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1997-11-27 第141回国会 参議院 法務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十一月二十七日(木曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員異動  十一月二十五日     辞任         補欠選任      林  芳正君     上杉 光弘君  十一月二十六日     辞任         補欠選任      上杉 光弘君     松村 龍二君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         風間  昶君     理 事                 釜本 邦茂君                 清水嘉与子君                 大森 礼子君                 橋本  敦君     委 員                 遠藤  要君                 岡部 三郎君                 長尾 立子君                 服部三男雄君                 林田悠紀夫君                 松浦  功君                 松村 龍二君                 魚住裕一郎君                 円 より子君                 菅野 久光君                 千葉 景子君                 菅野  壽君                 照屋 寛徳君    国務大臣        法 務 大 臣  下稲葉耕吉君    政府委員        法務省民事局長  森脇  勝君        法務省刑事局長  原田 明夫君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局総務局長   涌井 紀夫君        最高裁判所事務        総局民事局長        兼最高裁判所事        務総局行政局長  石垣 君雄君        最高裁判所事務        総局刑事局長   白木  勇君    事務局側        常任委員会専門        員        吉岡 恒男君    説明員        警察庁刑事局暴        力団対策部暴力        団対策第一課長  和田 康敬君        警察庁刑事局暴        力団対策部暴力        団対策第二課長  宮本 和夫君        法務大臣官房審        議官       吉戒 修一君        大蔵省証券局証        券業務課長    小手川大助君        大蔵省銀行局銀        行課長      内藤 純一君        大蔵省証券取引        等監視委員会事        務局特別調査課        長        大前  茂君    参考人        経済評論家    神崎 倫一君        元内閣広報官   宮脇 磊介君        弁  護  士  渡邊  顯君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○商法及び株式会社監査等に関する商法特例  に関する法律の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 風間昶

    委員長風間昶君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る二十五日、林芳正君が委員辞任され、その補欠として上杉光弘君が選任されました。  また、昨二十六日、上杉光弘君が委員辞任され、その補欠として松村龍二君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 風間昶

    委員長風間昶君) 商法及び株式会社監査等に関する商法特例に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、お手元に配付の名簿のとおり、三名の参考人方々から御意見を伺います。  御出席をいただいております参考人は、経済評論家神崎倫一君、元内閣広報官宮脇磊介君及び弁護士渡邊顯君でございます。  この際、参考人方々一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  参考人皆様から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  議事の進め方でございますが、まず、神崎参考人、次いで宮脇参考人及び渡邊参考人の順に、お一人十五分程度ずつ御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、念のため申し添えますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いいたしたいと存じます。  なお、参考人意見陳述、各委員からの質疑並びにこれに対する答弁とも、着席のままで結構でございます。  それでは、まず神崎参考人にお願いいたします。神崎参考人
  4. 神崎倫一

    参考人神崎倫一君) 御指名をいただいた神崎です。委員長のお許しを得て、着席のまま意見を述べさせていただきます。  本案はいわゆる総会屋の根絶を目的として罰則を強化するのが法律改正目的でありますが、結論から申し上げますと賛成です。  ただし、私は、総会屋というのは資本主義発生したゴキブリハエのようなものだと思います。ハエをたたくのがいいか悪いか、ゴキブリを根絶するのがいいか悪いか、これはもう問題はありません。しかし、なぜハエがわくんだろうか、ゴキブリがわくんだろうか。その原因を直さなければ、これはもう百年河清といいますか、いつまでたってもイタチごっこのように終わらない問題だという感じがいたします。  私は、この春以来、野村証券第一勧銀、その他いろいろな総会屋絡み事件が起きまして、念のため、総会屋という言葉は一体英語に訳したら何になるだろうかと思っていろいろ調べてみました。私の不勉強もあるんでしょうが、私の持っている和英にもありません、総会屋というのは。ですから、恐らくこれは日本的な、ローマ字の世界共通語になりまして、恐らく経団連とか全学連とか農協とか、そういうふうにその言葉そのものが通用するんじゃないかという感じがいたします。  しかし、今度の事件について欧米の雑誌、新聞が報道していないわけがないので、ウォール・ストリート・ジャーナルあたりギャングという表現をしていますね。日本で一番大きな代表的な証券会社ギャングとつき合っていたと。これ大変日本のイメージは悪いですね。その次に第一勧銀もやっぱりギャングと。ギャングじゃちょっと違うと思うので、少しほかのものも調べましたら、ラキティア、ゆすり、たかり屋という言葉があります。この方が恐らく一般的かもしれませんけれども、いわゆる株主権株主であることを利用して会社利益を強要した日本的な総会屋、これは恐らくどうも日本的な存在ではあるまいかと思います。  それは日本総会あり方、もしくは日本資本主義構造そのものの中に原因があるんじゃないかと私は考えるゆえんです。総会というのは、これはもう皆様方には釈迦に説法かもしれませんが、株式会社最高決議機関であります。いわば、政治でいいますと国会ですね、総会というのは。  一九二〇年あたりから、アメリカで、バーリ・アンド・ミーンズという有名な、株式会社の所有と支配分離資本を持っている人間と実際に会社運営する人間は別々なんだよという有名な論文が出まして、これはその後聖書のように鉄則になっていますが、考えてみると、資本を持っている人間株主ですね、株主が、自分の持っている資本がどのように使われているのか、経営の実態に触れるのは年に一回の総会しかない。ですから、これは大変重要なはずなんですね。  その重要なはずの総会を簡単に乗り切ろうと思っている経営者の方にも一半の責任はありますし、その一番重要な会議総会のときに不規則発言とか暴露発言とかそういうものを求めるよと言って会社利益を強要する総会屋は、これはもうまさに犯罪でございますから、これはもう許せないと思います。  しかし、総会というもののあり方が、そもそもの発祥のときに比べてふさわしいんだろうか。  少し昔話になりますけれども、株式会社発生は、今から四、五百年前、イタリアのベネチアということになっております。当時は、お金をお金持ちが出し合いまして、これをだれか船長に委託して、それでアジアと貿易をやる。ベネチアから恐らくトルコとかあのあたりに船を出しまして、それで恐らく当時は非常に高価であった香料か何かを積み込んで帰ってきて、何十倍の値段で売りさばく。皆様方御存じのベニスの商人の世界でございますよ、金持ちが金を出し合って。その結論を求めるのが総会だったんですね。  だから、例えば一億円ずつ、十人の金持ちがいて十億円金を出して、それを何とか船長に委託する。船長は何カ月かかかってトルコに行って帰ってきて、それで決算をして配当をやる。こうこうこういう商売をやってこれだけもうかりました、だから株主に対しては出資金の何倍払いますと。それが総会だったんですね。  その形が現在まで続いている。つまり、出資者に対して資本がどのように使われたか、そのパフォーマンスを説明するというのが総会である。それは確かに原則的には正しいんですけれども、しかし株式会社はその後まさに幾何級数的に大きくなっています。  だから、株主が一堂に会して会社側の発表、説明を聞いて、それに質疑応答する。確かに十人、二十人の出資者の場合、ベネチアの場合にはこれはよかったでしょう。どうしても金が返せないならば肉一ポンドよこせとか言ってごたごた要求することもできたんです。  現在、日本で一番株主の多い会社はどこか。御存じと思いますけれどもNTT、日本電信電話会社ですね。十六万三千人おります。株主総会をやる、十六万三千人の株主全員出席を求めた場合に、収容する場所があるだろうか。  国立競技場を借りて相当無理して詰め込んでも、早明ラグビー、あれが六万六千人が限界ですから、もう少し無理して詰め込んでも恐らく七万人ぐらいしか入れないに違いない。そうすると、隣の野球場を借りて何とかかんとか。これでもって果たして会社の社長と対面の説明が聞けるだろうか。  それから、十六万三千人の株主が一人一分ずつ発言を求めて質疑応答する。一人一分ずつで十六万三千人がやりますと、朝昼二十四時間ぶつ続けにやって百十三日間かかります。少しは休まにやというんで、一日八時間ずつやりますと、大体一年かかります。そうすると、株主総会というのは一年かかるのかねと。もう超マラソンですな。ということは、十六万三千人のスケール、さらにこれからふえるかもしれない、もっと大きな会社ができるかもしれない。そういう株主を相手にして、四百年前のベネチア総会というスタイルが一体合うんだろうか、そういう気がいたします。  それから、株主の質ですね。実は、それは何千万株という大変な大株主もおれば千株という株主もいる。それはさまざまおります。私なりに仕分けしてみますと大体四通りぐらいあるんじゃないか。  一つは、ほとんどもうその会社経営に対して興味を持っていない、投機株主といいますか、株が上がってくれれば構わない、きのう買ってきょう上がったらきょう売っちまうと。たまたま三月三十一日の株主名簿に名前が載ったから株主ということになっているけれども、実は会社とはほとんど、経営に対して関心がないんですね。これが一種類。  それからもう一つは、多少は投資目的でもって二年、三年株を持っている個人株主。これが恐らく一番多いと思います。千株、二千株、株を持っている投資株主。  それから三番目に、これは取引動機でもってお互い、例えば銀行取引会社の株を持つ、かわりに取引会社銀行の株を持つ、いわゆる持ち合いですね。これが非常に比率からいうと大きいです。今の日本の株式の過半数はこの取引動機株主で持たれています。  それから四番目に、これは残念なことですが、会社を揺さぶってそれから利益を得ようとする総会屋自分個人の、何か自分動機利益のために三十万株以上の株を持って会社をゆする総会屋。  これだけあります。  経営者は、会社株主のものだとよく言いますね。必ず商法でも経営学の時間でも言うんですけれども、株主と言うんだけれども、きのう買ったばかりの株主ともう五年も十年も前から百万株持っている株主と、だれのことを思って経営すればいいんだろうか。もしくは、三十万株持って、顔に傷がありましてどうとうしろとすごみをかけてきた総会屋、これも株主なんですよね。  ただ、株主に対してえこひいきをしちやいけないというんで、五十六年の商法改正がありまして、今回さらにこの改正の論議が起きているんですけれども、大体株主のために経営をする、株主に報告する、そういうことの概念がきっちり固まっていないんじゃないだろうか。それはひいては私は総会あり方、それから総会における運営の方法、これは後に渡邊先生が細かく述べられると思いますけれども、それに絡んでくるんではないかという気がいたします。  ですから、やっぱり一番根源は、会社株主のものだ、一体その株主というのはどの株主のことを思って経営しなければいけないのか、どれぐらい株主意見を聞き株主の声を経営に反映させるのか、この辺が非常に茫漠として、実は四百年前のベネチアの精神がそのまま続いているわけですよ、これは。それを今までうやむやにしておいたのが日本特有総会屋発生でして、欧米にはこういうものはない。株を持っていなくてもゆすり、たかりはするんだけれども、ただ株主であるがために総会でもって暴れるということはほとんどない。この辺にやっぱり僕はメスを入れなければ、もちろんそれは罰金刑、体刑を強化することによって彼らをひるますことができても、世に盗人の種は尽きまじということになるんではないだろうかという気がいたします。  これはやや余談になりますけれども、私は、株主総会が本当にクリーンに運営されるためには、今の会社側の方の対応にも問題がある。  例えば、これはだれも触れておりませんけれども、社員株主というのは果たして株主総会の円滑な運営にプラスなんだろうかマイナスなんだろうか。確かに総会屋に対抗するためには、社員株主にバッジを外させて、個人的に休暇をとらせて、それでこの総会の会場の前の方に陣取らせて、予行演習どおりに異議なしとか議長一任とかくだらぬ質問は却下しろとか、そういうような発言をさせております。  しかし、もちろん総会屋に対してはこういう与党的な発言をする株主も必要なんですが、もしも客観的な中立の第三者の株主が真剣に会社に何か物を聞きたい、何か会社に対して発言したい、そういうものに対して、社員株主存在というのは、もちろん法律では禁止はしておりませんけれども、これは実際的には障害になっている。それはもう総会屋がなくなれば会社だって好きこのんで社員株主を動員しないよとおっしゃるかもしれないけれども、まずやっぱり会社側としては本当に公平にフェアに透明に総会運営する、そういう気持ちを経営者側が持つことが大事ではないかと思います。  やや脱線いたしましたが、私の意見は終わらせていただきます。
  5. 風間昶

    委員長風間昶君) ありがとうございました。  続きまして、宮脇参考人にお願いいたします。宮脇参考人
  6. 宮脇磊介

    参考人宮脇磊介君) 宮脇でございます。きょうは御指名にあずかりまして商法等改正に関し所見を申し述べる機会をいただき光栄に存じます。  ただいま神崎先生の方からラキティアという言葉が出ましたけれども、私にとりましては非常に懐かしい言葉でございます。  昭和五十三年、一九七八年でございますが、私が警察庁刑事局捜査第二課長、当時暴力団総会屋も所掌する課長でございましたが、それになりましたときに、パリの郊外にあるサンクルーというところにICPO、国際刑事警察機構の本部がございまして、そこで「日本暴力団とそれに対する対策」というタイトルで英語でスピーチをすることになりました。そのときに暴力団だとか総会屋、こういったものをどういうふうに説明したらいいかということを私はスピーチする内容ともども当時アメリカ情報機関の人ですとかあるいはイギリス大使館広報部長さんなんかと連日のようにディスカッションいたしまして、そして内容からその言葉を選んでいくという過程をたどったのでございますが、結局ラキティアギャングスターと言うよりもラキティア日本語で言うとゆすり、たかりの徒というふうに辞書には書いてございますが、そのように落ちつきました。そのことを懐かしく思い出します。このことはこれから申し上げることにも関連いたしますので、一言あえてつけ加えさせていただきました。  ちょうだいしました改正案関係資料はあらかじめ読ませていただきました。私の立場は改正案につきまして基本的に賛成でございます。本年、捜査に着手しました事件を契機といたしまして立法府として素早く機動的に対応しておられますことに心から敬意を表するものでございます。お手元に差し上げてありますレジュメに沿って御報告申し上げます。  なお、以下申し上げますことは、あくまでも私個人のオリジナルな主張でございます。さよう御了承いただきたいと思います。  まず第一は、総会屋問題に的確に対応するためには、総会屋企業とのかかわりだけを見て判断してはならないということでございます。企業標的にするラキティア、すなわち総会屋暴力団かぎ括弧つき右翼など、企業組織犯罪全体、平たく言えば企業やみ社会全体とのかかわりを見なければなりませんし、さらに企業だけではなく、日本社会やみ社会とのかかわりあるいはまた政治やみ社会とのかかわりなど、広く日本やみ社会人間日本社会経済政治行政のどこにどういう形でかかわりを持っているかという全体像を把握することが前提でなければならないということでございます。あえてこう申し上げるのは、必ずしも現在これらの全体像が把握されていないということを申し上げたいのでございます。  東京の都心の幾つかの高級ホテルロビーには昼過ぎになりますとうさん臭い感じ人々がばらばらと集まってまいりまして、あちらに三人こちらに二人といったぐあいにひそひそ話を始めます。暴力団総会屋右翼等情報交換の場でございます。そこでは、西の暴力団も東の暴力団右翼総会屋も分け隔てなく、どこの企業が傷んでいるかですとか、あるいはどこのだれがどう動いているかといったことについての情報交換をしたり、あるいはいろんな相談、打ち合わせをしたりいたしております。彼らはそれを自称してロビー外交というふうに言っているそうでございます。  暴力団総会屋右翼等かぎ括弧つき右翼でございますが、日本組織犯罪、それらはこのようにフレキシブルな形をとりながら、それぞれの活動形態に違いこそありましても、いずれも企業標的にして企業を脅かし、あるいは企業と持ちつ持たれつの関係企業から利益を得ているのであります。暴力団組長が窓口となりまして総会屋にその組長から金をばらまいたという高島屋の例を見ても御理解できますように、株主総会対策だけではなくて、日常のトラブル処理など、企業やみ社会との間にある利害関係は多岐にわたっております。  したがいまして、特殊株主であるという、いわゆる総会屋との接点だけに視点を限定して矮小化してしまっては、マスメディアなどはえてして矮小化しがちでございますが、そうなりますと問題の解決につながらないばかりか、かえって問題をこじらせて潜在化させかねないと思います。総会屋に限定しないで、企業やみ社会全体とのかかわりを見ること、さらに企業やみ社会とのかかわりだけではなくて、広く日本社会経済政治のどこにどういう形でやみ社会の触手が伸びてつながっているかという全体像の把握がこの問題への対応に携わる方々にとって必須の前提としておとりいただくべき態度だと存ずるのでございます。  第二には、日本人々世界の各国々の中で一番組織犯罪の力を甘く見ているということであります。甘く見過ぎていると申し上げていいと思います。  外国の人が日本に来てびっくりしますことは、御案内のようにマフィアが堂々と町中事務所を設けている、組織犯罪が堂々と町中事務所を設けているということであります。そして、日本社会組織犯罪を容認している、アクセプトしているでありますとか、あるいは日本という国は社会企業政治組織犯罪とのかかわりなしにはやっていけない特殊な国なのだと言わんとするリビジョニスト、日本特殊論者に根拠を与えております。  日本だけに組織犯罪が目に見える形で存在しますのは、総会屋暴力団右翼警察官の増員や捜査権限の付与などによりまして警察力でコントロールできる、警察がもう少ししっかりやったら何とかなるというふうに日本社会リーダー層を含めまして安易に考えていることによるものと考えるほか明確な答えは出てこないのでございます。  どこの国の組織犯罪にも共通して言えますことは、組織犯罪は活力と創造性に富んだ存在である、バイタリティーとクリエーティビティーに富んだ存在であるということでございます。総会屋暴力団社会病理現象であって、隠花植物のようにじめじめしたところに咲く花のようなものだという説をなす方々もかっては多かったのでございますが、それは誤りでございます。社会病理という言葉を使うのであれば、むしろ体制側社会病理組織犯罪跳梁ばっこをもたらすということでございます。  すなわち、秩序を構築し維持する責任を負う体制の側、政治でございますとか行政でございますとか企業あるいはジャーナリズムなど、そういう体制の側が責任をおろそかにいたしましたりモラルを欠いたりいたしますと組織犯罪が栄える、全世界どこでもそういう構造がある、そのように私は思うのでございます。冷戦終結後のロシアあるいは中国、それからまたバブルの時期からの日本はそのよい例でございましょう。  総会屋の問題を考えますときに次に大事なことは、企業総会屋というふうに企業を一くくりにすることは問題であるということでございます。すなわち、銀行証券と、それ以外の一般企業とを区別して考えることが大事だと思います。  すなわち、銀行証券は金や株を扱うために元来自分でも悪いことがしやすいし、また悪人が寄ってたかってくるところでございます。したがいまして、各国とも厳格に規制をかけているのであります。ところが日本では、大蔵省保護行政で厚い掩蓋、覆いができまして、外からはのぞけないようになる、その中で悪人利益をはかってまいりました。大蔵省チェック機能が働かなかったのであります。  それからまた銀行証券一般企業に対して強い支配力を持っております。特に日本の場合にはそうでございます。メーンバンクでございますとか主幹事でございますとか、大事にも介入いたします。そういうことから、一般企業総会屋排除に一生懸命努力をいたしましても、汚染をされている銀行証券から一般企業汚染をされることになる、そういう構図になっておるのでございます。昭和五十六年の商法改正まで総会屋はうそぶいておりました。自分たち銀行から月給を、証券からボーナスを、そして一般企業から小遣いをもらっている。この言葉がその間の事情を如実に示しております。  もう一つ大事なことがございます。総会屋問題など組織犯罪の主要な根源行政の不公正を放置していることにあるということでございます。すなわち、一般国民の犠牲の上に一部の者が利益を得るという構造主管行政官庁の怠慢によってでき上がっているということにあるということであります。  総会屋問題につきましては、大蔵省銀行行政証券行政におきまして善良なる一般預金者や一般投資家を犠牲にして一部の者が利益を得ることを絶対に許さないという断固たる態度をとっておりますれば、悪人がはびこるようなことはなかったと言えるでしょう。企業から利をはかる総会屋存在は、彼らが存在し活動するのに快適な場が彼らに対して提供されてきているからこそあり得るのであります。警察の立場は違法行為が起きる場面で初めて登場する立場なのであります。大蔵省行政企業自身のあり方とあわせて総会屋問題の根源であることがおわかりいただけると存じます。  このような構造は、建設行政における公共事業と暴力団とのかかわり、運輸行政における港湾と暴力団とのかかわり、あるいは農水行政における漁業と暴力団とのかかわりまで、至るところに存在いたしておりまして、組織犯罪に快適な収奪の場を提供しているのでございます。  最後に、総会屋問題に対する対策についてであります。  現在、当委員会で御審議中の法案は、総会屋対策としてまことに時宜を得た効果あるものと確信いたします。  レジュメにも私の考えの幾つかを掲げておりますが、要は、総会屋対策は広い視点と、社会経済政治などあらゆる分野にわたる綿密な実態把握に基づく総合的な組織犯罪対策の一環として位置づけることが対策を有効に働かせることにつながるということかと存じます。そのためには、国会にも組織犯罪対策特別委員会を設けることが検討されてもよい時期ではないでしょうか。  財界団体に対しましては、財界団体がよく言う、政治に対する提言集団などとみずからを言う前に、特に銀行証券に対するチェックシステムに重点を置いた企業活動正常化本部とでも言うべきものを編成して、まず隗より始めていただきたいと願うものでございます。  以上でございます。失礼いたしました。
  7. 風間昶

