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1998-04-17 第142回国会 衆議院 安全保障委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年四月十七日(金曜日)     午前十時開議  出席委員   委員長 塩田  晋君    理事 浅野 勝人君 理事 石破  茂君    理事 中島洋次郎君 理事 浜田 靖一君    理事 石井 紘基君 理事 岡田 克也君    理事 赤松 正雄君 理事 西村 眞悟君       麻生 太郎君    池田 行彦君       大石 秀政君    岡部 英男君       河井 克行君    佐藤  勉君       阪上 善秀君    下地 幹郎君       田村 憲久君    中山 利生君       中山 正暉君    仲村 正治君       林  幹雄君    増田 敏男君       北村 哲男君    玉置 一弥君       前原 誠司君    横路 孝弘君       河上 覃雄君    冨沢 篤紘君       佐藤 茂樹君    二見 伸明君       中路 雅弘君    東中 光雄君       辻元 清美君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 久間 章生君  出席政府委員         内閣官房内閣安         全保障危機管         理室長     江間 清二君         内閣法制局第一         部長      秋山  收君         防衛庁長官官房         長       大越 康弘君         防衛庁防衛局長 佐藤  謙君         防衛庁運用局長 太田 洋次君         防衛施設庁長官 萩  次郎君         防衛施設庁総務         部長      西村 市郎君         防衛施設庁施設         部長      首藤 新悟君         外務政務次官  高村 正彦君         外務省北米局長 高野 紀元君  委員外出席者         安全保障委員会         専門医     平川 日月君     ————————————— 委員の異動 四月七日  辞任         補欠選任   宮島 大典君     佐藤  勉君 同月十四日  辞任         補欠選任   石井  一君     奥田 敬和君 同月十七日  辞任         補欠選任   山崎  拓君     大石 秀政君 同日  辞任         補欠選任   大石 秀政君     山崎  拓君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の安全保障に関する件      ————◇—————
  2. 塩田晋

    塩田委員長 これより会議を開きます。  国の安全保障に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石破茂君。
  3. 石破茂

    石破委員 おはようございます。  それでは、限られた時間でございますので、簡潔に質問をさせていただきたいと思います。  私は、このガイドライン見直し、そしてその実効性を担保するための法整備、これは可及的速やかにどうしてもやらねばならないことだというふうに思っております。  もう一つ周辺事態とは何かという議論、これもまだ法律がきちんと出てきたわけではありませんが、周辺事態というものは地理的な概念ということではなくて事態に着目をしたものだというふうに言われております。私もいろいろ考えてみましたが、実際にそういうことであらねばならないだろう、地理的に限局をすることはかえって実効性を損なうことになるであろうというふうに考えております。  そしてまた、国会承認を要するかどうかという点についてでありますが、これは事の性質からいって、またシビリアンコントロールの観念からいっても、国会承認というものは要しないというふうに思っております。  そしてまた、最後に申し上げれば、これも世上いろいろ言われておることでありますが、いわゆると申しますが、いわゆる有事立法というものは必ず必要なものであって、これも早急に策定をする必要があるであろうというふうに思っております。  そのような観点から、幾つか質問を試みさせていただきたいと存じます。  まず、今なぜガイドライン見直しが行われ、そしてまた、なぜその実効性を確保するための法整備が必要であるかという点についてであります。  私が考えてみますに、いわゆる冷戦の時代というのは、直接日本攻撃をされる蓋然性というのはどちらかといえば低かったのではないかというふうに思っております。冷戦が終わったということは、直接日本攻撃される蓋然性はむしろ乏しくなってきた、これは事実であろうと思っております。  しかしながら、翻って考えてみますと、そうだからもういいじゃないか、もう冷戦も終わったのに何で今ごろガイドライン見直しなんだというようなお話をされる方がありますが、冷戦が終わったということは、平たく言えば、世界じゅうにお巡りさんが二人いたのに一人いなくなってしまった、お巡りさんが一人だけになってしまったということがまず一つ。  もう一つは、アジア不安定要素というのはかえって高まる傾向にあるのではないかということであります。それはいろいろ理由はございますが、一つは経済的な格差が非常に生まれてきたということ、そしてそこに軍拡というような状況が生まれたということ、そして兵器の市場が中東からアジアに移ってきたということ、そして、抑える人がありませんから、領土問題であるとか宗教問題であるとか宗派問題であるとか、そういうものが一気に噴出をするようになったということであります。  つまり、もう日本攻撃される蓋然性は低くなった、だけれども、それじゃもう後のことは何も知りませんよということで本当にもつのだろうかということが根底にあるだろうと思っております。  そこで、集団的自衛権が云々という議論があります。私もそのような議論を昔展開したことがあります。片っ方はこれは集団的自衛権に触れるのだから一切だめと言い、片っ方は集団的自衛権を認めなければ全然話にならないからこんなもの一切だめというふうな状況が続いていくとするならば、これは何にも前に進まない。  今回のガイドライン見直しというのは、私は百点満点だとは思わない。七十点か六十点か、それぐらいかもしれない。しかしながら、そういうような神学的な議論をずっとしていって何もできないよりは、はるかによいというふうに思っておる次第でございます。  そのような認識につきまして、大臣、いかがお思いですか。
  4. 久間章生

    久間国務大臣 基本的には、今石破委員が披瀝されました考え方とほとんど同じだと思います。  安保体制といいますか、冷戦後の今日でも、振り返ってみたときに、冷戦が崩壊したから要らないかというとそうではない。  やはり、今言うように不安定な状況がまだ残っているし、むしろ最近の経済的発展等で、あるいはまた同じ民族でもあったり、違う民族もありますけれども、いろいろな内紛といいますかあるいは地域的な対立等は残っておる。しかも、核ミサイル等の拡散も進んでおる。  そういう状況の中で、非常に不透明、不確実な要素が私どもの周りには多過ぎるといいますか、多いというような状況の中で、安保体制が必要であると同時に、もっと信頼性のあるものにしておかなければならない。  集団的自衛権をめぐってのいろいろな議論はあるかもしれませんけれども、今、私どもは憲法九条というのをしっかりと守った上で、政府はそれに基づいて行動しているわけでございますが、その中でもやれることはやれる、やれないことはやれない、これをはっきりさせることがかえってアメリカとの関係ではいいのではないかというような基本的な考え方の中で整理をして、ガイドラインの新たな取り決めもやりましたし、それを受けての実効性の確保のための法的措置等も講じていきたいと思って努力しているところでございます。
  5. 石破茂

    石破委員 集団的自衛権、私は、本来の考え方は、使えないのではなくて使わないというなら話はわかるということは、昔、予算委員会でも申し上げたことがございます。  使えない権利なぞというものはそもそも権利の名に値をしないのであって、使える、しかし集団的自衛権を使うことは義務でも何でもないわけですね。使わなければならないということではない、使えるんだ。しかしながら、それを使うか使わないかは、まさしく主権者たる国民判断にゆだねるべきではないかというふうに思っておりますが、先ほど申し上げましたように、そんな議論をしておりますと何にも前に進みませんので……。そういうような位置づけのもとに、この後、お話をしていきたいと思っております。  周辺事態とは何かということであります。  私がなぜそれを申し上げるかと申しますと、けさの新聞報道でしか私は存じませんが、昨日、外務事務次官が、周辺事態範囲とは極東と同概念である、こういうような御発言をなさっておられますね。都内での講演質疑の中で、日米安全保障条約上の極東範囲ガイドライン周辺事態範囲については概念的には同じだとの見解を明らかにした、こういうふうに報ぜられております。  私、そういうふうにいっとき思ったこともあるのですね。すなわち、日米安全保障条約の枠をはみ出してこのガイドラインというものがあるはずがない、よって、政府の公式の見解でありますフィリピン以北日本周辺、韓国、そして台湾地域を含むという概念でなぜいけないのかというような議論も昔いたしたことがございます。  しかし、よくよく考えてみますと、線を引きまして、ここから中であればやります、そこを一歩でも出たらもう私には関係ございませんというようなお話で本当に安全保障というのは成り立つのであろうか。もちろん、それではあそこは含むのか、ここは含むのか、ペルシャ湾ならどうだ、インド洋ならどうだみたいな議論はあります。ただ、それは議論のための議論というのであって、余り意味があることだとは私は思っていない。  つまり、もう一度申し上げれば、地域をきちんと線を引いて、この中で起こったらやるけれども、この外では知りませんよというようなことで安全保障というものは成り立たないのではないかというふうに私は思っておる。  しかしながら、その範囲はおおむね常識的なところへ落ちつくのだろう。大体、政府見解極東にしても、「大体において、」という言葉がついているわけで、きちんきちんと線引きをしたものだとは思っておりません。  あわせて申し上げれば、安全保障条約第五条のように、権利義務を確定をするようなものであれば、それは地域をきちんと決めることも大事でしょう。しかしながら、このガイドラインというのは、何も権利を規定したものでもなければ義務を規定したものでもない、何かあったらこういうふうにしましょうねというようなメニューを並べたものであって、そのことがきちんと地域を確定しなければならないということに直接はつながらないと思っておるのです。  だから、周辺事態というのはあくまでガイドラインに書かれた定義でいくべきであって、これは極東と同概念であるということには私は疑義を唱えたいと思いますが、いかがでしょう。
  6. 久間章生

    久間国務大臣 外務次官がどういう脈絡の中で発言をされたか、私もつまびらかに聞いているものではございませんので、その内容についてコメントしたりどうだこうだと言う立場にはございません。  ただ、私どもは、今回のガイドラインを取りまとめるに当たりまして、安保条約に基づいて我が国に駐留する米軍とのいろいろな協力関係の中身についてしっかりしようとしているわけですから、安保条約との関係があることは申すまでもございません。  その中でも、とりわけ我が国周辺我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼすような事態が起きたときにどうするか、直接武力攻撃を受けていないけれども我が国にとって大変な事態が起きたときにどうするか、そういうことで議論をしているわけでございまして、特定地域、限られた地域内で起きた場合というような話ではございませんから、必ずしも地理的概念でなくて、そういう事態が起きたときに何をするか、そっちの方にむしろ視点が行っておる、そういう認識の中で作業をしてきたわけでございますから、やはり地理的概念ではないのではないかという気がいたしております。  ただ、安保条約の中の極東というのも地理的概念だけではっきり決まっているのではなくて、例えば安保条約六条を見ましても、極東及び日本の平和と安全のためにということになっておりますから、そこでは案外限られているようで限られていないのではないかというような気もするわけです。  だから、極東の安全のためにということで極東地域以外のことだってあり得るわけでございまして、周辺については、今言われたように、どこからどこまでときちっと決まっているわけではないのではないかな、そういうような気もいたしております。  この辺については、法案を提出するまでにまた外務省ともいろいろとすり合わせをしながら、再度検証してみたいというふうに思っているところでございます。
  7. 石破茂

    石破委員 大臣のおっしゃるとおりだろうと思います。私が限ると言ったのは五条のお話でありまして、六条はまさしく大臣のおっしゃるとおりだろうと思っております。  この点について、外務省はどうですか。
  8. 高野紀元

    高野政府委員 まず、周辺事態でございますが、これは我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態ということで、事態性質に着目したものであって、その事態我が国の平和と安全に重要な影響を与えているかどうかという判断でございます。これは、事態の態様、規模等を総合的に勘案して判断するものであるということで、先ほど御指摘のございました、昨日の柳井次官講演においてもそういう趣旨発言を申し上げているというふうに承知しております。  他方、いわゆる極東との関係でございますが、先ほど来御説明ございましたが、「「極東」は、別に地理学上正確に固定されたものではない。しかし、」ということで、委員御承知のとおり、一定の範囲の御説明昭和三十五年の段階政府統一見解としてお示ししているわけです。  同時に、その関連で、「この区域に対して武力攻撃が行われ、あるいは、この区域の安全が周辺地域に起こった事情のため脅威されるような場合、米国がこれに対処するため執ることのある行動範囲」というのは、その攻撃または脅威性質にかかるのであって、前の極東という区域とは別の範囲であるということもあわせてこの統一見解に述べられているところでございます。  いずれにしても、極東と今回の周辺事態あるいは周辺地域ということについて言えば、それが我が国の安全に密接な関連を有するものであるということにおいては同等の意味であるということは言えるということでございます。日本周辺地域極東概念的に同じようなことになるという発言趣旨は、今申し上げましたとおり、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態が起これば、当然極東の安全に脅威が及ぼされているという事態になるという意味で、それぞれ我が国の安全に密接な関連を有する地域であるということになるという意味でその発言があったというふうに聞いております。
  9. 石破茂

    石破委員 私は、ある意味で、これはそういうよくわからないなという部分を含むことも一種の抑止的作用にはなるだろうと思っているのです。きちんきちんと線を引いて、ここの中ならやりますが、ここの外ならやりませんというようなことは、そもそも安全保障においてはあり得ないことであって、地球の裏側とか南極とか、そういうことはそもそもあり得ない。やはりそういうことは常識で考えざるを得ないのではないかというふうに思います。  ただ、今の次官の御発言は、新聞紙上でしか存じませんが、周辺事態地理的概念でなければ際限がないのではないかという質問があって、それに対してお答えになったもので、質問お答えを合わせないとどうも全体的にはよくわからないのですけれども、その辺で混乱が生じませんように、政府といたしましても、きちんとした意思統一を持って、自信を持って国会に臨んでいただきたい。そしてまた、法案も提出をしていただきたい。  議論のための議論ではなくて、一体これは何のためにやるものなのか、日米安保にしてもガイドラインにしても、平和をつくるための仕組みであって、決して戦争をやろうとか、そういうような仕組みだとは私は思っておりません。それを維持するためには一体どのようにやっていくべきかというような立論の仕方が私は最も肝要なものである、かように考えております。  それに関連することでありますが、今度は、台湾海峡を含む含まないというお話があります。それを言うこと自体が極めてナンセンスなことであって、台湾を含まないんだとか含まないと言えとかということを言うことは、余り国益に合致をした話だとは私は思っておりません。  ただ、あえて理論的に申し上げるとするならば、結局、今回のガイドラインというのは、まず第一に、自衛隊の活動であっても戦闘地域とは一線を画すというふうにきちんと書いてあるわけですね。そのことの議論はまたいずれやりたいと思いますが、とにもかくにも、戦闘地域とは一線を画すというふうに書いてある。そしてまた、相手国の領海や領空に入るのではなくて、どんなに出ても公海までですよということが書いてあるわけです。  そうであるとするならば、公海部分を含みます台湾海峡地帯で、もしくはその上空で何かがあったということは、当然のことながら日本の平和と安全に影響を及ぼすことにほかならない。当たり前のお話でございます。やはりきちんとしておかねばならないのは、これは戦争マニュアルでも何でもなくて、戦闘地域とは一線を画され、なお公海であれば、これは当然と言わざるを得ない。何でそんなことが議論になるのか、私にはよく理解ができないのであります。  そもそもガイドラインというものは何なのかということを落ちついて考えてみれば、含むとか含まないとかそういうことをあえて議論をするということは、ある意味でいかがなものかなというふうに思っておりますが、いかがですか。
  10. 久間章生

    久間国務大臣 石破委員の言っておられることがどういうことなのか、ちょっと私が取り違えているのかもしれないので、もし違っていたら申しわけないわけでございますけれども。  私どもは、ある地区が入るとか入らないとかではなくて、どこかの地区なら地区でも結構ですけれども、何か起きた事態がとにかく日本の平和と安全のためにこれは大変なことだというようなことになった場合に政府としてどういうことをするか、そのときに米軍が活動する、それに対してどういう協力ができるか、そういうことでガイドラインを取りまとめて、周辺事態としていろいろなことを整理していこうというような立場でやっているわけでございますから、今おっしゃられたように、この地域が入るとか入らぬとか言うこと自体余り意味あることではない。  それはどこでもいいのです、我が国周辺で何かが発生して、それが日本の平和と安全に重要な影響を及ぼすような事態になったときに、国民生命財産を守っていく政府としては、それにとにかく対処していかなければならない。そして、それに対処するときに、米軍行動するときには、それにやはり協力してもらう、そしてまた我が国もそれに対して協力するというようなことで、どういうことをするかということを決めておく、また、その手順等も決めておく、それが大事なことではないかというふうに思っておるわけでございます。
  11. 石破茂

    石破委員 それで結構です。ぜひその趣旨で行っていただきたいと思います。  また、国民に対しても外国に対しても、そういうメッセージを発する必要があるだろうと思っています。長官も、政府を挙げて努力をしておられるように、周辺諸国にもそういうようなメッセージをきちんとクリアに伝えることが大事だと思っております。また、長官も連休中そういうような努力をされるように漏れ承っております。  それは、何もどの国を対象にしてというものではない。台湾に対してもそうであろうし、ある意味中国に対してもそうだろうと思っているのですね。台湾周辺中国の平和が脅かされるようなことがあったとしても、それはやはりこのガイドラインが用いられるものであって、何も特定のどの国というものを想定したものではないのだということ。そのメッセージをちゃんと台湾にも、そして中国にも伝えることが必要ではないかなというふうに考えておるわけであります。  なお、日米安全保障条約について一言申し上げれば、NATOなどと比べまして、やや条約というものが弱いような気が私はしているのですよ。例えばNATOに書いてあるようなヘアトリガー条項みたいなものはない。そしてまた、直ちに対応するのか、そういう事態認識しているのか、そういうようなことも、私は、原文と対照して読んでみますとやや差異があるように感じられている。そしてまた、これはまた議論をいたしたいと思いますが、合衆国の戦争権限法日米安保条約との関係というものについても、若干の疑義を私は持っているのであります。  いずれにいたしましても、そういうことも踏まえました上で、日米安全保障体制というものが冷戦後においてさらに強化をされるということが必要なことだなというふうに思っておる次第でございます。  次に、お話はかわりますが、国会承認を要するか否かということであります。  まず、これは、周辺事態が起こる、そういうものを認識をして安保会議に諮り、そして閣議基本計画を決定する、そういうような流れになっておりますね。そのことに国会承認を要するかどうかということでありますが、そのことにつきまして、今の政府のお考えを承りたいと存じます。
  12. 久間章生

    久間国務大臣 国会承認との関係立法政策の問題でもございますけれども、私どもが今大要の段階で考えておりますのは、まず、周辺事態といいますか、そういう事態が発生したときに何をなすべきか、そういう判断も一緒に含めまして、内閣総理大臣安保会議等手続を経て何をするかということを決めるわけでございます。ところが、内閣総理大臣としてみれば、これは内閣総理大臣だけでできることではございませんので、やはり政府を挙げて、政府の責任においてやるということを決めますから、閣議を開いて、具体的にどうするかということを決めるわけでございます。そして、それを国会には遅滞なく報告する、そういう手続をとろうと思っております。  といいますのは、それと同時に、いろいろな対処をしなければならないケースだってあろうかと思います。周辺事態の場合に、そこに二週間、三週間かけて何かをやるというよりも、すぐさま、一週間以内には行動を起こさなければならないような、例えば在外邦人救出等については、一週間といわずに数時間を置いてやらなければならないようなケースだってあろうかと思います。  そういうことで、やはり早急に迅速に対応するということを念頭に置くならば、今みたいな手続でやるのが、国民生命財産を預かる政府としては、対応において一番適切なのではないかというようなことで、今みたいな考え方で今整理を進めておるところでございます。
  13. 石破茂

    石破委員 これは昭和二十年代からずっといろいろな議論があった。自衛隊法をつくったときに、防衛出動を下令するときに、事態が切迫している場合、緊急の場合は総理判断でできる、しかし国会事後承認を要するというようなときにも、いろいろな議論がございました。  私もその議事録をずっと読んでみておるところでございますが、例えば、PKOには国会承認は要らない、しかし、本体業務であるところのPKFには国会承認は要るということがあるわけですね。  では、今度はペルシャ湾掃海艇を派遣をいたしました、このときはどうだったかというと、これはもともとそういうようなお話ではない、日本が単独で行くことであるからしてこれはそういうようなお話ではない、当然国会承認は要らないということを当時の宮下大臣お答えになっておられます。  では、今度は海上警備行動はどうだろうか、領空侵犯措置はどうだろうか、防衛出動待機命令はどうだろうか、治安出動待機命令はどうだろうか、防衛出動はどうだろうかというふうに全部並べてみて、その中で整合性のとれた説明というものが私は必要なのだろうというふうに考えておるのですね。  それで、これはPKO法のときに議論をしたことでございますが、そもそも政府の原案においては、PKOであれPKFであれ、国会承認は要しないということであったはずであります。ところが参議院で修正がかかりまして、PKFに関しては要るのだということになりましたね。そのときにいろいろな議論があって、大平さんが言った、何に国会承認が要るか要らないかみたいな議論まで出てきたわけであります。  そこで、PKFには国会承認が要るのである、しかしながら周辺事態については要らないのであるということを、どういうふうにつじつまを合わせて御説明になりますか。
  14. 久間章生

