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1997-11-07 第141回国会 衆議院 法務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十一月七日(金曜日)     午前十時開議  出席委員   委員長 笹川  堯君    理事 太田 誠一君 理事 橘 康太郎君    理事 八代 英太君 理事 与謝野 馨君    理事 赤松 正雄君 理事 上田  勇君    理事 北村 哲男君 理事 木島日出夫君       石原 伸晃君    粕谷  茂君       河村 建夫君    下村 博文君       谷川 和穗君    中川 秀直君       西川 公也君    浜田 靖一君       横内 正明君   吉田左エ門君       渡辺 博道君    渡辺 喜美君       安倍 基雄君    漆原 良夫君       西村 眞悟君    福岡 宗也君       若松 謙維君    佐々木秀典君       末松 義規君    田中  甲君       保坂 展人君    鴨下 一郎君       園田 博之君  出席国務大臣         法 務 大 臣 下稲葉耕吉君  出席政府委員         警察庁長官官房         長       野田  健君         警察庁刑事局長 佐藤 英彦君         法務政務次官  横内 正明君         法務大臣官房長 頃安 健司君         法務大臣官房司         法法制調査部長 山崎  潮君         法務省民事局長 森脇  勝君         法務省刑事局長 原田 明夫君         法務省矯正局長 東條伸一郎君  委員外出席者         法務大臣官房審         議官      吉戒 修一君         大蔵大臣官房秘         書課長     渡辺 博史君         大蔵省証券局証         券業務課長   小手川大助君         大蔵省銀行局銀         行課長     内藤 純一君         証券取引等監視         委員会事務局総         務検査課長   滝本 豊水君         最高裁判所事務         総局総務局長  涌井 紀夫君         参  考  人         (評論家)   佐高  信君         参  考  人         (学習院大学法         学部教授)   前田  庸君         参  考  人         (弁護士)   久保利英明君         参  考  人         (財団法人日本         証券経済研究所         主任研究員)  紺谷 典子君         法務委員会調査         室長      海老原良宗君     ————————————— 委員の異動 十一月七日  辞任         補欠選任   奥野 誠亮君     浜田 靖一君   河村 建夫君     石原 伸晃君   古賀  誠君    吉田左エ門君   加藤 六月君     若松 謙維君   枝野 幸男君     末松 義規君   佐々木秀典君     田中  甲君 同日  辞任         補欠選任   石原 伸晃君     河村 建夫君   浜田 靖一君     奥野 誠亮君  吉田左エ門君     古賀  誠君   若松 謙維君     加藤 六月君   末松 義規君     枝野 幸男君   田中  甲君     佐々木秀典君     ————————————— 本日の会議に付した案件  商法及び株式会社監査等に関する商法特例  に関する法律の一部を改正する法律案内閣提  出第二二号)      ————◇—————
  2. 笹川堯

    笹川委員長 これより会議を開きます。  内閣提出商法及び株式会社監査等に関する商法特例に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、まず午前の参考人として評論家佐高信君、学習院大学法学部教授前田庸君の両名の方に御出席いただいております。  両参考人には、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序及び発言について御説明申し上げます。  まず、佐高参考人前田参考人の順に、各十五分程度意見をお述べいただき、その後、委員質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  それでは、まず佐高参考人にお願いいたします。
  3. 佐高信

    佐高参考人 商法改正というのは一九八一年にあったわけです。そのときも私はさまざまなところで話したり書いたりしたのですけれども、その認識前提が、総会屋というものをどういうふうにすればなくすことができるのか。私はそのとき、八一年の商法改正というのは、いわばハエ発生源をきれいにしないでハエを追うようなものだというふうに申し上げたわけです。つまり、総会屋というふうなものを一生懸命退治しようとしても、総会屋が出てくる基盤、つまり会社の方の汚職や内紛やそういうふうなものをなくさなければ、ハエだけ追っかけても総会屋というのはなくならないというふうに申し上げた。  この間、さまざまに問題になりました全日本空輸、全日空の場合でも、若狭得治という人が会長からさらに名誉会長になって実権を握っていた。なぜそういうことが出てくるのか。一九七六年のロッキード事件の直後の株主総会若狭という人が逮捕される直前の株主総会ですけれども、その株主総会で、今問題になっている小池隆一がいわば若狭擁護の演説をやっているわけですね。過ちは最後まで追及してはいけませんみたいなことを言っている。それに助けられたという形で若狭という人は社長を留任し、その後捕まっても会長という形でとどまるわけです。  だから、私は、ハエ発生源関係でいえば、発生源の方がハエを培養してきたんじゃないか、そこにメスを入れなければ、幾ら罰則強化してもハエはいなくならない、次々とハエは出てくるということだろうというふうに思います。その認識前提がやはりまだちょっと違うのではないか、その八一年のときの改正と同じ認識に立っているのではないかという感じが私はしてなりません。  それで、総会屋問題がこれだけことし騒がれて、皆さん方御記憶、御承知のことと思いますけれども、ことしも六月末の、あれは二十七日ですか、六月末の同じ日の同じ時刻に一斉に株主総会が行われるわけですね、ほぼ九割の日本会社。私は、このほぼ九割の同じ日の同じ時刻株主総会をやった企業というのは、すべて総会屋関係があると言って差し支えないと思います。  つまり、ほかの日になぜやれないのか。私が外国のメディアから取材なんかを受けた場合に一番困るのはこのことで、あの日本株主総会のていたらくというのは何かと聞かれたときに、恥ずかしくて答えられない。つまりは、六月末の同じ日の同じ時刻に一斉に株主総会をやるというのは、株主総会を全くやっていないということと同じなわけですね。それで日本がまともな経済社会だというふうなことは言えない。だから、野村証券第一勧銀の問題が出て、その出た後でも、野村証券第一勧銀も、やはり同じ日の同じ時刻株主総会をやっているわけです。だから、例えば警察の主導のもとに反省という名の申し合わせみたいなものが行われていますけれども、私は、全く企業の方にそれを直す気はないんだろうというふうに思うわけです。  どういうことかというと、例えば、来年自分のところの企業は同じ日の同じ時刻にはやりませんというふうに言えるかどうか。本当に総会屋と絶縁する気があるかどうかというのはその一点にかかっているのです。幾ら誓ったって何したって、やはり同じ日にやるというのは、総会屋と本当に切る気がないということなんです。  第一勧銀だけがさすがに来年は別の日にやるということをはっきりと言っている。しかし、これだけ三菱自工を含めさまざまに問題になっている企業が、口では総会屋と絶縁いたしますみたいなことを言っていても、別の日にやるということは言っていないわけですね。だから、別の日にやれるかどうか。つまり、別の日にということは、たくさんの株主が押しかけてきますから、そのときに堂々と長時間やれるのかどうか。そこにかかっているわけですね。  それから、総会屋というのをうるさいとかなんとか言うけれども、総会屋とまともな株主の区別というのは、会社側から見ればついているかもしれないけれども、そう簡単にはっかない。つまり、会社に対してさまざまに、うるさい、物申す株主というのは、会社側から見れば全く総会屋と一緒なんですね。都合の悪い株主はすべて総会屋並みに扱う。  だから、私は、問題はハエではなくて発生源の方にあるんだということを第一番に申し上げて、それから一斉株主総会というのを何とかしなければだめなんであって、総会屋との絶縁なんて、誓いなんていうのはほとんど有効ではないというふうに申し上げたいと思います。  それからもう一つ、次に申し上げたいのは、大事なことは、社長連座制みたいなことを採用しなければ総会屋というのはなくならない。  つまり、今この期に及んでまだ、総務部長個人判断とか、あるいは大和証券の場合では証拠隠滅個人判断だとか、そんなことを言っているわけですね。何か国会でも、個人ぐるみなんていうとんでもない言葉が生まれたわけですけれども。今の日本会社個人意思というのをはっきり持っている役員なんていうのはいないわけですね。だから、個人というものが確立していないところに個人意思というのはあり得ない。だから、ある種それなり個人意思みたいなものを持てるのは、会長とか社長とか、その会社によって違いますけれども、会長実権を握っている場合もあるし、社長実権を握っている場合もある。つまり、そういうトップが本当に総会屋を切る、自分の命を張っても総会屋を切るという覚悟がなければ切れないわけですね。  日本会社の場合よく言われますけれども、よきに計らえみたいな、うまくやれよというふうな形を言う。そうすると、総務部長は、うまくやれよと言われたら、総会屋に金を渡すしかないわけです。絶対に金を渡すな、おれが何時間でも総会で答弁するというふうに社長なり会長が決めなければ、総会屋というのはなくならない。  そういう意味では、総務部長が金を渡したとして捕まったら即社長も捕まるという社長連座制、最近ようやく国会議員にも、ようやくというのはあれかもしれませんけれども、連座制というのが適用されて問題になっているようですけれども、それをやはり私はやらなければ社長とか会長がその気にならないということだろうというふうに思います。  だから、一斉株主総会というのをどういうふうにするのか。それから、一斉株主総会というのをそういうふうにしないように何とかする。それから、社長連座制みたいなことをしっかりとやるということですね。  それから、もう一つ私が言いたいのは、総会屋というふうな存在、はっきりした存在というのが今さまざまに問題になっていますけれども、もう一つ総会屋まがいの種族というのがいるんじゃないか。例えば、大蔵省官僚、あのたかり官僚なんというのはまさに、東京協和信用組合の例の高橋治則という人間になかった大蔵官僚なんというのはまさに、ほとんど総会屋に等しい存在ではないかという感じさえ私はするわけです。総会屋官僚というふうなものもあるだろう。そういうふうな問題にもメスを入れるのでなければ、企業というふうなものが健全化しない。  何か今、小池隆一という人間存在によって、三十六人というのですか、経営者が監獄に送り込まれている。私は、あの人たちに罪を犯したという意識はほとんどないだろうというふうに思います。その立場役割ということでやったんだという感じしかないだろうと。  しかし、経済犯罪というふうなものは、社会のいわば信頼とかそういうものの根幹にかかわる問題であって、その辺の社会信頼感みたいなのを取り戻すためには、やはり会社取締役というのはどういう責任を負わなければならないんだということをきっちりと認識させる必要があるんだろう。何か、偉くなって、日本の場合は、偉くなるということは責任をとらなくていいというふうなことを意味するようになっているわけですね。要するに、スケープゴート幾らでも出せる、あるいはスケープゴートになれる人がたくさん出てくるというのが日本の特に会社トップというふうなものであるわけですけれども、そういう問題を含めて、この問題を考える際の基本線というのは、先ほども申し上げましたけれども、ハエが問題なのではなくて、ハエ発生源の方が問題なのだということを申し上げて、一応私の発言を終わらせていただきます。(拍手
  4. 笹川堯

    笹川委員長 ありがとうございました。  次に、前田参考人にお願いいたします。
  5. 前田庸

    前田参考人 前田でございます。  このたびの、いわゆる総会屋の根絶を図るとともに株式会社の運営の健全性を確保するための商法及び株式会社監査等に関する商法特例に関する法律の一部を改正する法律案につきましては、全面的に賛成であります。  株主権利行使に関する利益供与罪受供与罪につきましては、昭和五十六年改正商法によりその規定新設する審議の過程で、その法定刑をどの程度にするかに関しましていろいろな意見が出されました。結局は、商法四百九十四条の規定する会社荒らし等に関する贈収賄罪法定刑とのバランス、その他諸般の事情から、現行商法四百九十七条の規定するところに落ちついたのであります。しかし、当時から、それでは軽過ぎるのではないかという意見もなかったわけではありませんでした。  このような経緯から考えましても、また、最近、株主権利行使に関する利益供与受供与禁止違反事件が次々に発覚していることにかんがみましても、右の法定刑をぜひ引き上げるべきであるというふうに考えます。したがって、この点に関するこのたびの改正法律案が可決されることを希望するものであります。  利益供与要求罪及び威迫を伴う利益受供与罪要求罪規定新設及びその法定刑並びに利益受供与罪威迫を伴う利益受供与罪要求罪についての懲役刑罰金刑との併科規定新設についても賛成であります。  企業の側が利益供与をやめようと思っても、総会屋がその要求をした場合、殊に威迫を伴う要求をした場合には、心ならずもそれに応じてしまうというのがこれまでの企業の側の利益供与禁止違反事件実態ではなかったかと推察されますが、右のような刑罰規定新設により、右のような利益供与禁止違反が防止できるようになるというふうに期待されるからであります。  さらに、これらの規定とのバランス関係等から、その他の会社法上の罰則強化に関する改正法案に関しても賛成いたします。  本年七月二日に法制審議会商法部会が開催されましたが、そこでは、事務当局から、会社法上の罰則強化必要性について、最近、企業不祥事が相次いで発生していることから、国会において利益供与罪等法定刑を引き上げるべきである旨の指摘を受けており、現在、引き上げの程度やその対象範囲について検討中であるが、緊急立法としてできるだけ早期に法案を作成したいので了解を願いたいとの要請がありました。法制審議会商法部会といたしましては、全会一致利益供与罪等会社法上の罰則強化について了承いたしました。その具体化につきましては事務当局に一任するということを決定いたしました。このことを申し添えさせていただきます。  昭和五十六年改正商法株主権利行使に関する利益供与禁止規定及びその違反行為に関する罰則規定を設けた趣旨は、このような規定を設けることによって、企業の側としては、総会屋から利益供与要求をされても、それに応ずると罰則制裁を科せられるということを理由に利益供与を断ることになるであろう、それによって総会屋を根絶することができるであろう、そういうことにありました。私としましては、このような立法それなりの効果があったと考えております。  昭和五十六年商法改正当時、我が国総会屋は六千数百人存在した。上場企業から総会屋に流れる金額、これは年間六百億から七百億円とも、さらには一千億円に達するとも言われておりました。その当時に比べますと、現在は、総会屋の数の点でも、総会屋に流れる金額の点でも大幅に減少しているということは確実であると信じております。しかも、これらの規定がこのたびの利益供与事件摘発根拠となっているということからいいましても、この存在意義は評価されてしかるべきではないかというふうに考えます。しかし、なお、総会屋が根絶されるに至っていない、違反事件が次々と発覚しているということは残念でなりません。  総会屋存在は、我が国独特のものであります。このたび提案されております改正法案が可決され、その規定総会屋への利益供与に対する大きな抑止力として機能するということを願ってやみません。  最近の利益供与事件を中心とする企業不祥事が次々と明るみに出されているということに関連しまして、コーポレートガバナンスに関する論議が盛んになされておりますが、この機会に、それについて若干の所感を述べさせていただきたいと存じます。  まず、株主代表訴訟制度について取り上げさせていただきたいと存じます。  私としましては、このような不祥事抑止力としての株主代表訴訟制度存在意義というものを無視してはならないというふうに考えます。したがって、平成五年改正商法により、その訴訟申し立て手数料が一率に八千二百円とされたということが契機となりまして、株主代表訴訟制度を制限する方向商法改正するという主張が主として経済界からなされておりますが、このような改正につきましては、どうか慎重なお取り扱いを願いたいというふうに存じます。  右のような主張根拠としまして、経営者株主代表訴訟提起を恐れて、経営が萎縮してしまうということが挙げられております。しかし、これまでの株主代表訴訟事件を調べますと、それは杞憂にすぎないということが明らかであります。  これまでの主要な株主代表訴訟取締役敗訴の判決がなされましたのは、自己株式取得禁止違反事件贈賄事件利益供与禁止違反事件等の具体的、明示的な法令による禁止規定違反事件についてであります。経営判断の当不当の問題で被告取締役が敗訴したという事例は、存在しないと言ってよいと考えます。そしてまた、裁判所原告株主に対する担保提供命令も有効に活用されておりまして、濫用的な訴訟提起が防止されております。  経営者としましては、このような株主代表訴訟の運用の実態というものをよく理解されましたら、株主代表訴訟制度によって経営が萎縮させられるというようなことはない、そういう心配をしないで経営をしていただける、そういうものと考えます。  代表訴訟に期待されるのは、企業不祥事件抑止力法令違反行為抑止力であります。企業不祥事が次々と明るみに出されている現在、株主代表訴訟制度は、ますますその役割を発揮するということが期待されるのであります。これを制限する方向商法改正するという時期ではないというふうに考える次第であります。どうかこの点、よろしく御理解賜りますようお願い申し上げます。  監査制度につきましても若干触れさせていただきたいと存じます。  我が国では、一方で取締役会業務執行決定機関でありながら、みずから業務執行監督権限を有し、かつ、監査役ないし監査役会業務執行監査権限を有する、そういう比較法的には極めて珍しい監査体制をとっておりますが、私といたしましては、我が国監査制度基本構造というのはそれなりに整っているというふうに考えております。  監査制度につきましては、昭和四十九年に大改正がなされまして、監査役監査権限充実監査役地位取締役会または代表取締役からの独立性の保障について十分な配慮がなされました。さらに、昭和五十六年及び平成五年にも改正がなされまして、その権限充実及びその地位独立性強化が徹底されたと言ってよかろうと思います。  この平成五年改正におきましては、商法特例法上の大会社に限ってでありますが、社外監査役制度の導入、監査役の員数の増加、それまで二名以上だったのが三名以上とされました、及び監査役会法定がなされました。そして、監査役監査役会との関係につきまして、監査役独立制、すなわち個々の監査役がその監査権限を単独で行使し得るという制度、これを損なわないようにするための細心の配慮がなされたのであります。監査役権限を取り上げてみましても、新しくこれにつけ加えた方がよいと思われるものは考えられないと言ってもよいのではないかと思います。  それにもかかわらず、企業不祥事が後を絶たないということは、繰り返しになりますが、残念でなりません。会社ぐるみ不祥事がなされるという場合には、どんなに監査制度充実させても、これを事前にチェックするということは困難であると言わざるを得ないと思います。  しかし、このたびの企業不祥事が摘発されまして明るみにされたことによりまして、企業の側としましては、企業違法行為をすれば、結局は社会的信用を失って大きな損失をこうむるとともに、取締役自身刑事上及び民事上の厳しい制裁を科せられる結果になるということを該当する企業関係者は身にしみて感じたと思いますし、またそうでない企業関係者も他山の石として反省しているというふうに考えます。各業界において、総会屋との関係を断絶するという旨の覚悟が表明されているということは、大変喜ばしいことでございます。  このたびの改正法案が可決されまして、その規定企業不祥事に対するさらに強力な抑止力として機能し、それに企業の側の反省が相まって、総会屋が根絶されるということを期待いたしまして、私の意見陳述を終わらせていただきます。  御清聴ありがとうございました。(拍手
  6. 笹川堯

    笹川委員長 ありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。
  7. 笹川堯

    笹川委員長 これより質疑を行います。  質疑者にお願いいたします。  質疑の際は、まずお答えをいただく参考人のお名前を御指名の上、質疑にお入りください。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。下村博文君。
  8. 下村博文

    下村委員 自由民主党の下村博文でございます。  お二人の参考人の方から貴重な御意見をお聞かせ願いまして、ありがとうございます。  最初に、佐高参考人にお聞かせ願いたいと思います。  ハエ発生源をなくさなければ、ハエは根絶できないという話がございました。そして、それに関連して、前田参考人から、その発生源をどうなくすかという具体的な御提言もあったかに思います。具体的なこともありますが、佐高参考人にはちょっと本質的なことでお聞かせ願えればというふうに思います。  それというのも、今回の一連の事件というのは、単に商法だけの問題ではなくて、ある意味では今の日本の置かれている本質的な問題がここにも出ているというふうな、そういう認識を私自身は持っております。そして、橋本内閣が今進めております六つ改革というのも、ある意味では戦後の、今までのやってきた方法、護送船団方式であったり、あるいは保護主義的なやり方、それが今までは成功してきたわけでありますが、その延長線上ではそれはもう成功しない。国際社会の中で、まさにその大競争の中で、国際的な基準に合わせて、日本独自の護送船団方式であるとかあるいは規制をしている、それをどう取り払いながら、国際的な慣習の中で日本という国を再生、発展させるかどうか、それのうみが今回のこの総会屋の問題でも出ている、こんなふうに思うわけであります。  そしてそれは、六つ改革というのも、ある意味ではこれからの新しい、明治維新そして終戦のとき、そして今回が第三の開国と言われておりますが、この開国を本当に達成できるかどうかという一つの端緒であって、この六つ改革がすべてできることが新しい日本をつくるその結論でなく、そのスタートであるということで、これからある意味では日本人一人一人がこの改革に向けて痛みを伴う、あるいは今までの自分の発想を変えなければいけない、そういうときにも来ているというふうに思いますので、これは単に政府なりが改革をすればいいということだけでなく、日本人そのものが、意識も含めてどう改革できるかどうかということが同時に問われてくるのであろうというふうに思います。  そういう中で、今までの企業のあり方というのも、ある意味では一人一人が、先ほどのお話の中にもありましたように、恐らく罪の意識はないのではないかというふうなお話がありましたが、ある意味では会社を守る、あるいは会社にとってこれは当然なことであるという中で結果的には罪を犯しているということが今回もあったのではないかというふうに思いますし、その辺で日本企業文化をこれからどうつくっていくかという中で、二つの点から。  一つは、これは、総会屋の問題は日本としての特殊な状況がございます。この特殊な状況というのは、日本の精神文化という視点からとらえてどう特異性があるのか、またそれを、どう精神文化をクリアしていくことが国際的な標準の中で通用するということにつながっていくのかということが一点。  それからもう一点は、これに関係しますが、基本的にそういうことがあるからこそ、日本のある意味では精神的な特異性があるからこそ、本当の意味での民主主義が戦後育ってなかった。この民主主義的な部分が育ってなかったことによってこのような、ある意味では脆弱性なり未熟性があらわれているというふうにもなるのではないかと思いますが、佐高参考人のお考えになる日本の民主主義の問題点、そしてその問題点をどうクリアすることがハエ発生源をなくすということにつながるのか、かなり本質的な話でありますが、これについてお聞かせ願えればと思います。
  9. 佐高信

    佐高参考人 私は、日本の美風というのは、ある種世界的な基準を入れてもそんなに簡単にはなくならないのだろうというふうに思っています。よく、さまざまないわゆるグローバルスタンダードを持ち込むと日本の美風は壊れるのだというふうなことをおっしゃる方がおりますけれども、私は、すべてがいいというふうには思っておりませんけれども、日本の和というふうなものを中心とした気風というのは、そう簡単には壊れないだろうというふうに思っているわけです。  それと、会社のためにというふうに言うときに、先ほど全日空の若狭さんの例を一つ象徴的な例として挙げさせてもらいましたけれども、会社のためにと言っていて、結局は若狭のためになんですね。若狭のためにを会社のためににすりかえて、小池という総会屋をいわば飼ってきた。そこに個人のためにというのと会社のためにというのが混同されている。あるいは上の方は、むしろそれをうまく混同するように持ってくるわけですね。そこのところは、やはり私はきっちりとメスを入れていかないとよくならないだろうと。  ちょっと極端な話かもしれませんけれども、日本には宗教がないというふうに言われるけれども、企業教というのがあるんだというふうに私は言っているわけですね、トヨタ教であり松下教であり。その企業教というのは、ある意味ではオウム真理教より呪縛性は強いんじゃないかというぐらいのことを、マインドコントロールといい、会社のためには尊師のためにだし、社宅という名のサティアンもあるなんて私は言っているわけですけれども、そのぐらい強い。そこは、ですからもう少しきちっと個というふうなものの考え方を入れていく必要があるだろう。  社歌を歌ったり、変なことをいろいろやっているわけですね。毎朝社歌を歌ったりするような会社もありますけれども、そんなのが会社というふうなものになじむものではないと思いますし、それと、グローバルスタンダードというふうなものへの、会社制度というふうなものをとっている以上、グローバルスタンダードみたいなものにやはり少しでも近づけなきゃならない。  ところが、ニューヨーク証券取引所というところに株式を上場している日本企業というのは、今現在わずか十社程度なんですね。それがすなわちグローバルスタンダードを満たすというふうには私は考えませんけれども、一応の目安として申し上げれば、ニューヨーク証券取引所に株式を上場している企業というのは、本田とかソニーとかあるいはTDKなんかを含めてわずか十社で、金融関係では東京三菱銀行だけなんです。  証券スキャンダルの発覚前に、ニューヨーク証券取引所が日本の証券四社に、株式を公開しませんか、大きくなったのだからという形を、ウエルカムのサインを送ってきた。それに対して、日本の証券四社は断るわけですね。それは皮肉な意味で正しかったと私は言っているのですけれども。あのときにニューヨーク証券取引所に上場していたら、証券スキャンダルが発覚して間違いなく証券のトップはあのとき既に逮捕されていたろうという感じがするわけです。それをわかっていたから上場を断ったというふうにもとれるわけですけれども。  それで、私はあるテレビの番組で、今すぐ即効薬としてこの証券スキャンダルみたいなものをなくする方法はないのかと言われたので、改めて証券大手四社とか銀行のニューヨーク証券取引所への株式上場というふうなものを勧めたらいい、向こうにはSECというのがついていて、FBIと連動してすぐ逮捕したりするわけですね。そのくらい厳しい。自分のところで行儀を直せないんだから、外で直してもらったらどうだというふうなことを言ったら、キャスターが声を潜めて皮肉なことを言って、佐高さん、大蔵省も上場させてはどうでしょうということを言ったのですけれどもね。  そのくらいやはり大蔵と、特に第一勧銀野村証券を含めて、金融に一番不祥事が象徴的にあらわれているというのは、大蔵省のそういうふうなものについての考え方が、保護という、過保護というふうなものの中で腐ってきた。そこはやはりきちっと取り除いて、取り除いても私は日本の美風というのは壊れないというふうに思っております。
  10. 下村博文

    下村委員 今回の商法改正の問題で、若手の上場企業会社社長さん何人かに聞いてみました。そうしますと、十五年前の商法改正で、前田参考人からお話がありましたように、大幅に総会屋等は減ってはいるけれども、しかし今回の改正によって根絶するとは思えないし、またこれは総会屋だけの問題だけでなく、やはり企業側の問題が大分あるのではないか、こういう話は言っておりました。  そういう中で、ちょっと日本も意識が、若手の経営者の中では変わってきたかなと思うのは、私が知っている範囲内の人でしか聞いていませんけれども、総会屋とのつき合いはない、かつていろいろな形でいろいろな接触的なことはあったけれども、断固として拒否をしてきたし、またあえて総会対策というのをしないことによって逆に総会屋との接点を持たなくなったし、それは実際に、例えばきょうは法務委員会でありますけれども、いろいろな委員会、予算委員会でも橋本総理が朝から晩まで、何日間も、まさに時には針のむしろのような議論の中でずっといることを考えれば、ある意味では日本社長が、先ほどお話がありましたように、総会対策ということでなく、何時間でも、あるいは一日でも二日でも、株主総会で法に基づいた内容であればきちっと丁寧に答えるというぐらいの誠実性を逆に企業文化として持つことが必要ではないかというふうにも思ったわけであります。  ちょっと時間の関係で飛び飛びの質問になりますが、前田参考人にお聞かせ願いたいと思うのです。  今回、この改正によってどの程度根絶できるか。また、するために幾つかの具体的なお話がありましたけれども、その具体的な提案を含めて、それによって、先ほどの佐高参考人の話をおかりすれば、いわゆるハエ発生源を根絶することが可能か、この辺をお聞かせ願いたいと思います。
  11. 前田庸

    前田参考人 先ほど、総会屋の問題だけではなくて、企業の側にも問題があるのではないか、そういう若手の上場企業社長の方の御発言でございますが、実は昭和五十六年改正もまさにそのことを考えまして、昭和五十六年改正商法規定によりますと、「会社ハ何人二対シテモ株主ノ権利ノ行使ニ関シ財産上ノ利益ヲ供与スルコトヲ得ズ」とありまして、企業を対象にしてこういう禁止規定を設けた、そのついでにその利益を受けた総会屋に対する規制もした、そういうことになっておりますので、昭和五十六年改正当時から、要するに、総会屋かどうかを判断するのは企業から金を受け取っているかどうかということでございますので、企業の側が総会屋に対して金を出さないようにすることを第一目的とするということで規定されていた。その点は、先ほどの御発言の趣旨のとおりであろうというふうに思います。  それで、このたびの改正で根絶できるかということでございますが、私としては、これだけ法定刑が厳しくなる、しかも株主代表訴訟で、現在もう既に問題になっているようでありますが、社長等が民事上の損害賠償責任を追及されている、そういうことになりますと、これからはやはりもう怖くて総会屋とのつき合いはできないという気持ちを持っている経営者が大部分ではなかろうかというふうに期待しております。  そういう意味で、このたびの改正及びこのたびこのように事件が摘発されてこういうことが明るみにされたということによって、企業の側も、先ほども触れましたけれども、相当に反省している、もう怖くてこういうことはできないということを直接聞いたこともありますけれども、そういうこともありますので、根絶されるのではないかというふうに期待しております。  以上でございます。
  12. 下村博文

    下村委員 佐高参考人にお聞かせ願いたいと思います。  先ほど、発生源をなくすために具体的な提案をされました。ニューヨーク市場にもっとどんどん公開した方がいいのではないか、あるいは、年に一度の六月の株主総会等、それぞれ企業の独自性でやったらいいのではないかと具体的なお話がございました。  もっと本質的なお話で、先ほど、日本の美風というのがある、それはどういうふうな形になっても、ボーダーレス化になっても変わらないのではないかとお話がございました。日本の美風というのは、ある意味では、聖徳太子からの「和を以て貴しと為す」というふうな、そういう部分が日本の美風としてあるのではないかというふうには思います。  そういう中で、日ごろ、佐高参考人におかれましては、舌鋒鋭くいろいろなところでいろいろな発言をされているわけでありますが、この商法の問題だけでなく、本質的に我が国があるいは日本人が国際社会の中で、民主主義的な国際社会における共有するコンセンサスを持ちながら、さらに国際社会の中で発展をしていく。国際社会の中で日本が、日本の経済だけではありませんけれども、政治も含めてこれから大きく発展をさせるためには、今までの成功例は逆に今それが足かせになっている。それをどう取っ払うかということが、システムをどう変革するかということになってくるわけでありますけれども、具体的に、この商法だけでなく、日本人の意識だけでなく、システムをどういう方向に転換をさせることが国際的に通用する、あるいは国際社会の中で日本の経済を、あるいは日本の政治を、あるいは文化をどう発展し、広げるということになるか。今、ある意味ではそれのちょうどターニングポイント的な時代でもあるというふうに思うのですね。  ですから、新しいそういう時代がどういう方向に行くことが日本にとって望ましい方向であるというふうにお考えになっているか、これについてお聞かせ願いたいと思います。
  13. 佐高信

    佐高参考人 和というふうなものがある種の日本の美風であるというふうなことに私も異存はないのですけれども、私がニューヨーク市立大学教授の露見芳浩さんと対談したときに、露見さんが向こうでよく使うジョークというのを紹介してくれまして、それは、豪華客船がやみ夜に難破して乗客が海へほうり出されたと。あるところでは救命ボートが一隻しかないので、女の人と子供を乗せるといっぱいになる。それで、男たちが暗い海に漂って助けを待つということになった。国際化時代を反映してか、その船にはアメリカ人、イギリス人、イタリア人、ドイツ人、そして日本人の男たちが乗っていた。それぞれの国の男たちに、どうやって男だけが海に飛び込むことを納得させるか。イギリス人に対しては、ジェントルマン、紳士ならみんな海に飛び込めと言えばいいと。イタリア人に対しては、飛び込むなと言うと飛び込むと。ドイツ人に対しては、キャプテンの命令だ、船長の命令だと言えと。アメリカ人に対しては、皆さんには保険がかかっていると言えばいいと。じゃ、日本人に対して何と言うのかというと、日本人に対しては、ほかの皆さんはおそろいで飛び込んでいますと言うと、隣の人を突き飛ばしても飛び込むと。  つまり、和というのはそちらの方に流れる。それがバブルなんかで顕著にあらわれたわけですね。そこにどう切れ目を入れるのかということだと思うのです。それについては、やはり生産の場と生活の場というふうなものを切り離す。日本の場合は、社宅という非常にユニークというか特殊というか、ILO、国際労働機関は、社宅というのは社員にとって好ましくないというのをもう随分前から勧告しているわけですけれども、そういう生活の場まで和が持ち込まれて、ずぶずぶになっているわけですね。そこに切れ目を入れるということが、私は非常に必要なんじゃないかと。だから、生活まで囲い込むという社宅みたいな形じゃなくて、生活はやはり別だと。生活と生産は別なんだというふうに、切れ目を入れても、隣の人を突き飛ばしても飛び込む日本人のそういう性質は、そう簡単にはなくならないだろうというふうに思います。
  14. 下村博文

    下村委員 時間が終わりましたので、以上で終了させていただきます。ありがとうございました。
  15. 笹川堯

    笹川委員長 上田勇君。
  16. 上田勇

    ○上田(勇)委員 新進党の上田勇でございます。  きょうは、佐高先生、前田先生、大変お忙しい中、当委員会に御出席をいただきまして、大変貴重な御意見を承りまして、本当にありがとうございます。  きょうも新聞のトップはやはり総会屋の記事が飾っておりまして、本当にここのところ連日のように、日本の代表的な企業がこの総会屋の違法な利益供与ということで連日各種マスコミをにぎわして、日本の経済あるいは企業といったものがここまでこうした反社会的な勢力との関係で汚染されていたのかというのが、正直言って、私もそうでありますし、多くの国民が本当に驚き、また今、大変な不信を抱いているときじゃないかというふうに思います。  今回のこの商法改正につきまして、ただいま佐高先生、前田先生の方から御意見を伺いましたので、それにつきまして若干御質問をさせていただきたいのです。  まず、佐高参考人にお伺いいたしますが、ただいまのお話の中で、株主総会がいわゆる集中日に一斉開催される、そうした企業はすべて総会屋関係があると見ていいというようなお話がございました。これは、以前にも先生いろいろ新聞などでも同じようなことを書いておられるのを私も拝見しておりますが、確かにこの株主総会、一斉に開催される。しかも、今度のこの委員会審議の中で出てきた議論として、株主総会は平均すると三十分にも満たない、二十何分だというのが何年も続いているというようなことであります。これでは、確かに少数株主というのでしょうか個人株主会社経営に対して物申す、意見を言うというような場が極端に限られているという異常な形じゃないかというふうに思います。  これは、先ほどお話がありまして、日本企業というのはよく体面を重んじるので、企業不祥事であるとか経営者にまつわるスキャンダルであるとか、そういったものはなるべく隠そう、体面を保とうという意識が働くというような、そういう企業文化というのでしょうか、そういう面もあると同時に、私は、日本企業経営というのが、少数株主個人株主というよりも、株式の持ち合い制度があるがゆえに、実際に個人株主、少数株主経営発言権を与えなくてもほとんど今まで支障なく、それぞれお互いさまというような形で運営されてきたという面もあるのじゃないかと思うのです。  その辺、なぜここまでそういうふうに株主総会が形骸化してしまっているというような理由、若干御説明ありましたが、もう少し補足していただきたいのと、例えば今経団連の方なんかでもこの集中日の問題についてはいろいろと議論があるようですが、今後どういう方向に行くだろうか、その辺、予測というのはなんですが、もしお考えがあれば御意見を例えればというふうに思います。
  17. 佐高信

    佐高参考人 御指摘のように、日本の場合は法人株主が七割ぐらい、その人たちはほとんど株主としての権限を行使していない、それで持ち合いになっているわけですね。それがある種の無責任社会というものを強めることになっているわけですけれども。  さっき前田参考人が言われました、せっかくそういう状況を打破するために株主代表訴訟というふうなものが持ち込まれたのに、経営者が今まで全く無責任に、楽ちんにやってこられたときにそういうものが出てきては自分たちはちょっと眠っていられないという形で、今それを緩めるみたいなことを言っているというのは、私は言語道断だと思うのですね。総会屋と絶縁するという決意と株主代表訴訟を緩めろというのは、総会屋みたいなのと絶縁して厳しい経営をやるつもりがあるということを後ろで裏切っているということなんですね。だから、皆さん方ぜひ、株主代表訴訟のあれを緩めるみたいなとんでもない提案がもし出てきた場合には、門前払いというふうなことを食わせるということが当然だろうというふうに思います。  それと、経済界が経団連とか含めて絶縁するというなら、やはり少なくともそういう副会長とかを出している企業なんかは、来年からは絶対別の日に自分のところはやるんだ、それで長時間、何時間でもやるということを言うのが先決だと思うのです。そうじゃなくて、ただみんなに誓わせますよというのは、みんなで渡れば怖くないをまだ続けようということで、声は高いけれども全然本当の意味の絶縁する気はないということだろうと思います。  私は、やはりいろいろなことを言っても、総会屋と絶縁している企業が十社くらいしかないのじゃないかと思っていますけれども、数はそれにしてもあるわけですね。そういう企業を見習ってやれないことはないだろう。それを、経団連とかなんとか、経済団体の役職に少なくともついている企業トップならみずから範を示してやるべきじゃないか。それによって私は、日本会社あるいは日本人というのは、さっき申し上げましたように、隣の人間が飛び込んでいると言うとすぐ飛び込む、銀行なんかでもそうですから、一つ変われば雪崩を打って逆の方向に、いい方向に変わる可能性もあるというふうに思います。
  18. 上田勇

    ○上田(勇)委員 佐高参考人にもう一つお伺いしたいのですが、総会屋となぜ企業が絶縁できないかというときの企業側の言い分がよく新聞等で紹介されていますが、一番大きな理由と言っているのが、多分身の安全が確保できないというような、非常に恐怖感があるというようなことがよく言われています。  新聞を幾つか見ていますと、実際にそういう脅迫的なことを言われたというような証言もありますし、またこれは、詳細についてはよくわかっておりませんけれども、例の阪和銀行の射殺事件であるとか、住友銀行でも支店長の同じような事件がありました。それについては全然まだ全容が解明されていないわけであります。  そういう中で、もちろんこれは企業側が安全の確保のための対策を講じるということも一つ重要でしょうけれども、どうしてもやはり総会屋の中の多くはいわゆる暴力団との関係といったことも実際にあるというような警察庁のお話もありました。そういう意味では、なかなか一企業でそういう段階になると対応できない面があるのじゃないかというふうに思います。もちろん、一昨日の審議の中で、警察庁としては万全の対策を期すというようなお話もありましたが、いろいろ新聞に出ている企業側の意見からいうと、世間の注目が集まっているときは警察がしっかりやってくれるのだけれども、ちょっとたつとなかなかやってくれないというようなお話があります。  佐高先生、こうした企業総会屋のかかわりについて、今までいろいろなケースについてたくさん調査し、またいろいろな御発言をされているので、今の企業のいわゆる安全対策それから警察の対応は十分なのか、また、どういうところを改善すればもっと企業が本当に毅然としてそういう反社会的な勢力と対決できるような環境を整えられるのか、その辺、御意見があればお聞かせいただきたいと思います。
  19. 佐高信

