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1997-12-02 第141回国会 衆議院 本会議 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十二月二日(火曜日)     —————————————  議事日程 第九号   平成九年十二月二日     午後一時開議  第一 精神保健福祉士法案(第百四十回国会、     内閣提出)  第二 言語聴覚士法案内閣提出)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  日程第一 精神保健福祉士法案(第百四十回国   会、内閣提出)  日程第二 言語聴覚士法案内閣提出)  小渕外務大臣の新たな「日米防衛協力のための   指針」の策定に関する報告及び質疑     午後一時四分開議
  2. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  日程第一 精神保健福祉士法案(第百四十回国会内閣提出)  日程第二 言語聴覚士法案内閣提出
  3. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 日程第一、精神保健福祉士法案日程第二、言語聴覚士法案、右両案を一括して議題といたします。  委員長報告を求めます。厚生委員長金子一義君。     —————————————  精神保健福祉士法案及び同報告書  言語聴覚士法案及び同報告書     〔本号末尾に掲載〕     —————————————     〔金子一義登壇
  4. 金子一義

    金子一義君 ただいま議題となりました二法案について、厚生委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。  まず、精神保健福祉士法案について申し上げます。  本案は、精神障害者社会復帰を促進するための相談及び援助業務に従事する者の資質の向上及びその業務適正化を図るため、精神保健福祉士資格を定めることを目的とするものであります。  本案は、第百四十回国会に提出され、継続審議となっておりましたが、十一月二十八日の委員会において質疑を終了し、採決の結果、多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。  次に、言語聴覚士法案について申し上げます。  本案は、リハビリテーション医療分野において言語機能及び聴覚障害を持つ者に対して訓練等を行う専門技術者の果たす役割重要性にかんがみ、その業務適正化を図るため、言語聴覚士資格を定めることを目的とするものであります。  本案は、十一月七日付託となり、同月十四日に小泉厚生大臣から提案理由説明を聴取し、二十八日の委員会において質疑を終了し、言語聴覚士資格欠格事由検討に関する修正を加え、採決の結果、全会一致をもって修正議決すべきものとされた次第であります。  なお、両案に対し、それぞれ附帯決議を付することを決しました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  5. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) これより採決に入ります。  まず、日程第一につき採決いたします。  本案委員長報告は可決であります。本案委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  6. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。  次に、日程第二につき採決いたします。  本案委員長報告修正であります。本案委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告のとおり修正議決いたしました。      ————◇—————  国務大臣発言(新たな「日米防衛協力のため   の指針」の策定に関する報告
  8. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 外務大臣から、新たな「日米防衛協力のための指針」の策定に関する報告について発言を求められております。これを許します。外務大臣小渕恵三君。     〔国務大臣小渕恵三登壇
  9. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 本年九月二十三日の日米安全保障協議委員会におきまして了承されました新たな日米防衛協力のための指針につきましては、既に国会におきましても御議論いただいておりますが、ここで改めて基本的な考え方について御報告申し上げます。  新たな指針におきましては、日米間における「平素から行う協力」、「日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等」及び周辺事態における協力、すなわち、「日本周辺地域における事態日本の平和と安全に重要な影響を与える場合の協力」のあり方が示されております。  「平素から行う協力」におきましては、日米両国政府が、おのおの政策を基礎としつつ、日本防衛及びより安定した国際的な安全保障環境の構築のため、平素から密接な協力維持することの重要性とそのための協力あり方についてまとめられております。  「日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等」に関しては、まず、これが引き続き日米防衛協力中核的要素であることが確認されており、日本に対する武力攻撃が差し迫っている場合には、日米両国政府は、事態拡大を抑制するための措置をとるとともに、日本防衛のために必要な準備を行うことといたしております。  日本に対する武力攻撃がなされた場合には、基本的な考え方として、日本は、これに即応して主体的に行動し、極力早期にこれを排除し、その際米国は、日本に対して適切に協力することといたしております。また、自衛隊及び米軍おのおの効果的な統合運用を行うこと等について言及しております。作戦構想については、統合運用重要性を踏まえ各種作戦機能別に整理しており、新たな様相の脅威等への対応についても記述しております。  次に、周辺事態における協力については、まず、日米両国政府が、周辺事態発生防止のため、外交上のものを含めあらゆる努力を行うこと、日米両国政府事態状況について共通認識に到達した場合に、おのおのの行う活動を効果的に調整すること、とられる措置情勢に応じて異なり得ること等を明記しております。周辺事態への対応については、日米両国政府が、おのおの判断に従って適切な措置をとり、適切な取り決めに従い、必要に応じて相互支援を行うことを明らかにいたしております。  これらの考え方を踏まえつつ、新たな指針は、周辺事態における協力を「日米両国政府が各々主体的に行り活動における協力」、「米軍活動に対する日本支援」及び「運用面における日米協力」に分類しております。さらに、これらの協力を行う可能性のある項目の例が四十項目にわたり別表に掲げられております。  以上のような内容の新たな指針におきましては、新たな指針及びそのもとでの取り組みが従うべき基本的な前提及び考え方として、日米安保条約及びその関連取り決めに基づく権利及び義務は変更されないこと、日本のすべての行為日本憲法上の制約の範囲内において行われるものであること、日米両国のすべての行為国際法基本原則及び国連憲章等に合致するものであること等がうたわれていることを改めて明確にしておきたいと思います。  新たな指針についての透明性確保することは、国内のみならず諸外国においても、日米安保体制重要性に対する理解を深める上で重要であります。今後とも、中国、韓国を初め関心を有する諸国に対しては、必要に応じ説明を行っていきたいと考えております。  日米間におきましては、新たな指針のもとでの日米間の共同作業を直ちに開始することで意見が一致しており、共同作戦計画及び相互協力計画についての検討等を進めてまいります。また、政府としては、新たな指針実効性確保することが我が国の平和と安全を確保するための態勢の充実を図る上で重要であるとの観点から、九月二十九日の閣議決定趣旨を踏まえ、関係省庁局長等会議場等を通じ、法的側面を含め、政府全体として具体的な施策について検討していくこととなります。  私は、新たな指針が、日米間の防衛協力をより一層効果的なものとし、日米安保体制信頼性をさらに向上させるものであると確信いたしております。  国民皆様並びに議員各位の御支持と御協力を心からお願い申し上げます。(拍手)      ————◇—————  国務大臣発言(新たな「日米防衛協力のための指針」の策定に関する報告)に対する賃疑
  10. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。荒井広幸君。     〔荒井広幸登壇
  11. 荒井広幸

    荒井広幸君 自由民主党荒井広幸でございます。  現在、橋本龍太郎総理大臣の強いリーダーシップのもと、行政改革について、自由民主党では連日、将来の日本国民の立場から激しい議論が交わされており、自民、社民、さきがけ三党との調整を図りつつ、この国の形をつくる行政改革を断行しておりますが、この国の形、国の基本とは何かと問われれば、まず、防衛外交、治安、そして食糧の確保と迷わず答えます。  そこで、私は、日米防衛協力のための指針、新ガイドラインについて、自由民主党を代表して質問いたします。  去る九月二十三日、ニューヨークにおいて、日米安全保障協議委員会が開催されました。ここにおいて新ガイドライン最終報告が了承されたことは、我が国安全保障はもとより、アジア太平洋地域の平和と安定にとって画期的なことであります。  我が党は、この発表に当たって、次のような幹事長談話を発表しております。  日米両国政府が約一年以上にわたり集中的かつ真剣に取り組んだ成果として評価できるものとなっている。内容的には、憲法の枠内ですべてが行われるものであり、今回のガイドラインには、単に日米防衛協力にとどまらず、安保対話推進国際協力活動における協力など幅広い分野対象とするものとなっており、また、事態拡大防止などの措置が重視されている点などは、冷戦後の日米防衛協力の適切なあり方としても評価できるという趣旨のものであります。  かくして、今、国会でオープンな議論ができるということは大変喜ばしいことでございます。それは、新ガイドライン日本にとって、また我々国民にとっていかに大切で有益であるかということを一層明確に確認し合えるからでございます。  私は、安全保障を考える上で最も重要な手がかりは、国際軍事情勢をどう分析するか、どう把握するかということにあると考えております。  冷戦後の世界について、国際情勢は平和で安定していると見るのか、あるいは、新ガイドライン認識にあるように、「冷戦終結にもかかわらず、アジア太平洋地域には潜在的な不安定性と不確実性が依然として存在しており、この地域における平和と安定の維持は、日本の安全のために一層重要になっている。」と見るかによって大きくその対応は異なってまいります。  私は、現在から二十一世紀の日本周辺軍事情勢を分析すれば、多くの国民各位と同じく、アジア太平洋地域においては依然として不安定、不確実な要素が存在しているととらえております。だからこそ、今新ガイドライン策定の必要があったわけでございます。  昭和五十三年、一九七八年に作成されたさきの前ガイドラインは、冷戦時代でもあり、日本に対する武力攻撃がなされるおそれのある場合と日本に対する武力攻撃がなされた場合、すなわち日本有事中心検討がなされておりました。