    久間国務大臣 今、自衛隊の活動の中で国会承認が要るのは、防衛出動、治安出動——治安出動も命令による治安出動、この二つでございます。それと、政府が提案いたしましたPKO法案では報告ということになっておったのですけれども、参議院の方の修正、そしてまた、もちろん修正でございますから衆議院に返ってきて、参議院、衆議院、要するに院、立法府で、PKFについては、現在凍結されておりますけれども承認ということになったわけでございます。  先般、参議院の予算委員会だったと思いますけれども政府統一見解を出さぬかというようなことを言われました。こういうところを考えますと、政府考え方としては、国民権利義務に直接かかわることであるから防衛出動、治安出動については必要だということで従来から整理しておりましたけれども、その他のものについては、海上警備行動にしましても、あるいはまた機雷掃海にしましても要らない、あるいはまたPKOについても要らないということで、そういう考え方国会法案を出させていただいて、衆議院はそれで通過しているわけでございまして、むしろ政府見解というよりも、PKFについてはそこで院の意思が入っておるわけでございます。立法府の意思で修正をされているわけでございます。  だから、今の我々としては、そういう修正があったということも踏まえながらバランスを考えていかなければならないけれども、従来の考え方でいきますと、国民権利義務に直接関係のあるものについては、自衛隊の活動については国会承認を必要とするだろう。しかし、それに直接かかわらないものについては必要としないのではないか。  ただ、PKFについては、初めて外国に行って、今凍結されているわけでございますから、外国で戦闘状態に巻き込まれるかもしれないというようなおそれがあってああいうふうに凍結されたのか、どういうようなことで凍結されたのか、その議論に直接かかわっておりませんだけに、院の御意思で凍結されたり、修正で国会承認ということになっておりますだけに、政府立場でこれをああだ、こうだと議論すべきものではないのではないか、そういう気もございます。  政府は、国民権利義務に直接かかわるものについては従来からそういうようなことでやっているけれども、直接かかわらないものについては、むしろ迅速性とかいった問題から、これは報告でいいのではないかというふうに判断しているわけでございます。
  15. 石破茂

    石破委員 確かに院の意思で修正をしたものでありますが、現にそういう法律になっておるわけでございますので、その辺は整合性のとれた説明が要るのだろうと私は思っているのです。  これは、大臣が今御指摘になったように、いろいろな要素があると思っています。国民権利義務を大きく制約をするかどうかということもそうでしょう。それから、PKO、PKFのときに議論をされたのは、業務の内容が軍事的な度合いがどれだけあるか、換言すれば、民間でも代替可能か否かというような度合いと換言してもよろしいのですけれども、それも一つ要素だと思っています。  そしてまた、ペルシャ湾のときの議論では、これは相手があるのかどうかということですね。つまり、PKOであれPKFであれ、これは国連の要請があり、相手国、当事国の同意があるというような、相手から言われて、どこかから言われてやるということでありますが、ペルシャ湾は、日本国は日本国の判断としてやる。今回の周辺事態についても、日本国は、だれから言われたわけでもなくて、あくまで日本国の判断としてやるわけであって、そういうような判断要素も私はあるだろうというふうに思っております。  もう一つは、大臣がおっしゃったように、緊急性があるのか、国会承認というものを要しておる時間的余裕があるのかないのかというような要素が幾つかあると思っております。  そういうようなことを考えてみますと、かてて加えて、これは国会承認がなければシビリアンコントロールに反するとは私は思っていないのですね。何でもかんでも国会承認にかけなければシビリアンコントロールを阻害するものであるというのは、それはシビリアンコントロールの誤解だろうというふうに思っておる。  要するに、行政府がやるコントロールというものは、これは直接的なコントロールである。立法府がやるコントロールというのは、これは間接的なコントロールであって、どちらも立派なシビリアンコントロールだというふうに私は思います。そして、立法府によって選出された文民である内閣総理大臣防衛庁長官がやるわけですから、これはシビリアンコントロールの名に反するものでも何でもない。  むしろ大事なのは、緊急性があるかどうかということであり、国民権利義務を拘束するかどうかということに重きを置いて考えないと、そもそもこの周辺事態の対応ということが遅きに失してしまって、かえって平和と安全を阻害することになるのではないかというふうに私は思っておりますが、いかがでしょうか。
  16. 久間章生

    久間国務大臣 全く私もそのとおりと思います。  シビリアンコントロールというのをよく言われますけれども、シビリアンコントロールというのは、政治が軍に対して優勢といいますかコントロールするということが基本でございます。  それは、行政府が行う、あるいはまた、さらにその行政府を立法府がコントロールする、そういう形の中でやるわけでございまして、直接立法府が軍をコントロールする、それがシビリアンコントロールだというわけじゃございませんから、すべてを国会承認にかからしめなければならないというようなことじゃないと思います。  ただ、立法府はやはりシビリアンコントロールの頂点に立つんだと言われると、私はそのとおりだと思っております。  しかしながら、我が国の憲法あるいはそれに基づく各法律を見ましたときに、議院内閣制をしいておるわけでございますから、行政府はコントロールができてないというふうに立法府が判定したときには、それをチェックするような制度も憲法上は残されておるわけでございまして、そういう意味では、我が国はきちっとシビリアンコントロールの制度はでき上がっておるというふうに思いますから、これを直接国会承認にかからしめるかどうかというのは、これは立法政策上の問題であって、シビリアンコントロールをもってしてそうしなければならないということにはならない、そういうふうに思っております。
  17. 石破茂

    石破委員 まことにそのとおりであります。  シビリアンコントロールのあり方というのは、この国ではいろいろな誤解もあって議論が交錯しておるところがありますので、今回の法案が出てまいりましたときには、シビリアンコントロールのあり方もきちっと押さえて議論をしていただきたい、そして、政府はその関連を明らかにしていただきたいというふうに思うものでございます。  ガイドラインに関しましては、各論に行きますといろいろな問題があります。特に限界的な事例において、この場合にどうなのかというのはかなり判断の分かれるところだろうというふうに思っておるのですね。これは、法案が出ましてからまたお話をさせていただきたいというふうに思います。  大事なのは、今のお話とも関連することですが、こういうふうにきちんとしておくことがまさしくシビリアンコントロールなのだ。そしてまた、有事になってから考えればいいなどという考え方は、これは思考的怠慢というものであって、今のうちに、平時のうちにこれをきちんとする。  消極的に言えば、何ができて何ができないのかぐらいははっきりしてね、そうでなければ困りますよというのが、ある意味で消極的な理由でしょうし、積極的な理由としては、これから日本が能動的に憲法の範囲内で何ができるということをきちんとする、これが大事だろうというふうに思っております。  最後に、時間も余りございませんので、いわゆる有事立法についてお尋ねをいたしたいと思います。  私は、これを定めてないということは、これまた恐ろしくシビリアンコントロールに反するものだというふうに思っています。定められてない方がおかしい。定めるのが当たり前。それも、平時においてやらなければならないというふうに思います。  よく、こういうものをやりますと、戦争になっちゃうんじゃないか、国民権利義務を大きく阻害するんじゃないか、甚だしきに至っては、ワイマール憲法下のヒトラーの例を引きまして、あそこのそういう条項を利用してヒトラーはああいう政権をつくったじゃないかというような議論まで展開をされる方がおられますが、私はそうは思っておりません。  一番大事なものは何かと言えば、確かに国民の基本的人権というものは侵すべからざるものである、それは、そのとおりなのですが、それは国が存立して初めて守られる権利である。国家というものが消滅をしてしまっては、基本的人権も何もあったものではない。基本的人権を制限するから反対だというようなお話に対しましては、法というものはすべて国の存立というものを守るためにある、国の存立があって初めて国民権利も守られるものだというふうに考えるべきだと思っております。  そしてまた、ヒトラーの例を引かれる方がありますが、あれは、ワイマール憲法に細則は国の法によってこれを定めるというふうな条文があったのですが、これまた非常にサボっておりまして、全然定めなかったのですね。細則は国の法においてこれを定めるというふうな規定がありましたのにもかかわらず、ドイツは平和に浮かれたのか何なのか、余りに第一次大戦の敗戦のショックが大きかったのか、そういうような法律を全然整備しなかった。それに乗じてああいうような政権ができたというのが私は歴史の真実だろうというふうに思っておって、こういうことを非難するのは何も当たらない。  薬は副作用があるから飲まないというようなことは言ってはいかないのであって、副作用もあるかもしれないけれども、薬というものはきちんと飲まねばならないというふうに思っております。  そういう意味で、今の日本というのは、日本有事——私は、周辺有事というのは、ある意味で瞬時にして日本有事にも変わり得る、周辺有事というものと日本有事というものは全く乖離したものだとは思っていないのですね。ですから、これは、今回は無理であるにしても、いわゆる有事立法というものを定めるのはまさしくシビリアンコントロールに合致したものであり、政府の責務、国の責務というふうに思っておりますが、いかがでしょうか。
  18. 久間章生

    久間国務大臣 有事の話をしますと、すぐ有事の状態が発生するんじゃないかということがありますのか、議論すること自体が非常に嫌がられるような傾向がございますけれども、私は、そういう意味ではもっとフランクに議論はすべきだというふうに思っております。  例えば、有事の状態になりましたときに、そこを通っておった橋が壊された。自衛隊は守るためには橋を通らなければならないというときに、そんなのは橋をかけて当たり前だというふうになるかもしれませんけれども、現行法では、そういうときには知事の許可をとって橋をかけるというようなことが書いてあって、そういう手続をとらなければならないわけでございます。  そういう事態になったなら、みんなが、それはかけて渡ってしかるべきだというような話になるわけでございますが、そうじゃなくて、こういう平時のときこそ、そういう場合には、施設大隊がおるわけでございますから、みずから橋をかけて渡るというようなことが当たり前だということを議論をして、法治国家でございますから、きちっと法律に書いておくということが必要でございます。  しかし、そういう法律は有事立法かというと、有事立法じゃなくて、言うなれば法の不備な点じゃないか、そういうふうに私は思っているわけでございます。  今、有事立法有事立法とよく言われますが、現在の法律で大方の基本的なものは整理されているけれども、され残されておった部分があった、そういうことについては少なくとも整理しておいたらいいんじゃないかというような議論と、有事における国民権利義務をある程度抑えてでもこれはもっとやらせようというような問題を一緒にして有事立法有事立法というふうな議論になってお りますために、今言いましたように、整理がまだ未整備の部分についてのことすらなかなか議論が先へ進んでいないという現状でございます。  そういうようなことから、今までは要するに有事立法の法制化はしないというような前提でとにかく研究はされてきておりますので、少なくとも、法整備をしないという前提じゃなくて、もう少し幅広く議論はしていかなければならないんじゃないか。  そういうようなことで、周辺事態の方を今手がけておりますし、また、そのほかいろいろとやらなければならない問題が山積しておりますから、そういう有事立法についての法整備というような問題はなかなか着手できないような環境でございますけれども、これから先、やはりこういう平時においてこそ議論は幅広くしておくというのが法治国家としては当然のことではないか、そういうふうに思っておるところでございます。
  19. 石破茂

    石破委員 時間が参りました。  自由民主党といたしましては、立法化というものを視野に入れていただきたいということを議論をいたし、お願いもしようというお話をしておるところでございます。  これは本当に法治国家として当たり前のことである。何かやるときには、森林法にひっかかる、河川法にひっかかる、建築基準法にひっかかる、病院法にひっかかる、医療法にひっかかる。だけれども、その法律は、やってくる相手には全く適用されないのですよ。我が日本国には適用されても、仮に侵略してくる国家があったとして、その侵略してくる国家には日本のそのような法律は全く適用されない、その事実を忘却してはならないだろうというふうに私は思っております。  日本が勝手に自己満足で、これだからいいんだ、あれだからいいんだ、危ないことはお話をしないんだ、お祈りをしておればいいんだというようなことは、外国には通用するお話ではない。  ぜひ大臣は勇気を持ってそういうようなことにもお取り組みをいただきたい、かように申し上げまして、質問を終わります。
  20. 塩田晋

    塩田委員長 横路孝弘君。
  21. 横路孝弘

    ○横路委員 私は、今も御質問ございましたが、周辺事態、それから周辺事態についての国会承認問題を中心に議論させていただきたいというふうに思っております。  私は、このガイドラインについてのアメリカ側の立場、要求というのは極めて明確だというように思います。  冷戦が終わりまして、この状況変化に対応するために、アメリカの安全保障の課題は何かといいますと、アメリカ国防報告の中で述べられているわけでございますが、まず第一に、やはり核の脅威、核拡散の防止、大量破壊兵器の拡散阻止といったことが非常に大きな課題になっています。同時に、アメリカの世界への即応態勢というものを損なうことなく、ポスト冷戦期の米軍の削減をどのように管理していくのかという点がもう一つの大きな課題だったろうと思います。そして、さまざまな世界の脅威を阻止するために、米軍、軍隊、資材というものをどのように選択をして効率的に運用するのか、これがアメリカにとっての安全保障の課題だったと思うのですね。  そういう課題のもとで立てた米軍の軍事戦略の基本というのは、地域の同盟国と協力をして、ほぼ同時に起こる二つの大規模紛争というものを戦って勝利をおさめる体制をつくる。いわばそれは朝鮮半島であり、中東地域だったと思うのですね。そうした二正面作戦を維持して、それを戦う能力を持つというときに、在日米軍の果たす役割というのは大変大きいわけでございますから、その作戦行動の展開に当たってできるだけ自衛隊協力してほしい、できるだけの協力をしてほしいというのがアメリカの明確な意思だったと思うのですね。  それについて、今回のガイドラインというのは、日本有事を除けばほとんどアメリカに対する協力の内容になっていると思うのですね。それに対してオーケーを出したというのが今度のガイドラインじゃないかと思うのです。そこにやはりかなり無理もありますから、今までの国会議論を見ましても、どうもよくわからないという点が出てくるわけでございまして、その一つ周辺事態ということではないかと思います。  周辺事態とは一体何かということにつきまして、今までの国会議事録、それから四月に皆さんの方で与党のPKOプロジェクトの方に説明された内容を拝見いたしますと、幾つかの点が明らかになっていると思います。  それは、軍事的な観点を初めとするいろいろな観点から見て、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態として典型的に考えられるのはまず何か。武力紛争が発生している場合、あるいは武力紛争の発生が差し迫っている場合が一つある。  それからもう一つは、ある国、地域における政治体制の混乱などによって、その国、地域において大量の避難民が発生して、我が国に大量に流入する蓋然性が高まっているというような状況というのがあります。  それからもう一つは、国連の安保理決議に基づく経済制裁の対象となるような国連の平和と安全に対する脅威となる行動をとっている状況であって、それが我が国の安全に重要な影響を与える場合というようなケースを今まで具体的な周辺事態ケースとして挙げられているわけですが、このように理解してよろしゅうございますか。
  22. 久間章生

    久間国務大臣 そのように理解いたしております。
  23. 横路孝弘

    ○横路委員 まず初めに、武力紛争が発生している場合というのは、これは大体国家間の武力紛争というように考えてよろしいのでしょうか。
  24. 高野紀元

    高野政府委員 武力紛争がどのような形、つまり態様、規模で起こり得るかということによりまして周辺事態になるかどうか、つまり、我が国の平和と安全に重要な影響を与えるか否かという判断になると思いますので、国家間の武力闘争ということであれば、当然そういう状況になり得るというふうに考えます。
  25. 横路孝弘

    ○横路委員 国家間以外の武力紛争というものも何か考えておられるのでしょうか。国家間の武力紛争というふうに限定して考えてよろしゅうございますか。
  26. 高野紀元

    高野政府委員 いずれにいたしましても、この周辺事態概念に関しまして申し上げますと、我が国の平和と安全に重要な影響を与えるか否か、その意味は、軍事的な観点を含め、種々の観点から我が国の平和と安全に重要な影響を与えるかどうかということが基準でございます。  そういう意味で、典型的に言えば武力紛争が発生している場合ということを申し上げているわけでございますが、それが国家間の武力闘争ということに限られるというふうにはここでは申し上げているわけではございません。     〔委員長退席、浅野委員長代理着席〕
  27. 横路孝弘

    ○横路委員 それは、例えば第三国の内乱のような混乱した状況というのも、その武力紛争が発生している場合というように考えておられるのですか。
  28. 久間章生

    久間国務大臣 先ほどから話が出ておりますように、その四つの事態として、それぞれがではございませんで、要するに、我が国の平和と安全を脅かすような状況になっている場合としてどんなものがあるかということで例示を挙げているわけでございます。  そうしますと一例えば内乱があって、大量に避難民が発生しているというケースだってあるわけでございますから、それはまさに国家内での武力紛争だと思います。  いずれにしても、小規模な衝突ではなくて、我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼすような事態が発生したというような状況で、しかも、それが軍事的な要素を含んでいるというようなケースを指しているというようなことから、先ほど言われたようないろいろな、例示を挙げるとすればそういう例示を挙げているわけでございまして、国家間に限るというような、一つ例を挙げてしまいますと、それしかないのかという話になりますから、今の四つ以外だって私はあり得ると思うのです。  要するに、総合的に判断して、我が国の平和と安全にこれは重要な影響を及ぼしておると判断したときに、政府としてどうするか、米軍とどう協力しながらそれに対処していくか、その方が大事でございまして、例を一つずつ挙げながら、これをと言って、これ以外のものは違うのかという話になりますので、そういうことではないというふうに御理解賜りたいと思うのです。
  29. 横路孝弘

    ○横路委員 しかし、それでは国民に対する説明にはならないのじゃないでしょうか。  結局、周辺事態というのはどういう事態なのかというのは、今のお話ですと、ある紛争が起きる、それは一つの前提になりますね、同時にそれが日本安全保障影響を与えるという、その二つの要件、要素ですということでは、国民にはどういうのが周辺事態になるのだというのがさつばりイメージされないわけですね。  それで四つの事例を挙げられた、しかし、これ以外にも考えられるというならば、例えばどんなことが考えられるのか、それをお話しいただきたいと思います。
  30. 久間章生

    久間国務大臣 考えられると言ったのではございません。  それ以外の状態で我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼすようなことが出た場合に、違うのかと言われますと、そうじゃないので、国民としてもあるいは政府としても、これは我が国にとって大変だというようなことで、何らかの対策を講じなければならないというような事態が発生した場合に、これは周辺事態としてアメリカと協力しながらいろいろな対処をしていこうということでございます。  だから、具体的に今頭の中に描いているわけじゃございませんで、そういうような事態が起きたときにどう日本は対処していくか、そのことについて考えようとしているわけでございます。
  31. 横路孝弘

    ○横路委員 もう一つ、ある国、地域における政治体制の混乱などによって当該国、地域において大量の避難民が発生した場合という御説明をされておられるわけでございますが、ここでわざわざある国、地域というように、地域という言葉を使われているのはどういう意味なのでしょうか。
  32. 高野紀元

    高野政府委員 これは、まず、ある特定国の中で、もちろん国全体が大規模な混乱になる場合もあると思いますし、あるいはその国のごく一部でそういう状況になるということも考えるわけでございます。同時に、我が国との関係において、国家関係等がきちっとしていない地域ないし国があり得るわけでございますので、そういう部分も含めてこういう表現をしているわけでございます。  いずれにしても、具体的にどこの地域であるとか国であるとかということは、繰り返しでございますが、私どもガイドラインの作成作業の過程でも念頭に置いておりませんし、周辺事態がどこで起きるかということは、先ほど申し上げましたような基準と申しますか、我が国の平和と安全に重要な影響を与えるかという観点から判断すべき問題だというふうに考えております。
  33. 横路孝弘

    ○横路委員 武力紛争といっても国家間の武力紛争ばかりじゃありませんよ、それから、いろいろな混乱というのが、国ばかりじゃなくて地域も入るのですと。特定国の中の地域だというと、では我が国周辺でどこなのかなといったら、大体想像がつくわけですね。そこを皆さんの方は、特定国、特定地域は明示しないとおっしゃられながら、この基準そのものは間接的にかなりはっきりさせていると言っていいのじゃないでしょうか。
  34. 久間章生

    久間国務大臣 特定国の話をしたり、特定地域の話をしますと、あたかもその特定国あるいはその特定地域がそういうような武力紛争の場になるのじゃないかというような想像すら出てくるわけでございまして、そういうことからも、そういうようなことは私どもは考えていないということを従来から絶えず言っているわけでございます。  いずれにしましても、どこか特定の場所あるいは特定の国ということではなくて、我が国周辺我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼすような事態が発生したときに政府としてはどうするか、そういうことを念頭に置いて対処していくということでございます。
  35. 横路孝弘

    ○横路委員 ですから、従来からそういう御説明をされていて、それではなかなかわからないという議論がだんだんされていって、周辺事態というのはこういう事態なのですよという説明が少しずつ最近されるようになってきたということだと思うのですね。  この周辺事態の認定をして、その後、どういう措置になるかといいますと、国民生活あるいは国民権利義務に関するいろいろな制約も生じてくるわけですね。それから、周辺事態状況によっては、ある意味では、非常に大変な事態になって、日本がその状況の中に参加せざるを得ないというようなことにもなりかねないわけでありまして、簡単なことではありませんから、周辺事態ということはどういう事態なのかということをやはりもっと国民説明すべきだというように私は思っておりますし、この表現を聞きますと、何となくこれは中国台湾との間の海峡、あの地域のことを言っておられるのかなというように考えざるを得ないということを申し上げておきたいと思います。  もう一つは、第三国の内部の問題ということでございます。  確かに、国際法で内政不干渉という原則が従来からあったわけですし、今もあるわけでございますが、その壁が大分低くなってきているということは事実だとは思うのですね。国の中で大量殺害が発生したとか、大きな飢餓が生じたといって周辺諸国影響するというような場合に、国連としてそれに対応をして、国内問題ではあるけれども国際社会の協力で解決しようということになってきているのは明確だと思うのです。  しかし、原則的には、第三国の内部の問題が、内部にとどまっている限りにおいては他国が干渉すべき問題ではないと思うのですね。例えばある国の中である部隊が反乱を起こして、政府軍がそれを鎮圧するというふうな紛争が起きたとしても、それが周辺影響を与えない限りは第三国の問題であって、国連で議論の対象にはなるでしょうけれども、それ以上のものではない、このように理解しておりますが、いかがですか。
  36. 久間章生

    久間国務大臣 私どももそのように思っております、他国に内政干渉はすべきではないと。  ただ、我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼす場合、これは他国のことではなくて、我が国に重要な影響が及んできている場合ということでございますから、そういう場合には我が国としてできる限りのいろいろな対処は考えていかなければならないのではないか、そういうふうに思います。
  37. 横路孝弘

