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1998-05-07 第142回国会 衆議院 安全保障委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年五月七日(木曜日)     午前九時五十分開議  出席委員   委員長 塩田  晋君    理事 浅野 勝人君 理事 石破  茂君    理事 中島洋次郎君 理事 浜田 靖一君    理事 石井 紘基君 理事 岡田 克也君    理事 赤松 正雄君 理事 西村 眞悟君       麻生 太郎君    臼井日出男君       岡部 英男君    河井 克行君       佐藤  勉君    阪上 善秀君       下地 幹郎君    田村 憲久君       中山 利生君    仲村 正治君       林  幹雄君    増田 敏男君       宮下 創平君    渡辺 具能君       北村 哲男君    玉置 一弥君       前原 誠司君    横路 孝弘君       河上 覃雄君    冨沢 篤紘君       佐藤 茂樹君    二見 伸明君       中路 雅弘君    東中 光雄君       辻元 清美君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (内閣官房長官村岡 兼造君         国 務 大 臣         (防衛庁大臣) 久間 章生君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      秋山  收君         内閣制局第二         部長      宮崎 礼壹君         国際平和協力本         部事務局長   茂田  宏君         国際平和協力本         部長事務局次長 新貝 正勝君         防衛庁長官官房         長       大越 康弘君         防衛庁防衛局長 佐藤  謙君         防衛庁運用局長 太田 洋次君         防衛庁人事教育 坂野  興君         防衛庁経理局長 藤島 正之君         外務省総合外交         政策局長    加藤 良三君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部長    上田 秀明君  委員外出席者         法務省刑事局刑         事法制課長   渡邊 一弘君         安全保障委員会         専門員     平川 日月君     ――――――――――――― 委員の異動 五月七日  辞任         補欠選任   山崎  拓君     渡辺 具能君 同日  辞任         補欠選任   渡辺 具能君     山崎  拓君 同日  委員細川護煕君が退職された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際連合平和維持活動等に対する協力に関する  法律の一部を改正する法律案内閣提出第九〇  号)      ――――◇―――――
  2. 塩田晋

    塩田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石破茂君。
  3. 石破茂

    石破委員 御苦労さまでございます。  PKO法に入ります前に、防衛庁長官一間お尋ねをいたしたいと存じます。  長官が先般訪中をなさいました。大変御苦労さまでございました。  聞くところによりますと、遅浩田国防部長よりこのような発言がなされたように聞いております。「日本台湾問題に関する立場をより明確にすることを希望する、台湾日米安保範囲に入れることは中国の主権の侵犯である、中国側は今後もこの問題を注意深く見守っていく、」このような発言があったやに承っております。  もっとも、これは報道によりまして随分いろいろな差がございますし、防衛庁からいただいたペーパーをそのまま読ませていただいたわけでありますが、実際のところ、中華人民共和国側からこのガイドライン関連法案についてどのような懸念が表明をされたのか、それに対して長官はどのようにお答えになったかということをお教えをいただきたいと思うのであります。  と申しますのは、先般もお尋ねをしたことでありますが、ガイドライン周辺事態法によって行える場所というのは、我が国領海公海、それも戦闘行動が行われる場所とは一線を画したところで行われる、こういうふうに規定をされておる。公海部分を含む台湾海峡上空で何かが起こった場合、それは日本としては関心事たらざるを得ない。  公海部分、その上空戦闘行為が行われている場所とは一線を画したところ、そのように明快にこのガイドライン関連法案というのは規定をし、政府もそのようにおっしゃっておられるはずでありますが、中華人民共和国懸念というのは那辺にあるというふうに向こうはおっしゃったか、お尋ねをいたしたいと存じます。
  4. 久間章生

    久間国務大臣 今委員が述べられましたような、報道にあります、ブリーフィングにおける説明のような、そういう趣旨の話は確かに文脈の中に入っておりました。  私は、それに対しまして、従来の我が国考えております台湾に対する我が国の基本的な立場を改めて説明しますと同時に、今度の周辺事態法の場合は、あくまで特定地域とか特定の国とかを議論してやっているものではない、我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼすような場合について述べているのであって、そのときにどういうふうな措置をとるか、どういうふうな手続を経るか、そういうことについて考えておるわけで、そのための法律についても、その目的について明らかに我が国の平和と安全の確保を図るためというようなことを述べているとおりでありますというようなことを申しまして、それで一応終わったわけでございます。  ただ、その背景の中には、先ほど委員が述べられました中にもありましたように、安保範囲に入れることはという言葉がありましたように、安保条約範囲台湾海峡の問題が入っているか入っていないか、その辺についての考え方が非常に昔からあっているようでございます。大平総理がかつて外務大臣時代答弁等を、ほかのところで、遅浩田さんじゃございませんけれども、ほかの方が言われたこともございます。そういうようなことから、非常に台湾海峡をめぐる問題については神経を使っているという感じは受けました。  それは、一つには、私が訪中する前に新聞等で出ました議論の中で、いわゆる極東という言葉と今度周辺事態で言っている我が国周辺地域とが同じ概念であるというようなことが大々的に報道された。そういうのがあって、我が国がずっと説明 している内容と若干違った報道か出ておりましたためにそのような話になったのではないかな、背景はそう思った次第でございます。  しかしながら、基本的には私どもは従来から述べております内容で御説明を申し上げたところでございます。
  5. 石破茂

    石破委員 この点につきましては、粘り強く中国並びにアジアの理解を求める、我が国にとっては、中国懸念するような意図は全くないということを明快にしていただきたい、そのための御努力をお願いをいたしたいと存じます。  さて、PKO法について何点かお尋ねをいたしたいと存じます。  私は、基本的にはこの法改正というのは当然のことであって、個人個人正当防衛という判断によって勝手に撃ったりするということはかえって危険を惹起しかねない、命令を待ついとまがないときを除き上官命令に従うということは部隊として行動する自衛隊として当然のことであるというふうに考え支持をいたしたいと存じます。  そういうような基本的な立場に立ちまして、何点か御質問をいたしたい。  一点は、この改正は従来政府が言ってきたことと異なるのではないかという指摘がなされておる、そして、憲法とのかかわり合いにおいていかがなものかというような指摘がなされておるわけであります。  先般の本会議でも幾つ質問がありまして、私はひっかかったのですが、私は、従来の政府見解答弁を幾ら読んでみましても、隊員個々武器個々判断によって使用する、だから憲法が禁止する武力行使には当たらないのだというような答弁政府は一度もなさったことがないというふうに思っておりますが、それで間違いございませんか。
  6. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  PKO法成立当時の議論では、武器使用目的自己または自己とともに現場に所在する隊員生命身体防護ということであるので、その際の武器使用判断については個々人判断するのが適切であるという答弁をいたしました。今回の法改正では、その答弁考え方を改めまして、原則として上官命令によって武器使用するということに変えたいということでございます。そういう点で、その点に関しては従来の政府答弁してきた考え方を変える、改めるということでございます。  ただ、先生今御指摘憲法との関係に関しましては、PKO法成立時の国会での討議におきましても、この自己または自己とともに現場にいる隊員生命身体防護ということでの武器使用というのは、仮に集団的であったとしても憲法上問題はないという答弁をいたしております。したがいまして、憲法との関係において政府答弁が変わってきているということではございません。
  7. 石破茂

    石破委員 この辺をごちゃごちゃにしてはいかぬと思っているのですが、要は、憲法が禁じる武力行使はしてはいけないということだと思っている。憲法が禁止する武力行使というのは何かといえば、それは紛争を解決する手段としての武力行使であって、そもそもこのPKOというのは紛争を解決する手段では全然ないわけですね。ですから、この辺、余り神経質になることはいかがなものか。  基本的に、ここで武力行使をしてはいけないというふうによく言われるが、気をつけなければいかぬのは、それは憲法が禁止している武力行使であるということで間違いないですね。
  8. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  武器使用武力行使関係につきましては、PKO法審議当時、これは平成三年の九月二十七日に武器使用武力行使関係についてという政府統一見解が出されております。  そこでは、先生おっしゃるとおり、憲法上禁止されている武力行使というのは何かということを規定をいたしまして、その上で、武器使用がすべて憲法第九条第一項の禁止する武力行使に当たるとは言えないといいまして、  例えば、自己又は自己と共に現場に所在する我が国要員生命又は身体防衛することは、いわば自己保存のための自然権的権利というべきものであるから、そのために必要な最小限の「武器使用」は、憲法第九条第一項で禁止された「武力行使」には当たらない。 ということを述べております。
  9. 石破茂

    石破委員 この点に関しましては、もう一回後でお尋ねをいたしたいと思います、関連をいたしまして。  もう一点は、先般の本会議質疑の中にありましたのは、この法の改正周辺事態措置法案との関係について何人かの議員が質問をなさいました。  この法案と、ガイドライン周辺事態措置法案というのは、同じような時期に出てきましたのであるいは関係があるというふうに言われるのかもしれませんけれども、もともとそれは異なるものではないだろうか。防衛庁長官が本会議答弁でもおっしゃいましたように、それは全く性質の違うものではないか。つまり、他国の領域で行う停戦の合意を前提としたPKOと、先ほど申し上げましたように、我が国領海公海並びにその上空範囲として行う周辺事態に対する後方支援とは異なるのではないか。したがって、周辺事態措置法に関しては、武器使用というのは自衛隊法の本則に基づくのであるという理解が正しいと思いますが、それで間違いございませんか。
  10. 久間章生

    久間国務大臣 これは全く別でございまして、今、国会にたまたま両法案がこうして一緒にかかっておりますために誤解を受けておりますけれども、そもそもPKO法案見直し平成七年の八月からやっておりまして、そして前国会でも法案をまとめて提出しておったわけでございます。それでもむしろ遅いぐらいの気持ちでやったわけでございまして、今回図らずもこの国会に同時に御審議になっておる、衆議院に両方とも今かかっておるというようなことから非常に誤解されがちでございますけれども、今御指摘されましたように、全くそれは別だというふうに理解していただいて結構だと思います。
  11. 石破茂

    石破委員 その点を明確にしていただいたことはありがたいことだと思っております。  さて、話はもとへ戻りますが、この法律のそもそものつくり方からいって、今回の改正というのは至当であるというふうに考え支持をいたし、賛成をいたしたいと思います。  さて、その今後のあり方、先般も提案理由説明並びに質疑の中でありましたように、今回の改正必要最小限のものだというふうに認識をいたしております。さらに、より自衛隊活動国際貢献に資するように、いろいろな理論構成法改正というのを今後も試みていかねばならぬのではないかというふうに考えておるわけでございます。  私は、この法律のつくり方、武器使用正当性というものが、基本的に刑法三十六条、三十七条に言うがところの正当防衛並びに緊急避難というものを論拠としている、下敷きとしている、そのことには少し無理があるのではないかなという気がしておるのであります。  なぜかといえば、正当防衛とか緊急避難というものは、それは基本的に個人を対象としたものであって、部隊組織体として動くような、PKOに参加するような自衛隊、これにそのまま持ってくる、その理論を適用するということは幾つか問題があるのではないのかなというふうに考えておりますが、総論としていかがですか。
  12. 久間章生

    久間国務大臣 正当防衛とかあるいは緊急避難という、こういう法の建前といいますかつくり方、これとても一つ便法でございます。  したがいまして、自衛隊みたいな一つ組織体がいろいろ行動する場合に、個々人あるいはまた個々人集合体として行動する、そういう人たちがみずからの危険を排除する方法としてどういう方法がとれるのかというときに、もう既に固まっております正当防衛とか緊急避難とか、先ほど言いました一つ便法として、法理論としてありま す、そういうのを使うことによってよくわからせるという方法方法論としてあるのじゃないかと思うのです。したがいまして、その方法論を使うことによってそういう場合における問題をクリアしようとして、PKOのときにもそれを使ったのだと思っております。  したがいまして、これは単にPKOだけではなくて、その他いろいろな場合に使われておるのじゃないか。自衛隊だけではなくて、警察官とか海上保安官とか、そういったものだって組織として行動しておるけれども、それの組織員としての個々人生命身体、そういうのを防ぐためにどうするかという場合には、正当防衛緊急避難という理論はよく使われておりますので、それとの比較においても適切な利用の仕方ではないか、法の立て方としてもそれでいいんじゃないかというふうに私は思っております。
  13. 石破茂

    石破委員 おっしゃるように、警察官職務執行法七条というものが下敷きにあるわけですよね。  ただ、これは私の個人的な見解でありまして、長官に御意見を伺いたいと思っておるのですが、警察官というのは基本的に集団行動をするということは想定をされておらないのではないか。もちろん機動隊とかそういう場合はありますが、基本的には個々人対応ということで法律が組み立てられておるのではないだろうか。  自衛隊というのは基本的に個々人活動するということが概念としてあり得ないことであって、常に部隊として、集団として行動するわけですよね。その場合に、それじゃ正当防衛緊急避難理論というものが本当に、それは援用とか、おっしゃったように便法としてはあり得るだろうと思うのです。ただ問題は、集団に対する、組織体に対する防衛というような概念、国際法的には自衛という概念集団を守るというものだと私は理解しておるのですね。物事の考え方として、集団を守るための防衛、こういうような考え方はありませんか。
  14. 久間章生

    久間国務大臣 確かに、自衛隊というのは人的組織体でございます。しかしながら、その中での個々人活動、そういうのが重なって集団になっているわけでございますから、行動する場合でも一人の場合もありますし、あるいは二人、三人、四人という場合もあるわけでございます、大きな部隊としての大集団の場合もあるわけでございますから、そういうのを今みたいに正当防衛議論でやりますときにどちらをとるかとなると、まず集団をとらえて構成していくのか、それから便法といいますか、やはり個々隊員のことを考えながらつくり上げていくのか、それはいろいろあろうかと思います。  PKO法なんかによりまして、現地の実態からいいますと、私もゴラン高原に行ってまいりましたけれども、輸送業務をしている隊員なんか二人でトラックを運転していくわけでございますね。そのときに、どちらかが上官の場合もあるでしょう、あるいは自分よりも上位にある者がおるわけでございますが、そういうような状況を見ておりますと、それは部隊集団としてのいわゆる自己保存というよりも、むしろ個々人生命身体自己保存的な場合の方が、PKOの現状からいいますと非常に多いわけでございます。  だから、そういうものの積み重ねとしての議論をしながらも、なおかつそれがもう少し大きい集団になった場合にでも適用できるということになりますと、正当防衛緊急避難議論の延長線でその集団になっているものをどうとらえるか、そちらの方がより適切なんじゃないか、そういうふうに思うわけでございます。  したがいまして、個々人が一人でおる場合は自分判断するわけでございますけれども、グループでおりますときには上官の命によって行動する方が、集団としての行動になれている自衛隊なんかにおいては混乱を招かず、より適切な対応ができる、そういう判断から今回の法改正を思い立ったわけでございます。
  15. 石破茂

    石破委員 今回の法改正の基本的な考え方は、個人生命身体防護という概念は何ら変えていないということだというふうに承っております。実際そういうような構成をしなきゃいかぬものでしょう、全体からすれば。  ただ、例えばこういう考え方はできませんかね。おっしゃるように、隊員個々には自己保存自然的権利が認められている。そうですね。ところが、部隊というものにはそのような自然的な権利を認める余地というのはないものなんでしょうか。つまり、今回の法改正は、部隊として指揮官命令武器使用する、そういうことなのか否かということなんです。多分否なんだろうと思いますが、いかがですか。
  16. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  今般の法改正の中で、非常に重要な言葉というのは現場という言葉でございます。集団をとらえる場合に、部隊としてとらえるか、それ以外の単位でとらえるかということなんですけれども、この改正法案では、現場にともにいる集団というとらえ方をしているわけでございます。  これは防衛庁長官からも御答弁がありましたけれども、輸送業務をやっている場合には二人である、例えば検問をしている場合には三人であるということで、生命身体に対する共通の危険を受ける、そういう単位考えておりまして、そういう単位の中で生命身体防護ということで構成をしているということでございます。
  17. 石破茂

    石破委員 この法律構成ではそうなるだろうと思います。それには賛意を表したいと思います。  ただ、いろいろなケースがあり得ることだと思う。別に、限界事例を示して、これでどうなんだとぎりぎり詰めることはこの場に即したお話だとは私は決して思っておりません。それはある意味で、逃げでも何でもなくて、ケース・バイ・ケースということもあり得るでしょう。法の常識ということもあろうし、その場合に全体として行動をどうとらえるかということだろうと思っているのですね。  ただ、共通の危険というものをだれがどのように認識をするのか。私は、基本的に、現地に行った自衛隊員が本当に後顧の憂いなく安んじて任務に精励でき、立派に平和を維持し目的を達成して帰ってくるということを、我々政治の場というのはきちんと担保をしてあげなければいかぬだろう。その場になってみなければわからないよ、とにかく行っておいでというようなことはあってはならないし、また政府としてもお考えではないであろうというふうに確信はいたしておるわけでございます。  距離は何メートルでもいいのですが、例えば本隊というのがあった、そこから五十メートルでも百メートルでも百五十メートルでもいいが、見張りが立っていた、二人ぐらいで立っていた。一人でもいいです。それが撃たれたという場合に、つまり、その人は普通の武器しか持っていなかった、しかし、向こうはさらに重い武器でその離れて立っている自衛隊員を襲ったという場合に、とてもじゃないけれども正当防衛緊急避難ではだめだ、それを距離を置いた上官が視認をした、見たという場合に、それを共通の危険ととらえるのかどうなのか。そういうようないろいろな問題があるだろうと思っておるわけでございます。  このことについてのお答えは要りませんけれども、現地において本当に上官並びに隊員皆さん方が安んじて任務に精励できるように政府のお考えを詰めていただきたい、このように思っておるところでございます。  さて、残った時間、あと幾つお尋ねをいたしたいと思います。  今回、法改正で落ちておるところが幾つかある、それは必要最小限ですから当たり前だろうと思っておりますが、例えば自衛隊法九十五条であるとか九十六条の一部適用除外であるとか、そういうものは今回行われておりませんね。例えば、この間のカンボジアに行っても、タケオの基地が襲撃をされた、隊舎とか燃料とか車両とか弾薬と か。そういうものが行われた場合に、武器防護規定による武器使用ができないというのは、やはり任務完遂のためにいかがなものであろうかという気もいたしております。  あわせまして、九十六条、警務官武器使用の問題でありますが、これは自衛隊員以外には適用しないというふうに書いておる。このことはやや自己抑制の行き過ぎかなという気が私はいたしますが、その点についてお考えはいかがですか。
  18. 村岡兼造

    村岡国務大臣 政府といたしましては、法律の実情に照らしまして、法律実施あり方について見直しを行うものとしている法附則第三条の規定に基づき、これまでの派遣の教訓、反省を踏まえつつ検討を行った結果、先般改正法案国会に提出したものであります。  他方、今御指摘のあったような運用面での改善を含めて、法律実施あり方について今後とも幅広く検討、対処を行ってまいることは当然であると考えております。
  19. 石破茂

    石破委員 つけ加えて申し上げれば、PKO法二十四条は、刑法三十六条に言うところの要件というものをかなり狭く解釈をしているわけですよね。つまり、「自己又は他人の」というふうに刑法には書いてあるけれども、この場合のPKO法は、「自己又は他人の」というところを、そこの近くにいる隊員というふうに狭く解釈をしておるわけですよね。そうすると、例えば外国人がやられた場合に、これは傍観をするしか手がないよということにならざるを得ない。  しかしながら、かつて、海部内閣総理大臣答弁で、そのことまでも否定するものではない、その権利までを否定をするものではないというような答弁もなさっておられるわけでありますが、私は、基本的に、「他人の」ということには外国人も含むのではないか、これも考えてみなければいかぬのではないかなということを申し添えておきたいと存じます。  それから、あとこれも何年か前に随分議論があったことでありますが、いわゆるSOPPKO行動基準とでも訳すのでしょうか、今回の法改正を行っても、かなりSOPとの間の乖離はございますね。  SOPに書いてあることを、こんな厚い本ですから全部言うわけにはいきませんけれども、例えばこういうような言葉が第三部第四節二十一項には出てくる。「自己防衛は、国連安全保障理事会の命令に基づく義務の遂行を強制的に妨げようとする企てへの抵抗を含む。」こんな文章があります。また、こういうような文章もあるのですね。「活動に関する事項については加盟国政府当局からの命令ではなく、事務総長率いる国連の指揮官からの命令にのみ従うのが原則である。もし、この指揮命令系統を欠くと、重大な活動上、政治上の困難を招く。」こんなのがある。また、こういう文章もあります。「行動の局面は違っても、多くは同じ行動規範に従わねばならない。」いろいろな文章があるわけです。  宮澤内閣総理大臣は当時の答弁で、それは肯定できないというのかな、そのことには同意しない、その上でPKOに参加するのだというふうな答弁をなさっておる。しかしながら、基本的にこのSOPの標準に近づけていく、憲法範囲内で近づけていくという努力もまた必要ではないかと思いますが、いかがですか。
  20. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  先生、今SOPとの関係で二点御指摘があったと思いますけれども、武器使用に関しまして、自衛の場合に限られるということが書いてありますけれども、この自衛の場合というのがSOPでは二つございます。  一つが、今のPKO法の二十四条で規定をしております、自己または自己とともに現場隊員生命身体防護というものがaタイプの武器使用とされておりまして、bタイプの武器使用ということで、任務遂行を妨害する行為を排除するための武器使用というのがSOPで書かれております。  ただ、この点については日本憲法規定というものを踏まえながらこれから検討していかなければならないと思いますけれども、先生御指摘のとおり、その点に関しては、今回の法改正が通ったとしても、このSOPが求めているいわば国際的な標準といいますか、そういうものにはまだ到達していない状況が続くということでございます。  第二点は、国連からの指図、コマンドの問題、それから日本が派遣した部隊に対して行う指揮の問題についての御指摘がございました。  これはPKO法審議当時にも大変議論がございましたけれども、政府側からは、国連のコマンド、指図と適合するように実施要領をつくるので、その点について二重指揮とかいうような問題が生じないようにしたいという答弁をしてきました。これは実際に何回か派遣をしてきまして、国連のコマンドを受けてそれと適合するように実施要領をつくって実施するということで、現在までのところうまくいっているということでございますので、その点申し上げたいと思います。
  21. 石破茂

    石破委員 時間ですので、最後にあと一点だけお尋ねをいたしたいと思います。  先般の本会議で、仮に、上官命令による行動、これに違法な場合があったらどうするのかという質問に対しまして、これは自衛隊法による懲戒処分または刑事罰の対象になることがあり得るという答弁長官がなさいました。それはそのとおりだと思っておりますが、実際そういうことは極めてレアケースだと思いますけれども、誤想防衛でありますとか過剰防衛でありますとか、そういうことが生じる可能性はゼロとは言えない。そういう場合に、どのような手続に従って、どのように処罰が下され、どのように裁判官の心証というものは形成され、どのような者が訴えを起こすのかという点につきまして明確にしておくことが必要であろうというふうに考えますが、いかがでしょうか。
  22. 久間章生

    久間国務大臣 明確にしておくといいましても、そのときのケースによって違うわけでございまして、それは、特に上官の命によって行われる、その命に従って行う、従う者は特に命によってやるわけでございますから、そういう意味では、命令そのものの要請がどれだけ明白であるかという問題も出てくるわけでございますので、それをあらかじめ具体的なケースを挙げながら明確にしておくというのはなかなか難しいのじゃないかというふうに思います。やはり、それはその刑罰法規が適用される、あるいはその前の懲戒処分なりなんなりするケースが起きたときに判断せざるを得ないのじゃないかというふうに思います。  今ここで、どんな基準で、こういう場合には違法性が阻却されるとか、そういうことをあらかじめ言うのはなかなか難しいと思いますけれども、命令する方の上官と比べた場合、命令を受けて、やらなければならないわけでございますから、やらなければならない隊員の方は、刑罰法規あるいは懲戒処分に当たる場合は非常に少ないのじゃないかというふうに思います。
  23. 石破茂

    石破委員 終わります。ありがとうございました。
  24. 塩田晋

    塩田委員長 石井紘基君。
  25. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 防衛庁長官、数日間にわたる連休中の訪中、大変御苦労さまでございました。この問題については、明日、長官からの御報告を本委員会でいただくことになっておりますので、特に一点だけお伺いをしておきたいと思います。  中国の遅浩田国防相との会談を終えての会見の中で、長官は、ガイドラインとの関連の問題について、日中共同声明と両立し得ると会談の中では述べたけれども、同時に、中国側がこれで十分わかったとはなかなかならない点もあると述べられたというふうに報道されているわけですが、なかなかわかったということにはならないというのは、どんな内容を指しておられるのでしょうか。
  26. 久間章生

    久間国務大臣 今度のいろいろな会談を通じまして感じたわけでございますけれども、今度のガイドラインのいわゆる周辺事態の問題というよりも、むしろ中国側考えでいる考えの根底には、 日米安保条約は昭和三十五年に結ばれておる、ところが、その後に日中平和友好条約が成立しておる、あるいはまた米中関係も正常化しておる、そういうときに、その日米安保条約の中で述べられております極東という概念がその当時のままであるかどうか、ここに対する疑念があるわけでございます。  そういうようなことにつきましては、日米安保条約を昭和三十五年に結びまして、それから今日までずっと来ておるわけでございますから、日本としては対米関係において改正しない以上は権利義務関係というのは確定しているのかもしれませんけれども、その後の状況が変わっておるという思いがありますので、その辺については日米安保条約までさかのぼってこれを云々というようなことはなかなか簡単にいかないのじゃないかなという気持ちがありましたので、私は、本当の意味で、今度のガイドラインについては一つ一つ説明しますけれども、そういうような基本的な問題がやはり中に残っているのじゃないかという感じがしましたので、あのような発言をしたわけでございます。
  27. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 その点についてはこれ以上質問をいたしませんが、一つだけ。  ことしの二月に向こうの遅浩田国防相が日本に来られて、それに対して、防衛庁長官が今回訪中をされた。大変積極的な日中間の平和的な関係に向けての、今でも平和的関係なのでしょうが、さらに相互理解を深める上で大変意義のあることであろうと思いますので、今後ともこうした御努力を続けていただきたいと思いますが、今後の日中間の防衛交流といいますか、相互交流といいますか、そういう点については何かあったのでございますか。
  28. 久間章生

    久間国務大臣 今回の会談でも、今度の私の訪中の後を受けて博全有総参謀長が日本に来ていただく、そしてまた我が国からも統合幕僚会議議長が訪中するというような、今度は制服のトップレベルの相互訪問を実現するということについても合意いたしました。  また、艦艇の相互訪問についても引き続きいろいろな調整をしていこう、できれば来年には来ていただきたいということを申し上げたわけでございますけれども、この艦艇の相互訪問というのは、一番目に見える形での交流になるからということでお願いしておったわけでございますが、来年は、もうとにかく世界各国、全部行く先が決まっておりますというようなお答えでございました。それでは、これから先、いろいろ事務的に調整させていただきたいという話をしましたら、外交ルートを通じて調整しましようというような話がございました。そのほか、いろいろと軍種別にも交流をしようというような話がございました。  そういう意味では、先ほどのいわゆる台湾の問題については、その点は非常に厳しい話がございましたが、全体として言いますならば、やはり日中の防衛交流を進めていこうと、非常に友好的な雰囲気で話は終始したわけでございます。
  29. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 ありがとうございました。  PKO法案について、まず武器使用の問題についてお尋ねをしたいと思います。  従来、武器使用隊員個人判断に任せていたわけでありますが、それはいろいろ議論があったわけですが、それを捨象して申し上げますと、結局はそれは間違っておったということでありますか。
  30. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  法案審議当時、政府は、PKO法上の武器使用は、いわば自己保存のための自然権的権利に基づくものであるから、その判断個々隊員判断にゆだねることが適切であるという答弁をいたしました。それが間違いであったかという御指摘ですけれども、その当時はいまだ派遣の経験がなかったわけでありまして、そういう派遣の経験がない当時の判断としてはやむを得ない判断であったというふうに考えております。  しかし、カンボジア、ザイール等への派遣の経験から、個々の自衛官がばらばらに判断するのでは統制を欠く、かえってその結果として生命または身体に対する危険や事態の混乱を招くことがあり得るということ、それから、PKOに参加しています他の国の状況からもこういう問題点が確認されたわけです。  したがって、今回、原則として、現場で最も適切な判断ができる者、すなわち、現場にある上官命令による使用へと法律を変えさせていただきたいということをお願いをしております。これは、法案当時の政府答弁を改めるものでございます。
  31. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 これはそういうふうに改めることは結構なことだと私は思いますので、かつての考えは間違っておったというふうに率直に言われた方がいいのではないかなと思います、そういう答弁でありますので。  そういたしますと、自己または自己とともに現場に所在する我が国要員生命または身体防衛することは、今おっしゃったように、いわば自己保存のための自然権的権利というものであるから、そのために必要な武器使用というこの目的、趣旨については、これは全く変化がないのですか。
  32. 茂田宏

