運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1997-11-17 第141回国会 参議院 国際問題に関する調査会対外経済協力に関する小委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十一月十七日(月曜日)    午後一時開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     小委員長        板垣  正君     小委員                 馳   浩君                 山本 一太君                 木庭健太郎君                 福本 潤一君                 角田 義一君                 田  英夫君                 上田耕一郎君    事務局側        第一特別調査室        長        加藤 一宇君    参考人        国際協力事業団        国際協力専門員  杉山 隆彦君        前海外経済協力        基金理事     山本 海徳君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件参考人出席要求に関する件 ○対外経済協力に関する件のうち、「実施現場か  ら見たODA状況」について     ―――――――――――――
  2. 板垣正

    ○小委員長板垣正君) ただいまから国際問題に関する調査会対外経済協力に関する小委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  対外経済協力に関する件の調査のため、本日、参考人として、国際協力事業団国際協力専門員杉山隆彦君及び前海外経済協力基金理事山本海徳君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 板垣正

    ○小委員長板垣正君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  4. 板垣正

    ○小委員長板垣正君) 対外経済協力に関する件を議題といたします。  本日は、実施現場から見たODA状況について二名の参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。  この際、両参考人に一言ごあいさつ申し上げます。  参考人におかれましては、御多用中のところ本小委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。  本日は、忌憚のない御意見を伺い、今後の調査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  本日の議事の進め方でございますが、初めに杉山参考人、次に山本参考人の順序でそれぞれ十五分程度御意見をお伺いした後、午後三時半を目途に質疑を行いたいと存じますので、御協力をお願い申し上げます。  それでは、まず杉山参考人から御意見をお述べいただきたいと存じます。杉山参考人
  5. 杉山隆彦

    参考人杉山隆彦君) それではただいまから、実施現場から見たODA状況ということで、私のこれまでかかわりました国際協力経験から意見を述べさせていただきたいと思います。  お手元にございます資料の順番に従って話を進めさせていただきます。  私は、一九六九年四月から七一年三月まで、タンザニア理数科教員といたしまして青年海外協力隊員として派遣されました。その現場活動いたしましたことは、現在の協力隊派遣活動と同じように、現場中等学校の先生といたしまして知の専門でございます化学と農業についてタンザニアの中学生に教えたわけです。その中で私は、タンザニア中等教育の中で一情操教育とか、あるいは教科以外からの情報が非常に欠如しているということから、課外活動などにも力を入れて活動いたしました。そこではタンザニアで非常に人気のありますフットボールとかを教えたり、あるいは情報教科以外から与えるために映画を大公使館等から集めて見せるというようなことをいたしてまいりました。  そういう活動成果についてですけれども、これは私が未熟であった点もありますし、当時海外へ出ることも非常に難しい状況でございまして、私がタンザニアに貢献したよりも、私自身国際化とか、あるいはその中で語学の習得をするとか、あるいは異文化を理解するという個人的な国際化に非常に役に立ったというふうに理解しております。それが現在まで私が国際協力に従事できる礎になったものであったというふうに理解しております。  そういう中で協力隊派遣事業を見ておりますと、これは三十年ほど前の話から今までを振り返りますと、派遣後の処遇につきましても現在までいろいろ改善されてきてはおるわけですけれども、やはり日本の社会の有します終身雇用制度の中で、大学を終わりましてからこういう海外への派遣事業に参画いたしますと現在でもなかなか国内での復帰が難しいというようなことを痛感いたしております。  しかし、最近の状況を見ますと、若い人は自力で自身国際化のための海外研修あるいは経験を得るために海外へ出かけられる経済状況にも変わっております。この青年海外協力隊派遣事業というものは当初は青年教育というものに重点が置かれておりましたけれども、現在の状況を見ますと、それだけでなしに、やはり日本ODA技術協力の中での位置づけというような形で協力隊派遣事業を考えてみるのも必要な時期になっているのではないかと思うような次第です。  その後、私は、その協力隊派遣事業の中で、中等教育も重要であるけれども、当時のアフリカを見ますとやはりリーダー養成することが非常に重要であろうというようなことを痛感いたしまして、個別派遣専門家に七一年から七八年まで従事いたしました。そこでは、タンザニア唯一国立大学にございます農学部へ派遣されまして、私の専門教科につきまして教育研究、指導をいたしたわけです。  しかし、七〇年代初頭のタンザニアは独立後十年未満の国でございまして、カウンターパートに当たる人材もほとんど育っていない状況で、タンザニアで初めて大学をつくって、栄養学あるいは食品学分野リーダー養成しなければならないというような状況でございました。その中で私は、したがってまずカウンターパート養成から始めて、そういう人々にそれなり学位を与えてカウンターパートにする、それでもって初めて学科をつくっていくというようなことに従事いたしまして、七年という長期にわたる技術協力に参画したわけです。  成果といたしまして、今振り返ってみますと、当時卒業いたしました学生が現在タンザニア農業分野リーダーとして育っておりますし、その大学へ参りますと、学長以下リーダーシップをとる教官がほとんどそういう意味では私の何らかの形の教え子であったり、あるいはカウンターパートであったということで、一人で参っておりましたけれども人づくりという技術協力が与えました影響というのは評価できるのではないかと思っております。  その中で私は、教育研究という知育にとどまらず、タンザニア人自立していくために重要である徳育というものもあわせて教えなければならないというようなことで、日本人の持ちます勤勉の精神とかあるいは時間に対するきちょうめんさというようなことも含めて指導いたしました。そういう成果は国の中で成果としてなかなか見えるものにはなっておりませんけれどもタンザニアに参りましたときにそういう人に会いますと、かなりそういう意識を高く持って活動されているのを見まして、自身の喜びとしているところです。  個別専門家派遣につきましては後ほどまとめてお話しいたします。  その後、私は、二年間ほど空白といいますか、日本へ帰りまして自身で研さんいたしまして、一九八〇年からケニアにございますジョモ・ケニヤッタ農工大学という大型のプロジェクト専門家として派遣されました。八五年から九四年までプロジェクトリーダーをいたしましたが、その経験を簡単に述べさせていただきます。  そこでは、プロジェクト無償資金協力、あるいはプロジェクトタイプ技術協力といいます専門家派遣研修員受け入れそれから機材供与の三本柱から成ります協力形態でございますけれども、それに協力隊派遣というものが複合的にかかわりましたプロジェクトリーダーをいたしました。そこでは、プロジェクト運営管理というものを中心にいたしまして活動いたしました。それは、日本側投入、あるいは相手側ケニア側投入計画促進、あるいは日本国内支援体制との調整というようなものを含めて、要するに日本ODA援助効率的促進というものを中心にかかわったわけです。現地では、新しい大学ですのでその大学組織制度に深くかかわり、新しく配置されます教官カウンターパートといたしまして、それの能力開発に従事いたしました。  その成果でございますけれども、これは御承知のように現在も協力は続いているわけですが、私が九四年に任地を離れますときには、大学は新しい大学として十分機能していく基盤整備はできたというふうに考えました。カウンターパート養成も、日本への国費留学制度を使ったり、あるいはJICA研修制度の中でそれなり基盤をつくる。現在の計画ですと、この大学は二学部七学科に分かれる大学ですけれども、そういう学科に二人から三人、教官日本学位を取った、あるいは日本お金で何らかの形で学位を取ったというような人づくりをいたしまして、将来ケニア大学として機能していくであろうと期待しているところです。  そういう四分の一世紀にわたる技術協力の中で、ODA事業に関しまして質的な改善について考えましたことを二、三申し上げますと、技術協力というのは、まず人から人への技術の移転であるということで、専門家の資質というものが非常に問われるということが言えると思います。私がかかわりました特にケニアの総合的なプロジェクトの中では、適材が適所に配置されるということがなかなか難しい状況でございました。これは例えて申しますれば、現役の大学教官がなかなか長期派遣されにくいというようなせいでもございます。  それから、そうした技術協力成果人づくり協力成果というものは非常に苦労を要するわけですけれども現地ではなかなか成果が見えてこないというところがございまして、非常に時間を要する協力が必要である。特にアフリカのような場合、時間を要するということが関係方々あるいは国民の方々に理解されなければ、質の高い援助にはつながらないというようなことを痛切に感じております。  それから、そういった活動をしております中でいろいろ私は思いましたのですけれども、いろんな形の調査団あるいは情報収集の目的の方々日本から派遣されるわけですが、そういう調査あるいは情報収集の内容が非常に似ているにもかかわらず多元化している。こういうものは受け入れ国にとりまして非常に煩雑といいますか、同じことを同じ国から聞きに来るというようなことで、ある意味では迷惑な面もあるわけです。そういうところでは、やはり予算的な情報収集の一元化というようなことを考えていく必要があるんではないかということが言えると思います。  それから、サブサハラアフリカについてもうちょっと私の考えを申しますと、六〇年代に多くの国が独立いたしまして、いろいろ援助を受けて自立への努力をしてまいりましたけれども、冷戦の終えん後、現在、経済的にもなかなか厳しい立場に置かれる国が多いわけです。先般のサミットでも問題になりましたように、二十一世紀に向けましては世界のかなりお荷物的存在になる大陸であるというふうに思います。  そういう国々から出てまいります援助といいますのは貧困問題というのが基底になるわけですけれども、その貧困問題というのは非常に他分野の要因が交錯している。したがって、援助する側も分野横断的な援助をしていかなければならないということで見ますと、日本縦割りの行政がそのまま国際協力事業に持ち込まれるというのは非常に難しい。あるいは、アフリカの現状というのはおくれているところもあるわけでして、そういう国に対しましてDACの出しました新開発戦略のような形で対応するには、国情に合わせた対応が必要になる。例えば単年度予算ですべてを解決していこうと思うところに、非常に緩やかな進展しか行われないアフリカにとっては難しいところもある。国情に合わせた協力体制というものも考えなければならないというようなことをこれまで感じてまいりました。  簡単でございますけれども、これで私のプレゼンテーションにさせていただきます。  どうもありがとうございました。
  6. 板垣正

