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1997-11-27 第141回国会 衆議院 法務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十一月二十七日(木曜日)     午前九時三十分開議  出席委員   委員長 笹川  堯君    理事 太田 誠一君 理事 橘 康太郎君    理事 八代 英太君 理事 与謝野 馨君    理事 赤松 正雄君 理事 上田  勇君    理事 北村 哲男君 理事 木島日出夫君       大石 秀政君    奥野 誠亮君       粕谷  茂君    河村 建夫君       古賀  誠君    桜田 義孝君       下村 博文君    谷川 和穗君       谷畑  孝君    西川 公也君       横内 正明君    渡辺 博道君       安倍 基雄君    漆原 良夫君       加藤 六月君    達増 拓也君       福岡 宗也君    枝野 幸男君       近藤 昭一君    佐々木秀典君       保坂 展人君    鴨下 一郎君       園田 博之君  出席国務大臣         法 務 大 臣 下稲葉耕吉君  出席政府委員         法務政務次官  横内 正明君         法務大臣官房長 頃安 健司君         法務大臣官房司         法法制調査部長 山崎  潮君         法務省民事局長 森脇  勝君         法務省刑事局長 原田 明夫君         法務省人権擁護         局長      横山 匡輝君         法務省入国管理         局長      伊集院明夫君  委員外出席者         人事院事務総局         給与局給与第三         課長      川村 卓雄君         総務庁人事局参         事官      中島 秀夫君         最高裁判所事務         総局総務局長  涌井 紀夫君         最高裁判所事務         総局人事局調  堀籠 幸男君         最高裁判所事務         総局経理局長  竹崎 博允君         法務委員会調査         室長      海老原良宗君      ――――◇――――― 委員の異動 十一月二十七日  辞任         補欠選任   中川 秀直君     谷畑  孝君   渡辺 喜美君     桜田 義孝君   西村 眞悟君     達増 拓也君   佐々木秀典君     近藤 昭一君 同日  辞任         補欠選任   桜田 義孝君     大石 秀政君   谷畑  孝君     中川 秀直君   達増 拓也君     西村 眞悟君   近藤 昭一君     佐々木秀典君 同日  辞任         補欠選任   大石 秀政君     渡辺 喜美君     ――――――――――――― 十一月二十六日  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第一九号)  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第二〇号) 同月十一日  少年法の罰則の強化に関する請願山元勉君紹  介)(第三八五号) 同月十七日  組織的犯罪対策法制定反対に関する請願(土  井たか子紹介)(第五五四号) 同月二十五日  組織的犯罪対策法制定反対に関する請願(辻  元清美紹介)(第七二六号)  同(畠山健治郎紹介)(第七八二号)  同(村山富市紹介)(第七八三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十一月十日  組織的犯罪対策法立法化反対に関する陳情書外  一件  (第一〇号)  治安維持法犠牲者に対する国家賠償のための法  制定に関する陳情書  (第二号)  除籍簿、除かれた戸籍の附票等保存期間の延  長に関する陳情書  (第一二号)  裁判所速記官新規採用停止決定の撤回に関する  陳情書  (第一三号) 同月二十六日  在日外国人の諸権利に関する陳情書  (第五一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第一九号)  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第二〇号)      ――――◇―――――
  2. 笹川堯

    笹川委員長 これより会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  本日、最高裁判所涌井総務局長堀籠人事局長竹崎経理局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 笹川堯

    笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ————◇—————
  4. 笹川堯

    笹川委員長 内閣提出裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  まず、趣旨説明を聴取いたします。下稲葉法務大臣。     —————————————  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  5. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を便宜一括して御説明いたします。  政府においては、人事院勧告趣旨等にかんがみ、一般政府職員給与改定する必要を認め、今国会に一般職職員給与に関する法律等及び特別職職員給与に関する法律をそれぞれ改正する法律案を提出いたしました。そこで、裁判官及び検察官につきましても、一般政府職員の例に準じて、その給与改定する措置を講ずるため、この両法律案を提出した次第でありまし て、改正内容は、次のとおりであります。  第一に、最高裁判所長官最高裁判所判事及び高等裁判所長官報酬並びに検事総長次長検事及び検事長俸給は、従来、特別職職員給与に関する法律適用を受ける内閣総理大臣その他の特別職職員俸給に準じて定められておりますところ、今回、内閣総理大臣その他の特別職職員について、その俸給を増額することとしておりますので、おおむねこれに準じて、これらの報酬または俸給を増額することといたしております。  第二に、判事判事補及び簡易裁判所判事報酬並びに検事及び副検事俸給につきましては、おおむねその額においてこれに対応する一般職職員給与に関する法律適用を受ける職員俸給の増額に準じて、いずれもこれを増額することといたしております。  これらの給与改定は、判事補及び五号から十七号までの報酬を受ける簡易裁判所判事並びに九号から二十号までの俸給を受ける検事及び二号から十六号までの俸給を受ける副検事にあっては平成九年四月一日にさかのぼって行い、その他の裁判官及び検察官にあっては平成十年四月一日から行うことといたしております。  また、検察庁法第二十四条の規定により欠位を待つことを命ぜられた検察官に支給する手当期末特別手当を加えることとし、この改正規定は、平成十年一月一日から施行することといたしております。  以上が、裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  6. 笹川堯

    笹川委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  7. 笹川堯

    笹川委員長 これより両案に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田勇君。
  8. 上田勇

    上田(勇)委員 新進党の上田でございます。  きょうは、議題となりました裁判官並びに検察官給与改定法案につきまして、何点か御質問をさせていただきます。  今回の法律改正行政官においては人事院勧告に基づきます給与改定に準ずるということでございますので、特にこれの内容について、大筋について異議があるものではございませんが、内容につきまして若干何点かお聞きしたい点がございますので、質問させていただきたいというふうに思います。  まず、今回の提出された両法案におきまして、行政の方では特別職あるいは指定職の例に準ずる検察官検察では八号以上、また裁判官判事で八号以上ということでありますが、についてはベースアップが一年間凍結という形になっております。これについて、なぜこういう措置をとられたのか。法務省、そして裁判所の方にも、もし同じ御意見であれば結構でございますが、また違う意見があるのであればそれぞれお伺いしたいというふうに思います。
  9. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 指定職俸給表適用を受ける職員につきましては、本年十一月十四日の閣議決定におきまして、危機的状況にある財政状況のもと、総人件費の極力抑制を定めた「財政構造改革の推進について」の趣旨を踏まえまして、国民的課題である行財政改革が推進されている中に、国民世論動向等をも勘案いたしまして、平成十年四月一日から改正を行うこととされたところであります。  裁判官検察官給与につきましては、従来から、これら一般政府職員給与に準じた取り扱いをすることが例になっているわけでございまして、私といたしましては、裁判官検察官方々大変平素から苦労し、時間的にも御苦労の多いことだと思うのでございますし、何とか給与改善に努めるべきだ、このように思いますが、今申し上げましたようなことでございまして、今回も同様の措置を講ずることとしたわけでございます。
  10. 上田勇

    上田(勇)委員 今の大臣の御答弁によりますと、いわゆる今の厳しい財政事情によるというところだというふうに思うのですが、現下のこういう財政の悪化というものの最大責任は、別にこれは検察にも裁判所にもあるわけではなくて、私は内閣行政府にあるということが言えるのじゃないかと思うのです。検察庁はもちろん内閣の一部とは言えますけれども、とはいっても、財政事情について検察にその責任を求めるというのは非常に難しいのじゃないかというふうに思います。  もちろん、行政府の各省庁指定職以上、これは局長とか審議官に該当するクラスの方々でありますので、今のいろいろな国の運営システムを考えれば、予算編成であるとか役所の運営あり方であるとか、一定責任を分かち合ってもらうというのは一定の理解はできるのですけれども、全くあるいはほとんど責任がない裁判官あるいは検察官がそこまで連帯責任というような形でとるというのは、何かどうも納得ができない気がいたします。  連帯責任で巻き込んでベースアップ凍結というのでは、私は、財政の今日ある状況、先ほど大臣危機的というふうにおっしゃいましたけれども状況について、どこに本来その責任があるのか、その責任所在をむしろあいまいにしてしまうのじゃないかという気がいたしますし、また、このところ検察官は、一連のいろいろな経済犯罪であるとか組織犯罪であるとか、大変な努力をされている中ですし、また裁判官も、先ほど大臣からもお話がありましたように、大変多忙をきわめる中での仕事をされている。その士気にもやはり影響してくるのじゃないかというふうに思うわけであります。  これは、国だけじゃなくて、企業のいろいろな違法行為であるとか乱脈経営記者会見なんかを聞いていましても、どうも刑事責任をあいまいにして、その責任所在というのが何となくあいまいもことなってしまっているケースが何か多いのじゃないかという感じがいたします。  もちろん、これまでの慣例であるというのはわかりますが、何というのでしょうか、極めて日本的な、責任所在を分散して、だれに本当に責任があるのかということがわからなくなってしまうのではないか。私は、そういう手法というのは、これまではいずれにしても、では財政危機にある責任というのはどこにあるのか。これはやはりあくまで内閣にあるわけであって、そういった責任をあいまい、分散化してしまうというような考え方というのは、今後の検討課題として改める方向で御検討いただければというふうに思うのですけれども大臣、御見解があれば伺いたいというふうに思います。
  11. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 なかなか実態を踏まえた御質問でございますし、また、私どもとしては、今の御質問を温かく受けとめさせていただきたいと思います。  昨今の世界経済情勢に照らしますと、司法の場において法的な紛争事件を迅速に解決するということですとか、あるいは検察においてさまざまな形態の違法行為に適切に対処する必要性というのは、いよいよ高まっているわけでございます。そういうふうな中でございますけれども、今申し上げましたように、一般政府職員に準じまして、現在その給与体系の中で、裁判官検察官給与も準じて対応されているということでございます。  行政に独立して司法あり方をどういうふうにすべきかという議論議論としてあるわけでございまして、例えば、自民党等におきましても、そういうふうな角度から調査会を設けて、司法全体の問題を取り上げようというふうなことで検討されているという話も私ども伺っているわけでございますが、やはり行政改革ということがいろいろ言われておりますけれども、全体の意味で、今おっしゃったようなことも含めて、司法のあるべき姿なりなんなりというものも検討すべき時期に 来ているのではないだろうか、このように思います。  御指摘のようなことも、そのような大きな考え方の中で議論してまいりたいと思いますが、現実の問題として、現状は今申し上げましたとおりでございまして、今回の給与改定、私どもとしては、やむを得ないことでございますし、よろしくお願いいたしたいという気持ちでございます。
  12. 上田勇

    上田(勇)委員 今、大臣の御答弁をいただきましたけれども、やはりこれから本当に、横並びというのですか連帯責任、そういうような形で、みんなが責任を分かつ、それは美風なのかもしれませんが、やはりこれからの時代、そういったところの責任所在というのはもっと明確に考えていく必要があるのではないかというふうに思いますので、ぜひとも、このことだけではありませんが、そういった観点も含めて、ひとつ今後考慮していただければというふうに考えるわけであります。  次に、ちょっと裁判所の方にお伺いしたいのですが、今、経済情勢というのはまことに憂慮すべき事態でありまして、金融機関破綻が相次いでおります。残念ながら、企業の法的な破綻処理も含めまして、これから非常に重要な民事事件民事案件というのがやはり増加するのではないかということは予想されるわけであります。またさらに、今規制緩和も進めておりますけれども、これがさらに進めば、経済活動社会活動、そういったものへの行政のこれまで若干行き過ぎた介入といったものが是正されていけば、そうした場合に、何か当事者間で争い事が起きる、そういった場合に、紛争を公正でなおかつ迅速に解決していく、そういった司法システムというものがやはりどうしても必要になっております。  私の認識としては、残念ながら今の司法システム、特に裁判に非常に長期間を要するというような実態もありますし、国民利益が十分に守られていないという状況なのではないかというふうに思うのですが、この辺、現状、それから今後の予測も含めまして、裁判所の方にその辺の認識をお伺いしたいというふうに思います。
  13. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 裁判所の方に持ち込まれます事件動向は、いわゆるバブルがはじけたと言われますころから民事事件が非常にふえてきておりまして、特に、その事件増大都市圏あるいは大都市部を中心に起こっているというのが特徴でございます。  今後の事件動向、どういうふうに推移していくかなかなか読みにくいところがございますが、委員指摘のような社会情勢を背景にかんがみますと、恐らく今後とも、いろいろな法的紛争を解決する手続として裁判手続を利用したい、そういう国民司法に対する要望といいますか、そういうものはますます強くなってくるだろうというふうに我々の方でも考えているところでございます。  したがいまして、今後、事件数あるいは事件内容といいますか、そういう面でますます裁判所にかかってまいります事件の負担は重くなるのではないかと思っております。今後、我々裁判所側としましては、こういった国民司法に対する要望にきちんとこたえていけるような、そういう裁判運営というものを何とか工夫していく必要があるだろうというふうに考えているところでございます。
  14. 上田勇

