただいたわけでございますが、この規定は、現在の動燃の役員であった者が再び機構の役員に任命されることを否定されるものではございません。しかしながら、機構への移行に当たりまして一たん任期を満了させるということによりまして、機構の役員としての適格性について再度チェックをする、そういうようなことになるかと思います。  いずれにしましても、先ほど大臣申しましたように、機構の役員は非常に経営のかなめでございますので、適切な者が登用されるようにしてまいりたいと考える次第でございます。
  129. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 私も、現在の動燃の役員の方が新しい機構の役員になるということについては、技術の連続性であるとかいろいろな意味で、あっておかしくはないというふうに思いますが、どうかその手続においては、国民から不明朗だと言われる、そういう批判がないような明確な形で、またオープンな、透明な形でやっていただきたい。ぜひこの点を要望しておきます。  それから、経営の不在という問題点に対して、経営の機能強化ということが今回の法律改正の非常に大きな柱だ、こういうふうに言われておりますが、法律のどこを読んでも、経営の機能強化するんだとか、理事長事業所長の裁量を大幅にふやすんだとかいう文言が出てこないのですけれども法律のどこにこの点が書かれているのでしょうか。
  130. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 私は、動燃は今まで長い時間をかけてなかなかの技術と経験を蓄積してきたと思うのですが、ああいう事故に対応するときに極めて不適切な面をさらけ出して、要するに、全体を統括してやっていく経営が不在であったという指摘はまさにそのとおりだろうと思います。  それで、経営が不在だったというのはなぜか。これは、先ほどの御議論、あるいはまた執行部の人選に関しても申し上げたところですけれども、役所と動燃原子力委員会、それぞれの権限と責任が明確でなかった。権限と責任が明確でないところに自主的な経営というものが存在するはずもない、これがまず一番基本だろうと思います。  そこで、機構が業務を実施するに当たりまして、事業目的を明確化しなければいけない。これは、国が基本方針を策定する旨を規定しております。つまり、そこで新法人に明確なミッションを与えて、その範囲の中では、具体的な業務運営法人自体の裁量と責任でやっていくんだ、これがまず経営の機能強化していく一番基本だろうと思います。  それからもう一つは、運営審議会ですね。運営審議会を設置する旨が規定されております。これは、平たく言えば、今までの動燃が、タコつぼ的と言うと言葉が悪いかもしれませんが、そういうような状況がやはり経営に対する視野を狭めている。もう少しかたく申しますと、機構における業務運営の透明性を確保するとか、社会との乖離を防ぐ、そういうことで、理事長の諮問機関としての運営審議会を設置して、できるだけ外部の多様な人材をそこに入れていただいて、経営の視野を広げていただこう、こういうことが二つ目でございます。  それから三つ目としては、情報公開とか業務運営の透明性の確保、あるいは適正かつ効率的な業務運営の実施というような機構の責務について規定をしておりますが、こういうような大体三つの柱で経営の強化を図っていくということだろうと思います。  それと同時に、こういうのは法律に書いてあるわけでありますけれども、これは何度も繰り返し申し上げて恐縮でありますけれども、そういう法律だけではなくて、やはり新しい体制の中で、執行部はもちろん、職員の一人一人まで、責任と権限というようなこと、あるいは経営を重視していくこと、こういう意識改革を図っていくということが一番大事なのではないか、こんなふうに思っております。
  131. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 今の大臣のお答えは、三点お述べになりました。第一点目ですけれども、これまでの動燃の経営にも裁量権はあった、しかし、これはもう何度も議論してきたことですが、責任の明確化というものがされていなかったので、今回は、その責任の明確化をすることによって、これまでにもあった裁量権というのを実質的に動きやすくするんだ、こういう理解でよろしいのでしょうか。
  132. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 そういうことだろうと私も思っております。  つまりこれは、これからの行政のあり方なんかで橋本総理もたびたび予算委員会等でも答弁しておられますけれども、要するに、幅広く行政指導で、事前に対応していくという方法よりも、明確な業務を与えて、その中で自己責任でもってやってもらって、行政は今度は、もちろんミッションは与えますけれども、厳格に事後的な評価を行っていく、そういう体質の転換を図っていくということではないかな、こう思っております。
  133. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 その点については理解できました。  大臣がお答えになった二点目の運営審議会について御質問をいたします。  二十二条に、機構に、運営審議会を置く。こうなっておりまして、先ほど大臣は、この運営審議会によって外部評価を与える、そのことによってまた経営の裁量権がふえていくんだ、透明化、つまり行政からの不明朗な介入がないんだという趣旨のことをおっしゃったのですが、非常に単純に考えまして、理事長がいらっしゃる、その理事長の外側に運営審議会がある。その運営審議会の答申というか評価に理事長が拘束をされるということは、逆に理事長の裁量権を狭めるものになるのではないか、こう素人は考えるのですが、その点についてはいかがでございましょうか。
  134. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 今の先生のお話は、多分、運営審議会の運営面の話だろうと思います。  法律上は、理事長の諮問に応じて答えるわけでございまして、理事長はそれに、尊重するということはあると思いますが、拘束されるという仕組みになっていなくて、その中の答申を採用するのもやはり理事長責任でするわけでございます。  したがいまして、ある意味では理事長の家庭教師的な位置づけでございますので、理事長が、世の中でわからない点、こういう経営はどこでどうしたらいいのか、そういう御相談をする相手のような役割もあるわけでございますので、そういう意味で、経営についてそれを助けると申しますか、そういう機能はあるものと思います。
  135. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 外部評価という言葉を使われております。理事長が自分の裁量権を行使するためというよりは、外部評価という言葉からくるイメージは、理事長の裁量権を拘束するという認識を強く持つのですけれども、その外部評価と諮問というのがよく理解できないのですが……。
  136. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 先ほど私、何という言葉で表現したのか、自分でも記憶が明確でないと言うといけないのですけれども、外部評価というと何かちょっと、あるいは私がそう申し上げたのなら不適切かもしれません。  要するに、余りにも理事長の権限を外から縛ってしまう、こういうイメージでとらえていただくよりも、やはり、先ほど私ちょっと卑俗な言葉でタコつぼと申しましたけれども、タコつぼ化しないためにいろんな知恵をインプットしてくる、こういうふうに御理解をいただきたいし、また、そういうふうに運営していくべきものだと思っております。
  137. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 それでは、別な角度から質問させていただきますが、非常に意地悪な見方をすれば、この運営審議会が科学技術庁意見を通すための科学技術庁一つの道具になるのではないか。もっと素直に法律を読めと言われればそのとおりなのですが、意地悪な人はそういう見方をしております。  そうならないということの担保と、それから、思考実験ですけれども委員は総理大臣の認可を受けて理事長が任命する、こうなっておりますが、理事長が任命をする人を総理大臣が認可しない。例えば理事長が、自分はこういう方針でやりたいんだ、その方針が一内閣の方針といいましょうか、科学技術庁の余り覚えめでたくない方針だった、しかし、断固としてこれをやる、そのためにぜひこの人に運営審議会の委員になってほしい、しかし内閣はそれを認めない、こういうことが当然理論的にはあり得るわけでございまして、そうなった場合はどうなるんでしょうか。
  138. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 まず、科技庁が変なことをしない担保はあるのかという話でございますけれども、これは、我々今回で懲りておりまして、とにかく新しい法人がきちっと健全に育たなければ、それは科技庁責任でございますので、そういうことで科技庁としても一生懸命応援していくということで我々考えております。  それから、先ほどの、委員の任命権は理事長でありますけれども、それは内閣総理大臣の認可があるからということでございますが、理論的にはそういうことはあるわけでございますけれども、先ほど申しましたように、事業団の運営をいかにうまくやっていくか、そういう観点で理事長が御選任されましたら、それは、目的は同じところでございますので、そういうところでフリクションが起こるとは余り考えておりません。
  139. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 時間が参りましたので、これで終わります。  逐条で行っておりまして、まだ二十三条までしか行きませんでしたので、この続きと、この間、大野委員長を初め、人形峠に視察に行ってまいりました、そのことも踏まえて質問しようと思ったのですが、これは次回に回させていただきます。  ありがとうございました。
  140. 大野由利子

  141. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 再三質疑されてきているところでありますが、動燃は、平成七年十二月に、高速増殖炉原型炉もんじゅ」において事故を起こし、さらに、昨年三月にも、アスファルト固化処理施設において事故を起こしました。  事故を起こしたこと自体も当然に問題ではありますが、さらにゆゆしきことは、これらの事故に関連して、虚偽報告や不十分な通報、連絡といった不適切な対応が重ねて行われたことであります。これは、国民の理解と協力を得つつ、安全の確保を大前提として進められてきた原子力開発利用にとって、国民信頼に反し、ひいては、原子力開発利用そのものへの不信感を招く事態であったと言えます。  そもそも、資源の乏しい我が国にとって、原子力開発利用はどうしても選ばざるを得ない選択肢の一つであると思います。例えば、既に総発電電力量の三割以上を原子力発電が賄っている状況にあるなど、その果たし得る役割は非常に大きいものとなっています。このようなことから考えると、原子力開発の執行機関である動燃一連事故や不祥事によって原子力開発利用そのものが大きく後退することがあってはならないと思っております。このため、できる限り早急に動燃を抜本的に改革し、損なわれた国民信頼が回復されるよう努めることが、原子力の推進にとって喫緊の最重要課題と考えています。  そこで、動燃一連事故等を踏まえ、今日に至るまでの動燃改革の取り組みについてはどうなってきているのか、このことをまず最初に質問します。     〔委員長退席、斉藤(鉄)委員長代理着席〕
  142. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 動燃一連の不祥事が起きまして、地元を初め国民方々に、原子力に対する不安感、不信感を与えましたことは非常に大きな問題と認識しているわけでございます。  こうした不安感、不信感を取り除くためにも、御指摘のように、動燃の抜本的改革は喫緊の課題でございまして、昨年の四月、動燃体質及び組織体制について徹底的な第三者的チェックを行うために、動燃改革検討委員会、座長に吉川先生をお願いしたわけでございますが、それを科技庁長官直轄の組織として設置して、御検討していただいたわけでございます。  委員会では大変精力的な御検討をいただきまして、昨年の八月一日に報告書を出していただきました。動燃事業等を抜本的に見直す、経営の刷新を図り、核燃料サイクルの確立に向けて長期的な観点から着実に研究開発を遂行する法人、そういうことで再出発すべきだという報告書を提出いただいたわけでございます。  その後、科学技術庁では、その報告書は、タイトルにございますように、基本的な方向ということでございまして一吉川先生からも、それをさらに具体化する必要があるという御指摘もございましたので、新法人作業部会というものを設けまして、新法人の経営、組織事業計画、それから職員意識改革安全確保の具体策、そういうものの検討を始めさせていただきました。  それと同時に、新法人タスクフォース、作業部会を支えるチームでございますが、それによりまして動燃の現地調査、これは六百以上の施設があるわけでございますが、山の奥の方のところだったりしますが、ほとんどすべて現地を調査させていただきました。そういうものを実施いたしまして、その作業部会におきましては、昨年の十二月に「新法人基本構想」ということで、吉川レポートのもう少し肉づけしたものをつくらせていただいたわけでございます。  片や、動燃事業団におきましても、職員の心構えやとるべき行動を示します行動憲章、そういうものをつくりまして、研修によります意識改革を進めておりますし、理事長診断会を開きまして、業務品質と言っていますが、業務のあり方の品質の向上を図っております。また、全施設設備の総点検も動燃みずからやっておりまして、安全性の向上に努めるなど、抜本的な改革に向けた作業を進めてきたわけでございます。  今回の通常国会におきましては、これら動燃改革に向けました作業を踏まえまして、先ほど大臣からお話ございましたように、事業を抜本的に見直し、安全確保を最優先として、情報公開を含め社会に開かれた体制のもとに、地元重視基本とした新法人核燃料サイクル開発機構、そちらに改組すべく法案を提出させていただいているところでございます。  科技庁といたしましても、ハード、ソフト両面にわたります動燃の抜本的な改革を通じまして、真に国民信頼される法人になっていただきたいと考えておりまして、今後とも動燃改革に全力を挙げて取り組む次第でございます。
  143. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 いずれにしましても、こういう事故を経験するたびに、やはり組織の長年にわたるだらけといいますか弛緩が大きな不信を買っているわけでございますので、その改革、対応については今後とも厳重に指導していくようにお願いしたいと思います。  新しくできる核燃料サイクル開発機構においては、これまでの動燃の轍を踏まないためにも、安全確保を経営の最優先事項として取り組んでいくようでございます。そのためには、毎年定期的に安全性の総点検に取り組むなど、徹底的な安全性の追求が必要と思います。  今、核燃料サイクル開発機構として生まれ変わろうと再生の苦しみの中にある動燃理事長に対して、昨年理事長の指示に基づき実施した全施設設備の総点検の結果とその対応状況について、どのようになったのか、またなっているのか質問いたします。
  144. 近藤俊幸

    近藤参考人 お答えいたします。  安全性の総点検の第一回目の取りまとめ結果につきましては、十月末に公表いたしましたが、その後、重要度による分類あるいは類型化等の作業を実施するとともに、事業団全体で共通的に確認すべき事項につきまして事業所間で水平展開を実施しているところでございます。  安全性の総点検の結果につきましては、できるところから対策を講じているところでございますが、今後とも、優先度を考慮しつつ、関係当局とも御相談の上、許認可手続や予算措置等の必要な調整を図りながら、鋭意処置を進めていく所存でございます。  また、先生指摘のように、新法人設立後も安全性の総点検に定期的に取り組むなど、安全確保に万全を期してまいりたいと思います。  以上でございます。
  145. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 動燃においては、現在、理事長の陣頭指揮のもと意識改革に取り組んでいることは承知していますが、自分としては、安全文化を全職員に醸成することが重要であると考えています。どんなに規則や機構をいじっても、最後はそれを担う人間一人一人が、またその人間性が問題になります。事業も学問も人という考えを含めて、理事長にまたお伺いしますが、この安全文化を醸成するための具体的な取り組みについて、どのようになしているか、またなそうとしているのか質問します。
  146. 近藤俊幸

