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1997-12-09 第141回国会 参議院 地方行政委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十二月九日(火曜日)    午前九時三十分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         藁科 滿治君     理 事                 久世 公堯君                 松村 龍二君                 岩瀬 良三君                 朝日 俊弘君     委 員                 岡野  裕君                 上吉原一天君                 田村 公平君                 谷川 秀善君                 山本 一太君                 石井 一二君                 小林  元君                 吉田 之久君                 村沢  牧君                 渡辺 四郎君                 有働 正治君                 西川きよし君    事務局側        常任委員会専門        員        入内島 修君    参考人        地方分権推進委        員会委員長    諸井  虔君        地方分権推進委        員会委員長代理        (地方行政体制        等検討グループ        座長)      堀江  湛君        地方分権推進委        員会委員行政        関係検討グルー        プ座長)     西尾  勝君        地方分権推進委        員会専門委員        (補助金税財        源検討グループ        座長)      神野 直彦君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○地方行政改革に関する調査  (地方分権推進に関する件)     —————————————
  2. 藁科滿治

    委員長藁科滿治君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。  地方行政改革に関する調査のうち、地方分権推進に関する件を議題といたします。  この際、参考人皆様に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ、本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。  皆様の忌憚のない御意見を承り、今後の調査参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  本日の議事の進め方でございますが、まず、諸井参考人から地方分権推進委員会勧告について三十分程度お述べいただき、その後、委員質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、諸井参考人、お願いいたします。
  3. 諸井虔

    参考人諸井虔君) 地方分権推進委員長諸井でございます。  先生方には常日ごろから地方分権推進につきましては格別の御支援をちょうだいいたしまして、まことにありがとうございます。また、本日は、当委員会勧告内容につきまして説明機会を与えていただきましたことを感謝申し上げます。  本日は、地方分権推進委員会のこれまでの四次にわたる勧告につきまして、その内容のあらましを説明させていただき、御理解を賜りたいと存じます。  まず、私どもの方の出席者を紹介させていただきます。  委員長代理地方行政体制等検討グループ座長堀江湛杏林大学教授でございます。  それから、委員行政関係検討グループ座長西尾勝東京大学教授でございます。  専門委員補助金税財源検討グループ座長神野直彦東京大学教授でございます。  どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、お手元に資料をお配りしてあると存じますが、それをひとつごらんいただきながらお聞き取りいただければと存じます。  当委員会は、地方分権推進法に基づきまして、平成七年の七月三日に五年間の時限の機関ということで発足をいたしました。昨年の十二月二十日に第一次勧告を行いました後、本年に入りまして、七月八日に第二次勧告、それから九月二日に第三次勧告、そして十月九日に第四次勧告を順次行ってまいりました。これによりまして、地方分権推進法に示された地方分権推進のための課題について具体的指針を一通り勧告することができたというふうに考えております。  また、当委員会勧告のすべてが政府の作成する地方分権推進計画に着実に具体化され、実施に移される、そういう改革案になっているというふうに考えておる次第でございます。  それでは、四次にわたる勧告概要につきまして御説明申し上げます。資料の八ページからその勧告内容が書いてございます。  まず、第一次勧告におきまして、明治以来の我が国中央集権型行政システム中核的部分を形づくっておりました機関委任事務制度については、国と地方公共団体とを上下、主従の関係に置いている。二番目に、知事市町村長地方代表者と国の地方行政機関としての二重の役割を負わせているため、知事市町村長地方公共団体代表者としての役割に徹し切れないなどといった弊害が生じていることから、国と地方公共団体との行政システム関係地方自治の本旨を基本とする対等協力関係に転換させるために、この際、機関委任事務制度そのもの廃止すべきことを勧告いたしました。  それから、地方公共団体事務の新たな考え方でございますが、従前地方公共団体事務を再編成いたしまして、新たに自治事務、これは仮称でございますが、それから法定受託事務、これも仮称でございますが、その二つに区分することといたしまして、新たな事務区分に応じた条例制定権地方議会権限監査委員権限等制度上の取り扱いについて基本的考え方整理いたしました。  このような地方公共団体事務の新たな考え方を踏まえて、従前機関委任事務について、事務自体廃止するもの及び国の直接執行事務とするものを除きまして、原則自治事務例外法定受託事務とする方針で事務区分整理を個別の事務ごとに行い、地方自治法別表第三、第四に掲げる五百六十一項目機関委任事務すべての整理を第四次勧告までに終えることができました。その結果、従前機関委任事務に占める自治事務法定受託事務との割合はおおむね六対四となりました。  なお、事務自体廃止することとしたものは十一項目、国の直接執行事務としたものは二十項目となっております。  また、従前団体委任事務と称しておったものがございますが、これは今後とも存続すべき事務自治事務とすることにいたしました。  それから、第三次勧告におきまして、地方事務官制度前提となってきた社会保険関係及び職業安定関係機関委任事務につきまして基本的に国の直接執行事務といたしまして、職員はそれぞれ厚生事務官労働事務官とすることによりまして地方事務官制度廃止することといたしました。  次に、権限移譲関係でございますが、国から都道府県への権限移譲については、農地転用許可保安林指定、解除など、地域づくりに関し長年の懸案であった事項中心に第一次勧告で取り上げましたが、第四次勧告では市町村規模等に応じた権限移譲について検討いたしまして、二十万人以上など一定人口規模を有する市を当該市の申し出に基づき指定することなどによりまして、権限をまとめて移譲することとしております。  例えば、指定都市移譲すべき事務としては埋蔵文化財包蔵地域における土木工事等届け出受理等がありますし、また中核市移譲すべき事務としては大気汚染公表等があります。また、今回新たに設定した人口二十万人以上の市へ移譲すべき事務としては公害関係規制地域指定開発行為許可等がございます。そのほか、すべての市、すべての市町村移譲すべき事務として整理したものを含めまして、全体で三十四件について提言をいたしました。  また、特に地方公共団体から要望の強い都市計画については、都道府県から市町村決定権限を大幅に移譲するとともに、国、都道府県による関与も限定することといたしております。  次に、機関委任事務制度廃止に伴う事務区分の再編成に合わせまして、国と地方公共団体との新しい関係確立するため、地方公共団体に対する国の関与あり方も極力廃止縮減する方向で見直す必要が出てまいりますので、国の関与基本類型一般ルール法設定することや、公正、透明性確保するための国の関与手続紛争処理仕組みを定めることとしております。  まず、地方公共団体が担う事務に対する国の関与については、法定主義原則一般法主義原則、公正・透明の原則、この三つ一般原則を定めております。  また、一般法主義原則に基づきまして、一般ルール法で定めることとされる国の関与類型自治事務及び法定受託事務性格に応じて設定をいたしまして、事前協議合意を要するものや緊急時等に指示ができるものを限定することとしております。  次に、国と地方公共団体の新たな関係の具体的なあり方といたしまして、第一に地方公共団体に対する国の関与手続ルール、第二に地方公共団体意見申し出と国の応答義務、第三に国と地方公共団体との間の係争処理仕組み、この三つについて提言をしております。  地方公共団体に対する国の関与手続については、官と民の関係を律する行政手続法的な考え方に準じてその調整ルール手続を定めようとするものであり、第一に国が関与等を行う際の書面交付などの書面主義原則、国による許認可等基準公表など手続の公正、透明性確保、第三に標準処理期間設定など事務処理迅速性確保といった内容原則として一般ルール法に定めることとしております。  また、特定の地方公共団体または地方自治全般に影響を及ぼす国の施策に関し、地方公共団体意向が適切に反映されるための機会を設ける意味から、地方公共団体意見申し出仕組みと、これに対する国の応答義務についても勧告いたしております。これらにつきましては第二次勧告提言したものでございます。  国と地方公共団体との間の係争処理仕組みにつきましては、第四次勧告において最終的に結論を得ることができました。すなわち、第一に、国の関与に関する係争を処理する第三者機関として国地方係争処理委員会、これは仮称でございます、を置くこと。第二に、地方公共団体は国の関与に不服がある場合に、国は地方公共団体是正措置要求または指示に従わない等の場合に委員会審査申し出をすることができる。地方公共団体と国の両方が審査申し出をすることができるということでございます。第三に、委員会審査申し出を受けて勧告または調停を行う。第四に、委員会勧告に従わない場合等には、地方公共団体関与の取り消しの訴え等を、また国は是正措置要求または指示に従わないことの違法の確認の訴え高等裁判所に提起することができることを提言しております。  次に、都道府県市町村の新しい関係でございます。  これまでの機関委任事務制度のもとで、都道府県市町村に対して一般的に優越的な地位にあり、市町村事務関与したり市町村を指導したりすることが当然であるかのような様相を呈してきたことを踏まえ、都道府県市町村の間において、分権型社会にふさわしい対等協力の新たな関係を構築していくこととしております。このため、都道府県市町村事務配分見直し機関委任事務制度前提とする従来の後見的な監督規定廃止するとともに、市町村に対する都道府県及び国の関与を極力縮減することとしております。  次に、国と地方公共団体財政関係については、第二次勧告において、地方公共団体自主性自立性を高める観点から基本的見直しを行う必要があることを踏まえ、第一に国庫補助負担金整理合理化、第二に存続する国庫補助負担金運用関与改革、第三に地方税地方交付税等地方一般財源充実確保、この三つの視点から財政面における自己決定自己責任の拡充に向けた改革方策提言いたしました。  国と地方経費負担区分原則等でございますが、最初に国と地方関係整理する方向といたしまして、第一に地方公共団体の担う事務に要する経費につきましては、従来どおり当該地方公共団体が全額負担することを原則とすることとしましたが、専ら国の利害に関係のある法定受託事務などについては、国はその負担すべき割合に応じて毎年度確実に負担することとしております。第二に、法定受託事務または法律に定めのある自治事務のうち地方公共団体実施を義務づけられているものは、国はそのために要する財源について必要な措置を講ずることとしております。それから、国庫補助負担金整理合理化を進めるに当たりまして、国庫補助金または国庫負担金区分を明確化することを求めております。  次に、国庫補助負担金整理合理化基本的考え方として、第一に存続意義の薄れた事務事業及びこれに対する国庫補助負担金廃止、第二に同化、定着、定型化しているもの、人件費補助等一般財源化、第三に五年を終期とするサンセット方式やスクラップ・アンド・ビルドの原則徹底等提言しております。  国庫補助金については、国家補償的な性格を有するものや災害支出に関するものなどを除き、原則として廃止縮減を図っていくほか、補助率三分の一未満のもの、零細なものなどについて原則として廃止または一般財源化等を進めていくこととしております。また、国庫補助金削減計画策定し、計画的に削減していくこととしております。国庫負担金については、おおむね十年ごと基本的な見直しを行うとともに、対象分野事業についても限定することとしております。  存続する国庫補助負担金については、地方の自主的、自立的な行財政運営確立を図る観点から、補助金等適正化法等及びその運用あり方についての見直しを含め、その運用関与改革を図ることとしております。なお、例示として百件の国庫補助負担金を取り上げ、整理合理化運用関与改革等の処方せんを具体的に示しました。  次に、地方税財源充実確保として、地方税地方交付税地方債を取り上げております。  地方税については、地方歳出規模地方税収入の乖離をできるだけ縮小する観点に立って、課税自主権を尊重しつつ、その充実確保を図るべきであるとしております。また、国と地方役割分担を踏まえつつ、中長期的に国と地方税財源配分あり方について検討しながら充実確保を図っていくべきことを勧告するとともに、当面は国庫補助負担金廃止縮減を行っても引き続き当該事務実施が必要な場合や、国から地方公共団体への事務権限移譲が行われた場合において、その内容規模等を考慮しつつ、地方税等の必要な一般財源確保を図ることとしております。  さらに、課税自主権の尊重の観点から、第一に法定外普通税許可制度合意を要する事前協議とし、税源の所在及び財政需要の有無は事前協議基本事項から除外すること、第二に法定外目的税制度を創設すること、第三に住民みずからが負担を決定する性格が強い個人市町村民税については制限税率廃止すること、以上三点を提言いたしました。  地方交付税については、その総額の安定的確保を図るとともに、算定方法簡素化観点から、補正係数を極力単位費用化するとともに、その算定方法について地方公共団体から意見申し出ることができる制度を設けることとしております。また、財政再建行革努力等を促す観点市町村合併支援観点からの財政需要に反映させることの検討や、地方債元利償還期について、地方債の実償還額等に応じ基準財政需要額に算入する措置あり方見直しなどを提言しております。  地方債許可制度については、地方公共団体自主性を高める観点に立って廃止し、事前協議制に移行するとともに、地方財政計画等を通じた財源措置は、合意が調った地方債についてのみ行うこととしました。ただし、赤字額公債負担一定水準以上の地方公共団体等については原則起債禁止としておりますし、一定の場合には許可を受けて発行することとしているほか、財政構造改革期間中においては地方公共団体歳出の抑制が求められていることから許可制度を維持することとしております。  次に、地方行政体制の整備、確立として、第一に地方公共団体における行政改革等推進、第二に市町村自主的合併広域行政推進、第三に地方議会活性化、第四に住民参加拡大多様化、第五に公正の確保透明性向上、第六に首長多選見直しについて、地方公共団体において自発的な取り組みを積極的に行うよう要請するとともに、国が講すべき支援策促進策について提言をしております。  行政改革等推進については、第一に、行政改革大綱等の改定、充実年度行政改革実施計画策定公表、第二に、定員管理、給与の適正化等、第三に、人事交流と人材の育成等を取り上げております。  また、市町村自主的合併については、今まで以上に積極的に進めていただくため、第一に、大都市圏地方中心都市とその周辺地域過疎地域などの地域の実情に配慮した施策実施することとし、政令市、中核市権限拡大中核市要件緩和中核市に準ずる市の特例の創設、市となるための要件見直し検討を行うこと、第二に、合併推進のための都道府県役割として、地域の実態を反映した市町村合併のパターンの提示、先進事例紹介等を行い、国はこのために必要な指針策定すること、第三に、そのほかとして、地方交付税等による財政上の支援措置検討住民発議制度をより効果的なものとするための制度的工夫、旧市町村代表合併市町村執行機関などへの参加仕組みの導入などを提言しております。  地方議会活性化として、条例による議決事件拡大議会事務局充実強化議員定数弾力化議会公開推進等を取り上げております。  住民参加拡大多様化として、直接請求制度見直し検討住民投票制度検討、民間のコミュニティー活動等との連携、協力のための支援等提言しております。  公正の確保透明性向上として、第一に情報公開推進、第二に行政手続適正化、第三に監査機能充実強化提言しております。  首長多選については、首長の選出に制約を加えることの憲法上の可否を十分吟味した上で、地方公共団体の選択により、多選制限を可能とする方策を含めて幅広く検討するよう提言をしております。  次に、国が地方公共団体に対し、職員行政機関等を設置しなければならないと義務づけている必置規制について、地方公共団体自主組織権を制約すると同時に、行政総合化効率化を阻害する要因ともなっているとの認識に立って、必置規制は法令に根拠を置き、必要最小限のものにとどめることとするとともに、職員行政機関、施設、各種審議会等について七十九件を具体的に取り上げ、提言をいたしました。  国の地方出先機関見直しについては、地方分権推進に伴い事務量が減少する機関、本庁と事務補助金等手続が重複する機関について見直しを進めるよう提言をしております。  以上が地方分権推進委員会の第一次から第四次までの勧告概要でございます。  最初にも申し上げましたとおり、四次までの勧告によりまして、地方分権推進法により示された地方分権推進のための課題について、地方分権推進し、国と地方公共団体との間の新たな関係確立するための道筋を示すことができたものと考えております。国と地方公共団体の双方が、四次にわたる勧告が示した国と地方公共団体との関係についての新たな枠組みのもとで対等協力関係を築き上げる努力を続けることにより、我が国行政あり方は大きく変わることと信じております。  今後、委員会の任務は、地方分権推進計画実施状況の監視に中心を移すこととなりますが、政府による地方分権推進計画策定作業の間においても、これをよりよいものとするために、随時政府協力し、必要に応じ補足的な検討を行ってまいりたいと考えております。  以上で説明を終わらせていただきますが、当委員会活動に対しまして、引き続き議員各位の御理解と御支援を切にお願いする次第でございます。  どうもありがとうございました。
  4. 藁科滿治