    佐高参考人 阪和銀行とかあるいは住友銀行のケースは、私は、総会屋の問題とも絡みますけれども、もう少し進んだ、進んだというか退歩したというか、企業のやくざ化とやくざの企業化の問題だろうというふうに思います。その企業のやくざ化とやくざの企業化という場合に、銀行のやくざ化とやくざの銀行化がとりわけ進んだのであって、阪和銀行の例なんかが示すように、やくざに金を貸していたわけですね、阪和銀行が。それはもう銀行ではないというふうに思うわけです。  総会屋の問題に限れば、株主総会において総会屋に質問したいだけ、もちろん変な質問は拒否することができるわけですけれども、まず質問させるだけ質問させる。総会屋以外に質問したいまともな株主もいるわけですから、その人たちに存分に質問させて、さっき自民党の方が言っておられましたけれども、総理でさえ何時間でもくぎづけになるんだからというような話がありました。社長なんかそれならやればいいわけですね。そうすれば彼らのある種の憂さというか何かが晴れるわけです。実質的に金をもらうという実りは得られないかもしれないけれども、そこで質問をとめて金を払うからおかしくなるのであって、だから、質問をどんどんさせれば一つの関門は突破できるわけですね。そういう形の方向が私は望ましいのだろうと思う。  銀行の問題については、私は、銀行が地上げとかなんとかでやくざと積極的にかかわりを持った、ある種の自業自得だろうという感じがいたします。
  20. 上田勇

    ○上田(勇)委員 前田参考人にお伺いいたしますが、先ほど、今回の法改正に至るまでの経緯につきましていろいろと御説明をいただきました。  先生は、今回の法改正におきまして罰則がかなり強化された、これにかなり抑止力が期待できるのじゃないかという御意見だったというふうに理解しております。一方で、いろいろなお話がある中で、実際には総会屋への利益供与というのは昭和五十六年の商法改正から違法であったわけでありますし、罰則は今回の改正よりは軽いとはいっても、実際、企業の役員であるとかその担当者というのは、罰則の軽重ではなくて、スキャンダルになる、報道されること、これがまさに致命傷なわけでしょうし、有名大企業なわけですから、それが新聞に出ただけで社会的な実質的なダメージというのはあったんじゃないか。既に違法であり、そういう罰則もあったにもかかわらず、今日までこういうふうに総会屋との関係が結局は排除できないで来たわけでありますけれども、今回、そういう意味で、そういった行為に対する罰則強化することが本当にその抑止力になるのかどうか。  さらに、そういうようないろいろな御意見もいろいろなところで私も聞くのですが、その意味で、むしろ今までは、違法であったにもかかわらず、法律を守るというような、なかなかそういう観念というのですか企業としての文化がなかったというところがあるのだと思うのですが、果たして、今回かなり大幅な加重であるのですけれども、それによって、これだけ刑が重くなったので、罰則が重くなったので、やはりこれは法律に違反してはいけないなというような抑止力につながるのかどうか、その辺もう少し御感想があれば御説明いただきたいというふうに思います。
  21. 前田庸

    前田参考人 御指摘の点でございますが、私は、先ほど申し上げました佐高参考人とは若干認識が違っておるのでございます。昭和五十六年の改正で刑罰は六カ月以下の懲役というふうに軽かったのですけれども、あの規定が設けられたおかげでそれなりの効果はあったのではないかというふうに私は理解しております。  その当時は、先ほど申し上げましたように、総会屋が六千数百人いた。それから、警察の発表では、総会屋に対して企業から流れるのが六、七百億。しかし、新聞に報じられたことによりますと、一般には一千億とも言われている、そういう新聞記事があったわけでございますが、そういうのに比べるとさま変わりに総会屋の数も減っておりますし、それから、総会屋に流れる金額も、これはちょっとわからないのですけれども、減っていると思います。総会屋の数も千人弱になっているということも新聞で報じられたところでありまして、また、親しい弁護士に聞いた話でも、総会屋の生活というのがかつてに比べると全くさま変わりに変わっている、それから見ても、総会屋に対する金品、金額が流れるということは大幅に減っているというふうに言っておりますので、私としてはそれなりに効果があったと。  ただ、昭和五十六年改正当時から、六カ月以下の懲役というのでは余りにも軽過ぎるのではないかというような意見もあったわけでございます。ところが、それにつきましては、当時は重い刑罰を新設するということに対しては一般的に抵抗がありまして、そういったことがありまして六カ月になったのですけれども、私どもとしては、それでは軽過ぎるのではないかというふうに考えておりましたので、このたびそれが引き上げられるということは適切ではないかというふうに考える次第でございます。  にもかかわらず、根絶されていないということは確かでございますが、しかし、このたびこのような形で主要企業の摘発がなされたということによって、さらに法定刑も重くなる、今回の摘発によって各企業反省しておるだろう、あるいは、もう今後とても総会屋とはつき合えないというふうに言っている経営者に直接私、話を聞いたことがあります。  そういったことから考えて、少なくともこのたびの法定刑を引き上げるということは有効に働くというふうに考えておる次第でございます。
  22. 上田勇

    ○上田(勇)委員 もう一問前田先生にお伺いしたいのですが、ここのところ、いろいろ経済犯罪あるいは組織的な犯罪、そういったものが続発しまして、それに対応するということで、いろいろな法整備がここ一年ぐらいの間にいろいろな法律について行われました。そういった犯罪に対する対策の、この法律でもそうなんですが、何か共通している考え方というのが、罰則強化ということが、大体何かどの法律でもそこに重点が置かれているような感じがいたします。  この委員会で議論した中でも、出入国管理法であるとか、また、今法務省の方で検討しているようですが、組織犯罪防止法であるとか、また、金融関係、大蔵委員会の方でいろいろ議論されている法案についても、そういう犯罪対策としては罰則強化というのが最大のツールとして入れられているようですけれども、果たして罰則強化という手段に依存し過ぎることが、そういう意味で犯罪の撲滅、あるいは公正な社会をつくっていくという意味で本当に有効なのかどうかというのが、私は正直言って疑問に感じております。  その意味で、非常に一般論の御質問なんですが、これは世界的にいろいろな法律、私も専門ではありませんが見ますと、やはり罰則の重い法律の多い国が必ずしも犯罪が少ない、あるいは安全な国というようなことではなくて、むしろ逆の傾向があるんじゃないかと思うのです。そういう中で、こういういろいろな犯罪が増加する、日本は非常に安全な国と言われてきた中でいろいろなものが明るみになってきた、実は潜行していたという面があるんだと思うのですけれども。  そういう中で、罰則強化という方向で対応するということが、一般論、全体的な方向として正しい方向なのかどうか、その辺の御意見をぜひ伺いたいというふうに思います。
  23. 前田庸

    前田参考人 私は、罰則強化がすべてであるというふうには考えておりません。そういう意味では、御指摘なさったことはよく理解できます。  ただ、現在の四百九十七条の規定によりますと、六カ月以下の懲役または三十万円以下の罰金、これはいかにも軽過ぎるということは、昭和五十六年改正の当時も一部で、私もその一人だったのですが、言われていたところでございます。そういった軽過ぎる規定を重くするということは必要ではなかろうか。それから、法定刑の軽い低いにかかわらず、やはり違反行為がなされたら摘発される、あるいは民事上の制裁が科されるということも必要ではなかろうかというふうに考える次第であります。  そういう点からいいましても、先ほど申し上げましたように、株主代表訴訟制度というものを制限するような改正はすべきではない。これは佐高参考人もおっしゃったことでございますが、その点、繰り返させていただきたいと存じます。
  24. 上田勇

    ○上田(勇)委員 今、先生から株主代表訴訟のお話がありました。先ほど佐高先生の方からもお話があったのですが、両先生ともこの株主代表訴訟の制限については慎重な御意見だというふうに承ったのですが、ぜひ最後に両先生にお願いしたいのですが、経団連がこの間コーポレート・ガバナンス特別委員会の提言というのを出されまして、監査役強化などという点については私は全くそのとおりだと思うのですけれども、今お話があったように、株主代表訴訟のところについて幾つか経団連の方から提案がなされています。  そういう意味で、経団連の方からなされている幾つかのポイントのうちで、これは両先生とも慎重なお立場だと思うのですが、特にここの部分というのが、やはり制約を加えてはまずいんじゃないかというようなところがございましたら御意見をいただければというふうに、両参考人からぜひお願いしたいと思います。
  25. 佐高信

    佐高参考人 今、具体的に手元にないのでわからないのですけれども、きょうの問題にちょっと絡めて言えば、総会屋がいなくなれば経営は健全化するのかというと、これは別問題ですね。総会屋がいなくなることと経営の健全化というのは別問題なんであって、残念ながら日本企業は、総会屋がわずかに批判勢力としてある、それによってようやくまともになっている、そういう非常に皮肉な意味があるわけですね。そうすると、総会屋をなくした場合に、経営の健全化、経営者のある種の責任を追及するというのは、まさに株主代表訴訟しかなくなるわけですね。  そういう意味では、私は今のむしろ経団連が嫌がるのがまさに必要な方だというふうに思います。
  26. 前田庸

    前田参考人 経団連の意見の中で、株主代表訴訟提起を制限する、かつては、少数株主権とする、発行済み株式総数の百分の三とするというような意見が出されておりましたけれども、恐らくそれは現在は撤回されておりますが、撤回されたということは大変結構でございまして、そういう少数株主権とすべきではないというふうに考えます。  それからもう一つ、現在も主張されておりますのは、監査役会株主代表訴訟提起すべきではないと全員一致で判断した場合には株主代表訴訟提起できない、そういう規定を設けるべきだというふうに意見を言っておるわけでありますが、そういう制限はすべきではないというふうに考えております。
  27. 上田勇

    ○上田(勇)委員 両先生方、大変にありがとうございました。貴重な御意見を伺いまして、参考になりました。
  28. 笹川堯

  29. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 民主党の佐々木秀典です。  きょうは、佐高先生、前田先生、本当に御苦労さまでございます。また、貴重な御意見をちょうだいいたしましてありがとうございました。  実は、私も一昨日この委員会で法務省あるいは警察などにも質問させていただいたのですけれども、きょうの先生方のお話を聞いて、本当にそうだと思うことが幾つもございました。  今、一番最後に佐高先生のお話がございましたけれども、私もこれを見てなるほどなと思ったのですが、今週売り出されております。ある週刊誌が、総会屋意見を聞いたりして、その中で、今度の法改正総会屋たちは確かにますます生きにくくなるということを言っているのですね。  それに関する不満として、自分たち総会屋がいなくなったら、企業は不正も何もやりたい放題になる。企業の恥部について文句を言うやつがいなくなる。これは今の佐高先生のお話と関連しますけれども、ある意味じゃ、企業それぞれが一つのあしき部分を持っている、それを摘発して正すのが自分たちだという使命感みたいなものを誇張して言っているというか、そんな記事が出ておりまして、なるほどもっともだと思うのです。  しかし、それを正すのは何かというと、本当はこれは株主なのですね。あるいは、その企業に関与する、それは株主だけじゃなくてさまざまな方々がいらっしゃる、その方々だろうと思うのですね。  そこで、実は、今度の法改正の中には、前田参考人からも御指摘がありましたように、利益供与要求罪という新しい構成要件ができることになっております。これは、確かにこれを運用すれば摘発もしやすくなるのだろうとは思いますけれども、ある意味では、逆にこれが、今のような真っ当な株主の権利の行使だとか消費者の皆さんだとか住民の皆さんだとか、これは欠陥商品の問題もありますし、あるいは公害企業に対するさまざまな要求もあると思うのですね。あるいは、そこに働いている従業員の労働者としての権利の問題で、会社に対していろいろと言いたいことがある。その中には、経済的な要求あるいは補償請求なども含まれるかもしれない。  この構成要件を見ますと、これは、行為の主体、つまり犯罪者になる主体についての限定が必ずしもはっきりしていないわけですね。これは、おととい警察の方にも、この運用については注意をしてもらわないと非常に濫用されるおそれがあるじゃないかということを言ったわけです。警察の方では、そういうことはありません、法務省も、そういう使い方はしませんということを言っているのですが、この辺について、まず前田先生、御心配がないのかどうか、お聞かせいただけますか。
  30. 前田庸

    前田参考人 このたびの改正法案におきましては、該当する規定は、株主権利行使に関し会社の計算において利益を自己もしくは第三者に供与することを要求した者はこれこれの罰則に処するということになっておりまして、金をよこせと言った場合に罰則の対象になるわけでございます。  したがって、株主総会会社の不正を暴くというようなことは、これは絶対に利益供与要求罪の対象になるものではございません。そういうふうに株主総会においていろいろな問題点をただすということは、株式会社にとってむしろ必要なことであろうというふうにも考えられまして、それがこの対象になるわけではございませんで、会社に対して、とにかくこういう発言をしてもらいたくないなら金をよこせという、そっちの方が対象になるわけでございますので、御指摘のような心配はないと私は考えております。
  31. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 佐高先生、これについてはどうですか。
  32. 佐高信

    佐高参考人 私は、先ほど申し上げた社長連座制というふうなものの一つの形を変えたものとしては、あるいは利益供与承認罪みたいな、利益供与を認めたその最終責任社長にあるんだというふうなものを設ければいいのじゃないかという感じがいたします。  それと、最近、社員株主というのが某弁護士の指導なんかによって導入されまして、要するに、株主総会の前列二、三列に全部社員株主を先に入れておいて、それで、株主総会が近づくと、その社員が全員で異議なしという発声練習までするという状況になっているわけですね。そういうことをやっていては株主総会の健全化というのは全く行われないわけですから、その辺のことを考えれば、利益供与要求罪よりは利益供与承認罪というふうなものを設けた方が総会屋の根絶には早いだろうというふうに思います。
  33. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 一昨日の当委員会質疑の中では、企業総会屋との関係を砂糖とアリとの関係に例えて質問をされた同僚議員がおられました。砂糖がある以上、アリがたかるんだ。しかし、仮に砂糖があったとしても、これを密封した瓶なんかに入れてしまえば、そばに来たってアリは砂糖にくっつけないわけですね。つまり、企業総会屋関係というのも、御指摘がありましたように、やはりそれと関係を持つことによって、経済的な利益だとかうまみだとか、あるいは金になるんだ、ここのところが絶たれれば、やってもむだなことだということになっていくのだろうと思うのですね。ですから、罰則強化というようなことだけでなかなか根絶はできないだろう。  しかも、総会屋の手口というのは、その状況によって年々年々複雑にもなってくるし、最近の情 報によりますと、インターネットなどを使って、非常に情報を利用して、それで金もうけの種にするというような手口。この辺になってくると、なかなかにそれが、こういう商法の規制にも、果たして対象になるのかどうかということもあるんだろうと思うのですね。そんなことを考えると、なかなか根絶は大変だ、法の規制だけでは私は難しかろうと思っているのですけれども。やはり、佐高先生おっしゃるように、発生源、根源的なところがどう変わるかというところと絡んでくるのだろうと思うのですね。  そんなことの絡みで、実は、それぞれの企業、これは、うんと小さいところには労働組合はないかもしれませんけれども、今度問題になっているような大きな企業だとか証券会社にしても銀行にしても、みんな労働組合があると思うのですね。残念ながら、あるいは私の調査不足かもしれませんけれども、こうした一連のことについて、それぞれの企業の労働組合が物を言ったり行動したりということがどうもちょっと見えてきていないのじゃないだろうか。そんなことで、佐高先生の方で何かお知りになっていることがあるのか。  また、かねて私は佐高先生から御指摘を受けてなるほどと思ったことがあるのですが、日本の労働組合は、企業内組合だということもあり、やはり企業との関係が非常に強い。さっきもいろいろ、社宅の問題のお話もありました。それと、人権運動だとか人権的な活動が日本の労働組合は足りないのじゃないか。その一つの、企業の方での社員教育の手段として、修養団でしたか、のお話がありましたね。幹部候補生を各企業が派遣して、お伊勢神宮ですか、でさまざまな修行をさせるというようなことで企業の忠誠心を育てている、そんなこととも関連するけれどもと。あるいは、そういうことについて労働組合などが物を言っていないのじゃないかというような御指摘もあったのじゃないかと記憶しているのです。  そんなことと絡んで、労働組合の役割といいますか、企業の体質改善などについて、特にまた、スケープゴートがたくさんつくられて、そういう人たちトップの身がわりになるというようなことは、これは社員にとってもゆゆしい問題だと思うのですけれども、その辺について御意見などをお聞かせいただけますか。
  34. 佐高信

    佐高参考人 私は、日本企業というのは、憲法とか民主主義というのは一度も入ったことのない憲法番外地だというふうに言ってきて、いわば藩、先ほども申し上げましたトヨタ藩であり松下藩、そういう中で、御指摘の修養団によるみそぎ研修みたいなものですね、日立、東芝、松下、三菱電機、宇部興産というふうなところで行われているわけですね。日立、東芝、三菱電機なんていうと、今回、総会屋との関係があからさまになったところでありますし、そういう一流企業と言われるところが相変わらずそういうことをやっている。  私、何年か前、長崎大学で集中講義をしたことがありまして、そのときに、過労死とかサービス残業とか汚職なんかの話をしましたら、聞いていた学生が、そういうものをチェックするのは本当は労働組合じゃないか、日本には労働組合はないんですかと聞かれたので、私は、あるけれどもないと言ったのですね。あるけれどもないんだと。一応労働組合の中で大きいという連合が、そういう過労死とかサービス残業の問題に全く取り組まないで、あるいは今度の総会屋の問題にも全く取り組まないで、政党をくっつけることに一生懸命になっているというのはとんでもない話だろう。くっつけられる政党の方もだらしないんだろうというふうな感じはしますけれども。その問題があって、監査役というのも全く機能してないわけですね。  監査役協会というところがありまして、私、頼まれて、監査役協会の総会で講演したことがありますけれども、そのときに、総会での講演というのは「月刊監査役」というのに毎年載せているからよろしくお願いしますということで、はい、いいですよと私が言って、ただ、その総会というのは、新日鉄から全部、二千人ぐらいですか、たくさん集まって、私が日立や東芝のみそぎ研修けしからぬとかさまざまに具体的に申し上げたら、終わったら係の人が飛んできて、今回の講演は掲載することは見合わせさせてほしいというふうな話だった。監査役というのは存在していても、これもまた、あるけれどもないの状況になっているわけですね。  それから、先ほども申し上げましたけれども、総会屋というふうなものしか会社経営者を正すものがないというその寂しい状況をどうするか、そっちの方が一番大きな問題なんであって、そのことを経団連のいわゆるお偉方も全く感じていない。自分たちが楽な経営をするためにとにかくうるさい総会屋をなくせ、そんな感じしかしていないということに私は非常に憤りを覚えると。
  35. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 労働組合がそれぞれあるわけですから、ひとつ、しっかり物も言っていただいたり、企業トップの体質を改めるためにも働いてもらいたい、私もそういうことを切望しておるわけでございます。  そして、両先生から株主代表訴訟の制限についての御心配をお聞きをして、我が意を得たりという思いをいたしました。  私は弁護士ですけれども、私の仲間の弁護士たちも、さまざまな住民の方々や、あるいは消費者の方々の提言される問題を受けとめて代表訴訟をやっていらっしゃる。それこそ、そういう事件なんというのはお金にも全くならないけれども、一生懸命に、やはり企業社会的な存在責任、それからそれが社会に広く及ぼす影響などということを考えて、まじめにその訴訟に取り組んでいらっしゃる。企業によっては、その訴訟をまじめに受けとめて、その中で、会社として正すものは正していくという方向を出しているということもあるのですね。高島屋の代表訴訟の例なんというのは、私はそのいい例だと思うのですけれども、その訴訟の結果、高島屋としても、株主総会の持ち方を含めて正すべきものは正すということを出されているわけですね。  そういうことを考えますと、私は、やはり両先生おっしゃるように、やみくもに代表訴訟を制限するというようなことはあるべきじゃないと思いますが、残念ながら、同僚委員の中にも、大変これを熱心にやろうと、積極的に代表訴訟の制限の方向、それから、さっき前田参考人がおっしゃった監査役の問題を絡めたような制約をということを考えていらっしゃる。どうも、自民党の先生方、たくさんいらっしゃるけれども、自民党の法務部会でこのことが検討されて、場合によると、次の通常国会に議員立法として出されるのではないかという報道もあるのですけれども、どうかひとつ、自民党の先生方にも、きょうの両先生のお話を十分にそんたくをしていただいて、慎重に御討議をいただければありがたいと思っておりますし、また、仮に出てきた場合には、この委員会でも私ども真剣な討議をしなければならないだろう、こんなふうに思っている次第でございます。  それから、もう余り時間がなくなっておりますけれども、前田先生、先ほどの御意見の中で、この総会屋の問題というのは非常に日本に特殊なことなんだ、外国では余り見られないという話がございましたね。  ところが、企業あるいは会社というものは、日本よりも先進国、例えばドイツ、イギリス、イギリスが早いかもしれませんね、イギリス、ドイツ、フランス、そしてアメリカが早いわけですね。それぞれの国でも、やはり暴力団もあればマフィアもあれば、企業とのかかわりでひとつ金をもうけようなんということを考えるやからというのはいないではないと思うのに、この総会屋的な存在というのが日本特有のものだというのはどういうところに原因がおありだと、あるいはどこに違いがあるとお考えになっていらっしゃいますか。
  36. 前田庸

    前田参考人 私、昭和五十年代、大分前の話ですけれども、アメリカの株主会社との関係について実態調査をしたことがございますが、そこでは総会屋に相当するものが存在するかということを最大の関心事といたしました。  アメリカにも特殊な株主というのは存在します。それは二組に分けられております。  一つはプロフェッショナル・シェア・ホルダーといいまして、職業的株主。有名なギルバートさんなんかがそうなんですが、これは、一切会社からは金をもらっていない、自分が大体大金持ちで、相続財産で十分暮らしていけるというタイプの株主。ただ、正義感ないし名誉、自分の名前が載るということがうれしいという気持ちで総会に参加して、私も総会に参加したときにギルバートさんが来ておられましたけれども、非常に紳士的に発言をしております。ただ、発言が何しろ多過ぎるということが会社にとっては困るけれども、しかしあれは排除できない。一切会社にお金を要求されたことはない。それが一つのタイプ。  もう一つのタイプは、プロフェッショナル・ヘックラーズとその当時は言っておりましたけれども、うるさ型屋というのでしょうか。私が総会に出たときもちょうど私の隣に座っておりましたが、これはデービスという、しかもこれは女性でありまして、威迫を用いて会社経営者を圧迫するなどということは到底考えられない。ただ、これはギルバートさんのような建設的な意見ではなくて、要するに、正当でない発言ばかりをしている。  それで、そういう人たちに対してどう対応しているかということを聞いたのですが、大体、そういうヘックラーズと言われている人たちが十人ぐらいしかいないというのですね。その人たち会社を訪れた場合には、七十ドルから九十ドルぐらいでパンフレットを買うことはある、しかし、それ以上のお金は絶対に払わないというふうに聞いております。  そういうことからいいましても、日本総会屋とは全く違うということが言えようかと思いますが、私の感じでは、これは損失補てんなんかにも共通する問題じゃなかろうかと思いますけれども、恐らく、理由のないお金は一切払わないというのが一つ立場ではなかろうか。もしそういうのを払ったら株主代表訴訟でチェックされる。そういうことがあるので、理由のないお金は払わないという風土ができているのではないかというふうに私たちは理解しております。日本もそういうふうになることを心から念願する次第でございます。
  37. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 時間が参りましたので、終わります。両先生、いろいろありがとうございました。御示唆をいただきまして、私どもとしても十分に拳々服膺していきたいと思っております。ありがとうございました。
  38. 笹川堯

    笹川委員長 暫時、委員長職を八代理事に交代させていただきます。     〔委員長退席、八代委員長代理着席〕
  39. 八代英太

    ○八代委員長代理 木島日出夫君。
  40. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  佐高先生、前田先生、御苦労さまです。  最初に、前田先生からお聞きしたいのですが、先生から先ほど、株主代表訴訟役割が大きい、これを後退させてはならぬという趣旨の御発言、私も同感であります。一昨日、当法務委員会でも私、その問題を取り上げて質疑をいたしました。と同時に、先生から、現在の日本監査制度の問題について御発言がありまして、新しくつけ加えることはないという御発言がありましたし、会社ぐるみ不祥事が行われると、どんな監査制度をつくっても役に立たないという大変深刻な御発言もありました。  まさに今、世上大問題になっている第一勧銀の問題、野村証券の問題、その他四大証券の問題、すべて会社ぐるみの大変な不祥事だったわけですね。ああいう問題に会社ぐるみで、企業トップが中心になってやっている不祥事を見つけ出して正す、そんなためにこそ監査制度はなくてはならないんじゃないでしょうか。  今の日本監査制度が、特例法の制度もありますけれども、機能していると先生はお考えなんでしょうか。そこをまずお聞きしたいと思うのです。
  41. 前田庸

    前田参考人 会社ぐるみ違法行為がなされるという場合に、監査制度が役に立たない。これは、役に立たせるように制度をつくるということは非常に困難ではないかというふうに感じておりますが、会社ぐるみであっても、監査役が頑として頑張れば、摘発できるはずであります。現在の制度のもとでも摘発しようと思えば摘発できる。にもかかわらず、摘発されない、監査役からは何の意見も出されないということは、やはりそれは会社ぐるみだ。その中に監査役も含まれているということからではなかろうか。そういった問題は、社長が意識を改めるということと、そうでなければ、外部からの公権力で摘発するということしかないのではなかろうか。  そういう意味では、監査制度というのは、その意味での限界というのはやむを得ないというふうに感じております。
  42. 木島日出夫

    ○木島委員 内部監査はやはり限界があると思うのですね。しかし、特例法による監査法人、監査人会、これはやはり外部ですね、公認会計士ですね。  今回の野村事件第一勧銀不祥事件ですが、あれが表へ出た一番のきっかけは内部告発でした。野村証券の社員が昨年来、北海道新聞その他の新聞紙上に出した。私も委員会で取り上げたのですが、彼は証券監視委員会にも長文の手紙を出して、内部告発した。しかし、それが全部握りつぶされたか、証券監視委員会は、取り上げるところがなかったと。それで、彼は雑誌にかなり詳しい手記を載せた。それが発端となって当衆議院の予算委員会で取り上げられ、それから表ざたになったんですね。  そうすると、ああいう内部告発が今日の第一勧銀、四大証券の不祥事の出発点になったということになりますと、ああいう内部告発が、例えば外部監査の監査人会あるいは公認会計士等に情報がきちっと流れていて、その監査人会がきっちりとした独立性を持って監査に入れば、特例法によりますと、いつでも監査できるという条文があるわけですから、もっと早くこういう不祥事を摘発することができたんじゃないか。  そういうこともつらつら考えますと、やはり今の監査制度には欠陥があるんじゃないかと思わざるを得ないのですが、これで完璧だというのは、どうも私、納得できないのです。どの辺が監査制度、問題だと。内部監査じゃなくて、特に特例法による大企業に対する監査法人問題ですが、問題ないとお考えでしょうか、それとも、こういう点は何とかしたらいいという御知恵があったらお聞かせ願いたいと思うのです。
  43. 前田庸

    前田参考人 おっしゃることはよく理解できます。  ただ、商法特例法上の会計監査人というのは会計監査に限定されておりますので、例えばこのたびのような利益供与の問題につきましても、どのぐらいの金額が、無償の利益供与がなされたかということをチェックするのは、それは会計監査人の会計監査の対象の範囲内でありますが、それが違法な利益供与であるかどうかということは、これは監査役の業務監査の権限になる。したがって、その点を摘発するのは監査役になる。現在の法制度としてはそういうことになるであろう。  会計監査人というのは会計に関する専門家でございますから、それについては、会計について監査をさせるということを現行の法律は期待しております。それに対しまして、そのような、会計も含めまして業務一般について違法行為がなされていないかどうかということを判断することを監査役に期待しているということになるわけでございます。  したがって、現行制度のもとでも、監査役が違法を摘発するということは、しょうと思えばできますし、その権限も十分に与えられている。そういう意味で、制度としてはほぼ基本構造はできているのではないかというふうに申し上げておる次第でございます。
  44. 木島日出夫

    ○木島委員 私はここに、ことしの七月二十五日に第一勧業銀行が大蔵省の処分を受ける直前に大蔵省に出した調査報告要旨なるものを持っているわけであります。そこに生々しい事実も記載されております。  例えば、これは第一勧銀がみずから表に出した文書ですが、平成六年十月に第一勧銀大蔵省の検査回避をやった。平成六年十月に、検査時にもう既に小池嘉矩の延滞が始まっていたのです。それを解消するために、第一勧銀の依頼により、大和信用が小甚ビルへ約六億円を融資した、この資金の一部が小池の延滞解消に使用された、こういうことをやったために大蔵省の分類査定を免れた。このゆゆしい問題については、既に第一勧銀関係者は検査回避罪として略式で有罪判決が確定しています。  これは会計問題ですよ。こんな問題、会計士がやはり摘発できなければおかしいと思うのですよ。大蔵省はこれでだましてしまったかもしらぬが、監査人は見られるわけですから。これが見つけ出すことができなかった。そうすると、やはりどこかに問題があるのじゃないかと思わざるを得ないわけです。  私、ここにもう一つ、自民党がことしの八月十一日に出した金融不正再発防止対策特別調査会報告書なるものを持っています。これを見ると、自民党の案は、監査役制度代表訴訟を抱き合わせにしていますから、とんでもないことだと私は思うのです。経団連もそうです。代表訴訟を後退させるのと監査役強化するのを抱き合わせに、セットにしていますから、とても認めるわけにいかぬ問題でありますけれども、この自民党の調査会報告書の中に、こんなゆゆしい文章があるのですね。「不正防止については、企業の自己責任を原則に、まずもって各企業における倫理の確立・徹底が不可欠である。」これはいいのですが、この次なんです。「会計監査人が会社の会計処理の不適正を指摘したところ、会社から契約を解除される事例があった」、こういう事例を指摘しているのですね。  やはりこれは、残念ながら、特例法による会計監査人についても、現実の日本企業社会の中では独立性が保障されていない、会社に都合の悪いことを摘発し、やろうとすると、やはりこうやって首を切られていくということを指摘しているかと思うのですね。  そうすると、やはり監査制度の欠陥でありますから、もっと独立性を高めるというようなことも改善の方向としては必要ではないかと考えるのですが、いかがでしょう。先生の御意見、簡単で結構です。
  45. 前田庸

    前田参考人 会計監査人の選任、解任あるいは再任につきましては、監査役意見を述べることができるという規定がございますので、法律としては、そういう不当な解任がなされた場合には、監査役意見を述べるということによってそういう不当な解任というのをチェックできる。そういう意味で、法律ではそういう点についても手当てはなされているというふうに私は理解しています。ただ、それが利用されないだけだという点に問題があるというふうに私は考えております。
  46. 木島日出夫

    ○木島委員 ありがとうございます。  そこで、佐高参考人にお聞きしたいのですが、制度はいいものがあるのだが利用されない、まさにそこが問題であると思うのですね、私も。佐高参考人から、先ほど、発生源が問題だ、発生源というのは企業のことをおっしゃっておられるかと思うのです。私もそのとおりだと思うのです。参考人から、株主総会が一斉に行われることを正すことやら、社長連座制の問題やら御指摘がありました。  私はここに、ことしの八月二十六日付の読売新聞に、宮脇嘉介という元警察官の幹部の方がこの問題で書いている文章を見まして、「私は政・官・業にマスメディアを加えたクゥオドラングル(四角形)の癒着構造こそが問題だと思う。」これを正さなければだめだということをおっしゃられているわけであります。佐高先生もそういう趣旨で発生源対策ということをおっしゃられているのかなと思いますが、発生源対策、先ほど幾つか述べられましたが、根本的にはどんなところが問題か、項目だけでも結構ですし、時間もわずかになってまいりましたが、時間の許す限り、先生の御所見をお聞かせ願えたら幸いであります。
  47. 佐高信

    佐高参考人 私は、さっきからいろいろ問題になっておりますけれども、監査役というふうなものを選ぶ社長が、日本の場合にはほとんど独裁的な権限を持っている、社長をチェックするものは何物もないということが大きな問題だと思いますし、だから社長を選挙制にしろということをずっと前から言っているのですけれども。そうすると、経営者たちはびっくりして、人気取りになるとかなんとか。今よりは絶対よくなることは受け合いだ。今、ろくでもない人ばかりが経営者になっているわけですから、今より悪くなることは絶対ないんだ。そしてまた、選挙制にした場合には、自分たち選んだ側の責任がありますから、そういうことで言っているのですけれども、あるいは社長リコール制みたいなそういうものを導入しなければ、社長の横暴をチェックできないというふうに思っているわけですね。  監査役というものについて、御指摘のように、変な決済に判こを押しているわけですから、ある人は、私の友人ですけれども、監査役というのは資格を持った総会屋ではないかというふうに言っていた。さっきも私その辺、良識ある自民党の議員が株主総会のあれをむやみに後退させるようなことはないというふうに信じておりますけれども、そういう後退をやるということにもしなれば、そういう人たちは議席を持った総会屋になってしまうのじゃないかという感じがいたします。
  48. 木島日出夫

    ○木島委員 最後に、社長選挙制とか社長リコール制、大変ユニークな御発想なんですが、その選挙人なりリコールをする権限を持つのはだれなんでしょうか。株主なんでしょうか。まさに、そうすると、株主総会がそういうことを果たしているんでしょうかね、今は。どうなんでしょう、その辺。
  49. 佐高信

    佐高参考人 株主総会は現在の状況ですから、社員ということになりますね。(木島委員「社員というと、会社の職員」と呼ぶ)ええ。だから、例えばそれを部長以上にするとかいろいろな方法はあると思いますけれども、具体的に検討されてしかるべき案だというふうに私は思っています。
  50. 木島日出夫

    ○木島委員 終わります。
  51. 八代英太

    ○八代委員長代理 続きまして、保坂展人君
  52. 保坂展人

    ○保坂委員 社民党の保坂です。  佐高参考人に伺いたい。  以前、私、佐高さんの講演を、特に日本企業風土、文化に絡んでお聞かせいただいたときに、とても印象に残っておりますのは、やはり社宅に絡んで、「運動会抜くなその子は課長の子」という川柳が詠まれたということを、社宅の女性の方からあったということを聞いているのですけれども、総会屋というのも日本独特の稼業である、なかなか海外で見受けられない。  もう一つ、お話の中で、ある種の総会屋企業の癒着構造、先ほど木島議員からのお話で、トライアングルにマスコミを加えたそういった日本的な構造、その中で伺いたいことがあるのですけれども、いわゆる官僚不祥事ということは、この間、一年前の厚生省の岡光次官、それ以前からも多々出てきているわけなんですけれども、問題だと思いますのは、官僚OBの不祥事不祥事というか官僚OBが、例えば具体的に申し上げますと、大手サラ金の武富士の未公開株を大蔵省の元銀行局長だった徳田さんという方が譲渡を受けている、そして娘の名義でこれを獲得していて、その娘さんの連れ合いは大蔵省に勤務をしているということは、庶民から見れば一体何をやっているんだということになるわけですよ。  そしてまた、大蔵省の別の、これは朝日新聞にその記事があるのですけれども、未公開株を受けていた元関税局長の松尾さんという方は、「どんな仕事にも役得は付き物だ。知人に自動車の ディーラーがいれば、車だって安く買える。それを非難するのは、役得にあずかれない人の嫉妬だ」というふうに話しているのですね。  こういった意識ということが極めて問題で、これはほとんど収賄あるいはわいろという概念を在職中のというふうにくくっていますので、結局はまだ罪に問われていないわけですけれども、日本社会にあっては、縦関係人間関係、必ずしも、実務をつかさどる官僚に直接働きかけるよりは、その上の上、また上、あるいはもう退職後十年、十五年たった人に強く働きかけて経済的なそれこそ利益を供与した方が効果的だという社会構造になっているのではないかと思うのですが、そのあたりの問題点についてお聞かせいただきたいと思います。
  53. 佐高信

    佐高参考人 社宅の問題でユニークな川柳を披露されましたけれども、ついでにもう一つだけ申し上げておけば、「社宅では犬も肩書外せない」という川柳もあります。  官僚というふうなものが非常に腐敗している、特に私は大蔵官僚が最も腐敗しているのだと思いますけれども。銀行の腐敗というのはまさに大蔵官僚の腐敗と裏表の関係であって、銀行があれだけ腐敗するについて、大蔵官僚も非常に責任がある。  テリー伊藤という人間がまとめた「お笑い大蔵省極秘情報」の中で、匿名の大蔵官僚三人が本当に言いたい放題のことを言っているわけですね。国民の上に政治家がいて、政治家の上に大蔵官僚がいるというふうなことを放言している。その大蔵官僚を匿名のままに訴えたら、向こうの版元の弁護士は、実在する大蔵官僚発言もそのとおりそのまま受け取ってもらって構わないということを断言しているわけですね。  その中で、私はきょうの法務委員会という席で一番問題だと思うのは、大蔵官僚は、法務、検察の予算をつかさどるというかコントロールするということで自分たちの支配下に治めているんだ、だから大蔵官僚は逮捕されることはないんだということをぬけぬけと言っているわけですね。実際、岡光何がしなりあるいは服部何がしなりが、厚生とか運輸のOBが逮捕されたけれども、大蔵官僚が逮捕されたという話は全くないわけですね。それは、その匿名大蔵官僚の放言を裏づけしているものだろうというふうに思うわけです。  先般、今大蔵省の主計局長の涌井洋治という人が、今問題になっている泉井何がしから再婚祝いに二十万か何かの絵をもらった。二十万というのもはっきりしていないわけですね、本人の申告だけですから。そういうことが問題になっていますけれども、そういうこと、あるいは中島義雄や田谷広明の問題でも大蔵官僚についてはほとんどおとがめなしという感じ、単なる注意みたいなことで済んでいる。それは、自分たちが予算を通じて法務省もコントロールしているからだという発言を許しているというのは本当にゆゆしき問題で、私はこの発言をとらえても、いわば大蔵省の官房長あるいは涌井洋治何がし、その人もここに呼んで、法務委員がしかるべくきちっと問いただすべきではないか、そういうふうに思っています。
  54. 保坂展人

