運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1997-12-11 第141回国会 参議院 大蔵委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十二月十一日(木曜日)    午前九時八分開会     ―――――――――――――    委員異動  十二月十日     辞任         補欠選任     清水 達雄君      長尾 立子君  十二月十一日     辞任         補欠選任      長尾 立子君     清水 達雄君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         石川  弘君     理 事                 河本 英典君                 楢崎 泰昌君                 上山 和人君     委 員                大河原太一郎君                 金田 勝年君                 清水 達雄君                 谷川 秀善君                 長尾 立子君                 野村 五男君                 保坂 三蔵君                 松浦 孝治君                 志苫  裕君                 笠井  亮君    国務大臣        大 蔵 大 臣  三塚  博君    政府委員        大蔵政務次官   塩崎 恭久君        大蔵大臣官房総        務審議官     溝口善兵衛君        大蔵省主計局次        長        細川 興一君        大蔵省証券局長  長野 厖士君        大蔵省銀行局長  山口 公生君        大蔵省銀行局保        険部長      福田  誠君        大蔵省国際金融        局長       黒田 東彦君        証券取引等監視        委員会事務局長  堀田 隆夫君    事務局側        常任委員会専門        員        小林 正二君    参考人        株式会社共同通        信社国際金融情        報本部顧問    西崎 哲郎君        財団法人日本証        券経済研究所主        任研究員     紺谷 典子君        日本銀行理事   本間 忠世君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○預金保険法の一部を改正する法律案内閣提出  、衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 石川弘

    委員長石川弘君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  委員長から申し上げます。  現在、平成会民主党新緑風会及び新社会党平和連合委員出席を求めておりますが、いまだ出席が得られません。  そのまましばらくお待ちを願います。  速記をとめてください。    〔速記中止
  3. 石川弘

    委員長石川弘君) 速記を起こしてください。  委員長から申し上げます。  平成会民主党新緑風会及び新社会党平和連合委員出席を求めましたが、出席を得ることができません。  やむを得ませんので、議事を進めます。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日、清水達雄君が委員辞任され、その補欠として長尾立子君が選任されました。     ―――――――――――――
  4. 石川弘

    委員長石川弘君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  預金保険法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会参考人として株式会社共同通信社国際金融情報本部顧問西崎哲郎君、財団法人日本証券経済研究所主任研究員紺谷典子君及び日本銀行理事本間忠世君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 石川弘

    委員長石川弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  6. 石川弘

    委員長石川弘君) 預金保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 河本英典

    河本英典君 自民党の河本英典でございます。  本臨時国会、残すところあと本日十一日、十二日と大変押し迫った中、この預金保険法改正案が大変不正常な形で参議院へ送られてきました。大変お忙しい中、大蔵大臣初め大勢お集まりいただきまして、また共産党を除く野党の先生方は残念ながら来ていただけないわけでございますけれども、粛々と審議を進めていきたいというふうに思います。  全部そろわない形で、非常に不正常な形でこうして審議をせにゃいかぬということは、大蔵委員会を今まで正常な形で運営してきた中で、委員長の御心労大変心中苦しいものがございまして、その辺もよく御理解いただきたいなというように思うわけでございます。  しかし、この法案でございますけれども、今、金融機関破綻が言われまして、金融システムに対する信頼が非常に薄れて、揺らいでおるということで、そういった意味でこの法案そのもの機能ということもございますけれども、この法案を何としてもこの会期中に成立させるということの意義の大きさというのは大変重要なものというふうに私は認識しておるわけでございます。  一連金融機関破綻ということで、北海道拓殖銀行という都市銀行がああいうことになりましたし、それから山一証券という四大証券一つ証券会社破綻ということで大変話題になっておるわけでございます。ほか、たくさんぽつぽつとそういったことが起こっておるわけでございます。  破綻と申しましても、倒産による会社更生法の申請とまた実は違うわけでございますけれども、その辺も言葉が、正式な定義で言いますと若干違うようでございますので、全部つぶれるような話になって、年末ということもございまして大変乱れておるような気がいたします。そこへ経済界といいますか一般は消費が伸びないことであるとか不況であるということで何となく暗いムードが漂っておるところでございますけれども、その中で政府緊急経済対策ということでいろいろ考えていただいておるようでございます。  いずれにいたしましても、この金融機関破綻の中で最大の関心事と申しますのは、この金融システムを取り巻くこういった一連の問題、一日も早い安定を国民は期待しているところであるというふうに思うわけでございます。  こんな中で、まずこの状況といいますか現状認識大蔵大臣のお考えをまず聞かせていただくところから始めたいというふうに思うわけでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  8. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 河本委員の全般の洞察と、そういう中における政府の取り組み方ということの御指摘であろうかと思います。  昨今の一連倒産破綻等事態、特に日本を代表する二十のうちの一つ拓銀地域金融に特化したとはいいながら、その持つ重みは大きいわけであります。また、四大証券の山一が自主廃業を決定したということの事態、いろいろな要素はあるとはいいますものの、経済国家日本金融システムはしっかりと安定をしておる、円も安定をしておると、こういう諸状況の中の事件でありますだけに、万般影響を与えておりますことに私はこの事態を深刻に受けとめて、毎日毎日世界マーケット動き我が国マーケット動き分析しながら、事務方にも督励を申し上げ、対応に万全を期するようにということで来ておるところであります。  巷間さまざま内外から言われておりますが、大蔵大臣として、また政府として心がけねばなりませんことは、日本発パニックを断じて出さないという決心と決意と万全の対策でなければなりません。よって、事態が発生をいたしましたとき、日銀との協調、分析ということの中で万全を期しまして、取りつけ騒ぎが起きないという状態、賢明な日本国民理解度、またこれに対応する地域社会のサポートというものがしからしめておるものと存じます。今後とも、この万全を期してまいります。  今回の法律も、新しい手法を加えることによりましてシステムの安定の一助になりますし、同時に地域経済社会に対する安心、年末年始を迎えてこれを乗り越えるためにはこの手法取り入れさせていただきますことが極めて大事と、こう思って御願いを申し上げ、御審議を賜っておるところであります。  何とぞ、万般の御賢察の中で、会期内成立に対し御願いを申し上げ、冒頭の答弁にかえます。
  9. 河本英典

    河本英典君 そういったことを起こさないようにということのお話でございますけれどもシステムとして起こさないようにということはいろいろ技術的にできるわけでございます。  一番大切なことは、先ほども申したわけでございますけれども、心理的な面でございまして、極端に言いますれば私どもはちょっと知らない歴史の中の話でございますけれども、取りつけ騒ぎという言葉がございます。そういったことも現代の情報化社会の中で起こりにくいんだという話はあったわけですけれども、逆に国内のこの今の状況でありますので、新聞とかテレビを毎日見ておりますと、何かそんな気にさえなりかねない状況であるということでございますので、その辺はしっかり政府発信のコメントといいますか、いろんな発言はきっちり慎重にやっていただきたいなというふうに思うわけでございます。そうしたアナウンスメント効果といいますか、非常に大事な局面じゃないかなというふうに思っておるわけでございます。  そうしたことで、何度もこの委員会、同じような話になるかもしれませんけれども、このような状況に立ち至った要因についてはどのように考えておられるのかを次にお聞きしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  10. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 高度経済成長時代から第一次、第二次オイルショック危機、大国になるに従いましてG7構成国ということで世界経済運営に、また通貨安定のために責任を負う国になりました。  バブル崩壊後の事態、これの対処のために種々の政策が行われてきたところでございますが、今日の事態はその正常に向けてのスタートに当たり総決算をし、あしきは取り除き、そして安定成長に向けての改革は思い切って断行をしていかなければならない、こういうところに来ておると思っております。新しい金融制度を目指す、いわゆるニューヨーク、ロンドン並み国際的基準に合った東京市場の構築が使命であろう、こういうことで諸改革が断行されておりますことも直接間接に影響を及ぼしておるところかなと思います。  体質の改善、そして情報開示責任、こういうことを基本として市場グローバルスタンダードに立ちますよう、立ちつつあるわけでございますが、そのことを乗り越えていかなければなりません。そういう意味で、政府も先月の十八日、総合経済対策を打ち出し、ここにまた国会終了後には思い切った対策も企画・立案をされておるところでございます。  大きな時代の流れの中の節目節目の出来事は我が国だけではなく世界の各国に大きな波を打ち返しておるわけでございますので、我が国の国力、国富というものの厚さ、これをベースにこの波を乗り越えていくことは決して難しいことではないと。努力と頑張りと、それから国民的な意思がその方向で一つになってまいりますならば立派な体制が仕上がっていくであろう、こんなふうに思っております。
  11. 河本英典

    河本英典君 日本版ビッグバンということが言われて久しいわけでございます。いろいろな制度改革の中でグローバルスタンダードという言葉がよく言われますけれども国際標準制度であり、具体的に言いますと国際標準経営ということがこれから一番求められるわけでございます。特に、この金融機関破綻といいますのは、総会屋云々で見られますように、日本的経営のままこのビッグバンの中に突っ込んでいくという状況一つの衝撃があったのかなというような気がいたします。ビッグバンというのは頭ではわかっていながら、進んでいく中で思っていたより強烈なものなんだなというようなことの結果じゃなかろうかというような気がいたします。  そうしたことで、逆に金融機関はかなりこのごろ緊張してこのビッグバンに取り組んでおられる形になるんじゃないかと大いに期待したいわけでございます。これは金融だけの話でございますけれども経済経営一般の中でのグローバルスタンダードというものはますます追求されるんじゃないかというふうに思っておるわけでございます。  それでは次に移らせていただきますけれども金融システムに対する信頼が薄らいでいるということの一つのあらわれといたしましてジャパンプレミアムの問題が指摘されております。ジャパンプレミアム現状、最近に至るまでの動向についてどのように把握されているのか、お伺いしたいと思うわけでございます。どうぞお願いいたします。
  12. 黒田東彦

    政府委員黒田東彦君) 御指摘のいわゆるジャパンプレミアムでございますが、九五年の十月にピークを迎えてドルの三カ月物で〇・五%に達していたわけですけれども、その後急速に縮小いたしましてほとんどなくなっていたものが残念ながら先月の中旬からまた急速に拡大をいたしまして、十二月三日には一%という異常とも言える水準になったわけでございます。その後若干縮小いたしまして、直近の昨日の段階では〇・五%まで縮小してきております。  今回のこういったジャパンプレミアム拡大要因が何だったのかということは、必ずしも客観的に明らかなわけではございませんが、恐らく二つほど理由を挙げられると思います。  一つは、年末にかけて資金の出し手の外銀側ドル供給がやや品薄になってきたところへもってきて邦銀側ドル手当てを急ぐということで取り急いだといった需給要因からプレミアム拡大したというのが一つございます。  それからもう一つ委員指摘日本金融機関に対する何とない不安と申しますか、不信といいますか、そういったものがマーケットでいろいろ言われまして、そうしたことからまたさらにプレミアム拡大するといったことがあったと思います。  その後、先ほど申し上げたように、縮小しました一番大きな理由は恐らく需給要因であろうかと思います。すなわち、邦銀は既に当面の外貨資金手当てを十分に行っておりまして、慌てて取り急ぐ必要がなくなってきたということがあろうと思います。  ただ、残念ながら日本金融システムについての何とない不安というのはまだ残っておりまして、そこからジャパンプレミアムというのがまだ存在しておるのではないかと思います。  ただ、御案内のとおり、そもそも我が国外貨準備も十分ありますほか、アジア諸国でいろいろ通貨不安が発生しております国というのは実は対外債務国ですが、我が国世界最大対外債権国であるということでこういう外貨取り入れについてのプレミアムというのは本当はやや異例というか異常な面があるわけでございまして、国内金融システム安定に向けての先ほど大臣がお答えいたしましたような断固たる対応をとっていきますれば必ずやこういった不安感みたいなものが解消し、ジャパンプレミアムも急速に解消していくことが期待されるところでございます。
  13. 河本英典

    河本英典君 そうしたものが存在して、ふえてまた減ってきたというお話でございます。  こうした傾向を解消していくためにどういった対策というのを考えておられるのかということを次にお聞きしたいのでございます。
  14. 黒田東彦

    政府委員黒田東彦君) 先ほど申し上げたような基本的な要因がございますので、そういった基本的な要因が解消すれば恐らくジャパンプレミアムも縮小していくものど思われますが、他方で、こういう短期的な資金取引ということでございますので、万全の備えをしておくということがどうしても必要でございます。  したがいまして、前から申し上げていますとおり、必要な場合には海外当局との協力、あるいは我が国の保有する外貨の活用なども含めまして万全の備えをとってまいりたいと考えておりまして、そういうこともこういったジャパンプレミアムといった現象が起こる問題に対する一つ対応ではないかというふうに考えております。
  15. 河本英典

    河本英典君 そうすると、ジャパンプレミアムというのは逆に言いますと日本金融システムに対する信頼バロメーターであるというふうに考えていいわけですね。
  16. 黒田東彦

    政府委員黒田東彦君) 先ほど申し上げたとおり、需給要因というものもございます。その他いろいろな要因があろうかと思いますが、まさに委員指摘のとおり、そういった金融システムに対するマーケットの見方の一つバロメーターであることは確かでございます。
  17. 河本英典

    河本英典君 そうすると、悪いときから比べれば少し落ちついてきたという印象でございますね。  金融システム安定化のためには短期金融市場が円滑に機能するということが不可欠であると考えますけれども、こうした観点から日銀大蔵省としてどのように対応していかれるかということをお聞きしたいと思います。
  18. 山口公生

    政府委員山口公生君) また日銀の方からも御答弁を申し上げたいと思いますが、短期金融市場金融機関等が相互に短期資金取り入れ取引を行っているわけでございます。  先ほどのジャパンプレミアム外貨での問題でございますが、円貨におきましても、先生の御指摘のとおり、大変重要な点でございます。短期金融市場がうまく機能する、円滑に機能するということが大変重要でございます。金融機関は、幾ら健全であっても、短期金融市場機能しなくなりますと大変経営が難しくなるわけでございます。  したがいまして、十一月二十四日に大臣談話の中でインターバンク取引等の安全を確保するということについても談話を出していただきました。また、二十六日にも大臣日銀総裁とともに改めて決意を表明していただいたところでございます。  いずれにしましても、大蔵省としては、内外金融市場のあらゆる事態に対処し得るように、日本銀行とともに市場への流動性供給に万全を期して金融システムの安定に万全を期していきたいというふうに心得ておるわけでございます。
  19. 本間忠世

    参考人本間忠世君) 私どもといたしましても、先生指摘のとおり、現下の金融システム状況内外ともに極めて厳しい状況にあるというふうに認識をいたしておりまして、仮にも金融システム全体の安定が損なわれるようなことがありませんように中央銀行の立場から最大限努力を傾けていくということが現在極めて重要な状況にそういう意味でもなってきているというふうに思っております。  市場におきます流動性資金全体の量でございますが、これが一時的にせよ不測の事態で低下をするとか、そういうふうなおそれがありますような場合には、市場に対しまして私どもとしまして潤沢に資金供給するという考え方で必要な措置をちゅうちょなく行っていく、対応していくという考え方基本にいたしまして、現に市場資金を潤沢にちゅうちょなく供給をしているところでございます。当然でございますが、そういう運営をさらに続けていくという考え方でございます。  現実に、十一月の下旬にいろいろな破綻が相次ぎましたことが影響いたしまして、インターバンク金融機関同士資金のやりとりでございます金融マーケットインターバンク市場におきます市場国会いがつきにくくなり、ある種の緊張感市場に出るということがございました。これにつれまして、金利でございますが、翌日の決済を当てにいたしますオーバーナイト金利、これを私ども金融調節誘導目標にしておりますが、平均的に公定歩合水準をやや下回って推移するというこの誘導目標を大幅に上回る水準に一時なりました。  こうした事態に対しまして、私ども日本銀行は連日通常のときを大幅に上回ります資金供給をいたしております。さらに、必要に応じましてこの適格担保を差し入れる形での二十条の貸し出し、これも実行をいたしますなど、中央銀行としましての機能最大限に発揮することによりましてインターバンク取引の安定を図るということで努力を尽くしているところでございます。  こうした実際のオペレーションの効果もございまして、短期金融市場全体の動きはこのところ次第に効果が浸透してきていると思っておりまして、オーバーナイト金利を初めといたします市場金利は徐々に落ちつきを取り戻してきております。  日本銀行としましては、今後とも金融市場に対しまして十分潤沢な資金供給を続けまして円滑な取引等安定的な金利形成を図っていくということに全力を傾けていきたいというふうに考えております。
  20. 河本英典

    河本英典君 ちょっと申しわけないんですけれども、きょうは変則的な運営をしますので一たんここで切って、一巡してから次にまた続けてやりますので、よろしくお願いいたします。
  21. 志苫裕

    志苫裕君 早速法案に関し順次お伺いします。  この法案が成立しますと地銀など地域金融機関再編合併が進みます。さきに成立した法案では、銀行持ち株会社に系列化される大手の金融機関合併再編される地域金融機関と、そして不良債権処理も思うようにならない、淘汰されてしまう小さな金融機関日本金融機関はおよそこの三つの類型に整理されていくんでしょうか。  この機会に金融機関全体のあり方というか全体像を語ってくれますか。
  22. 山口公生

    政府委員山口公生君) 委員の御指摘は非常に中長期的な視点からの御賢察でございまして、私どもも長期的にはそういった形の分析なり見通しというものを持っていかざるを得ないと思っておりますけれども現時点におきまして大きなマネーセンターバンクと言われるようなところはせんだって御審議賜りました持ち株会社、こういったいろいろな経営形態多様化でもって国際的な競争裏に打ちかっていくということを進めていくのであろうというふうに思います。  その次の中小あるいは地域金融機関は、それぞれの特色を生かしながらお客様のニーズにきっちりこたえるということで対応していくわけでございますけれども、その中に不良債権処理に追われ、大変自助努力をしつつも破綻あるいは破綻に近い状態に陥っているという銀行もあるわけでございます。そういったところは極力その努力をしていただくわけでございますけれども、そういった金融機関が不幸にして債務超過に陥る状況ではないにもかかわらず資金繰りが非常に苦しいというような状態ということがしばしば起きてくるわけでございます。そういったときに、その金融機関の単に処理だけをスムーズにやるというのみならず、地域における存在とその役割というものを考えたときに、今回の預金保険法改正をお願いし、その機能を十分に維持していくということも可能にしていただくようにお願いしたいということでございます。  そうした目的を持った今回の法律でございまして、この法律自体再編を進めるための法律ではございませんけれども、結果としてそういった金融機関体質強化の問題にも結びつくという点の御指摘はそのとおりだというふうに思っております。
  23. 志苫裕

    志苫裕君 現在の預金保険機構財政状態はどうなっておるのか、ついでに金融機関が抱える不良債権状況もかいつまんでお話しいただけますか。
  24. 山口公生

    政府委員山口公生君) 預金保険機構財源の問題でございますが、金融三法で平成八年度から平成十二年度までの五年間は特別保険料まで徴収させていただく機能を与えていただきました。その財源見込みは二・七兆円でございました。今までに既に一・四兆円の金銭贈与を実行しております。したがって、計算上一・三兆円残っておるという計算でございますが、最近いろいろ大型な破綻ということも続いております。そういった処理もどれくらいの財源が必要かということはまだはっきりいたしませんけれども、そういうことを考えてみたときに、やはり一・三兆円というものを十分に活用しながらもいろいろ考えていく必要があるという状態だと思います。  そこで、現時点で幾つの金融機関がどういう規模で破綻をするかということはとても予測はできません。しかし、現在見込まれる預金保険機構財源では対処が困難な状況が発生した場合には、遅くとも平成十年度末までにはその機構の業務や金融機関の財務の状況等を勘案して保険料負担のあり方について検討をするというふうに法律にも書いてありますので、それを検討する必要が出てくるだろうと思います。  また、セーフティーネットを完備し、預金者の保護に万全を期すためにいかなる事態が生じましても対応できるように、預金者の保護のために利用可能な資金を拡充していくということを今後検討していく必要があるのではないかと思っております。  それから、もう一つのお尋ねの不良債権状況でございますが、これは私どもしばしば申し上げておりますが、全銀協の統一開示基準で、一つの基準でもって時系列的にずっと見ておりますと、その不良債権総額は減りつつあります。それから、債権償却特別勘定の要するに引き当て済みもふえております。  そういったことを考えますと全体としてはいい方向に向かっておりますが、この全体としていい方向に向かっているということと個別金融機関で苦しんでいるものがあるということとは別問題でございまして、したがいましてこういった破綻処理の問題というのが出てくるわけでございます。いいところはどんどん進んでいきますけれども、そうでないところも残念ながらあり得るということでございます。そういったことを考え合わせたときに、やはり不良債権問題というものが完全に終わったということは言えないという状況だと思うわけでございます。
  25. 志苫裕

    志苫裕君 余りはっきりした数字は出なかったけれども、いずれにしてもこれで十分だという資金が機構にあるわけでもない、一方には巨大な不良債権がバブルのツケで未処理のまま残っておる、こういう状況金融環境を改善して金融秩序を維持していくために差し当たりどの程度の資金があればいいと考えておるのか、大蔵省金融部門の分離論などがあって腰が定まらぬというところで気の毒だけれども、この際資金の調達方法も含めて、これが最善だと思う構想を披瀝してもらえませんか。
  26. 山口公生

    政府委員山口公生君) 金融システムの不安というものが起きてはならない、あるいは仮に起きたとしても、これを直ちに解消するために何が必要かという議論が各方面でも行われております。そこには公的なかかわりということも含めて御議論をいただいておりまして、私どもも、あらゆる選択肢を点検し幅広く検討するようにという大臣からの御指示がありまして、今鋭意検討しているところでございます。この法案もそうしたものの中の重要な方策の一つだと思っておりますけれども、預金者保護あるいはシステムを守るために、やはり国民の皆様に安心していただける形をつくり上げていくという必要があろうと思います。  どの程度の資金が要るかということになりますと、それは今後の金融情勢いかんということにならざるを得ないのでございますけれども、ただ各金融機関とも不良債権を抱えながらもそれは自分の努力で解消すべく全力を挙げております。ただ、それですべてが解決し得るかという問題でございますので、私どもとしては早期是正措置等を通じてできるだけ金融機関の自助努力で解決してもらい、どうしてもそこで破綻というような事態になったときには国民の皆様に心配をおかけしないような万全の備えをしていくという方針でございます。
  27. 志苫裕

    志苫裕君 局長、あらゆる選択肢を検討してやれるものは何でもやるという精神論ばかり言っても、今、現実の問題なんですから、どんなことをするんだろうと、国民はおれのところにはどんな影響が及んでくるだろうかということを検証しながら正確な判断をしていくわけですから、やれることは何でもやるとどこへ飛んで行くかわからぬようじや困る。  住専の不良債権処理の進捗状況はどうなっていますか。回収が進んで国庫に入れられるような状況ですか。
  28. 山口公生

    政府委員山口公生君) 住宅金融債権管理機構におきましては、預金保険機構と一体となりまして、強力かつ効率的な債権回収及び厳格な責任追及に取り組んでおります。平成八年七月の設立から平成九年九月末までの目標額五千八百九十八億円を上回る六千百八十六億円の債権を回収しております。  また、住専処理法の規定によりまして、住宅金融債権管理機構は旧住専から譲り受けた債権の回収等により利益が生じた場合にはその益金を預金保険機構を通じて国庫に納付することとなっておりまして、平成八年度においては約九億円を国庫に納付しているところでございます。
  29. 志苫裕

    志苫裕君 公的資金というか財政資金といいますか、それの投入に関して幾つかの提案がなされているようですね。いわく宮澤構想、いわく梶山構想、不敏にして三塚構想というのはまだ拝聴しておりませんが、できれば諸説を伺いたいものだと思いますね。  また、それぞれの構想についての特色とその一長一短をコメントしてもらえぬだろうか。また、財政資金の投入はやむを得ないとお考えになっておるのかどうなのか。投入するにしましても、これだけはしてはならない、これだけはやらなければならぬというような、何かそういう点がございましたら、それもあわせてどうぞ。
  30. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 志苫先生の御質問、多岐にわたっております。  御案内のとおり、自民党内、与党三党の協議会、深刻な議論が行われております。いずれも今日における最重要課題は金融システムの安定にありと、こういうところであります。まさに金融は産業・生活の血液でありますから、その仕組みが一抹の不安を持たないものを目指すというのが政治の目的であります。  よって、こういう多様な時代でございますから、ありとあらゆる選択肢と申し上げましたのは、まさに一瞬の勝負を争うときの体制、中期の体制、長期の安定策というのは何かということで、一瞬の体制、ここ一年の安心をいただく、安心をもたらすための体制、こういう仕分けの中で進んでおるところであります。私自身は何も申し上げておらないということではなく、今申し上げました指示をいたしまして、やれるべきことを、やらなければならぬことを全部点検して備えろというので、総力を挙げて事務方は対処をいたしておるところであります。  政党政治の今日でありますから、党の協議、与党の協議、また国会における各党の論議、こういうものに傾聴をしながら、出された最終案に対し政府としての最終決定を行う前の決断というのがあります。そのときには、ただいま申し上げました最重要課題である、国民生活、国民経済基本はまさにそこにあるという視点で公的資金の導入もそのときはやらなければならないわけであります。  そういう点で、梶山構想、宮澤構想、また若い渡辺君の構想等々があります。そのほか名前は申し上げませんが、いろいろと論議が積み重ねられております中で、このことが十六日ぐらいをめどとして最終決定をしようかというようなことも聞いておりますし、いや今週中にという意見もありまして、最終的なところは遅くても十六日と。十六日というのは、ワンパッケージで金融システム安定のための基本の政策、そして経済政策を世界に向けての発信をします以上、金融基本的な考え方、今申し上げました基本はそのベースにあると思います。そういう点で、今全力を尽くしております。  大蔵大臣とすれば、まさにどんな事態が起きても万全を期する、そのためにはその瞬時の体制をとる、ここにあります。幸いに日本銀行はしっかりしておりまして、要請にこたえ、先ほど本間理事が言われましたとおり、ありとあらゆる手だてを講じこれに対応する、こういうところで国民の皆様の御安心、預金は必ず守り、御要求があればきっちりと返還できる体制をとり来っておる、こういうことの中で今後に対処をしてまいるということであります。
  31. 志苫裕

    志苫裕君 どうも精神論しか聞けないので少し私には不満ですね。  ところで、新型国債という耳なれぬ言葉がしばしばマスメディアに登場しますね。かつて政府の要職にあった前官房長官の提唱で橋本総理も自民党に検討を指示したと報ぜられておりますが、その衝にある大蔵大臣はこれにどんなかかわり方をしておるのでしょうか。新型国債とは一体どういうものですか。財政法のどの条文に根拠を置いたものなんですか。
  32. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 新型国債と言われておりますが、梶山提言が本日正式に議論が開始されると聞いております。連日の党の会議、三党の協議の中でもこの議論は行われておりませんで、最終的にその具体策というのは定まっておりません。もちろん、やります以上、法令に準拠をし、許容されるものでなければなりませんことは当然であります。  私のかかわり合いということについての御指摘につきまして申し上げますと、私は、この事態はありとあらゆる選択肢の中でよいものであれば何でもやる、この精神論というか基本論があります。そういう意味で、梶山前官房長官が今日の事態を憂え、NTT及びJT、その他開銀等々のものを保証として新しい国債の発行ができるならばこれをもって金融システムの安定に取り組もう、こういう趣旨であるという意味で私は、宮澤提案も含め、梶山提案も含め各種のいろいろなものが、宮澤先生を本部長として緊急金融システム対策樹立を目指しておるわけでありますから、そこで決定をしたものを御提示いただくのであれば全力を尽くしてその趣旨をしっかりと踏まえやらさせていただく、こういうことを申し上げておるところであります。
  33. 志苫裕

    志苫裕君 何か目新しいことを言えば市場が好感するというものでもないのでもう少し具体的に、新型国債というのは法律に基づいて出すのでしょうから、一体何条に基づくものなのか。ただ、その返し方が今までなかった例だというのであれば、これから新型国債はじゃんじゃん出ますよね、いろいろな返し方を工夫すればいいんですから。それはNTTで返すかたばこで返すか、あるいはまた別の返し方もあるでしょう。そう新しいものでもないようですが、何が新型なのかわかりません。  午前中の質問はそろそろ終わりにしますが、住専処理の後遺症とでもいいますか、国民の間には財政資金を投入することについてアレルギーのようなものがないわけではありません。この預金保険機構を充実して、保証機能を充実して転んでも大丈夫ですよということにすると安心して転ぶ不心得者が出ないわけでもないでしょう。  特定合併において破綻した金融機関の基準は法律上に何も明示されていないようですが、定義はあるんでしょうか。ついでに、財政資金を投入する基準、安心して転ぶ不心得者が出ないようにモラルハザード防止の措置もあわせてお伺いできればありがたいです。
  34. 山口公生

    政府委員山口公生君) 公的資金を導入すると金融機関経営者がモラルハザードを起こす、少なくともいいかげんな経営をしがちになるという御指摘でございます。そういうことがやっぱりあってはならない、そういう御批判があることは私も聞いておりますけれども、そういうことがあってはならないということでありますので、基本的には経営者の責任ということをきっちりと追及していくということが必要だというふうに思います。  また、金融機関も、公的資金があるから自分の銀行をいいかげんに運営してつぶしてもいいんだというふうな不心得者はおらないと思いますけれども、万一そういった経営を現にやってだんだん経営を悪くしていくようなことがありますと、それは例えば検査等で厳しくチェックするという姿勢で当たらなければならないというふうに思うわけであります。  もう一つ、今回の特定合併についてのいろいろな基準のお話がございましたけれども、これは今の預金保険法考え方をほぼ踏襲しておりまして、個々のケースにおいて具体的に判断していくべきものでございますけれども、これは言ってみますればその地域経済、健全な取引先の状況等を見まして、どうしてもそういったことが必要だということで、むしろ銀行が手を挙げるんじゃなくて金融監督庁の方からそろそろそういったことをやりなさい、どうですかというようなあっせんをすることであります。  したがって、銀行はそれを受けなくても構わないんですけれども、この特定合併の構想というのは金融機関を救うということではなくて、そういった事態にどんどん陥っていく、悪い事態にずるずる陥っていくことを防ぐ、そのことによって健全な取引先あるいは地域経済を守るという観点からのことでございます。それは乱用はするべきものではありませんし、一つ一つきっちりした考え方対応していくわけでございますけれども、そういった観点からの緊急的な五年間の残り、今世紀中の話でございます。
  35. 志苫裕

    志苫裕君 終わります。
  36. 笠井亮

    ○笠井亮君 日本共産党の笠井亮でございます。  昨日、本会議の質疑があって、会期末をあすに控えたきょうの時点でございまして、不正常な状況が現実にある、そして会期末はあしたということでいえば、十分な審議の見込みもないのにこういう時点であえて強行成立するということをするべきではないと、先ほどぜひこの国会でという意見がありましたけれども、私は逆の立場でございますので、ここまで来たらむしろ廃案にすべきだというのが筋だと思っております。  この預金保険法の問題は非常に重要な問題でありますので慎重に徹底審議するという立場で臨むということで質疑を行わせていただきたいと思います。とりあえず私は、きょう午前中限られた時間なので、昨日質問をいたしまして答弁をいただきましたので、それとのかかわりで幾つか具体的に伺っていきたいと思っております。  一つは、この法改正そのものの基本的性格の問題なんですけれども、これまではいわば破綻金融機関への援助だったのが、今回は法改正することによって簡単に言いますと破綻する以前の危ない銀行にも新設合併、特定合併ということで不良債権を買い取ることによって資金援助をしていこうということが大きな中身になっていると思うんです。  総理はきのうの答弁の中で、今回の改正案預金保険機構機能を変えるものではないと。これは大きく変質させるんじゃないかということを私が伺ったら、変えるものではないということを答弁されたんです。  そうしますと、これは素朴に、率直に伺いたいんですが、なぜ今回法改正をするのか、機能を変えないのだったらする必要はないのじゃないかと思うんですけれども、なぜ改正をするのかということについてはどういうことになるんでしょうか。
  37. 山口公生

    政府委員山口公生君) 先生御承知のように、現下の経済情勢ということも一つあると思います。それからもう一つは、不良債権処理で個別の金融機関で問題が生じる可能性がまだ残っているというような状況等を勘案しての御議論をお願いしたいということであります。  先生の御指摘が特定合併をどうして今やるのかと、こういう御趣旨でありますと、きのう総理や大臣からも御答弁ありましたように、これは特例期間中の措置であります。少なくとも今回の考え方は、ある地域経営の悪化した金融機関が複数存在し、それらが連鎖的に預金払い戻し停止に陥るおそれがある、地域経済に重大な影響が及ぶおそれがある際にこれを未然に防止するという公共的な観点から必要があると当局が判断した場合に限り合併のあっせんを行うこととしております。  また、あっせんを受けた破綻金融機関は法的に消滅するとともに、大胆なリストラの実施及び責任ある経営体質の整備について厳格な制度的歯どめを設け、モラルハザードを防止しております。したがって、今回の改正案におけるこの特定合併はシステミックな地域経済のリスクを未然に防止するという公共的な観点から制度的な歯どめを設けながら行うものであります。  今回なぜというお話でございますが、そういった事態にかんがみ、このまま放置しておきますと幾つかの金融機関が――破綻といっても二つ種類があります。債務超過に陥ってもう業務を停止しなきゃいけない銀行破綻でありますが、もう一つはまだそういう状態にないんだけれども資金繰り等で非常に苦しくなっているというものもあります。これを放置しますと、ずるずると債務超過に陥ってしまいます。そうしますと、費用ももっとかかります。破綻処理コストはもっとかかります。それと同時に、受け皿の金融機関が北拓と北洋のような関係で出てきますれば何とか地域経済影響は最小限におさめることができますけれども、放置しておきますとこの時期におきまして取引先は自分でどこかの銀行取引先を探さなきゃいけないという状態になります。そういうことを今やっていいのかという問題意識が私どもあるわけでございます。我々行政府としてベストを尽くさせていただきたいと。だから、大臣や総理が申し上げておりますように、そういう手段を与えていただかないとこの状況をうまく乗り切ることが難しいという事態であるからでございます。
  38. 笠井亮

    ○笠井亮君 結局、機構の機能を変えるということで改正するわけですよね、そういう意味で言いますと。いや、そうならざるを得ないと思うんですよ。今いろんな状況があるからそれをやらないと大変なことになるというふうに言われたわけですけれども、結局、これまでと違って債務超過でなくてもいい、大蔵省が危ないと判断したら援助をする、それをやらないと大変なことになるんだということで言われたと思うんですよ。昨年の法改正に続いて、そういう意味ではますます、きのうも指摘しましたけれども、この預金保険機構不良債権処理するという始末の場所にするということにならざるを得ないと。そして、穴があけば税金投入ということになると思うんですよ。  預金保険機構というのはもともと、繰り返しこれは議論もあったことですけれども、預金者の保護ということを本来の性格として機構が持ってきたということだけれども、いろいろあるけれども、結局そういうものから大きく変えるということになるんじゃないですか。
  39. 山口公生

    政府委員山口公生君) 預金保険法考え方は、預金者の保護のいろいろな類型を機能として与えております。もちろん、最近しばしば行われております営業譲渡という形もあります。そのほかに、例えば合併の形で預金者を保護するという形式があります。  典型的な例を申し上げますと、健全な金融機関が現に存在し、そこにいわゆる破綻金融機関、これも債務超過ではないけれども資金繰りにもう行き詰まりそうだというところが吸収合併をされるという形でその預金者が結果的には保護されるという場合も資金援助ができます。例えば、不良債権を時価で買い取るということができるわけであります。そのほかに、今回の法改正の本則でお願いしております。その受け皿の健全な金融機関が新設の金融機関である場合ということは今まで法律上規定がありませんでしたが、そこにその破綻金融機関が――破綻金融機関という概念が債務超過というふうに思われると合併というのはできませんが、債務超過ではないけれども資金ショート等のおそれがあるというところ、それが合併するということを今回は本則で認めていただいた、それも預金者の保護のためです。  それからもう一つ、今回そういうものがない場合の特定合併という新設の、また新しい銀行に二つ以上の破綻金融機関が新設合併して、そこを受け皿とした形での預金者の保護を図るということで、預金者の保護を図るということについては考え方は変わりませんし、そのときになおかつ地域社会やシステミックリスクを起こさないということを我々としては最大限今考えていく必要があるということでございまして、預金保険機構考え方預金保険法考え方を変えるものではないというふうに思っております。
  40. 笠井亮

    ○笠井亮君 債務超過でなくてもいいということになりますと、そういう時点でいうと、いろいろ議論はあるでしょうけれども、まだやっていける、ペイオフもできるし、いわば預金者保護ができる段階でもとにかく大蔵省が判断してこれは危ないというふうになればできるということにもつながってくると思うんです。  結局、預金保険機構というのは預金者保護が一番の目的ということだと思うんですけれども、それはもう認めざるを得ない、当然そういうことでいろいろ説明されるわけですけれども、それに法改正をすることによっていろんなことを加えていく、こういう場合もやるしこういう場合もやるということでやっていくと、先ほどもやりとりがありましたけれども、不心得者というんですか、いいかげんな経営をしてもいいんだというような意味でのモラルハザードを生むことにもなるし、そして機構の収支も悪化して乱脈の責任もまたとらなくなるということで、結局金融システムの真の改革にも逆行することになるというふうに言わざるを得ないということを今伺いながら私は強く思ったわけであります。  時間がありますのでもう一つ午前で伺っておきたいんですけれども、完全に破綻したという場合については経営者もいなくなるけれども、新銀行をつくるという場合、少なくとも株主は残る。一般の株主は別として、銀行や大企業などの大株主の責任はどうなるのかということをきのう伺いましたら、答弁では基本的には自助努力なんだと、その上に最大限の株主責任についても、株主負担についてもそれは求めていくんだというふうにおっしゃったと私は受けとめているんですけれども、その最大限の株主負担というのはどういうことを具体的には考えていらっしゃるのか、伺いたいと思います。
  41. 山口公生