    近藤参考人 お答えします。  先生指摘のとおり、動燃事業団におきましては、自己改革の一環として、意識改革に取り組んでおります。  意識改革におきまして最も重要な点の一つが、安全意識の向上を図り、今おっしゃいました安全文化を醸成し、根づかせることにあると理解しております。  このため、事業団におきましては、昨年十月に制定いたしました動燃行動憲章、この第一条に「私たちは環境の保全と地域の人々の安全を第一に行動します。」こう定めております。さらに、行動計画を一人一人が正しく確実に実践していくことをフォローする目的で、役員による幹部職員の面談とか、階層別あるいは部門横断的な小集団の研修とか、各職場におきまして真剣な職場討議を繰り返し実施しております。  これらが具体的に定着てきますように、私を初め各役員が各事業所に赴き、職員と直接討論を重ねて意識改革の浸透を図っております。  今後とも、私自身さまざまな機会をとらえて、現場にも行き、安全を最優先に事業を展開するとともに、現場において実践的な訓練を繰り返して、より安全文化の醸成、定着に努めてまいりたいと思います。  以上でございます。     〔斉藤(鉄)委員長代理退席、委員長着席〕
  147. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 いずれにしても、規則や法を運用するのはやはり人でありますので、人間性の啓発にも十分に留意して今後の運営に当たっていっていただきたいことをお願いする次第でございます。  次に、今回の改革のもう一つのポイントは、これまでの業務を抜本的に見直し、整理縮小するとともに、核燃料サイクル技術的な確立に向けた業務に重点化することであると承知しています一  動燃改組して新法人に移行するに当たっては、これまでの業務を見直してスリム化することが不可欠であります。ですから、動燃改革の骨格を規定するこの法案においては、その業務をどのように規定するのかといったことが実質的に最も重要な事項だと思います。  そこで、業務の肥大化が問題として指摘されるところでありますが、機構においてはどのような業務を行うこととしているのか、この点について詳しく説明をいただきたいと思います。
  148. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 核燃料サイクル技術的に確立するために必要な業務を行う法人ということで再出発させようということでございますが、業務の縮小につきましては、いわゆる基礎研究、それから、実用化に近くてもう民間でも実施できるようなものにつきましては、機構の業務として行わないように限定をさせていただいております。  具体的には、基礎研究に関連いたしましては、動燃事業団でフロンティア研究と言っておりましたが、レーザーを使って研究をするような分野、あるいは計算科学と言っておりますが計算概を使ってやるような分野、そういうような分野につきましては、日本原子力研究所の方に仕事を移しました。  それから、基礎研究でない方でございますが、事業的な分野におきましては、新型転換炉につきましては基本的には撤退するということでございますが、現実に「ふげん」という発電所が地元で動いておりますので、地元の自治体とも協議いたしまして、適切な過渡期間を置いて運転を停止しよう、地元が五年間と言われていますので、五年間運転をして運転を停止したいと考えておりますが、その後は廃炉の研究をしながら処置していくということになります。  それから、ウラン濃縮の研究開発につきましては、動燃事業団開発しました技術を徐々に民間に移したり、民間と共同研究をしたりしながら民間技術移転を図っているわけでございますが、民間技術を今後さらに移転していきまして、人形峠にございますウラン濃縮の原型プラントにつきましても、これはもともと十年間の設計寿命でございますので、寿命がことしぐらいで終わりそうなものですから、あと数年間運転して停止をしようということで、立地地元自治体とも協議して、これも三年ぐらいをめどに停止をするということでございます。  その後は、濃縮機器というのは、非常にウラン濃縮の機微な技術、核不拡散上機敏な技術でございますから、これをそこらにぽっと捨てるわけにいきませんので、これをきれいに、技術が盗まれないというか、抜けないような処置をしながら、廃棄技術、そういうものの研究をしながら処理をしたいと考えております。  それから、海外ウラン探鉱につきましては、基本的には民間活動にゆだねまして、現在の鉱区の権益は適当な過渡期間を置きまして民間等に移管するとかあるいは廃止をする、そういうことを考えている次第でございまして、それらが縮小する業務でございます。  今後進める業務といたしましては、長期的な観点から核燃料サイクル技術的に確立するための研究開発ということでございまして、一つは、高速増殖炉及びその燃料の開発でございます。それに関する研究も含まれます。それからもう一点が、東海の再処理工場中心としました再処理技術の問題でございます。それから三点目が、これから非常に重要になってまいります高レベル放射性廃棄物処理処分開発、そういうことを行おうとしているわけでございます。  また、そのような開発をする場合にも、社会とか関係機関に開かれた体制となりますように、研究開発成果を幅広く社会に還元する、そういう観点から、成果の普及ということもあわせて行いたいと考える次第でございます。
  149. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 それで、この研究開発成果普及についてでありますが、機構は、核燃料サイクル技術的な確立という国民の負託を受けて研究開発を進めるものであり、また、その成果国民に還元されなければ意味がありません。  今回、成果普及業務が法律に明記されることとなりますが、社会に開かれた研究開発体制を確立するためには、研究開発成果はできる限り幅広い分野の方にさまざまな方法で還元されるべきであると考えます。何せ動燃開発した原子炉で、多大の予算を使いながら、今まで実用まで進んだものは皆無であります。  このことは、日本原子力開発体制での大きな問題で、これは技術開発プロセスの中から応用研究を切り離したことにもあると言われています。このことは、先ほどの質問にもありましたが、リニアモデルでの研究を踏襲する限りどうにもならないような問題ではないかと思います。ですから、国の技術開発に大きな期待を寄せ得ないと言われてくるところでもあります。  こういう考えからも、その成果を適切に存分に国民に返していかなければならないと思いますが、この成果普及は、どのような分野を対象にどのような方法で行うことを考えているのか伺います。
  150. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 これまで動燃事業団は、ウラン濃縮のように、最初から目的としていました技術の普及と申しますか、そういうものは最初からやっていたわけでございますが、途中の段階技術、そういうものは、一般的には自分でノウハウとして囲う、そういうような性格もあったのではないかと考えているわけでございます。  今回法律で、成果の普及を積極的に行うためにそういう規定を明示させていただいたわけでございますけれども原子力というのは総合的な科学技術でございますので、動燃事業団あるいは新しい機構開発したいろいろなものはかなり幅広い分野で活用し得るものだろう、潜在的にはそういうものだろうと考えているわけでございます。  そして、成果の普及につきましては二種類あるわけでございます。一つは、高速増殖炉、再処理ウラン濃縮、そういうのはいずれ民間原子力をやる人に成果を移す、それは当然のことでございますけれども、いろいろな開発の過程で、材料の問題とかコンピューターを使った解析のソフトとか、直接のもの以外にもいろいろ使い得るものがいっぱいあるのだろうと思っております。したがいまして、そちらの方は不特定多数の産業界とか学会が対象になるかと思っております。したがいまして、この両方の面の成果の普及に努めていきたいと考えている次第でございます。  そして、その方法といたしましては、当然のように、高速増殖炉、再処理ウラン濃縮、こういうのは相手がいるわけでございますから、そこと密接な連携協議を図りながら成果の普及を図っていくわけでございますが、不特定多数の一般の産業界、学会等に対する成果普及に対しましても、論文の発表とか成果報告書の配付、それから、いろいろな人の受け入れ、派遣といった人的支援もさることながら、やはり持っているものをデータベース化しまして、皆様にアクセスしていただける体制をつくりながら円滑に成果の普及をしていきたいと考えている次第でございます。  なお、先生の御質問の中に、新型転換炉についての言及がございましたけれども、我々、新型転換炉の実用化は断念しておるわけでございますが、研究開発の過程におきましては、現在の軽水炉技術、これはもともとはアメリカからの導入技術でございますけれども、それを国産技術にするのに非常に役に立っている。新型転換炉への投資も、全部がむだではなくて、現在もそういうのが生かされている、そういう側面もあることを御理解いただきたいと思う次第でございます。
  151. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 次に、この成果普及と並んで、社会に開かれた研究開発体制の確立に重要な施設の供用業務についてでありますが、動燃研究開発施設設備のように、大規模かつ高度な設備日本にもそれほど多く存在するものではないのであります。この意味で、このような施設設備社会のニーズに応じて外部の関係者に利用させることは、日本全体の技術水準の向上のために非常に有効であると考えるわけであります。  それで、供用業務の対象となる施設設備としては、具体的にはどのようなものを想定しているのかお伺いいたします。
  152. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 供用業務の対象となる施設としてどのようなものがあるかという御質問でございますが、例えば高速増殖炉実験炉、茨城県の大洗にあるものでございますが、これは現在、燃料とか材料の照射試験に使われております。これは、中性子を当てて材料の劣化を調べるわけでございまして、核融合炉の構造材も中性子が当たるわけでございますので、そういうものの材料の開発に非常に有効でございます。そこで、そういうのはもう大学等から、それを使いたい、そういう希望があるわけでございます。  それから、岐阜県の東濃に、ペレトロンと申すのですが、年代測定に使える炭素の分析をするような加速器がございます。そういうものを使いますと、地下水とか岩石の年代測定、これはもともと、高レベルの廃棄物の安全評価をするために、地下水がどれぐらい動くか、例えば百メートルぐらい動くのに一万年かかるとか、いろいろな研究成果があるわけでございますが、その中の水を分析するための装置でございますが、そういうものは一般の考古学で非常に使えるわけでございますので、一般の考古学あるいは地質の研究、そんなものにも使っていただくために供用したらどうかと考えております。  やはり東濃に地科学センターというのがございまして、無重力の落下試験とか、地下深く掘りますと地震の研究に非常に使えるものですから、そういうところを地震の研究に提供する。あるいはまた、動燃事業団は大型のコンピューターを持っておりますので、そういうものはいろいろなところの要望に応じまして科学技術計算に使っていただく、そういうようなことを現在頭に描いているところでございます。
  153. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 外部の研究者や関係者への貸与となりますと、理事長理事その他の指導部の弾力的に事に処す姿勢が大切だと思いますので、これからの運用にはこのことを十分に意に介してやっていただくよう要望しておきます。  次に、昨年問題となったウラン廃棄物のずさんな管理については、動燃の前身である原子燃料公社時代の廃棄物であったと聞いています。今回の改革により、動燃は新法人改組され再出発することになりますが、ややもすると、昔の業務に関する負の遺産については自分の問題という意識が薄れがちになってしまうのであります。廃止された業務に関する負の遺産、例えば放射性廃棄物管理といったことについては、法律上新法人の業務として明確に規定するなどにより、責任を持ってしっかり取り組んでもらわなければなりません。このような業務を着実に遂行することは、改組された新法人が今後業務を進めていくための大前提であり、いわば社会的責務であると考えます。  そこで、整理縮小する業務であっても、これまでの業務に伴って発生した放射性廃棄物管理が必要と考えるので、このことに関しては法律上どのように位置づけられているのか伺います。
  154. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 御指摘のとおり、業務を廃止する場合にありましても、これまでの運転に伴いまして出てきました放射性廃棄物管理、そういうものを定常的あるいは場合によっては長期にわたって実施しなければならない業務があることは十分承知してございますし、先生指摘のようにそのような業務をしっかりやっていくこと、これが新しい機構社会的な責務であることも十分認識しております。  したがいまして、そのような業務につきましては、機構法の附則の十条に「業務の特例」というのがございまして、そこに明示的に規定しているところでございます。ちょっと法案文は読みにくいわけでございますが、そこで、業務廃止に向けた過渡期間中においては同条第一項に基づいてすることが決められておりますし、その後におきましては同条第二項に基づいて実施するということで、附則の方に明示しているわけでございます。
  155. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 法的な裏づけを持っているということで一応安心はしておりますが、本法案では、これまでの動力炉核燃開発事業団から核燃料サイクル開発機構法人の名称を変更しようとしています。事業団を機構に変更するなどは全面的な改称であり、法人の目的、性格自体が従来と比べて大きく変わるような印象を受けるわけです。  そこで、法人の名称を核燃料サイクル開発機構に変更する理由について詳しく説明していただきたいと思います。
  156. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 名称につきましては、いわばその組織の顔でございますので、職員も誇りを持ってその職務に臨めるように、そういうことも配慮しているかと思いますが、今回、核燃料サイクルの確立に向けて長期的観点から開発等を行うといった業務内容になっておりますので、そういうことを的確に表現できるように核燃料サイクル開発機構と改めた次第でございます。  これまで動燃事業団は、昔、原子燃料公社と言っておりまして核燃料の方をやっておりましたが、それに新しく動力炉開発というのが加わりまして、そこで動力炉核燃開発事業団、そういうことでずっと三十年間やってきたわけでございますけれども、軽水炉の燃料サイクルは事業化の段階になりまして、新しい機構は、高速炉の燃料サイクルを中心としたもの、それから高レベルの廃棄物がございますが、そういうものに重点が移るわけでございまして、そういう動力炉核燃料サイクルという代表約二つの概念からとらまえてきたものを、有機的な一体とした核燃料サイクル、そういう観点でとらえる方がいいということで核燃料サイクルという名前をつけることとしたわけでございます。  また、新法人におきましては、民間金業とか大学等と連携して核燃料サイクルの確立に向けた開発とかそれに必要な研究を進めていくわけでございますし、さらに成果の普及とか、施設民間企業等に提供する、そういうことを予定しておりますので、核燃料サイクル技術的な確立に向けました拠点的な性格が強くなる。そういうような観点から、事業団ということではなくて機構という名前に改めさせていただいた次第でございます。
  157. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 今回の改革において動燃の業務を抜本的に見直し、それを十分に反映できる名称に改称することが不可欠であることは承知しますが、単にそれだけを行うだけでは改革を十分に達成することはできないわけです。今回の改革において、業務の抜本的な見直しと並んで、経営機能強化安全確保機能強化社会に開かれた体制の構築も重要であります。これらについても法案に規定すべき事項はしっかり規定すべきであると考えるわけですが、今回の法改正は名称や業務の変更に伴う改正がほとんどであります。これで十分な改革ができるのか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  158. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 今回の動燃事業団改革の取り組みにつきましては、名称とか業務の変更、これは法律上のものでございますけれども動燃改革検討委員会報告書等を踏まえまして、動燃の経営・組織体制、そういうものを抜本的に見直しまして、当然もう安全確保最優先に、透明性のある業務運営、それから、社会に開かれた体制のもと情報公開を積極的に進めるとか、地元に本社を移すというのは地元重視、そういうことを基本とした新法人改組することとしております。  御指摘のように、法律では一つの枠組みをつくっていただいているわけでございますが、この動燃改革を実現するためには、職員一人一人の意識改革と申しますか、それぞれが出直す覚悟で意識改革に取り組むことが重要でございます。  初めのころに理事長からも意識改革をやっている状況を御説明いたしましたけれども、そういうことで魂を入れるということもあわせて、やはり新しい改革のための環境づくりに努めているところでございます。我々としましては、そういう法律的な受け皿と中身、両方の面から改革を進めまして、新しい国民の負託にこたえることができるような法人に再生いたしまして、国民の皆さんの信頼を早期に得られるように努力してまいりたいと考える次第でございます。
  159. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 次に、経営機能強化について伺いたいと思います。  安全の確保や危機管理の徹底、さらには、適切な事業計画を立てて効率的に業務を進めていくといったことは、経営がしっかりしていないとうまくいかないものであります。動燃改革検討委員会報告書において、動燃はみずからを取り巻くさまざまな状況の変化に的確に対応できなかったことが指摘されております。その意味では、外部の意見を広く経営に反映することができるようにすることが重要であり、その前提として、業務運営について透明性がまず確保されなければならないと思います。今、官僚が持つ守秘主義の性格が批判され、その弊害の方が問題を起こしているときでもありますので、こういう観点からも、新法人の経営はどのように改善されるのかをお伺いします。
  160. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 御指摘のように、報告書の中では、動燃の問題の構造といたしまして、動燃はみずからを取り巻くさまざまな状況の変化に的確に対応できない経営不在の状況であったというふうに指摘されているわけでございます。  基本的な方向としては、経営の強化ということでございますけれども、裁量権と責任を明確化して十分に仕事をしていただく。そういう中で、職員も生き生きと自分たちの目標を持って仕事ができるであろう。それから、そういうことのためにも、新組織の経営体はまず、自己変革と申しますか、現状から自己改革していただく。それからその際に、今運営審議会等ございましたが、外部の意見も入れる、透明性を導入する、そういうようなことが経営上重要だと考えている次第でございます。  具体的には、機構におきまして、特に安全確保とか危機管理、そういう面を経営の最優先の事項の一つにいたしまして、理事長を頂点とする責任を明確化して、機敏に対応できるようにする。  それから、先ほどからお話ございますように、経営陣も刷新して強力なメンバーにする。  それから、外部との関係におきましては、運営審議会を設置しまして透明性を高める。  それから、管理職につきましては、課長級以上の相当数をなるべく若手とか外部からの登用をして、少し内部を活性化させるとか、新しい人を導入する、そういうようなことも必要と考えております。  それから、本社の権限を現場に移譲する。これまで事業所がありまして、本社の中に事業部がありまして、何か多重構造になっておりましたために、なかなかトップまで連絡とかがうまくいかなかった。そういう反省のもとに、本社権限をできるだけ現場に移譲いたしまして現場責任を明確化する。そういうことで、平たい組織と申しますか、経営者と現場とが近くなる、そういうような組織体制にしたいと考えております。そういうことで経営体制を見直すようにしたいと考えております。  そういうことで、機構責任のある経営を行いまして、国民の負託にこたえられるようになるように努力してまいりたいと考える次第でございます。
  161. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 次に、時間がありますので、役員の職務及び権限についてですが、改正案第十二条において「監事は、機構の業務を監査する。」「監事は、監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、理事長又は内閣総理大臣に意見を提出することができる。」とされています。  昨今の銀行や証券会社の不祥事件が社会問題になっていますが、これらの問題も、内部チェックする監査役がその職務を全うしないか、全うしにくい会社の体制に原因があるとも指摘されています。  このような状況にかんがみ、監事の独立性の強化、権限と責任強化改正案に盛り込むべきであったと考えられますが、これに対する政府の検討状況と盛り込まれなかった理由を明らかにしていただきたい。また、核燃料サイクル開発機構における監事がその職責を全うできるための環境整備や取り組みについて、政府の考えを明らかにしていただきたいと思います。
  162. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 監事につきましては、機構あるいは事業団の内部組織でございまして、監事は監事なりにいろいろやっていただいているかと思います。  今回の法律改正でそこを触れなかった点につきましては、監事の機能につきましては基本的には現状でもあると思いますので、あとはそれがいかにうまく機能していくかという運用面の問題だろうと考えております。したがいまして、監事を補佐する機能をもう少し強化するとかいうことによって内部監査の実を上げる、そういう方向で対処していきたいと考えている次第でございます。
  163. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 それでは最後に、今回の改革には業務の見直し、経営機能強化など多くの改革事項がありますので、これらすべてを法律事項として規定することはできないものだということは理解できますが、それで規定できない部分がまさに大臣がおっしゃっている魂のところであります。改革の本質だとも思います。この意味で、意識改革や広報の充実などの改革については法律事項ではないものの、社会的責務としてきちんと進めていくべきだと思います。  このようなことから、仮に法案が成立した場合であっても、それで動燃改革は全く終わったというわけではありません。機構への適切な移行に向けて一層動燃を指導していただきたいという思いで、動燃改革に向けた今後の取り組みに対する大臣の決意を伺って、質問を終わりたいと思います。
  164. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 まず、今こうして御審議をいただいている法案でありますけれども、先ほど来の御議論のように、動燃改革検討委員会等で長い間、あるいは当委員会でもいろいろ動燃改革について長い間御議論を賜ってまいりました。そういうものを踏まえまして出した法案でございます。まずこれの早い成立をお願いをしたいと思っております。  それで、今菅原先生おっしゃいましたように、私の言葉で言うと仏と魂ということになるのですが、先生は、同じことをおっしゃっているのだと思いますが、最終的に改革は人であるということをおっしゃっておりまして、やはり法律が成立するのと並行に意識改革というのをやっていかなければならない、これはもう当然のことでございます。  今、動燃で、近藤理事長のもとで、先ほどから原子力局長も答弁をしておりますように、行動憲章をつくったりあるいは理事長診断会というようなことで意識改革に努めているわけでありますけれども、これを継続的にさらに推し進めなければならないと思いますし、科学技術庁としてもそれを全力を挙げて後押しをしなければならない。それと同時に、先ほどから御議論になっておりますように、科学技術庁も、頭の切りかえといいますか体質改善を図って、新機構の明確な権限と責任、それに対応して事後的に厳正に評価をしていく。こういう行政手法の変化を科学技術庁も迫られているのではないかと思っております。  それからもう一つ申し上げたいことは、この法案を成立させていただきましてから新しい法人に移行するまで若干時間があろうかと思っておりますが、マイナスの遺産というものをそのままずるずると引き継ぐようなことでは新生機構の将来は危ういわけでありますから、残された期間でそのマイナスの遺産を徹底的に整理をしていくということでなければならないと思っております。  今後ともいろいろ御指導をお願いを申し上げる次第でございます。
  165. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 以上でもって質問を終わります。  ありがとうございました。
  166. 大野由利子

