○並木正芳君
新進党の並木正芳です。
新進党を代表して、ただいま
議題となりました
持株会社の
設立等の禁止の解除に伴う
金融関係法律の
整備に関する
法律案、
銀行持株会社の創設のための
銀行等に係る合併手続の
特例等に関する
法律案及び罰則の
整備のための
金融関係法律の一部を改正する
法律案について
質問を行います。
これらの
法案は、抜本的
金融制度改革、いわゆる
日本版ビッグバンに備え、遅まきながらも、世界に通用する競争的体質の
金融システムをつくろうとする制度
整備の一環ではあり、我が
新進党も、かねてより、独禁法の改正、
金融持株会社の解禁について
主張し、
新進党の
日本再構築宣言の中でも取り上げています。その点から一定の評価はできるものの、あくまで制度
整備の一部がようやくなされようとしているにすぎないものであり、ビッグバンに向かっての
日本の
金融機関と
日本経済が置かれている
現状認識においては、我が党との甚だしい違いがあります。
ビッグバンのフロントランナーと位置づけられた改正外為法の施行まで既に五カ月とないわけでありますが、不便で使い勝手が悪く、コストも高いと言われる
日本の
金融システムや
金融・資本市場をこのままにして来年四月を迎えれば、
日本の
企業や個人は、決済口座や運用資産を、外貨建てはおろか円建てでも、便利でコストが安く、利回りの高い海外の
金融機関に移してしまい、
日本の
金融空洞化は急激に進むと考えますが、まずこの点について総理の見解を、今後の有価証券取引税、取引所税などの
金融関係諸税への対応を、ビッグバンのスケジュール
方針も含めてお伺いいたします。
次に、折しも三洋証券が系列ノンバンクの不良債権の重みで倒産し、総理の日ロ外交のせっかくの成果も
国民に明るさを与えるには至らず、話題は、次なる危機はどこかと、証券、ゼネコンなどの経営不安が取りざたされています。思えば、
住専処理の失敗による不良債権問題の未解決が、今日までの
金融不安、
企業の経営不安をなお増大させているわけですが、地価が再
上昇するまで不良債権を先送りすればよかった従来の手法は、困難の度を増すだけであることは明らかであります。
現在も
金融機関は不良債権の処理を懸命に行っているところですが、相変わらず、これまでの銀行
破綻事案で露呈する、公表と実態の不良債権の乖離が見られますが、この
原因とともに、二十兆円余りとも、あるいは実際は百兆円を超えるとも言われる不良債権の
現状についても明らかにし、この際、法的
責任に
基づく不良債権の早期処理の道筋を明確にすべきときと考えますが、総理の見解をお聞きいたします。
また、
景気の
現状については、二年にもわたり緩やかな回復と唱え続け、さすがに昨今では足踏み状態と言いかえたものの、緩やかな回復でも二年もたてば相当
景気がよくなっていなければならないはずであり、こうした言葉の繰り返しが
国民の実感と乖離し、説得力を失っているばかりか、
日本の先行きに対する悲観論は増すばかりであります。
特に、
日本の繁栄を下支えしてきた中小業者の困難は著しく、町の八百屋さんや家庭の主婦までもが
景気の問題を話題としています。今や
日本丸は豪華客船とは言いがたく、船底に穴があいている状態ですが、それに気づかず甲板でベンチの譲り合いをしているようなありさまでは、まさに民のかまどを見ずということであり、民の心知らずということであります。
ここは、目先の現象にとらわれた近視眼的な
景気対策でなく、行政のリストラと、民間
経済の
活性化に重点を置いた真の
経済構造改革と、
日本経済を潜在的成長軌道へと引き戻すべく、
景気浮揚を優先した思い切った
財政出動を含む
景気対策をどうしてもするべきといま一度考えますが、総理の見解をお聞きいたします。
さらに、
財政構造改革法によるデフレ
予算の次は
増税と大幅な
国民負担増との声も聞かれ、
高齢化社会の進行くの不安などと相まって、これまた先行きの不安感を増していますが、今後、二〇〇三年までの
改革期間中は、
増税と
国民負担の増大のない
財政再建を進め、真の
構造改革へとつなげられるのか、心
もとないところではありますが、この点についても総理の見解をお聞きしておきます。
さらには、泉井石油商による現職閣僚、
自民党幹部を中心とする巨額献金疑惑、野村、第一勧銀等の
金融スキャンダル、税務署汚職、第一勧銀の大蔵検査の最中に、当の検査官が銀行側からゴルフや飲食の接待を受けていたという不祥事などなど、政官財の腐敗は、多くの
国民が、
生活を通じて、
日本の政治、
経済、
社会が不健全なものとなり、深刻な制度疲労に陥っていることを実感し、怒っております。
こうした
日本のリーダーシップヘの極度の不信が、
経済の不況とともに
社会の閉塞感を増幅していることも否めないと考えますが、政治倫理を主とした
日本のトップ層の腐敗について、総理の見解をお聞きいたします。
こうした
国民の心理、すなわちマインドに不安と閉塞感を与える要因を除かずして、
日本の
経済は活況を取り戻し、
日本の
金融界が制度
整備の効果を十分に発揮し、地球規模的な大競争、いわゆるグローバルメガコンペティション時代に生き残ることはできないと考えますが、こうした要因克服のため、総理がいま一度火だるまとなって進める決意があればお聞きしたいと存じます。
さて、これらの
法案が、
金融システム
改革、いわゆる
日本版ビッグバンに備え、
日本の
金融界がグローバルメガコンペティション時代に生き残るための
方策とするなら、いささか不十分という感を否めません。