    委員長風間昶君) ありがとうございました。  続きまして、渡邊参考人にお願いいたします。渡邊参考人
  8. 渡邊顯

    参考人渡邊顯君) 渡邊でございます。  私のごとき一介の弁護士が参議院の議員の先生方にどれほどお役に立てるか、いささか自信がございませんが、ずっとこの種の実務に携わってきた者として、実務家の目で意見を申し上げたく存じます。  お手元意見陳述の要旨をお配りしてございます。まず結論から申し上げますと、今回の法律案については全面的に賛成でございます。  ただ、総会屋の根絶のためには、単に法定刑を引き上げるということにとどまらず、企業の意識改革あるいは警察の警備力の増強など、関係当事者の取り組むべき課題が多いと考えております。特に、企業の意識改革のためには、取締役あるいは監査役を有効に機能させるということが必須でございます。この意味で、最近コーポレートガバナンスということで株主代表訴訟制度の改正論議が起こっておりますが、この改正については慎重にお進め願いたい、このように考えております。  今回の法律案の主な点は、法定刑の引き上げと新たな犯罪の新設でございますが、まずこの法定刑の引き上げでございます。  昭和五十六年改正当時、法定刑が低過ぎないかという議論は当然ございました。ございましたが、片や商法の四百九十四条というのがございまして、これは従前からあった条文でございますが、会社荒らし等に関する贈収賄罪というのがございました。これが一年以下の懲役、五十万円以下の罰金となっておりましたので、この法定刑とのバランスから、利益供与罪については六月以下、三十万円以下、このようになったという経緯がございました。  ところが、五十六年改正後間もなく利益供与事件が摘発されましたけれども、いわゆる総会屋が執行猶予判決を受けるというようなことになりまして、案の定、法定刑が低過ぎたのではなかったかということが実務界では専ら言われておりました。  ただ、ここで法定刑の問題でございますが、ある意味で総会屋は懲役三年でも一向に構わないという部分があるんですね。つまり、彼らにとってみますと、前科前歴というのが実は勲章なんですね。それだけ恐れられるということになるので、ある意味で経済効果として、費用対効果、バランスみたいなところがございます。片や企業の担当者はサラリーマンでございますので、仮に一月の懲役、執行猶予でも、彼らにとっては大変な痛手でございます。  その意味で、単に法定刑を引き上げるということがいいのか悪いのか、ましてや重罰主義で国家というものを運営していくということもいかがなものかといった議論も当然ありましょう。しかしながら、今回の一連の事件を見ておりますと、やはりある程度の引き上げはやむを得なかろうというのが私の意見でございます。  それから、新たな利益供与要求罪などの新設が今回ございます。これは大賛成でございます。と申しますのは、決して会社が好んで利益供与をしているわけではないのであります。この意味で、要求する行為があれば直ちに警察に通報するなどして未然に防止できるという意味では大変抑止力になるのかな、このように考えております。その他、所要の改正が盛り込まれておりますが、これも相当のものと考えております。  さて、法定刑を引き上げれば済むというものではないというふうに私先ほど申し上げましたが、そもそも総会屋というのはいつ発生したのかというのが実はどなたも正確にはわかっておられないのではないかと思います。かく申します私もいつごろから発生したものかというのはよくわかりません。ただ、この種の事案に、株式会社株主総会指導という実務に携わってまいりました十五年間の経験から思いますのに、どうやら日本株式会社の上場制度というものができて恐らく間もないころからいわゆる総会屋らしき特殊な株主とのつき合いが始まっているのではないか、このように思います。  よく言われますような、銀行証券の裏口通用門に参りますと実体のない領収書を持ってくる総会屋に協賛金と称して利益供与されておったというのは五十六年までの現象です。極めて異様な現象があったわけです。このような異様な事態が短時間の間にできたとは思えません。恐らく相当長い年月を経てきている。そうしますと、企業総会屋の癒着というのは、つき合いというのは、恐らく世代を超えたおつき合いだったのだろうと思います。したがいまして、五十六年当時の利益供与罪の制定で、一遍の法律でなかなか単純には切れなかったのかなというふうに思っております。  とはいうものの、五十六年当時、絶縁に各企業は動いたと思われます。思われますが、これが間もなく復活してしまった。御承知のとおり超マラソン総会、マラソンの世界記録というのは今どのくらいか私も正確には存じませんが、二時間そこらですね。ところが四時間、五時間というふうにかかる総会が毎月のようにあった。御高承のとおり、ソニーでは十三時間半という長時間総会があった。このようなことから腰砕けになってしまいましてつき合いが復活してしまったんですね。これは総会運営のふなれも原因だと思います。  それで、責任の一端は私ども弁護士にあるというふうに実は反省をしております。つまり、五十六年まではしゃんしゃん総会で終わりますから、弁護士も会社法をしっかりと勉強しておらぬのですね。したがって、弁護士にとっても初めての経験でございました。そんなことで、大変に我々も反省しなきゃならぬのでありますが、そういったことも背景にございましてつき合いが復活してしまいました。摘発されている会社にいわゆる名門企業が多いというのは、長い歴史が背景にあったということを推定できる一つの事情だろうと思います。  しかし、片や一生懸命取り組みまして、現在では総会運営のノウハウというものが確立していると思います。当時、議事整理規則、つまり総会を荒らす者を退場させるというようなことを、議事整理規則といったものを法務省令でできないかという議論もございました。それから、説明義務というものの範囲が大変広うございます。株主総会でございますので当然一年間の営業報告をいたします。これについても説明義務がある。貸借対照表についても説明義務がある。損益計算書についても説明義務がある。そういたしますと、一年間の会社のいろいろな森羅万象の現象について説明義務があるのかといった誤解にいっとき陥りまして、そのために十三時間半もかかってしまった。  現在は、議事整理規則につきましては一括上程審議方式、議長権限を最大に行使する、あるいは説明義務の範囲の問題につきましては決議事項に集中すればいいんだといったような議論がなされておりまして、これは既に判例の支持、追認などがございますので確立しておるわけでございます。したがって、五十六年直後に大変苦労してノウハウを確立したところが片やございます。片やイージーについて従来のつき合いを復活させてしまった。こういうことだろうと思います。  さて、ではこれを根絶できるかということでございますが、私はなかなか難しいと思います、正直言いまして。日本会社構造というのが、違反とわかっていても繰り返してしまう構造があるんですね。これはなかなか言えません、つまり既につき合いが始まってしまった場合に切るべきだと。当然正論でありますが、切るのはいいけれども、今度の総会が荒れたらおまえが責任とるのかと、こう言われますと自信がない。つまり責任回避ですね。ということで、先例に従っておれば無難、保身につながる、こういったサラリーマンの考え方というのは根深くあろうかと思います。  しかし、この保身の気持ちを惰弱だといってなかなか責められないなという気がいたします。それは、終身雇用制のもとで、一遍退職してまた中途採用ということをいたしますと生涯の獲得賃金からいって明らかに不利だとされるということであればなかなか難しいですね。そうすると、やはり上司に逆らうこともしたくないということになってきます。このようなかばい合い構造が違反を繰り返させていると思います。  それと、あとは経営トップですね。この方がうまく対処しろというような指示をするんですね。うまくやれと、こう言うんです。うまくやれというのはどういうふうにうまくやれというのかはっきりしないんです。何時間かかってもいい、法律違反は絶対してはならぬと、こういうふうに明確な指示を出されればいいんですが、うまく対処しろと。そうすると、サラリーマンのさがでございますから、社長は何とかしろと言っているんだろう、すれすれのことをやって何としてでもやればいいんだろうと、こういうふうに思ってしまうんですね。ですから、今回の一連の事件の中でも、経営トップが知らなかったとおっしゃっています。確かに私は知らなかったんだろうと思います。しかし、それはある意味では不作為犯なのかなというふうにも思います。  それともう一つ、店頭公開会社とそれから上場会社、これ三千社あるんです。そうしますと、総会担当者というのは各社平均十人やそこらおりますので、実は三万人もいるんです。この〇・一%ですと三十人なんです。そうすると、経営トップからうまくやれと言われるとついついイージーにつく人が出てきてもおかしくはない、三万人もおれば、と思います。  ということになりますと、大変嫌な言葉でありますが、これは企業性悪説に立たざるを得ないのかな、少なくともそう思って対処せにゃいかぬのかな、このように思います。そうしますと、今の日本の法制度の中では、この株主代表訴訟というのが実は最大にして唯一と言ってもいいぐらいのコーポレートガバナンスの方法だろうと思います。  取締役会というのがございます。この取締役会というのは本来代表取締役を監視するんですね。重要な会社の業務を決定して業務執行する役員を監視するというのが法の建前でございます。しかし、実際に日本の取締役会は社長が取締役のけつをたたく、こういうふうになっております。その意味で今は機能しておらぬのです。代表訴訟が乱訴の傾向があり、そして企業経営者のマインドが萎縮していると、このように申しますが、現実に役員が敗訴したケース、これは汚職とかあるいは利益供与罪、明確な違法行為で、経営判断そのものが問われて会社役員が敗訴して多額の賠償金を払わなければいけなくなったというケースは今のところございません。つまり、経営判断の原則というのがほぼ判例上確立したように考えております。  時間もありませんので多少はしょりますが、次に監査役会のインフラ整備というふうにレジュメに書いてございます。  この監査役会が全然機能していないんですね。希有の例外を除いて機能していないと申し上げていいと思います。これは、監査役が子会社の社長のポストがあくまでの待合の席になっておるという現象がございます。こんなことでは監査役が監査できるわけがないのでございます。  今度、コーポレートガバナンス法ということで監査役体制の強化ということを言っておりますけれども、実は現行商法におきましても監査役の権限は十二分にございます。十二分にあるのにかかわらずこれが機能しない。なぜか。これはインフラであります、予算であります、あるいは報酬であります。つまり、会社に対してこれだけの監査のための費用が必要だから出してくれと言えば、会社側は不必要ということを証明しなければ拒否できないというふうになっているんです、商法上。しかし、現実にはスタッフがいない、あるいは監査役室すらない、あるいは東証一部の監査役は不良債権の回収をやっている、こういう例もあるわけです。これではもうとてもとてもと思います。  そこで、私が申し上げておりますのは、現執行部、経営トップに物が言えるのは前社長、会長だ、したがって会長が常勤監査役をやるべしと。会長という肩書がなくて寂しいのであれば常勤監査役会長と言ってもいいではないかと。  それから、〇・一%ルールということを申し上げております。つまり、その企業の年商売上高の〇・一%を監査役室に予算として振り向ける。例えば一千億売っている会社、これは結構ございます、かなりの規模でございます。その〇・一%であれば一億円なんですね。一億円の監査室の予算があれば独自に弁護士も雇えます、会計士も雇えます、複数名の専属のスタッフも雇える、こういったことをまずやらなければいけない。これを経団連あたりが自主的なルールで結構でございますから目標として掲げる。抽象的なあいまいな企業行動憲章では役に立ちません。そのように思います。  同じように、チェックシステム、これもつくればいいというわけではありません。大体、監査役室なり監査役というのは、言ってみればほこりをかぶった消火器みたいなものでありますから、やはり時々チェックをする。これはやっぱり外部でチェックする、こういったふうに組み込んでいかざるを得ません。意識にゆだねるということではだめだろうと思います。  それから、外部監査人制度というのがございます。これは御存じのとおり、この春に地方自治法の改正がございまして、公共団体が外部監査人の監査を受けるということになりました。そして、この外部監査人は四年未満ですか、継続してやってはいけない、かえなきゃいかぬということになっていますね。こういった制度を地方自治体でも取り入れている。企業でもそういったものを意識して取り入れる。しっかりやれば大丈夫だよ、やらないようにしようねと、こういう抽象的な慰め合いではだめだと思うんです。その意味では企業性悪説に立って物を見るというのも必要だろうと。  それから、警察との連携と自衛措置というふうに申し上げました。宮脇参考人のお話のとおり警察だけに頼っていいという問題ではないと思います。日本社会というのは暴力に対して大変甘い構造になっていると思います。その意味では、国民各層それぞれがやはり今回の一連の事件については責任を負わなきゃいかぬと思っておりますが、担当者の恐怖心というのは実はやっぱりあるんですね、非常にある。おたくのお子さんかわいいねと言われるとぞっとするという話がございます。果たしてそういったおどしの方法があったのかどうかわかりませんが、しかしその気持ちはよくわかります。現実に弁護士夫人殺人事件といったものも起こっておりますので、人ごとではないなと思います。可能な限りの警備を考えていただきたいなと思います。  しかし、企業あるいは我々自身、弁護士自身もそれなりの自衛措置を講ずる社会、時代になったんだなと。今まではそういったことが必要じゃなかったんでしょうね、恐らく。高度成長その他で、追いつけ追い越せということで日本の株価もどんどん右肩上がりで上がっていく、そういう意味で営業を上げていく、もうけていく、それでよかったのかもしれません。しかし、今はやっぱり時代が変わったんでしょう。ですから経営トップも、ただ単に効率的な経営ができるというだけでは経営トップの資格がないんだと。株主に向かって、国民に向かって、自分会社はこうですというふうに説明できるような資質、こんなものが経営トップに必要になってきた時代になったのかな、このように思います。  いずれにいたしましても、法の支配なくして国家は成り立たないんだろう、このように思います。  ありがとうございました。
  9. 風間昶

    委員長風間昶君) ありがとうございました。  以上で参考人方々からの御意見の陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  10. 釜本邦茂

    ○釜本邦茂君 自民党の釜本でございます。  本日は、神崎参考人宮脇参考人渡邊参考人におかれましては、専門的な視野から、しかもわかりやすく御意見をお伺いできましたこと、心から感謝申し上げます。  まず、宮脇参考人にお聞きいたしますが、警察庁の幹部としての御経験から、昭和五十六年の商法改正において総会屋を根絶するための利益供与罪、受供与罪が新設されたにもかかわらず総会屋を根絶できなかった原因はどこにあるとお考えでしょうか。また、今回の法案は総会屋対策として効果があると私自身も考えていますが、宮脇参考人の御所見をお伺いしたい、かように思います。
  11. 宮脇磊介

    参考人宮脇磊介君) ちょうど私が警察庁捜査課長をしておりましたときに、この商法改正の動きが法務省の方であるということがわかりまして、警察庁の方からも警察庁意見というものを出しましてその推進を図った者の一人でございますが、私はこの五十六年の商法改正一つの大きな意味はあったというふうに思います。それは、それまで急速に暴力団総会屋に入ってきた動きがございました。それに実は私どもは大きな危機感を抱いたのでございますが、それには一応の歯どめをかけたというふうに考えられようかと思います。  つまり、日本経済がどんどん伸びてまいりまして、それによって総会屋の仕事がうまみが出てきた、非常においしい仕事になってきました。日本の場合には企業にお金がたまる構造経済成長でございまして、そこに寄生じていた総会屋がとてもおいしい仕事になった。そこで、コンペティティブになってまいりまして、非常に競争が激烈になって腕力が必要になってきた。与党総会屋も野党総会屋も腕力が必要になってきました。そして、総会屋の方が暴力団を雇うようなつもりで入れた。それで、暴力団の方も、総会になりますと企業の方から先生、先生なんて言われたりして、ちょっと親指出せば茶封筒が入る、小指出せばもっと入るというようなことになりまして、どんどんふえてきた。  そうしますと、今まで企業の恥部を握っていた総会屋にかわって暴力団日本資本主義社会の恥部を握っていくことになる、暴力団支配に至るんではないかという危惧から、この危機感から改正を推進しまして、それによりまして総会屋、それには雑誌ゴロ、会社ゴロいろいろ含まれておりましたけれども、随分淘汰をされました。暴力団もかなり淘汰をされました。  しかしながら、今、釜本委員御指摘のとおり減って、実際にはむしろ汚染が深まっているという事実でございますが、これは手口が巧妙化をしたということが一つ大きく言えるんではないかというふうに思います。すなわち、皆様方もう既に御存じだと思いますけれども、この間の海の家の事件がございました。  当初のうちは、やれゴルフコンペに名をかりた資金集めですとか、そういうふうなところから商法改正直後は始まりましたけれども、だんだんその手口が、海の家的な親族の経営する店、料理屋に会社の総務の者が行って大きな領収書をもらってくるというようなことでございますとか、親族の者がやっているあるいは総会屋本人がやっている印刷業、そういうものに会社の封筒をつくらせるとか、さような一見正当な商行為を通じて、実は普通よりもうんと高い法外な金であるわけでございますけれども、そういうような形に潜行をしていったということが言えようかと思います。  その背景には、基本的に企業の体質が変わっていなかったと。先ほど来のラキティア企業目的とするゆすり、たかりに対して、理不尽な要求に屈して、あるいは企業の信用にかかわるとしまして警察ざたは最後の最後という体質がずっと残って、先ほども御指摘がございましたけれども、企業トップの責任逃れ。雇われ経営者が多いわけでございまして、自分の任期のときには少なくとも波風立てないで先輩の社長から譲られた仕事を先送りしていこうと。ダーティーな仕事を先送りしていこう、波風立たないようにしていこうという基本的な体質があったからというふうに存ずるのでございます。  背景につきましては、先ほど申し上げたとおりでございます。
  12. 釜本邦茂

    ○釜本邦茂君 ありがとうございます。  それでは、渡邊参考人にお聞きいたしますが、参考人企業から総会屋対策について御相談を受けられたことも多々あるというぐあいに思いますが、企業側というのはどのような点で困っているのか、また政府に対してどのようなバックアップを求めているのでしょうか。  今般、政府はことしの七月にいわゆる総会屋対策のための閣僚会議を設置され、政府を挙げてこの対策に取り組んでおられるということで、ことしの九月八日に、日弁連会長あての文書をもって、業界団体や企業からの相談に対する各弁護士会や弁護士の一層の積極的な対応を要請されたというように聞いております。そしてこの問題に対して、九月二十五日に、この要請に応じて日弁連から全国の各弁護士会に、いわゆる総会屋対策に一層積極的に対応するよう要請文を発したというようなことでございますが、このような動きに対して参考人はどのような考えをお持ちでしょうか。
  13. 渡邊顯

    参考人渡邊顯君) まず、会社の担当者が総会対策として困っておりますのは、いわゆる総会屋と称する者が連日のごとく、例えば総会屋が株をつけていると、要するに会社の株を買っているということを、株主であることを株をつけるというふうに言っておりますが、この株づけを受けているのが七十人、八十人もあるといった会社の場合には、総務部の担当者は連日のごとく総会屋の訪問を受けます。そのために専門の総務部長、それだけやる専任部長といった者もおるぐらいでございます。大変な負担になっております。  アポイントがないから会えない、今忙しいからと言って断ったらえらいことになると。つまり、怒らせると翌年の総会でいろいろと質問をしたり発言をして総会の長時間化を図るのではないか、これがまず困っております。面談をすれば暗に金品の要求をするわけですね。そろそろ昼飯どきだなと言って昼飯をねだる、最近ゴルフをやっているかね、ゴルフ接待を要求する、友人がこんな写真集を出したんだ、なかなか立派なものだ、応接に置いてくれないか、こういったような形の要求がございます。  これに対してどうするかということです。対価性があれば面倒くさいから買っちゃおうか、しかし、その後五万円の写真集が二冊、十冊、こうなったらどうしよう、こういうことで大変に悩んでおります。これがなかなかトップの方に持っていけない。そんなことお前何とかしろ、こういうことになってしまいます。この辺が一番困っているところだろうと思います。  それから、どのようなバックアップを期待するかという御質問でございましたが、これについては残念ながら、特段こういったことをしてほしいというような意見は余り積極的には見受けられません。今回の一連の行動、事件などがございましたので、みんな深刻に悩んでいると思います。深刻に悩んでいるのはどういう人たちかというと、海の家に類するようなことで自分のところに累が及ぶかどうかというようなことで非常に悩んでおるという雰囲気がございます。  きっぱりと手を切ってやっているところは、これだけの事件になったので来年からは総会屋の活動もかなり抑え込まれるな、やれやれと、こういうふうに思っている方もいらっしゃいます。逆に、これだけ締めつけられると生き残りをかけて大変に荒れるのではないかということで心配をしておる方、さまざまでございます。  つまり、その企業の担当者の方たちの発想は、残念ながら、自分の仕事を来年どううまくこなすかというところに終始しておりまして、かくあるべしといったような意見に実はなってきておらない、こんな感じでございます。
  14. 釜本邦茂

    ○釜本邦茂君 ありがとうございます。  それじゃ、最後に神崎参考人にお聞きいたしたいと思います。  総会屋をめぐる企業不祥事が後を絶たない、連日のように新聞ざたになっておるわけでございますけれども、経営トップの意識の問題があるというように指摘されております。何かあると責任逃れのように首脳陣の交代だけで済ませようとするような風潮がある。実は私、このようなことを申し上げていいのかわかりませんが、先般の三菱自工の総会屋の問題に対しましても、浦和レッズの社長は私の大変昔からの友人でございまして、そういう担当をされていたというふうなことであったわけですけれども、決して正しいこととは思えないわけですが、企業の役員として御経験のある神崎参考人の御意見を伺わせていただきたい、かように思います。
  15. 神崎倫一

    参考人神崎倫一君) 非常に大きい問題ですが、社長は自分の気に食わない者、自分のやることの邪魔になる者、それを嫌がっちゃいけないと思います。言ってみるならば、日本の戦後の企業経営というのはブレーキのない自動車を運転するようなもので、アクセルを踏むと物すごいスピードが出るんだけれども、歯どめがきかないんですね。  一例として、先ほど渡邊さんが監査役会の非機能化、全然動いていないじゃないか、それにはやっぱり金の裏づけがないからだということもおっしゃいましたけれども、私は、監査役の選任方法そのものに問題がある。監査役というのは、本来の意味からいうと株主が選ばなければいけないんですね。株主のためにいろいろ会社の現況をチェックしなければいけない。社長といえどもこれはおやめなさいと言わなければいけない。  それがなぜできないか。今、監査役の選任は、監査役の候補については会社側が選任してそれを株主にどうですかということで聞くというふうになっているんですね。つまり、社長が任命するんですよ。社長が任命するときに自分の耳に痛いことを言う人間を任命するだろうか。  いつでもベネチアの話が出てくるんですが、ちょっと堪忍してください。そもそもは、十人ぐらいの金持ちが船を出します。ただ、金持ちが船に乗ってトルコまで行くわけにいきませんから、自分の代理人をお目付役として船に一人乗っける、これがそもそも監査役の発祥なんですね。それで、監査役が帰ってきて船長も乗組員も非常に忠実にやったということを報告して、それで総会が終わりということなんです。  しかし、実際はしょっちゅう自分のそばにいて自分を見張っている人間、これは船長にとって嫌ですよ。釜本理事の御関係ですと、恐らくサッカーの現場の人間にとりまして強化委員会ぐらい嫌な存在はないと思う。しょっちゅう問題を言って勝手に監督をすりかえてみたり、ああでもないこうでもない、何ならお前やってみろと言いたくなるのが現場の意見だと思います。  それは昔から、日本の場合は軍監というのがありますね。まさか源頼朝が平家征伐に行けないから自分の弟の義経、範頼をやるんだけれども、それのお目付役として梶原景時という悪名高き告げ口役をつけるわけですね、これはもう芝居でも一番悪役なんですけれども。これは本当にもう嫌らしいんです、実際に戦争する人間にとりましては、それは。それが実は監査役でなきゃいけないんですね。監査役はもう社長にとって嫌で嫌てしょうがない、嫌われ者だと。だけれども、株主から任命されているから監査役の言うことは自分も耳を傾けなければいけない。  本当を言うならば、私は、監査役がしっかりしていてチェックの機能がきいておれば会社の方もそんなに外部の総会屋につけ込まれるようなことはなかった。だから、少し誇張して言いますと、総会屋というのは監査役のかわりにいろいろ会社に嫌味を言って、もしもこれで、さっきのゴキブリハエではないんですが、ハエゴキブリ総会屋もいなくなる、それから恐らく経団連あたりの運動が功を奏して株主代表訴訟がやりにくくなるということになりますと、恐らく社長さんはしたい放題。日本資本主義というのはとめどもなく堕落するんじゃないか。  ですから私は、本当に陳腐な言葉になりますが、やっぱり上に立つ者は恐れを知らなければいけない。自分に一番嫌なことを言ってくれる、国に諌臣なければ滅ぶ、いさめる人間がいなければ滅ぶと言いますけれども、企業も同様と考えます。  以上です。
  16. 釜本邦茂

    ○釜本邦茂君 ありがとうございました。
  17. 円より子

    ○円より子君 平成会の円より子です。  本日は、お三方の参考人からいろいろいい御意見を伺いまして本当にありがとうございました。  二十分の時間ですので三人の方に御質問できるかどうかわかりませんけれども、一つは今、神崎さんもおっしゃいましたけれども、日本の取締役制度の問題点というのは、社長など代表取締役の指揮命令に従うべき使用人の立場の方が、社長を監督する取締役会の構成員という矛盾を抱えていると思うんですね。  それで、ドイツやアメリカなどではいずれも経営監督と業務執行とは明確に線が引かれていると思うんです。先ほど渡邊さんが監査役に前任の社長が入ったらどうだろうとおっしゃったんですけれども、例えばおとといの東京地裁で四大証券第一勧銀の今回の不祥事のトップを切って公判が開かれました。この中で、冒頭陳述の中に、酒巻被告が前任の両田淵氏から社長に引き上げられたことを恩義に感じて二人が叙勲を受けられるような環境を整えることを画策したと。こんなことはもう当たり前のことだと私たちの感覚からは思うんですが、不祥事を起こした人がもう一度トップに返り咲くなんということは信じられないことですが、今回、山一の場合も顧問になったりとかいろいろあったわけですね。そういったことが許されていいのかということがありまして、それがまた総会屋につけ込まれた一つの要因なんですが、前任者が監査役になるのは何かとんでもないことのような気がするんですが、いかがですか。
  18. 渡邊顯

    参考人渡邊顯君) あのケースは除くと。ああいう例は非常に困りますね。  それで使用人兼務役員、これはやはり危険ですね。取締役会制度を機能させないことにつながっていると思います。ただ、この使用人兼務役員という制度も日本経済の成長の過程においては非常に有効な機能をした時期もあるんだろうと思いますが、こういうことになってくると、やはり見直しをするべきだろうと思います。
  19. 円より子

    ○円より子君 それで、株主総会というのが大変重要だと思うんですけれども、市場原理を働かせることが最も取締役会の機能回復には重要だと思うんです。とりあえず株主総会が三十分以内なんというのは、ディスクロージャーとアカウンタビリティーという点からいいますと、全く情報開示もしていなければ説明責任も果たしていないということで、こんな会社はだめだという市場チェックが働けばいいんですが、株主訴訟というのも大変有効な活性剤になるかと思うんです。そのあたりについて手短にお願いしたいんですが、渡邊さん。
  20. 渡邊顯

    参考人渡邊顯君) 年一遍の決算報告をする定時株主総会、これが三十分で終わるというのはやはり短過ぎますね。それで、やはり最初からもう二時間かけてやると決めるべきだと思います。早く終わるのなら早く終わらせたらいいだろうというような顔をトップがしますと、下はやっぱり利益供与に走るんです。ですから、最初からもう二時間やると決めて、そしてそのような演出をすればいいと思うんですね。映像を使うとか、あるいは新製品を展示するとか、そういったような場にすると。そうすれば二時間かかるんです。当然かかるんですね。ですから、それはやはりやりようだろうと思います。  ところが、トップは既に、先ほど神崎参考人からもお話がありましたが、日本会社というのは相互持ち合いになっておりますので、実は前日までにありとあらゆる議案がもう成立しちゃっているんですね、事実上。というのは、書面投票制度というのがございます。ですから、前日までに会社原案に賛成というのが戻ってきております。にもかかわらずやらなきゃいかぬのかと、早くおわらせいと、こういうこともあります。ですから、その意味では書面投票制度の見直しも必要かな、つまりもう成立していればそれは報告をすればいいというふうにするのも一つの方法かなと。  それから、代表訴訟の点でございますが、これはもう御指摘のとおりだろうと思います、有効に機能する方法だろうと思っております。
  21. 円より子

    ○円より子君 宮脇参考人からいただいた資料の中に、総会屋という言葉日本の新聞に初めて登場したのは一九〇二年、明治時代だということを知りました。また、多くの国民が総会屋なるものの実態を知ったのは城山三郎さんの「総会屋錦城」という本だったということも読ませていただいたんですが、おっしゃるとおり、五十六年改正、そして五十七年施行の商法改正総会屋はもう本当に数は激減しましたね。ゆすり、たかりというようなたぐいの、と言うとおかしいんですけれども、そういったごろつき程度の総会屋は多分かなり一掃されたんじゃないかと思うんです。ところが、大変手口が巧妙になって、株の取引のところで例えば損失補てんを会社にさせてしまうような、そして二億だとか何億だとかいうような大変な額の悪質な犯罪を行う総会屋はなかなか後を絶ってないというような気がするんですね。  そしてまた、今回の改正で罰則を強化しましても、ますますもっと頭のいい、頭のいいというのは悪賢い方の頭のよさかもしれませんが、そういった総会屋は根絶できないんじゃないかというような気がするんです。要求罪というのも今度新設されますけれども、これだって実際に本当に要求しているのかどうかなんてわかるような要求をする総会屋なんというのはいないんじゃないかと思うと、これで犯罪がチェックできるかという問題等もあります。  そういうことを考えますと、この商法改正だけではとても無理だと先ほど宮脇さんもおっしゃって、まず供与事件だけでなく、その裏にある、例えば飛ばして簿外の債務をたくさんつくってしまうとか、そういったさまざまな悪質なことをやっていることを見ていると、私たちは、総会屋の方がまだましで、きれいな顔をした銀行のトップや証券会社のトップや、そしてそれを保護してきた大蔵省の官僚たちの方がよほど悪質な、たかり、ゆすりではなく、そちらの方がギャングなのではないかというような気さえするんですね。そのくらい今信用がなくなってきているんだと思うんです。  大蔵省行政の情報公開のなさ、これはずっと明治以来、総会屋が明治からあったということなんですが、明治以来キャッチアップでずっと日本は何とか経済をよくしようとして、国民にはほとんどの情報を渡さずに、黙って一生懸命働いていれば私たちが何とかしてあげますよと。また、情報を公開してしまえば、当然いろんな意見が出ますから、株主総会もそうですけれども、解決方法がおくれますね。だから、なかなかキャッチアップができないということで、ずっと情報を開示しない方法でやってきた、それから、説明責任ということも負うことなくやってきたと思うんですが、ここにすべての何か問題点があるように思うんです。  このあたりをきちんと解決しなければ総会屋の問題も解決しないと私は思うんですが、先ほど対策もおっしゃっていますが、何か本当にいい方法があるのかどうか、このあたりのことについて宮脇参考人にお聞きしたいと思うんです。
  22. 宮脇磊介

