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1998-05-15 第142回国会 衆議院 運輸委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年五月十五日(金曜日)     午前九時三十一分開議 出席委員   委員長 大野 功統君    理事 衛藤 晟一君 理事 久野統一郎君    理事 実川 幸夫君 理事 林  幹雄君    理事 佐藤 敬夫君 理事 細川 律夫君    理事 赤羽 一嘉君 理事 江崎 鐵磨君       小野 晋也君    大島 理森君       木村 隆秀君    河本 三郎君       下村 博文君    菅  義偉君       橘 康太郎君    棚橋 泰文君       細田 博之君    宮島 大典君       望月 義夫君    森田  一君       米田 建三君    渡辺 具能君       小沢 鋭仁君    今田 保典君       田中  甲君    堀込 征雄君       山本 孝史君    長内 順一君       斉藤 鉄夫君    福島  豊君       福留 泰蔵君    久保 哲司君       鰐淵 俊之君    寺前  巖君       平賀 高成君    秋葉 忠利君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 藤井 孝男君  出席政府委員         運輸省運輸政策         局長      土井 勝二君         運輸省海上交通         局長      岩村  敬君         運輸省海上技術         安全局長    山本  孝君         運輸省海上技術         安全局船員部長 土橋 正義君         運輸省港湾局長 木本 英明君         海上保安庁長官 相原  力君  委員外出席者         環境庁水質保全         局水質規制課長 畑野  浩君         外務省中南米局         中南米第二課長 越川 和彦君         建設省河川局水         政課長     阿部  健君         運輸委員会専門         員       長尾 正和君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十五日  辞任         補欠選任   小野 晋也君     下村 博文君   大島 理森君     河本 三郎君   菅  義偉君     棚橋 泰文君   赤松 広隆君     小沢 鋭仁君   石井  一君     堀込 征雄君   長内 順一君     福島  豊君   福留 泰蔵君     斉藤 鉄夫君   久保 哲司君     鰐淵 俊之君 同日  辞任         補欠選任   河本 三郎君     大島 理森君   下村 博文君     小野 晋也君   棚橋 泰文君     菅  義偉君   小沢 鋭仁君     赤松 広隆君   堀込 征雄君     山本 孝史君   斉藤 鉄夫君     福留 泰蔵君   福島  豊君     長内 順一君   鰐淵 俊之君     久保 哲司君 同日  辞任         補欠選任   山本 孝史君     石井  一君     ――――――――――――― 五月十三日  日本海域への油回収船配備に関する陳情書外一  件  (第二五一号)  JR労使紛争早期解決に関する陳情書外一件  (第二九九号)  JR採用差別事件解決に向けた交渉の指導に  関する陳情書  (第三〇〇号)  公共交通機関維持確保に関する陳情書  (第三〇一号)  国民生活に必要不可欠な公共交通機関維持確  保に関する陳情書  (第三〇二号)  地方公共交通維持確保に関する陳情書  (第三〇三号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一  部を改正する法律案内閣提出第五九号)(参  議院送付)  船員職業安定法及び船舶職員法の一部を改正す  る法律案内閣提出第六〇号)(参議院送付)      ――――◇―――――
  2. 大野功統

    大野委員長 これより会議を開きます。  内閣提出参議院送付海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中甲君。
  3. 田中甲

    田中(甲)委員 民主党の田中です。おはようございます。  海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一部を改正する法律案について、三十分持ち時間をいただきましたので、質疑をさせていただきます。  ナホトカ号事故は、昨年の一月二日、その事故発生から対策本部設置まで八日間かかったというものでありました。以来、四月二十日まで、最終的に撤去が行われるまで、実に三カ月以上期間がかかったということでございました。  事故処理に多くの時間がかかった原因というものをまず確認をさせていただき、同時に、今回の改正案によりまして、同種の事例が発生した場合の対応解決がどの程度迅速化されるとお考えになられているのかをお聞かせいただきたいと思います。
  4. 相原力

    相原政府委員 お答え申し上げます。  昨年一月二日に発生いたしましたナホトカ号事故災害でございますが、これは、御案内のように、隠岐島の約百キロメートル沖合日本海で起こった海難でございました。  大変冬の厳しい日本海荒天下で起こった事故ということで、海上保安庁でも、当然二十四時間の当直体制で、必要な救助活動あるいは防災活動を行うわけであります。直ちに、この事件の場合には三十一名、全員で三十二名でございましたが、そのうち三十一名の人命救助を行った、あるいは行方不明者の捜索を実施したということで、その後、流出油防除、あるいは漂流しておりました船首部沖合での曳航とか流出油回収等作業全力を挙げて取り組んだところでございます。  しかしながら、非常に荒天であったということもございまして、残念ながら効果的な防除措置を講ずることができずに、結果として流出油沿岸に漂着して、相当事態が拡大したということでございます。  また、船首部が三国町沿岸に一月七日に漂着したものでございますが、このときは、船底を上にして、その一部が着底しているという非常に不安定な状態でございました。したがって、その船首部から新たな油の流出防止しながら油の抜き取りを行うというのは非常に技術的に、例えば潜水調査を必要とするとか、専門家による工法の検討が必要であるとか、関係自治体との調整が必要であるということで、時間が結果的にかかりまして、一月十四日に政府対策本部で油の抜き取り方針が決定された、そういう意味でもちょっと時間がかかった経緯がございます。  その後、直ちにいわゆる仮設道路の造成を開始いたしまして、また、並行して海上からの抜き取り作業も行いましたが、途中天気が悪いということで作業が阻まれたということもございまして、二月二十五日の時点抜き取り作業が終了した。  それから、船首部の引き揚げについては、これも天候がおさまるのを待って作業をやるということもございまして、結果的には四月二十日に完了したということで、先生指摘のとおり、相当長時間を要したというのは事実でございます。  これらのナホトカ号教訓を踏まえまして、私ども、まず政府全体として防災基本計画を昨年六月に改定いたしました。また、昨年十二月には国家的緊急時計画の改定も行いまして、政府全体として、例えば、直ちに非常災害対策本部をこういう場合には設置するとかそういうような対応、そういう意味で、迅速な立ち上がりが可能になるというような体制政府全体としてつくったわけでございます。  また、先生質問の、今回の海洋汚染防止法改正との関係でございますが、今回の改正によりまして、例えばナホトカ号のように領海外外国船舶がこのような大規模油流出災害を起こした場合に、現行の海洋汚染防止法では、海上災害防止センターに対して海上保安庁長官措置を講ずるよう指示することができないようになっておりますが、そういう場合でも、領海外外国船舶に対しても、海上保安庁長官海上災害防止センターに対して防除措置の実施を指示することができるような規定を整備いたしました。  また、関係行政機関の長などに対しまして海上保安庁長官から必要な油防除措置を要請できるというような仕組みも、この新しい、現在御審議いただいております改正案に盛り込んでいるところでございます。  こういう法制面観点からも、より一層我が国の油防除体制が強化されまして、先ほど申し上げました非常災害対策本部等との措置と相まちまして、迅速な対応ができるものというふうに考えているところでございます。
  5. 田中甲

    田中(甲)委員 泥棒を捕らえて縄をなうではありませんけれども、今回の改正を決して否定するものではありません。しかし、このような大規模災害、油の流出事故という教訓を踏まえてという姿勢を、そのまま、大いに結構ですという気持ちには若干なれないところがございます。今までどうしてこういうような措置というものが事前にとられてこなかったのかという疑問は、やはり持たざるを得ないところだからであります。  続いて、昨年七月二日、今度はダイヤモンドグレース号東京湾の中で災害を起こしました。  前回とは異なりまして、今回は原油流出事故でありましたが、揮発性が極めて高い原油流出によりまして、東京湾に面する一帯においては、かなり大気の中に異臭が発生いたしました。私も、実は千葉県の浦安市に近い、市川市は行徳というところに住んでおりまして、その日自宅にいたものですから、大変な異臭が漂ってまいりまして、息もできないような、そんな状態でありました。ですから、鮮明に私自身の記憶の中にもとどめられているのであります。  この流出事故の際に、今回は、流出量を実際の十倍の量という誤認した報道が当初流れたのですけれども、その理由、そして、そういう誤認が起こり得る状況説明というものをまずはしていただきたいと思います。
  6. 相原力

    相原政府委員 お答え申し上げます。  先生質問ダイヤモンドグレース号事故、昨年の七月二日に東京湾で発生したものでございますが、まず、こういう油流出災害が起こった場合に、その量がどの程度であるかという流出量につきましては、海洋汚染防止法に基づきまして、船長あるいは運航者側から報告が出される義務がございます。本件につきましても、事故当日、運航者側である日本郵船から事実の報告が提出されまして、その資料等から、当初一万四千キロリットルから一万五千キロリットルであるというふうに推定したわけでございます。  その後、日本郵船の方から現地の第三管区海上保安本部に対しまして、日本郵船専門機関である財団法人の新日本検定協会、そこで計測した結果、これは具体的にそのタンクがどういうふうに破れて、どの程度の油がタンクの中に残っているかという計測をした結果、流出量が約千五百五十キロリットルであるというふうにわかったという報告がありました。その事実関係海上保安庁の本庁に届いたのが、事故の次の日の午前七時ごろであったわけでございます。  先生指摘のとおり、これは大変流出量の大幅な訂正、大きい方から小さい方に変わるわけでありますが、いずれにしても大幅な訂正であるという極めて重要な事態でございますので、私どもとしても、日本郵船責任者から詳しい説明を受けて検討した結果、本件流出量訂正する必要があるということで、対策本部長であります運輸大臣にも報告の上、公表するに至ったという経緯でございます。  そういう状況で、十分の一程度数字訂正したわけでございますが、いずれにしても、千五百五十キロリットルという数字は、東京湾の中での流出量ということでは相当大きな量でございまして、海上保安庁としては、事故の当日あるいは翌日、翌々日にかけて、全関係行政機関等も含めて全力を挙げて防除活動に当たっていたところでございます。そういう意味での防除活動に与える影響というのは、特に大きなものはなかったのではないかというふうに考えているところでございます。
  7. 田中甲

    田中(甲)委員 答弁の最後はよく聞き取れなかったのですけれども、与える影響は少なかったのではないかとおっしゃられました。  時の官房長官でありました梶山静六さんは、原油回収は早まる、つまり、実際には十分の一であったのだということを明らかにして、最終的にそのように結んだわけですね。しかし、長官本部長となられた油流出対策本部というものは一万五千という数字をもとに対策がとられていたわけでありますから、それに対しての中和剤散布ということをもう即日対応していたはずですが、その点はいかがですか。
  8. 相原力

    相原政府委員 運輸大臣対策本部長で、全関係省庁局長等本部員として対策に当たったわけでございます。事故発生直後に、対策本部長である運輸大臣、それから私もヘリコプターで上空から視察しておりますし、現場では、もちろん航空機あるいは巡視船現場を確認しつつ防除活動に当たったわけでございます。したがいまして、数字の問題はございますが、現場におきましては、その流出状況を念頭に置きながら、油がどの程度拡散するかということも含めて検討した上での対応を行ったところでございます。  今先生質問油処理剤関係でございますが、海上保安庁といたしましては、基本的には油回収船とか回収ネット吸着マット等による回収を中心に行っているわけでございます。また、油処理剤も並行して使っているわけでございますが、油処理剤使用につきましては、まず、どういう処理剤が有効であるかという意味で、排出油を採取しまして油処理剤効果があることを確認する。それから、当然漁業等影響があり得るということもございまして、漁業協同組合等事前に協議いたしまして合意を得た上で、使用量につきましても、これは公表した量の問題もございますが、実態的には、海上における現実の浮流油のその時点あるいはその箇所での状況に応じて必要、適切な分量を使用するなど、海洋環境に配慮いたしましてきめ細かな対応を行ってきたところでございます。
  9. 田中甲

    田中(甲)委員 それでは、二点申し上げさせていただきたいと思います。  まずは、油流出対策本部というものは、状況を正確に把握するということを間違いなくやっていただきたいという点が一点。  そして、今答弁の中にも含まれておりましたが、海域環境影響があるということを今申されました。その油処理剤がまかれたのが、十倍の原油流出に対しての対応をとられたわけでありますから、その影響というものを、どのような状況が残ってしまったのか、環境庁の方から答弁をいただければありがたいと思います。
  10. 畑野浩

    畑野説明員 お答え申し上げます。  私どもは、油処理剤影響に関しましては、事故発生直後から三回にわたりまして、処理剤の成分でありますところの界面活性剤環境濃度調査をいたしました。それとともに、関係省庁が協力をして油流出事故環境影響評価のために設置をいたしました、ナホトカ号油流出事故環境影響評価総合検討会というものがあるわけでございますが、この中で関係省庁ないし自治体調査というものをいろいろに評価をいたしました。  その結果、御指摘ダイヤモンドグレース号の件でございますけれども油処理剤に関しましては事故直後微量検出されたものの、五日後以降は通常レベルまで低下をしているという御報告を、本年の四月でございますけれども中間報告としておまとめいただいたところでございます。  具体的に私どもが行いました調査の概略を申し上げますと、七月十日の調査では、界面活性剤通常レベルだったということ。それから、十六日に東京湾の奥の方で調査をいたしましたが、ごく微量、通常意味での検出限界以下のレベルであったということ。越えまして八月の六日、七日念のためにやったわけでございますけれども、これは通常検出限界以下でありました。  このようなことの背景でございますけれども油処理剤使用につきましては、私ども環境庁と水産庁が、非常災害対策本部に対しましてその使用必要最小限とするようにお願いをいたしました。海上保安庁も、油処理剤使用効果があることを確認した上で、必要最小限にとどめるという方向で対処していただきました。かようなことでございます。
  11. 田中甲

    田中(甲)委員 それでは、実際には大きな環境への影響はないと、環境庁の方では判断したということでよろしいですね。
  12. 畑野浩

    畑野説明員 さようでございます。
  13. 田中甲

    田中(甲)委員 了承しました。  お話をナホトカ号の方に戻して、一点、再度私の方から意見を述べさせていただきます。  長官の方から、領域外外国船舶の油の流出事故に対してもしっかりと対応ができるように、必要な措置ができるようにという新たな法改正を行うということでありますけれども、果たして、油が流れたからそういう対応をするということで、それだけでいいのかという点が残ります。  特に、根本的な対策を行っていかなければならないのは、便宜置籍船対策ということがやはりあるのだろうと思います。管轄外、つまり、今回のように領海外で起きた油流出事故、それを未然に防いでいくためには、領海外管轄権が及ばないという現在の状況が発生している便宜置籍船の問題というものにもう少し着目をして、本質的な改善にも今後努めていただきたいという点を申し上げさせていただきたいと思います。  また、ダイヤモンドグレース号に関しましては、東京湾という航行する船舶が非常に密集している状況内、専門用語ではふくそう海域という言葉を使うようでありますけれども東京湾等輻輳海域における大型タンカー輸送安全対策に関する検討委員会というのも設置されているそうですけれども、こういう委員会公開性というものをさらに高めていただきたいということ。  同時に、ふくそう海域だということが指摘されているその中で、さらに、第百四十回中央港湾審議会計画部会においては、今後、京葉の二期工事というものを行って、船橋沖合港湾設備をつくろうという計画があるようであります。この点に関しまして、これ以上航行がふくそうしていくような状況をつくり出すこの計画に対して、港湾局はどのように現在考えられているかを御答弁いただきたいと思います。
  14. 木本英明

    木本政府委員 東京湾での港湾開発といいますか、京葉二期の計画もそうでございますが、私どもの基本的な考え方でございますけれども、やはり、東京湾港湾というのは、首都圏港湾物流に対して大変重要な役割を果たしているわけでございまして、そういった物流需要の増大、あるいは最近問題になっております物流コストの削減に対しまして、港湾のそういった整備なり役割というのは今後とも大きな機能を果たしていくだろう、こういうふうに考えております。そういった観点から、やはり、適切な整備というものを今後とも着実に推進していかなければならない、こういうふうに考えております。  ただ、今先生指摘になりましたように、東京湾航行の安全の問題とかいろいろな問題についても、やはり十分配慮していかなければならないということで、港湾開発計画を定める場合には、専門の方々で委員会等をつくりまして、航行の安全の確保についてどういうような措置を講じていくのがいいのかといった観点からいろいろ検討していただきまして、そういったものを踏まえながら、あわせて、いろいろな施策を展開していく、こういうふうに考えております。  また、北関東地域港湾需要等に対しましては、あえて東京湾の諸港を利用するのではなくて、北関東常陸那珂港等、現在整備を進めておりますけれども、そういった港の機能分担を図りながら、北関東の諸港湾整備も進めることによって、東京湾の負荷というものを少しでも軽減させていく。こういったいろいろな施策を総合的に展開しながら、東京湾等の安全に配慮しながら施策を展開している、こういうふうにやっておるところでございます。
  15. 田中甲

    田中(甲)委員 あそこの水域は、一メートル程度のいわゆる三番瀬と言われる浅瀬の海域であります。私も一級船舶の免状を運輸省から許可を受けておりまして、ヨットに乗る人間です。あそこは、もう浅くてヨットは近づけないという海域でありまして、そこを掘り下げてみおという深みをつくって、十四メートルまでしか掘れないという計画だそうです。  つまり、五万トン以上の船は入れない、こういうところを、千葉県の船橋沖合京葉二期という形で新しい港湾施設をつくるということが、果たして必要なのかどうか。三万トンから四万トンの船しか通れないということになりますし、重要なことは、千葉航路船橋航路が交差するという、現在でも密集している東京湾の中に、さらに、信号機をつけられるわけではないこの海域に、例えば、ガスっている、霧が出ているときにフォグホーンを鳴らしても、どんなに警戒をしても、このように交差している航路というものをつくるという状況が果たしてあっていいのかどうか。そして、ここに莫大な予算を投じていくというこの計画を、しっかりと検討していただかなければ困る、見直していただかなければ困るということを申し上げたいと思います。  御答弁をもらう前に、もう一つ。こういうところに使われていくむだな予算というものを、今回の法改正の中で、まだまだ不足している点に充当をしていく必要があると思うのです、効率よく安全性の高い運輸行政を進めるということを冒頭、大臣のお言葉の中から発言をされているわけでありますから。果たして、現在、油流出事故が起きたときに、大型しゅんせつ油回収船、今度新設される船の名前は海鵬丸というそうでありますけれども、これをつくることによってどのような状況になるのか、簡潔に御説明をいただきたいと思います。港湾局長、済みませんが、答弁短目にお願いいたします。
  16. 木本英明

    木本政府委員 京葉二期等の安全対策については、今先生おっしゃられました、二つの航路が前方の方で交差するということでございますが、そういったことは、先ほども申し上げましたように、安全対策について専門家等検討委員会をつくって十分な検討を行った上で港湾計画を定めておるということで、ひとつ御理解をいただきたい、こういうふうに思います。  それから、油回収船の件でございますが、これは、現在名古屋港に清龍丸という油回収船がございますが、今度、関門航路に従事しております船が老朽化したものでございますから、ちょうど代替更新の時期になっておりましたので、清龍丸と同じように、油回収機能を付加した兼用船として整備をさせていただくということになっております。  一応、清龍丸名古屋でございますので、日本海側万が一事故が起きた場合には、どうしても関門海峡を抜けて日本海に行くのに結構な時間がかかるということで、今度、海鵬丸北九州に配備されることになっておりますので、そうすれば比較的短時間のうちに日本海側地域もカバーできるということになりますから、一応、太平洋側日本海側大型油回収船による防除体制としてはまずまずの体制ができるのかな、こういうふうに考えておりまして、私どもとしては、早急にこの海鵬丸整備を進めていきたいというふうに考えておるところでございます。
  17. 田中甲

    田中(甲)委員 港湾局長東京湾事故が起きたときに責任がとれますか。そういう問題だと思いますよ。こういう事故教訓として新しく法改正をして、東京湾事故が起こらないように最善の措置をとるという段階に及んで、しかるべき機関審議を行っているから大丈夫なんだという答弁をもしされているとするならば、これは大変な問題だと思います。これからの事故が発生した場合の責任がとれますか、それがまず一点。  それでは、新しい海鵬丸というものをつくって、北九州に配置をして、日本海側、稚内で事故が起きたときに何時間後に到着てきるか、御答弁いただけますか。
  18. 木本英明

    木本政府委員 東京湾安全対策については、もちろん、港湾管理者サイドだけではなしに、海上保安庁やその他関係機関、いろいろ連携しながら安全対策を講じていくわけでございますので、そういったことに万全を期して、事故が起きないように最善の努力をしていくということで私どもも努力していきたい、こういうふうに考えております。  それから、稚内、北海道の地域で油流出事故が起きた場合の到達時間でございますが、仮に、名古屋に配属されております清龍丸ですと、大体七十時間ぐらいで到達できる、それから、北九州に配備されます今度の海鵬丸では、八十時間ぐらいで到達できるという一応の想定をいたしております。
  19. 田中甲

    田中(甲)委員 私は、七十時間、八十時間、油が流れてからしゅんせつ船が到着てきないというのは、迅速な対応とは言いがたい状態だと思います。つまり、新しい船を、海鵬丸というものを造船するということでは十分に対応できていない。  この日本地図を見てまいりますと、私は、青森ぐらいにもう一隻配置することによって、ほぼ日本全体に均等のバランスで、もし災害が起きたときにはしゅんせつ船が駆けつけることができるのだろう。大型しゅんせつ油回収船というものが、やはりもう一隻は急いで必要だ。今回、昨年の一月、七月の事故教訓として対応していくというその法案改正であるとするならば、こういう整備というものを同時並行的にきっちりと整備していくということが必要だと私は思います。しっかりと検討してみてください。  また東京湾の問題に戻りますが、あそこは三番瀬という干潟、四百種類を超える多様な、貴重な生物が生息しているところであります。そして、対岸であります、東京湾の一番奥になりますけれども、今度は千葉県の企業庁が企画している埋立計画もありますが、それは、財政難ということもありますけれども、自然環境を考えて、環境影響調査の再調査を行って、大幅な計画変更をいたします。そういう中で、港湾局だけが、従来どおりの計画でいいのだ、災害というものも関係機関がしっかりと協議をしていく中で対策をしていくという言葉だけでいいのだということで、私は、それではいけないと思います。しっかりと検討をし直していただきたい。二度と東京湾内でこのような災害が起きないように最善の措置をとっていくというときには、千葉航路船橋航路が交差しているというような状況というのは、やはり起こしてはならない、そんなことを考えております。  もし御答弁がありましたら、もう一言いただきたいと思います。
  20. 木本英明

    木本政府委員 京葉二期の計画につきましては、経緯等踏まえて話させていただきたいと思います。  平成四年三月に港湾管理者であります千葉県から運輸大臣に提出されました港湾計画港湾審議会でいろいろな角度から議論されまして、答申をいただいております。その答申に沿って運輸大臣港湾管理者である千葉県に対しまして、港湾計画の実施に当たっては環境の保全に十分配慮されたいという意見を付して、千葉県に通知をいたしておるところでございます。これを受けまして、千葉県が専門家等先生方で環境会議というものを設置されまして、この三番瀬の生態系に関する補足調査を実施するなど、環境面での検討を鋭意実施していただいてきております。そういった環境等の調査結果を踏まえまして今後の対応検討したい、こういうふうに聞いておるところでございまして、私ども運輸省といたしましては、そういった港湾管理者の検討状況というものを見守ってまいりたい、このように考えておるところでございます。
  21. 田中甲