    ○小委員長板垣正君) ありがとうございました。  次に、山本参考人に御意見をお述べいただきたいと存じます。山本参考人
  7. 山本海徳

    参考人山本海徳君) 山本でございます。  私は、ちょうど東京オリンピックの開催されました六四年にOECFに入りまして、三十三年間勤めて、ことしの三月にOECFを退職いたしました。円借款中心に、援助現場でさまざまな活動に参画してまいったわけでございますが、その間、私のモットーといたしましては、我々の仕事効率的にやって効果を上げたいということを常に考えてまいりました。きょうここに、そういう観点に立ちまして幾つかの今感じている点をお話しさせていただく機会を得ましたことを大変うれしく思っておるわけでございます。  レジュメに沿って、幾つかの点についてお話しさせていただきたいと思います。  ODAというのはやはり現場が非常に重要だということでございますが、最近、世界銀行におきましても、今までのようなワシントン中心でやつておった業務をそれぞれの国の担当局長がそれぞれの現地に張りついて陣頭指揮をとるというふうに業務のやり方を変えてまいりました。  OECFにおきましては十年前からこういうことをやっているわけでございまして、私は八七年から八九年にジャカルタに駐在したわけでございますが、このタイミングに事務所スタッフを強化いたしまして本部の権限事務所に移すということをやりました。その前までは、ローンアグリーメントを結びますと、その後、プロジェクト実施するに当たりましてコンサルタントの選定をするとか資機材だとか土木請負業者選定をするといったような手続があるわけでございますが、こういったものに絡む書類のチェックであるとか同意事項を全部東京でやっていたわけでございます。そうなりますと、それぞれ大体八つぐ二いのステップがあるわけでございますけれども、こういうものをワンステップとるのに郵送の期間もございまして一カ月はかかってしまう。こういったものが、事務所権限を移すことによって、一週間単位で処理できるようになったというようなことがございます。  もちろん、こういうことができるようになりましたのも、OECF全体としての力をつけたこと、スタッフ能力があったということもあるわけでございますし、それからローカルのプロフェッショナルスタッフを雇用してそういう人たちの力をかりるということもやったわけでありますが、いずれにしましてもそういう権限移譲によりまして援助実施効率が極めて上がったということでございます。これは、プロジェクトの着手が早まるということ、完成が早まるということにもつながるわけでございまして、東京でやっていた時期に比べますと効果の発現の時期が早まったというようなことでございます。  このことはインドネシア側も大変高く評価いたしてくれまして、それに、この事務所は非常に頼りになるところであるということから、いろんな問題が起こりますと相談にしょっちゅう出かけてくるようになったということがありました。と同時に、それぞれの実施機関の持っております将来のプロジェクト自分たちはこういうことを考えているんだけれどもどういうふうにやっていったらいいんだろうかといったような、そういう意味での開発の。パートナーとしての役割というんでしょうか、そういうことも果たせるようになっていったというような経験がございました。このジャカルタ経験を契機に、OECFのほかの事務所も、現在ではすべて権限を移譲して迅速な処理に当たっているというようなことになっておるわけでございます。  こういう形でジャカルタ事務所は、当然のことながら、大使館のもと、JICAオフィスと私どもとで一体となって仕事をしているわけでございますけれどもJICAオフィスとは同じような実施機関相手にしているということもあり、いろんな問題についての連携をし問題点を把握しニーズを把握するというようなこともやっておったわけでございます。大使館は非常に忙しゅうございますので、そういう現場でのいろんな問題点につきましては私どもの方に任せていただいて、問題点発掘、将来案件発掘といったようなことをやってまいったということがございました。  それから、現地におりますといろんな問題に直面するわけでございますけれども、その中でもう一点申し上げます。  さまざまな実施機関関係者と接触する機会があるわけでございますけれども、そのところで我々の支援しているプロジェクト先方実施機関人たちが、これは日本プロジェクトであるとかOECFプロジェクトであるとか、そういう言い方をする。我々のプロジェクトは評価されているのかなという印象で最初は何となく受けとめておったわけですが、実はこのせりふはくせ者でございまして、要するに日本プロジェクトなんだから問題が起こったら全部処理してちょうだいと、こういうような対応をする実施機関も時たまあったわけでございます。  そういうときに私どもとしては、いや、それはおかしいんじゃないか、この開発プロジェクト皆さん方プロジェクトなんだから、問題が起こったらそれは自分たちでまず解決に当たるべきであろうと。プロジェクトが完成すれば当然維持管理費がかかってくるわけでございますし、そういうものもあらかじめ幾らかかるかということも十分検討して予算を確保する、そういう努力をしなければいけませんよと。どのくらい維持管理費がかかるかというようなことについて私どもとしてはこんなふうになるんじゃないかなといったようなサジェスチョンはできるけれども維持管理費まで我々は支援するわけにはいかないんですよと、こういったような話をしたりしておったわけでございます。  いずれにしましても、開発が成功するかしないかというのは、プロジェクト実施主体である先方実施機関がどれだけ当事者意識を持っておるのか、ないしは、そういう自助努力マインドを持っておるのかということがキーポイントであるということを現場においてつくづくと感じさせられたわけであります。我々は気がつくごとにそういう問題提起をしていったわけでございまして、最近インドネシア側がそういう実施能力を高めてきたというのも、我々のそういうことが多少なりとも役立ったのではないかなというふうに自負しているところでございます。  それから次に、このレジュメでは「「質の高い援助」とは」と書いてございますが、この質の高い援助というものについていろいろ論ずる時間はございませんので、たまたまといいましょうか、私が今気になっている点について二つほどお話しさせていただきたいと思います。  一つは、顔の見える援助という問題でございます。  十年ほど前にいろいろ日本企業の問題が起こったような折には、日本企業の顔が見え過ぎるということで非常に批判を受けた時代がありました一それから最近は、受注率が下がってくると、日本の顔が見えないじゃないかと。こういったような意味合いからODAを批判するような意見も見受けられるかと思うのでございますが、我々現場で見ておりますと、そういう問題じゃないんじゃないか、顔が見える見えないというのはそういうことではないんじゃないかというふうに思うわけでございます。まずは、理念とか国別援助戦略といったものをどれだけ明確にしてあるかということが極めて重要なことではないかなと思うわけでございます。  理念につきましては、日本の場合には途上国離陸へ向けての自助努力支援するという立派な理念を持っておるわけでございまして、これは世界的には非常に自慢のできるものだろうと思うわけでございます。  途上国自立支援する、こういったようなことはジャカルタにおいていろんな国々援助機関人たちとも話をしましたけれどもヨーロッパ諸国は国全体としての援助額がそう多くないんですね。したがって、それぞれの国に割り振れる金額というのは極めて少ないわけでございまして、そうなりますと途上国離陸を目指してその自助努力支援するなんということは考えたくても考えられないんだ、日本がうらやましい、こういろことをよく言われました。したがって、この誇るべき理念というのはさらに掲げてほしいなというふうに私は思います。  それと同時に、大事なことは、国別援助戦略というのをしっかり立てるということなんです。カントリー・アシスタンス・ストラテジーというのを世界銀行は持っております。非常に精密な分析をした立派なものです。これは残念ながら一般の目に触れることはできないのでございますけれども、我々は現地にあって、ジャカルタにあって、世銀の人とかADBの人とかその他と接触してそういうものを見る機会もたくさんあったわけでございますが、ぜひともこういうものをつくりたいなということでございます。  OECFOECFとしての努力はしてそれらしきものは持っております、また、日本政府においても各省それぞれ持っていると思います。しかし、日本国としてきちっとしたものを持っていないんじゃないかなと思うわけでございまして、いろいろな日本の掲げている立派な政策、グローバルイシューに対してどう対応していくといったような政策、こういったものもそれぞれの国に落としてしっかりとした開発戦略を立ててそれを明確に打ち出す、こういうことが顔が見える援助ではないかなというふうに思うわけでございます。  それから次に申し上げたいことは、やはり日本から積極的に開発について発信をするということじゃないかなというふうに思うわけでございます。それは、いろいろな国際会議であったり、それから途上国でワークショップを開く、シンポジウムを開く、そういったようなことを積極的に開いていくということだろうと思います。  そこで、私が気になりますのは、国際会議なんかにおきましても、やはり援助専門家が発言すべきじゃないかなと思います。JICAOECFにはもうこういう専門的な能力を持った人たちが育っております。そういう人たちを前面に立ててそういう場でどんどん発言していくということが、まさに日本のプロが出てきて日本援助の顔を見せているということになるのではないかなというふうに私は思うわけでございます。  それから、さらに大事なことといいますか、三番目に感じておりますのは、円借款というのはともすると、やはりインフラ中心ということで、どうも人の顔が見えにくいというふうに言われることがあるのでございますが、最近はソフト部分についての援助の領域も広げておりまして、その代表的なものとして留学生借款といったようなものをやっております。インドネシア、マレーシアの若い人が日本語を勉強して日本大学に入ってくる、こういったものに対する借款支援もしているわけでございまして、こういう意味での人と人との交流を図っていくといったような協力の仕方、これがまさに日本の顔が見える援助ということではないかなというふうに思っております。  それから、質の高い援助というとグラントとか贈与が質が高いのではないかなというふうな議論をよく聞くわけでございますが、私は、そういう要素もあるかもしれないけれども、全面的にそう言い切るのは非常に問題ではないかなというふうに思っております。無償とか有償とかいいましても、無償お金途上国が受けてもそれを国内的に転貸するということがあるんですね。逆に、借款を借りても、大蔵省はその資金返済負担をしてもそれぞれの実施機関にはただ予算を割り振る、無償にしてお金を割り振るといったようなこともやっておるわけでございまして、日本から出ていくところが無償とかローンとかいうことだけで物事を判断してはいけないということだろうと思います。  やはり、ODAの条件というのは途上国の発展段階、返済能力等を勘案しながらやっていくということなんだろうと思いまして、純粋にグラントでやるべきところとローンでやるべきところ、それをミックスしてやるべきところ、こういったようないろいろな組み合わせを考えてやった方がいいのではないかなというふうに思うわけでございます。  その中で、人道援助といいましょうか緊急援助、こういったものは基本的に無償でももちろんいいんだろうと思いますけれどもODA開発援助、政府開発援助であります。開発ということは何らかの成果が上がってくるわけでございますから、そういうものについてはむしろ緩やかな条件であってもお金を貸す、そして返してもらう、こういうことが非常に重要なんだろうと思うんです。コストマインド、要するに借りたお金を返す、したがって時期が来れば利益を生まなければいけない、したがって計画どおり事業を実施していこうというマインドが養われてくるわけでございます。そういったようなこともありまして、やる気を持たせるようなことにもなってくるということでございます。  最後になりますけれども、こういうODA仕事、特にプロジェクト実施しておりますと、プロジェクトというのは、ローンアグリーメントを結んでからプロジェクトが完成して効果を発現するまで五年、十年かかる、非常に長期的な視点に立った取り組みが必要なものでございます。したがいまして、その間、実施している間に途上国でいろんな問題が起こることがございます。  これはODAの四原則との絡みなんかでも出てくる問題なのでありますが、途上国に対していろいろ日本として申し入れたいことも出てくるわけでございますけれども、せっかく実施しかかった案件を非常に問題があるからといってストップする、そして札びらで自分たちの言うことを聞かせる、こういったような感じになってしまうようなやり方には非常に慎重であるべきではないかなというふうに思うわけでございます。プロジェクトは、とりかかった案件はストップすると後で再開するのに非常にコストがかかるという問題があるわけでございまして、いろいろな条件は、新規のプロジェクトをやるかやらないか、新規のコミットをやるかやらないかというところで判断していくというのが大切なことではないかなというふうに感じております。  それから、実施体制を強化するという問題なのでありますけれどもOECFのことを申し上げますと、毎年、新人を二十人程度しか採用できないわけでございますが、百倍を超えるような若い優秀な人が応募してくるわけでございます。ですから、潜在能力のある人材は非常にたくさんいるんだろうと思いますけれども、やはり足りないのは定員枠だという感じを非常に強くしているわけでございます。  こういう中で、最近、特に現場におりますと、途上国側からは、資金援助の機関というのもただ単にお金だけではなくてノウハウを教えてほしいということをよく言われます。日本の戦後のさまざまな経験を体系化して整理して我々に教えてくれ、お金と同時にそういうノウハウを伝授してくれ、こういうことをよく言われます。そういうのにこたえていくためには、今のようなわずかな人数ではとてもできないわけでございます。  今、OECFが三百三十三人、世界銀行は六千人いると言われております。ところが、事業規模はOECFの二倍でありますから、十倍の人員を抱えているわけでございまして、我々が十倍効率がいいというのはちっとも自慢にはならないわけでございます。特に、今後ともますますアンタイ化が進むにつれて案件形成というのは我々がやっていかなければいけないわけでありますが、そういうときにも、環境問題であるとか社会的なインパクトであるとか、そういったものを十分調べた上で援助しようということになりますと、相当きめ細かな事前の調査が要るわけでありますが、こういったようなこともやるにはどうしても人が足りないということでございます。  ODAをこの行財政改革の中で削減するのはやむを得ないとは思いますけれども、事業費を一一%削減してその一〇%との差額の一%はこういう体制整備の方にお回しいただければ、私はもう現場を去ってしまった者でありますけれども、現役連中は大変喜ぶのではないかなというふうに思うわけでございます。  以上でございます。どうもありがとうございました。
  8. 板垣正

