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1997-11-17 第141回国会 参議院 行財政改革・税制等に関する特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十一月十七日(月曜日)    午前十時開会     —————————————    委員の異動  十一月十四日     辞任         補欠選任      野村 五男君     武見 敬三君      海野 義孝君     泉  信也君      竹村 泰子君     菅野 久光君      瀬谷 英行君     田  英夫君      山田 俊昭君     佐藤 道夫君      末広まきこ君     椎名 素夫君     —————————————  十一月十七日     辞任         補欠選任      須藤美也子君     阿部 幸代君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         遠藤  要君     理 事                 片山虎之助君                 高木 正明君                 野間  赳君                 三浦 一水君                 荒木 清寛君                 広中和歌子君                 伊藤 基隆君                 赤桐  操君                 笠井  亮君     委 員                 狩野  安君                 鹿熊 安正君                 金田 勝年君                 亀谷 博昭君                 久世 公堯君                 沓掛 哲男君                 斎藤 文夫君                 清水嘉与子君                 田村 公平君                 武見 敬三君                 常田 享詳君                 長尾 立子君                 林  芳正君                 保坂 三蔵君                 宮澤  弘君                 泉  信也君                 今泉  昭君                 岩瀬 良三君                 小林  元君                 菅川 健二君                 高橋 令則君                 寺澤 芳男君                 益田 洋介君                 吉田 之久君                 小島 慶三君                 齋藤  勁君                 菅野 久光君                 清水 澄子君                 田  英夫君                 阿部 幸代君                 吉川 春子君                 佐藤 道夫君                 山口 哲夫君    国務大臣        大 蔵 大 臣  三塚  博君        文 部 大 臣  町村 信孝君        厚 生 大 臣  小泉純一郎君        通商産業大臣   堀内 光雄君        運 輸 大 臣  藤井 孝男君        郵 政 大 臣  自見庄三郎君        労 働 大 臣  伊吹 文明君        建 設 大 臣  瓦   力君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    上杉 光弘君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  小里 貞利君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  久間 章生君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       尾身 幸次君    政府委員        警察庁刑事局長  佐藤 英彦君        総務庁長官官房        審議官      西村 正紀君        防衛庁経理局長  藤島 正之君        防衛庁装備局長  鴇田 勝彦君        経済企画庁物価        局長       金子 孝文君        経済企画庁総合        計画局長     中名生 隆君        外務省経済局長  大島正太郎君        大蔵大臣官房総        務審議官     溝口善兵衛君        大蔵省主計局長  涌井 洋治君        大蔵省主税局長  薄井 信明君        大蔵省理財局長  伏屋 和彦君        大蔵省銀行局長  山口 公生君        文部大臣官房長  小野 元之君        文部大臣官房総        務審議官     富岡 賢治君        文部省教育助成        局長       御手洗 康君        文部省高等教育        局長       佐々木正峰君        文部省体育局長  工藤 智規君        厚生大臣官房総        務審議官     田中 泰弘君        厚生省健康政策        局長       谷  修一君        厚生省保健医療        局長       小林 秀資君        厚生省児童家庭        局長       横田 吉男君        厚生省保険局長  高木 俊明君        厚生省年金局長  矢野 朝水君        社会保険庁運営        部長       真野  章君        資源エネルギー        庁長官      稲川 泰弘君        運輸省鉄道局長  小幡 政人君        郵政大臣官房総        務審議官     濱田 弘二君        郵政省貯金局長  安岡 裕幸君        労働省労働基準        局長       伊藤 庄平君        建設大臣官房長  小野 邦久君        建設大臣官房総        務審議官     小鷲  茂君        建設省都市局長  木下 博夫君        建設省住宅局長  小川 忠男君        自治省行政局長  松本 英昭君        自治省財政局長  二橋 正弘君    事務局側        常任委員会専門        員        田中 久雄君    説明員        会計検査院事務        総局第二局長   諸田 敏朗君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○財政構造改革推進に関する特別措置法案(内  閣提出、衆議院送付)     —————————————
  2. 遠藤要

    委員長遠藤要君) ただいまから行財政改革税制等に関する特別委員会を開会いたします。  議事に入るに先立ち、三塚大蔵大臣より発言を求められておりますので、この際、これを許します。三塚大蔵大臣
  3. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 委員長理事各位のお計らいで、冒頭、発言の機会を賜りましたことに感謝を申し上げます。  北海道拓殖銀行についての発言であります。  本日、北海道拓殖銀行より、不良債権処理及び資本増強等の実施に向けて最大限努力してきましたが、預金の減少や株価の下落など、市場の評価は得られず、自力では営業をこのまま継続していくことが困難となった旨の報告を受けたところであり、これを受けまして、その処理方針等について談話を発表させていただきました。八時二十分でございました。  御報告を申し上げます。  拓銀からは、同行北海道における金融機能を維持していく観点から、受け皿となる銀行にその機能を引き継がせたく、ついては、預金保険機構不良資産買い取り等を要請することとしたい旨の報告を受けまして、また、このような事態を招いた経営責任を明確にするため、頭取初め取締役全員辞任する予定との報告を受けております。  大蔵省といたしましては、同行我が国金融システム、なかんずく北海道における重要な金融機能を果たしていることにかんがみまして、その金融機能自体はぜひとも維持することが不可欠であると考えており、今後、同行に対する当局検査による財務計数を確認した上で、以下の点を基軸とした処理方策関係者とも協議しつつ早急に取りまとめることといたしております。  第一に、北海道拓殖銀行の業務を引き継ぐ受け皿銀行北洋銀行とし、また、地域経済の安定を図る観点から、その他の地元金融機関にも協力を求めることといたします。  北洋銀行への承継までの間においては、北海道拓殖銀行通常どおり営業を継続し、預金者や健全な融資先等取引に支障が生じないよう万全の配慮を行うことといたしました。このため必要な資金については、日本銀行日本銀行法第二十五条に基づき供給するということに相なります。  第二に、受け皿銀行には北海道拓殖銀行の有する健全な資産預金等のみが引き継がれることとし、同行財務内容を今後速やかに確認した上で、預金保険機構不良資産を買い取るなど所要の支援を行うことといたします。  以上のように、大蔵省といたしましては、処理方策具体化に向けて早急に取りまとめたいと考えておりますが、預金はいずれにしろ受け皿銀行等に引き継がれることとなっており、すべての預金が保護されることに相なっております。  また、今後の処理の過程で、特に融資先の健全な企業に対し不測の悪影響が生じないよう最大限の努力を払う観点から、北海道庁を初めとする関係当局政府系金融機関並びに関係金融機関等に対して必要な支援協力を要請するなどにより、万全の対策を講ずることといたしております。  以上で御報告を終わらさせていただきます。     —————————————
  4. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 財政構造改革推進に関する特別措置法案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 広中和歌子

    広中和歌子君 平成会広中和歌子でございます。  けさ三塚大蔵大臣から大変ショッキングな北海道拓殖銀行の件について御報告があったわけですけれども、けさもう一つ、これは大変に明るいニュースがございましたので、この委員会をそれから始めさせていただきたいと思います。  昨夜、皆様の多くの方とともに私はサッカーを見ておりました。そして、対イラン戦勝利を得たわけでございます。まさに最低からの出発、そしてワールドカップ出場の権利を得たわけでございます。ゲームそのものも二転三転、まさに劇的な勝利でございました。そして、新監督に就任された岡田監督の采配が大変評価されております。優勝劣敗の激しいスポーツ界では実に責任とり方が明確でございます。日本金融界もかくありたい、そして日本サッカーチームのように、グローバルな金融マーケットの中でぜひ挽回してほしい、日本国民の一人として心から願っているところでございます。  さて私は、去る十一月七日、参議院本会議代表質問の中で、なぜ今この構造改革法案なのか、そしてこの法案構造改革という名に値するか、大きくこの二点についてお伺いいたしました。不良債権処理の見通しについても伺い、公的資金導入しないでその処理は可能かということについて伺ったわけでございます。  三塚大臣お答えは、「各金融機関は、現在経営合理化等を行い、不良債権早期処理に取り組んでおります。全体としてその状況は御案内のとおり改善をされています。」「昨年の通常国会において成立いたしました金融三法により整備された制度の基本的な考え方を踏まえまして、今後とも預金者保護を図りつつ不良債権処理が図られますよう、公的資金導入にも言及をされましたが、それをまたずとも、安定化健全化に向けて努めてまいりたいと考えておるところであります。」、こういうお答えをいただいたわけでございます。  しかし、本当なのか。長期低金利にも確かに助けられて、いわゆる表に出ている債権処理の額は報告されている額だろうと思いますけれども、それは少しずつ改善されているのは事実でございますけれども、しかし現実には、表に出ていない不良債権の額はその二倍とも三倍とも言われているわけでございます。そして、そうした不良債権、それが株安にも影響し、先週末は一万五千円台ぎりぎりのところでございます。地価も下がっている。そういう中で、不良債権はむしろふえているのではないか。公的資金導入なしでどうやってこの処理をすることができるのだろうか。その点について、大蔵大臣のお考えをお伺いいたします。
  6. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 広中委員の本会議の御質疑、私の答弁を引用されての再度の御質疑であります。  不良債権の額については、当局が精査をいたしておるものを基本として私は了承をいたしておるところでございまして、それぞれのマスメディア等々の言いぶりなりも聞いておりますが、それはそれとして、やはり正式の機関が正式にきっちりと把握したものをもって対応しておるところであります。  改善は進んでおると理解をします。今も言われましたとおり、金融三法の基本的枠組みを踏まえ、引き続き、預金者保護等を図りつつ、金融システム安全性確保に万全を期してまいりたいと思っております。  特に、預金者保護システム安定の負担のあり方、とりわけ公的資金導入の是非について、取り入れろという旨の御発言でありますが、まず事柄が、公的資金は公金でございます、国民の租税をもって賄われるということを考えますと、国民間においてその点について十分な論議が尽くされるべき問題であると考えておるところでございます。
  7. 広中和歌子

    広中和歌子君 公的資金導入に関しては、国民を含めて幅広い同意が必要だというふうにおっしゃいましたが、その点については後から御質問いたします。  拓銀北海道銀行の間で合併に向けて協議が行われていたのは、はっきり時間を覚えておりませんが、ともかくそういう協議が行われていましたけれども、それが御破算になった。その理由は、拓銀不良債権の全体像を隠ぺいしていたことが判明して御破算になった、そういうふうに聞いているんですが、大蔵省拓銀不良債権実態を当然認識していらしたはずではございませんか。それにもかかわらず、なぜこのような合併大蔵省主導推進されていたのか、まずお伺いいたします。
  8. 山口公生

    政府委員山口公生君) お答え申し上げます。  本年の四月に両行は、拓銀道銀でございますが、合併を目的とした話し合いをするということにしたわけでございますが、その不良債権の額について、特に道銀側から拓銀不良債権がもっと大きいのではないかというふうな疑念を出されたと聞いております。  そういうことで話し合いがなかなかまとまらないということであったわけですけれども、この不良債権というものは二つ概念がありまして、一つ公表不良債権という、これは例えば破綻先、延滞は六カ月、それから金利減免は公定歩合以下というような一つ基準で、どこの銀行も同じで出してくるのが公表不良債権でございます。  ところが、ここで問題になったのは、そうでないものであっても相手破綻するのではないかと。そうしたら元も子もなくなるわけです。そうした公表不良債権とは違った、実質取れるか取れないか、つまり回収可能か可能でないかという意味の不良債権の額が、回収不能が非常に多いのではないかというようなことで疑念を出されたわけです。  私どもの検査というのは約三年ぐらい前に一回行っております。当時はそれほどの額ではなかったと承知しております。今回、先月の半ばに検査に入って、これから新しい資産査定をして、実際どれくらい回収が可能か不可能かということを検査しようとしていた矢先ではあったわけでございますけれども、いずれにせよ、そういう貸出先の事情もあって、公表しているもの以上にもっと回収できないものがあるのではないか、つまり金利等は返ってきているけれども、そのうち相手先が行き詰まるのではないかというところが結構たくさんあるのではないかということで話し合いがっかなかったというように認識しております。
  9. 広中和歌子

    広中和歌子君 大蔵大臣、つまり表向きの数字に基づいて大蔵省としてはいろいろ裁量行政をやっていらっしゃるわけですね。しかし、それが実態と非常にかけ離れているということが明らかになったのではないでしょうか。コメントをお伺いいたします。
  10. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 今回の場合は、最善努力拓銀道銀、全力を挙げてやられてきたことは間違いない事実であり、その都度報告を受け、私もそれを了知しているところでございます。  そういう中にございまして、ただいま銀行局長が言いましたような流れ、そして資金ショートが確定的になりましたことにかんがみまして、北海道銀行拓殖銀行からこの措置に対して通告が本朝正式に、早朝でありますが、出されることにより、対応策を考えますと。預金者保護も大事、また拓銀取引銀行として資金運用をし事業をやっておる取引先も大事、こういうことで、そこを保護し取り進めていくということは大蔵大臣として当然の責任かな、こう思う次第であります。  そういうことで、北海道地域に対する金融の安定、本件が全体の経済の足を引っ張るということになりませんように、最善の道は何かということでありまして、拓銀道銀そして北洋銀行への事業承継の中で万全を期するということでございますから、北海道経済、ひいては日本経済という高い観点からその措置を講じさせていただいたところでございます。
  11. 広中和歌子

    広中和歌子君 実態を非常に明らかにしないままに、行政がいつも対症療法で後手後手に回っているわけですよ。そして、不良債権実態が恐らく公表されているものよりももっと大きいのではないか、そういうおそれが今の株安とか資金がどんどん海外に流れていくといったことにつながっているのではないか、そういうふうに思うわけでございます。  金融三法を使ってとすぐにおっしゃるわけですけれども、預金保険法改正によってこの預金保険機構責任準備金は今どういう状況になっているか、お答えいただきたいと思います。
  12. 山口公生

    政府委員山口公生君) 昨年の通常国会でお認めいただきました金融三法によりまして、預金保険機構に特別な保険料というものを設定していただきました。当時までの保険料の約七倍をこの五年間で徴収させていただくということになったわけでございます。  そうしますと、八年度から十二年度までの五年間で財源見込みが二・七兆円ございます。それで、今までの実行済み金銭贈与は一・四兆円でございます。この中には木津信組という一兆円にも上る損を出したところが含まれておりますので極めて多額になっておりますが、一・四兆円でございます。  そうしますと、今後、平成十二年度までに使用可能な財源見込みは約一・三兆円ある。もちろん、保険料でございますから、今入ってくるのではなく五年間で入ってくるものを勘定してのことでございます。
  13. 広中和歌子

    広中和歌子君 三月末で約四千億の不足がこの保険機構に生じていると聞いております。もう既に七倍に保険料を徴収しているわけですから、これ以上ふやせない。確かに五年トータルにすると二・七兆円の保険料が入るかもしれませんけれども、今御説明にありましたように、九六年一兆三千億円ぐらいの支払いをしている。  そして、今度の北海道拓殖銀行の場合どのくらいのお金が必要であるか。預金保険機構自身からも出さなくてはならないし、それからまた日銀からも特融として支出されなければならない、そういうような状況にあるのではないかと思いますけれども、この北海道拓殖銀行措置に関してどのくらいの公的資金並びに銀行保険料その他必要になるか、お答えいただきたいと思います。
  14. 山口公生

    政府委員山口公生君) 北海道拓殖銀行の今回の営業譲渡によりまして、預金保険機構不良資産を買い取るということをやるわけでございます。  そのときに時価で買い取りますから、簿価との差は損失になるわけでございます。それは当然北海道拓殖銀行資本勘定でまずは埋めるわけでございます。それで埋め切れない部分がありますと、預金保険機構資金を贈与するという形になるわけでございます。  そうしますと、北海道拓殖銀行不良債権状況、つまり不良債権現実幾らあって幾らで買い取るか、価格を幾らにするかによってその額が決まるわけでございます。今検査が入っておりますので、検査の結果が出て、それで確定しますとその額がわかるのでございますけれども、今一ちょっと御紹介しましたような、北海道拓殖銀行資本勘定が二千九百七十六億円はございます。したがって、それでどれくらい埋め切れるかということでどれくらいの負担になるかということでございます。  日銀の二十五条の特融の方はファイナンスでございまして、これはいずれば日銀の方にまた返ってくるということで、最終的なロスの負担ということでありますと預金保険資金が出ていくということでございます。
  15. 広中和歌子

    広中和歌子君 この日銀特融というのはあくまでファイナンスであるということでございますけれども、要するにファイナンスということ、それは当然後から返ってくるということなのでございますけれども、果たしてそうなのかと。これはある種の公的資金導入につながっていくのではないんですか、しかもなし崩しの形で。お伺いいたします。
  16. 山口公生

    政府委員山口公生君) 日銀特融は、日銀は最後の貸し手として金融機関機能を維持するためのものでございますが、本来であれば担保をとってきちんと貸すということですけれども、特融は無担保で貸せるということでございます。しかも無限に、限界を設けないで貸すということでございますので、日銀の金というのは一回出ます。それで処理をされますと、それは預金保険機構の買い取った資金で回収されるというルートが一つございます。  それから、資産が売却され引き継がれることによってその資金が回収されるということでありまして、日銀資金そのものが、特融がそのまま預金保険機構財源になってしまうというようなことではございません。  したがって、公的資金論ということをいろいろ御議論していただいておりますけれども、それはあくまで破綻に必要な財源金融機関の中の保険料で賄えるのか、それが限界を超えて公的なもの、あるいは税金が裏打ちになった財政資金でまで穴埋めをするかというような議論というふうに御理解賜りたいと思っております。
  17. 広中和歌子

    広中和歌子君 多くの一般国民は、こういう財政金融の問題に対して非常にわからない、理解に乏しいところでございますけれども、私もその一人です。そして、何というんでしょうか、わからない形で政府保証するところの日銀特融が、金融不安という状況の中で、金融不安を防ぐという名目でどんどんなし崩しに使われていくのではないか。そうすると事実上の公的資金ではないかということを恐れるわけでございます。  そういう中で、要するにアメリカがRTCをつくって早期に抜本的に公的資金によって処理をしたそういうやり方責任の追及、そして逮捕者も出したといったやり方と比べて、本当にわからない、不透明な形で解決される。そして責任者も、今度の場合は何か拓銀の総裁並びにトップの方が辞任されるという形でございますけれども、責任とり方も多くの場合非常にあいまいであるということで、まさにモラルハザードにつながらないかと恐れるわけでございますけれども、大蔵大臣の御見解をお伺いいたします。
  18. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 今次の経営破綻に対するそれぞれの評価、判断、御批判、御批判と言った方がよろしいのかなと思いますが、これからもよく承ってまいります。  しかし、住専に発しました金融の危機という問題について、大論議の末、昨年金融三法をもって預金者保護金融システムの安定に資するということで行われてまいりました。その一つ一つが、御批判はあろうかと思いますが、適時適切にとり行われてきたという点において、預金者に対する安心感そして取引者に対するこれまた安心感、それは健全なという意味の経営体であります。そういう点できっちりとしたルールの中で行われていき、全体に日本経済の下支えになり金融システム安定化に資しておるのではないか、こういうことであろうかと思っております。
  19. 広中和歌子

    広中和歌子君 金融危機の背景には売るに売れない土地問題があると思います。収益性を超えて値段が下がっているのに、それでも売れないわけです。それを収益レベルに戻すために土地流動化が必要ではないか、土地流動化のスキームを考えるべきではないかと私は思います。アメリカのRTCがやったように土地債券を売り出す、そういうようなことが考えられませんでしょうか。  例えば、住都公団といった公的機関による土地債券発行を考えてはどうかと思いますけれども、建設大臣のお考え、そしてそうした検討をなさっているかどうかについても深くお答えいただきたいと思います。
  20. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 広中先生にお答えいたします。  土地の問題でございますが、私は環境問題も含め、また魅力ある国土にしなければならない大切な時期を今迎えておると思うわけでありまして、この機会に都市の再開発というものをしっかりと考えてまいらなきゃならぬ時期だと考えております。そのためには、土地の有効・高度利用、都市機能の高進、こういったものを図ってまいる問題を抱えておりますので、これらを踏まえてこの事業を進めるためには土地を先行的に取得して事業に活用していく。今、委員御指摘のとおりでございまして、このことが有効であると考えております。  そこで、具体的には都市開発資金制度や民間都市開発推進機構、民都機構と呼んでおるわけでありますが、こういう機構による土地取得などの施策を実施いたしておるところでありますけれども、今後ますます積極的にこれらの課題に取り組んでまいりたい、こう考えております。  加えて、委員御指摘の証券化等についてでありますが、不動産特定共同事業のほか、SPC方式という方式でございますが、特別目的会社方式と申しますか、こういった検討も現在進んでおると伺っておりまして、これらのことを踏まえて証券化に資する手法を都市の再開発に活用してまいる、こういったことを今後私どももより積極的に検討して都市のあり方を追求してまいりたい、こう考えておるところでございます。
  21. 広中和歌子

    広中和歌子君 大臣もおっしゃいましたように、地価が下がっている。まさに都市再開発の非常にいいチャンスだろうと思いますので、これを積極的にやっていただきたいと思うわけでございます。  それから、土地税制でございますけれども、自民党の方でも、一九九〇年以降に加えられた、つまりバブルによる土地高騰への対応として生まれたさまざまな税制がございますけれども、それをもとに戻すという考え方について大蔵省はどういうふうにお考えでございますか。
  22. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 土地税制につきましては、御指摘のように、平成二年の秋にあの状況の中で総合的な検討を行いまして、平成三年以降新しい土地税制制度を動かしてまいりましたが、その後、御承知のように地価の動向が変わってきております。それから税制の方もかなりいろいろな面で変わってきております。  それを受けまして、平成四年以降、五、六、七、八とございましたが、特に八年の土地税制改正で譲渡の問題、土地譲渡益課税、これは法人も個人もそうです。それから土地保有課税、地価税を半減する、あるいは昨年、今回もでございますが、例えば登録免許税につきましては、これは固定資産税の評価にリンクしておりますが、固定資産税の評価自体が二五%下がった上に六割軽減というものを継続するということで、かなりの部分平成二年の税制に戻ってきております。ただ、それでも不十分である、あるいは土地の有効利用ということからもっと考えるべきことがあるではないかということで今議論を続けておりまして、年末までに答えを出していきたいと思っております。
  23. 広中和歌子

    広中和歌子君 自民党の土地税制に関する提案なんかを見ておりますと、どちらかというと供給者側の立場に立っている。例えば保有税とか譲渡益課税とか、そういうふうなものはほとんどもうなきに等しいような状況になっている。そういう中で、要するに需要者、買い手に買いやすいような税制に変えていくことが必要なんじゃないかと思います。  むしろ必要なのは、不動産取得税、登録免許税、印紙税、特別土地保有税など、実に多くの税金が土地を買う人にかかってくるわけです。トータルいたしますと、今非常に土地の評価とか何かが実態とかけ離れておりますから、取得価格の二割ぐらいかかってしまうというような、一〇%を超えるような、場合によっては二〇%近くなるというようなことが実際に行われている。そういう中で土地を買いたいという意欲がわいてこないんではないかと思いますけれども、その点についてお伺いいたします。
  24. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 今御指摘のように、土地問題につきましては、需要者側、供給者側、両側の受けとめ方があろうかと思います。需要者側の方は、もっと地価が下がるのではないかということで地価の動向を見ている状況にあるのが一番大きなポイントかと思います。この点につきましては、これは国土庁が主管ですが、地価の動きに今二極化が見えてきて、よい土地と言うのはおかしいですが、いわゆるよい土地については動き始めている、しかし不良債権担保の土地のようなものは動かないという状況にあります。  そういう意味では、供給者側、需要者側はありますが、基本はそこにあろうと思いますので、最初に御指摘いただきましたように、例えば不動産あるいは担保不動産の証券化といったような新しいスキームを考えていくのであれば、多分これは税金もリンクしてくると思います。税制が動かなければ証券化も動かないと思いますので、その辺は新しいスキームに合わせて税制上何ができるかを考えていかなければいけないと思っております。  なお、今の御質問で最初に私が答弁したこととダブりますけれども、不動産取得税、これは地方税です、それから登録免許税につきましてはできる限りの対応を平成九年に行っているということは御理解いただきたいと思っております。
  25. 広中和歌子

    広中和歌子君 地価が下がってからもう大分たっているのに、平成九年の対応ではちょっと遅過ぎるような気がいたしますけれども、それでもやっていただくことは大変すばらしいことだと思います。  そして、土地の値段も二極化している。非常に収益性の高そうなところはもう下げどまっている。そうじゃないところに関しては、やはり都市計画の視点から大いに建設大臣に頑張っていただきたいことをお願いいたしまして、次の質問に移らせていただきます。  総務庁長官、郵政三事業についてでございます。  国営として三事業一体化を堅持しようという考え方とか民営化論とかいろいろございます。さまざまな意見がありますけれども、自民党行革推進本部を中心とする考え方は国営堅持でございます。そういう中で、政府行政改革会議の会長代理のお立場としてどのように考えていらっしゃるか、お聞かせいただきたいと思います。いよいよこの行革の最終答申が今週中と伺っておりますけれども、ぜひその方針に沿った御決意を伺いたいところでございます。
  26. 小里貞利

    国務大臣(小里貞利君) 御承知いただいておりまするように、中間報告におきましては、郵便は国営、これを原則とすると。他の貯蓄、簡保については、中身の若干の差はございますが、将来は民営化しかるべきである、そういう方向でありましたこと、御承知のとおりでございます。先生もただいまお触れございましたように、その後、私どもは広く国民各界各層のこれらに対する自由闊達な議論を注目いたしてまいっております。  殊に、それらの中間報告にもかかわりませずという言葉はどうかと思いますけれども、政党関係あるいは関係団体等におきましては、必ずしも中間報告の方向を原則的に肯定せられる意見ばかりではないと。言葉をかえて言いますと、関係団体職員あるいはまた行政当局と申し上げていいんでしょうか、あるいはまたそのほかの関係機関等は、非常に強い一つのボリュームを持ちましてそのことはもう一回検討してみる必要があるのではないか、そういう意味の注意を喚起されておりますことも実情であります。  しかしながら、今次の改革は、申し上げるまでもなく国が現段階におきまして果たすべき役割を忌憚なくしかも厳粛に再検証するということがまず私は根本でなけりゃならぬと思っております。それらの考えの上に立ちまして、具体的にはやはり簡素で、そしてまた効率性の高い、しかも国民本位と申し上げましょうか、利用者の利便性を最高に考えたものでなけりゃならぬ、そういう一つの視点だけは大事に基本としながらこれを整理していかなけりゃならぬ、さように思っておるところでございます。
  27. 広中和歌子

    広中和歌子君 郵便局についてでございます。  この委員会でも多くの方が、郵便局がいかに地域に根差し、なくてはならない存在だということで評価が高いことも私は伺い、全く異論はございません。郵便局が民間宅配便との競合にさらされ、そして民営化議論が始まって以来、非常にサービスが向上したということも私は大変いいことだと思っているものでございます。  郵便小包に民間の宅配業者が参入したように、郵便事業に民間が参入することについて郵政大臣はどのようなお考えをお持ちでございましょうか。
  28. 自見庄三郎

    国務大臣(自見庄三郎君) 広中委員お答えさせていただきます。  手紙、はがきのサービス、これはいわゆる信書と言いますけれども、これは国民の基礎的通信手段として全国均一料金、ポスト投函制による簡易なシステムが世界各国共通の特徴でございます。先生御存じのように、近代郵便制度というのはイギリスで十九世紀に発生したわけでございますが、そのときもまさに全国均一料金そしてポスト投函制、これが世界各国の近代郵便制度の特徴になっております。  そういった中で、手紙、はがきのサービスは、宅配便とは異なり、民間事業者が郵便局と同じように全国津々浦々までサービスを提供すること、これはユニバーサルサービスと申しまして、郵便の場合は法律によりまして全国約三千三百の市町村に全部郵便局を置きなさいというユニバーサルサービスが法律上義務づけられてあるわけでございますけれども、そういったことを勘案しますと、民間業者が全国隅々までユニバーサルサービスを提供することは困難であるというふうに考えております。  仮に民間業者によるサービスが可能であるといたしましても、郵便局と民間事業者が同じようなネットワーク上でお互いに配達することになれば、郵便局だけが配達する場合に比べて郵便の数が減少しますし、その上分配の効率が低下することからかえって低下するのじゃないかというふうに考えております。  前回の委員会でもお答えしましたが、大都市と政令指定都市だけを仮に郵便を認めたとしますと、これは郵政審議会の答申でございますが、そうしますと東京、大阪、こういったところは、実は今は八十円と五十円でございますが、半額になるかもしれない。しかし、それ以外のところは、実は地方は、東京から例えば岩手県に手紙を出すと今の三倍になるのではないか、こういった試算も出しております。私は九州でございますが、九州の方から東京に出すときは今の郵便料金の三倍だ、しかし東京と大阪あるいは政令指定都市、その中は半額になる。そういったことが、クリームスキミングと申しますか、そういった現象が起きていいのかどうか。これは国民の方々の最終的な御判断でございます。  だから、郵便というのは、今申しましたように全国一律料金、ポスト投函制というのが世界各国の原則でございますから、そういったことを勘案しますと、なかなか民間参入というのは現時点では難しいのじゃないかなというふうに思っております。
  29. 広中和歌子

    広中和歌子君 電話料金は非常に高かったわけです。特に国際料金なんていうのは非常に高かったわけでございますけれども、民間の参入によって非常に安くなった、便利にもなったということが言えるわけでございます。それから、小包に関しましても、国内便は大変不便だったわけでございますけれども、民間業者が入ることによってゆうパックのサービスが非常に向上した。そういうことが言えるわけです。ですから、信書の秘密ということを守ってもらいたい方は郵便局の郵便をお使いになればいいので、そうじゃない方は一般を使ってもいいという考え方、利用者の利便性ということを考えたらそういうことも可能なんじゃないかなと思うわけでございます。  今非常に高いのが国際郵便。例えば、アメリカに送る料金とそれからアメリカから日本に送る料金とに非常に格差があります。これは資料要求、質問の中には入れていないわけですけれども、私は最近荷物を送ったことはないのですが、二、三倍になっているというふうに伺っております。  民間が入ると安くなる、これはどういうことなんでございましょうか。そして、最終的に郵便料金だけを国営にして残しておく、そうすると競争が入るところはどんどん値段を下げサービスもよくしていく、そして国営の部分に関しては値段をどんどん上げていくというふうな、そういう対応がなされるとしたら、全く利用者としては不満なのでございますけれども、いかがでしょうか。
  30. 自見庄三郎

