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1997-10-27 第141回国会 参議院 国際問題に関する調査会対外経済協力に関する小委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十月二十七日(月曜日)    午後三時開会     ————————————— 平成九年十月二十二日国際問題に関する調査会長 において本小委員を左のとおり指名した。                 板垣  正君                 馳   浩君                 山本 一太君                 広中和歌子君                 福本 潤一君                 角田 義一君                 田  英夫君                 上田耕一郎君 同日国際問題に関する調査会長は左の者を小委員 長に指名した。                 板垣  正君     —————————————   出席者は左のとおり。     小委員長        板垣  正君     小委員                 馳   浩君                 山本 一太君                 広中和歌子君                 福本 潤一君                 角田 義一君                 田  英夫君                 上田耕一郎君    事務局側        第一特別調査室        長        加藤 一宇君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○対外経済協力に関する件     —————————————
  2. 板垣正

    ○小委員長板垣正君) ただいまから国際問題に関する調査会対外経済協力に関する小委員会を開会いたします。  まず、本小委員会運営につきまして、前回いろいろな御論議がございまして、十分尽くされたとは言えませんでしたが、大体の御意向に基づきながらまとめたものをお回しした次第でございます。  これまでの調査会での議論を踏まえて、さきに持ち回りでお渡しした案、つまり問題点を大きく三つに分けまして、ODA理念の問題、第二点としてODAあり方なり現状の問題、つまり実施体制政策決定過程実施状況等々の問題、第三点が国会ODAとのかかわり、ここで各国の事情なりODA大綱ODA基本法、こういう問題点について御論議をいただく。大まかでございますけれどもこの案を基本に行うこととして、議論内容次第では柔軟に対応してまいりたいと存じます。  そういうことでよろしゅうございますか。
  3. 馳浩

    馳浩君 異議があります。  この前は議論をしている途中で話が終わったのであって、もうちょっと運営あり方について詰めていただかないと、例えば十二月中に何か一つ方向性を出すのか、あるいは、通常国会に継続してこの小委員会は続くわけでありますから、来年の五月か六月ぐらいを目途にして出していくのかというタイムラグが、私たちもお互いにわかっていないと議論のしようがないというのが一点。  それから、この時期に小委員会を設置することの意味考えたらおのずと議論方向性も定まっていくのかもしれませんが、その点、この前の議論では途中で終わったので委員皆さん方とのすり合わせができていない。  それから、やっぱり以前の経緯もありますから、屋上屋を重ねて、話が以前の議論からはみ出したりとか全く方向性が違ってしまったりするのも私はいかがかと思いますので、その点を踏まえてもうちょっと運営あり方について議論を重ねた上で、結果的にはこの三点の議論に入るのかもしれませんが、もうちょっと煮詰めていただきたいと私は思います。
  4. 板垣正

    ○小委員長板垣正君) 過去のことを踏まえながら、議論内容を今申し上げたような極めて大まかですが三点にして、その中で自由闊達な御論議をいただく。そういう中で、方向性といいますか一致点、あるいは一致できない点、いろいろ出てくると思います。一応のタイムスケジュールといいますか、その辺は調査室とも相談をして、先般も申し上げましたが、大体この臨時国会内、年内を目途に中間的なまとめが、方向性がまとまればと思うわけであります。  来国会も当然この小委員会も存続し、かつ御論議もいただき、目安としまして五月の連休前ぐらいまでに報告書をまとめていただく。その辺のスケジュールを念頭にお進めいただいたらどうか、こう思っております。  それでよろしゅうございますか。その辺のところで今後の論議の中で重複するとかなんとか、いろいろなことはやってください。
  5. 馳浩

    馳浩君 それでほかの委員皆さん方がよいのであれば、私は異存はありません。     —————————————
  6. 板垣正

    ○小委員長板垣正君) それでは、対外経済協力に関する件を議題といたします。  本日は、ODA理念につきまして、平成元年外交総合安全保障に関する調査会での七項目合意及び各会派から出されていた基本法案等を踏まえっつ、大体二時間、午後五時までを目途に小委員皆さんで自由に意見交換していただきたいと存じます。  まず、意見交換が円滑に行われるよう、意見交換に入る前にお一人五分以内でODA理念についてお考えを順次お述べいただきたい、その後で御論議をいただきたいと存ずる次第であります。順番は、お手元に差し上げてありますが、小委員の名簿の順番でお願いをいたしたい。  御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、馳君からお願いいたします。
  7. 馳浩

    馳浩君 五分間は私はそんなに特別必要ないんですが、平成元年六月二十一日にまとめられた七項目合意事項というのは、これはやっぱり国際情勢であるとか日本国内情勢考えれば、日本としても軍事的な協力はできない以上は、ODA予算をさあふやせという量的な拡大を図る時期の合意事項というふうに私は考えられると思います。  現在、議論されておりますけれども財改法の中でもODA予算一〇%削減、あるいはポスト冷戦の時期にもなってきているという時期に、この合意事項が今現在までに実際にどの程度実効性を持って実現されてきたのかという意味での、ある意味では国会内における評価をまずこの七項目合意についてしていったらいいのではないかというふうな意見を持っております。  具体的に言えば、このときの理念目的は大きく分けて二つ自助努力支援相互依存性という柱があったわけでありますが、今現在、例えば対GNP比〇・七%という国際目標の達成もはるか遠い夢でありまして、〇・二%という現実がありますし、あるいは私は、その評価あり方、フォローアップ、それから政策評価した後の次期へ向けてのフィードバックのあり方についてもまだ十分ではないという意見も持っております。  それから、七項目合意の中にあるんですが、「本院に国際開発協力に関して審議する場が必要である。」というその「場」というのは、どこでどのようになされているのか。私の印象では、決算委員会の場で資料を出していただいてそれを追認するというふうな程度で終わってしまっているのではないか。そういう意味からいえば、経済協力についてのもっと機動的な場が、そして議論される場が必要ではないかというふうに考えております。  そういった中から、総合的に七項目合意事項の見直しをこの小委員会でまずは最初にやっていただきたいという考えを私は持っております。理念についてはその次の段階だと私は思っております。  以上、申し上げます。
  8. 板垣正

    ○小委員長板垣正君) ありがとうございました。  それでは次に、山本君。
  9. 山本一太

    山本一太君 この小委員会フリーディスカッションということで、あえて余りまとめたり準備もしてきませんでした。いろいろ思いついたことを簡単にお話ししたいと思います。  先ほど国連本部のパレスチナのプロジェクトのUSG、事務次長でピーター・ハンセンというのが部屋に訪ねてきまして、三十分ぐらい、とにかく日本ODAを減らしてもらっちゃ困るという話が切々とありました。この間、小渕大臣ニューヨークに行かれたときに、一日だけついてこいということで一泊二日でニューヨークに行って、アナン事務総長お話をしたときも最初ODAの話が出まして、今、日本国連に対する自発的拠出金を削減するという問題が起こっているんですが、国連機関の方から悲鳴が上がっておりまして、改めて日本ODAのインパクトの大きさというものを感じています。  やはりODA理念それから体制、そんなことも含めて、日本外交の大きな柱としてこの小委員会でいろんな議論をしていくというのは極めてタイムリーじゃないかというふうに思った次第です。  理念については、先ほど小委員長がおっしゃったように、先般まとめていただいた大体三つ四つ項目の中でいろんな議論をする中でまた考えていけばいいと思いますし、言い古されたことですけれども人道主義なのか相互依存なのか、自助努力支援ということを主眼にするのかへさまざまなことがあります。  私が一点だけ申し上げたいのは、先般、若い議員一緒アジアを回ったんですけれども、そのときにアジア開銀に行きまして、二時間ぐらいいろんな理事の方とお話をしたときに、佐藤さんというアジア開銀のトップの方が、余り国益国益と言うのはどうかと。いじましく絡めないということもやはり日本マルチの場で信用されている理由ではないかということをおっしゃったので、そのいじましく絡めないという言葉をメモして帰ってきたんです。  顔の見える援助というのは何なのか、これはODA理念にも通じるところだと思うんですが、マルチとバイをどうやって組み合わせてこれから日本援助戦略としていくのかというところも含めて、やはり理念の中で考えていきたいなというふうに思います。いじましく絡めないということであればどうやってそれを理念に落としていくのか、ODAを通じて追求する国益というのは具体的にはどういうことなのか、そういう中でいろんな議論を始められたらいいなと思います。  理念についてはいろんなことがあるんですけれども、今まで言われているようなことなので、最初発言としてはこのくらいにしたいと思います。
  10. 板垣正

    ○小委員長板垣正君) ありがとうございました。  それでは次に、広中君、お願いします。
  11. 広中和歌子

    広中和歌子君 さきの馳先生そして山本先生がもう既に立派なことをたくさんおっしゃったので、補足的に申し上げることになると思いますけれども、やはりODAというのは我が国日本にとって大きな意味での国益をあらわすものではないかと思います。いじましくない国益ということは当然でございますけれども、二十一世紀日本がどういう国としてどういうイメージ世界に与えたいかということを考えたときに、ODAの果たす役割が非常に大きな意味を持つのではないかと思います。  私が非常に今問題意識を持っておりますのは、政府開発援助大綱の中で掲げられています基本理念人道的考慮相互依存性認識環境保全自助努力支援と、四項目ここに書かれておりますけれども、しかし現実にそれがどういう形で実施され、そしてどういうふうに評価されているかということが十分に見えてこない、受け取られた側としての声も余り聞こえてこないんです。  それよりも、特に最近のODAに関する概算要求中身などを見ておりましても、今、山本先生が指摘されましたように、国連機関への任意拠出金が一〇%よりももっと大幅に、三〇%、四〇%という額で削減されている。まさに口で言っていることと実際にやっていることとの間にすごく大きな乖離があるわけでございまして、ですから、理念を幾らきれいなことを述べても実際にそれが実効性が伴っていないということであれば、まさに大きな意味での国益を損じていることになり、それだったら最初から結構なことを言わない方がいいんじゃないかとむしろ感じられることでございます。  ということで、日本の二十一世紀イメージ日本がどういう形で世界に発信していくか、そういうところも含めて基本理念をもう一度問い直すと同時に、その実態との乖離、そして現状分析、そういうものをしていくことが必要なのではないかと思います。  以上です。
  12. 板垣正

