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1998-01-08 第141回国会 参議院 大蔵委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年一月八日(木曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員異動  一月六日     辞任         補欠選任      上山 和人君     梶原 敬義君  一月七日     辞任         補欠選任      直嶋 正行君     今泉  昭君  一月八日     辞任         補欠選任      西田 吉宏君     谷川 秀善君      今泉  昭君     平田 健二君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         石川  弘君     理 事                 河本 英典君                 楢崎 泰昌君                 牛嶋  正君                 峰崎 直樹君                 梶原 敬義君     委 員                大河原太一郎君                 片山虎之助君                 金田 勝年君                 清水 達雄君                 谷川 秀善君                 西田 吉宏君                 野村 五男君                 松浦 孝治君                 今泉  昭君                 海野 義孝君                 白浜 一良君                 平田 健二君                 広中和歌子君                 岡崎トミ子君                 久保  亘君                 笠井  亮君                 山口 哲夫君    国務大臣        内閣総理大臣   橋本龍太郎君        大 蔵 大 臣  三塚  博君    事務局側        常任委員会専門        員        小林 正二君    説明員        経済企画庁調整        局財政金融課長  奥田 宗久君        経済企画庁調査        局内国調査第一        課長       古川  彰君        大蔵政務次官   塩崎 恭久君        大蔵大臣官房金        融検査部長    原口 恒和君        大蔵省主計局次        長        藤井 秀人君        大蔵省証券局長  長野 厖士君        大蔵省銀行局長  山口 公生君        大蔵省国際金融        局長       黒田 東彦君        通商産業省産業        政策局産業資金        課長       齋藤  浩君    参考人        日本銀行総裁   松下 康雄君        日本銀行理事   本間 忠世君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件理事補欠選任の件 ○参考人出席要求に関する件 ○租税及び金融等に関する調査  (金融安定化対策等に関する件)     ―――――――――――――
  2. 石川弘

    委員長石川弘君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る六日、上山和人君が委員辞任され、その補欠として梶原敬義君が選任されました。  また、昨日、直嶋正行君が委員辞任され、その補欠として今泉昭君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 石川弘

    委員長石川弘君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 石川弘

    委員長石川弘君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事梶原敬義君を指名いたします。     ―――――――――――――
  5. 石川弘

    委員長石川弘君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  租税及び金融等に関する調査のため、本日の委員会参考人として日本銀行総裁松下康雄君及び日本銀行理事本間忠世君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 石川弘

    委員長石川弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  7. 石川弘

    委員長石川弘君) 租税及び金融等に関する調査議題といたします。  本日の議事の進め方でございますが、金融安定化対策等に関する件について、まず、三塚大蔵大臣及び大蔵省当局から説明を聴取した後、政府に対して質疑を行い、その後、内閣総理大臣に対する質疑を行います。内閣総理大臣に対する質疑が終了後、引き続き委員間の自由討議を行います。  それでは、金融安定化対策等に関する件について、三塚大蔵大臣及び大蔵省当局から順次説明を聴取いたします。三塚大蔵大臣
  8. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 参議院大蔵委員会の閉会中審査に当たりまして、次期通常国会において御審議をお願いする予定の金融システム安定化のための緊急対策について、その背景及び大要を御説明いたします。なお、具体的内容につきましては、後ほど銀行局長から説明させます。  金融国際化情報化が進み、国境を越えた市場取引を通じ、我が国金融システムは世界のマーケットと直結する時代となっております。  最近では、例えばアジア地域において、タイを発端に香港、韓国などの通貨金融市場に大きな混乱が見られました。こうしたアジア地域における経済金融情勢の深刻さは、我が国金融システム安定性関係する問題となっております。  国内においては、金融機関不良債権処理に取り組んでいるものの、昨年秋以降、金融機関破綻が相次いで発生し、我が国金融機能に対する信頼が大きく揺らぎかねない状況となっております。また、海外におきましてもジャパン・プレミアムは急上昇しており、これが金融機関資金調達に重大な影響を与えております。  金融システム国民経済基盤をなすものであり、金融機関資金供給機能が損なわれれば、健全な企業を初め経済にはかり知れない打撃を与えるとともに、それがさらなる不安を招くという悪循環に陥る危険があります。金融システムの安定は、我が国経済の自律的な成長実現国際経済における我が国信用の保持にとって必須の条件であります。  また、仮に我が国金融機能不全を起こせば、世界じゅうのマーケットに直ちに伝播し、深刻な影響を及ぼすこととなります。こうした事態を未然に防止するための体制整備は、政府に課された重大な責務であると考えております。  以上の認識に立って、今般、金融システムに対する信頼を一刻も早く回復させ、経済全体が危機に陥る事態を防ぐための時限的な緊急対策として、次の措置をとることといたしました。  まず第一に、今後いかなる事態が生じても預金全額保護が可能となる体制整備いたします。具体的には、信用組合のみならず、一般金融機関全体を対象として、公的資金により預金保険機構財政基盤強化を図ります。また、破綻処理受け皿銀行となる整理回収銀行機能の拡充及び預金保険機構における不良資産回収体制強化を図ります。これらにより、金融機関破綻に対し、円滑かつ迅速に対処してまいります。  第二に、金融危機の際の対応として、一時的に金融機関の発行する優先株等引き受け金融機関自己資本を充実させる制度を設けます。この措置を行うに当たっては、公正な審査機関により厳正な基準を設けて、透明性の高い手続のもとで運用を行うことといたします。こうした運用により、優先株等引き受け個別金融機関救済ではなく、我が国金融システムに著しい障害が生じ、信用秩序国民経済に重大な支障が生ずることが懸念される場合に限られるようにしてまいります。  以上の措置に関して、預金保険機構総額十兆円の国債を交付するとともに、借入金等政府保証限度額総額二十兆円とし、合わせて三十兆円の公的資金を活用できることとします。  こうした公的資金の活用の前提として、金融機関自身による責任ある経営体制整備やリストラの徹底破綻した金融機関経営者責任が厳しく問われることは言をまたぬところであります。  最後に、我が国金融システムを安定させることが、これまで講じてきた予算税制面における対応等と相まって、我が国経済の自律的な安定成長実現に大きく寄与し、財政健全化にもつながるものであることを申し上げまして、私の説明といたします。
  9. 石川弘

  10. 山口公生

    説明員山口公生君) それでは、私の方から、現在その具体化法案化の作業を進めております金融システム安定化のための緊急対策につきまして、その概要を御説明いたします。  大臣のお話にもありましたように、今回の緊急対策は二つの柱から成り立っております。預金保険法を改正することにより、すべての金融機関における預金全額保護徹底を図る体制整備するとともに、新法を制定することにより、金融危機時において金融機関自己資本充実を図ることにより金融システム安定化を図る制度を創設することとしております。  以下、その具体的な内容について御説明申し上げます。  第一に、預金全額保護を図る体制整備でございますが、二〇〇一年三月末までの時限措置として設けられた預金保険機構特別勘定について、一般金融機関信用組合の区分を廃止し、すべての金融機関対象とした一つの特別の勘定に統合いたします。そして、預金保険機構財政基盤強化を図るため、七兆円の国債をその特別の勘定に交付し、破綻処理に伴い発生する損失、すなわち特別保険料では賄い切れない破綻金融機関債務超過相当分及び買い取った資産から二次的損失が発生した場合のその損失補てん分等について、国債償還金により補てんできることといたします。また、この特別の勘定における資金調達が円滑に行われるよう、日銀等からの借り入れに加え債券発行機能を付与するとともに、借り入れなどに対し十兆円の政府保証限度額を設定し、これにより調達した資金破綻金融機関資産の買い取りなどを行えるようにいたします。  次に、信用組合破綻した際の受け皿として設立された整理回収銀行について、信用組合のみならず、一般金融機関受け皿銀行としての機能も果たせるようその機能を拡充することとし、これにより、一般金融機関破綻処理において他に受け皿銀行が見出せない場合においても預金者が保護される仕組みを整えることといたします。  さらに、預金保険機構において、これまで旧住専から承継された住宅金融債権管理機構貸付債権回収業務に限り認められております罰則つき立入調査権破綻した金融機関の貸国債権回収業務にも拡大するなど、預金保険機構回収体制強化も図ることといたします。  第二に、金融危機時における金融機関自己資本充実策でありますが、金融危機的な状況に対処するための緊急措置として、預金保険機構に新たな勘定を設置し、二〇〇一年三月末までの間、整理回収銀行に委託して金融機関が発行する優先株等引き受けることを可能といたします。  そのための財政上の措置として、その新たな勘定に三兆円の国債を交付し、優先株などの引き受け及び優先株などの売却等に伴い損失が発生した場合のその損失補てんについて、国債償還金を充てられることといたします。また、この新たな勘定における日銀等からの借り入れなどによる資金調達が円滑に行われるよう、先ほど述べました預金全額保護のための勘定と同様、債券発行機能を付与するとともに、借り入れ等に対し十兆円の政府保証限度額を設けることといたします。  また、公的資金による優先株等引き受けが厳正に行われるよう、法律に基づき、公正な審査を図るための審査機関を設置します。その構成員は、経済または金融に関してすぐれた識見と経験を有する者として内閣が任命する民間の有識者三名及び大蔵大臣金融監督庁長官日銀総裁預金保険機構理事長の七名といたします。  この審査機関は、厳正な審査基準を策定し、金融機関から優先株等引き受けの申請があった場合には、これに基づいて審査し、慎重を期す観点から全員の一致をもって議決することとし、さらに議決された案件については閣議で了承を得ることといたします。また、透明性を高めるため、審査機関審査議事録などは公表することといたします。  審査機関が定める審査基準については、優先株等引き受け個別金融機関救済とならないよう、次の基準を満たすものでなければならないことといたします。  第一に、破綻処理における受け皿金融機関において、受け皿金融機関となることで悪化した自己資本を改善しなければ、信用秩序維持及び地域経済の安定に大きな支障が生じるおそれがあることであります。ただし、その場合でも、破綻処理の円滑な実施のために必要な範囲を超えないことといたします。  第二に、経営状況が悪化していない一般金融機関について、優先株等引き受けにより自己資本が改善されなければ、我が国信用秩序維持国民経済の円滑な運営に重大な支障が生じることとなる事態として、金融機関の内外の金融市場における資金調達が極めて困難な状況に至ることになるなどにより、我が国金融機能に著しい障害が生じるか、あるいは、金融機関の連鎖的な破綻を発生させることになるなどにより、これらの金融機関業務を行っている地域・分野の経済活動に著しい障害が生じるか、いずれかの事態が生ずるおそれがあることであります。  そして、いずれの場合も、優先株等引き受け発行金融機関経営再建目的として行われるものではなく、信用秩序維持目的とするものであること、発行金融機関経営が悪化しておらず、発行金融機関破綻が見込まれない場合であることなどを要件といたします。  なお、優先株等引き受けを申請する金融機関は、経営合理化及び健全な経営体制確保に関すること、財産の状況健全性確保に関すること、その他業務の健全かつ適切な運営確保に関することを盛り込んだ経営健全性確保のための計画を審査機関に提出しなければならないこととし、審査機関はこれを適当と認める場合でなければ議決を行えないものとします。そして、審査機関は、承認の議決をした場合はこれを公表するものといたします。  以上、金融システム安定化のための緊急対策概要について御説明させていただきました。なお、以上の内容につきましては、現在検討途中のものであり、今後変更の可能性があり得ることをお断り申し上げておきます。いずれにせよ、最終的には法律案の形で御審議をお願い申し上げることとなると思います。  最後に、改めて、本対策は現在の金融危機的状況に対処し、預金者保護金融システム安定化に万全を期すためのものであり、委員各位の御理解と御協力をお願い申し上げまして、御説明とさせていただきます。ありがとうございました。
  11. 石川弘

    委員長石川弘君) 以上で説明の聴取は終わりました。  これより政府に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 清水達雄

    清水達雄君 自民党の清水達雄でございます。  昨年来、政府におきましては、かなり思い切った税制改正でありますとか二兆円の特別減税を含む補正予算、あるいはただいま御説明がございましたような金融安定化対策というふうなものを次々と出されてきているわけですけれども、このことが証券市場とかあるいは為替市場とかに余り反映されていないといいますか、そういう状況にあるわけでございます。そういう意味から、後から金融システム安定化対策の問題を伺いますけれども、この周辺の株式市場とかレートの問題とか、そんなことにつきまして現状認識やら御見解を若干伺っておきたいと思います。  株式市場におきまして風説とか憶測等を交えた不安、心理が非常に強くて過剰反応が起こりやすい、こういう状況にあるというふうに聞くわけでございまして、実はこの質問をつくっておりましたら、大蔵大臣の方から空売り規制とかいうふうな対策も出てきたわけですが、こういった株式市場現状についてどんな認識を持って、空売り対策だけではなくてほかにもいろんな対策が私は必要だと思うんですけれども、そういうことについてどんな対応を考えておられるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  13. 長野厖士

    説明員長野厖士君) 株式市場の昨年来の状況につきましては、いろいろな要素が絡み合った状況であろうかと思います。  基本的に、日本経済の先行きに対する投資家の方々の判断あるいは懸念といったもの、その中で特に本日議題とされております金融システムというものに対する問題ということも大きくございます。  そういった中で、政府におきましてもろもろの経済活性化あるいは金融システム安定化対策が講じられておるところでございますけれども、片や、かなり著名な上場企業における破綻といった現実も生じましたものですから、清水先生がただいま御指摘になりましたように、市場心理といたしまして非常に不透明感というものがございまして、そういったものをまたバックといたしまして、いろいろな個別会社をめぐるうわさといったようなものが恐らく平時におきますよりは過敏に市場に伝達されるというふうな状況もございます。  そこで、基本的な経済運営に関する施策と並びまして、そういった市場透明性確保、あるいは場合によっては相場操縦等証券市場価格形成をゆがめる不公正な取引に対しては断固として対応するという観点から、先日、大蔵大臣が御指摘いただきました談話を発表されまして、不公正な取引に対する証券取引等監視委員会による厳正な対応への期待、東京証券取引所による集中的な売買審査空売り規制の見直し、あるいは相場操縦等に対する利得の没収規定創設等ルール違反に対する厳正な対処といった措置を御発表いただいたところでございまして、基本的な経済運営の問題とあわせてこういった市場公平性確保施策というものが相まちまして証券市場の健全な発展に資することを願っておるわけでございます。
  14. 清水達雄

    清水達雄君 今お話しになった中で、企業経営の実態といいますか、そういうことについての情報開示国民というか、みんなにもうちょっとわかりやすい形でなされる工夫が必要ではないかなということが一つありますし、それから金融システムとの関係で、企業が見放されたらすぐ倒れちゃうんじゃないかという話があるんですけれども、これはシステム企業個別事業会社という関係ではなくて、主としてつき合っている銀行事業会社との関係が従来と変わってきている、そこに非常に不安な問題が多くあって、銀行から見放されるといつ倒れるかわからないよということもかなりあって、そこをまたつけ込まれるということもあるわけですね。  こういう変革期でございますから、その辺にもうちょっと金融機関企業との関係というふうなことについて漸進的な連携関係というようなことを何か考えないと不安というのがなかなかぬぐい切れないんじゃないかなというような感じもいたします。非常に難しい問題でございますけれども、御検討をお願いいたしたいと思います。  それから、円安が非常に進んでおりまして、五、六年ぶりの安値というふうなことを言われているわけですが、このレート現状をどう認識して、今後の動向についてどんなふうに見ておられるのか、お伺いいたしたいと思います。
  15. 黒田東彦

    説明員黒田東彦君) 為替レート動きにつきましては、一般的にファンダメンタルズによるものと、それからその時々の市場思惑といったものが加味をされまして動いているというふうに認識をしております。  したがいまして、個々の為替動きを確定的な形で御説明するというのは非常に難しいわけですが、ことしの初めからの為替動きを見ますと、実は円がドルに対して弱くなっているというだけではなくてマルクドルに対して弱くなっている、すなわちドルが対円あるいは対マルクで上昇しているようでございます。これは景気の動きあるいは金利の動き、その他いろいろな状況によるものと思いますけれども、少なくとも短期的な動きにつきましてはむしろドルが対円、対マルクで上昇しているということではないかと思っております。  ただ、いずれにいたしましても、我が国といたしましては円相場下落をするということについては懸念を有しておりまして、特に円の過度の下落は好ましくないというふうに思っております。したがいまして、今後とも為替市場の安定を維持するために適切に行動する用意があるという立場に変わりはございませんし、この点は常に大臣が強調しておるところでございます。
  16. 清水達雄

    清水達雄君 円レートが安くなって実際どういう困難、何か困ることがあるのかという点についてもうちょっと御説明いただけますか。
  17. 黒田東彦

    説明員黒田東彦君) 先ほど申し上げましたように、為替レートファンダメンタルズ動き市場思惑と両面があるわけでございますが、ファンダメンタルズを反映している限りでは、それがたまたま円高であるとかあるいは円安であるということ自体が特に問題であるというふうには我々も考えておりません。しかし、しばしばそのファンダメンタルズ以上に為替円高に振れたりあるいは円安に振れるということがございます。そういたしますと、それはまたいずれかの時点で修正され為替が激変するということになります。したがいまして、そういった為替の乱高下、激変ということはやはり経済にとって好ましくないということかと思います。  したがいまして、例えば円安になるということ自体が一部の産業セクター、例えば輸出に特化している企業にとってはむしろプラスであるということは事実でございますけれども、他方で非常に多くの原材料を輸入して国内でサービスあるいは商品を供給しているという企業にとってはむしろマイナスかもしれません。したがいまして、単に円安になるということ自体が一定のセクタープラスになりあるいはマイナスになるということがいろいろあると思いますが、私どもが常に念頭に置いておりますのは、ファンダメンタルズを超えて為替円安に振れる、あるいは円高に振れるということはやはり中長期的に見て望ましくないということで、先ほど申し上げたような考えに沿って為替の安定を図ってまいりたいというふうに思っているわけでございます。
  18. 清水達雄

    清水達雄君 レートというのはやっぱり通貨に対する需給関係だと思うんですね。そういうものが基本的な変動の根底にあるのではないかと。  例えば円について言いますと、我が国貯蓄過剰国で、要するにお金が余っているわけで、これを外国へ投資しようと思うとそれは円を売ってドルを買って投資されるというふうな形になってきますから、円を売ってドルを買うという量が多くなる。そういうことで、貯蓄過剰国で内需でそれが使われないから円が余っている、こういうのはやっぱり構造的な原因としてあるんじゃないか、それは当然投機対象になりますから変動はありますけれども、そういうふうに私は思うんですけれども、どうでしょうか。
  19. 黒田東彦

    説明員黒田東彦君) ただいま御指摘の点は、理論的にそういう要素があるということは確かでございまして、先ほど申し上げたように、為替動きというものはファンダメンタルズあるいは市場思惑ということを反映して動くわけですが、具体的にそれではどういうふうに動くかといえば、まさにおっしゃるとおり、為替需給という形で動くわけでございます。その需給の中にまさにファンダメンタルズを反映したものと市場思惑を反映したものと両方が組み合わさって市場需給にあらわれ、それが為替を動かしているということでございます。  そこで、そのうちのファンダメンタルズという場合にはいろいろな要因がとられてくるわけでございますが、景気の動向であるとかあるいは内外の金利差であるとか、さらには国際収支の動き等々が挙げられるわけでございます。  御指摘の俗に言いますISバランス論という議論で、貯蓄過剰国が、貯蓄過剰国というのはすなわち海外に資本が流出するとそれは自国通貨の安値あるいは外国の通貨ドルの高値を呼ぶのではないかという御指摘だと思いますが、先ほど申し上げたようなそういう要因がないということはないと思いますが、他方で資本が流出しているということは、裏側からいいますと経常収支が大きな黒字になるということでございます。  経常収支の黒字ということはむしろ為替に上昇圧力をもたらすというふうに言われているわけでございまして、先ほど申し上げたように、ファンダメンタルズ自体いろいろな要素がありますし、さらに市場思惑といったことでいろいろな為替需給に対する影響が入り乱れておりますので一概に申し上げられませんけれども、必ずしも貯蓄過剰が即為替下落の圧力というふうにはならないのではないかと。むしろ逆に経常収支の黒字ということで為替の上昇圧力につながる可能性もあるということでございますので、繰り返しになりますけれども、御指摘のような要素がないわけではないと思いますが、反対の動きもあり得るということで一概には申し上げられないのではないかというふうに思っております。
  20. 清水達雄

    清水達雄君 なかなか難しい問題で、これはもうちょっと勉強させていただかないとよくわからないということだと思います。  それから、アジアにおきまして最近通貨の混乱とか急激な変動があるわけでございますけれども、この原因をどういうふうに見ておられるのか、通貨価値の安定はどのようにしたら達成できるのだろうかということについて御見解を伺いたいと思います。
  21. 黒田東彦

    説明員黒田東彦君) アジア諸国を見てまいりますと、確かに御指摘のように最近非常に為替が弱くなっております。通貨下落しております。昨年中も下落しておりましたし、殊にことしに入って急速に下落しているという状況にございます。したがって、こういった通貨価値を安定させるためにどうしたらいいかということは非常に重要な問題、ポイントであるというふうに思っております。  この問題を考える場合に特に念頭に置くべき点が二つあると思いますが、第一点は、アジア諸国は実は経済ファンダメンタルズを見ますと貯蓄率が非常に高い、例えば四割とか、一部の国は五割近い貯蓄率というふうになっておりまして、他の地域、先進国のみならず、ラテンアメリカあるいはアフリカその他の国と比べましても非常に高い貯蓄率があります。しかも勤勉な労働力を有しておりまして、また財政も実はほとんどの国が基本的に黒字でございます。  そういったことで、経済の基礎的な諸条件は良好でございまして、なお高い潜在成長力を維持しているというふうに認識しております。これは何も私どもが認識しているというだけではなくて、最近ございましたAPECの非公式首脳会談あるいは拡大ASEAN首脳会談等でもほとんどすべての国が、アジア以外の国も含めて同様な考え方を持っておりました。  もう一つ、それではどうしてこんなに通貨が激動しているかということでございますが、これにつきましては、この二、三年、あるいはもう少し長い期間をとった場合に、これら諸国の為替ドルにペッグするという形で過大評価になっていた、そのために経常収支の赤字が拡大し、また海外から流入した資金が不動産セクター等の分野で必ずしも生産的でなく使われた国があったというようなことから市場の信認が低下し、それがまた為替下落、それによる金融セクターの困難ということで悪循環を生じて通貨経済変動が生じたというふうに思っております。  したがいまして、こういう潜在的な高い能力と現下の困難ということでございますので、やはり現在の局面を克服して、引き続き持続的な成長を達成するということが何よりも中長期的な為替経済の安定にとって必要でございまして、そのためには適切なマクロ経済運営を行う、これは具体的には、IMFとの合意したプログラムに沿って、既に例えばタイ、インドネシア、韓国等が行っておりますけれども、適切なマクロ経済運営を行うということと、金融セクターを中心とした構造改革を進めていくということで市場の信認回復に努めていく努力が必要であるというふうに思っております。  こういった努力を通じて、必ずやこれら諸国の為替あるいは経済が安定し、潜在的な高い成長力を具現していくことができるというふうに確信をしております。
  22. 清水達雄

    清水達雄君 年が明けましたら我が国の景気対策ということでかなり大幅な所得税減税等の要望が出てきているわけでございまして、六党の連合組織が六兆円ぐらいの減税をしろとか、あるいは経済界におきましてもかなり多額な減税をしなければいけないんじゃないかというふうな声が何か新年の会等で出てきているというふうなことが言われているわけでございます。  この点については従来、景気対策の問題として減税か公共投資かというような議論はずっと続いてきているわけですけれども、減税による消費拡大効果があるのかどうかという点について必ずしも議論がはっきりしていないと私は思うのでございます。今のような高齢化社会、あるいはリストラがどんどん進んでいつ首になるかわからぬといった状況にサラリーマンが置かれているときに、減税をやってもらったからその金で何か使おうかということじゃなくて、それは蓄えておこうということになる、私はそういう傾向にあると思うのでございますけれども、そういったことについてやっぱりはっきりした答えがないと適切な経済政策が打っていけないというふうに思っているわけでございます。  政府としては、減税をやった場合にそれがどれだけの消費支出の増大につながっていくのかというきちっとした解析、分析をしなきゃならぬというふうに思うわけでございます。そういう点で、これは本来経済企画庁がやらなきゃならぬ話だと思いますけれども、企画庁がやるにしても、世界経済モデルか何かで古い時代のモデルを使ってやってみたってこれはだめなんです。今の状況に照らして限界消費性向がどうなっているかとかいろんなことを考えなきゃいけない。そういうことも含めて、やっぱり経企庁に僕はもっと真剣に、経済審議会でこの問題だけでも一生懸命やってほしいと思うぐらいなんだけれども、その点についてどんな考え方を持っておるか、何%ぐらい消費支出の増大につながっていくのかというあたりの試算があれば御回答をいただきたいと思います。
  23. 奥田宗久

    説明員(奥田宗久君) 御説明申し上げます。  減税の経済効果につきましては、その期間、その規模、その時々の経済状況等により異なるものと考えられますために一概に申し上げることは困難でございますが、経済企画庁の第五次世界経済モデルによりますと、全額公債を財源として名目GDPの一%相当額の個人所得減税を行った場合、一年目に実質民間消費支出を〇・五八%押し上げる効果を持つと見込まれます。
  24. 清水達雄

    清水達雄君 その一%とか〇・五八%とかいったのは、要するに減税額に対して〇・五八%の消費の増加をもたらす、こういうことですか。
  25. 奥田宗久

    説明員(奥田宗久君) 今御説明申し上げました一%相当額といいますのはGDPの一%相当額でございまして、個人所得減税を行った場合には実質民間消費支出を〇・五八%押し上げる、こういうものでございます。
  26. 清水達雄

    清水達雄君 よくわからないんですけれども、減税額と消費の増大額との関係で数字を言ってください。
  27. 奥田宗久

    説明員(奥田宗久君) 経済企画庁の第五次世界経済モデルを用いまして統計上入手可能な確報値でございます平成八年度の実質民間最終支出をもとに試算を行いますと、減税実施一年目に、これは一兆円の減税を実施した場合でございますが、一兆円を実施した場合に三千三百億円相当の数字になるものと機械的な計算によりますと出てまいります。
  28. 清水達雄

    清水達雄君 一年目が。
  29. 奥田宗久

    説明員(奥田宗久君) はい。
  30. 清水達雄

    清水達雄君 二年目はどうですか。――それはわからない。  いずれにしましても、今のお話で、一兆円減税をして、その初年度は三千三百億ということですから三分の一の部分しか消費されないということですよね。だから、何兆円減税しろと言う方は一体何を目指して減税をしろと言っているのかということなんですね。そんな非効率な話があるかと私は経済政策として思うわけでございまして、この点は今のお話も本当にしっかりした答弁であるかどうかもよくわかりませんので、大蔵大臣、これは極めて大事な話ですから、政府としての統一見解といいますか、見解というのもおかしいかもしれないですけれども、要するに勉強に基づいた見解というものを私はぜひ出していただきたいというふうに思います。  それから次に、金融システム安定化緊急対策として、御承知のように、三十兆円の金を用意する、その中で十兆円の国債預金保険機構に交付するということにしているわけでございますが、この十兆円の国債というのは、性格あるいは償還財源、そういうものについてどういうことになっているのかということと、それから国債の発行残高の中に、いつどういう形で残高幾らの中に組み込まれるのか、組み込まれないのか、その辺、国債の性格についてお伺いしたいと思います。
  31. 藤井秀人

    説明員(藤井秀人君) 今、先生がおっしゃいましたこの国債でございますけれども、現在、作業をいたしております法律案におきましては、政府は機構からこの国債の償還につきまして請求があった場合には速やかに償還を行うものとするというような規定を進める予定で検討をいたしているところでございます。  したがいまして、この国債はいわば現金の交付にかえまして要求があれば支出をするという債券という形で行われるわけでございます。通常の特例公債あるいは建設公債、これは一般会計の歳入財源となるものでございますが、それとはおのずから性格を異にするものでございます。現在、国際機関等に対する拠出のための国債というものがございますが、この性格にいわば類似をするものというように考えております。  次に、償還の問題でございますけれども、九年度補正予算におきましては、現在、国債整理基金特会におきましていわば準備資金として約三兆円の資金がございますので、これでもって対応を考えたいと思っております。また、十年度予算におきましては、この三兆円の準備資金に加えまして御承知のようにNTTの株式収入というものがございます。十年度予算案におきましては五十万株、約四千億円強の金額を計上いたしているわけでございますが、これをこの国債の償還のための財源に優先的に充当するというように考えております。
  32. 清水達雄

    清水達雄君 その残高には入れないんですか。
  33. 藤井秀人

    説明員(藤井秀人君) これは、発行をいたしますと、その段階で通常申し上げております国債残高には組み込まれることになります。
  34. 清水達雄

    清水達雄君 組み込まれる。  いずれにいたしましても、こういう公費を金融システム安定化のために使うということになるわけでございますけれども、公的資金の導入に当たりましては、世の中でも随分いろんな議論があるわけでございます。私どもは、公的資金の導入を行うに当たりましては、その前提として、実際に回収できなくなっている債権、つまり不良債権の実態というものをちゃんと国民に示して理解を求める、理解を深めるということがこれはどうしても必要でありまして、今、不良債権の額につきましては二十何兆円かあるとかというようなことが言われておりますけれども、いや、そんな額ではないよと、百兆円もあるんじゃないのとか随分いろんな議論があります。そういう意味におきまして、やっぱり日本の不良債権の定義であるとかいうことがどうもちゃんとした定義に基づく不良債権の実態が示せるようなことになっていないというようなこともあるわけだと思います。  そういう意味におきまして、まず第一点として、不良債権に関する国内基準、これは全銀協か何かが統一基準をつくっているようですけれども、そういうものとアメリカのSEC基準との違い、やっぱりこれははっきりした基準で不良債権というものを出すために、その辺も比較をした上でいわば国際的な不良債権の基準に持っていかなければならぬだろうというところが一点あります。  それから、実質的な回収可能性に着目した不良債権の額、これを今後早期是正措置に関連して金融機関が自己査定をするというようなことにもなっているわけですから、そういう自己査定データを活用して不良債権の全貌というのをまず明らかにしなきゃならぬ、そうした上で公的資金というものを国民にわかりやすい形で投入ができるようにしていかなきゃならぬというふうに思いますけれども、この辺についての大蔵省の対処方針、御見解を伺いたいと思います。
  35. 山口公生

