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1998-05-14 第142回国会 衆議院 安全保障委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年五月十四日(木曜日)     午後五時十分開議  出席委員    委員長 塩田  晋君    理事 浅野 勝人君 理事 石破  茂君    理事 中島洋次郎君 理事 浜田 靖一君    理事 石井 紘基君 理事 岡田 克也君    理事 赤松 正雄君 理事 西村 眞悟君       麻生 太郎君    臼井日出男君       江渡 聡徳君    小野寺五典君       岡部 英男君    河井 克行君       佐藤  勉君    阪上 善秀君       下地 幹郎君   田野瀬良太郎君       田村 憲久君    中山 利生君       中山 正暉君    仲村 正治君       林  幹雄君    増田 敏男君       宮路 和明君    宮下 創平君       伊藤 英成君    北村 哲男君       玉置 一弥君    肥田美代子君       前原 誠司君    河上 覃雄君       倉田 栄喜君    冨沢 篤紘君       佐藤 茂樹君    二見 伸明君       中路 雅弘君    東中 光雄君       辻元 清美君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (内閣官房長官村岡 兼造君         国務大臣         (防衛庁長官) 久間 章生君  出席政府委員         内閣法制第一         部長      秋山  收君         内閣法制局第二         部長      宮崎 礼壹君         国際平和協力本         部事務局長   茂田  宏君         国際平和協力本         部事務局次長  新貝 正勝君         防衛庁防衛局長 佐藤  謙君         防衛庁運用局長 太田 洋次君         防衛庁人事教育         局長      坂野  興君         外務省総合外交         政策局長    加藤 良三君  委員外出席者         安全保障委員会         専門員     平川 日月君     ————————————— 委員の異動 五月十四日  辞任         補欠選任   池田 行彦君     小野寺五典君   亀井 静香君     宮路 和明君   佐藤  勉君     江渡 聡徳君   山崎  拓君    田野瀬良太郎君   横路 孝弘君     肥田美代子君   河上 覃雄君     倉田 栄喜君 同日 辞任          補欠選任    江渡 聡徳君     佐藤  勉君   小野寺五典君     池田 行彦君  田野瀬良太郎君     山崎  拓君   宮路 和明君     亀井 静香君   肥田美代子君     横路 孝弘君   倉田 栄喜君     河上 覃雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際連合平和維持活動等に対する協力に関する  法律の一部を改正する法律案内閣提出第九〇 号)      ————◇—————
  2. 塩田晋

    塩田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井紘基君。
  3. 石井紘基

    石井(紘)委員 長時間の議論をやってきたわけですが、最後に当たりまして、幾つか積み残した質問事項がございますので、聞かせていただきたいと思います。  まず最初に、我が国には国際舞台を相手にして外交政策というものあるいは防衛政策というものがあるわけですが、そうしたものとPKO活動というものとの関連、これは、PKO要請されたら事情が許せばどこへでも行く、あるいは行かないところと行くところがあるという場合に、どういう政策を、考え基準にして選択をしていくのかという点について伺いたいと思うのです。この判断基準というのは、例えばPKO原則というもの以外に、外交政策防衛政策という面であるのでしょうか、ないのでしょうか。
  4. 村岡兼造

    村岡国務大臣 国際平和協力法に基づく国連平和維持活動等への参加に当たりましては、従来より、いわゆる参加原則のほか、政府としては、憲法、国際平和協力法の枠内で行われるべきこと、国内の支持を受けるものであり、また国際社会からも評価されるものであること、現地事情に合わせて要員の派遣が効果的にかつ安全に行われるために万全の支援体制を整え得ること、我が国が適切に対応することが可能な分野であること等の観点を十分に踏まえながら、総合的に判断しているところであります。  今後とも、このような観点から、これらの活動への参加につき慎重に検討してまいりたい、こう考えております。
  5. 石井紘基

    石井(紘)委員 そういったもろもろの基準の中に、我が国国益ということは入るのですか、どうですか。
  6. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  我が国国益観点というのももちろん入りますが、国際貢献をしていくということももちろん入ります。こういうものは、国際貢献をしていくことが国益につながるということもございますので、そういういろいろな要素を総合的に勘案して判断していくということだと思います。
  7. 石井紘基

    石井(紘)委員 国益といっても抽象的なんですが、私の場合は、特に、例えば経済的な面あるいは外交の面で、そのときそのときによって重点を置いている政策等々、そうした意味も含めた国益という点もやはり念頭に置いてPKO活動というものの判断がされていくべきだろうというふうに考えるわけでございます。  そこで、次に国会承認という問題について、これは大変あいまいなまますっきりしないまま残っているわけでありますが、例えば周辺事態での対米協力ということですと、これは第三者から敵対行為というふうにみなされる可能性がある問題ですよね。あるいは国民権利という点についても、あるいは市民生活への影響という点についても多大な影響を及ぼす、そういう可能性を含んだ問題であります。  しかし、一方、PKFというものを考えた場合、これはPKO参加原則のもとで実施される、停戦合意あるいは受け入れ同意中立的な立場で実施されるということから、周辺事態の対米協力と比較してみるときに、第三国あるいは第三者からこれが敵対行為だというふうにみなされる可能性というものは低いのではないか。あるいは、こうしたことは海外で行われるわけですから、国民生活への影響という面でも非常に少ない、あるいはほとんどない。それでも、PKFを実施する場合には、シビリアンコントロールという観点から慎重を期さなければならないということで、国会承認の規定が設けられておる。  こういうふうに見てまいりますと、何を基準にこの国会承認というものを位置づけるのか。PKFとかPKOに比べれば、我が国主権行為としては、ガイドライン周辺事態での対米協力ということの方がむしろ重大な問題ということになるわけです。こういった点で、国会承認を求める、国会承認必要性ということについての基準といいますか、何をもって国会承認を規定するのか、あるいはしないのかという点について、もう一度、どうも御答弁を聞かなければならぬのじゃないかと思います。
  8. 久間章生

    久間国務大臣 あの当時議論をされましたときに、政府統一見解として出しましたものとしては、今まで国会承認をやっておりますのは、防衛出動とか命令による治安出動とか武力行使を含むもの、あるいはまた国民権利義務に直接関係するもの、こういうものがいわゆる自衛隊活動として法律国会承認事項になっておる。それに対して、PKFも含めましてでございますけれどもPKO法に基づいて外国に行くのは、これはそういうことにならないから国会承認は要らないということで法律案を出したわけでございます。そのときの統一見解としては、今述べたような内容で出しておるわけでございます。  しかしながら、国会の審議の中において、それは恐らく、今考えますと、あのときの提案者説明を聞いても、非常にたくさんの賛成を得るためというような答弁がなされておりますから、はっきりした基準はどうも不明確なんですけれども、やはり初めて外国へ出ていくというようなことから、特にPKFについては承認が必要だということで、参議院の方と衆議院とで、どちらもそうでございますけれども国会修正承認事項が入った、そういう経緯がございます。  したがいまして、私どもは、そういうような経緯を踏まえながら、これから先、承認にかからしめるかどうかの問題については議論をしなければならないわけでございますけれども周辺事態の場合は、今言いましたように、あくまで武力行使を含むものではない、あるいはまた国民権利義務に直接関係するものではない、影響はあると言われれば影響はあるかもしれませんけれども直接関係するものではない、それと迅速な決定を行う必要性がある、そういうことを総合的に考えて、これはやはり報告をすることによって国会議論をしてもらう、そしてまたその議論を反映していく、これでいいのじゃないかということで、今、ガイドラインに関する法律をあのような形で、承認にかからしめないで報告という形で提出させていただいておるわけでございます。
  9. 石井紘基

    石井(紘)委員 国会承認の問題につきましては、今後ガイドライン議論の中でも引き続き問題になっていくであろうと思うわけでありますが、今、長官答弁の中で国民権利義務のことにも触れられましたが、ガイドラインについては、この国会承認との関連で、長官のお考えは何か今までと変わるところはないのでしょうか。
  10. 久間章生

