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1997-10-30 第141回国会 衆議院 財政構造改革の推進等に関する特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十月三十日(木曜日)     午前九時三十分開議 出席委員   委員長 中川 秀直君    理事 甘利  明君 理事 佐田玄一郎君    理事 白川 勝彦君 理事 中山 成彬君    理事 野田 聖子君 理事 北側 一雄君    理事 中井  洽君 理事 海江田万里君    理事 児玉 健次君       浅野 勝人君    今村 雅弘君       小野 晋也君    大石 秀政君       大野 松茂君    木村 隆秀君       熊谷 市雄君    小林 多門君       佐藤  勉君    桜田 義孝君       実川 幸夫君    下村 博文君       菅  義偉君    田中 和徳君       滝   実君    竹本 直一君       谷畑  孝君    戸井田 徹君       中野 正志君    西川 公也君       穂積 良行君    目片  信君       持永 和見君    山口 泰明君       渡辺 具能君    渡辺 博道君       渡辺 喜美君    安倍 基雄君       赤松 正雄君    一川 保夫君       太田 昭宏君    岡田 克也君       左藤  恵君    田端 正広君       谷口 隆義君    中野  清君       西川 知雄君    原口 一博君       池田 元久君    石毛 鍈子君       生方 幸夫君    桑原  豊君       近藤 昭一君    石井 郁子君       古堅 実吉君    矢島 恒夫君       秋葉 忠利君    濱田 健一君       粟屋 敏信君    上田 清司君       北橋 健治君  出席政府委員         大蔵省主計局次         長       藤井 秀人君  委員外出席者         参  考  人         (野村総合研究         所研究理事)  富田 俊基君         参  考  人         (東洋大学経済         学部教授)   八巻 節夫君         参  考  人         (評 論 家) 佐高  信君         参  考  人        (神戸大学教授) 二宮 厚美君         参  考  人         (一橋大学経済         学部教授)   石  弘光君         参  考  人         (東京工業大学         大学院社会理工         学研究科教授)         大阪大学社会         経済研究所教         授)      小野 善康君         参  考  人         (京都大学経済         学部教授)   吉田 和男君         参  考  人         (経済評論家) 財部 誠一君         財政構造改革の         推進等に関する         特別委員会調査         室長      大西  勉君     ――――――――――――― 委員の異動 十月三十日  辞任         補欠選任   大野 松茂君     熊谷 市雄君   実川 幸夫君     戸井田 徹君   竹本 直一君     滝   実君   中野 正志君     今村 雅弘君   西川 公也君     渡辺 具能君   五島 正規君     桑原  豊君   佐々木憲昭君     古堅 実吉君   上田 清司君     北橋 健治君 同日  辞任         補欠選任   今村 雅弘君     下村 博文君   熊谷 市雄君     大野 松茂君   滝   実君     菅  義偉君   戸井田 徹君     実川 幸夫君   渡辺 具能君     山口 泰明君   桑原  豊君     近藤 昭一君   古堅 実吉君     石井 郁子君   北橋 健治君     上田 清司君 同日  辞任         補欠選任   下村 博文君     中野 正志君   菅  義偉君     竹本 直一君   山口 泰明君     西川 公也君   近藤 昭一君     五島 正規君   石井 郁子君     佐々木憲昭君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  財政構造改革推進に関する特別措置法案(内  閣提出第一号)  漁港法第十七条第三項の規定に基づき、漁港整  備計画の一部変更について承認を求めるの件  (内閣提出承認第一号)      ――――◇―――――
  2. 中川秀直

    中川委員長 これより会議を開きます。内閣提出財政構造改革推進に関する特別措置法案及び漁港法第十七条第三項の規定基づさ漁港整備計画の一部変更について承認を求めるの件の両案件を一括して議題といたします。  本日は、財政構造改革について、参考人から意見を聴取いたします。  まず、午前中の参考人として野村総合研究所研究理事富田俊基君、東洋大学経済学部教授八巻節夫君、評論家佐高信君及び神戸大学教授二宮厚美君、以上四名の方々に御出席をいただいております。  この際、御出席参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位におかれましては、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、両案件審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  次に、議事の順序でありますが、富田参考人、八巻参考人佐高参考人二宮参考人の順に、お一人十分程度意見をお述べいただき、その後、委員質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  それでは、富田参考人にお願いいたします。
  3. 富田俊基

    富田参考人 御指名をいただきました富田俊基でございます。  日本経済財政運営のあり方について、市場経済民主主義という我が国の原則に照らして、意見を申し述べさせていただきます。  昭和末期のバブルでかさ上げされた高いところから景気を見ることになれてしまったためでありましょうか、景気が停滞すると大規模な刺激策を繰り返し発動してきた。それにもかかわらず、景気現状が示すように、持続的な景気回復が可能になったわけではない。結果として、国と地方巨額借金が累積し、GDPの九一・二%にもなってしまった。こうした対策を繰り返し、財政再建を先送りすると、我が国が立脚する市場経済民主主義危機に陥りかねない。  まず、市場経済観点から論じる。  現在の日本経済は、冷戦後の世界経済の大きな産業構造変化の中に置かれています。新たに市場経済に参加した国々で労働集約的な財の生産が飛躍的に拡大し、新しい国際分業が模索されている。これに伴って、お手元の資料の図一にごらんのように、本邦製造業海外生産は急拡大を遂げ始めた。国内では業種によって成長力に大きな差が出ている。景気の底から今日までの間に、資本財生産は四割も増大した。その一方、消費財生産は全くふえていない。図二に見るような産業構造変化は今後とも続くであろう。このため、すべての産業景気がよくなるということは今後とも考えにくい。さらに、十五歳から六十四歳の生産年齢人口は既に減少に転じている。二ページにごらんのように、我が国潜在成長率も、八〇年代の四%程度から既に半減したものと推定されます。  こうした環境では、財政支出拡大減税という旧来の需要刺激策は効果を持たない。そればかりか、企業経営の甘えを助長し、古い産業構造が温存されるという悪循環をもたらしかねない。  政府は、民間経済を自在にコントロールできるという旧思考を改め、政策枠組みの根本にまでさかのぼった改革が必要であります。産業構造転換が促進されるよう、市場経済のダイナミズムを引き出さねばなりません。フェアで透明な競争ルールのもとに、企業創意工夫自己責任経営を促す規制緩和が一段と推進されるべきである。  次に、民主主義観点から財政再建必要性を論じる。  国債を出しても、借りかえすれば、経済が成長するので将来の利払いは重くないという考え方がある。しかし、三ページの図でごらんのように、一九八〇年以降、主要先進工業国では名目経済成長率の方が金利よりも低いという傾向がおおむね定着している。成長率よりも金利が高いということでございます。所得や税収の伸びよりも借金元利合計の方が早く膨張することを示しております。所得伸びが高かった昔とは違って、今国債を発行すると、将来の利払い負担はますます重くなる。欧米主要国財政赤字削減が粛々と行われているのはこのためであろう。  昨年の総選挙、ことしの都議選では、若い世代ほど投票率が低く、高齢者ほど投票率が高いという明確な傾向があった。巨額財政赤字はこうした投票率の反映であるかもしれない。将来に税負担増をもたらす国債に対して、高齢者ほどそれを許容する傾向が強いと考えられるからであります。あるいは、若年層の高い棄権率は、自分世代に税と年金保険料などをどんどん先送りされていることに対する反発であったかもしれない。  いずれにせよ、巨額財政赤字は、我が国民主主義危機に瀕していることを示している。今日の国債増発は、将来世代政策の選択の幅をますます制約することになります。所得伸びよりも金利が高い傾向を重視し、財政再建に取り組まねばならない。  さて、本九七年度の当初予算では、国債発行国債費よりも辛うじて少額にとどまった。現在世代受益負担のバランスを図り、新しい財政赤字を追加しない状況になった。この意味では、財政構造改革元年予算と呼ぶことができる。だが、現在の財政構造を放置すると、四ページ目の資料が示すように、財政赤字の対GDP比は異常なまでに上昇し、対外収支も大幅な赤字になる。極めて巨額の双子の赤字に将来転落することになる。  このように、現状を放置すると、国と地方借金残高拡大を続けるので、利払い費GDP比も上昇が続く。将来世代負担は増大を続ける。そこで、国と地方借金残高GDP比をまずは  一定の水準に保つ必要があります。このためには、年々の国と地方赤字の対GDP比を三%以下にする必要があります。現在その比率は五・四%で、それを二〇〇三年までに三%以下にするというのが財政再建の当面の目標であります。  これを達成するために必要な赤字削減テンポは、景気情勢いかんで若干の変動はあり得るとしても、対GDP比で見て年平均〇・四%強であります。このテンポは、我が国の一九七九年から八六年、あるいは九〇年代に入ってからの欧米主要国削減テンポよりも少しゆっくりしております。しかし、これらに比べて、これからの日本では、高齢化の進展によって、年金、医療などの分野で歳出拡大圧力は格段に大きい。  二〇〇三年までに財政赤字GDP比が三%以下となっても、財政構造改革が終わるのではない。将来世代税負担のうち、過去の借金利払いに充てられる比率を縮小させていくためには、アメリカが二〇〇二年までに達成しようとしているように、毎年の財政赤字をゼロにしなければならない。  これらを実現するためには、財政構造改革推進に関する特別措置法で、主要経費ごと歳出に二〇〇〇年までキャップをかけて、歳出削減のための構造改革推進することが不可欠であります。キャップを超えて歳出拡大したり、減税によって赤字拡大することは避けねばならない。  これ以上、安易なカンフル的景気刺激策を続け、将来世代負担をふやすことはできない。将来世代国民負担率を五〇%以下に抑えるという方針のもとに、明るい未来を子供たちに残すために、財政構造改革法の成立が急務であります。  御清聴ありがとうございました。(拍手
  4. 中川秀直