    田中(甲)委員 時間もなくなってまいりました。大臣に御答弁いただければ幸いであります。  この法改正は、二度と大規模油流出事故というものを起こさないためにどのようにするかということを考えられて改正がされたものだと思います。東京湾航路が密集した海域においてはさらに安全性の確立ということ、そして運輸委員会でも常に発言がされておりますけれども環境問題ということをしっかりととらえて、これからの計画というのを考えていかなければならない。安全性環境性ということを考えますと、今後の湾内整備ということはしっかりと検討し、住民の声等も聞いた上で望まれる整備というものが行われるべきだと思われますが、大臣はいかがでしょうか。
  22. 藤井孝男

    ○藤井国務大臣 先ほどから質疑をお伺いいたしておりまして、大変貴重な御意見をありがとうございます。  まず、ナホトカ号あるいはダイヤモンドグレース号油流出事故は大変ゆゆしき事故であり、こうした大規模油流出事故が再発しないように、運輸省といたしましても万全を期していかなければならないことは当然のことだと思っております。  ただ、私は参議院の委員会でも申し上げたんでございますけれども、我が国の置かれている現況というのは、資源が非常に、資源少国ということでありますし、とりわけ石油、化石燃料につきましては九九・八%が輸入ということでございます。そのことによって我が国の産業の礎になっている石油という問題の取り扱い、言ってみれば日本はまさに油の上に乗っている国ではないかと言われるぐらいではないかと思っております。ですから、今委員の御指摘のように、そういった危険、事故が再発する可能性はなしとは言えない、そういったことに対する万全の措置を今後とも講じていかなければなりません。  いずれにいたしましても、大変厳しい財政状況の中でありますけれども、私どもは、今委員の御指摘の点につきましても、今後とも十分それを踏まえて検討をしていかなければならないと思っています。  いま一つ、環境の問題でございますけれども、先ほど港湾局長がお答えいたしましたように、三番瀬の問題一つとりましても、平成四年に運輸省として一つの承認をいたしましたけれども、それは、環境面に十分配慮するようにということを付しておるわけでありますから、それを管理者である千葉県の方で今御検討なさっていらっしゃると聞いておりますし、その検討結果がまとまったことを踏まえて、環境面に対しましても我々は十分配慮しながら港湾整備というものも進めていかなければならない、このように考えているところでございます。
  23. 田中甲

    田中(甲)委員 ありがとうございました。  予定していた質問でお呼びした方々に質問できない御無礼をお許しをいただきまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  24. 大野功統

    大野委員長 次に、長内順一君。
  25. 長内順一

    長内委員 平和・改革の長内順一でございます。きょうは、海洋汚染及び海上災害防止に関する法律改正案ということでお時間をいただきました。  ただいまも議論があったように、先般のナホトカ号を初めとするさまざまな重油の流出事故、これが一つのきっかけになりまして、ひとつ法改正をして、しっかりこういうことに対応していこうということと受けとめさせていただいているところでございます。  ただいま大臣の方からもお話がございましたけれども、改めて、日本の国というのは石油を初めとするエネルギー、すべからく海外から輸入をしておるわけでございまして、まさしく今おっしゃられた油の上に浮いている国ということが実感できるわけでございます。そんな中で、ナホトカ号のような強烈なあの事故が起きたときに初めて我々は、私たちの置かれている立場といいますか、こういうものを改めて認識をしたわけでございます。  そんな意味から、私どもはこういう大きな災害事故から何を学ぶかというと、少なくとも二つある。発生したときに緊急にこれに対応するということが一つであります。それともう一つは、少なくともここにいる我々は、二度とこのようなことを起こさないための対応をしっかりしていくということが、私たちに課せられた使命ではないか、こんなふうに受けとめさせていただいております。  きょうは限られた時間の中でありますが、ちょっと小さなことになるかもしれませんけれども、具体的な事柄について大臣にお伺いをさせていただきたい、こんなふうに考えております。  まず、ナホトカ号の例を引いてちょっと考えてみますと、原因の調査がいろいろ行われているわけでございまして、日本とロシアとこの原因の調査結果は違うわけでありますが、いずれにしてもこのナホトカ号というのは非常に船体が老朽化していた、これだけは間違いないと思います。今、日本の周りを動いているタンカー、かなり老朽化した船があるというふうにも聞いておるわけでございます。  そこで初めに、老朽船対策というものについてお伺いをしたいと思うのですが、老朽化して安全上問題があると言われるような外国のタンカー、これをどう発見し、監視をし、排除していくかということが非常に大事だと思います。現在どんなことが行われているかと申しますと、外国船への立入検査、いわゆるポートステートコントロール、PSC、こんなことがあるわけでありますが、これなんかもなかなか現実的には難しい対応なのかと思いつつも、老朽化対策のためにはこのPSCの強化がどうしても私は必要だというふうに考えておるわけでございます。大臣、この点についていかがお考えになっておりますでしょうか、お願いしたいと思うのです。
  26. 藤井孝男

    ○藤井国務大臣 私どもは、ナホトカ号事故あるいはダイヤモンドグレース号事故、非常に多くの教訓を得たわけであります。そして、再びこうした事故が起こらないようにすることを第一義的に考えなければならない。そのためには、ナホトカ号のような外国船の事故防止をどうしていくかということにつきましては、今委員指摘のポートステートコントロールの強化を図ることが必要だと思っております。これは我が国だけがこのポートステートコントロールを強化してもこれで万全とは言えない、むしろ各国が個々に強化を図っていただく、それからまた、国際的にお互いに情報交換あるいは連携するということが必要だろうと思っております。  いずれにいたしましても、昨年四月にこのPSCの専門的な観点から外国船舶監督官というものを全国に四十六名を配置し、本年度さらに六名を加えてPSCの実施体制を強化しているところでございます。  また、国際的には、アジア・太平洋地域、欧州地域、南米地域、カリブ海におきましても地域的な協力連携を図って、このPSCが有効的に、効果的に実施されるように努力しているところでございます。
  27. 長内順一

    長内委員 このPSC、この辺がまずしっかりしていきませんと、受けの姿勢で、運輸省海上保安庁が一生懸命になって対応策を考えておっても、根っこの部分というのは、こういう船が平気で日本周辺を航行している。いつ何どきナホトカ号の二の舞になるかわからない。そんな意味では、今御答弁いただきましたけれども、少なくとも、日本の国だけで取り締まるだとかなんかではなくて、やはり国際的にこういうことへの関心、それから対応ということを考えていかなければならないと私は思います。  ただいま同僚の議員の方からも、こういう事故が起きると、それは船舶事故だけではなくて、ひいては環境問題、やがて次世代への影響もあるんだというような大きなお話がございましたが、まさしくそのとおりです。そんな意味では、運輸省そして海上保安庁も一生懸命やられていると思いますが、老朽船の事故の再発を防止するために、具体的に、国際的にはどう取り組まれているのか、御見解をお願いしたいと思います。
  28. 山本孝史

    山本(孝)政府委員 お尋ねの件について、国際的な検討状況、我が国の取り組み状況を御説明申し上げます。  我が国は、昨年五月に、こういった問題に取り組んでおります国際海事機関、IMOにおきまして、旗国検査、まず、ポートステートコントロールの前に、それぞれが所属している、登録している国、つまり旗国となります、ここが検査を強化するというのが第一だと考えまして、そこが老朽タンカー等について検査をより強化するような方策について提案を行いました。次いで、こういった検査を行った結果をその船舶にあらかじめ書類で持たせることによりまして、実際に入港を受け入れた、例えば我が国であれあるいは中国であれ、そういった国でポートステートコントロールをする際に、それぞれの国がきちんと検査したことを証明している書類と実際の船との状況を照らし合わせまして、もしそこに疑義がある場合には、この船はきちんと手入れがされていないのではないかということで、まずその旗国、登録国に通報するとともに一国際海事機関に通報をいたすというふうな制度を提案したところでございます。  これらにつきましては、昨年十一月以来検討を続けておりまして、とりあえず、一九九九年七月一日からこういった仕組みを発効させようという合意ができております。  引き続きまして、本年五月、つまり現在行われておりますが、ここにおきまして、さらにこういった制度の詳細運用について検討を進めておるところでございます。
  29. 長内順一

    長内委員 局長、IMOその他で、日本の発言の影響力というのは、どの程度ということはないですが、日本の発言の影響力についてどのように認識されておりますか。
  30. 山本孝史

    山本(孝)政府委員 我が国は、IMOに、大きな会議におきましては、政府代表、研究所の代表あるいは知識、ノウハウを持った公益団体等から代表を選びまして、百名に達するような大代表団を送り込んでこの会議に臨むということをしばしばやっております。  我が国のIMOにおきます評価でございますが、我が国は世界最大の造船業も所有しておりますし、また強大な海運を持っております海運造船国でございます。そういったところから、またすぐれた研究機関もございますので、実際に提案するに当たり、また外国が提案した諸課題につきましても、実験も交えて十分に技術的知見を得まして、それをもとに国際会議で発言を行っております。このような結果、我が国が技術的な所見を述べることに対しましては大変高い信頼性がありまして、技術基準の相当大きな部分が我が国の意見によって決まっていくという実態にございます。
  31. 長内順一

    長内委員 私は、やはりそうでなければならないと思うのですね。この間も、車のときにもお話し申し上げましたけれども、グローバルスタンダードということで、何かほかのところに基準を設けて、そこに日本が合わせていくというような行き方ではなくて、日本はもう本当に技術立国、ハイレベルな技術を持っているわけですから、それを駆使しながら、どちらかというと、日本の基準に世界を合わさせていくというぐらいの意気込みでひとつ取り組んでいただきたいな、こんなふうに思うわけであります。  そこで、老朽船対策のもう一つなんでありますが、タンカーの船体を二重構造にする国際条約ができているわけであります。タンカーからの油の流出防止する上では非常に有効な規制だというふうに考えられるわけでありますが、この二重構造、ダブルハルというそうでありますが、新たに建造するタンカーについてはこれからはすべて二重構造にする、ダブルハルにするというふうになっております。しかし、まだまだ現存するタンカー、これは何か船齢二十五年で切りかえるというふうになっておるわけでございますが、私は、現存のタンカーについて、二十五年という期限、ここにこだわることなく、やはり早期にダブルハルタンカ1へ移行する、いわゆるダブルハル化を促進していくべきだ、こういう考えに立っておりますが、御見解はいかがでございましょうか。
  32. 山本孝史

    山本(孝)政府委員 先生御案内のとおり、タンカーのダブルハル化につきましては、新しくつくられるものはすべてダブルハルでなければいけないという取り決めは国際的にできております。  ただ、この取り決めは一九九三年に発効いたしまして、まだ五年を経過していないという状況で、各国、その切りかえといいますか、整備を急いでいるところでございます。この取り決めに至るに当たりましては、各国の思惑と利害が非常に絡んでいるところを最終的に調整したという経緯もございまして、各国がようやく計画的に整備を進め始めたところでございます。  こういったところから考えますと、今この現状で、直ちに残りもすべてダブルハル化しろ、こういう提案をいたしましても、かなり大きな抵抗が予想されるところでございます。しかしながら、私どもは、一つの戦略といいますか、とにかく我が国を含めましてダブルハル化をどんどん進めて、世界の船舶においてダブルハルというのが主流になる、大勢を占めるという状態を早くつくって、その後しかるべき対応ということで考えていくのが得策ではないかというふうに考えております。
  33. 長内順一

    長内委員 これは構造的、技術的な問題ですが、私は,予算も、それからさまざまな問題もあってなかなか難しい問題だと思いますけれども、ひとつこれを促進していくという姿勢だけは崩さないで、推進をお願いしたいなというふうに思うわけでございます。  時間がありませんので、次にいきたいと思います。  ナホトカ号のときにだれしも非常に感じたと思うのですが、こういう大規模な油の流出事故に対する国の対応が非常にお粗末だなということを実感されたのではないかと思います一テレビを通して、漁民の皆さんがひしゃくとバケツで一生懸命吹雪の中であの油の回収をしている姿が出されまして、実態がどうなっていたのかなということが逆にわからなくなってしまっているという側面もあったのかなというふうにも思うわけでございます。  そこで、こういう事故が起きたときに、実は、一認可法人の海上災害防止センターが、ある意味では日本のすべてをここで受けて、対応しているというような位置づけにあるわけであります。位置づけが重要だということは大事なんですが、私は余りにもここの期待度が高過ぎるのではないかな、こんな気もしているわけでございますが、今回のナホトカ号教訓を踏まえて、この海上災害防止センター機能、もっとこれは抜本的に見直さなかったらいけないのではないかというふうに思うわけでございます。  大臣にお伺いしたいと思うのですが、この海上災害防止センター、高田馬場に本部があって、全国に四カ所出先がある。内容を拝見してもそうなんですが、果たしてここで、冒頭に申し上げましたように、これからの油の流出事故対応できるだけのものに、機能の面でも中身でもそうなんですが、なってはいないのではないか。逆に言えば、こういう出先機関自体が果たして必要なのかな、海上保安庁の中でも何かできるようなことが随分あるのではないかというような、これは私の懸念でありますが、抱いておるわけでございます。  大臣、この海上災害防止センターの見直しについて、どのようにお考えになっていますか。
  34. 相原力

    相原政府委員 私の方から、災害防止センターの機能と申しますか役割について、まず御説明をさせていただきたいと思います。  海上災害防止センター役割と申しますのは、海洋汚染防止法におきましても、本来、油の流出災害が起こった場合には、船舶所有者等運航者側に第一義的に防除措置を講じる義務があるわけでございます。ただ、通常、運航者が自分で油回収船とかオイルフェンスとかをそう大量に持っておりませんので、それにかわって適切に行う機関が必要である、そういう観点海上災害防止センターが設けられているというものでございます。したがって、第一義的には、防除措置を行う義務がある運航者等からの委託を受けて、防除活動を行うというのが一つでございます。  もう一つは、そういう活動だけでは不十分の場合、あるいは今回の法律改正案の中身でございます、例えば領海外外国船舶等の場合に、これは海上保安庁長官災害防止センターに防除活動を行うように指示をしてやってもらう、そういう役割を行う機関でございまして、油流出事故が発生した場合に、防除措置を適切に実施するために油回収船とかオイルフェンスなどの防除機材を全国的に配備している、あるいはその一環といたしまして、タンカーの乗組員あるいは石油関連施設の職員等に対しまして訓練を実施する、また、海上防災のための措置技術について調査研究を行う、そういう観点で、油流出事故を初めとする海上災害防止についての我が国の民間における中核的な存在でございます。そういう意味で、利益を追求しない公益的な機関でございますが、極めて重要な役割を担っているものというふうに考えているところでございます。  それで、これはもちろん海上保安庁としても、防災機関でございますので、油の防除活動等、これは横浜に機動防除基地というのも設けておりまして、行うわけでございますが、第一義的には、先ほど申し上げましたように、海洋汚染防止法の体系でも、汚染原因者である船舶所有者、運航者側防除義務があるということが国際的にも建前でございますので、そういう観点海上災害防止センター役割があるということでございます。  この海上災害防止センターにつきましても、ナホトカ号教訓もありまして、より体制を強化するといいますか、見直しをするということで、今回、国と民間からの出捐で防災基金というのがございますが、これも増額をするとか、あるいは新たに外洋において対応可能な大型油回収装置の整備も図るということをしているところでございます。  それから、先ほどもちょっと触れましたけれども、今回御審議をいただいております法律改正におきましても、領海外外国船舶流出事故に対しまして、センターもより的確に対応できるということでございますが、この対応は非常に重要な課題であるというふうに思っておりまして、先生指摘のように、センターの体制のあり方については、今後とも十分に検討してまいりたいというふうに思っております。
  35. 長内順一

    長内委員 さっぱりわからないです。  いいですか。これだけの大規模事故が起きる、そのときに、少なくとも民間のところでその一切をある意味で受けとめて、そして対応する、こういう形が本当にいいのか。また、ここの機能でそれができるのか。  先ほど言いましたように、本部が東京にあって、あと四カ所出先があって、わずか三十数名でやっている。私は、こういうものであれば、非常に中途半端で、本当の意味では対応はできないというふうに思うのですよ。  特に、ナホトカ号のときの一連の流れ、時間がありませんから細かくは申し上げませんけれども、中身を調べてみたら、もう後手後手で、結局は一番の被害者はだれがなったかというと、打つ手がおくれたものだから、最後はあそこの地域の漁民だとか住民の方に全部そのしわ寄せがいってしまっているということから考えると、このセンターのあるべき姿、もっと真剣に考えていかなければ、存在意味がないというふうに私は思いますが、長官、いかがですか。
  36. 相原力

    相原政府委員 災防センターの役割につきまして先ほど御説明したところでございますが、全体の防除体制防除活動のあり方につきましては、先生指摘のとおり、ナホトカ号のときにいろいろな教訓がございました。全体的な情報の一元化の問題とか、関係機関役割分担の問題がございます。災防センターが行うのは必ずしも全体ではございませんで、全体を統括するのはあくまでも政府でございます。  今回、ナホトカ号教訓を踏まえまして、昨年六月に防災基本計画の改定も行い、また、十二月には国家的緊急時計画も全面的に改正いたしました。これは、政府として、ナホトカ号のようなことが起こった場合には、非常災害対策本部設置しまして、例えば運輸大臣の陣頭指揮のもとに関係省庁が一丸となってやる、その一環として、実施部隊として海上災害防止センター機能する、そういう役割でございます。
  37. 長内順一

    長内委員 ですから、長官、中には、直接その原因を起こしたところで、事故を起こしたところで、自分のところで発注してできるのではないか、対応をできるのではないかというような声があったり、それから、実際にやってもらうのは、何か事故が起きましてその対応をしていただくのは、海上災害防止センターが契約をする民間防災措置実施者という方々がやるわけですよ。  この契約書の九条には、例えばこういう一項目があります。要するに、災害防止センターが仕事をしてもらう民間防災措置実施者、ここに対しての支払いは、原則として遅滞なく費用については支払いをする。ところが、これについても、非常に速やかに払われていないだとか、さまざまな意見もあるわけですよ。  ですから、私は、このセンターについて、冒頭お話申し上げましたように、油の上に浮かんでいる国、そこで主力部隊としていざ事故が起きたときに対応するのには余りにもお粗末過ぎる、このように私は思うのですが、もう一度御見解をお願いします。短く、もう時間がありませんから。
  38. 相原力

    相原政府委員 ただいま先生指摘のように、民間に原因者が直接委託してもいいのではないかという御指摘については、現に、比較的小規模流出災害の場合にはやっております。ただ、ナホトカ号ダイヤモンドグレース号のような大規模な場合になりますと、やはり、それに全部対応できるような民間の会社もございませんので、センターにおきましては、全国各地に、約百五十社と契約して対応する、あるいは、ノウハウも持っておりますので、現実問題としては、大規模流出災害のような場合にはセンターが行うことが適当なんではないかということで、現実にも行われているわけでございます。  なお、費用の支払い等については、速やかに支払うことになっておりますが、もしそういうのでおくれるというようなことがあれば、その辺については、私どもも十分注意をしてまいりたいというふうに思っております。
  39. 長内順一

    長内委員 ですから、別に、こういう法人を置いてやる必要もないのではないか、そのぐらいのノウハウであれば海上保安庁の中で幾らでもできるわけでありまして、そのことを申し上げております。  次に進みたいと思います。  今回、油の除去のための配置の状況をちょっと拝見させていただきました。非常にアンバランスになっております。いわゆる油の回収船ですとか、それから防除のための資材、設備ですとか、こういうものの一覧表を見せていただいておりますが、太平洋側に非常に重きをなしておりまして、日本海側の方の除去能力は極めて低いというふうに私は思います。これなんかも、ナホトカ号教訓を生かして、もっと日本じゅうバランスよく配置をすべきだというふうに思いますが、この油回収船並びに資材、これの配置状況を変えるおつもりはありませんか。
  40. 相原力

    相原政府委員 先生指摘のとおり、現状は、やはり、日本海側防除能力が低かったのではないかという認識がございます。特に、ナホトカ号教訓を生かして今後につなげていく必要があるというふうに考えておるところでございまして、平成九年度の補正予算と平成十年度の予算におきまして、外洋でも対応可能な大型油回収装置とか、高粘度の油にも対応できるような防除資機材の整備を図ったところでございまして、これらの資材の配備につきましては、先生の御指摘も踏まえまして、従来防除能力が十分でなかった海域について十分配慮してまいりたいというふうに考えております。
  41. 長内順一

    長内委員 ぜひそういう形で、バランスのいい、どこで事故が起きてもそれに対応できる、即応できる、そういう体制をつくっていただきたいというふうに思います。  それから、前回のナホトカ号事故を踏まえてなんですが、私は、この重油の流出事故の最大の被害者、これはだれかというと、結局は、先ほど申し上げましたように、地元の関係者ではなかったのか、こんなふうに改めて思っております。実際、ああいう事故が起きて、直接被害を受ける地元自治体、ここには、機材だとか、こういう油の事故に対する専門家、こういうものもありません。地方自治体ではこういうことに対するいわゆる危機管理体制が整っていない。  私は、海上保安庁が、今回、対応の強化、権限の強化、こういうことをなされたことは、これはこれで了としますけれども、それと同時に、各自治体の中でこういう危機管理に対する強化策というものがぜひとも必要だというふうに考えますが、いかがでしょうか。
  42. 相原力

    相原政府委員 確かに、ナホトカ号までは、地方自治体にとって、船舶からの油流出災害対応というのは余り問題意識を持っていなかったというのは事実でございます。  その後の、先ほども触れましたように、防災基本計画の改定で新たに海上災害対策編が設けられまして、関係機関のとるべき対応について改めて明確化が図られまして、地方公共団体についても具体的な役割が規定されたところでございます。その改定された防災基本計画におきまして、地方公共団体も、例えばオイルフェンス等の防除資機材の整備を図るとか、マニュアルを整備して訓練を実施すべきというようなことが書かれているわけでございまして、現在、関係自治体においても地域防災計画の見直しを行って、必要な体制等の整備が図られているところでございます。  海上保安庁におきましても、従来から、地域の海上保安部等を中心に、関係自治体、漁協なども含めまして、各地域の排出油防除に関する協議会というのがございますが、そういう場における訓練等を通じて地方自治体と連携をとりながら、地方における防災体制を強化してまいりたい、こういうふうに考えております。
  43. 長内順一

    長内委員 もう時間が終了いたしました。ちょっと雑駁な質問になってしまって本当に申しわけなかったのですが、大臣、先ほどの災害防止センター、中身、体制を含めて、この際見直す必要があるというふうに私は思います。ぜひとも前向きな御検討をお願いしたい。  それから、今の自治体の問題につきましても、いろいろあれやっていますよ、これやっていますよというのはわかるのですが、いざ、ああいう事故が起きたときには、結局はひしゃくとバケツでという、しかも人命が失われる。これでは、とてもそういう体制が整っているとは曲がりなりにも言えない、私はこんなふうに思いますので、あわせて対応をお願いしたいというふうに要望させていただいて、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  44. 大野功統

    大野委員長 次に、鰐淵俊之君。
  45. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 私は自由党所属の鰐淵でございます。  今、委員の方からのいろいろな質疑を伺っておりまして、私の質疑の中でも若干ダブる部面もございますので、その辺は少し観点を変えてお聞きをしたい、このように思っております。  御案内のとおり、日本は古来から四面海に囲まれておりまして、何といっても日本の国、国民は海とのかかわり合いにおいて生きてきた、あるいはまた、社会が発展してきたと言っても過言ではないわけでございます。したがいまして、日本の港湾、日本を取り巻く近海あるいは領海外を含めて、海洋というのは非常に重要な場である、このように認識をするわけであります。  そういった意味の中で、今回、過去の教訓を例にいたしましてこのような改正案が出、懸命に取り組む、こういうような姿勢があらわれてきたといったことを私は大変評価をいたしますが、今、いろいろ質疑にございましたように、まだ、もろもろ検討しなければならない事項も残っておるのではないか、このように思います。  そこで、第一弾、今回の改正案等におきまして、過去のいろいろな海上災害あるいはまた油流出等の経過を見まして、今度の改正でどの程度自信を持って所期の目的を達し得るのかどうか、こういう点につきまして、提出をされた大臣の方からの御答弁をお願いいたします。
  46. 藤井孝男

