○前原誠司君 私は、民主党を代表して、ただいま
報告のございました
日米防衛協力の
指針最終報告について
総理に質問いたします。
この
指針の
前提として、「
指針及びその下で行われる取組みは、いずれの
政府にも、立法上、予算上又は行政上の
措置をとることを
義務づけるものではない。」と書かれています。したがって、
政府は、この
指針を
国会承認事項ではないと繰り返し答えてきました。
しかし一方で、「
日米協力のための効果的な態勢の構築が
指針及びその下で行われる取組みの目標であることから、
日米両国政府が、各々の
判断に従い、このような
努力の結果を各々の具体的な
政策や
措置に適切な形で反映することが期待される。」とも書かれています。この
指針は時間と労力をかけてまとめられたものでしょうから、
日米のどちらかが、
義務ではないのだからと言ってその具体化を怠れば、二国間の
関係がおかしくなってしまいます。
したがって、この
指針については、単に
政府間の
合意で済ませるのではなく、本来は
政府間協定などの
国会承認事項にすべきであります。
総理、いかがでありましょうか。
また、
指針に基づいてこれから整備する関連
法案についても、現在
検討中ということで全体像がいまだに示されていませんが、本来ならば
指針とあわせて示されてしかるべきではないでしょうか。なぜなら、今はおぼろげな全体像しか見えず、それを実効あらしめる法律案などがはっきり示されておりません。あわせて
総理の見解を
お尋ねいたします。
また、これに関して、いわゆる大平三原則についても見直すべきだという立場から質問をいたします。
大平三原則は、
国会に提出してその承認を求めるべき条約の
範囲についての統一見解を示したものです。
内容は、「法律事項を含む
国際約束」、「財政事項を含む
国際約束」、さらに「わが国と
相手国との間あるいは国家間一般の
基本的な
関係を法的に規定するという意味において政治的に重要な
国際約束であって、それゆえに、発効のために批准が要件とされているもの」の三つですが、法律事項や財政事項を含む
国際約束はよいとしても、三番目は問題であります。
本来なら、「わが国と
相手国との間あるいは国家間一般の
基本的な
関係を法的に規定するという意味において政治的に重要な
国際約束」でとどめておくべきであります。つまり、「発効のために批准が要件とされているもの」の条件を入れることによって、批准が要件になければ、政治的に重要な
国際約束であっても
国会の承認を受けなくてもよいということになってしまいます。これは、
日本の進路にとって重要な決定が
国会の承認を経ずに行われる逃げ道になっております。したがって、大平三原則の第三カテゴリーからは、「発効のために批准が要件とされているもの」という
基準は削除すべきだと考えますが、
総理の答弁を求めます。
次に、この
指針には、
平素からの
協力と
日本に対する
武力攻撃に際しての対処
行動とあわせて
周辺事態の
協力が盛り込まれていますが、安保条約のどの条項を読んでも
周辺事態に
協力する根拠を探し出すことができません。
例えば、安保条約第五条は共同対処を規定していますが、これはあくまでも
日本有事のみを想定したものであり、第六条にも、
日本国の安全と
極東における平和と安全の
維持に寄与するため、アメリカは
日本の施設・区域の使用ができると書かれているだけで、
周辺事態の
協力については一切規定されていません。つまり、
日本有事以外には、アメリカの軍事
行動に対し
日本が
協力することに根拠を与える条項は安保条約にはないのであります。したがって、
周辺事態で
協力しようとすれば、現行安保条約を改定して新たにその条項を盛り込むのが当然の筋であります。
総理は今まで、
周辺事態に際し、自衛隊が
日本領域外で、
憲法の制約の
範囲内で、適用のある国内法令に従って
活動を行うことは
我が国の主体的な
判断によるものであって、安保条約の改定は必要ないと
発言されていますが、それでは安保条約の
拡大解釈を安易に認めることになります。
周辺事態での