    中川委員長 ありがとうございました。  次に、八巻参考人にお願いいたします。
  5. 八巻節夫

    ○八巻参考人 東洋大学の八巻でございます。  今回の国の財政構造改革案につきまして、参考人として意見陳述させていただきます。  国の財政が現在危機に瀕しているということは、今や指摘するまでもないことでありまして、またさらに、その借金の体質に加えまして、税金むだ遣い実態があちこちから噴出している、こういう状況も非常に日本の将来にとって危機的であるというふうに考えます。こうした実態をとらえて、私たち国民として一体どのような考え方で臨むべきか、税金というのは一体何なのだということを改めて問い直すような時期に来ているというふうに思います。  このように公的部門の失敗あるいは制度疲労があちこちで起こっていることに対して、私は、税を取る側の論理ではなくて、また、象牙の塔からの単なる理論的な考察ではなくて、納税者及び生活者としての視点から今回の構造改革評価してみたいと思っております。  私たちにこの事態が迫っているのは、大きな政府か小さな政府かの国民的選択問題であろうと思うのです。それともう一つは、税金の真の意味経済的な意味というのは何なのだということを問いかけている事態だというふうに考えるわけです。  そのような視点から若干コメントさせていただきますと、三つのアプローチというか切り口があると思うのです。  第一に、今回のこの改革措置法案には随所に数値目標が掲げられております。例えば、国と地方赤字の対GDP比を三%にするとか、あるいは国民負担率を五〇%以下にするとか、あるいは公共事業費を七%削減するとか。一体このような数値をどのようにしてはじき出したのか、どれだけの説得力があるのか、その裏づけは一体何なのだ、そういうことをちょっと疑問に思いました。  なぜかというと、数値目標というのはもろ刃の剣でございまして、それを掲げること自体は、目標を達成するという具体的なガイドラインができますので、そういう意味では評価できるのですけれども、ただ一方で、数値目標というのは、実体の、生きた経済から離れましてひとり歩きする、こういう危険性がありますので、その場合に、その数値目標には相当確たる根拠が必要であるというふうに考えるわけです。特に、例えば赤字GDP比が何で三%でなければならないのか。それが何で四%ではいけないのか、あるいは二・五%ではだめなのか、そのあたりが非常に見えてこないわけです。  そこで、例というか教訓といいますか、旧西ドイツの経験をお話し申し上げますと、旧西ドイツでは、赤字三つカテゴリー一つ循環的赤字、もう一つ構造的赤字、そして第三番目に正常赤字という三つカテゴリーに分けているのです。  わかりにくいのは正常赤字という概念だと思うのですけれども、その正常赤字というのは、要するに、経済潜在成長で正常に成長しているときにでもなお内在する赤字部分でありまして、成長通貨といいますか、潜在成長に必要な資金の需要部分であるというふうにとらえられるのです。具体的には、潜在成長で正常な状態のときの資源の利用率を例えば九七%だとか九八%とし、それの二%あるいは一%、そういう数字でとらえておりまして、これはもう許容範囲赤字なのであるということで、そういう概念も使っております。数字確実性という点ではちょっと疑問がありますけれども、ただ、こういう数字を掲げること自体は非常に意味があるというふうに思っております。  ですから、今回の三%という数字も、そういう正常赤字なのであるよというふうに論評づけてくれるなちば非常に説得性がありまして納得がいくのですけれども、単なる、EUがそう言っているから三%だなんというのでは全く論拠にもならないと思うのです。  また、これに関して第二に言いたいのは、三%に至る道筋が見えてこないということでございます。今の景気をどう見るかということにつきましては非常に論議が分かれるところでありますけれども、ただ、景気の先行きには心配があるけれども、とにかく借金が膨れ上がったので何が何でも三%にするのだというのでは、やはり国民は納得できないのではないかと思うのです。ですから、その三%に至るまでの道筋を明確に国民に示すべきであるというふうに考えます。  例えば、構造的赤字削減していくわけですけれども、構造的赤字イコール景気インパクトでございますので、構造的赤字削減すれば、それは景気インパクト低下意味するわけであります。そうであれば、それを補完する何らかの措置をとらなければ、あるいはそれを国民にわかりやすい形で明示しなければ、国民は不安てしょうがないというふうに思うのです。  したがって、この景気インパクト低下部分をどういうふうにして補って、景気を維持しながら、しかも中長期的には赤字を減らしていくという、これはもういわばジレンマ政策なんですけれども、そういったジレンマ政策でも、こういうふうに道筋をやっていくのだよということが見えてくれば非常にわかりやすい、また納得できるというふうに考えるわけです。  それから、第二番目に指摘しておきたいことは、税金とは何かということなんです。  これは、受益負担結びつきを今後も国民はますます強く求めてくるというふうに思います。そのためにも、新しい負担メニュー受益負担を明確にする負担メニューを開発していかなければならないのではないか。例えば、民営化による私的負担への転換もその一つでありましょう。また、受益者負担拡大、これは一見、そういうふうに言うと誤解があって、非常にイデオロギー的な色彩になっていますが、私はちょっと違うのではないか。受益者負担というのは、やはり自分が受けたサービスに対する、国民全体とは違った特別なサービスを受けたわけですから、その見返りとしてその利益を吸収するという意味では、適正な負担ではないかというふうに思います。  それから、目的税の再評価。ちょっと時間がなくて説明できませんけれども、質疑のときに説明したいと思いますけれども、それも再評価する価値があるのではないかというふうに思います。  それから、租税か社会負担かという選択問題も考えまして、要するに適正負担という概念、これが今後必要になるし、また、国民適正負担であるということをもっともっと求めてくるというふうになると思います。  第三番目に、最後になりますが、財故意思形成の質を高めなければならないというふうに思います。  ともかく、今の財故意思形成は、国民不在というか、生活者意識が全然反映されていないというところがありまして、そのためにも、例えば予算編成のシステムをゼロベース予算、あるいはそこまでいかなくてもサンセット予算方式とか、オンブズマンの拡充であるとか、それから公的部門での市場性拡充、これを市場テストにかけるということは、それだけ生活者意識が自動的に反映されるのだと思いますので、その点の可能性の考慮、それから官の役割と民の役割範囲についての国民的合意形成が必要であるというふうに思います。  いずれにしても、このような財故意思形成過程の中にいかに生活者意識が反映できるか、これをやはり制度的に、あるいはシステム化する、そういう方向で考えていくべきであって、今回の構造改革法案というのは非常に、一方では評価はできますけれども、他方で、単なる数値目標を掲げただけで制度的な改革がなかったという点、それが果たして構造改革と言えるのか、そういったことを強調いたしまして、私の意見とさせていただきます。  どうも御清聴ありがとうございました。(拍手
  6. 中川秀直

    中川委員長 ありがとうございました。  次に、佐高参考人にお願いいたします。
  7. 佐高信

    佐高参考人 英語にウイッシュリストという言葉があるそうです。国民願望とか願い、それぞれの願いというのをリストにしたものをウイッシュリストというそうですけれども、予算というのは、本当は国民ウイッシュリスト、こうあつてほしいとか、こういうふうなことをしてもらいたいという願い願望が込められた、実現されたものが予算だと思うのですけれども、果たして今の予算というのはそういうふうになっているか。  今度の財政構造改革法案の中に公共事業云々という言葉がありますけれども、公共事業というときに、私は公共事業公共というところにゼネコンとルビを振れと言っているのですけれども、公共事業イコールゼネコン事業みたいな形になって、それを全然疑わない形でいろいろなことが決められている。しかし、公共事業というのは本当にゼネコンだけなのか。ゼネコンイコール公共事業みたいな頭が皆さん方の中にもしみついてしまっているんじゃないか。しかし、本当に公共、パブリックというのは何か。それは、この間の宮城県知事選挙でも、国民願いとしてやはりおかしい、ゼネコンイコール公共じゃないんだということが非常にストレートな形で突きつけられたのじゃないか。  いわば、ゼネコンウイッシュリストにはあるかもしれないけれども国民ウイッシュリストにはないダムとか長良川河口堰とか、そういう要らないものをどんどんつくってしまった、そういうところが今の財政構造危機みたいなものをもたらしていると言うこともできるわけで、その辺のところを、公共云々ということで法案には書いてあるけれども、その公共の中身というのをこれから本当に具体的に検討していかなきゃならないのだろうという感じがします。  だから、社会保障とかODAとかそういうふうに別になっていますけれども、では、そういうのは公共ではないのかということですね。法案を読むと、何かやはり、公共事業というときに頭の中にはゼネコンというふうなものしかないのじゃないかという感じがするわけです。公共というのは、行政というのは、当然公平感とか公正感というものを日常の行政の中にどう反映するかということだと思いますけれども、一つ一つ公平とか公正ということが考えられているのかどうか。  例えば、ちょっと細かい話になりますけれども、この間びっくりしたことがあります。エイズの問題で例の川田龍平さんのお母さんと会って話をしていたら、この七月から新しい薬、七月に承認されたばかりの三種類の薬を飲み始めるということになったんだそうですけれども、その中に、何とミドリ十字が売っている薬が入っている。それを、ミドリ十字によってああいう薬害をこうむった川田君が毎日飲まなきゃならないということですね。  こんなことを厚生省がやっているというか、厚生省がそれを認めた。川田龍平君のお母さん川田悦子さんが厚生省審査管理課というところに電話したら、こちらは薬事法に基づいて安全性有効性を審査し、承認するだけだ、どこが発売するかは会社会社の契約であって、こちらは関係ないというふうなことを言っているのですけれども、こういう姿勢がまさに薬害エイズを生んだわけです。そのつくった方のブリストル・マイヤーズ社に尋ねると、ミドリ十字が発売したいと言ってきたというふうに言っているわけですね。  だから、公平、公正ということを本当に行政府というのはどう考えているのか。まさに、加害者にまたそういうものでもうけさせるみたいなことが通るということは、あの薬害エイズ教訓などというのは全く酌み取られていないということなんじゃないか。だから、こういう財政構造改革という数字的な問題が日々の行政の中でどう生かされるのかということもあわせて考えないと、単に枠組みをつくっただけでそれでいいというふうなことになってしまうのじゃないか。  防衛費の問題でも、日々のいわば平和への努力というものと絡み合ってその削減が出てくるわけで、こういうふうな日々の平和への努力というふうなものを抜きにして、防衛費が多いとか少ないということをスタティックに論じていいのかという感じもするわけです。  もう一つ財政というのは当然金融というものと両輪であるわけで、財政と金融というものを関連させて考えるということは当然必要なことですけれども、その場合に、今まで、いわば金融政策の失敗を財政でしりぬぐいするというふうなことが、特に住専問題では見られたわけですね。だから、私は、財政と金融の分離というのは絶対やらなきゃならないことであって、何か国会議員の中で、かつてはあれほど燃え上がった財政と金融の分離という話が、いわば大蔵省あたりに攻め込まれてどんどん後退していくというふうなことはとんでもないことだというふうに思っていますけれども、そういう財政と金融の分離ということも頭に置いた財政構造改革なのかどうかという指摘も私はしておきたいというふうに思うわけです。  住専問題では、ある川柳にこんなのがありました。「国民を無理やり連帯保証人」。「国民を無理やり連帯保証人」というのは、まさに住専問題の本質を一言でついている指摘、川柳だろうというふうに思います。あるいは「通帳のシミかと見れば金利なり」というのがあります。「通帳のシミかと見れば金利なり」、そういうことで公平感公正感が失われて銀行救済とかそういうふうな話になっているわけで、金融政策財政というものをどう関連させるのか。だから、財政だけ、ある種格好だけ健全にしておいて、全部それを金融にしりを押しつけるというふうなことではおかしいだろう。ゆがんでくるのじゃないか。  だから、根本にさかのぼって、国民ウイッシュリストというものを、一人一人の議員の皆さんが本当にそれは何なのかということを根本から考えるということがやはり一番必要なんだろう。そうでないと、いわば国家そのものが国民ウイッシュリストから外されるというふうになるのではないかということを申し上げて、私の陳述を終わります。(拍手
  8. 中川秀直