    ○小委員長板垣正君) ありがとうございました。  それでは次に、福本君、お願いします。
  13. 福本潤一

    福本潤一君 ODA、長期間にわたって、またかなりの額を日本発展途上国を中心に拠出しておるわけでございますが、もともとこれだけの膨大な予算が出るならば、基本的に理念があって法があって、その法に基づいて予算執行という形が本来は当然であったのにもかかわらず、それだけの膨大な予算が出される基盤法というものができていないまま現状が進んでいるというところに大きな問題がある。  今まで何回か法案ができておるにもかかわらず、なぜ通っていないのか。今までの法案を見てみますと、理念に関してもそう大きな差があるわけではないなと、例えば人道主義とか相互依存とか自助努力支援とか。そういう意味では、国会が法に基づいて予算執行を具体的にするという形で今後ODA基本法をつくって、その中にきちっと理念を入れた上で具体的な予算執行をできるような形に持っていきたいと思っております。  具体的な理念中身では、先ほどから人道主義相互依存、また本来は発展途上国自助努力支援というような形の問題が一番基本的にはうたわれているわけでございますが、先ほど山本先生また広中先生が言われたいじましく絡めないということは基本にはあるかと思います。法としてこれをうたううたわないは別として、人道援助という形で日本が参画していった場合、援助の規模、限度というのは当然限界があるわけでございます。  中近東の九〇年の戦争のときに関しても、日本は金だけ出す。また、この夏に北方領土の方へ行かせてもらいましたけれども、本来日本領土をロシアが占有している。所有権と占有が違うという状態のところにも日本人道援助をしている。  ただ、その人道援助している中身を人道的な立場だけという形でやっておると、これは外交上にとっても問題解決の方に行かない面もあるんじゃないかというふうに思いますので、いじましく絡める必要はないと思います。また、日本人が海外へ行って、JICAがODA予算に基づいてかなり仕事をしていますが、プラス面の働きもかなりしておりますので、そこらの具体的な正当な評価も含めて今後やっていって、いじましく絡めるのではなくて、正当に要請する必要があることは要請できるような形で、変な縛りを入れて完全に理念の中で人道主義だというだけで対応するのではない方向でいったらどうかというふうに考えております。  簡単ですが。
  14. 板垣正

    ○小委員長板垣正君) ありがとうございました。  では次に、角田君にお願いします。
  15. 角田義一

    角田義一君 こんなことを言うとちょっと私は自分の不明を恥じるんですけれどもODAの問題が大変大事な問題だということは認識をしております。今改めて小委員に選ばれていろいろ資料を読ませていただいておりますが、かつての議論の中で当然のこととして扱われたのかどうかわかりませんけれども、改めて日本国憲法前文精神、これを今の時代、これからODAをやるときに改めてもう一遍この憲法前文精神というものをきっちりと踏まえる必要があるのではないかなという気を私は大変強くしているわけです。  それで、いろいろ各党のあれを拝見するんですけれども前文についてもいろいろ議論があるところだと思いますけれども、私に言わせれば、かなり格調の高い宣言のようなものがODA基本法の中にきちっと書かれているのかな、その辺がどうなっているのかなと率直に大変疑問に思いました。今まで余り関係していない者として恥ずかしいんですけれども。  したがって、理念大綱とかそれから合意とかというところではあるわけで、そんなに違わないと思うんですけれども、改めて強調したいのは日本国憲法精神です。特に、「人間相互関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しよう」、こういう一節があります。そのことをきちっと踏まえた上でODAというのはされるべきだと。そのことによって私ども国際社会において名誉ある地位が占められるんじゃないか。そのことをどういう形で確認するかはこれから議論をされればいいと思いますけれども一つの問題として皆さんに御提起を申し上げ、こんなことは当然のことだからいいんだよ、当たり前のことなんだ、それは前提なんだよというのであればそれはそれで結構なんですが、もう一遍この時代でそのことをきちっと考えていただいたらというふうに思います。  それから、四つのことをいろいろ言われていますが、そのこと自体は別に異存がありませんけれども、例えば、これは私はある宗教家からの非常に切実な話を聞きましたけれども、国を挙げてもいいと思いますが、フィリピンですね。フィリピン河川改修をやる。河川の周辺には住民がいっぱい住んでいる。日本ODAの金によってその河川改修あるいはその辺の開発が行われるんだけれども、そこの住民が全部立ち退きを食っている、強制的な立ち退きを食っている。そして、その住民たちはそれに対して反対をしている。こういうことで、何とか救済してくれということをある宗教家が訴えられたという話を聞きまして、角田さん、これはどうなのかね、どうしたらいいかねという深刻な問題提起を私は今現在受けているんです。  そのことを考えますと、大変貴重な私どもの税金を使い、原則として相手の国がやることなんですけれども、その裏に地域の住民を客観的にいじめるような形で日本の金が使われているというようなことになれば、これはもう変な顔が見えちゃうんです。顔が見えるとか見えないとか、とんでもない顔が私に言わせれば見えちゃって、これはもう日本に対する一つのそこの人民の信頼というものを裏切ることになるわけで、そういう形でやられる。はっきり言えば、我々の出したお金、相手政府がそれを使うわけでしょうけれども、それを請け負うのが例えば日本企業であって、日本企業がそれによって潤うというようなことであれば、これは何のためのODAかというふうにならざるを得ないんじゃないか。  その辺をどういうふうにチェックをしていくのか。そうでないと、基本理念を幾ら掲げても、使われ方が間違っておるととんでもない形になるんじゃないか。そういう事例を考えますと、よほどこれは基本理念というものを踏まえながらもやり方というものをよくよく考えなきゃいけないんじゃないか、こういうふうに思います。  それから、これはちょっと現実的な話になるんでしょうけれどもODA予算を一〇%切るということですね、切ろうとしている。ただ私は、今の例から言っても、例えばハード面の、土建の部分とか、そういうところは場合によったら切ってもいいんじゃないかと思うけれどもソフト面において一〇%切られる、あるいは事によったら三〇%も切られるというようなことは、やっぱりこれは相当大きな影響が出るわけです。一律一〇%切る、あるいは特にソフト面で切るということについてはよほど考えませんと、日本ODAに対する一つ信頼というものを私は損なうんじゃないかというふうな気がいたします。  かつて日本援助を受けて新幹線をつくったりダムをつくったりした時代もあるわけですから、今逆にこれだけの金を費やすわけですから、結論的に言えば、憲法前文精神をもう一度踏まえてきちっと理念を確認して、その理念がちゃんと実現できるような方策というものをお互い考えていったらいいんじゃないかなというふうに私は思います。  以上です。
  16. 板垣正

    ○小委員長板垣正君) ありがとうございました。  それでは次に、田君にお願いします。
  17. 田英夫

    田英夫君 日本ODA理念から議論をしようということですが、日本ODA問題点というのは、一つ理念が明快でないということ、もう一つ実施体制に欠点があるんじゃないか、この二つだと思います。  理念については、政府のいわゆる大綱というものができておりますから一見理念のようですけれども、実はこれはもう極めて常識的なことであって、大変自分にかかわるので言いにくいんですが、かつて議員立法ODA基本法案を参議院に提出いたしましたが、その中の私ども基本理念として掲げた幾つかのもののうちの四つをとって、それを政府理念大綱という形で出しておられる。果たしてこれで理念と言えるだろうか、こういう疑問を持たざるを得ません。  人道主義相互依存自助努力支援というようなことになるわけですけれども、私ども基本法案をつくって考えたときには、例えば対象国生活向上ということになれば、貧しさの度合い生活の苦しさの度合い、そういうものをやはりその国民立場に立って考えなくちゃいけない。どこに線を引くか。今、政府のやっているのは世界銀行の算定方式で、世銀方式と言っていますが、それで基準を決めている。ですから、韓国が卒業しシンガポールも卒業するというような形をとっているわけですが、そういうやり方で本当にいいだろうか。対象国国民立場ということをもっと基本に据えるべきではないかということが一つ言えます。  それから、今、角田さんの言われた日本憲法精神からしても、やはり平和を維持し促進するということを根底に柱として掲げなければいけないんじゃないか。いわんや軍事用に転用されるようなことがあってはならない。これは私ども基本法案の中に一つの柱として入れた点であります。  それから、環境保全に配慮しなければならない。今はもちろん環境問題は大きな柱ですけれどもODA理念の柱としても環境保全ということが重要だと思います。  それから、相手国住民の参加ということを求める必要があるんじゃないか。住民が反対するというようなものにODAが出ていったということがあります。そういうことであってはならない。  さらに重要なのは、透明性の問題。これは日本国内でも、それから国際的にも、日本ODAがどういう国にどういうテーマ、プロジェクトで幾ら出されているかということが明らかにされていなければならない。この点についてはやはり国会とのかかわり、つまり国会に報告するというようなことは少なくとも法律で義務づけておきたいと私どもは思いました。この点をどういうふうにするか。これは、私ども国会にいるわけですから、特に重要な問題と思っております。  それから、体制の問題です。これは基本理念ということに直接触れないかもしれませんので簡単に申し上げますが、ちょうど行政改革が行われようとしているやさきだけに時間的な制約がありますけれども、どうこれに対応するか。前回もちょっと議論があったところですけれども、今までは十九省庁でそれぞればらばらに技術協力をやっている。それから、借款の供与については四省庁体制で経済企画庁が幹事役をやっている。こういうような政府体制の問題をきちんと整理していく必要がある、こう思っております。  大変雑駁ですが、そういうことを申し上げておきたいと思います。
  18. 板垣正