    久間国務大臣 ガイドライン関係で言いますと、とにかく我が国周辺事態の場合は、我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼすような事態我が国周辺の地域で発生しておる、それに対して適切に、迅速に対処をしなければならないということで政府行動を起こすわけでございます。しかしながら、そうはいいながらも、地方自治体とかあるいはまた地方自治体以外の——公共団体以外の一般の民間の者に対しましては協力依頼するだけでございますし、地方自治体に対しても協力を求めるわけでございまして、義務を課すわけではないわけでございます。  その一方、それは直接はそういうことで権利義務関係はありませんけれども、ただ、周辺事態が起きた場合は影響はあるじゃないかと言われますけれども、それは政府行動を起こさなくても、我が国の平和と安全にとって重要な事態が発生しているわけでございますから影響はあるわけてございまして、そのことをもってして承認にかからしめる事態ではないのじゃないかというふうに思うわけです。  ただ、このことにつきましては、これまでもいろいろな国会の御論議等もありまして、これから先も私どもとしても国会での御議論には十分耳を傾けていかなければならないというふうに思っておりますけれども、今まで政府が一貫してとってきました承認にかからしめる事項としてはそういうようなことでやってきておって、このPKOPKFの場合も、国会の中において修正という形でなされたということで、政府立場としては、先ほど言いますように、武力行使あるいはまた国民権利義務に直接関係がある、こういうものについては国会承認を得るということで法律が整理されてきておった。  だから、そういうような立場で提出させていただいたけれどもPKOPKFについては、特にPKFについては海外に出ていって武力行使につながる可能性もないことはないからというようなことなのか、そこのところははっきり提案理由説明なり趣旨説明説明があっておりませんので言えないわけでございますけれども、いろいろな御議論の中でとにかく承認にということになったというふうに理解しているわけでございます。
  11. 石井紘基

    石井(紘)委員 国会の方で修正されたというふうに長官が言われますと、何かちょっと一歩離れたところでこうした問題を見ているような気もしないでもない。やはり国会法律はつくるわけでありますから、その法律執行責任者として、国会で決められたのと政府考えと何か違うようなことをおっしゃらないで、これは今後のガイドライン議論までにさらに一歩前進のお考えをひとつおまとめいただきたい、このように要望をさせていただきたいと思います。  次に、最近、ここ数年の国連PKO活動というのは、どうも中立性あるいは平和的という概念からかなり変質をしてきているというふうに思われるわけです。  例えばソマリアとかボスニアでは、軍事的な強制措置を伴ったPKOが行われるようになってきている。例えば九三年に入って設立をされました第二次国連ソマリア活動、これは停戦監視武装解除などに加えて、PKO史上では初めて武力行使というものを前提とした平和執行部隊を主力とする新しい形のPKOというふうになってきている。あるいは、新しいPKOは、同意だとか中立性だとかという原則の限界を持ちながらも、本来の非軍事的強制措置という性格を大きく変質させてきているのではないか。ですから、九三年ごろから、国連保護軍にしても、やはり武力行使の権限を付与されてずっと来ている。  ソマリアの場合には、S・J・ピーターセン国連難民高等弁務官補なんかは、ソマリアと旧ユーゴにおける問題は、人道活動として出発したのだけれども、しかし、政治的努力が並行して行われなかったことによってどうもそうした強制措置を伴うものに変質をしていったと、この変質の原因を述べておられます。あるいは我が国の前国連事務次長の明石さんなんかも、ソマリアでは国連は従来型のPKO強制力を持った国連活動を混同したのだ、こういう言い方をされているわけであります。  具体的に、我が国の場合も、九四年にUNHCRを通してザイール医薬品などを送ったときに、UNHCRからは、隣国のルワンダでも医薬品を使いたいのだというふうに要請をされた。政府は、ルワンダでは停戦合意が結ばれておりませんから、そのことを理由に断ったわけですが、国連の方からはあるいはUNHCRの方からは、もう少し柔軟にしたらどうかというような非難をされたということなわけですね。  こうした国連PKO活動変質、軍事的な強制措置を伴ったPKOが頻繁に行われるようになってきた、こういう中において、我が国停戦合意のないところへの人道的な物資協力ということを考えた場合に、今までの原則というものが果たして今後とも問題なく踏襲されていくことができるだろうかどうだろうかという懸念があるわけです。  そこで、これまでの私に対する答弁では、第三者機関に渡すのだから、その第三者機関中立なのだからいいのだという答弁でありましたけれども、この第三者機関というのは必ず常に中立なのか、その判断というものは具体的に何をもって中立だというふうに言えるのかということはなかなか難しい問題じゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  12. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  先生、今大変いろんな問題を指摘されたと思うんです。まず最初に、停戦合意がない場合における物資協力の問題ですけれども、今回の法改正でお願いしておりますのは、まさに人道的な国際救援活動を行っている国際連合等に対して、一定の国際機関、例えば国連難民高等弁務官事務所のような国際機関を通じて行われる物資協力については、停戦合意が存在しない場合にもこれを行うことができるようにしたいということでございます。こういう国際機関につきましては、法律の別表第三に列記してございますけれども、これまでの活動の態様から見まして、人道的な精神で中立的に活動するということを大変重視している機関でございます。したがって、我々は、こういう機関を通じてであれば、停戦合意がない場合に物資協力をしてもその中立性等についての問題は生じないというように考えております。これが第一点。  第二点は、PKO参加原則がこれからも日本PKO活動に適用されていくのか、そういう対応日本として十分なのかという御質問だったと思います。  先生指摘のとおり、冷戦終結後、ソマリアボスニアPKOが行われました。このPKOは強制的な側面を持つPKOだったということかと思います。一時国連の中でも、いわゆる拡大PKOと言われておりますけれども、そういうPKOがふえてきたことがございます。しかし、その後国連で起こっていることは何かといいますと、やはりソマリア型、ボスニア型のPKOというのは大変難しいということで、今、いわゆる伝統的なタイプのPKOへの回帰が起こっていると思います。そういうことで、この伝統的なPKOというのは、まさに日本PKO法が決めております停戦合意中立性受け入れ同意という三原則を厳格に守りながら非強制的な手段を用いて行う、そういうところに国連PKOも回帰してきていると私は思います。  したがいまして、今後のことを考えますと、現在の五原則のもとで日本PKO活動協力していくという対応十分責務を果たせるのではないかというふうに思います。  もう一つ、最近のPKOの中で出てきておりますのは、国と国との間の武力紛争停止状況を監視するというよりも、国内紛争、混乱が生じた後の一国内PKOというのがふえてきております。ただ、これに関しても、私は従来の原則に従って十分対応していけるものではないかというふうに思っております。
  13. 石井紘基

    石井(紘)委員 PKO活動の後でいろんな報告書みたいなものが、簡単なものが出るんですけれども、こういうものには余り詳しい事情状況あるいはこちら側の対応というようなものが書かれていないんですね。こういうものはもう少し詳細に、どういう問題があって、どういう困難があって、この点はどうもうまくいかなかったとか、そういうことはたくさんあるわけですから、そういうものをきちっと、もうちょっと詳細に報告書をつくるということにしてもらいたいと思うんですね。  今の答弁ですと、国際機関というものは、その都度それに対する評価というものを加えていく。必ずしもいつもUNHCRというわけじゃないわけですから、いろんな国際機関があるわけですから、評価というものを慎重に判断をしながら物資協力活動を行うということでよろしいんでしょうか、その点はどうですか。
  14. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  先生の御指摘は、物資協力を実際にやる場合には、国際機関であっても、その国際機関活動内容性格等をもう少しよく調べて検討してやるべきじゃないか、こういう御指摘だと思います。  もちろん、我々が物資協力をやる場合、これは要請があればそれにすべて応ずるということではございません。その機関が、例えば難民が発生した場所でどういう活動をしているか、その活動が人道的な救援活動としていいものであるかどうかということを判断いたしまして、その上で物資協力をするかどうかを決めるわけですから、そういう判断はこれからはしていきたいと思います。
  15. 石井紘基

    石井(紘)委員 ルワンダの場合には、その物資というものが、どういう経路でどこに行って、どうなったということは把握したんですか。あるいは、そういう場合に、自衛隊じゃなくてもどなたかがそれをフォローするというようなシステムはあるんですか。
  16. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  ザイールルワンダ難民救援活動ケースに関して言いますと、我々は国連難民高等弁務官事務所物資協力をいたしました。これはテントとか毛布とか医薬品とかでございます。ただ、その物資がどこでどう使われたかというところまでは我々はフォローしておりません。我々は、そういう物資を提供した後、緒方貞子さん率いる大変立派な国際機関が適正に難民救援のためにこれらの物資を利用してくれるものと信頼して対処しております。
  17. 石井紘基

    石井(紘)委員 今後はいろんなケースが想定されるわけですから、一応この報告書ぐらいにはそういった点も触れられたらよろしいのではないかというふうに思います。  それで、ちょっとインドネシア情勢大変緊迫をしておりますので。  ここ一両日の情勢というのは、例えば先ほど入ったニュースによりますと、インドネシアの新聞は各紙がスハルト大統領が退陣する可能性を示唆しているとか、スハルト大統領は今カイロにおるが、十三日にカイロでそれらしい発言をしたりしておるとかいうことなんですが、ここのところ数千人規模のいろんなデモだとかあるいは略奪が起こったり放火が起こったり、軍隊が遠巻きにしておるというような状況で、十二日には六名死亡した、十三日には十人死んだというような報道もある。一般市民学生等が市街でもってそうしたデモンストレーションというのですか、反政府活動というのですか、それを展開して極めて緊迫の度を高めているというわけですね。  そこで、日本人はインドネシアに一万三千人ぐらいおるというわけですが、ここで邦人救出をしなければならぬというような事態をやはり想定ぐらいはしておかなければいかぬと思うのですが、どうなんでしょうか。外務省に伺いたいと思います。
  18. 村岡兼造