    中川委員長 ありがとうございました。  次に、二宮参考人にお願いいたします。
  9. 二宮厚美

    二宮参考人 神戸大学の二宮でございます。  時間の関係がありますので、財政構造改革法案の問題点、これは多面的に議論しなければいけないと思いますが、差し当たり、私は、国民生活の視点に絞って、以下二つに分けてお話を申し上げたいと思います。  その一つは、法案の全体の形式と申しますか、法案言葉を使って申し上げますと、全体の構造にかかわる問題点、それからいま一つは、国民生活の視点から見て特に重要と思われる個別的な論点、この二つに分けてそれぞれ三点、問題点を指摘したいと思います。  まず、法案の全体構造にかかわる問題点の第一でありますけれども、今回の法案というのは、よく読んでみますと、その内容に即して言えば、これは財政再建のための方策ないし赤字財政からの脱却の手だてというのを並べたもので、厳密に言いますと、財政の構造全体を見直すといった性格のものではないというのが第一印象であります。  ちなみに、私、広辞苑で調べてまいりましたけれども、構造というのは、その辞書によりますと、諸要素の相互依存ないし対立、矛盾の関係の総称、こういうぐあいに説明をされておりますけれども、これを財政に当てはめて構造改革ということを考える場合には、国家財政全体を構成する諸要素、その相互依存だとか対立、矛盾の仕組みを変えるものでなければならない。  例えば、日本の国家財政につきましては、今の佐高参考人の発言にもございましたように、土建国家であるとかあるいは公共事業優先型とか中央集権型とか、こういうような特徴づけがなされましたし、企業本位か国民本位かといった選択問題とか、また、古典的な命題になりますけれども、バターか大砲かといった選択問題もあったわけであります。これらの特徴づけだとか選択問題に照らして旧来の構造を新しく切りかえるということであれば構造改革の名にふさわしいかと思いますけれども、必ずしもそういうことになっていなくて、構造そのものはそのままにしておいて、いわば守旧型の財政再建策になっている、これが第一の印象であります。例えば、後でも触れますけれども、公共事業優先型というのは基本的に変えられようとしておりません。ですから、これらを全体として見直すということが必要なのではないか、これが第一です。  第二番目は、新聞報道によりますと、この法案の国会審議でもしばしば問題にされてきたと思いますが、今回の法案は、中期にわたって予算枠組みだとかあるいは性格というものを拘束するために、憲法だとか財政法に基づくいわゆる予算の単年度主義、それから国会の予算審議権、こういうものから逸脱しているのではないか、これが第二番目の印象です。  また、第三十五条を読みますと、自治体に対する国庫負担金だとか補助金について、各省庁ごとの合算額を約一割、集中期間、すなわち今後三年間にわたって削減するように義務づけております。補助金などの一括削減というのは、八〇年代の半ば、十年ほど前でありますけれども、このときにも問題になったことでありますが、国庫負担金だとか補助金というのは、一つ一つ予算補助であれば予算の性格、それから個別法に基づいて審議すべきことで、これを上から一括削減の方向を出すというのは、やはり、補助金などのおよそ三分の二が社会保障や文教関係の予算で占められておりますから、国民生活から見て非常に大きな影響、ダメージを中期にわたって及ぼすというふうに思います。また、こういう動きは、他方で自治体に対する分権化策というのが打ち出されておりますけれども、その分権の精神に照らしてみてもおかしいのではないか。  その上に、第三番目に、今回の法案といいますのは、社会保障や自治体財政に対しては今述べましたように冷たい一方で、財政再建策としても抜け穴を持っています。これは、例えば、防衛費の抑制からいわゆるSACOの部分の除外を含んでいるとか、あるいは公共事業関係の予算につきましても、よく知られておりますように、総額を圧縮するのではなくて計画期間の延長だけで済ませようとしている。これは総額は確保されるということでありますから、先ほど述べましたように、構造改革に当たらないのではないか、こういうことが全体にかかわる問題点だと思います。  さて、次に、法案の内容にかかわる個別的な論点につきまして、これも同じように三点指摘したいと思います。  まず第一番目は、財政再建に絞りましても、今回の財政危機の克服課題が、よく知られておりますように、何よりも赤字国債の依存からの脱却、ここに求められている。もちろん、赤字国債ゼロという目標それ自体が悪いというわけではありませんけれども、問題なのは、国の発行する赤字国債と、それから例の公共事業と結びついた建設国債との二つの国債のうち、ただ赤字国債だけを問題にして建設国債の発行については口を閉ざす。こういうことになりますと、国債のうち赤字国債は主に教育や社会保障や司法など、一連の経常的な一般歳出の経費に充てられておりますから、建設国債とは公共事業を担保にして発行されておりますから、この二つの国債のうち赤字国債だけを問題視することは、建設国債に関して口をつぐんだまま公共事業はどちらかといえば棚上げ、それから赤字国債の発行とリンクした教育や福祉などの関連予算を中心にして財政削減策が図られる。  すなわち、赤字国債からの脱却というのは、事実上教育だとか社会保障予算の見直し、この分野に集中してあらわれる、こういう構造を持っているということですね。そういう意味で、国民生活上この歳出削減の標的が社会保障に集中しがちだ、公共事業の見直しなどはどちらかといえば腰砕けに終わっておる、こういう印象が強いということですね。  実際に法案を読んでみますと、財政構造改革のプランでは、道路や空港建設などの公共事業関係の長期計画は、財政規模を絶対的に削減するというのではなくて、予算総額は変えないままその計画期間だけを延長する、こういうことにとどまっておりますし、しかも、物流効率化の名前でもって、道路それから港湾、空港などの重点施策については別枠予算で確保する、こういう政策がとられようとしています。このことは、要するに、赤字国債からの脱却という名前でもって、主に教育、福祉、医療などの国民生活関連分野に集中的な見直しが進行する。だから、事実上旧来型の財政構造の上でスクラップアンドビルドが進行する、こういうことになるのではないかということ、これが第一番目であります。  それから第二番目は、赤字国債からの脱却というのを最優先にいたしますと、しかも短期集中型の財政再建策を進行させようといたしますと、いわゆる財政支出の自然増部分にも容赦なくこれが降りかかってきます。財政支出の量的な抑制、削減というのが、社会保障を中心にした資金の量の削減だけではなくて、自然増を抑制するということになりますと、医療だとか社会保障の構造だとか質にかかわる変化を呼び起こす、これが見逃せない第二の問題点だと思います。  いわば、資金の量的な抑制に基づく社会制度の質的な変化、こういうことが、特に高齢化の進行などを背景にして自然増加部分を多く抱える社会保障や福祉の領域、特に来年度以降は医療の分野において最も鋭くあらわれております。九月一日からの医療制度の改革によりまして既に深刻な影響があらわれておりますけれども、医療が、一種の財政的な兵糧攻めというふうに言ったらいいかと思いますが、そういう効果のもとにさらされようとしている、こういうことになります。ですから、昔から医は仁術というふうに言われてきましたけれども、このままいきますと、医は算術というふうに言わなければならないような事態が生み出されようとしている。  実際に、今回の法案に描かれた社会保障関係の予算の姿を見てみますと、来年度予算では、よく知られておりますように、社会保障の自然増部分が約八千五百億円、そのうち三千億円の増加枠しかこの法案では認められないということになっておりますから、結果としておよそ五千五百億円の財政圧縮が予定されております。政府の説明によりますと、そのうち四千二百億円は医療関係の予算削減で賄う、こういうふうにされておりますから、今回の法案は医療に対する、いわゆるカットマシンという言葉がありますけれども、そういう性格が強いというふうに言わなければいけない、こういうふうに思います。  しかも、その上に、再来年度以降も社会保障予算は二%の伸びにとどめる、こういうふうにされております。社会保障予算に二%を掛けますと、事実上、将来三年間、毎年三千億円しかその増加が認められない、こういうことになりますから、これは比喩を使って申し上げますと、成長盛りの子供の背丈を小さくなった衣服に合わせて切り縮める、あるいは、よく知られている例のプロクルステスの寝台、こういった話に通じるのではないか、こういうことであります。  最後に、第三点目の問題点として、法案の前段の方に書かれてありますけれども、財政改革法案が、第六条におきまして、財政赤字を含む国民負担率を五〇%以下に抑える、こういうふうにしてあります。これは財政赤字ということを考える場合に重要な視点ではあろうかと思いますけれども、国民負担率は、社会保障を抑制する際の方便といいますか、一種の切り札として従来からしばしば持ち出されてまいりました。今回も同じでありまして、財政構造改革会議の文章を読んでみますと、こういうふうに書かれてあります。「高齢化のピーク時においても財政構造改革五原則における国民負担率目標に沿って、安定的に運営出来る社会保障制度を構築する」。だから、社会保障制度が事実上ターゲットになっているということですね。  そういう意味で、再び強調することになりますけれども、国民負担率を振りかざして社会保障に中長期的にしわ寄せをするということは、今回の財政構造改革法案国民生活から見た最大の問題点として見逃せないということを申し上げまして、私の意見にしたいと思います。(拍手
  10. 中川秀直

    中川委員長 ありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。
  11. 中川秀直

    中川委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野晋也君
  12. 小野晋也

    小野委員 きょうは、四名の大変お忙しい参考人の皆さんには、この場にお見えをいただいて、委員の立場からもまず御礼を申し上げたいと思います。  きょうは、大変時間が短い中での議論でございますから細かなところにはなかなか踏み込めないと思いますので、これだけ広い御見識をお持ちの諸先生方でございますから、少し大きな視点からいろいろと御教示を賜りたいと思う次第でございます。  実は、この財政再建をめぐりましての委員会質疑を私も聞かせていただきながら、皆さん方が国家の危機ということを訴えられているのでございます。その国家の危機に対して、いろいろな立場立場によりまして方策が随分違う。これがどういう立場から出てくるんだろうということを考えますと、私は、基本的には歴史観の問題というものを無視できないような気持ちがしてならないのでございます。  同じような状況の中にありながら、ある民族においてはその危機をうまく乗り切るわけでありますが、ほかの民族においてはそれが滅亡の道につながる。まさに、世界の歴史を振り返ってみるならば、国家の興隆と衰亡の歴史が延々と数千年の問続けられてきたわけでございまして、このあたりの国家としての歴史観、日本としてこの時代にどういう考え方を基本的に採用していくかということが大きく問われる議論が、当委員会で展開されてきたという気持ちがするわけでございます。  そこで、先生方にお尋ねをさせていただきたいと思いますのは、財政赤字拡大して国家財政が大変困難な状況に陥っているということは、これは事実として現在私たちの前に存在するわけでございますが、こういう財政赤字拡大というのが多くの国家や文明においてどういうふうにその先をつくっていくのか。どういうふうに動いていった歴史が存在するのだろう。これもいろいろなお考え方に立たれて先生方御研究しておられる問題であろうと思いますが、何かこういうふうなことなんじゃないかというような先生方のお知恵がございましたら、一つずつで結構でございますから、四人の先生方からその点をお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
  13. 富田俊基

    富田参考人 財政赤字が歴史的にどういう影響を与えてきたかという極めて大きな問題指摘でございますが、かつて、極めて古い時代、極めて我々にとって不幸な時代には、財政赤字拡大すると中央銀行が国債を買ってインフレをもたらしてしまうということが、これまでの、財政赤字が極めて巨額になったときの我々人類が参考とすべき事象だと思うのです。これは、私の知る事例では洋の東西を問いません。当時はやはり金融・資本市場も未発達でございまして、国債がたくさん出ると中央銀行がそれを購入して、そして軍事費等に用いるということがどの国でもなされてまいりまして、結局はインフレによってこれまでの借金を帳消しにしようということであったかと思うのです。これは極めて不幸な時代であり、市場経済も発展していなかった時代でございます。  では、市場経済が発展してからはどうか、資本市場が発展してからはどうかということで見ますと、国債が大量に発行されますと、国債というのは市場金利のいかんを問わずに市場から資金を調達するものでございます。それでもって金利が上昇するということが生じます。この金利は名目金利ということで、今ですと二%程度というのが長期の金利であるわけですけれども、実質ベースでとらえるということが重要であろうかと思います。つまり、物価上昇率を割り引いてとらえるという実質金利でございます。国債が大量に発行され、累憎いたしますと、実質金利が上昇する。それでもって民間企業の設備投資や個人の住宅投資が阻害されるというのが戦後の主要国の経験であったかと思います。これに対して、人類の知恵はまだなかなか七〇年代までは先進主要国におきましても定まらず、景気が悪いと財政赤字拡大させるような減税を行ったり、さまざまな支出を拡大してまいりました。  しかしながら、とりわけ実質金利が上昇するということを経験いたしましてからは、先進主要国は、不況期と申しますか景気後退期において大きな改革を行うというふうに変わってまいりました。その背景は、先ほどグラフでお示しいたしましたけれども、所得伸びよりも金利が高いという状態を認識したというものだと思います。  具体的に申し上げますと、米国では、不況期といいますか景気後退期、九〇年、九一年が景気後退期だったわけですけれども、そのときに、財政支出削減と増税を内容といたします包括財政調整法、OBRAというふうに略称されておりますけれども、それを制定いたしました。九〇年でございます。  それから、ドイツでございますけれども、ドイツでは九二年から九四年というのが景気後退期でございました。その中で、九四年の初めに成長と雇用の創出計画というものを作成いたしました。それは、財政支出削減する、そして増税を行う、財政面から見ればこういう内容でございますけれども、具体的には、付加価値税を引き上げる、そして法人税率は引き下げるのですけれども、課税ベースの拡大で税収中立の中で法人税を引き上げたのが九四年のドイツの計画でございます。そして規制緩和政策としても、小売業の店舗の営業時間の自由化といったこと、さらには中小企業や技術促進のための規制緩和ということを行っております。  フランスにおきましても、九二年から九五年が景気後退期であったわけでございます。それで、九三年五月に経済社会再建プログラムというものを発表しております。これも景気後退期の中で発表しているわけですけれども、それは赤字削減を行うということでございます。一方で、歳出は雇用政策や住宅政策拡大しておるわけですけれども、増税を行っております。  私は、人類は、これまでいろいろ経験してきたわけですが、これまでの不幸な歴史を踏まえて、今先進国が景気が悪い中でも長期的に財政再建を進めることが各国経済の発展につながるという認識に立ち至ったものと考えております。  繰り返しになりますが、アメリカも景気の悪いときに、GDP比で五%であった国防費を三・五%に引き下げていくということを計画したわけでございまして、これあたかも、我が国財政構造改革として公共事業の対GDP比を六・五%から五%に下げていくというものと非常に似た現象であるように思うのです。そういう中で、アメリカは規制緩和を進めて着々と新しい産業が育ってきているというふうに思っております。
  14. 八巻節夫

    ○八巻参考人 国債発行経済的な効果というのはまた別にいたしまして、求められている質問というのは、時代の流れの中で公債の発行あるいは財政の規模の拡大というものは一体どういう意味を持っているのかということでお話し申し上げますと、アダム・スミスというか、十八世紀後半の時代、資本主義がよちよち歩きを始めた時代には、御承知のように自由主義経済思想の浸透していた時代でありまして、とにかく公債は即悪であるという考え方でありまして、全体の国民経済公共部門と民間部門に分けますと、公共部門というのはもう一〇%ぐらいであった。その背後には自由経済思想があったわけですね。  ところが、その資本主義が希望に燃えて出発していったわけですけれども、その資本主義が今度はさまざまな矛盾、宿命みたいなもの、宿業みたいなものを出してくるわけです。それは一つは貧富の差でありまして、十九世紀後半に、そのような社会的な問題として福祉を重視しなければならない、そういうことでこの公的部門が今度は拡大してくるわけです。さらに、二十世紀初頭には、ケインズの、いわゆる景気政策としての公債を使っていくという、公債は悪ではないのである、そういうものが広まっていきまして、景気のカンフル剤として公債を使っていくということでさらに公的部門拡大していくわけですね。  しかし、ここに至りまして、これは世界的に軌を一にしまして、サッチャーやレーガン、あるいは我が日本では中曽根政権時代ですね、そういう時代に至りまして、ちょっと待てよと。市場失敗があったために公的部門拡大したけれども、しかし今度は、公的な部門での失敗、政府の失敗が明らかになって、公的部門拡大民間経済を非常に疲弊させるし、また、公共の部門の拡大は非能率性やあるいはむだ遣いが噴出する。そういったことで、この境界線を今度ディレギュレーションや小さな政府という形で逆戻りさせるという動きになっていると思うのです。  ですから、時代の大きな流れでとらえれば、民間経済公共部門の境界線のせめぎ合いが歴史をつくってきたのではないかというふうに推察しております。
  15. 小野晋也