協力を行うならば、やはり堂々とそれを裏づける条約の具体的な条文を追加すべきだと考えますが、なぜ安保条約の改定を行わないのか、明確な答弁を求めます。
仮に、
周辺有事で自衛隊が
米軍に
協力する場合、自衛隊法における根拠規定が必要になります。現在、自衛隊法第七十六条において、
日本有事の際の
防衛出動について規定されていますが、この条文には括弧書きで「外部からの
武力攻撃のおそれのある場合を含む。」と書かれています。
周辺事態はこれに類すると読むこともできますが、私は、
日本有事の
防衛出動とは違う新たな条文をつくって対処すべきだと考えますが、いかがでしょうか。
また、現行の条文で読もうが、新たな条文をつくろうが、
周辺事態に際して自衛隊の出動を行うということは大変重い決定であり、その場合は、自衛隊法第七十六条の
防衛出動の条文にも書かれているような
国会の承認、緊急の場合は事後承認を大
前提とすべきだと考えますが、
総理の見解を
お尋ねします。
今回の
指針見直しては、総じてアメリカから求められた
項目について
日本が
協力しているという感が否めません。
日本は戦略を持ってこの
指針取りまとめに臨んだのでしょうか。アメリカとのやりとりの中で、どのような点を
日本から積極的に要望して
協力項目として取り入れるに至ったのか、あれば
お答えください。
中間
報告と
最終報告を見比べて、
日本の立場が少しでも鮮明になったとすれば、それは、非戦闘員を退避させるための
活動と、その他の脅威への
対応としての弾道ミサイル攻撃への
対応ですが、この
最終報告によって、在外邦人の救出については、もしもの場合が起きたときに、
米国人以外で
日本人は高い優先度で
協力してくれるという承諾をアメリカから具体的に得ているのかどうか、また、
日本がミサイル攻撃を受けた場合、この
指針によってアメリカは確実にその
相手国に対して報復をしてくれると考えてよいのかどうか、
総理に
お尋ねいたします。
次に、集団的自衛権の解釈について質問いたします。
この
指針では、
日本のすべての
行為は、
日本の
憲法上の制約の
範囲内において行われるとされています。しかし、公海上の機雷除去や海上
輸送あるいは情報交換など、明確に、また定性的に集団的自衛権の行使には当たらないと言えない
活動も含まれております。
武力行使との
一体化につながっていなければ行えるという見解でしょうが、
状況は刻一刻と変化し、当初は
一体化につながっていなくても、時間の経過とともに
武力行使と
一体化してしまう場合が十分にあり得ます。そうであれば、初めから、行う
活動を
日本の領域内に限定して、確実にやれるものはやるという方がより実際的ではないかと考えますが、いかがでありましょうか。
現在、集団的自衛権に関する
政府の解釈は、集団的自衛権は、
国際法上、主権国家である以上
日本が当然有しているけれども、その行使は
憲法第九条に照らし合わせてみて許されないとなっております。つまり、
憲法第九条のもとにおいて許される自衛権の行使は、
我が国を
防衛するため必要最小限度の
範囲にとどまるべきものであると解釈されており、集団的自衛権を行使することは、その
範囲を超えるものであって、
憲法上許されないという考えであります。
では、その
範囲を超えない集団的自衛権の行使は全くあり得ないのでしょうか。逆に、
武力行使と
一体化していなくても集団的自衛権に当たると考えられるものはないのでしょうか。あわせて
お尋ねいたします。
私は、以前から、
政府の集団的自衛権の解釈そのものがおかしいと感じてまいりました。私の感覚からすれば集団的自衛権の行使に当たることも当たらないとし、ただ
武力行使との
一体化という一点のみに物差しを当てているのが今の
政府の見解であります。
例えば、
日米安保条約を締結していること自体、そもそも集団的自衛権の行使に当たるのではないでしょうか。アメリカと敵対する国が出てきた場合、その国は
日本を全く中立だと考えることは絶対にあり得ません。なぜなら、
日本はアメリカに基地を提供しています。軍事
行動において、どこに基地があるかは大変重要なポイントです。特に
日本周辺で