    ○小委員長板垣正君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わりました。  これより質疑を行いますが、時間が限られておりますので御発言は五分以内におまとめいただくようお願い申し上げます。  それでは、質疑のある方は挙手を願います。
  9. 馳浩

    ○馳浩君 両参考人、どうもありがとうございます。  簡潔にということですので、まず、資料を拝見いたしますと杉山参考人は例のハイジャック事件のときに大変な肉体的、精神的なダメージを受けられたということですが、もうお元気なのでしょうか。
  10. 杉山隆彦

    参考人杉山隆彦君) はい。もうその件はほとんど影響はございません。
  11. 馳浩

    ○馳浩君 ということで、心配しますのは、専門員、調査員、青年海外協力隊員などが派遣される国は政情不安であったり生活水準が著しく厳しいからこそ派遣されるわけですが、彼らの現地における生活の安全性について非常に心配しております。一説によりますれば、派遣される人の三%ぐらいの割合で事故、犯罪等に遭って、命を落とす人も少なくないと聞いておりますが、それに対してJICAとしてどのように取り組んでおられるのか。これはもう我が国の有為な人材を派遣するわけでありますから、彼らのまず人命が保障されてこその支援だと思いますので、この点をもうちょっと詳しく教えていただきたいのと、逆にれしろこういった点に配慮してほしいといった希望があれば教えていただきたいと思います。  それから、専門員については、杉山さんのように志を持って大学を出た後に応募される方、参加される方というのは非常に少ないと思うんですね。そういう意味において、例えば地方公共団体の職員や自治体の職員などが、これ、私が調べてみましたら、各都道府県に条例があって、単独事業で派遣されるされないというふうな事情があるそうなんですね。ただし、有能な人材が各地方公共団体、自治体におりますので、JICAの職員として派遣される、これは二年とは言わないまでも一年でやることも、今般の概算要求でも新規要求として出ておりますけれども、ぜひそういうふうに有効に活用していただきたいと思うのですが、この点についての御見解があれば教えていただきたいと思います。  それから、ケニアの方に行って大学で先生をしておられて、カウンターパート、人材育成ということでありますが、どうしても私たち日本人のせっかちな性格からすると、本当にその国にその人材が根づいたのかと。この資料にもありましたけれども大学を卒業して就職先が行政マンだけではいけないわけであって、民間で十分に活用していただいてこそ、我々の援助杉山さんが御努力されたことが広くケニア社会、アフリカ社会に広がっていくわけですね。この点について、自分自身の評価、あるいは今後の評価のあり方についての御意見があればお聞かせ願いたいと思います。  それから、もう一つ聞きたかったのは、杉山さんは現場でどの程度の権限を与えられていたんですかということなんですね。先ほど山本参考人の話にもありましたように、東京との、あるいは事務当局との連絡調整が非常に煩雑で一元化されていないおかげで、もう私に任せてくれればすぐ案件発掘し展開できるにもかかわらず、十分な権限がないためにそうではないという御意見も聞いております。では、杉山さんにはどの程度権限があり命令能力があったのか、与えられていたのかという点についてお聞かせいただきたいと思います。  次に、山本参考人には、読ませていただいた資料の中でこれこそ今後の日本ODAのあり方に一番必要だなと思いましたのがヒューマン・ディベロプメント・インデックスの観点でありまして、この点について御意見がありませんでしたので、ぜひ御意見を開陳いただきたいと思います。  以上です。
  12. 杉山隆彦

    参考人杉山隆彦君) それでは、第一点の安全対策の点からお答えいたしますと、近年、JICA派遣専門家に対します安全対策という意味では非常にいろんな対策がとられております。  国によって差があると思いますけれどもケニアには十数年おりましたのでその変遷を見ておりますと、派遣されました当初はほとんどそういう対策もなく、派遣された時点で現地事務所並びに大使館等から現状を知らされて、その中で対策を専門家が講じなさいというような形でございましたけれども、最近では、無線装置を各専門家が携帯するとか、あるいはJICAの中で専門的な安全対策委員会現地でつくりまして現地状況に応じた情報を遅滞なく専門家等に流していく、あるいはそういった治安対策の専門家を招きまして安全対策のセミナーを開催するとか、かなり改善されてきております。  しかし、途上国でございますので病気もあれば政変もある、いろいろな状況を抱えておりますので、なかなか予期できない出来事も起こるのが現実です。これを一〇〇%安全にするというのはほとんど、これは先進国を見ましても、ニューヨークあるいは東京の中でもいろいろな問題が出ているわけですので、そこは派遣される専門家もそういう意識を持って安全策を講じていかなければならない。私は、安全対策に関しましては、それぞれの個人がそれなり意識を持っていなければならないのは当然であるし、現在行われておりますようなJICAの対策をこれからいろいろな経験を踏まえて改善していけばそれでよいのではないかと思っております。  ただ、これはなかなか複雑な問題ですけれども、一つ、この前の墜落のときのことを見ていますと、ああいうような状況のときに、フランス等は御承知のように軍隊が出まして邦人の救出というのを行うわけですけれども日本人の場合は病院で寝て待っているというようなことを考えますと、途上国で事件が起こりましたときに邦人の保護というものをもうちょっと積極的に考えていくことも必要ではないかと思います。  それから、二点目の地方公務員あるいは地方自治体の人材の活用でございますけれども、これは現実に行われております。しかし、先生が申されましたように各県の条例がございまして、それぞれその自治体の方針等がございまして、必ずしも適材がリクルートされるというような状況にはなっていないのが現状でございます。私は、広く国際協力にかかわる人材を確保するという観点から、地方自治体あるいは民間も含めまして、リクルートの可能性を広げていくことは非常に望ましいのではないかと思います。  それから、三点目のケニアの人材の定着あるいは卒業しました人材の民間での活用等でございます。これは、ケニア国内だけでなしに東アフリカにおきましても、当初、私が参りましたころの東アフリカでの日本の認識というのは中国の一部ぐらいにしか考えられておらなかったわけですけれども、現在では世界の工業国のリーダーあるいは経済大国のリーダーとしての認識は広まっておりまして、そういう国が行っている技術協力をしている大学の卒業生ということでケニア社会からは非常に期待されております。いろいろ経済的な問題もありまして民間投資が思うように進まないこともございますけれども、他のケニア大学と比較いたしますと、非常にそういうことで卒業生は就職していっております。そういう意味では非常にインパクトは高いと思います。  それから、養成いたしましたカウンターパートの定着も、多くのケニア国内の他の同様の大学では研究費にも困って南部アフリカ等へ頭脳流出が起こっているわけですけれども、当該大学では定着率も、一〇〇%とは申しませんですけれども七割から八割は養成された人間が残って教育研究に従事しているというようなことから、時間をかけてまいりましたけれどもそれなり人づくりには貢献してきていると私は評価しております。  それから、最後の四番目の権限のことでございますが、私はチームリーダーとして派遣されておりましたけれども、そういう意味で与えられました権限といいますものは、JICAとの委嘱の中で与えられておりますプロジェクトチームの専門家に対する技術的指導というようなこと、あるいは基本になります相手国とのプロジェクトの合意事項の範囲の中で行えることでございまして、専門家に対する人事権とか、あるいは与えられました枠の中での予算の執行に関します権限がございますけれども、それを超えるものはやはり現地事務所それから東京との調整の中で物事を解決していくというようなことでございます。  以上でございます。
  13. 山本海徳

    参考人山本海徳君) HDI、人間開発指標についてのお話でございますが、この人間開発指標というのは、御案内のように、従来の一人当たりのGNPで国の発展段階を見るのではなくて新しい視点で見ようということ、人間開発の視点から見ようということでございまして、こういう観点から物を見ますと、それぞれの国にどういう方向で協力していったらいいのかというのがより方向性として明確に出てくるおもしろさがあるということで注目しているわけでございます。  さらに、このHDIという指標は、男女別で分けるとか地域別で分けるといったようなアプローチもございます。例えば、男女別で分けるということになりますと、南アジアなんかでは女性に対する教育とかが非常におくれているということが明確に出てきたりいたします。それから、地域でいいますと、ブラジルあたりでは都市と農村との格差というのが中進国であるにもかかわらず極めて大きな格差が出てくるといったようなことがございまして、そういう視点から見ていくと、我々のカントリー・アシスタンス・ストラテジーをつくるときにも非常に参考になるのではないかなという意味で極めて重要視しているということでございます。
  14. 馳浩

    ○馳浩君 ありがとうございます。
  15. 山本一太

    山本一太君 本日は大変貴重なお話を伺いまして、ありがとうございました。  私がJICAに勤めていたときにジョモ・ケニヤッタ農工大プロジェクトにちょっとかかわったことがあって、当時の杉山リーダーにもお目にかかった覚えがございますけれどもJICA技術協力プロジェクトの中でもやはりジョモ・ケニヤッタとタイのキング・モンクットは二つの代表的なプロジェクトでございました。杉山リーダーが相変わらずお元気で活躍されているのを知りまして、この間のハイジャック事件で思い出したのですけれども、お元気そうで何よりだと思っております。  いろいろ質問したいことがありまして、先ほど馳委員の方からもあったんですけれども、やはり技術協力効果というのはなかなか目に見えにくいということで、例えばケニアみたいに就労の統計がない国についてはなかなか大変だというお話もありました。そのことについてはさっき何となくお答えをいただいたようですので、私がお聞きしたいのは、たしか杉山専門員が書かれた中にも、アフリカに対するいわゆる日本の関心というのをどうやって高めていったらいいか、こういうお話があったと思うんです。  アジアは近くて遠い国と言われるんですけれどもアフリカはやっぱり遠くて非常に遠い国だと思うんですね、特に一般の日本人にとって。今後TICADⅡなんかもありますし、アフリカ援助の必要性なんかもいろんなセミナーで言われているんです。カンボジアのPKOがあれだけ注目されたのは、やはりカンボジアが日本にとって大変重要な意味を持つ国であった、アジア太平洋であったということもあると思うんですが。それにしても、モザンビークのPKOの報道が二回しかなかったと。少なくともあそこに自衛隊が常駐していたにもかかわらず、もちろん現地はポルトガル語ということもあって記者がなかなか行かなかったということもあるんですが、あのときに私が思ったのは、やはりアフリカというのは多くの日本人にとっては本当に遠いなということだったんです。  先ほど杉山専門員が、人づくり成果というのは実は非常に時間を要することなので、特にアフリカ援助については国民の理解が大事だというお話があったんですが、私もアフリカ援助に携わっていて思ったんですけれども、あの国を本当にきちんと発展させるためには、各国がそれこそ十年二十年タームで一つの覚悟みたいなものを持って取り組まないとなかなかいかないのじゃないかと。  よく話すんですけれども、初めてニジェールに行ったときに飛行機の上から見たあのサハラ砂漠の大きさを思い出して、本当にアフリカという国にアジア・モデルが当てはまるのか、アフリカ開発というのが本当に可能なのかという点について、アフリカでずっと過ごされてきたリーダーの立場から、どうやってアフリカ日本人に近づけることができるのかということについて個人的な御意見があれば伺いたいと思います。  また、山本参考人につきましては、私も国連開発計画に勤めておりまして、人間開発報告書、作成には携わらなかったのですけれどもいろいろお手伝いをさせていただいたようなこともあって、ヒューマン・ディベロプメント・インデックスというのを最初に見たときに私も大変感銘を受けたんです。日本がたしか三回ぐらい連続でトップだったのが、残念ながらトップの座を滑り落ちて、今カナダに抜かれアメリカに抜かれ、三位になってしまって大変残念だと思う反面、やっぱり日本がHDI一位であるはずがないなという何か考え方もあったので、書かれた物を見まして、なるほどHDIをこういうふうに分析して、援助指針をつくるのにこういうふうに使えるんだなということで大変参考になりました。  先ほど顔の見える援助というお話があって、その前にOECFではかなり現地の体制を強化していると。外務省、JICA関係でいうとまだまだ中央集権なんですけれども現地の体制を強化しているというお話があって、その顔の見える援助を行うために大切な国別援助指針、UNDPでいえばカントリープログラムだと思うんですけれども、これの作成についても、現地権限を与える、現地活動を活発にするということはやはり大変大切だと思うんです。  この間、英国大使館に行って公使に会ってきました。アメリカの援助庁から専門家が来たので彼としばらくディスカッションをしていたんですが、英国の援助では大使館にかなりの権限があって、これが実は英国の援助指針をつくるのに非常に役に立っているというお話を伺ってきたんです。  そういうことを踏まえた上でお聞きしたい話なんですが、顔の見える援助について、マルチとバイという観点からどういう組み合わせが望ましいと考えられるのか。例えば、アフリカは人材がほとんどいないから、こういうところこそUNDPみたいな国際機関を使ったマルチの援助によっていわゆる顔の見える援助をするという考え方もちょっと述べておられたようなんですが、マルチとバイというかかわり合いからとらえた顔の見える援助というのはどういうやり方が望ましいと思われるのかについて御意見をいただければと思います。
  16. 杉山隆彦