    小野委員 この調子でやりますと質問時間がなくなるという御指摘をいただきましたので、ちょっと絞らしていただいて質問さしていただきたいと思います。  佐高先生に御質問さしていただきたいと思うのです。  今先生からは川柳で、「国民を無理やり連帯保証人」とか「通帳のシミかと見れば金利なり」、こういうふうなものを御紹介いただいたわけでございますが、私ども、今の政治をやっております中で、例えがこれは適切かどうかわかりませんが、「色男金と力はなかりけり」の悲哀を日本政治の中で感じ始めてきているというところが実はあるわけでございます。  金のない中で国民からは力を期待され、そして景気を浮上させ、日本が二十一世紀に対して雄々しく国として成長していくように、また新しく展開するように期待される割に、その金と力を振るうことが難しいというような状況であるわけでございますが、今回のこの財政特の委員会の議論の中で大きく分かれてまいりましたのが、こういう状態の中にあって果たしてこれ以上財政支出をやるべきなのか、または財政をやはり緊縮すべきなのか。これはもう先ほど二人の参考人の先生方からのお話もあったわけでございますが、この点に絞って、佐高先生、どういうお考えをお持ちになっておられるのが御指摘をいただければと思います。
  16. 佐高信

    佐高参考人 色男というのは自称色男だと思いますけれども、さっきの御質問を聞きながら私思ったのは、斎藤隆夫という人のことを思っていたわけですね。斎藤隆夫の粛軍演説というのがありましたけれども、そのくらいいわば議員の方がさまざまな抵抗を押して緊縮の方向に走るのかどうか。それで、緊縮そのものがすべていいというふうには私も思いませんし、どこを緊縮して、どこは緊縮しないのかということなんだろうと思います。  それと、いわば国家像と国民の思いというのは、幸福に結びついていればいいんですけれども、それがずれているわけですね。私は、かつて、国家と会社をそのまま一緒にはできませんけれども、会社は富むけれども社員は貧しいという社富貴貧という言葉をつくったことがあるのですけれども、それに例えますと、国富民貧というのはまたよろしくないわけで、逆に国貧民富というものもいいのかどうかということですね。だから、お答えはなかなか難しいのですけれども、今時代は違うということがありますけれども、斎藤隆夫ぐらいの気概を持って、族議員がどのくらい来ても絶対押し切るんだというようなものがあるのかどうか、そういうところがポイントじゃないかというふうに思います。
  17. 小野晋也

    小野委員 佐高参考人の今の御答弁に関係するわけでございますが、二宮参考人にお尋ねしたいと思います。  二宮参考人の方からは、かなり広範にわたって今回の財政再建法案についての疑問点が指摘をなされました。その要点を考えますと、要するに、旧来の考え方の延長線上でこの改革をやろうと言ってもだめなのではないかということになるのではないかと思うわけでございますが、それに対しまして、今の参考人からのお話の中には、新しいビジョンはこういうビジョンになるのではないかという提起が、福祉の部分について少し触れていただいた部分があったわけでございますが、全体的に、ではこうしたらというような御提言については実は余り感ずるものを持たなかったわけでございます。短い時間の御説明でございましたから触れることができなかった点もあろうと思いますけれども、二宮参考人は、こういう国が二十一世紀の日本の国なのではないかというようなお考えをお持ちのことがございましたら、この点御示唆をいただきたいと思います。
  18. 二宮厚美

    二宮参考人 最初の質問にも答えようと思っていたのですが、あわせて申し上げたいと思います。簡潔に申し上げます。  伝統的には、歴史観の問題をお話しになりましたけれども、財政危機の問題は、財政学では国家破産論としてこれまで議論されてきたわけです。国家破産的状況になったときに最も手っ取り早いのは、これはフランス革命であるとか、あるいは第一次大戦後のドイツだとか、あるいはロシアで問題になったことで、ケインズが主張しましたけれども、いわゆる借金棒引き論ですね。すなわち、破産というのは要するに借金棒引きが一番簡単なので、これをやれというのが例えばケインズの主張であったわけですね。これは日本ではやれないと思います。  第二番目は、先ほど参考人から意見がありましたようにマイルドなインフレーションで、これは債務の安楽死ですね。徐々に社会全体に物価を上昇させて債務の目減りを図っていく、こういうやり方ももちろんあるわけでありますが、そして日本でも進む可能性があると思いますが、これが第二のパターン。  それから第三番目は、歳入の確保と財政の圧縮。この第三の方向が普通行われていることで、これは先ほど幾つか紹介があったとおりです。  私が申し上げたいのは、その際に、国家破産的状況になりますと、例えば借金の棒引き論というのが出てくる背景、なぜ国家破産の状態になったのか、ここの分析が非常に重要で、大体大づかみに申し上げますと、フランス革命から第一次大戦、第二次世界大戦後まで一貫して、一つは戦争と結びついている、すなわち軍事と結びついて国家破産状態になるケースが非常に多いということと、いま一つ財政の浪費ですね。古い体制でありますと、アンシャンレジームのいわゆる上層部分の浪費が財政危機を招く。これが原因になりますから、浪費というものを抑制することと、それから戦争のツケを断ち切るということが、これまでの歴史上、国家破産状態になったときの解決策として提示をされてきたわけです。  私は、その歴史的な教訓、先ほど歴史観ということが言われましたので、その点を踏まえて、例えば現代の日本財政危機は、今回の法案でも問題になっておりますように、世界一というふうに言っていいかもしれない。しかし、社会保障の水準だとか医療の水準は世界一とはとても言えないわけで、要するに先進国の中でも最下位のグループだ。つまり、財政危機は世界一だけれども、社会保障の水準は世界一でも何でもない、最下位グループに属する。この二つを強引に結びつけて、財政危機の原因は社会保障にあるというのは全くの間違いであって、これは論理的に実証できない。  したがって、原因を確かめなければいけないわけでありますが、その原因を幾つか挙げることはきょうはいたしませんけれども、要するに、健全な財政を生み出すための健全な富の源泉、すなわち日本経済のボディー、これを再建しなければいけない。その点でだれもが一致している点は、いわゆる日本経済の再建は、今企業が海外にどんどん出かけていっておりますから内需拡大によるしかない。輸出主導型もだめ。だから、内需拡大という点はほぼ一致していると思うのですね。そうすると、内需の拡大をどの方向に持っていくか、ここで意見が食い違っていると思うのですね。  先ほどお話がありましたように、ゼネコン優先型で相変わらず内需拡大策を図るといっても、これはもう今までの経験上、景気回復にもならないということがはっきりしている。したがって、私は、一言で言いますと国民生活充実型というか福祉主導型というか、例えば福祉だとか医療だとか社会保障といいますのは内需の非常に大きなウエートを占めておりますから、そこを主導にして経済のボディーの健全化を図りながら中長期的な財政再建の方向を考える、これが基本的なこれからのガイドラインではないかというふうに思っています。
  19. 小野晋也

    小野委員 ありがとうございます。  それでは、今度は富田参考人にお尋ねをさせていただきたいと思うわけでございますが、先ほどお話をいただきました中にも、こういう時期においては、財政支出はむしろ削減をしながら、産業の育成を図りながらこの時期を乗り切るということが極めて大事なことではないかというような御指摘があったと思います。また、冒頭のお話の中でも、今、産業構造変化の大きな波の中に置かれているというような御指摘をいただいたわけでございます。  私自身、経済の問題をいろいろと見ながら、考えながら感じますのは、この日本の国の産業転換に当たって、これから大きく成長をし得る分野についてはできるだけ規制を廃して、本来、新しい技術なり新しい経営体なりが伸び行くことを邪魔をしない政策というのが大事だ。そしてもう一方では、その成長の陰で衰亡をしていく産業等があるわけでございますが、この種の産業に対しては、余り急激に変化を引き起こしてしまうとこれは社会不安等にもつながってくる要素を持つわけでございますから、ここにはできるだけその影響を緩和する措置をとるべきである。政治が行うべき産業政策というのは、この二点をきちんと基礎として踏まえながらやっていくべきではないかというような考え方を持っているわけでございますが、この点について、こういう考え方での産業政策が妥当なのかどうかについてお教えをいただきたいと思います。
  20. 富田俊基

    富田参考人 今の小野先生の御指摘、規制緩和を進めて新しい産業が育っていく、その一方で衰退する部分には、財政で少しその不安を解消するような対策が必要だろう。私も、大きな方向は御指摘のように思います。  ただ、重要な点は、先ほども御指摘いたしましたように、現在日本経済は極めて大きな産業構造変化のただ中にありまして、一度衰退してまた戻ってくる企業産業はあるのでしょうけれども、長期的に見ますとやはりその方向はかなり明らかになってきておりまして、いつまでも衰退する産業に補助をつけていくということは、かえって構造改革産業構造変化の足かせになるのではないかというふうに考えるわけでございます。そういう意味では、方向として市場経済重視、そして規制緩和という方向に大きなウエートを置くということが重要かと存じます。
  21. 小野晋也

    小野委員 加えて富田参考人にお尋ね申し上げたいのでございますが、御指摘ございました中に、冷戦後の国際的経済変化の荒波の中に日本の国が置かれるというような御指摘がございました。まさに今、日本の国として考えました場合に、以前ですと国家というものが、財政の面においても金融の面においても、また企業を指導するという意味においても、かなり大きな権限を持ち行使することができたわけでございますが、現状で見ますならば、かなりそういったものが制限を受ける状況が生まれてきているわけでございます。  特に金融の方面でいきますならば、もう日本が単独で公定歩合一つも決められない。また、企業にいたしましても、国がいろいろと注文をつけるならば、この国を出て他国で経済活動をやっていくというような状況になっているわけでございまして、企業を振興していく、経済を成長させていくという手法がかなり大きく変わってきつつあるのではなかろうかというような気持ちがいたします。  こういう時代の中で、国といたしまして経済政策の持ち方、また、それはひいては財政政策の問題にもつながるわけでございますが、これについて、非常に大ざっぱな質問で申しわけないのですが、御所感ございましたらお教えをいただきたいと思います。
  22. 富田俊基

    富田参考人 冷戦が終わって、産業構造が大きく世界じゅうで変わっているという認識が極めて重要だと思うのです。とかく我々は、バブルが崩壊して、需要の面だけに着目してこれまで景気対策等が行われてきたように思うわけですけれども、問われていることは、供給構造、産業構造の方向が問われているというふうに認識すべきことは先生御指摘のとおりだと思います。  そして、製造業の中でも大きな構造変化が起こることはグラフでお示しさせていただいたわけですが、実は製造業のウエート自体が、八〇年代にはGDPの三〇%であったのが二五%程度の方向に向かって現在低下しております。ということは、非製造業のウエートが高くなる。  ところで、我が国の非製造業は、これまで規制に守られ、あるいは貿易がそもそも行えませんので外国との競争も余りなかったということで、決して生産性が高くない。それがゆえに我が国に高コスト構造が定着する、また、国民から見れば内外価格差が大きいという問題が発生しているわけでございます。したがいまして、この非製造業の生産性の上昇、それは非製造業が競争を促進できるように、また、企業創意工夫を生かして自己責任の経営ができるような、そういう環境を設定することが重要だろうと思うのです。  重要な点は、これまではキャッチアップ経済だったので見本があったわけですけれども、見本がない中では、政府政策というものよりもやはり競争の結果というものが望ましい方向を示すのだろうというふうに思います。
  23. 小野晋也

    小野委員 ありがとうございます。  次は八巻参考人にお尋ねをさせていただきたいと存じますが、先ほどのプレゼンテーションの中で参考人が御指摘になられましたのは、数値目標設定の合理性という部分があったと思います。いかなる理由でこれが、例えば二〇〇三年に財政赤字GDPの三%以下になるようにというようなことについてどう決められたのかという問題でございましたけれども、こういった種類のものについて合理的に決める手法というのはあり得るのかどうか。西独の話に少し触れられましたけれども、これも、では本当に国民的に広く理解をいただけるような合意形成がなされて決められたものなのかどうか。  この点についてお伺いさせていただきたいのと同時に、今の時代の変化というものが非常に急テンポでございます。この激しい変化の中で、民主主義的手法といいながら、日本で一億二千万余りの国民皆さん方に尋ねながら時間をかけて合意を形成するということをやると、逆に臨機応変の対応ができなくなるといううらみが出てくる可能性があると思いますが、この点についての参考人のお考えはいかがでございましょうか。     〔委員長退席、甘利委員長代理着席〕
  24. 八巻節夫