    参考人宮脇磊介君) 情報開示という御指摘がございましたけれども、まことにそのとおりだと思います。  きのう、きょうも銀行証券の問題に関連しまして、公的資金の導入でございますとか、そういうことが言われ始めております。これも銀行などが自分のところの月給ですね、どれぐらいもらっているのかとか、役員報酬がどうかとか、そういうことさえも開示しないで、それで公的資金の導入を言うなどというのはまことに問題である。また、政党の方からもそういうことを抜きにして公的資金の導入と言うこともこれもまた問題であるというふうに思います。  それはおきまして、先ほどの五十六年改正の後の問題、依然として行われている、むしろ深刻化しているということとも関連するのでございますけれども、五十六年改正の後、警察企業とが手を組みまして、企業から総会屋の手を切っていくという努力を一生懸命されましたのは、これは専ら一般企業でございまして、銀行証券ではございません。  銀行証券の方は、当時の企業防衛対策連絡協議会とかあるいは特殊暴力対策連絡協議会とか、そういう警察企業との連絡協議会、これの役員、会長だとか副会長は銀行証券などの人が多かったわけでございますけれども、実際に手を切ることに努力したのは一般企業でございまして、先ほど総会屋がそれまでに言っておりました銀行から月給をもらって、証券からボーナスをもらって、それから一般企業から小遣いだと、その小遣い銭をいただいていた部分が一生懸命手を切ったわけでございますね。  そして、あるアンケート調査によりますと、商法改正の前に、特殊株主三百人以上とつき合っていたのが四分の一を超えると、上場企業で。そして、千五百人以上の特殊株主に配っていた企業が数社ある。そのほとんどが今申し上げた職種に属するわけでございます。  さようなことで、この冒頭の御説明にも申し上げましたけれども、ただいま御指摘のこの損失補てんなど、これはまさしく証券会社の問題でございまして、やっぱり銀行証券ですね、この二つをクリーンにしていくということができるかどうかということに焦点を当ててお考えいただくと解決の方法もわかりがいいんじゃないかなというふうに存じます。
  23. 円より子

    ○円より子君 神崎参考人にお伺いしたいんですが、神崎さんは証券会社銀行にお勤めでいらっしゃいました。そして、銀行の監査役もなさっておられると略歴で知っております。  有価証券報告書というようなものを上場企業大蔵省に出すわけですけれども、そこでもこういった簿外債務についてわからなかったし、それから山一の場合、監査役の人たちがだまされていたというようなことをおっしゃっていたりしておりますし、また日銀の考査も大蔵省の検査も、今回の山一のことについてもそうですけれども、おととしの大和銀行のあのときにも十一年間も不正な取引をずっとしていたこともわからなかったしというようなことがありまして、本当にいろいろ不正をやっていることが、それを総会屋がしているかどうかはともかく、やはりおかしいなと思うことが、そういうことをやっていることがいろいろな暴力団総会屋がつけ入ることにもなっていくわけです。  監査というもの、内部監査もできない、外部監査もできないということになるとこれは大変だと思うんですが、監査の方法とか仕組みとかというものをどうすればいいとお考えか、ちょっと御意見聞かせていただけますでしょうか。
  24. 神崎倫一

    参考人神崎倫一君) ある意味では、非常に日本人というのは寛大、それから数字に対してルーズですね。  ですから、企業の例えば利益利益という言葉自身があいまいなんですが、もっと絞って経常利益としますか、ある一定期間中にその企業が本来の業務でどれぐらい利益を上げたかという数字なんですが、これが三種類あるんですね。それは取引所に届ける、今もお話に出ました有価証券報告書の数字、それから国税庁に申告するいわゆる税務申告、それからこれがうちうちでもって本当はこうなんだよという数字、その三通りあるわけで、どれを大体基準にしていいかというのがわからない。  それから一つには、株価の形成にこれは絡んでくるんですけれども、欧米のようにすべての数字が本当にクリアになっていて、その数字にのっとって投資家が投資判断をし、パフォーマンスを競うという慣習にありません。ついこの間まで、ある証券会社が推奨したから買ったといって非常にあいまいなことになった。それから、中にはその会社資本金が幾らか知らないで買う投資家もいるわけですね。こういう姿勢がだんだんルーズになってきた。  ですから、今ちょっとお触れになった不良債権の問題一つにしましても、発表されるたびにだんだん多くなるわけでしょう。だから、四年前に不良債権が問題になったときの数字と今では、一つ銀行をとっても五倍、十倍になってきていますね。それに対して、例えば有価証券報告書を受理した取引所がその銀行に対して注意したか、おまえ、こんなうそばっかりついたらだめじゃないか、上場廃止するよ、言っていませんね。これ言うと、全上場銘柄が恐らく怪しくなる。  みんなもいいと言うからいいじゃないか、しかしそれはいわゆるグローバルスタンダード、世界では通用しませんよということになりますから、初めて真剣にこれからその数字の透明性を求めるでしょう。それにふさわしい監査をやらなければいけない。そうすると、その監査をやるには大変手間がかかるしコストはかかるから、さっき渡邊さんがおっしゃった〇・一%、千億円の売り上げなら一億円いただければこれは手間暇かけられますね。  ただ、実際はほとんどが今はコンピューター化されていて抜き取り検査以外にはできないと思います。そのときにはやっぱり第三者、外部の公認会計士事務所に委託して、この辺が恐らく、これはまだ問題になっていませんけれども、もしもその会社銀行でもってドレッシングが発見された場合にそれを見逃した公認会計士はどうするのか、免許停止かというような問題まで踏み込んできて初めて日本も真剣に企業の数字に辛くなると思います。  以上です。
  25. 円より子

    ○円より子君 ありがとうございました。  確かにおっしゃるとおりだと思います。先ほど話しました株主総会を軽視しているというのがあるんですが、これは企業だけじゃなくて株主の方も本当にそうだと思うんですね。そして、株主がということは国民全体がいろんなことに対してなあなあで余り厳しくチェックしてなくて、それが自分たちにツケがまた返ってくるというようなところがありまして、証券会社銀行は多額のお金を扱っていますけれども、一般の投資家や一般の預金者の保護というよりも本当に利益だけを考えてしまっているというようなところがあるのかもしれないんですけれども、総会屋とかそれからトップの勲章だとかそんなことだけをもし考えているとしたらこれは大変なことなんです。日本企業の体質だとかそういうことは今おっしゃったようなグローバルスタンダードからいくともう通用しなくなってきて、それが逆に今回のようなさまざまな不祥事が出たことで多分淘汰されていくもしかしたらいい機会なのかもしれないというふうにも思うんですね。  しかし、ジャパン・プレミアムが拡大したのは、おととしの大和銀行事件が発覚したときに、それをずっと大蔵省が知っていて隠していたということも大きな要因だと思うんです。今回も富士銀行は十月六日に簿外債務の存在を知っていたのに、大蔵省はいや十一月十七日だなんというようなことで、大分そこに大蔵省ももしかして知っていたのではないかというような疑惑も出てきて、もし違ったとしてもそういう疑惑を起こさせるようなこと自体が問題で、大蔵省行政が本当にきちんと不良債権に関しても一体どの程度あるのか、いつもこれだけだと言っていながらふたをあけてみたらもう全然違うというような状況では、もう日本が本当に立ち行かなくなるんじゃないかという気がするんです。  今の企業の、特に銀行界、証券界のトップの人たちというのは一体どういう倫理観を持っていらっしゃるのかとよく思うんです。この企業トップの倫理観、政治家とかすべてのリーダーかもしれません、日本の今リーダーが本当にリーダーシップをとれないような倫理観の持ち主にもしかしてなってしまっているというのは、これは大変なことなんです。証券会社銀行のトップの資質を変えるとか、そういったことについて、日本的な土壌を変えていくというようなことについてと言ってもいいんですが、宮脇さん、何か御意見がありましたらお願いいたします。
  26. 宮脇磊介

    参考人宮脇磊介君) 先ほども企業性悪説でいかなければならないんじゃないかなという御意見も出ましたけれども、確かにそういう面はあろうかと思います。また、本来性悪でなくてもそうせざるを得なくなるということもあろうかと思います。  先ほど叙勲のお話も出ましたけれども、企業のトップの倫理観ということになりますと、特に大企業の場合には財界団体の役員になります、財界団体の役員を何年と、どういう段階なら十年とかあるいは全国組織なら三年だと勲何等、そういう基準が皆様方御存じのようにございます。ですから、この種の不祥事を起こした企業はその後十年間はいかなる役員にも、その社の役員に対しても財界団体の役員になってはならないというような申し合わせを財界団体でやるとか、そういうことが本当は一番効果があるんではないかなというふうに思っております。
  27. 円より子

    ○円より子君 どうも皆様、ありがとうございました。  終わります。
  28. 千葉景子

    ○千葉景子君 きょうはそれぞれの参考人の皆さん、ありがとうございました。貴重なお話を伺い私も大変勉強させていただいたところでもございます。  皆さんのお話を伺いまして、今回の法改正についてはそれぞれ基本的には評価をされていらっしゃるというふうに私も承りました。ただ、どうやらこの法改正だけですべてを解決するということは困難だというのもそれぞれの共通なお話ではなかったかというふうに思います。私も、この改正をきちっとまずはスタートをさせることが大切であろうというふうに思いますけれども、やはり皆さんが御指摘されたような背景であるとかあるいは日本社会全体の構造、こういうものも含めてさらに対応をしていかなければならないのではないかと、そんなことを感じたところでもございます。  そこで、何点かお聞かせをいただきたいと思いますが、まずこの法改正の御評価はいただいたところではございますけれども、改めてこの法案自体の問題としてお尋ねをしたい部分がございます。  それは、先ほど渡邊参考人の方からも、法定刑の引き上げというのが、一面では効果があるけれども、これが勲章になってしまうような部分もあるというお話がございました。今回は、懲役刑それから罰金刑も引き上げになっているということになるんですが、この法定刑引き上げの効果、罰金の引き上げもどのような効果があるのか、あるいはなかなか難しいものなのか、その辺について、渡邊参考人と、それからいろいろ御経験をお持ちの宮脇参考人にもこの法定刑の引き上げの効果をお聞かせいただきたいと思います。
  29. 渡邊顯

    参考人渡邊顯君) 効果がないとは言えない効果があるのだろうと思います。ちょっと禅問答のようでございますが、やはりもっともっと重罰でなきゃ効果がないのかなという気もしないではございません。  ただ、先ほど申し上げたとおり、じゃ重罰主義でおさまるかといえば、そういったものではない、息苦しくなるだけの話でございますし、結局この問題は非常に根深い社会構造そのものに根差している問題だなと。  ですから、やはりそこのところもそれぞれのしかるべき人たちがそれぞれ努力しなきゃいかぬと思いますね。先ほども私、かばい合いとか先例主義みたいなことを申し上げました。かく言う私ども弁護士会でもそういった風潮があって、なかなかやっぱりうまく機能していないというのはじくじたるところでございます。そういったいろんな団体、組織でいろいろとやっぱり同じような悩みがあるんだろうと思います。  そういったものをやはり直していかないことにはこういったことも直らないだろうという意味合いからいくと、果たして効果はどうなのかなというのが率直な気持ちとしてあります。しかし、やはりもっと厳しく罰するんだよという意味での効果はもちろんあるだろうと、このように思います。
  30. 宮脇磊介

    参考人宮脇磊介君) 罰則の関係につきましては、運用など法務省の所管でございますので私具体的にはよく承知しておりませんけれども、しかしながら、今回こういう時期に罰則の強化ということは、国民の皆さんに対して非常に納得のいく心理的にいい効果を与えるんではないかなと。やはり、暗いニュースばかり続く中できちっと立法府としての姿勢をお示しになられるということは、私は大変日本の将来に向けていいことじゃないかなと。国民の皆さんにも心理的にいい効果を与えるというふうには思います。
  31. 千葉景子

    ○千葉景子君 ありがとうございます。  私も罰則、刑が上がるということにどういう効果があるのかというのは実際になかなかはかり知れないところがあるわけです。国民に対する問題提起とか、あるいはやはり違法性が強いということをこれによって表現をするという意味の効果もあるのかな、こんなことを感ずるところでもございます。  ところで、皆さんから御指摘ありましたように、やはりこの法改正のみならずさまざまな問題点があることがわかりました。一つその中で総会の問題、総会というのは一体どうあるべきかというのがちょっと私も気にかかるんですけれども、先ほどのお話にもありましたように、神崎参考人から四百年前のスタイルをそのまま継承している、こういうお話を聞くと、確かに十数人の株主のときならともかく今のスタイルが本当にいいのかなという素朴な疑問は私も感じます。しかし一方で、これもお話が出ましたように、企業経営にもきちっと関心を持ち、そういう投資家、株主を保護し、そしてその権利を擁護していくという面もこれは忘れてはならないところだというふうに思います。  そういう意味で、その両面を考えて、総会というのはどうあったらいいのか、そして総会の中で、あるいはそのほかの手法でも、一般の投資家、株主を保護するためにはどうあるべきか、こういう点について、神崎参考人から御意見ございましたらお話を伺いたいと思います。
  32. 神崎倫一

    参考人神崎倫一君) 個人的な考えですが、これは株主に対する不平等だということで廃止になっているんですけれども、大株主会の復活もしくは活用を考えてもいいんじゃないだろうか。前は、大体その一割ぐらいの、トータルすると五割以上の株になる特に取引先の法人株主を集めて株主総会以前に会社説明していったんですね。このときは相当突っ込んだ説明もできたし、また了解も得て、それで白紙委任状をいただいていたんですが、今は全然そういうことは行われていません。行われていないで、ただもう白紙委任状をいただく方だけはいまだに続いているわけです。  それは、お互いに持ち合っていますから、おまえがくれないとおれもやらないよでもってスムーズに六割、七割の白紙委任状が集まる。それぐらいあったならば、むしろ生きた質疑応答、それからいわゆる賛成、反対の意思を発表できる犬株主の活用があってもいいんじゃないだろうか。  個人株主の場合には、会社が気に食わなければ売ればいいんですよ、端的なことを言えば。売って会社との縁を切ればそれっきりになるわけですけれども、法人の場合にはそうはいきません。例えば、三菱系列の三菱電機が三菱重工の株を売ったらこれは大騒ぎになると思うんです、まあそういうことはあり得ませんけれども。それだけに、やっぱり法人への説明会というのは必要だと思います。  それから、日本の場合には、大株主はただ株を持つだけで発言せずというのが何か美談、行徳のようになっていて、名前を挙げてはなんですけれども、本当に生命保険会社なんというのは、企業はしょっちゅう時価発行増資をやってその割に増配はしないといって文句を言うんだけれども、文句を言うんなら買わなきゃいいじゃないかとこちらも言いたくなるんですけれども、しかし、続けてやっぱり日本の大株主一つですね。これを改めて、僕は大株主発言する義務があると。  御存じでしょうが、今一番日本の発行会社企業が悩みを持っているのは、大株主の中に、CALPERSというカリフォルニア公務員年金基金ですか、これはアメリカでも屈指の基金なんですけれども、これに株を持たれると、必ずこれは意見書をつけてくるんです。今のところまだ数%ですから余り発言権はないけれども、今外人の持ち株は日本のトータルの一割に達していますから、やがてだんだんこれがふえてきて発言権を持ってきますと、大株主に株を持たれているということは、それは安全でも何でもなくてチェックが行われるんだよと。  なぜ日本の機関投資家といいますか、法人株主はおとなしいんですか。早く持ち合いの弊害を絶って、やっぱり株を持った以上は発言するという習慣をつける。そういう大株主個人株主にかわってチェックしてくれることでもって一般株主も安心して投資できるんじゃないだろうか、そう考えております。  以上です。
  33. 千葉景子

    ○千葉景子君 ありがとうございます。  同様の問題なんですけれども、先ほど渡邊参考人も、総会の問題で書面主義の問題、ちょっと御指摘などをされました。いかがでしょうか。総会の持ち方、そしてその中で投資家の保護をどういう形でやっていくか。実務を御存じ渡邊参考人にぜひお聞かせいただきたいと思います。
  34. 渡邊顯

    参考人渡邊顯君) 先ほどちょっと書面投票制度に触れました。  株主総会、これは会議でございますね。会議ということですから、会して議するわけであります。ところが、今や日本の上場会社クラスになりますと、株主の数が大変多うございまして、果たして会議と言うべきものなのかどうか、やや疑問なしとしないという実態になってきております。  つまり、会議というのは、少数意見が多数意見を説得してひっくり返す可能性もある。つまり、民主的な討論をして、なるほどと、こういったことが予定されておるわけであります。だから、会議をする、これが民主的だと。  ところが、ほとんどもう書面投票で前日に全議案が決まっている、にもかかわらず会して議さなきゃいかぬのか、こういうことになります。であれば、いっそのこと書面投票にしてしまって、あとは結果報告というふうにするというのが一つの考え方だろうと思います。  ただし、その場合には、少数株主に対する保護の問題が出てまいります。これはやはりディスクロージャー制度の充実ということで補うということを考えなければいけないのかな、このように思います。  それから、先ほど大株主発言すべしという御意見神崎参考人からございましたが、そのとおりだろうと思いますね。  つまり、お互いに持ち合っているから、めくら判で白紙委任をする、これは自分会社に対する株主に対して果たして忠実だろうか。もっと配当できるんじゃないか、あるいはそんな無能な経営者はだめよといったような発言をしないと、自社に対する株主に対して忠実義務違反になるのではないか。  つまり、株主代表訴訟があるよというのは、その意味で非常に活性化していくだろう、このように思うんですね。これをやはりやるべしというふうに考えております。
  35. 千葉景子

    ○千葉景子君 ありがとうございました。  先ほど宮脇参考人からは、日本社会構造的な問題、こういう御指摘をいただきまして、私ども政治に携わる者も改めて襟を正し、あるいは問題を重く受けとめていかなければいけない、こう考えたところです。  その中で、やはり行政の不公正の放置、こういう日本構造がこういう総会屋などの蔓延を許しているという御指摘でもございました。大蔵省の問題の御指摘がございましたけれども、そのほかの例も、ここに建設の問題あるいは税務行政の問題など御指摘いただいているんですけれども、ちょっとわかりやすく御説明をいただけますでしょうか。
  36. 宮脇磊介

    参考人宮脇磊介君) 例えば、今財政再建ということで公共事業費の七%カットですとかあるいは一〇%カットなんだとか言われておりますけれども、公共事業費の使途につきましては、大きなブラックホールがございまして、暴力団なりそういうやみ社会の方に吸い込まれていく。  関西新空港につきましては一兆五千億円かかったのでございますけれども、厳しく見る人は三分の一でできたんじゃないか、あるいは甘く見ても半分でできたんじゃないかというようなことが言われております。  私も、昨年、一遍関西の方に行き、それからことしは三月に九州と関西の方に参りまして、そして公共事業費の末端の消化の構造でございますね、これは、私は現役のころからある程度承知はしておったのでございますけれども、いろいろ聞かれたり、あるいは物を話したりする場合に確認をとる必要がありましたので、行ってまいったのでございます。ことしの三月の分につきましては、一年半前に既にそれぞれの地域のしかるべき人にお願いをしてありまして、その聞き取りに行ったのでございます。  特に九州の北の方が多いわけでございますが、それから関西、そういったところでは暴力団が建設業者であり、そしてまた町会議員、市会議員であり、県会議員で実力がある。そして、そういう県会の実力者が下請を仕切るというようなこと。それからまた、下請をして暴力団企業などに受けさせて、そして暴力団企業は力がないからそこは素通りで、ただ中間収奪だけで、その下に今度は大手が入っていくというような逆転現象がもう随所に見られる。  これは一例でございますけれども、そういう地元業者、地方政治家、中央も入ることもありますけれども、それから暴力団、それから行政の方も、県でございますとか、あるいは市、町などはそういった一連の人たちと子供のときから仲よしたとか、そういう人がむしろこの担当になって行政の中で力を持っているというようなこともあるようでございまして、そういう利権構造に光を当てないことには、談合の問題ばかり取り上げているのは私はちょっと筋違いじゃないかなというふうに思います。  談合の問題も、もともとは悪い業者を排除する意味で始まったんだというような積極的な意味も聞いております。いずれにしましても、そういうブラックホールの構造をきちっとさせるには、やはり建設省が目を行き届かせていかなければならないんじゃないか。建設業者がどれぐらいいて、それが地方政治家にどれぐらいなっているかとか、あるいは暴力団がどれぐらいいるかというようなことはやっぱり建設省の責任において、もちろん警察の協力も得なければいけませんけれども、警察任せということじゃなくて、むしろ第一義的には建設省の方が私は行政責任を負うべきだというふうに考えます。  そして、そういう行政責任ということについての視点、指摘というものが今まで余りにも少な過ぎた、なかったと言っていいほどだと。そこで、それを声を大にして申し上げたいと思うのでございます。
  37. 千葉景子

    ○千葉景子君 ありがとうございました。  時間になりましたので。
  38. 風間昶

    委員長風間昶君) 速記をとめてください。    〔速記中止〕
  39. 風間昶

    委員長風間昶君) 速記を起こしてください。
  40. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 本日は、御三名の参考人に大変貴重なお話をお伺いすることができて、感謝を申し上げたいというふうに思っております。  特に、宮脇参考人の講演録を昨日いただきまして、大変興味深く読ませていただきました。また、私が知らなかった総会屋に関するさまざまな問題点が的確に指摘をされておりまして、非常に勉強になりました。ありがとうございました。  さて、私の方からも何点か質問をさせていただきたいと思いますが、最初に、宮脇参考人にお伺いをいたします。  きょうの意見陳述、また宮脇参考人のあらかじめいただいた講演録の中でも、与党総会屋と野党総会屋ということについて触れておられます。政治世界と同様、総会屋世界でも与党、野党というのはあるんだなというふうに感じたわけでありますが、与党総会屋であれ野党総会屋であれ、総会屋であることにはまず間違いないんだろうと思いますね。  ところが、与党総会屋、野党総会屋というふうに、そういう概念でくくられているわけですから、恐らくその実態、あるいは何らかの手口に違いがあるのではないかなというふうにも思いますし、あるいは企業との関係で時に与党になり時に野党になりと、こういうこともあるのかなというふうに考えるわけでありますが、その点、どのような実態なのか、お教えいただければありがたいなと思います。
  41. 宮脇磊介

    参考人宮脇磊介君) 委員御指摘のとおり、与党総会屋、野党総会屋というふうにはっきり分かれて存在しているわけではなくて、ある会社に対しては与党総会屋であり、ある会社に対しては野党総会屋であると、あるいは専ら野党総会屋をもって業となしているというような、そういうさまざまでございます。  与党総会屋は、申すまでもなく会社の議事進行をスムーズにさせたいという要求に沿って、そして事前に余りトラブルがないように、それから株主総会の当日、スムーズにいくように、しゃんしゃんといくようにという手はずを整えていく立場でありますし、逆に野党総会屋の方は、それを妨げて邪魔するぞということで、嫌がらせ、おどしをして、それによって全員を得ようと、こういうものでございます。
  42. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 宮脇参考人の講演録によりますと、日本総会屋存在が確認されたのが一九〇二年ということでありますので、もうこれは古い歴史があるんだなというふうにも思いましたし、日本社会構造そのものと非常に深いかかわりを持ったやみの存在だということもよくわかりました。  ところで、総会屋株主という地位を利用して企業に不正行為を働きかける、こういうこともあるんでしょうけれども、専ら企業の側が総会屋をむしろ積極的に利用する、総会屋に働きかけるというふうな実態はないんでしょうか。あるいはまた、それがいわゆる与党総会屋なんでしょうか。そこらあたりの件についてお伺いいたします。
  43. 宮脇磊介

    参考人宮脇磊介君) 委員御指摘のとおりでございまして、商法改正前は、証券会社総会屋を上場する株式会社に紹介をしていたというふうに聞いております。また、委員御指摘のように、昔からやはり総会屋企業とのつながりは深かったようでございまして、このたびの第一勧銀あるいは四大証券に関連した総会屋の親分だった人のまたその親分でございますか、亡くなった人でございますが、有名な総会屋がおりました。その人の名前を私が承知いたしましたのは、これは警察の現役のころ、下からの暴力団担当刑事の方からの筋ではなくて、ある財閥の当主の人からその名前と人となりを聞いたのが始まりであるということでもございますが、そのように日本企業社会と密接にかかわっていたものと思われます。
  44. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 ところで、宮脇参考人、よく総会屋とか、あるいはかぎ括弧で企業ゴロだとか新聞ゴロだとか、そういうふうな言い方がなされます。あるいは、総会屋、かぎ括弧企業ゴロ、かぎ括弧新聞ゴロを総称して総会屋等というふうな呼び方をしておられる人もおるわけでございますが、それらの総会屋企業ゴロ、新聞ゴロと呼ばれる人たちの具体的な不正行為を働く警察用語で言う手口みたいなもの、なるたけ具体的にこういう手口があるよというふうなことをお教えいただければありがたいなと思います。
  45. 宮脇磊介