    茂田政府委員 今回の法改正におきまして、武器使用目的は、現行のPKO法二十四条に書いてあるものから膨らんでもいないし、減ってもいないということで、同じでございます。すなわち、自己または自己とともに現場に所在する隊員生命及び身体防護という目的については変わっておりません。  その基本的考え方を維持した上で、その枠内で、いわば方法論といいますか、方法として、現場にいる上官命令に原則として従うということによってその目的をより適正に達成したいというのが、今回提案している法改正の眼目でございます。
  33. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 先ほども一部議論があったわけですが、ここには「自己又は自己と共に現場に所在する我が国要員生命又は身体」となっているわけで、それからまた「自己保存のための自然権的権利」というふうに書いてあるわけです。そうすると、それは、上官命令によって隊としてそれに対して対応する、どうも文章的にも余りすっきりしないような気がするのですが、上官命令によって武器使用を行うというのは、これは集団的な行為ないしは組織的な行動ということになりますね。
  34. 太田洋次

    ○太田(洋)政府委員 お答えいたします。  先ほど事務局長の方からお答えしましたように、ごれはあくまでも個人生命身体防護するというための武器使用でございまして、その武器使用の仕方と申しますか、その目的をより適切に行えるように上官命令をそこに置くということでございます。  それはある意味で組織的に使うという言葉が当たるかもしれませんけれども、それは、あくまでも基本的な考え方は、個人生命身体防護するために武器使用の適正化を図るという目的のためでございまして、その意味では、それがある意味で組織的に見えたからといって、いわゆる憲法で禁止されている武力行使に当たるというふうには考えておりません。
  35. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 そうすると、上官が何らかの状況を判断して隊員個人武器使用命令するのですか。あるいは、それが複数である場合あるいは隊全体として武器使用を一律に行う、そういう概念ですか。
  36. 太田洋次

    ○太田(洋)政府委員 これは、実際の現場の状況はさまざまでございます。したがいまして、一人で行動する場合もないわけではありません。二人の場合もあるし、それ以上の場合もございます。その場合にどういうふうにやるかということでございますけれども、一人である場合はもちろん個人使用できますし、それが複数になりました場合には、現場にある上官がそれを命令して行うということになるわけでございます。
  37. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 隊でありますから、隊として大体統一して行動をしている中で何か身の危険が生 海外における日本自衛隊のいわば国際貢献活動としてのPKOへの参画ということを一つケースにして、自衛隊が海外で活躍するという部分に関してのもろもろのことをひっくるめて国民の受けとめ方というものに大きな変化があると認識しておられるのかどうか、それとも余り変わっていないというふうに思っておられるのかどうか、この辺についてまず冒頭に官房長官にお聞きをしたいと思います。
  38. 村岡兼造

    村岡国務大臣 今の質問は、憲法で禁止する武力行使に至らないまでも戦闘行動が起こると戦闘行動というか、自己生命身体を守るため、仮に万が一発砲があったとしても、戦闘行動と言えるかどうか、私もわからないところでございますが、マスコミ各社等による国際平和協力業務の実施に関する世論調査の結果を見ますと、支持する回答の比率は着実に増加しており、国際平和協力業務に対する国民の理解は深まっていると考えております。また、総理府が毎年実施いたしております外交に関する調査においても、法案成立後の平成六年以降、国連PKOに対する支持は八割以上の高い数字で推移をいたしております。ちなみに、総理府における外交に関する世論調査の国連平和維持活動に対する支持の推移でございますが、いずれも十月でございますが、平成六年の十月は八三・九%、七年の十月は八八・二%、八年の十月は八九%、平成九年の十月は八八・四%と、高い支持を得ていると感じているところであります。 の行使というのと先ほど来議論している武力行使というのとは違う概念で私は言っておりますので。  今憲法長官は持ち出されましたので、憲法との関連についてさらに話を進めます。  そうすると、今まで、これまでの議論における武力行使というものが憲法に禁じる武力行使に絶対に至らないというその保証は何ですか。
  39. 茂田宏

    茂田政府委員 これは平成三年九月二十七日に出した政府統一見解をもう一度繰り返すことになりますけれども、憲法第九条第一項で禁じられている武力行使に関しまして、これは「我が国の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為をいい、」ということでありまして、このPKO法での武器使用というのは「自己又は自己と共に現場に所在する我が国要員生命又は身体防衛すること」という、いわば自己保存のための自然権的権利行使ということでありますから、そういうことのための武器使用というのは憲法第九条第一項で禁止されている武力行使には当たらない、ここに保証があるというふうに考えております。
  40. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 紛争とか戦争というものは、ちょっとした契機で大きな規模のものに発展することもあるわけでありまして、それが自己保存のためのきっかけであったから憲法に言う武力行使に至らないということは言えないと思うのです。今の御答弁は大変苦しい御答弁ではないかなと思うわけですね。  それでは、少し助け船を出すわけじゃありませんが、この武力行使というものが発展しそうになった場合には、これは遅滞なく引き揚げるなり、その武力的な行為が発展しないような措置というものは考えておられるのですか。
  41. 久間章生

    久間国務大臣 その前に、先ほどから言っておりますように、PKOに出かけていく場合、PKFも含めてですけれども、停戦合意ができている状態の中で出かけていくわけでございますね。自己保存的な自然権を守るために武器使用して、それが部隊とのいわゆる小競り合いといいますか、あるいは小競り合いからもう少し大きい規模になるかもしれませんけれども、停戦合意が崩れてしまって、相手国と要するに国際的な紛争になるというようなことになるならば、PKOの前提が崩れるわけでございますから、そういう崩れた場合にはやめて撤退しなければならない、そういう大原則になっているわけでございます。  だから、PKO法の二十四条における武器使用が、それでもっていわゆる国際紛争の、武力闘争としての、憲法九条に抵触するような武力行使になるということはまず考えられない、そういうふうに思うわけでございます。  したがいまして、そういうような停戦が崩れるような状態のときは、法律にありますように、いわゆる五原則のうちの一つに従って業務を停止して帰ってくる、そういうことになろうかと思います。
  42. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 それは考えられないと言ったって、あり得ないことじゃないわけであります。停戦合意といっても、それじゃ何のために停戦合意が必要かといえば、不安定な紛争状況があるから停戦合意というふうに言われているわけですから。  例えばカンボジアのようなところの停戦合意というのはその後どうなったかと言えば、停戦合意が存在する中においてもゲリラ戦はあったわけでしょう。私が先ほど来言っているのは、そういう紛争状態の中での話ですから。これは、停戦合意があればぴたっと軍事的な動きがとまるということではないわけですよね。ですから、私は、今の長官の御答弁はもう一度聞き直してみなくてはならないのではないかと思います。
  43. 久間章生

    久間国務大臣 逆に言いますと、個人個人が一斉に撃ち出して、全員が撃ってしまった場合だってそういうことになり得るわけでございます。しかし、そういう場合も、前回法律をつくるときに、これだけのいわゆる五原則を引いた上で二十四条を設けておれば武力行使にはならないということで踏み切ったわけでございますから、それをより適切に、混乱を招かないために、あるいはまた抑止する方法だって含めて、指揮官命令にしたからといって武力行使になっていくということは考えられないのではないか、そういうふうに思うわけでございます。  従来、ばらばらでやっても、全員が撃つということだってあるわけでございます。それに対して、向こうはまた反撃するということだってあるわけでございます。そういうようなときに、今回、上官命令にしたから、それが武力行使になってしまうんだという論理ならば、従来のやり方だってそういうことはあり得たということになるわけでございます。  しかしながら、この法律をつくったときに、いわゆるPKO派遣の五原則を前提にしてやるならばそういうことにはならないということで、各党合意をいただいた上で法律がつくられたというふうに伺っております。  ただ、そうはしておっても、PKFについてはまだまだいろいろ問題があるからしばらく凍結しようということで凍結された。少なくともほかの業務については大丈夫だということで二十四条もつくられているわけでございます。  そういうことと考えあわせますと、現在、それを上官の命にしたから武力行使につながっていって憲法違反になるんだ、だからいかぬのだという理屈にはならないのではないか、そういうふうに思うわけでございます。
  44. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 長官、大変御答弁が巧みであられまして、御都合のよろしいときには国会での議論を持ち出されるわけですが、私が先ほど来こういう主張をしておりますのは、一方には、やはり上官といえども命令を下すということは非常に重い仕事だ、危険が及んだというので、ちゅうちょしなければならないとか、どうしたらいいかわからぬということがあり得る。そうすると、せっかくこういうことを決めても実効性がどこまであるかという問題になってくるだろうと思うのですね。  したがって、私は、国会でやはり何らかのこれを裏打ちすることが必要ではないかと。責任はこっちだよ、あとは現場のプロフェッショナルの判断によってやってくれと。ある程度のところはそうした自由なといいますか、隊としての一つのやりやすい状況を保証してやる。そういう意味で、私は、国会の何らかの承認ということを言っているわけです。  そういうことに対しては、長官は、国会承認云々ということは国会が後で突っ込んで決めたことなので私は知りませんというようなことを言うわけですね。だから、御都合のよろしいときに御都合のよろしいところを引っ張り出されても困るわけでございます。  国会の承認ということは、危険が迫っているときに、上官命令をする前に国会が一々どうこうするなんということは現実的にはできませんよ。したがって、一定の行動については上官命令でもってある程度のところまではやっていいよということを、まずPKO派遣の計画をつくる、それを国会で承認するということがやはり必要であろう。あるいは、少なくともその行動計画の実施はどうだったのかというものを、終わってからじゃなくて、やはり一定の節目節目に国会議論をしていく。そうしたお考えが全然ないというのはおかしいのではないかと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  45. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  PKO法上では、現在凍結されておりますPKF本体業務に関しては、これは開始前に事前に国会に承認を求めるということになっております。  PKF本体業務以外のPKO業務に関しましては、実施計画を閣議で決定した段階で国会に報告させていただいております。PKO派遣業務が終了した際には、PKO業務の結果ということで、これまた報告させてもらっております。長い間続く場合には、PKO業務の実施の状況というのを報告させてもらっております。  これは、国会で御議論していただいて、いろいろな意見を聞かせていただくというのは、我々としても大変有益なことだというふうに考えております。
  46. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 国会に報告までするのだから、報告したらその承認を受けるということにしたらいかがですか。防衛庁長官と官房長官はいかがですか。
  47. 久間章生

    久間国務大臣 御承知のとおり、PKFについては国会承認になっているわけでございますね。そしてへ二年たちましたら、これまたPKFについては国会の承認を得て延長することになっておりますけれども、それ以外のものについては報告でいいというのは、これは最初の計画は報告で十分、しかも五原則が守られているところでやるから、これなら行っていいよ、思い切りやっていらっしゃいというようなことでこの法律ができているというふうに理解しておりますので、現在行われている制度が粛々とうまく機能しているのではないか、そういうふうに私は思っているわけでございます。  ただ、今回お願いしておりますのは、その中で、個人個人判断対応しているのが混乱を招くことがあるから上官の命によって統制をとった方がより適切ではないかということでお願いをしているわけでございますので、どうかその辺の事情等については御理解賜りますと同時に、PKFの場合についてはまだ今凍結されておるわけでございますので、その辺のところもかんがみて、PKOについては、そういう点でも武力行使とは直接結びつくことはなかなかないだろうというような御判断のもとで、かなり柔軟な内容になっておるのではないかというふうに思っておるわけでございます。
  48. 村岡兼造

    村岡国務大臣 基本的には久間長官考えと同じでございます。  私は余り詳しくはないのですが、PKOへ行くときの激励や帰ってきてから慰労をしたときに、隊員の方々から、個々判断武器使用ということでは大変困る、こういう話も聞いております。また、外国のPKOの派遣隊員はやはり上官の命によって武器使用をする、こういう話も聞いております。  先ほど、今までのものは間違いではなかったか、こういうお問いがあったわけでございます。答弁としては、やむを得なかった、こういうような答弁をしたようでございますけれども。当時、七、八年前でしたか、派遣するときにはなかなか議論がございまして、まだ初めての状況でありましたので、個々判断によってと。それがかえって混乱を招く事態にもなりかねない、また、実際に数カ国経験をいたしまして、隊員の方々あるいは隊長の方々の意見も聞き、外国の例も聞きまして、今回の法改正を提出した次第でございます。  今般の武器使用にかかわる改正案は、私どもとしては、何ら憲法に抵触するものではなく、またこれまでの憲法解釈を変更するものではない、このように考えているところであります。
  49. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 官房長官国会に事後報告することになっているのです、PKOが終わった後。終わった後に、そのPKO活動がどうであったのか、武器使用があったにしろなかったにしろ、そうした評価というものはやはり国会が少なくともすべきではないかと思います。その報告というものは国会の承認を必要とした方がいいのではないかと思いますが、いかがですか。
  50. 村岡兼造

    村岡国務大臣 過去の経験におきまして、武器使用は、カンボジア、モザンビーク、ゴラン高原、ザイール等に派遣しましたけれども、今まで自衛隊が実際に武器使用をした例はないと聞いておりますけれども、これはいろいろなケースがありますので、今後、またそのような問題も起きる。  同時に、お尋ねは、国会に報告をしただけではだめで承認をというようなお尋ねでございますが、これはいろいろな事例がございますので、報告をするだけでよいのではないか。事後承認というのもちょっとおかしな話ですし、いろいろな状況で報告だけでよいのではないかと私は思いますけれども。
  51. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 私は、実施計画の段階でやはり国会が承認をした方がいいと思います。自衛隊の皆さんは体を張ってそういった国際平和協力活動に使命感を帯びて頑張ってくるわけですから、それを国会がある程度守ってやらなければならぬということと同時に、それを国の全体の問題として扱う、そういう意味においてもぜひ国会の関与というものが必要だろうと私は思っているわけでございます。  それから、先ほどの停戦合意というのはどうも私はあいまいに聞こえて仕方がないのですが、停戦合意というのは、そういう紛争地域、非常に不安定な混乱した状態の国々または地域または組織、こういう中での関係でありますので、何か合意のようなものはできたけれども、一方ではまだごそごそ煙が立ったり火が噴いたりしておるということはあるわけですね。これは、一体停戦合意というのをどう認識をしているのか、もう一回そこを詳しく言っていただきたいと思います。
  52. 茂田宏

    茂田政府委員 PKO法の中で、停戦の合意というのは大変重要な役割を果たしているものでございます。  停戦の合意というのはどういうものかということですけれども、法律では「武力紛争の停止及びこれを維持するとの紛争当事者間の合意」ということで定義をしております。  停戦合意の形式に関しましては、停戦協定の署名、調印の形で実現する場合もありますし、国連安保理事会が停戦を呼びかける決議をして紛争当事者がそれを受諾するという形式、それから文書によらない意思の表明、いろいろなものがあり得ると思います。  この停戦合意はそういういろいろな形式がございますけれども、武力紛争の停止及びこれを維持するとの紛争当事者間の合意というものが確認できるものであれば、これは停戦合意があるということになるのだと思います。  停戦合意かてきた後に権勢が不安定になることがございます。これは、双方の紛争当事者の中には内部でいわばはね上がり分子というようなものがいまして、これが停戦違反行為をするというようなことがございます。停戦合意違反行為がどれくらいふえてきたら既に停戦合意はなくなっているのか、そういうところの適用の問題といいますか、そういう問題については、具体的な状況に応じて総合的に判断した上で決めざるを得ない問題であろうというふうに私は思います。
  53. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 どうも具体的な状況の中で総合的に判断して決めざるを得ないというわけですが、これはもう少しきちっとした原則を立ててもらいたいと思うのですね。  やはり紛争をやっている当事者というのは、戦闘集団みたいなもの同士ですから非常にエキサイトしておりまして、それぞれの組織の内部においてもいろいろな分派があったりするわけですから、合意はあっても一方ではまだゲリラ戦がある、あるいはまたそれがぶり返して停戦合意がしばしば破られてしまうということが起こるわけですから、その都度PKOに参加したり引き揚げたりなどするのか。もう少し具体的な状況を想定した中に立って、この停戦合意というものの概念を詰めていく必要があるのではないかと思うわけです。  それから、そうした停戦合意というものがない場合でも国際救援活動のための人道的物資協力というものはできるということにするわけですが、この点について若干伺いたいと思います。  この場合の人道的物資協力の物資は、ここに掲げられてあるもの以外にはどういうものが想定されますか。
  54. 茂田宏

    茂田政府委員 人道的な国際救援活動で必要になる物資についての御質問ですけれども、テントですとか毛布ですとか医薬品、そういうものが主になると思います。
  55. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 そういうものが主ということですが、その他いろいろたくさんあるのだろうと思 います。  そうすると、この人道的ということはどういうことになりますか。
  56. 茂田宏

    茂田政府委員 人道的というのは、人道的な観点から見て看過し得ないような事態を除くために行われるものだというふうに思います。
  57. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 名答弁だと思いますが、人道的とは何かと聞いているときに、人道的なという言葉を使ったのでは、これはわからないことになってしまいます。ですから、例えば難民、避難民が出ておって、その人たちが生死の危険にさらされておるとか、そういうような言い方で、もう一回ちょっと人道的というのはどういうものなのか言ってくれませんか。
  58. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  法律に人道的な国際救援活動の定義というものを置いてあります。これは、この法律での人道的な国際救援活動ということの定義なのですけれども、「国際の平和及び安全の維持を危うくするおそれのある紛争によって被害を受け若しくは受けるおそれがある住民その他の者の救援のために又は紛争によって生じた被害の復旧のために人道的精神に基づいて行われる活動」、そういう定義を置いております。
  59. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 そうすると、この人道的支援、人道的救援活動における物資協力というものが、戦争や紛争によって生じた、それによって生命の危機にさらされるとか、そうした者に対する支援というわけですが、その先の方には戦争とか紛争というものがあるわけですね。  そうすると、これは、ここまでが人道的支援、ここから先は、余りそれ以上支援すると、人道的というよりもむしろどっちかに加担するというようなことにもなり得る、そういう一連の関連というものがあると私は思うのですが、これはどこまでで線を引くとかいう考えはありますか。
  60. 茂田宏

    茂田政府委員 我々が考えております人道的な救援活動というのは、紛争の被災者、被災民、端的に言いますと難民が多いと思いますけれども、そういう人々に対する救援活動ということで考えております。
  61. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 それはそうなのですが、例えばルワンダなどの場合はザイールまでしか行かれない。それで、ザイールからルワンダに援助しようとすると、この物資というものは自分では持っていけないわけでしょう。何らかの国際機関に預けて、持っていってもらうということになるわけなのですが、そうすると、後は国際機関任せということで、ある意味では、その国際機関というものが必ずしも国連のUNHCRだけとは限らないわけですから、その先どこへ行くかまでは見届けられないということになるわけでしょう。どうですか。
  62. 茂田宏

    茂田政府委員 今回の法改正案の中で、物資協力の相手方の国際機関を列挙してございます。  こういう国際機関というのは、例えば国連難民高等弁務官事務所ですけれども、これまでの活動を通じまして大変立派な成果を上げてきているところでございます。そして、中立的な活動というのに大変気を使っている機関でございます。我々は、こういう機関を信用して物資を渡す、それがどこか別の用途に使われるのではないかという懸念を持つ必要はないのではないかというふうに思っております。
  63. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 結局、ザイールだけに難民がいるのではなくて、ルワンダの、紛争をやっているその国の中に難民がいて、その難民を支援しようということでそういう国際機関を信用して渡すというわけです。そうすると、その国際機関に対して与えるということになってしまうのではないですか。  どこか行き先を、これはどこどこにいるどういう難民に、どっち側から来た難民とかいろいろあるわけですよ、それを指定するのでしょうか。
  64. 茂田宏

    茂田政府委員 我々が物資協力いたしますときに、これは停戦合意がない場合の物資協力ですけれども、それは非常に信頼できる国際機関を通じての物資協力ということについてのみ例外にしているわけでございます。  先ほどの答弁を繰り返すことになりますけれども、私は、国際機関を通ずることがまさにそういう紛争状況がある場合に中立性を確保していくのに資することだというふうに考えております。
  65. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 もうそろそろ時間が来ましたので、また次回に回したいと思いますが、こういう場合は例えば紛争当事者の同意というものは得られないわけですよね。あるいは、停戦合意ももちろんない。したがって、中立的な立場というものは守れないわけですよね。これは五原則に反するんじゃないでしょうか。
  66. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  先ほどの答えの繰り返しになりますけれども、先生はUNHCRという国際機関は御存じだと思いますけれども、例えばこのUNHCRという機関は、中立性ということについて大変気を使っている機関でございます。常に人道的な見地からの活動をしているということで、そういう国際機関を通ずることによって、難しい状況の中でも中立的な活動というのが担保されるというふうに考えております。
  67. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 時間が来ましたのでやめますけれども、それだったら、国際機関に渡すと言えばいいわけであります。そういう紛争の中に協力という形で介入していくわけですから、その物を預けた国際機関が中立的なところだからといって中立性が確保されるというものではないと私は思います。  これはまた次の機会に聞かせていただきますので、答弁は結構でございます。どうもありがとうございました。
  68. 塩田晋

    塩田委員長 岡田克也君。
  69. 岡田克也

    ○岡田委員 続きまして、民主党の岡田克也でございます。  きょうは、武器使用の点を中心にいろいろお聞きをしたいと思っております。  まず、部隊としての武器使用に関しまして、私自身が平成七年の六月九日、安全保障委員会におきまして、当時の玉沢防衛庁長官に対して質問をしております。その中で申し上げたことは、個々人判断による武器使用ということしか認めていないということが果たしてPKO隊員として行かれる自衛隊員の安全の確保にきちんとつながるのかどうか、こういう問いに対しまして、当時の玉沢長官は、私はこれは何度読んでも理解できないのですが、まずPKOで「危険であるあるいは身の危険を感ずるというような点におきましては、部隊長の判断によるかあるいは個人判断によるかは別といたしましても、危ないという認識共通のものがある」。「したがいまして、部隊長が命令によって武器使用をやると仮に決めたとしましても、危険性というものは去らない。」これは当たり前のことだと思うのです。したがって、「むしろ個々隊員がその使命を全うするためにその責任を明確にし、個々隊員が銃の発砲等におきましても責任を持つ、こういう趣旨をより徹底していった方がこの平和協力業務の趣旨に合うのではないか、私はこのように考えます。」、こういうふうに大臣は答弁されているわけでございます。  この答弁の意味は、私、必ずしもよくわからないわけでありますが、しかし、安全保障委員会におきまして、国会の場におきまして、大臣がこういう形で、個々隊員がその使命を全うするためにその責任を明確にして、個々隊員が銃の発砲等におきましも責任を持つ、その方が法の趣旨に合うんだということを明確に述べておられるわけです。  防衛庁長官は、この考えを現在でも維持されるということでしょうか、それとも変更するということでしょうか。
  70. 久間章生

    久間国務大臣 変更する必要性が生じたからこそ、今回、法改正をお願いしているわけでございます。
  71. 岡田克也

    ○岡田委員 そこで、私の方ではこういうことも申し上げております。自衛隊法の八十九条二項で、自衛官が武器使用するには、基本的には部 隊指揮官命令によらなけれはいけないということになっている、ところが、このPKO法ではそれが個々使用でなければいけないということで全く逆転している、そこが基本的におかしいのではないかということを私は申し上げているわけでございます。  その上で、PKO法律をつくったときは社会党は野党であった、しかし、その社会党が与党の一角を担い、村山総理大臣も出している、そういう状況のもとで一いろいろな経緯があって部隊武器使用というのは認められなかったんだけれども、総理まで社会党が出している状況のもとで、現実に隊員を送り出している立場にある防衛庁長官がリーダーシップを発揮して、従来のおかしな法律上の考え方を改めるべきだ、法改正をすべきだということを申し上げております。  それに対して、当時の長官は、「法律を変えるという考えは全く持っておりません。」、こういうふうにお答えになったわけでございます。  私は、これはやはり政治家としての責任感の問題じゃないかと思います。だれが見てもおかし-い。もちろん、この法律をつくるときにはいろいろな経緯があって、そうでもしないと通らないという状況があったかもしれない。しかし、その後、事情が変わって、社会党の総理大臣が誕生した以上、私は、閣内において当時の防衛庁長官が総理を説得して、自衛隊員が危険な状態に置かれている、そのことを一刻も早く解消すべきだということで、法改正についてのイニシアチブをとるべきではなかったか、こういうふうに思うわけでありますが、長官の御感想をお聞きしたいと思います。
  72. 久間章生

    久間国務大臣 実は、三年後に見直すということで平成七年の八月から見直しが始まったわけでございまして、今まさに委員が御指摘になりました委員会でのやりとりは六月の時点でございます。それから二カ月後に、PKOについてこれでいいのかということで見直しが始まったわけでございますので、その時点で果たして全く考えておられなかったかどうかはわかりませんけれども、まだ政府として、それから検討を始めて、改正をこうするということを決めるまでは、やはり今みたいな答弁になったんじゃないか。  あの答弁でもただいまのところということを言っておりますので、それからニカ月後に改正の作業に入ったということを考えますと、その辺はどのような事情にあったのかは私もつまびらかに聞いておりませんけれども、その後、八月からPKO法改正等の作業に政府としては取り組んでいったということを御理解賜りたいと思います。
  73. 岡田克也

    ○岡田委員 そこで、この改正作業ですが、平成七年の八月に法律で定めた見直し時期が来たということで事務的な検討作業に入った。そして、それから約一年後の平成八年九月に、「国際平和協力法の見直しについて」という総理府国際平和協力本部事務局の一応の取りまとめができた。その間、一年かかっております。そして、さらにそこから一年近くかけて平成九年の五月に、同じく総理府国際平和協力本部事務局の「国際平和協力法の改正について」という最終的な結論が出た。それからまた一年かけてこの国会法案が提出され、今議論されている、こういう流れであります。  つまり、見直しの事務的作業が始まった平成七年から約三年を要して今日に至っている。どうしてこんなに時間がかかったのか。いずれも確かに論点を含む問題だとは思いますけれども、しかし、きちんと議論していけば、こんなものは一年もかかる話ではなかろうというふうに私は思うわけであります。  なぜこれだけの時間を政府の中においておかけになったのか、そのことについての御説明を官房長官にお聞きしたいと思います。
  74. 村岡兼造

    村岡国務大臣 国際平和協力法の見直しについては、政府といたしまして、平成七年八月に同法に規定する見直しの時期を迎えて以来、これまでの派遣の経験を踏まえ、法の実施あり方について見直しを行った結果、先般、改正法案国会に提出したものでございますけれども、遅かったじゃないか、こういうお話でございます。  私も国対委員長を前に経験をいたしまして、昨年とかおととし、国会の情勢その他もいろいろございまして、延び延びになってきたことも事実でございます。遅くはなりましたけれども、何とか今回この法案を上げていただきたいとお願いをいたします。
  75. 岡田克也

    ○岡田委員 今、国会の情勢というふうに言われましたが、三年かかったのは国会が理由ですか。国会が理由で三年間かかったわけですか。今の御説明はそういうふうに聞こえましたが、私はそうじゃなかろうと思うのですよ。  ですから、なぜこんなに時間がかかったのか、そのことについての御説明をいただきたいと思います。
  76. 村岡兼造

    村岡国務大臣 七年から二年数カ月になりますけれども、この見直し検討も、少し延びて長くかかったろうと思いますけれども、その後、ある程度まとまってから、また国会の情勢もあって、提出時期というものは今回になったという説明をしているところであります。
  77. 岡田克也

    ○岡田委員 まず、国会の情勢というのは具体的におっしゃっていただけませんか。国会に出すことは、政府としては別に障害があるわけじゃございませんね。閣議決定して、国会に出せばいいわけですから。  だから、国会に出した後、この委員会あるいは本会議議論されるまで、非常に、一年も二年もかかったというのであれば今の御説明で納得できますが、おくれたことを国会のせいにされて、それは具体的にどういうことなのか、明確に述べていただきたいと思うのです。
  78. 村岡兼造

    村岡国務大臣 私は与党の国対委員長も経験いたしました、与党内のいろいろな調整に長くかかった、こういうことであります。
  79. 岡田克也

    ○岡田委員 つまり、国会の中での話じゃなくて、与党の中での話である、こういうことでございますね。わかりました。  私は、この武器使用について、個々人判断に任せるというのは現場の自衛官の皆さんにとっては非常に酷な話でありまして、心理的なプレッシャーも非常に大きいということを想像できるわけですし、現にそういう話も聞いております。私は、このPKO法ができて以来、今日までの間に、武器使用のこの規定が障害になって自衛官の方に、例えばお亡くなりになるとか、あるいはけがをするとか、そういうことが起こらなくて本当によかったなというふうにつくづくと思うわけでございます。  しかし、そういう危険は常にあったわけで、私は、やはり自衛隊を送り出す立場にある長官として、あるいは政府の中でこの法律を所管する官房長官として、この法改正についてはもっと真剣に、急いで取り組むべきではなかったのか、そういうふうに思うわけでございますが、改めてその点についての御見解をお聞きしておきたいと思います。
  80. 久間章生