このため、日本以外の極東における事態日本の安全に重要な影響を与える場合の日米間の協力、この点についての検討はされなかったわけでございます。  ところが、冷戦後の安全保障政策を考えれば、日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等はもとより、今後は、日本周辺地域における事態日本の平和と安定に重要な影響を与える場合、すなわち周辺事態への対応が重要になってきているわけでございます。  ここで明らかにしておくべきことは、この周辺事態ということでございます。周辺事態概念は、地理的なものではなく、事態性質に着目したものであります。当然のこと、日米両国政府は、そうした周辺事態が発生することのないよう、外交上のものを含む最大限の努力を払わなければなりません。そのためにも、周辺事態における協力対象となる機能分野協力項目例、いわゆる四十項目については、日米両国政府間はもとより、日本政府部内で早急に具体的な詰めを作業として行う必要があります。  加えて、日米両国政府は、計画についての検討を行うとともに、準備のための共通基準実施要領等を確立するため、包括的なメカニズムを構築するとともに、緊急事態においてそれぞれの活動調整するための日米間の調整メカニズム、これを日ごろから構築しておかなければなりません。  今回の新ガイドラインやそのもとで行われる取り組みは、その結果を、日米両国政府がそれぞれの判断に従い、それぞれの具体的な政策措置に適切な形で反映することが期待されるとなっております。政府としては、今後何としても実効性確保するために、ひとり外務省防衛庁というのではなく、総理リーダーシップを発揮して政府全体として取り組み法的側面を含めて具体的な施策について検討の上、必要な措置を早急に講ずる必要があると考えております。  自由民主党では、安保調査会がこれらの点について、既に「ガイドラインの見直しと新たな法整備に向けて」という提言を発表し、検討すべき法制の具体例などを列挙しております。また、新ガイドラインと同様に見落としてはならない重要なことは、昨年五月に橋本総理総理指示として政府検討を命じた、在外邦人等保護大量避難民対策などの緊急事態対応策であったことを評価いたしております。  総理、そこでお尋ねをいたします。  一つは、新ガイドライン実効性確保するための法整備検討についてどうお考えになっておられるか、もう一つは、緊急事態対応策検討はどのような状況になっているのか、この二つについてお聞かせいただきたく存じます。  さて、皆様、新ガイドライン特定の国を対象としたものではなく、冷戦後の日本の安全の確保にとって必要不可欠であり、アジア太平洋地域の平和と安定を維持するために必要なものでございます。こうした点については、東南アジアなど周辺諸国から高く評価される反面、近隣諸国の一部からは反発の声も上がっております。私は、こうした声に謙虚に耳を傾け、その声に誠意を持って正確に答えていき、少しでも誤解をなくす真摯な努力がこれからの日本安全保障政策を確かなものとする極めて重要な姿勢であると考えております。  総理は、先般もカナダでAPECに参加され、各国首脳と精力的に首脳会談を行うなど、こうした点に配慮した積極的な役割を果たされておられますが、改めて最近の近隣諸国反応とそれへの対応についての総理姿勢心がけをお聞かせいただきたいと存じております。  私は、戦後のタブーの一つであった安全保障問題が、冷戦終結を受け、また、我が党が社会民主党、新党さきがけ連立政権を組むことで、新防衛大綱日米安保共同宣言、そして新ガイドライン、さらにはアジア地域における安全保障対話推進など、国民的に議論を起こしつつ確実に前進してきていることを高く評価するものであります。  戦後五十年を経て、我が国が大きな岐路に立っていることは国民共通認識でございます。国際化情報化、少子・高齢化などの変化に対応して、橋本政権は一歩ずつ、しかし着実に六つの改革を断行しております。これらは、将来の日本を考えれば何としてもなし遂げなければならない重要課題であります。そして、これらのすべての基本に国の安全確保があり、それが安全保障防衛政策であることは言うに及びません。  私は、橋本政権の行革の最重要課題国家国民安全確保対策であって、そのための官邸機能総理権限強化策が必要であり、さらに考慮されるべきことは防衛省の設置であると総理に申し上げまして、今後さらに、国会審議を通じ国民理解を求め、総理の強い決意とリーダーシップによって新ガイドライン実効性確保されることを確信し、代表質問といたします。(拍手)     〔内閣総理大臣橋本龍太郎登壇
  12. 橋本龍太郎

    内閣総理大臣橋本龍太郎君) 荒井委員お答えを申し上げます。  三点のお尋ねがございました。  まず、新たな指針実効性確保のための法整備検討についてのお尋ねがございました。  新指針実効性確保に関しましては、九月二十九日の閣議決定趣旨を踏まえまして、現在、法的側面を含め、政府全体として具体的な施策についての検討を行っている最中であります。可能な限り速やかにその検討作業を取り進め、所要の措置を講じることが重要だと考えております。  次に、緊急事態対応策検討状況についてお話がございました。  昨年五月、在留邦人保護あるいは大量避難民対策等、私の指示以来、各検討項目につきまして、内閣安全保障室中心関係省庁において鋭意検討を行っております。この検討は極めて広範多岐にわたる内容を含んでおりまして、十分に検討を尽くすことが必要だと考えており、危機への対応という事柄の性格上、今後とも精力的にその検討を進めてまいります。  また、新たな指針に対する近隣諸国反応、そしてこれに対する姿勢心がけというお尋ねがございました。  各国反応はさまざまなものがございます。そして、新たな指針について内外に対して透明性確保することが重要と考え、これまでも随時各国に対して説明を行ってまいりました。その結果、新たな指針地域の平和と安定に資するものとしてアジア諸国からおおむね理解を得たと考えておりますが、なお懸念を示す向きもないわけではありません。今後とも、関心を有する諸国に対し、必要に応じ説明を行うとともに、人的な交流等の中からその疑念を払拭していくための努力を継続してまいりたい、そのように考えております。(拍手)     —————————————
  13. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 平田米男君。     〔平田米男登壇
  14. 平田米男

    平田米男君 私は、新進党を代表いたしまして、ただいま政府より報告のありました日米防衛協力の新たな指針、いわゆる新ガイドラインについて、政府の見解を求めるものであります。  冷戦終結後、アジアではソ連脅威はなくなったものの、朝鮮半島の緊張や南沙諸島などの領有権問題が表面化するなど、軍事情勢はむしろ多様化、複雑化しつつあります。その中で、日米安保体制は、日本及びアジア太平洋の平和と安定に大きな役割を果たしております。同時に、日本周辺の平和の維持は、日本の平和と安全にとって極めて重要であります。今後生起する可能性のある事態対応し、これを未然に防止するとともに、有事における日米防衛協力実効性を一層高めるため、ガイドラインを見直すこと自体は大きな意義があると考えるものであります。この認識を踏まえた上で、以下、今回の新ガイドラインのさまざまな問題点について、政府の明確な所見を求めるものであります。  まず第一に、この新ガイドライン性格及び日米安保条約上の根拠について伺います。  言うまでもなく、日米安保条約は、第五条の日本有事における日米共同対処と、第六条の日本防衛極東における国際の平和と安全のための基地提供義務とを大きな柱といたしております。この新ガイドラインで言う日本周辺事態における防衛協力とは、日米安保条約の何条に基づく協力なのか、あるいは日米安保条約とは別の、例えば米国との相互防衛援助協定などによるものなのか、明確にお答えをいただきたいのであります。  我々は、このガイドラインがこれまでの日米安保条約義務を踏み越え、新たな防衛協力日米両国首脳約束をした文書と考えるものであります。政府は、日米の2プラス2で合意されたこの文書をどう外交上位置づけているのか、二国間の国際約束ではなく、守る必要もない単なる宣伝文書と考えているのか、橋本総理所見を伺いたいと思います。  第二に、いわゆる周辺事態について伺います。  昭和五十三年の旧ガイドラインでは、日本以外の極東における事態日本の安全に重要な影響を与える場合の日米協力表現をされておりました。ところが、なぜ今回は「極東における事態」という表現を「日本周辺地域における事態」と変えたのか、その真意を明らかにしていただきたい。極東周辺ではどう違うのでしょうか。極東範囲を超えるということなのか、その政治的意図は何なのか、明確に国民に明らかにしていただきたいのであります。  また、ガイドラインでは「周辺事態概念は、地理的なものではなく、事態性質に着目したものである。」といたしております。しかし、日本周辺地域での有事がどうして地理的なものではないのか、全く私たち国民には理解できません。仮に地理的な言葉でないとすれば、日本の国益によって周辺範囲がどんどん変わるということなのか、つまり地理的制限はないということなのでありましょうか。周辺という言葉は、明らかに地理的用語であることは自明であります。なぜ、極東という言葉を避けて、わざわざ対象地域範囲をごまかそうとしているのか、納得のいく説明をいただきたいのであります。  そもそも周辺事態とは具体的にはどのような状況を指すのか。例えば、過去の北朝鮮の潜水艦韓国海岸への座礁事件、昨年三月の台湾海峡での大規模軍事訓練米国空母派遣なども周辺事態の範疇に入るのでありましょうか。日本の安全に重要な影響があるかどうかというだけでは、まさに不明確であります。事前に何らかの基準の作成が当然必要であると考えますが、その意思はあるのかどうか、具体的にお答えをいただきたいのであります。  第三に、今回のガイドライン合意に当たっての政府憲法解釈について伺います。  従来の政府憲法解釈では、後方支援等行動でも、米軍武力行使一体となると認められるおそれのある行動はすべて憲法上問題があると判断され、抑制的に取り扱われてまいりました。しかし、今回の合意では、従来なら武力行使一体になると見られた行動も含まれております。  例えば、新ガイドラインでは、武器弾薬補給についてはできないが、輸送はできることになっております。輸送補給性格にどれだけの憲法上の違いがあるのか、なぜ補給はだめで輸送が許されるのか、納得のいく説明をいただきたいのであります。  湾岸危機の際は、政府内での議論の結果、武器弾薬輸送は行わないとの方針を決定したわけでありますが、なぜ今回のガイドラインではできることになったのか、憲法解釈が変わったのか、あるいは政府方針が変わったのか、また、なぜ変えたのか、総理所見を明らかにしていただきたい。  また、新ガイドラインは、特定有事に向けたものではなく、日本の平和と安全に重要な影響を与える周辺事態と、一般的表現となっています。しかし、現実は、朝鮮半島有事前提ガイドライン検討されているにもかかわらず、朝鮮半島等における国連平和活動との関係性についてはほとんど触れられておりません。なぜ在韓国連軍在日国連軍との関係を含めた総合的検討がなされなかったのかも説明をいただきたいのであります。  さらに、周辺有事における船舶の検査、いわゆる臨検への協力も含まれていますが、具体的にどのような協力を意味するのか、明らかにしていただきたい。  