    参考人杉山隆彦君) それでは、アフリカに対する援助というものについて申し上げますと、まず日本におけるアフリカに対する理解というのは非常に偏ったものがございます。御承知のように、日本で報じられますアフリカのニュースといいますのは、テレビ等で報じられます非常に原始的な生活あるいは非常に奇異な食べ物を食べている人々、いわゆるターザン映画のような報道あるいは飢餓のアフリカというような非常に極端な例をあたかもアフリカの現状というような形で報道されるケースが非常に多いわけですので、そういうことから国民の多くはそういうアフリカのイメージを持っております。  しかし、最近、私がお聞きいたします中には、開発教育というようなことを小学校あるいは中学校レベルで取り上げてアフリカを理解させる方法論を開発研究されている学者グループの存在もございます。そういうような方々のお力もおかりして正しいアフリカの理解を進めていく、そういうことが起こり出したということを非常にうれしく思った次第です。そういう日本国内アフリカを正しく理解してもらう方向に導いていくという努力が一つは必要だと思います。  それから、アフリカ協力したときに時間がかかる、どういう発展の可能性があるのかということですけれども、これに関しましては、やはりアフリカは御承知のように部族問題を抱えておりまして、国民意識を統合していくというのはまだ達成されていませんので、まずそういう人づくり協力のような中で、先ほども申しましたけれども、知育あるいは技術の移転だけでなしに、国民意識の醸成というようなものも視野に入れました協力をしていかなければならないのではないかと。そうしますと時間がかかるわけですけれども人づくりというのは非常に時間のかかるもの、日本の中でも人間の意識が変わるというのは世代を超ズて時間がかかって変わっていくというようなことでございますので、アフリカでもそういうことになるのではないかと思います。  それから、アジア・モデルをアフリカへ持っていけばというお話を再三私も聞いておりますけれども日本がアジアに協力いたしましたときでも異文化の問題等がございまして、日本でもアフリカを十分理解できていない中で他のアジア諸国がどれだけアフリカを理解しているかというようなことを考えますと、これはかなり緩やかな形でジア・モデルを移していくというようなことを考えていかなければならないのではないかというような気がいたします。  それぞれアフリカの大陸には独立した国がございますので、経済開発のための協力も必要でありましょうけれども、現在、私が思いますには、やはり社会開発、いわゆる教育とか保健医療とかという社会開発分野協力を通じて、アフリカ人の中に国づくりをどうするかという意識を植えさせていくことが時間はかかるけれども必要でないのかというふうに考える次第であります。  以上でございます。
  17. 山本海徳

    参考人山本海徳君) マルチに日本の顔が見えるようにするということは非常に難しいことだろうと思います。しかしながら、マルチとバイとの協調というんでしょうか、そういうやり方で日本の存在感というのを示す余地、可能性は幾らでもあるのじゃないかなというふうに思うわけでございます。  そのやり方は、いろいろな事前の調査協力するということもありますし、一つのプロジェクトに協調融資という形でOECF借款と世銀の借款プロジェクトの部分部分を分けて協調してやる、その場合には審査に行くときに合同ミッションを組んで審査するといったようなやり方もありましょう。それから、完成した案件についての事後評価を一緒にやるといったような形での協調をすることによって、日本の存在というんでしょうか、日本のやり方を世銀にも反映させるといったようなことができるんではないかなと思うわけでございます。  それと、やはりマルチの場合にはバイとは違って、バイとしてはなかなか言いにくい条件等を我々にかわってマルチにやってもらう、こういうようなこともあろうかと思います。こちらは何もしないで向こうにやってもらうという意味ではないんですけれども、それもある意味では陰に隠れた協調というような意味合いもあるのではないかなというふうに思います。  以上です。
  18. 福本潤一

    ○福本潤一君 長い年月にわたる現場での活躍を短時間で話していただいてありがとうございました。  最初に、杉山参考人にお伺いしたいと思いますけれども、私の友人にも加藤和憲さんという旧フランス領関係現場で働いている人間がおりますけれども、そういう人に聞きますと、現場へ行ってトイレを最初つくったり、病気対策とか、あと現地採用する必要があるのでということで、時間を守ることとか生活習慣だとかの改善からやらなければいけないというような話を伺ったりすることがあります。そういう場合、今回、青年海外協力隊でも百倍という大変な希望者もおられる中で選ばれているということになりますと、どういった人間がそういう現場で活躍するときに一番適しているのかというのを、飛行機事故という希有な体験をされた杉山参考人に体験を踏まえてお伺いさせていただければと思います。  それと、ジョモ・ケニヤッタ大学にも、私が愛媛大学に勤めておるときに安倍先生というのが長年農業機械で行かれていました。こういうもともとは大学教官専門家になっている人の派遣と、専門家養成が必要だということで現地専門家として派遣した場合のケースと何か違いがあるのかどうか。教育というのはすぐ目に見える成果とはならないということもありますけれども専門家養成の必要を強く訴えられていた杉山参考人にお伺いさせていただければと思います。  あと、新開発戦略ということの中で、単年度予算のところがかなり現場では大変だったということがありましたので、単年度予算で具体的に大変だった状況の話があればそのお話もお伺いさせていただければと思います。  山本参考人の方に、特に人間開発指数をつくり出されて、長年の自分の体験を一つの形にまとめられておるということでございますが、この人間開発指数、どういう点でその指数、指標をつくり出したらいいのか、また、中身の問題としてはさまざまな観点から考える必要があるんだろうと思いますので、その中身をどういう形で指標としてあらわしたらいいのかというのをお伺いしたい。  特に、現場に行った人に言わせますと、国によって事情が違うんでしょうけれども、国によっては、援助をしてもらうのが当然だというような形で資金援助をむしろ当然のごとく考えるような国もある。先ほど、さまざまな具体的なプロジェクトの中で、その国の人材育成なりその国の人間を長く養成できるような形のプロジェクトにしていく必要がある、特にランニングコストは具体的には日本からの援助の中では出ないわけですからそこらの当事者意識もつくる必要があるというふうなお話をされておりましたので、その当事者意識を持ってもらうために今まで考えられて具体的にやっておられたようなことの中身を聞かせていただければと思います。  以上です。
  19. 杉山隆彦

    参考人杉山隆彦君) まず、どのような人材が適切であるかという観点ですけれども、これは非常に難しいと思います。それぞれ、現地へ行けば急に水を得たようになる人もおられますし、日本で非常に認められておった方が現地へ行けば急になえてしまうケースもございます。  しかし、私が見ておりますと、やはり最低限、派遣されます国の言葉、最初は下手でもそういう言葉をまず学んで相手の言うこと、相手のやっていることを理解しようとする姿勢がある人、やはり異なります環境に対する適応力というか適応しようと努力する人、まずそういうところが非常に重要なんだと思います。それからもう一つは、物の考え方に柔軟性を持つ。非常に硬直化した頭の持ち主というのは、やはりこういう事業には適さないのではないかというような感じを受けております。  したがって、大学の先生がそういう現地協力事業にかかわられたときにほかの人との違いがあるかどうかということも同じようなことで、それぞれの先生方が今申しましたような姿勢でもって臨まれるケースの場合は非常によろしいと思いますし、日本制度あるいは日本で自分のやっていたことしかもう目が向かないというような姿勢のときにはやはり相手側とぎくしゃくすると思います。  それから、三点目の単年度予算等につきましてですけれども、特にアフリカで事業を行っておりますと、アフリカ人が協力事業に対して主体性序持って、自分たちプロジェクトである、自分たちを発展させるための協力をお願いしているというような意識を持たせますには非常に時間がかかる。それに対しまして、単年度で物事を解決していこうと思いますと、相手が準備できたときには日本予算をすぐ確保するのが難しい。したがって、そういう準備が整うまで予算を持ち越していくとかいうようなことができないところに非常に難しいところがございます。割り当てられて確保されました予算はその年度内で消化しなければならないというのが非常に強く望まれているわけですので、相手側が十分その準備ができなくても執行してしまわなければならない。そういうところで、やはり後々、効率的に見ますと、十分相手側が成熟していないような要請に対して予算執行してしまうというようなことを考えますと、余裕を持ってそういう相手協力受け入れられる体制が十分に成熟するのを待って、予算執行できるという体制……
  20. 福本潤一

    ○福本潤一君 単年度予算が届く時間は具体的に何月とかありますか、九月とか十月とか。
  21. 杉山隆彦

    参考人杉山隆彦君) その予算が執行されましたら、前年度に次年度の計画を立てておりますので、そこのところの問題は特にございません。
  22. 山本海徳

    参考人山本海徳君) HDIのお話がございましたが、このHDIの指標を開発しておりますのはUNDP、国連開発計画でございます。ここで現在取り上げられております指標は寿命と識字率と成人の就学年数と購買力平価といったようなことだろうと思いますが、そのほかにいろんな指標があるじゃないかという議論をしていたようでございます。いろんな指標を入れてみても今入れております四つの指標で比べたのとそう違わないといったような議論をしたようでございますが、私もどういう姿がいいのかというのはよくわかりません。  ただ、問題は、いずれにしましても、途上国できちっとしたそういうデータが、どの程度信頼性のあるデータが得られるかということが大きな問題なんだろうなというふうに思っております。  ですから、人間開発指標というのも、先進国それから社会主義であった国々中心にデータが集められているようなところがございまして、途上国の場合にはすべての途上国がカバーされていないといったような問題があるわけでございます。したがって、まず途上国で我々が援助していく場合に直面しますのは、いろんな意味合いでのセンサスといいましょうか、いろんな経済社会的なデータがきちっと整っていない、この辺をどういう形で整えてデータを集めてくるかということも重要なことなんじゃないかなというふうに思います。そういう意味で、統計といったようなものに対する協力というのも非常に重要な仕事になってくるんじゃないかなというふうに思ったりもしておりました。  それから二点目の、当事者意識といいましょうか、そういうものを醸成するためにどういうことをしておるかというお尋ねでございますけれども、これも大変に難しい問題であります。多くの途上国の人は我々と親しくなってくればだんだん態度が変わるのでありますが、ないしは、我々とのおつき合いが深まっていけばいいんですけれども、最初に接触するときには自分たちのすきを見せたくないという強がりが当然出てくるわけでございます。何でもできるといったような態度をとる、それで実際やってみるとうまくいかないというようなことで、そういう意味で彼らの失敗の事例をよく集めておくということが一つ重要なんだろうなと思っておるわけでございます。  それと同時に、重要なことは、我々日本も失敗しているんだ、こうこうこういう失敗もあるんだということを言ってあげる、一緒に考えようじゃないかという形でアプローチしていく。途上国の目線に合わせてそういう議論をするというような形に持ち込んでいくと、だんだん、これは自分たちでやらなきゃいけないんだ、日本でも失敗していることがあるんだな、こういったような形になってくるとうまくいったような記憶がございます。
  23. 田英夫