    上田(勇)委員 現在も裁判所の方で大変な御努力をされているということについては十分承知いたしますが、これは、もちろん今の与えられている枠組みの中で最大限の努力を尽くすと同時に、やはりシステムとしてもっとちゃんと機能できるように、そういう制度的な拡充もあわせて必要であるというふうに私は思うわけであります。  それで、先ほど私は、今の司法システムというのが必ずしも十分に整っているとは言いがたいというふうに申し上げたのですが、やはり早急に、もっといろいろな面での整備というのは急がれていることだというふうに思います。これは裁判所だけではなくて、今は検察の方でも、最近のいわゆる総会屋への利益供与事件、これは検察が大変な対応をされている中でそういう経済犯罪あるいは組織的な犯罪などが顕著になっていることを考えれば、検察それから裁判のそういうシステムをもっともっと拡充していかなければいけない。これは本当に緊急な課題であるというふうに私は認識しております。  今回は、人件費ということでありますが、ここで予算上、財政事情理由人件費を値切っているのですが、私は、これから今もっと整備拡充していかなければいけない司法システムを、財政が苦しいからここはちょっとできないのですというような、そういう発想はぜひやめていただきたいというふうに思います。特にこれから、先ほど裁判所の方からも話があったように、国民裁判の場で解決、処理していくことを非常に求めていくことでしょうし、特に、難しい、また重大犯罪検察の役割も重要になってくるというふうに思っています。  そういった意味で、ぜひとも、国民利益を守っていくという観点から、仮にもそういう財政事情という理由で、これからの司法体制拡充整備といったことに対して、今そういう方向で着実に進んでいるのだとは思うのですが、それを逆戻りさせるというようなことがあってはならないというふうに私は思います。ひとつその辺、大臣に御見解を例えればというふうに思います。
  15. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 司法制度をどういうふうに持っていくかというのは、これは極めて重要な問題でございますし、司法権というのは行政権から独立しているわけでございます。司法制度そのものの抱えている問題はたくさんございます、裁判官の数にいたしましても、それに対応いたします検察官の数にいたしましても。それから、財政が厳しいから云々ということではなくて、やはり今、司法というのは国の重要な機能の一環でございますので、その辺のところをよく十分認識しながら対処してまいりたい、このように思います。
  16. 上田勇

    上田(勇)委員 今御披露いただきました大臣の御決意に従いまして、ぜひよろしくお願いしたいというふうに思います。  それで、従来から、やはり今の司法システムのこういうところをもう少し変えていかなければいけないというような、日弁連であるとかいろいろなところからも御指摘がありますが、その最大で、なおかつもう前から言われているのが、やはり、検察裁判官人員の問題であるというふうに私は思います。これまでも増員についてはそれぞれ努力をされてきているということは認識しておりますが、やはりもっと大幅な増員が必要なのではないかというふうに私は思います。その意味で、これまでの取り組み、それから今後の増員計画につきまして、検察並びに裁判所、それぞれから御見解を伺いたいというふうに思います。
  17. 原田明夫

    原田(明)政府委員 お答え申し上げます。  法務当局といたしましては、検察が近時の犯罪情勢の変化に適切また迅速に対応して各種の事件捜査処理を適正に行うとともに、その公判裁判維持でございますが、その公判を迅速に終結させて適正な裁判結果を実現することを可能とするために、検事増員を近時お願いしてまいりました。  最近二年間を見ますと、平成八年度では検事増員を三十五名認めていただきましたし、また平成九年度では三十四名ということで、この二年間だけで六十九人の検事増員が実現されたわけでございます。また、平成十年度予算概算要求におきましても、さらに三十七人の検事増員要求させていただいているところでございます。  最近の行財政改革の中で、公務員一般にその数を厳しく抑制するということで、各省庁、また法務省内部におきましても純減がやむを得ないというような状況の中で、この二年間で検事六十九人の増員ということは、先ほどの委員の御指摘の関連で考えてみましても、かなり思い切ったといいますか、計らいがなされたものというふうに私どもとしても受けとっているわけでございます。  今後も、厳しい行財政事情に配慮しつつ、犯罪動向とか検察業務量推移等を踏まえまして、適切に対処してまいりたいと存じます。
  18. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 裁判官増員の関係でございますが、先ほど来申し上げましたような民事事件の急増という動向を受けまして、裁判所でもこのところ毎年着実に裁判官増員を図ってきておるところでございまして、数字で申し上げますと、最近五年間、平成五年からことし平成九年までの五年間でございますが、その合計数でいいますと、六十四名の裁判官増員してきております。来年度の概算要求におきましても、二十名の裁判官増員をお願いしているところでございます。  五年間で六十四名といいますのは、これはかなりの規模の庁の裁判所をつくったと同じような効果のある増員数でございまして、例えば身近なところでいうと、横浜の地方裁判所の本庁というのは大体裁判官数が四十数名という規模でございますので、あの程度の規模の庁を一つ半新しくつくったというぐらいの規模になるわけでございます。  ただ、今後の事件動向、先ほど来委員の方から御指摘がございましたように、ますます質量ともに重くなってくるだろうと思っておりますので、今後とも、事件動向を十分見ながら、さらに必要な人員の確保に努力していきたい、かように考えております。
  19. 上田勇

    上田(勇)委員 増員努力につきまして検察裁判所の方からお話がありました。その努力については大いに多とするところでありますけれども、残念ながら、まだまだ裁判に要する期間が長いというのが実態でありまして、やはり一般国民からはなかなか、裁判に持っていくと時間がかかって、結局は、当初目的とする利益がやはりそこではかなえられないという現実があるのも、これまた事実であるというふうに思います。  もちろん、行財政改革という話が先ほどありましたが、国民利益を守っていくための司法システムというのは、これは行財政改革、国の予算全体から見ればこの検察ないし裁判所予算というのはもうごくごくわずかなものでありますので、もっと重要な国民利益を守っていくという意味からは、そういう制約にとらわれずに、ぜひともその整備拡充、または人員増員に努めていただきたいというふうに私は思うわけであります。  あと何点かお願いしていた点があるのですけれども、時間が余りなくなりましたので、最後にちょっと一つだけお伺いしたいのです。  先般、法曹三者で、司法試験あるいは法曹養成制度について合意がなされました。法曹人口をふやしていこう、そういう方針については、私もこれまで述べてきましたように大賛成であります。その中で、司法修習期間、これを二年から一年六カ月に短縮するということも含まれております。これについては、いろいろな方面から依然としてやはり異論があるということは私も承知しているところであります。この措置について、予算上の制約が主な理由だというような話も伺ったのですが、いやしくも、そういうふうな理由で短縮するということはやはりあってはならないというふうに私は思うわけでありまして、そういう意味で、この二年を一年六カ月に短縮したという、その理由、また、こうした結論に至るまでの議論の経緯について御説明をいただければというふうに思います。
  20. 山崎潮

    ○山崎(潮)政府委員 お答え申し上げます。  司法の機能を充実いたしまして社会の法的ニーズにこたえていくために法曹人口を速やかに増加させていくということは喫緊の課題であるというふうに認識をしております。  この司法修習制度につきましては、現行制度の目的と、この制度がこれまでに果たしてきました役割を踏まえまして、法曹三者、いずれの道に進む者についても、法曹として国民の負託にこたえ得る水準を充足する統一修習を行う、こういう原則を維持いたしますとともに、時代の要請に適応した法曹養成制度を構築するという観点から、社会に対する広い視野を持ち、高い見識と柔軟な思考力を備えた二十一世紀を担うにふさわしい法曹を養成するための工夫と配意、これが必要であるというふうに考えられるところでございます。このような観点に立ちまして、この喫緊の課題にこたえるために、新しい修習制度というものを昨年七月から本年十月まで法曹三者で鋭意検討してまいったところでございます。  その結果といたしまして、これまでの指導上のノウハウの活用とか、あるいは科目間の重複を回避するとか、それから時間割りの編成を工夫するというような効果的な、また効率的なカリキュラム編成を行う、こういうことが可能になるということになりまして、そういう点から、一年六カ月の修習期間で十分に国民の負託にこたえ得る水準を充足し、時代の要請に適応した法曹養成を行うことができるということの結論に達したわけでございます。これが第一点の理由でございます。  なお、司法修習生につきましては、研修所の修習以外に、各実務庁でございます地方裁判所検察庁において修習を行うわけでございますが、その受け入れの実情を見てまいりますと、現行の裁判所検察庁への修習生の受け入れ体制はほぼ限界に達しております。適正な修習環境を確保した上で、司法試験合格者を年間千人程度に増加させるという喫緊の社会的要請に速やかにこたえるというためには、現在実務修習期間におきまして二期の修習生が四カ月ダブっているわけでございますが、このダブりはぜひ解消しなければ、やはりできない、こういうような実際的な理由と二つあったわけでございます。  この両者が相まって、二年から一年六月へという選択をしたわけでございまして、決して予算上の理由とか、そういうことで行ったわけではないということを申し上げたいと思います。     〔委員長退席、八代委員長代理着席〕
  21. 上田勇

    上田(勇)委員 まだ何点かお聞きしたい点もあるのですけれども、時間でありますのでこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。
  22. 八代英太

    ○八代委員長代理 次に、漆原良夫君。
  23. 漆原良夫

    ○漆原委員 私は、本年の五月二十八日の法務委員会で、当時の法務大臣でございました松浦法務大臣法律扶助のことに関して質問をさせていただきました。若干その部分を引用したいと思います。  憲法三十二条では「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」こう規定しておりまして、これは、国民の基本的人権の一つとして裁判を受ける権利を保障しておるわけでございます。   しかし、現実には、裁判を遂行するためには相当高額な経済的な負担が必要となります。そのために、法的には保護されるべき権利が存在しても、経済的な理由から訴訟の遂行を断念し、泣き寝入りを余儀なくされるケースが非常に多いというのが実情でございます。これでは、憲法三十二条に保障されている裁判を受ける権利というのは絵にかいたもちになってしまいます。また、資力のある人は五人でも十人でも弁護士を抱えて裁判をやっておりますけれども、資力のない人は一人の弁護士に依頼することもできない。これはやはり、法のもとの平等を保障した憲法十四条の精神に反するのではないか、こう考えます。経済的な余裕がない人も安心して裁判制度を利用できるように、国家がこれを援助していくような制度を確立しなければならないと私は考えております。そして、このような制度が確立されてこそ、日本が本当の意味で民主主義国家となり、また法治国家になるものと確信しております。   その意味で、私は、法務大臣が所信表明で述べられました、「法律扶助制度は、国民裁判を受ける権利を実質的に保障するために極めて重要なもの」であるというこの御認識には、高い評価と敬意を表するものでございます。現在、財政難の折、幾多の障害があろうかと思いますが、どうか松浦法務大臣の手でこの制度を何としても確立し、なし遂げていただきたい、 こう考えます。改めて、大臣の御決意をお聞かせいただければありがたいと思います。 こう御質問申し上げました。法務大臣はこうお答えされております。   この問題、委員指摘のとおりでございまして、全く同感でございます。いろいろ問題点がたくさんございまするけれども、段階的にこれを乗り越えて、少なくとも来年度にはある程度、先生方によくやったと言われるように努力をしていきたいという気持ちでいっぱいでおるということを申し上げておきたいと思います。 というふうな御答弁をいただいておりますが、新しく法務大臣に就任されました下稲葉法務大臣に、この法律扶助に対するお考えと、それから決意をお尋ねしたいと思います。
  24. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 お答えいたします。  松浦前法務大臣が述べられたことと私も全く同感でございます。平成五年の六月でございますか、当委員会理事会の申し合わせ等々を受けまして、平成六年の十一月に法律扶助制度研究会なるものが発足いたしまして、毎月一回、最近は二回ぐらいやっておるようでございますけれども、というふうなことで検討を重ねてまいっております。学者先生あるいは日弁連の方々あるいは最高裁、法務省それから法律扶助協会、こういうふうな方々がメンバーでおやりになっておられますし、非常に重要な制度であろうということを承知いたしております。本年度中にその検討の内容の取りまとめをいたしたいというふうなことで答弁いたしておるはずでございますが、私もそういうふうな気持ちでおります。
  25. 漆原良夫

    ○漆原委員 法律扶助制度の導入、確立については、積極的な方向で進めているという趣旨の御答弁と受け取らせていただきます。  今申されました平成六年十一月に法律扶助制度研究会が発足をされて、法務省、最高裁、日弁連、法律扶助協会、学者などが構成員として、日本の司法制度に適合した望ましい法律扶助のあり方について調査研究をされておると聞いておりますが、現在における進捗状況はどんなふうになっておりますでしょうか。
  26. 横山匡輝

    ○横山政府委員 お答えいたします。  ただいま委員指摘のとおり、法律扶助制度研究会は平成六年十一月に発足いたしまして、これまでにおおむね月一回のペースで研究会を開催しております。同研究会におきましては、法律扶助の需要、諸外国の法律扶助制度の実情について調査研究を行いますとともに、法律扶助制度の全般にわたりまして、我が国の法律扶助制度の現状と問題点及びそのあり方を研究し、現在は研究会報告書の取りまとめを行っているところでありまして、平成九年度中には研究結果を得たい、そのように考えております。
  27. 漆原良夫

    ○漆原委員 漏れ聞くところによりますと、現在、法律扶助協会が行っています事業のうちに、刑事被疑者弁護援助それから少年保護事件の付添援助、これについては、新しい制度では法律扶助の対象から外されるというふうに聞いておりますが、その辺はいかがでしょうか。
  28. 横山匡輝

    ○横山政府委員 お答えいたします。  法律扶助制度研究会の研究目的には、刑事に関する問題は含まれておりません。したがいまして、刑事に関する問題、それからただいまお話しされました少年保護事件、これも少年に関する刑事事件の特別手続であると考えております。そういうことで、研究会の検討対象には含まれていないという理解でおります。
  29. 漆原良夫