    政府委員山口公生君) 法律用語でございますので非常に誤解を受けやすいのでございますが、資金援助という言葉を広く法律で使っておりますが、この特定合併のときの資金援助というのは不良資産を時価で買い取るということでございます。簿価で買い取ればそれはもう損失のロスの穴埋めですから、時価で買い取るということであります。例えば、もう取れないとわかっているところはゼロの価値で買い取ります。そういったことでございますので、その時点でロスを穴埋めすることではありません。資金援助という法律概念ですから、ここは国民の皆さんに非常に誤解されやすいところですけれども、このケースにおいては単に資産を買い取るということです。  そうしますと、簿価と時価との差額というのはもちろん自分の銀行の含み益あるいは利益の積み上げ等、つまり株主の持ち物だと思っている部分にずっと食い込んでくるわけです。そういう形で株主としてはやはり最大限の損失を資本で充当するという意味で負担しなきゃいけません。これは債務超過ではないわけですから、株主の利益を全部放棄させるというわけにはまいらないわけです。しかし、そういった形で一挙に償却をしなきゃいけないということですから、その部分は株主は当然最大限の負担をされるということになるわけであります。したがって、株主の責任をあいまいにしたということにはならないというふうに思うわけであります。
  42. 笠井亮

    ○笠井亮君 今の問題について、一昨年の金融制度調査会の答申、ちょうど二年前ですけれども、十二月二十二日に出まして、そこで金融機関破綻処理のあり方の「基本考え方」ということで三つ前提条件というのがありますよね。「金融機関破綻処理においては預金保険が発動されることとなるが、預金保険の発動により保護されるべきは預金者、信用秩序であり、破綻金融機関経営者、株主・出資者、従業員ではない。従って、預金保険の発動に際しては、」、ア、イ、ウとありまして、アが「破綻金融機関は存続させないこと、」、イとして「経営者の退任及び民事・刑事上の厳格な責任追及が行われること、」、ウとして「株主・出資者の損失負担が行われること、」、これが前提条件となるというふうにはっきり書いてあるわけですけれども、その前提条件で言われている「株主・出資者の損失負担」というのは、今、局長が言われたような意味での責任の負担だということなんでしょうか。
  43. 山口公生

    政府委員山口公生君) 先ほど言いましたように、適正に資産の評価を行った上で今回の買い取りが行われるわけですので、その際発生する損失については資本で充当するものであります。したがって、適正な処理の結果として最大限の株主負担を求めるということになるわけであります。それは債務超過ではないということを前提とした話でございますので、当然そういうふうになります。しかし、株式会社は株主のものですから、積み上げている含み益、あるいは利益の積み上げているもの、そういうものは自分のものだということになっております。そういうのをずっと消していくわけです。そういう形で株主は当然そこは負担をせざるを得ないということになるわけでございます。  先生のおっしゃるのは、株主の持ち分をすべて放棄させろ、こういう意味でありますと、それは考えておらないわけであります。破綻のもう一つのタイプの債務超過になっているとき、当然全部株主の利益は放棄をしていただく、それは当然のことであります。
  44. 笠井亮

    ○笠井亮君 時間になりましたので、今の答弁を受けて私もちょっと言いたいことがあるんですけれども、午後に回してやらせていただきます。
  45. 河本英典

    河本英典君 先ほど申しましたように、ちょっときょうは変則的な順番でございますので、御理解いただきたいと思います。一巡しましてまたこちらの番が回ってきましたので、これから引き続いてやらせていただきたいと思います。  先ほどは短期金融市場の話の辺まで行ったわけでございますけれども、十一月二十四日と二十六日に大蔵大臣、それから日銀総裁が記者会見でいろいろなことをおっしゃっていただいた、これが金融システム安定の鎮静剤になったということなんですけれども、先ほどもちょっと言いましたように、この金融不安というのはやっておられる金融機関システムの中の話と、それから、取りつけ騒ぎというようなお話をさせていただいたんですけれども一般国民といいますか、預金者の方々から見る話と二つございます。  言うならば素人と玄人の世界でございまして、素人の世界といいますのは、先ほどもお話ししました破綻という言葉一つにしましても、破綻倒産は実は違うわけでありますけれども、何か同じように、同義語ではあるかもしれません、どちらかがどちらかを含むわけでございます。破綻倒産は違うわけですけれども、今、資金援助の法律用語についてもお話がございましたように、破綻というのは定義があるわけでございます。ついでにちょっと破綻というものの定義を言っていただけますか。
  46. 山口公生

    政府委員山口公生君) 預金の払い戻しの停止のおそれのあるもの、あるいは停止をしたもの、こういうのがいわゆる破綻金融機関というものの定義であります。往々にして、これまで債務超過に陥っているものの処理がずっと続きましたので、破綻というと債務超過状態のものを指すというふうに国民の皆さんはお感じだと思いますけれども、そうでないケースにおいても、債務超過でない場合においても、資金繰りが行き詰まりますと預金者に払い戻すお金がありません。それも破綻ということになるわけで、それがそういうおそれがあるという事態破綻金融機関という定義でございます。
  47. 河本英典

    河本英典君 ありがとうございます。  本当に言葉というのは非常にひとり歩きしまして、イメージというのがございまして、若干実際と違うということがございます。特に法律用語は難しいわけですから誤解が起こりがちでございます。  金融システムの安定ということと預金者保護というのが大きな柱になっておるわけでございますから一方ではシステム安定のためのアナウンスメントをしていただくのも大切なのでございますけれども、やっぱり一般預金者向けのメッセージというのも当局から送っていただくということは実は大切じゃないかなというふうに思うわけでございます。  この銀行はつぶれませんよというふうなことを言いますと危ないのかなというふうな逆の心理も働きますけれども、ある程度やわらかいといいますか、平たい言葉でしていただくことはこれからの金融システムの安定そのものについても、預金者保護のためにも、両方の目的のために非常に大事じゃないかなと。特に、情報化社会でこうしたマスメディアを通じていろんな言葉、ある一つ言葉が走るわけですけれども、いろんなイメージが膨らみましていろんなことが想像されて、悲観論に陥りやすい国民性でございますので悪くとって、とにかく出しておこうかということで先ほど言いました取りつけ騒ぎのようなことが起こり得る可能性があると。一たん起こると実は大変なことになるんじゃないかなというふうな気がいたします。そういったことをお願いしておきたいと思うわけでございます。  今、デマであるとかうわさであるとかそういったことのお話をさせていただいたわけでございますけれども、一方では、今日はディスクロージャーがある程度進んでいますから、そういった財務内容をもとに、あそこは危ないんだとか、いろんなうわさで、悪く言うと株式市場で投資家の相場操縦に使われるという可能性がありまして、下がると言いますと、あれは空売りというんですか、空売りして買い戻せば大もうけするわけですからそういったことも考えられるわけです。もしそういうことがあれば極めて大きな社会問題、経済問題というよりもこれはもう一つの、経済法には触れることは間違いないんですけれども、これはもう詐欺に近いものでございますから社会的にも大変大きな問題であるというふうに思うわけです。  こうしたことに対しまして、証券取引等監視委員会を初めとして当局も毅然とした態度で対応していただきたいなというふうに思うわけでございますが、こういった問題についてどういった認識を持ってどういった対応をされるのかということをお聞きしたいと思います。
  48. 堀田隆夫

    政府委員(堀田隆夫君) お答え申し上げます。  私どもは、日常的な監視と呼んでおりますけれども市場で日々行われる取引をウォッチしておりまして、不自然な動きがある場合あるいは特異な動きをする場合、取引の公正性を害すると疑われるような事例が認められる場合にはその銘柄につきまして、どの証券会社がどのぐらいの取り扱いをしているのか、あるいはその取扱証券会社から売買取引者、どういう顧客が注文を出してきているのか、あるいはその売買の、取引の動機がどういうものであるのか、あるいは過去の投資経験などと比べまして何か変わったところがないのかどうかというようなことをヒアリングいたします。マーケット等の情報も集めまして、突き合わせまして全体として事実関係を解明する等、対応しているということでございます。それで、仮に先生が御指摘になりましたような株価操縦のような犯則事件の端緒が出てくるということになりますれば犯則調査を実施する、検察への告発を目指して調査をするということになってくるわけでございます。  私どもそういった銘柄の監視というのは、先ほど申し上げましたように、日常的にやっております。私どもの立場上、具体的にどの銘柄について審査をしているということは控えさせていただきたいと思いますけれども先生指摘になりましたような最近の銀行株等の一部の銘柄が特異な値動きをしている、あるいは不自然な、不自然といいますか、かなり大幅な変動をしているということは十分承知をしておりまして、そういったことも念頭に置きまして、あるいは視野に入れまして先ほど申し上げましたような方針のもとに対応しているということでございます。
  49. 河本英典

    河本英典君 そういったことでやっていただいておるということはよくわかるわけですけれども、こういったことは一つの流れですので便乗する方もおられるわけです。それは実際は罪にならぬわけです。便乗といいますのは、そういった現象が起こった場合だれでも考える手口といいますか手法であるわけですから、そういった意味では監視している部分と、もとになった、そういったことをしかけた人は罪になるわけですけれども、便乗した人はこれは一つ経済行為だと言ってしまえば経済行為になるわけですから、その辺が非常に難しいわけです。  いずれにいたしましても、うわさは怖いということでございますので、やはり打ち消して、打ち消すことがまた逆に、先ほど言いましたが、促進することになるわけです。その辺、これから政府とか当局はそういった情報コントロールということも、先ほどからも申しておりますように、非常に微妙にやっていただかないと、特にお金といいますか欲の絡む話でございますので難しいなというふうにつくづく思うわけでございます。どうかよろしく問題は厳罰に処するように動いていただきたいなというふうに思うわけでございます。やっている本人もそれほど悪いという意識はないかもしれませんね。これは経済行為でやっているというふうな感じをみんな持っているかもしれませんけれども、本当によろしくお願いいたします。  次に、ほかのことを聞かせていただきます。  今回の預金保険法改正案日本版ビッグバンを進めて今後金融再編成が見込まれるわけですけれども、預金者の保護、金融システムの安定を図るに当たりまして金融機関破綻した場合の処理方法の多様化を図るものだということは、これはもう何度も聞いておるわけでございます。  この会期末に大急ぎでこの法案を成立させる必要性といいますか、緊急性を確認しておきたいと思うわけであります。今この法案を成立させる重要性、緊急性、必要性ということを改めてお伺いいたします。
  50. 山口公生

    政府委員山口公生君) 現行の預金保険法のスキームでは債務超過には陥っていないけれども多額の不良債権を抱え預金払い戻し停止に陥るおそれのある金融機関を円滑に、スムーズに処理することはなかなか難しい状況にあります。  このような金融機関が仮に資金ショートに陥った場合に、受け皿金融機関を見つけられない場合は窓口を閉鎖せざるを得ません。そうしますと、やがて債務超過に陥りまして、救済機関がそれでも見出せない場合には業務停止命令をかけて整理、清算をするということになってしまいます。この場合、最も影響をこうむるのは健全な取引先であります。地域の雇用にも影響があります。  その当該銀行だけの話ならそれで済むかもしれません。しかし、その地域に複数のそういった問題のあると言われる銀行が仮に存在しているような場合、あるいはそういったうわさが全国的にも飛び火するような場合ということもやはり考えませんと、先生おっしゃるように、金融というのは大変そういった心理に左右されるものであります。そうしますと、そういった現象を未然に防ぐということ、あるいはそういったことにベストに対応しておくということが今緊急に求められるんじゃないかと思うわけであります。  なお、この特定合併をあっせんして仮に銀行がそれを受けるということになりますと、債務超過に陥るまで放置しておった場合に比べますとはるかにコストは安く済みます。預金保険の財政上もその方がはるかにこれは少なくて済むというふうに思います。  ただ、これはあくまで当局からのあっせん行為で、つまり金融機関から手を挙げて、それでやってあげましょうというものじゃなくて、こっちから社会的な必要性をあっせんする行為でもって行うわけです。これはこういった社会的なコストをできるだけ小さくしようということでこの特例期間に限って厳格な制度的歯どめを設けて対応していこうと、その手法を与えていただきたいということでございます。
  51. 河本英典

    河本英典君 先ほどから少し話が重なって申しわけないんですけれども、この会期末で、特に年末で、ずっと一連金融機関破綻があり、それからいまだにまだ金融システムが不安定であるという状況の中で、そしてまた不況といいますか余り景気がよくないという中で、未然に防止するという意味でもこういったことを決めておくということは私は非常に重要だと思うわけでございます。  地域的に見ましても、この間この委員会でも北海道の先生がおられたので北海道拓殖銀行の話が出ておりました。預金者保護、それから金融システムの安定ということが二つの柱になっておりますけれども、先ほどから局長がおっしゃっておりますように、やはり地域経済における金融面での経済への影響というのは本当にはかり知れないものがあるというふうに思うわけでございます。  特に、中小企業中小企業というふうによく言われますけれども、言うならば幾つかの取引銀行があって一つ破綻すればまだそれなりの融通はできるわけですけれども、唯一の取引金融機関として仕事をされる方が本当につなぎ資金なり融資をお願いしようということで破綻した場合、さあどこへ行くかといったら一からやらにゃいかぬわけですからこれは実は大変なことになるわけで、そういった意味の企業の連鎖的な倒産といいますか、悪影響を与えるということは非常に重要だと思うわけでございます。おっしゃいますように、必要性と緊急性をやはりこの際よく強調しておかなきゃならないかなというふうな気がいたしております。  それから、その二本の柱である預金者の保護と金融システムの安定ということなんですけれども、この改正経営の悪化した金融機関同士資金援助を行う、悪い者同士の合併への資金援助を行うということは新しくできる銀行への救済策じゃないかというふうにちょっと悪く見た場合の言い方で先ほどからもその法的必要性がいろいろ言われておるわけでございますし、モラルハザード等で言われておるわけでございますけれども、これも傷は浅いうちにしておけば後の救済コストがさらに安くつくというお話でございます。  この点について、重なりますけれども大蔵省のお考えを聞かせていただきたいというふうに思います。
  52. 山口公生

    政府委員山口公生君) 私の説明の不足部分をちょっと強調してお話させていただきたいんですが、あっせんをやるのが前提条件であります。これは金融監督庁がそういう必要性を認めてあっせんをするということがなければそういった発動はないということをまず御理解いただきたいと。  それから、資金援助というものの概念が非常に誤解を受けますが、これはあくまで不良資産の時価での買い取りにすぎません。それも資金援助ではあります。ありますけれども、概念として資金の贈与ではありません。  そういった前提でお聞き賜りたいんですが、あっせんを受けた両者の金融機関は法的には消滅をいたします。そのものが残っているわけではありません。つまり、破綻金融機関がそのままそういったことでもって生き残るというものではありません。つまり、経営陣がそのまま生き残るというものではありません。少なくともそれは消滅した上で新しい銀行をつくります。それはがらっと一変しなければ預金者もイメージが変わらないわけですから、そこには思い切ったリストラあるいは経営陣の一新等が当然あるわけです。きちんとした経営体制の整備が必要になるわけです。今までバブルを生み出したような人が経営をやるということはできないわけであります。  そういった形で、厳格な制度的歯どめをつけて審査して、これは新しい銀行として預金者に安心を与えられるかということをきっちりと確認した上でそれを認めるわけであります。もちろん各金融機関は、あっせんですから、私は最後の最後まで頑張りますという銀行があっても、それは義務ではありませんので受ける義務はありません。しかし、その場合において私どもが心配しますのは、ずるずる悪いイメージのまま行くと、これは預金者のみならず、周りにも地域にも非常に迷惑をかけることになるのではないかというおそれがあるのであっせん行為をするわけでございます。  そうした意味で、金融機関の単なる救済じゃないかというふうにおっしゃいますけれども、私どもとしてはそういう地域経済のシステミック的なリスクを未然に防止するという公共的な観点からいろんな歯どめを設けて、しかも時限的にやらせていただきたいということでございます。  したがって、モラルハザードを起こしちゃいけないということは重々私どもも承知しておりますし、そういった運用をさせていただきたいというふうに思っているわけでございます。
  53. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 山口局長が補正的に完璧な答弁をしましたが、わかりにくいところがあると、こういうことで私から申し上げさせていただきます。  公共性、それは地域経済を安定する基本であります。さらに大前提は預金者保護の安心感であります。そして、全体に貢献するものという観点から公共性と申し上げさせていただきました。結果として、債務超過ではありませんが破綻状態にある銀行が新しく生まれ変わることによりまして健全な銀行になるわけであります。結果は救済されたんだと、こういうことになっても、そのことはそれを目的としているわけでございませんから、そうではなく、生まれ変わり新しい誕生と、こういうことの中で地域のために安心をして御利用いただく、また金融機関の仕事を地域振興のため、またお得意さんの、顧客の安心のために取り組まさせていただくと。  世の中には裏と表がございます。こちらの方は表に対して、委員言われますとおり、預金者保護でありイコール金融システムの安定という大義名分の中でスタートをさせていただく。大蔵大臣、今度その部分は金融監督庁がスタートいたしますと監督庁の権限になりますが、責任を持ってこのことに取り組んで、金融システムの安定イコール地域の安定、顧客の安心、連鎖反応を起こすことのない歯どめをしっかりとつくり上げさせていただくことによって日本金融界の安心感を内外に示していくということにもなるわけであると考えます。
  54. 河本英典

    河本英典君 今の局長大臣お話は裏と表というふうにまことにきっちり説明していただいているわけでございますけれども、そのことがこの法案成立に当たっての本当のねらいといいますか趣旨であるということをきっちり理解せにゃいかぬな、また知っていただかなきゃいかぬなというふうに思うわけでございます。救済は結果であると、新しい金融機関に生まれ変わって結果として救済するんだということでございますけれども、本当にそうであってほしいと思うわけでございます。  その救済の話で申しわけないんですけれども、この法案が成立した場合、直ちに具体的な適用の予定というのがあるのかどうかというのをお聞きしたいわけです。  といいますのは、これは福徳銀行となにわ銀行の救済のための法案ではないかという非常に悪いうがった見方があるわけでございますけれども、この点もきっちりこの際大蔵省にお聞きして説明をしていただいておいた方がいいんじゃないかというふうに思いますので、お聞きしたいと思います。
  55. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今回御審議をお願いしておりますこの預金保険法改正に関連しまして、御指摘の両行が十月九日に合併を発表しているところでございますけれども、両行は当面自主的な単純合併で合意しております。今回の改正法案に基づく合併を行うか否かについては、あくまでも法律が成立した段階における検討事項であることを留保した上で発表しております。  改正法に基づき合併を行うには、先ほど御説明したとおり、当局からのあっせんがまず必要であります。当局のあっせんは地域経済に重大な影響が及ぶおそれがあるという公共的な観点から行われるものでありまして、また破綻金融機関には厳格な歯どめ措置がとられるものであります。  したがいまして、今の時点で特定行のことを予定しているということではありません。あくまで御審議を賜り成立させていただいた後、また御審議されたいろいろな問題点等をお聞かせいただきますので、それを踏まえた上で改めていろいろな判断をして適切に対応するというものでございます。
  56. 河本英典

    河本英典君 そういったことできっちり理解しておかなきゃいかぬなというふうに思うわけでございますけれども、今回の法改正は言うならば手法をちょっと変えるところに改正のポイントがあるわけです。  次に、財源論といいますか、裏打ちのお金があるかないかという話が先ほども少し出ておりました。恐らく次の改正でまたそういったことを考えていかにゃいかぬかなという気もいたしますけれども、現在の預金保険の財源はどのような状況にあるかということを伺っておきたいと思うわけでございます。  今回の制度改正で対象となる金融機関が増加して預金保険の財源に支障を来すようなことになるのではないかというふうに心配しておるわけでございますけれども、その辺はいかがでしょうか。
  57. 山口公生

    政府委員山口公生君) 先ほど繰り返しましたように、この法案自身が財源の問題として負担をふやすものではありません。むしろ処理コストを縮減できるのではないかというふうに考えているわけでございますけれども、今後の預金保険の財源という問題をお尋ねでございますので今回の法案からは少し離れて一般論としてお話し申し上げますと、しばしば申し上げておりますように、二・七兆円を予定してとっておりますが、一・四兆円は既に使っておると。それから、残り一・三兆円ですが、大型の破綻等が現に起きておりまして、その処理がまだ待っている、どれくらいの規模になるかわかりません、なおかつ今後どういうことが起きるかというのもなかなかわからないという状態であります。  だから、まず保険料の問題があります。それは十年度末までに足りなくなるという見込みがあるときには検討しましょうというふうになっておりますので、まずそういったことをやりつつ、また国民の皆様が財源がなくなるんじゃないかという御不安をお持ちにならぬように対処していくということが今私どもに課された役割かなというふうに思っているわけでございます。幾らかかって幾ら足りないから幾らというふうに明確に言える性格のものではございませんので、ややそういったあいまいな答弁にならざるを得ないのでございますけれども、そういった状況であります。  ただ、一番大切なことはなるべく破綻してもらいたくないということなんです。結局、各金融機関が頑張って、破綻あるいは債務超過状態に陥る前に努力をしてやっていただきたいということなんです。それが社会的なコストも一番安く済みます。  一般の議論として、預金者保護が非常に大切だと、それはそのとおりです。預金者保護以外のことは一切考えなくてもいいという極論がたまにあります。しかし、そうした場合には先ほどるる申し上げた地域経済の問題あるいは雇用の問題、金融不安の蔓延の問題、国際的に迷惑をかける問題、これは社会的なコストは無限に広がっていきます。したがって、まずはそういった自助努力を徹底してやってもらうということと同時に、私ども行政としてはできるだけの手を尽くすということによって社会的な広い意味でのコストを最小限にするということが今私どもに課された責務ではないかというふうに思うわけでございます。
  58. 石川弘

    委員長石川弘君) 速記をとめてください。    〔速記中止
  59. 石川弘

    委員長石川弘君) 速記を起こしてください。  暫時休憩いたします。    午前十時四十八分休憩      ―――――・―――――    午後二時十分開会
  60. 石川弘

    委員長石川弘君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  預金保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。  それでは、ただいまから本案の審査のため、参考人の方々から御意見を承ることといたします。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ、本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。  参考人の方々から忌憚のない御意見を承りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  本日の議事の進め方でございますが、まず、西崎参考人紺谷参考人の順序で、お一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員質疑にお答えを願いたいと存じます。  また、御発言は着席のままで結構でございますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきいただきたいと思います。  それでは、まず西崎参考人からお願いをいたします。西崎参考人
  61. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) 西崎でございます。  きょう、預金保険法改正という信用秩序維持の根幹にかかわる重要法案審議に際しまして、参考人として当委員会で意見を述べる機会を与えられまして、まことに光栄に存じております。  意見を述べる前に、実は私がどういう立場で一体参考人に出ているのかという若干の説明をお許しいただきたいと思います。  私は、共同通信社の経済記者として昭和三十年代の初めから主として金融、財政を取材しておりまして、現役記者を離れてからも国際金融、国際経済にずっとタッチしておりまして、同時に実はこの二十年間、金融制度調査会の委員としまして金融制度にかかわってまいりました。この間、証券化作業部会長、ディスクロージャー作業部会長、あるいは早期是正措置検討会の座長として個別の政策に参画いたしまして、また金融三法制定の基礎になりました金融システム安定化対策、また日本版ビッグバン日銀改正などの論議にも深くかかわってまいりました。私は、ですからいわゆる金融の専門家では全くないんですが、現在もジャーナリストであると同時に現在の金融制度責任を共有している立場にありまして、こういった立場から意見を述べさせていただきたいと思います。  まず、最近の金融不安、金融危機についてちょっと一言述べさせていただきたいと思います。  十一月に発生しました北海道拓殖銀行、山二証券など大手金融機関を頂点とした金融破綻、この嵐は政府日銀対応によって現在小康状態に入っておりますけれども、根本的な不安定要因は解消されておりませんし、楽観を許されない状況だと思います。  今、一番重要なのは、第一は預金者、投資家の信頼をいかに回復し金融秩序の安定を図るか、そのためには口先だけではなく信頼の裏づけとなる具体的な安定化政策を早急に整備することが重要であると思います。  現在、公的資金導入拡大による破綻対策の強化、それから経済の根幹にかかわる金融機能の維持強化策などが与党・政府間で検討されておりますけれども、これは大変歓迎すべきことでありますし、早急な具体化を強く要請いたしますが、こういった抜本策についての必要な法的措置は来年の通常国会になるのだろうと思います。しかし、今、明確な方針を示すことによって金融市場の安定が図られると思います。  第二は、こういった公的資金導入というカンフル剤だけではなくて、病状の必要以上の悪化、あるいはウイルス菌の伝染による金融経済の混乱を防ぐためのきめ細かい多角的な対策を準備して、可能なものから即時実施していくことが必要だと思います。  本日、当委員会審議されています預金保険法改正案は、まさにその重要な対策の一環となるものと考えております。  世間には、経営悪化金融機関をどんどん破綻させ、預金保険機構が公的資金の裏づけによって預金者を救済すればよいし、それが金融システム安定に最も効果的であるという議論もありますけれども、私はこれは経済の実体を無視しているものと言わざるを得ません。確かに問題金融機関を整理すればすっきりするだろうと思いますが、取引先企業は一体どうなるのか。例えば北拓の破綻の場合、北洋銀行という営業譲渡先があったからよかったわけですが、しかしその場合でも、これからのニューマネーの供給を一体どうするかとか、今後の取引について中小企業はいろんな難問を抱えていますし、優良企業はいいですけれども経営難を抱える中小企業は恐らく極めて不安な状況だと思います。いわんや営業譲渡先のない破綻金融機関取引先は路頭にほうり出され、状況によっては地域経済の混乱も十分に予想されると思います。破綻に伴うこうした社会的コストを十分に認識し、これを最小限にしていく必要が現実の立場、特に為政者の立場としては極めて重要だと思います。  また、破綻に伴う資金コストについても同様でありまして、例えば兵庫銀行、阪和銀行の場合を見ますと、実際の不良債権の額は公表不良債権を数倍も上回っているわけです。これは公表基準が限定的であること、不良債権を隠していた、こういったことも原因だと思いますが、金融機関破綻すると系列企業、取引先企業にも破綻拡大し、不良債権があっという間に膨張するのが通例であります。また、回収できる債権も回収不能状況に陥ってロスになってしまうと。預金は保証されているとはいっても、預金者の多くは払い戻しを要求し、預金保険機構の預金支払い額あるいは不良債権の買い取り額は膨張することになるわけです。  破綻が不可避でもうどうにもならない金融機関を温存することは逆に傷を深くして破綻コストが高くつくので早期に破綻させるべきでしょうが、立ち直り可能な金融機関は早期に再建させ破綻を防いだ方が社会コスト、資金コストが安くて済むという、これが重要な一つのポイントであると思います。  現行の預金保険法は、破綻金融機関処理に限定し、債務超過に陥っていないが多額の不良債権を抱えて資金繰りが窮迫している金融機関を実は適切に処理する方策を持っていないわけです。経営不安のうわさが立ちますと、預金の払い戻しが殺到し、資金がショートし、今回のように短期資金市場からも締め出されて、受け皿金融機関がないところはあっという間に窓口閉鎖を余儀なくされ、ついには破綻に陥るケースというのが出てきているわけです。  今回の改正案は、経営が悪化し預金の払い戻しに支障が生ずるおそれのある金融機関が複数存在する場合、またこれら金融機関がその地域で果たす金融機能を維持することが預金者や取引先など地域経済のために不可欠であると認められる場合、預金保険機構不良債権の買い取りなどを行ってこれら金融機関同士が新設合併し、健全な金融機関が新しく設立されることを可能とする、そういう内容であります。  また、改正案経営に問題のない金融機関経営悪化銀行合併し新銀行をつくる場合も対象にしております。これは現行法の発動対象を拡大することで金融再編の選択肢をふやすことになるという意味があります。  この改正案に対して、既存金融機関の延命策に利用されるといったモラルハザードを助長する、あるいは監督当局の懇意的な裁量の余地が大きくなるといった批判もあるわけです。しかし、既存の金融機関は法的に消滅し、新しい経営者のもと新しい健全な金融機関が設立されるということ、また手続については当面大蔵大臣、来年六月以降は金融監督庁長官が地域金融維持など公共的観点から必要があると認定した場合に限定し、また当事者の申請は認めず、大臣、長官があっせんした場合のみに限り、さらに預金保険機構の援助の最終決定は民間金融機関の代表から成る預金保険機構運営委員会で行う、こういった歯どめが設けられているわけであります。同時にまた、新設銀行は厳しいリストラなと思い切った経営健全化が必要となるわけですが、経営を健全化し、適切な運営を確保するための計画を大蔵大臣または監督庁長官の承認事項としている点、さらにこうした改正金融が正常化しペイオフに移行する二〇〇一年四月までの臨時措置としている点も評価できます。  繰り返しますと、改正案は、信用不安の連鎖的波及による金融システムの混乱を未然に防止し、中小企業を中心とする地域取引先企業の経営危機など地域経済の混乱を防ぎ、さらに金融機関不良債権処理を促進して金融制度安定化に資する、こういった点で極めて有意義であり、私は賛成いたします。この国会でぜひともこの改正法案を成立させ、早急に施行されることを強く要請いたします。  とりあえず、預金保険機構改正案についての私の意見を申し述べましたが、金融安定化のためには多くの課題があるわけでして、こういった問題について必要があれば質疑の中で意見を述べさせていただきたいと思います。  以上です。
  62. 石川弘

    委員長石川弘君) ありがとうございました。  次に、紺谷参考人にお願いいたします。紺谷参考人
  63. 紺谷典子

    参考人紺谷典子君) 日本証券経済研究所の紺谷でございます。よろしくお願いいたします。  私は、この預金保険法改正というのは基本的には賛成ではありません。ですけれども、今の状況ではいたし方なしと思っております。どうしてかと申しますと、日本金融不安の現状、不況の現状というのが余りにも緊急を要しているからなんです。  金融というのは、人間の体に例えれば心臓みたいなものです。一般の企業とか家計から預金としてお金を集めて、それを必要とする事業主、企業とか、あるいは住宅ローンとして流していく、借りた方たちがまた預金をし、それをまた貸してというようにお金をぐるぐる回転させる役割を持っているのが銀行ですね。銀行という名前がついておりませんでも、信用金庫、信用組合も同一でございます。そういうところが貸した先で資金が焦げついて返ってこないということが起きた、その結果として人間の体に例えれば血液が十分に回らない、飛行機でいえば片肺飛行みたいなそういう状況になってしまっているわけです。それが余りにも長引きましたために、どんどん状況が悪くなっている、病巣が深く大きくなっているという状況を生んでいるわけです。  そういうふうに不良債権問題が一向に片づいていないにもかかわらず、増税とかあるいは特別減税の廃止、あるいは社会保険料の値上げ、公共事業の削減ということを政府はお決めになりまして、それは言ってみればまだ病み上がりでもない、病巣を抱えたまま何とか病気をあしらい、歩き始めた病人の上に何だ歩けるのではないかと言って大きな荷物を四つも一遍にしょわせたに等しいんですね。ですから、経済は完全にへたり込んでしまったというのがこの春以降でございます。  そこにアジアの金融不安、通貨不安が起きたということでございまして、日本はアジア地域に巨額なお金を融資しておりますし、それから重要な輸出先の一つでもありましたから、不況と不良債権と両方の事態を悪化させてしまったわけです。言ってみれば、何とか病巣を抱えながら歩き始めた病人に大きな荷物を背負わせた上に、頭から水をぶっかけるような、そういう事態が生じたというのが今回の状況ではないかと思っているわけでございます。  ですから、この十一月からほんの一月余りの間にばたばたと四つも金融機関破綻をする。三洋証券がだめになった。北海道拓殖銀行破綻した。山一まで来て、さらに徳陽シティということが起きたわけなんですけれども、これは非常に危機的な状況でありまして、どういうふうに危機的かと申しますと、従来でしたらば十分に営業が可能であったかもしれない金融機関資金繰りが苦しくてこの場をしのげなくてつぶれ始めているということでございます。山一の破綻の後に生じた銀行株の暴落というのはその危険性を非常に大きく物語っていたわけでございまして、その危機は一向に去っていないと思うんですね。  どうしてかと申しますと、今幾らか株価にしろ何にしろ落ちついているというのは、政府がいろんな意味での不良債権処理を進めて金融不安を静めるという政策をいろんな形でおとりになっていらっしゃる、それが確定するまでの間少し様子を見ようという形で静かになっているだけでございまして、危機は一向に去っていないんだと思うわけです。  どういう意味日本は今危機かと申しますと、金融不安とか不況の危機というのがただならないと私が考えますのは二つの理由があります。  一つは、今、日本経済が置かれている現状というのが家計あるいは企業あるいは金融機関が自己防衛のために自己責任でいろいろ努力すればするほどマクロ経済的に全体が一層悪化するという状況にあるわけです。家計が節約すれば消費が減ってしまう。あるいは企業が、うちの商品は売れているんだから工場をつくってもいいんだけれども、景気の先行きが不安だといって投資を控える。あるいは金融機関は今後早期是正措置ということで数字が悪かったらば業務停止するよ、あるいは自動的に破綻処理に入るよという、そういうおっかないことが決まってしまったわけですからほとんどおしりに火がついてしまったような状況でございまして、それは何とか数字をよくしたいと思うわけです。この先不良債権がどれほどふえるかわからないと思えば、貸し出しを渋っておこうということを考えるわけですね。そうしないと、持っている自己資本と資産の比率というのが処理に入られる比率を下回ってくるという可能性があるわけです。  ですから、今非常に深刻なのは、先ほど西崎参考人もおっしゃいましたように、中小企業に対する貸し渋りというのが起きていて、それがさらに景気を悪化させている、非常に困った問題が起きているんですね。大丈夫な企業が資金繰りのためにどんどんつぶれ始めているということが起きているわけです。  今、日本現状というのは、先ほど申し上げましたように、一人一人が自己責任で防衛努力をすればするほど全体が悪くなる、景気が悪化して株価が下がった、株価が悪くなることによって金融機関経営がさらに悪くなって金融不安がいや増す、貸し渋りが景気をさらに悪化させる、それによって株価が下がって株価の下落が金融機関の損失をさらに大きくするという、そういう悪循環が生じているわけです。一人一人の努力経済を一層悪化させるという形の悪循環が生じてしまっているわけですから、ここは政策の出番なので何らかの形で歯どめをかけないととても困った状態が生じる。  これだけ円安が進んでいるにもかかわらず物価が下落しているということは、円安だったらば通常は輸入物価が上がりますので物価上昇に結びつくわけです。それが卸売物価も消費者物価も低落傾向をたどっている、これはただならない事態なんですね。つまり、経済全体がデフレ経済、縮小均衡に向かっているということでございます。  それからもう一つ理由は、日本発の金融不安が今世界じゅうで懸念されているということでございます。  それは、言ってみれば日本はこんなに病んでいる状態でもあるにもかかわらず資産を大量に持っていて、よその国にたくさんお金を貸している状態である、日本のお金が世界経済を支えているという側面がありまして、日本経済がどんどん悪くなってくれば金融機関を中心に諸外国から資金を引き揚げ始めるということが起きるわけでございます。それがさらに海外の経済状態を悪化させて金融不安をいや増すということでございますから、これはもし本当にそういうことが起きてしまいますと、第二次世界大戦以来の世界への大迷惑ということでございまして、日本経済政策のいかんによっては世界に甚大な被害を及ぼすかもしれないというような、ほとんどがけっ縁といっていいところに日本は今いると思うわけですね。ですから、そういう二つの点で日本経済自体が大きなスパイラル、悪循環に入っている。  もう一つは、日本発の金融不安、大不況が世界に波及するかもしれないというような状態まで来ている、これを何としてでも食いとめなかったらば大変なことになるということでございます。  ですから、今回の預金保険法改正につきましては、破綻した金融機関同士をどうして助けるのか、そのためになぜ公的に資金支援を行うのかというような疑念というのは所々方々から生じておりますけれども、通常の状態ではないということです。  それから、今起きていることは、もしかしたらこんな状態じゃなければ生き長らえたかもしれない金融機関をさえも死なせてしまう状況にあるということなんです。そのことによって生じる損失というのは甚大なものがございまして、山一の破綻でも何でもそうですけれども一つの組織が壊れると、仮に失業者を出さずにみんな引き取ってもらえたといたしましても、組織であることによって生まれていた付加価値というのは消えてしまうわけでございます。  それから、さまざまな摩擦コストが生じます。山一の破綻で大きく株価が下がりましたのは、あれがどんなに大きなショックを国民に与えたかということなんです。山一までつぶれるのか、山一というのは世界に名前がとどろいた大証券会社でございます。そこまでついに来たのかということで株価が大暴落したのでございますけれども、あれによって一般国民の気分あるいは金融市場の気分というのは非常に大きく変わってしまいました。つまり、私のところなんかに取材に来る方々が何をテーマにしているかというと、もしもうちのお父さんの会社がつぶれたらどうしたらいいのかとか、そういう話になっちゃったんです。退職金は出るのか出ないのかとか、山一の人たちは失業してその後本当に就職先が見つかるのかどうかとか、自分の身に引き比べて非常な不安感を持ってしまったということでございます。  それから、世界に対しても、世界に名がとどろいて世界じゅうに三十もの海外現法を持っている大証券会社がつぶれたということは、日本がいかに危機的な状況かということを世界に知らしめてしまいました。  しかも、あのときの記者会見というのが非常に情けないものでございまして、つまり山一の経営責任を追及して、それに終始したということでございます。本来あの記者会見は、証券局長の記者会見でございますけれども世界じゅうが注目した、日本じゅうが注目した記者会見でございますから、不安を静める、責任ある対処をどうとるかということを示すための記者会見であったはずでございます。そうであるにもかかわらず責任逃れに終始してしまった。知らなかった、初めて聞いたとおっしゃる。それは、知らなかったと言うことによって責任逃れをしようという姿勢がありありとしたものでございまして、あれをきっかけに大蔵省に対する世界信頼というのは大きく大きく損なわれたであろうと思います。  ですから、大蔵省金融行政をつかさどっている限りは日本金融不安に対する懸念というのはなかなか鎮静しないのではないだろうかと。そのためにも政治主導できちっとやっていかなくてはいけない状況が生じたということでございます。つまり、あの記者会見は世界じゅうの不安を一層強めた記者会見であったわけです。日本の国際信用も大きく損ないました。それを通して日本経済交渉力というものも国際交渉力というものも大きく損なった記者会見であったろうと思います。  ですから、そういう点からかんがみまして、この預金保険法改正について、どうしても一つクレームをつけたいことがあるわけでございます。  それは、大蔵大臣の裁量によってどの金融機関資金支援をするかということを決めることになっている。大蔵大臣のあっせんを受けた金融機関にのみ資金支援を行うという形になっている。大蔵大臣がお決めになるということは、実質問題として大蔵省がお決めになるということですね。この大きな問題を引き起こした監督官庁が何ら責任を負うことなくしかも今まで非常に無責任にどんどん先送りしてきて今日の事態を招いたところにその判断をゆだねるということは到底容認し得ないことでございまして、その辺に関しては、例えば第三機関とか、もう少し別の御処理があってしかるべきと考えております。  その点を除けば、非常に緊急事態でございますから、破綻する金融機関に手を差し伸べて何とか金融不安を静める、ありとあらゆる考えられ得るすべての方法をとってでもこの金融不安から脱しなくてはいけないような危機的状況日本はあると思います。  重ねて申し上げますけれども、今日の事態を招きましたのは金融行政の責任者であるところの大蔵省だと思うわけです。そこの裁量権をさらに拡大するというような措置というのが金融不安を静める方向に働くとは到底思えないわけでございまして、その点の再考だけをお願いしたいと思います。
  64. 石川弘