    ○小委員長板垣正君) ありがとうございました。  最後になりましたが、上田君、お願いします。
  19. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私は、七項目合意をつくったときに小委員としてずっと皆さん一緒仕事をしまして、今度改めて理念目的、諸原則というものを見てみて、かなり積極的な定式化に当時としてはみんなでまとめ上げられたんじゃないか、そう思います。  つまり、発展途上国先進国とが国際的な相互依存関係にある、我々先進国とその国民人道的立場に立って発展途上国自助努力援助する、支援するんだという基本的な考え方ですね。これは抽象的なようだけれども非常に重要な原則で、この点をはっきり確認すれば、いろいろ具体的な問題、内容についても実施体制についてもやっぱり出てくるものだと思うんです。  これまでのこの調査会意見でも、西川潤参考人が、九〇年国連開発計画人間開発が提唱されたと。私、持ってきましたけれども、九六年度のODA白書、この序文は「二十一世紀に向けた開発戦略−人間中心の開発を目指して」と。だから、今この開発問題ではもう国際的に人間中心の開発というのが中心的概念になったということをODAの白書でも確認しているので、そういう人道主義、人間中心の開発政府もここまで来たというのは僕は非常にうれしいんですけれども、それはしっかり据える必要があると思うんです。  それから、私、前にもちょっと触れたことがあるんですけれども、神戸大学の教授で、国連人権規約委員会委員をおやりになってきた多谷千香子教授が「ODA環境・人権」という本を書かれています。  これには、八六年の国連総会で発展の権利という宣言が確認されたと。これは人間の生存と尊厳に不可欠なベーシック・ヒューマン・ニーズ、これを先進国としても、発展途上国がそういう発展の権利をかち取っていく努力を支援するんだという、この発展の権利ということが非常に重視されて、多谷教授はこの中でも、「現在求められるODA理念とはなにか」というところで五項目挙げています。一、人道的考慮、二、相互依存認識、三、自助努力支援、四、環境の保護、五、平和国家としての貢献と。この五項目理念としては私も賛成で、やっぱりこういう中身はどうしても取り入れる必要があると思うんです。  この七項目というのは、平成四年の政府開発援助大綱の中にも大体取り入れられて、人道的見地からということで入ったんですけれども、ただ政府のこの基本理念というところは、いいものもあるけれども、非常に問題のあるのがその後づけ加わっているんですね。  私は二点挙げたいと思うんですが、結局・インフラストラクチャー、経済社会基盤の整備ということがずっと出てくるわけですよ。ずっと書いてあって、「「良い統治」の確保を図り」と、よい統治まで出てくるんだね。だから、インフラストラクチャーとよい統治、その国のよい統治を確保するという政治目的が入っているところが非常に我々は問題だと思うんです。  私たちは、前から日本ODAについては三つ大きな欠点があると。一つは軍事的な戦略援助、アメリカへの追随だと、二番目は日本の大企業の東南アジア進出が重点になっていると、三番目は秘密主義だということは言っていたんです。  それで、これはもう私たちが言っていたんですが、私たちだけの見解じゃなくて、読売新聞の解説におもしろいのがありました。五月二十一日付の解説部の杉下さんの記事で、「一方的戦略援助 安定生み出さず」。彼は、ODAの動機は二つあると、「一つは人道的援助、もう一つは戦略援助だ。」、二つだと言うんです。戦略援助というのは何かというと、イデオロギーと利潤だと言うんです。OECDのDACが行ってきたODAの大半は戦略援助だったという判定で、これは真の安定をもたらさないと言うんですね。  だから、戦略援助ということで我々が問題にしてきた二つですよ。一つはイデオロギーによるアメリカの戦略援助、これに対する日本の追随。もう一つは利潤ですね。やっぱり大企業のインフラストラクチャーを整備するということでプロジェクト輸出、これを円借款などでやっていくことが主になってくるという、この二つの戦略援助の問題がここでも指摘されていると思うんです。  政府基本理念の中に人道的見地というのをずっとこの七項目を取り入れて書きながら、その後でインフラストラクチャーとよい統治というのが出てきますと、そういう二つの戦略援助というのはもう基本理念の中へ入っちゃっていると思うんですね。これは非常に問題だと思うんです。  五月七日に、外務省の畠中経済協力局長が「我が国の今後の経済協力」ということを説明されて、そのとき資料をいただきました。それを見ると、「今後、東アジアへのインフラ需要は益々拡大(東アジア・太平洋地域で今後十年間で一兆三千億ドル以上)。」と、こういうふうにそこを重視するものが早くも出ているんですね。九六年度の人間中心の開発とうたったのと一体どういう関係にあるんだろうと、私はちょっと不思議に思う。  それから第五次中期目標、九三年から九七年に七百から七百五十億ドルというふうに立てていて、これはなかなかいっぱいにならぬというんだけれども、これが何でできたかというと、宮澤首相が九三年の日米首脳会談で、世界の諸問題に対して安保条約を軸に共同対処する、ODAは向こう五年間に七百五十億ドルということを約束して、それがこの第五次の中期目標になっているんですね。  そういう点では、基本理念基本目標を本当にしっかりしたものにすることは非常に重要で、やっぱり我々が言うこの日本ODAの欠点、軍事援助並びに大企業の海外進出に対する税金による支援、そういう二つの戦略援助の傾向がしっかり是正されて、本当の意味での人道的な発展途上国の人間的な開発、発展の権利に対する、その自助努力に対する支援という方向のものにするような理念原則をうたう必要があるのではないかと、そう考えています。
  20. 板垣正

    ○小委員長板垣正君) ありがとうございました。  それでは、これから意見交換を行います。  発言を希望される方は挙手を願い、私の指名を待ってお述べいただきたいと存じます。  それでは、挙手を願います。
  21. 馳浩

    馳浩君 理念のところで、まさしく十二月にCOP3が日本で開かれるわけですが、この環境保全というのは、先ほどの政府ODA大綱でもたった一行か二行程度の問題でありますけれども、地球が存在するかしないかぐらいのこういう大問題がもう目の前に迫っておる段階で、理念の中にこれをひとつ私はもうちょっと強く打ち出していくべきではないかと。確かに財政構造改革も必要でありますけれども、これは一応今、CO2の削減目標という数値だけを近視眼的に見ておりますが、そうではなくて、地球がこれから存在していくかどうかという問題であります。  私は、ODA世界的な必要性ということを考えたときに、この理念の中にまさしく地球温暖化というものに対してやっていかないと、環境保全というと、どうしてもその国あるいは地域だけの環境保全というふうな見方になってしまうのではないかと。地球全体の温暖化に対抗するための一つ理念というものをもうちょっと強く打ち出すべきではないかという意見を持っております。  以上です。
  22. 山本一太

    山本一太君 さっき最初に五分話したときに、アジア開銀の佐藤総裁のいじましく絡めないという言葉を引用したんですが、ちょっと言い方に誤解があったかもしれないんです。もちろん、援助理念として人道主義というのは必要だと思いますが、それと同時に、相互依存といいますか戦略的援助というものは私は必要だという考え方です。  このいじましく絡めないということを中心に持ってきていわばODAを常に考えるという意味ではなくて、ODAはこれからも外交政策の重要な一つの柱になるわけで、外交政策というものは当然そこに国益というものが絡まってくるわけです。そういう意味では、人道主義というものはもちろん大事ですけれども、そこに日本国益、それが相互依存であり、あるいは世界の安定につながるということに結びつかなきゃいけないとは思うんですけれども、当然、国益を踏まえた援助というのは非常に大事だということをちょっと申し上げたいと思います。ちょっと誤解があるといけないかなと思いました。  今の北朝鮮への援助の話も、人道的な面からいろいろと議論がされています。当然、その人道主義から北朝鮮への援助というものを考える切り口もありますが、もう一つ、なぜ北朝鮮に日本が関与しなければいけないかということは、安全保障の面とか戦略的な面とかいろいろあるわけです。すなわち、今、北朝鮮を突然死に追い込むということがどう考えても日本の利益にならないし、またアジア太平洋の安定につながらないという、ここら辺のポイントもあって、やはり米支援というものが決まったと思うんです。常にツートラックで、二つの側面があるということを申し上げたいと思います。  ちょうどアジ銀の会議のときに、各国の理事の方も来ていていろいろお話しする中で、私が佐藤総裁に申し上げたのは、いじましく絡めないというのはそれは一つ考え方かもしれませんと。確かにアジ銀というところは日本の顔が随分見えておりまして、総裁も日本がとっていますし、国際機関と違って主要なポジションはほとんど日本人がきちっと固めているというところがあるんですが、しかしながら、そのいじましく絡めないということでは、タックスペイヤーの理解がそれだけでは得られないという状況になっているということもありますというお話をしました。  今、財政削減のもとで、福祉の予算から公共投資の予算からいろんな予算を削られて、地元に帰ると、うちの町村にODAが欲しいということを言う方もいっぱいいまして、あそこに援助するんだったらうちに援助してくれなんて言われております。必ずしもマルチ援助が顔が見えないとは思いませんが、角田先生がおっしゃったように変な顔が見える援助はやっぱりいけないんですけれども、きちっとした顔の見える援助ということは議論していかなければいけないのではないかと思います。  それと、広中先生がおっしゃっていた、理念としては随分いろいろ立派なことがあるけれども、大事なことはその理念に基づいてどういう政策をきちっと展開しているかという点だというお話で、それは私も同感でございます。しかしながら、ここら辺は外交との絡みでいろいろ簡単に、単純にはいかないところもあります。この点については、理念ということについてはもう随分今までいろんな議論もあって、何項目かの合意もありますし、ほとんど基本的な理念というものはこの中に網羅されておるものですけれども、これをいかに政策として実施に移していくかというところをやっぱり考えていかなければいけないのかなというふうに思いました。  それと、上田先生がおっしゃったインフラの整備とグッドガバナンス、グッドガバナンスというのも最近はやりの言葉で、どうも日本語でよい統治と訳しているらしいんですが、人道主義、人道を中心に据えるべきだというのは当然ですが、インフラの整備があって何でいけないのかなと。なぜこれが政治的なのかなという疑問を私は持っておりまして、やはり一つの国の開発というのは、例えば借款と技術協力があったら両方必要だと思います。インフラの整備というのは、開発途上国の発展を助ける意味で私は大事な要素の一つだと思いますし、その技術協力と円借款、ソフトとハードがバランスよく行われるところにやはり援助の実質が上がるのではないかというのを援助機関にいて実際に経験してきましたので、そこら辺のところを政治的なものというふうに決めつけるのはちょっとどうかなと思いました。  あと読売の件で、援助というのは二つしかない、人道援助かあるいは戦略的援助だと。戦略的援助はイデオロギーと利潤しかないというのは、これは尊敬する杉下次長さんのお言葉なんですが、戦略的援助をイデオロギーと利潤だけというのはちょっとシンプルな考え方じゃないかなと。戦略的援助というものは、その国の安全保障、地域の安全保障、そういったものを含めたコンセプトであるべきで、戦略的援助は真の安定をもたらさないというのはちょっと違うのではないかなということを感じました。  一人の発言時間をちょっとオーバーしましたからここら辺にしますけれども、そんなことを感じました。
  23. 福本潤一

