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1998-05-08 第142回国会 衆議院 安全保障委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年五月八日(金曜日)     午前九時四十六分開議  出席委員   委員長 塩田  晋君    理事 浅野 勝人君 理事 石破  茂君    理事 中島洋次郎君 理事 浜田 靖一君    理事 石井 紘基君 理事 岡田 克也君    理事 赤松 正雄君 理事 西村 眞悟君       麻生 太郎君    臼井日出男君       小此木八郎君    岡部 英男君       河井 克行君    佐藤  勉君       阪上 善秀君    田村 憲久君       中山 利生君    中山 正暉君       仲村 正治君    林  幹雄君       増田 敏男君    伊藤 英成君       玉置 一弥君    前原 誠司君       横路 孝弘君    河上 覃雄君       冨沢 篤紘君    佐藤 茂樹君       二見 伸明君    中路 雅弘君       東中 光雄君    辻元 清美君  出席国務大臣         国 務 大 臣        (防衛庁長官)  久間 章生君  出席政府委員         内閣官房内閣安         全保障危機管         理室長     江間 清二君         防衛庁参事官  山崎隆一郎君         防衛庁長官         長       大越 康弘君         防衛庁防衛局長 佐藤  謙君         防衛庁運用局長 太田 洋次君         外務省アジア局         長       阿南 惟茂君         外務省欧亜局長         事務代理    飯村  豊君  委員外出席者         安全保障委員         専門員     平川 日月君     ――――――――――――― 委員の異動 五月八日  辞任         補欠選任   山崎  拓君     小此木八郎君 同日  辞任         補欠選任   小此木八郎君     山崎  拓君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国の安全保障に関する件      ――――◇―――――
  2. 塩田晋

    塩田委員長 これより会議を開きます。  国の安全保障に関する件について調査を進めます。  この際、防衛庁長官から、中華人民共和国訪問に関する報告について発言を求められておりますので、これを許します。久間防衛庁長官
  3. 久間章生

    久間国務大臣 私は、五月一日から五日まで、中華人民共和国訪問いたしました。今回の訪問におきましては、遅浩田国防部長会談したほか、朱鎔基首相トウカセン外交部長を表敬するとともに、上海にある東海艦隊基地、西安にある空軍工程学院、北京にある陸軍警備第三師団を視察いたしました。  遅国防部長との会談におきまして、防衛交流につきましては、日中防衛交流が着実に進展していることを双方とも高く評価し、二十一世紀に向けて、両国友好協力関係が全般的に発展していく中で、防衛交流についても一層進展させていくこ流の具体とで合意しました。また、今後の防衛交的な進め方に関しては、大臣レベル交流継続的実施、総参謀長年内訪日統幕議長早期訪中次官級協議実施分野別軍種別交流積極的推進艦艇相互訪問実施に向けた事務的調整実施について合意、確認することができました。  また、両国防衛政策について率直な意見交換を行いましたが、「日米防衛協力のための指針」に関しては、遅国防部長より、日本台湾問題に関する立場をより明確にすることを希望する、台湾日米安保範囲に入れることは中国主権侵犯である、中国側は今後もこの問題を注意深く見守っていくなど、基本的には従来と同様の発言がありました。  これに対し、私より、台湾問題に関する我が国基本的立場、すなわち、「我が国立場は、日中共同声明において表明しているとおり、中華人民共和国政府中国唯一合法政府であることを承認した上で、台湾中国の領土の不可分の一部であるとの中国政府立場を十分理解し、尊重するというものである。我が国としては、中国政府が、台湾をめぐる問題は中国人同士の問題として平和的解決を目指していると承知している。いずれにせよ、我が国としては、かかる基本的立場を堅持した上で、台湾をめぐる問題が関係当事者間の話し合いにより平和的に解決されることを強く希望している。」ことを改めて説明いたしました。また、現在指針実効性確保のための法整備を進めているが、その目的はあくまでも我が国の平和と安全を確保することである旨説明いたしました。  朱鎔基首相との会談におきましては、先方より、日中平和友好条約締結二十周年の本年、これまでの日中間友好協力関係を基盤に、両国関係を一層発展させたい旨、また、中国側江沢民主席訪日を大変重視しており、この訪問を通じて日中間友好協力関係が新たな段階に入ると信じているとの発言がありました。  トウカセン外交部長との会談におきましては、日中間友好協力関係をさらに発展させていく上で、両国防衛当局間の交流を通じた相互理解信頼の増進が非常に重要であることにつき一致いたしました。さらに、先方より、日中間において真の相互理解信頼のもとに友好関係を樹立するためには、日中共同声明及び日中平和友好条約、さらにこれまで両国指導者が約束したことに従って事を進める必要があるとの発言がありました。  今回の訪中に際し、人民解放軍陸海空軍それぞれの部隊または施設を視察することができましたが、このことは、日中間透明性向上にも寄与するものであったと考えます。  また、あわせて、国防大学訪問し、将来の人民解放軍の幹部に対し、我が国防衛政策について講演を行いました。講演の後には活発な質疑応答も行われました。これは、我が国防衛政策理解してもらう貴重な機会であり、大変有意義な意見交換を行うことができたと考えております。  日中平和友好条約締結二十周年の本年、二月の遅国防部長訪日に続き、今回私が訪中し、両国国防担当大臣相互訪問が実現するとともに、率直な意見交換が行われたことは、両国防衛当局間の対話交流を一層発展させ、相互理解信頼を深める上でまことに有意義であったと認識しております。  私としては、今回の訪中成果を踏まえ、日中間防衛交流を今後さらに一層推進していく所存であります。
  4. 塩田晋

    塩田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井紘基君。
  5. 石井紘基

    石井(紘)委員 防衛庁長官大変御苦労さまでございました。ただいまの報告について、最初に幾つかお伺いをしたいと思います。  日中間防衛交流というのは大変意義深いことだろうと考えておりますけれども、今回の訪中成果について、長官なりの御認識をお伺いしたいと思います。
  6. 久間章生

    久間国務大臣 先般、遅浩田国防部長訪日されて、日本自衛隊施設等も見学されました。そして、その際、私との会談だけではなくて、それぞれの自衛隊部隊視察等を行う過程において、かねてから私どもが言っておりました、日本は、いわゆる以前の旧軍隊といいますか、そういうものと今の自衛隊は違うんだということを主張しましたが、そういう感じを受けて帰ってもらいました。帰られてからのいろいろな話を聞くにつけ、訪日はよかったという話を聞いておりました。  今回、逆に私が行きましたときも、大変温かく受け入れていただきましたが、そういう態度を見ておりまして、日本自衛隊日本防衛政策に対する理解はかなり深まったというふうに感じました。  今回、私も向こうに行きまして、今までいろいろな文献その他でも見ておりましたけれども、確かに中国は軍の近代化等も進めておる、また、軍関係国防予算もかなりの程度伸びておるというのも知っておりましたけれども、そうはいいながらも、向こう感じとして、いわゆる排他的といいますか排日といいますか、そういうような感じを軍のレベルでも持っていないという感じを受けました。  これから先、やはりこういう防衛当局の、ハイレベルだけではなくて、いろいろな軍種別、各分野における交流等を通じ、あるいはまた留学生の受け入れ、そういうことを通じながら両国防衛交流が進んでいきますならば、必要以上の疑心暗鬼というものがなくなってくるのではないか。そういう意味では、交流することは非常によかったと思いますし、そういうようなきっかけとして初めて防衛首脳交流が始まったということはよかったのではないか、それがまず一番目の成果だというふうに私は思います。  それと同時に、確かに、ガイドラインをめぐる問題につきましても、いろいろな意見は従来からも寄せられておりましたし、今回も出ました。しかし、出はしましたものの、基本的な立場としての主張はされますけれども、また、私ども主張、いわゆる日本の平和と安全にとって重要な事態が起きたときに、国民の権利、財産を担当している防衛庁長官として、我が国政府としてどうするか、そういう立場からやらなければならないんだという、その辺の気持ちについては理解を示していただいております。  しかしながら、そうはいいながら、台湾の問題というのは自分たちの要するに内政の問題であるという基本原則がございますから、向こう向こうとして主張されますが、そういうような会談を通じながら、我が国がとろうとしている防衛政策につきましても、ガイドラインについても、それはそれで、私ども立場といいますか防衛庁立場、国の立場政府立場というものについても一定理解は示した上で、なおかつ、自分たち主張についてはきちっと言うという感じでございますから、これもこういう会談等を通じながら説明をすることは、決して間違っていないというよりもむしろ前進をするものにつながっていく、そういうふうに感じた次第であります。
  7. 石井紘基

    石井(紘)委員 我が国は、当然この日米安保条約を基軸としながら、一方においては地域的な安全保障といいますか信頼醸成を高めていくということが非常に重要なものに位置づけられるわけでありまして、そういう点から、今の防衛庁長官の御感想は大変結構だと私は思います。  今触れられました例のガイドラインとの関係について、中国側といろいろやりとりがあったようでありますが、中国の方の言い方としては、このガイドラインというものが台湾海峡を含むならこれは主権侵犯だというふうに認識をする、ないし台湾海峡を含む中台の問題というのは内政問題である、したがって、このガイドラインがこの地域に及ぶのであればこれは内政干渉になるというような主張があったように報道されておりますが、その事実関係とそれに対する長官の対応、それからまた、今回の長官訪中でそういうやりとりがあったという意味では、この訪中というものが今後のガイドライン立法化に向けて何らかの形で影響を及ぼすということがあるのかどうなのか、その点を伺います。
  8. 久間章生

    久間国務大臣 私どもは、先般、遅浩田部長訪日されたときも申しておりますが、今度のガイドライン、それを受けましてのいわゆる実効性確保のための法律等におきましても、今度の周辺事態は、特定の区域、特定地域特定の国を対象とするものではなくて、我が国周辺地域我が国の平和と安全にとって重要な影響を与える事態が起きたときにどうするかということでまとめているんだという話を絶えずしてきておりますから、その問題につきましてもそういう言い方で反論があるわけではございません。先ほどの報告でも述べさせていただいたように、向こう言い方は、台湾日米安保範囲に入れることは中国主権侵犯である、そういうような言い方なのです。  今度のガイドラインあるいはそれを受けた法律のことよりも、その根っこにございます安保条約対象台湾を入れることは内政問題に対しておかしいというようなトーンでございますので、だから、法律内容等については、私は従来から説明してきたとおり、今回国会に提出させていただきましたけれども、その法律はいささかも変えないというような従来どおりのスタンスでやっていこうと思っております。
  9. 石井紘基

    石井(紘)委員 これは我が国主権ないし国益とも関係することでありますので、長官姿勢で結構だろうと私は思うわけでございます。  それからもう一つは、長官の方から向こう国防相に対して、台湾問題については話し合い解決を希望するということをおっしゃられたと聞いておりますが、それに対して向こうのコメントはなかったのですか。
  10. 久間章生

    久間国務大臣 中国八文字だと言われるのです。その八文字というのは、「平和統一、一国二制度」。九文字になるのかもしれませんけれども、要するに「平和統一、一国二制度」ですというような話でございました。
  11. 石井紘基

    石井(紘)委員 長官は、以前に東南アジア訪問されて、かなり積極的にそうした交流をなされているわけですが、軍事的な意味で、中国東南アジア諸国、あるいは北朝鮮、あるいは韓国、ロシア、こういう関係の中で中国が果たしている役割というものは、あるいは最近の実情といいますか、中国周辺諸国に対する影響力といいますか、その関係における中国影響力というのはどんなふうに見ておられるか。
  12. 久間章生

    久間国務大臣 残念ながら、私は東南アジアを回る予定でございましたが、あの当時、国会がすぐ始まりましたために、途中で打ち切りまして、ベトナムだけしか行けずに帰ってきております。  しかしながら、全般的に言えますことは、中国も、経済的な成長と同時にこの東南アジア地区では着実にその力を伸ばしてきており、そういう意味では、日本と同様に、この東南アジアにおいて非常に重要な国としての役割を果たしてきているというふうに思っております。  その一環として、軍事力等におきましても、漸進的ではありますけれども着実に近代化等も進めておりますだけに、その辺が近隣諸国にどのような影響を与えておるか、これはまた各国のいろいろな意見を聞いてみなければわからないことでございますけれども、やはり時には緊張感感じさせることもあろうかと思います。  しかしながら、先般ベトナムに行って、向こうのトップとの話の中では、それだからといって特別の緊張感を持って見ているというようなことでもございませんでした。それぞれの国が、自分のことは自分で守るというようなことで、絶えずよそのことは意識しながらかもしれませんけれども自分のことについては自分の方できちんと対処しているというような感じを受けました。そういう意味では、中国自身も友好的な関係近隣諸国ともとっているのだなという感じを受けたわけでございます。  そのほかのフィリピンとかインドネシアとか、いろいろな国を予定しておりましたが、残念ながらそういうことで回っておりませんので、それはまた後日にさせていただきたいと思います。
  13. 石井紘基

    石井(紘)委員 先ほど長官も言われましたように、中国では近代化が進んでいるあるいは国防予算の増大というものも確かにあるというお話でありましたが、中国の軍事的な実力といいますか軍事力というものについてはさまざまな見方がありまして、我々も一体どれが実際のところなんだろうというところがなかなかわかりにくいのですが、率直に、長官感想としては、中国軍事力あるいは国防予算というものは格段に強化されている、そういう実態なのでしょうか。
  14. 久間章生