    久間国務大臣 御承知のとおり、今言いましたように、平成七年から検討を始めたわけでございますが、平成八年には選挙があっております。法律というのは、私もその作成を役所におってやったことがございますけれども、選挙の前でございますと、国会がうまく通るかどうかということを心配するわけでございます。そういうこともあったんだろうと思います。  私が就任しましてから、PKO本部の方と一緒になりまして防衛庁としても作業を急ぎまして、平成八年から急ピッチで皆さんやっておられまして、平成九年にはでき上がったわけでございます。  そういうようなこともございまして、今度法律を出しますときには、出して、これがまたスムーズに通らないと、また廃案ということになると大変なことになりますので、その辺も見ながら政府としても提出時期をうかがうわけでございまして、そういうことも背景にはあるのだということをぜひ御理解賜りたいと思います。  したがいまして、与党もひっくるめまして、国会としてとにかく通してもらわないといかぬわけでございますから、そういう意味では、ぜひこの政府案で通していただきたいという気持ちがありますので、できるならば賛意を得た上で通していただけるというような見通し等についてやはり私たちも慎重に考えざるを得ないわけでございますので、どうかその辺の事情を政府側としては持っておるということも御理解賜りたいと思うわけです。
  81. 岡田克也

    ○岡田委員 今の御説明は、私は全く納得しがたいわけです。  もしそういうふうにおっしゃるのであれば、現在出されているこの法案は、野党はこれについてオーケーとどこかで言っているのですか。私はこの問題の責任者ですが、民主党として、この法案について、出す前から結構ですと言った覚えはございません。しかし、今の長官のお話は、見通しがつかないと出せなかったんだということは、今回出したということは、見通しがついているということになるのじゃないですか。
  82. 久間章生

    久間国務大臣 そういうことじゃございませんで、国会の御論議等がまずスムーズに進めていただけるかどうか、そういうような雰囲気、そういう国会の状況、先ほど官房長官がおっしゃられましたように、官房長官は国対委員長としても経験があられますので、そういうような国会の情勢かどうか、そういうふうなことを総合的に判断されながら、今回、出そうというふうに最終的に決めたということでございます。  だから、各党それぞれの賛意を全部得た上で提出したというわけじゃございませんので、どうかその辺の事情等も、そうはいいながらも、当委員会における質疑とかいろいろな形の中で、これはどうなっているのか、早くせよというような御意見等も結構いろいろ出ておるわけでございますから、そういうような御意見等もしんしゃくしながらやらせていただいて、しかも国会の会期とかいろいろなことを考えながら、とにかく出した以上は一日も早く通していただきたい、また通せるような雰囲気の中で出させていただきたいという気持ちで出させていただいたということでございます。
  83. 岡田克也

    ○岡田委員 先ほどの官房長官の御答弁の方が私は正直だと思うのですね。  結局、これは政府の中あるいは与党の中での問題でありまして、自社さ政権のひずみがここに出ている、大きなひずみの一つがここに出ているというふうに私は思います。こんな簡単なことといいますか、重要であり、かつ、やる気になればできることが、これだけ時間がかかったのは、そういった自社さ連立というものの大きなマイナス点であったということを私は申し上げておきたいと思います。  そこで、私は、今までの質問でもおわかりいただきますように、個々隊員判断を強いるのは間違いであるという基本的な考え方でございます。しかし、だからといって、今の法案でそのまま納得するというものではございません。少し詰めておきたい点がございますので、その点についてこれから順に御質問をしたいと思います。  まず、平成三年の九月二十七日に武器使用武力行使関係についての政府統一見解というものがございます。この政府統一見解というものは、今回の法改正に当たってもそのまま維持しているというふうに考えてよろしいのでしょうか。
  84. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  武器使用武力行使関係についてという、これは平成三年九月二十七日に衆議院のPKO特別委員会に出した統一見解ですけれども、これは現在も維持されております。
  85. 岡田克也

    ○岡田委員 ということは、今回の指揮官命令による武器使用ということについても、この統一見解にあるように、  自己又は自己と共に現場に所在する我が国要員生命又は身体防衛することは、いわば自己保存のための自然権的権利というべきものであるから、そのために必要な最小限の「武器使用」は、憲法第九条第一項で禁止された「武力行使」には当たらない。 こういう解釈ですね。
  86. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  そういう解釈でございます。
  87. 岡田克也

    ○岡田委員 それじゃ、ちょっと話が回り道をするかもしれませんが、憲法九条による武力行使と自衛権の発動ということについての従来の政府考え方について確認をしたいと思うわけであのます。  従来、自衛権について、これは個別的自衛権を言ったものだと私は理解をしておりますが、自衛権というのは国の基本的生存維持のための権利である、したがって、憲法九条一項で禁止された武力行使には該当しないのだ、こういう御答弁をされていると思いますが、そのことの意味というのはどういうことなんでしょうか。  九条一項は武力行使というものを基本的には禁じているわけでありますが、九条一項とは一員矛盾するがより根源的な自然権として自衛権の行使というのは認められているのだ、こういう考え方だと私は理解するのですが、そういうことなのか。それとも、九条一項によって、個別的自衛権の発動というのは例外として除かれているのだというふうに考えるべきなのか。どちらなんでしょうか。
  88. 久間章生

    久間国務大臣 これは私の見解でございますけれども、私は、今委員が御指摘になったように、国としての自己保存的な権利、それが個別的な自衛権だと思っております。
  89. 岡田克也

    ○岡田委員 したがいまして、九条一項は、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」こういう規定を見る限りは、個別的自衛権の発動も九条一項には形式的には該当する、しかし、より根源的な自然権というところで、個別的自衛権というのは、何をもっても、憲法であっても排除できないぐらいの根源的なものだからそれは認められているのだ、こういうことでよろしいですね。
  90. 久間章生

    久間国務大臣 九条一項は個別的自衛権を排除するものではない、そのように理解しております。
  91. 岡田克也

    ○岡田委員 そこで、それじゃ今回のこの武器使用というのは、同じような考え方に基づいて、自分の身を守る、身体を守るということは根源的な自然権だから九条一項の問題でないというふうに考えているのか。私は、今までの政府統一見解はそういうふうにも読めるわけです。そうじゃなくて、九条一項に定める武力行使には該当しない、つまり自然権とかそういう次元の話じゃなくて、九条一項という土俵に乗っかった上で、そこに条文上該当していないんだという考え方に立つのか。これはどちらなんでしょうか。
  92. 久間章生

    久間国務大臣 かって政府見解平成三年に出されましたときも、一と二というふうに分けて書いてありますように、これは両方の意味からも、自己保存的な自然権的権利だという意味でも武力行使には該当せぬし、また一般的な憲法九条で書いているいわゆる国際紛争の一環としての戦闘行為というような点からいっても、いわゆる停戦合意がなされている状態の中で行われる武器使用にすぎないのであって、ここで言う武力行使には当たらない。両方の意味からもこれはいわゆる武力行使とは違うんだということを、平成三年の時点での統一見解で出されました文書は書いているのじゃないか。ダブルの意味で、両方からいってもこれは違うということを言ったんだというふうに理解しております。
  93. 岡田克也

    ○岡田委員 仮に、長官がおっしゃるように、両方の意味があるのだというふうな考え方に立ったときに、今回の部隊としての武器使用を認めた場合にも、今長官がおっしゃる両方の意味での理由というのが依然として通用するのかどうかというところについてはいかがでしょうか。
  94. 久間章生

    久間国務大臣 私は、平成三年のこの統一見解は現在も維持できるというふうに思います。
  95. 岡田克也

    ○岡田委員 私はちょっとそこに疑問を感じるわけでございます。  というのは、従来は個々人がみずからの身を守るために武器使用するということでありましたから、個々人自然権的権利というのが根源的なものとして憲法以前にあって、その発動としての武器使用は法に言う武力行使に当たらないという解釈が成り立ったと思うのですが、今回部隊としての使用ということになりますと、個々人判断というよりも部隊としての使用になりますから、少しそこからずれが出てくるという感じがするわけであります。  なぜそんなことを言うかといいますと、もし部隊としての使用についても根源的な権利であるということを認めてしまいますと、それがさらに拡大していく可能性はないのかということを非常に危惧するからであります。やはり自然権と言うからには、それは国か個人ということであって、集団について自然権という考え方を認めるべきではないのじゃないか、私はこういうふうに思うわけですが、いかがでしょうか。
  96. 久間章生

    久間国務大臣 私どももそのように思っております。今度の場合でも、単に命令によってするというけれども、それは個人としての自然権というようなものの延長であって、部隊としての、その集団のいわゆる自己自衛権といいますか、そういうものではないというふうに思っております。  私は、先ほど一と二と二つの意味から別だと言いましたのは、一の方においては、憲法九条で言っている武力行使というのはいわゆる国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為をいうということからも外れておるという意味で、武器使用武力行使にはならないということを言ったわけでございます。  そして、個人の問題としての今度のものも、武器使用はいわゆる自己保存のための自然権的権利というもので、それは武力行使とは別だということを言ったわけでございます。  今回、命令によって武器使用ができることになっているけれども、それは従来の目的と変わらない。ただ、それの混乱を避けるために、より適正な武器使用ができるようにということで命令によるとしたことであって、部隊自己保存というようなことになりますと、それは非常に-今言われましたように、個人あるいは国という場合ははっきりしておりますけれども、部隊自己保存のための権利だというふうに言ってしまいますと、かなり広がるような気がするわけです。  そういう意味で、従来の一と二の二つの考え方を今回も踏襲しているのじゃないかというふうに私は理解しております。
  97. 岡田克也

    ○岡田委員 長官の基本的な考え方と私は余り違っていないように認識しておりますが、ですから、一と二というふうな分け方をすれば、一のところ、つまり憲法九条一項の文章からいって、これは例えば少なくとも国際紛争ではないわけでありますから、武器使用武力行使に当たるかどうかという問題はそこでシロになっている、こういうことであって、自然権という話をここでは持ち出すべきではない。  個々人判断使用している状況においてはそういう議論ができたかもしれませんが、今や指揮官命令によって武器使用するわけでありますし、それから、みずからの生命を守るための武器使用だけではなくて、PKO法上はそうじゃない場合も認めているわけですね。例えば威嚇のために武器使用する、例えば天に向かって鉄砲を撃つということは認められておりまして、緊急避難正当防衛が認められるのは、それは相手の身体に対する攻撃は正当防衛緊急避難に当たる場合にのみ認められているわけであって、逆に言いますと、それ以外の武器使用というのも当然法律は念頭に置いているわけですから、ある意味でそういう広がったものについて、これは自然権だ、しかも部隊としての使用について自然権だというのは、私は将来に非常に禍根を残すように思うわけですが、いかかでしょうか。
  98. 久間章生

    久間国務大臣 確かに、従来、単なる判断で、やめという抑止的なときだけやっておったのを、今度は命令に変えることによりまして、まずおまえが威嚇射撃をしろ、相手に対して、撃つな、まず威嚇射撃をしろと命ずることによってそれをやる、その次にこうするという形で、手順を踏むことによってそういう射撃が行われます。  それは、今おっしゃられるように、相手に向かって反撃するというわけじゃございませんけれども、しかしながら、それを全部総体として見たときには、やはり自己保存としての自然権を、自己保存するためにその一連の行為が行われておるのだ、そういうふうにも理解できるのじゃないでしょうか。そう思いますと、今度の武器使用も、帰するところはやはり自己保存的な自然権だというふうに解していいのじゃないか、そういうふうに思うわけでございます。  といいますのは、これは国の自己保存的な個別的自衛権というのも一つありますけれども、個人のものもありますけれども、集団としてのものをどの程度認めるかというのはまだでき上がっていないのじゃないかというような気がいたしますので、私は、そういう意味ではやはり今回も従来の目的の延長線にある、そういうふうに理解しておるわけでございます。
  99. 岡田克也

    ○岡田委員 かなり大胆な仮定の議論をしますが、例えば、戦前満州事変が起きた、それで関東軍が敵から攻撃を受けた、そのときに、それに応戦する、これは自然権だ、こういう議論につながっていきませんか。
  100. 久間章生

    久間国務大臣 敵から攻撃されて、自分が危ない場合にそれに応戦する、自己を守るためにそういうような行動をとるということは、それはあると思います。  しかしながら、その前提として、我が国の場合、いわゆる国際紛争の一環としての武力闘争はしないという憲法九条の制約があるわけでございますから、そういう意味での武力行使はできないわけでございますから、そういう意味でダブりのチェックが入っておる、そういうことじゃないかというふうに思うわけでございます。  自己保存的な行為としてはやれるけれども、やれるからといって、それがどこまでやれるか、それの制約はやはりおのずからあるのじゃないかと思います。
  101. 岡田克也

    ○岡田委員 繰り返しになりますが、私は、憲法九条一項の「国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」というところで説明ができますと言えば十分であって、あえて自然権まで持ち出す必要はないということを申し上げているわけでございます。  なぜそんなことを言うかといいますと、従来、個別的自衛権の発動というのは自然権だから、九条一項があるにもかかわらずそれは国として本源的に持っているのだ、こういう説明が、先ほどもなされたように政府の御見解ですね。私は、それはそのとおりだと思いますが、一方では、それはかなり苦しい説明であることは間違いない。  いかに自然権であっても、憲法というものが実際の制定法としてあるときに、それよりも自然権の方が根源的だからそちらの方が優先するのだという考え方は、実は私は余り通用しない議論ではなかろうかというふうに思います。いろいろな憲法制定当時の事情、その後の国際情勢を踏まえて、苦しいながらそういう説明をせざるを得ないというのが私は現実の姿ではなかろうかというふうに思います。  実際は、日本の国家としては、憲法という実際に定めたものをもって規範とすべきであって、自然権などというものを持ち出すのは、それはよほどの説明ができないときの議論だろうというふうに考えるわけでございます。そういう極めて例外的な概念をこの場に持ち出す必要はないのじゃないかというのが私の問題意識でございます。  基本的には、憲法の条文上こういう歯どめがかかっています、だからいいのですという説明をすれば十分であって、こういうときに自然権という ものを持ち出す癖をつけてしまいますと、憲法自身が空洞化していく一つのきっかけになるのじゃないか、私はそういう気すらするわけでございます。  憲法があるにもかかわらず自然権ということで例外を認めるのは、今までの個別的自衛権のところだけで十分だ、そういうふうに思うわけでございますが、これについて何か御感想はございますでしょうか。
  102. 久間章生

    久間国務大臣 自己保存的ないわゆる自然権だということを今回非常に強調いたしますのは、一つには、その場所我が国ではなくて外国でありますから、私どもから見れば、形式的にも停戦合意が成立した中で出かけていっておるわけですから、いわゆる国際紛争としての武力闘争じゃないというのはわかるわけでございます。それを重ねて自己保存的な自然権だということを強調したいのは、その場所が、いわゆるPKOで出かけていくのは外国であるという点もあって、そこのところは特に強調しているのではないかというふうに思います。  そういうような背後関係もあって、確かに委員が御指摘の理屈も私もわからぬではございません。そういうような理屈だけで済むのじゃないかというふうに言われれば、そうかなというふうな気もしないではないのですけれども。  しかし、それだけではちょっと問題が生じはしないか、やはりもう少し武器使用を限定すべきではないかというような気がしまして、そういうような観点から見た場合にも、今度は自己保存的な自然権の発露としての武器使用だから、そういう面からチェックしても武力行使にはなりませんということを言っているわけでございますので、どうかそういうような事情も御理解賜りたいと思います。
  103. 岡田克也

    ○岡田委員 正当防衛とか緊急避難に該当する場合の武器使用であればそれでもいいというふうに私は思いますが、この法律武器使用というのはそれより広がっておりますので、だから、そういう部分についてまで自然権という理屈で認めてしまうということは、アリの一穴じゃありませんけれども、将来いろいろな議論としての広がりを呼ぶ可能性が出てきてしまうのではないか、こういうふうに申し上げているわけでございます。何か御見解はございますでしょうか。
  104. 久間章生

    久間国務大臣 特別ございませんけれども、先ほどから言いますように、正当防衛緊急避難でない武器使用があるかと言われますと、威嚇射撃にしましても、やはりそういうことを避けるための緊急避難あるいは正当防衛、まずはそういうような一環としての威嚇射撃であり、相手がそれによってひるんでとまってくれれば、それでもうその先をしないで済むわけでございますから、そういうようなとり方ができるのではないかというふうにも思うわけでございます。
  105. 岡田克也

    ○岡田委員 この点はさらに別の機会に議論をさせていただきたいと思いますが、そういう問題意識もあるということを認識していただきたいというふうに思います。  それでは次に、PKOの本体業務についてお聞きしたいと思います。御案内のように、現在、この法律があるにもかかわらず、附則の二条におきまして、「自衛隊部隊等が行う国際平和協力業務であって第三条第三号イからへまでに掲げるもの又はこれらの業務に類するものとして同号レの政令で定めるものについては、別に法律で定める日までの間は、これを実施しない。」ということになっております。  具体的には、三条三号のイからへということでありますから、「武力紛争の停止の遵守状況の監視又は紛争当事者間で合意された軍隊の再配置若しくは撤退若しくは武装解除の履行の監視」でありますとか、緩衝地帯におきます「武力紛争の発生の防止のために設けられた地域における駐留及び巡回」、その他いろいろなことが書いてございます。こういうことについては、今回の見直しにもかかわらず何ら触れられていないということになっているわけでございます。  なぜ、法律の本則に書いてあって、例外的に附則でしばらく凍結したものについて、今回凍結を解除しなかったのか、どういう理由で解除しなかったのか、あるいはそもそも検討をしなかったのかしたのか、官房長官お答えいただきたいと思います。
  106. 村岡兼造

    村岡国務大臣 いわゆる平和維持隊本体業務については、憲法上の問題はないのですが、内外の一層の理解支持を得るため、「別に法律で定める日までの間は、これを実施しない。」こととされているところであります。このいわゆるPKF本体業務の凍結解除の問題と国際平和協力法の見直しとは、法律上別途規定されているものであります。  政府としては、平成七年八月に国際平和協力法に規定する見直し時期を迎えて以来、これまでの派遣の経験を踏まえ、法の実施あり方について見直しを行った結果、改正法案国会へ提出したものでございますが、いわゆるPKF本体業務の凍結解除の問題についてはさまざまな御意見があるところでありますが、政府としては、国会等におけるこの問題の御議論にも十分耳を傾けつつ検討すべきものと考えたものであります。  以上でございます。
  107. 岡田克也

    ○岡田委員 平成八年九月の総理府の国際平和協力本部事務局の見直しについての取りまとめにも、そもそも課題として上がっていないわけですね、凍結解除の問題は。  しかし、凍結したというのは、本来やるべきだけれども暫時それを停止しているという状況ですから、見直し時期が来たのであれば、当然、少なくとも課題としては取り上げて検討すべきだったのではないですか、政府としては。検討した結果、それが必要ないということになったのならともかくとして、なぜ課題としてすら取り上げなかったのか。今官房長官は内外の理解支持という表現を使われましたが、具体的にどういうことなのか、御説明をいただけますでしょうか。
  108. 村岡兼造

    村岡国務大臣 我が国がゴラン高原におきます国際連合平和維持活動PKOである国際連合兵力引き離し監視隊、UNDOFに参加するに当たって、与党間において合意された「わが国のuNDOF参加に当たっての与党確認事項」の中に「PKF本体業務の凍結解除は、当面行わないこと。」とあることから、政府としては、これを踏まえての見直し作業ということになったわけであります。
  109. 岡田克也

    ○岡田委員 与党間でそういう合意があるということでありますが、政府としては与党の間の約束ですから尊重しなければいけないというのはわかるのですが、もっとありていに言えば社民党さんが反対したということだと思うのですが、そのときの理屈といいますか、なぜ凍結解除しないのか、どういう議論があってそうなったのでしょうか。  政府としては、もちろん与党間でお決めになればそれを尊重しなければいけないということなんでしょうが、やはりそこにはそれなりの理屈というものがあると思うのですね。いかがなんでしょうか。
  110. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  先生、これは与党間の話し合いでございますので、政府の側からどういう理屈であったということを説明するのは難しいということで御理解いただきたいと思います。
  111. 岡田克也

    ○岡田委員 与党間で決めたから政府としては無条件にそれに従った、こういうことですか。違うのですか。
  112. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  どういう論拠でこういうことになったのかという御質問でしたので、それは与党側の論拠ですから、それを政府の側から説明するのは難しい、こう答えた次第であります。
  113. 岡田克也

    ○岡田委員 それでは、現時点でこの凍結解除の問題を政府はどういうふうにお考えなんでしょうか。
  114. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  PKF本体業務の凍結解除につきましては、本会議で総理から、それから先ほど官房長官からも御答弁がございましたけれども、国会での議論を踏まえて今後検討していきたいというのが政府立場でございます。
  115. 岡田克也

    ○岡田委員 こういうときだけ国会での議論ということになるわけですが、政府としてはどういうふうにお考えなんですか。  この法律を成立させたときに、こういうものは必要だという認識に基本的には立っておられたはずですね。しかし、すぐにそれをやるということはいろいろな事情でできないからしばらく凍結した、こういうことだと思うのですが、基本的には必要なことだと思っているのではないですか。
  116. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  先生経緯を御存じだと思いますけれども、政府としては、凍結条項をつけ加えてPKO法案を提案したわけではございません。我々は、PKFもやるということで政府の原案を提出させていただきました。しかし、その後参議院に法案が回りました段階で、いわゆる参議院修正というのが加えられたということでございます。参議院修正の中の一部が、PKFについては別途法律で定めるまで実施しないということが決められたわけでございます。  しかし、政府としては、PKO法提出時にPKF本体業務というのを行うという判断をしておりましたし、これは重要なことであるというふうに認識しております。  ただ、附則第二条と第三条というのは少し書き方が違っておりまして、附則の第三条は、政府として法の実施あり方見直しをするものとする、「政府は、」ということになっております。したがって、これは政府としての一定の責務といいますかそういうものがありますので、その責務を果たすという点から、今回、見直しをして改正法案を提案しているということでございます。  附則の第二条の方に関しては、別途法律で定めるまでの間は実施しないということになっておりまして、政府がどうこうするというのは入っておりません。  そして、この参議院修正が入った段階では、この修正を提議した諸党間での話し合いが持たれるということが予定されておりました。その後、いろいろな政治的な状況が変わったということでございます。そういうことで、我々は国会での諸議論に耳を傾けて、その上で今後検討していきたいということを申し上げている次第であります。
  117. 岡田克也

    ○岡田委員 この法修正をやった当時の自公民三党が、いろいろな変遷を経て、今大分状況が変わっておりますから、当事者がいなくなってしまった、こういうことだと思います。  しかし、この二条には政府という文字が入っていないという今の御説明ですけれども、この法律は基本的には政府が提案されたものでありまして、それを国会で一部修正したということでありますから、政府あるいは与党として、これについてどう考えるのかということについてきちんとした意思表示がまずあって、その上で、それを受けて野党がどう判断するのか、こういう順序ではなかろうかというふうに私は思うわけでございます。  このままいきますと、これはだれも言わないままどんどん時間だけたって、僕は、PKFという表現自身は純日本的なもので、本来は、全体はPKO活動だと思うのです。その一番の核の部分が抜けて、本来、PKO協力することは日本国際貢献に重要なことなんだというのであれば、やはりその核の部分について早くしっかりした体制をとってやっていく、そのことについて政府としてあるいは与党としてイニシアチブをとっていくということが当然のことだと思うわけですが、いかがでしょうか。
  118. 久間章生

    久間国務大臣 確かに、出したのは、閣法として政府が提案いたしました。しかし、そのうち、ここの部分は凍結するということを国会の修正で、参議院が最初提案しますけれども、衆議院に回ってきて修正されたわけでございます。  法律でもそうでございますけれども、閣法と衆法等がございますが、議員提案の衆法の場合は、それの改正なりなんなりをやるときも、でき上がってしまいましたら実行は政府がやるわけでございますけれども、衆法の場合は衆法で、参議院で上げた場合は参議院で、そこから提案してもらうような慣例がございます。  そういうようなことを考えますと、院として、参議院あるいは衆議院としての両方の御意思でこれはだめだと言われていましたので、我々としては、普通の閣法と比べますと、そこはより慎重にやらなければならない、そういう責務がございます。そういうこともございまして、非常に慎重にやってきているわけでございます。  したがいまして、この問題につきましては、政府だけではなくて、各党各会派においてこのPKFの凍結を――少なくとも政府の意思は、先ほど言われるように、この全体をやりたいということで法律を出しているわけでございますから、それを院の意思としてとめておられるわけでございますから、それについてどうするかというのは、やはり各会派でいろいろと御議論していただいて、私どもも、またそれを反映させていただいて、どうしたらいいか真剣に考えなければならない問題じゃないか、そういうように思っているわけでございます。
  119. 岡田克也

    ○岡田委員 長官は、今、政府の大臣として他人事のような言い方をされましたが、長官も自民党の有力な議員の一人ですよね。もし長官の言うことを認めるとしても、しかし、政府ということではないとしても、与党としてこの問題についてどうするのかはっきり意思決定をして、その上で野党に働きかけるということが私は必要ではないかというふうに思います。  正直申し上げて、この問題は我が党の中でもいろいろな議論が出るだろうと思いますけれども、やはり物事はきっかけがないと進まないわけで、それは、この法律について最も必要だというふうに推進をされた政府・与党の方でイニシアチブをとるべき問題だ、こういうふうに考えますが、いかがでしょうか。
  120. 久間章生

    久間国務大臣 与党の一員ということでございますけれども、この場は政府に対する質疑の場でございますので、あくまで政府の域を超えて答弁をするわけにはまいりませんので、今委員が御指摘になりました問題点については、個人としては、強く、重く受けとめながら、これからいろいろと配慮してまいりたいと思います。
  121. 岡田克也

    ○岡田委員 最後に、今まで日本PKOについて、随分時間がたったわけでありますし、それから、この法律を通すときには、それこそ国会において大議論があったわけでありますが、現実にこの法律が施行されて、自衛隊が、カンボジアから数えまして、たしか四つのケースだったと思いますが、海外に行かれたわけであります。これについて国際的にどのような評価がなされているのか。国際的にといっても、それは非常に幅広いですから、なかなか全体をというのは難しいかもしれませんが、我が国自衛隊PKO活動に対する評価というものについて、政府はどういうふうに認識しているか、お聞きをしたいと思います。
  122. 村岡兼造

    村岡国務大臣 カンボジア、モザンビーク及びゴラン高原における国連平和維持活動並びにルワンダ難民救援のための人道的な国際救援活動にかかわる自衛隊活動については、国際的に高く評価されていると思っております。  例えばゴラン高原での我が国派遣要員の活動ぶりについては、シリア、イスラエル両国政府関係者を初め、国連のアナン事務総長からも高い評価をいただいているところであります。
  123. 岡田克也

    ○岡田委員 それじゃ、自衛隊から見て、こういったPKO活動に参加をするということは、プラス、マイナスあると思いますが、全体としてどのようなメリットないしはデメリットがあったというふうに考えておられるでしょうか。
  124. 久間章生

    久間国務大臣 自衛隊が国際平和協力業務を実施してきていることにつきましては、派遣先国政 府を含めまして国際的に高い評価を得ており、国内においても多くの国民の支持を得ているところであります。これらの業務を実施することに特段のデメリットがあるとは考えておりません。
  125. 岡田克也

    ○岡田委員 私は、自衛隊というのは、一つの軍隊に近い組織でありますから、ある意味では非常に孤立しているというか外部と遮断されている、そういう部分があることは否定できないと思うわけであります。だからこそ、例えば国会などにも自衛隊の幹部に来ていただいて答弁していただいた方がいいのではないかというふうに私は申し上げているわけです。  こうした形で海外に出ていくことによって、自衛隊の皆さんの意識が少し変わるというか視野が広がる、非常に限られた中で自己完結的に一つの価値判断で物事を考えている、そういう状態から、より広い視野で物事が判断できるようになる、そのことは結局自衛隊としての機能も高めることになる、そういうふうに私は思っているわけですが、この点について、長官、もし何か御感想があれば、最後にお聞きしておきたいと思います。
  126. 久間章生

    久間国務大臣 そういう一面はあろうかと思います。しかし、余りそれを強調いたしますと、出ていかない面々がそういう点では非常に視野が狭くていけないというふうにもとられますので、そういうふうな言い方だけではなくて、行った連中は非常に士気も高まるし、また外国のいろいろな部隊と交流することによって国際的な視野も非常に高まってきて、そういう点では非常にいいというような評価も得ております。
  127. 岡田克也