    委員長石川弘君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  65. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 西崎参考人紺谷参考人、大変御苦労さまでございます。  紺谷参考人には、この間は参議院のシンポジウムにも御参加願いまして、ありがとうございました。  西崎参考人は、金融制度調査会で大変お世話になっておりまして、ありがとうございます。  そこで、お二人の意見をお伺いしたんですけれども西崎参考人は、これは金融政策の重要な一環をなすものである、早期の採択を希望すると、こういうお話でございました。  紺谷先生は、どうもこんなみみっちいことまでやるのかねというふうな気はするけれどもやむを得ないんじゃないかと、こういう御意見であったように承りました。  私ども、この問題を議論しており、かつ今までこの大蔵委員会金融問題を中心に相当の議論をしてまいりました。そのような中でいろいろこの問題も議論しているわけですけれども、やっぱり一つ制度というのはいいところもあれば悪いところもある、一つを助けるとどうもこっちが助からないとか、いろいろな問題が出てくるわけですね。その中の一つとして、先ほどちょっとお触れいただきましたけれども、預金者保護ということが正面にもちろん出ているわけですけれども、片方でこれは銀行救済じゃないかというような意見も出ているわけでございます。  そこら辺について両参考人の御意見を承れれば幸いだと思います。
  66. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) 最初の御説明でも触れましたけれども、つまり今度の改正案は、破綻金融機関じゃなくて、経営内容が悪化し不良債権が巨大化し預金の支払いにも将来的に支障を生ずるおそれのある金融機関経営悪化銀行を対象としているものであるということです。それと同時に、こういった経営悪化銀行を延命させるものではなくて、この改正案による特定合併といいますか、既存金融機関はすべて法的に消滅させて、経営者ももちろん交代し、新しい経営者のもとで新しい金融機関をつくるということです。したがって、経営悪化に至った金融機関としてのもちろんいろんな経営上の責任もあるわけですけれども、それはその金融機関の消滅、経営者の交代、これは後でまた責任問題をどうするかいろいろあるかと思いますが、法的な問題があればこれはもちろん問われることになるでしょうけれども、援助の対象になるものは新しい金融機関であって既存の経営悪化した金融機関ではないということです。  それからもう一つは、既存の金融機関がつぶれてなくなっても行員はみんな残っていくわけです、もちろんリストラが必要になりますけれども。それから、これまでの取引企業を抱え、地域でも一定の役割を維持する、そのために形を変えて。つまり、実質的な温存になるんじゃないか、これは非常にモラルハザードを招きかねないという問題が一つあると思うんです。  しかし、これは私が見るところ、今度の改正案でかなり厳しい歯どめがあって、まず本当にその地域金融機能の維持が必要かどうか、つまりそれに混乱を起こす危険性があるのかどうか、そういう公共的な視点でこれを判断し、しかも当事者が申請してくるというとこれはもう身がわり温存なんということになりますので当事者の申請は認めず、大蔵大臣あるいは金融監督庁長官があっせんしたものに限ると。それから、さっきも言いましたけれども、新設銀行経営計画については厳しいチェックをし、承認制のもとに置き、最終的には預金保険機構運営委員会で決めるという幾つかの歯どめがあるわけです。したがって、経営悪化金融機関の救済につながるということではないわけでして、救済すべきは預金者と地域取引先と地域金融機能地域経済であるというふうに私は思います。  それについて、大蔵大臣の裁量、監督庁長官の裁量は問題だという紺谷さんの御指摘があったんですが、これは今の御質問の範囲外ですから必要があったらまた後ほど。
  67. 紺谷典子

    参考人紺谷典子君) 私は、繰り返しになりますけれども、やはり基本的な方向としては正しいんだけれども、運用の問題というのがあるのではないのかなと思っております。  どうしてかと申しますと、その公共的目的にかんがみ大蔵大臣が御判断なさってあっせんに入る、それはそのとおりでございましょう。ですけれども、これまで大蔵省がなさってきた処理の仕方を見ますと、非常にバランスが悪いわけです。例えば、木津信組、コスモ信組という二信組を初めとして破綻が続いたわけですけれども、阪和銀行、兵庫銀行といった大蔵省御出身の方が頭取を務められる銀行があった。それ以外の金融機関はすべて経営責任者は私財の提供を求められ、場合によっては刑事責任まで追及されているわけでございます。だけれども、阪和銀行、兵庫銀行については一切その動きがないんですね。  先日、山一証券に関しまして簿外債務があった、巨額であった。だからそういう不正なことをやるようなところにはもしかしたらば自主廃業も許さないかもしれない、そういう御議論を大蔵省はなさっているわけでございますね。ですけれども、簿外債務という特別な言葉が使われておりますけれども、普通の用語で言えば粉飾決算でございます。粉飾決算の一種にしかすぎないんですね。そうだとしたらば、今、粉飾決算をしていない銀行が幾つあるだろうか、金融機関が幾つあるだろうかということでございます。数々の粉飾決算をした銀行があり、しかも大蔵省御指導でそれをなさってきたということでございます。  そして、その中でも兵庫銀行という大蔵省銀行局長が頭取をお務めになった銀行の粉飾決算が一番甚たしかったわけでございます。破綻してみましたらば、公表不良債権の何と二十五倍もあった。同じく大蔵省御出身の方が頭取を務められた阪和銀行については公表値の四倍の不良債権があったという状況があるにもかかわらず、大蔵省はこれを告発なさっていないんですね、粉飾決算について。それどころか、一般からありました告発について検察は行政指導のもとに行われたからいいんだということで告発を受け入れなかったわけでございます。それは極めてバランスを欠いたやり方でございまして、どうして阪和銀行と兵庫銀行だけは私財の提供もしなくていいのか、そういう疑念があるわけでございます。  それに関しまして、大蔵省銀行局のさる高官がこういう説明をなさっていました。信用組合とか農協、組合方式の金融機関というのは理事長が無限責任である、ところが銀行は株式会社なんだから有限責任なんだという御説明なんですね。それをそのままマスコミの皆さん、新聞もお書きになったりした。  だけれども、これはおかしな説明なのでございます。どうしてか。確かに農協とか信用組合の理事の皆さんというのは無限責任でございます。同様に、株式会社である銀行の役員、監査役の皆さんも無限責任でございます。常識的に考えましても、仲間内金融であるところの組合方式の金融機関よりも広く一般から預金や株式で資金調達をしております銀行の方が社会的責任経営責任が重いのは当然のことでございまして、信用組合方式の金融機関は無限責任であるけれども株式会社はそうではないというのは、もうほとんどうそというか、一〇〇%うその世界でございまして、株式会社で有限なのは株主なんですね。株主は出資した資金限りの責任を負えばよろしいわけでございまして、それを言うなら組合方式に関しましても出資者は出資金限りの責任を負えばいい。それをそういう世の中を欺くような説明を平気でなさるということを大蔵省は繰り返していらっしゃったわけです。どこに公正な基準というのがあるのかと常々私は疑問に思ってきたわけでございます。  住専問題のときにもその議論がされたわけですけれども、住専問題につきましても農協の貯蓄を救うために税金を投入するのだという御説明があった。ところが、つぶれたのは住専でありまして、農協じゃないんですね。では、住専を経営なさっていたのはどなたかといえば、大蔵省から天下りなさった会長さん、社長さんがほとんどであった。経営責任者、つまり役員の皆さんというのは母体行からいらっしゃった方たちであった。農協は経営に全く関与していないんですね。お金を貸しただけだったんです。だとしたらば、税金を使うような事態を招いたのは住専ではないだろうか。住専を経営していた銀行ではないだろうか。銀行の監督官庁はどこだろうか、大蔵省であるということです。のみならず、大蔵省からの天下りの方が住専の会長、社長をお務めになっていたという経緯があるわけですね。  そういう非常にバランスの悪い裁定、御査定をなさってきた官庁に公正な判断がおできになるとは到底信じられないんですね。ですから、私は大蔵省が今後大蔵省の裁定によってどこの金融機関を救うか救わないかということをお決めになるというのはどう考えてもおかしいのではないのかなと思っております。
  68. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) 今、裁量の問題が紺谷さんからも出て、改正案の中のやはり重要な手続の一部をなしているので簡単にちょっと私の意見を言わせていただきたいのです。  確かに大蔵省金融行政、これが幾つか過ちを犯してきた、今日の事態責任を持つということはこれはもうはっきりしている。しかし、これは大蔵省だけの責任ではなくて、例えば私の立場でいくと金融制度調査会、これは必ずしもチェック機関とは言えないんですが、金融制度に関する一つの諮問機関を持っているわけですから、この責任もある。また、それとずっと共存してきた金融界の責任もあるし、経済界責任もある。あるいはこういった行政府を監視監督すべき政治、ここにももちろん責任があるし、いろんなところで責任があると思うんです。  ただ、大蔵省がこれまで過ちを犯してきたから大蔵大臣の裁量に任せることは認められない、もう大蔵大臣は一切下がれという紺谷さんのお気持ちはわかるんですけれども、これは国民に奉仕すべき行政機構の長、閣僚、しかもこれは議院内閣制で選挙されて、これを一切信頼できない、だから外せというのは、細かく言えば私も意見を言いたいんですが、これは私は反対であると。  なおかつ、来年六月に金融監督庁が発足すれば、これは大蔵省から分離された形で、しかもその長官人事はだれがなるか、総理の直属の機関としてこれはワークしていくわけです。もちろん、金融監督庁には大蔵省からかなりのスタッフが移るわけですけれども、では大蔵省と名のつくものは一切この際排除せよというのは、言ってみると監督庁の足を折りますようなもので、足を切るようなもので、大蔵大臣が裁量するという期間は非常に短いわけですから、これは私は随分変わっていくと思います。  いずれにしても、どういう判断でその経営悪化金融機関、先ほどこれを私は破綻金融機関と区別したんですが、実質的に債務超過ではないけれども預金の払い戻しが不可能になるという実質破綻金融機関と見ていいと思うんですが、どういう判断でそれを選んだか、あっせんしたかというその判断内容を明確にディスクローズし、公的資金を使うわけですから、その地域はもちろん国民の前あるいは国会にも明らかにすべきだと思います。
  69. 紺谷典子

    参考人紺谷典子君) 私は金融監督庁というのが独立機関とは到底考えられないんですね。現に大蔵省別館に入るわけです。それから、検査をなさる職員の九割が大蔵省からいらっしゃるということでございまして、そういうことで本当に独立の機関なのかということに強い強い疑問を持っております。  私は、大蔵大臣を初め大蔵省を一切信じるなということではなくて、これまでのやり方は信じられないから何らかの御処置をおとりいただきたいと申し上げているだけでございまして、ですからそういう意味ではこれまでの経緯をすべて明らかにしていただきたい。どういう判断でそういう措置を一つ一つとったのかということをきちっと明白にしていただきたい。なぜ告発しなかったのか、告発義務を怠ったのではないかということまで含めましてすべてを明らかにしていただきたいと思うわけです。もしそのために必要とあれば、国会の中に特別委員会をおつくりいただいて、この金融不安問題に関してこれまでの行政の見直しについてすべての総括をなさっていただくということは重要ではないかなと思っております。  それから、最初の意見陳述のときに第三機関のような何らかの客観的な基準を導入することが必要であると申し上げたわけでございまして、それは申しわけないんですけれども現状大蔵省信頼できない、ですから大蔵省の立て直しといいますか、金融監督庁がきちんと信頼できる機構であると我々が考えられるような状態になるまでは第三機関にゆだねるということがあってもいたし方ないのではないかと思っております。  それから、アメリカにいたしましても、いろんな形で税金を投入いたしましたときには経営責任だけではなくて行政責任もきちんと追及して、監督当局というのは解体させられているわけですね。大蔵省の全部を解体せよとはもちろん申しませんけれども、いろいろな形で分割した方がいいかなと思っております。でも、そういう行政責任の明確化ということなしに行政の裁量をさらに広げるということはとてもおかしなことではないかと思っております。
  70. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 かねがね紺谷参考人大蔵省につらく当たるというので有名な方でございまして、今の御議論を承っておりまして、さて新しい金融監督庁ができてもそれは信用できぬのだというような御議論までいただくと一体何をやっていいのかなかなか難しくなるところでございます。  それはさておきまして、大蔵大臣のあっせんによって行われるということになっておりますが、それがいいか悪いか、民間の機関云々というぐあいにおっしゃっておられますけれども紺谷参考人は具体的には何かイメージをお持ちでございましょうか。
  71. 紺谷典子

    参考人紺谷典子君) 特別なイメージは持っておりませんけれども大蔵省の外に独立な委員会があって、議事録をきちっとつくって、何年か後にはきちっと公開されるというような形をおとりいただくのが最も公正が期待できる形ではないかと思っております。
  72. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 参考人の御意見としてしかと承りました。しかし、現実の姿として、さてそれはどういうぐあいにするのかというのはなかなか難しい問題だというぐあいに、私が意見を陳述する時間じゃありませんのであれなんですが。  そこで、現在、公的資金を導入すべしというような議論がございます。自民党でも十六日までに公的資金だとか金融安定システムを確保するためにいろいろな議論をせにゃいかぬということで今集中的にやっております。十六日には結論を出すというぐあいに先ほども大蔵大臣が言明されましたけれども、現在の金融環境のもとで公的資金を含めてどういうぐあいにすれば金融安定が図られるか、そのようなことについてお考えを承りたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  73. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) 本来的に私はもう住専処理の段階あるいはそれ以前からこういった公的役割も含めた不良債権破綻処理スキームをつくるべきだという考えでしたし、実は金融制度調査会は、一九八五年に預金保険機構改正案を答申したときに、それまで三百万円だったのを千万円に実は引き上げたんです。そのときの、これは金融自由化と環境整備答申という、ちょうど八五年というのは御存じのように八四年の円・ドル委員会から始まって金融自由化、金利自由化の方向を出した年なんです。それで、この金融自由化というのは当然に個別金融機関破綻を招くし、それが連鎖的に波及して金融システム全体を不安定にする、したがってそういった個別の金融機関破綻というのを前提にしてそれに対する破綻処理スキームを、これは公的資金意味ですが、それから預金保険機構機能拡大あるいは相互救済、あらゆるケースを想定してできるだけ早くこれを確立し、それを国民に示すことによって金融制度に対する信頼感を確保する必要があるという答申を実に十年以上前に出しているんです。結局それができなくて、十年後に金融三法ということでやつと実現したといういきさつがあるわけです。なぜ十年間おくれたか、これは実はさっき紺谷さんのおっしゃった問題だけではなくて、私はバブルの形成、崩壊に伴ういろんな問題があると思うんです。  それで、今回金融破綻というのが予想を超えてどんどん出てくる、それに対して破綻処理スキームというのは極めて不十分であったということで、今度本格的に公的資金の導入、しかも全面導入ということで議論が行われていろんな案が出ているということは大変歓迎すべきだと思うんです。ただし、具体的にこの公的資金の場合幾つかのポイントがあると思うんです。  一つは、預金者の保護というか、預金者にも安心感を与える。預金は全額保証されるんですよと、ペイオフまで、二〇〇〇年度までですね。そのために預金保険機構への資金供給、それから同時に最終的に帳じりを合わせる段階で信用組合に限定しているのを一般金融機関にも拡大していく、それによって日銀信用に対する不安も防いで預金者を安心させる、公的基金、財政資金も含めてあらゆる手段をつくってやるんだという、これがまず一つ。これは極めて重要なポイントです。  それから第二番目には、金融機関の健全化対策として、つまりそれによって金融機能の維持を図るということで、例えば劣後債、優先株、これを公的資金によって引き受けるという計画もあるわけですね。  それで私は、これについては同時に貸し渋りの是正という、特に早期是正措置の導入に絡んで自己資本比率を維持するために、分子である自己資本が増強できない場合は分母である貸出資産を圧縮しなきゃいけないと。そのために貸し渋りが出てきて日本経済に大変深刻な影響をこれから与えていくおそれがあるという、これも含めてこういう構想が出ているんですが、これは私は実は非常に難しい問題を幾つかはらんでいると思います。例えば、公的資金によって劣後債、優先株、つまり自己資本の増強を援助する場合は、当然経営責任というのは問われる必要があると思うんです、なぜ自己資本がショートしたのか。  そうすると、これは強制するわけにもいきません。おまえのところで引き受けろ、そのかわり責任とるぞと言ったら恐らく引き受けるところはないと思うんです。強制はできない。だけれども、例えば北洋銀行のように北拓の取引先を全部抱えて、このままでは分母が巨大化して分子が縮小し、相対的に自己資本比率が低下し、早期是正措置の行政処分対象になっていくと、こうなったらこれはもう一大事で、これはまさに今度の経営悪化銀行の特定合併の判断の基礎と共通するわけですが、こういうところには自己資本増強をやってやると。それで、できればその地域経済界も一定部分は引き受ける。そういうのが相まって、はっきりした目的と、それから逆に言うとペナルティーを伴わない自己資本の増強策、これを公的資金によってサポートしていくということは有意義だと思うんですが、一般的な形での金融機能の強化あるいは貸し渋りの防止という意味での公的資金による自己資本増強策というのは私は非常に難しいだろうと思います。  今の二番目は、実はRFCということで、大恐慌のときアメリカがやってこれは効果はあったんですが、実はその後いろいろな問題を起こしたわけです。  三番目は、不良債権処理を促進する、このために公的資金を活用するという、これは私は非常に今極めて重要なものだと思います。  金融機関は今、決算でも帳簿上の処理は優良な金融機関はもうほとんど手当てを完了しつつある。大体私の見るところ、これ以上経済が悪化して不良債権がふえない限りは一、二年でまず普通の金融機関不良債権処理はめどがつく。ただ、帳簿上実際の担保不動産は動いていないわけです。これを売却処理しないといつまでたっても不稼働資産として残るし、金融は正常化していかないと。  したがって、今の整理回収銀行あるいは住専処理機構、いろいろな形で担保不動産の処理をどうするかという問題が出ているんですが、これこそまさにアメリカのRTCの構想を活用して、しかも土地対策から税制から総動員して実態面の不良債権処理をできる限り促進していく、そのために公的な援助を与える、これは非常に有効だと思います。
  74. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 紺谷先生、お願いします。
  75. 紺谷典子

    参考人紺谷典子君) 公的資金導入に関しては、結論から申し上げれば私は賛成でございます。早急におやりいただきたいと思います。ですけれども、本来どうあるべきかということから申し上げれば、公的資金は本当は要らないのではないかと思っているということを申し上げさせていただきたいと思います。  どういうことかと申しますと、アメリカ、イギリス、北欧諸国を初めとして金融破綻を生じた国々というのは最終的には皆税金を使って処理いたしました。それは事実でございます。ところが、日本の特殊事情というのがあります。それは、日本の大銀行がたくさんの資産を蓄えているということでございます。護送船団のツケは護送船団の中で払うのが本来の形ではないのかなと私は思っております。  どういうことかと申しますと、高度成長期、日本の預金者は産業の資金コストを下げるのだという理由から非常に低い預金金利に甘んじてきたわけです。インフレも非常に高進しておりましたから実質金利マイナスという時期もかなりあったわけでございますけれども、あの世界の奇跡と言われた高度成長期、日本の実質金利というのは非常に低かったわけでございます。マイナスでさえあったわけです。  その間、銀行は非常に低いコストで企業にお金を貸したかというと、そうではなくて、歩積み両建てと言われるような手法などを使いまして、貸出金利は高く設定してきたんですね。日銀の統計年報なんかに記載されております約定金利というのは確かに高くございませんけれども、貸したお金の何割かを低い金利で預金させることによって実質的な貸出金利を高く設定するという手法をとって非常に大きな利ざや稼ぎをやってきたわけです。それが株式とか不動産などに投資されまして、非常に大きな利益を生んでいるわけでございます。  今、日本銀行は大いに傷んでいると言われますけれども傷んでいるところもあるけれども、かなりのところは大丈夫でございまして、それは帳簿にあらわれていないんですね。どうしてかと申しますと、関係会社あるいは子会社などに優良な資産を移してしまっているからです。典型的には不動産管理子会社でございます。石油ショックの前後に日本の大銀行はほとんど不動産管理子会社をつくりまして、一〇〇%子会社でございます。そこに優良な不動産をほとんど移してしまったんです。ですから、新聞などに報告される銀行の含み益は全体でほんの数兆円しかないということになるのでございますけれども、一〇〇%子会社の分あるいは関係会社に移している分までを考慮に入れると、とてもとてもそんなものではないということは明らかでございます。  ですから、そういうところを明らかにすることによって、つまり不良債権を明らかにするだけではなくて正常な資産というんでしょうか、まだ利が乗っている資産というんでしょうか、そちらもきちっと両方明らかにしてほしい。そうすれば、ある意味では金融不安のほとんどはほどけてしまうんではないかと思っているぐらいでございます。確かに地価も株価も半分以下になりましたけれども、その以前に何百倍にもなっているわけでございますからその利益というのは莫大なものがあるわけです。  私は、十数年前に日本の上場企業全部の資産の再評価という作業をいたしました。個別の再評価の積み上げでございます。土地とか保有有価証券を時価評価いたしまして、簿価と時価がどのぐらい離れているかとか、そういう国際的な同時プロジェクトがMITでございまして、東大教授と一緒に共同研究という形で何年間かにわたって作業をいたしました。日本の企業の含み益というのは膨大なものがございます。  ですから、そういう資産内容をきちっと公開してもらえば、かつそれが護送船団の中で大きな銀行が余力を残して預金金利を少ししか払わなかったとか、そういうことを通して蓄えたものでございますからそれを吐き出してくれれば日本金融不安というのは解消可能なのではないだろうかというふうに考えているくらいでございます。  ただ、そういうことを言っておりますと、百年河清を待つに等しい。ですから、今、急の場には間に合わないですね。今の緊急事態を救うためには公的資金の導入やむなしと思いますけれども、その一方で銀行のディスクロージャーということをきちっと進めていただきたいと思います。不良債権のディスクローズだけではなくて、関係会社、子会社も含めました資産の公開をきちっとやっていただきたいと思います。できれば土地の再評価をいたしまして、その利益を自己資本に算入するということをやったってよろしいわけでございます。  それから、その土地の含み益というものの利益に課税分を現物で納税してもらえばよろしかろうと思います。もちろん、再評価利益というのに同じように法人税をかけるというのはなかなか厳しいものがあろうと思いますので軽減税率でよろしいかと思うんですけれども、物納という形で納めてもらえば日本銀行はかなり身軽くなるのではないだろうかと。  どうしてかと申しますと、日本銀行は巨額の資産を持ち過ぎておりますために利益率が低いという結果を生んでいるんです。余分な資産をたくさん持っているわけです。銀行界の方たちは、日本銀行の経費率は非常に低い、それはリストラをしている成果である、一方、ROE、利益率が非常に低い、これは業務の自由を認めてもらってないからであるという非常に手前勝手な主張をなさっているのでございますけれども、経費率、総資産利益率ともに分母は資産なんですね。資産が大きいがゆえに利益率も経費率も低くなっているということでございまして、資産の処分をなさって身軽になればよろしいと。  アメリカにはほとんど資産を持たない銀行もあるというふうに銀行経営自体が大きく変わっているにもかかわらず、これだけ不良債権問題というのが世の中で議論を呼んでいるにもかかわらず、本店を売ったという銀行一つあらわれていないんですね。アメリカでもヨーロッパでも、金融破綻処理不良債権処理に当たっては、もう非常にドラスチックなリストラをやってしのいできているわけでございます。  北海道拓殖銀行でさえ、本店を売却いたしましたけれども、関連子会社に売ったんですね。本当に外に手放したわけではないんです。不良債権問題あるいは住専問題などで世の中の議論がかまびすしくなってくるまで役員報酬さえ削っていなかった、行員さんには高い給与を払っているという状態で、基本的には銀行経営姿勢は変わっておりません。変わっていないということは可能だということなんですね。巨額の資産を持っているという状況があるんだと思います。  大蔵省の方たちにそういうことを言いますと、そんなことを言っても日本銀行の体力というのはかなり落ちていますよと。それはそうだと思います。ですけれども、高度成長期に稼いだものというのはそう簡単には減っていないわけでございまして、先ほど申し上げましたように、地価と株価は半分以下に下がったかもしれないけれども、それ以前に何百倍にもなっているわけでございますから、そういう意味でのディスクローズということをきちっとおやりいただきたいと思います。  とりあえずの緊急措置としては、公的資金の導入、私は大いに結構であると思っております。破綻金融機関の自己資本増強のために優先株とかあるいは転換社債を買うということも結構なことではないかと思っております。そうしないとこの場はしのげないと思うんですね。どうしてかと申しますと、預金者保護という前提に立った、それだけを仮に言ったといたしましても、破綻したものの預金者を保護していくということだと限りなく資金が要るわけでございまして、破綻させないということの方がコストが低かったらばそういう措置をとるべきなんですね。  今現在破綻するものが本当に経営が悪いところだけかというと、必ずしもそうではないんです。今、日本銀行は、あるいは銀行だけではなくて保険会社も証券会社もそうでございますけれども金融ビッグバンの競争なんて一切いたしていないと思います。そんなことではなくて、何とかおぼれまいとしてがけに必死にしがみついているというところでございまして、資金力のない、つまり下の方にしがみついているところから金融不安と不況の水位がどんどん上がってきたためにおぼれ始めたといっただそれだけのことでございまして、まだまだ金融ビッグバンの競争なんというのは本当は始まっていないんですね。あるいは競争させてみたら勝つかもしれないところが今金融不安でおぼれているという可能性も高いわけでございますから、持てる組織を本当の競争の中で淘汰させるためにも、何らかの形で公的資金を導入して、とりあえずこの急場をしのぐということはおやりいただいた方がよろしかろうと思います。  どうしてか。残っているところの経営が健全とは必ずしも言えないからでございます。護送船団方式などで多額の資産を蓄えたところが資金力にゆとりがあるだけで残っているという可能性の方がずっと高いからでありまして、競争に敗れて敗退したというわけでは全然ないと思うんですね。現在のところは経営努力の勝負ではなくて体力勝負、資金力の勝負をしているだけであると思いますので、とりあえずはお救いいただいて競争の現場に一度は並べさせてあげていただきたいというふうに思うわけでございます。
  76. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 ありがとうございました。  問題が非常に広く分散をしてしまいましたので御意見が分散をいたしましたが、しかし、おっしゃるように、公的資金の導入といいましても二通りやっぱりございます。アメリカ流に言えばRTC、それからRFC、この二つに分かれるんだと思います。一つ金融破綻に際して手を差し伸べる、一つ破綻はしないけれども破綻しそうなところに先ほど申し上げたような劣後債であるとかあるいは優先株の取得であるとか、そういうものだと思います。お二人とも、それにはいろんなモラルハザードもあり、紺谷先生は特にいや本当は銀行はいいんじゃないのという御意見までつけ加わりましたけれども、いずれにしてもそういう方向で今しのがないと何ともならないよという御意見であったように思います。  実は、先ほど申し上げました自由民主党における緊急金融システム安定化対策本部というのがございまして、宮澤先生が本部長をやっておられますけれども、そこの議論が近々まとまるはずでございます。今、仰せになりましたような議論をも踏まえさせていただいて、特に劣後債、優先株をどうするのか、これはもう実は西崎先生が仰せになりましたように厳しい条件をつけようじゃないかと。私ども、そういうのがもしあるとすれば恐らく北洋銀行が第一番手になるのかなというようなことも思いました。しかし、実は北洋銀行の頭取にこの前、自民党に来ていただいてお話を承ったんですけれども、じゃおれのところは四じゃなくて八なんだ、したがって現在は相当余力があるよというようなお話も承りました。  やはりそれぞれの銀行等にそれぞれの事情がございまして、一律に制度で決めたからおまえのところは強制的に優先株を発行しなさい、あるいは劣後株を買いなさい、そうでなきゃ危ないよというようなことはもちろん言えない。まして、先ほどちょっと仰せになりましたように、劣後株を買いなさいと政府が言うと途端にその銀行がおかしくなっちゃうというような事態も発生する状況でございますので、なかなか難しい問題であるなというぐあいに思っております。  そこで最後に、西崎参考人から不良債権の実態は進んでいないんじゃないの、帳簿上の処理は進んでいるけれども持っている不良債権一つ一つほぐして処理していくというようなことはやっていないんじゃないのというお話がございました。実は私どもとしては、きょうの議題ではございませんけれども、SPCをどうするかとか、あるいはアメリカではREIT法というのがございまして、土地の売買をやるんじゃなくて株式売買が非常に盛んになっているというような状況もあるというぐあいに思いますが、この担保不動産の流動化についてもし何らかのお考えがございましたらお教えを願えませんでしょうか。
  77. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) 時間がありませんのでごく簡単にしたいと思うんですが、今まさにおっしゃったように、例えばSPCあるいはABS、資産担保証券、こういったスキームも金融制度調査会で提言しまして、これは税法上の特別扱いも実現するようですし、来年度からこのスキームが動き出していくと。  それで、実態の不良債権処理、これをどう進めるか。アメリカの場合はこれを強力に進めることによって金融機関金融制度の安定、これがもう非常に促進されたわけですね。それで、RTCが動き出したときは金融破綻もほぼ真っ最中でしたけれども、特にアメリカの場合はキャッシュフローで見るわけで日本の地価を見るのと違うんですが、要するにRTCが介入したことによって簿価の二、三割でたたき売りしたわけですね、買い取った不良債権を。しかし、全体的に景気は回復段階に入っていたので、それを契機に地価は猛烈に反騰、回復したわけですね。それで逆にもうかっちゃったということにもなっているんです。  日本の場合、一連対策を公的資金も使ってどう強化するか、あるいは回収機能をどうするか、人員をどうするかとか、それからいろんなそういうスキーム、それから税制上のサポートをどうするかと、今いろんな形で議論、自民党でも議論されているし、私は大賛成なんです。先ほど紺谷さんが言われた実体経済金融不安の悪循環、これに歯どめがかからないと。もし実体経済がこのまま何とか推移していけば私は地価は、もちろん低落に全面的な歯どめがかかったとは思わないんですが、商業用地あるいは住宅地でもまだら模様ですけれどもどんどん上がってきているところあるいはレンタルが上がってきているところもある。要するに、底なしの暴落には大体歯どめがかかりつつあるのではないかというふうに思うんです。  ただ、これは金融不安、株価暴落、金融株暴落、ダウ暴落、それがまた金融株暴落、それから実体経済の足を引っ張る、当然それはまた地価の再低落、これにいかに歯どめをかけるかということは、私はやっぱり紺谷さんの御意見に非常に賛成です。しかし、一方でこれは進んでいくと。  同時に、具体的なスキームと言われましたが、これは自民党の方でも十分検討されているし、既にいろんな形で回収機能の強化とかをやっているんです。ですから、これはスキーム、資金、人員、それから権限まで含めて強力な公的なサポートが必要だと思うんです。  それからもう一つ、ちょっと質問と関連するんですが、早期是正措置の関係で貸し渋りが非常に進行していくのじゃないかという懸念が実はあって、早期是正措置をおくらすべきだという議論もあるわけです。私が早期是正措置検討会の座長として、一昨年十月に、国際基準八%は今までどおり、国内基準四%は基準を修正して、さらに一連の弾力条項、猶予措置も決めて、来年四月から正式に導入されるこの早期是正措置というのは、金融機関破綻に追いやるというのではなくて、金融機関が自分の経営内容を自己責任で正確に把握し、それで経営内容の悪化を防ぎ、それによって経営内容を改善し破綻を未然に防止していくという、これがまず一つ大きいわけです。しかし、だめなところはほっておくとますますコストが高くつくから、これは破綻させる。  それからもう一つは、日本金融機関のリスク管理というのが欧米に比べてまことにお粗末だったわけです。今度の早期是正措置で金融機関がまず債権を一つ一つ洗って分類するわけです。不良債権でもいろんな種類がある。それに対して必要な償却、引き当てを行って、それも今度は金融機関だけじゃなくて公認会計士、監査法人が重大な責任を持ってチェックし、それによって出てくる財務諸表というのは今までのに比べると非常に、一〇〇%とは言わないけれども、はるかに正確なものが出てくる。それから、不良債権金融機関の判断によって、今までの公表不良債権に比べると実額としてははるかに正確なものが出てくる。そうすると、それによって日本金融機関に対する信頼度、財務諸表に対する信頼度、あるいは公表不良債権に対する不信論、これを非常に改善できるんです。もしこれを一年おくらせたら、ああいよいよ日本はもうだめなんだなということでジャパンプレミアムが即座に一%全金融機関についてしまうと思うんです。どうしてもおくらせられない。  しかし、そういう経営内容の健全化という問題と同時に、特に地域金融機関の場合は初めから要注意先債権をとっているようなところが多いんです、協同組織では。大銀行がとらないリスクを地域金融機関がやっぱり地元企業の育成、地域経済への貢献ということでとっているわけです。そうすると、不良債権を初めからとっている。今度は分類して要注意先債権になる。そこにニューマネーを出す場合、これは背任にならないかという深刻な問題があるんです。これは地域経済への貢献、地元企業の支援ということで、例えばその中小企業が法人としては赤字でも個人経営者が資産をみんな持っている、一緒くたですからそういうのも評価してともかく続けさせる、これが非常に大事です。  しかし、何といっても融資に対しては慎重になるわけです。私がかねがね言っているのは保証機能です。つまり、今度の場合、中小公庫、国民公庫に猛烈なつなぎ融資資金を出して、これは非常に私はよかったと思うんですが、そういう直貸しじゃなくて、保証機能を強化して保証をどんどん拡大していくと。特に公的な保証機関の保証がかかっているものはリスクウェート一〇%なんです。つまり、九〇%は分母から控除されるのです。それによって自己資本比率は改善するわけです。貸出資産を回収、圧縮しなくても済むと。この保証機能の活用を今回のいろんな一連対策の中で検討されているようですが、ぜひ実現していただきたい。それがやっぱり貸し渋りを非常に防止する効果になるというふうに思います。
  78. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 ありがとうございました。  私の持ち時間が既に経過をいたしておりますので、これで私の質問は終わらさせていただきます。
  79. 志苫裕