そもそも臨検は、強制的に相手の船を停止させ、積み荷を調べ、従わなければ武器による威嚇など強硬手段をとり、進路変更指示や拿捕を行う場合もあり得ます。このような行為は、武力行使武力による威嚇そのものとされてきたものであります。  相手の船が従わない場合の武器使用威嚇はできるのか、明確にお答えをいただきたい。また、強制力を伴わない協力であっても、武力行使一体となるおそれはないのか、憲法上どういう理由から許されると考えるのか、この点も明らかにしていただきたい。  また、なぜ臨検に関してのみ国連との関係が出てくるのか不思議でなりません。国連武力制裁決議武力行使容認決議が出されて米軍が参加する場合の米軍への協力についてなぜ触れないのか、説明を願いたいのであります。  政府は、戦闘地域と一線を画される地域という抽象的かつ非現実的な判断基準で区別したり、実際の協力行為趣旨目的ではなく、武力行使一体かどうかといった短絡的、近視眼的な基準などであって現実の周辺事態対応できる基準とは到底考えられない基準を立てているわけであります。  なぜ国連の平和回復活動への参加が憲法違反なのか。憲法前文の、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、我らの生存を保持しようとしたとあるように、一方で国際社会の正義に国の安全を期待しながら、他方でこれに協力をすれば憲法違反というのでは、全く論理矛盾であります。  新進党は、安全保障の三原則を定め、国連平和活動へ積極参加することを主張いたしております。  政府の硬直した憲法解釈で、冷戦後の国際情勢に本当に対応できると考えているのか、政府の見解を伺うものであります。  第四に、今後の法整備基本方針について伺います。  与党三党間でのガイドライン協議はついに合意を見ないまま、本年九月、日米政府間で新ガイドラインとして合意されました。これまでの与党協議の経緯を考えると、今後の法整備は難航をきわめることは明らかであります。橋本総理は、安全保障のため、何としても新ガイドラインに基づく法整備をやり抜く決意があるのでしょうか。新ガイドライン政府に立法上の措置義務づけていないと一応はなっています。与党三党の政権の枠組みを優先し、法制化作業の後退、先送りもあるということなのか、橋本内閣の今後の法整備に当たっての基本姿勢を明らかにしていただきたい。  また、従来から、研究段階にとどまり、法制化措置を怠ってきた日本有事の法制と周辺有事協力のための法整備とをこの際同時に行うのか、法整備の時期としては次期通常国会での成立を考えているのか、あわせてお答えをいただきたい。  新進党は、新ガイドラインにもある「非戦闘員を退避させるための活動」すなわち在外邦人の救出について、今国会に自衛隊法百条の八の改正法案を提出することを現在検討しております。  政府は、去る七月、カンボジアの国内情勢の悪化に伴い、タイのウタパオに、自衛隊法百条の八の準備行為という、全く法律の根拠がない自衛隊の海外派遣を強行いたしました。結果は、時期おくれの無意味な派遣に終わりましたが、こうした法律にない派遣が許されるなら、シビリアンコントロールは有名無実となるおそれがあります。しかも、現行法では、危険なところには派遣をしない、輸送手段は航空機だけ、しかも政府専用機を優先させるなど、およそ在外邦人の立場に立った法律とはなっておりません。  したがって、我々は、自衛隊法を改正し、準備行為もきちんと法律に位置づけるとともに、航空機に加えて艦船の派遣もできるよう改めるべきだと考えております。  政府として、現在の在外邦人輸送あり方について現在どのような認識を持っておられるか、また、艦船による輸送をどう考えられるか、総理所見を伺うものであります。  以上、今回の新ガイドラインに関する主な問題点を指摘いたしましたが、冒頭申し上げたとおり、このガイドラインは、これまでの日米安保条約基地提供義務を超えて日本周辺有事に積極的に米軍協力約束する、政治的に極めて重要な文書であります。  言うまでもなく、このガイドラインを実効あらしめるためには国内法の整備は不可欠でありますが、同時に、このガイドライン憲法七十三条に言う国会承認を得るべき条約に該当することは、いわゆる大平三原則の新たな立法措置を伴う国際約束に当たる点からも明白であります。  なぜ国会での承認手続をとろうとしないのか。承認を求めれば与党三党の枠組みが壊れることを恐れているとしか考えられません。国の安全保障に関するこのような重要取り決めを与党三党ですら合意のないまま政府限りで進めることは、国民コンセンサスの形成を阻み、今後の法整備をおくらせる結果となることは明らかであり、無責任きわまりないことでございます。  新進党は、既に、十月二十一日、民主党、太陽党と三党共同で、新たな「日米防衛協力のための指針」の国会承認に関する決議案を提出いたしております。速やかな審議を求めるものであります。  最後に、国会承認手続についての政府の考えを改めてただし、私の代表質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣橋本龍太郎登壇
  15. 橋本龍太郎

    内閣総理大臣橋本龍太郎君) 平田議員にお答えを申し上げます。  まず、周辺事態における協力の根拠についてのお尋ねがありました。  日本の平和と安全に重要な影響を与える周辺事態対応する米軍への協力は、日米安保条約またはその関連取り決めの具体的な規定に直接の根拠を置くもの以外も含まれますが、日本極東の平和及び安全の維持というこの条約の目的に合致するものであります。  次に、新指針性格につきましては、日米いずれの政府も、指針により立法、予算、行政上の措置をとることを義務づけられるものではなく、両国間に国際法上の権利義務関係が生じることはありませんので、指針は条約ではございません。指針は、新たな時代における防衛協力の一般的な大枠、方向性に関する考え方を取りまとめて、政治的な意思の表明として発表した文書であります。  次に、周辺地域極東についてお尋ねがありました。  新指針では、前の指針に言う便宜供与以外に、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態に際しての日本の主体的活動などが盛り込まれましたため、その表題に安保条約上の「極東」を用いることは適当ではなく、かわって「日本周辺地域における事態」との言葉を用いている次第であります。  その範囲についてもお尋ねがありました。  日本周辺地域とは、そこにおいて生起する事態我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼし得る地域であります。そのような事態が生じる場所をあらかじめ特定できるわけではございません。日本周辺地域を地理的に一概に画することはできません。また、極東という話を用いなかった理由は、先ほどお答えしたとおりであります。  また、周辺事態について幾つかの例示を挙げてお尋ねがございましたが、まさに日本の平和と安全に重要な影響を与える場合を言いまして、生じ得る事態性質に着目したものであり、ある事態周辺事態に該当するかどうか、あくまでもその事態の態様、規模などを総合的に勘案して判断することとなります。  次に、補給及び輸送についてのお尋ねがございました。  武器弾薬補給につきましては、現時点で日米協力の必要性が想定されていないため、新たな指針において日米協力対象とされなかったものであります。  次に、憲法解釈についてのお尋ねがありました。  周辺事態における日米協力は、我が国が実施することを想定している具体的な内容及び態様に関する限り、それ自体は武力の行使に該当せず、また米軍武力の行使との一体化の問題が生ずることも想定されません。また、これらのうち、従来憲法上できないとされてきたものについて、今回できると見解を変更したものはございません。  次に、指針と在韓、在日国連軍との関係についてお尋ねがございました。  指針は、国連活動に関する協力を主たる目的として策定したものではありませんが、「平素から行う協力」の中で、国連平和維持活動に際しての日米協力に触れるなど、国連活動に対する協力にも配慮いたしております。  いずれにいたしましても、国連に対する協力につきましても、引き続き米国と密接に協議、協力してまいります。  次に、船舶の検査についてのお尋ねがございました。  我が国としては、商船の積み荷の検査、確認を行い、要すれば進路変更を求めるなどの措置をとることを考えておりますが、その際、憲法が禁ずる武力の行使または武力による威嚇に当たる行為は行いません。また、船舶の検査に対しての協力あり方は、今後、憲法上の制約の範囲検討してまいります。  指針国連関係についてのお尋ねがございました。  そもそも日米安保条約国連の強化に触れております。この新しい指針は、国連活動への協力を主たる目的とするものではございませんが、先ほど申し上げましたように、国連平和維持活動に言及するなど、国連とのかかわりにも配慮しております。今後とも、米国とも協議をしながら、憲法上の制約の範囲内で国連の諸活動協力してまいります。  次に、国連平和活動への参加という御質問がございました。  御指摘の国連平和活動という言葉内容が必ずしも明らかではございませんので、その参加の可否を論ずることはできませんが、いずれにせよ、我が国は、国連中心とする国際社会の平和と安全を求める努力に対し、今後とも、憲法が禁ずる武力の行使または武力による威嚇に当たらない範囲内で積極的に協力してまいります。  次に、新指針に基づく法整備内容及び時期についてのお尋ねがございました。  新指針実効性確保に関しましては、九月二十九日の閣議決定趣旨を踏まえ、現在、法的側面を含めて、政府全体として具体的施策について検討しており、可能な限り速やかにその検討作業を取り進め、所要の措置を講ずることが重要だと考えております。  このような検討の過程におきまして、新たな立法課題が明らかになると考えておりますが、現時点におきましては、法整備内容及び時期について具体的にお答えをすることは困難であります。次に、在外邦人輸送あり方についてのお尋ねがございました。  政府といたしましては、緊急事態に際し、なお一層、適時適切に邦人などの輸送を行うため、現在、鋭意検討を行っております。  なお、自衛隊艦船の使用につきましては、我が国として、円滑かつ効果的な邦人の輸送をいかに行っていくかという観点から、自衛隊法を改正し、邦人の輸送手段に自衛隊艦船を加えることについて検討することが必要だと考えております。  次に、新指針国会承認についてのお尋ねがございました。  新たな指針は、政府に立法、予算、行政上の措置をとることを義務づけるものではございません。旧指針と同様に、国会の承認の対象となる文書ではございません。  他方、今後の作業を踏まえ、新規立法あるいは現行法の改正などを行います際に、国会に当然のことながらお諮りをし、十分御議論をいただきたいと考えております。(拍手)     —————————————
  16. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 前原誠司君。     〔前原誠司君登壇
  17. 前原誠司