    村岡国務大臣 今いろいろお話しされたインドネシア情勢については、大変私どもも憂慮いたしておるわけでございます。  まず最初スハルト大統領辞任の話の報道承知をいたしておりますけれども大統領自身カイロにおりまして、きょうとか明日インドネシアに帰る、まだそれも定かでございませんし、そういう報道はなされておりますけれども辞任をするというような詳細については私ども承知をいたしておりません。  そして、現地状況は、今方々からいろいろ情報をキャッチしておるところでございます。メダン並びにジャカルタで数千人単位の暴動、略奪あるいは放火、そしてきのうの場合は十数名亡くなったというような話もあるわけでございますが、まだ正確には聞いておりません。  御承知のとおり、在留邦人が一万三千人ほどインドネシアにはおります。そして、旅行者が常時六千人から七千人と聞いておるわけでございまして、今までは注意喚起ということでございましたが、きょう、観光旅行延期危険度二ということを発出をいたしております。  外務省はもちろんでございますが、危機管理監の制度もできましたし、その現状を把握しながら準備をしている。また、外務省当局についても、在留邦人あるいは旅行者等に、まだすべてという状況ではございませんけれども、そういう連絡もしているという情報を得て、なお、これが鎮静化すればいいのですが、どのようになるかと注意深く、そして対策を相談もしておりますけれども、場合によってはそういうことをしていきたい、こういうふうに思っているところであります。
  19. 石井紘基

    石井(紘)委員 外務省外交ルートあるいは外務省出先機関等を通して邦人に対する安全策を講ずるというようなことが一方ではもちろん非常に重要であるわけですが、一方では、いざというときに、こういう内乱状態が一気に拡大した、そういうことは大いにあり得るわけですから、そういった場合には、これは自衛隊法でもって邦人救出というのがあるわけです。  かつてタイでそうした事態があったときに、これはどういう法の根拠でやられたのかというのがどうもいまだにはっきりしないわけですが、準備行動だなんていう新しい定義があったわけです。これは、自衛隊法百条の八では、そうした邦人救出という場合には防衛庁長官外務大臣依頼を受けて手続をとるということになっておるわけですが、そういう可能性ということについては、今回のインドネシア事態考えておられるのですか。予想しているかしていないかという聞き方はいたしませんが、考えておられるのですか。
  20. 久間章生

    久間国務大臣 防衛庁は、自衛隊法上、緊急事態におきまして、外務大臣から依頼がある場合に在外邦人の輸送を行うことを任務としておるわけでございますから、当然のことながら、平素からこの任務に備えて外務省とも連絡をとり合って、各種の情報収集を行っているところでございます。  最近のインドネシア情勢は注意深く見守っているところでありますけれども報道にあるような、インドネシアヘの自衛隊機の派遣を前提として準備を進めているわけではございません。しかしながら、注意深く今のところ見守りながら情報収集をしておるということでございます。
  21. 石井紘基

    石井(紘)委員 ありがとうございました。以上で終わります。
  22. 塩田晋

  23. 倉田栄喜

    倉田委員 平和・改革の倉田でございます。  私は、武器使用の点を中心に、重なる部分もあるかと思いますけれども、確認をする意味でも質問をしたいと存じます。  まず、官房長官にお尋ねをいたします。  我が国の今までのPKO活動で、武器を使用するようなケースがございましたか。
  24. 村岡兼造

    村岡国務大臣 これまでに我が国参加したカンボジア、モザンビーク、ゴラン高原などにおける国連平和維持活動において、我が国要員が実際に武器の使用に至った事例はないと聞いております。また、そういう危険を感じたことがあるか、これも聞きましたけれども、銃声が聞こえて土のうは積んだ経験はあるけれども、実際にそういうことはなかった、こういうふうに聞いております。
  25. 倉田栄喜

    倉田委員 武器使用をしたケースはなかった、また、武器使用をしなければならないのではないか、そういうふうな危険に遭遇するケースもなかった、こうお聞きしてよろしいですか。
  26. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  カンボジア、ザイールでの派遣の経験というのを幾度か委員会でも私申し上げてまいりましたが、カンボジアでの国際平和協力業務の実施に当たりましては、憲法制定議会選挙が近づくにつれまして治安状況の悪化が大変憂慮されました。したがいまして、隊員の一層の安全を確保するため、従来から必要に応じて実施していた武器の携行、防弾チョッキ及び鉄帽の着用のほか、宿営地における土のう積み等所要の措置を講じた上で業務を行いました。  ルワンダ難民救援国際平和協力業務の実施の際には、治安状況の悪化か憂慮されたことから、隊員の安全確保について万全を期すために、宿営地や給水所付近の警備に関しザイール軍の支援を受けたほか、部隊としては必要に応じて武器の携行、防弾チョッキ及び鉄帽の着用を実施いたしました。さらに、銃声の聞こえない夜はほとんどないという状況下におきまして、宿営地において所要の警備態勢をしき、土のう積み等所要の措置を講じた上で業務を実施するなど、隊員が安心して業務に集中できる環境づくりに努めたところであります。  このように、自衛隊の部隊等は、このような治安状況のもと、武器の携行を含む適切な対応をとったところでありますが、仮に実際に武器を使用せざるを得ない状況に至っていた場合を想定すれば、状況によっては、統制を欠いた武器の使用により、かえって自衛官等の生命身体に対する危険あるいは事態の混乱を招くこととなることがあり得ることが感得されたところであります。ただ、官房長官からも御答弁がありましたが、発砲はしなかったけれども武器を持ち出して構えるというような、そういう切迫した状況には至ったことはございません。
  27. 倉田栄喜

    倉田委員 たくさんお答えいただいたのですが、かえってちょっとわかりにくくなったようなところがあります。  要するに、武器使用をしたケースはなかった、武器使用をしなければならないという切迫したケースもなかった、しかし、土のうを積んで、個人個人の隊員心理からすればそういうことがあるかなという、感得という言葉なのですけれども、そういうことはあったように聞いている、こういうことなのだろうと思いますが、外務省にお尋ねをいたします。  他の国のPKO活動で武器を使用したケース、あるいは武器を使用しなければならない、そういう危険が切迫したケースというのは報告を受けておられますか。
  28. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 PKOで武器が使用された例といたしまして、パキスタンの部隊が国連カンボジア暫定統治機構、UNTACに参加した際に、組織的な攻撃に対して武器を使用して事態の鎮静化を見た事例があるというふうに承知いたしております。その他にも若干の例があるというふうに承知いたしております。
  29. 倉田栄喜

    倉田委員 他の国のPKO活動での武器使用の実態というものを正確に把握しておられるかどうかは、私は実際のところはわからないと思うのですね。ただ、そういう例があるというふうに今聞いておる、こういうふうなお答えであります。少なくとも、我が国PKO活動ではそういうケースはなかった。、  そこで、今回、武器の使用を個々の隊員の判断から指揮官が現場にいる場合には指揮官の判断に従うということでありますが、そうなった原因が、平和協力本部及び関係省庁での派遣の教訓と反省を踏まえて今回の法改正を出された、こういうことであります。  そこで、先ほど感得という言葉を事務局長はお使いになりましたけれども、ここでいう教訓と反省、やはり武器使用は個々の判断ではなくて指揮官の命令によらなければならないなというのは、感得でそうされたわけですか。
  30. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  集団で行動している場合において、武器の使用が個々の隊員の判断にゆだねられている場合には、統制を欠いた武器の使用でかえって危険を招くことがあり得るということが感じ取られたということが一点でございます。そういうことを踏まえまして、国連平和維持活動への参加各国の実情というのを調査いたしました。そこでも上官が統制をとった武器使用というのが一般的であったということが、この改正の背景でございます。
  31. 倉田栄喜

    倉田委員 私は、これは本当にそういう武器を使用するケースがなくてよかったな、そういうことによって、隊員の方々が仮にでも命を落とされるようなことがなくて本当によかったな、こう思っているのです。  こう思っていますが、その感得とかそういうことでいわゆる推論的に、この議論はこの法案が最初出されたときも同じ議論が繰り返されて、やはり指揮官の判断ではなくて、個人の正当防衛的、緊急避難的権利であるわけだから個人の問題だ、こういう議論があってそうなったのを、いわゆる教訓と反省の中身を感得という形で、やはりこれは指揮官によるべきだと、個人からいわばある意味では組織的というのか集団的というのか、そういう形に踏み込んでいく形になっている、そこに一つ問題なしとしない、こういうふうに思うわけです。そこは、やはりだれに聞かれてもきちっと説明できるようなものでなければならないのではないのか、そういうふうに思っているわけです。  そこで、憲法九条の解釈について、きょうは法制局にもお越しをいただいておりますので、お尋ねをいたしたいと思います。  九条では、国際紛争を解決する手段としての武力による威嚇、武力行使は、我が国は永久にこれを放棄をしているわけでありますけれども、ここで言う国際紛争は法制局ではどういうふうに定義をしておられますか。
  32. 秋山收