    委員長藁科滿治君) ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 上吉原一天

    上吉原一天君 地方分権推進委員会諸井委員長さんを初め各委員先生方におかれましては、第一次から第四次までにわたります勧告の取りまとめにつきまして大変な御苦労をなさったと思います。敬意を表したいと思います。  今回、私自身の経験も踏まえまして若干御質問をさせていただきたいと思います。  まず、機関委任事務廃止というのは、御説明にもありましたが、大変画期的な改革だというふうに思いますけれども、それが実際に実現するかどうかというのが本当の問題でございまして、現場の実務の感覚では、これによりまして国の関与がどれだけ減るのかというのが問題視をされているわけでございます。勧告ではかなり国関与を認めることになっておりますけれども、これで本当に国と地方関係が抜本的に変わると考えてよろしいのでしょうか、お伺いをいたします。
  6. 諸井虔

    参考人諸井虔君) 地方分権推進委員会では、国の関与について、機関委任事務制度を根本的に廃止するということで、今まで国が包括的に指揮監督権を持っていた、その点をまず根本的に改めるということをねらったわけでございます。  従来、そういう包括的な指揮監督権で、指導、通達というものが詳細に行われてやってまいりました。今後は国の関与法律かそれに基づく政令に具体的な根拠を有する個別的関与に限られることになります。また、それによって国の関与というのは従来に比べて相当限定されることになるというふうに考えております。  また、勧告では、個別的な関与について、先ほど申し上げましたように、自治事務とか法定受託事務類型に応じて基本的に幾つかの関与類型というものをつくっております。いわゆる許可、認可、承認といったような権力的な関与自治事務については基本的には認めないということにしております。  また、事前協議をするような場合、特に事前協議でも合意が条件になっているようなケース、これは極力限定をすることにして国の関与縮減を図ってまいります。  また、国の関与があるとしても、透明性あるいは公正性というものを確保するためにその関与ルールを定めることにしましたほか、もしそれについていろいろ解釈の相違とか意見の対立があった場合のそういう係争処理のために、第三者機関として国地方係争処理委員会を設立してそこで新たな勧告制度をつくる、第三者機関係争について勧告をする、それに不服な場合には高等裁判所の方へ上告をしていくというようなルールもつくったわけであります。  こういうようなことを大分やりましたものですから、関与があるとしても従来に比べましたら相当程度大幅に縮減ができるんではないかというふうに考えております。
  7. 上吉原一天

    上吉原一天君 関与原則というのをはっきりさせたということは大変評価できると思います。  ただ、個別関与の仕方も、従来ですと通達行政ということが言われておりまして、国の方がどんどん通達を出して地方団体の手足を縛るということがあったわけでございます。  私が考えるところによりますと、そもそも通達というのは同一の行政組織の中で上級庁下級庁に対して自分たちの統一的な考えなり解釈なりを伝達する、こういうものが通達だというふうに思いますが、もし機関委任事務廃止をされれば国と地方対等関係になるわけですから、通達行政も極力なくなるんじゃないかというふうに思うわけです。ただ、法律所管省というのが本省というか国の方であるわけですから、同じような姿勢で統一的に運用をしたいという国の意向が働きまして、余り変わらないんじゃないかというような気もするわけです。  ですから、国と対等関係に立つとされます地方自治体に対するこのような通達というのは今後どのように評価をされるのか、また従来のような通達行政がなくなるという保証があるのかどうか、その辺をお伺いいたしたいと思います。
  8. 西尾勝

    参考人西尾勝君) 機関委任事務における包括的な指揮監督権は今回の勧告に従いまして廃止されます。今後は国の関与法律またはこれに基づく政令にその根拠が定められる必要があるとしておりますので、従来のような包括的な指揮監督としての通達によって地方公共団体事務を義務づける等の関与廃止されることになります。  なお、勧告では、法令所管省庁は自治事務につきましてもその法令の解釈を技術的助言の意思として地方公共団体に示すことができるとしておりますけれども、このようなこれまで施行通達などと呼ばれてきたものに当たるものも機関委任事務に関する指揮監督として行われるものではなくなり、地方公共団体法律上拘束するものではございません。  万一、現在と同様にいわゆる通達行政と言われるようなものが行われるようなことがあった場合でありますが、今後、地方公共団体は国の関与に不服がある場合は国地方係争処理委員会審査申し出ることができることにしております。さらに、司法審査への道も開かれることとなっております。したがいまして、このような第三者的な解決が図られることによりまして違法等の関与は是正され、その結果いわゆる通達行政は排除されていくものというふうに私どもは考えているところでございます。
  9. 上吉原一天

    上吉原一天君 次に、経費負担の問題についてお伺いをいたします。  現行制度のもとにおきましては、国と地方経費負担について、固有事務、団体事務、それから機関委任事務、こういった事務性格にかかわらず、地方公共団体実施主体となる事務事業の費用につきましては地方公共団体が全額を負担するということを基本とした上で、これらに要する経費につきまして国が地方税あるいは交付税などの一般財源を含めまして財源措置を講ずるというふうにされているわけでございます。  機関委任事務廃止をされて、新しい事務区分におきましては、私の考えですけれども、筋を通した考えをするならば、自治事務経費地方財源として確保すべきであって、現在の国の負担分というのは地方に移管をされるべきだというように思いますし、法定受託事務につきましては、本来これは国が直接執行すべき事務なわけですから、地方交付税のような地方の固有の財源から支出をされるのではなくて、国の財源とした上で負担金やあるいは委託費のような形でもって負担をさせる仕分けが必要じゃないかというふうに思うわけでございます。  この辺が新制度では財政的な性格づけが機関委任事務に似てあいまいではないかというふうな気がいたしますが、その辺どうお考えでしょうか。これは委託費という制度ならば不交付団体にもお金が渡ることになりますね。ですから、その辺をどうお考えなのか、お伺いをいたします。
  10. 神野直彦

    参考人神野直彦君) ただいまの上吉原先生の御質問は、法定受託事務については現在の委託金のように、つまり専ら国の利害にかかわる事務について出している委託金のように全面的に国が負担すべきではないか、こういう御趣旨で、そうすれば事務区分経費負担区分というのは明確になるのではないかという御意見だと思いますが、私ども委員会でも先生のような御意見検討した経緯がございます。  しかし、結論といたしましては、先生今御指摘のように、現在の地財法の基本的な原則である、それぞれの事務を執行している政府と申しますか、中央政府だったら中央政府が執行している事務は中央政府負担する、地方公共団体が執行している事務については地方公共団体が全額これを負担するという原則は一応貫くべきではないかというふうに考えまして、その上で現在地財法が規定しているような利害に基づく負担区分というようなことを基本的な考え方として堅持すべきではないかという結論に達しております。  したがいまして、専ら国の利害にかかわる事務については全面的に国が負担する、しかしナショナルミニマムのようなものについてはそれぞれ国の利害に応じて負担し、かつ全国的な計画に基づくものについては現在の負担金というような形でもって負担するというような考え方整理をさせていただいたところでございます。
  11. 上吉原一天

    上吉原一天君 今の問題は財源全体の措置の問題ともかかわってくる大きな問題だと思いますので、その中でまた検討していただきたいというふうに思いますけれども、時間がないので次へ移ります。  行政のスリム化の問題をちょっとお伺いいたします。  国民が今地方分権を望む、規制緩和を望む、いろんなことを行革でやっておりますけれども、これは行政の肥大化を防いで効率化した政府をつくりたい、こういう願望のあらわれだというふうに思います。地方分権推進に当たりまして、推進法の第三条第三項におきましては、国、地方を通じた行政の簡素効率化推進するよう念を押しておるわけですね。勧告の実現に伴う効率化によりまして国の定員は減少することになるのか、もしなるとすればどの程度減るというふうに見通しておられるのでしょうか。また同時に、地方の方では機関委任事務廃止されまして効率化が図られますならば、新規事業としての事務、例えば介護保険などにつきましては別ですけれども、定員も減る、あるいは抑制されてしかるべきだというふうに考えますが、いかがでしょうか。  また、あわせて人の問題ですけれども、推進法制定時に、地方分権が進めば国の優秀な公務員が地方にどっと移るような答弁もあったように思いますけれども、これは非常に望ましいことだというふうに思います。今回の勧告を通して見る限り、どうもそのような人材の地方大量移動というのは考えにくいと思いますけれども、この辺いかがお考えでしょうか、委員長にお尋ねいたします。
  12. 諸井虔