    ○岡田委員 私は、そのいい効果が自衛隊全体に波及していく、そういうことを期待しているものでございます。  これで終わります。
  128. 塩田晋

    塩田委員長 前原誠司君。
  129. 前原誠司

    ○前原委員 民主党の前原でございます。  通告をしております内容について順次質問をさせていただきたいと思います。  まず、この法律改正案についてでございますが、三点あるということでございます。国際的な選挙監視活動、人道的な国際救援活動のための物資協力、そして武器使用、この三点について一つずつお伺いをしていきたいと思います。  まず、国際的な選挙監視活動でございますけれども、これについては、今までの経験等々を踏まえられて、言ってみれば、国連が派遣をしているもの以外、いろいろな地域組織等でやられるものについても出ていこうということでございましょうし、その内容については私は評価をさせていただきたいと思っております。  この法案改正後、すぐにこの改正法において選挙監視活動をやろうというふうに想定されているものがあるのかどうか、あるから法改正をしたのか。あるいは、過去いろいろな場面において出たかったけれども法的な制約によって出られなかった、だから改正をしたのであって、今はないということなのか、その点についてお聞かせをいただけますでしょうか。
  130. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  この法改正目的ですけれども、先生が今御指摘された後者の目的であります。  現行法では、国連の平和維持活動の一部として行われる選挙監視には参加できることになっておりますけれども、それ以外には参加できません。ただ、国際的な状況を見ますと、国連平和維持活動というのではなくて、国連からの要請に基づく選挙監視、また地域的機関が主導して行われる選挙監視というものがふえてきております。したがって、そういうものに対応をしていきたいということでこの改正案を出させていただいております。法改正が成立した後、すぐここに出たいからという趣旨ではございません。  一番近いところでは、カンボジアの選挙がございます。カンボジアの選挙というのは、今カンボジアで平和維持活動がありませんので、現行では参加できないということになります。じゃ、改正の後、このカンボジアの選挙はどうかということですけれども、これもまた、国連の要請という冬件が満たされる可能性が非常に少ないものですから、法改正をしてもこれには該当しないかなというように考えております。そういう意味で、すぐ出るものはございません。
  131. 前原誠司

    ○前原委員 今カンボジアの例を挙げられましたので、一つだけちょっとつけ加えて御質問したいと思います。  今までも、国際平和協力法によらない選挙監視活動というのは数多くされているわけですね。外務省設置法に基づく派遣というものもあるといろ話を聞いておりますけれども、今カンボジアの話で、ちょっと法案とは離れますけれども、この改正されたPKO法に基づいては派遣はしないけれども、政府として、今までのように外務省設置法に基づいての派遣ということもお考えになっているのでありましょうか。その点について、外務省あるいはPKO事務局、どちらでも結構ですが、お答えいただけますか。
  132. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 外務省として、カンボジア和平プロセス、その一つの重要な節目をなします今回の選挙というものについての関与、これをできるだけ深め、積極的に対応していきたいという気持ちを持っております。  現行法のもとでも、委員指摘のとおり、外務省設置法第三条の六号でございますか、「国際連合その他の国際機関との協力及び国際会議への参加」という条文のもとで可能になっていると認識しております。
  133. 前原誠司

    ○前原委員 カンボジアの和平については、かなり日本が主体的な関与を持って今まで進めてこられたと認識をしておりますし、この法律が当てはまる当てはまらないということを度外視をしても、今局長がお答えになったように、どうか現行法で対応できる部分については積極的に対応していただきたいということを私からも要請をさせていただきたいと思います。  次でございますけれども、選挙監視活動において、国連の要請ということを先ほど言われました。国連の要請だけではなくて、その他の国際的な機関、国連憲章第五十二条に規定する地域的機関で政令で定めるものというものの要請に基づく場合においては、中立性、受け入れ同意及び停戦合意を満たす範囲内において要員の派遣及び物資協力というものを行う、こういう話になっております。選挙監視活動もこの範疇に含まれるということであると思います。  これは、この法律ができたときにも多分議論をされたことだと思うのですけれども、中立性、受け入れ同意及び停戦合意という概念はなかなかきっちりととらえられるものではないと思うのです。特に国内が内乱であるとか、あるいは戦争の当事者がどことどこなのかよくわからないとか、そういうときに、どことどこが当事者かわからないのに中立性と言われてもなかなか難しいし、ましてや受け入れ同意というものを与えられるような状況でないという場合もあるかもしれません。  しかし、国連の要請があったり、あるいはその他、今度法律改正をして、地域的機関でぜひとも日本に対して要員を派遣をしてほしいという場合においては、この中立性、受け入れ同意及び停戦合意を満たす範囲内ということは、これは法律を定める上では必要な部分かもしれませんが、こんな言い方をしたらおかしいわけでありますけれども、ある程度あいまいにならざるを得ない部分というのはあると思うのです。  もしここの判断基準というものを、何か内規とかあるいは政府見解でお持ちでございましたら、お話を例えればと思います。
  134. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  先生から、中立性、受け入れ同意、それから停戦合意の定義についての御質問がございました。  停戦合意に関しましては、「武力紛争の停止及びこれを維持するとの紛争当事者間の合意」ということが法律で定義されております。これを実際に適用する際にはいろいろな問題がございます。これは先ほども答弁いたしましたけれども、停戦合意が存在しているかどうかというのは、具体的 な事例に応じて総合的に当断をして決めざるを得ないだろうというふうに思います。  例えばカンボジアの事例のときは、ポル・ポト派がいろいろな停戦合意違反を行いましたけれども、それで停戦合意がなくなっているから日本が帰るという判断にはならないわけでございまして、全体としてパリ協定が枠組みとして維持されているかどうかということで判断していくべきであったし、そうしたわけですけれども、そういう判断というのは、具体的な状況に応じて総合的に判断するということしかないのだろうと思います。  それから、中立性の問題でありますけれども、中立性については、紛争当事者のいずれか一方に偏ることなくという表現で法律では規定しております。そのいずれか一方に偏ることなくという要件が満たされているかどうかというのも、これも大変難しい問題でございます。  例えばPKO部隊が一方の側のある行為を違反行為であると指摘をした、指摘された方は自分たちは違反行為をしていない、相手側は違反行為だと言う、そういうのを裁くときに、いずれの側にも偏らないで処理をしていくというのは、実際の具体的な問題状況においては大変難しい問題がございます。  ただ、これも法案でいずれか一方の当事者に偏ることなくということで書いておりますけれども、実際の適用については、これまた同じような答弁になって恐縮でございますけれども、具体的な状況に応じての総合的判断ということにならざるを得ないかと思います。  受け入れ同意の点でございますけれども、こちらの方はもっと簡単にわかる場合がございます。先生御指摘のとおり、政府自体が崩壊してしまって、その国を代表して受け入れ同意を表明する機関が存在しないような場合がございます。ソマリアのケースがそうですけれども、そういう場合には、だれが表明した受け入れ同意が受け入れ同意なのか、そもそも受け入れ同意はないのかというような点では非常に微妙な問題が出てまいります。これもまた繰り返しになって恐縮でございますが、具体的なケースに応じた総合的な判断ということでやっていかざるを得ないだろうと思います。  日本が選挙監視を行っていく場合には、今言ったような個々の中立性ですとか、受け入れ同意ですとか、停戦合意というようなことについての判断をしながら、かつ、日本が有益な活動ができるかどうかということを判断しながら、参加の可否というのを決めていくということになろうかと思います。
  135. 前原誠司

    ○前原委員 事務局長、恐縮でございますが、簡潔に答弁をお願いをいたします。  今おっしゃったように、ある程度柔軟に対応していかなければいけない部分はあると思うのです。  私も、初めて選挙に出る前に、カンボジアのUNTACが行われていて、私はPKO賛成の立場でいろいろな方といろいろな話をしたときに、さっき話があったように、参加をした途中にポル・ポト派のいろいろな妨害行動とか起きて、停戦合意が守られているかどうかという状況の中で、もう守られていないと見える状況がかなりの期間続いたのを記憶しております。ただ、その時点においてすぐに撤退ということになると、国際的な責務を日本として果たせるのかという問題にもなってまいります。  私は、ある意味で、出るときの基準としては、今おっしゃった中立性とか受け入れ同意とかそういう内容については必要だと思いますけれども、出た後に起きた問題については、今おっしゃったような総合的な判断とともに国民に対してわかりやすい説明、つまり、それだけではない、中立性とかそういうものは崩れていても、日本PKOに派遣をしている大きな目的は何なのかという観点から国民に説明をしていただくことも含めて、政府に対して柔軟な運用と言ったら逆におかしな言い方になるかもしれませんが、その点を踏まえて、この点についても運用していただきたいというふうに思います。  次に、簡単で結構でございますので御答弁いただきたいと思うのですが、人道的な国際救援活動のための物資協力の中で、UNHCR等となっておりますけれども、この「等」というのはほかにどういう機関が想定されるのか、教えていただきたい。  それから、備蓄制度が平成九年から約三年間かけて物資を調達するということで、当初の備蓄予定品目というのは八品目を予定をされていて、備蓄規模は二億六千万円ということでありますけれども、この内容については変更がないのでありましょうか。また、備蓄拠点については、差し当たり一カ所の備蓄倉庫を国内の大規模国際空港周辺にということでございますが、どこに設けられているのか、御答弁をいただければと思います。
  136. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  第一点のUNHCR等というのはどういう機関かという御質問でございますが、これは、法律の別表第三に掲げている国際機関でございます。UNHCR、ユニセフ、UNDP、UNEP等、別表の三に掲げております。  それから、備蓄制度の御質問ですけれども、平成九年に物資備蓄制度というのを創設いたしました。三カ年かけて備蓄をすることにしておりまして、平成九年度におきましては、テント、毛布、防水ビニールシート、給水容器等を調達しております。  ちなみに、予算は、平成九年度が九千六百五万円、平成十年が八千三百八十一万円でございます。
  137. 前原誠司

    ○前原委員 要は、当初の計画どおり進んでいるということでよろしいわけですか。そして、この備蓄拠点というのは今どこになっているのですか。
  138. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  備蓄場所は、運ぶ便宜の関係から設けてございますけれども、場所に関しては、PKOに反対する勢力というようなものの問題がございまして、特定することは差し控えさせていただきたいと思います。
  139. 前原誠司

    ○前原委員 こういう備蓄制度を設けられているわけですから、三年間で当初の計画を整備するということですので、どうかそれは進めていただきたいというふうに思います。  次に、武器使用について少し御議論をさせていただきたいと思うのでありますが、質問をするというよりも、私は、今までの答弁、この場所あるいは院内テレビ等で見ておりまして、むしろ何かまどろっこしい部分があるというふうに思います。  私は、実は、UNDOFに自衛隊を派遣するかどうかの事前準備にゴラン高原に行かせていただきました。そのときにその現場を見て、ゴラン高原の二つの駐屯地がございますね、ジウアニ駐屯地、ファウアール駐屯地、両方とも行かせていただきまして、特にジウアニ駐屯地についてはくまなく内容を見せていただきました。  要は、防空ごうといったらちょっとイメージが違うかもしれませんが、ところどころに石窟みたいなものがあるのですね。そして、そこに石が積んであって、そこに退避できるようになっている、こういうところであります。いざ何か事が起きれば、PKO要員については、そういう掘られた穴に避難をする、こういう形になるわけですね。そして、避難をする際に、みずからの命に危険が及ぶというときには、持っている小銃とかけん銃などを使って、自己防衛のときのみにそれを使用する、こういう形になるわけです。  言ってみれば、ここで認められているけん銃とか小銃とか機関銃では、大がかりに武装した部隊と交戦できるようなものでは全くないわけですよね。ですから、PKOというのは戦う部隊ではなくて、まさしくこういうものは必要最小限の自衛のため、つまり、自分生命の防御のために使用しているわけであって、そういう観点からすれば、個人判断であろうがあるいは上官判断で あろうが、そういうものは、一説に言われているような武力行使とかそういうものには全く当たらないわけです。  ですから、余り過去の答弁にとらわれずに、上官命令するから武力行使に当たるとか、あるいは個人判断するのがどうとか、そういう議論は、実は、私は現場を見せていただいた者として、法的なやりとりの意味はあるかもしれませんけれども、実態的な観点からすれば余り意味のない話ではないかというふうに私は思っております。  したがいまして、現場を見せていただいて、むしろ個人判断に任せる方が酷である。やはり自衛隊隊員の方々は上官命令に従って物事を行う、こういう訓練を受けておられる方々でありますから、これは、もちろん一人でしか判断できないときには自分で使われるのでありましょうけれども、何らか形としてやる事柄についてはむしろ上官命令に従うということの方が私は必要なのではないかと思っております。したがいまして、この武力行使については、質問はございません。  むしろそういう実態であって、つまり、これだけのけん銃とか小銃などでは、本格的な武装した集団との戦いには決してならないということ。そしてまた、そういうざんごうなどに逃げ込むということがマニュアルとしても書かれている以上、戦う部隊ではない。つまり、自分たちの命を守るために必要最低限なものを持っていて、その使用に当たって、個人判断に任せっきりというのはどうなのかという観点から、実際に派遣してみて、その矛盾についての理解ができたので上官命令というものに変えたんだ、この方が私はすっきりするのではないかと思いますので、ぜひそういう御答弁をこれからしていただければということだけ御要望をしておきたいと思います。質問ではありません。  さて、残りの時間で、今後のPKOとかあるいは今のUNDOFの問題について御質問したいと思います。  PKOについて、このごろちょつと世界的な関心が薄れてきているのではないか、私はこういう思いを持っています。  ガリさんが事務総長のときは、かなりこのPKOとかあるいは軍組織的なものまで考えておられましたし、国連こそが平和を維持するための中心を担うんだ、こういう決意でやられていたような気がしますが、アナンさんにかわってから、あるいは世界の情勢が変わったのかもしれませんけれども、少々PKOに対する国連の方針というものが変わったというか、何か熱が冷めてきたような気がしてならないわけであります。  外務省あるいは政府から見て、この国連のPKOに対する方針というものは変わったのかどうか、あるいは変わっていない、そういう対処する場所が減ってきた、なくなってきたということなのか、その点についてどう分析をされているのか、御質問をさせていただきたいと思います。
  140. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 いろいろな見方というものがあり得るのかもしれませんけれども、私どもといたしましては、国連の緊急対応能力の向上、それからPKOの効果的な実施のための方策というものに今重点が置かれているということがあり、この考え自体はブトロス・ガリ事務総長のもとで打ち出されたものでございまして、当時のPKO局長でございましたアナン現事務総長によってそれが基本的には引き継がれている、その意味において申し上げれば、方針に変更はないということであると認識いたしております。
  141. 前原誠司

    ○前原委員 方針に変更はないと政府は見ておられるということですね。ということは、国連が関与をする場面というのが減ってきた、こういう認識でよろしいのでしょうか。
  142. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 一般的に申し上げますと、冷戦後の国際情勢の変化ということがございまして、国連のPKOというものが、地域的機関などによるPKO補完活動というものと合わさって効果を発揮しなければならないような時代に入っている、そういうことはあろうかと思います。
  143. 前原誠司

    ○前原委員 関連して質問をいたしますけれども、今ゴラン高原に自衛隊が派遣をされているわけでありますが、国連から日本への新たなPKO参加要請というものは現在あるのかどうか、その点についてお答えをいただけますでしょうか。
  144. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 一般にPKOに関します場合には、国連から非公式な打診が政府に対して次されることになっております。しかし、これは、実は国連の方からの申し入れと申しますか要請もありまして、個々にどのような要請が行われたかということについては答弁を差し控えさせていただきたいと存じます。
  145. 前原誠司

    ○前原委員 えらい冷たい言い方をされましたけれども、要は、今はあるのですか、ないのですか。  ちょっと質問の仕方を変えますよ。例えば本体業務が凍結をされている、また、日本の限られた今のPKO法の中において、日本としてやれるPKOがゴランのほかに今あるというふうに政府として認識をされているのかどうか、その点はどうですか。この点については、本体業務は凍結している、この法律案改正する前でありますけれども、今世界各国でやられているPKOの中で、法的に見て日本が参加できるPKOがあると思っておられるのか、ないと思っておられるのか、どうですか。
  146. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  先生の御質問が、現行のPKO法の要件を満たして日本法律的に参加できる可能性のあるPKOがUNDOF以外にあるかという御質問でありましたら、それはございます。
  147. 前原誠司

    ○前原委員 それは具体的にどういう地域PKOなのか、PKOは今やっているわけですよね。それで、UNDOFについても、日本が、これはいろいろなやりとりの中で表にできない部分はあると思いますけれども、要はカナダ部隊から輸送部隊のみをかえるという極めて変則的な変更を行っているわけですよね。  私も実際にゴラン高原に行って、そのときに、コステルスさんという司令官がおりました、オランダから来た人ですけれども。要は、その人は迷惑だという言い方をしていたのですよ、実際問題。つまり、カナダ部隊に何にも不自由は感じていないし、整然とやってもらっている。ある程度カナダ部隊の主力をすべて日本と入れかえるならわかるけれども、輸送部隊だけ、四十数名だけかえるということについて組織としても迷惑だという言い方を初めされていて、いろいろ物議を醸したときがあったわけです。  あれについても、日本PKOというものをやっているという実績を残さなければいけない、あれは出すべきだということで私は賛成をした立場でありますけれども、日本としても実績を残さなければいけないということで出た部分もあると思うのです。向こうからの要請もあったかもしれない。それはどちらが先かということは、イタチごっこになりますから質問はいたしません。  しかし、そういう意味合いも含めて、今実際にPKOが行われているという中で、日本として法的にやれる部分はある。しかしながら、実際はどこかの国がやっているわけですよ、それについては。かわってまでやるようなものがあるのかどうか。ですから、それを日本が代替してやるべしと考えているかどうか、そういう一歩踏み込んだところまであるのかどうかという質問をしているわけです。  法的にできるものはあるという御答弁ではなくて、そういう一歩踏み込んだ、意思の部分も含めてあるのかどうかという質問をしているわけです。
  148. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  日本PKO法ができて、その後日本が参加し出したわけですけれども、今、全世界的には一万数千人が出ているのに、日本は四十五人だけであるということでございます。そういう意味では、比率としては少ないなという気持ちを持っておりますけれども、いろいろなPKOに積極的に参加 することも考えた上で、結果として現状のような状況になっているということで御理解いただきたいと思います。
  149. 前原誠司

    ○前原委員 この法律をつくったときには上限を二千人と決めていますね。全世界で一万を超える方々が出ているという中で四十数名というのは、少ないなということであると思います。  これは官房長官お答えいただけますでしょうか、実際問題、具体的にどこに出るとか出ないとか、お立場として言えないと思いますけれども、一般論として、全体としてそれだけのPKOが各国から出されて活動されている、それに対して日本は四十五名だ、この人数についてどう思われるのか。また、やはりこれはもうちょっとふやして積極的に関与していくべきなのかどうか。私は、これは極めて政治的な判断だと思いますし、その点について、官房長官、御答弁いただきたいと思います。
  150. 村岡兼造

    村岡国務大臣 今、世界で一万数千人出ているうちの日本は四十五名だ、多いか少ないか、考え方はどうだと。  日本としては、先ほど来いろいろやりとりもありましたが、このPKOの参加の七年ぐらい前、いろいろな議論もありました。そして、その議論の結果を踏まえまして、この改正法をお願いしておるところであります。ただ、PKFの方は凍結ということになっております。いろいろな制約もあるわけでございます、憲法との関係もあるということで。  また、国連から、あるいはいろいろな関連の機関からPKOの要請が今来ているのかどうか、私も明確でございませんが、私には来ておりますとかなんとかという報告がまだございませんので、ないと思いますけれども、また、要請が来ないと出せないわけでございます。  私は、今現在四十五名出しておる、また、いろいろな状況の変化によって国連から我が国PKO法案に合致するような要請があった場合には出すべきだ、こういうふうに考えておるところであります。
  151. 前原誠司

    ○前原委員 これ以上質問はいたしませんが、私が申し上げたかったのは、ゴランの場合については、これは具体的なことはなかなか政府のお立場として言えないと思いますが、変則的な形の中でもとにかく出ようということで出られて、それは、カナダの一部隊の六つある役割のうちの一つの輸送というところのみを日本が取ってかわってやるということで、極めて変則的な出方だったわけです。変則的な出方だから悪いということではなくて、出ることにおいて日本PKOに参画をしている、そしてまた、そういうPKO活動を通じて地域の安定や平和に貢献をしているということを、この法律をつくった以上は、やはりやろうという意識があると私は思うのですね。やたらめったら出たらいいということではありませんけれども。  しかし、その中で国連の要請をただ単に待っているだけではなくて、日本として二千人出せる、そして世界として一万数千人、ちょっと正確な数字は存じませんが、そういう中で四十数名というのは少ないと私は思うのです。もうちょっといろいろな地域の中で日本としてやれるものも含めて、積極的なアプローチをむしろ国連にするという形もあり得るのかなと私は思いますし、ただ単なる受け身ではなくて、日本PKOに対する方向性というものを決める中で、この法律改正一つの契機として、さらに積極的に取り組んでいただきたいということを要望させていただきたいと思います。  もう時間がございませんので、二、三点まとめて御質問したいと思います。  PKOを出すはいいけれども、例えばUNDOFにしてもすごく期間が長いわけですね。一九七四年からずっと今でも続いていて、これはどうなるかわからない。キプロスなんかもかなり長い間PKOが派遣をされています。  つまり、PKO派遣というのは対症療法であって、根本治癒というのはやはり外交交渉だと思うのですね。外交的にどう紛争状況を解決するかということが、PKOの期間とかあるいは性格も変えてくるというふうに私は思っております。したがって、UNDOFがいつまで続くのかどうかという議論は私は意味のないことだと思っています。  例えばPKOにゴランならゴランに出したということであれば、それは日本として中東和平に積極的にかかわるという意思を示したことにほかならないと思うわけですね。  実際、ラビンさんが暗殺されて、ペレスさんでしたか、総理になられて、総選挙で今のネタニヤフ政権ができた、そして中東和平というものが暗礁に乗り上げている。つい先日も、ロンドンで、オルブライト・アメリカ国務長官が仲介の労をとられて、アラファト議長とネタニヤフ首相が集まっておられました。いろいろな努力はなされているわけでありますけれども、そのPKO活動にも参加をしている、そしてまた、だらだらとこれからいつまでPKOが続くかわからないということも避けなければいけない、そういう中で、根本治癒としての外交努力というものはこの中東和平としても必要だと私は思っております。  そういう中で、日本として中東和平についてどういう新たな取り組みをしていくべきだと考えておられるのか、あるいは今されているのか、あるいは見通し。済みません、時間があれなんで重ねて質問しますが、テレビを通じて見ておりますと、アラファト議長が何か健康状態が悪いのではないかということを私は感じましたし、またそういう報道も一部されております。健康状況も含めて、パレスチナ自治政府内の政治的な力学、またイスラエル内部のネタニヤフ政権に対する評価等も含めて、申しわけございませんが、まとめて御答弁をいただければと思います。
  152. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 まず、中東和平の見通しと日本の貢献ということでございますけれども、従来から、我が国は、地味ではあるかもしれませんけれども、機会をとらえて各和平当事者に対すろ直接的な働きかけを行っております。それに加えて、パレスチナ支援を含む周辺アラブ諸国支援というものを実施しておりますし、多国間協議への建設的な参画も行っている、それに今御議論のuNDOFへの要員派遣ということもございます。  したがって、今後とも、和平のための社会的へ経済的な環境醸成というものに向けて積極的に寄与していきたいと思っております。こうした多様な分野での貢献を引き続き行ってまいりたいというのが、日本政府の方針でございます。  それから、アラファト議長の健康云々ということでございますが、確かに、最近会った方が、唇が震えるとかなんとかというような情報が流れておりました。しかし、私どもに関する限り、九二年四月のリビア南部における飛行機事故の後遺症が残っていると言われているようなことは、情報として承知をしておりますけれども、同議長の健康状況が最近悪化したという情報には接しておりません。  それから、ネタニヤフ・イスラエル首相に対するイスラエル国内の評価ということだったかと思いますが、これは他国の内政事情でもございますので、私から余り詳しく申し上げることはございませんが、世論調査といったようなものからのデータを見てみますと、ネタニヤフ首相の仕事ぶりの評価をという質問に対して、肯定的意見と否定的意見がそれぞれほぼ同数であるというような状況に現在あると承知いたしております。
  153. 前原誠司

    ○前原委員 時間が来ましたので、終わります。
  154. 塩田晋

    塩田委員長 午後三時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五十二分休憩      ――――◇―――――     午後三時五十四分開議
  155. 塩田晋

    塩田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。赤松正雄君。
  156. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 新党平和の赤松正雄でございます。  きょうのこのPKO法案に入ります前に、あした大臣の方から報告があるやに聞いておるんですけれども、私はあした質問いたしませんので、一日早いんですけれども。  久間防衛庁長官が、この休日の間に日中防衛交流の一環として中国へいらして人民解放軍を視察をされた。日本防衛庁長官中国の人民解放軍を視察をされたというのは、近過去では一九八〇年以来だというふうに聞いておりますけれども、一九八七年から今日までの間、十一年という歳月の間には、冷戦の崩壊という世界史の上でも画期的なことがあった。  そういう中で、伝え聞くところによりますと、中国海軍の著しい増強というふうなことも専門家の間で指摘をされておりますけれども、特に、そういう中国の海軍を中心に見てこられた、中心かどうかは知りませんが、見てこられたことについての印象、感想をまず冒頭にお聞かせいただきたいと思います。
  157. 久間章生

    久間国務大臣 今回の訪中に際しましては、中国人民解放軍の陸海空軍それぞれの基地または施設を視察いたしましたが、海軍につきましては、東海艦隊の上海基地を視察いたしました。同基地においては、中国海軍の最新鋭艦の一つでありますミサイル・フリゲートを見学いたしました。  基地視察の印象としましては、中国海軍も着実な近代化を進めているとの感じを得ました。同時に、艦艇につきましては、内部の見学や装備の説明も行われまして、中国側としても透明性に配慮を行っているとの印象を受けました。
  158. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 言葉の遊びをするわけじゃありませんが、今長官中国海軍の近代化とおっしゃいましたけれども、何か特別な意図を持って近代化とおりしゃったんでしょうか。普通、近代化というのは、現代化よりはおくれた過去の段階のことを指すのであって、つい最近では中国の四つの現代化ということで、科学技術の現代化、軍事の現代化ということを言っておりましたけれども、別にそういう深い意味があって近代化と現代化を使い分けられたんじゃないでしょうね。
  159. 久間章生

    久間国務大臣 いえ、そういうわけじゃございませんで、普通我々は装備の近代化をそのまま近代化として国内でも言っておりますので、新鋭艦でもございましたし、近代化が進んでいるなというような率直な感じを受けたということでございます。
  160. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 PKOの方の問題に入りますが、まず冒頭で概括的なことをお伺いしたいというか、私の感想も含めて申し上げたいと思います。  せんだって四月三十日の衆議院本会議におきましても、私、質問に際しまして若干触れさせていただきましたけれども、このPKO法成立から今日この時点における改正法の提出、この論議に至る経緯につきまして、さきにも述べましたけれども、まさに隔世の感がいたします。  といいますのは、ちょっと振り返りますと、当時、自由民主党対野党という大きな枠組みでこのPKO法をめぐっての議論があったわけですけれども、その野党の中でも公民対社共という位置づけというか、はっきり言って、野党の中でもこのPKO法に対する姿勢というのは大きく違ったということが指摘できると思います。  特に、旧社会党の皆さん、共産党の皆さんは、このPKO法をめぐって、いわゆる憲法が禁じている海外派兵に直結するものだというふうな論調一点張りであったという印象を、私は当時国会議員ではございませんでしたけれども、強く持っておりました。  それに対しまして、私が当時所属し、今もその流れでありますけれども、旧公明党あるいは民社党の方は、要するに、憲法が認めている範囲の中で、憲法の許す範囲の中で、どうすれば国際貢献を果たすことができるのかということについて、まさに知恵の限りを尽くした。  そういう議論がなされ、交渉がなされ、一九九〇年代冒頭の非常に厳しい国際環境の中で政治の知恵というものが発揮された非常に画期的な場面であったのではないのかなという印象を私は強く持っておる次第でございます。  当時の政党の枠組みというものが、その後非常な政局の変動の中で思わぬ方向へ行ってしまつやということもあるわけですけれども、そういう状況の中で、冒頭、官房長官また防衛庁長官にも利が今強くお聞きしたいと思いますのは、先ほど申し上げたような、国民の多くの部分にあった、憲法違反につながりかねない海外派兵という部分の批判というものは、この一九九〇年代の冒頭から今日に至るまで約六年の期間の中でそういうものは払拭をされた、国民の間における誤解は解けたというふうに私は思っております。  しかし、一方で、カンボジアPKOの参画から今日のゴラン高原のPKOに至るまでの流れの中で、先ほども前原委員指摘をされておりましたけれども、PKO活動のいわば低迷ぶりといったらおかしいですが、いっときに比べてPKO参画の傾向性というものがかなり変質をしてきているという流れの中で、日本の国民の間におけるPKOに対する関心というのも少し薄らいできているのではないのか。  そういう中で、私は、先ほど言いました誤解は解けた、PKOはいわゆる戦闘行動に直接参画するというものではなくて、戦争的行為が終わった後、それの再発を防ぐためにいかにして貢献をするのかという部分についての国民意識の定着というものはある程度あろうかと思いますけれども、同時に、この数年の間におけるPKOに対する関心の低下というものがあって、もし仮に、今というか、仮定の議論はあれですけれども、これから先、PKO現場において、例えば武力行使ということに直結しないまでも、武器使用から憲法が禁じる武力行使ということにもちろんいかないまでも、武力行使から戦闘行動への参画というふうな事態が起こったときに、やはり国民の間に一種のパニックのような状況が起こるのではないのか。  こういう観点からしますと、確かに、PKO活動についての国民の意識というものは、従前に比べると大分変わってきたようには思いますけれども、事の本質ということに関しては余り変わっていないのではないのかなというふうな懸念を持つわけでございます。  今私が申し上げたそういうふうなこともひっくるめまして、PKO法が成立をして今日改正論議が始まった、この流れの中で、国民世論の変化――当時と今と比べて、PKO一つの題材にして、海外における日本自衛隊のいわば国際貢献活動としてのPKOへの参画ということを一つケースにして、自衛隊が海外で活躍するという部分に関してのもろもろのことをひっくるめて国民の受けとめ方というものに大きな変化があると認識しておられるのかどうか、それとも余り変わっていないというふうに思っておられるのかどうか、この辺についてまず冒頭に官房長官にお聞きをしたいと思います。
  161. 村岡兼造