    ○藤井国務大臣 法案の目的、中身につきましては、詳しくは保安庁長官の方から答弁をいたさせますけれども、先ほど来、田中委員長内委員、また鰐淵委員からの今御質問の中にもありましたように、あのナホトカ号ダイヤモンドグレース号教訓をいかに生かしてこれからの災害防止に当たるかということで、今回の法案もその中の重要な法律案だと思っております。一歩前進であろうと私どもも思っております。  ただ、これですべてが解決するとは、とても私自身としても、そこまではまだ言えない。いろいろな角度から制度の面、あるいは先ほど御質問にありましたように、自治体との関係、海外との連携、そういったものをうまく連携していかなければならないと思っています。  実は、私は昭和四十年にアラビア石油という会社に入社いたしまして、昭和五十二年まで十二年間、アラビア石油、これは日本で初めて中近東で油の採掘の利権をとった会社でございましたが、この間数年間アラビアの方にも赴任したことがありますけれども、今でも鮮明に記憶いたしておりますことは、昭和四十年の四月に入社いたしまして、その八月にアラビアのカフジ基地という積み出しのシーバースにおきまして、日本の海蔵丸という船が原油積み込み中に火災を起こしまして、日本人の船員を含めて十名を超える死亡者、それから数十名の負傷者を出した事故がありました。  結果的には大火災になりまして、シーバースから海蔵丸を引き離すという大変な難作業であり、大分時間かかかりましたけれども引き離しに成功したわけです。その海蔵丸が鎮火いたしましたのは、十二月になってからでございます。このように、油の事故というのは、油流出だけではなく、火災を起こしたときにも大変事故が増大するという経験を、私自身が、当時現地にはおりませんでしたけれども、新入社員当初にそうした大きなショッキングな事故にも遭遇したわけであります。  したがいまして、私は、先ほど日本という国が油の上に浮いている国であると言って過言ではないと申し上げたのは、まさにそういう中で私どもは生活しているのだ。そういう中でいかに事故を起こさせないように、また起きた場合には最小限に食いとめるようにこれからも努力していかなければなりませんし、また今回の法案につきましても、これですべてが解決するとは思いません。一歩前進だと思いますけれども、今後ともいろいろな魚度から法整備もありましょうし、制度の改善もありましょうし、いわゆる資機材の充実もありましょう。そういったことを踏まえて、これからも万全を期していかなければならない、このように考えておるところでございます。
  47. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 今、大臣に包括的に御答弁をいただきましたが、全くそのとおりだと思います。  海上輸送、いわゆる海運、日本は海運国家といいましょうか、日本籍の船がだんだんなくなるものですから、果たして海運国家という名にふさわしいのかどうかは別にいたしまして、日本の国や私どもの生活は、まさにそういった海運の、生産の原材料を運んできて製品を運び出す、そういう中で日本の経済というものは裏打ちされているのだということを考えますと、いかに海上路と港湾というものが大切であるか、これは論をまたないわけでございます。  したがいまして、特にエネルギーの問題につきましては、化石燃料、いわゆる石油、石炭、LPガス、その他原子燃料含めまして、エネルギーのほぼ一〇〇%近いものが海外から日本に入っておるのではないか、その他生産の材料の大宗が港に入ってくる。しかし、若干最近は、漁業の関係を見ますと、私は漁港という港に入るのが一番多いのかなと思って見ましたら、何と驚くなかれ、成田空港、空港におりる水産物の輸入が非常にふえまして、今や魚というものは漁港に入るよりは空港に入ると言っても過言でないほど航空貨物がふえているわけであります。  しかし、そのことがあっても、大量輸送ということになりますと、これはもう海上にどうしてもかなわないというか、比較することのできないほど大きな荷物を運ぶことが可能であるわけでございますから、何といってもそういった災害というものを未然に防止していくということが大事ではないか、そういう自覚を持って、担当官庁並びに官民一致して体制を構築していくということが大事であろうと思っております。  その中で、いろいろな課題があるわけですが、とりわけ、先ほど来議論されておりますとおり、油の防除体制のスキームというものが先ほど長内議員からもいろいろ心配されて質問されておりましたとおり、私もその心配をする一人でございます。したがいまして、各関係機関と協力しながら、例えば官であれば海上保安庁、都道府県、市町村、自衛隊、民間であれば船会社、あるいは漁業協同組合もあるでしょうし、いろいろな民間の協力を得てやる、こういう体制がこの改正法の中の一つの意味であろうと思います。  私はやはり日本の近海が非常に大切であるということを考えましたときに、領海内、領海外を問わず、日本の近海で、いわば海上保安庁の場合は管区で分かれていると思うわけであります。そうすると、太平洋、日本海、オホーツク海あるいはまた九州の西の方の海、玄界灘の方がそうですが、それぞれ自然条件が全く違うと思います。したがって、そういった地域の事故の発生によっては、資機材あるいは持っていくものも、条件が違いますからおのずと違ってくるということであろうと思います。  そういう意味で、日本近海における海域状況をどのように事前情報として発することができるか、あるいはまたそういった啓蒙ができるか、こういう体制があるやなしやという点について御答弁いただきたい。
  48. 相原力

    相原政府委員 お答えいたします。  先生指摘のように、海域状況、地域地域によって異なるわけでございますので、海上保安庁といたしましては、全国を十六の海域に分けまして、それぞれの海域ごとに排出油防除計画を策定いたしております。その排出油防除計画の中には、各海域の気象とか海象などの状況、あるいは海域の周辺環境等についての情報が盛り込まれております。  また、先ほどちょっと触れたところでありますが、全国の各地に、これは百カ所以上でございますけれども、国の関係機関関係自治体、漁業協同組合あるいは関係民間企業等から成ります排出油防除に関する協議会というのを設置いたしておりまして、これも活用いたしまして、日ごろから情報交換あるいは訓練等を行っているところでございます。  なお、海上保安庁独自のものといたしましては、沿岸海域環境保護情報というのを整備する必要があるということで、従来からもやっているわけでございますが、昨年のナホトカ号事故教訓に、これをもっと強化する必要があるということで、今年度、特に組織も沿岸域海洋情報管理室というのを海上保安庁の水路部に設けました。特に今年度から重点的な情報の整備を行って、関係のところにも早期に情報を伝達できるようなシステムをつくりたいというふうに考えているところでございます。
  49. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 先ほど来の議論の中でもありましたが、災害が発生する、あるいはそういう状況の中で果たして速やかに対応できるのか、それだけの資機材がそろっているのか、こういう心配が各委員の中にあったのではないか、私はそのように思います。  私もその心配をする一人でございますが、海洋汚染海上災害が一たび発生しますと、阪神・淡路大震災でもそうですが、私ども体験いたしました釧路沖地震でもそうですけれども、初期動作というのがいかに大切かということでございます。初期動作によって、私どもの町でありますと、大きな震度六の地震で大変な被害もあったのですが、火災はほとんど未然に防ぐことができた。これはなぜかというと、幼稚園から小学校の生徒が、ガスだとかそういう引火するようなものを実はその子供たちが、約四〇%の方たちが消しているんですね、アンケートをとりますと。お父さんや大人は、落ちてくる棚とか物を押さえている、そういうような状況ですから、火を消すのは子供たちがやっている。これはやはり、私たちの町の、釧路ですが、ふだんの訓練というものが行き届いている。それによって、ほとんど火災は発生しなかったのですね、ぼやは発生しましたけれども。ところが、阪神・淡路の震災は、もう五千人以上を超える死者、そして火災の発生、ということは、結局、初期動作に大きな迷いがあったということがあれだけ大きなものになっていったわけです。  その教訓からしますと、陸も海も同じでありまして、やはり海も早く対応しなければ、油はどんどん拡散していくわけでございますから、あるいはまた油だけではありません、石炭であろうとチップであろうと、化学肥料であろうと有毒のいろいろなものでも、一たび海上に流れますと、時間を置けば置くほど対応が難しくなる、こういうことがあるわけでございます。  そういったことで、私は、まず一つは、管区ごとでもいいですが、あるいは防止センターですか、今ある中の区分でもよろしいのでございますが、果たしてそういった資機材が十分用意されているのか。まあ十分とはいかないと思いますが、今どのくらい用意されているかということは私どもはわかりません。したがって、これについては後ほど、油の回収船とか清掃船あるいはまた消防艇ですとか航空機、油の処理剤、中和剤といいましょうか、あるいは吸着剤とかオイルフェンスといった資機材がどう整備されているんだということをディスクローズしてもらいますと、ああそうか、これだけのものがそろっているのなら安心だな、あるいは足りないなということが言えるのではないかというので、これは後日、ひとつ資料として提出していただければ幸いだ、このように思っているところでございます。
  50. 大野功統

    大野委員長 ただいま鰐淵委員から御要求のございました資料につきましては、後日、後刻、鰐淵委員運輸省から提出、説明させますので、御了解いただきたいと思います。
  51. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 ありがとうございます。  それでは次に、各海上保安部で管区ごとにそれぞれ今防除計画といいましょうか、そういったものがあるというのですが、私は、この防除計画というのは油を除くとかそういう意味が主とは思いますけれども、先ほど大臣がおっしゃったように、これは火災も発生する、それから衝突によっては、油だけでなくていろいろなものが流出する可能性もある。それから人命の問題もあるということを考えますと、やはり緊急に対応できる防災計画というものが私は必要ではないかと思うのであります。  まず、この防災計画の策定といった点について、既にあるものなのか、それとも今後検討されてつくろうとするものか。あるいは同時に、そういった計画があるとすれば、やはり防災訓練というものが必要である。港における訓練は、それぞれの自治体、各関係機関あわせてやっておりますが、いわゆる外洋、領海外の、今言ったナホトカとかああいうようなときの訓練といいますか、それはちょっと私はまだ聞いておらないわけでありますが、そういった訓練もやはり将来はやっていく必要がある、私はそのように考えるのですが、その点についてはいかがでしょうか。
  52. 相原力

    相原政府委員 御質問の防災計画関係でございますが、まず、防災計画自体は、全体的には防災基本計画というのがあるわけでございます。海上保安庁も、それに基づきまして海上保安庁の防災業務計画ということで、油流出災害だけではなくて、御指摘船舶火災とかそういうものも含めた全般的な防災業務計画がございまして、これに基づいて適切な対応を行っているところでございます。  それから、油につきましては、先ほど御説明いたしましたように、全国を十六の海域に分けまして排出油防除計画を策定いたしまして、これは海域の特性によって異なりますので、特性に応じて、よりきめ細かい油の流出事故に備えているところでございます。  それからなお、全国各地、これは百五カ所でございますけれども排出油防除に関する協議会を設けまして、ここで防除訓練も行っているところでございますが、先生質問の外洋における防除訓練は確かに今まで実施した例はございませんでした。ただ、ナホトカ号のように、また外洋でいつ大きな油災害が発生するとも限りませんので、平成十年度に新たに、外洋においても対応可能な大型油回収装置を予算整備する予定になっております。今後、これを使用した訓練も行っていきたいというふうに考えております。
  53. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 それでは、もう一つお伺いしたいのです。  新しい予算の中で、こういった災害に対する予算というのは、保安庁としては、前年対比でどの程度ふえておるのか。あるいはまた、港湾局もそういったものがあるのかどうかはちょっとわかりませんけれども法律に基づく予算というものの対前年比の伸び率はどの程度なのか、あるいは額はどの程度あるのか。ちょっとわかればお知らせ願いたいと思うのです。
  54. 相原力

    相原政府委員 先ほども申し上げましたように、九年度の補正予算と十年度予算で合わせて流出油防除体制整備を図った形になっているわけでございます。予算額といたしましては、海上保安庁の分だけで申しますと、九年度補正予算で八億二千六百万円、平成十年度予算で六億六千二百万円、これが海上保安庁関係防除資機材等に充てた予算でございます。  なお、平成九年度の当初予算、今ちょっと正確な数字はございませんが、非常に少ない経常経費的な額でございますので、倍率からいいますと、十倍程度の相当大きな伸びでございます。今までは経常経費的な予算でございました。そういう意味では、相当大幅な手当てをしていただいたというふうに考えております。
  55. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 こういった海上汚染、海上災害、主務官庁はやはり海上保安庁、ここを中心として防除スキームができております。これがすべからく上手に機能して、各都道府県や市町村、災害防止センターあるいは民間、こういうものを含めて機能しなければだめだと思うのですね。体制はできても、果たして、事故が発生したときに、ボタンを押してみたらふくそうしてなかなか現地に赴けないというのであれば、スキームを幾らつくっても機能しない。これではだめでありまして、機能するようにしていくためには、やはりこれを動かす訓練、トレーニングなり、あるいはその実験をやる、そういうことがどうしても必要になってくると思いますので、ぜひひとつその点、お願いをします。  さて、最後になりますが、これは直接この法律にかかわりはありませんけれども、自然災害の問題でございます。  自然災害におきまして、特にこれは私の港で起きたある事件でありますが、各港でも過去においてあったようであります。外国漁船が暴風雨に遭いまして、避難してまいりました。そして、釧路港の中に入り込もうとしたときに、航路筋で沈没してしまったわけですね、三隻。もちろん、我々港湾部の職員も消防も全員招集がかかりまして、人命の救助第一ですから、まず船やその他より人をとにかく助ける、これに一生懸命努力いたしましたのですが、やはりかなりの方が亡くなったということで、三隻の船が航路筋に沈んでしまった。  航路筋に沈むということになりますと、港湾管理者には実は航行上良好な管理をする責任があるんです。そうすると、この船をサルベージしなければ港を使うことができませんので、早くサルベージしなければならない。これは、基本的には、政府の考えておられるように、原因者の責任、船の所有者がサルベージをする費用を出す、これはもちろんもっともなことだと思います。  ただ、問題は、その原因者が居所不明、特定することができない、こういうことが実際、釧路の場合起こったわけであります。そうすると、そのサルベージ費用はだれが出すかというと、管理者の責任において管理者が出さなくてはいけないということになります。サルベージ費用というのは、ちょっとした漁船でも一つ揚げると深いところだったら大変な額ですが、港の航路筋ですから、十四、五メーターのところに沈んだのですけれども、やはり一億前後のお金がかかるわけであります。  これは、本州のように港湾管理者が知事でありましたり、あるいはある一定の財政規模を持つ都市、そういう都市であるならば、まあ何とか工面して五千万とか一億は出せるだろうと思いますが、北海道の場合は、港湾管理者というのは市町村長になっている。ですから、町はわずか一万足らず、そんなところでも港湾管理者なのでございます。だから、そういうところにこのような状況が起きたとして、居所不明で相手がいなくなったとした場合には、その町の町長なり村長が全部出さなくてはいけない。これは大変な財政負担になって、全体の財政から見るととても対応できない、こういうことになるわけであります。したがって、それではいつまでもその港を使うことができないのかという矛盾がございます。  こういった点について、やはり運輸省としても、これまでにもあったわけでございますので、今後もないということは断言できないと思います。そういったときに、どう過去の行政実例を考えながら対応していくかということは、十分ひとつ検討されて一定の結論を出していただければ、港湾管理者が大変安心できるのではないか、こう思いますので、港湾局長の方からひとつ御答弁願います。
  56. 木本英明

    木本政府委員 先生がただいまおっしゃられた、港湾の中で、特にそういう船舶航行のメーンルートであります航路等で沈没した場合、これはオーナー等、船主がはっきりしておれば、その方に第一義的に費用を見ていただいて撤去するということは当然だと思いますが、どうしても船主等がはっきりわからない場合にどうするのかという問題提起であろうというふうに思います。  かつて釧路港でそういった事例がありまして、大変先生御苦労されたというふうに私ども聞いております。ただ、港湾の管理あるいは維持というのは港湾管理者の業務になっておりますので、なかなか国の方でそういった撤去費用の面倒を見るということは難しい情勢であるわけでございます。  そういった中で、どのように考えていけばいいのかなということで、実は、私どもも問題提起を受けまして頭を悩ませておるところでございますが、国としては、船主等、特に外国の場合ですと、政府間ルートを通じて船主等を何とか捜し出すとか、そういった側面的な応援といいますか、努力はさせていただいておるわけですけれども、肝心の撤去費用についてはなかなか難しい問題があります。私どもも、先生のそういった点を受けまして、今後勉強していかなければいかぬな、こういうふうにただいま思ったところでございます。
  57. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 最後になりますが、本当に小さな町や村の首長さんは、一億になんなんとするサルベージ費用は出せないと思います。これは村民税、町民税の中から出せないと私は思います。そうなりますと、やはり何らかの手当てをする必要がある。  これは、基本的には、所有者がいれば所有者に請求することはもう明らかですからそれはいいのですが、今私が言ったのは、前提が居所不明、特定できない、こういうことですから、相手がいないわけですね、交渉する相手が。そうすると、外国の場合は国が出すかといったら、それは、こんな国の交渉は、私も本当に大変な目に遭いましたが、大変でありました。  しかし、運輸省の韓国の大使におられた方が本当に骨身を削って頑張っていただきましたから、運輸省の皆さんのお力添えもいただいたわけでありますが、私は、一つの例として、そういう場合は、やはり自治省と相談していただければなと思うのですね。自治省では交付税というのがありまして、普通交付税はもうだめですけれども、特別交付税については、そういう災害、自然災害ですから、災害の該当をやはりしていただいて、特交の中でカウントしていくということによってそういうものは解決する道が出るのではないか、私はそう思いますが、その点、いかがでしょうか。
  58. 木本英明

    木本政府委員 いろいろ考えなければならないというふうに思っておりますが、先生今御提案のありました自治省サイドのそういった措置が可能かどうかにつきましても、今後勉強していきたい、こういうふうに思います。
  59. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 これで終わりますが、海洋汚染あるいは海上災害というのは、一たび起きますと大変大きな被害をこうむり環境をも変えてしまう、こういうような非常に重大な問題だと思いますので、今後皆様方の一層の御奮起を願って、やはり海洋国日本として、どういうことがあっても安心して国民の生活を守っていけるということで努力をしていただければと、このように思います。  以上、終わります。
  60. 大野功統

    大野委員長 次に、寺前巖君。
  61. 寺前巖

    ○寺前委員 今、せっかく外国の座礁船舶の問題が出ましたので、私も最初にその問題について一言聞きたいと思います。  船が座礁した場合、本来は所有者が責任を持って撤去すべきものだということになっていますが、所有者が明らかでなかったり、船主責任保険に未加入などという場合に、撤去されずに長期にわたって放置されるという事態が生まれているわけです。  そこで、お聞きしたいのですが、現在外国船が座礁して放置されたままに置いてあるというのはどの程度なのか、過去五年の間に撤去された外国の船舶というのはどの程度あるのか、御報告を求めたいと思います。
  62. 土井勝二

    ○土井政府委員 お答え申し上げます。  現在、海上保安庁の方で把握しております乗り上げ海難による放置外国船舶状況でございますが、本年の五月十三日現在で、七隻の外国の船舶の放置がございます。  それから、平成五年から九年の間の五年間に船舶の撤去がどのように行われたかということでございますが、十隻の外国の船舶の撤去が行われております。
  63. 寺前巖

    ○寺前委員 海防法の四十三条では、何人も船舶を海洋に捨ててはならないと規定し、違反の場合に罰金刑が科せられることになっています。  そこで、聞きますが、過去五年の間に十隻の船が撤去されたとなっていますけれども、さて、そのうち違反行為として四十三条の適用を受けた船はどの程度あるのか、あるいは、今残っているところの七隻の問題について、古いのでは一九八六年から放置されているけれども、ここで違反として位置づけられたのは何件あるのか、御説明をいただきたいと思います。
  64. 相原力

    相原政府委員 御質問の件でございますが、放置外国船舶につきましては、一般的に、放置されている船でございますので、外国においても居所が不明であるとか、あるいは余りその実体がない会社であるとか、そういうケースが多いわけでございます。  それからまた、わかったとしても、外国に居住しているということもありまして、罰則の適用に至るケースは非常に少ないわけでございます。現実に、船舶所有者等が日本に来た場合に逮捕して捜査できるということでございまして、一件、平成五年の八月九日に鹿児島県で乗り上げましたホンジュラス貨物船につきましては、船舶所有者が日本に来た、これは密航事件関係でございますが、そういうこともありまして、逮捕した事例がございます。  それ以外については、要するに、日本にいないということで、罰則の適用をしたことはございません。その一件でございます。
  65. 寺前巖

    ○寺前委員 新聞を見ていると、放置問題でいろいろな記事が載っています。「「船主逃げ得」 返上へ法整備を」という見出しの新聞もあれば、「お荷物座礁外国船 処理費に税金投入」というので書いてあるのもある。「大迷惑です 座礁外国船」というのがある。それから、「超粗大ごみだ!漁民怒り心頭」という見出しのもあります。「沖合撤去作業に一億三千万円自腹 まだ七カ所メド立たず」というのもあります。要するに、めどが立たないで困っているという記事がいろいろな新聞に毎年のように出ています。  そこで、そういう内容を今聞いていたら、たまたま日本へ来たから捕まえてやったんだ、そうでない限りは逃げ得だと。逃げ得どころか、その後始末もしないまま、迷惑をかけている。  さて、その責任は、現実的には、先ほどここでお話があったように、関係の市町村長さんが必死になって仕事をしなければならぬということになっている。しかし、外国の船である以上は、外交権を持っているのは日本の外務省でしょう。外務省に折衝をさせなかったならば、この問題を自治体解決することはできそうもないでしょう、素人目に見ておっても。とすると、保安庁は、運輸省は、外務省と折衝をして、一つずつについて解決方向を打ち出していかなければならないと思う。  運輸省の方は、外務省に対して、この七件放置されているのについてどういうふうにお願いをしているのですか。それに対して外務省のとった態度について、どういうふうな見解を持っているのですか。
  66. 相原力

    相原政府委員 現在放置されております七件でございますが、このうち三件につきましては、外務省を通じまして、相手国に対して適切な措置をとってくれるように、それからまた所有者に対しても指導してくれるようにというような申し入れを行い、外務省においてもそういう措置を講じてもらっているところでございます。  なお、その他のものについても、これは、大使館、領事館等を通じて照会をしたところ、所在不明であるというようなものもございまして、必要に応じて外交ルートを通じて措置を講じているところでございます。  なお、残念ながら、七件についてはまだ撤去の段階に至っておりませんが、引き続き、そういう外交ルートを含め、また、直接海上保安庁から警告書的なものを発する場合もございますが、そういうものも含めて、適切な措置が早期にとられるように措置してまいりたいと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、所有者が所在不明であるとかそういうのもございますので、なかなか思うようにいかないというのが実態でございます。
  67. 寺前巖

    ○寺前委員 七隻の放置の状況を見ると、海難発生時は、パナマの貨物船の場合に、一番最初に出てくるのは昭和六十一年というのですから、これは大分前の話です。その次に出てくるシンガポールの船籍の貨物船は昭和六十二年、その次にパナマの貨物船は平成三年だ、その次にロシアの貨物船は平成四年だという調子で、大分前からの話を通告もしないで、だれの所有かわからぬというので放置されたままにしてあって、連絡がつきませんでは、外交権を持っている日本としても、こんなやり方でいいのだろうかとだれだって疑問に感じますね。  外務省はこういう要請の問題についてどういう措置をとってこられたのか、御説明いただきたいと思うのです。
  68. 越川和彦