    参考人諸井虔君) 我々委員会は、地方分権に取りかかる一番最初前提として、地方分権によって地方の役人の数がふえるというようなことはあってはいかぬということをまず大前提として考えました。  それで、機関委任事務制度の撤廃を初め関与縮減をやってまいりますと、今まで地方の自治体の人たちが中央の省庁にいろいろお伺いを立てに行くその手間暇、金というものはかなり縮減をされるわけでございます。ですから、基本的にはむしろ縮減になっていくんだと。おっしゃるように、今後また新たな地方自治体の行政というのがふえてまいります。できるだけその人数をふやさぬでそういうものがこなせるような体制に持っていくのが基本じゃないかというふうに考えております。  それから、中央の方は、もちろん関与縮減によってある程度事務量が減ってくることは間違いないと思うんですが、では一体何人ぐらい減るのかとか何割減るのかというような数値的な算出の仕方は困難なところで、しかし全体としての事務縮減につながることは間違いないと思います。あとは中央省庁の方でその辺を真剣に考えて、今後スリム化の進む中でそういうものを台にして人数を減らしていくという方向ではないかと思います。  それから、人材の面につきましては、今まで自治体に自分で考えて仕事をするということをさせないで、先ほどおっしゃいましたような通達とかいろんな指示監督ですべて中央にお伺いを立てて仕事をさせるような方策をとってきているわけですね。そういう中では人材が育つわけがないわけであります。これからどんどん仕事が地方へ移っていく、関与も減っていくということになれば、これは当然、地方の人材の質がもともと悪いわけではないわけでありまして、仕事をやるチャンスを与えていないわけであります。ですから、その辺がこれからどんどんおりてくることによって人材が育っていく、それが一番ポイントだと思いますね。  それから、中央から地方へ移るという点は、実は事務権限あるいは財源等がどかっと移っていくと当然そういう現象が起こると思うんですが、今回の四次勧告までのところでは関与縮減の方に力点がありまして、権限移譲についてはそれほど大きなものではございませんので、今までの勧告の中でそういう現象にはならないんじゃないかというふうに考えております。
  13. 上吉原一天

    上吉原一天君 今回の第四次勧告の中で、新しく人口二十万の市に対する権限移譲勧告をされますけれども、人口だけをとらえて権限に差を設けるという考えに至ったのはどういう御趣旨なんでしょうか。
  14. 西尾勝

    参考人西尾勝君) 市町村への権限移譲につきましては、すべての市町村に一律に権限移譲できればこれにこしたことはないわけでございますが、なかなかそうはいかない事務が多いわけでございます。  市町村への権限移譲を少しでも推進していくというために、これまでも政令市あるいは中核市権限移譲するという方式があったわけであります。そこで、その政令市、中核市以外に、行政ニーズが集中しておりましたり、あるいは事務処理に必要とされる専門的な知識とか技術を備えた組織が整えられると思われるような市町村から段階的に権限移譲していくというのも一つの有益な方策ではないかというふうに考えた次第であります。  その際、一般的に申しますと、市町村の組織規模、役所、役場の組織規模というものはその地域社会の人口の規模に応じて大きくなり、そしてまた専門的職員確保されていくという形になっておりますものですから、一応人口基準として権限移譲するということも一つの考え方ではないかというふうに考えた次第でございます。
  15. 上吉原一天

    上吉原一天君 私は、せっかく権限移譲するなら中核市に準じたような権限、特に町づくりの権限というのが各市町村から非常に強い要望があると思うんですね。その辺も含めて検討すべきではなかったのかなというふうに思っております。  時間がないので次に移りたいと思いますけれども、財源の問題でございます。  地方自治確立するためには地方税財源、特に地方税源の充実が不可欠なことは言うまでもないわけです。今回の勧告では、国から地方への権限移譲が行われた場合や国庫補助負担金廃止縮減が行われた場合の一般財源確保につきましては述べられておりますけれども、その具体的な方法が明示されておりません。自治体は国税から地方税への税源移譲あるいは交付税率の引き上げなどによる明確な一般財源措置がなされるべきだというふうに考えているわけですけれども、委員会としてはどのようにお考えでしょうか。
  16. 神野直彦

    参考人神野直彦君) 先生御指摘のように、勧告では二つの場合に一般財源化を図るということになっておりまして、一つは国から地方事務権限移譲された場合、それからもう一つは補助金負担金を整理合理化してもなお事務実施しなければならない、こういう場合に一般財源化を図るようにというふうに指摘させていただいておりますが、その場合も所要の財源を明確にするように、地方財政計画などでそれぞれ一般財源化を図る場合には所要の財源を明確にするようにということをそれぞれの場合にうたっております。  その上で先生の御指摘は、具体的に地方税充実していくのかあるいは交付税を充実していくのかということが不明確ではないか、一般財源化といっても二つの場合いずれを充実していくのかということが不明確ではないかという御指摘だろうと思いますが、この二つの場合にどういう内容、つまり補助金を削減、整理合理化するような場合でもどういう補助金整理合理化されるのか、そういう内容と規模を考慮いたしませんと決まってまいりませんので、一応私どもとしてはその内容と規模などを考慮した上で地方税、それから交付税というような一般財源化を図っていただきたいというふうに勧告では考えております。
  17. 上吉原一天

    上吉原一天君 今まで地方税財源充実というのを五十年間も叫び続けて実現できなかった。政府答弁では常に国の財政地方財政は車の両輪だというふうに言っているわけですけれども、いつも踏みにじられるのは地方だったわけですね。そこで、今回の分権委員会に期待するところが多かったわけでございます。権限移譲につきましても大変な御苦労をされたことはわかります。財源については今まだ明確になっていない、政府の対応待ちだということでございますので、今後ますます、まだまだ検討すべき課題は多いんじゃないかと思うんです。  けさの報道によりますと、諸井委員長さんが橋本総理にお会いをなされて、総理の方から御指示があったというような記事もございますので、差し支えない範囲でその内容と今後の取り組みの決意につきましてお伺いをいたしたいというふうに思います。
  18. 諸井虔

    参考人諸井虔君) 昨日、橋本総理にお会いしたのは事実でございます。なぜかと申しますと、私ども第四次勧告を提出申し上げたときにも事務権限移譲についてもう少しやれぬかなというお話がございました。その後、国会答弁その他いろんなところで地方分権推進委員会にもっと追加して仕事をやらせるんだというようなことを発言しておられます。我々もこれは何かやらなくちゃいかぬなということで内部でもいろいろ議論をしてまいりましたが、実は今までのシステムで、例えば地方公共団体側から何をしてほしいのかという意見を当時とって、それを省庁の方へぶつけて、それですり合わせをしていって最後に調整できたものを勧告としてまとめる、これで一応全体の仕事をやり終えておるわけでございます。ですから、これから新たに加えるということになりますと、場合によると蒸し返しじゃないかとか重複じゃないかとかというふうな非難も出てくるわけでございます。  しかし、一方で申しますと、今回の行革会議でもやはり権限移譲をしていくことによって中央の省庁のスリム化を図っていくということで、それが大ぐくり再編成の一つの前提になっているというようなこともございますので、総理の真意と申しますかお考え、どのぐらいのところを考えておられるのかということを一遍よく伺って、その上で委員会に正式にかけまして、今週、委員会を予定しておりますので、そこへかけましてお諮りをして、それで今後、権限移譲についてどのような方法でどのぐらいの範囲で、あるいはどのぐらいの期間に追加した仕事をやっていくかということを決定したい、こういうふうに今考えている次第でございます。
  19. 上吉原一天

    上吉原一天君 終わります。
  20. 田村公平

    ○田村公平君 四人の参考人先生方、きょうはお世話になります。ありがとうございます。  地方と国の関係というのは、大変古くてそして新しくて重いテーマだと思います。地方分権推進法という法律ができまして、この二年間の四次にわたる勧告を実は詳細に読ませていただきました。そこで、その昔、といってもそれほど昔ではありませんが、大平さんが内閣総理大臣になったときに、田園都市の理念に基づいた地方の時代ということを総理としては大変重く打ち出されたことが記憶に残っております。  そういう中で、この四回にわたる勧告をしていく中で、そこから後を追うようにして、これは委員長も同じメンバーに入っておられますけれども、政府における、この分権推進委員会は分権推進法という法に基づいてできておりますが、橋本内閣総理大臣を会長とする行革会議との関係といいましょうか整合性といいましょうか、片方では分権、権限移譲財政の問題、いろんな問題があります。  ところが、二十二省庁体制からいわゆる一府十二省庁という、そこいらの整合性というか悩みというんでしょうか、ちょっと焦点が——私は本来は分権をきちっとやっていく過程の中で中央省庁のスリム化だとかそういうことも当然できてくるんじゃないかなと思っておったんですが、何か屋上屋を重ねるような、何か分権委はもう四回の勧告を出したんだ、これで終わったんだと、行革会議の方が今はメーンだみたいなというふうに、選挙区へ帰っても一般的にそういう印象を非常に受けるものですから、そこいらのあつれきと言ってはおかしいんですが、苦労話でも結構ですけれども、伺わせていただければと思います。
  21. 諸井虔

    参考人諸井虔君) 今進行している、橋本総理に言わせると六大改革ということがございます。結局、戦後の日本がやってきた体制あるいは構造そのものを根本的に変えていこうという話ではないかと思うんですね。いわゆる六大改革というのはみんなつながりがあって、全部相互連関しながら進めていかないとこの改革というのはできないんだろうと思います。  また、その六大改革の中の一番中心をなすのは行政改革。ということは、今まで日本は行政主導、中央集権でやってきた。その体制がいよいよ行き詰まってきたので改革をしなきゃならぬ。そういう意味では、やっぱり行政改革が一番中心をなすものであるというふうに考えます。地方分権というのは、その行政改革の中の重要な一環である。行政改革というのは、今まで行政側が全部主導して、各省庁が分担管理し、省庁間調整で事を運んできた、そのやり方が行き詰まってきたから改革しなきゃならぬと。  どういうふうにしなきゃいかぬかというと、結局、全部今まで役所に押しつけて、何かあれば役所は何しているというふうに国民も言ったわけですね。それをそれぞれが責任を分担していくと。まず、国の大きな方針というものは政治が分担をすべきことだろうと思いますし、それから経済の問題というのは企業が市場原理とか自己責任で分担をすべきことだと思いますし、それから地方の問題、あるいは身の回り、生活の問題というのは地方がみずから住民の意思に基づいて決定すべきであるということで、そういうふうにみんなが責任分担をしていくということが今の改革の大きな流れだと思うんです。  したがって、この行政改革の中で地方分権というのは非常に重要な一環であると。行政改革地方分権とは決して矛盾をするものでもないし、これは屋上屋と言われればそうかもしれませんが、しかしこれはそれぞれが分担をして同じ方向へ向かって進んでいくべきものではないか。一府十二省庁の大ぐくりというのも、そういう行政主導、そして各省が分担管理して牢固たる城を築いて動いていくというこの体制を崩していこうというところに基本があるわけでございます。  ですから、地方分権方向と決して矛盾するものだと思っておりませんし、私は、行革会議のメンバーとしても地方分権推進委員長としても全く同じ考え方のもとで行動をして、あるいは考えていって何ら矛盾を感じないでこられた、それは非常に幸いであったというふうに考えております。
  22. 田村公平

    ○田村公平君 資料によりますと、実は私どもの高知県でも公聴会といいますか、一日分権推進委員会を開いていただきましたけれども、勘定してみますと全部で十四の道県で開催されたと。  ここでちょっと、どの参考人の方になるかわかりませんが、我々選挙をやる人間でも、諸井委員長は経済人でもありますから、一つの商品を開発したり売っていく場合にマーケティングリサーチ、需要と供給を当然調べないといけないわけですけれども、自分なんかも六年間で延べにして二十万人の人間に選挙区で会って、金もないのに何とか国会議員になってきておるんですが、そういう意味でいきますと、いわゆるフィールドワーク、これはそれぞれの委員専門委員とかいろんな方々がおられる、どれほど地方治自体に対してフィールドワークをやったかと。それをちょっと、どの参考人にお聞きしたらいいかわかりませんが、お教えいただきたいと思います。
  23. 諸井虔