    ○秋山政府委員 憲法第九条の国際紛争についてのお尋ねでございますが、国際紛争と申しますのは、一般には、国家間で特定の問題について意見を異にし、互いに自己の意見を主張して譲らず対立している状態をいうというふうにされております。しかしながら、紛争の当事者が国家である場合に限らず、例えば国家以外のものが当事者である場合でありましても、それが地域住民を一定の範囲で支配している場合でありますとか、またはその支配を目指しているような場合にも、その紛争が国際紛争と言える場合もあるものと考えております。
  33. 倉田栄喜

    倉田委員 その国の中で、いわば反政府活動というものが一定の地域の中で実効的支配をしている、あるいは実効的支配を目指そうとしている集団的グループがある、それもいわば憲法九条で言う国際紛争の中に意義づけられる場合がある、こういう答えだと思いました。  そこで、このことは後で関連をしてくることだと思いますけれども、まず、この憲法九条は「日本国民は、」ということから始まっておりますけれども国連の一員としてあるいは国連軍ができたら国連軍として我が国PKO部隊が参加する場合、この憲法九条というのはその場合にも当てはまるのかどうか、この点については法制局はどうお考えでしょう。
  34. 秋山收

    ○秋山政府委員 ただいまのお尋ねは、国連憲章第七章、あるいは国連憲章に基づきまして実際上発達してきたPKO活動などにつきまして、我が国参加する場合の憲法九条の問題はいかがかという御質問でございますけれども、国際法上、集団的安全保障と申しますのは、これは国連憲章上の措置でございまして、武力行使一般的に禁止する一方、紛争を平和的に解決すべきことを定めまして、これに反して、平和に対する脅威とか平和の破壊あるいは侵略行為が発生したような場合、国際社会が一致協力してこの行為を行った者に対し適切な措置をとることにより平和を回復しようという概念でございます。  それで、我が国は、憲法の平和主義、国際協調主義の理念を踏まえまして国連に加盟し、国連憲章にはこのような集団的安全保障の枠組み、あるいは実態上確立されてまいりましたPKO活動が行われているところでございます。  したがいまして、我が国としまして、最高法規であります憲法に反しない範囲で、憲法九十八条第二項に従いまして国連憲章上の責務を果たしていくということになりますが、その場合、もとより集団的安全保障あるいはPKOにかかわりますいろいろな行動のうち、憲法九条によって禁じられている武力行使または武力による威嚇に当たる行為につきましては、我が国としてこれを行うことが許されないというふうに考えているわけでございます。
  35. 倉田栄喜

    倉田委員 今のお答えをもう少し確認をさせていただくと、よく議論の中で、例えば国連の指揮のもとに入って行動する場合については、実際の戦闘行為等々においても、それは国権の発動と違う形で行われているわけであるから憲法九条の問題ではない、こういう議論があると思うのです。それは集団安全保障という言い方をされた場合にはありますけれども国連軍みたいな形であれば、それは国権の発動ではないから憲法九条の問題ではないのだという議論があると思うのです。  今のお答えは、ともかく我が国の部隊が海外武力行使する場合は、どういう指揮のもとであるとしても、それは国権の発動として憲法九条の禁止するものである、そういうお答えであると理解をしてもよろしいですか。
  36. 秋山收

    ○秋山政府委員 大体今御指摘のとおりでございますけれども我が国の憲法第九条は、国際紛争を解決する手段としての戦争あるいは武力による威嚇、武力行使我が国の行為として行うことを禁じているものでございます。それで、国連の決議に従って我が国武力行使を行うという場合でありましても、我が国の行為であることには変わりがございませんので、このような行為は憲法九条において禁じられるというふうに考えているわけでございます。  それから、集団的安全保障措置に関しましても、これは国際紛争を解決する手段であるということには変わりないのでございますから、このような措置のうち、武力行使等に当たる行為につきましては、我が国としてこれを行うことが許されないというふうに考えているわけでございます。
  37. 倉田栄喜

    倉田委員 そこで、次の論点でありますけれども、憲法九条は、武力行使武力による威嚇を禁止して、これを永久に放棄している。しかも、今回の改正の場合は、集団的にというのか組織的にというのか指揮官の命令のもとで、私は組織的にと思うのですけれども、場合によれば集団的に武器の使用が行われる。そして一方で、先ほどお尋ねをした国際紛争というのは、いわばある地域の実効的支配を目指そうとするゲリラというのか、そういうグループとの間のものも国際紛争に当てはまる、そういうことであります。  そうだとすれば、憲法九条で言う武力行使と組織的、集団的な武器の使用というのは、私は、明確に区別されなければならないのではないか、こう考えるわけでありますけれども、どういう基準でもってそれを区別することができるのか、この区別の基準は何なのか、この点を法制局にお尋ねしたいと思います。
  38. 秋山收

    ○秋山政府委員 武力行使と武器の使用についてのお尋ねでございますが、これは委員承知のとおり、平成三年九月二十七日に、いわゆるPKO特別委員会に、武器の使用と武力行使関係についての政府統一見解を提出してございます。  この中では、一般に、憲法九条一項の武力行使とは、武器の使用を含む実力の行使に係る概念であり、我が国の物的、人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為をいうというふうに解しております。それからまた、国際平和協力法二十四条の武器の使用とは、火器、火薬類、刀剣類その他直接人を殺傷し、または武力闘争の手段として物を破壊することを目的とする機械、器具、装置をその物の本来の用途に従って用いることをいうというふうに解しているところでございます。  したがいまして、この見解におきましては、憲法九条の武力行使は武器の使用を含む実力の行使に係る概念であるが、武器の使用がすべて同項の禁止する武力行使に当たるとは言えない。例えば自己または自己とともに現場に所在する我が国要員の生命または身体を防衛することは、いわば自己保存のための自然権的権利というべきものであるから、そのために必要な最小限の武器の使用は、憲法九条で禁止された武力行使に当たらないとしているところでございます。  したがいまして、武器の使用は、憲法第九条第一項で禁止されました武力行使に当たる場合と当たらない場合とがあるということになりましょうが、どのような場合に武器の使用が武力行使に当たるかということに対しましては、さきに述べました武力行使の定義、すなわち「我が国の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」という定義に照らしながら、個々具体の事例に即して判断すべきものと考えます。  ただ、先ほどの繰り返しになりますが、国際平和協力法第二十四条のような武器の使用は、憲法九条の禁止する武力行使には該当しないという判断を申し上げているところでございます。
  39. 倉田栄喜

    倉田委員 個々的な武器の使用というものが憲法九条で言う武力行使とは関係がないことは、これは明白であります。いわゆる集団的な武器の使用あるいは組織的な武器の使用、これが即そのまま武力行使でないということも理解はできます。それはお答えのとおりだと思います。  そこで問題としましたのは、外形的に組織的、集団的、一体的な武器の使用というものが、ある一定の段階から憲法九条の武力行使に当たる場合があるわけですね、解釈としてもちろん、相手が何者であるかによっても異なりますけれども。その区別の基準は何なんですかということをお尋ねしたときに、今、やはり個々のケースによって判断するしかない、簡単に言えばそういうお答えなんです。そこがちょっと心配なんですね。心配と言えばちょっとあれですけれども、そこにもうちょっと明確な区別の基準というのはないのかどうか、両大臣、これはどうですか。
  40. 久間章生

    久間国務大臣 そういう御懸念はあろうかと思いますけれども、そのときにその組織体が自分の組織体の目的のために武器を使用する、それが武力行使につながる、こういう場合は委員指摘のような判断につながっていく問題が発生すると思います。しかしながら、その組織体が目的遂行のために武器を使うのではなくて、自己保存的な自然権、自己の身体生命を保護するために武器を使う場合は、それによってきちっと枠がはめられておって、それはいわゆる憲法九条で言う武力行使にはつながっていかないものである、そういうふうに整理がつくのじゃないかと思っております。  そういう意味で、今回の法律改正におきましても従来と同じように、今回の武器の使用も、確かにそこにおる上官の命令によって対処はしますけれども、それはあくまで自己保存的な自然権を守るために行うものである、そういうような整理で、これは憲法九条には違反しない、そういうふうに思っているところでございます。
  41. 倉田栄喜