    大野委員長 吉井英勝さん。
  167. 吉井英勝

    ○吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。  動燃事業団法の改正案について、きょうは大きく言って四つの観点でこの法律案にかかわって質問をしていきたいと思います。  最初に、今度の法律改正事業団を機構というふうに名称を変えるわけですが、名称変更以外に、特にこれが変わるというものを一つ挙げるとすれば、それは何ですか。
  168. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 一つとおっしゃられると、実は、どうお答えしようか苦しむのでありますが、これは先ほどから申し上げているように、新生法人に明確なミッションを与えて、そしてその明確なミッションのもとでの権限と責任を明確にしていくということではないかと思っております。そして、そのことが業務を整理縮小するというようなことにもつながってきているわけでありまして、そういうことを通じて、大前提の安全ということに寄与していきたい、こんなふうに思っております。
  169. 吉井英勝

    ○吉井委員 名称の変更だけはよくわかったのですよ。けさほど来の議論を私も聞いておりまして、魂を入れる議論もありました、それから経営責任の明確化とか透明性とかいうこともありました。しかし、これは、経営責任の明確化とか透明性の確保などということは現行の法律によっても本来きちんとなされるべきものである。ですから、お聞きしておりまして、魂を入れるという精神訓話というか訓示的なお話も伺いましたけれども、結局、名称変更以外に、一体これは何がどう変わろうとしているのかという点が非常に不明確なわけです。  そこで、私、法律を読ませていただきまして、核燃料サイクル技術的に確立するために必要な業務を行うということを挙げていて、主たる業務の一つは要するに高速増殖炉、そしてその燃料の開発とこれに必要な研究ということにしているわけですね。そして、基礎研究に関しては、これは今度は非常に制限的で、行わない。こちらは原研の方でやってもらうんだということを法律の説明に来ていただいた科学技術庁の方にレクチャーをいただいて、そういうものだということを伺いました。  ですから、今度の法律改正において、業務としては、今私が申し上げましたような核燃料サイクル技術的に確立するために必要な業務だ、主たる業務の一つは何といっても高速増殖炉、そしてそのための燃料の開発、それに必要な研究だ、あとの基礎的なものはこれは制限すると申しますか、大体それが要するに今度の法律の一番のポイントかなと思うのですが、そういう理解でいいのですか。
  170. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 大臣の方から、基本方針を明確にして、そのミッションのもとで裁量権を持ってというお話がございましたが、業務につきましても今回思い切って整理をしている。それは一つのポイントかと考えておりまして、御承知のように、新型転換炉とかウラン濃縮、海外ウラン探鉱、そういうところから、ある期間を置きますが撤退する。そして、今後重要となってきます御指摘高速増殖炉、それからまた高レベルの廃棄物の研究開発でございますが、そういうものに重点を移す。それから再処理につきましては、東海工場がございますから引き続きやっていく。そういうことも一つのポイントかと考える次第でございます。
  171. 吉井英勝

    ○吉井委員 その新型転換炉の話では、民間の方で取りやめということが既にもう久しい以前に決まっておりまして、いずれにしても、「ふげん」の扱いというものはもう事実上決まっておったようなものなんですよね。ですから、幾つかおっしゃったのだけれども、そうして見ていると、要するに、これまでから中心的な業務というのは、これは高速増殖原型炉もんじゅ」と、その燃料の開発、そしてこれに必要な研究ということでやってきたわけですから、この点については変わらないと理解していいですね。
  172. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 中心的なところは高速増殖炉でございますが、やはり高レベルの廃棄物に関する研究もこれから重要な分野とは考えている次第でございます。
  173. 吉井英勝

    ○吉井委員 ですから、いろいろけさほど来もおっしゃってこられたのだけれども、要するに、枝の部分は切りましようと、少々刈り取るところがあるかもしれないわけですが、しかし、幹になるところ、大もとになるところについては、これまでの動燃の基幹的事業について変更はない、こういうふうに理解していいのですね。
  174. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 日本核燃料サイクルを確立していくために非常に重要な点は、やはり一つ高速増殖炉、それから先生おっしゃった燃料の開発研究でございますし、それから現在の実用の原子力発電所から出ます使用済み燃料、それを再処理しますと高レベル廃棄物が出ますから、そういうものをきちっと処理処分する体制をつくることも重要でございますので、その二つはこれからの原子力政策の中のかなめでもございます。そういう点を中心にやっていきたいと考えている次第でございます。
  175. 吉井英勝

    ○吉井委員 再処理工場の問題につきましても、商業施設の分野については六ケ所で進めていくという方向が打ち出されて以来、量的に見ても、東海の方というのはその役割は事実上終えたということで見ていらっしゃって、現に取り組んでこられたのはやはり「もんじゅ」用の燃料を、あるときには「もんじゅ」の燃料はうまくいかなくて、かなり大量のオシャカが出たときはそれこそフル稼働で随分やってこられたわけです。そういう点では、法律二十四条関係で見ても、「核燃料物質の再処理に関する技術開発及びこれに必要な研究」というところについては既に「もんじゅ」にかかわるものということでやってきていらっしゃるので、そうすると結局、確かにネーミングは変わるわけですが、この名称変更以外に基幹的な業務については実質的に変わるものはない。だから、これまでの基幹的業務を、枝葉の部分を整理して進めるのだ、それが今度の法律改正のポイントだ、一番中心的なところだというふうに理解をさせてもらっていいのですね。
  176. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 枝葉ということの考え方によるのですが、我々は、吉川先生報告書にございますように、現在の動燃事業団の業務をレベル分けをいたしまして、非常に基礎的なもの、それからもう民間がやっているもの、あるいは競争力がないATR、そういうものについては整理して、経営の仕方をなるべく一体化する、開発業務に絞る、そういうふうなことで整理させていただきました。  結果的にそれを枝葉という表現を使われることになるかもしれませんが、我々としての整理の仕方としてはそういうことで考えさせていただいております。
  177. 吉井英勝

    ○吉井委員 今のお話を伺っても、名称変更以外に、基幹的業務については従来どおりの法律の仕組みだという受けとめ方をいたしました。  そこで、次に、「もんじゅ事故が何を示したかということですね。「もんじゅ事故など事故が続いて、結局こういうネーミングの変更という感じになってきているわけですが、確かに、事故隠しとか虚偽報告、通報のおくれなど体質化していたさまざまな問題が吹き出しました。しかし、それだけじゃないと思うんですね。事故発生直後に私、現地調査に入ったとき、現場技術幹部の方から、ナトリウム技術は完成したものと思っていたと率直なお話を伺いました。  そこで、少しそこにかかわって聞いておきたいのですが、世界で高速増殖炉からの撤退が相次いでおりますが、日本では、商業用として完成するということにしても、いろいろな方のいろいろなお話がありますが、だんだん大分先に延びていくみたいで、二〇二〇年から二〇三〇年ぐらいに商業用に完成するとすると、かなり長い先の話になってきているように思います。それは、採算性の問題がもちろんあるわけですけれども技術的に解決しなければいけないのはプルトニウム問題とナトリウム問題だということで科学技術庁の方はお考えになっていらっしゃると見ていいですか。
  178. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 技術的には、高速増殖炉でございますから、非常に狭いところが炉心でございまして、そこから大量の熱を取り出す。軽水炉よりも熱の密度は物すごく高いわけでございますので、それに関連した技術。ナトリウムもそのために使うわけで、高速中性子を使うという意味もございますが、熱を取り出すためにもナトリウムが必要なわけでございまして、そういうことに関連した技術としまして、ナトリウム技術というのは非常に重要だとは考えております。  それから、プルトニウムの話は、例えば新型転換炉、ATRでもプルトニウムを燃やしておりますし、先ほどの、炉心が非常に欄密であるという意味で難しさはあるかもしれませんが、その技術的な点はそういうことかと考えておりますが、基本的には、一つの大きなプラントが全体としてうまく動くようにするというプラント技術、そういうものも新しい仕組みのものではかなり経験が要るのではないかという気もいたしております。
  179. 吉井英勝

    ○吉井委員 これは高速増殖炉ですから、増殖するわけですから、そこには、使用済み燃料の再処理、高次化したプルトニウムの再処理、ガンマ線の問題だとかさまざまな問題があるわけです一ですから、プルトニウムの技術とナトリウムの技術、それらを一体として見たときの、今あなたもおっしゃったプラントのさまざまな問題、いずれにしても技術的にはそこをやはり解決していかないとなかなか実用化というところに行くものじゃないということは、今のお話を伺っておってもよくわかるところです。ですから、さまざまな分野の技術、そこの解決がなされないとだめな分野なんですね。  そういうときに、これまでのキャッチアップの時代からフロントランナーへということを皆さんよくおっしゃるのだけれども、キャッチアップの時代ですと、模倣技術といったら時には言い過ぎになる場合もあるかもしれないけれども、それに近い面が随分あるわけですね。例えば再処理の分野でも、原研で研究していたものと違うものを、原研の人たちが取り組んでいたのとは切り離して、海外からの技術導入によって進めてきたという問題。それから、世界がナトリウムでやっているから、だから日本高速増殖炉はナトリウムでと。これは、ある意味ではフロントランナーが走ってやっているものを、模倣という言葉には皆さんは抵抗を覚えられるかもしれないけれども、現実には技術導入とか諸外国の論文を読んだりして、それでとにかくキャッチアップしていくということで進むこともできるわけなんですが、アメリカもやめた、ドイツもやめた、各国次々とおりていった、振り向いてみれば結果的にフロントランナーになっていたというときに、そうなると、ナトリウムそのものについて、あるいはそれ以外の液体金属についても、それから高速増殖炉そのものについても、その関係する基礎的な技術とか周辺の技術を含めて、やはり高い到達点というものが求められてくるというふうに思うのですよ。  それで、法律案で見てみますと、業務の範囲を定めているわけですが、逆にそこでは、先ほども言っていました基礎研究は行わない。これは実際にどういう仕組みかというのでレクチャーに来ていただいて、基礎研究は行わない、日本原子力研究所で実施というふうに御説明を、文書も示していただきました。つまり、もう新しい組織では基礎研究をやらない、原研でやるということなんですが、そうすると、フロントランナーになって、本当はいろいろな問題、よその論文を読んだりしてやっていられない、まねのできない、そういう事態に直面しながら基礎研究をやらないとなりますと、かなり研究は制限的なものだというふうに理解していいのですか。
  180. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 新しい機構で行います研究というのは開発に必要な研究ということでございますから、開発に必要な研究というのは十分できるわけでございます。例えば何かトラブルが起きた、それの解析をするとか、そういうために必要な研究は、これはもう開発のために必要な研究でございますから、そういう観点から十分できると思いますが、目的がはっきりしないようなもの、将来何に使うか全くわからない、そういうような基礎的な研究についてはこの機構はしないということでございます。
  181. 吉井英勝

