○西
委員 大臣、就任おめでとうございます。ともにまた次の
教育の
改革を目指して、私
どもも頑張ってまいりたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
私は、きょうは特殊
教育について、大臣並びに関係の皆さんに質疑を申し上げたいと思います。
このきっかけは、実は私は和歌山県の広川町というところに生まれてずっと住んでいて、四年前までおったのですけれ
ども、その出身の小さな
中学校、広川町立津木
中学校というのですけれ
ども、そこの
中学校三年生に二人の障害者がおられます。まさお君とまこと君という二人の障害者なのですが、小さなころからずっと私もよく知っております。
その
子供たちがことし卒業に当たって、幸いにして、去年、ことしと
文部省の指定研究校、特殊
学級の
教育に関する
調査研究の指定校になっておりまして、その発表会が今月の初めにございました。地元だからということで呼んでいただいて一緒に勉強させていただいたのですけれ
ども、大変感動したことがございました。
それをきっかけにして、特殊
学級または特殊
教育ということについて少し勉強した結果について、大臣並びに関係者の皆さんと討議をさせていただきたい、この
ように思います。
この
学校自体は、一クラス十人から二十数名という非常に小さな規模の
学校でございます。そんな
学校で、小
学校、
中学校とこの二人はずっと、特殊
学級という形で健常者の生徒と部屋は別ですけれ
ども、同じ
学校でずっと九年間成長してきました。
そんな中で、きょうちょっと参考のためにということでお持ちしたのが、大臣のところにしおりを二枚お渡ししているのですけれ
ども、
一つはまこと君の習字でございます。それからもう
一つが、これがまさお君の字なのです。こんな小さなしおりにしておりますが、本当は大きな立派なものがありまして、先生が立派な装丁をして展示をしておられました。
お聞きすると、普通の生徒さんの五倍、十倍の時間をかけて先生が教えてくださって、こういう字が書ける
ようになった、こういうお話でございました。私は正直、この字を見て、私も芸術的なセンスはないのですけれ
ども、本当に感動いたしました。ここまでの字を書ける
ような
子供に成長したということを、前々からのお二人の姿を知っているだけに、大変感動いたしました。
同時に、ことしうちの小さな田舎に新しい橋ができたのですが、大体両方に銘板を入れますね。その銘板に実は、地元の皆さんの合意のもとに、こちらにまさお君、こちらにまこと君、二人の字を彫り込んだ橋ができたわけです。
そういう
意味で、いろいろな出来事をつぶさに聞かせていただき、日ごろ私も実感をしていることを中心にきょうはお話を申し上げたいな、こういうことでございます。
初めに、特殊
教育の
現状について、私の認識と今後特殊
教育が目指すべき方向性を若干お話をさせていただき、その後、特殊
教育に中高一貫
教育を活用できないか、このことについて
議論をさせていただきたいと思います。
我が国の特殊
教育を概観いたしますと、現在、
義務教育段階の児童生徒で、大変重い病気のために就学義務が猶予されたりまたは免除されて
教育を受けていない人、この数が平成八年五月で二百二十一名全国でいらっしゃる、こういうことでございます。都道府県に割り当てましても数名ということで、大変
充実した
教育が展開されているわけでして、訪問
教育等も
充実されておりますし、特殊
教育の
現状というものを量的に考えてみますと、もうほとんどの人に
教育の手が差し伸べられている、すばらしい成果を上げていると思います。関係者の御努力に心から敬意を表したい、この
ように思うわけでございます。
ところで、私は、今後の特殊
教育の目指すべき道、若干先ほ
ども田舎の
中学校の例を引かせていただきましたけれ
ども、三つのことを考えているわけでございます。
第一点は、できる限り普通
学級で健常者の生徒とともにということでございます。それから第二点が、生まれ育った
地域の中で成長することが大事ではないかということでございます。三つ目が、一人一人を大切に
教育をしていくことが大事だ。この三占を中心にきょうはお話をさせていただきたいと思います。
〔
委員長退席、
河村(建)
委員長代理着席〕
日本の特殊
教育の形としては、盲
学校、聾
学校、養護
学校、いわゆる特殊諸
学校という
学校群ですが、それに特殊
学級、さらには通級による指導、こういう立て分けがあると思います。平成五年度から制度化されました通級による指導、これが導入されておりますことは、私が先ほど申しました健常者とともにという面で大変大きな前進を見ている、こういうふうに思うんです。
文部省では、一人一人を大切に、こういう方針についてはこれまで強く打ち出されてきておりますけれ
ども、初めの普通
学級でということと、それから地元で成長する、この二点については、まだ方向性としては十分打ち出されてはいないのではないか、また、制度的にも十分統一されていないのではないかというふうに感じます。
そのことについて、特殊
教育を受ける生徒の視点から見ますと、小
学校、
中学校段階と
高校段階では、ある種の分断がある
ような気がしてなりません。それは具体的には、
地域が離れてしまう、それから健常者の皆さんとほとんどの人が離れてしまう、さらには
教育機会が離れてしまう、こういうことがあるのではないか、こう思うわけです。
小
学校、
中学校の段階では、
地域の中でという形で、比較的軽い障害を持っている人は、地元の小
中学校に通いながら、特殊
学級という形ででも健常者の皆さんと一緒に地元で
教育を受けることができます。しかしながら、
高校へ進学するときには、
高校に特殊