    福本潤一君 今のお話もありましたけれども最初山本先生の言われたいじましい援助にとられないようにというのが、戦略的外交も含んだ上での話であるということはよくわかりました。  最初に馳先生から言われた、京都会議もあるので環境保全環境保護ということを大いに据えるべきだと。地球全体の支援であるから当然でありますけれども、京都会議自体はCO2の削減ということが基本的な目標でやっておる会議でありますので直接には結びつかないにしても、環境保護というテーマが日本に入ってきますと、例えばODA予算の中でも環境ODAという形で、かなり具体的に環境に絡むODAを目標値をつくった上で推進する。  そして、私どもが具体的に中身を見ますと、環境保全、保護とは言いながら、先ほどの角田先生からありました、具体的には例えばダムを開発したり、これは開発保全というのはどこでどういうふうな形で区別できるのかという形になりますけれども、実際上の地域の環境というものの保全のためにかなり開発的要素というのは大きいわけです。昔から日本でも、新幹線とかダムとか、インフラ整備がかなり進んでいっているじゃないかと。  その整備が進んでいったことが、先ほどの山本先生と絡んでくると思いますけれども、実際上は環境の保護にもなっておる側面もあるにもかかわらず、何か常に悪者のような形でとらえられる。現実にそれを一番利用し、また一番そのメリットを受け、なおかつインフラの整備で例えばどぶ川が河川になって住民生活環境としては整備されたと、環境ODAという形で発展途上国にはかなり進んでいるという現実の問題というのは、日本の昭和初期から所得倍増計画以後、かなり発展した変化の中で享受しているメリットのプラス面も、効果としては拾っておかなければいけないのじゃないかというふうに私も思います。  先ほどの上田先生のお話かなり私の頭の中も整理されてきたわけですけれども、人道的目的と戦略的な目的二つある、その中でさまざまなマイナス面、インフラの整備、よい統治を確保するというお話問題点として指摘されております。  ただ私、はっきりと地球環境の問題と地域環境の問題というのは整理していかないと、インフラの整備によって、ODA予算ではないですけれども、例えば戦前の台湾やなんかですと、ダムの開発日本人が、八田与一という人ですけれども、偉人のように扱われて、日本の二宮尊徳のように銅像が各地に建っているような人までおられるわけですから、ソフトとハードのバランスという意味で、インフラの整備悪者論が地球環境の問題から即座に地域環境の問題に転嫁されたような形で論議が進んでいるところをちょっと整理しておかなければ、悪者論のところも具体的には実効性のない話だけの話に終わる可能性があるというところを少し感じました。  私としても、またここの点も踏まえて地球環境、地域環境二つの視点を混同しないで議論を進めていきたいというふうに思います。
  24. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 山本さんの御意見がありました。  一つ、ちょっと私の言葉が足りなかったこともあると思うのですけれども、戦略援助ということで、イデオロギーの方です。私の言ったのは、日本独自の主体的な判断である援助をというのじゃなくて、アメリカの軍事戦略に追随している戦略援助、これが残念なことに日本の場合、事実上支配的だという悲しい現実があるのです。  私、前に国際問題調査会で質問して、アメリカの国防総省の幹部と日本の外務省の参事官が毎年ODAについて協議しているということを認めましたし、この間もその問題を取り上げたら、いや、どこの国でもやっているんだということがありましたけれども日本とアメリカの場合はもっと非常に具体的なんです。  例えば、アメリカの下院の軍事委員会で、アメリカの会計検査院の担当局次長が証言した中でこういうのがあった。「一九八〇年、アメリカに催促されて日本はトルコにたいする対外経済援助を増やした。トルコは西側同盟にとって戦略的に重要な国である。さらに日本は、その他の戦略的に重要な国々、たとえばエジプト、パキスタン、韓国、オマーン、などへの対外援助を増やした。」等々、具体的に日本にこう言ったらふやしたということをアメリカの下院で証言さえ出ているんですね。  それで、例の東アジア戦略、ナイ国防次官補が主導権をとったものが去年出ましたけれども、その中でも、日本の新しい地球的規模の役割には地理的、世界的な安定への日本のより大きな貢献が含まれる、日本世界最大のODA提供国であるという、これはODAをアメリカも東アジア戦略の中ではっきり位置づけているということがある。  我々は具体的に調べました。  詳しく言っていると大変ですけれども、例えばアメリカには安全保障援助というのがあるんですね。これは軍需品を売ったり軍事融資をしたりしているもので、それをアメリカが公表しているんですけれども、そのアメリカの軍事的な安全保障援助を受けている国で、日本ODAの対象としている国が二十カ国ある。これは全部表をつくりましたが、この二十カ国に対する日本ODAは何と二国間の援助の三分の一なんですよ、日本は百三十カ国に援助しているんですから。ところが、アメリカが軍事援助をやっている国だけで、二十カ国で三分の一とられちゃって、あと三分の二で百十カ国に分けているんだからあとは非常に小さくなるという残念な状況があるんですね。  この軍事援助だけでなく、アメリカが戦略的な重点を置いている国が別にもちろんありますけれども、それを合わせますと大体日本の二国間援助の半分がいわゆるアメリカの戦略援助ともダブっているんですね。アメリカは大体軍事援助と経済援助はもう一体にしてどんどん平気でやりますから、軍事援助の裏づけとなる経済援助日本に肩がわりさせているという現実があるんです。日本は、大体アメリカに追随していろいろなことをやるというのでちょっと残念ながら有名な国だけれども、このODAについても事実なんですね。だから、そういう点を直さにゃいかぬ。  だから、この前の七つの合意事項をつくるときにも私はこの問題を非常に重視して、それでこの諸原則の一に、「主権尊重、内政不干渉を基本として、自主的に行う。」ということで、当時、やっぱり余り追随はまずいと、日本として自主的にやる必要があるということは自民党の方も一致しまして、この自主性ということがまず冒頭掲げられたという経緯があったんですね。  それから、二番目のインフラストラクチャー問題も、これも重点が置かれ過ぎていてちょっと日本は突出しているんですね。そういう点は是正すべきだと。  これもデータで申し上げますと、私、調査会の会議でも指摘したことがあるんですけれどもODAの分野別内訳という表がありまして、この中に、社会インフラのシェアと同時に経済インフラのシェアというのがあるんです。DACの平均は、九三年で一九・五%、約二〇%、あと一四%という年もあります。日本は大体三〇%から、多い年は四四%。経済インフラのシェアがありまして、九五年は四四・五という数字が出ています。アメリカはわずか五・四、イギリスは一五・七、フランスは一一・九、ドイツは二〇・九ということで、DACの平均が一九・五です。  だから、私もインフラについて一切必要ないということを申しませんが、日本の場合にはこのODAが賠償と結びついて進んでいったという歴史的経緯もあるけれども日本企業かなり露骨な問題、政官財の癒着もありますけれども、このインフラのシェアが国際的にもかなり突出して多いという状況があります。  これについては既に反省も少し出ていまして、これはちょっと古いんですが、財界の調査機関の日本経済調査協議会が八〇年三月に発表した報告でこう言っています。この援助も、「紐つき援助やバイアメリカン、バイ××等のため、先進国企業の輸出や利益に貢献し、多国籍企業の進出に役立つところ大であったが、被援助国にとっては政府ならびにそれを取り巻く若干の関係者の懐ろを肥やすだけで、一般国民大衆の所得の向上にまではなかなか結びつかない。」と、かえって腐敗や汚職の温床にもなったということを財界の調査機関が反省を述べたことがあるんですね。  それから、中曽根内閣時代には、全斗煥政権やフィリピンのマルコス政権なんかに対する援助、これもかなりふやしまして、これが大きな問題になった、これは国民的反省の対象にもなったんですけれども。  だから、そういう性格が、欧米諸国のODAにそういうものが一切ないと私は言いませんよ、しかし、どうも日本の場合には突出してアブノーマルに強過ぎる。これをやっぱり是正して、せめて欧米並みにしていかないといけないということをちょっと申し上げておきたいと思います。
  25. 広中和歌子