    ○吉井委員 例えば今の液体金属の問題にしても、液体金属の研究はもう技術的に終了したというふうに見るかどうかというところで、そこにかかわって基礎研究も含めてやっていくのか、もうそれはやらないということでいくのか、随分これからの方向性というのは変わってくるのですね。一九五五年当時、日本に来て大学で講演したりしておられたものを武谷さんらがまとめられた、クラーク・グッドマン教授の「原子炉入門」などというのはうんと昔々の話になりますが、そういうもので液体金属のことなんかを学んだことも思い出すわけです。グッドマン教授のこういうものの中で、うんと古い時代に紹介されていた、冷却材として望ましい性質として、融点が低いこと、それから沸点が高いこと、安価であること、普通の金属容器に入れられる、中性子吸収断面積が小さい、熱輸送係数が大きい、ポンプ輸送が楽で、減速能率がよくて、熱的安定性があり、放射線に対して安定なもので、放射能を帯びにくい、作動流体と激しい反応を行わないなどといったことを学んだわけです。  そして、いろいろの性質とともにパワーコストを考えてナトリウムに傾いていたというのが、当時としてもあります。ただ、もちろんこの時代でも、中間ループを要しないことによるコストダウンを考えると、ナトリウムと競争できそうなものには、ビスマスとかあるいは鉛とビスマスの共融混合物なども挙げられておりました。  今日ではそういう液体金属の研究というのはもう完成して終了しているんだ、だからナトリウムを中心としたもので、これでいけばもう十分だというのが科学技術庁の考え方というふうに理解させてもらっていいのですか。
  182. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 その点につきましては、昭和四十二年に動力炉開発プロジェクトというものが始まりました。その前数年間日本としてどのような動力炉開発するかということでいろいろな検討が行われまして、当然、先生指摘のような、ビスマス系とかいろいろなタイプを含めて検討が行われたと思いますが、その中で高速増殖炉と新型転換炉が選ばれましたけれども高速増殖炉につきましてはナトリウム冷却ということで進んできたわけでございまして、動燃事業団ができて以降、それよりもすぐれたものというものは多分出ていないのではないかと考えております。  基本的には、ナトリウム冷却の高速増殖炉は、我々の技術でこのまま進めていけば、技術的には物にできるものと考えております。そういうことで、高速増殖炉につきましてはナトリウム冷却のものを引き続きやっていくということになろうかと思っております。
  183. 吉井英勝

    ○吉井委員 いずれにしても、液体金属にしてもそれぞれ長所、短所、さまざまな特性があるわけです。大事なのは、事故発生時の安全性ということが非常に大事な点でして、アメリカのように広大な国土の国での原子力利用、これも非常に、アメリカ自身、世論的にも厳しいものになってきております。それから、あなたが判断したとおっしゃる以降、原発事故原子力事故に対する受けとめ方とか、認識の違いというものはやはり出てきているわけですね。時代が変わってきているんです。国民の受けとめ方も変わってきているんです。それらを考えたときに、冷却材として有利な点が実は安全技術の面からするとマイナスに作用することもあるわけですま。  それは、化学的活性であることが、水、空気、ハロゲンその他と反応、それも非常に激しく反応するという問題とか、中性子照射による誘導放射能を持つことで、ガンマ線放射能の減衰に炉を停止してから約八日間ぐらいかかるという問題とか、熱的にナトリウムは非常にいい性質を持っているわけですが、しかし、その熱伝導度の非常に高いという利点が構造材に対して非常に強い熱衝撃の問題を持っているということとか。ですから、これらは原子炉事故発生時に対応をする上で非常に難しい問題となっていることは確かだと思うのですが一この点は多分考えは一致すると思うのですが、どうですか。
  184. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 ナトリウムの詳細を必ずしも存じ上げておりませんが、少なくとも、空気に触れると燃えるとか、水と激しく反応する、そういう性質がございますので、そういう点からの安全性、そういうものも十分我々としては克服しなければいかぬ課題だと考えている次第でございます。
  185. 吉井英勝

    ○吉井委員 ですから、もう一度確認しておきたいのですが、それぞれのものに、それぞれの長所、短所があるんです。ですから、さまざまな利点があるとともに、しかしその中で、やはり我々が仮にそれを利用していくということを考えたときには、最も大事なことは、事故発生時の安全性という観点、これはやはりきちんと持っておかないと、どういう研究をやるにしても開発をやるにしても、これは話がおかしくなると思うのですね。この点はどうですか。
  186. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 原子力発電につきましては、基本的にそういう難しい技術をやっているわけでございます。臨界をきちっと維持して、そこから熱量を取り出す、そういうシステムをつくっていくこと自身が非常に難しいところでございまして、そういうことにつきましては、既にもう軽水炉技術で我々は大体こなしているわけでございます。それに加えまして、あとはナトリウムに関する技術でございまして、それにつきましても、ナトリウムのいろいろな各国の原型炉、イギリスは二十年ぐらいDFRを既に運転して終了しておりますし、フランスのフェニックスも、同じ規模でございますが、二十年間運転して、さらにもう少し延長して運転しようということでございまして、そういうナトリウムの技術というものは、我々としては十分対応していけるものだと考えている次第でございます。
  187. 吉井英勝

    ○吉井委員 軽水炉技術があなたがおっしゃるほど完成しておれば、数年前の関電・美浜の事故にしてもないわけですよ。ナトリウムがそれほど完成しているものであれば、もともと「もんじゅ」の事故もなかったんですよ。  だから、私が言っているのは、すべてもう完成したという発想じゃなくて、やはり大事なのは、事故発生時の安全性というこの観点、どんな法律をつくるにしても、国家としてはそのことについて一番責任を持たなければいけないのですから、この観点はやはり貫くべきなんじゃないですか。どうですか。
  188. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 高速増殖炉技術は完成している、ナトリウムも完成しているとは必ずしも言っているわけではなくて、我々は対応していけると考えている次第でございますが、御指摘のように、その安全の問題につきましてはもう十分配慮しなければいけませんので、その設計の段階、製造の段階、それも細心の注意を払いながら建設、運転をしなければいけないと思いますし、また、それを運転する体制、ソフトの面におきましてもきちっとそれができるような体制になっていかなければいけない、そういう意味では御指摘のとおりだと思っております。
  189. 吉井英勝

    ○吉井委員 せんだって、御承知のように西澤教授に来ていただきましたけれども西澤先生の言葉で言えば、危険にふたをする技術ということをおっしゃいました。それは、言葉をかえて言えば安全技術ということなのですが、水や空気と爆発的に反応しない材料を選ぶことも一つです。仮にナトリウムを使ったとしても、大規模事故発生時にも完全に封じ込めることのできる技術、これも先生のおっしゃる危険にふたをする技術だと思うのです。しかも、そのときは、プルトニウムなどを含めた高レベルの放射性物質の放出を伴うようなこと、それも完全に封じ込める技術の完成ということが必要になってきます。しかも、実用化ということを考えれば、コスト面でもクリアされるということが問題になるわけですね。  こういう面で、何か先ほど軽水炉もナトリウムももう完成したかのように、少し今言いかえはされたけれども、この面の技術というのは今どの水準に到達しているというふうなお考えなのですか。
  190. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 プルトニウムを封じ込める技術というのは、要するに炉心の事故を起こさないということだろうと考えておりますが、そういう前の段階で、ナトリウムが大量に漏れない、そういうことが重要かと考えております。きょうの午前中の議論の中で、辻先生からのお話で、動燃事業団が答えた中には、百五、六十トンのナトリウムが漏れるということを想定して安全審査をしていると言っていらっしゃいましたが、そういう意味では、そういうナトリウムの事故が起きたときにそれを封じ込める、そういう考え方でできているものであると考えております。
  191. 吉井英勝

    ○吉井委員 私は、そういう考えでやってきたということと技術的に到達しているという話は全然違うということをきちっと申し上げておかなければならぬと思うのです。  ナトリウムそのものは技術的に完成したものだと思っていたという思い込みがありましたということを、実際事故直後に現場技術幹部の方がおっしゃっておられたのですよ。私は、やはり今日の水準でもってもう大丈夫という思い込みが一番怖い。スリーマイル島事故のときのアメリカのケメニー報告でも、大統領報告の中でも、事故の最大の原因の一つは、安全だという、もう到達したという思い込みであったと。そこは非常に大事な点であって、今日、そんな水準に達しているのであれば、これは大体、二〇二〇年だ、三〇年だと言わなくても、もう二、三年先ぐらいに高速増殖炉でやっていけるということなのでしょう。しかし、とてもじゃないがそこまでいっていないこと自体が今のこの水準というものをはっきり示していると思うのですよ。そこを踏まえて臨まなきゃならぬと思うのです。  さて、これからの課題として考えたときに、私は、原子炉のタイプそのものを含めてまだまだいろいろ検討していかなきゃいけない問題があるというふうに思うのです。例えば、超ウラン元素をつくらないものを考えていく。クリプトンとかキセノンなど、そういうものを常時簡単に取り出せるものであることとか、廃棄物が極めて少なくて、廃棄物処理も保守もやりやすいものとか、化学的に不活性で爆発的な反応の心配がないものとか、それから、高温高圧などの運転条件を避けられることで、故障確率が低くて保守点検も容易なこと、さらに、余剰反応度がうんと弱いものとか、炉心溶融や再臨界が起こりがたいもので過酷事故をかなり排除する可能性の開けるもの、こういう原子炉の研究というものが本来先行して、基礎的にまず行われて、その後から、安全技術の確立された枠の中での実験炉とか原型炉へ本来は進むべきものじゃないかと思うのです。その点についてのお考えはどうなのですか、科学技術庁は。
  192. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 今のは多分溶融塩炉の話だと思いますが、溶融塩炉につきましては、それなりにそういうメリットはございますが、片やなかなか難しい点もあるやに伺っておりまして、アメリカにおきまして、一九五〇年代にそういう炉を建設しようという話もございましたが、なかなかうまくいっていない。それから、日本の国内におきまして、動力炉開発が始まった以降におきましても、そういうような研究が重要だと御指摘されました学者の先生もいらっしゃいました。そういうことも承知しております。  しかしながら、そういうそれまでの技術的なものを評価いたしますと、基礎的な研究をされる、それはいいかと思いますが、一つのプロジェクトとしてやっていくにはなかなかまだ詰まっているものではないのじゃないかと考えております。
  193. 吉井英勝

    ○吉井委員 私、キャッチアップの時代だったら、あなたの今の発想でいいと思うのですよ。とにかくナトリウムを中心とした技術で進んでいるから、とにかくキャッチアップだから、それを模倣してやっていきましょう、これはいいと思うのですよ。しかし、これはなかなか難しいからもう研究やめたと、周りが全部ナトリウムを含めておりてしまった、フロントランナーになったというときに、果たしてそれでいいのだろうか。やはり、今、原点に立ち戻った検討が原子力の分野では必要なのじゃないか。  私が、もう原子力は最初から、はなからだめという立場の人間であればそういう話はしませんよ。二十一世紀とか二十二世紀も、非常に長い人類社会を展望したときに、エネルギしの問題というのは、いずれにしても私たちはどういう形でか、後世代の人たちの時代に完成することも含めて、きちんと研究はしなきゃいけないわけですね。そういうときに、キャッチアップの時代じゃなくて、みずからフロントランナーになって、しかし、フロントランナーがこれでと思い込んでやったものが全然的が狂っておったら大変なことになるわけですよね。  だから、そういう点では、もう基礎研究はやらないということで研究制限的にいくのか、そういうことを含めて、もっと基礎的なところから日本がしっかり、仮にフロントランナーになるとすれば、全体を見渡すことのできるような、学問的にも技術的にもそういう水準に到達していくことを着実に進んでいくのか、私はこの点はなかなか大事な点だというふうに思っているのですよ。  元原研でナトリウムの研究をしてきた古川さんなどは、ナトリウムはすばらしい能力を持った金属だというふうに言っている方なんですよね。今おっしゃったような溶融塩炉の考え方ですね。これは、おっしゃったように、昔の昔になりますが、グッドマンの時代から紹介されてきたものであって、古川さんなどはトリウム溶融塩炉を提起していらっしゃるわけです。だから、どの炉の型式が本当にいいのか、もう研究の余地はないのか、結論は確定したのかというところが実のところ今改めて問題になっているのじゃなかろうか。  つまり、かつてのように、動力炉としてやってきたときのコスト中心の考え方でいけば、今お考えになって言われたことも、私はわからぬことはないですよ、コスト論だけでいけば。しかし、今国民が、本当に安全技術の確立、安全な技術の水準の枠の中で、どうこれが本当に安全技術の面でクリアされて実現できていくのか、それが実現のめどがなければ、それはノーという回答が出ることもあると思うのですよ。しかし、そういうときに、どんな炉の型式が本当にいいのか、そういう研究の余地はもうない、必要はないという立場に立つのかどうか、私は、ここのところは、科学技術庁としても相当真剣で深刻な検討や議論が必要じゃないかと思うのですよ。その点、どうですか。
  194. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 二つに分けて考えたいと思いますが、一つは、日本の中でそういう研究が要るのかどうか、あった方がいいのかどうか、こういう話でございます。もう一点、機構がそういうことをすべきかどうかという話でございます。  現在、機構はプロジェクト的なものを、要するにチームを組んで組織的にやっていくような研究開発を進めていきたい、そういうことでございまして、今の先生の、かなり基礎に立ち返ったような研究をしなくていいのかという話でございますけれども、それは、どちらかといいますと研究者の発意、創意によりまして、日本原子力研究所とかあるいは電力中央研究所とか、いろいろな研究機関がございますが、そういうところでいろいろな研究をされるのは、それはそういうこともあり得るのじゃないかと思いますが、少なくとも、この機構でプロジェクト的にやっていく対象にはならないのだろうと考える次第でございます。
  195. 吉井英勝

    ○吉井委員 今のお話でかなりはっきりしてきたと思うのですよ。つまり、ネーミングを変えて、やることは、この機構として進めていくのはこうだという方向なんですよ。だけれども、そうすると単なるネーミングの変更で、基幹的事業はこれまでどおりということじゃなくて、そこを転換して、日本原子力研究そのものについて大もとから考え直すということになれば、なるほど、今まで約四兆円ほどですか動燃で使ってきた、この道でいきたい、それにかけるという思いは思いとしてあなたの方にあるとしても、しかし、もっと長期に見たときにどういう道を選ぶのが本当に大事なのか、そのことが今問われてきているのじゃないでしょうか。  例えば炉の型式についても、溶融塩炉ということも含めての炉の型式もあれば、高速増殖炉にしても、ナトリウムを使ったFBRにしても、「もんじゅ」で目指そうとした、そういうタイプでいくのか、もっと小型化したものですね、非常に一基当たりの出力が高いものですから、小型化して安全技術の枠の中におさまるようなもの。もちろん、そういう段階であっても、安全技術そのものが開発されて進まないことには、人類の到達したその時代の安全技術の枠の中に、幾ら小型化してもおさまるとは簡単にいかないでしょうけれども、しかし、炉のタイプにしても、超小型安全炉の研究日本国内でもやっているところもあるわけですよね。一体どういう道を選ぶかということは、今本当に、ネーミングの変更以上に、これは研究開発の大もとについて考えなきゃいけないときじゃないかと思うのですが、どうですか。〔委員長退席、斉藤(鉄)委員長代理着席〕
  196. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 少なくとも高速増殖炉につきましては、高速増殖炉に関します原子力委員会の方針がございまして、それに従って動燃事業団、これからは機構開発していくわけでございますけれども、例えば高速増殖炉につきましても、ロシアでは、多分ちょっと日本と違ったような考えの研究活動もされている。それから、燃料をつくるのにも、バイパックと申して、何か振動を使って埋めていくとか、あるいは、高速増殖炉の時代になりますと、当然、再処理というのが重要でございますが、そういう再処理も乾式でやるとか、いろいろなアイデアもあるわけでございます。今の研究開発としてはそういうことで進んでおりますが、長期のいろいろな勉強という意味では、ロシアからも高速炉の研究を一緒に何かやろう、そういう提案もあるわけでございますので、そこは余り固定的に考えずに、勉強としてはいろいろやっていくということはあり得ることだと考えております。
  197. 吉井英勝