    ○八巻参考人 お答えいたします。  初めの問題ですが、私が言いたいのは、要するに、三%という数値あるいはGDP比五〇%以下の国民負担率という数値が確たる根拠があれば、それは国民が納得してそうかということでみんなが協力するというか、そういう組織、システムができると思うのです。  しかし、今回の三%という数字の裏側の論拠が見えてこないというところがありまして、そういう意味では、例えば、先ほど言いました三つ赤字のうち正常赤字潜在成長率の正常な状態での赤字であるよ、これは許容範囲なのであるよということが明示されること。そしてまた、循環的赤字につきましても、正常の状態に戻ればその循環的赤字は解消するわけですから、循環的赤字が一体どのように動いていくかということの道筋が見えてこないということ。それから、GDP比五〇%ということを言いますけれども、これも二宮参考人からも御意見ありましたように、五〇%ということの論拠というのはどこから出てきたのか。  例えば、これが、国民所得を分母にとりますと一挙に二〇%ポイントほど上がってしまうのですね。特に間接税が大きい国、例えばスウェーデンとかフランスでは、二〇%ポイントほど上がってしまう。そういったスウェーデンやフランスの数字を公表して、六〇%、七〇%になったら大変だよとおどかすというか、だから削らなければならないというふうになってくると、その数字だけを出したのでは国民からは反対だけ、反発だけが出てきます。だから、そういった意味で相当論拠のある道筋を示してもらいたいという意味でございます。  ですから、財故意思形成の中に、民主主義的に国民的合意が必要であるということは、これは非常に時間のかかることでありますし、私たちに与えられているのは先生方を選挙するということでございますから、システム化するというか制度的にそれをビルトインさせておく。例えば先ほど言いましたような、予算は必ずサンセットを持つのだ、五年なら五年の、必ず予算プログラムは期限を持つのであるというふうなものがシステム化されれば、それは国民としても安心できるわけであります。そういった国民的合意といっても、結局は国民的選択に、選挙にかけましてその選挙で我々が選ぶという、これしかないわけですね。だから、そういう意味では、この財政制度の中にシステム化が必要ではないか、こういう意味で話しました。
  25. 小野晋也

    小野委員 もう時間でございますから、最後に佐高参考人にお尋ねしたいと思います。  ウイッシュリストに基づいて、国民願望願いを実現できる予算を組まねばならないというような御指摘を当初ちょうだいしたわけでございます。我々といたしましても、それは国民が喜ばれるように、幸せになるように予算を組みたいという願望はまさに一致する部分がありますが、それがなかなかかなわない部分も現実問題としてはあり得る。ということは、結局、その国民のウイッシュというものが、AというグループのウイッシュとBというグループのウイッシュというものが随分異なるというところに原点があるわけでございます。  これから先の日本のことを考えてまいりましたときに、大きく分けた場合に、ゼネコンの問題等も指摘ありましたけれども、それ以上に、高齢者世代と若者世代、この両者のウイッシュの乖離という問題が非常に大きなものになるのではないか。この世代間の対立というものはかなりこの日本の国の中に大きなひび割れを起こす可能性を持ってくると思うのですが、それを解決する知恵とか、または先生の御自由な御発想ですとか、何かございましたら、ちょっと御示唆をちょうだいいたしたいと思います。
  26. 佐高信

    佐高参考人 今、私はある件で匿名の大蔵官僚を訴えているわけです。大蔵官僚が匿名という名前で勝手なことを言っているということについてですね。そのときに、そういう金融政策みたいなのを含めて、大蔵官僚に対する年輩者の不満というのは物すごく強いのだなということを私は強く感じたわけです。要するに、ぜひ応援したいというのは、年輩の人からたくさん寄せられたのですね。若い人の方は余り、大蔵官僚を訴えていると言ってもああそうかみたいな感じなのですけれども、御指摘のように、高齢者と若い人たちの格差というのは大変これから重要な問題だと思いますし、自由な発想というのは何か褒め言葉かどうかわかりませんけれども、宿題としてこれを考えさせていただきます。
  27. 小野晋也

    小野委員 以上で質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  28. 甘利明

    ○甘利委員長代理 これにて小野君の質疑は終了いたしました。  次に、谷口隆義君。
  29. 谷口隆義

    ○谷口委員 新進党の谷口でございます。  本日、四人の先生方におかれましては、大変お忙しい中、当委員会に御出席を賜りまして、ありがとうございました。また、先ほどはそれぞれの先生方から大変御高説を承ったわけでありますが、今、当委員会におきましては、御存じのとおり財政構造改革法案、極めて重要な法案を審議いたしておるところでございまして、そのような観点から何点かの御質問をさせていただきたいというように考えております。  今回のこの財政構造改革法案と申しますのは、二〇〇三年までに国、地方財政赤字GDP対比で三%以内におさめる、また、二〇〇三年までに特例公債からの脱却を目指す、このように言われておるところでございます。  しかし、これは私ども、二つの意味において大変問題がある、このように考えております。  一つは、先ほど二宮先生もおっしゃっておりましたが、これは、財政構造改革法案といいながら構造改革という視点が抜けておる、まさに歳出削減、また均衡財政法案とも言われるような法案であります。  金融をめぐる世界は大きく変貌いたしております。来年の四月から外為法の自由化も始まります。ビッグバンが二〇〇一年まで、こういうように今政府の方は推し進めていらっしゃるわけでございますが、そうしますと我が国の金融市場が大きく変わってくるだろう、こういうことでございます。  今まで、我が国の国内の金融マーケット、いわゆる個人資産千二百兆円と言われるようなマーケットの中で国また地方が債券を発行してお金を調達した。また、財投におきましても国内の資金を調達してこれを回してきた。こういうような状況でございますが、今後は、そういう観点だけではなくて、極めて視野が広くなってくると申しますか、世界の金融市場が大きな対象になってくるだろう。こういう観点も、これは忘れてはならない観点だろうというように考える次第でございます。  またもう一つは、大変ごこに来て景気が悪くなってまいりました。  今、御存じのとおり九五年の九月に超低金利〇・五%の公定歩合に引き下げられたわけでありまして、もう既に三年目に入っておるわけでありますが、そういう意味において、金融政策はもう打てないというような状況になっております。また一方、今回の財政構造改革法案を審議しておるわけでございますが、総理並びに大蔵大臣は財政出動は行わないというような状況の中で、財政政策も打てないというような金縛りの状況にあるわけでございます。政府の趣旨説明、また、大蔵大臣、総理のお話の中にもありますように、我が国の今抱えておる累積債務、五百二十一兆円と言われるような、これは隠れ借金も含めましてこういうような累積債務があるわけでございまして、これが我が国財政に大変な負担になっておる。国債費を通じて大変な負担になっておるというのは、これはよくわかる話で、極めて重要な話である。  しかし、今の景気の悪化は角を矯めて牛を殺すというようなことにならないのかということで、大変危惧いたしておるところでございまして、現実に、このところの数字を見ておりますと、先日の日銀支店長会議におきましても、各地域において極めて景気が悪くなった、足踏み状態。また、国内の自動車販売も減少しておる。また、百貨店の売り上げも、消費税引き上げ以後、四月以降九月までずっと前年対比で減少しておる。また、先日の世界同時株安でございます。これはもう大変なショックを与えたわけでございますが、これが逆資産効果になって、またより一層消費を減退させないのか。  また、金融機関の不良債権の問題がございます。この金融機関の不良債権の問題は、私はずっと、バブル崩壊以後の政策の間違いが何点か現実にあったんだろうというように訴えておるわけでございますが、特に根底にあるこの不良債権の問題が解決しないと景気はよくならないというようにずっと言い続けてまいりました。現実に、そういうようなことで、政府は六次にわたって六十兆円を超える経済対策をやりながら、むだ金に終わっておるというような状況でございます。  また、こういう状況の中で、ゼネコン状況が極めて厳しくなってきたというようなことで、全国五十六万業者でございますか、建設業界の状況が極めて悪い。大和総研の資料によりますと、上場会社のうち十七社がもう既に債務超過に陥っておる。こういうような数字がずっと上がってまいりますと、本当にこの景気は大変だな。私も、地方に帰って選挙区の方にいろいろお聞きするわけでございますが、政府、特に経企庁長官は、先日、緩やかな回復から足踏み状態、こういうようにおっしゃったわけでございますが、足踏み状態ではない、大変景気が悪い状態である。今、何らかの方策、我々は大幅な減税をやるべきである、このように言っておるわけでございますが、このようなことについてもやらないというようなことで、大変景気が危惧されておるところでございます。  また、先日私、当委員会におきまして質問をさせていただきましたその折に、九一年以降の政府のとった政策が、金をぶち込んで景気が上がってきたら景気を冷やす、ストップ・アンド・ゴーの連続であった、このように言っておるところでございます。また、本年は、御存じのとおりこの四月に消費税が上がって、これで五兆円。また、社会保障関連費用、この九月に医療保険が上がりました。また、特別減税が廃止されました。これらを合わせますと九兆円の国民負担がのしかかってきたわけでありまして、この影響がかなり出ておるのではないか。このようなときに政府はデフレ予算を組んでやっておる。これはまさに病人に冷や水をかけるようなものだ、このように言っております。  また、先ほど申し上げました、もう三年目に入りました超低金利は極めて大きな影響を及ぼしておる。銀行はモラルハザードが生じ、年金生活者は大変な状況になっておる。今回の世界同時株安の大きな原因は、我が国の超低金利が、アメリカの株式市場に行ったり、また東南アジアの市場に行った結果バブルを生じさせた、このようにさえ言われておるわけでございまして、今超低金利の見直しをやっていかなければいけない、こういうことでございます。  また、先ほど金融機関の不良債権の問題に触れましたが、あの住専国会の折にどうもおかしくなっちゃった。住専の救済のために六千八百五十億円という住専への公的資金の導入が、本来やらなければいけない、これは当然そのときには銀行経営者の責任の問題、関係者の責任の問題は生じるわけでございますが、アメリカで行われたような公的資金の問題を論じなければいけなかったときに、結局その方向が違う方向に行っちゃいまして、今そのようなことができない。  今回、今国会で預金保険法の改正法案が出ております。これは、悪い銀行と悪い銀行をひっつけて新しい銀行をつくってこれでやっていこう、いわば公的資金をなし崩しに入れようというような法案が今上がっておるわけでございますが、そのようなことで、この金融機関の不良債権の問題ももう本当に大変なところまで来ておる。  こういうような状況の中で、今回のこの財政構造改革法案は、極めてそのような景気に冷や水をかけるということになるだろうというように私たちは申し上げておるところでございます。  そこで、質問をさせていただきたいと思うわけでございますが、今回のこの財政構造改革法案は、各歳出分野ごとにキャップをかぶせるということで、量的縮減目標を設定してやっていこうというようなもので、先ほど私が申し上げました歳出削減法案、また均衡財政法案ともいうべきものであるというように私は考えておるわけでございますが、本来この財政構造改革というものはどうあらなければいけないのかということについてお話をお聞きいたしたいと思います。まず初めに富田先生の方からごく簡単に、後の質問もありますので、お答えをお願いいたしたい。
  30. 富田俊基

    富田参考人 今谷口先生から、これは財政構造改革というよりも財政均衡法案だと言われたのですけれども、三%の赤字にまでしょうということですので、私は、均衡ではなしに赤字、この財政構造改革をやっても依然として、二〇〇三年になってもまだ赤字があるんだということをまず認識すべきだと思います。  そして、景気が悪い中で病人に冷や水だということでは、これまでも過去数次どんどん景気対策をやってきて、新しい産業が生まれるでもなく、さまざまな古い産業が残ってしまうという、構造改革をおくらせた面というものにもう少し着目すべきだと私は思います。やはりつける薬がこれまで本当に合っていたかどうか、先と言われたような公共事業だ、減税だというのが正しい薬かどうかというのが現在問われていると思うのですね。  例えば、今景気が悪いのは事実だと思うのですが、それは、消費が伸び悩んでいる。それにつきましても、今減税をたとえ行っても、当然これは将来増税して返さねばならない。しかも、その増税の規模というのは現在の減税の規模よりも大きくなるかもしれないという状況の中ですので、消費者の財布が果たして緩むかどうかという問題があろうと思います。  さらには、財政赤字が非常に大きいということだけではなしに、現在の年金制度の維持可能性についても、生産年齢人口が減少する中で、みんな不安に思い出した。ということは、この現在の財政赤字、そして年金債務といったことで持続可能かどうか、そこをやはり国民にメッセージを送っていくというのが財政構造改革の基本的なねらいであろう。つまり、笛を吹いても踊らない対策ではだめであって、そのために財政構造改革だと私は思います。  御質問は、本来どうすべきかということなのですけれども、やはりそれぞれの経費について、目先一律削減といったことではなしに、長期的に歳出構造を変えて、歳出を可能な限り減らしていく、めり張りをつけるということが財政構造改革であって、その中に国民経済が活性化していく可能性があるのではないかというふうに私は思います。
  31. 谷口隆義