    ○漆原委員 刑事に関する部分を省いた、民事に関する部分に限ったと今おっしゃられましたですね。それは、どうしてそういうふうになったのでしょうか。何か理由があって、刑事に関する部分は法律扶助の対象にしなくていいのだ、民事だけをやればいいのだというふうにお考えになったその理由は、一体、どういうところでしょうか。
  30. 横山匡輝

    ○横山政府委員 お答えいたします。  もともと、法律扶助は財団法人法律扶助協会で行ってきたところでございますが、これまでも国は民事法律扶助につきまして長い間にわたりまして補助金を交付して民事法律扶助の事業にそういう形でかかわってきたわけでございますけれども、やはり国民裁判を受ける権利を実質的に保障するという観点から、当面、その流れの中でまだ民事法律扶助自体が十分ではないというところがございますので、まず民事法律扶助の充実について検討すべきであるというところから、そういう従来の経緯また現状等の認識から、この研究会におきましては刑事に関する問題は外されたのではないか、そのように理解しております。
  31. 漆原良夫

    ○漆原委員 刑事被疑者弁護活動、これは起訴前の弁護ということなのでしょうけれども、被疑者が捕まって拘束された場合、非常に不安な状態になる。そこに弁護士が行って、いろいろなアドバイス、いろいろな事情を聞く、それは非常に重要な弁護活動だと思うのですね。身柄を拘束されているわけですから、そこから誘導による供述が始まったり誤導が始まったり、それが、裁判になった場合には誘導された供述がそのまま証拠になって出てきて、それを覆すのは非常に難しいという実態があります。また、それをもとにして判決がなされれば誤審のもとにもなるというふうに私は考えておるのです。  起訴前の弁護活動というのは、多分これは国選弁護の対象にはもちろんならぬと思うんですね。そうすると、そこにおける被疑者の人権というか権利というか、それは無視されて、そのまま放置されていいというふうにお考えなんでしょうか。
  32. 横山匡輝

    ○横山政府委員 そのようには考えておりません。
  33. 漆原良夫

    ○漆原委員 いや、そのように考えていないとおっしゃっても、裁判を受ける権利を実質的に保障するために今の法律扶助制度をつくろうと考えていらっしゃるわけですから、やはり経済的な余裕がなければその段階で弁護士を依頼することもできない。そうすると、結局それは、その人たちの権利は起訴されるまでは守れないという結果になるわけですね。そうでしょう。  ですから、経済的な資力の有無にかかわらず、裁判を受ける権利、人権の保障をしていこうというのであれば、その一番大事な初動弁護活動に光を当てて、そこをきちっと法律扶助の対象としていかなければ制度としては十分でないと僕は思いますが、その点はどうでしょうか。
  34. 横山匡輝

    ○横山政府委員 お答えいたします。  刑事被疑者弁護及び少年保護事件の付添人に対する国庫補助の問題、これにつきましては、刑事被疑者弁護制度のあり方あるいは少年審判制度のあり方にかかわる問題ですので、これにつきましては、刑事被疑者弁護制度のあり方あるいは少年審判手続構造全体の中で検討されるべき問題、そのように理解しております。
  35. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 お答えいたします。  今、法律扶助研究会のお話が出ました。平成六年に設立されて今日まで来ているわけでございますが、その発会のときに、民事面だけに限るか刑事面も含めるかというふうなことでいろいろ議論がございまして、そして、いろいろ議論の末に、この研究会は刑事の問題は含まないというふうなことで発足されたという経緯がございまして、ただいま政府委員から話しているようなことだろうと思うのでございます。  したがいまして、今御質問の点は、年度末に検討結果の一つの結論が出ますけれども、それとは別個の問題としてやはり議論すべき性格のものだと思いますし、それから、今お話しのような問題、いわゆる刑事被告人になる前の逮捕被疑者等々の弁護の問題は、その問題とは別にまた大きな問題として議論しなくちゃならぬことだと思いますし、私どもも十分関心を持っておるということを申し上げておきます。
  36. 漆原良夫

    ○漆原委員 そうしますと、今の研究会の中ではとりあえず含まれないんだ、今の研究会は民事援助を中心にやっていくんだけれども、それが、答申というのでしょうか、でき上がった後に、法務省としては、全体として場合によっては刑事被疑者弁護も少年付添事件法律扶助の対象にするかどうかは考えていく、そういうゆとりというか、 そういうつもりはあるんだというふうにお伺いしてよろしいんでしょうか。
  37. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 現在の研究会を設置するときにはいろいろ議論があって、刑事問題は取り上げないということで合意をされて発足したというふうに聞いております。  したがいまして、その問題が、一応の決着を本年度中に出すというふうなことでやっているわけでございますから、それから後、今御指摘のようなことも我々は視野の中に入れて検討すべき問題であるという認識でございます。
  38. 漆原良夫

    ○漆原委員 法務大臣のそのお考えを聞いて安心しました。  ぜひともこの研究会とは別に、刑事被疑者弁護、合弁護士会でやっておりますけれども、大変被疑者にとって喜ばれている実情でございますので、ぜひこれも法律扶助の対象にしていただきたいというふうに強く要望しておきます。  それから、もう一つは、少年事件の付き添いでございますけれども、本年九月十八日に調布駅の南口事件の最高裁の判決がおりました。  これはどういう事件かといいますと、調布駅の南口で一九九三年三月一日に集団暴行・傷害事件が発生して、これに関与したということで五人の少年が逮捕されて、東京家裁八王子支部が、五人の少年たちが非行事実ありとして中等少年院に送致されたわけですね。少年がその後、冤罪であるとして、事実誤認を理由に東京高等裁判所に抗告をしました。その結果、抗告が入れられて、非行事実はないということで東京家裁八王子支部に差し戻された。その後、検察官が東京地裁八王子支部に起訴したということから、その起訴の有効性が問題となりまして、本年の九月に、少年に不利益な処分をしてはならない、二度目の処分が不利益であってはならないという原則に基づいて、本件起訴が違法、無効であるというふうに確定した事件でございます。これは、事件から四年半たってようやく少年たちの冤罪が確定したわけでございますけれども、この間の付添人、弁護士の努力というのは大変な努力だったと思うのですね。  少年事件において事実関係を明確にするというのは大変重要な仕事でありまして、事実関係が明確になってこそ初めて少年の処分が決まっていくわけですから、その点、弁護士である付添人の仕事というのは僕は大変重要であろうかと思うのです。ここにやはり法律扶助の光を当てていかないと少年たちの権利は守られないのではないかなというふうに思いますが、ぜひこれも、先ほどの起訴前の弁護活動と同じように、法律扶助の対象としていただきたいということを法務大臣に改めてお願いをしておきたいと思うのですが、いかがでございましょうか。
  39. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 御承知のとおりに、現在はそういうふうな措置がとられていないわけでございます。  被疑者弁護に対する公的扶助の問題、これは先ほど申し上げましたように、今おっしゃるような問題も当然検討の中に入るべきものだとは思いますが、具体的にいろいろ検討いたしてみますと、さて、一万六千名いらっしゃいますけれども、その弁護士さんが全国的にそういうような形で対応できるのだろうかどうかというふうな問題等々もございましょう。あるいは、そういうふうな事務をどこで行うのか。今、国選弁護人につきましては裁判所の方でお取り扱いいただいていますけれども、どこで具体的に扱われるのだろうか等々、いろいろな問題があることを私は承知いたしております。  だから、そういうふうな問題も含めまして、私、先ほど広い意味で視野の中に入れて検討させていただきますということを申し上げたわけでございますので、御了解賜りたいと思います。
  40. 漆原良夫

    ○漆原委員 扶助の方法でございますけれども、今の研究会においては、償還制、給付制、一部負担制が論じられていると聞いておりますが、方向としてはどうも原則償還制になるような方向で動いているのではないかなというふうに感じておりますが、法務大臣は、どうでしょうか、扶助の方法としてはどういう扶助が望ましいというふうにお考えになられますでしょうか。
  41. 横山匡輝

    ○横山政府委員 私の方から答弁させていただきます。  ただいまお話ありました償還方法につきましては、現在、法律扶助制度研究会におきまして、償還制、給付制等の利用者の負担のあり方について幅広く調査研究が行われ、両制度の利害得失等も分析されているところでありまして、例えば、納税者の理解という観点から償還制を主張する意見や、利用者の利便の観点等から給付制を主張する意見等が示されております。  法務省としましては、研究会の報告を踏まえて適切に対処してまいりたい、そのように考えております。
  42. 漆原良夫

    ○漆原委員 イギリスでは、負担金の負担を伴わない法律扶助の受給者が九六年度で全体の八六%になっている、八六%の人たちが償還しないで法律扶助を受けている、こういうことを聞いております。  イギリスでこういう制度、八六%、ほとんどの人が償還しないでいいという、そう考えるようになった根拠、法律扶助に対する思想的根拠はどんなものなのか、お調べになったでしょうか。
  43. 横山匡輝

    ○横山政府委員 お答えいたします。  法律扶助制度研究会においては、今お話に出ましたイギリスの制度等も含めて調査はいたしております。
  44. 漆原良夫

    ○漆原委員 いや、どういう思想的根拠に基づいてそういう全体受給者の八六%の人が償還しないでいいというふうな制度にしてあるのかという理由を聞いておるのです。
  45. 横山匡輝

    ○横山政府委員 ただいまお話に出ましたイギリス、あるいはその他の国を含めまして、そういう諸外国におきましては、法律扶助に関する法律制定して多額の国庫支出を行っておりますけれども、これらの諸外国におきましては、弁護士強制主義、あるいは弁護士費用の訴訟費用化等を初めとする司法制度、あるいは訴訟事件数などの法律扶助制度を取り巻く状況が異なっておりまして、単純には比較できないというところがあるかと思います。  そのようなところから、我が国の法律制度を諸外国のものと比較するに当たりましてはやはり種々の事情を考慮する必要がある。そういう観点から、法律扶助制度研究会におきましても諸外国の実情について幅広く調査研究を行っている、そういうところでございます。
  46. 漆原良夫

    ○漆原委員 お答えになったようでお答えになっていないようで、全然わからないのですが……。  法律扶助については、武器平等の原則というのでしょうか、デュー・プロセスの中でとらえて武器平等にしてやらなければ、本当の対等な関係にならなければ戦えないのだという、また公正な裁判ができないのだ、だから資力のない人にはきちっと武器を与えるという、そういう思想があると僕は聞いておるのです。もう一つは、国家がお金がないなら恩恵的に援助をしてやろうじゃないかという、こういう発想もあると聞いておるのです。  やはり、デュー・プロセスの中でとらえた場合にはなるたけ多くの人に給付をしようという発想になるでしょうし、恩恵として与えるのであればこの程度でいいじゃないかというふうになるのでしょうし。イギリスの場合どっちですか。日本の場合はどうあるべきだと思いますか。
  47. 横山匡輝

    ○横山政府委員 お答えいたします。  そのあたりも含めまして、我が国の制度がどうあるべきか、まさにこれが今研究会で鋭意検討され、あるいはよりよき法律扶助制度の実現に向けて今研究しているところでございます。したがいまして、私どもの口から今具体的な内容についてどういうのが好ましいというような点についてお答えするのは差し控えさせていただきたい、こう思います。
  48. 漆原良夫

    ○漆原委員 研究会の中でどんな議論がなされているんでしょうか。イギリスの制度も研究されたということでしょうけれども、その思想的背景に ついて研究会の中では、どのようにイギリスの制度を把握し、日本はこういうふうにいこうというふうに討論されていると思うのですが、どんなふうな討論がなされているか、お答えいただきたいと思います。
  49. 横山匡輝

    ○横山政府委員 お答えいたします。  具体的なところまでちょっと御説明できないところがございますけれども、それぞれの国の制度を今調査して、その実情を踏まえてまたいろいろ研究しているというところでございます。
  50. 八代英太

    ○八代委員長代理 質問者に的確に答えないと、時間がむだになりますからね。
  51. 漆原良夫

    ○漆原委員 この点は、もう結構でございます。調査結果が出てから、また検討したいと思います。  私は、できるだけ多くの人に憲法の保障を、自主的にこれを保障する制度というふうに大臣もおっしゃっているわけですから、本当にだれもが利用できるような制度にぜひ広げてもらいたい、こう思います。  本当に、最低限でしょうけれども、生活保護を要する水準にある国民について、これは保護世帯じゃなくて、生活保護を要するという水準にある国民については、訴訟等の結果、金銭的成果を得た場合以外には、原則として償還義務を課さない、このくらいのところまでは何とかレベルアップをしてもらいたいと思うのですが、大臣、いかがでしょうか。
  52. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 法律扶助制度につきましては、実は委員御承知のとおり、年々国の予算もこういうふうな財政状況の中ふえているのは事実でございます。本年度は、たしか四億三千万ぐらいですね。だから、トータルでいきますと数十億まで来ていると思います。  今お話しのように、償還を原則としてやっているようなことでございますね。その辺の実態、今お話しのように、生活保護を受けている人との兼ね合いにおいてどうかというようなことも私ども見てまいりますと、今の実態はそれより若干上のところまで見ている。ただ、先生の意見と違うのは、それは償還を前提としているというところが違うわけでございますがね。  その辺のところを踏まえまして、研究会でもいろいろ御検討いただいていることだと思いますので、その検討の結果を待ちたい、このように思います。
  53. 漆原良夫