    ○田英夫君 いいお話をお二人ともありがとうございました。  最初に杉山さんに伺いたいのは、青年海外協力隊のことから触れられましたが、今でも被援助国からこういうプロジェクト、こういう人をよこしてほしいというやり方をとっておられるのかどうか。実際には柔道の専門家とか看護婦さんとか多岐にわたる人が行くわけですが、その要求のもとは相手国なのかどうか、それでいいのかどうか。  それともう一つは、今度は派遣される隊員の人たちの帰国後の社会復帰の問題で、以前よりは随分よくなったと聞いておりますが、この点はどうなのか。できれば、さっき山本さんが触れられた人材の確保という意味も含めて、杉山さんが歩かれたような道を、一定枠とって青年海外協力隊経験した人をJICAなりに採用していくというようなことができないのかどうか。まさに、国際協力の人材というのはこれから非常に重要だと思います。青年海外協力隊はあしたちょうど広尾で歓送会があるようで、私も大体いつも出ていますが、非常に重要なことですから、今の点をどうお考えか。  それから、これは山本さんが触れられたことですが、できれば杉山さんにもお答えいただきたいんです。資金プラスノウハウということを言われましたし、プロジェクト形成能力を強化しなくちゃいかぬということを山本さんが言われたわけですが、実際には発展途上国なるがゆえに、どういうプロジェクトを自分の国で日本援助を求めたらいいか、それを考えそして日本に要請するという能力すらなかなかないというか低い、そういう国が多いんじゃないかと思います。  私も今カンボジアのことで頭を痛めているのはあの国の現在の最大の問題である地雷の問題で、地雷を処理しながら田んぼを耕すという機械を日本の人が開発して現在向こうでテストしているんですが、向こうはそれをODAにのせたい、こう言っているんです。もう言い出してから一年近くたつにもかかわらず、向こうの政府から外務省に対して要請の書面が出てこない。これは、どうも調べてみると、今、政情混乱もあるでしょうが、その能力がないと。そうなると、従来は日本のコンサルタントがつくりそれを向こうの政府から出してくる、この手続をもっとオープンにする。隠れてやると、かつて批判を浴びたようなことになると思うんですが。そういう現状からして、どういうふうにしたらそういう国々が円滑に日本に対して要請できるようになるかということです。  三つ目に、これは山本さんに伺いたいんです。きょうは触れられませんでしたけれども、「論壇」にお書きになった投稿の中で、ODAについては援助政策専門に担当し予算を一元的に要求する独立の省庁を新設する、その上でOECFあるいはJICAを中核として大幅な執行権限を持った一元的な実施機関を創設すべきである、こう提言しておられますが、この点ももうちょっと詳しく触れていただければと思います。  以上です。
  24. 杉山隆彦

    参考人杉山隆彦君) まず、青年海外協力隊の要請につきましてですけれども、基本的には相手国の要請ベースということになっております。しかし、実際、相手国の機関によりましてはその青年海外協力隊の存在も知らないようなケースもあるわけです。事務所もございます、あるいは協力隊員が派遣されております事務所には協力隊を担当する職員がおりまして、相手側協力隊活動を説明し、知らしめて相手側の要請を発掘する活動もしております。あるいは、出てまいりました要請に対して、相手国と協議いたしまして、よりよい形で隊員を派遣するというような相談に乗ったりしておりまして、すべてが基本的に要請ベースですけれども、要請のプロセスの中ではそういった日本側からの情報のインプットもあるということでございます。  それから、隊員の帰国後の問題ですけれども、例えば私のように隊員を終わりまして国際協力事業にかかわろうというような人に関しましては制度幾つかできまして、私のおります国際協力専門員制度もその一つでありますし、またジュニア協力専門員というような制度もございます。それから、JICAあるいはその他の財団等が行います海外でのさらなる勉強をするための長期研修の制度等がございまして、それはそれなりに、このODAといいますか、援助事業の中でキャリアを伸ばそうという場合にはかなり改善されてきていると思います。  いわゆるもとの社会へ復帰していこうというときには、これも時代の流れがございまして、日本の貿易が伸びているというようなときには非常に復帰もしやすいわけですけれども経済状況が停滞するような中では難しくなるというようなことがございます。これは余り制度化してどうこうできる問題ではないと思いますけれども、そういった問題は今も残っているということで、私もそれに対してこうすれば望ましいのではないかと言うことはなかなか難しいと思います。  それから、隊員を終わりましてJICAの中途採用制度の中で職員になる人もおりますので、そういう意味援助事業にかかわっていこうという場合にはかなり道は制度化されたものができてきているというふうに言えると思います。  それから、資金プラスノウハウとかプロジェクトの形成にかかわる、これは先生の御指摘のように、国によりましては、何が問題であるか、あるいはどういう援助が必要であるか、それを必要とすると認識しても要請するプロセスも踏めないというような国があることも事実でございます。その中では一御指摘のようなコンサルタントが動きまして、そういう相手国にかわってプロジェクト形成しているケースもあるようでございます。  私が九四年から専門員になりましてかかわっております多くの仕事プロジェクト形成段階の調査活動でありまして、そういう中では、相手方の問題点の指摘あるいはそこから日本がどういうことができるかというような対話をいたしまして、現地の理解といいますか、何が問題になりどういう方策がその解決につながるかということを相手側に考えてもらう、それから要請につなげるというようなことにかなりかかわってまいっております。  それから、資金援助だけでは効果が出ずに、やはりソフト、ノウハウをつけていかなければならない。アフリカに対する援助は特にこの必要性が高いものでございまして、無償資金協力で道路をつくりましても、維持管理をするノウハウをつけておかなければ、数年たてば道がまた使えなくなってしまうというようなことがございます。アフリカに対する援助に関しまして、私は、この資金援助にプラス技術協力といいますかノウハウをつけた援助が必要であろうと。こういうことを相手側が理解していくには、現在も行われておりますけれども、さらに踏み込んだ相手国との政策対話が重要であろうと思いますし、そのためには、現地でのJICAあるいは大使館におきます相手国政府との対話のための体制の強化というものが必要になってくるのではないかと思います。  以上でございます。
  25. 山本海徳

    参考人山本海徳君) カンボジアのようなどういう案件をやっていったらいいのかすらよくわかっていない国で、案件形成などをどういうふうに考えていったらいいのかというお話でございますが、私も昨年十二月にカンボジアに行くときがあって、今先生お話しのような事情に直面したわけでございます。  これはなかなか難しい問題だろうと思うのでございますが、一つ考え得る道はマルチとの協調ではないかというふうに思います。それは、UNDPであるとか世界銀行あたりが相当ベースラインスタディーみたいなことをやっております。そういうところから何をやらなきゃいけないかという方向性が出てきているわけでございまして、そこから拾い上げてくるというようなサジェスチョンをしたわけでございます。  さらに言いますと、私はベトナムの借款を再開するときに当事者でやっていたわけですけれども、ベトナムの場合にはああいう政策がございましたので、世銀も入れなかったわけです。もちろん日本も入れなかったのですが、国連の機関でありますUNDPだけは事前に入って、開発計画、どういうプロジェクトがあり得るかという調査を相当しておりました。したがって、日本協力する場合にも、そのUNDPの描きましたマスタープランの中から日本としてやりやすいものは何かといったようなことも検討の材料にしたということがございました。したがって、そういう意味でのマルチとの協調といいましょうか、そんなことも考えるのが一つの道ではないかなという感じを持っております。  それから、二番目の「論壇」の関係でございます。私、ずっとこのOECFにいて援助行政のことを考えてまいったわけでございますが、時々援助庁をつくれという議論があったわけでございます。そのときには必ず屋上屋を重ねるからやめた方が得だという議論があり、私もそうだと思っておったわけでございますが、今般のように中央省庁の再編成をやると、千載一遇のチャンスが到来したのじゃなかろうかというふうに思って、年来の夢が実現できればいいがなという気持ちが一つあったということでございます。  それからもう一つは、ああいう記事を書いた背景でございますけれども、そういう特殊法人等々の統合問題なんかにつきましても、我々援助の前線で一生懸命やっている連中の意見というのが一切聞かれずに物事が進んでいった、役所から聞けばいいというような感じで扱われたということに対する不満があったということもありまして、何らかの意見を述べる機会があればいいと思って述べたということでございます。
  26. 板垣正

    ○小委員長板垣正君) 田委員、今程度の御答弁でいいですか。
  27. 田英夫

    ○田英夫君 また機会がありましたら聞かせていただきます。
  28. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 上田でございます。お二人の参考人、ありがとうございます。  まず、杉山参考人にお伺いしたいのは、ケニアプロジェクトリーダーをおやりになった件なんですが、この小委員会で何回かケニアのことが問題になりまして、山本委員の指示で私たちのところにもかなり詳細な報告書が回ってきていまして、私も興味を持って読んだんです。これは、「定着農業ケニア) アフリカ(サハラ以南)地域における定着農業発展の諸条件と我が国協力の方向性について」、調査期間は九四年十二月、檜垣宮都東京農大教授、板垣啓四郎東京農大講師で、先ほど調査団がいっぱい来て受け入れがなかなか煩雑だというお話がありましたが、どうもその一つかもしれぬと思うんですがね。  これは、ムエアかんがい農業開発計画ジョモ・ケニヤッタ農工大学の整備拡充とケニア園芸開発計画の三つのもので、読んでみると、お米を増産して等々と。定着農業というんですけれども、評価がやっぱり厳しいんですね。先ほどなかなか成果が上がらなかったとおっしゃっていましたけれども、例えばこう書いてあるんです。「しかしながら、個々の技術を組み合わせてはじめて成立する多角的営農システムが、」、この地区のことらしいんですが「MISのスタッフ・生産者へ的確に移転されているかと言えば、はなはだ疑わしい。」と。だから、せっかくいろいろやっても、それが現地人たちに移転できるかというと甚だ疑わしいという評価になっているんですね。  最後に、この三つのプロジェクトのことについての総括的評価は、「これらのプロジェクトは、そうした関連性を十分念頭においた上で計画立案されたものではない。それぞれのプロジェクトの目標や開発アプローチの仕方、また、プロジェクトが着手された時期並びに実施サイトは、まったく異なり、そこには一見何らの脈絡のある相互関連性が見い出せないように考えられてしまう。」ということになっています。この報告書ではこの枝術協力が総額幾らか書いてないんで、だからこういうものを見てもちょっとわからないんですけれども、一体この三つのプロジェクトODAの総額がどのぐらいだったのか。それから、かなり常しい御評価が出ているし、先ほども余り成果が上がらなかったとおっしゃったんですけれども、一体根本的原因はどこにあるのか。どうも計画そのものにやっぱり問題が、計画をどちらが立てたか、日本が立てたのか現地が立てたのかわかりませんけれども、そういうことをお聞きしたいんです。それが第一の問題です。  もう一問、杉山さんにお聞きしたいのは、今新潟大の教授をおやりになっている鷲見一夫さんの岩波新書で「ODA援助の現実」というのがあります。この中で最も大きく取り上げられている問題のあるODAの一つとして、ブラジルの大カラジャス計画というのがあるんですね。これはJICAがおやりになったと。いただいたJICAのパンフレットを見ますと、「開発協力」というのがあるでしょう。この。パンフレットを見ますと、この「開発協力」というのは、結局、「日本の民間企業途上国で調和のとれた事業活動を行い、その国の経済開発に貢献できるように支援する業務」だと。とりわけ、民間企業仕事援助するというんですね。  この大カラジャス計画のマスタープラン、これはJICAがおつくりになったんだが、鷲見教授の本を見ますと、JICAはこのマスタープランを結局経団連に委託したというんですよ。そう書いてあるんだな。経団連は「国際開発センター(IDCJ)に調査を委託した。」と。ここがやったマスタープランというのは、鷲見教授の批判によれば、国産技術に基づく木炭高炉による銑鉄をつくれというので、木炭だから木を全部切っちゃって熱帯樹林がだめになる、それから、この地域の一万数千人のインディオが生活基盤を失うということになったというんです。  それで、JICAはこういう事業の一つとして民間企業の進出を援助するというんだが、そのマスタープランをつくるのをJICAとしての日本ODA理念に基づくマスタープランにするのが任務なのに、それをまた経団連の組織に委託したんじゃ、一体何のためにJICAがあるのかということさえこの本を見ると思うんですけれども、そういうことが広く行われているのかどうか。大カラジャス計画がその後どうなっているのか私もよくわかりません、これを読んだだけなので。  以上二点、お伺いして、山本参考人には五分になりましたので次にお聞きします。
  29. 杉山隆彦