    ○谷口委員 八巻先生、お願いいたします。
  32. 八巻節夫

    ○八巻参考人 財政構造改革というのは一体どういうふうにあるべきかということでございますけれども、私は、確かに数値目標そのものは決して否定するものではないし、むしろ必要ではないかというふうに思うのです。ですから、そういった意味で、量的なガイドラインを出していくということは、その達成の一つの手段であるというふうに思いますが、やはり構造改革でありますので、例えば過去の予算の推移を見まして、一体何が原因で予算の構造がこのように悪化していったのか、例えば一般歳出伸びに対して何が突出して伸びていったのか、そこの原因は何なのかということを、悪化期と再建期と両方を照らし合わせ比較しながら、一体そこの伸びがどうしてこんなにふえたのか、今後その予算伸びは継続すべきなのかということで、予算の中身そのもの、構成をやはり相当めり張りをつけて改革しなければならないということが構造改革の第一点だと思うのです。  それともう一つは、片方で、歳出の方と財源があるわけですが、その財源の徴収の仕方が、これは今回ちょっと私はその点で不満に思うところでございますけれども、税制改革の流れがちょっと途絶えているのじゃないか。つまり、システム的な解決ということで、そこが財源の点で改革がなされていないという点が一つ不満です。  私は、公共サービスには必ずそれに対応する財源徴収の方法があるはずでありまして、その公共サービスの中身が変わったのであるならば、その徴収方法も対応して変わるべきでありまして、そういう意味で、絶えず財源の方も改革を検討し、取り組まなければならないのじゃないかというふうに思います。そういう意味で、この財政構造改革はその二点で不満が残ったということでございます。
  33. 谷口隆義

    ○谷口委員 あとお二人にお聞きしたいと思いましたが、ちょっと時間の関係がございまして、またお伺いいたしたいと思いますが、次の御質問をさせていただきたいというように思います。  今、八巻先生がおっしゃっていただきましたが、今回財政赤字削減する過程で、景気インパクト、当然景気に与える影響がここで出てくるわけでございますが、このようなことについて、旧西ドイツで具体的にこのような景気インパクトに対する対策と申しますか、これをやられたというように聞いておるわけでございますが、もしそのような事例を知っていらっしゃいましたら、お聞きいたしたいというように思います。
  34. 八巻節夫

    ○八巻参考人 旧西ドイツで全く日本の現在の状況と同じような状況に直面したことがございます。それは一九八一年でございます。その前にも若干同じような状況が一九七五年に生じていますが、特にあらわれたのがその一九八一年でございまして、それはどういう状況かというと、経済成長がマイナス一・一%でございまして、しかもその赤字地方と国と、社会保険は除きまして一般政府赤字が対GDP比五%を超えました。  そのような状況のときに西ドイツはどういうふうに取り組んだか。同じ状況で、二律背反だと思うのですね。景気をよくしようとすると、赤字をふやさなければならない。赤字をふやすと、財政改革ができない。このようなジレンマをどのように解決したかというと、それは、片方で、特にこれは福祉が中心になりますが、あるいは教育面でも歳出を削りまして、あるいは公務員の削減であるとか、そういった人件費あるいは消費的支出を中心に削減を進める一方で、やはりこれは供給サイドのエコノミックスの考え方に立ちました。もはやケインズ主義的な一時的な大幅な赤字をやっても結局国民経済は活性化しない。そこで、供給サイドの考え方に立ちまして、民間のそういった投資やあるいは消費を供給サイドから刺激する必要があるということで、西ドイツの場合には、増税をしてその財源を確保したということが一つです。それは付加価値税の増税でございまして、二次にわたりまして、一%あるいは二%というふうに増加させていきました。  それと、歳出削減をしました。かなり厳しくやりましたので、その点で財源が出てくる。その財源をどういうふうに使ったか。つまり、景気をこのままにしておいたのではまずいということで、そこで民間の特に設備投資の刺激策をかなり継続的に行いました。  それは例えば具体的にはどうかというと、一つは投資ボーナスということで、これは一九八二年から三年間にわたってやりましたけれども、要するに、新しく設備投資をする場合に、過去三年間の平均額よりも上回った投資をやった場合には、その投資の経費の一〇%を所得税や法人税から控除する。投資ボーナスと言われますが、そういった措置や、あるいは、減価償却を高速償却という形で拡充していった。このような形で民間のところに活動できる余地を与える、そういったことを中心に行いました。ただ、これを今日本現状に持ってきてどうかというと、それは必ずしもそれでいいのだということにはならないかもしれませんが、一つ参考にはなるのではないかというふうに思っております。
  35. 谷口隆義

    ○谷口委員 さらにもう一問、ちょっと八巻先生にお聞きしたいのですが、今回の財政構造改革というのは、歳出面がメーンと申しますか、歳出面をとらえてやっておるわけでございますが、歳入面については全く今考慮されておらない。  先ほど私冒頭申し上げましたように、今から我が国は、グローバルスタンダードと申しますか、経済を開放していくに際して、税制の国際的整合性、こういうことが問われておるわけでございますが、そういう国際的整合性という観点の中で理想的な我が国の税制改革はどうあるべきかということについてお聞きいたしたいと思います。
  36. 八巻節夫

    ○八巻参考人 御質問の税制改革につきまして、ちょっと私の考えを説明すると同時に、世界的な税制改革の流れというのがあると思うのですね。  その世界的な税制改革の潮流というものは、基本的には所得税をフラット化して、課税ベースを拡充する、そして法人税を減税する、そしてやはり同じように課税ベースを拡充する、そして付加価値税を増税する、そして資産課税を軽減していくということが、これは大体世界の税制改革の大きな流れになっていると思うのです。  私は、それに対して、例えば所得税のフラット化というのは、これは、例えば一本化するのはかなり極端ではないかと。やはり所得税にも蘇生する価値がある。特に所得再分配の効果につきましては、やはりかなりの効果を持っておりますので、それを完全にフラット化するというのはやはりちょっと極論ではないかというふうに思っております。だから、そこはやはり五段階ないし三段階の税率のブラケットを設けるべきではないかというふうに思っています。  また、今回の法人税の論議につきましても、実質減税ということで、これは現在の景気状況を考えますと実質減税は必要かなというふうに思いますが、ただ、長期的には特別措置はなるべく整理して、やはり課税ベースを法人税についても拡大する。それと同時に、どうして事業税の改革ができないのかという点がいつも残る不満でございまして、事業税を外形課税をするという形で付加価値税にすれば、やはりそこの事業税の税収分というのはかなり低い税率で確保できるのではないか。現に、地方の便益は受けているわけですから、そういった便益に対する支払いの仕方としては、事業税の改革が必要ではないかというふうに思います。  消費税につきましては、改革された消費税ですね、改革された消費税を、私は先ほど目的税にすべきではないか、目的税の再評価ということでお話し申し上げましたけれども、なぜかというと、消費税というのは税を取る側からすれば打ち出の小づちというか、タックスマシンでございますので、そこにやはり生活者というか、納税者からの歯どめをかける。そういう意味では、目的税化することによりまして、増税をするときには福祉の拡充がなければならないという形になります。  目的税財政学では非常に否定的でございまして、なぜかというと、効率的な資源の配分ができないからだというふうに昔から言われていますけれども、そうではないのではないか。むしろ、目的税化することによってコスト意識が芽生えまして、そのコスト意識によって、自分がこれだけ便益を受けるにはこれだけの負担が必要なのであるということが明確になるわけですね、その結びつきが。そうすることによって、むしろ資源の効率的な配分ができるのではないか。一般税でやりますと、全体の中で隠れてしまうのですね。匿名化されてしまいまして、負担受益結びつきが不明確化する。そこに財政錯覚が起こって、それでむしろ一般税の拡充やあるいは公債の累増が起こるのではないかというふうに思っております。  以上でございます。
  37. 谷口隆義

    ○谷口委員 どうもありがとうございました。  次に、佐高先生にお聞きしたいのですが、先ほどお話を聞いておりますと、金融と財政の分離のことをおっしゃっていらっしゃいました。それで、先ほど富田先生のお話にもございましたが、我が国の戦後は、政官財を中心にしたキャッチアップ体制がつくられて極めて高度成長をしたわけでございますが、それがここへ来て、どうも成長率も鈍ってきた、このキャッチアップ体制の見直し、ひいては経済構造改革をやっていかなければいけない、こういうようなことが今言われております。  我が国が大変この経済構造改革をやりにくいと申しますか、非常に大きな問題は、一つは、先ほども申し上げました戦後の政官財の、官僚が引っ張っていって、官僚主導型啓蒙主義と申しますか、こういうようなことがあって、あるところまでは極めてうまく順調にいったのだろうと思いますが、その後、成長率が鈍ってきた。そのような状況の中で、また官僚が主導していろいろ諸規制を、既得権益と申しますか、そういうようなことがあった。これがやはり構造の中にビルトインされておりますので、なかなか厳しい状態である。  そういう状況の中で、野口先生の考え方で一九四〇年体制というようなお話があります。これは、一九三八年の国家総動員法に基づき戦時経済体制を我が国がつくった。それは、戦後においても崩壊されずに残っている、温存されたと申しますか、極めてシステマチックに動いておる。先日改正されました日銀法もそういう意味ではそういう時期につくられたものでありますし、食管法もそうですし、借地借家法もそうでございますし、源泉徴収制度なんかもそのときにつくられたものであります。そういうような状況の中で、今、極めて財政と金融が一体化した、それによってバブルが引き起こされたというような考え方もあるわけでございますが、今回の財政構造改革法案が審議されております。  先生、先ほどお話しいただいたことを、もう一度詳しく先生の考え方を教えていただけましたら結構だと思いますので、よろしくお願いいたします。
  38. 佐高信

    佐高参考人 金融の政策の失敗をめぐって住専問題というのは起こったわけですけれども、私は、個人的には、六千八百五十億というのは銀行の頭取を中心とした経営者に個人負担させるべきだったというふうに思っております。そういうことを言うと、また例によって過激な意見だという話になるのですけれども、銀行の責任と銀行家の責任というのはまた別にあるわけで、その辺のところが非常にあいまいにされている。  それは、大蔵省が過保護の中で銀行の経営者の無能さを倍増させてきたということだ、無知、無能、無責任みたいなところを倍増させてきたということなんだろうと思うのです。今の銀行の腐敗というのは、まさに大蔵官僚の腐敗と裏表でありまして、保護というのはやはり、するものとされるもの、双方を腐らせるわけですね。それで、そ の金融政策の失敗をまたこっちの方から税金出させるみたいな、そういうことは絶対あってはならないし、だからそういう意味では、財政と金融の分離をやらないと、第二、第三の住専問題が起こるというふうに私は思っています。  それと、財政の問題では、入るを制するのと出るを制するのと、いろいろ方法はあるわけですけれども、入るを制すという意味では、私は、消費税五%に上げるときに新進党などが途中で反対をやめたというのは、個人的には非常に残念でございました。
  39. 谷口隆義

    ○谷口委員 今最後に先生がおっしゃったこと、私、届かなかったのですが、もう一回ちょっとお聞かせ願えますか。
  40. 佐高信

    佐高参考人 五%に上げるときに、最初反対して途中で腰砕けになったのは個人的には非常に残念でしたということです。
  41. 谷口隆義

    ○谷口委員 いや、我々は基本的には最後まで反対しておりましたし、私がこの引き上げ法案を国会の中で代表をしてさせていただいたわけでございますので、先生、ちょっとそれは御理解違いだというように思っております。  さっき申し上げた金融と財政の分離の問題は極めて重要な問題だというように認識しております。  また八巻先生にお聞きしたいのですが、先生は、福祉目的税ということについて大変興味を持っていらっしゃる、関心を持っていらっしゃるとお聞きいたしておりますが、このあたりのことをちょっと教えていただけましたら。よろしくお願いいたします。
  42. 八巻節夫

    ○八巻参考人 福祉目的税がなぜ必要かということは先ほど若干説明いたしましたけれども、さらにつけ加えまして御説明いたしますと、一番基本的な考え方は、例えば、どのような公共サービスであれ、必ずそれに見合う財源の徴収方法があるはずなんです。ですから、それに見合う徴収方法をすれば私たち納税者としては非常に納得がいくのであって、確かに、納税者として一番不満に思うのは、水平的公平とか垂直的公平はともかくといたしまして、それ以上に一番不満であるのは、自分が払った税金が一体何に使われているのか、ふたをあけてみたらとんでもないところに使われていたり、あるいは本来他人が払うべきはずであった部分を自分が払っている、こういうことが明らかになることが最も不満が噴出する部分だと思うのです。  ですから、そういう意味でも、では、福祉目的税というのは何なのかということで申し上げますと、福祉というシステムは、要するに公共サービスの多様な複合体だと思うのです、全体としては。ですから、例えば純粋公共財的な、国民全体が便益を受けるような部分もあるでしょうし、また価値財的な、政策として促進すべき内容を持つものもあるでしょう。また、受益者負担みたいに、特別な便益を個人的に吸収している、そういう部分もあるでしょう。したがって、そこを洗い出しまして、それに対応するような仕方で徴収方法を考えるべきだ。  ですから、特に消費税を考えれば、消費税は一般税ですので、一般税はやはり国民全体が均等に差別なくサービスを受けるものに対する支払い方法であると思うのです。そういう意味では、例えば福祉目的税を導入する場合には、必ず基本的な基礎的な福祉の部分、例えば基礎年金であるとかあるいは社会保険の基礎的な部分であるとか、そういった基礎的な福祉の支払いの仕方として福祉目的税というのが適合しているのではないかというふうに思います。  それと関連いたしまして、第二臨調以降、論調としてずっと現在まで続いているのがありまして、それは、国庫負担をなるべく減らして、そして社会保険負担で、そちらに傾斜すべきであるという考え方でございますが、これについては若干不満があります。なぜかというと、そこは手段の選択でありまして、例えば社会保険に傾斜するのならばそれでいいのですけれども、それならばそれに見合う福祉の拡充があるのか。今までと違った福祉の拡充があって、その支払いの仕方として社会保険負担がちょうど適合的であるからそれに傾斜すべきであるというならば話がわかるのですが、ただ国庫負担、もう租税は無理であるから社会保険負担に傾斜すべきであるというのは、余り論拠としては説得性がないのではないか。  社会保険負担のあり方として、受益負担が明確なというまくら言葉がつくのですが、しかし現在、社会保険の、特に年金なんかを中心に、受益負担が明確というよりも、世代間の所得再分配の内容になっていますので、むしろ純粋公共財的なそういった内容になっていますので、そうすれば、社会保険負担よりもこれは租税に対して傾斜すべきであるというふうに、むしろ逆に考えられるわけです。そういった意味でも、介護保険なんかについても、そういったとらえ方をすればむしろ租税負担でいくべきだというふうに論調としてはつながっていく、そういったことを考えております。
  43. 谷口隆義