    参考人諸井虔君) 今フィールドワークというお話が出まして、我々も随分いろんな手だてで地方の声あるいは住民の方の声というのを聞くようにしてまいりましたが、フィールドワークというお話になりますと、じゃ果たして我々がどこまでそれをやれたのかなと、じくじたるものがあるわけでございます。  ただ我々としては、まず地方六団体を中心地方の自治体の意見というものは相当丁寧に聞いてまいりました。また、六団体一括した御意見だけじゃなくて、場合によっては直接その市町村なりあるいは政令指定都市とかそういういろんな立場の方にも来ていただいて御意見を伺いました。  それから、今おっしゃっていただきました地方分権推進委員会地方で開きまして、このときには例えば住民運動をやっておられるような方とかボランティア活動をやっておられるような、そういう一般の方になるべく出ていただくようにお願いいたしまして、そういう方の御意見も相当伺わせていただきました。このフロアからの御意見なんかにもそういう方の御意見が相当出ておりました。  それから、今おっしゃっていただきました私どもの専門委員の中には地方自治をずっと長い間やってこられたような方がおられまして、町長さん、市長さんのような方もおられまして、そういう方の御意見というのは非常にやっぱり傾聴に値する、現実に即したお話だったと思います。  フィールドワークまではちょっとやっておらぬと申し上げた方が正しいと思いますが、できるだけそういう御意見をなるべく聞いて反映するようにということは心がけたつもりでございます。
  24. 田村公平

    ○田村公平君 どうしてそういうことを言うかといいますと、固有名詞を挙げてもいいんですけれども、これはこの前大分県に行ったときもそうでした、私どもの高知県でもそうですけれども、いわゆる地方自治体の役場の職員の方々、ほとんど試験を受けないで入った方が今幹部になっておるのも一つの事実でございます。私どもの高知県庁でも、ついこの間まで一等級の庁議メンバーに試験を受けずに入った人がおるのが現状でございます。最近はもちろんちゃんとした人事委員会に基づく試験を受けて入ってきていますけれども。  ですから、議会との関係もこの答申に触れられておりますけれども、それぞれの市町村議会、県議会でも、自分が質問に立つのに何を質問したらいいかわからない、役人に聞かなきゃわからないとか、質問を書いてもらい、当然執行部は答弁も書いておるということが現実問題としてあります。二十年とか三十年役場に勤めてきたから、財政法も余りわからないけれどもどういうわけか税務課長をやっておるという現実もあります。  そういう中でこれから、けさの新聞によれば、同僚議員からも今質問ございましたけれども、総理の要請を受け第五次勧告検討、もう少し地方権限移譲というときに、私の県で恐縮でございますが、酒気帯びで懲戒免職を食らったと。大変優秀な県の職員。それはまあ酒を飲んで運転してはいけないことは道交法にも書いてあります。懲戒権の乱用という問題も——酒を飲んで運転したことはいけないんですよ。弁護しているわけじゃないんです。  そうすると、分権がどんどん進んでいった場合に、その首長さんなりが神様、仏様を石けんで洗ったぐらい立派な、限りなく神以上に立派な人格をお持ちになっている方がトップにおられ、それと同等の議会というチェック機能が働いておればいいんですけれども、分権に僕は反対とかいう意味じゃないんですが、一種の権限を持ち過ぎるために、専制君主とかいうふうになっていく可能性が全然ないとは言えないというのが、田舎の現場をずっと歩いてきた人間としてはそういう思いが一つあります。  それと、実はここの委員会でも私質問をさせてもらったことがありますが、前の自治大臣の白川さんが、自治省と地方との、まあ自治省だけではありません、それは建設省でも通産省でもいろんな人事交流をやっていますけれども、そういう人事交流はよくないからやめようと、今度の大臣はどういうふうにお考えになっておるかわかりませんが。  私ども田舎の自分の同級生や先輩、後輩に、田舎に行きますと、他に産業がないものですから高知県庁に勤めるというとこれはエリート中のエリート、そういう人々の話を聞いておりますと、官官接待の問題にしても、中央対地方という対比関係じゃないんですけれども、地縁、血縁がないところで非常に優秀な役人が二年なら二年来ていただくと大変気持ちのいい緊張感、そして習熟、学習、新しい視点から物が見える。田舎に行くと、どうしてもついなあなあで、本音で物を言っているようで言えない部分、親戚だとか引っ張り合いもある。そういう意味で交流というのは、同僚議員の今質問にもありましたけれども、地方の優秀な人というふうな表現でありましたが、どっと来ると。  そういうことも含めて、もし第五次の勧告があるとすれば、ちょっと先ほどのフィールドワークに触れできますんですが、東京とか、そういう審議会だとかいろんな学者の世界で見ている世界と、実際現場におると、例えば一日分権推進委員会を開いても、その地方都市で一番いいホテルで皆さんやってきているわけですから、なかなか本音で言っているようで、ずばっとしたことは入ってこないというのが、あってはいけないんですけれども、なるたけそういう意味で目と耳を大きく開いて、もし第五次があるとすれば、僕はもう少し地方の本当の意味での実態を知ってほしいなと。  それが先ほど言った専制君主になる可能性もある。というのは、首長さんというのは二十四時間職務権限者ですから、文房具一つ、職員の弁当一つ、あるいは土木事業一つ、全部知事ににらまれたらとか市町村長ににらまれたらとか。実は、南国市、室戸市、土佐清水市、今は三原村と、毎年実は首長が贈収賄でうちは逮捕されています、本当に情けないというかみじめな話ですけれども。それぐらいの権限があるのがもっと権限が強くなってくる、そういうところもひとつ考慮の中に入れて、五次があるのであればやっていただきたいなという思いであります。  あと一分しかありませんので、委員長、何かありましたら。
  25. 諸井虔

    参考人諸井虔君) 今おっしゃいました点は、我々例えば財界団体とかいろんな外部に行って伺うときに必ず出てくる問題でございまして、その受け皿は大丈夫なのかねという点でございます。私どもも、もちろんその点は考えないわけではございません。  ただ、先ほどもちょっと申し上げましたように、やらせないで全部上から指示をして、今起こっていることはすべて中央集権のもとで起こっていることで、地方分権はまだ実は始まっていないわけです。そういう中で起こっていることでありまして、私はやっぱり多少のトラブルはどうしてもそういう経過期間では生ずるかと思いますが、結局その地方の自治体というのは住民の一番近いところにおる。そして、住民が常に監視したりしやすい場所にあって、今後情報公開等が進んでまいればそういう点はやはり住民のチェックも相当厳しく働く。あるいは選挙のあり方まで多分変わってくるんじゃないか。  そういう中で、やはり地方の自治体に力をつけてもらってそういう悪いことが起こらないようにしてもらう。それ以外に日本の地方行政がよくなる方法はない。中央集権のもとでは今と同じようなことが繰り返されるわけでございますから。そういうふうに期待してまいりたいと思いますし、そういう意味で、御注意のようになるべく広くいろんな御意見をまたさらに伺うようにしてまいりたいと思っております。  どうぞよろしくお願いいたします。
  26. 田村公平

    ○田村公平君 以上で終わります。
  27. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 諸井委員長さん初め委員会の画期的ないろんな答申については私ども非常に歓迎しておりまして、いつもそれぞれの委員さんが新聞に出ましたときなど、我々も読ませていただいたというようなことがありまして、本当に敬意を表する次第でございます。そういう中で、何点かちょっとお尋ね申し上げたいと存じます。  先ほど、権限移譲の問題について総理と諸井委員長さんがお話しになった、というようなこともあったわけでございますけれども、四次までの勧告をなされた後、委員長さんのお考えとしてこういう点をもう少し詰めたかったなとか、また、こういう点は委員会としては詰められないけれども、皆さんにもつと議論してほしいんだ、こういうような何かございましたら、冒頭ちょっとお考えを、お話しづらい点もあろうかと思いますけれども、聞かせていただきたいと存じます。
  28. 諸井虔

    参考人諸井虔君) 地方分権推進法というのは大変画期的な法律で、中央の国が地方にみずから権限を渡していくんだということを決めた法律で、またそのための手順として委員会をつくって、我々がまた具体的な指針勧告し、それに基づいて政府が実際の地方分権推進計画をつくっていくというようなことでございまして、非常に私どもも責任の重い立場だなというふうに感じております。  ただ、今もお話がございましたように、全体として地方分権に対してはすべて追い風で、必ずしもやれやれというだけの空気というわけでもないわけでございます。また当然中央の省庁とすれば、みずからの権限あるいは財源、仕事をとられていくという話になるわけでございますから、そしてまた今もお話がありましたように、地方に対する不信感というようなものがあるわけでございます。そういう中で、なかなか思うようなところまではやれなかったのかなというふうに考えております。  ただ、地方分権については、権限とか財源を移していくということと、今の機関委任事務制度のように国がすべてのことについて口出し、手出しをしてくるということと両面があろうかと思うんです。その口出し、手出しの方は、実は地方六団体の方からも相当強い要請がたくさんございまして、これについて私どもとしては、機関委任事務制度の撤廃とか補助金の補助条件の問題とか必置規制の問題とか、かなり全般にわたって、そして最終的にはいわゆる第三者係争処理機関のようなもの、それまでも含めてかなりのところまでやれたのかなという感じがしております。  ただ、その事務権限に伴う財源移譲の点については、結局機関委任事務制度の撤廃に一年半ぐらいかけてしまったというような点もありまして時間的な制約があったこと、あるいは地方六団体からも必ずしもこの点については強い要請があったわけでもなかった。それから、当然中央省庁の抵抗というものは、関与仕組みよりもさらに非常に強いものがあったというような点で十分ではかったのかなというようなことも考えております。これは、先ほどお話ししたように、どのぐらいのことが追加でできるかということをこれから一生懸命研究してみようかと思います。  ただ、いずれにしても、私どもが四次勧告までにやれたこと、これは一〇〇%実現をしていただけるというふうに信じております。それにしても、恐らく地方自治という最終的な目標に対してはほとんど出発点に立ったというようなところではないか。これから先のことは、やはり我々もできるだけの努力はいたしますが、この国会あるいは政府、国民全体が地方分権に対してどれだけの熱意を持って進んでいっていただけるかということにかかっていようかと思います。ひとつ何分よろしくお願いをいたしたいというふうに存じます。
  29. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 機関委任事務制度廃止という画期的な勧告をされたわけでございますけれども、次に機関委任事務廃止された後の法定受託事務自治事務、こういうのに分けられたわけでございます。法定事務については、初めは二割くらいというお話なども新聞に出ていたわけでございますが、それが四割くらいというふうに上がってきたわけです。こういう点についてもお聞かせ願いたいと思ったんですが、今委員長さんのお話の中で一部それはありましたので、これらは省かせていただきます。  それにしても、廃止されましても法定受託事務それから自治事務につきましても国の関与というんですか、この冊子にも出ていましたけれども、後見的な関与と申しますか、そういうものがまだかなりあるように思うわけでございます。  そういうことと、それから事務権限移譲、こういうものは県の方は市町村へ、人口二十万以上のときはどうのこうのとか、いろんな五段階の区分をつけられまして示されておるわけでございます。また、今までやっておりましたものでなくしたものもあるというようなことで、考えてみますと、都道府県の場合は、市町村への移譲、また国からの関与がなくなるというようなこともあって、都道府県事務につきましてはこれは少し少なくなってくるのかなというような印象を持つわけでございます。  一方、市町村の方はかなりの事務量権限、そういうものがおりていくんじゃないかというふうに思うわけでございますが、一方そういう法定受託事務につきましても国の関与というのがまだかなりあるような感じがするわけでございます。  そういう点を含めて、県、市町村職員、こういう人たちにこうなるんだよ、ですから皆さんこういうふうに考えてこれから事務をやってくれというようなことを、県と市町村とをちょっと分けていただいた方がいいかと思いますけれども、皆さん方のお考えをちょっと示していただければと思うわけでございます。
  30. 西尾勝