    参考人杉山隆彦君) なかなか難しい御質問なんですけれども、ムエアの話、あるいは園芸プロジェクト、それからジョモ・ケニヤッタの三プロジェクトに関して申し上げますと、ムエアの稲作、そこでは機械化稲作の技術指導をされているわけですし、園芸のプロジェクトではケニアにおける園芸作物の技術普及ということで、ジョモ・ケニヤッタ農工大学の農学部ではそういう二つのプロジェクト関係なく、広くケニア農業の振興に必要とされる技術者を養成しているということです。  やっておりますことは、そのムエアの技術あるいは園芸プロジェクト技術養成ということも含めて農学部門という関連ではつながっておりますし、現実に大学の農学部の学生の実習をムエアでやったり、あるいは園芸のプロジェクトを使ってやったりという連携が行われておりますので、御指摘にありました、スタートした時点はいろいろ差があるかと思いますけれども、内容的には連携はとっているわけでございます。  一言申し上げておきたいと思いますのは、私はそのジョモ・ケニヤッタがなかなか成功しなかったということは申しておりませんで、非常に時間がかかって人づくりというものの成果がなかなか見えにくいということを申し上げました。しかも、人づくりをいたしました中で、ケニア社会においては、日本の、工業力あるいは経済力のある国の支援ということで非常な高い期待も寄せられておって、卒業生の就職も他の大学から比較すると民間企業に対する就職等は非常に高いという評価ができると申し上げました。その点へ一言申させていただきたいと思います。  そういうことで、ほかの農業技術あるいは園芸作物の技術に対しまして技術移転におくれがあるというような評価が下されているという御指摘でございましたけれども、現実ムエアにいたしましても、私は直接かかわったわけではございませんけれども、園芸にいたしましても、園芸は特にマカダミアナッツという豆を中心にやってまいりましたけれども、これはケニア国の輸出産物の中では非常な伸びを示しておりまして、このプロジェクトで行われました。これは、接ぎ木の技術あるいは品種の選定というようなものがあったわけです。しかし、その成果といたしまして非常に有望な輸出産物になっております。  それから、その分野では日系企業がほぼ独占的に栽培輸出していたわけですけれども、ジョモ・ケニヤッタを卒業しました学生が日系企業でマカダミアナッツの経営を学びまして、ケニアで初めてケニア人のマカダミアナッツ会社を設立する、競争価格でもって農民の生産者価格が向上するというようなこともございまして、そういう意味で園芸のマカダミアナッツを取り上げますれば非常な成果を上げていると。  それから、ムエアの稲作にいたしましても、ケニア全体で米の消費量がどんどんふえて輸入を迫られているわけですけれども、そこから出ております国内で生産される米の量というのが輸入代替につながり、それなり成果を上げていると。  それで、評価の仕方をどの視点に立って行うかという問題はあると思いますけれども、そういうことでスタートするときに、これは予算の制限もあるわけで三つを同時にスタートさせるというようなことにもなかなかいきませんですから、それぞれ時間差があったとは思いますけれども、先ほど申しましたように内容的にはそれなりに連携しているし、それなり成果は上げているというふうに私は思います。
  30. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 三つの総額はおわかりですか。
  31. 杉山隆彦

    参考人杉山隆彦君) 私がわかりますのは、自分がおりましたプロジェクトのことはわかります。大体百億ちょっとと。ジョモ・ケニヤッタはそうですけれども、あとのところはちょっとわかりません。  それから、ブラジルに関しましては、私は全然もう畑も違いますのでちょっとわかりにくいんですけれども開発調査というのが行われて、これはアフリカでも行われております。これが特定の団体に落ちていったプロセス、多分そこは偶然であって、基本的には競争入札の中でその実施するコンサルタントが選ばれていると。私のケニアあるいはその他のアフリカで行われておりますものを見ておりますと、そういうことでございます。こういう特別のケースを取り上げて開発調査全体を述べるということに関しては、私はちょっと疑問を感じるところがございますけれども、その程度しかわかりませんので。
  32. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 山本参考人に二つお伺いしたいんです。  私は、グラントエレメントの低さとか贈与比率の低さとか、それから日本円借款のインフラに向ける比率の大きさなどでかなり問題があると思っていたんですけれども、きょうのお話ですと、発展途上国自立支援する、こういう理念は世界に誇るべき非常にいいものだと。この理念の確立にはこの参議院の調査会が役割を果たしているので、これはよかったなとは思ったんですけれども。そのときに、ヨーロッパの国々はそういう理念の確立が非常に弱くてというか額も少ないので、日本円借款がうらやましいというお話がありました。  DACの新開発戦略などにもやっぱり自助努力というのはかなり基本だというようにも書かれているが、ヨーロッパ諸国ODAというのはどういう理念なのか。先ほどのインドネシアのお話で、ヨーロッパ諸国はアジアは少ないということで金額が少ないのか、それとも、理念の上で日本理念が非常に高く評価されるほどヨーロッパ諸国の場合にはそれが薄いのか、その問題を実態に即してちょっとお話をお伺いしたいと思います。それが第一点です。  それから二番目は、先ほどの大カラジャス計画などにもかかわるし、マルコス疑惑のときに私たちも国会でかなり問題にしたし、また鷲見教授の本にも書かれているんですけれども、先ほどのコンサルタントといわゆるプロファイ、プロジェクトファインディングとかいうものとの関係ですね。鷲見教授の本には、かなり広く言われている言い方ですけれども、こういうふうになっているんですね。  プロファイにおいて陰の部分で大きな役割を果たすのは、コンサルタント会社と商社である。これらのコンサルタント会社、商社は、現地政府に各種のプロジェクトを持ちかけ、当該政府がこれに関心を示せば、日本政府の承諾を得られやすいように計画案を作成し、これを外交ルートを通じて要請させるのである。  日本援助案件には、こうしたケースが非常に多く、このため日本政府により「優良案件」とか「優良プロジェクト」とか言われるものは、現地住民、特に底辺層の人々にとっては必ずしも優良でないことが多いのである。 こう書かれているんですね。そういういわゆるプロファイとコンサルタント、コンサルタントはすべて質が悪いとは言いませんけれども問題になるのもあるんでしょうし、こういうことが実態はどうなのかという問題ですね。  それから、この現地住民にとってというんですけれども、人間のための開発という点で言うと、山本さんにいただいた資料でも、環境ガイドラインは非常に重視すべきだという主張をなさっておられる。また、鷲見教授は、この環境ガイドラインと同時に先住民のガイドライン、先住民に関してはILOの条約もあるので日本は批准していないというんですけれども、やっぱり先住民を非常に大切にするようなガイドラインというのもODAで重視すべきじゃないかということもつけ加えて強調されているんです。  以上、二つの点についてお伺いしたいと思います。
  33. 山本海徳