    ○横路委員 そこで、そのことをめぐって、例えばことしの予算委員会でも岡田克也議員との間で随分議論されております。  周辺事態というのは、ある紛争があって、しかもそれは日本の安全に影響を与えるものだということでございまして、そうすると、そういう事態というのは——いわば日本自衛隊というのは日本の国土防衛というのがベースになっているわけですね。つまり、周辺事態というのは、もう一つ言い方を変えると、日本の国土へ具体的に侵略があったあるいは具体的にそのおそれがあるというのは日本有事になるわけでございますが、その外側にあって日本有事が発生するおそれのあるような軍事的な事態というように考えてよろしいのでしょうか。
  38. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 まさに、周辺事態というのは、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態ということでございます。  そのケースとしてはいろいろあり得るだろうということでこれまで御説明させていただいているわけでございますけれども、その中には、場合によっては日本有事に波及し得るようなものもあり得るだろうと思います。しかし、そればかりではないと思いますけれども
  39. 横路孝弘

    ○横路委員 私は、日本の国土へ侵略する、そういう事態に発展する可能性がある、それがこの周辺事態ではないかと思うのですね。そうでないのでしょうか。それ以外のケースというのはどういうケースなのでしょうか。
  40. 久間章生

    久間国務大臣 それがすぐ我が国有事にはね返ってくるのだから、この周辺事態のことは大変なんだとよく言われますけれども、私どもは必ずしもそういうふうに考えているわけではございません。  例えばの話でございますけれども我が国周辺でいろいろな紛争が起きた、そして機雷等が我が国周辺にどんどん流れてくる、そのときに、機雷掃海等をしなければ、我が国の船舶等が、とにかく貿易によって成り立っておる、あるいは漁業等もやっているわけでございますから、そういうことについてはとにかく対処していかなければならない、そういう事態だってあると思うのです。いろいろなケースが出てくると思います。  だから、私どもは、周辺で何か事態が起きて我が国の平和と安全にとって重要な影響がある場合に、これは周辺事態として政府を挙げて対処しなければならない、通常の対処ではできないというようなときに、それを内閣として閣議決定して、基本計画をつくる、日本ができない分野については米軍にも協力してもらうというような、お互いに連絡をとりながら協力していく、そういうようなことで対処していこうということでやっているわけでございます。  我が国周辺事態からすぐ有事になるんだという前提で考えていきますと、何か非常におどろおどろしたような内容になってまいりますけれども、決してそうではなくて、国民生命財産を預かっておる政府としてはこのときにどう対処するか、そういうような事態が発生しなければ一番いいわけでございますし、私はそう簡単には発生しないと思いますけれども、発生した場合にどうするかということについては絶えず考えておかなければならない。  その一環として、日米防衛協力としてそれに対応していこうということで、今回のガイドラインを取りまとめて、それの関連法整備等を今検討しているわけでございます。     〔浅野委員長代理退席、委員長着席〕
  41. 横路孝弘

    ○横路委員 私は、周辺地域で紛争があって、例えば機雷が我が国の漁業者が漁業をしている地域にぷかぷか流れてきたというときは、それはそれで、何もガイドラインということでなくたって、今の制度、仕組みでも対応ができることだと思うのですよ。  問題は、どうして周辺有事という形でアメリカに対して協力する態勢をとるのかといえば、それはやはり日本の国の安全にかかわるからなわけで、日本の国の安全というのは、ベースは日本国土への侵略の可能性ということではないでしょうか。違いますか。
  42. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 周辺事態に対する対応でございますけれどもガイドライン上も、一つは、各国がそれぞれ主体的に活動を行うということで、これは四項目ほどに分野を分けて記載してございます。こういったものを各国がそれぞれ自主的にやるわけですが、そういうことをする場合に、お互いに協力し合った方が効率的であろう、こういう分野がございます。  それからもう一つは、米軍に対します後方地域支援ということで、これは、米軍日米安保条約の目的達成のために活動している場合に、これに対して後方地域においてその支援を行う、こういう内容でございますので、必ずしも今先生がおっしゃったようなものに限ってこのガイドラインが考えられているということではないと思います。
  43. 横路孝弘

    ○横路委員 問題は、そういう事態についてアメリカの行動協力をするということがポイントなわけです。  米軍行動というのは、これは自分の行動原則に従ってアメリカ軍というのは行動します。これを日本政府がチェックするというのは、いわゆる安保の事前協議として対象になっている事項だけでありまして、あとはどんどん自分で行動をされるわけですね。したがって、ポイントは、本当にそのアメリカの行動が、実は日本安全保障に寄与する行動なのか、自分の国の権益、国益を守るためだけの行動なのかというところを見きわめること、これが周辺事態認定の一番ポイントになるわけですね。  周辺事態というのは、認定しますと、周辺国家との間の外交関係を含めて大変さまざまな問題というのを惹起します。これは日本有事よりはるかに、周辺事態であると認定する作業そのものは非常に難しい決断を要することだと思うのですけれども、そのポイントは、米軍行動をどのように見るかということだと思うのですよ。いかがですか。
  44. 久間章生

    久間国務大臣 したがいまして、今度のガイドラインでも、それぞれが自主的に判断するというふうになっているわけですね。  しかも、その周辺事態は、我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合ということでしっかりと縛りがかかっているわけでございますから、我が国の国益に該当しないような状況の中で米軍が勝手に行動するから、それに追随してといいますか、それに従っていろいろなことをやれと言われましても、我が国の平和と安全に重要な影響がある場合ということで取り決めといいますか今度のガイドラインをつくっているわけでございますから、そういう意味では、かなりはっきりその辺は出てくるのではないか。重要な影響がある場合かどうかというのは、かなりはっきりわかると思うのです。  そういうときに、影響はないのに、ましてや重要でもないのに、そういうような行動をするということは、それはしにくい、あるいはそういうことは自主的に判断ができにくい、政府としてそういうことはできないというようなことになってくるわけでございますから、その辺は政府を信頼していただいていいのではないか。  そのとき、これから先、二十年、三十年先、いつの時代になるかわかりませんが、そのときの政府としても、やはり国民から、議会から信任を受けて政府ができ上がっているわけでございますから、そのいろいろな負託にこたえている以上は、こういう我が国の平和と安全に重要な影響がある場合かどうかというのは少なくとも客観的に判断できるのではないかと思います。
  45. 横路孝弘

    ○横路委員 米軍行動というのもいろいろな形があるわけですね。過去においても、いろいろなことに基づいて、例えば条約に基づいて米軍行動する場合もありますし、国連の決議に基づいて行動する場合もありますし、それから、米軍自身が攻撃を受けたという、自分の自衛権の発動として行動する場合もあります。  しかし、最近、パターンとして多いのは、アメリカの自国民保護ということを理由として相手国の了解なしに軍隊を派遣する。それは二つパターンがありまして、救出をして終わりというパターンと、そこに軍隊を派遣して、しばらく駐留をして秩序を維持するというような任務に当たるという場合があります。  このケースというのをずっと見てみますと、やはりアメリカはアメリカで考えて行動をしている、これをチェックするということはまずほとんどできません。安保の事前協議だけですね。ですから、そこをしっかりやってもらいたいと思いますが。  同時に、例えば周辺でいうと、韓国とかフィリピンとの間にアメリカは二国間の条約を持っているわけですね。その条約に基づいて米軍行動するというときに、では日本はどう判断するかというようなときに、本当にそれが日本の平和と安全にという中身が大変大事になってくるわけなのですね。  平和と安全というのはどういうことなのか。軍事的に日本が侵略を受ける可能性に発展するということが基準であるとするならば、それはかなりはっきり整理されるだろうと思うのですが、しかし、そこがどうも、随分と議論していて、今の御答弁を聞いても必ずしもはっきりしないということになりますと、アメリカが他国との約束に基づいて行動する場合に日本協力させられるというようなことになりかねないという心配をしています。そのチェックは一体どこでどういう形でやるのでしょうか。
  46. 高野紀元

    高野政府委員 今回のガイドラインにおきます。辺事態における日米間の協力でございますけれども、その際に我が国として米側といかなる協力を行うかということは、先ほどから申し上げておりますような意味での周辺事態判断に加えまして、どのような対応措置、どういう協力をするかということは我が国として主体的に判断するわけでございます。  ですから、我が国としてそういう判断をしない場合には、当然のことながら、今回の周辺事態における協力ということは成立しないということでございますので、チェックという委員の御趣旨に直接の回答にはならないかと思いますが、そういう意味で、我が国として、そもそも今回の周辺事態における協力をするかどうかということ自体我が国が主体的に判断するということでございまして、米国が何らかの活動をしているときに、自動的に我が国が何らかの対応、協力をしなければならないということを義務づけられるというような関係にはなっていないということでございます。
  47. 横路孝弘

    ○横路委員 どうもその主体的にというのが、過去の日米間の実績を見ますと、大統領から電話一本ありますと、それまで否定していた減税を実現してしまうような総理大臣のもとで、大事な外交、安全保障の問題について、本当に主体的に判断できるのか、そこにやはり国会の関与という問題が出てくるわけであります。  ことしの三月二十三日の参議院予算委員会で、角田議員の質問に答えて、国会承認について、こういうことを防衛庁長官は御答弁されております。「国民権利義務を、例えば義務を課すとか、あるいは権利を剥奪するとか、そういう関係影響が大きいものとそうでないものとによって違う」、また、「外国へ出ていくようなものとそうでないものとも違う」、「それとまた、緊急性があってすぐ対応しなければならないものと時間的に余裕があるものと、これもあろうと思います。そういう幾つもの基準があって、」という御答弁をされて、これを一つの基準のようにお話をされて、したがって、国会承認は必要ないというように長官として考えるという御答弁になっております。  これを一つずつ議論する時間はなくなりましたが、周辺事態というのは本当に国民権利義務影響が少ないというように——周辺事態を認定して、自衛隊がそのために協力をする、それに伴うさまざまな措置を国内でとるということは、本当にこれは権利義務に関して影響がない、長官、このようにお考えなのでしょうか。
  48. 久間章生

    久間国務大臣 周辺事態でいろいろ掲げております政府が対処する行動は、国民権利義務に直接かかわるものは少ないのではないか、間接的にはかなり影響を受けるという問題はあろうかと思います。  しかし、直接、義務を課すというような規定は設けておりませんし、また、権利を奪うというような規定も設けておりませんので、防衛出動あるいはまた治安出動、そういったものと比べますときに、国民権利義務に直接かかわってくるケースというのは非常に少ないのではないかというふうに思っております。
  49. 横路孝弘

    ○横路委員 ガイドライン、指針の協力項目というのはたくさんございます。例えば後方地域支援の中でも、補給とか輸送とか整備とか衛生とか、たくさんありますね。例えば港湾や空港の使用とか、あるいは病院の使用でありますとか救急車を使うとか、いろいろなケースが出てきますね。それは国民権利義務関係ないのですか、国民の生活に関係ないのですか。
  50. 久間章生

    久間国務大臣 そういうような形での協力依頼を民間に対してもすることはございます。また、地方自治体に対しても協力をお願いすることはございますけれども、いわゆる義務を課すとかあるいはまた優先的にそれを位置づけるとか、そういうようなことは法的にも考えていないわけでございまして、そういう意味では、いわゆる防衛出動、治安出動みたいに国民権利義務に直接かかわることは少ないのではないか、そういうように思っております。
  51. 横路孝弘

    ○横路委員 義務を課していないからいいんだということになりますか。  実態として、周辺地域で紛争があって米軍行動しているわけでしょう、あるいは武力紛争があって行動している、それに自衛隊が出ていって協力をしている。そのための国内のさまざまなことについて、政府はいろいろなことを各民間に指示をする、お願いをする。それは義務ではないから権利義務を侵すことにならないんだと言っても、実態的に国民生活はこういう事態でどうなりますか。
  52. 久間章生

    久間国務大臣 逆に考えていただきたいと思うのですよ。我が国のいわゆる平和と安全に重要な影響が起きているわけでございますから、そういうときに活動する状況だと思えばいいわけです。  そういうようなときであって、かつ、今言いましたように、国民権利義務には直接影響は及ぼさない。間接的にはあるかもしれませんと先ほど言ったわけでございますが、それは、今までと違って込み合って自分の利用が少なくなったとか、そういう意味で間接的にはあるかもしれませんけれども、直接ではございませんので、そういう意味では、先ほど言った二つの事例からいってもそれほどの影響はないのではないか、そういうふうに思ったわけでございます。  それと、そういうときに国会承認をとるかどうかという問題は、ではどの程度だったらそういうことをしなければならないかということでございますけれども、やはり迅速性とかいろいろ総合的に判断して、これは政府の責任で早く対処しなければならない。基本計画をつくることによって、それを国会に報告をして、これで十分対処できるのではないかというふうに考えておるわけでございまして、もし、今の私どもが、今政府側におるわけでございますけれども、また将来、二十年、三十年先に、そのときの政府がそういう対処を迅速にやることができないような状態を今つくり上げていることが私たちの立場からいっていいかどうか、そういうことまで考えまして、この問題についてはそういうことで十分ではないかというふうに思ったわけでございます。
  53. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 ただいま長官から御答弁したことに尽きるわけでございますが、若干補足させていただきます。  国民権利義務に直接関係する面はないということでございますけれども、これはまさに現在国会承認に係らしめている防衛出動あるいは治安出動という事態、こういったものと比べまして、まさに国民権利義務に直接関係する面はない、こういうことだろうと思います。これは今長官も申し上げているところでございますけれども。  それからもう一つ、そういうこととの関係で、では、今回の周辺事態に関します国以外の者による協力という面からいいますと、地方公共団体の長に対して協力を求めることができる、あるいは民間等に必要な協力を依頼することができる、こういうことを今検討しているわけでございますけれども、いずれもこういうものについては罰則を設けるとかそういうことは考えていないということでございます。
  54. 横路孝弘

    ○横路委員 いずれにしても、そういう事態の場合に国民生活に非常に大きな影響を与えるということでございまして、そこに私はやはり国会のコントロールの必要性ということを感ずるわけでございます。  今回の周辺事態の認定の手続、まず何らかの事態が発生するわけですね。そうしますと、国連でもいろいろ議論するし、皆さんも日米間で議論をする。そして安全保障会議でどうするかという判断をされて、我が国としての必要な措置をとるということを決めますと、内容を決めて基本計画閣議で決定されるという仕組みになっていますね。  例えばドイツなんかの場合は、防衛事態、つまり有事事態の前の段階で、有事態勢の確立を必要とするほどに国際的な緊張が高まったという場合に、そういう事態、つまり緊迫事態の発生というのは連邦議会が行うのですね。これは投票者の三分の二の多数で決めるわけです。そうしますと、いろいろな準備活動に入っていくわけですね。ですから、ドイツの場合は議会が主体的に判断をする、そして議会の判断のもとに行政、軍事組織が動いていくということになろうかと思うのですね。  それからアメリカの場合も、例の戦争権限法の中で連邦議会と大統領との共同判断ということになっておるわけで、大統領の判断行動した場合には四十八時間以内に議会に対してその理由を詳細に、法的な根拠でありますとかあるいはその事態の内容について報告をするということになっているわけです。  この周辺事態に対する対応の手順ということの中で、今皆さんが考えられている中でも、何らかの事態の発生があったときに、その事態についての情報の提供ということを、まずこの段階国会に報告をするということは十分できるわけですし、やるべきだというように思いますけれども、いかがですか。
  55. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 今お触れになりましたように、何らかの事態が発生した場合に、いろいろな国際社会での対応もございましょうし、また我が方としても関係当局あるいは在外公館等を通じました情報収集というのはあると思います。  しかし、その段階でそういったものを集約していって、先ほど申し上げたような適用になってくるわけでございますけれども、その段階でもし御質疑が必要であれば、またいろいろなこういう委員会の場等での御質問等も出てくるのでございましょうけれども、その段階周辺事態というような判断をしている状況ではございませんので、その段階でいろいろなお話をするということがもしあるとすれば、いろいろなこういった御質疑の形の中でその状況についてどういう現状なのかというようなことを御説明をする、そういうような形があり得るのかと思います。
  56. 横路孝弘

    ○横路委員 ガイドラインの中でも一周辺事態が予想される場合にどういう対応をするのかということは明確に決められているわけですね。そこから今度周辺事態への対応というように、ガイドラインの中でもなっているわけであります。しかも、周辺事態が予想される場合には、日米両国政府の、つまり調整メカニズムがそこから本格的に開始される。そして、情勢の変化に応じて情報収集、警戒監視を強化するとともに、即応態勢を強化するというようになっていますね。  だから、この段階では事態というのがどういう事態で、日本政府はどう考えていて、国連、国際社会はどういうぐあいに対応しているのか、国際社会がちゃんと対応すれば何も日米協力でやる必要はないわけでありますから、だから、そういう点はここでちゃんとまず国会に報告すべきだ。その上で、周辺事態として認定したときには国会承認という手続が私は必要だと思いますけれども、いかがでございますか。
  57. 久間章生

    久間国務大臣 周辺事態というふうに認定するといいますけれども、今の情報収集を始める最初の段階では、まさに情報収集だけでスタートすることもあるわけでしょう。そして、ずっとなだらかにといいますか、ずっと何らかの変化が起きまして、政府としてこれは周辺事態だ、これだけのことをしなければならないという決意をしたときに初めて基本計画をつくる、そして国会にも報告をするというわけでございます。  それ以前の段階においては、今議院内閣制でございますから、立法府の方で必要に応じて、政府は今どの段階で情報収集しているのかというような話があれば、当然のこと、政府としては対応するわけでございます。  先ほどちょっと言われましたけれども我が国有事の場合の——例えばドイツの場合でございましても有事の場合を想定した話でございますし、また、アメリカの場合もそういう場合だと思います。  現在の周辺事態の場合はいわゆる有事ではないわけでございまして、周辺で何か起きていて、我が国は直接影響はない、侵略その他のおそれがない、しかしながら、我が国の平和と安全にとっては重要な影響が出てくるぞという段階でございますから、そういう段階段階国会報告をするということではなくて、それは、議院内閣制の我が国にあっては必要に応じて委員会等で、あるいはまた場合によっては国会で、そういうことで報告を求められれば政府としては対応するわけでございますから、それをもってそういうようなことをしなければならないと法律で義務づけることにはならないのではないか、そういうふうに思うわけでございます。
  58. 横路孝弘

    ○横路委員 これで終わりますが、シビリアンコントロールの一つがもちろん議院内閣制でありますとか、いろいろな原則が自衛隊の中についてもあるわけでございますが、一番基本のところは、選挙で直接国民から選ばれた、つまり政治がしっかりコントロールし責任を負うということが、実はシビリアンコントロールの一番の根幹をなしているわけですね。  ですから、アメリカの場合も、ベトナム戦争で行政が、大統領の方が少し先行し、さまざまな問題が起きてきたということで議会がチェックをかけて、それではアメリカ市民に対する責任が果たせないというので議会の方がさまざまな制約を加えたということですね、コントロールしたということです。ドイツもやはり議会の判断で物事が動く。つまり、決定をするのと執行をするのと、そういう意味では明確に区別しているわけでございます。  シビリアンコントロールも大分議論がありましたけれども、基本は、やはりそういう国会のコントロールというのが一番大きな大事な点ではなかろうか。確かにこれは立法府が考えればいいということなのですが、長官も政治家でございますから、そういうお立場でぜひこれからの議論にも対応していただきたいと思います。  終わります。
  59. 塩田晋

    塩田委員長 岡田克也君。
  60. 岡田克也

    ○岡田委員 続きまして、日米防衛協力ガイドライン関連立法につきまして、周辺事態国会承認を中心に、今の横路委員質疑を受けまして続けさせていただきたいと思います。  まず、今回の立法でありますけれども、基本的に日米の防衛協力というものは一体何かということの認識からスタートしなければいけないというふうに思うわけであります。  基本的に、米軍というのは今世界の中でただ一人の警察官として活動しているわけでありますが、米軍が世界の中で警察官として活動していく中で、一定の条件のもとで日本がその米軍行動に対してこれを支援していくというのがこの立法の一番ポイントのところではないか、そういうふうに思うわけですが、長官はそういう御認識でしょうか、お聞きしたいと思います。
  61. 久間章生

    久間国務大臣 米国が世界の警察官として活動する、その一翼を担うというような位置づけではないのではないかと私は思っております。  あくまで今回のガイドラインは、日米安保体制という体制ができ上がっている、その中で、我が国の平和と安全に重要な影響が出てきた場合に、我が国も主体的にいろいろな行動をしますが、やはり日米双方が連絡をしながら、協力しながらやった方が非常にいいというようなケースを想定しながらそれに備える、そういうものだと思っております。  世界の警察官として活動する米軍日本が助けるといいますか、サポートするというような役回りではない。あくまで我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼす場合にどうするか、そういう問題だというふうに認識しております。
  62. 岡田克也

    ○岡田委員 日米安保共同宣言の中で、アジア.太平洋の平和と安定のためにという中心テーマがあったと思いますが、では、世界の警察官というのは横に置くとして、少なくとも、アジア・太平洋の平和と安定のために米軍が活動する、その中で日本が一定の範囲の中でこれを支援していく、協力していく、こういう視点は当然あると思いますが、いかがでしょうか。
  63. 久間章生

    久間国務大臣 アメリカはあるいはそういう意識を持っているかもしれませんし、それは私はわかりませんが、少なくとも我が国立場としてはそういうものではない。  日米安保体制というのは我が国の平和と安定のために非常に役立ってきた、そして平和が続いた、その恩恵というのはアジア・太平洋地域に広がっておる、そういう認識はございますけれどもアジア・太平洋地域の全体の平和と安定を守るために米軍が活動する、それを日本がサポートする、そういうような積極的な、いわゆるアジア・太平洋の警察官としてのアメリカ、それをサポートする日本という位置づけではなくて、あくまで我が国我が国の平和と安定を守っていく、そういう立場。そして、それをアメリカにもまたサポートしてもらう、一緒になってやっていく、それが結果としてアジア・太平洋地域の平和と安定、そしてさらなる発展に寄与している、そういうような認識でございます。
  64. 岡田克也