    ○越川説明員 お答えします。  寺前先生指摘船舶のうち、七隻、今放置船舶があるわけでございますが、海上保安庁より通報あるいは依頼のあった船舶につきましては、しかるべく船籍国政府等に申し入れを行ってきているところでございます。これらの船舶につきましては、いまだ放置されている状況でございますので、今後とも、海上保安庁関係省庁と十分協議の上、船籍国政府等に対して適切な申し入れを強く行っていきたいと考えております。  その他の船舶につきましても、船主の国籍が船籍国と異なるといった場合もありまして、今後とも、この点につきましても海上保安庁と緊密に連絡をとって、必要であれば外交ルートを通じて強く申し入れを行っていきたいと思っております。
  69. 寺前巖

    ○寺前委員 海上保安庁、何で七隻のうち三隻しか外務省の外交ルートに乗せなかったのかというのが、一つの疑問なんです。  それから、その外務省の船籍ルートに乗せたけれども、ロシアの貨物船、平成四年の十二月だという、それから、パナマの貨物船は平成五年だ、ベリーズのこの船は平成六年だ、長期にわたって外交交渉のルートに乗せているというのに、めども立たないというのは一体どういうことなんだろうか。そんな外交折衝というのはあるんだろうか。連絡を入れただけであって放置されておったのと違うかいなと疑問に思うのは、だれでもの話だと思うのですが、これは依然としてめどが立たない外交交渉になるんですか。  私は二つの点を聞きたい。運輸省は、なぜ外交ルートに七隻のうち四つはしなかったのか。外交ルートに乗せてあるのにもかかわらず、めどが立たないという問題については、どこに問題があるのか、それについて今後どうしようと外務省はしているのか、お答えをいただきたいと思います。
  70. 相原力

    相原政府委員 まず私の方から、先生指摘の、全体の七件のりち外交ルートを通じて要請していないケースについての御指摘がございました。  これにつきましては、先ほども少し触れましたが、このうち三件はもう既に外交ルートで要請しておりますが、残りのうちの二件は、大使館とか総領事館を通じて所在を確認いたしましたが、所在が不明であるということでございます。所在といいますのは、船舶所有者等の所在が不明であるということで、これは、大使館あるいは総領事館を通じてそういう調査をしていただいたわけでございます。  それから、もう一件は、財団法人交流協会台北事務所を通じた撤去指導の協力依頼を行っているところでございます。  もう一件、実はやっていないのがございますが、これは、海上保安庁の出先機関である保安部から直接撤去勧告を行ってはおります。ただ、これについては、ちょっと今正確な経緯は持ち合わせておりませんが、結果的に外交ルートを通じた要請は行っていない、したがって、七件のうち一件だけそういう措置を行っていないという、それが実態でございます。  以上でございます。
  71. 越川和彦

    ○越川説明員 寺前先生指摘のように、外交ルートを通じて、外交的に申し入れを行ってきているにもかかわらず、いまだ数隻の船舶が放置されて  いるという状況につきましてはまさにそのとおりだと思います。その理由としましては、個々のケースでいろいろと事情があるわけでございますが、今海上保安庁の方からも御説明がありましたように、船主が不明である、所在が不明であるという理由も挙がると思います。  いずれにしても、船籍国あるいは船主の国籍の国に対しまして、その船主あるいは運航者に対して、できるだけ早く撤去するように、各ケース、各事故の事情に応じまして適切な外交的な申し入れを引き続き行っていく所存でございます。
  72. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、大使館なり領事館かどこか知らぬけれども、何か連絡をとってやっていますのやという話もあったけれども、要するに船主がわかりませんのや、そんな、粗大ごみではあるまいし、わかりませんで済む話とは違うと思う。これは日本の国内で山の中に何やらほかしに来よった、だれやらわからぬわというのと大分性格は違うと思います。  真剣になって、総合的に検討してもらう必要がある、こういう問題の外交ルートに乗せて、けりのつかぬ問題はけりをつけるということに努力をする必要が一つはあると僕は思うし、もう一つは、皆さん方がこういう協議会をおつくりになって、そして去年、おととしになりますか、十二月に要請を運輸大臣にしています。そういう要請文を見ていたら、座礁船の撤去問題解決に向けて国の窓口を一本化するよう強く求めるということが書かれている。ともかく一体となって真剣にこの解決の道を、財政面だけではなくして、ちゃんと外交交渉としても位置づけていけるように、責任をどこが持ってやりますという窓口をきちっとつくって、総合的対策をやっていく必要があるのと違うか。この期待にこたえてやってくれますかということを大臣に聞きたいと思います。
  73. 藤井孝男

    ○藤井国務大臣 寺前委員の御質疑は大変もっともなところをついておられると、私も理解をいたしております。  その上で、運輸省といたしましても、また先ほど外務省からの答弁もありましたように、外交ルートを通じて船舶所有者を把握、そして早期撤去ということをやらなければいけない。しかし残念ながら、その所在が不明である、所有者が不明である、いろいろな問題等によって今七隻の船が座礁しておるわけでありますけれども、放置された形になっております。  この問題につきましては、これを国としてどうすべきかというのは、もちろん今後とも外交ルートを通じてその撤去方に努力をしなければならないことは当然のことであります。それも長年そのまま放置されるということになれば、さればどうすればいいのかという問題につきましては、私ども国といたしましても、国が、では国の責任においてこれを撤去する、こういう考え方ももちろんありましょう。ただそれをしますと、今度は逆に、むしろそういった無責任と申しましょうか、船が座礁したときに、日本で座礁させれば別にほかっておいても日本の方ですべて撤去してくれるというようなことにもなりかねませんので、その点、非常にいろいろな意味で難しい点があろうかと思います。しかしながら、一方では現実というものがありますから、今後とも関係省庁を含め、また十分こういった問題についてはどうあるべきかということは検討をしていかなければならない、このように考えているところでございます。
  74. 寺前巖

    ○寺前委員 それではよろしく頼みます。  次に、今次の海洋汚染及び海上災害防止に関する法律案の問題を若干聞きたいと思います。  その一つは、日本海におけるところのナホトカ事故教訓を踏んまえての対応策を、今度の法改正の中でやりたいということを大臣はおっしゃっていた。私は、非常に大事なことだというふうに思います。ところが、日本海ナホトカ号事故のもう七年前に、京都の経ケ岬というところで事故が起こったときに、私、これ、予算委員会質問をやっているのです。油回収艇四十隻は瀬戸内海や太平洋側に配置されていた、それらは内海用のため波の荒い日本海に持ってきてもすぐには使えなかった。入管に、外洋でも油回収できる船をすぐ使えるような体制を、あるいは大型のオイルフェンスを整備すべきだという問題提起をやりました。当時委員会に出席していた海上保安庁次長は、「厳しい条件下におけるより迅速かつ効果的な流出油防除手法等について検討を進めるとともに、その結果を踏まえて、効果的な資機材の配備のあり方等についても検討」すると約束されたけれども、さて、七年たって、あの事故が起こったときに、私、改めて見て、冗談じゃないよ、この七年間放置しておいてということを強く感じたのです。  そこで聞きますけれども、九〇年度段階から今日までの段階で、海上保安庁として、一体、排出油処理能力をふやす方向で入管の体制はつくられていたのか、どうだったのか、御説明をいただきたいと思います。
  75. 相原力

    相原政府委員 第八管区内における油の処理能力でございますが、今回のナホトカ号事故災害、それの教訓でも改めて私ども認識したわけでございますが、不十分であったということは十分認識しているところでございます。  御質問の平成二年度から平成八年度にかけて、最近にかけて、油処理能力はどうなったのかという御質問でございます。第八管区海上保安本部管内におきます排出油処理能力、平成二年度末で一万九千キロリットルでございまして、これは平成八年度末では一万四千キロリットルになっております。ただ、数字的に減少しておるわけでございますが、これにつきましては、油防除資機材の配備は、官庁が持っているものもございますが、民間企業等で配備する比重が大きいわけでございます。特に第八管区海上保安本部管内につきましては、平成三年度に境港にございました大きな石油会社四社が事業所を閉鎖したということで、処理能力が減少に至っております。  ただ、いずれにしましても、本来もっと充実すべきであったのが充実できなかったという実態は、全く先生の御指摘のとおりでございます。これにつきましては、先ほど来御説明していますように、平成九年度の補正予算それから平成十年度の予算におきまして、外洋対応の大型油回収装置とかオイルフェンス等々、回収資機材を手当てすることになっております。これらを、入管を初め日本海側の、従来不備であったところに重点的に配備して対応してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  76. 寺前巖

    ○寺前委員 私、海上保安本部からもらったところの資料を見ておって、本当にそう思った。全国合計で、平成二年度の末を見ると、二十七万八千キロリットルの排出油処理能力がある。それが全国的に三十五万八千キロリットルになっている。これは、ずっとふやしている。ところが、逆に、平成二年度一万九千キロリットルであったところの八管が、一万四千に減っていくんだ。こんな不備な体制、あったものかいな。ばかにしなさんな。一体、国会の質問というのを何と心得ているんだろうかというような感じを、正直言って私は持ちました。  それで、運輸技術審議会が「流出油防除体制の強化について」という報告を去年の十二月に出しているのを読んでみて、なるほど、日本海側防除体制太平洋側と比較して不十分だと書かれているのはこれはもう当然だ。構えをやらないかぬ。そこで今度の法改正になって出てくるわけですが、さて、北九州に新しい船の体制を持ってくる、大型しゅんせつ船の老朽更新として、北九州に配備する。  北九州に配備しておって、今度の事件じゃないけれども、それ行けといったって、行けという指示までにはいろいろ検討も要ります。これは時間がかかります。そうすると、日本海側に、山口県の沖あたりだったらいざ知らず、鳥取県、兵庫県、京都、福井県、石川県、こういってくると、さて、油回収というのは二日以内でなければならぬじゃないかという問題が提起されているということと関連して見たときに、あそこに一隻配備しておくということだけでいいのだろうか。関係者から聞いてみると、三隻は最低配置しておかなかったらだめじゃないかという意見が出てくるのは、私は、もっともであろうと。だから、日本海側におけるところの事態を考えてみたときに、そういう体制に入るべきではないか、そのことを検討すべきではないかというのが私の聞きたい一つなんです。  それからまた、今お話があった大型の油回収機能を持った機械を配置しようという問題、大型油回収装置、今度の予算の中で一式配置するということになっているけれども、民間の機能を含めて、これも日本海側に配置するという問題を考えなければいかぬのやないか。そういうことになっているという御答弁であったのかどうか、ちょっと聞きづらかったのであえてお聞きしたいのですが、本当に余りにもひどい放置の姿になっている、この点についてお聞きしたいと思います。
  77. 相原力

    相原政府委員 日本海側防除体制が不備であったということは、先ほど、ナホトカ号教訓で、そのとおりであるというふうに申し上げたわけでございます。したがいまして、先生指摘の運輸技術審議会での「流出油防除体制の強化について」の報告書でも、そういう観点での報告がなされているわけでございます。  私どもも、先生指摘大型油回収船、それから積載型の大型油回収装置、それ以外の回収資機材がいろいろあるわけでございますが、これの適正な配置、そして日本海側における重点的な配備ということを通じて、より一層防除資機材の整備体制の充実を図ってまいりたいというふうに考えております。
  78. 木本英明

    木本政府委員 大型の油回収船、しゅんせつ船との兼用船でございますが、これは、流出油防除体制の強化策の検討が運輸技術審議会で行われた際に、やはりそういう大型の兼用船が、いろいろなことを考えれば、最もいいのではなかろうか、こういった趣旨の御答申といいますか御意見が出されまして、それに基づきまして、私ども関門航路に従事しております船がちょうど代替更新の時期に参ったものですから、今年度から油回収の兼用船として代替更新をさせていただく、こういうことになったわけでございます。  三船目ということになりますと、やはり私どもの本務でありますのは港湾工事、しゅんせつ工事をする船でありますので、そういった船をいろいろつくっていく、あるいは代替更新をしていくという場合には、しゅんせつ工事量といいますか、長期にわたるしゅんせつ工事の事業計画といいますか、そういったものを十分踏まえた上で、しゅんせつ船の代替更新といいますか、新造といいますか、そういったことの検討をしていく必要があるだろう、こういうふうに考えておるところでございます。  現在、新潟港に白山丸というしゅんせつ船がございますけれども、この船はまだ十分機能を発揮しておりまして、早急にといいますか早期に代替更新をする必要はないというふうに考えておりますので、そういった船につきましては、今申し上げました観点に立って検討を進めていきたい、こういうふうに考えております。
  79. 寺前巖

    ○寺前委員 時間の都合もありますので先に行きます。  北海道とか北部の方を考えてみたときに、日本海側も、名古屋北九州の配置の船で対応していこうなどということでは、あの冬の荒海の日本海では対応策としては欠けていたなということを、また語らなければならないことになるんじゃないだろうかと心配するので、ぜひ私は、三船体制は最低の課題として御検討をいただきたいということを申し上げたいと思います。  そこで、最後の問題になりますが、せっかく油回収をやったけれども、いろいろな問題がこの間の経験から出てきたということが、最近、雑誌「世界」の六月号に、日弁連のナホトカ号プロジェクトチーム委員をやっておられる薦田哲という弁護士さんが書いておられました。回収作業に当たった自治体がみずから適当に判断して作業選択したことが、不適正処理を増幅したとか、事前に一定の回収方法についての統一基準をつくっていなかったことや実際に訓練していないことが二次被害の原因となった、これは各自治体責任というより、事前に緊急時に対応し得る有効な計画を策定していなかったところの国の責任として厳しく問われなければならないという問題提起がされている。  それは、二次被害問題というのをよく知らなければ、問題点が次々と生まれる、あの緊急事態の中では生まれたと私は思うのです。実例がここにはずっといろいろ指摘をしてありました。  そして、同時に、この船が油を回収して、最終処分をするところへ持っていく。持っていった先ではどういうことが起こっているかということについて、たまたま新聞を見ていたら、こういう新聞がありました。  「回収重油 また〝漂流〟」要するに、北九州の場合であったならば、野積み状態での保管は消防法上問題だ、廃棄物の飛散や流出のおそれがあり、廃棄物処理法上の問題がある、港湾倉庫への保管は重油のにおいがしみつくおそれがあるなどということで、北九州の場合には、一時保管する場所がないとして荷揚げを拒否されるという事態が続いたという指摘が、新聞を見ておったら載っていました。あるいは、そのほか、新門司港に着いたときに二週間以上も停泊ということが起こっていたとか、広島県の沼隈町に本社を持つ廃棄物処理業者は簡易舗装の敷地内に重油が入ったドラム缶などを野積みの状態で保管していたとか、こういう問題。  だから一私は、油の回収をやるために起こっている二次被害を考えたときに、緊急事態におけるところの、どういう対応をする必要がありますということを自治体関係者などなどにマニュアルをつくって一定の対応策を考えておく必要があるのと違うかという問題と、回収した油の後処理ができない事態のままで、これで対応策があったなどとは言えないと思うのです。その辺の対応策は検討しているのか、もうちゃんとマニュアルその他についてもできているとおっしゃるのか。現実的にはここに書かれているような事態が発生していたんだから、私は改めてこの際に検討する必要があると思いますが、いかがですか。
  80. 相原力

    相原政府委員 お尋ねの第一点でございますが、マニュアル的なものにつきましては、排出油防除協議会、全国で百五地域にあるわけでございますけれども、それぞれの地域ごとにそういうものが整備されてはいるわけでございますが、必ずしも非常に機動的に動ける体制になっているかどうかという問題もございます。これは、昨年来それぞれの地域で見直しを行っております。もう既に見直しは済んでいるところもございますが、マニュアルとそれに伴う訓練というのは非常に重要なことだと思っておりますので、より徹底をいたしたいというふうに思います。  それから第二点でございますが、回収した油の処理体制について、ナホトカ号のときは、特に冬の日本海ということで、海象条件等もありまして、回収した油の処理の問題があったということ、先生の御指摘のとおりでございます。ナホトカ号教訓ということで、これの円滑な処理というのが非常に重要であるという観点で、政府全体で対応策を検討いたしました。その結果、特に内航海運の貨物船を即応して利用するとか、そういうような対応を既に講じたところでございます。  これは、昨年十二月に改定いたしました国家的緊急時計画においても反映されているところでございまして、回収した油の輸送、それから御指摘のあった廃油の処理施設の方の問題も含めて、回収システムが十分うまく機能するようなシステムをつくったところでございまして、現実にも機能できるように、一層努力をしてまいりたいというふうに思っております。
  81. 寺前巖

    ○寺前委員 時間が来ましたので、終わります。どうもありがとうございました。
  82. 大野功統

    大野委員長 次に、秋葉忠利君。
  83. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 社民党の秋葉でございます。  委員長初め各会派の御理解をいただきまして、二つの法案、午後から審議される船員職業安定法及び船舶職員法の一部を改正する法律案についても、あわせてこの時間帯で質問をさせていただきます。午後は質問をしないということで、御配慮いただきました。まず感謝をして、海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一部を改正する法律案について関連した質問をしたいと思うのです。  今までの各委員質問の中にも出てまいりましたけれどもナホトカ号事故がございました。このナホトカ号事故についての事故調査報告が昨年の暮れまとまったということです。長い説明は不要なんですが、この調査報告書の中で、ナホトカ号の被害が非常に大きくなった原因はどこにあったのか、なぜこれほど大きな被害になってしまったのかということについて、一言で言うとどういう総括になっているのか、まず伺いたいと思います。
  84. 相原力

    相原政府委員 一言で申し上げますと、今回のような日本海の荒波の中で起こった外洋における大規模な重油流出事故に対する備えが、必ずしも十分ではなかったということであろうかと思います。
  85. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 十分でなかったというのは、要するに、準備をしていれば準備ができたはずなのに、その準備が十分できていなかった、人災であるという結論が出ているど理解していいわけですね。
  86. 相原力

    相原政府委員 申し上げておりますように、日本海の荒波の中、これは四メートルから六メートルぐらいの大きな、大きなというか高い波のあらしの中で起こった事故災害でございますので、世界的にもそういう波の中で十分機能を発揮できる油回収船というのはないような状況でございます。  したがいまして、十分備えれば全く被害が起こらないような状況であったかどうかということにつきましては、少しでも被害の軽減を図ることができたという意味で、対応が行われたのではないか、そういう趣旨でございます。
  87. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 そういうふざけたことはやめていただきたい。  だれが全く被害が出ないという話をしているのですか、ここで。そうじゃないでしょう。事故が起こった際に、被害をできるだけ軽減するという話をしていることはわかっているじゃないですか。それを、なぜ全く被害が出ないという話にすりかえるのですか。そんなことできないに決まっているじゃないですか。  それで、そのことを一言注意しておいて申し上げますけれども日本海で波が高くて回収等作業に支障を来すという状態は、何年前から始まりましたか。二、三年前から日本海の波が突然高くなったのでしょうか。
  88. 相原力

    相原政府委員 私が先ほど申し上げましたのは、波が数メートルぐらい非常に高いあらしのような状況の中では、例えば油回収船、オイルフェンスももちろんでございますが、世界的に十分な効果を発揮できるようなものはまだ開発されていないという状況でございます、そういうことを御説明したところでございます。
  89. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 要するに、世界最高の技術があるかどうかという話をしているのではなくて、限られた技術の中、限られた自然環境の中で、最善のことをしたかどうかというところが問題なわけでしょう。そういう話をしているのに、技術の話にすりかえるのはけしからぬ。  それから、今の気象の話も答えていないじゃないですか。  だから、答えを申し上げますと、そういう荒い波が日本海で突然起こり始めたわけじゃないですね。東郷元帥のころから、天気晴朗なれど波高し、日本海は波が高いのですよ。いや、それ以前の何億年も前から日本海は波が高いのです。  事実、これは二十七年前も波が高かった。二十七年前、一九七一年の十一月三十日にはジュリアナ号が日本海で全く同じような事故を起こしていますね。そのジュリアナ号の事故の後の調査の結果を要約すると、どういうことになりますか。
  90. 相原力

    相原政府委員 日本海でそういう事故が起こるケースが想定されるので、それに対応した適切な防除体制を講ずる必要がある、そういう結論であったかというふうに思います。
  91. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 これは、七二年に調査書が出ていますけれども、その調査の結果というのは、昨年出た調査の結果とほぼ同一じゃないですか。  要するに、技術的にはかなり程度の高いものができている、完璧な技術なんというのはありません、しかしながら、こういった場合でも随分技術的には高まってきている、そういったものを根底に置いて、「油防除のための技術的手法及び資機材の開発改良を促進する」といった結論が、もうこれは二十五年以上も前に出ている。その教訓が全く生かされなかったのが、要するにナホトカ号事故だったわけじゃないですか。  その事故の後、また懲りずにジュリアナ号のときと同じような調査報告を出して、しかもこれまでの答えの中に出てきた考え方というのは、このジュリアナ号、二十六年前と全く変わってない。これだったら、また同じような事故が起き、同じような反省をしなくてはいけないことになります。そこのところの根本認識を百八十度転換しないと、こういった事故に対する対処というのはできないと思います。  済みません。時間がありません。もし最後にまだ時間が残ればこれに戻りますけれども船員職業安定法及び船舶職員法、これに関連した質問に移って、できれば、時間がなければ、また後刻この問題について、海上保安庁その他、運輸省等と議論をしたいと思います。  船員職業安定法に関連してですけれども、これはまず運輸大臣に伺いたいのです。日本人の船員の数が減っている。いろいろな理由があるわけですけれども、日本人の船員の確保を本気でやる気があるんだというふうに私は理解したいのですけれども、なかなか、事実を見ると、本当にそうなのかなというようなところが、どうも見えてきてしまう。  そこで、もう一度確認したいのですけれども、日本人船員確保について、運輸省は本当に本気でやる気があるのか、あるいは、もう船に乗る人は外国人でいいんだ、もうけだけ日本に入ってくればいいんだ、もうあとは、船員の誇りだとかこれまでの伝統とかそういうものは捨ててしまっていいんだというようなことをお考えになっているのか。そうではなくて、本気で日本人の船員確保をするつもりであるのだったら、その決意と、それについてどんなことをやろうとしているのか、簡単で結構ですから、ぜひ、ここは、本気でやる気があるんだということを確認したいわけですから、その方向での確認をお願いします。
  92. 藤井孝男