    倉田委員 今回の改正が、改正の目的そのものが憲法九条に違反しないということは私も理解できます。今長官いみじくもお答えになりましたけれども、武器の使用が組織的目的のためになされる場合、あるいはその組織が何らかの目的を持つ場合、例えば国際紛争を解決する目的として武力行使をやった、それはだめだよ、これはわかるわけです。個々のまさに自然権的な権利として個人の生命を守るためにやる、それはそういう目的でないのだからそもそも憲法九条の問題ではない、これも言われるとおりわかるのです。  私が問題にしているのは、その目的というのは、まさに目的というものが外形的にあらわれる場合もあるのだと思うのですけれども、その一つの行為について、武器を集団的にあるいは組織的に使用したことが、実はある一定の組織としての、組織全体としての目的を持った行為なのかあるいは個々的なものなのか、こういうことがはっきりわかるかなと懸念をするわけですね。そういう問題意識を私が持っているということは、どうぞ御理解をいただきたいと思います。それで、あと二分ぐらいしかありませんので聞きますけれども、実はまだ聞きたいことはあるのですけれども、時間がありません。  長官、いわゆる組織的正当防衛あるいは組織的緊急避難、これもどう定義づけるのだと聞かれたらいろいろあるのですが、言いたいことはニュアンスを受け取っていただければわかると思うのですが、そういう概念を想定することができますか。
  42. 久間章生

    久間国務大臣 個人の自己保存的な自然権というのはございます。また国家も、国家の個別的自衛権という観念もございますけれども、グループに対してそういうような概念を使った例があるだろうかと思って、実定法上どうかということをいろいろ聞いてみたり探してみたりしたけれども、まだ見つかりません。ということは、そこまで組織体としての自己保存的なそういうような概念というのは、まだきちっと確立されて法律になっているようなことがないのではなかろうか、そういうふうに思うわけでございます。  したがいまして、今回のものについても、あくまで個々の自衛官の自己保存的な自然権を確保する、そういうような考え方で統一しているわけでございます。
  43. 倉田栄喜

    倉田委員 この点も、先ほど感得という言葉から、個々の判断から指揮官の命令による形で、それは確かにそのとおりだと私は思う部分もあるわけでございますから言うわけですけれども、危ないという観点から見れば一歩前進をした。これが個人の正当防衛的、個人の緊急避難的行為から、組織でやらなければいけない組織全体の正当防衛だとか緊急避難だとか、そういうふうに概念を飛躍することはよくないし、そういう概念を用いることがあってはならないと私は思いますので、これは防衛庁長官に改めて要望しておきたいと思います。  最後に、そういうことがないように望みますけれども、上官の命によって武器の使用があった場合、それは即時国会報告されるような体制になっているのでしょうか。
  44. 久間章生

    久間国務大臣 発砲事件が今まであっておりませんから、これは国会にもちろん報告もございませんけれども、私は、こういう委員会の場を通じあるいは国会の審議等において、また、それでなくても海外において発砲事件が起きた場合にはマスコミ等で報道されるわけでございますから、国会の方へももちろん私どもの方からも報告があると思いますけれども国会でもそういうことについてはいろいろと議論を進めていただく、そういう過程においてその前後の関係等についてはつまびらかにされていくのじゃないか。そういう議論を大いにやってしかるべきだと思っております。
  45. 倉田栄喜

    倉田委員 私は、時を置かずに直ちに報告をしていただきたい、こう思います。  以上で終わります。
  46. 塩田晋

    塩田委員長 西村眞悟君。
  47. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 今の倉田委員質問とも関連するのですが、私、前回、正当業務行為、刑法三十五条という視点から武器使用のことを把握しようとして質問いたしました。どだいこれは休日に休暇をとってうろうろしている人間の武器使用の要件を定めておるのではない、平和維持業務という業務の途上における武器使用の要件でございます。したがって、当然、正当業務行為という視点からこの問題を把握しなければなりません。  どだいこの正当防衛、緊急避難というものは、個人に降りかかった究極の緊急事態に対処するときの要件でございまして、部隊において上官に正当防衛の要件があるから即部下にも要件があるのだ、これは無理でございます。ただ、正当業務行為という範嗜でとらえますならば、上官が正当業務行為により武器を使用した、その上官の命令に従った部下についても、したがって正当業務行為である、このようにすんなり把握できるわけですね。  私が前の質問のときに満足しましたのは、究極の三十六条、三十七条というものは書いてあるけれども、書いていない刑法三十五条の正当業務行為というものが武器使用にもやはり適用されるのだという答弁を私はいただきました。これで私はこの法案については満足いたします。  しかし、その後の質問者が違う御答弁を聞いておりますと、私がそう判断した、御答弁いただいたものがちょっと違うのかなという不安に駆られましたので、この際、正当防衛の急迫不正の侵害という要件はない武器使用の領域については正当業務行為に当たるのか否か、この問題を、前にお二方の政府委員から正当業務行為に当たるという答弁はいただいておりますけれども、再度御確認させていただきたいと存じます。
  48. 太田洋次

    ○太田(洋)政府委員 一度お答え申し上げましたので、端的にお答え申し上げます。  今回の法改正も含めまして、法二十四条三項に基づく武器使用につきましては、これは刑法三十五条に該当しまして、いわゆる正当行為に当たる、業務的に言いますと正当業務に当たるというふうに考えております。その面で、この要件に当たればこれは違法性が阻却されるという意味でございます。
  49. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 これで私は満足しました。  それでは、出しておられる法案について不備があるから変えなければいかぬとか、出しておられる大臣にお聞きしても御答弁できにくい。また、前に東祥三委員質問で、本体業務の解除はなぜしないのかという問題でもお答えにくい。したがって、この問題はこれでやめます。もっと根本の問題をきょうはお聞きしたい。  国連平和維持活動協力法、この国連というのは何を目的にして、何を行動原理にしておるか。このことをさかのぼって押さえていきましたならば、我々は二万キロ先の遠く離れたアフリカで協力する体制を整えねばならないというふうなことではなくて、我が国の一番近い地域においてこの国連の目的と行動原則を再確認して臨まなければ周辺諸国との信頼醸成も成り立たない、こういう事態にあるということ、これが私の問題意識です。これから質問していきます。  つまり、台湾の問題です。中国に行かれて、台湾のことは主権侵害だとかいろいろ言われて帰ってこられたのですから、これを聞きます。  台湾をいかに把握すべきか。一つには、大陸を実効支配していない国民政府が、台湾にいて全中国を支配する政府として一つの中国を叫んでおる。二つ目は、台湾を実効支配していない共産党政府が、これは北京ですね、台湾の国民党による支配を否定して一つの中国を主張しておる。その中で、台湾人二千万の声は全く無視されてきておる、こういう事態。  この台湾の法的地位は何かといえば、これはアメリカの一九七九年一月一日発効の台湾関係法の前提条件を我々はこの日本においても再確認しなければならない。この台湾関係法の前提事実は、立法事実は、一つ、日本のポツダム宣言受諾により、マッカーサー連合軍総司令官は、蒋介石に日本にかわって台湾を占領する権限を与えた。二つ、日本は、サンフランシスコ講和条約により、台湾に対する権利、権原及び請求権を放棄した。三つ、以後、台湾の法的地位はいまだ未確定である。確定していないのです、台湾は。  このような場合、台湾の地位を確定さすものは何か。その原則は何か。これは、国連憲章一条二項にございます。国連憲章一条二項しかこの問題を解くかぎがないわけです。どう書いてあるか。「人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎をおく諸国間の友好関係を発展させる」、これが国連の目的なんですね。そして、これに基づく行動原理としては、国連憲章第二条四項、「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、」「慎まなければならない。」こういうふうに書いてある。  ところで、台湾は、既に、一昨年三月の総統選挙でも明らかなように、二千万の国民がみずからの運命をみずからの意思で決定するシステムを完成させたところでございます。つまり、台湾国民の意思を抜きにしてこの問題を語ることは、今審議している国連PKO法の前提たる国連憲章に違反するわけですね。  したがって、平和的話し合いはともかく、武力行使による台湾の併合は国連憲章違反であり、中国が言っていたように内政問題ではなくて、国際問題である。この認識は、長官お持ちでしょうね。お聞きしたいと思います。
  50. 久間章生