    ○岡田委員 この問題の深入りは避けたいと思いますが、今の長官お話は、アジア・太平洋の平和と安定ということと日米安保条約をそういうふうにお考えだとすれば、結局、日米安保条約あるいは米軍の存在が瓶のふたである、日本行動を制約しているということを日本政府が認めたということにしか私は論理的にはつながってこないと思います。しかし、この点は別の機会にさらに議論したいと思います。  先般、イラクの問題で、日本立場をどうすべきかということで、国連決議がきちんとあるのかないのかとかいうことも含めて日本の態度を問われたときに、私は日本政府は非常にあいまいな答えに終始したというふうに思うわけです。米軍の軍事行動に対して支援するか支援しないかということについて、明確には述べることができなかった。  しかし、今回のこのガイドラインの問題は、長官いろいろおっしゃいますから日本のことに限定しても結構ですが、日本のこの周辺事態の定義に当てはまれば国連決議がなくても米軍の単独行動に対して日本がそれを支持するのですよ、こういうことですね。国連決議がなくても米軍行動に対して日本はそれを支持し支援するということは当然あり得る、そういう重い話だというふうに私は思うのですが、これは当然のことだと思いますが、長官の御認識をお聞きしたいと思います。
  65. 久間章生

    久間国務大臣 我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合、そのために行動する米軍に対しては、我が国は適切な対処をしていきます。
  66. 岡田克也

    ○岡田委員 つまり、そのときに国連決議がなくても、行動する米軍に対して日本は支援をする。長官、ちょっとお答えください、今のお答えはそういう意味ですね。意味かどうかを聞いているのですから、長官にしかお答えできませんよ。長官、お願いします。
  67. 高野紀元

    高野政府委員 そもそも、このガイドラインとの関係におきまして、我が国と米国との関係の防衛協力でございますので、この協力安保条約の枠という中における協力であるということがまずございます。  それから、先ほど来の国連との関係で申し上げれば、安保条約自体にもございますけれども、そもそも日本及び米国はそれぞれ国連憲章の原則というものを遵守するという立場での協力安保条約も含めて行うということでございます。決議が具体的にあるかどうかということは、またそれは別の問題でございますが、いずれにしても、そういう基本的な原則の中で日米間の防衛協力が行われる。決議が必ずしも必要ないということだと思います。
  68. 岡田克也

    ○岡田委員 長官も同じ御認識でよろしいですね、決議がなくてもこのガイドラインというものは発動される。お答えいただきたいと思います。
  69. 久間章生

    久間国務大臣 立場外務省ではございませんでしたので答弁を控えましたけれども、今度のガイドラインの中にも、国連憲章あるいは国際的な取り決めを尊重するということをうたっているわけでございます。  ただ、国連決議とまではうたっておりませんので、そういうような枠内で活動する米軍、しかも我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合には、それはしかるべくいろいろな対処をするわけでございます。
  70. 岡田克也

    ○岡田委員 つまり、イラクのときに国連決議があるのかないのか、あのときは私はグレーだったと思いますが、そういうような場合でも、米軍が武力行使するということについて世論は非常に割れたと私は思うのです。  今回の場合、日本に直接関係のあることとはいえ、そういう国連決議、安保理決議が場合によってはない場合にも日本協力するのだ、そういう重い話だということを政府はまずきちんと国民メッセージを発する必要があると私は思うのです。何か非常に、大したことない、単に協力するだけですよ、そういうふうに説明されているように思うわけですけれども、これはそういう意味では非常に重い話である、重要な話であるということだと思います。私は、だからやらなくていいとはもちろん言っていません。やらなければいけないという前提で、しかし、物事の重要性はきちんと政治は国民に対して伝える必要がある、そういう前提でお話をさせていただいているわけでございます。  そこで、周辺事態の定義でありますが、この定義は非常に重要であります。  つまり、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態の場合にのみこの米軍に対する支援ということが行われるわけでありまして、もしそうでなければ、先ほど言いましたように、世界じゅう、世界の警察官として行動する米軍に対して、日本はあるいは自衛隊は憲法九条の許す範囲でどこでも協力するということになりかねないわけでありまして、そこを日本の国益、つまり我が国の平和と安全に重要な影響を与えるというところでぴしっと切っているところにこの意味がある、こういうふうに思うわけでございます。  そこで、この定義が不明確ですとそこが非常にぼやけてしまうわけで、例えば今までのこの国会での御議論の中で、軍事的な観点から見て我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼす事態であるというふうに御答弁をいただいております。単なる我が国の平和と安全に重要な事態ということじゃなくて、軍事的な観点から見てという御答弁をいただいているわけですが、そうであればそのことを法律に書くのが当然だと私は思いますが、いかがでしょうか、周辺事態の定義として。
  71. 久間章生

    久間国務大臣 日米防衛協力という形でございますので、その一環として、ガイドラインの取り決めであり法整備でございますから、やはり軍事的な要素があるということになりますけれども周辺事態を定義するというよりも、日本の平和と安全に重要な影響を及ぼすような事態が発生したときにどうするかというような観点から法律はつくっておりますので、その周辺事態の中身が軍事的であるとかないとか、そういうようなことを法律に書かなければならないということにはならないのじゃないか。  むしろ周辺事態という事態が、日本の平和と安全にとって重要な影響を及ぼすような事態が発生したときに、米軍に対してどういう協力をするか、あるいは自衛隊がどういうような行動をとるか、そういうようなことについて基本計画をつくって国会へ報告しようとしているわけでございます。  そういうのを見ていただくと、軍事的要素というか、要するに武力的な要素といいますか、そういうもので日本国民の生命等にいろいろな事態が発生しないように、先ほど機雷の話をしましたけれども、そういうようなことに対して自衛隊協力する、あるいはまた情報収集する、そういうようなことになろうかと思うわけでございまして、法律にそれを書き込まなきゃいかぬというようなことにはならないのじゃないかと思っております。
  72. 岡田克也

    ○岡田委員 今まで国会の場で、まず周辺事態の定義として、軍事的な観点から見て我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼす事態であるという御答弁をいただいておりますが、そこはお認めになりますね。
  73. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 法文での書き方につきましては、今長官から御説明したように、どういう形での表現がいいかということで、私どもとしては、我が国周辺地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態ということが、きちっとした格好で法文に記載していくということではこういう形が適当ではないか、こんなふうに考えております。  また、今お尋ねの軍事的観点の点でございますけれども、軍事的観点を初めとする種々の観点から見て我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態、こういうふうに考えておるところでございます。
  74. 岡田克也

    ○岡田委員 今の答弁だと、従来の答弁の修正ですから一統一見解を出していただけますか。
  75. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 これまで申し上げていることと異なるところはないと思いますけれども、先般、北米局長がこの点について御答弁をしていると思いますけれども、私が今申し上げたのもその考え方に沿った御答弁をさせていただいているわけでございます。
  76. 岡田克也

    ○岡田委員 ですから、そういうあやふやな答弁なら、答弁していただかなくて結構です。  前回の高野政府委員の答弁は、   今軍事的な観点と申し上げましたのは、軍事的な観点から見て我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼす事態であるかということでございます。   したがいまして、我が国の平和と安全から見て軍事的な観点から影響はないということになりますと、これは、ここで言う周辺事態ということには該当しないというふうに考えております。 とはっきり言われているわけですよ。  ですから、それを何か非常にあやふやな答弁で打ち消すというようなやり方は、私は国会議論の仕方として非常におかしいと思うのですよ。  もし前回の答弁が違うのなら違うと言っていただきたい。今の防衛局長の答弁は、この高野さんの答弁と実質的に違う答弁を言うことで、最後は同じだという言い方をされましたが、後で議事録を比べてみればわかると思いますが、実質的に違うわけです。違うことを同じだと言うような、そういう白を黒と言うようなやり方は私はぜひやめていただきたい、こういうふうに思います。そのことをまず申し上げておきます。  私は、こういう前提で軍事的な観点ということが入っているわけですから、そのことは法律にちゃんと書くべきじゃないですかということを申し上げているわけです。これは立法技術の問題ではございませんということをまず申し上げておきたいと思います。  次に、安保条約との関係であります。  安保条約との関係につきましては、政府から御説明いただいた新法の概要というところでは触れられておりませんで、はっきりしないわけでありますが、従来の私の質問に対して、例えば小渕国務大臣は、  今回のガイドラインは、あくまでも日本国憲法に基づいて、安保条約範囲において、特に六条の問題についてきちんと法制化しようという立場で考えておるわけでありまして、我が国としては、日本並びに日本周辺事態我が国の安全に大きな影響を与えるということを排除する意味で、日米安保条約を効果的に、その条約意味が達せられるようにということでの今回のガイドラインの決定だと理解しております。 こういうふうに答弁をされておりまして、あくまでも今回のガイドライン安保条約六条の枠の中の話である、こういうふうに答弁されているわけでございます。  ここは、そうでないという考え方も当然できるわけですね。別に憲法九条に触れなければ、自衛隊というものが安保条約の枠の外で活動するということも法制上は可能であります。しかし、外務大臣はこういうふうに答弁されているということであれば、私は若干疑問があるのですが、政府のお考えとしてはそういうことであろう。  そうであれば、今度の法律の中にこの安保条約との関係というものをきちんと明記すべきだ、こういうふうに思うわけですが、いかがでしょうか。
  77. 久間章生

    久間国務大臣 これは外務省かもしれませんけれども。  安保条約の今言われた六条だけというふうに答弁しておられるのか、その辺は、安保条約の目的に寄与するためにやっているわけですけれども、六条だけということなのか、安保条約全体を指してその枠内でやるというふうに私ども認識しておったのですけれども、六条だけというふうに限定されますと、六条は施設・区域の提供だけになっておりますので、いろいろな活動というのは、今度の補給にしましても輸送にしましても、もう少し広い概念があっていいのじゃないか。  ただ、六条で言っている施設・区域の提供をするというもとになる目的も含めて、六条が設けられた趣旨といいますか、そういうようなことだというならば、そのとおりかもしれませんけれども、六条だけというふうに限定してしまいますと、若干狭いのじゃないかな。  安保条約全体の枠内での話だというふうに理解しておりますので、その辺、若干委員の御指摘に沿わないのかもしれませんが、私はそういうふうに理解しております。
  78. 岡田克也

    ○岡田委員 ちょっと議論整理しておきますが、これはあくまでも米軍に対する後方支援についての話であります。法制全体じゃございません。  ここは考え方がいろいろあると思いますが、もし六条ということであればそういうふうに書くべきだし、あるいは安保条約全体だとおっしゃるのであれば、安保条約全体といっても、では具体的には何なのか、安保条約の目的達成という意味は具体的にはどういうことなのかということをきちんと政府説明される必要があると思いますし、そのことは私は法律にきちんと書いておくべき話だ、こういうふうに思うわけでございます。いかがでしょうか。
  79. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 今先生がお話しのように、ガイドラインのうち後方地域支援の部分についてのお話であれば、まさにガイドラインの中におきます後方地域支援は、安保条約の目的達成のために行動している米軍ということが前提でございます。それで、現在関連法案の作業をしているわけでございますけれども、もちろんその法案の作業はこういったガイドライン考え方に沿って行われているわけでございます。  したがいまして、そういう中で、今おっしゃいましたような、ガイドラインで考えている後方地域支援の対象の米軍がどういう米軍であるかということにつきましては、御質疑の中でその点についてきちっと対応させていただくということになろうかと思います。
  80. 岡田克也

    ○岡田委員 その際に、これは六条じゃなくて安保条約全体だというなら、安保条約というのは、軍事だけではございません、非常に幅広い条約ですから、その目的と言われても何のことかよくわからないわけなので、もう少しきちんとお書きになってはどうでしょうか、そういうことを申し上げているわけでございます。  それからもう一点、周辺事態に関してお聞きしたいと思います。  この平和と安全に重要な影響を及ぼす事態、先ほど横路委員も御質問になったわけですが、これは日本に軍事紛争が直接波及してくるような場合だけじゃなくて、機雷がぷかぷか浮かんできて、それを排除しなければいけないような場合も含むのだというのが長官お答えだったのですが、例えばこういう場合はどうなのですか。  軍事紛争が起きて、その結果として国の支配体制が変わるというか、もっとわかりやすく言いますと、朝鮮半島で軍事紛争が起きて、そして大韓民国がなくなってみんな北朝鮮の支配下に置かれる、そのことが結果的に日本の平和と安全に将来重大な影響を及ぼしかねない、こういう場合もこのガイドラインの対象になるのですか。
  81. 久間章生

    久間国務大臣 それは体制が変わっただけの話でありまして、私どもに、それによって平和と安全に重要な影響を与えるというような抽象的な話じゃございませんで、あくまで、先ほど外務省の北米局長から答弁がありましたように、これまで議論をしております中においては、我が国に軍事的な要素を含んで平和と安全に影響が出てくる場合を指すわけでございます。  先ほどのいろいろな答弁のやりとり、私もあのときにおりましたので聞いておりましたけれども、単に湾岸戦争日本に油が来なくなった、それをもって我が国の平和と安全に重要な影響があるとして、これはガイドラインの対象になるのか、周辺事態になるのかということに対して、それは軍事的要素がないので、そういうことまで考えているわけじゃございませんという、あのときもたしか委員と北米局長とのやりとりだったと思います。  今のまさに例を挙げられましたようなことを是認するわけでもございませんし、私どもはとにかく特定地域特定の国を想定するわけではないということを言っておりますので、それを前提にしては答弁できませんけれども、そういうような事態は、少なくとも今考えておる我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態とは直ちには言えないというふうに思います。
  82. 岡田克也

    ○岡田委員 この問題はきょうはこの辺にさせていただいて、次に、国会承認の問題であります。  先ほど長官の御答弁を聞いていて、ちょっと違うのじゃないかなと思ったのは、長官は、直接立法府がコントロールすることがシビリアンコントロールだとは思わない、こうおつしゃいましたね。その意味はどういうことですか。
  83. 久間章生

    久間国務大臣 ちょっと私の言い方も適切でないかもしれません。直接コントロールすることのみをもってシビリアンコントロールが達成されているというものでは必ずしもない、そういうような言い方でございます。  シビリアンコントロールの仕方はいろいろあろうと思います。まず、行政府の中でコントロールし、そしてまた立法府が行政府に対してコントロールする、そういう間接的なコントロールもあるでしょうし、あるいは直接立法府がいわゆる制服に対してコントロールするやり方だってあると思います。しかし、それがどれが一番いいかというのは、これはまた選択の問題だろうと思います。
  84. 岡田克也

    ○岡田委員 そういうふうに言っていただければよくわかるわけであります。  現在でも、治安出動や防衛出動の場合には国会承認するということになっておりまして、直接的なコントロールというものもあるわけですから、もし国会の直接コントロールがシビリアンコントロールだと思わないということになりますと、今の法律を否定することになるわけであります。  では、治安出動、防衛出動と比べて今回の場合がどうなのかという中身の議論をしなければいけない、こういうことだと私は思います。  その中身の議論ですが、長官、これは予算委員会でも私申し上げたことがあるのですが、急ぐからということをよくおっしゃるのですが、これは全く議論として成り立たないので、これから国会の場で言うことをやめていただきたいと思うのです。  治安出動や防衛出動だって、急ぐ場合には事後承認の道を開いています。場合によっては、私は、治安出動、防衛出動と比べれば、まだ今回の方が時間的ゆとりはある場合が多かろうと思うのですよ。何せ政府の方は計画をつくるわけですから、少なくともそれだけの時間はあるわけですよ。治安出動、防衛出動は、瞬間的に判断しなければいけないことが結構多いと思うのです。そういう意味で、私は、急ぐからという理由は成り立たない、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
  85. 久間章生

    久間国務大臣 確かにそういう面はございます。迅速性をもってやる場合には事後承認でいいじゃないかというような御意見はあろうかと思います。  しかしながら、従来から言っていますように、やはり迅速に対応するというのも大事な要素一つでございます。それと、防衛出動、治安出動と比べましたときには、国民権利義務に直接かかわるものでないという面もございまして、それらを考えて報告でいいのじゃないかなというような判断をしたわけでございます。  特に在外邦人救出等につきましては、これは本当に迅速にやらなければなりませんから、基本計画の決定だって一日でやってしまわなければならないような場合も出てくるわけでございます。  そういうことを考えますと、そのとき、こういう事態が発生するのがいつの政府になるかわかりませんけれども政府としては、国民生命財産を預かっているわけでございますから、とにかく早く対応できるようにしてもらいたい、そういう思いが私としては非常に強いわけでございます。
  86. 岡田克也

    ○岡田委員 それは治安出動、防衛出動だって同じだと思うのですね。特に防衛出動の場合などは、本当に、時間がたてばどんどん日本国民権利義務が侵害される、今までも奪われる、こういうことですから、急ぐのは当たり前なのです。それにもかかわらず今の規定があるということをお考えいただく必要があると私は思います。  だから、ポイントは、権利義務の侵害かどうかということに尽きると私は思います。国民権利義務関係するかどうかということであります。  私は、このガイドラインの問題というのは、非常に国民権利義務にかかわる問題だと思います。  一つは、個別の問題で、私もかつて予算委員会で御質問させていただき、先ほど横路委員もおっしゃった、自衛隊が動く上で民間に対していろいろ権利の制限的なことも起こってくる、こういう問題であります。  もう一つは、この後方支援を行うということが、相手国から見れば戦争加担行為であるというふうに見られることも当然あろうかと思います。武力行使は一緒にしていないけれども、しかし、米軍を助けているわけですから、少なくとも愉快な話ではありません。したがって、それに対して、例えばテロで対抗するとか、あるいは直接日本に対して武力攻撃をかけてくるということも当然場合によってはある、そういう重い話ですね。私は、そのことをまず指摘したいと思うのです。  重い話だけれども、それはやらなければいけない場合は当然ある、そういう前提に立った上で、重い話だから、つまり、場合によっては国民の財産や生命まで危険にさらすようなことが将来あり得る話だから国会承認をかけるべきだ、私はこういうふうに申し上げているわけです。いかがでしょうか。
  87. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 基本的な考え方は、先ほど久問長官から御答弁したところでございます。  今回、この周辺事態に対する対応について、私ども国会への御報告ということを現在検討しているわけでございますけれども、そういうことを判断するに当たって、一つは、今問題になっております国民権利義務に対する直接的な関係がどうなのかという点、それから、その事態への対応の仕方の迅速性とか、自衛隊が活動をするその行動がどういうものであるかとか、そういったものを総合的に検討の上判断をしていく問題ではないか、かように考える次第でございます。  今のお話でございますけれども、これはまさに、周辺事態に対しますこのような対応によって、今御懸念のような治安に与える影響とかいうようなものもむしろ抑止するようなことも考え得るわけでございますから、一概に、これだから治安に支障を生じ得るので、それで国会に関与を、係らしめる必要があるんだという論理にはならないのではないかな、かように思う次第でございます。  また、米軍への後方地域支援ということにつきましては、今先生がまさにおっしゃいましたように、後方地域支援の性格、また、そういった形で日本行動をとることにつきましては国際法上も適法なものである、こういうふうに考えているわけでございます。
  88. 岡田克也

    ○岡田委員 あと十分残して午後に回したいと思いますが、できたら長官が直接答えてください。今の問題なんかは政治家が答える話ですよ。  日米協力した結果、場合によってはそういうことが起こり得るということは明らかですよね。常に起こるなんて私は言っていませんよ。起こり得る。だから非常に重要な話なんだということを申し上げているわけで、それを、一概に言えないとか、そうでない場合の方が取り締まれるとか、そんな話を私はしているわけではございません。  残りは午後にしたいと思います。
  89. 塩田晋

    塩田委員長 午後零時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十二分休憩      ————◇—————     午後零時五十二分開議
  90. 塩田晋

    塩田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。岡田克也君。
  91. 岡田克也

    ○岡田委員 それでは、残された時間、まず国会承認につきまして、地方公共団体との関係について確認をしておきます。  国会の外ではいろいろ政府の方がその点について説明をされているようですが、法律上は、地方公共団体の長に対して協力を求めることができるというような書き方になると伺っておりますが、これは、地方公共団体あるいは関係行政機関の長にとって義務になるのでしょうかというのが第一点、そして義務になるというときに、強制手段はあるのかどうか、この点について確認をしておきたいと思います。
  92. 久間章生

    久間国務大臣 確かに、そういうような書き方にしたいというふうに思っております。そのときに、果たして法律上の義務と言えるかどうか、これはそこまでの義務にはならないのかもしれません。  しかしながら、何らかの法的な効果を期待できるのではないかというような気がいたしておりますし、また、そのように協力を求めることができるという根拠規定が政府側にありますと、それによって、協力を求めたとき、地方自治体は、それに対して地方自治体の長として正当な理由を付して、できないならできない、あるいはまたやるならやるということで、地方議会に対しても説明がつくのではないかと思いまして、法的効果とまでは言えないかもしれませんけれども、そういう状況を期待してそういう条文を入れたらどうかという方向で今検討しているところでございます。
  93. 岡田克也

    ○岡田委員 これは、またいろいろな問題が将来発生する可能性がありますから、義務であればきちんとそういうふうに法律上しておくべきだ、こういうふうに私は思うわけでございます。  それから、民間の場合も、これは協力依頼ということでありますから義務ということではないと思うのですが、果たしてそれでうまく回っていくのかどうか。  例えば民間の会社から見れば、株主代表訴訟も抱え、政府の言うこととはいえ法律の強制力がない単なるお願いについて、そのことが会社の事業活動にマイナスに影響を及ぼす場合に、わかりましたとは言えないということが起こるわけでありますので、むしろ法律できちんとそういうのは書いておいた方がいい。一般的な規定だけではなくて、より細かく、こういう場合にはこういうことができる、そのための手続はこうするということをしっかりと法体系としてつくっておかなければ、これは義務ではないと言っても事実上の強制になりかねないことでもありますので、かえって私権の侵害を招くことになりかねない。ちょうど有事立法についてと同じような議論になるのではないかと私は思いますが、いかがでしょうか。
  94. 久間章生