    説明員山口公生君) まず、前段の不良債権の実態、額の御質問でございますけれども、これまで我が国は全銀協の統一開示基準でもっていわゆる破綻先、延滞、金利減免ということで一つの基準を設けてやってまいりました。ところが、それにつきましてはいろいろまだその基準では甘いのではないかという御議論も前国会でも御指摘いただきました。  アメリカのSECの基準というのは日本と若干異なっておりますが、代表的なところを申し上げますと、例えば二番目に申し上げた延滞債権のところは、日本の場合は六カ月以上利子の支払いが延滞している場合、こういう条件にしておりますが、アメリカの場合は三カ月以上元利の返済が延滞しているものということで、その期間のとり方が少し違っております。  それから、三番目に申し上げた金利減免債権、これにつきましては、日本の場合は当時の約定改定時の公定歩合以下、つまり資金調達コスト以下にまで下げた場合という考え方で計上させておりますが、アメリカの場合は経営者の経営の悪化のために金利を減免するなど、何かそういったリストラクチャーしたものという概念で拾っております。したがって、どちらが広いかといいますと、恐らくアメリカのSEC基準の方がやや広いというような感じを持っております。  したがって、前国会での当委員会でもいろいろ御指摘もありましたし、米国のSEC基準を念頭に置いて各金融機関のディスクロージャーの拡充を図るように全銀協に暮れに要請をいたしたところでございます。それはいわゆるディスクロージャーでございまして、アメリカでもそのSEC基準で一つのきちんとした形式的な基準でもって比較可能性を持たせるためにやっておるわけでございます。  それともう一つ、二点目で御指摘いただきました点につきましては、ことし四月からの早期是正措置を控えまして各行は回収可能性観点から資産を分類しております。  例えば、貸付金があったときにどれくらい回収ができるのか。これはもう絶対大丈夫というものもあります。ちょっと個別のリスク管理をしないといけないなという債権もあります。それから、かなりこれは回収が難しいかもしれない、しかし金額がまだよくわからない、破綻とかいう状態に陥っていない段階でそういうケースがあります。それからもう一つは、もう完全に法的な整理に入って、金額も大体確定しているというものがあります。  今、四つのジャンルで申し上げましたけれども、銀行によってはそれを五つとか六つとか七つとかいうふうにジャンルで分けたりもしますけれども、私どもの検査でも一応四つの分類で考えております。  それで、それを再編成しますと、先生の御指摘のとおり、今度はそういう形式的基準ではない、実質取れるか取れないか、どの程度の危険性があるかという観点からの分類というものもあり得るわけで、今回それを各金融機関は試行、トライアルでございますね、試行段階でございますが、今やっております。  したがって、私どもとしてもそれを昨年の末には報告を求めたところでございまして、大臣からの御指示もありまして、これからの委員会での御審議に供するためにもひとつ集計したものが出せないか検討しろという御指示がありましたので、今ちょっとその辺のチェックをやっておるところでございます。早急に検討を行うつもりでございます。
  36. 清水達雄

    清水達雄君 よく銀行なんか破綻するときに、当初は不良債権額幾らと、ところが実際に調べてみると二倍にも三倍にももっとふえるというふうなのは、いざ回収ができるかどうかという詰めをやるとそうなっちゃうんだろうと思うんですね。だから、やっぱり今の不良債権の定義が本当に回収できるかという観点にいっていないというところにもかなり問題があるんじゃないかという感じがするわけで、このことは極めて大事なことだと思いますので、大蔵大臣も前から強くその点おっしゃっておりますから、ぜひよろしく御努力をお願いいたしたいと思います。
  37. 三塚博

    国務大臣三塚博君) ただいま銀行局長からただいままでの自己査定の進め方について報告がなされました。  前国会におきましても、当委員会において不良債権の実態把握は極めて重要、ディスクロージャー極めて大事、こういう御指摘をいただいてきたところでございます。  十二日から通常国会開会であります。これだけの大事な国民の権利義務にかかわる法律でございますので、また金融システム安定が国家のため、さらに産業界の活力のためにも重要でありますし、国民各位の安心感をいただく、信頼をいただくという点においても大事なポイントであることにかんがみまして、できるだけ早急に取りまとめを急がせておるところでありまして、国会開会をめどに公表できるようにしていきたいものだと考えておるところでございます。
  38. 清水達雄

    清水達雄君 それから、十兆円の国債につきましては、七兆円を特別勘定に交付して三兆円は金融危機管理勘定に交付する、こういうことになっているわけですが、金額をこのように分ける根拠というのは何かあるんでしょうか。
  39. 山口公生

    説明員山口公生君) 今回の今検討させていただいております措置国民の皆様に金融に関して安心を持っていただくというためでございますので、その金額につきまして、これだけの金が必要になるから七兆、三兆だということではありません。こういうお金を準備しておればその不安を解消できるであろうという必要にして十分な金額ではないかという観点からお示しし、御審議を賜りたいというものでございます。
  40. 清水達雄

    清水達雄君 まあそういうアバウトなものであろうとは思っておりますが、次にその二十兆円の融資枠の問題なんですけれども、特別勘定金融危機管理勘定にそれぞれ十兆円というふうになっておりますが、融資枠につきましては現在の預金保険法の第四十二条に日本銀行からの資金借入限度額の規定がありまして、その中でこれが政令で一兆円に決められているわけですね。これを二十兆円に引き上げるということになるんでしょうか。
  41. 山口公生

    説明員山口公生君) 今回二十兆円の融資枠を設けさせていただきますのは、いわゆる特別勘定で十兆円、これまた政府保証つきになります。それから金融危機管理勘定、先ほど概要を御説明申し上げた新しい勘定で十兆円、合わせて二十兆円ということでございます。
  42. 清水達雄

    清水達雄君 それは法律上はどうなるんですか。さっき私が言った預金保険法の四十二条の規定との関係はどういうふうになるんですか。
  43. 山口公生

    説明員山口公生君) 今、借り入れ預金保険の形としては特別勘定借り入れていろいろな事業をやっておりまして、それで一般勘定の方からその財源としてまた特別勘定の方に繰り入れるという形式をとっておりますので、一応特別勘定の方でそういう資金繰りをつけるという形になっております。  ただ、一般勘定の方の御指摘がありましたが、それはまたもし必要であればその借入枠というものを広げる、設定するということも当然あり得るというふうに考えておりますが、今の時点での運用特別勘定でそういった借り入れを行い、一般勘定と合わせて精算をし、一般勘定の方の資金特別勘定に後で繰り入れる、こういうちょっと技術的な形をとっておりますので、当面これで対応するということでございます。
  44. 清水達雄

    清水達雄君 それで、いわゆる金融危機管理勘定の関連なんですけれども、二〇〇一年三月末までの間、協定銀行に委託をして金融機関優先株等を取得する業務を行うと。優先株の取得が公正に行われるように審査委員会を設置して一定の基準に基づいて審査議決を行い、政府はこれを受けて閣議で了解することというふうになっておりまして、随分重い手続だなというふうに率直に思うわけでございます。  しかも、優先株を買い取る場合のケースというのが、いわゆる金融システム危機的な状況にあるというふうに極めて限定的に書いているわけですね。さっきからの議論では、貸し渋り対策等も頭に置いて、優良銀行からもどんどん優先株を買って自己資本を充実させてやろうというふうな、そういった議論もかなりあったんですけれども、今度の案を見ますと、いわゆる金融システム危機的な状況があって、こういうことをやらないと金融システム全体の維持が困難であるとか、地域金融に非常に大きな影響を与えるとかというような場合に限定をしてきているわけですね。しかも、閣議で了解をするというのは、私はこれはちょっと行き過ぎじゃないかなという感じがするんです。銀行が申請をして、閣議了解であなたの金融機関はそういう金融機関ですよというような格付をもらっちゃうみたいな、私はどうも感覚的にはそんな感じがして、こういうことでうまく運用されるんだろうかというふうな心配を非常にしているんですけれども、どんな御感触でございますか。
  45. 山口公生

    説明員山口公生君) 二点御指摘いただいたと思います。  一つは、手続的にも大変重い、厳しい手続になっているという御指摘だったと思うのでございますが、これは先ほども御説明いたしましたように、個別金融機関救済目的としたものではないということをやはりはっきりさせる必要があるわけでございます。確かに信用秩序維持のためとはいえ、その手段としては個別機関を経由する手法をとらざるを得ないことは、これは否めないものでございます。しかし、それがともすれば個別金融機関救済目的としているということでありますと、なかなか国民の皆様の御支持も得られにくいだろうと。  それで、そのときにやはり客観的な立場から、有識者等の御意見を賜りながらということできちっとしたことをやるということ。それからもう一つは、非常に重大な危機的な場合に限っているということでございますが、ちょうど御審議を賜っていたころでございますが、実は昨年の十一月ごろの経済状況は、かなりこれは比喩としては悪うございますが、枯れ草の上に我々が寝転がっているような状況でございました。ちょっと火がつくと大変に危ない状況ということがあったわけでございます。  一部の銀行には取りつけ的な動きすらありました。そういったときに、やはり自分たちの金融機関だけの力ではどうにもならない場合があります。そういうときに政府を挙げて対応するという強い姿勢を示す、これで市場信頼感を回復させてもらうということをねらいにしているから、こういうことを考えている次第でございます。
  46. 清水達雄

    清水達雄君 終わります。
  47. 牛嶋正

    牛嶋正君 きょうは委員長のお計らいで平成会の牛嶋として質問させていただきます。よろしくお願いいたします。  先ほど安定化緊急対策の御説明大蔵大臣からお聞きいたしましたが、細かな点につきましてはまた通常国会で御議論させていただくということにいたしまして、安定化を進めていく場合の基本的な姿勢について若干質問させていただきたいと思います。  年明けの五日の東京市場の相場につきましては、平成十年の我が国の景気の先行きを占うという意味で国民の多くの人々が注目していたのではないかと思います。  ところが、先ほど清水委員のお話にもありましたように、明けてみますと円相場は五年八カ月ぶりに一ドル百三十二円後半まで下落しております。日経平均株価も一万五千円を割り込むといった非常に波乱に富んだ幕あけになってしまいました。十二月に一連の景気対策も打ち出されておりまして、国民の多くはかすかな景気回復の期待を持っていたと思うんですが、これが完全に私は打ち消されてしまったのではないか、こんなふうに思っております。  この東京市場の年明けの相場を私見まして、二つの点が指摘できるのではないか、こんなふうに思っております。  その一つは、今申しましたように、十二月に打ち出されました二兆円減税を初めとする景気対策、それからきょう御説明がありました一連の金融システム安定策、これに対して市場が余り効果は期待できないという判断を示したのではないか、私はこういう受け取り方をしております。  もう一つは、これは先ほどのお話の中で大蔵大臣もおっしゃいましたけれども、我が国経済全体が金融システムに対する不安感を軸に縮小の方向に向かって悪循環が始まったのではないかということであります。  先ほど大蔵大臣は悪循環に陥るおそれがあるとおっしゃいましたけれども、私はもう既に進んでいるというふうに思っております。しかも、この経済全体の悪循環が次の二つの要因によってさらに拡大されようとしているわけです。  その一つは、金融システムに対する不安が人々の先行き不安を増幅させて、これも先ほど清水委員のお話ありましたように、個人消費の伸びを抑えてしまっているということです。  もう一つの要因は、金融機関の貸し渋りが企業の設備投資あるいは住宅投資を抑えてしまって、時には企業の倒産をも招いているということであります。  そして、ここで問題なのは、こういった閉塞状態から我が国経済を立ち直らせるためにはこの悪循環を断たなければなりませんけれども、今まで政府・大蔵省が懸命に進めてこられた金融システム安定化策がかえって、銀行の貸し渋りに見られますように、悪循環を促している面があると、こういうことであります。この点をやっぱりきちっと私は断ち切っていかなければならないと思うのでありますけれども、今回の金融安定化策でこの点についてどんな配慮がされたのか、まずここからお聞きしたいと思います。
  48. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 先ほど御説明を申し上げたわけでございますが、委員指摘のとおり、悪循環を断つことが極めて重要でございます。  そういう観点から、緊急の対策として、ASEAN首脳会議から帰られた橋本さんが二兆円の特別減税を決心する、同時に、その前からでございましたが、自民党本部において宮澤元首相が本部長となりまして金融安定化の具体策について協議に入ったところでございます。  そういう中で、政府・与党の協議、三党との協議を経まして基本が示され、ただいま、先ほども局長言われましたとおり、法案作成の大詰めを迎え、国会開会までには提出できるように最後の努力をいたしておるところでございます。  御説明にありましたとおり、三十兆円の安定化対策金融経済の基本でございます。国民生活のまた安定にもつながる、不透明感を払拭する重要なポイントでもございますから、そこに具体案を提示させていただくということになります。  同時に、貸し渋りの問題につきましても、早期是正措置を含め、BIS基準を達成しなければならぬという金融セクターの努力がそういう結果をもたらしたということも明確に相なったものでございますから、総額二十五兆円の貸し渋り対策への、政府機関を中心として総動員をいたしまして、中小企業、中堅企業に対する対策を講ずるということにいたしたところであります。  以下、補正予算における諸措置、全体で見て五兆円近いものがそこに盛られておるわけであり、当初予算におきましても、構造改革の理念を守り抜きながら、めり張りのきいた、費用対効果の高いものの採択、さらに実効性、効率性の高い予算措置を講じて提示を申し上げる態勢にございます。  このことがワンパッケージでスタートを今切っておるわけでございまして、法律事項の要らぬものはやらさせていただいておるところでありますが、法律事項は今通常国会に提示をさせていただきまして、ぜひとも深い御理解の中でこの危機的状況を回避し、悪循環を断つということに取り進めさせていただきたいということで努力を傾けておるところでございます。
  49. 牛嶋正

    牛嶋正君 もう少し具体的な話にちょっと入らせていただきますけれども、早期是正措置の適用、先ほど本年の四月一日とおっしゃいましたが、国内基準につきましては何か一年延期するというふうな措置も考えておられるようですけれども、これは明らかに貸し渋りの問題と関連していると思うんですが、この点についてはどういうふうにお考えでしょうか。私はこれをやっても余り効果はないのではないかなというふうに思っておるんですけれども、どういうふうにお考えか、お尋ねいたします。
  50. 山口公生

    説明員山口公生君) 御指摘のように、四月一日からの早期是正措置につきまして、今回、国内基準に関しましては一年間その命令の発出を猶予する旨の発表をさせていただきました。それはちょうど貸し渋り対策が強く求められていたことが背景にございまして、御指摘のとおりでございます。  それは実は国内銀行、海外展開している銀行もそうでございましたけれども、かなり横並び意識というものが従来からありまして、自分のところだけが政府から命令を打たれるのは大変不名誉であるということで、非常にそこは厳しい見方をされる。結果的にはそれが自助努力につながればいいことなのでございますが、それが過剰にもっともっとということで恐怖心になっていくというような現象すら出てくるとますます貸し渋り現象、また貸し渋り現象を早期是正でもって正当化してしまうというようなことがあってはならないと。金融機関はもともと地元の企業等のために活動していただかなきゃいけないわけでありますから、その本来の使命を忘れてしまうような貸し渋り現象をさせてもらっては困るわけでございます。  そういうことでもって、私どもとしては、国内銀行は四%ですけれども、自分たちの努力で一年以内にすぐ回復できるようなときは命令は打ちませんから、そこは少し地元のこともよく考えて対応してくださいということをしたわけでございます。  だから、早期是正措置そのものをなくすとか、あるいは内容を変更するというものではございません。
  51. 牛嶋正

    牛嶋正君 今の横並びの意識というのは私もよくわかるんですが、これは対象区分をするときの基準自己資本比率一本でやっておられますね。私はそこに問題があるのかなというふうに思うんですね。もう少しやっぱりいろんな指標を組み合わせて区分をする。そうすると、自分のところは自己資本比率はこうだけれども、こっちの指標は非常にいい、ですからこれでいくんだというふうな、今おっしゃいました自己責任というふうなものがもっとはっきりするんじゃないかなと思うんですが、この点についてちょっと。
  52. 山口公生

    説明員山口公生君) 今のお尋ねは、私どもの銀行行政のある意味では一番難しい点でございまして、実は私も基本的には自己資本だけで金融機関を判断すべきではないという考え方は持っております。むしろ、それとあわせて例えばROEだとかROAだとかいうリターン、つまり利益をどれだけ上げられるかという点も必要なわけでございます。  ただ、それでは国際的にもそういった両方の基準でやっているかというと、自己資本比率一本なんです。BISもそうなんです。それはやはり何かのメルクマールでもって行政をやっていくのがとりあえず必要なんだと。要するに、最小限の備えがまずあってからの話であるという恐らく考え方だと思うんです。  それで、私どもが所管させていただいております銀行法におきましても、何も自己資本比率だけでやれというふうには書いてありません。自己資本比率でやる場合にはこういうふうにして明確化して省令で定めた基準でやりなさいということでございますので、この自己資本比率だけがすべてだというのは、確かに先生のおっしゃるとおり、それだけではないというのが私ども意識にはあります。  しかし、自己資本比率も満足にできていない、十分でないところがいろんなことを、もうかるからといって利益を追求した行為がとれるかというと、それはちょっと順序として難しかろうというような考え方もありますから、その点を御理解賜れば幸いでございます。
  53. 牛嶋正

    牛嶋正君 とりあえず我が国金融市場を立て直さなきゃいけません。そして、金融システムを安定したものに再構築していかなきゃいけないわけでありますが、この安定化策の進め方について私は大きく二つの方向があるのかなというふうに思っております。  一つは、ある金融機関破綻いたしまして、それが次々に他の金融機関に波及をしていく、そういうことをできるだけ避けまして、したがってその破綻に追い込まれる前にいろいろな方策、対策を通じて救済をし、そして金融システム全体を守りながら安定化を進めていくという方向づけだと思います。これが一つあると思います。これを救済金融安定化策、こういうふうに私自身は呼んでいるわけでございます。  もう一つの安定化策の方向づけは、バブル以降、金融機関の立ち直りが非常におくれております。このことを考えますと、やっぱりバブルによって受けた打撃というのはどの金融機関も非常に大きかったんじゃないかと思いますね。したがって、自力で立ち直ることのできない金融機関もちらほらあるわけでございます。私はそういう金融機関はむしろ思い切って整理をする、そしてもう少し身軽になって残された金融機関で安定した金融システムを組み立てていくという方向づけがあるのではないかと思います。これは私はリストラ型金融安定化策というふうに呼んでいるわけであります。  さて、これまでの政府がとってこられました金融安定化策は、今私が分類いたしましたどちらのものになるのかということですけれども、私はやっぱり救済型ではなかったかなというふうに思っております。そして、そのことは私は護送船団方式の考え方と軌を一にするものであるというふうに解釈しているわけであります。  臨時国会で私の質問に対しまして山日銀行局長は、大蔵省の金融行政に対する姿勢は護送船団方式の考え方から完全に脱却しているんだというふうなお話でございましたけれども、私はまだそうはなっていないんじゃないか、今申しましたようなこれまでとられてまいりました安定化策というのが救済型であるというふうに考えますと、そこには護送船団方式の考え方がまだ色濃く残っているのではないかと思いますが、この点についてもう一度銀行局長の御見解をお尋ねしたいと思います。
  54. 山口公生

    説明員山口公生君) 護送船団型の行政というものの定義の問題にもかかわると思うのでございますが、過去の行政においていい面、悪い面、御指摘をいただいておりますが、悪い面として御指摘いただいておりますのは、本来伸び切れる金融機関が伸びぬのは、ちょっとそれはある程度にとどめ、落ちこぼれるところはなるべくないようにというような行政をやってきたという御批判があるわけです。これは、規制金利体系のもとでは、ある意味ではそれでもって預金者に完全に安心感を持ってもらうという意味では、歴史の一つの現象として、手段としてはあり得たのだろうと思うのでございます。  じゃ、そういう行政が今でも続いているかということの御指摘でありますと、いろいろ御批判はあろうと思いますけれども、ちょうど一九八五年から金利の自由化がだんだん始まりましたし、業務の自由化もそのころからでございます。ちょうど円・ドル委員会の後ぐらいから金利の自由化と業務の自由化をどんどん始めていきました。ある意味では、護送船団といった船団がだんだん前と後ろが距離が出てきたということはもう明らかだと思うのでございます。昨年の年末に、優良だと言われる銀行預金が殺到し、うわさになった銀行に人がどんどん並んで引き出したというような現象すら起きたわけでございます。したがって、私どもの銀行行政そのものが護送船団方式を、まだ昔の形のものを維持しようとしているということはないと私どもは思っておるわけでございます。  問題は、破綻の処理の件についてのお尋ねでございますが、最近ざっと見渡しても二十数件破綻処理をいろいろさせていただいておるわけでございますけれども、そのときにやはり破綻にもう陥ってしまう、自力では立ち直れないところは残念でございますけれどもそれは破綻処理ということをさせていただいております。  ただ、そのときにできるならば預金者のみならず取引先まで最小限の迷惑にしたいということで、受け皿銀行というのをできるだけ探して破綻処理をしておるわけでございます。ロスは預金保険機構から埋めるという形でやっておりますけれども、それは別に私は救済型の破綻処理策ではないと思うわけでございます。  これはあくまで破綻はやむを得なく、もうどうにもならないものは破たんさせざるを得ないんです。そのときになるべく預金者取引先、そういったものは優良な受け皿銀行に引き継いでもらうということを懸命に私どもやっておるわけでございます。そういった意味では、ある意味では手厚い行政の延長と言われればそうかもしれませんが、しかし金融機関の果たしている社会的な役割というものを考えたときに、それは預金者が一番大切ですけれども、しかしそれでまた生活をしている、企業活動をしているという人がいるわけでございますから、そういう人たちに、この銀行つぶれましたからあなたは別の銀行に行ってくださいと、まだそう簡単にドライに割り切れる状況ではないという感じがいたすわけでございます。  そういった意味では、そういった策をとらせていただいておりますけれども、先生の御指摘の今の二つのジャンルで話しますと、私どもとしては、自力で立ち直れない金融機関は残念ながら破たん処理をしていかざるを得ないし、またしてまいったということでございます。受け皿が見つからないときは残念ながら、あの阪和銀行の例がそうなんですが、預金者だけは保護しましたけれども、取引先はちょっと保護できなかったという一ケースもあります。そういった場合もあり得ることは御承知願いたいと思うんですけれども、基本的な方針としてはそういう方針で今後もやってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  55. 牛嶋正

    牛嶋正君 私は、今の銀行局長のお話はよくわかります。あえて二つに類型化したわけでございますけれども、もちろん場合によっては救済型あるいはリストラ型というふうな使い分けが必要になってくると思います。しかし、私はそういう使い分けで今の金融危機状態というのは乗り切れるのかなというふうな気がしております。やっぱりリストラでいくならばリストラ型の安定化策を徹底させるべきだと、こんなふうに思っているわけです。そういう意味で、今回の安定化緊急対策、私は注目をして見させていただきました。どれぐらいリストラ型の安定化策が盛り込まれるのかなということでございます。  ところが、私、先ほどから公的資金導入の話がありますが、これはまた具体的な内容につきましては次回の委員会で質問したいと思っておりますけれども、私がきょうお話を聞きましたところでは、公的資金導入の根拠の御説明などを聞いておりますと、まだまだ救済型の安定化策が色濃く出ているのではないかというふうに思うわけです。もちろん、その適用に当たりましてはきちっとした公正な審査をやるというふうなことでございますけれども、その点についてそういう歯どめがどういうふうに用意されているのか、その辺も含めましてちょっと御説明をお願いしたいと思います。
  56. 山口公生

    説明員山口公生君) 先ほど御説明申し上げました金融システム安定化策についての御印象をお述べいただきましたけれども、私どもの考え方をこの機会に少し申し述べさせていただきたいのでございますが、まず、金融の持っている特色の一つであろうと思いますが、非常に不安が増殖しがちな面を持っているということでございます。  昨年の例で申し上げますと、ある特定の銀行、これは複数の銀行の株式が相当売り込まれ、株価が極端に下がるという現象がありました。そうすると、その株の下がった銀行について、インターバンクでの、これはプロの世界ですけれども、コール市場等で急激にその銀行に対する資金が取れないという状態が現出するわけでございます。インターバンクは保護されておりますとはっきりみんな言っているし、わかっているにもかかわらず、そういう現象は起きるわけであります。  そして、それを見て海外の銀行がひょっとしたらひょっとするかもしれないということでまたドル資金を貸さない、クレジットラインを切ってしまう、そうすると今度は格付機関がまた格付を下げるというようなことになるわけです。もちろん、マスコミもそれは報道します。そうすると、預金者の皆さんもこれは大変じゃないかといううわさが広まって、それで窓口に並ばれた方もたくさんいらっしゃいます。約一週間ぐらいそういう現象がありました。大変心配したわけです。  もとはといえば、ある株がどんと下がったということが発端ではあります。その原因は何かあるかといえば、それはその株を売った人にとってみるとあるんでしょう。しかし、私が申し上げたいのは、そういった連鎖が心理でもってつながっていくという、非常に不安の心理が増殖されていくという性格を持っているのがこの金融システムであり、信用秩序だと思うわけであります。  そうすると、どうやってそれの不安を断ち切るかというのが今一番大切なことだと思うんです。そのときに、預金者はまず大丈夫かと、全額保護されるのかということが一つあります。それについては、北海道拓殖銀行というような大きな銀行破綻して、それで預金保険でお金は大丈夫なのかというような御議論があります。それは前国会でも、この委員会でも御指摘がありました。それに万全を期さなきゃいけないのは一つあります。  それからもう一つは、例えば中小企業受け皿銀行がないときに困ってしまうということで、受け皿銀行にその資産引き受けてもらうために応援ができないかという話があります。  それともう一つあるのは、そういった危機的な状況のときは、銀行は別に債務超過でも何でもないわけです。ところが、そういった現象でもって不安になってみんなが、プロですら自分のところでお金をホールドしてしまう。本当は余ったお金は市場に出してしまうわけです。市場に出して、お金の足りない銀行がとりあえず一時的に借りるわけです。ところが、自分の銀行がもうどうなるかわからないというので、資金をホールドしてしまうと同時に貸し渋りという現象すら起こしてしまう。ひょっとしたらまた株が下がるかもしれないという恐怖感がどんどん増殖するわけです。そうすると、やっぱり安心感を与えるためには、いざというときはちゃんとした仕組みを準備してあげるということだろうと思うわけです。  そういった意味で、今回いろいろな安定策を御提言申し上げたいと思っておりますのは、与党の中でのいろいろな御議論も踏まえた上ででございますけれども、そういった不安感というのを断ち切るための施策であるというように考えておるわけでございます。  確かに、今、先生がおっしゃったように、長期的な金融行政のあり方の問題、破綻処理の考え方の問題ということは大きな太い筋として考えていく必要があると思いますし、そのために破綻処理に必要な資金公的資金を導入させていただくということをお願いしておるわけでございますけれども、それとはもう一つ別に、金融の持っているそういう不安定性、不安心理の増殖、それがまた経済影響を及ぼしているということについての、現下の経済というものを見たときに、やはりこれは思い切った備えというものをしておかないと何が起こるかわからないという状態はかえって国民の皆さんに不安を呼び起こすし、また国民一人一人が、例えばたんす預金がふえているという話がありましたが、これはもう国民みんなが自分で自分の生活だけを守ろうという、守らざるを得ないというような心理に追い込まれるからであります。そういうことでありますと経済は回りません。そういうことのないようにしたいということが今回の主眼でございます。  そういった趣旨で申し上げておるわけでございまして、先生の御指摘の点については長期的な金融行政のあり方としてよく肝に銘じておくべき話だと重々承知した上での話でございます。
  57. 牛嶋正

    牛嶋正君 今の問題について議論を始めますとまた用意いたしました質問ができませんので、これもまた次回に回させていただきまして、次の質問に入らせていただきます。  山一証券の破綻の直接の原因になりました簿外債務につきましては本委員会におきましてもしばしば取り上げられた問題でありました。きょうは私は金融安定化策との関連で一つだけちょっと御質問をさせていただきたい、こういうふうに思っております。  問題になりましたのは、政府・大蔵省がこの事実を知ったのはいつか、いつ知ったのかということであったかと思っております。  この問題につきまして政府・大蔵省の答弁は、十一月十七日に山一証券から報告を受けたときにこの事実を知ったという御答弁であったと思っております。私はこの発言の真偽についてここで議論しようとしているわけではありませんで、むしろこの事実を報告があったときに初めて知ったという、ここのところに私は非常に大きな問題が含まれているような気がするわけでございまして、これについてちょっとお尋ねしたいわけです。  と申しますのは、多くの人々が感じたことですけれども、大蔵省の検査・監督機能あるいは検査能力というのはこんなものかというふうに思ったのではないかと思いますね。こういう事実さえ発見できなかったのかと。この思いは非常に大事なんです。重要なんですよね。  恐らく、これからますますわかりにくい形で金融機関破綻というものが突然起こってくるというふうに思いますね。その場合に、政府・大蔵省にこの問題を解決するために任せておいて大丈夫だろうかというような懸念を今申しましたようなことから仮にみんなが持ったといたしますと、私はこの懸念は何としてでも払拭しなければ金融安定化策は進まないと思いますね。  この問題について、政府・大蔵省はどういうふうに対応されてまいりましたか。
  58. 原口恒和

    説明員(原口恒和君) 今、先生の御指摘のありましたように、過去の調査において、これは御説明しておりますように、証券会社の帳簿自体にその痕跡が残らないような取引を原因としたものであったということで把握に至らなかったという御説明をしてまいりました。  ただ、おっしゃいますように、結果としてそういうものが過去の検査によって発見できなかったという事実は我々も、今、先生が御指摘のような観点も含めて、重く受けとめているところでございます。  現在、検査部は証券取引等監視委員会と同時に十一月二十五日より山一証券に対する特別検査を行っております。その過程で厳正な実態把握にまず取り組んでいるところでございます。  そういう結果も踏まえ、またそういう現在の状況等の反省の上に立ちまして、どういうふうに今後的確な金融機関資産、財務内容について把握していくか、これは研修の充実ということもありますし、検査手法についての見直しということもあると思います。そういうことについて今検討を進めているところでございます。  また同時に、こういう違法な行為といいますか、こういうことについては金融機関自身の自覚なりということももちろん大事なことでございますが、さきの国会でそういうことに対するいろいろペナルティーの方も強化をしていただきました。そういうことと我々の検査の充実と相まって、こういうことのないように努めていきたいというふうに考えております。
  59. 牛嶋正

    牛嶋正君 非常にお答えにくいのではないかと思って、ちょっとこの質問をやめておこうかなと思ったんですけれどもあえてさせていただきましたが、それじゃちょっと話題を変えさせていただきます。  証券市場で一日平均の売買局を株数で発表しておりますね。私、これをずっとバブル以降たどってみたんですが、いわゆるバブル期の一九八七年から八九年、この三年間は、もちろん一日変動ありますけれども、大体九億株から十億株ぐらいの取引がされておりました。それがバブル後急激に減少いたしまして、平成四年、一九九二年では平均いたしますと二億六千万株ぐらいに落ちております。最近また若干取り戻しておりますが、それでも三億株後半のところで推移しているわけです。バブルのときに比べますと三分の一強ぐらいというふうになろうかと思います。  このように、証券市場における一日の平均の売買高の縮小傾向だけで証券業界の体制がその業務量に比べて過大であるということは即断できないと思いますけれども、私はかなりリストラの余地はあるのではないかなというふうに思っております。  このことから考えますと、三洋証券とか山一証券が破綻いたしましたけれども、その背景にはこのような金融システムそのものの肥大化というものがあるのではないかと。ですから、リストラに乗りおくれたところはやっぱりつぶれていくと、こういう運命にあるような気がするわけですけれども、この点について政府・大蔵省はどのようにとらえておられるのか。今、私は一日の売買高で業務量というものをとらえたんですけれども、これも含めてちょっと見解をお尋ねいたします。
  60. 長野厖士

    説明員長野厖士君) 証券業界の就業員数という面からリストラの状況を御報告させていただきたいと思いますけれども、ただいま先生が仰せになりましたいわゆるバブルのピーク時のころの日本の証券人口というのは、会社の範囲は若干動きますが、十五、六万と言われたものでございます。今日時点で日本の証券人口は十一万でございますので、三分の一近い人員削減が行われてきたと。この十一万というのは八七年ぐらいになりますから、バブルの前の時期ぐらいに大体戻ってきておるということでございます。  就業員数の動きとしてはかなり大幅な変動があった業種ではなかろうかと私自身は思っておりますが、しかし国際的にこれから大きな競争の時代にまた入ってもまいりますので、国際的ないわば効率性というレベルから考えましても、このリストラの努力はここ数年間で五万人減ったからこれでよしというものではないであろうというふうに考えておりますので、この点の努力は今後とも引き続き行っていく必要があるだろうと。  これは、日本企業の場合にはなるたけ首を切らずに対応していくという企業経営のお考えがすべての産業にございまして、そことの調和をどう考えるかというのは日本経済がこれから世界経済の中でグローバルスタンダードに合わせていくときに一番悩ましい課題だと私は思っておりますけれども、しかしこういった証券業のように国際的な競争が激化せざるを得ない分野におきましてはそのような国際的な動向を踏まえた対応が必要になるであろうと考えております。  しかし、アメリカにおきましては証券人口が今二十数万ということでございます。大変な成長産業でございます。今後、証券市場の活性化策を講じていくことによりまして、全体としての日本の証券業というのは日本の雇用を支えていく成長産業になってほしいという思いも私には強烈にございます。この両面で施策を講じてまいりたいと思います。
  61. 牛嶋正