    ○前原誠司君 私は、民主党を代表して、ただいま報告のございました日米防衛協力指針最終報告について総理に質問いたします。  この指針前提として、「指針及びその下で行われる取組みは、いずれの政府にも、立法上、予算上又は行政上の措置をとることを義務づけるものではない。」と書かれています。したがって、政府は、この指針国会承認事項ではないと繰り返し答えてきました。  しかし一方で、「日米協力のための効果的な態勢の構築が指針及びその下で行われる取組みの目標であることから、日米両国政府が、各々の判断に従い、このような努力の結果を各々の具体的な政策措置に適切な形で反映することが期待される。」とも書かれています。この指針は時間と労力をかけてまとめられたものでしょうから、日米のどちらかが、義務ではないのだからと言ってその具体化を怠れば、二国間の関係がおかしくなってしまいます。  したがって、この指針については、単に政府間の合意で済ませるのではなく、本来は政府間協定などの国会承認事項にすべきであります。総理、いかがでありましょうか。  また、指針に基づいてこれから整備する関連法案についても、現在検討中ということで全体像がいまだに示されていませんが、本来ならば指針とあわせて示されてしかるべきではないでしょうか。なぜなら、今はおぼろげな全体像しか見えず、それを実効あらしめる法律案などがはっきり示されておりません。あわせて総理の見解をお尋ねいたします。  また、これに関して、いわゆる大平三原則についても見直すべきだという立場から質問をいたします。  大平三原則は、国会に提出してその承認を求めるべき条約の範囲についての統一見解を示したものです。内容は、「法律事項を含む国際約束」、「財政事項を含む国際約束」、さらに「わが国と相手国との間あるいは国家間一般の基本的な関係を法的に規定するという意味において政治的に重要な国際約束であって、それゆえに、発効のために批准が要件とされているもの」の三つですが、法律事項や財政事項を含む国際約束はよいとしても、三番目は問題であります。  本来なら、「わが国と相手国との間あるいは国家間一般の基本的な関係を法的に規定するという意味において政治的に重要な国際約束」でとどめておくべきであります。つまり、「発効のために批准が要件とされているもの」の条件を入れることによって、批准が要件になければ、政治的に重要な国際約束であっても国会の承認を受けなくてもよいということになってしまいます。これは、日本の進路にとって重要な決定が国会の承認を経ずに行われる逃げ道になっております。したがって、大平三原則の第三カテゴリーからは、「発効のために批准が要件とされているもの」という基準は削除すべきだと考えますが、総理の答弁を求めます。  次に、この指針には、平素からの協力日本に対する武力攻撃に際しての対処行動とあわせて周辺事態協力が盛り込まれていますが、安保条約のどの条項を読んでも周辺事態協力する根拠を探し出すことができません。  例えば、安保条約第五条は共同対処を規定していますが、これはあくまでも日本有事のみを想定したものであり、第六条にも、日本国の安全と極東における平和と安全の維持に寄与するため、アメリカは日本の施設・区域の使用ができると書かれているだけで、周辺事態協力については一切規定されていません。つまり、日本有事以外には、アメリカの軍事行動に対し日本協力することに根拠を与える条項は安保条約にはないのであります。したがって、周辺事態協力しようとすれば、現行安保条約を改定して新たにその条項を盛り込むのが当然の筋であります。  総理は今まで、周辺事態に際し、自衛隊が日本領域外で、憲法の制約の範囲内で、適用のある国内法令に従って活動を行うことは我が国の主体的な判断によるものであって、安保条約の改定は必要ないと発言されていますが、それでは安保条約の拡大解釈を安易に認めることになります。周辺事態での協力を行うならば、やはり堂々とそれを裏づける条約の具体的な条文を追加すべきだと考えますが、なぜ安保条約の改定を行わないのか、明確な答弁を求めます。  仮に、周辺有事で自衛隊が米軍協力する場合、自衛隊法における根拠規定が必要になります。現在、自衛隊法第七十六条において、日本有事の際の防衛出動について規定されていますが、この条文には括弧書きで「外部からの武力攻撃のおそれのある場合を含む。」と書かれています。周辺事態はこれに類すると読むこともできますが、私は、日本有事防衛出動とは違う新たな条文をつくって対処すべきだと考えますが、いかがでしょうか。  また、現行の条文で読もうが、新たな条文をつくろうが、周辺事態に際して自衛隊の出動を行うということは大変重い決定であり、その場合は、自衛隊法第七十六条の防衛出動の条文にも書かれているような国会の承認、緊急の場合は事後承認を大前提とすべきだと考えますが、総理の見解をお尋ねします。  今回の指針見直しては、総じてアメリカから求められた項目について日本協力しているという感が否めません。日本は戦略を持ってこの指針取りまとめに臨んだのでしょうか。アメリカとのやりとりの中で、どのような点を日本から積極的に要望して協力項目として取り入れるに至ったのか、あればお答えください。  中間報告最終報告を見比べて、日本の立場が少しでも鮮明になったとすれば、それは、非戦闘員を退避させるための活動と、その他の脅威への対応としての弾道ミサイル攻撃への対応ですが、この最終報告によって、在外邦人の救出については、もしもの場合が起きたときに、米国人以外で日本人は高い優先度で協力してくれるという承諾をアメリカから具体的に得ているのかどうか、また、日本がミサイル攻撃を受けた場合、この指針によってアメリカは確実にその相手国に対して報復をしてくれると考えてよいのかどうか、総理お尋ねいたします。  次に、集団的自衛権の解釈について質問いたします。  この指針では、日本のすべての行為は、日本憲法上の制約の範囲内において行われるとされています。しかし、公海上の機雷除去や海上輸送あるいは情報交換など、明確に、また定性的に集団的自衛権の行使には当たらないと言えない活動も含まれております。武力行使との一体化につながっていなければ行えるという見解でしょうが、状況は刻一刻と変化し、当初は一体化につながっていなくても、時間の経過とともに武力行使一体化してしまう場合が十分にあり得ます。そうであれば、初めから、行う活動日本の領域内に限定して、確実にやれるものはやるという方がより実際的ではないかと考えますが、いかがでありましょうか。  現在、集団的自衛権に関する政府の解釈は、集団的自衛権は、国際法上、主権国家である以上日本が当然有しているけれども、その行使は憲法第九条に照らし合わせてみて許されないとなっております。つまり、憲法第九条のもとにおいて許される自衛権の行使は、我が国防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解釈されており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されないという考えであります。  では、その範囲を超えない集団的自衛権の行使は全くあり得ないのでしょうか。逆に、武力行使一体化していなくても集団的自衛権に当たると考えられるものはないのでしょうか。あわせてお尋ねいたします。  私は、以前から、政府の集団的自衛権の解釈そのものがおかしいと感じてまいりました。私の感覚からすれば集団的自衛権の行使に当たることも当たらないとし、ただ武力行使との一体化という一点のみに物差しを当てているのが今の政府の見解であります。  例えば、日米安保条約を締結していること自体、そもそも集団的自衛権の行使に当たるのではないでしょうか。アメリカと敵対する国が出てきた場合、その国は日本を全く中立だと考えることは絶対にあり得ません。なぜなら、日本はアメリカに基地を提供しています。軍事行動において、どこに基地があるかは大変重要なポイントです。特に日本周辺米軍が軍事行動を行う場合、日本に基地を持つということは作戦上極めて有利であります。  このような観点から考えても、アメリカの敵対国からすれば、日本がアメリカと安保条約を結び、基地を提供していること自体、アメリカの軍事行動日本が同調している、つまり、具体的な行動を起こしていなくても、集団的自衛権を隠然と行使をしているとみなされるのが当然でありましょう。  さらにもう一つ例を挙げれば、湾岸戦争のとき、日本は多国籍軍に対し多額の資金を使途を限定して提供しました。湾岸平和基金に対する資金拠出については、集団的自衛権を含めおよそ自衛権とは国家による実力の行使にかかわる概念であるので、我が国が単に費用を支出するということは実力の行使に当たらず、したがって、資金供出は集団的自衛権の行使には当たらないとの見解が示されました。  つまり、自分は単にお金を出しただけで、実力の行使はみずから行っていないから集団的自衛権の行使には当たらないというものでありますが、この論理自体、例えば、気に入らない人間がいて、自分自身は手を汚さず、別の人に金を渡して自分のかわりに殴ってもらっても、自分は直接手を下していないのだから自分には関係ないと言っているようなものにすぎません。  このように、日本の集団的自衛権の解釈がそもそもおかしく、この際、根本的に見直すべきだと考えますが、総理の見解をお尋ねします。  さて、この指針実効性を持たせるためには、さまざまな法律の整備が必要になります。多岐にわたる法整備では防衛庁の所管外のものも多く、他省庁との調整が今まさに行われています。他省庁との調整も難しいものはあるでしょうが、それ以上に難しいのが地方自治体や民間との調整です。空港や港湾は地方自治体が管理しているものも多く、地方自治、地方主権の観点から、自治体の意向は当然尊重されなければなりません。  しかし、それで本当に実効性確保されるのでしょうか。例えば、普天間飛行場を名護市のキャンプ・シュワブ沖に移転することが検討されていますが、日米で大枠を決めても、そして政府が実行に移そうとしても、地元がノーと言えば話は進みません。民間についても同じことが言えます。物資の輸送一つとっても、業者の協力が得られなければ、協力体制は絵にかいたもちにすぎません。  指針に書かれた協力を実効あるものにするために、このような難題にどのように対処していくおつもりか、総理の考えをお聞かせください。  最後に、今後の日米防衛協力の将来像について質問いたします。  この指針で顕著なのは、日米間の緊密な情報交換や政策協議です。特に、調整メカニズムを確立して、作戦、情報活動、後方支援について共同調整所の活用を含めて行っていくことになっています。しかし、日米の情報量の差は歴然としており、それゆえ、物事の決定が常にアメリカ主導になるのではないかという危惧もあります。気がついてみれば総合力の差で抜き差しならぬ事態になり、日本の国益に反する防衛協力を行わざるを得ないことになりはしないのでしょうか。ぜひこの懸念を、総理から説得力を持って払拭していただきたいと思います。  また、防衛協力の強化は両刃の剣であることをはっきり認識すべきであります。協力の度合いが高まると、日本安全保障の能力は高まりますが、それだけアメリカに依存するということにもなります。日米関係日本外交の基軸であることに全く異存はありませんが、遠い将来を考えた場合、未来永劫、日米関係が変わらず良好だという保証はどこにもありません。したがって、ある程度の防衛協力は進めながらも、基本は、自分の国は自分で守るという基盤をいかに確保するかが極めて重要であります。  そこで、日米間の防衛協力、例えば訓練、作戦行動、軍事技術の共同研究、武器の共回生産などはどの程度まで進めるおつもりなのか、裏返せば、日本独自の防衛力の基盤をどの程度確保していくつもりなのか、このことを最後に総理にお聞きして、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣橋本龍太郎登壇
  18. 橋本龍太郎