    久間国務大臣 逆に有事立法といいますか、まだ有事の場合の議論はしていないわけでございますけれども、災害等においての義務規定を設けている例がございますけれども、それほどまできっちりと義務化する必要はないのではないか、そういう意見の方が強いのではないかと思いまして、今言われましたような内容で整理を進めているわけでございます。  株主訴訟その他につきましては、これによって損害が生じた、損失を生じたような場合にどうするか、そういうことを担保しておくといいますか、そういうことについて何らかの配慮をする必要があるのかな、それもやはり議論はいたしております。そうしておかないと、協力をして損失が生じたときに、その損失の持っていき方はどこに持っていくのだというような問題等もございますから、今内部ではいろいろと議論をやっているところでございます。
  95. 岡田克也

    ○岡田委員 それから、今の話は、結局国民権利義務に直接関係がないということのためにこういう規定が非常に抽象的になっているのではないか、そういう気がするものですから質問させていただいたわけでございます。  それから、国会承認ということがあることで米国との交渉に幅ができるということはあるのではないかと思うのです。これは、米国から協力の依頼があったときに、日本は、日本の国益に基づいて協力することが——我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼすような場合であって、協力することが国益にかなうという場合に協力をすることになると思うのですが、しかし、米国から見れば同盟国でありますから、とにかく協力してくれということに当然なるだろうと思います。そういう場合に、国会承認ということが入っておれば、政府が米国と交渉をする際にもまさしく国益を体現して交渉することが可能になる、その選択の幅が広がる、そういうふうに思うわけですが、長官、いかがでしょうか。
  96. 久間章生

    久間国務大臣 それはどちらにも関係するわけで、幅が広がる方向にある場合もあるでしょうし、逆に狭まる場合もあるわけでございますから、それをもって承認に係らしめるかどうかという問題とはまた別ではないかという気がいたします。  しかし、それが立法政策上の問題であるかもしれませんが、私どもとしては、先ほどから言っていますように、国民権利義務に直接かかわる問題ではないということと、迅速に対応しなければならない、そういういろいろな問題を総合的に判断して、内閣の責任において基本計画等を決定して、直ちにそれを国会に報告する、そういう形で行動に移らせていただきたい、そういうふうに思っているところでございます。
  97. 岡田克也

    ○岡田委員 この点は引き続き議論したいと思います、  最後に、全く別の議論でありますが、在外邦人の救出のところでございます。  今予定されている自衛隊法の改正の中で、自衛隊機だけではなくて、船舶あるいは当該船舶に搭載された回転翼航空機を加える、こういうふうに改正を検討されているということでございますが、現在ある百条の八の本体の規定の中で、輸送の安全の確保という項目が入っております。これはある意味では当然の規定かという感じもいたしますが、しかし、輸送の安全が完全に確保されたとは言えない状況においても、そこにいる邦人がより危険な状況であれば、その救出のためにあえて危険を冒してでも行かなければいけない場合というのは当然あると思います。それがこの表現が入っていることによって非常に制限されるのではないか、こういうふうな懸念を抱いているわけでございますが、ここについて何らかの修正を加えるお考えは今おありでしょうか。
  98. 久間章生

    久間国務大臣 輸送の安全の確保というのは、これは大事な要素でございまして、先般、この百条の八をつくりましたときも、大変いろいろな議論の中で輸送の安全の確保ということで決着したわけでございますので、私どもは、今までのいろいろな議論を踏まえながら、この輸送の安全の確保というのは残したい、そういうふうに思っているところでございます。
  99. 岡田克也

    ○岡田委員 この輸送の安全の確保という概念は、具体的にどういうことを考えておられるのでしょうか。  もちろん、その救出機が攻撃を受けて、撃ち落とされるような状況ではこれは出せないことは当然でありますが、これを余り幅広く見ますと、実際には救出ができないということになりかねないわけですが、いかがでしょうか。
  100. 太田洋次

    ○太田(洋)政府委員 お答え申し上げます。  ここで輸送の安全の確保と述べておりますのは、この条項の前提として、災害その他の緊急事態ということでございまして、その国が緊急事態に陥っている、例えば紛争があっているとか大災害があるとか、こういう場合でございますけれども、そうであっても、邦人を救出するためにある空港から外へ運び出すということがこの業務の対象になるわけでございますけれども、その空港なり輸送する経路、これが安全が確保されているということをここでは一般的に念頭に置いております。  そういう意味で、その地域なり国全体が緊急事態に陥っているということと、この輸送の安全の確保というのは、そういうふうに考え方整理しております。
  101. 岡田克也

    ○岡田委員 この点はなお引き続き御質問させていただきたいと思いますが、きょうは時間がなくなりましたので、これで終わります。
  102. 塩田晋

    塩田委員長 赤松正雄君。
  103. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 新党平和の赤松正雄でございます。  政府、防衛庁は、周辺事態日本周辺有事に備えた法案を準備される一方で、防衛庁長官が十四日の閣議決定後の記者会見で、有事法制について、立法を前提に作業に着手する意向を表明されました。  このような、私などから見まして、いわば堰を切ったような対応ぶり、非常に違和感を強く感じます。危機管理、いざという場合に備えてあらゆる対応を考えておきたいということはわかりますけれども、何かしら危うさを感じるということをまず冒頭に申し上げておきたいと思います。  九五年の防衛計画の大綱、新しい大綱の策定、それから翌年、九六年の日米安保共同宣言、そして昨年秋の日米防衛協力の指針、ガイドライン見直しに至るこの二年半余りの動きというのは、非常に極端な言い方かもしれませんが、冷戦後というよりも、新たなるいわば戦争前を思わせるような、そういうふうな異常な慌ただしさを感じるわけです。  最近、私が興味を持って読んだ本に、司馬遼太郎さんの「「昭和」という国家」、かつてNHKで司馬遼太郎さんが一人語りで十二回ぐらいに分けて行われた「「昭和」への道」というテレビ放送を出版化したものでありまして、「「昭和」という国家」は「「明治」という国家」よりは先に書かれたというか収録されたものなのですけれども。  その中に、司馬さんは、要するに日清、日露という二つの戦争は、いわば祖国防衛戦争的側面があった。それを経て、その時点までは祖国防衛戦争であったけれども、日露戦争の後、日本は際立って帝国主義的側面を強めていって、そして昭和のあの大戦へと入っていった。いわば昭和の初めから昭和二十年までの二十年間は魔法の森に迷い込んだようなものであった。こういうふうな表現をされておりまして、江戸から明治に続いての日本のよさというものが一挙にそこで崩れてしまった、非常に異常な二十年であった。こういうふうな表現をされております。  同時に、司馬遼太郎さんは、日本の近代というのはロシアを際立って恐れた近代であった、こういうふうな表現もあります。  近くエリツィン・ロシア大統領が日本を訪れるわけですけれども、ロシアからソ連という国を経て、そしてまたロシアに戻った、そういうふうなことを考え、私思いますに、この明治以降の約百三十年、前半は司馬さんの言葉をかりるとロシアという国に苦しめられた日本、恐れた日本。後半の五十年余りの年代というのは、今度はアメリカを恐れ、アメリカに悩まされたというか、今も、これからずっとそういう時期が続くのではないかというふうに思わせるような状況が我々の前にあるなということを強く感じる次第でございます。  そういった観点から、日本の国家のありようというものについて、いや増して心して防衛庁長官は取り組んでいただきたいと思うわけですけれども、きょうはその中で、近く国会にかかる法案、PKO法案はどこで審議されるかまだ決まっていないようですけれども、あわせて日米防衛協力の指針、いわゆるガイドラインにかかわる法案、この辺のかかわり合いといいますか、オーバーラップするような部分があるように思いますので、その辺を、本格的な審議はこれからのことにまっとしまして、とりあえずその糸口の部分でちょっと私が気になるところをお尋ねしたい、そんなふうに思います。  まず第一点目でございますけれども、今回のこの日米防衛協力の指針の見直しという中身については、地理的概念にしても行動形態にしましても、あるいは軍事協力分野にしましても、かなり多くの部分で、安保条約の条文やあるいは従来の政府見解からかなり逸脱したというか踏み込んだ設定がなされている、そんなふうに思います。  そういう中で一つ取り上げたいと思いますのは、日米協力の中で、国際の平和と安定の維持を目的とする経済制裁の実効性を確保するための活動、いわゆる臨検ということがこれに含まれるというか入ってくるのだろうと思いますけれども、それについてであります。  日本有事とは別に、日本周辺地域における事態、そういう言葉についてはきょうの午前中、あるいは今までの議論の中にも出てきておりますけれども、いわゆる日米協力の場が設けられるわけですけれども、そこで他国船舶の臨検が実施できるとされているわけであります。  それで、昨年十二月三日の参議院の本会議で、現在私どもと一緒の会派を組んでおります改革クラブの山崎力議員がこのことについて質問をしておりますけれども、そこではこう言っています。  臨検は「交戦権の一つとして国際法上認められている行為の典型例であり、政府がいかに弁明しようとも、我が国においては違憲の疑いの最も強い協力行為と言えます。」こういう指摘を本会議でしているわけですけれども、その指摘に対して橋本総理はこう答えておられます。「我が国が行うことを想定している船舶の検査は、国連安保理決議に基づく集団安全保障措置でありまして、交戦国の国際法上の権利の行使ではございません。」こういうふうに答えられております。  そこでお尋ねしたいのですけれども、ここで言う国連安保理決議に基づく集団安全保障措置なるものは、いわゆる国連軍を指しているのでしょうか、それとも多国籍軍を指しているのでしょうか。この総理が答えられた国連安保理決議に基づく集団安全保障措置ということについて、お答えを願いたいと思います。
  104. 高野紀元

    高野政府委員 お答え申し上げます。  集団安全保障という言葉でございますが、これは、平和に対する脅威、平和の破壊または侵略行為が発生したような場合に、国際社会が一致協力して、このような行為を行った者に対して適切な措置をとることにより平和を回復しようという概念であり、国連憲章七章にその具体的措置が規定されているわけでございます。  今委員のお尋ねの、狭義の国連軍かどうかということでございますけれども、これは狭義の国連軍というのはこの七章の中にございますけれども、私どもが申し上げている集団安全保障の一環としての国連決議ということとは異なったものというふうに考えております。
  105. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 局長、今、七章に書かれている国連軍とは違ったものとおっしゃいますが、その場合、多国籍軍というものを考えていいのか、それを指しているのかどうかについてお答えがないのですけれども。  あわせて言いますと、九〇年代初めに、湾岸戦争当時に提出をされました国連平和協力法案の中身というのは、いわば当時の多国籍軍に日本が参画をして自衛隊をそれに参加させる、そういうふうな中身が含まれていた、こんなふうに理解しておりますけれども、この場面で、総理がおっしゃっている、あるいは皆さんが考えておられる国連安保理決議に基づく集団安全保障措置というのは、そういうものも含んでいるのでしょうか。
  106. 高野紀元

    高野政府委員 いずれにいたしましても、私どもは、今度のガイドラインとの関係で、ガイドライン実効性を高めるために、効果的なものにたらしめるためにいろいろな作業をしている、法整備もその関連でしようとしているわけでございます。  その関係で申し上げますと、そこで行おうとしている、ここで申し上げております集団安全保障措置の一環としての船舶検査というものは、国連決議に基づいて行うということを申し上げているわけでございます。  多国籍軍かどうかということについてのお尋ねでございますけれども、いずれにしても、私どもが考えております船舶検査というものは、一定の国連決議に基づいて行うということを申し上げているわけでございまして、多国籍軍という言葉自体の定義は必ずしも明確でございませんので、その関連を申し上げることは差し控えたいと思います。
  107. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 今私が取り上げましたものは、日米の二国間におけるところの防衛協力日米防衛協力というものの、まあアウトライン、ガイドラインをこれから見直そうという話の中に、どうして国連安保理決議に基づく集団安全保障措置という、いわば多国間の、二国間よりも大きな枠組みのものがここへ入ってくるのかということについてはどういうふうに考えておられるわけですか。
  108. 高野紀元

    高野政府委員 我が国として、国際社会の一員として、国連による平和と安全のための諸活動に対して憲法の範囲内でこれまでもいろいろな形で積極的に協力しているわけでございます。  いわゆる船舶検査という場合でございますが、これまでも国連憲章のもとに、いわゆる経済制裁措置等がとられるという場合において、そういう形の措置と申しますか、決議も行われてきているということでございますので、日本考え方として、船舶検査を行う場合には、国連の決議に基づくそのような経済制裁措置等の一環として行われる船舶検査に対して協力するということが適当だろうということで、今回の私どもの対応措置ということをその枠の中で考えようとしているわけでございます。
  109. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 ということは、日米関係を主軸とした日米防衛協力の指針、そのガイドラインの枠のもちろん中でしょうけれども、そこから派生してくる行動として、国連の安保理決議があった場合のみ船舶の臨検をする、こういうことですね。
  110. 高野紀元

    高野政府委員 そのとおりでございます。
  111. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 その場合、第一義的に言いまして、国際の平和と安全の維持を目的とする経済制裁の実効性を確保するための活動ということですから、臨検をするこちらの船というものにおける武器のありようというか、船そのものの中における武器の存在の形態といいますか、どういうふうな船でもってその臨検に立ち向かうのでしょうか、臨検を行うのでしょうか。
  112. 久間章生

    久間国務大臣 また先ほどの議論に返りますけれども、今委員がいろいろと言っておられました臨検、いわゆる船舶検査は、最初はいろいろな議論があったのです。それで、いろいろな議論の中から、まず、国連決議に基づくというような形に絞りまして、そしてまた、今度の日米防衛協力のためのガイドラインというその中で起こってきたことから、周辺事態ということで、国連決議の中でも周辺事態に対応する国連決議、それだけに絞ってやろうとしているわけでございまして、その辺はまたそう理解していただいていいと思います。  それから、今の武器の話でございますけれども、自衛艦を使っていろいろな検査をやるわけですけれども、停船させたりいろいろなことをします。そのときに乗り組んでいったりなんかする隊員が、正当防衛としての武器の使用ぐらいはできないといかぬだろうというようなことで、そういった武器の使用は認める方向で今議論をしております。
  113. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 今長官がおっしゃった、臨検の場合に乗り組む自衛隊のメンバーが武器を携帯する、それが一つ。その船そのものも、もちろんいわゆる砲艦というものになるわけですね。
  114. 久間章生

    久間国務大臣 それは、そうなります。通常装備している自衛艦でやるわけでございますから。
  115. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 その場合、今長官おっしゃった、自衛隊のメンバーが武器を持って臨検に当たるという場合の武器使用のありようというのは、私たちが今知っている範囲でいいますと、現行PKO法における武器の使用という部分がございますが、その現行PKO法における隊員の皆さんの武器使用というもののありようと同じだと考えてよろしいのですね。
  116. 太田洋次

    ○太田(洋)政府委員 ここで考えております武器の使用は、今先生が問われております船舶検査活動におきまして、場合によっては相手の船舶、この場合の船舶というのは通常民間船でございますけれども、それに乗り込んでいってやるわけで、通常は相手から危害を加えられるということは考えられないわけですけれども、実際にはいろいろなことが起こり得るということでございまして、その場合に、何らか突発的な不測の事態が起こりましてこちらに危害が加えられるという場合を考えております。  その場合に、自衛隊員の生命身体の防衛のために最小限の武器を使用しようというようなことでございまして、そういう意味で申し上げますと、PKO法上の隊員の生命身体を防衛するために武器を使用するということに極めて近いというふうに考えております。
  117. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 繰り返しになるかもしれませんが、現在のPKO法におけるところの武器の使用というのは、自己保存のための自然権駒措置ということで、いわゆる任務の遂行のためということは入っておりません。そういう状態がそのままこれから考えようとされておられるガイドライン関連のものの中にも入る、そういうふうに考えてよろしいんですね。
  118. 太田洋次

    ○太田(洋)政府委員 先生のお話のとおりでございます。  ただ、私どもが船舶検査で行おうとしておりますのは、船舶の航行状況の警戒監視だとか、船舶に対する呼びかけだとか、それから船主、積み荷、目的地、そういうものについて照会する等々を考えておりまして、武器使用によってこれをやろうというふうに考えているわけじゃございませんので、ここでちょっと付言させていただきます。
  119. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 船舶に対します臨検というのは、たとえ相手が商船であっても——大分設定が違うかもしれませんけれども、せんだってNHKテレビで、キューバ危機の十三日間という非常に興味のあるテレビ、ケネディ元アメリカ大統領がキューバ危機をいかにして闘い抜いたかというのを克明に放送しておったのを見たのですけれども、ここでも約八日間ぐらいたった時点で、停止、臨検という話が出てきて、ケネディを初めとするアメリカのメンバーが非常に苦しむという場面が出てくる。最終的にそれは回避できたわけですけれども。あのときのソビエトの商船には潜水艦がもちろんついていたわけです。だから、そういう場合、こちら側もおのずとそれなりの覚悟と決意で臨検が行われるということです。  同じ昨年の十一月二十五日の参議院の内閣委員会で、永野茂門議員がそういう角度から質問をされて、武器の使用ということから武力行使へとつながっていく危険性というものも指摘をされているわけです。それに対して、防衛庁長官は、八つの手順をその場面でもおっしゃっておられますね。有機的に組み合わせた上で有効に対処することになろうと答えておられるのですけれども、有効に対処というのはどういうことを指しておられるのでしょうか。
  120. 久間章生

    久間国務大臣 あのときどういうふうに言ったかわかりませんけれども、今考えておりますのは、船舶の航行状況の警戒監視。船舶に対する呼びかけ。船籍、船主、積み荷、目的地等の無線等による照会。検査に応じた船舶に対する立ち入り、書類検査、積み荷の確認。進路変更の要請。停船または進路変更に応じない船舶に対する説得。検査実施船舶の存在を示すための信号弾、照明弾の使用及び遠方における空砲の使用。説得を行うための接近、追尾、伴走、進路前方での待機。こういった八項目をやろうというようなことで、通常の場合は、通常の場合といいますか、船舶検査の相手は軍艦以外の商船でございますから、これによってその目的は達することができるのじゃないか。これをもってしてもできない場合はやむを得ない、そういうふうに割り切るというような考えでございます。
  121. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 その後で大臣がおっしゃっているのは、「対象船舶があくまで検査等を無視しあるいは逃走するケースは極めて例外的な場合」。ということは、極めて例外的で、逃げちゃったらもうしょうがない、こういうことなのですね。
  122. 久間章生

    久間国務大臣 私どもは、国連に加盟しておるわけでございますから、国連がそういう決議をした場合、それに対して協力をして、臨検といいますか、船舶の検査等をやらなきゃならないわけでございます。  しかしながら、私どもは、御承知のとおり憲法九条でその限界が規定されておるわけでございますから、その枠内でやれることは精いっぱいやりますけれども、それののりを越えてはやれないわけでございますので、それを越えてまでしなければやれないようなことについてはやむを得ない、そういうふうにはっきり割り切っておるところでございます。
  123. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 そこでもう一つ、これは直接は防衛庁長官が、長官だから答えていただけると思いますが、現行PKO法は、PKFのいわゆる本体業務部分、巡回でありますとか武装解除といった部分が凍結になっております。  先ほどの臨検という場面というのは、まさにPKFの本体業務と際立って似ている、巡回だとかあるいは武装解除という部分と非常に似通ったものを感じるわけですけれども、その臨検の方に参画をし、PKFの凍結解除という問題についてはどういうふうに考えておられますでしょうか。
  124. 久間章生

    久間国務大臣 私どもは、PKFも現行憲法上はできるということで法案を用意して国会に出させていただいたわけでございますけれども、その当時の国会の審議の経過であのような形に凍結をされておるわけでございまして、私どもとしては、憲法上はPKFも含めて活動はできるというふうに今でも思っておるところでございます。  しかしながら、いろいろな諸般の情勢、いろいろな審議の過程における経過等であのような形に凍結というふうになったわけでございますので、その辺は、私どもとしては、国会の御審議等を通じて解除していただければそれなりにまたやれる、憲法上は問題ないというふうに思っているのは今も変わらないところでございます。
  125. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 ともあれ、冒頭の局長との話にもありましたように、今まで日本が取り組んだことのない、国連安保理決議に基づくとはいえ、集団的安全保障措置という行動に参画をする初めてのケースが出てくるわけでございますので、重々、日本が持っておる平和憲法の枠ということをしっかりと踏まえた上での法案づくりというものをしていただきたいということを申し上げて、次の問題に移ります。  冒頭でも申し上げましたけれども、非常にここ数年の、日本を取り巻くというよりも、日本発のさまざまな出来事というか問題が、さまざまな部分で私は従来と違った雰囲気を漂わせているというふうに思うのです。  それは、先ほど申し上げましたように、九五、六、七、この二年半余りの日米関係、今まさに一つの山場を迎えようとしているわけですけれども、それが一つ大きな背景にある。  一方、具体的な実例として、沖縄におけるさまざまな出来事というものがもう一つ大きな問題としてあって、例えばあの県道百四号線越えの実弾演習というものを、沖縄から日本の数カ所のところへ移動して実弾演習を行う、これがいわば一つのシンボライズされた、象徴的な出来事だろうと思うのですけれども。  今まで、沖縄だけではなくて、在日米軍基地の七五%が沖縄に集中しているとはいえ、それ以外の部分がもちろん日本全体に広がってあったわけですから、今に始まったことではないのですけれども、しかし、例えば先ほど申し上げた県道一〇四号越えの実弾演習を日本全体に拡散するというふうなことを一つの機縁としたような形で、日米関係におけるところのいわば本土の沖縄化という現象が、今まで口でいろいろな人がいろいろな場面で言ってきたと思いますけれども、非常にいや増して現実化してきているなという印象を受けます。  そういうふうな大枠の私のとらえ方ということに対して、長官、どういうふうに考えられますか。
  126. 久間章生