    久間国務大臣 中国の軍の関係皆さん方と話をいろいろとしましたときに、今度の改革で五十万人を減らすということでございますが、五十万人を減らすというと、今、中国でも今度はその職をどうするかということで、実を言うとなかなか大変なんだという話でございました。  しかしながら、そういうふうに数は減らしてでも近代化の方に向けたいというような気持ちはうかがうことができました。そういう意味では、これから先、装備の近代化に向けて、あるいはまたいろいろな配置を含めまして、その運用面での近代化といいますか合理化といいますか、そういう面に向けて努力をしているのだなという感じを受けました。
  15. 石井紘基

    石井(紘)委員 最近の報道で、北朝鮮金正日総書記が訪中をするというのがあったと思うのですが、その事実関係を耳にしておられるか。あるいは、もう一つ中国に行かれた際に、北朝鮮中国との最近の関係、あるいは朝鮮半島問題、そうしたことに関するやりとりというものはあったのでしょうか。
  16. 久間章生

    久間国務大臣 中国のいろいろな政府首脳との関係では朝鮮半島問題については一切話は出ませんでした。  ただ、国防大学での私の講演などの質疑応答の中で、あそこの学生というのは、教官もおりますし、かなりハイレベルの、師団長クラス学生なわけでございますけれども、その中の質問として、朝鮮半島については日本はどういうかかわり方をするか、どう考えているかという質問がございました。  私は、今朝鮮半島安定化のために南北対話努力するのが基本的には一番望ましい、それと同時に、米、中、北朝鮮韓国の四者の会合が持たれており、日本KEDOについては協力している、こういう形で、とにかく四者会合がスムーズに進むことを望んでおるということを言ったわけでございますけれども、やはり朝鮮半島については軍の関係者も関心を持っているんだなという感じはいたしましたけれども、私との会談では正式には朝鮮半島問題については一切出ませんでした。
  17. 石井紘基

    石井(紘)委員 それはそれなりに長官のお考えがあって触れられなかったのかもしれませんが、朝鮮半島に対する中国影響力というものは少なからずあるわけでありまして、中国を介して朝鮮半島問題の解決ということも一つの手法として十分あり得る、考えられ得ることではないかというふうに私どもとしては考えるわけでありまして、やはり中国影響力を活用するという考えが、これはむしろ防衛問題というよりも外交問題でありますが、そんな気がするわけでございます。  そういう意味で、外務省にお尋ねしたいと思うのですが、今私が申し上げましたことについてどのようにお考えでしょうか。
  18. 阿南惟茂

    阿南政府委員 中国北朝鮮関係につきましては、先生御指摘のように、最近でも北朝鮮食糧不足等に対して食糧支援をしているとか、歴史的にも中朝関係というものは大変密接でございます。他方、最近、中国は、北朝鮮自主性主権というものを尊重するという言い方で、例えば北朝鮮韓国との関係とか朝鮮半島の平和の問題についての姿勢とかについて余り口出しはしないというような基本姿勢をとっております。  さはさりながら、最近、朝鮮半島休戦協定当事者である北朝鮮韓国米国中国の四カ国で行っております四者会合におきまして、中国は積極的な役割を果たそうという姿勢を示しておりまして、前回、ジュネーブで行われた第二回会合においても議長役を務めて、会合の円滑な話し合いが進むように努力をしているというようなことは中国もやっているようでございます。  そういうことで、中国北朝鮮に対する影響力に限度はあると思いますが、朝鮮半島の平和と安定に一定役割を果たしたいという観点から、中国も積極的に関与しているというふうに私どもは見ております。
  19. 石井紘基

    石井(紘)委員 北朝鮮問題については、外務省考えなり、現在いろいろと外交的に進めている政策なりというのは、それ以上ないのでしょうか。北朝鮮に対する外交、もう少し具体的に言えば、北朝鮮を国際的な一員として開放させるといいますか国際舞台に引っ張り出す、そして、今のような孤立した状態から開放させる、あるいは南北統一という方向に向けて日本努力というものはいかになされているのかというようなことについては特にないのですか。
  20. 阿南惟茂

    阿南政府委員 北朝鮮が現在のような閉塞状態と申しますか、外界との関係をほとんど絶っているというような状況は、まことに望ましくない状況でございます。  それを打破するために、基本的には南北間の対話、それから、先ほど申しましたような四者会合というようなことの進展を日本も支持しているわけでございますが、現在の段階では、日本朝鮮半島の平和と安定のために、米国韓国等とも緊密に連携をとりつつ、一九九四年に起こりました北朝鮮核開発疑惑等に対処するということでKEDOというプロジェクトを推進する等、北朝鮮をおかしな方向に持っていかないように、できるだけ外の世界との接触をふやすようにということで、日本として果たすべき役割は果たすということでやっております。  ただ、これは御案内のように、日本北朝鮮との関係そのものは、二国間の人道問題等なかなか難しい問題がございますので、今の段階でそう急速に北朝鮮を外に引っ張り出すというような形で動くことはなかなか難しいという状況はございます。
  21. 石井紘基

    石井(紘)委員 北朝鮮食糧危機について何か我が国としてとるべきことがあるのかないのかとか、あるいは拉致問題に関して具体的にどういう行動をとるべきなのか、あるいはとっているのかというようなことを聞きたかったわけですが、余りないようなので、次に移ります。  今、インドネシアで相当の暴動が起こったり、いろいろな事件が頻発しているようでありますが、このインドネシアの不安定な情勢についてちょっと議論をしたいと思うのです。  その前に、橋本総理がこの前ちょこっとインドネシアに行かれたのですが、これの目的と、そしてそれがどうだったのかということを説明していただきたいと思います。
  22. 阿南惟茂

    阿南政府委員 橋本総理は、三月十四、十五日でございましたが、インドネシアに行かれました。これはちょうどスハルト大統領の新体制が発足した直後でございまして、そのとき、時あたかもインドネシア経済は大変困難な状況にあったということで、インドネシア経済安定化、そしてまた、日本インドネシア関係首脳同士で率直に話し合うことを目的とされて訪問を行われたものでございます。  特に経済混乱が非常に危機的な状況にあったときでございましたので、橋本総理からスハルト大統領に、直接、インドネシアは一層国内改革を進めて、現在の困難を克服すべきであるということをるる説明をされました。そして、インドネシアがそういう改革努力をしていくならば、日本としてもできる限りの支援は行う用意がある、こういう積極的な姿勢を示されたわけでございます。  この会談で、スハルト大統領も、国際的ルールに基づいて国際社会と協調して協力していく、インドネシア国内改革を行っていくということを橋本総理に明言されました。また、スハルト大統領自身が国際的に行った約束は守っていくんだということを、これもはっきりと明言をされたわけでございます。  この会談きっかけといたしまして、インドネシア支援を要請しておりましたIMFインドネシアとの話が再び軌道に乗って、既に五月四日に、IMF理事会決定インドネシアに対する支援が動き出した。また、日本が、我が国がこれまでインドネシア支援のためにいろいろな施策を講じてまいりましたが、これもIMF理事会決定と同時にリンクしておりますので、これも動き出した、結果的にこういうようないい状況が出てきたというふうに考えております。
  23. 石井紘基

    石井(紘)委員 スハルト大統領の七選を決めた国民協議会というのは、その代議員の半数はスハルトさんの指名で、これは、大統領を決める母体そのものが極めて非民主的なものです。  そういう中で、一方では経済危機を背景としたスハルト独裁政治というものに対して各所でもって暴動がますます激しくなってきているわけです。ことしになってからも、アメリカインドネシアに住んでいるアメリカ人を救出をする準備までしていた。日本も一万人を超える日本人を救出する、これを現行のガイドラインでできるかできないかというようなことの協議アメリカとしたとかしないとか、こういうことになっておるわけですね。  橋本総理が行った後も何ら改善されていないのではないでしょうか。事態はもっと悪化している。こういう中で、どうも橋本総理の果たした役割というのは、成果が全然上がっていない。ただ、IMF支援あるいは日本経済援助というものを継続していくための、何か無理やり行った方便みたいな形になっているのではないでしょうか。インドネシアに対する日本経済援助の実態を含めて御答弁をお願いします。
  24. 阿南惟茂

    阿南政府委員 この数日来報道でも伝えられておりますように、インドネシアの社会不安というのが増大しているということは、今お話にあったとおりでございます。  インドネシア国内情勢はインドネシア政府が責任を持っているわけでございまして、橋本総理インドネシアにいらっしゃったのは、先ほども申し上げましたように、非常な経済困難、特に政府が外貨準備が極端に少ないというような状況で困っている、これをIMFを通じてどう助けるかということで、実は、スハルト大統領もその点について、インドネシアの国情にかんがみてIMFのつけてくる条件というものに抵抗を示しておられたということがあるわけでございますが、そういうことについて、橋本総理がその点はきちんと国際的ルールにのっとっておやりになった方がいいというお話をされたわけでございまして、そのことは、先ほど申し上げましたように、IMF支援が動き出したということで、そのお話し合いの結果はそういう形で結実しているのだと思います。  御指摘のように、今インドネシアがさらにいろいろ困難を抱え、最近の公共料金の値上げ等で各地で暴動が起こり始めているというような状況は確かにございますが、日本支援というものは、そういう社会的弱者に対する協力という面での支援も含んだものでございまして、これがインドネシア国民のためになるということを期待しつつ、これからも支援をやっていく、こういう基本的立場でおります。
  25. 石井紘基

    石井(紘)委員 有償、無償を含めて現状においてどのぐらいの経済援助をやっているのかということを伺ったのですが、もう一回それを聞きたいと思います。  それから、社会的弱者への支援もあるんだなんて言いますけれども、そういうものがちょこちょこっとあるからいいというものではないのではないですか。いかがですか。
  26. 阿南惟茂

    阿南政府委員 インドネシアに対する支援といたしましては、若干技術的な内訳になりますけれどもIMFの金融支援に対する第二線準備というものを日本も五十億ドル用意した、また貿易金融の円滑化支援として十億ドルの輸銀のツーステップローン、さらには経済困難の影響を受けているインドネシア国民、特に社会的弱者に対して人道的な観点から支援を行うことを重点といたしまして七百億円程度の構造調整支援のための円借款、また三月初めの時点で医薬品等、特に外から輸入するものが非常に不足しているという状況もございまして、そういう状況にかんがみて医薬品等支援のための緊急無償援助四十億円、また、現在検討しております米の支援、六十万トン程度を考えておりますが、こういうものを支援策として行うということを考えております。  私ども気持ちとしては、そういうものが社会的弱者、そういう人たちの生活に少しでも役立つということを期待して、こういう支援を行っているわけでございます。
  27. 石井紘基

    石井(紘)委員 そういう独裁政権でどんどん国民はむしろ疲弊していく、経済の実態が悪化していくというような中で、日本のそうした援助というものがどれだけ役に立っているのか。  それから、そういった社会的弱者と言いますけれども、これは一体どういうルートで、どんなふうに社会的な弱者というものを現実として救っているのかということは、それはきちっとフォローされなければいけないわけで、そういう予算があるからいいという問題ではないのですよ。そういうところは当然おわかりの上だと思いますけれども、きちっとしていないのだから、それは非常に問題ですよ。しかも、こういう政権に対してこうやって援助をふやしているということは非常に問題ですよ。  橋本総理インドネシア訪問というのは、アメリカとは前と後の話し合いはどういうことだったのですか。
  28. 阿南惟茂

    阿南政府委員 橋本総理は、インドネシア情勢につきましては、首脳同士アメリカ政府とも緊密に連絡をとっておられました。橋本総理訪問の直前に、アメリカはモンデール元副大統領を特使というような形でインドネシアに派遣をして、モンデール氏もスハルト大統領と話をされた。そういう状況も十分に踏まえながら、橋本総理インドネシア訪問の準備をされましたし、また御訪問の後は、その結果についてアメリカ側に、クリントン大統領にもお伝えになっておられます。
  29. 石井紘基

    石井(紘)委員 モンデール氏が先に行かれたのですね。それを受けてどういう形で橋本総理が行ったのですか。
  30. 阿南惟茂

    阿南政府委員 モンデール元副大統領インドネシア訪問の評価を云々するということは差し控えなければいけないと思いますが、モンデール氏がスハルト大統領インドネシアの金融・通貨危機についていろいろ話をされてアドバイスもされたようでございますが、その時点でのスハルト大統領姿勢はなかなかかたかったというふうに報道もされておりますし、我々もアメリカ政府側から聞いているわけでございます。  そういう状況も踏まえて、スハルト大統領経済構造改革を抜本的にやる、それに踏み切る以外にインドネシア経済危機を克服する道はないわけでございますので、その決断をしてもらうためにどういう言い方をしたらいいか、そういうことをモンデール・ミッションの経緯、結果を踏まえながら検討し、そしてそういうものを持ってインドネシアに行かれ、スハルト大統領と話をされた、こういう経緯だと承知しております。
  31. 石井紘基

    石井(紘)委員 これはかなり綿密にアメリカ政府と詰めて、橋本総理はその使命を帯びて、あの忙しいさなかにインドネシアを、一日か半日だったのではないですか、訪問してきた。これは、アメリカ側からそんなに強い要請があったというふうに理解していいんですか。
  32. 阿南惟茂

    阿南政府委員 あのときの状況をむしろ事実関係から申し上げます。  先ほどもちょっとお話し申し上げましたが、スハルト大統領は、いろいろな方面からアドバイスを受けたり注文をつけられたりしておられて、若干防御的な姿勢になっておられた。そういうこともございましたので、橋本総理が行かれる前に余り日米で緊密な連絡をとって、モンデール・ミッションも行かれたし、次にまた橋本総理も行かれると、何か日本アメリカ、そしてその他の国がみんなでインドネシアに場合によっては圧力をかける、そういう印象を持たれないようにということで、事実関係からいって先ほど申し上げたような経緯はございましたけれども、そう緊密にアメリカ側と話をし、そういう結果、あのタイミングで橋本総理が行かれた、そういう経緯ではないと承知しております。
  33. 石井紘基