    志苫裕君 参考人先生方、ありがとうございました。  私は社会民主党志苫と申します。体調が十分じゃありませんので、座ったままで失礼させていただきます。よろしくお願いします。  最初に、法案の構造に関してお伺いしたいんです。  法案の目玉である特定合併の意義につきましては、お二方にそう異論があるようには思いませんでした。ただ、紺谷参考人のように、今日の事態を引き起こした大蔵省、行政当局があっせん、承認などというのはおこがましい話だと、こう言ってしまえばこれは身もふたもない話ですが、西崎参考人もおっしゃったように、しかしこの規定はやっぱり運用が問題になるというお話でしたが、それにしてはこの法律には特定合併の意義もなければ承認ないしはあっせんの具体的な基準もないわけです。したがって、裁量行政になるのじゃないかという懸念は依然として残っております。法律の構造上、訓示規定はありますけれども、具体的な基準に当たるようなものがないんですね。ちょっとその辺、御意見を例えればと思います。
  80. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) おっしゃるとおりだと思います。ただし、法律に特定合併を認める場合の具体的な基準を細かく具体的に書けるかどうかというのは、私は非常に難しいと思うんです。  というのは、いろんなケースが考えられるわけです。訓示規定としては地域金融機能の維持、地域経済の混乱防止、そして公共的な役割に資する、こういった規定があるわけですが、それでは具体的にどの程度地域経済に資するのか、どの程度例えば混乱が起きると予想されるのかというのは、これはいろんなケース・バイ・ケースがあるし、法律に数量的に出すということはまず私は不可能だと思うんです。  しかし、おっしゃったように、当面は大蔵省あるいは六月からは金融監督庁に移っても、その時々の判断で、これはもちろん状況に応じてということはあるわけですけれども、くるくる変わっては困るわけですし、さじかげんというのも、これもなかなか問題です。ですから私は、やっぱり運用規定としてこれをどういう形で運用していくか、これも恐らくあらゆるケースを想定して出すことは不可能だと思いますが、代表的な例示的なものをつくって、それをガイドラインにしてやっていくということは私は必要だと思います。  それから、さっきも言いましたけれども、どういう判断で特定合併を認め、公的資金の支援対象にしたかというこの判断理由、これは明確に説明する義務がある、そういうふうに思います。
  81. 紺谷典子

    参考人紺谷典子君) 私は、先ほど既に申し上げましたけれども、この運用に当たりましては裁量の余地をできるだけ小さくした方がよろしいと思います。つまり、それはあらかじめ基準を明確にするということが技術的に困難ということは西崎参考人がおっしゃったとおりですからそれは無理かなとは思いますけれども、そのかわりにやはり第三機関であってほしいと思うわけです。  何回も何回も申し上げて恐縮なんですけれども、これは今日の事態を招いた大蔵省がそういうことをしていくということ、その運用の裁量権を持っているということは、やはり世間一般に受け入れがたいものがございまして、第三機関であるべきだと思います。かつ第三機関も、では第三機関なら公正かというと、それも必ずしも担保されないわけでございますから、第三機関の名をかりた実は従属機関というのもたくさんあるわけでございますから、きちっと議事録をとって何年か後には公開という原則でおやりいただくのが一番よろしいかろうと私は考えております。  それから、これは二〇〇一年三月までの時限立法なんでございますけれども、できたらそれまでに片づいていてほしいなと思うんですけれども、これはもうあくまで緊急措置でございます。ですから、金融不安の縮小というか収縮が見込まれたと判断できるときには時限に至らなくてもこれを取りやめるというような附則があってしかるべきではないかなと思います。延長にならないように切に祈っております。
  82. 志苫裕

    志苫裕君 先ほどの紺谷参考人お話で、今の金融の局面を、病巣を持った病人を無理に歩かせてむしろ病気を悪くしちゃったというお話がありましたが、その観点でいきますと、ビッグバンの導入時期に問題はなかったんでしょうか。  先生の文章にありますが、ビッグバンというのは大爆発と言うんだそうですが、日本版ビッグバンは操作を誤って暴発した感じがあって、爆発じゃなくてこれは暴発じゃないかという感じがしないわけではありません。そういう論評もないわけじゃありませんけれども、そのタイミングの問題はどんなものでしょうか。
  83. 紺谷典子

    参考人紺谷典子君) 金融ビッグバンといいましても、どこからどこまでが金融ビッグバンなのかということが明確ではないという問題が一つあるわけでございます。それは言ってみれば、これまで大蔵省金融行政として、あるいは証券行政としてお進めになってきたことを金融ビッグバンという新しいふろしきにくるんでさっと国会を通しちゃったというようなものでありまして、きちんと体系的に日本金融証券・保険市場の設計をなさって、それに基づいて着々と準備を進め、体系を練り、かつ日本経済現状に照らして段階的に導入を図ったというようなものでは全くないからなんです。  ですから、そういうことの問題点というのが数々出てきているのでございますけれども、早期是正措置というのはその一つであると思っております。もちろん、これはアメリカでも導入されたものでございます。金融不安の処理は全部済んでおりませんでしたけれども、入ったばかりという状況ではございましたけれども金融不安そのものは収縮した段階でアメリカの場合は早期是正措置を取り入れているわけでございます。日本は今、金融不安の真つただ中でございます。真っただ中で入れるよと言ったわけですから、それはもう金融機関は慌てまして、貸し渋りを行って金融不安をさらに強めるというような状況を生んでしまったというのは当然のことかなと思っております。  ですから、これが体系的なものでもなければ、国民経済に立脚して日本経済が今どのような金融証券市場を必要としているか、国民生活のニーズが那辺にあるかというような議論を徹底的にいたしまして、それで体系的に考えられた金融ビッグバンではないという問題点の一つのほころびが早期是正措置にあらわれていると思うわけです。  ですから、私は、もし可能でしたらば早期是正措置は先送りなさったらよろしかろうと思います。先ほど西崎参考人がおっしゃった自己査定によるディスクロージャーをすることによって信頼を高める、それをおやりいただけばよろしい。だけれども、それに基づいて早期是正措置をとるというような、業務改善命令とか業務停止とか、あるいは破綻処理に入るというような部分については先送りをお決めになるということも一つの手だてだと思います。  それから、今、自民党でも御議論なさっているかと思いますけれども、土地の再評価益を自己資本に組み入れるというようなことをなさってもよろしかろうと思います。BIS基準というのは何もがんじがらめにBISが決めているわけではございませんで、その国その国の運用というのが認められているわけでございますから、そういうふうにしたらよろしかろうと思います。それでもなお足りない分を公的資金導入によってなさったらいかがかと存じております。  金融ビッグバンについてもう一言だけ言わせていただきたいのでございますけれども金融ビッグバンというのは、先ほど申し上げましたように、本当の意味国民生活のニーズから立ち上がったものとは思えないんですね。  どうしてかと申しますと、今、日本経済が必要としておりますのは中小企業金融であろうと思います。これからは中小企業の時代なんですね。どうしてかと申しますと、人々はもう欲しいものを手に入れてしまった、欲しいもののない時代日本が貧しいゆえに満たされない需要があった時代というのがあったわけですけれども、そういうときには大量生産によってできるだけ価格を下げるというのが国民生活のニーズに見合っていたんですね。大規模企業の時代であったわけです。ところが、今、日本人は必要なものは全部持ってしまって、追加的に必要なものはそれぞれの人生設計とか好みに応じて違う、つまりマーケットが小さいわけです。そのかわり、欲しいものだったらばスポーツシューズに三万円、四万円払ってもいいよという消費行動になっているわけでございますね。それはすぐれて中小企業に適したマーケットなわけです。  そういう一つ一つマーケットは小さいんだけれども、高付加価値、つまり高価格でもいいという消費者ニーズを開発していく、そういう潜在的なニーズを顕在化し掘り起こしてマーケットとして持っていくことが産業空洞化によって懸念されている日本の失業問題、失業者、労働者を吸収していく一つの便法でもあろうかと思いますので、中小企業育成というのが日本経済を活性化させる一つの大きな柱だと思うんです。  そうであるとしますと、中小企業金融というのは金融市場の設計に当たって非常に重要な側面を持つべきであろうかと思います。そうであるにもかかわらず、大企業を相手にしてきた大銀行の商売を広げる、それを商売がたきとする証券会社、保険会社にも多少のおこぼれを回してあげるよというような形の金融ビッグバンであったわけでございますね。  それからもう一つ国民生活のニーズという点からいきますと、これからは資産運用が非常に重要でございます。最近の超低金利で生活が苦しいというお年寄りの嘆きの声がしょっちゅう新聞に載るわけでございますけれども、それは庶民が金利生活をするようになっているということでございます。  かつては金利生活者といったらばお金持ちの代名詞であったわけですけれども、今は金利生活者というのは年金生活者を意味するんですね。ということは、資産運用というのが極めて重要、年金をどこで下ろすかとか、あるいは自分が持っているお金をいかに効率的に運用して老後に備えるかと、そういう時代になっている。高齢化社会が進展するとすればなおのことそういう金融機関というのは大事だ、地域金融機関が大事だということでございます。  そうであるにもかかわらず、農協の再編を進めて六千ほどもあった農協を五百五十まで絞っていこうとする、当然農協の店舗は減っていくわけでございます。信用金庫、信用組合の統合も進められております。郵便局の民営化が議論されたということも皆さん御承知のとおりでございます。そうやって地域金融がどんどん薄くなるという現状にある。それは国民生活のニーズにかなわないのではないだろうかと思うわけですね。  かつては日本経済というのは非常に貧しかったですから、たんす預金をせずに少しでも金融機関に持ってきてもらってそれを産業資金に回す、あるいは郵便局に持ってきてくれれば財投資金として、道路をつくる、学校をつくる、病院を建てるというような資金として使うということでよろしかったと思います。そういう時代にはたんす預金ですと産業資金が枯渇してしまうわけでございますから、金融機関一行たりともつぶさないという護送船団方式も当然意味ある政策であったわけでございますけれども日本の資産蓄積が進んで、単に安全ならいいということではなくて利回り志向というのが徐々に徐々に高まってきていたんですね。  つまり、自分の資産をできるだけ効率的に運用したい、手数料は下げてほしい、貸出金利は上げてほしい、借入金利は下げてほしい、それは経営努力によってやってほしいということでございまして、ですから金融ビッグバンによる自由化、競争化というのが必要であるということは言をまたないのでございますけれども、本当の意味国民生活が欲しているようなものではないということでございます。  本当に利用者利便のためであるならば、どうして銀行の手数料の横並び、ATMはどうしてどこも百円なんでしょうか。それから、九四年十月に完全自由化されたはずの預金金利がどうして横並びなんでしょうか。新聞はどうして毎回毎回平気な顔をして、きょう都銀各行一斉に金利引き下げなんて書くんでしょうか。あれがカルテルでないのだったらば何をカルテルと言っていいのか。あれが談合でないんだったら建設だって談合ではないと私は思うのでございますけれども、そういう状況が放置されている金融ビッグバンというのは極めてまがいものであると思っております。  以上でございます。
  84. 志苫裕

    志苫裕君 西崎参考人、タイミングの問題はどんなものでしょうか。
  85. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) ちょっと幾つかよろしいでしょうか。  まず、早期是正措置について、これは何回も言いますように、私もこの基準をまとめた責任者ですからその立場でちょっとこだわるんですが、まさに私が座長として一番懸念したのは地域金融。つまり、一方でビッグバンが進行していく、片方で早期是正措置が進んでいく、しかもこれは金融不安の中で同時並行的に進んでいく。その場合に、例えばマネーセンターあるいは大金融機関の競争力が活性化されても、地域金融が空洞化し地域金融機関が参るのでは、これは何のための改革かということになるわけですね。ですから、私は、この基準をつくるときも実は一貫してできるだけそういう立場を反映させようと思ってやってきたわけです。  同時に他方では、さっきも言いましたように、日本金融機関はまさにリスク管理体制ができていなかった。これはまさに護送船団行政であり、横並びであり、欧米の金融機関に対して物すごく劣化してしまっているわけですね。そのために不良債権もあれだけ集積してしまった。リスク管理体制をどう強化するかということは、これは本当に重要な最優先事項ですね、金融機関としてやっていこうとすれば。  それから、日本金融機関の財務諸表に対する信頼度、経営内容に対する信頼度が全く内外ともに落ちてしまっている、これをどう信頼回復するかという、この措置ですね。それが早期是正措置で資産査定から償却、引き当て、それで行政処分の連動ということになって、今、紺谷さんから、行政処分の連動のところはここだけ外せばいいじゃないかということですが、実はこれは基準をつくったときに猶予期間をつけているんです。  要するに、例えば国内基準行が四%を下回っても三年間は猶予を認めます、ただし毎年改善していかなきゃいけない。それから、債務超過になっても一年間は猶予する。それから、はっきりした経営改善計画を持ってマイナスからプラスにしていく。合わせると、ゼロ以下からスタートすると四年間の猶予期間をもって毎年改善させていくという、そういう実は猶予期間をつくっているわけです。ですから、これも運用をどうするか、裁量をどうするかという、これまたこの裁量が信頼できないということになるとなかなか大変なんですが、しかしそういう歯どめをつくってともかく地域金融機関にということで、今度の場合、改正案もかなり考慮している。  それから、ビッグバンについては、これもおっしゃったように、マーケット、業務あるいは全体的な制度、何から何まで日本の場合入っているんですが、私はやっぱり地域金融機関、中小金融機関でも生き残れるし、ネットワークとシステムをうまく使えばむしろ有利になるというふうに考えています。アメリカでも金融改革で大銀行と同時に地域に密着した金融機関が生き残って優良銀行としてやっているというケースもあるし、時間がありませんので説明は省略しますが、中小金融機関地域金融機関でも十分にビッグバン対応し、むしろこれをプラスに活用できるというふうに私は思っています。
  86. 志苫裕

    志苫裕君 早期是正措置のお話が先ほどからありますが、早目に手を打って、これは死刑を宣告しろというんですが……
  87. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) いや、死刑とまでは……。
  88. 志苫裕

    志苫裕君 まあそういう内容になっていますが、ただ、確かに早目に手を打って大助かりするときもありますし、がんというのは、私は専門家ではありませんが、なまじ早く切ってしまうとかえって怒って大きくなるんですね、それで寿命を縮めることもあるわけです。少し先延ばししたらどうだという御意見もありましたので、参考にさせていただきました。  実は、住専の処理が不手際だったということもあるんでしょうか、国民の間には公的資金の導入には大変強いアレルギーが見られます。したがって、預金者の保護なのか金融機関の援助なのかという論議が神学論争のように続いております。  預金者の保護か金融機関の援助かというのは、これはどちらの入り口から入っても同じ場所へ行くわけでして、鶏と卵のような話をいつまでもしておってもしようがないんですが、国民の目から見て納得がいくような、ああこれは預金者の保護なんだなということが非常に納得のいくような手だてというものは、もうちょっと何か有効なものがないものでしょうかね。どちらからでも結構です、お話しいただければありがたいです。
  89. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) 住専処理のとき、まず説明が、何で六千八百五十億円導入するんだという、これは極めてわかりにくい説明でしたね、金融システム維持、安定化のためにと。実際は、系統金融機関がその負担に耐えかねて、それを負担させれば破綻に至りかねなかったという、結局系統金融機関の救済であり、その貯金者の救済だということをはっきり政治的な考慮もあって出せなかったということで、非常に混乱したわけです。何のために一体税金を使うのか理解できなかった。後からだんだんその説明は行われてきたんですが、その後遺症がずっと続いた。  しかし、最近の金融破綻で世論調査をやっても公的資金導入に対する賛成論というのはかなりふえてきていますね。あの住専当時に比べると、国民の間でもかなり私は理解が深まってきているというふうに思います。それは逆に言えば、この破綻に対する不安もあるんだろうと思うんです。  ですから、私は、この公的資金導入については、さっきもちょっと質疑の中で私の意見を申し述べたんですが、公的資金導入がはっきり預金者保護、全体の金融制度安定あるいは金融秩序維持、地域金融も含めてそういった金融機能が発揮されるという、プラスになるんだという明確な説明が必要だと思うんです。  それで、もちろん見せ金として十兆円ぼんと置けば、これは確かにすごい、いや大したものだということになるでしょうけれども、やっぱりそういう具体的なスキームが非常に必要であるということ。それから、導入する場合、特に個別の金融機関がその恩恵をこうむる場合、この経営責任の問題というのは私は非常に大きいと思うんです。  よくアメリカのSアンドLの破綻のときは数千人が逮捕されたと。日本は全然違う。アメリカの場合は、経営破綻で法的責任というんじゃなくて、それぞれ法令違反を犯しているんですね。それが圧倒的に多かったわけです。日本の場合もこの法令違反は、今までの破綻金融機関を見ると、大体背任罪が圧倒的に多いんですね。それはやはり不良債権をいかに膨張させたか、本当に経営者の裁量によってどう膨張させたか、それが背任罪に問われた。  ですから、こうした法的な責任追及はもちろんのこと、それから同時に私はやっぱり道義的な責任というのも避けられないと思うんです。こういった道義的な責任、これは法的な強制力はないにしても、一体どうするか。それはさらに、結局経営者だけではなくて企業自体のあり方の問題とも非常につながってくるわけで、いわゆる倫理綱領、コンプライアンスといいますか、倫理管理をどうしていくかという、ここまでやっぱりさかのぼってくるわけで、これについても私は幾つかいろいろな案を持っているんですが、時間がないので省略しますが、こういう問題まで含めて、そういう経営者のあり方、企業のあり方、これをこの際できるだけ議論して有効な対策をつくる必要があるだろうと思います。
  90. 紺谷典子

    参考人紺谷典子君) 住専処理について最初につけ加えさせていただきたいと思います。  金融システムの安定を守るためというあいまいな説明で、系統金融を助けるためという本当のことが言えなかったからという西崎参考人の御意見に異議ありでございます。全然そうではない。  先ほど申し上げたように、住専というのをつぶしたそれこそ経営責任を問うべきであったんです。そうして、それに至った金融行政の責任も問うべきであったんです。そこのところをうやむやにして農協の貯金を助けると言いましたので、農協というのは何だかんだ言ってもダーティーなイメージがあるんです。ダーティーなイメージを利用して農協の責任だと言えば世の中通りやすかろうという、そういう御判断があったのではないかと思うわけです。  それは大蔵省の常套手段でございまして、主計局次長の中島さんという方が収賄疑惑があった、脱税疑惑があった、インサイダー取引、補てん要求疑惑、借名口座取引、副業疑惑、ありとあらゆる疑惑があって、それをそのまま不問に付されて、退職金までもらっておやめになろうとしたら、さすがに世論が騒いで退職金はもらえないということになったのでございますが、あのとき大蔵省がおとりになった措置というのが公務員の株式取引規制でございます。それのみでございます。つまり、株式取引がいけなかった、だからインサイダー取引とか補てんとかというようなそういうイメージをつくったわけです。  私はこう言わせていただきました。盗んだお金で自動車を買ってひき逃げ事故を起こしたからといって、皆さんもう自動車を買うのはやめましょうと言うがごときもので、証券市場を育成しなくてはいけないお立場の大蔵省がなぜそんなことでごまかすのか。つまり、株式というダーティーなイメージの中に逃げ込んだわけです。住専も全く同じで、農協のダーティーなイメージの中に逃げ込んで、御自身の金融行政あるいは御自身が天下っているところの銀行経営責任をごまかそうとしたのではないのかなと私は思っております。  ですから、そういううさん臭さを理屈はわからなくとも国民一般の方はおわかりになって、そういう理屈はわからなくたって何か説明が足りないぞと思って税金にアレルギーを示された。それは当然のことだと思います。そのときにきちんとやはり説明すべきであったと思います。きちんと銀行の資産内容を不良債権含めて公開すべきでありましたし、金融行政の失敗、例えば大蔵省銀行局長、農水省の経済局長ともども判を押して、住専はつぶさないと保証して農協の資金を引き込んだという、そういう問題に関してまできちんとディスクローズして、ごめんなさいと言って、必要だったらば税金投入というふうにおっしゃるべきであったと思います。  それを、国民が住専のときに理解を示さなかったからと、あたかも国民が理解が足りない、ばかだから本当に必要な処理がとれないんだみたいな言い分をおっしゃっているというのは非常におかしいんです。きちんと説明しなかったからです。説明すれば、日本国民の知的水準はそれほど低くはございませんから、わかるのではないのかなと思うわけでございます。  ですから、公的資金にアレルギーがなくなってきたというのも、実はだんだん不良債権問題をちゃんと片づけないといつまでも不況だぞ、金融不安が起きて今度やられるのは自分の保険かもしれないぞというふうに思い出した。それだったらしょうがないなということがだんだん納得できてきた。つまり、大蔵省の失政が国民の理解を深めてきたとも言えるのではないかと思うわけでございます。  それから、今どのように国民を納得させればということでございますけれども、それはやはりこの不況でございます。日本のGNPは、GDPと言ってもよろしいんですけれども、ほぼ五百兆ほどございます。日本の実力からいえば年々三%から四%の成長をなし遂げてよかった。言ってみれば年々十五兆円から二十兆円を不良債権問題をきちんと処理しないために捨ててきたも同然なんです。今まで何十兆円の損害でございます。  それから、その不良債権を個別にきちっとディスクローズを伴って、経営責任、行政責任の追及を伴って処理しないできたために、どういうことか超低金利という形でごまかしてきたために本当は大丈夫な銀行まで大もうけしてしまったわけでございます。それが預金者からの巨額の資金移転となって銀行を潤してきたという、そういう事実もあるわけでございますから、それによって生じている国民の損失も含めましてそれはやめて、きちんとディスクローズして、経営責任金融行政の責任を追及して、税金を使った方がむしろ得なんですよというふうに御説明があれば、国民は十分納得するであろうと思っております。
  91. 志苫裕

    志苫裕君 農協がダーティーであるかどうかは別にしまして、耳の痛い人はいるでしょうね。
  92. 紺谷典子

    参考人紺谷典子君) イメージがダーティーだということでございます。
  93. 志苫裕

    志苫裕君 わかりました。  この質問で最後にいたしますが、預金保険機構につきましてふと疑問に思うことがあるので、ちょっとお伺いしたいんです。  それは、この機構が本来の役割を果たすにはそれなりの資金がなければなりません。その原資は、言うまでもなく、金融機関がお互いに出し合う保険料、それからこの機構の公共性に着目をしての公的資金、さらには機構自身が自分で調達をする債券の発行等、幾つかのタイプがあると思います。  しかし、これをよく考えてみますと、保険料というのは金融機関が預かっておる預金者のものなんですね。公的資金というのは預金者である国民の税金です。そうすると、預金者は自分の預金を保護するために自分の預金を取られるという形になりますね。そうしますと、おのずから限度があって、いつまでも際限なく膨張して持てるものでもない。そうなったときにはこの預金保険機構自身が破綻、破滅をしないかどうかという点について、今後の預金保険機構の将来についてふとそんな疑問を持つことがあるんですが、この辺はどんなものでしょうか。
  94. 紺谷典子

    参考人紺谷典子君) それはやり方次第であろうと思います。もしもきちんと景気対策をおやりいただければ、日本の地価や株価というのは日本経済の実力から比べれば極めて低くなっていると思います。現状に比べれば市場メカニズムの中でそれなりの価格がついていると思いますけれども、実力から見たら低いということも事実でございます。  日本経済の実力につきましては、日本の製造業が強いというのも一部の方たちが主張なさっているとおりです。日本の労働の質が高く、かつ技術革新力がまだ失われていないというのも事実でございます。ですから、日本経済そのものは病んでいるとはいえそれほどもろい状態にあるわけではございませんから、金融不安そのものをきちっと解消していけば、経済が順調に動いて本来の実力である三%、四%の成長をしていけば株価とともに地価も着実に上がっていくであろうと思っているわけでございます。そういうふうにきちっと経済運営がなし遂げられれば預金保険機構がきちんと債権回収できるという可能性は高いかと思うのでございます。  それから、昭和四十年の戦後第一回の山一に対する特融に関しましては、山一証券はたったの四年間で金利込みで、特融というのは担保がない分だけ公定歩合より金利が高いのでございますけれども金利込みできちっと全部返し終わっている。それから、当時できた株式の保有組合、共同証券はもう大もうけして閉じたんです。つまり、底値で株を買って高値で売り払うということが可能であったために巨額の利益を生んだんです。  ですから、そういう考え方を敷衍いたしますと、経済運営次第ということになるのではないかと思うわけです。
  95. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) 預金保険機構資金繰りあるいは資金的な基盤はどうかと。これはペイオフに移行する二〇〇〇年度末までに、特別保険料ということで従来の保険料の七倍の保険料を徴収して、保険料から二兆七千億円収入が入る。現在、既に半分使っちゃっているわけです。そうすると、一体残りの一兆三、四千億円で大丈夫なのかという問題です。  それから同時に、日銀からの借り入れが二兆円までできるわけです。しかし、それも大分超えていくんじゃないかと。それで、このままいけば、じゃ保険料は値上げするのか、あるいは日銀からの融資が焦げつくんじゃないかとか、いろんなそういう不安も出ているわけです。  しかし、具体的に預金保険機構の必要な資金手当てというのは一体何かというと、一つ不良債権の時価による買い取りです。ですから、これはどう時価を評価して買い取って、どう処分するかによる。さっき紺谷さんも言われるし私も言っていますように、地価がどんどん暴落していくと当然預金保険機構としてのロスが出てくる。しかし、これをどうするか、この問題を抜けば、時価によって買い取って時価で処分していくということです。  それからもう一つは、債務超過部分に対する資金贈与ですね。債務超過の場合は、例えば木津信用組合なんというのは、これはもう一兆円ぐらいになっちゃったんですね。こんなべらぼうなケースというのはまず今後考えられない。そうすると、私は、債務超過部分もそういうひどい大穴をあけるようなことはまず今の状況なら予想されないと思います。  ただし、さっきも言いましたように、いろんな不安感があるわけですから、この資金繰りとして、宮澤さんが提唱しておられる例えば政府保証債を発行してそれによって資金繰りを強化していく。あるいは最終的に預金保険機構としてロスが出たときは、今、信用組合に限定されている財政資金、それによるしりぬぐいをそれ以外の一般金融機関にも拡大しますよという、こういう保証。そういうことによって、これは預金保険機構のスキームに対しても大変な保証感を与えることになるし、一般の預金者も安心する。  それから、海外ではまた預金保険料を値上げしてそれでやるんじゃないかという、そうなったらもうこれはまさに奉加帳で、優良な銀行も体力を消耗するだけということで、こういうことは、今現実にそういう案はないし、仮に出てきても私は反対だと思います。  ですから、一連のこのスキームで、例えば今度の改正案による経営悪化銀行同士の特定合併を含めても私はマネジブルだろうというふうに思うんですが、ただ経済の実体がどうなるかという非常に大きな不安があるだけに、いろんな公的な保証、これは必要だろうと。実際に最終的にどれだけ財政資金が投入されるかというのは、これはもう実体経済状態がよくなればむしろおつりが来るわけですし、この辺はわかりませんが、現段階ではそういうはっきりとした保証策、その方針の明示が必要だろうと思います。
  96. 志苫裕

    志苫裕君 終わります。ありがとうございました。
  97. 笠井亮

    ○笠井亮君 日本共産党の笠井亮でございます。  きょうは、西崎参考人紺谷参考人、本当にありがとうございました。大変貴重なお話を伺ってきたわけでございます。聞きたいなと思ったことは既にほかの委員からの質疑を通じまして、そしてまたそれに加えていろいろお話がありましたが、限られた時間ですけれども幾つか伺いたいと思います。  今かかっております法改正案、これにつきましては、私ども今御意見を伺いながら、なかなかいろいろ複雑な問題があるなと思ったんです。  私どもとしては、乱脈経営の結果できたような不良債権の始末をするということで言えば、預金保険機構がますます今度の法改正を通じていわば最終処分場ともいうようなことにされて、その穴があいたら結局税金投入ということで、本来預金者保護ということであったこの機構の性格から見ると、まあそうではないという御意見もありましたけれども銀行救済というための機関に大きく変えるものじゃないかなというふうに思っております。  そういう形で税金投入となれば、いわば乱脈経営その他バブル破綻に伴ういろんな問題について何の責任もない国民が負担を負わされるということで、罪なき者を罰することになるんじゃないかというふうな率直な気持ちでそれは許されないという気持ちはあるんです。それはもうここでは、余り私の意見を言う場じゃなくて伺う場ですので、そういうことを前提にしながら、幾つか実は伺いたいことがあります。  まず、西崎参考人金融制度調査会の中で長い間やってこられたということで、ちょうど私いろいろ伺いたかったところなんですけれども、実は金融機関破綻処理のあり方の問題で政府とも質疑をやっているところなんですけれども、一昨年の十二月二十二日ということで、ちょうど二年前ですね、あの答申の中で「基本考え方」ということで、この預金保険の発動に際しての前提条件ということで三点明確にされていると思うんですよね。  破綻金融機関は存続させないこと、これはそういうことかなと。それから、経営者の退任及び民事、刑事の責任を追及するということがあります。それからもう一つ、株主・出資者の損失負担が行われることということがございまして、これらの前提条件というのは引き続き一つのメルクマールになるのかというふうに思うんですけれども、特に株主とか出資者の損失負担の問題というのは具体的にどういうことを議論されて、どういう形での負担というのが必要だというふうに金制調で議論されているのか。時価と簿価の差ということが一つあったり、そんなようなこともあるかもしれませんが、実際のところどの程度のことまで必要ということで議論の到達点があるのか例えればと思うんです。
  98. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) 現実にその金融機関が清算され破綻するという場合は、株主・出資者は残余財産の配分ということで当然優先順位があるわけで、極端に言えば、山一証券の株価、あれは自主廃業ですけれども、一円ですか、もうパアになっちゃうと。  それから、協同組織系の場合は、これは出資形態になっているんですけれども、原則的にはこれも、相互救済とか合併とかいろんな形があるわけですけれども、理論的に言えば、これはもう出資者としてはパアになる。  それから、極端に言えば、例えばフランスなんかの場合は、金融機関経営危機に陥ると中央銀行総裁か大蔵大臣かどっちかが、株主、特に大株主に対して救済命令を出すんですね。つまり、株主が救済せよ、それによってコストをミニマム化せよと。やっぱりそのぐらいの株主責任がある。フランスの場合、国営銀行といういろんなあれもあるんですが。  金融制度調査会で議論したのは、具体的に例えば今おっしゃった簿価と時価の差とか、そういう細かい議論じゃなくて、つまり原則、一般論としてその三条件を前提としたということです。  ですから、例えば今度の改正案経営悪化銀行が清算されて新銀行が設立される、それで営業権が譲渡されていくと。しかし、既存金融機関の場合は、これはもう清算、閉鎖されるわけですから、別に今金融制度調査会でここまで議論しているわけじゃないんですが、これにおいても同じような原則が当然適用されるだろうと思います。  どうも不十分で申しわけありません。
  99. 笠井亮

    ○笠井亮君 さっき言われたところなんですけれども、完全に破綻したところだと経営者もなくなるしそういうこともあると思うんですけれども、今度新銀行をつくるということは、株主は残りますよね。そういう意味で、一般株主は別として大株主とかというあたりの責任というのはどこまで問われなければならないのか、この法案の場合に即していきますと、どういうことが考えられるし、考えなきゃいけないんでしょうかね。
  100. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) この法案の作成に私は委員会として別に参画していないわけです。ですから、今のはちょっと私の方からは……。  実は私もこれ不勉強なんですが、提案理由といいますか、大蔵省の方はどう説明しているんでしょうか、今の点について。つまり、旧株主と新株主の関係というのは。
  101. 笠井亮

    ○笠井亮君 ちょうど私もそこを午前中聞いていたところなんです。  私が理解した範囲では、簿価と時価の差があるし、そのことは当然負担がかかるんだというような説明を銀行局長がされたのかなということで、細かい話というふうに先ほど言われたような、まさにそういう範囲のことを答弁されたのかなというふうに受けとめているものですから、もっと原則論として、さっきフランスの例も挙げられましたけれども、そういう問題として今回の場合も本来は問われるべき問題じゃないかなという気がしたものですから伺ったんですけれども、それはまた別の機会にしたいと思います。  それから、この金制調の答申で預金保険という公的手段に入る前に、当事者、関係者の可能な限りの努力が払われなきゃいけないんだ、そして関係機関による可能な限りの協力が必要だということが言われておりますけれども、これはどういう中身を具体的には議論としてされているんですか。
  102. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) 要するに、さっき私最初のプレゼンテーションのところでもちょっと触れましたけれども破綻ということで預金保険機構に入ってくるといろんな意味でコストが高くつくわけですね。社会コストも高くつくし、資金コストも高くっくと。  そうすると、金融機関同士で、例えば健全な金融機関が自主的に経営悪化銀行を吸収する、これはその場合も今、預金保険機構の一応対象にはなっているんですが、要するに破綻懸念以前の段階で吸収合併していけば別に預金保険機構の、これも公的資金ですから、お世話にならなくて済むと。それから、経営悪化銀行といっても、例えば自己資本比率で基準をもうすれすれなところぐらいでやっていけば別にお世話にならないという意味で、そういう再編成にも資するし一連のコスト節約にも資するということで、ひとつそういう自己努力をやってみろと。  ですから、なるべく公的な資金にお世話になる前にという趣旨なんですが、現実にはそういう余裕がもうなくなってきちゃったということですね。無理やりそれを押しつけて大蔵省が旗を振って合併させちゃうというのも、これももう限度に来ていると。その意味では確かにもう言うことも聞かないという面はあると思うんです。  ですから、今の状況ではこの改正案の趣旨も、例えば経営優良銀行経営悪化銀行を買収合併して新設するというときには、それは別に余裕があればそんな預金保険機構のお世話にならなくて済むじゃないかというあれもあるでしょうが、現実にはそれをやらないと済まないという面もあるし、しかし逆に、例えば信用金庫なんかは信用金庫の内部で、ちょっと脱線しますけれども、援助基金をつくっていて、公的資金預金保険機構のお世話にはならない、まずそこでお互い助け合うという、そういう制度をまだ厳として持っています。いろいろあると思うんですが、現実的には今そういう形が全体的には余裕がなくなってきた、非常に難しくなってきているということだと思います。
  103. 笠井亮

    ○笠井亮君 そのまさに余裕と体力の話で紺谷参考人の方に伺いたいんですけれども、昨年この預金保険法改正されて以来、破綻処理に関連して預金保険機構資金援助が行われる際に、いわば当然その責任からいっても負担すべき関係金融機関資金負担がそれ以前と比べてなくなってきているというのは実際に数字で出ていると思うんですよ。たしか十三件あった中で木津信用組合の場合の三和の百二十二億円というのが一件だけという状況になっていると思うんですけれども、そういうことでいいのかということに関連して、体力問題とのかかわりですね。  先ほど、根本的には余力、体力があるんだ、ただ今すぐには間に合わないんだということでディスクロージャーの問題も含めてお話があったと思うんですけれども、今そういう意味では当然負うべきものも無理でゼロになるような状況なのか、バブル崩壊後も超低金利政策のもとで業務純益が史上最高で八兆円というふうにも言われていますし、それから業界全体でいきますと銀行業界も証券業界も、きょうかきのうの新聞でも野村に相当集中しているという話がありますし、銀行でもやはりある銀行に預金が集中していると。そういう意味では、移っているだけじゃないか、業界全体ではあるんだということもあると思うんですけれども、その辺とのかかわりで御見解をいただけないでしょうか。
  104. 紺谷典子