    牛嶋正君 私、この問題を取り上げましたのは、先ほどから言っておりますリストラ型の金融安定策と非常に関連してまいりますのでこういう質問をさせていただいたんですが、私は問題はむしろ銀行の方にあると思うんですね。やっぱり銀行も同じような状況になっているんじゃないかと。バブルのときにかなり業務量が拡大しておりまして、それに応じてやっぱり機構も拡充し、人もふやしたんじゃないかというふうに思っております。例えば、地方銀行は商業銀行のところへ領域が食い込んでいく、あるいは地域銀行は地方銀行の方に食い込んでいく、そして商業銀行は東京に店を集中させるというふうなこと、現象的に見ましても相当な機構の拡充があったというふうに思っております。  ところが、金融市場そのものはバブル後、これまでの貸し手市場から借り手市場へ変わっていく、先ほどの貸し渋りなども考えまして、業務量はかなり私は縮小しているんじゃないかなと。そうしますと、銀行全体にとりましてもやっぱり肥大化、過大であるというふうな面があるのではないか、こういうことからこの質問をさせていただいたわけでございますけれども、どうなんでしょうか。先ほど私は証券会社の業務量につきましては一日の平均出来高というふうなものを用いさせていただいたんですが、銀行の場合は業務量というのは非常に難しいですね。資金量でもちょっとなかなか把握できないと思います。ですから、むしろ、先ほどお答えいただいたように、どんなふうにリストラがなされてきているのかということでお答えいただければなというふうに思っております。よろしくお願いいたします。
  62. 山口公生

    説明員山口公生君) リストラの必要性という点につきましては銀行業も例外ではないわけでございまして、むしろそれは強く求められている時代だと思うわけでございます。各行ともかなりその点については十分認識しておりまして、対応は既にやってきている面がございます。  平成八年度の主要行だけでございますが、従業員は八千二百人減っておりまして、これは四・四%の減でございますし、それから店舗も九十店舗削減しております。昔はどんどん店舗を出すことが競争だったんですが、今は店舗は減っております。それから従業員のベースアップも見送っておりますし、役員賞与は七年度、八年度と全額返上になっております。それで十分かという御議論は当然ありますし、また銀行自身がさらにリストラをやっていかなきゃいけないという気持ちを強く持っております。  それは先ほど申し上げました自己資本比率の問題のほかに、やはり収益性を高めないことには銀行がこれから成り立っていかないわけであります。何でもって収益性をはかるかというのは、ROEとかROAとかいうふうに申し上げましたが、例えば一人当たりの収益でもいいわけでございます。あるいは店舗当たりの収益でもいいわけです。そういった形でやはり収益を上げられるような銀行をみんな目指しているわけでございまして、これは銀行自身が十分考えてやっている面でございます。
  63. 牛嶋正

    牛嶋正君 終わります。
  64. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 民主党・新緑風会の峰崎でございます。  北海道に年末年始帰っておりまして、実は拓銀の問題というのはある意味ではいまだにずっと尾を引いているわけであります。大蔵省から「北海道拓殖銀行に対する大蔵省検査による資産査定状況」、これ一枚だけが私の部屋に入っておりました。これはもう皆さんのお部屋にも入っていたんだと思いますが、これは要するに債務超過額が八千四百億円ありましたということだけがわかる資料なんです。  我々が知りたいのは、これだけ、二カ月以上にわたって調べた拓銀に対する検査の結果、いわゆるよく言われるところの延滞債権が幾らか、あるいは破綻先債権が幾らか、そういうものはどうなっておるのか、あるいは劣後ローンと言われているものはこの中で拓銀には幾ら、どの業態がどのぐらい実はこれを入れておったのかということはこれでは全然わからないんです。こういうことについてはディスクローズをすることはできないんでしょうか。それとも、これからこの国会の中で明らかにしますということなんでしょうか。もう破綻した銀行ですよね。ですから、まず最初にその点をちょっとお聞きしたいんです。
  65. 原口恒和

    説明員(原口恒和君) 拓銀の検査については、検査の着手後、北洋銀行等への営業譲渡の方向が明らかになったということで、今回の金融検査においてはその資産内容の精査を中心として実態把握を行ったところでございます。細かい点について、破綻先債権、延滞債権、これはいわゆる一般的な統一開示基準に基づく分類でございますので、今回の検査においてはそういう形の分類はやっておりません。  今回の検査におきましては、いわゆる資産を通常言います四つの分類に分けております。その結果の数字を申し上げますと、四分類、企業会計上直ちに償却、引き当てすべきいわゆるロス額は約三千四百億円、それから三分類、預金保険機構に買い取られた段階でロスが顕在化するおそれのあるロス見込み資産、これが約六千億円、それから二分類ということで、個別に適切なリスク管理を必要とするというふうに判定をいたしました資産が約一兆三千五百億円、それから一分類といいますか非分類として、回収の危険性等について特に懸念のない資産、これが約六兆二千六百億円という分類をいたしております。  それから、劣後ローンにつきましては、これは九年九月期の有価証券報告書にも記載をされておりますが、総額では二千四百二十五億円でございます。  なお、金融業態別の内訳については、劣後ローンの債権者にも関する問題でもありますし、またその拓銀自身は御指摘のような事態でございますが、今、そういう債権者の問題あるいはその貸出先を含めて今後どういうふうに円満に円滑にやっていくかという協議もいろいろ進められている状況でございますので、そういう個別の問題に関してはお答えは差し控えさせていただきたいと思います。
  66. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 いずれにせよ、ディスクローズするという意味では、北海道にいる関係者からすると、あるいは我々もそうなのでありますけれども、どうやったらいかに次の銀行へ円滑に引き継げるのかという点で、大蔵省の検査の結果というのはやはり関係者には正確に、できる限り詳しく知らせるべきではないかというふうに思っておりますので、この点はぜひまた善後策といいますか、対処策をよろしくお願いしたいと思うのであります。  実は、私ども回っておりまして、貸し渋り問題とかいろいろ大変だろうということで各企業銀行の各支店、そういったところにも実はヒアリングなどをしてまいりました。そのときに、後で貸し渋り対策というところとも絡むのでありますけれども、この点確かめてみたいんですが、先ほど為替相場の問題がございましたけれども、いわゆる円安に振れていることは一体どういう影響をもたらすのだろうかということについて先ほど清水委員の方から質問がございました。  実は、私どもが各企業、とりわけ国際決済業務をやっているいわゆるBIS規制八%に適用されざるを得ない銀行に聞いたときに、一番今問題になっているのは、貸し渋りというよりも貸せなくなってきているか、ある意味では非常に絞らざるを得なくなってきている原因というのは、一つは確かに株の問題があると。これは、御存じのように、四五%含み益を入れるという問題がございますので当然かかわってくるわけでありますが、もう一つ、円安に振れていることが、三月三十一日時点でどれだけのある意味では円安に伴う不良債権の問題につながっていくかという点で、大変ダブルで影響を受けているんだと、こういう指摘を実は受けているのであります。  この点、銀行局、今の貸し渋っている八%規制に該当する銀行というのは、円安影響ももろにいわゆる八%の基準に大変大きな影響を与えているという点の指摘についてはどのように考えておられるんでしょうか。
  67. 山口公生

    説明員山口公生君) 確かに、円安によりまして外貨建て資産の円ベースでの表示が大きくなりますので、資産がふえる。そうしますと、もし自己資本が同額でありますと、自己資本比率がその分下がるわけでございます。それは御指摘のとおりだと思いますが、ただ、では分子の方で全くそういうことはないかというと、それは例えば海外から外貨建てでもし劣後ローン等でとってティアⅡに計上してありますれば、それはそれでまたその分は円ベースではふえるわけですから、そこはその点は相殺されるということであります。  ただ、全体として見ますと、外貨建ての資産というものが評価によってふえるという面があることは否定できません。しかし、それが今バイタルな話かどうかという点についてはまだ正確な感じは持っておりませんけれども、BIS銀行はそういった問題は否定はできないというふうに思います。
  68. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 両方相殺すればあまり影響ないのかもしれないとおっしゃっていますが、しかしBIS、国際決済業務をやっている銀行にとっては、ある支店長の発言でございますけれども、ダブルでかかってきているがゆえに、円安に振れている問題というのは一体どこまで行くのかということで大変心配しているということだけ指摘を受けています。この点、また正確にわかれば教えていただきたいと思います。  もう一つ、実は円安の問題で、これは先ほども問題ありましたけれども、一番新しい世界週報で、寺島実郎さんというワシントンの三井物産にずっとおられた方が、「日本経済再生への処方箋」ということで、二月発表のアメリカの対日貿易赤字は非常に注目をされると、こう述べているんです。五百五十億ドルを超えるか超えないかだと言って、何で五百五十億ドルかがちょっと私もよくわかりません。そこは本人に聞かなければわからないところなんですが、要するに国際貿易の問題でまた日米間の摩擦の問題と絡んでくるんです。  そこで、きょう日銀の総裁にお出まし願っているわけでありますが、実は先ほど来為替円安に振れている原因は何だろうかということで国際金融局長の方からも少しお話を聞いたわけであります。今の金利が〇・五%に下がっておる、コールレートになると〇・四%ぐらいにまで今下がっているように思いますが、これだけずっと下げ、なおかつ資金がどんどん潤沢に出されておりますね。その資金がどこに流れているかというと、一つはたんす預金だと言いました。ですから、これは銀行にきちんと入っていかないで実はたんす預金のところへ行っている、あるいは預けたとしても普通預金とか取り崩しが簡単にできるようなところへ行っていますね。定期預金がどんどん取り崩されている。信用乗数がどんどん落ちています。と同時に海外にも流れていっているんです。  そうなると、〇・五%に金利を下げているというのは、もう二年以上にわたっているわけでありますから、それは恐らく日本金融不安あるいは不良債権問題に対応しようとしているんだろうと思うんですが、そのことが実は円安になって日本銀行やいわゆる金融関係、あるいはもっと言えば今度はファンダメンタルはいいと言われている日本経済にまで大変な悪影響を及ぼし始めているんじゃないかというふうに言われ始めているわけであります。  この点について日銀総裁はどのように考えておられるか、お聞きしたいと思うわけであります。
  69. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 御指摘がございましたように、為替レートの決定のいろいろな原因の中には両国間の金利の差というものも当然それはあるわけでございます。  日米間の為替レートにつきまして、現状それがどのぐらいの影響を持っているのかという点はいろいろと判断の難しい面はございますけれども、ある国から資金が他の国に流出をするといいます場合の動機としましては、やはり一つは金利差がございまして、相手の国の方が金利が高い場合にそちらに向かって収益を図るために流出をするということはございます。しかし、資本の流れというものの現実はそれだけで決まるものではございませんで、例えば現状為替レートが将来どういうふうに変化していくであろうか、あるいは両国の間のインフレの将来の見通しはどうであろうか、そういういろいろな点、またそのほかリスクがございますから、そのリスクに対する判断等がございます。  現状におきまして、私どもは日米間の資金の流れというものも観察をしてまいってきておりますけれども、ここに来てこの金利差に基づきまして何らか非常に大規模な為替の移動、資金の流出というものが発生しているというふうには見ていないわけでございます。  私どもとしましては、現在は、国内金融政策の立場から、我が国経済活動が今後自律的な軌道に乗ってまいるような金融政策の運営をすることが全体としての経済運営に有効であると判断をいたしましてこういう措置をとり続けているわけでございます。
  70. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 地元に帰って企業家だけではなくて有権者の声をいろいろ聞いても、いわゆる利息がほとんどつかない現状になっていまして、一千二百兆円とも言われる金融資産、もちろんその中で確定する利息は恐らく五、六百兆円でしょうか。そうすると、一%違っただけで六兆円だ、二%あれば十二兆円だと。これだけの所得移転が銀行にかかっているじゃないか、もうそろそろいいかげんにしてもらえないかという声も実は非常に強くあるわけです。もちろん、それは経済ファンダメンタルズの問題が非常に大きいわけですから、そちらの問題はあるだろうと思うんです。  そこで、大蔵大臣、私はことしの年初以来の株安の問題は政府に対する不信が実はあるのではないかというふうに思い始めているんです。と申しますのは、今ちょっと日銀総裁は、もちろんそれだけが原因じゃないと、金利差だけじゃないよと。いわゆる為替円安に振れているのはそれだけじゃないというのは私もよくわかります。しかし、非常に大きな要因であることは間違いないと思います。第一、貿易収支は黒字なのに、本来ならば円高になってしかるべきところが実は円安になっていっているということは、日本経済の実態が非常に問題があるということもさることながら、非常に金利差が大きいということもあると思うんです。  ですから、そういう問題も含めて見ていると、日本経済政策というものはどうも一貫性がないんじゃないかと思わしめることがこのところ続いているんじゃないかという気がするんです。その代表例が二兆円の特別減税財政構造改革法案、私はこれを今やるということについては反対だったわけでありますが、いわゆる財政構造を去年の四月以来ずっと、ある意味では消費税の引き上げから特別減税からさまざまなデフレ政策をとってきたわけです。今度、十二月になると突然二兆円特別減税をやりますと言ったんですよ。我々はそれを要求していましたから結果はいいかもしれないけれども、しかし政府自体財政構造をデフレ的に進めなければいけないんだといったことを途中でごろっと変えるということは、経済政策の基本としてこの国の政策は一体どうなっているのかと。  要するに、財政構造改革法案という法案の考え方を変えたのか。変えたなら変えたなりに、ことしの予算編成だって大変な緊縮財政を組んでいるわけでありますから、そこへ二兆円減税がぽっと出てくる、これは一体何のためにやったのかということについての信頼性というものが、結果としてそれはいい方向をもたらすのかもしれません。いや、金額が少な過ぎて、あるいは遅過ぎて効果が少ないのかもしれません。その意味で、この点についてもどうも一貫性がないじゃないかと。  それから、金利の問題は日銀の専管事項ですが、それと円安に振れ始めてきている、それが実は大変ある意味では日本経済に、金融機関に、先ほど私が、金融機関にそのことが大変貸し渋りの大きな原因になっていますよということを一つの、どのぐらいの影響を与えるのかということについてはまだ定かではないということをおっしゃっていますから、いっかまたその影響を詳しく教えてほしいんです。  そうすると、そのことも実はある意味では日本経済の、今必死になって円安を防止するためには、今度は円資金をある意味では市場から吸い上げなきゃいかぬわけですね、為替相場のやり方としては。そうすると、円資金をどんどん出さなきゃいかぬことと円資金を揚げていかなきゃいかぬという、この二つを同時にやっているのではないか、アクセルとブレーキを同時に踏み始めているような、そういうマクロ政策をとり始めているのじゃないのかということを私は市場関係者は見ているのではないかと思うんですが、その点、大蔵大臣、これをどういうふうにお考えなんですか。
  71. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 利子政策は日銀の専管でありますから、それと同時にただいまの経済状況を見て超低利政策をとられておることはやむを得ないこと、経済を押し上げるために極めて重要な政策だと共鳴をいたしておるものであります。  そういう中で、レートの問題、株価の問題等々、市場との関連の中での御指摘でございます。  為替レートは、本来実体経済が、いわゆるファンダメンタルズとよく言われておりますが、そういうものの総合的なあらわれとして動くわけでございまして、先ほど来答弁にありましたとおり、それもさまざまな要素が働くことによって動いていくというポイントも見逃せない、これは局長の言でございますが、私もそう思います。  レートが安定しておりますことはマクロ経済にとって極めて重要な課題であります。安い方が輸出業者にとりまして大変プラスであります。しかし、全体的に原材料を輸入しながら国民生活に寄与しておるという分野については物価高に揺れていくであろう、こういうことでありまして、自由市場の持つ要点といいますか要素といいますか、避けて通れない流れというものなのかなとも思ったりいたします。  そういう中で、経済が安定した方向へ進むということになりますと、我が国は先進国中、唯一赤字財政に悩む国家であります。少子・高齢化の時代を迎えながら、国民生活の安心を得るためには何をしなければならぬかということになりますと、六大先進国、G7構成国でありますが、今日それを克服しつつある、しょうとしておるところがある、アメリカのように完全に克服をして我が世の春が到来した感じの国家もございます。  これだけの実力を持った我が国がその中でどうするかということになりますと、基本的な原則は大事に守っていかなければならない、この点だけは明快に言えることでございます。そういう中で、危機的な状況と言われる、指摘をされるポイントについては真剣に政府が受けとめていく、こういうことでシステム安定の問題、信用秩序維持というのは産業、経済の血液でございますから、重要な政策だということで全力を尽くすと。  同時に、日本経済は世界経済に左右されます。また、アジアの中の日本でありますから協調体制の中で今日まで参りました。アジア通貨の不安が日本経済を襲うということ、その場合に安定のために主役を演じなければならない我が国でございますから、IMFとの連携、世銀、アジ銀との連携の中で、それぞれの国家のレート安定のために努力をしていきますことも当然であります。  そんな点で、全体の政治の展望の中で、中長期的、短期にその問題に対応するということも総合的に取り入れるというのが政治、行政の責任かなと思っておるところであります。
  72. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 大臣、私は要するに政府がやろうとしていることについての一貫性がどうもないんじゃないのかということを言っているわけでありまして、その点は恐らく通常国会でこれから我々野党としてはやはり本格的に追及していかなきゃいかぬポイントだと思っております。  もう時間もありませんから先に進めたいと思います。  貸し渋り対策で出てきておりますが、私は、分子分母のいわゆる八%規制にしても四%にしても、いわゆる自己資本の充実ということについてこれはいろんな条件をつけて出てきているんですけれども、どうもそれは自己資本が不足しているからやろうという考え方を持っているんですが、その前にやることがあるんじゃないか。要するに、いわゆる負債といいますか資産が余りにも多過ぎているんじゃないかと。  もっと言いますと、この間、ずっと銀行に対して金利を非常に下げて、公定歩合を下げながらずっと所得移転をしている、業務純益を上げさせてきた。それにしてもとにかく大変な状況になってきているわけですが、一番肝心なのは、不良債権と言われているものの土地だとかいわゆる実態は塩漬けになっているものがございますね。流動化させるという意味においてこれを証券化させるとか、そういったところに先に努力をしていくべきなのではないかなというふうに私は思うんです。そういう努力をしてみて、いわゆる負債がもう要するに超過してしまえば、それはその企業銀行というのは残れないのだろうと思うんですが、それで非常に自己資本が劣化してきたというときに初めて出てくるのではないかなと。そうしない限り、どうしたってこれ、今は自己資本対策をやるというふうになると、私はやはりもう一つ先にやるべき課題が残っているような気がしてならないわけであります。  それともう一つ、公的資金、今回三十兆、先ほど指摘がございましたけれども、これは大蔵省がよく言われる、不良債権は二十七兆円ですというふうに言っているところと三十兆というのは何かこう符節が合うんですけれども、本当に二十七兆円あるいは三十兆円でいいんですか。すなわち、我々が一番これから危惧しなきゃいけないのは、公的資金を導入するというときにその目的、なぜ入れるのかということもそうでありますが、どのぐらい実はその不良債権があるのかというディスクローズ、実態ですね。これが先ほどの拓銀の場合だって現実にはその倍あったわけでしょう、不良債権が。その意味で、不良債権の実態がよくわからないのに、いや三十兆ですと、これで大丈夫ですよと言われても、果たしてそうなのかなと。その意味で、いわゆる不良債権の実態の問題とこの三十兆円の問題との関係でいえば、先にもっとやるべきことがあるのではないかと。  先ほど検査の問題がございましたけれども、不十分性の問題がありましたけれども、不良債権問題と言われているもののディスクローズを本当に本気になってこの機会に徹底的にやらないと、もう諸悪の根源というのは、とにかくこの不良債権問題というものを早く解決しないと、アジアに対してもよくないし、〇・五%にずっととどめている原因というのはここにあるわけでしょう。ですから、それを早くとめないと、変えていかないといけないというときには、この機会に徹底的にやはりそこのところを明らかにする、あるいは責任の問題も明らかにする、こういった点について私はやはり問題を持っているのではないかと思うんですが、この点どのように考えておられるのか、明らかにしてもらいたいと思います。
  73. 山口公生

    説明員山口公生君) 多岐にわたる御指摘でございますが、最初の御指摘資産、負債の関係を見たときに、資産にある債権をもっと流動化することが大切ではないかと。それは大変重要な視点だと思いますし、私どもも今度の通常国会におきましてそういったものを可能にするような法的な仕組みをまた御審議をお願いしたいというふうに思っております。そうしますと、先生のおっしゃるような点がかなり解決できる面があると思います。  それから、三十兆の件でございますが、これは先ほど申し上げましたように、十兆という国債の交付と、それから融資の枠の政府保証が十兆、十兆、合計三十兆の公的な資金を活用できる、こういうことでございます。これはたまたま公表不良債権の二十八兆というのに近いという御指摘でございますが、直接の関係があるわけではございませんけれども、いずれにせよ、あらゆる事態に対処できるように対応しようというのが、先ほどくどくど申し上げたような不安心理の問題等もありますし、しっかりした体制を組ませていただきたいということなのでございます。  その前にやるべきこととしてディスクロージャーとかあるではないかと、それはそのとおりであります。したがって、これまでのディスクロージャーの一つの統一基準をひとつSECを参考にしてもう少し深化できないかということも強く依頼しております。そういう方向へぜひ持っていくべく努力したいというふうに思っております。  先ほど御質疑がありました自己査定という、もともと自分たちでやっている内部作業でありますけれども、そのトライアルのものも集計できないかという御指摘がありましたので、そういったものについても審議に供するために前向きにひとつ検討をしていきたいというふうに思っております。それで国民の皆様に御理解を賜るよう努力したいと思っております。
  74. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 もう時間も残り少なくなってまいりましたので、ちょっと二点、また畳んで質問させていただきたいんです。今回はいわゆる三十兆円といろいろ資金を入れていますが、これは金融機関だけで保険会社の保険だとかあるいは証券会社の預かり証券とか、その他の問題についてはどのようにされようどしているのかなということについて、つまりどこまで保護されるのかということについて大変関心を持っているんですけれども、今回はその点は出てきていないのではないかなというふうに思っております。この点はどうなっているのかということ。  それから最後に、貸し渋りの問題で、政府金融機関の果たす役割というのは非常に大きいのだろうと思うんですが、一つは中堅企業対策。今回の拓銀なんかが取引していたところというのは一億円以上の中堅企業が非常に多いんです。ですから、中堅企業対策をやるというふうにおっしゃっていましたが、これは具体的には法令とか政令とか、基準の改正をしておやりになるんでしょうか。  それともう一つは、北東公庫あるいは開銀といったようなところは運転資金というものを出すことがなかなか難しいというふうに言われているんです、設備資金を中心にして。ところが実際問題、今回こういう状況になってみると、やっぱり設備投資をする以前に運転資金そのものが足りなくなってきているという状況があって、本当に優良な貸付先なんだけれども運転資金が回らなくなってきているという、そういうことに対する対応もぜひお願いしたいと思うんですが、この二点を質問して、私の方からは終わりたいと思います。
  75. 山口公生

    説明員山口公生君) 御質問がありました最初の点は範囲をどうするかということでございますが、これは預金保険の財源の問題ということで対応しておりますので、預金保険法対象となっている金融機関破綻した場合にこういった備えをするというのが一つあります。  それから、資本注入の方はいわゆる金融機関等ということで考えております。そこには証券、保険というのは含まれてはおりません。  それから、中堅企業はどういうことかということでございますが、これについては一応中小企業の定義よりは上で一部上場企業ではないということであります。  それから、運転資金については、今回、開銀及び北東公庫につきまして設備投資に伴うものについて一部認めておりますので、どうぞ御活用いただきたいというふうに思っております。
  76. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 通産省、来ておりますでしょうか。
  77. 齋藤浩

    説明員(齋藤浩君) 当省におきましても、中小、中堅に対しての実態把握をいたしまして、中堅にもかなり貸し渋りの影響が出ているということでございましたので、今、銀行局長から御答弁ございましたような形で北東公庫、開銀それぞれにつきまして特別な融資制度をつくっていただいたところでございます。  この特別な制度につきましては幾つか特例を設けていただいておりますが、その中で先生の御指摘のございました設備資金以外のところにつきましても一定のものを対象とするということでやつております。  それから、もちろんそれにつきまして広報を一生懸命するということも大事かと、広報活動で皆様に御利用いただけるようにしたいということで窓口PR等に努めているところでございます。
  78. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 終わります。
  79. 石川弘

    委員長石川弘君) 午前の質疑はこの程度とし、午後零時五十分まで休憩いたします。    午後零時十八分休憩      ―――――・―――――    午後零時五十一分開会
  80. 石川弘

    委員長石川弘君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、今泉昭君が委員辞任され、その補欠として平田健二君が選任されました。     ―――――――――――――
  81. 石川弘

    委員長石川弘君) 休憩前に引き続き、租税及び金融等に関する調査議題とし、金融安定化対策等に関する件について政府に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  82. 梶原敬義

    梶原敬義君 経企庁と日銀に最初にお尋ねします。景気判断、これが非常に現実とずれている、このことについてお伺いをしたいわけでありますが、そこが狂っておれば国の政治をする総理以下トップはやっぱりそこが狂うわけです、それをもとにして判断をするから。  だから、これは非常に重要なことなんですが、月例経済報告によりますと、去年の一月は「景気は回復の動きを続けて」「民間需要は堅調さを増している。」、こう言って、三月、四月、六月までぐらいは堅調、堅調と言っている。七月には「回復テンポが緩やかなものになっているものの、堅調な民間需要を中心に景気は回復の動きを続けている。」、こう言っている。九月も若干トーンダウンをしておりますが、十一月になって「民間需要を中心とする景気回復の基調は失われていないものの、企業の景況感に厳しさがみられ、景気はこのところ足踏み状態」ということで緩やかな方向転換をしております。  日本銀行の景気判断も、去年の一月は「わが国の景気は、緩やかな回復を続けており、民間需要の回復力は底固さを増してきている。」、こう言っておりまして、四月に「消費税引き上げに起因する振れを伴いつつも、基調としては緩やかな回復傾向にあり、民間需要は底固さを増している。」と。そして、五月、六月、七月も、消費税の影響は若干あるが回復基調を続けている、こう言っております。それから、八月になって「生産や所得は底固く推移をしており、全体として緩やかな回復基調を続けている。」、こう言っておる。九月になりまして「しかし、企業部門を中心に所得・支出の改善傾向は維持されており、全体として景気の緩やかな回復基調は崩れていない。」と。それから、十月になって「引き続き四月以降の減速局面にあり、」、ここでがらっと転換しています。「企業のマインドも慎重化している。しかし、輸出や設備投資増加の支えもあって、企業収益や雇用・所得面の改善基調は崩れていない。」、こうなっております。それから、十一月になって「四月以降の家計支出低迷などの影響が生産面にも次第に及びつつあり、企業マインドも慎重化するなど、景気は減速傾向を強めている。」、十二月になって「景気はこのところ停滞色を強めている。」、こうなっておる。  しかし、我々一般国民というのは、十月ごろじゃなくて、春先にもう悪い、こういう声が強かったわけです。総理も、今度所得税減税二兆円を決断したり、あるいは補正予算を組んだり景気対策をやらにゃいかぬ、こういうような形になったのは、景気の局面がやっぱり本当に深刻になったからそういう形になったんだと思うんだが、もう少し前にこういう状態がなぜわからなかったのか。戦争をするときに、作戦本部が間違った資料をどんどん出して大将がそれをもとにして判断していく、こういう間違った資料をもとにした戦争というのは負けますよ、これは。兵隊を何ぼでも殺す。  こういうことがどうして起きるのか、あるいは責任をどう感じているのか、経企庁と日銀総裁に伺いたいと思います。
  83. 古川彰

    説明員(古川彰君) お答えいたします。  私どもとしては、経済動向はもうとにかく入手可能な統計を収集分析する、産業界からのヒアリング等もいろんなチャンネルを通じて経済の実態把握を行って、その時々でもって最も的確な判断を行えるように心がけているつもりでございます。  先生御指摘のように、月例経済報告の判断が変わってまいったわけですが、最近のところで申しますと、設備投資は設備過剰感が薄れてきたということで緩やかには増加しているわけですし、純輸出は増加傾向にございます。しかし、個人消費、これは家計の経済の先行きに対する不透明感というのもありまして足踏み状態となっておりますし、住宅建設も下げどまりの兆しはありますけれども依然として弱い動き、こうした需要動向を背景といたしまして生産が弱含んでおります。  以上のように、景気はこのところ足踏み状態が続いているというふうな判断をしておりますし、家計、企業の景況感、厳しさが増しているということで、これが個人消費、設備投資等にも影響を及ぼしているというふうに認識してございます。
  84. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私どもの景気に対します判断は、昨年春の時点におきまして消費税率の引き上げ等の財政面からの影響経済に及ぶことを予想いたしまして、その場合には景気の一時的減速は避けがたいと見ておりましたけれども、さらに同時に、生産、所得、支出の循環の働きといいますものが当時、一昨年の後半あたりからだんだんと働き出していたという前向きの点も評価をいたしまして、景気回復の流れ自体はこのまま持続するというふうに判断をしていたところでございます。  ただ、その後の動向を見ますというと、景気は一時的な減速にとどまりませず、このところ停滞色を強めておりますが、これには個人消費が予想を上回るような落ち込みを示しましたことや、あるいはまた一部の金融機関破綻というものをきっかけにしまして、企業や家計のマインドが予想以上に大きく後退したということが影響をいたしておりますし、またその背後まで見ますというと、企業金融機関の不良債権問題もなおまだ重くのしかかっているというふうに受けとめるわけでございます。ただ、この間、私どもとしましては、政策につきましては、こういった構造調整圧力の重荷にも配慮いたしまして、一貫をして慎重な判断と運営を図ってまいったところでございます。  そういうことではございますが、今後ともに、私どもとしましては、より高い経済分析を行うように努力をし、政策判断、政策運営に誤りがないように努めてまいりたいと考えております。
  85. 梶原敬義

    梶原敬義君 経企庁、今何かそう間違っていないような話をしましたけれども、そういうことでいいのか。経企庁はもう要らぬのじゃないのかな。  橋本総理にしても、政府あるいは与党にしても、どういうようにこの局面をとらえて経済政策的な手を打っていくかということは非常に重要なことなんです。  今の経企庁のお話なら何もしなきゃしなくてもいいんじゃないのか。何とか調子よくいっているという。そこのところはどうなのか。
  86. 古川彰

    説明員(古川彰君) 私どもも、景気の現状をとにかく足踏み状態である、それが続いているというふうに判断しておりまして、景気の状況は非常に厳しいというふうに認識してございます。したがいまして……
  87. 梶原敬義

    梶原敬義君 何で最初に厳しいと言わないのか。
  88. 古川彰

    説明員(古川彰君) それにつきましては、やはり四月以降ある程度、日銀総裁もおっしゃいましたような景気のいい循環というものも失われてはいないという認識をしておったわけですけれども、やはり特に家計消費、駆け込み需要というものがあったわけですが、その駆け込み需要及びその反動の大きさといったものが非常に予想を超えていたということで認識を変えてきたわけでございます。
  89. 梶原敬義