    ○漆原委員 それでは、検討の結果を得た上で、またいろいろ議論をさせていただきたいと思います。  以上で終わります。ありがとうございました。
  54. 八代英太

    ○八代委員長代理 次に、北村哲男君。
  55. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 民主党の北村でございます。  私は、今回の二法案については、一応賛成の立場で御質問をいたすわけでございます。  ただ、大きい意味で、裁判官あるいは検察官給与がなぜ人勧に基づく一般職給与と横並びにならなくちゃいけないんだろうかということと、今回、財政問題ということで一年間据え置きを指定職以上の人はされておるわけですけれども、それが、比較をしてみるとほとんど司法部の人たちにしわ寄せが来ているという問題があるのではないかという問題。そして最後には、司法部、特に裁判所検察官給与というのはもっと独自の体系でつくるべきではないだろうか、そういう三点から質問をしていきたいと思います。  今回の法案理由説明によりますと、政府においては、人事院勧告趣旨にかんがみ、一般政府職員給与改定を認め、その一般政府職員の例に準じて、裁判官検察官給与改正する措置を講ずるというふうに先ほど言われました。これは既に何十年もの慣例、恒例というようになっているようですけれども、改めて、なぜ裁判官あるいは検察官給与体系一般職員の給与体系に準ずるのか、その根拠、理由について伺いたいと存じます。  と申しますのは、人事院勧告制度は一般の公務員の労働基本権制約の代償措置として存在するのに反して、裁判官検察官給与体系は決してそういうものではないというふうに思います。代償措置という根拠はないと思うのです。  また、裁判官あるいはそれに準ずる検察官給与体系は、司法の独立の観点から一般の公務員とは別に考えるべきであって、それにもかかわらず、給与だけに関しては、人事院勧告のもとに一律横並びというふうな感じというのがなかなか納得できないと私は考えておるわけですけれども、そのあたりについての納得がある説明をいただきたいと存じます。
  56. 山崎潮

    ○山崎(潮)政府委員 お答え申し上げます。  まず、一般職給与法でございますが、これが裁判官検察官に準用される根拠でございますけれども、これは、裁判官報酬等に関する法律、今御審議いただいておりますが、この九条、十条に根拠がございます。また、検察官につきましては、検察官俸給等に関する法律の一条に根拠がございます。  いずれにおきましても、裁判官及び検察官給与につきましては、それぞれ一般職職員給与に関する法律等適用を受ける職員の例に準じた取り扱いによることとされているわけでございます。これが根拠になっているわけでございます。
  57. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 私は法律上の根拠を聞いたわけじゃなくて、合理的根拠があるのか、その法律について。そうなると、その法律そのものに合理的な根拠があるだろうかということになるのですが、しかし法律云々を言うわけにはいきませんけれども法律の根拠というよりも、私が言ったような、裁判官給与体系というのは、そういう準ずるという法律があるにしても、もっと別の根拠を持ってその法律ができているはずだというふうに思うわけですけれども、そのあたりは再度聞いてよろしいでしょうか。
  58. 山崎潮

    ○山崎(潮)政府委員 実質的な根拠でございますけれども、確かに裁判官検察官給与制度につきましては、一般職とは若干違う点がございまして、責任の重さ、職責の特殊性、さまざまな要素があるわけでございます。そういうものをある程度反映させるという点が当然必要になるわけでございますが、これは確かに一般給与に準拠して定められておりますけれども、その中でも、ある程度の格差を保ちながら優位な位置づけがされているという点では配慮がされているわけでございます。  しかしながら、同じキャリアシステムのようなシステムをとっている公務員と、裁判官検察官、そういうものにつきましては、やはり給与全体の中でバランスをとって考える必要があるという要請もございます。そういう点も考慮いたしまして、やはり優位を保ちながらでもバランスをとって構築していく、こういう思想に基づいているものでございます。
  59. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 ただいまのところはそういうふうにお伺いしておきたいと思います。  ところで、ことしの八月四日に、いわゆる人事院勧告なんですけれども、人事院から立法府、すなわち総理大臣及び衆議院、参議院議長あてに二つの文書が出されました。一つは「報告」という書面であり、もう一つは「勧告」、いわゆる人事院勧告という書面でありますが、1の「報告」を見ますと、これは専ら一般職職員の職業環境とかあるいは給与状況についての調査報告であって、2の「勧告」は、その報告書を根拠にした給与改定の勧告であります。  それで、その一の「報告」の中には、例えば「新たな時代に対応した人事管理」とか、あるいは「高齢者雇用制度の検討」など、裁判官とか検察官の職業環境には必ずしもそぐわない内容のものもあるわけです。こうした報告や勧告がベースとなった給与体系に本件の法案が準ずるということは、同じ思想が裁判官とか検察官給与体系の中の思想的背景になっているのではないかということになるのじゃないかと思いますけれども、そのあたりはいかがでしょうか。     〔八代委員長代理退席、委員長着席〕
  60. 山崎潮

    ○山崎(潮)政府委員 ただいま御指摘の点、さまざまな要素はあろうかと思いますけれども、先ほ ど申し上げましたように、一般職給与考え方、それに準拠してということでございますので、必ずしも全部そのとおりということではございませんが、基本的なところにつきましては、同じ国家の一員として働く立場といたしましては、そう大きな違いはないということから準拠させていただいているわけでございます。
  61. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 その中に、また関連するのですけれども、さきに述べた「報告」と「勧告」のほかに、同日付で人事院が「給与勧告の説明」という文書を出しております。この中には、人事院の八月四日付の「報告」の中の第2の4の(1)というところに「公務員倫理の確立」あるいは「厳正な懲戒制度の運営」という項がありまして、その中に「期末・勤勉手当」という項があります。その中で、指定職職員の期末手当の四・〇五カ月分が全額減額ができるものというふうに書いてあります。  こういう考え方は、要するに四・〇五カ月分が勤務評定によって全額減額可能だというふうにされるということが今回の裁判官検察官給与体系にも適用されているのでしょうか。もし適用されているとすると、これは能率給のような形で、まさに普通の民間企業の形、あるいは、ある意味では公務員の一般職なんかに当てはまる気がしますけれども裁判官検察官の仕事にはそぐわないような内容に思うのですけれども、そのあたりはいかが考えますか。
  62. 山崎潮

    ○山崎(潮)政府委員 ただいま御指摘の点、指定職職員でございますけれども、これにつきましては、現在は減額がない期末手当が支給されておりまして、今回の一般職給与法の改正案におきましては、期末手当を廃止いたしまして、これにかえて期末特別手当という減額ができる手当を支給するということになったことは確かでございます。  なぜこのようなものが導入されたかということでございますけれども、近時、高い職責を担う公務員の不祥事が契機となっているわけでございまして、公務員に対する国民の批判が高まっている中で、特に高い職責を有し、職員の範たることが期待されております指定職職員について、懲戒処分を受けるなど期待を裏切るというような事態が生じた場合にまで常に定率の手当を支給することは相当でないという、国民のまた納得も得られないだろうという考え方から導入されたわけでございます。この点は、指定職に準じて報酬俸給が定められております裁判官検察官についても同様であるというふうに考えて導入したわけでございます。  この期末特別手当につきましては、性格的には、通常の場合にはこれまでの期末手当に相当する額を支給いたします。しかしながら、懲戒処分を受けるなどの成績が良好でない場合には、その評価に応じて減額することができるというものでございまして、懲戒等の明確な勤務成績不良、こういう場合に例外的に減額を肯定するものでございまして、いわば通常の査定、こういうものを持ち込むわけではございません。本当に、絶対評価という形で導入されておるわけでございます。
  63. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 今の御説明ではありますけれども、今批判を浴びている問題についてはもちろん、この間のいろいろな接待事件あるいは厚生省の問題、さまざまありましたけれども、それを受けたからといって、そういうものをある意味の根拠にしてできた法律を、どうして検察官とか裁判官に持ってくる。私は、もちろん検察官裁判官も人の子ですから、間違ったことをする人もいるとは思いますけれども、しかし、制度そのものを持ち込むということは、非常にそういう不信感を基礎にしているわけですから、どうも考え方、思想が違うような気がしてなりません。恐らく現場の人たちも、いわばとばっちり、どうしておれたちまでこういうことになるんだというふうな感じを受けるのではないかと思うのです。  特に、憲法七十九条、八十条は同じことに関係して、「裁判所裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。」とうたっております。また、裁判所法でも同じように、その意に反する報酬は減額ができないというふうになっていますが、この趣旨は、特に裁判官は憲法と良心に従って裁判事務を行う、それに対して一種の勤務評定的な減額を行ってはならないという趣旨もこの中に入っているような気がするのです。  そういうふうな観点、憲法上の観点報酬規定するというのは、その地位を特別にほかの人に干渉されないというふうなところで憲法も保障し、法律も保障しているのです。それを、勤務形態からいえば確かに国家からお金をもらっている。そして同じく、大学を出て試験を受けて官庁に入るという意味では似ているけれども、そういう形態ばかりにとらわれて、仕事そのものから物を見ていない。仕事そのものを評価する重要な基準は、やはり給与の問題も大きな問題だと思うのですけれども、憲法上の問題あるいは裁判所法との観点から、その点についてもう一度御説明をいただきたいと思います。
  64. 山崎潮

    ○山崎(潮)政府委員 ただいま御指摘の憲法上の問題でございますが、確かに裁判官は地位が保障されておりますが、その中で、特に給与面に関しましては、報酬については減額されないという保障が憲法上ございます。  この報酬につきましては、月々支給される報酬を指しているわけでございまして、いわば手当に当たるもの、報酬以外の手当に当たるものについては憲法上保障しているものではございません。したがいまして、法律上の手当であるということになるわけでございます。まさに、裁判官報酬等に関する法律でも、報酬以外の給与については、一般職の例に準ずるというような定め方がされておりまして、今回も、対象になりますのは期末手当でございます。いわば報酬ではないということでございますので、その点は問題はないというふうに考えております。
  65. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 北村先生のおっしゃることはよく理解できます。これは懲戒等特別の場合の例外規定でございますので、一般的にはこのようなものの適用はない、こういうふうに御理解いただいていいと思います。
  66. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 今の山崎司法調査部長のお話でちょっとひっかかる点があるのですけれども、期末手当だから関係ないのだというふうなお話なんですけれども、今、給与体系というのは、民間を含めて、基本給というのを非常に少なくして、あと能率手当、勤務手当その他のさまざまなものを加えて総合的な給与体系にしているのですよね。それが民間で、それは退職金等も関係するわけでしょうけれども、非常に少なくしている。しかし、実質賃金というのは全部を含めたものになっていくのですけれども。  それを今、今まで公務員はそういうことは関係なくて、基本給が非常に多いところで、あとわずかのいろいろな勤務地手当とか通勤手当、扶養手当がふえているのですけれども、だんだん基本給が少なくなって、そのほかのものをふやす傾向になっているわけです。そうすると、私は特にこの四・何カ月分かの期末特別手当というものがかなり報酬の中の重要なファクターを占めてくるような気がするので、関係ないからというふうにしてくると、だんだん自分たちの身に迫ってくるといって、実質報酬報酬とは名ばかりのものになってくるという可能性があるので、私はその辺は十分に注意していくべきだと思っております。  ということで、次の質問に移りますけれども、よく法曹三者というふうに言われます。裁判官あるいは検察官あるいは弁護士というふうに言われますけれども人事院勧告は大体、民間との格差をもとにして給与を査定していくという方法をとっておるわけです。そうすると、もう一つのいわば法曹三者の民間である弁護士の年収調査とか、そういうものと比較してみるのも一つ考え方と思いますけれども、具体的な調査とか、そういうふうなことをしてごらんになったことはあるのか。またあるいは、将来そういうことを、ある意味の独自の調査をされるということを考えてお られるのでしょうか。  加えて、諸外国の例と常に言うのですが、もし御調査であれば、よその国なんかの法曹給与というものはどういうふうなものなのか、そのあたりをお調べであれば御説明を願いたいと存じます。
  67. 頃安健司

    ○頃安政府委員 お答えします。  同じ法曹資格を有する弁護士と裁判官検察官報酬が著しくかけ離れておりますと、事実上、皆さん弁護士の方になられて、裁判官検察官になる者が非常に少なくなるということになりますと大変困った事態でございますので、我々も常に、弁護士の報酬がどの程度であるかということについては重大な関心を持っておりまして、いろいろなルートを通じて情報収集に努めているところでございます。  弁護士の報酬というものを性格上、正確に把握するということはなかなか難しいわけではございます。なお、諸外国の法曹に比べてどうかという点でございますが、今手元に具体的なデータを有しておりませんが、私どもが承知している限り、日本の裁判官検察官報酬は、例えば欧米諸国の対応官職の報酬に比べて、決して遜色はないと  いうふうに理解しております。
  68. 堀籠幸男