    石井(紘)委員 どうも日本としても、スハルト政権が崩壊すると非常に困る事情があるんじゃないんですか。大変なスハルト政権への肩入れをやってきているわけですから。しかも、現在もさらにそれを上乗せして援助しているわけですから。スハルト政権がやはり健在であってもらわないと困ると。  今後の問題として、インドネシアは、こういう独裁政権に対する市民、国民の支持というものが実際には失われているわけですね。そうすると、将来のインドネシアの民主化といいますか、あるいはそういう民主化ということだけじゃなしに、将来の経済的な発展という意味からいっても、こうした形でのインドネシアとの関係というものは、果たしてこれは有効な効果を上げることができるのかどうかという点は大変に疑問だと思うのですね。いかがですか。
  34. 阿南惟茂

    阿南政府委員 インドネシア国内体制、先ほど先生も言及されました国民協議会の構成等につきましては、それがどういうものであれ、インドネシアの憲法で決められているものでございまして、これは日本政府が云々すべき問題ではないと考えております。  また、インドネシアは、申し上げるまでもなく、アジア・太平洋地域で非常に重要な大国でございます。また、日本にとっては長年の友好国でございまして、その国の政権が安定し、それが国民生活の安定と申しますか、幸せにつながるということを考えてこの国に支援するのは当然のことだというふうに考えているわけでございます。
  35. 石井紘基

    石井(紘)委員 インドネシア支援するというか、私がさっきから言っているのは、スハルト政権を今後とも支援していくのかどうなのかということなんですよ。その方針にいささかも変化はないのか、再検討する必要はないのかということで、もう一回、スハルト政権を支えていくのかどうなのか、それを答弁してください。
  36. 阿南惟茂

    阿南政府委員 スハルト政権を支えていくのかどうかというふうに限定いたしますと少し意味が違うかもしれませんが、先ほど申し上げましたように、インドネシアという日本にとって非常に重要な友好国の政治経済が安定するように、日本としては最大限の支援を続けていく、こういうことでございます。
  37. 石井紘基

    石井(紘)委員 スハルト政権を支えていくのかいかないのかというふうに聞いたんですから、意味が違うかもしれないも何もないんです。私が聞いたことに答えてもらわないと困るんです。
  38. 阿南惟茂

    阿南政府委員 先ほども申し上げましたように、スハルト大統領国民協議会の仕組みによって選ばれているわけでありまして、その手続が民主的かどうかということは、私どもがいろいろ論評すべき問題ではないと思います。  そういう形できちんと大統領に選ばれた、そして政権を担当しているスハルト政府、これが代表しているインドネシア支援していくということは、先ほど来申し上げているとおりでございます。
  39. 石井紘基

    石井(紘)委員 次に、日ロ首脳会談の問題について幾つか伺いたいと思います。  日本側からは国境線の画定を提案した、ロシア側からは日ロ平和友好協力条約を提案してきたということでありますけれども、これは、外務省は非常にエリツィンさんに気を使っておられてなかなか中身を言えないことが多いというわけですが、言えないことは言えないとして、とりあえず言える範囲でお答えをいただけますか。
  40. 飯村豊

    ○飯村政府委員 現在の日ロ間の交渉についての御質問でございますけれども、交渉の内容については、ロシア側との約束もあって明らかにできないことをぜひとも御理解いただけたらと思います。我々としては、この問題をめぐる外交交渉は、静かな、かつ、落ちついた雰囲気の中で進めることが極めて重要であると考えておりまして、御理解をいただきたいと思います。  他方、一言つけ加えさせていただきますれば、私どもとしては、クラスノヤルスクにおける日ロ首脳会談の合意を踏まえまして、東京宣言に基づいて、二〇〇〇年までに平和条約を締結するよう全力を尽くしているところでございます。去る六日に開催されました、これはモスクワで開催されておりますけれども、平和条約締結問題日ロ合同委員会次官級分科会におきましては、川奈での首脳会談での両首脳の合意を踏まえまして、クラスノヤルスク合意の実質的な前進、そのための作業の加速化ということで日ロ間で一層尽力すべきだということで合意したところでございます。
  41. 石井紘基

    石井(紘)委員 そうすると、その会談の内容というのはほとんど秘密だということのようですが、それはそれである意味ではいいんですけれども。  例えば新聞に出ていることで外務省が発表したことも幾つかあるんじゃないかと思うのです。この中には、「東京宣言第二項に基づき、平和条約は四島の帰属問題を解決する内容で、二十一世紀に向けた日露の友好協力に関する原則などを盛り込む」、平和条約についてこういうことを外務省は発表されたと思うのですが、もしそうだとして、これについてコメントができるのであれば、もう少し詳しく説明してくれませんか。
  42. 飯村豊

    ○飯村政府委員 もう少し時系列的に申し上げさせていただきますれば、昨年の十一月のクラスノヤルスクにおける首脳会談におきましては、両首脳は東京宣言に基づいて二〇〇〇年までに平和条約を締結するよう全力を尽くすことで合意をしております。  その後、この四月に川奈で首脳会談が行われておりますけれども、ここでのポイントを三つほど申し上げさせていただきますれば、第一点は、ここの会談におきまして、両首脳は、今申し上げましたクラスノヤルスク合意を実現するために真剣な話し合いを行ったというのが第一点でございます。  第二点は、今先生御指摘がございましたけれども、その話し合いの結果、両首脳は、平和条約が東京宣言第二項に基づいて四島の帰属の問題を解決することを内容とし、二十一世紀に向けての日ロの友好協力に関する原則等を盛り込むものとなるべきことで一致したということでございます。  さらに三点目としては、日ロの首脳は、クラスノヤルスク合意の実質的な前進、そのための作業の加速化を図るとの決意を表明いたしまして、平和条約締結問題日ロ合同委員会次官級分科会を早急に開催させるという合意をいたしました。  それに基づきまして、六日に、モスクワで私ども外務省の丹波外務審議官とロシア外務省のカラシン次官との間でこの分科会が行われたところでございます。
  43. 石井紘基

    石井(紘)委員 いろいろ話し合いの中で、一つ日本側のロシアに対する経済援助というものがある。それは十五億ドルとかなんとか言われているわけですが、そうした経済援助や、あるいは経済交流を活発化させる、そのためには、向こうのそれなりのきちっとした体制がとれていないと……。経済的な能力といいますか基盤といいますか、貿易基盤なりあるいはそうした法律的な基盤なり、そのために日ロの共同投資会社をつくるというようなことが話し合われた。その打ち合わせも今月から始まるということですが、それは今おっしゃられた合同委員会とはまた別なんでしょう。別に行われるわけですね。
  44. 飯村豊

    ○飯村政府委員 お答え申し上げます。  先般の川奈の日ロ首脳会談におきましては、先ほど申し上げました平和条約に関する合意とは別に、今先生が御指摘になりました投資会社を設立する方向両国政府で検討していくということが合意されております。  これは、日本からロシアヘの投資を促進するためにロシアと協力して投資会社をつくるということでございまして、この合意に基づきまして、五月五日、原口外務審議官を団長とする、外務省、大蔵省、通産省の各省から成る代表団がロシアを訪問しまして、ネムツォフ副首相と予備的な意見交換を行っております。したがいまして、先ほど申し上げました平和条約にかかわる次官級の分科会とは別のものでございます。
  45. 石井紘基

    石井(紘)委員 特に、向こう日本に投資をしてほしいというのだったら、投資をするための向こう側の基盤なり保証なりというものがなければそうはいかないわけですから、そういう点で投資会社なり何なりをつくって環境を整えるというのは大変結構なことだと思います。  ただし、輸銀の融資が二年間で十五億ドル、世銀との協調融資で。それから、財投も活用して出す。当面、年内には六億ドルを輸銀資金から実施するということのようですが、その他日本からの経済的な支援というものはたくさんありますよね、いろいろなエネルギー関係だとかあるいは漁業関係だとかその他もろもろ。とにかく、それ、出せ出せと言わんばかりに、何と表現したらいいのでしょうかね、物と金だけまずとりあえず出して、ばあっとえさをまいて、そうすればいい魚が釣れるのじゃないかというような感じに見えてしょうがないわけですね。  しかも、そのやりとりというのは一切秘密だ。首脳だけだ。外務大臣もよく知らない。橋本さんとエリツィンさん二人だけの、橋本さんはロシア語ができないでしょうし、エリツィンさんは日本語ができないだろうから、全く二人だけというわけにはいかないでしょうけれども、そういうひそひそ話でやっている。そうすると、もし橋本さんがこっちで参議院選挙でも終わって総理が交代になっちゃった、あるいはエリツィンさんがかわっちゃった、そういうことになったらこれはどうなるのですか。  やはり国民認識というようなものもあるわけですね。例えばロシア側からいえば、この間ロシア通信のアンケートで、北方領土を日本に返すというのは反対だというのが七六%あるというわけですね、国全体では。サハリンとか領土地域では半々ぐらいかもしれないのだけれども。そういうことだとすると、むしろそういった世論を醸成していくといいますか、領土の帰属というものは歴史的にこうこうこうで日本のものなんだよというようなことを向こうでもちゃんと言ってもらわないと困るわけですよ。ただ、損か得かだけの話をしていたのじゃ進みませんよ、そんなものは。  この間、エリツィンさんが突然全閣僚をばあんと解任しちゃったみたいに、突然北方領土を日本に返しますと言ったって、その他のロシアの国民がみんなだめだと言えばやはりだめになっちゃいますよ。そうでしょう。  そのぐらいの簡単な話を、外務省は、もう少しオーソドックスにといいますか間違いのないように、間違ったら次の後任の人たちがまたやっていくだろうというようなことじゃ、そう思ってやっているわけじゃないでしょうけれども、それはお互い皆さん真剣に、神頼みのようなつもりで、わらにもすがるようなつもりでやっておられるのでしょうけれども、しかし、もう少しお考えになった方がいいのじゃないかなという気がいたしますので、そのことだけを申し上げさせていただきます。  ただ、大変な御努力は多といたしまして、日ロ関係も全体としては大変好ましい状況になってきておりますので、そういう点については高く評価をするということをあわせて申し上げまして何か外務省から感想がありましたら言ってください。ありませんでしたら、いろいろあるのですけれども、次の問題に入ると時間が足りなくなりますので、以上で終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  46. 塩田晋

    塩田委員長 冨沢篤紘君。
  47. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 平和・改革の冨沢篤紘でございます。  自衛隊の対外活動について質問をいたしますので、防衛庁長官、御答弁をよろしくお願いを申し上げます。  今、衆議院の行政改革特別委員会で、中央省庁等改革基本法案の審議が進んでおります。専門家や大学の先生にも来ていただいていろいろ議論が交わされておりますが、大方の御意見は、欠点の多い法案だという批判の声が多いようであります。  その一つに、防衛庁の国防省見送りがある。近代国家で当然の処遇が日本の防衛になされない。二十一世紀になっても、国防省でない防衛庁が「この国のかたち」として残ってしまいます。予算委員会の一般質疑で、私は久間長官にこの点をただしました。長官いわく、私自身は仕事をする上で何ら支障はないと極めてのんきな御答弁をいただきました。  国防、安全確保の志を抱いて、現場で努力し精進を重ねている自衛隊員が多いのであります。これら現場の自衛隊員に国を守る誇りと困難な仕事に取り組むやる気を持たせること、これが防衛庁長官の仕事なのではありませんか。とても防衛庁を代表する答弁とは私には思えないのでありまして、納得できないのであります。改めて御所見を伺いたい。
  48. 久間章生