    梶原敬義君 私どもも正月ずっと帰って選挙区やなんかを回りましていろんな人と会いましたよ。みんな厳しいと言っている。あなたの言っていることともう月とスッポンぐらいの違いがある。  それはそれといたしまして、次に移りますが、金融システム緊急対策、これをずっと聞いておりまして、大蔵省は外の関係とか内の関係とか、こういう書き方をしておりますが、どうも責任をやっぱり感じていないような感じをこの文面から、あるいは大臣局長説明を聞いておりましてまず印象として受けました。  私は、今度の金融不安というのは恐慌の一歩手前まで来ている。あるいは郵便局に貯金が集まる、あるいは東京三菱銀行預金が集まる、こういうような状況で、これはやっぱり大変な時期だと。しかし、バブルの後遺症が金融不安をもたらしておると私は見ている。ほとんどすべてがバブルの後遺症じゃないですか。バブルで踊ったところが皆悪いんじゃないですか。そこのところを非常にあいまいにした形で何か次に進もうとしているところに私はどうにも納得ができない。  最後に責任をここでとってもらうというような、「経営者責任が厳しく問われることは言を俟たぬところであります。」、こう言っておりますが、これは日銀にしても考査をやっておる。大蔵省は検査をやって監督をしている。ここがバブルを見逃した張本人なんですね、ここが張本人。ここをそのままにして、そして銀行なら銀行をあなたたちに責任があるんだと、こう言ったって迫力が出ない。  私は今回のこの金融対策、これから緊急対策をやると言うのなら、やっぱり太平洋戦争で日本が負けたときにみんな戦犯で問われた、そしてその後新しい民主主義を導入していった。戦国時代でいうと、戦国時代で戦争やったら一族郎党皆やられていくんですよ、殺されるんですよ。追われるんです。こういう状況が放置されて、これはもうバブルという異常な事態をつくり出した状況をそのまま、だれも責任を問われぬまま三十兆に及ぶような金融対策をすると言うのなら、やっぱり国民は、じゃそれはいいでしょうと仮にそう言っても、しかし肝心なところは肝心な責任をとってほしいと。これは刑法や民事で責任をとれぬなら、経営者の経営道徳あるいは行政や日銀の責任、そこをはっきりさせると。  だから、当時の人たちが今どこかで違う生活をしている、違う仕事をしているかもしれないが、やっぱりそこまであなたたちは道徳的な責任があるなと、あったんだよというところまではっきりしなきゃ、これは筋が通らぬのじゃないですか。この点は日銀総裁、いかがでしょうか。
  90. 松下康雄

    参考人松下康雄君) バブルの発生につきましては非常にいろいろ複雑な要因が絡み合っていたところでございますけれども、今日になりまして振り返ってみますというと、その中では長期にわたります金融緩和もその原因の一端があったということは否定できないところであると考えております。  ただ、その際に、当時の金融政策でございますけれども、当時の国内経済情勢はプラザ合意以後の非常に急速な円高が進行いたしておりまして、そのデフレの効果が大変懸念されている状況でございました。このために日本銀行としましては、公定歩合を二・五%という低位に置きまして平成元年まで据え置いたわけでございますけれども、やはりその当時の国全体の経済政策におきまして経常黒字の是正や円高の回避ということが非常に優先的な課題でありました中ではぎりぎりの金融政策を選択したものというふうに考えられるところでございます。  しかしながら、結果としまして金融緩和が長期にわたりましたことがバブル発生の一端となったということを考えますというと、やはりこの間の事情は私どもにとりまして金融政策のあり方というものについての重い反省をもたらすものであると受けとめております。私どもといたしましては、当時の教訓をしっかり念頭に置きまして、今後適切な金融政策を運営いたしてまいるように努力いたすつもりでございます。  その際に、一つの例を申し上げますが、今回、四月から施行されます新しい日本銀行法におきましては、こういう金融政策につきまして諸外国の例も見ながら政策運営透明性を高めていこう、それから政策運営のあり方を事後的に検証し改善をさせていくことが適当であるというお考えによりまして、議事要旨の公表とかあるいは国会への報告を通じまして国民に対する説明責任をより明らかにしていくという仕組みになったわけでございます。私どもとしましては、この一月から、新法の施行に先立ちまして、議事要旨の公開等につきましては実行に移していくというようなことを通じまして、今後、新法の理念であります政策を透明にし国民の御批判を受けられるように運営をするという点は努力してまいりたいと思っております。
  91. 梶原敬義

    梶原敬義君 金融緩和の状況、これに一つは責任があるということを言われた。もう一つは、日銀の考査の段階で各銀行がノンバンクやあるいは不動産業者にどんどん不必要に金を出しているという実態は恐らくわかっていたはずで、わからないというのなら何かおかしいのであって、その部分の状況を的確に判断できる資料を持っておれば金融緩和の状態や何かというのももう少し手が打てた。日銀の考査の状況、そういうものは一体何で役に立たなかったのですか。  それで、あなたはさくら銀行におったですね。さくら銀行もあなたがいたときにバブルで踊ったでしょう。踊っていないというのは三菱銀行ぐらいじゃないですか、三菱も最後に踊ったけれども。こういうかたいはずの銀行がバブルで踊りまくった。その踊っているところを、本元の日銀がそれはいかぬよと何で早く言わなかったのか、そこですよ。
  92. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私もこちらに参りましてから当時の日銀の考査等の状況につきまして検討いたしましたが、やはり当時のバブル期におきましては、資産価格の高騰を背景にしましてさまざまな節度を欠いた融資活動も見られたわけでございまして、当時の日銀考査といたしましては、投機的な不動産取引への融資のチェック体制を厳格にするように、あるいは融資の審査を厳格にし担保掛け目の状況などを適切にするように指導をしてまいったということでございます。また、当時、日銀の総裁は、記者会見等の機会をとらえまして、金融機関に対しまして資金需要の実態を踏まえた節度ある融資態度で臨むようにというような発言も折に触れて行ってまいったところでございます。  私どもといたしましては、一方でそういう努力はいたしておりましたけれども、他面におきまして、やはり当時資産価額は非常な高騰を続けておりましたけれども、一般の物価水準におきましてはまだ極めて安定的な状態でございましたこと等もありまして、そういう点からやはり金融政策の発動につきましてもっとこれを早期化するということが必要なことであるという教訓を得たというふうに考えております。
  93. 梶原敬義

    梶原敬義君 私は、もうここで金融不安は打ちどめしなきゃいけないと思うんですね。もうこれ、以上、また次に出てきて何かするというのではなくて、もうここで金融不安を安定させる、これ腹を決めなきゃいけない。そのための三十兆円だろうと思いますから我々協力したいんだが、しかし日銀総裁、あなたはさくら銀行で踊ったんだよな。そうすると、その当時、今の話でいうと日銀からさくら銀行に対して不動産投資やあるいはノンバンクやなんかにどんどん貸しまくるなと、こういう指導があったというわけですね。あったにもかかわらず、さくら銀行は踊ったわけですね。どうなんですか。
  94. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 融資の全体的な対応といたしましては、私どももその当時一般審査体制を確立して資産健全性に配意をするという点につきましては十分留意をする必要があるということを意識していたところでございます。  その当時の一般的な情勢から申し上げますと、やはり不動産関連のいろいろなプロジェクトから生じます資金需要というものは根強いものがございまして、また他面におきましてはそれに相応する流動性の増加ということもございましたために、結果といたしまして、十分な抑制的な運用という点から申しますというと、これはやはり至らざるところがあったというふうに考えております。
  95. 梶原敬義

    梶原敬義君 大蔵大臣、民事とかあるいは刑事で責任をとらせるだけじゃなくて、やっぱり経営者の道徳的な責任を、これはいい銀行でも、問題のない銀行でも、当時踊った人たちやなんかというのはとらせるべき。経営責任を厳しく問われることは言をまちませんと、こう言われた以上はどういうことをお考えになっておられるのか、大蔵省そのものもあわせてお尋ねします。
  96. 三塚博

    国務大臣三塚博君) ただいまの責任問題でございますが、経営者責任、厳しく問われなければならない、こういうことを申し上げたところでありますが、基本的な問題はバブル時の行動、その後の行動等々、金融セクターにございます全力を尽くして不良債権解消のために努力をしておる金融機関もございます。破綻に追い込まれた金融機関もございます。  そういう中で、刑事、民事の責任がどう問われるのかということは当然あるわけでございますが、それは構成要因が満たされておりませんければ、法治国家の原則でございますから、そのことはそのこととして道義的な責任ということに終わらざるを得ないと。問題があれば強く問われることは当然であります。  また、破綻をしたということについて、今度の改正法、さらに新法において、システムの安定のために公的資金三十兆円を投入するわけでございますから、国民の財産が投入されるという意味において、その責任の道義的責任は何かと。そういう中で、法制上の責任についてはその存在が認められれば厳正に対処をしていくことは当然であろうかと思っております。
  97. 梶原敬義

    梶原敬義君 終わります。
  98. 笠井亮

    ○笠井亮君 けさほど、大蔵大臣銀行局長から金融安定化緊急対策についての説明を受けましたので、これに関連して質問をしたいと思います。  けさ、政府から正式の説明を初めて聞いたばかりでありますが、私はそれを伺いながら、やはり政府の考えている金融システム安定化対策というのは、三十兆円もの巨額な公的資金を大銀行救済支援につき込んでいく道を開くものだと。銀行破綻には税金を投入しないというこれまでの政府・与党の公約を踏み破って、方針をいわば大転換させるものであるというふうに感じたし指摘せざるを得ないというふうに申し上げたいと思うんです。これを今度の通常国会の冒頭で短時間審議で処理しようなどということがあれば、まさにこれは暴挙でありまして、断固反対であることをまず明確にしておきたいと思います。  その上で、限られた時間ですので、今回の対策で幾つか伺っておきたいんですが、一つは、三十兆円という規模の問題でありますが、その根拠は何かということでございます。  昨年暮れの本委員会で問題になったときに、最初は十兆円ということで交付公債の発行という話がありました。ところが、その後政府保証がその上に十兆円で、また十兆円ということで見る見る膨れ上がりまして、あっという間に三十兆円規模になったということであります。これが最終的に国民にツケがすべて回るとすれば、国民一人当たり二十五万円、四人家族だと百万円、住専のときが六千八百五十億円でしたから全体の規模が四十五倍近い巨大なものだという受けとめだと思うんです。  バブルに踊った乱脈経営のツケがそんな規模でバブルの責任が何もない国民に押しつけられるようなことになれば、これはとんでもないということが世論調査でもあらわれていることではないかというふうに思うわけであります。  そこで、では一体なぜ三十兆円なのかということでありますが、午前中の質疑の中で山日銀行局長は、私が理解したところでは、あらゆる事態対応できる、安心感を与えるんだ、不安解消のために必要かつ十分なものであるという趣旨をこの額の問題、規模の問題に関連して言われたと理解しております。  そういうふうにおっしゃるとすれば、じゃ、新年に入って、先ほど来ありますけれども、株価も円も低迷を続けているということがあるわけでありまして、一体この三十兆というのが市場を初め国民に対して安心感、不安解消につながっているのかと。それどころか全く効果がないということがもう既に明らかになっているじゃないかというふうに思うんですけれども、それでも三十兆という規模が大事だ、それで大丈夫なんだというふうにおっしゃるのかどうか、まず伺いたいと思います。
  99. 山口公生

    説明員山口公生君) まず三十兆円の公的な資金でございますが、国債を交付するものが十兆円で、あと二十兆円は借り入れに対する政府保証でございます。いずれにせよ公的な資金の関与というわけでございまして、合わせて三十兆円で対応するという趣旨でございます。その十兆円のうち七兆円分というのは預金全額保護のための備えでございまして、今後破綻がどれくらい出てくるかというのはわかりませんけれども、万一いろいろの事態になってもそういったものの穴埋めにちゃんと対応ができているということのためであります。  ちなみに、昨年の十二月二十二日だったと思いますが、今の公表不良債権ベースの統計を発表させていただいたときに、要処理見込み額が四、五兆円残っているという数字を公表させていただいております。  それにつきましては、午前中の御質問でも、ちょっとそれだけでは足りないじゃないか、SEC基準が必要じゃないかという御質問もありました。ただ、今のずっと傾向的にとっている統一的な数字で言いますと、四、五兆は不良債権として要処理として残っていると。そういったものを見ながらも、それに余裕を持たせ、また全部の金融機関が倒れるということはあり得ないわけでございますので、そういったことを加味しまして、七兆円の備えというものをしておけばまず国民の皆さんにも安心していただけるのではないかということでございます。  一方、三兆円というものにつきましては、いわゆる資本注入のための資金及びその損失が出たときの補てんでございます。これは優先株あるいは劣後債、劣後ローン等を引き受けるときのお金でございますが、そのための備えでございます。例えば、優先株を買ったときも値下がりするか値上がりするかはわかりません。しかし、万一の場合の備えが要ります。  それから、そのときの資金繰りのためにまたそれに加えまして十兆円の融資枠も用意してございます。例えば十兆円を使いますと、仮に今の主要行十九行にみんな十兆円全部入れるとしますと、自己資本比率が私のざっとの計算では一三%ぐらいになると思います。それは国際的レベルからいうとかなり高い方の数字になります。それくらいの備えというものを準備しておけば国際的ないろいろな横波あるいは横風が当たっても対応できるということが言えるのではないかというふうに考えております。
  100. 笠井亮

    ○笠井亮君 いろいろ言われましたけれども、三十兆円ということで大丈夫なんだということの説明にはなっていないと思うんですね。  私はもっと積めと言っているんじゃないんですよ。要するに、つかみ金みたいな話で十兆円、十兆円、さらに十兆円、一部は根拠めいたことを言われましたけれども、そういうことで当てもなく三十兆円という形で公的資金を投入するという仕組みをつくっても、それは一生懸命やろうとしたってこれはもうだめだということを私は言いたいんです。  大蔵大臣、やはり乱脈経営あるいは癒着にメスを入れて、そして金融機関の公共性を発揮させるのに必要な規制整備する、とりわけ年末にも取り上げたような徹底した情報開示の問題や大口融資規制、こういう厳格な適用なども含めて、やはり世界に通用するような金融行政のルールを確立する、これが何よりも先決だし、それが安心感や信頼確保の道だというふうに思うんですけれども、そういう点ではそういうふうにお思いになりませんか。いかがですか。
  101. 山口公生

    説明員山口公生君) 先ほど三十兆円のお尋ねがございましたけれども、この金融システム、長い間培ってきたこの信用制度というのは金額的にははかり知れないほどの価値があると私は思います。もしこの信用秩序が壊れたら、これはもう我が国は壊滅してしまうわけであります。したがって、確かに金額の問題、いろいろ御議論あると思いますけれども、我が国が今までずっと培って築き上げてきたこの金融システム信用秩序というのをぜひ守りたい、こういうことで万全の備えをさせていただきたいということでございます。  またその前提として、先生の今お話しになりました情報開示とか大口規制の問題とかいうのは、当然そういうことも真剣に対応していくと。特に、情報開示につきましては、けさほどのお話にありましたように、さらにこれを深めていくという方向で検討していく所存でございます。
  102. 笠井亮

    ○笠井亮君 秩序を維持してシステムを守るために幾らお金を積んで公的資金を投入してもだめだということで言っているのでありまして、それと並んでこれもやりますということじゃないと思うんですよ。  今、それもやりますと一般的な決意として銀行局長は言われましたけれども、けさの説明を伺いまして非常に驚きだったのは、金融機関の問題についてはいろいろ責任の問題を追及するような話もありました。しかし、あの説明の中で金融行政みずからが自己点検をするという言葉については一言もなかったということを私は驚きを持って聞いたんです。  例えば、年末年始にかけて大蔵省の金融検査部の職員が金融機関から接待を受けていた疑惑が改めて問題になりました。もう新聞で大変に大きく取り上げられた。大臣、まさに御自分の足元でそういう問題が起こっているのに放置されていいのか。きちっと調べられたのか。やっぱりこういうときだけに、この問題は改めてきちっとやるべき問題だと思うんです。  大臣、大蔵省としてもこの問題をきちっと調べて、そして国会に報告していただきたいし、厳正に対処すべきだと。そうでなければ、幾らシステム安定化だということで、そのためにこういうことをやるのだから御理解をと言っても、これは国民はもう入り口から納得しない。つくった大蔵省みずからがみずからの問題をきちっとただせないじゃないかということでありますが、大臣、その問題では決意はいかがですか。それから、具体的にどうなさいますか。
  103. 三塚博

    国務大臣三塚博君) ただいま新年来の報道を引用されましての御指摘、御質問でございます。  検査官等が銀行から接待を受けたとの種々の報道でありますが、内容については、検察当局の捜査活動に関することでございまして、現段階でコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。しかし、言うまでもなく不適切な行為があった場合には厳正に対処してまいりますことだけは強く申し上げておきます。  なお、職員の綱紀粛正につきましては、平成八年十二月に制定した大蔵省職員倫理規程の遵守を初め、その趣旨のより徹底した周知を図っておるところでございまして、さらにその実を上げますように今後も努力をしてまいります。
  104. 笠井亮

    ○笠井亮君 捜査の問題は捜査の問題ですが、大蔵省みずからの内部の問題ですからきちっと調べて、それはもうしかるべく報告もいただきたいと改めて申し上げたいと思います。  最後に伺いたいんですけれども、今回の対策対象として、破綻した金融機関受け皿機関にとどまらず一般金融機関の資本充実のために資金を注入することも盛り込まれているという問題であります。  先ほどの説明では、個別金融機関救済ではないんだ、信用秩序維持のためだということを言われましたが、しかし維持のためということで実際にやるのは、その手当てとしては個別の金融機関に手当てをするということは間違いないですね。
  105. 山口公生

    説明員山口公生君) 御指摘のとおりです。
  106. 笠井亮

    ○笠井亮君 そうしますと、どこに投入したら信用秩序維持のためになって、どこに投入したら救済のためになるのかというのは非常に難しい問題じゃないかと思うんです。  今回、厳正にということで審査のための委員会もつくると、基準もうたわれておりますけれども、これを拝見しますと、いわば極めてあいまいでどうにでも解釈できる部分があるというふうに思うんです。  結局、そういうことをやっていくと救済ということに、あるいは銀行支援ということにつながらざるを得ない。特に、信用秩序維持ということになりますと、維持のためには外国との関係もある。そういうことも含めて、システム安定化、秩序維持となれば、結果的には大銀行はすべて救わなければいかぬというところに重点的に行くということにならざるを得ないと思うんですけれども、その点ではどうでしょうか。
  107. 山口公生

    説明員山口公生君) 朝に御説明申し上げましたように、個別金融機関救済ではない、これは信用秩序維持のための措置でございますということでありますが、手法が、個別金融機関を経由するという意味ではそういった疑念が生じないように、いかに公平中立、また透明性を持って物事を決定していくかということだろうと思います。そのために審査会をつくりまして、そこでまた透明性を持った決定をしていただくということでそれを担保していきたいというふうに考えております。
  108. 笠井亮

    ○笠井亮君 公平性を持ったと、厳正にということでありますけれども、実際見ますと七人ということで、三人の民間人も内閣が任命ということでありますから、結局そういう点では基準も含めて裁量ということの範囲が相当色濃く出るのではないかというふうに見ざるを得ない問題があると思うんです。これは引き続きよく検討していきたいと思いますが、そういう問題があります。  それから、今お答えにならなかったんですけれども、実際に大銀行の問題について、これは支援をするということになるんじゃないかという点については、私自身がそういう印象を持って申し上げているだけじゃなくて、朝日新聞の一月四日付のインタビューで名古屋銀行の加藤頭取も、「地銀レベルでの優先株の購入は難しいだろう。優先株を購入して欲しいと名乗りを上げると、あそこは苦しいと見られ、市場の評価が悪くなる危険性がある。うかつに手をあげられない。優先株の購入は国際基準が適用される大手金融機関向けの自己資本増強策だと受け止めている」と名古屋銀行頭取自身が、この対策は自民党の案が出た段階だと思うんですけれども、実際にそういうことで述べているんです。実際にそういうことになってくるんじゃないかというふうに思うんですよ。その点はどうですか。
  109. 山口公生

    説明員山口公生君) 朝ほど御説明しましたところでまた繰り返しになって恐縮ですが、一つのケースは、内外の金融市場における資金調達は極めて困難で、我が国金融機能に著しい障害をもたらす、これはある意味では国家的な意味のシステミックリスク、対外的なシステミックリスク、こういうことだと思います。  もう一つ申し上げました。それは地域あるいは分野において連鎖的な破綻が大変に地域に悪い影響を及ぼすというケースも想定してございます。したがいまして、それぞれのケースでいろいろなケースがあり得ると思いますので、大銀行だけが対象ということではないと思います。
  110. 笠井亮

    ○笠井亮君 時間ですので最後に一言申し上げて終わりますが、それだけが対象になっている、公然となっていると私は言っているんじゃないんですよ。  今、この仕組みは結局そういう方向になるような仕組みになっているということを申し上げたいわけで、債務超過に陥っている銀行だけじゃなくて、経営が悪化していない銀行だとか破綻しない金融機関自己資本充実へのてこ入れのために優先株等を取得するということをつくっていきますと、これはやっぱり預金者保護という大目的から離れて、いわばあからさまに銀行の体力増強のための税金投入に道を開くということになるんじゃないか、これはそういう意味では預金保険機構の変質ということにつながるということを私は非常に重大な問題として思っているという点を申し上げたわけでありまして、この問題、大蔵省としても法案を仕上げる段階で検討されるそうですけれども、私もその中身を見ながらさらに追及をしていきたいと思います。  終わります。
  111. 山口哲夫

    山口哲夫君 総理大臣もそうでしたけれども、大蔵大臣もこれまで国費の投入というのはあくまでも預金者の保護に限るんだと、こういうことを今までずっと言い続けてきたと思いますけれども、今回は破綻しそうな銀行、また破綻銀行受け皿銀行にまで公費の投入の枠を広げた、その理由をまず簡単に説明してください。
  112. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 金融機関の相次ぐ破綻がございました。その都度、緊急記者会見で対応を発表いたし、預金者の保護について御安心をいただくべく申し上げてまいりました。同時に、経済国家、近代国家は金融国民生活の安心につながり、また産業界の血液としての働きが行われ前進をしていくもの、こういう基本を申し述べてきたところであります。  ここ大型破綻が引き続く中で、日本金融に対する内外の不信が高まってまいりました。危機的状況という状況に立ち至ったところであります。ASEAN首脳会議に出席をした橋本首相が特別減税を決定いたしましたきっかけは、まさに金融システムの安定、信用秩序維持、そのことを行うことによりアジアの通貨の安定、アジアの経済の安定につながる、こういう観点でありました。  もちろん、我が国の安定が第一であります。臨時会の後半で申し上げたとおり、破綻のない金融秩序維持というものが究極の目的ではありますけれども、そういう中で信用秩序維持を確立することにより国民各位の安心、国際社会における信頼、こういうものを築き上げてまいりますことがイコールの形で国民預貯金者の安心を得ることにつながります、こう申し上げてきたところでございます。     ―――――――――――――
  113. 石川弘

    委員長石川弘君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、西田吉宏君が委員辞任され、その補欠として谷川秀善君が選任されました。     ―――――――――――――
  114. 山口哲夫

    山口哲夫君 先ほど来の銀行局長の答弁などを聞いておりますと、何かこういう制度をつくっておかないと日本銀行システムが完全に崩壊して、それがさっきの言葉ですと国の崩壊さえ心配になってくるような、そんな答弁を前議員に対してしておりましたですよね。  確かに、都市銀行の一角である拓殖銀行が崩壊していった、山一証券も崩壊したということでは、これは私たちも相当深刻に考えなければいけないとは思うけれども、しかし、何かそれを一つの例にとって、これから大変な銀行破綻が起きるだろうというふうに答弁を聞いていると聞こえてくるわけです。私は金融不安を少し銀行当局があおり過ぎているんじゃないかなと思うわけです。  やっぱり私は、これはあくまでも預金者の保護ということに限るべきだと思うんです。それで、経営の悪いようなそういう銀行は、もう皆さん方の方でさえこれはつぶれたって仕方がないんだということを言っておったわけですから、やっぱりまず銀行同士でそういうものの救済を図るべきであって、いきなり三十兆円の公費の枠をここで決めるなんということは、これはむしろ国民に対して金融不安をあおるものだろう、そのくらい私は考えるわけです。  それで、まず預金保険機構、これは日本の場合には預金保険機構の保険料というのはそれぞれの資産の〇・○八四%というふうに聞いておりますけれども、アメリカでは大体その三倍くらいしております。〇・二七%じゃないですか、私の調べではそうですけれども。日本預金保険機構の保険料は余りにも少な過ぎますよ。それについてもっと引き上げるような努力を銀行に対してまずやるべきじゃないですか。銀行みずから全然そういう努力をしないでいきなり公費に頼るようなやり方というのは、私は国民は絶対納得できない問題だと思います。どうですか、その点。
  115. 山口公生

    説明員山口公生君) お答えを申し上げる前にちょっと。  私は別に破綻が次々起きるということを申し上げているつもりはありません。そういうことではございませんで、昨年の秋の状況を見ますと、例えば海外での資金調達で各行が非常に苦労して、はらはらしたという事態もあるということです。したがいまして、備えをしておくということが大変大切だということでありまして、破綻を私どもが予想して云々ではないことはひとつ御理解賜りたいと思います。  それから、保険料の話でございますが、当然各銀行は今七倍という高い保険料を払っております。これは当時どういう考え方で基準を決めたかといいますと、アメリカでのピークが利益に対して八%だったと思いますが、それくらいのウエートを占めておった。当時のアメリカでのピークの時点ぐらいは我が国金融機関も負担できるであろうと。中には、ある小さい金融機関においては非常にそれが経営を圧迫するといういろんな御議論もありました。しかし、ぎりぎり七倍ということにさせていただいております。また、十年度末にはこれは見直しをするということにもなっております。  今のアメリカの保険料は、かなり経済が順調にいっているということがありまして極めて低くなっております。そういう状況であることを御理解賜りたいと思います。
  116. 山口哲夫

    山口哲夫君 それじゃ正確に調べて教えてください。私の調査によると、アメリカの銀行預金保険機構に対する保険料というのは〇・二七%、日本の場合にはその三分の一の〇・○八四%というふうに私は把握をいたしておりますので、後ほどで結構ですから正確にひとつ教えていただきたい、そう思います。  とにかく、銀行は恐らく史上空前の低金利でもって大変な利益を上げていることだけは事実でありますね。調査によりますと、九年の三月期業務純益、これは全銀行で約七兆四千五百億円、これだけの純利益を上げているわけですからね。そういうことから考えたら、それぞれの銀行の今後の経営破綻というものが仮に起きる、そういう心配があるならば、まずやっぱり銀行同士が思い切ってこの保険料というものをもっともっと納入するべきだ、一々政府に頼らないでまず自分たちが努力をする、そういうことが私は今一番求められていることだろう、そういうふうに思います。  そこで、今度は金融債、これも対象にするんだそうですね。たしか前の大蔵委員会銀行局長が答弁したと思うんですけれども、金融債もこれから対象にすると。そういうふうになりますと、金融債を発行している日本長期信用銀行日本債券信用銀行、それから日本興業銀行、こういうものも当然この預金保険機構対象に今なっているんでしょうか。もし対象になっていないとするならば、こういうものも当然対象にして保険料というものをやっぱり出させるべきだと思うんです。どうでしょうか。
  117. 山口公生

    説明員山口公生君) ちょっと先ほどのお尋ねの補足をさせていただきます。  アメリカの場合はゼロから〇・二七%の幅があります。〇・二七%という先生の御指摘健全性が一番落ちるところの銀行でございます。健全性の一番高いところはゼロでございます。平均すると〇・〇〇〇九%で極めて低くなっております。  それから、今の金融債等についてのお尋ねでございますけれども、対象金融機関の中には御指摘金融機関ももちろん含まれております。預金保険法をごらんいただきますとわかりますが、本則におきまして本来対象としているものは預金、定期積金等となっております。それで、附則の方で今申し上げたことについて特別資金援助制度というのがあります。そこで金融システムの安定のために金融機関の債務についてロスカバーができるというふうになっております。したがって、結果として金融債あるいは公金預金あるいは外貨預金等もみんな保護されるということになっていると、それは特例期間の話でございますが、そういう趣旨でございます。
  118. 山口哲夫

    山口哲夫君 具体的に金融債を発行しているところは預金保険機構に入っているわけですか。
  119. 山口公生

    説明員山口公生君) 機関としては入っております。対象となっている本則の本来の預金保険の例えばペイオフをするときの一千万までという対象にはそれは入っておりません。しかし、今の金融三法によりまして、附則によって特例の期間中は金融システムの安定を確保することが極めて大事でございますので、その預金等以外の金融商品に係る金融債の債務についても、あるいは預金についてもその一千万を超える部分についても特別資金援助という形でカバーすることができますので、その関係上保護されているということが言えるということでございます。
  120. 山口哲夫

    山口哲夫君 確かに今までこの長期信用銀行預金保険料というのは極めて微々たるものですけれども、都市銀行が千四百十八億に対してこちらの方は三十八億ということですから三十分の一以下でしょうかね。物すごく少ないですね。今度は金融債すべてについて普通銀行預金と同じように対象にして保護をするというようなことになれば、このくらいのものでは済まないのではないだろうかと思うんですけれども、その点どうでしょうか。
  121. 山口公生

    説明員山口公生君) 先生の御指摘は、今の預金保険の制度そのものを全部変えて、例えば金融債を入れる、あるいはビッグとかいう信託商品も入れる、あるいは公金預金を入れる、外貨預金を入れるとかいうその制度の見直しであれば、当然そういう議論は出てくると思います。  ただ、今私が申し上げておりますのは、本来例えばペイオフするときの対象というものには入っておりませんが、特別資金援助という制度がありますので保護されるということを申し上げているわけでございます。
  122. 山口哲夫

    山口哲夫君 この問題はもう一度いずれかの機会にやらせていただくことにして、銀行自体の努力という問題についてもう一つ問題提起しておきたいと思うんです。  先ほどどなたかの答弁で銀行局長は、銀行関係はリストラはそれなりの努力をしています、約八千人ぐらいの人員削減もやっておりますと、こういうような答弁されていましたね。確かに、八千六百何がしか平成八年度だけでもやっているということに聞こえるわけですね。しかし、数字だけ聞きますと八千人からやっているじゃないかというんですけれども、全体の人件費に対してそれでは一体どのくらいのリストラになっているのか、こういう数字が出ていないわけですよ。  私は極めて簡単にやってみたんですけれども、銀行の給与というのは物すごく高いんだそうですね。平均して一人一千万円くらいで見積もってみても全銀行のこの人件費、年間三兆九千億何がしに比べるとわずかに二%程度のものしかやっていないというふうに思うわけです。だから、人件費二%くらい浮かしたことでリストラをやっていますなんという大きなことを言えるんでしょうか。
  123. 山口公生

    説明員山口公生君) 私はリストラが十分で、もうこれでいいと言っているわけではございません。もちろん、各金融機関もリストラに一生懸命になっています。私どもも一層リストラをしてもらいたいというふうに思っております。
  124. 山口哲夫

    山口哲夫君 銀行関係、特に幹部の給与は物すごく高いそうですね。あなた方の大学の同期の人でも恐らく倍くらいいただいているという話を私は聞いているわけです。実際にどのくらい本当に出しているのかということはほとんど情報を出しておりません、銀行関係は。日銀でさえ、前の大蔵委員会で給与の基準だけでも示しなさいといっても、それさえ示さないわけでしょう。ですから、民間の銀行ですからなおさら示してくれない。しかし、うわさとしてはそういう話があるわけですね、どうも事実らしいですけれども。  そうなると、これは民間銀行ですから、それはちゃんとした金利も一般預金者に払って、責任をちゃんととって経営も順調ですというのならいいですよ、そのぐらい高くたって。しかし、今度は公費を投入するわけでしょう。いわば最後国民の税金を導入するようなことだってあり得るわけですね。三十兆円という、それだけの公費を導入するという場合に、そういう莫大な給与というものをもらっていることに対して国民が納得するでしょうか。そういうことをやっぱり明らかにし、もっと徹底したリストラをやるようなことを指導していかなければいけないんじゃないですか。
  125. 山口公生