    参考人西尾勝君) まず最初の御趣旨は、機関委任事務制度廃止されまして、従前機関委任事務自治事務または法定受託事務になって何がどの程度変わるのかという点が第一の御質問かと存じます。  従来の機関委任事務と申しますのは、都道府県なり市町村執行機関に国の仕事を委任するという考え方になっておりますから、知事に委任するもの、教育委員会に委任するもの、あるいは市町村長に委任するもの、市町村教育委員会に委任するものといったようになるわけであります。今度の場合は、自治事務も当然ですけれども、法定受託事務につきましても都道府県という団体に移譲あるいは委託される、市町村という地方公共団体そのものに移譲または委託されるという形になります。ここが非常に大きな変化であるわけです。  そして、こうした団体に移譲または委託された事務ということでございますので、都道府県議会市町村議会といった地方議会がこれにかかわることが可能でございますし、監査委員の仕事の対象でもあり得るということになります。そのことがまず大きな変化でございます。  それから次には、お話にも出ましたように、機関委任事務制度の場合には包括的な指揮監督権を国の行政機関の方は留保しているわけですけれども、これを否定いたしまして認められる関与類型というのが限定されるということになります。したがって、国からの権力的な関与が一切なくなるわけではございません、依然として残る部分がございますけれども、これまでに比べますと大幅に縮小されることになります。つまり、国から仕事の仕方について示されるマニュアルというものが従来のような細かなマニュアルではなくなってくる。地方公共団体が自主的な判断と責任において物事が決められるという領域がこれまでより広がるということでございます。  つまり、その広がったところでは、それぞれの地域社会は地理的な条件も自然条件も気候条件も違いますし、歴史も風土も文化も違います。そうした地域社会に一番ふさわしい行政の仕方というのがあるはずでございますが、自由になった領域で自分の県、自分の市ではどういうふうに行政を展開することが一番ふさわしいのかということをそれぞれ判断していただいて仕事をしていただけるようになるということですから、それぞれの公共団体が多様で個性的な自治を展開する余地が開けてくる、これが効果であるというふうに考えているわけでございます。  そこで、そういう一般的な話ではなく、さらに都道府県市町村に分けてというお話になりますと、私個人の認識としましては、今回の勧告がすべて実現されたという場合に、国、都道府県市町村のどのレベルが一番大きな影響を受けるかという観点から申しますと、都道府県が一番大きな影響を受けることになるのではないかというふうに思っております。これは都道府県という存在が国と市町村の間に挟まれた中間団体であるということに由来していると思います。  つまり、国の側はこれまでのように都道府県市町村に対して細かな口出しはしてはなりませんよというふうに縛られますから、そういう行政の仕方を変えなければなりません。一番下にある市町村から見れば、都道府県や国からの締めつけというものが減りますから自由になりますので、その自由にちゃんとたえられるような自治をやってくださいということになるわけです。  都道府県の場合は、国からの締めつけはなくなりますから市町村と同じように自主性が生じます、それにちゃんとこたえる自治体になってくださいという面があると同時に、市町村に対して従来のような締めつけはできませんよ、してはなりませんよという面もあるわけです。その両面で都道府県は変わらなければならないという面を持っていますので、都道府県に一番大きな影響が出るのではないか。職員の意識改革が一番強く求められているのは都道府県レベルではないかというふうに感じております。  それから、お話にもありましたように、都道府県の場合には、この機会市町村権限移譲してくださいと申し上げているものが都市計画関係以外にも三十六項目ほどあるわけであります。地方事務関係については、この際国に返上しようとしておりましたりいろいろとございまして、仕事の範囲は、大きく変わるわけではありませんが、若干従来よりは縮小するということになろうかなというふうに思っております。
  31. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 次は財源の問題をひとつお聞きしたいと思うんですけれども、地方六団体でつくっております地方自治確立対策協議会というのがありまして、この決議要望があったわけですけれども、この決議要望を見ますと、地方分権推進計画の早期作成というようなものが一つなんですが、もう一つは地方税財源充実確保、こういう二点が主なものでございます。  この税財源なんですけれども、御承知のとおり、三割自治と言われてきたわけでございますが、最終支出ベースでは国と地方の比率が一対二になっているのが実際の財源ではそれが逆転している。こういうようなことでございまして、費用と財源との均衡を図ってこそ自治の確立がなされるんじゃないかと思うんです。いろいろこの本などにも財源地方負担にしてはいけないよということは十分御検討いただいたし書かれておるわけですが、その基本のところの、今までの二対一と逆転しているところまでの踏み込みがないように思うんですけれども、この辺のところの御議論がどうあったのか教えていただければと思うわけでございます。
  32. 神野直彦

    参考人神野直彦君) 岩瀬先生御指摘のように、現在日本では、歳出総額に占める地方割合が約三分の二なのに対して税収全体に占める地方税割合は約三分の一にしかすぎない。その格差を是正するということのために財政の移転が行われて結局自主性が損なわれているのではないかと。したがって、私どもの勧告基本的な考え方は、この歳出と税収の格差を是正するという観点から、地方税財源充実確保をお願いしたいということを一般原則として強く打ち出しております。  そういう観点から、一応具体的に二つのことを打ち出しておりまして、一つは、国税と地方税あり方を、今申しましたような歳出とそれから歳入の格差を是正するという観点から税源配分のあり方見直して、中長期的には地方税充実確保をお願いしたいというのが第一でございます。  しかし、当面はこういう国税と地方税の全般的な改革というようなことは無理でしょうから、先ほど来お話が出ておりますように、一つは国から地方事務権限移譲された場合に、その財源はできる限り一般財源として手当てをお願いしたい。それから、地方に対する補助金ないしは負担金を整理合理化して、その財源については一般財源でお願いしたいというふうに言っております。この二つの場合に、規模と内容を考慮しながら地方税充実確保していただきたいというふうにお願いをいたしておりまして、そういう中長期的、当面、この二つの段階を通じて格差をできる限り是正していただきたい。  ただし、もちろんそれぞれ地方公共団体には課税力、つまり税収を調達する能力に差がございますので、その点も考慮した上でお願いしているところでございます。
  33. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 それからもう一つ、今財源の問題としては地方交付税の問題があるわけでございますけれども、交付税は財政調整機能としては大事な側面を持っておりますので、これはもうぜひ必要なことだろうというふうに私は思っておるわけでございます。  ただ、平成九年度の場合、普通交付税の不交付団体は三千二百八十団体中百二十三団体、全体の三・八%、都道府県は東京都だけであったわけでございます。これは例年よりちょっと少ないんじゃないかと思うわけでございますけれども、こういう点。  それから、地方団体財源に占める地方交付税は、地財計画で見ますとこれが二〇%弱を占めておるわけでございまして、交付税そのものの財政調整機能というのは大事な点だろうと思うんですけれども、どこら辺までこれに財政調整機能を持たせたらいいのか。財政調整機能ということになるとある程度の範囲でいいんじゃないか、ちょっと交付税そのものが大きくなり過ぎちゃっているのか、そういう財政調整機能でなくて本来の方へもっと持っていくべきじゃないかと。言うなれば、財政調整機能の方が大きくなり過ぎちゃったんじゃないか、そんな気がするのでございますが、この辺のところの御議論はいかがでございましょうか。
  34. 神野直彦

    参考人神野直彦君) お話しのように、現在では交付税の不交付団体はかなり少なくなってございます。ただ、これをいわば少しふやすということが当然望ましいわけでございますが、そういう場合に考えなければいけないことが二つございます。  一つは、先ほど御質問にございましたように、地方税がどの程度充実していくのか。当然ですけれども、地方の税財源充実していけばそれだけ不交付団体は少なくなるわけです。それからもう一つは、法律でさまざまな事務を義務づけておりますが、そういう必要行政水準をどの程度の水準で抑え込むのか。これをそのままにしておいて、その財源を達成できないような地方公共団体は困るわけですから、この二つの兼ね合いでもって地方交付税がどの程度の水準に決まるかということが決定されてくるのだろうというふうに思います。  勧告もそのような趣旨で、二つの場合を考慮して一応安定的な財源確保をお願いしたいと言いつつも、それぞれ地方公共団体が自立的、自主的に財政運営をできるような仕組みにしていただきたいということをお願いしているところでございます。
  35. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 それからもう一つ大事な点は、起債の点、地方債の点があるわけでございますが、地方債許可制から協議制ということで、非常に画期的な変化を遂げる御提案があったわけでございます。  ただ、協議制になった場合でも事前協議制ということで、許可制と協議制では性格が違うわけでございますけれども、事前協議ということになっできますと手間の点ではそんなに違わないんじゃないかというふうに思うわけでございます。これはやり方にもよると思うので一概に言えないし、またこの協議制に入ったという時点をとらえてそういう方向へ持っていくということが大事なことなのではないかと思いますけれども、そういう点が一つ。事前協議制というより届け出制までしていただくという考えがなかったのかどうかという点が一点ございます。  それからもう一つは、これは財政改革法の法律の方なんですけれども、そういうことも踏まえて二〇〇四年度から許可制をそっちへ持っていくんだ、こういうようなお話でございますけれども、許可制につきましては地方自治法ができたころから当分の間許可するんだと、こういうような話になってずっと来ているわけでございます。そういうことから考えると、これはこのたびの法律に関するものじゃなくてもっと前の時点での話じゃないのか。そうしますと、二〇〇四年度という問題とはちょっと違って、それ以前にそういう方向へ移行していくべき性格のものじゃないか、そういうふうにも思うわけでございますが、この辺のところはどうでございましょうか。
  36. 神野直彦

    参考人神野直彦君) 地方債の起債につきましては現在許可制ということになっておりまして、これは一般的に申しますと、地方公共団体は起債が禁止されている、ただし許可を受ければできる、こういう考え方になっているわけです。それを事前協議制に改めたというのは基本的には考え方がかなり大きく変わったというふうに思います。  かつ、この事前協議制には国との合意が必要な事前協議制と、国との合意を必要としない事前協議制があるわけでございます。地方債の発行につきましては国との合意を必要としておりませんので、もちろん事前協議制というのは国と地方合意を求めて誠実に話し合うということでございますが、しかし他方で合意を必要としなくて発行できるという権限をバックに事前協議ができるというのは、これまでの許可制とはかなり大きな変化になっているのではないかというふうに考えております。  後者の財政構造改革の期間中に許可制を残すということはいかがかという御質問だったと思いますが、これは一応現在の歳出抑制で財政健全化を行って、国、地方を通じて財政健全化に取り組むという焦眉の課題を重視いたしまして、財政構造改革期間中に許可制を残したということでございますので、御理解をいただければと思います。
  37. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 もちろん許可制の御苦労というのはもうこれは大変なものだということは私も存じておりまして、その点はそういう前提でお聞き申し上げました。  それで、最後でございますけれども、こういう形でやっていった場合、地方公共団体の方もみずから行財政改革をしなきゃいけないということはいろんな団体の会合等で言っておるわけでございますけれども、分権委員会の方としましてあとどういう点を地方公共団体の方へ望むか、そういう点がございましたらお話しいただいて、終わりにしたいと思います。
  38. 堀江湛