学級はありませんから、大部分の人は親元を離れて盲、聾、養護
学校に進学していくわけですね。これで第一の分断といいますか、これが起こるというふうに思われます。
平成八年の三月に
中学校で特殊
学級を卒業した人は七千九百四十六名、約八千名が特殊
学級を卒業されております。そのうち、進学の形態を見ますと、普通の
高校へ進学した、これが千六百四十名、約二〇%が普通の
高校です。特殊諸
学校、盲、聾、養に進学した人が四千二百二十四名、五三%ぐらいになります。そういう成り立ちになっているんですが、特殊諸
学校というのは、これはいわば障害者だけの
学校になりますから、健常者から分断をされていくということになります。
これは、まだ詳しくは、また具体的なことはわからないので若干仮定が入るんですけれ
ども、もし、
義務教育と同様に地元の
高校に入学できる制度が保障されていれば、進学をしない人でも地元の、親元から
高校に通うということがもっとふえるのではないかというふうな感じもしております。そういう
意味では、さきの
高校におけるいわゆる特殊
学級の
ような形がないために、生徒の
教育機会を奪っているのではないかということも危惧されるわけでございます。
全く
文部省はこういうことを考えていないかといいますと、そうじゃないと思います。
地域に密着するという点では、交流活動や交流
教育の
充実ということで、盲、聾、養護
学校の児童生徒と通常の小
学校、
中学校の児童生徒、それから
地域の人々との交流が図られておりますけれ
ども、これは障害者と障害のない人とのいわゆる混在化、ノーマライゼーションというものを目指しているわけではなくて、その都度合流するという形のものでしかありません。
私は、盲、聾、養護
学校の果たしている役割を否定するというつもりもありませんし、必要がないというふうに極端なことを考えているわけではございません。そうした特殊諸
学校の必要性を認めた上で、できる限り健常者とともに学ぶ環境、これを目指していくべきではないか、今後、量から質への特殊
教育の
改革を行っていくべきではないかということを主張申し上げたいわけでございます。
それでは、ノーマライゼーションを具体的に
教育の場で進める方法として、私は通級による指導、これがもう大変重要な方策ではないかと思っております。これは、小
中学校の通常の
学級に在籍している障害の軽い
子供、この
子供がほとんどの授業を通常のクラスで受けながら、障害の状況に応じて特別の指導の場を設けて、通級指導教室というんですか、そこで授業を受ける、こういう
教育形態ですね。対象になるのが言語の障害、情緒障害、それから弱視、難聴、こういう皆さんが、補助的にといいますか、特別クラスでその時間だけ特殊
教育を施していただく、こういう形ですが、昨年の統計では、二万人の生徒が全国でこの制度を利用して普通
学級で学んでいる、こういうことでございます。
義務教育段階で、全体のこの特殊
教育の対象者のうち通級で今授業を受けている生徒は、平成五年に始まりましたときには九・三%であったのが、八年には一四・八%に増加をしてきている、こういうデータがあります。今後とも、この制度の積極的な活用を図るとともに、人員配置など支援体制の整備を
文部省当局にお願いをしたいと思います。
私が先ほど
指摘しました小
学校、
中学校と高等
学校の間の分断、いわゆる小中までは特殊
学級として普通の健常者の生徒と同じ
学校で勉強できたのが、
高校ではそういう機会が事実上ほとんどの人が奪われているというこの問題を解消するために、中高一貫
教育の活用が図られるべきではないか、こう考えるわけでございます。
我が党が主張している
ように、原則すべての
学校で中高一貫
教育を導入すれば、今までの
中学校において親元を離れることなく
高校教育が受けられるということになります。
人間は、
社会とのかかわりなしに生きていくことはできないわけですから、精神的にも身体的にも大人への重要なステップである後期中等
教育、この時期こそ、健常者の皆さんとともに地元で勉強する機会が与えられるべきではないか、こう思うわけです。
平成八年五月の総務庁の、障害者の雇用・就業に関する
行政監察の勧告で明らかな
ように、特殊
教育諸
学校のうち、聾
学校以外の盲
学校及び養護
学校の高等部の卒業者の就職は大変厳しい状況にございます。平成八年三月の卒業生の進路を見ると、大学や職業訓練など進学者を除く卒業生の就職率は、盲
学校で四一・二%、養護
学校で三一・二%、その中でも肢体不自由養護
学校は一三・三%、こういうデータがあります。就職で重要なのは
学校と
地域との密着性、ここにかかってくるわけでございます。
さきの総務庁の勧告においても、「現場実習先の確保が就職先の確保に大きな影響を及ぼしている。」こう
指摘をしております。現行では、
地域障害者職業センターと連携を強化する、こういうふうに言われておりますけれ
ども、現実には、現場実習先を確保することすら大変困難で、ましてや養護
学校、聾
学校、盲
学校から離れている生徒の実家の近くで就職先を確保するということはさらに厳しい状況となっています。生まれ育った
地域にある
学校であれば、
地域の実情もよく知っており、人脈もたくさんあります。そういうメリットを生かして現場実習先や就職先を比較的確保しやすいのではないか、こう思うわけです。
地域の中で
教育し就職するという環境を提供できる中高一貫
教育の推進をこの
意味からも進めるべきである、こう再度主張したいと思います。
地域、それから健常者、それから
教育機会、この三つの分断の問題について
文部省の考えをお伺いしたいと同時に、解消策としての中高一貫
教育の活用について当局の答弁を求めたいと思います。