    ○吉井委員 これまで、プルトニウムサイクル、循環のこの方式で、高速増殖炉はナトリウムを使った「もんじゅ」でやってきたこの方式でということで、今進んでいるわけです。それで事故は随分起こしたのですよね。私は、ある意味ではいい機会だと思うのですよ、日本原子力研究を一度大もとに立ち戻って考えるという。ところが、どうもいろいろな審議会だ、検討会だと持たれても、もともと最初から、プルトニウムサイクルのこの路線、「もんじゅ」型でやってきたこの路線は変えないのだ、進めるという枠を決めての議論をやってきているものですから、本当のところを言って、今本当に深めた議論がなされなきゃいけないときに、なされていない。  今の、とにかく一度レールを敷いたら、それいけどんどんでいってしまう、国民が何を心配しようと、何を言おうと、とりあえず何とか懇談会だとかを持って国民も入った、ガス抜きはやった、しかし結果は変わらない、変えたのはネーミングだけだ、こういうふうなやり方で本当にきちんとした日本原子力政策の原点についての検討ができるんだろうか。  そこで大臣、私は、それほど専門的な話でもありませんが、いささかそういうのを入れて議論をしてきたわけですが、今大事なことは、「もんじゅ」型でどんどんいった、しかし本当はこれでいくよりも、結果として溶融塩炉の方がよかったという結論が数年先に出るかもしれないんですよ。「もんじゅ」型でいってうまくいかなかったということになるかもしれないんです。これはわからない話なんです。私は、それをうまくいかないと決めつけて今言っているわけじゃないんです。  今、ネーミングを変えて、これまでやってきたんだからこれというふうな、そういう行き方を進めるということだけじゃなくて、やはり政治の世界はもっと基礎の部分で、この原子力の問題については、炉のタイプ、型式もそうだし、そして本当に、これまでの人類の到達した技術の枠の中では実際には安全は確保できないということは、幾つも事故をやってきたわけですよ。それは本当に封じ込められるものになるのか、あるいは、事故をそもそも起こさないようなタイプを開発するのかということを含めて、私は、基礎に立ち戻った研究、検討というものをやはりやるべきじゃないかと思うのですが、中間的に大臣のお考えというものを聞いておきたいと思うのです。
  198. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 京都大学の工学部で原子核工学を専攻された吉井先生の御論議に私お答えするような専門的知識がないわけでございますが、ナトリウムを冷却材として用いた高速増殖炉ばかりじゃないぞということをおっしゃっているのだろうと思います。  ただ、これは、動燃がいろいろな事故を起こしました中で、私どもも円卓会議というものを原子力委員会で持って、各方面の御意見を聞いてきた。そういう中で、高速増殖炉のあり方についてももう少し議論をしろというお声が出てきて、西澤先生のもとで高速増殖炉懇談会というものをおつくりいただいて、何回か御議論をされて、一つの方向を出されている。実は、私の高速増殖炉についての知識というのは、このレポートを再三読ませていただいたということの上を出るものではないのでございますけれども、その中でも高速増殖炉のメリット・デメリットというものについての御議論があって、その上で一定の方向が出されているのではないかと思っております。  ただ、吉井先生が御指摘のように、我々も、何も馬車馬のように一方だけを見詰めて走ればよいというものでもないと思います。この高速増殖炉懇談会報告の中にもいろいろな柔軟な対応というようなことが書いてあるのも我々は念頭に置いておかなければならないのではないかという気持ちもございます。ただ、視野は広く持つ必要があると思いますが、当面私がお答えできるのはこのぐらいのことでございます。
  199. 吉井英勝

    ○吉井委員 次に、私は、技術の継承性という面から見ていきたいと思うのです。  けさほど来議論のあった一つに、「もんじゅ」の事故の温度計問題がありました。当時における計装品については一般的であったというお話もありました。ただ、私も当時現地に行きまして、温度計の差し込む場所がなぜ横からなのか、「常陽」となぜ違うのか。横から差し込むということは、これは当時専門家の方たちから、ナトリウムを抜いたときの腐食の問題とかいろいろな問題も出てきて、なぜなのかわからないという話も既にありました。  それから、温度計をどこまで差し込むかということについても、それはそもそも、温度計を差し込んで、ついでに圧力計も差し込んで、流速分布とか温度分布を調べる実験であればわからないことはないのですが、なぜわざわざ真ん中まで差し込むのか。ナトリウムは非常に熱伝導がいいものですから、もっと壁面近くに温度計を出しておくだけで本来温度はわかるわけなんですよね。それは、壁面の影響を避けるとかいろいろなこともあったかもしれないが、逆に、そうしたときに、温度計に対する流力弾性振動の問題とかカルマン渦の問題などについては、そういうのはこれまでからずっと研究成果がいっぱいあるわけですね。それにもかかわらず、なぜ横から、なぜ真ん中まで差し込んでやったのか、設計思想がわからないというのがかなり多くの技術屋さんや研究者の言葉でもありました。私もそこは非常にわからないところだったんです。  実は、このこと自体が、「常陽」からの技術の継承性ということもあれば、それまでのいろいろな分野での技術の継承性ということを考えてみても、やはり技術の継承性という点では非常に弱点を持っていたのじゃないかと思うのです。この点について、これは指導監督する側でいらっしゃった科学技術庁の方のお考えを聞いておきたいのです。     〔斉藤(鉄)委員長代理退席、委員長着席〕
  200. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 「常陽」から「もんじゅ」への技術の継承ということでございますけれども、原子炉の中で非常に重要なものとしましては、当然燃料がございます。それから、それを制御する制御棒というものがございます。それから、当然、ナトリウムが速く回るわけですから、その配管に関連したバルブとかいろいろなものがあるかと思います。原子炉回りのそういうものとか、全体のプラントの技術、そういうものにつきましては、人材も含めまして、「常陽」をやった人が「もんじゅ」のことをするというようなことも含めまして、「常陽」から「もんじゅ」に技術が伝達されているものと考えております。  また、そういう燃料の設計とか流れの設計等で使います計算コード、そういうものは当然「常陽」で開発されたものが「もんじゅ」に生かされていますし、当然その間には改良とかあると思いますが、そういうことで生かされているかと思います。
  201. 吉井英勝

    ○吉井委員 温度の超音波測定について、耐久性、信頼性、実証性の確認につき時間がかかるというお話が午前中もありました。本来、「常陽」で確認されてきたやり方、それを使えば、もともと温度計にしても随分違うものになってしまっているのですよ。ずっと「常陽」で確認されたものと違うものをやって、そこからナトリウムの漏えい火災事故を起こしたわけなんです。だから、技術が継承されたとか、そういうふうな言いわけをしておったのじゃ、私は本当に、この事故の教訓を酌み取って科学技術庁が進んでいこうとこの法律案を出してきて、事故の経験を踏まえて進もうとしているんだということにならないと思うのです。ナトリウム技術という点で見ても、原研でやってきた方たちの技術が継承されていないこととか、今の問題などを含めて、私は、そういうお話じゃこれはだめだと思います。「もんじゅ事故の解明というのは、今組織改組することで解明を終わらせちゃならないときなんですよ。  これも午前中お話がありましたが、例えば、ナトリウム・コンクリート反応の問題ですね。床ライナーの腐食問題、これは私自身が、その問題についてフランス政府の報告書を二年前にも取り上げてやったことがあります。いずれにしても、フランススーパーフェニックスの調査報告書では、「高温下で水素放出が起こる可能性を否定することはできない。あらゆる爆発の危険を排除できるように、このような放出の大きさを制限する必要がある。」つまり、ナトリウム・コンクリート反応の後の水素爆発の問題など、建屋の破壊に至ることもあるから非常に神経を使わなければならないんだということがフランス政府の報告書ではもうずっと前に出ておったわけですよ。これは九二年の報告書ですよ。しかし、それが十分酌み取られていなかったじゃないかという午前中の辻議員の御指摘もそういう趣旨を踏まえてのことだと思うのです。  それで、動燃技報に発表された、動燃自身が実験されて既に紹介されているものを見ても、日本自身研究がまだ十分でなかったということがわかりますよ。  動燃技報では、スプレー火災だけじゃない、コラム状の漏えいのことは今後究明すべきだとしていたわけで、そのことを、動燃もさることながら、動燃のそういう研究状況を科学技術庁としてちゃんと御存じであったはずなのに、フランス事故と比べて、向こうの事故は溶接部分だと。箇所の違いじゃないのですよ。漏れたことに対する対応、そのときの対応をどうするかということについて、動燃自身もコラム状漏えいの場合にもっと究明すべきことはあるとしてきたのですから、それに対して、科学技術庁としてもきちんとした指導とかを本来やってくるべきであったのにそれをやってこなかった責任というものはあるわけです。そういうことがあいまいにされて、今度何かこの組織改組が行われて、気がついてみればいつの間にか雲散霧消しておったということになったら、これは大変だと思うのですね。  この点について、やはり「もんじゅ事故の解明は終わっていない、これからもきちんと続けていく、そして、ナトリウム漏えいによる床ライナーの腐食から、さらにはナトリウム・コンクリート反応などによる爆発による建屋の破壊とか、そういうものについてもきちんとした研究もやっていく、こういうことは科学技術庁としては考えているわけですか。
  202. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 先ほどの、そういうコラム漏えいでしょうか、ちょっとその技報を見ておりませんのであれでございますが、仮に動燃の技報にそういう研究が必要であるというのがあれば、少なくとも研究のマネジャーは当然継続して研究していただくというのが筋であろうと思います。そういう意味で、もしそれが事実であるとすれば、やはり研究のマネジメントに何か不備があったのではないかというふうに考えている次第でございます。
  203. 吉井英勝

    ○吉井委員 私は、これほマネジメントの問題だけじゃないと思うのですよ。大体、国民の税を投じて研究をやっていて、そしてナトリウム関係は二千億近い実験費を使ったわけでしょう。それだけの成果物として、スプレー火災の場合はこうだと。しかも、その研究というのは辻議員も午前中お話ありましたが、一九七〇年代から十五年間にわたってやってこられて、アメリカの論文なんかも十分勉強もしてこられて、そしてみずから動燃の中で実験プラントもつくってやってこられて、メプレー火災についてはこうだったと。しかし、ちょうど「もんじゅ事故のときのようにぽとぽとと液滴状からさらに水柱のようにコラム状に漏えいが起こったときについては、これはさらに検討をしていかなければならないという報告まで出していたわけなんです。  ちょっとその部分を言うと「一九七〇年代後半から約十五年間にわたって実施してきた本研究には動燃事業団の数多くの研究者が携わってきたことを付言しておく」と。これはこの漏えい研究そのものについてですが、その上で、「スプレイ燃焼よりも穏やかな燃焼形態であるコラム燃焼について評価手法を確立するとともに」ということで、もっとこれはやらなければならぬということも述べ、そしてさらに、「現在は評価手法の高度化を狙って、コラム状の漏洩燃焼形態に関する知見を補強して評価手法を充実させる」ということを動燃の方ではちゃんと研究報告も出していらっしゃって、それは科学技術庁監督官庁としてちゃんと見てきたわけですから、これは経営の問題だけじゃなしに、予算を伴う部分はまさに、お神酒どっくりという表現はおかしいかもしれないけれども国が一体となってやってきたわけですから、それを経営責任だ何だということで済ませてしまうということはやはり許せないことだと私は思うのです。  ですから、「もんじゅ事故の解明と、そしてこれら一連の問題については、動燃改組ということで解明を中途半端に終わらせないで、きちんと究明する、やはりこういう立場を科学技術庁はとるべきだと思いますが、これはどうですか。
  204. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 「もんじゅ」に関します一連の安全点検というのはそれぞれの段階を踏んできているわけでございますが、いずれにせよ、ナトリウム漏えいに関連いたしまして、「もんじゅ」全体の安全性を確保できるかどうかというのは、これからまだ安全審査等で審査するわけでございますので、そういう過程を通しましてそういう問題につきましても十分対応してまいりたいと考える次第でございます。
  205. 吉井英勝

    ○吉井委員 さてそこで、「もんじゅ関係文書の公開の問題で、法律では今度情報公開のこともさらにうたっているわけですが、設置及び工事の方法の許可申請書三万三千ぺ-ジのうち約三割、一万ページほどが、一ページ丸々白ぼてのまま、空白のままということで、私はこういうやり方はだめだということをこれまでから何度か議論してまいりました。国民の税でもって賄われる研究が、請け負うている各企業の知的財産権保護だということでもって公開されない、こういう事態が続いてまいりました。  この問題については動燃の方に、理事長さんに伺っておきたいのですが、こういう問題、随分国会でも議論してまいりましたけれども、やはりこれは、改組するしないの話じゃなくて、一〇〇%公開をする。つまり、税でもって賄われる研究というのは国民の共有財産なんです。これは動燃の私的財産でもなければ、それを請け負うた企業の知的所有権の話じゃないのですよ。そんなに知的所有権を言いたければ、動燃の下請研究をする企業は契約を結ばなければいいのですよ。国民の税でもって研究をやらせてもらったからには、これは国民の共有財産だという立場をきちっととらないとおかしいのです。この点、理事長さんから伺っておきたい。
  206. 近藤俊幸

    近藤参考人 お答えします。  そういった情報公開には大いに力を入れているところでございますが、今テーマとして出されました「もんじゅ」の、設工認と言っておりますけれども、これの公開の度合いでございますが、従来は、御指摘のように三〇%あるいはそれ以上白紙でございました。それで、こういうことではいかぬということで、メーカーさんともさんざん交渉いたしまして、今一%未満の空白というところまでできております。  ちょっと残念でございますが、実はきょう公開したいというふうに考えておりましたけれども、ここ数日、ちょっとおくれ様甘けれども、おっしゃるようにできるだけ全面公開ということで進んでおります。  あと、その一%は、これももう少し時間がたてば、見直していきますので全面公開のときも来るかと思いますけれども、差し当たりは、一%ぐらいは残るというところまで詰めましたので、よろしく御理解のほどお願いしたいと思います。
  207. 吉井英勝

    ○吉井委員 相当長い期間にわたってこれは議論してまいりましたね、大臣。三万三千ページの申請図書の中の一万ページほどが全くの真っ白だったのです。つまりこういう状態だったのですよ、ページ数だけ打ってあって。異常な事態が原子力開発の分野で続いてきたのです。研究開発だといったって、これではとてもじゃないが国民の理解は得られないし、それがやはり動燃の秘密主義とか虚偽体質とか言われるものを生み出していった素地になったと思うのですよ。  そういう点では、これまで原子力基本法では、自主、民主、公開をうたってきたのです。日本原子力開発はその立場でいかなければいけないのです。ところが、公開をやらない、三割は公開しないのが当たり前、それ以外にもっとひどい話はいっぱいあったのです。だからそれは、今までが法律違反の状態だったのです。今後、新しい法律公開のことをうたっているわけですが、自主、民主、公開ということについては、国民の税でもって賄われる情報について、しかも原子力基本法で定められているのですから、法律違反は許さない、一〇〇%の公開をやはりやらせるようにするという大臣の強い指導が求められると思うのです。  最後に、大臣の決意というものをお伺いしたいと思います。
  208. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 先日も本会議で、斉藤議員の御質問だったと思いますが、もう一回原子力基本法の原点に立ち返るべきだという御趣旨の御質問があって、私は、何度でもその原点は見直さなければならなやということを御答弁申し上げたわけであります。  ただ、具体的になりますと、やはりどこまでできるのか一命、初めは三割ぐらいあったのをあと一%まで持ってきた。これは動燃も随分努力をしたということをお認めいただきたいと思うわけでありますが、どこまでぎりぎり詰められるのかということは、我々、常に意識しながら前へ進んでいきたいと思っております。(吉井委員「ただ、法律を守るか守らないかということがありますからね、自主、民主、公開という」と呼ぶ)それは、その原子力基本法の原点を何度も確認することは当然だろうと思っております。ただ、具体的な運用はどうなるかということを全部、今、視野を広くしてお答えをすることは私はできませんので、その原点は何度も確認をしたいと思っております。
  209. 吉井英勝