    広中和歌子君 ODAに関して、日本が非常にインフラ中心である、しかもタイドというんでしょうか、受注するのが結局は日本企業である、ですから自己目的のためにODAをやっている、そういう意味で非常に戦略的援助であるというような言われ方はずっとされてきたんですが、それは事実だったのかもしれませんけれども、最近はそういうことを変えていこうという動きはずっとあるんではないかと思います。  評価されている部分については余り話題にならないことが、多分ODAを実施していらっしゃる方にとっては非常にフラストレーティングなことなんじゃないかと思います。その実情について余りにも私たちが知らないから、誤解があったりそれから攻撃があったり、あるいは自己満足があったりと、いろんなことがあるんじゃないかと思いますので、最初に馳先生がおっしゃったような、やはり審議をする場そして情報公開、そういうものが必要なんじゃないかということが一点あると思います。  それからもう一つは、なぜ日本で大きなインフラODAが多いかというと、ODAの額、それは私は今、日本のGDPから見て十分だとは思いませんけれども、それでも非常に大きいわけですね。大きいにもかかわらず、それを実施する体制というのが、要するに外務省で全部抱え込んじゃっているようなところがあって、もっとNGOを通じての支援とか、それから外国の人と一緒にやるとか、いろんな工夫をこれからさらに進めていく必要があるんじゃないか。  今までは仕方がなかったし、またインフラの整備も、福本先生がおっしゃったようにいい部分もなかったわけじゃないわけですから大きなのもいいんですが、これから日本の経済力がそれほど大きく成長しない中で、やはり援助の質ということがますます大切になってきたときにどういう形でやっていくか。その実施の体制の何といいますか向上というのをもっと具体的にディスカッションしていく必要がこの委員会であるんじゃないか。そして、何らかのサゼスチョンができればいいんじゃないかなというふうに感じます。
  26. 田英夫

    田英夫君 ODA理念考えるときに、今皆さんお話しになっているのとちょっと話がそれますけれども基本的に大事なことは、現在の実態、実情、過去の問題点、そういうものを我々は知る必要があるんじゃないかなと思うんです。  過去の方から先に申し上げれば、一つは腐敗の問題がありました。  例のマルコス疑惑と言われた大部分は実は日本からのODA援助にまつわるものであったと言われていて、私も現地へ行って、マルコスが倒れた直後フィリピンでもサロンガ委員会という調査委員会ができましたけれども、実はサロンガ委員会は、その調査の内容日本にも知らせていない部分があるんです。  簡単に言えば、日本からODA援助が行って、あるプロジェクトでお金が向こうへ行く、技術協力が行く。そのときに、実はその計画自体は日本企業が契約したコンサルタント、それも日本人ですが、それが計画をつくって相手国政府にそれを出して、その政府から日本政府に計画が提起される。そのときには既に日本企業もコンサルタントを通じて知っていますから、たちまちそこで日本企業がそのプロジェクトに参加することができる仕組みになっている。そこで、その間に立ったフィリピンならフィリピン、場合によってはこっちもあり得るのかもしれませんが、不正な金がキックバックしてくるということが当時言われました。日本の方までは我々は調査できませんでしたけれどもフィリピンの方は事実そういうことで不正が暴かれたわけです。  その体制というところが問題であることは間違いないんですが、例えば、名前を挙げては失礼ですけれども、現在、カンボジアもODA対象国として無償援助国になっているわけですから重要な国ですが、今のあの政府の状況からして、ODA援助してほしいものはたくさんプロジェクトとしてあるわけですが、それをカンボジア政府が企画をし立案をし日本政府に要請してくるという能力がなかなか十分ではない。しかし、最も必要な国であるということは間違いない。  あの戦禍の中から復興していく農業国ですから、農業技術も、あるいは地雷に対する問題も含めて、非常に重要であることは間違いない。それをさあやろうとすると、日本の専門家が調査をし企画し、そして日本政府援助し得るような形の要請に実はつくってあげなければできないということも事実なんですね。そういう実態を我々が十分把握しておかないと、空論のようなものをつくってみても仕方がない。要するに、実態をどこまでつかめるか。  過去は、例えば韓国もODA対象国であったわけです。私が一番最初に参議院に出したODA基本法、といってもわずか五条ぐらいの法律案だったんですが、韓国の援助でそこに不正があったために、民主主義を破壊するような政権に対しては援助してはならないという一項を入れたら、これは憲法考え方からして問題があるといって法制局に直させられたことを覚えております。  そういう点を実際問題としてどういうふうに是正し今後は起きないようにしていくのかという実態調査、国の状態によって違いますから、インドの場合、国際的に問題になったダムの建設について、十万人の住民が移動させられ人道的な問題ということで大きく取り上げられました。これは世界銀行が主たる出資団体、組織だったわけですが、日本ODAも一部入っていた。こういうようなことも起こり得るわけです。だから、実態調査というのをかなりやる必要があるんじゃないかと思います。  もう一つ全く別の問題で、さっき言われなかったんですが、例えば外国の例を見ますと、イタリアなどは女性と子供の条件改善というのがODAの柱の一つになっています。イギリスの柱の一つにも女性の地位向上、これは調査室でつくっていただいた資料に出ていますけれども、スウェーデンも男女平等という表現で同じようなことを言っているんだと思います。私ども基本法法案をつくったときに女性と子供の地位に対する配慮というのを柱に入れたわけでありまして、こういう何を柱にするかという議論も非常に重要になってくるんじゃないかなと思います。
  27. 馳浩

    馳浩君 同じことで余り山本先生を攻撃はしたくないんですが、先ほど山本さんがおっしゃった中で開発、経済発展が日本国益に資するというようなことなんですけれども、だからこそ、外務省がODA予算、最終的に現場で判断するときの裁量を悪い言い方をすれば手放さない、外務省の現場主義で我々国会、立法府側はなかなか関与することができない。後で結果としての資料をたくさんいただきますけれども、それを承認せざるを得ないことになっているんじゃないか。途上国の開発、経済発展に資するだけが本当に日本国益なのかという理念を今こそ変えるべきじゃないかと私は思うんです。  先ほど上田先生もおっしゃいましたけれども、これはことしの十月十二日の産経新聞、論説委員、古森さんという方の論説にあるんですけれども、「戦後の国際関係で大きな柱となった対外援助は、そもそも米国の主導で始まった。一九四七年にトルーマン大統領が「武装した外部勢力や少数派に服従を迫られる自由な諸国民支援することは米国の政策だ」と宣言したのが出発点だった。」と。冷戦構造の中で主要因は冷戦安全保障の意味が強かったというふうに、これは本当に産経新聞かなと思うんですけれども、こう書いてあるわけです。  この辺の認識も、私が最初に申し上げた日本国益に資するODAの役割の強さを考えたときに、日本独自ということを考えたら、それは先ほど地域と全世界的なということで福本先生がおっしゃいましたけれども、この地球環境に資する部分というものを日本としての理念の中にこそ据えていくべきだと、私はそういう考えでおるわけです。  戦略的、人道的という理念を、さらに加えて地球環境的な理念を持って、インフラ整備のあり方についても、それから広中先生がおっしゃるような、非常に日本として金は出しているけれども国連職員などにはなかなか日本人が行きたがらない、そして脆弱であるという現場の実施体制を見たときに、そういう理念をもっと強く打ち出していくべきだと私は思うんです。
  28. 山本一太