    参考人宮脇磊介君) 最近の状況などにつきましては、むしろ現役の警察の人にお聞きいただいた方が詳しいことはおわかりだと思います。  新聞ゴロはいわゆるブラックジャーナルと言われるものでございまして、ミニコミですとか、あるいはちゃんとしたれっきとした雑誌もございますけれども、スキャンダルをそれに載せるぞということで、また事実載せたりしまして、それによって企業に嫌がらせをして、そしてそれをもって金を得ていくというものでございます。会社ゴロというのはそういうコミュニケーション、メディアを持っておりませんけれども、それに類することをやっていくものとして把握をされてまいりました。  それで、おっじゃられるように、このちょうだいしました資料にも出ておりますけれども、警察の方では総会屋等ということで、かねてから総会屋とそれから新聞ゴロ、企業ゴロということで総会屋等と総称しておりますけれども、私としてはかぎ括弧つき右翼、これもやっぱり同じような類型に入れなければいけないのじゃないかなというふうに思います。まして、今はもう冷戦が終わって七年、八年にかかるところでありまして、右翼というものの意味合いというものが社会的に変わってきているはずでありますし、また社会的に変わっているものととらえて考え方を整理していかなければならないんじゃないか。そこのところがはっきりしていないために妙なグループの跳梁を許していることにもなっているんではないかなというふうに思います。  なお、銀行だけをねらうラキティア、ゆすり、たかりの徒がいることを私は承知しております。これは銀行だけをねらっている者について銀行のトップの方から個人的に相談があって、何行からも御相談がありまして承知をしたものでございますけれども、銀行ラキティアというふうに私は命名したのでございますが、彼らに共通しておりますのは、昭和三十年代まではいろいろ暴力行為でございますとか恐喝ですとか詐欺ですとかいろんなことをやっておりますが、四十年代に入りますとぴたっと共通して警察の厄介になっていない。  それはどういうことかなということでございますが、私なりの見方は、四十年代から会社の方で、企業の方で金で済むことなら金で済まそうという世の中になったんじゃないかということ、それから特に捕まっていないのは銀行相手でございますが、銀行は決して警察にそういう問題について届け出をしないということを意味するんではないかなというふうに思いました。そして、その銀行ラキティアの中には、もともとは何にも無一文みたいな姿だったのが、数年大都市に行ってまた田舎の方に帰ってきたときにはゴルフ場をつくり始めたというような者もおります。
  46. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 宮脇参考人の講演録によりますと、現在総会屋が約一千人ぐらいおるということでございますが、一方で昭和六十年から六十二年ごろにかけて日本総会屋のグループ化現象があるんだという指摘もあります。さらには、総会屋が表看板の政治結社を設立して政治献金みたいな形でお金を集めておる、こういうことを指摘する人もおるんですが、それらの実態についておわかりの範囲でお教えいただければありがたいなと思います。
  47. 宮脇磊介

    参考人宮脇磊介君) これも最近の状況は警察の現役の者にお聞きいただけるとありがたいと思うのでございますけれども、総会屋に限らず暴力団右翼もそれから手形ブローカーですとか、そういうのも二枚看板、三枚看板を持つというのが普通でございまして、それぞれやっぱり得手不得手がある。同じ暴力団でも、総会屋に向くのとそれからかぎ括弧つき右翼に向くのと、企業に行くのにふさわしいようななりをしている者は総会屋になれますし、それからやっぱりスピーチができないとかぎ括弧つき右翼にはなれないとか、さまざまな制約はあるようでございますが、もうそこら辺は極めて流動的とお考えいただいて結構かと存じます。
  48. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 きょういただいた宮脇参考人のレジュメの中で、対策一つとして調査業法、探偵業法の制定ということを指摘しておられます。私もかねがねこの探偵業という実態についていろいろ疑問に思うところがありましたし、また私も二十六年ばかり弁護士をやっておりますけれども、弁護士という仕事を通しても非常に不可解な存在だなというふうに思うことも多々あったわけでありますが、この調査業、探偵業と総会屋とのつながりみたいなのがあるのか。それから御提言があった対策としての意味みたいなものを少しお聞かせいただきたいと思います。
  49. 宮脇磊介

    参考人宮脇磊介君) 現在警備業につきましては、これはもう既に二十年ぐらい前になりましょうか、法律もできまして、きちんとした形でそういう要員の教育訓練でございますとか、間違いのないような、安心して企業が雇えるような形で、あるいは個人がお願いすることができるような形で今運営されておりますけれども、興信所でございますとかそういういわゆる調査業、これについては法律がございません。規制がされないままになっております。  そこで、この探偵業なり調査業といったものに物をお願いする人というのはみんなトラブルを抱えている人が多いわけでございますね。しかも、人に言えないような問題、弁護士さんの場合には弁護士法でございますかきちっとした法律が昔から整っておりますけれども、そういう探偵業には全くない。そこで、悪いのがそこに目をつけましてそういうのをやっていると。  そうすると、困ってそこに泣きついていく人も、それからまたその探偵業に物を頼んだその相手サイドの人、これもまた秘密、スキャンダラスなことに関連しているわけでございますが、両方とも秘密を持っている。その秘密を探偵業の者が握る、そしてその情報を自分で使ったり、あるいは人にその情報を売ってそして利益を得させたりということが行われているというふうに、数はごく少のうございますけれども、そういったことを私も承知いたしておりまして、こういうことは社会上ゆゆしき問題であるというふうに存じております。  警察の方にも聞いたことがございますけれども、警察の方でも努力はしているようでございますが、現在のところまだ実態がよくわかっていないというようなことでございまして、こういう実態の把握につきましては、警察もさることながら、マスメディアの調査報道でございますとか、そういったことにも期待が寄せられるところであろうかと、さように存ずるものでございます。
  50. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 最後に渡邊参考人にお伺いをいたしますが、総会屋の根絶あるいは総会屋との絶縁に向けた対策として弁護士や評論家から、例えば総務部長だとかあるいは総会担当者などが利益供与事件などを惹起した場合に、即社長にも責任が及ぶ社長連座制の採用などを提言しておられますが、これは民事上、刑事上の恐らく連座ということなんでしょうけれども、どのような法規制が考えられるのか、お話を例えればありがたいなと思います。
  51. 渡邊顯

    参考人渡邊顯君) 御指摘の点は大変に難しい法律上の問題を抱えていますね。要するに、一種のいわゆる連座制を設けようと、こういうことだろうと思いますが、先ほども申し上げましたとおり、総会を担当する者が全国に三万人もおって、本当に上が知らずに利益供与を犯してしまったとすれば、それを連座制でひっくくるというのはどうも均衡を失するなと、このように思われますし、どうも怪しいなという場合には、立証の問題で逃げ切れるというのは非常に国民世論としては落ちつかないという部分がある。この折り合いなんだろうと思いますね。これを立法的にどのような方法があるかと聞かれましても、私も今のところノーアイデアでございます。お役に立ちません、申しわけありません。
  52. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 終わります。
  53. 橋本敦

    ○橋本敦君 きょうは、三人の参考人の皆さん、貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。私からも順次御意見を伺わせていただきたいと思いますが、最初に神崎参考人にお願いいたします。九月二十六日の読売新聞で神崎参考人が、「余りに甘い職業倫理」ということで御指摘をなさっているのを拝読いたしました。この中で私も大変大事なことをおっしゃっているなと思いますのは、日本企業社会はいかに金をもうけるかが優先をして、大事な企業倫理、職業倫理が軽く扱われてきているのじゃないか。そういったすき間に総会屋がはびこるというような社会的条件があるということを御指摘になっていらっしゃるわけですね。  そこでそのすき間の問題として、会社経営陣は総会屋に金を渡さざるを得ないような暗部を抱えているというそのこと自体を問題としてしっかり自覚しなきゃならぬのじゃないか。そして、総会屋に握られる暗部というのが企業のトップだけの問題じゃなくて、実態が暴露されれば政官財界を揺るがしかねないいわゆるVIP口座の存在、これは情報開示が不十分なんですが、そういうものがあるということもこれまた総会屋をはびこらせる一つの要因になっているんじゃないかということを指摘なさっているんです。  私も全くその御意見には賛成なんですが、実際に今までのいろいろ総会屋が暗躍した事件をごらんになっていただいて、やっぱり会社の幹部が何らかの弱みを握られているという問題が大きな要因になっているという事例等、具体的に御認識なさっていらっしゃるわけでしょうか。
  54. 神崎倫一

    参考人神崎倫一君) 大変大きな問題になるかと思いますけれども、整理します。それは、大変総会屋問題というのは具体的な戦術的な問題かもしれませんけれども、その根を掘っていきますと実は資本主義の危機にかかわってくるんじゃないだろうかという気がいたします。  アメリカ御存じのようにビジネススクール、特にハーバード・ビジネススクールというのはアメリカでもトップに立つようなビジネススクールなんですが、ここで聞いた話ですけれども、ビジネススクールというのは何か基本的にコンプレックスを持っているというんですね。  それはどういうコンプレックスかというと、ビジネススクールというのは割に二十世紀になってからできた大学院なんですけれども、その前に、医学の方でもってメディカルスクールというスクールがあります。これによって博士号を取るわけですね。一方で、これは渡邊先生の方ですが、ロースクールというのがある。大変古いんですね。これはそれぞれ職業倫理がはっきりしているというんですね。医者は何をおいても患者の命を助けなきゃいけない、ほかのことでどんなことがあっても命を助けるのが第一だ。これがもう基本的な倫理。それからロースクールというのは、自分の依頼人の利益を徹底的に図る、たとえもうはっきり殺人犯とわかってもその人間利益を図ると。その極端な例がこの前のO・J・シンプソンみたいなことになるわけですけれども、とにかく一生懸命図る、そういう職業倫理がある。  それに対してビジネススクールというのは、それにかわるのは何だろうかということを悩み続けていた、もう百年近く悩み続けていて、結局、効率的、収益性、そういうものでもって現在割り切っているけれども、それでいいんだろうかといまだに悩んでいるというんですよ。  恐らく日本企業経営者も同じような悩みを持っていて、バブルが破裂するまでは余り矛盾を感じなかった。とにかく収益を上げればいいんだ、手段を選ばないで収益を選ぶと。鄧小平じゃないけれども、白い猫でも黒い猫でもネズミをたくさんとればいいんだと。本当に手段を選ばずに結果オーライ、高収益な会社がいいんだということで来たのがバブルがつぶれるや否や今まで隠されたうみが一斉に出てきた、その一つ総会屋だと。臭い物にはふた、総会屋には金、それでもって済ましてきたのが世の中でもってかくも指弾を浴びて社会問題になる、社長も会長も次々とやめる、四大証券なんかは全部入れかわった、うみを出しちまったと。やっぱり大きな大きな反省期が来ている。  そうすると、企業経営者の職業倫理というのは何だろうか、こんなことは余り同友会とか経団連とか日経連でも議論されませんけれども、そこまで掘り下げて一遍真剣に議論すべきじゃないだろうか。もちろん株式会社ですから、配当もできないでもって山一みたいにつぶれる会社は論外ですよ。しかし、一人前の企業なら、もうけるだけでいいんだろうか。  これからは恐らく環境問題とか公害問題とか、もしくはいかに周りの社会とうまくつき合っていくか、そういうことが要求されるんでしょう。その中心になるのが僕は企業経営者倫理というので、日本の場合には何かそういうことをやらなきゃいけないんだなと思いながらちょっとほかに置いていた。やっと今それを振り返って、二十一世紀に向かってまさに世界でもって通用して、世界のどこに進出しても日本企業が尊敬されるためには、欠けているのは倫理なんですね。そこへ工場を持っていって、銀行の支店を持っていって雇用機会をつくってやるだけじゃだめなので、どうしたら尊敬され喜ばれるか、そういう大きな問題がこの総会屋問題を掘り下げていくと、なぜこんなことが会社ぐるみでもって今までカバーされてきたのか、みんななあなあでやってきたのか。そういう時期に来ていると思います。  そういう意味で、その量刑についてはいろいろ意見もあるでしょうけれども、これだけ法改正までしてという機運が国会で盛り上がったことに対しては、感謝と尊敬を持ちます。
  55. 橋本敦

    ○橋本敦君 ありがとうございました。  次に宮脇参考人にお伺いしたいんですが、調査室がつくってくれた参考資料にも出ているんですが、共同通信社が実施した主要企業五十社対象の株主総会に関する緊急アンケートでも、総会屋への利益供与問題を起こさないために重要なことは、一番多いのがトップの決断だというのが四十二社、それから担当者の意識、これがしっかりしなきゃならぬというのが二十二社、それから法規制の強化は十八社ということでございます。ここでもやっぱりトップの決断ということで、トップの倫理性が鋭く問われているわけであります。  例えば読売新聞の五月二十七日の社説にも、経団連が実施したサラリーマンアンケートでも、企業不祥事の原因としては、経営者の自覚が乏しい、そしてもう一つは、問題があっても指摘しにくい企業風土や体質があるというのが圧倒的多数を占めている、こういうわけですね。  今御指摘があった企業倫理の問題もあるんですが、私がもう一つ宮脇先生の御意見で非常に重要だなと思いましたのは、そういう問題に関連をして、企業倫理だけの問題ではなくして、体制の側の病理現象、これが組織犯罪を繁栄させているという意味で、そこのところもしっかりメスを入れなきゃならぬじゃないかと。その体制の側というのは、お話がありましたように、政治行政企業を含むそういった体制、そこのところをしっかりしなきゃならぬじゃないか、こういうようにおっしゃっているわけです。  そういう意味で、私は、これまで言われてきた護送船団方式ということの中で、大蔵省の管理監督責任ということの関係でも総体的に厳しく反省をし、批判されなきゃならぬ問題がこれに関連してあるというように思っておりますが、御意見はいかがでしょうか。
  56. 宮脇磊介

    参考人宮脇磊介君) 委員御指摘のとおり、この共同通信のアンケートで総会屋への利益供与問題を起こさないために重要なこととして掲げてある四つの項目、その中には先ほど来私が強調いたしております行政チェック機能行政責任の問題が項目としても入っておりません。これは非常に遺憾なことだというふうに思います。  それから、体制側の病理現象ということについてでございますが、私はここ三、四年、ロシアのモスクワ大学あるいは旧KGBアカデミーで組織犯罪のことについてスピーチを求められましたり、それから先週も中国に行ってまいりまして、中国では国家安全部、情報機関でございますけれども、非常にこの組織犯罪の問題について熱心でございます。それから、韓国でも一昨年警察庁組織犯罪の問題についてスピーチを求められました。また、アメリカでも去年の十一月にはワシントンで組織犯罪の本質、ザ・トゥルー・ネイチャー・オブ・オーガナイズド・クライムということでスピーチをいたしてまいりました。  そういうふうに今組織犯罪問題、それからその組織犯罪の本質とは一体何だということについて関心が深うございます。特にロシアだとか中国だとか、冷戦が終わりましてから体制が弱くなって、そのためにマフィアがロシアでは席巻をしている。鉄の規律が強かったころもマフィアがあったというような説もありますし、ステンカ・ラージンがロシアではマフィアの元祖だなんて言われたりしておりますけれども、昔はストリートギャングであったり、あるいはフィッシュマフィアという利権集団であったりしまして、本格的なロシアでのマフィア活動は冷戦後でございます。また中国では、国家安全部の研究機関の人が言っておりましたけれども、鄧小平の改革・開放が始まった一九七八年末からぼちぼちこの組織犯罪問題が出てきて、今はもう手がつけられない状態にあるというふうなことでございまして、これは一に、特に中国の場合には役人の腐敗が大きな原因になっているようでございます。  そういうところから体制側の病理現象ということに着目しなければならないんじゃないかと。また、さらに言えば、逆に宗教的な戒律の厳しい国、そういうところは組織犯罪問題というのは起きる余地がないということからも、申し上げていることが裏づけられようかというふうに存じます。
  57. 橋本敦

    ○橋本敦君 渡邊先生に次にお伺いしたいんですが、株主総会をいかに開かれたものとして活性化させるかという課題もこの改正法案とは別に大事な課題だと思うんです。株主総会白書が商事法務研究会から毎年発表されておりますけれども、九六年版によりますと、株主総会の所要時間が三十分以下が八割を占めているという現状、それから商法改正以後同じ日の時間に多くの会社株主総会が集中して開かれるという傾向が助長されてきたということですね。九七年には東証一部上場の三月決算の会社のうち六月二十七日に集中したのが千七十六社で、全体の九七%ということですね。これは会社から見れば総会屋がいろんな会社に来られないようにしたいという思いもあるんでしょうが、しかしそれで株主総会の活性化が全然できない逆の方に行ってしまっているという現象があるわけです。  こういう状況をどう改善するのが必要かということを、どうお考えになっていらっしゃいますでしょうか。
  58. 渡邊顯

    参考人渡邊顯君) 我々総会指導弁護士にとってもこの集中化傾向というのは大変困った現象でございまして、体一つでございますので年に一社しか指導できない、これは売り上げの激減につながっておるわけでございますが、それはさておきまして。  どの会社もどのトップもいいことと思っていないんですね。いいことと思っていないんですが、何も我が社が天にかわって不義を討つようなまねをすることはあるまいという発想でございますね。ただ、最近はあえて集中日を避けて、しかも土曜とか日曜日に家族連れでいらっしゃい、あるいは終わった後に試食会をやります、ぜひおいでください、あるいはリクルートの大学生などの見学も許している、こういった会社もぽつぽつと出始めている。大変結構なことだと思います。結局のところ、したがってトップの決断ということになってきちゃうんですね。  ただ、気持ちはわからないではないんですね、やっぱり自分のところだけはことしだけは何とかまあと。我々も進言申し上げますが、明年の課題ということになりますが、年に一遍のことでございますので、年が明けて三月ぐらいになってくると、まあ宿題はいただいたけれどもことしもう一遍従来どおりと、こういうことで行ってしまっているということでございます。したがって、やはり株主のものだという意識を持っておいでいただくということでやらなきゃしようがないと思いますね。  ちょっと話が長くなりましたけれども、結局十三時間半もかかった恐怖心というのがかなり根強くあるように思います。
  59. 橋本敦

    ○橋本敦君 もう一点先生にお伺いしたいと思うんですが、かつての商法四百九十四条ですね、これがございましたが、これはほとんど実際に機能できなかった。これが一つは構成要件として「不正ノ請託ヲ受ケ」、この問題にひっかかって極めて少数の、判例で言えば三件しかなかったということもあるんですが、四百九十七条ができてから摘発も進んできた、こういう傾向があることは事実ですね。  それで、今度の改正によって罰則強化だけではなくていわゆる利益の供与要求罪、威迫による供与要求罪ができたということが総会屋の暗躍を規制する上で大いに役立ってほしいと私どもは思うんですけれども、企業の実態からしますと、やっぱり事なかれ主義でおさめたいという意向が強いと、これもうせっかくの法改正も十分機能しないわけですね。  そこのところを私は心配するんですが、そういうことと逆に、総会屋の方から、顔を出して物を言っただけで私は要求していませんよと、威迫といったって何もそんな威迫したつもりありませんよと。先生がさっきおっしゃった、おたくの子供さんかわいいですねと言っただけですよと。こういうことになりますと、せっかくの法改正社会的機能を果たすというのはなかなか難しいということも出てくるんですね。  そこらあたり、そうなっちゃいかぬのですが、今度の法改正総会屋の暗躍を少なくとも抑えていくという方向に機能していくために、企業の方も責任を持ってきちっと報告するとか、今度の場合は要求を受けた場合の報告義務なんというのは法律上出てきませんでしたけれども、どういう運用が具体的に企業も含めて必要だというふうにお考えでしょうか。
  60. 渡邊顯

    参考人渡邊顯君) 確かに御指摘のとおり、立証上の問題はあろうかと思います。決して生易しい話ではないんだろうと思います。実際に立件するとなれば大変なことだろうと思いますが、ただ、そういうことで警察当局と緊密な連絡を取り合う。そうしますと、ここは警察とツーツーだなとなりますと彼らの足も遠のくものなんです。その意味で非常に大きいなと思います。  それともう一つは、じゃ警察に連絡をして立件されなかったらお礼参りが怖いなと、こういうふうにもまたシュリンクするわけですね。これは、もう正直言いまして、会社自身がやはり会社法の勉強をしてもらわぬといかぬと思います。つまり、私どもが株主総会の乗り切り法などについていろいろと申し上げておりますけれども、どうも総会のプロという担当者が多くいるわけですね。今回の事件でもそういう方がいらっしゃった。若造の弁護士が何を言っているんだと、そんな甘いもんじゃないよというような感じで、聞く耳を持たないという傾向がなきにしもあらずなんですね。だからそういう意味では、やっぱり勉強していただかないといけないなと、勉強していただければ乗り切ることはさほど難しいことではないんです。  実際に、従前にいろんな事件があったときに、手を切って、そして手を切ったがゆえに総会屋がわっと来たというケース、私も経験をいたしました。手を切ってからそこの御指導をすることになったわけですが、実はもう株主総会に関連する法律のイロハが発育不全で退化しちゃうんですね。つまりしゃんしゃん総会を頼んでいますと、何のノウハウもなくなってしまう。そういう傾向がありますね。だから勉強してほしい。手を切ったところは三年ですね、経験的に言いますと。三年我慢すれば四年目からは平穏になります。  あと、三十分で終わっているというのは、これはやっぱり質問がないからなんですね、つまり散ってしまって。そういうときには別シナリオか何かを用意しまして、総会屋が来たときにはしょうがない、ある程度強硬な運営もやむを得ない。総会屋がない場合にはもう少し柔軟にやっていくというシナリオを二つぐらい用意して差しかえるというようなことをやってもどうだろうと、こういうふうに申し上げますが、当日緊張して混乱してわからなくなるからこれでいきますと、これが実態なのでございます。
  61. 橋本敦

    ○橋本敦君 ありがとうございました。  終わります。
  62. 風間昶

    委員長風間昶君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々一言御礼のごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。本委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  午前の審査はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十四分休憩      ―――――・―――――    午後一時三十分開会
  63. 風間昶

    委員長風間昶君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、商法及び株式会社監査等に関する商法特例に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  64. 釜本邦茂

    ○釜本邦茂君 自民党の釜本でございます。引き続き御苦労さまでございます。  さて、総会屋企業倒産、損失補てん、不正融資等々の言葉が朝起きてから夜目を閉じるまで入ってくる今日でございます。既に昭和五十六年にこのような総会屋を根絶するための商法四百九十七条が制定されたということですが、その経緯について教えていただきたいと思います。
  65. 森脇勝

    政府委員(森脇勝君) 商法四百九十七条の利益供与罪は昭和五十六年の商法改正で新設されたものでございます。  その経緯でございますが、その時点におきましても総会屋の活動が激しいものがありまして、これが一般株主総会から遠ざけ、総会屋に仕切られた株主総会という形で株主総会が形骸化された存在になっていったわけでございます。そうした中で総会屋対策としての法整備の必要が指摘されたわけでございます。  実は、この昭和五十六年商法改正前は会社荒らし等に関する贈収賄の規定、現在の四百九十四条がございました。これは株主総会における発言または議決権の行使に関して不正の請託を受けて財産上の利益の収受をした者を処罰するという規定でございました。この不正の請託があった場合に限り処罰が認められるということにとどまったわけでございますが、このように総会屋がはびこるのはこれを利用する会社側にも責任があるのではないか、会社側の不正支出行為を規制しなければ根本的な対策にはならないのではないかと考えられたわけでございます。そうした経緯から昭和五十六年にこの利益供与罪の新設に至ったというふうに認識しておるところでございます。
  66. 釜本邦茂

    ○釜本邦茂君 当時といたしましては関係者の皆さん方のお力で本当にベストの知恵を絞ったというにもかかわらず、昭和五十六年以降もやはり依然として総会屋を根絶することができなかった、そしてそれが今日に至っているということでございますが、なぜ総会屋を根絶することができなかったのでしょうか。
  67. 森脇勝

    政府委員(森脇勝君) この昭和五十六年の商法四百九十七条の新設によりましてそれ以降総会屋の数が減った等の法律効果というものは一応上がったのではないかと認識しておるところでございますが、現に最近これだけ総会屋が活動する事件というのが摘発されております。したがいまして、総会屋を根絶するには至らなかったというのはこれは認めざるを得ないわけでございます。  その原因でございますが、これはいろいろあろうかと思いますが、会社が自己の会社のスキャンダル等を流布されないといったいわば防衛的な態度から総会屋に安易に妥協する、あるいはできるだけ議論をせずに株主総会を終わらせようといった風潮、経営陣の意識の問題といったようなものが現在まで総会屋を根絶できない原因だったのではないかというふうに考えておるところでございます。また、この四百九十七条の刑罰が十分な犯罪抑止力を持たなかったという面があるのかもしれないというふうにも考えております。
  68. 釜本邦茂

    ○釜本邦茂君 前回の法改正総会屋の根絶のために全くならなかったとは言いがたいというぐあいに思いますが、今回の法改正ではどのような点が総会屋の根絶のために効果的であるとお考えであるのでしょうか、お聞かせください。
  69. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) お答え申し上げます。  御指摘のとおり、いわゆる総会屋をめぐる事犯につきましては、昭和五十六年の商法改正後、利益供与あるいは受供与という罪によりまして二百名以上の者が起訴される一方、総会屋として把握されている者の数も五十六年以降減少していると聞いており、これらの罪を新設いたしました法改正、そのもとにおきまして捜査当局としても活動させていただいたことはそれなりに一定の効果を上げたものと考えているのでございますけれども、最近の状況を踏まえまして、やはりその抑止力という観点から若干の問題があったのではないかということが意識されてきたというふうに考えております。その上で、今回の改正による罰則の強化が実現されますと、この種の犯罪の撲滅にさらに相当な効果が上がるというふうに考えているわけでございます。  その幾つかの中身でございますが、まず利益供与・受供与罪等の法定刑が大幅に引き上げられることになります。つまり、立法府におきましてこの種の犯罪が非常に重くとらえられているということの国家意思の表明がそこでなされるわけでございまして、これにつきましては捜査当局、またこの種の事象に携わるすべての者がそのように理解してまいるというふうに考えるのでございます。  また、新たに利益供与を要求する罪を設けていただくということを提案しております。会社側がいわゆる総会屋から不当な要求を受けた段階で直ちにこれを捜査当局に届け出ましてその処罰を求めることができるようになるわけでございます。これによりまして、会社関係者といたしましては総会屋に対して毅然たる対応をとることがより容易になるというふうに考えております。  また、あわせまして、威迫を伴って利益供与を要求したりあるいは受けたりする罪を新設いたしまして、その懲役刑の上限を五年とすることが提案されております。こうした悪質な態様の行為に一層厳正に対処するということが可能となる上、この場合は公訴時効期間も従来の三年より長い五年とされることになりまして、これらを合わせますと私どもといたしましては相当な抑止力が生ずるものというふうに考えます。
  70. 釜本邦茂