    久間国務大臣 本来はこれは外務省からお答えすべき事柄でありましょうが、お尋ねがありましたので、私の方から答えさせていただきます。  我が国としては、中華人民共和国政府が台湾をめぐる問題は中国人同士の問題として平和的解決を目指している、そういうふうに承知しております。我が国としても、この問題が関係者の話し合いによって平和的に解決されることを強く希望しておりまして、それと異なる前提を置いて議論することは適切でないと考えております。
  51. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 法的な解釈を聞いておるんです。国連憲章違反かどうか、すなわち、国際問題になるかということです。  それで、この問題は、連休に中国に行かれたときにも、くぎを刺されるような言い方で長官は聞かれたと思います。この問題をあやふやにすれば、中国に行った目的の対中信頼醸成はおろか、対アメリカにおける信頼醸成もできない、こういう事態になる。この見本を今から私はお示しします。  ガイドラインに向けた日米共同宣言は、中国がミサイルを三発ぶち込んでから一カ月後の一昨年の四月に宣言がなされたんですね。これでガイドラインの策定が始まるわけです。少なくともこの時点で、日米共同宣言の前提たる東アジアの平和を確保するという問題意識には、台湾武力併合は極東の平和を破壊する行為との認識が両国にあったはずでございます。この認識はないとは言わせない、こういうことですね。  この認識から出発して、共同宣言から出発したガイドラインについて、我が国は、私はあえて申しますが、自民党が結党以来最大の財産をどぶに捨てたんだという事態が起こった。つまり、自民党首脳が中国に行って、ガイドラインには台湾は入らないと言った。慌てたもう一人の自民党首脳の方が入ると言った。これが一つですね。  それから、先ほど長官の御答弁にもありました、ガイドラインは中国に対する主権侵害であると明確に言ってきている中国に、武力併合は国際問題ですよと一言も反論していない。この一言を言えばいいんです、我々のPKOの前提たる国連の精神なんですから。  もう一つ。ガイドライン関連法案を国会に提出しながら、連休に、日本国内ではなくてアメリカにおいて、ガイドライン成立は本国会では無理だと発言した与党の幹部の方もおる。  こういう事態を総合すれば、同盟国アメリカは日本は信頼できない国だと思うのは当たり前でございます。中国は、日本などどうにでもできる、明確な反論は全くしない国だ、そういうふうに解釈するのは当たり前でございます。  この前提で、米中関係を今から見ていきます。  中国は民主活動家を釈放して、アメリカのクリントン大統領が在任中初めて中国に来る土壌をこしらえた。クリントン大統領は予定を繰り上げて、来月、中国を十日ばかり訪問するというふうに聞いております。ハワイでゴルフをしてから中国に行くということをも聞いております。しかし、ゴルフをする時間があっても日本に寄る気はない、そういうふうに聞いております。  日本にクリントン大統領が来るとおっしゃるならば明確に来るとおっしゃっていただいて結構ですが、なぜクリントンさんが来ないのか。これは、江沢民主席がアメリカを訪問するときに日本に寄らずにアメリカに行ったのだから、クリントンさんも日本に寄らずに中国に来るべきだと、中国の要請に基づくアメリカの判断だとも聞いております。ここで話し合われるのは台湾問題であることは明らかでございます。  そこで、長官にお聞きしたい。台湾という国は日本のシーレーンに位置する。つまり、我が国の死活的利益にかかわる場所に存在すると認識されておるか否か。
  52. 久間章生

    久間国務大臣 かつてシーレーン防衛という話がございました。これは、我が国がいわゆる武力攻撃を受けた場合に、我が国はどこまで防衛するかということでやったわけでございます。その当時の話でございますけれども。  そういう意味では、今言いましたように、とにかく台湾海峡の問題につきましては、今回中国に行きましたときも、向こうの方は、平和解決、一国二制度、そういうような言い方をしておりまして、私どもとしては、両岸の当事者がとにかく話し合いで平和的に解決されることを望んでおるわけでございますので、今みたいな前提に立つならば、我が国武力攻撃を受けてそういうことになるというような議論はできないということでございます。
  53. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 私はそんなこと聞いてないんですよ。あの場所が日本のシーレーンにとって本当に重要な場所であるかどうか聞いておるわけです。場所なんですよ。  それで、あの重要な場所に関する問題、平和か争乱かの問題が、米中両国によって日本をパッシングまたはナッシングとして話し合われる事態に我々は遭遇しているんです。防衛庁長官として、また閣僚として、我が国に一番国境が近い国台湾のことを我が国を抜きにして米中が話し合うという事態になっていることをいかに認識されるか。これは、閣僚としての、また防衛庁長官としての大臣にお聞きいたします。
  54. 久間章生

    久間国務大臣 アメリカは、我が国関係なく、いわゆる台湾関係法という法律も持っておるわけでございます。そういうようなことを考えますと、台湾の問題につきまして我が国関係なく米中で話し合いが持たれたとしても、それに対して我が国が異議を挟む問題ではないのではないか、そういうふうに思っております。
  55. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 先ほど紹介したように、アメリカは台湾関係法を持っております。その前提の基本認識が同じであるから同盟国なんですね。そうですね。だから、同盟国というのは基本的価値を同じくするんですよ。基本的利害も同じくするんですよ。だから、同盟関係は維持されているわけです。  江沢民主席は、昨年、ハワイで米中両国は日本軍国主義と戦った戦友であるという趣旨の演説をされた。先日来日した遅浩田さんは、冷戦構造の遺物だと安保無用論を唱えておる。この両者が進もうとしている戦略目的は、安保の実効性を消そうということです。日本と米国が敵、味方であったという記憶を喚起しながら安保無用論を言っておるわけだから。そうですね。私が先ほど申しましたガイドラインに関する、いわゆる信頼を醸成する方向に反する一連の言動が今の事態を招いていると私は判断せざるを得ない。これをお聞きしても長官はお答えにくいでしょうか。  長官は、私が武力攻撃があるとかないとかという仮定の問題をお聞きして、その仮定の問題に対する答弁を迫っておるという受け取り方で先ほども答弁なさいました。そうじゃないんです。長官任務は、あらゆる事態を想定して、それに対して対処の原則を確立しなければならないんです。少なくとも中国が、江沢民さんは武力併合を叫んでおるんですよ。そして、それに干渉するのは主権侵害だと言っておるわけですよ。それに対して、一言、武力で併合することは国連憲章違反で国際問題である、こういう一言が我々は要るんです。  今、いわゆる国連PKO法を審議している、その国連というものは何のためにあるか、我々が加盟している国連憲章というのは何のためにあるか、この原則を押さえておけばかなりの程度信頼は回復し、また醸成され得ると私は確信しております。  二十分でお聞きする課題は大分これで終わりつつありますが、私がこれで申し上げたいのは、二万キロも三万キロも離れたところで国連の精神を生かすために我々の青年を派遣するというぼんやりした意識でやっておりますけれども国連の精神を我が国が体するならば、我が国の一番近い隣国のあの地域について、我が国は、少なくとも首脳同士が会えば明確に我が国の意思を伝えねばならない。そうでなければ、我が国はアメリカとの信頼関係もなくなるし、中国との信頼関係も醸成できない。そして、のっぴきならない場所に我が国はおるのだ。  それは政府の閣僚としてお答えにくいかもしれませんが、自民党は与党なのですから、立て直していただきたい。余りにも日本という国の信頼という財産を個々別々に発言してどぶに捨て過ぎている、このきつい言葉を申し上げて、私の質問を終わります。
  56. 塩田晋

    塩田委員長 中路雅弘君。
  57. 中路雅弘

    ○中路委員 限られた時間ですので、端的にお答え願いたいと思います。  二十四条武器使用の原則、この法制定のときの理由として、各国の事情を調査したとかあるいは憲法との関連を検討した、そして武器使用は個人の判断ということでやっていけると政策判断をしたということですが、この政策判断が間違っていた、経験がなかったのでやむを得なかった、そんなことで私は済むものでないと思うのです。  当時、官房長官の談話が出ていますけれども、この二十四条は憲法九条との関係で慎重に検討した法案の中心的要素をなす条項だということを言っています。二十四条の問題はこの法案の中心の問題です。憲法との関係で慎重に検討した中心的な要素と言っています。  武器使用が命令か個人かは、繰り返し論議をされた問題であります。今、経験がなかったとか、これではかえって危ないと感じ取ったのでこの条項を変えるというのは、国会のこうした審議も全く軽視をするものではないかと思うのです。官房長官、いかがお考えですか。
  58. 村岡兼造

    村岡国務大臣 ただいまの御質問でございますけれども、前の例を出されましたけれども、六年ぐらい経験をいたしまして、今回の改正を、したがってお願いをしている。  集団で行動している場合において、武器の使用が個々の隊員の判断にゆだねられている現状では、状況によっては統制を欠いた武器の使用によりかえって隊員の生命身体に対する危険あるいは事態の混乱を招くこととなることがあり得ることが、これまでの派遣の経験から感得され、また国連平和維持活動への参加各国の実情からも確認されたところでございます。  そこで,部隊として参加した自衛官等による法第二十四条に規定する武器の使用について、その一層の適正を確保するため、原則として現場にある上官の命令によることとしたものでございまして、この法の改正が実態にふさわしいということで提案をいたしまして、お願いしておるところであります。
  59. 中路雅弘