    参考人紺谷典子君) 金融機関の体力については、それから責任問題につきましては、全く事実関係が究明されておりませんね。事実関係が究明されていないということがありますが、木津信における三和の関与というのは極めて特別なものがあったと思うんですね。もう明らかに経営に関与したと思うわけです。ですから、先ほど金融制度調査会や何かの決定についての御質問が西崎参考人の方にあったかと思うんですけれども、大株主は経営に関与しているだろうという判断が多分あったんではないのかなと思うわけです。  ですから、ただ単に関係者であるとかそういうことではなくて、どの程度破綻責任があるのか、経営責任があるのか、あるいは関与の責任があるのかということを明確にしなくてはいけないと思います。しかも、体力がある銀行だったらば当然資金提供を求めないといけないと思うんですね。それを今まできちんとやらずに怠ってきたということが非常に大きな問題を生んだのではないかと思います。  住専問題におきましても、山一の飛ばしということが問題になっておりますけれども、住専問題では銀行が農協に飛ばしたようなものなんですね、あれは。言ってみれば、銀行が自分の不良債権を回収したくて住専にお金を貸させようとした。住専にはお金がないから農協から借りてこいみたいなことがあったわけですよ。農協のお金が住専を通じて銀行の貸し先に入って、あとは新たな融資で自分の融資を引き揚げるというようなことをさんざんやったわけですよね。  そういう事実関係の究明をきちんとして、そういうことを公開して銀行責任を追及するということを大蔵省はなさればよかったんです。それをしなかったんですね、監督責任を問われたくないためかどうかは存じませんけれども。そういう事実関係を今からでも遅くはありませんから一つ一つきちんと追及して、今、住専管理機構で中坊さんがなさっているみたいに、銀行の関与があった、あるいは銀行が申告した不良債権の金額というのが実は時価より相当低かったとか、そういう事実を一つ一つ洗い立てていって銀行から資金を受け取ったらよろしかろうと私は思います。  金融サービス法が日本では金融ビッグバンの中で最も後回しにされていてとてもおかしいと思うんですけれども、イギリスには金融サービス法がありますし、アメリカにはございませんけれども似たような趣旨のルールがございまして、リスクをきちんと説明しないで投資家、預金者、契約者に損失を与えた場合には、金融機関はその取引がなかったことにして損失は金融機関がかぶりなさい。それだけではなくて、リスク説明の義務を怠った、あるいは投資家に適合するような資産を勧めなくてはいけないのにその義務を怠ったということで、非常に重い罰金を科せられることになっているわけでございます。  そういうところからこそむしろ金融ビッグバンは入るべきだったと思いますけれども、同じような考え方で、経営責任というんでしょうか、損失に関与した責任というのをきちっと明らかにしなくてはいけないと思うわけですね。それをやってこなかった。つまり、そういう告発義務というのが大蔵省にはあるわけです、行政担当者といたしまして。  何よりも私がびっくりいたしましたのは、あの第一勧業銀行事件がございましたときに、銀行法違反による告発が初めてであったという記事が新聞に載ったことです。大蔵省には行政の担当者としてそういう不正行為を見つけたときに告発する義務がある、そうであるにもかかわらず、ずっとやってこなかった。第一勧銀のときが初めてであったということでございまして、マスコミはあのときの罰金の低さを問題にしたのでございますけれども日本経済法というのはそもそも罰金刑は重くないですね。すぐれて行政罰で対処してきたということがございますから、罰金を問題にするのだったらば日本の法体系すべてを見直さなくてはいけないわけでございまして、それは法哲学、法思想の問題なんですね。  そうではなくて、行政当局としてそういう告発義務があるにもかかわらず全然やってこなかった。今まで銀行というのはただの一度もそういう法令違反を犯していなかったのであろうか、告発しなくてはいけないようなことが証券会社、保険会社にはどうだったのだろうかということをきちっと洗い直さないといけないと思います。そういう処理の中で、できるだけ民間金融機関から法的根拠をもって資金を召し上げていくというような、処理資金を取り立てていくということがまず第一番に必要なことであろうと思います。  第二番としては、先ほど申し上げましたように、護送船団とこの超低金利で非常に大もうけして経営が安泰な銀行があるわけですよ。安泰であるにもかかわらず資金援助を受けてしまった金融機関があるわけでございますから大いに寄附を募ったらよろしかろうと思います。寄附を募るというのは今の大蔵省の実力ではちょっと難しかろうと思いますので、そのためにも銀行の資産も含めたディスクローズをきちっとおやりいただいて、経営実態を明らかになさればよろしい。そうしたらば世論の圧力が銀行に寄附を強要すると思います。  証券に関して言いますと、証券の寄託証券補償基金というのは三百五十億しか集まっていなくて、三洋の破綻でもう足りないということがわかったわけです。それで、大蔵省はどうなさったかといいますと、野村証券に百億円の寄附を要請した。つぶれてしまった、いや、まだつぶれていないんですけれども山一も含めまして、残りの三社がもう百億寄附をするということになっていたわけでございますけれども、そういう形をとることが可能だと思うんですね。  世の中では、学者の皆さんあるいはマスコミの皆さんが、健全な銀行にそうやって資金供与を強要することは健全な銀行の健全性を傷める、あるいは護送船団の中で奉加帳を回すというのは非常に不透明だとかというふうにきれいごとをおっしゃるんでございますけれども、私は今申し上げたようにきれいごとだと思います。どうしてか、非常に利益を上げてきたからですよ。得べきではない利益を得てきたということでございまして、その吐き出しは当然要求しても構わないのではないのかなと。吐き出しが要求できるようなディスクローズをきちっと行っていただいたらいいのではないのかなと思うわけですね。  そもそも預金保険というのは一九七一年にできているわけですね。寄託証券補償基金というのはもっと前にできているわけでございます。そういうものがあるわけですね。だけれども、それは形ばかりつくったのでございます、ほかの国のまねをしたりなんかいたしまして。実際問題として金融不安がどんどんどんどん高まってきているにもかかわらず、それに対する実際的な手当てというんでしょうか、準備というのを一切金融当局がなさってこなかったわけでございます。  寄託証券補償基金について言えば、法的根拠は何にもない。あれは要するに寄附を強要するという形でやってきまして、しかも外国系の証券あるいは銀行系の証券会社ができたにもかかわらず、そこには資金提供を求めていなかったわけですから、従来の証券会社はそれはばかばかしいといって九四年以降払わなくなっちゃったんですね。  証券会社経営がおかしい、破綻が進むということがさんざん議論されているにもかかわらず、寄託証券補償基金の充実とか、それから証券会社が保護預りしている証券は分別勘定になっておりますけれども、それ以外の現金とか、それについては何ら手当てがされていないということを大蔵省は当局として御存じであったにもかかわらず、全然手当てをなさっていないとか、そういう問題があるわけでございますね。そういう処理のおくれということもあって、なかなかその資金というのが積み増されていない。それから、証券会社数々あるにもかかわらず一件当たり二十億だというような、そういう処置もずっと今日に至るまで、三洋に至るまで放置されてきたということでございます。  そういう金融行政のおくれというのがいろんな問題を生んでいるわけでございますけれども、一方で大事なのは、ディスクローズの促進のおくれというのが大きくて、そのために処理がなかなかうまくいかないわけでございます。つまり、銀行とか証券とか保険会社とか、そういうところの経営責任を追及するということは同時に行政責任を追及することでもありまして、そのためにディスクロージャーがおくれたのではないのかなとうがった見方をしたくなってしまうのでございますけれども、その辺も含めて、先ほどお願いいたしました、ちょうどアメリカで金融恐慌の後つくられたペコラ委員会のようなものをおつくりいただいて、さかのぼってすべての事実関係を明らかにしていただいて、資金提供を強要すべきは強要して、それで手当てをおつけくださるというのが一番いいのではないのかなと思っております。  二度とこういう事態を招かないための、再発防止策としても必要なことでありますし、そのためには何よりも、しつこくて申しわけないんですけれども、行政責任を明らかにする、どこに行政の失敗があったのかということを明らかにして、組織の決定だということになったらば、そんなことを言っていたら会社だって組織でございますから、会社についてはきちっと個人責任を追及しているわけでございますね。だとしたらば、行政組織についても、やはりその場その場で御決断あった責任者という方がいらっしゃったわけでございますから、責任追及をおやりいただく。そうすれば、もしかしたら来年は自分はこのポストにいないんだということが先送りの理由になっていたかもしれないんですけれども、不作為の罪というのは厚生省だけではなくて他の省庁にもあり得るんだということで、不作為の罪、問題先送りの罪もきちっと追及していただく仕組みをおつくりいただきたいと思います。
  105. 笠井亮

    ○笠井亮君 最後の質問で、紺谷参考人にもう一つだけ伺いたいと思うんですけれども、いわゆる新型国債十兆円構想というのが今出てきておりますが、私はこれは新たな国債で生み出される財政資金を優先株の買い取りなどの銀行の自己資本の充実のために実施するということで、形を変えて国が借金して銀行を救済するのかなというふうなものとして見ているんですけれども、これはもう住専処理のやり方と同じようなことになるのじゃないかという見解を持っております。  同時に、これは財政構造改革法、国民に犠牲をしわ寄せにするということで私どもも言ってきましたが、そういう上に立ってこの財革法のもとで六年後の西暦二〇〇三年までに赤字国債をゼロにするという目標などを掲げたそれとも矛盾するようなものになるのかなと、のっけからそういうものとして映るわけでございますけれども、この新型国債十兆円構想についてもし御見解をお持ちであれば伺いたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  106. 紺谷典子

    参考人紺谷典子君) 私は、国債を発行してまで今日の事態の収拾を図ろうという、その趣旨は大賛成でございます。一刻も早くおやりいただきたいと思います。ですけれども、いわゆる新型国債というのは議論をごまかしているなと思っております。どういう点かと申しますと、やはり財政構造改革法と矛盾しない範囲でという感じで、NTTの株式とかJTの株式のそういう資産の裏づけのある、つまりそれを償還財源とした国債を発行しようということでございますけれども、それは非常におかしいんですね。  いろんな意味でおかしいのでございますが、まず何よりも日本は財政赤字が深刻だということが大いに間違っているというふうに思っているわけでございます。日本の財政赤字と言われているものは単なる財政の債務でございまして、赤字じゃないんですね。  どういう意味かと申しますと、負債は非常に大きい、確かに大蔵省発表のとおり四百兆、五百兆というものがあろうかと思うんですけれども、一方で国は処分可能な金融資産もたくさん持っておりまして、ネットの負債、それこそが本当の赤字であろうかと思うんです。その赤字部分で見ますと、日本は対GDP比でたったの一四・三%、ほかの先進諸国に比べても断トツに低い。OECD加盟国中最も低い、断トツに低いという現状があるわけですね。そういう資産について全くディスクロージャーを怠ってきたということをはしなくも露呈したのがあの新型国債でありまして、何だNTTの株があったのか、何だJTの株があったのかということでございますね。  そういうものだけではなくて、ほかにも数々のおかしさというのがあるわけでございますけれども、早い話が日本は貿易黒字の国でございます。つまり、貿易黒字ということは金余りということなんですね。ほかの国で財政赤字が深刻なのは、政府が使い過ぎなだけではなくて民間も使い過ぎている、生産した以上に輸入して使っている、だから貿易赤字なんでございますけれども、それはどういうことかというと、生産していないんだから所得がない、借金して輸入して使い過ぎているということですね。それはいつかどこかの時点で外国に返さなくてはいけない借金があるということでございます。ですから、大変だということなんですけれども日本は御承知のように世界一の債権国でありまして、もう何年にもわたって一番よその国にお金を貸している国なんですね。金余り国なんです。  ですから、言ってみればこういうことでございます。家計のやりくりがとても下手な奥様がいらっしゃる、政府でございます。政府がダイヤモンドとかも皮だとかいっぱい買っちゃって、一方で台風が来て屋根がわらが飛んだのに直していないから雨漏りがどんどんしている。子供が窓ガラスを割ったのにガラス屋さんを呼んでいないから風がビュービュー吹き込んでくる。働き者の御主人がいて、たくさんお金を持っていてお友達に貸しているほどだったんだけれども、風邪引いちゃった。おまえ風邪薬ないか、あなた風邪なんか布団かぶって寝ていれば治るわよみたいなことを言って風邪薬をくれなかった。つまり、景気対策が十分じゃなかったということでございますけれども、そうこうしているうちにもう寝ているまくら元にぽたぽた水は落ちてくる、寒風は吹き込んでくるという状態でございまして、ついに風邪が肺炎になっちゃったということでございます。  医者を呼んでくれと言っても、だってあなた病気で寝ているんだから残業手当も入らないわ、もうお医者さんを呼ぶ費用なんかないわよという状態になっているということでございますけれども、御主人様は働き者だったからお友達にお金をたくさん貸している。お友達は非常な低利で借りたお金で豪邸に住んで、栄養をとってどんどん出世競争ひた走っているということでございまして、日本は低利で世界にばらまいているお金で日本の持っていないハブ空港を外国にこしらえさせたりとか、クリントンさんにうちの経済運営の方がよっぽど上手だろうと威張られるような状態を生んでしまっているわけでございますけれども、それは非常におかしいんですね。  本当にやるべきことをやる、やるべきことのコストを低くやる。そして、やらなくていいことはやめる。毛皮やダイヤモンドは買わないで屋根がわらをちゃんと補修しなさいよ、そういうことが必要なのが財政構造改革ではないかと思うのでございますけれども現状の財政構造改革というのは構造改革ではなくて単なる量の削減になってしまっているわけです。赤字国債をいつまでに減らすとか、それから公共事業を七%削減するとか、そういうことなんですね。それはおかしいのでございまして、やるべきことは数々あるわけでございます。  つまり、首都圏の地震対策なんておやりいただかなかったら、東京都に大地震が来たらどうなっちゃうんでしょうか。道路拡幅も必要でございます。それから、電信柱を地中に埋めていただかないと、電信柱が倒れて消防車も救急車も行けない。もう何万人の死者が出るだろうということが予測されている。  下水道の整備が進んでいない。そのために、水道水の上水というのでしょうか源流が汚染されて、家庭排水ですとか工場排水が紛れ込んで、都会の方たちはカルキ臭いのを我慢すれば水は安全かと思っていたら、実はそうではなくて、カルキと化学反応を起こして発がん性の毒性物質が飲み水の中に混入しているというわけでございまして、まさしく国民の生命が危殆に瀕しているわけでございますね、安全が脅かされているわけでございます。  ハブ空港一つ持っていない。これから経済活性化だとアジア諸国が次から次へとハブ空港をつくっているのに、関空も成田も滑走路一本という非常にお粗末な状況があるわけです。  これから地域振興の時代である、地方分権の時代であると言うのでしたらば、ネットワーク型の道路網が必要なわけですね。ところが、日本は東北から中国地方に行くにしても東京都を通らなくちゃ行けないような道路構成になっている、中央集権的な道路構成になっているわけです。そのために渋滞を生んで、環境汚染をして、物流のコストを高めているというような状況があるわけでございます。  それだけではなくて、どこかからどこかに行く道路というのはできたら二本は最低限必要だと。うんと迂回していくにしても、三本ぐらいのルートがなかったらば、万一何かの災害が発生したときに、その道路が寸断したらば救援物資もなかなか運べないということになってしまうわけです。ですから、道路は要らないとか公共事業はもう変なことばかりだというのは、もしかしたら大蔵省がなさったキャンペーンではないのかなと私は思っているのでございますけれども、道路網の整備、ネットワーク型の道路網の整備は非常に必要でございます。  やるべきことが数々あって、それをいかにめり張りをきかせて優先順位の高いものからコストを低くやっていくかということが本当の財政構造改革ではなかろうかと思います。  アメリカの場合は、政府のリストラをして、官公庁のリストラをして、それで減税をしたんですね。そういうことによって景気をよくして、景気をよくしたことによって税収の増大を図って、フローベースではございますけれども、来年度には財政赤字がゼロになるという見通しが立ってきたということでございます。  ですから、景気対策と財政構造改革が矛盾するという考え方自体がもう既におかしいわけでございまして、景気をよくすることによって税収増を図り、それによって財政赤字を削減していくというのが一番基本的な考え方ではないでしょうか。それが日本では増税したことによってさらに税収が落ち込んできている。ですから、来年予定どおり赤字国債を減らせないという事態になってきてしまっているわけでございますけれども、それはとてもおかしいわけです。  そういう本来の議論をきちんと展開しなくてはいけないにもかかわらず、ただただもう財政構造改革を決めちゃったから、それは喫緊の課題だと言っちゃったからそれと相矛盾する景気対策はできない、金融不安対策はとれないということで、ああいうアイデアというのでしょうか抜け道というのでしょうか、お考えくださったので、政府が納得して国債を発行してくださるのはそれはそれでいいと思うんですけれども、本来国債というのは国の信用をバックにするものでございまして、償還財源があるかないかなんというのは関係ないんですね。償還財源と言うなら、あれはそもそも償還財源に算入されているわけでございます。  そういうことではなくて、本当に日本の財政赤字というのがどの程度深刻で緊急な状態なのかというディスクローズをまず大蔵省に要求なさってください。日本はたくさんの金融資産を持っていて、財政赤字というのは緊急でも深刻でもないという姿が見えてくるはずだと思います。その一端がかいま見えたのがあの新型国債の償還財源と言われているNTTとかあるいはJTの株式でございまして、あれだけではなくてほかにもいっぱいあるのでございますから、そういうものをお調べいただくといいと思います。  それで財政構造改革が必要なくなるかというと、決してそうではないんです。財政構造に問題があるということは論をまたないわけでございまして、それは大いにお進めいただいたらいいと思います。だけれども、今緊急を要しているのは景気対策金融不安対策の方でありまして、財政構造改革なんというのは、本当の構造改革だったら今すぐにだって進めていただきたいと思うんですけれども、単なる量の削減、緊縮財政であるのだったらば、もうこの瞬間におやめいただきたいと思うくらいでございます。  その財政赤字を将来に先送りするというふうによく大蔵省の方はおっしゃるのでございますけれども、それは子孫に残す禍根であるというお話なんですけれども、もしも日本の景気、金融不安がどんどん悪化して、日本発の金融不安、不況を世界にばらまくようなことになったらば、それによって失う日本の信用とか国際交渉力というのは財政赤字どころではない大きな大きな禍根を子孫に残すと思うわけでございます。だから、何が緊急なのかという御判断がまずあってしかるべきでございます。  財政構造改革は必要です。必要ですから安心しておやりいただきたいのですけれども、本当の構造改革をおやりいただきたい。単なる緊縮財政を構造改革というふうにごまかしているところがあると思うんです。ですから、新型国債をお出しいただくというのが便法としては私はいいかなとは思わなくもないんですけれども、まやかしはまやかしてございます。消費税を国民福祉税と言ってごまかして通そうとしたあの細川内閣の愚かさをまた繰り返すということでございますから、そういうことではなくて、きちんと本当のことを国民に御説明いただいてやっていただくのが一番いいのじゃないかと思います。
  107. 笠井亮

    ○笠井亮君 ありがとうございました。
  108. 石川弘

    委員長石川弘君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の方々に一言御礼のごあいさつを申し上げます。  参考人の方々には、長時間にわたり御出席願い、率直かつ貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  参考人の方は退席していただきまして結構でございます。  引き続き、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  109. 河本英典

    河本英典君 きょうは三度目の登板でございまして、大変細切れな変則的な質疑で大変申しわけございませんけれども、私にとりましては非常に勉強しながらやらせていただいておるという感じで、今も参考人との質疑を十分に聞かせていただいたところでございます。かなり大蔵省のことなんかおもしろいことをおっしゃっていらっしゃったので、また機会があれば速記録などを読んでいただければいいのじゃないかなと、大蔵省に聞いていただいた方が参考になったのじゃないかなというようなお話も今出ておるわけでございます。  引き続いてやらせていただきたいと思います。  先ほどちょっと切れたところは、預金保険の財源についてお聞きして、この制度改正で対象となる金融機関がふえることによって預金保険の財源に支障を来すのじゃないかなというところをお答えいただいたところで終わりまして、私も御答弁いただいた部分をかなり忘れてしまいましたのでもう一度、最後の方だけで結構でございますのでお話ししていただいて続けていきたいなというふうに思うわけでございます。  保険料云々の話もございましたし、それから保護不要の極論というようなお言葉もあったように覚えておるわけでございますけれども局長、その辺から、後段からで結構でございますのでちょっとお願いいたします。
  110. 山口公生

    政府委員山口公生君) まず、この法案に盛られております特定合併の仕組みの影響でございますが、私どもとしては早目の処理に結果的になりますので処理コストはそのまま放置する場合よりは少なくて済むのではないかなという感じを持っております。その点を一点御説明申し上げました。  さらに、それだけにとどまらず預金保険機構財源全体がどうかという御質問だったと思います。それにつきましては、せんだってからも御説明しておりますように、残りが一・三兆で、大型破綻等が起きておりますので、そういったものをこれで賄うということになってまいりますが、国民の皆様方に財源として大丈夫かという御懸念がないように、ひとつそのあたりは公的な支援によって利用可能な資金を拡充していくことも検討していくべき時期ではないかという感じがいたしておるわけでございます。  と同時に、また保険料の問題というのもございますので、これは十年度末までには検討するというふうになっておりますので、この点についても金融界と私どもお話をさせていただくことになるというふうに思っております。
  111. 河本英典

    河本英典君 重複して申しわけございません。  今、金融ビッグバンの中でグローバルスタンダードということが、これは金融システムだけじゃなしに日本経営の中でいろいろ言われておるわけでございます。  もちろん、預金者の保護ということには間違いないわけでございますけれども、これは国内の預金に限ってのことでありますから例えば外貨預金を保護するということはならぬわけでございます。そういった意味で、預金者もグローバルスタンダードでよく考えてやらないと、経営側も護送船団方式で割と保護された中で横にらみでやってくればよかったという状況の中で、預金者ももちろん保護していかにゃいかぬということの基本的な考え方はわかりますけれどもグローバルスタンダードからいえば、極論すればこれもある意味じゃ預金者の責任ですよという、金利差があれば金利の高い方へ行ったということは自己責任でやったんだという考え方があるわけですから、そういった考え方はあると思うんですけれども、それでいいんですか。    〔委員長退席、理事楢崎泰昌君着席〕
  112. 山口公生

    政府委員山口公生君) まさに先生のおっしゃっている点が大きな意味でいきますと一番重要な部分でございます。  ともすればそのときそのときの経済情勢とか金融情勢等でいろいろ議論が非常に盛り上がっていると思うとまたそれが下火になったりということを繰り返しておりますけれども、長い目で見たときには金融機関の自助努力、自己責任というのが徹底して求められると同時に、預金者にも自助の精神といいましょうか、自己責任というものが求められていくということは必要であろうと思います。  ただ、その際にはやはり金融機関の姿勢の問題、情報開示の問題等がございますし、それに加えまして預金者の方々が自分の財産をきっちりと管理することについて自己責任というものをどれくらい意識していただくか。仮に金融機関がいろいろディスクローズしましても、そんなディスクローズ誌を見ても難しくてわからぬ、そんなの言われても私どもには理解できませんと言われますともう手がなくなるわけですね。それで、むしろマスコミ等で言われる、あるいは時々起きる風評等を頼りにされますとまたこれは困ることでございまして、したがって私どもの行政としてもなるべくそういった自己責任というものを醸成するようなことをやっていかなきゃいけないと思います。    〔理事楢崎泰昌君退席、委員長着席〕  ただ、今の時点でそれを高らかに言うということにつきましては、やはりこういう非常に皆さんが不安に思われるというような時期が若干続いておりますので、大臣からも預金者を守りますということを強く言っていただいておりますけれども基本としては先生おっしゃいますように自己責任の方へのステップは確実に進めていかなければいけないことだろうと思っております。
  113. 河本英典

    河本英典君 本当に極論というふうに聞いていただいたら結構なんですけれども基本的には私はグローバルスタンダードというのはそういうことになるんじゃないかなというふうに思うわけでございます。  グローバルスタンダードということをもっと幅広く考えますと、経営ということが今言われております。特に、今、金融システムについて、銀行経営についてお話ししておるわけですけれども、世間一般で言いますと、サラリーマンが一体幾らもらうのが国際的な基準なのかなということも言い出しますし、年間一千万もらっている方がどこか、格付じゃございませんけれども、コンサルタント会社かどこかに査定してもらったら実際は六百万の値打ちしかなかった、四百万多目にもらっておるというふうなことがいろんな分野で実は行われているのではないかなというような気がいたします。  さらに、行政も、それから我々選挙で上げていただいておる政治家も日本的な風土の中の非常にローカルな条件の中での職業でございますので、これもある意味ではグローバルスタンダードに実は乗っていない分野じゃないかなというような気がいたします。どこへ持っていっても通用するというのが実はグローバルスタンダードではなかろうかと。そういった意味で、大変厳しい時代になるんだな、しかしそれは国際化、ボーダーレスの時代においてこれは鎖国でもしない限り逃れられない状況なんだなということでますます自己責任時代になっていくということを最近つくづく感じておる次第でございます。  話は戻りますけれども、現在の金融システム安定のために公的支援ということが盛んに議論されておるわけでございますし、先ほどからも随分話が出ておるので重複して申しわけございませんけれども、大きく分けまして、金融機関破綻処理に際しての預金保険の財源負担をどのように強化するかという論点が一つと、それから金融機関の財務体質、自己資本率を上げるというような話ですけれども、そういった財務体質をどう強化するかという論点の二つ、もうちょっとあるかもしれませんけれども、二つに分かれると思うわけでございます。  いずれにいたしましても、預金者保護と金融システムの安定に万全を期すということは一番大事なことでありますし、内外からの我が国金融システムに対する信頼を回復するためにも公的資金導入を含めた抜本的な対策を早急に打ち出す必要があるというふうに考えます。  これにつきまして大蔵大臣のお考えをお聞きしたいと思う次第でございます。
  114. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 公的資金につきまして、大きな意味で公的支援ということになるわけでありますが、同時に一般会計から捻出をするという公的資金、さらに財投資金を活用して行う手法、そしてただいま日銀最大システム安定という観点から行われております日銀特融、こういうことがあると思います。  そういう点で、預金者保護という観点を踏まえて、銀行局長が言われましたとおり、一・三兆ありますけれども、これでさまざまなことに対する対応が一応できるとは思うが、やはり万全を期しておくことで御安心をいただけるわけでございますから、保険料の見直し、さらに三党を中心に、また自民党は自民党として努力をしておる支援のあり方ということの中で政府保証というのが論議になりましたり、さらに梶山前官房長官の新提案の新型国債という概念の中で取りまとめをできないものだろうかということ、以下、既にお聞きのとおり、渡辺議員の銀行体質強化ということの中で劣後債なり優先株を引き受けるようなことはいかがなものか、研究すべきではないのか、衆議院大蔵委員会においてそういう意見の開陳などもあり、そんなことも党内論議の中で行われておるところでございます。  私自身、この論議の煮詰まりを期待いたし、できるだけ早く宮澤先生をキャップとする緊急金融システム安定化対策本部における取りまとめを期待申し上げておるところでございます。同時に、三党の協議が相並行して政策責任者の間で行われておる、こう承っておるところでございまして、その点を期待しておるところでございます。  問題点は、預金者保護は、破綻の場合に万全の策をとって保証しお返しを申し上げますよ、こういうことで国民生活に対する金融機関の安心を期する、そして皆様にも御安心をいただけるということで機能いたしておりますから、あれだけのことが起きましても冷静な国民各位の行動によって騒ぎにならず来ましたということは大変すばらしい国民性であるし、そういう点における対応も評価いただけるものなのかなとは思います。  しかし、同時にシステム安定という最大目標がございます。このシステムが安定しておりますことが内外に与える信認感という意味で大変大事なポイントなものでございますから、この点はイコールで考えていかなければならない金融政策の最大課題であるのではないだろうかと。  そういう中で、党内で、また三党の中でも議論されておる体質強化策というものは国民の御意見等を踏まえながら、また政治でございますから万全を期するという意味で議論が行われておりますこと、このことは御歓迎を申し上げておるというのが率直な意見でございまして、そういうことで今後の論議の煮詰まりを大蔵省とすれば最大限期待をしながら、いずれにいたしましても取りまとめをいただけるということを御提示いただけますれば私どもは万全を期してこれを受けとめてまいりたいというのが率直なただいまにおける考え方でございます。
  115. 河本英典

    河本英典君 貸し渋りという話がよく出ておるわけですけれども、それは自己資本比率を高めるために貸出量を減らそうということになるわけです。逆に、自己資本比率をアップするために先ほど言いました一つの論点の金融機関の財務体質を強化するという論点から株式、第三者発行みたいになるのかどうか知りませんけれども、特別に株を持つということが財務体質強化という公的支援ということになるわけですけれども、このあたりはどういうふうにお考えか、局長にお聞きしたいんです。
  116. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今、先生の御指摘の貸し渋りの現象というものにつきましては、かなりいろいろな声を私どもも聞いております。  ただ、全体として見ますと、金融は緩和している状況の中での現象でございます。したがいまして、個別ケースでいろんなことがあると思います。それは金融機関が、今、先生のおっしゃった財務体質を改善しようということで思い切って締めている場合もある、あるいは今まで審査をかなり温か目にやっていたのを非常に厳し目にやり始めた、審査体制の強化をしたという問題もあるかもしれません。いろいろ区々のケースがあると思います。  ただ、金融機関が本来果たすべき役割というものも当然あるわけで、地域金融機関としては地域金融機関、あるいはマネーセンターバンクマネーセンターバンクとしての要請があるわけで、その辺につきましてはやはりそれなりの役割は維持していっていただく必要があると思うわけでありますけれども、ただ財務体質を悪くしてまでそれをやれというわけにはいきませんので、そこのあたりについては政府系の方でかなり思い切って対応するということで今対策をやっておるわけでございます。  自己資本比率の方での原因もあるかもしれませんし、あるいは、最近非常に資金調達に銀行が懸念を持って、したがってどんどん貸しますと余計資金取り入れなきゃいけないということがあります。そうすると、例えば大口の預金なんかがどっと抜けたときにどうするかということをいつも心配しますと、なかなかその辺が貸し込めないという事情もあるかもしれません。したがって、今の金融情勢を安定させることも大事であります。したがって、単に貸し渋り現象と言われるものをその自己資本比率だけの問題としてとらえるのがいいのかどうかという問題はあると思います。  ただ、これに関しまして先ほど御質問ありましたようないろいろ対応策というのが各界で御議論されております。また、それに対しては御意見もいろいろ出ております。マスコミ等でもいろんな意見があります。そういったところもよくお聞きをしながら判断していくべき問題だなというふうに考えております。
  117. 河本英典

    河本英典君 おっしゃるとおり、貸し渋りの原因が必ずしも自己資本比率の問題だけじゃないということはよくわかりますけれども、しかし、世の中というのはおもしろいもので、必要ない人は余り資金が要らぬわけで、要る人が実は貸してもらえないというのが貸し渋りという言葉になってくると思うんです。もちろん、商売でやっておるわけですから危ないところに貸すわけはないわけですけれども、その辺がもしブレーキになっているのであれば公的支援ということも実は考えていかなきゃいかぬというふうに思うわけであります。  それからもう一つ、今、公的支援について分類二つというふうに申しましたけれども、預金保険の財源負担をどうするかということ、それから金融機関の財務体質をどう強化するかということともう一つ、先ほど参考人からお話を聞いたんですけれども、不良資産の処理という話が出ておりました。  金融機関も余力のあるところは自力でかなり不良資産を処理されたわけですけれども、一番大切なことは実態といいますか、実質面でこれからどういうふうにやっていくかということについて少し何かヘルプをしていかなきゃいかぬのじゃないかなと。特に、土地と株式といいますか、その辺が実は少し下げどめから上がるような状況になることで随分これはよくなるというふうに思うわけでございます。  この辺が要するに景気の問題とも関連するわけでございますけれども、何らかの方法というのは考えられないんでしょうか。
  118. 山口公生

    政府委員山口公生君) 私の立場で答え得る話がどうも限られていると思うのでございますけれども不良債権処理、これはやはり各銀行が自分でもうけたもの、あるいはリストラして生み出したもの、そういったもので消していく、あるいは引き当てていくべきものでございます。  したがって各銀行とも、例えば向こう五年間でこういう計画で償却、引き当てをやろう、あるいは三年間で思い切ってやろうということで計画を立ててやっているわけでございますけれども、最近の傾向としましては、やはり格付会社というものの存在もありまして、どうも市場の評価が償却をどれだけやったか、あるいは引き当てをどれだけやったか、つまり不良債権処理をどれくらい急いでやったかをむしろ評価する傾向があると。  そうすると、本来計画的にやろうと思っていたのが一挙にやるという傾向が各銀行等で今起こっているような気もいたします。そうしますと、先生がちょっと御指摘されたような自己資本比率の方で少し懸念が出てくるわけですね、一挙にやりますから、今までの内部蓄積等を使うわけですから。それで貸し渋りの現象等の原因になっているんじゃないかという議論が当然出てくるわけです。そこに株価等の問題が加わってより慎重になっていくというようなことが懸念されるわけでございます。  ただ、株価とか土地そのものをどうするかということにつきましては、これはいろいろな原因でそういった価格が決まってまいりますので総合的な形での対応策ということになるのかなという感じがいたしておるわけでございます。もちろん、金融システムの安定ということ自身がまたそういったもののベースになるということも私どもはよく自覚をして対応しなければいけないと思っております。
  119. 河本英典

    河本英典君 まさしく、今、局長がおっしゃったのは悪循環の方の話でございまして、先ほどの言葉をかりますと、ミクロで一生懸命やればやるほどマクロでおかしな話になるというような状況でございまして、その辺から脱却しないと金融システム安定、それから金融機関が非常によいバランスシートをつくることになっていかないというふうに思うわけです。直接的に公的支援ということでお金を出すわけにはいかぬわけですけれども、そういったことを間接的にやるような支援ということを考えていくということが経済政策かなというような気がいたします。ちょっとピントは外れていたかもしれませんけれどもお話ししたわけでございます。  そういった意味で、公的な資金を導入するという前提としてディスクロージャーという問題が非常に出てくるわけでございます。これは言われて久しいわけですし、この話ばかり随分出ておるわけでございます。会社という公的なものを考えた、これは日本人が考えたわけじゃない仕組みでございますけれども、要するにその中身をきっちりみんなに見せるということなんです。  一番いい例が、日本の会社は営業報告書を見ていますと我が社はというところで始まるわけですけれども、欧米の会社は株主に対して語りかけるわけですからユアカンパニーというふうな言い方をするそうでございます。まさしくだれのものかということの経営と資本の分離がきっちりできている。だから、お預かりしたものに対して、それこそ町内会の会計を預かっているみたいなものでちゃんと会計報告せにゃいかぬわけですから、これがまさしくディスクロージャーの原点であります。マイカンパニー、アワカンパニーと言っている分にはこれは好きなようにしてもいいじゃないかという考え方は、そんなことはないと言ってもあるわけですから、その辺からの商習慣であるとか日本人の経営文化、いろんなところに根差したものであると思うわけです。  ディスクロージャー、ディスクロージャーと言われておりますけれども、これはグローバルスタンダードと同様にこれからの本当の意味でのキーワードになるんじゃないかなというような気がいたしております。ディスクロージャーをもっと充実させるというふうに思うわけですけれども、これはまた概論みたいなことになるかもしれませんけれども、お考えを伺いたいと思います。
  120. 山口公生

    政府委員山口公生君) 全くこれからは株主を大切にするということがどうしても必要でありますと同時に、マーケットにいかに正しく理解をされて信頼を得るかということが重要なわけでございます。中身を開示しない場合には疑いを持たれるということになりますとそれはマイナスの評価になるわけでございますので、そういった意味では、先生のおっしゃるとおり、これからディスクロージャーということは不良債権だけの問題ではありません、いろいろなものをやはりディスクローズしてマーケットの理解を求めていく、そのことがむしろ評価を高め、資金調達コストを低め、そして収益構造を強くするというふうに持っていくことになる、必ずそうなるというふうに思っております。
  121. 河本英典

    河本英典君 本当にこれは中途半端なディスクロージャーが一番危ないわけでして、まだ隠しているんじゃないかというようなことで株価が下がったり、先ほどの話になるわけでございますけれども、これは一つの国際ルールであるということで考えていかにゃいかぬなというふうに思うわけでございます。  ちょっと話が前後しますけれども金融機関信頼が揺らいでいる一つ金融機関不良債権問題があるというふうに思うわけですけれども不良債権現状を少しお聞きしたいのと、それから債権の流動化など今後の対応策について聞いておきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  122. 山口公生

    政府委員山口公生君) 不良債権の問題は例の統一基準でもってお示しをしておりました。それだけでは不十分だという御批判もかなり受けておりますけれども、その統一的な数字でいいますと減ってきているし、引き当てはふえているというような状況であります。  ただ、いつも御説明していますが、個別銀行はそういった中にあってもまだ苦しんでいるところはあるということでございます。  問題は、先ほど引き当てとか償却とか申し上げましたが、帳簿上の引き当てをやっただけではそれは見合っているものだけでございまして、御専門の先生には釈迦に説法になりますが、そうすると実際それを稼働資産に変えていくためには不動産なり貸付債権を流動化する必要があるわけです。したがいまして、そういった債権を流動化して資金回収をするあるいは稼働資産にしていくということの知恵が要るだろうと。そのために例えば、また御審議を次期通常国会にでもと思っておりますけれども、SPC法というようなものをお認めいただきますと、特別にそれを目的とする会社をつくって、それで資産を担保に、あるいは資産そのものあるいは不動産そのものを流動化して市場からCPとか社債とかそういったもので資金を調達していく、そういった工夫、スキームを私どもも整備しますとかなり進むのではないかというふうに期待しておるわけでございます。したがいまして、単に帳簿上の処理だけじゃなくて、実際上そういった形での応援の体制ができればというふうに思っている次第でございます。
  123. 河本英典

    河本英典君 今、帳面上の云々とおっしゃったように、まさしく私が先ほど言いました実態面での不良債権がどうかということ、これが今の困難というか危機的状況を乗り越える最大のポイントじゃないかというふうに思うわけです。  それと、先ほどの参考人お話であったおもしろい話ですけれども銀行というのは結構資産を持っているという話なんですね。資産というのは流動資産と固定資産があるわけですけれども日本の場合は土地であるとか建物であるとか美術品であるとか、いろいろあるでしょう。美術品がたくさんあるわけじゃございませんけれども、しかし簿価から比べれば大変な時価になっているような資産というのを長い歴史の中で恐らく僕は持っておられると思うんですね。それを吐き出せというわけじゃございませんけれども、何かアメリカの銀行ではほとんど資産というのを持たないでやっている会社があると。だから、本当に国際基準の会社の体質に変えていくのかと。  日本はある意味では今まで不況に対する対応力として資産を持つということが一つの会社の考え方でありました。特に、製造業なんかは不動産をたくさん持っておりますし、赤字を出しても何十年もやっていてつぶれない会社があるわけですが、これは優良な不動産を大変安い簿価で持っているということで今までずっと来れたわけです。これはある意味ではグローバルスタンダードと反対の話になるかもしれませんけれども日本国有の会社経営の仕方であるわけですからその辺のかじ取りといいますか、バランスが難しいなというふうに思っておるわけでございます。  会社を上場しまして、本当にすっからかんになってしまって倒れたらもう知らぬということでは失業問題にもなりますし、社会的に使い捨ての会社がごろごろするようなことになったら困るわけですから、やはりその辺は資産といいますか、安定した時価での土地をある程度、不必要に持つと負担がかかりますのである程度持ち、それから株式を持ってそれなりの資産を、高資産会社というのも実はたくさんあるわけですけれども、ここら辺が難しいところかなというような気がいたします。  しかし、きょうは金融機関破綻の問題をしておりますので先ほどの話に戻りますけれども金融機関というのは長い歴史の中で結構資産を持っていると、先ほどそういったことをおっしゃっていました。  それから、先ほど言うのを忘れたんですけれども、ディスクロージャー、日本の国家のディスクロージャーもやれという話がございました。大蔵省はそういった銀行で言う資産的なものをまだいっぱい持っているんじゃないかなと、国の財務のディスクロージャーをもっとやれというような話が出ておりましたのでつけ加えておきます。あるかないか知りませんけれども、そういった話がございました。我々もなるほどなと。  ディスクロージャーというお話を言いながら日本の会社経営の特質ということも両方申し上げましたけれども、これがこれからの日本経済運営していく大きなポイントの原点になるんじゃないかというような気がいたしましたので、ちょっと余分でございますけれども、申し上げた次第でございますが、いかがですか。
  124. 山口公生