    ○釜本邦茂君 総会屋というものが要求する、また威嚇するというようなことにおきましては、やはり警察当局と企業側とがきちっと手を携えていかなきゃいけないことじゃないかというぐあいに思います。  今回の商法等改正以外に、総会屋対策のために有効な法整備として法務省は何かお考えがあるのでしょうか。
  71. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) 今回御提案させていただいております商法改正以外では、組織的な犯罪に対処するための刑事法の整備について現在検討を続けさせていただいているところでございます。本年九月十日に法制審議会の答申を受けまして、できるだけ早く国会に御提案させていただくために作業を続けさせていただいているものがございます。  その内容の一部といたしまして、いわゆる反社会的な各種の勢力がございます、それらの勢力のいわば正当な社会活動、経済活動への侵入を阻止するということなどを主要な目的といたしまして、犯罪によって得られた利益について適切な規制を行うということが考えられております。そして、犯罪によって得られた利益を隠したりあるいは収受したり、これらは国際的にもマネーロンダリング行為ということで意識されて、各国共通の立場で規制していこうという中の一環であるわけでございますが、そのようなマネーロンダリング行為を直接処罰する規定の新設や、また犯罪によって得られた利益の没収・追徴制度をより充実していこうという立場からの規定が盛り込まれることとなると考えております。  そのようなことにより、商法上のいわゆる総会屋等をめぐる犯罪に関しましてもこれらの規制の対象とすることとされておりまして、かかる規制によりましてより一層効果は期待できるものというふうに考えている次第でございます。
  72. 釜本邦茂

    ○釜本邦茂君 では次に、株主総会総会屋に対する会社側の意識の問題について何点かお聞きしたいというぐあいに思います。  テレビ、新聞報道等によりますと、毎年株主総会が一定の日に集中して開かれるようでございますけれども、このようなこと自体が問題であるというように私は思うわけでございます。この点について法務省としてはどのようにお考えであるのか、お聞かせください。
  73. 森脇勝

    政府委員(森脇勝君) 会社は毎年一回一定の時期に定時株主総会を招集しなければならないという規定になっております。その定時総会を招集するためには、株主を確定する必要がございます。そのためには、株主名簿を閉鎖するか、あるいは株主確定の基準時を設ける必要があるわけでございますが、この株主名簿の閉鎖期間及び基準日が効力を有する期間は三カ月を超えることができないと、こういう規定になっております。世上、三月末が決算期であるという会社が大変多いわけでございまして、これらの会社におきましては決算期の三カ月後、すなわち六月の末ごろの一定期間に株主総会が集中してしまうというのは法制上やむを得ない面があると思っております。  ただ、これも新聞等で、大会社が特定の日の特定の時間に株主総会を開催するというようなことが報ぜられておるところでございまして、これにつきましては、定時総会の開催日が特定の日になりますと、複数の会社の株式を所有している株主にとっては株主総会への出席及び発言等の機会が奪われるということになるわけでございまして、六月のある程度の期間という中でも日をずらす、あるいは時間をずらすといったような工夫をした上で、こうした株主の権利保護の観点から経営者が行動をとる必要があるのではないかというふうに考えておるところでございます。
  74. 釜本邦茂

    ○釜本邦茂君 聞くところによりますと、株主総会の平均的な所要時間が三十分以内でしゃんしゃんと終わってしまうというようなことでございます。知る限りで結構でございますが、この数年間の平均所要時間というのは大体どれぐらいなのでしょうか。
  75. 森脇勝

    政府委員(森脇勝君) 上場会社の一部でございますが、千九百二十七社について最近五カ年の株主総会の平均所要時間を調べたものがございます。それによりますと、平成五年は平均いたしまして二十八分、平成六年は二十五分、平成七年は二十七分、平成八年は二十六分、平成九年は二十九分ということで、おおむね三十分以内と平均時間はなっておるということでございます。
  76. 釜本邦茂

    ○釜本邦茂君 今お聞きしましたように、本当に短時間で済まそうという傾向でございますが、企業の一年間の総決算である株主総会で何も意見がないということは社会常識では考えられないというように思います。  よくマスコミ等で予算委員会云々という中で、橋本総理などは体調を崩していても一日じゅうくぎづけで議論され、それが数日続くということでございますし、また私たちのサッカーの場合においても、九十分間で決着がつかない場合、延長戦を三十分やる、本当に体力の限りすべてをさらけ出して勝負を決するというような、これはまた別問題のことかもわかりませんが、そういうことで十分な論議を尽くすということが当たり前だというぐあいに思うんです。  そういう株主総会の形骸化を防ぐための方策として、最低の所要時間を法律で規定するということは立法技術的に見て非常に難しいことかもわかりませんが、今までどのように改善されてきたか、お聞かせ願いたいと思います。
  77. 森脇勝

    政府委員(森脇勝君) 株主会社の所有者でありますし、株主総会会社最高の意思決定機関でございますから、そこで株主が質問をし、また経営者がそれに対して真摯に答えるということを繰り返していくことが株主総会を活性化させる必須の要件ではないかというふうに考えておるところでございます。  そこで、株主総会の形骸化を防ぐということのために、少数株主株主総会での議案の提出権を認めたとか、取締役及び監査役に株主からの質問に対して説明する義務を課した、あるいは総会の混乱防止のために、議長に秩序を維持し議事を整理するとともに秩序を乱す者を退場させる権限を与えたといったような改正を加えてきたところでございます。  委員御提案の、株主総会に要する時間を法定するという考えでございますが、これはそれぞれの会社の規模あるいは出席株主の人数、議題の数あるいは議題の内容といったことによって所要時間というのは定まってくるものだろうと思っておりますので、一律に最低の所要時間を法定するというのは妥当ではないのではないかというふうに考えておるところでございます。
  78. 釜本邦茂

    ○釜本邦茂君 総会屋に対する利益供与等の捜査の発端は監査役による監査の結果ではないと聞いておりますが、それは監査役による監査が十分に行われていないということを意味しているのではないでしょうか。その原因には監査役の人事がほとんど経営のトップの意向で決まっているという点にあるのではないかと考えますが、この点について法務省はどのようにお考えでしょうか。
  79. 森脇勝

    政府委員(森脇勝君) 確かに監査役の選任については、代表取締役が提出する選任議案に基づきまして株主総会において決定される、こういう仕組みになっております。この場合に、その選任議案を提出できる代表取締役の意向が強く反映するのではないか、これを減殺する必要があるのではないかという観点もございまして、監査役に対して、株主総会において監査役の選任について意見を述べることができるという規定を用意したところでございます。その旨の改正がなされたところでございます。  また、平成五年には、大会社についてではございますが、社外監査役の制度を採用していただきました。これによって第三者的立場から経営トップに対して意見を述べることができるようにということが期待されているところでございます。  現在、仮に代表取締役の顔をうかがって適正な監査がなされない、それが経営トップの大事に基づくものであるとするならば、それはどちらかというと経営者の意識の誤りでございまして、会社のために適正な意見を述べてもらう、これが本当に会社の発展のためにつながるんだと、こういう意識を経営者の方に持っていただく必要があるのではないかというふうに考えておるところでございます。
  80. 釜本邦茂

    ○釜本邦茂君 今、社外監査役制度の活用ということが述べられましたけれども、現在、大会社の監査役は三人以上、そのうち一人は社外監査役とされていますが、その社外監査役をもっとふやすべきではないでしょうか。いかがなものでしょうか。
  81. 森脇勝

    政府委員(森脇勝君) 社外監査役の制度は、確かに第三者的な人物を監査役の中に加えることによりまして監査の判断の適正を図り、監査の実効性を確保しようというねらいに基づいたものでございます。したがいまして、社外監査役をふやすということはより客観的な監査を期待するということになる一面がございますが、その反面、社外監査役は社内の実情になれておりませんで、むしろ社内出身の監査役の方が会社の業務執行に通じている、また監査の要点を心得ることができるといった立場にございまして、社内の実情に詳しい社内出身者というものも必要でございます。  そこで社外監査役を増加させるということは、社内の実情に詳しい社内出身者の監査役を減少するということでございまして、その結果として監査の形骸化を生じはしないか、あるいはそれだけの数の社外監査役適任者がいるんだろうかといったような議論がございまして、平成五年の時点では三人のうちの一人以上と、こういう規定にいたしたところでございます。
  82. 釜本邦茂

    ○釜本邦茂君 今、金融、証券、それからまた企業におけるこういった総会屋の問題に対して、一般の人々というものは本当に驚きとともに恐れおののいているという点もあろうかというぐあいに思います。今回のこの法改正によりまして、総会屋と言われる人たちが本当に根絶できるようになればというように思います。  最後に、この総会屋の問題に対して、法務省を含め政府全体としてどのように取り組んでいかれるのか、大臣の御決意をお聞かせ願いたいと思います。
  83. 下稲葉耕吉

    ○国務大臣(下稲葉耕吉君) この委員会におきましても、総会屋の問題に関連いたしまして商法改正の御議論が熱心に行われているところでございますが、いわゆる総会屋という言葉は私は本当はあってはならない言葉だと思います。昭和三十年代ごろには五、六千人ぐらいいたというふうに記憶いたしておりますけれども、だんだん減りまして千七百になり、今は千名ぐらいだと。要するに、株主総会に寄生じまして反社会的な行為を繰り返している存在総会屋でございまして、こういうふうな人たちの根絶を図らなくちゃならないというのは、これはもう私たちの願いでございますし、何とか実現したい。  そこで、今回の一連の総会屋事件を振り返ってみまして一つの特徴的なことは、今までは会社の総務部の人たちが責任を追及されていたというのが大体のところでございました。今回は総務部じゃなくて企業最高責任者が直接責任を問われたというふうなところに特色があるわけでございまして、いわゆるしっぽ切りの段階ではなくて本体まで進んできた。私どももいわゆる企業責任者の方々にいろいろ総会屋対策についてお願いすることも多いわけでございますけれども、やはり企業のトップの方々が、これじゃいかぬ、何とか本腰で取り組まなければならないというふうな気風を感じておられるのを私はひしひしと実は感じているわけでございます。  そういうふうな総会屋根絶のために政府全体の施策といたしましては、既に御承知のとおり、関係閣僚会議を本年の九月五日に開きまして総会屋対策要綱を決めました。さらに十月二十八日には、業界団体における企業経営者の意識改革を支援するなどの諸対策を決めまして、一層推進している最中でございまして、それぞれの省庁に対応する団体なり企業なりいろいろお話を進めて、政府全体として今この対策に取り組んでいる最中でございます。  そういうふうな中で法務省も、ただいま御審議いただいておりますように商法の罰則の強化を中心とする商法改正でございますとか、あるいは、ただいま刑事局長からその一部を説明いたしましたが、組織的な犯罪に対処するための刑事法の整備という法律面の整備が一つございます。それからまた具体的には、検察当局におきます総会屋等の犯罪に対する徹底した処置というふうないわゆる法執行面からの厳正な対処という問題がございます。  それから、法務省といたしましては、日弁連、日本弁護士連合会に対しまして総会屋問題について一層積極的に対応してもらいたいという要望もいたしまして、日弁連もそれをお受けいただきまして、管下の弁護士会に通達を出されて、積極的に企業等々からの相談があったら対応するようにというふうな対応もしていただいております。  さらに、私みずから、官房長官及び関係閣僚とともに、経団連初め十二団体のトップの方々に直接お会いいたしまして、総会屋と絶縁するよう要請をもいたしました。  釜本委員御指摘のとおり、総会の時間が短過ぎるじゃないか、形式的じゃないかというふうなお話もし、国会では総理以下一日張りつけで審議に応じておられます、それぐらいの気概でおやりになったらどうですかという具体的な話までそういう御相談の会議で出たことも事実でございまして、私冒頭に申し上げましたように、やはりせっかくの機会、もうこの機会を逃して総会屋の根絶はないと。逆に言いますと、あのような検察の検挙という処置を受けますと社会的な信用も失墜するので、会社の再建にも相当の期間がかかるというふうなこともおっしゃっているんです。  そういうふうなことでございますから、今が総会屋を根絶する時期ではなかろうかというふうなことで取り組んでおられるようにも見受けますし、それ等々総合的に対策を推進して、もう総会屋という言葉がなくなるように、そういうようなところまで推進してまいりたい、このように思います。
  84. 釜本邦茂

    ○釜本邦茂君 ありがとうございました。
  85. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 平成会の魚住裕一郎でございます。  今週は総理がカナダに行っておられて、APECが開催をされました。総理の活躍あるいは記者会見におけるパフォーマンス等とは裏腹に、アメリカの新聞でしょうか、一面にグッドバイ・ジャパン・インクという大きな見出しで、山一証券社長の涙の顔写真が写っておりました。本当に今の日本の状況を物語るような状況だな、日本企業と暗黒社会とのつき合いが日本社会の不透明さと相まって非常に日本のイメージを悪くしているんではないかなと私は思っております。  また一方、法律学の一端を学んできた者として、昭和四十年代後半ですか、一株運動とかあるいは企業社会責任ということが非常に議論されました。そしてまた、昭和五十年代半ばにおいてこの利益供与についての改正がなされました。それから十五年たっているわけでございますけれども、いまだにこのようなことを議論しなきゃならないということは非常に私は残念に思っております。  ところで、外国にはいわゆる総会屋がいないというふうに聞いております。これはなぜなんだろうかというふうに私もなかなか考えあぐねているところでございますが、ある意味では日本の特殊性というものなのかなというふうに思います。  その辺のところについて、警察の実務経験の長い、そしてまた法秩序維持に御造詣が深い法務大臣の御認識をお教えいただければ幸いでございます。
  86. 下稲葉耕吉

    ○国務大臣(下稲葉耕吉君) おっしゃるように、外国には総会屋なるものの存在はございません。ただ、正確に申し上げておきますと、ドイツではいわゆる議決権の買い取りにつきまして当事者を処罰する法律がございますし、フランスでも似たような法律がございますが、いわゆる総会屋なるものの存在日本の特有なものだと思います。  そこで、じゃどういうふうな理由だろうかということでございますが、欧米諸国の経営者と比較いたしまして、我が国の経営者というのは会社の体面を保つために安易に総会屋に妥協している面があるんじゃないか。例えば、個人的なスキャンダルだとかあるいは会社の不祥事等々に関連いたしまして、そういうふうな話があるとやはり会社の体面を保つために安易に妥協する。そしてまた、株主総会におきましても、本来ならばやはり株主総会というのは堂々と時間をかけて、場合によっては何日やったって構わないわけですから、一年に一回の総会でございますので、そういうような形で、会社はだれのものかという議論がございますが、株主経営者との間で意思が十分通じて、そして健全な会社運営が行われる、そういうふうな形が私は望ましいと思います。  ところが、そういうふうなことではなくて、できるだけ余り議論しないで、政府委員から今話がございましたように、上場企業の千五百社が平均して三十分足らずで行われるというふうな実態等々というのは私は望ましい株主総会あり方ではない、このように思います。  そういうふうなことで、基本的には企業の風土と申しますか、そういうふうなものが総会屋を生む温床になっているのではないか、こういうふうに推測いたしております。  また、反面から申し上げますと、今お願いいたしておりますような面で罰則規定が抑止力として果たして十分機能したかどうか。これは基本的な問題じゃございませんけれども、そういうふうな側面もやはりあるんじゃなかろうか、このように思います。
  87. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 おとといこの委員会で本法律案の審議がなされました。その日にちょうど野村証券利益供与事件初公判がありまして、夕刊では各紙いろんな形で検察側冒頭陳述の要旨ということが載っておりました。私も興味深く二、三読ませていただきました。私の手元にあるのは読売新聞のまとめなんでございますが、「小池隆一の総会屋としての活動状況等」についてという項目の中で、今までの総会屋活動というんでしょうか、それがずっと載っております。  昭和五十六年くらいまでは大体賛助金目当てに企業に出入りをしていた。それから、商法改正が施行されたことを契機に一時総会屋としての活動を停止し、また五十九年から再開をしていると。それから、その後においては、賛助金名下にお金をもらうということではなくして、総会屋が発行する情報誌を、これは企業側ですが、情報誌を購入し、また購読料名下に現金を供与、さらには飲食費のツケ回し、さらには転換社債や新規公開株の発行ラッシュを迎え相当程度プレミアムが見込まれる商品等を供与してきたと。非常にこの冒頭陳述書の中で今までの動きがずっと、随分手口が巧妙になってきたなというのが本当によくわかるのであります。  昭和五十六年の改正のときに、六月二日ですか、当参議院の法務委員会で附帯決議をし、総会屋のばっこがないように、また形式的な、形骸化した株主総会にならないようにということで努力せよという趣旨の附帯決議もつきました。この手口が巧妙になってきた、あるいは額が大きくなってきた、あるいは法務大臣先ほどおっしゃったようなトップまで行くようになってきたと。  それにつきまして、法務省あるいは警察においてどのようにこの十五年間ごらんになってきたのか。そしてまた、何ゆえこの十五年間逆に言えば放置してきたのかなという疑問もございまして、その辺のところをお教えいただきたいと思います。
  88. 吉戒修一

    説明員吉戒修一君) お答え申し上げます。  いわゆる総会屋をめぐる事犯の動向についてでございますが、昭和五十六年の商法改正後、利益供与罪、それから受供与罪によりまして二百名以上の者が起訴されております。他方、いわゆる総会屋として把握されている者の数が昭和五十六年当時は警察の調べで一千七百名だったと。ところが最近では一千名というふうに減少していると聞いております。したがいまして、昭和五十六年の改正によりまして、利益供与罪等の新設をした法改正の効果、あるいはこれに基づきます警察当局の摘発活動、これは一定の効果を上げているというふうに考えております。  しかしながら、委員御指摘のとおり最近の事件では利益の供与額が極めて巨額でございます。また手口も巧妙化しております。それから、金融機関等の最高幹部が関与いたしまして会社ぐるみで犯行に及ぶというふうに悪質、重大化が進んでおります。  したがいまして、総会屋の活動が我が国の経済社会に深く浸透いたしまして これを内側からむしばみつつある状況が認められる。そういたしますと、総会屋をめぐる事犯に対します現在の商法等の罰則の規定が現在におきましては十分な犯罪抑止力を持っていないということが明らかになったというふうに考えます。  そこで、いわゆる総会屋の根絶を図るとともに、会社経営の健全性を確保いたしますために、株主の権利の行使に関する利益供与罪及び受供与罪等の罰則の強化が緊急の課題になったということから、今回の罰則強化の法案の提出をいたしまして、法案の御審議をお願いしているというところでございます。
  89. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 警察の方も。
  90. 宮本和夫

    説明員(宮本和夫君) 総会屋企業から不正に利益を受ける手口につきましては、商法改正以前におきましては、祝儀とか会費とか寄附等、名目はさまざまなものがあったにせよ、企業から直接現金を受け取る形態が多く見られたところでございますが、最近の検挙事例等を見ますと、つき合いと称した情報誌の講読要求を初め、広告掲載要求、また下請参入要求、融資要求など、いろいろな名目で経済取引を装いつつ不当要求を行っている実態にございます。  また、昭和五十六年以降一たん企業の側が総会屋と縁を切った後も、長時間総会などが行われて、それを乗り切るためにということで、悪質な総会屋の活動実態を見せつけてまた関係を再開する、このような実態も見られるところでございまして、複雑巧妙化、悪質化がうかがわれる状況でございます。  そこで、警察といたしましては、従前より暴力団総会屋等に対する徹底した取り締まりとあわせまして、各種経済団体の会合や各都道府県に設置されている企業防衛協議会等の場など、あらゆる機会を利用して企業トップに暴力団総会屋等への毅然とした対応を促すなど、企業や業界団体に対する指導に努めてきたところでございます。  今後とも、総会屋の活動の実態を十分に把握をし、刑罰法令に触れる行為につきましては徹底検挙に努めるとともに、企業と連携をして総会屋に対する取り締まり、排除の徹底を図ってまいりたいと考えております。
  91. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 それから、この冒頭陳述の中で、要旨でありますけれども、総会あり方に関しても若干載っておりました。「従来から、株主総会の議事運営が混乱して長時間に及べば、同社の信用を損なうことになり、議長役を務める同社社長や列席する役員の資質をも問われかねないとの認識の下に、」という表現なんですが、ある意味では、先ほどから出ておりますけれども、長時間かけても、たとえ百四十ページに及ぶ質問状が来ても、それをきちっと議論をしていけばいいわけであって、その辺の認識というか心理状態というのはなかなか理解しがたい。逆の言い方ではありますけれども、褒め殺しにおびえた政治家もおられましたけれども、それと同じような心象風景なのかなと私は思います。  そこで、もう何回も出ていると思いますけれども、株主総会の本来あるべき姿というものを法務省としてはどのようにお考えになっているのか、もう一度ちょっとお教えいただきたいと思います。
  92. 吉戒修一

    説明員吉戒修一君) お答え申し上げます。  株主総会は、会社の所有者である株主によって構成される会社最高の意思決定機関でございます。そこでは、いわゆる利益処分案、すなわち配当決議案とか役員の選任決議案等の審議がされるわけでございまして、株主に十分な発言の機会を与える、あるいは会社経営に対する株主からの質問には真摯に答えるというような、株主総会につきまして十分な時間を確保してこれを活性化するということが株主総会のあるべき姿ではないかというふうに考えております。  また、委員御指摘のとおり、株主との質疑応答を回避しないという姿勢も極めて重要でございまして、これを貫くことが総会屋の介入を防ぐことになるというふうに考えております。
  93. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 まさにおっしゃるとおりだと思います。  そこで、本来あるべき姿にするために、本来、私企業、そしてオーナーと経営者という関係でございますから、ある意味では民間の利益調整というような、本来的には会社という組織法ではありますけれども、民間の問題として対処すべきではないか。むやみやたらに国家の刑罰権をもって、あるいはそれを重くして本来あるべき姿を追い求めるというのは筋ではないんではないか。本来のあるべき姿を求めて株主あるいは民間がとるべき手段があるんであれば、それをどんどん活用をすべきであるというふうに私は思っております。  そんな中で、一つの重要な民間の手段であります株主代表訴訟につきまして、先般も若干触れられたようでございますけれども、いろいろ制限というんでしょうか、そういう方向で検討している政党もあるようでございまして、その点につきまして若干お聞きをしたいなというふうに思います。  まず、この株主代表訴訟について、特に原告につきまして訴訟の原因になった行為時の株主に限定すべきではないか、そういう意見もあるようでございますが、法務省のお考え、もう一度ちょっと教えていただけますか。
  94. 吉戒修一

    説明員吉戒修一君) お答え申し上げます。  株主代表訴訟といいますのは、会社が取締役の会社に対する責任を追及する訴えの提起を怠っている場合に、株主会社にかわりまして取締役の責任を追及する訴えのことでございます。商法二百六十七条に規定がございます。この株主代表訴訟の機能は、取締役の違法行為によって生じた会社の損害を回復するとともに、取締役が法令に従って適正な業務執行を行うことを確保するための極めて有効な手段として機能しているわけでございます。  今御指摘ございましたように、最近発覚いたしましたいわゆる総会屋に対する利益供与事件に関しても、数件の株主代表訴訟が提起されているというふうに聞いております。このことから申しましても、株主代表訴訟制度は、利益供与等の違法行為に対する監督是正手段として十分に機能しているというふうに考えております。  委員今御指摘のとおり、代表訴訟のあり方につきましては、原告適格を制限するというふうな御意見もございます。いろいろな御意見がございますけれども、先ほど申し上げましたように、代表訴訟に伴います監督是正機能という機能が損なわれないように配慮するということが極めて重要ではないかというふうに考えております。
  95. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 今法務省の方からは、代表訴訟の機能という観点から限定すべきではないというような意見表明がございましたけれども、本来、危ないところを知っていてそこに近寄ればその責任だよというふうに言えるわけですね。ただ、そのことは、危ないことが一般の方によくわかっている、あるいは投資家によくわかっているということが大前提であって、それを知らせずに投資家の皆さん株を買ってくださいというのでは、ある意味じゃ詐欺みたいなものでありますから、やはり私はその辺もきちっと理解すべきではないかと思いますが、いかがですか。
  96. 吉戒修一

    説明員吉戒修一君) お答え申し上げます。  委員御指摘のとおりでございまして、行為当時、いわゆる取締役の行為当時に制限するという考えをとりますと、その行為の時点がいつなのか、あるいはその損害の発生時をとらえなくていいのかという議論がございます。  それから、委員今御指摘のとおり、そもそもその取締役の行為あるいは損害の発生というものが株主に十分に開示されてこそ初めてそのような制限も可能になってまいるわけでございまして、その点の配慮を欠いたまま単に行為時にするということはいささか問題があろうかというふうに考えます。
  97. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 今、山一証券で簿外債務というのがやたらに有名になりましたけれども、あれは普通の貸借対照表とか、いわゆる営業報告書なり財務諸表には出てこないものだと私は思うんですね。それを幾ら開示しても出てこない。そうすると、それはやはりきちっと責任追及しなきゃいけない。先ほどおっしゃったように、機能を十分に果たすべきである。そう考えると、訴訟を原因行為時の株主に限定するのはやはり不当ではないか。逆に言えば、もっと情報開示をきちっとやるべきではないかというふうに思うわけであります。  それから次に、株主会社に訴訟を起こしてくださいよという形で通知して、熟慮期間というんですか、今は三十日でございますが、これを六十日にしようという御意見もあるやに聞いております。  そうしたところ、この間、十一月八日でしょうか、毎日新聞の報道に、第一勧銀の元副頭取ら三人、「敗訴に備え財産隠し?」というような記事が載っておりました。かなり多額の代表訴訟が予定されている段階での行為のようであります。しかも、通知をしてから一カ月ぐらいにまとめて奥さん名義にした、あるいは長男ら親族に贈与した形にしているというようなことなんですね。そうすると、これを三十日から六十日にしようなんという意見は、どんどん隠してくださいよというような、そういう動きになってしまうんではなかろうかというふうに大変私は危惧をするところでございます。  まず、財産隠しというこの件につきまして、法務省は御存じでしょうか。また、私の微管によれば執行免脱罪も出てくるんではないだろうかなと思いますが、いかがでしょうか。
  98. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) 御指摘のような報道がなされていることは私どもも承知しておりますし、また検察当局としても承知いたしておると存じます。ただ、この報道によりまして、一定の事実を想定して、直ちに委員御指摘のような犯罪の成否を問えるかどうかということに関しまして、法務当局としてのお答えは差し控えさせていただかなければならないと存じます。  ただ、委員のお立場として、まさに世の中にさまざまな事態があるときに、強制執行免脱というようなことがある程度行われている、そういうものに対する問題意識を背景での御指摘だと思います。その点を含めまして、検察当局といたしましては、どのような事項について捜査するかというふうな点につきましてはあらかじめ明らかにするということはないと存じますが、一般論ということで申し上げますれば、事実関係を証拠に基づいて認定いたしまして、必要があれば適正な処分をするだろうというふうに考えます。
  99. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 これとの関係で、非常に会社経営者としてはもうとんでもない、倫理にもとるというふうにしか私は言いようがないと思っておりましたところ、けさの東京新聞に、山一の前会長、きょう参議院にお見えになっておりますけれども、元会長、「自社株を大量売却」というような記事が載っております。「二人で六十万株近く インサイダー取引か」と。かつ、今の山一の経営陣は社内調査に着手して、トップにあるまじき背任的行為として刑事告訴の検討も始めている、こういう記事が載っております。  ちょうどきょうは予算委員会参考人でこの前会長にお見えいただいたので、恐らくこれも話題になったんだろうというふうに思いますけれども、法務省として会社経営者、トップの倫理というか、これはどのように考え、またどのようにその倫理向上を図っていこうとされているのか、その辺、御所見があればお教えいただきたいと思います。
  100. 吉戒修一