    ○保坂委員 ここ一年、議員になってから毎日新聞を見ると、一体何人逮捕されたのだろうかと思うわけです。それは、例えば出会い頭のけんかとか衝動殺人とかいう記事もございます。しかし、ほとんどが企業あるいは官僚あるいは政治家絡みの不祥事のラッシュですよ。本当にもう四大証券事件がどのように展開して、今どういう段階なのかということを克明に追っている国民というのは今何人いるのかというふうに思ってしまうわけです。  野村証券あるいは第一勧銀のときには驚いて、どうだったのだろうと関心は高まった。しかし、これだけもう網羅的に広がって、まさに総会屋あるいはそういったブラックマネーに汚染されていない企業があるのだろうかというときに今回の商法改正というのが出てきたわけですけれども、私若干懸念いたしますのは、利益供与ということで半年三十万というのはいかにも軽いという発言を前回いたしました。しかし、重罰化というところだけでこの構造を断ち切ることができるのだろうかという点を、今度前田参考人の方に伺いたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  55. 前田庸

    前田参考人 御指摘のとおりでございまして、罰則を重くすれば根絶できるというものではないというふうに考えます。しかし、先ほども申し上げたことでありますが、このたびの摘発によって企業の側というのは反省をしているということは事実であるというふうに思いますので、こういったさらに民事上の制裁株主代表訴訟提起によって受ける可能性も現実に訴訟提起されていることによって出てきているわけでございます。  そういったことによりまして、一罰百戒といいますか、そういうことで、このたびの改正法案の内容とも相まちまして、総会屋を根絶できるというふうに期待する次第でございます。
  56. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、時間がありませんので、最後にまた佐高参考人に伺いたいのですけれども、総会屋あるいはブラック、やみの勢力に対して歯どめをかけていく、あるいはそこに非常に弱みを見せてきた企業に今までのやり方では通りませんよというルールをいわば確認してもらうという趣旨の議論が本日もあると思うのですけれども、しかし、もう一歩国の行政あるいは政治のかなめというところでその筋が立たなければ、これはきっと何かまた緩んでくるのではないかという危惧があるわけですけれども、そこのところの抜本策について一言お願いしたいと思います。
  57. 佐高信

    佐高参考人 先ほど、株主代表訴訟について自民党筋というかそういう人たちが非常に危惧しているという、それで後退させようとしているという、勘ぐるわけではありませんけれども、それがもし企業献金というふうなものが細るからということであれば大変に本末転倒な議論であって、私は、やはり企業献金というのは廃止して、政党助成法によるお金も出ているわけですから、そういうことで政治を別な形で運営するということがなければ、宮城県知事選挙に見られたように政党そのものを潮流が押し流していくというふうになるだろうと。だから、企業の政治献全廃止というのが一番大事なことだというふうに思います。
  58. 保坂展人

    ○保坂委員 両参考人、本当に長い時間ありがとうございました。  本当に正すべき企業倫理とともに政治倫理、そして官僚の論理、倫理、そこを本当に、すべてゼロから組み直す覚悟で取り組んでまいりたいと思います。  これで終わります。
  59. 八代英太

    ○八代委員長代理 以上で午前中の参考人に対する質疑は終了いたしました。  両参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  午後一時より委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     正午休憩      ————◇—————     午後一時開議
  60. 八代英太

    ○八代委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前と同様に参考人から意見を聴取し、質疑を行うことといたします。午後の参考人として弁護士久保利英明君財団法人日本証券経済研究所主任研究員紺谷典子君の両名の方に御出席いただいております。  両参考人には、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、心から感謝を申し上げます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序及び発言について御説明申し上げます。  まず、久保利参考人、紺谷参考人の順に、各十五分程度意見をお述べいただき、その後、委員質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  それでは、まず久保利参考人にお願いいたします。
  61. 久保利英明

    ○久保利参考人 久保利英明でございます。きょうは、参考人として意見を述べる機会を与えていただきまして、大変光栄に存じます。ありがとうございます。  私は、昭和五十六年の商法改正以来、株主総会の指導ということをかなり中心的な業務としてやってまいりました。したがいまして、きょうは、株主総会あるいは総会屋実態ということを踏まえて、私の考えるところを御説明申し上げたいというふうに思います。  昭和五十六年の商法改正、これは昭和五十七年の十月一日施行でございますが、ここでなぜ総会屋への利益供与というのは犯罪とされたのかという、もう今から十五年前の話でございますけれども、そのときのことを思い起こせば、ほとんど今と同じ状況があったのではないか。  すなわち、日本経済界から約一千億円のやみのお金が総会屋を通じて暴力団に流れていく。そして、裏金というものがどんどんどんどん膨らんでまいりまして、心ある経済人は、とてもじゃないけれどもこんなお金を出しているわけにはいかないという、経済界からも何とかしてほしいという声が出てくる。  一方、日本商法学者は、世界じゅうの学会に行っても相手にされない。おまえのところの株主総会というのは、社長総務部長総会屋が料亭でしゃんしゃんとやるとおしまいなんだろう、とても学問の対象にはならぬじゃないか、こういうことを言われて大変悲しい思いをする。ということで、まさに、経済界、学界、そして官界すべて挙げてこれを取り締まろうということで、実は商法四百九十七条ができたのではなかったかと思うわけであります。  しかし、その後、総会屋はどうなったかというと、まさに先生方御存じのとおり、現状を迎えているわけであります。総会屋というのは、本来あり得ない。何々屋というのは正業でありまして、八百屋さんだとか魚屋さんというのが屋であります。これは犯でありまして、犯人でありますから、本当は総会犯と言わなきゃいけない。だけれども、これがいまだに総会屋として生きてきている。彼らは、今、株主権の行使に名をかりて、まさに株主標榜犯罪者、株主標榜暴力団というふうに位置づけられると思いますけれども、相変わらずその種の活動をしているというわけであります。  そういう点からすると、従来の利益供与禁止規定というのは、民事的にもあるいは刑事的にも十分効果を上げてこなかったのではないかという疑問が出て当然でありまして、その原因は一体どこにあるのかということを究明し、新たな立法を含めて、先生方の御検討に今なっているというふうに理解しております。  この利益供与禁止の規定があることによって、実は取締役たちは大変なダメージを受けるわけでありまして、刑事罰を受ける、社会制裁を受ける、代表訴訟が起きれば破産も覚悟しなきゃいけない。しかも、これは商法違反ですから、取締役の欠格事由ということで資格を失います。しかも、最も愛する会社のためだと言っていながら、その結果、会社を最もひどく傷つける。こういう五つの被害といいますか、マイナス点があるにもかかわらず、なぜやっているのだろうか。これを考えたいと思います。  まず、総会屋はそれじゃ何をするのかといいますと、株主標榜暴力団でございますから、当然、標榜するものをしなければいけない。そうしますと、まず最初は、利益供与をしなければ株をつけるぞという話をします。  次に、株をつけますと、株主として権利行使をいたします。いろいろな書類の閲覧請求をいたします。例えば、一番の嫌がらせは、株主名簿の閲覧請求をいたします。株主名簿におれは名前を書きに行くぞと言って、おおむね多くの会社が代行会社、証券代行に委託しておりますけれども、そこへ行って、一名一名毎日筆記していくぞ、嫌がらせのために営業時間中ずっといるぞというような嫌がらせもあります。あるいは、さまざまな書類あるいは取締役会の議事録、こういうようなものをよこせ。これは当然裁判所の許可が必要でございますが、そういう請求をいたします。  あるいは、事前質問状という名前の脅迫状を提出いたします。事前質問状でございますから、幾ら嫌らしいことが書いてあってもなかなか脅迫罪にはならないというふうに彼らは安心いたしまして、ストレートの脅迫状ではありませんけれども、会社の嫌なことを羅列してこれをぶつけできます。  また、中には三百単位を得まして、小池何がしのように三十万株を持って提案権の行使をしてくるというやからもおります。もちろん、総会当日、出席をして発言をいたしますし、中には、議長を殴る、あるいは社員株主をけ飛ばすというような暴力行為を行う者もございます。  総会が終わるとこれでいいかといいますと、そうでもございませんで、総会終了後に、また、議事録を見せろ、あるいは委任状を見せろ、議決権行使書面を閲覧させろと言って会社に参ります。中には、暴力的に事後の報復を物理的に行うというやからもおります。しかも、この連中は訴訟を濫用いたしますので、決議取り消し訴訟であるとか代表訴訟というものを原告になって提起してまいります。  まことに、会社としてはこの連中がつくとずっとうっとうしい。総会の日だけではなくて、ほとんど一年じゅううっとうしい。このうっとうしさに負けるものがいけないわけでございますが、少なくともそういうプレッシャーをかけてきて、しかも背後には暴力団があるんだということをちらつかせながら企業恐喝をしてくるやから、これが総会屋でございます。  しかし、その総会屋に金をやってはいけないとあれほど言われているにもかかわらず、なぜ利益供与事件というのは発生し続けるのだろうか。これは、数多くの外国のマスメディアからも質問を受けますけれども、私も、これがその原因だというふうにはっきりわかりません。ただ、最近の事件を分析してみますと、どうも七つぐらい理由があるのではないかなということで、お手元のレジュメに書きました。  総会屋利用の対価として利益供与をしている。利用すれば、当然対価が発生します。  あるいは、自分たちは今利用していないんだけれども、かつて総会屋会社トップが癒着をした、その過去の因習の継続として利益供与をし続けなければいけないという呪縛にとらわれている、そういう事件がありました。  あるいは、本来であれば会社の総務部というのは、総会屋と癒着するためではなくて、総会屋と対決をして総会屋会社から追い払うためにいるはずなんでございますけれども、ダーティーワークでございますので、結果的にはそのダーティーの中へ総務部自身が巻き込まれていってしまう。総会屋と癒着をしてしまう。もっと甚だしいのは、社内総会屋と呼ばれるように、社外の総会屋と結託をして会社をむしる、そういう存在の総務部になってしまう。  また、中には、強要とか威迫が恐ろしくてついつい総会屋の言いなりになってしまうという、いわば企業恐喝の被害者という形のものもございます。  また、中には、総会が混乱することによって信用が毀損されるのではないかというおそれから利益供与する。もちろん、このおそれは間違いでありまして、総会が混乱することによるよりも、総会屋利益供与をしていたことによる企業の信用毀損の方がはるかに大きいわけでありまして、クールなビジネス感覚を持って判断すれば当然わかるわけでございますけれども、一時の気の迷いから総会混乱を恐れてしまう。  系列会社のアドバイスあるいは横並びということで、業界みんなでそろって一定の総会屋利益供与をしてしまう。あるいは、中には系列の御本社が総会屋と非常に癒着をしているので、新規上場してくるそういう系列会社までが汚染にさらされてしまう。  最後は、トップの意気地がないから、びくびくするから、しょうがなく下の総務が何らかのことをしないとならなくなってしまう。  こんなふうに、どれがどれということではありませんが、さまざまな要因が私はまじっているのではないだろうかというふうに思います。  それでは、一体、どういうことをしたならば再発防止ができるのだろうか。逆に、今申し上げた七つの利益供与原因というのを除去するためにはどうしたらいいのだろうかということで私見を申し上げたいと思います。  まず、総会屋対策。総会屋に荒らされないように頑張るためにはどうしたらいいか。  これは世の中に若干誤解があると思います。総会屋と戦うためには、丸一日でも我慢をして、トイレも行かないで、何か六時間も七時間も対決しなければいけないように誤解がありますけれども、そんな必要はありません。  本日配付させていただきました「法化社会日本が変わる」という書物の七十五ページ以下に詳細書いておきましたけれども、要するに、今や総会を二時間で終えて、決して決議取り消しにもならず、何ら問題もない総会運営のやり方というものがもう確立をしております。七十五ページから七十九ページまでいろいろ細かく書いてありますけれども、この手のやり方を、一括審議方式という形でやり、一括回答で、問題点については丁寧に説明をしてしまう。こういうことをすれば、実は、これはアメリカのやり方と同じでございまして、アメリカでも株主さんには丁寧に説明をするけれども、しかしすべての議案を一括して上程して、その議案について全部まとめて、何でも株主さんとコミュニケーションしましょうというのがアメリカ型のやり方であります。  ここに書きました方式も、基本的にはこれと同じでございまして、一つ一つの議案で個別に審議をしていきますと、何遍でも総会屋がいろいろな議案で手を挙げますので、なかなか短時間で終わらない。二時間頑張れば大丈夫だという仕掛けがもうできているのだ。これをなぜちゃんと採用してやらないのだろうか、なぜびくびくして総会屋利益供与をしてしまうのだろうか。日本じゅうの上場会社の二割から二割をちょっと超えたところはこの方式をとっておりますが、七十数%は相変わらずまだ旧態依然たるやり方をしています。これを何とか変えたい。  二番目は、経営トップが余りにも日本の安全神話とか日本の今までのやり方というのに埋没していないだろうか。私の考えでは、八万人の暴力団がいる日本という国は、決してそんなに安全な国ではないというふうに理解をしております。  だとすれば、さまざまな企業恐喝、これは総会屋には限りません。総会屋というのはあくまでも暴力団の持ち株会社の子会社一つのパターンでありまして、暴力団という持ち株会社がいろいろな業務運営子会社を持っているわけで、右翼もあれば、ブラックジャーナルもあれば、産業廃棄物会社もあれば、いろいろなものがある。その中の一形態として総会屋というグループがいるわけであります。  ですから、総会屋と戦うということは暴力団と戦うということでありまして、総会屋に負けるということは暴力団に負けるということです。総会屋に勝つということは、逆に暴力団側からすれば、とんでもない会社だ、こういう会社はとてもじゃないけれども我々は食い込めないということで、暴力団と絶縁するいいきっかけになるような戦いであるわけであります。そういう腹を据えた経営トップの心構えというのがどうしても必要なのではないだろうか。もちろん警察による警護であるとか、ボディーガードであるとか、いろいろなことは必要だと思いますけれども、これは日本国が正常な形になるための必要なコストなのではないだろうかというふうに私は思います。  しかも、総会屋は、彼らが一番脅迫力を持ちますのは、企業が違法な経営をしたときに、おまえの違法性を警察へ言うぞ、特捜部へ言うぞ、公正取引委員会に言うぞというのが実は一番強い迫力を持っているわけでありまして、総会屋に負けないように、暴力団に負けないようにやろうと思えば適法な経営をしていくしかない。その適法経営の大きなインセンティブになるわけでありまして、そのためにも、経営トップは、戦う心と適法な経営を志す志、これが必要な時代が来ているのではないかというふうに思います。  三番目は、総務の担当セクションでございます。  この人たちも、一生懸命暴力団、総会屋と戦うことをやっていらっしゃるわけでございますが、いかんせん暴力団対策のプロではないわけです。あくまでもサラリーマンなわけです。  私としては、ぜひこの種の問題については民暴弁護士というものを活用すべきではないか。これについては、日本弁護士連合会も、民暴弁護士というものをできるだけ企業のためにも活用してほしい、密接な協力をいたしますということを会長の名前で声明も発表しておりますし、大いに役に立つと思うのでございますが、お手元の「法化社会」の本の五十六ページ以下に民暴弁護士という仕事のことをかなり詳細に書いておきました。  これをやはり企業の外ヘアウトソーシングという形でしなければ、一介のサラリーマンをこういう形で暴力団と最前線で戦わせるというのは気の毒ではないだろうか。また、こういう仕事をずっとやらせておれば、また本人が腐敗していくという危険もあるのではないか。そういう点から考えますと、早く民暴弁護士というものを活用することによって、これを企業内に取り込むことも含めて、あるいはアウトソーシングでも結構でございますが、適切な対応が暴力団と総会屋にできるのではないか。  それから、現在御審議中の利益供与罪罰則強化、私は大いに賛成でございます。少なくとも、今の六カ月というようなことでは総会屋の方は全く痛くない。ただ、逆に、三年だというふうなことになりますと、経営者の側あるいは従業員の側は結構きついかもしれません。  しかし、これはもともとの法律ができたときから、利益供与罪というものは、総会屋を取り締まる法律であるよりは、株主の財産というものをへんぱな一部の株主に渡してしまう、それが会社財産の消尽といいますか、これを使い尽くしてしまう、違法なことで使ってしまう、これを制約しようということであったわけですので、これはやはり変えられない。やる方も受ける方も同等の刑罰になるだろう。ただし、これに威迫力をもって迫ったときにはまた別だというお考えも私はよく理解できますので、基本的に今回の罰則強化賛成でございます。  さらに、それにつけ加えれば、暴力団が株取得できるというのは、世界じゅうで、実は近代的な国家の中では非常に珍しいのではないだろうか。これは後で紺谷先生がおっしゃるかもしれませんが、そういう問題。あるいは、ある種の暴対法の一部として、暴力団、総会屋には総会出席禁止をするというような対応策はできないものだろうか。そして、大きな流れからいえば、八万人の暴力団という存在日本国を揺るがしているわけですから、やはり組織犯罪対策法というような切り口で何らかの対策法をつくらないことにはグローバルスタンダードからおくれてしまうのではないかというようなことを考える次第であります。  私の持ち時間十五分、ちょうど尽きましたので、これをもって私からの最初の御説明とかえさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手
  62. 八代英太

    ○八代委員長代理 ありがとうございました。  次に、紺谷参考人にお願いいたします。
  63. 紺谷典子

    ○紺谷参考人 日本証券経済研究所の紺谷でございます。  きょうは、意見陳述のチャンスを与えてくださって、ありがとうございます。ですけれども、私は専門家でも何でもございませんので、ずっと証券市場で仕事をしてきた人間としての直観論と申しましょうか、そういう話をさせていただくことになろうかと存じます。  この総会屋の問題に関しましては、いろいろ議論が混乱してしまっているところがあるかなと思うのですね。ですから、まず問題点の整理が必要なのではないかと存じます。  まず、なぜ日本でだけ総会屋がばっこするのかという問題があります。  日本だけ特にアンフェアなのだろうか。そうおっしゃる方、たくさんいらっしゃるのですけれども、私は、どこかの国の国民が特にフェアで、ほかの国の国民が特にアンフェアだというようなことは絶対あり得ないのではないかと思いますので、そういうフェアネスの問題ではないのじゃないのかなと思うのです。  例えば、日本では最近、野村とか一勧問題なんかがありまして、護送船団の金融・証券業というのが特に問題になりまして、あの場合には行政のやり方というのもかなりかかわっていたのではないかと思うのですけれども、それだけではなくて、結果的に、やはりその後続々と、日立が出、三菱が出ということで、一般企業全体に蔓延しているというのは、今回の海の家事件をまたなくてもかなり知れ渡ったことではないかと思うのです。  じゃ、どうしてなのかということなのでございますけれども、日本では、リスクに挑戦する企業家精神というのでしょうか、そういうものを持った方たちが経営者にならないのです。企業トップにならない。そういう特徴があるのじゃないのかなと思うわけです。  日本で、特に総会屋という形で、脅迫者というのでしょうか、が出てしまいますのは、経営者の問題というのがあるのじゃないかと思うのです。でも、それは個々人の経営者のモラルが低いということではなくて、日本が高度成長期にリスクの少ない経営が可能であったということです。もともと農業国家で、仲よしこよししないと、例えば水も分けてもらえないとか、それから、刈り入れとか田植えの時期というのは逃すと大変らしいのですけれども、そういうときに村を挙げて協力してもらわなくてはいけない。だから、村八分が怖いのだという村社会的な要因というのは太古からあるようなんでございます。  かてて加えて、高度成長期というのは先進国というお手本のあるキャッチアップの時代、追いつき追い越せの時代なんですね。つまり、マニュアルのある時代。目標が見えていて、いかに打って一丸となって早くそこに到達するかという時代でございますから、年功序列とか終身雇用とか、いろいろ言われる日本会社の仕組みというのは、そういうキャッチアップ時代、高度成長期に非常に適合したあり方であったのではないのかなと思うわけです。もともと持っていた、何というのでしょうか、仲よしクラブ体質というのが高度成長期にかなり助長されたということがあったのではないかと思うのです。  ですから、勇猛果敢にリスクにチャレンジして、フロンティアスピリットで前に進んでいくというような方ではなくて、全体をよくおさめていく。特に日本は昔からトップダウンではなくてボトムアップの社会だと言われておりまして、そういう意味でも、調整能力にたけた方、みんなの意見をよく聞いて、穏やかにまとめていくという方がトップに来ている。そのために、総会屋ともなかなか戦えない。どこの企業にだってたたけばほこりは出るのではないかと思うのですね。  私、大学で教えておりまして、学生たちが、どうして日本経営者はこんなにだめなんだ、政治家はだめなんだと偉そうに言うので、あなたさっきあそこで赤信号無視していたではないかと。だれだってその場その場で、何かいいかげんにやっている部分というのでしょうか、逃れてしまっている部分というのはあるのでありまして、だから、そういうときに毅然として立ち向かえばいいのだと言うのですけれども、そうしなくてもいい人というのでしょうか、そうできない人というのがトップに来るような日本の経済環境が大きかったのではないのかなというふうに思うわけです。  ですから、この問題というのは、ある意味ではほうっておいても、日本経済全体がリスクをとらなければ成長が不可能な時代に突入しておりますから、日本経営者もどんどんリスクにチャレンジしていかないと会社自体が生き残れないというような状況に入ってきておりますので、会社自体の生き残りを考えましたならば、そういう経営者も選ばれないし、自然と企業体質を変えざるを得ない。必要が体質を変えていくというようなことがあるのではないかと思います。  ですから、いわゆるしゃんしゃん総会に代表されるような日本経営の特質というのはやがてはなくなるのではないのかなと思ってはおりますけれども、ただそれをじっと待っているというのもばかばかしいですから、できるだけ早くそういう仕組みに転換するという必要はあろうかと思うのですね。  ただ、もう一つここで指摘させていただきたいのは、株主総会が形骸化しているという議論なんです。それも議論の整理が必要な部分ではないかなと思うのでございます。  どういうことかといいますと、日本でだけじゃないのですね。株主総会が形骸化し、儀式化しているというのはほかの国だってそうなんです。アメリカだってそうですし、ヨーロッパだってそうなんですね。それは当然のことでございまして、例えばNTTなんかは株主が百五十万人もいるのですね。一体、どこに集まったらいいのかということです。  個人株主がやってきて、いろいろな意見を言って、それに経営者が丁寧に答えて、そうしたならば株主総会というのは機能を発揮し得るのか、会社経営というのは効率化されるのかというと、全然そうではないはずであるにもかかわらず、何となく、個人株主を重視しなくてはいけないとか、それから同じ日に総会を開くのはけしからぬとか、割合上辺の議論に終始してしまっているところがあるのじゃないのかなと思うわけです。  ですけれども、日本商法は、決算を閉じた後、決算期末から三カ月以内に株主総会を開きなさいと決めているわけですね。幾らコンピューターアカウンティングの時代、コンピューターで会計をする時代といっても、やはりそれなりに会計報告をつくる期間というのは必要でございますし、それから会計監査にも数週間必要とするわけですね。それからさらに、株主総会を開く前に、何週間かとって株主の皆さんに通知しなくてはいけないとか、質問をしたい方にはその期間も与えなくてはいけないとか、そういうスケジュールを見ますと、かなりぎりぎりなんですね。  ここ十数年ずっと同じ日に集中しているということを、あたかも年中行事のように六月になりますと新聞は書き立てるのでございますけれども、昔から一定期間に集中はしていたのです。それがさらに加速されたというだけでございまして、もし集中するのが悪いというのでしたならば、例えば三カ月以内というのをもっと延ばしてもいいのですね。現に、もっと緩やかな期間でやっている国の方が多いのです。日本は、総会を開くまでの期間というのは非常に短い方の国だと聞いております。ですから、株主総会形骸化論というのも、実は形骸化論自体が形骸化しているという問題があるわけでございます。  資本主義社会のお手本のように言われるアメリカでも、株主総会なんというのは言ってみればお祭りみたいなものなんですね。有名な経営者と一緒に写真を撮るとか、広い庭園に食べ物を出して皆さんで楽しくやるとか、あるいは、従業員株主というのが充実しておりますので、従業員のOB会みたいになっているとか、そうするために年々違う場所で、違う州で株主総会を開く会社があるとか、ほとんどお祭りと化しているのですね。  というわけで、本来的な各国の会社法というのは、もっともっと株主が少ないときの理念的な形で法律がつくられているのでございますけれども、今みたいに、よその国も株主が非常に、何十万とか百何十万なんという会社も出てきている時代には、到底現実に合わない法律なんだということですね。  ですから、アメリカでさえもヨーロッパでさえも、大株主だけの株主総会みたいなものが実はかわりにございまして、そこで大事なことは決めてしまっているのですね。日本だけじゃないわけです。当然だと思うのですね。株主総会における決議権というのは、選挙と違って一人一票ではございませんで、持ち株比率に応じているのですね。たくさんの出資をした方はそれだけ発言権も強い、議決権も大きいという形になっているわけでございます。  ですから、大株主の意向で全体が決まるということは全然問題じゃないのじゃないのかなと思うわけなんでございます。でも、じゃ一方、個人株主、小口の株主は無視していいのかというと、それはまた別の問題でございまして、アメリカとかヨーロッパで株主総会が1Rの場となっている。つまり、会社側から投資家に対する説明の場、懇談の場になっている。ですから、例えばビデオなんか使ったりして会社の内容を宣伝したりとか、こんな新製品ができましたと言って、食品会社だったら試食してくださいとか、日本でも一、二そういう会社が出てまいりましたけれども、そういう会になっているわけです。  ですから、株主総会が形骸化しているとおっしゃるのだったならば、現実に合わせた形で法改正をしなくちゃいけないということですね。それを一方的に経営者が悪いとか、そういう議論、もちろん経営者は悪いのですけれども、そういう議論ばかりしておりますと、どうも問題の本質を失ってしまうというところがあるのではないかと思うわけです。  ですから、企業なんというのはそもそもが生産のための仕組みなんですね。企業にモラルを要求するというのが私はそもそも間違っていると思っておりまして、モラル高い企業はあってほしいですし、御努力いただければうれしいですけれども、でも、企業にモラルを要求して、それで議論のけりをつけるというのはもういいかげんにした方がいいのじゃないのかな。企業はモラルを持たない、それでもある程度うまくいくという仕組みをつくらなくてはいけないのじゃないかと思うわけです。  ですから、マスコミも企業のモラルをすぐ問題にするのですけれども、では、マスコミというのは一切暴力に屈していないかというと、ちょっと視聴者から電話があったというだけでもう放送禁止語とか、新聞の中の禁止語なんて勝手につくって、自粛してしまっているわけですね。おたくも脅迫に屈しているのではありませんかと言いたくなってしまう状況があるのに、人のことは随分責めるなと思うのでございます。  それだけではなくて、総会のシーズンが近づきますと、あそこの企業総会は荒れるぞと、何かうれしそうな感じに読み取れるような観測記事が載ったりするわけでございます。しかも、総会が終わりますと、スキャンダルが起きた企業を中心に、ここはやはり長かったというような、そういう記事を書くのですね。だから、企業側が、長かったと取り上げられたくなかったら短くしたいという気持ちも無理からぬところがあるわけでございまして、マスコミ自身が加担している部分というのもあるのですね。  でも、別にマスコミを責めたいわけではございませんで、全日本的な体質なんだということだと思うのです。表面を取り繕う、仲よしクラブでいるというような全日本的な体質をどこかで変えていかなければいけないのではないのかなと思うのです。  モラルの問題にしてしまうもう一つの大きな問題点というのは、何か行政の怠慢を許してしまうところがあるのではないかと思うのですね。野村問題にしろ一勧問題にしろ、野村と一勧のモラルだけを問題にしておりますと、では大蔵省は何をやっていたのかなという問題が消えてしまうわけです。ですから、行政の問題もあわせてきちんと議論しなくてはいけないということがあると思うのですね。  総会屋とか暴力団の問題について言いますと、警察は、重大な殺人事件とか傷害事件が起きていますね、企業経営者が脅迫されたりとか、家族の生命が危険にさらされたりとか、現実に殺されてしまった方が何人かいるにもかかわらず、犯人が捕まっていないという状況があるわけですから、そちらの部分もきちんとおやりいただかなくてはいけないと思うわけです。  それから、今、総会屋と申し上げてきましたけれども、実は、先ほど申し上げたようないわゆる総会屋と言われるような人たちというのは、もうかなり払拭されてしまっているわけです、お掃除されてしまっているのですね。それで、残っているのは暴力団に近い人たち、あるいは暴力団そのものなのですね。だから、暴力団の問題として実はこの問題を解決していかなくてはいけない。そうだとすると、商法の問題かなという気がしてくるわけでございます。  小物の総会屋というのは八二年の商法改正でかなり廃業しておりまして、その後、暴力団のばっこする世界になったと言われているわけなのでございますけれども、暴力団の問題とすれば、やはり刑法とか組織犯罪法とか、それから暴力団対策基本法ですか、そういうようなもので対処していただかなくてはいけないのではないのかなという気がするわけです。  ですから、私は今回の商法改正は大賛成でございまして、どうしてかというと、モラルの問題にしないでコストベネフィットの問題にしなくてはだめだと。企業というのはもともと利益追求主体でございますから、こんなことをやると損だぞと思わせることが本当は大事なわけでございますから、やってしまったときの罰則が重いということは非常に大事なので、その点では今回の改正も、ちょっと金額が低いのではないのかなと思っておりますけれども、そういうコストベネフィットの世界にしていただきたい。  法改正だけではなくて、法の運用という点も十分御留意いただきたいと思うのですね。  どうしてかと申しますと、一勧問題で、銀行法適用による告発が初めてであったと新聞が書いておりましたけれども、ほとんど問題にならなかったのですね。一勧のこの間の法人としての罰則というのは五十万円であった。安いんじゃないのといって、金丸さんのときと同じように新聞はそこを騒いだのでございますけれども、でも、五十万円の罰金の低さというのは、日本の法体系そのものが今まで割合罰金が低いという形でして、そこがいけないというのでしたならば、今回のように法改正するとか、あるいは司法の哲学そのものを見直していかなければいけない。さっき申し上げたように、アメリカその他のように、本当に重たい罰金で、嫌というほど取ってやる。財政赤字と言われている折から、二重、三重にメリットがあるのではないかと思うのですけれども、そちらに変えるということをしなくてはいけない。  もう一つ、一勧問題でぜひ注目しなくてはいけなかったのは、さっき申し上げた、五十万円の罰金の小ささよりも、大蔵省が今回、告発が初めてだったということですね。それから、銀行法の二十七条を用いた業務停止処分も初めてだった。では、これまで全然銀行というのは銀行法違反していないのかといったならば、そんなことはないのでございまして、大蔵省が告発義務を怠ってきたということだと思うのですね。そういう問題。法改正だけで済まない問題。  だとしたならば、やはりそれぞれの行政当局あるいは監督当局が任務の過怠があったときには、それもきちっと取り締まっていただくという法改正もあわせておやりいただかないと、商法改正だけではちょっと不十分なのではないのかなというふうに思うわけでございます。  その点をどうぞよろしくとお願い申し上げまして、私の陳述、少し長くなりましたが、終わらせていただきます。どうも失礼いたしました。(拍手
  64. 八代英太

    ○八代委員長代理 ありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。     —————————————
  65. 八代英太

    ○八代委員長代理 これより質疑を行います。  なお、質疑者にお願いいたします。  午前中にも申し上げましたが、質疑の際は、まずお答えをいただく参考人のお名前を御指名の上、質疑にお入りください。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西川公也君。
  66. 西川公也

    ○西川(公)委員 自民党の西川公也と申します。きょうは、久保利参考人、紺谷参考人には、こちらへお出かけくださいまして、大変貴重な御意見を聞かせていただきまして、感謝を申し上げたいと思います。  実は、きょう四人の方が御意見を申し上げてくれたわけでありますけれども、それぞれの方々が、企業経営者のあるべき姿といいますか心構えについて、大変ニュアンスの違いがあって、私は興味深く聞いておったところでございます。しかし、どういう形をやっても、この問題は起きているわけです、現実に。こういう問題を解決するにはどうすればいいか、こういう視点から聞いていきたいと思いますが、最初に、お二方に聞いていきたいと思います。  きのうは、衆議院の本会議で橋本総理も、総会屋対策を全力で取り組んでいく、このような話をしてくれました。それから、きのうは政府側としましても、官房長官が、経団連の皆さん初め十二団体の皆さんのお越しをいただいて、とにかくしっかり総会屋対策を取り組んでください、こういうことをお願いしたのです。  そこの中で、答えがちょっと、企業側が非常におとなしい回答でありますので、心配なのでありますが、きのう官房長官から三点ほどお願いをしたわけです。行動規準を策定して頑張ってやってくれ、さらには、情報誌購読料等総会屋に利益を供与しないように絶縁宣言をやってくれ、あとは、警察に積極的に通報してくれないか、こういうお願いをしたのですね。  経団連側の決意表明でありますが、絶縁に努力する、この表現でとどまっておるというのが新聞報道に出ていました。もう少し胸を張って言ってもらえればいいのでありますけれども、そこまで言えない、そういう立場があるんだと思います。  それから、きょうは経団連が理事会・評議員会緊急合同会議をやる、こういうことになっておるわけでありますけれども、私は企業行動憲章等もいただきまして読みましたが、全く当たり前のことでありまして、これで本当に大丈夫なのか、こういうことをさらに心配しております。  そこで、きょうの八百社に及ぶ経団連の緊急合同会議、それと昨日の、官房長官が十二団体を呼んで要請しましたけれども、これで本当に効果が上がると両参考人はお思いかどうか、ちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  67. 久保利英明

    ○久保利参考人 参考人の久保利でございます。  上がらないと思います。そもそも、官房長官に言われたからとか、経団連でみんなで八百社が寄り集まってという問題ではないのであって、一社一社のトップが、自分会社はこれでいいのかと考えて、絶縁宣言なんかしないでいいから、絶縁すればいいのです。宣言だとか努力だとかは意味がない話でありまして、具体的に絶縁をする、行動だけが価値があるというふうに私は思います。
  68. 紺谷典子

    ○紺谷参考人 私も、何てきれいごとの世界だろうと思います。野村と一勧の問題のときに、三菱も日立も、もう野村とは取引を行わないとか言ったのですね。だけれども、結局、自分たちも出てきてしまったということがあるわけでございます。  それで、今どういうことが起きているかと申しますと、証券会社が情報誌を買うのを大蔵省がやめろと行政指導しているのですね。その結果、業界誌の購読を一切やめてしまったという証券会社が続出してきておりまして、業界誌が非常に困っているのですね。そうじゃなくたって株式市場の低迷でお客が細ってきているところへもってきて、もともと何分の一かに削っていた証券会社がみんな購読をやめてしまったのです。そういうのと少し違うんじゃないかなという気がするのですね。  業界誌の中には怪しいのもあるかもしれませんけれども、私が聞いているのはまともな業界誌でございまして、個人投資家相手にすぐれて商売しているというところでございますから、個人投資家にどんな情報が行っているのかという点をチェックする点でも、証券会社にとっては重要な情報源であるはずなんですね。あるいは個人投資家のお客さんたちに配っていた、そういうものでございます。それをやめてしまったりしているのですね。  だから、何となく議論が上っ面をなでていて、そういう延長線上に今回の経団連の、今おっしゃられたこともあるのではないかなと思っております。全然本質的ではないと思っております。
  69. 西川公也

    ○西川(公)委員 ありがとうございました。  私も予想したとおり、きれいごとで、これで総会屋対策ができるぐらいであればとっくにできたと私も思っております。  そこで、それではどうすればできるのだろう。久保利先生のお話を先ほど興味深く聞かせていただきました。ですけれども、先生の対策も、これでできるのであれば私はいいと思うのですけれども、どこかで断ち切れればいいのでありますけれども、問題は、過去に弱みがある、弱みがあるから、その弱みを取り出すぞという部分に、先生の先ほどの再発防止対策、六項目お話しくださいましたけれども、今断ち切れれば済んでしまう話だと思うのです。二時間方式の確立をされたから、先生の言うとおりやれ、こうやればうまくいくよ、こういう話があったり、経営トップの心構えだとか、こういうことでやっていけばできるのかもしれませんが、これでできない部分、だから、過去に何かあった、それを表に出されるのが非常に怖い。スキャンダラスにやられる。まあ政治家も同じでありますけれども、表に出されるのは非常に怖いのです。真実でなくても三回言えば真実になりますから。  そういう意味で、今度のものを効果あらしめるためには、確かに重くはしましたけれども、先ほど軽過ぎるという話もあったわけでありますけれども、私は、どんなに重くしても、表に出されては困る話について責められたら、人間なかなかしのぎ切れないと思うのですね。そこを解決してやる方策をとらなきゃだめだと思っています。ですから、懲役刑を重くして五年としましても、三年でも十年でも、結局途中で、まじめな囚人だ、一年ぐらいまけてやれ、二年ぐらいまけてやれ、こういうことで出てきますと、自分の前を歩くだけで、威迫、怖さを感じまして、そういうことがありますから、断ち切るといってもなかなかできない部分があると思うのですね。  それからもう一点。収監されている人は中に入っていますから影も見えませんけれども、総会屋だって仲間がいるはずですね。まして暴力団というような話になってくれば、もう組織暴力団しか生き延びていけないわけですから、仲間がいます。仲間が歩く、話しかける。これでも同じように、企業経営者の方はサラリーマン重役ですから、何とか守りたい、触れられたくない、こういうことでまた引きずり込まれる可能性もあると思うのですね。  ですから、私は、仲間に及ぼす刑をこの際考えるべきだと思っておりますけれども、今度の改正は、久保利参考人といたしましては賛成か反対か、と同時に、軽過ぎないかどうか、さらには仲間からの影響をどう考えていったらいいか、その辺の御意見をお聞かせいただければと思います。
  70. 久保利英明