    国務大臣(自見庄三郎君) 広中先生にお答えさせていただきますけれども、基本的に信書だけが実は今原則として郵便事業の独占になっておりまして、小包、ゆうパックというのがございますが、これはもう完全に基本的に競争状態になっております。  そういった中で、今さっきから申しますように、郵便事業は一体何でそれなら独占なのかといいますと、私の知識が正しければ、郵便事業というのは大変実は人件費が、もう一軒一軒郵便を届けねばならないということでございまして、大体この郵便事業の、統計によりますが、六五%あるいは七五%が人件費でございまして、そのところが実はユニバーサルサービスがかかっておりますから、全国に、一日でございますが、これは二千八百万カ所に実は手紙、はがきが行っております。  ある民間宅配業者は百九十万カ所行っておりまして、郵便事業というのは一軒一軒訪ねていってやらねばなりませんからけた違いに実は人手が要るわけでございます。一カ所当たり手紙、はがきは一日に平均一・三通行っております。これは一日に七千万通、年間に二百五十億通の実は手紙、はがきが行っておりますから、御存じのように人件費が大変要る事業でございまして、そういった意味で私は各国ともやはり国の権力が介入した郵便事業をしているんだというふうに思っております。  ただし、今申し上げましたように、小包はこれはもう完全に今は日本の場合でも民間事業と競争いたしておりまして、そういった状況にあるということを御理解いただければというふうに思うわけでございます。
  31. 広中和歌子

    広中和歌子君 ただ、随分規制があるんじゃございませんか、外国郵便の場合など。そういう規制はもうぜひ、緩和と言いません、廃止をしていただきたい。そして、それこそグローバルな状況で私たちも安いサービスを世界のどこにいても受けられるような、そういうふうに変えていただきたいと思います。  郵便事業を国営のままするか、どういう形になるかということ、いずれにしてもこれからの検討課題だと思いますので、私は国民各界各層の方の最大多数の利便性というところでお決めいただければいいと思います。やはり競争のない事業というものは基本的によくないというのは今までの私どもの体験でございます。国鉄しかり、それから電話しかりでございまして、申し上げにくいんですけれども、それはだれでも体験したことでございます。  本当に私たちは今便利な世の中に住んでいると感謝しているわけでございまして、郵便事業に関しましても前向きの御検討をいただきたい、民営化も含めて前向きに取り扱っていただきたいと思います。  それから、郵貯でございますけれども、郵貯は世界最大の銀行でございます。預金高二百二十四兆円ということです。店舗は二万四千六百、国で完全に保護されて、しかも優遇されております。  例えば、法人税、事業税、固定資産税、印紙税などを払う必要がない。それから、日本銀行準備預金預金保険といった信用保証の積み立ても不要である、株式配当も不要、利子課税の繰り延べが十年認められる等々ということで、大変結構なようでございますけれども、これは日本の他の民間の金融機関にとってはアンフェアな競争状況にあるんじゃないか。  特に、これからグローバルな金融市場の中で本当に日本金融機関は生き残れるかという、そこをかけて今リストラをやっているところでございますけれども、郵貯はそういう中で今のままでよろしいんでしょうか、お伺いいたします。
  32. 自見庄三郎

    国務大臣(自見庄三郎君) 広中委員から郵便貯金のことについて御質問があったわけでございますが、いろいろな税金初め、これは国営事業でございますから払わなくていい、非常に不公平じゃないかというお話がございました。  実は今さっき言いましたように、郵便局はユニバーサルサービスというのが実は義務づけられておりまして、そういった中で、郵政事業が黒字のところは東京と関東それから東海と近畿だけでございまして、ほかのところは、私は九州でございますが、九州、四国あるいは北海道、東北、もう全部赤字でございます。  しかし、法律上どんなところでも郵便局をつくりなさいということでございますから、三千三百のすべての市町村に郵便局があるわけでございます。そういった中で、ユニバーサルサービスのコストが一体どれくらいかかるのか、これはこの前審議会で試算をしていただきましたが、大体六千億円ぐらい、そのユニバーサルサービスというのは法律で義務づけられておりますからお金を出さねばならない。  一方、公租公課と申しますか、仮に払うとすれば、いろいろ前提がございますが、郵政省の審議会では大体二千億円ぐらいだろう、こういった結果も出ておるわけでございます。確かに公租公課は国の事業でございますからまけていただいておりますけれども、しかし逆にユニバーサルサービスで全部やりなさいということでございますから、約六千億円近いそのための出費もかさんでいる、こういった現実も御理解をいただければというふうに思うわけでございます。  また、先生の方から金融ビッグバンの話がございましたが、これは御存じのように、ビッグバンは基本的に我が国の金融市場の活性化を目指し、民間金融機関に対する規制緩和等を進めるものとして理解をして、これは政府も大変強く推進をしておられるわけでございます。そのことは利用者の利便を向上させるものとして積極的に私も推進されるべきものだというふうに思っております。  ただしその中で、イギリス、アメリカで規制緩和により金融サービスの地域間の格差あるいは顧客間の格差が拡大する傾向がございまして、ちょっと私が読んだ本でございますが、アメリカでビッグバンが進むとどうなるか。実はアメリカの国民の二五%が銀行に口座を持てない状態になる。これはある著者の話でございます。それは要するに、先生御存じのようにアメリカの銀行は大変経営効率を上げなきゃなりませんから、二十万なり三十万の預金銀行に預けないと口座をつくっていただけない、こういった状態にもあるやに聞いております。ライフラインバンキング、先生も長い間アメリカにおられたわけでございまして、私も同じときにおらしていただいたわけでございますが、そういったことでありまして、やっぱり地域間の格差、貧しい人はなかなか銀行口座をつくりにくい、そういった現象も起きているやに聞いておるわけでございますから、そういった可能性もございます。  一方、もう御存じのように、郵便貯金は小口、個人を念頭にして基礎的金融サービスをまずは全国あまねく公平に提供する、これは法律上義務でございますからやっておりますので、ビッグバンの進展する中、郵便貯金がこうした役割を果たしていくことによって全体としての利用者の利便が向上するように、そしてまた本当に安心して国民に生活をしていただくというふうなことも私は一面大事なことではないかなというふうに思っております。
  33. 広中和歌子

    広中和歌子君 私、銀行に口座を開けない人はアメリカでもいると思います。ホームレスなんかその典型だと思います。  今強調されました郵便局のユニバーサルサービスとしての利便性ということをお考えになるんだったら、公営という形でもどういう形でもお残しになればよろしいと思うんですが、一千万円の預金の限度、それはちょっと大き過ぎるんじゃないんですか。もっと小さな形でお残しになるんだったら結構でございます。  例えば、イギリス、フランスなどかつて国営の郵便局を持っていたところがございますけれども、その資金規模、預金規模というんでしょうか、それはせいぜい五兆円とかその辺ですよ。日本の場合二百二十四兆。しかもマル優が終わって、三百万円の限度額が外されて今度一千万円になった。それで一千万まで、つまり全額その預金が保証されるという中にあって、今の状況の中でどんどん預金が郵便局にシフトしていますね。こういうことでよろしいんでしょうか。ちょっとやっぱりアンフェアな気がいたします。まずその点について伺います。
  34. 自見庄三郎

    国務大臣(自見庄三郎君) ちょっと後の方の御質問から答えさせていただきたいと思いますが、郵便貯金が大変肥大化をしているんじゃないかという話でございましたが、個人金融資産平成八年に大体千二百一兆円あるということでございます。これに占める郵便貯金の、これは平成八年でございますが、二百二十五兆円でございまして、このシェアは大体この十年間、二割弱で安定的に推移をしております。  また、平成八年度の郵便貯金の純増、どれくらいふえたのかということでございますが、これは預入から払戻金を引いた額でございますが、これは対残高比で一・五%でございまして、残高全体の伸びも五・四%。一方、民間の銀行の個人預金に関しましては五・五%でございます。郵貯の方が五・四、民間銀行の方が五・五でございますから、若干下回っているということでございます。  また、非常に巨大なお金だということでございますが、先生御存じのように金融システムとの関連につきましても、郵便貯金は入り口の貯金金利も今民間の三年物の定期預金掛け〇・九五と、民間の定期預金の三年物より五%安いという金利を設定させていただいておりまして、出口の預託金利も、これは十年物の国債の表面利率を基準にする、そういう仕組みをつくらせていただいておりますので、金融市場で形成される市場金利に基づいて決定しているところだということ、入り口も出口もまさに金融市場によって決定をされているということを御理解していただきたい、こういうふうに思うわけでございます。
  35. 広中和歌子

    広中和歌子君 時間が限定されておりますので、次に続けたいんですが、郵貯が今自主運営を一部していらっしゃいますけれども、その巨大な資金が財投に流れているわけですね。何かこの行革のお話の中で、それを全部自主運営に切りかえるというような動きもあるやに伺っておりますけれども、それが事実かどうかということ、そしてそうしたときには財投のあり方はどういうふうに変わっていくんでしょうか、お伺いいたします。
  36. 自見庄三郎

    国務大臣(自見庄三郎君) 郵貯の資金運用の預託の話が出ましたので、先に答えさせていただきます。  御存じのように、行革会議の中間報告にも郵貯の預託の廃止が盛り込まれたところでございますが、財投の資金調達のあり方について資金運用審議会懇談会等において今議論をしているところでございまして、その帰趨を見守っております。  仮にこの預託義務が廃止となれば全額自主運用ということになるわけでございますが、郵政省といたしましては長年の経験と実績がございます。一例を挙げますと、実は簡易保険というのは大正八年創設以来ずっと自主運用でやっております。戦時中、一時、戦費調達ということで一元的になったこともございますが、大体大正八年以来自主運用いたしておりまして、現在約九十九兆円のお金を自主運用させていただいております。また、郵便貯金につきましても昭和六十二年から自主運用ということが認められまして、現在約四十兆円のお金を運用させていただいておるわけでございますから、現在でも郵政省は百四十兆円のお金を実は自主運用させていただいているわけでございます。  もし全額自主運用となった場合、具体的にはどうするのかという御質問もございましたが、引き続きやはり社会資本整備等、公的分野での長期的資金を提供するとともに、日本版ビッグバンの進展により拡大する証券・金融市場で社債等に有利な運用を行うことに、長期安定的な資金運用を行うことを基本として経営計画を維持していくというふうな考えでございます。  もう一点、先生にぜひ御理解をいただきたいんですが、二百二十兆円が自主運用になるとすべて、今百四十兆円ありますが、すぐ二百三十兆円のお金が加わるのか、こういう御質問をいただくことが時々あるわけでございます。先生御存じのとおり、全額自主運用がもし実現した場合でも、預託廃止後七年間、これは預託の最長預託期間が七年でございますが、いきなり二百三十兆円が全部戻ってくるというわけでなくて、毎年の新規運用額は大体三十兆から四十兆になるということを予想いたしておりまして、今百四十兆円既に自主運用を、簡保は大正八年からやらせていただいておるわけでございますが、そうなっても、毎年三十兆、四十兆ふえたにしても、今申し上げました原則に基づいてしっかり自主運用ができるというふうに我々は思っております。
  37. 広中和歌子

    広中和歌子君 この委員会でも多くの方から財投の使われ方について御質問がありました。一般会計だけでなくて補正予算の問題、特別会計、それから特定財源、それから特殊法人などに配慮しなければ、一般会計だけを見て構造改革などと言ってもだめなわけでございます。  ここで委員長に資料を請求したいわけでございますけれども、一般会計、特別会計、財政投融資、地方財政各会計相互間の貸借関係表を一覧できるように工夫したものをぜひ提出、公表していただきたいとお願いしたいと思いますけれども、いかがでございましょうか。
  38. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 後刻、理事会で協議をいたします。
  39. 広中和歌子

    広中和歌子君 よろしくお願いいたします。  それでは、運輸大臣お見えでございますので、国鉄債務の問題について伺います。  これも既に同僚議員からいろいろな形で御質問がありましたけれども、国鉄の負債総額は二十一八・一兆円でございます。それは平成九年度債務残高見込みということでございますけれども、最初は二十五・五兆円、それが二十八・一兆円まで膨らんだわけです。そのときに国鉄清算事業団と旧しては、土地もあり株も売り出すということで、最終的には多少国民負担をお願いするかもしれないけれども、清算事業団という名前が示すように、できるだけたくさん清算をして国民にお示しする、そういうことだったと思います。  時間が余りありませんのでこちらから言ってしまいますけれども、なぜもっと早く土地を、また株を売って債務を軽減しなかったのか、その責任についてお伺いしたいと思います。  私は、平成五年に同じ質問を運輸委員会でしております。つまり、毎年一兆五千億円ぐらいの利子を払っているわけですね。利子を払うのであればできるだけ早く返す方向で考えるべきである、なぜ土地を売らないのかと。そうしましたら、土地は利子分ぐらいしか、ちょろちょろと売る程度なんですね。要するにバブルのときで土地高騰をさらにあおってはいけないというようなお答えが返ってまいりましたけれども、むしろバブルのときには土地をたくさん供給することによって値段を下げる効果があるんじゃないか。それから、JRの株でございますけれども、ちょっと株価が下がっておりますので、NTTを高く国民に売りつけたその二の舞をしようということなのかもしれませんけれども、ともかく早く借金を返すことが先決じゃないかということを私は質問していたわけでございます。  このような状況になっている責任はだれがおとりになるのか、どういうふうに運輸大臣は責任を感じていらっしゃるか、お伺いいたします。
  40. 藤井孝男

    国務大臣(藤井孝男君) 広中委員お答えいたします。  今、委員おっしゃられましたとおり、昭和六十三年一月の閣議決定に基づきまして、この国鉄長期債務の本格的処理につきましては、まず国鉄清算事業団が持つ資産、そして株式を適切また効率的に処分することによって国民負担を極力軽減する、そういった閣議決定に基づいて処理策を行ってきたところであります。  今、委員おっしゃられましたとおり、平成五年の運輸委員会委員のおっしゃいました、土地売却について、大量に土地を供給すればむしろ地価は下がるのではないか、その点につきましては私も共通する認識を持っている一人であります。  しかし、残念ながらあのときの結果が、いわゆる一般競争入札等々の制限が加えられまして自由に土地を処分することができなかった、またバブル崩壊後また株価の低迷等々ございまして、政府といたしましてはそのときそのときの情勢をかんがみまして適切な最善努力をしてきたつもりでありますが、結果的にこのように債務が膨らんだということにつきましては、我々、また運輸省といたしましても運輸大臣といたしましてもこれは謙虚に責任を受けとめなきゃならないと思っております。  そういう中で、今後の本格的処理はどうあるべきかということにつきましては、昨年の十二月の閣議決定に基づきまして平成十年度から本格的な処理をしなければならない、こういうことが決まりまして、現在、財政構造改革会議の企画委員会であらゆる面についてどういう具体的な処理策があるか、検討している最中であります。  運輸省といたしましても、みずからどれだけ努力してこの処理策に対して対策を講じていけるか、さまざまな議論の中で、また企画委員会のいろんな御議論の中で、本年中、でき得れば予算等との関係もございますので今月末までに具体的な処理を考え、そして国民の皆様方の御理解をいただきながら何とかこれ以上の先延ばしは避けるべきだ、このように考えております。
  41. 広中和歌子

    広中和歌子君 閣議決定にされたようでございますけれども、債務を国が引き受けることに私は異論があるわけではありません。  その処理方法でございますけれども、国鉄長期債務整理特別会計というようなのを設置なさるということでございますけれども、この赤字は一般会計の中に組み込まれるのかどうかということでございます。そして……
  42. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 時間です。
  43. 広中和歌子

    広中和歌子君 二人合わせてさせていただくようにお願いしてあります。  そうした場合、国及び地方自治体の財政赤字の対GDP比を百分の三以下とするといったような財政構造改革法案の目的、それはどういうふうに変わってくるのか、お伺いいたします。
  44. 涌井洋治

    政府委員(涌井洋治君) お答え申し上げます。  現在の清算事業団の債務はもともと国鉄の債務を受け継いできたものでございますので、国民経済計算上は国の債務とは現在のところなっておりません。いずれこの扱いについては、ただいまこの予算編成過程で検討しているわけでございますが、先生の御指摘のように仮に国が引き受けた場合には国の債務ということになりますので、現在国の債務残高は、国、地方についてのGDP比は九〇%を上回るということでございますが、仮に国が引き受けた場合にはそれにのってくるということでございます。  ただ、それは債務残高でございまして、もう一つの目標であるGDP比三%というのは、これは毎年度の国、地方を通じたフローの財政赤字でございます。
  45. 広中和歌子

    広中和歌子君 もう一度確認いたしますと、そうした国の赤字として認めた場合には、今のこの法案、政府が立てていらっしゃるフローベースでもストックベースでもそのスキームというのは狂ってくるというふうに考えてよろしいんですか。
  46. 涌井洋治

    政府委員(涌井洋治君) お答え申し上げます。  現在の政府の試算で示しておりますところの九〇%という債務残高の中には、現在のところ、これはもともと国鉄の赤字なものですから公営企業の赤字ということで、これは国民経済計算上は国の債務とは区別しております。そういう意味で入っておりませんが、これはまだ結論が出ていないわけですけれども、仮に先生の御指摘のような国がその債務を引き受けた場合には国の債務ということで債務残高に入ってくる。そうすると、その支払い利息につきましては毎年度の財政赤字のところにのってくるわけですから、それを含めて三%以下にしなくてはならない、法律上はそうなっております。
  47. 広中和歌子

    広中和歌子君 閣議でも国の財政赤字として計上することを決定しているということでございますので、ここは今後どういう形になるか、私としては指摘しておきたいと思います。  最後に、今さまざまな金融不祥事がマスコミなどで報じられております。そして、大企業、金融機関、あらゆるところが総会屋対策などで法に許されない形で資金を提供しているとかなんとかで逮捕者が出ていて、これはまさに金融界日本経済界に対するイメージダウンはすごいものがあると思います。そうした法の裁きは一方でなさるべきだと当然思いますけれども、しかし、こうした総会屋への利益供与疑惑の前に、そのもとであるところの総会屋、それを今までどういう形で放置、その放置されていた警察の責任というものがやはり追及されなければいけないんじゃないかなと思うわけでございます。  総会屋対策というふうに言われておりますけれども、企業などから具体的な形で警察が頼まれることはなかったのか、そしてまた、そういう違法行為があることを警察は察知することができなかったのか、それを未然にとめられなかったのか、その点についてお伺いして私の質問を終わりたいと思いますが、いかがでしょうか。
  48. 佐藤英彦

    政府委員佐藤英彦君) 御指摘のように、警察といたしましても、この種事案の根源は、総会屋、さらにはその背後にある暴力団側に根源的問題があるというぐあいに考えて、かねてより取り締まりをし、検挙をしてまいりました。  しかし、十五年前、商法の改正によりましてその種の集団に対する株主権の行使に関し利益を供与することが犯罪と規定をされたわけであります。そして、そのとき以降、私どもとしては企業に対し、彼ら不法集団に対する全員の供与をやめるように指導申し上げ、また私どもに相談が参った場合にはその企業の支援をすることを重点として今日までやってまいりました。そしてなお、今日に至りましても、また本年に入りまして政府挙げてこの種の事案撲滅のために力を尽くしているときに、引き続き、その供与を継続しているという事実については私どもも看過するわけにはまいらないというぐあいに考えております。  なお、先生御指摘のように、やはり冒頭に申しましたように根本はその種の利益を要求する側にあるということでございますので、引き続き取り締まりを強化してまいりたいというぐあいに考えております。
  49. 広中和歌子

    広中和歌子君 民間の人たちがおどされて、そして金品を渡さなければ黙ってくれないという状況の中でいろいろな事件が起こっているわけです。殺されるケースもあるし、騒ぎ立てられるケースもある。そういう中で、結局長いものに巻かれるような土壌が日本経済界の中にでき上がっているとしたら、これはゆゆしき問題でありますので、このテーマにつきましては、法務委員一会で商法改正についての委員会が開かれますので、十分に審議され、また警察としても対応なさることを心から期待申し上げて、私の質問を終わります。  どうもありがとうございました。(拍手)
  50. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 平成会の岩瀬でございます。  今、広中先生の方より大綱お話がありましたけれども、拓銀の問題についてあと二、三私から質問させていただきます。  この北海道拓殖銀行北海道銀行合併の問題についてはことしの四月に発表されたわけですけれども、発表された当初より不安視されていたわけであります。しかし、その間の大臣の発言を申し上げますと、これであらわされているかと思いますけれども、預金者の信頼を確保する上で最善の選択じゃないかというようなことも言われておりますし、また七月二十九日には三塚蔵相の講演で合併撤回は考えていないというような見解も示されておるわけでございます。  一方、こういうことをきょう発表されました結果、株の方の動きはどうかなと思ったわけでございますが、ある時点の数値ですが、その後動いていると思いますけれども、九百五十七円高で、銀行株はしっかりだというようなことが実態とされておるわけでございます。  そうしますと、大蔵省の方は、この合併問題に対してどういう対応をしていたんだということがあるわけでございます。この点どうでございましょうか。
  51. 山口公生

    政府委員山口公生君) 事実関係を中心にまず御説明申し上げます。  先生御指摘のように、四月一日の時点では両行が合併して新しい銀行をつくって再出発するということでございました。それは、地域が非常に競合しているということで思い切ったリストラができるのではないかと。店舗等は横に接して並んでいるケースが多うございます。そうすると、一つはなくし、一つだけにするというような、他の合併では見られないリストラ効果があるのではないかということでそれを始めたわけでございます。  ところが、不良債権等の認識の問題等でなかなかうまくいかないということになったわけでございます。合併という線も七月二十九日ではまだ消えておりませんでしたけれども、ただ、その合併の延期の話が出たときに非常にマーケットから厳しい評価を受けた。株が下がりました。それから、ごく最近に至りますと、インターバンク、つまりコール市場での取り入れが非常に厳しくなりました。担保を積んでも貸してくれないというような形で資金的に行き詰まったわけでございます。  したがいまして、合併という線を引き続き模索するにはもう時間的な余裕がない。資金がショートしてしまえば銀行としてワークしませんので、急遽この際新しい形での対応策ということで日銀法の二十五条の発動を願って、それでその機能を維持するという処理になったわけでございます。
  52. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 それからもう一つ大蔵省の方で金融検査というのをやっているわけでございます。また日銀考査もやっているわけでございますけれども、先ほど来のお話を聞いておりますと、三年前に検査をというようなお話がちょっとあったわけでございます。この検査なり、また日銀の方はわからないでしょうけれども、この時期はお互いに連絡をとっているんじゃないかと思うんですが、こういうものはいつやられたんだろうと。また、こういう事態になって検査もしていないのかというような疑問も浮かぶわけですが、この点はいかがでございましょうか。
  53. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今正確な日付はちょっと手持ちございませんが、大蔵省検査はほぼ三年前にやっております。それから日銀の考査というのは大蔵の検査と大体その間に挟まるような形でやっておるわけでございます。  それは毎年毎年検査に入れれば常時ウォッチができるわけでございますけれども、多数の銀行があり、こちらの職員にもマンパワーの限界がございます。したがいまして、少なくとも余り長く間隔があかないようにということで努力をさせていただいているところでございますけれども、ちょうど今回そういう時期に来ましたので、昨月の半ばに検査に入って新しく資産の査定等をやるということで今検査中のところでございました。
  54. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 これはもう四月一日から合併が進められておるわけでございますけれども、その四月一日合併になるまでにも大蔵の方へのいろんなお話があったんだろうというふうに思うわけでございます。そういう中で、今検査をしているというのはちょっと我々解せないんですけれども、もっと早くやってお互いのいい方法をアドバイスするということがやはり必要なんじゃないかと思うんですけれども、この点はそういうしきたりになっているのかどうか。
  55. 山口公生

    政府委員山口公生君) 四月一日の合併の発表の際の経緯を若干申し上げますと、拓銀道銀両方から、今後の北海道内における両行の将来展望というものを議論した際、やはりこれは一つになっていこうという自主的な判断がございました。したがいまして、自主的な判断としての両行の合併の話でございました。したがいまして、当局の方が資産を査定してこちらで合併をあっせんするというようなシチュエーションではなかったことを御理解いただきたいと思います。
  56. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 そうしますと、現在数値はつかんでおらないのかどうかという点が一点ございます。それから、預金者保護を万全にするということであるわけですけれども、その預金者保護は、どういう額のどのくらいの範囲の人は万全にすると考えておられるんでしょうか。この点、はっきりしたものがあるんでしょうか。
  57. 山口公生

    政府委員山口公生君) お答え申し上げます。  検査に先月入ったばかりで、今検査中でございます。したがって、数値としてまだ私の手元の方に明確なものはございません。したがいまして、これが明確になった後にそのロス額あるいは資産の査定をして、どの部分は北洋銀行に引き継ぐというようなことをやらせていただきたいというふうに思っております。  それから、預金者保護でございますが、これは金融三法でお認めいただいておりますので、全部の預金を保護いたす所存でございます。
  58. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 一説によりますと、大蔵省の方は北日本、徳陽シティ、殖産の東北三行の合併を演出したけれどもうまくいかなかった、今回は腰が引けているんじゃないか、こういうような話もあったわけでございます。預金者保護という観点から、できるだけの努力をお願いしたいというふうに思うわけでございます。  最後に一点、こういうふうな形でいろんな銀行の不安が出てきておるわけでございますし、またこれが経済界にも影響しておるわけでございます。こういうような不安要素、銀行、証券等々でございますけれども、こういう不安要素というのは今幾つかあるのかどうか、そういう点、ちょっとお答えいただきたいと思います。
  59. 山口公生

    政府委員山口公生君) 大変お答えしにくい話でございますので、具体的に申し上げることは差し控えさせていただきたいと思うんですけれども、今回処理案を発表させていただきました北海道拓殖銀行は、かねてよりいろいろな風評もございましたし、マスコミの皆さん方からのいろいろな御批判もあった銀行でございます。  その処理が今回明らかになったということで、それはどういう御評価をいただくか、これはマーケットの方でお決めいただくわけでございますけれども、いつも頭にひっかかっていた大きなものが一つ何かめどが立ったという感じは、私としては期待している次第でございます。  それ以上の答弁はちょっと差し控えさせていただきたいと思います。
  60. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 最後に、金融問題については、それぞれの経営は個別銀行の問題であるわけでございますけれども、この取り扱いを誤るとまたかえって信用不安を増大させるというようなことがあるわけでございますので、大蔵大臣の御見解をお聞きして、この問題は終わりにしたいと思います。
  61. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 政府委員等の段々のお話であります。金融は産業の血液、経済の動脈でございます。このシステムが安定しておるということで諸施策が前進をすることは御案内のとおりであります。  同時にまた、預金者保護という観点も当然配慮をしていかなければなりませんから、自己責任ではありませんでこちらの責任、なぜ振りかわるのかという問題もあろうと思いますが、これも、全体が安定することによって預金者も保護される、こういうことでありませんと信頼関係がなくなるわけでございまして、ある日突然、かって戦前のパニックのようなことにもなりかねないということ、それを防止してまいることが政府として、また担当相として当然のことなのかなと思っております。金融三法をきっちりと誠実に執行することによって役目を果たさせていただきたいと思っております。
  62. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 それでは本来の質問の方に入らせていただきたいと思いますけれども、時間の関係でちょっと前後させていただいて、文部大臣がおいでになっていますのでひとつ献血の問題を先にお尋ねいたしたいと存じます。献血は、本来は厚生大臣、厚生省の所管でございますけれども、学校教育という観点から質問させていただきます。  血液事業につきましては、厚生省の方の資料を見させていただきますと、通常の血液は足りておる、しかしアルブミン製剤とか特殊な血漿分画製剤関係のものは不足しており、外国から輸入しておるということでございます。そういう意味で、献血の推進を図っておるというのが実態でございますけれども、私の友人の赤十字の関係者が、もちろんボランティアの方でございますが、一生懸命この推進を図っておるわけでございます。  献血していただく中で、学生諸君の若い力というのが非常に要素が大きいわけでございますけれども、どうも最近の統計を見ますと、献血量というのが年々落ちておる。もちろん、献血する人員も落ちておるわけでございまして、簡単に申し上げますと、平成四年に百五十五万人の学生さんの献血があったものが平成八年には百八万九千ということで、約三分の一が落ちてしまっておる。もちろん量もこれにつながって落ちておるわけでございます。こういう中で、高校生もこの半分を占めておるわけですが、七十七万人が三十七万人というふうに半分近くまで落ちておるというような実態があるわけでございます。  これは、学生以外の一般の献血の方も同じでございますけれども、またこの私の友人が申しますには、献血という行為は、単に血を提供するというだけじゃなくて、子供たちが社会に参加する、社会生活の一員だというようなことの教育的要素も非常に強いんだというようなこともあるわけでございます。そういう中で、高校生、この話としては高校生だったんですけれども、どうも協力が得られにくい環境になってきた。そのことが、また先生方も強制できる話ではないので、これまた先生方の方もなかなか難しくなってきている。こういうようなことで、これは高校生の教育の一環として大事なものじゃないか、社会全体もまたそれで助かる人もたくさんいるんだというようなことでございます。  どうかこの推進方について、文部大臣、今豊かな心を持った生徒の育成とかいろんな分野でのことをやっておられるわけなんですが、ぜひこのこともひとつ入れて、本当は厚生省の方からのそういう話が先なんだろうと思いますけれども、文部大臣の方からきょうはお話を伺わせていただきたいと思います。
  63. 町村信孝