    政府委員山口公生君) 銀行が結構資産を持っているという御指摘でございますが、それは恐らく土地とか建物とか、その辺を再評価でもして償却に充てたらどうかというような御指摘につながる話かと思うのでございます。  それは一つ考え方として成り立つと思いますが、ただ商法の考え方あるいは企業会計原則の考え方は固定資産につきましては簿価でやるというのを大原則にしておりまして、今、金融機関不良債権で困っているからそこだけ特例的に何かやってあげよう、あるいは税金もどうしようということが成り立つ議論かどうかというところはいろいろ御議論があると思うのでございます。  それで、別に私はそれをいいとか悪いとか言っているわけではありませんけれども、だんだん時価会計に近づいていくということは流れとしてはあると思います。ただ、固定資産について時価にしていったときにどういう問題があるだろうかと。例えば、地価が下がったら今度はまた低価法で土地建物の簿価を修正しなきゃいけないというような問題にもなるわけで、検討を十分するべき問題であろうかなという感じがいたしております。     ―――――――――――――
  125. 石川弘

    委員長石川弘君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、長尾立子君が委員辞任され、その補欠として清水達雄君が選任されました。     ―――――――――――――
  126. 河本英典

    河本英典君 話として聞いていただいたらいいわけでございますけれども銀行が全部資産を売りに出したら、買い手がだれやということになるわけですね。言うならば日本の国の不況産業が何か売りに出して、それでまた新しい産業が興ってそこが買い取る、それを一時的に持つのが今まで銀行であったりしたわけで、銀行がみんなそうして資産を売りに出したら、買い手はだれかというと実は個人なんです、今は個人が一番お金を持っている時代ですから。それは全体としての話です、実際は買えないわけですから。  これは一つの話でありますからそういうふうに聞いていただきたいんですけれども、私が思いますのは土地、今おっしゃいましたように、簿価が安いから、土地勘定に安い土地があるからずっとやってこれるわけでして、これがぼんぼん洗いかえして高い土地を買ってやり出したら今度は逆にすぐパンクするわけですから、そういった意味からも土地というのは明治以来の近代工業社会、近代社会になってからの経済成長、その成長程度には上がっていかないと日本の会社経営はなかなか成り立たないんじゃないかというのが私の考え方なんです。  それが極端にはね上がったのがバブルでありますし、はね下がったのが大変今問題になっておるわけです。私は、ずっと今までのカーブの線の上に乗るような土地の水準になり、さらにちょっとずつではあるけれども成長程度には上がっていくんだという安心感があれば経済というのはある程度軌道を回復するんじゃないかなというような気がいたします。  そう思う次第でございますが、いかがでしょうか。
  127. 山口公生

    政府委員山口公生君) 大変実務に裏打ちされたいろいろな御経験からの御示唆でございます。  確かに、そういう資産価格というものが成長とともに順調に上がっていくというのは健全な姿であろうと思うのでございますけれども、ただいろいろマーケットというものは思惑あるいは期待というものがどうしても入ってまいりますから、オーバーシュートといいましょうか、一時的にぐっと盛り上がって、盛り上がったらますます盛り上がるというような現象、シュリンクし出すとますますシュリンクする、そういう現象が各国でも起きておるわけでございます。これが毎年起きるわけではありません。何十年に一回とか、そういうことで起きるわけであります。  そういったことを経験しながら一人一人の国民が、あるいは企業家が自分の経営を通しながらモデレートな姿とはどんなものだろうかというイメージを持っておけば、単なる期待値だけで市場を盛り上げ、あるいは市場を著しく収縮させるようなことはないだろうなと思うわけでございます。  いろんな経験を踏まえながらそういったことをやっていく、我々政策当局としてもそういったことをいつも忘れないでやる必要があるのではないかというふうに思っております。
  128. 河本英典

    河本英典君 きょうは金融機関破綻の問題なんですけれども経済全体のお話をさせていただいたわけです。やはり、金融というのは経済の血液だと言われているようにある意味では基幹産業でもあるわけですし、それから人間の体も血液を調べたら病気がわかるわけですから、これは単なる金融機関を見るという行政じゃなくて経済全体にかかわる行政である、もちろんそういうふうに認識していただいておりますでしょうけれども、しかし恐らく大蔵省銀行局が思っておられる以上に私は大きい影響を与えている場所だというふうに思っておりますのでそのことを申し伝えまして、私はこの辺で終わらせていただきます。
  129. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 引き続いて質問させていただきたいと思います。  この法律案は、第一に健全な金融機関破綻金融機関が新設合併を行う場合に預金保険機構からの資金援助を可能にするということ、第二点としては、平成十三年三月までの時限的措置として二以上の破綻金融機関がすべて当事者となって新設合併を行う場合、いわゆる特定合併の際に預金保険機構からの資金援助を可能にした点、この二つが大きな改正点であるというぐあいに心得ております。  それで、実際問題として第一のいわゆる新設合併、要するに健全な金融機関破綻した金融機関合併の場合には資金援助を、要するに現ナマ、現ナマを資金援助するという考え方だろうと思うんです。それから第二の場合には、午前中に局長が答えられたように、不良債権を時価で買い取る、こういう区分があるのだろうと思いますが、そのとおりでしょうか、それとも若干違うのでしょうか。
  130. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今、先生の方から整理してお尋ねをいただきましたが、いずれの場合も不良債権の時価での買い取りになります。先生がおっしゃいました現ナマで上げるというのは、金銭贈与と言っておりますが、それは債務超過になって資本で埋め切れないロスの部分でございます。したがって、一応合併の形をとる以上は資産超過の状態、つまり債務超過ではないということでございますので、本則でも附則でも不良債権の買い取りという形が考えられるわけでございます。
  131. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 そうすると、債権を時価で買い取る、そしてそれを保険機構が保有して何らかの機会にそれを時価でまた売って資金を回収する、こういう形になるわけですね。そうなってくると、フローのお金はもちろんそれは信用維持のために買い取ってやらないと資金が動かないという問題がありますからそれなりに大きな効果があるというぐあいに考えますが、今度はあべこべに保険機構の方から考えると、時価で買い取り時価で売れるわけですから、下がれば別ですよ、上がればまた別ですが、一応考え方としては損得がないと、要するに保険機構の資金影響を及ぼさない仕組みであるというぐあいに考えてよろしいのでしょうか。
  132. 山口公生

    政府委員山口公生君) 御指摘のとおり、預金保険機構は時価で査定して買えます。例えば、もう回収ができないと見込まれたものはゼロで買い取るわけですから、それがもし万一相手が生き返って返ってくるとか、あるいは何らかの配当があって返ってくるとなればそれはプラスになります。逆に、時価で買い取ったものが担保の評価価値がまた下がって、それでロスが出るとなると、そこはロスになります。だから、どちらがプラスになるかマイナスになるか、それはわかりません。しかし、時価で買い取った時点ではその点は中立てございます。
  133. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 ということは、この法律によって大きく保険機構の負担がふえるとか、そういう話じゃないと。それはもちろん担保になっている不動産が上がったり下がったりするであろうけれども制度的には中立である、要するにフローのお金が必要なだけだと、こういうぐあいに考えてよろしいですか。
  134. 山口公生

    政府委員山口公生君) そういうことでございます。
  135. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 そうすると、これに対してこういう法律案をつくると、保険機構の金繰りは多少問題がありますけれども、保証財源としてのお金は、多少は違ってくるでしょうけれども、それで負担がふえて困るよという話じゃないと、こういうぐあいに理解しますが、それでいいですか。
  136. 山口公生

    政府委員山口公生君) おっしゃるとおりであります。むしろ、このまま放置してこれが債務超過になるような状況になりますと、これはロスが出てきます。そのときにはもっと財源が必要になるということで、むしろ財源的に言うと早目のこういった処理の方が助かるというふうに思っております。
  137. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 ということは、本当に破綻処理になってくると無理して清算をしなきゃいけませんから、そこに破綻処理のための大きなロスが出てくるよと。しかし、合併であってずっと新設の法人にそれを抱えていてもらえば、それは自然な経済原則で処理されるんだからその方がずっと効率もよく、かつ負担も少ないよということになるんでしょうか。
  138. 山口公生

    政府委員山口公生君) 結果的にはそういうことを期待できるわけでございます。ただ、これはもともとその銀行がみずからやるべきことが本来ではあるということは申し添えておきます。
  139. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 そこで、いろいろ財源論が言われているわけですね。そうすると、この法律改正案そのものは財政的には大きな負担を保険機構にかけるものではない、フローの問題だけであると。しかし、フローの問題を片づけてやることがすなわち地域的な金融機関金融行政に対してプラスであるし、ということは破綻に至ると地方経済に及ぼす影響、さっきから申し上げますけれども、地方の経済といっても特に借り手なんですね、貸し手というよりも借り手、借り手の安定を保持するということに貢献するんだろうなというぐあいに思います。  しかしながら、議論されているのは、先ほどもちょっと議論がございましたけれども、要するに二〇〇一年までの間の五年間の収入は二兆七千億円である、それに対して今一兆四千億使っちゃったと。それからさらに、予備軍として、どうも破綻はしたんだけれどもまだ使っていないというのが四銀行四組合あるというぐあいに言われています。それがどれくらいの大きさのものであるかわかりませんけれども都市銀行が一行含まれているし、地方銀行も大きな銀行が一行含まれているというような状態ではこれがあと一兆三千億残っているといっても賄い切れるのかなと、この金融不安の時代にこれからどういうものが出てくるかわかりませんけれども、大丈夫かなというような気がいたします。  その不安についてはしばしば当委員会においても議論され、幾つかお答えになっていますけれども、その中の一つに保険料というものは再検討するように法律に書いてあるんだというようなお答えがありますが、現在の保険料というのは非常に高いんですね。  そう言ってはあれですけれども、保険機構が発足当時は一般保険料は〇・〇〇六%であった。そのころは金融が安定していましたから破綻をするというようなことはほとんど考えられないねということであったと思うんですけれども、現在は特別保険料を含めて合計いたしますと〇・〇八四%になっておるわけですね。非常に耐えられないと。健全な銀行からいうと、おれのところは破綻しないのに何でこんなに多くの保険料を払わにゃいかぬのだと。私は比例代表区ですからしばしば地方の銀行を訪れることがあるんですけれども、何でわしらがこんなに高いのを払わにゃいかぬのだと。要するにこれは護送船団の一種なんですね。何でこんなことをやらにゃいかぬのだというぐあいな不満をしばしば聞かされています。  そういう意味では、この保険料をこれから引き上げるというのは非常に困難じゃないかと、いや保険料を引き上げることもあるよとおっしゃるけれども既に限界に達しているのではないかというぐあいに思われますけれども、いかがでしょうか。
  140. 山口公生

    政府委員山口公生君) 保険料の料率の問題につきましては十年度末までに見直すということになっておりますので私どもその見直しに取り組む必要があるわけでございますが、そのときの金融機関の財務の状況等を勘案し、また機構が必要としている財源の問題等を勘案し、やはり総合的に見て決めていかなきゃいけないというふうに思っておるところでございます。  確かに、先生のおっしゃいますように、保険料を七倍に上げましたのでかなり負担が重くなっていることは私は承知しておりますけれども、そのあたりの調整は十分に出し手である金融機関とも議論を尽くしてやってまいりたいというふうに思っているわけでございます。
  141. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 これまでの説明では、二兆七千億あるよ、今使っているのは一兆四千億だよと。一兆三千億余っているような印象の答弁になるんですね。  しかしながら、現時点においては日銀、民間金融機関からの借り入れがあり、現時点だけで切ってみると既にパンクをしている。しかも、先ほど申し上げたように、四銀行四組合の破綻が現在あると。それはいつ確定するのかわからぬけれども、そういうものが予備軍として待っている、そういう状態だとなかなか私は難しいんじゃないかなというような感じがするんです。  現時点において四千億ぐらいの借り入れをしておられると思いますけれども、どういう内訳で、どこからお借りをしてその場をしのいでいるんですか。
  142. 山口公生

    政府委員山口公生君) 現在、日本銀行及び民間金融機関から約四千五百億円の借り入れを行っておりますが、内訳は日本銀行からの借り入れが二千九百三十二億円、民間金融機関からの借入金が千五百六十五億円でございます。そういう形で日本銀行からの借り入れの方が一般金融機関より多くなっておる状況でございます。
  143. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 単純に考えますと、民間からお借りするのは金利が高いんですね。日銀からお借りするのは多分金利が安いんだろうと思いますが、どうして日銀から全部お借りにならないで民間からもお借りになっておられるんですか。金利も教えてください。
  144. 山口公生

    政府委員山口公生君) 考え方として、まず民間金融機関から借りられないかということをやるわけでございます。それでも無理な部分を最後の貸し手としての役割を果たしておられる日本銀行からまたお借りするということでございます。    〔委員長退席、理事河本英典君着席〕  日銀からは〇・七五%でございます。民間金融機関からは、短期市場レートだと思いますが、〇・八五%でございます。
  145. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 そこで、実はそれに政府保証をつけられるという規定が本法にあるというぐあいに思いますけれども、それは現在使っておられるんですか、使っていないんですか。
  146. 山口公生

    政府委員山口公生君) 機能法律で与えていただいておりますが、まだその必要性がなかったということで今の時点ではついておりません。
  147. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 それはいわゆる信組の特別勘定についてだけ借り入れに保証がつけられることになっておるわけですね。どういうぐあいに物事を考え整理していくのか難しいところでありますけれども、この保険機構が、先ほど申し上げたように、特別保険料だけで、あるいは一般保険料だけで過ごすというのはなかなか難しいように思いますけれども、自民党で今検討している金融安定化対策の中では銀行勘定の方にも借入金の債務保証をつけたらどうだというようなことが議論されていると思いますが、その点については銀行局はどういうぐあいにお思いでしょうか。
  148. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今御指摘のとおり、信組の特別勘定の借り入れに政府保証をつける機能をお与えいただいております。さらに、今いろいろな方面でこれを一般金融機関特別勘定の借り入れにもつけたらどうかという御意見もちょうだいしております。私どもとしては具体的な案をまだつくってはおりませんが、要するにセーフティーネットでございますので、これを完備し、預金者の方々に御安心をいただく、また金融システムをきちっと守るという意味からいかなる事態が生じても対応できるよう利用可能な資金の拡充という方策を検討すべきだというふうに思っております。大臣からもそういう御指示をいただいているところでございます。
  149. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 私も、今、銀行局長が答えられたように、いかなる事態がこれから金融システムについて起こってくるのかわからぬと。四銀行四組合だけだからまあ安心だというんじゃなくて、やっぱりきちんとした姿でこれに対応策を講じておくべきであるというぐあいに考えております。  さて、ちょっと話題を変えて、現在の金融不安の一番の根源はやっぱり不良債権なんですね。不良債権について先般当委員会でお聞きしたところでは一定の基準、すなわち全銀協の統一開示基準でやっているんだというようなお話がありまして、なかなかそれは動かせないんだというような感じの御答弁であったというぐあいに思います。いや、趨勢を見ているので一つ一つのことを見ているんじゃないんだというような御答弁もあったかと思います。  実はその際にも出た議論でございますけれども、アメリカのSECの不良債権の基準はもっと厳しいんだということが言われていますが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。
  150. 山口公生

    政府委員山口公生君) 御指摘のとおり、統一開示基準でやっておりますが、日本の開示基準は税法の考え方取り入れておりまして、例えば延滞先債権も六カ月以上のものを掲げております。アメリカの場合は三カ月、細かく言うとちょっとニュアンスの違う部分がありますが、三カ月というような基準の違いがあります。  今、例示を申し上げましたが、そのようにアメリカのSECの基準の方が全般的に厳しいということになっております。
  151. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 二日前か三日前の新聞に全銀協の方がこの統一基準をSEC並みに変えようという記事が出ておりました。今、利子の支払いのことだけ言われましたけれども、実はそれ以外でも債務者のいわゆる金利減免等債権ですね、それについても日本の基準とアメリカのSEC基準とでは違うんだということを伺っていますけれども、それについても変えるということが新聞等には載っております。  この点については銀行局はどのようにお考えですか。
  152. 山口公生

    政府委員山口公生君) 公表不良債権の統一基準、統一された全銀協の基準を変えるかどうか、前は前としてまた新たに加えてやるかというような問題があります。その点につきましては当委員会でも御指摘を受けておりまして、私どもとしてはやはりできるだけのディスクロージャーの推進という必要性を感じておりますので、業界、全銀協の方に問題意識を投げかけているという段階でございます。
  153. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 問題意識を投げかけるのは結構ですけれども、それによって全銀協は変えるべきであるという御指導をなさっておられますか、いかがですか。
  154. 山口公生

    政府委員山口公生君) まだそういう段階には立ち至っておりませんけれども、やはりいろいろな今回の預金保険法改正案の際に種々出てまいりました国会での御議論を踏まえてぜひ前向きに対応していくと、どういう基準が現実の我が国の姿に一番ふさわしいかという点をこういった諸外国の例も参考にしながら探っていくということが必要だろうというふうに思っている次第でございます。    〔理事河本英典君退席、委員長着席〕
  155. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 私は、フリー、フェア、グローバルと言っているわけですから、なるべくグローバルの方に、アメリカはグローバルだと、アメリカだけがグローバルだとは思いませんけれども、なるべく近づけていった方が、特に今度の金融問題というのはアメリカとの対比が非常に接点として重要に働いできますので、なるべくそのようなことをお考えになったらいかがかと思います。  ところが、これは税務の基準を使っているものだから、要するに法的ないろいろな措置がとられないと実は不良債権にならないんですね。しかし、実際は腐っているというのが幾らでもあるわけですよ。ですから、公表されているのが二十数兆だと言っているけれども実は百兆あるんだとかいいかげんな、いいかげんじゃないと思いますけれども、そういう説かずっと続いてくるわけですね。それにどうやって対応できるのかねと。  先ほど兵庫銀行について、いや実はふたをあけてみたら実際の不良債権が公表した不良債権の二十五倍あったよと、そういうことが参考人から意見として述べられました。公表されるのは結構ですけれども、ふたをあけてみれば実態が違うよというのはいかにもむなしい感じがするんですね。しかし、いやそんなことを言っても実態と余り合わせちゃうと危ないよというような声も聞こえてくるので、そこら辺はどうやってバランスをとるのかなという感じはします。  今度の金融三法による早期是正措置においては自己査定、こういう不良債権の定義ではなくて自分らが危険度、その債権のリスクを計算して、そして査定をする、そういう構えになっておるわけですね。それが恐らく真実のものに近いということになるわけですが、これは今後どういうぐあいになさるんですか。というのは、公表するんですか、それともいやそれは自分で勝手にやったんだからおれは知らないよと。それはBISだとかあるいは国内基準とかで四%でございます、八%でございます、私のところは高いんですよと恐らく言うんでしょうが、しかし基準がないわけですからある銀行によっては厳しく査定をし、ある銀行によっては甘く査定をするというようなことが起こってくるんですね。しかももっともらしく不良債権幾らというのは公開基準だから恐らく公開するけれども、これは公開基準に入っていないからおれのところで勝手に自己査定した数字が、数字まで言わないんでしょうけれども、その結果の資本比率はこうだよということで終わりになっちゃうような感じがするんですが、いかがでしょうか。
  156. 山口公生

    政府委員山口公生君) 御指摘のとおり、来年の四月から導入します早期是正措置、これの一番重要な部分は自己査定をするということであります。自分の銀行の資産を査定するということであります。その際、各金融機関は自主的な判断でもちろんやるわけであります。ただ、余りにばらばらであってもいけないという観点から、基本的な共通の考え方は確保される必要があると思います。  したがいまして、資産査定のこれまでの当局の実務等も参考にしていただくということで、回収の危険性または価値の毀損の危険性の度合いに応じまして例えば資産を四段階に分ける、ある銀行によってはそれをまだ細分して十段階にしてもいい、八段階でもそれはいいわけですけれども基本的には最低限それを四段階ぐらいには分けて査定をやってくださいと。それは回収の危険性の問題あるいは価値が毀損される危険性の度合いでみずから判定するということでございます。  それは何のためにそういうことをやるかといいますと、償却や引き当てをいかにやるべきか、どれだけやるべきかということを算定するためなんです。結局、財務諸表において開示をいたします。その中身は償却、引き当て、それを幾ら企業財務、つまり公認会計士としてきちっと見たときに少なくとも今期はこれは回収できないということで、あるいは毀損されるおそれがあるということで償却、引き当てが必要だというものをきっちりそこで出すわけでございます。そのためのベースとしての自己査定というものがあるわけであります。そういったことをしますと、財務諸表に基づき計算された自己資本比率につきましてもディスクローズされます。それから、公認会計士が審査して決定した償却、引き当ての状況も開示されます。そういった形になるわけであります。  ただ、不良債権のディスクロージャーというときは、これはアメリカでもそうなんですけれども、それを全部洗いざらい各行が出しているわけじゃありません。そうではなくて、その場合は各銀行間が、今、甘いとか厳しいとかおっしゃいましたが、それが比較可能なように決めなきゃいけません。その基準のバリアが高いか低いかの問題はあります。しかし、統一的にやっております。それでディスクローズをするわけでございます。自己査定というのはそのリスクの度合いの判定でございますから、それでもって償却、引き当てをきっちりするということであります。だから、ディスクロージャーのぐあいはちょっと違うわけでございます。  じゃその実態的なものをみんな出しちゃえばいいじゃないかという議論がありまして、ただそういう議論になりますと、各国もとっておりませんのは、それをやりますと会社は金利も入ってくるし元本も返済されているけれども、ちょっと今期は赤字になっていると、あるいは前期も赤字だったというだけでチェックされますと、その額に入ってくるとなりますと、そのチェックリストに入りますと、そこはもう貸してもらえないということになる。だから、銀行を健全にするために今度は借り手の方をつぶしてしまう、借り手の方を窒息させてしまうという現象が起きる可能性もあるわけです。したがって、アメリカでもやっておりますのは日本より厳しい基準ですけれども、ディスクロージャーの一つのそういったきちんとした基準でもって出しているということでございます。  その自己査定は、結果として申し上げますと、それに基づいて出てくる償却、引き当てをすべきものというのがきっちり表示されますし、それの結果出てくる自己資本比率というのが結果として表示されるということになります。そうすると、一般の預金者の方々あるいは株主の方々、それからマーケット等はそれを見ればその銀行のことが結果としてはわかる、こういう姿になってくるわけでございます。そういう意味もありまして、各金融機関は非常に一生懸命今努力をされているということもあるかなというふうに思っております。
  157. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 今、借り手云々と言われましたけれども、個別のやつは別段ディスクローズしないわけですから、ある特定の借り手がいや困っちゃったなというわけじゃないんですね。  それからもう一つ、何段階かに分けて自己査定をやるんだというぐあいにおっしゃいましたけれども、その段階については全銀協かあるいは大蔵省で統一した基準を設けるんですか。ただ単純に各銀行にお任せをして、自己査定をやったね、後で検査してこれはちょっと厳しいんじゃないの、甘いんじゃないのということを検査する程度の話なんでしょうか、どうなんでしょうか。
  158. 山口公生

    政府委員山口公生君) 基本的には自己査定でございますから各金融機関が自分でやります。それを公認会計士がチェックをいたします。さらに、検査の際にそれが甘過ぎないかということでまたチェックをするということでございます。  それから、先ほど先生に申し上げた点で一つつけ加えなきゃいけないと思いますのは、トータルとしての数字だからいいではないかという議論はあるかもしれませんが、しかしその数字をふやせないという、たががはまってしまうということになるとそういう現象が起きるという心配をしておるわけでございます。  つまり、不良債権という言葉は物すごく悪いイメージがありますので、相手企業が赤字に二期なった、あるいは今期なったというだけで要注意とした途端にそれが数字として出てくると、それをふやしちゃいけないふやしちゃいけないということで非常に金融機関がそういったところに対する貸し出しを思いがけないことで渋ってしまうこともあるということも考えなきゃいかぬと。  それで、外国でもそれは公表しておりませんし、これはあくまで償却、引き当てのためということで、それと別途にディスクロージャーは統一基準で日本もやっております。アメリカもやっております。ヨーロッパは統一的なものはありません。これは自主的に好きなようにやってくれという感じですけれども、アメリカでも日本より厳しい基準ですがそういう統一的な形でやっているということでございます。
  159. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 どうも隔靴掻痒の感じがするんですよ。いや、自己査定の方が実態に近いんだよと、しかし自己資本比率か何かでぼこぼこといってそれは担保されていないよ、一般基準じゃないよと。一般基準に近づけるように公認会計士だとかあるいは銀行検査によって近づけていくんだと。順次是正はされていくように思いますけれども、随分隔靴掻痒の感じがするし、銀行に金を預けている方がそれでああそうかねと言われるような代物でもないような気がする。  要するに、自己資本比率が幾らということは多分ディスクロージャー誌に一行とは言わない、一行の三分の一ぐらいの数字が載るだけになるんじゃないですか。それで信用しろということになるんでしょうか。実際上、それをやってみて破綻をしたときにその数字と合えばいいですよ。どうもなかなかそういうぐあいにはなっておらぬような感じがするんですが、いかがですか。
  160. 山口公生

    政府委員山口公生君) 破綻した銀行破綻しない場合の銀行では結果が違っできますのは、資金供給していることによって相手が生きているという場合があるわけでございます。それがミルクがとまるといいましょうか、あるいは血流がとまるということでぱたっといくということで急にそこの部分が大きくなるということがあります。  先ほど二十五倍とかおっしゃったのは、あれは当時のディスクロージャーが破綻先債権だけが統一開示基準にありましたから、だから実際は回収不能ということに比べますとえらく大きくなったようですけれども、現在は延滞、金利減免までディスクローズしていますのでそんな極端な例はありません。  しかし、確かに先生おっしゃるように、破綻した後に回収不能部分を認定しますとその統一の基準での開示しているものよりは大きくなっています。それは、一つはそういうのに引っかからないけれども本当に回収ができなかったものが存在したということはあります。それからもう一つは、破綻したことによって、例えば系列ノンバンク等が極端な例でよく出てきますけれども、それで血流がとまってそれも倒れてしまう。そうすると、一挙に生産価値で見るわけですね。要するに、ゴーイングコンサーンですと例えば五年かけて徐々にというところが一挙にそれがすべて破綻ということで回収不能ということになるわけでございます。その違いというのがあるわけでございます。  確かに不良債権の統一開示基準では不十分だという御批判も承っておりまして、その辺についてはよくよく我々もこれから考慮に入れてディスクロージャーを前に進めるという方針でやっていきたいと思っております。
  161. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 今、ノンバンクの話がちょっと出ましたけれども、北海道拓殖銀行破綻に伴ってたくぎんリースであるとかたくぎんファイナンスであるとかが一挙につぶれてしまったと。恐らくあれは破綻先債権でもなければ法律上によるものでもないし、利子はちゃんと払っていたと思うんですね。だからこの中に引っかかっていなかったんでしょう。具体的な行名の話は、案件の話はできないと思いますが、一般的に自行が支配をしているノンバンクについてはこの計数の中に入っていないんじゃないですか。
  162. 山口公生

    政府委員山口公生君) 確かにそういった一つの基準に当てはまらなければ入っていないわけであります。ただ、今度自己査定をしますと、実質的に回収の危険度がどれくらいあるかということをやりますから、それはまた違った概念からの査定があります。そこで、償却あるいは引き当てをすべきということで、公認会計士が認定するものについてはきちっとそれをやらなきゃいけないということになるわけでございます。それで財務諸表をそういう形にして出すという形になる、これが早期是正措置の自己査定ということでございます。
  163. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 そこが一番問題点だと思うんですね。ということは、今御発表になっておられる不良債権の中には系列リースに対する貸付金等はほとんど入っていないと思うんですよ。資金繰りをつけてやって、ともかくもう利子を全部巻き上げておくというようなことをやっておられるように思うんですね。ところが、実は腐った債権がそのノンバンクの中にあると。  早期是正措置で自己査定をやるのは結構ですけれども、そのときにそれをどういうぐあいに考え、どういうぐあいに評価していくのかねというのは大問題だと思いますね。今まで系列ノンバンクについての債権は償却の対象に恐らくなっていないんじゃないでしょうか、現実の措置は詳しくは存じませんけれども。そこのところを早期是正措置においてどういうぐあいに表現をするか、それがまた巷間の経済雑誌等によってえじきにされているところなんですから、そこはしっかりやらないといけない。  それから、きょうはもう伺う機会はございませんけれども、建設会社に対する債権も実は現在、もちろん不良債権の中に入っているのもあるでしょうけれども、大部分は入っていないんだと思うんですよ、私は個別に調べたわけじゃないからわかりませんけれども。そこら辺を早期是正措置のときにどういうぐあいに自己査定をしていくのか。そして、自己査定をした、おれは自己査定をやったのでこうだよと発表するだけになるのか、それはこうだというぐあいにしてもう少し詳細に、我が方はこういう査定基準で計算をしますとこういうぐあいになりますというようなところまで親切にディスクローズするかというような点が私は問題点だと思いますが、いかがですか。
  164. 山口公生

    政府委員山口公生君) 確かに先生がおっしゃいますように、自己査定をどういう考え方でやったということを明らかにするというのは大変有効なことであると思いますけれども、もともとこの自己査定は本来これまでもやってこなきゃいけなかったものでございまして、今回改めて制度化しました。ただ、あくまで自己査定でございますので、そこは公認会計士に十分チェックしてもらいませんと、余りひとりよがりの査定をされても困るわけでございます。したがいまして、回収可能性等を十分に検討して償却、引き当てをすべきものと、こういう考え方でそういうふうにしたということをディスクローズされるということは大変好ましいことだというふうに私も思うわけでございます。
  165. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 余り洗いざらいガラス箱の中に入れちゃうということになると、透明性は確保されるけれども本体は転んじゃうというようなことになるという事情はわかります。特に信用機関ですからね。しかし、せめて自己査定をした基準ですね、こういうぐあいに物を考えてやりましたと、系列ノンバンクとはっきり書いちゃうとこれもまた問題なんでしょうけれども、そういうものについてはこういう査定で自己査定をやったんですよと、その結果がこういう数字になりましたということがわからないと何ともならぬというぐあいに思いますね。そういう心がけで早期是正措置に取り組んでいただきたいと思います。  早期是正措置をこうやれという通達は今出していますか。
  166. 山口公生

    政府委員山口公生君) 自己査定の基準となる考え方、これは既に出しております。それから、公認会計士も償却、引き当ての考え方をまとめて出しております。それから、この早期是正措置の最後のポイントであります行政の措置、よく申し上げる八%・四%・〇%、四%・二%・〇%という措置、これについても既に決め、公表をいたしております。
  167. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 ぜひその点は心を使って早期是正措置が十分信頼できる数字になるようにやっていただきたいというぐあいに思います。  それから、ちょっと話が変わりますが、北海道拓殖銀行の話を先ほど申し上げました。代表質問をきのうさせていただきましたけれども、その際に劣後債のお話を申し上げました。  劣後債については従来どのように考え、どのように扱っておられたんでしょうか。
  168. 山口公生

    政府委員山口公生君) 結局、金融機関破綻した場合、その債務の取り扱いになるわけでございますね。それで、劣後事由が発生するかしないかということになるわけでございます。それで、劣後債に係る発行者の契約上の義務というのが破産等の劣後事由が発生しない限りは他の債務と変わらないということになるわけでございます。  これまで預金保険の対象となる預金等以外の預金取扱金融機関の債務についても金融システムの安定を確保するとの観点に立った破綻処理の中で保全されてまいったところであります。  今後においても、金融システムの安定性確保には万全を期していきたい、こういうことでございます。
  169. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 ということは、過去の保険機構の資金援助の中には劣後債は当然入っていたということですね。  それで、それはどういう形で入っていたのか。要するに、劣後債というと劣後であるがゆえにふだんは利率が少し高いだろうと思います。ほかの債券よりも金利の利回りだけでいえば有利な債券なんだけれども破綻したときは元本保証まであって同じだよということになるんでしょうか。それとも、何らかの意味のディスカウントというんですか、そういうことを考えてやっているんでしょうか。
  170. 山口公生

    政府委員山口公生君) 繰り返しになりますが、劣後事由が発生しているかしていないかということになろうかと思います。これは契約上の問題でございますので、そこは法的に考えるべきものだというふうに考えております。
  171. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 実は北海道拓殖銀行が発行している劣後債は九百五十億、それぐらいあると思いますが、そのうち三百六十億が信用金庫に発行されているんですね。  劣後事由とおっしゃいましたけれども、私は契約を見ておりませんので劣後事由がどういう事由になっているのかよくわかりませんけれども、信用金庫に対する劣後債をもし払わないということになったら、これは中小企業に与える影響は絶大なものになるばかりじゃなくて、北海道における信用金庫は重大な壊滅的な状態になっていくように思います。現在、現時点で北海道拓殖銀行に対する資金援助というものがまだ具体化しておりませんが、それの計算を今おやりになっている最中かとも思います。まだそこまで行っていないのかもしれません。  その点については、先般大蔵大臣から金融債その他も考えるべきだというような御答弁があったようですけれども、いかがですか。
  172. 山口公生

    政府委員山口公生君) 拓銀については、今、検査をいたしております。まだ結果がまとまっておりません。まとまり次第、そういったことも含めてその処理を決めていく必要があるというふうに思っております。
  173. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 けさの新聞を見ると、長期信用銀行の債券、いわゆる金融債、それからさらに言えば信託銀行のヒットそれらも預金保険機構の対象に含めることを大蔵省は検討しているという記事が出ておりましたけれども、そのようなことを御検討にはなっているんですか。
  174. 山口公生

    政府委員山口公生君) 当局としてはまだそういった検討はしておりませんが、党の方ではそういった御意見もいろいろ出ているというふうに伺っております。
  175. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 何か党の方に責任を押しつけられたような感じがしてうまくないんですが、あの記事には政府はと書いてありましたが、どうなんですかね。いずれにしても、十分な検討はまだ行われていないというお話のように承りました。現時点においてそういう金融債は保険料を払ってないわけですから当然入れろと言うわけにはいかないので、恐らくそれらを含めるということになると保険料を取らにゃいかぬというような問題も生じるのかなというぐあいに思っております。  さらに敷衍して、最近、某銀行、某銀行、某銀行、幾つかの銀行外貨預託を始めています。それは外銀だけじゃなくて邦銀外貨で預け入れをすることができるということで、外貨の預金をとっているようです。  これらの預金は保険機構の対象になるんですか、ならないんですか。
  176. 山口公生

    政府委員山口公生君) 預金保険法の対象預金等というところには入っておりません。ただ、外貨預金あるいは譲渡性預金とか公金預金等はこの特例期間中の資金援助のときにフルカバーでの資金援助が認められております。したがいまして、そこには含まれ得るということは申し上げられます。しかし、本則での対象にはなっておりません。それは先ほどのお尋ねの金融商品についても同様でございます。
  177. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 外為法が改正になって為替の自由化が行われた。そして、恐らく外銀だけではなくて邦銀も当然のことながら外国商品を取り扱う、金融多様化ですからそういうことになると思うんですけれども、御検討になるつもりはありますか。
  178. 山口公生

