○
山本一太君 今、馳先生の
お話なんですが、特に私の言っていることと矛盾していることは別にないと思います。
援助の
理念の中で
相互依存といいますか、経済的な安全保障というのは当然ありますし、そういうことで
日本も
アジアに
かなり援助が多いわけです。
環境の問題ももちろん重要なもので、
理念の中にさらに強調していくということはいいことだと思いますから、特に馳先生と
考えが違うわけではないなというふうに今思っていました。
上田先生がおっしゃったことについてちょっと簡単に反論したいんですけれ
ども、
日本の
援助はもう完全に米国の戦略
援助に追従する形で行われてきたという点なんですが、確かに同盟国として安全保障の分野でコモンインタレストがあるところもあって、ある
程度いろんな責任の振り分けというのをしてきた事実もあります。しかし、今でもほとんど
日本の
援助理念というものが米国の戦略
援助に引っ張られているというのは、これはちょっと言い過ぎじゃないかというふうに思います。
さっきのバイの
援助のほとんどが米国の戦略
援助に引きずられたものだという話ですが、今一番多いのが恐らくインドネシア、二番がインド、中国、タイぐらいだと思うんですが、これらの国々は
日本の
国益にとっても
日本の安全保障にとってもいろんな
意味で大切な国々であって、必ずしもこれはアメリカの戦略的な
援助の対象としてやっているわけではないということはちょっと一言申し上げたいなというふうに思いました。
それから、田先生がおっしゃった腐敗の話、マルコス疑惑は私がJICAに入る前だったと思うんですけれ
ども、その後も随分いろんなことがありました。先生はさすがにポイントをおっしゃるなと思ったんですが、直接
援助に携わっておりまして、なかなか
開発途上国というのは
自分の力で文字どおり案件を発掘してつくるという力がありません。
日本の
援助は要請主義ということになっていまして、確かに先生のおっしゃるとおり、これは
実施体制とも絡んでくるんですが、例えばナイジェリアなんかへ行ってみますと、大使館に二人ぐらいしか経協担当がいなくて、その人
たちが何十という案件をスクリーニングして選んでいくわけなんです。その中には現地に入っているメーカーとか商社が見つけてきて
プロジェクトにするものもあります。
ちなみに、UNDP、
国連開発計画は
援助機関ですが、ナイジェリアの首都のラゴスだけで三十人か四十人ぐらいのスタッフがいますし、アブジャも合わせると八十人ぐらいの
体制で経協をやっています。これはもう全然
実施体制が違うということもあるんですけれ
ども、必ずしもそこに黒いお金が動くということではないと思いますが、確かにそういう状態があるので、ここは少し現地として
考えなければいけないんじゃないかと思います。
今、
日本がお金を出している、例えばキャパシティー21基金というのがあるんですが、これは何をしているかというと、UNCEDの決議を受けて各国のナショナル・アジェンダ21という
環境計画をつくるそのノウハウを助ける
仕事をしていまして、現地に専門家を派遣して現地
政府とよく相談しながら、そのアジェンダ21のフォローアップをどうしようか、国家計画にどうやって組み込んでいこうかという手伝いをしているわけなんです。
一つのヒントは、もちろんこれは改革の
方向でもあるんですが、たとえある
程度サポートしながら
援助の案件を見つけていくにしても、現地
政府あるいは現地の国際機関、NGOなんかと
日本政府が綿密に協議して
プロジェクトを発掘、立案していく
体制をつくっていくことじゃないかなということを田先生の
お話を聞きながら思いました。
私がいたUNDPは、常駐代表事務所が
世界各国に百三十、百四十とあるんですけれ
ども、そこの常駐代表が常に定期的に現地
政府あるいは現地の国際機関、NGOと協議をしながら案件を生み出していくという
体制になっています。しかし、それは
日本とどこが違うかというと、完全な現場主義で、
日本の外務省というのはもう完全に中央集権ですから、JICAの方にもそうなんですけれ
ども、なかなか大使館の方に権限を委譲しないという問題があるんです。案件をつくる力のない途上国をどうやってサポートしていくか、その中でどういういい案件を見つけていく必要があるかということは、やはり先生がおっしゃったとおり
実施体制にも
関係してくることかもしれませんけれ
ども、この
委員会でよく協議をしたらいいんじゃないかなと思います。
それともう一点、簡単に。
田先生の方からほかの国の
援助理念の柱の話がございましたけれ
ども、イタリアは女性と子供の条件改善、確かにこういうのを出しているなと思って今お聞きしていました。女性の地位向上というのを掲げているところも多いし、あるいは男女平等というのを掲げていることも多いんですが、これで私が思ったのは、やはり
援助の
理念というのは
時代によって変わり行くものなんじゃないかと。
例えば十年前にまとめた
大綱が今の
時代に合っているかという問題もあると思います。例えばこれはカナダですか、その状況に応じて
国会で決議をして
大綱のアジェンダを加えていく。馳先生が言ったみたいに
環境問題が大事な状況であれば、それを決議のような形で、どういう形でもいいんですけれ
ども、
時代に応じて
大綱に加えたり削ったりする、そういう柔軟性があってもいいのかなと。
これは、
国会、立法府と
ODAがどうかかわってくるかという問題の中で
ODAの
基本法なんかと
一緒に後ほどいろいろ
議論ができればいいと思うんですけれ
ども、そんなことをちょっと感じました。