    内閣総理大臣橋本龍太郎君) 前原議員にお答えを申し上げます。  まず、新指針国会承認についてお尋ねがございました。  先刻来お答えを申し上げておりますように、この指針は、政府に立法、予算、行政上の措置をとることを義務づけているものではありません。旧指針同様、国会の承認の対象となる文書ではございません。  他方、今後の作業を踏まえて、新規立法あるいは現行法の改正等を行う場合には、当然のことながら国会にお諮りをいたします。  次に、大平三原則についてお尋ねがございました。  大平三原則は、これまでの我が国憲法解釈、慣行を整理して、政府としての統一見解の形で国会にお示しをしたものでありまして、従来から、国会との関係において歴代内閣が一貫してこれに依拠してきた妥当なものだと考えております。現在、これを特に変更する必要があるとは考えておりません。  次に、新指針と安保条約との関係について御意見をいただきました。  周辺事態における種々の日米協力は、日本及び極東の平和の、また安全の維持という日米安保条約目的に合致するものです。また、新指針のもとにおきまして、日米安保条約及びその関連取り決めに基づく権利義務並びに日米同盟関係基本的な枠組みが変更されないことは、新指針の「基本的な前提及び考え方」で明確にお示しをしているとおりであります。  次に、周辺事態への対応に対する手続についてのお尋ねがございました。  新指針実効性確保につきましては、現在、法的側面を含めて、政府全体として具体的施策について検討いたしております。いずれにせよ、周辺事態に際し我が国が行う活動及び協力は、その時々において適用のある国内法令に従い、しかるべき手続を経て行うということは当然であります。  次に、協力項目についてのお尋ねがありました。  これらは、より効果的な日米防衛協力のために必要かつ適切であると両国政府判断したものであります。具体的な協力あり方につきましては、今後なお検討してまいります。  なお、日米両国が、日本の施政下の領域におけるいずれか一方への武力攻撃に際し、共通の危険に対処するよう行動いたしますことは、日米安保条約第五条に規定されているとおりであります。  次に、周辺事態における日米協力についてのお尋ねをいただきました。  機雷掃海や情報提供を含めまして、我が国が実施することを想定している具体的な内容及び態様に関する限り、それ自体は武力の行使に該当せず、また、米軍武力の行使との一体化の問題が生ずることも想定されず、集団的自衛権の行使には当たらないと考えております。  我が国防衛するために、必要最小限度の範囲を超えない集団的自衛権の行使というお尋ねがございました。  政府は、従来から一貫して、集団的自衛権の行使は、我が国防衛するための必要最小限度の範囲を超えるものとして、憲法上許されないと解しております。また、それ自体が武力の行使に該当しない行為は、他国の武力の行使との一体化の問題が生じない限り、憲法上問題が生ずることはありません。  安保条約と集団的自衛権の関係等につきましてもお尋ねがございました。  日米安保条約には、我が国として集団的自衛権を行使するようなことはその内容に含まれておりません。また、湾岸戦争当時の資金の提供は実力の行使に当たるものではなく、我が国憲法上認められていない集団的自衛権の行使に当たることではありません。こうした解釈の見直しは考えておらないところであります。  次に、指針実効性確保のため、地方自治体や民間に係る法整備についてのお尋ねをいただきました。  政府としては、現在、新指針実効性確保するために、法的側面を含めて具体的な施策について検討しているところでありまして、地方公共団体や民間事業者による協力をいかなる方法により確保していくかについても検討してまいる考えであります。  次に、物事の決定が米国主導になるのではないかという御指摘がございました。  ある事態周辺事態に当たるかどうか、周辺事態において我が国が後方地域支援などの対米協力を行うか否かについては、国益確保という見地から我が国が主体的に判断をいたします。  次に、日米防衛協力について幾点かのお尋ねがございました。  従来から、共同研究や共同訓練の実施、装備、技術面での相互交流などを含めてさまざまな分野防衛協力を進展させてまいりましたが、我が国としては、みずからの防衛力の基盤の維持に留意をしながら、引き続き、日米安保体制信頼性の向上を図り、その円滑な運用のために努力していくことが重要だと考えております。(拍手)     —————————————
  19. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 東中光雄君。     〔議長退席、副議長着席〕     〔東中光雄君登壇
  20. 東中光雄

    ○東中光雄君 私は、日本共産党を代表して、新ガイドラインについて質問します。  新ガイドラインは、六〇年安保改定を上回る、日米安保条約の事実上の大改悪であります。在日米軍基地の強化拡大と長期固定化、米軍の行うアジア太平洋地域での武力介入に、自衛隊を初め、自治体、民間を含め、総動員して支援する態勢をつくるものであります。  まず、米軍基地強化の焦点、海上ヘリポート基地の建設について質問いたします。  総理は、十一月二十一日の沖縄復帰二十五周年記念式典で、米軍基地問題の最重要の課題は海上ヘリポート基地建設だと、地元住民にその受け入れを改めて要請いたしました。  名護市沖に建設しようとする海上基地は、老朽化した普天間基地にかわって、二十一世紀のはるか先まで使える最新鋭基地の建設であり、最新の垂直離着陸機V22オスプレーを配備するなど、海兵隊基地機能を格段に強化するものであります。  総理は、海上基地は撤去可能だとしきりに強調しますが、それでは、いつ撤去するというのですか。米側と撤去時期を合意をしているとでもいうのですか。大体、どんな基地でも撤去は可能であります。問題は、政府の基地撤去の意思と方針を定めることであります。  いかにも基地を縮小し沖縄県民の負担を軽くするかのように言いますが、実際に進めているのは、海兵隊のために恒久的な最新鋭海上基地をつくり、その演習を日本全土に大規模に拡大するなど、米海兵隊が無期限に沖縄に居座るための足場を強化するものではありませんか。  また、海上ヘリ基地建設の是非を問う名護市の住民投票を前にして、防衛庁長官が、沖縄県出身及び同県駐留の自衛隊員約三千人に「隊員諸君へ」と題した長官名の文書を送付し、基地建設の賛成投票獲得への協力を要請したことは、防衛庁長官がその指揮系統を通じて、条例に基づく住民投票に干渉するものであります。地方自治への乱暴な介入であって、断じて許されません。文書の撤回と、住民投票への政府の干渉行為の即時中止を求めるものであります。  さて、新ガイドライン中心問題は、米軍への基地提供だけでなく、新たに海外における日米の軍事協力取り決めたことであります。  日米の軍事共同対処は、安保条約第五条で、日本の領域に対する武力攻撃が行われた場合に限られているのであります。ところが、新ガイドラインは、日本に対し何ら武力攻撃が行われていないのに、「周辺事態への対応」として、米軍が行う軍事作戦行動への自衛隊の作戦協力日本支援等を規定しているのであります。  これらの海外での米軍への協力支援は、安保条約に直接の根拠を持たず、安保条約の枠組みを超えるものであり、しかも、現行国内法のもとでは実施することができないものもあることは、政府自身が認めておるところであります。安保条約上も国内法上もできない周辺地域における軍事協力を、日米政府間で勝手に取り決め国会にも諮らず、国民に押しつけて、既定のこととして立法作業まで進めるということは断じて許されません。総理のはっきりとした答弁を求めます。  次に、周辺事態における日米の共同行動は、日本をアメリカの戦争計画に動員するもので、極めて重大であります。  総理は、周辺事態協力は主体的に判断すると強調しますが、そもそも周辺事態は、日米が緊密に連絡調整し、情勢共通認識のもとで対処するものではありませんか。  周辺事態が発生したと米軍が認定した場合、米軍はみずからの決定で平和と安全の回復活動、すなわち武力の行使を含む軍事作戦行動に入るのです。在日米軍、第三海兵機動展開部隊やインディペンデンスなどの空母機動部隊が周辺事態で出撃するのであります。そのとき、自衛隊は、周辺地域に出動し、これらの米軍部隊に協力し、AWACSやP3Cの警戒監視作戦や掃海部隊による機雷掃海作戦などの軍事作戦行動を行うのであります。  総理、この場面で、日本はどのような自主的判断ができるというのでありますか。米軍と同じ認識に立った判断しかあり得ないのではありませんか。総理は、日本の自主的判断で一切軍事協力はしない、こういう決定をするとでも言うのでありますか。答弁を求めます。  しかも、日本が何らの武力攻撃を受けていないのに、自衛隊が海外に出動して米軍の戦闘作戦行動協力し、AWACSやP3Cにより収集した情報を米軍に提供し、また米軍の戦闘相手が戦闘行為として敷設した機雷の掃海作戦を行うなどということは、自衛隊法七十六条や九十九条に該当しないことは明らかであり、自衛隊法上何らの根拠もありません。政府の言う専守防衛の原則にも反し、明らかに憲法違反の海外での武力行使そのものではありませんか。  周辺事態で重大な問題は、対米支援を行う自衛隊の活動領域がどこまでか全く不明確だということであります。  安保条約には、日本周辺地域という規定もその定義もありません。日本周辺地域とはいかなる地域か、その地理的範囲については日米間で合意しているのか、していないのか。また、日本周辺地域アジア太平洋地域及び極東範囲は同じなのか、違うのか、違うならどう違うのか、はっきりすべきであります。  総理は、日本周辺地域については答弁をせず、周辺事態というものは地理的概念ではない、地理的に一概に規定できないと繰り返していますが、この答弁は言いわけにもなりません。あくまで周辺地域範囲は無限定で、事態性格によって変わるものだと言い張るのですか。もしそうであるとすれば、日本政府は、米軍周辺事態だとして軍事行動をするところは、それがどの地域であっても、すべて日本周辺地域として米軍への協力支援を行うことになるではありませんか。  これでは、かつて日本の侵略を受けた中国やASEAN諸国が懸念を表明し、政府が何度説明しても理解が得られないのは当然ではありませんか。総理の答弁を求めます。  さらに、周辺事態における米軍活動に対する日本支援を数々誓約したことは極めて重大であります。  第一に、米軍基地の適時かつ適切な追加提供の誓約であります。  米軍が必要だとして新たな基地の提供を求めた場合、日本側はその必要性の有無、規模について何らの判断も差し挟むことができず、米軍の言うままに適時適切に基地を提供することを誓約しているのであります。このため、日本政府は、適時適切に米軍用地の使用権限を取得できるように米軍用地特措法の再改悪をしようというのではありませんか。  第二に、米軍による自衛隊施設や民間空港、港湾の一時使用を確保するということを取り決めております。  港湾は、米軍が欲する時期にその欲する港湾に入港し、神戸港であろうと博多港であろうと、米軍の欲するままに優先使用を日本政府と港湾管理者が保障するということになるのではありませんか。  民間空港は、米軍の作戦機や輸送機、民間チャーター機を、成田であろうと羽田であろうと関西空港であろうと、米軍が必要と言えばいつでも、日本側は言われるままに民間機の一般使用を制限、排除し、米軍の優先的使用を確保する、そのための法整備を含む体制をとるということではありませんか。答弁を求めます。  第三に、米軍活動に対する後方支援として、兵員、武器弾薬輸送を初め、補給、整備、医療、警備、通信等の支援項目は、いずれも安保条約及び関連取り決めや国内法上の根拠はありません。周辺有事米軍戦争行為への協力支援であり、参戦行為そのものになります。こうした許しがたい誓約を実行するために、有事版のACSAや国民総動員の有事立法、海空域調整有事立法をつくるなどは、断じて許されないと思います。  新ガイドラインのもとで、日米政府は、共同作戦計画相互協力計画検討するなど、包括メカニズム共同作業を開始していますが、これは、周辺事態への対処体制を確立するため、米軍と自衛隊という軍レベルだけではなくて、政府全省庁、地方自治体、民間挙げての戦時総動員体制をつくるものではありませんか。  中でも、自衛隊と米軍共通準備段階を設定し、共通の実施要領を策定するとしていることは重大であります。これは、周辺事態等に対する即応態勢、つまり戦闘準備態勢を日米同一基準にし、戦闘時の作戦実施要領、交戦規則を日米共通のものにするものであります。自衛隊を事実上米国の従属国の軍隊として米軍の一部に組み込んでしまうことになるではありませんか。答弁を求めます。  最後に、新ガイドラインは、日米の共同演習訓練について、従来の自衛隊と米軍による共同訓練にとどまらず、日米両国の公的機関や民間機関をも巻き込んだ共同訓練等の強化を取り決めたのであります。新ガイドライン策定後、日本全域で相次いで実施されている日米の共同演習は、いずれも民間の空港、港湾を使用し、民間輸送業者等の輸送業務に支えられ、多数の警察官による警備活動の中で行われ、米海兵隊の各地での実弾演習も日米共同の実動演習も米軍機の超低空訓練も、質量ともに著しく強化され、各地で重大な被害が起こっておるのであります。国民に重大な不安をもたらしております。  まさに、米軍支援の総動員体制を実践的につくるものにほかなりません。こうした共同演習等の強化はもってのほかであります。直ちに中止すべきであります。総理の答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣橋本龍太郎登壇