    参考人堀江湛君) ただいまの先生の御質問でございますけれども、これは釈迦に説法かもしれませんが、現在、少子・高齢化社会あるいは環境保全、ないしは経済構造の改革に対する対応等々で、市町村を初めとする地方自治体の行政需要の拡大、そしてそれに伴う予算もしくは専門スタッフの増というのはある意味で不可避ではないかと思います。一方、国民負担率の増大には限界があるということを考えますと、簡素で効率的な行政体制、具体的に言いますとスクラップ・アンド・ビルドの原則に基づいた職員の研修もしくは再訓練、そして厳しい定員管理、さらには地方行革の推進、こういったものが不可欠であろうと考えております。  また第二に、今日、電気通信手段の発達ないしは行政に求められる技術の高度化等々に対応いたしまして、介護あるいは高度医療ないしは廃棄物処理等々で行政における広域化が今急速に求められております。こういう点では、いわゆる広域行政拡大して、そして一部事務組合につきまして、今これが余りに多くなっていくという場合に、時に住民意向をどうやって意思決定に反映させるかといったような問題もあることを踏まえますと、広域連合、さらには一歩進んで市町村合併にまで進んでもらう必要があるのではないか、かように考えるわけであります。  また第三に、地方自治は団体自治と住民自治のバランスのとれた発展が必要であるという点では、地方議会がますます活性化してもらわなければならない。そういった意味では、地方議会活性化をそれぞれの自治体に御工夫願うと同時に、ある意味では、そういった民意集約という機能を果たす上で、今のような選挙制度その他がよろしいのかどうかというようなことも将来の検討課題には恐らく入るんではないかという気がしております。  そんなことから、今回の勧告といたしましては、第一に地方公共団体行政改革推進、第二に市町村合併広域行政推進、第三に地方議会活性化、第四に住民参加拡大多様化、第五に公正の確保透明性向上、これがまさに自治体と住民とをつなぐ最も重要な点ではないかと思いますが、これら諸点について積極的な対応をしていただくように国及び地方団体に対してお願いをしておるという次第であります。
  39. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 民主党・新緑風会の朝日でございます。  まず冒頭に、諸井委員長初め、大変なこれまでの御努力に敬意を表したいと思いますし、先ほど来のお話でありますとまだまだ仕事が残っているようでもあります。せっかく勧告を出されて、さてこれが着実に推進計画にあるいは法改正につながっていくのか、この点はきっちりとウォッチングをしていただかなければいけないという意味で、今後の引き続きの御検討を期待したいと思います。  そこで、きょうはせっかく三つ検討委員会座長先生方においでいただいていますので、時間を有効的に使うために、最初にそれぞれの座長先生方に一つずつ質問をさせていただいて、まとめて後で順次お答えをいただければと、こんなふうに思っております。  まず第一点は、西尾座長にお伺いしますが、今回の勧告でも中心的な課題であったと思います機関委任事務が、新たにおおよそその六割が自治事務に位置づけられる。そのことによって自治体における事務の具体的な運用がどんなふうに違ってくるのか、自治体の裁量の幅がどれぐらい広がってくるのか、自治体の自己決定の範囲がどれぐらい広がってくるのか、具体的にどうもまだイメージしにくい点がございます。ちょっと私の理解が不十分なのかもしれませんが。  そこで、ある具体例に絞って、私は医療関係とか福祉関係のことに非常に強い関心を持っているわけですが、例えば社会福祉施設の設置許可事務自治事務にされたと。そのことによって、じゃ都道府県のこのことに関する運用の幅というか具体的な実態がどんなふうに変わってくるということを想定されているのか、あるいは期待されているのか、ぜひ具体例に即して御説明をいただければというふうに思います。  それから二番目に、堀江座長にお伺いいたしますが、自治体における行政改革、私は自治体改革というふうに呼んでいるんですが、これを推進していく。そのためにいわゆる必置規制、これを法律またはこれに基づく政令の定めるものに限定をするんだ、こういう内容で積極的な勧告を行っていただいていることは重々承知しておるわけですが、さて、これを実際、具体的に整理縮小あるいは廃止していくという作業になりますと、なかなかに難しい面が出てくるのではないか、その点についてどんなふうに御認識をなされているのか。そして、今後どんな手順と方策でこの必置規制等の縮小あるいは廃止に導いていこうとされているのか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。  それから最後に、神野座長には、地方税財源充実確保という観点からお伺いいたします。  分権推進委員会勧告では、先ほど来議論になっていますように、地方税財源充実確保、その際、自治体の課税自主権を尊重する方向、こういう方向が示されているわけです。これは多分今後の問題になるのかもしれませんが、では、一体具体的にどういう性格のものが地方の税財源としてふさわしいんだろうかというふうに考えていくと、なかなか難しい点があります。率直に言って、私自身は、それは例えば地方消費税であるとか、あるいは個人住民税であるとか、そういうものを考えざるを得ないのかなというふうに思っているんですが、この点について、これは先生の私見でも構いませんので、ぜひ考え方をお聞かせいただければありがたいと思います。  以上三点、それぞれの座長先生方にお伺いしたいと思います。
  40. 西尾勝

    参考人西尾勝君) できるだけ具体的な例で説明するようにという御注文でございました。  そこで、医療、福祉関係の方から若干の例を拾いますと、医療法人の設立認可、監督の事務、それから病院の開設の許可、監督の事務、そして、お話にもございました社会福祉施設の設置許可、監督の事務等が今回の事務区分の中で自治事務ということになったわけでございます。  従来、機関委任事務につきましては、地方議会条例を制定する権限がないということになっていたわけですが、自治事務に変わりますと条例制定の余地のある事務ということに変わります。  しかしながら、自治事務になったら必ず条例がつくれるかというと、必ずしもそうではありませんで、条例はあくまでも国の法令に違反しない限りにおいて制定できるものでございますから、それぞれ国の法令がどのような立法趣旨でどのような決め方をなさっているかということによって、条例制定の余地がかなり広い場合もありますし、ごく限られるという場合もあり得るということでございまして、これはそれぞれの国の法令の定め方によるところがかなりございます。ですから、なかなかこの場合には、こういう条例が制定可能であろうというようなことを一般論としては申し上げにくいという面がございます。  さらに、条例制定権が生じるというだけではありませんで、従来の包括的な指揮監督権が否定され、特に運用通達といったようなもので公共団体の仕事の仕方を縛るということが否定されますので、こうしたたぐいの通達が今後は廃止されていかなければならないということになります。  その際、今出されておりますような詳細な通達が全部ただなくなって白紙になるのかどうかということであります。片方で、国としてはどうしても全国画一的にこれだけのことは守らせなきゃいけない、すべての市町村都道府県に守らせなければならないという基準がもしあるのならば、それは必ず法令のレベルで定めてください、つまり法律、政令、省令のレベル、あるいは場合によっては告示という形で決めてくださいということを申し上げておりますので、その医療、福祉関係通達につきましても、その中のある部分はどうしてもやめるわけにいかないので、この機会に省令レベルに定め直しますということが出てくる可能性がございます。その他のことについては、従来通達で書いていたことは全部やめますというような整理がそれぞれの省庁によってなされることになるだろうと思うんですね。  そのとき、どの程度のものが従来の通達から法令レベルに転換されるのか、ほとんど全部なくなってしまうのかによって、公共団体側に生じる自由の余地というのは違ってくるということでございます。ですから、法令で定めるべきことは必要最小限のものに限定してくださいという一般原則は述べておりますが、それがどういうふうに守られていくかということを今後監視していかなきゃいけない、こういうことになろうかと思っております。  そこで、もう少しそうした今後の改革方向が示されてきているものといいますと、文教関係の例があろうかと思います。  学校教育行政で申しますと、今回の勧告によりまして、それぞれの義務教育の小中学校の公立学校の学期、一学期とか二学期、三学期という期間をどう定めるかというのは、従来は都道府県教育委員会の決定事項でございましたが、これを市町村教育委員会の決定事項というふうに権限移譲なされることになっています。そうすると、学期をどのように定めるかは、今後は市町村レベルでまず決められるということになるわけですね。  そして、その次に今度は、どの子供はどこの小学校に通学させるべきだという就学校の指定という問題がございます。これもかなりみんな上にお伺いを立てないと、そして承認されませんと弾力的な運用はできなかったんですが、この就学校の指定問題について運用弾力化するということを文部省は約束しておられます。そうすると、原則はここの区域の子は第一小学校、この区域の子は第二小学校となっておりますが、いろいろな事情によってそうではない通学を認めるという余地が広がってくると。そのとき、どういうときにそれを使っていくのがいいのかということはそれぞれの公共団体の判断になります。  さらに、学校において何を教えるかというのは学習指導要領等々で、それぞれの学年にはこれこれの科目を何時間以上教えなきゃいけないというのが詳細に決まっておりますが、これを緩めていくということが現在、教育課程審議会と中央教育審議会で議論され、時々新聞に報道されますが、それが緩められていくということは方向としては決まっています。そうすると、どの程度どういうふうに緩められるかはこれから見てみなきゃいけないのですが、緩められますと、そこから余ってくる授業時間というものをどの科目にどういうふうに使うのかということはそれぞれの公共団体の判断にかかわってくる。  こういうふうな形で、それぞれの行政分野について変化が生じてくる、その具体的な変化の姿は今後の整理の仕方を見てみないとまだわからない部分がございますというところでございます。
  41. 堀江湛

    参考人堀江湛君) 必置規制についての御質問でございますが、必置規制地方自治体の組織、職員の配置の硬直化をもたらし、あるいは定員管理の障害となるというような形で、地方公共団体の固有の機能である自主組織権や人事管理権に対する重大な制約となっているということは言うまでもないことであります。したがって、こういった必置規制につきましては、個々の必置規制の必要性と妥当性を検討し、他の代替手段をもってしては達成できないといったような特別の場合にのみ限定して、必要最小限のものにとどめるべきであるというのが私どもの勧告の趣旨でございます。  ただ、現実の問題といたしまして、私どもこの必置規制の緩和等々につきまして所管官庁といろいろ交渉もいたしましたが、同時にまた、それぞれの必置規制にかかわるいろいろな団体の中にも実は分権に対して強い懸念が存在しておったということも事実でございます。そういった意味では、先生御指摘の具体的な問題でいえば、医療関係の団体は、例えば保健所の所長の必置規制といったようなことにつきましても非常な御疑念が提起されておりました。  そういうことで、私どもといたしましては、地方自治体が地方行政体制の整備を通じてその市町村住民のみならず、広く国民各層の信頼を獲得できるようにぜひ御努力願いたい、また、それが実はさらに将来の課題として必置規制の大幅な緩和を進めていくゆえんであると、かように考えております。
  42. 神野直彦

    参考人神野直彦君) 朝日先生の御質問は、地方税財源充実していく場合にどういう地方税が望ましいのかということについて見解をということだろうと思いますが、私どもの勧告では、もちろん、別途税制調査会などがございますので、基本的な考え方のみを示しております。  それで、私どもの基本的な考え方は、勧告を読ませていただきますと、「生活者重視という時代の動向、」を踏まえて、そして「所得・消費・資産等の間における均衡がとれた国・地方を通じる税体系」と、こういうふうに述べております。  この合意を少し説明させていただきますと、地方税というのは、御案内のとおりに、国税が、能力原則と申しますが、それぞれの人の経済的な力に応じた原則でかけられるのが望ましいのに対して、地方税の方は公共サービスの利益に応じた利益原則でかけられるのが望ましいと、こういうふうに一般的に理解をされております。  これまでの地方公共団体のサービスが警察とか消防とか公共事業とか、そういうサービスであったのに対し、今後は生活者重視ということで福祉とか教育とか医療とかという対人サービスがふえていくであろう。そういう生活者重視の動向で公共サービスが変わっていくということを考えて、資産、消費、所得、こういう課税のバランスを考えた税体系、公平な税体系をつくっていただきたい、こういう考え方を示しているところでございます。  先生は最後に、全く私の個人的な考え方でいいけれども考え方を示せと。朝日先生は個人住民税とそれから地方消費税が望ましいと考えていると、こういうお考えだったと思いますが、平成六年度の税制調査会では、長期的に今後どういう地方税を増税していくのが望ましいかということに対して、個人住民税とそれから固定資産税を挙げております。先ほど申しましたように、それは割と公共サービスが、かなりこれから福祉関係とか対人サービスがふえていくということを考えると、私はできるだけそれぞれの住民の所得に比例した税金を課税するということが望ましいのではないかというふうに考えております。  先生が御指摘のように、個人住民税とかそれから地方消費税とか、あるいは現在事業税というものが利益にだけしかかかっておりませんが、個人住民税というのは所得をもらったところの地域社会に納めるわけですね。それから、消費税というのは、これは所得を支出したところでかかるわけです。もう一つ、所得が生まれてくるところ、例えば事業をやっているところではそこで賃金とか利益とか支払われるわけですから、そういう所得が生じたところでもかけませんと、事業活動をやっている会社あるいは個人企業もそれぞれ利益を受けているわけですから、そういうことを考えますと、今検討されているような事業税の外形標準化などを考えて、できるだけ所得に比例的なバランスのとれた税体系を考えるというのが筋ではないかというのが私の全くの個人的な意見でございますが、意見でございます。
  43. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 ありがとうございました。
  44. 渡辺四郎