    ○吉井委員 では、時間が参りましたので、一層の公開を求めて、終わります。
  210. 大野由利子

    大野委員長 島津尚純さん。
  211. 島津尚純

    島津委員 民友連の島津尚純でございます。  原子力基本法及び動燃事業団法の一部を改正する法律案につきまして質問をさせていただきたいと思います。  このたびの二度の動燃事故と不誠実なその後の対処の仕方により、国民原子力に対する不信は増幅し、今後の原子力政策の推進に大きな障害となっておるわけであります。  しかし、我が国エネルギーにとってみますと、原子力は極めて重要でありまして、現在稼働中であります原子力発電所は五十三基、そして四千五百二十五万キロワットであります。これは総発電電力量の三四%、大変大きいものであろうと思います。また、昨年十二月のCOP3において国際公約をしましたCO2の六%削減達成のためには、さらに二〇一〇年までに二十基の原子力発電の増設が不可欠である、このようなことも提言されておるわけであります。もしそうなれば、この原子力比率というものは四二%になる、このようなことであります。  それに対して、脱原発あるいは反原発とおっしゃる方々は、原発にかわって新エネの拡大あるいはクリーンエネルギーの導入拡大というようなことを安易におっしゃるわけであります。私も、もちろんこの新エネの導入に対しては賛成なのでありますけれども、しかし、新エネルギーをよく考えてみますと、例えば、新エネの中でも最も期待をされております太陽光発電にしましても、今開発中の技術がすべてうまくいったとしても二千万キロワットぐらいが導入の限界であろう。そしてまた、太陽光発電といいますのは設備利用率が非常に低いわけでありますから、二千万キロワットを導入できたとしましても、総需要電力量に占めるその割合というのは一%か二%ぐらいということでありまして、とても原子力にかわるエネルギーになり得るとは考えられないのであります。  このような観点からいいますと、安全性を確保しながら原子力を推進していくということが、当面、我が国エネルギー政策の根本である、このように思うわけであります。  そこで、長官お尋ねを申し上げたいわけでありますが、まず、我が国エネルギー問題に対して原子力をどう位置づけておられるのか、また、今回の動燃事故によって失われたこの原子力に対する信頼をいかに回復し、そして必要な原子力政策を進めていかれるお考えなのか、まずこの辺からお聞かせをいただきたいと思います。
  212. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 今島津委員から、今のエネルギーの状況の中で原子力を位置づけながら御質問いただいたわけでありますけれども、私の認識も先生の御認識とおおむね同じでございまして、我が国のように資源の乏しい国、八割を輸入に頼らなければならない国でありますし、その中で、今いろいろ苦労をしているわけですけれども、ここまで経済的に充実した国をつくってきた。どうしてもエネルギーの安定的供給ということを視野に置いて、将来においてもエネルギーの安定的な確保が図れるということを考えていくということは、国策の一番基本一つではないかというふうに私は思っております。  そういう中で、エネルギーを海外に頼らなければならないわけでありますから、省エネということも工夫をしなければならないのはもちろんでありますし、今島津委員が御指摘のように、新エネルギーというものも決して否定していいとは思いません。この新エネルギーの太陽光であるとかあるいは波であるとか風の力を利用するというようなことも十分に我々は考えるべきであります。その上で、石油であるとかあるいは原子力であるとかのベストミックスを考えていかなければならないと思うのですが、いろいろ新エネルギー研究をすることは当然としても、まだまだ安定的なものとしてそれに全面的に頼るというような状況でないことは御指摘のとおりであります。そういうことを考えますと、やはり原子力の比重というものを、我々は、これはしっかり受けとめておかなければなりません。  御指摘のように、現在、既に三四%の電力を原子力に頼っているわけでありますし、原子力発電所二十基という計算のもとにCOP3の計算も行われたわけでありますから、今後とも、この原子力に相当頼らなければならない、これはまず動かせないところではなかろうかと思います。特に、原子力というのは、供給安定性やまた経済性にもすぐれているということがあろうかと思います。これは資源論の観点で申し上げたわけであります。  それからもう一つ、環境論の観点というのも現在では欠かすことができない。地球温暖化の中で、CO2を出さない、化石燃料を使わないで済むということの意味も我々は考えておかなければならないのではないかと思っております。  さらに、この原子力エネルギーをより効率的に使って、しかも放射性廃棄物からの負荷というものを減らしていくという意味合いからいたしますと、核燃料サイクルを確立するということが我々にとってはやはり必要なことではなかろうか、このように思うわけであります。  ただ、今回の法案もその一つなのでございますけれども、こういうことを推し進めていくには、やはり国民信頼というものがなければなりません。安全性確保が大前提であります。午前中も質疑の中で申し上げたわけでありますが、単なる安全の確保というだけではなく、情報公開やその他も十分行って、この安全確保国民安心に結びつけていくということでなければならないのではないか、こんなふうに考えております。
  213. 島津尚純

    島津委員 我が国原子力行政は、実用化以前の研究開発段階にあるものは科学技術庁、そして実用化された産業界にあるものは通産省と、縦割りで行われているわけであります。今国会に提出されている中央省庁等改革基本法案におきましては、科学技術庁と文部省の統合が決められ、通産省は経済産業省になり、その結果、原子力行政の二省庁間にまたがるという現在の体制は依然として変わらないということになろうとしておるわけであります。  しかし、事業化を前提とした核燃料サイクル確立を目指す新法人は、技術移転先である民間企業やそれから通産省とも密接な関係を維持しなければならないのでありまして、この二省庁間にまたがる体制により、また、省庁間のセクショナリズム等の問題から、今までも技術移転などがスムーズに行われなかったというような事実も散見できるわけであります。  本来、国の原子力行政といいますのは一本化されて推進されることが理想と考えられるわけでありますので、このような省庁再編という行革の論議がいよいよ始まろうというような時期に、ぜひそのようなあるべき姿に向かって進まれるお考えはないのかというようなことをお尋ねをさせていただきたいと思います。
  214. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 現行の原子力行政体制といいますか、それは、一応原子力委員会それから原子力安全委員会と二つの委員会が大きな方針を立てて、そのもとで、エネルギー政策の観点からは通産省が、科学技術の観点からは科学技術庁が推進をしてきた、その間の連携を持ちながら推進をしてきたというのが今までの体制でございます。  行政改革会議報告書あるいは今度の省庁再編の法案ではその点はどうなっているか、率直に申し上げますと、そこのところは、十分論議が詰まっていないと言うとちょっと語弊があるかもしれませんが、いささか玉虫色ではっきりしていないところがあるのは事実だろうと思います。  具体的には、これから設置法を詰めるときにここのところを整理していく必要があろうかと思いますが、現在そういう設置法をどうするかという議論が煮詰まっていない中で、私も申し上げられることは限界があるわけであります。  そこで、あえて申し上げれば、行政改革会議報告書では、今の原子力委員会原子力安全委員会の体制をより一段高いところに持っていこう、つまり、内閣府のもとに置いて、総理の直属のもとに原子力政策を定めよう、そのもとで、エネルギーの観点からはそちらの部門を担当するところ、科学技術の観点からはそこを担当する役所、それがまた車の両輪で推し進めていくことになるのかな、実はこんなふうに思っておりますが、この具体化は設置法のところで詰められるということであります。  いずれにせよ、二十一世紀に、先ほど先生の御質問にありますように、原子力エネルギーというのは重要でありますから、それがきちっと行われる体制をつくっていかなければならない、こういうことではないかと思っております。
  215. 島津尚純

    島津委員 この原子力行政、大変重要な問題でありますので、今後、そのようなあるべき姿に向かってぜひ進んでいただきたい、このように思います。  第三番目に一資源小国である我が国において、現在、将来ともにエネルギーを安定して確保していくことは、大きな命題であるわけであります。地球環境保護の観点から見ましても、化石燃料にかわる有力なエネルギー源を開発していくことは、資源の大量消費国として果たすべき我が国の大事な役割である、このように思うわけであります。  日本の将来のエネルギー源の確保をどのような方法で実現するのか考えたときに一限られたウラン資源をさらに有効に活用できるプルトニウムの利用は極めて重要な選択肢である、このように考えるわけです。したがって、核燃料サイクル確立に向けた研究開発を積極的に進めていくことが必要不可欠であるというふうに私は考えております。  日本国民は、唯一の被爆国として、原子力利用全般に対して極めて慎重な国民性を有しておるわけでありまして、原子力に対する潜在的な不安を持っているわけであります。このような状況のもとにおきまして、今回動燃が引き起こした「もんじゅ事故は、我が国原子力利用あるいは開発全体に対する国民信頼をまさに失墜させてしまったということが言えると思います。  しかしながら、先ほど述べましたように、我が国の将来を考えたときに、核燃料サイクルの確立は国民に対する国の責務であろう、このように考えるわけであります。  この原子力信頼回復、あるいは再処理基本とした核燃料サイクルの必要性を含めたエネルギー政策について今後国としてどのような議論を進めていくのか、そして、そのような中から、どう国民の皆さん方にコンセンサスを形成していただくのか、その辺につきまして、具体的な方策をお伺いしたいと思います。
  216. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 先ほど、資源論とそれから環境論の両面から日本にとって核燃料サイクルの確立が必要ではないかということを申し上げたわけであります。そして、その前提はやはり安全確保であり、その安全確保をいろいろな手段を通じて国民安心に結びつけていかなければならないということを申し上げたわけでありますが、あの動燃一連事故がそのためには大変大きな障害となり信頼に水を差したということは、残念ながらこれはもう否定できない事実でありました。  ですから一我々がまず第一にやるべきことは、今法案の御審議をいただいているわけでありますけれども、この法案、それから、先ほどから仏つくって魂入れずではいかぬということを申し上げているわけでありますが、法案と同時に、器、動燃の一人一人の職員意識、そういうものを改めていくということが、そのことによって信頼を取り戻していくということがまず第一ではないかと思います。  しかし、それと同時に、電源立地地域の方々だけにこの問題を意識していただくというようなことでは物事は進んでいかないと思うのですね一先ほど、今三四%の電力を原子力に負っているということでございますけれども、将来的にはふえていくとすると、幅広く一人一人の国民に、自分たちの生活がどういう背景を負りているのかということを理解していただかなければいけないのだろうと思います。  今まで原子力委員会としても、全国で円卓会議というようなことをして各方面の意見を伺ってきたわけでありますけれども、あるいはシンポジウム、フォーラム等も開いてきたわけでありますけれども、こういう広報活動を通じて、原子力政策の位置づけというものを十分に理解していただくということをあわせて行わなければならないだろう、こんなふうに思っております。
  217. 島津尚純

    島津委員 動燃事故を契機として、マスコミの原子力批判が相次いでおるわけでありますが、イメージだけで原子力発電が安全でないと考えるような人たちがふえてきておるということも事実であります。  しかし、先ほど申し上げましたように、エネルギー供給の相当部分を既に担っている重要なエネルギー源であること、また、こういう風当たりが強い中でも、日々我が国エネルギー供給のために、安全確保に最大限配慮をしながら、黙々と原子力関係の仕事に従事している多くの人たちもおられるわけでありまして、私たちはそのようなことも忘れてはならない、こう思うわけであります。  そうしたことを考えますと、一日も早く原子力に対する信頼回復をする必要があるわけでありますが、この点を踏まえまして、以下二点、政府のお考えをお尋ねをしたいわけであります。  まず第一点は、国民原子力に関する正しくわかりやすい情報を提供することが、やはりこのような時期であればこそ大事なことであろう、私はこのように思うわけでありますが、どのように取り組もうとされておられるのかということ。  第二点は、原子力という名前ではもう優秀な人材が集まってこない、あるいは大学におきましても、原子力という名前をつけた学科がなくなってきておるというような状況であります。これは国としてはやはり憂慮すべきことであろうというふうに思うわけであります。本当に将来のエネルギー事情を考えるならば、私はまだ優秀な人材を確保し続けなければならないのではないかというふうに思います。そのようなことを考えましたときに、学校教育の中で原子力をどのように取り扱っているのか、そのような実態と、そしてまた、今後の計画等がありましたらお聞かせをいただきたいというふうに思います。
  218. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 最初に、信頼回復のために具体的にどのような情報提供を行っていくかという御質問でございます。  御指摘のように、地元を初め国民皆様方の理解と協力を得ながら進めていくことが原子力開発利用にとっては不可欠でございますので、積極的に情報公開し、透明性を高めていきたいと考えているわけでございますが、我々も「もんじゅ」の事故を契機といたしまして、原子力政策に対する国民の合意形成に積極的に努めることとし、大臣が先ほど申しましたように、原子力委員会においてもいろいろなことをやってまいりました。  そういうことのほかに、具体的に、最近のメディアと申しますかインターネットにわかりやすい情報を提供して、見ていただく。あるいは、原子力公開資料センター、これは東京と大阪にございますし、原子力発電所の各地には原子力連絡調整官というのがございます。そういう事務所を活用する等いたしまして、資料の公開をしております。  それからあと、いろいろございますが、草の根的なものといたしまして、各地の勉強会に講師を派遣するというようなことをやっております。これを始めたのが昭和六十三年でございますが、これまでに既に千七百回以上講師を派遣しておりまして、対象となった人も十万人を数えるような、そういうような草の根的なこともやっております。そういうことをやりながら、国民との幅広い対話、そういうものに努力してきている次第でございます。  そういうことのほかに、合意形成を得る上で極めて重要な情報公開ということに関しましては、先ほどの原子力政策円卓会議議論を踏まえまして、原子力委員会におきまして、一昨年来会議をすべて公開しております。原子力委員会及びその下の専門部会、そういうところの会議をすべて公開いたしておりますし、報告書をまとめる際には、事前に国民の皆さんに見ていただいて、意見をいただいて、必要があれば修正する、そういうような措置を順次実施しております。原子力委員会だけではなくて、当庁に置かれました、先ほどの動燃改革検討委員会とかあるいはアスファルト固化施設事故事故調査委員会、そういうものをすべて全面公開のもとで行う等、国民の皆さん方に御理解を深めていただくための努力をしている次第でございます。  そういうことで、今後とも、先ほど御指摘ございました、なるべくわかりやすくという話もございますので、そういう点を肝に銘じながら、国民各界各層との対話の促進などを積極的に進めてまいりたいと考える次第でございます。  それから第二点目に、原子力につきましては学校教育の段階から教育を行うべきではないか、こういう御指摘でございます。  まさしくそのとおりでございまして、原子力の問題につきましては国民一人一人の問題として考えていただくことが非常に重要でございますし、また、原子力の学科がなくなるという御指摘もございましたように、将来ともやはり原子力エネルギー供給の重要な手段でございますので、優秀な技術者が集まるようにしなければいけないわけでございまして、そういうためにも一定の正しい科学的な知識を身につけ、これに基づいた判断力を養えるような教育、そういうものが非常に重要と考えております。  そういうような観点から、科学技術庁としましては、文部省の後援を得まして、教職員を対象とした原子力実験セミナーを開催するとか、あるいは、原子力学会にお願いいたしまして、高校生とか大学教養レベルを対象とした原子核、放射線等に関する分野の学習資料、そういうものをつくって配るとか、そういうことをしておりますが、まだまだ不十分だとは承知しております。  いずれにせよ、原子力、特に次世代を担う人々に対する教育の充実が図られますよう、今後、関係省庁とも、それからいろいろな機関とも連携しながら努力してまいりたいと考える次第でございます。
  219. 島津尚純