  21. 橋本龍太郎

    内閣総理大臣橋本龍太郎君) 東中議員にお答えを申し上げます。  まず、海上ヘリポートの撤去時期についてのお尋ねがございました。  現段階で具体的なことを申し上げることは困難でありますが、いずれにいたしましても、普天間飛行場の代替ヘリポートにつきまして、いろいろな条件を考え抜いたあげく、安全、騒音、自然環境などいろいろな問題を考慮した上、現時点における最善の選択肢として、撤去可能な海上ヘリポートを追求することといたしました。  次に、新指針と安保条約などの関係についてのお尋ねがございました。  周辺事態におけるさまざまな日米協力は、日本及び極東の平和と安全の維持という日米安保条約目的に合致するものであり、憲法範囲内でその時々に適用のある法令によって当然行い得るものであります。新指針自体は国会承認の対象ではありませんが、実効性確保のため新規立法、現行法の改正等を行うときは、国会に当然お諮りを申し上げることになります。  次に、周辺事態における我が国協力判断についてのお尋ねがございました。  周辺事態に際し、我が国が後方地域支援などの対米協力を行うか否かについては、我が国の国益確保の見地から自主的に判断を行うことになります。我が国として、個々の事態においていかなる対応をとるかにつきまして、あらかじめ一般的に想定することはできません。  次に、周辺事態とは地理的概念ではなく、生じる事態性質に着目したものであります。ある事態がこれに該当するかどうか、それは、その事態の態様、規模などを総合的に勘案し、日米がそれぞれ主体的に判断をいたします。また、指針に関しましては、アジア諸国を含め関心を有する諸国説明を行い、おおむね理解を得られつつあると考えておりますけれども、今後とも必要に応じ、説明をしてまいります。  次に、自衛隊施設や民間空港、港湾の一時使用と法的整備についてお尋ねがありました。  このような一時的使用を確保する場合には、使用の態様及び地元に与える影響などについても十分考慮する必要があると考えます。このような問題につき、どう調整を図るかという点を含め、周辺事態に際しての対米協力あり方につきましては、今後、政府部内において真剣に検討してまいります。  次に、米軍への後方地域支援についてのお尋ねがございました。  周辺事態における日米協力は、日本及び極東の平和と安全の維持という日米安保条約目的に合致するものであります。また、政府として、新指針実効性確保のために、今後法的側面も含め、具体的な施策検討してまいりますが、その際、憲法を遵守することは当然であります。  次に、日米共同作業についてお尋ねがありました。  日米共同作業は、我が国に対する武力攻撃あるいは周辺事態に際して、日米両国政府が円滑かつ効果的に対応し得るよう平素から実施されるものでありまして、議員が仰せられましたような戦時総動員体制をつくるものでは、また、それを目的とするものではございません。  それから、共同演習等の強化についての御指摘がありました。  日米共同訓練は、我が国に対する武力攻撃に際し、日米共同対処行動を円滑に行うために不可欠である等の観点から実施してまいっており、また、新指針で記述されております共同演習訓練の強化については、今後さらに検討してまいりたいと考えており、いずれにせよ、これを中止する考えはありません。  残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)     〔国務大臣小渕恵三登壇
  22. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 日本周辺地域とはいかなる地域かというお尋ねでございますが、この日本周辺地域とは、そこにおいて生起する事態日本の平和と安全に重要な影響を及ぼし得る地域であります。このような事態が生じる場所をあらかじめ特定できるわけではなく、地理的に一概に画することはできません。したがいまして、その具体的な範囲について、日米間であらかじめ合意することはできるものではなく、また、極東ともアジア太平洋地域とも性質を異にする概念であります。  極東は、日米安保条約に関する限り、日米国際の平和と安全の維持共通関心を有している区域であります。その範囲は、昭和三十五年の政府統一見解のとおりでございます。  アジア太平洋地域とは、日米安保条約により米軍我が国に駐留していることが、結果としてその平和と安定に寄与している地域であります。これについても明確な境界を画し得るものではありません。(拍手)     〔国務大臣久間章生君登壇
  23. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 東中議員の御質問にお答え申し上げます。  まず初めに、普天間飛行場の代替海上ヘリポートについて私の名前でお出しした文書についてのお尋ねでございますが、当該文書は、自衛隊員に対し、防衛庁の所掌事務である普天間飛行場移設問題について、その経緯、重要性を改めて認識してもらうとともに、名護市民を初めとする国民の皆さんにその内容等についてよく知っていただけるようお伝え願いたいとの考えを述べたものであり、投票に対して干渉を行うという、そういう趣旨ではなく、文書を撤回する考えはございません。  次に、周辺事態における協力についてのお尋ねでございますが、周辺事態日本の平和と安全に重要な影響を与えることから、情報の交換、機雷の除去を含め、各種の協力を行おうとするものであります。  いずれにいたしましても、協力に際しての日本行為は、その時々において適用のある国内法令に従うとともに、専守防衛という我が国基本的な方針に反して行われるものではないということは言うまでもございません。  次に、周辺事態における米軍の施設の使用についてのお尋ねですが、周辺事態において我が国が新たな施設・区域の提供を含む対米協力を行うか否か、また、いかなる協力を行うかにつきましては、我が国の国益確保の見地から、我が国が主体的に判断を行うことになります。  いずれにせよ、指針に基づく日米間の協力は、日米安保体制信頼性を一層向上することにつながるものと考えております。  共通準備段階等についてのお尋ねでございますけれども、日本防衛周辺事態における協力措置準備のために確立される共通基準や、日本防衛のための整合のとれた作戦を円滑、効果的に実施できるよう準備される共通の実施要領については、今後、日米共同作業として検討することを考えていますが、米軍及び自衛隊はおのおのの指揮系統に従って行動することは当然であり、自衛隊を米軍の一部に組み込むとの御懸念は当たらないと考えております。(拍手)     〔国務大臣藤井孝男君登壇
  24. 藤井孝男

    国務大臣(藤井孝男君) 東中議員にお答え申し上げます。  米軍に民間空港、港湾を優先的に使用させるつもりではないかとのお尋ねでありますが、民間空港、港湾の一時的使用は、これまでも日米地位協定第五条に基づき行われてきており、いわゆる周辺事態においてこのような一時使用を確保する場合には、使用の態様及び地元に与える影響等についても十分考慮する必要があると考えております。  このような問題につきまして、いかに調整を図るかという点を含め、新ガイドライン実効性確保するとの観点から、平成九年九月二十九日の閣議決定趣旨を踏まえ、法的側面も含めて、具体的な施策について政府部内において真剣に検討していく必要があると考えております。(拍手)     —————————————
  25. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 北沢清功君。     〔北沢清功君登壇
  26. 北沢清功

    ○北沢清功君 私は、社会民主党・市民連合を代表し、ただいま議題となりました新たな日米防衛協力指針について、橋本総理初め関係閣僚に質問をいたします。  私たち社会民主党は、今回の新ガイドラインに関して、昨年の第二次橋本政権発足に当たっての三党合意の「現行憲法や集団的自衛権に関する政府解釈を前提」とすることと、「近隣諸国との関係に十分配慮し、誤解を与えないよう明確な説明を行っていく」ことに従い、政府・与党間の協議に参加してまいりました。  新指針は、日米両国防衛協力について、一般的な枠組みと方向性を示す運用の手引書であって、両国間に権利義務関係を発生させるものではないことを前提に、憲法第七十三条が求める国会承認を必要としないという考えでおります。しかしながら、新指針に関して国民関心も高いこと、その内容憲法や安保条約と矛盾するおそれのある事項が含まれていることと、さらには、外交政府の専権事項といっても、国権の最高機関である国会政府外交に積極的に関与することによってその透明度を高めなければならないことから、我が党は、この臨時国会冒頭から政府報告と本会議における討論を求めてまいりました。  まず、新指針のうち、憲法日米安保条約等と矛盾するおそれのある事項については、社会民主党は、立法化にも予算化にも同意できないという立場であることを表明しておきます。  国民の最大の疑問は、ポスト冷戦の時代になぜ新ガイドラインなのか、なぜ堂々と安保条約の改正案を提案しないのかということにあります。  冷戦後、世界は軍縮の方向に向かって進みつつあり、各国が平和の配当を求める潮流の中、なぜ新たな日米同盟の枠組みが確立されようとしているのか。旧ソ連の脅威が消失したにもかかわらず、なぜ引き続き四万七千人の在日米軍を維持しなければならないのか。いざというときのための準備と言うが、周辺諸国のいずれかが日本本土を攻撃し、上陸侵攻するという日本有事が近い将来本当に勃発すると考えているのか。  同時に、アジア太平洋地域における米軍の軍事プレゼンスに日本が一層の補完的な役割、任務を負わされるのではないか。また、被災地救援、捜索・救難、非戦闘員退避、臨検などは主体的な活動とされ、PKO法の枠を超えた、事実上の自衛隊の海外出動を可能にするものではないか。