    村岡国務大臣 今の質問は、憲法で禁止する武力行使に至らないまでも戦闘行動が起こると戦闘行動というか、自己生命身体を守るため、仮に万が一発砲があったとしても、戦闘行動と言えるかどうか、私もわからないところでございますが、マスコミ各社等による国際平和協力業務の実施に関する世論調査の結果を見ますと、支持する回答の比率は着実に増加しており、国際平和協力業務に対する国民の理解は深まっていると考えております。また、総理府が毎年実施いたしております外交に関する調査においても、法案成立後の平成六年以降、国連PKOに対する支持は八割以上の高い数字で推移をいたしております。  ちなみに、総理府における外交に関する世論調査の国連平和維持活動に対する支持の推移でございますが、いずれも十月でございますが、平成六年の十月は八三・九%、七年の十月は八八・二%、八年の十月は八九%、平成九年の十月は八八・四%と、高い支持を得ていると感じているところであります。
  162. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 世論調査の結果を挙げられて、PKOに対する国民の理解は深まっているという指摘があったわけです。  さらに、では具体的にこの法案の中身について、せんだっての本会議で御質問をいたしましたけれども、答弁の方がいささかあっさりし過ぎている答弁をなさった大臣もいらっしゃいましたので、さらに補足的にお聞きをしたいと思います。  まず第一点、今回の法改正の最大のポイントであります武器使用をめぐっての件でありますが、個人判断から原則上官判断に変えるということにつきまして、かつて自己防衛などで個人判断で可能としていたのを今回のように変える政府答弁の整合性の食い違いをどう考えるのかという質問をせんだっていたしました。  それに対して、総理は、これが適切である旨の答弁をいたしておりましたが、いまだ派遣の経験のない当時の判断としてはやむを得なかった、あるいはまた、カンボジア、ザイール等への派遣の経験などから、部隊参加した自衛官などによる武器使用について、その一層の適正を確保するため上官命令による使用へと法改正したい、こういうふうに総理大臣は述べられたわけです。  今挙げました二つの答弁の中に、いずれも経験という言葉が出てまいりますけれども、過去に日本が参加したPKOの中で、武器使用をめぐる問題の中で具体的にどういう経験があったのかということについてお伺いをしたいと思います。
  163. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  カンボジアにおける国際平和協力業務の実施に関して、実施の結果ということで国会平成五年十一月十二日に報告をしております。それから、平成七年二月十四日に、ルワンダ難民救援国際平和協力業務の実施の結果というのを国会に報告してあります。  その中で、我々が行っている派遣の経験に触れた部分がございます。カンボジアにおけるカンボジア国際平和協力業務の実施に当たりましては、憲法制定議会選挙が近づくにつれまして、治安状況の悪化が憂慮される状況になりました。そのために、隊員の一層の安全を確保するために、従来から必要に応じて実施していた武器の携行、防弾チョッキ及び鉄帽の着用のほか、宿営地における土のう積み等の所要の措置を講じた上で業務を行ったということを報告してあります。  ルワンダ難民救援国際平和協力業務の実施に関しましては、治安状況の悪化が憂慮されたことから、隊員の安全確保について万全を期すために、宿営地や給水所付近の警備に関し、ザイール軍の支援を受けたほか、部隊として、必要に応じて武器の携行、防弾チョッキの着用及び鉄帽の着用を実施しました。さらに、銃声の聞こえない夜はほとんどないという状況の中において、宿営地に所要の警備態勢をしきまして、土のう積み等の措置を講じた上で業務を実施するということを行いました。  このように、自衛隊部隊は、今言ったような治安状況のもとで、武器の携行を含む適切な対応をとったところでありますけれども、仮に実際に武器使用せざるを得ない状況に至っていた場合を想定いたしますと、状況によっては、統制を欠いた武器使用により、かえって自衛官等の生命身体に対する危険あるいは事態の混乱を招くことになることがあり得るということが、こういう状況の中で感得された次第でございます。感じ取られた次第でございます。
  164. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 今、茂田事務局長のお話で、最後に、感得された、そういうふうに感じ取れたというお言葉がありましたように、実際に自衛官の方が個人判断で、そういう場面に遭遇して実体験としてそれがあったというのではなくて、現実にPKOの展開する現場の場面の中で、日本で机上で考えているより以上にそういう不都合というものを感じた、そういうふうな御答弁だったのだろうと思うのです。  防衛庁長官にお聞きしたいのですが、結局、当時の議論の中で、上官判断上官の指揮のもとでという旧来的な自衛隊行動定型の中のパターンをここに適用すると、初めての経験の中で部隊防衛組織防衛という形に直結するというか、そういう印象を避けたいということで、結果的には、今になって振り返ると、きょうもこの瞬間もゴラン高原で自衛隊の皆さんが頑張っておられるわけですけれども、自衛隊員の心理的負担を増大させただけにすぎなかったという歳月だったのじゃないのかというふうに思うのですけれども、長官の方から、改めてこの問題について。
  165. 久間章生

    久間国務大臣 現在のゴラン高原は比較的平和な状態が続いておりますから、私も行きましたけれども、そのような輸送業務に携わっている途中での事件等は余りないようでございます。  しかしながら、これまでほかの地区では、今、茂田さんからも述べられましたように、夜眠るときもとにかく土のうを積んで眠ったというようなこともございますだけに、帰ってきた隊員の話を聞いてみましても、もし万一強盗みたいにして襲ってきたときに、自分自身がそれを撃つのか、周りと一緒になって部隊として反撃するのかというようなことを考えると、やはり部隊として上官命令行動する方が非常に対処しやすいといいますか、そういうような意見等はよく聞かされました。  そういう意味では、早くこういうものはすべきであったのかもしれません。しかし、何せ初めてのことでございましたし、非常に慎重を期しながら、そういうケース個人的にはあるだろうというようなことで武器使用規定をあのような形で設けておったわけでございますので、これは、その当時としてはやむを得ない判断だったのじゃないかと思っております。  そういう意味で、今、ゴラン高原では平和な状態の中でPKO活動が行われておりますけれども、またこれから先、どういうところに出ていくかわからないわけでございますから、一刻も早くこういう法改正はやっておくべきじゃないかということで今回お願いをしているわけでございます。
  166. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 そこで、今までの個人判断という格好での武器使用というものが上官の指揮命令のもとでの判断ということになった場合、過去に具体的にはそういうケースはなかったわけですけれども、これからいわば想定されることでございますけれども、そういう上官判断ということになると、単純に今までは個人判断にゆだねられているということで、非常に凝縮された形での個別の武器使用ということに、経験はないわけですけれども、仮にあった場合でも、個人判断ということで個別の武器使用で終わったかもしれませんが、今度は上官判断部隊全体、組織としての対応ということになると、より大きい概念としての戦闘行動的なるものにつながっていく可能性が高まるということについては、防衛庁長官はどういうふうに考えますでしょうか。
  167. 久間章生

    久間国務大臣 今度の法改正をしましたからといって戦闘行動が高まるわけではございませんで、むしろ適正な措置がなされるのじゃないか、そういうふうなことを期待しておるわけでございます。  それと同時に、今まででございますと個人個人が発砲したりなんかするわけでございますけれども、今度は組織立ってやりますから、例えば上官の命によって、まず指名された者が空砲で威嚇射撃をするとか、それによってこちらの存在をちゃんとわからせてから立ち向かうようにするとか、そういうことによって抑止効果も働くと思います。  また、それだけに上官判断というのは的確でなければなりませんから、これから先は、そういう場合、どういう形で上官がどういうような行動をとるか、これらについては日ごろから部隊としては自衛隊の場合は訓練はしておりますけれども、いろいろな基準とか手順といいますか、そういうものについても示しながら、PKOに参加する場合の教育の中でそういうことも徹底していかなければならないのじゃないか、そういうふうに思っておるわけでございます。  そういうことをやっていくことによって、今までは戦闘にならなかったけれどもこれからはなるんだというようなことよりも、むしろそれは逆じゃないか。どういう場所に行くか、そっちの方が戦闘に巻き込まれるおそれがあるかどうか、そういうことの懸念は、場所を選ぶことの方がむしろ大変じゃないかと思っております。  先般、確かにゴラン高原におきましても、外国の隊員が二人、事件で亡くなりましたけれども、私も行ってみて平和だなと思いましたけれども、そういうところですらあんなふうに事件というのはあるわけでございますので、やはり油断はできないと思っております。
  168. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 今いみじくも大臣おっしゃいましたように、場所。ですから、大状況としての、どういうPKOに参画するかというPKO全体の場所もありますし、また、参加したPKOの中でも個別の場所という問題があると思うのですね。後ほどまた議論の中で出しますけれども。  普通、こういう平和な場所で想定しているのと、現実には何が起こるかわからないという場面では、やはり最悪のことを想定しなくちゃいけないという感じがするわけですね。大臣、先ほど期待をするというふうなことをおっしゃっていましたけれども、また上官の適切なる判断という問題も、非常に、これからより一層求められると思うのですね。  そういう中で、これはたびたびここの委員会でも出ましたし、私もこの間本会議でも取り上げて、もういいという感じもいたしますけれども、先般の小説の話でございますが、総理大臣はあっさり個別の小説についての論評は避けますとおっしゃいましたが、あの中には、要するに自衛隊が、上官の指揮命令を待っている間に、適切な指揮がおりない、指揮が出されないという状況の中で悲惨な事態が拡大していくという場面が書かれているわけです。  私、ある自衛隊のOBの方にこの感想を求めつつ、どうなんでしようということを申し上げましたら、その方は、非常に迫真性がある記述ですねというふうなことを言っておりました。  なかなかこれは答えづらい話かもしれませんが、そのあたりの心配、それは長官に聞いたら、そんなことは絶対ないとおっしゃると思いますが、今、結構人口に膾炙してきているというか、そういう影響性が非常に強い。書かれた方が例の「情報、官邸に達せず」という、この間も浜田委員指摘をされていましたけれども、現場をしっかり掌握しておられる方の論評というか小説のテーマでもありますので、個々の小説の論評は差し控えたいなどと総理大臣のようなことをおっしゃらないで、防衛庁長官、ちょっとその辺についてお答え願いたいと思います。
  169. 久間章生

    久間国務大臣 先般、浜田委員からも御指摘がありまして、私もできるだけ早く読みたいなと思っておるのですけれども、何せまだ読まなければならないものがたくさんございまして、一応小説でございますから、それまでにいろいろと今までの、特に最近の、例えばガイドラインをめぐるいろいろなことを書きました「同盟漂流」とか、いろいろなことがございまして、そっちの方を読んでしまって、その次にはとか、あるいはいろいろ考えておりますけれどもなかなか行っていませんから、コメントをする立場にないというよりもコメントできないわけでございまして、その点は申しわけないと思っております。  しかしながら、いずれにしましても、我が国自衛隊といえども、いわゆる敵から攻撃を受けるような場面には日ごろ遭遇していないわけでございますから、そういう意味では、もしそういう場面に遭ったときには判断が本当に大変だろうということはわかります。  それだけに、日ごろから冷静に対応をしながら、どうやってやっていくのか、これを今ここで自分が反撃しないと、そういういとまがないのかどうかの判断、そういうことも要求されるわけでございますから、そういうことについても日ごろから訓練を通じて適正な判断ができるようにしておかなければならないと思っておりますし、また、そういう訓練は個別にはやっているわけでございます。  やりながらも、しかし、自分の本当の意味での真剣勝負といいますか、そういうことにはなかなか遭遇する機会がございませんので、そういう点ではそれでもって完全であるとは言い切れないと思いますけれども、努めてそういうような臨場感ある訓練を何らかの格好で、特に精神的な面も含めましてやらなければならないとは思っております。
  170. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 それこそ個別の小説の中身というよりも、しっかり読まれると、これはある意味で現在の防衛庁自衛隊が非常に抗議しなくてはいけないぐらいの中身だと私は思ってもいるのですけれども、今長官がおっしゃったような、そういう現場の具体的な対応というものについてしっかりと対応していただきたい、そんなふうに思います。  それから、官房長官にお伺いしたいのですが、先般、本会議におきまして官房長官に御質問をさせていただいたのは、施行後六年たってのこの法律の問題点という流れの中で、要するに、カンボジアPKO派遣の際に、我が国PKOの目標が道路、橋のかけかえであったのに、第一次隊の場合、着くとすぐに、物資の補給やら水の輸送あるいは駐屯地の建設などの任務についたり、第二次隊のときには選挙支援のために道路補修が中断されたり、さらには凍結されている任務のはずの巡回までがなされていたという指摘を取り上げまして、任務と参加領域の実質的な拡大がなし崩し的、言葉はちょっと過激かもしれませんが、なし崩し的に進められているということをどう認識していますかと尋ねましたら、あっさりとそんなことはないと官房長官はおっしゃいましたけれども、そんなことはないということはないのではないか。  いろいろな方面からの調査報告を見ますと、やはり行く前と行ってからとでは若干違う任務の要請が現場であったというふうに私は掌握しておるわけですけれども、もう一遍、そのあたりについて官房長官にお伺いをいたしたいと思います。
  171. 村岡兼造

    村岡国務大臣 四月三十日の本会議においても申し上げたとおりでございまして、我が国は、国際平和協力法や閣議において決定または変更される実施計画に基づきカンボジア国際平和協力業務を実施したところであり、業務の拡大をなし崩し的に進めてきたことはなく、また、実施した業務はいわゆる凍結業務に当たるものでもないと考えております。  御承知のとおり、提案者は私でございますけれども、実際には、私、外国へ行かれない身分でございまして、見たことはないということで、PKOの事務局長からまた詳しいことは答弁させたい、こう思っております。
  172. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  カンボジアに派遣した自衛隊部隊PKO関連した日本の平和協力隊ですけれども、行った後、業務の拡大というのが何回か行われたということでございます。これは、最初に決定されました実施計画が平成四年九月八日ですけれども、その後、平成四年十二月四日、平成五年二月十二日、それから平成五年四月二十七日と実施計画がそれぞれ変更されております。  なし崩し的に業務を拡大したという指摘に対しましてそういうことはないと申し上げたのは、こういう実施計画の変更を閣議で決定しまして、この変更を国会にも報告しておりますけれども、そういう手続をとって業務を拡大してきたということから、そういうふうに答弁申し上げたということでございます。  それから、凍結業務に実態的に近づいたのではないかということについても、そういう凍結された業務に近づくような形で拡大をしたというふうには我々は認識しておりません。
  173. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 なし崩しという言葉が非常に刺激的な言葉だからそういうふうなお答えが返ってくるのだろうと思いますが、今お話を聞いている と、微調整をしたということなのかなという感じがいたします。  次に、今凍結をされているPKF本体業務ということにつきまして、まず、改めてここで、このPKO法におきまして凍結をされているPKF本体業務なるものについて、確認の意味で、凍結をされているものを挙げていただく、同時になぜこれが凍結をされているのかということについてもお伺いしたいと思います。
  174. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  凍結されているPKF本体業務の内容についての御質問ですけれども、これは、自衛隊部隊等が行う国際平和協力業務であって法律の第三条第三号イからへまでに掲げるもの、またはこれらの業務に類するものとして同号レの政令で定めるものでございます。  具体的には、自衛隊部隊等が行う停戦・武装解除等の監視、駐留・巡回、武器の搬入・搬出の検査・確認、放棄武器の収集・保管・処分、停戦線等の設定の援助、捕虜交換の援助、及びこれに類するものとして政令で定める業務ということでございます。  これがなぜ凍結されているのかという第二点の御質問ですけれども、これはいわゆる参議院修正でこの凍結がなされたということで、政府提案につけ加えられたものでございます。そのときの参議院側の提案者の説明では、PKO活動についての内外のより広い理解を得るためというように参議院側の提案者が説明されたというふうに記憶しております。
  175. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 参議院側の修正でそうなったということですけれども、さらにもう少しその点について詳しくお聞きしたいのです。  これは防衛庁長官答弁をお願いしたいと思うのですが、先般も総理大臣にお尋ねしたのですが、いわゆるPKF本体業務の凍結を解除したとしても、他の国のPKFと同じようにいわゆる警護活動ができるということではない。これはPKO法の中に五原則が盛り込まれているということで、いわゆる停戦の合意、同意、中立、それから武器使用については護身ということに限定するということから、いわゆるこのPKO法そのものの中に武器使用のありようというものが護身ということに限定されてビルトインされているために、警護活動はできないということは当然のことだろうと思うのです。  では、PKFの凍結を解除しても、そういう原則に縛られているために不十分ではないか、逆にPKFの凍結を解除するとかえって極めて危険であるというふうな、ある意味で逆の立場からの誤解というものがこの法をめぐって生じているというふうに私は理解をしておるわけですけれども、このことは、この五原則の位置づけというものがこの法律全体の方向をしっかりと縛っているということが十分理解されていないからではないのか。  一般に、今のPKFは解除すべきだ、単に解除しただけでは役に立たないから五原則を見直すべきだ、こういうふうな主張が一部にあるようですけれども、こういうことについて総理にどう考えられるかとこの間聞きましたら、総理は、国会における御議論に十分耳を傾けながら今後検討していくべきものです、こういうふうにお答えが返ってきたわけですけれども、まず、そういう私が指摘をしました双方からの誤解というものがあるということを認められるというか認識されますでしょうか。
  176. 久間章生

    久間国務大臣 この法律をつくるときに、いろいろな議論があの当時あったようでございます。私も直接はタッチしておりませんでしたけれども、その後いろいろ調べてみますと、各党間でも、最終的にはこの法律内容になったわけでございますけれども、五原則というのを法定すればこれでいいじゃないかという意見、あるいはまた五原則は法律にわざわざ書く必要はない、先ほどおっしゃられました自公民の三党の中でも、公民のそれぞれの考え方が違っておりまして、最終的にはこういう形でとにかくやろうということでいろいろな修正が加わりまして、そのときに、いわゆるPKFも凍結されたわけでございます。  したがいまして、この法律は、率直に言いまして、全部一本の線で、政府考え方ですっと整理がなかなかできていない点が実はございます。それだけに、この法律についてどう考えるかと言われましても、また、今の時点で解除したときにどうかと言われましても、我々としては、この法律は解除されたとしても憲法上は問題なく一応やれる、そういう議論は法制局も含めてやってきたわけでございます。  しかし、なおかつ、いろいろな要素を配慮してこういう形が望ましいということででき上がっておりますだけに、この法律について、その五原則の法定の変更も含めまして、なかなか今の私どもの政府考え方だけで律することができにくいのじゃないか。だから、総理が言われたのは、各党各会派のいろいろな議論を、国会審議等を見きわめながらこれはやっていかないといけないと言われたのは、そういうような当時からのいきさつをよく熟慮した上での御発言だったのじゃないかというふうに思っております。
  177. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 今、ある意味で非常に重要なことを長官はおっしゃいました。  今回の法改正については、際立って限定された形での提起がなされているわけですけれども、今の長官発言にありましたように、この法そのものが抱えている体系というのは、非常に複雑なものを持っているわけだと思うのですね。そういう点で、国会における議論に十分耳を傾けながら今後検討していくという総理大臣の先ほどの発言になっていったのだろうと思うのですけれども、この三年後見直しということで、かなりおくれての見直しが、一回目の見直しが今回ようやくなされようとしているわけですが、今後、この法についての見直しのいわば基準というか考え方というか、そういうものは何か具体的なものをお持ちなんでしょうか。
  178. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  先生、現時点においては、我々、附則第三条に基づく見直しの結果として、ただいま改正案を提案させていただいているわけでありまして、現段階ではこの改正案の早期成立をお願いしたいということでございます。  その後、まだ検討課題が残っているのではないかという御指摘は、そのとおりだと思います。それは、第二条に書かれているPKF本体業務の凍結解除の問題もありますし、もしそれをやる場合には、それに付随した問題も出てこようかと思います。しかし、今、あと何年後にはこれをやるというようなことで決められる状況にはないと考えております。
  179. 久間章生

    久間国務大臣 確かに、委員が先ほど冒頭で言われましたように、PKOそのものに対する熱気といいますか、そういうのはやや薄らいだような気がいたします。しかしながら、賛意といいますか、賛成、反対という形で見るならば、先ほど官房長官が答えられましたように、着実に、我が国が、特に自衛隊を中心としてPKOに参加することについては非常に賛成がふえてきているわけでございます。  したがいまして、このPKOへの参加あるいはまたPKOへの参加のいろいろな内容につきましても国民の理解は深まっておるのだ。熱気はないかもしれませんけれども、前みたいに、出ていくことについて、おお、行くのかというような反響はないかもしれませんけれども、行ったことについての賛成、よくやっているなという、それについては確実に高まっていると思います。  そういう中で、本体業務についてどうするか、これは真剣に私どもも検討しなければならない問題でございますが、先ほど来たびたび当委員会でも答えておりますように、これが国会の、参議院が発議はしましたけれども、衆議院もそれを受けて一緒に修正して成立した法律でございますだけに、政府だけでこの問題を、本体業務の解除を初めとしまして、ほかの、先ほど言いましたような 五原則等も含めて、これでいいのかどうかになりますと、やはりそれはみんなでもう少し考えなければならないのじゃないかというふうに思うわけです。  それを私どもが提案するのかどうかの問題はございますけれども、ともかく私どもとしては、今行っているみんなのいろいろな気持ちの中から、武器使用についてはこうしてもらいたいという気持ちが非常に強かったので、それを受けて提案をしておりますけれども、その他PKFの凍結を解除するかどうかの問題につきましては、これはやはり各党各会派を含めてお互いが真剣に議論をしなければならない、そういう時期には来ているのじゃないだろうか、そういうふうに思っているわけでございます。  一応三年たったら見直すというそのときに、このPKFも含めて見直しをしなければならなかったのかどうかについては、私どもは、一応それは切り離して、今回はこの改正で臨んだということでございます。
  180. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 次に、官房長官にお聞きしたいのですけれども、停戦合意につきまして、先般四月三十日の本会議におきまして、私は、いわばカンボジア派遣の際、特に第二次隊の場合に、現地におけるその後に派生じた状況の変化で、行く前と行ってからとで見解が分かれた場面があったということで指摘をいたしました。  これはカンボジアの場合だけじゃなくて、今日、いわゆる伝統的なPKOが、AとBという二国間の紛争武力衝突があって、それが一たん終わって停戦が合意をされて、その停戦合意の状況の中で紛争の再発を防ぐといういわゆる伝統的なPKOから、むしろ一つの国の中のいわゆる内乱、内戦という形の一国内PKOというスタイルが、日本が参加した六年前ですか、その状況の流れの中である意味で一層ふえてきた。  つまり、日本が参加する前は伝統的なPKOが多かったわけですが、いわば一周おくれの状況で参加した日本PKOの参加と同時に、世界的にはその一国内PKOという形の紛争がふえてきている。  そういう中で、ゲリラの武装グループとの間に行われる停戦合意というのは、その指導者の指令というか指示がなかなか末端まで徹底されない。そういうことから、かなり戦闘行動というか武力行使という形で発生しやすいというふうなことがよく指摘をされています。だから、そのすべてのグループ、一つの国の中のあらゆるグループに停戦が合意をされるという根回しがきちっとできた形じゃない状況の中で物事が進んでいってしまって、やがてどこかからほころびが始まって停戦合意が崩れてしまう、停戦協定が壊れてしまう、こういうふうな状況がより一層従来に比べてふえてきている、そんなふうに思うのです。  先般、私が改めて停戦合意ということについての考え方というものを定義をしたらどうかという質問をしましたら、官房長官は、停戦協定などはこれに該当すると考えます、停戦合意の原則が満たされているか否かについては、活動が展開している地域全体の具体的状況に照らして総合的に判断すべきものだと考えております、こういうふうにお答えになられたわけです。  いわば地域全体の具体的状況に照らして総合的判断ということですが、これは臨機応変にやるということで、結局は現地日本国内との乖離という問題をまた引き起こすんじゃないのかな、そういう懸念を持つのですが、改めてこの停戦合意の問題についてお答えを願いたいと思います。
  181. 村岡兼造

    村岡国務大臣 停戦合意の原則が満たされているかどうかについては、国連平和維持活動や人道的な国際救援活動が展開している地域全体の具体的な状況に照らし、総合的に判断するべきものと考えております。  具体的な判断基準について、一般論としてお答え申し上げるということは困難ではございますが、例えば戦闘が全面的に再開されるというような状況になれば、それは一つの重要な判断基準となるものと考えております。
  182. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 先ほど防衛庁長官のお話の中に、日本の国内世論において着実にPKOについてのいわば意識というものが国民の間に定着をしてきているというようなお話がございました。  私、日本PKO協力につきまして常々思っていることは、PKO法成立の過程に照らしてみても、あの湾岸戦争のときに、日本が九十億ドル古援というような形のお金だけの支援ではなくて、いわゆる人的な国際貢献をすべきだというふうな流れの中で国際平和協力法という法律が出た、そして、それが廃案になったという経緯があるわけですけれども、PKO協力というものが、国際社会におけるいわば国連軍の変形としての多国籍軍に日本も参加をすべきだという要請をいわば無言のうちに日本PKOに対する協力、貢献というものではねのけるというか、そううまくいくかどうかわかりませんが、日本憲法に対する理解が国際社会の中に定着しているかどうか、別の問題があると思うので難しいかもしれませんけれども、そういう多国籍軍なんかに参加をすべきだという要請に対して、PKO参加というものが一つの大きなプレッシャーになるというか役割を持つというふうに私は思って、先般総理大臣に、今申し上げたような観点から、PKOの位置づけというものについてそういう役割を持っているというふうに判断をするのかどうか聞いたわけですけれども、明確にそのあたりについての判断が示されなかったのですが、改めてその辺のことについて官房長官にお伺いしたいと思います。
  183. 村岡兼造

    村岡国務大臣 国連を中心とした国際平和のための努力に対し、人的な面でも積極的に貢献することが我が国の地位と責任にふさわしい協力あり方であると考えておりまして、今後とも、国際社会の期待にこたえ、国連平和維持活動等に積極的に参加してまいりたいと思っております。  参加に当たっては、従来より、憲法法律の枠内で行われるべきこと、国内及び国際社会から評価されるものであること、派遣が効果的にかつ安全に行われるよう支援体制を整えること、我が国が適切に対応することが可能な分野であること等の観点から総合的に判断してきておりまして、今後とも、このような基準により参加について検討してまいりたい、こう思っております。
  184. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 官房長官、際立って紋切り型の御答弁をいただいたのですけれども、先ほどの質問をさらに言いかえますと、こういうことなんです。  いわば集団的安全保障の補完としてのPKO、こういう位置づけができると思うのですが、そういう集団的安全保障の補完としてのPKOに参加をすることで、日本が参加できる後方支援という形の集団的安全保障に参加せよという要請を避けることができるというふうに考えられるのか。それとも、それはそれ、これはこれ、PKOPKO集団的安全保障に日本が参加できる武力行使と一体化しない形での後方支援という問題は、それはそれでまたしっかりと考えていかなくてはいけないことなんだと。  私は、どっちかというと、集団的安全保障の補完としてのPKOにこれからさらに一層いろいろな場面でしっかり参加することによって、申し上げた後ろの方のことはそれこそ補完できる、そういうふうな考え方を持っているのですが、長官はどうでしょうか。
  185. 久間章生