    久間国務大臣 私は、委員の御指摘と若干違うと思います。  冷戦構造が終わりまして、日米安保体制を見詰めてみましたら、冷戦構造は終わったけれども、ヨーロッパ地域と違って安全保障の大きな枠組みがない。このアジア・太平洋の場合はどうしても二国間の関係が中心になっておって、最近ARFというような、そういうのができてきつつありますけれども、まだそれが全体の安全保障の大枠をつくるほどの機能はしていない。そういう中で、二国間関係はやはり必要だ。  そして、特にその中で日米安保体制というのがあったから我が国の平和が続いてきた。そしてまた、そのおかげでこのアジア・太平洋地域も恩恵に浴して平和が続いて、経済発展も図ってきた。だから、安保体制はこれから先もきっちり守っていくことが我が国の平和と安全にとっても非常にいいし、それがまた、ひいてはこのアジア・太平洋地域にも寄与するのだということを考えて、それでそのために日本とアメリカの信頼関係はきっちりしていこうじゃないか。日米関係でこの安保体制をもう少ししっかりするためには、信頼関係もきずなをきつくしようと。  そのためには、やはりガイドライン等も見直していこう。また、そのときに、今の日本における在日米軍の基地が沖縄にばかり集中しておる、これは何とかしなければならないということで、SACOという特別委員会をつくっていろいろ検討してきた。その中で、沖縄だけではなくて、本土でもやれるものについては移そうじゃないかということで一〇四号も移したわけでございますし、KC130を岩国に持ってきたのもそういう意味でございまして、決して本土の沖縄化ということではなくて、本土で背負えるものは背負おうという気持ちで作業をやってきたわけでございますから、どうかそういうような流れとしてはとっていただきたくない。  私が言ったように、素直に、沖縄のものを幾らかでもほかで分担することができれば、その方が沖縄の人たちにとってもいい、そういう気持ちで努力したというふうにとっていただきたいと思うのです。  もう一つは、冒頭に委員が、有事法制について私が非常に積極的な話をしたような、テレビあるいは新聞等で言ったような話になっておりますけれども、これもそういうことじゃない。  あのとき話をしましたのは、従来は有事法制、立法化を前提としないということでいろいろな成果物ができてきておりますけれども、立法化をしないという前提での成果物をそのまま使ってすぐ立法化をするというわけにはいかないので、そういうものを抜きにしてもっと幅広く検討をする必要があるのじゃないかということを言いましたのが、有事立法に向かってまっしぐらに走っているみたいな印象で報道されてしまいました。  若干ニュアンスは違うわけでございますので、決して委員が先ほど言われたような、そういう何かしらんきな臭い動きがずっとあっているようなことではなくて、やはりきちんと整理することは整理しておこう、それが我が国のためにも非常にいい、そういう考え方で今整理を進めておる、そういう点をひとつ御理解賜りたいと思います。
  127. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 素直に見てほしいというお話がありましたが、私は非常に素直な人間だと思っておるのですけれども、素直に見まして、今の長官お話ぶりというのは、もちろん私は日米関係を非常にいいかげんにしていいなんと言っているつもりは全くありませんで、日米関係は非常に大事だと思っておりますけれども、その前提の上に立って、日本としてもやはり言うべきは言う、いろいろな場面で独立国日本として主張すべきは主張するという部分がないといけない、それがどうもないようにうかがえるということから申し上げているわけです。  そこで、具体的に、じゃどういうケースでもって私がそんなふうに判断するのかということを申し上げますと、これはお答えは要りませんけれども、私は、知り合いから、何で日本でアメリカ軍が実弾演習をせんとあかんのやという電話がありまして、わかるように説明してくれと言われました。これは説明しましたけれども、非常にしづらいものがある。外務省にお聞きして答えは持っているのですけれども、非常によくわからないお答えでありました。それは、もうそれ以上言いませんけれども。  もう一つ、これは防衛施設庁長官に来ていただいているのでお聞きしたいのですが、これも私が実際に調べたわけじゃないので、新聞報道でございますから反論はおありかもしれませんが、米軍の低空訓練というのが非常に最近気になるという報道があります。朝日新聞のことしの冒頭で、米軍の低空訓練が年千機、七ルートを確認できたというふうなことから、市民団体でもこういった米軍機の低空飛行訓練というものを取り上げて、非常に危険な側面があるんだという御指摘がありますが、この実態認識、現実認識についてどういうふうにとらえておられるか。
  128. 久間章生

    久間国務大臣 よく委員会等でも防衛庁並びに防衛施設庁に対してそのような御質問があるわけでございますけれども、残念ながら、米軍の運用に係るものは外務省が第一義的に担当しておるものですから、防衛施設庁ではなかなかそれは答えられないのじゃないかと思います。  私の場合は立場が国務大臣でございますから、あずかり知らぬというわけにはまいりませんけれども、そういう意味で……(赤松(正)委員「そういう実態があるかどうかという現実認識」と呼ぶ)いろいろな意見が私どものところにも寄せられているのは事実でございます。
  129. 萩次郎

    ○萩政府委員 今防衛庁長官が申し上げましたように、低空訓練の実態というのは私の方では必ずしもはっきりしないのでありますけれども、防衛施設庁の方では低空訓練に伴う被害の補償というものをやっておるものですから、先生がおっしゃいましたうちのどういう影響があるかということで若干つけ加えさせていただきます。  新聞記事に千機というような話は載っておりますけれども、私どものところに入っております被害者といいますか、これは統計をとり始めました昭和六十二年度から始まって二百七十名、大部分は窓ガラスが割れたというものなんですが、そのほか牧場の馬が暴走をしてさくを壊したというようなケースもございます。  そういうことで、被害関係が、少ない年で二名、多い年で、これは平成三年度だけ特に多いのですが、百名を超えているというようなケースがございますが、飛行機数が千機とかというようなところは必ずしも把握をしておりません。
  130. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 今のお話では、お聞きしていて、正確なる実態がわからないということだろうと思うのですが、これは大変な事故が起こってからでは遅過ぎるわけで、今いろいろな場面でそういう警告というかシグナルが発せられているわけですから、これはやはりしっかりと受けとめていただきたいと思いますね。  長官はそれは第一義的には外務省のマターだからとおっしゃいましたが、外務省はこれはどうですか。
  131. 高野紀元

    高野政府委員 今御指摘の低空飛行訓練でございますけれども米軍が訓練を通じてパイロットの技能の維持向上を図るということは、我が国米軍の駐留を認めているという安保条約上の義務を私どもが負っている以上、当然これは必要なことだという認識でございます。  他方、それでは訓練を行うに当たって自由気ままに、あるいは全く我が国の公共の安全に配慮を払わないでやれるかというと、そういうことでは全くございませんで、米軍我が国において低空飛行訓練を実施するに当たりまして、関係国内法令にある安全基準を尊重して実施しているということは米軍みずからも明らかにしているところでございますし、私どもも種々のレベルで話し合いをしている過程でそれは確認しているところでございます。  なお、最近の経過でございますが、ことしの二月にイタリアで低空飛行訓練の関係で重大な事故が発生いたしました。その関連で、直ちに私どもは、安全面で我が国における低空飛行訓練についてもさらなる措置がどういう形でとり得るのかということを話し合いを始めておりまして、それを真剣に継続してまいりたいというふうに考えております。
  132. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 種々なレベルで日米間においていろいろな協議をなさっているということでございますので、そこのところは、先ほど申し上げましたように、事故につながらないようにしっかりと言っていただきたい、強調して交渉に当たっていただきたいと思いますし、防衛施設庁の方もそういう実態というものをしっかり掌握するようにしていただきたいということを申し上げておきます。  それで、もう一点でございますけれども、最近、先ほど申し上げましたが、日米関係において日本がかなりなし崩し的にアメリカの言い分というものを聞き過ぎているのじゃないのか、日本がしっかり主張すべきは主張せよというふうな角度の話をさっきからしているわけですが、そのうちのもう一つの例として、在日駐留米軍経費の使い方として、私が知りましたところでは、例えば九七年一月に佐世保基地にコールド・アイアン・プラントという、これは原子力潜水艦の修理施設のようですけれども、そういうものを新たにつくったとか、あるいは横須賀に九六年七月に米第五艦隊の潜水艦司令部TF54というものを、新たに第五艦隊向け司令部棟をつくったという話を聞きました。  私が認識している限りでは、第七艦隊は西太平洋、そしてインド洋の一部までカバーする、第五艦隊はペルシャ湾とかアラビア海とかインド洋の一部、第一義的にはそういうふうなアメリカの艦隊、もちろんオーバーラップしているところもあるようですけれども、基本的にはそういう働く部分というものが分けられている。そういう中に、新しく最近になって第七艦隊潜水艦司令部に加えて第五艦隊用の司令部ができているということは、これはどういうふうに理解をすればよろしいのでしょう。
  133. 萩次郎

    ○萩政府委員 コールド・アイアン・プラント、それから管理棟の件であると思いますが、このコールド・アイアン・プラントは米軍の名称でございますが、この施設は、赤崎貯油所の岸壁に、コールドというのはエンジンをかけていないという意味だそうでございますが、エンジンをかけないで停泊する艦船に対して、給汽、給電、給水、こういうことを支援するユーティリティー施設でございます。  それから、もう一つの御指摘の横須賀基地の施設でございますが、これは第七艦隊隷下の第七潜水艦隊司令部が使用する管理棟というふうに承知しております。第五艦隊というお話でございますが、第五艦隊の潜水艦隊司令部というのを第七潜水艦隊司令部が兼ねているということでございますから、両者、一人で二役ということで、同一のものであるというふうに承知をいたしております。
  134. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 ということは、要するに、従来あるものに新しくつけ加えたわけではないということですね。
  135. 萩次郎

    ○萩政府委員 米軍の組織の関係で、第七艦隊の司令部が第五艦隊の司令部も兼務しているというふうに聞いております。
  136. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 その点については、若干私は食い違いがあるように思うので、実際にきちっと調べたい、さらに調べたい、そんなふうに思います。  いずれにしましても、日米関係というものは、日米安全保障体制の円滑かつ効率的な運用に資するためということが大きな目標であろうと思うのですけれども日米安全保障という日米間の枠の領域を超えて、いわばアメリカの世界戦略保障体制の円滑かつ効率的な運用に資するためというふうに言っても過言でもないような場面がいろいろなところに出てきているということを非常に危惧するというふうに申し上げまして、きょうの質問を終わらせていただきます。
  137. 塩田晋

    塩田委員長 佐藤茂樹君。
  138. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 自由党の佐藤茂樹でございます。  私も、午前中からの質問者に引き続いて、ガイドラインのことについて何点かお伺いをさせていただきたいと思うのですが、その前に、先ほど来長官質問をされていないのに答弁されておりましたが、有事法制発言の件につきまして、まず真意を確認させていただきたいと思うのです。  十四日だったと思うのですけれども、記者会見で、各紙の報道によりますと、防衛庁長官が有事法制について、単なる研究にとどまらず、立法化するとすればどんな問題があるのか、法整備に向けての検討を始めたい、こういうように発言したという、かぎ括弧つきで、各紙とも大体同じ表現で書かれておるのですね。  私はこの発言を聞きまして、これは、先ほど来ありますように、これまでの、昭和五十三年だったと思いますが、立法化を前提としないとした防衛庁による有事法制の研究から、いよいよ国会提出を念頭に置いた法整備の検討に踏み込む意欲、意向を示されたのかな、そういうように私自身はとらえたのです。  しかしながら、その夕方、逆に今度、防衛庁長官ではなくて村岡官房長官が、十四日の午後の記者会見で、法整備を前提とした検討を始めた事実はない、高度の政治判断にかかわる問題だと述べられて立法化に慎重姿勢を示した、報道ではそういうふうになっているのです。  私自身、この二つの、それぞれ防衛庁長官と官房長官発言を比較しても、微妙にニュアンスが違う。はっきり言うと、一体閣内できちっとそういうことを話し合われた上で両長官は話をされているのかどうかよくわからない、見えにくい。  ですから、ぜひこの委員会の場で、一回政府見解として、有事法制について今の段階で言えることは何が正しいのか、明確に統一見解という形で出していただきたいということを最初にお願いしたいと思うのです。
  139. 久間章生

    久間国務大臣 統一見解を出すまでもなく、村岡官房長官が言われた、立法化を前提としておりませんというあのとおりでいいと思います。  そして、慎重にという言葉がありますけれども、私が言った言葉が少し適切さを欠いておったのかもしれませんが、私も、法提出を準備するものではなくてということをわざとその中では念を入れておるわけですけれども。  要するに、今までの研究がどちらかというと法案提出を前提としない、そういう方向でいろいろな研究がされてきているわけですね。そういう形で、いろいろなこういう問題がある、こういう問題があるということで整理がされて、それを国会にも御報告させていただいておるわけですけれども、これはどちらかというと、法案化するものではないということでそういう作業をしておりますから、それをすぐ法案化に向けて作業をすべきであると言われましても、というのは、その前に自民党の方でそういう決議がされておりますから、そう言われても、それは直ちにできるものじゃなくて、それはそれなりにいろいろとこれから幅広く検討していかなければならないのだ、そういう気持ちでございまして、そういうような気持ちを言ったときに、前提とするものではなくてということは念を押したのですが、向かってという言葉を使ったものですから、その向かってというのが、さも一直線に走っていくのだというようなニュアンスを与えたのじゃないかと思いまして、私も、その点は皆さんに対しても申しわけなかったなと思っております。  ただ、言えますことは、従来は、全く法制化はしないというような方向でいろいろな研究をしてきて、その研究成果については公表されておりますけれども法案化しないというように縛るのではなくて、もし法案化するにしても今度はどんな問題があるかということを幅広く検討しなければならないわけでございますから、そういう意味では、もし言葉を選んで言うとすれば、村岡官房長官が言われた、慎重に検討していかなければならないという、その表現の方がやはり適切だろうと思います。
  140. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 もうちょっと確認しますけれども法整備に向けて一直線に行くわけじゃないのだと。  しかし、今までは間違いなく、昭和五十三年のあの防衛庁の研究のときにも明確に言われているのは、要するに、近い将来の国会提出に向けたものではないのだ、法案化を前提としないのだということを明確に言われていたのですよ。  今の防衛庁長官の答弁では、そういう法案化または法案提出を前提としないという、その今までの歯どめというものにこだわるのではなくて、むしろもうそれを取っ払って、いつになるかわからないけれども法案提出に向けて、今までの研究から一歩前に進んで、もう一回ほったらかしになっているものを整理しないといけないのだ、そういう答弁だというようにお聞きしたのですけれども、これは全然違うのですよ。  昭和五十三年の、法案の提出とは関係ないのだ、いつまでもそういうふうに言い張るのか、それとも、長官の今の答弁だと、法案提出を前提としないということにはこだわらないのだ、ということは、一歩踏み込むということだというように私はとらえるのですけれども、もう一度長官、答弁をお願いしたいと思います。
  141. 久間章生

    久間国務大臣 もし正確に言うとしますと、官房長官が先般記者会見で述べておられますように、今までの問題が、立法の準備ではないという前提が置かれていること等、問題点の整理が目的であり、そういうふうに置かれていること等を踏まえれば、直ちに法整備を進められるものではなく、その取り扱いを慎重に検討する必要がある、また、問題点の整理を目的としている現存の有事法制研究の成果から法制を準備、整理する場合には種々の準備が必要であり、直ちに法整備ができるというものではないということであるというふうに言っておられますけれども、私もこのとおりだと思います。  しかしながら、さりとて、政府としては、いろいろな国民世論の動向その他を踏まえながら、もし有事になったときに法の欠陥があっていいのかどうか、そういうことを指摘されますと、それはあったらいけない、やはり平時においてこそそういうことの議論は大いにして、どういう問題があるか整理しなければならないと思っておりますが、これを立法化するかどうかは、高度の政治判断を要するわけでございますから、それはまた別の問題だろうと思います。  しかしながら、絶えず幅広く検討はしていかなければならないのじゃないか、そうは思っております。
  142. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 私は、反対する立場から質問しているのではなくて、我々は旧新進党時代から、確かに今回の周辺事態に対処するための法整備というのも必要であるけれども、もっと日本有事のための法制というのが先行すべきであるという主張を一貫して我々言っていたわけで、そういう観点から先ほど来質問しているつもりなのです。  そういう点から、このことばかりやっていたら質問時間が終わるのでやりませんが、長官自身は、今回、周辺事態法並びに自衛隊法の改正とかACSAの改定とかありますが、それとは別に、近い将来、日本有事に対応するための法整備というのは日本のこれからの将来を考えたら必要である、そういうようにお考えですか。
  143. 久間章生

    久間国務大臣 私は、我が国がもし有事になったときに、先ほども例として挙げましたけれども、例えば、自衛隊は施設大隊等がございまして、橘をかけたりなんかすることができます。しかしながら、壊れている橋をかけようとするならば、現在の法律制度では道路管理者の許可をとってかけなければならないわけでございますけれども、そういう場合にそういういとまがないわけでございます。  そういうときの法律なんかはどうするのかというのは、言うなれば法の欠陥ではないか。そういうような穴があいている部分については、日ごろから平時において検討をして、議論をして、ちゃんと手当てをするという基本的な姿勢は必要ではないか、そういうふうに思っておるわけでございます。  しかしながら、有事法制といいますと、そういう問題ではなくて、すぐ何かしら国民権利を奪ってあるいは義務を課してしまうというような観点から、しかも、今にも有事がありそうなことがすぐ言われますので、そういう雰囲気の中ではなかなか議論がしにくいということで、従来の研究も、法律化を前提としないというような条件をかげながら研究がされてきたのだと思うのです。そして、研究の成果もあるわけでございます。  しかしながら、そういうところはもう少し幅広く、フランクに議論をすべきではないだろうかということを言っているわけでございまして、今直ちに法制を、今度の周辺事態が終わったらすぐそっちに向かって走るんだというふうにとられるとすれば、それは私の本意はそういうことではない。やはり慎重にそれは対処しなければならない、そういうふうには思っております。  さりとて、そういう議論を、憲法改正の論議もそうでございますけれども政府としてはこの議論については大いにすべきだ、そういう議論はかねてからやっているのと同じで、こういう法律についてもやはり議論はすべきではないか、そういうふうに私も思っているわけでございます。
  144. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 私も長官と同様で、やはり有事のものを、平時のときに、さめた頭で、また切迫した状況でないときにどれだけ進められるか、そういう議論ができるかということが非常に大事になってくると思うのですね。  そこで、今言われたような内容、これは研究から一歩進んだ検討なのかもわかりませんが、検討あるいは整理、そういうものの結果をぜひこの安全保障委員会なり国会の場に、今までの第二分類までと同様、またきちっと報告あるいは公表していただいて、我々国会議員の議論の一助としていただきたいなと思うのですが、そのあたりについて、防衛庁長官、今すぐ答えられないかもわかりませんが、どのように考えておられるか、お願いいたします。
  145. 久間章生

    久間国務大臣 こういう問題につきましても検討しながら、その過程もまたオープンにしていかなければ、透明性を持っていくといいますか、そういうことがかえっていいことだと思いますので、もし検討を始めましたらそういうことをしたいと思いますけれども、従来の整理をしているものについてこれから検討するにしても、とにかくまだ、なかなかその緒についていないというような状況でございます。  いま一方では、もっと早くガイドラインに合わせて法制化もせよというぐらいの話がありますので、なかなかそうはすぐにはまいらない、まだまだやることがたくさんございますということで勘弁を願っておるというような状況でございます。
  146. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 ぜひ透明性と、さらに積極的な議論の材料の提供というものをお願いしたいな、そういうふうに思うわけですが、これをやっているとガイドラインに入れないのでここまでにして、また次回やりたいと思うのです。  それで、ガイドライン法整備の大要というものを事前にいただいていろいろ拝見させていただいたのですが、各論に入ります前に、今回の法整備の取りまとめ方につきまして、まずお尋ねをしたいのです。  自衛隊のやる活動分野としては大体四分野、今回もともと検討されていた段階であったと思うのですけれども、それは一つは後方地域支援活動、あと捜索・救難、先ほど来質問がありましたけれども、いわゆる臨検、在外邦人の救出。この四分野についての法整備をどうするのかということで、結局、今の対応までの段階を拝見いたしますと、国内法としては二本立て、それにACSAの改定ということで、合計でいったら三本立てになるのかもわかりません。  私がたしか三月十七日の予算委員会の一般質疑防衛庁長官に御質問をしましたときに、三月五日にそれぞれ外務省、防衛庁、内閣安全保障危機管理室の皆さんが総理のところに中間報告に行ったときには、どういうまとめ方をするんだということについて了承があったのかということについては、そのとき私が提示したのは、二通り考え方があるけれどもどちらでいくんだと言ったときに、いや、これから、それについてもいろいろな意見があるので、その段階では決まっておりませんと。これは三月十七日の段階でもそういう答弁だったのですね。  十七日から、今度四月七日に総理のところに報告に付されたときには、今大要という形でいただいている、国内法としては二本立てにするという取りまとめ方をされているのですが、一体どういう議論を経て、どういう理由から、結局、周辺事態の新法の中に後方地域支援、捜索・救難、いわゆる臨検を入れて、在外邦人救出については自衛隊法改正でいきますよというように二本立てに分けられたのか、まず、法整備の取りまとめ方について御答弁をいただきたいと思います。
  147. 久間章生