    堀籠最高裁判所長官代理者 最高裁の方から答弁いたします。  弁護士の収入実態につきましては、組織立った把握はいたしておりませんが、近年展開しております弁護士任官者からの事実上の説明を受けるなど、実際上は、一定の範囲で実情をかいま見るということはできると言っていいのではないかと思います。  弁護士の収入との比較でございますが、ただいま申し上げましたような観点からの把握によりますと、弁護士は、個々人によって収入に相当のばらつきがある、それとともに、事務所経営という面から相当の必要経費が認められるというようなことでございまして、裁判官報酬と一義的に比較しにくいという面はあるわけでございますが、全般的な印象では、裁判官報酬、弁護士一般の収入というものを比較すると、裁判官の収入がそれほど劣ってはいないのではないかという印象は持っているところでございます。
  69. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 確かに、弁護士は、ある面ではビジネスみたいなところもありますし、個人営業的なところがありますから、比較がなかなか難しいということはよくわかります。しかし、近年、昔のように弁護士になればすぐ独立して仕事をするのではなくて、多くの人たちはサラリーマン弁護士のような形で弁護士事務所に勤めておる傾向が非常に強い、また勤める時間も非常に長くなってきている。そういう意味では、今御説明があったのは、私もそれこそ十年前から同じ説明を受けているのですけれども、弁護士の世界も、同じビジネスの世界といいながらも、相当実態が変わってきているというふうに思われます。ですから、また改めて独自の調査をおやりになって、そのあたりの比較ということも御検討されることを私は望んでおきたいと思います。  次に、対応金額スライド方式という形が裁判官あるいは検察官報酬あるいは俸給体系に過去四十年以上も取り入れられているというふうに言われておりますけれども、この対応金額スライド方式というものはどういう趣旨のものでしょうか。
  70. 山崎潮

    ○山崎(潮)政府委員 この対応金額スライド方式というものでございますけれども裁判官報酬月額と検察官俸給月額を特別職及び一般職俸給表の俸給月額と対応させまして、同じ改定率でその改定額を定めるという方式でございます。  例えば、具体的に申し上げますと、判事一号を例にとりますと、この報酬月額は指定職十一号の俸給月額に対応しておりまして、両者について同額の改定が行われるということを意味するわけでございます。ですから、指定職十一号の方が一%アップということになれば、判事一号についても一%アップになる。連動というかスライドというか、そういうことを意味しているわけでございます。
  71. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 今の御回答でよろしいと思うのですけれども。  昭和六十年十二月十日付の、十二年前のものですが、そのころに、やはりいわゆる完全実施ができなかったという例があったようです。このころの法務委員会の議事録を見ますと、当時の櫻井最高裁人事局長が、裁判官行政官の格差について、判事補については一・二倍から一・三倍、十年経過後、判事になったときの差が一・七倍、その後、行政官との関係では、だんだん縮まってきて、一・四倍ないし一・五倍の格差があると報告しておられます。  十二年経過した今日の状況では、この格差というものはどのような形になっているのでしょうか、お調べになっておれば御説明を願いたいと思います。
  72. 山崎潮

    ○山崎(潮)政府委員 完全な具体的な数字はわかりかねるのですが、一般職との格差でございますけれども指定職になりますと、手当等が、例えば扶養手当とか勤勉手当とか、そういうものがなくなりますし、もちろん超勤の手当も一切ございません。そういう点では、一般職職員の方はそういうものは全部支給されるということでございますので、俸給額で比較しますと相当な格差があるということになろうかと思いますけれども、そういう手当をすべて入れますと、概算でございますけれども、二割程度は高いということにはなりますが、そんなに大きな格差があるということではないだろうというふうに理解しております。
  73. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 前の報告では、十年後になると行政官との差が一・七倍というのはかなりですよ、今二割くらいとおっしゃいましたけれども。そのあたりは同じなのでしょうか、今でも。
  74. 山崎潮

    ○山崎(潮)政府委員 私、今申し上げましたのは、俸給で比較しますとそういうことが出てくるかもしれませんけれども裁判官の方には手当がない。一般職の方には手当がございますので、それで比較していくと、そんなに大きく差はないというふうに申し上げているわけでございます。
  75. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 わかりました。  ここで大臣にお伺いしたいと思います。  大臣とは参議院の法務委員会のころ、裁判官とか検察官給与についての審議に御一緒に参加させていただいた。そこでよく同じような議論をしたのですが、一般論で結構なのですが、裁判官とか検察官給与は、今までの議論のように基本、公務員に準ずるという形で決めてよいものでしょうか、あるいは別の考えで、全く別の形の体系というものをつくるべきであろうかということについて、大臣の御所見を聞きたいと思います。
  76. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 お答えいたします。  裁判官それから検察官司法に殉ずるということで、三権分立いたしているわけでございます。そういうふうな意味からは、今御説のとおりに、現行の体制は、国家公務員というふうな枠の中でとらえて、そしてそういうふうな中で、今政府委員から御報告申し上げましたように、裁判官検察官の特殊性にかんがみ、ある程度の俸給上の優位性というふうなものをいろいろ御配慮されて今日まで来ているわけでございます。  大きな流れはそういうふうなことでございまして、細部の点をいろいろ見てみますと、いろいろな意見もあろうかと思います。ですから、現在こういうような体制になってきていることは私はやむを得ないなというふうな感じがいたしています。しかし、先ほどちょっと意見として申し上げましたが、全体として、日本の司法というものがいかにあるべきかという議論はございます。そういうふうな中で、裁判官あるいは検察官等々の給与もいかにあるべきかという一つのテーマにはなると思います。しかし、これは今直ちにというわけにもまいりませんし、将来の問題として検討すべき問題であるな、しかし、重要な問題であるというふうに認識いたしております。
  77. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 さて次に、平成九年十一月十四日に閣議決定がありました。そこでは、本件の問題に関しては、人事院の勧告どおり実施したいところだが、財政事情及び国民的課題である行政改 革などを勘案して、指定職については一年間据え置きとし、来年平成十年四月一日から実施するというふうにしております。本案もこれを受けて横並びの措置となっております。しかし、さきに新進党の上田先生からも御指摘がありましたように、行政改革とか財政改革あるいは財政上の緊急事態というのは、司法権の位置づけとはもう次元の違う問題であろうと思うわけです。  それで、さらに行政改革とかあるいは規制緩和等々いろいろなものを受けて、司法部の役割というのは今後これからもっともっと大きくあるいは強くならねばならないというふうに私は思うわけです。そういう観点から見ると、行政の施策のツケが司法の方にそのまま回ってきているような感じがするのですけれども、その点について、裁判所閣議決定趣旨等司法権の独立という立場からどのように受けとめているのでしょうか。
  78. 堀籠幸男

    堀籠最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  ただいまの質問司法部の役割の重要性に対する温かい御理解の上でのものと感じているところでございます。  御指摘のように、指定職以上に相当する判事以上につきましては当面凍結され、来年の四月一日からの施行という内容法案となっております。国家財政が極めて厳しいという状況の中で、裁判官も国家公務員の一員であることや裁判官報酬はこれまで一般政府職員に比べ一定の優位性をもって定められており、さらに、その優位性を前提として一般政府職員についてのベースアップが行われた場合には、いわゆる対応金額スライド方式によって報酬改定が行われるという裁判官報酬法十条を初めとした報酬体系等からいたしますと、今回の当面凍結という措置は私どもといたしましてもやむを得ないものであって、司法の独立という観点からも直ちに問題になることはないという認識でございます。
  79. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 それにしても、先送りの対象となった一般の公務員の指定職公務員は新聞によると約千五百人というふうに聞いております。これは国家公務員五十数万人中の千五百人ですから、その比率は極めて低い、ほとんど問題にならないぐらいの数であって、しかも金額から見ると、すべての国家公務員に完全実施した場合の国庫負担が一千四百二十億円と言われておりまして、この中で千五百人の者だけ一年間実施を先送りしたことによる浮いた利益はたったの十億円なのですね、これも新聞による情報なのですけれども。千四百二十億円のうち十億円しか倹約になっていないというのが今回の人事院勧告の不完全実施の中身。  しかし、裁判官とか検察官となると該当者は全然違って、私の記憶では恐らく裁判官は半分以上、三分の二ぐらいが対象になってくると思うのです。検察官だって同じだと思うのですね。そのあたりについて、今公務員については五十数万人中の千五百人が対象であるというふうに聞いておきます。裁判官は大体二千九百人ぐらいいると思うのですけれども、一体、その中のどのぐらいが該当して、検察官については——まずその点についてお伺いしたいと思います。
  80. 堀籠幸男

    堀籠最高裁判所長官代理者 お答えいたします。  裁判官の総数は、委員指摘のように、約二千九百人でございます。この改正案の実施に伴って改定が延伸される裁判官である指定職以上相当の裁判官は約二千百人でございます。
  81. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 続けて、裁判所にお伺いしますけれども、その場合の削減効果というのは、一体どのぐらいになるのでしょうか。
  82. 堀籠幸男

    堀籠最高裁判所長官代理者 お答えいたします。  報酬改定の延伸による削減効果は約五億円であるというふうに計算してございます。
  83. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 同じことを法務省に、検察官の関係についてお伺いしたいと思います。
  84. 頃安健司

    ○頃安政府委員 お答えいたします。  検察官の総数は約二千二百人であり、そのうち指定職以上に相当する人員は約千二百人でございます。費用削減効果は約三億円でございます。
  85. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 今御説明のあったとおりに、これはもう驚くべき数だと思うのですよ。裁判官については二千九百人中二千百人が対象、そして、これは六、七割、もうほとんどですね。それから、検察官については二千二百人中千二百人、五〇%を超えている。片や、まさに問題になって、削減しようとした対象は五十数万人中一千五百人なんて、もうコンマ以下のパーセントになっている。しかも、削減効果についても、国家公務員全体で十億円にしかならないのに対して、司法部だけが八億円と、ほぼ匹敵する額を負担する、こういう形の不完全実施というのは非常にへんぱなような感じがするのです。  しかもその目的が、私はさっき汚い言葉でツケが回されたというふうに言ったのですけれども、本来負うべきところが負わないで、直接関係ないところが全部負うというのは非常に不合理なような不完全実施の形態だと思うのです。それはなぜかというと、結局、司法部が独立した賃金体系あるいは独立の調査機能、独立した体系を持っていないことからくるこれはもう必然的な結果だと思うのです。  先ほど言ったように、人事院はもちろん国家公務員に対して勧告とか報告を出して、独自の調査機構を持っておりまして、どうこうしなくてはいけない。これはあくまで対象がいわゆる国家公務員という性格のものに対してやるのですけれども、一体、裁判所は、これからの司法改革あるいは司法の制度のあり方ということをいろいろな面から検討しなくてはいけないのですけれども、その中の給与の問題について独自の調査、あるいは司法部の報酬とか俸給体系というのはどういうふうにあるべきかということの独自の調査機構というものは持っておられるのか、あるいは将来つくろうとしておられるのか。もう時間がありませんから、そのあたりを聞いて私の質問を終えたいと思いますが、いかがでしょうか。
  86. 堀籠幸男

    堀籠最高裁判所長官代理者 裁判官の生活実態の点について申し上げますと、独自に調査するという機構は現在のところ持っておりません。  委員指摘の点は私どもにとっても重要な問題であると認識しておりますので、将来の検討課題にさせていただきたいと思います。
  87. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 裁判所は、司法の独立という観点から、あるいは司法の役割という観点から、これは身分その他ではなくて、給与体系というのは身分の大変重要なファクターを占めるものですから、ぜひそのあたりは、今までのようにすべて横並びというこの面については本当に謙虚というか、あるいは消極的な態度をとっておられるようですけれども、ぜひ独自性を発揮していただきたいということを申しまして、私の質問を終えたいと思います。
  88. 笹川堯

  89. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  総務庁をお呼びしておりますので、最初に総務庁から御答弁願いたい。  今年度の人事院勧告の実施に当たりまして、一般職公務員指定職俸給表適用を受ける職員についてのみ平成十年四月一日実施ですから、丸一年おくらせたわけであります。人事院勧告の値切りということだと思うのです。人事院勧告が本来労働基本権を剥奪した代償措置という基本的性格からして、これ自体許されないものだと私は考えますが、簡潔で結構でありますが、指定職職員についてのみ丸一年実施をおくらせた趣旨についてお答えいただきたい。
  90. 中島秀夫

    ○中島説明員 お答え申し上げます。  今回決定いたしました一般職給与法の適用を受ける国家公務員の給与改定につきましては、労働基本権の制約、また良好な労使関係の維持等にも配慮し、指定職以外の職員につきましては勧告どおり改定を行うものといたしましたが、他方で、危機的状況にある財政事情のもと、財政構造改革の推進についての閣議決定趣旨等を踏まえ、ま た、国民的課題である行財政改革が推進されている中における国民世論動向等も勘案し、指定職俸給表適用を受ける職員につきましては給与改定を一年延伸することとしたものでございます。
  91. 木島日出夫

    ○木島委員 私の質問趣旨は、なぜ指定職職員についてのみ一年おくらせたのか。俗に言う上級官僚についてのみ一年おくらせたその趣旨、それに限定して聞くとどうなるんでしょうか。
  92. 中島秀夫

    ○中島説明員 具体的には、御案内のとおり、指定職につきましては、その職務と責任の重要性という観点から、他の一般職員とは区別して考えられるものということをも踏まえまして、先ほど申し上げた事情を勘案して給与改定を一年延伸することとしたものでございます。
  93. 木島日出夫

    ○木島委員 職務と責任の重要性にかんがみて一年間おくらせたと。部下をたくさん持っていると、今回の財政の大変な逼迫についても責任を持つという趣旨であろうかと。そしてまた、もっと善意に解釈すれば、それによって上厚下薄を幾分か緩めるという付随的な効果も発生するのかもしれません。  それでは、こういう措置によって平成九年四月一日からさかのぼって実施される一般職職員数と来年四月一日から実施される指定職職員数の実数を述べていただきたい。その比率を答えていただきたい。
  94. 中島秀夫