    久間国務大臣 かつて西村委員から質問がございましたときにも私は申し上げたわけでございますが、防衛庁としては、国防という大事な仕事を預かる意味からも、やはり防衛庁にとどまらず一つの国防省みたいな位置づけをしてもらう方が望ましいし、またみんながそれを望んでおるということは、私どももかねてから主張してきたことであります。  しかしながら、今回、省庁再編のいわゆる行政改革をやる場合に、行政改革会議がそういう意見の取りまとめを行ってまいりまして、結局、有識者のそういう意見を取りまとめて会議を進められたわけでございますけれども、両論併記ということになりまして、総理大臣に判断をゆだねたわけでございます。  そのときに、総理は、現在のままで仕事ができないかどうかという点も踏まえまして、また、今回の行政改革防衛庁の仕事内容がそのまま一つの組織体として残るということ、あるいはまた、今いろいろとガイドラインの、当時はガイドラインもそうでございましたし、現在はガイドラインに基づく実効性確保のための法律、いろいろな諸問題がありますときに、どうするかという最終判断の中で、結局、そのまま防衛庁として置くという判断をされたものですから、私どもとしてはそれに従った、そういう経緯がございます。  したがいまして、あえて言いますならば、これで仕事ができないかと言われますと、仕事は一応できるわけでございますので、現行法で不備があるというわけではございませんので、そういう意味で先はどのような言い方になったのかと思いますけれども、基本的には、やはり国防省としての位置づけをされることによって、自衛隊員も、また防衛庁で仕事をしている連中も、それなりの我が国の大事な仕事を引き受ける一つの省としての位置づけが望ましいというのは、今でも気持ちは変わっておりません。  しかしながら、やはり全体をまとめてこういう問題はやっていかなければならないわけでございますから、それだけをとらえてほかの問題が行き詰まるということもあってはならないわけでございますから、そういうのを総合的に判断して、内閣総理大臣が議長をしておる行政改革会議においてそういう結論を出されたとすれば、政府としては、それに従って粛々と法案が一日も早く通ることを望んでおるというのが私どもの現在の心境でございます。
  49. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 国防という任務は大変重大な任務で、国民への最大の福祉であるというふうに私は認識をしております。久間長官は文民でありますので、現場の軍人はこういう大きな取り組みはできないはずでございますので、その指導者として、ぜひ現場が元気になるような御発言を要望をしておきます。  さて、自衛隊日本防衛のために存在をする、日本の力だけでは防衛力が足りない、そこでアメリカの力をかりて日米で共同防衛体制をとっておりますが、米ソの冷戦時代は、大きなソ連の存在が、私自身、ソビエト連邦というのは大変怖かった。いつ攻めてくるのか、そういう恐怖感も感じておったところでございますが、九年前でしたか、そのソ連邦が崩壊をした。国民には、日本を攻めてくる敵がわかりにくくなっている。  国防は、当然相手を想定をする。そして、自衛隊も、攻めてくる相手、一口に仮想敵国と言っておりますが、仮想敵国を想定して日常訓練をやることが当然のことだろうと思いますが、一体それらの国はどこらを想定をされているのでしょうか。
  50. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 先生御案内のように、冷戦終結後も国際情勢は不透明、不確実な要素が残されておりまして、安定的な安全保障環境が確立されるに至っていない。こういう中で、我が国の防衛を考える点から、我が国としては基盤的防衛力、独立国として必要最小限の防衛力を保持する、こういう考え方で防衛構想を持っているところでございます。  また、仮想敵国というふうなお話でございましたが、我が国といたしましては、従来から、世界各国、各地域との関係相互理解を増進することを基本方針としておりまして、特定の国あるいは地域を仮想敵国というふうに考えることをしていないということは、これまでも御答弁しているところでございます。
  51. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 仮想敵国はない、こういう御答弁でございますが、予想どおりであります。  ただ、戦争というのは、とんでもない遠い国とやるわけではないのです。日本の歴史を見ても、近代に入って、大体、周辺の国とずっと戦争をやってきた。日本は本州を中心とする四つの島で、海に囲まれていますから、つい安全だと思いがちでありますが、近場の国とはみんな未解決の領土問題があるわけでございます。ロシアとの北方領土、韓国との竹島、そして中国との尖閣諸島、それぞれ問題を含んだ未解決の領土問題があるわけでございます。  まず、北のロシアでありますけれども、ソ連の時代は大変恐ろしかったが、崩壊をして、今ロシアになった。橋本・エリツィン会談が、先月、伊東市川奈でありました。焦点の領土問題では、日本の総理が国境線画定を提案、日ロ関係も幾らか前に向かうのかなと期待をしているところでありまして、この御努力は多とするところであります。  明治三十八年に、日露戦争で日本が勝った。このときは樺太を戦利品としてもらった。しかし、間もなくロシア革命が起こって、ロシアがソ連邦になった。そして、太平洋戦争を今度は日本が仕掛けたわけなのですが、敗戦の直前に、ソ連は日ソ中立条約に違反して日本に攻めてきた。今度は日本が負けた。負けると領土をとられる。日本国有の領土の北方四島が占領をされてしまった。五十年以上たったのにまだ返ってこないわけであります。  今日、ロシアは日本国民の一番嫌いな国になっている。  先ほどの石井議員のお話にもあったように、今、ロシア提案の平和友好協力条約に向けて話が進んでいるようでありますが、四島占領にきちんと結論を出すこと、領土問題の結論をきっちり出すことが正常化の前提とならなければいけないと私は信じております。  日本の領土を外国のロシアが占領している。しかし、日本で売られている地図には、北方四島まで日本の領土としてきれいに書いてある。私は、ソ連崩壊後、カムチャツカ半島に行ったのですが、あそこで本屋さんに寄ってみた。明確に北方四島はロシアの領土になっております。  さてそこで、北海道には航空自衛隊、海上自衛隊、それぞれ仕事、活動に取り組んでおりますが、ロシア国境の警戒警備、領海の確保、自衛隊がどんな活動をされているのか、御報告をいただきたい。
  52. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 自衛隊といたしましては、我が国周辺におきまして常続的に必要な監視活動を行うというようなことで、そういう点で、航空機あるいは艦艇による監視、こういうことをやっております。また、それとともに、レーダーサイトにおきまして、我が国領空を侵犯するおそれのある航空機の飛行があるかどうか等々の監視活動を行っている、こういうところでございます。
  53. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 北方四島は、ロシアが実効支配、占領をしております。日本は大体根室半島あたりまでなのですが、航空自衛隊だとスクランブルと言うのですか、海上自衛隊だとパトロールと言うのですか、言葉はよくわかりませんが、その辺の活動はどんなふうにされているのですか。
  54. 久間章生

    久間国務大臣 御承知のとおり、自衛隊ができましたのは二十七年以後でございます、その前の警察予備隊からしましても。そのときには今言われましたような地区は全部実効支配されておるわけでございまして、自衛隊としては、そこの区域は全部外してやっているわけでございます。
  55. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 厚木基地から、私の選挙区にある基地なのですが、P3Cが毎日飛んでいる。夜中も飛んでいる。これはアメリカの対潜哨戒機であります。  ロシアの潜水艦がどのくらい走っているのか。これはソ連崩壊後、大幅に減少したと聞いております。私もウラジオストク、ペトロカムチャツキーに行って、ロシアの実態を私なりに調査をしてきたが、防衛庁は、ロシアの潜水艦がどのくらい走っているか、活動の拠点が今どこにあるか、どんなふうに掌握をされていますか。
  56. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 極東におきますロシアの潜水艦の勢力でございますけれども、今先生おっしゃいましたように、冷戦後、近年、その数を減少しているところでございます。量的に考えますと、大体五十隻程度の潜水艦を極東地域に置いて運用している、こんなふうに考えます。  その運用の拠点といいましょうか、そこはウラジオストクなり、あるいはペトロパウロフスクなり、そういうところが拠点になっているだろう、こんなふうに考えております。
  57. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 朝鮮半島の方に移ります。  これも米ソ冷戦の遺物で、南北に分断をされている。隣国として心から悲しい状況であると思います。  朝鮮半島の南の韓国ですが、訪問してみると、結構反日感情が強い。日本との歴史で、豊臣秀吉が出兵をしたり、近代になって韓国を統合したり、こういう厳粛な歴史がかの地の反日感情のベースになっておることと推測をしますが、ソウル郊外に独立館という建物、国営の建物があるのですが、久間長官はごらんになったことはございますか。
  58. 久間章生

    久間国務大臣 行ったことはございません。
  59. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 まさに韓国の反日感情を代表する博物館と私は認識をしております。建物が六館ある。韓国も二千年の歴史のある国ですが、そのうちの、日本とのかかわりの深かった五、六十年間、六館のうち二館を日帝時代として資料展示がされておりまして、その中身は、日本の憲兵が韓国国民を殺りくしている姿あるいは日本帝国主義者に抵抗する韓国人の勇ましい姿が幾つも並んでいて、視察していて胸が痛んだのを覚えているのであります。結構な反日感情が国民のベースにある。  この韓国と竹島問題があるわけなんですが、竹島は韓国に実効支配されている。波止場の建設も進められているようですが、私は近づいたことがないので、防衛庁はこの実効支配の実態をどんなふうに掌握をされていますか。
  60. 久間章生

    久間国務大臣 先ほどの私の答弁をまず訂正させていただきます。  二十七年と言ったのは、保安隊になったのが二十七年でございまして、自衛隊は二十九年でございます。  なお、今の竹島につきましても、戦後、我が国が敗戦になりまして、自衛隊ができましたときからも、その時点でもう既に実効支配されておったという実態を承知しております。
  61. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 いや、お尋ねしたのは、波止場とか実効支配の現状を強める行動に韓国が出ている、そんなふうに伝えられておりますが、この動きが進んでまいった場合に、自衛隊はどんな対処をされるのか、この点をお尋ねします。
  62. 久間章生

    久間国務大臣 自衛隊は、御承知のとおり、国際紛争を解決する手段として戦争を禁じている憲法九条の趣旨からも、実効支配が進んでおるからといって、それに対して実力でもってそれを奪回するというような方途をとるつもりはございませんし、またそれはできないと承知しております。
  63. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 北朝鮮の問題に移りますが、なかなか経済がうまくいかずに、国民が貧しく、食事にも事を欠くと伝えられています。  しかし、北朝鮮というのは、ミサイル実験など軍備には結構金を使っている。これも報道の範囲なんですが、ミサイルを北朝鮮が打つと日本にも届く、東京にも届くのだなんということが伝えられているのですが、そんな軍備を北朝鮮は持っているのでしょうか。
  64. 山崎隆一郎

    山崎(隆)政府委員 お答え申し上げます。  ミサイル開発について幾つか事実関係を御説明したいと存じます。  まず最初に、北朝鮮は、八〇年代半ば以降、スカッドB、それからその射程を少し延長したスカッドCというものを生産、配置してきたと見られておりまして、その性能諸元は、スカッドBが射程約三百キロ、弾頭重量約千キログラム、スカッドCが射程約五百から六百キロ、弾頭重量は約七百キログラムとされております。  また、北朝鮮はさらにより長い射程のノドン一号というものを開発してきていると見られております。ただし、その性能諸元は詳細は必ずしも明らかではございませんが、各種情報を総合的に勘案いたしますと、単弾頭、しかも弾頭重量が約千キログラム程度、射程が約千キロメートルというふうに推定されまして、そのノドン一号というものが実戦配置された場合、その配置位置によっては我が国の過半がその射程内に入る可能性があるということでございます。  いずれにしましても、ノドン一号の開発状況の詳細については、防衛庁として現在のところ承知していませんで、その開発完了時期や実戦配置時期につきまして明確なことを申し上げられる段階にはございません。いずれにしましても、今後、そのノドン一号を初め北朝鮮の弾道ミサイル開発等の動向把握には一層努力してまいる所存でございます。
  65. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 千キロメートルも飛ばすノドン一号というミサイルを開発したのですか、開発中なんですか。北朝鮮というのは政情が極めて不安定で、今の政権がいつ崩壊するかわからぬ、こんなふうにも聞いておるのですが、千キロのミサイルを仮に大阪にぶち込まれたら、自衛隊はどう予防なり防衛なりするお考えなのか。
  66. 久間章生

    久間国務大臣 そのようなことがないように、私どもとしては、国としては、政府としては、対処しなければならないわけでございます。  具体的にミサイルで攻撃された場合どうかといいますと、普通の巡航ミサイルについてはいろいろと対処もできるかもしれませんけれども、弾道ミサイルについては、残念ながら、現在の世界各国を見ましても、それを迎撃するというすべは持っていないようでございます。  これは、各国ともそのために今抑止力という形で対抗措置を講じてやっているわけでございますけれども我が国みたいに、相手の国にそういうミサイル等を撃ち込んだりするということはやらないという立場の国からしまして、これをどうやって防ぐか。これは現在の技術でどこまで可能か、そういうようなことについては非常に関心を持って、この知見を有する米国等から資料を今集めて研究をしているところでございます。  いずれにしましても、現段階で弾道ミサイルについて迎撃するシステムというものはでき上がっていないのではないかと思っております。
  67. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 日本のすぐ近くにある国に対する防衛でも、大きな問題点があるということがわかりました。議論を前に進めます。  中国ですが、訪中御苦労さまでした。防衛当局間の交流の実現という具体的な成果に結びつかれたようで、ぜひこの仕事を前に進めていただくようにお願いをいたします。  残念ながら、日本は近代になって中国とも大きな戦争をしたし、し続けてきた。日清戦争は明治ですか、それから旧満州建設とか太平洋戦争。大きな過ちを日本が犯した。こんなことは二度としてはいけないわけなんです。  私は中国が大好きで、私の生まれた町で長く日中友好協会の会長を務めております。何度も訪中をし、国の指導者とも何回もお目にかかっておりますが、気になることは、先ほどの石井議員も指摘をされておりましたが、中国の国防費が年々ふえていることで、ここ十年間、毎年一二、三%平均の伸びを示していることであります。  九八年度の予算も約九百十億元、日本円に直しますと一兆三千六百億円ぐらいになっている。九百十億元は前年対比一三%の伸びを示しておりまして、全体の予算の伸びが八・四%ですから、軍事費だけが突出して伸び率が高い。あわせて、昨年の九月の久しぶりの第十五回共産党大会で、中央軍で五十万人の削減が決定をいたしました。五十万人の軍の削減というのは、自衛隊の二倍半ぐらいですから、大変な削減になるわけなんですが、しかし、軍事費は一三%ふえている。この辺を防衛庁はどういうふうに分析をされていますか。
  68. 山崎隆一郎

    山崎(隆)政府委員 お答え申し上げます。  今先生が最後におっしゃっていた今後三年間で五十万人削減というのは、確かに、御指摘のとおり、昨年九月の中国共産党全国代表大会において表明された次第でございます。ただ、これもまさに三年間でということですので、推移については今後注目したいと存じます。  また、国防予算につきましても御指摘があったので、この機会にちょっと御答弁申し上げますと、確かに、九八年度まで十年間連続で二けた以上の伸びで中国国防予算は増額してまいりました。しかもインフレ率、昨年はたまたまGDPデフレーターというのが〇・二%しか上昇していませんが、ほかの年は相当高いインフレ率がありまして、その要素が一つございますのと、国防予算の国家予算に占める割合、これはずっと大体九%前後ということで大幅な変化がない、この二つも考慮する必要があるかなと思います。  他方、逆のといいますか別の要素として考慮しなければいけませんのは、中国は従来から国防費の内訳の詳細については公表しておりません。したがいまして、中国が実際に軍事目的に支出している額は公表されている国防費よりも大きいのではないか、これについてはいろいろな推測はございますが。したがいまして、公表された国防費の総額のみをもって、今後の中国の軍事的動向についてコメントといいますか明確な判断をするということは必ずしも適当ではないかな、そう考えております。
  69. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 中国に対しても領土問題があるわけでございますが、太平洋戦争に負けて台湾はお返しをした。しかし、尖閣諸島問題というのがあります。この委員の西村さんは上陸をされたようでありますけれども、これは間違いなく日本が実効支配をしている。ここらの監視、パトロールは自衛隊はどんなふうにされているのですか。
  70. 久間章生