    ○中路委員 六年のこれまでの経験と言われますけれども、この六年間一度も武器を使用したごともないですね。そういう経験からこれでは危ないと感じ取った、こんな論理はだれも納得させることはできないと私は思います。  外務省も私は責任があると思います。外務省も、この法案をつくるときにPKOの実態や各国のPKO関連法令を十分調査したという話ですけれども、そして外務省はこうしたことでこの法案を押し通した。この答弁はうそだったのか。当時の調査はいいかげんだったのかということも言えます。外務省の責任はどうなるのですか。
  60. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 外務省といたしましては、今回の改正に際して、国連平和維持活動への参加実績がある主要各国に対して国連平和維持活動において武器を使用する際の判断主体ということについて改めて調査を行いました。  その結果、ほとんどすべての国で、部隊及びその構成員がさらされる危険を最小限に抑えて事態の悪化を防止するという観点から、上官の命令を求める暇がないような場合を除いては、基本的に現場にある上官が最良の選択を行い、その命令に従って対応すべきであるという考え方が一般的であるということが判明したわけでございます。ただし、個人の判断による武器の使用を排除する国も、それはなかったわけでございます。  実際に、パキスタンの部隊が国連カンボジア暫定統治機構、UNTACに参加した際に、組織的な攻撃に対して上官の命令によって武器を使用して事態の沈静化を見た事例がございますし、逆に、国連保護隊に参加したフランス部隊や連合国部隊が攻撃された際に、現場にある上官の命令により武器を使用せずに投降しまたは退避した事例などがあるということが判明した次第でございます。
  61. 中路雅弘

    ○中路委員 先ほど言いましたように、この二十四条というのは、政府も、この法案の中心的な要素なのだ、憲法九条との関係で慎重に審議して決めたのだということを言っているのです。今の官房長官外務省答弁でも、この中心のところを変更するという理由に何の説得力もないと思うのです。こういうことで変更するのは全くけしからぬと思います。  具体的な例で一、二お話ししますけれども、カンボジアの問題ですが、PKOで安全な場所しか行かないということを前提に、自衛隊がまず最初に派遣されたのはカンボジアであります。カンボジアで何が起きたか。カンボジアでの活動を知り得る唯一の資料は、九三年十一月の国会に対する報告ですが、これを見ますと、この中でも、  特に、安全確保の問題については、カンボディアでの経験を通じて、国際連合平和維持活動紛争終了後の混乱した状況の下で行われることから、現地情勢対応して要員・部隊の安全を如何に確保するのかが極めて重要であることを改めて認識した。 今さら何だということが言えるわけですが、問題は自衛隊の部隊の安全にとどまらない。自衛隊員だけではない、協力隊員であった高田警視も犠牲になったという事態が起きています。  ポル・ポト派が総選挙の武力阻止の行動に出て、日本人の選挙監視関係者の安全確保が求められることになったとき、そのとき派遣された施設大隊は何をやったのか。情報収集活動ということで治安情報を収集する、選挙監視要員を保護する活動を行った。これは間違いないと思うのです。  この情報収集チームは、報道によりますと、邦人救助のために実弾入りの小銃を持って投票所を偵察したという報道があります。言葉は保護とか偵察とは言っていますけれども、要するにやったことは日本人選挙監視員を守ることではありませんか。これは事実はどうですか。
  62. 太田洋次

    ○太田(洋)政府委員 事実関係を私の方からお答え申し上げます。  カンボジアにおいて設置されました先生指摘情報収集チームだとか、そういうことで実際に行動を行ったわけでございますが、これは我が国自衛隊が道路、橋の修理等を行うことが予想される地域の地形等を把握する必要がありますし、その近辺の治安情勢についても事前に調査を行う必要があるということで情報を入手することを目的としたものでございまして、そういう意味での活動を行いましたけれども先生が言われるような選挙要員を警護するとかそういうことで行ったわけではございません。
  63. 中路雅弘

    ○中路委員 私はその事実を聞いているわけです。こういう事実があったのかということを聞いているわけです。  もう一つ例を挙げますと、緊急医療チームというのをつくっています。これはレンジャー部隊の隊員でつくっているのですね、医療チームといって。これは日本人を救助する部隊として編成され、自衛隊の宿営地で待機していたと報道されています。こんなことは、今言いましたことは、国会への報告では何も出ていないのです。  このとき、監視員を救助するために考えられたのが、いわゆる人間の盾と言われているものです。日本人監視員を保護するために、自衛隊員がその撃ち合いの場に飛び込んで、人間の盾となって、襲撃される当事者となることで正当防衛を理由にして武器を使用しようとするものだった。これが、「個々の隊員の判断によるものとされている武器使用について、隊員の心理的負担が大きかった」ということを言うのですか。こういう人間の盾が実際にあったのかどうか、明らかにしてほしいと思います。
  64. 太田洋次

    ○太田(洋)政府委員 お答え申し上げます。  カンボジアの平和協力業務の実施に際しまして、自衛隊もいわゆる緊急医療チームをつくりまして、緊急の際に、UNTACの要請を受けて、その構成部門等の要員に対する医療を実施する、そういう目的で組織し、その行動を行おうとしたわけでございまして、いずれも御指摘のような点には当たらないというふうに考えております。
  65. 中路雅弘

    ○中路委員 今の問題は、当時、マスコミ各紙も大きく報道している事実じゃないですか。しかし、国会報告にはこうしたことは一切記載されていません。  もう一つ例を挙げますが、ルワンダの問題です。いわゆるルワンダ難民救援隊の中で警備隊というものが編成されていますが、これは事実ですか。警備隊が編成されていたとすれば、その編成についてお答え願いたいと思います。
  66. 太田洋次

    ○太田(洋)政府委員 お答え申し上げます。  自衛隊は、ルワンダ難民等に対する医療・給水活動等の実施を行いました。その際、その業務を行うためにいろいろな組織を編成しましたけれども、その中に、先生がおっしゃる警備を行う部隊もございました。これは総勢で四十七名でございまして、これは、宿営地、給水地等への部外者の出入りをチェックする必要がございますし、そういう意味での見回り等も行いました。そういうことが事実でございます。
  67. 中路雅弘

    ○中路委員 今、警備隊のことを認められましたけれども難民救援隊には三つ、給水隊、医療を行う治療隊、それに並んで警備隊という部隊が出ています。しかし、このルワンダ難民救援隊の実施計画を見ますと、自衛隊の部隊が行う業務は、医療、防疫、給水とあって、警備という業務はどこにも入っていないのですね。どういう根拠で警備隊が組織されたのか。問題は、閣議決定にどこにもないことをやっているということが、この警備隊でもはっきりしています。  常時、この警備隊は銃を持って警備を行う部隊でありますが、この警備隊の長が部隊を指揮監督して、監視や見回りなどの警備活動を行っている、必要な訓練もやっています。  私、何冊かあるのですが、きょう一冊だけ、当時のルワンダの写真集を持ってきました。この写真集の中に今の警備隊の活動が何枚か出ているのですが、ここにあるのですが、このルワンダ難民救援隊の写真集を見ますと、土のうを積み上げて、不測事態対応として対処訓練とか、警備対処訓練という説明がついていますが、自衛隊員が一列に並んで小銃を構えているところが載っています。そして、これには二両の指揮通信車がついています。個々の隊員の判断で集まってやっているわけでないことは明らかです。  こういう訓練をやっておきながら、実際に不測事態が起きたときは、命令によらずに個々の判断で武器を使用する、こんなことはあり得ないと思うのですね。ましてや、警備隊には一丁持っていった機関銃が、この警備隊には不測事態に対処するので機関銃がつけられています。個々の判断で武器を使用するという二十四条の規定が通用しないことが、これを見ればはっきりするじゃありませんか。  警備隊が編成され、部隊として行動し、部隊として武器を使用する態勢をとっていた。今度の改正というのは、現地のこういう経験によって法律を合わせようというものだと思うのです。官房長官、今のこういう写真集の実態は御存じですか。
  68. 茂田宏

    茂田政府委員 先生から警備隊の任務についていろいろお尋ねがございました。  ルワンダ難民救援国際平和協力業務実施計画におきましては、先生指摘のとおり、医療、防疫上の措置を含む被災民の捜索もしくは救出、または帰還の援助等々の実施が定められております。  警備隊の行った任務というのは、隊員の安全の確保のためでありまして、ルワンダ難民救援国際平和協力業務実施計画において与えられました任務を行う上において、それぞれ不可欠なものでありまして、それぞれの業務に附帯する業務であるというように考えております。
  69. 中路雅弘

    ○中路委員 時間が来ていますので終わりますけれども、この写真を見れば、きょう一冊持ってきておりますけれども、総理府が出している写真集にも同じものが出ているのですよ。一列に並んで銃を構えて、そして訓練をやっている。これが個々の判断でやる場合の訓練ですか。明らかに部隊としての訓練であることは明白なんです。時間がないので、答えなくてもいいです。これは明白だ。  そして、こうした警備隊が置かれているということは、この最初の実施計画にもないのですよ。やるのは給水とか医療だとか、そういうことを言っているじゃないですか。計画そのものにないことをやっているということを、私はきょうはっきりと言っておきたいと思うのです。  時間が来たというので、最後に私はお話ししますけれどもPKOの本部長は総理なんですね、そして、この法案を最初審議したときは、国会答弁は歴代の内閣総理大臣が皆答弁しています。国論を分けて、創設以来自衛隊を初めて海外へ派遣した、この大事な問題の、しかもその中核の二十四条を変えるという審議に総理が出席をしない、憲法九条の原則にかかわる重要な変更の問題で、こうした審議に出席しないということに対しては強く抗議をして、質問を終わります。
  70. 塩田晋