    説明員山口公生君) 昨年の十月に、私の名前で各銀行あてに非常に厳しい見方があるということを伝え、それで努力を促したところでございます。各行ともその意識は十分持っておるわけでございます。また、いかなるリストラをやっているかということをできるだけディスクローズして国民の理解を得るという努力が必要だろうというふうに思っております。
  126. 山口哲夫

    山口哲夫君 最後に申し上げておきますけれども、営業経費、全銀行で大体八兆円です。これも随分多いなと思うんですけれども、そのうちの約半分が人件費、あと四五%が物件費。これは本当にリストラをやろうとするならば、二割程度リストラをやっただけで一兆六千億円も出るわけですよ。そういうリストラをやって、そのお金を預金保険機構にきちっと積んでいく、まず銀行同士も責任を持って破綻銀行なら破綻銀行を守っていく、そして預金保護もちゃんとやっていく、その上でどうにもならなくなったときに政府が一体どうするかということであって、まだまだそこまでやりもしないうちに三十兆円の公費導入をやるということについては私は到底納得できるものではありません。  終わります。
  127. 石川弘

    委員長石川弘君) これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  128. 清水達雄

    清水達雄君 自民党の清水達雄でございます。時間もございませんので端的に御質問申し上げたいと思います。  政府・与党は、昨年末以来、緊急経済対策金融システム安定化のための緊急対策、法人税や金融、土地税制に重点を置いた税制改正、二兆円の所得税減税を含む補正予算等相当思い切った対策を講じてきていると思います。しかしながら、年が明けてみますと、株価や為替レートにこれが反映されていないという状況にあります。  私、不動産住宅関係の業界団体の年始の会に行きますと、土地・住宅税制などについては自分たちが思った以上のことをやってくれた、今後はこれを踏まえて土地の流動化等にみんなで一生懸命頑張ろうじゃないかと、リーダーはそういう発言もしております。ところが、その不動産とか住宅関係の株価は下がったままになっている、下げ続けているというふうな状況にあるわけです。  こういった状況、原因についてどういうふうに総理はお考えになっているか、そういうことについて御見解を承りたいと思います。
  129. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 我が国経済現状、これは議員が御指摘になりましたようにさまざまな問題をはらんでいると私は思います。そして、経済社会のやはり構造問題というものは私は否定できないと思います。そして、それに加えて、夏以降アジアの通貨金融不安、秋以降の我が国における金融機関経営破綻などの影響というものもございました。  こうしたことが家計にも企業に対しましても、景況感の上で極めて厳しいという印象を与えた、これが実体経済影響を与える、そういった意味で景気が、よくない足踏み状態とでも申しましょうか、本来なら上がり得る場所、それがとまってしまった、そしてその状況が続いていることが一層景況感を悪化させている、そういった状況にあるような感じがいたします。  そうした状況対応いたしますために、二兆円の特別減税を含む予算税制面措置、また金融システム安定化のための三十兆円の公的資金の活用など財政金融両面にわたるさまざまな措置を講ずることといたしました。  こうした措置を実施していくことによりまして、景気の先行きに対する不透明感というものが払拭されて、我が国経済の力強い回復に資するものと、私はそのように考えておりますし、そのためにも次期通常国会におきまして御審議をいただきます予算あるいは関連法律案、これをできるだけ早期に成立をさせていただくことがぜひ必要だと考えております。  既に市場はこうした対策を織り込んで動いておるわけでありまして、そうした点からも株価あるいは為替相場の動向というものは今後ともに十分注意深く見守ってまいりたい、そのように考えております。
  130. 清水達雄

    清水達雄君 年初来の株とか円レート動きなどがあってと思いますけれども、より一層大型の減税をやるべきではないかといったふうな要望とか意見が野党とか経済界から非常に出てきているわけでございます。  この点でございますけれども、減税によって消費拡大効果がどのくらいあるか、これは非常に大きな問題でございまして、きょう午前中、経済企画庁に私、この点について質問いたしましたら、一兆円減税をやったら三三%、つまり三千三百億円ほどの消費拡大効果があるという程度の話なんですね。  私は、減税による消費拡大効果は特に今の時点では非常に小さくなってきているというふうに思いますし、それから我が国の所得税は国際的に見て決して高くない。これはいろんなデータがたくさんありますけれども、今ここで申し上げません。ということでございますし、それから現在の財政構造から考えまして、私はこれ以上の所得税減税は行うべきではないというふうに思っておりますけれども、総理の御見解はいかがでございましょうか。
  131. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 次期の通常国会に提出させていただく予定の税制改正案では、平成十年分の所得税及び平成十年度分の個人住民税について二兆円規模の特別減税を行いますほかにも、法人課税あるいは有価証券取引税、地価税の減税など幅広い措置を講ずることとしていること、既に御承知のとおりでございます。  そして、これらは現在の我が国経済社会が当面しておりますそれぞれの課題に税制の面から十分こたえるもの、私はそう考えてまいりました。また、二兆円の特別減税は直接的には、議員からも数字を挙げて御指摘がございましたけれども、家計の可処分所得の増加を通じて消費の回復に寄与する、こうした見込みもあるわけでありますし、間接的には生産活動の活発化などを通じ、経済全体の拡大に資すると考えております。  現在、野党の皆さんから、また経済界からこれをはるかに上回る大規模な減税を求める声が出ておることは私も承知をいたしております。しかし、今、議員からも御指摘がございましたように、我が国租税負担率は欧州諸国に比べましてもかなり低い水準にございます。所得税を例にとりますなら、中低所得者層を初めとした負担軽減が行われてまいりました結果もあり、諸外国に比べて相当低い水準にあると承知をしております。こうした中で、大規模な減税、これは税負担のあり方としても大いに議論をする必要があることではないでしょうか。  同時に、いずれにいたしましても大規模な減税のためにはそのための財源が必要でございます。それぞれの御主張の方々それぞれにいろいろな財源を御工夫になっておられることとは思いますけれども、仮にこれが特例公債による大規模な減税の実施ということでありますなら、これは財政構造改革の基本を崩しかねない問題でもございますし、これを実施することにはさまざまな問題があることは御指摘のとおりだと思います。
  132. 清水達雄

    清水達雄君 金融システム安定化のための緊急対策の点でございますけれども、預金全額保護のための体制整備につきましては、私は今回の措置で十分の措置をとったというように考えております。  一方、金融危機管理勘定を設けまして、金融機関自己資本充実を図る施策につきましては、これは議論の過程におきましては、例えば貸し渋り対策をにらんでもっと幅広い金融機関対象として優先株の買い取りを行うとか、そういう考え方もあったわけでございますけれども、きょう大蔵大臣銀行局長から伺った御説明によりますと、金融危機時において金融システム安定化のためのもう限られた範囲で優先株の買い取り等を行うという仕組みになっているように思いますし、それから優先株の買い取りの決定の手続等を見ますと、非常に重い手続をとっておって、私はどうかと思うんですけれども、しかも閣議了解までやると。これはちょっと私は行き過ぎじゃないかなという気が実はしておりますけれども、そこまでのことをやるということになっております。  これは、確かに公的資金の導入、しかもストレート預金保護ではないこういった自己資本充実のための優先株の買い取りという問題について公的資金の投入論については非常な議論があった、その結果こういうことになったのではないかというふうに思うのでございますが、その点についての総理のお考えと、それから貸し渋り対策につきましては、私はこういうことをやっていくと主として公的金融機関にその重荷がかかってくるのではないかというふうにも思いますが、その点につきまして御見解を伺いたいと思います。
  133. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、今議員が述べられた論点を決して否定するものではございません。しかし同時に、やはり何と申しましても公的資金を活用させていただく、これは国民のお金を使わせていただくことでありますから、それだけの重みを持った対応というものはあってしかるべきだと思っております。  そして、今回の公的資金による自己資本充実策、これは金融システムというものが国民経済基盤を形成するものであること、そしてそれが損なわれた場合、経済にはかり知れない打撃を与える性格のもの、こうした点にかんがみて、金融危機的状況に対処するための時限的な緊急措置として、国民の財産であります公的資金を活用させていただき金融機関自己資本を充実させる、これによって金融システム安定化を図ることを目的としたものでございます。御指摘のような御議論というものは私も承知をいたしておりましたが、それだけの慎重さがあってしかるべきものであろう、そのように考えました。  また、貸し渋りという問題に対して、公的金融機関にそれだけの負担がかかるのではないか、これは私はそのとおりだと思いますし、また現在の状況の中において公的金融機関はその性格としてもその国民の需要にこたえる資金供給者としての役割を負うべきものと思います。ですから、信用補完措置も含めまして、補正と次年度予算におきまして二十五兆円という枠を用意し、民間の今までは対象としておりました中小、それを超えました中堅企業に至るまで、民間金融機関の貸し渋りによって優良な企業影響を受けないだけの対応をとってまいりたい、そのように考えた次第でございます。
  134. 清水達雄

    清水達雄君 終わります。
  135. 牛嶋正

    牛嶋正君 平成会の牛嶋でございます。  きょうは、せっかくの総理の御出席でございますので、少し長期的な視点で総理のお考えをお尋ねしたいと思っております。  それは、もう二十一世紀には少子・高齢社会が確実にやってくるわけであります。そこで、どのような経済運営を展開していけば国民の生活が守れるのかということは、これはもう今から考えても遅過ぎるぐらい緊急の課題だと思っております。  その場合に、経済運営を行っていくに当たりまして、やはり、総理もよく言われますように、財政金融というのはいわば両輪でございます。恐らくどういうふうな経済運営を行っていくかによってその両輪の形、機能、そういったものも決めなきゃいけないと思いますけれども、また財政金融システムがどのようなシステムをとるかということによっても経済運営は変わってくるのではないか、そういうことで両者は密接に関連しております。  そのことと関連いたしましてちょっとお尋ねしていきたいわけですが、住専の処理以降の政府・大蔵省がとってまいりました金融システム安定化策というのは、私から見ますとどうも後ろ向きで、そして保守的であったと。けさほどの私の質問の中では救済型というふうな呼び方をさせていただきました。現行の金融システムをできるだけ守っていく、そして個々の金融機関につきましては健全な経営状態に戻してそれを基本とする、そして預金者の不安を少しでも取り除くことに努めていく、こういったことだろうと思うのですけれども、私はこういった姿勢は少し保守的であり、後ろ向きではないかと思うんですね。  実態は刻々変化しております。金融取引もグローバル化が進んでいるわけですし、その取引内容も非常に複雑化しているわけですね。このような後ろ向きの姿勢では、金融システム安定化策を進めるといいましても、その時々に発生する問題に適切に対処できるのかということです。  どうも、今まで見ておりますと、後手後手に回っているような気がするわけです。なぜそうなったのか。私は、先ほど申しましたように、二十一世紀の我が国経済社会にふさわしい金融システムがきちっと描かれていないからだというふうに思うわけでございます。むしろ、ここをきちっと描いて、それを実現していくためにどういうふうに安定化策を進めていくか、そうでないと私は前向きの安定化策を進めることはできないのではないか、こういうふうに思っております。  そこで、総理にお尋ねしたいわけですが、二十一世紀の経済運営の基本的な方向とあわせて、財政構造改革を通して財政システムのあり方については私たちは大分理解いたしましたが、金融システムについてどうお考えになっているのか、まずそれをお聞きしたいと思います。
  136. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 大変大きなテーマから具体的な問題を提起されたわけでありますけれども、私なりに申し上げてまいりますと、今後の経済運営、これは安易に財政に依存することは許されないものになっていくであろう、またそうならなければならないと思います。なぜなら、既に言い古されたことでありますけれども、超高齢社会というものが現実のものになり、人口構造の変化という要因からだけでも大きく社会構造、経済構造は変わらざるを得ない状況にあります。そうした中から必然的に導き出されるもの、それはいたずらに財政にすべてをゆだねる経済運営というものは許されないということではないでしょうか。  同時に、金融システムの安定というものに細心の注意を払いながら、フリー、フェア、グローバルという言葉で私は申し上げてまいりましたような、国際的に通用する、しかも国民資産運用の場であり必要な資金の調達の場である市場というものが育つような、そうした金融システムというものを確立していかなければならない、私はそのような方向にあるべきだと思います。そして、そのためにも私どもはこの金融システム安定化というものに力をいたさなければなりません。  先ほど議員から住専以来の処理が後手後手ではないかという御指摘を受けました。私は、その批判はあえて受けるべき御批判、そう思います。なぜなら、確かに出た事象というものの解決に迫られている部分を持っております。その限りにおいてこれを否定はいたしません。  しかし同時に、政府自身が今日まで進めてまいりました中で、破綻を避けて安定のために努力をしてきたものが有効に働いている部分、こうした部分もあることは私はお認めをいただけると存じます。  今日、我々はさまざまな課題を抱えておりますけれども、例えば各金融機関みずからの不良債権の早期処理を進めながら、経営健全性確保するために最大限の努力を行っているわけであります。政府としても、現在検討しております今般の金融システム安定化対策を講ずることによって、預金者の保護、また金融システム安定性確保のために資する、そのような考え方で取り組んでおる次第でありまして、方向からもしお答えをするなら今のような答えになろうかと思います。
  137. 牛嶋正

    牛嶋正君 今のお答えの中で、二十一世紀の金融システムを構築していくに当たりましては国際的な市場に通用するというふうなお話がありました。それは言いかえますと、我が国金融システムもやはりグローバルスタンダードを身につけていかなきゃならないということだろうと思います。  しかし、諸外国の金融市場の構造というものと比較いたしますと、日本金融市場というのは割合特色を幾つか持っていると思うんですね。そのうちの一つは、直接金融と間接金融というふうに分けた場合に圧倒的に間接金融が大きいわけです。そして、証券と銀行の垣根が取っ払われてもその比率はほとんど変わっておりません。私は、こういう日本金融市場が持っている特色をやっぱり生かしていくべきではないかというふうに思っております。もちろん、先ほど言いましたように、グローバルスタンダードはきちっと確保していかなければなりません。  こういう日本金融機関金融市場が持っている特色をどう生かしていくのかということなんですけれども、これについて総理はどういうふうにお考えなのか、お聞きしたいと思います。
  138. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 市場の特色と議員は御指摘になりましたけれども、市場以前に国民性の問題も一つあろうと私は思います。そして、いたずらにハイリスク・ハイリターンを求めるよりも安定した資産運用を求めるというのは我が国の一つの特色ではないだろうかと。これは、議員のお言葉をそのままに拝借いたしますなら、直接金融よりも間接金融が今日まで主軸であったその資産運用の手法にも通じるものがあろうかと存じます。同時に、これは大変私自身今困ったことだと思っておりますけれども、いわゆるこの国民性というものは貸し渋りという今の現象にもつながっている部分があろうと思います。これが欧米でありましたならば、多少のリスクがあった場合、その融資対象は金利の引き上げによってカバーされ資金の提供は行われるであろうケースが我が国の場合にはむしろ貸し渋りの対象になる、こうした現象を生んでいることは否めません。  そうしたことを考えてまいりましたとき、私は、やはり今後金融システム改革が進むにつれまして、利用される方々にとっては非常に多様な金融商品あるいはサービスというものが提供されていくことになろうと思いますし、その限りにおいて私は間接金融のウエートというものは従来に比べれば相対的に低下するのではないかと思います。  しかし、その国民性等を考えましたときに、情報生産あるいはリスク管理能力を有しております間接金融の行為主体者、これはやはり間接金融というものを通じて果たす役割というものは、一般の例えば預金者の方々、あるいは市場から直接資金調達はなかなか難しいような中小の企業経営しておられる方々にとりましては、やはり変わらず有力な手段として今後ともその存在は大きいと思うんです。そして、日本国民性からいきますと、私なりに考えました場合、新たな金融商品・サービスに移行する方々よりも、従来型の間接金融というものにウエートを置く方の方がやはり多いのではないか。ただ、相対的に比率は低下するだろうと、そのように思います。
  139. 牛嶋正

    牛嶋正君 それでは、もう一問だけお尋ねさせていただきます。  私も今の総理の見解とほぼ近い見解を持っております。今の消費需要の停滞もやっぱり国民性というものをもう一度考え直す必要があると思います。ただ減税すればいいというものではないと。国民性としましては、日本人というのは非常に節約を美徳とするというこの伝統はずっと続いていると思うんですね。そういたしますと、耐久消費財などについては大事に使うという気風がだんだん、もう一度戻ってきたんじゃないか、こういうことを考えて対策を打たなきゃいけないと思います。これは景気対策の話です。  今の金融システムについて申しますと、私一つ懸念いたしますのは、先ほど総理がおっしゃいましたように、間接金融だけで多様な資金需要に対応できるのかということです。特に問題は、直接金融は長期資金で間接金融は短期資金というふうに大体の色分けがされております。そうしますと、やっぱり間接金融の中で長期の資金というものを十分に供給できるような体制をつくらなきゃいけないと。そこで私は今の財投が絡んでくると思うんですね。  ですから、私は、金融安定化策を議論するときに、二十一世紀の金融システムのあり方を議論するときに財投を抜きにできないと思います。どうも今それが横に置かれているので、本当に二十一世紀の我が国の安定した金融システムはできるのかなという、私はちょっとその点危惧を持っておりますが、この点についてもしコメントがございましたらお聞かせください。
  140. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 大変難しいお尋ねでありますけれども、私も、二十一世紀になりましても財投の役割というものは一定の役割を果たすべきものであろう、また果たすと考えます。  ただ、従来、財投についてさまざまな角度から批判が浴びせられました最大の原因、それは例えば郵貯等国民からお預かりをいたしましたお金というものが資金運用部から出ていく、その使われ方がよくわからない、こういうところから出てきた御議論が多かったように思います。また同時に、その財投の原資を調達する手法というものが国という信用を背負って集められたお金でありましただけに、これが民間金融機関との間の競争原理に反するのではないか、こうした御指摘もございました。  当然ながらそうした原資調達のあり方は将来変わっていくでありましょうし、また変わらなければなりません。そして、民間の金融市場というものをよりたくましいものにしていくためにもその努力は必要であると思います。その上で私も、議員が御指摘のように、財投というものを今後も当然ながら我々は経済財政運営の中で考えていかなければならないし、またいくべきである、そして財政投融資という資金の性格に適した国の仕事というものも今後ともに残るであろう、それにこたえるためにも財投というものの必要性を否定することはできない、そのように考えております。
  141. 久保亘

    ○久保亘君 財政再建と景気浮揚という課題は、具体的に政策化していく場合に非常に両立しにくいものであります。しかし、結果としてこれが両立するように政府はこの政策の優先性を選択しなければなりません。それはタイムリーに、しかも毅然たる意志を持ってやらなければならない問題だと私は考えております。  そういう意味で、総理の決断とされる二兆円特別減税は、これはやはり、日本経済の予想を上回る厳しい現状に照らして、政策の選択という意味でこの変更を決意せざるを得なかったものと考えております。そしてそのことは、日本経済状況が著しく好転しない限り、特別減税制度減税等を含めて平成十年度にも継続されなければならない状況にあるのかなと思っておりますが、この点に関して総理の御見解を承りたいと思います。
  142. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今、議員からは財政構造改革の政策と景気対策との優先度という視点からの御論議をいただきました。  しかし、私どもが今考えておりますこと、これは今後ともに我々は財政構造改革との整合性を図りながら経済金融情勢などを踏まえた最大限の対応を行うという姿勢、これが我々に求められているものだと思います。そして、そういった考え方のもとに財政運営を行っていくことが我々の責任ではなかろうか、そのように考えて今日まで参りました。また現在も御答弁に立っております。  そして、財政構造改革というものが、申し上げるまでもなく、よく議員御承知のとおりに、危機的な状況にあります我が国財政健全化するために、またその結果として安心して豊かな福祉社会というものを迎えるためにも、また健全で活力のある経済実現させるためにもこれが必要なものであることは議員御承知のとおりでございます。こうした状況の中におきまして、現在さまざまな課題があることは議員からも触れられたとおりでございます。  そして、今回確かに特別減税を私は決断いたしました。この二兆円規模の特別減税というものは、平成十年分の所得税及び平成十年度分の個人住民税について当面の景気対策として実施したものでございます。今回の特別減税というものが財政構造改革を進めていく上でのぎりぎりの選択であったことは御理解を賜りたいと存じますし、これが継続を必要とするような状況にならないこと、全力を挙げて景気の回復に努力していくことを私たちは目指してまいりたいと、そのように思います。
  143. 久保亘

    ○久保亘君 きょうは時間がございませんので余り細かいところまで御意見を承ることができませんけれども、また機会を得たいと思っております。  次に、為替相場の問題について現状認識を伺いたいのでありますが、大蔵省の国際金融にかかわっておられる方は、国外において、今の円の為替相場について相当異常な円安という表現を使っているのでありますが、このことに関しては政府としても同じような認識に立っておられるんでしょうか。
  144. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 年頭以来、ドルが対円、対マルクで上昇をしておるということは私も承知しておりますけれども、私は、相場の短期的な動きについてのコメントは私どもの立場として控えるべきものだと思います。  その上で申し上げたいこと、それは、余りにも短期の間の為替の上下というものは、どちらの方向に振れる場合でも決して好ましいものではございません。また、経済ファンダメンタルズを反映するといいながら、思惑等によってその市場動きが変わることは議員御承知のとおりであります。  私どもとしては、これが投機的な動きによる部分が現在の水準に影響していないことを期待いたしますけれども、いずれにせよ為替変動というものはできるだけなだらかなものでありファンダメンタルズを反映したものであることが望ましいということに答弁はとどめさせていただきたいと思います。
  145. 久保亘

    ○久保亘君 アジア各国の通貨のフリーフォールと言われる状態は、これはアメリカとの関係で見ると、当然アメリカが貿易の入超につながりやすいために保護主義の台頭を心配する、懸念している向きも多いのでありますが、そういうことを背景にしながら、これは総理としてはお答えにくい問題だと思いますが、この現在の円安状況に対して日米の間で協調介入を行うということが必要な段階に来ているという判断に立つのかどうか、もしお答えができればお聞きしたいと思います。
  146. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今申し上げられることを要約して申し上げますならば、我が国の立場、それは円相場の最近の下落懸念しておりますということが一つ申し上げられることであります。同時に、円の過度の下落は好ましくない、これも申し上げられることでありましょう。また、為替の安定を維持するために適切に行動する用意がある、これは従来から申し上げてきたことでありますけれども、この立場に何ら変わりはございません。それ以上のことは必要に応じ行動いたします、対応いたしますという言葉でとどめさせていただきたいと思います。
  147. 久保亘

    ○久保亘君 大体お述べになりたい御意思はよくわかりました。  最後に、金融の問題に関して、これも国際的な場において国際金融にかかわっておられる方の発言として、北海道拓殖銀行、山一証券など大手金融機関の倒産は例外である、マネーセンターバンクを守るのは国際的常識であるから、今後倒産はあり得ないし、日本政府としては倒産は絶対にさせないという発言があったと聞くのでありますが、これは政府の共通の見解と見てよろしゅうございますか。
  148. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私自身がそうした質問に海外で遭遇いたしましたのはバンクーバーにおけるAPECの席上、またその後行われましたクアラルンプールにおけるASEANプラス3、ASEANプラス1の場でございました。そして、私自身は拓銀、山一が経営破綻に至ったことを政府としてもまことに遺憾なことだと考えておりますと。同時に、これらの金融機関はそれぞれに経営戦略の失敗あるいは市場の評価に対する見通しの甘さ、また山一の場合には簿外債務の存在といった反社会的な行動まで含めて存在したわけでありますけれども、それぞれの個別例外的な事情によって破綻をしたもの、そう考えており、他の金融機関経営状況とは全く異なるものと認識しているという言い方をいたしました。  そして、今御指摘になりましたような政府関係者の発言というものを私は直接聞いておりませんけれども、いずれにいたしましても金融システム安定性確保するというのが政府の責務でありますし、そのための取り組みを万全のものとするために預金全額保護徹底を図る体制整備する、また金融危機時における金融機関自己資本充実を図る制度を創設する、こうしたことを現在検討いたしております。  こうした措置を講ずることによりましてシステムに対する信頼確保される、信頼確保が図られる、そのように考えております。
  149. 久保亘

    ○久保亘君 時間がございません。  今、北拓、山一は例外的倒産というお話がございました。他の金融機関に関してはそのような例外的倒産を生ずるような状況にないということであれば、一年半前に金融安定化のために新たな法律を制定させた、その上に立って考える場合に、今日三十兆円という公的資金投入のための法律改正というものがどういう事情によって必要になっているのか、その辺が大変わかりにくいと思うのであります。このことについてはまた時間のあるときにお尋ねしたいと思っております。
  150. 梶原敬義

    梶原敬義君 二つのことを申し上げて、どっちかというと私の提案をさせていただきたいと思います。  一つは、バブルで踊った人たち、あるいは踊らせた人たち、こういう人たちの責任をやはり明確にする必要があると思うんです。  今の状況というのは、ビッグバンとか何とかかんとか言っておりますけれども、金融危機状況の原因というのはバブルの後遺症そのものだと思うんです。これも一時よくなりかけたような感がしましたが、やはり去年の春先から景気がどんどん落ち込んできて、そして再び治りかけたうみがまたあちこち出だして、そしてペニシリンを打たなきゃならないような状況で今回のこの三十兆円の緊急提案になっているんだと思うんです。  私は、この正月、九州からこっちに来るときに、何としても金融だけはもう安定させなきゃいけない、そういう強い気持ちで来ました。どんなことがあってもこれ以上は金融はもうつぶさないと、例外を除いて。しかし、そのためには健全なところも、銀行やなんかも踊ったところというのは、民事や刑事の責任は追及できなくても道徳的な責任、あるいは日本でいうと大戦後に戦犯の方が追放された例がたくさん出たように、企業企業で戦犯を出すべきだ、やっぱり現職から離れるべきだ、こういうような強い決意で臨んでもらいたいというのが一つです。  そのためには、大蔵省にしてもあるいは日銀にしても、当時の人はいないかもしれないけれども、やっぱり金融検査をして、検査・監督をして銀行のバブルをとめ得なかったというここのところを十分反省して、これは我々もあるいは政治も責任があったということを国民の前に明らかにして新しい提案に我々は臨むべきだと。これはどうせやらなきゃならない問題だと思っております。それが一つでございます。  それから、もう一つは景気対策、これはやらなきやならないと思うんです。しかし、金がない、財政は悪い、こういう状況ですから一つの提案をしたいと思うんです。  私は、やっぱりこの際住宅投資を思い切って住宅金融公庫にお願いをして、住宅金融公庫を行政改革やなんかでどんどんたたくだけじゃなくて、この際やっぱり住宅金融公庫に力をつけさせて出動してもらうという、そういう施策をとってもらったらいいんじゃないかと思います。  私のずっと前から国会に来て計算しているあれから言いますと、大体五三%が住宅を新築する場合に住宅金融公庫から借りている、あとの四七%が個人の資金あるいは民間の銀行からの住宅ローン、これで大体やってきておると。  そこで、一兆円の住宅投資が行われるということになりますと、五千三百億円の住宅金融公庫の出動が必要になってくるわけです。十兆円にした場合は一つけたを上げればいいわけですからね。そのときに、大体これまでは預託金利、運用資金の金利の方が高かったんですけれども、きのう聞いたんですが、今は住宅金融公庫が貸す金利が大体三%、預託金利が二・二%、〇・八%逆ざやになっているんですよね。だから、今のところは政府一般会計からはそれは出動しなくていいわけです。  そういう状況ですから、この際三十万戸ぐらいやりますと十兆ぐらいの住宅投資ができます。そのうちの約五兆三千億ぐらいの住宅金融公庫からの出動が要るわけです。政府は一銭も要らない。だから、住宅金融公庫をもっと刺激して、宣伝もして、金利が安い今こそ東京都やなんか家のない人はマンションを買ったらいいですよと。あるいは地方では新築したり、あるいは改造したらいいですよというのをもっと宣伝をさせてやることが、これは約八百業種が住宅産業に連なっておりますから、僕は小さいことをごとごとやっている手はないと思うんです。今やるとすれば、やっぱり大きなものとしては住宅だと思うんです。  これは余り住宅金融公庫をたたかぬで、もう少し住宅金融公庫の必要性、国民は豊かな住宅生活ができるわけですから、これを今急いでやると局面が変わってくると思うんです。金融安定化の問題にしても、やっぱり景気がよくならないと安定化しないから、両方でやっていくということが大事じゃないか、この二つを申し上げて総理の見解をお聞きします。
  151. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 大きく分けて二つのお問いかけがございましたが、バブル期の地価あるいは株価、これは本当に今になって振り返ってみますと、当時、熱病のように皆が浮かされていた。なぜだったんだろう。経済的な合理性を欠いたレベルにあったんじゃないのかということはそのとおりだと私も思います。  しかしその時点において、その後の急激な価格低下というものが生じる、今、省みてみれば必然的な市場動きでありましたけれども、そうした洞察が足りなかった、これは私は御指摘を受けてやむを得ないことだと思いますし、こうした大規模であり、かつ急激な資産価格の上昇、下落といったものを我々はかつて経験をしたことがありませんでしただけに、その後の実体経済への影響等についてもその見通しが不十分であったという御指摘は甘受すべきであろうと存じます。  今、我々はその教訓を生かしながら、財政構造を変え、経済システムを変え、金融システムを変えて安定化を図ろうと努力をしているわけでありますから、当然ながらこうした事態に対する反省の上に立って努力をしているということだけはどうぞ御理解をいただきたいと思うのであります。  また、住宅につきましての御指摘、これは御指摘のとおりでありまして、先般の対策におきましても住宅金融公庫融資の拡充など各般の措置が決定されております。また、平成十年度の税制改正におきましても、居住用財産の買いかえ特例の要件緩和、あるいは居住用財産の買いかえの場合の譲渡損失の繰越控除制度の創設など所要の措置が講ぜられておることは御承知のとおりでありまして、こうした住宅取得環境の改善などが住宅投資というものにいい影響をもたらしてくれるであろうことを期待もいたしますし、その効果を注視してまいりたい、そのように考えております。
  152. 梶原敬義

    梶原敬義君 もう少し時間がありますから重ねて申し上げたいんですが、きょう日銀の総裁もお見えでした。日銀が考査をやりながら、なぜ都市銀行や市中銀行がああいうバブルにどんどんノンバンクをつくったり、あっちこっちに金を貸すのを阻止できなかったか、とめ切れなかったかと厳しく言いました。  よく私は大蔵省に言うんですが、大蔵省は検査・監督をしながらどんどん不動産やバブルを助長していくようなああいう形のやり方に対してそれはおかしいぞと、異常じゃないかと。バブル形成の時代にそれを阻止できなかった日銀の、あるいは大蔵省の体制について、やっぱりそこのところをうやむやにしていて次に行くというのはどうしても国民感情からして納得できないんだ、そこは一体なぜか、このことを抜きにしてきれいごとだけでは済まされないと、このように思います。  それからもう一つは、ぜひ住宅金融公庫をやっぱり一回呼んで、住宅金融公庫が出ていくと、明るい宣伝でもかけますと、国民はまだ需要があると思うんです。  私のところにきのう、こういうことで大蔵省の皆さんや日銀の皆さんが若い人がいっぱい来ましたから一人ずつ聞いたら、いや家はない、そんな状況じゃないとみんなは言っていました。しかし、地方へ行きますと、地方の人たちは若い人でも住宅をつくっていますよ、共稼ぎしながらっくったり何やらしていますから、やっぱりまだ相当あると思いますよ、家の欲しい人が。マンションや、あるいは地方に行きますと一戸建ての住宅が欲しい人がたくさんあると思うんです。  それを金利が変わらないんですから、今は三十万戸をやれば約十兆円、波及効果は大体二・三倍と言われておりますけれども、土地の関係を抜きにすると一・七倍ぐらいじゃないかと思うんですね。そうすると、十兆円が向こう三年以内に約十六兆ぐらいの規模になって膨らんで返ってくる、そういうことですから行革の対象でわあわあ言うんじゃなくて、住宅金融公庫の必要性というものはぜひ御理解していただいて対応すべきだと、そうすればよくなると思うんですよね。  以上です。
  153. 笠井亮