    国務大臣(町村信孝君) 大変貴重な御指摘を賜りました。  御指摘のとおりに、どんどん献血者の数が減っている。大学生の方は大体七十万人前後、ちょっと減っておりますが、それほど大きく変化はないんですが、おっしゃるとおり高校生の数が非常に減っているというのはどうしてなのか。  ちょっと実情が必ずしもつまびらかではないのでありますが、一つには、昭和六十一年からそれまで二百ミリリットルの献血だったものを四百ミリリットルにふやした。さらに平成三年からはその方の体重を目安にしてというから、体のがっちりした人は多分六百ミリリットルまでいいというあたりが、もしかすると高校一年生あたりはそれだけのまだ、体力的にちょっと無理があるのかどうか、私も専門じゃないからわかりませんが、そんなこともあって減っているのか。  しかし、より大きくは、やっぱり先生おっしゃったとおり、何かそういう献血という行為を通じて、世のため人のためにという気持ちが薄らいでいることのあらわれであるとするならば、これは大変大きな問題だろうし、教育上もゆるがせにはできないかなと思っております。  ただ、先生御指摘のように、あくまでもこれはボランティアベースの話で、強制をするという話ではないのでありますが、学校を通じできるだけ協力をしてもらうというようなことをやっていきたい。これは日赤に対する集団献血あるいはボランティアベースによる献血であるわけでありますが、できるだけ皆さん方の協力を得られるように、各教育委員会等を通じて高校段階もまたできるだけ協力をしてもらえるように努力をしてまいりたい、かように考えております。
  64. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 よろしくお願いしたいと思います。  それから、構造改革法案の方でございます。この前、十三日に私が質問させていただきまして、地方財政のところに入れなかったわけでございますけれども、きょうはちょっとそれに、一問くらいかと思いますけれども入らせていただきます。  端的に申し上げますと、国の方も今厳しい財政状況だと。地方の方も同様でございまして、公債発行のウエートが非常に高いし、また国債償還費の割合も高いということで財政の硬直化も進んでおるわけでございます。端的に硬直化の指標を示すものがあるわけでございますけれども、その公債費の弾力性を判断する経常収支比率ということも、今平成七年度の数値しか持っておりませんが、八五%というふうに、平成元年が六九・八、約七〇%ですから、もう一五%もふえている。これは七年度の数字ですから今もっとふえているんだろうというふうに思うわけでございます。  こういう中での地方財政の問題なんですけれども、まず財政構造改革法案の四十一条で、地方財政計画における一般歳出額を前年度より下回るようというようなことが書かれておるわけでございますけれども、これは単にこの額を減らせというだけの問題ではないんだろうと思います。  そこで、この問題について自治大臣に、これは何を意味しておるんだ、何を期待しているのか、お伺いしたいと思います。
  65. 上杉光弘

    国務大臣(上杉光弘君) 地方財政健全化のためには地方の歳出を抑制する必要があるというのはもう御承知のとおりだと思うんです。  それで、このため地方財政計画ベースでは地方一般歳出の抑制を図ることといたしておるわけでございます。問題はそのありようでありますが、その抑制のための必要な措置といたしましては、国の施策や予算と密接に関連する公共投資、社会保障、教育、これで地方一般歳出の七〇%を占めておるわけでございまして、極めて地方財政にかかる比重が大きいわけでございますが、この公共投資、社会保障、教育における国、地方双方の歳出抑制につながる施策の見直しをまずする。それから、地方単独施策の抑制などもする財源措置をいたしておるわけで、ここにも財政が苦しくなった一因もあるわけでございますが、こういうことをやっていくということであります。
  66. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 今までの地方財政の地方債残高を見ますと、平成四年度に六十一億円だったものが平成九年度では百八億円ということで、この五年間でもう倍近くふえておるわけでございます。これにつきましては、政府の経済対策が毎年行われて、これとちょうど重なっておるわけなんですが、こういうふうに重なっておることは、政府の対策に協力して地方も行ったと考えておるわけなんで、いろんな地方の悪化について政府の方も責任を持って対処していただきたいということを大蔵大臣にちょっと申し上げておきたいと思いますが、この点について一言だけお答えしていただきます。
  67. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 公経済の車の両輪が国と地方自治団体、こういうことであります。今次の財政構造改革は、御案内のとおり国と地方一体となりまして全体を見直し健全な財政に生まれ変わらせよう、生まれ変わりますことで地域サービス、国民サービスが向上してまいりますねと、この基本でありますから、かねがね自治大臣も御答弁ありますように、全力を尽くしてその趣旨を踏まえ努力をする、こういうことであり、私どもも御期待を申し上げておるところであり、予算編成時において全体をどう進めるか真剣な論議を積み重ねるということになります。
  68. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 終わります。(拍手)
  69. 林芳正

    ○林芳正君 自民党の林芳正でございます。どうぞよろしく御声援のほどをお願いいたします。  きょうは同僚の広中先生から暗い話が多いので少し明るい話をということでございましたが、私も、ここで余り暗い話をするとそれだけで景気が悪くなるような気がいたしまして、少し明るい話をしたいと思います。直接この財政構造改革とは関連が薄いかもしれませんが、先般、総理がロシアへ行かれました。ユーラシア外交ということで画期的な成果を上げて帰ってこられたわけでございます。  この中で、橋本・エリツィン・プランというものをつくって帰ってまいられたわけでございまして、その中で、私は大変にすばらしいなと、また私も従来強い関心を持って勉強させていただいていたことがございまして、それはエネルギーの問題でございます。この橋本・エリツィン・プランの中にエネルギー対話という部分がございまして、その中に特に極東シベリアのエネルギーの潜在的可能性を最大限に引き出すために対話をやっていくということが明記をされております。  きょうは資料を用意させていただきましてお手元にお配りをさせていただきますので、この一枚目をごらんになっていただきたいわけでございます。  この極東ロシア、サハリンやロシアにはたくさんの天然ガスが埋蔵されておるわけでございまして、この一番左側でございますが、欧州が一九七〇年と二十年後の一九九〇年、どのようにパイプライン網を発展させていったか。ちょっとこれは見にくいわけでございますが、この黒い実線がパイプラインのネットワークでございます。この二十年間で欧州はパイプラインをまさに網の目のように敷かれまして天然ガスを通しておるわけでございます。  翻りまして、我が北東アジア、まだミミズのようなのがちょろちょろとしておるのが今の北東アジアのパイプラインの現状、この右側の上の図でございます。今から十五年間でこの北東アジアにおきます天然ガスのパイプラインが続々と出てくるというふうに予測をされるわけでございますが、この中に我が国がやはり積極的に入っていかなければならない、こういうふうに思っておるわけでございます。  これはあくまで仮定でございますが、この真ん中の下の日本国内パイプラインが整備をされなかった場合、右側の整備をした場合と比べていただきますと、この北東アジアにヨーロッパのようにネットワークが整備されたときに、我が国が国内で整備をするかしないかによって、全く我が国が蚊帳の外に置かれるかきちっとそのネットワークの中に入っていくかという大きな岐路に今立っておる、こういうふうに思っておるわけでございます。  そういった意味で、このユーラシア外交の第一歩として、総理がこれを明記されたというのは大変に画期的なことだと私は思っておりますが、その辺の検討状況また将来の見通しについて、またあわせまして、これは我が国一つだけでできる話ではございません。周辺の中国や韓国そしてモンゴルといった国との、ロシアだけではなくて、協調が大切だと思いますが、その辺の御見解について通産大臣にお伺いしたいと思います。
  70. 堀内光雄

    国務大臣(堀内光雄君) お答えを申し上げます。  アジアにおいて大変急増するエネルギーの問題に対しまして、ロシア、特に極東シベリアのエネルギー資源の潜在的可能性というものを引き出すことは、エネルギー需要の長期的な安定化観点からも大変重要な課題であると考えております。御指摘のとおり、今回の橋本総理とエリツィン大統領との会談の中でも、この観点からエネルギー面での協力として日ロ間のエネルギー対話を進めていくこととされたところでございます。  ロシアは世界有数のエネルギーの生産国でありますし、特に天然ガスにおきましては生産量及び埋蔵量ベースでは世界第一位でございます。しかしながら、一方で、自由化以降の混乱から、エネルギーの需給に関しましては極めて非効率なエネルギー消費を行っており、またエネルギーの供給部門の財務の危機などから多くの問題点を抱えていると認識いたしております。  そういう意味合いから、今後事務レベルでの日本とロシアの間のエネルギー協議早期に開始いたしまして、世界のエネルギー供給の中でのロシアの役割、あるいは極東シベリアのエネルギーの開発、それからロシアにおける省エネルギーの推進等の幅広い観点から日ロ間での対話を深めてまいりたいというふうに考えております。  また、パイプラインの問題につきましては、御指摘のとおり、ヨーロッパにおいては天然ガスのパイプラインが、先ほどお示しいただきました資料にもございますとおり、大変発達をいたしておりまして、それに対して、極東においては天然ガスはこれまで主として液化天然ガスの形態で輸送、利用がされているところでございます。しかしながら、近年、サハリン及びシベリアにおける天然ガスパイプライン構想が動き始めているというふうに承知をいたしております。こうした構想は、仮に実現をすれば、経済成長著しいアジア地域におけるエネルギーの供給の安定化、あるいは北東アジア地域の経済緊密化というような面からも有意義なものだというふうに考えております。  具体的な構想といたしましては、第一に、サハリンから我が国に至る天然ガスパイプライン構想でありまして、現在、関係事業者によってルートあるいは経済性などに対するフィージビリティースタディーを行っているところでございます。当省といたしましては、フィージビリティースタディーの進捗状況だとか需要業界の協議の動向を今見守っているところでございます。  第二番目には、シベリアから中国に至る天然ガスパイプライン構想でございまして、本構想の実現のためには、まずガス田の事業化の可能性について経済性等の総合的調査を行う必要があると考えております。現在、これをいかに行っていくかについて、日本の石油公団、ロシア、中国、韓国の関係機関の間で予備的な意見交換を行っているところでございまして、こういう段階であると承知をいたしております。  今後こうした動きが進展をしていくことを大いに期待をいたしておりますし、その動向を見守ってまいりたいと考えております。
  71. 林芳正

    ○林芳正君 大変ありがとうございました。  ぜひ周辺諸国との協調を図りながら、またこの国内の状況というのもなかなか一筋縄ではいかない状況であろうと理解をしておるところでございまして、あわせて通産大臣のリーダーシップをお願いいたしたいと思います。  これに関連いたしまして、外務省に来ていただいていると思いますが、今、大臣がおっしゃったように、このヨーロッパのパイプラインが充実していくということは、エネルギーの供給だけではなくて、それを通じまして安全保障に大変に寄与をしている、こういうふうに私は思っております。  冷戦がずっと続いておる間も、パイプラインの中を流れる天然ガスはいっときたりとも途切れたことがなかったということであります。今EU統合ということが言われておりますけれども、そもそもは石炭や鉄鉱そして原子力をどうやってお互いに使っていこうかということからこのヨーロッパは始まったわけでございまして、それが何十年を経て通貨統合までこぎつけておるというのが現状であります。  そういった点におきまして、この北東アジアのパイプラインというものが、エネルギーだけではなくて、世界でも今一番微妙な場所と言われておりますこの北東アジアの安全保障にも大変に大きな明るい見通しをもたらしてくれるのではないか、こう思っておるわけでございますが、それについて、外務省、何か御見解がありましたらお伺いをいたしたいと思います。
  72. 大島正太郎

    政府委員大島正太郎君) お答えいたします。  まず、私は日ロの話からちょっと始めさせていただきますけれども、合意がございまして、その後中ロ間でもエネルギー協力につき認識の一致を見て、東アジアにおけるエネルギー対話の強化、機運が盛り上がってございます。そして、高い経済成長に伴って急速にエネルギー需要を増大させておりますアジア地域においても、エネルギーの安定供給の確保とか、地球温暖化問題等のエネルギー消費に起因する環境問題への対応がますます重要になってくると思っておりまして、地域の関係国の間でこういった形で対話、協力推進することによってこれら問題の解決が図られ、さらにはこうした協力を通じた信頼醸成が促進されて、ひいてはアジア地域の安全保障にも好ましい影響を与えるものと考えております。  また、アジア地域は今後世界のエネルギー情勢にますます多大な影響を与えると見込んでおります。したがって、アジア地域での対話、協力の進展は、アジア地域のみならず、戦後、石炭や鉄鉱等で対話、協力を通じて統合を進めてきた欧州連合、今御指摘のございました形でのヨーロッパの安全保障にパイプラインももちろん寄与しているわけでございますけれども、そういったヨーロッパを含んだ世界のエネルギー情勢の安定にも役立つ、影響するものだと思っております。
  73. 林芳正

    ○林芳正君 ありがとうございました。  以上のように安全保障に対する影響も大でございますから、通産大臣におかれましては、国内また諸外国との協調の上で推進をしていただきたいと思います。  本件に直接関係のない御質問で通産大臣にお越しいただきましてまことにありがとうございました。これでパイプライン関連の質問は終了させていただきますので、適宜御退席をいただければと思います。  それでは、この財政構造改革について、まず基本認識といたしまして、高齢・少子化の到来ということが言われておるわけでございまして、これは国民負担率等いろいろ御議論があったところでございます。ここで繰り返すつもりはございませんが、公的負担がある意味では増大をしていくということはやむを得ないだろう、こういうふうに思っておるわけでございます。  負担を税や保険料、いろんなことでお願いをするわけでございますが、どういった負担の対応をとっていくか。例えば税にいたしましても、所得に対する課税と資産に対する課税、また消費に対する課税というのがございますし、保険料というのもございましたし、またこの間国民負担率の定義についてこの委員会でも御議論があったところでありますが、自己負担という部分で御負担をいただくのか保険料としていただくのか、いろんな対応があるわけでございます。  この対応は手段ですから、結果として入ってくるのが同じだからそれでいいのではないかという御議論もあるかとは存じますが、この取り方によって経済に対する影響というのは随分変わってくるのではないか、こういうふうに思うわけでございます。多分、所得と消費課税を比べますと、所得課税というのは新しく何か企業を起こそうと今から頑張ろうという人にとってはなかなか厳しいわけでございますが、一方、消費課税というのは消費者や企業にとってはニュートラルだということがよく言われておるわけでございます。  また一方で、この金融政策、金利の問題も随分日銀に来ていただきましてここで取り上げたわけでございます。また、財政出動といった従来型の景気対策の効果が薄れてきたようなことをよく耳にするわけでございますが、この前段については大蔵大臣に、後段の従来型の景気対策がなかなかきかなくなってきたんではないかという点につきましては経済企画庁長官に、それぞれ認識をお伺いしたいと思います。
  74. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 所得、消費、資産という公正公平な税原則を基本として構築をされるものと思っております。そういう中で、おのおのの特徴を踏まえた上で経済社会構造の変化に適応した税と社会保険料の組み合わせというのが今後の一つの目安になってくるのかな、こんなふうに思っております。  税は財政基本であり、国家運営のまた基本でありますから、絶えず公平の原則に基づいて真剣な論議が行われ、その中で受益と負担との関係をどう組み合わせ、国民各位の理解を得られるか、またその大前提に、無限に広がる当然増をどうバランスよく取り進めることができるかということになると思います。  そういう点で、永遠の課題でありますが、まさに今日の日本国の財政と国家予算の運営の基本からいいますと緊急の課題、こういうところに到達をし、猶予し、これを先延ばしすることが許されないという意味で、本論議もそこに収れんをされて御提言、また御叱正、御鞭撻をいただくということの中で政府が真剣にこれに対応するということではないでしょうか。
  75. 尾身幸次

    国務大臣(尾身幸次君) 従来型のいわゆる景気対策でございますが、日本経済のいろんな意味での構造変化というものが近年ございまして、公共事業などを中心とするものがなかなか効きにくくなっているというのは今おっしゃったとおりだと思っております。  一つは、企業が国を選ぶ時代になりましたことに伴いまして、いわゆる産業の空洞化という現象が起こり、物が日本で売れても必ずしもそれが日本でつくられるとは限らない、したがって購買力が出てもその購買力が工場の稼働率を上げることに必ずしもならない。そのために、またその工場で働く人たちに対する所得が思ったほどふえないという意味の問題点がございまして、日本という国を企業活動の拠点として選ぶような体制づくりを税制その他の面でしていかなければならないということがあろうかと思っております。  それからもう一つは、まだ何といいましても不良債権処理が終わっていないということでございまして、この点でも、担保となっておりました不良債権担保不動産の流動化、土地有効利用という点を含めて経済対策をやっていかなければならないと考えております。  それからもう一つは、戦後五十年続きましたいろんな意味での日本的な経済システムが制度疲労を起こしているという感じもございますので、その点につきましても規制を緩和して民間活力中心の経済構造改革を進めていく、そういうことが大切だというふうに考えております。
  76. 林芳正

    ○林芳正君 ありがとうございました。  まさに第三点目で大臣がおっしゃいました、五十年続いてきたシステムが大変に我が国のこれまでの経済発展には寄与してまいったわけでございますが、その全部とは言いませんけれども、制度疲労を起こしてきたシステムが出てきたということで、まさに私もそのとおりだ、こういうふうに思いまして、今から規制緩和や経済構造改革についてお聞きをしたい、こういうふうに思うわけでございます。  まず、実は文部省にお聞きをしようと思って、文部省来ていただいておるようでございます。時間の関係でちょっと割愛させていただきますが、大学の設置基準の緩和ということについて多くの議論があるところでございます。現状は、例えば大学にコンピューターですとかバイオですとか新しい学部を設置するときには大学の学則の変更を文部省に認可をいただくということになっておりまして、事前規制がかかっておるわけでございます。これについては欧米、特にアメリカ等で、新しい大学は私立大学が多いものですから自由にやっておるように見えるわけでございますけれども、事後的なチェックを行っておるということで大学に任せておるということでございます。  こういったことも、実はこの六月三日に「財政構造改革推進について」の閣議決定いただいておりますが、これにも「国立学校については、早急に設置形態を含めた組織の見直しを検討する」ということが書かれておりますので、文部省にはよろしくお願いをいたしまして、ちょっと質問は割愛をさせていただきたいと思います。  二番目に、今我が党で第二次の景気対策をまとめさせていただきましたけれども、この中で目玉として、最近余り英語を使うとおしかりをいただくことが多いわけでございますが、一応この景気対策に出ておりましたのはPFI、プライベート・ファイナンス・イニシアチブということだと思いますけれども、民活、今まさに大臣おっしゃいましたように、公的インフラを整備するときに全部公共事業で税で手当てするのではなくて、民間資本やノウハウを導入して、第三セクター的な発想だと思いますけれども、やっていこうということで議論されておるようでございまして、我が党の方からはいろんな議論があるので年内にこれをまとめていこう、また行政の方にもそういうお願いをするということでございます。  この中で、私は諸外国の例をいろいろと見ておりますと、実はきょう皆様に御紹介しようと思って「行政革命」という本を持ってまいりました。これは、アメリカの行革をずっとやっておりましたシティーマネージャーの方が書かれた本でございまして、まさに大変に参考になることが書かれております。実は、PFIをやるときの料金の話でございます。  アメリカの「平均的な地方政府は歳入の二五%以上を利用料金により調達し、特にごみ回収、水道・下水道サービス、娯楽施設、駐車場、保険サービス、イベントでの警察の警備、ビルの点検、ゾーニングサービスではこの方式が普及している。」というふうに書いております。ただ、ただし書きがございまして、料金を利用者から取るという手段は、「有効なのは、サービスが「個人的善」、すなわち利用する個人の便益になる場合、代金を支払わなければ便益を享受できない場合、料金が能率的に徴収できる場合」に限られると。  こういうことを既に先進国でやっておるということでありまして、まさに民間の活力を導入する場合に、できたものに対してどうやって果実といいますか料金を取っていくかということがポイントになってくるのではないか、こういうふうに思っておるわけでございますが、これについて経済企画庁長官また建設大臣、御見解がありましたらいただきたいと思います。
  77. 尾身幸次

    国務大臣(尾身幸次君) 今のPFIのお話、私はイギリスあたりでかなり実例があるというふうに聞いておりまして、我が国も新しい状況のもとで民間活力を使いながら公共的な事業を進めていく大変に画期的なアイデアだと思っております。  そういう意味で、サービスが個人に帰属する部分もかなりあるわけでございまして、例えば駐車場とかあるいはごみ処理とかあるいは有料橋とか、そういう種類のものにつきましてはこのPFIの手法はかなり魅力的なものになるのじゃないかというふうに考えております。  他方、サービスが個人に帰属するということを明確にできないような一般的な公共のためになるようなものについてこういう手法がどの程度導入できるかということについては、まだまだ検討の余地がある、そのように考えておりますが、いずれにいたしましてもPFI方式を活用できる分野はかなりあると思っておりまして、私どもも与党の御検討と歩調を合わせながら前向きに検討を進めてまいりたいと考えております。
  78. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 林委員お答えをいたします。  今、経企庁長官からお話がありましたとおり、社会資本整備に当たりましては、民間活力をいかに組み合わせていくかという問題と、基本的に社会資本整備をするのを国がいかに負担していくかという問題も基本的にあろうと思うわけでありますが、御指摘のようにPFIが今手法としていろいろ研究されていくことは時宜にかなったことだと思いますし、積極的に取り組みたい、こう思っておるわけであります。  私が当選いたしましたときはちょうど日中国交回復のころでございました。今、日ロのパイプラインを活用する話が出てまいりまして、一つの大きな時代の転機にあると思うわけでありますが、我が国の社会資本財政に頼りながら今日まで来た。これからは魅力的な国土をつくっていく、機能的な都市をつくっていく、こう考えますと、民間の力を旺盛にしていかなければならぬということにつきましては委員御指摘のとおりでございまして、全く同感でございます。  よって建設省では、民間投資を誘導する新しい社会資本整備検討委員会を先般設置いたしまして、それぞれ学識経験者等に委員に御就任いただきまして、海外の事例も参考に新たな整備方策につきまして検討を加えて、明年四月くらいに一通りのまとめをしていただきたいと今要請をしておるところでございます。  御指摘のような収益性や施設の性格なども考慮に入れまして、導入が期待される分野、先ほど申し上げました官民の役割分担、こういったこともよく検討をして、整備すべき条件について検討を加えてまいりたい、鋭意積極的に取り組んでまいりたいと、こう考えておるところであります。
  79. 林芳正

    ○林芳正君 ぜひその方向で新しい手法を取り入れていっていただきたい、こういうふうに思っております。  また、これも委員会で随分いろいろ議論になってきたところでございますが、新しい民活の導入とともに、今までやってまいりました公共事業というものもどんどん効率化をしていかなければならないんではないか、それがこの法案には書いてないではないかという議論も随分ありました。実は、閣議決定にも触れられておりますように、建設省の方では公共工事コスト縮減対策に関する行動指針というものを既におまとめになっておられるわけでございまして、これにあわせまして、また閣議決定の中には費用対効果分析の活用による効率的な整備の推進とチェック機能の強化ということがうたわれておるわけでございます。  これは全く一緒のことではないとは思いますけれども、大変重要なことではないかと思っております。まず、量を縮減していくことによって質的な縮減を図るということでございますが、この中でどうやって民主的なプロセスを取り入れていくか、そこに住んで税金を払っていらっしゃる方の合意を得ながら公共事業をやっていくという面がここに盛り込まれているんではないかなと、こういうふうに思うわけでございます。  実は、GAO法案というような民主党提案の法案があったわけでございますが、参議院の方では行財政調査会で行政監視評価委員会というのを設立するという運びになっておるそうでございますが、行政評価という面で、例えば橋をつくるときにいかに安くつくるのかというのが一応学問的にはプロジェクト評価と言われておるようでございます。いかにコストを削減して効率的に橋をつくるかというのがプロジェクト評価、その一段上として、橋をつくったことによってそこに住んでおられる方やそこを通る方の便益がどれぐらい向上したかというのがプログラム評価と、こう分けられておるようでございます。例えば道路をつくったら、幾らでつくった、安くつくった、早くつくった、いいものをつくったというのがプロジェクト評価でございますが、プログラム評価というのは、その辺の道路事情がよくなったと一般に言われますけれども、要するに混雑が緩和したとか目的地に到達する時間が短くなった、こういうことであります。  この辺を含めまして、私が新聞で拝見いたしましたのは、たしか今建設省の方でヘドニックアプローチというのを使いまして、これも英語で恐縮でございますが、道路をつくったときにその周辺の地価がどの程度向上したかによってはかるというような手法だとお聞きしておりますけれども、このようないろんなことをやられまして、費用便益分析とかいろんな分析をこのプロジェクト評価、またプログラム評価に取り入れていくことによって公共事業の質的な転化というものを図っていかれれば幸いだと、こう思っておりますが、その点につきまして御答弁をいただければと思います。
  80. 小鷲茂

    政府委員(小鷲茂君) お答えを申し上げます。  御指摘のとおり、コストをいかに削減するかということも大変大きな課題でございますが、他方、効率のいいものを選んでいくという、おっしゃるようなプログラム評価というのも大変重要でございまして、建設省では従来から費用効果分析と言われております一般的な手法を活用しながら事業を実施してまいっておるわけでございまして、平成九年度のほとんどの新規事業につきましてこの費用効果分析を実施しておるところでございます。  ただ、それぞれの事業によりまして便益の評価の仕方について大変難しい問題がございまして、例えば道路によって期待される便益とあるいは都市公園によって期待される便益とは必ずしも評価項目が同じではございませんので、それぞれの事業ごとにふさわしい評価方法をいろいろ改善努力しながら努めておるところでございます。御指摘になりましたヘドニック法といいますのも、そういった意味での評価をする一つの方法でございまして、御案内のとおり、事業を実施しますとそれが地価の評価に反映されるという一般的な考え方を基礎に評価をする方法でございますが、いろんな手法を取りまぜながら、今後も制度の改良を重ねながら、おっしゃるような便益の評価を十分実施して事業実施につなげてまいりたいと考えておる次第でございます。
  81. 林芳正

    ○林芳正君 ありがとうございました。  ぜひ、いろんな手法を、諸外国も苦しみながら生み出しておるようでございますから、御検討賜って、効率的なまた住民に理解できる公共事業推進についてお願いしたいと思います。  また、定期借家権についてお尋ねをしようと思っておりましたが、時間の都合で割愛をさせていただきたいと思います。  また、資料につきましては午後使わせていただきますので、お持ちいただければ幸いでございます。
  82. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時七分休憩      —————・—————    午後一時二分開会    〔理事高木正明君委員長席に着く〕
  83. 高木正明

    ○理事(高木正明君) ただいまから行財政改革税制等に関する特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、財政構造改革推進に関する特別措置法案を議題とし、質疑を行います。
  84. 林芳正

    ○林芳正君 午前中に引き続き、質疑を続けてまいりたいと思います。  午前中、経済企画庁長官から、いろんな経済構造の転換が行われまして従来型の手法が必ずしもきかなくなってきた、また戦後五十年を経ていろんな制度が制度疲労を起こしておるというような御見解も御披露いただいたわけでございます。それに合わせまして、大学の規制緩和ですとか公共工事のあり方、PFI、また時間がございませんでしたので定期借家権についても割愛をさせていただきましたけれども、いろんな規制緩和を今までやってきておるわけでございます。規制緩和も大分進んでまいっておりまして、残っておるものでなかなか大きな効果を得るものが少ない、こんなような気も私はいたしておるところでございます。  また、国際競争が大分激しくなりました。先ほど長官からは、企業が国を選ぶという時代、そういう大競争の時代になってきたということでございますが、私はこれに一つつけ加えまして、資本が企業を選ぶという時代になってきたのではないかな、こういうふうに考えておるところでございます。  よく生産要素、労働、資本、技術ということが言われておるわけでございますが、この技術というのはもともと国境を越えて伝播していく速度が非常に速いというふうにされておるわけでございます。労働はやはり人でありますから、そう急にアメリカへ引っ越してあしたから働くというわけになかなかいかないわけでございますが、三つ目の生産要素であります資本、これが現在加速をしておる状況にあるのではないかというふうに言われております。  今、議論が盛んになされております金融ビッグバンにつきましても、この資本の移動の速度というのを今から速めていくのではないかな、こういうふうに思っておるわけでございます。そういう時代を迎えておって、企業が国を選ぶだけではなくて、どこの国にその企業があるかということを今度は資本が見ておるという時代に立ち至ったという認識を私は持っておりますが、大臣、このあたりの新しい時代の認識についていかがでございましょうか。
  85. 三塚博

    国務大臣三塚博君) よく大競争の時代と言われます。私もその潮流はそのとおりであると認識をいたしております。  まさに情報化社会、瞬時にして世界を駆けめぐる、このことはマーケットに顕著にあらわれておる昨今の現象でございます。自由貿易体制の拡大、そして情報通信技術の革新、これが経済活動のボーダーレス化を進める、こういうことであり、林委員の御指摘のとおりであると思います。  この時代の到来を迎えまして、我が国の経済発展を支えてまいりましたさまざまなシステムが変革を起こしております。ついていけない、ついていっているところもあります。これが私どもがいつも言う構造問題の中核的なものでございます。よって、ついていかぬことには競争にならぬものでございますから、大胆に変革に取り組むことでなければならない。この変革を怠ることは空洞化をもたらす、企業が国を選ぶという潮流に逆行することになりかねないことですから、結果は明瞭であろうかと思っております。  規制緩和を初めとする経済構造改革、システム改革を推進することによってこの潮流の中に身を置いて、その中で最大限の知恵を働かし、対応していかなければなりません。そのことが民需中心の自律的な成長を可能にする下支えをしっかりとっくり上げていただけるものと考えておるものでありますから、財政構造改革をにらみながら、同時に経済構造改革、時代の進展に即応して、できれば先取りをする気迫を示して立ちおくれないということでいかなければならない時代かな、こう認識をいたしております。
  86. 林芳正