    ○久保利参考人 大変悩ましい問題だということは理解しておるつもりでございますが、ポイントは、打ち切るのか打ち切らないのか、打ち切らないときには、その企業はいわば企業舎弟となって暴力団にずっと支配されていくんだということになるわけであります。  したがって、スキャンダルがある、何かがある、それが怖くてずっとつながってきた。ところが、では何がスキャンダルなんだという実態も実はわからずに、呪縛という名のもとにこれまた隠ぺいしているわけでございますが、さぞかし何代も前の頭取の話であればもう時効も切れていると思いますし、一体何をそんなに恐れているのか。実はこういうことが恐ろしかったので利益供与をいたしましたという話は、三十件に及ぶ数多くの利益供与事件の中でも、いまだ明確にこのスキャンダルが恐ろしかったのでいたしましたという話は聞いたことがないのです。  私は、今の先生の御心配はまことにごもっともかと思いますが、そんなにすごいスキャンダルを、この情報化社会の中で、一部の暴力団、総会屋にお金を渡すだけで隠しおおせるはずがない。必ずばれる。現に、今まで出ている問題はすべて、総会屋利益供与も含めて内部告発じゃありませんか。という点からすれば、隠すよりあらわるでございまして、そんなに必死になって隠すことをやっても、どうせ出てしまう。逆に、今までのケースは大した秘密はなかったのではないのかというふうにさえ思いたい、また、思えるのではないか。  そういう点からすれば、企業舎弟となって一生暴力団に使われる企業になるのか、一時少々スキャンダルはあるかもしれないけれども、そんなものは楽々越えていくという全社挙げての戦いを組むのか、これは経営者判断なのだ。うちはそれができないよという会社は倒産すればいい。この厳しい経済環境の中で生き延びていく価値のない会社だというふうに、厳しい言い方になりますけれども、私としては申し上げたい。  現に戦っている企業がたくさんいる中で、暴力団、総会屋に金を渡している企業は、実は戦う企業の敵なんですね。そういう存在として、仲間うちの同じ経済団体に加盟しているなんて言いながら、企業の敵であり続けていいのか。むしろ、それは我々の仲間ではなくて敵対なのではないかというふうにさえ思います。  その認識をしっかり理解されれば、それではどちらが得かというふうに考えたならば、どんな会社でも総会屋、暴力団とは絶縁をした方が得だということになるに違いない。その判断ができない、あるいは、戦うとボディーガードをつけたりガードマンをつけたりしてコストが高いということを言いますけれども、それは何も一生つけている必要はないわけでございまして、一定の期間きっちりやればいいわけです。  それと、暴力団に一遍金を流し始めたときには、未来永劫流し続けなければいけない。そのコスト計算ができないようで経営者と言えるのかなという疑問の点もございまして、私としては、明敏な経営者であれば必ず断絶できるし、その断絶に当たってのコストは、適切なコストをかけて守り切れるだろう。それを日本の警察も守っていかなければ、日本国の将来はぼうぼうたる荒野であると司馬遼太郎さんが言っておりますけれども、そうなるだろうというふうに私は思います。
  71. 西川公也

    ○西川(公)委員 久保利先生の話を聞いておりますと、企業も絶縁した方が得だと思うはずだと。私もそう思います。しかし、絶縁できないから今日こういう問題がどんどん出てくるわけですね。  それで、冒頭に申し上げましたけれども、きょう、四人の参考人の方々の御意見を聞いておって、午前中の佐高参考人でありますけれども、今度の経団連の関係も、総会関係で九割以上は総会屋と何らかのつながりがあるのじゃないか、こういうような意見も述べていました。出てくるのは氷山の一角で、掘れば掘るほど出てくる、こういうことではないか、こういう分析をしていました。  それで、両参考人にお聞きしたいと思いますが、そのとき私も思ったのでありますが、確かに総会屋が千人程度いるとしても、その人たちの勢力分散ということからすれば、同じ日、同じ時刻総会をやった方がいいと思うのです。しかし、同じ日にやるのは後ろめたいところがあって、軽く逃れた方がいいという気持ちがあるのじゃないか、このような話もしていましたが、私は、集中しても決して悪いことではない、こう思っています。  そこで、問題は、企業が本当に総会屋と結びつきがあるかどうかわかりませんけれども、掘れば掘るほど、調べれば調べるほど出てくるということであれば、この際、警察なり検察なりに上申書を出していただいて、私のところは総会屋関係があります、お金は送っております、こういうことをやっておりますけれども、公表されてもぜひここで断ち切りたいのでありますけれども、その方法をとれませんかと。こんな方式をとって、隠しておくような本当に悪いやつはどっちにしても出てきませんから、出てくるやつだけここで断ち切るような方式で上申書方式、あるいはまた両参考人が考えるような方式で断ち切る方式等のお考えがあれば、お二方にお聞かせをいただきたい、こう思います。
  72. 久保利英明

    ○久保利参考人 後の方の御質問から申し上げますと、いわば上申書方式、ある種の徳政令かもしれませんけれども、私としては、法律家の端くれでございますので、法のもとの平等とかいろいろ考えますと、しかも、現実に総会屋と戦って血を流して、それでも切ってきた人たちがたくさんいる中で、一片の上申書を出して、言ったら許してあげるよというのが果たして適切かどうかという点で、やや疑問なしとしないというのが率直なところでございます。  それから、集中日の問題につきましては、お説のとおり、そういう形でガードを固めていこうという指導が、当初、確かにございました。しかし、考えてみれば、現在総会屋としてリスティングされている者はせいぜい千名。日本じゅうの上場会社が二千五百社、店頭公開を入れて三千。その三千社のうちの八割が大体三月決算。そうすると、二千数百社が六月の幾日に総会を開く。幾ら何でもこれはちょっと過剰防衛過ぎやしないか。六月の下旬になるというのはわかります。来年は集中日が二十六日であろうかとか二十九日であろうかとか、もう既にささやかれているわけでございますけれども、とにかくそのあたりの三日、四日にばらばらと、それこそお得意の業界別でも結構でございますから、少しそのあたりをばらばらとばらけておやりになる、それで十分だ。いかにも今の集中度は過大過ぎるという感じがいたします。  先ほど私、答弁漏れいたしましたけれども、仲間がいる、その総会屋の仲間に対する連座とか、あるいは共犯関係でくくるというふうなことはどうかということでございますが、それはむしろ、私としては、この法律の問題、この射程距離ではなくて、やはり組織犯罪に対する対策の中でそれらの問題は解決されていくべきではなかろうかという感じがいたしております。  以上でございます。
  73. 紺谷典子

    ○紺谷参考人 私は、総会屋も暴力団も、根絶やしにすることなんて絶対不可能だと思います。それはもうありとあらゆることについて言えることではないでしょうか。ですから、社会としてどの程度まで容認できるかということをまず議論しなくてはいけないのですね。  今みたいに、海の家の人がどのぐらいかよくわかりませんけれども、せいぜい年間数十万円とか、そんなところまで摘発して、何か物すごい極悪人であるかのようにわあっと写真入りで報道して、交通安全週間のときのおまわりさんみたいだなと思ったりするのでございますけれども、数を挙げればいいというものではないのですね。だから、その点のバランスというのを見失うということの方がむしろ怖いのではないかと思いますから、全体としてどこをどの辺までやれるのか、そのためにはどういう法体系とか仕組みをつくればいいのかなという議論をすべきだと思うのです。  小さな総会屋みたいなものはほうっておいたってもうなくなると思います。それから、大きな暴力団はちょっとやそっとのことでは絶対なくせないと思います。ですから、その辺もきちっと踏まえて、現実的な議論が必要なのかなと思っております。
  74. 八代英太

    ○八代委員長代理 時間になりますが。
  75. 西川公也

    ○西川(公)委員 そろそろ時間が。もう一問ぐらいしか聞けません。  今、海の家の話が出ましたが、千人の人が生活をする総会屋、一人二千万の収入ですと二百億、そういうことですね。これはもう大変な話ですから、もっともっとあると思うのです。  それで、一勧あるいは証券業で出てきたのは直球が出てきた。海の家がカーブだと私は思うのです。それからフォークボールもあるし、シュートボールもある。まだまだ形を変えた利益供与はあると私は思うのです。ただ、どの辺で打ちどめるかというのは今のバランスの問題だ、こういうことで理解をしておきたいと思います。  そこで、天下りの問題ですけれども、警察も実は、野村も第一勧銀も山一も日興も松坂屋も三菱自工も三菱電機も三菱地所も日立製作所も日立金属も、仄聞するところ、天下りが行っている、こう受けとめています。  日本は、天下りは、国家公務員法百三条の二項で、私企業から隔離する、こういう話で来ているのですね。しかし、今、民間から大学の教授になれるような法改正をしてきているわけでありまして、余り制限すると、結局、外郭団体をどんどんつくっていって天下り先を見つける、こういうことになりますので、発想を変えて、アメリカは大分厳しいようですけれども、イギリスのように、幾ら市民運動が起こってもけるよ、このぐらいで天下りも認めてやって、警察の方々ぜひ、勇気があって総会屋対策、こればかりではありませんけれども、企業が世界の立場で耐え得るような形で協力できる、こういうことになれればいいわけであります。  天下り論は、私は大賛成なのですけれども、両参考人、どう考えるか、最後に一言ずつで結構でございますので、お願いします。
  76. 久保利英明

    ○久保利参考人 余り役に立っていないのではないかということが一つあるだろう。役に立つのであれば、天下り、結構だと思います。
  77. 紺谷典子

    ○紺谷参考人 警察の方が役に立っているかどうかは存じませんが、大蔵省について言わせていただきますと、大蔵省の方が天下った銀行ほどつぶれているというデータがはっきりございますので、私は賛成できません。
  78. 西川公也

    ○西川(公)委員 大変貴重な御意見、ありがとうございました。
  79. 八代英太

    ○八代委員長代理 続きまして、上田君。
  80. 上田勇

    ○上田(勇)委員 きょうは久保利参考人、紺谷参考人、大変お忙しい中御出席をいただきまして、また貴重な御意見を拝聴させていただきまして、本当にありがとうございました。  きょうは午前中から参考人にいろいろな御意見を伺う機会がありまして、本当にこの総会屋絡みの問題というのは、きょうも新聞の一面を飾っていましたけれども、もう連日、今最も報道されている、日本における最も脚光を浴びているというのでしょうか、最も関心を集めている社会の問題であるというふうに思います。  最初に、久保利先生にお伺いをいたします。  久保利先生、いろいろな総会屋の問題につきまして大変これまで長年の取り組みがありまして、いろいろなところで、新聞紙上でも御意見をいろいろと拝聴させていただいておりますけれども、まず、きょう先生のお話を聞くと、何であんなに多くの企業が、またその中でも幾つかの例、例えば第一勧銀なんていうのは百億を超えるような利益提供をする、その原因というのは何なんだろうかというと、本当にわからなくなってしまう感じがしますし、きょうの先生のお話を聞くと、余計、何でそんな理由があるのだろうかということが全くわからなくなってしまうわけであります。  よく新聞報道などで、これは会社側の言い分として出てくることが、担当役員や総務の担当者、やはり総会屋が暴力団を背景に持っているということの中で、脅迫される、やはり身の安全の確保が大変難しい。警察も世間の注意が非常に集まっているときには一生懸命やってくれるのだけれども、しばらくするとほったらかしにされてしまう、そのときどうするのだというような、これは企業側の言い分として、そういう発言がよく載っております。  そこで、この問題、久保利先生は具体的な事例にも携わってこられたと思うのですが、では、いざ毅然として対峙しようとしたときに、これは企業の努力もあると思いますし、また、暴力団絡みということになれば企業だけでは対応できない、警察の力も必要があると思うのですが、この辺、安全確保という意味で、現状、十分な対策が講じられているのか。また、不足するような点があったら、どういう点を改善していけばいいのか。これは、企業側、また行政、警察も含めて、御意見があればお伺いしたいと思います。
  81. 久保利英明

    ○久保利参考人 暴力団等による脅迫、身の安全の問題でございますが、一つは、身の安全が心配になるようなケースであればあるほど癒着が深かったということだと思うのですね。非常に巨額の金がその会社から出ているときに、その金を打ち切るということによる被害というのは、被害というのは変な言い方でございますが、暴力団側、総会屋側のダメージというのは非常に大きいわけですから、これを何とかつなぎとめようと思ってさまざまな暴力的な言動を行う。逆に、金額が少ないのであれば、それほど一生懸命になってしがみつかなくてもというところがあると思うのです。逆に言えば、身の安全が心配になるくらい危険な状況であるならば、際限ない金をこれからもむしり取られ続けなければいけないということの証左であると私は思うのですね。  したがって、そのためには徹底したガードと徹底した警察当局による御協力が必要なわけでございますけれども、それはある意味でいうと、今までの経営トップ責任なんだということであれば、第一勧銀の新頭取が、一命をかけても、命をかけてもやるというふうにかつておっしゃいましたけれども、まさに命をかけてもやる価値のあることなのではないか。私は、単純に殺されてしまえと言っているわけではありませんけれども、少なくともそれだけの金をやみ世界に流し続けた責任はだれかがどこかでとらなければならないという覚悟を決めた上で、しかしガードを固めながらやっていかざるを得ない、そういうことなんだろう。それだけの巨額の金を流しておきながら、何にもなくて、警察が守ってくれないからおれはやらないというのは本末転倒でありまして、やることに決める、しかし守りは一生懸命やりましょうということが本筋ではないだろうか。  私は、一つあえて提言するとすれば、日本でボディーガードという制度がなぜないのだと。敵はチャカを持っている、盗聴もやっている、何でもやっているのに、こちらは警察以外、だれもピストルを持てない。せいぜい携帯警棒か何かを持って、飛び道具は持てないものですから、クロスボーか何かを持って戦うしかない。そういう武器不平等の状況で、かつ、ボディーガードというのがいない。私立探偵もいない。アメリカの探偵小説を読むと、ロバート・B・パーカーの小説なんかでホークという強い探偵が出てきて守ってくれる。ああいうのが日本にもおったらどんなにか頼もしいかという感じがするわけですが、これはすべて警察にしかお願いができない。このあたりが一つ問題なのかなと。  今回の法案とはちょっと関係がありませんけれども、そういうことを含めて、ガードマンというのはウォッチ・アンド・アウェーでございますので、見たら通報して逃げてしまうのですから余り役に立たないという点で、ボディーガード制度というのは検討に値するものではないだろうかという感じはしております。  とにかく、身の安全は守りつつ、しかし安全が第一なのではなくて、やみ世界と切ることが大事なのだという原点をしっかりわきまえる経営者に頑張っていただきたいとしか言いようがないと思います。大変悩ましい問題ではあります。  以上です。
  82. 上田勇

    ○上田(勇)委員 もう一つ、この問題を考えるときに、例えば第一勧銀では百億円を超えるような 利益供与がある。これはまさに経営者個人株主のものである会社を全く私物化している。しかもそれは、もう全く個人のために、そういう公開されている企業が、しかも違法な行為のもとに行っているということが、これは非常に重大なことであるわけです。同時に、何で日本を代表するような大銀行において、個人なのか、経営陣かもしれませんが、それの独断専行でそういうようなことが可能だったのか。何でそんなチェックシステムすらないのかというのが一つ大きな疑問になります。  同時に、制度的には、企業意思決定をするときには取締役会がありますし、監視する意味での監査役という制度もあります。いずれも何も機能していなかったのかなと。これが、先ほどおっしゃったように少額の問題であれば、それはわからないでしょう。しかし、これはわからないというような数字ではありませんので、この辺、こうした取締役会監査役という制度がありながら、結果的には会社に多大な損失を与える行為がまかり通っていたというのは、制度的な欠陥があるのか、またその辺をどういうふうに改善したらいいのか、引き続き御意見をいただければというふうに思います。お二人からお願いいたします。
  83. 久保利英明

    ○久保利参考人 各社ともいろいろなチェックシステムを持っているわけでございますが、トップ違法行為社長、頭取がみずから発案をし、あるいは非常に中枢的に絡んだ、そのトップの犯罪行為に対していかなる管理システムが有効なのかということは大変難しいと思っておりまして、監査役会機能もあるいは取締役同士のチェック機能も、現実にはほとんど働いていないというのが実情だと思います。  それでは、これをどういうシステムにしたならば防げるのかということは、コーポレートガバナンスの非常に重要なポイントだと思いますけれども、まず一つは、だれがトップを見張るのか、見張る係はだれなんだと。日本のシステムでは監査役がこれを見張るということになっていますが、今の日本監査役の質、量ともに、かつ、人事権まで取締役会に押さえられている監査役にそれだけの期待ができるだろうか。今、さまざま立法案も出ておりますし、大きく変わろうとしておりますけれども、現状ではとても無理だったろうと。  そうだとすると、何が機能するのか。アメリカでは、基本的にコンプライアンス・プログラムをつくり、そのオフィサーを各セクションに配置し、しかも場合によると密告者を、むしろ密告推奨制度と言われるような制度までつくって、トップが悪いことをしたときにそれがボードにちゃんと入ってくるような仕組みまでつくっておりますが、日本は性善説に立っているものでございますから、そこまでのシステムはない。だけれども、私としては、そろそろ日本も、従業員に対してもまた経営者に対しても、性悪説に立つチェックコントロールシステムをつくらないといけない時期に来たということを今回の事件は示しているのではないかなというふうに思います。  したがって、今のチェックシステムが十分だったかということであれば、不十分であった。それではいかなるシステムが有効なのかということについては、明快な回答はないけれども、これについて先進的に進んでいるアメリカ、欧米の制度というものを学ぶ中から日本的なシステムを考えていくしかないのではないだろうかというふうに考えているところでございます。
  84. 紺谷典子

    ○紺谷参考人 非常に難しい問題かなと思いますけれども、今までの日本がどうしてそういうチェック機能を持たなかったかというと、必要がなかったからだと思います。  一つは、行政の立場というのがある。例えば、野村にしろ一勧にしろ、表ざたにしなくて済んできたのですね。例えば、金融検査、証券検査が入りまして不正行為を見つけても、それは大蔵省が情報を隠してしまいまして、世の中に発表しないわけです。それで、担当役員の首を切って自分が天下ってくるとか、場合によっては、天下りしないまでも、例えば某銀行が合併要請を断ったならば、その銀行のこれまでの不正行為が少しずつ大蔵省からリークされたとか、そういううわさは数々あるわけですね。つまり、金融検査にしろ証券検査にしろ、さまざまな検査体制が、企業の効率的な経営とかあるいは国民経済に資するためにきちっと行われていなくて、ただ単に大蔵省の行政がやりやすいというような形でしか使われてこなかったという行政上の問題というのが非常に大きいのではないかと思います。  それから、日本のコーポレートガバナンスというのでしょうか、効率性という観点から考えてみますと、私は、日本企業にもそれなりの効率性はあったと思います。そうでなければ、どうして世界の奇跡と言われた日本の高度成長が達成可能であったのかと思うのですね。よく、株式持ち合いとか系列だとか企業集団とか、そういうものは非常に日本国有のもので、そのために日本経営が非効率になっているというふうに指摘されるのでございますけれども、私はそれは間違いであると思います。株式持ち合いの中で効率化というのが、アメリカとかイギリスとは違う形で進められてきたと思っております。  一つ例を申し上げますと、例えば三越の事件というのがありましたけれども、社長が非常に困ったことをしている、目に余るぞという段階になりますと、三井グループの総帥が割って入って、それで社長の首を切るというようなことがあったわけでございます。それから、この長引く不況の中でも、さまざまに企業トップ交代が進んでおりますけれども、それもやはり企業集団の中で行われているのですね。  株式持ち合いをするということは、資本のつながりを通して、一蓮托生といいますか、運命共同体になるということでございます。グループの中で経営が非効率で沈むところが出てきますと、当然ほかの企業も引っ張られてしまうわけでございますから、自分の利益を考えたってほうっておくわけがないのですね。ただ、市場の株価とかあるいは株主の交代とか、あるいはMアンドAとか、そういうような形で経営の効率化というのは進められてこなかったかもしれないのだけれども、むしろ株式の持ち合いを通して進められてきたというふうに思っております。それから、株式の持ち合いが日本国有の現象かというと、それも違っていると思います。  よく最近、アメリカとかイギリスの銀行が資本提携と出ますね。資本提携というのは株式持ち合いのことでございます。あちらでは、企業が持っている株式というのは初めから株式分布状況にあらわさないのですね。だから、法人保有の株式というのは消えてしまっているのでございますけれども、持ち株会社があるという一事を考えていただいても、法人企業企業が株を持っているのでございます。しかも、日本の場合は持ち株会社が認められてこなかったわけですから、何らかの形で資本提携をしようと思ったならば、相互に株式を持ち合うという方法しかないわけですね。しかも日本は、アメリカ、イギリスと違って、極めて長期的な関係を重視して経営を行ってきた国だというふうに言われているわけですね。そうしますと、なおのことに資本提携という必要は出てまいります。  それは当たり前のことなのでございまして、業務提携をして、お互いに秘密をリークし合ったときに、担保がなかったら不安てしょうがないのですね、いろいろな秘密を打ち明けて、その後裏切られたら困ってしまいますから。ですから、資本提携なんというのは企業の戦略として当然あり得ることで、どこの国の企業も使っているということです。株式持ち合いが日本国有のやり方で非常に不透明で非効率だというのは、日米構造協議を初めとして諸外国が日本経営に文句をつけるときの、ためにする議論でありまして、それに識者やマスコミが乗っかっているだけということであろうと思います。  ただ、そういう日本経営のあり方というのが、これまではいろいろな意味でいい面も持ってきたのだけれども、これからの日本にとってもいいやり方かどうかというのはまた別の議論があろうかと思います。つまり、リスクをとって進んでいかなければいけない。リスクをとるためには、個々の現場での決断というのが大事になりますし、長期的な関係を維持するような安定的な経済情勢にもないわけでございますから、そういう意味で変わらざるを得ないと思います。私は、法律というのはまあ一種の網の目なのでございますけれども、ざるは幾ら目を細かくしたって水はこぼれてしまうということでございまして、しょせん限界はあろうかと思っております。  そんなことよりも、先ほども申し上げましたけれども、必要がそういう形をつくっていくと思っておりまして、効率化の面からもあるいは遵法の面からも、そうでなければコストの高い社会がやってくるわけです。野村・一勧問題を初め、最近の事件というのは、八二年までは商法総会屋とのつき合いというのが罪ではなかったのですね、八二年以降は利益供与は罪になりましたけれども。でも、トップが関与していたと明らかにわかっているにもかかわらず、逮捕がトップにまで及ばなかったわけです。証券会社が出てきて、株屋だったならば捕まえやすいぞかどうかはわかりませんけれども、ともかくトップに及んだということですから、初めて日本企業はそのリスクの大きさ、コストの大きさを認識したのだと思うのですね。  そういう意味では、これからでございます。やはり一歩前進したのですね。そういうようなコスト感覚あるいは利益感覚というのが自然に変えていくのかなと思っております。  そうではなくて、外側からの何らかの力とか法律をぎりぎり厳しく細かくやっていけばいいという問題ではなくて、法の目を細かくし過ぎる別の弊害というのも一方で出てくる可能性もございますので、その辺の現実的な議論をお願いしたいと申し上げましたのはそこでございます。むしろ、日本企業がリスクをとりやすくなるようなさまざまの形、ですから商法だけではなくて、例えば労働関係、雇用関係にしろ何にしろ、リスクをテークしなかったならば企業が成長できないという、そういう状況に見合ったシステムの改革というのでしょうか、そういうことを周りから少しずつ変えていく、そういういろいろな足で支えてやるということが重要であろうと思っております。     〔八代委員長代理退席、委員長着席〕
  85. 上田勇

    ○上田(勇)委員 また、両先生にお伺いしたいのですが、今もそうなのですが、先ほど紺谷先生の方から、最初のお話の中で、企業にモラルを求めるというのはむしろ不自然なのであってというような話がありました。これは利潤を追求する企業において、その辺のモラルと利潤とのバランスをとって行っているということはよくわかりますけれども、ただ今回のこの一連の総会屋の問題というのは、単なる商慣行の問題であるとか、あるいはちょっとずるいとか、そういうことではなくて、両先生方おっしゃっているように、これは暴力団と絡んでいる反社会的な勢力との関係なわけですね。  では、それをコストベネフィットで考えるというのは、私は、むしろそれはちょっと開き直りなのではないかなというので、先ほどの紺谷先生の御意見にはちょっと違和感を感じたことは正直言って申し上げます。というのは、これは社会に対する負担を企業は何か外部経済みたいな形で追いやっておいた上で、それの中でだけでコスト計算をやって、それでブレークイーブンすれば事済むというようなことでは、これはむしろ何か公害を垂れ流している工場と同じようなことになってしまうのではないのかなというような感じがいたしました。  そこで、もちろんこれはモラルだけで解決できる問題ではないと思います。当然そういうメリットがなければいけないことだというふうに思います。ただし、法治国家において法律を守るというのは最低限のモラルだと思うのです。その辺は非常に悩ましい部分なのかもしれませんが。これからこういう反社会的な勢力、これは企業経営の問題だけではなくて、日本社会を安全で公正な社会にしていくという意味で、やはりできるだけ排除していかなければいけないという意味において、これからいろいろな対策を立てていかなければいけないのですが、モラルの面それから制度上の問題、そういったもの等がいろいろ絡んでくると思うのですけれども、若干抽象的な質問になってしまってちょっと申しわけないのですけれども、その辺の御見解というのでしょうか御感想を最後にお伺いして、終わりたいと思います。
  86. 久保利英明

    ○久保利参考人 私は、この問題はモラルの問題だとは思っておりません。モラルという名前で、倫理という名前でごまかそうとする人たちがいるだけである。これは犯罪行為であります。少なくとも、一九八二年以前は別といたしまして、それはモラルの問題であったかもしれません、しかしそれ以降は明らかなる違法行為でありまして、犯罪行為であります。まさに上田先生おっしゃるとおり、反社会的集団と癒着した、そういう犯罪行為というものをモラルの問題として片づけようとする方がおかしい。したがって、これは犯罪行為という違法性の問題だというのが一つ。  二番目は、日本国民といいますか日本経営者といいますか日本に生きている者のプライドの問題だというふうに実は考えております。  例えば、「ビジネスウイーク」という雑誌が、有力なアメリカの経済誌でございますけれども、確かにこの雑誌は日本たたきをするので有名な雑誌ではございますけれども、その雑誌の中で、野村・一勧事件が出た出だしのころに、コラプション、腐敗というのは日本の風土病であるという言い方で書かれました。まさにコラプション・イズ・エンデミック、風土病だ、そういう風土に日本はいるのだということをさんざん書かれました。これは三月二十四日号に書かれたのですが、七月二十一日号にはとうとう「ブラックメール」という名前のカバーストーリーになりまして、日本の日の丸の旗を後ろにして札束をやくざに渡している経営者の顔が出てくる。これは四ページにわたって、さまざまな角度から、日本の暴力団が日本経済界にいかなる影響力を持っているかという記事でございました。  そういう反社会的集団が日本において非常に強い力を持っているというのは、日本国あるいは日本人として、海外で勤務している人たちにとってみれば大変なダメージだ。その意味では、やはり単なるモラルではなくて、日本人のプライドの問題でもあるのではないか。  そして、もう一つが経済的ダメージの問題でありまして、これを最も有効にやりますのは代表訴訟だろう。総会屋に対する利益供与というものは特に準用規定等を設けまして代表訴訟の適用を受ける。経営者総会屋利益供与をした場合には、そのお金を戻すために会社株主会社に成りかわって返還請求訴訟ができるという規定になっておりまして、その意味では、総会屋利益供与をした役員は代表訴訟によって、そのお金を取り戻さない場合には破産をするかもしれないという危険を持っているわけであります。決してモラルではありません。  そういう点で、民事上も刑事上もプライド上も大変なダメージを日本あるいは日本人に与える。こういう行為というものをモラルだとか倫理ということでむしろ糊塗しようとする方が私は誤りであろうと。今先生がおっしゃったとおり、大変重要な問題なんだということを腹に据えてかからなければいけない問題だというふうに私は理解しております。
  87. 紺谷典子

    ○紺谷参考人 私は、さっきちょっと申し上げた意味が違うかなと思って、訂正させていただきたいと思います。  私はモラルは大事だと思っておりますけれども、モラルは他人に求めてもせんないことだなと思っているということであります。まして行政とか監督、警察の立場がモラルを言挙げしてそれでおしまいにするということは絶対あってはならないことだと思っております。  ですから、企業がモラルを持たなくていいと申し上げているわけではなくて、企業がモラルを持たなくてもある程度大丈夫なようなルールをつくらなくてはいけない。つまり、モラルのルール化ということでございまして、モラル違反を行ったならば、それが刑罰となって、コストとなって、自分の利益を損なうという形ではね返ってくるような形にしなくてはいけないということを申し上げたわけでございまして、ちょっとその辺、誤解があったかもしれないと思いますので、訂正させていただきたいと思います。
  88. 上田勇

    ○上田(勇)委員 どうもありがとうございました。
  89. 笹川堯

    笹川委員長 北村哲男君。
  90. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 民主党の北村でございますが、両参考人の先生方、きょうはどうも御苦労さまでございます。ありがとうございます。  私は、まず紺谷参考人にお伺いしたいと思います。  今ちょっとおっしゃったことなんですけれども、私は先生の、企業は聖人君子ではないからモラルを求めるのは無理であって、社会として抑止力を求めるならば刑罰を整備すべきであるという考えは全く同感でございます。  そこで、先ほど、今回は少し軽過ぎるのではないかという御感想を述べられましたけれども、今回は、今まで六カ月以下の懲役そして三十万円以下の罰金であったのを、懲役は三年に延ばし、そして三百万円にふやしたということについて、いろいろとアメリカの例なんかも御存じと思いますけれども、一体どのくらいならば先生のおっしゃるコストベネフィットに当たるのか。そして、その刑罰の重さ、もう一つのコストというのは一体どういうものをお考えなのか、その二点についてちょっとお伺いしたいと思います。
  91. 紺谷典子

    ○紺谷参考人 幾らぐらいが適切かというのはわからないのでございますけれども、でも、その職にあって得ていた報酬を上限とするぐらいであってもいいのかなというような気はいたしております。それから、今回みたいに組織ぐるみであるということが明らかな場合には、法人としての罰則というのがあってもいいのかなというふうに思います。  モラルに関しましては、よく、馬を水飲み場に連れていくことはできても飲ませられないといいますね。それと全く同じなんでございまして、モラルを言う人たちというのはむしろそういう議論をごまかしているという久保利さんからの御発言がございましたけれども、私は、だれがごまかしているかということを言えば、企業ではなくて、監督責任のあった監督当局であろうというふうに思っております。  野村や一勧の問題に関しましても、企業のモラルだけをしかって済ませる問題ではない。監督当局は何をしていたのかという問題こそ追及しなくてはいけないですし、次から次へといろいろな企業が出てきたとしたら、それは構造問題なんでありまして、もっと早くにルール改定に取り組まなくてはいけないものを、そういう問題があったということ自体を公表せずに済ませてきた問題というのがあるかと思うのですね。  前に、よくこういう例を使わせていただいていたのです。地下鉄東西線で私は通っておりまして、いすが七人がけなんです。だけれども、足を広げて五人ぐらいでかけている方たちが多くて、最初は、ここは七人がけですというステッカーを張ったのですけれども、全然効かない。その次には、七人分に分けて模様をつけたのですけれども、座ってしまえば見えませんよね。その次には、今度は白雪姫と七人の小人のポスターをつくりまして、七人仲よく座りなさいと白雪姫がしかっているポスターを張ったのですね。それでも効き目がなくて、最後にどうなったかと申しますと、お尻の部分と背中の部分がくぼみがついているシートをつくったのです。ですから、二人分使おうとするとごろごろして座りづらいのですね。多少窮屈でも一人分のところにかけたのが一番居心地がいいという状態ができたわけです。その後、ちょっといすが古くなって、また柔らかくなってきてしまいましたから、だめなんですけれども。  でも、それが規制というものの一番望ましい形というのでしょうか、私が先ほどから当人のコストベネフィット、当人がそうした方が利益なんだと思うような形に誘導するのが最も望ましいルールではないのかなというふうに思っております。
  92. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 大変すばらしい御示唆をありがとうございました。  それに引き続いてですけれども、紺谷先生が九七年三月二十七日付の東京新聞に、ちょうど野村に強制捜査が入ったときに、小論文を書いておられまして、まさに監督責任の問題で、証券監視委員会責任は重いということを言っておられます。すなわちここには、  野村証券責任は重大だが、それ以上に監視委員会責任が重い。こうした不正取引は、欧米の証券会社でも頻発している。欧米の証券市場が、わが国の市場よりも投資家の信頼を得ているとすれば、それは証券会社にモラルがあるからではなく、監視と摘発が着実に行われることによってである。利益を求めるための組織である企業に、人格を求めても無駄である。まさに今のことですね。  市場への信頼は、監視委員会への信頼によってしか達成され得ない。だからこそ、監視委員会が不正に対して迅速かつ確実に対応することが必要なのだ。と、監視委員会責任は重いというふうにおっしゃっております。  私も、この証券監視委員会というものがちょうど一九九一年の証券スキャンダルのときにアメリカのSECに見習ってつくられたということについて非常に重く考えておるのです。その後それが何をしているのか非常にわかりにくい点があって、今回は少し告発なんかでいろいろ名前が挙がっておりますが、この五年間の実績が非常に弱いと思っているのですけれども、参考人がごらんになって、証券委員会についてどういう感想をお持ちなのか、どういう点が問題なんだろうかという点について御意見をいただきたいと思います。
  93. 紺谷典子

    ○紺谷参考人 最大の問題というのは、非常にバランスの悪い検査というのでしょうか、摘発を行っているということだと思います。  皆さんも御存じと思いますけれども、大蔵省には中島問題という問題がございました。主計局次長の中島さんが、億という金額を超える収賄の容疑があり、かつ脱税の疑惑まであり、インサイダー取引を行ったという疑惑もあり、のみならず証券会社に補てん要求をした。それだけでなく、借名口座まで行っていらしたというようなことがわかったわけです。すべて大蔵省の監督対象事項でございます。  そうであるにもかかわらず、大蔵省官房秘書課は、どうも税のことをよく知らなかったからだと言っている。そういうことでおさめていい問題なのかなと思ったのでございますけれども、結果、大蔵省がどんなルール改定を行ったかといいますと、公務員の株式取引規制だったのですね。  冗談じゃないよと私は思いまして、どうしてかと申しますと、盗んだお金で自動車を買って自動車でひき逃げ事件を起こしたからといって、皆さん、みんなでもう自動車を買うのはやめましょうと言っているに等しいことなんですね。  中島問題に関して証券監視委員会は何をしたか。何にもしなかったのですね。調べた結果、証拠が挙がらなかった、インサイダー取引に関しては利益を得ていなかったのだからインサイダー取引じゃないとおっしゃった。それはとても変なんです。インサイダー取引というのは利益を上げようがどうしようが、結果は問わないのですね。どうしてかというと、市場というのは生き物ですから、情報を得て、もうけるつもりで売買いたしましても、結果的に損をするということは幾らでもあり得るのです。情報を得て、その情報を得たことによってもうけようと思って取引をしたかどうかという動機を問うているものでございまして、結果を問うていないのですね。現にその後、鈴丹の社長さんは、損をしていたにもかかわらず、インサイダー取引だということで摘発されております、告発を受けております。  ですから、そういう非常にバランスの悪い監視のあり方をしているという、その一事をとってみても、証券監視委員会が市場から信頼を得られるような形になっていないということは雷をまたない。  まして、証券市場を育成すべき立場大蔵省が、すべての罪をあたかも株式取引に罪があったかのように押しかぶせて公務員の株式取引規制だけでおさめようとしたというのは、重大な犯罪ではないかと私は思っております。
  94. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 どうもありがとうございました。  次は、久保利参考人にお伺いしたいと思います。  実際に総会屋対策に奔走しておられる久保利参考人、今、政府も日弁連に協力を求めて、弁護士会と協力すると言っておりますけれども、実は、先日、私どもの先輩である岡村弁護士の夫人が刺殺されたということもあります。弁護士がそういう矢面に立つのは当たり前の職業なんですけれども、危険な側面に立たれることはよくあることなのですが、参考人自身、そういう仕事をされておって、そういう矢面に立った、あるいは危険な目に遭ったというふうなことはありますか。そして、そういうときにはどういうふうにされましたか。
  95. 久保利英明

    ○久保利参考人 幸か不幸か私の場合には、人相、風体が非常にけしからぬこともありまして、普通の弁護士とは違うようにどうも思われているのかもしれませんが、各種嫌がらせのようなものはありますけれども、いわゆる生命、身体、あるいは家族の生命、身体に具体的な危害が加えられるというような経験は、幸いなことに持っておりません。しかし、いっそういうことがあるかもしれないという緊張感だけは常に持っているつもりでございますし、それなりの準備はしているつもりでございます。  しかし、まさに今北村先生おっしゃいましたような、弁護士が、あるいは弁護士の家族がそういう標的になるということはあってはならないことでありますけれども、しかし、あり得ないことではないということは重々かみしめ、しかし、それを超えなければ、結局これだけ、八万人の暴力団というものがつくられてしまった、しかもバブルのできる過程あるいは壊れる過程、その過程で彼らは一粒で三度おいしい思いをしてきて、たくさんの裏金、やみの世界へお金を持っていってしまったということでありますので、それをつぶしていくためには、弁護士だけではありませんけれども、皆それなり覚悟を持って戦うしかないのかな、こう考えている次第であります。  私の身まで御心配いただいて、先輩、どうもありがとうございます。
  96. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 先ほどのお話の中で、総務担当セクションの変革でアウトソーシングとしての民暴弁護士の活用ということを言われました。実際に民暴弁護士というのは、ちょっと暴力団弁護士みたいな感じで余りいい名前じゃないと思うのですけれども、その人たちは一体、普通の弁護士さんとどういうふうに違うのか、どういう活動をしようとしておられるのか、どういう面の専門家なのかという点について少し御説明をいただきたいと思います。
  97. 久保利英明