    説明員吉戒修一君) 御指摘のような山一証券の問題につきましては、今お示しのとおりの新聞報道以上のことは承知いたしておりませんので、一般論としてお答えさせていただきたいと思います。  御承知のとおり、株式会社の取締役、これは株主総会によって選任されます。株主によって会社経営を委任されたということで、株主のために法令定款に従って適正にその職務を執行しなければならない義務がございます。そして、このような取締役の職務の執行の適正を担保いたしますために、取締役には忠実義務でありますとかあるいは善管注意義務というようなものが設けられておりまして、これに違反した場合には、それによってまた会社が損害をこうむったのであれば、その行為をした取締役は連帯してその損害を賠償する責任を負うというような規定もございます。また、その責任を追及する制度といたしまして、先ほどから御指摘の株主代表訴訟の制度も設けられているところでございます。  また、取締役がその職務を行うにつきまして、悪意または重過失があったときは、会社以外の第三者に対しても損害賠償責任を負うというような規定が置かれております。  したがいまして、このように取締役の責任及び義務は極めて重大でございますので、企業経営者といたしましては、適正な業務執行に対する遵法精神を持って企業経営に当たるべきではないかと  いうふうに考えております。
  101. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 ところで、先ほど会社の健全化のための機能というようなお話がございましたけれども、人によってはこれは乱訴が出てくるのではないかと危惧をされる方がおります。特に、手続手数料といいますか、訴状に張りつける印紙の額が八千二百円になってからは非常に多いんではないかというような指摘がございます。  そこで、このいわゆる株主代表訴訟の件数でございますが、裁判所お見えでしょうか。ここ数年の件数、もう既に出ているかもしれませんが、再度お教えいただきたいと思います。
  102. 石垣君雄

    最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) この株主代表訴訟の係属件数の調査は、実は平成五年から始めておりますが、平成五年から平成八年までの毎年末の係属件数を申し上げたいと思います。  平成五年末の係属件数ですが、高裁が十件、地裁が七十四件、合計八十四件。平成六年末の係属件数は、高裁が十二件、地裁が百三十三件、合計百四十五件。平成七年末の係属件数は、高裁が十六件、地裁が百五十八件、合計百七十四件。平成八年末の係属件数は、高裁が十四件、地裁が百七十四件、合計百八十八件。こういう状況でございます。
  103. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 ちょっと確認しますが、今係属件数という表現でございますが、これは新しく事件を受けて、判決なり、とにかく事件が終了していない事件数を集めたということであって、新たに申し立てがあった、訴え提起があったということではないんですね。
  104. 石垣君雄

    最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) ただいま委員仰せのとおりでございまして、今申し上げた数字は、毎年末のいわば未済件数といいますか、現に係属している件数でございます。その関連で、つい最近でございますが、平成八年の新受件数はわかっておりますが、これで申しますと高裁が十一件、地裁が七十一件、合計八十二件が新受件数でございました。
  105. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 この平成五年末から平成六年末、かなり大幅にふえているように見えるんですが、これは先ほどの印紙額の問題と関連しますか。
  106. 石垣君雄

    最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) この調査を始めましたきっかけの一つは、印紙額の変更ということがあったかと思いますが、客観的な事実として、平成五年末が合計で八十四件でありましたものが、平成六年末が百四十五件になっている、こういうことでございます。
  107. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 印紙額が下がっても実際には乱訴を防ぐ手だてはあると思います。  それは、被告となった取締役あるいは元取締役側、要するに被告側から、担保提供してくださいよと、そういう申し立てがなされ、かつそれが事実上乱訴を防ぐ本当に実際有効な手段になっているんではないかというふうに考えられるんですが、この担保提供命令の数であるとか、お教えいただけますか。
  108. 石垣君雄

    最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) 委員せっかくのお尋ねでございますが、担保提供命令はいわば決定の一つでございますが、担保提供命令という形で格別の統計をとっておりません。
  109. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 それと同時に、具体的な額というのはどういうふうに決められるのかわかりませんが、訴訟物としての訴額自体が数千万あるいは数億になる場合、これは担保といっても五万や十万の話ではないと思うんですが、大体どのような形で決められて、大体どのような額に決定されているものなんでしょうか。
  110. 石垣君雄

    最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) 担保提供命令そのものは命令を発する要件があるわけでございまして、各裁判体がそれぞれの要件に従って判断をしているという以上のことを申し上げることが現段階ではできませんので、御了承いただきたいと思います。
  111. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 私が読んだ物の本の中では、要求される担保はかなり高額であると、ほとんどの事件で一千万、多いもので一億以上の担保の提供が要求されておりますということのようでございます。ですから、わずか八千二百円の手数料で何十億というような請求ができるというのはおかしいのではないかというようなことを言われておりますけれども、現実には、代表訴訟を提起した側としては、とにかく実体審理に入るためには相当額の経済的な費用を負担する覚悟が必要ではないか。  結果として、訴え提起をする場合は、例えば被告一名について一千万の担保が必要だよというふうなことも想定して、最初から被告とすべき取締役を厳選してから訴訟を提起する。あるいは当初は多くの取締役を被告として訴えても、その後担保提供の申し立てがなされて、それによって問題の行為に直接かかわった者だけに絞って訴訟が係属されるというのが実態のようでございます。  私も、この乱訴に対応するものとして実務的にも非常にすぐれた対応ではなかろうかなというふうに思っておるところでございまして、現代表訴訟における乱訴の問題について法務省としてどのような御見解を持っているか、お聞きしたいと思います。
  112. 吉戒修一

    説明員吉戒修一君) お答え申し上げます。  代表訴訟の改正につきましては、平成五年の改正当時もいろんな御意見がございました。その中で、乱訴になるのではないかというふうな御指摘もございましたけれども、私どもといたしましては担保提供制度が適正に運営されれば乱訴の事態は起こらないというふうに考えておりましたところ、委員御指摘のとおり、担保提供制度がその後適正に運用されているというふうなところから、例えば刑事事件になったものが代表訴訟の形で起こされるという形でありまして、今のところいわゆる乱訴的な訴訟は極めて少ないのではないかというふうに考えております。
  113. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 私は、この株主代表訴訟は非常にすぐれた制度であり、先ほども申し上げましたように、これはどんどん活用すべきである、入り口を狭くするべきではないというふうに考えておりまして、またこれは機会があったら質問をさせていただきたいと存じます。  それで、会社の健全な運営のために、もう何回か監査制度、先ほども質問されましたけれども、権限の強化であるとか任期を延ばすとかあるいは増員するとか、いわゆる監査機能の強化を図ってまいりました。しかし、この山一の簿外債務とかを見ますと、先ほど機能という言葉がありましたけれども、本当に監査役が機能しているのかなというふうに思わざるを得ないわけでございまして、現行法上、法務省としてはこの監査制度のどこに問題があるとお考えなのか、お教えいただけますか。
  114. 吉戒修一

    説明員吉戒修一君) お答え申し上げます。  御指摘のとおり、会社の業務執行の適正を図るという見地からいいますと、監査体制、監視体制の整備は極めて重要な事項であるというふうに考えております。そのため、委員御指摘のとおり、昭和四十九年の商法改正、五十六年の改正、平成五年の改正と、監査制度につきまして数次にわたる改正をしてまいったところでございます。したがいまして、法律上の制度といたしましては、現行の監査制度は相当程度に充実した内容になっているというふうに考えております。  しかしながら、法の実際の運用におきまして、例えば監査役等の人選の問題でありますとか、あるいは経営者側においての監視体制に対する認識といったような経営者の意識の面、そういう面におきまして必ずしも商法改正の意図したような趣旨が生かされていないのではないかというふうに考えております。  したがいまして、商法の趣旨にかなった制度の運用がなされるように、監査役としての適材を得て適正に権限を行使するように制度が運用されることが肝要であると考えておりまして、法務省といたしましては、そういうふうな観点から法の趣旨にかなった制度の運用がなされるようにさらに監視体制の厳格な運用の必要性についての周知徹底に努めてまいりたい。それと同時に、今後の業務執行の適正を図る見地から、いろいろな方策が考えられると思いますけれども、どのような対策が必要であるかにつきましてさらに関心を持って適切に対処してまいりたいというふうに考えております。
  115. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 確かに、会社の監査をするには会社経営というか営業の実務に通暁した人がいた方がいいわけでございますが、ただ逆に言えばなれ合いみたいな部分もございまして、今おっしゃるとおり人選の問題もあるのかな、また元部下だった人が監査役になっても、企業のトップとしては配下が監査役になったようなそういう認識になるのかもしれません。  ということで、今の法務省のお答えは、制度としては全く不備はないよ、運用が問題だよと、こういうふうに聞いておいていいんでしょうか。
  116. 吉戒修一

    説明員吉戒修一君) 一般論として申し上げますと、制度はこれで完全であるというふうには考えておりません。さらに御指摘の点を踏まえまして、改善すべき点があれば検討いたしたいというふうに考えております。
  117. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 それから、一連の総会屋事件、あるいは山一の簿外債務というようなことがございましたけれども、それぞれについて監査役の法的責任としてはどういうものが考えられているか、お教えいただけますでしょうか。
  118. 吉戒修一

    説明員吉戒修一君) お答え申し上げます。  一連の事件内容の詳細につきましては承知しておりませんので、まず一般論として答えさせていただきます。  まず、監査役でございますが、これは御承知のとおり株主総会によって選任される会社の機関でございまして、職責上、善管注意義務を負います。したがいまして、これに基づきまして取締役の職務執行の監査を行うというものでございます。  そこで、会社の方の経営につきましてでありますが、商法はその会社の財政状態及び経営成績を明らかにするために、日々の取引を個別的かつ明瞭に会計帳簿に記載することを求めております。また、決算期におきましては、貸借対照表あるいは損益計算書等の計算書類を作成することも求めております。このような計算書類の作成を通じまして、会社の財産及び損益の状況を明確にすることを要請いたしておるわけでございます。したがいまして、会計帳簿の作成あるいは計算書類の作成におきまして不実の点があれば、これは過料をもって制裁されるというようなことになっております。  そこで、不正な経理を防止いたすためには、会社の会計帳簿あるいは計算書類は監査役の監査の対象になります、監査役は、会計帳簿に記載すべき事項の記載がない、あるいは不実の記載があるとき、また貸借対照表もしくは損益計算書の記載が会計帳簿の記載と合致しない場合、あるいは取締役に不正行為等があった場合には、その事実を監査報告書に記載しなければならないというふうになっております。  そこで、監査役がこのような職責上の義務を尽くさないで取締役の違法行為を見抜けなかった場合など、その任務を怠りまして会社に対して損害を与えた場合には、これまた会社に対し連帯して損害賠償する責任を負うわけでございます。また、その職務を行うにつきまして悪意または重大な過失があったときには、会社以外の第三者に対しても連帯して損害賠償責任を負うということになっております。  さらに、会社に対する損害賠償責任の追及につきましては、会社がこれを怠っている場合には株主がさらに追及できるという代表訴訟の制度もあるところでございます。
  119. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 わかりました。  それで次に、今度は新たに利益供与要求罪というのが新設されるようでございます。要求したらそれですぐ犯罪が成立するということでございますが、冒頭にもお話し申し上げたように、大昔、一株運動というんでしょうか、会社の不正な行為を株主総会でただすというような運動もありました。非常に市民運動というか、あるいは住民運動、さらには場合によっては労働運動にも関係してくるんではなかろうかというふうに思うわけであります。また、正当な株主権の行使、この境目というのがようわからない。衆議院でも聞かれていることではあるかと思いますけれども、この要求罪に該当するのか、あるいは正当な権利行使、さらには一株運動等との境目というものはどのように考えておられるのか。警察、法務省にお聞きしたいと思います。
  120. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) お答え申し上げます。  お尋ねの利益供与要求罪は、構成要件として、株主の権利の行使に関しまして会社の計算において財産上の利益を自己または第三者に供与することを会社の役職員に対して要求するということを要素といたしております。  そこで、株主の権利の行使に関しという点でございますが、これは株主の権利の行使またはそれを行使しないことに対する対価の趣旨を意味しております。したがいまして、例えば株主総会会社に有利な発言をしたり、不利な発言をしないようにすることの見返りの趣旨で財産上の利益の供与を要求する場合がこれに該当するわけでございます。  これに対しまして、御指摘のようないわゆる市民運動と申しますか、あるいは住民の方々の運動、あるいは一般的な労働運動というような活動につきましては、そのような趣旨のものではないという点において明確に区別することができようと思います。そういうわけで、利益供与要求罪においてそのような運動が不当に阻害されるようなおそれはないと考えております。  なお、昭和五十六年の商法改正で新設されました利益供与・受供与罪につきましても、「株主ノ権利ノ行使ニ関シ」等の要件が定められていることは御承知のとおりでございまして、基本的には今回新設されます要求罪とその部分において構成要件を共通にしているものでございます。したがいまして、従来も正当な市民運動等を抑圧するようなことなく適切に解釈、適用されて現在に至っているというふうに理解しておりますので、今回の改正によりまして、このような正当な権利行使が抑圧ないし阻害されるような懸念はないものと考えております。
  121. 宮本和夫

    説明員(宮本和夫君) この利益供与要求罪が成立いたしました場合には、総会屋等の会社から不正な利益を得ることを目的とした諸活動に対して大変大きな武器になるものと考えておりまして、警察といたしましては、法の趣旨に従いまして適正な運用に努めてまいりたいと考えております。
  122. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 しっかりお願いしたいと思います。  それで、しっかりお願いすることなんでございますけれども、また戻って株主総会、いろんな形で、刑罰を重くしたりいろいろなことをやってもなかなか根絶というのは難しいんではなかろうかな。また、株主であればそういう方であってもむげに総会に入ることを拒むことはできないというふうに思うわけであります。  先ほど御紹介した、冒陳でもあったように、議事の混乱であるとか、そういうことに対して会社は本来きちっと警察なりと連携をとりながら対処していくべきだと思いますけれども、この株主総会そのもの自体について警察としてどのように取り組んでいかれるか、お教えいただきたいと思います。  特に上場企業の場合、会社総会担当者が談合したような形で一斉に六月末に開くわけでありまして、もし警察の方に応援してくれよというふうに言われても、一斉にやられたらなかなか対処できないと思うんですが、その辺も含めて、今後の警察の取り組みについてお教えいただけますか。
  123. 宮本和夫

    説明員(宮本和夫君) 警察におきましては、かねてより株主総会の開催に際しては、企業において議長権限を的確に行使し自主運営を図ることを原則としつつも、違法行為が発生するおそれがある場合には、不審な入場者のチェックであるとか、テープレコーダーやビデオカメラの設置による事案発生時の証拠保全措置等について企業に指導いたしますとともに、警察官の派遣につきましては、企業からの要請を受けてこれに積極的に応じて、株主総会会場における違法行為の防止等に万全を期しているところであります。  今後とも、総会屋等の動向に強い関心を持って臨み、株主総会の開催に当たっては、企業との連携を密にしながら、株主総会会場における違法行為の防圧と総会屋等の排除の徹底を図ってまいりたいと考えております。  また、株主総会が集中することに関してでございますけれども、警察といたしましては、特定の日に株主総会が集中するしないにかかわらず、所要の体制を確保して適切に対処してまいる所存であります。
  124. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 株主総会の日というのは、丸の内あるいは大手町を歩くと、特に爆弾事件とかあるとほとんど戒厳令のような状態に実はなるわけでございます。もう一般市民活動にもちょっと影響があるんではなかろうかなと私は思ってしまうんですが、先ほど法務省あるいは法務大臣の方からもお話がございました、充実した、そして活発な株主総会をするには、なるべく一斉にやるんではなくしてばらばらにやった方が本来の趣旨に合うんではないかな。逆に警察の方で御指導されているのかなというふうに思ったわけでございますが、その点、今の御答弁では一斉であるか否かにかかわらず万全の体制でやっていくということでございますが、ばらばらにやった方がもっと万全になるんではないかと思うんですが、この点いかがでしょうか。
  125. 宮本和夫

    説明員(宮本和夫君) 株主総会のあるべき姿について警察としては述べる立場にありませんので、集中日のことについてどうすべきこうすべきというようなことを警察として指導したというようなことはございません。  また、警察官の運用、これまでの実施結果などにかんがみますれば、先ほど申し上げたとおり、集中しようとまた分散であろうと、それぞれ所要の体制を確保して対応してまいりたい、このように考えております。
  126. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 それから、企業総会屋の絶縁を図るということでございますが、官邸に経済団体の方々を呼ぶ、あるいは官房長官が経済団体に出向いて口を酸っぱくして言っても、なかなかはいそうですかということにはならないんではなかろうかというふうに思っております。  本気でこの絶縁を図るという場合には、やはり企業のトップであるとかの身辺警護というんでしょうか、要するに危ないというふうに感じないようにしなきゃいけないんではないだろうかなと。身辺の危険をどのように排除できるかということだと思いますが、これについて警察対応はどのようにお考えでしょうか。
  127. 和田康敬

    説明員(和田康敬君) 警察におきましては、総会屋暴力団等との関係遮断を進めております企業に対しまして、これらの役職員の方に不法行為などがなされることを未然に防止するため、まず各警察本部の方にこういった保護対象としての保護対策官というのを指定いたしまして、その統括のもとに各警察署に保護責任者を置いてそういった体制をとっております。  それから具体的には、そういった関係を進めておられます企業の役職員の方を具体的に保護対象者という形で指定をいたしまして、先ほどの保護責任者と緊密な連携をとりまして、一つには、自主的に警戒をしていただく方法などについての注意事項、指導事項などをやりますとともに、状況によりまして、緊急監視装置というのがございますが、そういうものを設置いたしましたり、あるいは身辺警戒とかあるいは自宅などのパトロール、そういったものを強化しておるところでございます。
  128. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 ちょっと前に話題になりました本で、「金融腐蝕列島」という本でしょうか、ばあっと読んだんですけれども、あれはある銀行だったと思いますが、MOF担から総会屋担当になると、役職員でなくしても総務の担当者となるともう家族までねらわれる。家の周りを街宣車がぐるぐる回る。そういう状況がその小説では描かれておりました。その小説では、御両親も一緒に住んでいるという中で、一家がばらばらになるんじゃないかというようなところまで描かれておりましたけれども、今の警察のお答えは、家族までお願いすれば対処していただけるのかどうか。
  129. 和田康敬

    説明員(和田康敬君) 先ほど申し上げましたように、企業の役職員を保護対象といたしますけれども、当然その御家族の方につきましても、保護責任者がまず最初はその御自宅に赴いて、家族の方にまずいろいろと御指導すべきことを、特に奥様などにお話をしております。もちろんその役職員、担当者のみならず、家族の方の身辺の安全という観点からの保護対策を講じておるところでございます。
  130. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 また、身辺の危険というか、そういうことで申し上げれば、実際に起こった事件もあるわけですね。阪和銀行の副頭取であるとかあるいは住友銀行の名古屋支店、さらに富士フイルム、山一の顧客担当者ですか、本当に身震いするような事件でございますが、こういった事件捜査は現在どういうふうになっているでしょうか。
  131. 宮本和夫

    説明員(宮本和夫君) お尋ねの事件につきましては、警視庁及びそれぞれの発生警察におきまして、事件発生即日捜査本部を設置した上で関係府県警察とも連携をとりながら事件解決に向けて全力を挙げて捜査を推進中であります。  阪和銀行副頭取射殺事件につきましては、平成五年八月五日、阪和銀行副頭取が和歌山市内の自宅前路上において出勤のため出迎えの自動車に乗車しようとしたところを胸部等をけん銃で撃たれ殺害された事件でありますけれども、和歌山県警察におきましては、銀行の融資をめぐるトラブルの有無、また被害者個人に絡むトラブルの有無などの捜査を継続中でございます。  また、住友銀行名古屋支店長射殺事件につきましては、平成六年九月十四日、住友銀行名古屋支店長が名古屋市内の自宅マンション通路において頭部をけん銃で撃たれ殺害された事件でありますが、愛知県警察においては、平成六年十一月、住友銀行本店に対し融資を強要した男性がけん銃を所持していたことから、同人を銃刀法違反で逮捕し、同げん銃は鑑定の結果、本事件に使用されたけん銃である可能性が極めて高いことが判明するなど、粘り強く事実の解明に努めておりますが、実行犯の特定にはいまだ至っておりません。そのため、引き続き同人及び同人の周辺者に対する捜査会社及び被害者をめぐるトラブルの有無等の捜査を継続中でございます。  また、山一証券顧客室長刺殺事件についてでございますが、これは平成九年八月十四日、山一証券顧客相談室長が東京都大田区内の路上で胸腹部を刃物で刺され殺害された事件でありますが、警察庁内においては、会社関係をめぐるトラブルの有無、被害者個人に絡むトラブルの有無等の捜査を継続中でございます。
  132. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 そろそろ時間が参りましたので私はこれで終わりにしたいと思いますけれども、いずれにしても、今大変な経済不況の中、また日本再生をかけてどういうふうにやっていくかということが今議論の的になっているところであります。一日も早く明るい企業社会をつくっていきたい、また英知を結集していきたいと思いますので、よろしくお願いします。  これで終わります。
  133. 千葉景子

    ○千葉景子君 きょうは、ちょうど午前の委員会で三名の参考人の方から大変興味深い、あるいはまた私たちの審議にもいろいろな参考になる御意見もちょうだいをしたところでございます。  御三名ともこの法改正には基本的には賛成であるというお話でございました。しかしながら、この法だけですべてを解決しようということにはやはりなかなか限界がある。国民全体で総会屋の根絶、あるいはその根底にあるいろいろな他の問題に対処をしていかなければいけないという御意見でもあったかというふうに思います。私もこの法律改正については基本的に賛成でございますけれども、ぜひそういう姿勢で私たちもこれから臨んでいかなければいけないというふうに痛感をしたところでもございます。  前回の委員会の質問で総論的な部分も多少お尋ねをさせていただきましたので、きょうは法の改正内容に即して何点か質問をさせていただきたいというふうに思っております。  そこでまず、今回の改正で、先ほどからもお話が出ておりますけれども、利益供与要求罪と、それから威迫を伴う利益受供与・供与要求罪が新設をされたところでございます。これ自体はもっともなことだというふうに思うんですけれども、今、魚住委員からも問題提起がございましたが、この要求罪、一面では正当な権利行使、こういうものに支障がないようにしていかなければいけないという問題がございますけれども、他方、なかなか要求というのが具体的には適用しにくいといいましょうか、そういう面があるのではないか。ちょうど午前の参考人の御意見でも、例えば会社に行って、このところしばらくゴルフはしていないな、こういう発言をして、これが何に当たるかというのがあるんですけれども、そういうケースなどもあることもお聞きしたりいたしました。  そういう意味では、この要求罪というのは構成要件からいっても、新設をされたこと自体私も納得をするところでございますけれども、この適用はあるいはこの要件を考えますとなかなか難しいところもあるのかなという感じもいたしますが、これはどのようにこの趣旨といいましょうか、それから解釈を考えておられるのでしょうか。
  134. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) お答え申し上げます。  本改正案利益供与要求罪における要求の趣旨でございますが、この点につきましては、現在、刑法上わいろの要求罪というのがあることは委員御存じのとおりでございますが、その要求罪と基本的には同じというふうに解せられると思います。  そこで、その要求でございますが、これは具体的に相手方に対しましてその趣旨を認識し得る状態において財産上の利益の供与を求める意思表示をすることというふうに理解されており、その趣旨が客観的に事実上明らかになれば、それが直接的であるか、あるいは間接的であるか、あるいは明示と申しますか、明らかにそのことを言うか、あるいは黙示的に、裏に隠れてといいますか、言葉の端々にあらわれてそういうことを要求するというようなことを問わないということで、この点はわいろの要求罪等に関しまして累次の判例また学説等である程度確立された概念でございまして、その点では明白に適用できるものというふうに考えております。
  135. 千葉景子