    政府委員山口公生君) 先ほどの金融商品も同じでございます。外貨預金についても同様でございますが、本則の対象にすべきかどうかということについてはいろいろ御議論があろうかと思います。いろいろ検討課題であると思っております。ただし、これは預金保険法の対象になっている金融機関外貨預金でございます。
  179. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 もちろん、対象になっていないのはそもそもだめに決まっているわけで、対象にできないのは当たり前なんですけれども、その中で特に一番最後の外貨預託金についてはちゃんとした御見解を早目にお取りまとめになることがいいんじゃないかというぐあいに思っています。  最後にやっぱり大蔵大臣に聞かないとちょっと申しわけありませんから伺いますが、現在の金融破綻状況について公的資金を導入すべしという議論が非常に高くなっておりますが、まだ大蔵省としてはお決めになってはおられないんでしょうけれども、それについての思いをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  180. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 日本金融システムが安定しておるということが極めて今後の我が国経済運営の根幹でもありますし、経済・産業の血液、国民生活の血液が金融でありますということでありますから、システムについての安定感を増してまいらなければなりません。  そういう意味で、今、ありとあらゆる手段を事務方も点検いたしておるところでございまして、公的支援を整備していくという基本的な考え方、公的支援の内容は前段も申し上げましたとおり公的資金、こういうことになり、最終的には税金でこれを担保するという一般原則論があります。それもあり、また政府保証という、これも最終的に一般会計で補てんをする、これは損失が出た場合、こういうことになるわけでございまして、そういうことを基本の考慮に入れながら、どういう仕組みが一番インパクトがあり、安心感を与え、かつ最終的に税をもって賄うことでなくやれる方法なのか、また安定のためへのぎりぎりの最低保証ということでいく道がいいのか、あるいは大きくフレームをつくりましてこれだけの安定策をつくり上げておきますよということで内外の信認を得ることが大事ではないのか、こういう点で、またおしかりを受けるかもしれませんが、党の方の論議の決定を待って対応しなければならぬと。  ただ、党の対応だけを待ってということではなく、やはり主管官庁でありますから、ありとあらゆる選択肢を考え、ありとあらゆる国民間の議論、各党間の議論、こういうものをしっかりと点検しながら、なおかつ法制上、財政法上、それぞれの観点からそのことが構築をされていくというものの研究、検討、そしてそれぞれのケーススタディーをやり、党が決定したら直ちにそのことに対応できるようにやるべきではないのかと。諸事万端、研究、検討を進め、その案について対応できることについても真剣に検討、全力を挙げて最終的には党が決めたものに直ちに対応できるようにしていかなければならぬと、こう考えておるところであります。
  181. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 今おっしゃいましたけれども、党の方は十六日までに決めるということで汗を流している最中でございますが、今、大蔵大臣のお覚悟に示していただきましたように、これは党ばかりじゃなくて、大蔵省がやっていただかねば何にもならぬ問題ですから大蔵省の方も元気を出してこの問題に取り組んでいただきたい。私どもも党の方から御提示することがあると思います。よろしく御検討の方をお願いしたいということを希望しまして、質問を終わります。
  182. 石川弘

    委員長石川弘君) 午後六時五十分に再開することとし、休憩いたします。    午後六時二十分休憩      ―――――・―――――    午後六時五十一分開会
  183. 石川弘

    委員長石川弘君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、預金保険法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  184. 上山和人

    ○上山和人君 社会民主党・護憲連合の上山和人でございます。  大臣初め大蔵省の皆さん、長時間にわたって大変御苦労さまでございます。私は、途中かなりの時間、与党の医療保険制度改革協議会が並行して開かれておりまして、どうしてもそれに参加しなければならないという事情もございまして中座をいたしました。したがって、質問がダブることになるんじゃないかと思います。その点については、非常に申しわけないことでございますけれども、あしからずお許しくださいますように最初にお願い申し上げます。  実は、きのうの代表質問に対して、楢崎先生の御質問と私の質問に総理がお答えになりまして、私は、金融システム安定化対策としていわゆるNTT株式等を償還財源の担保にして発行する新型国債の構想が浮上している、そのことについて総理に見解をただしたわけですけれども、これは大変積極的な、この事態を乗り切るための非常に貴重な提案であると思うから自民党にも検討するように指示したとお答えになったわけです。  額が十兆円という規模でございまして、きのう総理からはっきり十兆円という額も数字でおっしゃいましたし、ただ報道されているばかりではなくて、はっきりした御構想があるんだなときのう思ったわけであります。その十兆円という規模が、財政構造改革法案が成立して、今、予算編成の作業中に非常に財政構造改革法案にみんな拘束されて、私は厚生省の医療関係の予算の問題をずっと今議論をしておりますけれども、非常に窮屈なんです。どこか財政構造改革法案に抜け道はないかとさえ実は思うぐらい苦しい状況なんです。  それとの関係はさておきまして、そういう状況でありながらあえて十兆円規模の新型国債という構想がもう正式に総理からもゆうべ明らかにされました。国民の前にもそのことが明らかにされたと思うんですけれども、じゃ、今度のこの金融システム安定化のために最低十兆円という規模の財源が必要なのかなというのをまず国民は印象として思うんだと思うんです。それにはやっぱりできるだけ早い機会に国民にも、どれぐらいの財源が必要であって、そして十兆円に上る新型国債の構想があるんだ、そして自民党で今検討中なんだと、こういう御説明がないとかなり国民はショックを受けていると思うんです。  そこで、お尋ねしたいのは、恐らくずっとこれまでの各委員の皆さんの御質問にあったと思ってお尋ねしにくいんですけれども、今の金融機関不良債権の実態について、これは銀行局としては各地域にそれぞれの出先がございますからいろいろ検査、監査をなさっている。私も、三年間だけでしたけれども、労働金庫という協同組合組織の金融機関がございますが、そこに責任者として三年間勤めておりました。そういうときにも厳しい検査を受けてきたわけなんです。  したがって、大蔵省としては、金融機関不良債権がどの程度あるかということについては全国的に私は十分把握されているんだと思いますが、その数字をここで発表して差し支えがあるないという問題はあるのかもしれませんけれども、ぜひ大蔵省が今把握なさっていらっしゃる全国の金融機関不良債権の実態について最初に御報告をいただければと思います。
  185. 山口公生

    政府委員山口公生君) 御説明をいたします。  いわゆる統一基準で出しておりますディスクロージャーベースの不良債権額は、しばしば御報告申し上げておりますように、二十七兆九千億だったと思いますが、その程度になっております。過去の傾向から見ますと大分減ってはきておりますが、まだそれくらい残っている。ただ、引き当てが済んでいる部分もあります。土地の担保等があるものもあります。したがいまして、全部がまだ要処理というものではありませんけれども、そういう状況であります。  しかし、一般的に御批判がありますのは、先ほど来の御質問もありましたけれども、それだけではないのではないかという御批判があります。ただ、いわゆる不良債権と一くくりで言われますけれども、これがみんな取れない債権だ、つまり回収できない債権だというふうに国民の皆様が仮に思われますと、それはちょっと違うわけです。不良債権と言われるものは、極端に言いましたらもう全く取れないものから赤字企業だからちょっと注意して見ておきたいというのまであるわけです。それを全部不良債権という概念にしますと、非常にまたこれは国民の皆様に誤った印象を与えてしまうということもあろうかと思います。したがって、私どもとしては一つの基準でもって今統計をとらせていただいております。  先ほども御議論がありまして、例えばSECというアメリカの証券関係の政府機関がありますが、そこの基準はもっと厳しいではないか、その基準を参考にしながらもっとディスクロージャーを充実といいましょうか、リストアップするのをもう少しもっとふやしたらどうかという議論があります。  そういったことの検討も全銀協に今投げかけたという段階でありますけれども、そういった形で見ますと、先ほどもグローバルスタンダードだと、あるいはアメリカ基準でいうとこれくらいというのが出てくることが可能になるわけですが、現実、それが作業として可能かどうかという問題はまだ詰めが必要でございますけれども、そういったことに前向きに取り組んでいくべき時期にあるのではないかというふうに思っているわけでございます。
  186. 上山和人

    ○上山和人君 これは私の記憶違いがひょっとしてあるかもしれませんけれども銀行の安全神話が崩れて、そして銀行金融機関倒産をし始めたのはたしか平成五年だったと思うんです。そして、この五年間に北海道拓殖銀行、徳陽シティ銀行を含めて十七の大小の金融機関倒産したと記憶をいたしているのでありますけれども平成五年からそういうふうに金融機関倒産をいたしておりますから、大蔵省としてはもっとそれ以前から金融機関倒産に追い込まれる兆しというのは十分把握をしていらっしゃったと思うんです。  したがって、この不良債権の中身について局長から今御説明がございましたが、それは回収不能な債権と努力すれば回収できる、また現在回収中といったような債権、どこの金融機関でもいろいろあるんだと思います。しかし、それはそれとしまして、今三十兆に近い不良債権が内容はいろいろあるけれどもあるんだと、二十七兆余りとおっしゃいました。その不良債権の中に、平成五年から倒産が始まっている、その兆しは前からあったはずであります。  したがって、そういう時点で、全国の金融機関に対して、いわゆる倒産予備軍的な金融機関、またそれに近い、それに次ぐ予備予備軍的な金融機関、そういった整理をされながら、倒産を未然に防ぐ措置の検討も含めて、いろいろと実態を十分把握なさっていらっしゃったんじゃないかと私は思うんです。そういう倒産予備軍的な不良債権不良債権といいますか、あるいは予備予備軍的な不良債権、そういったものを整理して区分けしながら倒産防止に備える指導なり手だてはなさっていなかったものか、局長にちょっとお尋ねをいたしたいと思います。
  187. 山口公生

    政府委員山口公生君) 先生の御指摘は大変ごもっともなことでございますが、バブル崩壊後、個別の金融機関はさまざまな状況でございましたけれども、総じて大変その重荷に苦しんだわけでございます。幸いにして体力があったところ、あるいは蓄積のあったところは何とか切り抜けてきましたけれども経営が非常に悪化し、またそういった体力のないところというのは個別でかなり、先生倒産予備軍とおっしゃいましたけれども、やはり不良債権の重荷にあえいでいる、そういったときには私どもの方で、三年に一回ぐらいが標準でありますけれども、検査をして問題点を指導してきております。  それで立ち直ってきているところももちろんあります。全国でたくさんある金融機関の中で、全部で千程度の金融機関がありますけれども破綻しているところというのはそう多くはございません。だから、日本金融機関はみんながみんな不良債権でつぶれてしまうという状況ではございませんけれども、個別銀行それぞれ苦労しております。  そこで、私どもとしてもできるだけ、リストラをこういうふうにやったらどうだろうか、あるいは増資をこういうふうにやったらどうだろうかというサジェスチョンをしたり、もう少し厳しくその辺を見た方がいいんじゃないかというサジェスチョンをしたり、いろいろ指導をしてまいったわけでございます。  ただ、残念なことに幾つかの銀行では、特に先生平成五年ぐらいからとおっしゃいましたけれども、やはり持ちこたえられなくなって債務超過に陥ってしまったというような状況が発生しているわけでございます。でき得る限りそういった金融機関の数を少なくするというのは私どもの大事な仕事でもあろうかと思います。  したがいまして、それは自助努力をできるだけ促すということをしていきたいと思いますし、金融再編等がもしうまくいきますればそういうこともいろいろお手伝いをしたいと思いますけれども、不幸にしてそういった破綻ということも現に起きておりまして、そういったときには適切にむしろ対応する必要も一方であるわけでございます。  そういった状況で、私どもとしても今全力を挙げて社会的なコストを少なくし、混乱をできるだけ起こさないということで頑張らせていただいておるところでございます。
  188. 上山和人

    ○上山和人君 私が知りたいと思う点のお答えがなかなかいただけないのでありますけれども、申し上げたいのは、結局平成五年から倒産が始まっていて五年たつのに今日なおこういう事態に陥ってしまったという問題なんです。倒産が始まっていよいよ国際的にも信用の厚かった我が国金融機関の安全神話が崩壊した。もうはつきりしたわけですから、そういう状態の中で、全国の金融機関の予備軍的なもののそういう区分けをしながら、難しかったとは思いますけれども、どうしてこの予防措置がもっと効果の上がるように施されなかったものか、できなかったものか。倒産が始まってから五年もたっているわけですから、今日の事態に至らずに済んだのではないかという思いがございます。  したがって、そういうこととの関連で、今私は、倒産予備軍、まあ破綻予備軍と言ってもいいんでしょうけれども破綻予備軍、破綻予備軍のまた予備軍的な金融機関などをチェックなさらなかったものか、そういう手当てをしなくちゃならない、救済をしなくちゃ倒産するという危機に瀕しているような金融機関を発見して事前の予防措置をすれば今日の事態に至らずに済んだんじゃないかという思いでお尋ねをしているんです。二十七兆九千億の不良債権、その内容はいろいろございますとおっしゃいますけれども、それはそうなんですけれども、今私が質問申し上げている観点といいますか、もう少しその核心をつくようなお答えを局長に期待しているんですけれども、いかがでしょうか。
  189. 山口公生

    政府委員山口公生君) 各金融機関を検査等を通じまして実態を把握してまいりました。その結果、いろいろ問題のある金融機関が現に存在しております。そういう金融機関に対しましては、いろいろな形でのリストラを指導するなり、例えば経費がかかり過ぎではないかとか、あるいはもう少し増資を考えたらどうかというようなことを個別に指導してきておりました。  したがって、今起きている現象が、大変残念なことでございますけれども、そうした努力をしたにもかかわらず、あるいはそれが成功しなかったために、こちらがサジェスチョンしてもそのとおりにならなかったということで破綻に陥ったというケースが幾つか出てきておりますが、中にはそこから立ち直って頑張ってきている金融機関もあるわけでございます。  今回、来年の四月からの早期是正措置も、実は私どもがこれまでとっております措置のこれは明文化であり透明性を保つための制度でありまして、この早期是正措置という、自己資本比率等で客観的に指導していくということについては、先生のおっしゃいますように、検査でそういうことが見つかりますと私どもは現実にはやってきたわけでございます。  ただ、蓄積があるところは何とかそこで頑張ってまた復活をしていますが、平成五年ぐらいから五年もたっているのにという御指摘はもっともでございますが、それくらいまでは持ちこたえておったけれどもどうしようもなくなったという現象も現にあるわけでございます。だから、いろいろ各金融機関努力を促し、それでそういった指導をしてきておりますけれども、幾つかの金融機関におきましてはその効果が十分にあらわれなかったということもあると思います。  それからもう一つ、最近の現象としては、財務的にはまあ何とか持ちこたえていたにもかかわらず、マーケットの評価が非常に悪くなってそれで資金繰りに行き詰まったと。北海道拓殖銀行も徳陽シティ銀行も実は原因はそこでございまして、資金が取れなくなったと。大口の定期等がどんどん抜けますと資金が足りなくなるわけでございます。それで、貸出金をすぐに引き揚げるというわけにいきません、それは期限の利益を相手に与えてありますから。そうすると、資金を調達しなければ銀行は成り立たないわけです。それで行き詰まってしまったという現象が起きたわけでございます。財務内容が悪いというのがベースにはありましたけれども、最近の現象としてそういった資金繰りで行き詰まったというケースがあります。  しかし、できるだけそういった金融機関が少なくなるように、それは先生のおっしゃるとおり、破綻が望ましいわけではないわけで、その社会的コストは非常に大きいわけですからできるだけその金融機関が頑張って、それで踏ん張って回復してもらうということを願っておりますし、私どもとしてはできるだけそういうお手伝いをしたいと思っております。  昔は、困った金融機関があったときにいろいろ助けてあげようというところも現にありました。しかし、各金融機関がともにバブルの処理にかなり追われておりまして、そういった余裕もなくなってきたということもいろいろ影響があるかなという感じはいたしておるわけでございます。
  190. 上山和人

    ○上山和人君 これ以上この問題にこだわっていても先に進まないのでありますけれども、今、株価の問題をおっしゃいました。今言われておりますのは、銀行の株価をずっと見ろと言われていますね。株価が下がる銀行はやっぱり危ないんだ、つまり市場金融機関を評価して淘汰する時代になっている、だから株価に注目しろと今ずっと言われております。銀行の株価をずっと見ておればその銀行状態がわかるとさえ言われるようになっておりますので、今の局長の説明を聞いておりまして、市場の厳しい評価にもやっぱり注目をしながら、これから指導に当たっては後悔することのないような御指導を十分いただかなければと思うところであります。  そうしますと、この十兆円という規模、これは今の段階で恐らくお答えになれないのかもしれませんけれども、十兆円の新型国債、しかも金融システム安定化対策としてのみ使うという新型国債の構想、今、構想の段階ですが、十兆円必要だという根拠については今の段階では、局長、答えられませんか。
  191. 山口公生

    政府委員山口公生君) この構想自体がいろいろまた御議論をされている段階でございまして、私どもとしては今後幾らお金が必要なのかということにつきましては、しばしば御答弁申し上げておりますように、今後の破綻がどうなるか、どれくらいの規模のものが出てくるのかということでございますので、今はお答えできる用意がございませんことをお許しいただきたいと思います。
  192. 上山和人

    ○上山和人君 あした総理に対する質問の機会もありますから、これは改めて総理にお尋ねすることにいたしたいと思うんです。  しかし、銀行局長自身が十兆円の金額の根拠などについて相談にあずかっていらっしゃるのか、あの構想発表あるいは検討される場合にそれすらも疑われるような状況のように思うのでありますけれども、財政構造改革法案が成立して予算編成でみんな苦しんでいるときにぽんとこの大きな額の国債の構想が出てくる。それまでには十兆円の規模が必要なんだというやっぱりそれなりの一定の根拠はあるんだと思うんですけれども、本当に局長は相談にはあずかっておいでになりませんか。
  193. 山口公生

    政府委員山口公生君) 御相談にはあずからせていただいておりませんが、ただ仄聞するところによりますと、大丈夫ですよということを示すためだというふうにも聞いております。
  194. 上山和人

    ○上山和人君 安定剤としての安全弁なんですかね。これはお互いのことですから、何も責め合ったりどうしたりする問題じゃないと思うんですけれども、やっぱり私たちだってまだわからないんです、どうして十兆円なのか。これは国民に安心しなさいと、そういう安定剤的な、安定剤とは言われませんが、私が言うだけの話ですけれども、そういうものとして一層この金融不安が社会的な不安に広がらないように、金融不安が社会不安となって連鎖反応が起きないようにとにかくここで思い切った国としては責任ある大胆な措置をしよう、そこで十兆円。政治判断でしょうか、大蔵大臣
  195. 三塚博

    国務大臣三塚博君) きょうの夕刊、今まだ出ていないようでありますが、宮澤本部長、党本部において安定化対策本部総会が持たれまして、梶山構想、前官房長官梶山さんから直接その意図するところの説明、質疑応答があったと先ほど報告を受けました。そういう中で十兆円の話にも言及されたと聞いております。  また、私も直接前官房長官と会いました折に、NTT、JT、それから民営化の基本方針が決まっておる開銀等々、これらをカウントいたしますと十兆円というラインが出てくる、こういうことでありました。基本システム安定のためのものに使わさせていただく新型国債である、このことだけは明確になっておるところでございます。  経済国家、産業国家であるこの国が金融システムに対する内外の不信感によって万が一の事態が起きるということでありますと、到底その責めに耐えられない、こういうことになるわけですから、政治はこれに完全なポリティカルセーフティーネットをしっかりとやることが基本であろう、こういうことで総理とも話したということを聞いておるわけであります。それで、総理大臣から加藤幹事長に指示がおりまして、党において検討し結論を得ていただきたいと、宮澤本部長のシステム安定化対策本部であります。  そういう中でございまして、上山委員からただいま御指摘をいただきました、安定剤ですかねと、こう言われましたが、私も、市場というのは残酷にして冷酷なものであるという、昨今、ここ一年余の大蔵大臣の経験と苦悩を思うとき、そういう結論に、残酷かつ冷酷、しかしこの警告はストレートに受けとめていかなければならないなというのも勉強させていただきましたし、また同時に市場は真理でもある、そういうお話を専門家がしている言葉も引用させていただきました。そういう意味で、思い切った形の実行可能なもの、新型国債ということであれば償還の財源はありますよということでいくということで、財構法と離反しない、矛盾しないということで検討が行われておる、こういうことであります。  先ほど入りました報告によりますと、その取り扱いは宮澤本部長に一任ということであったようで、情報でありますが、早急に明日以降この検討に入っていくものと考えておるところであります。  前後の情報としてお伝えをしながら、安定して信頼される市場構築のために、システムが安定維持されていくことによって預金者保護も完全に保証されていくであろうと。破綻の場合の保険機構の財源というのももちろん視野に全くないとは思いません。あると思うのでありますが、システムと今後のあり方については今後の協議、こういうようなことだと承っております。  私とすれば、大蔵省事務方に、システム安定こそ預金者保護、同時に金融機関が健全化を進めリストラを進める限りにおいて安定をしていく、こういうことであらゆる選択肢、あらゆるものを分析して、党が決めましたら、また総理の指示がありましたらこれに対応できるようにすべきである、こう指示をして、ここもう二週間になろうとしておりますが、ありとあらゆる検討をして万全を期しておるというのが実態であります。
  196. 上山和人

    ○上山和人君 今の段階で大体お答えいただけるもう限度いっぱいのお答えだろうと御推察申し上げますのでこれ以上はお尋ねしませんが、そうすると大変な責任がやっぱり生じると思いますよ。  先ほど紺谷参考人は、今の状況になったのはすべて大蔵が悪いと、こういうふうに言われました。これはもう先生方聞いていらっしゃったわけですから。もともと大蔵には厳しい人だというのは楢崎先生も言っておられました。  ただ、それはそうとしまして、やっぱりそれだけの政治決断をして新型国債で金融システム安定化に万全を期そうということなら、当然のことですけれども、大変大きな責任を背負うことになると思います。失敗は許されないことになるんじゃないでしょうか。それだけに決断をされたのだと理解をいたします。あした総理に直接お聞きすることにいたします。  そういう今までの御答弁を前提にしながら少し具体的にお尋ねをいたしたいのは、今度の改正案の中で破綻金融機関、これは今までの現行法は健全な金融機関破綻金融機関を救済する場合に預金保険機構から資金援助を行うことができる、そういう規定を改めて、健全な金融機関が存在しない場合であっても、破綻した金融機関同士であっても、大蔵大臣等が合併をあっせんしたら預金保険機構から資金援助ができる、こういうふうに改められた、それが今度の改正案だと理解をしているのでありますけれども改正法案で言う破綻金融機関同士であってもというその破綻金融機関の定義、これを少しわかりやすくちょっと整理をしていただけませんか。
  197. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今、先生お話の中で、健全な金融機関破綻金融機関を救済合併する場合の規定はそのまま残してございます。今回は特定合併という今御指摘のような合併を附則で追加させていただいたということでございます。  それで、破綻金融機関の概念でございますが、これは従来からの定義と同じでございまして、業務もしくは財産の状況に照らし、預金等の払い戻しを停止するおそれのある金融機関または預金等の払い戻しを停止した金融機関ということでございまして、破綻金融機関の概念を変えたわけではございません。したがって、この場合は合併でございますので払い戻しを停止するおそれのある金融機関ということになるわけでございます。  それだけではよくわからぬじゃないかという御疑問が出てくると思いますので具体的にどういうケースかということを少し整理してみますと、例えば、債務超過には陥っておりませんが多額の不良債権を抱え、現に資金繰りに困難を来しており、早晩必要な資金を確保できなくなる可能性が高いなどのケースが当たると思います。  具体的に、じゃどうやってそれを判定するかということになりますと、マーケットのその金融機関に対する信認がどうだろうかと。例えばどういうときにあらわれるかといいますと、コール市場で無担保で貸してくれる、これはかなり信認があるわけです。有担保、担保があってようやく貸してくれる、これも担保がよければそれは貸してくれます。しかし、担保を出しても貸してくれない、あるいは担保がもう出すものがなくなってきた、こういう状態というのはやはり先ほど申し上げたような早晩必要な資金を確保できなくなる可能性が高いということに入るわけです。  それからもう一つ、預金の流出というのがあります。どの程度の速さでどういった預金が流出しているか、これも私どもよく見なきゃいけないというふうに思っております。  それから、マーケット全体の様子が、銀行だけのことじゃなくて全体として、例えばインターバンクマーケットが非常にタイトになっているか、あるいは非常にそこが流れがよくなっているかによるわけでございます。  そういった要素を勘案して、今申し上げた、今、資金繰りに困難を来しており早晩必要な資金を確保できなくなる可能性が高いというような認定をするということではないかというふうに考えておる次第でございます。
  198. 上山和人

    ○上山和人君 これから失敗は許されない、二度と金融機関のこういう破綻が生じないようにするための御決断だと理解をするわけでありますけれども、もう全力を挙げて予防措置を講じ安定化対策を施したにもかかわらず仮に破綻金融機関が出てきてそれを処理しなくちゃならないというときに、万一、あってはならないことなんですけれども破綻金融機関と認定をした今おっしゃったような問題については、これは開示なさいますか。これから公表できる問題ですか。公的資金を仮に投入するようなことになれば、国民に対する責任が生じますから説明の必要がある。そういう破綻金融機関の定義の内容については、例えばAという金融機関破綻をしたと判断をしたのはこうこうこういう要素に基づくものだということは公表なさいますか。なさることになりますか、これからは。
  199. 山口公生

    政府委員山口公生君) その破綻のケースの、こういった場合に破綻だということを数量的あるいは何かきっちりした形で出すことはなかなか難しいと思います。  それは、今申し上げましたように、いろいろなケース、マーケットとの関係、資金繰りの状況はどうか、その預金の抜けぐあいはどうか、いろんなバリエーションがあります。周りの金融機関との関係、あるいはマーケットでの資金の調達の状況等があります。  したがって、一つの基準あるいは二つの基準できっちり決めてしまうということは逆に弾力的な運用はできません。しかし、先生の御指摘のように、ある程度私が少し踏み込んで申し上げましたような形でもって、客観的にだれが見てもそういう状況であるというふうな形での運用をさせていただきたいというふうに思っているわけでございます。
  200. 上山和人

    ○上山和人君 国民が納得するものでなければならないと思うからその点は指摘したわけでありますけれども、十分研究、検討すべき問題じゃないかと思うんです。  それで、破綻金融機関の定義の問題に関連するわけでありますけれども銀行局長は午前中の質問に対する答弁の中で、合併をあっせんする場合にあっせんする当該銀行の取り扱いについて答弁をされておりました。そして、合併する銀行は、ちょっと私の言葉の聞き違いはあったかもしれませんけれども、消滅させる、そういう表現でお答えになったと思うんです。そして新しい銀行にするんだと、破綻する銀行を救済するのではないのだ、預金者保護なんだと。したがって、そういう意味合併する銀行については消滅させる、新しい金融機関を、新しい銀行をつくるんだと言われました。  消滅させて新しい銀行をつくる場合に、今定められている、あるいは構想されている、あるいは既にでき上がっている基準といいますか、つまり破綻した金融機関の前の役員等の取り扱い等を含めて新しい銀行に移るときの条件というのは明確に定まっておりますか。
  201. 山口公生

    政府委員山口公生君) あっせんをして当該銀行がそれを受けますと言ったときには、計画を出していただいてそれを承認するという形にするわけでございます。  したがいまして、計画をどういう考え方で承認するかという問題になるわけでございますけれども、例えばこういうふうなことを考慮に入れるべきだろうと思っておりますのは、原則としまして代表権のある役員については退任していただくことになると思います。それから、その他の役員につきましても経営破綻責任を有する者は新しい銀行のその経営には参画させない、それから新しい銀行の新体制の経営者については業務を的確、公正かつ効率的に遂行することができる知識及び経験を有して社会的な信用を有している人材であるということが必要であろうと思うわけでございます。そのほかに、例えば経費の圧縮など最大限のリストラをやっていただく、それから増資の実行など自己資本充実の実施をやっていただく、そういったことがやはり要素となってくるのではないかというふうに思っております。  いずれにせよ、経営陣がしっかりしてもらわなきゃいけないわけでございますし、それと同時に、合併してリストラをするわけですから、それは思い切った形でやってもらわないと、ずるずるべったりでまた同じことを繰り返されては困るわけでございます。そういうことを念頭に置いて承認をするということになると思っております。
  202. 上山和人

    ○上山和人君 もっとはっきりした方がいいんじゃないかと思いますのは、その破綻した金融機関は消滅させる、新しい銀行をつくるんだと、こういうふうにおっしゃった内容は、一つ経営者は退任をする、これは明確だと思うんです。その経営者は退任をするという中身がその責任者だけなのか、一緒にその金融機関経営に携わってきたその他の役員等を含めた経営者等をお考えになっているのか。私たちは少なくとも前の金融機関の指導陣、役員というのは全員退任をするというのが一つのあるべき姿ではないか、国民に理解を求められる要件の一つではないかと思います。  もう一つ、これはもう私の方から申し上げますけれども、株主・出資者等による損失負担の問題があると思うんです。この損失負担をどうするかという場合は、これは公的資金を使うなら、国民に最小限のものにとどめなければならないわけですから、損失負担は可能な限りもとの、前の破綻した金融機関で追及されるべきだと思うんですけれども、株主・出資者等による損失負担、これはまたどうしても一つの要件になるのではないかという気がするのでありますが、その点はいかがですか。
  203. 山口公生

    政府委員山口公生君) 前の銀行の役員を全部退任させるべきだという御意見は一つの御意見としてあるかと思いますが、現実問題として見ましたときに、全員いなくなるということは新しい銀行をしょっていく人がいなくなるというケースもあります。したがって、私どもとしては、少なくとも責任のあった人、あるいは責任ある立場にあった人、あるいはそういう原因をつくった人はいけませんが、一律に全部役員は退任といいますと、だれが運用していくか、だれが運営していくかという問題があります。  そういう問題を考えますと、余りそこに一律の基準を設けてしまうと実際新しく生まれ変わった銀行が成り立たなくなります。運営ができなくなります。私ども基本的にはその責任をきっちり追及していくことには先生と全く同じ考え方ですけれども、一方でそういったことも考えなきゃいけないということで、余り一律の基準は設けられない。しかし、基本的には責任のある人はおやめいただく、そういう原因をつくったような人は経営に参加させてはいけないということは、そこは共通してあると思います。  それから、株主の損失負担につきましては、委員のほかにもいろいろ御議論を賜りました。これは実は資金援助という形をとりますが、これは不良債権を時価で買い取りますから簿価と時価の差は当然株主の勘定から差っ引かれるわけです。したがって、株主としては相当自分の持ち分だと思っていた積立金とか含み益とか、そういったものはみんなずっと使われるわけでございます。少なくとも合併でございますから債務超過ではありません、資産超過の状態でありますから、それが一応の限界であると。その分におきましては株主は責任を負わなければならないということになるわけでございます。
  204. 上山和人

    ○上山和人君 役員全員ということについては、その役員がどこまでを役員と言うかということもありますけれども、少なくとも非常に責任ある仕事をしていた職員はたくさんいるわけでありますから、部長クラスあるいは課長クラスを見ても、どこの金融機関だって役員以外に有能な人材はいっぱいいます。私はそういう点にも着目しながら、国民の理解を得られるためには、人材がいないはずはないと思っています、金融機関に。役員がすべて退任した後、役員になれる人材がいないはずはない、私の小さな金融機関の中を見てもいつもそう思っておりました。  そういう体験からいっても、もっとすっきりした形で、何も一律の基準にしなくてもそういうふうに積極的に役員の退任については心がけた方が国民の理解を得られるんじゃないか、そのように思うところです。  そして、今の二番目の株主・出資者等による損失補てんについては先ほどのお答えで大体理解をするわけでございます。  不良債権の問題に少し戻りますけれども不良債権の回収について、もう私の方から最初に申し上げますけれども、この預金保険機構を中心とした回収機構というものをやっぱり整備をした方がいいんじゃないかということについてはお考えになったことはありますか。不良債権の回収の問題です。先ほどの前の質問に関連します。
  205. 山口公生

    政府委員山口公生君) 不良債権というものは各銀行抱えております。各銀行ともにそれは自分の自助努力で消していくといいましょうか、償却あるいは引き当てをするわけでございます。と同時に、各銀行はその回収に努めなければなりません。  先生のお尋ねは破綻した金融機関不良債権の回収の問題かと存じます。その点につきましては、銀行が存在しなくなるわけでございます。これは特定の合併のケースじゃありません。破綻して債務超過に陥って営業譲渡した場合には回収という問題が先生のおっしゃるとおり現実問題として出てくるわけでございます。回収しないままほっておくというわけにいきません。  したがいまして、現在は信組の方は整理回収銀行という回収をやる銀行を設けさせていただいております。それから、一般金融機関の場合におきましては、現在やっておりますのは、これからが主な作業でございますが、預金保険機構が買った不良債権を整理回収銀行に回収を委託するという形でやるわけでございます。  ただ、まさに先生おっしゃいましたように、これからその回収というのが相当大変になってくるわけでございます。その数が少ないあるいは規模が小さいときは少人数でも何とかやれたかもしれない。しかし、これからこの回収についてどういう体制がいいのかということを真剣に考えていきたいというふうに思っておる次第でございます。
  206. 上山和人

    ○上山和人君 私たちは、やっぱり公的資金の投入を最小限にとどめるためには、不良債権の回収の成否のいかんがそれを大きく左右することになるわけですから、やっぱり預金保険機構を中心にした回収機構を整備した方がいいんじゃないかと思うんです。これは一つの提案として受けとめていただいて結構ですけれども、今までの経過を見ながら、公的資金の投入を最小限に防ぐために不良債権をどれだけ回収できるか、その成否をかける場合はやっぱり預金保険機構が中心となる回収機構を整備される方がいいのではないか、そう思うところでございます。  そこで、次の質問に移りたいのでありますが、実は、参考人の意見も聞きながら思ったことは、大蔵省に対する不信を非常に強く述べられた参考人もおいでになるわけでありますけれども、この今度の合併のあっせんが大蔵大臣等のあっせんとなっておりますが、大蔵大臣等という、その「等」については、これは具体的には例えばどういうものが考えられるんですか。
  207. 山口公生

    政府委員山口公生君) 来年の年央からは金融監督庁になります。それで、大蔵省があっせんするわけではなくて金融監督庁長官がするというふうになります。「等」につきましては、大蔵大臣としか書いてありませんので来年の半ばからは金融監督庁長官にこの部分は変わります。
  208. 上山和人

    ○上山和人君 先ほど紺谷参考人お話をちょっといたしましたけれども、これは私もきのうの代表質問で、大蔵省があっせんをするということになりますと大蔵省の裁量ですからやっぱり護送船団方式に戻ってしまうんじゃないかという懸念はありますよと。それは今までのことを考えるとだれしもそう自然に懸念するわけです。  だからもっと、紺谷参考人が言われたことでもありますけれども、その判断をする場合に、大蔵省だけの裁量ではなくて何か第三者機関みたいなものも大蔵大臣の判断を助けるものとして、あるいは直接大蔵大臣の裁量ではなくて合併をあっせんする対象になる金融機関の認定なり判断をする場合に第三者機関等の構想は考えられませんか。
  209. 山口公生

    政府委員山口公生君) 監督庁長官が来年の半ば以降はやるわけでございます。検査等をやり、監督等を通じまして一番よく実態を把握しているわけでございますが、もちろんこれをあっせんする際には、最終的には預金保険機構が発動されるわけでございますので、預金保険機構には運営委員会というのがありますので、したがって預金保険機構の意向というのも当然伺いながら行動をするということになるわけでございます。しかし、一番よく実態を把握し、状況を把握しているのは、監督庁長官になるわけでございます。
  210. 上山和人

    ○上山和人君 第三者機関的なものは考えないけれども預金保険機構とは十分協議をしながら当然判断をすることになると、そのように理解してよろしゅうございますか。  せっかくきょうの参考人の意見聴取もしたわけでありますが、第三者機関的なものを考えた方がいいんじゃないかという、これは意見陳述でしたか質問に対するお答えでしたか定かに覚えておりませんが、そういう御意見があったということも受けとめておいていただいた方がいいんじゃないかと思うところでございます。  問題は、これから再発防止といいますか、一番最初から申し上げておりますように、十兆円構想が出て失敗を許されない、これからは同じ失敗を繰り返してはならないというときであるだけに、やっぱり不良債権問題の再発を防止するために、今までの苦い経験の教訓に学びながら、今、銀行局長がお考えになっている不良債権問題の再発防止策といいますか、再発防止のための対策みたいな構想があればぜひ明らかにしてほしいと思うんです。
  211. 山口公生

    政府委員山口公生君) 不良債権を生じせしめたもの、これはいろんな理由があるかもしれませんが、その中の大きな要素の一つは各金融機関の審査がよかったのか悪かったのかという問題もあるかと思います。もちろん、地価の下落を予測できなかったのがおまえの責任かというふうに経営者に問うた場合、それはいろんな御意見はあるかと思います。しかし、やはり基本的には不良債権のもとになった貸し出しの審査がよかったのか悪かったのか、あるいはリスクの管理が十分だったかどうかということだと思います。  したがって、金融機関が今扱っている不良債権を何か公的な仕組みで一挙に処理するというのはなかなか難しいと思いますが、結局これからそういった不良債権をできるだけつくらないようにしていくということを考えましたときには、各金融機関が、これは自助努力でもありますけれども、リスク管理というのをきっちりやっていただくということだろうと思います。  リスク管理をやり過ぎて貸し渋りという現象も、またいろいろ弊害を招く点はありますけれども、自己管理をしていくというところの経営の質の転換ということが、回り道なようですけれども、それが一番正しい道であり、それでぜひやってもらう必要があるというふうに考えておる次第でございます。
  212. 上山和人

    ○上山和人君 きのう代表質問で私は一つは保険料率のことを申し上げました。今の預金保険料が各金融機関に同一の保険料率を適用している、このことの問題を指摘したわけでありますけれども、今の予防措置と関連して、保険料率のことについては今のままでいいとお考えになっているのか、改めることが経営者の自己規律マインドを刺激する、そして効果的だとお考えになっているのか、いかがでしょうか。
  213. 山口公生