    ○林芳正君 ありがとうございました。  私と大臣は共通の認識を持っておるということで、大変心強く思っておるわけでございますが、その前提を踏まえた上で、後半は法人税の改革についていろんな角度から御質問を申し上げていきたい、こういうふうに思っておるわけでございます。  財政構造改革法案、これは財政の出る方をいろんなキャップをはめたりする、改革をするということでありますが、単純な減税といいますと、この改革とはなかなか相入れないということであります。いろんな意味でのこの改革、出たり入ったり、減税をやったり増税をやったりというような中で、午前中にも御質問の中で取り上げさせていただきましたけれども、経済に与える影響というのは、最終的に入ってくる税収が一緒でもそのやり方によって大分変わってくるんではないかというのが私の基本的な認識でございます。例えば法人税が経済にどういうような影響を与えるかというのはいろいろ考えられるわけでございますが、実は設備投資というものにも大きな影響を与える、こういうふうに思っております。  午前中にお配りした資料の表の二というのがございますけれども、もしお持ちでない方は委員部の方からまたお配りいただければと思いますけれども、これは内部留保と設備投資の関係についての表であります。  内部留保というのは、利益から法人税等いろんなものを差っ引いて中に残ったものでありまして、それと減価償却を足してありますけれども、法人税を引いた後に残った企業の利益というものが企業の設備投資に対してどのような影響を持つかということであります。昭和五十四年からずっとグラフをとっておりますが、左側が実際でありまして、これに基づいて、大体これぐらい内部留保と減価償却がありますと設備投資はこれぐらい出てくるんではないかという推計をいたしましたのが右の表でございます。  この推計と実際の設備投資額というのがかなり軌を一にして動いておるということがこの表から見てとれるわけでございまして、その推計式は下にあるとおりでございますけれども、大体この内部留保とそれから減価償却に丁二五を掛けると翌期の設備投資になる。二五%をほかから調達してきて、自分の自己資金と一緒にして設備投資をやるんではないかという推計があらわれておるわけでございます。  また、設備投資だけではなくて、先ほど資本が企業を選ぶということを申し上げましたけれども、そういった中で、株主資本利益率とかそういうような収益率にこの法人税というのが大きな影響を与えることによりまして、お金を持っている人が、どの会社へ資本を持っていって、これを多数のリターンをつけて返してもらおうという選択をするときに大変な影響を与えるということが考えられるわけでありまして、これは裏返して考えますれば資金調達のコストに影響をするということであります。  また、三番目には、そういう状況でありますから、今度は企業が新しく国際展開を考える場合の立地選択にもこれは大きな影響を及ぼす。法人税の安いところへ行けば資本が集まるので、新しく事業を展開するときにはなるべくそういう負担の少ないところへほかの条件が一緒であれば行こうというのが、これは企業の当然の選択であると思っております。午前中にもいろんな議論の中で出ましたとおり、空洞化というのはここにも大きく影響してくるんではないかな、こういうふうに思っておるところであります。  また、例えば日本の企業が新しいベンチャー的な事業に乗り出したり、または別会社にしてベンチャーをやるときに、いっぱいもうかったとしても法人税でがっぽりと持っていかれるということであると、なかなかリスクを負って新しいベンチャーに乗り出そうという意欲が、法人税が安いときに比べて、また安い国に比べて減退をさせられるのではないかという意味におきまして、このリスク投資に対しても大変な影響を法人税は与えるというような見解を私は持っておるわけでございます。  以上、設備投資や収益率を通じた資金調達コスト、また企業の立地選択、そして企業のリスク投資について、法人税が経済の活力に対して大変大きな影響を持っておるということにつきまして御見解を賜れればと思います。
  87. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 法人税のみならず、税金といいますか税制が経済活動にいろいろな影響を与えるということはもう御指摘のとおりでございます。特に税収というのは、国あるいは地方公共団体の公共サービス提供のための財源として企業あるいは個人からいただくものであるだけに、これが少なければ少ないほど、個人の消費行動なりあるいは企業の設備投資等々にはプラスであるというのは傾向としては否定できないと思っております。ただ、これがどれだけ直接的な影響をするのか、ほかの要素との関係でどういう関係にあるのかということにつきましては、多分議論が分かれるのではないかと思っております。  幾つが御指摘いただいたわけでございますが、例えば内部留保なり減価償却と設備投資との関係といったようなことにつきましても、理論的には製品の需要見込みに対応した生産の見通しによって決定されるというのが普通に言われていることでございますが、税引き後の利益が配当等に回ることも考えますと、法人税の影響をきっちり分析していくというのはなかなか難しいところがあろうかと思います。  過日、通産省だったと思いますが、その辺の統計を出しました。これは両者の関係が非常にリンクしているということでございますが、私どもその背景を、どうしてそういうことになるのか調べてみますと、どうもバックデータとして法人企業統計を使っておられるようでございます。この法人企業統計の設備投資額というものが、定義上なんでしょうが、有形固定資産の増加額と減価償却の合計として設備投資額を定義しているようでございます。こういう意味での設備投資が、前期の内部留保と減価償却を足したものとリンクしている、相関が高いというのはある意味では当然のことかなと思う次第でございます。  なお、その他収益率のお話がございました。資金調達についてはそういった面と、それからもう一つ金利水準等々との関係があることはこれもまた間違いないことでございまして、法人税がその中でどれだけ影響を持つのか、影響がないとは私も申し上げられませんが、明確ではないように思っております。  それから、企業の立地選択。これはよくアンケート調査等におきまして日本の法人税が高いから外に出ていくんだという答えをされている方がいることも承知しておりますが、一方で、不動産のコストあるいは人材の確保、人件費、言葉の問題等々いろんな要素が絡まっているように思います。そういうものを総合勘案して法人は決定をされているわけでございまして、他の要素が全部同じであるならばということであれば法人税につきましても確かに影響はあろうかと思いますが、現実経済、企業のビヘービアというのは総合的に判断されているのではないかと思っております。  また、リスク投資についてもへ投資の収益率とか経営者のマインドというものも欠かせない要素であると思います。法人税の影響との関係で、どれだけどちらが大きいかというのはなかなか難しい。  とは言いつつも、法人税、さっき最初に申し上げましたように、税負担ですから、企業に影響を与えることは間違いないと思います。そういうことから考えましても、現在、私ども手探り状態で努力しておりますが、いわゆる表面的な税率を下げていくことが大事であって、一方で課税ベースについても国際的な標準的なものにしていく、その両方を目指していくことがいろんな意味で企業にとってもプラスになるというふうに考えているような次第でございます。
  88. 林芳正

    ○林芳正君 ありがとうございました。  いろいろと御答弁いただいたわけですが、これはあくまで帰納法的なアプローチでありますから、結果としてこうなったということもあろうかと思いますが、今配当という御指摘がございましたので付言させていただきます。  日本の場合は、大分崩れてまいったとはいえ株式の持ち合いをやっておりますので、配当に行ったものはほかの会社の内部留保に回っていくんではないか、そういうことも織り込んでこの機能分析はやっておるようでございます。  また、マインドというお話がありました。まさにいろんな引当金を縮減して税収中立てやるということで表面税率が下がればというお話もありました。後でちょっと触れますけれども、そういうふうにしますとすぐメディアが税収中立て実質減税がないと書いちゃうものですから、せっかく表面税率が下がっても何か減税じゃないような、あたかもそういう雰囲気が醸し出されて、それがせっかく税率を下げたときのマインドに与える効果というのを大変減殺をしておるような気が私はいたしておりまして、その辺についても御検討願えればと、こういうふうに思っておるところでございます。  そういった中で、今まさに税収中立というお話がございました。また、この委員会でも何度か諸外国の税制改正、財政構造改革について言及をされておられるわけでございまして、実はそういった意味で表の三を用意をさせていただきました。  ごらんになっていただければ一目瞭然でありますが、これは各国の法人課税の実効税率の推移でございます。この一番上の白いのがドイツでありますが、その次の黒い四角が日本でございまして、ずっと五〇%から今の四九・九八というところに推移をしております。見ていただきたいのはアメリカ、フランス、イギリスでございまして、ほぼ軌を一にして八〇年代の半ばに法人税の改革をやりました。我が国と同じような水準にあった各国が現在大変に低い水準に改革を進めておる。  時あたかも、アメリカにおいてはレーガン、イギリスにおいてはサッチャーという保守の革命が起こったときであります。確かにレーガノミックスに対してはいろんな評価があるわけでございますが、この中で私が申し上げたいのは、レーガノミックスについて後でもう少し詳しく取り上げたいと思いますけれども、一度は、成功したか失敗したかはともかく、汗をかいた人に報いるという意味での法人税改革というのを各国それぞれ苦しみながら八〇年代にやってきた。それをまだ我が国の場合はいろんな状況の中でやってきておらないのではないか、そういうような気がいたすわけでございますが、この表をごらんになっていかがでございましょうか。
  89. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 法人税の実効税率の推移がこの表にあらわされておりまして、この問題がまさに今や私どもも一番大事な問題だと思っております。  御指摘のように、アメリカ、イギリスにおきましては一九八〇年代半ばから早くも税率の引き下げということを決断しておりますが、その際には課税ベースを広げつつやっておりまして、この表にその部分が書かれていないわけですが、そういう意味での、ちょっとおくれはしましたが、日本も同じ手法を今回とりたいなというふうに思っております。  また、よその国を見ますと、ドイツが急にまた下がることになっておりますが、現在のところ法案がうまく進んでいないようで、現実には廃案になっているようです。ドイツも課税ベースを引き下げてでも、あるいは消費税を上げてでも、向こうの消費税というのは付加価値税ですが、法人税の税率を下げようという努力をされていると聞いております。  なお、この表でフランスとイギリスというのはちょっと別の道筋をたどっておる面がありますが、フランスとイギリスの場合には地方の税収を法人所得課税に求めていないという特殊性があろうかと思います。そういう意味では、日本とドイツとアメリカは国と地方が法人の所得に負担を求めている。そういった中で、アメリカがかなり早目に税率を下げている、ドイツも下げようとしている、日本もその努力をしつつあるということでございます。  なお、日本の場合も全く今までサボっていたということではなくて、平成元年の抜本改正のときに、それまで四二%であった法人税率を三七・五%までは下げてきております。もう一段の引き下げが必要というのが今日の世の中の要請というふうに受けとめております。
  90. 林芳正

    ○林芳正君 ありがとうございました。  いろんな各国の事情で結果としてこういうような表面税率はなっておりますが、レーガノミックス、レーガン減税につきましては、最初大変に華々しい、減税をすると景気が刺激されてそれによって税収が上がるので減税をすると税収がふえるといったような公約でレーガンが登場いたしました。結果としては、国防費を当時拡大したりしておったものですから歳出面の削減が思ったように進まなかったということも相まちまして大変な大赤字になって、これが双子の大赤字と言われるものにつながってきたというような大変否定的な評価もあるわけでございまして、一部の学者はブードゥーエコノミックス、呪術者の経済だというようなことを言っておったわけでございます。  その後二十年弱がたちまして、今から振り返ってみますと、確かにそのときは赤字を生み出したわけでございますけれども、そのときに下げた、またそれに伴っていろんな規制緩和をやったことが投資や資本蓄積を促進し、今大変にアメリカは好景気でございますし、足元の強いベンチャーが後から後から出てくるような好循環の経済になっているわけです。この八〇年代にやったいろんな改革が今実を結んでいるのではないか、このような評価を改めてする動きもあるわけでございまして、そんな前提に立ちましてこのレーガノミックスの現時点における評価がもしあれば御当局に聞かせていただきたい。  それから、このときおもしろいことをやっておりまして、日本語がないので英語を使わせていただきますが、インデクセーションといいまして、所得税や法人税に幾らの所得層は何%という所得割があるんですが、例えば一千万から一千三百万円までという、この一千三百万という数字を、どんどんインフレになりますと数字が古くなりますから、毎年そのインフレ率に応じてスライドさせていくというようなことをやっておりますが、これについても、大変おもしろいアイデアだと思いますので、御見解を賜れればと思います。
  91. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) レーガノミックス、レーガンの時代の税制改革が今日の経済にどういう影響を与えているかの評価の御質問でございました。委員が分析していただいたとおりだと私も思っております。  レーガンは第一期と第二期に税制改革をいたしております。一九八一年の改革と八六年の改革でございまして、その第一期が、先生が御説明されたように、減税すれば経済はよくなって減税分以−上の税収が入るという理論のもとに、いわゆるレーガノミックスという大減税を行ったわけです。当時、歳出カットもうまくいかなかったことやいろいろなことが重なったんだと思いますが、結局は予定どおりの税収は入らずにこれは失敗したと、少なくとも当時は評価されていると思います。  それを反省の材料にいたしまして、一九八六年、レーガンは第二回目の改革をいたしました。このときは税率等は下げフラット化するんですけれども、いわゆる課税ベースは広げて税収中立てやったわけでございます。これは非常にうまくいったと評価されております。  ただ、先生御指摘のように、最初にやったものが今になってあるいは影響しているのではないかというところは、効果の評価のしょうもないところではございますが、一つ一つについての世の評価は、第一期目には予定どおりいかなかった、その反省で第二期の手法が出てきた、これが評価されているというふうに私どもも受けとめております。  なお、その中で、所得税についてインデクセーションを一九八一年にやっているではないかということです。インデクセーションというのは、日本の言葉で言えば多分、物価調整減税ということで、物価が上がった分だけ税率の階段を引き延ばしていくということかと思います。  当時の状況を振り返ってみますと、消費者物価が一〇%前後の勢いで上がっていた中ですから、いわゆるインフレ的な要素の中で税制をそのままにしていくと毎年毎年税負担が重くなってしまうという背景の中で導入されたわけでして、そういう意味では、今日の日本状況とは大分様子が違うと思っております。  なお、そういうことは別にして、インデクセーションについての世の中の、あるいは学問の世界の分析というか評価というのは、歳出というものが物価上昇による自動的な要素やその他の要素によって増加する一方で、物価上昇による自動的な減税制度を設けてしまいますと、歳出歳入の間で大きな乖離が出てきてしまう。歳出の方は伸びていく、税収の方は物価スライドで減っていくということになると大丈夫かという問題。それから、インフレの影響を受ける減価償却費とか、あるいは酒税のように従量税、量でもって税金が決まっているような税目との関係で無理があるということで、一言で言いますと税制の持つ景気調整機能、ビルト・イン・スタビライザーと言いますが、これを阻害する恐れもあるということで、自動的に物価にリンクして税負担を調整することについては消極的というか否定的な考え方が多いように思います。  ただし、ある時期ごとに負担と物価の関係は常に見ていくべきだという議論は、当然のことながらあるというふうに承知しております。
  92. 林芳正

    ○林芳正君 ありがとうございました。  まさに局長おっしゃったように、インフレが今大変低い率でおさまっておりますから余りそういう声もないわけでありますが、歳出の方でも例えば年金ですとかスライドで上がっていくものもあるわけでございまして、将来の課題として御検討を賜ればと、こういうふうに思っております。  いろいろ申し上げてきたわけでございますが、最初に御答弁の中でありましたように、マインドをやはり刺激すると。午前中の質問の最初に明るい話というのを取り上げましたけれども、地元の方とお話をしておりましても、何となく将来的に明るい展望が見えないのでという縮み思考にどうしても陥っているではないか。今まさにそのマインドを明るい方向に刺激するということが一番大切なんではないかなと考えております。  そういう意味で、表四と五というのを用意させていただきましたけれども、五の方は実質一〇%でございますが、四の方は、先ほど税収中立てなければならないという御答弁があったわけでございますが、この税収中立というものが、ことし、この引当金をなくしてその他の見合いの財源で法人税を下げようという単年度の税収中立てはなくて、例えば五年や十年の間隔で法人税をことし改革して、しかも実質真水の部分を、例えば五となっておりますけれども、やった場合にどうなるかというような試算であります。もちろん実質五%減税いたしますれば、これは四角の方が累積で、斜めの四角が単年度でありますけれども、初年度は大変な減収になるわけでありますが、先ほど申しましたように、法人税はいろんな経済に与える効果がございますので、翌年度はそれがいろんな経済活動、設備投資という話も先ほど申し上げましたけれども、だんだんと経済を刺激することによって戻ってくるのではないか。  そうしますと累積でも、これは五%のモデルでありますけれども、八年から九年たちますと取り戻して、その後はだんだんと法人税が上がってくるということでありますから、まさに先ほど私が申し上げましたレーガンの第一期、また第二期を通してアメリカがやったことが、多分ちょうど十五年後でありますけれども、今、花を吹かせているのではないかなと私は思っております。そういう意味ではことしだけの税収中立、御当局から見ればそういう冒険をするというのはなかなか危険なことだろうと、これは私もよく理解するところでございますけれども、法人税を実質減税した分で企業が明るいマインドを持って活動してくれる、その分で戻ってくるものは、来年戻ってきたとしてもことしの減税の財源にならないんだろうかということがこの考え方でございます。今まではそういう考え方はなかなかできなかったわけでありますけれども、例えば税収中立てやるにしても、このマインドを温めるためにも幾ばくかの実質減税というのがこういう考え方に基づいて行われればありがたいなと思うわけでございます。  御当局、また大臣、御見解がありましたらお伺いして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  93. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 税制改正、特に実質減税の長期的な影響に関しましては、御指摘のとおり、私ども自信が持てないところでございまして、それがこのようであれば非常にありがたいんですけれども、多分そうでないだろうと思っております。  それともう一つは、日本の租税負担率というのが低い中で、消費あるいは所得に対しての税負担が特にアメリカと比べても低いという中で全体的なことを考えないと、部分的に比較していくとバランスがとれなくなってくると思っております。
  94. 林芳正

    ○林芳正君 ありがとうございました。  以上で終わります。(拍手)
  95. 伊藤基隆

    伊藤基隆君 民主党・新緑風会の伊藤でございます。  本委員会は、総括質疑から一般質疑に移ってきておりますが、財政状況の悪化にどう対応するかということの議論をずっと続けているわけであります。今日、大変な経済の不況、株価にそれが厳しくあらわれてきておるわけですけれども、国民生活への影響がこの時期になって厳しくなりつつあるのではないかという気がつくづくいたします。  私は、自分が住んでいるところのそば屋のおやじとこの間話をしておったんですが、昨年と比べてそば屋の売り上げが半分になったと、これはオーバーに言っているのではないわけであります。だからといって、そば屋が急に生活に困って苦しくなるということではないんですけれども、そういう状況下にじわりと動いてきたのではないかというふうに思っています。  財政状況が悪化した、それはとりもなおさず経済状況が悪くなる、国民の生活が苦しくなってきているということの原因となるところは、バブルの後遺症であり、そのことの克服がなされていないということが総括質疑における総理の答弁、大蔵大臣の答弁の中で示されました。  私は、現政権はちょっと国民から取り過ぎているのではないか、減税を打ち切ったこと、消費税をアップしたこと、医療費の値上げ、超低金利、これらを見ると少し国民から取り過ぎているというふうに思われます。そのことにどう政権が思いを寄せているか、大蔵大臣がどのように考えているかということが、この財政構造改革をする上で国民の支持が得られるか得られないかというところにつながっていくんじゃないかというふうに思っております。  私は、このバブルの後遺症といいますと、バブルからバブルの崩壊にかけて少し経過を、多分に來雑物を排して四捨五人的に申し上げてみたいというふうに思っています。  冷戦末期にアメリカは、それまで何もかも抱え込むという覇権体制は限界に来ていたのではないかというふうに言われております。軍事力の増強、高金利、ドル高というレーガン戦略は行き詰まっていたのではないでしょうか。私は、この夏、議長のお供をしてレイキャビクの現場を拝見させてもらってきましたが、新デタントは、アメリカにとってはそういった経済戦略の転換の好機だったのではないかと思います。軍事費を抑制し、財政赤字の削減、金利低下、ドル高是正の転換は、国際政治の変化を巧みに取り入れた経済政策の軌道修正であったろうというふうに思います。  アメリカは、ドル安を進めながら日本からの資金導入を求め、これには日本金利がアメリカより低くなければならないということで、公定歩合の引き下げを何度も日本に求めてきたわけでございます。日本の不幸は、政策協調という名の円高対策が金融政策偏重になった、とりわけ八七年二月のルーブル合意に当たって実施した公定歩合二・五%という低金利の時期を長引かせたことがバブル経済の素地をつくったのではないかというふうに思います。二・五%、今から考えると夢のような数字でございます。  アメリカの公定歩合引き下げ要求に対して、日銀は当時抵抗したようでございますが、対米協調と財政再建を優先する大蔵省に押し切られて、地価や株価が当時上昇してバブルの危機があったにもかかわらず大蔵省金融緩和の是正に動かなかった。その反動が三重野日銀総裁時代の急激な金融引き締めになって、過熱したバブルを急激に冷やしたのだと思います。  住専の特別委員会でも私は申し上げましたが、そのときの決定打が大蔵省による不動産融資規制で、資金を絶たれた開発案件は軒並みつぶれ不良債権となった。このとき住専と農協系金融機関資金ルートだけがあいたまま残されて、住専問題へと発展したわけでございます。  今プラザ合意から十二年たちました。アメリカ経済は当時から見ると息を吹き返してきて、マルチメディアなどの先端分野を独走して、不良債権は荒療治で処理し、アメリカの銀行は復活し格付を大幅に上げたわけですが、バブル崩壊後の日本経済はデフレ泥沼から抜け出せない状況となって、銀行不倒神話が崩れ、拓銀状況も本日報告されておりますけれども、金融システムの不安、危機というものが起こっているわけでございます。  もう一つのバブル発生の大きな原因について申し上げてみたいと思います。  戦後は一貫した低金利政策で来たというふうに私は思っています、預貯金に対する低金利政策。戦後間もなくのころは産業復興の名のもとに行われてそれなりの意味もあったと思いますが、その思想がずっと貫かれてきたのではないか。この間、特に銀行は護送船団方式と言われる保護的な色彩が強いぬくぬくとした保護のもとにあって、最も経営状況の悪い金融機関の経営が成り立つレベルに利子が設定され、金利が設定されたために、経営状態のよい銀行にとっては大きな利益をもたらすという状況が続いてきたと思います。  物価と公定歩合と預貯金金利状況を申し上げますと、物価は、一九七一年から七八年まで数字をとりますと、七一年が対前年比六・〇%、七二年が五・五%、七三年が一五・六%、七四年が二〇・九%、七五年が一〇・二%、七六年が九・八%、七八年が六・九%という対前年比の急上昇でございます。  特に、七三から七五までの狂乱物価というところを見ますと、七三年は物価が一五・六%アップしたのに、公定歩合は五・〇から九・〇、これは七四年まで続きますが、定額貯金は一年利子で五・五〇、定期預金が一年物で五・七五、七四年が対前年比物価が二〇・九%アップしたのに、定額貯金は六・七五、定期預金一年物七・二五、七五年が物価が対前年比一〇・二%アップに対して、定額貯金は六・二五、一年定期が六・七五。まさに狂乱物価によって預金の目減りがあって、この間大企業の借金は棒引きになったと言われるぐらいの状況が起こったわけでございます。  銀行は、大企業の資金ストックが大きくなったため貸出先がなくなってきて、中小企業、非製造業へ融資先を図っているわけでございます。第二臨調の銀行出身委員が、当時、公的セクターの規制を取り払って民間の融資の幅を広げるべきだとの主張を行っております。  一九八五年、金融自由化が本格的に始まって、金利さえ高くすれば資金は市場から幾らでも集められるという状況があらわれてきました。調達手段は大口定期預金、譲渡性預金など多様化いたしまして、金余り企業が市場にどんどん資金を出していった。企業は本業より財テクでもうけるというような話も伝わってきたわけでございます。  一方大企業は、株高で証券市場から大量な資金導入できるようになって、ますます銀行離れを強めていったんではないでしょうか。銀行は非製造業、中小企業に融資するしがなくて、やがて不動産融資に走っていったわけでございます。バブル崩壊の大もとになっているわけでございます。  私は、戦後一貫して低金利状況が続いてきた、これは市場メカニズムであろうけれども、政策的な誘導があったからこういうことになってきたのではないかというふうに思います 特に、狂乱物価と言われる時期は貯金の価値が実質的に低下して、ゼンセン同盟が当時、目減り訴訟を起こしたということを記憶しております。この低金利状況、政策による誘導がバブルの発生の重要な要因となり、またそれがバブル崩壊につながっていって今日的な状況になってきたというふうに私は考えております。  多分に省略、四捨五人的でございますが、この経過に対して、大蔵大臣のまず所信をお伺いしたいと思います。
  96. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 約三十年にわたる物価と利子、それと経済政策、為替レート等々についての御見識の御披歴でございます、御研究の御披瀝でございます。  そういう中で申し上げられますことは、狂乱物価の際はオイルショックと言われる基本的な命題がございました。必死になってこれに取り組み、収束を図ったことも御案内のとおりでございます。無資源国日本でございますから、資源供給国のそれぞれの要素による混乱、また思惑等々が高物価をもたらすことは御理解をいただけるものと思います。  そういう中で、バブルは我が国経済に対する強気の期待、あるいはリスク管理体制が不十分なまま活発に行われました金融機関の融資活動、さらに長期にわたる金融緩和等を背景に大量の資金が株式、土地の市場に流れ込んで発生したことも御理解、共通であろうかと思っております。その後、経済の先行きに対する期待が一掃される、市場の資金流入が細まり崩壊しました。  このときに、政策的に強くマスコミ等から出されました懸念と不満というもの、国民間にうっせきしたものは、マイホームを持って家庭団らんを期したい、老後に備えたいといっても都市圏ではそのことが不可能になりました。生涯働いて一坪買えるか買えないか、こんな不公正、不正義があるかと、こういうことの中でバブルを退治するための施策が行われたことは御承知のとおりでございます。  そういう中で、その後遺症が尾を引いて、今日収束の状況にあります不良債権の問題、この処理をどうするのか、これがネックになりまして不透明感をもたらしておるのではないか、こういう点があるわけでございますが、私どもはそういうことに対し適時適切に政策を駆使していかなければならないと思います。  しかし、議会制民主主義の根幹は国会の論議を重ねるということが極めて重要であり、それは国民の声を代表する国会代表がおられてそこでやられるわけでありますから、そのために精いっぱいその意見を取り入れてやらせていただいたことも御理解がいただけるのかなと思います。  総じて申し上げさせていただきました。そういう過程の中で、あの当時の政策は、伊藤委員言われるとおり、外圧により、また思惑により行われたのかというそういう御指摘に対しては、ストレートに私がそのとおりであると言うことはでき得ません。時の政策者が真剣にやられたものと理解をいたしますし、国会の論議基本の中でやっておることでありますし、マスコミの論説を含めそれぞれの報道、また国民の声をじかに聞くことによってなされたものと考えておるところでございます。現時点から当時を顧みて申し上げさせていただいたことであります。  今後、私どもはバブル経済の際にもたらした教訓をかみしめながら、二度と再びバブルを発生させてはならない決意、それは弱い立場の方に物価という重圧その他がかかるわけでございますから、その視点に政策の重点を置いて経済運営に遺憾なきを期してまいりたいというのが、委員御指摘の長い流れの中の感想を交えて決意の一端を申し述べさせていただきました。
  97. 伊藤基隆

    伊藤基隆君 ありがとうございました。  私は、一般的な日本の低金利というものと狂乱物価が重なって金融のアンバランスが非常に大きくなって起こった、それがバブルの遠因、遠い原因になっているのではないか。狂乱物価そのものの起因するところは今、大蔵大臣がおっしゃったとおりだとは思いますけれども、ただそういう遠因となった低金利の被害者というか、受け身的な国民が今また超低金利の中で厳しい受け身の状況に置かれている。その超低金利不良債権の解消を図るということで表面上ないにしても、実態は超低金利によって不良債権の解消が図られつつあるというのはだれでも知っておるわけでございます。  さらに、総会屋への利益供与とか、最近では貸し渋り状況が高まっているとか、まさに庶民、中小企業というものは金利政策のはざまの中で踏んだりけったりの状況に置かれているのではないかというふうに思うわけでございます。経済政策の根幹となる金融政策が庶民の犠牲の上に組み立てられてきて今日の経済の不況状況を起こし、さらには財政構造改革をしなくてはならないような状況にまで来ているというところに国民の政治不信の根があるというふうに私は思います。  さて、個人貯蓄でございますが、個人貯蓄は労働による汗の結晶でございます。一つ一つを積み上げた足し算の結果であります。労働により得るものというのは掛け算的に入ってくるわけではございません。毎日の働きの中から出てくる。個人にとってその資産というものは絶対価値のようなものがあると思います。  しかし、これが預貯金になると市場メカニズムの中に入るわけでありまして、それは仕方がない当然のことというふうに私は思いますけれども、ただそのときにはもう既に絶対価値のようなものはなくなって相対化されているという状況にあります。このことは庶民にとっては手が出しようがない、自分たちの力から離れたところで預金金利が決まっていくということになってくるわけでございます。  私は、個人貯蓄、個人の労働によって得た資金、お金というものは絶対価値あるいは絶対価値観というものを打ち立てる必要があるんじゃないか、その上で市場メカニズムと調整を図る必要があるんじゃないか、個人貯蓄の利息、扱い、保護ということについてはそういう視点が必要なんじゃないかと思いますが、大臣のお考えはいかがでございましょうか。
  98. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 勤労の成果として得られた所得、それを家庭の営みの中で不時の支出に備えて貯金をするというのが国民の考え方、また老後に備えて、年金社会ではございますけれども、生きがいのある老後という意味で蓄積をされておることも同感でありますし、全くそのとおりである。それによって計算をされた利子計算がなかなかそうはいかないということになる、その都度の経済政策で動くことについてはいかがなものかという意味で伊藤委員からは、これは個人にとり、一般大衆勤労者にとり絶対的な価値として認めろと、こういうことであります。  全く私も一面から見ますとそういうことでありますから否定するつもりはありません。やはり隆々として働き積み上げたものが正当に評価をされて利子が支払われていくということで計算が立つことはおっしゃるとおりであります。しかし、御案内のとおり、利子の決定は日本銀行の決するところでございます。  そういう中で、全体を見て取り組む。政治の基本的な問題は、物価の高騰をもたらさない、インフレは防ぎ切っていく、安定した基本の中で持続的な経済成長を達成していく、インフレなき持続成長という意味であります。そういうことで、相対的に資産が保護され、また果実としての利子も保護されていくということで国民生活が安心できるという総合政策の基本にあると思います。  一面から見ますと、伊藤委員も御案内のとおり、借入金の負担の減少がもたらされることにより不良債権が解消されていくことも当然でありますし、また民間企業が低金利資金を取得することによりまして企業の前進、また新しい企業の創出に成功すると、こういうこともありますものでございますから、回り回って所得として国民生活にそのことが寄与していくということもあるとは存じます。  ただいまの御主張、そういうことについて承って、今後政治運営の腹づもりとして何ができるのか、日銀専管の金利に対し総合的な政策の中でというので財政構造改革の法律を提出し、御理解を得たくお願いを申し上げておるところであります。
  99. 伊藤基隆