このように、安保の枠組みを変え、専守防衛を柱とする我が国防衛政策に変化をもたらすものを一片の手引書で改定を行うのはいかがであろうか。  このような国民の疑問に対して、総理から明確なお答えをいただきたいと思います。  次に、新指針を不透明なものとしている周辺事態及び周辺地域に関してお尋ねをいたします。  政府はなぜ、周辺事態日本周辺地域の地理的範囲を明確にしないのでしょうか。私たちは、日米安保条約基本的枠組みを変更しないことが前提である以上、同条約第六条の「極東」に限定するとともに、七二年の日中国交正常化以後の我が国は、台湾関係法を持つアメリカとは異なって、中台有事を中国の国内問題として扱うようになったと解することを主張してまいりました。しかし、政府は、日本周辺地域を地理的概念は伴わないものとして、周辺事態事態性質に着目した概念としたことから、いかようにも解釈可能な危険性をはらむ、より拡大が求められるおそれがあるものとなりました。日本の軍事大国化への懸念を表明しているアジア近隣諸国から十分な理解を得ることもできないと考えますが、総理の御見解を承りたいと思います。  私は、国民に一層の負担と危険を強いることになる周辺事態を認定する場合は、自衛隊の防衛出動に準じて、内閣総理大臣閣議決定を経て、国会の同意を得て行うべきであることを強く求めていきたいと思います。安保条約第五条の事前協議においても、日本として独自の判断を担保することは当然であります。  そして、例えば米軍に対する日本支援によって、米軍の攻撃対象国が日本に報復攻撃をした場合、再び国民を戦禍に巻き込む危険があるのではないでしょうか。また、昨年三月の台湾海峡危機のように、周辺事態の抑止を口実としたアメリカによる介入それ自体が周辺事態を引き起こすことさえ考えられるのではないでしょうか。総理のお考えはいかがでしょうか。  周辺事態における具体的な協力についてお尋ねをいたしたいと思います。  社会民主党は、民間施設の使用は国民感情からも極力避ける、武器弾薬補給憲法上許されていないことを明確にする、特に公海上の米艦船に対する武器弾薬の海上輸送及び整備については、武力行使一体化するおそれがあり、協力項目から除外する、周辺事態における海空域調整は、まず現行の在沖縄米軍優先の航空交通管制のあり方そのものについて検討するなどについて主張をしております。政府がこれらの点に同意できないのはなぜなのか、防衛庁長官から明確にしていただきたいと思います。  あわせて、日米の協議の促進、政策調整及び作戦、活動分野調整あり方の包括的メカニズム調整メカニズムをつくることが合意され、また国内法整備のための関係省庁間協議が始まっています。現在の防衛政策の整合性との関係、具体的検討項目関係省庁間協議の現況や法整備内容法案提出の時期について御答弁をお願いいたします。何よりも、十分な国会論議、地方自治体の声、国民の世論を踏まえないままに法整備に着手するということは、余りにも性急ではないかと考えますが、総理、いかがでしょうか。  国際政治学者の坂本義和氏は、今回のガイドライン見直しの論議に決定的に欠けているものは、東アジアの将来に対するビジョンの創造への政治的情熱と意思であると言っております。日本アジアの一員であるからには、アジアにおける軍事的な緊張緩和と紛争の発生防止に積極的に貢献することこそ、最も優先されるべき課題であると考えます。米軍基地の整理、統合、縮小、アジアでの多面的な平和維持体制づくりへの貢献など、有事をつくらない絶えざる外交努力が必要であります。南北朝鮮の和解と統一にも政府として努力を傾注すべきでありますし、また、三党合意では、ASEAN地域フォーラムの強化策等具体的な提案やアジア地域の軍縮に向けて積極的な提案を行うとしております。政府としては、どのような準備検討をしているのか、外務大臣からお答えをお願いいたしたいと思います。  最後に、橋本内閣が、村山総理の戦後五十年における八月十五日の談話を基本とし、アジアにおける緊張緩和、世界の軍縮と核廃絶の外交、地球環境保全の外交などを主目的とする外交改革に対して果敢に踏み出されることを期待し、総理の御決意をお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣橋本龍太郎登壇
  27. 橋本龍太郎

    内閣総理大臣橋本龍太郎君) 北沢議員にお答えを申し上げます。  まず第一に、日米同盟と在日米軍に対するお尋ねがございました。  国際社会に依然として不安定要因が存在をいたします中において、日米安保体制及び在日米軍は、我が国の安全及びアジア太平洋地域の平和と安定に重要な役割を果たしており、また、在日米軍につきましては、その存在自体が目に見える形での抑止機能を果たしてもおります。日米安保体制の一層の充実及び米軍の駐留の維持は極めて重要だと考えております。  次に、米軍のプレゼンスと日本役割についてお尋ねがございました。  新たな指針及びそのもとでの取り組みは、日米安保体制を一層充実させ、アジア太平洋地域における米軍のプレゼンス確保に貢献するものであります。ただし、新指針に明記されておりますとおり、日米安保条約及びその関連取り決めに基づく権利義務日米同盟関係基本的な枠組みは変更されません。  次に、被災地における救援などの日米両国政府がそれぞれ主体的に行う活動についてのお尋ねがございました。  これらの活動我が国が実施いたします場合には、武力行使目的を持って武装した部隊を他国に派遣することはせず、また、その時々において適用のある国内法令に従うことは言うまでもありません。  次に、新指針日米安保体制及び我が国防衛政策との関係についてのお尋ねがございました。  新指針の「基本的な前提及び考え方」において明確に述べておりますとおり、日米安保条約及び関連取り決めに基づく権利及び義務並びに日米同盟関係基本的な枠組みは変更されません。また、指針のもとでの日本のすべての行為は、日本憲法上の制約の範囲内で専守防衛などの基本方針に従って行われるものであります。  次に、周辺事態範囲などについてのお尋ねがございました。  周辺事態が生じる場所をあらかじめ特定できるわけではないことは、累次御説明を申し上げてきたとおりであります。極東範囲に関する政府の見解に変更はございません。台湾をめぐる問題につきまして、我が国としては、関係当事者間の話し合いによる平和的解決を強く希望しております。指針につきましては、今後とも必要に応じ、関心を有する各国説明を行います。  周辺事態の認定についてのお尋ねがございましたが、ある事態周辺事態に該当するかどうか、日米両国政府がそれぞれ主体的に判断をすべきものであります。また、周辺事態において我が国活動を行う際にはしかるべき手続が必要だと考えますが、その時々において適用のある関係法令に従うことは当然であります。なお、安保条約第六条の事前協議につきましても、我が国は自主的に判断し、諾否を決定いたします。  米軍への支援により戦禍に巻き込まれるのではないかというお尋ねもございました。  指針のもとでの日米同盟関係の充実強化は、日本の安全及び地域の平和と安定に影響を与えるような事態の防止や、その拡大の抑止、収拾を目的といたしております。また、その指針のもとで我が国国連憲章及び日米安保条約に従って行動する米軍に対し行う協力は、国際法上適法な行為でございます。  次に、包括的なメカニズム調整メカニズムについてのお尋ねがございました。  前者は平素から日米共同作業を実施するためのものでありますし、後者は緊急事態において日米活動調整を図るものであります。具体的内容は現在鋭意検討中でありますが、両者はいずれも日米防衛協力を効果的に進めるという観点から構築するものでありまして、日米安全保障体制を基調とする我が国防衛政策と一致するものであります。  また、国内法整備関係省庁作業についてもお尋ねがございました。  新指針実効性確保に関しまして、九月二十九日の閣議決定趣旨を踏まえ、現在、法的側面を含めて政府全体として具体的な施策について検討しているところでありまして、可能な限り速やかにその検討作業を進め、所要の措置を講ずることが重要であると考えております。  また、橋本内閣が、村山内閣総理大臣の戦後五十年談話を基本とし、アジアにおける緊張緩和、世界の軍縮と核廃絶の外交、地球環境保全など、こうした点の外交改革に果敢に踏み出すことを期待というお話をいただきましたが、私どもは、この基本姿勢を引き継ぎながら、その上でアジア太平洋の繁栄と安定のために、域内での地域協力、信頼醸成に努力をいたしていきます。  また、国際社会の責任ある一員として、核兵器を含めた軍縮、あるいはまさに今COP3を我が国で開催しているわけでありますが、環境問題などの地球規模問題に積極的に取り組んできており、今後とも努力してまいります。  残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁申し上げます。(拍手)     〔国務大臣小渕恵三登壇
  28. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 私に対してのお尋ねは、アジア太平洋地域情勢の安定化、改善を図る方途はいかんということでございますが、政府といたしましては、二国間、多国間等の外交努力を一層強化いたしまして、ASEAN地域フォーラムを初め、各種の安全保障対話地域協力の促進を図るなど、あらゆる努力を行っていく決意でございます。(拍手)     〔国務大臣久間章生君登壇
  29. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 北沢議員の御質問にお答え申し上げます。  まず、施設の使用に関するお尋ねでございますが、新たな施設・区域の提供につきましては、周辺事態拡大の抑制及び収拾のための日米の効果的な対応我が国の平和と安全を確保する上で極めて重要であるとの観点や、既存の施設・区域や自衛隊施設の能力、近隣への影響等について総合的に勘案し、主体的に判断することになります。  次に、後方地域支援に関するお尋ねでございますが、武器弾薬補給について現時点で日米協力の必要性が想定されていないため対象から除外されており、憲法上の評価につきましてはお答えすることは差し控えさせていただきます。  また、公海上の米艦船に対する人員、物資等の輸送等は、戦闘地域から一線を画される場所において行われ、さらに一般的に艦船の特性を考慮した場合、個々の作戦行動と直ちに結びつくものではないことにかんがみれば、米軍による武力行使との一体化は基本的に想定されないと考えております。  最後に、海空域調整についてのお尋ねでございますが、政府としては、新指針に盛り込まれた項目については、その実効性確保するとの観点から、九月二十九日の閣議決定趣旨を踏まえ、具体的な施策について検討していく考えでございます。  なお、一般論として申し上げれば、米軍機と他の航空機の混雑が予想される場合には、関係機関の関与を得て運航調整を十分に行い、安全確保に万全を期すことが重要であると考えております。(拍手)     —————————————
  30. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 小坂憲次君。     〔小坂憲次君登壇
  31. 小坂憲次