    久間国務大臣 ここは、航空自衛隊にしましてもスクランブルをかけたり、その他自衛隊の方でやっております。
  71. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 中国は釣魚島というのですか、領有権を主張をしている、これは戦争が終わった後でございますが。  一説によると、これも聞いた話なのですが、アメリカから沖縄を返してもらったときには、尖閣諸島は明確に日本の領土であるということで沖縄返還協定の中に入っていたと聞いておりますが、間違いありませんか。
  72. 久間章生

    久間国務大臣 返還後も米軍の施設として提供しておるということは、やはりそれに入っているからこそ、返還後も米軍施設として尖閣諸島の提供ができているわけでございます。そういうことを考えますと、論理的には、返還してきたときに一たん日本の方に返還をした。だから、それから提供施設として提供しているということからいいますと、その中に入っておったのだというふうに思います。  これはまた、外務省の方に後ほど私の方からも問い合わせてみたいと思います。
  73. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 間違いなく沖縄返還協定の中には尖閣諸島が含まれている、こういうふうに私は勉強いたしました。  ところが、亡くなられた鄧小平さんは、この領有権の問題について、次の賢い世代で、次の世代で解決をしよう、こんなのんきな発言をされておるのですけれども、これは次の世代になっても日本の領土であることには変わりはない。  そういう意味で、日本主権侵犯になるわけでありますので、隔月で日米合同委員会というのが開かれておるはずなのですが、ここのところでぜひ沖縄返還協定を引っ張り出していただいて、アメリカにも日本の領土であるとはっきり言わせるような工夫はいかがなものですか。
  74. 久間章生

    久間国務大臣 アメリカがそれは日本の領土でないということを言っているのならば、それは問題でございますけれどもアメリカ自身はそんなことは言っていないと思います。言っているのは、今中国がそういうことを言っているというふうな話でございまして、これは日中の問題でございまして、日米間でそれについて議論があるとは私どもは聞いておりません。
  75. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 私が申し上げておりますのは、アメリカから沖縄が返ってきたときに、その中に明確に、尖閣諸島が日本の領土であるということが明記をされている。ならば、この点の確認を日米合同委員会でなすったらいかがですか、中国関係ないですよ、日米間でお話をなすったらどうですか、この提案を申し上げているのです。
  76. 久間章生

    久間国務大臣 日米間では、先ほど委員が御指摘になられたように、これは入っているということになりますれば、それをわざわざ合同委員会にかけるまでもないことなのではないでしょうか。
  77. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 わかりました。  もう一つ台湾海峡の問題が今回の新ガイドラインに関連して出てくるのですが、これは今日まで、周辺事態に相当するのかどうか、周辺事態という概念は地理的概念ではない、こういう御説明で、大変わかりにくい。私がわからないのですから、恐らく国民もわからないと思います。  確かに、はっきりさせないということは戦争の抑止力にはなるという側面もある。しかし、一方で周辺の国の脅威にもなっている、これもまた事実であります。台湾海峡周辺事態範囲にはならないということを日本は明確に示さなければならないと私は考えます。二十六年前、周恩来総理と田中首相との日中共同声明の原則にも、これは明確に中国内政問題というふうに書いてありますので、周辺事態台湾は入らない、この点を明確にする必要があると考えますが、いかがですか。
  78. 久間章生

    久間国務大臣 何度も申しておりますように、私どもは、確かに今度のガイドラインというのは、安保条約に基づく安保体制、それに基づく信頼関係をより向上させるために取り組んでおるわけでございますけれども、取り組み方として、今度のガイドラインの場合は、我が国がいわゆる攻撃された場合、それと同時に、我が国以外の地域、要するに我が国の周辺で何かが起きて、それが我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼす場合にどうするか、そういう観点から取り組んでおるわけでございます。  だから、どこの国とかどこの地域とか、そういうところは入るとか入らないとかいうことではなくて、我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼすような事態が起きたときにはどういう形でそれぞれの国が活動するのか、また協力しながらやっていくのか。あくまでも、我が国はそれに対して武力行使をするとかいうような観点からやっているわけではございませんので、そういうような事態が発生したときにどうするかでございますから、特定地域が入るとか入らないとかいう議論そのものがなじまないのではないか、私はそういうふうに思っているわけでございます。  今度のガイドラインに基づく実効性確保のための法律にしても、あくまでその目的に掲げておりますのは、我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼすような事態が起きたときに、それをどうやっていろいろな措置を講じるか、あるいはその手続をどうするか、そういう観点から取り組もうとしておるわけでございます。
  79. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 時間が参りましたので、最後の質問にいたします。  新ガイドラインの船舶検査、法三条の三ですか、船舶検査といわゆる臨検とはどう違うのか。後方地域捜索救助活動、船舶検査、武器弾薬、兵器の輸送、装備の部品、燃料等の提供は米国の武力行使と一体化したものだ、こういうふうに批判をされておる点に防衛庁はどうお答えになるのか。
  80. 久間章生

    久間国務大臣 私どもは、今度の法律をつくりますときにも、とにかく一番の関心事は、武力行使と一体化しないように、どうやれば法律上も担保できるか、説明上もそれがきちっとできるか、実効上もそれがきちっとできるか、その辺に意を注いできたつもりでございます。  したがいまして、私どもは、そういう観点から、いろいろな点から見ましても武力行使にはならない、そういうふうな形で今度の法律をつくったというふうに御理解していただいて結構だと思います。
  81. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 ありがとうございました。
  82. 塩田晋

    塩田委員長 西村眞悟君。
  83. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 この委員会の冒頭でたびたび、長官、本を読まれましたかということがありまして、中国訪問報告を前提としたこの質疑で私も二冊本を持ってきておりまして、長官にぜひお読みいただきたいな、このように思っております。  一冊目は、「日本人と中国人、どっちが「馬鹿」か」という本です。孔健という孔子の御子孫が書かれた本だと思います。サブタイトルは「中国人は腹の中で日本人を恐れている!!知ったかぶりの「相互理解」が最も危険だ!!」ということですね。もう一つは、「台湾独立運動私記三十五年の夢」、宗像隆幸さんという方が書かれた。サブタイトルは「「台湾人の台湾」のために闘った日本人の記録」ということがあります。  五月五日、長官向こう国防大学講演をされた。それは、私事ではございますがと言われて、日本地域としては自分の郷里の長崎が貴国とは最も縁が深いのだ、そういうふうに言われた。しかし、台湾という地域、国の歴史を考えますならば、十七世紀後半まで清と戦った倭寇の頭目といおうか明の遺臣といおうか、鄭成功という人の母親はまさに長官の御出身の長崎平戸の方なんですね。したがって、台湾とも長官の郷里は近いということを御紹介して、二つの本、お忙しいと思いますけれども、読まれたら非常におもしろい本でございます。  さて、「台湾独立運動私記」はともかく、なぜ「日本人と中国人、どっちが「馬鹿」か」という本を出させていただいたかといいますと、二月四日の遅浩田国防相の我が防衛研究所での講演と、今申しました五月五日の中国国防大学における大臣の講演を読み比べましたときに、ここにあらわれているそっくりの表現が当てはまるのじゃないか。  言いますと、「中国人は、日本人を、「○○先生」と尊称をつけて呼ぶ。呼ばれた日本人は素直に喜んでいる。」「ところが、中国人のほうは、日本人を先生であるなどとは思っていない。ここは、日本人をおだてて、しっかり、技術や会社経営のノウハウを学んでおこう、と考えている。」だけである。それから、結論じみたことでは、「日本人は、「中国人はズルイ」「ウソつき」と評する。逆に、中国人は「日本人はお人好し」「馬鹿正直」「利己的」と思っている。」こういうふうに相互理解の前提としての感情表現とか自分の思いの表現のパターンが違うということを書いておるわけですね。  遅浩田さんの講演集を読みますと、例えばミサイルを三発撃ち込まれている台湾、また侵攻されたベトナム、そして既に併合されたチベットの人から見れば、ようこんなあほなことをぬけぬけと言うわということなんですけれども、彼はぬけぬけと言っているわけですね。片や、防衛庁長官中国国防大学における講演は、非常にまじめで、本当に我が国内においてだけ通用する用語をもって淡々と御説明されている。  やはり「日本人と中国人、どっちが「馬鹿」か」という、この両者、日本人と中国人を表現した言葉が当たるなと思いまして、きょう紹介させていただきました。決して失礼に当たるというような意味ではないのです。読んでいただきたいなと思っています。  さて、質問に移りますけれども、先ほども冨沢委員の御質問の中でありましたガイドラインに関して、中国は異常に反発して、もし周辺事態台湾海峡を含むならこれは主権侵害だとまで言っておるわけですね。私は先ほどの問答とは考えを異にいたしまして、政府は、周辺事態は地理的概念ではないということを貫かれるべきだ。  ただし、惜しいかな、与党内に含まれないと言ったり含まれると言ったりしたことがあった。これは、私はある意味では自民党が結党以来の大切な財産をどぶに捨てたなと思った。なぜどぶに捨てたかといえば、同盟国アメリカからの信頼をどぶに捨てた、このように思いました。そしてまた、これは非常に国益を毀損する事態だな、政府は当初からの答弁をこの問題では貫かれるべきだ、このように思っております。  それは、主権侵犯というきつい用語をもって遅浩田さんは長官に言ったわけですが、ガイドラインは何を基盤としてでき上がっているかといえば、日米安保条約ですね。日米安保条約の六条には極東という文字がありまして、これについては歴代政府は地理的概念だと言って説明されておるわけですね。  したがって、この際確認をいたしますが、ガイドライン周辺事態はいいのです、周辺事態は今の地理的概念でないということで貫かれるべきでありますけれども、今確認したいのは、日米安保条約第六条に言う極東は台湾海峡を含むのか否か、これは含むという政府の見解が今でも維持されている、このように伺っていてよろしいですね。
  84. 久間章生

    久間国務大臣 外務省が見えていませんので私の方からお答えいたしますけれども、昭和三十五年の解釈が現在まで生きております。  ただ、やはり大平外務大臣が国会でも答弁しておられますが、四十七年ですか、日中共同声明を出した後、この台湾海峡の問題に触れられて、安保条約の運用について配慮をするというような表現、正確には覚えておりませんけれども、大平外務大臣としての発言もございまして、その辺も同じくその後そのまま踏襲されておるのじゃないかというふうに思っております。  したがいまして、今回も向こうの方から出ました話としては、いわゆるガイドラインそのものでの周辺事態という言葉よりも、安保条約対象として要するに台湾海峡を含む、そういうことについての言及は非常に強く意識としてはあるのじゃないかなというふうな感じを受けました。  というのは、四十七年に日中共同声明が出されて、その後また五十三年に日中平和友好条約が締結されて、それから今日までずっと推移してきています。そのときに日米間は安保条約の改定をやっているわけでもございませんし、そのとき有効な条約がそのまま続いておるわけでございます。形式的に言えばそういうことでございます。  ただ、米中の関係も、その後、国交回復といいますかいわゆる友好条約等が成立しているわけでございまして、それを受けたときに、この安保条約の運用がどうなるのかなという気持ちがないわけではございません。そのときに大平外務大臣のそういった発言等がどういうふうな意味を持つのか、これはむしろどちらかというと外務当局の方にただしていただく問題ではないかと思いますけれども、私どもとしては、そういうような背景があることについては承知しております。
  85. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 安保条約についての中国の見解の歴史をたどりますと、かの国が建国された直後から二十年ほどは、安保反対、アメリカ軍基地反対、日本人民解放・救出ということでした。北京に行って、アメリカ帝国主義は日中両国国民共通の敵という声明が社会党委員長から発せられて、それが両国でもてはやされるという状態でしたね。これは、中国は何を戦略目標としておったかといえば、日本革命です。日本アメリカから引き離して、日本にみずからと同じような共産主義政権を成立させることでした。  しかし、一九七二年に田中角栄首相に周恩来首相が言われたのは、日米同盟は大事ですから堅持してくださいということでした。これは、日米安保台湾海峡を含む、極東は台湾海峡を含むんだという前提をそのまま容認しながら、日米同盟は必要なんだと明言された。その戦略的目的は対ソ連戦略でしたね。国境紛争も含めた中ソ対立のときに、日米安保中国の後ろ盾になるという発想でした。  ただし、一九八七年、ソビエトの力が衰えて崩壊する前後から、日本軍国主義非難を始めた。これは国防費がGNP一%を超えた時点で始めまして、九二年には領海法を制定して、先ほど話題になっておりました、南シナ海を初め東シナ海の尖閣諸島までも中国の領土と規定した国内法を制定した。鄧小平氏が尖閣問題は棚に上げようと言っておりましたが、中国はとっくに棚からここでおろした。  それで、今、遅浩田さんの防衛研究所での講演を読みますと、「冷戦時代の軍事同盟を基礎に、軍備の増加を手段とした安全体制が平和の構築にならないことはすでに証明されました。」今、安保無用論を言っておるのですね。これは戦略目標は何かといえば、安全保障条約が、周恩来氏も認めておりますように、台湾海峡を含むからです。そして、香港が返還になりマカオも返還になりつつある中国にとって、中国の国家の統合というものを図って対内的に政権の浮揚を図る残された道は、台湾併合の悲願です。このために今言い始めた。ころころ変わってきました。  ところで、先ほど本も紹介されましたし、台湾国民は二千二百万に達すると思われます、経済も非常に発展してきておる、長官の長崎からも近いし、我が国国境線から百キロも離れていない地域にあるあの一つの単位、これが中国によって武力併合されることを長官は許されるのか否か、これをお聞きしたい。
  86. 久間章生