    ○中島説明員 お答え申し上げます。  本年四月一日現在の数字でございますが、指定職俸給表適用を受ける職員の数は一千四百二十名、一般職給与法の適用を受ける職員総数四十九万三十七人に対する割合は約〇・三%となっております。
  95. 木島日出夫

    ○木島委員 ざっと〇・三%の値切り率だと思います。  そこで、裁判所についてお聞きしたいのですが、さきの同僚委員からの質問によって、裁判官については、本年四月一日から実施される裁判官が八百人ですか、来年四月一日実施、一年先送りされる裁判官が二千百人、合わせて二千九百人という先ほど御答弁いただいたのですが、それでいいのでしょうか。そうすると、割り算をすると値切り率七二%になりますが、それでいいですか。
  96. 堀籠幸男

    堀籠最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  指定職クラスに当たる裁判官の数は、先ほど申し上げましたように二千百人でございます。  裁判官の数を申し上げますと、簡裁判事を除く裁判官の数は二千百人、簡裁判事の総数が約八百人でございまして、このうち指定職相当の裁判官、簡裁判事を除きますと、これは判事以上でございますが千四百人、それから、指定職相当の簡裁判事が約七百人で、委員指摘のように、指定職以上相当の裁判官裁判官全体の約七〇%ということでございます。
  97. 木島日出夫

    ○木島委員 何か簡判と判事とを一緒にしてしまうとごちゃごちゃしてしまうので、簡裁判事を除いて、裁判官についてのみ数字を言っていただいた方がすっきりしていたと思うのですが。要するに、裁判官についてのみ聞きますと、値切り率約七〇%ということになる。  検察官についても聞いておきます。  副検事は除いて、検察官について、平成九年四月一日からさかのぼって人事院勧告趣旨が実施される検察官の数と来年四月一日に先送りされる検察官の数、その割合、値切り率といいますか、それをお述べください。
  98. 頃安健司

    ○頃安政府委員 お答えいたします。  検事七百四十八名でございまして、率にいたしますと約五五%でございます。
  99. 木島日出夫

    ○木島委員 一般の公務員の場合に比較して、私は、今回の措置は余りにも、裁判官検察官について、報酬引き上げの実施時期について、バランスを失しているんじゃないかと思わざるを得ないのですね。なぜこのようになったんでしょうか。
  100. 堀籠幸男

    堀籠最高裁判所長官代理者 指定職以上に相当する判事以上の者につきまして来年の四月一日からという施行になったわけでありますが、これは、先ほども答弁申し上げましたように、国家財政が厳しい状況のもとで、裁判官も国家公務員の一員であるということや、裁判官報酬はこれまでも一般政府職員に比べて一定の優位性を保って定められていること、さらに、その優位性を前提として、一般政府職員についてベースアップが行われた場合には、いわゆる対応金額スライド方式によって報酬改正されるという裁判官報酬法十条を初めとする報酬体系からいたしまして、今回の指定職についての当面の凍結という措置と同様の措置をとったものと理解しておりまして、これは、私どもとしてもやむを得ないのではないかというふうに考えておるところでございます。
  101. 木島日出夫

    ○木島委員 要するに、裁判官検察官も国家公務員じゃないかと、そしてこれらの報酬俸給は比較的高いではないかと、財政再建の折、協力すべきだ、そういう趣旨だと思うのですね。しかし、その理屈は、裁判官に関する限り、それに準ずる検察官に関する限り、やはり通らないと思うのです。  さっき総務庁から聞いたところ、なぜ指定職だけ一年間値切ったのかと、職責の重要性というのを挙げられました。今回、全然準じていないんですね。大体任官して十年で判事になるわけでして、それが値切られてくるわけですね。しかし、一般の国家公務員の場合、指定職になるのに何年かかるでしょうか。二十年以上かかっているんじゃないでしょうかね。たまたま指定職相当の俸給をもらっている、報酬をもらっているということで右へ倣えさせられてしまったわけでありますから、実態が全然違うんじゃないかと思わざるを得ないのですね。総務庁の考えも、突き詰めると、今回は管理的立場にある公務員に限り我慢してもらおう、そういう趣旨だと思うのですね。  それなら、裁判官についても、例えば高裁長官とか地裁所長など司法行政事務を行っている裁判官会議司法行政事務は裁判官会議では行っているのですが、その裁判官会議を総括する裁判官、これは裁判所法二十条、二十九条でちょっと格が違う。そういう管理的な地位にある裁判官にのみ、地裁所長、高裁長官についてのみ一年間実施をおくらせるというのがバランスのとれたやり方だったのではないんでしょうか。そうすれば、値切り率も、裁判官検察官についても大体〇・三%とか、そういう数字になってバランスがとれたんじゃないでしょうか。なぜこういう手法を今回とらなかったのか、そこを聞きたいのです。まず最初に裁判所
  102. 堀籠幸男

    堀籠最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  判事につきましては、一般職の中の指定職俸給が対応されているということから同じ扱いにしようということでやったわけでございまして、たまたま特殊の職についている人というような観点からの凍結ということは考えなかったというところでございます。
  103. 木島日出夫

    ○木島委員 法務省
  104. 原田明夫

    原田(明)政府委員 お答え申し上げます。  検察官の職務の実情に照らしてのお尋ねで、特に、一般検事と申しますか、管理職的な立場にある検察官との比較においての御質問と承りましたので、私の方からお答え申し上げたいと思います。  確かに、いわゆる管理的という立場、状況だけから見ますとただいま委員指摘のような面もあろうかと思いますが、実際、検察の組織の中では、検察官が他の一般職員に相当する多数の検察事務官とともに仕事をしております。その中で、特にそれぞれが独任官庁として勤務をいたしております検察官の職務は、その他の検察職員、特に検察事務官を指揮いたしまして、そして一つのチームとして管理的な立場で仕事をしているという側面があるわけでございまして、そういう点から、全体の検察職員の中での地位ということから見ますと、これは管理的な側面もやはりあろうかと思います。そういう中で、検察官の立場ということをいわば評価していただきまして、裁判官の立場と同じく指定職俸給表を適用されるという ことで、一般的な場合と比較して優位に取り扱っていただいているという状況が根本的にあろうかと思います。  そういう中で、従来から指定職俸給表につきましては、一般職俸給表とあわせて、いわば連動する形で評価していただいている、その中でのお話ということで、今回の措置につきましては、全般的に見るとやむを得ない措置というふうに考えているわけでございます。
  105. 木島日出夫

    ○木島委員 私は、法律家になって二十七年になるのですよ。裁判官になって十年目、検察官になって十年目で、部下をたくさん使って指導的立場になんか立つ状況じゃないことを私はよう知っています。それは裁判所法務省も十分わかると思うのです。たまたま裁判官検察官俸給報酬について一般国家公務員に比べて非常にいい数字だというのは、決して部下をたくさん従えて管理的立場にあるからじゃないんですよ。司法権の独立、裁判官の独立という、その職務に殉じて、憲法上の要請で裁判官報酬が高い、それに検察官も準じているだけにすぎないのであって、そういう観点から見たら、私は、今回、裁判官検察官の値切り率が五〇%を超える、七〇%を超える、一般国家公務員については値切り率〇・三%というのは、本当に理屈として通らないのじゃないかと考えていることを指摘して、次の質問に移ります。  指定職職員の期末手当の問題についてですが、人事院をお呼びしておりますので、お聞きします。  今回、人事院勧告を出しまして、指定職職員について、期末手当について減額できるという措置が導入されました。勤務成績の良好でない者は減額できるという状況になったようでありますが、その根拠、趣旨は何でしょうか。
  106. 川村卓雄

    ○川村説明員 お答え申し上げます。  今回の一般職給与法の改正によりまして設けられます期末特別手当でございますけれども、これは、指定職職員につきまして、通常の場合は従来と同様、期末手当に相当する額を支給する一方、指定職職員の職責等にかんがみまして、勤務成績が良好でない者につきましては、その者の勤務成績に応じて各庁の長が人事院規則の定める基準に従いまして減額した額を支給することができるということにしたものでございます。
  107. 木島日出夫

    ○木島委員 どうも趣旨がもう一つ鮮明じゃないのですが、査定するのは今各庁の長と言いましたから、各省の大臣ですね。査定されるのは指定職職員、幹部職員。査定の基準というものはどんなものなのですか、人事院。
  108. 川村卓雄

    ○川村説明員 お答え申し上げます。  勤務成績が良好でない場合といたしましては、典型的には、戒告、減給、停職といった国家公務員法に基づきます懲戒処分を受けた場合を想定しておるところでございます。これらの場合につきましては、各庁の長の判断で、通常の場合に支給されるべき額の一定の割合を超えない範囲内で減額ができることを基本としつつ、特に悪質な場合に限りましてはこれを超えた減額ができるように人事院規則で定めることを予定しております。  また、懲戒処分を受けました場合以外で減額され得るケースといたしまして、厳重注意や訓告等、国家公務員法に基づく処分ではないですけれども、各省庁それぞれの内規等によりまして何らかの注意を受けた場合、こういうものを想定しているところでございます。
  109. 木島日出夫

    ○木島委員 その場合、どのぐらいまでカットできるのか検討は終わっていますか。
  110. 川村卓雄

    ○川村説明員 その内容につきましては、現在検討中でございます。
  111. 木島日出夫

    ○木島委員 全部見えてこないのですが……。般国家公務員はこういう状況だと。  さあ、それで裁判所に聞きます。一般国家公務員の期末手当の査定制度がこうやって入ってくるのですが、じゃ、指定職に相当する裁判官、さっき言ったように、裁判官に任官してから十年目以上、検察官についても十年目以上、この指定職に相当する裁判官並びに検察官の期末手当についてはどうするおつもりですか。
  112. 堀籠幸男

    堀籠最高裁判所長官代理者 お答えいたします。今回、指定職に対して新設されます期末特別手当につきましては、裁判官報酬法第九条の規定によりまして、指定職に相当する裁判官にも準用されることとなりますが、これを受けまして最高裁規則で期末特別手当に関する定めを置くことになろうかと思います。  期末特別手当を準用するという形で導入するにつきましては、裁判官の職務の特殊性に配慮したものが必要でありまして、とりわけ裁判官の職務の独立を害するような事態を招くことがあってはならないというふうに考えているところでございます。  一般職給与法の改正法によりますと、期末特別手当が減額される場合として、懲戒処分を受けたときと、それ以外に、勤務成績がよくないときを規定しているようでございます。  そこで、まず勤務成績についてでございますが、そもそも裁判官の職務は、基本的に独立性が高く、その担当する事件も種々さまざまでありまして、それ自体、勤務評定になじみにくいものであります。そして、三月期、六月期、十二月期という短期の期間で成績を論じることは、事柄の性質上困難であり、また相当でもないというふうに考えているところでございます。したがいまして、期末特別手当を減額するというようなことは、成績がよくないという理由でやることは考えておりません。  一方、一般職の懲戒処分に相当するものといたしまして、裁判官の場合には裁判官分限法による懲戒の裁判というものがございますが、これは厳格な手続で言い渡されているところでございます。委員御承知のように、まず一審が高等裁判所で五人構成の合議体でやる、それに不服がある場合には最高裁の大法廷で判断してもらう、こういう厳格な手続でやられておりますので、このような懲戒の裁判を受けた場合に減額を行うということは、その場合に限れば決して裁判の独立を害するというものにはならないのではないかというふうに考えているところでございます。  そこで、最高裁といたしましては、このように裁判官分限法による懲戒の裁判を受けた場合に限定して減額を行う方向で期末手当の導入を考えているところでございます。また、率につきましても、減額率を定率なものとして固定することにより裁量が働かないようにするのが相当ではないかという方向で検討を進めているところでございまして、結論といたしまして、最高裁といたしましては、このような形で導入することにより、裁判の独立の侵害のおそれというものがないような配慮をいたしたいと考えているところでございます。
  113. 木島日出夫

    ○木島委員 その配慮、まことに結構だし、当然のことだと思うのです。  裁判官分限法によると、どういう場合に裁判官が懲戒処分、分限にかかるか書いていないのですよ。ただ、手続が非常に厳格だ。懲戒権者、任命権者が懲戒権を持っていないということも特殊だと思うのですね。こういう厳格な手続を定めた趣旨裁判官の独立を守るということであることは間違いないのです。  そこで、最近五年間の裁判官分限件数を教えていただきたいと思います。
  114. 堀籠幸男

    堀籠最高裁判所長官代理者 裁判官の分限について、過去十年間の状況について御説明申し上げますと、監督責任が十一件、判決原本に基づかない言い渡しをしたものが一件、それからほかの事件に介入したものが一件、記録を紛失したものが一件、酒気帯び運転が一件というぐあいになっております。
  115. 木島日出夫