    ○笠井亮君 日本共産党の笠井亮でございます。総理に伺いたいと思います。  まず一つの問題は、政府がこれまで金融機関破綻処理は原則として金融システム内の負担により対応すべきものであり、信用組合以外の金融機関については全体として不良債権額に対して十分な償却財源があること等から政府保証等特別な制度を用意する必要はないというふうに答弁されてきました。また、総理御自身も金融機関破綻処理金融システム内の負担により賄われることが原則というふうに言明されてきたと思うわけでございます。  ところが、今回、政府対策案を伺いますと、破綻処理の問題を含めて総額三十兆円という形で巨大な規模の財政資金、そして税金投入に道を開くような仕組みをつくるということであると思うわけでありますが、これは明らかに従来公約されてきたことから見て違反するものではないかというふうに思うんですけれども、まずこの点で総理御自身がはっきりお認めをいただくべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  154. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 平成八年六月に成立をいたしましたいわゆる金融三法、当時信用組合の大規模な破綻が相次いで発生しておりましたことから、預金保険機構信用組合特別勘定における借り入れに限って政府保証を措置いたしました。これは議員の御指摘のとおりであります。  その後、一般金融機関におきましても大規模な破綻が相次いで発生しましたことなどから金融システムの安定に対して内外の信頼が大きく揺らぎました。そして、信用秩序経済に重要な影響懸念されている状況でございます。  こうした状況のもとで、預金全額保護徹底を図るなど金融システム安定化を図るために預金保険機構に対し必要に応じ現金化できる十兆円の国債を交付いたしますとともに、預金全額保護を図るための特別の勘定及び優先株等引き受けを行うための新たな勘定においてそれぞれ十兆円の政府保証枠を設定し、合わせて三十兆円の公的資金を活用できるように措置いたしました。現時点において必要な措置と考え、これを世に問うております。
  155. 笠井亮

    ○笠井亮君 あのときと違って、その後の状況があって現時点において必要な措置ということなんですけれども、今おっしゃったことで公約との関係でいいますと、当時も不良債権額に対して十分な償却の財源があるということから政府保証等はやらないと言っていたわけでありまして、その後の状況を見ましても、じゃ、その償却財源は体力はどうかと。これはあると思うんですよ。  公式には政府御自身も、それから全銀協の会長も日銀総裁も不良債権の処理の山は越えたということを言われているわけであります。そういう状況なのに、じゃ今までの公約と違ってなぜ投入かということになるわけでありまして、これは私明らかに公約とはたがう公約違反だということは明確だと思うわけでございます。私は、不良債権を生み出した責任がどこにあるのかそれを明確にして、そこにきちっと負担を求めてこそ解決の道が見えてくるということを強く申し上げたいし、それが本道だというふうに思うわけでございます。  その点で次の問題を伺っておきたいんですけれども、自民党の関係者の一部の方の中には、こういう今回の相次ぐ破綻とその後の事態という問題について国民にも責任があるかのごとく言われている方もおりますけれども、私はこれはとんでもないことだと思うんですね。  総理は国民にも責任の一端があるなどという認識はよもやお持ちではない、そのように理解してよろしいですね。
  156. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私、そのような言葉を使った記憶はございません。
  157. 笠井亮

    ○笠井亮君 総理がおっしゃったということじゃなくて別の関係者ということで申し上げたんですが、しかしそのような言葉を使ったことはないとおっしゃるということは国民に責任があるとは思っていらっしゃらないということで理解をしたいと思うんです。国民に責任があるとは当然言えない性格の問題だと思うんです。ところが、今回はそういう意味では責任のないいわば罪なき国民に負担を負わせる道をとろうとするというわけでございまして、こういうことがどうして許されるのかという問題がやはり私は厳しく問われなければいけないというふうに思うわけであります。  私、もう一つ伺っておきたいんですけれども、このように罪なき国民に負担を負わせようとするという問題が出される一方で、一連の金融破綻等内外の不信を呼んだ本当の責任が全く追及されていないんじゃないかと。私はこれは大問題じゃないかというふうに思うわけであります。  我が党は、この問題でいいますと、今度の通常国会で金融問題に関連して新井将敬議員の証人喚問を要求して、金融界との癒着による国会議員の不当な利益供与、この問題の真相を国会で徹底的に解明することを求めていくという立場でございます。  大体、あの問題でありますけれども、大蔵省出身で証券会社から利益供与などを受けながら自民党の金融システム安定化の小委員会の事務局長をやられて、今回の三十兆円の仕組みのレールを敷く役割、仕事を果たされた。私は、こういう話になりますと国民には到底受け入れられない話じゃないかというふうに思うわけであります。総理として、また自民党総裁として、こういう点をあいまいにしたまま三十兆円の仕組みをつくるなどと言っても、私は国民は到底納得しないというふうに思うわけでございます。  この際、このような金融安定化対策の提出は取りやめて、新井将敬議員の個人の問題ももちろんですけれども、政官界と金融界との癒着にメスを入れて、金融機関の乱脈経営の責任、大蔵省の指導監督責任など、今日の金融問題の責任を国民の前に徹底的に明らかにすることこそ先決ではないかと私は思うんですけれども、総理大臣、その点での認識対応についてはいかがでしょうか。
  158. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、先ほど来、他の委員の御質問に対しましても、バブルの生成、崩壊に至るプロセスの中で、資産価格の急激かっ大幅な変動というものが国民経済に与える影響について的確にして十分な認識を持ち得なかったのではないかという点について責任を回避できるものではないと思うということを申し上げました。  同時に、あえてつけ加えさせていただきますなら、八〇年代以降、金融機関の中には業容の拡大あるいは収益至上主義の経営姿勢の中でリスク管理に対する十分な体制整備がないままに安易な融資に応じた、そうした面があったことも否定できないと思いますし、また我が国金融機関経営実態が明らかではないという御指摘があることも事実でありますし、また当局として業界との相互信頼に基づいたきめの細かい行政姿勢というものを目指していたものがともすれば不透明という御批判があったことも承知をいたしております。  こうした反省の上に立って、今我々はさまざまな施策を持ってシステムの安定に資そうとしておるわけでございますが、私は議員の御質問が金融システム安定化を図ることがけしからぬとおっしゃっているのではないと思います。金融システム安定化を図る必要性はお認めをいただいた上で議員としてのお立場からの御意見を賜ったもの、そのように受けとめておりますし、私どもは金融システム安定性と内外からの信頼確保していくこと、これは現下の政府に課せられた極めて重要な責務だと考えておりますし、その具体化、法制化について今鋭意努力を進めている最中でございます。  こうした努力の結果として、我が国金融システムが安定し、国民のみならず、内外と先ほども申し上げましたが、内外の信頼が回復され、確保されることを心から願っております。
  159. 笠井亮

    ○笠井亮君 金融システム安定化とか、あるいは信頼を回復する、こういうことをやるためのやるべきことが違うということを私は申し上げているわけでありまして、これまでいろいろな問題があったということの一般的な反省じゃなくて、例えば新井将敬議員の問題、それから、先ほども大蔵大臣に伺ったんですが、大蔵省の検査・監督の問題、具体的に大変な問題が明らかになっていくわけでありますが、そういうことを含めて一つ一つきちっと対処するということをやらない限り、信頼が高まるどころかますます不信が高まるんだ、それをやらずに三十兆円の仕組みをつくる、こういうことでは全く本末転倒だということを申し上げているわけでございまして、その点については通常国会の中でもさらにいろんな点で伺っていきたいと思います。  終わります。
  160. 山口哲夫

    山口哲夫君 第一問はたまたま前議員が全く同じ質問をされましたので省略をいたします。  ただ、一言申し上げておきたいことは、やっぱり現時点においては預金者保護に徹すべきであって、破綻しそうな金融機関にまで手を広げる、しかも三十兆円の枠を決めるということは私はこれは納得できない。その前にまず金融機関自体が一生懸命に努力をするときであって、それがまことに今のところは不十分である。そういうことをまず行って、その上で公費の導入の問題を議論するべきであって、現時点においてはその必要性はない、こういう意見だけを申し上げておきたいと思います。  そこで、次の質問ですけれども、経営者の責任問題についてお尋ねをしたいと思います。  けさほど大蔵大臣から要旨の説明がございました。この中にも公的資金の活用の前提として金融機関自身がまずリストラを徹底させなさい、そして金融機関経営者責任が厳しく問われることは言をまたないというふうにもおっしゃっておりました。  前官房長官の梶山さんが新聞の対談でこんなことを言っております。金融機関経営責任の明確化などがうやむやになっているのではないかという質問に対して、私もそう思う、やはり経営責任をどうするのか決めなくてはならないとおっしゃっておりました。  元副総裁の後藤田さんがこう言っております。「将来国民の負担になるかもしれない資金を投入する以上、対象金融機関経営責任は厳しく問われなければならない。このままでは「ばかにするな」というのが国民の声だろう。」、全く我々の言いたいことをそのままおっしゃっておりました。  これほどやはり経営責任が問われているのに日本金融機関経営者は一体何をしているんだろうか。それを象徴するのが私はどうも山一証券の行平会長の言葉でないかなというふうに思います。  行平会長は、昨年の参考人として出られたときにこんなことをおっしゃっております。飛ばしをやったけれども、それは先代の会長の、社長だったですかね、の指示に従ってやったんだということで、まるで御自身の責任というものは痛感されていないというふうに私どもはあの参考人の発言を聞いて受け取りました。その証拠に、莫大な退職金をもらっておやめになって大変優雅な生活をしているとさえ言われているわけです。どうもこういう日本金融機関の責任者、これではやっぱり国民が納得できないだろうと思うんです。  しかし、一方、アメリカの金融機関はどうかといえば、金融機関破綻したときにはまず経営者は私財をなげうってでも預金者の保護に当たっているという、そういうことが随分言われているわけですね。これほどまでにアメリカの責任者と日本経営責任者との違いがあるのだろうかということを考えたときに、私どもはやはり徹底した金融機関経営者の責任というものを明らかにしない限り公費の投入などということはもうとんでもないことだ、それこそ後藤田さんじゃないけれども国民をばかにするなということさえ言いたいわけでありますけれども、総理大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  161. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今、議員から御指摘がございましたので金融システム安定化のための緊急対策につきまして大蔵大臣説明されました要旨そのものに目を通しております。そして、「こうした公的資金の活用の前提として、金融機関自身による責任ある経営体制整備やリストラの徹底破綻した金融機関経営者責任が厳しく問われることは言を俟たぬところ」、今、引用されましたようなことを大臣から御説明されたと聞きました。これらの点は私も同様だと思いますし、気持ちの上で私は議員が仰せられた気持ち、同じような気持ちを持っておると私ども自身思います。その上で、法治国の日本として法律上できることできないこと、その境があることはまた事実であります。  そして、当然ながら私は刑事、民事両面において、御指摘になりましたようなそれぞれのケースについての捜査あるいは調査は行われていると承知をいたしますし、また行われていくでありましょう。その結果、法に照らすものがあれば照らして厳正な処分を行うことは当然でありますけれども、法律にないルールで政府が責任を問うということには私は限界があると思いますし、同時に気分的に、私は御指摘のような気分は、同じような思いを持っておるつもりでありますけれども、法治国である日本が法を超えて政府が行動することをよしとすることはできない、そのように思います。
  162. 山口哲夫

    山口哲夫君 私がこういうことを言いますと、実はこれは新聞に載っておりましたけれども、経団連の某幹部がそんなことを言う者は精神論にすぎないのだと。まるで我々が、今、国民の声を代弁してそう言っているんですけれども、単に精神論だけで片づけようとする、そう言う経団連の幹部もいらっしゃるということに実は驚きを持っているわけです。  だから、やはり法律的には確かに難しいところがあるでしょう。同じような問題を起こしたときに、アメリカの金融機関の責任者はそれこそ牢屋に入れられる、一千人も入れられていると、同じような問題を起こした場合ですよ、そういうことを考えたら、日本の刑法というのは非常に薄い、軽いということは言えると思うんです。  しかし、やっぱり問題は、そういうものは別の問題といたしましても、確かに法律的にどうこうとは言えないにいたしましても、少なくとも公費を導入される人たちが、そういう精神的な面での反省というかそういうものを一つも持たないで、みずからの責任も回避をする、リストラも満足にやらない、そんなことで国民が納得できるはずがないということを私どもはもっと強調していきたいし、できればやっぱり大蔵省は指導機関なんですから、銀行に対してそういう国民の声があるんだということをもっと厳しく銀行の人たちに対しても主張し、指導していただきたいものだというふうに考えます。  そのことについてお聞きしたいことと、もう一つは、あわせて行政責任を一体どうするかという問題です。  梶山前官房長官も経営責任と同時に行政責任もきちっとしなければならないということをおっしゃっておりました。このことは今までも随分方々から言われてきたことであります。やはり、何だかんだ言いましても、これまでの護送船団方式というものが結果としてこういうものをつくり上げてきた、そういうことを考えたときに、やっぱり行政の責任というものは免れないと思うわけです。そのときはこれがいいんだと思ったかもしれないけれども、結果としてこういうふうになってしまったということになれば、当然その責任というものは行政上も負っていかなければならないだろうと思うんです。そのくらいの厳しさを持たなければ国民が、政府がどういう方針を出そうとしても、やっぱり納得することにはならないだろうと思います。  そういう点で、多くの方々が言っているように、まずそういう問題を論ずる前に、行政並びに経営者の責任を明らかにするべきであるということを言っているわけでございますので、今申し上げた問題について、二つの点についてお答えいただきたいと思います。
  163. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 大蔵大臣の御説明を補足いたしました銀行局長説明の中に、優先株等引き受けを申請する金融機関についての部分の中に、「経営健全性確保のための計画を審査機関に提出しなければならないこととし、審査機関はこれを適当と認める場合でなければ議決を行えないもの」とするという文言が入っております。言いかえれば、今日までの法制の中にこうしたものが含まれておりませんでした。  そして、今回、このシステム安定化のための施策の中で、こうした文言を取り込んでおるわけでありますけれども、これも優先株等引き受けを申請する金融機関についてということでありまして、全般を律するものにはなっておりません。そういう意味では、私は、情報の開示といった努力を含めまして、金融機関にはなお努力を求めなければならない部分が多く存在すると思います。これは、ちょうど私が参りましたときに議員が御意見を述べておられました金融機関における役員給与のあり方等々についても同様でありましょう。また、リストラの努力についても同様のことが言えようかと存じます。  それだけに、少なくともこのシステム安定化のための緊急施策の中で、これに該当いたしますものについて、そうしたルールづくりをしようとしております私どもの気持ちをぜひお酌み取りいただき、お支えをいただきたいと存じますし、こうしたルールが普遍化するなら、それはまた私はそれなりの望ましいものという世間の受けとめもあろうかと思います。  同時に、行政の責任ということを強調されました。私自身、大蔵大臣在任中に証券・金融不祥事が発生し、その責任をとって証取法の改正が終わりました段階で辞任をさせていただきましたけれども、私は政治家としての責任のとり方、行政としての責任のとり方、さまざまなものがあろうかと存じます。そして、議員が行政としての責任を求められるそのお気持ちは同様と申し上げました上で、私は、行政としては、過去の反省に立ってよりよい施策を実行し、それを進めていく責任を負う、また過去の反省の中から将来に対する教訓を仕組みとしてきちんと担保していく、こうした努力を当然ながら払ってくれるものと、そのように考えております。
  164. 石川弘

    委員長石川弘君) 以上で内閣総理大臣に対する質疑は終了いたします。  橋本内閣総理大臣及び三塚大蔵大臣は退席されて結構でございます。  引き続き、委員間の自由討議を行います。  討議の方法でございますが、発言の希望のある方は挙手をしていただき、私の指名を待って発言をしていただきます。  また、より多くの委員の発言の機会を確保するため、一回の発言時間は五分以内にお願いをいたします。なお、発言は着席のままで結構でございます。  また、本日は大蔵省及び日本銀行当局の出席も求めておりますので、各発言者は自由討議に必要な範囲内で政府側の説明、意見の聴取を求めていただいて結構でございます。  また、自由討議の終了時間は午後五時を予定しております。  それでは、発言の希望のある方は挙手を願います。
  165. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 まず皮切りということでやらさせていただきますが、いずれにしても大蔵委員会におけるフリートーキングというのは初めてでございます。初めてであるばかりじゃなくて、大蔵委員会そのものが改組になるものですから、これが最後ということであろうかと思います。  それで、ほかの委員会ではフリートーキングというのを幾つかやっておりまして、スムーズに運営されていたというぐあいに思いますけれども、当委員会は非常にかたい議題が中心でございますので、さてどのようにフリートークができるのかな、ぜひ成功していただきたいなと。これが成功していただければ、今後ともまだ委員会は名称が変わりましてもあるわけでございますから、なるべく率直な意見を述べていきたいというぐあいに考えております。  そこで、きょうの委員会議題は大きく分けて金融政策の話と経済対策の話と二つあったように思いますが、私は主として金融対策の話を自分の主張として申し上げたいというぐあいに思っております。  まず第一に、けさほど大蔵大臣銀行局長の補足説明を含めまして今後の金融対策についての説明がございました。その中で、実は二つに分かれているように思いますけれども、一つは二〇〇一年までの間に従来の信用組合のみならず全銀行に関して十兆円の金額を投入して金融政策の安定を図ろうという御提案であったわけです。私は、これはいろいろ御議論がこれから出ると思いますけれども、現在の金融不安について、特に株式関係市場関係で取りざたされているいろんな問題の禍根、根源を絶つ政策として十分であろうというぐあいに思っております。  それからもう一つの問題としては、優先株、それから劣後債、劣後ローン等についての出資を三兆円、そして政府保証十兆円という格好でやられていますが、これについては今までやったことのない政策でございます。  最初の方の保険機構そのものの業務の拡大ということはそれなりに意味があるし、我々も若干なれているわけですが、この優先株及び劣後債、劣後ローンの運用は初めて出てきたわけですが、前例としてはアメリカにおけるRFCのようなこともございます。それに比べるとこれは非常に少ない範囲、さっき我が方の委員からも強過ぎるんじゃないかというような話がありましたが、私は、本来ならば、RFCの前例を見ますと、もう少し本当は拡張してもいいんじゃないか、金融システムの安定ということで網がかかっているわけですからそれなりの行動を起こしてもいいんじゃないかというぐあいに思っております。いずれにしても、初めてのことでございますので、現時点においてこのような政策を打ち出すということは適当かなというぐあいに思っているところでございます。  それから、さらに申し上げますと、さっき牛嶋委員がリストラ型かというぐあいに言われましたけれども、いずれにしろ前向きという意味だと思いますが、その前向きな施策としてはこの政策がある程度役に立つのではないかと。ただ、懸念されるのは、これが回収されるかどうかというところに問題点はあるように思いますが、それについての知恵をどういうぐあいに働かさすのかというのはこれからの問題ではないかと。いずれにしても、このような政策で我が国金融システム安定化が図られたらそれにこしたことはないと。  さらに申し上げますと、今、問題点は、金融システムが安定するかどうかで日本の国の経済の行く末が決まってくると極言してもいいのではないかというぐあいに思っておりまして、この際妥当な政策であるというぐあいに思っていますが、いかがなものでしょうか。  以上で終わります。
  166. 石川弘

    委員長石川弘君) 今の御発言、別に反論とか何とかという必要はないんですが、きょうずっと皆さんの御意見を聞いても、明らかに預金者保護の話のところは度合いの問題で差はあっても余りそう大きく開きはなかったんですが、今のもう一つ新たにつけ加える部分のところは、例えば大前提として必要であり、なおかつその運用自身もより弾力的にとおっしゃる御主張とそうでない御主張はかなり差があったように聞こえておりますので、その辺で今の楢崎委員の発言と違う、違うということはわざわざ必要ないですが、お立場の方、どうぞ。
  167. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 楢崎さんの提起されている問題で、非常に裁量型になってしまったらまずいなと思うんです。つまり、たしか七名の委員でやる機関がございますね、その優先株をこれには投入しようとか、投入しないと。そのときに裁量型でなくてルール型にしておかないと、要するになぜそうなったのかと。もちろん後で議事録は出ますよとか透明性はありますよということになっても、私自身はやはりある程度事前に、いわゆる個別金融機関の不良債権のある意味では事実上持っている担保、不良債権を持っているやつを切り離していく、そしてそれはもう損切りをしていくと。  それが終わってみて、自己資本というものが非常に劣化してしまった、しかしこれは優良債権を持っているんだから優良債権に対応して、ある程度のところまでは資本を充実させないとまずいなというふうに持っていかないと、何だかまだよくわからない、自分たちは債権を持ってやっているけれども何だかよさそうだとか、何だかこの企業には資本を注入すればもっとよくなりそうだとか、ある意味ではそういう裁量的なものにならないような手順、仕組みというものをしっかりさせないと私はやはり非常にまずいなというふうに思っているものですから、先ほどのちょっと質問と大体ダブってしまいますけれども、そう思っているんです。
  168. 牛嶋正

    牛嶋正君 私も峰崎さんにかなり近いんですけれども、公的資金を導入するとき私は三つの前提を考えております。  その一つは、やっぱり公的資金を使うわけですからきちっと根拠が明確であるということ、これが第一だと思うんです。  第二番目は、公的資金配分の公正なルールを確立する、そしてそのルールに従って配分を行っていくということです。この場合、私が公正なルールというのをどういうふうに考えているかといいますと、ここではできるだけ市場原理を考えるべきではないかと。すなわち、この資金をこの銀行自己資本比率を高めるためにこれだけ費やす、その場合にこの銀行が立ち直るだろうと。しかし、もしつぎ込まなければつぶれる、その場合にどれだけのコストがかかるのか、いわゆるコスト計算をきちっとして、そして使われる公的金融が非常に有効に使われるように決めていく。これは結局市場メカニズムをそこに導入するわけでございますから、公正なルールという場合はただ非常に不透明な、あるいは裁量的なものを排除するというだけじゃなくて市場原理、そしてその市場原厘に基づくコスト比較と申しますかコスト計算、コストテストというものがきちっとやられるということが必要ではないかと思います。  三番目の前提は、やはりモラルハザードを完全に封じ込める基準をきちっとつくっておくということではないか、こういうふうに思っております。  これらの前提を満たしていくために何が必要かというと、やっぱり情報開示だと思うんですよ。それはきちっと情報開示されなければ、こういったルールの適用に当たりましても、幾らルールを公正にしてもやっぱりそれは運用されるときには裁量性が入るだろうというふうに思います。  私は、情報開示をきちっとやるための提案をさせていただきたいんですけれども、それは銀行経営に関しまして五つのランクを私提案しようとしているんです。第一のランクは、健全な経営が行われており、破綻の心配は全くない銀行であります。第二のランクは、改善すべき点が若干ありますけれども、努力すれば健全な経営に向かうことができるというふうなグループです。ランク三は、改善すべき点がかなりあり、状況によっては経営悪化に向かうおそれも多分にあるというランクです。ランク四は、既に経営悪化に陥っておりますけれども、思い切った手を打ては破綻を免れることができる、もし打たなければ破綻に向かうだるりと。ランク五は、もう既に破綻に近い状態でありまして、どんな手を打ってもだめだというふうなものです。  このランクづけですけれども、先ほどもちょっと質問のときも申しましたけれども、幾つかの指標を組み合わせてこのランクをきちっと区分していくということであります。それで、公的資金の導入を行う場合に対象になりますのは、今私が申しましたランク四なんですね。ランク五は、もうこれはつぶすべきだと私は思っております。ランク四は、先ほど申しましたように、コスト計算をしなければなりませんけれども、その前に銀行の方から再建計画みたいなものをきちっと出させましてそれを十分に審査し、そしてその計画についてはある程度手直しも要求していくというふうなことに基づいて公的資金の導入を図っていくというふうに、情報というものを開示しながら、不透明さをできるだけ排除しながら、そして市場原理に基づくルールづくりをしていくと。そうでないと、公的資金の導入に当たりまして国民の御理解は、先ほどから御議論ありますけれども、私はなかなか難しいんではないかと。  私は、資金をどれだけ積むかという話よりもその資金をどう使っていけば最も公的資金を有効に生かせるのか、言いかえますと、それによって金融システム安定化がどれだけ進むのかというふうなことでコスト計算をしていかなければならない、こんなふうに思っております。
  169. 石川弘

    委員長石川弘君) 似たような感じで、今の話を伺っておると、例の不良債権だけの話じゃなくて金融機関自身優先株の問題等についてもいろんな条件が整えばノーとはおっしゃらぬとも聞こえるわけで、ですからその辺のところをだんだん詰めていけば案外論議は詰まってくるので、そういう観点から、それもいかぬというお話があればまた別なんですけれども、いかがですか。
  170. 松浦孝治

    ○松浦孝治君 牛嶋先生、確かに銀行のそれぞれのランクづけによってそういう中で公的な資金の導入をきちっとした基準によってやるべきで、そうすればうまくいくんじゃないか、こういう御意見なんですが、日本銀行の実態を見ますと、大手、シティーバンクについてもいろいろな形がありますが、地方の銀行になりますと多種多様でありまして、その中で果たして、例えば不良債権の格付、それがどのような形でできるかということになると非常に難しいと思うんですね。  例えばAという銀行がAという企業に五億円の与信をしている、従来もずっとやってきた、それには従来は不動産担保を入れておる。しかし、担保下落によって今担保割れしてしまって、しかし債権は、融資残高はずっとそれが続いておる。そういうようなのもあるし、あるいはまたベンチャー企業の場合には、将来に向かっての確たるなにがないけれども、地方の銀行としてはそれに融資を続けておる。  例えば私の地元でもそういうことで今相談もあるんですが、三年間研究をして、ベンチャー企業と指定してやってきたけれどもなかなか製品化しない。しかし、融資残高としては残ってしまっている。こういう形の中で、融資残高をどう評価して、これは不良債権なのかあるいは正常債権なのかという認定のもとにいろいろな経営内容をランクづけしていくということになると、非常に難しいことがあらわれるわけですね。  したがって、そういう点について、先生が今言われるような大まかな基準というのはそれぞれの指標を使ってできるかもわからぬけれども、しかし日本銀行は、先ほど先生も言われたように、ほとんどが、特に地方の場合は間接金融ですね。したがって、そういう形の中で銀行経営体質、経営健全性というのをどのように評価するかというのはかなり難しいんじゃないかという気がするんですが、そういう点は先生はどういうふうにお考えになっておられますか。
  171. 牛嶋正

    牛嶋正君 今申しましたように、ランクづけというのは非常に大ざっぱでいいと思うんですね。そして、私はランク四に分類するのがポイントだと思っておりますが、今おっしゃいましたように、それは一つの指標ではそこに入るのか入らないのかというようないろんな問題が出てまいりますけれども、複数でうまく組み合わせますと割合大ざっぱなつかみ方ができるんじゃないかと。  その上で、今回のあれもそうなっておりますけれども、銀行自身がつくる再建計画、それに基づいてコスト計算をしていく、こういうことです。もしその再建計画に従いましてこれだけの公的資金を導入するならば、それは破綻しなくていい。破綻したときには、その融資先でありますところの地域経済に与える影響はこれこれだと、こういうふうなきちっとした計算をして判定をしていくべきだと、こんなふうに思っております。
  172. 松浦孝治

    ○松浦孝治君 ちょっとそれに関連して、きょう貸し渋りの論議がいろいろございました。そうした中で早期是正措置というお話も先ほどありまして、それを緩和したといういろんな中に含まれているわけですが、やはり貸し渋りの大きな原因はその早期是正措置、自己査定をやりなさい、そして公認会計士等の監査法人もそれに加わって今各銀行は自己査定をやっているわけですね。  それについては、先ほど横並びとかそういうお話がありましたけれども、自分のところはやっぱりきちっとしたできるだけ厳しい自己査定をしょうという動きが地方の銀行の状態を見ていましても出てきていまして、そのために、先ほど言ったような担保割れしているところは償還を一たんやるともう貸さない、そういう実態が出てきておるわけでございます。そういう点についての早期是正措置も問題点として我々は考えないと、地方の正常な企業経営活動に対する血液を入れていけないんじゃないかというような、そういう現実がある点を私も非常に危惧しているんですが、そういう中でランクづけをやるとなかなか大変だなという気がしますので、私の意見としてちょっと申させていただきました。
  173. 広中和歌子

    広中和歌子君 一月七日の朝日新聞の夕刊であったわけでございますけれども、榊原大蔵財務官がイギリスの金融関係者にもう大手銀行破綻はないという発言をなさったということが報道されております。  大手銀行を守るのは国際的な常識だと述べ、破綻がこれ以上ないという考えを強調なさったらしいんですが、この真意というのはどういうものなのか、山日銀行局長にちょっとお伺いしたいと思います。新聞に出ておりましたので、多分その発言の背後というんでしょうか、バックグラウンドは十分に御存じだろうと思います。
  174. 山口公生

    説明員山口公生君) 私、直接聞いておりませんので真偽はちょっと確かめがたいのでございますが、恐らくそういったやりとりがあったとすれば、外国がどういうところに一番日本金融について関心を持っているかといいますと、やっぱりビッグバンクスといいましょうか、マネーセンターバンクスといいましょうか、今で言うと十八行になりますか、日債銀はもう国内基準になっていますから十八行についてだと思うんですね。あとはほとんど関心がないんじゃないかと。  そういうところがもしデフォルトを起こしたら、赤字であろうが黒字であろうが何であれ、ストップしますとデフォルトになるわけですね。そうすると、そこに大量の資金を貸しているのが瞬時にして焦げついてしまうわけです。後で回収することはそれは可能かもしれませんが、それが一番怖いんです。つまり、ベアリングズ社事件のときに、あるいはBCCI事件のときに日本がちょっと震え上がったときがありました。ちょうどあれと逆の現象が起きるわけですね。彼らの関心は一番そこにあるわけです。そうすると、つぶれるんですか、つぶれないんですか、それだけ答えてくださいというのが正直なところの気持ちだと思うんです。  それについて拓銀とか山一というのはかなりこれは前々から問題があったし、先ほど御答弁を大臣からおやりになったように、特別とは言い切れないかもしれませんが、いろいろそういう事情があってそういった事態だったんです。  それに比べると、今どうこうという、現時点においてそういった問題はないというふうに御理解をぜひしてもらわないと、いつまでも日本銀行全体が山一あるいは拓銀みたいな状況にもうなっている、今、牛嶋先生がおっしゃった分類で言うと五になっているというような、あるいは四になっているというような感じで受け取られると困るなというような雰囲気の中でいろいろやりとりがあったのではないかという感じはいたします。
  175. 広中和歌子

    広中和歌子君 外向けのスポークスマンとしてのこの発言というのは、銀行局長が今おっしゃられたように、非常に重要な意味を持っているだろうと思いますが、その後で榊原財務官は「北海道拓殖銀行や山一証券は例外だ。外国資本を含め、買収や合併は歓迎するが、これ以上の破たんはない」というふうにおっしゃっているんです。  「買収や合併は歓迎する」という言葉なんですけれども、これは行政指導を意味するんでしょうか。例えば山一とか拓殖の場合も合併とか何かいろいろな努力がされた上で、行政指導があったかなかったか知りませんけれども、多分なかったんでしょう、倒れたわけですけれども、だから今後はつまり方針をお変えになるということなんでしょうか。
  176. 山口公生