    久間国務大臣 今回も、私は向こうに行きましたときに言いました。台湾中国との関係について、とにかく台湾海峡当事者の問題であるというのは私どもも従来から認識してきているけれども、しかし、同時に、私どもとしては、それは平和的に解決をしてもらいたいということを望んでおるということを重ねて主張したところであります。
  87. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 それで結構だと思います。  台湾の法的地位については、我が国はサンフランシスコ条約で主権、統治権を放棄しておりますから、台湾の法的地位は今未確定でございまして、これを中国との話し合いによって台湾の方が決めるのか、それとも台湾国民自身の意思によって台湾の運命を決するのか、これは我が国の容喙するところではございません。  また、今お答えにならなかったのですけれども、香港六百万市民はみずからの運命をみずからで決するのではなくて、北京とロンドンの話し合いによって決せられた。しかし、中国が香港と台湾を同一に置こうとも、台湾国民はみずからその運命に陥ることを拒否して、一昨年三月、大統領選挙をみずから行って、正統性のある大統領、李登輝総統を選んでおるわけですから、この民主的な単位を我々は武力で併合されることを許してはならないだろうと思います。一番近い国ですからね。お答えは結構でございますが、私はそのように思う。我が国の運命にもかかわることです。  それで、先ほども触れました国防大学における大臣の講演にはシーレーンのことが全く触れられていない。遅浩田さんは、海洋覇権を許さない、自分のところはすごい平和的勢力なんだと。これはプロパガンダの講演なんですけれどもね。平和勢力なんだ、しかし海洋覇権は許さない、その平和集団に敵対するものは許さないと言っておるわけですね。海洋を注目しているわけです。ソビエトが崩壊してから、北の余力を海洋に向けてきているわけですね。  しかし、我が国の五十年前の敗戦の原因も、海洋のシーレーンを閉められたことによってあるわけですね。やはり我々は、国家存立の基盤は海洋にありということを忘れてはならない、このように思います。  そして、ここでお聞きするのは、長官中国訪問されて向こうの軍事施設訪問されましたけれども中国の海洋覇権は戦略はどうなっておるのかというふうなことを、実際に見てこられたからちょっと御説明していただきたい。  同じように、ガイドライン我が国アメリカとの取り決めで、我が国内政問題、中国関係ないということで主権侵害というふうに強く言うならば、長官中国向こう関係者と会われたときに、ちょうど長官が行かれているときに、中国の海洋調査船は我が国尖閣諸島大正島の領海を侵犯して、排他的経済水域内で調査を続行していたわけですね。そして、それによって何の応答をしておるかといえば、これは昨年の応答ですけれども、ここは中国の海である、本船に何ら違法はないという応答をしておるわけですね。このことに何か、現実の主権侵害であるというふうなことを言われましたか。
  88. 久間章生

    久間国務大臣 私は一日の日に行きまして、一日の日の午後でございましたか、そういうような日本からの報告は受けました。しかしながら、その問題についてはつまびらかでございませんでしたので、向こうにおる期間中、また、こちらの役所の方も、ほかの省庁も休みだと思いますので、細かくは帰ってから聞こうと思いましてその報告は受けませんでした。  したがって、詳細についてわからなかったので、向こうにおる期間中についてはその問題については触れておりません。
  89. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 海洋戦略のことについて触れられませんでしたけれども、南沙、西沙というのは瞬く間に制圧して、中国の癖は自分が武力で制圧してから平和的解決を呼びかけるということです。  ガイドラインの基礎にある認識はどういう認識であるか、長官向こうの演説で少しだけ触れられていますけれども、この地域には依然として不安定と不確実性が存在する。それは具体的にどういうことかといえば、朝鮮半島における緊張は続いている、核兵器を含む軍事力は依然大量に集中している、未解決の領土問題、潜在的な地域紛争、大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散は、地域の不安定化をもたらす要因である、こういうふうな東アジア地域の認定のもとにガイドラインができておるわけですね。  それで、この不安定要因をもたらしている最大の要因が中国であるという御認識を持たれておると思うのですが、どういう御認識かといえば、この十数年来の中国軍事力増強、核実験と大量破壊兵器の第三世界への移転、南シナ海での軍事行動、台湾への軍事威嚇。これら日米ガイドラインの前提となる地域の歴史的な状況認識、この不安定性をもたらしている最大の要因は、私は中国だと思いますが、長官の御認識はいかがですか。
  90. 久間章生

    久間国務大臣 必ずしも特定の国を意識して言っているわけではございませんけれども、やはり私ども日本を含むアジア地域はまだまだ平和的環境が構築されたと言い切るにはほど遠い問題が残っておる、そういう認識をしておるところであります。
  91. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 もう一つの最大の不安定要因はどの国だと思われますか。我が日本でございます。我が日本は、明確にみずからの行動を対外的に説明し得ていない。国内的にも説明し得ていない。  浜田議員も赤松議員も触れられました「宣戦布告」という本の主題がそうなのです。つまり、我が国は、いざ緊急事態になれば超法規的に行動せざるを得ない。そして、超法規的に行動せずに手をこまねいていることはできないのです、我が国のような民主主義国家では。  阪神大震災でも、あれは超法規的行動なのです。知事の要請があったと言っておられますけれども、知事なんか午前十時にどのところにおるかわかりません。知事の要請があったことにしたのは、姫路の駐屯地から兵庫県庁に電話がたまたまつながった、知事はどこにおるかわからぬけれども、県庁職員が知事の要請があったことにしていただいてもいいですよと言った、それが始まりだった。だから、超法規的行動なんです。しかし、そうせざるを得なかった。  それで、例えば我が国が領土を確実に守るという配備と意思と、そしてそれを中国が明確にわかった時点で紛争の種は一つ摘まれると私は思っております。  それから、現実に、中国の今の軍事増強は先ほども御答弁されておりましたし、また核実験を繰り返していたことも確かでございますし、北朝鮮どころではないミサイルを持っておることも確かでございますし、武器を輸出していることも確かでございます。長官相互の情報交換として向こうに行かれたわけでございます。  さて、この中国の軍備の増強を見られて、我が国のODA四原則から見て、我が国中国にODAを出すべきか否か。ODA四原則があるというのならば、その原則から見て、ODAは中国にふさわしいのかふさわしくないのか。これは、見てこられてどう思われましたか。
  92. 久間章生

    久間国務大臣 残念ながら、今回四日間でございますけれども、つまびらかに中国がどういうような施設をつくり、あるいはまた装備をし、武器をつくり、それをまた対外的に輸出しているか、その辺についていろいろと細かいことを見たわけではございません。  これから先、お互いの防衛交流を通じながら、いろいろな意味での透明性を図っていきたいということは、それは伝えております。お互いに信頼を醸成していくためには、やはりオープンにするべきものはオープンにしていかなければならないわけでございますので、そういう意味では、これから先の交流を通じながら、軍事のことでございますからなかなかオープンにできないという面もあるかもしれませんけれども、少なくともそういう対外政策等にかかわるような問題についてはオープンにしていかなければならないのではないか、そういうふうに思っております。
  93. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 先ほどもちょっと話題に上ったので簡単に触れるだけですけれども国民の安全を守るのは防衛庁の責務ですね。しかし、北朝鮮に拉致された日本人がおる。これは国防上の、国の安全保障上の問題でございますな。それで、我が国北朝鮮には国交はない。しかし、中国北朝鮮にはある。したがって、関係国へ行かれたら、我が国国防上の問題で、我が国国民が拉致されているということは間断なく伝えるのが閣僚の責務であろう、このように私は思うのです。  今後、日中との交流の中でそれを伝えていただきたい、このように思います。
  94. 久間章生

    久間国務大臣 その問題については会談のときには申しませんでした。朝鮮の問題は会談で全然出ませんでしたので触れる機会はございませんでしたが、国防大学での質問の中で北朝鮮半島についての質問がございました。  それに答えますときに、今言いましたように、我が国としてもKEDOに協力をしているという話をしましたり、あるいはまたいろいろ食糧の援助等の話もある、しかしながら、我が国の場合は、我が国の女性が拉致されたという疑いが非常に強いという問題が残っているので、ほかの国と比べて対応の仕方が若干違ってくるということで、そういう問題がありますというのを一つつけ加えたことも事実でございます。
  95. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 時間を残して質問をやめたいと思いますが、最後に二点だけ。  中国というのは、遅浩田さんのあの講演を見てもそうですけれども、やはり言いたいことを言ってくるわけですね。そして、完全に自己正当化の垣根はちゃんと構築する。たとえ南沙、西沙に中国が武力で行っても、それに反対して奪い返そうとする勢力は中国から見れば平和を破壊する勢力だという言いわけの前提は各所で確実につくっていっているわけですね。先ほど、中国人と日本人の感情表現の違い、生き方の違いということを紹介しましたけれども中国人はこうだと思うのです。  中国人は、大歓迎をして、相手の気持ちが本当に感謝するといったときには本当のことを言えるんだ、言いたいことをずけずけ言えるんだ。だから、夫婦げんかでもそうです。中国人の夫婦げんかというのは、表通りに女房が行って、自分の亭主がいかに悪いかを隣近所に言い回す。そうしたら、亭主が閉口して手をつないで家に入る、これが中国人の夫婦げんかです。葬式もそうですけれどもね。  だから、我が国は、大歓迎されたら、ここまで大歓迎されておるのだから、これを言ったら気を悪くするからだめだといって控える。夫婦げんかにおいても、信頼性を醸成するための交渉においても、そういうふうな感情がありますから、どうか中国においては言いたいことを言っていただきたい、このように思う次第でございます。  それから、今議題になっておるPKO法は、この国会で通さねばなりません。通さねばなりませんけれども、次の改正を見れば、現実にした後の問題点を整理して、また、法をよりよきものに持っていくという前提から見れば、六年前にできたときのあの議論を土台にしてやるわけにはいかぬと思います。したがって、十分議論を積み重ねていきたいと思いますので、また、委員長にもこの点をお願いして、時間が余りましたけれども、私、質問を終えます。
  96. 塩田晋

    塩田委員長 中路雅弘君。
  97. 中路雅弘

    ○中路委員 私は、きょうは新ガイドラインの関連の法であります。辺事態措置法に関連して御質問したいと思います。  この法律案の中で、第九条の問題ですが、第九条の一項に「関係行政機関の長は、法令及び基本計画に従い、地方公共団体の長に対し、その有する権限の行使について必要な協力を求めることができる。」とあります。関係行政機関の長は協力を求めることができるとありますが、これは第四条で、国以外の者の協力の種類及び内容並びにその協力に関する重要事項を含む基本計画が閣議決定された場合、関係行政機関の長は協力を求めなければならないということで、行政機関の長は協力を求める職務上の義務をこの問題で負うことになりますか。
  98. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 総理は基本計画に従いまして行政各部を指導するわけでございまして、関係行政機関はこの基本計画に従って総理の指導を受けて必要な措置を講ずる、こういうことが必要になってくると思います。
  99. 中路雅弘

    ○中路委員 自治体等に協力を求める協力要請ということは、どういうことを意味するのか。この協力要請によって自治体は法的な義務を負うことになるのですか。
  100. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 九条の第一項「関係行政機関の長は、法令及び基本計画に従い、地方公共団体の長に対し、その有する権限の行使について必要な協力を求めることができる。」という規定でございますけれども、この規定は、周辺事態に対します対応の重要性にかんがみまして、地方公共団体に対する一般的な協力義務について定めるものでございます。あくまでも協力を求めるということでございまして、地方公共団体に対して強制をするということではございません。
  101. 中路雅弘

    ○中路委員 仮に、地方公共団体の長がその協力要請にこたえられない場合、法的に違法状態になるということですか。
  102. 久間章生

    久間国務大臣 それをもって直ちに違法になるとは考えられません。
  103. 中路雅弘

    ○中路委員 例えば正当な理由、合理的な理由があれば、協力要請に対して法的――一般的な義務と言われましたけれども、これを果たさなくてもいい、これはいわゆる一般的な法的義務を免れるというのが立法趣旨と考えていいですか。
  104. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 直ちに違法になるものではないというのは、今防衛庁長官から御答弁したところでございます。  ここで言います「協力を求める」ということでございますけれども、これは、地方公共団体の長に対しまして、個別の法令に基づいて、地方公共団体の長が有する権限を適切に行使することを求めるということでございます。したがいまして、これを拒む正当な理由があるか否か、それについての法的効果はどうかということは、それぞれの当該個別の法令に照らして判断されることになるということになろうかと思います。
  105. 中路雅弘

    ○中路委員 ただいまの正当な理由か否か、合理的な理由か否かというのは、だれが判断することになりますか。
  106. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 いずれにいたしましても、今申し上げましたように、地方公共団体の対応についての評価というのは、当該個別の法令に従って判断されるということになろうかと思います。
  107. 中路雅弘