    参考人山本海徳君) ヨーロッパ諸国援助理念がどういうものであるかということでございます。それに絡んでの御質問でございますが、私も細かくお話はできないわけでございますけれども、基本的には、やはりキリスト教の博愛精神に基づいて困っている人に援助の手を差し伸べるというような考え方がベースにあるんだるりと思います。フランスのように援助を通じてフランス語、フランス文化の普及を図るといったような理念を掲げている国もありますけれども、基本的にはそういうのがベースにあるわけでございまして、途上国離陸させ、まさに自分たちの競争相手をつくるといったような考え方は基本的にないだろうというふうに思いますね。  それから、例えば北欧諸国にしましてもそういう理念の強い国々ではありますが、GNP比率は一%とか結構高いんですけれども援助額自体は十億ドルいくかいかないか。そういうレベルの国が世界各国を相手援助するということになると、もちろん重点的にやってはいますけれども、それにしても一国に割り振られる金額というのは一千万ドル、二千万ドルといったようなオーダーになってしまうわけなんですね。  そうなりますと、できることというのはおのずと限られてくるわけでございまして、やはり住民密着型の、NGOと共同で小さなことをやると。それ自体は非常に意味があるわけでありますけれども援助で大事なことは、そういうやったプロジェクトを一つのモデルケースとして全国に面的に広げていくということが援助効果を上げる重要なポイントなんだろうと思うんですが、そういうことは自分たちはできないと言うわけです。したがって、こういうことで自分たち調査したものがあるんだけれどもこれを日本援助で使ってくれないかといったような申し出を受けることもあったわけでありまして、それで一緒にやろうよといったような誘いを受けることもあったりします。そういう意味で、日本というのは相当大きな額を扱っているという意味でうらやましいねと、こういう発言で出てきたんだろうと思います。  ですから、それぞれそういう各国の事情があるわけでございますが、日本の場合には、トップドナーとはいいましても対GNP比率が〇・二%と非常に低い、それでもそんな規模になっているわけであります。そうしますと、そういうものをどういう形で使っていくかということになりますと、途上国側もそれなりの規模の援助であればぜひとも自分たちがやりたい開発計画の重要なプロジェクトに充てたいというふうに考えるのが道理というんでしょうか、そういうことになってくるわけでございます。したがって、単なる数字だけではなくて、各国の置かれた事情、ドナーサイドの置かれた事情、それからどういう国につき合っているのか等々を細かく分析していきますと、それぞれの理由があるんですね。  アメリカなんかを見ましても、アメリカも援助額は多いんですけれども、基本的にはイスラエルとエジプトに相当な金が行ってしまいまして、例えばインドネシアなんかをとらえますと数千万ドルぐらいしか援助できていないんです。ですから、アメリカにおいても、自分たちで手がけた東インドネシアの方の小さなかんがいプロジェクト、これを自分たちでもう手が出せなくなったと、だから日本の方に譲るから、これはいいプロジェクトだから引き続き援助してくれというようなお話を受けたこともありまして、それを我々が引き継いでいったというようなこともあったわけでございます。  それから、プロファイとコンサルタントの関係で鷲見教授のお話が今ございましたが、鷲見さんが分析して指摘しておられるような側面というのは、今日においては全くないというふうに言い切れると思います。これは、かつて鷲見さんが書かれたことは全くないというふうに否定はしませんけれども、やはり非常に強調し過ぎている嫌いがあると思います。  現在は、円借款をとらえますとすべてアンタイドになっているわけでございまして、幾ら商社とコンサルタントがそんなふうに組んでやったとしても、そういう先行投資をしても、そのプロジェクトが確実に取り上げられるという保証は全くありません。四省庁なりOECFなりJICAの職員は、そういう開発調査であるとか案件の審査をするに当たってそれぞれ非常にまじめに対応しておりまして、そういう要素が入ってくるプロジェクトはもう最初から排除していくといったような強い信念でやっているということをここで申し上げておきたいと思います。  それから、先住民ガイドラインでございますけれども、これは先住民ガイドラインとはうたっておりませんけれどもOECFの環境ガイドラインの中に住民移転問題に関するガイドラインというのを含めておりまして、これは公表しております。そこで十分な配慮をするように我々はガイドラインを掲げております。  そして問題は、そういうガイドラインをきちっと実施していくためには相当な手間暇がかかるというんでしょうか、途上国側もしっかりした調査が要りますし、それからしっかりした対策を立てていかなきゃいけない。例えば、仮に住民移転する場合には、住民移転先の整備等々につきましては円借款プロジェクトの中に含めるといったようなこともやっておりますし、その他さまざまな対策をプロジェクトの中に含めるということもやっております。もちろん、そういうことも住民の納得ずくでやるというようなことも含まれておるわけでございまして、当然了解が得られなければそういったところには一切手をつけない、そういったようなガイドラインを持ってやっているわけでございます。  OECFの職員も、この環境問題とか移転問題等に対して若い人たちは大変敏感でありまして、そういうものに対しては真剣に取り組もうという態度であります。もちろん見過ごすということが全くないとは申し上げませんけれども、そういったものをないがしろに扱うという態度では全く臨んでいないということを申し上げておきたいというふうに思います。
  34. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 いろいろ貴重な御意見をありがとうございます。  一つは、これからのODA実施体制のあり方の中で、資金とノウハウというお話を両方の方ともされました。私も、幾つか見てきた経験の中で、これが極めて大事だと思います。山本参考人がベトナムの話を挙げられましたけれども、私は、ベトナムのチョーライ病院の調査援助再開前と再開後と二回行きまして、技術というか施設は提供したけれども、その後途絶えたときにどういう状態が起きて再び再開したときにどう復帰するかということも見せられましたし、これから本当に重要な課題になるであろう、つくづくこう思っておるんです。  そこで、両参考人にお聞きしたいんですけれども、これから大事になってくるのは、大使館援助機関の連携、まさに役割分担をどうするかという問題になってくるんだろうと思います。それが現在のあり方でいいのかどうかということを現場の体験の中からお聞かせいただきたい。それから、OECFJICA、それぞれ部門も違いますし、それなりの役割をきちんとこれまで果たしてきたと思うし、これからもそれぞれ機能は果たすんだろうと思いますけれども、今までの体制のままで、この両者それぞれでいいのかどうかという問題も、現場から皆さんが感じたことをお聞かせ願いたい。特に、現場主義、現地を大切にしていくとなると、余計に現地の出先にいるこのOECFJICAの方たちの知恵をどう生かすかという問題が一番大事になってくるのであろうと思うし、そういう意味では、現在のままでいいのかどうかという問題にかかわってくるのであろうと思います。  それとあわせて、これも両参考人にお伺いしたいんですけれども、先ほど援助体制の一元化の問題で、山本参考人は随分遠慮なされて千載一遇のチャンスだというふうにおっしゃったように私は思います。やはり現場から積み上げてきて見たときに、今の日本援助体制をどう感じるかというのはいろいろあると思います。先ほど杉山参考人は、縦割り行政の中で苦しんだお話もちょっとされておりました。その意味では、行政改革というのはチャンスでもあるということですけれども、今後、このODAがそうふやせない状況にあるならば、それを効率的にやるためには、出先じゃなくて、日本の政府としてどのような体制を組むべきかという問題をこれから私どもも論議しなくちゃいけないし、政府も論議しなくちゃいけない。これに対して、現場から積み上げてきたお二人がどう感じていらっしゃるかというのをもう少し率直にお伺いできるなら聞いておきたい、これが二点目でございます。  三点目。山本参考人には、顔の見える援助ということで、理念国別援助戦略の明確化というようなことをお話しになりました。一応、今外務省は四原則を設け、OECFそれなりのガイドラインを持ちつつ、理念という意味それなりの確立をしながらやっていらっしゃることは事実でございます。  ただ、私どもが感じるのは、この理念のより明確化というのがもっと必要だろうし、私個人で言えば、国会もそれなりに国民の代表として関与しながら、基本法的なものも必要だろうというようなことを感じておるのも事実です。それに基づいた形で一つの一元化された省庁があるならば、そこによって国別援助戦略というのは明確に立てられるだろうと。それを受けて、国会のかかわり方というのは、先ほど事前調査と評価の問題がございましたが、事前調査まで我々が関与することは現実的にはなかなか不可能でしょうが、逆に言えば、国民の税金が使われたらチェックするという意味で、国会がこの評価という意味でどう関与していくかというのが大事だろう、我々はこう感じておるんです。その辺を含めて、この顔の見える援助というのとちょっと違うかもしれませんけれども理念、国別援助政策の明確化ということと国会のかかわりというようなことでもし御意見があればお伺いをしておきたい。  以上、三点でございます。
  35. 杉山隆彦

    参考人杉山隆彦君) 大使館あるいは援助機関、あるいはOECFJICAとの関係という問題を現場から見てどうかということでございますけれども、それぞれ連携は密にしなければならないんだということは痛切に感じております。それぞれが役割があるわけでして、今御質問にございましたところといいますのは割合整理ができておりまして、実際、技術協力事業等にかかわります人間にとりましては、今申されました機関の間での問題というのはそんなに私は大きく感じたことはございません。  ただ、冒頭申しましたように、お互い密接な連携を持っていく必要はあるし、そのためにはそういう時間が持てるような体制がそれぞれの機関に現地でできていなければならない。どちらかといいますと、JICAにいたしましても大使館にいたしましても、そういう個々の技術協力事業について詳しく話ができるというような時間が十分とれないぐらい今忙しい状況にあるということは事実であったと思います。  それから、もう一つの援助体制につきましては、特に私、いろんなあれがあるわけですけれどもアフリカというようなところを取り上げますと、要するに貧困というものは非常にいろんな分野が絡んでおります。そういうものにかかわるときというのは、アフリカ農業が経済の基盤になっているわけですけれども、かといって農業だけを取り上げて援助しても、その周りにはやはり子供がいるわけですし女性もいるし、あるいは生活環境があるわけです。  したがって、農業を取り上げても、保健の分野教育分野あるいは農村インフラの分野を取り上げていかなければ、それこそ一方では稗益する人がいながら片方ではそのためにマイナス効果を生じるというような批判もあるわけですので、そういう調和のとれた形の援助効率的に進めようと思えば、余りにも現状というのは縦割りで物事が整理され過ぎているのではないかというようなことだと思います。
  36. 山本海徳

    参考人山本海徳君) まず、現地での連携の関係でございますが、先ほどもちょっとお話しさせていただいたわけでございますけれども、まさに現地日本ODAに携わっておりますJICAOECF、それを政策的に見ておられる大使館との連携、役割分担は極めて重要なのであります。  そして、現実に私がジャカルタにいたときにも、今もお話がありましたとおり、大変JICAの皆さんはお忙しくて会議を開くのが難しいんですけれども、それでも何とか食事を挟みながらでも集まって、それぞれの実施機関なりが抱えている問題点、セクターの問題点なんかを協議し、どういう方向に持っていっていいんだろうかというような議論をやっておったわけであります。こういうのをさらに組織的にしていくためには、何らかの日本援助行政全体としての観点からの見直しということがあれば、さらに効率よくそこはできるんではないかなというふうに思っております。  そういう意味で、日本ODA行政はどうあるべきかという問題に戻ってくるわけでありまして、要するにOECFとかJICAというのが実施部隊で手足であるとすれば、頭であるべき役所レベルが四つも十九もあったんでは、手足だけを一緒にしてもどうしようもないというところがあるんだろうと思います。  そういう意味で、ODA行政の何らかの一元化ということはやはり追求してほしいなというのが私の率直なところでございますし、日本の国民にとっても、日本援助が顔が見えるとか見えないとかいうのは、それを専門に扱う組織があるかないかということなんだろうという気がします。二十一世紀に入って、多分日本ODAというのは大変重要な役割をまたさらに深めていくんだろうと思いますけれども、そういうときにそういうものを専門に扱う組織というのが本当になくていいんだろうかという率直な感じがいたします。  そして、ODAというのは、広い意味での外交政策の一環であることは間違いないとは思いますけれども、やはり日本途上国とのトータルなつき合いだという側面もあるんだろうと思うんですね。ですから、非常に各方面の役所のかかわり合いがあることは間違いありません。したがって、聞くところによりますと、大蔵省の主計局あたりではODAの査定の方は一元化するという話があるようでございますけれども、要求する方がばらばらというのは一体どういうことなんだろうかという感じがするわけでございまして、やはりその予算の要求を一元化するとか、先ほど言いました国別援助戦略といったものをまとまってつくり上げるような組織というものがどうしても必要なのではないかなというふうに思います。  ただ、「論壇」では私はああいうふうに一刀両断で書きましたけれども、やはり各省庁ともODA実施とするという側面もあるんだろうと思うんですね。各省庁の持っているノウハウをODAに生かすという側面もあるわけでありますから、そこら辺はその問題というのが残るのかなと。  ですから、その政策というものを一元化する上同時に実施はすべてOECFとかJICAに統一できるかというと、多分そこはそうでもないんじゃないかなという感じもしまして、そこら辺はよくわかりません。エージェンシー構想などという話もちらほら聞くわけでございますけれども、よくわかりません。一元化問題は、私もそう突き詰めて考えているわけではございませんので、その程度にさせていただきたいと思うんです。  それから、国会がどういうふうにかかわるべきかというのは大変大きな問題でございまして、全くの私見を申し上げさせていただければ、やはり国別援助戦略とかは相当きちっとした調査に基づいてつくられるべきものなんだろうと思います。そういうものと、それを公表するのがいいのかどうかという問題があります。  さらに、近い将来どういうプロジェクトを取り上げるかとかどの程度の規模の援助をやるかといったような話は、やはり余り公開でやるべきものではないんじゃないかなという気がします。途上国側に必要以上の期待感を持たせたりするということにもなりかねませんし、実際出てくる答えはそれと違うようなことであったりしますといろんなフリクションも起ころうかというふうに思いますので、そこら辺については慎重に扱わざるを得ないのではないかなというふうな感じがいたします。ただ、援助をした結果どういう効果が上がったのか等々については、やはりしっかりとしたチェックをしていただく必要はあるのだろうというふうに思います。  日本ODAというのは専門的な機関が独占的にやっているわけでありますから、どうしても独善になりがちなところがあります。市場メカニズムが働かないという要素があるわけでありますから、そういう意味では、いろいろな批判なり御意見というのは率直に受け入れ実施の改善を図っていくということに役立てるのであれば、そういうことも大切なことではないかなというふうに思います。
  37. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ありがとうございます。
  38. 角田義一