    説明員山口公生君) これも私は確認しておりませんので本当にそういう発言があったかどうかは存じませんけれども、少なくとも私どもの行政におきまして、合併等について行政指導ですべてやるというものではないと思います。これは外資系の買収あるいは合併であれ、国内銀行同士の合併であれ、あるいは買収であれ、これは当事者の意向でありまして、現に私が銀行局長を務めさせていただいてからは、あなたとあなたはぜひ一緒になりなさいというようなことを私の方から言った覚えはほとんどありません。  ただ、一つ申し上げたいのは、この間の特定合併のような受け皿銀行の問題があって、政府としてどうしてもこうやった方がいいのではないか、地域のためにということはもちろん法律を改正してお願いしたわけでございますけれども、普通に健全にやっているところについて、行政指導としてこういう再編を強制させるという意味ではありません。しかし、例えばある銀行とある銀行が将来の展望を開くためにそういう合併話を進めている、仮にそういうことがあるとすれば、それはいい方向であれば私どもとしてはいろいろ支援をしてあげるということは必要だと思います。  じゃ、どんな支援かというと、何も権力を使っての支援ではありません。いろいろ海外の情報あるいは国内の情報ということがあると思います。その場合に、特に外国との関係からいいますと、外国は日本についての情報が、十分にある面もありますが、やや足りない面もある。しかも外国の金融機関は、当局がどう考えているか、これは日銀も含めまして当局がどう考えているかということを一番気にしている。これはやや誤解もあると思うんですけれども、一番気にしている部分でもあります。そういったものに適切にやはりこちらのインフォメーションを与えてあげるということは可能だと思います。したがって、積極的に進めるとか、あるいはそれを阻止するとか、行政的にそれを変えていくという考え方は少なくとも現時点においてはないというふうにお考えをいただきたいと思います。
  177. 広中和歌子

    広中和歌子君 どうもありがとうございました。
  178. 石川弘

    委員長石川弘君) 笠井先生、山口先生、私さっきちょっと御発言いただきたいと思ったのは、預金者保護のところは余り御異議がない話なのでその次のところの自己資本充実策のところで、しかもこれも大体皆さん方のお話の中でも破綻処理受け皿機関の話は、これがまずいというお話よりも、どちらかというと健全な金融機関で、その影響が他に及んでどうこうというところに専ら焦点があるように聞こえたんですよ。  それからもう一つは、はっきりこれはまだだめというお話を承ったような気がしないので、順番が違うんじゃないか、より先にやるべきことがあるんじゃないかというふうに聞こえたんですが、そのあたりのところで今の皆さんの御意見と違う部分がございましたらどうぞ。
  179. 笠井亮

    ○笠井亮君 預金者保護の部分というのは異論がないんじゃないかとおっしゃったんですが、そこも違うんです。預金者保護は大事だというのは間違いないんですけれども、それについて、先ほど銀行局長が言われたみたいに、七兆円という形で国債発行というので備えをやるというふうなことでやること自体は私たちはうまくないと。預金者保護というのであれば、預金保険機構の中でやはりきちっとやる、やりくりする。それは当事者であり、関係金融機関であり、業界がきちっと持つべきだし、体力があるんだというところなので、預金者保護はいいんだけれども、それに公的資金を使うということになるとそこはだめだというのが、もう私は一番冒頭に、大蔵大臣に伺う前にスタンスは申し上げたつもりなんですけれども、その点が一つあります。  それから、その上で金融機関自己資本強化のために資金を出すという方向についてですけれども、これもいわば一般の、要するに健全なところにも出すということについては、私が取り上げさせてもらったのは、いわば象徴的に非常に明確に出ていると。預金者保護どころか、あるいは破綻救済どころか、要するに健全なところを支援することになるんじゃないかという形で取り上げさせていただいたんですけれども、それも含めて、金融機関自己資本強化するという枠組みで、結局十三兆ですか、そういうことをつけること自体これは公的資金じゃうまくない、これは問題外だというのが基本的な立場だということです。  なぜかということなんですけれども、大体今の金融悪化の問題ということを見ますと、皆皆んの中からも御指摘があったと思うんですけれども、護送船団方式ということがあって、いわばその失敗の結果だというふうなことが言えると思うんです。これからさらに研究させていただきますし、さらに後でも自民党の対策本部の関係者がいらっしゃったらその辺も伺いたいんですけれども、私が理解している限りはそういう護送船団方式を形を変えてまたやるものになるんじゃないかというのが今の要するに優先株の買い取りを含めた問題として見ている点なんです。  私は、これらに関連してアメリカの経験を二つ、よく研究したいし、見ていく必要があるんじゃないかと思っているんです。  一つは、六年前ですけれども、アメリカでやはり同様な事態があって、そこから抜け出したのがアメリカの活性化の転機だというふうに言われている問題があると思うんですけれども、あのときはアメリカの中でも大分議論があって、要するに国民の税金は使わないという大原則を打ち立てて金融界の負担で抜け出したということが私が理解している限りあると思うんです。やはり政治がそういうルールをきちっとつくったので信頼が増したんじゃないかというふうに思うんです。そういうルールをつくって、その立場で臨んでいけば金融界に体力はあるんじゃないかと。そうしてこそやっぱり経済も世界の荒波に耐えるものになるし、政治への信頼も高まると。ところが、今のやり方というのは逆に経済を一層ゆがめて政治への信頼を悪くするものだということになるんじゃないかというふうに非常に思っておりまして、それは食いとめなきゃいけないんじゃないかというのが一つです。  もう一つ、先ほど楢崎理事がおっしゃった点で、アメリカの一九三〇年代ですか、RFCの経験ということで、あのときは優先株買い取りで一番大きかったモルガンかなんかを先頭にして買い取っていって乗り切ったという話が言われていると思うんですけれども、私はその辺でもよく勉強したいと思っております。  一つは、当時アメリカというのは千も二千も銀行が倒産するという大変な事態があったわけですけれども、今日の日本もそういう事態になるという認識があるのかないのか、アメリカの経験を参考にされるというのであればその辺の認識を伺いたいと思います。  それから、当時のアメリカの経験というふうに言うならば、やっぱり大恐慌や大不況という中で異常に苦闘する中で金融制度が大がかりな改革をしたというのがアメリカであったと思うんですよ。徹底した銀行規制が確立強化されて、そして戦後の金融市場の発展の法的な枠組みをつくる、そういう適応をすることになったという点があるんだと思うんですけれども、私たちとしてはそこをむしろ日本としてもよく学んでいくべき点なんではないかということを思っているので、その辺でまたRFCの御研究もされている上でのいろんな今回の制度ということもあると思いますので、例えればと思います。  それから最後に一つ、これはぜひ私は自民党の委員の方どなたでも結構なんですが伺いたいんですが、これまで金融政策を決定するに当たっては金制調で審議があって、私はそれが十分だと思っていません、非常に不十分なものだと思ってはいるんですが、しかしそういう専門家も含めて議論をされて、そして十分でないけれども概要が公表される中で時々の金融政策決定に至ってきたと思うんです。だから、ある程度議論の中身がわかったというのがあったと思うんですね。今回、安定化策をつくるに当たっては、自民党の中で対策本部をつくられていろいろ議論されたと報道では拝見しているんですけれども、その議論に立って今度政府が受けてやられるという形で、今までとちょっと経過が違うかなと思っているんです。  そこで、その辺の議論の中で、例えば私がさっき伺ったような当初十兆円という構想がある中で二十兆、三十兆という枠になってきた。規模の問題を含めてどういう議論と検討を経て対策本部としてはああいう結論になられたのか、そして今の政府のあれにつながっているのかというあたりを、御苦労があったと思うんですけれども、それはそれでまた立場は違いますが、その辺の中身を御紹介いただければというのが希望なんですけれども、そんなふうな立場で思っています。
  180. 山口哲夫

    山口哲夫君 今、なぜ三十兆円が出てくるのかなという感じが実はするわけですね。問題は、預金保険機構というか預金者の保護が一番問題だと思うんですね。預金者の保護というのは、これは政府の方では二〇〇一年の三月まで完全に保証すると言っているわけです。当時約束したときは五年間ということで二〇〇一年ですよね、そこまで約束しているわけですよね。これは、国民にそこがまずPRされていないのではないかなと思いますよ。ですから取りつけ騒ぎなんか出てくるんですね。本来であれば全然心配ないわけですから、その銀行がつぶれたって自分の預金は返ってくるということがはっきりしていれば何もその辺は私は心配ない問題だと思うんですね。その辺をきちっとPRをすることが先決であって、何か今三十兆円という問題を出せば、また山一や拓銀に続いて相当大きなところが次から次へとつぶれていくのかなという不安をむしろあおるのではないかなと私は思うんです。  それで、これだけの金を保証するということになると、私はむしろ経営者が非常に安易な考えに立つと思うんですよ。いわゆるモラルハザードと言われているけれども、それを助長するものではないだろうかど。そういうことを考えたときに、まず少なくとも一年なら一年きちっとやってみて、その上で本当に公的資金の枠というものを決めなければ金融不安というものをだんだん助長していくのかなというような問題が出たときにやるべきであって、今いきなり三十兆円という問題が飛び出すということについては私はおかしいなと思うんです。  それから、預金者保護についても、これは政府が約束した問題ですから、これはもうしようがないと思いますよ。ただ、私はやり方には問題があると思います。やっぱり今七兆円ですか、というものを約束してしまえば、これはもう非常に金融機関自体が安易になってしまうので、そうではなくして、さっきも言いましたように、まず金融機関の人たちがやっぱりもう少し努力したっていいんじゃないかと思うんです。  先ほど私ちょっと数字を間違っておりましたけれども、アメリカは確かに銀行局長がおっしゃったようにゼロから〇・二七%保険料を払っている。だから、悪いところは〇・二七%ですね。そうすると、それでも日本の三倍払っているわけでしょう。日本だってやっぱりそのぐらいのことを考えたっていいと思うんですね。そういう努力をきちっと銀行にさせていかないで、いきなり安易な方針を政府が打ち出すこと自体、私は非常に問題があるのではないかなというふうに思うんです。  そして、特に山崎政調会長が一人一千万円を二千万円にしたらどうかということを新聞発表していましたよね。これも問題があると思います。一人一千万円といったって一つの銀行ですから 五つの銀行に分けていたら五千万まで保証されるわけでしょう。そして、妻の名義を使ったら、十の銀行になったら一億円の預金の保証をされるわけですよね。果たしてそこまで保証することがどうなのか。そうすると、二千万円ということになるとその倍の二億円くらいまで、それ以上でも保証されるというわけですから、果たしてそこまで保証するということが国民の納得できる問題なんだろうかというような感じがします。そういう意味での預金者保護についても若干の問題は残っていると私は思います。  間違っていることがあったら、ぜひ教えてください。
  181. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 今、笠井委員が言われましたけれども、私も自民党の金融対策本部に属しておりまして、この議論をずっとトレースしてきた者の一人ではあるんです。今回、政府が提出される法案は、自民党の意見に基づくものでありますが、政府の見解に従って政府案としてお出しになるものだというぐあいに理解しております。  私どもが議論していましたのは、三十兆という金額になりますけれども、その根拠は何だとか、あるいはそこまでかかるのかとかいう問題ではなくて、現在の金融不安の様相に対して一つの終止符を打たねばならぬというかたい決意を自民党、政府として示すべきであるという議論がありまして、いずれにしても政府の強い決意の表明であるというぐあいに御理解を願いたいんです。ですから、先ほど一番最初に申し上げましたように、私はこの対策金融不安問題については一つのピリオドを打ったというぐあいに考えております。  それで、山口先生が言われましたのは、極言すればそういう問題もあるかもしれませんけれども、御心配のし過ぎじゃないでしょうか。それは、五つあれば五千万、十あれば一億だよというぐあいに言われるけれども、五つも十もばたばた倒れるようではこの国は成り立たないですよ。そんなことではないと思います。  それから、なぜ今かというのは、今必要なんです。今、この現下の問題に対して結論を出さなければ日本金融市場は崩壊するかもしれないという危機感を私どもは持っています。そういう意味では、今まさに必要があるからなので、問題点もあるからそれを詰めてやったらどうかというお話ではありますけれども、それだと間に合わない問題だと、そういうぐあいに思っております。  それから、モラルハザードというぐあいに言われましたけれども、私どももそれは重要な視点であると思っていて、今度の政府提案の中でも、健全性確保のための計画をどうやってやるか、責任の追及をどういうぐあいにするのかということは、細かくは書いていませんけれども、大きなところで言及をされ、それを担保してやろうとしているわけですから、心配ないとは言いませんけれども、それについては十分な配慮をしていこうという姿勢は十分持っているつもりです。
  182. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 お二人のお答えと関連して、今、笠井さんと山口さんと何かダブっている問題で実は背反するような問題は例の預金保険機構でもつと対応したらいいじゃないかと。  ところが、預金保険機構で〇・○八四%で今いっているんですが、山口先生がおっしゃったときはこれはゼロから〇・二七、アメリカ式にやれば、要するにいい銀行とそうでない銀行、そこに料率を設けろという意見ですよね。  そうすると、これは非常に難しいなと思っているのは、一律で○・○八四まで上げろとやれば奉加帳方式ということになりますよね。要するに、保険料率そのものをしっかりやっている銀行もそうでない銀行も同じように上げていくんじゃ、これはまた不公平ではないかという意見と、山口先生のおっしゃるように、アメリカのようにいい銀行と悪い銀行の料率に差をつけろというと、今度はその差を見て取りつけ騒ぎが起きる可能性があるという大変難しい問題を両方含んでいると思うんです。  ですから、そこのところは一つはアメリカ型の方式を笠井先生は考えておられるのか。つまり、優秀な銀行というか、いい銀行とそうでない銀行を分けてランクづけして、そしてもっと銀行同士がそういう料率を負担すべきであるというふうに考えておられるのか。そこは本当に物すごく難しいところで、非常に重要なポイントではないかなと思っているんです。  自民党の中でそういう預金保険機構の保険料率の引き上げを図るべきだと、その上げ方はアメリカでやっているようなやり方をとるべきだというような議論があったのかどうなのかというのがもしわかれば教えていただきたいと思うんです。
  183. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 確かにアメリカは保険料についても差をつけているわけですね。それで、その議論も当然どうなるのかなということでさせていただきましたが、それを現段階でやると格差がついてきてほとんど公のレッテルが張られてくる、それでいいのだろうかという議論が大勢を占めたということであります。  それに関連して申し上げますと、牛嶋先生の五段階に分けてランクづけをしろという話はなかなか難しいという話が我が方から出ましたけれども、実のことを言うと早期是正措置というのがあるわけですね。現在の不良債権の額の公表は信用されていないというところに一番の問題点があるわけです。  この前の大蔵委員会の質問で私も申し上げましたけれども、要するに、不良債権が幾らあるよと言ったけれども破綻をしたときにはそれの何倍かになっちゃう、そんな不良債権の公表なんて信用できるのかねと、こういう問題があると思います力  それで、私は早期是正措置があるじゃないかと。早期是正措置は、確かに自己査定ではありますけれども、それに検査部が入り、いろんな評価が入って、それが正当であるかどうか。一番最初は確かにばらつきがあるかもしれませんけれども、だんだんなれてきてというと時間がたっちゃうじゃないかという話がありますけれども、その早期是正措置により自己査定をした査定が甘いか辛いかということはおのずとこれから議論され、整理されてくるというぐあいに思います。  そうなってくると、自己査定をした早期是正措置による欠損額、それは不良債権がどういうぐあいになっているのかということを公表すべきだということをこの前の大蔵委員会で私は主張をいたしましたが、なかなかできないよという話を政府側から答弁されています。けさの清水委員の質問に対して、個別の問題はともかくとして、対応として大きくそれをとって公表することを検討したいという発言がございました。私は、ぜひこのフリートークの中で諸先生方の御賛成も得て、いわゆる全銀協による不良債権の公示だけではなくて、早期是正措置による自己査定も、余り自己査定も個別にしちやっとまたレッテルを張ることになると思います。  それからさらに、牛嶋先生のおっしゃるランキングとはその他の諸要件も入れて評価しようというお話ですから、それだけで評価するのはあるいは問題かもしれませんけれども、私は不良債権の実額を、けさのお話ですと、要処理額は今四兆円であるという前々からの御発表がございますけれども、私はそういうぐあいにしていくとそれよりふえてくるだろうというぐあいに思います。  しかし、ふえたにしろふえないにしろ、現在の金融不安は、一番大きいのは不良債権が幾らあるのかねということについての開示が、ディスクロージャーができていないと、そこが信用されないところだというぐあいに思っておりますので、ぜひ大蔵省に、九月期ですか何かの対応調査されたようですから、あるいは報告をとられたようですから、その対応について御発表になることが必要であろうというぐあいに考えております。  質問じゃありませんけれども、山口さんに聞いてもいいですか。
  184. 山口公生

    説明員山口公生君) 自己査定は実は初めて今回やったというかやらせたというわけですけれども、時点は恐らく去年の四月から九月までの間の作業だと思います。だから、九月期の状況を反映したものではなくてそれ以前の、つまり早期是正措置をこういうことで入れますよ、だから皆さんトライアルで、試行的に早く自分の自己査定をやってみたらどうですかということで、小さい信用金庫とか信用組合まではとてもそういう体制はありませんが、いわゆる全国銀行と言われる第二地銀以上は大体全部やっています。  ただ、その制度とかいろいろまちまちでございます。しかし、余りそれを厳密にやっていますとこういう国会の御議論に提供できる資料でなくなりますので、それはちょっと目をつぶっていただいて、それで出てくる数字をアグリゲートしたらどうかというので年末にちょっと数字をとり始めたところなんです。  それで、分類ようがいろいろ各行によって違いますから、それをやっぱり四つぐらいの分類に分けないと、あるところは十項目に分けて、あるところは四項目、あるところは五項目じゃどうにもなりませんから、ちょっと整理し直したものを出してもらって大体お示しをするということだろうと思うんです。  ただ、今、楢崎先生がおっしゃったように、じゃ個別銀行だってそれを出したらということになりますと、非常に心配な点があるんです。それは、例えば第一分類、第二分類、第三分類、第四分類と俗に言われていますね。それで、第四というのはすぐ償却しなきゃいかぬ、三も結構悪いよと。ただ、特に第二分類というところが、実は相手企業が赤字が二期続いているというだけでもう二にしてしまうので、つまり個別管理が要るというだけなんです。  ところが、それを不良債権だと決めつけますと、ちょっとマスコミにも御注意をお願いしようと思うんですけれども、仮に出たときに、その第二分類というものについてこれが悪いものだと言いますと、ちょっとでも相手企業が赤字になるとみんな回収になっちゃうんですね。あるいは貸しちゃいけない、貸すと特別背任になるということでは、これは金融機関としてリスクをとらないということになりますから、個別行でそういう自己査定を余り赤裸々に出してしまうということについては、我々としては慎重になった方がいいんじゃないかと。  しかし、全体の数字を全国の銀行でアグリゲートする分には、それが個別行で漏れない限りにおいてはやはり国会での御議論には必要ではないかということで大臣からも言われまして、それで今ちょっと集計をして、近々対応できないかということでやっておるわけでございます。  それとはまた別に、SEC基準に合わせる、つまり国際的スタンダード、アメリカだって自己査定は公表していません、これはもう自分のところの作業ですから。ただ、今回はそういうことで考えようと思いますが、それとは別にSEC基準で今の公表不良債権ベースをもうちょっと、六カ月、三カ月とかとちょっと御説明したようなことで、グローバルスタンダードでのディスクロージャーというものをやっぱり並行してやっていくことも必要ではないかというふうに考えて始めているところでございます。
  185. 久保亘

    ○久保亘君 早期是正措置、それから預金保険機構の保険料を引き上げて五年間の全額保証の問題、それから信組の破綻に対する公的資金の投入の問題などは九六年六月の金融三法で決まった問題ですね。私は、提案者の側でしたから両院の意見をしっかり聞かせてもらいましたので、よく記憶をいたしております。  それで、早期是正措置をやることによって金融不安を取り除くということであの法律はできたはずなのに、今になってみるとあれが金融不安の原因だったり金融障害になっておるから凍結しろというような意見が出るというのは、あのときの審議は何だったんだろうという気が一つします。  それから、さっき広中さんが言われた私がさっき総理に尋ねた問題ですが、そのことをなぜ聞いたかというと、あのときに五年間の預金の全額保証を決めて、保険料率を七倍に上げたんですね。それでその後、あの問題を論議したときの経済の情勢と今とどう変わっているのか、そこのところが明確でない。一方では、財務官が出かけていって、日本の大手銀行が倒産するようなことはもう絶対ないよと言って大見えを切っておるわけだ。  そうすると、そういう状況にあるのに、なぜ今公的資金を投入して、それでようやく今の経済情勢に見合うだけの全額保証の預金保険機構資金が用意されるというようなことになるとどういうことになるのかなと思って、あのときの五年間の全額保証というのは何だったんだろうということが残るので、それで私がそこのところをしっかり説明してもらわないと三十兆というのを簡単にはわかりませんなということを言っておるわけです。
  186. 清水達雄

    清水達雄君 その三十兆、今なぜ入れるのかとか、当然保険料で賄うのが筋じゃないかとか、あるいは、今、久保先生のお話などもあったわけですけれども、結局これは二〇〇一年三月まで預金全額保護する、こういう原則を達成するためにその期間だけやろうということで、だからこの三十兆円の金というのは、残務処理的な部分があるかもしらぬけれども、その二〇〇一年三月になればもう引き揚げられるというふうに我々は思っているわけですね、特別の勘定金融危機管理勘定もなくなると。  結局、あと残るのは一千万円のペイオフのために、それはそれにふさわしい保険料を取れば、それでやっていけばいいんだということがあって、ただその期間においては相当銀行のリストラということも進むから、いろんなケースが出てくるから資金援助とかいろんなことをたくさんやっていかなきゃいかぬし、優先株云々なんという話もいろいろ出てくる。これはちょうど同じようなプロセスでそういう金融業界の再編成みたいなものが起こるから非常にそういう仕事がふえてくるだろう、こういうことでそれに対する対応が我々は問われているんだろうと、こう思っているわけです。  それで、久保先生のお話の問題については、確かにあのときは公的資金を入れるのは住専と信用組合だけだというふうな話になっておったけれども、今度はそれを一般金融機関にも入れようと、こういうことになった。結局、これはあのとき思ったよりも金融システム維持することが非常に大変になってきた、あれじゃとてもだめだと、とてもそれじゃみんな国民信頼しないというところだろうと思うんです。私はそう思っているわけです。
  187. 久保亘

    ○久保亘君 あのとき分析した情勢とは今は違うよと。どう違うのか。一方では、山一や北拓はこれは特例であって、経営が悪くて、経営者がなっとらぬからあんなになったんだという、ちょっと激しく言えばそういう説明でしょう、政府側の。だから、ほかの金融機関にはそういうことはありませんよと、こういうことなんです。それならどこが違っているんだということなんです。
  188. 梶原敬義

    梶原敬義君 それは、彼が言っているのは、山一も拓銀もつぶしちゃいけなかったんだと、こういう意味でしょう。どこかの座談会で、テレビで聞いたらそういう言い方をしておった。
  189. 久保亘

    ○久保亘君 例外というのは何か、何が例外かと言ったら、これは経営のやり方がなっとらぬ、いろいろ問題のある経営をやったからだということを、さっき橋本首相もそう説明したわけであります。
  190. 海野義孝

    ○海野義孝君 二年前の六月に金融三法が制定されたときに早期是正措置の問題なんかありましたけれども、あれと今日までで抜本的に何ら変わっていない点は不良債権の問題なんですよ、これが全部引きずってきているということで。  もう一つの問題は、去年の十一月にばたばたと金融機関がバンザイした。あの問題は、一つはやっぱり私は東南アジアの問題だと思いますね。東南アジアで七月にタイのバーツがパンクした、その後十月に香港の株が暴落した、そういった問題が世界を駆けめぐって日本が大変円安の方向へ動き始めた。これは日本とアジアとの関係が大変強いですから、例えば輸出の四割強は対アジアですから、もうアメリカじゃないですから。そういうような問題がここへ来て出てきたために、去年のあの段階では、そこで日本金融機関等に対するレーティングが、世界の著名なそういったレーティングしている機関が殊さら厳しい評価をしてきた。そういったことが、私は過剰反応した部分もあるかもしれないけれども、やはり去年の十一月のああいう倒産劇になってきたということで、基本的にはそういう不良債権の問題を抜本的に解決しないままで今日まで来たと。  これから出てくる問題は、一つは不景気の問題ですよ。これはよくなるということを自信持って言える人はいないわけです。いろいろなことを今やっているけれども、これはやっぱり民間のそういった活力だとかいろいろなことに任せるわけで、相変わらずその財政病理的なそういう問題は続いているわけです。そうすると、心配な問題は、去年の北拓の合併問題が失敗に終わったというのは例の東海興業です。これなんか出してみたら大変な不良債権を抱えているということが北銀はわかったから、そんなところと一緒になるのは御免だと。私はこの間も決算委員会か何かで申し上げたけれども、大蔵省の証券局長から行った方が北銀の頭取です。言うなれば、日本のそういった金融システム安定化の問題にとっては、そういう人が入ってもそういった合併ができないという問題が、もう既に民間ベースにおいては、やはり自分たちがビッグバンに対応していくためにはそういったきれいごとでは済まないんだということであれはノーと言ったという問題です。  やはり、不良債権の問題は、楢崎先生もさっきからおっしゃっているように、これはもうだれでも異口同音におっしゃっているように、いよいよパンク寸前になってふたをあけてみたら大変な数字が出るという問題ですよ。そうしますと、これから先やっぱり私は財政デフレで心配な問題はゼネコンの問題なんかがあると思うんです。  それと、そういった問題で今私が一番心配しているのは、株価を見ても百円、二百円以下の株というのが今もうバブルが崩壊したころよりもはるかに多いということなんです。このことは一体何を物語っているかということです。既に株式市場においてそういう企業の選別ということが激しく行われている時代に入っているということですから、そういう意味で私は大変な火種を抱えたままでこれからもいかなくちゃならないと。  ですから、私はここで一番問題は不良債権の問題と景気だと思いますね。これをやらない限りは、海外から日本金融システムをいろいろなことをやっているけれども、これは何となく今まで漸進主義でやってきたけれども、もうどうにもならなくなったために、ここへ来て思い切って――去年十二月十二日ごろに宮澤元総理が十兆円で十分だとたしかおっしゃっているんですよ。国債的な形に変わりました、それがなぜ三十兆円かといったら、これはだらだらやっていたのではしようがないから思い切った額を出したということじゃないかと思うんです。これは実際にすぐ使うわけじゃないですから。  今後問題が出てきたときに、要するに日銀に対して政府が保証するとか、それからいわゆる現金化する、そういう問題ですから、具体的には今ないけれども、私はやっぱり漸進主義でいったことに対して、これはもうだめだということがわかったという点では私は大変評価する、その点だけは。だけれども、まだまだ問題を多く抱えている、私はそう思うんです。ですから、そういう段階で、ここで国民に公的負担をお願いするという形はまだ私はちょっと問題が残ると思います。
  191. 梶原敬義

    梶原敬義君 聞きますけれども、十兆円の赤字国債を発行する分は、これは返ってくるんでしょう、将来何もなきゃ、うまくいきゃ。これは交付したらしっ放しですか。
  192. 山口公生

    説明員山口公生君) お答えします。  国債十兆円を交付しますが、うち七兆円がいわゆる全額保護のためでございます。それから、三兆円が例の優先株等に充てられるわけですけれども、いずれにせよ、もし使うときはそれをいわゆる国に償還をさせて現金化して使うわけです。  どういうときに使うかというと、まず前者の全額保護の場合は、補てん、つまり預金保険は破綻処理するとき、穴があいたとき埋めなきゃいけません。そのとき、まず保険料をもちろん充てまずけれども、それで足りないときはその現金化したお金をつぎ込むということになります。  それから例の優先株の方は……
  193. 梶原敬義

    梶原敬義君 ちょっと待って。  そこで、保険料で足らなかったら国が現金を入れる、それから何年か先に保険料はどんどん入る、そうするとその分はどうなるんですか。返してくれるんですか。
  194. 山口公生

    説明員山口公生君) 残った国債はもちろん返します。それから、回収した資金は返します。だから、七兆円のうちどれくらい本当に使われるかどうかは今後の破綻次第、無責任な言い方ではありますけれども、破綻がどうなるかによるわけです。だから、どれくらいそれが本当に使われるかというのは、今後の破綻がどれくらい出るかということによるわけでございます。  それから、もう一つ申し上げた優先株の方は、もしそれで優先株を買った場合、あるいは十兆円の例の保証つきの借り入れで買った場合も、例えば三百円で買ったものが二百円になれば、いずれは売らなきゃいけません、それが二百円のままだったら百円損が出ます。その百円の損の部分は三兆円の方から穴埋めします。しかし、それが四百円に仮に上がっていたらむしろ益が出ますから、これは今度はプラスとして返すと、こういう形にするわけです。  実際どれくらい三兆円が使われてしまうのかということについては、それももし株価がこれからどんどん上がるような状況ですとおつりが来る、下がっていくような状況だと三兆円で穴埋めしなきゃいかぬと、こんなことになるわけでございます。
  195. 久保亘

    ○久保亘君 交付国債で交付されたもの、これは市場には出ないわけだから保険機構が必要なときに政府が買い上げてくれるわけでしょう、償還という形で。
  196. 山口公生

    説明員山口公生君) そうです。償還を求めるわけですね。そうすると現金をくれる。
  197. 久保亘

    ○久保亘君 償還してお金を向こうへ出すわけですね。そうすると、交付国債でやっておったものを今度は直接現金で渡すから、このお金は返ってこぬでしょう。
  198. 山口公生

    説明員山口公生君) いいえ、返ってきます。
  199. 久保亘

    ○久保亘君 返ってくるの。
  200. 塩崎恭久

    説明員(塩崎恭久君) 交付しているだけですから、最初は金が何も動いていないわけです。
  201. 久保亘

    ○久保亘君 いやいや、これを償還させて現金化した場合に、この現金化したお金はもうかったからお返しに来ましたといって返してくるのか。それはないでしょう。必要に応じてかえていくから、かわったものは保険機構のお金になって、それはもう政府に返ってくることはないでしょうと言っているんです。
  202. 塩崎恭久

    説明員(塩崎恭久君) いやいや、最初に国債を交付するわけですね、このときはいわば手形を渡すようなものですから、その請求があったときだけキャッシュを渡しますから。
  203. 久保亘

    ○久保亘君 請求して交付国債が現金にかえられて渡っていったものが返ってくることはあるかと言っているんです。
  204. 塩崎恭久

    説明員(塩崎恭久君) それは今、優先株の場合は……
  205. 久保亘

    ○久保亘君 優先株じゃないよ。  例えば政府国債整理特別会計からでも三兆なら三兆の現金を渡す、必要ですからというので三兆分の国債を持ってきて、それで確かに必要なようだというので政府が用意して渡してやる、このお金は将来返ってきますかと言っているんです。
  206. 山口公生

    説明員山口公生君) 破綻処理に必要な資金として毎年度入れます。しかし、使わなかった部分及び後で保険料で回収できる分は全部返します。だから、結果として七兆円のうち……
  207. 久保亘

    ○久保亘君 そうすると、これは累積の赤字にはならないんだね。
  208. 山口公生

    説明員山口公生君) つまり、二〇〇一年三月までで締めますから、そのときに七兆円のうち幾ら使ったかということは最後になってわかります。  いずれにせよ、毎年度毎年度その穴埋めのために、保険料でたまりがあったら保険料でまず払いますが、もしたまりがなかったときは国債を現金化してもらってそこで埋めます。しかし、将来保険料が上がってきますと今度はその部分が現金で逆に積み上がってきますから、その分は返します。だから、まだ現金化していない残っている国債も返します。
  209. 久保亘

    ○久保亘君 国債のままあるやつは返すだろう。
  210. 梶原敬義

    梶原敬義君 パンクしたときの話だね。
  211. 山口公生

    説明員山口公生君) そうです。そのまま返すわけです。  いずれにせよ、七兆円のうちどれぐらい使われるかは……
  212. 久保亘

    ○久保亘君 そうしたら五年たってみなきゃわからぬということだね。
  213. 山口公生

    説明員山口公生君) そういうことです。破綻次第だということです。
  214. 梶原敬義

    梶原敬義君 それからもう一つ、議論に参加する前に、こっちの話もあれだけれども、あなたは三十兆円あればもう大丈夫だ、来いと、こういうことが言えるの。
  215. 山口公生