    ○久保利参考人 正確に言うと民暴対策弁護士と言うべきだと思いますけれども、いわゆる暴力団が単純な刑事事件の問題ではなくて民事事件に介入をしてきて、その民事的な事件企業恐喝等々をしてくる。これに対して、企業のサイドあるいは被害者のサイドに立って暴力団を撃退する、あるいはこれに対して対抗する、こういう弁護士のことであります。  日本弁護士連合会の中には民暴委員会というものがありますし、数多くの各地の単位会の中にもこの民暴委員会というのはございまして、警察と非常に密接な協力をしながら対応している。  暴力団というのはいろいろな姿をするわけでありまして、先ほど来話題になっております総会屋というのも暴力団の一つの変形、右翼標榜暴力団というのもありますから、街宣車というのもある種の暴力団の変形、あるいは解体業者であるとか産廃業者であるとかブラックジャーナルとか、いろいろなパターンの変形をしてまいります。  そういう者たちに対して法的に、裁判所の例えば街宣禁止の仮処分をとるとか、いろいろな意味での違法行為法律を使って、裁判所を利用しながら食いとめていく、あわせて、警察とも密接な関係を持って具体的な暴力行使に対抗していく、こういう弁護士たちでございまして、最近では相当人数もふえてきているというのが現状でございます。
  98. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 続けて、久保利参考人に少し伺いますけれども、確かに、警察との協力を密接に行っているということは、警察当局あるいは弁護士会当局なんかに聞きますとよくあるんですが、弁護士さんに聞きますと、どうも頑張っても警察が協力してくれない、いわゆる民事絡みだからだめだとか、それで所轄の警察に行きますと、いや、本部と連絡しなければ私の判断ではできないとか、そういうことでなかなか協力してもらえないという声を聞きますけれども、参考人立場から、そういう点についてはどういうふうにお考えでしょう。
  99. 久保利英明

    ○久保利参考人 現実的な問題として、警察官の数といいますか、量といいますか、これがまず不足しているということが一つあります。  それから、民事関係については、警察官の方々の知識といいますか、対応する能力といいますか、率直に申し上げて詳しくないのですね。したがって、殴られたらおいでというような、傷害行為になったときにはおれのものだけれども、民事関係だったときには、ちょっと弁護士さん、まだ頑張っていてよというような感じが確かにないではなかったのです。  ただ、最近、特に住専債権の管理機構等々で中坊先生が動き始めたあたりから、警察当局は民事介入だからということで身を引くことはしない、民事事件だからといって引かない、刑事的側面があるのであれば仮に中心が民事的なものであっても積極的に応援しましょうということで、最近はかなり警察当局もフットワークがよくなってきているという印象を持っておりますし、さらにさらにフットワークをよくして動いていただきたいというふうに私からも念じる次第でございます。
  100. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 お二人の先生にそれぞれお聞きしたいのですけれども、紺谷先生もいろいろなところで、株主訴訟抑止力に非常によく効果があるんだということをお書きになっておりますけれども、今、経済界の中では、株主訴訟はちょっと濫用され過ぎるのではないか、だから制限する必要があるという意見や動きがあると思いますけれども、先生はそれについて、株主訴訟の意義と、それからそういう動きについて、どうお考えになるのか。これはお二人の先生にそれぞれお聞きしたいと思います。どちらからでも。
  101. 久保利英明

    ○久保利参考人 法律問題ですので、まず法律的な側面の方から私から申し上げます。  先生おっしゃるとおり、抑止的な効果は大変強いと思います。  私としては、代表訴訟は今やっとうまく回り始めたのではないか。もちろん濫用する悪意の者もおります。しかし、少なくとも大会社における経営判断作用については、すべての判決がその経営判断を是とするという形で、経営判断の問題で上場会社の役員を負かしたケースはないわけです。むしろ、この総会屋問題のように違法行為を行って会社のお金を他へ流出させたというようなケースについては、これはもう死屍累々でありまして、たくさんの原告勝訴事件がございます。  私は、そういうことによって、違法行為というのはペイしないというふうに、会社の役員がみずからペイしないということを自分の財布の問題として理解をしていただくというのが違法行為をやめるには一番いい方法ではないだろうか。そのためには、株主代表訴訟は今程度の状況で当面推移を見るということでよろしいのではないか。  少なくとも、これをさまざまな形で起こしにくくしていくということはかえって別の影響というのが出てくる危険があるように思いまして、私は、もう少し温かく現状で見ていきたい。もし担保提供命令とかそういうものが非常に厳しくなり過ぎて原告が起こせない、あるいは逆に非常に緩くなり過ぎてどうにも濫訴が防げないという状況が出たときにもう一遍考えればいいのではないか、かように考えております。
  102. 紺谷典子

    ○紺谷参考人 私は、既にして濫訴の気配が見えていると思っております。八千二百円でできる、しかも要求金額は無制限であるということでございまして、それは、今まで会社の役員、監査役の方たちにとってはゲーム途中のルールの変更に等しいのですね。そこまで要求されるとは知らずに役員になられていた方たちも多いわけでございまして、しかも、それを援助するようなほかのインフラが整備されていないわけですね。ですから、やはり弁護士さんの売名行為とかさまざまな、むしろ総会屋がそれを悪用するとか、そういう気配というのも一部とはいえ出てきていたわけでございまして、ある程度制限するというのは必要であったと思います。  特にアメリカにおきましても株主代表訴訟は、訴えられている当該役員を除いて、残りの人たち会社にとってプラスかマイナスかということを議論して、社外取締役も含めてですけれども、それでゴーサインが出て初めて訴訟が立件されるんですね。日本の場合にはそういうような歯どめというのが監査役しかございませんで、監査役がほとんど機能しないという状態では、本当にそれが会社全体の利益なのかどうなのかという疑問が生じてきてしまうわけでございます。  ですから、逆に、株主代表訴訟が余りにも乱発されることによって役員の皆さんが萎縮していって、それで企業経営がかえって非効率にされるという問題も一方で考えておかなくてはいけないと思いますので、やはりどんな制度もプラスの面とマイナスの面があって、どこで日本の現状を考えて折り合いをつけていくか、そういう非常に現実的な問題として処理していただきたいと思っております。
  103. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 ありがとうございました。終わります。両参考人、どうもありがとうございました。
  104. 笹川堯

  105. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  久保利参考人と紺谷参考人には、総会屋、暴力団根絶のために大変貴重な御意見、ありがとうございました。  一昨日も質疑がありまして、私も質問に立ったのですが、なぜ日本では企業総会屋、暴力団との癒着が断ち切れないのか、どうしたら癒着を断ち切ることができるのか、その根本問題が突きつけられてきているのではないかと思うのです。いろいろマスコミも挙げて私は指摘したのですが、政官業の癒着を断ち切るのを基本にして、私、個人的には三つあるのじゃないかと。  一つは、何といっても企業トップの決意だ。暴力団、総会屋を断ち切る決意。それを倫理という言葉を使っているのかどうかわかりませんが、使ってもいいのかな。二つは、警察、検察の徹底した取り締まり。これは本罰則強化もそれに資するのじゃないか。そしてもう一つは、制度上のいろいろな欠陥、これを是正する。  私はそこで取り上げたのですが、やはり日本、やみ社会ですから、これは。やみ社会を断ち切るにはやはり公明正大にすることと情報を徹底的に開示することではないかということで幾つか質問させていただいたのですが、その質問で私取り上げたのは、八一年の商法改正のときに利益供与罪が導入されて、それは結構だったのですが、あの商法改正では逆に企業のディスクロージャーについては後退がされたという点を指摘いたしました。  最も大きな問題として、私は、その二年前に法務省の民事局が要綱をつくっておりまして、こういう要綱をつくったのですね。営業報告書、今は業務報告書、これに企業が無償で渡した金品、物品は全部明らかにする。総額を明らかにするだけではなくて、法務省令によって、個別の無償供与を全部明らかにする。どこの総会屋幾ら、いつ渡したのか、それをやるべきだと、法務省は一応案を出したのですが、それがつぶされてしまったのですね、いろいろな理由で。寄附金を表に出すのはいろいろまずいということもあったんでしょう。私は、あの時点でそういうディスクロージャーが徹底して明らかにされる法制ができれば、総会屋幾ら金が流れたか全部表に出るわけですから、総会屋存在する余地がなくなっていたんじゃないかということまで言いました。  そういう面で、お二人の参考人に、やはり公明正大な、透明性の高い日本企業社会をつくるというのがこういうやみ社会を一掃する一番根本じゃないかと思って、皆さんの御意見をお聞きしたい。  先ほど久保利参考人からいただきました「法化社会日本が変わる」、ちょっとつらつら読んでいたのですが、そのしょっぱなに、「官僚に与えられた権限を市民に取り戻す。このキーワードは「情報開示」と「自己責任」だ。」という御指摘があります。また、「企業活動や経営内容についての情報開示をすることが当然、要求される」「経済団体が企業の行動憲章をつくって法令社会的ルール尊重の誓約をしても、贈収賄や談合、ヤミカルテルが跡を絶たない。」こういうのを一掃するために「法制の整備と司法機能の充実」と。大変共鳴するところがあるわけであります。  そういう企業のディスクロージャーについて久保利参考人の御意見をお聞きしたいのと、紺谷参考人におかれましては、先ほど、村社会日本の特異な社会の風土をお話しになりました。こういうディスクローズの問題で、日本企業社会と欧米の企業社会において根本的なところで違っているのかどうなのか、教えていただきたいと思います。
  106. 久保利英明

    ○久保利参考人 今木島先生御指摘の問題でございますが、日本社会というのは本当にディスクロージャーがない社会でございます。最も透明性がたっとばれるべき司法の社会でもこれがないわけですね。  例えばアメリカでは、バーといいますけれども、弁護士資格試験に落ちますと、おれの試験答案見せてくれと言って、その試験答案を見せて、これは採点の方が間違いだと言って裁判所にクレームを言って、それでその結果通った人もいるというような公明性があるのに、日本では、最も透明であるはずの司法試験においても、今行われている丙案というのがございますけれども、自分が丙案で受かったのやら、その合格枠制の部分で入ったのやらそうでないのやらわからぬというような状況でありまして、まして何点でどうなったのかということも、正確な点数は教えてもらえない。もちろん、答案を見るなんてとんでもない。最も透明性の高いはずの司法がこの状態でございますから、それ以外の分野が全く真っ暗やみであることは間違いないところだと私も思います。  したがって、ディスクロージャーを進めるというのは大変必要だと思いますけれども、今の日本の、今先生御指摘の八一年改正のときの状況でございますが、結果的には、附属明細書の販管費の明細の部分で、無償の利益供与があった場合にはそれを監査役が発見しやすいように工夫をして書きなさいという条項がついたわけでありまして、具体的に一つ一つ、全部その無償の利益供与を掲げろということには確かになりませんでした。  そういうものがもしできていれば総会屋に対する利益供与は防げたのかということになりますと、これはなかなか、仮定の問題でございますから私にも確言はできませんけれども、ある意味でいいますと、ディスクロージャーをしなきゃならないというふうになってしまえば、先ほど先生方から御質問がありました、ディスクロージャーをされたら怖いから、秘密が守りたいから利益供与をするということはもうなくなるわけですね。ですから、いやでも何でもとにかくディスクロージャーをしちやうんだというふうに強制してしまった方が、やみの部分を隠そうとするインセンティブがなくなってくるという点において私は非常にプラスなのだろうと思います。  ただ、実は八一年改正のときに、総会屋に対する利益供与の禁止ということと同時に、取締役監査役株主総会での説明義務というのがセットで立法されました。この説明義務が逆に今度は怖くて怖くて、説明義務が決められてしまったので、総会屋から厳しい質問を受けたならば、これをみんな言わなければいけないのではないか、それは大変だというので、やはり総会屋にお金を払おうという動きがあったというふうに理解をしております。  したがって、その意味では、実はあの立法は、まず総会屋をたたきつぶしてしまって、その後でディスクロージャーをすべき、そういう説明義務というのを時間差攻撃をすべきだったのではないかという意見もあるくらいであります。  したがって、どっちが先なのか。まずディスクロージャーさせてしまえば、どうせわかっちゃったことだから総会屋利益供与はしないだろうという考え方もありますし、その逆もあり得るということでございまして、私としては日本が一刻も早く透明性のある国になってほしいと思いますが、今申し上げたような日本の司法の不透明な状況を考えてみると、果たしてそれを法律上ずばっと、ディスクローズをするんだということが言えるのだろうか。国家公務員の問題についても、民事訴訟法の改正の際に、次の情報公開法に譲るという形で附則で後送りになってしまいましたし、これをやるためには、単純に企業にだけディスクロージャーを求めるのではなくて、行政も司法もそれを行っていくということがないと国民的な賛意が得られないのではないだろうか。  一介の弁護士の身で、先生方を前に大変僭越なことを申し上げますけれども、そういう国民に受け入れられるような素地をどうしたらつくっていけるかということが大事なのではないか。しかし私は、原則としてもっと透明性の高い、ディスクローズのある国にならなければこのやみ社会は防げないということだけは信じております。  以上でございます。
  107. 紺谷典子

    ○紺谷参考人 今、久保利参考人がおっしゃいましたように、ディスクロージャーというのは一番基本的な大事な問題であろうと思っております。どうしてかといいますと、情報を公開いたしますと、当然それに付随して説明責任というのが生まれるからですね。ですから、説明できないことはできなくなるということでございまして、ディスクロージャーはすべての基本であると思っております。  ですけれども、ただ単に情報公開すればいいというものではございませんで、例えば情報公開、ディスクローズしていても、会計監査や何かで粉飾決算が発見されずにいる。仮に粉飾決算が行われたとしてもそれに対して告発が行われないという状況が、例えば銀行の倒産や何かについても数々起きているわけでございますけれども、ただ単に情報公開を求めるだけではなくて、それのチェックシステムと、それから粉飾があった場合の罰則というのを、きちっきちっと告発していかないと何の意味もないということがあり得ると思います。  それから最近、会社関係していえば、国際会計基準というような動きがあるのでございますけれども、私は表面的な議論というのが余りにも多いかなと思いますのは、今、むしろ市場は専門家の時代なんですね。ですから、会計報告をわかりやすくするために統一されたルールでというのは、非常にわかりやすくてそのとおりかなと思うのですけれども、国情が違うわけでございますから、専門家は、例えばこれはアメリカの会計のやり方、日本の会計のやり方という、相違がわかる人たちが見ているのですね。それを一般的に、個人投資家もいるんだからわかりやすい会計報告というような議論に一足飛びになってしまっているのですけれども、私は、専門家向けと、それから例えばアナリスト情報とか情報の集約とかわかりやすい加工を施した個人投資家向けと、両方考えなくてはいけないんじゃないかと思うのですね。それをごちゃまぜにした議論があるかな。  それから、ディスクロージャーに関しましては、例えば大和銀行事件で、アメリカにきちっと大蔵省が報告していなかったのは恥ずかしい、ディスクロージャーのおくれだと言われましたけれども、さんざんディスクロージャーと言われながら、あのとき全く指摘されないことがあった。それは、大和銀行というのはどこの国の銀行かということです。つまり、日本の銀行であって預金者も投資家も日本人であるにもかかわらず、預金者、投資家に対してディスクロージャーが行われなかったという問題点を指摘した方がどなたもいらっしゃらなかったのですね。ですから、ディスクロージャー論議というのもかなり表面をなぞっている部分がございますので、より現実的な問題としてさらに深くお考えいただければと存じます。
  108. 木島日出夫

    ○木島委員 もう時間がありませんから、もう一問だけ久保利参考人にお聞きしたいのですが、先ほど参考人から、日本の現在の監査制度が実質機能していないというお話がありました。実は、午前中も前田参考人から詳しくお話がありまして、法制度としてはもう最高の制度だ、しかし運用がだめなんだ、この今の監査制度企業トップから丸ごと違法なことが行われたときには機能しようがないんだというお話がありました。  そこで、一言で、じゃ今の日本監査制度を、外部監査も含めまして本当に機能させるためにはどうすべきなのか、御提言をいただきたいと思うのです。
  109. 久保利英明

    ○久保利参考人 一つは人事です。監査役の候補者、これを総会にかけて決めますけれども、この選任権を、私は監査役会に与えたらいいというふうに思います。現状は代表取締役が鉛筆なめなめ決めておりますので、これでは人事権を握られていて、監査役がしっかりしたことを言えるはずがない。これが一点。  あとは量の問題でございまして、法律上は取締役も三名以上、監査役も三名以上です。しかるに、取締役は三十人も四十人もいる。監査役はせいぜい三人か四人です。これで監査を十分しろと言ってもかわいそうです。少なくとも取締役と同人数ぐらいの監査役が要る。逆に、そうなると取締役も減らそうということになると思いますけれども、取締役十名、監査役十名なら立派な監査役会が機能するのではないだろうか。報酬も、取締役の総枠と監査役会の総枠は同額にする。  これで日本的な監査システムの、現実、日本法律上は並列だと言っているのですけれども、実際は全然並列じゃないわけで、これを並列にするためには、今のようなアイデアを豊富に生かさなければとてもそうならないだろうというふうに思っておりますし、それをやればかなり変わってくるというふうに私は監査役会のために考えております。日本の将来のためにも、これは一番いい方法だと思います。  これができなければもう監査役制度は少しあきらめて、それこそアメリカのような取締役会一本制度にして、ここへ社外取締役をたくさん入れていくというシステムに変えなければどうもだめなのかもしれないとさえ思っております。  以上でございます。
  110. 木島日出夫

    ○木島委員 ありがとうございます。終わります。
  111. 笹川堯

  112. 保坂展人

    ○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  まず紺谷参考人にお伺いをしたいのですけれども、先ほどの御意見、御説の中でいわゆる企業の問題が言われていますけれども、もちろん総会屋の跳梁ばっこもありますが、監督官庁、行政の怠慢ということを御指摘をされました。大蔵省がまさに何をしてきたのかという問題だったのですけれども。  一昨日この場で、夕方だったのですが、大蔵省の秘書課長に、野村、一勧と、そして昨年の田谷・中島事件というのがあり、大きな衝撃を与えている、我々から見ればまさに収賄そのものということが起きたんじゃないかというふうに思うのだけれども、大蔵省としてはどう反省しているのかと言うと、田谷氏については、本人は既に退官していて省内の調査にかける考えはありません、こうおっしゃる。  さらに、第一勧銀のこの小池、総会屋の問題、こう言われながら、ことしの七月でしょうか、大蔵検査時に接待があったということが明るみに出ているわけですね。これだけ出ながら、全体的な調査をし、そして公的な報告を、どこの企業でも不祥事があれば作成するわけですけれども、これを提出しないのかというふうに問いただしたところ、全体を調査してその報告を作成するということについては消極的な考えでおります、こう答えているのですね。  その点について、まず、社会全体のルールということを再構築していくこの時期に、そしてこの法案審議の中でこういう発言があるというのは許しがたいと私は思っているのですが、御意見を伺いたいと思います。
  113. 紺谷典子

    ○紺谷参考人 厚生省では松村さんが不作為の罪で逮捕されておしまいになりましたけれども、大蔵省にも数々の不作為の罪があったと私は思っております。  今おっしゃったように、一勧問題の検査に当たりましてはそういう接待疑惑というのがあった。それだけではなくて、東京新聞の報じたところによりますと、いつ検査に入るのかのみならず、どこを重点的にやるのか、今回は株式融資関連を重点的にやるということを一勧側はリークを受けておりまして、だから小池の分を事前に隠せたという報道がございました。それに関しても、大蔵省は一言の弁解もせずノーコメントのまま、あれはうそだと言っているにとどまっているわけですね。そういう状態というのは何なのかな。検査というのは税金を使ってやるものであるにもかかわらず、大蔵省が堂々と、紳士協定でやっている、相手が出してきたものを信じるしかない。じゃ、何のための検査なのかなということになってしまうわけでございます。  特に、最近金融ビッグバンということが日程に上がってきておりますけれども、外資系に関しては規制が非常に甘いだけではなくて、どうしてかといいますと、法的根拠のない行政指導だらけだからでございます。アメリカから文句を言われたら反論できないものですから、国内の銀行、証券会社、保険に対しては数々の無用な規制をしているにもかかわらず、それは一切外資系には及んでいないのですね。  それだけではなくて、検査がほとんど行われていないのです。不正行為が何にも見張られていないのですね。現に九二年の株価暴落に際しては、外資系の証券会社が株価操作を行って兆とつくかもしれないような巨額の資金を稼いだと言われているのでございますけれども、そういうものに関しても大蔵省は何ら検査に入っていないわけでございます。  今までは、金融検査にしろ証券検査にしろ、ノンキャリアの一部の方に非常にベテランの方がいらっしゃいまして、眼光紙背に徹するという形で摘発なさってきたのですけれども、今はデリバティブズとかあるいは英語の帳簿をどうやって見るのかとか、そういう問題が生じまして、外資系は野放し状態だそうでございます。  そうであるにもかかわらず、専門家が行かなくてはという理由で金融監督庁を大蔵省別館とも言える合同四号庁舎に入れ、九割の職員が大蔵省から行くという状態でございますので、非常に危ないかなと思っております。  ですから、大蔵省のさまざまなそういう金融検査に関するこれまでの不手際とか、それからむしろ業界との癒着というような問題に関しては、これから非常に厳しく追及しておかなければ、金融ビッグバンの暁には、日本の資金がどんどんいろいろなルートから逃げ出して、そこからも日本がやせ細るという問題が生じるのではないかと懸念しております。
  114. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、次に久保利さんに伺いたいのですが、今の紺谷参考人に伺ったのと同じこともぜひお答えをいただきたいのですけれども、先ほどの紺谷さんのお話にもあったように、例えば武富士の未公開株を銀行局長というまさに職務権限そのものの当事者が、その後退官してずっと人脈を引きながら受け取っていた。しかも、その方がいたので、その業界がすべて大蔵省の方たちの天下りの、いわゆる各サラ金会社全部入っているわけですね。こういうことが行われて、そして借名口座、これを取り締まってきたはずの大蔵省が、その銀行局長がやっている。あるいは中島事件では、税の知識がなかったというふうなことをぬけぬけと記者会見で言うという、社会の根幹を揺るがすようなことを中央省庁のかなめである大蔵省がやっている。  そしてもう一点なんですけれども、先生、弁護士でいらっしゃいますから、残念なことに、いわゆるやめ検と言われている検察OBの中には、特捜の捜査手法に精通しているという理由で、やみの世界と近いのではないかと見られているような側に立って動かれている方もいる。  要するに、この日本の非常に根深い腐敗、そして総会屋もその本当に一部だと思うのですが、そこにメスを入れていくために、先生の御見解と、一方策ですか、これを伺いたいと思うのです。
  115. 久保利英明

    ○久保利参考人 今御指摘のいろいろ問題、私、すべての事件について真実がどうであるかということはわかりませんので、一般論になってしまうかもしれませんけれども、一つは、やはり日本の国のキャッチアップ体制というのが戦後五十年続いてきて、その中で非常に効率的に機能してきた。その最も効率的に機能してきた部分が、今逆に、長所が短所になってきている。そういう時代的な変革のときに来ているんだろう。その意味で、今まで信頼感を得て、日本の役所はすごいというふうに世界じゅうから言われてきた役所にも金属疲労が出てきている、これは否めない事実だろうと思います。  今御指摘のやめ検問題でございますけれども、やめ検であろうと何であろうと、弁護士になった以上は弁護士でありまして、弁護士としての職務を行うほかないわけです。もとの古巣で本当にそういう情報力を得ていたのであれば、それは逆に、被疑者になる人民、国民の側で活躍をするというのは、ある意味では、通り一遍の一般論からいえば、逆にふさわしいことかもしれない。違法な捜査をさせないためには、敵の秘密を一番よく知っている人が、こういう違法なやり方をするんだということを知った上でガードに入るというのは、決して悪いことではないと思います。  ただ、問題なのは、その弁護活動が一定の限界を超えたり、あるいは従来のいわば天下り的な発想で、元検察官であるから検察官といかにも談合的な事件解決ができるかのごとき振る舞いをしたりするということは、弁護士としての本来の正しいあり方とは逆行するものだというふうに私、思いますので、それは一つ一つ事件について、それこそ日弁連が懲戒問題も含めて考えていかなければいけないところなんだろう。  検事をやめた人が刑事弁護をやってはいけないというふうにも思いません。それから、そういう人がいい仕事をすることも当然あり得るだろうし、しかしよくない仕事をすることもあり得るだろうという点では、弁護士として同じ列だというふうに理解をしておりますが、これを大蔵省からの天下りのように、弁護士界に検事から裁判官から天下られたのでは、これはたまらないわけでありまして、そういうものではない。  したがって、むしろ私としては、きょう先生方に僭越ながらお配りいたしました「法化社会日本が変わる」という本の中では、早く司法が強くならなければ、暴力団がはびこっているのは弱い司法だからでありまして、裁判所に行くよりもやくざのお兄ちゃんを頼んだ方が早い解決ができるからでありまして、それから警察に頼むよりも総会屋、暴力団に頼んだ方が、ひょっとすると別の暴力団からおどかされたときには役に立つなどという誤解があるからでありまして、これはやはり司法当局が強くならなければいけないということで考えておりますので、今のやめ検問題というのも、強い司法という文脈の中でもう一遍とらえ直してみたいというふうに私も思っているわけでございます。  以上でございます。
  116. 保坂展人

    ○保坂委員 時間になりましたので、終わりますけれども、やはり日本が今大きな転換点に立っている。私も、自分の内申書の問題で訴訟の当事者に十六歳のときになりまして、何と判決が出たのが三十二歳のときでございますから、これは裁判の迅速などという話じゃないわけで、もう当事者利益が全くない。しかし、その中で、ディスクロージャー、情報開示、そして多くのそれこそやめ検の方も、大蔵省の多くの職員もまじめに誠実に仕事をしているのだと思います。ところが、やはりキャリアという、それでエリートと言われる中に、この十年、十五年、巨大な腐敗が巣くってしまった。ここは何としても決壊をしていきたいということを申し添えて、本当にきょうはありがとうございました。終わります。
  117. 笹川堯

    笹川委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  両参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  どうぞ御退席をいただいて結構でございます。(拍手
  118. 笹川堯

    笹川委員長 この際、お諮りいたします。  本日、最高裁判所涌井総務局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  119. 笹川堯

    笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  120. 笹川堯

    笹川委員長 質疑を続行いたします。安倍基雄君。
  121. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 この審議も最終段階に参ったわけでございますけれども、ちょっと話題がおかしいかもしれませんけれども、大臣は世代が古い方ですから、茶柱が立つとおめでたいということを知っておりますね。いかがですか。知っておられたらそれでいい。  何であれがおめでたいのかと私は気にしていましたら、あれは幹のもとの部分の方が重くて、上の部分が軽い。だから、茶柱が立つというのは、もとと先とがきちっとけじめがついているということでおめでたいのだそうですね。  私は、これを言い出しましたのは、何がこの問題の基礎か、何がもとで何が末であるかということがちょっとはっきりしていない点があるのじゃないかと私は思うのです。  一番最初にお伺いしますけれども、昭和五十六年の法改正、あのいわば趣旨は、いわゆるやみの世界の手先である総会屋が基本的に企業からいろいろな資金を吸う、ヒルの口のように。それを防止するという意味で、渡す方の人間をいわば規制しようという意味が基本にあったと思いますけれども、これは間違いございませんか。
  122. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 そういう点が基本的にあるわけでございますが、もう一点、商法の二百九十四条ノ二第一項は、「会社ハ何人ニ対シテモ株主ノ権利ノ行使二関シ財産上ノ利益ヲ供与スルコトヲ得ズ」ということで、その背景には、会社の役職員が会社の計算におきましていわゆる総会屋に利益を供与する行為を処罰の対象とするということで四百九十七条に規定されたことでございまして、その点は……(安倍(基)委員「簡単でいいです」と呼ぶ)はい。会社財産の不当な支出により株主権利行使の適正が阻害されることを防止し、あわせて会社運営の健全性を保持しようという趣旨もあったと考えられております。
  123. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いろいろあれはございましょうけれども、暴力団に金が流れることを防ごうという趣旨が基本にあったと思います。  私はここで聞きたいのは、参考人もいろいろ言っていましたけれども、今残っている総会屋というのは、大分自然淘汰されて、暴力団に関係の深い者が生き残っているというぐあいにも聞いております。そうすると、私が非常に問題としていますのは、過去において暴力団が行ったであろうと想定される幾つかの事件がございます。富士フイルムの専務の殺害事件、あるいは住友銀行の名古屋支店長、あるいは阪和銀行の元副頭取ですか。たしか、私の理解によりますと、富士フイルムの元専務は昔、総務部長であった。周囲の状況から判断して、これら殺害事件というものは、被疑者が捕まっているものがほとんどなくて、捕まらないとその意味がはっきりわからないと言いますけれども、やはり暴力団絡みのものであろうと推定される状況は大きいと思いますけれども、これは警察庁の判断を聞きたいと思います。
  124. 佐藤英彦

    ○佐藤(英)政府委員 今お尋ねの事件につきましては、富士写真フイルム事件につきましては、被疑者、実行犯二名、指示者一名を逮捕いたしております。これらは暴力団員でございました。残りの事件については、現在捜査中でございます。
  125. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 基本的には、こういった事件というのはほとんど迷宮入りになっているんです。この事実を踏まえたときに、いわば、企業トップもしくはそれに関連する者が、企業防衛の立場からある程度総会屋に譲歩しようという現象の起こるのは当然じゃないか。私は彼らを別に弁護しているわけではございませんけれども、これほど広く、例えば日立や三菱の、割と健全と思われた会社さえもが総会屋に対して一定のいわば保険料みたいなものを払っておる。恐らくこれは、例えば数百万円とか百万円とかいうオーダーでいけば、ほとんどの企業が私は関係していると思います。これは、一つ一つ引き出せば切りがないわけですね。  前回、法務大臣は私の質問に対して、企業は毅然たる態度をとればよろしいじゃないかと言いますけれども、もし企業が毅然たる態度をとって、そのトップもしくはいわば関係者が殺害されたときに、一体、国はどういう責任をとるんですか。それからまた、警察庁は彼らを防御できるんですか。その二点をお聞きしたいと思います。もちろん、モラルの問題である、毅然たる態度と言いますけれども、彼らが殺されたときに、一体、だれがどういう責任をとるんですか。
  126. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 お話がございましたように、そしてまた、るるお話がございました事件、これで、検挙した事件もあるけれどもまだ未検挙の事件が多い、これは御指摘のとおりでございまして、大変遺憾で残念なことだと思います。私どもは法秩序を維持するという立場でございますから、草の根を分けてでも、そして、あるいは若干時間がかかっても犯人を検挙するという姿勢が基本でなくちゃなりませんし、またそういうようなつもりでやっているわけでございます。  実は、昨日も経団連の会長さん初め企業の団体の幹部の方にお集まりいただきまして、朝、時間が割に早かったわけでございますが、官邸でお話しいたしました。そういうふうな際にも、企業側から、今お話しのようなことに類するような御意見も出ました。国家公安委員長は、いろいろ具体的に御相談くださいと、そして、警察としては窓口を広げて一万人体制でやっておりますというふうなお話がございました。  今おっしゃられましたように、じゃ、どういう責任をとるかどうかというふうな問題の御議論でございますが、私どもとしては、もちろん先ほどからお話ししておりますように、検挙を全力挙げぬといけませんが、だからといって総会屋の存続というものをいつまでもほっておいていいというわけにはいきません。そういうような形でいきますと、ずるずるずるずるなっちゃって、結局解決することができない。どこかで線を引かなくちゃいけない。  そういうふうなことで、企業にも御協力をいただくし、それから企業自身も、今、刑事局長からお話がございましたように、あのような、きちっと企業側にも責任があるという規定もあるわけでございまして、先日来申し上げておりますように、それぞれのつかさつかさが総力を挙げてこの問題に対処していかなければならない、このように考えております。
  127. 佐藤英彦

    ○佐藤(英)政府委員 企業に対する保護についてのお尋ねでございますけれども、私どもは、企業の方から警察の保護を要するということで要請がありました場合には、その相談に応じておりまして、現在、各会社について申し上げますと、三百六十名について保護活動を実施中でございます。
  128. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 そういう暴力団というのは、時間の期限はないんですから、また警備が緩んだころに一発やればそれで済むんです。未来永劫、果たして警察が彼らを守り通せるかと。非常に問題になるんです。  私は、今回の法改正で、いわば刑を、特に渡す方にも科すると。もともとは、要求する、威迫によって強要する罪の方を先につくるべきだったのです、前の改正のときに。それをつくらないでおいて、渡す方ばかりを責めておる。慌てふためいて、今現在、脅迫する側をつくっているという状況ですけれども。実際そうですね。しかし、この渡す方についても、要するにもらったと同じ刑にしないとバランスがとれないといって、我々の同僚委員が、通常のバランスからいって、まあ渡す方は一年が限度だなという議論もされました、福岡委員が。事実、この基礎にはやはりどうしても脅迫があるんですよ。だから、渡す方ともらう方と全く同列に扱って、それでなくちゃバランスがとれないというのはおかしいのです、もともと。  私は、この問題について、法制審議会を通過させたかどうかと、前の議員も話されましたけれども。法務省というのは、すべていろいろな案件を法制審議会を通過せにゃいかぬという話をしてきました。しかし、この案件については、審議会を通過していないらしいと。では、過去において法制審議会をジャンプさせた案件、しかもその問題について、私は少なくとも、刑を延ばしたり、ふやしたり、新設したりする、国民の本当に基本的な権利に関係するものについては、やはりプロの意見を十分考えなければいかぬのだ、しかも過去における刑のバランスをよく考えなければいかぬと。  なぜ、これは法制審議会をパスさせたのか。過去においてそういう例が何があるのかということを、これは法務大臣、御存じですか。
  129. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 詳しくは刑事局長なり民事局長から説明をさせますが、私の承知しているところでは、例のダッカのハイジャック事件等々がございまして、緊急にあれに対応する法律の整備が必要であるというふうなことでたしかやった記憶がございますが、詳しくは刑事局長から答弁させます。
  130. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 例えば刑罰規定改正を含む法改正につきまして、ただいま大臣から申し上げましたように、昭和五十二年、法律第八十二号によります航空機の強取等の処罰に関する法律の一部改正の例がございます。  その要点は、いわゆるハイジャックの「罪を犯した者が、当該航空機内にある者を人質にして、第三者に対し、義務のない行為をすること又は権利を行わないことを要求したときは、無期又は十年以上の懲役に処する。」という規定を加えたものがございます。
  131. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 ハイジャックのときというのはある程度異常事態でございましょうけれども。  もう一つは、今の関連で、今度、渡した者の刑をもらった者の刑とほとんど同じにしたということについて、威迫に伴うものは別として、三年以下の懲役、一緒にしたのですね。一般的に、これは必ずこの背後には大抵威迫があるんですよね、何らかの形で。それを両方とも三年にしたというのは、この間、福岡委員が、収賄罪において贈賄罪との格差があるじゃないかという話もしました。それぞれ守られる法益は違うと思いますけれども、このバランスをとるという感覚そのものが非常に解せない。  そういった問題について専門家の意見も十分聞いたのですか。私が聞いていますと、何か商法部会ですか、それが報告をしたと言っていますけれども、法制審議会の審議というのはもっともっと何回も繰り返してやるべき問題ですよね。これについて私は、何で法務省がそうやってバランスをとったという形で同じにしたかということがわからないのです。これは一言でお答えください。
  132. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 四百九十七条におきます供与する側とされる側について、法定刑は、当初から六月以下ということで同じだったわけでございます。  この点につきましては、先ほど御説明申し上げましたとおり、法の趣旨は、会社の役職員におきまして、いわゆる総会屋を利用したり、あるいはこれを必要悪であるという立場上やむを得ないなどとして安易に利益供与に及ぶことこそ、法に違反していわゆる総会屋会社との癒着関係を継続させる行為として非難されなければならないのであって、このような会社の役職員をも処罰の対象といたさなければ、いわゆる総会屋排除の目的は達しがたいとされたものと考えるわけです。  また、会社側が、いわゆる総会屋を利用いたしまして、その経営上の問題点や失態を隠ぺいしようとするような場合は決して少なくございません。このような場合のいわゆる総会屋会社側との関係は、むしろ贈収賄の収賄者と贈賄者の関係に類するものでございまして、必ずしもすべての場合に、恐喝の加害者と被害者との関係とは類似のものとは考えられない面もあるわけでございます。
  133. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 一般的に、やみの世界に対する恐怖がなければ、こんなことはないんですよ。だから、急を要するのは恐怖を取り除くことであって、刑を重くすることじゃないんですよ。刑を重くするなら、恐怖が存続する限り、必ず裏の世界に行きます。表に出しません。今でこそ、会社に行けば帳簿で簡単にわかつちゃうけれども、必ず彼らは隠しますよ。やはり、社会というものは、単に刑を重くすることによってこういうのは防止できない、本当の意味で恐怖感をなくさせることが本当の意味の解決なんですね。この点、今度の法制がいかに渡す者も同罪だということの考え方が、私は行き過ぎじゃないかと。  それからまた、これは警察庁に聞きたいと思いますけれども、別に細かいものを見逃してはいないけれども、総会屋に対して例えば年間五十万とか百万とか、そういうのを全部洗い出したらもう至る企業がかかると私は思うのですけれども、これからもやはり同じようになさるおつもりですか。これはむしろ警察庁の最高方針としてお聞きしたいと思います。
  134. 野田健