    ○中路委員 ちょっと一、二、具体的な例でお話ししますけれども、先日、この問題で各地方自治体の関係者がいろいろ談話を出していますけれども、例えば佐世保の市長はこういうことを言っています。佐世保の自治体病院は六百床あるのですが、現況は病床の利用率が九八%だ、要請されても、米軍の傷病兵のために市立病院の手術を先送りすることは人権の上からも認められないということをコメントしていますが、こうしたことは当然正当な理由あるいは合理的な理由ということになりますか。
  108. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 具体的には、その状況、それから地方公共団体におきます医療に関します関係法令に従って判断されることになろうかと思いますけれども、今お話しのようなケースであれば、それは正当な理由がある、こんなふうに判断されるのではないか、かように思います。
  109. 中路雅弘

    ○中路委員 もう一つ例を挙げますけれども、憲法の九十四条で、地方自治体は港湾等の管理権限を持っていまして、それぞれ条例をつくっているわけですね。港湾の入港についての許可等の条例を持っています。  例えば神戸市が持っています港湾施設条例、これはよく言われますけれども、非核の証明書の提出の問題を含めた条例でありますが、こうした地域の都市で地方自治法に基づいて決めている条例の問題はどういう関係になりますか。
  110. 久間章生

    久間国務大臣 先ほどから局長が答えておりますように、それぞれの法律、またそれを受けました例えばそれぞれの条例、これに従って正当な理由があればいいわけでございます。  ただ、今挙げられました条例そのものが、港湾法なりそれに基づいて条例として適切であるかどうか、それはまたそっちの方の法律の問題でございます。  といいますのは、かつて、呉市であったと思いますけれども、呉市でも同じような条例をつくろうとしたことがありました。しかし、そのときには、それは果たして日米安保条約に基づいて入ってくる艦船に対してそれをもって拒否することができるかどうかという問題がかなり議論されまして、結局、地方自治体としてはそういうような条例は本来はできないんじゃないかというような議論までやって、それはやめたような経緯もございますから、それは、それぞれの法律を所管される省庁なりなんなりにおいてそれがどうかという問題でございまして、今度出しております法律上は関係ないといいますか、それの問題じゃなくて、それぞれの法律の解釈なり適正であるかどうかの法律の問題に帰するのじゃないか、そういうふうに思うわけでございます。
  111. 中路雅弘

    ○中路委員 今言いました神戸の決議は七五年ですから、それ以後ずっとそのとおり実行されているわけですね。
  112. 久間章生

    久間国務大臣 実行されているかどうかじゃなくて、入っていないわけでございまして、それにかかわらず入ろうとしたときに裁判で争われた例はございませんので、それをもって合法かどうかという判断は、今私どもの方でできるわけではございません。それは、そういう事案になったときに、適切であるのかどうかは、あくまでその法を所管する省庁が判断することでございます。
  113. 中路雅弘

    ○中路委員 この問題だけで論議しませんけれども、これはいわゆる国是と言われている非核三原則の具体化の問題ですから、こういう問題について国がこれを押し切るということはできないと思います。
  114. 久間章生

    久間国務大臣 国是とおっしゃられますけれども、要するにそういう証明書を出さないものは入れないという言い方が現在の法律体系の中で許されるかどうかの問題もあるわけでございまして、国是というのはあくまで国がそういう方針をとっているということでございますけれども、それと同時に、そういうものを見せなければ入れないぞというような、そういうものが現在の法律上、憲法下で許されるかどうかという問題とも絡む問題でございますから、これは私どもが判断するという問題ではなくて、やはりそれを所管するところの問題、最終的には日本の法体系をどこが有権解釈するか、その問題とも密接に関連することでございますから、この場でそれが正しい正しくないということは、私から申すわけではございません。
  115. 中路雅弘

    ○中路委員 今の神戸の問題は、最近高知等でも、こうした条例制定の動きが全国に広がっているから、今の問題はこれから重大な論議になるということを指摘をしておきたいと思います。  法案に罰則規定は規定されていませんけれども、そういう面では、先ほど言われたように法的な強制力はないということは言えますか。もしそれを断ったという場合に、どういう状態になりますか。
  116. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 まず、この周辺事態に関します措置に関する法律上、罰則を設けるという形での強制力はございません。  一方、地方公共団体の長の対応につきましての法的な評価というのは、先ほども大臣から御答弁いたしましたように、それぞれの個別法においてそれがどういう位置づけのものとして判断されるかということになろうかと思います。
  117. 中路雅弘

    ○中路委員 同じ関連の問題ですけれども、第九条の二項に「前項に定めるもののほか、関係行政機関の長は、法令及び基本計画に従い、国以外の者に対し、必要な協力を依頼することができる。」、今度は民間に関係行政機関の長は必要な協力を依頼することができるとありますけれども、基本計画が閣議決定された場合、関係行政機関の長は協力を依頼する職務上の義務を負うことになるのか。  それから、民間の企業や団体に対して協力を依頼することになっていますが、この協力依頼は、先ほどの公的機関である地方自治体との関係でも、これは協力要請とありますけれども、協力依頼というのは法的な義務といいますか強制といいますか、そういう点では対応は異なることになるわけですか。
  118. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 一項の「必要な協力を求めることができる。」という方は、一般的な協力義務を定めているわけでございますが、二項の「必要な協力を依頼することができる。」という方は、そういう一般的協力義務を定めているわけではございません。
  119. 中路雅弘

    ○中路委員 民間企業等が協力依頼に応ぜられないという場合、先ほどお話がありましたけれども、正当な理由とかはどういうことになりますか。
  120. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 日本の平和と安全に重要な影響を与える事態でございますから、私どもとしては、この依頼に応じて民間の事業者の方が適切な対応をしていただけるものと思いますけれども、仮にそういう対応が行われなくても、それに対して何らかの強制が行われるということはございません。
  121. 中路雅弘

    ○中路委員 民間と自治体との関係ではやはり程度の差があるということは、今の答弁でもはっきりしたと思います。  全体のこの条文を見ますと、周辺事態我が国の平和及び安全への重大な影響が生じたと認定しさまざまな対応措置をとるわけですが、その基本計画が閣議決定される。基本計画には、今言いました「行政機関が後方地域支援として実施する措置であって特に内閣が関与することにより総合的かつ効果的に実施する必要があるもの」、第四条で言う措置が掲げられています。そして、第四条第二項第七号で、今言いました地方公共団体その他の国以外の者に対する協力要請、協力依頼する場合の協力の種類及び内容並びに協力に関する重要事項が決定されると明記されていますが、第八条にありますが、関係行政機関の長は、この基本計画に基づいて対応措置を実施し、自治体や民間に協力要請、協力依頼を行うという仕組みに全体でなっているわけですね。  これは、先ほども答弁がありましたけれども、まとめてもう一度お聞きしますけれども、自治体などが負う法的義務というのは拘束力を持つものになりますか。先ほどの答弁をもう少しまとめて……。
  122. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 ちょっと御発言を正確に聞き取れなかった面もあるのですが、地方公共団体に対し協力を求めることができるということは、まさに一般的な協力義務を規定しているわけでございまして、それに応じないからといって直ちに違法の状態になるものではない、こういうことでございます。また、それに対しまして、本法において強制措置を講じているということはございません。
  123. 中路雅弘

    ○中路委員 これは直接自治体などの関係ですけれども、協力要請、協力依頼を受けた自治体や民間企業はどうするかという問題です。  その協力をするという場合に、そこに組合もある、あるいは労働者もいる、職員もいるわけですが、自治体は職務命令あるいは企業は業務命令で、職員あるいはそこの労働者を支援業務に従事させる、そういうことはできますか、やりますか。
  124. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 まず、地方公共団体の対応でございますけれども、繰り返しで恐縮でございますが、それぞれの個別法においてどのような対応をすることが定められているのか、その場合、地方公共団体としてどういうふうに対応すべきか、これはいろいろな地方公共団体に関する関係法令もございましょうから、そういったものに適合する形での対応ということであろうかと思います。  また、民間企業におきましても、同様に基本的に民間企業の御判断でございますけれども、その際も、それぞれの関係法令等に適合するような形でそういったものに対する対応が行われるもの、かように考えます。
  125. 中路雅弘

    ○中路委員 限られた時間ですので、もう一つお聞きします。  次は、自治体への協力要請、民間への協力依頼について、国会に提出したこの周辺事態法で、基本計画に協力の種類及び内容並びにその協力に関する重要事項が含まれることが今度はっきりしているわけですけれども、地方自治体に対する協力要請にはどういうものを今考えられているのか。法案も出されたところですから、具体的な中身について、どういう分野を想定されているのか、お話しいただきたいと思います。
  126. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 具体的にはそれぞれの状況事態に応じてその内容が定まってくるわけでございますので、あらかじめこの段階で申し上げるということにはならないのかもしれませんが、例えばということであれば、例えば港湾の使用等についての協力を求めるというようなものが考えられるのじゃないか、かように思います。
  127. 中路雅弘

    ○中路委員 内閣の安全保障危機管理室がお見えになっていると思いますが、同じ問題ですけれども、今この管理室が関係省庁局長会議を設けて、関係行政機関の局長等が新ガイドライン実効性確保に関する検討を行っているわけですが、そこでは関係行政機関のやるべき対応措置を検討して、自治体や民間がやるべきことを検討しているわけですが、そういう今検討されている中身についてお知らせ願いたいと思います。
  128. 江間清二

    ○江間政府委員 お答え申し上げます。  先生既に御案内のとおり、昨年の十月以来、ガイドラインに関します関係省庁局長会議というのを設けて、その実効性確保のための方策ということについて検討をしてきたわけであります。  その成果が今回国会に御提出をさせていただいた法案等にあらわれているわけであります。  その中で、今御指摘の自治体等の協力の観点について申し上げますと、いわゆる周辺事態に際しては、国の関係行政機関はもとよりでありますけれども、国以外の者の協力というようなことについて、これは不可欠、これなしにはやはり実効性ある対応措置がとれないという事態というのは当然考えられるわけでございますので、そこで、そのためにどういうような協力規定を設けることが必要かということについて、この局長等会議の中でも議論をいたしてまいりました。  その結果、先ほど来防衛庁からも御答弁ございますように、地方自治体の持つ公共性ということから、地方公共団体の長が既に各種の法令に基づいて有しておられる権限の行使につきまして、その適切な行使というものを求めるということは、これは法律的な観点からいっても当然必要になるだろうということで、今回九条の規定を置かせていただいたところであります。  具体的にどういうようなことについて地方公共団体なり民間の協力をいただくことになるかということにつきましては、これは事態の態様というようなことによってもさまざまでございますので、確定的なことは申し上げかねるわけでありますけれども、ただいま防衛局長の方からもお話がありましたように、施設の使用の問題でありますとか、あるいは各種規制法令についての許認可といったようなことが挙げられるのではないかというふうに言えようかと思います。  それで、先生の御質問でございますけれども、今何かこの関係省庁局長会議の中で具体的事象について検討しているかということになりますと、今私が申し上げた以上の、具体的なさらなる個別のケースを置いて検討というようなことはなされていないというのが現状でございます。
  129. 中路雅弘

    ○中路委員 今一例がありましたが、もう少し具体的に聞きますけれども、例えば港湾、第三種の空港の提供は対象になるのか。あるいは医療面で公立病院や負傷者のための救急車等、それから都道府県警察のやる米軍基地の警備等、こういうものが当然入るのかどうか。民間では、民間病院の問題あるいは輸送の問題、こうした点についてはどうですか。防衛庁と、両方にお聞きしたいのですが。
  130. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 繰り返しで恐縮でございますが、具体的な協力内容等につきましては、それぞれの状況事態いかんにかかわることでございますから、一般的にこういったものが入るあるいは入らないと申し上げるのは適当ではないと思いますけれども、仮にということで、そういったものが対象になり得るかということであれば、今おっしゃったような内容のものはやはり対象になり得る性格だろう、こういうふうに危います。
  131. 江間清二

    ○江間政府委員 お答えをいたします。  今まさに防衛局長がお答えになられたとおり、私どももそのように認識をいたしております。
  132. 中路雅弘

    ○中路委員 時間が来ましたので、一応これで終わります。
  133. 塩田晋

    塩田委員長 辻元清美君。
  134. 辻元清美

    辻元委員 社会民主党の辻元清美です。  本日は、久間防衛庁長官より中華人民共和国訪問に関する報告を受けました。それに関連いたしまして、まず質問させていただきたいと思います。  日中関係は非常に重要であるという御認識のもとに御訪問されたかと思います。私は国会議員になる前にピースボートという、国際交流の団体でしたので、中国にも何回も訪問いたしました。  初めて参りましたのは一九八四年なのですけれども、もう十五年ほど前になるのですが、そのときは、五百人ぐらいの日本の一般青年を中国に船で入港させるための手続や交渉というのは非常に厳しいものがございました。何回も北京に参りまして、日本の青年を受け入れてほしいという交渉をやりました。それは、やはりお互いの国の間に何かわだかまりがまだあったし、それから冷戦構造ということもありまして、不信感もあったのではないかと思います。そういう意味で、こういう民間の交流も難しかった。  それで、その翌年の一九八五年に宇都宮徳馬元参議院議員と一緒に訪中いたしまして、民間の若者交流の促進ということで、当時の胡耀邦さんとお目にかかりました。そしてその後、日本の若者が数千人その年に中国訪問するということが実現いたしました。  そのように、日中関係というのは、政府交流と民間のそのような青年交流などが積み重なって、今日、自由に行き来できる、そういう関係にいい方向で移行してきたのではないかと思っております。  そういう前提に立ちまして、今回訪中されましたが、私たちも中国との関係をさらに良好なものにしたいと努力するわけなのですが、基本的に大事なのは、日中関係について過去をどのように認識し、現在をどのように分析し、そして未来をどのようにつくり出していきたいのか、この議論を積み重ねていくことがやはりお互いの信頼醸成につながるのではないかと思います。  そこで、まず、過去、現在、未来という御認識について幾つか伺いたいと思います。  過去には、第二次世界大戦時、日本中国を侵略したという歴史を持っております。長官がこの過去の戦争に対してどのような御認識をお持ちになるのか、まず伺いたいと思うのです。それは、やはり防衛庁長官がアジアの国々を歴訪されるときも、そこの部分は御自身でもいろいろな考えをお持ちになって訪問されることかと思いますので、まずその基本認識をお聞かせください。
  135. 久間章生