    ○谷口委員 それじゃ、時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。
  44. 甘利明

    ○甘利委員長代理 これにて谷口君の質疑は終了いたしました。  次に、生方幸夫君。
  45. 生方幸夫

    ○生方委員 民主党の生方幸夫です。本日は、四名の先生方、お忙しい時間、大変貴重な御意見を賜りましてありがとうございます。私は、二十分間にわたって質問をさせていただきたいと思います。  財政構造改革の審議、ずっとこの間進められてまいりました。政府がそもそもこの案を提出したときには、考えられたときには、今のような景気状況というのを予想はしていなかったはずでございます。すなわち、四月に消費税の引き上げ、特別減税の廃止等九兆円に上る国民負担増というのがあって、その影響を多分夏ぐらいまでには脱して景気がかなりよくなる、先行き明るい見通しの中でこの財政構造改革案の審議がなされているはずだという前提で多分政府はこの財政構造改革案を提出したんだというふうに私は考えております。  しかしながら、まさにその財政構造改革案の審議の山場におきまして世界同時株安というような状況が起こりまして、株価自体はその後戻したとは言いますが、アメリカの株価を除けば、アジア、日本、ヨーロッパ、それぞれ不安要因を抱えておりまして、これから先、まだ株が安定するというふうには言えない状況でございます。また、日本景気に与える影響というのも、株安というのが非常に暗い影を投げかけているのではないかなというふうに私は思っております。この中で、今のまま景気対策、大幅なものを打たないで一体いいのかどうかというのが、国民の間に今非常に不満になってあらわれてきている。  政府・自民党さんがお考えになりました景気浮揚策、景気対策というのを見ますと、規制緩和を中心とした案でございまして、残念ながら極めて効果の乏しい、あるいは効果が出るのに非常に時間がかかる対策になっております。もちろん私たちも、五百二十兆円余りの財政赤字というものを何とかしなければいけない、これはもうどの政党、国民だれを問わず考えていることだと思うのですけれども、財政構造改革をするということは、当然財政支出を抑えていくということが中心になるデフレ政策でございますから、いわば、走っている車にとってはブレーキをかけることになる。  今景気自体は足踏み状態というふうに言っておりますが、一部で見ればもう既に後退を始めているというような状態で、片方では景気対策としてアクセルを踏まなければいけない状態である。まさに、政府が今おやりになろうとしていることは、ブレーキと同時にアクセルも踏まなければいけないという、非常に矛盾したことをやらなければいけない難しい局面に差しかかっているわけです。これは、一つ間違えれば、車の運転をお考えいただければわかりますように、スピンをしてしまって、ぐるぐるっと回ってしまって、まさに乗っている国民が非常に迷惑を受けるということにもなりかねないというふうに私は考えております。  財政改革をやらなければいけないのに、ではどうしたらいいのかということを考えた場合、やはりここは財政構造改革目標年次を一年ないしは二年延長するというような柔軟な考え方もいいのではないか。景気の先行きがある程度見通しができるまでの間、一年ないしは二年、その執行を凍結するというようなことをしないと、この法案がこのままいきますと、来週でもこの委員会を通りまして衆議院を通過するというようなことになりますと、景気により一層悪い影響が出るのではないかというふうに私は懸念をしておるところです。  そこで、きょう御出席していただきました先生方に御意見をお伺いしたいのです。  まず富田参考人にお伺いをしたいのですが、今私申し上げましたように、財政改革は確かに大事なことでございますが、同時に、景気対策というのを非常に国民の間では待望する声があるわけです。今政府がやるべきことは財政構造改革であるのかあるいは景気対策であるのか、どちらを優先させるべきだというふうにお考えなのか、その辺のお考えがございましたら聞かせていただきたいと思います。
  46. 富田俊基

    富田参考人 私は、財政構造改革を優先すべきだと思います。これまで幾たびも景気対策を行ってきたわけですけれども、やはり日本経済が置かれている状況というのは、大きな構造変化の中にある。それに景気対策で対応してこようといたしますと、もうどんどん財政支出あるいは減税を行わねばならないということだったかと思います。  先ほど、一年おくらすというふうなお話があったわけですけれども、景気というのは生き物でありまして、これがまさに市場経済のダイナミズムで、より有効で効率的な産業拡大し、そうでないところが徐々に衰退していくというのが市場経済だと思います。  今、デフレ政策というふうにおっしゃったのですが、現在は先進国で一番大きな年間での財政赤字五・四%を出していて、そういう面では刺激策だと思います。自動車の運転に例えられてアクセルとブレーキだというふうに言われたのですけれども、私は、アクセルやブレーキよりも正しい方向にハンドルを向ける、それは、大きな産業構造転換の中にあって民間市場経済のダイナミズムをどうやって引き出すか、それが経済構造改革であって規制緩和だと思うのです。そちらの方向にハンドルを向ける、それが、財政構造改革経済構造改革が表裏一体として推進すべき、あすを切り開く道であろう。  確かに景気対策がないと失望される方もいるわけですけれども、国民から見ますと、一体どっちの道に行くんだろう、景気が悪いといつまでも甘えさせてくれるのかな、それとも自助努力、自己責任でもって経済を切り開くのか、この分かれ道にあるわけでして、ここはやはり正しい方向にハンドルを切る必要があろうというふうに思います。
  47. 生方幸夫

    ○生方委員 先ほど富田参考人のお話で、アメリカとかドイツが、まさに景気が後退しているときにこそ構造改革というものに取り組んだというようなお話がございました。  確かに、アメリカを見ましても、景気が非常に後退をしているさなかに財政構造改革案を打ち出して、財政赤字を非常に減らしたという実績があるわけですが、私はちょっと参考人意見を異にするのです。アメリカは、やはり八〇年代の初めから経済構造改革に取り組んできて、ある程度経済構造改革にめどが立った時点で、確かに景気は悪かったですけれども経済構造は非常に大きく変わりつつあって、変わっているいわばその種が仕組まれていて、これがいずれ花開くであろうということが予想された時点で財政構造改革を立て、御承知のように、法人税の自然増というのが非常にふえていったという追い風を受けて財政構造改革をされたわけです。  ところが、日本の場合ですと、残念ながら日本経済構造は余り大きく変化はしていないわけですね。方向としても、規制緩和というのが打ち出されてはおりますが、本当に規制緩和を実施するだけで、アメリカ型のような経済構造改革ができるかできないかわからない状態で、今経済構造改革ではなくて財政構造改革に取り組んでしまえば、先ほどの新進党の委員の方もおっしゃいましたように、まさに角を矯めて牛を殺す結果になるのではないか。もともとの経済本体を枯らしてしまうようなことを行ったら、これは、せっかく財政構造改革をやろうとしても日本経済全体が縮んでしまうのではないかというふうに私は考えておるのですけれども、いかがでございましょうか。
  48. 富田俊基

    富田参考人 確かに、アメリカは規制緩和が先行していたことも事実ですが、我が国も、平成に入ってからですけれども、規制緩和がぽつぽつと行われてきたことも事実です。同時に、当時の、九〇年、九一年のアメリカを見てみますと、やはり我が国の現在と同様、金融部門において不良債権が非常に累積していた。ですけれども、財政再建のためのOBRA、包括財政調整法というのをつくり、そして金融の規制緩和を進めるということでやってきたわけです。  私は、何も我が国もアメリカと同じがいいんだということを申しているわけではなしに、もう既に借金残高国民経済に対して非常に大きなリスクを与えるところまで来ている。一年延ばせばいい、二年延ばせばいいといえば、いつまでもこれが続いてしまうと思うのです。今回の、五・四%の赤字を三%に徐々に引き下げるというのは、私、電卓で計算してほかの国と比べても、決してそれは速いものではないのです。年平均で〇・四%ずつ引き下げるということでございます。  その三%の意味がわからないというふうなお話があったのですけれども、これは、借金残高の対GDP比が一定水準に保たれるための毎年の財政赤字の対GDP比、これが一二%でして、現在の五・四ですとどんどん借金残高の対GDP比がふえてしまう。したがって、二〇〇三年までに三%以下にすることによって国、地方借金残高の対GDP比を一定にするという中間的な目標であると思います。
  49. 生方幸夫

    ○生方委員 二宮参考人に、財政構造改革法案を出すタイミング、今が適切であるのかどうかということについて、ちょっと御意見をお伺いしたいのです。
  50. 二宮厚美

    二宮参考人 私は、財政構造改革法案全体が問題があるというふうに思っておりますから、タイミング以前の問題で、これが、例えば来年出されたらそれでいいか、再来年出されたらそれでいいかというふうな御質問でありましたら、それはノーと言うしかないと思います。
  51. 生方幸夫

    ○生方委員 先ほど二宮参考人が、赤字国債削減するだけの目標であれば、教育や福祉に対する投資というものがなくなっていくんだというような御指摘をなさいました。  私どもも、赤字国債、建設国債という分け方自体がもはや古いのではないか、赤字国債、建設国債という分け方をやめて、一本化して、その上で発行の何かしらの限度というものを設けるべきではないかというような考え方を持っているのですが、それについての参考人の御意見をお伺いさせていただきたいと思います。
  52. 二宮厚美

    二宮参考人 御存じのとおり、財政法の第四条で、特例といいますか、建設国債についてだけ一応許容されている。したがって、赤字国債は、毎年毎年の文字どおりの特例に基づいて発行されているわけですね。建設国債は、第四条が許容しているということによって、それを口実にして、赤字国債以上に発行されやすい体質を持っている。したがって、それも縛る必要があるのじゃないかという御趣旨だと思いますが、その限りでは、放漫財政といいますか垂れ流し財政というか、これに縛りをかけるという意味では、同じ国債に対する歯どめでありますから、御趣旨の限りでは賛成であります。  ただ、赤字国債と、それから、例えば港湾にしたってダムにしたって道路にしたって必要な財源というのがあるわけで、これを国債という形で一本化して、それで完全に処理できるかどうかという問題は残ると思いますから、それは検討課題として考えなければいけないというふうに思います。
  53. 生方幸夫

    ○生方委員 先ほど二宮参考人の御意見の中で、内需拡大をする、それを中心とした経済を運営していかなければいけないということで、社会保障費等に重点的に投資をすることによって内需を拡大したらいかがかという御意見がございましたが、もう少し詳しくこれを伺わさせていただきたいのです。
  54. 二宮厚美

    二宮参考人 これは、最近、福祉は経済的効果を発揮するとかあるいは福祉は投資であるという見方が必要だ、こういう議論が盛んに行われておりますが、その趣旨で一部申し上げたわけです。  それで、具体的に申し上げますと、今ちょっと正確な細かい数字までは覚えておりませんが、例えば、公共事業のいわゆる誘発効果といいますか、産業連関上の波及効果は、現在、乗数が一・四ぐらいにたしか下がっているはずなんですね。これに対して、これは医療経済研究機構だったと思いますが、そこが試算した産業連関上の数字では、医療の経済波及効果は一・八なわけですね。つまり、公共事業景気刺激効果というのは、景気刺激効果だけを取り出すと医療、福祉を下回る、そういう状態になっている。だから、内需拡大であっても、そういう景気刺激という視点から見たって、社会保障や医療の配分というのが重視されていいのではないか。  その波及効果だけではありませんで、これはその他の国会の委員会でも問題になっていると思いますけれども、その波及効果を一つといたしますと、大体医療や福祉は主に国内で資金が循環いたしますから、あと二つばかり効果があるわけです。  これは通説でありますけれども、例えば介護であるとかまた保育の重視というのは、これから問題になるであろう労働力の女性化、女性の社会進出をその分促して、すなわち育児だとか介護から女性を解放して、これから予想される高齢化社会の中の労働市場の担い手として極めて有力な役割を果たす。これは一般的に言われている点でありますし、介護体制がしっかりすれば、研究機関の名前は忘れましたけれども、たしか二十数万ぐらい労働力市場が拡大するという試算がありますけれども、それらが一例です。  それから、社会的有用性、つまりこれは経済の、産業だとか就業構造の質にかかわる問題でありますけれども、例えば、医療費といいますのは二十八兆円近くというふうになっておりますが、よく対比されますようにパチンコ産業だって三十兆円あるわけですね。パチンコ産業で三十兆円費やすのが日本経済や社会全体の質にとって望ましいか。それとも医療で、もちろんこれは薬価その他改革しなければいけない点があるわけでありますけれども、それにしても、医療の二十八兆円なら二十八兆円を、パチンコ産業の三十兆円を横に置いて目のかたきにするというのは、いささかバランスを欠いているのではないか。  そういう意味で、質を切りかえるという効果もありますから、波及効果にあわせて総合的に、福祉充実ないし社会保障主導型の経済ということをここで本格的に考えるべきではないか、こういうことであります。
  55. 生方幸夫