    ○藤井国務大臣 今、簡単にということでございますので、簡単にお答えをいたしますけれども、もちろん、私どもは、日本人船員の確保、また育成というのをこれからやっていかなければならないと思っております。  ただ、一方では、外航海運におきましては、国際競争力という問題がありますから、そういった競争力を持つためには、やはりどうしても、今般のこういう船員職安法の改正を行わなければならない面がございます。これはぜひ御理解いただきたいと思います。  それから、内航海運の問題につきましては、高齢化が進み、また、残念ながら、若い年齢層の船員が不足していることは事実であります。今のこの時代に、若い世代の方々がどういった職業につきたいか、いろいろございますけれども、私どもは、内航海運の労働条件の改善というものも進めながら船員の確保をしていかなければなりません。しかし、今後とも、そういった人員の育成を、しっかりと生み出すために、全力を傾注して努力していく決意でございます。
  93. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 経済的な事情で外国人の船員も、これは雇わなくてはいけないような状況があるということは認識しますけれども、やはり、本当に、日本人の船員を確保することが、我が国の社会、それから経済、文化等においても非常に重要であるという認識をお持ちであれば、それに従ったきちんとした施策を実行していくべきだというふうに私は思います。口だけではなくて、やはり具体的なことをやっていかなくてはいけないというふうに思います。  日本人と外国人、今の場合は船員ということですけれども、日本人と外国人を区別する要素の一つというのは、例えば、選挙権というのがあるわけですね。これは非常に重要な区別の一つですけれども、日本人は日本の選挙に参加ができる、外国人は参加ができない。外国人の選挙権ということも今話題になっていますけれども、基本的には、日本人が選挙ができるというのが今の制度です。  ところが、船に長い間乗っている人は、選挙の期間中も船に乗っているというような状況が生じるわけですから、当然選挙ができません。日本海員組合を中心にして、日本人として当然の権利である選挙権を行使したいという声が非常に強く出てきております。これは、ただ単に口で言っているだけではなくて、自分たちが国政に参加をしたい、政治に参加をしたい、その気持ちを、昨年の十一月二十九日には、気仙沼市と協力をして、太平洋とかインド洋、大西洋等いろいろなところにいる四十二隻の船、大体六百人近い人が参加をして模擬投票まで行って、選挙に参加したいんだということを行動で示しています。  私は、やはり、日本人船員の確保が大事だというふうにおっしゃるのであれば、こういった点について、日本人船員が働きやすい、労働条件はもちろんですけれども、それと関連して、日本人として当然の権利を行使できるような制度的な担保をきちんと行うべきだというふうに思います。  そこで、運輸省に伺いたいのですけれども、選挙権の問題は自治省の管轄になっていますが、運輸省としても、やはり日本人船員を確保するという視点から、その労働環境を整えるために、当然、自治省に働きかけて、こういった、洋上投票というふうに呼ばれていますけれども、この実現のために、日本人船員の熱い思いを実現するために努力をすべきだというふうに私は思いますけれども運輸省の考えをお聞かせいただきたい。
  94. 土橋正義

    ○土橋政府委員 お答え申し上げます。  日本人船員の選挙権の行使の問題でございますが、先生指摘のとおり、私どもも、これは国民の主権の行使にかかわる大変に重要な問題だという認識は十分持っておりまして、全日海を初めとして、るる私どもに御要望なり御陳情なりに見えておるのも事実でございます。  先生御案内と思いますが、既に、漁船員の選挙権の行使につきましては、例えば、船内投票の制度ですとか指定船舶投票の制度というのが公職選挙法上用意されておるわけですが、それをさらに一歩進めて、長期間洋上で生活される、例えば外航船員とかあるいは遠洋漁業船員さんでもちゃんと選挙権を行使できるようにということで、私どもとしても、これは御案内のとおり所管が自治省なものでございますから、大変に限定された範囲内ではございますが、できる範囲内の御協力はぜひ申し上げたいということで、要望の趣旨等はその都度自治省に伝えておるところでございます。
  95. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 今後ともその努力をぜひ続けていただきたいと思います。私たちも、公職選挙法の特別委員会の方でこの問題についてなお一層きちんとした議論をして、一日も早い実現を図るように頑張っていきたいと思います。  もう一つ、実は非常に重要な問題があるのです。救命艇等に積み込む海水脱塩装置あるいは脱塩造水器というのがあるのですけれども、現在、SOLAS条約では、これは改定された方も含めますと、まず、救命いかだとか救命艇については、飲料水を積み込むということが義務化されております。それから、雨水を集めるための装置を備えることというのも決められているわけですけれども、海水から真水をつくる、しかも手動式で簡単に作業ができる、それほど重さもないといったものについては、これは設置が任意事項というふうにされています。  しかしながら、かなり長い間の漂流などということも、例えば、ヨットレース等において二十何日間漂流したというような記録もあるわけですけれども、船に乗る船員の気持ちからすれば、やはり、塩水から真水をつくれる脱塩造水器の設置を義務づけてもらうということが、安全上の考慮から非常に強い要望になってきています。  先ほど申し上げましたように、船員を確保するという条件整備の中でも、やはり生命の危険ということは、船に乗っている限り常につきまとうわけですけれども、そういった安全上の配慮、心配を一つでも多く取り除くことによってきちんとした労働条件、労働環境を整えるということも重要だというふうに思います。これは、日本人のみならず、船員の確保というところから重要になってくるわけですけれども、この脱塩造水器を義務化するといった方向での法制化の努力、これをぜひしていただきたいと思うのですが、運輸省ではこの件についてどういうふうに考えていられるのか、まずその点から伺っていきたいと思います。
  96. 山本孝史

    山本(孝)政府委員 ただいま先生の御指摘のございましたとおり、救命艇及び救命いかだには、飲料水及び雨水収集装置の備えつけが国際的な条約で義務づけられております。これに関しまして、この飲料水の一部につきましては、海水脱塩装置あるいは造水装置の設置によってこれを代替することが容認されておるところでございます。  したがいまして、先生指摘のとおり、具体的に飲料水のみを装備するか、あるいは飲料水及び海水脱塩装置等を装備するかにつきましては、現在のところ、船舶所有者の判断にゆだねられておるところでございます。  実は国際的にこの件について見てみますと、二年前にこの義務づけを行うか、代替措置として現状のような規則で任意にするかというようなことで議論が行われた際には、大勢が義務づけまでいくことについては消極的でございました。  それから、今申し上げましたような国際的な合意をどのように扱っているかにつきましては、実はこういった装置を開発して製造いたしております米国自体を含めまして、英国あるいはドイツなどにおきましても、義務づけまでは至らないか、あるいは義務づけを行わない方向で検討しているというような実態がございます。  こういった状況がありますのと、それから一般論ではございますが、国際条約で定められております要件につきまして我が国のみ上乗せ規制を行うということは、我が国船舶の国際競争力という観点から見ても慎重な検討が必要な点かとも思料しております。  こういった状況でございますので、当面は、船主の自主判断によってこれが普及していくことを期待してまいるところといたし、国際的にこれを備える、義務づけるという合意がなされた時点で、我が国も義務づけにいきたい、こういう手順を踏みたいと考えております。
  97. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 今のお答えについては、いろいろとたくさん反論をしたいのですが、まずコストのところから伺いたいのです。我が党の幹事長の伊藤茂代議士が運輸大臣のころに、これは型式承認ということをやっているわけですが、この型式承認を受けたものを一個設置するのに今幾らぐらいお金がかかるのですか。今国際競争力というふうにおっしゃいましたから、何億もかかるのだと国際競争力、それは影響あると思いますので、幾らかかるのか。
  98. 山本孝史

    山本(孝)政府委員 お答えいたします。  我が国で型式承認しておりますのは二型式ございますが、そのうちの一つは一器十六万円、もう一器は四十万円というふうに承知しております。
  99. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 これは何年ぐらい使えるものですか。
  100. 山本孝史

    山本(孝)政府委員 特に期限は切ってございません。(秋葉委員「いやいや、具体的に機械として何年ぐらい耐用年数があるかということ」と呼ぶ)私もこれが何年もつものであるかということは厳密には承知しておりません。まことに申しわけございません。
  101. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 常識的に考えて、これは十年ぐらいは使えるのですね。もちろん途中で船が何か遭難をして、そこで使っているうちに、具体的に使えばという話になれば別ですけれども、十年ぐらい使える平均寿命があるわけです。そうすると、十六万円として、年に一万六千円、月に千円ぐらいですね。一隻当たり月に千円の負担をふやすことがどういう形で国際競争力に影響するのですか。
  102. 山本孝史

    山本(孝)政府委員 救命艇あるいは救命いかだというのは、多いもの、例えば客船についても相当数を載せることになりますが、いずれにしても、金額的には先生のおっしゃるとおり巨大な金額に達するものとは私どもは考えておりません。
  103. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 そうすると、経済的な理由と言っても、今図らずもおっしゃったように、負担というのは、要するに単位当たりの船に割って、これをどのくらい、一隻当たりで、例えば運送業であればその運賃にそれを加えるというような形で国際競争力、あるいは国際じゃなくても国内競争力でもいいのですが、これがはね返ってくることになると思いますが、一隻当たりの負担は微々たるものだ、だけれども、それがたくさん集まるとかなりの額になるというところはわかります。  そうすると、船をたくさん持っている船主あるいは船会社の方には負担になるということはわかります。となると、さっきおっしゃっていた国際競争力というのは、要するにその前にもおっしゃいましたが、これは船主の任意判断だというふうにおっしゃいましたけれども、船主が金を出すのが嫌で、それで仮に船に乗っている乗組員の方は、やはり生命の危険ということを考えればこれを設置してほしいという要望があるのに、いや、おれたちは金がかかるから嫌だよという人がいた場合には金に対する配慮を優先するという、そういう金優先の態度を運輸省が、これは大きな水戸黄門の印籠みたいなものを持ち出してきて、運輸省も、それでいいんだよ、命よりも金が大事なんだということを認めているという話になってしまうじゃないですか。そんなことでいいのでしょうか。
  104. 藤井孝男

    ○藤井国務大臣 そういう意図は全くございません。  先ほど来答弁を申し上げておりますように、これは国際法上、条約上も任意ということになっておりますので、私どもがこれからではどうすべきかという御趣旨かと思います。私どもは、そういった国際条約と申しますか、国際法上の協議の中で、むしろ私どもが積極的にこういうものをやはり義務づけようではないかという、そういった努力は今後していかなければなりませんけれども、今我が国のみということで云々というふうにおっしゃられましたけれども、決して、何か運輸省が船主の立場をもって物事を判断するのではなくて、やはり国際法上でもそういう任意ということで今取り決められていることでございますので、今後ともこの点については、我が国といたしましても、運輸省といたしましても、そういったことに関して積極的に努力をしていかなければならない、このように考えておるところでございます。
  105. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 ありがとうございます。そういう積極的な方向でぜひやっていただきたい。そのために、我々も運輸大臣の後押しをして、日本がともかくこういった方面でもリーダーシップを発揮して、世界の、例えばデファクトスタンダードといいますか、要するに事実的な標準、グローバルな標準をつくっていくという方向でぜひリーダーシップを発揮していただきたいと思っていますので、建設的な方向での御努力をお願いしたいと思います。  時間がちょっと余っていますので、先ほどのナホトカ号の話に返りたいのですが、済みません。(発言する者あり)いや、やはり大事なところだから、ちょっとやらせてください。事故の問題とか人命の問題、与党、野党関係なくやはりやらせていただきたいと思います。  先ほどのジュリアナ号とそれからナホトカ号、これは大体二十五年間隔で起きた同じような事故ですけれども、もう一つ象徴的な似通っている点があるのです。それは、ジュリアナ号の被害を受けたときに、これまた油の回収その他で一番活躍したものは何だったかというと、むしろなんですね。むしろに油を吸わせて、そのむしろを回収するということで、ジュリアナ号の場合にはたくさんの人が協力をして何とか危機を救った。その点が、実は二十六年前の調査書の報告の中にはその事実が余り評価されていない。にもかかわらず、技術的な、あるいは資材を云々ということだけになってしまっているわけですけれども、また皮肉なことに、皆さんこれは覚えていらっしゃると思いますが、ナホトカ号の際、ヒーローになったのは、今度はむしろではなくてひしゃくだったことは覚えていらっしゃいますね。  ですから、結局、二十七年前のこの事故教訓が生かされなかったために、ハイテクの時代と言われる今、本当に原始的なひしゃくがヒーローになってしまった。この事実をやはり謙虚に考える必要があるのではないかと思います。  そういう意味で、やはりナホトカ号事故、そして被害というものが、被害の拡大といいましょう、それが人災であったということを謙虚に認識をした上で、では、今後そのような再発をさせないためには何をすればいいのかというところから、将来に対する施策を私たちは考えなくてはいけないんだと思います。  その際に、やはり一番基本になるのは、ともかくオイルフェンスで囲んで、それを回収するという、一番基本的なところを押さえた上での施策でないとだめなんじゃないかと思うんですけれども、その基本的な認識についてはどうお考えになっているのか、最後にその点を確認しておきたいと思います。
  106. 藤井孝男

    ○藤井国務大臣 秋葉委員の御指摘は、私どもは謙虚に受けとめなければいけませんし、また厳粛に受けとめなければならないと思っております。  ただ、先ほど来海上保安庁長官から答弁をいたしておりますけれども、自然との闘いということもあります。波が四メーター、六メーターとなっても、そういうものにも技術的に上回る油回収船なりオイルフェンスなりというものが、技術的にもつくり上げられればこれにこしたことはありません。残念ながら、今の世界の技術をもっていたしましても、油回収船の設備、海外の大型油回収船をもってしてでも、やはりおのずと限界がございます。  そういう自然との闘いの中で、不幸にしてあの荒海の中で起きた事故、しかし結果的には、おっしゃられましたように、ひしゃくが一番の最大のヒーローとなったという御指摘は、我々は謙虚に受けとめなければなりません。いずれにいたしましても、今後とも、こうした事故が起きないようにまず防除体制安全対策を講じなければなりませんけれども、起きた場合には、それが最小限に食いとどまるように、これからの一層の、技術的にも、設備的にも、あるいは各自治体との連携、また海外との連携におきましても、総合的に万全を期していかなければならない、このように考えているところでございます。
  107. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 時間が参りました。  その決意を生かす方向でぜひ頑張っていただきたいと思います。我々もその方向で協力を惜しみません。どうもありがとうございました。
  108. 大野功統

    大野委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  109. 大野功統

    大野委員長 本案につきましては、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  110. 大野功統

    大野委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  111. 大野功統

    大野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――      〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  112. 大野功統

    大野委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時十三分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十七分開議
  113. 大野功統

    大野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出参議院送付船員職業安定法及び船舶職員法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。細川律夫君。
  114. 細川律夫

    ○細川委員 民主党の細川でございます。  まず最初に、船舶職員法の一部を改正する法律案について質問をいたしたいと思います。  今度のこの改正案におきましては、国が規定する国際船舶につきまして、外国人船員の就業を認めるという思い切った配乗要件の緩和を具体的に推進するものでございます。運輸大臣が指定をいたします外国人船員の就業範囲は、船長、機関長以外の職、そして国際航海に従事する船舶ということに限っております。国際航海に従事する船舶とは、二千トン未満や国際船舶に指定をされていない船、あるいは外洋に出る漁船なども含まれております。  そこで、質問をさせていただきますが、海造審の海運対策部会の報告でも、外航海運の国際競争力を確保するために国際船舶制度の拡充を推進するというふうにしておりまして、当然このことは国が規定をする国際船舶に限定されるというふうに考えますけれども、この点についていかがですか。
  115. 土橋正義

    ○土橋政府委員 お答え申し上げます。  今回の法律改正に伴い、国際船舶へ外国人船員を船舶職員として乗船を認める制度を創設するわけですが、これに当たりまして、現在、先生指摘のとおり、二つの手順といいますか手続が出てこようかと思います。最初は、外国人船員の資格を運輸大臣が承認するときの手続でございます。それからもう一つは、運輸大臣の承認を受けた外国人船員が、これは外国の会社を通じてでございますが、日本籍船に配乗されるときの手続、この二つが出てまいろうかと思います。  まず、最初の方の、運輸大臣が外国人船員の資格を承認するときの手順について申し上げます。  今回設けます承認制度は、STCW条約の締約国が発給した資格証明書を受有していることを前提として、我が国の船舶職員になることを認める制度でございます。このため、承認をすることができるのは当該資格証明書により乗り組むことができる範囲内に限られております。外国の海技資格体系というのは国によって相当ばらつきがございます。あるいは、承認の申請者が乗り組むことができる範囲、これも国によって大変多種多様にわたっております。したがいまして、その就業範囲を運輸大臣が指定するに当たりまして、その決め方をあらかじめ法令上きっちりと決めるというのは大変に困難だということで、具体的な指定の範囲につきましては運輸大臣の裁量にゆだねることとしたところでございます。  それで、承認に際しての就業範囲の指定に当たりましては、本制度が、日本籍外航船の国際競争力強化を目的とする国際船舶制度の拡充強化方策の一つとして、日本人船長、機関長二名配乗体制を実現して外国人船員の受け入れの拡大を図るためのものであるという海運政策上の必要性から設けられたものでございますので、船長、機関長以外の職について、また国際航海に従事する船舶についてのみ指定するというふうに考えております。  二番目の手順、そういった承認を受けた外国人が外国の海運会社を通じて日本籍船に配乗される場合の限定でございますが、船社が承認を受けた外国人を船舶職員として配乗する場合には、先生も先ほど御指摘のとおり、本制度が国際船舶制度の拡充方策として実施するものであることにかんがみまして、国際船舶に限定して配乗するようにきっちりと行政指導するということにしております。  以上でございます。
  116. 細川律夫

    ○細川委員 今お答えをいただきましたが、国際船舶に限定をされるということで、ぜひ運用をきちっとしていただきたいというふうに思います。  次に、船舶職員法改正案に関連をいたしまして、GMDSSの問題についてお伺いをいたします。  このGMDSSにつきましては、既に一九九二年に任意に導入をされておりまして、九九年の二月一日にはこれが全面的に導入をされるということになっております。ところが、船舶が遭難した場合の遭難警報につきましては、誤った警報が発せられる、いわゆる誤警報の問題、あるいはGMDSSの機械がまだ全面的に導入されていない、設置率が大変低いというようなことが問題としてありまして、果たして九九年に全面導入が妥当なのかということについて大変議論があるところでございます。  そこで、誤警報についてまず申し上げておきたいと思いますが、船舶が遭難したときに発せられる警報については、誤った警報かたくさん出ている、まずほとんど誤警報だということでございます。GMDSSの主な設備であります中短波のDSCについて申し上げれば、昨年、九七年、日本の近海では一〇〇%が虚偽または誤発射の遭難警報だということでございます。これは、いわゆる通信の関係船舶通信士労働組合の調査でそうなっておりますし、海上保安庁に聞きましても、九七年は、三百件のうち二件を除いて誤警報であった、九五%が誤警報であったということでありまして、いわば一〇〇%に近いような誤警報の実態でございます。  この事実につきまして、「人と船」という雑誌がございまして、ことしの一月号に掲載されております対談で、ある船長が次のように述べていることからも、これは事実であるというふうに思います。どういうふうに述べているかと申し上げますと、八割から九割はエラーですからね、それが二十分、三十分鳴り続くといった状態なんですよ、そのたびにストップボタンを押しにいくんですけれども、もう少し地域を限定するとか、エラーだったら何とかエラー信号を取り除くような手法はないものかどうか、ディストレスシグナル、遭難信号の信頼性というものが今ものすごく問われていて、現場では問題視されていますね、こういうふうにある船長がその対談で述べておられまして、通信士の人だけではなくて船長も大いにこれを問題にしているわけでございます。  また、国際的な機関でありますIMOあるいはITUの間でも、この誤警報の防止のために、遭難警報の伝送とか中継の手順が問題になって議論が行われているところでもございます。そういうことでありまして、この問題が、何年も前から提起をされているにもかかわらず、いまだ解決をされずに国際的にも問題になっているということでございます。この誤警報の問題は、遭難警報があっても、これは誤警報だということで警報をリセットにするとか、これがたび重なりますと受信機そのものの電源を切ってしまうというようなことがあります。そうなりますと、本当に遭難警報があったときに一体どうなるのか、実際に遭難に対して救助ができないのではないかという、大変ゆゆしき問題としてとらえなければいけないというふうに思うところでございます。それが誤警報の問題であります。  一方、この装置の設置率につきましては、昨年の九七年一月現在では二五%前後だというふうに言われております。そうしますと、あと二年、九九年までには五〇%にもいかないだろうというふうにも思います。そういうことでは、全面導入というふうなことを言っても、グローバルな制度としては目的を達成することができない。こういうことで、この設置率につきましては、船舶もこのようにおくれておりますし、ましてやDSCの海岸局についてはもっとおくれているというふうに言われております。  そこでお伺いをいたしますが、こういう誤警報の問題、あるいは設置率の低さを見れば、九九年の二月からの全面導入というのは当面見合わせることにして、従来のモールスによる遭難通信体制というのを併存させていく、こういうことが航海の安全にとってよりよい方策ではないかというふうに私は考えるものでありますけれども、この点についてどのように対応をされていくのか、お答えいただきたいと思います。
  117. 山本孝史

    山本(孝)政府委員 先生指摘のとおり、確かに誤遭難警報がたくさんあるということは、まことに残念ですが、事実でございます。しかしながら、実際に発すべき遭難信号が発せられなかった、こういうようなケースはございませんで、過って遭難でもないのに発せられた遭難信号が多くて、これが救難機関や周りにいる船の皆さんに大変徒労を強いてしまうという点は問題としてあるのは事実でございます。こういったことについては早急に解決をする必要がございますので、しかも国際的な協力のもとに解決する必要がございますので、IMO、国際海事機関におきましてもその対策を既に合意してとりつつございます。  まず一点は、遭難中継手順、これも先生の御指摘がございました、これを改善して徹底するということでございます。それから二点目は、そもそも備える機器がこういった誤警報を発射しにくいような装置でなければいけないということで、その性能基準についてもこれを改めて、今後普及するものはこういったおそれの少ないものにしていくといったことでやっております。さらに、これに加えまして、各国とも確実な実施に向けて一層努力をするということも申し合わせてございます。こういったことが効果をあらわしていけば、この誤発射の問題も逐次解決していくものと考えております。  基本的なことでございますが、こういう事実はございますが、GMDSSの有効性とか信頼性そのものに疑義があるというようなものではないと私どもは認識しております。  それから、次に、GMDSSの普及といいますか、設置状況でございますが、本年三月の私ども調査で、外航船については八割設置が終わっております。それから、内航船については約五割となっております。さらに、普及の度合いが低いと言われておりました漁船につきましても、漁船というものは集団操業という漁船特有の航行の形態がございますので、こういった点を考慮して現存の漁船の代替措置というものを大幅に導入することといたしましたので、期限とされております時点までにはGMDSSの設置、移行は完了するものと考えております。  それから、最後でございますが、旧来設備とこの新しい設備の併用の件でございます。これは国際的にも、本年二月に開催されましたIMOの無線通信捜索救助小委員会というのがございますが、そこにおいても、やはり条約どおりGMDSSは来年二月一日に完全実施することが必要であるということが改めて確認をされております。こういった状況でございますので、我が国としてもその方向で参りたいと考えております。
  118. 細川律夫