    ○千葉景子君 こういう新しい類型が新設され、これを受ける側、総会屋の側というのも変ですけれども、いろいろとまたできればできただけの知恵も出てくるのかなという気もいたしまして、これが適切に運用されるように私も望みたいというふうに思います。  それからもう一つ、威迫を伴うものですね。これは威迫というのは私も承知をしているところは脅迫よりは軽いわけですね。相手を不安にさせたり困惑させたりする、そういうことを通常示すということになろうかというふうに思います。証人威迫罪などがございますけれども、これも要求と同様なかなか難しい面もあるかなと。これも多分御説明ではこれまでの解釈、威迫というもののそれを適用していくということになるのだろうというふうに思うんですが、この間のいろんな議論から考えましてもいろいろなケースがわかってまいりました。  例えば、いろいろな質問状のようなものをどんどん送りつけるというような行動もあったり、それから株を多数の名義人、架空のものもあるかもしれませんけれども、株分けして、そして行くぞと言う、そういうようなこともあるやに聞きましたし、あるいは総会屋というのかどうかわかりませんけれども、雑誌などでその会社のスキャンダルを暴露するとか、いろんなことがあろうかというふうに思うんです。  この威迫も、脅迫まではいかないけれども、こういう困惑させたり不安にさせたりするわけですから、個別にはいろいろなケースがあろうかというふうに思いますが、この点についても先ほどと同様適切に運用できるようにどのように解釈をされるべきなのか、お答えをいただきたいと思います。
  136. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) お答え申し上げます。  若干、煩雑にわたるかもしれませんが、非常に大切な点でございますし、やはり国会における論議が今後の本法の解釈、運用に大変重要な意味を持つと思いますので、お答えさせていただきたいと思います。  この新たに新設することとさせていただく威迫を伴う利益供与要求罪における威迫とは、一般的には、人に不安、困惑の念を抱かせるに足りる行為と解されておりまして、これはまさに委員御指摘のとおり脅迫と比べますと一段低い概念であると解されております。これは刑法百五条の二あるいは暴力行為等処罰ニ関スル法律等で既に使用されているもので、累次の判例もございます。  そして、一般的に申し上げますと、そのような言動、人に不安、困惑の念を抱かせるに足りる行為の開始が実行の着手になるわけですが、その段階で、相手にその趣旨、言動が伝わった時点で、相手方に現に不安、困惑の念を抱かせたことを実際には必要としない、それが実行の着手でございますが、その段階で威迫行為自体は成立すると。威迫行為の中身を主としてとらえまして、それが相手方に伝わった段階で成立するというふうに考えられるわけでございます。  このあたりにつきましては、先ほど委員御指摘の脅迫罪では、一般には人を畏怖、恐れさせる行為でございますが、恐れさせるに足りる害悪の告知をして相手方がこれを了知しただけで既遂となると解されているのと同様でございます。
  137. 千葉景子

    ○千葉景子君 説明はよくわかりました。これも個々具体的な事例になりますと、なかなか微妙な、相手方に到達したときといいましても難しいところもあるのかなという感じがいたします。やはりこういう犯罪類型が新設されたということは、これに適用が必要な事例なりあるいは状況がやはり存在するわけで、だからこれをつくらねばならないと、こういうことであったかと思われますので、ぜひこれがきちっとした成果を上げられるように私も見守っていきたいというふうに思っております。  さて次に、今回は懲役と罰金との併科が可能になるわけです。これも一般論でしか確かにわからないのですけれども、従来、懲役と罰金が併科はできない、選択しかできないことの不都合というんでしょうか、それによって併科ということが今回提起をされたわけだというふうに思われますので、その点、これまでのできなかったことの不都合と、それからこの併科をされることによってどういう意味合い、今後その効果というものが出てくるのか。その点についてお尋ねしたいと思います。
  138. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) お答え申し上げます。  一般的に刑事法の分野で罰金を懲役刑と併科する規定は、経済的な利益の取得を主たる目的とする犯罪の類型につきまして、経済的な制裁をあわせて加えることによりまして犯罪行為が経済的に引き合わないものであるということを感銘させる、こうした側面からいわば犯罪を起こそうとする者に反対動機を形成させるということが適当と認められる場合に設けられているのが通例でございます。  昭和五十六年に商法四百九十七条の利益供与・受供与罪が新設された際には、まだそのような反対動機を形成するための措置を設けるまでの必要はないものと判断されたものと考えます。しかし、その後、いわゆる総会屋をめぐる利益供与・受供与事犯が依然として後を絶たない。その活動が我が国経済の中枢にまで深く浸透している実情にあることにかんがみまして、今回法定刑を大幅に引き上げるとともに、受供与罪、供与を受けた者等に関する場合には、犯情によっては罰金刑じゃなく懲役刑を科するというふうにした場合もあわせて罰金を併科することによりまして、これは犯罪によって得た利益をそのままにはしておかないという刑罰の基本的な考え方を明らかにさせていただいて、そのような適用の範囲を拡大させていただこうというのが趣旨でございます。
  139. 千葉景子

    ○千葉景子君 私も罰金というのは、前回もちょっとお尋ねをしたのですけれども、特に経済犯罪についてどのぐらいが適切なのかというのはよくわからないんですね。  今回、確かに従来の例えば供与、受供与ですと相当のアップ率になります。そういう意味ではその効果というのが考えられるのですけれども、この資料をつくっていただいた、調査室の方でしょうか、これまでの商法四百九十七条違反の例を見ますと、供与総額などはだんだん大きくなって数千万というような事例も出てくる。それにかんがみると、確かに三百万あるいは五百万という罰金は高いといえば高いし安いといえば安いという、何か何とか問答をやっているようで恐縮なんですけれども、そういう意味では併科できることによってそういう利益を得させない、それによって抑止力を出すということはあろうかというふうに思うんですけれども、これがどれだけの意味を持ってくるのか、抑止効果があるのか、これからの運用、適用によって見えてくるものだというふうに思います。  これも午前の参考人の御意見でしたけれども、逆に言えば、重い刑罰を受ければ受けるほど勲章にもなってしまうというようなことも指摘をされておりましたので、最初に戻りますけれども、やはりこういう刑罰あるいはこの法律だけですべてが片づくものではないのだろうと、こんなふうに思っているところです。  さて、今回はさらに利益供与、受供与の法定刑が大幅に上げられたわけですけれども、昭和五十六年の改正の際には非常にこれは法定刑が低いですね。六月と三十万と、随分何か余り重きを置かれていなかったのかなという感じもするわけです。それを今回は一気に引き上げているわけで、ほかの引き上げ方あるいは他の罪との均衡から考えるとなるほどという気もするのですけれども、前が低いから一気にどんと上がっちゃっているのか、その辺前回の改正昭和五十六年から今回の改正に至るまで何か背景の違いとか、そういうことがあるのでしょうか、その辺についてお答えをいただければと思います。
  140. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) お答え申し上げます。  昭和五十六年の商法改正でこの四百九十七条の利益供与・受供与罪が新設されたものでございますが、同じ商法の中で同じくいわゆる総会屋の排除を目的として昭和十三年に設けられた商法四百九十四条の会社荒らし等に関する贈収賄罪の規定がございます。その法定刑は一年以下の懲役または五十万円以下の罰金と。これは罰金刑につきましては五十六年改正で実は五万円から五十万円に引き上げられたものでございますが、そのようにされていたものでございます。  それとの比較で考えてみますと、四百九十七条の罪では、四百九十四条に言う不正の請託が要件とはされていないということから、実質的には四百九十四条のいわゆる会社荒らし等に関する贈収賄罪の罪よりは一段低いものと見ざるを得ないということで、当時六月以下の懲役または三十万円以下の罰金という法定刑とされたものというふうに承知いたしております。  そこで、今回も相当上げられたその基本的な、ではどうしてそのぐらいなのかという点について若干御説明させていただきたいと思うのでございますが、結局その五十六年の改正後も事犯は後を絶っていないということで、特に最近の事件では金融機関等の最高幹部までが関与して、いわば会社ぐるみで、しかもその態様は極めて悪質と申しますか、通常の取引の深部にまで入り込んでいるというような状況から、まことに憂慮すべき事態であるというふうに考えられてきたというふうに思います。  そのような状況にかんがみますと、いわゆる総会屋の根絶を図るとともに、株式会社運営の健全性を確保するためには大幅な罰則の強化が必要だというふうに考えられたのがその基本的な最初の動機でございます。この際、会社荒らし等に対する贈収賄罪との比較ということを考えてまいりますと、この汚職の罪の収賄の主体が会社に義務を負って会社の業務活動に直接関与する会社の役職員等であるのに対しまして、この収賄自体は会社に対する権利を有します株主、社債権者の場合もそうでありますが、そういうことを考えますと、会社荒らし等による贈収賄罪が依然としてやはり罪質としては重いものというふうな点は変わらないと思います。  そこで、現在のいわゆる総会屋活動に対する国民の意識が極めて厳しいことになっていることを考慮いたしましても、その関係を逆転させるというところまではいかないのではないかというふうに考えられたと思います。一方、発起人、取締役等の汚職の罪につきましては、刑法百九十七条の単純収賄罪に準じて設けられているものであるということから、その懲役刑の長期、これは五年でございますが、これを超える懲役刑を設けることまではなお困難ではなかろうかというのが一般的な受けとめ方だったというふうに考えます。  そのような状況から、結局発起人、取締役等の収賄罪及び会社荒らし等に対する贈収賄罪の法定刑を最大限に引き上げるといたしましても、懲役刑の長期が五年が限度であり、また利益供与・受供与罪の法定刑はこれより若干低いものということを考えますと、三年が限度ではないだろうかというのが一般的な受け取り方であったというふうに承知しております。
  141. 千葉景子

    ○千葉景子君 それとほぼ同様の問題になろうかというふうに思うんですけれども、今回はそれ以外にも例えば社債権者集会の代表者等の特別背任罪、それから会社財産を危うくする四百八十九条等、法定刑がこれも引き上げられております。ただし、今おっしゃった話にも共通するんでしょうけれども、そもそも現行が懲役が五年以下ということでしたので、そこのところは今回の改正でもそのままに据え置かれて、罰金のみがおおよそ二百万円から五百万円に引き上げられているということになります。  これもやはり今御説明をいただいたこととほぼ重なるような意味合いになるのでしょうか。
  142. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) 確かに、罰金刑のみ引き上げまして懲役刑のところについてはそのままということになっておりますのは、そのような配慮というものがあろうかと考えます。
  143. 千葉景子

    ○千葉景子君 この法律そのものの内容は、これからの個別の問題でいろいろと適用上また私も今後御質問させていただく機会もあろうかというふうに思います。  きょうは、ちょっと違う観点になりますが、この改正がなされても、あるいは他のこういう犯罪に対して適切に対応していく意味でも法務省が頑張っていただくと同時に、やはり裁判所、司法の部分もこれから迅速なあるいは十分な体制を整えて対応をいただくことが必要ではないだろうかというふうに思います。  そこで、裁判所にお聞きするんですけれども、どうも裁判所の今体制というのは本当に十分なんだろうかと、そういう気がするわけです。人員の問題なども、またこれ別な機会にお尋ねをしたいと思いますけれども、例えば予算の面などを見ても、これだけいろいろ複雑なあるいは重大犯罪がふえている、あるいはこれから規制の緩和などによって司法というものの機能が大変求められてくるというところなんです。  これはちょっと資料に出ていた数字を挙げさせていただきますが、平成八年なんですが、国会とちょっと裁判所を、三権という意味で二つにかかわるわけで、国会の予算が千二百四十九億、国会に関連する職員含め、国会議員も含めて四千人余りなんですね。それに対して裁判所は、裁判官も含めてすが二万四千人ほどの体制で、予算は三千億なんです。そういう意味では、非常に裁判所の方がささやかな予算と、人数の割には。  それから九七年度の国の歳出が七十七兆余りですけれども、それのうち裁判所というのは三千百七億、三千億ということで〇・四%と非常に少ない、遠慮深いのかもしれませんけれども。昭和三十年に〇・九%ぐらいだったそうで、逆にいえばどんどん割合が低くなっている。ちょっとある意味では時代と逆行している部分があるのかな。それで人件費が今九〇%ぐらい占めておるんではないかというふうに思うんですね。  これ、もし間違いがあればあれですし、またこの細かい数字は後ほど確認をいただければ結構ですが、やはりこれからこの司法の役割ということを考えて、もっとここの充実方に裁判所も積極的に取り組まれていくべきではないだろうかと、こんなふうに思いますが、いかがでしょうか。その方向性といいましょうか、ちょっとお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  144. 涌井紀夫

    最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 裁判所の事務量を一番はかります物差しといいますか、これは事件数ということになろうかと思いますが、委員御指摘のように、確かにこのところ民事系統の事件を中心に非常に事件がふえてきておりますので、裁判所の事務量がふえてきておるというところはそのとおりであると思います。また、今後の社会状況の変化というものを考えますと、いろんな法的紛争を解決する手続として裁判手続を用いたいという国民の側からの要望というのはさらに強くなってくるだろうと思います。  私ども裁判所の側としましては、やはりそういう国民の司法に対する期待といいますか要求にきちんとこたえていけるような体制をつくっていく必要があるだろうと思っております。  予算面のお話が出ました。裁判所の予算というのは、例えばほかの行政省庁のように大きな政策の経費でありますとか、あるいは大きな事業の経費というのは持っておりませんで、八年度の予算ですと人件費が大体八五%ぐらいになろうかと思いますが、そういういわば事務的な経費で組み立てられた予算でございますので、なかなか国の総予算との比率で何%が適切なのかというような比較は難しいところがございます。  ただ、私どもの方のこれまでの方針としましては、例えば庁舎、設備の問題にいたしましても、他の国の機関の庁舎、設備とお比べいただいてもおわかりいただけますように、決して劣っているわけではございませんし、人件費といいますか、職員の給与水準等の面でも決して他の国の機関の職員に劣るようなことにはなっていないと思います。事件の処理に必要な経費というものも当然この事件増に応じた増額は講じてきているところでございます。  ただ、今後の課題と申しますか、これは確かにますます司法に対する国民の要求なり期待が大きくなってくる、それに応じて事件の負担が大きくなってくるといいますと、やはりそれに応じた体制の整備は必要だろうと思っております。  今後とも裁判所の人的、物的な事件の処理体制を含めました体制整備のために必要な予算の獲得に十分力を入れていきたい、こういうふうに考えております。
  145. 千葉景子

    ○千葉景子君 そういう面もぜひ充実方、努力をいただきたいというふうに思います。  もう一点、今回の総会屋の問題ばかりではありませんけれども、ちょっと気になったことがありまして、それは許永中被告が保釈中に消えていなくなっちゃった、こういうことがございます。裁判がある程度長くなる、そして保釈中に、拘束しているわけではありませんから難しいところはあるかと思いますけれども、やはり先ほど言ったように、高い保釈金でもそれが全く担保力にならないような状況もあり、ただ一般市民にとってはそれなりの保釈金というのはやっぱりそれがおもしになるという面もありますから、これも一概に高けりゃいいとか、あるいは低けりゃいいということも言えないんですけれども、ああいうことを見ますと、私の思いですけれども、そんな簡単に外国渡航の許可を出していいものかな、そんなことも考えます。  それがひいては裁判の遅延に結びつくわけですし、事案の解明というものをおくらせるということにもつながるわけですね。そういうことから考えますと、これは個々の事件ということでお答えいただけないとは思いますけれども、やはりこういう裁判の円滑な遂行、そういうことも頭に置きながら保釈の問題などにもより適切に対応いただく必要があろうかというふうに思いますが、その点について何かお答えできることがございましたらお願いをして、これを最後の質問にしたいと思います。
  146. 白木勇

    最高裁判所長官代理者(白木勇君) お答え申し上げます。  委員つとに御承知のとおり、保釈にはいわゆる権利としての保釈、権利保釈と言われておりますが、それと裁量保釈がございます。  権利保釈に該当いたします場合には、保釈の請求があったときにはこれを許さなければならないこととされております。権利保釈に該当しない場合には、裁量保釈の可否ということを検討することになります。裁量による保釈は、保釈を相当とする特段の事情があると認められる場合に許可するものでございますが、この特段の事情の有無につきましては、個々具体的な事件におきまして諸般の事情を総合的に考慮するものとされております。  いずれにいたしましても、被告人の公判廷への出頭を確保する必要性とそれから被告人の人権に対する配慮の双方を考慮すべき重要な問題でございますので、各裁判所では検察官の意見も聞いた上で慎重に検討がなされ決定されているところであると承知をいたしております。  なお、旅行の許可につきましても同様であるというふうに思っております。  以上でございます。
  147. 千葉景子

    ○千葉景子君 終わります。
  148. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 きょうは、午前中に三名の参考人から大変貴重な御意見を拝聴いたしました。  特に、元内閣広報官で岡山や静岡の県警本部長をしておられました宮脇参考人の「総会屋」という講演録、これは事前に配付をされましたし、またきょうの参考人としての意見陳述の中でも明らかになったことでございますが、我が国で総会屋が登場したのが一九〇二年だということを知って、改めて総会屋日本企業風土に深く根差して、そればかりか社会構造そのものに広く深く根差したやみの存在だなということがよくわかりました。  しかも、宮脇参考人からは、総会屋問題の主たる原因大蔵省銀行行政証券行政の不公正の黙視であるということ、あるいは行政の不公正の放置が組織犯罪問題の主要な根源であるという指摘もあったのであります。  ところで、去る十一月二十五日に野村証券利益供与事件の第一回公判が開かれまして、冒頭陳述の要旨がマスコミで報道されました。私も読ませていただいたのでありますが、きょうは最初に、野村証券関係者らによる総会屋小池への利益供与事件で提訴をされた株主代表訴訟の件数と内容について、まずお伺いをしたいと思います。
  149. 石垣君雄

    最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) 御質問の小池氏関連の事件でございますが、今、委員から御指摘ありましたように、一昨日新たに新聞報道もされましたし大変御関心も強いように見受けますので、事務処理に差し支えのない範囲で事実確認をさせていただいたところでございます。そういった限定つきでございますけれども、野村証券関係ではこれまでに東京地裁に六件の訴えが提起されておりまして、そのうち現在四件が係属をしているという状況のようでございます。  これらの訴えは、小池氏の実弟が経営する企業の名義での取引で生じた損失を補てんするため、野村証券が自己勘定取引で得た利益のつけかえにより利益供与をし、また現金三億二千万円を供与するなどしたという事件に関連するものであるというふうな主張になっております。  係属中の一件は、取締役らを被告として、利益のつけかえによる七千万円の損害賠償を求めるものでございまして、もう一件は、取締役らを被告として、現金の供与等について合計三億六千九百七十三万円の損害賠償を求めるものであるということのようでございます。さらに、同様の事件が二件係属をしていると、こういう状況でございます。
  150. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 六件提起をされて四件係属中ということでございましたが、二件は取り下げなんでしょうか、それとも既済事件になったんでしょうか。
  151. 石垣君雄

    最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) 二件は、委員御指摘のとおり取り下げで終わっているということのようでございます。
  152. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 野村証券と並んで大変大きな社会問題になりました、第一勧銀関係者らによる同じく総会屋小池への利益供与事件で提訴された株主代表訴訟の件数と内容についてもお教えをいただきたいと思います。
  153. 石垣君雄

    最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) 第一勧銀関係でも先ほどのような趣旨で調査をさせていただきましたが、東京地裁に二件の訴えが提起されておりまして、現在も係属をしているようでございます。  うち一件は、取締役らを被告として、第一勧銀が小池氏側に担保割れの融資をしたことから発生した損害の一部である十二億円を請求するというものでございます。そしてもう一件は、取締役らを被告として、第一勧銀がノンバンクを通じて小池氏側に迂回融資をしたことから発生した損害の一部であります十億円を請求するというもののようでございます。
  154. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 株主代表訴訟についてはさまざまな議論があるということは私も承知をいたしておりますし、先日の当委員会でも多くの委員からも質問があったとおりでございます。  私は、乱訴に及んでいるんじゃないか、あるいは乱訴の傾向があるのではないか、こういうことでにわかに株主代表訴訟の原告適格を制限すべし、こういうふうな意見にはくみしない、くみすべきでないという考えでありますが、けさも当委員会で弁護士であられる渡邊参考人から、株主代表訴訟こそが最大にして唯一のコーポレートガバナンスであると、こういう意見陳述もあったわけであります。その点、大いに参考になりました。  ところで、これら株主代表訴訟に対する企業側の自衛策というんでしょうか対抗策というんでしょうか、それとして会社役員賠償責任保険、こういうのがあるんだということがいろんな資料、文献に載っているわけであります。この会社役員賠償責任保険の仕組みというのは一体どうなっているのか、どのような場合にこの保険が効力を発するのか、その点お教えをいただきたいなと思います。
  155. 吉戒修一

    説明員吉戒修一君) お答え申し上げます。  委員御指摘のとおり、平成五年の商法改正によりまして手数料が一律低減化されたということから株主代表訴訟が提訴しやすくなったということで、これに伴いまして被告となる会社役員が敗訴いたしまして損害賠償債務を負担するというような事態がふえてくるんではないかということから、それの備えといたしまして会社役員損害賠償責任保険に関心が集中しております。  この保険は、沿革的にはアメリカで最初に商品として開発されて発展してきたものでございまして、アメリカでは広く利用されているというふうに聞いております。我が国では、平成五年にこの保険の和文約款が大蔵省によって認可されております。  この保険の内容でございますけれども、保険契約者である会社とそれから保険会社との間の保険契約によって決まってくるというものでございますけれども、一般的にその内容を申し上げますと、役員、これは取締役と監査役を含みますが、役員がその職務の遂行に際しまして会社または第三者に違法行為により損害を与えた場合に、当該役員が負う損害賠償債務等、これには損害賠償金とそれから争訟費用が入ります、これをてん補するために、会社が役員を被保険者として保険会社との間で締結する保険契約であるというふうに聞いております。  この保険のさらに具体的な内容でございますけれども、代表訴訟に即して申し上げますと、代表訴訟を提起された役員が勝訴いたしました場合には、訴訟の遂行に応じた弁護士費用、その他の争訟費用をてん補することを内容とする基本契約、これは基本契約と申します、それから反対に、役員が敗訴した場合のさらに損害賠償金までもてん補することを内容とする特約条項、この二つから成っております。  会社が保険契約者といたしまして契約をし、さらに手数料を支払う、保険料を支払うということができますのは基本契約、役員が敗訴した場合の損害賠償金をてん補する特約条項につきましては別途役員個人が保険料を支払うというような仕組みになっておると聞いております。  ただ、いずれにいたしましても、被保険者である役員が悪意または重過失によりまして損害を生じさせたというような場合には、これはいずれの基本契約でありましても、特約条項の場合でありましてもてん補されない。したがいまして、そういう場合には役員自身が損害賠償金を支払うということになろうかというふうに聞いております。
  156. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 さて、総会屋対策として、それぞれ企業が総務部を設置して総会屋担当を配置している、こういう実態がマスコミ等で報じられております。  もちろん大小を問わず、企業でありますから総務部という部署というのは必要だろうし、設けられているんでしょうけれども、どうも総会屋と今騒がれております四大証券を含む大企業利益供与・受供与罪の実態を見てみますと、総務部を中心に総会屋とかかわっておったんじゃないか、こういうふうに思われるわけでありますが、警察庁、総務部を中心にかかわった総会屋との関係、あるいはまた総会屋対策の実態等でも結構でございますから、説明をいただければありがたいなと思います。
  157. 宮本和夫

    説明員(宮本和夫君) 過去数年における利益供与事件の検挙事例などから見ました総会屋、そこからうかがわれるところの総会屋対策ということでお答えをさせていただきますけれども、一般に、名称はいろいろでございますけれども、総務部門と言われる部署、これが総会屋等に係ります対応をしているのが一般的であるようでございます。  そのような総務部門の担当者が総会屋に対して、みずから株主総会において攻撃的な発言をすることを控えてもらうことであるとか、株主総会の陰の進行役となって他の総会屋に株づけをさせず、要するに出席に必要な株の取得をさせず、または取得している場合にはその総会屋に対して出席発言を差し控えるといったことを持ちかけたり、また総会屋の側からなされたそうした旨の申し出に対して積極的に応じるなどによって、株主総会の議事が平穏かつ円滑に進行するよう協力を求めている事例、こういったものがこれまでの検挙事例のほとんどでありまして、企業の中で総務部門が窓口となって特定の総会屋と交渉し、他の総会屋を抑えるなどさせている実態が見受けられるところであります。  また、あわせまして、総務部門の担当者が異動などをする際において、後任の担当者に対し株主総会の議事進行に協力している総会屋を紹介するなど、いわば引き継ぎを行っていた事例などについても相当数把握をいたしているところでございます。
  158. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 よくわかりました。  また一方で、警察からの企業に対する総会屋と縁を切れ、関係を断ち切れと、こういう指導に対して、総務部あるいは総会屋を担当する職員あたりから、やっぱり生命、身体の安全に対する危害が加えられるのではないか、こういう不安も訴えられておるようでございますが、その点についても警察の方でしかるべき万全の体制をとっていただきたいと思います。  さきの当委員会で、私は総会屋の手口みたいなものについていろいろ警察庁からお教えをいただきました。きょうも、宮脇参考人から、新聞ゴロあるいは企業ゴロあるいはかぎ括弧右翼などを含めて具体的な手口をお教えいただいたところであります。総会屋による多数の架空名義での株づけ、それから質問状の送付、これも恐らく手口の一つなんだろうな、こういうふうに思うわけでありますが、それらの行為の態様を含めて、検挙事例の中から警察庁の方で認知をした範囲で結構でございますが、御答弁いただけたらありがたいなと思います。
  159. 宮本和夫