    久間国務大臣 よく、過去の戦争がやれ侵略戦争であったかどうかとか、いろいろなことが言われますが、そういうような定義とか評価は別としまして、やはり過去の戦争において我が国の軍が侵略をしたという事実はあったと思います。そして、それを受けたそれぞれの国においては、その侵略に対して非常に痛手を受けた。そして、それによって悲しいいろいろな事実があったということについては、生々しい現実であろうけれども、それはやはりきちっと私どもは知っておかなければならないと思っております。
  136. 辻元清美

    辻元委員 さらに、政府のそれぞれのスタッフの方も、日中の友好な関係を築くためにさまざまな話し合いをなされると思うのですが、防衛局長にお伺いしたいと思うのですけれども、今のと同じ質問です。防衛局長はどういう御認識でしょうか。
  137. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 私も、基本的には今長官がお話ししたのと同じ考えを持っております。  我が国が過去の一時期にアジアの諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えたという事実は、やはり謙虚に受けとめていく必要があるだろう。 その上に立って、今後関係諸国との信頼関係を一層強化していくということに我々としては努力していく必要があるのではないか、かように私は思っております。
  138. 辻元清美

    辻元委員 私の手元に、戦後五十年の年、一九九五年六月九日に、当時は村山連立政権でした、そこで「歴史を教訓に平和への決意を新たにする決議」という国会決議をされたことと思います。  ちょっと改めて確認したいと思います。   本院は、戦後五十年にあたり、全世界の戦没者及び戦争等による犠牲者に対し、追悼の誠を捧げる。   また、世界の近代史上における数々の植民地支配や侵略的行為に思いをいたし、我が国が過去に行ったこうした行為や他国民とくにアジアの諸国民に与えた苦痛を認識し、深い反省の念を表明する。   我々は、過去の戦争についての歴史観の相違を超え、歴史の教訓を謙虚に学び、平和な国際社会を築いていかなければならない。   本院は、日本国憲法の掲げる恒久平和の理念の下、世界の国々と手を携えて、人類共生の未来を切り開く決意をここに表明する。   右決議する。  この決議を踏襲して今回も御訪問になったというふうに私は受け取らせていただいているのです。といいますのは、ここから、今度は現状に移るわけなのです。今までは過去です。  現状の認識なのですが、この日米新ガイドラインについて、中国を含めたアジアの国々から疑念を呈されているということは、これは事実であるかと思います。今、首をかしげられました。そのことについてちょっと伺いたいと思うのですね。中国訪問されたと同時に、韓国でも、報道によりますと、疑念のようなコメントが出ていたりしております。  その中で、私は、こういう疑念が少しでもあるならば、それは無視してはいけない、それは一体どういうことなのかということを確認し、分析していかなければいけないと考えております。ですから、中国を含めましたアジアの国々は日米新ガイドラインについてどのような受けとめ方をされているのか、そして、少しでも疑念があるならば、何が原因だとお考えなのか、そこをお伺いしたいのです。
  139. 久間章生

    久間国務大臣 何事でもそうですけれども、例えばPKO法一つとりましても、大多数の人が賛成でも、反対の人がやはりおられるわけでございます。だから、全部が全部とにかく賛成というわけにはいかないというのはわかりますけれども、できるだけ多くの方に理解してもらいたいという気持ちで各国へも説明もし、また各国においても大方そういうようなことで理解をしていただいておるわけでございます。  そういうようなことでございますから、ガイドラインにしましても、我が国のいわゆる国民の生命財産を守っていくために、周辺で何か起きたときに何もしないでいいかというと、そういうわけではない。そういうような立場から我が国が取り組んでいく、それについて各国に疑念を与えてはいけないということで説明をしてきたところでございます。  ただ、今おっしゃられましたけれども、各国とも、特に戦争等のいろいろな被害があっておりますだけに、日本の軍国主義が復活するのではないか、復活したら困る、そういうことにならないように注目しておかなければならないというような基本的な態度といいますか、目は持っていると思います。  だから、そういうような目で見るときには、一つのことでも、これはまた非常にエクスパンド、広がってくるのではないかというようなことになりがちでございますから、そういうようなことはないということを私どもは日ごろから説明をし、また、今度の防衛交流を初めとしてお互いの信頼醸成を深めていくことによって、戦後の日本は変わっているのだ、そうじゃないのだ、平和国家なのだ、他国に対して侵略するようなことにはならないのだ、そういうようなことを説明してきたつもりでございますし、これから先もそういう態度で接して、理解を深めていきたいと思っているところでございます。
  140. 辻元清美

    辻元委員 今の御発言の中で、他国に対して侵略するのではないという理解を求めるということがございました。  さて、そういう中で、今回の中国の御訪問の中で大きな議題になったかと思いますが、先ほどからも審議の中で出ておりますけれども中国台湾との関係ということでもう一度確認させていただきたいのです。  万一、中国台湾の間で緊張が高まる、これはないとは言えませんので、もしくは紛争のようなものが起こったとしても、これは新ガイドラインにおける周辺事態には当たらないということになるのでしょうか。
  141. 久間章生

    久間国務大臣 かねてから何回も申しておりますように、今度の周辺事態は、我が国が直接侵略はされないけれども我が国の周辺で何かが起きたときに、その状態我が国の平和と安全にとって重要なことになるかならないか、そういうことで判断をして、そのときに必要な措置をとるということでございます。この地域で、この海峡でそういうことがあるとかないとか、そういうことを想定しての話では全くない。そういう事態がどういう事態なのかというのを判断した上で、我が国がいかに対処するかということを考えておるというようなことで御理解していただきたいと思うのです。  そうしませんと、特定の国とか特定地域とかということをやりますと、そういう例を挙げられただけでも、その国にとってはおもしろくないと思います。  だから、よくいろいろな政府説明の内容として、ある国ならある国で武力紛争が起きた、あるいはまた武力紛争までは起きないけれどもその国が内部分裂を起こした、それによって避難民がわっと押し寄せるようなことが発生した場合にはどうかと言われますと――そういう国が対象とされているというふうに思われただけでもいけませんので、そういうことはないですけれども。しかし、そういうふうにわっとたくさんの難民が我が国に押し寄せてきた場合に、我が国政府として何もしないでいいかとなると、そういうわけにはまいらないわけでございます。そういうような状態のときに日米がどういうふうに協力しながらやるか、そういうことについては考えなければならないわけでございます。  しかし、さりとてそれが特定の国で起きるとか起きないとかということを前提にするのではなくて、起きた場合にはどうするかというようなことで、今度の事態我が国に直接影響があるような場合にはどうするかという取り組みをしている、そういうような深い意味もひとつ御理解賜りたいと思います。
  142. 辻元清美

    辻元委員 もう少し、現状をどういうふうに認識するかということで幾つか質問したいのです。  今、特定地域や国に限ってここで考えることは非常に難しいというような趣旨の御答弁だったわけなのですけれども、日中関係を含め東アジアの情勢が現状でどのような方向に進んでいるのか、もしくはこの情勢をどういうふうに分析するのかということを議論することは大事なことだと私は思うのです。  そういう中で、先ほど長官の御発言の中で、平和的関係が構築されたとは言えないというような御発言がありました。これは東アジアの情勢に関しての御発言なのですけれども、ここはどういう根拠といいますか、どういうことを具体的におっしゃっているのか、もう少しこの状況分析をお聞かせ願いたいのです。ただ、立場上、あそこはこうだ、ああだということは言えないという御答弁を期待しているわけではなく、もう少しここを詳しく御答弁いただければと思います。
  143. 久間章生

    久間国務大臣 逆に、私の方から委員に対して、質問は議会上は許されておりませんから、質問という形ではなくて、話をさせていただきたいわけでございますけれども委員におかれては、我が国を取り巻くこのアジア地域は全く平和な状態になって、何も要らないという状態になっておるか、そういうことを考えると、そうではないというような返事が返ってくるのではないかと思います。  それと同じようなことで、我が国周辺のアジア地域を見ましたときに、幸いなことに、時を経るごとに平和な状態ができ上がってきております。昔と比べますと、先ほど言いましたように、国の往来も非常にスムーズになりました。疑心暗鬼も大分解けてまいりました。ASEAN地域フォーラムみたいないわゆる対話の場も設けられました。経済的にもお互い協力しております。最近非常にすばらしいことは、平和が続くことによって経済発展もできる、またそれによって国民の所得も上がってくる、そういうことについての理解が非常に深まってきております。しかしながら、さりとて一〇〇%そういう状況ができ上がっておるかというと、そうではないのではないか、そういうふうに思うわけでございます。  というのは、やはりこの地域にはまだまだ緊張状態が続いている地域もございます。そしてまた、ミサイルもある程度あちらこちらに配置されております。しかも、核兵器等もまだあるわけでございます。あるいはまた、生物・化学兵器があるかどうかについての検証等も完全にでき上がったわけではございません。  そういうことを考えたときに、国民が全く安んじて、とにかく何もしないでいいんだというふうに、大っぴろげに広げて評価できるような安全保障環境が構築されているかというと、まだそこには至っていないのじゃないか、そういうふうに思うわけでございます。  そうなれば、やはりそういうようなことを目指してお互いにこれから先も努力して、一〇〇%そうはならないにしても、それに極力近づけるように努力していくのが私たちの責務じゃないか、そういうふうに思っているわけでございます。
  144. 辻元清美

    辻元委員 ここらあたりから、先ほどから過去、現状、未来と申し上げました未来の話につながっていくわけなんですけれども。  確かに、東南アジアも含めまして、アジアの地区は、先ほど長官ベトナム訪問されたという御発言もございましたけれども、かつてであるならば訪問することは不可能であるというような時代もございました。  そういう意味で、全体的に緊張緩和の方向に、往来も自由になっておりますし、情報交換も密になってきているという方向に進んでいくべきであると思うし、進んでいる部分は多いと思うわけなんですね。そういう中で、私は、日本は軍縮に向けたイニシアチブをいかにとれるか、そういうビジョンを出していくことが非常に大事だと思います。  そういう中で、最初にちょっと申し上げました日米の新ガイドラインの議論が今なされておりますけれども、一部緊張地域があるという御発言も今ありましたけれども、ですから、全部緩和に向かっているとは言えないという御認識に立ってこの見直しが行われておりますけれども、これが緊張を高める方に行ってはアジア全体の軍縮につながらないと思いますね。  ところが、今アジアの国々から、まだ疑念は全く消えたわけではないという認識は私と一緒だと思いますけれども、この新ガイドラインについて、近隣諸国の疑念を高め、緊張を高める方向に行かないように、このガイドラインの実体というものがどういうものであるのかということを示せるのかどうか。私は、周辺事態の定義や後方支援についてこれだけ議論してきても、私自身が直接長官と議論をしてもまだ納得しない部分があるわけなんですね。それを私は心配しておるわけです。  ですから、最後になりますけれども、あと二分しかないのですけれども、未来ということで、この軍縮に向けたイニシアチブをどうとるかということと、この日米新ガイドラインに対してアジアの疑念というのが消えていない中で、これが果たして緊張を高める方向に行かないという確信をお持ちなのかどうか、私はそこをちょっとお伺いしたいと思います。
  145. 久間章生

    久間国務大臣 私は、かなり理解は深まってきていると思います。といいますのは、日米の安保体制があった、米軍がアジア・太平洋地域に十万人のプレゼンスがある、それがまた一つの安定剤として平和が続いてきたという認識は、本音のベースで話しましても、結構各国にあるわけでございます。  それで、日米が、多国間のいろいろな信頼醸成が高まって平和に向かっていくというのはいいけれども、やはり二国間の同盟関係というのもしっかりしていなければならないんだということについても理解は結構深まっております。  例えば中国との関係でいいましても、日米がお互いに二国間の問題としてしっかり同盟を結ぶのは結構なことだ。しかし、その同盟が他国に向けて、例えば我々に向けてそういうふうなことになってくるのはおかしいという主張でございますから。二国間の問題として、日本なら日本が、日本の安全のために日米同盟関係をしっかりと結ぶのはいいんだということを言われます。  それは、ほかの国でもそういうような認識は非常に強いわけでございまして、自分たちは同盟政策はとっていない、どことも同盟は結んでいない、それはそれぞれの国がどういう選び方をするかだから、それは勝手だけれども、我々としてはしていない。また、そこまでは、非常に結びつきを強化することについては何も異論はないわけでございます。むしろ、その同盟が矛先を自分たちに向けるというようなものであっては、これはやはり困る、問題だというところでございますから、そういうものでないという理解を深めるように私たちは努力していかなければならない、そういうふうに思っておるところでございます。
  146. 辻元清美

    辻元委員 本日は一般質疑でしたので、長官の基本的な御認識、過去、現在、未来について、時間の制約がありましたけれども、お伺いしました。これをもとに、今後、安保委員会で個別についてまた質問させていただきたいと思います。  これで終わります。
  147. 塩田晋

    塩田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時四十五分散会