    ○木島委員 私、訴追委員もやっているのですけれども、訴追委員会で論議してもいいような事件のほんのまたその一部のみが実際には分限事件として手続が行われているということだと思うのです。こういう場合にのみ限って今回の期末手当の減額ができるという状況がつくり出されるのであ れば、ある程度裁判官の独立は守れるかなとも思うわけでありますので、ぜひ歯どめとして、そこは絶対崩さないでほしいと思います。  私は、むしろそんなものも要らないのであって、国家公務員指定職について、期末手当に関して減額できるという規定をつくられようとも、それはそっちの行政公務員としてのあるべき姿からの発想であろうから、司法部としてはそんな制度をつくる必要はないんだという立場に立ってもいいと私は思うのですよね。今後の問題だと思うので、そういう私の意見もひとつ参考にしてこの問題に取り組んでいただきたいと思うわけであります。  実際に、期末手当というのは非常に大きいわけでありまして、今、年間合わせると四カ月分を超えるわけです。基本的な俸給の四カ月を超えるわけですから、非常に大きい金額でありますから、こんな形で、勤務成績不良という烙印を押されて期末手当がカットされるようなことがあったら、裁判官の独立がそこから侵害されてくる、裁判の統制が上から始まってくるということになりますから、ゆめゆめそんな制度はつくらないでほしいと思うわけであります。  続いて、勤勉手当についてお聞きします。これは総務庁か人事院。  今回、一般職職員について、勤勉手当についても制度がえが行われるようであります。端的に言いますと成績率の幅の拡大と聞きますが、簡単にへどんな制度に今なっているのか、それをどうしようとするのか、御答弁願います。
  116. 川村卓雄

    ○川村説明員 お答え申し上げます。  一般職員の勤勉手当の成績率に関してでございますけれど、人事院規則及び通達の改正をいたしました。その主な内容でございますけれども……(木島委員「いつ」と呼ぶ)先般二十五日付で行いました。(木島委員「今月二十五日ですか」と呼ぶ)はい。  人事院規則の改正でございますけれど、これは勤勉手当の成績率の幅につきまして、従来百分の四十以上、それから百分の九十以下の範囲内で各庁の長が定めるものとされておりましたのを、百分の百二十を超えない範囲内で人事院の定めるところにより各庁の長が定めることといたしました。  次に、人事院の定めといたしましての通達を改正いたしまして、勤勉手当の成績率につきまして、勤務成績が特に優秀な職員は百分の八十以上、それから勤務成績が優秀な職員は百分の七十以上百分の八十未満、勤務成績が良好な職員は百分の六十、これら以外の職員につきましては百分の六十未満とする適用基準を新たに設定したところでございます。  なお、このほか、懲戒処分を受けました職員の成績率の運用の目安としましても、課長通知を発出いたしまして、停職の処分を受けた職員の場合は百分の三十、それから減給の場合は百分の四十、戒告の場合は百分の五十を基本とするようにしたところでございます。  以上でございます。
  117. 木島日出夫

    ○木島委員 最下限は百分の三十ですか、停職処分を受けた場合の。それは最下限と聞いていいのですか。
  118. 川村卓雄

    ○川村説明員 停職の場合は百分の三十を基本にするということでございまして、いろいろな状況によりまして、それ以外の数字もあり得るというふうに考えております。
  119. 木島日出夫

    ○木島委員 簡単に言うと、現行は百分の四十から九十の範囲内で査定していた。しかし、今度これが上は百分の百二十、だからプラスになっているわけですね。下は限りなくゼロに近い。大変な査定が導入された。しかも、これが今月二十五日に通達が出た。恐るべきことだと私は思うのです。  さて、そういう状況一般国家公務員に入ってきた。そこで、裁判所、これは判事補簡易裁判所判事のほとんどすべてが一般職相当として勤勉手当が定められています。現在の運用の実態はどうでしょうか。
  120. 堀籠幸男

    堀籠最高裁判所長官代理者 お答えいたします。  委員指摘のように、勤勉手当判事補と五号以下の簡易裁判所判事に支給されているところでございますが、勤勉手当の成績率について申し上げますと、裁判官の職務は独立性が高く、その担当する事件もさまざまであることから、勤務評定になじみにくい性質のものでありますため、実際の運用といたしましては、均分して支給しているというのが実情でございます。
  121. 木島日出夫

    ○木島委員 結構なことだと思うのです。  それで、一般職国家公務員については、人事院が今月二十五日にそういう通達まで出して、最大百二十、最低ゼロ。こんなすさまじい査定をこれからやろうとしているのですが、これを受けて裁判所は今後どうするつもりでしょうか。
  122. 堀籠幸男

    堀籠最高裁判所長官代理者 お答えいたします。  今般の一般職の成績率の幅の拡大によりまして、裁判官についてもそれに準じて成績率の幅が拡大されるという法的可能性はあるわけでございますが、判事補の職務内容というものが先ほど申し上げましたとおり変わらない以上、運用実態も実際上変える必要はないのではないかというふうに考えているところでございます。
  123. 木島日出夫

    ○木島委員 ぜひそういう立場を堅持して、裁判官の独立を守ってほしい。  最後に法務大臣に、今私が幾つかの点を指摘しましたが、今一般国家公務員の中に持ち込まれようとしている差別化ですか、査定の強化、これを唯々諾々と司法部、裁判官にも導入していったら大変なことになって、裁判官の独立が基本から崩されていくということは明らかだと思うのですね。  今回の人勧実施の問題について、私、さっき言いましたように、ちょっと国家公務員に右へ倣えし過ぎているのじゃないかというので大変指摘したわけでありますが、これから裁判官の独立、検察官もそれに準じた独立、これをしっかり守るという立場に立っていただきたい。御決意のほどをお聞かせいただいて、質問を終わります。
  124. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 御調を十分体しましてやってまいります。
  125. 木島日出夫

    ○木島委員 終わります。
  126. 笹川堯

  127. 保坂展人

    ○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  本日議題裁判官及び検察官報酬並びに俸給の引き上げに関する議題については、人事院勧告の完全実施を強く求めたいということを要望いたしまして、本日は、国籍法に絡んだ点について伺いたいと思います。  実は、十月十七日に最高裁でこのような判決があったわけなのです。日本に来日をされて十年たった外国人女性と、そしていわゆる婚外子、婚姻に基づかないお子さんが生まれて、従来だと出生前の胎児認知ということが条件づけられていたのが、実はこの外国人女性の場合は、事実上破綻関係であった日本人男性と夫婦でありまして、したがって婚姻の関係があったわけで、別の、この子供の父親自身が胎児認知をすることができなかった。こういう事情で、最高裁判所が、出生後の日本国籍を認めるという判決を出したわけです。  これは大変画期的な判決だったと私も思うわけです。しかし、今回の最高裁判決をよく読んで見ますと、大西裁判官が補足意見をかなり長く述べられておりまして、親子関係不存在確認の手続をすべき期間及びその認知の届けの仕組みについて、具体的に最高裁判決は述べていないわけですね。これについては、立法的な解決を待つしかないというふうに補足意見で結ばれているわけですが、早速、判決が出て間もないと思うのですけれども法務省の方でこのための準備をどのように始められているのか、伺いたいと思います。
  128. 森脇勝

    ○森脇政府委員 お答えいたします。  この最高裁の事例は、今委員指摘の事実関係に基づくものでございまして、母が別の男性と婚姻関係にあるために、その者との間で嫡出推定を 受けてしまう、したがって胎児認知ができないといった場合でございまして、この最高裁判決では、戸籍の記載上嫡出の推定がされなければ日本人である父により胎児認知がされたであろうと認めるべき特段の事情がある場合には、国籍法二条一号に準じて、生来の日本国籍が認められる、こういう判決でございます。  したがいまして、この判決で言っている事項といいますのは、非常に例外的な事件についてされた事例的な色彩の強い判決でありまして、その要件を見てみますと、嫡出推定を受けていることのほかは、非定型的な要件が示されているだけでございます。したがいまして、この判決から直ちに実務の取り扱いを一律には定めがたいのでございますが、かといって、ではこれを法律にたやすく規定できるかというと、これも困難な面がございまして、この取り扱いにつきましては、目下慎重に検討しているという段階でございます。
  129. 保坂展人

    ○保坂委員 これはちょっとややこしい話なのですけれども、このお子さん自身が平成四年の九月十五日に生まれているわけですよね。ですから、事前には胎児認知ということができなかった。それでその後に、十一月に協議離婚されて、今度、十二月十八日から親子関係不存在確認調停の申し立てが始まるわけですね。そして、これは争いがなかったということで平成五年六月に審判確定して、直ちに父親が認知の届けをした。  最高裁の判決は、九月十五日にこの子供が生まれて、そしてお父さんがその認知届けをしたまでの期間を出生時というふうにやや広義にとらえている。しかし、これはかなり、子供の間の平等ということを、国連子どもの権利条約も含めて、やはり生まれてくる子供に罪はないという発想でぎりぎりの解釈をされているのです。ですから、これを例外的だというふうにおっしゃるならば、ちょっと最高裁のこの判決が意味をなさないのではないかと思うのですね。  具体的に伺いますけれども、例えば同様のケースの場合、この事件のケースの場合には三カ月ほどで親子関係不存在の確認が出されていますけれども、半年してそれが出されて、裁判も何か争いがあったりして何年かに及んだというと、例えば生まれて認知までの間、一体どのぐらいの期間、これは最高裁の判決では、遅滞なくとか、速やかに、親子関係不存在の手続を早くしなさいよ、そして、確認が出たら、速やかに認知手続をすること、こういう表現なんですけれども、それはどの期間を指すのですか。  例えば今、例として挙げますと、六カ月たって、そして二年ぐらいに及んだ場合、ですから、生まれて三カ年ぐらいたった場合も、「出生の時」というふうにくくる解釈はできるのかどうか。これをお答えいただきたいと思います。
  130. 森脇勝

    ○森脇政府委員 大変難しい質問でございまして、この判決にあらわれた事例というのは、出生から親子関係不存在の調停申し立ての間がおおむね三カ月、それから、その審判確定から認知の届け出までが十二日でしたか、そういった事例でございますが、今委員指摘のとおり、これが多少期間が延びたらどうなるのかというのは、これは非常に線引きが難しい問題でございまして、今ここで直ちに、六カ月であればどうだというお答えはいたしかねるところでございます。
  131. 保坂展人

    ○保坂委員 それは、だめだとも言えないということですね。
  132. 森脇勝

    ○森脇政府委員 個々の事案について検討せざるを得ないという意味でございます。
  133. 保坂展人

    ○保坂委員 今回の最高裁判決は、胎児認知ができる子供と、そして事情によってできない子供。子供は親を選べないし、どういう形での出生を子供自身選択できない。これは当たり前のことですけれども。そうなると、やはり最高裁判決では、著しい差異は生じないというふうにしているわけですね。ですから、そこのところは非常に子供の間の平等ということをきちっと押さえた判決であり、嫡出子と非嫡出子という区別も、海外から指摘されているように、国連でも指摘されているように、これは差別してはならないという流れを踏まえた判決だと思うのですね。ヨーロッパ各国でもおおむね、未成年の間に認知があった子供は国籍を取得できるとされているわけですね。  どうでしょうか、我が国でもこうした方向に倣って国籍法を改正していくということを検討すべきときではないかと思うのですが、ぜひ前向きな答弁をお願いします。
  134. 森脇勝

    ○森脇政府委員 この最高裁判決は、日本人の父と外国人母との間の子が出生により日本国籍を取得するためには、その両親の婚姻あるいは子の出生前の認知、胎児認知ですね、それによって日本国籍を取得するのだ、こういう前提を踏まえているわけでございまして、この点は、いわば最高裁の方も是認しているというふうに理解しておるところでございます。  それから、この判決が言います、戸籍の記載上嫡出の推定がされなければ日本人である父により胎児認知がされたであろうと認めるべき特段の事情というくくり方をしておりますので、これが事務取り扱いの一定の基準になるという性格のものではない。すなわち、期間だけを見ればいいのかといったような問題も考えていかなければならないのではないかと思っております。
  135. 保坂展人

    ○保坂委員 お答えいただいてないのですけれども。  国籍法、これを改正するには大変手続が必要でしょう、議論も必要でしょう。しかし、どんどん子供は生まれてくるわけで、今回のケースと同じように生まれてくる子供も、ことしも来年もいるかもしれない。その場合にどう取り扱っていくのかということで、最高裁がこれだけ示して、法務省が何もしないというわけにはいかないと思うのですね。何らかの通達や考え方を示す、これは急がれていると思うのですが、その点、どうですか。
  136. 森脇勝

    ○森脇政府委員 早期に対応しなければならないという点は、議員御指摘のとおりでございます。ただ、先ほど申し上げましたとおり、非常に難しい問題があるという点も御理解いただきたいと思います。  私どもで早急にできる手だてといたしましては、この最高裁判決が出た旨及びこれに基づく取り扱いがされるように、私どもから情報を提供したところでございまして、こういった類似の事案について仮に申し立てがなされるといった時点では、民事局に対して受理の伺いなり相談なりという形で、民事局の方で集約できる体制というものを一応とっておるところでございます。
  137. 保坂展人

    ○保坂委員 なかなか苦渋に満ちた御答弁で、やはり法務行政が今大きく転換しなければならないということを最高裁判決は示していると思うのですね。  これは、平成七年一月の、有名になったケースですが、アンデレ君の判決がございました。この場合には、日本人男性とフィリピン人の女性の間に生まれた、そして両親ともに目の前にはいないということで、どちらからも認められず、無国籍児というふうになったケースですよね。このときに、新聞各紙は、心の通う法務行政へとか、判決は出たけれどというようなことを書いておりますよね。そして、その時期に、百三十数人でしたか無国籍児を入管局は把握しているということを新聞記事等で確認できるのですが、例えば、この判決を受けて、どのような努力、事実確認、そしてアンデレ君のようなことが繰り返されないような措置をしたのか、お答えいただきたいと思います。
  138. 森脇勝

