○鈴木(淑)
委員 山口局長は、これは助けてくれと
破綻金融機関の方から頼んできたんじゃないから、当局の方で認定するんだから救済じゃないとおっしゃいましたが、それは
山口流定義だと思うのですね。
債務超過にもなっていない
金融機関に公的
資金を入れて、
不良債権をきれいにしてあげて、さあ継続していいですよというのは、これは立派な救済ですよ、
日本語で言ったら。
こういうことを行政の
判断でやるというところがまたけしからぬ。とんでもないことですよ。どの
銀行について行政は
不良債権をきれいにして継続させてやるか、どの
銀行についてはそうじゃないか、行政が裁量権を持っている。これは
金融行政のこれまでの典型でありますところの裁量的密室指導型、介入型の行政がここでまた出てくるという話で、これはとんでもない話だというふうに思います。極めて不公平な話だというふうに思うのですね。
それで、米国では、やはり最初はそういう発想で救済の話が出てくるわけですね。今
山口局長が言ったみたいに、これはアメリカでは不可欠性原理と言うのですが、今の
預金保険法の条文の中にも出てきますが、地域とかあるいは分野に支障を来すおそれがあるときには救っちゃうということなんですよ、これは。これは非常に行政の懇意が入る話であります。
だからアメリカでは、当初、不可欠性原理でやり始めましたが、極めて不公平だ、行政裁量が入り過ぎるし、救われるところとそうじゃないところとを、それが本当に地域、分野にとって不可欠かどうかと行政が
考えちゃうというのは極めて不公平であるということで、不可欠性原理はだめだということになった。不可欠性原理がはっきり採用されたのは、一九五〇年の連邦
預金保険法制定のときですが、その後、これはだめだということになった。
そして、かわって出てきたのが、八四年のコンチネンタル・イリノイ
銀行の救済のときでありまして、これは例のツー・ビッグ・ツー・フェールの原理が入ってきた。不可欠性なんてそんなあいまいなことで、地域、分野への支障なんというあいまいなことで行政が勝手に
判断しちゃいけない。ツー・ビッグ・ツー・フェールは、とにかく大き過ぎてこれをつぶすと全体の
経済への
影響が大き過ぎるからこれは救うという、ツー・ビッグ・ツー・フェールが入るわけですね。
それで、
三塚大臣もこれまで声を大にして、大
銀行二十行はつぶしませんと言って胸を張っておられた。これはまさしくツー・ビッグ・ツー・フェールだというふうに思います。今度の
拓銀のケースも、私が承知している限り、最後の瞬間まで、マーケットからその
資金供与を拒絶される最後の瞬間までツー・ビッグ・ツー・フェール・ポリシーで救済を
考えていたと私は思いますよ。どうやってこの
債務超過になつちゃった大
銀行を何とかもたせるかという救済を
考えていたと思うんですね。
ところが、このツー・ビッグ・ツー・フェール・ポリシーも、アメリカではその後、これは不公平じゃないか、何で大きいと救われて小さいとだめになつちゃうのという議論が強まって、最近、九一年の例の連邦
預金保険公社改善法、FDICIAができたときに、ツー・ビッグ・ツー・フェール原理の原則禁止が打ち出されるのですね。
そのかわり出てきたのが、システミックリスク原理であります。システミックリスク原理というのは、大きい小さいの話じゃない、システミックリスクが強い、ペイメントシステム全体が危ない、あるいはファイナンシャルシステム全体に重大な支障を来すということが非常にはっきりしているときに限る、大小の話ではないというのでシステミック原理が入ったわけですね。
このシステミック原理ということで
考えていきますと、さっきの福徳となにわのようなケースは、これは公的
資金を入れて経営を継続させちゃいけないケースですよ。システミックリスク原理からいったら、システミックリスクなんかを引き起こしません、こんなところ。
大体、
日本銀行が間髪を入れず最後の貸し手
機能を発揮してレンダー・オブ・ラスト・リゾートとして飛び込めば、
拓銀のような都市
銀行が
破綻したってシステミックリスクは起きない。阻止できたじゃないですか。あるいは
山一証券のような四大
証券の一つが
破綻したって、これはもう大変だったと思いますけれ
ども、週末返上で
銀行局さんも
日銀も一生懸命やったということは私は承知しておりまして、御苦労さまと申し上げますが、しかし、その結果、
日銀がレンダー・オブ・ラスト・リゾートとして入れば、あんな大きなものがつぶれたってシステミックリスクは表面化させないことができたわけであります。
ですから、システミックリスクでいきますと、私は今の
預金保険法改正のような、こういう精神で、行政の裁量で、具体的には福徳となにわのようなところを救済するということは許されないというふうに思っております。
今申し上げましたアメリカの推移、最初は今の大蔵行政のように不可欠性原理、地域あるいは分野に支障を来すときは、これは不可欠なんだから救つちまえという不可欠性原理、そしてそれはだめだということになってツー・ビッグ・ツー・フェール、これも不公平でだめだということになって禁止されて、システミックリスク原理になる。私は、
拓銀の
破綻を受け入れざるを得なくなった、
山一証券の廃業を受け入れざるを得なくなった現
時点の
日本の行政の姿というものは、いや応なしにマーケットによってシステミック原理だけというところへ追い込まれたというふうに見えます。
蔵相及び
日銀総裁、私のこの意見についてどう思われますか。もうツー・ビッグ・ツー・フェール・ポリシーは
破綻した、不可欠性原理なんてだめだ、今はシステミックリスク原理で、救済をどうしてもしなければいけないところは決める。つまり、事前に明らかにしたルールで判定していくのがこれからの
金融行政ですから、システミックリスク原理というのをはっきりさせておいてやらなきゃいかぬ。この私の
考え方についてどう思いますか。ツー・ビッグ・ツー・フェール・ポリシーは
破綻しましたか。もうこれは口にされませんか。あるいは不可欠性原理ということについても、もうこれはいかぬなというお
考えでしょうか。お答えください。