    久間国務大臣 議論がいろいろと進んでおりますときに、多分こうなるだろうなと思っておっても、また変わることがあるものですから、あの時点ではなかなかお答えしにくかったわけでございます。  それは一つには、この捜索・救難のうち、いわゆる戦闘行為によって遭難した戦闘員を含む救難の場合、現在の自衛隊法の八十三条では読めるのかどうか、そういう議論がございました。  現在の八十三条は災害を中心とした捜索・救難でございますから、戦闘行為によって遭難したそれを捜索・救難する場合、八十三条でそれを全部読むというのは、次々起きてくるのを読むというのは難しいのではないか。それは自衛隊法ではちょっと読みにくい。  そうしますと、そういう事態が起きるのは周辺事態で起きるわけですから、周辺事態で起きた場合についてはその中に取り込む方がいいのではないか。そして周辺事態については、いろいろと手続あるいはまた基本計画閣議決定するとかそういう手続等も出てくるから、それはどっちみち法律が要るであろう。  それと、先ほどもちょっと御答弁したわけでございますけれども、いわゆる臨検、船舶検査につきましても、国連決議に基づくものでございますから、そういうことでやろうとしておりましたが、これも日米の防衛協力ということになりますと、周辺事態の中で起きた船舶の検査というふうにぐっと絞ることによって、それ以外のことではなくて、とりあえずそれだけをやろう、初めてのことでもございますから、そういうことにしますと、周辺事態におけるいろいろな諸手続とその中で活動する分野については、その法律の中に書けるのではないかということで、そっちの方の法律に一くくりができる。  そうすると、在外邦人救出等は、従来でも百条の八がございますけれども、百条の八は飛行機しか書いていないけれども、船の場合があり得るのではないか。それは何も周辺事態に限らずに、在外邦人の救出に、輸送に出かけるということは、船の場合がある。それは周辺事態とは関係がない形で改正しておく必要があるのではないか。だから、それは自衛隊法の改正でやればいいのではないかということで、そういうような考え方から整理して分けました。  そして、ACSAについては、また外務省の方で検討していただく、そういうような形の中で整理が整ってきたということでございます。
  148. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 一つ一つ今の答弁に対してお聞きしたいのですけれども一つ一つ詰められてそういう整理をされたという経過はよくわかったのですが、それではまず、後で聞こうと思っておったのですけれども自衛隊法八十三条では捜索・救難は読めないんだと、いっそういう判断をされたのかということなんですよ。  というのは、例えば、昨年の中間まとめが出た後に、各委員会でガイドラインの中間報告に対していろいろな質疑がありました。きょう紹介するのはその中の一つですけれども、参議院の内閣委員会で、六月十六日に当時の秋山防衛局長が、今事務次官をされていますが、答弁をされています。そのときに、捜索・救難の質問を参議院の清水澄子先生がされているのですが、それに対して、大臣の答弁を補完する形で次のように言われている。   先ほどから大臣が答弁しておりますのは、自衛隊法第八十三条に言うところの捜索・救難活動でございますけれども、これは八十三条で捜索・救難活動ができるんだという前提で答弁されているのです。  同条の「天災地変その他の災害」とは、通常、暴風雨、豪雨、地震等の自然災害、火災、爆発、船舶の沈没、航空機の墜落と解されているわけでございまして、同条に基づく自衛隊の部隊等の派遣は一種の警察活動としての災害派遣と考えられ、人命の保護といった観点からしましても、 次ですね、  船舶の沈没、航空機の墜落等に際しての捜索・救難について紛争時におけるものが一律に排除されるとも言えないと考えることを述べているものでございます。 要するに、当時、政府の答弁として、紛争時におけるものもこの八十三条というのは一律に排除していないんだ、逆に言ったら含まれるんだ、だから自衛隊法の八十三条に基づいて、災害派遣の条項ですけれども、これに基づいて、紛争時のそういう飛行機の墜落であるとか、また船舶の沈没とか、そういうものによっておぼれたりしている人を救助できるんだ、そういうようにこのときに答弁されているのですね。  だから、要するにこの答弁というのはその時点で間違っておったのですか。
  149. 久間章生

    久間国務大臣 それは決して間違っているわけではございませんで、現在でも、あの法律で、あの条項で、たまたまそういうふうに墜落して遭難した人を捜索して救難するということは、八十三条でできると思います。  しかしながら、こういうものが周辺事態で頻発するようなときに、その法律のそれを根拠にしてやるということについてはかなり無理があるのじゃないか、読めないこともないけれども、もっとはっきりと、国会の御審議を願って、こういう形で周辺事態における活動をしますよと、その根拠法をきちっと書くことの方がより適切ではないか、そういうような指摘等が立法の作業の過程において指摘されまして、それで、やはりこれはきちっと法律に別建てで書くべきだ、書くとなると、周辺事態のいろいろな関連法の方で措置するのが適切ではないか、そういう形で今整理が進められているわけでございます。
  150. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今の答弁ではちょっとわからない。周辺事態で頻発するときにはこの八十三条では読めないということですか。今の防衛庁長官の答弁だとそういうようにしか受け取れないのですけれども
  151. 太田洋次

    ○太田(洋)政府委員 お答え申し上げます。  今先生御指摘のように、秋山防衛局長が答えましたように、「船舶の沈没、航空機の墜落等に際しての捜索・救難について紛争時におけるものが一律に排除されるとも言えないと考える」というふうに答えております。  つまり、ここでは読めないことはないけれども、これが積極的な根拠になるかといいますと、今大臣が指摘しましたのが一つの例でございますけれども、そういう場合に全部カバーできるかどうかについてはいろいろな意見があり得るということでございます。  今回やろうとしておりますのは、我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼす事態である周辺事態におきまして、平和と安全の回復のための活動等に参加している各国は、我が国周辺でございますので、いろいろな期待をすると思います。  そこで、これを行うことによりまして我が国の平和と安全の確保に資する、そういう考え方からしまして、戦闘に携わった遭難者を救助することを目的として行うとの整理を新たにしたいということでございまして、このような捜索・救難活動は、天災地変その他の災害に際して人命または財産の保護のために行われる自衛隊法八十三条に基づく災害派遣とは、趣旨、目的を異にするのでありますから、そういう意味で新たに明示的に根拠を設けようという考え方でございます。
  152. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 私は、これは昨年のものをたまたま引っ張っただけですけれども、その前にも、読めないわけではないというような後ろめたいものを持った答弁じゃなくて、もっとすきっと、大丈夫なんだという答弁をされているのですよ。  例えば、先ほど質問されておりましたが、赤松正雄議員の平成八年六月十四日の安全保障委員会での質問に対して、同じく、多分秋山さんはこのとき防衛局長をされていたと思うのですが、確信を持って次のように言われているのですね。  自衛隊法第八十三条の災害派遣の要件に該当するような場合には、当然遭難した米兵の捜索、救難を行うことは可能でございますし、憲法上も問題がないと思うわけでございます。また、それが領海内であろうと公海であろうと、その条件が整っておれば問題ないと思うわけでございます。 そういうふうに一貫して、今までの防衛庁の答弁というのは、要するに八十三条で全部やれるんだ、そういう答弁だったんじゃないですか。  だから、今回、逆に言えば、周辺事態の新法にわざわざ入れなくても、今までもそうだったんだから、自衛隊法の若干の改正の余地はあるかもわからないけれども、ある意味でいったら、わざわざ新法に入れてそういう規定をする必要性というのはどこにもなかったんじゃないですか。もう一度、わかるように答弁をいただきたいと思います。
  153. 久間章生

    久間国務大臣 災害としてとらえた場合、飛行機が墜落した、それはもちろん災害になるわけでございますが、戦闘状態で墜落した飛行機も、それを救助するのは、それはまた災害として読めるだろうと思います。今でも私は読めると思います。  しかしながら、そういう状態が、頻発すると言ったら語弊がございますけれども、そういうことが頻発することを想定しながら、その目的で捜索・救難に行くときに、災害の目的で捜索・救難するというふうに読むのはやはり無理じゃないかというようなことを立法の段階で法制局も含めまして議論をしておりまして、やはりこれはきちっと法律をつくった方がいい、そういうようなことになりましたので、私どもはそれはすっきりさせたいということで、立法作業でそういうふうな方向に向かって今検討しているわけでございます。
  154. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 私はすっきり納得していないのですが、それはいいとして、そうすると、二つの活動、捜索・救難という活動といわゆる臨検と分けて、それぞれあると思うのですが、例えば捜索・救難一つとっても、これは人道的な活動として周辺事態以外でも十分自衛隊が出ていって行い得る、そういう事態というのがこれからもあり得ると思うのですね。そのときには、自衛隊の活動というのはどういう法的根拠に基づいてされるのですか、そのときは八十三条じゃないのですか。
  155. 久間章生

    久間国務大臣 八十三条及びとにかく自衛隊法で規定されている各条項に従ってしか自衛隊行動できないわけでございますから、そういう枠内で行動するということでございます。
  156. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 要するに、こういうことですか、周辺事態のときの捜索・救難というのは新法に従って動きますよ、しかし、周辺事態以外でそういう捜索・救難をしないといけない事態のときには自衛隊の活動というのは自衛隊法八十三条に基づいて動きますよ、それぞれ違いますよ、そういう答弁だというように受けとめてよろしいですか。
  157. 久間章生

    久間国務大臣 捜索・救難一般というのじゃなくて、周辺事態で戦闘行為で遭難した、その者を救うための捜索・救難活動は新しい法律にきちっと盛り込もうということでございまして、そういう戦闘行為以外の、要するに周辺事態が起きたとき以外の捜索・救難というのは八十三条でやれるわけでございます。  要するに、戦闘行為で墜落した遭難者を災害目的のことで読み切っていけるのかという疑問が出されまして、それについてもはっきりさせようということでその項目を起こしたわけでございますから、それ以外のものについては現行法で読める分についてはやれるわけでございますから、そこのところをぜひ御理解いただきたいと思うのです。
  158. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今、戦闘行為で、そういう救助を求めている人間ということなのですけれども、ちょりとそれに関連して、新法の考え方自体を聞きたいのです。  そうすると、これは、そういう意味でいうと極めて対米協力的な意味合いが強いのかなと思うのですが、そうではなくて、例えばアメリカとの交戦国、相手兵士に対してもこの捜索・救難の対象となる、どこまでも人道的な活動の側面が強いのだというようにとらえていいのかどうか。
  159. 久間章生

    久間国務大臣 これは、アメリカだけではなくて、アメリカの相手が、もし交戦があって墜落したとした場合、そういう人たちも捜索・救難の対象にはなり得るということでございます。
  160. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 捜索・救難なので、また法案ができたときに、今の議事録を振り返ってもう一回きちっと質問したいのですが、今回の大要の中だけでも、一つのポイントとして、今まで新ガイドラインの表現では日本領域と日本の周囲の海域という表現にとどまっていたのが、今回の大要でガイドラインになかった表現がさらに加わって、捜索・救難活動に限っては他国の領海内というところまでぐっと区域を広げているのですね。  なぜこの他国の領海内までの活動を含めなければならないのか、答弁をいただきたいと思います。
  161. 久間章生

    久間国務大臣 それは、捜索・救難をしようと思ったときに、潮流で流されて他国の領域に入ってしまうようなケースがあったときに、それは知らぬということで引き返すかということになりますと、そうはいかぬだろう。それは他国の了解を求めて、そこに入っていい、そこで救助していいという了解を得られたら、それを救うことは人道上は必要ではないか。  そういうようなことで、そういう了解を得ることができた場合にはそういう領海に入るということも視野に入れて、今立法作業を進めておるわけでございます。
  162. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 それは、確かに捜索・救難活動をやる方の立場からすれば、そのとおりの部分があるかもわかりませんけれども、しかし、その他国というのがどういう他国であるかによって大分状況が、日本にとって非常に危険になる場合もあるのですね。例えば、いわゆる領海を持つ他国が仮に紛争と密接にかかわっていれば、そのもう一つの他国、交戦国とか関係している国から見ると、日本の活動が敵対的な行動であるというふうに見られるおそれも十分あるわけですね。  要するに、何が言いたいのかというと、例えば他国の領域に入っていった、そういう救助しないといけない対象者がいる、自衛隊の艦船がそこに入ることによってその艦船自体攻撃される危険性というのが、公海でやっている作業よりもさらに一段と高まるのではないのか、そういうおそれがあるのではないのかと思うのですけれども防衛庁長官、それはどういうように見ておるのか。
  163. 久間章生

    久間国務大臣 そういうふうなことはないと思います。といいますのは、戦闘区域一線を画する区域で捜索・救難をするという大前提があるわけでございますから、その大前提に立つならばそういうことはない。  むしろそういうふうな御心配のないようにしなければならないわけでございますから、戦闘区域一線を画する区域を先にはっきり決めておりまして、それで、今言うような事態が起きたときにも、それは一応他国の領海かもしれないけれども了解を得て救助する、それは人道上にかなうことであるというふうな考え方整理をしておるわけでございます。
  164. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今の、戦闘区域一線を画すのはわかった上で聞いているのですよ。戦闘区域一線を画するというのは、どこまでもこれは日本の基準なのですよ。  要するに、日本日本側の基準で戦闘区域一線を画していると思っても、それは、他国とかそれに関係している国にとったら、そういう基準は全然通用しないのではないですか。最後にそれだけちょっと長官にお尋ねしたいと思います。
  165. 久間章生

    久間国務大臣 それは一線を画することはできるのではないかと思うのです。他国がどう思うかというふうに言われますと、ちょっと言葉が詰まりますけれども、要するに、戦闘区域一線を画す。なぜ画すかというと、戦闘に巻き込まれないために。  巻き込まれたら——私たちの場合は要するに武力行使しないということでやっておるわけでございますから、巻き込まれないような地域を選んで行動をすることになっておるわけでございます。だから、相手から見ても、そこは戦闘区域でないような地域でしか活動ができない。非常に限られてくるのは事実でございます。
  166. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 引き続きまた、長官議論させていただきたいと思います。  以上で質問を終わります。ありがとうございました。
  167. 塩田晋

    塩田委員長 中路雅弘君。
  168. 中路雅弘

    ○中路委員 新ガイドラインを実施するための新しい法律、それからACSA協定の改定案づくりの問題が、橋本総理の了解を得て、政府・与党で協議がやられていますけれども、最初にこのガイドライン関連法案について、もう法案ができているだろうと思いますが、二十八日にも閣議決定し、国会に提出する方針だと新聞で報道されていますが、大体この見通しはどうですか。
  169. 久間章生

    久間国務大臣 今関係省庁で一生懸命努力をいたしておりますけれども、法律をいざつくるとなりますと、細かい点でなかなか難しい点もございまして、果たして二十八日中という目標がうまく達成できるかどうか、まだ何とも言えません。
  170. 中路雅弘

    ○中路委員 きょうは、船舶検査の問題を質問する前に、もう一問。先ほどから答弁、質問もありましたけれども、十四日の記者会見での防衛庁長官の有事法制についての発言であります。  今まで、研究については法制化しないという縛りがあったわけですけれども、先ほどの答弁を聞いていましても、慎重に検討、官房長官もそうですが、あるいは一直線でないとか、直ちに法制化できるものでないというような答弁をされていますけれども、これまで法制化をしない、これが前提の研究ですが、この縛りは取っ払われるわけですか。
  171. 久間章生

    久間国務大臣 今までも法制化しないと言っているわけではございませんで、法制化を前提とするものではないということで、ちょっとそのニュアンスが違うのではないかと思います。しないということを決めているわけではなくて、法制化を前提とせずに、いろいろな整理をして研究をしてきたということでございます。  これから先、その研究成果もあるわけでございますから、これを私たちも大事にしながら、しかし、その後、五十三年からいきますと二十年くらいたっているわけでございますから、その辺のこともございますし、また、そういうことを前提としないと言いましたときの当時の背景、そういうことについても十分配慮しなければならない。  いろいろな問題を検討しなければなりませんが、前提としないというふうに決めてしまって取りかかると、これはまた従来と同じことでございますから、そうではなくて、法制化するとした場合はどんな問題があるか、そういうのも含めて幅広く検討をしなければならないだろう、そういうふうに思っているところでございます。
  172. 中路雅弘

    ○中路委員 もう一度お聞きしますけれども、そうしますと、法整備、法制化を前提としないというこれまでの縛りは取っ払われるわけですね、いずれにしても。
  173. 久間章生

    久間国務大臣 法制化しないという前提もひっくるめて、とにかくその前提があることについても検討をしょう。要するに、幅広く、忌憚なく意見の交換をみんなでやりながら、この問題については検討していこうということでございます。
  174. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 まさに今長官から御答弁したところでございますけれども、報道にございますような、立法化を前提とした作業に着手するとか、そういうことではないということでございます。
  175. 中路雅弘

    ○中路委員 長官発言は、現時点での問題点を含めて研究をするということを言っておられます。今もありましたけれども、一直線にとかあるいは慎重にやるとか、一直線ではないとか言っておられますけれども、私が端的にお聞きしているのは、今までこの法整備、法制化を前提にしないというのが、幅広くということで、この問題はその中で取っ払われているわけでしょう。もう一度お聞きします。
  176. 久間章生

    久間国務大臣 従来も法制化しないという前提でやっているわけじゃございません。法制化するという前提ではないということでございますから。  従来の問題も、委員が御指摘になるように、法制化しないという前提でその検討をしてきたのだと言われますが、そうじゃないのです。法制化を前提としないということで作業をやってきたということでございますから、しないというふうに今まで決めておったのだ、今度はそれを取っ払うのだというような、そういうとり方じゃないのじゃないかと思うのですけれども
  177. 中路雅弘

    ○中路委員 広くという中に私が指摘している問題も入っているかと思います。いずれにしても、今の憲法体系の中で、この有事法制というのは入る余地がないと思いますし、私はこうした研究は中止をすることを最初に要求をしておきます。  きょうは船舶検査活動の問題でお聞きするわけですが、その前に、新ガイドラインの中で、この船舶検査活動は、国際の平和と安定の維持を目的とする経済制裁の実効性を確保するための活動の中に、国際連合安全保障理事会決議に基づく船舶の検査というのがありますね。これは安保理事会決議となっていますけれども、安保理事会の決議がなければやらないわけですか。決議がなくてもやる場合もあるのですか。
  178. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 ガイドラインで前提にしております船舶検査は、安保理の決議を前提にしているわけでございます。
  179. 中路雅弘

    ○中路委員 もう一度、安保理事会の決議がなければやらないということですか、それ以外はないということですか。
  180. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 あのガイドラインで言います船舶検査は、そういったものを対象にしていないということでございます。
  181. 中路雅弘

    ○中路委員 この問題は、法律をつくって規定される問題ですから、明確にしておいていただきたいというふうに思います。  この船舶検査活動を行う海域全体はだれが決めるのか。安保理事会が決めるのか、それとも日本、アメリカ、それぞれがこの安保理事会の要請等を受けて決めるのか、あるいは過去の実績から見て、アメリカが中心になって参加国で決めるのか。また、そういう海域はどういう形で全世界に公にされるのか、まとめてちょっと。
  182. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 実際の船舶活動をどういう形でやるかというのは、そのときの決議の内容、それからそれを踏まえた国際間でのいろいろな協議というものを踏まえて決まってくると思います。  いずれにいたしましても、我が国が実施いたします船舶検査活動につきましては、他国の活動海域とは区別した海域を指定して実施していく、そういうことになろうかと思います。
  183. 中路雅弘

    ○中路委員 この中にもありますけれども、他国の活動海域とは区別された海域を指定して実施をするということになっていますが、これはだれと協議して決めるのですか。
  184. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 先ほど申しましたように、国連安保理決議により船舶検査活動が行われるわけでございますけれども、その決議を踏まえ、関係国間で調整、協議をして、そういう中で、こういった海域を決めていくということになろうかと思います。
  185. 中路雅弘

    ○中路委員 自衛隊が船舶検査活動を行う海域ですが、これは日本領海はともかく、当然公海、経済制裁の対象となる国の領海にも及ぶわけですか。
  186. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 まさに国連安保理決議の内容等によると思いますけれども、これまでの例からいたしますと、公海で行われるということが中心でございます。
  187. 中路雅弘

    ○中路委員 中心とおっしゃっていますけれども、私の聞いているもう一つは、経済制裁の対象となる国の領海にも及ぶのかという問題ですが。
  188. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 基本的には、そういうことは想定されないと思います。
  189. 中路雅弘

    ○中路委員 船舶検査活動で、新ガイドラインによりますと、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態、いわゆる周辺事態における日米の防衛協力一つとして行われるわけですが、船舶検査活動のところは、国際の平和と安定の維持を目的とする経済制裁の実効性を確保するための活動として規定されていますが、ここで言う国際の平和と安定の維持というのと周辺事態とは同じものなのですか、それとも経済制裁すべてが我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態であるという認識なのですか。
  190. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 今先生おっしゃいましたように、あのガイドラインの分類の中で、国際の平和と安定の維持を目的とする経済制裁の実効性を確保するための活動という機能、分野の中で、その協力項目として、国連安保理決議に基づいて行われる船舶の検査というのが上がっているわけでございます。  国連の安保理決議に基づく国連のそういった活動の一環でございますから、まさにそれは国際の平和と安定の維持を目的としていることではありますが、また、それが必要とされる事態我が国の平和と安全に重要な影響を与えるということで、周辺事態に該当する場合にこれが行われるということでございます。
  191. 中路雅弘

    ○中路委員 この法整備の大要を見ますと、基本計画閣議決定するとしていますけれども、船舶検査活動を行うこととなる要件というのはどういう要件ですか。  もう一つ、続いていきますが、例えば周辺事態における戦闘員の捜索救助活動を必要としていない場合も想定されるわけですが、こういう場合は、船舶検査活動が必要ならば周辺事態として決定して行うことになりますか。
  192. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 まさに、この周辺事態に際して船舶検査活動が必要であるということになりますれば、その点につきまして、基本計画に盛り込んでいくということになろうかと思います。
  193. 中路雅弘