    ○渡辺四郎君 社会民主党の渡辺でございます。  持ち時間が十五分しかございませんから、大変失礼なお尋ねになるとも思いますが、御了承願いたいと思います。  まず最初に、地方分権推進委員会諸井委員長を初め委員専門委員の方々には、委員会発足以来二年有余、本当にハードスケジュールでの審議を行い、並々ならぬ尽力の末、四次にわたる勧告を行った御苦労に対し、まずは心から敬意を表する次第であります。  これまでも地方分権推進に関する総論についてはシャウプ勧告以来さまざまな立派な提言がなされてきたと思いますが、現実の広範な行政分野において地方分権の理念をどのように具体化し、どのように総合的に新しい分権型行政システムとして構築していくかと、こういう各論部分についてはこの地方分権推進委員会の場で初めて私は本格的な審議が行われたんではないかというふうに思っております。その意味で、国と地方自治体との関係について新たなルールを創設するなど、歴史的にも大変意義のある勧告であり、大きな成果を上げられたと心から評価をいたしております。  ただ、私としましては、中間報告や第一次勧告に比べ、その後に続く勧告に大変期待をしていた一人として、個々の点で消極的といいますか控え目な勧告にあるいは終わったんではないか、そう感じられる点がございますので、以下、若干質問をさせていただきたいと思います。 その第一は、先ほどからもお話がありましたが、昨年の十一月に橋本総理が、勧告については現実的で実行可能な案をというふうな注文をなさったというようなことが報道されました。これを聞いて霞が関の官僚群が、省庁との合意がなければできないんだ、何かそういう受け取り方をして、枠をはめて勧告内容全体が制約されたんではないかという見方も一方ではあるようですが、申すまでもなく、実現不可能な案では困ります。せっかく地方分権のあの追い風に乗って法律に基づく分権推進委員会として発足したものですから、もう少し積極的といいますか大胆な勧告内容であってもよかったんではないかというふうに思いますが、官僚と折衝に当たった当事者としてこの点どういうふうな御感想をお持ちか、諸井参考人にお尋ねしたいと思います。
  45. 諸井虔

    参考人諸井虔君) 昨年、総理からそういうお話があったことは事実でございます。  ただ、私もそのときいろいろ考えたわけでございますが、まず中間報告の段階では、普通、政府の審議会ではそれまでに調整、合意の成り立ったものをまとめて中間報告というのが慣例だろうと。ただ、その段階では、昨年の三月の段階ではほとんどそういう合意あるいは調整のできたものはございませんでした。  そこで、我々としてはその時点における我々の考え方を中間報告ではっきりいたした。ただ、これはすべてそういう方向検討をしてみたらどうか、こういう考え方はどうかというふうな書き方をしておるわけでございます。その中間報告をスタートにしてその後各省と議論を進めて、その各省の言い分に正しいところがあればそれは修正をしていく、それから我々の主張もできる限り、個別のグループヒアリングというふうな形で先生方に大変な御苦労をかけたわけでございますが、各省の局長、審議官クラスと先生方がひざ詰め談判をするというふうな形で一つ一つ詰めてぎりぎりと折衝をして固めていくというふうな方策をとりました。  そういうやり方じゃなくて、中間報告のようなスタイルで思いのたけをそのまま勧告に出しちゃうという方法もあるいはあったのかもしれません。ただ、その場合には、恐らくその推進計画をつくり、先ほども西尾先生からお話があったように、一つ一つの個別の法律を改正していく、省令、政令を改正していく、そのプロセスで各省庁がこれは無理である、困難である、あるいは不可能である、非常にぐあいが悪いというふうなことをどんどん言い立てて、合意をしていないんだからこれは先延ばしをしていくというふうなことで、この推進法の期間であり我々の任期である五年間の中で実現をしないで先送りされてしまうという危険性が多分に出てくるわけでございます。  それで、我々としては中間報告では思いのたけを述べましたが、実際の勧告に持っていく場合には一つ一つきっちり詰めて、そして各省と調整を済ました上で勧告にのせていく、そのかわり勧告にのせたものはこの五年間の期間の中で一〇〇%実現をしていただく、こういう方策をとったわけであります。  いずれが正しかったかということはあろうかと思いますが、今まで臨調、行革審あるいは地制調等でいろんなすばらしい地方分権勧告が出ておりますが、なかなかこれがその実現に結びつかないというのは、やはり各省とのきっちりした調整が必ずしも済んでいなかったという点があるんではないかと思います。  ですから、私は先ほども申し上げましたように、住民自治という最終的なゴールに対して我々が四次勧告で到達した点というのは恐らく出発点にすぎないんではないかという感じもいたしますが、しかし出発点すら固められないでそれが先送りされ、うやむやにされてしまうということは耐えられないことである、出発点だけはしっかり固めておかなくちゃいかぬ。そういう意味で、一つ一つきっちり固めてこの四次までの勧告を仕上げたわけでございます。  これから先まだまだやらなくちゃならないことがたくさんあることは私ども重々承知しておりますが、これはさっきも申し上げましたように、国会、政府あるいは国民全体がそういう方向でお考えいただく、そういうほうはいたる世論をベースにして事が進んでいくことによって初めて到達できる点であろうかと思います。  私ども、今後も残された期間にできるだけのことはいたしますが、少なくとも四次勧告までを一〇〇%実現する、それに少しでもつけ加えるものがあればやる、こういう覚悟でおりますので、ひとつ御理解をいただきたいと思います。  ありがとうございました。
  46. 渡辺四郎

    ○渡辺四郎君 時間が余りないものですから、ちょっとお尋ねする順番を変えて、西尾参考人にお尋ねしたいと思います。  まず、地方事務官制度の問題についてでありますが、これはやっぱり地方分権基本である住民に身近な行政地方自治体が担うべきものである。そういう中から、今回の勧告内容は私から見れば地方分権の趣旨にそぐわないんじゃないかという気がしてなりません。  と申し上げますのが、この問題はさまざまな議論が過去からなされてまいりました。昭和四十九年、第七十二国会で、両院の地方行政委員会でも地方自治法改正案の附帯決議で地方議会努力を、五十一年の三月三十一日までに地方公務員とするよう、全会一致で実は決議をした経緯もあるわけです。  私自身もこの問題に長年関係してきた一人として、どうしてもこういう勧告になったということについて理解しがたい点があるものですから、その理由と申しますか議論の経過と申しますか、そういう点をひとつお伺いしたいと思います。
  47. 西尾勝

    参考人西尾勝君) 地方事務官制度につきましては、先生お話しのとおり、戦後長いいろいろな経過がございまして、古くて新しい問題ということになっているわけでございます。地方議会についての全会一致の決議がなされたこともございますし、第一次臨調の答申ではこれを国に返上すべきであるという答申になったというような過去のいろいろないきさつがあるわけでございます。  大変職員の身分にもかかわっている重要な問題でございますので、私どもも大変これには時間をかけて慎重に審議をしてきたつもりでございます。委員会で正規にこの話題が取り上げられている回数だけで八回に及んでおりますし、グループヒアリングという場で関係省庁あるいは関係団体と討論をしたという回数だけでも七回になります。勧告を取りまとめます直前の段階では、記録を残さない委員懇談会という形でも親委員会の諸先生方の徹底的な御議論をいただいた上で結論を出したという次第でございます。  この中で、大変異例なことでございましたけれども、この問題は職員の身分にもかかわっております問題でございますので、関係職員が結成しております職員団体の全国連合組織でございます自治労、全厚生、全労働といった関係労働団体からも御意見を伺うという機会を設けて慎重に審議をしてきた次第でございます。  その結論でございますけれども、私どもは地方公共団体事務をできるだけ残す、あるいは移譲すること、これが分権の基本でございますけれども、それがすべてではないというふうに思っております。地方公共団体が担うにふさわしくない事務、国が担うにふさわしい事務はやはり国にお返しをする、国に直接責任を持っていただく、そういう形で国と地方公共団体の間の役割分担を明確にしていくということも地方分権推進していく上で極めて重要なことだと考えているわけであります。  今回のこの地方事務官につきましては、事務官が担当してきました仕事については国が直接執行した方がいいのではないかという結論になりましたけれども、このことが地方分権推進に反しているというふうには私どもは思っていないわけであります。  社会保険関係について申しますと、健康保険、年金に関する事務につきましては国が運営する保険事業としての完結性を持っております。そして、国が保険者として経営責任を負い、財政収支の均衡確保のために不断の努力を行わなければならないというものでございます。保険料を徴収するという面と、それが支出されていく先、例えば医療費が適正に執行されているかどうかという面をチェックするという支出の面でもそうでありますが、両面にわたって国が不断の努力をしなければならない事業であると、こう考えるわけであります。  第二番目に、全国規模の事業体として効率的な事業運営を確保していくためには一体的な事務処理による運営が要請されているということもございまして、この仕事は国の直接執行にふさわしい仕事であると、こう判断したわけであります。  もう一つ、労働省関係職業安定関係事務がございますけれども、ここでは、これまで地方事務官の方が担ってまいりました仕事は公共職業安定所という労働省の出先機関、これを指揮監督するという仕事であるわけであります。国の機関を指揮監督するという仕事であるわけであります。そういう意味では、これは国の組織の内部管理事務であると言わざるを得ないというふうに思いましたので、これもやはり労働省の出先機関が直接執行した方がふさわしい仕事であるという結論に到達したということでございます。  以上でございます。
  48. 渡辺四郎

    ○渡辺四郎君 もう時間が来ましたので、最後に権限移譲の問題で、これはもう私の方から一方的なお願いになるわけですけれども、政令指定都市なんかの皆さんが、いわゆる受け皿論から申しましても都道府県と同等程度の権限移譲があってしかるべきじゃないかという、その後の非常に強い要請等もあっておりますので、ひとつ申し上げておきたいというふうに思います。  以上で終わりますが、どうぞひとつ、今後も分権推進の牽引役として推進委員会先生方努力していただくように、私どもも議会の方で頑張ることをお約束申し上げまして、終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  49. 有働正治

    ○有働正治君 日本共産党の有働でございます。本日はありがとうございます。  勧告内容を判断する基準というのは、推進法の精神を貫徹しているかどうか、また地方自治の拡充に真に役立つ方向が貫徹されているかどうかという点から判断されるのではないかなと思うわけであります。その点で、私、地方自治に携わっておられる方々幾人かから御意見をお伺いいたしまして、それらの人の御意見を含めて簡潔に提起しつつ、御意見をお伺いできればという次第であります。  まず、きのうの諸井委員長と総理との会見にかかわりまして、マスコミの報道によりますと、委員長として感想を求められたのでありましょうけれども、この間の審議時間が必ずしも十分でなかった、あるいは各省庁の抵抗等、すり合わせ等も必要だった等々を挙げながら、権限財源移譲という点では手薄という感は否めない旨の報道がきょうなされているわけであります。また、四次までの勧告の中で各方面からの御意見等もいろいろあろうかと思います。  率直なところ、大体こういうお感じでおられるのかどうか、そして今後の日程等を考えますと、やはり半年ぐらいをめどにしてある程度皆さんとお諮りしながら詰めていくということになるんではないかと推測されるわけでありますが、ここらあたりいかがでございましょうか。
  50. 諸井虔

    参考人諸井虔君) 先ほどもちょっと御説明したと思うんですけれども、我々、この地方分権の中で機関委任事務制度の撤廃等のいわゆる関与縮減の問題、それから事務権限、それに伴って財源移譲の問題、二つの類型があると思うんですけれども、その前半の方の関与縮減についてはかなりしっかりとやるべきことはやったんではないかと思っております。ただ、これに非常に時間を費やしまして、その結果、事務権限移譲については必ずしも十分な時間がとれなかった。  これは実は、五年間の任期があるわけでございますが、後半に監視の役目が残っております。我々が勧告したことが推進計画になり、それが実際の法律制度の改正になって、そして実現をするという、そういうところまで見届けなくちゃならない、そういう仕事が残っているわけでございます。  したがって、前半の二年ないし二年半ぐらいで勧告を全部し終わって、それで政府の方へ渡す。政府推進計画をつくるのに半年ないし一年かかる。その後、二年ぐらいで全部の法律の改正の作業をやってもらわなくちゃならないわけであります。それをまた我々は監視し、見届けて、一〇〇%できたなということで我々の責任が終わる。そういう意味ではやはり二年ないし二年半のうちに全部やってしまわなきゃならない。そういう制約があったわけでございますね。そういうことで今のような結果になりました。  昨日、総理とお話ししたときも、今まで四次の勧告まででやったことについては、これは従来のスケジュールどおり推進計画に移していただく、そして、これから委員会に諮って具体的に考えますが、その後の事務権限移譲についての作業というものは必ずしも推進計画と直接絡むということでなしにやらせていただく、こういうようなことでお話をしたわけでございます。  何にしても、せめて勧告したことについて一〇〇%実現をするということでないといけないんではないかという思いが非常に強かったわけでございます。
  51. 有働正治

    ○有働正治君 今後の検討の中で、地方税充実確保という点、これまでの勧告からいったら抜本的な改革案を具体的に提示するという点にはなっていないんではないかというかなり指摘もございます。そういう点で、財源問題についても少し検討されていくという御意向でしょうか。
  52. 諸井虔