    ○森脇政府委員 御指摘の最高裁判決は、国籍法二条三号の趣旨及びその立証責任について最高裁が初めて示した司法判断でございまして、私どもとしても重く受けとめまして、会同等の機会におきまして最高裁判決の内容を各法務局に周知徹底させるとともに、同種の事案が生じた場合には、この判決の趣旨を十分踏まえて、具体的な事実関係を調査して事案に即した適切な処理をするよう指導したところでございます。先ごろも、こうした事案につきまして、この事案はどうかということで私ども民事局の方に相談がございまして、当 該事案については、父母不明という事実認定のもとに処理するよう指導したところでございます。(保坂委員答弁落ち。数はどうですか、現在の無国籍児」と呼ぶ)私どもは把握いたしておりま  せん。
  139. 伊集院明夫

    ○伊集院政府委員 お答えします。  平成四年十二月末現在で、外国人登録を受けている四歳以下の者で無国籍としての取り扱いを受けている者が百三十八名ということがございました。現在、最新の数字でございますが、平成八年十二月末現在の数字は七百三十四名となっています。四歳以下でございます。
  140. 保坂展人

    ○保坂委員 時間が参りましたので、最後にいたします。  これはぜひ法務大臣に伺いたいことなのですけれども、こうして最高裁が、こういった難しいケースについて、やはり生まれてくる子供に罪はないということで判決を出しているわけですね。判決が出たことを周知するのが法務省の役割ではないはずですよね。それこそ行政のできる範囲で最大限の努力をしていただくということをまずお約束いただきたいのと、もう一つ、冒頭取り上げました問題というのは、嫡出子、非嫡出子の間の問題も絡んでいるわけですね、その差別の問題。  そうしますと、法制審で答申された民法改正、ここは選択的夫婦別姓ももちろん大事なのですけれども、婚外子差別の問題、二分の一相続規定ということが国連の場でたびたび指摘されているということもありますので、こういったことをやはり勇気を持って推進していただきたいということも含めて、法務大臣、御所見を、きちっとお答えいただきたいと思うのです。
  141. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 第一点の問題につきましては、国籍法の改正になじむかなじまないか、そういうような大きな問題は別といたしまして、最高裁の判決も出たわけでございますが、私どもとしましては、人権尊重の立場から、個々具体的な問題についてはひとつ取り組んでまいりたい、このように思います。  二番目の問題につきましては、法制審の答申等々出たことも承知いたしておりますが、なおかつ、国民の世論がそこまでいっているかどうかというふうなことにつきまして、御承知のとおり、先般、総理府の世論調査等々の結果によりますと、まだ国民の多くの意見は、今委員おっしゃるようなところまでではなくて、とどまっているというのが実情であることも御承知だと思います。その辺のところも、もう少し国民動向というものをよく踏まえながらこの問題は判断してまいりたい、このように思います。
  142. 保坂展人

    ○保坂委員 ありがとうございました。  国籍法改正に向けて、やはりこれは基本的なルールを変えるべき時期が来ていると思います。ぜひ目指していただきたいと思います。  二番目の点につきましては、もし民法改正がおくれるのであれば、事実上差別状態になっている非嫡出子差別ですね、これに対する何らかの行政的な救済が必要かと思います。ぜひそのところも考えていただきたいし、一緒に進めていきたいと思います。  終わります。
  143. 笹川堯

    笹川委員長 鴨下一郎君。
  144. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 裁判官報酬それから検察官俸給に関する法律の一部を改正する法律案に関連しての委員会でありますけれども、この中で私は、同僚議員の議論を承っていて疑問に感ずるところは、なぜ司法部が、人事院の勧告に基づいて、それに準拠した形で報酬等が決められるのかということについての疑問であります。  大臣、「大蔵省極秘情報」というテリー伊藤が書いた、ここに「お笑い」と書いてあるので、お笑いで一笑に付してしまえばいいのかもわかりませんが、実はこれは、朝日新聞もそうですし各新聞で、おもしろいということで、かなりいろいろな意味で話題になった本であります。  その中に、一連の住専絡みの大蔵スキャンダルに関して、これは大蔵省の主計局の何がしというような匿名の方が、「賄賂だということを証明するのはマスコミでも国民でもない。それはもう検察庁ただ一個しかない。警察では当然できない。ところが検察庁だって法務省の一部なんです。法務省予算で動いてるんです。われわれがその気になれば、明日からすぐ法務省予算を締められる。金がなかったら、法務省といえども何もできない。」「法務省の建物どんなですか。」こういうようなことでありまして、あれは大変ハイテクで、しかもその前には古い文化財的な庁舎を保存してある。こういうようなことも全部大蔵省が予算を渡したからできたんだ。大蔵省の機嫌を損ねたら何もできないんだ、こういうようなことを書いてあるわけなのです。  冒頭申し上げましたように、「お笑い」と書いてあるので、一笑に付してしまえばいいと言えばいいでしょうけれども、これはちまたで出回っていて、現実にはそういうような本をたくさんの方が読んでいる。こういうような中で、私はこういうことは断じてないのだというふうに思っておりますし、そうあるべきだというふうに思っておりますけれども大臣、そういうようなことを踏まえて、国民に多少誤解のある部分があったら、もうこれはとんでもないことでありますので、ぜひこの辺について、大臣のお考えと、それから法務省はこうして独立しているのだというようなことをおっしゃっていただきたいと思います。
  145. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 今のお話をお伺いしまして、私は極めて不快感を感じます。  警察から出ましたので、警察のためにも一言言っておきますが、警察は当然であるなんと書いてありますが、これもおかしなことでございます。法務省のことにつきまして今お話がございましたが、私どもは、検察は法と証拠に基づきまして、取り上げるべき事案があれば、大蔵省だろうがどこだろうが、それはいかなる人に対しましても厳正に対処していかなければならないことでございますし、大蔵省が予算云々ということでございますけれども、大蔵省の個人がそういうふうな形で法務省の面倒を見ているなんというのは、もしそうだとするならば、これはとんでもないことでございまして、大変不快感を感じますが、それはそれといたしまして、私どもは法と証拠に基づきまして厳正に対処してまいる。検察はそういうふうにやってくれるものだというふうに思っております。
  146. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 私も大臣のおっしゃるとおりだと思いますし、この委員会は一貫して、ある意味で今回の法律に関しては、法務省そして裁判所にエールを送っているような、こういうようなニュアンスだというふうに私は思っているのです。  その中で、大臣は今おっしゃったように、全くそういうことは断じてないというふうなことで、私もそのとおり。ただ、予算を握られているということについて、給料にも影響します、それから予算そのものの執行に対してあらゆる影響力を大蔵省が持つ、これは事実だろうと思いますので、予算予算だけれども、それでも法務省は独立しているのだということをもう一度国民が納得できるような形でおっしゃっていただけたら幸いだと思います。
  147. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 けさほどから各委員さんの真摯な御質問を伺っておりますと、今おっしゃいましたように、裁判所それから検察に対しまして大変御激励といいますか、というふうなものをつくづく感ずるわけでございます。指定職にだけ今回一年間給与法の適用がおくれる、裁判官検察官、多いのではないかと。たまたま指定職ということを政府で決めた結果としてああいうふうになったわけでございます。  政府委員等の答弁を聞いておりますと、私自身感ずるわけでございますが、皆様方のそういうふうな心温まる御声援に対して、政府委員答弁というのはなかなか苦しい答弁をしているのだなというふうな感じを率直にいたすわけでございます。  しかし、それは私ども政府の立場でございますから、そういうふうなことを申し上げているわけでございますし、今のお話につきましても、検察 当局は、繰り返して申し上げますけれども、それはいかなる対象であれ、これはもう厳格に、厳正公平、不偏不党、やっていただくものだというふうに私は確信いたしております。
  148. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 今は経済の流れも非常に不透明といいますか、これから来年には金融ビッグバンも始まります。そういう意味で、私は、規制緩和も含めて、これからはいろいろな意味で自己責任社会になっていくのだろうと思います。そういう中で、国民は何にすがったらいいのかというような話の中で、もう信ずるものが何もなくなってきた、そういう中での司法というものは非常に重要な位置をこれから占めるのだろうと思います。そのことで、大蔵省とどうこうなんというようなことをゆめゆめ勘ぐられないようにぜひ厳正に対処をしていただきたい、こういうふうに思うわけであります。  その中でもう一つは、国民裁判に関して、ある意味で非常に敷居が高くて、遅くて、そして費用もたくさんかかる、こういうようなことを感じているわけであります。これから、そういう意味で、自己責任社会に突入していけばいろいろな意味で、民事の問題もたくさんふえてくるのだろうと思いますし、これは、平成四年から八年ぐらいの間を見ましても、民事訴訟の事件は大体十三万件から十五万件ぐらいで推移しているわけでありまして、今の現有の司法基盤の中で、これから将来的にこれ以上の訴訟事件を抱えてやっていけるのかどうか、この辺のところの現状と将来展望についてお聞かせをいただきたいと思います。
  149. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 委員指摘ございましたように、いわゆるバブルの崩壊といいますか、そういう社会状況を受けまして、裁判所の方に提起されてきます民事の事件が非常にふえてきております。やはりこれからの社会状況というものにかんがみますと、さらに事件は数の上でもふえてまいりますでしょうし、またその内容の面でも難しい事件が増加してくるだろうと思っております。私ども裁判所としましては、こういった事件増に対しましてきちんと対処していけるような体制をつくっていかないといけないだろうと思っております。  国民の目から見まして民事の裁判に対する一番不満の焦点といいますのは、委員指摘ございましたように、事件処理のスピードの問題でございます。迅速な事件処理というのは裁判所ひとりだけでできる問題ではございませんで、やはり訴訟当事者なり当事者の代理人をお務めになる弁護士さん方との一種の共同作業のようなことになってまいりますわけですが、これまでいろいろ工夫を重ねてきておりますのですけれども、来年の一月から新しい民事訴訟法が施行されることになっておりまして、この法律のねらいも、まさに新しい審理のやり方を工夫することによって、これまでよりももっとスピーディーな民事裁判というものを実現していこう、そういうところにねらいがあるわけでございます。  私どもとしましては、この新しい法律趣旨を十分踏まえまして、もっともっと国民にとって利用しやすい、そういう裁判というものを実現していく必要があるだろうと思っております。訴訟の運用の仕方だけではございませんで、やはりそれに伴いまして事件を処理します裁判所の人的、物的な体制の整備というところも当然重要になってまいりますので、そういった点についても十分必要な手を打っていきたい、こういうふうに考えております。
  150. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 日本の裁判官は二千八百九十九名、そして裁判官一人当たりの人口数は四万三千ぐらい、そして抱える事件数は、東京で二百五十から二百八十件で、地方では百四十から百六十、こういうふうに承っているわけであります。  欧米と比較してそう大差はないという話ですが、特に都市部で、そういう意味で非常に手続が滞るというようなこと、もしくは裁判官が過重に事件を抱えて非常に御苦労なさっている、こういうふうなことも聞いているわけでありますけれども、これから、将来的に今の現有で対応できるのかどうかということをもう一度お聞かせいただきたい。
  151. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 実は、裁判所の方に参ります事件数動向というのを正確に予測するということはなかなか難しいわけでございますが、ただ、事件がふえてまいりますと、それに応じてその審理期間が長くなってくるかといいますと、そういう直接の関係があるわけではございません。  例えば、このところでいいますと、平成一年、二年あたりはかなり事件は少のうございまして、地裁の民事事件でいいますと、十一万件とかそんなような件数だったのが、去年、平成八年あたりでは十五万ぐらいになっておりますので、三、四万件ふえてきてはおるのですけれども、実はその間の事件処理のスピードという点ではむしろ短くなってきております。  かつては全事件の平均で一年以上かかっておりましたのが、最近では平均的な審理期間というのは十カ月ぐらいになってきている。これは、やはり裁判所とそれから訴訟の運用に携わられます弁護士さん方がいろいろ工夫をしまして、スピーディーな審理をやっていこうということを工夫してきた、その成果と言っていいかと思うのです。  ですから、今後ともそういうふうな訴訟の運営の上での工夫というのも重ねていく必要があるだろうと思いますし、ただ、やはり事件の負担がふえてまいりますとそれだけではなかなか処理し切れないところもございます。そういったところは、事件数動向も十分見ながら、人的な陣容の問題も含めまして、裁判所の方の体制の整備をさらに進めていく必要があるだろう、そういうふうに考えております。
  152. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 時間がありませんので、とにかく自己責任社会においては司法が頼りでありますから、これからの社会情勢を踏まえて、そもそも法務省というのは非常に保守的でゆっくりと変化をしていく省庁だ、こういうふうに考えておるわけですけれども、ここはスピードアップして司法基盤の整備についてぜひ頑張っていただきたい。  国民裁判に対して敷居が高いというようなことになってしまいますとへ一番私が心配するのは、本来裁判で裁かれるべき問題が暴力団や事件屋やら、そういうようなやからが仲介に入るというようなことにもなりかねませんので、ぜひ早急に司法基盤の整備という問題については社会に対応して進めていただきたい、このことをお願いしまして、質問を終わります。
  153. 笹川堯

    笹川委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  154. 笹川堯

    笹川委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  まず、内閣提出裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  155. 笹川堯

    笹川委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、内閣提出検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  156. 笹川堯

    笹川委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  157. 笹川堯

    笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  158. 笹川堯

    笹川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時十四分散会      ————◇—————