    山本一太君 今、馳先生のお話なんですが、特に私の言っていることと矛盾していることは別にないと思います。援助理念の中で相互依存といいますか、経済的な安全保障というのは当然ありますし、そういうことで日本アジアかなり援助が多いわけです。環境の問題ももちろん重要なもので、理念の中にさらに強調していくということはいいことだと思いますから、特に馳先生と考えが違うわけではないなというふうに今思っていました。  上田先生がおっしゃったことについてちょっと簡単に反論したいんですけれども日本援助はもう完全に米国の戦略援助に追従する形で行われてきたという点なんですが、確かに同盟国として安全保障の分野でコモンインタレストがあるところもあって、ある程度いろんな責任の振り分けというのをしてきた事実もあります。しかし、今でもほとんど日本援助理念というものが米国の戦略援助に引っ張られているというのは、これはちょっと言い過ぎじゃないかというふうに思います。  さっきのバイの援助のほとんどが米国の戦略援助に引きずられたものだという話ですが、今一番多いのが恐らくインドネシア、二番がインド、中国、タイぐらいだと思うんですが、これらの国々は日本国益にとっても日本の安全保障にとってもいろんな意味で大切な国々であって、必ずしもこれはアメリカの戦略的な援助の対象としてやっているわけではないということはちょっと一言申し上げたいなというふうに思いました。  それから、田先生がおっしゃった腐敗の話、マルコス疑惑は私がJICAに入る前だったと思うんですけれども、その後も随分いろんなことがありました。先生はさすがにポイントをおっしゃるなと思ったんですが、直接援助に携わっておりまして、なかなか開発途上国というのは自分の力で文字どおり案件を発掘してつくるという力がありません。日本援助は要請主義ということになっていまして、確かに先生のおっしゃるとおり、これは実施体制とも絡んでくるんですが、例えばナイジェリアなんかへ行ってみますと、大使館に二人ぐらいしか経協担当がいなくて、その人たちが何十という案件をスクリーニングして選んでいくわけなんです。その中には現地に入っているメーカーとか商社が見つけてきてプロジェクトにするものもあります。  ちなみに、UNDP、国連開発計画援助機関ですが、ナイジェリアの首都のラゴスだけで三十人か四十人ぐらいのスタッフがいますし、アブジャも合わせると八十人ぐらいの体制で経協をやっています。これはもう全然実施体制が違うということもあるんですけれども、必ずしもそこに黒いお金が動くということではないと思いますが、確かにそういう状態があるので、ここは少し現地として考えなければいけないんじゃないかと思います。  今、日本がお金を出している、例えばキャパシティー21基金というのがあるんですが、これは何をしているかというと、UNCEDの決議を受けて各国のナショナル・アジェンダ21という環境計画をつくるそのノウハウを助ける仕事をしていまして、現地に専門家を派遣して現地政府とよく相談しながら、そのアジェンダ21のフォローアップをどうしようか、国家計画にどうやって組み込んでいこうかという手伝いをしているわけなんです。  一つのヒントは、もちろんこれは改革の方向でもあるんですが、たとえある程度サポートしながら援助の案件を見つけていくにしても、現地政府あるいは現地の国際機関、NGOなんかと日本政府が綿密に協議してプロジェクトを発掘、立案していく体制をつくっていくことじゃないかなということを田先生のお話を聞きながら思いました。  私がいたUNDPは、常駐代表事務所が世界各国に百三十、百四十とあるんですけれども、そこの常駐代表が常に定期的に現地政府あるいは現地の国際機関、NGOと協議をしながら案件を生み出していくという体制になっています。しかし、それは日本とどこが違うかというと、完全な現場主義で、日本の外務省というのはもう完全に中央集権ですから、JICAの方にもそうなんですけれども、なかなか大使館の方に権限を委譲しないという問題があるんです。案件をつくる力のない途上国をどうやってサポートしていくか、その中でどういういい案件を見つけていく必要があるかということは、やはり先生がおっしゃったとおり実施体制にも関係してくることかもしれませんけれども、この委員会でよく協議をしたらいいんじゃないかなと思います。  それともう一点、簡単に。  田先生の方からほかの国の援助理念の柱の話がございましたけれども、イタリアは女性と子供の条件改善、確かにこういうのを出しているなと思って今お聞きしていました。女性の地位向上というのを掲げているところも多いし、あるいは男女平等というのを掲げていることも多いんですが、これで私が思ったのは、やはり援助理念というのは時代によって変わり行くものなんじゃないかと。  例えば十年前にまとめた大綱が今の時代に合っているかという問題もあると思います。例えばこれはカナダですか、その状況に応じて国会で決議をして大綱のアジェンダを加えていく。馳先生が言ったみたいに環境問題が大事な状況であれば、それを決議のような形で、どういう形でもいいんですけれども時代に応じて大綱に加えたり削ったりする、そういう柔軟性があってもいいのかなと。  これは、国会、立法府とODAがどうかかわってくるかという問題の中でODA基本法なんかと一緒に後ほどいろいろ議論ができればいいと思うんですけれども、そんなことをちょっと感じました。
  29. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 調査室でつくっていただいた資料の十一ページに、理念目的基本原則について調査会合意政府大綱、参議院四会派法案、新進党法案四つ並べて書いてあるんです。そこで僕は、理念原則目的をどう分けるのかということは議論があるにしても、こういう中身を入れることなら大体合意ができるんじゃないだろうかと思うんです。  私の意見は、大体これで賛成なんだけれども、例えば三つ目の「自助努力支援」のところは、先ほど申し上げた多谷千香子さんの「発展の権利」ということを彼女はここの項目で表現の問題だと言っていますけれども、例えば発展の権利の尊重と自助努力支援というふうにする。「主権の尊重」というところは、参議院の調査会合意はちゃんと自主性ということが入っているんですけれども、ほかは余り入っておりませんので、先ほど私が言った戦略援助については御意見もありますけれども自主性の尊重という点では一致できると思いますので、主権と自主性の尊重かな、ここへ自主性という言葉を入れていただきたい。それから、その次の「低生活水準地域、女性子供への配慮」のところは、去年のODA白書にある「人間中心の開発」ということを入れていく。  この項目をその後のいろいろ発展に応じて充実させていって合意を求めれば、大体基本的な理念目的原則については合意が可能なんじゃないかというふうに思います。
  30. 広中和歌子

    広中和歌子君 田先生、上田先生のように議員としての御経歴の非常に長い先生方は本当にいろいろODAに対してさまざまな角度からの御批判はあると思うんですが、何事にもそうであるように、ODAにもやはり歴史があって、そしてもちろん歴史から学ぶことは非常に大切ですけれども、今私たちがしなくちゃならないことはこれからどうするかということだろうと思います。ですから、理念がどうあるべきかということだと思いますけれども、例えばODA大綱基本理念人道的考慮相互依存性認識環境保全自助努力支援というふうに出ておりますけれども、このことを理念として持っていても実際との乖離があるというようなことで、今まででしたら要請ベースであったのが、それにコンディショナリティーをつけるというようなところまで進んできたことは大いに評価していいんじゃないかと思います。  私としては、今後さらにこのコンディショナリティーというものをどんどんつけて、要請もいいんですけれどもむしろ私たちはこういう方針で進んでいるんだというその理念をはっきりさせて、そして相手からそれに沿った形で引き出すようなそういう努力、そして援助実施体制が必要なんじゃないかなというふうに思います。  これから問題にしなくちゃならないのは、理念はいいことがいっぱい書いてあって、どれをとっても私は結構だと思うんです。しかしながら、実際に理念を掲げていながら乖離があるということですね、現実に。それに沿ってやっていないじゃないかということの方が私は日本国益を損ずることになるだろうと思います。口でいいことを言いながら日本援助はこうじゃないかと。  そこのところをどうやって縮めていくかということが非常に大切で、今後ディスカッションするとしたら、コンディショナリティーのこと、そしてそれを実際に実行していく勇気と、それから実際の実施体制、そして他国を含めてNGOとの協力とか、そういうようなことが具体的にあるんではないかと思います。
  31. 福本潤一

    福本潤一君 先ほど基本法を出していただいた田先生の方から経緯等も含めてお伺いした中に、今の理念の問題とかかわる問題がやはり含まれているなと思うわけです、腐敗の問題というのが具体的に統治国で起こっていると。フィリピン・マルコス疑惑、カンボジア、韓国。  そうすると、統治者と国民の、具体的に援助される、受け取る側としては、統治者の意識と国民の違い、統治者における腐敗の問題が具体的に起こったときに、先ほどの自助努力支援とか自主性を尊重するのは、理念でうたうのは当然だとは私も思うわけですが、それを光と影といいますか、支援することが逆に国民のプラスに全然なっていないところか、いじめのような状態にまで向かっている状況というのがあった上での支援ということになりますと、支援が国際的にも人道にもとるんじゃないかというような問題が具体的に起こってくる。そうすると、ここはもう国内の問題だというふうに単に逃げられないにもかかわらず、理念としては自助努力という形、また自主性という形で言わざるを得ないというところが理念の難しさだろうと思うんですね。  だから、実施体制の問題で何とか解決できるのかどうか。私も先と影だけではなくて具体的に援助あり方の問題まで若干かかわってくるなと思いまして、基本法を出された田先生とか上田先生の先ほどからの自助努力支援とか、ただ単なる慈善でやっているという形を最も開発途上国は嫌うわけですから、そこの問題を自助努力また自主性というところからとらえたときにどういう形の対処法があるか、上田先生を含めて長年かかわった人から理念の問題の上でちょっとお伺いしたいなと思います。
  32. 田英夫

    田英夫君 今の御質問のお答えになるかどうかわからないんですけれども自助努力というのは本当に基本原則としてどうしたってうたわなければならない一つの柱だとは思うんです。  実態から見ると、さっきもちょっと申し上げたように、一番必要とする貧しい国ほど自分の力でODAを要請することすらなかなかできない。また、そういう貧しい国の国民皆さんは生きていくために大変な苦しみをしているわけだから、そこでそういう実態を改善しようとする、そういう意味のエネルギーをそっちへ回すことすらできない。これは悪循環になっているわけで、これが実態だと思います。  したがって、基本理念としてうたわなければならないけれども、そこにむしろ透明性を持ちながら、日本ODAの事務的協力ODAを要請するための協力、そういうところまで含めてやれる体制をつくっておかないと、かえってそこに不透明なところができて不正が生まれる余地も残してしまう、こういうふうな気が私は実際にします。  速記に残る形ですけれども申し上げていいと思いますが、今カンボジアで地雷を除去しながら農地を開発、復興するというテストをしている日本人のグループがあります。これは日本人ですからこっちがやっているわけで、このやり方というのは技術的にも能力的にも日本の方しかない、カンボジアにはない。ただ、機械を運転するというようなところまでようやくカンボジア人自身がやれるようになった。しかし、それではその機械をODAを使ってカンボジアの復興のために生かすということになると、さっき申し上げたように要請書を日本政府に提出するというそこまで持っていくことすらできない、これが実態なわけですね。  そうすると、そこもお手伝いしてあげるということにはっきりしておけば、実際にその文書をつくるのは日本企業のコンサルタントであったりするかもしれない、しかしそれも公然としておけばいいんじゃないかなという気がいたします。これを隠して、実は陰でつくって格好だけは向こうの政府が出したような形にするからおかしなことが起きるんであって、政府の面目をつぶさないようにしながら一種の技術協力、事務的技術協力もしてあげる。そういうものをODA体制の中にしっかり組み込んでおけば、今民間のコンサルタントと申し上げたけれども、JICAならJICAの一部にそういう技術者も置いておく。その出先が日本ODA体制の中にちゃんと存在していれば、それが公然と手伝ってあげられるんじゃないだろうか。  しかし、世界的に言ってそういう国の数はそう多くはないと思います。その辺のところをどういうふうにやったらいいかというのは、理念の問題よりもっと実施体制の問題に入ってくるんじゃないでしょうか。
  33. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 今の問題と関連するんですけれども、マルコス疑惑のときに、当時の外交総合安全保障調査会でJICAやOECFの理事を呼んでかなりいろいろ審議、調査をしたことがあるんです。  そのときに、今お話しになった要請主義、これがなかなか難しい問題で、向こうの政府から要請があって、それで円借款なり贈与なりの対象を決めるんだという建前になっているでしょう。そうすると、日本のコンサルタントがその国へ行って、プロジェクトファインディングというのだけれども、プロファイというのをやるわけです。プロジェクトを見つけて向こうの政府にこれをやったらどうかというのを提案すると、その政府が取り上げて、日本にこのODAを頼むということで来るわけです。そうすると、フィージビリティースタディーといって可能性調査を基金が派遣するんですね。  僕はいろいろ質問したんだけれども、結局、発展途上国だから、行ってみるとホテルは一つしかないというのですよ。そうすると、そのホテルにコンサルタントや何か一緒に泊まっているというのだな。どうしても話は通じるわけね。それから、メーカーの代表も来ているというんだ。だから、プロファイにしろフィージビリティースタディーにしろ、それを開発した日本のコンサルタント、そこにプロジェクトを売り込みたいメーカーの大体関係者ですから、それが現場へ行くと基金の人たちと同じホテルで、話も通じるというような関係がある。  では要請主義ノーかというとやっぱりなかなかここも難しくて、例えば公開の問題でも、情報公開で大体その国の予算はどのぐらいだとか発表しちゃうとほかの国から文句が出る、だから要請主義でやっておりますから公開はできませんと外務省は言う。長い間に積み上げられてきたシステムをどこでどう改善していくかというのは、先ほど実態調査の話もありましたけれども、腐敗や不正が生まれることとも構造的な結びつきがあるんだけれども理念に従って全体の構造をどういうふうに改善していくのかというのはかなり研究が必要な問題だと思います。
  34. 角田義一