    ○細川委員 今私が指摘をしました誤警報の問題、そしてまた、設置についてもまだ全面的にされているわけではないということであります。私は、船の安全性の問題につきましては本当に慎重にしなければいけないというふうに思っておりますので、その九九年二月全面実施ということにつきましては、ひとつもう一度考え直す、検討をし直すという方向でぜひお願いをしたいということを強くこの場で申し上げて、次に移りたいというふうに思います。  この法案の、船舶職員法改正の中で、今度新たに五級小型船舶操縦士の資格が創設をされるということになります。この改正そのもの自体は、水上レジャーの発展のためになりますし、またモラルの向上に結びつくのであれば、大いに結構だというふうに思っております。  しかし、今でもプレジャーボートの不法係留が大きな問題になっておりまして、保管の問題が解決を見ないまま、さらに新しい資格の創設によって水上オー十バイやフィッシングボートの数がふえるということになるならば、この資格の創設はいかがなものかというふうに考えざるを得ないものでございます。  昨年公表されました運輸省、建設省、水産庁の合同調査によりますと、全国の港湾、河川、漁港で確認されました二十万八千隻のプレジャーボートのうち、六六%の十三万八千隻が係留の許可を得ていない放置艇であったという報告になっております。この問題をやはり何とか解決をいたしませんと、港湾、河川の管理上問題になることはもちろん、水害時の災害発生の可能性あるいは近隣に対する迷惑など、今後問題が拡大するおそれがあるわけでございます。私は、この問題は、そもそも行政の方が法整備などで手を打たなかった、施設の整備もほとんど進まないままに小型船舶がふえ続けてきたということが最大の原因だというふうに思っているところでございます。  そこで、このプレジャーボートの保管につきましては、運輸省港湾局でも検討されておりますし、そこから委託を受けましたプレジャーボート保管対策懇談会などでもいろいろ検討をされて、報告が出ております。例えば、昨年の八月には、首都圏の七つの都県、そして市の首脳会議が、運輸省、建設省、農水省に対しまして、不法係留対策及び安全対策に関する要望について文書を出しまして、保管場所を義務づける制度の整備などについて要望をいたしているところでございます。私も、船、プレジャーボートにつきまして、自動車と同じように保管場所を義務づける、車に関しては車庫証明がなければ車を買うことはできませんけれども、船についてもやはりそういう船の保管場所を義務づけるということが必要ではないかというふうに思っているところでございます。  そこで、お聞きをいたしますが、運輸省の方ではボートパークの整備の推進をしているというように聞いておりますけれども、この計画の概要あるいは予算はどういうふうになっているのか。それから、三省庁合同で問題点なども検討しているというふうに聞いておりまして、その経過あるいは結果はどうなのかということ。さらには、新聞の報道によりますと、当面は保管場所については届け出制の導入を検討するというような報道もありますけれども、先ほど私が申し上げましたように、保管場所を義務づけるということが必要だというふうに思いますけれども、これらの点についてどのように考えているのか。先ほど申しました首都圏の七都県市の要望に対してはどういうふうにこたえていくのか。これらについてお答えをいただきたいと思います。
  119. 土井勝二

    ○土井政府委員 お答え申し上げます。  ただいまプレジャーボートのいわゆる放置艇問題についてお尋ねがございました。  まず第一点、ボートパーク整備事業の進捗状況ということで、このボートパークは、平成九年度から新たにプレジャーボート係留、保管対策の一環といたしまして運河、水路等の既存の静穏な水域を活用した簡易な係留施設を整備していこうということで開始したものでございまして、平成九年度におきましては、東播磨港等七港で実施をしております。予算は国費で二億八千万円でございます。それから、今年度におきましても、引き続き九港で実施する予定でございまして、予算は国費で三億七千万円でございます。  それから、関係の三省庁検討の問題でございますが、平成八年度から、この問題に関係している建設省河川局、水産庁、それから運輸省の三省庁共同でプレジャーボート係留、保管対策について検討を進めてきておりまして、昨年の十月に設けられた調査委員会、これは民間の学者の方等も入っていらっしゃいますが、この調査委員会におきまして検討をして、本年三月に、プレジャーボート係留・保管対策に関する提言が取りまとめられております。本提言を踏まえまして、国におきましては関係省庁間の連絡会議設置するとともに、全国の港湾管理者などに対し、本提言及びプレジャーボート係留・保管対策検討指針を参考に送付させていただいたところでございます。  それから第三点でございますが、先生の御指摘のプレジャーボートの保管場所の確保の義務づけの問題でございますが、私ども運輸省といたしまして、将来的にはこの係留、保管能力の向上のための取り組みとあわせて検討すべき問題と受けとめております。現在の一般的な規制緩和の流れの中で、義務づけの必要性について十分検討を要しますし、また義務づけた場合に、それが実行できるように先ほどのボートパークを整備しておるわけでございますが、そういう受け入れの保管場所の整備状況も見きわめていくということが必要ではないかというふうに考えてございます。  ただ、いずれにいたしましても、この放置艇問題、その地域によりまして大変深刻な問題になっているということは、運輸省あるいは関係省庁も真剣に受けとめております。ただいま申し上げたような観点、規制のあり方あるいはその受け入れ施設の整備状況、これらを見ながら、先ほど七つの都県のお話もございましたが、特に地方自治体の要望等を踏まえて、あるいは地方自治体とよく相談をしながら、適切な施策を進めてまいりたいというふうに考えてございます。
  120. 細川律夫

    ○細川委員 大変丁寧な回答をいただきましてありがとうございました。  放置船舶といいますか、不法係留、これは早急にひとつ強力な対策をとっていただいて解決をしていただきたい。その際に、やはり保管場所の義務づけについても取り組んでいただきたいというふうに思います。  そこで、この問題につきまして、今回答をいただきましたけれども、私も実際に埼玉の方の河川を見ましたら、自治体の方で、埼玉県の方で代執行に基づいて不法係留のプレジャーボートを追い出しますと、今度は直轄の国の方の管理の川にたくさん来ているというような実態も見ましたし、また河川敷にもたくさんプレジャーボートが置かれているというような状況もございます。これらについて、早く何とかしていただきたいと思いますが、建設省の河川局で、河川の不法係留について暫定係留施設を認める方向を打ち出しているということを聞いておりますけれども首都圏の河川の暫定係留施設の整備の見通しがあるのかどうか、また、将来的、恒久的な係留、あるいは保管施設への移行というふうにも言っておりますけれども、その展望はあるのかどうか、直轄河川の管理とあわせて報告をいただきたいというふうに思います。  時間がありませんからもう一つ質問をして、もう一つ答えてもらいたいと思います。実は今、プレジャーボートに乗って酒を飲んで酔っぱらって運転をしても、取り締まりがなされることはない、法的な規制がないわけなんですね。普通、自動車で酒酔い運転をしますと、それだけでもう行政罰が来るわけなんですけれども、プレジャーボートについては一切そういうのはない。これらについて、私はぜひやらなければいけないと思うのですけれども、法的な整備をどういうふうにされていこうとお考えになっているのか、これらについてもひとつお答えをいただきたいというふうに思います。
  121. 阿部健

    ○阿部説明員 お答えいたします。  河川区域内のプレジャーボートなどの不法係留船の問題でございますが、これにつきましては、洪水の流下の阻害であるとか河川管理施設の損傷、あるいは騒音の発生等、さまざまな問題が生じているところでございます。  こういった状況に対処するために、私どもとしても、従来から河川巡視の実施であるとか、不法係留の禁止の看板の設置、あるいは河川監理員の指示に基づきます監督処分等々も実施してきたところでございます。  また、平成七年度、九年度の二カ年度にわたりまして河川法の改正を行いまして、簡易代執行制度ということで、簡便な手続で不法係留船を撤去するような手続も整備してまいったところでございます。あわせて、河川内でも、できるところではマリーナの整備をしていこうということから、河川利用推進事業の実施というものも行ってきたところでございます。  さらに、本年の二月には、より計画的、段階的に対策を講じるというようなことから、計画的な不法係留船対策の推進ということのために通達を出したところでございます。この通達におきましては、不法係留船対策というのはやはり河川管理者のみではなかなか実効性ある対策が困難だということから、まず河川管理者あるいは地方公共団体、関係機関、こういったところから成る協議会を設けまして、適切な対策のための計画を策定するということ、それから、強制的な撤去を計画的に実施していくべきだということと、今先生から御指摘ございました暫定係留、河川管理上問題のない場所については暫定的に係留を認めるような措置も実施していくかということで考えておるわけでございます。  この暫定係留施設でございますが、河川管理上の支障の度合いを見ながら認めるところは認めていくかということで考えておるわけでございます。そして、どうしても河川管理上ここだけは重点的、優先的にやっていかなければいけない、撤去しなければいけないというところは、緊急に撤去していくということで、めり張りをつけた対策を実施していきたいというふうに考えておるわけでございます。  今後とも、この対策のためには、港湾、漁港、河川等々、かなり地域全体で問題に対処していかなければなかなか本当の解決はできないのだろうと思われます。先ほど先生からも御指摘ございましたが、ある河川から撤去すると、それがまたよそに行くというようなこともございます。そういったこともございますので、関係機関、公共団体等とも連携しながら、効果のある対策の実施に努めてまいりたいと思っております。
  122. 土橋正義

    ○土橋政府委員 お答えを申し上げます。  二点目にお尋ねの、プレジャーボートについての飲酒運転の禁止の問題でございますが、先生指摘のとおり、現在、プレジャーボートについての飲酒運転を直接的に規制している法規はございません。  ただ、プレジャーボートの安全運航につきましては、例えば関係団体を通じての安全指導ですとか、海難防止講習会を通じての指導ですとか、こういうことで事故防止に努めておるところでございます。飲酒運航に起因する事故防止につきましても、安全運航確保対策の一環として今後とも指導に努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。  それで、今後でございますけれども、飲酒運航を法的に規制すべきかについては、まず安全指導の徹底を図ることが重要であると考えておりますけれども、今後のプレジャーボートの事故原因の動向も見きわめた上で、どのような方策が適切であるか検討してまいりたいと思います。  最後に、ちょっと蛇足になりますが、もし、そういう行為によって、例えば運転者といいますか、それが事故、海難を起こした場合の処分でございますけれども、プレジャーボートの運転者が持っておる免許の取り消し等につきましては、例えば海難が発生した場合あるいは船舶職員が職務を行うに当たり非行行為があった場合には、海難審判法あるいは船舶職員法によりまして、その船舶職員の持っておる免許の取り消しですとか停止の処分を行えるような制度が現在でもございます。  以上です。
  123. 細川律夫

    ○細川委員 終わります。ありがとうございました。
  124. 大野功統

    大野委員長 次に、福留泰蔵君。
  125. 福留泰蔵

    福留委員 平和・改革の福留泰蔵でございます。  船員職業安定法及び船舶職員法の一部を改正する法律案に関しまして質疑をさせていただきます。私は、主に船舶職員法関係質疑をさせていただきたいと存じます。  まず、締約国の資格証明書を受有する者の特例、第二十三条の二の関係でございますが、この関係質疑をさせていただきたいと思います。  今回の改正によりますと、STCW条約の締約国が発給いたしました資格証明書を受有する者が運輸大臣の承認を受けて船舶職員になることができる制度が創設されることになるわけでございます。これは、国際競争がますます激しくなります国際経済環境のもとで、我が国の海上企業の国際競争力をつけるために、外国人船員を日本籍船において船舶職員として活用していくことへの道を開く、その改正だろうと思っております。平成九年の五月に海運造船合理化審議会海運対策部会が報告書を出されて、その中でも、日本国籍船、日本人船員の確保が今後とも国策として必要であるという趣旨の報告書が出されているわけでございます。  まずお尋ねいたしますけれども運輸省として、現在の日本国籍船と日本人船員の現状をどのように認識しておられるのか、そしてさらに、今回の改正によりましてそれがどう変化していくと思われているのか、この点について、まずお尋ねしたいと存じます。
  126. 岩村敬

    ○岩村政府委員 お答えいたします。  最初に、外航分野の日本籍船と日本人船員の現状でございますが、これまで、日本籍船、それから日本人船員とも減少傾向にございます。  その背景というのは、国際競争力の面から、人件費の安い外国人の船員が配乗ができる、さらには、我が国と比べ有利な税制度を有する国に籍を置くいわゆる便宜置籍船という形がふえてきておるわけでございます。そういうことで、日本の海運企業の商船隊自体そう全体の数が減っているわけではございませんが、日本籍船については減少の傾向にございます。数字で申しますと、昭和六十年には千二十八隻の日本籍船がございました。昨年の七月一日現在では、これが百八十二隻にまで大幅に減っておるわけでございます。また、日本人の船員の方でございますが、同じく昭和六十年には、三万十三人ですか、約三万人でございます。それが平成八年には、約八千人、八千十八人ということで、これまた大幅に減ってきておるわけでございます。  お尋ねの第二点でございますが、今回の制度の改正によって、日本人の船長、機関長二名配乗が実現することによって今後どうなっていくのだろうかということでございますが、今先生から御指摘があったように、今回の改正というのは船員費のコスト差を縮めて国際競争力をつけるという点にあるわけでございます。これも数字で申し上げますと、従来、乗組員全員が東南アジア船員であった場合の船舶の一年間の船員費のコストは約六十万ドルでございます。他方、日本人が配乗する船舶で一番合理化を進めて十一人という配乗の船があるわけでございますが、これの船員のコストが約二百十一万ドルでございますので、現在では約三・五倍の格差があるわけでございます。今回のこの制度が導入されますと、船長、機関長二名が日本人で、その他の船員二十一名を東南アジア船員といたしました場合、このコストが約百二万ドルになります。したがいまして、今回の改正によって、その東南アジア船員が全部乗っておる船との船員のコスト差は約一・七倍にまで縮まるわけでございます。  こういった施策、さらには、これまでも行ってまいりましたが、登録免許税、固定資産税等の船舶税制の減免措置もやっておりますが、こういったことと相まって日本籍船の国際競争力が確保され、日本籍船、さらには日本人船員の減少の歯どめにとって大きな効果があるものというふうに期待をしておるところでございます。
  127. 福留泰蔵

    福留委員 現状、大変日本籍船と日本人船員が少なくなっているという御説明がありました。それで、この改正が行われますと、コスト面での国際競争力がつく、よって日本籍船と日本人船員の減少に歯どめがかかるというお話だっただろうと思います。  便宜置籍船というお話がございました。これは確認の意味でお聞きしたいのですけれども、船会社が日本国籍船にするのか便宜置籍船にするのかという判断をしているように私は理解しておるわけでございますが、なぜ便宜置籍船にしているのかということの理由をお尋ねしたいのです。ただ、人件費だけなのかということをちょっとお答えいただきたいと思います。
  128. 岩村敬

    ○岩村政府委員 便宜置籍船を船会社が導入する理由は、まさに国際競争力を維持する、国際競争に勝っていくためにしておるわけでございます。  今先生指摘のとおり、一つは、人件費の安い外国人の船員を配乗することができるという点、それからもう一点は、便宜置籍をする国の制度が、例えば税の面で有利な制度を持っておる、そういった国に籍を置いて、結果的に、税制上さらには船員の費用両面で、日本に籍を置き日本人の船員を配乗する場合より、より有利な競争力を持つということでございます。
  129. 福留泰蔵

    福留委員 よくわかりました。  つまり、人件費と税制面、この両面で、船会社は、便宜置籍船、国際競争力をつけるためにそういう形をとらざるを得ないという状況なわけです。  私が一つ心配しますのは、さっきこの改正によってどうなるのかということをあえてお尋ねしたのは、今回は外国人船員を日本籍船に乗船することができるようにしたわけでございますが、そういう意味でのコスト、人件費のコストという面では船会社にとっては大変いいことだろうと思いますが、そこだけにとどまっていれば、船会社の方からすれば、人件費だけ安いもので、しかし、税制面ではやはり有利な制度の国に籍を置いておこうという発想になって、当初の目的であります日本国籍船、日本人船員を今後とも確保するということについては不十分じゃないかと思うわけでございます。ですから、そういう意味で、当然審議会でも税制面でのことが要望されて、報告書で上げておられるようでございますが、この税制面での対応もやはり必要になってくるのだろうと思います。  これは実は質問通告しておりませんので詳しいお答えができるかどうかわかりませんけれども、この面での対策についてお考えがあればお聞きしたいと思います。
  130. 岩村敬

    ○岩村政府委員 平成八年度から、国際船舶制度ということで、今御指摘のあった税の面での特例を設けるべく、国際船舶につきましては、固定資産税の減免であるとか、登録免許税についても大幅な引き下げを図るという措置を講じてきておるところでございます。これで完全なのかどうかということについてはこれからもいろいろ見直しをしていく必要がありますし、また、諸外国との比較もこれからも続けていく必要があろうかというふうに思っておるところでございます。
  131. 福留泰蔵

    福留委員 あえてこれ以上お尋ねしませんけれども、恐らく完全に、税制面という制度の上で、制度だけで申し上げると、日本に置いておいた方が、一番コストの面で、そういうさまざまな意味で、国際競争力がつくと言えない状況にあろうと思います。そうしますと、やはりどうしても、そういう面で有利な国に籍を置いておこうというふうに判断していくのは当然のことだろうと思いますので、そういうところについては、今お答えありましたけれども、今後とも各国の制度をよく比較研究されて、船会社としての国際競争力をしっかりつけるように、また御検討をいただきたいと思います。  それで、二点目でありますけれども、今回、外国人船員が日本の船に乗れるようになるというふうなことでありますが、先ほど申し上げた海運造船合理化審議会の報告で、外航船の船長と機関長以外に限って導入するというような趣旨で報告書が出されていると思うのです。  先ほども実は御説明があったので、あえてもうお答えをお聞きしなくてもいいと思うのですが、つまり、今回外国人の船員を活用できるようにするけれども、まず、内航船は省くんだ、外航船のうちでも船長と機関長は除くんだというお考えで、今回の改正があるというふうに理解しているわけでございますし、そういう答弁があったわけでございます。そして、それをどのように担保するかということについては、運輸大臣の承認過程でそこを担保していく、つまり資格の承認とその船員の配置による限定という形での承認、この二つでそこを担保するということが先ほどの細川委員質疑の中でも答弁があったわけでございます。私、その答弁をお聞きしながら、次の質問をしてからまたこのことについて触れたいと思いますけれども、まず、この基本方針を、外航船に限って、そして船長、機関長を除く部分に限って導入するということであります。  内航船の船員の状況等もいろいろあろうと思います。内航船の船員については、今回の改正では外国人船員の活用は想定していないわけでございますが、内航船の船員の状況についても、国内の状況というのは大変いろいろ厳しい様子でございます。  まず、運輸省の方から具体的な状況をお聞きしたいと思います。内航船の船員の状況については、例えば今の人数とか平均年齢とか、求人、求職状況はどうなっているのか、そういう面で、現状について御報告をいただきたいと思います。
  132. 土橋正義

    ○土橋政府委員 内航船の船員の現状についてのお尋ねでございます。  現在、内航船員は約四万六千人ほどいます。六十年には六万人ほどいましたので、その当時に比べると約二三%ぐらい、この十二、三年の間に減ってきておるということが一つでございます。  それから、私ども一番問題にしている点でございますが、この内航船員の年齢構成を見ますと、四十五歳以上のいわゆる中高年齢層の船員が五四%を占めておるという、ワイングラス型の極めていびつな年齢構成にあるという点が二点目でございます。  それから、最近の求人、求職状況でございますけれども、平成九年の平均で申し上げますと、有効求人倍率が〇・三二倍というふうになっておりまして、ちなみに、陸上職の同じ期間の有効求人倍率〇・七二でございましたので、それに比べても大変に求職が厳しい状況ということが言えようかと思います。  以上です。
  133. 福留泰蔵

    福留委員 今、大変求人倍率が低くて求職が厳しいというお話がありましたけれども、一方で、若い人たちの船員離れという現象もあろうかと思います。  今御報告がありましたとおり、かなり年齢が高い方々が船員の方々の平均年齢構成だというふうに伺ったわけでございます。そういう方々が今、実は余り自分の希望する職場がなくて大変厳しい状況にあろうかというふうなことだろうと思います。しかし、もう一方で、求人側としては若い人たちが欲しいんだけれども、それがなかなか確保できていないという側面があるんだろうと思います。そういう意味で、今後の内航船も含めて、特に若い方々の船員の養成、育成というのは大変重要になっていくのだろうと思っております。そういう問題意識を持っておりますし、またそれについては鋭意頑張っていらっしゃるということも、ある程度理解しているつもりでございますので、そこはきちっと今後ともやっていただきたいということをまず申し上げておきたいと思います。  それで、実は先ほどの話に戻るのですけれども、今回は基本的には国策として内航船への外国人船員というものは認めないという方針があるように読み取れるわけでございますが、その点についてはいかがお考えですか。
  134. 土橋正義

    ○土橋政府委員 先生指摘のとおりでございまして、昭和四十年代より、私ども船員労働の分野での外国人労働の問題につきましては、実は政府全体の、労働省の方でつくられておる雇用対策基本計画というのがございまして、これで単純労働者の分野には外国人労働者を導入しないという方針が継続されてまいっております。船員の分野につきましてもこの方針をずっと援用させていただいておりまして、外国人船員は船員の分野に入れない。ただ、この場合一つ条件がございまして、この場合の外国人船員を使わないというのは、日本船社が配乗する形で日本船に使う労働力としては外国人労働は使わないという方針を現在まで堅持してまいっております。  今後の問題につきましても、外国人労働の内航船の分野への導入につきましては、私ども船員行政だけの問題ではございませんで、御案内のとおり政府全体の労働政策の問題あるいは他の分野への影響波及の問題、さらには内航独自の問題として、例えば現在の内航船員の雇用への影響の問題、船舶交通の安全への影響、いろいろな難しい課題があるのではないかというふうに考えておる次第です。
  135. 福留泰蔵

    福留委員 今、運輸省の中だけの問題ではないという趣旨のお答えがあったと思うのですが、そこで、せっかくですから大臣にお答えいただくしかないと思うわけでございます。  これは、私、今回いろいろ勉強させていただいて、素朴な疑問なわけでございますが、外航船に限っては国際競争力をつけるために低コストの労働力を活用していくという方針になった。そうすると、内航船には制限をしているというか、そこは排除しているという立場ですが、これは労働力の確保、日本人船員の雇用の場を確保するという意味合いとか、安全上の問題とかさまざまあろうと思います。今、例えば金融業界では金融ビッグバンと言われて、非常に経済がグローバルスタンダードという形で動いている状況の中でございます。私たち日本国民の消費者という一つの立場からすると、今、国内流通の五〇%を日本の内航船舶が担っているという状況を見ますと、結果として我々消費者がその高コストの負担を強いられているというふうな見方もできるわけでございます。  今回の規制緩和の流れで、運輸省としても需給調整規制はできるだけ撤廃しようという流れだというふうに理解をしているわけであります。私は、それだけでやれということを申し上げているわけではなくて、運輸省として非常に大事な、日本人船員の雇用の場も確保しなければならないということも十分承知しながら申し上げているつもりでございます。  私がここであえて大臣にお尋ねするのは、こういう時代の状況の流れの中で、このままで本当に日本人船員の置かれている状況はいいのかどうか。そして、日本の内航船の状況というのはこのままで固定していいとお思いなのか。それを変えるとなれば、当然、単に運輸省の中だけの問題ではなくしてさまざまな調整が必要だろうと思います。先ほども実は単純労働者の分野に外国人を使わないという話がありましたけれども、果たして今対象となっているこの分野が単純労働者なのかなという思いもあるわけでございまして、そういう思いを含めて、ぜひとも大臣から、今後の日本の行く末を含めて見解をお伺いしたいと思います。
  136. 藤井孝男

    ○藤井国務大臣 福留委員の今の御質問は、将来の日本の産業界全体にかかわる大変重要なポイントをつかれた質問だと思います。  今般の法改正におきましては、確かに外航に限定して、内航船には外国人の職員を採用しないことになっております。また一方では、やはり若年層離れということですから、そういった若い人たちの船員の育成というのもやっていかなければならない。そこに、内航に対しまして外国船員を入れることは、雇用の問題あるいは他の労働関係影響等々があって非常に困難な問題であるというふうに先ほど船員部長から御答弁をさせていただいたわけであります。  ただ、今の御質問を聞いている中で、高齢化、少子化、特に少子化ですね、これが一体日本の二十一世紀の産業全体、我が国の産業全体にどういう影響をもたらすのかというのを、私は今から政治の課題としてとらまえていかなければならないものだろうと思います。  ですから、ある限度まではいわゆる国際競争力ということで、需給調整規制の廃止、これはまさに規制緩和ですね、規制をどんどんなくしていくこと、これもいろいろまだバランスを考えなければいけませんけれども、やはりグローバルスタンダード、日本でもある一定の国際ルールの上にのっとっての競争力を、そのための環境づくりをやっていかなければならない、これが今回の法改正の一つのねらいであります。それはそれとして私はぜひ御理解いただきたいと思います。  ただ、将来にわたってとなりますと、少子化という問題が、何も内航だけの問題ではございません、いわゆる製造業を含めた日本のあらゆる産業にどういう影響を与えるのか。これは、我が国が資源小国であり、海外から資源を輸入し、それを加工して、付加価値をつけて輸出する、そういうことで今日までやってこられましたけれども、今後はそれで、本当にこの少子化の時代の中でそれも可能なのかどうか。  そういった全体の中から考えますと、今委員の御指摘の問題を私どもは十分注意を払って――ですから、内航に認めるという意味ではございません。私は、そういう狭い範囲ではなくて、全産業、いわゆる我が国の二十一世紀のあるべき姿の中に夢を持たせなければいけない、活力も維持しなければいけない。しかしながら、この少子化という問題が急速に進んでまいりますと、一体これでどうなるのか、支えていけるのかどうか。こういった問題をぜひ我々は、与党も野党もございません、国民の一人として、また政治家の立場としてこれからお互いにこの点は十分留意して検討していかなければならない課題だと思っております。
  137. 福留泰蔵