    ○野田(健)政府委員 企業関係者の不安感を払拭するためにこれらの事件を検挙するということが極めて大事だという認識に立って、全力を挙げているところであります。  一方でまた、暴力団、総会屋等との関係遮断に向けて真摯に努力している企業につきましては、保護対策を含め積極的な支援を行うということにしております。  しかしながら、このような努力をせずに暴力団あるいは総会屋といったものを利用している企業につきましては、これらの者と同様に社会的な非難を受けるものとして厳正に対処しなければならないものと考えております。
  135. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私も、御承知かもしれませんけれども、警察官僚の息子として生まれたわけです。戦後には、特高が本当に袋だたきに遭ったときを成長期に過ごしたわけです。私は特高警察というのはそれなり意味があったと思いますが。ただやはり、権力の行使というか、個人というのは弱いものですから、一番怖いのは警察であり司法なんです。それだけに、やはり行使は慎重でなければならない、悪に対しては徹底的に本当に捕まえていかなきゃいかぬ。現に、もちろん法務大 臣も警察でございますから。  私はこの法案の経緯を見たときに、検挙すべき者を、ここで実は、皆さんにお配りした「アピール」、これはこの間の財革委でも出ましたけれども、私がここに書きましたように、  総会屋あるいは暴力団への利益供与を徹底的に取り締まるのであれば、その反動として生まれる、脅迫、暴力行為から、彼らをガードしてやるという責任を、警察司法当局は果たさなければならない。この責任を全うせずして、商法違反のみを振りかざす資格が当局にあるのであろうか。と私は書いたんです。これは、朝日の「論壇」に出そうと思ったら「論壇」が取り上げなかったから、ちょっと小さな「アピール」になっていますけれども。  まさにここが本質なのであって、私が本末転倒ということを言いますのは、もとは恐怖にあるのであって、これを取り除かないで、ただ罰則強化するという考え方がおかしいんじゃないか。それだけ司法警察というものが恐れられているわけですから、それなりにやはり慎重な対応ということを私は望みたいと思います。  時間もございませんから、その次の少年法についてお話ししたいと思います。  例の酒鬼薔薇事件、いろいろ問題になりました。全体的に見まして、他国との比較におきまして非常に日本の少年法は甘い、しかも、戦前と比較しても非常に甘いと私は思います。  私は、法の立法過程で聞いてみますと、大体、アメリカの当時のいわば教育刑というか犯人を更生させる、特にまだ体が成長期にある者については彼らを守るというような形の法制であった。ところが、欧米においても最近は、少年犯罪の激化からむしろそれを厳しくしてくる、大人の犯罪を行う者については少年といえども大人扱いするという方向に転換していると聞いています。  余り時間もございませんからあれですけれども、一応、戦前の少年法とそれから現在の少年法、ほかの国との比較、ごく簡単に御説明ください。私の時間があと八分しかないから、二、三分でお答えください。
  136. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。  旧少年法のお尋ねでございますが、これは大正十一年に制定されたものでございますが、十八歳未満の者が少年とされておりました。少年事件を処理する機関としては、当時司法省に所属しました行政機関である少年審判所が設置されておりました。  そこで、罪を犯した少年につきましては、まず、検事が刑事裁判所に起訴するか否かを判断いたします。これは検察官先議主義と呼ばれておりました。そして、刑事裁判所に起訴しないこととされた者を少年審判所に送致いたしまして、少年審判所が保護観察や現在の少年院に当たります矯正院などへの送致を含む保護処分に付することとされていた、それが骨格でございます。
  137. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 お話しいたしましたように、諸外国におきましても、今までの少年法が強化されているということは事実でございます。私は、本当に、現在やはり我々が早く手をつけるべきことは、少年法について、もっとこれはある程度、一罰百戒というか、少年だから少年だからというのが果たしていいのだろうか。この点について、法務大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  138. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 現在の少年法は、御承知のとおり、占領中、昭和二十三年にできた法律でございまして、その後、今日まで約五十年近くたっているわけでございますが、今お話しのように、現在の少年法がいいのかどうか、これは大変議論のあるところでございまして、既に先生御承知のとおり、昭和五十二年に法制審が中間答申等を出して、改正したらどうかという意見があったのですが、率直に申し上げまして、法曹三者の中で意見がいませんでした。そして、成立を見ることができなかったわけでございます。  そういうふうなことを踏まえまして、事実解明、真相究明の手続の面なんかにおきましても、具体的に申し上げますと、少年事件につきましては検察官の関与ができないわけでございます。あるいはまた、事件のいわゆる審判、決定が行われましても、それに対する抗告というものが少年の方には認められておりますけれども、事件を送った方には認められていない。それから、普通の殺人の否認事件なんかですと何年もかかるわけでございますが、少年の審判の問題については、いわゆる身柄の拘束ができるのは四週間、しかも、一人の家庭裁判所の裁判官が審判して決定する等々いろいろな問題がございますし、それから、今先生がおっしゃいますような年齢の問題等々いろいろあるだろうと思います。  したがいまして、この問題については、特に、御承知のような大変忌まわしい事件が神戸で起きたというふうなこと等もありまして、私どもそれから最高裁判所それから日弁連、三者でこの問題について本格的に協議しようというふうな機運に相なりまして、そして、近々そういうふうなことについての検討が始まるような段取りと承知いたしておるわけでございます。その辺でどういうふうな議論が行われますか、その検討の推移を見なければなりませんけれども、今私の感じを申し上げましたけれども、当然そういうふうな問題も含めて議論されるものだと思いますし、そして、先生お話しのとおりに、やはり新しい、激動しつつある今日の社会に対応できる少年法というふうなものを検討していかなくてはならない、このように思います。
  139. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 では、質疑の時間も縮まりましたからあれですけれども、日本人というのは忘れっぽいんですよね。私はしつこい方ですからよく覚えているのですけれども、何か、少女を誘拐して、暴行して、一カ月かニカ月監禁した後、殺してコンクリート詰めにしてしまったという事件があったわけですね。ほとんどの者は、時々思い出すけれども忘れてしまう。いじめ殺人というのは、私は、通常の殺人よりも、何というか重い刑にしてもいいとは思っているのです。  今度の酒鬼薔薇事件も、これは少年法という壁に守られていますけれども、これは、最終的に何年先になるかわからぬけれども、外へ出さなければならないときに、当法務委員会に報告される気持ちがあるかないか、お聞きしたいと思います。
  140. 東條伸一郎

    ○東條政府委員 お答え申し上げます。  少年院送致は、少年の健全育成を期し、非行少年の性格の矯正あるいは環境の調整を図るという、いわゆる保護処分の一環として行われているものでございますので、その執行に当たっております私どもも、少年の保護の見地から、そのプライバシーが十分に保たれていることが要請されるという見地で、現行法制のもとで個々の少年の取り扱いについて公表することは現段階ではちょっと難しいのではないか、このように考えております。
  141. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いずれにいたしましても、日本は、加害者の人権、加害者のプライバシー、それは重んじるのですよ。被害者については、本当にプライバシーもなければ、まさにいわば人権もない。これは大問題なんです。私は、少年法の改正も含めて、加害者のプライバシーばかり言わないで、もう少し被害者に対して本当の意味のいわばプライバシーなりなんなりを、しかも、わけのわからぬのに殺されて、家族はどういう気持ちでいるか。加害者なんというのは私は鬼畜に等しいと思っている。そのプライバシーを何で保護する必要があるのか。  私は、そこが、やはりさっきのもとと末という論議と同じですけれども、加害者である総会屋の方よりも、むしろ半ば被害者とも言うべき総務部の連中、彼らは一生懸命会社を守ろうとやったわけですよ。いいとは言いませんよ。しかし、そういうことを考えないで、渡す者と取る者と全く同じだ。今になって初めて威迫を加える。しかも、刑のバランスを本当に十分考えてない。私は、それこそ我が国の、戦後のまずい点ですよ、はっきり言って。  私は、そういった意味で、この二つの問題、やはり似たような感じがあるんじゃないか。加害者ばかりは言うけれども、被害者の方こそ保護すべきところを、まさに同等と扱っているとか、むしろ加害者のプライバシーばかりを考える。私は、こういったことは日本の風潮として、これはマスコミもいけないわけですけれども、そういうことで、どうか、この少年法の改正を含めて、もう少しスタンスを変えていただきたいと思います。  時間が参りましたから、次の質問者に譲ります。
  142. 笹川堯

  143. 若松謙維

    若松委員 新進党の若松謙維でございます。議員になって五年目、法務委員会初の質問でございます。大臣、ひとつよろしくお願いいたします。また、委員長もひとつよろしくお願いいたします。  法務大臣は元警視総監ということで、総会屋関係それなりに手腕もお示しになった実績の方だと思います。  何でこういう事件が次から次へと起きるのか。やはり土壌の問題で、いろいろと二日間かけまして議論を行ってきたところだと思いますけれども、やはり私の認識としては、特に最近、阪和銀行、経営者総会屋の癒着が結局まだある。これは当然、氷山の一角でありまして、確かに平成五年で外部監査役一名の導入。ところが現実は、OB五年間たって、また、おい、戻ってきたか、そういう方々。もしくは主要取引銀行からのいわゆる監査役。こういう現状ですと、実質、機能強化にはなっていない。さらに、今回、罰則強化ということで、トップの意識改革というところですけれども、果たして、この罰則強化だけで構造的な改革には何らメスは入っていないのではないか、そう認識するわけなんです。  ですから、いわゆるコーポレートガバナンス、またこれも定義の問題はあろうかと思いますけれども、構造的に日本企業の、特に経営者の風通しをよくするには今回の改正だけでは不十分だと思いますけれども、大臣、どういう御認識でしょうか。
  144. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 コーポレートガバナンスという言葉が出ましたが、企業不祥事を防止するために、やはり会社業務執行の適正を確保するための制度が重要であると思います。  そういうふうな観点から今までちょっと眺めてみますと、昭和四十九年には、もう先生御承知のとおりに、監査制度充実ということで、監査権を業務執行全般に拡大するとか、あるいは監査役の任期を一年から二年へと延ばす等々の改正をいたしましたし、会計監査人制度商法特例というふうなことで制定されました。  五十六年には、先ほどの改正の問題と同時に、大会社につきましては複数監査役あるいは常勤監査役制度の導入でございますとか、あるいは、平成五年の改正には、監査役の任期が二年から三年になる、あるいは大会社については三人以上にする。それから、監査役会という制度を創設するとか、あるいは社外監査役の創設とか、私どもとしては、法制度の整備についてはいろいろ努力してきていると思いますし、十分企業がそういうふうな制度を使い切っているかどうかなというふうな問題も、問題としてあるのじゃないかなというふうな感じがいたします。  もちろん、お話しのとおり、罰則強化ばかりでいいとは思いませんし、今おっしゃったような意味で、コーポレートガバナンス、企業の管理と申しますか、管理体制の強化といいますか、こういうふうな問題につきましては、常に真剣に検討していくべき問題だ、このように思います。
  145. 若松謙維

    若松委員 そうしますと、継続的な改善は必要と認識しながらもそれなりの改善を行ってきた、そういう御答弁だと思いますけれども、今の、監査役を選任する、先ほど取締役会というお話もありましたけれども、取締役会というのは昭和二十五年に導入されたのですか、いわゆるアメリカの制度として。そのかわり、同じく監査役の業務調査権はなくなってしまった。四十九年には、取締役会は残って、また監査役はその業務監査権が戻ってきた。結局、いわゆる同列の機関があって監査役会取締役へのチェック機能を持たせようといっても、これはもう制度的に同列ではやはりだめなんですよ。  特に、一番の問題は、監査役の選任過程で、監査役もしくは監査役会にどれだけ経営陣からの独立性を担保できるかという、これがないと、幾らその独立性というところにいわゆる確保されたものがないで積み上げしたって、しょせん不備の不備を改善しているわけですから、私は監査役本来のチェック機能は生じないと思いますけれども、そういう点はいかがですか。どうぞ、大臣。
  146. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 会社経営陣と監査役を全く別にしたらどうかというふうな考え方も、考え方としてはないわけではございません。  ただ、今先生御承知のとおりに、監査役の選任というものは株主総会でやるわけでございますね。ただ、その提案権がいわゆる代表取締役にある。だから、代表取締役のお気に入りの者がその監査役になるんじゃないか、したがって従属関係になるんじゃないかというふうな御議論がないわけではないと思いますが、代表取締役というのは、これまた御承知のとおりに、取締役の中から取締役会代表取締役が選任されるわけですし、その取締役自身株主総会で選任されるということになっているわけでございます。ですから、会社の一体的な経営ということから考えれば、やはり、何といいますか、今申し上げましたような制度かなというふうな感じがしないでもございません。  しかしながら、あくまでもこれは株主総会において決められるわけでございますから、幾ら提案されましても、場合によっては反対すればそれは実現しないというふうなこともあるというふうな実態でございますし、社外監査役の導入でございますとかいろいろ監査役の体制の強化というふうな面から、今御質問のような点についても、やはり十分検討するべきではなかろうかなというふうな感じでございます。
  147. 若松謙維

    若松委員 今大臣が株主総会、確かに株主総会で承認するというところですけれども、株主総会意見をもっと取締役に注入するというのですか、そのために代表訴訟制度も、これも商法改正の一環として導入されたのですけれども、これもなかなか日本の土壌で余り使われていないようなのですね。私は、確かに法的にはチャンスは与えられているけれども、使う人が、株主にしろ取締役にしろ、監査役はいろいろ問題はあると思いますけれども、いまいちそういう権利を使っていない、恐らくそういうことをおっしゃっていると思うのですね。それはそれで、そのとおりだと思うのですけれども、やはり私も国会議員ですし、大臣も国会議員ですから。  では、例えば株価、今の株価は一万六千円台をうろうろしていますけれども、これだけの株価低迷というのも、やはりこういった総会屋とかいわゆる一部の経営者の不明朗な、不透明な取引というか裏取引というか、そういった実態というのもやはり株価に反映していると思うのですけれども、大臣、それはどういうお考えですか。
  148. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 なかなか難しい御質問でございますが、そういうふうな側面もあろうかと思います。
  149. 若松謙維

    若松委員 そういうことであれば、やはり日本の国益のためにも、もっと風通しのいいいわゆる経営形態というのですか、そのために、例えば先ほど言った取締役、いわゆる社外取締役というのですか、せっかく取締役経営者を、代表取締役をチェックするというのですけれども、私も仕事は公認会計士をやっていましたから、上場企業の監査をいっぱいやりました、そうすると、取締役会というのは、代表取締役の、常務とか専務のチェック機能じゃなくて、プロモーションの、昇進の受け皿なんですよ。もうそれは大臣もおわかりでしょう。ですから、取締役代表取締役の、取締役のさらにプロモーションの形が代表取締役ですから、身内同士のチェックというのは、これは、まずチェックということを求めることに対しての根本的な不備がありますよね。それは御回意いただけるでしょう。いかがですか、大臣。
  150. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 極めてそれは異例かもしれませんけれども、私の認識によりますと、かつて三越においては取締役代表取締役を、社長を解任されたというふうな事例も、極めてまれですけれども、ないわけじゃございませんし、それは制度上はできるわけでございますから。
  151. 若松謙維

    若松委員 制度的にはできると。でも、今のままでは余り——では、例えば二年後、三年後、こういった総会屋とか非常に不明朗な事件が、今回のトップの形式で本当に変わるのかどうかというときに、これで制度的には十分だということであれば、やはりよくなると確信をお持ちだと思うのですよ。言い切れますか、どうですか。
  152. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 ですから、監査役制度充実だとか社外監査役の導入だとか、そういうふうな問題が出てくるだろうと思うのです。  片や、例えば社外監査役の導入という問題につきましては、資本金五億円以上ですかの大会社、これが今アバウトな数字で申し上げますと、日本に九千社ございますね。そうすると、九千社に少なくとも一人は社外監査役を入れる。そうすると、ほとんどやはり東京、大阪等々に集中していると思いますね。恐らくもう先生御経験で、釈迦に説法でございますけれども、そういうふうな場合に、では、果たして九千人以上の立派な人がすぐ右から左に現在の日本社会情勢の中で得られるかどうかというふうな問題もあると思いますね。  片やまた、監査役の活動の形骸化といいますか、こういうような問題もあるのではなかろうかと思いますし、そういうようなところをいろいろ総合的に検討しながらやはり進めていくべきではなかろうかなというふうに思います。
  153. 若松謙維

    若松委員 大臣もかなり、いろいろとどうしたらいいのか、非常に御苦労されている雰囲気が伝わってまいります。  では、例えば今さっき言った九千人、それなりの人が要ると。でも、先ほど私が指摘しました、やはり監査役会として少なくとも独立性は保たれていなければいけない、それは御同意いただけますよね。それが前提であれば、では、例えばその九千人のうち、会社取締役だった人が五年たってまた監査役で戻ってきた。あとはいわゆる主要銀行からの出向監査役みたいな方、大体ここら辺が多いわけですよ。ですから、監査のプロの例えば公認会計士とか、それは会計監査をやっている方ではないですよ、違ったところとか、また弁護士とか、またどこかの上場会社からぽんと連れてくるという。全く縁がない、その会社と本当に利害関係がない、そういった人で初めて私は監査役としての独立性が確保されると思うのです。そうすると、今の法制度は不備だと思うのですね。やはりこれは直していただきたいと思うのですけれども、大臣どうでしょうか。
  154. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 今先生のおっしゃるようなことは、私は基本的に賛成でございます。そしてまた、そういうような方向に持っていかぬといかぬと思いますし、これはもう当然そうなるべくしてなるのではないかというふうに思います。だから、そういうような形で制度上変えなくてはならぬ問題があるとすれば、これは前向きに当然検討していかなければ、国際社会における日本企業というふうなものは太刀打ちできないのではないかな、このように思います。
  155. 若松謙維

    若松委員 ということは、今の社外監査役にしても、先ほどの五年条項とか、改善の意向がある、そういう理解でよろしいわけですね。
  156. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 私もそのように思います。
  157. 若松謙維

    若松委員 だんだん乗ってきました。  それでは、今度は大会社監査役制度ですけれども、今三人。三人のうち一人だけ純粋に外部、それで二人が元取締役とか。監査役一つのプロモーションというか、定年延長の一環ですから。そうすると、二対一というよりもやはり一対二、少なくとも外部監査役監査役会の過半数を占めなくてはいけないと思うのですけれども、それについてはいかがですか、大臣。ぜひ、ここまで言ったのなら、さらに盛り上げた答弁をお願いします。
  158. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 まあ、その点までにわかに賛成しがたいのですけれども……(若松委員「どうしてですか」と呼ぶ)いや、それは先ほど申し上げましたように、それは方向としては十分考えられることなんですよ。しかし、実際そういうふうなことが現実に可能かどうか。例えば九千人ですよね。先生はたくさんいろいろ御存じのようでございますけれども、私どもの認識では、お一人の方でも数社兼ねたり、何だかんだしてやっともっているようなことですよ。だから、方向として、私はそういうふうな方向日本企業も行くべきだと思いますが、ではすぐ二人と一人を逆さまに逆転していけるかどうかということになりますと、これはちょっと検討しなければならないな、このように思います。
  159. 若松謙維

    若松委員 大臣、いけるのですよ。その発想で法整備を考えられないから、この二日間議論していたのは運用上の問題です、やはりそういう答弁になると思うのです。  だって、監査役みたいな人は声を、はっきり言うというのですか、わあっと言う。橘先生みたいな方ですかね。そういった方というのは、別に兼任してもいいわけでしょう。そういう優秀な、やはり外部監査役に適した人材というのはいますし、私はこれは可能だと思うし、私の体験としても、確信を持ってぜひそれはできると。ただ、それを法でやらせるかやらせないか。実務はもうレディーなんですよ、できるのですよ。これをやれば、かなり取締役陣に対するチェック機能というのは強化されて、それで経営の風通しもよくなって、おお、日本もやるなと。アメリカの企業年金も一兆ドルぐらい日本に来ようか、そういう話になると思うのですけれども、大臣そう思いませんか。どうぞ大臣、せっかくですから。
  160. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 いろいろ私の考え方を申し上げておりますが、その辺のところについて、一応実務的に、専門家が来ておりますので、専門家の意見もちょっと聞いていただきたいと思います、ちなみに。
  161. 森脇勝

    ○森脇政府委員 御案内のとおり、平成五年のときに、大会社について社外監査役制度というのを導入したわけでございます。ただ、そのときの議論といたしましては、社外監査役にもいい面があるけれども、反面デメリットの面もありますよという議論がなされているわけでございます。  いい面といいますのは、今先生御指摘のとおり、社外監査役はしがらみがありませんから客観的な監査を期待することができる、これは非常に重要なメリットであろうというふうに考えます。ただ、社外監査役がぽっと会社へ参りますと、会社業務執行状態というものを原則的には把握できないというデメリット面があるわけでございまして、この点は、この平成五年改正のときには、社内の実情に詳しい社内出身の監査役というものも置いて、それの共同によって行っていこうと。これがないと、社外監査役だけをふやすということになりますと、一方の面が相対的には数として減るということになると、これは監査の形骸化につながるおそれはないかというような議論がなされたところでございます。  したがいまして、この社外監査役をもっと法定して、社外監査役の員数をふやすということについては、なお検討の余地があるのではないかというふうに考えておるところでございます。
  162. 若松謙維

    若松委員 今局長がそういう答弁をされましたけれども、でも、もし有能な社外監査役が過半数いれば、いわゆるコーポレートガバナンスという観点からは非常に日本企業信頼性は高まりますよね。大臣、そうですよね。(森脇政府委員「社内と両方」と呼ぶ)いや、両方なんだけれども。  例えば、外部監査役がある会社を一、二年やりました、それで、その人がほかの外部監査役をやりましたと。その人はプロなんですよ。監査の手法というのは、アプローチをしっかり身につければ、私は一カ月で会社などというのは把握できると思っています。実際そうやっていましたし。  今、ですから、卵が先か鶏が先かの議論になるわけですけれども、法制度で、まさに過半数が外部監査役が必要なんだというところですね。  例えば、きょう大臣がここ一、二年に改善しますと言ったら、きょう実は午前中、監査役協会の方とお会いしたのですけれども、ここは昭和四十数年ごろからずっと研究して、一生懸命監査役経験の方と研究会をやっているのですよ。いるのですよ、そういう人が。それで、私、自分の業種をよいしょするわけではないのですけれども、公認会計士だって、そうやって企業に対して内部的な勧告をしたいという人もいっぱいいます。  ですから、大臣、いかがですか。過半数を、今変えようとするかしないかというときに、日本の土壌においてもコーポレートガバナンスという意味合いは一挙に高まって、私は、海外投資家の日本に対する信頼性というのは高まると思いますよ。決断の答弁を。
  163. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 検討させていただきます。
  164. 若松謙維

    若松委員 同僚議員の漆原委員ですけれども、たしか、使用人がもしミスしたら、それは取締役責任として取締役地位を失わせるべきだと。いわゆる二百五十四条ノ二ですか、ここに何らか条項を追加して、欠格事由を拡大する。これは非常にいい提案だと思うのです。ぜひ考えていただきたいわけです。  では、既存の制度で、もしくはちょっとした工夫で、私はこれは可能ではないかと思うのが、例えば、監査役株主総会に対して、株主それなりに、一年間ずっと業務監査をやっているわけですから、それをいろいろな、例えば監査役の報告書、監査報告書というのも簡単ですよね、適法であると。それだけですよね、二行ぐらいです。ところが、それに至るまでいろいろな勧告事項というか覚書というものがあるわけなんですよ。そういうものを株主に言わせる場を私は提供させるべきだと思うのですけれども、そういう点ではいかがですか。
  165. 吉戒修一

    吉戒説明員 お答え申し上げます。  先生非常にお詳しいということで、いささかちゅうちょするものもございますけれども、御承知のとおり、株主総会におきましては、取締役監査役は、株主の求めに応じまして、会社業務執行あるいは監査の状況につきまして説明するという義務がございます。これを誠実に履行していただければ、会社の状況あるいは監査の状況等につきまして、株主は十分な情報を得ることができるのではないかなというふうに考えております。
  166. 若松謙維

    若松委員 これも、法制度としては問題ないけれども、やはり運用が悪いと。何で機能しないのですかね、この日本制度。もう嫌になってしまいますよ。  では、局長、まだずっと法務省にいられますから。  ここ一、二年間、本当に不祥事が変わらない。不祥事が減るという御理解で今回の罰則強化をしたと思うのですけれども、当然これから課長さん、いや、管理職以上の方ですね、数年以内には局長になると思うのですけれども、ちょっと改めて聞くのですが、本当に今の法制度で十分かどうか。十分ですと言い切ったら、不祥事が全然変わらなければ、十分ではなかったのですね。これはやはり今の課長さんも含めて責任をとってもらうべきですよ。  大臣か局長、ちょっと一言。本当に今のこの法整備で問題ないかどうか。
  167. 森脇勝

    ○森脇政府委員 私も、今回の罰則強化によって今問題にされているような事象が完全になくなるというめどを持っているわけではございません。これは、制度面、それから刑罰の持つ抑止力、それから運用、この三つが重なっていかないと効果を上げ得ない問題だというふうに思っております。  それで、今回この改正国会の御議論を通じても、運用面としてはかなりできているんだ、企業の側でこれをどう使っていくのか、どう魂を入れていくのかという部分がこの議論を通じて企業トップの方々に浸透していくという効果があれば、これは大変大きいのではないかというふうに思っております。  また、それでは法制度面はもう完璧であって、すべての面で改善の余地がないのかというと、これも私はそれだけ自信を持って申し上げているわけではございません。改善の余地というのは常に模索していかなければならないというふうに考えております。
  168. 若松謙維

    若松委員 大変うまい答弁だなと思うのですけれども。  では、大臣、だから、本当にこれで大丈夫かなというのはみんな思っているのです、ここの委員の方も、皆さんも。そこをさらに一歩ブレークスルーして、コーポレートガバナンスなり、風通しをよくするには、やはり社外監査役を過半数にするというのは私は大事だと思うのですけれども、大臣、どうですか。
  169. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 御質問等々いろいろございましたが、まとめて御返事申し上げますと、企業を何とかよくしようということについては、皆さんと私ども同じだと思うのですね。  それで、今度法律をお願いいたしておりまして、罰則強化、これもいろいろ御意見がございますけれども、私どもとしては、五十六年のあの条文を入れて以来、今日の状況を見てみますと、やはり抑止力として不十分だったというふうな点から、ああいうふうにお願いしようということです。それと、先ほど来言われております企業の倫理と申しますか、安倍先生からもいろいろ御指摘ございましたし、私、安倍先生のお父様に大変かわいがられた一人でございますけれども、やはり企業の倫理を徹底しなければならないという問題。それからもう一つは、きょうの先生の御議論ですが、会社の組織論、なかんずく監査役制度の問題。まだほかにもいろいろあると思いますが、やはりこれが相まって、全体として国際社会における日本企業がすばらしく飛躍しなくてはいけないと思います。  そこで、監査役制度につきましては、冒頭私、申し上げましたように、比較的商法改正というのは頻繁に行われまして、いろいろ導入してきているというのも事実です。それから、今民事局長が話しましたように、企業の中によっては、現在の商法も十分使い切っていないという側面も私はあると思います。これは不勉強だと思いますけれども、しかしなおかつ、今御指摘のような問題はやはり新しい流れだと思います。  だから、そういうふうな点を踏まえまして、私どもは常に謙虚に、時代の要請にこたえるべく積極的に検討し、改正すべきところがあれば、これも御協力を得ながらやっていくという姿勢ではなかろうか、このように思います。
  170. 若松謙維

    若松委員 質疑時間が終わりましたので、主張を最後にして終わらせていただきたいと思いますけれども、今ちょうど総会屋がかなり大企業に目をつけているのが、いわゆる役員人事、この裏のごたごた。ここら辺でいろいろ攻撃材料を持っちゃう。ですから、少なくとも、取締役の推薦ですか、出るわけですけれども、それを監査役に同意なり承認なりというものを持たせれば、それだけで風通しがよくなりますし、何か総会屋から言われたときに、うちはそういうことはない、ちゃんと監査役の同意を得ている、そういうものがあるわけなんで、私は、もっと監査役取締役の人事権について関与させるべきだと思います。ぜひ、それを検討していただきたい。  あわせて、くどいようですけれども、ぜひ、コーポレートガバナンス、太田先生いらっしゃればもっといいのですけれども、非常に研究されていて、私どもも今議員間で勉強していますし、ぜひ一緒に、大臣、このコーポレートガバナンスの向上のためにともに働かせていただきたいと思います。よろしくお願いします。ありがとうございました。
  171. 笹川堯

    笹川委員長 北村哲男君。
  172. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 民主党の北村でございますが、 前回に引き続いて質問をさせていただきたいと思います。  まず、証券取引等監視委員会は来ておられますか。  今、政府は、総力を挙げて日本社会をやみ社会から守ろうとして、特にその代表である総会屋を根絶しようということで種々の方策をしております。  九月五日に、いわゆる総会屋対策のための関係閣僚会議の申し合わせをして、これはもう経済界あるいは警察、そのほかあらゆるところに対して協力を求め、そして新しい施策を講じようとしておるわけです。その中に「銀行、証券会社に対するより実効性のある厳正な検査等の確保」という項目がありまして、そしてそこで「証券取引等監視委員会は、体制整備等を図り、引き続き厳正な市場監視に努める。」という項目があります。  この問題につきまして、私は、午後に参考人にお見えになった紺谷典子参考人にお話を聞きましたところ、今回の証券・金融関係について最も責任のあるのは監視委員会が問題であるというお話をされました。すなわち、証券監視委員会が迅速かつ適切なる措置をとらなかったということは大きな問題ではないかというふうなことを言われました。たしか、九一年に野村問題等に端を発して証券スキャンダルが起きたときに、アメリカのSECに見習って、証券業界を監視するためにこの委員会ができたはずなのに、数年たってもあのときの補てん問題なんかちっとも直らなくて、ずっと温存しておって今回発覚したというか、表に出たというのは、五年間もこの証券監視委員会がありながらその機能を発揮してこなかったというふうにも言えなくもないという感じがするわけです。  そこで、証券委員会に対してお聞きしたいのは、「体制整備等を図り、引き続き厳正な市場監視に努める。」というふうにありますけれども、総会屋対策のためにどのような役割を果たし、具体的にどのような体制整備を図ろうとしておられるのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  173. 滝本豊水

    ○滝本説明員 証券取引等監視委員会は、証券会社に対する検査、日常的な市場監視及び犯則事件の調査などの活動を通じまして、証券市場の公正性の確保を図ることがその責務であると認識しております。  大手証券会社による一連のいわゆる総会屋に対する損失補てん事件につきましては、証券取引等監視委員会が、日常的な市場監視活動の中でその端緒を把握し、調査を行った結果、告発に至ったということでございます。  証券取引等監視委員会といたしましては、いわゆる総会屋が関与しているものも含めまして、証券取引法違反行為につきましては今後とも厳正な市場監視活動を行っていくこととしておりまして、そのため必要な人員の確保を図るとともに、事務の効率化を図るためのシステムの拡充、あるいは市場監視手法の開発向上などの体制整備に努めてまいりたいと考えております。
  174. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 アメリカのSECは、人員は大体三千人以上と言われています。そして、告発する対象者、被告人ですか、毎年五百人から六百人ぐらい、あるいは、告発件数は百五十件ないし二百件というふうに、非常に大きな成果を上げているようなんです。  今、陣容の整備を図るとおっしゃいましたけれども、今現在で監視委員会はどのぐらいの陣容で、そして、この政府の申し合わせに基づいてどのぐらいの陣容を新しく要求しようとしておられるか、そのあたりはどうなんでしょう。
  175. 滝本豊水

    ○滝本説明員 現在、証券取引等監視委員会の人員は約九十名ということでございまして、そのうち、今問題になっております犯則事件の調査に当たっておりますのは特別調査課でございまして、これは約三十名程度の体制で行っているわけでございます。一般的に、証取法違反事件といいますのは、膨大な、複雑な資料・証拠収集が必要ですし、多くの関係者から事情を聞く、その中で必ずしも容易に真実を聴取するとは限りませんし、また、刑事告発ということから、起訴、公判にたえ得るような資料収集という精微な作業が求められるということを理解いただきたいわけです。  こうした中で、ことしに入りまして、この一月から十月までに既に八件の告発を行っておりまして、この中で大手証券会社に対する一連の補てん事件につきましては、当委員会が告発し、今、地検が捜査を行っているというふうに理解しております。
  176. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 大変少ない陣容の中で一生懸命やっておられることはよくわかりますし、その御苦労については頭が下がる思いですけれども、私は、この証券取引委員会の果たす役割はとても大きいものと思いますし、今は御担当の人しかお見えになりませんし、結局決めるのは大蔵大臣であり首相であると思うのですけれども、この体制はとても大事なものであるから、本当に一人、二人の人間、記録を見ますと毎年一人ぐらいしかふえていないような状態なんですけれども、飛躍的というか、倍増、三倍増にするような形の組織にしなければ、これは今の証券業界を確実に健全にするものはできないと思っておりますので、ぜひそのようにしていきたいと思っております。何かありますか。
  177. 滝本豊水

    ○滝本説明員 先ほど、御質問の中で、増員要求をしておるのかということをちょっと答弁漏れいたしましたけれども、現在三十人で特別調査課は犯則事件の調査をやっておるのでございますけれども、来年度の予算要求の中で、現在十五名の増員要求をさせていただいているところでございます。
  178. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 次の質問に移ります。どうもありがとうございました。  ところで、その申し合わせの中で、「日弁連への協力申し入れ」というふうにもあります。午後、久保利参考人をお呼びして、日弁連がいわゆる民暴対策委員会というものをつくって、そこでそのノウハウを取得した弁護士を企業との協力のもとに、企業の要請に応じて出していって、この対策に当たるというふうに話がありました。  具体的に、法務省は日弁連とどういうお話し合いをされておるのかについて御説明をお願いします。
  179. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 お答えいたします。  法務省といたしましては、ことしの九月五日の関係閣僚会議で申し合わせがございまして、いわゆる総会屋対策要綱、先生御承知のとおりでございますが、その趣旨を踏まえまして、九月八日付で事務次官から日弁連の会長さんあての文書を出しまして、業界団体や企業からの相談に対する各弁護士会や弁護士の一層積極的な協力を要請したわけでございます。  具体的に申し上げますと、最近の総会屋の情勢をるる書きまして、「この際、各弁護士会及び弁護士に対し、業界団体や企業から本問題に関する相談を受けた場合には、これに一層積極的に対応するよう、改めて必要な指導等を行われたく、要請する次第です。」「なお、本件に対する」「対応につきましては、所轄官庁から経済界に周知することとされております」ということでございまして、それを受けまして、今度は日弁連の会長さんから御返事いただいております。  もう先刻先生御存じだと思いますが、「要請の趣旨は時宜に適ったものとして積極的に評価すべきであると考えます。」ということでございまして、「業界団体並びに個別企業から総会屋問題に関する相談があった場合には、一層積極的に対応して下さるよう、連絡方々要請申し上げます。」という内容の文書を日弁連の会長名で弁護士会長各位に出されておりまして、「なお、当連合会民事介入暴力対策委員会では、総会屋問題等について企業健全化方策検討部会で検討中であり、その検討結果は適宜各弁護士会にお知らせする予定であることを申し添えます。」というような内容でございました。  昨日、総理官邸におきまして、経団連以下銀行協会あるいは証券業協会あるいは建設業協会等々十二団体の代表者の方がおいでいただきまして、政府から、総会屋対策についての積極的な御協力、それから絶縁宣言、それから警察関係者との連携を密にしてほしい、おおむねそういうふうな趣旨の要請をいたしまして、私からも、今申し上げましたように、日弁連との関係についてはこういうようなことになっております、したがいまして、それぞれの団体の方々も弁護士会の方々とよく相談されて対処されるようにお願いいたしたいという発言をいたしておきました。
  180. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 日弁連への協力、そして日弁連からの協力ということに関連しまして、具体的に弁護士がこういう総会屋対策の前面に立つわけですけれども、いろいろと弁護士も危険にさらされることがあると思います。  それに関連して、先日、岡村勲弁護士の奥様が刺殺されるという悲惨な事件が起きた。そういうことはないように、ないようにというのは、絶対なくす、ないことはないわけで、危険な場面ですからあり得るわけでしょうけれども、警察の方にお願いするということはあるにしても、あの事件は一体、現在どうなっているんだろうか。事件の原因とか逮捕に至る経緯とか、そして現状、これについて御説明をいただけますでしょうか。
  181. 佐藤英彦

    ○佐藤(英)政府委員 お尋ねの事件につきましては、本年の十月十日午後六時ごろ、都内小金井市内に居住いたします弁護士さんの奥様が、自宅玄関先におきまして胸腹部を刺され、殺害された事件でございます。  警視庁におきましては、直ちに捜査本部を設置いたしまして、聞き込み捜査、あるいは被害者及び被害者の夫をめぐるトラブルの有無等について捜査をしました結果、無職の男性が浮上いたしまして、十月十七日殺人罪で通常逮捕し、現在、本件犯行の動機等を含めまして捜査中でございます。
  182. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 ただいまの警察当局からの御説明でございますが、警察当局により逮捕、送致されました被告人西田久につきまして、本日、先ごろですか、東京地方検察庁検察官は、岡村弁護士夫人殺害事件につきまして、殺人の容疑により公判請求したという報告に接しております。
  183. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 ちょうどまさに本日、つい先刻起訴されたということをお聞きしました。  しかし、それだけではなくて、この件は恐らく山一証券の樽谷さんという方の殺人事件にもまた発展していくと思うのですけれども、そういう意味で、今後、こういうことが再びないように、しっかりとその関係者の身辺の警戒は必要だと思っております。  ところで、一部報道によりますと、その西田という容疑者、今は被告人でしょうが、既に樽谷さんの殺害事件の容疑者として、容疑者じゃなくて、重要参考人になるのでしょうから、尾行されておった。尾行しておりながら、途中で見失って、その後の夕刻に殺人事件が起こったなんという報道もあります。あたかも捜査の落ち度のようなことにも感じられるような報道がありましたけれども、それについては実際はどういうことだったのか、御説明を願えますでしょうか。
  184. 佐藤英彦

