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参考人(
西尾勝君) できるだけ具体的な例で
説明するようにという御注文でございました。
そこで、医療、福祉
関係の方から若干の例を拾いますと、医療法人の設立認可、監督の
事務、それから病院の開設の
許可、監督の
事務、そして、お話にもございました社会福祉施設の設置
許可、監督の
事務等が今回の
事務の
区分の中で
自治事務ということになったわけでございます。
従来、
機関委任事務につきましては、
地方議会は
条例を制定する
権限がないということになっていたわけですが、
自治事務に変わりますと
条例制定の余地のある
事務ということに変わります。
しかしながら、
自治事務になったら必ず
条例がつくれるかというと、必ずしもそうではありませんで、
条例はあくまでも国の法令に違反しない限りにおいて制定できるものでございますから、それぞれ国の法令がどのような立法趣旨でどのような決め方をなさっているかということによって、
条例制定の余地がかなり広い場合もありますし、ごく限られるという場合もあり得るということでございまして、これはそれぞれの国の法令の定め方によるところがかなりございます。ですから、なかなかこの場合には、こういう
条例が制定可能であろうというようなことを一般論としては申し上げにくいという面がございます。
さらに、
条例制定権が生じるというだけではありませんで、従来の包括的な
指揮監督権が否定され、特に
運用通達といったようなもので公共団体の仕事の仕方を縛るということが否定されますので、こうしたたぐいの
通達が今後は
廃止されていかなければならないということになります。
その際、今出されておりますような詳細な
通達が全部ただなくなって白紙になるのかどうかということであります。片方で、国としてはどうしても全国画一的にこれだけのことは守らせなきゃいけない、すべての
市町村、
都道府県に守らせなければならないという
基準がもしあるのならば、それは必ず法令のレベルで定めてください、つまり
法律、政令、省令のレベル、あるいは場合によっては告示という形で決めてくださいということを申し上げておりますので、その医療、福祉
関係の
通達につきましても、その中のある部分はどうしてもやめるわけにいかないので、この
機会に省令レベルに定め直しますということが出てくる可能性がございます。その他のことについては、従来
通達で書いていたことは全部やめますというような
整理がそれぞれの省庁によってなされることになるだろうと思うんですね。
そのとき、どの程度のものが従来の
通達から法令レベルに転換されるのか、ほとんど全部なくなってしまうのかによって、公共団体側に生じる自由の余地というのは違ってくるということでございます。ですから、法令で定めるべきことは
必要最小限のものに限定してくださいという
一般原則は述べておりますが、それがどういうふうに守られていくかということを今後監視していかなきゃいけない、こういうことになろうかと思っております。
そこで、もう少しそうした今後の
改革の
方向が示されてきているものといいますと、文教
関係の例があろうかと思います。
学校教育
行政で申しますと、今回の
勧告によりまして、それぞれの義務教育の小中学校の公立学校の学期、一学期とか二学期、三学期という期間をどう定めるかというのは、従来は
都道府県教育
委員会の決定
事項でございましたが、これを
市町村教育
委員会の決定
事項というふうに
権限移譲なされることになっています。そうすると、学期をどのように定めるかは、今後は
市町村レベルでまず決められるということになるわけですね。
そして、その次に今度は、どの子供はどこの小学校に通学させるべきだという就学校の
指定という問題がございます。これもかなりみんな上にお伺いを立てないと、そして承認されませんと弾力的な
運用はできなかったんですが、この就学校の
指定問題について
運用を
弾力化するということを文部省は約束しておられます。そうすると、
原則はここの区域の子は第一小学校、この区域の子は第二小学校となっておりますが、いろいろな事情によってそうではない通学を認めるという余地が広がってくると。そのとき、どういうときにそれを使っていくのがいいのかということはそれぞれの公共団体の判断になります。
さらに、学校において何を教えるかというのは学習指導要領等々で、それぞれの学年にはこれこれの科目を何時間以上教えなきゃいけないというのが詳細に決まっておりますが、これを緩めていくということが現在、教育課程審
議会と中央教育審
議会で議論され、時々新聞に報道されますが、それが緩められていくということは
方向としては決まっています。そうすると、どの程度どういうふうに緩められるかはこれから見てみなきゃいけないのですが、緩められますと、そこから余ってくる授業時間というものをどの科目にどういうふうに使うのかということはそれぞれの公共団体の判断にかかわってくる。
こういうふうな形で、それぞれの
行政分野について変化が生じてくる、その具体的な変化の姿は今後の
整理の仕方を見てみないとまだわからない部分がございますというところでございます。