    塩田委員長 辻元清美君。
  71. 辻元清美

    辻元委員 社会民主党の辻元清美です。  きょう、幾つかの点について確認させていただきたいと思います。  まず、この国際平和維持活動、先ほどからも性質が変化してきていると。これはその時々によりまして変化すると思います。私の認識では、近年は、北欧諸国やカナダ、オーストラリアなどPKOを中心に担ってきた国も、人道援助の方で活躍が目覚ましいというかそちらに力点を置いているように、そちらのニーズが高まってきているように認識しているのですけれども、この認識は、政府はいかがでしょうか。
  72. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  PKO活動の中で、一つは現在の通説としましては、伝統的なPKOへの回帰というのがございます。いま一つが、一国内での紛争に伴うPKOというのかふえてきております。一国内PKOにおきまして、人道支援絡み、難民支援絡みの必要性というのがふえてきているということがありまして、辻元先生指摘のような傾向が出てきておると思います。
  73. 辻元清美

    辻元委員 ちょっと他国の活動と比較したい件があります。  例えば、一例として、一九九四年にザイールでの救援活動における国際平和協力隊の活動と、そのときドイツのTHW、御存じだと思いますけれども、緊急技術支援隊、これは民間防衛庁の所属の災害救助組織で軍隊ではありませんけれども、これの活動がよく当時も比較されてテレビなどでも報道されました。  この活動、同じザイールのゴマにおける活動では、例えば自衛隊が行った場合、隊の本部には自衛隊は三十人いたわけなんですけれども、こちらのTHWの現場の方は隊長と秘書の二人だったのですね。そして給水隊も、自衛隊は四十人だったのに対してTHWは十四人で賄ってきました。その陣容で、THWは全難民キャンプヘの給水を自衛隊撤収後も引き受けて立派に果たしました。これは御存じのとおりだと思います。THWは、軍隊ではないので武器は持ちません。そのため、警備はザイール軍に任せ、現地警察官をガードマンに雇うなどしてその任務を果たしております。日本自衛隊はこの当時はキブ湖畔での給水のみに限られておりましたけれども、このTHWは実際にキャンプ地までの配達をこなしたというような事実もございます。  こういうことからかんがみまして、私は、今までの形態以外のこういう他国の例もやはり日本としては参考にすべきであるというふうに考えますが、いかがでしょうか。
  74. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  ザイールルワンダ間の難民問題に関しましては、UNHCRから、自己完結性のある組織による支援というものを求められたわけです。それに応じまして自衛隊が出たというのが経緯でございます、  人道支援活動におけるニーズというものは、大変さまざまなものがございます。医療、給水、食糧の支援、その他いろいろなことがございますけれども、それはいろいろな状況に応じて適切な対応をしていくということだと思います。
  75. 辻元清美

    辻元委員 今こういう例も申し上げましたのは、さまざまな他国の事例を参考にして日本活動内容を決めていますので、そういう意味で、効率や現状に即した活動をこれからも研究していくべきだと思うのですね。  さて、今回の改正について、PKO法成立時と今日に至る議論の中で、この審議の過程でもさまざま過去の議論が取り出されました。武器の使用については、平和協力業務の特徴、それから平和憲法があるから個人にゆだねるという政府答弁も中にはあった、私が何回か紹介しておりますけれども。今回の審議ではございません、前回の審議の折にこういう話もありました。  そこで、今回何回か審議を重ねてまいりましたけれども、これらの過去の答弁と今回の方針転換の矛盾について、私は今日に至るまでなかなか納得ができませんでした。  また、今回の改正によって、先ほど武器使用について法制局と倉田委員とのやりとりもございましたが、任務遂行の妨害排除のために上官の命により武器が使用されることとならないような歯どめが改正案には盛り込まれていない。そのため、実際上の運用において、上官の命により改正案の想定する範囲を超えた武器の使用がなされる危険性をどうしてもぬぐい去れないというふうに私は考えます。  また、武器使用を要員の生命等の防護のために限定しているのに、上官の命令を原則とすれば、任務遂行の妨害排除との運用上の区別が困難な事態が想定される。先ほどの法制局の答弁の中にも、個々のケース判断ということで、明確な線引きは示されなかったというふうに私は受け取りました。  今申し上げもしたような運用上の事態は、憲法との整合性において違憲の疑いをぬぐい去ることはできないと思います。  また、今回、停戦合意がない場合でも国際機関の行う国際救援活動のための物資協力を行える旨の改正は、当該国際機関が求めた場合でも紛争地域内では譲渡しない旨をしっかり明記していただきたいとも考えます。  そこで、このような運用上の事態を招く問題を含む今回の改正には、賛成することができないというわけなんです。  さて、そういう中で、先ほどザイールの例も申し上げましたけれども、これから検討していくべきことが幾つかあるかと思うのですね。現場ザイールに行っていた隊員の方の発言の中にも、こういうのがございます。  責任と権限が明確にされさえずれば、このような任務の場合、べつの組織であってもかまわないと思います。ただし訓練やチームワークが必要なので、紙の上の組織ではだめでしょう。そのような条件整備がなされるなら、別組織の検討もあってもいいのではないかというような現場の声も紹介されていました。  実際に、我が国は国際緊急援助隊というのも既にございますね。この中には、消防庁、海上保安庁などの救助チーム、医師、看護婦から成る医療機関のほか、NGO、ボランティアも加わった人助けの専門家集団があります。登録隊員は、派遣決定から四十八時間以内に出発できるよう準備しているとも聞いております。九二年に法改正がされて、自衛隊もその構成員となって常時七百二十人が登録待機中、こういう組織もできているわけなんですが、こういうものもあわせまして、以前PKO議論があった折にも、この平和憲法を持つ国の特徴に合致した、そして人道的救援がニーズとしてふえてきているという答弁もございましたけれども、そういう精神を生かした国際平和協力活動を行う別組織についても、私たちはそろそろ整理して検討してもいいのではないか、このよ うに考えます。  以上のことを主張させていただきまして、時間が参りましたので私の質問は終わります。
  76. 塩田晋

    塩田委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  77. 塩田晋

    塩田委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。中路雅弘君。
  78. 中路雅弘

    ○中路委員 私は、日本共産党を代表して、反対討論を行います。  本法案は、憲法九条にかかわる政府解釈、政策の極めて重大な変更であり、断じて容認できません。  そもそもPKO協力法は、政府が、憲法違反の指摘を免れるための前提として盛り込んだのが第二十四条の武器使用規定であります。自衛官の武器使用は、個々の隊員の判断で刑法の正当防衛、緊急避難に当たるときに限って使用する、部隊として指揮命令によって組織的に使用するものではない、だから憲法九条が禁止する武力行使には当たらないという法体系は、当時ガラス細工と言われましたが、政府自身が憲法上の歯どめと位置づけたものであり、経験がなかったなどといって簡単に改めることのできないものであります。  二十四条の武器使用規定は、重大なごまかしと矛盾に満ちたものであります。  現場にある上官の命令による自衛官の武器使用とは、部隊として行動している自衛隊の指揮命令権限を持つ上官の命令によって組織的に武器を使用することであります。およそ上官の命令で組織的に機関銃や自動小銃等の武器を使用するいわゆる戦闘行為が、刑法三十六条や三十七条に該当するということがそもそもあり得ないことであります。まさに自衛隊の部隊としての武器使用、すなわち、憲法が禁じる武力行使にならざるを得ないのであります。  政府が言うカンボジアやルワンダヘの派遣の経験、教訓とか、これら派遣部隊における部隊としての警備活動などのPKO法をも逸脱する経験に合わせて法規定そのものを変えようとするものであります。また、各国の実情を踏まえたと言いますが、これは各国や国連基準に合わせて武器使用の範囲を拡大し、PKF本体業務の凍結解除を進めることを企図したものであり、極めて重大であります。  新ガイドラインは、PKO活動における日米協力を盛り込み、新ガイドライン実行のための周辺事態措置法案には、自衛隊による米兵の捜索・救難活動や臨検活動における自衛官の武器使用が規定されています。これは憲法が禁じる海外における自衛隊武力行使を一層拡大するものであり、断じて許されません。  以上で、反対討論を終わります。
  79. 塩田晋

    塩田委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  80. 塩田晋

    塩田委員長 これより採決に入ります。  内閣提出国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  81. 塩田晋

    塩田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  82. 塩田晋

    塩田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————    〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  83. 塩田晋

    塩田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時二分散会