    ○角田義一君 お二人から大変貴重な御高説をいただきまして心から感謝申し上げます。  山本参考人の先ほどのお話の中で、二つだけちょっと詳しく聞いておきたいなと思っておりますのは、開発に関する知見の発信というところで、援助専門家がもっと発言すべきである、日本それなりのプロが育っていると、こういうふうに先ほどおっしゃいましたけれども、この辺についてはいろいろの国際会議等における実情を踏まえて現場の方はよほど御不満を持っておると。もっとはっきり言わせていただきますと、外務省の高級官僚から現場をよくわかりもしないのに偉そうなことを言われても困るので、現場がもっとばんばん発言できるような機会、そういう立場というものを保証してほしいというようなことなのかどうか。こういう場ですから率直に聞かせていただいていいんじゃないかと思うんですけれども、どういうことなんでしょうか。
  39. 山本海徳

    参考人山本海徳君) 援助問題というのは、国際会議の場でも非常に率直に専門家意見を交換する場なんだろうと思うんですね。ところが、何とか会議ということに銘打ちますと、政府代表とかいってちゃんとステートメントをつくって、それで衝に当たる人が出てそれを読み上げるというふうになりがちなところがあるわけであります。もちろんそういう場はそういう場でそれはいいのだろうと思うんですけれども、ともするとOECFとかJICAとかというのでオブザーバーという形で参加は認められるんですけれども、そういうところで自由に発言するという形にはなかなかならない、そういう公式な場はそれでもしょうがないのかもしれませんが。  ですから、そこでそうしてくれという意味じゃないんですけれども、いろんな場でチャンスは幾らでもあるのだろうと思うんですね。そういうところでいろんな具体的な経験を持った人同士がちょうちょうはっしとやり合うということが常識なんだろうと思うんです。そういう場をふやすということが絶対に大切なことだと思いますし、そういう人たちは非常にふえてきておると思います。  それに、日本というのは非常に現場重視の援助をやっておりますから、そういう現場でこういうことがあったんだというのをどんどん言う。例えば世銀の人であるとかDACの会議に出てくるような人たちというのは、現場を知らないで援助を語っているというところもあるわけでありますので、非常に迫力のある議論ができるという経験もありますので、あえて申し上げたわけでございます。
  40. 角田義一

    ○角田義一君 では、あとまとめて二つだけ聞きます。  山本参考人の方から実施体制の強化というお話がありまして、足りないのはODAの人材ではなくて定員枠であると。例えば、海外経済協力基金はことしは二十人ぐらいしか採れなかったと。世銀は六千人おる、基金は三百人とかおっしゃいましたか。これからどういうふうになっていくかわかりませんけれども海外経済協力基金としては、望むべくは例えばどのくらいのスタッフが理想として欲しいのかというような問題。それと裏腹で、ちょっと私、不勉強で申しわけないんですけれども、その場合に財政的な問題が当然出てくるでしょうけれども、この原資というものは一体どういう形で現在賄われているのか。その二つについてお答えいただきたいと思います。  それからもう一つは、先ほどから一元化問題が大変大きな議論になっておりまして、恐らく委員の先生方は皆一元化については原則的に反対ではないんじゃないかと思います。ただ、どこがどういうふうに仕切るかということについていろいろな御議論もあるんじゃないかと思いますが、もし山本私案なり杉山私案なりがあってこういうふうにした方がいいんじゃないかというのがあれば、ずばりこういう席ですから私は言っていただければありがたいというふうに思います。
  41. 杉山隆彦

    参考人杉山隆彦君) 私はどちらかと申しますと現場志向でまいっておりますので一元化が望ましいというところまではあれですけれども、それを取り仕切るところをどうということになりますとかなり複雑な政策的マターになりまして、ちょっとそこまで私は考えておりません。とにかく、余りにも縦割りでやると必ずしも相手のニーズに合致したものにならないということを申し上げたわけでございます。
  42. 山本海徳

    参考人山本海徳君) OECFはどの程度の規模が適当であるかというお話でございます。今、三百三十三人という定員なのでございますけれども、それでも過去、ほかの特殊法人に比べますとJICAさんと同じように定員をふやしていただいているという現状なのでありますが、そういう現状から議論しますと何を言っているんだという話になるんですけれども、少なくとも倍の人間はいないと丁寧な仕事はできないんじゃないかなということでございます。  それに、今後ますます環境問題であるとか社会開発であるとか、そういう手間のかかる分野に手を染めていくということになれば、ぜひともそういうのは確保していく必要があるんだろうと。たまたま今こういうODA削減ということで事業規模がいわば横ばいになる時期でありますので、こういうときこそ体制整備をして来るべき二十一世紀に備えるのが適当なんじゃないかなというふうに念願しているところでございます。  一元化の議論は、私も先ほど申し上げた以上にはちょっとよくわかりません。
  43. 山本一太

    山本一太君 今まで委員の先生方がおっしゃったこととか、あるいはお二人の参考人に御質問したいことはいっぱいあるんですけれども、もう時間がありませんので二分ぐらいで国際協力現場でお仕事をされてきたお二人に一つずつお聞きしたいと思います。  お二人にお聞きする話ではないかもしれませんけれども、先ほどの山本理事のお言葉で、やはり援助の前線にある者の意見を聞いてほしいというお話もありましたので、お二人に一言ずつちょっとお聞きしたいと思うんです。  まず杉山リーダーなんですが、ここ何回か産経新聞で取り上げられました、ケニアのモイ政権に対する日本援助が余りケニアで役に立っていないんじゃないか、独裁政権を助けるような形になっているんじゃないかという報道に対して、ケニアで十数年援助に携わってきたお立場からどういうふうにあの記事をごらんになったかということが一点。  そして、あと山本理事にお聞きしたいのは、今援助一〇%以上カットという方向が出まして、特にマルチの援助については、社会開発の国連機関については軒並み三五%から四〇%のカットになりまして、悲鳴が上がっています。改めて日本ODAというのがいかに国際社会で大きなインパクトがあるかということを示した形になっておりまして、今外務省は大蔵省と必死で交渉して少しでもお金をバックさせようということをしているわけでございます。  馳委員もそうかもしれないですけれども、我が党でいいますと何人かODAサポーターがいまして、私もしょっちゅうこの件で大蔵大臣にお目にかかったりして、いや、もう量より質だと、いや、質と言ってもある程度量がなければ困りますということでやっておるわけなんです。いわゆる日本のマルチ、特にUNDP、ユニセフ、UNHCRに対する援助だけじゃなくて、これは技術協力にもかかわる話ですし、研修員も減らさなきゃいけない、青年海外協力隊も減らさなきゃいけない。  こんな中で、大蔵省の主に所管している予算山本理事も「論壇」で書いておられましたけれども、例えば大蔵省が世銀に拠出しているもの、あるいはアジ銀に出しているもの、こういうものは外務省でつかめないような状況になっておりまして、ここら辺が多少余裕があるんじゃないか、ここら辺から引っ張ってこようと。何といっても一番の目玉はOECFの行っている借款の話でございまして、細かくは言いませんけれども、何となくある程度戻ってきている分もあって、技術的に言うと余裕があるかないかというのはいろいろ難しい話かもしれませんが、ここら辺のところから持ってこれるんじゃないかと。  私の仲間で河野太郎という衆議院議員がいまして、大蔵省を呼びつけて、きさまら、けしからぬ、こんなに困っているのだから金を出せという話をやったんですが、私がいつも思っているのは、山本理事も書いておられましたけれども借款無償技術協力も私はすべて必要だと思うんですね。バランスよくこれらの援助をしていくこと、すなわちマルチもバイも全部そうですけれども、それがやはり一番大切だと思うわけであります。  そう考えてみると、外務省だろうが大蔵省だろうが、技協をどこの官庁がやっているだろうが、マルチだろうがバイだろうが、大きな援助ファミリーとして日本の国益あるいは世界のいわゆる国際貢献をするという観点から援助をしている。その援助ファミリーの中でどうしても緊急避難的に困っているところがあると。今、国際機関に対する拠出を三五%削ってしまうと、これは大変な間違ったメッセージを送ることになる。こんなに研修員を減らしたり青年海外協力隊を減らすということは、やっぱり非常によくないインパクトがある。その中で、多少余っているほかの援助ファミリーの中から少し資金を緊急的に回してください、こういう言い方で今大蔵大臣に陳情しているわけなんです。  現場におられた立場から、これは理事にお聞きする問題ではないとも思うんですけれども、そこら辺のお金を今緊急避難的にこちらに持ってきて、ある程度日本ODAの間違ったメッセージを送らないようにするという考え方についてどういうふうに考えられるかということ。  ちょっと長くなりましたけれども、一言ずつ。
  44. 杉山隆彦

    参考人杉山隆彦君) 新聞報道にありました件ですけれども、当時、私はちょうどケニアに所用で参っておりましてそういうデモがあったときにおりましたけれども、私の見ますところ、この報道というのはかなりゆがめられて報道されていると思います。  まず、デモが大使館に押し寄せるようなニュアンスになるわけですけれども、それは大使館のある位置がメーンストリートでデモの通る道であったことがあたかもデモが大使館へ来るように書いてあったと記憶しておりまして、非常にゆがめられておる。それから、そのデモが日本援助はモイ政権を支えると書いたものを示していたということでございますけれども、私はいろいろ現地でも聞いてみましたけれども、特にそういうことがあったような気配もございませんので、その辺のところは真偽のほどは確かじゃないと思います。  そういうことですけれどもアフリカから報道されますものは、何か特にODAにかかわりますと大体ネガティブに報道すればという傾向が非常に強いように思われるところもありまして、そういうことで私は、この新聞については偏見といいますか非常に偏りのある報道であったと理解しております。  現実に日本が行っております援助を見てみましても、多くの技術協力は、ケニア人の庶民の子弟に対する教育であるとか、あるいは農民に裨益する技術協力であるとか、婦人あるいは弱者に稗益する人口教育であるとかというようなプロジェクトが多うございます。庶民に裨益する協力日本はしているという一般国民の意識が高い国だと私は理解して援助に携わってまいっておりますので、直接そういう批判が出てくるということは余りなかった国でありますし、今もそうだと私は思っております。
  45. 山本海徳

    参考人山本海徳君) 大変難しいお話なんでどうお答えしていいかわからないんですけれども円借款が非常に成功したがために途上国側からは確かに着実に返済が行われております。このお金は、翌年度資金計画の中にきちっと織り込まれて、さらに新年度の出資金幾ら、借入金幾らという形で構成されているわけであります。そして、聞くところによりますと、来年度の事業予算要求を一〇%カットという線に沿って規模縮小の要求をやっているようでございますから、OECFとしてもそれなりの縮減はやっているんじゃないかなと思うわけでございます。  片や、借款というのは累積的に赤字になる、大変赤字の幅が広がっていくという要素があるわけでございますから、そうならないように細心の注意を当局がやっておられるんじゃないかなと思うわけであります。さらに最近、地球環境問題に貢献するようなプロジェクトにつきましては、中国なんかに対してもやっているかと思うんです。第二世銀並みの条件ですね、〇・七五%、四十年、十年の据置期間を含むといったような条件を設定して、今は限られた予算の中で環境援助を重点的にやっていこうというふうなことを言っているわけであります。それはOECFの中ではコストの足を引っ張るものでありましょうから、どうしてもそういう出資金というものを減らすわけにいかないといったような要素はあるんじゃないかなというふうに思います。  いずれにしましても、こういう問題が出てきたときに思いますのは、やはり援助を要求するときにしっかりと一元化してきちっとした議論をするというシステムになっていない、予算折衝のところでやるというところに非常に問題があるんじゃないかなというふうに思います。そんなような感じがしております。
  46. 板垣正

    ○小委員長板垣正君) まだまだ質疑もあろうかと存じますが、予定した時間が参りましたので、参考人に対する質疑はこの程度とさせていただきます。  一言ごあいさつ申し上げます。  本日は大変お忙しい中、長時間御出席をいただき、貴重な御意見を賜りましてまことにありがとうございました。本小委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十分散会