    ○小坂憲次君 私は、太陽党を代表いたしまして、ただいま報告のありましたいわゆる新ガイドライン、すなわち日米防衛協力のための新たな指針について、政府の見解をただすものであります。  東西冷戦終結した今日、主要国間による二十一世紀に向けた新たな世界システムづくりが進められています。最近の米中首脳会談、日ロ非公式首脳会談、エリツィン大統領の中国訪問など、一連の首脳外交は、それぞれ二国間の懸案解決を目指すと同時に、二国間の枠を超えた新たな世界システム形成の一環としての意味を持つものであります。  それは、東西冷戦終結しても、それぞれの地域に潜在的な脅威が残り、政治的、軍事的な対立関係がなお存在し続け、その一方で、アジア通貨危機、香港株急落に端を発した株安が日米欧さらには南米をも巻き込んで広がったように、世界市場の一体性もまた強まっています。  冷戦後の安全保障は、冷戦型の特定仮想敵を想定したものではなく、その地域に潜在する武力衝突の危機をいかに未然に防止するかという予防外交に努め、そのための信頼醸成措置を促進し、紛争をいかに平和裏に解決するかが中心となるのであります。そのためのさまざまな共通ルールづくりを進めながら、もし平和解決が困難な場合に、その代替手段としての強制力を持った存在によって紛争の拡大を阻止することが必要であります。  その意味において、日米安全保障体制が有効に機能することが、日本そしてアジア太平洋の平和と安定を維持し、持続的な経済発展を確保するために必要不可欠なものとして、引き続き大きな役割を担っているのであります。今回の日米防衛協力のための指針の見直しは、今後発生する可能性のある事態に対処し、日本周辺地域の安定と平和を維持するための幅広い分野にわたる両国の具体的協力関係について合意したものとして、日米防衛協力実効性を担保する上で有意義なものとして、これを評価するものであります。  しかしながら、日本周辺有事における協力関係の明確化を中心とした新ガイドラインは、安保条約を機能的に拡張し、事実上は改定に近い内容となっております。  政府は、六月のガイドライン中間報告以降、国会において、周辺事態地域との関係後方支援等日米協力の各項目、これに伴う国内法整備について、濃密な議論をすべきであったにもかかわらず、踏み込んだ答弁を避け、これを行ってこなかったのであります。また、新ガイドラインは、従来の米軍と自衛隊との協力関係から、日本社会全体による協力体制への転換という重大事項を含み、国民理解が不可欠であるにもかかわらず、政府は、国会承認を必要とする事項には当たらないとしてきました。  国民に対する説明も不十分であるのみならず、いまだ理解も得られないうちに最終合意をしたことは、国民の生命と財産にかかわる国家の重要問題について、国民の目の届かないところで勝手に決めたとのそしりを免れず、周辺アジア諸国の誤解を招くことにもなるのであります。  我が党は、新進党、民主党と共同で、十月二十一日に、新ガイドライン国会承認に関する決議を提出しておりますが、橋本総理には、国会決議を待たずに、直ちに今国会において承認事項としての手続をとられるよう強く求めるものであります。  日米安保条約では、武力攻撃に対して日米が共同で対処するのは、第五条の日本への武力攻撃があった場合のみであり、第六条は、極東有事での米軍の軍事行動日本の施設・区域の使用が許されることとしております。日本への武力攻撃がないのに、周辺事態対応で、自衛隊が海外に出動して米軍行動協力するなどの規定はどこにも書いてないのであり、新たな国際約束の締結でないとするならば、新ガイドラインは明らかに日米安保条約の改定の意図を含むものと考えます。  たとえ文章の中に「指針及びその下で行われる取組みは、いずれの政府にも、立法上、予算上又は行政上の措置をとることを義務づけるものではない。」と入れようとも、新たな防衛協力について両国政府首脳合意した重要文書としての性格を持ち、これを担保するための国内法の整備が必要となることからも、いわゆる大平三原則の国会承認事項であると考えますが、橋本総理並びに小渕外務大臣の御見解を伺います。  また、新ガイドラインでは、周辺事態概念は、地理的なものではなく、日本の平和と安全に重要な影響を与えるか否かという事態に着目したものであるという表現が使われていますが、このことは、日本にとって周辺事態と認定すれば、地球上のどの地域にも日米共同作戦が展開されることを意味することになるとも考えられます。このことからも、日米安保条約極東範囲を逸脱していると言えるのであり、この点を明確にすることが周辺諸国の誤解を招かない上で必要と考えます。  新ガイドラインの中で、臨検の実施については国連の経済制裁を前提とするとしています。なぜこの問題において国連との関係が出てくるのでしょうか。  また、臨検するには武力による威嚇または行使の裏づけがあって初めてこのような強制措置が有効に実施されるのであり、今日までの政府答弁では、臨検対象の船舶は命令に従わず、実施したとしても効果が期待できないのではないでしょうか。また、武装の可能性のある船舶に対処する場合の判断を、明確な基準も示さず、現場の指揮官に任せることが適当と考えられているのでしょうか。これらにつき、橋本総理並びに小渕外務大臣、久間防衛庁長官の御見解をお聞かせください。  周辺地域との関連で、台湾問題については、総理は二つの中国や台湾の独立は支持しないことを繰り返し述べられておりますが、本国会の場において、総理の対台湾政策の立場を明確にお述べいただくように求めます。  後方支援活動の中で、「日米両国政府は、後方支援の効率性を向上させ、かつ、各々の能力不足を軽減するよう、中央政府及び地方公共団体が有する権限及び能力並びに民間が有する能力を適切に活用しつつ、相互支援活動を実施する。」と定めていますが、ここで言う「能力不足」というのは、具体的には何を意味するのでしょうか。  また、補給の面でいえば、日米物品役務相互提供、いわゆるACSA締結で十五分野の相互提供が可能になりましたが、あくまで平時であり、有事の際には何も枠組みができていません。このため、米国と北大西洋条約機構との有事相互支援のように、有事版ACSAについて具体的に検討し整備する必要があると考えます。あるいは、既に政府では作業が始まっているのでしょうか。この点につき、総理防衛庁長官の見解を賜りたいと思います。  新たな世界システムの構築を世界じゅうが模索している今こそ、我が国の安全と平和をどのようにして確保していくのか、日本アジアのリーダーとして求められるもの、そして世界のために果たすべき役割とは何かを国会の場で与野党の壁を超えて幅広く議論し、憲法論に傾斜した従来の抽象的議論、神学論争に終始せず、国民理解を深め、国民的な合意を形成する機会にしたいと願ってやみません。  総理並びに関係大臣の明確な答弁を期待して、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣橋本龍太郎登壇
  32. 橋本龍太郎

    内閣総理大臣橋本龍太郎君) 小坂議員にお答えを申し上げます。  まず、新指針国会承認について、大平三原則と関連してお尋ねがございました。  この指針につきましては、繰り返し申し上げておりますように、日米安保条約及びその関連取り決めに基づく権利義務を変更せず、また、政府に立法、予算、行政上の措置義務づけるものでもありませんので、そもそも条約ではなく、大平三原則とは関係がございません。国会承認の対象ではないと考えております。他方、今後の作業を踏まえ、法律の新規制定、改正等が必要な場合には、当然ながら国会にお諮りをするわけであります。  次に、新指針と安保条約の関係についてお尋ねがございましたが、日本周辺地域極東性格を異にする概念であります。周辺事態は、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態であり、周辺事態におけるさまざまな日米協力は、日本及び極東の平和と安全の維持という日米安保条約目的に合致し、我が国の主体的判断により、憲法範囲内で及びその時々の適用のある法律に従って行い得るものであります。  また、指針国連との関係についてお尋ねがございました。  そもそも日米安保条約は、国連活動への強化に触れております。新指針国連への協力を主たる目的とするものではございませんが、国連平和維持活動に言及するなど、国連とのかかわりにも配慮いたしており、我が国は、今後とも米国とも協力をしつつ、国連の諸活動協力してまいります。  次に、船舶の検査の実効性及び武装可能性のある船舶についての対処のお尋ねがございました。  諸外国等の実績などにかんがみてみますと、武力の行使などによらない措置であっても、経済制裁の実効性確保という点では実質的に有効に機能すると考えております。また、検査の対象は、一般に武装は想定され得ない商船でありますが、御指摘のような場合の対応等について現在検討をいたしております。  次に、台湾との関係についてのお尋ねがございましたが、我が国は日中共同声明において、中華人民共和国政府を中国の唯一の合法政府として承認をし、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であるとの中華人民共和国政府の立場を十分理解し尊重する旨を表明いたしております。このような基本的立場は不変であり、いわゆる二つの中国あるいは台湾独立を支持する考えはございません。  それから、後方支援活動における能力不足という意味についてお尋ねがございました。  具体的には、新指針において記述されておりますとおり、例えば、日本側におきましては、米国製の装備品等の補給品の取得や整備能力などの点、またアメリカ側においては、日本国内における補給品の取得や装備品の整備などの面で能力が必ずしも十分ではない、こうした点を指して述べたものであります。  次に、その有事版ACSAというお尋ねがございましたが、具体的な内容がお述べいただけませんでしたので確たることは申し上げられませんけれども、いずれにせよ、今後は、新指針実効性確保のためにいかなる措置が必要かという観点から、具体的な枠組みや法整備について、政府全体として真剣に検討をしてまいります。  残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)     〔国務大臣小渕恵三登壇
  33. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 指針につきまして、これを国会承認事項にすべきだというお尋ねでございますが、既に総理から御答弁申し上げておるところでございますが、重ねて、指針は条約でございませんので、大平三原則とは関係なく、国会の承認の対象ではないというのが政府考え方であります。  ただし、指針を実効的なものにするため、法律の制定や改正等が必要な場合には、国会にお諮りをいたしていくことは当然でございます。(拍手)     〔国務大臣久間章生君登壇
  34. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 小坂議員の質問にお答え申し上げます。  臨検につきましては、先ほど総理が述べられたとおりでございます。  また、後方支援活動につきましても、この能力不足の意味につきましては、先ほど総理から御答弁があったとおりでございます。  日米物品役務相互提供協定の関連についてのお尋ねでございますけれども、これも先ほど総理からお答えがございましたとおり、今検討を行っているところでございますが、このような検討の過程で今後新たな立法課題が明確化されると考えておりますが、この検討すべき内容は極めて広範多岐にわたるものであり、なかなか、現段階において法整備内容について具体的にお答えすることは困難でございます。  以上でございます。(拍手
  35. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  36. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。     午後三時十七分散会      ————◇—————