    ○佐藤(英)政府委員 そのような報道があったことは、私どもも承知をいたしております。  この相談室長の刺殺事件でございますけれども、この事件につきましては、山一証券株式会社と顧客との間でトラブルがなかったかについても捜査をいたしておりました。そして、トラブルの当事者の中に不審な人物がいないかという確認活動を行っておりましたけれども、弁護士夫人殺人事件の発生した日以前におきましては、特定の人物を相談室長刺殺事件の容疑者としてマークしていたということはなかったと承知いたしております。
  185. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 わかりました。  次の質問に移ります。  十月三十一日の読売新聞によりますと、警察庁長官が官房長官の「”徳政令”発言を批判」という見出しの記事が出ておりました。たしかどなたかの発言の中に徳政令というふうなことに近い、上申書を出して罪を減ずるようなことの話もありました。  その内容を読みますと、官房長官が十月二十三日の衆議院の財政構造改革特別委員会の席上で、総会屋につけ届けとかしてきた人は言ってください、そうしたら罪を免除するといった徳政令みたいなことが大分前にあった、思い切ってもう一回やって、このような事件は根絶しなければならないと言ったということに対して、警察庁長官が、総会屋関係を続けている企業に対しては厳然として対処すると言って、官房長官の見解は受け入れられないとの立場を明らかにしたという報道があるわけです。  こういう徳政令みたいな例が実際あったのかどうかということも、江戸時代はあったでしょうけれども、今の社会にあるかどうか。私の記憶はないのですけれども、それを含めて、警察庁長官はどういう意図でそういうことをおっしゃったのか。要するに官房長官の発言を批判されたというふうなことで、そのまま受け取っていいのかどうか。御説明をいただきたいと思います。
  186. 佐藤英彦

    ○佐藤(英)政府委員 まず、警察におきましては、暴力団、総会屋等への対策につきましては、企業がこれら反社会的勢力との関係を将来にわたって遮断するということが重要だというぐあいに考えておりまして、かねてより企業が暴力団、総会屋等との関係遮断に向け真摯に努力している場合には積極的に支援してまいるというぐあいに申し上げ、企業からの警察に対します積極的相談を呼びかけてきたところでございます。  しかし、そのような努力の見られない企業、あるいは警察の捜査により結果として暴力団、総会屋等への不正な利益供与が判明した企業につきましては、厳正な態度で臨むことは当然であるというぐあいに考えておりまして、先日の警察庁長官の発言もこのような趣旨でなされたものでございます。  なお、官房長官におかれましても、同様の認識を持たれているというぐあいに理解をいたしております。
  187. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 外国、アメリカなんかあるのかもしれませんが。徳政令みたいな、そういうものは実際にあったことはあるのですか。その辺、もし御記憶があれば。
  188. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 私も具体的な歴史的な事実につまびらかでございませんが、明治以前といいますか、江戸時代におきまして、ある一定の事象があった場合に、例えば借金を一律に免除するとか、その種のいわば現在でいいます恩赦的なことが一律に行われたというようなことがあったやに聞いておりますが、現在は、そのようなことがもし行われるとすれば、大赦令その他の恩赦法の規定によって行われるということになろうかと思います。
  189. 佐藤英彦

    ○佐藤(英)政府委員 ちょっと補足をさせていただきたいと存じますけれども、官房長官が答弁されましたときには、いわば徳政令みたいなことがあったと申し上げた趣旨といいますのは、警察におきまして、平成四年ごろから、先ほど私が答弁申し上げましたようなことを企業に対しまして直接申し上げてまいりました。そうして、平成六年に警察庁長官が記者会見におきまして同種の発言をいたしたわけでありますけれども、その際に、報道は、過去は問わずという報道がなされました。そのことを指しているのではないかというぐあいに推測をいたします。  ただし、その当時警察庁長官が答弁をいたしましたのは、実は、過去は問わないというぐあいには申しておりませんで、先ほど申し上げましたように、絶縁しようと真剣に努力している場合には捜査の重点は将来に置きますよ、また要求してきた者に対する恐喝事件に重点を置きますよ、しかし、暴力団、総会屋等を積極的に利用するような、そういう放置しがたい事実がある場合には厳正に対処いたしますということもあわせて申し上げておりまして、そういう包括的な意味においての例えの表現であったというぐあいに私どもは受けとめております。
  190. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 説明を聞くとわかるのですが、私もこんなばかなというふうに思っておったのですけれども、何かきょうのこの委員会の前のどこかの場面で、上申書を出したら免除したらどうだというふうな話があったもので、あれあれと。やはりこういう話というのは案外真実味を帯びて世間にあるのかなという気がしましたので、ちょっと注意的に、犯罪に関するものについて、そういうことはないのだということはしっかりしてもらわないとまずいというふうな気持ちで、私はあえてこれを聞きました。  次に、五十六年当時の問題に戻りますけれども、五十六年改正のときに総会屋防止のための方策として、そのころはびこっていた総会屋の特徴的傾向として、当時の警察庁の深山さんとおっしゃる、当時は捜査二課の課長補佐さんだったようですけれども、もう十六年前ですけれども、その方が論文で次のように指摘しておられる。幾つかの特徴点を挙げておられる。それを私ちょっと読み上げますけれども、これらの特徴が現在でも同じなのか、あるいは顕著に変わった点はどういう点なんだろうかという点について、御説明を願いたいのです。  深山さんは、次のような点を指摘されておられます。  第一点は、総会屋のグループ化、集団化が進んできたことです。昭和五五年の調査では、総会屋のグループが五二三、構成員は三、六〇一人に達しています。第二点は、暴力団が総会屋の活動分野に進出し、総会屋をその支配下におく傾向を強めていることです。特に山口組系、住吉連合、稲川会等の広域暴力団の首領、幹部クラスの進出が目立っており、今後ともその傾向は強まるだろうということです。  第三点は、活動の多様化傾向であります。いわゆるほとんどの総会屋が雑誌、新聞等の刊行物を発行し、または発行していない総会屋はブラックジャーナルなどと結託して、社長会社役員などのスキャンダルを集め、これを利用して企業に浸透しようという傾向を強めています。第四点としては、活動地域の広域化です。ほとんどの総会屋が地方都市へ進出し、その活動領域を拡大しているのです。第五点としては、総会屋に対する警察の取り締まり強化企業の自主的な締め出しの動きの中で、さらに今回の商法改正の動き等も重なって、総会屋が一般的に表面上は低姿勢を示す傾向にあります。このような特徴点が指摘されています。  私はこれを読んで、人数は別にしても、今とほとんど変わっていないなという気がするのです。そうすると、五十六年の改正は一体何だったのだろうという気もするのですけれども、その点を踏まえて、今変わっている点、それから、そういう点をどのようにされるのかということを簡単に御説明願いたいと思います。
  191. 佐藤英彦

    ○佐藤(英)政府委員 今御指摘の数字は、たしか昭和五十五年の数字であったかと思います。それで、改正商法が施行されましてその翌年に当たりますけれども、昭和五十八年当時と現在を比較いたしてみたいと思います。  まず、人数、グループ数でございますけれども、昭和五十八年におきましては、総会屋数は約千七百名、グループ数は約七十五グループでございます。それが、昨年、平成八年におきましては、約千人、そしてグループ数は約三十五グループでございます。ということで、やはり改正商法が施行されました以降、大分その部分に関しましては変わっております。  それから、暴力団の関係につきましては、平成八年におきましては、千人のうち約九十名ぐらいが暴力団勢力、要するに構成員、準構成員でございますけれども、他の者にありましても何らかのつながりがあるというぐあいに見ております。そのあたりの状況は大きな変化はないのかなというぐあいには思いますけれども、ただ、その度は、暴力団との関係につきましては、平成三年から四年ごろからさらに強まっているというぐあいに、私どもはそういう印象を受けております。  それから三点目に、総会屋の活動の態様についてでございますけれども、商法改正以前につきましては、直接現金を受け渡しするというのが多かったように思いますけれども、現在は、いろいろな経済取引を装ったり名目をつけているというようなことで、その手口は巧妙になっているというぐあいなことが言えようかと存じます。
  192. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 新しい事態に対して、今私どもは対処しようとしておるわけです。  ところで、現在、今もお話しになりましたけれども、総会屋への利益供与の方法として、海の家の利用料の徴収とか、情報誌や広告費名目での供与が問題になっております。  昨日の夕刊では、読売新聞が「企業対応さまざま」という特集を組んで、企業側は総会屋認識した上で送金したという会社がある一方、あくまで海の家の利用のためと突っ張る会社もあるというふうにまだ報道されておる。また、毎日新聞では、でかでかと城山三郎さんの特集が出ておりました。そこでも、海の家の利用代なら、総会屋企業もこのやり方なら検挙されないと思ってやったのじゃないかというふうに言って、その巧妙さに舌を巻いておられる。  このような状況、誌の購読料とか広告代あるいは海の家の利用代などの形態をとる場合に、利益供与罪要求罪で取り締まれるのだろうかというふうな一般的な素朴な気持ちがあるのですけれども、それはどのようにお考えでしょうか。
  193. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。  いわゆる総会屋をめぐります利益供与、その供与を受ける行為、また要求する罪は、株主の権利の行使に関して利益を授受いたしましたり、これを要求することによって成立する罪とされております。  すなわち、これらの罪が成立するためには、株主の権利の行使、または不行使に対する対価の趣旨、例えて申しますと、株主総会会社に有利な発言をしたり、あるいは不利な発言をしないようにということの見返りとしての趣旨が必要とされると解されております。したがいまして、そのような趣旨で行われたものでございますれば、お尋ねのような、情報誌の販売等でございますとか、その他さまざまな商取引の名目のもとに利益の授受がなされたり、これを要求したりした場合には犯罪は成立すると解されるわけでございます。
  194. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 理屈の上と実際は難しいと思うのですけれども。株主の権利の行使に関して言っても、株主で実際ない人間が、応じないとこれから株主になるぞというふうなぐらいのことをうかがわせながらやらせるというふうに、微妙な点はいっぱいあると思うのですよね。ですから、なかなか難しい問題もいっぱい含んでいるというふうな気がします。しかし、大きな目的が総会屋の取り締まりということで、この辺の厳格な適用というのが求められると思っております。  それから、今回の法改正について、いろいろな人の意見、きょうの参考人もそうなのですけれども、改正にしたって全然甘過ぎるんじゃないか、逆に、ほかのバランスから考えて重過ぎるという意見ももちろんありますが、素朴な意見としては、一体これで取り締まれるんだろうかということに対して、いや、こんなことぐらいでは無理だよというふうにすぐ返ってくる感じがします。  しかし、刑罰の加重というのはほかのバランスとか日本全体のバランスの中で大変難しい問題があるので、今回の御苦労はわかるのですけれども、時効の延長ということでちょっとおもしろい意見がありました。  今回の時効の延長も、刑の重さに比例して時効が延長されたのですけれども、エコノミストの九七年七月十五日号に、山田斉さんという方の論文の中に、アメリカでは、銀行犯罪に関して、「法律を厳格に適用したばかりでなく、法律強化した。まず銀行詐欺罪の時効が五年だったのを一〇年に延長した。事前に刑が定められていないと罪にならないという罪刑法定主義は日本と同じだが、時効はその範囲に含まれないというのがアメリカの考え方だ。」というふうな論文なのですね。  私も初めて見るお考えなのでちょっと頭をかしげたのですが、まず、法務当局にお聞きしますけれども、時効というのは罪刑法定主義の範囲には含まれないのでしょうか。
  195. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 アメリカにつきましては、何分外国のことでございまして、必ずしも理論的な詳細について完全に把握しているわけではないのでございますけれども、我が国におきまして、事後的に時効期間を延長する立法を行いまして、既に行われた犯罪行為にも適用するということになると、一般的には、事後法の禁止を定めました憲法三十九条との関係で問題を生ずるおそれがあり、極めて慎重な検討を要するところであるとされております。  特に、一たん時効が完成した犯罪につきまして、再び時効未完成の状態に復するというようなことで、その処罰を可能とするような立法は、この憲法第三十九条の趣旨にかんがみまして、問題はさらに大きいだろうと解されております。
  196. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 そういうところだと思いますね。だから、現在、時効進行中のものでも、それをさらに延長することも問題であるし、時効完成したものについてはなお問題だということですね。はい、わかりました。  アメリカでそういう話が出てくるということは、全体としてやはり、こういう犯罪に対してはもっと厳格にということの考え方があらわれているし、話が飛びますけれども、今回、ニューヨークの市長さんが共和党からお出になった。その人の主張は、ニューヨークにある犯罪をとにかく根絶するという強い姿勢が市民に受け入れられたということがありますので、まさに今の社会は犯罪との戦争といいますか、犯罪に対してどのように厳正に対処するかということがまさに我々に与えられた使命だと思いますので、どうかその辺、いろいろと話が別になりましたけれども、何とか法律と犯罪に対して、どのような法律が一番的確なのか。それは、ほかのバランスもあるけれども、今の社会がどんどん進んでいる、そして、犯罪が特別な形で、昔とは違った形で社会を侵食し始めているということに対するいわゆる刑罰の考え方もまた必要かと思っております。  ところで、次の質問に移りますけれども、今回の改正法の要求罪は、刑法百九十七条の一から百九十七条の四の収賄罪と同じだというふうに言われました。確かに、そういうふうに言われておると思います。そうすると、刑法百九十七のいわゆる収賄罪については、要求だけでなくて約束罪もあるわけですよね。これについてもやはり、この委員会の中でも、要求をするのもまずいけれども、それに応じるのもまずいのではないか、だから要求応諾罪なんかをつくった方がいいと参考人のどなたかがそんなことを言っていて、そうしないと、これは持ちつ持たれつの関係だから、それも必要なのではないかという意見もありました。  だから、そういう意味では、約束、わいろ罪の約束というのはまさに応じる方ですよね。これだったら要求応諾罪みたいなものだと思いますので、これはなぜこの中に入れることができなかったのか。
  197. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。  この改正新設することといたしております利益供与要求罪に言う要求とは、刑法上のわいろの要求罪と同様という点は御指摘のとおりでございまして、相手方に対して、趣旨を認識する状態において、財産上の利益の供与を求める意思表示をすることを意味いたしております。  この要求罪新設の趣旨は、いわゆる総会屋利益供与要求する行為自体を独立して処罰することといたしまして、総会屋に対する制裁強化するとともに、これによりまして、会社関係者といたしましては、利益供与要求を受けた段階におきまして捜査当局に対して、それはもう犯罪として成立するわけでございますから、犯罪の届け出をすることを可能にする。したがいまして、早期かつ効果的な摘発を図るということが期待されるわけでございます。  そこで、一方で会社側といわゆる総会屋との間の約束行為を処罰の対象にしたらどうかという考えがあるわけでございますが、そのことを要求を受けて約束してしまいますと、それは既にまたその段階で犯罪を構成するということになりますと、要求段階で総会屋の摘発を可能とすること以上に、事案の早期摘発や会社総会屋との癒着関係の排除に資するところはそれでは少ないのではなかろうかと考えられたわけでございます。  また、約束罪を設けてしまいますと、約束をした会社側が実際には捜査当局へその通報を避けようとするおそれも生じるのではないだろうか。結局、先ほど来の御議論にございますように、この利益の供与と受供与は、ある種の持ちつ持たれつという関係にあることは事実のようでございます。  ただ、事案によりましては、会社側としてはできるだけ避けたい、もう手を切りたいという場合に、要求されたら、その段階で要求罪が成立するのでございますから、それについて捜査当局に対して、届け出をして、取り締まってくださいということが言えるようにしたいというのがその趣旨でございまして、要求罪以外にあえて約束という構成要件を設ける必要はなく、また相当でもない。  わいろ罪における約束罪というのが成立すると考えられておりますのは、そのことを超えまして、公務に関しまして、ある種のわいろの授受を要求されまして、それを約束するということがあったこと自体が、やはり公務の廉潔性に対する重大な問題を生ずるということが恐らくあるのではないかと思います。  利益の要求、また実際の供与の関係ではそういう関係ではないだろうということで、今回は、要求罪を独立として処罰させていただくようにしたいというのがその趣旨であるわけでございます。
  198. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 わかりました。  次に、これもしばしば問題になっているのですが、社外取締役制度ということがしばしば出ております。  それで、先ほども申しましたが、きのうの夕刊に城山三郎さんが、「トップよ、気概を持て!」という大きな新聞記事が出ておりましたけれども、この中で、「社長地位は、今のままでいいのでしょうか。」というのに対して「そうは思いません。米国なんかは社外重役の存在も大きいし、会長との役割分担もできている。社内の権力がうまく分権していて、チェック機能も多いんです。ところが日本社長がオールマイティーになっていて、みんなが社長の、つまり殿のご安泰だけを考えて、」云々というふうなお話をされておられますね。  こういうことを言われている反面、会社法の大家である河本一郎先生は、日本企業ではもっと社外取締役を入れさせるべきであるという意見もあるけれども、他方、内部取締役を中心として構成されている我が国取締役会がその経済的効率性の点において極めてすぐれていることもまた実証されておるというふうな見解も述べておられます。しかし、このような体制はワンマン体制の独走を抑止できない制度的欠陥を持っているんだというふうなことを言っておられます。  法務当局はこの社外取締役についてはどのようなお考えをお持ちなのだろうか、御意見を伺っておきたいと思います。
  199. 森脇勝

    ○森脇政府委員 今先生御指摘のとおりでございますが、取締役につきましては現行法では何ら制約を課していない、欠格事由はございますけれども、これを除くとだれでも取締役に選任していい、こういう形になっているわけです。ところが、日本企業の実情を見ると、いわば会社の従業員から勤め上げで取締役になってくるというのが大部分だ、こういうふうに言われているわけです。  社外の取締役がいいのか、あるいは日本で多く行われている従業員から勤め上げの取締役がいいのか、これは先生今御指摘になりましたとおり一長一短だ。メリットも大きいし、場合によってはデメリットも大きい、こういうものでございます。  結局、この点は、商法でどう扱うかということになりますと、メリット、デメリットもある、その会社の状況によって違うということになってまいりますと、大会社監査役に採用したような社外監査役というような形で、一定割合以上は社外の監査役の選任を強制するというような形がとれるかというと、この問題に対しては、むしろ、その会社会社の事情に応じて総会で決めていただくという制度の方が合理的なのではないかというふうに考えておりますし、現に、現在の法制度のもとでも、社外取締役を多く採用して成功したという例も聞いておるところでございます。
  200. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 今の御意見を拝聴しておきたいと思います。  次の質問に移りたいと思います。  刑罰の執行ということは、確かに犯罪の防止に大変必要なことでありますけれども、一面、厳正かつ的確な行政処分というものはあわせてとても有効な手段であると思います。交通違反なんかの問題についても、刑の執行とそれからあわせて運転免許の取り消しあるいは停止とかいうのが非常に効果を上げているのと同じように、本件総会屋の問題についても行政処分の執行というのは大変有効なものだと思いますけれども、この間の一連の銀行と証券会社に対しては実際に今現在どのような行政処分が行われているのか、これについて御説明を願いたいと思います。
  201. 小手川大助

    ○小手川説明員 まず、今般の証券会社及び銀行をめぐる一連の問題によりまして投資家それから預金者等の信頼が著しく傷つけられたという点については、遺憾に思っているところでございます。  先般、これは七月三十日でございますが、野村証券それから第一勧業銀行に対しまして厳正な行政処分を実施したところでございます。  その内容といたしましては、まず、野村証券に対しましては、株式関連の自己売買業務及び公共債の引き受け等について約五カ月の業務の停止、それから全店での株式関連業務の一週間の停止が含まれているところでございます。  また、第一勧業銀行につきましては、国内営業所におきますところの新規の顧客に対する与信取引及び公共債の引き受けにつきまして同様に約五カ月の営業停止を含む厳正な処分を実施しているところでございます。
  202. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 この行政処分が本当に適切かどうかというのは私自身ちょっとわからないのですけれども、そのほか今どんどん進行中のものについて同様な形での処分というのは行われる予定なんですか。
  203. 小手川大助

    ○小手川説明員 現在報道されておりますところの大手証券三社につきましては、今後、証券取引等監視委員会の方から私どもの方に対しまして行政処分に関する勧告が出た段階で、聴聞等の必要な手続を経た上で内容を決定したいと思っておりますが、いずれにしましても厳正な対処をしたいと思っております。
  204. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 今回の件については、本当に一番大事な時期、行政処分についてもまた刑事処分についても誤ってはならないというふうに考えております。適切な処分をすることが将来に対するいい影響を与えるのだと思っております。  ところで、総会屋対策についてはいろいろと私どもも考えてまいりました。ただ、これは単に総会屋対策ではなくて、組織犯罪全体に対する問題、それを大きくとらえていかなければ解決しないだろうということは当然のことだと思っております。  今法務省の方でも、再三というか時々お話しになるような組織犯罪対策法を検討しておられると言われます。総会屋対策との関連で、余り広く言われると困るのですけれども、法案の問題になってしまいますけれども、関連において、この組織対策法はどのように機能していくような形になるのだろうか、その辺について御説明をいただきたいと思います。
  205. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。  組織的な犯罪に対処するための刑事法の整備につきましては、本年九月十日に法制審議会の答申をいただきまして、現在、できるだけ早く国会にその法案の提出をいたすべく鋭意作業中でございます。  その内容の一部といたしまして、ただいまお尋ねの点に関して申し上げますと、反社会的な各種の勢力の正常な経済活動への侵入を阻止すること等を主要な目的といたしまして、犯罪によって得た収益について適切な規制を行うため、これを隠匿、収受するいわゆるマネーロンダリング行為を処罰する規定新設や、犯罪によって得られました収益の没収、追徴制度充実等が盛り込まれております。これは、一般に、組織によって犯罪が行われる、むしろ犯罪そのものが収益を目指して行われるという組織的な犯罪の特徴を考えまして、犯罪をペイさせないという観点からそのような措置をとりたいということで、これは国際的にも相協力してそういう体制を整えつつある一環と考えているわけでございます。  そういう状況でございまして、商法上のいわゆる総会屋をめぐる犯罪の収益もこれらの規制の対象となっているのでございまして、かかる規制によっていわゆる総会屋対策としても効果を期待できるものと考えております。
  206. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 一点聞き漏らしたかもしれませんが、一匹オオカミの総会屋利益供与でもらったお金というのは、これは今言われるその組織犯罪に関する法律のマネーロンダリングの規制に当てはまるのですか、たった一人の人間が取ったお金。
  207. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 その点につきましては、最終的にどういう法案になるかという点にもかかわるわけでございますけれども、主として、組織によって行われるという点に着目してまいる場合には、そのような状況にならない場合もあるだろうと思います。ただ、この商法上の総会屋ということになってまいりますと、基本的には、商法上は、得た利益というものは一元的には会社に返していくという点もございますし、また、刑法上の一般の没収、追徴規定も適用されることがございますので、それは事案によりましてまた適用関係が変わってくるだろうと思います。
  208. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 わかりました。  さて、私も、最後の質問に移ってまいります。  さまざまな対策をとろうとしておるのですが、結局、最後の担保となるものは、正義の味方といいますか、司法権力といいますか、司法が社会の中で適切に確立されて、そこでチェックをすることによって自由な社会が担保されるという形になっておるのですけれども、日本の司法は、裁判所といい検察庁といい、一生懸命やっているのはわかりますけれども、量的にあるいは構造的に極めて弱いのではないかというふうに言われております。  今、新しい自由社会、規制緩和あるいはビッグバンを迎えて、司法がしっかりしなければこの自由社会は保てないのだという考えのもとに司法改革が叫ばれておりますけれども、法務大臣におかれましては、そのあたりはどのようなことをお考えなのか、御所見を伺いたいと思います。
  209. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 大変重要な御指摘だと思います。今行政改革ということがるる言われておりまして、政府も真剣に取り組んでいるわけでございますが、先生の御指摘は、そういうふうな意味から、司法制度、司法改革というものはいかにあるべきかという御質問だろうと思います。  昨日もちょっと私、新聞を見ていまして、「「小さな司法」からの転換を」という、これは毎日新聞の論説の方の書かれた内容でございます。たまたま同じ日に、「「四十年裁判」を避けるために」、これは朝日新聞。これはどういうことかといいますと、例のオウムの事件が長期化しておる、何か工夫はないのかというふうな考え方から書かれておる。毎日の新聞のように、そういうふうに現在抱える司法の問題をたくさん取り上げられておられます。  これはやはり何とか考えないといかぬなとつくづく思うわけでございますが、考えれば考えるほど問題が多いということにぶつかるわけでございまして、頭が痛いのですが、そんなことを言っておれませんので、自民党の中でも司法制度調査会で取り上げて幅広く検討されようとしておられますし、これはもう大変いいことだな、こう思うわけでございます。  司法の問題については、もう先生今御指摘のとおりに、やはり法秩序の維持と国民の権利の保全ということが何といっても基礎にあるわけでございまして、これが国民生活の基盤でございまして、この基盤が崩れれば、経済活動なり政治活動なり諸般の活動というのはみんな崩れてしまうわけでございますから、それだけがっちりしなくてはいけない。  実は、最近、最高裁の長官もおかわりになりまして、早々に私もお会いいたしました。それから日弁連の会長さんにももう何回もお会いいたしておりますし、いろいろな問題をぶつけているわけでございます。新聞報道にいろいろございましたように、長年かかりまして、法曹養成の問題につきましては、先般来、やっと法曹三者の合意がいただけまして、司法修習生の人数をふやすとか、あるいは年限を若干短縮するとかいうふうな結論が出たわけでございまして、そういうふうなことを踏まえまして、また法律の整備なりなんなりしなくてはならない。  私は、法曹三者、よく申すわけでございますが、今までの司法に対する問題を検討いたしてみますと、三者の意見が合わなくてつぶれていることが大変多いのですね、たくさんございます。例えば、先ほどお話しになりました少年法の問題一つにしましても、それから刑事施設法の問題にいたしましても、これは意見がいませんでした。どういうことかといいますと、監獄法といって明治の法律で片仮名の法律が、今矯正業務の基本になっているというふうなことでもございます。  そういうふうな基本的な法制の整備の問題と同時に、先ほど来お話しになっているコーポレートガバナンスの問題だとか、あるいは債権譲渡の活性化ということで、規制緩和、国際社会に対応しようとか、いろいろな問題が次から次へと出てきていますね。そういうふうなことを考えますと、裁判所にいたしましても、法務省にいたしましても、やはりその辺の体制の整備というものが、何とか緊急に、重要ではなかろうか。  先般も最高裁長官がお見えになったときに申し上げたのですが、毎年、最高裁から増員の要求が出る、十二名だとか何名だとか、判事補の要求が出るのですね。哲学がないのではないですかと。例えば、日本の司法というふうなものはどういう意味を帯びていくのか、そういうふうな中で、将来を見通して計画的に、どういうふうにその体制を整備していけばいいか。法務省にしてももちろんそうでございます。やはり、そういうふうなことを法曹三者の中で合意を見なければそれもなかなか進まないという問題もございますし、精力的にそういうような問題に取り組みまして、いろいろな問題たくさんございますが、一つ一つ解決に向けて努力しなければならない、こういうふうに思うわけでございまして、皆様方の強い御支援をお願いいたしたいと思います。
  210. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 時間があとわずかになりましたが、今大臣のおっしゃった——本当に大臣が参議院の法務委員会で、裁判官の増員に対して、哲学がないということを叫んでおられたのはよく覚えておりますが、きょう、裁判所も来ておられますから、哲学を聞きたいと思います。  それと、法曹三者が、確かにある時期は対決姿勢もあったと思いますけれども、それは協力してやりたいということは私も同感でございます。  それからもう一つ言い忘れました。自民党さんが今司法改革に対してとても積極的に取り組んでおられることについて私は敬意を表したいと思っております。  それにつけても、司法を強くするというのは、もう簡単に言えば、人数をふやして予算をふやすということに尽きるということではありませんが、それが一番早いことであると思うのですけれども、どうも裁判所といい、それから法務省といい、何か少しずつ、ちびちびしか請求しない。まさに哲学、果たして司法改革の大きい企画のもとでそういうものを出しているかどうか、疑わしいような感じがします。  司法試験改革が今言われておりまして、今まで七百五十人であったものを来年度から一千人にするというくらいのことを決められました。それも大変な英断と思うのですけれども、たったそれだけでいいのだろうかという話も片やあるわけです。その点について、もう時間がありませんので、長らく待たせましたが、ひとつ、法務省当局に、まず司法試験に関連して、大幅に司法人口を伸ばすべきだという考えに対して、どうしてこうけち臭いのかということについて御意見を伺いたいと思います。
  211. 山崎潮

    ○山崎(潮)政府委員 お答え申し上げます。  法務省といたしましては、司法の機能を充実して国民の法的ニーズにこたえるため、法曹人口を大幅に増加する必要があると考えておるところでございます。  具体的な数字につきましては、法曹養成制度改革協議会の意見書に多数意見として示されているように、法務省といたしましても、中期的には年間千五百人程度を目標といたしましてその増加を図る必要があると考えているところでございます。  今回の千人という問題につきまして若干御説明させていただきたいと思いますが、先ほど申し上げましたように、千五百人程度への増加という点については多数意見でございます。しかし、その中の意見の中には、当面、合格者について年間千人程度にすべきであるという意見も多数ございまして、日弁連の意見もその点では多数意見と一致したわけでございます。  この法曹養成の関係で人数をふやしていくということは、現下の喫緊の課題であると我々は認識しております。そういう点にかんがみまして、現状の修習の受け入れ体制のもとで、やはり可能な限り速やかにやっていこうという方針をとったわけでございます。そういう観点からまいりますと、現在、マンツーマンシステムの教育を行っておりますけれども、そういう現在の修習環境のもとで現行と同様の修習を行おうとする場合には、司法試験合格者年間千人程度の受け入れが現状の体制の中では限度であるということで、そういう決定をしたわけでございます。  したがいまして、この千人程度への増加をまず早く実現した上、その修習の内容や方法の改善あるいは受け入れ体制の問題、こういう点を勘案しつつ、さらなる増員、増加の検討をしていく必要があろうというふうに認識をしております。
  212. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 時間がありませんけれども、一点、裁判所に。長くお待たせしました。  今裁判官が非常に少ない、裁判官の負担が多過ぎる、にもかかわらず、裁判所は、今の司法修習生の広がりと並行して同じように広げられればいいけれども、ちびちびしか増員を請求されていないというふうなことも言われています。そのあげく、裁判は遅くなる、そして裁判官の負担は大きくなるということで、裁判所の力をますます弱めているような感じがするのですけれども、一体どのくらいの規模まで大きくしようとしておられるのか、その辺についてお伺いをしたいと思います。
  213. 涌井紀夫

    ○涌井最高裁判所長官代理者 委員御指摘になりましたような社会情勢の変化といいますか、そういうものを考えますと、恐らく今後、司法に対する国民の期待というのはますます大きくなってくるだろうということは我々も全く同様に感じておるところでございまして、やはりこういう国民の期待にこたえていけるような体制、これは人的体制を含めて、そういうものを整備していく必要があるだろうと思っております。  裁判官の人員のお尋ねがございましたが、これは最近の動きを見ていただきますと裁判所の増員方針というのはある程度おわかりいただけると思うのですが、従前に比べますと随分積極的な増員を図ってきております。最近の五年間でいいますと六十四名という裁判官の増でございまして、この数のスケールをどう見るかというのは、平たく申しますと、例えば横浜地裁の本庁、これが四十名余りの裁判官を抱えた庁でございます。それから神戸地裁の本庁というのは、やはり二十名余りの裁判官を抱えた庁であります。いわばこの二つを合わせたような、かなり大きな規模の庁を一つ新設した程度の人員増は図られておるわけであります。  ただ、委員御指摘のように、今でも首都圏を中心に、かなり事件負担が重くて繁忙な庁はございますので、今後とも事件の動向等を十分見ながら、さらに人的な体制の充実強化に努めてまいりたいというふうに考えております。
  214. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 終わります。
  215. 笹川堯

  216. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  私は、きょうは一連の総会屋をめぐる事件の出発点となりました、総会屋小池隆一にかかわる金融・証券会社の犯罪に関して質問をしたいと思います。それは、現に起きている事件の真相の解明なしに、総会屋根絶のための的確な対策など打てるはずがないと考えるからであります。ぜひ、そういう立場から、お呼びしております関係各省庁におかれましては、真相解明という立場から御答弁を願いたいと申し述べておきます。  最初に、第一勧銀の問題についてであります。先ほど、前の質問者からもう質問がありましたから、私の方から述べます。  大蔵省は、ことしの七月二十日、第一勧銀に対して、銀行法二十六条、二十七条に基づく行政処分を行っております。簡単にいいますと、その中身はこういうものです。二十七条に基づく行政処分は、ことしの八月六日から十二月三十一日までの間、与信取引を停止する、国債、地方債、政府保証債などの公共債の引き受け及び入札への参加を禁止する、これが中心であります。それから、二十六条による処分は、ことしの八月六日から来年の八月五日まで丸一年間、第一勧銀の営業所の新規設置等、新規業務の禁止であります。そして、同時に業務改善命令がなされております。ことしの九月十九日までに計画書を大蔵省に出せ、そして六カ月ごとに実施状況を報告させる、それが中心かと思います。これはもう答弁は要りません。  そこで、大蔵省に質問いたしますが、大蔵省は銀行法二十四条並びに二十五条によって、銀行に対する調査権、立入検査権があります。本第一勧業銀行に対して、この事件に対する行政処分をするに当たってどのような調査をやったのか、御答弁願いたい。
  217. 内藤純一

    ○内藤説明員 お答え申し上げます。  今般の第一勧業銀行に対する行政処分を行うに際しまして、私ども大蔵省といたしましては、同行に対し、今回の事件に係る一連の事実関係等につきまして徹底的な調査を指示いたしましたところ、同行から、弁護士も参加をいたしました行内調査委員会というものを設置をいたしまして、同委員会によります調査結果の報告がございました。  この報告は、今委員御指摘の銀行法の二十四条に規定されておりますものでございまして、その真実性につきましては罰則により担保されているというものでございますが、この報告によりまして、同行が不適切な業務運営を行っていたということが認められまして、さらには大蔵省の検査を回避するという銀行法違反の行為を行っていたことが明らかになったと。そして、同報告に加えまして、平成六年十月の大蔵省検査における資料等から検査忌避の事実を把握いたしまして、当省から検察当局に対し刑事告発を行い、検察当局から同行が銀行法違反の容疑で起訴をされました。商法違反の容疑で検察当局から経営の最高責任者を含む多数の役職員が逮捕、起訴されたといったことなどを踏まえまして、同行に対し、委員御指摘のような、銀行法第二十六条及び第二十七条に基づく厳正な処分を実施したということでございます。
  218. 木島日出夫

    ○木島委員 ありがとうございます。  第一勧銀に行内調査委員会をつくらせて徹底的な調査をさせた、そして大蔵省に報告を求めた、それが中心だと思うのですが、本年六月に大蔵省に中間報告が出され、最終報告が七月二十五日に出された、それでよろしいですか。
  219. 内藤純一

    ○内藤説明員 かように認識をしております。
  220. 木島日出夫

    ○木島委員 大蔵省が処分をなすに当たっては、利益提供罪で東京地検から公訴が提起されたということも理由になっておりますので、法務省に、数字だけで結構ですから、既になされた第一勧業銀行等に対する商法違反事件の公訴の概要を示してほしい。もう名前は結構です。何人が起訴されているのか、いつからいつまでの、どういう、何回に及ぶ利益供与罪が起訴されたのか、総額は幾らだったのか、奥田前会長についてはどういう共犯関係になっているのか、それだけで結構です。
  221. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。  第一勧銀をめぐる利益供与事件につきましては、その公訴事実の概要でございますが、平成六年七月から同八年九月までの間、前後五十二回に分かれ、合計百十七億八千二百万円を貸し付けてその金融の利益を株主の権利の行使に関して供与し、小池はこれを受けたというものでございます。  なお、お尋ねの奥田前会長につきましては商法違反、利益供与ということで公判請求されております。
  222. 木島日出夫

    ○木島委員 被告の人数は。
  223. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 同行元会長ら同銀行関係者十一名でございます。
  224. 木島日出夫

    ○木島委員 もう名前は言いません。十一名が起訴されたと。  それで、第一勧銀の総務部担当の取締役とか個々の被告は自分が関与した部分だけが起訴されているのですが、私、公訴事実を読みますと、奥田会長は今御答弁の百十七億八千二百万円、平成六年七月から平成八年九月まで五十二回分全部について共犯という構成をしているのですか。
  225. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 そのように承知いたしております。
  226. 木島日出夫

    ○木島委員 ありがとうございました。  それで、実は私は、大蔵省から第一勧銀がことし七月二十五日に大蔵省に提出をした、先ほど御答弁の調査報告書の本文ではなくて、要旨が書かれた調査報告要旨なるものを渡されまして読んできました。平成九年七月三十日付の第一勧業銀行作成の調査報告要旨であります。しかし、これを読んだのですが、事件の大事な真相はいま一つ明らかではないというのが率直な感想であります。  以下、幾つかの点について質問していきたいと思います。  まず第一点でありますが、第一勧業銀行の小池に対する平成元年二月八日の日本円換算で三十一億六千万円の融資、これは日本円で渡されたのではないわけでありまして、当時の円換算で約三十一億六千万円になりますが、この融資が実は野村、大和、日興、山一、いわゆる四大証券会社の株式三十万株の購入の原資になった。この一連の事件の出発点となった非常に重大な融資であります。これが事実上担保なしといいますか、これは語弊がありますから正確に言いますと、これを融資をして、これで四大証券の三十万株をみんな買う、そしてその株を担保にする、そういうやり方であります。銀行関係の言葉によりますと、担保徴求事後扱いの貸し出し条件をつけてこれだけの金を融資したという、非常に専門用語でありますが。  それで、第一勧業銀行が現実にこの四社、三十万株、百二十万株を取得したのは同年の二月十七日と報告されています。融資が二月八日ですから、当然でありますが、十七日になったわけでありますね。  それはともかくとして、この報告書によりますと、融資の際、審査第一部が融資したというので すが、審査第一部は、四社のそれぞれの三十万株を小池が持つことの意味については「思い至らなかった。」こういう記載があるのですよ。これは本当におかしな話ですね。小池という者が総会屋であることは重々承知していたはずであります。それはもうそれに至る経過も書いてありますから承知していた。しかも、この三十一億六千万円の融資は小池が直接申し込んだのではない。小池の裏にいる、いわゆる大物総会屋、児玉誉士夫系の元出版社社長、名前は言いません、今は故人であります、これから総務部への依頼だというのです。これがどんな大物総会屋であるかは第一勧銀は百も承知。小池が総会屋であることは百も承知。もう嫌な融資もそれまでにさせられていたでしょう。  そして、ついては野村証券初め四大証券の三十万株を買うから融資をしてくれ、担保は何もない。その意味野村証券の三十万株を持つ意味、大和の三十万株を持つ意味、それを全く思い至らなかった、そして融資をしてしまった、そういう報告書であります。大蔵省はこれを信じて処分したのですか。
  227. 内藤純一