    角田義一君 私もちょっと疎いのでよくわからないのですけれども、例えばきょういろいろ新聞やらラジオで盛んに報道されておりますエイズです。このままいくと東アジアであと三年、二〇〇〇年には患者さんが一千万人になると国際機関が警告しているというんです。私は、エイズの患者一千万というのは大変なことになるのじゃないかと思うんです。  こういうエイズの問題というのは、例えば日本のいろいろな医療技術だとかあるいは人材だとか、そういうものを今のODAの中で臨機応変に、しかも集中的に大量に金もつぎ込む、人もつぎ込むというふうなことが果たして可能なのかどうか、ODAと全然関係ないところで日本としてやるのかどうなのかということなんです。  今後、限られた資金の中で非常に効率的に重点的に資金を配分しなくちゃならない。さっき言ったように一律一〇%を切るなんというのは私は愚の骨頂だと思うんです。どこにどういうふうに重点的に金を回すかということを考えた場合に、例えば今言ったエイズなんかの問題はかなり深刻に受けとめなきゃならぬと思うんだけれども、この資料を見てみても余りエイズのことは書いてない。  この辺の実態がよくわかっている山本先生、エイズの問題なんかはどうなっておるんですか、わかりますか。
  35. 山本一太

    山本一太君 極めて深刻だということは間違いないんですけれども、エイズについては、私が国連にいたときにはWHOを含めて幾つかの機関でプロジェクトチームができていまして、特にアフリカなんかエイズのポテンシャリティーの大きいところについては実態調査をやっていました。例えば、当時のルワンダなんかだったと思いますけれども、人口の三割ぐらいが抗体保菌者だとか、そんなことでいろいろエイズのプロジェクト自体は国連で動いていると思うんですね。  先生、御存じですか、その辺。
  36. 広中和歌子

    広中和歌子君 知りません。
  37. 山本一太

    山本一太君 情報を少しとってみます。今、どういう活動をしているか、数字でどのくらい国連でエイズに関するプロジェクトがあるかとか、そこら辺の具体的なところはちょっと調べてみないとわからないんですが、関係機関でプロジェクトチームをつくってエイズ対策はもちろん活動を続けていると思います。
  38. 角田義一

    角田義一君 これを見てみると貧困とか福祉とかというのが書いてあって、医療というのは福祉とちょっと違うような感じがするんだけれども、そういうエイズの問題なんかは今日的な非常に大きな問題で、まさに人道的な立場からいえば、エイズの患者がいずれ死んでしまうというのは非常に深刻な問題ですよ。それは貧困も大事だけれども、命にかかわる問題だからね。そういうときに、日本とすれば、限られた資金だけれどもそこのところに重点的に、アジアに対してどうするかというようなことが臨機応変に一体できるのかできないのか、こういう問題が私はあると思うんですよ。
  39. 広中和歌子

    広中和歌子君 WHOですか。
  40. 山本一太

    山本一太君 WHOを中心にやっていますよ。
  41. 角田義一

    角田義一君 WHOに対しては、これは日本は例えば資金の出資だとかなんとかということでしょう。じゃ、WHOと組んでどういうふうにやれるのか、ちょっとそれはわからないですよ。
  42. 山本一太

    山本一太君 ちょっと調べてみないとあれですけれども、多分、WHOとか国際機関のエイズの基金に日本政府としてきちっと拠出していると思うんですね。
  43. 角田義一

    角田義一君 ただ、拠出はこの中に入っているのかな。
  44. 山本一太

    山本一太君 エイズは、例の日米コモン・アジェンダ、九三年の東京サミットのときの宮澤・クリントン首脳会談のときに、地球的展望に立つた協力という中に人口・エイズというのが入っていたのは先生覚えていらっしゃると思うんですけれども、一応日米のコモン・アジェンダの作業部会の設置をそのときにされていると思うんです。その中で、日米協調してこのエイズ問題をやるということで、今まで五、六回やっているようで、今まだそのときのコモン・アジェンダが二十六分野残っているんですけれども、人口・エイズはやっぱり最も協調が進んでいる分野だという評価であるように伺っています。今、作業部会を通じて、日米の政策協調はエイズについてはやっぱりかなり進んでいるということで、プロジェクトの形成調査団にアメリカがオブザーバーで参加したり、あるいは合同調査なんかをやりながら途上国のエイズの日米協調案件というものをつくっているという、日米のコモン・アジェンダの方はそういう形で進んでいると思うんです。  ただ、国連の方にも、私がUNDPにいたときにエイズのプロジェクトチーム、WHOから始まってFPAとか幾つかの国連機関で横断的なプロジェクトチームがつくられたので、そこら辺のところの活動は調べてまた御報告したいと思います。  済みません、それでちょっと別件でよろしいですか。  上田先生がさっきおっしゃった件で、ODAを要請するための協力までやったらどうかという話ですが、実質的には日本側はODAの要請というかプロジェクトの発掘の手伝いをしているわけです。さっき言ったように、JICAの方から基礎調査団が行ったり、フィージビリティースタディーで調査団が行く中には、大体きちっとしたオープンビッドでコンサルタントの方を選んで、例えば土木だったら土木とかいろんな分野で何人かの専門家をちゃんと連れていって、場合によっては一カ月、二カ月長期調査をして、その中でいろんな情報をとってきています。そういう段階で向こうの政府と調査団がコンタクトしたり、日常、大使館と向こうの政府がコンタクトする中で、実質的にはこのいわばプロジェクトの要請内容をつくる技術協力というのはやっていると思うんですね。それは田先生のおっしゃったようにもっとオープンにやるかどうかということだと思うんです。  それで、上田先生もおっしゃったように、要請主義がどうかという話なんですが、今、改革懇談会の中でも言われているんですけれども日本援助政策の中の一つの課題は、国別の援助指針をどうやってもっとつくっていくかということだと思うんです。
  45. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 各国別のね。
  46. 山本一太

    山本一太君 各国別のですね。国連開発計画、UNDPの開発戦略の特徴というのは、各国別にカントリープログラムというのがありまして、大体五年間ぐらいの計画の中であらあらのプロジェクトまで出てきて、大体どの分野にどういう形で援助するかというかなりきっちりとした書類をつくるんですね。日本援助とちょっと違って、いわば一人の人間の健康を回復させるためにという観点から、きょう耳を治して、足の指を治して、それが全体の機能として高められるような発想で国連開発計画なんかをやっていて、これは日本の方でも取り組まなきゃいけない一つの課題ということで示されているんです。  でも考えてみると、それも一種要請主義みたいなもので、このカントリープログラムはどうやつてつくられているかというと、常駐代表事務所の人と現地政府と現地にある国際機関、UNDP本部、ニューヨークの本部にあるカントリーオフィサーがもう緻密に綿密に協議していろんな情報交換をする中で、いわば技術協力をしながらそのカントリープログラムを練るということですから、要請主義という言葉はどういうところまで定義になるかわからないんですけれども、それ自体悪だというふうには思わないし、ほかのやり方というのはなかなかないと思うのです。ただ、そこは、どういうふうにそこら辺の技術協力をオープンにして田先生がおっしゃったような腐敗の土壌を生まないような整備をしていくかということが課題じゃないかなというふうに思います。
  47. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 きのう、新聞の切り抜きを読んでいたら、今の点でこういうのがあったんです。前海外経済協力基金理事の山本海徳さんという方の朝日の五月八日付の「論壇」なんですが、   効率的・効果的な援助をするためには、途上国ごとに援助戦略を立案すべきである。援助政策当局者はみなこの点を十分承知しているが、現実には成功していない。その理由は、無償資金協力技術協力、円借款という援助形態別に独自の予算執行体制が敷かれ、その実施促進に力点が置かれるあまり、個々の国の発展段階や開発の課題に即したアプローチを優先させる余裕がなかったためである。 だから、今おっしゃったような国別のそれが必要だとみんな思いながらできないと言うんですな。  例えば日本の場合、最貧国に対して非常に低いでしょう。例えばアフリカその他の最貧国には、飢餓とか貧困とか、一番援助しなきゃいかぬ。それぞれの国別に考えにゃいかぬけれども日本の場合、もう非常に低いままで決まった予算執行体制をとにかくやると。これが省庁別に縦割りになっているんです。そういう点では、本当に今の構造を抜本的に点検、見直して、現場の人たちは皆こう言っているのにどうもうまくいかないという現実があるというこの投稿もあるわけなので、考えなきゃいけないんじゃないですかね。
  48. 山本一太