米軍が軍事
行動を行う場合、
日本に基地を持つということは作戦上極めて有利であります。
このような観点から考えても、アメリカの敵対国からすれば、
日本がアメリカと安保条約を結び、基地を提供していること自体、アメリカの軍事
行動に
日本が同調している、つまり、具体的な
行動を起こしていなくても、集団的自衛権を隠然と行使をしているとみなされるのが当然でありましょう。
さらにもう
一つ例を挙げれば、湾岸戦争のとき、
日本は多国籍軍に対し多額の資金を使途を限定して提供しました。湾岸平和基金に対する資金拠出については、集団的自衛権を含めおよそ自衛権とは国家による実力の行使にかかわる
概念であるので、
我が国が単に費用を支出するということは実力の行使に当たらず、したがって、資金供出は集団的自衛権の行使には当たらないとの見解が示されました。
つまり、自分は単にお金を出しただけで、実力の行使はみずから行っていないから集団的自衛権の行使には当たらないというものでありますが、この論理自体、例えば、気に入らない人間がいて、自分自身は手を汚さず、別の人に金を渡して自分のかわりに殴ってもらっても、自分は直接手を下していないのだから自分には
関係ないと言っているようなものにすぎません。
このように、
日本の集団的自衛権の解釈がそもそもおかしく、この際、根本的に見直すべきだと考えますが、
総理の見解を
お尋ねします。
さて、この
指針に
実効性を持たせるためには、さまざまな法律の整備が必要になります。多岐にわたる
法整備では
防衛庁の所管外のものも多く、他省庁との
調整が今まさに行われています。他省庁との
調整も難しいものはあるでしょうが、それ以上に難しいのが地方自治体や民間との
調整です。空港や港湾は地方自治体が管理しているものも多く、地方自治、地方主権の観点から、自治体の意向は当然尊重されなければなりません。
しかし、それで本当に
実効性が
確保されるのでしょうか。例えば、普天間飛行場を名護市のキャンプ・シュワブ沖に移転することが
検討されていますが、
日米で大枠を決めても、そして
政府が実行に移そうとしても、地元がノーと言えば話は進みません。民間についても同じことが言えます。物資の
輸送一つとっても、業者の
協力が得られなければ、
協力体制は絵にかいたもちにすぎません。
指針に書かれた
協力を実効あるものにするために、このような難題にどのように対処していくおつもりか、
総理の考えをお聞かせください。
最後に、今後の
日米防衛協力の将来像について質問いたします。
この
指針で顕著なのは、
日米間の緊密な情報交換や
政策協議です。特に、
調整メカニズムを確立して、作戦、情報
活動、後方
支援について共同
調整所の活用を含めて行っていくことになっています。しかし、
日米の情報量の差は歴然としており、それゆえ、物事の決定が常にアメリカ主導になるのではないかという危惧もあります。気がついてみれば総合力の差で抜き差しならぬ
事態になり、
日本の国益に反する
防衛協力を行わざるを得ないことになりはしないのでしょうか。ぜひこの懸念を、
総理から説得力を持って払拭していただきたいと思います。
また、
防衛協力の強化は両刃の剣であることをはっきり
認識すべきであります。
協力の度合いが高まると、
日本の
安全保障の能力は高まりますが、それだけアメリカに依存するということにもなります。
日米関係が
日本外交の基軸であることに全く異存はありませんが、遠い将来を考えた場合、未来永劫、
日米関係が変わらず良好だという保証はどこにもありません。したがって、ある程度の
防衛協力は進めながらも、
基本は、自分の国は自分で守るという基盤をいかに
確保するかが極めて重要であります。
そこで、
日米間の
防衛協力、例えば訓練、作戦
行動、軍事技術の共同研究、
武器の共回生産などはどの程度まで進めるおつもりなのか、裏返せば、
日本独自の
防衛力の基盤をどの程度
確保していくつもりなのか、このことを最後に
総理にお聞きして、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣橋本龍太郎君
登壇〕