    伊藤基隆君 私は、日銀総裁に公定歩合の引き上げについてどうかとお聞きしましたら、総括質疑の中でノーという答えが出てきました。そのことによって経済状況に悪化の要因をつくって、かえって国民生活は悪化するだろうという答えでございました。日銀の専決事項であるだけに大変重い回答だったというふうには思っております。  さて、低金利がこれだけ長期にわたって、それで景気がかえって悪化しているというのは、低金利がもたらす景気刺激効果というものが今やまさに失われているんだと、さらにはジャパンマネーの海外流出、高齢世代の消費意欲喪失を招くだけの結果になっているのではないかというふうに思います。しかも、昨今の市場の状況はこれ以上打つ手がないんじゃないかという閉塞感を与えている、それがあらわれているというふうに考えております。  この際、金利引き上げ、適正金利への段階的引き上げを行うことによって高齢者の不安感を除き、消費の拡大を図る考えはないか。すなわち、個人預貯金の金利の引き上げあるいは高齢者に限定した個人預貯金の引き上げについて、キャピタルゲインへの課税や金利引き上げのマイナス面、すなわち個人ローンとか中小企業への融資の問題についての手だては同時に行わなきゃなりませんけれども、限定的でも預貯金金利の引き上げを模索する必要があるんじゃないかというふうに思いますが、大蔵大臣のお考えはいかがですか。
  100. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 景気の動向の判断であろうと思います。  今、見方が二つに分かれておりますことは国会論議の中でもそのとおりであります。マスコミの論調の中でも、やはりここは耐えて頑張り抜くことが明るい展望の時代の到来を早めることになると。今、行政改革、財政構造改革経済構造改革以下六改革になるわけですが、それを怠るようなことになればツケを後世に回すことになる、辛抱でと、こういうこと。もちろん、また別な論説もありますことは御案内のとおりであります。  さて、全体的に簡単に申し上げます。  民間需要を中心とする回復基調は変わっておりません。月例経済報告に足踏み状態というのが加わりました。これは消費がGDPの基本でありますから、そういう意味で百貨店、スーパーの売り上げが対前年同月比で八月以来上向いておることも御承知のとおりであります。機械受注もそうであります。構造的な問題があって力強さが肌身に感じませんことはそのとおりでございますが、これをやり抜くことによりまして展望が開けると思っておるわけであります。  つらい時代でございますけれども、つらい時代を過ぎることが、いつも言って恐縮ですが、冬来たりなば春遠からじという、こういうことで、その春に向かって全力を尽くす。諸改革を腰折れにしてしまうことによって膨大な赤字を先に送っていくということで後世代の皆様に批判を受けることがあってはなりませんし、これだけの国家でありますから、伝統とよき文化というものをしっかりと保持していかなければなりません。そんな点を強調させていただくところでございます。
  101. 伊藤基隆

    伊藤基隆君 厚生大臣においでをいただいております。幾つかの質問を事前に通告したんですが、時間の関係上一点に絞って、ちょっとまとめてお聞きしたいというふうに思います。  将来の年金の改革に対する考え方を総括質問でお伺いいたしました。私は、年金財政改善を図るという発想がまず重要視されていて、それが国民生活あるいは国民経済活動にどのような影響を与えるかという見通し、または対策を講じられていないんじゃないか、あるいはそちらの面の認識が薄いんじゃないか。性急にといいましょうか、一直線に年金改革の問題の政治命題、政策命題を追求することに重点を置き過ぎてはいないか、認識がそのように片寄っていないかというふうに総括質疑のときに答弁をお伺いしました。そのことについてまずお伺いしたいというふうに思います。  あわせて、総務庁統計局の平成八年度の生活実態調査に基づいて試算をいたしましたものがございます。すなわち、平均消費性向、消費支出、いわゆる生活費を可処分所得で割ったものでございますが、高齢無職世帯、月平均で可処分所得は二十三万四百九十三円、消費支出が二十五万五千三百七十円で、平均消費性向が一般的には一〇〇でとどまるべきが一一〇・八になっております。不足分が二万四千八百七十六円、これが貯金の取りまして生活をしている。これが年々高まってきている状況でございます。高齢勤労者世帯が、同じレベルでとりますと七八・二、黒字が八万八千五百五十七円、これが消費しても余るお金という統計が出ております。  先ほどの総括での討論も踏まえながら言いますと、これらが高齢者世帯に特に将来の不安感を強めているわけでございまして、大蔵大臣と今やりとりをしました超低金利の問題がそれに追い打ちをかけている状況にあろうかと思います。高齢者世帯は年金だけでは生活費を賄うのに不十分ということで預貯金の一部を取り崩さざるを得ない状況になっている。預貯金金利の水準は九〇年当時に比べて十分の一に低下しておりますから、金利収入も十分の一に低下しているわけでございます。  そういう国民生活の実態を踏まえながら、厚生大臣としては低金利国民生活にどのような影響を及ぼしているかという実感をどのようにお持ちか。  低金利国民生活にこんなプラスが生じている、日銀総裁は低金利による経済的な優位性も発言しておりましたけれども、どんなにいろんな説明があっても国民生活のじかにこれは悪化の要因となっていることを国民は実感をしているわけでございます。  そのような今日の超低金利政策というものが国民生活にどのような影響を与え、将来にどのような不安感を国民に対して与えるか、厚生大臣として、年金改革を進める上でもどのような認識を持っておられるか、ここで吐露していただきたいというふうに思います。
  102. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 金利と年金というのは、直接的には関係ないかもしれませんが、ある面においては似ていると思います。  金利預金者にとっては高ければ高いほどいい。しかし、ローン等を借りている人にとってみれば、貸出金利は低ければ低いほどいい。両方相関関係があります。この低金利の面、現在のプラスを探すとすれば物価の安定でしょうね、物価の安定、目に見えない最大の恩恵だと。それと、史上最低の低金利の中で高齢者だけ特別の金利をつけるというのは、これまた私は政策的に無理ではないかと思っています。  年金の方をとってみますと、年金を受ける高齢者にとってみれば、給付は多ければ多いほどいい。しかし、この年金というのは世代間の支え合いですから、保険料負担している若い人から見てみれば、これは保険料負担は低ければ低いほどいいわけであります。給付を高くすれば当然保険料負担も高くなってきます。  これからこの問題をいかに均衡を図るかというのが年金改革をする上で大変重要な視点ではないかと思っておりまして、今後、次期財政再計算に向かって制度改正を考えておりますが、その際も、今のままの給付水準を維持すれば若い人の負担は倍になりますと、果たして一七%程度の厚生年金の保険料率が将来三四%を超えるということに対して若い世代の理解を得られるだろうか、そういう点もあります。  でありますから、現状を維持していくということではなくて、保険料率を三〇%以下にするんだったら給付はこの程度になりますよ、あるいは給付をこの程度上げるんだったら保険料は上がりますけれども、この程度に下げてもいいんだったらば保険料もこの程度下げられますよという幾つかの選択肢を提示して、将来の年金改革に向けてはいろいろ議論の材料を提供することによって国民の関心を高め、多くの方々の意見を聞きながら、大方の理解を得られるような制度改正をやっていかなきゃならない。  当然、年金改革につきましても、ことし改正して来年から適用というようなことはできません。当然改正しても、十年以上先を見て徐々に給付率にしても保険料率にしても変えていかなきやなりませんから、かなり前もって将来の生活設計ができるような事前の準備が必要ではないかと思っております。
  103. 伊藤基隆

    伊藤基隆君 時間が来てしまいましたので、これで終わらざるを得ません。  私は、政策的な整合性については理解できるところもありますけれども、この改革というものが役所なり企業なりの狭い視野のみで発想されているような気がしてならない。そちらの側、強者の論理でしか発想されていないんじゃないかという気がいたします。国民にその改革がどのような影響を及ぼすかという視点が頭の中から抜けているんじゃないかという感じがします。国や企業の財布は心配しても、国民の家計、財布の心配はしていないんじゃないかという不安感、不満が国民にあるということを訴えまして、質問を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。(拍手)
  104. 清水澄子

    ○清水澄子君 三塚大蔵大臣にお伺いいたします。  本法案は、一般会計予算を抑制また減額することで財政の均衡を図ろうとするものでありますけれども、集中改革期間三年間においてどの程度の財政収支の均衡が図られる見通しなのか、具体的な数値を挙げて説明していただきたいと思います。
  105. 涌井洋治

    政府委員(涌井洋治君) お答え申し上げます。  あくまでもこれは機械的に計算したものでございますが、「財政事情の試算」というものでお示ししているところでございますが、この試算によれば、平成十二年度の国、地方の財政赤字の対GDP比は大体三・九から四%程度になるんじゃないかと試算されます。
  106. 清水澄子

    ○清水澄子君 私は、この法案には幾つかの疑問を感じるわけなんです。大蔵大臣は、この法案の考え方となったモデルをアメリカの包括財政調整法だというふうに話しておられたと思いますけれども、このアメリカの法律と今回出されているものとは削減手法に大きな違いがあると思います。  アメリカの場合には、はっきりと一九九一年から九五年の五年間で約五千億ドルという数字をきちんと出しています。それから九四年から九八年で約四千九百六十億ドルの赤字削減をするのだということで、非常に国民にとってわかりやすいものになっています。しかも、裁量的な経費には上限を設けて、この上限を超える経費は一律に削減する、そしてまた新たな義務的経費を設ける場合には歳出増に見合った増税と、または歳出削減を行うのだという二つの原則を明確に義務づけた法律であると思います。  ですから、ちゃんと今のような数値目標がはっきりしない、だから本当に三年後どうなるのかというのが全然わからないというこの法案は非常に私は疑問とせざるを得ません。  そして同時に、この法案は第四条で、財政赤字額を国内総生産GDPの三%とするとなっている。この点も、今、国内総生産の三・九から四%を予定しているなんておっしゃいましたが、本当にそうなるでしょうか。やはり現時点で既にもうその数字ではないと思うんです。ということは、財政削減の幅が景気の動向によって絶えず数値目標が動くというそういう法案であって、ですから私は、今地方と国で四百七十六兆円もある長期債務残高を、この法案の赤字削減策だけで果たして財政の均衡が図れるのかどうか、大変疑問に思わざるを得ません。  財政均衡のための政策であるというのであれば、もっと税制などの歳入面も含めた総合的な施策ときめ細かい政策的配慮を同時に並行していくということが必要ではないかと思いますが、その点、大臣どうお答えになりますか。
  107. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 先ほど主計局長から仮定計算の中で一・七五の場合、三・五の場合、こういうことで説明をいただきました。  問題は、包括財政調整法、OBRAのよき点は参考としつつ、我が国の財政事情を分析し、そのベースの上に立って集中三カ年、そしてプラス三カ年、こういう時限的なものを設定いたしまして、赤字体質からの脱却、借金漬けからの脱却、健全な財政再建を期してまいりたいということで、法律に御明示させていただきましたとおり、一〇パーを上回らない、いわゆる一〇%カットと七%以下抑制、縮減等々の表現を用い、これは画一、一律的に行うことによって、当然増経費というのもございます、義務的経費もございます、これら全体を見直すことによって抑制・縮減を図る。法令が必要とするのであれば法令改正、制度の見直し、節約でできる分はどれだけのものができるかという歳出カットの目標を定めさせていただいたところでございます。  そういう中で、最小限六カ年の中で、赤字国債七・五兆円は、その時点はゼロになります。赤字国債、借金、次の世代に先送りする財源の捻出の仕方はやりませんという、この目標だけは達成をしていく。これだけの縛りをかけませんとルーズになるのではないでしょうか。やはりこれをやることによって歳出カットが前に進みますねと。  同時に、量的縮減目標、今言いましたことでありますが、それを達成することによりまして、やらなければならないもの、辛抱できるもの、また既に役目は終わったもの、民間に移すことによってやることの方が効果的であり、国民各位に喜ばれる、こういうようなことで取り進めさせていただいておるということでございます。
  108. 清水澄子

    ○清水澄子君 大臣のおっしゃること、余りいつもよくわからないんです。しかし、本当に何か抽象的に、声は大きいし気張っていらっしゃるのだけれども、何か本当に論理性がないんですね。そのことは毎回聞いて感じているんですけれども。  そこで、次にお尋ねしたいんですが、社会保障費予算の抑制減額で国民への負担が増すと思うわけですけれども、この法案によって三年後にはどの程度の国民負担率の増加を見込んでいらっしゃるんでしょうか。
  109. 涌井洋治

    政府委員(涌井洋治君) 国民負担率の水準でございますが、その将来の見通しを定量的にお示しすることはなかなか難しいわけでございます。あくまでもこの「財政事情の試算」を前提に、税の負担率、それからあと厚生省でお出しになっております社会保障負担の推計を前提に、非常にラフな推計でございますが、それによりますと、平成十二年度におきましては、財政赤字を含む国民負担率は四五%程度、財政赤字を含まない租税及び社会保障負担率でいきますと大体四〇%程度と試算されます。
  110. 清水澄子

    ○清水澄子君 じゃ、経済企画庁長官にお尋ねします。  国民負担率の増加は、この法律には五〇%を上回らないとあるわけです。上回らないとわざわざあるのは、やはりそこまでは許されるということにもとれるわけですけれども、しかし、この国民負担率が上がりますと消費需要の抑制になると思うんです。それで、景気にこれはどのような影響を与えるとお考えになりますでしょうか。
  111. 尾身幸次

    国務大臣(尾身幸次君) 国民負担率の先ほどの見通し、主計局長の話がございましたが、いわゆる国民負担率が現在たしか三八%だと思いますが、それが四〇%程度になる。そして、赤字を入れました負担率、赤字分がたしか七%で、合計で現在は三八プラス七で四五%程度の国民負担率になっていると思いますが、赤字の縮減によりまして、赤字分が五%ということで、合計で四五%という試算があるという話がございました。  社会保障構造改革も含めまして、中身は自己負担がふえるとかいろんなことがありますけれども、同時に、逆に言いますと、医療費の掛金とかあるいは年金の掛金とかそういうものも含め、税も含めまして出す方、いわゆる租税、社会保障負担率という全体としての負担率を抑制するということが大変大事だと思っておりまして、そういう意味では、全部合わせて五〇%を超えないようにするというのは非常に妥当な目標だろうと私どもは考えております。  ほかのヨーロッパの国々、五十数%という国が多うございますし、それから社会保障の王国と言われておるスウェーデンは七〇%にも達しておりまして、それがまた働き手のいわゆる意欲をそぐものであると。そういう点からは、赤字も含めた国民負担率を五〇%に抑えるということは、国の将来の経済社会の活性化を実現していく上で極めて大事なことであるというふうに考えております。
  112. 清水澄子

    ○清水澄子君 私は、国民負担率についての論議はちょっときょうは時間がなくてできません。  次に長官に、十四日の月例経済報告閣僚会議で十一月の月例経済報告をされたわけですけれども、その場で、政府の経済対策では税制改革に全く触れていないとの指摘が出て、長官は、この政府の対策に税制改革は盛り込んでいないけれども、大蔵大臣と相談したいと答えておられるという報道がありました。  私は、日本経済をこれから再建していくためにも、財政構造改革というのはこれは絶対にやらなければならない必要なものだと思っております。しかし、それと同時に、景気への配慮としてやはり政策減税など消費需要を喚起する景気循環回復のための特別な措置というものも一緒にやらないと、財政構造改革と言いながら、本当にこれは先行き大変不安な問題が非常に大きくなっていると思いますので、その点につきましてはどのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
  113. 尾身幸次

    国務大臣(尾身幸次君) 経済構造改革を中心といたします経済対策、総理の御指示もございまして現在取りまとめ中でございまして、あすには取りまとめをして発表させていただきたいと考えております。  この中に、税の問題につきましては具体的に何をどうするということを実は書く状況にございません。といいますのは、十二月の半ばころまでの間に与党三党の税制調査会あるいは政府税制調査会で最終的に決めていただくことでございまして、方向として、国際的な視野に立った事業環境を整備する、規制緩和をして民間活力を生かす、それから土地の有効利用を図るというような方向に立って、税制についてこれから検討を進めるという趣旨は書いておりますが、具体的にどういうふうにするかということについては書いていないところでございます。  今、清水委員のおっしゃいましたいわゆる政策減税でございますが、今、与党三党の間でその点について御議論をしていただいているというふうに聞いておりまして、赤字国債を出して減税をして、そのお金で物を買っていただくというようなことではなしに、全体としての経済を刺激する、または国民の皆様に安心感をいただけるような政策減税については、与党三党の協議の場を踏まえて出された結論を十分に考えながら、私どもとしても温かみのある体制をつくっていきたいと考えている次第でございます。
  114. 清水澄子

    ○清水澄子君 長官、もうそれだけで結構ですので、どうぞお引き取りください。  次に、小泉厚生大臣にお尋ねしたいと思います。  第七条では、人口の高齢化に伴う社会保障関係費の増加額の抑制ということが述べられております。私は、これは非常に今日の状況なりこれからの二十一世紀に逆行する内容ではないかと思っております。というのは、高齢化の問題は当然皆よくわかっているわけですけれども、高齢化は即少子化の問題であると思うわけです。  十月に人口問題審議会が「少子化に関する基本的考え方について」という報告を出しておりますが、そこでは少子化の影響として、経済成長に重大な影響を与える、そしてこれは現役世代の負担を増し、国民生活に影響を与えると、政策の緊急性を警告しているわけです。  また、経済企画庁が最近発表しました国民生活白書におきましても、特に働く女性に焦点を絞っていますが、やはり育児や介護、雇用慣行など、女性の職場進出という大きな流れが起きているのに社会システムが追いついていない、そして、社会システムをもっと女性が働きやすいシステムに変えていくべきだということを提言しております。特に、働く女性への育児支援が少子化に歯どめをかけるということが計量分析で実証されておるわけです。  しかし、実際には厚生省は今の財政抑制の中で、特に保育料など、平均収入二百四十五万円から三百五十七万円ぐらいの勤労世帯の保育料を引き上げるためにいろいろ苦心をしているようですし、今までなかったゼロ歳児の保育料を今度はコスト主義で料金を決めようとしたり、生活保護者からも保育料を取ろうというふうな動きがありますし、それから子供を育てて働いている母子世帯の児童扶養手当の削減ということも今いろいろ工夫しているようであります。このことは、非常に少子化に私は追い打ちをかけるものであると思います。  私は、子育てへの支援というのは決してマイナスの経費ではなくて、やはり社会福祉とか社会保障というのはこれからの経済成長を促すための経済投資だと思うわけです。しかし、この法案のターゲットがどちらかというと、社会保障費の抑制に大きな比重が置かれているというのは一目瞭然であります。  私は、社会保障費全体を見て、もっと経済成長や社会の安定、そして政治の安定にとって、この社会保障をどう位置づけるかということはとても重要だと思いますが、厚生大臣はその点どのような御認識をお持ちでしょうか。
  115. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 今後の経済活力を考えますと、いわゆる国民負担率を五〇%を超えない程度に抑えるというのは妥当な結論ではないかと思っております。  若い世代に対してそれほど過重な負担を押しつけない。当然、若い世代というのは子育ての費用もかかるでしょう、子供の教育の費用も大変だと思います。こういう方々の税負担保険料負担というものも考えなきゃいかぬ。高齢者の福祉、今のままでいきますとこの負担というのはどうしても若い世代に行ってしまう、これは何としても避けなきゃいかぬ。しかも、社会保障関係費用はこれからの人口構造を見ても確実にふえていきます。  そういう中で、構造的な改革が必要である。わけても、経済活力なしに社会保障の充実はあり得ないということを考えると、どの程度の負担国民が覚悟して、またどの程度の給付を受けるかという、この給付と負担というものを両者公平に見る必要があるということから、今の財政構造改革並びに社会保障制度の諸改革に取り組まなきゃいけないと思っておりますが、今御指摘の少子化問題、これも今後、年金にしても医療にしても介護の問題にしても影響は大変大きいものがあると思います。    〔理事高木正明君退席、委員長着席〕  かつての、男は仕事、女は家庭という時代から、お互い男も女もともに仕事を分かち合いまた育児、家事を分かち合う、そういう意識の転換も必要でしょうし、子育てがしやすいような環境、いわゆる女性がますます社会参加といいますか社会進出、仕事を持つのは当たり前という時代になってきますから、女性ばかりに責任を押しつけていた家事、育児の問題もお互い男性とともに分かち合う、女性が仕事を持ちながら家事、育児もしやすいような社会通念の転換というものも必要でしょうし、人口問題審議会の報告書に指摘されているような趣旨を踏まえて、今からそのような男女共同参画時代、さらに少子化に対する今後の環境変化、高齢者と若い世代との給付と負担の公平というものを総合的に考えてこれからの福祉施策を考えていかなきゃいかぬと思っております。
  116. 清水澄子

    ○清水澄子君 ぜひその点をひとつ強力に推進していただきたいと思います。  大蔵大臣も先ほどから財政の側面からのみ社会保障費を抑制するという、私はそういう考え方にはやはり問題があると思うわけです。ですから、ぜひ財政当局としての大蔵大臣は、社会保障費の抑制をできるだけ、むしろこの社会保障という問題は本当に経済政策にとって重要な投資ですから、ぜひ私は大蔵大臣自身も今後の予算措置あるいは法律の執行においてもその辺について大きな役割をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  117. 三塚博

    国務大臣三塚博君) この法律におきましては、社会保障関係費当然増、厚生大臣言われますとおり今度は八千五百億円出るでありましょうと。私もその計算はそのとおりだと思っております。そういう中で、三千億円を上乗せすることを概算要求だけではなく、この法律の中で決定をさせていただきました。そういう中で何ができるかよく協議をしてまいります。
  118. 清水澄子

    ○清水澄子君 小泉大臣、この法案では社会保障費の削減、抑制について将来のビジョンが示されないまま抑制が打ち出されているわけです。そして、法案の内容には社会保障制度のあり方を検討しとあるわけです。これから検討するというそういう状況の中で数値目標だけが出ている、これは私は本末転倒ではないかと思いますが、小泉大臣は社会保障制度の将来ビジョンをどのように描いていらっしゃるか、お聞かせいただきたいと思います。
  119. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 財源を考えないで自由にあるべき姿を描きなさいといえば、大変楽しくまた楽な仕事かもしれません。しかしながら、何をするにしても財源という、国民のお金というものを期待しながらいかにいい制度を構築していくか。わけても、今のような財政が深刻な状況においては、当然一定の額のもとに諸制度の改革に取り組まないと、どうしても、今まで培ってきたんだからむだなところは何もないと関係者は言うに決まっています。自分の関係ないところは切ってもいいけれども、自分の関係のあるところは絶対むだなところはないんだから切ってはいけませんというのが各省庁あるいは各団体共通しています。  そういう中にあって、それでは現状維持の上にさらに積み重ねていくならば、それはどうやって経済成長を図っていくか、財源ができるかというと、経済成長もかつての高度成長のようには全然見込めない、そこが今難しいところでありまして、私は現時点において予想される財政支出の伸び、これに上限を設けないで改革をしろというのは無理ではないか。やっぱり上限を設けてどこにむだがあるか、どこに非効率な点があるかということを徹底的に見直すことによって将来の世代も助かるのではないか。また、引き締まった、真に必要なところに行く、自分でできる方は自分でやってもらうという新たな時代に向けたそれぞれの制度の改革が必要ではないか。  今回、大変苦しい作業であります。今までと違って、前年度よりお金を使ってもいいですよという状況とは全く逆で、前年度よりお金を減らしなさい、その中で重点的、効率化を図りむだを廃しなさいという一つの歴史の転換期における苦しい作業をこれからしなきゃならないなと。将来に向かって展望が開けるような改革に取り組んでいきたいと思っております。
  120. 清水澄子

    ○清水澄子君 私は今おっしゃったような見直しが必要じゃないとは思いませんけれども、社会保障の構造改革の論拠を立てて、こうして削減が必要だということの方がやはり国民理解できます。そして、どこをまた新たに必要としているか。そういう意味で私は、ビジョンがない中で削減だけが出ていることはますます国民を不安に陥れるし、むしろ社会保障額をも削られるんじゃないかというのはみんな疑問に持つところだと思っております。  厚生大臣、もうここで結構です。どうもありがとうございました。  次に、会計検査院の方にお伺いいたします。  平成五年から七年にかけて防衛庁に納入していた日本工機など四社を調査したところ、合計二十一億円の水増し請求があってその後返納されたという事件がありましたけれども、防衛庁は当初から適宜会計検査院に説明していたと言っておるわけですが、いつからどのような説明を受けていたのか、そしてまた、会計検査院はその説明に対してどのような是正措置をとるように指導していたのかお伺いしたいと思います。簡潔にお願いいたします。
  121. 諸田敏朗

    説明員(諸田敏朗君) お答えいたします。  まず、報告を受けたのがいつかということでございます。本院が報告を受けましたのは、記録に残っていない点もございますが、日本工機につきましては平成五年七月ごろ、東洋通信機につきましては六年六月ごろ、藤倉航装につきましては平成七年六月ごろ、ニコー電子につきましては九年七月ごろでございます。  次に、どのような説明を受けたかということでございますが、日本工機につきましては、昭和六十三年度から平成四年度までの経理に関する原価差異があり、約五億八千万円を返還させ、東洋通信機につきましては、元年度から五年度までの経理に関する原価差異があり、約八億七千万円の是正処理を行い、藤倉航装につきましては、二年度から六年度までの経理に関する原価差異があり、約三億五千万円を返還させ、ニコー電子につきましては、二年度から六年度までの経理に関する原価差異があり、約二億九千万円の是正を行ったという旨の報告を受けております。  次に、本件につきましてどのような是正措置をとるよう指導したかという御質問でございますが、ただいま御答弁したとおり、調達実施本部から各社に対し過大分を一括返還させたり当時履行中の契約を減額したりする措置を講じたとの報告を受けたところでありますが、この報告につきまして会計検査院といたしましては、返納させた額等が妥当であるかどうかの確認を行うこととしたものであります。  その結果、これらの契約は原価監査を必要としない確定契約に係るものであり、工数等に関する資料の提出等が義務づけられていないため各種資料が整備されていないことなどから正確な工数等の把握が困難でありましたが、調達実施本部の計算しました過大額が著しく実情に沿わないものではなく、実質的に国損を生じていないということなどから、会計検査院といたしましては特に調達実施本部に対しては指導していないところでございます。しかしながら、このような事態が発生したことを踏まえまして、その後さらに装備品の調達について十分な検査を実施しているところであります。
  122. 清水澄子

    ○清水澄子君 ちょっと会計検査院の方、こういう事例は過去にありましたか。
  123. 諸田敏朗

    説明員(諸田敏朗君) 例えば、防衛庁ではございませんけれども、過大な契約をしたということで返還させているということはございます。防衛庁に限りましては、このようなことは従前にはなかったと記憶しております。
  124. 清水澄子

    ○清水澄子君 過去にはこういう例はなかったということですね。  防衛庁はこの事件について内部処理で済ませているわけですけれども、このような不正請求の問題というのは、内部処理のみで済ませずに、調達実施本部の広報に載せるとか、そういう意味ではやはりこういう問題は社会的に明らかにしていくことではないかと思いますが、長官、いかがでしょうか。
  125. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 私も就任しましてから、この問題については、内部で検討委員会をつくってもらいまして、今後二度とこういうことが起こらないように、またどういう背景で起きたか、そういうことについてもいろいろと今も調べてもらっております。  しかしながら、外に公表するようなものではなくて、それは過大請求があったという、それに対してうちの方がそれをそのままうのみにして済ませてしまっておったと。それで、その当時の担当者としては、これはいかぬということで、外部からの情報に基づきまして、それを特別調査をやって、その事実を認めて、また会社に対して申し出をしたら向こうの方もそれを認めたから返還をさせたということで、その当時は、むしろ会社の方も協力して返すということになりましたので、過大に払っている金をとにかく返すことが大事だということでそっちの方に神経が集中したのではないかと思っております。  しかしながら、そうはいいましても、今言われましたように、単にその問題だけとしてではなくて、その前後関係に問題がなかったかどうか、そういうような問題もひっくるめまして、内部でいろいろと調査をして、今後こういう問題が起きないように制度的にも今いろいろ研究をしているところでございます。
  126. 清水澄子

    ○清水澄子君 さらに、防衛庁が有償軍事援助契約でアメリカから購入している装備品のうち、清算されていない額三千億円、このうち代金を払っても実際の装備品が来ないものが六百億円に達しているということが報じられています。  大蔵大臣に伺いますが、政府としてこのような債務不履行に対してアメリカ政府に履行を求めるお考えはないか。同時に、久間防衛庁長官にも、このような調達方法の契約見直しの改善策というものを考えることはいかがなものか。大蔵大臣と両方でお答えください。
  127. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 大蔵大臣というより私の方だと思いますので、私の方から一括して答弁させていただきます。  今三千億円と言われましたけれども、そのうちまだ納期が来ていないものなんかは千億以上あります。要するに、納期が来て、うちの方から金は払っているけれどもまだ品物が来ていないのが五百六十億円あるということでございます。それと同時に、もう品物も来て金も払ってやっておりますけれども、とにかく全部が終わらないので清算が終わらない、向こうから取り分があるのかこっちからまた出す分があるのか、その清算が終わっていないというのがまた千億以上ありまして、その合計で三千億ということで、問題になりますのはこの五百六十億、前金として払っているのに来ていない、ここが問題になるわけでございます。  ただ、FMS調達というのは、御承知のとおり、会計法上に基づくようなそういう契約じゃございませんで、一般の民間を通じて契約をする私的な、アメリカが自分の米軍に対してもあるいは適格国として決めた国のいわゆる軍関係の部品とかそういうものを、言うなれば自分が調達してこれを有償でやってやるぞと。それで、こういう条件でどうかという形で、それに従うならやってやるぞという米国の武器管理法に基づくものでございますから、私どもとしては、どうしてもそれで結構ですという形で、欲しいものについてはそういうようなFMS調達をしなければならないわけでございます。そのときに予定納期というのがあるわけでございますけれども、これは一応の納期でございまして、普通の契約みたいなきちっとした納期じゃないわけでございます。  ところが、こちらが申し込みをする、それに対してほかの国からも申し込みをするのを待っておって、全部がそろってから向こうはっくるというようなことになりますと、それがそろわないとなかなか実際の納期が来ても、来ないということになります。  道義的には責任があるわけでございますから、私どもはいろんな場を通じてとにかく早く、金は出しているんだからくださいと言っていますけれども、これはやはり制度的な問題で、そういうふうにこちらの意思できちっと決める、そういう契約ではないので、どうしても向こうの言い分が通るというようなそういう状況にあることについて御理解賜りたいと思うんです。
  128. 清水澄子