    島津委員 次に、今回の動燃事故について具体的な質問をさせていただきたいと思うわけでありますが、今回の動燃事故によって国民の皆様の原子力についての信頼というものを大変失ってきたわけでありまして、この責任はまさに動燃自身にとって大きいものがあると言わざるを得ないわけであります。しかしながら、一方では、監督官庁である科学技術庁においてもその責任はまさに大きいと言わざるを得ないわけであります。  科学技術庁は、監督官庁として長年にわたって動燃に出向者を送り、研究開発や試験の実施などに立ち会ってきた。まさに監督する立場にありながら、どうして動燃の持っておった欠陥体質というものを見抜くことができなかったのか、まさに国民の皆さん方は不思議でならない、このように思うわけであります。  この点について、どの辺が理由だったのか、そして、その反省に立って今後どうされようとしているのか、その辺を聞かせていただきたいと思います。
  220. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 島津先生指摘のように、この不祥事の一義的な責任動燃にあるということはもちろんでありますけれども、それと同時に、監督官庁としての科学技術庁責任を否定するわけにはまいりません。  去年八月一日に、科学技術庁としても、動燃一連の問題に関しまして、指導監督の立場にあった我が科学技術庁責任は重大であるという認識のもとに、具体的な改革方針を明らかにしたところでございます。  その方針に沿いまして今までやってきたことを申し上げますと、休日も含めた二十四時間通報連絡体制を発足させる等の緊急時対応の強化。それから、抜き打ち立入調査を実施するといった安全監視強化。それから、現場を重視して、職員による動燃のすべての施設設備の現地調査を実施して改善策を指示させるというような現場重視の方針。要するに、遊離して、紙の上だけで指示をするというのはいけないのじゃないか、やはり現場を把握しろというようなことを中心としまして、こういう改善策といいますか、それを講じてきたわけであります。  これは今後も引き続き行わなければならないことでありますけれども、さらに申し上げますならば、きょうのこの法案の御審議でも申し上げておりますように、動燃、今度は新しい法人に名前も変わるわけでありますけれども、そこにやはり明確なミッションといいますか、仕事を明確に定義づけて、そして動燃に権限と責任というものをはっきりさせて、その中で自主的に判断をしてもらう。科学技術庁ないし国の役割というのは、まず動燃にきちっと任務を与える、明確に与える、そして、厳密な自己評価をする。  今までは、ややもすれば、一から十まで行政指導というような手法のもとにはしの上げおろしまで口を出す反面、ややそこらの権限と責任、お互いの権限と責任がはっきりしなかった面があるのではないか。その点は今後、この法律、今御審議をいただいている制度改革を通じてもっときちっとしたものにしていかなければならない、こう考えているところでございます。
  221. 島津尚純

    島津委員 先ほど長官もお述べになりましたけれども、要するに、魂が入らなければまた同じことが繰り返される、そうしたら原子力というものは二度と足腰が立たないような重大な状態を迎えるということであります。  それで、新法人、新機構に移行するということでありますけれども、今回の事故を起こした最大の問題というのは、やはり動燃の持っておった体質であるというふうに私は思うわけであります。  それで、どういう体質かということなんですが、動燃は約二千八百人ぐらいの職員がおられる。しかしながら、そこには、先ほど申し上げた科学技術庁から出向される、あるいは電力会社から出向される、そしてまたメーカーからも、大学からも、いろいろな方が来ます。さらには三千人ぐらいの協力会社の皆さん方も現場にいる。とにかく混成部隊なわけです。しかも、その二千八百人の中でも恐らく八割以上、九割近い人たちが技術者ではないか。大変な技術者集団でもあるわけであります。その集団が、例えば炉と燃料、炉の部門が二部門一あるいは燃料部門が三部門、そういうところに分かれてグループをつくっておられる。まさに縦割りだ。そして、言うならば風通しがよくない、意思の疎通がよくない。  さらには、その混成部隊の中で最大の発言権があった者は何か、これは科学技術庁の出向者である、こういうことも言われております。この人たちの発言というものは絶対的だ。  こういうふうな体質事故を生んでいった、このように思うわけでありまして、この反省なくして、そしてこの体質を徹底的に変えることなくして新しい機構意味がない、二度とこういうことが繰り返されないという保証はないというふうに私は思うわけであります。  それで、そのような反省に立って、いろいろな意識改革といいましょうか、そういうものに取り組みを始めておられるというふうに聞いておるわけですが、その辺の内容と、それから進行状況といいましょうか、そういうものについてお伺いをさせていただきたいと思います。
  222. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 まず、先生動燃事業団が、いろいろなところからの出向者が多くてそのために閉鎖的になっている、こういう話もございましたけれども、出向者を含めまして、混成部隊で、縦割りになっているという御指摘もございますけれども、先ほどの動燃改革検討委員会報告でもそうでございますが、そういう出向云々というよりも、動燃全体が外部の、外界の反応を得るための発信を怠ってきた、そういう意味で閉鎖的になってきているという話でもございます。また体質の点で、御指摘の無責任体質もございますけれども、それは出向者の問題というよりも、組織それぞれの責任が明確でなくて、何かお互いにもたれ合うような感じのものがあった。そういうところがございまして、そういうことをなくすためにも、社会に開かれた体制、それから責任体制責任の明確化、そういうことをしていかなければいけないわけでございます。  なお、出向者につきましては約三百六十名ぐらいございますけれども、官庁からの出向者は二十名ほどでございまして、あとは電力が百数十名、あとメーカー等もございまして、一般的に、民間からの出向者につきましては租織的に仕事をするということに非常にたけていらっしゃいます。研究者は、研究の方を最終的にやっていますと、それぞれ各人各人の行動、そういうのが基本にございまして、組織として一体に動く、そういう習性が少し少ないのではないかと思いますが、そういう意味では、出向者は、動燃事業団の中で電力、メーカーとも一生懸命やっていただいているんだと思っています。  むしろ、そういう問題よりも、先ほど申しましたように、責任体制が明確でなかったとか、あるいは外部への情報発信等をせずに閉鎖的になっていた、そういう点が問題かと考えている次第でございます。  それから、そういうような問題点を解決するために、体質改善の取り組みについての御質問でございます。  先ほど申しましたように、特に安全性に関します意識一般社会とギャップがあった、一般の社会安心を求めているのに、そういうことに対して鈍感であったとか、それから先ほど申しましたような情報発信を怠ってきた、そういうこととか、責任体制責任所在があいまいであったという問題がございました。  そういう問題の中で、責任体制等の問題につきましては、今度の機構に移るとき、組織体制を変えまして、本社の事業部制も房止して、現場責任重視、そういうような組織体制にまいりますし、また、意識改革の面につきましては、今理事長から話もございましたように、職員に対する研修、これも既に延べ六千三百人に対してやっているところでございますし、行動憲章というのをつくりまして、職員の心構えやとるべき行動を示し、意識改革を進めていらっしゃる。また、理事長診断会等を行いまして日ごろの業務状況の向上に努めるというような作業を進められております。  そういうようなことで、動燃職員の一人一人も出直す覚悟で意識改革を進めているところでござざいして、我々の方も、そのための環境づくりに協力していきたいと考えているところでございます。
  223. 島津尚純

    島津委員 科学技術庁から出向した方が絶対的な発言権を持っておる、しかし月日がたてばその人たちはまたもとに戻ってしまう、まさに無責任体制がこのような状況をつくったのではないか、その辺を徹底的に反省をしていただきたいということをお願いを申し上げます。  時間がありませんので、最後にもう一点お伺いをさせていただきます。  動燃の中で三事業が撤退を決められておるわけであります。その中で、海外ウラン探鉱の撤退ということが決められておるわけでありますが、いろいろな角度から調べてみますと、ちょっと問題があるのではないかということを思うわけであります。  どういうことかと申しますと、ウランの需給見通し、これはいろいろな意見があるわけでありますけれども、短期的には在庫が過剰である、しかしながら、これは原子力委員会に提出された日本鉱業協会の資料でありますが、中長期的に見ますと、ウラン資源は不足から枯渇していくというような観測がなされておるわけであります。  今日まで我が国ウラン資源確保については、民間の非鉄各社や電力会社によって努力をされてきましたけれども、主に動燃によるウラン資源探査に関する広範な取り組みによって確保されてきたわけであります。民間にとってリスクの大きい新しい資源の探査は、資源セキュリティー確保の立場から、国家がやはりリスクを補完し、資源開発を促進するという政策が必要である、このように思っているわけでありまして、今までの動燃の努力によってカナダや豪州などで約四万トンの埋蔵量の権益確保が現在なされておるわけであります。  現在日本は世界の消費量の一三%ぐらいを消費しているそうでありますが、二〇一〇年ごろにはこれが二〇%近くまで上ってくる、こういうことであります。そのような中でこれを打ち切ってしまう、あるいは民間に移転するかもしれないということでありますが、私は、これは民間はとても受け入れられる代物じゃないと思うのですね。  そうすると、結果的には世界の二大メジャーに権益を売り飛ばしてしまうということになってくるのじゃないでしょうか。現在、世界二大メジャーで五二%の寡占状態。日本の権益を買い取ったならばさらに大変な寡占状態になってくる。これは、日本の将来に向かって、資源ナショナルセキュリティーという立場から大きな問題を残すことになるのではないかというふうに思います。長官はいかがお考えでしょうか。
  224. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 天然ウランにつきましては、我が国原子力開発利用の自主性や安定性を確保する上から安定確保に努めなきゃいけない、こういうことで、今までウランの探鉱ということを動燃がやってきました。これは、今御指摘のようなオーストラリアとか、酷熱の地のようなところへ行きましてウランを探してくるというのは、委員長は女性でいらっしゃるのでこういう言い方はいけませんが、男のロマンみたいなところがあったのだろうと私は思うのですね。  ところが、最近、電気事業者が長期購入契約によって十年近くの必要量を確保している、あるいは、天然ウラン市場は今後十数年間は安定な状態にあるのではないかと推定される、それから核燃料サイクル関連事業もある程度進んできたというようなことを踏まえまして、今度の改組に際して、適切な期間を置いて探鉱活動を停止して、先ほど、民間はだめだ、こうおつしゃったわけですが、民間活動にゆだねることとしたわけであります。  動燃技術人材等をどう取り扱っていくか、これについてはまだ最終的な結論は得られていないわけでありますが^天然ウランの安定確保の観点も踏まえまして、関係者でこれから詰めていかればならないと思っております。
  225. 島津尚純

    島津委員 時間が参りましたので、質問を終わらせてもらいます。  ありがとうございました。
  226. 大野由利子

    大野委員長 保坂展人さん。
  227. 保坂展人

    保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  本日は、この委員会で我が党の辻元議員が既に質問をさせていただいていますが、動燃のまさに負の遺産ということで、人形峠の鳥取県側にあります東郷町方面のウラン残土問題を集中的に質問をいたしたいと思います。  まず、これについては、私ども、十二月の末、昨年末でしたけれども一秋葉議員とともに現地を訪れました。ウラン残土というその言葉の響きだけでは、幾らかの塊が残されているのかなという認識で、量とかスケールはわからないわけですけれども、実地を踏んでみて、現場に行ってみて、大変な量の、また非常に広い地域にウラン残土がまさに放置されているということを確かめてまいりました。そして、とりわけ民有地にこのウラン残土がいわば放置されている。もう既に土地使用の契約は切れてしまっているということなのです。  きょうは法務省にお願いをしてお越しいただいたのですけれども、民有地に期限が切れた状態でこうした非常に危険なものが放置されている。これは明らかに違法な状態、民事訴訟を起こされれば原状回復ということが必ず認められるべきものと私ども思うわけですけれども、その点について、法務省にお願いしたいと思います。
  228. 揖斐潔

    ○揖斐説明員 お答え申し上げます。  一般論として申し上げるわけでございますけれども、民法上、今の委員の御指摘でございますと、土地の賃貸借契約におきまして土地の賃貸借の期間が切れたということでございますけれども、そうした場合には契約が終了するということが原則であると考えているところでございますが、当事者の合意ですとかあるいは法律等の規定に基づきまして契約が更新される場合もあるわけでございまして、期間の経過によりまして直ちに契約が終了するというわけには解されないのではないかというふうには思います。  お尋ねの点につきまして、賃貸借契約が終了しているかどうか等、個別具体的な事案の事情によるとも思われますので、私ども、そうした事案の詳細というのを承知していないわけでございますので、それ以上にどういう法的な関係に立つのかという点につきましては、答弁を差し控えさせていただければと思っておる次第でございます。
  229. 保坂展人

    保坂委員 それでは、動燃中野理事お尋ねをいたします。  法務省からは、具体的によく承知していないので今判断できないということでしたけれども、そもそも一九五八年に契約を最初にされた、そして二十年を経て期限が切れたわけでございますね。そして、十二年間、いわばそのままになって放置されてきた。そして、一九九〇年に、自治会の方と動燃の方と、聞くところによると徹夜の交渉で協定が取り結ばれたわけですね。そして期限が切られた。期限の更新は同意を得ていないということで、この状態を、動燃の側は、いわばこれは不法な状態だ、この契約の約束が守れずに置いているというきちっとした認識を持っておられるのかどうか、伺いたいと思います。
  230. 中野啓昌

    中野参考人 お答え申し上げます。  今先生指摘のように、方面の地におきますウラン残土の敷地に関しましては、全体の七五%につきましては、たしか四人だったと思いますが、四人の地権者の方からお借りしております。残り約二五%の土地につきまして、七人の地権者の方が今現在は契約が切れているという状態でございます。  今先生が御指摘のように、一九五八年、これを最初にお借りいたしました。皆様からお借りをいたしまして二十年たちましたところで、一九七八年でございますか、原状回復はしませんということで、一度お返しいたしてございます。原状回復をしないということで御了解をいただいて、一度お返しいたしております。  その後、いろいろ問題が起きまして、一九九〇年になりまして再度協定を結んだ次第でございます。その結果、平成八年十二月二十六日でございますが、この契約が六年たちまして切れたわけでございます。正確に申しますと、三年、三年、二回契約を結んでおるわけでございます。  しかし、一方、この堆積場の安全管理のために事業団の立ち入り、それから、機材の設置などを認めるという旨の通知を、地権者の皆様より文書によっていただいておるところでございます。  また、この場所の中への立ち入り制限のための、これは鉱山保安法に基づいて管理をさせていただいておるわけでございますが、施錠につきましては、平成九年十二月六日に取り外しをいたしましたけれども、現在取り外した状態のままでございますが、平成九年、昨年の十二月十八日でございますが、借地が切れている地権者の方々に、施錠管理に関して御理解をいただいた上で、かぎをお渡しし、受領書もいただいておるところでございます。したがいまして、事業団としてはその土地を現在施錠管理できるという状態にございます。  したがいまして、七名の地権者の土地につきましては契約切れではあるものの、堆積場の管理につきましては、地権者の了解を得た上で管理を行っているという状況でございます。  しかし、いずれにいたしましても、先生が最初に御指摘のように、借地契約が切れたという状態は好ましい状態とは言えませんので、私どもとしては、できるだけ早期に本件の問題が解決できるべく努力していきたいと思っておるところでございます。
  231. 保坂展人