    久間国務大臣 私も、言われんとするところは、似たような気持ちを持っております。ただ、そうはいいながらも、よその国と違いまして、特に我が国の場合は近隣諸国とのいろいろな過去の歴史的な関係もございますだけに、PKO一つとってみましても、非常に配慮しながら各国に出ていかなければならない。したがいまして、先ほど官房長官が言われましたように、他国がどう評価しているかということを絶えずフィードバックしながらやっていかなければならない、そういう問題がございます。  しかし、そうはいいながらも、そういう中でPKO活動を活発にやることによって、なおかつ他国の評価も非常に高く得ていけば、我が国に対す るいろいろな要請の中で、先ほど言われましたいわゆる集団的安全保障といいますか、そういう形での問題については、なかなか我が国の場合は難しい点も持っておるわけでございますから、できにくいということを補完してくれる、そういう点もあろうかと思います。そういう中で、これから先、できるだけPKO等についても積極的に参加することは、そういう国際社会の中で評価を高く得ることにはつながっていくんじゃないかと思います。  しかし、それと同時に、やはり我が国憲法上の制約があって、先ほどちょっと触れられました多国籍軍を初めとするそういう問題には出られないんだということも絶えず言わざるを得ない。また、言うことによって理解をしていただいて、日本という国はこういう国なんだ、そのかわり、PKOその他でこういう形で国際貢献をしているんだという評価を得ていけば、私は、国際社会において日本は認められていくんじゃないか、そういうふうに思っておるところでございます。
  186. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 今の長官と同じ考えに私も立つわけですけれども、なおさら、そういう重要な役割を持つPKOであるからこそ、今、日本の場合は、PKO活動というものが自衛隊としてのいわば付随的な任務、それこそ自衛隊の本体業務ではなくて付随的な業務に位置づけられているということについて、今長官が述べられたようなことも含めて世界にアピールしていく、プレゼンテーションしていくという観点から見ても、もう少し位置づけを変えた方がいいんじゃないかという気がするわけですけれども、その辺のことについてどう考えられますか。
  187. 久間章生

    久間国務大臣 確かに、現在の自衛隊法では、三条の目的任務等からいいましても、主たる任務ではなくて付随的任務になっておりますし、PKOにおける条文も一応雑則の形で書いてあります。  しかしながら、今行っている実態からいきますと、まだ主たる任務として言うほどのPKO活動にもなっていないし、また自衛隊が果たしてそれを主たる任務とすることがいいのかどうか、これについてもみんなの理解もまだ深まっていないのではないかと思います。  私どもとしては、現在の状態を積み重ねていくことによって国民の理解あるいはまた思う方向がどういうふうに向かっていくのか、そういうことも見きわめながら、それと同時に、先ほど言いましたように、周りに与えますいろいろな影響等もよく配慮しながら、これから先検討していく問題であろうかと思いまして、今直ちに主たる任務としてこれを位置づけようという考えは持っておりません。
  188. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 新しい防衛計画の大綱でも、「大規模災害等各種の事態への対応」ということで、「等」の中にひっくるめられて非常につつましい位置づけがされているわけです。  今長官は当面そういう考えはないということでございましたけれども、冒頭述べましたように、何回か本会議だとかあるいはこの委員会の質問でも繰り返し申し述べさせていただいておりますように、日本の置かれた特殊な位置であるからこそ、私はPKOというものが非常に重要な役割を果たす、そんなふうに思いますので、今申し上げた、日本自衛隊にとってPKOというものが非常に重要な位置を占めているのだということを法的な観点からでもぜひしっかりとフォローアップしていただきたい、そんなふうに思います。  最後に、PKOに参加する組織あり方ということにつきましてちょっとお伺いをしたいのです。  これは、それこそPKO法が大変に議論の渦中にあったときにいろいろなところから指摘をされたり議論の対象になったことですけれども、自衛隊の本来任務である我が国防衛に見られない、先ほどの防衛庁長官発言とも関係するのですが、いわば自衛隊の本体の業務とはちょっと異質のものがPKOの場合要求されるということから、むしろ自衛隊の中に独自のPKO活動をする専門の組織をつくってはどうか。いわば自衛隊内別組織論というふうなことが一部で強く主張をされたりしましたけれども、自衛隊の中にそういうPKOに対する専門の組織をつくるということに関して、現時点でどういうふうに考えておられるでしょう。
  189. 久間章生

    久間国務大臣 御承知のとおり、今、各方面隊から順番に、その中に陸海も一部入れながらやっていっているわけでございまして、この一つのパターンで大体一巡してまいりましたし、定着していると思います。  それで、これをまた自衛隊の中で別組織にしてつくるということが果たしていいのかどうか。これは、むしろ現在やっと定着し始めた自衛隊の中の順番で、えりすぐって訓練をしながら派遣しておるこの制度を、今せっかく定着しかけたわけでございますから、もう少しこの方向を見てみたい。その上で、今御指摘になるような方法がいいのかどうか比較してみないことには何とも言えませんけれども、現時点では現在の方法がいいのじゃないか、そういうふうに思っているところであります。
  190. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 終わります。
  191. 塩田晋

    塩田委員長 佐藤茂樹君。
  192. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 自由党の佐藤茂樹でございます。  我が党は、まだ今回の改正案について党としての賛否は正式には決めておりませんけれども、私個人としては、今回の改正案というのは、六年間の経験から、憲法範囲内でPKO協力法の中で実情にそぐわない条項があるのであれば、それは改正するのは当然である。であるがゆえに、今回の改正案というのは、PKOの先進国まではいきませんけれども、国際的な標準といいますか、基準に合わせるための一歩前進の改正ではないか。そういう観点から、賛成するという立場から何点かお尋ねをさせていただきたいと思うのです。  一つは、きょう官房長官お見えですので、午前中にも別の委員の方から大分しつこく聞かれておりましたけれども、要は、平成七年の八月以来、関係省庁間で、それまでの派遣であるとか派遣の教訓とか反省を踏まえてさまざまに今回の見直し検討されてきたということが事実として残っているのですね。であるにもかかわらず、今回三月に法案化されたけれども、二年半もかかったのはなぜなのかということをまずお聞きしたい。  特に、一年後の平成八年の九月には、また後でも触れますけれども、既に今回の三項目についてはまとめられていたわけですし、また、その一年後の昨年の五月には最終案としてまとめられていたのですね。それがなぜ二年半かかった今になって法案として提出されたのか、そのあたりについて、まず官房長官お答え願いたいと思います。
  193. 村岡兼造

    村岡国務大臣 先ほどもお答えをいたしましたが、平成七年の八月に同法に規定する見直し時期を迎えて以来二年半もかかったのは何か、こういうお話でございますけれども、改正に当たっていろいろな方々の協議、御意見も聞いたことと、先ほどもお答えいたしましたけれども、与党内の調整とか、あるいは昨年あたりは相当な法案数もございまして、私も与党の国対委員長をやっておりましたけれども、そういう状況を踏まえて現在にまでなった、こういう経緯でございます。
  194. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 与党内の調整と法案数が多かったがゆえに二年半もかかったという。その結果、実際に現地に派遣されている自衛隊の皆さんというのは、いざ武器使用のときには個人判断でやらざるを得ないという非常に心理的負担が、この二年半ほったらかしになっていたがゆえに、かけられたままここまで来たわけですね。やはり政治としての、特に与党の皆さんは責任を感じなければいけないのじゃないのかな、そういうふうに思うのですけれども、官房長官、一政治家としてどのように考えておられますか。
  195. 村岡兼造

    村岡国務大臣 PKO法案だけでなく、いろいろな法案についても、与党協議、自民党の中にあっては総務会、こういうものを通らなければ閣議決定できないのでありまして、それに時間がか かった、こういうことの御説明をするほかない、こう思っております。
  196. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 いや、仕組みは聞かぬでもわかっているのですけれども、その間現地に行っている、具体的に派遣されている自衛隊隊員の皆さんが結局個人判断を迫られて心理的負担を感じざるを得なかった、そういう期間が二年半も続いたということに対して、官房長官はどのように感じておられるのですかということをお聞きしたい。
  197. 久間章生

    久間国務大臣 官房長官がどうというよりも、自衛隊を派遣しております私の立場から言わせてもらいますと、実は、昨年の七月に私はゴラン高原に行きました。そして、ゴラン高原でもみんなの隊員を前に、これは一日も早く法案改正して、やはりそういう指揮官の命で行動できるようにしたいというようなことも伝えました。  しかしながら、御承知のとおり、財政構造改革法案とかいろいろな法案がずっとございまして、そういう中で国会に提出して、この法案が流れるというようなことになりますと大変なものですから、これらについても慎重を期しながら、政府だけではなくて党の国対の関係者とも相談をしながら、いつ出すか、出した以上は上げていただく、そういうような気持ちで時期をうかがっておったのも事実でございます。  そういうような形の中で今日まで審議が非常におくれたということでございまして、そういう意味では、その間一刻も早く通してもらった方がよかったのに残念でありましたけれども、その責任者としての私の立場からいっても、国務大臣でもあるわけでございまして、大変申しわけないという気持ちはありますが、おくればせながら、今とにかく一日も早く成立させていただきたいという気持ちでおるわけでございます。
  198. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 これ以上はやめますが、要するに言いたいのは、急迫不正の場合に、非常時において人命にかかわる問題なんですね、場合によっては。そういう問題を政治の怠慢で、早急に改正すべきものを後回しにしておったということは反省しなければいけないであろうということを指摘して、次の質問に移らせていただきたいのです。  平成七年の八月に検討を始められて、先ほど言いましたが、平成八年の九月に「国際平和協力法の見直しについて」という作業結果をまとめられているのですね。その中で、今回は早急に結論を出すべきこととされた事項三点について法案化をされているわけですけれども、この見直しについての中では、大きな二項目めに「その他運用の改善を含め今後とも検討する事項」ということで五項目が掲げられているわけです。時間もないので一々読み上げませんけれども、この五項目について、平成八年九月から、期間を考えても既に一年半経過しているのですね。「今後とも検討する事項」の五項目について、政府としてどのように取り扱われていくおつもりなのか、お答え願いたいと思います。
  199. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  五項目の各項目について、現在の状況を御説明したいと思います。  人道的な国際救援活動における医師等の派遣についての五原則適用の緩和というのを検討課題にいたしました。今回の法改正案では物資協力の面だけについて手当てをいたしましたけれども、医師派遣というのは人の派遣ですので、停戦がしっかりなされているところでないとなかなか難しい問題があるということでございます。  それから、五原則に係る同意を得ることを要する受け入れ国の範囲検討というのを行ってきましたけれども、五原則というのはPKO法の基本をなすものですから、大変慎重な検討をしているということでございます。  それから三番目の、派遣先国への活動終了時の残置物品の譲与ということについては、経済協力の枠組み等を使いまして実際に運用上手当てをしているということでございます。  物資協力の手続の迅速化についての検討ですけれども、これは備蓄等を進めているということで運用上の対処をしているということでございます。  第五番目、いわゆる警護の検討の問題がございますけれども、警護の問題というのは武器使用あり方とかなり密接な関連のある問題でございまして、慎重な検討が必要になっているということでございます。
  200. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 これは、引き続きまた別の機会に聞いていきたいと思うのです。  続いて、武器使用の問題でお尋ねしたいのですけれども、この六年間、結局、個人判断武器使用をするということがずっとまかり通ってきたのです。時間もないので、いろいろ言いたいことははしょってお聞きしたいのですけれども、日本自衛隊以外で、各国の軍隊でもいいですし、また国境警備隊でもいいですし、テロ対応の特殊部隊でもいいのですけれども、武装をしているそういう集団の中で指揮官命令もなく個人判断武器使用していい、そういうような国とか機関というのが世界じゅうにあったのかどうか。逆説的な聞き方ですけれども、お尋ねしたいと思います。
  201. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 今回の改正に当たりまして、国連の平和維持活動への部隊の派遣経験を有する主要国に対して、国連平和維持活動において武器使用する際の判断主体について調査を行いました。その結果でございますけれども、ほとんどすべての国で個人判断する場合と上官判断する場合と双方がありまして、個人判断による武器使用を排除するという国はなかったわけでございます。  ただ、各国が、部隊及びその構成員がさらされる危険を最小限に抑え、事態の悪化を防止する観点から、上官命令を求める暇がないような場合を除いて、基本的に現場にある上官が最良の選択を行って、その命令に従って対応をすべきであるという考え方をとっている、これが一般的であるということが判明いたしております。
  202. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 逆説的な聞き方をしましたけれども、今の御答弁にもあるように、結局、ようやく日本も各国の標準に今回の改正武器使用についても並ぶ。あと限定的な部分があるので、傍でその部分については聞きますけれども、そういうところにようやく来たと思うのです。  今回、急迫不正の事態において上官命令によって組織的に武器使用されるということが午前中来ありましたけれども、憲法九条で言う武力行使に当たらない、憲法上許されるという解釈は一貫しているんだということであるならば、なぜ現行法では武器使用については個人判断しか認めなかったのか。そのことについて、過去にさかのぼるような話を聞きますが、お答え願いたいと思います。
  203. 久間章生

    久間国務大臣 当時のいろんな議事録その他を読んでみましても、個人判断で十分であるといいますか、個人判断して適切に対応することによってそういうような危険は乗り越えられるということで、組織としてではなくて個人個人判断をするというところに力点が置かれて法律がつぐられたようでございます。
  204. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 そのことも、午前中の石破委員初めずっと聞かれているので、本当は聞きたかったのですが、あえて飛ばしまして、今後の話として、防衛庁長官も先ほどそういう答弁もされたのですが、あえてきちっとお聞きしておきたいのです。  今回の改正によりまして上官あるいは指揮官命令武器使用をするんだということになりますが、そうなると、一言で言うと、逆に上官指揮官に、正当防衛に当たるのかどうかという判断、これまで以上に重い責任と厳しい判断を追られることになると思うのですね。今回の二十四条の新しく入る五項なんかでも、上官は、武器使用は「その目的範囲内において適正に行われることを確保する見地から必要な命令をするものとする。」という一応の枠というか条件というものをつけておりますけれども、結局、武器使用と いうのは、とっさの判断上官がどうするのかということが非常に迫られてくるのです。  その極限の状態において上官判断を間違えるということのないような、何らかの武器使用の基準とか手順というものをやはり明確につくっておくべきじゃないのか、それを上官がわかって現地に行くという形にきちっとしておくべきではないのかな、そういう歯どめを日本にいるときから訓練としてきちっとしておくべきではないのかなという感じを持っているのですけれども、防衛庁長官としてどのように考えておられるのか、お尋ねしたいと思います。
  205. 久間章生

    久間国務大臣 実は、国内におきましても、自衛隊組織としての武器使用のときも、一応のそういうものはあるわけでございます。しかしながら、これはまた手のうちをいろいろと示すわけにまいりませんので、外に対しては公表はいたしておりませんけれども、そういうものはございます。  そういうような意味では、これから先、いわゆる隊の組織としての武器使用ということになってくるわけでございますから、それをさらに間違うことのないようにということで、しかも、今回は法律の中にその判断基準までも担保するような条項をあえて入れているわけでございますので、これに限らず、さらにもう少し細かい点におきましても、国内と同様あるいはそれ以上にいろんな判断基準を示していかなければならない、そういうふうに思っているところであります。
  206. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 先ほど、前の委員質問のときに、例えば空砲を撃ってこちらの存在を示してから武器使用するんだというような答弁防衛庁長官はされたように、私は席にいて聞いておるのですが、そういうこととは全く違う次元の話ですか。
  207. 久間章生

    久間国務大臣 先ほど言いましたのは、空砲を撃つ場合もあるということを言ったわけでございまして、必ず空砲を撃ってというふうにやりますと、日本の場合は、一発目は空砲だから危なくないんだということになるわけでございますから、実施要領等は公表できないというのは、そういう意味も含めての話でございますから、御理解を賜りたいと思います。
  208. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 時間も限られていますので、次に行きます。  次にお尋ねしたいのが、今回のPKO協力法の武器使用と、四月二十八日に閣議決定されました新ガイドラインに伴う周辺事態安全確保法案並びに自衛隊法改正案での武器使用関係について、ちょっとお尋ねをしたいんです。  今回の周辺事態安全確保法案で、第十一条で武器使用というのがきちっと規定されておりますし、また自衛隊法改正案でも、在外邦人等の救出を規定した百条の八が改正されて、武器使用の部分の規定がきちっと追加されている。そういうことなんですけれども、今回のPKO協力法案改正でも、当たり前のこととして、そうだからこうなんだということなんですが、自衛隊というのは、やはり日常的に部隊として編成されて訓練されて、部隊単位で動いている。そういうことから、指揮官命令によって統制されている、そういう集団だと私は思っているんです。  そういうことからいうと、今回、ガイドラインに伴って三つの活動がうたわれておりますけれども、それは、法律の中の文章で言いますが、後方地域捜索救助活動と船舶検査活動、あと在外邦人等の救出の活動、この三つの活動実施の場合も、今回のPKO協力法の改正点と同様に、現場上官がいるときは、原則として上官命令によって武器使用しなければならないのではないのかな、そういうふうに私は思っておるんですが、防衛庁としてはどう考えておられるのか、お尋ねしたいと思います。
  209. 久間章生

    久間国務大臣 それはそのとおりでございます。  また、あえて言いますと、今挙げられました三項目は、いずれもこれは任務遂行の問題でございますから、その点においてPKOの場合の武器使用と若干違うわけでございます。  PKOの今度の二十四条の場合は、いわゆる任務遂行中だけではなくて、隊員が眠っているときとかそういうときもあるわけでございますから、個人がまず判断していいんじゃないかというようなことでっくられたわけでございますけれども、しかしながら、いろいろな世界の各国の例その他からいって、やはり上官があるときは上官の命によるというふうにすべきだということで、急迫不正以外のときには、とにかく同じような仕組みにしましたので、結果としては同じような形になっております。
  210. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 であるならば、私が拝見したところ、いただいている資料あるいは新聞報道も含めてですが、四月二十八日の閣議決定の段階では、今回、PKO協力法の改正案で新しく入れられる、PKO協力法では二十四条の四項、五項ということになっていますが、上官命令による武器使用の条項というのが、四月二十八日に閣議決定されたガイドライン関係法案の中には盛り込まれていないんですね。  ですから、そういう防衛庁長官答弁であるならば、今からでも結構ですから、法案を修正して追加すべき筋合いのものなんじゃないですか。
  211. 久間章生

    久間国務大臣 先ほども言いましたように、先ほど委員が御指摘になりました三つの項目は要するに職務遂行上の話でございますから、したがいまして、自衛隊法の五十七条に基づいて、上官の命によるということをあえて書かなくても組織として行動しているということでございます。  今までのPKOの場合はその五十七条じゃないわけでございますので、そういう意味で、上官の命によるというような規定を入れなければならない、そこの違いがあるわけでございますから、部隊任務遂行中の仕事としてやる場合には、これは上官の命によるというのがごく当たり前のこととして、法律上もそういうような仕組みになっているわけでございます。
  212. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 あともう一点お尋ねしたいんですけれども、武器使用の話で、報道ではいろいろと出ているんですが、あえて確認をさせていただきたいんです。  現行のPKO協力法では、二十四条の六項で、自衛隊法九十五条「武器等の防護のための武器使用」というのはPKO業務に従事する自衛官には適用しないと明確に書かれているんですけれども、今回のガイドライン関連周辺事態安全確保法案並びに自衛隊法改正案ともにそのような条項がないということは、逆に言えば、この三つの活動の際に、この自衛隊法九十五条の「武器等の防護のための武器使用」というものも十分適用があるんだ、そういうように受けとめていていいのでしょうか。その辺、防衛庁としてどうでしょうか。
  213. 久間章生

    久間国務大臣 そのように理解していただいて結構でございます。
  214. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 これはもともと国連の名のもとで動くPKO周辺事態と全然事態が違うんだということをわかった上で言っているんですけれども、しかし、そうなってきますと、武器使用という点でいうと、PKO協力法に比べて許容範囲が非常に拡大したとも言えるわけです。そうすると、その事態においては、例えば使用できる武器自体が、今のPKOで限定されている小銃であるとか、せいぜい機関銃とか装甲車ぐらいまでから拡大する可能性も非常にある。  そういう意味からいいますと、例えば在外邦人の救出の際に、救生活動などに使用する航空機や艦船、車両を守るための武器も使えるということになってくると思うんですね。重火器で攻撃された場合は重火器で応戦が可能、そういうように考えてもいいのか。それとも、生命身体を守るためといえども、無制限な武器使用の可能性はなくて、使える武器範囲などはある程度自衛隊として、防衛庁として決めているんだ、そういう立場なのか、御答弁をいただきたいと思います。
  215. 久間章生

    久間国務大臣 自衛隊法九十五条の規定から直ちに使用できる武器の種類に制限が課されるわけではありませんけれども、使用できる武器の種類というのは、自衛隊法八十七条によって自衛隊が保有することのできる武器の中で、その事態に応じて合理的な範囲のものに限られることになるわけであります。  一般的には小火器が中心となるわけですけれども、具体的に使用する武器の種類については、個々の事態によっておのずから決まってくるということになろうかと思います。したがいまして、全く無制限ではございませんけれども、かといって、何ができないというような規定法律上は設けられておりません。
  216. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 それはケース・バイ・ケースでやるということなんですか。それとも、今から検討をされてもいいんですが、要するに、相手の出方とか応戦の仕方によってエスカレートしないように、ある程度しっかりとした基準であるとかルールを自衛隊内できちっと決めていく方針なのか、そのあたりについてお答え願いたいと思います。
  217. 太田洋次

    ○太田(洋)政府委員 お答え申し上げます。  一つの例を申し上げますと、現在も遠洋航海の部隊が、艦船が外国に行く場合もございます。そういう例の場合も含めまして、自衛隊武器等の防護のためにどういう形で、どういう考え方で、どういう基準でやるかということにつきましては、内部の規定を設けまして、それによって、実際の万が一のときに――今まで海上自衛隊は、三十年以上にわたりまして、四十年になりますか、遠洋航海に行っておりますけれども、実際にそういう事態に遭遇したわけではございませんけれども、そういう万々が一のために備えまして、一応のそういう武器使用についての考え方、それから、それについての一応の基準と言えるものも内部的に定めておりまして、それにのっとってやっている。  その内容につきましては、先ほど大臣から答えております趣旨と同じなんですが、事柄の性質上、中身については御説明を差し控えさせていただきたいということでございます。
  218. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 時間の残りがなくなりましたので、最後に確認的にちょっと質問をさせていただきたいのです。  これは武器使用と全く違いまして、今回の人道的な国際救援活動に対する物資協力についてですけれども、これは本会議でも同様の質問をされていたのですが、今回、物資協力実施の条件から停戦合意の存在を外す改正について、これは結果としてPKO参加五原則の例外をつくることになったわけですけれども、人道支援の物資協力に限って参加五原則に例外を設けることが直ちに原則そのものの形骸化につながるかどうかということが大事だと思うのです。  この人道支援の物資協力に限ってだけは今回五原則から外しましたけれども、今後ともそういう事態は生まれてこないのだというふうに考えておられるのか、また、その都度、ニーズに応じてはそういうこともあり得るのだというふうに考えておられるのか、政府としてどのように考えておられるのか、お尋ねをしたいと思います。
  219. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  今回、人道支援のための物資協力に関して停戦合意の要件が外されているということなのですけれども、停戦合意の要件を外しているのは、国際連合難民高等弁務官事務所等の一定の国際機関を通ずる物資協力の場合でございます。これは、こういう機関は停戦合意がないような状況でも絶えず中立的な立場というのを重んじて活動する機関であるということに着目をしてそういうことをしているわけでございます。  したがいまして、今回、そういう改正をしたから、その改正考え方を国際連合平和維持活動あるいはまたそれ以外の人道的な国際救援活動に広げていって五原則を崩すような結果にすることは全く考えておりません。
  220. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 もう一回、最後に確認です。  人道的な国際救援活動内容また目的からいってもあり得ないことだと思うのですが、しかしながら、今回、条文に明記しなかったのであえてお尋ねするのですが、武器弾薬等、またそういうものに類するようなものの物資協力というのはあり得ない、条文に書かなくても大丈夫であるという見解なのですか、政府としては。
  221. 茂田宏

    茂田政府委員 今回、停戦合意がない場合の物資協力は、人道的な国際機関を通ずる物資協力でございます。こういう人道的な国際機関というのは、その活動のために人を殺傷したり物を壊したりする武器ないしは弾薬というのを必要とすることは万が一つにもありませんから、これらの機関から日本に対してそういう武器弾薬の提供の要請があるとは考えておりません。  もし万が一、仮にあったといたしましても、それはお断りいたします。
  222. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 法制局の方、また外務省の方、お呼びして質問できずに申しわけありませんでした。  以上で終わります。ありがとうございました。
  223. 塩田晋

    塩田委員長 西村眞悟君。
  224. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 午前中から御答弁をお聞きしておりましたら、やはりこの改正案は実施の経験から不備な点を改めるという観点から出しておられる。これは現場隊員の諸君に特に武器使用に関しては非常に不安が多かった。そして、その点を改めながら改正案をつくったのだ。一番の点は武器使用の要件で、隊員個人にその責任をゆだねているということが、非常に隊員の負担も重いしかえってこれは統制を欠いた武器使用になる、その武器使用に統制を与えるのは上官命令である、こういう経験的なことから出てきた改正案であるとお伺いしてよろしゅうございますでしょうか。
  225. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  現行PKO法成立当時に、政府としては、自己または自己とともに現場に所在する隊員生命身体を守るという目的のための武器使用であるから、個人がその使用の可否を判断するというのが適切ではないかという考えをとっておりましたけれども、派遣の経験からそういうばらばらの武器使用といいますか、それはかえって危険を招くということが感じ取られましたので、今回は、その点をなくすために原則として上官命令によるという改正をお願いしている次第でございます。
  226. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 私のお聞きしたことと同じ御答弁をお返しいただいたと承っておりますけれども、統制を与えるのは上官命令であるということですね。  ということならば、翻って、論理的な面でこれは詰まっていない法律なのだろう、いわゆる改正点を詰めた案ではないなと私は思いまして、私なりにこの法律を詰めてみました。  非常にこれは現場隊員がなおも御苦労されるなというのが私の印象でございます。私もこれを考えている最中でございますから、要領よく頭の整理をなして質問できないかもわかりませんが、三十分お許しください。  およそ人間の行為が違法であるか違法でないかを判断する一般原則、これは刑法三十五条、三十六条、三十七条でございます。三十五条は正当業務行為、三十六条、三十七条は正当防衛緊急避難。  私という人間が何も社会から業務を与えられずに例えば赤坂をうろつきながら人に危害を加えたというときには、私の行為を合法である、違法ではないという判断をするのは、正当防衛緊急避難しかないわけです。  しかし、社会から何かの業務を与えられておる、ドクターであれ、警察官であれ、自衛隊の諸君であれ、消防士であれ、その業務に基づいて何かをなしているときには、その行為が違法ではないという判断の一般原則として三十五条の正当の業務によってなしたる行為はこれを罰せずということが必ず入るわけです。  まずこれが私の質問の前提で、そして先ほどから武器使用の要件というのは正当防衛緊急避難 てあるということで出しておられますけれども、この法律条文を読めば、これは正当防衛でも緊急避難でも何でもないのです。急迫不正の侵害ということが全く要件としては要求されておりませんから。ただし、二十四条四項に、正当防衛緊急避難のとき以外には人に危害を加えてはならない、こういうふうにあるわけです。武器使用の要件としては急迫不正の侵害ということは要求されておらない、これがある意味では大変だなと私が思うところです。  では、一般原則ですから、法律に書く書かぬにかかわらず、違法性阻却要件というのは出てくると私は思うのですが、あえてここで書いておられる三士八条、三十七条の場合以外には人に危害を加えてはならない、これについて今回は統制のとれた武器使用にするのだ。上官命令で発砲した、人に、相手に危害を加えた。五人の部隊上官命令によって発砲し、相手に危害を加えた。このときに、わざわざ書いておられるのですからお聞きしなければなりません、共謀共同正犯としてすべての隊員が急迫不正の侵害があったのか否かを判断して違法性を阻却されると判断するのか、それとも、命令を下した、統制をとった上官一人の正当防衛の要件があるのか否かを判断して、その全体としての部隊としての行動の違法性を阻却するのか、いずれなんだろうか、これが私の疑問ですね。  それからもう一つ、二問目ですが、それを有権的に最終的に判断するのはだれなんだろうか。昔の本当の軍隊、真の軍隊なら、内部的な秩序と有権的に最終的に判断する内部的な機関として軍法会議がある。我が自衛隊にはないとすれば、有権的解釈は裁判所しかないわけですね。  それで、有権的解釈は裁判所なのですかということと、先ほどの、組織として上官命令があったときに、どの人の要件をもって違法性を阻却するか否かを判断するのか、この二つをお聞きしたい。
  227. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  PKO法二十四条の武器使用規定の性格についての御質問がまず最初にあったかと思いますけれども……(西村(眞)委員「いや、それは質問していない。前提で言うただけです。順々に聞いていきますから、私の疑問にだけ答えてください」と呼ぶ)刑法三十五条で言う法令正当業務というのがございますけれども、これに二十四条に言う武器使用は当たるということでございます
  228. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 頭が整理されていないので、順番にお聞きしていかなければ私の質問が成り立たぬのです。だから、条文に明示されていることからまず聞いてまいっていますので。  正当防衛に当たれば違法性は阻却されるとわざわざ明示されておりますね、この四項で。だから、その正当防衛に、たとえ――先ほどの前提の質問では、上官命令で統制をとって武器使用をすることが安全なんだ、それが望ましいんだと経験則上出てきたと言われましたね。だから、本改正案が望んでおるのは、上官命令によって武器使用すること、部隊として。例えば十人なら十人。そして一定の人に危害を加えた、それが合法なのか合法でないかを判断するのは、命令を下した上官にその要件があるか否かで判断するのか、それとも十人すべての要件を見て判断するのか、こういうことですよ。  上官命令は正しかった、しかし、上官命令に従って発砲したAという隊員の前面には急迫不正の侵害の現状はなかった、ただ、Bというところにあったんだと。こういうふうにして、A、B別々に判断していくのかということを聞いておる。そして、それを有権的に最終的に判断するのは我が国の裁判所であるのか、裁判管轄も含めて簡潔にちょっとお聞きしたい。
  229. 茂田宏