    ○清水澄子君 なかなかこれは理解いたしますとは言えないと思います。それは何を改善できるのかというのを十分研究をしていただかないと、これは非常に不信を持たれると思います。そのことを強く要望しておきます。  最後に、大蔵大臣にお尋ねいたします。  幾度となく財政再建の緊急性が訴えられているわけですけれども、防衛予算はたまたまこの問題が出ましたが、本当は公共事業なんかでもいろいろなむだというのが、またはその使い方とかお金の処理の仕方の甘さというのがいろんなところにございます。ですから、大蔵省はもっと政府予算の使い方の内容をもう少し精査して、一方またきめ細かい政策的な配慮というのは、例えば社会保障とか当然必要なものにはそういう国民生活をより配慮した財政再建策というものを打ち出す必要があると思います。  そういう点で、私はこの法案には幾つかの不備な点が非常にあると思いますが、やはりこの法案だけでは財政再建というのは非常に不十分だと思っておりますので、そういう点も含めて最後に一言御答弁いただきたいと思います。
  129. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 委員がいろいろ御指摘をしていただいておる点、全くわからぬわけではありません。健全財政に向けて量的縮減目標を決めておるわけでありますが、物によりましては、御精査いただいておりますとおり、抑制、削減、内部の優劣を決める、緊急性を決める、法律的な事項、こういうものについての計上についてどうするか、こういう一律カットではない制度にいたしました理由はそこにあります。
  130. 清水澄子

    ○清水澄子君 ありがとうございました。終わります。(拍手)
  131. 阿部幸代

    阿部幸代君 日本共産党の阿部幸代でございます。文部大臣、大蔵大臣並びに経済企画庁にお伺いいたします。  法案の第十七条は、国立学校特別会計への一般会計からの繰り入れ及び私立学校に対する助成の総額をそれぞれ集中改革期間は前年度の当初予算額を上回らないようにするとしていますが、このこととかかわって、まず、今日の高い学費の負担によって国民生活と学生の勉学生活が陥っている事態をどのようにごらんになるか、伺いたいと思うのです。  大臣も多分ごらんになったと思うんですけれども、平成八年度の学生生活調査によりますと、学生の一年間の生活費は、下宿する場合、九六年ですが、国立大学で百八十二万円、私立大学で二百五十四万円です。これらの教育費の家計負担は重くて、家計平均可処分所得に対する学生生活費の比率は、これは九六年度の国民生活白書によりますが、最も負担の小さい国立大学の自宅の場合で一七・六%、最も負担の大きい私立大学の下宿の場合で四二・五%となっています。学生の方はアルバイトを余儀なくされ、学部学生の七八・四%がアルバイトに従事し、そのうち三〇・三%が家庭からの給付のみでは就学不可能、あるいは家庭からの給付がないと言っています。しかも、学生の生活上の支出の五二%が学費です。もう限界に来ていると思いませんか、大臣。
  132. 町村信孝

    国務大臣(町村信孝君) 阿部委員お答えを申し上げます。  国立大学、私立大学、それぞれ御指摘のように負担の額が異なっておりまして、平成九年度の入学者に係る授業料は、国立の場合は四十六万九千二百円、これに入学金二十七万円を加えますと、初年度は七十三万九千二百円ということになってございます。他方、私立大学は、平均をいたしますと百二十三万九千五百円、こういうような水準になっております。  家計との関係ということで先生今、国民生活白書平成八年版、御指摘のようなことでございまして、自宅かどうか、国立か私立かということで御指摘のように一七・六%が国立の自宅、私立の下宿で四二・五%と、まさに先生の御指摘のとおりの数字が出されております。国民生活白書にも載ってございますが、「これらの教育費の家計負担は重く、」という認識がこの白書にも述べられておりますが、少なからぬ負担があるなということは私も認識しているつもりでございます。
  133. 阿部幸代

    阿部幸代君 家計の四割が高等教育費、学生支出の五割が学費、本当にもう限界に来ているというふうに思います。  そこで伺いたいのですが、歴史的に見て大学の学費が一貫して引き上げられてきたということを確認してよろしいでしょうか。一回でも引き下げられたことがありますか、大臣。
  134. 佐々木正峰

    政府委員佐々木正峰君) お答え申し上げます。  国立大学の授業料等の学生納付金については、過去引き下げられたことはございません。また、私立大学の学生納付金の平均額につきましては、文部省の私立大学の初年度学生納付金調査、これは昭和五十年度から実施しておりますが、これによりますと、これまで前年度より下回ったことはございません。
  135. 阿部幸代

    阿部幸代君 グラフをお渡ししてあると思うんですけれども、おっしゃるとおり、これは下の方が国立大学の授業料です。上が私立大学の授業料、いずれも一貫して引き上げられてきました。  経済企画庁に伺いたいんですけれども、この国立大学の授業料について言いますと、一九七〇年を起点にすると三十七倍、また初年度納付金は四十五倍の値上げになるんですが、電気やガス、水道料金などの公共料金でこんなにも、つまり三十七倍だとか四十五倍だとか、こんなにも値上げされたものがあるんでしょうか。
  136. 金子孝文

    政府委員(金子孝文君) お答えいたします。  消費者物価指数の動きを見ますと、一九七〇年を一〇〇とした場合、一九九六年の電気代は一六三、都市ガス代は二七一、JRの鉄道運賃は三七四となっております。それから、国立大学授業料につきましては、先ほど先生が御指摘のように三八六七ということで、消費者物価指数の採用品目となっております公共料金の中では上昇率が最も高くなっております。
  137. 阿部幸代

    阿部幸代君 公共料金というのは物価や国民生活に及ぼす影響が大きいということで、安易な引き上げはしないというのが九四年、平成六年の物価問題に関する関係閣僚会議の「公共料金の取扱いに関する基本方針について」の中でも確認されているんです。この趣旨に反して、政府は国立大学の授業料値上げを続けてきたわけです。本来ならば、国立大学の学費値上げを抑えて、私学助成を大幅に増額していくことによって私立大学の学費値上げを抑制すべきところを、そうしなかったためにどうなったか。それを示すのがお配りしたグラフ、一枚目と二枚目を両方見ていただきたいというふうに思います。  私立学校振興助成法によりますと、私学助成の目的の一つは、私立学校在学者のための経済負担の軽減を図ることとしていますが、一九七五年に法律が制定され、参議院の文教委員会で「私立大学に対する国の補助は二分の一以内となっているが、できるだけ速やかに二分の一とするよう努めること。」、こういう附帯決議がつけられました。  にもかかわらず、私立大学の経常費に占める補助額の推移を見ますと、八〇年の二九・五%をピークにその割合は減る一方で、九六年は一二・一%に落ち込んでいます。そのために私立大学の経営は大きく学費に依存し、学費は上がり続けてきました。先ほど大臣おっしゃったとおりに、九七年度の平均額を見てみますと、全学部の平均の授業料が七十五万七千百五十八円、初年度納付金の合計が百二十三万九千五百三十六円となっています。  何度も言いますが、家計の四割が高等教育費、学生出費の五割が学費。もう限界です。  学費値上げ政策をやめる。つまり国立大学の学費値上げをストップして、私学助成を増額して私学学費の値上げもストップしていくべきではないんでしょうか、大臣。
  138. 町村信孝

    国務大臣(町村信孝君) 国立大学の授業料についての考え方でございますけれども、これは従来からまず教育の機会均等の理念というのを踏まえながら、私立大学の授業料の水準、これも横ににらみながらプラス社会経済情勢、そうしたものの動きを勘案しながら決めるということになってございます。他方、私立学校の場合は、確かに学生納付金それから経常費助成というのがあるわけですが、それ以外にも寄附金でありますとか資産の運用収益といったようなものがあるわけであります。  私ども文部省の立場からいたしますと、確かにお金が非常にあるならば国立大学の学費も上げない、さらには私立学校の経常費助成もどんどんふやしていきたい、それはでき得べくんば私もそうできればと、こう思っておりますが、全体とのバランスあるいは現下の国の財政状況ということを考えたときに、一方的にすべてそれをどんどん文教予算だけというわけにはなかなかまいらないというのは全体をごらんいただければ御理解をいただけるのかなと、かように考えております。  なお、私立大学の授業料あるいは国立大学もそうでありますが、一体どういう考え方でこれからこれを取り扱っていったらいいだろうかということについては、確かに数字の額でいくとお手元に配られた資料のとおりでありますが、国立大学の授業料と私立大学の授業料の比率で比べますと、かつては数倍開いていたんですね。それを余り差があり過ぎるのはいかがかということもありまして、今約丁六倍ぐらい私立大学の授業料等が高いという比率になってきております。  一体これを一対一にまで持っていくのがいいのか、あるいはもう全体の負担状況から見てこのくらいの比率がそろそろおさめどころなのかなと。そんなことをどういうふうに考えるべきかということについて、この国公私立大学の授業料のあり方ということについて、先般、私は大学審議会に諮問をした中に、その辺をこれからいかに考えるべきかということについて実は諮問を改めてさせていただきました。  そうした学識経験者などの御意見もよく承りながら今後対応してまいりたい、かように考えているところであります。
  139. 阿部幸代

    阿部幸代君 家計の四割が高等教育費、学生支出の五割が学費、もう限界だということで、私は値上げをストップすることを考えるべきだと。大臣も、家計に占める負担が極めて重いということをお認めになりましたね。  ベクトルで言うとこういうことなんです。国立大学の授業料、これをストップすることです。つまり、ベクトルの向きが上に行ってはいけないということなんです。そして私学助成、経常経費に占める助成割合をふやしていくことによって私学の学費もベクトルを上に向けてはいけない、下に向けて国立大学並みに近づけていく、両方とも下げていくということを本気になって考えなければならない時期だというふうに考えるんです。
  140. 町村信孝

    国務大臣(町村信孝君) かつて高等教育への進学率二割台、三割台、今はやや五割近くなってきております。そして、このままの入学定員を変えずにずっと行き、しかも少子化という事態を考えると、早晩ほっておいてももう大学全入に、進学率一〇〇%という時代が来ても不思議はないような、もうそこが見えるような状態になってまいりました。さあ、そうなったときに、果たして一体国がどこまでそれを支えていくべきなのか。もちろん、より高い水準で勉強したいという、そういう国民の気持ちは大切にしなきゃならない、こう思っております。  ただ、隣の人もみんな行くからとにかく我も我もとみんな大学へ一〇〇%行く。そこにどんどん税金をつぎ込むというのが本当にいいんだろうかどうだろうか。この辺の進学率はどこが限界かとかどこがいいという一義的に水準を決めるということは難しいのかもしれません。しかし、先生ももう御承知のとおり、大学に行ってなおかつもう一度高校のカリキュラムで勉強をし直し、補習をしなければとても大学の授業についていけないという学生が現実に相当数ふえてきているという実情を見たときに、果たしてそういう方々にまで相当な税金をつぎ込む必要があるのかどうかということもあわせて考えていかなきゃならない。  そういうことも新たな要素として我々考えながら、そこら辺のバランスをどうするのかなということを今真剣に議論をしている最中、審議会などでの御議論をいただいている最中でございます。
  141. 阿部幸代

    阿部幸代君 大臣に確認をしたいのですけれども、憲法第二十六条はすべての国民の教育を受ける権利をうたい、教育基本法第三条はすべての国民にその機会がひとしく保障されなければならないと機会均等をうたっています。このことは確認してよろしいですね。
  142. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 与党席、静かにしてください。
  143. 町村信孝

    国務大臣(町村信孝君) 憲法の規定は、御指摘のとおりでございます。私は日本の国ほどこの教育の機会均等が隅々まで行き渡っている、徹底をされている国は世界の中でもないんではなかろうか、かように考えておりますから、戦後の自民党の文教政策は憲法に極めて忠実な文教政策であった、かように考えております。
  144. 阿部幸代

    阿部幸代君 大臣の今の答弁、私は不届きだと思います。本当に怒りでいっぱいです。自民党の文教政策のどこが正しかったということですか。私は学費の問題を今取り上げているのです。(発言する者あり)
  145. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 御静粛に。
  146. 町村信孝

    国務大臣(町村信孝君) 確かに、学費が相当な水準に達しているというのは、冒頭の先生の御質問にお答えしたとおりでございます。  しかし、もしそれが本当に負担にたえられないものであるならば、現実にもっと進学率が落ちてもいいはずですね。しかし、進学率は年々上がる一方であります。だから私は、今の学費負担が軽いと言っているわけじゃありませんよ。現実に私立に通う下宿の学生の家計に占める負担水準は相当なものだと私も思います。でも、教育機会の均等というその一事は学費水準だけではかられるべきものではなかろう、かように思っております。私は、現実の進学率などをごらんいただいて、憲法の基本理念は十分に達成できているんではなかろうか。しかし、だからといって、もう今後何もしないでもいいということを私あえて申し上げるつもりはございません。まだまだいろいろな面で努力する余地はあろうと思っております。
  147. 阿部幸代

    阿部幸代君 大臣は本当に庶民の心がおわかりにならない。極めて単純なことなのですけれども、学費がどんなに高くてもそれを払うことを拒むことはできないのです。拒むことできますか。
  148. 町村信孝

    国務大臣(町村信孝君) 現実に学費が本当に払えないで大学へ行くのをやめたという方もそれは中にはいらっしゃるかもしれません、現実にそういう統計がないのでわかりかねますが。しかし、しかるがゆえに奨学金という制度もございます。また、いろいろな形での今度は家計全般に対するさまざまな援助もあるわけでございます。そういうことを考えたときに、貧しいがゆえに機会均等が奪われているという社会状況、それは昭和二十年代、三十年代は先生のような御指摘がまさにそのとおりかなという事情もあったかもしれない。しかし、今これだけ世界に冠たる所得水準になっていて、なおかつ貧しさがゆえに、要するに所得が不十分であるがゆえに教育機会均等が奪われているという言い方は、今の日本では余り妥当しないのではなかろうかと私は考えます。
  149. 阿部幸代

    阿部幸代君 日本の高等教育の進学率が五割に達するとおっしゃいましたが、進学率の問題でいいますとアメリカやイギリスは日本より上回っていますし、在学率という比べ方をしてみますとフランスやあるいはドイツも日本とほとんど同じになるわけです。これは先進国の特徴なんです。日本も先進国のお仲間入りをしているというだけであります。高い学費を払うことを拒めない国民が、家計費の四割も占めるそういう出費を余儀なくされ、学生生活の支出の五割を学費で占めざるを得ない、こういう犠牲を払っているわけです。その上に成り立っている今日の進学率であって、文教行政が、自民党の教育政策が正しかったということの証左ではありません。  ちなみに、こんなにも負担に悩まされる国がほかにあるのか国際比較をしてみたいと思うんです。高等教育費に関する公財政支出の国民総生産並びに国民所得に占める比率は、文部省が大変いい資料を用意してくださいましたが、これによりますと日本ではそれぞれ〇・六%と〇・八%ですが、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツではそれぞれどのくらいになりますか。
  150. 富岡賢治

    政府委員(富岡賢治君) 国によりまして統計の取り扱い方が異なりますので厳密な比較は難しいわけでございますが、アメリカ合衆国につきましては対国民総生産比が一・二%、対国民所得比は一・五%、イギリスにつきましては対国民総生産比が一・三%、対国民所得比は一・八%、フランスにつきましては対国民総生産比は〇・八%、対国民所得比は〇・九%、ドイツにつきましては対国民総生産比は一・五%、対国民所得比は二・〇%という状況でございます。
  151. 阿部幸代

    阿部幸代君 つまり、財政上、日本の高等教育の位置づけが諸外国に比べて非常におくれているということを示している数字だと思います。どの国も日本より公財政支出の比率は高いです。フランスを除いて日本の二倍以上です。進学率は確かに先進国のお仲間入りをしましたが、公財政支出においては先進国のお仲間入りをしたとは決して言えないのが現実であります。  この問題は、高等教育費の負担区分を比べてみるともっとよくわかるんですね。大変いい資料を文部省は用意してくださいました。私立の高等教育費について、九二年度、日本では公財政支出の比率が八・八%で授業料等が五七・〇%になっています。アメリカは公財政支出の比率が一七・九%、授業料等が三八・五%、イギリスはそれぞれ一〇〇%とゼロ、フランスは二七・四%とゼロ、ドイツは一〇〇%とゼロです。イギリスやドイツの場合、公立、私立を問わず公財政支出によって高等教育費が賄われ、アメリカやフランスの場合も、私立の場合、公財政支出の比率が日本の二倍から三倍と高く、アメリカを除いて授業料等はゼロです。これは資本主義国のことなんです。  財政上、日本の高等教育の位置づけが諸外国に比べて非常に低く、おくれているということをお認めになりますね、大臣。
  152. 町村信孝

    国務大臣(町村信孝君) それぞれの国でそれぞれの教育の歴史があり、またそれぞれの負担に関する歴史もある。例えばドイツのように基本的には州立の大学でほとんどが賄われる、アメリカのように国立というのはなくて州立と私立、日本は国立大学主導で来て戦後非常に私立大学がふえていった。それぞれの経緯、成り立ちが違いますから、一概にどの国がすぐれているとか劣っているという言い方はいかがであろうかな、このように私は考えております。  じゃ、日本が非常に今十分であるかといえば、それはもしお金があればこういう研究もやってもらいたい、こういう教育施設も用意したい、それはございましょう。だから、そういう意味で、私は今の状態で極めて満足すべきと言っているつもりはございません。ただ、そこは日本の予算全体の中でやはり文教予算というものも考えていかなければいけないという点について、今回の法案もそういう基本的な発想ででき上がっているわけでございます。
  153. 阿部幸代

    阿部幸代君 私どもは、日本の国家財政が危機的な状況にあるという認識では一致しております。しかし、その改革をどのようにするかということでは見解を異にしております。  浪費に思い切ったメスを入れるということで、例えば軍事費、思いやり予算について、これは七八年発足のときから四十四倍もふえているんですよ。日米安保条約あるいは地位協定上負担の義務のない思いやり予算だけとっても四十四倍にもふえている。衆議院での答弁を読んでみたら、相手国のあることだから一方的に削れない、こういうことをおっしゃいました。  あるいは公共事業費、日本の道路というのは、高速道路など高規格幹線道路を含めると可住地面積にしてその延長世界一なんです。狭い国土に道路がひしめき合っているんですが、この新しい道路整備五カ年計画、七十八兆円規模の事業を進めようとしている。こういうところにも思い切ってメスを入れるという提案をしながらの私どもの提案です。  高等教育の問題に移りますが、九五年版の教育白書で、「我が国の高等教育費に占める公財政支出の割合は、」「欧米諸国に比較するといまだ低い水準にとどまっている。高等教育が社会の発展や国民生活の向上に果たす役割を考慮すると、高等教育に要する経費を幅広く社会全体で負担するという観点からも、公財政支出の一層の充実に配慮する必要がある。」と言っていました。これをほごにするということですか。
  154. 町村信孝

    国務大臣(町村信孝君) 私は一度もほごにするとも申し上げておりませんし、先ほど来からこれで十分満たされているとは一度も言っておりません。むしろ、さらなる充実を図っていくべきだと思っております。ただ、現下の財政事情ということも私ども頭の中に置きながら対応していかなければならないというのが一点。  また、限られた財源の中でさらにそれをいかに効率的にあるいは効果的に使っていくかということを考え、例えば私学助成の中でも経常経費の中でさらに特別に特色のある授業や教育をやろう、研究をやろうというところには特別補助の割合をふやしたり、あるいは建物なり大型の機械、コンピューターなどを入れる、そういうものについては施設整備補助という形で、それは前年横ばいではなくて増加を図っていくというようなことで、さまざまな工夫を凝らしながら充実した私学教育、あるいは国立大学も同様でございますが、そういう改善策を講じていくのは当然のことであろう、こう思っております。
  155. 阿部幸代

    阿部幸代君 大臣、結局このベクトルで下に向けるという、経常費補助を上げて私立大学の授業料を下げる、このために力を尽くすという立場に は立たないということですね。
  156. 町村信孝

    国務大臣(町村信孝君) 委員に大変恐縮でございますが、政策というのはそう簡単に白か黒か、上へ行くのか下へ行くのかということで断ち切られると何ともお答えのしようがないのでありまして、でき得れば私どももこれ以上学費負担をふやさないようにしてはいきたいな、こう思います。  しかし、私学というのは私学助成の金額だけで納付金の水準が決まるものではございませんで、例えば私学の中でもさらに経営努力をしてもらう部分もあるのだろうと思います。そういう要請を私どもも累次しておりまして、私学助成が横ばいになった、あるいはかつて減ったことがございますけれども、しかし、そのことが直ちに学生納付金の引き上げというものにつながらないという形にはしてください、そういう努力は私学は私学で大いにやっていただきたいということはかねてよりお願いをしているところであります。
  157. 阿部幸代

    阿部幸代君 私学の経常経費に占める私学助成の割合が過去最高二九・五%です。それが今日一二二%です。絶対的に不足をしていたがゆえに常に学費を上げざるを得なかったということ、このことは日本私立大学連盟の「私立大学の財政−二十年の歩み」を見てもよくわかります。  「帰属収入に占める補助金の構成比率が低下するにつれて、学生納付金の比率は逆に上昇することとなった。私立大学は、家計への圧迫を恐れ、スライド制の導入などにより値上げ幅をできるだけ抑えながらも、学費の値上げに頼らざるをえなかった」、この実情が今回の財政構造特別措置法によって改善される見込みはないわけですね。そうしたら、政治家は先の見通しを持つのが仕事ですが、先ほどのベクトルが決してこちらに上がっていく保証がないじゃありませんか。  ちなみに、この同じ「私立大学の財政−二十年の歩み」の中で、過去最高比率が二九・五%ですね、もしここまで私学助成が回復すれば学費値下げができると具体的に言っております。財政構造特別措置法によってその道が閉ざされてしまうというのはだれでもわかることではありませんか、大臣。
  158. 町村信孝

    国務大臣(町村信孝君) 先ほど申し上げましたように、国の助成が横ばいになるから直ちにイコールそれが値上げということにはならないだろうということは先ほど申し上げたとおりであります。
  159. 阿部幸代

    阿部幸代君 大臣、それはひどい立場ですよ。
  160. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 質問者は答弁の時間を保有しておいて、ひとつ質問してください。
  161. 阿部幸代

    阿部幸代君 私学助成を抑えても、学費の値上げにはならないだろうということを無責任に見通されましたけれども、非科学的な見通しですよ。もしそれをやるということは、経常経費を圧縮せよということです。今でも日本の私立大学は大学のマクドナルド化と言われるほど大変劣悪な教育研究条件下に置かれています。それをさらに一層悪くせよということですよ。(発言する者あり)  私学助成の目的、三つ言ってください、大臣。
  162. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 御静粛に。
  163. 町村信孝

    国務大臣(町村信孝君) 三つと言われても直ちにあれでございますけれども、私は、私学助成のあり方、それは確かにおっしゃるとおりに、学生の負担ができるだけ軽くなればいいということもあると思いますが、基本的には、もちろん私学助成法というのがあって二分の一以内ということですから、当初の建学の精神は、それは確かに御指摘のように五割まで行けばいいなという気持ちがあってあの法律をつくられた国会があるわけです。多分、三塚大蔵大臣も当時大変熱心にこの法律成立には御努力をされたろうと、こう思っております。  ただ、今の経済情勢そして財政情勢というのは、当時とは著しく異なってきたということをやはり御認識いただかなきゃならないだろうし、したがって、願わくば五割まで行けばそれは確かに学納金は下げることができるんでしょう。しかし、そこのところは私学の皆さん方もわかった上でそういうことをすべて言っておられるわけでありまして、私は願わくばベクトルとして学費が下がる方向に向かえば望ましいと思います。  しかし、先ほど申し上げましたように、大学の進学率が相当上がってきた中で、一体どこまで国の税金でその負担をすべきか否かということは、やはりこの時点に立ってもう一度考え直してみる必要があるテーマではなかろうか、そういう問題意識で私どもは先般大学審議会に諮問をさせていただいたということでございます。
  164. 阿部幸代

    阿部幸代君 終わります。(拍手)
  165. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 大蔵大臣には朝来、まことに御苦労でございます。さぞお疲れだと思いますけれども、しばらくおつき合い願えればと思います。  いろんな問題が提起されまして、興味深く拝聴していたわけでありますけれども、私は基本的なことをちょっとお尋ねいたしたいと思います。この法案の提案の基本的な考え方と言ってもいいかと思います。  大蔵大臣は趣旨説明の際に、日本財政はまさに危機的状況にあると、「危機的状況」いう言葉を使われました。この言葉は当委員会の審議の際にも橋本総理も何回か使っておられるように記憶しております。  「危機的状況」とは何か。これは大変な状態だろうと、まず一言で言いますれば。しかし、何が大変かと。わかりやすい言葉で言えば、ある人ががけっ縁に立っておって、だれかにちょっとでも突かれたらもう奈落の底に転落する、そういう状態。あるいはまた、大変恐縮ですけれども、今、大相撲が行われておりまして、立ち上がって相手に押し込まれて、土俵際で顔面を真っ赤に紅潮させてこらえておるような状態、これが危機的状況かという気もするわけであります。  サッカーけさほど話に出されましたけれども、韓国に敗れてどこかの国と引き分けた際に、さるスポーツ評論家が、まさに危機的状況、もうパリ出場は絶望的である、後は奇跡を待つのみ、こういうことを言いました。私はその言葉を聞いておって、はあ、なるほど危機的状況というのはこういう趣旨で使われるのかなと、こう思ったわけであります。  まさしく日本財政は先進諸国の中で最悪の状態だと、こういうふうにも言われておるわけであります。この点を大蔵事務当局などに伺いますと、まずもって数字がばあっと羅列されまして、国、地方の公債合わせて四百何十兆、旧国鉄の債務その他を合わせると五百二十兆という数字がすらすらと出てきます。これは表の数字であって、隠れた借金も含めるともうはるか千兆を超えるんだというふうにも言われております。  こういうふうに膨大な数字を列挙されますと、国民はある意味じゃ不感症になってきまして、なに大したことはない、いつも政府はあんなことを言っている、まあ何とかなるんだろうと。財政構造改革も重要だろうけれども、それよりも当面の景気対策も大事、法人税を中心として大幅な減税をすべきではないかと。それから、公共投資も引き続き行って景気を刺激して、税収をふやして、それでもって借金の払いに充てる、こんなことは昔から言われてきていることでありますが、一向に事態は改善されていない。それからまた、増税などはとんでもない話である、公共サービスの低下、福祉も含めまして、びた一文だめだというふうなことにもなっていって、結局は同じ、もとに戻ってしまうのだろうかなと、こういう気もいたすわけであります。  今回この法案が提起されておりますが、こういう国の何らかの措置なしに今までの状態を続けていったら、果たしてこの国はどういうことになるのか。それがまさに危機的状況という言葉で表現されておるんだろうと思いますけれども、数字のことは、もう飽きるくらい聞かされておるものですから、数字のことはさておきまして、今私は相撲の話とかあるいはがけっ縁の話をしたわけでありますが、なるべく国民にわかりやすいように、大臣独特の言い回しでもって説明いただければと、こういう感じもいたすわけであります。どうかお願いいたします。
  166. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 佐藤委員のわかりよくということ、危機的状況の解釈、がけっ縁という表現もそのとおりであろうと。しからば、なぜがけっ縁なのかと、こういうことであります。  財政構造改革という法律でありますから、財政に一言だけ触れさせていただきます。  御指摘のとおり、五百二十一兆、地方、国が持っております。利子は払っていかなければなりません。払うのに借金をして払わざるを得ないところをここ十年余続けてまいりました。収入によって支出を賄うというのが家庭経済。公経済は義務的経費がございます。社会保障国家であり、その他幾つかの問題があります。そうしますと、それを積算いたしますと直ちに数字が出てまいります。最低六十兆必要と、こういうことになるわけであります。そして、利払いは払わぬわけにいきませんから、利子を払わぬで金を借りていた国があるかと言われれば、これはどうしようもないわけで、十七兆利払いその他があります。  こういうことになりますものですから、歯どめをかけて正常な状態に、この際集中三カ年で、辛抱の哲学で頑張ろうではないか。まず、辛抱するということであれば、政府みずからが行財政改革を断行して、民間でやってもらうことによって効率が上がるというのであればそちらに移管をすべきではないのか。そして、辛抱できるものであれば、この際、歳出削減、合理化を進めることによって御辛抱をください、こういうことを申し上げておるところであります。  我が国の展望から言えば、世界まれなる少子・高齢化社会を迎えて、二五年には国民負担率が七〇とかなんとかということになってきておるわけでございまして、そのときの国民生活のあり方はどうなるのであろうか、見方はそれぞれ違いますが大変な時期が到来するなということ等があります。  限られた時間でありますから、ポイントのみ申し上げさせていただきました。
  167. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 どうもありがとうございました。何かわかったような、しかしどうもまだよくわからないという面もございます。  それから次は、対策としてこの法案が提出されておるわけでありますけれども、その前に、どうしてこういう事態になったのか、その原因はどこにあるんだ、本当に正確に原因を把握しない限り正しい対策は出てこない、こう思うわけであります。  私をして一書で言わしむれば、収入以上の生活をしたからだろう、こういうことに尽きるのかという気もいたします。けさほど拓殖銀行の倒産の件につきまして話がございました。今現在、日本銀行というのは何百とあるわけですけれども、すべての銀行がおかしくなっているわけではないのでありまして、今までの例によりますと、拓銀、兵庫銀行、阪和銀行とかごくごく限られた銀行だけであります。同じように、証券会社にしましても三洋証券一社のみ、保険会社については日産生命のみ、それから信用組合に至っては全国で三千近くあるわけですけれども、そのうち倒産したというのは安全信用組合とか木津信用組合とか、ごくごく限られた数であります。  これが全部が全部おかしくなって倒産しているというのならば、もう今さら原因を追及しても始まらない、これはもう不可抗力であった、こういうことになるわけでありますけれども、どうもそうではない。きちっと、苦しいながらも歯を食いしばっている企業が大部分でありまして、倒産したのはいずれも例外的な現象であります。  その原因は何だと尋ねてみますれば、当時の経営者が、これまた一言で言えばバブルによって過大な設備投資をした、不動産投資と言ったら聞こえはいいけれども不動産投機をした。そのツケが今もって回ってきていると。まあそのうち何とかなるだろう、いずれ、右肩上がりだから、どこまでいってももうかる一方だというふうな見通しの甘さがこれを招いたんだろう、こういう気もいたします。  拓殖銀行につきましては、何かけさほどの御説明では、北洋銀行に整理をゆだねるということのようであります。北洋銀行は、御案内かどうか、相互銀行から出発した大変小さな銀行であったわけですけれども、現在の頭取が大変堅実な方で、バブル期も別に踊ることもなく静かにやってきた。これが今や拓銀と逆転しておる。  そこで、果たして我が政府はどっちだったんだろうか。長い間自民党が単独政権といいますか政権を担当してきた。そのツケがここに回ってきたんだと言う人もおりますけれども、この自民党政権のやり方拓銀的であったのか、いやいや北洋銀行的であったのか、この辺のことも踏まえて、原因と対策についてあるいは責任につきましてお話をいただければと思います。
  168. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 私には非常にわかりいい指摘、見解でございます。拓銀的なのか北洋銀行的なのか——北洋銀行の経営理念を体していかなければならないのかなと。拓銀北海道に特化された重鎮の銀行でございました。海外進出がやはり無理だったのかなと。撤退をして合同しようとしたのでありますが、北洋ということに相なりました。  御指摘のように、バブル崩壊を迎えて数々の問題がありました。総じて言えば、佐藤委員の御指摘に私は共鳴するところ多々あります。
  169. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 終わります。(拍手)
  170. 山口哲夫