例えば、
銀行持株会社の同一
企業に対するグループ全体の株式保有制限は、上限を一五%とするということでありますが、
政府は決定を与党協議にゆだね、結局、
自民党二〇%と社民党一〇%の中をとって一五%になったとも聞きますが、いかがでしょうか。
大蔵省の試算によれば、これを超過するのは三菱商事など四社だけであり、このレベルなら株式処分に奔走せず
持株会社を設立てきるといいますが、逆に言えば、既に今の時点で超過するケースがあり、将来、合併、買収でグループ外の
金融機関を傘下にしたり、今後の法
整備により生保を傘下に入れるときには、上限を大きくオーバーし、保有株の調整を迫られることは必至となります。こうしたことでは一五%制限は将来のケースに対応していると言えないと考えますが、大蔵大臣、いかがでしょうか。
また、銀行による過度の産業支配に対する警戒からか、
銀行持株会社を首相の認可としたり、子会社の業務を制限するなど、銀行に対する制約を強くしていると考えられますが、マーケットの変化や
金融技術の革新により、銀行だけがとりわけ資金調達が優位ではなくなっていることからすれば、旧財閥のように独占的に産業を支配する可能性は小さく、これまた国際標準に照らして、銀行への規制をとりわけ強く考える必要はないのではないでしょうか。
また、大蔵大臣が、設置後は
金融監督庁長官でありますが、銀行、保険
持株会社に対し、グループ全体の経営をチェックし、問題があれば経営改善命令を出すということですが、立入検査や経営改善命令の基準が明確ではありません。大蔵省の裁量で、ノンバンクや事業会社の経営に過剰に介入しては
持株会社の自主性を損なうと考えますが、大蔵大臣、いかがでしょうか。
子会社に資産を移して
持株会社に脱皮する通常の営業譲渡方式、いわゆる抜け殻方式では、数十万件の債権についた根抵当権を移すときに、全
債務者の同意を必要とすることや現物出資に際して裁判所選任の検査役調査が必要で、半年もかかる調査
期間中は事実上営業を停止せざるを得ないなどの問題から、
持株会社の設立は、事実上実現不可能となります。
そこで、
アメリカ型のいわゆる三角合併方式を認めていますが、既存銀行がペーパー銀行と合併する際の税の特例
措置がなければ、資産譲渡益課税や登録免許税など数千億もの税
負担がかかり、設立は困難との指摘もあります。この税の特例
措置導入についてはどのように考えるのか、お聞きいたしておきます。
また、連結ベースで効率を極大化していけるのが
持株会社の最大のメリットであり、連結納税制度の
導入なくしては
持株会社の設立は絵にかいたもちであるとの指摘もあります。ディスクロージャーについても連結ベースを求めているのであるからして、将来にわたり、グループ内での税の連結納税制度を可能とすることが必要と考えます。
平成十年度税制改正においては、法人税率の引き下げを念頭に置いた法人税
改革が予想されるところであります。この法人税の
見直し作業の中で、連結納税制度の
導入に向けた検討が
政府税制調査会などで行われているのか、またはこれから年末にかけて検討を行う予定があるのか、その見通しについて大蔵大臣にお聞きいたします。
また、海外における債権
債務及び許認可の継承について、現地当局との交渉に相当の
負担がかかり、
国内の根担保についても消滅銀行の債権を担保しないので、被担保債権範囲の
変更登記が必要であるなどの問題もあります。したがって、既存銀行が存続銀行となり、ペーパー銀行が消滅銀行となるいわゆる逆三角合併方式も認めることはどうでしょうか。
アメリカでは、模範事業会社法で株式交換制度も認められていますが、そうした基準にのっとっていくべきではないでしょうか。この点も大蔵大臣の見解をお求めしておきます。
さらには、今回積み残した、証券会社が
持株会社を設立する際には抜け殻方式をとらざるを得ないという問題は、今後どう対処していくつもりか、お聞きいたしておきます。
金融機関犯罪に対する罰則の強化についてでありますが、そもそも罰則の強化で
経済犯罪を
抑制し、再発防止ができるのか疑問もあり、また人権問題にかかわる刑罰の強化は慎重でなければならないと考えますが、昨今の
金融不祥事や
アメリカ流の国際標準を考えると、罰則の強化も必要とせざるを得ません。
アメリカの場合、OCC、いわゆる通貨監督庁やFRB、連邦準備制度理事会の検査官をだます目的で帳簿や
報告書に虚偽の記載をすると、連邦刑法で、行為者は百万ドル以下の罰金または三十年以下の禁錮に処すとあり、
金融システムは銀行同士の信頼の上に成り立っており、信頼に対する裏切り行為はシステム全体を
崩壊させる危険性がある、こうしたことから、行為者は厳罰に処すべきという考え方が徹底しております。
大和銀行事件などを見ても、
日本ではこうした考えにはほど遠く、この
法案も多分にバランスを重視した裁量性が感じられますが、今後、いわゆる
アメリカ流、アングロサクソン流の国際標準に沿っていかざるを得ないとも考えますが、大蔵大臣、いかがでしょうか。
また、警察も、民事不介入の原則があることも理解しますが、民事事件に潜む、
企業をむしばむ犯罪に積極的に取り組むとともに、
債権回収などに絡む刑事事件に機敏に対応する
方策をとってほしいと考えますが、この点については総理からお答えをいただきたいと思います。
以上で
質問を終わりますが、ぜひ積極的な答弁をお願いいたします。ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣橋本龍太郎君
登壇〕