    茂田政府委員 二十四条の武器使用は、上官命令で統制をとるということになっておりまして、それで上官命令をする、その命令が適切かどうか。その命令が二十四条の要件を明らかに逸脱している場合、それは日本の裁判所に係属することになると思います。裁判所で最終的に判断されるということになると思います。  ただ、日本の裁判所というのが決まる前に、日本PKOが行っている場所、受け入れ国との間で地位協定というのが結ばれるか、または国連の特権免除協定が適用になると思います。それで、国連の地位協定では、普通、派遣国の専属裁判権が認められておりますので、多分日本の裁判所に来ることになる、そこで最終的決定がなされる。その下の命令に従った人は、これは命令に従う義務に従っているわけですから、そのことがどう判断されるかは、また、個々具体的な状況に応じて判断されるのだというふうに考えます。
  230. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 やはりいまだ隊員は大変なんですよ。それは、明確にその部分はお答えいただかなければ大変ですよ。また、大変なまま放置することになりますね。  今、裁判管轄のことで、日本の裁判所が判断する。例えば千キロ向こうのところで発砲の命令を下した上官日本の検察官が起訴して、日本に千キロ戻して、どうして証拠を収集し事実を認定するのか。そのときの現場の、現地におられる方々、国民の方々を証人としてまた呼ばなければいかぬ。到底無理なことだと私は思って、この部分でもまだまだ詰まっていないなと思っております。  次に参ります。  先ほど、正当防衛緊急避難のとき以外は人に危害を加えてはならないと書いておられる。しかし、武器使用の要件としては、急迫不正の侵害ということは要件に入れられておりません。  まずお聞きします、武器使用とは発砲のことですかどうですかということ。この法律には、武器を保有するという言葉武器使用するという言葉の二つがございます。だったら、その使用とは発砲に限定されますかということが一つです。  そして、武器使用目的は、改正案では、生命身体の保護ということは語られています。しかし、それにプラス事態の秩序維持及び回復ということも改正案で語られておるのではないか、私はこのように思います。  なぜなら、改正案の五項を見てください。その武器使用はこういう場合には許されるんだと前項にありまして、ただ、それによってかえって生命身体に対する危険または事態の混乱を招くことになることを未然に防止し、これは、生命身体と離れて事態がなおかつ混乱していくことを防止しなければならないということを書いてあるわけですね、武器使用のときの注意として。だったら、反対から言うならば、事態の秩序維持及び回復ということも武器使用目的に入るのではないか。  武器使用とは発砲のことを言っておるのですか。そして、その発砲は隊員等の生命身体の保護と事態の秩序維持及び回復を目的としてなされるものですか。この二つはどうですか。
  231. 太田洋次

    ○太田(洋)政府委員 お答え申し上げます。  まず、事実関係と申しますか、武器使用の実態について私の方からお答えをさせていただきたいと思います、発砲かどうかということを。  それで、今、例えばゴラン高原に派遣しておりますけれども、そこへ持っていっている武器は、機関銃、小銃、けん銃でございます。これの通常の使用は発砲ということになります。ただ、それの使い方によっては、理論的な問題ですけれども、台じりで殴るということだってあるわけでございます。そういう理論的な問題はございます。  使用目的は、先ほど申しましたように、個人生命身体防衛をするために武器使用するということでございまして、今回のこの改正目的は、個人個人判断で勝手に武器を使った場合には非常に混乱を招くおそれがあるということで、それを防ごうということでございます。
  232. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 それで、だったら反対から聞きますよ。  改正案の五項は、武器使用生命身体を守るためだけに限定するならば、それによって、生命身体を守るために発砲することによって事態の混乱を招くことになることを未然に防止する、そうい うことを配慮しなければならないと書いてあるから、私の疑問が出てきたわけですよ。まあ、いいですわ。  それで、先ほどのことを聞きますよ。  急迫不正の侵害がないけれども、ただ、例えば武器使用のやむを得ない必要があるときということがあるわけです、生命身体を守るために。その大きな集合の中に、その事態がどうして起こったか。急迫不正の侵害で起こったというのは正当防衛緊急避難ですよね。そして、法律正当防衛緊急避難のとき以外は人に危害を加えてはならない。反対に、急迫不正の侵害があるときに人に危害を加えてもよろしいと書いてあるわけですね。  それなら、武器使用の許される要件、急迫不正の侵害ではないけれども、例えば百メートル先から、そこにいる日本人、どかなかったら射殺するぞと静々歩いてくる事態を想定してください、この場合は人に危害を加えてはならぬのですか、どうなのですか。
  233. 太田洋次

    ○太田(洋)政府委員 大変難しい御質問でございまして、実際には、そういう全般の状況を見まして、相手がぶらぶらと歩いてくるということで、その場合に武器を持っているというようなことがございます、それから、周囲の状況がどうであるかとか、活動しています地域の実態的な動き、ゲリラが頻発しておるかどうかとか、そういう総合的な情報を集めまして、そこで総合的な判断をするということでございます。これはあくまでもそういう判断に適するのは、やはり上官がそれをやった方がよかろうということが今回の趣旨にも盛り込まれておるわけでございます。  それを個人個人でやった場合に、例えば先ほど……(西村(眞)委員「それはわかっていますよ。だから、人に危害を加えたらあかんのかと聞いているわけです」と呼ぶ)それは、この場合はいい、この場合は悪いという判断はあらかじめ言うことはなかなか難しいということを先ほど申し上げておるわけでございますが、その場合に、これは全般の状況から判断して、自分たちの生命身体防衛のためにどうしても必要があるというふうに判断すれば、それは武器使用するという命令を下すということになります。
  234. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 だったら、その場合の違法性阻却事由は何ですか。刑法三十五条でしょう。刑法三十五条なのですよ。だから、三十五条は条文として明示されていないけれども、三十五条は背後で機能させなければ、その事態において、現地隊員、また命令を下す上官が安んじて事態を収拾できないのですよ。何かあるのですか。僕の考えと違うのなら言ってください。
  235. 太田洋次

    ○太田(洋)政府委員 端的にお答えします。  まずここで、先生のおっしゃるような事態において、我が方で生命身体防衛のために武器使用しなければいけないという判断をしました場合に、第二十四条の武器使用についての要件が細かく書いてございますけれども、これに当たれば、これは先生の例で言えば、三十五条の正当業務に当たるということは間違いございません。  あと、実際に相手方に危害を加えていいかどうかという判断が、正当防衛緊急避難によって要件が決まってくるということでございます。
  236. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 またそこで堂々めぐりしてきた。  だから、そのときに、刑法三十五条の正当業務行為で、急迫不正の侵害はないけれども、今の御答弁なら、空に向けて撃たなければいかぬ。相手がこんなふうにして歩いてくるわけですよ、十人ほどが銃を構えて、腰だめして。急迫不正の侵害はないのですよ。しかし、逃げれば業務は遂行できない。自分たちの背後にいる反対派の難民に乱射すると宣告している場合、こういうことが今お答えできないでしょう。だから、刑法三十五条は人に危害を加えてもいいのです。正当業務行為なのです。医者は手術でメスで身体を切る、これは正当業務行為だから当然のことなのです。  それで、詰めれば、私が整理できていないからあっちこっちの観点からお聞きすることになるのですけれども、今の事態を想定すれば、武器使用というものは、生命身体の保護が目的というものではなくて、これはPKO部隊として国家から指定された任務を帯びている部隊ですから、その任務にふさわしい正当業務行為に基づく武器使用。つまり、この改正案でも、ちょっと先ほどから出ている武器使用により事態の混乱を招くこととなることを未然に防止する、命がかかったこういう事態においても、それが自分たちが平和を維持するために行っている事態の混乱を招くことになれば、武器使用は慎まねばならないと書いてあるでしょう。  だから、本当の武器使用目的は、いろいろな御事情がありましょうけれども、PKOという平和維持活動の業務に沿った目的なのです。これ以外に私の疑問を解くかぎはないのです。  そして、隊員に安んじて武器の保有を認めているわけですから、いざとなれば上官命令行使する。これは、単に自分たちの命を守るために、強盗と遭った現行犯逮捕の男がびっくりして発砲するようなことではなくて、自分たちの隊として、部隊として、その崇高な任務を果たすためにこれはあるのだよとやっと教育できるのですね。  それで先ほど、この法律には武器の保有という言葉使用という言葉があるわけですね。武器の効用というのは、発砲は使用に含まれるけれども、威嚇によって秩序を回復するということもあるわけですね。これは全然規定がない。そしてまた、威嚇射撃についても規定はないのかな、多分ないのでしょう。威嚇のための保持。  つまり、先ほどからたびたび出ております停戦合意が崩れるというのはどういう事態なのか。子供が相手方の大人に石を投げて、大人が子供を追いかけて、どついて子供が泣いたら、子供のおやじが出てきて、大人同士のけんかになって、石を投げ始めて、ピストルを持っているやつがぶつ放し始めて、こういうことがエスカレートしていくわけでしょう。  だから、そのときに武器を持っておって何をするのか。武器をぼおっと持っていて、武器使用は発砲のみだと言われたから解決しましたけれども、自分にピストルを向けられたときにぽんと発砲するだけだというのではなくて、これはエスカレートをやめさせるために威嚇射撃をする。両者を離すために、腰だめして、銃を構えて、これによって威嚇をして秩序を回復する。こういうのは、普通の人間が、私がやれば脅迫であれ恐喝であれ、こういうことになるのですが、隊員はこれはできる。それができなければ秩序を回復できない。だったら、何になるのですか、刑法三十五条の正当業務行為でしょう。そうではないですか。
  237. 太田洋次

    ○太田(洋)政府委員 私どもの提案しております法案のここの意味でございますけれども、「統制を欠いた小型武器又は武器使用によりかえって生命若しくは身体に対する危険又は事態の混乱を招くこととなる」、ここの意味は、実際に数人で行動しておるときに、先生の例をかりれば、向こうからぷらぶらと歩いてきた、しかし武器を持っているというような場合に、向こうが仮にこちらに銃を向けた、砲を向けたという場合に、これはいかぬということでこちらから応戦したということを想定していただければいいのですけれども、その場合に、実はよく見たら、後ろに自分のところの数名どころではなくて何十人あるいは百名に至る敵のゲリラ等がいた、こちらが発砲したために向こうの反撃を招いて我が方が全滅するというようなことも理論的には考え得るわけです。  ここで言っている事態の混乱というのは、そういうことにならないようにしようということでありまして、先生のおっしゃる考え方でいけば、それは情けないと言うかもしれませんが、実際には、そういう場合、抵抗するのをやめて投降する、あるいは退避するというようなことも考えられるわけです。だから、そういう意味で、ここで言う判断とそれに基づく命令を確かなものにしようという趣旨でやっているわけでございまして、この業務を遂行するために、つまり、端的に言いますと、我が方の言うことを聞かないから武器使用して言うことを聞かせよう、その業務遂行のために武器使用するというようなことでここの「武器使用」はでき上がっているわけではございません。
  238. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 私の問題意識もそうなのですよ。ただ、その当該ゲリラと居合わせた隊員が生き残るためには、武器を乱射して、走って逃げたらいいわけですね。しかし、それをやれば、先ほどの例では、ゲリラ全体を動かすからやってはだめだ、投降せよと言うたですよ。ゲリラに投降すれば生命がどうなるかわからぬという事態もあるわけですから、現場は。  ある意味では、あなた方が出してきた法律が完璧だといって、すべてつじつまが合うように説明する必要はないのですよ。この改正案が出てきた前提を聞いたでしょう、現場でやれば非常な不都合があったからこの部分は出してきたとおっしゃったじゃないですか。それで論理的に、だったら、点検はなされておりませんなといって、私なりに考えたことでもこれだけ出てくるわけです。  長官、またこれは後日の研究課題にしなければ、どうもだめですね。そして、我が国の青年を、ここにいる方々でその隊員の父親の年齢の方も多いと思います、青年を行かすわけですからね。やはりもう少し詰めて、そして正当業務というものを全面に出して、業務を与えて行かせている人間なんですから、青年なんですから、そういう法律の条文をもう少しこれにふさわしいように構成しなければならないと私は思っている次第です。  それで、時間が急になくなってまいりましたが、いわゆるPKF本体業務、最後はちょっと飛びますけれども、私はこの法律が異様だと思いますのは、せっかくっくったものを、それが何の不備があるのか知りませんよ、不備があったから附則第二条で凍結しているのだったら、紙に書いておくこと自体が恥じゃないか、政府は何しておるのだということになります。しかし、先ほどの答弁では、何ら不備はございません。そして、附則第二条で凍結しているわけです。凍結している理由は私は聞きません。これは異様な法律ですよ。  しかし、先ほどの、現実に経験したことから今は不都合の部分を改めるために出しただけでございますという御答弁からするならば、凍結しているものを現実に経験できるはずはないのですから、永遠に出てきませんわ。経験すること自体を禁じておるわけです。みずからこれはやれますと世界に公表しておいて、どういう事情か、世界に説明できる事情ではないと私は思いますけれども。やれませんと言っているから、百年待ってもできませんわな。いっか決断することです。これは先ほどお答えが出ておりましたから、これ以上お聞きしません。  ただ、防衛庁長官、私の議論をお聞きになっていただいて、やはりまだ現場に行かされた隊員は大変です、こういうふうに私は思ってこの質問をさせていただきました。長官はいかに感想を持たれておりますか。
  239. 久間章生

    久間国務大臣 法律上いろいろ整理するのは可能ですけれども、それを現場に当てはめますと、いろいろ状況が違うわけでございますから、そういう意味では現場はもっともっと大変だろうと思います。  しかしながら、今までよりも少しでも前進できれば、それは一つずつ直していくというのは我々の責務だと思っておりますので、そういう第一歩として今回の改正をぜひ一日も早く通していただきたい、そういうように思うところでございます。
  240. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 今回の改正は半歩前進だと評価しております。しかし、これから検討すべきことはたくさんあるということも申し上げて、質問を終わります。  ありがとうございました。
  241. 塩田晋

    塩田委員長 辻元清美君。
  242. 辻元清美

    辻元委員 社会民主党の辻元清美です。  私は、自分の体験も踏まえまして、今回のPKO協力法の一部改正について質問させていただきたいと思います。  私は、国会議員になる前に、ピースボートという国際協力の団体で働いておりました。その関係で、人や緊急救援物資を運んで世界四十八カ国ぐらい行っております。その中で、カンボジアやパレスチナ、旧ユーゴスラビア等に物資や人を運んだ経験があります。実際に身の危険を感じたということは何回もありました。  例えばカンボジアでの経験ですけれども、カンボジアは私は十回以上行っております。一九九二年にUNTACに自衛隊が派遣される前と後にも行ったのですが、その直前に行った折に、プノンペンからコンポントム、今で言えばシアヌークビル、自衛隊が行った折にあそこに船を着けますが、その道をずっと人と物を運んでいた折に、実際に兵士にとめられて、夜、三メートルぐらい先で自動小銃を撃たれたという経験もありました。銃から火を噴きましたので、一瞬やはりたじろいで、何が起こったかわからない。そのときは九二年の四月二十八日で、実は私の誕生日だったのですけれども、一瞬、私は誕生日に死ぬんだと思いました。撃つんだったら足にしてくれとも思いました。そういう経験を持っております。  その後、自衛隊が来ました。その後は、明石さんも当時プノンペンにいらっしゃいまして、自衛隊活動での意見交換や、それからタケオ基地にも行った経験があります。そういう経験を踏まえまして、今回、武器使用についてまず質問したいと思います。  今回、この法律を、個人判断から上官命令によって武器使用できるように変更するということです。さまざまな方も質問しておりますけれども、変更した具体的理由、どういう体験から変更されたのかということをもう一度お聞かせ願えますでしょうか。
  243. 村岡兼造

    村岡国務大臣 御承知のとおり、現行国際平和協力法上、武器使用判断個々隊員判断にゆだねられておりますが、しかしながら、カンボジア、ザイール等への派遣の経験等から、部隊参加した自衛官による武器使用について、その統制を欠くことによりむしろ生命身体に対する危険や事態の混乱を招くことがあり得るとの問題点が感得され、また国連平和維持活動への参加各国の実情からも確認されているところであります。  そこで、いわば自己保存のための必要最小限武器使用であるという点について何ら変更を加えず、これを維持することとした上で、その一層の適正を確保するために、原則として現場にある上官命令による使用へと、憲法との関係で問題が生じない範囲法律改正しようとするものであります。
  244. 辻元清美

    辻元委員 今、カンボジア、ザイールでの体験からという御発言がありましたが、どのような体験でしょうか。私は今自分の体験を述べましたが、どういう具体例のもとに変更されることになったのか、お聞きします。
  245. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  カンボジアにおきましては、憲法制定議会選挙が近づくにつれまして治安状況が悪化してまいりました。それで、隊員の一層の安全を確保するために、その前から必要に応じて実施していました武器の携行、防弾チョッキ及び鉄帽の着用のほか、自衛隊部隊の宿営地における土のう積み等、所要の措置を講じた上で業務を行った経験がございます。  また、ルワンダ難民救援国際平和協力業務の実施に当たっては、治安状況の悪化が憂慮されたことから、隊員の安全確保について万全を期すために、宿営地や給水所付近の警備に関しザイール軍の支援を受けたほか、部隊としては、必要に応じて武器の携行、防弾チョッキ及び鉄帽の着用を実施いたしました。  さらに、銃声の聞こえない夜はほとんどないという状況のもとにおいて、宿営地で所要の警備態勢をしきまして、土のう積み等、所要の措置を講じた上で業務を実施するなど、隊員が安心して業務を実施できる環境づくりに努めたところであり ます。  自衛隊部隊等は、このような治安状況のもとで武器の携行を含む適切な対応をとったところでありますけれども、仮に実際に武器使用せざるを得ない状況に至っていた場合を想定すれば、状況によっては、統制を欠いた武器使用により、かえって自衛官等の生命身体に対する危険あるいは事態の混乱を招くことになることがあり得ることが感得されたというのがこの改正案の背景でございます。
  246. 辻元清美

    辻元委員 先ほどの御答弁で、もう一点、参加各国の実情からということで御答弁がありました。先ほど政府委員の方も、別の方の答弁の中で各国の実情の報告がありましたが、そうすると、以前このPKO法を制定した折、あのときは参加各国の実情は調査していなかったのですか。そのときと私は変わっていないと思いますよ。というのは、私はそのころ現場に行っていました。そうすると、各国のそういう活動をしている人たちと日常接触するわけですけれども、変わっていなかったと思いますね。  ですから、この法律が制定された折に各国の実情について日本政府は把握していたのかしていなかったのか、していたとすれば今とどう違ったのか、お答えください。
  247. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  先生、PKO法制定当時、外務省を通じまして、各国の武器使用についての実情というのを調査いたしました。そのときの調査では、自衛のための武器使用のうち、要員等の生命身体の護衛のための武器使用については上官命令によるものと個人判断によるものの双方の態様があり得ますけれども、要員への危険が切迫した究極的場面においては個人判断でやる場合があるというような回答がございました。そういうことで、個人判断という考え方もあり得るかという判断を法制定当時にはしたわけでございます。  しかし、カンボジア、その他ザイール等に出た後に、少しこれでは不都合が、統制がとれなくてかえって危ないというようなことで、もう少し上官の役割を考え直すべきではないかということで再度調査をいたしました。  武器使用は、一般的な形としては、究極的な場面では個人判断ということでしたけれども、それ以外の場面では上官命令に従うというのが一般的であるということがこの改正案を提起する前の調査では判明しているということでございます。
  248. 辻元清美

    辻元委員 再度調査されて、上官命令の方が安全を守るのに適切ではないかと判断されたということは、再度調査される前はそうではなかったということですね。個人の方がいいというふうな調査結果だったわけですか。
  249. 久間章生

    久間国務大臣 大きく違いますのは、今度は、現地の調査というよりも、行ってきた経験を反映することになったわけでございます。  行ってきた隊員たちの話を聞いてみると、個々人判断するよりも、やはり組織として上官命令を下して、一体となって組織的に統制のもとでやった方がいいという経験をもとにして検討を行ったということでございます。  だから、現地は、これから先行くところはもっと厳しいところもあるかもしれませんし、もっと軽いところもあるかもしれぬわけでございますから、現地の調査というよりも、一番最初に行く前にもちろん調査していると思います、しかし、その調査をして、これなら個々判断で小火器を持たせればいいだろうというようなことで法律もつくったけれども、行ってきた隊員の話を聞いてみると、部隊として上官命令によって使うというふうにした方がより混乱をおさめて適正な武器使用になるという意見が圧倒的でしたので、そのようにしたということでございます。
  250. 辻元清美

    辻元委員 それでしたら、参加各国の実情からという理由ではないということですよね。  ところが、先ほどからの答弁では、私、この実情は前から変わっていないと思います、参加各国の参加の仕方の実情というのは。ところが、御答弁の中にはそれが理由に入っていましたので、再度確認したわけです。この法律ができたときと今の調査と何か変わったことがあるのかないのかということを先ほどから質問しているわけです。
  251. 久間章生

    久間国務大臣 参加各国の実情からというのは、要するに行って、そこに寝泊まりしてみて、寝るときにも、土のうを積んで、ざんごうを掘って、そういう形で寝る、そういうときに銃声があちらこちらで聞こえる、そういう中で寝泊まりをしている、そういう状況を行った隊員から聞いているわけでございます。それは、特にルワンダの場合でございます。カンボジアの場合はそこまではなかったかもしれません。  行って帰ってきた隊員からそういうような経験を聞くことによって、そういう実情によって、これは、今言ったように、新たにそういう制度にした方がいいという判断をしたわけでございます。
  252. 辻元清美

    辻元委員 実際にこの法律ができた当初の議事録を読んでみますと、この法律をつくるときも、各国の状況、武器使用については十分調査していると思います、日本政府は。その上で個人ということを選んだのだと私は思うのですね。  例えば一九九一年九月二十五日のPKO特別委員会で、上原康助議員に対して、海部内閣総理大臣が「その隊員がその現場において一番的確な判断をできるわけであります。個々隊員判断すべきものであります。」とお答えになったり、さらに池田国務大臣は「あくまでその武器使用の権限、そしてその判断の主体は個々隊員でございます。」と延々と答弁されていますね。  また、上田哲委員に対して、九月三十日ですけれども、池田国務大臣が「これはあくまで部隊行動じゃございませんで、自衛官個人判断に基づき、自衛官個人としての主体において武器使用するものでございます。」と。この中で部隊行動という言葉が出てきますけれども、今回の改正によって上官命令で発砲した際、これは部隊行動に当たるのか当たらないのか、そこをお答え願えますか。
  253. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  先生、部隊行動という言葉をお使いになりましたけれども、今回の改正案で出てきます状況というのはどういうことかといいますと、PKOに参加している自衛官が特定共通生命身体に対する共通の危険を分かち合う現場にいる、その集団単位において、その場における上官武器使用についての命令を下すということでございます。その目的は、自己または自己とともに現場に所在する隊員生命身体防護である、こういうことでございます。  これは、ある意味で集団的な行動だと思いますし、その組織の中の上下関係を利用した統制というものがとられているというふうに思います。しかし、それを何か任務を遂行するための部隊行動というのと同一視することはできないのではないかというふうに考えます。
  254. 辻元清美

    辻元委員 先ほど、冒頭に私は自分のカンボジアの体験を述べたわけなのですけれども、その折の状況を見ても、目の前にあらわれて銃を撃った兵士は数人ですけれども、よく見ると、ああいうときはブッシュがありますね、それで火がゆらゆらしているわけですよ、たばことか。たくさんの兵士がいるわけですね。  そうすると、そのときに身の危険を感じて発砲してしまった場合に、戦闘行為にならないという保証は全くないわけですね。そういう事態もそれは想定しているわけですね。いかがですか。
  255. 太田洋次

    ○太田(洋)政府委員 今先生の例にそのままお答えしますと、そういう場合がありますので、一つの例として、個人判断としてはばらつきがある場合もございます。そういうことで、先生がおっしゃったように、一言で言いますと過剰な反応をした、そのために、ブッシュの陰に隠れておった多数の相手方の反撃に遭って、我が方が最悪の場合は全滅するというようなことも考えられるわけですよ。  だから、そういう場合には、もっと総合的な判断ができる者がある場合にはそれに従った方が、 そもそもの自分たちの生命身体防衛するためには適正な武器使用ができるというふうに考えまして、今回の提案をさせていただいたということでございます。
  256. 辻元清美

    辻元委員 私は、現場でのことを想定しているわけですね。  というのは、カンボジアのときもそうでしたが、自衛隊がタケオで活動しているところは余り危険ではないわけです、それは完璧に周りを囲ってやっていますので。不測の事態というのは、身体に危険が及ぶような事態が起こるときというのは、それからちょっと外れたところで起こるわけですね。今、私も自分の例を申し上げました。  そういうときに、それは戦闘になりますよ、武器使用した場合。その際に、上官命令武器使用したために戦闘になった場合、政府としてはどういうふうな見解で対処するつもりなんでしょうか。そういうことも考えないと、私は現場判断できないと思います。いかがですか。
  257. 久間章生

    久間国務大臣 いろいろな場合があるわけでございますけれども、個々人が危険にぱっと出くわしたときには発砲する可能性の方が非常に強いと思います。むしろ上官が、自分判断命令を下さなければならないという立場にあるならば、客観的により正確な判断を加えると思います。そういう意味では、むしろ上官の命によって発砲するように、銃を使用するようにした方がかえって混乱を防ぐことになる、そういうことが言えるのじゃないでしょうか。  だから、今言われたような状況の場合で、個人個人判断をしてよろしいという現行の法律のままですど、発砲する確率といいますか、そういうのはかえって高い。それよりは、かえって今度の場合は少なくなる。それは、上官がおるということとおらないということでは違うのじゃないかと思います。そういうようなことで、今までよりもそういう点ではいわゆる抑止的に働く可能性が非常に強いのじゃないかと思います。  しかし、さりとて、そういうような状況の中で発砲の命令を下し、そして、結局反撃を食らってこっちが負傷するということだってあり得ないわけじゃございません。それは、その状況、状況の判断でございますが、その中において、正当防衛といいますか自己保存のために、上官としてはあるいはまた各人としても、精いっぱいの判断をしながら向かっていかなければならないという大変厳しい局面に立たされることはあると思います。
  258. 辻元清美

    辻元委員 今長官がおっしゃったようなことは、私は、この法律ができたときからわかっていたのじゃないかと思うのですよ。というのは、私が先ほどの体験を申し上げたときはこの法律ができた年なんですね。それは、調査をやって、実際に行ってみないとわからなかったということではないと思うのです。ですから、あのときに個人判断にゆだねるとした理由は別にあるのじゃないか。  例えば第百三十二回の国会で、衆議院の安保委員会議事録の第四号で、玉沢防衛庁長官はこう答えていらっしゃいます。平和協力業務というのは、あくまでも平和を維持するという仕事に従事するので、むしろ個々隊員がその使命を全うするためにその責任を持つという趣旨をより徹底した方が平和協力業務の趣旨に合うのではないかという御答弁。それからもう一つが、これは第百三十六回国会の予算委員会の議事録の第十六号、九六年の二月二十日ですけれども、梶山官房長官がこう答えていらっしゃいます。PKO部隊を出す場合の宮澤四原則という原点に返ると、むしろそういうものを-そういうものというのは上の流れでいくと指揮官の権限なんですけれども、そういうものを一切否定しておくことが日本の平和憲法ないしはPKOを行う場合の原則である、そういう思いがあったからこそ、若干の苦痛あるいは不合理をこらえてもその分野にとどまることが大切ではなかったのかとおっしゃっているわけです。  結局、平和憲法があるために、あのとき自衛隊が出る出ないでもめていました。それで、一挙に上官命令武器使用をできるというところまでいくとむしろ抵抗が強過ぎるということ――ここに不合理があるがとかちゃんと書いてありますよ。だから、あのときはまず個人でという判断でこの法案を通過させたとしか私は思いようがないわけですよ。そうじゃないと、あのときの状況を、それは事情を調査不足だったとかそんなはずはないと思います。  ですから、この答弁は、梶山さん、前の官房長官ですけれども、今は村岡官房長官ですが、ここでは平和憲法ないしはPKOの原則にのっとっているからそうしたんだと言っているわけです。だから、裏をとれば、今度これを改正をすると平和憲法に抵触する可能性が出てくる、そういう御発言なんですよ、前の官房長官は。これについてどう思われますか。
  259. 久間章生