    福留委員 今大臣から大変すばらしい答弁をいただきまして、私もまさしく同じ問題意識を持っているわけでございます。この法案改正がどうだこうだということはもう申し上げませんし、これはさまざまな方々の調整なり、いろいろな御意見を伺いながらまとまったものであろうと思います。ですから、私はこれはもう過去のものだろうと思っております。  問題は、これからどうするかということだろうと思いますし、そこについては、今大臣の方からもお話のありました少子化という問題もございます。これからの日本の経済をどのように維持し、また活性化していくかという問題もあろうかと思います。それはやはり、我々を含めてみんなで真剣に考えていかなければならない。この時代の流れというのをしっかり見きわめながら考えていかなければなりませんし、特に行政、運輸省としてもそれをある意味で先取りするような形でぜひとも行政運営を行っていただきたいと希望をする次第でございます。  時間が残り少なくなりましたので、あと一点だけ御質問をさせていただいて、質問を終わりたいと思います。  小型船舶操縦士の資格制度の問題でございます。  今回の改正では、小型船舶操縦士の分類が見直しというか、新しく五級小型船舶操縦士の資格というものが導入されるわけでございます。これはこれとしておいて、私は、この小型船舶操縦士の資格制度の件で最後に一つだけお尋ね申し上げたいのは、身体障害者の方々の資格取得の状況がどうなのかということでございます。  本年行われました冬のパラリンピック等を見ていても、身体障害者の方々に対する我々のイメージというものを払拭するような御活躍だったのだろうと思います。健常者ではできないような運動能力を非常に発揮されて、大変すばらしい結果を残された。我々は、健常者だけが何か特殊な能力を持っていて、身体障害者の方は何かそれがないような感じで見がちでございますが、その方々はまた、我々が持てない一つの能力を持っているのだなということを私は感じた次第でございます。  当然、こういうふうな小型船舶操縦士というものも、そういう意味ではハンディキャップがおありですから、大変いろいろな難しい部分はあろうかと思いますが、今後とも、身体障害者の方々がこういう資格を取りやすくなるようにぜひとも検討していただきたいと私は思っているわけでございまして、今の身体障害者の方々の資格の現状と今後のお考え方について、最後にお尋ねしたいと思います。
  138. 土橋正義

    ○土橋政府委員 身体障害者に対する小型船舶操縦士の免許の現状についてのお尋ねでございます。  私ども、従来から、先生指摘のとおり、身体障害者の積極的な社会活動あるいは余暇活動への参加を進めたいということで取り組んでおるところでございます。お尋ねの小型船舶操縦士の資格につきましても、昭和四十九年の船舶職員法改正によりまして、もちろん船舶航行の安全を十分に確保することが前提ではございますが、一定の身体障害者の方についても、安全確保のための装置を設備することを条件に資格を与えておるところでございます。  四十九年の導入以後、資格を付与する基準を数度にわたって改善してまいっております。例えて申し上げますと、現在では、片側の手なり足が義手、義足であっても資格が取れるというふうな状況にまでなってまいっております。こういったことで、現在では、身体障害者としての条件つきの海技免状を持っておられる方は三百六十四名に上っております。  今後とも、そういった身体障害者の方の海洋レジャーの分野への積極的な参加を進めるために、もちろん航行の安全の確保が大前提になりますが、積極的に取り組みたいということで、今回の職員法の改正にも、より弾力的な対応が可能になるように若干修正をさせていただいておるところでございます。
  139. 福留泰蔵

    福留委員 ありがとうございました。  今の答弁、積極的に取り組んでいただけるということでございますので、期待を申し上げたいと思います。  当然、こういう船舶の免許というのは車の免許とはその性質を異にすると思いますが、車の免許の方が、身体障害者の方々の免許を取得できる範囲は広いと私は思っているわけでございまして、今後、安全ということも大事でございますけれども、それをしっかり念頭に置きながら、できるだけ多くの身体障害者の方々がこの資格が取れるよう、御検討をよろしくお願い申し上げる次第でございます。  大変にありがとうございました。
  140. 大野功統

    大野委員長 次に、鰐淵俊之君。
  141. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 午前中に引き続きまして御質問をいたします。よろしくお願いいたします。  ただいまも質疑を伺っておったのですが、全体の質疑に入る前にちょっとお聞きをしたいと思います。今の御答弁の中で、有効求人倍率が、平成九年で〇・三二、こういうお話がございました。  そこでお聞きしたいわけですが、海で働く人の年齢の構成を見ると、さっきワイングラスと言いましたね。そうすると、若い人がいないということです。だからこれは、つまるところ、船に乗って働きたいという人がいるのだけれども会社の方が種々の事情でとらないというのか、それとも、海の方の仕事につこうとする若い方がなかなかいないのか、この辺はどうお考えなのでしょうか。
  142. 土橋正義

    ○土橋政府委員 先ほど私、内航船員の年齢構成について、極端なワイングラス型になっておるということを申し上げましたが、この要因には二つあるのではなかろうかと思います。  現在、三十代あるいは四十代前半の層が薄くなっておるという背景には、特に、オイルショック後の昭和五十年代でございますが、内航海運業界全体として、大変に厳しい経済情勢の中で、新規採用を急速に絞った時代がございます。反面、それ以前の昭和四十年代は、御案内のとおり、団塊の世代ということで、高度成長の余波もございまして、大変な勢いで業界が若手の方々を雇っていかれた、その構造が現在でも続いておるということが一面ございます。  それから、二点目の理由といたしましては、先生指摘のとおり、やはり最近の若者の中には、海に対する理解不足といいますか、海離れの傾向が出てきているというのは否めないのではなかろうかと思います。  ただ、将来に向かって、それでは悲観しなければだめなのかということにつきまして申し上げますと、例えば、商船大学、外航の幹部職員を養成する機関がございます。商船大学の毎年の応募倍率を見ていますと、現在でも、ことしても五倍近くございます。あるいは、内航船員の養成機関でございます海員学校というのが全国八カ所ございますが、これの応募倍率を見ましても、二倍近くございます。一般の職業高校などに比べてずっと高い応募倍率になっております。  そういう意味で、海にあこがれて、あるいは海を一生の仕事にしたいということでそういった教育機関を選ぶ若者はまだまだいるというふうに私は理解しております。
  143. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 ただいまの答弁を聞きまして少し安堵をしたわけでございますが、本題に戻りたいと思います。  今度の法律改正案、まさしく日本船籍あるいは日本人の船員を確保していこうということと、もう一つは、この改正では、船主のコスト削減、合理化、こういったことによって、労働力の安さといいましょうか、そんなことで外国人の同乗をどんとふやしていくという考え方も一つあろうと思います。全体の傾向からいきますと、私、今お聞きしたところ、現状、一九九五年で五千六百人ぐらいの外航二団体の所属の方がいるそうでございますが、二〇一〇年になりますと大体千九百人程度、その中で、例えば航海士とか機関士、通信士、こういう方はある程度確保されるでしょうけれども、船で働く部員は恐らくほとんどいなくなるのではないか、こういう予測も言っておられるわけでございます。  そうなりますと、先ほど私もお話ししましたが、やはり日本は海洋国家であり、確かに厳しい海の職場ではあるけれども、やはり海のロマンとかあこがれとか、そういう中で厳しい仕事を乗り越えていくということも日本としては必要なことではないか、そういう意味での政策を進めていくことも政府としては必要なことだと私は考えるわけであります。  そこで、今回の法案につきまして、海運造船合理化審議会の報告を見ますと、いわば船長、機関長は日本人職員であることを原則とする、これは国際船舶ですが、その考え方があるわけでございます。今回はそれは堅持しておりますが、そういった審議会の報告と、外国人の船員をふやしていくという考え方と、整合性といいましょうか、調和といいましょうか、その辺はどういうようにおとりになったのでございましょうか。お聞きしたいと思います。
  144. 土橋正義

    ○土橋政府委員 先ほどもちょっと言及いたしましたが、日本人の外航船員の数、先生指摘のとおり、平成七年の数字だと思いますが、外航二団体に所属する外航船員さんは五千六百十人までになっております。これを六十年で見ますと二万五千人ぐらいおられまして、これはひとえに、やはり日本籍船がその間急速に減ってきたという事情が背景にございます。その背景にあるのは、日本籍船の国際競争力が失われてきたということがあろうかと思います。  今回の措置は、その一番かなめの日本籍船を何とか維持し、確保し、ふやしていきたい、そのためには国際競争力をつけなければだめだ、そのためには一番大きな要因となっております船員費、コストの国際競争力を高めなければだめだということで、職員につきましては、日本人は船長、機関長二名の体制、そのほかは外国人との混乗を進めるという政策を昨年の五月の海造審の報告でいただいたところでございます。  なお、ヨーロッパ諸国につきましても、主要国は既にこういった政策を八〇年代後半あたりからとっておる国が多うございます。     〔委員長退席、実川委員長代理着席〕
  145. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 今お話を伺いますと、やはり人件費というのは外国の方と大変格差がある。  それと同時に、船籍がパナマ船籍というのが随分多いのですね。私どもの港に入ってくる船でも多いのです。これはやはり、今言った税の問題だとか、それからもう一つはグローバルスタンダードでいっている船のドック入りあるいは検査、ありますね。あれが省令で、省令といいましょうか、決まっておるわけですが、これはちょっと質問になかったので失礼だとは思いますが、わかる範囲で結構ですが、そういった船の規制ですね、検査するとか何するとか、これは、やはり相当パナマ等とは違うのでしょうか。その点ちょっと、知っておればお答えいただきたいと思います。
  146. 岩村敬

    ○岩村政府委員 安全の確保といいますか、船舶の検査等についての担当の局長がおりませんが、私の承知する範囲でお答え申し上げます。  少なくとも、船舶の検査の期間であるとかその検査の内容については、国際航海に従事する船については国際条約で統一的に扱っておりますので、日本だけが特別に検査の回数が多いとかそういうことではないというふうに承知をしております。  ただ、これにつきましても、そういう負担の軽減、それから船舶の性能の向上等を考えて逐次見直しをしておるところでございまして、先般もそういう関係の規制緩和をしておるところでございます。
  147. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 それでは、次に参ります。  外国人船員に対しては、法律では資格の付与をする、こういうことになっているわけです。そういうわけで、この船舶職員法改正の範疇の中では、船長、機関長は日本人、そしてまた国際航海に限定するということをうたっているわけでございますが、国際船舶限定ということについては行政指導で行う、こういうことになっているようであります。  これらの担保につきましては、いろいろ質疑もあったところでございますが、どのように担保されるのでありましょうか。その辺、お伺いしたいと思います。
  148. 土橋正義

    ○土橋政府委員 運輸大臣の承認を受けた外国人が船舶職員として乗り組む船舶を国際船舶に限定するに当たりまして、それをどうやって担保するかという御質問でございます。  今回創設することとしております承認制度につきましては、国際船舶の拡充策の一環として審議されました海造審の報告書を契機として創設するものでございますので、承認を受けた外国人船員の船舶職員は、国際船舶についてのみ配乗されるべきものであるというふうに考えておるところでございまして、必要な方策を講じてまいるところでございますけれども、具体的には行政指導により国際船舶に限定することを考えております。  なお、この行政指導、遵守義務の限界は当然ございますが、ただ、本件につきましては、船社の代表者を含めた関係者間において長年にわたり協議を続けてまいりまして、明確な合意のもとに実施する制度だということで、その実効性は高いものというふうに考えておるところでございます。     〔実川委員長代理退席、委員長着席〕
  149. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 そのような形で行政指導をされたといたしましても、なおその行政指導に従わない船会社が仮に出たとすれば、どんな対応をなさるのでしょうか。
  150. 土橋正義

    ○土橋政府委員 行政指導に従わない船会社に対する対応でございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、外国人船員の配乗を国際船舶に限定するという行政指導につきましては、基本的には十分に守られるのではないかというふうに私ども考えておるところでございます。  ただ、どうしても先生指摘のような違反といいますか、守らない船社が出てくる場合でございますが、実は、今後ともこの国際船舶制度の円滑な運営のために、関係者でフォローアップのための会合を継続的に開催することになっております。仮に行政指導に従わない船会社等が出てきた場合には、このフォローアップの会合の場を通じて、国際船舶に限定する趣旨が守られるように所要の措置を講じてまいるつもりでおります。
  151. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 これも先ほどから質疑もあったことでございますが、要するに、今回の改正については、できるだけ日本の船舶等においても国際競争力をつけて、何とか船会社の、荷主の負担とかそういうものを考えていこう、こういう趣旨があろうと思います。  その中に、どうしても日本人の配乗というのが限定されてくるということによって、今後海員の育成とか、職場が狭まっていくということ、結局、商船学校に五倍からの競争率があるのにかかわらず、商船学校を出てなかなか船会社に就職できないとか、最近漁船の方は、水産学部の遠洋あたりもなかなか船に乗れない、輸入水産物の方が多いわけで、遠洋もだめ、沖合も余りよくないということで、非常に乗る機会が薄くなってくる。  そういう意味で、政府としては、やはり基本的には日本人の船員をしっかりと養成していく必要があるのではないか、私はそういうぐあいに思うのですが、それらについて、特に大臣といたしましては、日本の船籍をいかにふやすか、あるいは確保するか、あるいはまた日本人の船員をいかに確保していくか、こういった総体的な考え方について、大臣の所見を伺いたいと思います。
  152. 藤井孝男

    ○藤井国務大臣 先ほど来御答弁申し上げておりますように、今般の法改正によりまして、国際競争力をつける、そしてコストダウンを図る、しかし一方で、外航に限ってでありますけれども、船長、機関長以外の場合に外国人の船員でよろしい、こういう制度であります。  先ほど船員部長も御答弁をいたしましたけれども、今また委員の御指摘もありましたが、確かに、海にあこがれる、海にロマンを求める若者は、昔ほどではないかもしれませんけれども、決してそう悲観的なものでないという現状はそのとおりであります。しかし、やはり一方では、若年層、若い人たちのそういうあこがれ、夢、ロマンというものを現実化するためには、それを受け入れるだけの職場といいますか、雇用機会というものを与えなければならないし、それがまた魅力的なものとなるように努力していかなければならない。これは労使一体となってやらなければなりませんし、また、そのためには私ども、さまざまな制度の面においてもこれからも十分環境整備をしていかなければならないと思っております。  いずれにいたしましても、予算措置は当然のことでありますけれども、やはりこれからの日本人の船員の養成をするために、そしてそれが後世の世代にもつながるような立派な船長なり機関長を育てるためにも、いろいろな場面での教育訓練であるとか、いろいろなスキーム、先ほど申し上げた制度というものも充実させていかなければならないと思っております。  しかし、これは言葉で言いましても、なかなか難しい問題があります。それは、一つには、今の若い世代がどうのこうのと言うつもりはありませんけれども、やはり安定した収入、それから安心して勤められるというようなことを考えますと、海上での職務というのは非常に危険が伴いますし、そういう問題について、私は、今の若い人たちは決してそれを恐れているとは思いませんけれども、このような多様化の時代になりますと、人間、ともすれば楽な方を求めがちな傾向はあろうかと思います。  しかし、先ほど委員の御指摘のとおり、魅力ある、そして将来に向けての育成という御指摘に対しましては、我々はそういった若い人たちのニーズにもこたえるように、各般の制度並びにいろいろな意味での支援措置、あるいは環境整備に努めてまいらなければならない、そのように考えております。
  153. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 今の大臣の見解は全く私も同感でございます。  したがいまして、その大臣の考え方を受けて、運輸省では制度のフォローアップとか、制度の目的に添った運営というものが必要であろうと思いますし、あわせて、後継者といいましょうか、若手の船員の育成、こういったことも一つの大きなテーマであろうと思います。そんなところに予算措置というものが私は必要ではないかと思います。  現在、そういった意味での予算措置なり、また今後考えられる方策なり、具体的に局長さんの方でおありでしょうか。
  154. 土橋正義

    ○土橋政府委員 船員の養成のための予算措置についてのお尋ねでございます。  もちろん海員学校、航海訓練所等の教育機関予算もございますが、ここでは特に十年度から新しく始めることになっておる予算措置について紹介させていただきたいと思います。  先ほどの、昨年五月の海造審の答申、報告を受けまして、若手船員の実践的な教育訓練スキームを、今年度からお認めいただいた予算によりまして立ち上げることにしております。船員教育機関の卒業生など外航海運において活躍する意欲のある若者を対象にいたしまして、実際の社船に乗船させまして実践的な訓練をするというふうなスキームでございますけれども、このために、平成十年度予算措置として、国費でございますが八千六百万円を計上しておるところでございます。
  155. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 もう時間もなくなってまいりましたので、あと二言お話させていただきます。  四月十四日の海運造船合理化審議会海運対策部会におきまして、日本人船員の確保に関して、荷主産業の理解を求めるために全日本海員組合の本部の委員の方が、国際船舶制度は、日本人船員の空洞化を踏まえ、日本人船員を確保するための方策と受けとめている、一方、現状は、荷主産業の厳しいコスト削減要請のもとで、国民生活に直結している電力炭を運ぶ船舶においてもすべて外国人船員による運航体制が求められている、既に外国人船員への依存が九〇%を超えている現状を認識していただき、日本人船員が配乗できるよう、その他の荷主産業を含め、国際船舶制度の目的に添った日本人船員の確保、育成につながる対応をお願いしたい、外国人船員の配乗については、国際船舶への限定をマルシップ方式をベースとした通達をもとに行政指導で措置されることになっており、規制緩和の流れの中にあっても通達、行政指導が徹底されるよう、国際船舶制度の目的に添って断固として対処していただきたい等、課題を指摘するとともに関係者に理解を求めた、こういうふうなことがありました。  こういった組合の方々の切実な要求というか要請というものを受けて、最終的に、例えば法律の中に、日本人の船員、職員の確保、育成、これは先ほど大臣も言われたわけでありますが、海上運送法の国際船舶に関する省令に、国際船舶機関長とは日本人船員とすることを明らかにすべきである、こういうぐあいに思っているのですが、これらについてはいかがでしょうか。
  156. 岩村敬

    ○岩村政府委員 国際船舶の船長及び機関長について日本人であることの担保でございますが、先ほど来御答弁申し上げておりますように、外国資格受有者を承認する際に、就業範囲の指定を船長、機関長以外の職に限る、そういう形でやっていくということでございます。  ただ、今御指摘の、海上運送法の施行規則で措置できるのかという点でございますが、実はこの海上運送法の施行規則の中に国際船舶の定義がございます。その中で、現在、近代化船、二十条許可船等々例示がされておるわけでございますが、今回の承認制度導入に伴ってこの国際船舶の定義をどう見直すべきか、さらには、今御指摘のような点についてその中で明記ができるかどうか、これについてはいろいろ法制上の問題とか、また税制の特例措置との関係もございますので、そういったことを含めて今後慎重に検討をさせていただきたいというふうに思っております。
  157. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 総体的に、午前中の質問、午後の質問を通じまして、基本的には私どもは、日本は海洋国家だと考えております。したがって、日本が主体的に海を十分に活用して日本の産業、日本人の生活を向上させる、こういう意味から改正については前向きに、どうかひとつ発展できますように、ぜひひとつ御指導いただきたいということをお願い申し上げまして、質問を終わります。  以上です。
  158. 大野功統

    大野委員長 次に、平賀高成君。
  159. 平賀高成

    ○平賀委員 日本共産党の平賀高成です。  私は、船舶職員法改正案について、まず最初に質問をいたします。  この船舶職員法改正案では、STCW条約の締約国が発給した資格証明の受有者であって運輸大臣の承認を受けた者は、海技士の免状を受けなくても日本籍船の船舶職員になることができるようになります。  この特別措置は外航船に適用されるもので、国際船舶だけでなく、国際航海に従事する船舶に外国人船員が日本の船舶職員として配乗できる、こういうものになるのではありませんか。
  160. 土橋正義

    ○土橋政府委員 お答え申し上げます。  承認を受けた外国人船員が、国際船舶のみならず一般の外航船、日本籍の外航船にも乗船できるようになるのではないかというお尋ねでございます。  今般、創設することとしている承認制度につきましては、国際船舶の拡充策の一環として審議されまして、海運造船合理化審議会の報告書を契機として創設するものでございます。承認を受けた外国人船員の船舶職員は国際船舶についてのみ配乗されるべきものであるというふうに考えておるところでございます。したがいまして、承認を受けた外国人船員の船舶職員としての配乗は国際船舶についてのみ行われるよう必要な方策を講じてまいるつもりでございますけれども、具体的には、行政指導によりまして国際船舶に限定することを考えております。
  161. 平賀高成

    ○平賀委員 今の答弁で、具体的には行政指導で行うというお話でありました。そうしますと、国際船舶以外の外航船については行政指導で行うということなんですが、何回もこの質問は今までやりとりがありましたけれども、先ほどの他党への答弁についても、関係者がフォローアップの会議を持ってそこでやるから効果はあるんだというふうなことも言われておりました。  ところが、違反をした場合、これは罰則規定も何もないわけですから、これで果たして歯どめになるのかということが私はあると思うんですね。指導の徹底というのは、罰則規定も何もない中で具体的には一体どうやっていくのかというのが非常に私は心配になるんですが、この点で運輸省の指導はどうされるのか、大臣に伺いたいと思います。
  162. 土橋正義

    ○土橋政府委員 行政指導でございますので、確かに先生指摘のとおり法的な制裁措置をもって実効を担保するということはかなわないわけでございます。  ただ、この国際船舶制度創設に当たりましては、過去三年以上にわたりまして、船社の代表者を含めた関係者間で議論を煮詰めてまいって、合意ができたところに従って導入しようとするものでございます。したがいまして、この行政指導は十分に守られていくというふうに私ども確信しておりますし、実はほかの過去の経験でございますけれども、平成二年から、いわゆる海外貸し渡し方式によりまして日本籍船に外国人の船員を配乗する、部員としてでございますが、部員として配乗する制度をこれまで十年近くずっと続けてまいっております。これにつきましてもやはり行政指導ベースで行ってきておるわけでございますが、関係者を含めた会議、協議会等を設けることによりましてきちっと守られてきておる、こういう実績がベースにあっての今回の関係者の合意でございますので、私どもは、先ほど申し上げましたように、行政指導は十分に守られていくというふうに考えておる次第でございます。
  163. 平賀高成