    山口哲夫君 まず、大蔵大臣北海道拓殖銀行の問題について一つだけ質問をいたします。  私も北海道出身でございまして、特別関心を持っております。御存じのとおり、北海道拓殖銀行北海道に占めるシェアというのは恐らくほかの都道府県ではないほど大きいものがあるんではないだろうか。それだけに、北海道民はもちろんのこと、拓銀預金されている人の心配というのははかり知れないものがあると思います。  けさほど談話で発表がございましたけれども、確認の意味でお尋ねをしたいんですが、預金されているすべての人たちに対して、その引き出し等については一切心配はないということをまず確認をしていただきたいと思います。  それからもう一つ拓銀の中小企業に対する貸し付け等については、相当以前から貸し渋りというか、なかなか今までのように思うように貸してもらえないという中小企業の問題があったわけです。それで、今後なお一層そういうことになるんではないかという不安がありますけれども、日銀特融等の問題もあわせて、地元の北海道経済、そういうことに影響を来さないようにするというこの二つについて御確認をしていきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  171. 山口公生

    政府委員山口公生君) 大臣の御答弁の前に事実関係等を御説明申し上げます。  預金についてすべて心配ないのかというお話ですが、これはすべて心配ございません。  それから、中小企業への貸し渋りの問題の点でございますけれども、今回の措置で引き継がれますので、健全な取引先との関係はそのまま維持されます。今まで拓銀でもし貸し渋り等の現象があったとすれば、資金繰りに困って慌てて回収をするとか貸し出しをやらないとか、そういうことを迫られてきたという点があったかもしれません。そういうことは、健全な先については今後はないということになるわけでございます。
  172. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 銀行局長が詳しく言いましたが、預金保険法を発動し、お願いを申し上げ、日銀特融承継までしっかりと支える、こういうことで発動することといたしました。必要な資金は出てまいります。よって、預金者保護は完全でございます。御心配はありません。  また、お取引をいただいておる、メーンバンクとする優良企業の皆さんその他もあると聞いておりますが、これに対しても資金が提供されてまいります。こういうことでございます。
  173. 山口哲夫

    山口哲夫君 ひとつしっかりお願いいたします。  次に、自治大臣にお尋ねをいたします。  おとといの朝刊に「自治省 定員減らし年度ごとに 自治体に明示要請」という新聞記事が載っておりました。簡単に読んでみますと、「定員の削減数を明示する行政改革実施計画を年度ごとに策定し、達成状況公表するよう通知した。」「自治省は三年前にも地方自治体に対して三−五年の地方行革大綱を策定するよう求めたが、年度ごとの具体的な数値目標までは要求していなかった。」、こういうことです。  それで、九月十八日の決算委員会でも私はこの問題を取り上げて質問をいたしました。そのときの大臣並びに自治省の答弁は、要約すると、地方行革というものは自治体が自主的にやっていただくというのが基本なんだと、こういうふうにお答えになっておりました。  しかし、今回、十四日に都道府県知事並びに指定都市の市長に出した事務次官の文書、これから読みますとこれは自主的にはなっていないと思うんです。要請をするんだと言うけれども、これは要請ではありません。明らかに指示をするという指導的な文書というふうにしか私には読めません。  ちなみに、表書きにもありますように、「この指針に沿って、より一層の行政改革の推進に努められるよう強く要請する。」とは言っているけれども、言葉では要請するという言葉は使っているけれども、その下に「なお、都道府県知事におかれては、貴管内の市町村に対してもこの旨を伝達の上、適切な指導をお願いする。」、こういうことが書かれております。そして、非常に細かく書いております。定員及び給与の状況について、行政改革大綱等の推進状況についても公表しなさい、そしてもっと具体的に、定員管理に当たっては、新規の行政需要に対しても原則として職員の配置転換によって対応するなど、増員を抑制し、定員管理の適正化に努めなさい、こう書いているわけですね。   こんなことを一々地方自治体に言わなくたって、各自治体は自主的にちゃんとやっているんですよ。どこの自治体だって、必要もないのに職員を採用するなんということは考えられません。それを一々こういう文書をもって出すということは、これは言葉では要請と言うけれども、中身は明らかに指示です。  そして、大変失礼なことを書いているんです、この文書を読みますと。例えば、地方自治運営の基本原則に立ち返り、サービス精神と経営感覚に立脚した行政改革を進めることが重要である。特に首長のリーダーシップと職員一人一人の意識改革が不可欠であると。これは、まるで地方自治体の首長はリーダーシップがないんだ、職員はこういう行革に対しては無関心だからもっと改めろというふうにしかとれないんです。これは地方自治法に違反する文書だ、そういうふうに私は思います。  そこで、確認しておきたいと思います。  二つほど確認したいんですけれども、一つは、地方自治体の行政改革の実施はあくまでも自治体が自主的にやることであるということをはっきりと確認しておきたいと思います。二つ目は、実施状況について報告を求めることはしないでもらいたい。この二つについて確認できるかどうか、結論だけお聞きしたいと思います。
  174. 上杉光弘

    国務大臣(上杉光弘君) お答えをいたします。  今回の行政改革や財政構造改革に取り組むということは、地方公共団体も国と合わせてやるというのは、これはもう不可欠な条件でございます。  それで、その新しい指針を出したことは地方自治法の違反じゃないか、主体性というか自主性を侵すものじゃないか、こういう趣旨の質問でございますが、現在、実行の段階にございます地方分権の成果を十分に上げるためにも、地方公共団体みずからが、みずからということは自主的にでございますが、行政改革をより積極的に推進することが求められておることはもう事実でございます。仰せのとおりです。  さらに、このような状況にかんがみまして、地方分権推進委員会の第二次勧告におきまして、国に対して地方行革に関する新たな指針の策定を求めておるわけでございます。このことを踏まえ、今般、新たな指針を策定いたしまして、行政改革をより一層推進するようにお願いをした、こういうことでございます。  数字を出したとか報告とか、そういうものもございましたが、地域の住民の皆さんにもわかりやすく、透明度をより高めた改革として、そこに住む住民の皆さんの御理解、御支持をいただきたいという願いがこれには託されておるわけでございます。  さらに、首長さんのリーダーシップを大いに発揮するというのは、これはリーダーシップがないからそれを発揮せよというのじゃなくて、さらにリーダーシップを、先頭に立って行政改革をおやりいただきたい、こういうふうな意味を込めてのものでございます。
  175. 山口哲夫

    山口哲夫君 いずれにしても、非常に問題のあることでございますので、今後そういう強制的な指導につながるようなことだけは絶対にやめてもらいたいということを強く要請しておきます。  せっかく小泉大臣においでいただきましたけれども、一問しか質問できなくて失礼します。  厚生省の今度の予算を四千二百億円、これは医療制度改革を中心に削減するということになっておりますけれども、これは医療費総額を一定しておきますと、当然これは国費を減らせばその分だけ保険料や患者の負担がふえるということになると思うわけです。それで、九月から患者負担を上げたばかりでございますから、これ以上国民負担をふやすということは大変なことだと思いますので、この四千二百億円の削減措置については国民負担にならない方向でやるべきでないかと思いますけれども、そういうことで認識してよろしいでしょうか。
  176. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 税も国民負担保険料国民負担、自己負担国民負担、全部国民負担でありますが、四千二百億円を医療費で出せということについては、薬価、診療報酬等、医療費全体にかかわる問題を全部見直しながら、年末の予算編成で具体的な項目を詰めていきたいと思っております。
  177. 山口哲夫

    山口哲夫君 終わります。
  178. 武見敬三

    武見敬三君 今回の財政構造改革推進に関する特別措置法案、その中でも、特に集中改革期間中の社会保障関係費の伸びの考え方について御質問をさせていただきたいと思います。  この考え方として、賃金、物価上昇に伴う単価増等の影響は制度改革等で吸収をする、こういうふうになっております。等というのがたくさんついているので、解釈がいかようにも広げられるところにみそがあるようにも思いますが、そして、対前年度伸び率を高齢者数の増の影響分以下に抑制する、これはおおよそ全体の二%に相当すると、こういうふうな話になっているわけであります。  まずは、平成十年度には三千億円以内に増を抑制するということになっているわけでありますが、三千億という数字がどのような考え方から組み立てられたのか、簡単に御説明をしていただけるとありがたいんですが。
  179. 涌井洋治

    政府委員(涌井洋治君) 先ほど先生の御指摘のありました閣議決定の考え方に従いまして十年度の増加額を推計いたしますと、九年度の社会保障関係費約十四兆六千億円のうち、年金、老人医療に対する国庫負担等の高齢者関係予算額が約八兆二千億円であること、それから高齢者関係予算の対象となる高齢者数が人口推計によれば十年に約三・七%程度増加すると見込まれることから、これが大体二%ということで、十年度の増加額を三千億円を下回るようにするということにしたわけでございます。
  180. 武見敬三

    武見敬三君 そこで次に、そうなりますと、賃金、物価上昇に伴う単価増等というものの影響は制度改革等で吸収する部分に今度は入ってくるわけでありますけれども、次年度に関して、賃金、物価上昇に伴う単価増というのはどの程度推計されてきているのでありましょうか、その額をおよそ教えていただければ幸いであります。
  181. 涌井洋治

    政府委員(涌井洋治君) お答えいたします。  現段階での平成十年度の義務的経費の自然増が約八千五百億円と推計されております。
  182. 武見敬三

    武見敬三君 この制度改革等でこれらを吸収していくということになるわけでありますけれども、それがどのような制度改革等によって吸収されるのか。例えば、保健・福祉三プランの経費からは百二十三億円、それから国立病院の繰り入れからは百六十億円、社会保険事務費になりますと、これが約七百億円、その他で二百七十五億円、これだけで合計千二百五十八億円の経費削減になるわけでありますが、これらのほかにこうした増部分についての抑制というものをどのような形で組み立てられているのか、教えていただきたいと思います。
  183. 田中泰弘

    政府委員田中泰弘君) お答えいたします。  少し話を戻してお話ししたいと思いますが、八千五百億の自然増で三千億のキャップがかかっておりますので、五千五百億を削るということになるわけでございますが、そのうち医療費につきましては四千二百億を削減いたしまして千八百億の増、それから年金の関係は、そのうち千五百億の当然増でございましたが、数値を精査いたしまして三百億を削るということで千二百億の増、残りが一千億の自然増でございます。  その他経費の一千億の自然増を洗い直しまして、これを圧縮しますとともに、三プランの関係等、生活保護の関係等増額経費がございますので、あとは経費の見直しによります削減分を出しているわけでございます。  その削減経費が、先ほど御指摘ございました社会保険事務費の関係、国立病院の繰り入れの関係、補助金の縮減の関係、公共事業費の縮減の関係、それから施設整備費、これは並行でございますが、施設整備費の関係ということで、大きな項目といたしましては今申し上げました五つの項目でこの一千億のその他経費の自然増を吸収いたしまして、三千億の枠の中におさめているということでございます。
  184. 武見敬三

    武見敬三君 例えば、今御指摘になりました年金、四月時点で自然増の見込みが千五百億円、こういうふうに示されております。また、医療に関しましては同じく四月時点で自然増見込みが六千億円、こういうふうに見込まれているわけでありますけれども、これは九月の患者負担の引き上げ等さまざまに新しい変化要因が出てきておりますので、十一月の現時点において年金及び医療の自然増見込みというのはどのように修正されてきているのか、その点についての数字のお示しをいただけると大変にありがたいと思います。  特に、九月一日の患者負担の引き上げの影響というものを実際どういうふうに分析して次年度当然増予測の推計に正確を期するかということは、私、極めて重要な課題であると理解をしておりますので、この十一月時点における見込み、これをぜひ教えていただきたいと思います。
  185. 田中泰弘

    政府委員田中泰弘君) お答えいたします。  今、お話のございました医療保険の九月からの改正分のデータにつきましては、いま少し出てくるのには時間がかかるということで、今のところまだ修正する数値は持ち合わせていないということでございます。  年金につきましても、現在のところは、四月時点での先ほどお話し申し上げました推計というのが現在の数値ということでございます。  以上でございます。
  186. 武見敬三

    武見敬三君 この予測というのは、かなり実際国民一人一人の痛みにかかわる問題でありますから、数字だけ議論をしていると何か極めて合理的に数合わせができてしまうわけでありますが、さじかげん一つ一つについてそうした気持ちを持って議論をしなければいけないんだろうと思います。  実際に、昨日も私、姫路に行ってまいりまして、姫路の医師会の関係の方々と話をしておりますと、姫路のような地域においても被保険者本人の受診行動にかなりの影響が及ぼされてきているということが出てきております。また、東京港区の医師会の関係者と話をしておりますと、特にビルにおいて開業している先生方のところにいらっしゃる患者さんたち、おおよそこれは仕事の行き帰りに受診される傾向が多いわけでありますが、こういう方々の場合には二割から三割実際に減っておられる、こういうような傾向が現実に出てきているわけであります。  こうした実際の受診行動の変化というものが国民の健康状態にどういう影響を及ぼすかということを細かにきちんと分析し、それをきちんと議論し、理解をしながら、この問題は正確を期して議論していきたい、こう考えているわけであります。  さらに、先ほども山口委員から指摘がされておりましたけれども、四千二百億円の医療費の当然増分の削減の方法という点について御質問をさせていただきたいと思います。  これは実現するのは相当に大変で骨の折れる仕事であるわけであります。私自身は、子孫に借金を残さないためにも、我が国の健全な財政というものを一刻も早く確立するためにも、こうした財政構造の改革というものについては国民に一定の痛みを理解していただきながら断行しなければならないんだということは肝に銘じて理解をしているつもりでありますけれども、この四千二百億円の医療費の当然増分の削減方法について、その具体的な方針、考え方をお知らせいただきたいと思います。
  187. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 厚生省の概算要求としましては、あと四千二百億縮減しなければならないわけであります。この大部分は医療制度の中で縮減をしていくという姿勢でおります。先ほど大臣からも御答弁がありましたけれども、基本的には薬価あるいは診療報酬、こういったものの適正化というものをまず中心に据えて進めていかなきゃならないというふうに考えております。  ただ、概算要求段階においては、毎年そうでありますが、その積算の基礎となっておる数値、先ほど武見先生からもその数値の問題の御質問がございましたけれども、これは概算要求時点において把握している数字をもとに計算をしておりますので、毎年本予算の編成に当たりましてはこの辺の計数の見直しということをやりますので、そういった計数の見直し等々も含めてこの四千二百億というものを縮減していかなきゃならないというふうに考えております。
  188. 武見敬三

    武見敬三君 例えば薬価の切り下げという点について考えてみると、よく新聞報道などでは一〇%の切り下げをしたらいかがなものかというような議論がなされているということも言われているわけであります。  例えば一〇%切り下げしたとしても、そこで削減できる予算額は二千億円というふうに聞いているわけであります。それからまた、いわゆるRゾーンというものを圧縮したらどうかという議論もあります。Rゾーンを一%圧縮して確保できる財源は二百億だと聞いております。こうしたことに加えて、さらにペースメーカーであるとか、あるいはバルーンといったような医療の器材、設備といったようなものに関する公定価格の引き下げから財源をつくったらどうかというようなことも言われているわけでありますが、そこから捻出できる財源も相当に限られていると思います。  したがって、これらを幾ら足し合わせても、私の計算ではなかなか四千二百億に届かないというふうに思うわけでありますけれども、現時点において実際に、高木保険局長にもお伺いしたいわけでありますが、どのような見通しをお持ちなのか、ぜひ教えていただきたいと思います。  また、今私の御説明させていただいた内容で正しいかどうかも御確認させていただきたいと思います。
  189. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 薬価基準の引き下げの数値で申し上げますと、一〇%引き下げてはどうかということではありませんで、仮に一〇%に相当する額をはじくとすれば、まさに武見先生おっしゃったような国庫負担ベースで約二千億ということになります。  これは、いわゆる診療報酬全体の中における薬剤のシェアというのは八兆円ということでありますから、八兆円の一〇%で八千億、そのうち約四分の一が国庫財源ということでございますので約二千億、一〇%薬価基準を引き下げると約二千億の節減になる。こういうことでありまして、それらをどの程度引き下げることになるのかということにつきましては、現在中医協でこの議論をしていただいております。ただ、その議論の前提として現在薬価調査というものをやっておりますので、この薬価調査の結果というものをまず見なければ確定的な数値というものは出てまいらないわけであります。  それからまた、全体としての医療費の適正化。今出ましたようなことで、ペースメーカーとかあるいはカテーテルとか、そういった医療材料の引き下げというようなことも、今、中医協の中で議論がなされております。しかし、これらを全体的に仮に合理的な範囲内で縮減するとしても、四千二百億の国庫負担というのはこれは大変な額でありますから、そう簡単にはなかなか埋まらない。そういう意味で、私どもとしてはあらゆる方策というものを現在検討しておりますけれども、なかなか厳しい状態であるということでございます。
  190. 武見敬三

    武見敬三君 さてそこで、先ほど申し上げたのですが、社会保険の事務費の七百億円削減というのは、これは見事な数字をお出しになったというふうに思います。この七百億円の削減の方法というのは一体どういう方法があるのか。それからまた同時に、こうした七百億円という数字をぽんとこうやって出せるんだったら、正直な話なぜもっと早くこういうことをやらなかったのかなと、こういう認識も持たざるを得ないのでありますけれども、一体どうやってこの七百億円を捻出されるのか、ぜひ教えていただきたいと思います。
  191. 真野章

    政府委員(真野章君) 今回、概算要求をさせていただいておりますのは七百億円ではございませんで、六百二十六億円の削減ということでお願いをいたしておりますが、これは現在、年金の支払いの都度に年金支払い通知書というのをお送りをいたしております。現在、年金の支払いが年六回でございますので六回いわば同じ通知が参っておるわけですが、この辺につきましても簡素化ということで年一回に簡素化させていただく。それからまた、各種の福祉施設を整備いたしておりますが、その整備の縮減を行う、このような方法によって六百二十六億の削減をしたいというふうに考えております。
  192. 武見敬三

    武見敬三君 なるべく早くこういう努力はされるべきだったというような率直な気持ちを持ちます。直接に今回の財政構造改革の対象とはならないわけでありますが、これと外側で関連するところで、例えば医療事務関連で言えば、社会保険の支払基金というものの事務諸経費についてもこれは真剣に考えなきゃいけないなというふうに思います。  例えば、レセプト一枚当たり百十三・六円、これは九二年度には九十九・七円であったわけで、わずか五年で約一四%も引き上げられている。年間七億枚のレセプトを発行しているわけでありますから、総額で約七百九十五億円の手数料をここは入手しておるということになります。  そこで、全国で四十七支部、六千四百四十八人もの職員を雇っている巨大な組織になってきているわけでありますが、わずか五年間でなぜ約一四%もの引き上げが必要であったのか、そしてまたこうした支払基金の消費している医療事務費用の合理化について、どこまで真剣にこれに取り組もうとされているのか、これについての御質問をさせていただきます。
  193. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 支払基金の事務費でありますけれども、やはり大宗を占めますのは人件費でございます。人件費のアップ等を見込んで、毎年当然のことながら改正をしておるわけでありますが、そのほかに、まさに今、先生御指摘のとおり、できるだけ機械化というものを進めていかなきゃならないということを考えておりまして、いわゆる支払基金には七億万枚からのレセプトが毎年あるわけでありますが、これを各保険者別に分類をするというのもこれまで手作業でやっておったわけでありますけれども、これを機械化して機械で分類するようなことを導入いたしております。  そういったレセプトの保険者別分類の機械の導入というものがございまして、これもかなりの金額がかかるものですから、ここ数年の間にこの導入経費を含めますと、御指摘のような単価の引き上げを行わざるを得なかったということでございます。  ただ、この支払基金の審査、支払いの効率化ということを極力進めておりますけれども、やはり全体のレセプトの枚数、いわゆる仕事の量というものも年々ふえております。そういった中で、私どもとしては、極力人件費等も減らしながら、合理化しながら進めておるつもりでございますけれども、この数年の伸びの大きな要因というのはそのようなものが中心でございます。
  194. 武見敬三

    武見敬三君 こうした御努力というものをこれからまさに進めていただかなければならないというふうに思うわけであります。  ただ、一九八〇年代、一九九〇年代初頭ぐらいまでの大きな世界の、特に先進国の動きを見ておりますと、やはり規制緩和や小さな政府というものを志向することによって経済の活性化を実現するという、そういう過程であったかと思います。  こうした中で、おおよそ多くの先進諸国では、社会保障サービス関連についての予算も削減をし、サービスが実質的に低下をするという傾向がございました。こうした結果を受けて、経済は活性化したものの、実は国民の社会保障サービスに対する期待というものは一貫していたために、こうしたいわば経済的にはある一定の成果を上げたにもかかわらず、そうした政権がいずれも昨今の選挙によって敗北をするというような傾向が出てまいりました。西ヨーロッパだけ見てみても、この結果として、こうした小さな政府、規制緩和を推進した政権で生き残っているのはドイツのコール政権だけであります。来春、このドイツで選挙がありますから、その結果によって実際に全滅する可能性もある。  我が国はたまたまある意味で出おくれてこうした規制緩和、小さな政府を志向するという状況下に今現在あるわけでありますけれども、でき得る限りこうした他の先進諸国の二の舞は踏まずに、実際にこうした経済の活性化のための規制緩和あるいは行革というようなことの重要性は認識しつつも、社会保障の分野に関しましては私は他の先進諸国の教訓を率直に学ぶべき必要もあるというふうに考えております。  それだけに、今回の法案におきましてもこうした一つの枠組みが提示されているわけでありますが、それを実際に運用する段に当たりましては、国民のこうした社会保障のニーズに対する期待というものを裏切らないように極力柔軟な運用を求めるものであります。  私自身は、中長期的にこうした社会保障関係費の予算、特に医療関係の予算というものを健全にかつ適切に抑制するということを考えなければいけない。その場合には、いわゆる健康価値、健康そのものを一つの価値として考える健康価値と、そして経済価値というものを、双方両立させるような形でこれを実現するという考え方が必要であって、私はこれを健康投資という考え方で呼んでいるわけであります。国民の健康の水準というものを確保してかつ適切な経済基盤を確保するためには、この健康投資という考え方の中で現在の保健事業を私は再検討する必要性を認識するものであります。  そこで、この保健事業に関しましては幾つもの省庁にまたがって実施されているという傾向があるものですから、大変お忙しいところ労働大臣さらには文部大臣にもお越しいただいて恐縮に存じているわけでありますが、母子保健や地域保健、老人保健といったようなものは厚生省の管轄であります。そして、これらの人たちが所在する地域社会というものは、別に特定の目的を持った社会ではございません。そして、そこは厚生省が所轄をしている。他方で学校保健は文部省が所轄をしている。産業保健は労働省が所轄をしている。そして、これらの学校保健も産業保健も、おのおの特定の社会目的を有する特定の社会集団を対象として実施されている保健事業であります。  私は、こうした社会目的を持つ社会集団における保健事業というのは非常に重要であるという認識をまずきちんと持った上で御質問をさせていただくわけでありますが、こうした現在の母子保健、学校保健、産業保健、地域保健、さらには老人保健といった行政組織上、縦割り的に実施されている健康保健のシステムというものを人間個人の生涯を通じた保健事業の立場から再構築する必要があると私は考えるのでありますが、これらをそれぞれ別の視点から現在所轄されている厚生大臣、労働大臣、文部大臣はどのようにお考えになるかをお知らせいただきたいと思います。
  195. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 御指摘の健康づくり、疾病対策よりも健康投資等健康そのものに対する総合的な視点が必要ではないかという御指摘は、私も同感であります。  そこで、現在、来るべき少子・高齢化社会を展望して、できるだけ多くの国民に健康でいてもらいたい、どうせ長生きするのならば健康で長生きしてもらいたいということを考えますと、子供のころから健康的な生活習慣を身につけるということが大事だということで、健康診断事業の徹底による病気の早期発見、早期治療に並んで、日ごろみずからが子供のうちから健康のためにはどういうことが必要か、生活習慣が大事であるという点の啓発活動も必要であろう。また、地域、職域、学校などで行われております健康診断の結果が健康指導につながるようにすることができないか、健診を受けられた方みずからや、またかかりつけ医が継続的に健診データをどのように個人個人の健康づくりに役立てていくか、その組織的なつながり、連携をどうやって築いていくか。  さらに、こうしたいろんな問題御指摘を踏まえまして、生涯を通じた国民の健康づくりといいますか、今委員御指摘の健康投資、これの具体的な達成目標と手順を示した仮称でありますけれども、「健康日本21計画」、二十一世紀に健康な日本を目指すというような趣旨でありますが、この「健康日本21計画」を今検討しておりまして、この具体化に当たっては厚生省のみならず、関係省庁とも連携をとって協力を求めていきたいというふうに考えております。
  196. 伊吹文明

    国務大臣(伊吹文明君) たびたび本委員会でも景気の問題について御審議がありましたのと同様に、短期的に景気を浮揚させるということと、構造的に元気の出る経済構造をつくっていくというのとちょうどよく似た先生の御質問だと私は思います。  来年度予算をどうするかということと、少し長い目で見て医療保険の負担を軽減するためにはどういう方法をとるかと、そういう視点ともう一つ、今御指摘がありましたように、やはり一人一人の人間が健康で生きがいを持って暮らしていくために健康管理をやっていくという視点も同様、私は必要だと思います。  そこで、人間が生まれたとき、まず胎児のときから厚生省が母子保健法に基づいていろいろなことをやりますが、学校に入ると学校保健法に基づいて文部省がいろいろやる、職場へ行くと我々の方の労働安全衛生法に基づいて健康管理や何かをやる、それからまた退職後は厚生省に戻っていく、こういうことでございますが、やはり長期的に見ますと、武見委員が御指摘になりましたように、病気にできるだけならないように、そしてその人を、これはプライバシーの問題があるとも思いますのでその点には注意しなければいけないと思いますが、一つのデータ、一人の人には一つのデータ的に管理ができて、できるだけいい形で医療の提供ができるという方向は私は非常に結構なことだと思っています。  たまたまきょうから官邸でも会議が始まっておりますが、労働省と厚生省は一府十二省庁で同じ役所になるということも案としてあるわけでございますので、それら関係省庁また文部省ともよくお話をさせていただいて、将来の医療提供体制全般の問題の中でおっしゃっている方向に行けるように我々はぜひやってみたいと思っておりますので、どうぞよろしく御支援をお願いいたします。
  197. 町村信孝

    国務大臣(町村信孝君) 学校教育の中で健康教育というのは私は非常に重要だと思っております。ある意味では、余り細々したことを覚えるよりもはるかに、人間が一生健康に生きるためにはどういうことに気をつけたらいいかとか、あるいはどういうものをしっかり栄養としてとったらいいかとか、広い意味でのそういう健康教育をこれから重視していくということは本当に大切なことだと、委員御指摘のとおりだと思っております。  そういう中で、確かに今御指摘のとおり厚生省の関係、あるいは学校時代は私どもの学校保健の関係、あるいは産業保健と分かれている点が一つの問題、課題なのかなと思っております。  実は、私も事務方に聞いて勉強したのでありますが、平成元年から一年ほどかけて、厚生省の母子手帳と連携をとった形で児童生徒健康手帳というのをつくるような、そんな研究もしたようでありますが、なかなか実行までには至らなかった。一つは、先ほど労働大臣がお答えになったプライバシーの問題というのが大きなネックになっているようでありまして、どこでどんな状況で生まれたかとか、あるいは小さいころどうだったかというような情報を学校に親が知られたくないというようなことがあったり、それからどうしてもやっぱり幼児のころの段階は非常に病気になったりする確率が高いわけですが、学校へ入ると大分疾病発生率が下がるわけでありますので、その何か記載事項がなかなか統一できないとか、いろいろ技術的な問題も含めてあったようでございます。  私どもとしては、急にすぐそういうシステムがうまくできるかどうか余り自信はございませんが、しかし若干時間がかかっても、一人の生涯について、言うならばコンピューターの技術も発達してきておりますから、例えば一枚のカードでずっとこれである意味のそういう健康管理、そして治療管理、病歴管理といったようなものができる、そんなシステムがもしできるのならば、それは一つのすばらしい方向ではないだろうかと考えてはいるところでございます。長期的によく慎重にまた考えていきたいと思っております。
  198. 武見敬三