    久間国務大臣 今度の改正をしたからといって、決して憲法に抵触するものじゃございません。  先ほどから何回も言っておりますように、法律をつくったその当時はいろいろな思いもあったかもしれませんけれども、行って帰ってきた隊員の話を聞くと、統制を欠いてかえって混乱するから、やはりそこにある上官の指揮によって、命令によって武器使用するようにしてもらった方がいい、そういうような意見が圧倒的でございましたので、それを受けてこのような改正を行うことにしたわけであります。
  260. 辻元清美

    辻元委員 きょうは時間が参りましたので、まだこの法案については審議があると思いますが、その部分についてはさらにこれから審議させていただきたいと思います。  これで終わります。
  261. 塩田晋

    塩田委員長 東中光雄君。
  262. 東中光雄

    ○東中委員 今回のPKO法二十四条の改正といいますのは、自衛官の武器使用の原則を、現場にある上官命令によるということに変更した。これは、憲法九条にかかわる政府解釈並びに政策そのものの重大な変更だというふうに私たちは考えています。  その点について、この間、四月三十日の本会議で橋本総理が、「法案審議当時の政府答弁を改めさせていただきたい」、こういうふうに答弁しておられますね。その内容を官房長官にお聞きしようと思っておったのですけれども、まだ会議録がないのだけれども、本会議のものを速記を起こしてみますと、総理がこういうふうに言っています。  武器使用について、過去の答弁憲法との整合  性についてのお尋ねをいただきました。これは私の質問じゃありませんけれども、   法案審議当時、国際平和協力法上の武器使用判断個々隊員判断にゆだねる、これが適切である旨の答弁をいたしておりましたが、いまだ派遣の経験のない当時の判断としてはやむを得なかったと考えています。   しかしながら、カンボジア、ザイール等への派遣の経験などから、部隊参加した自衛官などによる武器使用について、その一層の適正を確保するために、原則として、具体的な状況に応じて最も適切な判断をすることができる現場にある上官命令による使用へと法律改正したいと考えており、その限りにおきまして、法案審議当時の政府答弁を改めさせていただきたい こう言われていますね。  そこで、私は、今前提としてお聞きしたいのですが、PKO法の九条の四項では、防衛庁長官自衛隊部隊等に国際平和協力業務に参加させることができるという規定がございますね。部隊としてPKOに参加させたのは、いつ、どのPKOで、どういう部隊が行ったのかということをまずお聞きしたい。
  263. 太田洋次

    ○太田(洋)政府委員 一等当初はカンボジアの国際平和協力業務でございまして、陸上自衛隊部隊約六百名、それから第二番目はモザンビーク国際平和協力業務でございまして、これは陸上自衛隊部隊約五十名、それからその次がルワンダ難 民救援国際平和協力業務でございまして、陸上自衛隊、航空自衛隊部隊計約五百名でございます。それからその後、現在ゴラン高原の方に派遣をしておりますが、これの規模が部隊として四十三名、それから司令部要員に二名出ております。
  264. 東中光雄

    ○東中委員 それぞれの部隊の装備ですね、武器を書いていますね。どういう武器部隊の装備として持っていったのか。
  265. 太田洋次

    ○太田(洋)政府委員 お答え申し上げます。  カンボジアの国際平和協力業務におきましては、武器としてけん銃及び小銃、それから車両、それから補給艦、輸送艦等の艦船及び輸送機でございます。  それからモザンビークにつきましては、武器としましてけん銃及び小銃、それから車両、輸送機でございます。  それからルワンダにつきましては、武器としましてけん銃、小銃及び機関銃、それから車両、輸送機でございます。  それから、先ほどの例で申し上げましたゴラン高原につきましては、けん銃、小銃、機関銃、それから道路の補修等の機材、それから車両等でございます。それから、それを現地まで運びますための輸送機等がございます。
  266. 東中光雄

    ○東中委員 私は武器だけを聞いておるので、車両なんというのは武器ではありませんからね、小銃、機関銃というのはあるわけですが。  この自衛隊部隊等の装備そのものは、今まで聞いたところでは小銃、小銃といっても自動小銃ですね、それから機関銃という武器を持っている。けん銃というのはいわゆる小型武器と言われておるものですね。ところが、六条の四項では、その装備自体は、国連事務総長が必要と認める限度で定めることができるというふうになっているのです。  だから、それぞれの、今まではPKOばかりだったのですが、PKFも含まれるわけですから、そういうことで、国連事務総長が装備として今までPKO、PKFに対して許しておったものには、例えば装甲車、機関銃、十二・七ミリの機関銃がついておる装甲車、迫撃砲、バズーカ砲、コンゴのときは飛行機まで出ましたけれども、そういうのがある。  だから、PKFということになれば、日本自衛隊部隊として行く場合の装備は、装備としての武器、迫撃砲やバズーカ砲も含まれるということに法律上はなると思うのですが、間違いありませんね。
  267. 太田洋次

    ○太田(洋)政府委員 自衛隊が平和維持活動に参加します場合にどういう装備を持っていくか、その中にどういう武器を持っていくかということにつきましては、政府でつくります実施計画の中で定められます。  その場合には、その平和協力業務の態様あるいは目的等に照らしまして、必要最小限度の武器を持っていくということになります。
  268. 東中光雄

    ○東中委員 何言っているんだよ、そんなことを聞いているのじゃないんだよ。国連事務総長の認める限度までの装備を持っていくことができるんだ、法律上そうなっている。だから、最高はバズーカ砲や迫撃砲は入りますねと言っているのです。  そんな、あなたの今言っているようなことは聞いてやせぬよ。そんなこと、法律の条文だからわかっています。そういうものは含まれるのです。過去に、私、この前の法制定のときの論議も具体的に表を示してやっているじゃないですか。まあ、いいですよ。そういうものなのだ。  そういう自動小銃、機関銃、迫撃砲、バズーカ砲、これがここで武器使用と言っている場合の武器内容なのです。  それを、この前の法制定のときは、個人個人がやるのだと言っていたわけです。なぜそうなったかということについて――その前に、今までの経験でいえば、ゴラン高原とルワンダですか、小銃、機関銃を含むということがありますね。それはカンボジア、ザイール等への派遣の経験などからということが言われているのですが、このカンボジア、ザイールなど派遣された経験の中で、持っていった小銃、機関銃の武器使用した経験があるのかないのか、お聞きしたい。
  269. 茂田宏

    茂田政府委員 武器を発砲したというような事例はございません。
  270. 東中光雄

    ○東中委員 だから、自衛官、自衛隊部隊としても、この法律で言っている、今論議の対象になっている、武器使用したということは一回も経験していないということですね。それでその武器使用方法がごろっと変わるというのですから、これもおかしな話なのですがね。前提として、それだけお聞きしておきます。  その上で、今度、現場にある上官命令による武器使用ということに変わっていますね。現場にある上官というのは、どういう人を言うのですか。
  271. 茂田宏

    茂田政府委員 現場にある上官というのは、二つの要素があります。一つは、現場とは何かということがございます。第二点目は、上官とはだれかということがございます。  上官というのは、その現場にいる自衛隊員集団がございますけれども、その中で、指揮命令系統の中で上位に位する者という人でございます。もしその現場に指揮命令関係には入っていないけれども位の高い人がいたとしても、その人は上官には当たらない。その現場にいる自衛官の中の指揮命令系統に入っている人の上位の人という意味でございます。  現場とは何か。現場とは、この武器使用目的自己または自己とともに現場に所在する隊員生命身体防護ということでございますから、そういう意味で、そういう生命身体について共通の危険にさらされる状況にある場ということになると考えております。
  272. 東中光雄

    ○東中委員 だから、現場にある上官というと、何か現場にいなかったらあかんのや、なしでええんやという感じになるけれども、命令するというのだから、指揮命令権のある者でしょう。そうでしょう。だから、位が上だからといって指揮命令権があるとは限りませんから、あなたが今おっしゃったように、指揮命令権を持っている上官命令でやるんだ、こうなっているのです。  指揮命令権を持っている上官がいるのは、これは一つ部隊になっているわけですよ。だから、こう聞きましょう。自衛隊法の八十九条に「治安出動時の権限」というのがあって、八十九条二項で「自衛官が武器使用するには、」「当該部隊指揮官命令によらなければならない。」と言う当該部隊指揮官とこの現場にある上官とは違うんですか、一緒なんですか。どう違うのか。
  273. 太田洋次

    ○太田(洋)政府委員 PKO法上は、実際に一人である場合は当然自分判断でできるわけでございます。それ以上の複数になった場合に、そこで上官がある場合には上官武器使用についての命令を下すということになります。  その場合に、今先生がおっしゃった治安出動時の部隊指揮官という言葉が出てきますけれども、それは、治安出動で言う場合には、自衛隊法上出動の要件等が定められておりまして、そこでの武器使用をどうするかということを書いてございます。その際に、これはあくまでも部隊としての行動であるから、その場合は部隊行動について責任を持つ部隊指揮官というのは当然あるというふうに考えておりまして、当時の法の制定の建前はそういうことであろうと思います。  それに比較しまして、今回の場合は、実際に輸送業務を行う部隊指揮官というのが、数人で、例えば二人でトラックに乗って運転していたという場合に、その人は形式的に部隊指揮官ではないかもしれません、ただ、その場合に上下関係があって、上官ということであれば、その人が武器使用についての命令を下すというふうに考えております。
  274. 東中光雄

    ○東中委員 それは、あなた、さっきのと話が違うじゃないか。上官だというだけではない、指揮命令権がある場合というふうに、さっきそういう答弁をしたでしょう。違うのですか。今のと全然言うていることが違う。
  275. 茂田宏

    茂田政府委員 お答えいたします。  私は、一つ現場に数人の自衛官がいる、その中で一番位が高くて、その中で、指揮系統の中で一番上位にいる人のことを上官というという答弁をいたしました。  ただ、例えばその部隊指揮官が別の場所にいて、現場にはいない場合には、指揮官上官というのは異なってくる、部隊指揮官とは違うということでございます。そうすると、その現場に、指揮命令系統に関係のない人が、自衛官でその指揮命令関係に入っていない人がたまたまいたという場合には、その人は上官には当たらない、こういう答弁をいたしました。
  276. 東中光雄

    ○東中委員 だから、指揮命令権のある位の上の人が、それは部隊といったって二人で部隊とは普通は言わぬけれども、しかし、昔の軍隊でいえば、分隊もあれば小隊もあればいろいろありますが、そこから斥候に行くといったら、何人かそろって行く。それは三人で斥候に行く場合に、これは指揮命令権を持っています。そういう格好になるんですよ、部隊運営なんだから。そうでしょう。  だから、部隊として派遣された自衛官はというのが主語ですから、上官というのは位が上の人ということじゃないんだ、やはり指揮関係があるということなんだ。そして、このPKOの性格からいって三人とか一しかし、治安出動の場合だって、必ずしも大勢いるとは限りませんよ。それは三人で行くこともあるだろうし、それはあり得ますよ。だからといって、一人のときに命令なんかないのは当たり前のことじゃないか。だから、そういういいかげんなことを言うとったらいかぬ。  どっちにしても、命令するというんだから、命令権がなければ命令できないんですよ。今度は、命令を受けなければいかぬというんだから、命令を受けた人はやらなければいかぬのです。命令によらなければならないというんだから、命令があれば命令に従わなければいかぬ、こういう構造を今つくったんだということをまず前提として私は確かめた土で、それで何か問題かということについて、これからが本論なんです。この法律ができたとき、官房長官は談話を発表していますよ。これには、国連の平和維持隊においては、任務の遂行に当たり武器使用が認められる場合があるため、政府としては、かかる武器使用我が国憲法第九条上禁止されている武力行使との関係につき慎重に検討を行ってきた、その結果、我が国から平和維持隊に参加する一これは平和維持隊とこのころは名前を変えましたけれども、それまでは平和維持軍と言っていたものですね。平和維持軍に参加する場合の武器使用は、要員の生命等の防護のため必要な最小限のものに限ることを中心的要素とする平和維持隊への参加に当たっての基本方針を取りまとめたんだ、こう言っているんですね。それで、武器使用個人でなきゃいかぬのだということを言っているんです。  私は、これは九一年の十月一日のPKO特別委員会での質問ですが、PKO武力行使するときは現場指揮官命令によって武器使用する、そうして部隊として武器使用する、だから武力行使になる、こういうふうに国連のPKOマニュアルで言っているがどうなんだ、こういう質問をしたのに対して、当時の池田防衛庁長官は、日本自衛隊がPKF活動に参加いたします場合、武器使用については法案二十四条に定めるところによって行う、あくまでそれは個々の自衛官がその使用の主体であるわけでございまして、部隊として使用することはございません、個々の自衛官が使用すべきだと判断していないにもかかわらず上官の方から命令して使用させることはない、個々の自衛官の判断がない限り上官命令して使用させることはこの条文上できない、こう言っているんです。  それから十一月十八日、これは宮下さんが防衛庁長官になっていますが、武器使用の主体あるいは武器使用をする判断、これは自衛隊員個々人個人個人ということで、だから命令によるものじゃないんだということではっきりそこには歯どめをかけているのであります、ということを言っているんです。  命令によるということで、国連のPKOのマニュアルではちゃんと命令でやらなければいかぬと書いてあるんだ。だから、武力行使というふうに書いていますよ、ユース・フォースというふうに書いていますね。そのことを指摘したのに対して、いや、個人個人なんだ、命令じゃないんだ、だからいいんです、こう言って答弁していたんですよ。  ところが、今たまたま位の上の者がおるんじゃなくて、やはり部隊として指揮命令権のある人の命令によらなければならないと今度変えたんでしょう。それを変えたんだと総理も言っているわけです。だから、前に言ったことを変えたわけでしょう。前は憲法上そうしなきゃいけないんだと言っていた、慎重に検討してそうしたんだと。今度は、一回も武器使用したことのない自衛隊がどこかへ行ってきて、帰ってきて感想を言うた、感得したと。そんなこと、先ほどの論議を聞いておって、一回も使ったことがないのに、何か情勢から見て感得したと。  この前のこの法案審議したときは、私たちは、こんなことでどうするんだ、実際上はあり得ないよと、国連のPKO部隊の中へ入るんですから。入ってやる以上は、機関銃や小銃や迫撃砲を撃つのに、個人判断正当防衛で撃つなんて、そんなばかなことがありますか、部隊としてならざるを得ないんだと。いやいや、違うんです、日本憲法上それはできないんですとはっきり言っていますよ。これは宮澤さんが、あのときは総理大臣だった、あの最後のときは。これは日本憲法立場からいって、日本日本個人でやるんです、こういう答弁をしているのです何ぼでもあります。  それを変えるんだったら、これは部隊としての行動になりますよ。憲法上許されない、こう思っているのですが、どうですか。
  277. 久間章生

    久間国務大臣 憲法上はその当時も現在も変わらないと思いますし、そしてまた目的自体も、自己もしくは隊員生命身体を保護するためにやるというその目的も変わらないわけでございます。しかしながら、法案制定当時は、憲法上は問題ないけれどもより慎重を期した、そういうような意味であのように抑制的にされたのじゃないかということは推測されます。  しかしながら、先ほどから何回も言っておりますように、その後の経験から、幸いにして我が国が出かけておりますPKO部隊が発砲するような事態には至らなかったから結構でございますけれども、それに類するような状況は非常にあったというようなことから、そういうふうになった場合に、個々人判断するよりもやはり上官の指揮によって、命令によって対処した方が、混乱を抑え、非常に適切な対応ができるというようなことから、それをするためにはやはり法律改正しなければできないわけでございますので、今回、その法律改正させていただきたいということでお願いをしているわけでございます。
  278. 東中光雄

    ○東中委員 このPKO法の前の段階、廃案になった法案ですけれども、国連平和協力法の審議のとき、海部さんのときの内閣法制局長官は、憲法からいって平和維持軍的なものに対しては参加することは困難な場合が多い、これは正式にそういう答弁をしていますよ。しかし、法案提出時には、参加五原則があるからこれは憲法違反にならないんだ。五原則というのは何かといったら、個人判断武器使用するんだ、部隊命令でやるんじゃないんだということが五原則の一番の中心ですよ。あとの同意とか合意とか平和とか中立、これはPKO全体の問題ですからね。撤退だってPKO全体の問題ですよ。日本だけは、この五原則のうちの武器使用のところが変わっているからということを言っているのですよ。  だから、そういう点でいえば、あのとき論議した問題を今ここで変えた。変えるのは、ただ経験からだと。ザイールへ行った自衛官が帰ってき て、あのときの状況から見たら、ゲリラがずっと襲ってきたときにそんなことを言っておったら困るからということを感得した、感知したなんて、あんなこと、よく言えますね。  そういうことで変えたというのだったら、これは甚だしい憲法上の問題だ、何ということを言っているんだということを、工藤法制局長官と随分私もやり合いをしましたよ。これは、防衛庁長官、文句ありそうやけれども、どうですか。
  279. 久間章生

    久間国務大臣 この五原則につきまして、五原則の中で「武器使用は、要員の生命等の防護のために必要な最小限のものに限られること。」ということでありまして、その武器使用の仕方が、先ほどから言っておりますように、個々人判断して、それで上官の命によってやったらだめだというようなことはこれにもかかわっていないわけでございます。  したがって、それ自体が憲法九条に抵触するかどうかとなると、それはならないということを、先ほどから何回も言っておるのはそういうことでございますので、武器使用について今回そのような法改正をするからといって、それをもって憲法違反になるというようなことにはならないということについてどうか御理解をしていただきたいと思います。
  280. 東中光雄

    ○東中委員 個々の自衛官が使用するのである、それから、そういうふうにしてあることが、命令なんかでやらないんだということが歯どめなんですと、これは宮下防衛庁長官が当時言っていますよ。だから、固有名詞を抜けば防衛庁長官答弁ですよ、歯どめだと。  ところが、その歯どめを外したわけでしょう、命令でやるのだから。歯どめだと言ったのは何かといったら、それは官房長官談話にもあるように、九条との関係武力行使との関係で慎重に検討した結果何とはなしにこの線にしたんだということになっています。  こういう答弁もありますね、武器使用について上官の指揮権は排除されている。個人判断を束ねる場合もあるということは言っていますが、束ねる場合も抑制する方向にのみストップをかけるという方向で指揮官判断を示すということがあるのですと、これは畠山防衛局長が言っていますね。  要するに、指揮というような、命令というようなことでやるのと違うんだ、後ろにおって束ねるということはあっても。そんなこと実際上あり得ぬぞと随分言いましたよ。しかし、そういう建前なんです、そうでないとぐあいが悪いんだというのが一貫した答弁だったのですよ。  それは経験がないからといって、その後経験があるのかといったら、何にもないですね、一回も武器を使ったことがないんだから。その当時、随分調べたということを盛んに言っていますよ。そんなもの、個人個人でやるということでも使うことがないんだと盛んに言うたのです、あの当時。それは、今審議官をやっている丹波さんが、私、恐れ入りましたよ。あの人は、だあっとあっちこっち全部調べたけれども武器なんか使ったことないということを盛んに言いましたよ。そういうことだから、個人個人武器使用と書いておっても、それは武力行使にならぬということを盛んに言ったのですよ。  ところが、今、カンボジア、ザイールへ行って、使ったこともないのに、個人個人判断によって使ったら混乱を招く場合があるとか、あるいはかえって危険になるというようなことを言っていますが、これは何によってそういうことを言い出したのですか。そんなこと、初めからわかっておるじゃないですか。  部隊で行って、機関銃や小銃を持っていって、自動小銃を持っていって、あるいは迫撃砲を持っていって、個人個人正当防衛とかなんとかいって撃ち出してごらんなさい、混乱が起こるのは当たり前ですよ。初めからそういう制度にしてあるのです。そうしなければ、命令でやったのではぐあいが悪いからということで、こういうわけのわからぬことになったのですよ。  だから、そのときに随分、私たちのような戦中派は知っていますから、こんなこと言ったって、刑法三十六条やら三十七条の場合しか相手に対して危害を加えたらいかぬなんて、そんなあほな部隊がありますかいな、機関銃を持っておって。そして、正当防衛緊急避難かという判断というのは、攻撃を受けた本人が判断するというのが刑法上の原則でしょう。あれは個人個人の市民刑法なんだから。この条文の中に刑法三十六条、三十七条と書いてあるのです、これは市民刑法の適用があると。  PKO部隊が行って、機関銃や迫撃砲を持った者が、一人一人が判断して、これは正当防衛ということでやれるんだと。相手方を正当防衛でないときに傷つけたら今度は処罰されるんだと。この間、本会議場で長官は言いましたね、めったにないと思うけれども、万々ないと思うけれども、あった場合は、懲罰、懲戒上の処分も刑事上の処分もそれはないとは言えないと。理論上はそうなりますね。あれは全然お話にならぬのですよ。  先ほど西村さんから刑法三十五条の正当業務行為じゃないかという話がありましたけれども、そんな次元の問題と違うのです。自衛隊部隊としてPKOに参加するのですよ。それで持っていく武器というのは何かといったら、これはさっきからあるように、小銃、機関銃。今までの経験でもそうですよ、小銃や機関銃を撃つときに、正当防衛で小銃を撃つ、自動小銃を撃つ、機関銃を撃つ、迫撃砲を撃つ、しかも一人一人が判断してというふうなことはあり得るか。私は法務省刑事局に来ていただいたのですが、そういうことはあり得ますか。
  281. 久間章生

    久間国務大臣 あり得るかと言われますと、それはあり得ます、そういう答えになります。  それは、急迫な、生命身体に危険が迫ったときに、その対応によっては小銃である場合もあるでしょうし、機関銃である場合もあるでしょう。しかしながら、そういうようなことを個々人判断して対応するよりも、やはり指揮官命令によって対処した方がそういうような要員の生命等を守るために適切であるというふうに判断したから、今回こういう改正をお願いしているわけでございます。  過去のことは、確かにそのときにいろいろな議論があったと思います。しかしながら、そういうようなことから、七年間の経験を通じて、こういうような形でやった方がより適切である、そういうふうに判断したから今回改正をお願いしているわけでございます。  なお、迫撃砲というのを盛んに、それもごく当たり前みたいに言われますけれども、これは、国連のいろいろな手順はそうなっておるかもしれませんけれども、どういうものを持っていくかもきちっと内閣において閣議決定してやっているわけでございまして、余り迫撃砲と言われると、さも今まで持っていったかのようなことになりますので、これは、今までの経験ではそういうものを持っていったことはないということも私の方からも言わせていただきたいと思います。
  282. 東中光雄

    ○東中委員 いやいや、防衛庁長官、あなたは全然次元の違うことを言っているよ。  法律の構造は国連事務総長の決める装備の範囲内でやるというのだから、国連事務総長がPKFでやった場合には迫撃砲までありましたよ、だから、この法律からいえばそういうこともあり得るんだと。今までPKFは行っていないのだから、PKFで行った場合はそういうことだってあり得るんですよ、法律はそうなっていますよということを私は言っているわけです。法律の建前は、そういうものを持っていけるということになっていた。  その法律が、緊急避難正当防衛でなければ相手を傷つけたらあかんのやと。ゲリラが来おった、これは正当防衛緊急避難か。個人に対する急迫不正の侵害ですね、正当防衛にしても緊急避難にしても。それを今度は、その被害者本人じゃない上官命令して初めて動くなんて、こんなも のはおよそ概念上あり得ない。  だから、私が言うのは、自動小銃、機関銃を命令によって発射して、刑法上の正当防衛あるいは緊急避難があり得るか、刑法の所管官庁である法務省はどういうふうに……。
  283. 渡邉一弘

    ○渡邊説明員 お答えいたします。  自衛官が上官命令により武器使用することが刑法上の正当防衛緊急避難に該当するかどうかということにつきましては、個々の具体的な事実関係に基づいて判断されるべきものであると考えております。したがいまして、具体的事実関係に基づかないでお答えするのは困難でございますけれども、一般論として申し上げますれば、刑法の三士八条、三十七条の要件を満たす場合には正当防衛緊急避難に該当することになろうかと思われます。
  284. 東中光雄

    ○東中委員 具体的な場合というのは、自衛官が上官命令によって機関銃を撃つという具体的場合ですよ。アメリカで、正当防衛やといって拳銃を撃って、それで正当防衛が成り立つかどうかといって随分議論になりましたね。機関銃を撃って正当防衛だなんというのは、しかも侵害されている本人じゃなくて上官という別のところからの命令では、そんなことはあり得ないんだ。市民刑法上の概念じゃないですよ。今のが該当すれば該当するのは当たり前なんですが、該当しないと言っているんだよ。そういう例があるかと。  この前、九一年九月二十六日に私が聞いたときは、「そういういわゆる重火器でもって自分の身を守る、そういうような事例は今まで聞いたことはございません」というのが当時の刑事局公安課長の答弁でした。ところが、今度はそのとき以上に、そのときは個人だったんですが、今度は命令で機関銃を撃ってそれが正当防衛になるか、なりっこないんです。なりっこなくて、相手方に何か傷害を加えたら刑事責任を問われるわけだ、その自衛官は。命令した上官も。これはそういう構造になっているんですよ。  だから、普通のPKO、PKFのことと違った独自のことを言って、その言っている内容は、武力行使武器使用と言い、部隊として命令によって機関銃を撃っておりながら自衛官の正当防衛という名前でこういうことをやろうとしている。これは話にも何にもならぬ脱法行為ですよ。自衛隊ができた当初……
  285. 塩田晋

    塩田委員長 東中光雄君に申し上げます。  時間が参りました。
  286. 東中光雄

    ○東中委員 まだ五分前と聞いているんです。まだ五分前だよ。まだ時間が来てないですよ。
  287. 塩田晋

    塩田委員長 五十八分。
  288. 東中光雄

    ○東中委員 五十八分なのに、まだ五十八分になっていないじゃないか。何ということを言うんだよ。時間ですという通知もせぬで、そんなばかなことがありますかいな。時間が来ていないときに時間が参りましたなんというようなことを委員長が言われたら困る。
  289. 塩田晋

    塩田委員長 時間が参りましたので、御注意を申し上げたわけです。やめろと……
  290. 東中光雄

    ○東中委員 時間が来てなかったじゃないか。これは来ていない。
  291. 塩田晋

    塩田委員長 やめるようにはまだ言っていないんです。
  292. 東中光雄

    ○東中委員 いや、時間は来ていない。時間が来たというのがまだここに来ていないじゃないか。そんな発言をするやつがありますかいな。そんな横暴な委員長指揮はありませんよ。
  293. 塩田晋

    塩田委員長 ちょうど時間が参りましたから。
  294. 東中光雄

    ○東中委員 いやいや、余計なことを言うから時間が徒過するんですよ。
  295. 塩田晋

    塩田委員長 時間が来ました。
  296. 東中光雄

    ○東中委員 そんな、あなた、時間が来たらどうするんだよ。
  297. 塩田晋

    塩田委員長 それを文書でお届けするところです。
  298. 東中光雄

    ○東中委員 これは質問妨害や。大体、質問している最中に、時間が来ていないのに、時間が来たなんて言われたんじゃたまらぬ。
  299. 塩田晋

    塩田委員長 質問妨害じゃないです。質問をやめてくださいとは言っていないんですよ。
  300. 東中光雄

    ○東中委員 だから、そういうことを言うことによって、時間が来ていないときに来たというようなことを言われたんじゃたまらぬです。――まあまあ、いいですよ。
  301. 塩田晋

    塩田委員長 やめるようにと言うまではやってください。
  302. 東中光雄

    ○東中委員 はい、やります、やります。  だから、要するに、これは本当に武力行使武器使用かということで憲法上の問題として随分論議をしてやってきたことを、さっと経験によってといって、武器使用したことが一回もないのに、個人個人でやったら混乱を招くと。混乱を招いた経験も何にもあらへん。そういうことを条文にまで書くのだから、これは全くのごまかしだ。そして、こういう形でなし崩しに憲法違反を進めていくということだと思いますので、断固抗議をして、質問を終わります。
  303. 塩田晋

    塩田委員長 次回は、明八日金曜日午前九時四十分理事会、午前九時四十五分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時散会