    ○平賀委員 では、もう少し伺います。  今回の法改正は、九六年の法改正の際に見送られた日本人船長、機関長の二人配乗制の導入について具体化するもので、これまで外国人船員は部員に限られていた国際船舶に、船長、機関長以外は外国人船員の船舶職員を認めることにしたものです。法律では、外国人の船舶職員の就業範囲を指定するという規定でありまして、船長、機関長は認めないという規定ではありません。船長、機関長は認めないという就業範囲は、具体的には政令や省令で明確になるんでしょうか。
  164. 土橋正義

    ○土橋政府委員 今般の承認制度は、先生指摘のとおり運輸大臣の承認行為によりとり行われることになるわけでございますが、船舶職員法の二十三条の二第二項に基づく運輸大臣の指定というのがございます。これはどういうことかといいますと、外国人の船員を承認するに当たりまして、その外国人が本来持っております資格に応じまして、その乗り組むことができる船舶なり区域の範囲を指定した上で承認するということになっております。  そういうことで実行することになっておるわけでございますけれども、なぜそれでは政省令に、船長、機関長の指定は行わないというのを書けなかったのかという御質問かと思いますが、実は、国によりまして船舶職員の資格体系が非常に多様に分かれております。そういうこともございまして、政省令で一律に、我が国の資格体系あるいは職務の体系に対応関係で規定するというのが非常に難しかったというふうなこともございまして、運輸大臣の裁量により具体的な就業範囲を指定するというやり方の方がずっと円滑にこの制度を実施できると判断した次第でございます。  この指定行為そのものは、繰り返しになりますが、職員法の二十三条の二の第二項に基づく法律行為として、船長、機関長以外の職あるいは国際航海に従事する船舶に限って行いまして、その内容を承認証にもはっきりと記載するということにしておりますので、もし万が一、その承認を受けた者が大臣の指定した就業範囲を超えて船舶へ乗り組んだ場合には、法律違反ということで法的な制裁措置を講じることができる、こういう仕組みになっております。
  165. 平賀高成

    ○平賀委員 私は、今回の改正案は、船長や機関長二名に限るという点さえも法律的には担保されていない、そういうものだと思います。  この間、日本船舶に外国人船員を乗せる新マルシップなどの施策が行われてきましたが、一向に日本人船員の減少に歯止めをかけることができていないわけです。外航海運では、コスト至上主義から日本籍船は百九十一隻まで減少して、日本商船隊のほとんどが便宜地籍船化されたような、そういう状況に今なっているわけです。そのため、乗組員の構成は途上国船員との混乗が進んで、今や日本籍船まで混乗が及んでいるわけです。  それで、船長、機関長の二名だけは日本人船舶職員で、ほかは外国人船員で運航できるようにするものでありまして、日本人船員を育成して、海運国である日本の海運業を守っていくことはできなくなる、こういうものだと私は思います。国際船舶制度のもとで、外航船社の新規採用者は、倍々ゲームではなくて半々ゲームで減少して、我が国の外航海運の存続が危ぶまれるものであるということを私は一つ指摘をしまして、次のプレジャーボートの不法係留の問題について質問をいたします。  首都圏自治体を初めとして、港湾や河川など、プレジャーボートの不法係留が増加をして、その対策に非常に各自治体は苦慮しています。  全国的なプレジャーボートの不法係留の実態は、九六年の調査によれば、プレジャーボートの係留確認数二十万八千隻、公共水域に放置をされているのが十三万八千隻です。港湾で六万隻、河川四万六千隻、漁港が四万一千隻。放置されているのは、小型モーターボートが十一万二隻で大部分を占めています。モーターボートの普及に、手ごろな係留施設の整備が追いつかないのが実態であります。運輸省もプレジャーボートスポット整備を行ってきましたが、今年度からボートパーク整備事業を行うなど、簡易な係留施設の整備を進めていますが、こうした対応でこの不法係留を解消できるのかどうなのか、まず伺いたいと思います。
  166. 土井勝二

    ○土井政府委員 お答え申し上げます。  今、プレジャーボートの放置艇問題につきまして、先生、九六年、平成八年度の調査数字を述べられまして、確かにそのような状態で、非常に放置艇の割合が多い。それで、関係自治体首都圏であるとか瀬戸内海であるとか、そういう自治体が困っておるという、ある意味では社会問題になっているということは、私どもとしても十分認識しております。  ただいま御指摘のようなボートパーク整備事業というのを九年度に新設をし、また、これで、それぞれ、九年度におきまして七港、それから十年度におきましてさらに九港ということで整備をしていくわけでございますが、これによりまして、相当程度受け入れ能力がふえていく、この制度を続けていくことによってふえていく。それプラス既存のマリーナ等の十分な活用によって次第に受け入れ能力的にマッチしていくということで、私どもとして、この事業を推進していきたいというふうに思っております。
  167. 平賀高成

    ○平賀委員 私もこの問題ではいろいろ資料もいただきまして、横浜のベイサイドマリーナというところの資料も見させていただきました。ここは全面稼働で二千隻収容で、全国最大級の施設になっています。ことしの三月末で、施設収容数千四百八十九隻に対して、八百九十三隻が契約をしています。しかし、八メートル未満で年間利用料金が、資料によりますと四十二万円ですね。しかも、その保証金が六十万円、合わせますと、一年間で百二万円になるわけです。ですから、施設の整備を進めましも、低料金で利用できる施設でなければ、不法係留の解消につながっていかないと私は思います。  全国的に見ますと、運輸省の資料で、係留や保管施設の収容能力は、公共の部分が二五・六%の収容余力があります。民間では二六・九%、全区域では二六・四%の収容余力があります。係留、保管施設の整備促進も大事でありますが、利用しやすい料金の設定、周辺地域の防災や環境に配慮した係留、保管施設の管理運営の体制、あり方が必要になっていると私は思います。  運輸省は、こうしたソフトの部分についてどのようにお考えになっているのか、伺いたいと思います。
  168. 木本英明

    木本政府委員 従前から公共マリーナ等の整備を進めてまいったわけですが、事業のスキームといいますか方式が、起債事業等を中心とした資金調達でマリーナを整備するために、どうしても、それを保管料等の利用料で償還していく、こういう形になっておる関係で、従来のマリーナは、先生今御指摘になられましたように、高目の保管料で推移をしてきている。これが、放置艇の大部分を占める小型艇の、いわゆる公共マリーナヘの保管がなかなか進まない実態なのかなというふうに私ども考えます。  それで、最近では、先ほど御指摘がありましたボートパーク事業等を導入いたしまして、いわゆる小型艇が安い保管料で係留、保管できる、そういった事業を展開するようにいたしております。それが、既存の港の埋立地に挟まりました水路だとか運河だとか、そういった遊休水路を活用いたしまして、簡易な施設をつくって、そこに安い料金で保管するということで、先ほど運政局長も言いましたように、これを進めておりますので、今後は次第にそういった小型艇の保管も進むのかな、こういうふうに考えております。  一方、今御指摘になられましたように、やはり、一層の利用促進だとか、利用者にとって利用勝手のいい、使い勝手のいい、そういう保管、係留場所の提供というために、私ども、いろいろな検討を進めてきております。三省庁でも合同の調査委員会をつくって、いろいろな検討をしてきておるわけですけれども、ことしの三月に一応の一つの方策といいますか、提言をまとめております。  具体的には、係留、保管施設が十分に利用されるためには、利用者ニーズに応じたサービスだとか適切な利用料金の水準の施設を提供していく。さらに大事なことは、こういうマリーナといいますか、そういう場所の営業時間の問題があります。公的主体が運営しますと朝の九時から晩の五時までとかそういう問題もありまして、どうしても利用勝手が悪いという面もありますので、そういったものは民間のノウハウをできるだけ活用した管理運営をしていく。  それから、御指摘のありました漁業との調整だとか周辺環境との調和といったことも大変大事でございます。そのために、利用者の団体、海上保安の関係機関だとか漁業者の方も含めました多様な関係者の方の連携体制を確立して、いろいろな調整なり話し合いを進めていく場の設定だとか、あるいは個々の利用者の自己責任によって水域利用をしていただく。漁網等を傷められた場合には、やはりきちっとした補償をしていただく、そういった自己責任の確立あるいは御迷惑をかけないという、水域利用に当たってのマナーの遵守といったことも大変重要であります。  そういったことを利用者あるいは関係者が十分承知の上で対策を講じていくことも必要であろうということで、実を言いますと、平成九年度よりボートパークの管理運営のあり方に関する研究会を全国の港湾管理者とともに進めておりまして、そういった研究会の中で、今お話ししましたいろいろな対策なりルールなりについて広く普及させていくということで、今御指摘の問題について対応しているところでございます。
  169. 藤井孝男

    ○藤井国務大臣 ただいま港湾局長から御答弁申し上げたとおりでありますけれども、先ほどから他の委員からも同じこのプレジャーボートに関する放置問題等々が出ております。これは、私も、大変ゆゆしき問題になっているのではないかなと思います。地域的なばらつきもありますけれども、大変なプレジャーボートの売れ行きと申しましょうか、数がふえていっている。  それで、今ボートパーク事業等々、また、今港湾局長が、三省庁間とのいろいろな連携あるいは自治体との連携、さまざまな形での研究会、自己責任の問題等々に触れましたけれども、しかし、私は、この問題はかなり厳しい目で見ていかないと、社会問題ばかりではなく、環境汚染あるいは災害時においてさらに被害を大きくするような要因にもなりかねないということで、この問題については、関係省庁等も含めて十分重点的に今後とも検討を進めていかなければならない、このように考えております。
  170. 平賀高成

    ○平賀委員 静岡県の浜名湖でも不法係留が大きな問題になっていて、県としても規制強化の方向に今動き始めています。静岡県では、プレジャーボートなどが一万二千四百六隻係留、保管されておりますが、そのうちの約八割の九千八百八十四隻が放置をされています。県のアンケート調査では、係留、保管に関する何らかの規制が必要という意見が八割を超えています。プレジャーボート利用者による違法駐車やごみの不法投棄、油の流出船舶のエンジンの騒音など、地域住民の生活環境にも悪影響を及ぼしているわけです。そして、養殖施設や漁網等の破損など漁業活動への支障も生じているわけです。  こうした不法係留の対策も現状では不十分なままで、改正案は、小型船舶操縦士の資格に五級小型船舶操縦士を追加しようとしているわけです。自治体での苦労を考えてみますと、本当にこういうやり方でいいのかということを心配するのは私だけではないと思います。  各メーカーとも低価格のプレジャーボートの普及を図っておりまして、販売の六〇%強が八メートル未満のボートになっています。運輸省などの調査でも、全国的にも不法係留のほとんどが小型モーターボートということであって、今度の規制緩和でプレジャーボートが増加して、一層不法係留がふえることにもなると私は思うのですが、この点についてはどのように認識をされておりますか。
  171. 土橋正義

    ○土橋政府委員 今回、船舶職員法改正によりまして新たに設けようとしている小型船舶操縦士の資格は五級の小型船舶操縦士というものでございまして、主に船の形としては水上バイクと言われるタイプの船を操縦するための資格になろうかと思います。海岸から一海里までの海域航行する乗り物ということになろうかと思います。この水上バイクの場合は、御案内のとおり、通常はそういう係留施設等に係留いたしませんで、利用者が自宅から直接持ち運びするというふうな形のものが中心でございます。  そういう意味で、今回の措置と、それからその後に生じるであろうデメリットといいますか、そういうようなものがどういう関連があるのか、ちょっと私いま一つ理解できない点はございますけれども、ただ、小型の船舶一般につきまして、騒音公害の問題、事故の問題、あるいは放置艇の問題、いろいろあろうということは十分に私ども承知しております。私ども船舶職員の免状を与える立場から申し上げましても、例えば免許の更新のときに講習を受講していただくことになっておりますが、そういったときにモラル面での強化を盛り込んで利用者に理解を訴えるとか、パンフレットをつくって騒音公害等への配慮を訴えるとか、そういう啓蒙活動を鋭意やっておるところでございまして、今後とも強化してまいりたいと思っております。
  172. 平賀高成

    ○平賀委員 今、水上バイクは不法係留にはならないのだという趣旨の答弁がありましたけれども、しかし、水上バイクにつきましても、これは実際に自分の車に積んで運搬できるようなものではありませんし、実際には特別なトレーラーみたいなものをつくりまして、それで車で牽引するような運搬方法をやっているわけですよ。ですから、それにもやはり特別のお金がかかるわけでありますし、到底一人でやれるような代物ではないですよね。ですから、幾ら水上バイクがこれからふえるといいましても、不法係留の問題は余り影響がないのだというふうなことには、私は絶対ならないということを一つ指摘をしておきたいと思います。  それから、自動車は買う場合は車庫証明がなければ買うことができませんけれども、ボートの保管場所の証明がなくても船舶は買うことができるわけですね。平成九年の三月に出されました「放置艇解消のためのプレジャーボート保管のあり方」という最終報告の最後に、「残された課題」というところで、船舶の届け出制度を設けたり、ステッカー等の登録票を発行するなど、所有者が明確に把握できる新たな制度を創設するというふうなことが書かれています。この点で今後どのように具体化をされていくのか、伺いたいと思います。
  173. 土井勝二

    ○土井政府委員 お答え申し上げます。  先生今御指摘になった三省庁合同の調査委員会におきまして提言をしておるわけでございますが、この中で、所有者の明確化が必要である、あるいはそういう制度の創設が必要であるということがうたわれております。私ども、この調査委員会、いろいろな学者の方とか民間の関係者なんかが入って御議論いただいたわけでございますが、省庁側、行政側といたしましても、この提言につきまして、これからどういう形で実現をしていくか鋭意検討をしてまいりたいと思っております。  具体的に、ちょっと敷衍して申し上げますと、例えば一つ、届け出制度というようなことをつくるとすれば、先ほどの二十万隻、あるいは販売の面から把握すると約三十万隻ぐらいあると思いますが、これらについて全国一律にそういう義務づけをするのが適当であるのかどうか。これは地域によって放置艇の深刻度が相当違うという実態もございます。例えば東京湾であるとか瀬戸内海であるとかが相当放置艇の割合が多いというようなこともありまして、地域の差がある点について、全国一律に届け出制度を設けるのか、あるいはその地域の差に着目したような別の制度を考えるのか、この辺のところも一つのポイントだろうというふうに思っています。  それからもう一つのポイントは、これは一つの規制をするわけでございますが、その規制が現に実効的なものであるためには、やはり他方で保管場所、受け入れ場所も、その需給と申しますか、バランスしていなければいけない、それでこそ例えば届け出制を設けた場合に一定の実効性がある、遵守されるということもございますので、先ほど来申し上げています保管場所の整備の進捗状況、これらもポイントとして検討していかなければいけないということでございます。  先ほど大臣からも、非常にこの問題が重要な問題である、環境問題、社会問題的にも重要な問題であるという認識は運輸省全体としてありますので、そういうような認識のもとに、今二つポイントを申し上げたのですが、それらのポイントも含めまして、十分検討し、関係省庁あるいは関係自治体とも相談しながら対処をしてまいりたいというふうに思っています。
  174. 平賀高成

    ○平賀委員 今浜名湖には約一万隻の船舶があって、漁船などを除きますと、小型の船舶は八千二百隻、民間のマリーナや自宅に保管されているものが二千七百隻、残りの五千五百隻は保管場所がなくて、入り江や河川に不法係留されているわけです。  それで、ヤマハ発動機やスズキ、日産自動車などのメーカーは、百万円台のレジャー用モーターボートを販売して、出荷数も伸びています。メーカーは、低価格でモーターボートが大衆化すればさらに市場が拡大する、こういうことでっくり続けているわけです。メーカーは販売攻勢をかけるだけで、売るだけでいいということにはならないと私は思います。  このプレジャーボートの保管のあり方で、最終報告の中でもメーカー責任というのは余り議論をされた形跡はないのですが、この点について、運輸省として、放置艇解消の上でメーカーの責任をどのように考えているのか、伺いたいと思います。
  175. 山本孝史

    山本(孝)政府委員 まず初めに、プレジャーボートの廃船処理につきまして、だれがどういう義務といいますか、責任を負っているかという法律のことを申し上げますと、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づきまして、一義的には所有者、それから地方自治体処理を行うべきということにされております。  しかしながら、プレジャーボートは他の廃棄物と比較いたしましても回収が大変困難であるとか、その材料であるFRPは大変処理が容易ではない代物である、こういったような状況にございますので、実態といたしましては、舟艇の製造とか販売に当たっております事業者におきましては、こういった処理を行う事業者の情報を提供するとか、みずからの流通ルートを活用いたしまして廃船処理が円滑に行えるように必要な協力を行う、こういった実態もございます。  しかしながら、これまでも、FRPといえどもやがては大量に廃棄される時期が来るだろうということは重々予測されておりましたことと、それから、このFRP船自体は考えようによっては一つの資源の塊のようなものではないかという認識もありましたので、このリサイクルについて私どもの方も指導いたしまして、これまで各方面でいろいろと検討を進めてまいっております。現在のところ、これの効率的な、これだという決め手になるような有効な方法は残念ながら見つかっておりません。  それともう一つは、このFRPの耐久年数が当初の予想より随分長くございまして、現時点ではリサイクルを事業あるいはシステムとして確立して安定して運営するというか、そういう観点から見ましても、どうもそれに足りるような廃船がコンスタントというか量的にそろって出てこないというような状況もございまして、現状ではリサイクルのシステムというのはまだ確立しておりません。問題が先送りされているというふうに言えるかもしれません。  こういった状況については、私どもは、当然将来的には必ずFRP船はたくさん廃棄されてまいりますし、どんどん需要がふえている分もどんどん廃棄として上積みされますので、大きな問題という問題意識は十分持っております。これらを解決するシステムを確立するに当たりましては、やはりメーカーにおいてもリサイクルに関して応分の役割を果たしていくべきだろう、そういう観点で私どもは取り組んでまいる所存でございます。
  176. 平賀高成

    ○平賀委員 時間もなくなりましたので、先ほどメーカーの放置艇解消の上での責任は法的にはないんだというふうなことも言われておりましたけれども、だとするのだったら、きちっと法的にも責任を持たせるということをやるべきだと思います。  特に、最後に、大臣に一言だけ、廃船処理のシステムやリサイクルシステム、この点の確立に係るメーカーの責任について今のままで本当にいいと思われているのか、それとも、この中で書かれておりますけれども処理システムの確立についてメーカーも費用負担を含めた責任を負うべきだというふうにお考えなのかどうなのか、お伺いしたいと思います。
  177. 藤井孝男

    ○藤井国務大臣 ただいま山本局長の方からお答えいたしましたが、現在のところ、これを法的に整備することについて具体的にまだそこまで確立されていないという答弁を申し上げましたが、同時に、今後ともこのFRP、いわゆる繊維強化プラスチック、この船舶がふえてまいりますとなると、当然リサイクルというシステムを確立しなければならない。今PL法とか製造者責任とかいろいろな法律上の制度も整備をされてきたところでありますけれども、私どもも十分その点を踏まえて、メーカー側の、先ほど山本局長がお答えいたしましたように、応分の負担と申しましょうか役割というものは果たしていただかなければならない、今後、我々はこの点についてのリサイクルを含めたFRP船の廃船処理については、前向きに検討していかなければならない課題だ、そういうふうに認識しております。
  178. 平賀高成

    ○平賀委員 以上で終わります。
  179. 大野功統

    大野委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  180. 大野功統

    大野委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。寺前巖君。
  181. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、日本共産党を代表しまして、船員職業安定法及び船舶職員法の一部を改正する法律案に対する反対の討論を行います。  反対する第一の理由は、特例措置によって、我が国の海技免許を取得しなくても、外国人船員を我が国の船舶職員として認めるものであるからです。  今回行われる特例措置は、法的には我が国の海技免許を保有しなくとも、船長、機関長、外航、内航に区別なく適用されることになるものでありますが、この特例措置による船舶職員の範囲は、STCW条約批准国の海技免許取得者を条件としながら、運輸大臣の一方的な裁量にゆだねられていて、当面の適用対象を、我が国の外航船舶の船長、機関長を除くそれ以外の船舶職員には対象を広げないとしています。しかし、このような措置は、あくまでも国際競争力の強化の大義名分に船員コスト削減を最優先する余りに、我が国の世界に冠たる海技制度に大穴をあけるだけでなく、実際に我が国の海技を継承し、実践している我が国の船舶職員の雇用をもないがしろにするものです。  反対する第二の理由は、我が国の大手船会社や荷主等による我が国船舶便宜置籍船化に歯どめをかけない以上、我が国の船舶に日本人の船長、機関長二名制を導入しても、日本籍船の減少に歯どめのかかる保証とはならないからであります。  さらに、我が国船舶のフラッギングアウトによる日本人船員の減少は、我が国の国民生活や経済活動の安定、海上輸送における安全性海洋環境の保全等を脅かすことになります。  反対する第三の理由は、首都圏を初め関係自治体が小型船舶等の不法係留の増加に苦慮して、その抜本的な対策が緊急に求められている中で、海技試験の軽便化によって小型船舶を一層増加させることになるからであります。  おくればせながら、運輸省などで対策検討はしているものの、具体的な規制、対策が行われていないのが現状であります。特にプレジャーボート等の不法係留は、地方自治体災害対策の上でも問題となっています。このような不法係留の抜本的な対策もなしに小型船舶に五級の資格を新たに設け、免許取得の規制緩和だけ先行させることには反対であります。  以上、反対する理由を述べて、討論を終わります。
  182. 大野功統

    大野委員長 これにて討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  183. 大野功統

    大野委員長 これより採決に入ります。  船員職業安定法及び船舶職員法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  184. 大野功統

    大野委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
  185. 大野功統

    大野委員長 この際、本案に対し、衛藤晟一君外四名から、自由民主党、民主党、平和・改革、自由党及び社会民主党・市民連合の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。細川律夫君。
  186. 細川律夫

    ○細川委員 ただいま議題となりました船員職業安定法及び船舶職員法の一部を改正する法律案に対し、附帯決議を付すべしとの動議につきまして、自由民主党、民主党、平和・改革、自由党及び社会民主党・市民連合の五会派を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     船員職業安定法及び船舶職員法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   日本船舶と日本人船員の減少に歯止めをかけ国際海上輸送の活力を向上させるため、また、安全な海洋レクリエーションを振興させるために、政府は次の措置を早急に講ずべきである。  一 外航海運の基盤を強化し日本船舶の国際競争力を増強するため、関係者に一層の努力を求めるとともに、国際船舶制度を拡充するなどの有効な施策を講ずること。  二 日本人船員の減少を防止し、優秀な技術を今後とも維持するために、労働条件・環境等の改善に一層の努力をするとともに、若年船員を養成するための有効な施策を講ずること。  三 プレジャーボート等小型船舶の係留・保管対策及び小型船舶に係る水上交通の安全対策について適切な措置を講ずること。 以上であります。  本附帯決議案は、ただいまの法案審査の過程におきまして、委員各位からの御意見及び御指摘のありました問題点を取りまとめ、政府において特に留意して措置すべきところを明らかにしたものであります。  何とぞ委員各位の御賛成を賜りますようお願いを申し上げます。  以上です。(拍手)
  187. 大野功統

    大野委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  衛藤晟一君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  188. 大野功統

    大野委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、運輸大臣から発言を求められておりますので、これを許します。藤井運輸大臣
  189. 藤井孝男

    ○藤井国務大臣 ただいま、船員職業安定法及び船舶職員法の一部を改正する法律案につきまして、慎重な御審議の結果、御可決をいただきまして、まことにありがとうございました。  また、附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、運輸省として十分な努力をしてまいる所存であります。  どうもありがとうございました。     ―――――――――――――
  190. 大野功統

    大野委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  191. 大野功統

    大野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  192. 大野功統

    大野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十二分散会