    武見敬三君 大変前向きの御答弁をいただいて大変に感謝を申し上げているわけであります。  実際に、現在の疾病中心の保健医療システムというのに対しまして、まさに二十一世紀に向けては、健康から疾病に至る過程というものを包括的に把握してこれに総合的に対処するような全く新しい保健医療システムというものを確立する必要性が先進諸国でいずれも認められるようになってきているわけであります。  例えば、小泉厚生大臣がよくおっしゃいますけれども、自分の健康は自分で守るという自己責任、これについてまずきちんと国民の皆さん方に持っていただくという努力は本当に小さいときからする必要性のあるテーマだと思いますし、また、そういう意識を持った人たちに対して適切な情報を提供する健康教育というものがその次に必要になりますし、それから心身ともに健康な生活をする生活様式というものが維持できるような健康の管理がそこにもたらされなければならないし、さらには健診であるとかその他の予防医学等による一次予防、二次予防といったようなものもこれを連携して繰り出していかなければいけない。そして、早期診断、早期治療、リハビリ、社会復帰とつながるようないわゆる包括医療と呼ばれてきた過程というものを、個人の健康の歴史、健康史としてこれを整理して把握しておくことが特に必要な時代になっていくわけであります。  そういうことができることによって、余り横文字を使うと小泉厚生大臣に怒られるかもしれませんけれども、ライフステージ、これは年齢適性というふうに日本語に訳すとなるんだそうですけれども、それぞれの人生のライフステージ、年齢適性に合わせた健康づくり体制を確立することが重要だと。母子保健のときの健康投資の中身、そして学校保健のときの健康投資の中身、産業保健のときの健康投資の中身というようなものをきちんと学問的に研究調査をし、それに裏づけられた形で再構築していくことが必要だというふうに思うわけであります。  それにしても、その骨格は、先ほど町村文部大臣がおっしゃったように、明らかに個人の健康情報の今後の扱い方になります。これは、いわゆる健康の基盤を充実させるという考え方から非常に基本的な柱になると同時に、ある一定の病気に対して、それにならないように予防するという考え方からもこの情報は必要になってくるわけです。  この両方の視点からのいわば必要性をともに兼ね備えた大きな柱が、私は個人の健康情報ということになるんだろうと思うんですが、これをつくり出していく必要性というものを考えたときに非常に問題になってくるのは、先ほどもお話しになりました各保健の連携というものが実際にどの程度各省庁の縦割り行政を克服して、そして特に大臣の諸先生方の政治的な指導力で実現していただけるのかというのは、私は本当に重要な課題ではないかと思うのであります。  そこで、母子保健と学校保健との情報連携というものについて、今までの段階でありますと、例えば心臓病であるとか糖尿病であるとかある特定の疾患に関しては情報連携をしているというふうに伺っているわけでありますが、その実態と、それからその場合に個人のプライバシーの保護というものにどのような配慮がなされているのか、そういうことについてまず文部大臣からお話を伺わせていただけますでしょうか。
  199. 工藤智規

    政府委員(工藤智規君) お答え申し上げます。  学校と家庭との連携というのは保健事業のみならず大事なことでございまして、学校保健関係について申し上げますと、常日ごろからいろいろな連絡体制をとっているわけでございます。例えば、学校医等の専門家による講演会の開催に父母の方々も御参加いただくことでございますとか、あるいは保護者に対して児童生徒の健康に関するアドバイスあるいは相談の体制を設けるとか、あるいは広報活動で保健便り、給食便り、あるいはPTA便りというような形で情報を提供するというようなこともあるわけでございます。  そういう中で、今し方先生から具体的に御指摘ございました特定の疾病についての情報連携ということでございますが、これにつきましては、心臓病、糖尿病、それから腎臓に疾患のある子供たちにつきまして、学校において、財団法人でございますが日本学校保健会というところがございまして、そこの御協力を得ながら、それぞれ個別の手帳を子供たちに発行してございます。その手帳をもとに、実際に何かの病気で医師にかかるような場合について、個別に学校でのそういう特殊事情をお医者さんにも情報を提供しながら適切な御指導をいただくとか、あるいは運動等の場合に特定の運動については制限していただくような配慮をいただくとか、そういう形の連携をとらせていただいているところでございます。  いずれにしましても、御懸念いただいていますようにプライバシーにもかかわりますので、その手帳は、それぞれ母子手帳などと同じように個別の御家庭で管理していただきながら、それを適宜必要な場合に医師等に開示して連携を図っていくというものでございます。
  200. 武見敬三

    武見敬三君 まさに最後に御指摘になったとおり、個人のプライバシー保護を考えたときに、この情報を責任を持って管理するその主体をどこに置くのかということになるわけでありますが、私は、やはりこれは個人で責任を持って自分の健康情報の蓄積に努めてそれを保護するという考え方が基本にあるべきだろうというふうに思います。  ただ、それを政府が支援して、蓄積しやすい行政サービスがその中できちんと提供されるということがそこに伴われてくることだろうと思うわけであります。  その次に、今度学校保健から産業保健に移行する、すなわち卒業して就職をするということになった場合に、実際に産業保健の側から、現状で学校保健との間でどんな情報連携というものがあるのでありましょうか。その実態をちょっと教えていただければと思います。
  201. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 学校保健と産業保健の連携でございますが、両者の健康診断の項目等には一部重なっている部分もあるわけでございます。ただ、学校から職場へ移る段階におきましては採用という問題がございまして、適性と能力だけに基づいて的確な採用が行われることが望ましいわけでございますが、やはり先ほど来お話ございましたプライバシーの問題がございまして、そういったことをどう処理していくのか、その辺につきまして問題があるために、事実上、先生御指摘のような十分な連携というのはとられていない状況でございます。  私ども、そういった点をどういうふうに乗り越えていくのか、もう少し勉強させていただいて、文部省ともいろいろ相談をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  202. 武見敬三

    武見敬三君 この問題は特に個人のプライバシーが大きなネックになることは当然でありますが、それだけに個人の責任というものを基本にして、個人がその情報を管理するという立場の中でひとつこの問題をクリアしていく必要性があるだろうと思います。  その上で、技術論が現実に出てまいります。それは、先ほどもカード化したら大変に効率的なものになるであろうというようなお話もあったわけでありますけれども、その際に、実際に厚生省では電子カルテの研究を現実においてしておられて、その中でも恐らくプライバシーの保護の問題等と関連して、暗号技術などをどのようにその中で生かして個人のプライバシーを保護するかということも研究をされておられるんだろうと思います。  そこで、そういう研究調査等を踏まえた上で、個人の健康情報というものをカード化して蓄積していくということは現在の我が国の技術水準のもとにおいて現実に可能であるのかどうか、技術論の立場から教えていただけると幸いであります。
  203. 谷修一

    政府委員(谷修一君) 先ほど来お話ございます個人の健康情報ということに関して、カードの中にそれを記録していくということにつきましては、技術的には解決をされている部分が多いというふうに思っております。そういう意味で、既に、主として市町村でございますが、全国の幾つかの地方自治体において、カードの種類としては光カードあるいはICカード、そういうようなものを使いまして、いずれも試験的ではございますけれども、健診データ等をこの中に入れるということは行われております。  ただ一方、先ほどちょっと先生もお触れになりました電子カルテの開発というようなことに関係いたしましては、現在、平成九年度からこの電子カルテの開発を行ってきております。  具体的には、その前提といたしまして病名などの用語あるいはコードの標準化、それからもう一つは改ざん防止というんですか、プライバシーの保護、こういうようなことをどのようにするかということが一番の課題でございまして、まだ完全に解決されたわけではございませんけれども、いわゆるセキュリティー、個人のプライバシーをどういうふうに保護するかということについては、現在研究をしているところでございますが、技術的な問題さえクリアされればこの問題についてはカードとの連携ということも含めて可能であろうというふうに認識をしております。
  204. 武見敬三

    武見敬三君 そこで次に、その情報の中身の方の話になるわけでありますが、こうした個人の健康情報の中身ということになりますと、いわゆる健診事業によって入手される情報ということが多く出てくるわけであります。  この健診事業に関しましては、実は一般的には余り知られていないわけでありますけれども、欧米諸国の中ではかなりその効果について疑問とする見方というものがふえてきているわけであります。  既にアメリカやカナダなどでは、年に一回すべての患者、これは健康な人も含むわけでありますが、に対して同じ診察や検査を行うことが臨床上最も有効な疾病予防とはならないという評価が定着した、こういうふうに言われているわけであります。これは、米国の保健省で組織しました米国予防医療研究班というところが作成した報告書、これは予防医療実践ガイドラインというものでありますが、この中でその結果がそういう形で取りまとめられて出ているわけです。こういう考え方が実際に出てきている。アメリカの医師会の場合には、一九八三年に、こういう標準的な年一回の健診を廃止するという所信表明まで実際にしているわけであります。  一九七六年には、カナダがこうした定期健診の臨床効果について研究するために政府の専門家会議を設置しておりますし、アメリカでは一九八四年に保健省の副長官が予防医療研究班を今申し上げたような形で設置をして、約四年間にわたって十四回の会合を持ちながら大きな成果を上げました。その場合には、すべての年齢層の人たちに対しまして包括的な予防サービスの勧告を作成することを目的としたわけであります。乳幼児から老人まで六十の疾患を対象とした予防サービスを分析し、評価して、勧告を現実に作成しました。  そこで、こういうふうに欧米諸国の中で健診事業についての基本的な見直しが進んでいる昨今の状況というものを見ながら、では、我が国ではこのような定期健診の臨床効果について一体どの程度の研究調査が行われているのか、この実情について教えていただきたいと思います。
  205. 小林秀資

    政府委員小林秀資君) お答え申し上げます。  この健診事業の効果判定でございますが、これにつきましては、ことしの七月に出されました公衆衛生審議会の中間報告の中で、その中間報告の名前は「今後の生活習慣病対策について」という題名がついておりますが、その中でも、健診事業の効果を検証し、見直す必要性が指摘をされました。  現状はどうかと申しますと、現状は、ほとんどのところでまだ健診の効果判定は行われておりません。ただ、老人保健事業におけるがん検診につきましては、今検診ごとの評価をいたしておりまして、近々それがまとめられるというふうに聞いておるところでございます。  それで、厚生省では、先ほどありましたことしの七月に出されました「今後の生活習慣病対策について」というレポートによりまして、来年度から本格的にこの評価に関する研究を実施していきたい、このように思って、来年度では予算要求で約十億余の概算要求を行っておるところでございます。
  206. 武見敬三

    武見敬三君 今、本当に正直にお話しいただきましたとおりの実態であります。これは、我が国はこの分野に関してはもう全然先進国ではないという実情を示しているのに等しいわけでございまして、ぜひ、この来年度から実行される健康科学総合研究の中の一環として、こうした各省庁で行われている健診事業というものの臨床効果というものを、各省庁が連携をしてきちんとその学問的な調査研究ができるようにしていただきたい、こういうふうに思うわけであります。  さらに、これに加えて調べてみますと、その基礎的なデータさえもがないということがわかってまいりました。「国内総医療支出及びその財源分析に関する研究」というのがことし三月に医療経済研究機構から出されております。その中で、「予防や健康管理も当然に医療支出の一部として捉える考え方があってもよいだろう。しかし、現状ではこれらに対する支出のほとんどは「国民医療費」の範囲外に置かれているばかりか、包括的な統計も存在していない。」と、こういうふうに書かれているわけでありますが、実際にそのとおりなのでありましょうか、教えてください。
  207. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 国民医療費の積算の中には、それは御指摘のとおり入っておりません。  今後の課題として、やはりこういった健康投資というものがどういうふうに行われているのか、そういった面についての研究をしていく必要があると思いますけれども、これまでの我が国の統計の中では、いわゆる疾病にかかる医療費というものを国民医療費という形で集計をしておるものですから、そういった関係については入っていないということでございます。
  208. 武見敬三

    武見敬三君 かくもさように実態の把握さえもがおくれている理由は、やはりこの分野が縦割り行政の中で行われていたということがあったからなんです。  したがいまして、まさに今からでも遅くありませんから、健康投資を通じて中長期的に国民医療費を健全に抑制するという重要な分野の中で、各大臣におかれましては指導力を発揮していただいて、まずこういったところから埋めていき、着実にそういう科学的根拠に基づいた形で、コストの抑えられた効率的な保健事業というものを生涯を通じて我が国民が享受できるような仕組みをぜひつくっていただきたいと思うわけであります。  この分野に関しましては、実は法律さえもきちんと整理されていないわけであります。本来ならば、病気にかかる以前の段階のこうした保健事業を各省庁を含めて全体として把握して整理された基本法が私はあるべきだと思います。そういう基本法がまた同時に存在しないことが、こういう縦割り行政の中での弊害というものが現実にこういう形で顕著に出てきてしまった一つの理由ではないかと思うわけであります。  それだけに、こうした基本法の制定というようなものについて、私は健康投資法なんていい名前だと思うんですね。これは小泉大臣に怒られるかもしれませんけれども、横文字にしますとすごく格好がよくて、ヘルス・インベストメント・アクトというんですよ。こんな法律を実際につくっている国は世界にどこにもありません。もし日本でこういう法律をきちんと体系的につくることができれば、すべての国に率先して最もすぐれたそうした法律を我が国は獲得することができることになります。  これは国民に対しても非常に夢を与えるテーマでもあるだけに、ぜひこうした基本法を考えていただきたいのでありますが、それぞれ所轄する各大臣、どのようにお考えになるでありましょうか。
  209. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 日本人は教育に投資するのに非常に熱心な国民だと言われますけれども、本来一番大事なのは健康ですね。健康に投資しようというのは最近盛んに多くの国民が関心を持ってきたと思います。  健康投資法という法律をつくるかどうかは別にして、健康の基礎づくりの三原則というのは、これは言うまでもなく食生活、運動、休養、これはもう子供の時代から、むしろ母親が子供を持つ前から自分の食生活がいかに生まれてくる子供に大きな影響を与えるかという観点を持つというのは大変重要でありますので、今言った国民全体の健康投資に関する関心を各省庁挙げて協力していくのは大変大事なことだなと私は思います。
  210. 伊吹文明

    国務大臣(伊吹文明君) 今おっしゃいましたように、ヘルス・インベストメント・アクトという言葉は大変格好がいい言葉だと思います。  英国でもサッチャーがやりました構造改革というのは、当時非常に賛否両論あったと思いますが、今皮肉なことに労働党政権のもとで私はその成果が出てきていると思いますし、首相になったブレアはウエルフェア・ツー・ワークという言葉をキャッチフレーズにしておりますね。これは先生がおっしゃったことと相通ずることだと思いますので、小泉厚生大臣がおっしゃったのと私は同じ気持ちでございます。
  211. 町村信孝

    国務大臣(町村信孝君) 確かに、基本法でございますからその基本的な考え方を一つの法律という形にすることは意義があるのかなと、こう思っております。ただ、どういう内容を法律に盛り込むかとかやや具体的に考えていくと、もう少しよく考えてみなきゃいけないのかなと思ったりもいたします。  いずれにしても、冒頭、先生御指摘があったとおり、各省庁がそれぞれの立場でやっておりましたし、またその間の連携も先ほど政府委員から御説明をさせていただいたようにかなり心がけてやっているつもりではございますが、さらにそれを統一する概念として何らかの法律というものも大いに検討に値するのではなかろうか。余り前向きな答弁をするとちょっと事務方が嫌がるようでございますけれども、慎重にかつしっかりと考えさせていただきたいと思っております。
  212. 武見敬三

    武見敬三君 ぜひ、よくよくお考えいただいた上で、こうした新しい基本法につながる流れをつくっていただきたいと思います。本当にそれに成功すると、もう日本はまさに大きな成果を国際社会の中で上げたことになります。  さて、続けてさらに、この健康診断と検査にかかわる話をさせていただきたいわけでありますけれども、このアメリカの予防医療研究班の報告書によりますと、検査その他、予防サービスを提供する上でやはり対象者を厳しく選択する必要が出てきた。必要な検査を適切に選択するために、検査に伴う副作用の危険であるとか費用のむだ遣いを最小限にできるように、年齢とか性別その他、個々の患者の危険因子を注意深く考慮する必要がある。臨床上どの予防方法が最も重要かということを知るためにも、患者の危険因子を全般的に評価することも必要だと。こういう危険因子の評価が必要だということは、これは患者の健康行動に関して十分にその病歴などをも聴取して患者と話し合うということが非常に重要になってきます。これはまた、健康な人も含めて同じように考えることができます。それはもうまさに昔から医療の世界で言われてきた原則そのものであります。こういう考え方が実際にその中で語られているわけであります。  そうすると、今後こういう新しい予防に関する分野を開発していこうという場合に、私はやはりそうした臨床医の果たす役割というものは極めて重要になってくると思うわけであります。そこで、厚生省の場合は健康診断などの予防サービスを提供する際にこうした臨床医の果たすべき役割をどのように認識しておられるのか伺いたいと思います。  ちなみに、労働省の方の労働安全衛生法というのは事業責任で行われる健診事業をしているわけでありますが、その結果につきましては産業医がこれを診断して事業主に報告して、必要な場合には適切な医療機関と連携をとることになっているわけであります。実によくできているんです、この法律の方は。ところが、これが厚生省の方の健康保険法の二十三条に基づく健康診断の方になってみますと、こうした医師の役割というものの規定が全くございません。  私は、今後この分野についての開発を進め、それを法的に整備していくということを考えたならば、この医師の果たす役割というものを適切にやはり法律の中でも規定していく、そういう必要性があるだろうと考えるわけでありますが、この点についての厚生省のお考えをお聞かせください。
  213. 小林秀資

    政府委員小林秀資君) お答えを申し上げます。  まず、健診と医師のかかわりの前段の部分について私からお答えを申し上げたいと存じます。  健診などの予防サービスの実施に当たりましては、対象者の健康状態それから生活習慣等を踏まえ、医師を中心とした各医療関係者の十分な連携協力のもとで、適切な健診項目の設定などが行われることが必要である、このように考えております。また、健康診断の結果等から把握されました対象者の状況に合わせまして、医学的、専門的な立場からの指導をきめ細かに行っていくことが予防サービスの効果を高める上で大変重要である、このように認識をいたしております。
  214. 武見敬三

    武見敬三君 そういう御認識を持っておられるとすれば、健康保険法の二士二条を多少書きかえる必要性があるわけであります。厚生大臣、今担当局長はああいうふうに言っておられるわけでありますけれども、実際に、あの認識に基づいた考え方で健康保険法二十三条を修正する必要があるとお考えになりますか。
  215. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 現在の健康保険法は非常に古い法律でありまして、大正時代にできた法律でありますが、この法律自体は疾病の治療ということに重点が置かれておりまして、いわゆる健診事業とか健康教育とか、こういったものについては保険者のいわゆるヘルスの保健事業という構成になっておるわけであります。  先ほどから武見先生がおっしゃっておりますように、今後の予防なり、あるいは生涯を通じた健康投資等についてのフォローアップ等々の問題というのは、やはりこれは新しい時代に出てきた考え方だと思います。そういった意味で、現在の健康保険法そのものがそういったものを直接反映しているということではないと思います。  そういった中でヘルス事業というのがありますが、これが労働安全衛生法と違いますのは、労働安全衛生法の場合は、産業医というような形で新しい資格制度というようなことを設け、そして全体的に体系づけられておりますが、健康保険法の場合には、幅広く、生まれたときからお年寄りまでの疾病の治療あるいは健康の管理というふうな視点で設けられておるというふうに思うわけであります。そういった意味では、医師についても特別な産業医のような資格ということではなくて、いわゆる通常における医師という形でそういったものを実施していただくということを前提にしているんだと思います。もちろん、これは医師だけではありませんで、保健婦等々における健康の管理というものが含まれておるわけでありますが、そういう法律になっているというふうに思います。  今後、この法体系というものをどういう格好で持っていくべきかというのは、かなり全体的な検討が必要だと思います。  これは先ほど来質疑の中で出ておりますように、そもそも健康診断等のデータというものをどういうふうに生かしていくのか、あるいはまた各制度ごとにおける連携なりというものをどういうふうにやっていくのか、そういったようなものも全般的にやはり検討した上で、そういう総合的な見直しの中で今後検討をしていかなきゃならないというふうに考えております。
  216. 武見敬三

    武見敬三君 ぜひ真剣に御検討いただきたいと思います。  そこで、学校保健の方の話に戻りますけれども、生活習慣病対策というのがこれから非常に重要だという認識が持たれております。小学校や中学校の段階での学校保健の役割というのはこれからますます重要になってくると思います。  特に、家庭教育との連携というのは必須の課題です。両親に対しまして、子供の健康行動であるとか生活様式を学習させるための積極姿勢というのを引き出しまして知識を提供することが、こういう学校保健の枠組みだとしやすいからであります。この場合、学校というと義務教育制度のもとにありますし、教育という目的を明確に持った社会集団でもあります。現実の我が国の地域社会の中においては、まだまだ個人の主体性というものが十分成熟化して育ってきているわけではありません。したがって、そういう地域社会の方から地域保健で入り込もうとしても、実際主体性がないところでは幾らそういうサービスを提供しても効果が上がりません。したがって、それだけに、学校保健のような社会目的を持って子供という家族の中の大事な一員を抱え込んでいるところがこういう大きな役割を健康教育、健康管理等を通じて持つということは、私は二十一世紀において物すごく重要になってくるのだろうと思います。  しかし、こういうことを考えたときに、じゃ現在の学校保健法に基づいて、こういう両親を対象とした健康教育というものを積極的に展開することができるのかどうか。また同時に、こういうことをしようとした場合に、現在の学校医であるとか栄養士であるとか看護婦さんといったような人たちがそうした能力をきちんと確保される形で養成されてきているのであろうか、そういったことも含めてその御所見を伺いたいと思います。
  217. 工藤智規

    政府委員(工藤智規君) お答え申し上げます。  まさに先生おっしゃるとおりに、子供たちの健康づくりのためには、いろんな関係者が連携協力しながらそれに当たる必要があるわけでございますし、特に家庭の役割は大事なわけでございます。  家庭の親御さんたちへの情報あるいは相談体制につきましては、先ほどもお答え申し上げましたように、学校での学校医等の専門家の活用によるいろんな講習会、研修会、情報提供等もあるわけでございますが、そのほかに、いわば地域等に出張っていって、学校主体ではないいろんな情報活動も大事なことでございまして、そのために私ども霞が関レベルでも省庁間の連携で、文部省の会議に厚生省の方からも御参加いただく、あるいは逆も真なりでございます。ほかに、学校現場におきましても学校と保健所とのいろんな事業の連携活動をしているわけでございます。  さらにまた、先般、私どもに置かれております保健体育審議会の答申がございまして、そこの御提言にもまさに先生御指摘のように、学校内外のいろんな専門家の活用によって子供たちの健康づくりのために運動、休養、栄養を含めた総合的な健康づくりの体制整備が必要であるという御提言をいただいてございます。  これまでもある程度やっている部分もあるのでございますが、必ずしも十分でない部分もございまして、来年度、厳しい枠組みの中ではございますが、概算要求による新たな事業の創設も含めまして一層その方面の充実を図ってまいりたいと思っているところでございます。
  218. 武見敬三

    武見敬三君 ちょっと質問の趣旨がきちんと伝わらなかったようでございますが、現在の学校保健法に基づいた考え方の場合、両親だけを学校に呼んでこういう健康教育をすることは学校保健法上きちんと実行できるように解釈されるんですか、その点についてのお答えをよろしく。
  219. 工藤智規

    政府委員(工藤智規君) 今の学校保健法の考え方の中では、学校医等の専門家の御活用のほかに、地域の方々と、地域の方々というのは保護者も含むわけでございますが、保護者でございますとか保健所の専門家でございますとか、地域の方々との連携による、例えば学校保健委員会というような形の組織づくり、現に行われているわけでございますが、そういう学校内外を通じた子供たちのトータルの保健環境の整備ということがうたわれておりまして、その体制はそれぞれの市町村といいましょうか設置者でございますとか各学校にゆだねられている部分もございますけれども、仕組みとしては、しかも現状としてもそういうことになっているわけでございます。  なお、数の上でいかがかということになりますと、例えば専門家では、学校医というのは特別の資格ではございませんで、既に医師免許を有しておられる方々に学校でのいわば嘱託的な形でのお願いをしているとかございますし、あるいは栄養の面でございますと、学校に家庭科の先生がおられるほかに学校栄養士という専門家の方々がおられるわけでございまして、そういう学校内外のいろんな専門家をうまく活用し切っているかどうかは別として、少なくとも活用する方向での事業の充実というのは課題と受けとめているわけでございます。
  220. 武見敬三

    武見敬三君 実は、この問題は単に栄養等々の問題だけではありませんで、心の健康の問題も含まれているわけですよ。現に、教室に行けないで保健室に逃げ込んでくるような子供たちが最近ふえているということは新聞報道でも御存じのとおりです。こういう問題こそ、実はこういう家族教育との連携の中で、学校保健の枠組みの中で対処していくことが重要な課題なんです。  ですから、こういう部分について、ぜひもう少し認識を新たにして積極的に改善をしていただくよう御努力をお願いしたいと思うわけであります。  さて、こういうふうに健診事業というものがいろいろと学術的にその臨床効果を検討しなければならない事実がはっきりわかってきていることとか、我が国の中でこういう行政の効率化を図らなければならないことなどがこういう形でわかってきているときに、思い出すだけでもこれは腹が立つのが東京都総合組合保健施設振興協会というところの行っている健診事業なんですね。  この健診事業というのは、いわゆる総合組合健保から健診を委託されて、そしてそれを受託した上でさらに医療機関に再委託して、そして途中で中間的な医療事務費というのをもらうという形の役割を担っているわけです。それによって、中小の企業に勤めているような総合組合健保の人たちに対してそういう健診事業というものを効果的に提供するんだということになっているという話なんです。ところが、実際にこの東振協というところは非常に高い医療事務料金を徴収していたということもありまして、まさに財政構造改革で我々が本当に必死になってやらなければならない課題があるときに、何と最近、毎年一億一千万ずつその資産をふやして、十三億円以上の資産現実にため込んでいる状態になっているわけであります。  こういうふうな不明朗なことが現実に行われていることを、これは一刻も早く是正しなきゃいけないだろうと私は思いまして、実際にその東振協に行ってまいりました。その担当者とも話してまいりました。そうすると、やっぱり実態はもっとひどかったんです。すなわち、こういう十三億円以上のお金を蓄積する際において、何と理事会で財務計画も採択していない。漫然と、新しい会館をつくったらどうかとか、そういういろいろな目的を考えながら何と一億一千万ずつ金をため込んでいたわけであります。  こんなことを許していたら、これはもう幾らこれから財政構造改革だ何だかんだと我々が言ったって、国民は鼻で笑っちゃうわけですよ。こういうことも含めて、私は徹底的にこういう状況改善しなきゃいけないだろうというふうに考えているわけでありますが、現状でこの東振協の改善状況はどのような段階に入っているのか、御説明いただきたいと思います。
  221. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) たしか予算委員会だったと思いますけれども、先生からこの東振協の実態について御質問を受けました。私も勉強させていただきましたけれども、やはりこれは根本的に業務内容の改善が必要だということで指示をいたしております。  先生からも今お話しのとおり、東振協に直接お出向きになっていろいろと説明をお聞きになったというふうに聞いておりますけれども、私どもとしまして、この東振協におけるこういった内容についてきちんと透明化を図り、そしてまた、これは東京都の総合健保組合の共同事業としてやっておるわけですから、組合員に対してもそういった面についてきちんとした報告なりというものを行うということが必要だと思っております。  現在、そういった意味では、これまで御指摘を受けた点も踏まえまして、今後における東振協の健康管理共同事業のあり方そのものについて検討をしてもらっておりまして、平成十年度から改善すべきものについて大まかにはまとまってきているようでありますけれども、私としてもこの内容について十分報告を受け、さらに改善すべきものは改善させていきたいというふうに思っております。先生御指摘のとおり、まだまだ改善の余地がある、このように考えております。
  222. 武見敬三

    武見敬三君 ここで蓄財されてしまった非常に不透明なお金なんですけれども、十三億円ぐらいあるわけですし、健康科学研究の概算要求で出されている額も十億円ちょっとですね。したがって、そういうことのために、私はこの健診事業というものが本当に臨床効果を持つ、効果的なものにするための学術研究に不明朗にため込んだお金を使っちゃえばいいと思うんですよ。そういうことをしてやはり罪滅ぼしでもしていただかない限り未来に生きてこない、このお金は。ぜひそういうことをお考えいただきたいと思います。  最後に一つお聞きしたいのは、やはり我が国の伝統的な医学としての漢方医学についての考え方なんです。  これは非常にやはり私は重要な国民医療の中での役割を果たしていると思います。実際に、近代の医学史の中でも西洋の医学というものが我が国に導入をされて、一時こうした伝統的な医学というものはわきに押しやられました。しかし、実際にこうした押しやられた中においても、着実に国民生活の中での風俗、習慣や価値観の中で、こういういわば漢方医学であるとかあるいは民俗医学と言われているような柔道整復であるとか、はり、きゅう、マッサージといったようなものは、いずれも国民生活の中に定着をして今日においても重要な役割を担っているわけであります。  こういうような状況を踏まえて、私は二十一世紀の医療改革を考えるときにも、こういう我が国の伝統的な価値観というものを具備した医療というものについてもきちんとこれを継続、発展させていくことが我が国の国の形の本来の方向にも合った新しい医療改革の流れになるだろうと思います。  したがって、こういう点についての御認識をいただきたいわけでありますが、いろいろなところから伝わってくるのは全く逆の方向の話でして、漢方薬を医療保険の扱いから外してしまえなんという暴論も厚生省の中で一部あるやに承っているわけです。私は、やはりそれは表面的な考え方で議論していることだと思って本当に好ましくないと思っているんです。  厚生省に、こういう漢方薬を引き続き今後も継続して医療保険にて扱うという重要性を認識しているのかどうか、ぜひお伺いしたいと思います。
  223. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) この問題は、漢方薬の保険適用ということで今お話ございましたけれども、これはむしろいわゆる一般用医薬品の類似医薬品ということで薬局等で通常一般用の医薬品として売られているものと、それから保険給付としていわゆる医療用医薬品として給付されているものとの給付における負担の公平なりバランスというような観点から、実はこれまでも審議会等の中でも議論がなされておりますし、また現在の与党三党における医療保険改革協議会の中でも検討課題というふうになっておるわけであります。  そういった中で、一つ漢方薬というものは一体どうなんだろうかという議論があることは事実であります。これはあくまでも、漢方薬の重要性といったものについて否定をしている、あるいはそれについての認識が不十分であるということではありませんで、医療保険内における給付の公平なりというような視点からの議論というふうに考えております。  ただ、私どもとしまして、これを一般用医薬品の類似医薬品ということで保険から除外するということを決めておるわけではございませんし、また、そういう方向を前提として今議論をしているわけではございませんで、全体の中における医療用医薬品と一般用医薬品とのバランスという観点での御議論がなされているということでございます。
  224. 武見敬三

    武見敬三君 この二十一世紀の我が国の国民医療の中でも、こうした伝統的な医学というものがきちんと発展していく余地をぜひ残しておいていただきたいと思います。  そうしたことは、もう現状においてはこうした漢方について、診療部門を持つ研究所を持っているような大学が二つもありますし、それから漢方の外来だとか東洋医学外来の診療をしているような大学も三十一大学に上っているわけでありまして、ぜひこうした現実を踏まえた形で適切に評価をしていただきたいと考えるものであります。  大変長時間にわたり御質問をさせていただきましたが、健康投資という考え方というものを現実に我が国の医療を促進していく上でぜひ留意していただきたいということを切にお願いを申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)
  225. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 明日は午前十時に第四十三委員会室において開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時散会      —————・—————