    ○内藤説明員 お答えいたします。  私ども、先ほど申し上げましたような形で行内調査を指示いたしまして、それに基づいて報告書を徴求をしたということでございます。それに基づきまして、かような取引については非常に不適正な取引であるというような認定をいたしまして、先ほど申し上げましたような一連の行政処分を下したということでございます。  さらに、その問題についての違法性の問題については今後裁判等におきまして明らかになってくるというふうに考えております。
  228. 木島日出夫

    ○木島委員 裁判とは関係ないのですよ、これは公訴されていませんからね。  私が聞いているのは、大物総会屋要求をした。小池も要求した。四大証券の各三十万株を買いたいので融資をしてくれという要求。これがどういう意味を持っているのか知らないで融資した。「思い至らなかった。」と報告しているのですよ。そんなことはあるはずがないのですよ。これが大問題になったところです。野村証券の三十万株を持つというのがどういう意味か、もう皆さん百も承知。総会屋なら百も承知。この今審議している商法にかかわる問題であります。株主総会で、野村証券の役員を解任する解任請求権を手にするというのですよ。そうでしょう。四大証券全部そうでしょう。すさまじい武器をこれで持ったのですよ、小池は。そういう意味をこの三十一億の融資は意味した。それを、株主総会担当ですか、総務担当ですか、第一審査部ですか、最初に要求されたのは総務部ですね、知らないはずはないのですね。  こんな報告書を信ずる人は誰もいませんよ。大蔵省はこれを信用するのですか、信用したのですか。知らないで融資をしてしまったというこの報告書、私のところへ来ている要旨にはそう書いてあります。要旨ではなくて現物が大蔵省に行っているでしょう、銀行局へ。同じ文章ですか。それとも大蔵省が持っている報告書はもっと本当は知っていたのだというようなことが書いてあるのですか。そこは大事なところなのですよ。答弁してください。
  229. 内藤純一

    ○内藤説明員 私どもが受け取っております報告書でございますが、基本的にはこの要旨と記載において変わるところはございません。そのように認識しております。  したがいまして、この問題については、先ほど申し上げましたが、この取引がこういった担保の事後徴求である、非常に適正を欠いた取引であるということについては、少なくとも銀行の公共的な性格から考えまして、大いに問題があるということで、その他の諸事実ともあわせまして、行政処分を下したというところでございます。
  230. 木島日出夫

    ○木島委員 質問に答えてくださいよ。そんなことを聞いていないのですよ。不正な融資だったのは明らかでしょう、そんなことは。時効だから起訴されていないだけですよ。  こういう融資をして、小池が四社の三十万株ずつそれぞれ買うことが小池に株主総会での代表取締役取締役の解任請求権を与える。大変な武器を与える。第一勧銀の幹部がそういう意味を知って融資したのか、知らずに融資したのか、決定的に重要なことですよ。知って融資したんだったら、第一勧銀はそれ以後の野村証券その他の事件の重大な共犯者ですよ。むしろ、野村その他四大証券は被害者かもしらぬ。第一勧銀が、こんな武器を小池に与えることはまかりならぬということで融資をとめたら、担保ゼロですから、買った株が担保ですから、融資する義務ないんですから。  共犯者に、共犯者というか、むしろ主犯ですね、四大証券事件の主犯になるかならないかの重要な勘どころについてこの報告書は、第一審査部は、正確に言います。「なおその際、審査第一部は三十万株の保有が持つ意味には思い至らなかった。」という言葉。これを信用しているんですか大蔵省。その一点について聞いているんですよ。  信用して処分したんですか、それとも、これは信用できないから調査しましたか、第一審査部の幹部なり、あるいは当時の第一勧銀トップを。それをやらないでもし処分したとしたら、本当に大蔵省の処分というのはいいからかげんな処分だと言わ、ざるを得ないですね。
  231. 笹川堯

    笹川委員長 大蔵省内藤銀行課長、質問者に丁寧に答えてください。
  232. 内藤純一

    ○内藤説明員 この報告書でございますけれども、これは銀行法二十四条に基づきまして、基本的には行政調査という形で銀行に対して求めまして、それで、銀行の中で行内の調査委員会というのをつくりまして、この行内調査委員会の、種々限界がございますけれども、その中で関係者にも当たり、そしてまたその当時の記録も当たり、そして作成をして提出をしてもらったというような報告書でございます。  したがいまして、この記述でございますが、今委員御指摘の点でございますけれども、これにつきましては、私どもとしては、これ以上、違法性があるかどうかということは大蔵省として判断する立場にないということで、少なくともこの問題については、適正を大いに欠いたという問題と、その他の違法性の問題ございますので、それを踏まえて行政処分というものを下したというところでございます。
  233. 木島日出夫

    ○木島委員 大蔵省は調査する立場にないなんてとんでもないことですよ。行政処分のための調査でしょう、これは。そうでしょう。犯罪捜査のための調査じゃないんですよ、行政処分のための調査です。それで、どういう行政処分をするか。まさに第一勧銀がどういう不正な融資をしたか。不正というのは、単に法律に違反するかどうかじゃない、その融資がどういう意味を持つか。決定的に重要なことでしょう。  それで、大蔵省の銀行局なり証券局は、当時、野村を初め四大証券が発行済み株数が何万株であったか、そんなのすぐ、百も承知でしょう。三十万株が商法上どういう役割を持つか。いろいろあります、発行済み株数の百分の一ならどういう権限がある、百分の三持てばどういう権限がある。全部皆さん知ってるでしょう、私も知っていますよ、総会屋ならだれでも知っている、銀行の総務部ならだれでも知っている、融資の担当者ならだれでも知っていること、一目瞭然なんですよ。しかし、「思い至らなかった。」と書いてある。処分をするのに聞いて当然じゃないですか。これを信用して聞かなかったんですか、審査部の幹部に。
  234. 内藤純一

    ○内藤説明員 私ども、この調査報告書につきましては、この調査を進めていく中で、もちろんこれは非公式でございますけれども、銀行側といろいろ話し合いを持ちまして、その中で、調査の進捗状況等を把握しながらこの調査報告書の作成を進めてもらうという形の指示をいたしました。  その中ではいろいろやりとりございまして、先生の御指摘の点も我々としては話し合いを持ったというふうに記憶しておりますけれども、そういう話の中で、全体としては銀行側においては最終的にこういった形の認識までにとどまったというふうに考えております。
  235. 木島日出夫

    ○木島委員 今、話し合いを持ったと言いますが、だれとだれの話し合いですか。この調査報告書あるいは中間報告を受けて、大蔵省の銀行局の幹部と第一勧銀の担当者との間で話し合いを持ったということですか。はっきりしてください。
  236. 内藤純一

    ○内藤説明員 これは、私どもの銀行課の担当者、私も含めまして担当者が相手の銀行の担当者と話し合いをしていたということでございまして、かなり実務的な問題でございますので担当者ペースで話をしていったというふうに記憶しております。
  237. 木島日出夫

    ○木島委員 じゃ、そのときに、その第一勧銀の担当者は、この最初の一番大事な出発点の融資ですね、第一審査部は三十万株の保有の持つ意味には思い至らなかった、その点についてはどういう答弁だったですか。あなた詰めたんでしょう。
  238. 内藤純一

    ○内藤説明員 ですから、その点につきましては、向こう側としてはいろいろ関係者に当たり調査をしましたけれども、これについてはこういった表現が、現在その調査委員会として把握したところであるというふうな説明を受けたところでございます。
  239. 木島日出夫

    ○木島委員 じゃ、もう質問を変えますが、客観的に見て、いろいろなその当時の状況、大蔵省全部つかんでおると思うんです。こういう言い方ですね、第一勧銀の報告書、三十万株の意味には思い至らなかったというような報告書。国に対する報告ですよ。これは信用できますか、今あなた。今も信用していますか。答弁してください。
  240. 内藤純一

    ○内藤説明員 この報告書につきましては、やはり我々としては、調査を第一勧業銀行としても行い、その中で提出されたものとして受け取っております。したがいまして、現在においては、きちっと法律に基づく報告書ということでございますので、そのような内容であるという形で我々としては受領をしたということでございます。
  241. 木島日出夫

    ○木島委員 もうだれが見たってこんなこと信用できるはずがないですよ、それは。その道のプロなんですから、みんな。そんないいかげんな報告書を受けて、ちょっと詰めた、論議もした、それはもう信用できる、いまだにそうあなたおっしゃる。そして、それを前提にして、先ほど私に言ったような程度の処分をして終わりにする。こんな大蔵行政というのは私はないと思うんですよ。  やり直ししていただけませんか、これが本当なのかどうなのか。今起訴されているかもしらぬです、しかし検察のお許しをいただければ担当者全部呼べるわけですから。本当に第一審査部の融資担当者は思い至らなかったのか、あるいは、この融資に対して、当時のトップ代表取締役社長は知らなかったのか、関与していたのかしていないのか、それも書いてないんです、これ。それ、調べ直していただけますか、調べ直すべきではありませんか。
  242. 内藤純一

    ○内藤説明員 この第一勧業銀行の問題につきましては、私ども、これを行内調査委員会の中で、極めて中立性のあるメンバーを銀行側で選別していただきまして、その中で、弁護士も含めて厳正に調査をしたというふうに考えております。  したがいまして、この内容につきましてはもちろん、かなり古い時代における事柄もございますので、その中で最大の努力をして調査報告書を出してきたというふうに考えております。  したがいまして、もちろんこれは、先ほど申し上げましたように、罰則で担保されている正式の報告書でございますので、この内容につきまして仮に問題がある、あるいは虚偽があるということになりますと、新たな問題が発生するというふうに考えております。
  243. 木島日出夫

    ○木島委員 大体、担保もなしに約三十二億円もの融資が、企業トップの了解なしにやれるなんていうことはあり得ないんです。しかし、この報告書は、企業トップなんて出てこないんですよ、総務部と第一審査部だけですよ。しかも、この融資というのは日本円で融資されたんじゃないんですよ。何か外国の外貨手形貸し付け、USドル一千五百三十八万二千ドルの手形、そういう普通じゃない貸し付けの仕方ですよ。  私はもう言いませんが、もうこのこと一つとってみても、やはり大蔵省の調査は全然不十分、しかもまともな調査をしてないと言わざるを得ませんので、もうこれだけで時間がなくなっちゃうといけませんから、次の質問に参ります。  この次の問題として、これも起訴事実ではかかわらないところでありますが、いわゆる山梨県のゴルフ場投資資金としての融資問題が書かれています。これは、平成二年十月にゴルフ場投資資金として小池に十六億円を融資した、同じく平成二年十一月、翌月、大和信用が、第一勧銀直では貸し付けができないというのでこれを迂回させたわけですが、これに約十六億円を融資したと書かれております。担保は何かといいましたら、そのゴルフ場会社の全株式とゴルフ場の会員資格保証金証書だというんですね。これは、もう既に、前に事件がありまして、こういうゴルフ場造成のための会員資格保証金証書なんというのは担保価値はゼロだということは、日本の検察当局が起訴した事件でもはっきり言っているんですよ、冒陳で。これは無担保じゃないですか。  今このゴルフ場はできていますか。調べていますか。
  244. 内藤純一

    ○内藤説明員 営業をしていないというふうに認識しております。
  245. 木島日出夫

    ○木島委員 ゴルフ場なんかできてないんですよ。  この報告書によると、ゴルフ場の親会社L社という、名前を伏せてありますが、平成四年四月破産申し立てをして、同年十一月破産宣告を受けたと。だから、これも本当に、三十二億円全く無担保で金が出たということだと思うのです。しかし、これは起訴されておりません。  それから、私は、本件公訴事実に係る問題について、次に質問をいたします。  公訴事実をもうちょっと詳しく私が言いますと、既に平成四年九月ごろまでに、第一勧業銀行から同銀行の株主である総会屋小池隆一に対する小池名義及び株式会社小甚ビルディング名義の融資の返済がもう遅延したと。これは検察庁の起訴状ですよ。もう返済が遅延した、担保物件の評価額も融資残高を著しく下回った。もう担保が下回ってしまってどうしようもない。回収不能が見込まれ追加融資し得ない状況にもあったにもかかわらず、同銀行の株主総会での議事が円滑に終了するよう小池隆一の協力を得ることの謝礼の趣旨で、あえて迂回融資及び実質的な債務保証の方法により同人小池に金融の利益を供与しようと企てて、その情を知らない大和信用株式会社の担当者らとの間で、先ほど御答弁の五十二回にわたって百十七億八千二百万円が融資された。それが商法違反だというので、今起訴されているわけであります。まさにこれから裁判なわけであります。  この問題についての報告書を私もずっと全部読んだのですが、もう返済も滞った、もう担保も下回ってしまった、回収不能が見込まれた、もう追加融資がし得ない状況にもあった、もう出せない、それでも出した。第一勧銀の名前では出せない、それで、子会社である大和信用株式会社を引っ張り込んでその名前で迂回融資する。なぜそういうことをせざるを得なかったのか、全然書いていないんですよ。全然書いていないんです。  それを、要旨じゃなくて、大蔵省に行っている報告書には書いてありますか、なぜこんな犯罪を犯さなくてはいけなかったのかの本当の理由。どうですか。答弁してください。
  246. 内藤純一

    ○内藤説明員 委員の御指摘の点でございますが、これにつきましては、九七年、本年の第一勧業銀行のディスクロージャー誌で、その状況についての記述がございます。  第一勧業によりますと、昭和六十年に、元出版社社長の紹介によりまして、小池隆一の実弟である小池嘉矩との取引を開始したものでございますが、本件は、総務部門が、元出版社社長が歴代トップと長期にわたり親密な関係を有し、同行の上層部に強い影響力を持っているとの風聞に影響され、不透明な取引の継続を審査部門に要請したこと、審査部門も総務部門の要請に対し妥協的な判断と対応を行ったこと、また、このような巨額で不透明な取引が長期間継続して行われていたにもかかわらず、取締役会、常務会等において報告されることなく、その結果、組織上のチェック機能が十分働いていなかったことなどが、こうした関係を生ぜしめた原因であるということでございます。
  247. 木島日出夫

    ○木島委員 私は、その問題で、先ほどしつこく、当時の奥田頭取が全部の犯罪についての共犯者として立件されておる、五十二回、百十七億八千二百万円分全部奥田頭取だけは共犯者になっているという問題について、この報告書の矛盾を指摘します。  この報告書は、「奥田頭取(当時)への報告」とあって、第百項目になっていますが、こういう記述があるのです。奥田頭取が報告したという趣旨ですが、「平成七年一月から二月、」ちょうど起訴に当たる部分です。「審査担当役員から自分に」、奥田、「自分に「総務部がらみの融資があっていろいろ考えている。元出版社社長の紹介案件である。延滞している」との話があった。」そういう話はあった。トップ自分にあった。しかし、その後が大事なんです。「具体的な資金使途、債務者名、担保等は話が出なかった。」だから、奥田頭取は知らなかった、そういう記述が堂々と書いてあるのですよ。  これが本当だったら、私は、検察は奥田頭取を全部共犯者として起訴できないと思うのですよ、知らないのですから。だから、矛盾していると思うのですね。  今、あなたの答弁によっても、何か第一勧銀トップは知らされていないかのごとき答弁だったでしょう。どうなんですか、本当のところは。奥田頭取は全部について、平成六年七月から平成八年九月までの融資、五十二回、百十七億八千二百万円分全部について担当者から逐一報告を受け、承諾を出し、融資が出ていたんじゃないですか。だからこそ起訴されたんじゃないですか、全部について。どうなんですか。答弁してください。
  248. 内藤純一

    ○内藤説明員 その点につきましては、私ども、先ほども申し上げましたように、この行内での調査委員会の報告書によりまして把握をしておるという以上の事実は、持ち合わせてはおりません。  行内の調査委員会におきましても、もちろん種々の資料に当たりまして全力を挙げて解明をしたわけでございますけれども、特に奥田頭取に関する問題につきましては、刑事事件という形でございますし、この一定の制約の中で把握をしたものが、今委員御指摘の点、こういった形の報告書を受けているということが、いわばその限界的なものであるというふうに了解しております。
  249. 木島日出夫

    ○木島委員 第一勧銀に係る起訴は、非常に綿密です。具体的な名前は伏せますが、被告人だれだれにおいては平成何年何月から何月までの何回分について幾ら、被告人だれだれにおいてはいつからいつまでの何回分について幾らと、個別的に立件されています。よその頭取なりがやったことについては、立件されていません。それは厳密ですよ、検察は。しかし、奥田頭取だけは全部について共犯なんですよね。  では、法務省に聞きましょう、刑事のプロ。  もし、奥田頭取が、自分が具体的な資金使途や債務者名や担保を何にも知らなかったのに部下が融資してしまった、共犯を問えますか。
  250. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。  検察官におきましては、強制処分等を含む捜査権に基づきまして、証拠に基づきまして認定した事実に基づいて公判請求をしたものと考えておりますので、その事実の詳細、その背景、事情を含めまして、これから公判が行われまして、検察官といたしましては、冒頭陳述によりまして、証拠によって証明しようとする事実の概要を裁判所に提示いたしまして、それを証拠に基づいて証明していくという運びになろうかと考えております。
  251. 木島日出夫

    ○木島委員 具体的には答えないから、刑法の一般理論を聞きますよ。共犯の一般理論を聞きますよ。  銀行の頭取が具体的な融資を知らないで、下部が不正な融資をしたという場合に、共犯を問えますか。共犯の一般論。皆さん、プロでしょう。一般論ですよ。銀行の頭取が下部が不正融資したのを知らなかったのを共犯に問えるか。
  252. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 具体的な事実の当てはめ問題でございまして、さらに、その融資に関する責任につきましての共犯関係がどのぐらいに及ぶかという点は、まさに積み上げられていく個々の事実を総合して判断すべきものと考えます。
  253. 木島日出夫

    ○木島委員 一般論ですよ、大学の授業ですよ。だれか答えてくださいよ。一般論ですよ。共犯問えますか。
  254. 笹川堯

    笹川委員長 刑事局長、一般論と言っています。
  255. 木島日出夫

    ○木島委員 一般論で、問えますか。銀行のトップが知らないで、下部がやった不正融資に対して共犯問えますか。
  256. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 共犯としてその犯罪を問擬されている各人各人につきましては、全体についての状況について認識があり、それについて犯罪に加功したということを前提に検察官は起訴をしたものと考えております。
  257. 木島日出夫

    ○木島委員 じゃ、丸ごと知っていた、そういう場合に共犯問える、全体の犯罪を知る立場にあったという場合に問えると。そうすると、この報告書と違っできますよね。私、違ってくると思うのです、大蔵省と違ってくると思うのですよ。  私は、第一勧銀大蔵省に出した報告書は、非常にいいかげんなもの、検察は、その後徹底して捜査して、奥田前頭取も全部について立件できる、共犯だと認定して起訴したのだと思います。これから公判始まりますから、私はしゃべりません、微妙ですから。しかし、少なくともこの大蔵省に対する第一勧銀の報告書は不十分ですよ、真相を語っていないのじゃないでしょうか。大蔵省、どうですか。
  258. 内藤純一

    ○内藤説明員 私どもの調査は、あくまでもこの行政処分といったものを行うに当たりまして、その実態を把握するという目的で、基本的には任意で、相手の同意を得ながら調査を進めまして、そこで、行内調査委員会の中で内容を固めまして、報告を受けたというふうに認識をしております。したがいまして、その中で把握をし得た事実についても一定の限界はあるということは認識をせざるを得ないというふうなことで報告書を受けております。  しかしながら、この報告書につきましては、あくまで法律に基づく報告書でございますので、仮に虚偽等がございましたら、それは虚偽を犯したということで、新たな処分の対象になるというふうに考えております。
  259. 木島日出夫

    ○木島委員 きょうは野村証券についてもいろいろお聞きしたがったのですが、もう時間がなくなってしまいました。一点だけ、証券局をお呼びしていますので。  野村証券の問題については、いわゆるVIP口座の問題が大きな問題に国会でもなりました、処分がされました。もう時間がないから言いません。野村についての調査は、VIP口座、どういう口座があったのか、どういう属性の人間に対してどういうくくり方をVIPとしてしてたのか、調査していますか、大蔵省証券局。
  260. 小手川大助

    ○小手川説明員 議員御承知のとおり、前回の証券不祥事の後に証券取引等監視委員会が設立されまして、そのときに、いわゆる不正取引にかかわる調査につきましては、委員会の方でという役割分担になってございます。  今回につきましても、したがって、もし違法な取引があればそれは監視委員会の方でVIPという名前にかかわらず行われていると信じているところでございます。
  261. 木島日出夫

    ○木島委員 今、何か証券監視委員会の方にゆだねちゃったような答弁でありますが、権限は確かに監視委員会に渡しているのですが、大蔵本省は権限があるのですよ、調査権限あるのですよ、残しているのですよ、ちゃんと法律で、証取法で。 私はやっていないと思うのです、VIP口座に関する調査を。  そういう決定的な大事な問題について、真相解明もしないで、野村証券に対しても処分が行われている。まことにずさんな処分だ。これでは、野村証券から大蔵省に対して、九月ですか、業務改善報告が上がりましたよ。だけれども、この決定的な大事な問題を伏せておいて、幾ら反省しますなんと言ったって、そんな、反省するはずないんですわ。  きょうは野村証券問題やれませんでしたが、この調査が全く不十分だということを大蔵省は理解をされて、徹底して、まだ終わったわけではないわけですから、調査を詰めて、今までの処分がもし軽過ぎるというのだったら、きっちり処分をし直していただきたいということを要望いたしまして、国税当局と警察をお呼びしましたが、前半時間がとられて質問することができなかったことをおわび申し上げまして、時間ですから終わります。
  262. 笹川堯

  263. 保坂展人

    ○保坂委員 社民党の保坂展人です。  一昨日の当委員会におきます審議の中で、私は、先ほどの話題に上がっていた、第一勧業銀行の大蔵検査のさなかに接待が行われていたという事実をただしました。これに関して、渡辺書課長の答弁の中で、私は、田谷・中島問題以降一連の不祥事、これに対して省内できっちり調査をし、そして法的な報告をなす用意があるかどうかという質問をしましたが、お答えは、今のところ消極的に考えております。これ、間違いありませんか。撤回されませんか。こんな答弁で通用すると思いますか。
  264. 渡辺博史

    渡辺説明員 先日の御質問に対しまして、私の言葉が足りなかったところもあるかもしれませんけれども、全体について改めて文書において報告を行うということを考えているかという先生の御質問に対しましては、今のところ消極的に考えておりますとお答えしたことは事実でございます。
  265. 保坂展人

    ○保坂委員 先般、木島議員から、第一勧業銀行の調査についてのやりとりがありました。非常にずさんだと。しかし、その調査報告というのを大蔵省が、しかも金融ビッグバンを控えて、そしてこの商法改正総会屋あるいは癒着した企業社会的なルール、規範をきっちりはめていこうというときに、こういう答弁をして、どうなんですか、これは。要するに、公的な文書で残せない理由、発表できない理由というのをはっきり言ってください。
  266. 渡辺博史

    渡辺説明員 お答え申し上げます。  先日の御質問の中で、一連の不祥事ということで幾つかの件についての御質問がございまして、私どもの方といたしましては、それぞれの問題につきましてはそれぞれの時点において調査を行い、その調査の結果に基づいてそれぞれ処分が必要なものについては処分を行う、その時点におきまして必要な情報につきましてはそれぞれ記者発表等も行っておりますし、国会委員会において御質問があった場合には詳細にお答えする、あるいは、事の重要な場合においては委員会冒頭において大臣の方から積極的に御説明を申し上げるという形で対応しているところであります。  それを、現段階において、さかのぼって全体について文書をとりまとめて、改めて公的な報告、公的なという意味が必ずしも判然といたしませんが、そういうことを行うということについては消極的に考えておりますと申し上げたところでありまして、先生御指摘のように、さまざまな問題がこれから起こっていく中で、実態についてどうなっているか、不祥事があった場合あるいは不祥事があるのではないかという情報を得た場合において、それにつきまして必要な調査を行い内容を解明していくということは我々としても必要だと思っておりますし、これまでも行ってきているところであります。  それで、既に行いました処分に関連することでありましても、新しい事実、我々がその時点において把握していない新たな事実が発生した場合においては、それに基づきまして改めて調査を行うということは、我々としても当然ということで思っておりますが、先生御指摘のように、一連の大蔵省不祥事について、全体をとりまとめて今の段階で文書を作成してということについて行うことは考えておりません。
  267. 保坂展人

    ○保坂委員 これは、ことしの七月三十日の朝日新聞なんですが、渡辺書課長のコメント。これは新聞が違うように書いたというならそういうふうに言っていただいてもいいのですが、この例の接待の問題ですね、大蔵検査時の。「九四年であれば、倫理規定制定以前で、程度の問題。過剰であるかどうかは皆さんの判断でしょう」そして、「一応調べては見る」というふうにお答えになっている。そして、この記事の中では、いわゆる大蔵検査の当事者が検査後にゴルフ接待を受ける。ゴルフをやって相手が代金を払えばこれは接待です。これに関して、「検査に一区切りがつき、改善点を話し合うため、誘われたと認識している」、こういうふうにあるんですが、この認識は大きく変わりましたか。
  268. 渡辺博史

    渡辺説明員 お答え申し上げます。  記憶が正しければ今の記事は朝日新聞の記事かと思っておりますが、まず前段におきまして程度問題という表現を使っておりますけれども、私が申し上げた趣旨は、平成七年五月以降さまざまな、中島・田谷問題等もありまして、私どもでは「綱紀の厳正な保持について」という通達を発出いたしまして、それに基づきまして綱紀の保持を図っているわけでありますが、そういう前の段階において、正直申し上げまして、一般の行政に携わる者が民間の企業と会食をともにしていなかったということを申し上げるつもりはありません。まさにその時点においての常識というものについて、それに即しているかどうかということを考えなければならないということを申し上げたわけでありまして、検査に行っている者が検査期間中にどうのこうのということについて程度問題というコメントをした記憶は全くありません。  それにつきましては、まさに申し上げましたように、我々としても検査期間中に検査に行っている者が、あるいは講評を十二月に終えておりますが、実際上文書において示達を行いましたのが翌年五月でございますから、それまでの間に会食をともにする、あるいはゴルフを一緒に行い、いずれも経費は先方が持っている、あるいは融資先の企業への工場視察に赴いた際にその車の中で缶ビールを飲むといったこと自体がいいかどうかということにつきましては、我々としては適当ではないというふうに思っているところでございます。
  269. 保坂展人

    ○保坂委員 ちょっと短目に答えてください。  それでは、先ほど、その都度何かがあったときには記者会見しているんだ、調査する必要があれば調査するんだというふうなお答えでしたけれども、この大蔵検査時における接待の総額は幾らでしたか。お調べになったと思うので答えてください。
  270. 渡辺博史

    渡辺説明員 お答え申し上げます。  それぞれのものにつきましてどのようになっているかということについて大体の感じをつかんでおりますが、実は第一勧業銀行の方に対しまして、これこれというところのこれこれの日時において会食を行っている、したがって、それについて本人にどの分が帰属するかということを回答してほしいということで私どもの方から七月の段階からお願いをしているところでありますが、第一勧業銀行の方からは、現在の段階においては書類をすべて検察にお持ちいただかれているので確たる数字を申し上げることはできないというふうに回答を受けております。  しかしながら、そのままで放置はできませんので、とりあえず現段階においては、当時国家公務員法上の処分を受けました二名の元管理課長及び上席の検査官につきましては、一名については会食のみでありますので現在五万円をとりあえず、供託というと変な形ですが、先方にお渡しいたしまして清算をしていただくようにお願いしておりますし、ゴルフを行いました者につきましては現在十万円をお渡しして清算をお願いしているというところであります。もちろん過不足が生ずればそれについてそれぞれ金額を確定していただければと思っております。  そういう全体でございますので、今の段階において全体で幾らであったかということは私どもの方も調査をできませんし、第一勧業銀行も現段階では私どもに対して回答いただける状況にはなっていないということであります。  ただ、私どもとしては、先ほど申し上げましたようにその確定をする必要があると思っておりますので、先方に対してはなるべく早い段階で確定をいただければありがたいということでお願いをしている状況でございます。
  271. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、法務省刑事局長に伺いたいのです。  これは民間、例えば海の家の問題とかでも、要するに日がわりメニューでそれこそ逮捕されているわけです。それでは、中央省庁の最も金融・証券の元締めであるところの大蔵省、今のお話だと大体見積もってお返しすると。お返しするとこれは問題なくなるんですか。何かをもらって、これは例えばわいろになりそうだという疑いが御自身で生じたときに、あるいは社会的非難を浴びそうだ、浮上したというときに返すというと、それはなしになってしまうんですか、お答えください。返せば問題ないかどうか。
  272. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 一般的に申し上げまして、贈収賄罪の成立というのはその時点で判断されるべきことでございまして、委員御指摘のように、仮に犯罪を構成するような事実があったとして、返したらすべてそれについて問擬されることはないというものでは一般的にはないだろうと思います。
  273. 保坂展人

    ○保坂委員 一昨日も伺いましたが、大蔵省では紀律保持委員会をつくられているんですね。紀律保持委員会をつくられて、その責任者は、ことし前半、涌井官房長だったわけですね。この涌井官房長が泉井被告から絵を贈られた。そして、今まさにおっしゃったとおりお返しになったこの問題なんですけれども、具体的に、いついただいて、これは結婚祝いというふうに聞いていますけれども、いつ返却をしたのか、その絵の金額と種類は何だったのか、調査なさっているでしょうから、ぜひお答えいただきたいと思います。
  274. 渡辺博史

    渡辺説明員 お答え申し上げます。  涌井当時の官房長に対しまして泉井氏から結婚祝いということで贈られたものがありますが、本人の記憶によりますと版画、本人というのは涌井の方の記憶によれば版画を贈られたということでございます。それで、翌年の十月二十七日に返却をした、いわゆる宅急便の配送の記録を保持しているということでございます。
  275. 保坂展人

    ○保坂委員 といいますと、平成七年十月に絵画を贈られた、そして大体一年たって返したということですね。違っていたら後で訂正してください。  そうすると、平成七年三月十三日に中島・田谷問題で訓告が出ていますね。そして平成七年三月十七日には武村大蔵大臣が訓令を出して紀律保持委員会をつくるべしとやっている。そして平成七年五月二十九日にはこのような批判を受けることがないよう大蔵省職員の綱紀を保持していくということを発表されている。さらに平成七年九月八日には涌井官房長自身が厳重注意を受けている。この厳重注意の内容というか、何で注意されたんでしょうか。
  276. 渡辺博史

    渡辺説明員 お答え申し上げます。  平成七年九月八日に涌井官房長が処分を受けましたのは、中島前主計局次長の処分に係る綱紀の保持の責任者としての厳重注意を受けているということでございます。
  277. 保坂展人

    ○保坂委員 処分をされて一カ月ほどして絵を受け取ったということで確認できるんですね。  そうすると、その綱紀粛正というのは本当に意味があるんですか。その方が紀律保持委員会責任者でしょう。何か紀律保持委員会の中でこれをやったんですか、調査あるいは議論。答えてください。
  278. 渡辺博史

    渡辺説明員 受け取った時期が十月であるか十一月であるか、ちょうど結婚式が十一月十日であったかと思いますのでその前後であったと思いますが、その時点で受け取っていたという事実でございます。  考え方としては、すべての方から結婚祝いを受け取るのが適当でないかどうかというそこの判定をどう考えるかということでございますけれども、泉井氏の場合においては、少なくとも大蔵省の所管する行政においていわゆる関係業者あるいは所管業種の経営者ではないということも踏まえて考えれば、その時点において受け取ることがいいかどうかというのは、単に名目もなく受け取る場合とは若干様相が違うのではないかということではあります。  しかしながら、まさに先生御指摘のように、官房長ということで全体の綱紀あるいは服務保持の責任に当たる者として、それほど親しくもない者から特に版画あるいは絵画といったような形で、雑誌等にも書かれておりますが、価格の判然としないものを、幾ら結婚祝いのためとはいえ受け取ることは適当でないということで、いわゆる軽率のそしりを免れないということで、翌年一月に大蔵大臣の方から口頭で注意を受けたということでございます。
  279. 保坂展人

    ○保坂委員 時間が本当に短いので、もっともっと聞きたいのですけれども。  法務大臣に伺いたいのですけれども、今回の商法改正で、総会屋あるいは組織暴力あるいは企業の腐敗、こういったものを正していくんだということと関連して、これまでの大蔵省に対する幾多の疑念、そして強い疑問を示したわけですけれども、法務省もいろいろ予算が厳しい、そしてその予算を握っているのは大蔵省であるというようなことは、まさか法務の法務大臣として影響を受けずに、これは悪いものは悪いということで、きっちり正していただく決意があるかどうか、ぜひ語っていただきたいと思います。
  280. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 御説のとおり、当然のことでございます。
  281. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、威迫という概念について、この法改正で非常に気になっているのでお聞きをしたいのですけれども、威迫という概念、これは極めて言葉上からもなかなかあいまいな響きがある、脅迫まではいかないけれども威迫だ。具体的にこの威迫というのをどのような規定で考えておられるのか。  そして、我々の懸念は、消費者運動あるいは市民運動あるいは労働組合運動等に濫用される心配はないのかどうか、ここはしっかりお答えいただきたいと思います。
  282. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。  ただいまお尋ねの威迫という言葉は、一般的に人に不安、困惑の念を抱かせるに足りる行為であると解されております。他の法律にも多数の用例がございまして、判例においても、いわば刑事司法上はあいまいな概念ではないとされているところでございます。ただ、具体的な当てはめのところでは、種々の状況が考慮されますので、具体的に証拠に基づいて判断されるということになるだろうと思います。  そこで、お尋ねは、この新たな威迫を要件とする罰則規定が、他の正当な運動まで適用される心配はないかという点でございますので、この問題とされている規定は、利益受供与罪要求罪がまず成立することが前提とされております。これらの罪は、株主の権利の行使に関しまして利益の供与を受けたり、またはこれを要求することにより成立する罪でございまして、「株主ノ権利ノ行使ニ関シ」とは、株主の権利の行使、またはそれを行使しないことに対する対価の趣旨で行われたということを意味しており、例えば、株主総会会社に有利な発言をしたり不利な発言をしないようにすることの見返りの趣旨で、財産上の利益の供与を要求する場合がこれに該当するというふうに解されます。  これに対しまして、労働組合あるいはその他の市民運動に係る会社に対する正当な要求は、このような趣旨のものではないという点におきまして明確に区分することができると考えられますので、威迫を要件とする罰則規定がそのような正当な運動行為自体に適用される懸念はないと考えております。
  283. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、時間が迫りましたので、もう一回先ほどの大蔵省に戻りますけれども、いろいろ疑念は挙げましたけれども、今後、きょうから情報公開に努めて、広く国民に不信の念一つでもないように、すべて公開をしていく、調査をしたら調査報告をつくって国民だれもが見れるという姿勢に転換されるお気持ちがあるのかないのか、それだけもう一回確かめたいと思います。
  284. 渡辺博史

    渡辺説明員 私どもも、いろいろな形で、公務の執行に当たって国民から疑念を抱かれるようなことがあってはならないという見地からは、綱紀の保持に今後とも十分努めてまいりたいと思っております。  また、さまざまな問題が指摘され、あるいは提起された場合には、それに基づきましてきちんと調査をしていこうということで考えておりますが、ただ、文書において報告をするというのは、どういう形でということの問題もございますので、今こごで即断を申し上げることはちょっと行えません。(保坂委員方向性」と呼ぶ)  いろいろな形での御質問、例えば記者会見等、例えば中島氏の問題等の場合には、前後七、八回にわたりまして、延べ十時間とは言いませんけれども、それ未満の形でいろいろな質疑応答を受けておりまして、それぞれについて私どもでわかる限りにおいて回答をしておりますけれども、そのものについてどれだけのものをまとめるかということもございますので、今の段階では、文書で必ず報告をするというお約束はちょっとしかねるということで御理解をいただければと思っております。
  285. 保坂展人

    ○保坂委員 全然理解できませんね。情報公開の時代で、そして、そんな記者会見したって、いる記者はわずかなわけです。新聞記事というのは、ほんの一握りなわけですからね。  そういうことで、本当に社会的にルールを新しくつくろうというこの法案審査中に、やはり、少なくても、消極的でありますとか、今のところ考えておりませんということを繰り返して済む問題ではないということを、きょう午前、午後の参考人質疑でも明らかになったと思います。だから、そこはぜひ大きく転換をしていただかないと、これは法の厳罰化ということだけでは、総会屋を生んでいくこの国の体質というのは変わらないという点を強く申し上げて、時間が来たようでございますから、私の質疑を終わりたいと思います。
  286. 笹川堯

    笹川委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  287. 笹川堯

    笹川委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  内閣提出商法及び株式会社監査等に関する商法特例に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  288. 笹川堯

    笹川委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  289. 笹川堯

    笹川委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、赤松正雄君外六名から、自由民主党、新進党、民主党、日本共産党、社会民主党・市民連合、無所属クラブ、新党さきがけの共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を聴取いたします。赤松正雄君。
  290. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し趣旨の説明といたします。     商法及び株式会社監査等に関する商法特例に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   本法の施行に当たっては、政府は次の事項について格段の配慮をすべきである。  一 企業経営者株主総会のあり方についての意識改革を徹底して進めるとともに、監査役及び会計監査人による内部チェック機能を充実させるべく法的、行政的体制の整備に一層努めること。  二 企業責任者に対するいわゆる総会屋あるいは暴力団による脅迫や殺傷事件については、当局として、その根絶を期し、徹底的な捜査、検挙を行い、いやしくもこれが未解決のまま放置されることのないよう努めること。  三 利益供与要求罪の運用に当たっては、株主権の正当な行使や市民、労働、住民運動を不当に阻害しないようにすること。  四 株主、債権者等の保護並びに企業経営の健全化を図るために、企業がディスクロージャー(企業情報の公開)を十分に行うよう指導に努めること。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  291. 笹川堯

    笹川委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  292. 笹川堯

    笹川委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。下稲葉法務大臣。
  293. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。     —————————————
  294. 笹川堯

    笹川委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  295. 笹川堯

    笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  296. 笹川堯

    笹川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時二十分散会