    ○中路委員 例えば周辺で何らかの事態が発生した場合、アメリカの方は船舶検査活動はやらないが、日本はその必要があると判断した場合に、日本だけで船舶検査活動をやることはあるのですか。
  194. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 現実問題として、そういう事態がどういう事態かというのはなかなか想定しがたいわけでございますけれども、事柄の性格からいたしますと、このガイドライン法整備におきましても、日米両国政府がおのおの主体的に行う活動における協力というところで、それぞれの立場で行い得る活動ということでこの船舶検査活動が挙がっているわけでございますから、理屈の問題としてはそういったことはあろうかと思いますけれども、ちょっと現実の事態としてなかなか想定しがたいのではないかな、こういうふうに思います。
  195. 中路雅弘

    ○中路委員 一緒にしかやらないということじゃないですね。  船舶検査について、当初、自衛隊法の八十二条の海上警備行動で行い得るとしていたわけですけれども、今回の新しい立法の中で船舶検査活動を規定されるようになったのですね。新ガイドラインで規定されている船舶検査活動と海上警備行動とはどこがどういうふうに違うのですか。
  196. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 先生今御言及されました自衛隊法八十二条によります海上警備行動でございますけれども、これは、海上における人命もしくは財産の保護または治安の維持のため海上警備行動といった行動をとることができる、こういう規定になっているわけでございます。  一方、今お話のございますこの船舶検査活動は、国連安保理決議に基づく経済制裁の実効性を確保するための公海上の船舶の検査等でございまして、この趣旨、目的からいって、やはり八十二条で対応するのは適切ではないのではないか、こんなふうに考え、今回新たな法的根拠を設けるように御提案をしようとしているわけでございます。
  197. 中路雅弘

    ○中路委員 船舶検査活動の具体的な措置として、先ほど防衛庁長官も挙げられましたが、八項目ですか、八つの措置を明らかにされています。一項目ずつ聞きたいわけですが、時間が非常に限られていますので、この中で二、三、お聞きしたいと思います。  いわゆる臨検ですけれども質問だけで貨物や行き先の確認が得られない場合は検査を行うことになるわけですが、検査に応じた場合、立ち入りをして書類検査や積み荷の確認をやるわけですが、この際には、当然検査担当の士官や幹部が乗り込むわけですね。一般に、この乗り込んでいきますクルーは小火器を携行するわけですか。
  198. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 今お尋ねになりました検査に応じた船舶に対する立ち入りということでございますけれども、立ち入りをして書類検査をし、あるいは積み荷の検査等をするわけでございますけれども、その際に立ち入る隊員につきましては、これは検査に応じた船舶でございますから、基本的には要員に危害が加えられるということは想定されないわけでございます。  ただ、万一の事態が想定されるわけでございますので、そういう不測の事態に対応し得るような最小限の措置は必要であろうということで、必要な武器の携行、使用等が必要であろう、こういうふうに思っております。
  199. 中路雅弘

    ○中路委員 必要な武器の携行が必要だというお話ですが、例えば応じても、乗船後、混乱や抵抗も予想される場合もあると思うのですね。そういう場合に、小火器が必要な場合はだれが判断して携行を指示をするのですか。
  200. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 隊員が乗り込んでいって検査をするときに、その身を守るために使用するということでございますから、基本的には乗り込んでいった隊員が判断をするということになろうかと思います。
  201. 中路雅弘

    ○中路委員 個々の隊員の判断ですか。  乗り込んでいった中で、使用する際は、だれが指示をして携行した火器を使用するのですか。
  202. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 形態が、大勢での部隊で何か活動しているというよりも、かなり人数的にも限られた形でこの検査活動をするということになりますから、基本的にはそれぞれの隊員が判断するということになると思います。  しかし、自衛隊の業務でございますから、これ全体につきまして上官の命に服するということでございますから、そういう全般の考え方は生きておりますけれども、基本的にはそれぞれの隊員が判断をするということになろうかと思います。
  203. 中路雅弘

    ○中路委員 同意が得られても抵抗が予想されるわけですが、その場合に、いわゆる強行乗船という方法もとられるわけですか。立ち入りという中にはこういういわゆるテークダウン、強行乗船というやり方も含まれるのかということ。  それからもう一点ですが、乗船して貨物等をすぐ検査できるとは限らないわけですね。夜間や天候によって直ちに臨検ができない場合もある。こういう場合は相手船舶をとめたり、しかるべき場所や港湾に引っ張っていったりして、そこで検査をする、こういうこともあるのですか。
  204. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 船舶に立入検査をする、その前提は、検査に応じた船舶に対する立ち入りということでございます。  それから、例えば当該海域での波浪がひどいとか、いろいろな条件もございましょうし、その現場ではなくて、あるいは日本の港湾等での確認という方がより適切だというような状況が仮にあるとすれば、それに応じた対応のあり方もあろうか、こういうふうに思います。
  205. 中路雅弘

    ○中路委員 停船または進路変更に応じない船舶に対する説得というのがありますが、この具体的な措置の中では、検査実施船舶の存在を示すための信号弾、照明弾の使用、遠方における空砲の使用、それからもう一つ、説得を行うための接近、追尾、伴走、進路前方での待機というのが書かれています。防衛庁の話ですと、さっき長官も八つの措置を組み合わせて有効に対処するというわけですが、率直に言ってこれでできるのかと思います。  それで、防衛庁は無視や逃亡というのは極めて例外的な場合だと言っておられますが、例外的な事態こそが問題なんですね、臨検の場合に。こういう措置に相手が納得しないで応じない場合に逃亡やそういう問題が出てきますけれども、その点については長官はどうされますか。
  206. 久間章生

    久間国務大臣 今自衛隊でできることは、そこに掲げている八項目だろうというふうに思っております。だから、それで何とか効果を上げたいというふうに思っているところでございます。
  207. 中路雅弘

    ○中路委員 効果を上げられない場合、どうするのですか。
  208. 久間章生

    久間国務大臣 上げるように努力いたしますけれども、それ以上のことはできないということでございます。
  209. 中路雅弘

    ○中路委員 この八項目以外はできないということですね。  時間ですので、もう一点だけ。  大要では、先ほど答弁のように、生命等の防護をするための必要最小限の武器使用の問題の規定は、今度の法案の中にもはっきりと入れられるわけですか。  もう一点、この生命の防護だけではなくて、今指摘しましたような事態が起きた場合、船内で説得中に不測の事態が起きた場合の対応に火器の使用については含まれるのですか。身体の防護だけではなくて、不測の事態が起きた場合の対応に武器の使用というのは含まれるわけですか。
  210. 久間章生

    久間国務大臣 不測の事態と言われましても、どういう事態か、ちょっとわかりませんので、直ちに答弁できないわけでございますけれども、やはり身体に危害が加えられた場合にはそれ相応に対応できるというようなことは言えますけれども、抽象的に、例えば不測の事態というのが相手が逃亡したときに、それを例えば武器を使って押さえるかということになりますと、それは犯罪を犯しているわけではございませんので、そこまではできないわけでございます。
  211. 中路雅弘

    ○中路委員 時間が超過しましたので、一応これで終わらせていただきます。
  212. 塩田晋

    塩田委員長 辻元清美君。
  213. 辻元清美

    辻元委員 社会民主党の辻元清美です。  私は、新ガイドラインにおけるいわゆる周辺事態の定義などについて、きょうも御質問したいと思います。  この周辺事態についてということで何回も御答弁いただいておりますけれども周辺事態とは、我が国周辺地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態である、これは地理的概念ではなく事態性質に着目した概念である、この定義で政府の方はよろしいのでしょうか。
  214. 久間章生

    久間国務大臣 そのとおりでございます。
  215. 辻元清美

    辻元委員 前回の私の質問に引き続き、関連して質問したいと思います。  前回、この周辺事態という言葉をめぐりまして、私は二つのことを申し上げました。  一つ目は、一九九五年十一月二十八日に閣議決定された防衛大綱の中の「防衛力の役割」という中に、周辺事態という言葉が出てまいります。この言葉と今回の新ガイドラインでうたわれている周辺事態の定義ほ同じなのかどうかということを前回議論させていただきました。  その中で、久間防衛庁長官に対しまして、自衛隊のことについていろいろやりとりがあったのですけれども自衛隊のみについて言うならばこの防衛大綱の周辺事態の定義と今度のガイドライン周辺事態の定義は同じであるということですねと私が質問いたしました。それに対しまして、久間防衛庁長官は、自衛隊について言うならば同じような状況を想定しながら書かれた文章であろうというふうにお答えなさっております。  そして、さらに私の方が、それは今の御答弁ですと、同じ事態を想定しているということですねと、防衛大綱と今度の新ガイドライン周辺事態で。この後に、今首を振っていらっしゃいますけれどもと。定義は同じですねと私が申し上げましたら、そうだそうだと深くうなずいていただいたのを皆さんも覚えていらっしゃるかと思います。  もう一度確認したいのですけれども、この周辺事態、防衛大綱と新ガイドラインで言われる周辺事態というのは同じであるということでよろしいでしょうか。
  216. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 あのときの御質問に対応させていただきましたけれども、あのときも、基本的には同じである、こういうふうに申し上げたところでございます。  ただ、長官もお触れになったわけでございますけれども、「日米防衛協力のための指針」の方はまさにアメリカと日本との間での協議を経てまとめられた文書でございますし、それから防衛大綱の方は我が国としてまとめた文書である、こういう違いはございます。ただ、いずれにしましても、基本的には同じ概念であろう、かように思います。
  217. 辻元清美

    辻元委員 そうしますと、これは、防衛大綱の方は一九九五年に閣議決定されたものでありますので、我が国での防衛大綱に言われる周辺事態地理的概念ではないということは、一九九五年のこの時点からそういう解釈になっているということですか。
  218. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 基本的にはそういうことだと思います。
  219. 辻元清美

    辻元委員 そうしますと、この一九九五年以降、周辺事態という言葉は、日本では、特に「防衛力の役割」という中では地理的概念ではないというような定義で使われてきたというふうに今御答弁いただいたかと思います。  さて、そうしますと、今度は自衛隊の任務ということを伺いたいと思うのですけれども自衛隊の任務につきましては、自衛隊法二条で「自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、」というふうになっております。ここの自衛隊の任務ということと今の周辺事態に対する自衛隊の役割というのは私は矛盾しているのではないかと考えるのですが、いかがでしょうか。
  220. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 今先生御引用されましたように、自衛隊の任務につきましては、自衛隊法三条で「自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当るものとする。」こういうふうにございます。  一方、今先生が問題にしておられます防衛大綱の「防衛力の役割」のところでございますが、ここに大きく分けて、「我が国の防衛」というのと、今言われました我が国周辺地域云々も含まれております「大規模災害等各種の事態への対応」というのと、それからさらに、(3)といたしまして「より安定した安全保障環境の構築への貢献」、こういうふうに三つ大きく防衛力の役割を記載しているわけでございますが、その中で、例えばPKO活動というようなものは(3)の「より安定した安全保障環境の構築への貢献」に該当する活動の一つだと思いますけれども、こういったPKO活動なんかにつきましては、自衛隊法百条の七で、「長官は、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の定めるところにより、自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度において、部隊等に国際平和協力業務を行わせ、及び輸送の委託を受けてこれを実施することができる。」このような整理の仕方になっているわけでございます。  したがいまして、今回のガイドラインに対応いたします各種の措置につきまして法律上の整理が必要になってくるわけでございますけれども、その点につきましても、今申しましたようなことを参考にして整理をしていくことになろうかと思います。
  221. 辻元清美

    辻元委員 もう一点、周辺事態について伺いたいと思います。  現在、与党PKO・ガイドライン問題協議会でこの問題を協議しております。これは四月十三日にいただきました「「周辺事態」について」というペーパーです。  その中に、先ほどから議論になっております地理的概念ではなくということが書いてあります。後半部分に、「かかる事態が例えば中東やインド洋で発生することは、現実の問題としては基本的に想定されない。」というふうに文言が締めくくられているわけなのですね。  それで、この文章の始まりは「これは地理的な概念ではなく事態性質に着目した概念であって、」というので始まって、最後の締めくくりが中東やインド洋で発生することはないといきなり地域が出てきているわけなのですが、これは一体どういうことなのでしょうか。
  222. 高野紀元

    高野政府委員 周辺事態という言葉の定義に関しましては、我が国周辺における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態ということでございます。また、これが地理的な概念ではなく事態性質に着目した概念で、その事態我が国の平和と安全に重要な影響を与えているか否かということの判断材料は、事態の態様、規模等を総合的に勘案して判断するということでございます。  そういうような、今申し上げましたような事態がどこで生じるかということとの関係でこれまでいろいろ御議論いただきました。そういう中で、例えば中東での事態、あるいは石油のルートの問題、あるいは石油のルートの遮断の問題等の議論がございました。  そういう観点から派生じた議論として、そういう事態が現実に起きた場合に周辺事態に当たるのかどうかということをこの国会の場でも種々御議論いただいて、そういう事態は、先ほど申し上げましたような基準から申し上げて周辺事態に当たらないということを申し上げておりましたので、ここで念のために確認させていただいているということでございまして、この中東やインド洋ということは確かに地域概念でございますけれども、これをもって周辺事態が地理的な概念であるということを申し上げているわけではございません。
  223. 辻元清美

    辻元委員 そうしますと、再度この点について御質問したいのですが、「中東やインド洋で発生することは、現実の問題としては基本的に想定されない。」ということは、中東やインド洋が入らないと言っているわけではないということですか。中東やインド洋は入っているわけではないということでしょうか。もう一回答えていただけますか。
  224. 久間章生

    久間国務大臣 先ほどから説明があっていますように、こういう事態だという事態でとらえておりますので、この地域がどうこうということではございません。インド洋とか中近東で我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼすような事態は通常は発生しない、そういう事態が発生しないということを強調しているのだと思います。おわかりでしょうか。
  225. 辻元清美

    辻元委員 では、事態が発生しないというふうに日本政府判断なさっているということは、ここは入らないと。
  226. 久間章生

    久間国務大臣 先ほどから言うように、この地域が入るとか入らないという、そもそもそういうような発想自体をしていないということでして、こういう事態が起きた場合にどうするかということを議論しているわけでございます。  だから、事態が起きやすいところか起きにくいところかと言われれば、それは起きやすいところ、起きにくいところというのはあるかもしれません。しかしながら、我々は事態でとらえているから、その地域はどうかと言われましても、その地域はそういう事態が発生しにくい地域ですねということまでは言えたとしても、その地域が入るとか入らないということにはならない、そういうことでございます。
  227. 辻元清美

    辻元委員 そうしましたら、ほかにこういう事態が発生しにくい地域はどういうところが想定されるのでしょうか。
  228. 高野紀元

    高野政府委員 この点もまことに申し上げにくいのでございますけれども周辺事態というものは、先ほど申し上げましたような種類の、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態でございます。それが、それでは東経何度、北緯何度というような形で、きちっとした地理的概念で確定される地域でしか起きないというものではそもそもない。事態性質にかんがみて決めなければいかぬ。  そういたしますと、先生のお言葉でございますが、どこそこの地理的な地域とか場所を特定して、そこで起きることはそもそも周辺事態ではないとか、あるいはそこではそもそも周辺事態は起きないということは、先ほどから申し上げました周辺事態概念と申しますか定義からいって、そもそもそういうことが言えないということでございます。  しかし、中東やインド洋ということで申し上げれば、そういうことは、現実の問題としては、軍事的な観点も含めて、我が国の平和と安全に重要な事態が生じることは基本的には想定されないということでございます。  もう一点、具体的な例で申し上げれば、去年起きましたカンボジアの内紛と申しますか、ございました。そこで邦人保護の問題も生じる事態につながつたわけでございますが、あの事態は、あの当時国会でも申し上げましたけれども、あれは仮に周辺事態かと聞かれれば、それはそうではないということを申し上げた経緯がございます。
  229. 辻元清美

    辻元委員 ということは、そういう事態が発生するかどうか、その可能性ですね。それで、中東やインド洋ではそういう事態は現実の問題として発生しないということですね。そうすると、そういう事態が発生するかしないかという判断政府はされて、この地域については事態が発生しやすいとか、する可能性はないだろうというふうに、ここで既にこの二つの言葉を出していらっしゃるわけですから、判断されるわけですよね。そうすると、その事態が発生するかどうかということで地域を切り取っていくことができるわけですね。実際切り取っていらっしゃるわけですから。
  230. 久間章生

    久間国務大臣 いや、そうではなくて、それは、発生しない、余りそういう事態とならないだろうということを一般論として言っているわけでございまして、とにかく、もし正確に言えと言われるならば、どこで起こるかわからない、起きたのを見て、政府がこれは日本の平和と安全に重要な影響を与える、そういうような認識をしたときには、それはその事態が発生したということになるわけでございます。  だから、一般論として、中近東とかインド洋では日本の平和と安全に影響を与えるようなケースにはならないのではないかというふうに、推定といいますか、そういうふうに通常は思われるということを述べたのだと思います。
  231. 辻元清美

    辻元委員 いや、一般論としてとおっしゃるわけなのですけれども、これは本当に、与党の協議に提出された正式な文書の中で地域を限っておっしゃっているわけですね、ここの部分について。それで問題にしているわけなのです。  それで、先ほどの御答弁の中に、例えば海上輸送の話が出ました。石油等についての海上輸送の例も出ましたけれども、これは四月十三日の秋山防衛事務次官の御発言の中に、周辺事態について記者会見でこういうことをおっしゃっています。日本の平和と安全にいかなる影響を与えるかということで判断する、その場合には例えばシーレーン、海上交通なども入ると思うという御発言をされているわけなのですね。  そうしますと、今の御答弁と食い違ってくるように思うのですが、いかがでしょうか。
  232. 久間章生

    久間国務大臣 シーレーンが入るというふうに、そういう決めつけた言い方ではないのではないかと思います。  その記者会見のときの前後の脈絡は私つまびらかでございませんから、コメントする立場にないのかもしれませんけれども、シーレーンが入らないとは言えないということだろうと思うのです。どこかで何かあったときに、それが結果として我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合になるなら、それはシーレーンといえどもあり得るわけですから、それが入らないとは言えないというふうなことを裏から言っているのではないかと思います。
  233. 辻元清美

    辻元委員 今、私幾つか御質問申し上げたのですけれども、この中でも実際に、先ほどの御答弁ですと、中東やインド洋でそういう事態が発生することは現実的にはあり得ない。しかし、もう一つは、シーレーンが一概に入らないとも言えないということです。  これは、日本にとってのシーレーンというのは、以前言われた千海里シーレーンのこととは違いますので。違いますよ、これは。海上輸送ということに限って言っているわけです。こうなってくるとインド洋が入らないわけがないのですね、この秋山さんの記者会見での御発言ですと。  こういうように、一つ私が二十分間にお話ししている中でも、一体これはどういうものなのかということが、ここの委員の方もなかなか理解できないのではないでしょうか。こういう非常にあいまいな定義の中でこのガイドラインが進められていくというのは、私はこれは大問題だなと考えるのですけれども、いかがですか。
  234. 久間章生

    久間国務大臣 これから先、法律を出して御審議を願うわけでございますから、そういう中でもいろいろとまた議論が出てまいると思います。  しかしながら、そういう議論を通じて言えますことは、どういうような状態になったときに国民生命財産を預かっておる政府としてこれに対処するか、そういうことを、やはりきちんと基本計画をつくって、対処する内容を決めて、またどこで対処するかを決めて、国会へ報告するというようなことをやろうとしているわけでございますから、そういう審議を通じていろいろと明らかになってくるのではないかと思っております。
  235. 辻元清美

    辻元委員 あと数分時間があるのですけれども、もう一つ、前回質問しましたときに、後方支援ということで、戦闘地区一線を画するという御答弁がございました。  その中で、これは久間防衛庁長官が二十九日のNHKの討論番組でおっしゃっていた中に、一線を画するということで、戦争に巻き込まれない地域であり、空の優勢、距離がどうかなどを総合的に判断してこの一線は決めるんだというようなことをおっしゃっているわけです。  私の前回の質問に答えていただいた折には、一線を画するということで、空の優勢、要するに航空優勢が大きな判断材料になるとNHKではおっしゃっているのですが、前回の御答弁では、航空優勢をここでは確保したと断言するのが、現在のいろいろな飛行機の性能、あるいはミサイルの性能、そういうふうなことを考えると、航空優勢が確保されているかどうか、このところが非常に難しいというふうにおっしゃっているわけです。また、飛行機に乗っていて、ここは自分が航空優勢を確保していると言い切れるかどうか、その辺の問題が確かに現実にはあるとおっしゃっているわけです。  ですから、一線を画する条件として、空の優勢を一つの大きな判断材料とするとおっしゃっている一方、これは非常に難しいともおっしゃっているわけですね。こういう中で果たして一線が画せるのかどうか、私は疑問に思います。
  236. 久間章生

    久間国務大臣 航空優勢も一つの大きな判断材料になります。しかし、航空優勢というのは、またそれは非常に難しい問題もありますから。  この間言いましたのは、それだけで判断するのはなかなかできない、ほかの要素を組み合わせるべきだということを念頭に置きながら空幕長はあのとき記者会見したんだということを申し上げたわけで、航空優勢だけでこの地域は戦闘区域一線を画したと言い切ることはなかなかできないということを言ったわけでございます。
  237. 辻元清美

    辻元委員 きょうは、周辺事態一線を画するということで、時間が足りなくて残念なんですけれども、今後もまた、次回、この続きを質問させていただきたいと思います。  質問を終わります。
  238. 塩田晋

    塩田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時一分散会