    政府委員山口公生君) 大変重要な点をお聞きいただいたと思いますが、保険料率を優良なところは下げて成績の悪いところは上げるという可変保険料という考え方はもちろんあります。将来はそういうことも考えなきゃいけないと思います。それでなければ自己規律が十分に働かないということも先生のおっしゃるとおりであります。  しかし、現実に今それが適用になるかといいますと、いいところは負担が少ないかわりに、これから必死ではい上がろうとしているところはもっと重い負担でその努力が報われないという現象が起きるわけでございます。したがって、今の時点では一律の保険料率を設定してございますが、現時点におきましてはそうせざるを得ないんじゃないかと。しかし、先生の御指摘のように、将来はそういったいいところは楽ができるというような形でのインセンティブを与えていくということは大変重要な御提言だというふうに私は思うわけでございます。
  214. 上山和人

    ○上山和人君 今の局長の御答弁は、もっと端的に申し上げますと、自己資本比率に基づいた料率をお考えになっていらっしゃると理解してよろしいですか。
  215. 山口公生

    政府委員山口公生君) 私が申し上げたいのは、今は可変保険料率の適用は無理だということをまず申し上げたかったわけでございます。  ただ、将来ずっと先の話になりますと、優良度というのは恐らく自己資本比率等ではかっていくということになろうかと思います。
  216. 上山和人

    ○上山和人君 わかりました。  それでは、時間を残しておりますけれども、最後にいたします。  やっぱりこの予防措置、これから大蔵省不良債権問題の再発防止の対策に腐心をされると思うだけに今私は少し断片的に申し上げましたけれども、もっと十分大蔵省として検討された上で一日も早くそういう対策が具体的に講じられて、そして大胆な政治決断とも相まって二度と同じ失敗が繰り返されないような安定した金融システムといいますか、金融システム安定化を目指して大臣を先頭に最大限の御努力を続けてくださいますように御期待申し上げまして、とりあえず本日の質問は終わりにいたします。  ありがとうございました。
  217. 笠井亮

    ○笠井亮君 それでは、午前中に続きまして質問を続けさせていただきます。  午前中の最後のところで、ちょうど今、上山委員からもありましたけれども、株主、出資者の責任という問題の御答弁をいただいて、そこで終わっているところであります。今も改めてありましたように、局長の御答弁というのは簿価と時価の差があるということについては負担になるのだというお話だったと思うんですけれども、それで負担していると言えるのかというようなことがやっぱりあると思うんですよ。しかも、二次ロスが出た場合はその分については負担しないということで、そんなことでいいのかということが出てくるというふうに思います。  この問題は、参考人に先ほどちょうど伺ったのですけれども西崎参考人金融制度調査会というところで長い間やってこられて、この問題をどう考えるかということで簿価、時価の差という御説明もあったということも紹介しましたのですが、参考人の御意見はそういう問題じゃなくてもっと原則的な問題なんだと、そういう問題として株主、出資者の責任があるんだという形で、フランスの場合には大株主に救済命令を出すということも含めてやっている例もあるんだということも紹介されたので、私はそういう問題としてこれはどういうことをやるのかというのはさらに大蔵省としてもしっかり研究もするし検討もする、そして具体化するということが必要だと思うんですけれども、そのことについて一言御答弁あればお願いします。
  218. 山口公生

    政府委員山口公生君) この特定合併の場合は債務超過ではありませんので、資産超過であります。したがって、その限りにおいては株主の権利は残るわけであります。  先生の御趣旨は、さはさりながら、例えば株主であるからそれは第三者割り当て増資をして引き受ける義務があるとか、そういう趣旨のことをおっしゃっているのであれば、それはそういったことを強制できるかどうかという問題があろうかと思います。  ただ、これは一応のこちらのあっせん行為と向こうの合併行為というのがありますので、今の我が国法律の体系からいうと株主は平等の扱いで、それでその損失を株主の勘定でできるだけ埋めるという形での責任の負い方ということになろうかと思います。
  219. 笠井亮

    ○笠井亮君 これ以上やっていても恐らくそれ以上の話はないと思うんですけれども、私は西崎参考人の意見は金融制度調査会、長年にわたってやってきて、外国とのかかわりでも原則問題として発動の前提条件の中にそういうものとしてやっぱり位置づけているんだという話も答申の流れの中で言われたので、ぜひこの問題はさらにしっかり検討もしていただきたいというふうに思うわけでございます。  続きましてもう一つ責任を問うていくということとの関連でいきますと、発動の条件といいますか基準といいますか、どう条件を縛っていくかということなんですけれども、今、特定合併の話で、この法律案の附則第六条の三ですか、先ほど来出ておりますけれども、「その破綻金融機関が業務を行っている地域又は分野における資金の円滑な需給及び利用者の利便に大きな支障が生ずるおそれがあると認めるとき」に大蔵大臣合併のあっせんができると書いてございます。  従来も、第六十二条だったと思うんですけれども、同様の条件が、もちろん今度は特定合併で新しいケースになるわけですけれども、六十二条でいきますと同様の条件があり、そこには預金者保護ということも明確に入っていたと思うんです。ところが、今回の法律案にはあえて預金者保護ということを書いていないのはなぜなのかというのについて伺いたいんです。
  220. 山口公生

    政府委員山口公生君) もちろん、究極の預金保険法の目的は預金者保護であるわけでございます。したがいまして、本則と附則で考え方が違うわけではありません。この六条の三も第二号におきまして「前項のあっせんを行うことができる特定合併は、機構による資金援助を得て行われることが預金者等の保護に不可欠であるものに限るものとする。」というふうにしておりますので、基本的な考え方は同じにしておるわけでございます。  それで、今、先生がおっしゃったのはあっせんをどういう状況のときにやるかということで、それはしばしば申し上げましたように、複数の破綻金融機関が存在し、それがこのまま行くと地域経済に大変な影響が及ぶ、このまま業務停止命令がかかるような状態になったときに、その取引先等に影響があるのみならず、それがまた連鎖的な現象を起こしてしまうというようなことをイメージしてここに書いておるわけでございます。
  221. 笠井亮

    ○笠井亮君 私も、中小企業など善意で優良な借り手の保護といいますか、これも預金者保護とともに重要であるというのは当然だと思っているんです。ですから、私自身で言いますと、単に銀行をつぶせばいいということじゃないんじゃないかというように思っているのでそういう点はあると思うんですけれども、やはりこの附則のところでいきますと、六条の三で具体的にこういうことを書くのであれば預金者保護ということについても六十二条と同様にきちっと位置づけて明記することがやっぱり必要じゃないかということを指摘しておきたいと思います。  その上に立って拓銀の債務の問題について具体的に伺っていきたいと思っているんです。拓銀にしましても山一証券にしましても、破綻責任はバブルを引き起こしてそれに踊った乱脈経営にあるということで、これも昨日来申し上げているんですけれども、その不始末を税金で行うなどとはやっぱり絶対に許されないルール違反だというふうに私は思うんです。  乱脈経営という場合、二つの角度といいますか、切り込みというか切り口から見ることが大事なのかというふうに思っているんです。その第一は、投機目的の不動産融資だとか、あるいは総会屋、暴力団との結びつきから、あるいは飛ばしまでやっていくというような融資の内容、質の問題といいますか、やり口といいますか、そういう問題をきちっと見ると。それから、もう一つの角度といいますか切り口といいますと、やはり銀行法に反して行われているというか行うということですか、大口融資の問題ですね、大口融資の問題にやっぱり着目する必要があるんじゃないかというふうに思うんです。  そういう点を踏まえて具体的に伺っていきたいと思うんですけれども、たくぎんファイナンス、これが去る十二月五日に特別清算を申請いたしました。負債総額は二千百四十七億円、うち拓銀が千六百三十七億円という形で四分の三を超えるということになっていると思うんですけれども、これは拓銀のいわば限度額を超えているんじゃないかと思うんですけれども、その点は事実としてどうでしょうか。
  222. 山口公生

    政府委員山口公生君) その限度額を超えているというのはどういう御趣旨か、もしお聞かせいただければありがたいのでございますけれども
  223. 笠井亮

    ○笠井亮君 融資規制の問題です。
  224. 山口公生

    政府委員山口公生君) たくぎんファイナンスに対してですか。  突然の個別のケースについてのお尋ねでございますので、今、手元にはちょっとございませんが、もし例の二〇%というのであれば……
  225. 笠井亮

    ○笠井亮君 じゃ、それはまた後で伺うことにします。今はいいです。  拓銀が千六百三十七億円という形で四分の三を超える、それから拓銀系ノンバンクのたくぎん抵当証券がございますが、十一月の十九日に破産をするということでこの負債総額が五千三百九十一億円、拓銀が千二百十二億円、それから拓銀グループでは二千七百九十九億円にも上っているというふうになっていると思うんです。  それじゃ伺いますけれども拓銀及び拓銀グループのうち整理されるものも含めて不良債権額というのは一体幾らになっているのかということなんですけれども、これやはり直ちに公表すべきだというふうに思うんですけれども、それはいかがでしょうか。
  226. 山口公生

    政府委員山口公生君) 拓銀につきましては現在検査に入っておりまして、まだ検査結果がまとまっておりません。したがいまして、検査を待ってその辺が明らかになるというふうに思うわけでございます。
  227. 笠井亮

    ○笠井亮君 不良債権というのは、先ほどどういう性格かという議論もありましたけれども、平たく言えば融資先が借りた金をどうしても返せない、踏み倒すということにもなるというようなことも含めて大変に重大な問題だと思うんですけれども、そういうこと、あるいは相手を明らかにしないでどうして責任が追及できるのかということは非常に思うわけでございます。その点は検査の結果が出てからという繰り返しのことでありますけれども、その点は強く指摘をしたいと思うんです。  このたくぎんファイナンスとたくぎん抵当証券の負債ですね、今数字を申し上げたわけですけれども、二社合わせて七千五百億円を超えるということでありますが、この負債も親会社の拓銀に重くのしかかるということで、迂回融資、それから不良債権飛ばしで、私先日そういう言い方をさせてもらいましたが、質問しましたカブトデコムの問題、ここでは債務超過が二千百四億円にも及んで今も拓銀からの負債がことしの九月期中間決算で八百四十億円残っていると。  そのほか拓銀不良債権の上位を占めているのがエイペックス、ここが六百二十五億円、それからリッチフィールドというところが四百五十三億五千五百万円、それから地崎産業が四百十七億八千七百万円、拓銀破綻以前に倒産した東海興業の場合は四百七十四億円という形で不良債権が明らかになっているわけですけれども、今挙げただけでも非常に相当膨大な額だと言わざるを得ないという形だと思うんですよね。本当に大変な問題だと。  先ほど全体の不良債権の額というのが、ことし三月の時点だと思うんですけれども、二十七兆九千億という話もありました。大蔵大臣が衆議院での答弁の中で年末に各金融機関不良債権額を公表するように指示したという形で答弁されていると思うんです。  そうなりますと、当然拓銀についても公表するんだというふうに私はその答弁を伺って思ったんですけれども、関連会社あるいはグループも含めてきちっとやらせるということになるんじゃないかと思うんですけれども、その点はどうかということと同時に、拓銀に開示させるだけじゃなくて大蔵省としても銀行法を必要に応じて強化をして金融機関の社会的責任にふさわしいディスクロージャー、先ほども議論がありましたが、これを具体的に推進する必要があると、大蔵省の査定の四分類に沿って拓銀の債権も公表すべきだというふうに思うんですけれども、その点についてはいかがですか。
  228. 山口公生

    政府委員山口公生君) 大臣が予算委員会で申されたのは、九月末の統一基準による不良債権を早く集計しなさい、こういう御指示がありましたので今鋭意データを集めてやっておるということでございます。年末までには公表できるというふうに思っておるわけでございます。  それから、今おっしゃいました拓銀の件につきましては、今検査をしております。検査をしておりますので、その結果が明らかになればおのずとその実態というのがわかると思います。ただ、拓銀自身は破綻したわけでございますが、個別企業にかかわる問題になりますと、それはやはり公表というのは慎まなければ相手企業が現に生きて活動している場合がある、そこは慎むということでありまして、拓銀自体がどうかということになりますと検査をすればおのずとその辺が判明してくるというふうに思うわけでございます。
  229. 笠井亮

    ○笠井亮君 年末までといってももうわずか、時間が迫ってきておりますが、速やかに明らかにすべきだというふうに私は思います。  それはもう年末までということできちっと明らかになるわけですね。
  230. 山口公生

    政府委員山口公生君) 九月末の統一基準による不良債権は明らかになりますが、拓銀の方は検査が終了しませんとそこは確定はできません。
  231. 笠井亮

    ○笠井亮君 拓銀の検査は大分前のこの委員会質疑でいつごろになるかという質問がありましたが、大体めどとしてはいつごろまでと今の進行状況の中でおっしゃれるでしょうか。
  232. 山口公生

    政府委員山口公生君) 十月の半ばから入っておりますが、これはある意味では通常のゴーイングコンサーンとしての検査とはちょっと違った観点から見なければいけませんので時間は少々かかるのではないかというふうに思っております。いつまでということは申し上げられませんので、その辺は御容赦をお願いします。
  233. 笠井亮

    ○笠井亮君 大蔵省日銀が査定する四分類によりますと、都市銀行の問題債権というのば、先ほども答弁があったと思うんですけれども銀行が公表している公表不良債権よりも大きくなるということで、三倍にもなるというようなことも言われたりもしておりますが、拓銀でいえば公表不良債権が三月末の時点で九千四百二十九億円だったということでありますから、その三倍にもなるということになりますと二兆八千億とか三兆円とかいう規模にもなるのかなということも考えていかざるを得ないというふうに思うんです。  そこで、さらに伺いたいんですけれども破綻を招かないために大口規制を定めた銀行法の十三条という問題が、これは金融恐慌などの痛苦のかつての教訓から戦後制定をされたというふうに承知をしているんですけれども、どんなに健全な相手でも同一人に過大な貸し付けをするのはリスクが大き過ぎるということで許さないというのが信用供与限度額というのを定めた精神だというふうに思っております。それはそのとおりだと思うんです。  この銀行法の精神で拓銀経営を行っていれば破綻につながるようなことは果たして起こっただろうかということを非常に思うんですけれども、その点はいかがですか。
  234. 山口公生

    政府委員山口公生君) 拓銀破綻の原因が何であったかということは検査をしてみればおのずとわかってくるものと思いますけれども銀行法の精神とおっしゃいましたのが十三条に限ってのことでありますと、それは事実関係を見てみませんと何とも申し上げられないというふうに思います。  ただ、銀行法の精神が、先生がおっしゃいますように、健全な経営をやらなきゃいけないという基本的な銀行のあり方としての銀行法の精神ということでありますれば、それはやはり銀行のあり方ということをきっちり守るということが、先ほどの御質疑でもありましたけれども、それがまず一番大切だということでございます。ただ、十三条に限っての、このことだけが、あるいはこれが主因かというふうに言われますと、それはちょっと事実関係を解明しませんと何とも申し上げられないというふうに思います。
  235. 笠井亮

    ○笠井亮君 これだけ膨大な不良債権があると。それから、前の委員会のときにもカブトデコムの問題で具体的にこの信用供与限度額の問題も含めて質問させていただいたわけですけれども、そこはよく具体的に見ていかなきゃいけないというふうに思いますし、この問題というのをきちっと押さえていくということが大事だというふうに思うんです。  これまでの当委員会でもこの問題を取り上げてきたわけですけれども大蔵省銀行からの同一人に対する貸出限度については広義自己資本の二〇%というのが銀行法であると、それにもかかわらず、大蔵省通達で同一グループ、つまり同一人及びその関連子会社への貸出金及び支払い承諾見返りの限度というのが四〇%という形で認めているということで答弁があったと思うんです。  つまり、一社に対して二〇%の融資を超えなければグループに対しては四〇%までできるということになっているというふうに思うんですね。ぎりぎりの融資をしていたところがもし一グループでもおかしくなって不良債権化すれば、すぐに自己資本額の半分近くになってしまうということをそれは示していると思いますし、不良融資先が二つのグループと一社あるとすると、そこに通達に沿って融資していても四〇%と四〇%と二〇%ということで、合わせて結局それだけで自己資本額に相当する巨額になってしまうというふうに思うんです。  そういう実例がまさに拓銀の乱脈経営だったんじゃないかというふうに思うんですけれども、そういう点についてはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  236. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今、先生御紹介いただきましたように、大口融資規制は、特定の者に対する貸し付けの限度というものを設けて、それのリスクが一挙に銀行の健全性を損なわないようにという趣旨でございます。  今、御紹介いただいたような二割あるいは四割という制限を設けておりますけれども、そういう形で現にやらせていただいておりまして、そういったものを守っていっていただかなければ健全性は守れないというふうに思うわけであります。
  237. 笠井亮

    ○笠井亮君 私は、具体的な問題で見て、大蔵省対応の不十分さから拓銀問題も出てきているということを率直に見る必要があると思うんです。  とにかく、これだけ膨大に膨れ上がってきた問題というのがあるわけだし、融資する側も系列ノンバンクなどのグループで融資をしているから額がさらに膨れ上がると。先ほど申し上げたたくぎん抵当証券で見ましても、拓銀本体が千二百十二億円、拓銀グループでは実に二千七百九十九億円にも上っているということで、二〇%、四〇%だと大蔵省が言われているわけですけれども、結局何の歯どめにもならなかったということだと思うんですよ。  やっぱりこの事実を認めなければ話が始まらないというふうに私は思いますし、さらにそれだけではなくて網の目をくぐって行われたということも考慮に入れなきゃいけないということでありますから、そういう点では直ちに大蔵省としても対応を改めるべきだというふうに強く思うわけでございます。そうでないと、後になって幾ら足りないんだ足りないんだといっても、これは話が遅いということになると思うわけであります。  そこで、今後破綻する銀行があるのなら直ちに今回の拓銀破綻の教訓も生かして銀行法を厳しく運用して業務の規制を見直すべきだというふうに思うんですけれども、その点についてはいかがですか。
  238. 山口公生

    政府委員山口公生君) これまでも行政はその辺は見てまいっておるわけでございますが、今後ともこういった法令をきちんと遵守していくということに重点を置いていくということはこれからの行政あるいは検査の重要な要素になるというふうに思います。  いわゆる総会屋事件もありましたけれども、法令をまずは守るということをやはり基本にやっていってもらわなければ、そういった経営をやっていますとリスクの管理もおざなりになるというふうなことになろうかというふうに思います。
  239. 笠井亮

    ○笠井亮君 大蔵省の通達の問題ですね、具体的に四〇%までというところについては再検討の必要があるということはお認めになりませんか、どうでしょうか。
  240. 山口公生

    政府委員山口公生君) この四〇%で何か大きな支障が現に来されるというのであれば、これは見直す必要はありますけれども、これで現に各金融機関対応してきておりますので、それもまた現実問題として尊重していくということだろうかと思います。
  241. 笠井亮

    ○笠井亮君 私が申し上げたのは拓銀問題では歯どめにならなかったんじゃないかということを申し上げたわけで、その点は真摯に事実のもとに受けとめながら、そういうことも含めて再検討するというぐらいはやっぱり答弁していただかないと先に話が進まないんじゃないかと思うんですけれども
  242. 山口公生

    政府委員山口公生君) 私どもは、こういった基準につきましては、この問題に限らず、現実に即して何か問題が生じているのか生じていないのか、こういう形で運用していることに問題があるのかないのかということを謙虚に見て、それで直すべきところは直す、しかし直す必要がないところは直さないというようにきちっとした対応をしていくということだろうというふうに思います。いろいろなケースが生じてきますが、それが特異な例なのか、共通にあらわれる現象なのかということをよく見きわめて政策の基準をつくっていくということだろうと思うわけでございます。
  243. 笠井亮

    ○笠井亮君 繰り返しになりますが、現実に拓銀問題が起こっているわけで、今後特異なケースとかという形で見直さないで済ますとすれば、またそういうことで繰り返されたらそのときは本当に通り一遍では、今でも済まされないわけですが、大変なことになると。そうならない前に、やっぱり大蔵省の行政あるいは通達の問題を含めて、銀行の精神あるいは銀行法十三条に照らしてどういうことなのかということを真剣に、具体的に、今必要なことはやると言われたわけですから、この問題についてもやるべきだというふうに思うわけでございます。  続きまして、拓銀に対する日銀特融について伺っていきたいと思います。  最初に、基礎となる数字の確認なんですけれども、十一月末時点での日銀から拓銀に対する融資なんですけれども日銀法二十条に基づく貸し出しが八百億円、それから日銀法二十五条に基づく貸し出しが二兆二千二百億円というふうに私間違いなければ承知しているんですけれども、この額が現在ではどういうふうになっているでしょうか、そのことをまず例えればと思うんです。
  244. 本間忠世

    参考人本間忠世君) お答え申し上げます。  現在の状況でございます。本日でございますが、拓銀に対します特融、二十五条の貸し出しが約二兆六千億になっております。それから、いわゆる二十条、担保を私どもが受けまして出しております貸し出しの方でございますが、これが約八百億、これは基本的に変わっておりません。
  245. 笠井亮

    ○笠井亮君 では次に、内訳なんですけれども日銀特融のうち拓銀が預金の払い出しに使っている分というのは幾らかということなんです。先日も地崎産業に対する新たな再建計画を決めて、また貸し渋りのないようにということで融資は続けていくということもありましたけれども、融資分として使ったのは幾らか、その二つですね。
  246. 本間忠世

    参考人本間忠世君) これは基本的に拓銀の全体の金繰り、これを我々が状況を受けながら、この金繰りの全体に対して担保がある分については二十条、担保を超える分については二十五条ということでトータルの資金供給しているものでございます。  御承知のとおり、金繰りを構成している要因はさまざまでございまして、おっしゃるとおり、預金が流出しているものもその大きな要因だと思いますし、それから拓銀が通常仕事をしておりましたときにマーケットで調達できた、コール市場等で調達できましたものがもうできにくくなっておりますので、そういうものも結果としてこの特融の中の構成要素になっている。その他もろもろでございまして、これは私どもは個別に一つ一つ要因について必ずしもつまびらかにしておりませんので御了解をいただきたいと思います。
  247. 笠井亮

    ○笠井亮君 そうしますと、次の質問もお答えが難しいのかと思うんですけれども、先日、二十七日に拓銀や北海道の財務局でいろいろ聞いたところ、約七千億円がインターバンクでの返済に回っているという話を伺ってきたんですね。現在までにコール市場への借入金の返済に幾ら使われたかという問題について、あるいはその他の借入金の返済にも使われているのかとか、その額は幾らなのかということについてもこれは難しいということですか。全体としての額だけということでしょうか。
  248. 本間忠世

    参考人本間忠世君) 私、現在その詳細を残念ながら持ち合わせておりません。御了解いただきたいと思います。
  249. 笠井亮

    ○笠井亮君 具体的な額は別としても、そういう形で使われているということは承知されているということでありましたが、拓銀不良債権の実態が全体としてまだ明らかになる前に何の担保もなくて無制限に出していくという形で借入金の返済にも相当部分充てられていると見られるということは、今うなずいていらっしゃいますが、そうすると一体どういうことになるのかということが非常に心配されるわけでございます。  その返済について、日銀はこの間、今後の資産売却代金や預金保険機構による資金援助によって全額回収し得るものと判断しているというふうに言われておりますけれども、これはつまり債務超過になれば残りは預金保険機構に出していただきますと、そういうことで承知して出されているということになるんでしょうか。
  250. 本間忠世

    参考人本間忠世君) 拓銀の現在の資産と、それから債務の状況につきましては、先ほど銀行局長からお話がございましたように、現段階は大蔵省の検査の結果、私どももその検査の結果に基づいて最終的な預金保険機構の出動の仕方というものが固まってくる、そこからこの数字も固まってくる、こういう話だと思っております。  したがいまして、現段階ではそこのところは十分もちろん計数的にははっきりしないわけでございますが、基本的な考え方といたしましては、拓銀が北洋銀行に営業譲渡をされる、その時点におきまして預金保険機構拓銀の資産を買い取る、この買い取りの代金というのがしたがって預金保険機構から北洋銀行といいますか、営業譲渡のところでこの金が出ます。それから、営業譲渡までの間に拓銀が資産を売却するということがこれから起こると思いますので、売却代金というものも当然日本銀行の特融を返していただく原資の一つになるのだろうというふうに思っております。したがいまして、基本的には日本銀行の特融は預金保険機構資金援助と、それから拓銀の資産の売却代金、これをもって返済をしていただけるものだというふうに考えております。  この関係は拓銀だけではなくて、これまで幾つかのケースがございました。営業譲渡のケースあるいは合併のケースで預金保険機構の発動がありました。例えば、木津信用組合あるいは兵庫銀行、すべて数字、それから全体のバックグラウンドは異なりますけれども、特融の返済のされ方ということについて見れば同じやり方でございます。
  251. 笠井亮

    ○笠井亮君 そこで、拓銀の損失といいますか、債務超過がどれぐらいの規模になるかということが問題になってくると思うんですよね。少なくとも、九日に衆議院の参考人質疑で河谷参考人ですか、拓銀が道銀との合併交渉中に示した不良債権の要処理額というのが狭義には四千数百億円、広義には六千億円程度であったことを明らかにしておりました。これらの債権回収は極めて困難であることから、拓銀の損失額というのは約三千億円の自己資本を上回ることを認めているということがあったと思うんです。  しかし、これは夏の段階でございまして、その後拓銀自身も含めて、先ほどから申し上げているような系列ノンバンクの七千五百億円を超える大型破綻を初めとして新たな破綻先がふえたと。さらに、エイペックスだとかカブトデコムだとか――エイペックスというところではほとんど担保がないことも明らかになっておりますけれども、そういう破綻が今後も続けば損失が一兆を超える、さらに一兆数千億に上がることも十分あり得るということになっていると思うんですよね。  エコノミストという雑誌で十二月二日付、これを見ますと、「下手したら二兆円」、「それは住専の三倍だ。」というような書き方もしてあったわけで、そういう声もあるという段階になっていると思うんです。  先ほどの日銀特融の話に戻るわけですけれども、このように多額の債務超過が起こった場合、借入金の返済にも日銀の特融が使われるということでありますので、日銀への返済が難しくなる場合が出かねないというのがあると思うんですよ。今、議論されている公的資金導入論、大きな問題の一つはやっぱりその辺のところにあるのかなと、その絡みがあるのではないかと思うんです。  日銀特融の返済に当たって、債務超過分といいますか、焦げつき分に預金保険機構を通じて公的資金を入れるということになるんじゃないかというふうに思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。
  252. 山口公生

    政府委員山口公生君) 拓銀につきましては今検査しておりますけれども、今、先生がおっしゃったようないろいろな要素を考えるということは、結局清算といいますか、もうゴーイングコンサーンとして見ないわけですから、かなりそこは検査は見方がゴーイングコンサーンの場合とは違ってくるわけです。したがって、かなり債務超過状態が大きい可能性は否定できないという感じは受けます。ただ、まだ幾らぐらいかというのがはっきりいたしません。  いずれにせよ、その場合におきましては預金保険機構がそのロス分は資金の贈与をする形で穴埋めをするということでございます。そういうことをすることによって日銀の特融も返却できるということになりますし、またそれを埋めることによって預金者、あるいは、先ほど債務とおっしゃいましたが、そのシステムを守るというようなことがありまして、どうしても今の経済情勢におきましてはそこをそのまま、ロスのまま放置する部分があるというわけにはなかなかいかないだろうと思います。  これは過去に起こった非常に残念な事件だと、あるいは残念な結果だということを言わざるを得なくなるわけでございますが、かといってそれを放置すればもっと大きな問題を生じるわけでございます。したがって、処理をせざるを得ないということ、そこには預金者の保護であり、システムの安定を守ることであり、また取引先、健全なところは中小企業を主として守るということを今の時点では最大限目標にしておるということでございます。  公的な支援の話が現に出ておりますが、その結びつきでの御議論というのも私は全く否定するものではありませんけれども、いずれにせよこういったものを社会的に一番コストの少ない形、つまり私が何を申し上げたいかというと、大混乱を起こすということはこれは社会的コストが一番大きくなるわけです。そういう形で処理をしていくということが私どもに課された課題であろうというふうに思っているわけでございます。
  253. 笠井亮

    ○笠井亮君 乱脈経営でさんざんこんなに膨らませたものを国民にツケを回すということは絶対あり得ないというふうに私は思うんです。  不良債権については、預金保険機構が買い取って整理回収銀行に回収させるということもそういう処理の中ではあるわけですか、その辺はどうなんでしょうか。
  254. 山口公生

    政府委員山口公生君) 先ほどの御質疑でもございましたけれども破綻した金融機関不良債権をだれかが回収しなきゃいけません。その回収をするのは、預金保険機構が買い取りますと、今私どもが考えておりますのは整理回収銀行にそれを委託して回収をしてもらうと。  ただ、先ほどの御質疑でもっと体制を整備すべきではないかという貴重な御意見もありましたので、その辺も含めてまた検討課題とさせていただきたいと思いますけれども、これは回収の実を上げるべく私どもとしては努力をさせていただきたいというふうに思っております。
  255. 笠井亮

    ○笠井亮君 その回収といっても、整理回収銀行の回収状況というのは、私も数字をいろいろ拝見しましたけれども、今五百一二十億円ですか、一三・六%という形で、それも不良債権買い取り時の時価に対してそういう状況になっているということで、山陽信組以下の八信組の損失額の合計というのは一兆二千六百億円ということになっておりますからわずか四・二%ということになると思うんですね。拓銀の損失額が一兆四千億円あるいは五千億円となれば、現在の預金保険機構のあり金ではとても足りなくなるということで、その点からも結局大きな問題が出てくると思うわけでありまして、その後の対応が決まらないうちに大蔵省日銀がいわば一緒になって拓銀がほかの金融機関から借り入れた金を日銀が立てかえてそのまま返してしまって、後になって国民の預金を保護するためということであいた穴を国民の税金で埋めるという事態になりかねないということを私は非常に危惧するし、そういうことが問題としてあるんだと、そういうことで無責任処理されることは許されないということを私は強く思うわけでございます。  続きまして、残った時間で伺いたいことなんですけれども、先ほど来ありましたが、総理が政府保有株を担保として十兆円の国債発行などを柱とする構想について検討を指示したということでございます。このことについて幾つか伺いたいと思います。  私は、これは形を変えて国が借金をして銀行を救済するということで住専処理でやったことと同じようなことをまた繰り返すことになるというふうに今その中身を伺いながら思っているわけですけれども、問題は、名前をどういうふうにつけるかというのは別にして、何とつけようとも財政法で認められている四条国債以外はすべて赤字国債ということになりますから、これは政府・与党がつい先日強引に成立させたばかりの財政構造改革法に真っ向から反することになるんじゃないかと思うんですけれども大蔵大臣、そういうふうには御認識なさらないですか。
  256. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 先ほども上山委員の御質疑にお答えをさせていただきました。  新型国債という概念で審議が党において行われておると理解をいたしております。特例公債にも当たらず建設国債にも当たらず、こういうことであります。  どういう形でいきますかは、ただいま取りまとめの状況最大のポイントでございまして、それが決まりますと政府に対し、大蔵省に対し、これにてぜひと、こういうことになると思うんですね。政党政治の基本でありますから、与党一体、三党の合意の中で行われる案件については大蔵大臣として、担当大臣として誠心誠意しっかりと受けとめていく、こういうことになろうかと思います。
  257. 笠井亮

    ○笠井亮君 財革法との関係については。
  258. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 新型国債ということで特例公債ではございませんというその仕切りが明確に行われることによって財政構造改革の理念と矛盾するということはない、こういう形で取り組まれるべきものと、こう考えております。
  259. 笠井亮

    ○笠井亮君 名前をどうつけようと、私は財政法から見れば四条国債以外はやっぱり赤字国債、特例公債ということになると思うのでこれは明らかに矛盾すると思うんですけれども、そのことが一つ。  もう一つ伺いますけれども大蔵省は来年度の予算編成に当たって赤字国債、特例公債の発行額を今年度に比べて一兆二千五百億円削減するという目標があったですね。これについては達成を断念したというふうに報道されておりますが、財政構造改革法が適用される初年度からその目標を放棄したということになるのか、それは事実なのか、その点についてはいかがですか。
  260. 三塚博

    国務大臣三塚博君) これは私もたびたび御質問にお答えをさせていただいてまいりました。  九年度特例公債の発行額七・二兆円、六カ年にわたりまして発行をゼロにしたい、こう申し上げてまいったところでございまして、その目標値に向けて誠心誠意理念を達成するため頑張るというのは当然のことであろうかと思います。
  261. 笠井亮

    ○笠井亮君 じゃ来年度については、予算編成に当たって一兆二千五百億円、この目標を織り込んでやるということなんですか。
  262. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 目標はそうでありますけれども、六年度目にゼロになるように最大努力を、こういうことでございます。
  263. 笠井亮

    ○笠井亮君 大臣、私もついこの間質疑したばかり、財革法でも質疑に参加し、それから特別委員会におりましたので大臣の御答弁もつまびらかに伺っておるところでありますが、大臣、こう言われているんですよね。  これは吉岡議員が質問したのに対して、「大蔵省がつくられた「財政事情の試算」にある要調整額というものの性格と言うべきか、この額は結局どういう意味を持つ額かといえば、この要調整額をそのままにしておいたのでは目標が達成できない。したがって、各年度ごとにこの要調整額を法案に基づいて作成された概算要求にさらに追加して、各年度ごとに予算ではこういう額が残らないように予算編成される、そういう数字だととってよろしいですか。」という質問に対して、「要調整額が解消されませんと、この法律に明示をされましたその目標が達成できませんので、そのとおりであります。」と、こう言われました。  さらに、その後こういう問いがあります。「この大蔵省の要調整額によると、来年度予算の場合に、それに加えて低い数字でも二兆一千億円、高い数字だと二兆九千億円、もし国鉄、国有林野の債務処理問題をこれに加えることになるとさらに八千億円ふえる。こういう額をうまく処理しなければ来年度予算編成ができない、こういう数字だと思いますが、これは間違いありませんか。」という問いに対して、事務当局でも結構ですと言われたのに対して大臣があえて立たれまして、「私からお答えします。」ということで、「この「財政事情の試算」に基づいて、構造改革法でありますこの法律基本を踏まえて編成をしてまいりますと、御指摘のとおり相なります。」という形で言われたわけです。  つまり、六年間でとにかく七兆円、八兆円、最終的にあれができればいいんだということじゃなくて、毎年度毎年度具体的にこの目標をやっていかなければこれができないんだということを大臣答弁されて、それを前提にしてあの法律案審議がされ、ああいう形で成立しているということでありまして、今、大臣が来年度の話にお答えにならないで六年間でとにかくやればいいんだというのは、ちょっとそういう話にはならないんじゃないですか。
  264. 三塚博

    国務大臣三塚博君) そこのところは、後ろの方に吉岡先生がおられて聞いておりますが、そのとおりの答弁をさせていただきました。  中長期六年で目標を達成するというのも一つあります。私は、そういう中で気迫を込めて単年度でやれるだけのことはやり抜いていかなければならぬとこの目標を明示させていただいたところでございます。
  265. 笠井亮

    ○笠井亮君 やっぱり具体的に来年度あたりからまず、初年度というか、この改革法に基づく初年度ですから、そういう点では少なくとも毎年確実にやるというふうに言われたわけですし、しかも毎年確実にやってもこれはやるのがもう困難だというところまで言われたのが初年度からそれがはっきりやると言われないということであれば、これはもう積み残していったらますますやれないことになるんじゃないかと、こういう問題だと思うんですよ。  だから、大臣、これは二つあると思うんですけれども、率直に言われたらいいのかなと思うんですが、考えていたよりもその後の事態が非常に大変なことがあるので初年度はそのとおりいかなくなったのでとりあえずは達成は断念というか、来年度については難しいということなのか、あるいはもともとこの法案を通してその後初年度からやれるかどうかわからなかった、あるいは当然初年度からやるのはもう無理だということで、その達成ができないことを予定しながらあえてああいう形で説明されてこの法案を通されたのか、そういう点では、言葉は悪いかもしれないけれども、ごまかして通したのか、その二つに一つしかないと思うんですよ。  ですから、その点についてはすっきりとどういうことなのかということについて率直にお答えをいただきたいと思います。
  266. 三塚博

    国務大臣三塚博君) ただいま笠井委員の口が悪いがという前提で率直に言われましたが、口が悪かろうとよかろうと、今日の時点で直接表現で経済が極めて厳しいということも言われる方も多々出てまいりました。なかなか一・九の成長も基本的に大変だな、こういうことも聞いております。いろいろと論評があり、論評は論評としてしっかりと受けとめております。  そういう中におきまして、私は改革基本目標に向けて全力を尽くしてまいる、こういうことで御理解ください。
  267. 笠井亮

    ○笠井亮君 時間が来ましたから終わりますが、成長率の問題でも三・五か一・七五かということで試算の中でも両方あったわけです。三・五は難しいという話もある中で、その初年度から国債を新型で出していく、あるいは一兆二千五百億もどうなるかわからないというようなことになると、これはあの法案を通してわずか一カ月もたったかたたないぐらいのところでもう早速違う、見通しが崩れると、こんなことではやっぱり国民が今の政治に対して、あるいは政府に対して本当に信頼なんということにならないということを最後に私は言わせていただきまして、質問はとりあえず終わります。
  268. 石川弘

    委員長石川弘君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、次回は明十二日午前九時三十分に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後八時四十八分散会      ―――――・―――――