    説明員(宮本和夫君) 御指摘のような手法、手段は、一般的に企業を威圧するためのものと見られるところでありまして、総会屋企業から不正に利益を得るために仮名であるとか、異名であるとか、多数のグループ総会屋構成員の名義を使用して、多人数の名義で株主総会出席に必要ないわゆる単位株株式を取得して、株主総会には総会屋が集団で出席する、そういった状況をつくり出し、ほのめかしたり、また質問状につきましては、企業の営業活動とか議案の内容、役員の職務執行状況といった経営内容などについて極めて詳細な質問項目を多数掲げた質問状をその企業に送付するなどして、株主総会ではその質問項目を徹底して質問することをほのめかしたりする、こういったようなことによりまして、株主総会の議事の進行を妨害したり混乱させかねないといったおそれを企業側に抱かせようとする、こういった手段というふうに理解をいたしております。  最近の検挙事例におきましても、グループ総会屋の幹部が自分の土地、建物に対するノンバンクによる競売申し立ての取り下げを企てて、そのノンバンクと業務提携を結ぶ企業に対し、仮名で四十名を含む四十五名の名義で株主総会出席に必要な株式を取得した上で、株主総会に乗り込むなどと申し向けた事例でございますとか、またグループ総会屋の代表らが訪問した企業の総務担当者に対して六十二項目にわたる質問状をちらつかせながら、こういった内容株主総会で質問するのは格好悪いではないかなどと申し向けた上で下請参入を要求したような事例、こういったような事例を把握いたしておるところでございます。
  160. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 総会屋小池をめぐる利益供与事件以外に、海の家を舞台にした総会屋利益供与事件の摘発がございました。  その事件で、総務部の幹部が逮捕された三菱地所とか日立製作所、これらの企業のトップ責任が見えてこないという批判がマスコミ等でも出ております。私も同感でございますが、総会屋を根絶する対策一つとして、これらの企業のトップの責任を問う一つの方法として、総務部長とかあるいは総務部の総会担当者などが利益供与事件を起こした場合に、即社長にも責任が及ぶような社長連座制を法制化することについて、どのような方法があるのか、お教えいただけたらなと思います。  参考人にも聞きましたけれども、なかなかうまい方法がないという答弁でございましたが、今申し上げました三菱地所とか日立製作所にしても、逮捕者を出した企業のトップが、一方で、経団連ですか、そこの役員などにもついておるということで、社長連座制ということで役員としての地位を失わしめる、あるいは民事上の連帯責任が追及できるようにする法制化だとか、刑事上の責任というのは難しいのかもしれませんが、そこら辺の法制化の見通しみたいなものがあればお教えいただきたいなと思います。
  161. 森脇勝

    政府委員(森脇勝君) お答えになるかどうかわかりませんけれども、大変難しい課題だということを感じております。  ただ、大部分は現在の法制でも解決されているという部分もございます。  例えば、代表者なり代表取締役なりが利益供与金の供与に直接加わっていないという場合でも、共謀共同正犯という形で処罰の対象になるという場合がございます。そういった場合でございますと、当該代表取締役等が利益供与罪その他の商法の罪で刑に処せられた場合ということになりますので、その執行を終わった日または刑の執行を受けることがなくなった日から二年間経過するまでは取締役の欠格事由に当たる、この間は取締役になれない、こういう形に現行法でなっておるところでございます。  それから、全く代表者が関与していない、その場合に地位を失わせるということについてでございますが、この場合には、当該代表取締役は法的な責任を負うところがないということになりまして、法律上、当然その地位を失うという重大な不利益を課すということは、これを法律によって行うということはかなり困難なのではないかというふうに考えております。  ただ、翻って考えてみますと、株主総会はいつでも取締役を解任する決議ができるわけでございます。したがいまして、御指摘のような場合に、つまり総務部の職員が利益供与をやったというような場合に、社長の責任を問うて株主総会で代表取締役たる者を取締役に再任しないというような形を行うことは可能であるわけでございまして、どちらかというとこれは法制で決めるよりも会社自治の形でそういう方向の判断がなされるということの方が好ましいのではないかという感じがいたしております。  次に、損害賠償責任を負わせることはできないかということでございまして、これにつきましても、当該代表者が利益供与に何らかの形で加わっておるという場合には、これは当該行為者とともに連帯して賠償する責任を負う。これは現行法も当然でございます。それから、会社の社長等が具体的な指揮命令をしたわけではないという場合であっても、当該行為者についての行為者に対する監督を怠ったといったような会社に対する忠実義務あるいは善管注意義務違反に当たるという場合には、その過失責任に基づいて損害賠償責任が生じ、行為者とともに連帯して賠償責任を負うということになるんだろうと思われます。  最後に問題になりますのが、当該社長等にこのような過失も認められないという場合に損害賠償責任を負わせることはどうかということでございますが、これは無過失責任を負わせることになりますので、現在の法体系上の過失責任の原則から見ていかがなものだろうかというふうに考えるところでございます。
  162. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 大蔵省おいでのようでございますので、山一証券に見られるように、とてつもない簿外債務の存在等をめぐって、検査のあり方、報告のあり方が今厳しく問われているだろうと思います。検査回避あるいは虚偽報告等に関する罰則強化を内容とする銀行法等の改正の必要性、これは具体的に大蔵委員会などに係属しておるようでございますが、その法改正内容をお教えいただければありがたいなと思います。
  163. 内藤純一

    説明員(内藤純一君) お答えいたします。  現在、国会におきまして御審議いただいておりますが、銀行法等の罰則の強化についてでございます。最近の総会屋絡みの金融不祥事を踏まえまして、その再発防止を図るとともに、今後の金融システム改革に向けまして、金融システムの健全性を確保し、公正かつ透明な金融証券市場の構築を図るという観点から、銀行証券会社等を対象にいたしまして検査回避、虚偽報告等に対する罰則並びに証券市場等におきます不公正取引、ディスクロージャー違反等に係る罰則を強化するというものが今回の法改正内容でございます。  お尋ねの検査回避、虚偽報告といったものについて具体的に申し上げますと、銀行の検査回避、虚偽報告等に対する罰則でございますが、現行では五十万以下の罰金刑でございます。これを一年以下の懲役または三百万以下の罰金に引き上げるという内容を考えております。また、法人に対しましては二億円以下の罰金に大幅に引き上げるという形で重罰化を図っているということでございます。  また、ただいま御審議いただいております商法改正でございますが、例えば商法の規定では適用されません相互会社、これは保険会社の場合に当てはまろうかと思いますけれども、この場合におきます罰則の強化等につきましては商法改正に合わせました改正を行うということを考えております。  以上のような金融関係の罰則の整備は、金融当局によります検査、監督の実効性の確保といったものを通じまして、金融不祥事の再発防止に向けて十分な抑止効果を上げていくというふうに私ども期待をしておりまして、今後の行政手法として事後チェック体制の整備ということも図りながら、これと相まって金融証券市場の透明性、公正性の確保に資するものであるというふうに考えております。
  164. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 証券取引等監視委員会にも質問を通告をしておりました。それは、けさの東京新聞のトップで、山一証券の前会長、元会長がそれぞれ本人名義で保有していた山一証券の株を約六十万株、経営破綻の直前に売却をしておったんではないか、これがインサイダー取引に当たる可能性もあるし、同時にトップの背任行為ではないかということが報道されておりましたので、その事実関係を確かめようと思って通告をいたしました。  ところが、前会長が、午前中の予算委員会で、そういう事実はないんだというお話であったようでございますので、あえて質問をきょうの段階では取りやめておきたいと思います。御協力願ってありがとうございました。  終わります。
  165. 橋本敦

    ○橋本敦君 まず、法律案の構成要件についてでありますけれども、同僚委員からいろいろ指摘がありましたので、この問題はごく簡単な面にとどめておきたいと思います。  刑事局長のお話で、四百九十四条の罪質は四百九十七条よりも重いというお話がございました。その四百九十四条の会社荒らし等に関する贈収賄罪ということで事件になったのは、資料によりますと、昭和四十年の東洋電機のカラーテレビ事件、四十八年の図書印刷事件、四十九年の津工事件、この三件だというように資料にはございますが、そのとおりですか。
  166. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) そのように把握いたしております。
  167. 橋本敦

    ○橋本敦君 数々の総会屋の違法と見られる行為が社会的には存在する中でわずかこれだけの事件しか立件できなかった、そのことについてはどこに原因があったというように今考えていらっしゃいますか。
  168. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) 具体的な事件で立件できなかったものについての問題点ということで大変難しい点でございますが、やはり構成要件的に先ほど申し上げましたが、不正の請託ということがいわば要件になっておりまして、そのあたりが現実問題として株主権の行使に関して不正なことが請託されたかどうかという点を具体的に証拠によって立証するということはかなり困難な状況も、これは一般的に申してでございますがあるだろうと考えます。
  169. 橋本敦

    ○橋本敦君 私も御指摘の状況だというように理解しております。したがって、次の改正で四百九十七条が設けられたということは、これはやっぱり社会的ニーズにこたえて総会屋の暗躍を取り締まっていくという上で必要があったと思うんです。  そこで、同僚委員からも指摘されましたが、これに関して要求罪及び威迫に伴う要求罪が新設されたというのも今日の社会状況から見て私はそれなりに理由があると思いますが、問題は、これの乱用をしてはならないという一面の要素も皆さんがおっしゃったとおりあるわけですね。  そこで一点伺いたいんですが、この四百九十七条との関係、要求罪、威迫を伴う要求罪を見ますと、刑事局長何度もおっしゃるように、「株主ノ権利ノ行使ニ関シ」という文言の一定の枠がございますね。ところが、四百九十四条の方ではその点についてはもっと具体的に、株主総会等における発言または議決権の行使、株主総会の決議無効確認の訴えの提起、株主提案権の行使等のこうした列挙事項に関して不正の請託があればということで、いわば株主権の行使の内容を特定しているわけですね。ところが、四百九十七条ではそういう特定的制限条項がなくなって広く株主権の行使に関してと、こうなってきている。だからそういう意味では適用範囲が広まってくるという状況があるわけですね。  だから、この株主権の行使に関してというそのこと自体を的確に構成要件として限定的にあるいは正確に解釈するとすればどういうことになるのかということで、特にお考えがあれば教えていただきたい。
  170. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) この点は、結局四百九十四条の場合、贈収賄ということでございますし、不正の請託という点がございますから、かなり限定的に列挙的に規定がなされているものと存じます。それとの対比でまさに委員御指摘のとおり株主権の行使ということになりますと、いわゆる総会屋等ございますけれども、いわばそういうことを背景にしてあらゆるといいますか、かなり広範な形態で物事をとらえようという観点から会社側にさまざまな要求がなされるということが恐らくあるんだろうと思うわけです。  そういう中で、やはり法といたしましては、法の規定、その立て方と申しますか、構成要件としてはそういう実態に合わせてできるだけそれに迫りたいということが背景にあるんではなかろうか。しかし、あくまでもそれは株主権の行使あるいはその不行使に関してのものだということを限定づけているということで、いわばそれとは離れて一般的に会社側に何らかの要求をするというものではないというふうに考えられるわけでございます。
  171. 橋本敦

    ○橋本敦君 わかりました。広がってはいるけれども、株主権の行使に関してということは厳格に解するよと、こういうことですね。  ところが、環境運動などの市民運動をやります場合に、株主権を行使できる単位株を持っている人がその環境運動で運動をなさっている例だってないわけじゃないんですよ。だから、総会の場合に環境問題で会社の姿勢を問いただしたいというようなことがある。これは当たり前のことですし、そういう問題で会社といろいろ交渉する、そして環境被害を受けた場合の会社責任と損害賠償を要求するといったことが市民運動としてもあり得るわけですね。そういう場合にこの規定がもろに適用されたら、これは問題にならない。これは非常に市民運動に対する抑圧になりますわな。そういう場合はならないということはどういう点からかきちっとおっしゃっていただけますか。
  172. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) この点は大変微妙な点でございますが……
  173. 橋本敦

    ○橋本敦君 微妙じゃ困るんだよ。
  174. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) そこで、まさに委員の御懸念の点から申し上げますと、あくまで株主権の行使に関しまして、その行使不行使に関してその見返りとしてといいますか、つまり株主権の行使のその対価としての財産上の利益会社の計算上得るということが構成要件でございまして、正常なと申しますか、ちょっと言葉があれでございますが、いわゆる正当な市民運動と申しますか、会社に対してそれぞれの利害を持つ運動の中で会社と交渉をしてある一定の措置を要求するということとはおのずから違ってくるのではないだろうかと思います。その点が従来も恐らく実務上も厳格に明確に区別されて私は適用されてきたものと思います。  五十六年にこの法律ができて以来そういう点で御懸念があったような事案は恐らく私はなかったろうと考えております。なおかつ、今回そのようなことで新たに厳格にこの法律の法定刑が定められるということに関しましてこのような御論議が行われるということは、まさにその内容自体提案者としてそのように理解しているということを申し上げるわけでございますので、その点は今後法執行に当たりましても十分尊重されてまいるだろうと考えます。
  175. 橋本敦

    ○橋本敦君 わかりました。その問題はそういう御答弁をいただきましたので、そういう運用を期待して、次に進みたいと思います。  今回の総会屋に関する事件につきましては、野村から始まりましたが、山一、日興、大和と、こうまいりまして、大和証券の前社長の十亀博光氏など三人が起訴されたことによって一応四大証券事件捜査及び起訴自体は終わったということですか。
  176. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) 御指摘の四大証券と申しますか四つの証券会社、それからそれに先立ちました銀行に関する総会屋をめぐる事犯につきましては、一応の捜査処理を終えたというふうに理解しております。
  177. 橋本敦

    ○橋本敦君 この規模というのはまことに重大な問題でありまして、大体この事件での逮捕者は、他の顧客への損失補てんなどとあわせて企業側がトップ経営者三人を含んで何と三十六名逮捕された、そして総会屋側は三人の計三十九人、うち三十三人が起訴されるという空前の大型事件になったわけであります。しかも、五社から小池被告人が得た資金、利益は立件された分だけで百二十四億円に上る、こういう重大な事件ですね。  大体起訴された事件はそういう概要であることは間違いありませんね。
  178. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) そのように承知しております。
  179. 橋本敦

    ○橋本敦君 これはさきのいわゆる証券スキャンダル事件どころか、今日、日本経済界を揺るがす、世界からの信用をなくす大変な事案になったわけであります。  そこで、こういうような重大な事件になったというそのことについて法務大臣はどういう御所見を今お持ちなのか。私は、こういった事件は本当にこれは日本の今日の政治の中で、あるいは法秩序維持という重要な観点の中で許してはならぬ重大な事件だということを考えておりますが、法務大臣の御認識はいかがでしょうか。
  180. 下稲葉耕吉

    ○国務大臣(下稲葉耕吉君) お話しのように、いわゆる総会屋をめぐる事犯が今日ここまで参っているわけでございまして、極めて憂慮すべき事態であると深く認識いたしております。  そこで、今まで根絶できなかったことについてどうかというふうな点でございますが、我が国の経営者会社の体面を保つためにいわゆる総会屋に安易に妥協している、そして株主総会だけ何とか短時間で済ませればいいんだと、平穏に終わらせればいいんだというふうな考え方で、先ほど来お話ししておりますが、このような議論を避けようとする企業風土が総会屋を生む現象になったんじゃないだろうかというふうに深く思います。  ところが、従来はどちらかというと総務部の段階でとまっていたわけでございます。トカゲのしっぽ切りみたいな感じが否めなかったと言われても仕方がないんじゃないかなと思いますが、今回はトカゲそのものの本体にまで今御指摘のように入っているわけでございまして、企業が全体として深い認識を持つようになったということも私は事実だろうと思うのでございます。  したがいまして、そういうふうな認識をもとにして総会屋根絶のために一層努力しなければならないと思いますし、片や私どもは現在の商法の罰則規定が必ずしも十分でなかった側面もあるんじゃないかというふうにも思いますし、そういうようなことも含めて今回の改正をお願いしているというふうな段階でございます。
  181. 橋本敦

    ○橋本敦君 国会に証人あるいは参考人で来た企業のトップが、なぜこういうことになったかということについて、いわゆる総会屋の呪縛が解けなかったということを言ったこともありました。これは会社ぐるみじゃないかと追及されると、いや、そうじゃなくて個人ぐるみだと平気でこういうことを言ってきました。私はこうした企業トップの責任というのは本当に極めて重いと思うんですね。  調査室の資料でも、参考人のときに私も指摘したんですけれども、これは共同通信社で実施された主要企業五十社対象の調査ですが、総会屋への利益供与問題を起こさないために重要なことは何かといいますと、法規制の強化は四番目に出てきて、トップの決断が大事だというのが四十二社で最高ですね。それから担当者の意識、これがしつかりしなきゃならぬ、これが二十二社で二位ですね。私は今回の法改正はもちろん賛成ですけれども、企業トップの社会責任というのは極めて重いと思うんですね。その点、大臣はそういう御認識でしょうか。
  182. 下稲葉耕吉

    ○国務大臣(下稲葉耕吉君) 全く同感でございまして、時々まだそういうふうな私どもの認識と違う企業の幹部もおられるようでございますので、その辺につきましては私どもはやはり厳重に対処しなければならない、こういうふうに思います。
  183. 橋本敦

    ○橋本敦君 それで、私はこの問題について、従来から我が国の大蔵行政が護送船団方式などと言われてきたということは言うまでもないことなんですが、こういう巨大なスキャンダル事件に至るまでに大蔵省の検査あるいは証券監視委員会責任がないと言えるだろうか。これだけの事件が今一応起訴されたという状況の中で、振り返ってみずからの責任をどうお感じになっていらっしゃるか、その点をまず私は大蔵省あるいは証券監視委員会のきょうお越しの方に伺いたいと思いますが、いかがですか。
  184. 小手川大助

    説明員小手川大助君) 今、先生の方から御指摘のございました四つの事件のうちで、野村については行政処分が既に終了してございます。あとの三社につきましては、これから監視委員会の方でいろいろと御審議をいただきまして行政処分が必要であるという認識に達した場合には、私どもの方に対しまして行政処分の勧告というものがそこに出てまいります。その段階で私どもとしましては厳正なる処断をいたしたいと思っております。  今後の方向といたしまして、やはり基本的におっしゃるような護送船団というような話ではなくて、やはり今後は事後監視的な行政ということで、前もって行政がいろいろ申し上げるということではなくて、一つのルールについてしっかりしたわかりやすいルールでお示しをし、それを会社の方でリーガルリスクをとっていただいて、それで事後的にしっかりそれを見るという体制をつくることが大事だと思っております。
  185. 橋本敦

    ○橋本敦君 証券監視委員会はいかがでしょうか。
  186. 大前茂

    説明員(大前茂君) 証券取引等監視委員会は、証券会社等に対する検査あるいは日常的な市場監視及び取引の公正を害する犯則事件等の活動を通じまして、市場の公正性、透明性を確保することがその責務でございます。  検査及び調査の結果、重大な法令違反等が発見されました場合には大蔵大臣に対して行政処分等を求める勧告を行うほかに、犯則事件の端緒が発見された場合には告発を目指して調査を行ってきているところでございます。委員会は、こうした活動を通じまして市場の公正性、透明性を確保するという責務を果たしてきていると認識しております。今後とも市場監視機能を有効に発揮し、与えられた責務を適切に果たしてまいりたいと考えております。
  187. 橋本敦

    ○橋本敦君 私はそういう抽象的、形式的な答弁を聞こうとは思っていなかったんですよ。これだけの巨大なスキャンダル事件になったことについて、大蔵省証券取引等監視委員会はこれまでの検査やあるいは指導の体制にみずから反省して欠陥があったということの認識はないのかと、こう聞いているんですよ。まるでないんですか。ないならないとはっきり言ってもらいたいね。大蔵省証券監視委員会、もう一遍答えてくださいよ。どう考えているかということですよ。何の反省もないんですか、冗談じゃないよ。
  188. 小手川大助

    説明員小手川大助君) 先般の答弁で申し上げましたとおり、これは先ほどの答弁の中にもございましたけれども、一つはやはり会社のトップの認識というのが非常に大きかったのではないかと思っております。それで、私どもはそのような会社のトップの認識に至った原因等につきまして、先般の野村証券事件のときにも十分にその点を勘案いたしまして、いろいろな内部管理体制の整備等についても当方の方から申し上げ、会社の方からそれに対する報告を求めたところでございます。  基本的に今後の方向といたしましては、いわゆる行政がいろいろと突っ込んでいくということではなくて、やはり業界の方において自主的な規制をつくるとともにルールを明確にした上で事後監視的な行政に移っていくということで、まさに今般そのような点も踏まえてビッグバンに向けて今準備を進めているところでございます。
  189. 橋本敦

    ○橋本敦君 反省はないのか、反省点はないということか。
  190. 大前茂

    説明員(大前茂君) 今般の大手証券会社による一連の証券取引法違反事件につきましては、証券市場においていまだ法令遵守意識が徹底されていない証左であると考えておりまして、今後とも厳正な市場監視活動を行うことによって市場の公正性、透明性を確保するという責務を適切に果たしてまいりたいと考えております。  そのために、私ども体制を充実することも重要であると考えておりまして、必要な人員の確保を含む体制整備に取り組みますとともに、事務の効率化を図るためのシステムの拡充でありますとか、さらに市場監視手法の開発、向上等に努めてまいりたいというふうに考えております。
  191. 橋本敦

    ○橋本敦君 まるで話にならぬ。もう一遍聞きますよ。大蔵省、いいですか、証券監視委員会。これまで、これだけの大事件になるまで検査も指導もいろいろやってきたんでしょう。みずからの検査あるいは指導に不備があったかなかったか、みずから反省するところはあるのかないのかはっきり言ってくださいよ、もう一度。何も反省しないのか。簡単でいいよ。
  192. 小手川大助

    説明員小手川大助君) まさに私が先ほど申し上げましたビッグバンの関係でございますが、これは従来の金融行政について根本的な見直しをした上で、いわゆるフェア、フリー、グローバルという観点から、新しい方向に向けて一歩を踏み出したものであるというふうに考えております。
  193. 大前茂

    説明員(大前茂君) 今般の大手証券会社による一連の証券取引法違反事件につきまして、私ども、その端緒をつかんだ後、全力投球をして鋭意調査を行ってまいりました。その結果が先ほど御説明のあったようなことに結びついたんだろうと思います。  ただ、私どもの調査体制そのものが万全であったかと言われますと、そこには恐らく個別にこれからも検討していかなければならない点が多くあるだろうと思うんですけれども、その一つの重要な要素といたしまして、今後のこういった事犯に対しましてさらに万全を期するために体制を充実することが必要であるということで、先ほど御答弁申し上げた次第でございます。
  194. 橋本敦

    ○橋本敦君 反省なくして新しい方針も体制も出てきませんよ。恐るべきことだね。今度のこの事件が国際的にどれだけ批判されているかということを考えても、あるいは国民の中で金融秩序に対する信用をどれだけ落としたかということを考えても、大蔵省証券取引等監視委員会責任というのは、これまで何をやってきたかということで国民は不信感を持っているんですよ。これはもう大蔵大臣か総理に聞かなくちゃ答えが出ないかもしれぬけれども、本当にもっとまじめに反省すべきだよ。  そして、これに関連してきょうも魚住委員や、あるいは先ほども話があったけれども、山一証券の元会長、御存じのとおりですけれども、この元会長の植谷さんあるいは前会長の行平さん、何と持ち株を六十万株ほどどんどん売ったというんですよ。これはまさにあの山一証券社会的批判を受けて、御存じでしょうが、株価がどんどん落ちて五十八円まで行ったんだよ。そういう状況を内部情報として当然知り得る立場にあって、そして株を売り抜けたとするならば、これはもう言うまでもなくインサイダー取引ということに該当する。  証券取引等監視委員会に聞くけれども、未公開の会社の重要な事実を役員が知って、それに応じて株の処分をすれば、当然それは証券取引法の百六十六条に違反するインサイダー取引になることは明らかだね。どうですか、法律の問題として。
  195. 大前茂

    説明員(大前茂君) 役員等会社関係者等が重要事実の公表を前に当該事実を知りながら自社株を売買した場合はインサイダー取引の違反になることとなります。御指摘のとおりでございます。
  196. 風間昶

    委員長風間昶君) 質問時間を超えています。
  197. 橋本敦

    ○橋本敦君 それじゃ、もう最後で終わりますが、この問題について証券取引委員会大蔵省は今特別監査に入っている最中だが、この指摘された重要な問題についても念頭に置いてしっかり調査をやるということを約束してもらいたいし、こういうことについての違法行為は検察庁としても重要な事実としてこれからさらに必要があれば捜査を遂げてもらいたいということで、それぞれ答弁をいただいて、委員長、終わります。
  198. 大前茂

    説明員(大前茂君) 御指摘のような報道がなされていることは私ども承知しております。現時点において本件に係る事実関係は確認できておりませんけれども、行平前会長につきましては、本日の国会において本人から持ち株の売却はしていないとの発言があったということも承知しております。  いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、役員等会社関係者等が重要事実の公表前に当該事実を知りながら自社株を売買した場合はインサイダー取引に違反することとなりますので、委員会としましては、仮に取引の公正を害するような証券取引法違反があった場合には厳正に対処していく所存でございます。
  199. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) 一般論ということで恐縮でございますが、検察は刑事事件として取り上げるべきものがございますれば証拠に基づきまして厳正に対処するものと思います。
  200. 橋本敦

    ○橋本敦君 委員長、時間が過ぎて済みませんでした。終わります。
  201. 風間昶

    委員長風間昶君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。――別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  商法及び株式会社監査等に関する商法特例に関する法律の一部を改正する法律案賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  202. 風間昶

    委員長風間昶君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  大森礼子君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。大森礼子君。
  203. 大森礼子

    ○大森礼子君 私は、ただいま可決されました商法及び株式会社監査等に関する商法特例に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、平成会、民主党・新緑風会、社会民主党・護憲連合及び日本共産党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。  商法及び株式会社監査等に関する商法特例に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、次の諸点について格段の努力をすべきである。  一 いわゆる総会屋存在が、我が国の株主総会運営の在り方にも由来し、その根絶には企業経営者の意識改革が不可欠であることにかんがみ、総会の適正な運営と、監査及び検査体制の充実を図るための法的、行政的措置の整備に努めること。  二 いわゆる総会屋の不法な行為を排除するため、企業経営者等に対する警護に配慮するとともに、いわゆる総会屋あるいは暴力団による脅迫、殺傷等については、取締りを徹底し、事件の早期解決に努めること。  三 新設される利益供与要求罪の運用に当たっては、正当な株主権の行使や市民活動、労働・住民運動を不当に阻害しないようにすること。  四 企業経営の健全化を図り、内部チェック機能を充実させるため、業務及び会計に関する情報の開示が十分行われるよう指導に努めること。  五 経済事犯における公訴時効及び罰金刑の在り方について、個別の罪質を加味した措置の可能性を含め検討すること。  右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  204. 風間昶

    委員長風間昶君) ただいま大森君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  205. 風間昶

    委員長風間昶君) 全会一致と認めます。よって、大森君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、下稲葉法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。下稲葉法務大臣。
  206. 下稲葉耕吉

    ○国務大臣(下稲葉耕吉君) ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
  207. 風間昶

    委員長風間昶君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  208. 風間昶

    委員長風間昶君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十九分散会