    保坂委員 再度お答えいただきたいのですが、中野理事に、答弁は聞いていることに対して簡潔にお願いをしたいのですね。  実は、その現地調査の後に、一月、三月と二度にわたって、中野理事にもお越しいただいて、それこそマスコミも入る中で、動燃科技庁にも来ていただいて、この問題をどうやって解決すべきかというやりとりをしております。よくお聞きいただいて、そしてその場で中野理事はこういうふうにおっしゃっているのですね。これはもう民事上の契約、約束が履行されていないのは事実だ、そして不法占拠と言われればそれはそうかもしれない、こういうふうにおっしゃっている。これは間違いありませんか。
  232. 中野啓昌

    中野参考人 お答えいたします。  私どもとしては、この場所にございました残土を撤去するという約束をもともと地元の方としているわけでございますから、この賃貸契約が切れた、契約が切れたという事態は、これは極めて好ましくない状態であるということを認識した上で、そういうふうに申し上げたつもりでございます。
  233. 保坂展人

    保坂委員 もう簡単にします。  今私が紹介をしたメモによるものですけれども、民事上の契約は履行されていない、そして不法占拠と言われればそれはそうかもしれない、こういうふうにおっしゃったのですよ、私の目の前で。これをきちっと認めてください。
  234. 中野啓昌

    中野参考人 確かに、私、そのときに、民事上の契約という形ではそれが履行されていないということは申し上げたと思います。それから、それが不当だというふうに言われればそうかもしれないと申し上げたと思います。それはそのように申しました。それは、その判断は、我々法律の専門家でもございませんので、できないので、そうかもしれないというふうに申し上げたつもりです。
  235. 保坂展人

    保坂委員 再度中野理事にお願いをいたしますが、そうすると、動燃はこのことをずっと、少なくとも九〇年には非常に厳しい住民とのやりとりを踏まえて、これは動燃責任としてウラン残土を撤去しなければいけないんだという約束を交わしているわけですね。この費用については動燃が持つんだ、環境についてもきっちりやりますと言って、一応住民の不安を、そこで一応協定を交わす形で、一たんそこで決着を見たわけです。見たということになっているわけです。しかし、残念ながら、現在、この協定も履行されていないですね。  それで、中野理事に簡単にお尋ねしますが、その当時、そして現在に至るまで、動燃はこのウラン残土をどのような方向で解決しようとしていたのでしょうか。どのような最終処理が必要だという認識で努力をしてこられたのでしょうか。これも簡単にお答えいただきたい。
  236. 中野啓昌

    中野参考人 先生、二点御質問あったと思います。  第一点は、どのように当時するつもりであったかということに関しましては、今までもたびたび申し上げておろうかと思いますが、この残土を人形峠事業所に持ち込んで処理をしたいというふうに当時考えてございました。その後、その人形峠事業所に持ち込めない状態になりましたので、どこか適当な持ち込む場所がないかということで、いろいろ模索をし、協議を続けておるところでございます。
  237. 保坂展人

    保坂委員 もう一言。  協定を結んでこれが守れなかったということに対する動燃の反省、そして何がいけなかったのかということについて、明確な、責任も含めて、そこはきっちりお答えいただきたいと思います。
  238. 中野啓昌

    中野参考人 一九九〇年に結びました協定におきましては、残土をその土地から持ち出すというお約束をさせていただいておりますが、そのとき、この協定書をつくるに当たりまして、関係者の協力を得て、関係自治体の協力を得てこれを持ち出すということでお約束をしておるわけでございますが、今日、その関係自治体の協力を得られない状態の中で持ち出せないでおるわけでございます。したがいまして、我々としては、この協定をつくった以上、一刻も早くこれを実施すべく行っていきたいというふうに思っておるわけでございますが、今日なお関係自治体の了解が得られない状態にあるものでございますから、今動かせないでいるというのが実態でございます。
  239. 保坂展人

    保坂委員 それでは、実は私どもが見に行きました後に、何度かこの問題の解決のために話し合いをさせていただいていますけれども科技庁の今村審議官にもちょっと御確認をしたいと思います。  私どもの方から、そもそも今回の動燃組織改革の発端になった事故における情報隠し、あるいは周辺住民への不誠実な対応、あるいは虚偽の報告というようなことを総括的に見たときに、この動燃の人形峠に残されたウラン残土の問題ということは原子力行政の破綻のあらわれではないかというふうに指摘をさせていただきました。  今村審議官にお尋ねをいたしますが、原子力行政の破綻のあらわれと受けとめておる、動燃体質的なものがあることを認めざるを得ない、解決しない限り新法人への展望は開けない、本来撤去の見通しがあるべきだったという御発言をいただいていると思いますが、これは確認してよろしいでしょうか。
  240. 今村努

    ○今村政府委員 お答え申し上げます。  私、今保坂先生から御指摘のありました件は、一月二十六日、社民党の先生方々あるいは地元の対策会議方々とお話し合いがありましたときのことだろうというふうに思っております。  この際、未解決であるこの問題は日本原子力行政の破綻を意味しているのではないかというお問いかけというが御指摘がありまして、私はそれに対し、動燃が抱えている長年にわたり解決できないという問題がある、そういう未解決の問題があるという意味では破綻と受けとめるべき問題ではないかというふうにお話をしたというふうに思っております。  ただ、重ねて申し上げますが、日本原子力行政全体が破綻したとか、あるいはこの問題を解決することが破綻処理だというふうな表現とか、そのようなことは適当でないというふうなこともあわせて申し上げたというふうに思います。  以上でございます。
  241. 保坂展人

    保坂委員 率直にお認めいただいたのですが、私ども、この動燃改革の問題、そして原子力行政そのものを振り返る意味で、先ほどの今村審議官の言葉は大変重い言葉として受けとめさせていただきました。  日本原子力行政の中でこの問題を直視すれば、これは破綻のあらわれと受けとめざるを得ないという言葉で再度確認できたと思います。         ―――――よろしいですか。全体のとは言っていませんよ。この問題を直視したときに、この人形峠のウラン残土の問題を受けとめたら、これは少なくとも、科技庁の立場からも原子力行政の破綻のあらわれと受けとめているということを踏まえて、では何が必要なのか。破綻とお認めになるのであれば、破綻処理という言葉が次に来るわけでありまして、破綻は認めるけれども破綻処理は認めないというのはこれはおかしな話です。  今村審議官にお尋ねしますが、現在、この問題の解決に当たって、何を原則に、とりわけ地元住民との間で交わされた先ほどの協定をきちっと踏まえながら、この責任をだれが、どこに、どのように継承するのかということも踏まえて、お答えいただきたいと思います。
  242. 今村努

    ○今村政府委員 お答え申し上げます。  重ねて、繰り返しになりますけれども、私は、この問題が解決していないという、未解決の問題であるという意味でこの問題をとらえれば破綻と受けとめるべきということを申し上げたのでありまして、全体であるとか、あるいは科学技術庁原子力行政が破綻しているとか、そういうこととはまた別の問題であるというふうに思います。そのような意味で、私どもはこの問題を解決しなければいけない問題というふうに受けとめているというふうに言いかえてもいいかと思うのです。  そこで、この点につきましては、もともと、先ほど中野理事からお話もございましたように、動燃事業団が残土の搬入先として予定していた関係自治体の御理解を事前に得ないままにウラン残土の撤去についてお答えをしてしまったというところがあったというふうに思っておりまして、これは動燃を監督する立場の科学技術庁としても極めて遺憾なことだというふうに考えております。  どういう観点からこの点を解決するというふうに考えているかというお問いかけであったかと思いますが、現在動燃は、ウラン残土の保管管理につきましては、鉱山保安法に基づき、安全確保に万全を期しているというふうに思っております。また、この点は、先般もそうでございましたが、鳥取県の放射線監視の点でも確認されているところでございます。その上で、長期にわたり地元において未解決になっているこの問題については、現在、鳥取県の要請に基づき、東郷町において解決について検討していただいておるわけでございますので、その検討の結果を見守りつつ、動燃を指導し、問題の解決に向けて努力していく、そのようなことが必要であろうというふうに考えております。
  243. 保坂展人

    保坂委員 今審議官から、ウラン残土がこんな大きな問題になると当時は動燃も認識をしておらなかった。そして、危険が指摘されて住民との間の協定も結ばれて、撤去をするという約束をして、中野理事もおっしゃったように、それは動燃の人形峠事業所で当然処理されるべきものということで、そこを掲げてきたわけですけれども、今審議官がおっしゃったように、どうも最終目標を回避してこの東郷町内に置くということも今言われてるわけですね。これは破綻をそのままに放置することだと私は指摘をしたいと思います。  原子力局長に答弁をいただきたいと思いますが、地元住民の合意、これはこの問二つのアンケートがとられたわけです。一つの、対策会議のアンケートでは七割を超える方が反対である、どかしてほしいと言われている。設問が違うのですが、町議会のアンケートではやや半数、まあ仕方がないというような答えが出ておりますけれども、そもそも動燃が当初目指した、住民との協定をきっちり結んで解決をしようとした原理原則をあくまで科技庁として貫いて、そしていわば負の遺産を清算しようという強い決意がおありになるかどうか、答弁をお願いしたいと思います。
  244. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 地元の方で、町議会のアンケートと同時に市民団体のアンケートも出まして、その両者の結果は一見矛盾するような結果だということも承知しておりますし、今御指摘のように、町議会のアンケートでは総数の過半を少し上回った程度だったということも承知しております。  本件の問題をどのように考えるかということでございますけれども、もともとあそこの残土と申しますのほ、方面鉱床、ウランの鉱床がございまして、平均の品位が〇・〇六七%ということで、カナダとかオーストラリアの優良なところではそれこそもっと高い、一%にまでなるものもあるかもしれませんが、そういうもともと平均の高い鉱床ではございませんでした。そういう鉱床の中からウランのたくさん含まれているところは人形峠に運び込んで、その残りがズリと申しますか、捨て石としてそこに置いてあったわけでございます。したがいまして、当時、動燃事業団もその処理を話し合ったときに、それよりも品位の高いウラン鉱石は当然事業所に持っていって製錬したわけでございますから、それよりも品位の低いものは当然問題なく持っていっていいんだろう、そういうことを頭から問題がないと思い込んで多分ああいう協定を結んでしまったのかと思います。  その後、岡山県の方から、鳥取県側で処理できないものを持ち込むことにつきましては反対というような立場がございまして、今回こうなってしまったわけでございますが、そのように、岡山県側のそういう事情もよく調べずに結んでしまったということにつきましては、科技庁としても非常に遺憾と思っております。  それをどのように処理するかということでございますけれども、今の状況におきましては、現実、放射線のレベルもそれほど高いものではございません。安全に管理されているものでございますし、現在、鳥取県の要請によりまして、東郷町においていろいろ御検討していただいているところでございますので、そういうものが地元の御理解を得られまして解決に向けて進展することを期待している次第でございます。
  245. 保坂展人

    保坂委員 時間がありませんので、非常に簡潔にお願いしたい。  もう一度局長にお願いしますけれども、今のお話を聞いていると、ついうっかり約束をしてしまった、よく調べてみたらうかつであった、したがってこんな協定はしなければよかった、そして今は鉱山保安法上による管理が尽くされているので何の問題もないのだというふうに聞こえますが、科技庁としては、住民との協定は事実上無視、これは全く踏まえないというふうに聞こえるのですが、そうであるかないかだけはっきり答えていただきたいと思います。
  246. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 そういう協定が存在することは十分承知しております。  その中で、第一項の中で、何立米か知りませんが、撤去するということが最初に入ってございますし、第十一条におきましては、そういうものを関係自治体の協力を得て行う、そういう協定があることもよく承知しております。
  247. 保坂展人

    保坂委員 そうしますと、その協定は存在することは承知しておられる、しかし問題はないということも言っておられるのですね。そして、保安法上問題のない形で現在置かれている。これを新機構が完全に引き継ぐのかどうか。責任と義務、この協定を結んだ動燃という主体がまさに改組再編されるわけで、地位も義務もこの協定上のいわば主体が入れかわって引き継ぐのかどうか。そこが一点。  もう一つ、では、引き継ぐということが今回の法案のどこに明示をされているのか。この二点について、よろしいでしょうか。
  248. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 今お尋ねの点は、まず最初に条文を申し上げますと、核燃料サイクル開発機構法附則の第十条二項に書いてございます。  今回の改正は、動燃を抜本的に改組して、名称も核燃料サイクル開発機構と改めるわけですが、今まで動燃が負っていた義務あるいは責任、これは当然にすべて新法人が負うことになっておりまして、それを言うなれば確認する意味の規定が今申し上げた十条の二項ということになるわけであります。
  249. 保坂展人

    保坂委員 重ねて長官お尋ねいたしますけれども、今指摘をさせていただいたように、住民との間で、ウラン残土は撤去します、そして影響は完全になくしますという約束をきっちりして、それは現状、果たされていないわけですね。そして、ごらんのように法案も出てくる。私は、動燃改革をせざるを得なかった一つの凝縮された事実がここにあると思っているのです。  地元住民に負担を押しつけるのではなく、かつての協定をきっちり遵守をして、一日も早くこの問題を解決していただきたいということを要望したいのですが、お答え、いかがでしょうか。
  250. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 私も、先ほど局長が御答弁いたしましたように、そういう協定が存在している、その協定の中にそういう条項があるということも承知をしておりますが、なかなかそれを現実に履行することが難しい状況にあるとも聞いております。今鳥取県の中でいろいろ御努力いただいていることも聞いておりますので、そこらの動向も見守ってまいりたいと思っております。
  251. 保坂展人

    保坂委員 動燃改革再編が必然の流れだったことは、何も東海村や「もんじゅ」の問題だけではなくて、この問題でも再三再四、地元住民の不安の声、そしてお尋ねするところによると、当時、国策としてのウラン採掘に当たった地元の方たちは、もう本当に地元を挙げて協力をしたわけです。そして、当時は放射能に対する知識もそれほどない中で、暑いといって全部服を脱いで、ほとんど下着姿で採掘をしておったということも聞いております。そして今、地元にそれは残っているのですね。残っていて、非常に過疎の中で、この動燃改革の流れの中で、まだ解決の方向が見えない。  ぜひ、長年のまさに積み残し、積み残し、先送りにしてきたことを、長官の決断で、本当に協定書どおりに解決をしていただきたいということを重ねてお尋ねしたいと思います。
  252. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 保坂先生の御意見は承って、私も受けとめますが、しかし、この協定どおり解決していくためにはいろいろな条件がまだなかなか難しいということも承知しておりますので、これ以上のことはなかなか今お答えできないということでございます。
  253. 保坂展人

    保坂委員 では、もう一言。  この点を見れば、ウラン残土というものを見て、そして地元との長時間かけた協定は、形になって残っているわけですけれども、結局遵守し切れなかった、そして現在、その最終解決である動燃が目指した処理ができないままあるということは、原子力行政の破綻のあらわれであるというふうに私ども指摘をさせていただいていますが、長官の御見解はいかがでしょうか。
  254. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 保坂先生の御指摘は承っておきます。
  255. 保坂展人

    保坂委員 受けとめていただいてありがたいのですが、原子力行政の破綻、すべてが破綻をしたということを言うつもりはありませんけれども、しかし、この点に限ってきっちり見るならば、これはもう一刻も早く解決しなければならない問題だというふうに、ここはぜひ言っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  256. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 先ほどから申し上げておりますが、それぞれが御努力をいただいておりますので、その御努力を見守ってまいりたいと思っております。
  257. 保坂展人

    保坂委員 それでは、なかなか解決をいたしておりませんが、なおこれは早急な解決を求めていきたいと思います。  これで私の質問を終わります。
  258. 大野由利子

    大野委員長 次回は、来る四月三日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会するこ本日は、これにて散会いたします。午後四時三十二分散会