    山本一太君 先生、御存じだと思うんですけれども、いわゆる援助の実施定期協議みたいなものをやっているバイの大事な国については援助指針はできていると思うんです。今、たしか二十数カ国できていると思うので、それを見ていただくと、もちろんUNDPなんかのカントリープログラムに比べると個々のプロジェクトというのは出てきませんけれども、政治状況があり、そして今の経済の状況から見て、こういう分野にやはり重点的に援助をするみたいな大まかの方針は書いてありますので、そういう意味で少しずつは進歩しているんじゃないかと思うんです。それを先生にもごらんになっていただければ、ある程度方向性みたいなものはその援助指針の中に書いてあることは事実だと思います。
  49. 馳浩

    馳浩君 きょうは理念のことで非常に各般にわたっているんですが、ある意味日本ODAはこれまで戦後の賠償の一つの側面もあったということは否定できず、それが逆に東アジアの経済発展と生活水準の向上に資してきたということは否定できない。けれども、僕はいつも思うんですけれども日本世界で唯一原爆を落とされたと。私、もっと残念だと思うのは、二発も落とされたわけなんですね。それだけに、人道的に考えても、その原爆に、核兵器に対する一つの明確な信念、主張というのがあってもしかるべきだと私は思うんですよ。そういう意味では、国際社会の中における日本としての人道的見地から、核兵器を保有しておる、今後軍備を近代化、増強しようという国に対する援助あり方というのは今のままでよいのだろうかと。具体的に中国を言えば、技協、円借款、無償、今までのままでよいのかと。  きょうはまさしく今後のODA理念の問題ですから、私は、これはぜひもうちょっと議論を深めた方がいいのではないかなと。確かに、飢餓と貧困に苦しんでいる世界の方々に対する支援というのは絶対必要ですけれども、相対的に、飢餓と貧困に苦しんでいる、経済発展をこれからなさねばならない、と同時に、我が国のすぐ近くには核兵器を保有しておる国もある、核実験をしておった国もあるということも、今後のあり方として私はぜひ理念の中でもうちょっと明確にしていくべきではないかと思うのです。そういう意見です。
  50. 広中和歌子

    広中和歌子君 それは、政府開発援助大綱原則のところの二番目に、軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避、それから開発途上国の軍事支出、大量破壊兵器の開発・製造、武器の輸出入等の動向に配慮とか、だからあるんですよね。こういうのをコンディショナリティーとして、条件づけでやろうとしているんだけれども現実にはそうじゃないということですよね。
  51. 馳浩

    馳浩君 そういうことです。広中先生のおっしゃるとおり、そういうことです。
  52. 田英夫

    田英夫君 全く違うことでもいいですか。  ODA一つ技術協力の一種類ですけれども、青年海外協力隊というのはJICAが担当してやっておりますが、これもやっぱり頭の中に入れておいた方がいいと思います。  というのは、人間が直接発展途上国へ行って、しかもしばしば一人で行って、向こうの要請のあった問題について、それは場合によっては柔道を教えるとか、そういうことまで含めてやっているわけですね。これは日本として大変特徴のある国際協力あり方だと思っています。  大体年に二回派遣されますから、その送別会といいますか激励会のようなものがあるときは、広尾の割合近いところで、そこに青年海外協力隊の本部があるので、訓練所は二カ所ぐらいあるんですか、前は一カ所でやっていましたが今三カ所ぐらいで送別会をやるので、なるべく私は行って激励するようにしております。行ってみると、本当にいろんな項目について、女性の方だと看護婦さんとかお花の先生までおられますね。それから、もちろん非常に危険なところにも行く。そういう若い人たちのことですから、意義ということからしたら非常に大きな意義があるように思います。  予算額は、これはそんなに大きなお金を使っているわけじゃなくて、日本としての技術協力という意味でいうと、本当はもっと予算もとり人間ももっとふやした方がいいし、それから、帰ってきてから再就職することが実はまだ体制が十分できていないものですから、応募者を募るときに、帰ってきてからのことが心配で行けないという声もあるようです。我々、こういうことをやり始めた以上は、そういうところまでひとつ整備するようにしてあげればもっと応募者がふえてくるんじゃないかなと。この青年海外協力隊もぜひ頭の中に入れていただきたいと思います。
  53. 山本一太

    山本一太君 JICAにいたときに青年海外協力隊の事務局にもよく行ったりしたんですが、田先生おっしゃったとおり、やっぱり顔の見える援助ということでは、青年海外協力隊、二年間現地人と同じ生活をしてよく病気にもなっていましたけれども、頑張っているので、そういうところはやっぱり先生がおっしゃったとおり頭に入れていかなければいけないと思いました。  あと、広中先生がおっしゃったお話で、必要な理念は全部もう言われている、問題はそれをきちんと運用できるかどうかという、いわゆる理念と実際の外交の行動の中の乖離という話はやっぱりすごく重要なポイントだと思いまして、小委員会で時間があるかどうかわからないんですが、ちょっとしたケーススタディーみたいなものをやってもいいかなと。例えばミャンマーの場合、中国の場合、北朝鮮の場合。中国の借款のときはいろんな議論の末ああいう結論になったんですけれども、果たしてほかにオプションがあったのか。  確かに人道的な理念、人道的な見地と言うのは簡単なんですけれども外交である以上、やはり国益というものがあって、その全体的な国益からいくと、そのままODA大綱を当てはめてその国益にかなうときと、やはり全体から見るとそぐわないときと、いろんな場合があると思うんです。ちょっと時間があればその大綱を、今までいろんなところで大綱をいかに運用するかという議論が幾つかこれまであったわけですから、中国、ミャンマーのケースはほかにオプションがあったのか、もしほかのオプションがあったのならどういうインプリケーションがあったのかということはこの場所で議論してもおもしろいんじゃないかな、すごく大事なことではないかなと思いましたので、ちょっと提案させていただきます。
  54. 広中和歌子

    広中和歌子君 もう田先生が青年海外協力隊のことをおっしゃって、私ももっとこれがふえていけばいいんだけれども、有為な人材が応募しにくい状況、それは再就職が問題だというふうに言われているわけです。やっぱり日本の雇用体制が終身雇用で中途採用を余りしないというところがあったと思うんですが、これから好むと好まざるとにかかわらず変わってきますし、また、企業側としても人材として青年海外協力隊に参加した人を採るような風潮になるかもしれない、それに期待する以外方法がないと思います。あとは我々が企業なんかにお願いをするとか、折に触れてそういうことをしゃべりまくるとか、そういうようなことになろうと思います。
  55. 福本潤一

    福本潤一君 私も大分長いことおりましたが、青年海外協力隊に行った人というのはかなりエネルギッシュで優秀な人が多いんですけれども、そういう見返りがなくてもできるぐらいのバイタリティーのある人じゃないとなかなか行けてないんだなという現実がありますので、帰って以後の対応というのを考える形に持っていける方策というのは必要だと思います。  それと、今ケーススタディーと山本先生おっしゃいましたが、実際やっていただければと思いますし、そのときに、先ほど田先生からですか、インドで十万人移民したダムとか、三峡ダムやなんかは具体的にODAはかかわらないと思いますけれども、百万人移民とか、そういうちょっとインフラの絡んでおる具体的なケースでやっていただければと思います。  ということで、私も基本的には今既に出ておる理念の中で特別抵触する理念というのは大綱も含めて今までないんですけれども、この大綱でとどまっていて、法案になるとストップしてしまうというのが私はかなり気になるところであります。具体的にその理念というのが大綱として出せてそれを実施する段階ではなかなか難しいとすると、むしろ法案として出すときに何がひっかかっているのかというのも今後この小委員会でもちょっと勉強してみたいというふうに思いますので、よろしくお願いします。
  56. 馳浩

    馳浩君 今後の進め方という点で提言として。  今の福本先生のお話を聞いておったら、最終報告に何か言葉は出てきそうな気はするんですけれども、きょうの議論はある意味で、まさしく基本法ということを考えたら第一条は理念になってくるわけですから、その辺の意味でのお互いの何か理解を深めるような議論ができたと思います。最終的にどういう方向が出てくるかは私もまだ見えないんですが、本音は実はあるんですけれども。  こういう方向で私は進めていただければいい形を見つけることができるんじゃないかという期待を込めて、次回を楽しみにしております。
  57. 板垣正

    ○小委員長板垣正君) それでは、意見の交換はこの程度にさせていただきたいと存じます。  ODA理念ということでございますが、それに触れながら、また非常な広範囲かつポイントを、いろいろな問題点をきょうのお話し合いの中でも提示されたと思いますし、さすがはベテランぞろいで将来大いに期待できるわけであります。とともに、これはどうやってまとめていくかなと、こういう悩みも思うわけであります。  速記をとめてください。    〔速記中止〕
  58. 板垣正

    ○小委員長板垣正君) 速記を起こしてください。  本日は以上をもちまして散会いたします。    午後四時五十三分散会