    説明員山口公生君) さっき笠井先生の御質問にも答えたんですけれども、いわゆる十兆円のお金というのは原則としては穴埋めに使えるわけですね。それで、ロスがそれだけ本当に出る予測をするかどうかということなんですが、例の不良債権の額の集計次第、ごらんになってから御判断いただきたいと思うんですけれども、そんなに極端に日本経済が、金融ががたがたになっているという状況では私はないと思うんです。
  216. 笠井亮

    ○笠井亮君 さっきは大変だと言っているけれども。
  217. 山口公生

    説明員山口公生君) 大変な状況ではあります。  ただ、もう一つそこでちょっと理解していただきたいのは、金融機関破綻というのは債務超過だけではないということなんです。  これは久保前大臣からお話があった御疑問の点にもお答えすることになるんですが、金融機関破綻というのは債務超過になって初めて破綻というふうに理解されている方が多いんですけれども、十一月にひょっとしたらということで外国から物すごい疑念の目で見られたのは、資金がショートしてしまうと。資金がショートしてしまったら、どんな黒字の金融機関でも倒れてしまいますので、このリスクが非常にあったということ。そのプロセスは株価の下落、レーティング、それからコール市場での資金の逼迫とか、そういうプロセスを申し上げましたけれども、それをひとつ頭に置いていただければ大変幸せでございます。
  218. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 今の話ですけれども、それは三十兆円で足りるのかというお話がありましたが、私どもは三十兆で十分余りあるんだと、しかし今度はあべこべに何で三十兆も要るのかねという意見も当然あり得ると思います。  三十兆を積み上げただけではありません。ありませんけれども、それをもってアナウンス効果として、日本金融機関は絶対デフォルトすることはないということを世の中に示すために三十兆、やや多目だと、ややじゃなくて相当多目だと考えていますけれども、そういう格好で三十兆ということを私どもは決めさせていただいたという感じだと思います。  それからもう一つ、久保先生の言われたのに十分答えていないと思うんですけれども、要するに七兆円を崩していきますよね、そうするとこれは国債を返すんだからあとは返還義務はないわけですよね。
  219. 久保亘

    ○久保亘君 そうですよ。
  220. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 そうでしょう。それを質問されているんですよ。だから、法律上清算をして国債を現金化してもらったけれども、それが余ったら返すんだというのを措置するのか、こういうお話が一つ。それから、恐らく大蔵当局が考えているのは、実際上は資金繰りでやっておいて一番最後に清算する、だから必要な額以上は償還請求がないというぐあいに考えているんだと思うんですが、どうなんですか。
  221. 山口公生

    説明員山口公生君) 二つお答えしなきゃいけませんが、最初のお答えだけ。  七兆円が国債で交付されます。それで、使った部分、つまり現金化して、しかも使ってロスに穴埋めした部分、それ以外はみんな返すと。だから、保険料が入らないので立てかえて払った部分は、保険料が後で入りますから、つまり二〇〇一年の三月末で切れますから、そこでその七兆円のお金の一部はロスの穴埋めに本当に使った、一部は現金の形で幾分か残っている、一部は国債のそのままの形で残っているというときには、その国債と現金を全部お返しするということになります。
  222. 久保亘

    ○久保亘君 国債が返るのはわかるよ。残ったものは当然返さなきゃならない。しかし、現金化したもの、そのお金が残っておるというのはおかしいんじゃないですか。
  223. 山口公生

    説明員山口公生君) ただ、そのときに後で特別保険料というのが入ってきますから、ある意味では保険料の立てかえ払いをした部分というのが出てくるわけです。つまり、毎年度毎年度必要な額は七兆円の一部を現金化して充てていきますから、そうすると保険料というのは毎年毎年入ってきますから。
  224. 久保亘

    ○久保亘君 そうなるかな。
  225. 山口公生

    説明員山口公生君) したがいまして、七兆円のうち使った部分、現金の部分……
  226. 久保亘

    ○久保亘君 政府に換金してもらったら、その分はその保険機構の基金としてきちっと管理されるんじゃないの。そうしなければあなた、おかしいだろう。
  227. 山口公生

    説明員山口公生君) もちろん管理しますが、勘定を締めた後に法律で国庫に返却することにしております。法律で書きます。
  228. 久保亘

    ○久保亘君 法律に返還義務を明記してあるの。
  229. 山口公生

    説明員山口公生君) はい、明記します。
  230. 久保亘

    ○久保亘君 明記している。それならいい。
  231. 山口公生

    説明員山口公生君) 全額じゃなくて、使ったものを。
  232. 笠井亮

    ○笠井亮君 今のであれなんですけれども、結局、最終的に返ってくるかもしれないけれども、そうならないかもしれないという話もありましたね。だから国債発行だとか政府保証の仕組みをつくるということに今なっているんじゃないかと思うんですけれども、そうすると結局最終的には、返ってこないときには税金投入ということになるんじゃないかという話なのかなというふうに私は理解しているんです。そういう問題としてこの問題は重大だというふうに思っているというのが一つ。  それから、先ほど強い決意表明、アナウンス効果というお話があったんですけれども、先ほど私も質問したんですけれども、実際三十兆と出されて、政府もそういう方向で決めたということなんですけれども、ところが市場の方が反応しない。そうすると、これ、際限なくならないか。例えば去年末に、民間臨調というんですか、金融臨調が、百兆円やれ、大胆にやるべきだという話も出しましたけれども、結局そういう形で、そのアナウンス効果で決意表明したけれどもなかなかこたえてくれなかったら、もっと五十兆、百兆というふうに際限なくならないかという問題が一つあります。  それと関連して、これは自民党の案の方で伺った方がいいのかもしれませんけれども、「保証枠は各年度設定」というのが書いてありますね。「各年度設定」というふうに文章にあると思うんですけれども、これは実際、毎年毎年二十兆にするのか、あるいはもっとふやすのか、法律にどう書くのかはちょっとわからないんですけれども、予算が定める範囲で保証すると書くのか、その辺はどうなっているのかというのをちょっと伺いたいんです。その辺で歯どめがなくなるんじゃないかという非常に危惧を持っている点があります。  それから、公約論で私先ほど聞いたんですけれども、金融三法のときに金融システム内でやるんだと。それから、金田委員のあのときの質問、会議録を拝見したんですけれども、当時の西村銀行局長が、破綻金融機関の処理への財政措置は行わないということで、そこまで、原則としてやらな下んだというところまで言われて、要するに別の言い方をするなら預金保険料によって対処する考えなんだということを言われているわけです。  それはもう七倍になったから無理なんだという一言はあるんだけれども、しかし、その辺のところで、公約してそういうふうに公言して、当時久保委員大蔵大臣でいらしたわけですけれども、そういうふうにやってきたこととのかかわりでどう変わったのかということを、事態がどう変わったからこうするんだ、体力がないんだとかというあたりは、もっとこれは詰めてやらないと、あのときはこう言ったけれども、さらっと今度はもうこうなんです、状況が変わっていますでは、これは話が国民的にはわからないというふうに思うんです。  それから、最後に一言。  保険料率の問題で先ほど峰崎理事から話があって、私はアメリカ方式でやるべきだというふうに言っているわけじゃないんです、料率の問題については。ただ、体力がある、そこから応分の負担をするということで料率はそういう立場に立ったら賢明な大蔵省はどうしたらいいか考えるんじゃないかというふうに思っているんです。ただ、一つあるのは、地銀と第二地銀については相互援助制度というのがもう一つあって、そっちにも負担があります。その辺はもう少し調整しないとそういうところにとっては大変なのかなということは一つ思っていますけれども、そういうことも含めて、体力に応じて応分の負担ということで対処すべきなのかなと。アメリカ方式でやれということを私自身がここで主張しているわけではないということは申し上げたいと思います。
  233. 金田勝年

    ○金田勝年君 時間もなくなってきましたのでちょっと。  今までの先生方のお話、特に楢崎先生のお話に私は共感するんですけれども、繰り返しを避けますと、やっぱり今の五十年に一回と言われるいろんな問題が起こっているこの時期でございますが、非常に急速な国際化が行われている。例えば二十四時間取引が同時にいろんなところで行われていて、非常に日本市場にあるいはアジアの市場に、そして欧米の市場に巨大なやはり投機をする動きが出たりいろんな動きで、いろんな形で日本金融市場証券市場というのは影響を受ける、そういう時期にまさに今差しかかってきた、いろんな意味で非常に過渡的な要素が多いんだと思うんです。そういう中でこの前の東アジアの通貨不安のようなものも起こったように私は思うんです。  そういう中で考えたときに、非常に今回の問題については私たちしっかり対応しなきゃいけないと思うんですが、国際化市場原則、それから自己責任原則というふうな全く日本の価値観の転換に向かうわけですけれども、そのときに市場の淘汰に任せて事後的対応だけで終始するということを繰り返していくと後で非常に大きなコストが出てくる、そういう問題に今直面しているのではないかなと、こういう感じがするわけです。  ですから、先ほど楢崎先生も言われました不良債権問題が原因となって今の金融市場にいろんな問題を起こしているんですけれども、それに対して終止符を打つんだ、ピリオドを打つんだという強い決意の表明だと、今こそそれが必要なんだというお話だったんですが、破綻処理の枠組み、要するに金融機関破綻に対して迅速に対処する、そういうのに加えて、金融機関自己資本を充実させて、そういう事後的な対応だけではなくて、今後を考えた部分の対応というのが必要になるというのは、いろんな条件を付した場合にはなるほどなと、こういうことになるんです。その場合にどうしても必要になってくるのは、まず先ほどから話が出ておりますディスクローズとモラルハザードの防止という話になってくるわけですけれども、これを具体的にどうするかと。  そうなりますと、先ほど言ったように、なかなか難しい、与える影響が、ディスクローズの場合は。しかし、破綻処理の枠組みを整備すると同時にディスクローズも絶対に条件になる。ただ、そういうことをまずは国民の側に立ってどういうふうにわかりやすく、そしてまた手続を明確にして示してやるかということが非常に重要な時期に今当たっているのではないかなと、そういう思いも個人的にはするわけであります。  それともう一つは、企業の倫理が非常に問われた現状というものを考えますと、金融機関もそうなんですけれども、企業自身のチェックシステムというのはどうなっているんだと。取締役会とかそれから監査役の制度とか、いろんな意味で企業の倫理、そういうことも含めて金融機関のモラルハザードの防止、そういうものがありましたけれども、そういう点もやっぱり何らかの答えを私たちが政治家としていろいろ議論していかなきゃいけないのかなというふうに思うんですね。  ついでにもう一つ言わせていただきたいんですが、先ほど牛嶋先生でございますか、財政金融の政策のマッチングの必要性をおっしゃられた、そういうふうに思うんです。今回、景気対策が重要だと先ほどおっしゃっておられましたが、景気という面、これも重要で、去年政府として考えられる対策をいろいろととったわけです。  そういう中で、やっぱり株価とか市場にあらわれている為替レートとか市場のそういう悪循環になっているものといいますか、それは翻って金融市場と非常に関係してくるわけですけれども、金融機関企業への融資対応力というんですか、そういうものに非常に影響してきていると。例えば、株価が下落しますと含み益の減少あるいは含み損の発生で自己資本比率が低下していく、そうすると融資能力の低下でもって景気が悪化してくる、だから株価も悪化する、そういうような悪循環に入っていくと思うんです。  そういうことに対する対応、これは貸し渋り対策ということを現実にはいろいろと考えて去年の暮れに決めたわけでございますね。そういう一つ一つがばらばらになっているのではないかと。今非常に政策が山のように去年の暮れに議論してきてとっていると思うんですね。ですから、財政構造改革だけではなくて減税措置、それから貸し渋り対策、いろんな対策をとってきている。  そういうときに、例えば減税は減税で、この項目が一つだけで十分なんだろうかという議論ではなくて、全部が影響し合っているという、政策が全部引っ絡まっている状況を政治家として私たちは全体を見る視点というのを絶対失ってはいかぬと。その中でこの金融システム安定化というものをどのようにとらえていくか、そういう視点が今まで余り議論がないものですから、牛嶋先生がおっしゃったのでちょっとそれを敷衍させていただきました。  以上、三点です。
  234. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 今の金田さんの話も聞きながら、一昨年、六大改革ということで金融ビッグバンということを打ち出して、この間、山一証券がいわゆる自己破産したとき、たしか証券局長は、いや、いわゆるビッグバンが起きればこういうことは起きてくるんだよということを言っている。  先ほど久保委員の方からは、いや、財務官はイギリスに行ってもマネーセンターバンクはもう絶対つぶさないんだと、こう言っている。要するにそこら辺は、何だか六大改革と言われているものが、いや経済改革もそうだ、あるいは財政改革もそうだ、何だか今の政府がやっていることというのは、最初に非常に華々しく市場メカニズムをとにかく導入してロンドンやニューヨーク並みのものにしますよということを言って、どうもそれが少しずつ少しずつ、それはある意味では基本路線は同じなんだけれども、それを補強しているのか、それとも基本路線をそのままストレートにやったら日本のまだシステムがそこまで行っておらぬから、どうしてもそれはある程度ちょっと一時的にストップしますよとか、そういう意味でいうと、どうもそこの改革路線と言われているものがここへ来てとんざしてきているのかなというイメージももう一面僕は持っちゃうんです。  そこら辺は、証券局長、後ろにおられるから議論に参加してもらってもいいと思うけれども、私は財務官がここにいないから余り財務官の話をしないんですが、ムーディーズなんかの格付をやっている人たちの話を聞くと、マネーセンターバンクはもう一行たりともつぶさないということがあったから今まで大手の銀行の格付というのはそんなに下げなかったけれども、しかしどうやらそれはそうでもなさそうだということで下げてきたと。株価の問題はさっきおっしゃった市場メカニズムがもうきき始めているわけですから、そうするとある意味ではそこのところをやはり促進させるというか、そういう市場メカニズムの流れはもう避けて通れないと、そういうふうに判断をしていくのか、それともそうじゃなくてやっぱり日本には日本のやり方で徐々に行く以外にないなというふうにちょっとよそ道を回っているのか、そこら辺がどうもはっきりしないなという感じがするんです。私はそんな今イメージを持っているんです。
  235. 長野厖士

    説明員長野厖士君) 一言御説明させていただきたいと思います。  私の記者会見におきますこのマーケット経営という問題は、当時の私の真意よりもやや過大にいろいろ尾ひれがついて伝わっているような感じがいたします。金融システム改革、ビッグバン、別に銀行とか証券会社を念頭に置いたわけではなくて、すべての資本市場資金を調達する者ということを念頭に置いた上でございますけれども、投資家というものの信頼をから得た者のみが市場で繁栄できるというマーケットをつくりたいという理念で金融システム改革をやっておりますということを申し上げました。それにそういった形の市場が無理な経営をとがめるということがあるとしても、それはそういった新しい市場ではそれも一つの望ましい方向と考えられるということを申し上げました。ただ、生々しく現実に破綻が起きた段階でそれを申し上げましたために、その破綻を証券局長が歓迎したのではないかというふうに伝わりましたことはまことに私の舌足らずでございます。  その上で、先ほどの榊原財務官の御発言をめぐってもございますし、財務官がどのような御発言をされたか存じませんけれども、株式市場という角度から国際的に今どういうことが言われておるかということになりますと、やはり預金者保護という問題は国内においては大事であろうと。外国の者から見れば、日本の証券会社や銀行取引する場合には、そういったインターバンクの取引でありますとか、デリバティブ、スワップその他の複雑な絡まり合いでありますとかそういったもの、あるいは株式として持っているものというものに一番関心があるわけでございますので、結局は債務不履行ということが起こるか起こらぬかというところに関心がございます。国内預金者をどう保護するのか、それは一千万までなのかそれ以上なのかということは海外の取引の方は関心がございません。  そこで、榊原財務官がつぶさないと言ったと伝えられておりますけれども、つぶさないというのが英語でどういう表現だったか私は想像できませんけれども、国内で榊原と議論しております限りでは債務不履行を起こさせないようにするということでありまして、これにつきましては、山一証券のケースでも幸い債務超過になっていないという状態でございましたので、大蔵大臣談話でも、海外の方も含めすべての取引はそのまま継続し、完結することができますということを発表させていただいて、あのときの危機を乗り切ったことがございます。  そういった期待を持っておる国際的な関心事項に対して、恐らく財務官はそのようなおそれの起こるような事態日本は避けておるということを強調したのであろうと考えております。
  236. 梶原敬義

    梶原敬義君 僕は、結論としたら、やっぱりきょうのこの場の議論は非常に重要だと思うんです。だから、もうみんなわかった、それでいこう、三十兆でいこうと言えば株も上がるし、あるいは金融不安もなくなる。  そして、もう一つ大事なのは、私の考えは総理には言いましたが、これからは景気対策をやっぱり急ぐべきだと。景気対策も大きな線でやらないと、こちょこちょやってもこれは何にもならない。ウナギを捕まえるとき、しっぽから捕まえると絶対捕まえられぬのです。首から三寸ぐらいのところを捕まえるとウナギは捕まるんです。だから、景気対策もかなめのところを押さえた景気対策じゃないと何にもならないと思うんです。だから、そこはもう少し、きょうはひとつこれでいこう、そのかわり理屈の合わぬところは筋道をちゃんと立てて、責任をとらせるところはとらせるとか、そういうことは全部やってやるようにすればいいと思うんです。
  237. 広中和歌子

    広中和歌子君 今の危機的状況に関する対応としては大変結構だろうと思いますけれども、そこから先のことですよね。ビッグバンが起こり、外国企業などが参入してくる。そうすると、例えば日本銀行の手数料がめちゃめちゃに高いことなんかも事実ですし、それから証券関係の手数料も高い。それを国際的な基準にしなくちゃならないとなってきたとき、あるいは金利の差が非常にございます、今はもう超低金利で。日本のお金が外へ流れていくことを禁止しようと思ってもできないはずでございます。もしそれをあえて日本にとどめようとしたならば、外国にも日本的なビヘービアをしてもらう、日本化することによるグローバル化というのでしょうか、そういうふうになる。  日本に参入してきているいろいろな企業がございますけれども、例えば清涼飲料水にしろ何にしろ、外国で売っているのより高く日本で売ることによって非常に彼らはもうけながら日本的にやっているわけですけれども、そういうような形にまた行政指導をなさるというようなことがあるとしたら、あるいは何となくあうんの呼吸でそういうふうに持っていかれるとしたら、何のための国際化なのか、何のための自由化なのかという問題になるのじゃないかと思います。  それで、もうちょっと先のことになるのかもしれませんけれども、これからの大蔵行政としてはどういうふうになさるのか、議員間のディスカッションかもしれませんけれども、お考えがあったら伺いたいと思います。
  238. 塩崎恭久

    説明員(塩崎恭久君) いや、余りそんな将来のことは議論していません。
  239. 牛嶋正

    牛嶋正君 今の広中先生のお話に関連してですが、私はむしろ議員間で楢崎先生にちょっとお尋ねしたいんですが、先ほども今やらなくてはいけないというお話で、それは恐らく四月一日からのビッグバンのことをお考えだと思うんです。  そうしますと、この三十兆のお金を考える場合、今の危機的状態を救うのにこれだけ必要なのか、それだけで私はいいのかなという気がするんですね。もうちょっとやっぱり足腰をきちっとしておかなければなかなか、今の広中先生のお話ですけれども、外国の金融機関にやられてしまうという面もありますけれども、そのあたりの議論はどのように展開されたのか、ちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  240. 楢崎泰昌

    ○楢崎泰昌君 私は政府の要人でありませんので個人的な意見にもちろんなるわけですけれども、四月一日と言われましたけれども、この問題は四月に至るまでの間に片づけなきゃならぬ問題であると。それで、補正予算にこれはかかっているということで、一月十二日から始まるのですけれども、恐らく予算委員会その他では十九日からの週になると思いますけれども、そのときにやっぱり片づけにやならぬ、まさに今必要な時期であるという考えでございます。  それから後のことをどうするのかねというのは大変あれですけれども、金融不安、それからバブルの話というのは、実はこの間までは土地問題が中心だねというぐあいに認識をしていたんです。ところが突如として、突如としてというと先見の明がないなと言われるかもしれませんけれども、金融問題を何とかして今解決しなければこの日本の国の少なくとも株式市場には大きな影響が及んでくるだろうという考えからこういう問題が出てきたということです。  それからもう一つ、広中先生がおっしゃったほかの外国資本にとられちゃうんじゃないのという問題です。  これは、ある程度そうなんだなというぐあいに私は思っています。要するに、グローバルな世の中になり、そして日本国がロンドン市場と同じように外国資本にほとんど占領されようとも、その中で雇用が確保され、そして我が国市場がグローバルになればそれでいいじゃないのと、まああきらめ切った表現になりますが。  ちょっと余計な話ですけれども、我が国経済の発展というのはやっぱり国民の英知、そして努力で成立してきたんだというぐあいに思います。私は、そういう国民の英知あるいは努力、労働、質の高さというものに信頼を置きたいなと思っています。ただ、先発の欧米諸国のノウハウというものが一時期直ちに占領する気配を見せると思いますけれども、我が国の学習能力は相当なものだと私は信じています。そして、それで完全に制覇されるような国ならばそんな国だなというぐあいに、私個人ですよ、自民党の意見ではありませんが、と思っています。また、自民党の中にも外国資本にある程度入ってこられてもしようがないんじゃないのと、むしろそれは我々にとって教師になるんだと、そういう考え方で私はおります。
  241. 塩崎恭久

    説明員(塩崎恭久君) 牛嶋先生の御指摘で三十兆だけでいいのかというお話でございますが、私は政務次官ではありましたけれども一人の自民党の国会議員として今回このスキームをつくる議論に最初からずっと参画をしてまいりまして、そのときの思い入れというか、入っている人たちもいろいろばらばらなんですけれども、私個人としての考え方は、久保先生もおられますが、久保大臣のときに住専があって、あのときに信組特別勘定というのはつくって、預金保険料も七倍にして、そして政府保証もつけられるように信組勘定はしたということであります。そのときはそのときで目いっぱいやったわけだろうと思うんですが、今になってみると、危機管理という意味では、包括的な危機管理というのはやっぱりできていなかったなと。  例えば、政府保証がつけられると書いてありながら、そして日銀とか民間から借りているんですね、あの信組勘定、しかし全然保証なんかつけていないわけです。ただ預金保険料で何とかやっていくぐらいのことでやってきた。それは、恐らく財政当局というか政府保証をつけるのを嫌がるのかなというふうに思いますが、それじゃとてもじゃないけれどもおかしいし、整理回収銀行にしたって信組勘定の方しかない。しかし、現実に一般金融機関破綻しつつある、こういうことで今回は包括的な、さっき楢崎先生おっしゃったピリオドを打つというか、危機管理はこれでいくよという包括的なプログラムをつくって、最悪のケースでも何でも大丈夫だというところまでやりましょうという気持ちで私はいたんです。  十二月十六日付のペーパーを読んでいただければおわかりのように、あらゆる項目を私ども入れたつもりでありまして、今回特に優先株の話と三十兆という数字がひとり歩きしていますけれども、それ以外にさっき金田先生がおっしゃったコーポレートガバナンスの話、それから金融検査士とかそういう制度の問題、サービサー、先ほど来ずっとお話が出ている本源的にやっぱり問題なのは不良債権をどうするんだということで、そういうことについてもあらゆることを入れていこうということであって、ただ今すぐにやらなきゃいけないのはこの三十兆のスキームに代表されるような、何が起きても絶対大丈夫だというところまでみんなに構えを示すというところが大事なんだったんじゃないかなと。  それも二〇〇一年の三月で言ってみれば哲学を変えようという話でありますから、実は何兆国会ぶち込んだところで、預金保険料でずっと三十年、五十年賄おうと思えば日銀からどんどこ借りて、五十兆借りてやっていけばできないことはないわけです。しかし、これからのやり方はそういう哲学じゃないだろうと。そういうことで二〇〇一年三月で切ってもらいましょうということでこういうスキームをつくったということなんですね。  じゃ、二〇〇一年四月以降はどうなんだと。これはまたみんなで考えていかなきゃいけないと思うんですが、しかし少なくとも原則はもうこれ決まっているわけでありますから、まさに市場原理でいきましょうと。  こういうことで、先ほど来の預金保険料で賄えないのはなぜかとか、いろんな問題が全部絡んでいるのはこんなところに考え方があったのではないかなというふうに思っています。
  242. 清水達雄

    清水達雄君 今いろいろお話があって、楢崎先生から、日本人は何とかきちっとしていて、いろいろちゃんと考えてというようなお話もあったわけですけれども、私は今回の対策というのは、日本がかってない大英断をいろいろやっていると思うんですよ。これまではほとんどやってこなかった。楢崎先生から、従来土地の問題と考えていたのが今金融システムの問題になったと言うけれども、土地の問題をやっておかなかったから金融システムにもう移行しちゃってきているわけですよ。土地の問題を議論しますと、今この辺にいらっしゃる先生方と何ぼ議論したって合意ができないんですよ、土地問題、土地対策ということに関して。だから、やっと土地対策について今回ある意味では決着がついたと。  私、当選してからもう五年半です。要するに、プラザ合意以後のでたらめ金融政策、バブル、その崩壊過程におけるまた変な金融対策、土地問題に対する対処、全く日本の政策当局は私は零点だと思うんですよ、本当のこと言って。やっと今度本当のきちっとした政策を打ち出してきている、そういうふうに私は考えていまして、決して日本の政策当局が優秀だったなんて全く思っておりません。私は今そういう実感ですね。
  243. 金田勝年

    ○金田勝年君 国民の側から物を考えました場合に、ここにいる大蔵委員の先生方は非常に高度な議論をされるわけですけれども、やはり国民の方にもこれがなかった場合どうなるんだというところがきっちりとわかる、これは非常に政治的に大きな意味というのはあると思いますので、そういうところを逆に、今は非常に重要な日本経済日本の国にとって大事な過渡期ですから、そういうところをきっちりと今度通常国会の議論になると思いますが、議論をさせていただきたいなという側面もちょっと申し上げておきたい、それが一点。  もう一つは、どうしても今問われているのは、銀行を含めた金融機関全体なんですけれども、それが産業界も含めての努力というものがまさに必要だということを確認しなければいけないなというふうな気持ちを持っております。リストラもやる、それからディスクローズもやるということでございましたが、利益を上げてリストラをやって収益性を改善していく、それが借金を返したり設備投資に回したりと景気がよくなるのにもつながっていくわけですね。そういう努力を銀行を含めた金融機関、これはもう本当に国民生活の血液、循環器としての社会的責任というものだと私は思うんです。ですから、そういうことをしっかりと金融機関認識しなければいけない、そして産業界全体もリストラを含めたそういう努力をしっかりとやっていくということが二つ目に申し上げたいことであります。  以上です。
  244. 野村五男

    ○野村五男君 たしか十月十四日に三塚大蔵大臣に質問をさせてもらいましたけれども、監査役が合併させたくないと言ったときはどうなんですかと言ったら、三塚さんの話は大丈夫です、今一生懸命やっていますからそのようなことはと。いろんな問題でいろんな事件がありましたけれども、やっぱり監査役というものの重要性というのを問われているのに、相手の銀行が余りにも不良債権が多いからと、結論がそういうふうに出た場合はそれをどうするんですかといったときに、大丈夫ですという話をしていたわけですけれども、いつの間にか、一カ月前にですが、相手銀行も全然違っちゃったという不信感があります。  それから、この間ある銀行の頭取が来まして、実際はこのような経済の状態ではお得意先の七割が赤字だと言うんですね。貸し渋りというものをどうするんですかと、赤字でも出すんですか、それとも赤字では出さなくてもいいんだというならいつになったって貸し渋りは解消しないと思いますと。  それから、私は一週間前に韓国へ行ってまいりましたが、物すごい不景気です。ですから、韓国へ貸した金も全部棚上げになってしまうのでしたら、三十兆円なんという問題では全然解決しないのではないか、これも一時しのぎのことになっているのではないかと、私はそう思いながらこの問題を研究していきたいと思っております。  以上です。
  245. 河本英典

    ○河本英典君 少し発言させていただきます。  よくこの場でお話しさせていただくんですけれども、金融の話が主体になっております。今、清水先生がちょっとおっしゃった土地の問題であるとか株価の問題というのは実は本当に一番大事でありまして、不良債権云々もある程度水準が戻れば不良が減るわけですから、これほどわかりやすい景気対策はないわけです。株は上がるだろうということで、いろんなアナウンスメント効果が出るだろうということでこの年末からの発表もあったわけですけれども、意外と反応しない。これはちょっと何かもう一つ徹底した政府経済政策がまだ信用がないからかなというような気もいたしますし、私は資産デフレになりつつあるのをインフレに誘導せいとは言いませんけれども、やはりもとの水準に戻すことが何よりの景気回復のよい材料だというふうに思うわけです。  銀行もビッグバンということでいろんなことをやっていただいておるわけですけれども、グローバルスタンダードという言葉で言うならば、いろんなところをこれから合わせていかなきゃいかぬわけです。一番最後にひっかかってくるのは、担保能力といいますか、企業の担保能力を実は土地と株式ぐらいでしか評価する、言うなら審査能力がそこまでしかないというふうなのが実は日本銀行ではなかろうかと。これからの将来性を買うとか技術力を買うとか営業力を買うとか、そういったことを実は審査して銀行は融資せにゃいかぬわけですけれども、今までの伝統の日本銀行経営の中で、そういった審査能力のないようなところがグローバルスタンダードでこれからひっかかってくる問題ではないかなというふうに思っておるわけです。  いずれにいたしましても、当面の問題は、国会議員の方は嫌われますけれども、株と土地というと何か不動産屋と株屋という言葉があるようですけれども、これを資産インフレ的な傾向に持っていくことが景気回復の一番よい方法でありますし、消費も伸びてくると思いますし、いろんな党の先生方に、考え方が違うわけですけれども、これを認識していただくのが一番何か早道のような気がいたしますのでつけ加えておきます。
  246. 石川弘

    委員長石川弘君) 私の立場は、きょうは大胆にまとめたりする立場ではございませんので、いろいろとけさからの皆さんの御意見を聞かせていただきながら、いずれは法案という姿でかなり時間をかけて審査をしなきゃいかぬことが多かろうと思いますが、本日、政府側、日銀にも御列席いただきましたので何か想定問答の予行演習をしたような気持ちでございますけれども、そういう論点をはっきりさせて、結果的には同じものを見ても理解の仕方が同じところに来ていないというところに非常に問題があるように思います。  そういう意味で、どちらかというと預金者保護の方には、先ほど笠井先生があそこも問題だとおっしゃいましたけれども、あそこの方には比較的合意が得やすくて、その他のいわば優先株あたりのところで、しかもその中のある部分について、方法論的にもっときちっとしろというお話と、そもそもというお話とがどうも違っているように思いますけれども、これとて本日の議論だけでどちらが賛成、反対ということじゃないわけですし、政府案の策定段階でもそういうことも十分お考えいただくし、何も法律だけですべてが済むことじゃありませんから、政省令の関係であったり、あるいはみずからの一種の行為規範みたいなものをはっきりさせられることによってより合意が得やすいようなことになるりかと思います。  ただ、私個人としても大変心配しておりますのは、時間がそんなにないわけでございますね。したがって、片方で予算委員会審議等を行いながら法案審議というようなこともやらざるを得ないような慌ただしい審議になろうかと思いますけれども、そういう意味で、本日率直な御意見がありましたことは大変私どもにとっても有意義でありましたし、あるいは政府、日銀の方でもその辺の、本日のいろいろな御意見なども頭に入れて整理をしていただいて、最後梶原先生のおっしゃったようにいけば大変あれなんですが、そこまで本日は申し上げられませんけれども、いろいろな意味でこれから皆さん方の御協力を得て委員会運営したいと思います。  予定の時間が参りましたので、自由討議はこの程度とさせていただきます。  大蔵委員会としての多分これが最後委員会でございましたけれども、いろいろ皆さん方の御協力を得ましたことを大変感謝いたしております。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二分散会