    参考人諸井虔君) これはあるいは神野先生の御担当と思いますが、ただ今後の審議の問題でございますのでお答えいたしますが、ちょっと今の段階で財源にどこまで踏み込んでやれるかというのはいろいろ検討してみないとはっきり申せないところでございます。  ただ一方で、税制調査会でも地方財政、税制についての検討が今始まっておるところでございます。そういうところでも、私も委員の一人でございますので、分権委員会としての、先ほど神野先生が言われたような、できるだけやはり地方の自主財源を拡充していく、その自主財源というのは偏在性が少なくて安定性のあるものにしていきたい、そういう点を具体的に税制調査会の場でも主張してまいりたいと思いますし、あるいは今後の権限移譲の過程で大きな財源の移動が必要である場合には、その辺も含めて考えざるを得ないんではないかというふうに考えております。  これはあくまでも現段階では私見でございますので、そういうことでお願いいたします。
  53. 有働正治

    ○有働正治君 次に、市町村合併促進の問題ですけれども、これは分権推進委員会権限、範囲をはみ出しているんではないかなという御指摘もあるわけであります。地方分権推進法第二条の精神、それぞれの地域の個性豊かな発展、自主性自立性等々から見まして、合併促進勧告を打ち出すということは、この推進委員会権限を越えるものではないか、地域の個性豊かな発展が阻害されるのではないかという御意見もあるわけであります。この点についてのお考えが一点。  地方行革推進、リストラ問題でありますけれども、地方分権を進める上でも自治体が力をつけることは必要だということはわかるわけでありますが、自治体の力という場合に基本は人の問題だと思うんです。職員の資質向上が重要であると思うんです。こういう点で自治体の努力を励ますのではなくて、定員削減、人減らし、行革等々を国から地方に強要させるような勧告を出すというのは、本来の精神、趣旨に逆らっているんではないか、こういう指摘もあるわけでありますけれども、ここらあたりいかがかという点。  時間がありませんので、機関委任事務制度の問題、法定受託事務自治事務、まだまだこれが中央集権的支配、関与のスタイルが多過ぎる、不十分だと、こういう指摘もあるわけでありますが、あわせてまとめて簡潔にお答えいただければと思います。
  54. 諸井虔

    参考人諸井虔君) これは堀江先生の御担当でございますが、簡単に私の方から申し上げて、あとは堀江先生にお願いいたします。  合併について委員会としてあれこれ言うのは差し出がましいんじゃないかという意見委員会の中にないわけではございませんでした。ただ、これからやはり自治体の責任が非常に重くなってくるわけでございますので、あえて合併をしていただく方向でお願いできないかということを勧告しているわけです。ただ、これは強制的にやるべきことではございません、あくまでも自主的なものだというふうに考えております。
  55. 堀江湛

    参考人堀江湛君) ただいま委員長が申し上げたとおりでございまして、先ほど来先生方の御質問の中で私お答えいたしましたけれども、今地方自治体に対する行政需要の増大というのが非常に大きな課題になっておりますし、さらにまた、そういった行政需要に対応して適切な施策を、公共政策を推進していくためにも自治体の足腰の強化が必要でございます。  そういう意味で、ひとつこういった自治体が相互に職員の、先生御指摘のような行政能力の向上についてのいろいろな研修、あるいは再訓練等々をお進めいただくと同時に、また限られた厳しい財政状況の中で、そういったますます増大すると予想される行政需要に対応するために、定員管理等々についても副次的にそれを厳しく再検討していただいて、地方の行革大綱についてもう一度見直していただく。しかも、それは抽象的な改革の理念だけではなしに、具体的な実施計画と数値目標を入れて、そしてそういう行革を推進していただくことによって住民の信頼をから得てほしい、こういう趣旨でございます。
  56. 西尾勝

    参考人西尾勝君) 最後に、国の関与がまだかなり強く残っているのではないかという御質問にお答えさせていただきます。  これまで包括的な指揮監督権を持っている以外に、都道府県市町村で最終決定をできる案件であっても、その最終決定をする事前関係の省庁と協議をせよということが法令あるいは通達で義務づけられていたというものがかなりあります。この協議においては、国が最終的に許可、認可、承認しない限り決定の効力は発生しない、こういう仕組みになっていたものがあるわけであります。  私どもはこれを一件一件検討いたしまして、これを原則としては事前協議に切りかえる、その中でどうしても国の合意または同意がなければならないという事項を極力限定しようとしてまいりました。国の関与が残り過ぎているというのは、恐らく一つはこの点を指しておられるかと思います。しかし、あそこで見ていただきますと、どういう場合にどういう観点から今度は国の同意を不可欠としているのかというメルクマールが、あるいは視点が限定されております。したがって、従来の何についても国がノーと言えるという許可、認可、承認から比べますと、大幅にその関与の程度は弱められているというふうに私たちは思っております。  それからもう一つの問題が、特別の関与として指示を認めているという場合でありますが、これは一つ一つごらんいただきますと、いかなる場合にいかなる要件のもとでいかなる目的のもとで認められるかということは、緊急時に、そして人権あるいは人の生命、健康にダイレクトにかかわっているというような案件のときにのみ国が指示権を持つという非常に厳しい限定を付しております。今後は、法令改正の中で指示権を定めるときには、勧告で書いてありました要件をそのまま法令の中に書いていただくということが建前になっておりますので、それが行使される場合というのは非常に限定されたものになるというふうに私たちは理解しております。  以上でございます。
  57. 有働正治

    ○有働正治君 どうもありがとうございました。  終わります。
  58. 西川きよし

    西川きよし君 本日は御苦労さまでございます。私が最後になりました。よろしくお願いいたします。  私は、特に補助金改革についてお伺いしたいと思います。  非常にいろいろな人が絡んで、やめるとなると官僚や議員の抵抗が強いというふうに諸井委員長もおっしゃっておられるのをお伺いしたんですけれども、その中で百件もの方向性を示していただきましたことは、今後は政府による地方分権推進計画の作成、そして国会での審議によって具体化していかなくてはならないわけですけれども、生みの親といたしましてこれだけは肝に銘じて頑張ってもらわないといけないというようなことがございましたら、冒頭でお伺いしたいと思います。
  59. 諸井虔

    参考人諸井虔君) 補助金の問題は神野先生にお願いいたしますが、私ども、やはり今までは国が全国を統一で画一で、あるいは公平に公正にということで地方行政を見てこられたことは決して間違っていなかった、それによって日本のナショナルミニマムが達成できたというふうに考えておりますが、大体達成ができた後のいろんな行政ニーズというのは地域により非常にまちまちになってくるわけでございます。そういう段階になったのに、なお国が統一、画一でやっていくということは、非常に行政の非効率あるいはサービスの不徹底というふうなことを招くわけでございます。その時代になったら、やはり地方がみずから責任を持って住民意向というものをベースにして行政の優先順位を決めていくという方向で行くべきではないか。  そこで、これから先はもう中央集権では地方行政はやっていけないんだ、どうしても地方分権に持っていかなければ、そのための体制がいろいろあるのかもしれませんが、それでもそれをやっていかなくちゃいかぬのだというふうに信じております。そういう意味で、少なくとも我々が勧告した内容についてはなるべく早く一〇〇%法令化していただいて、そういう体制に一日でも早く向かっていただくということをぜひお願いしたいと思っております。  補助金の問題については神野先生に。
  60. 神野直彦

    参考人神野直彦君) 補助金負担金の整理については各省庁の抵抗が厳しい中で百件事例として挙げたということについてお言葉をいただきまして、どうもありがとうございます。  基本的な考え方として、補助金負担金という二つの性格の異なる、広い意味での補助金がございますので、国が基本的に義務としてやらなければならないものは、本当に義務としてきちっとやらなければならないものだけに限定していただいた上で、これについては予算がないとかというようなことを言わずにきちっと出していただきたいということと、それから補助金国庫補助金と一般的に言われている奨励的な補助金、これはできるだけ削減していただいて各地方公共団体が多様な行政をできるような形にしていただきたいという、この基本的な考え方だけは重視、守っていただきたいというのが基本的な我々の考え方でございます。
  61. 西川きよし

    西川きよし君 私は十分しか時間がございませんものですから、三問御質問をさせていただきたかったんですけれども、一つ割愛させていただきまして、今度は堀江先生に、最後の質問に移りたいと思います。よろしくお願い申し上げます。  例えば、今まででしたら法律だとか制度だとか、例えばこれからは介護保険等々がございますけれども、そういう問題でも、自治体に出向いて意見を申し上げますと、それは国が決めたことだから自治体ではどうしようもないんですけれどもといって門前払いというような事例もたくさんあるわけです。結局、我々といたしましたら、だれが首長になろうが議員になろうが何も変わらないではないかということで、じゃ選挙にも行かないでおこうかとか、せんだっての新聞にも出ておりましたけれども、今この国を、いろいろなみんなの気持ちを直すためにはたくさんの人たちが選挙に行く以外は緊張感はないであろうというようなことも出ておりました。  分権が進んでまいりますと、自治体もこれまでのように国に責任を転嫁することができなくなりましょうし、自分たちの責任になるわけですから、住民と自治体の関係に新たな緊張感が生まれるのは当然でございます。そうした中で、今までは何をやっても何を言ってもだめだとあきらめがちだったものが、自分たち意見を反映させる、自分たちの代表を議会に送り出そうという空気になれば、住民参加協力、監視という点で期待をいたしますし、またそうした方々が立候補できる環境の整備、住民議会が近くなるような環境についても整備が必要ではないか、こう思うわけですけれども、こういった点について、最後に堀江先生にお伺いをして、質問を終わりたいと思います。
  62. 堀江湛

    参考人堀江湛君) ただいま先生の御指摘の点は私も全く同感でございます。  そこで、御質問の内容に対するお答えをいたしますと、分権を成功させるためには住民の目に見える分権がまず第一に必要であろうかと思いますが、移譲される権限の中には、直ちにそれに伴って住民の生活が変わるというものがすべてなのかというと決してそうではありません。それが定着して住民に実感されるには若干の時間がかかる。そういう意味では、直ちに効果の出るそういった側面については積極的にそれぞれの自治体が思い切った行政の転換を進めて、そして目に見える分権を実現していただくということが必要ではないかと思うわけであります。  そういったことの幾つかの例を挙げますと、一つは、具体的には情報公開条例の制定。これは都道府県あるいは政令市、中核市等においては進んでおりますが、一般の市町村のレベルではまだ必ずしも十分ではございませんので、早急なそういった情報公開条例推進。そして、まさに住民自治との関係で申し上げますと、しばしばこれは執行機関のみに限定されていて議会が対象外になっているものも多うございますが、できる限りそういった情報公開の対象も地方議会に及ぼしていくということも必要ではないかというふうに思います。  さらに地方行政の透明化、あるいはそれが情報公開条例とつながりますが、それと同時に、例えば公共事業の発注等々を初めとしまして、そういった行政の行う各種事業の透明化あるいは開かれた公正でクリーンな行政確立といったようなことがぜひ必要であろうかと思います。  さらに地方議会の問題でございますが、従来、御指摘のように地方議会が必ずしも民意集約の機関としてその権限をフルに発揮したとは言いがたい側面もあります。もちろんこれは、機関委任事務等々がございまして議会権限が及ばないというようなこともあったということになりますが、しかし今回、機関委任事務廃止されるということになりますと、議会権限も当然拡大されてくる。したがって、議会が民意を集約する機関として、その代表にふさわしい活動をやっていただくようなさまざまな活性化方策をぜひお願いしたいということで、勧告議会活性化ということをお願いしておるような次第であります。  そういった意味で、同時にまた、議会はそれを支える事務局、その人的、質的な強化も必要でございましょうし、その他、現在各自治体の内部監査で議会の代表が入っておりますが、実は議会に出てこない行政の具体的な内容をお調べになるにはやはりそういうことも必要でございますので、単なる形式的な選任に仮にも流れることのないように、議会の代表として内部監査の機構等々も大いに活用していただきたい、かように考えております。
  63. 藁科滿治

    委員長藁科滿治君) 以上で参考人の方々に対する質疑は終了いたしました。  参考人皆様に一言御礼を申し上げます。  本日は、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしましてここに厚く御礼を申し上げます。  本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午前十一時五十六分散会      —————・—————