    ○生方委員 次に、八巻参考人にお伺いしたいのですが、八巻参考人は、数値目標の根拠が明らかでないというようなことを先ほど御説明していただきました。  私どもも、この間の審議の中で、確かに数値目標は掲げられているのですけれども、その数値目標が守られなかった場合は一体どうなるのかというような論議をたくさんしまして、結局、この数値というのは単なる努力目標であって、この法案が通ったからといって何ら効力はないのだというふうに我々はこの論議の中で考えてきたのですけれども、単なる努力目標を列記したこの財政構造改革法案が通った場合、どの程度財政構造改革に対する効果があるというふうにお考えになっているのか、お話をお伺いしたいのです。
  56. 八巻節夫

    ○八巻参考人 財政構造改革についての効果ですか。
  57. 生方幸夫

    ○生方委員 仮に通った場合、財政構造改革に対する効果です。数値目標を列記していますが、それを破った場合でも何ら法的な罰則があるわけでも何でもないというような法案が通ったことの効果ということです。
  58. 八巻節夫

    ○八巻参考人 数値目標は、例えば今の景気の関連でいいますと、今現在GDPギャップが七%ほどある。日本の実力からいえば、経済成長率は、潜在成長率は三%ほどである。したがって、私は、数値目標そのものは決して否定するべきものではないし、そこに到達点があるということをいつもにらみながら進めるというのは、これはいろいろな面で協力体制ができるのではないか、そういう意味では数値目標そのものは効果はあるというふうに思っております。  ただ、経済は生き物でございまして、例えば短期的な見方と長期的な見方があると思うのですね。ですから、最終的に三%なら三%という目標に到達することは、これは否定するものではないのですが、しかし生き物でありますから、その過程の中でかなり変化があるし、また、特に集中期間というのは、むしろ集中的に経済を立て直すということに力を注ぐべきじゃないかと思うのですね。  そういう意味で、景気インパクト低下するわけですから、その低下する部分を補完する何らかの措置を明示すべきである、また実行すべきであるというふうに思うのです。そのときの数値はこの目標等をにらんだ上で変化するでしょうが、しかし、それはそれで正常値に戻ればまた目標達成の実現に向かって進めばいいのであって、余り硬直的に縛られるべきではないのではないかというふうに思っています。
  59. 生方幸夫

    ○生方委員 佐高参考人には質問する時間がなくなってしまいまして、大変失礼いたしました。  これで終わります。
  60. 甘利明

    ○甘利委員長代理 これにて生方君の質疑は終了いたしました。  次に、児玉健次君。
  61. 児玉健次

    ○児玉委員 日本共産党の児玉健次です。きょうはお忙しいところ、ありがとうございます。  最初に佐高先生にお伺いしたいのですが、もし私の聞き違いでなければ、先ほどのウイッシュリストですね、確かに国民の側からすれば、予算は本来ウイッシュリストでなければならないと思うのです。しかし、現状からいえば、残念ですけれども、今日の政治のさまざまな分野に対するスタンスといいますか姿勢を金額であらわしているのが今の予算だ、私はそういうふうに思っています。  そういう中で、先ほど、ゼネコン公共事業にお触れになったところから発して、公共という言葉の中身の吟味が必要だ、そして社会保障公共ではないかというふうにもおっしゃったと思うのです。まずその点を、すなわち社会保障公共性について、よろしければ、例えば文教予算その他にお広げいただいてもいいのですが、先生のお考えを伺いたいと思います。
  62. 佐高信

    佐高参考人 先ほど二宮先生もおっしゃいましたように、経済の波及効果として医療というふうなものが非常に大きいということであれば、むしろ経済的な側面からそういう社会保障というものも考えられていいだろう。また、文教の方も、私は、ゼネコンとかにかわるものとして、比較して、十分考えられていいものではないかというふうに思います。
  63. 児玉健次

    ○児玉委員 二宮先生にお伺いしたいのですけれども、先ほど大きく二つに問題をお分けになって、そしてそれぞれ内容についてお触れになりましたが、最初の部分に関連して、予算の単年度主義、それから国会の予算審議権と今度提案されている法案との関連、そのことについてもう少し立ち入って御意見を伺いたいと思うのが第一点です。  二つ目の点は、今質問があって社会保障経済的効果については十分お伺いいたしましたので、先ほどのお話の中で、自然増がもしカットされたらその分野の質的な変化が生まれてくる、そのことを社会保障に触れてお話がありましたが、そのことについてもう少し先生のお考えを伺わせていただきたい。  以上、二点でございます。
  64. 二宮厚美

    二宮参考人 単年度主義だとか内閣の予算編成権及び国会の予算審議権というのは、これは、国権の最高機関である国会、それからそれに並んで、憲法上、財政の取り扱いにつきまして会計年度を定めてそれで予算を審議し、国会の責任において毎年、先ほどのお言葉で言いますと政治の顔である予算を取り決めて、それでもちろん後に会計検査を行う、そういう流れは、全体としては予算の、あるいは広くとりますと財政民主主義の一環だと思うのですね。  これは、例えば財政が多年度にわたって流用されるとか、あるいは多年度にわたって国会及びこういった委員会の審議権等が拘束されることがないように、つまり、政治というのは、その意味では実態に基づいて毎年毎年変化しなければいけないし、対応しなければいけないわけでありますから、年度を区切って予算というのは審議をしなければいけない、こういうことで、国会だけではありませんけれども、自治体の予算につきましても年度を区切って会計処理をするということだと思うのですね。  そういう点で、私は、自治体に対する補助金の一括削減も、財政民主主義という視点から問題があるんじゃないかとあわせて指摘したのでありますけれども、要するに、財政を運用していくときの本来の国会の民主主義のあり方というのをきちっと考えた上で、こういう長期にわたる財政を拘束するような法案については、けじめをつけるといいますか、処理をしておかなければいけない、そういう趣旨で見逃せない問題点だと思いましたから指摘をしたということであります。  それから、自然増分のカットはやがてこれまでの社会制度の仕組みを大きく切りかえるのではないか、こういう指摘をしたのでありますが、これは社会保障予算に限らなくて、教育であるとかあるいは労働行政についても同じことが言えると思います。  例えば、今回、高齢者の求職給付金、いわゆる雇用保険の財源があわせてカットされようとしておりますけれども、これは、一種の失業対策、失業行政に対する見直したと思うのですね。つまり、自然に、例えば高齢化社会で六十五歳以上なら六十五歳以上の人たちの求職人口はふえるであろう。これは自然増だと思うのです。そういう社会のトレンドに基づいて自然に増加せざるを得ない予算要求をいわゆるキャップ制と称して上から抑えつけるということをやりますと、資金が抑制されるわけですから、先ほどの言葉で言いますと一種の財政上の兵糧攻めに遭ったようなものですから、その中で制度のつじつまを合わせなければいけない。  それに基づいて、今構想段階ではありますけれども、最も大きな制度改正案として出てきているのが医療制度で、医療制度は、何しろほかの、例えば失業手当なんかと比べまして規模がそれなりに大きいものですから、自然増部分もそれなりに伸びていかざるを得ない。これは、医療費が、御存じのとおり、高齢化に基づく自然増部分であるとかあるいは医療技術の進行に基づいて生み出されてくる医療費の増加であるとか、これらの社会的、自然的要因に基づいて発生せざるを得ない。その増加部分を、先ほど申し上げましたようにカットしていきますと、プロクルステスの寝台のように、その寝台に合わせて足を切らにやならぬ。足を切るということは結局、制度の質的な後退、国民から見ますと改悪を招くことになる。その延長線上で、医療制度の改変案というのが次の通常国会で問題になるそうでありますけれども、そういうことを例えば国会で審議するときに、要するに、財政構造改革法案が先に通っちゃうと、もうその枠の中でしか議論ができない。  さっきの話に戻りますけれども、要するに制度の改悪と、それから、国会の中で本来医療なら医療について考えるべき課題を、枠をはめて取り決めをしてしまうということになりますから、財政民主主義という点から見ても、あるいは戦後の社会保障制度の精神という点から見ても、非常に大きな問題点があるのではないか、こういう指摘をしたということです。
  65. 児玉健次

    ○児玉委員 八巻先生にお伺いをしたいのですが、先ほどの、十分間という限られた時間での御陳述とあわせて、私、先生が以前、税務弘報の四十四巻、「国民負担率社会保障の未来」という御論文の中で、いわゆる国民負担率というカテゴリしが「政治色の濃い目眩ましである」とお書きになって、そして担税者、生活者の論理から追ってみよう、そういうアプローチで展開なさっているのを大変興味深く拝見したことがあるのです。今日の社会保障その他の状況と、そして国民負担率、どうも私は、家計が社会保障についての保険料その他を負担し、かつ租税の負担、それに全く異なる性質である企業の分まで一緒に足してしまう、このやり方が何とも納得ができないのですが、そのあたりにも触れて、先生の御詳説を伺いたいと思います。
  66. 八巻節夫

    ○八巻参考人 税務弘報に書きました論文の趣旨につきましては、要するに、先ほどの主張の繰り返しになるかもしれませんが、やはり、福祉がどのようにして今後推移するのかということを明確に見た上で、それの裏づけとしての負担のあり方というものが必要であって、それを初めから国民負担率というものを持ち出してきて、そしてそれが大変な数字になるよということで、だから削らなければならない、だから福祉削減だ、こういう論調はちょっと順序が逆じゃないかというふうに思いまして、それで書いたわけなんです。  特に、社会保険の負担の国別のものを見ますと、国によっていろいろなんですね。社会保険の負担部分が非常に大きい国と大体同じ国、それから逆に租税負担の部分が大きい国、こういうふうにあるし、また全体の国民負担率についても非常に低い、高いがあります。そのときにその論議として出てきたのが、一つは、先ほど御紹介しましたように、負担受益が明確な社会保険に傾斜すべきであるという論調と、それからもう一つは、社会保険負担というのはそもそも不公平であるからこれを租税負担に傾斜すべきであるという論調、それから先ほど言った、サービスの内容がもう純粋公共財的なものに変わっているのであるから租税負担にすべきであるとか、そういったいろいろな主張が巷間に主張されているのですが、それがちょっと私としてはいずれも納得できないというか、要するにそれは財政の徴収の方法の選択でありまして、それに見合う政策目標の選択問題とは違うのではないか。     〔甘利委員長代理退席、委員長着席〕  だから、財政の手段の選択は、適合的に考えれば、一番最後に紹介した、福祉の内容が変わったのだから負担のあり方も違ってくるという、これは正しい、適正な負担のあり方だと思うのですが、しかし、先ほど言った政策目標の選択問題については、これは国民的に信を問うべきである。社会保険負担に傾斜すべきであるというならば、それなりの政策を、福祉の中身としてこれからこれを拡充しますよということを、これは政策目標の選択ですから、それは国民に信を問うべきであって、それを逆に手段から主張されているという点がどうしても納得できない。ですから、先ほど言った企業負担の部分と家計の負担の部分との違いも、やはりサービスの内容を通じての明確化をすべきであるというふうには思いますけれども。  以上です。
  67. 児玉健次

    ○児玉委員 最後になりまして大変失礼ですが、富田先生、先ほどお話の最初のところで、これまでともすればありがちだった傾向として、大規模な刺激策、これが常用される傾向があったという趣旨のお話をいただいたと思うのです。  この大規模な刺激策というのが、今のことではないのですけれども、今日の財政困難を生み出していると思うのですが、そのことについての社会的な責任は主としてどこに存するのかという問題と、そして、その結果に対する責任についてもいかがか、この二点についてお伺いしたいと思います。
  68. 富田俊基

    富田参考人 まず、経済学的には、潜在成長率が下方に屈折した中で巨額の需要をつけたというのがこの六十兆円余りの対策であったと思います。  今おっしゃられたのはその責任の問題なんですが、私は経済学が専門なんですけれども、基本的には、予算、そして補正予算財政投融資の追加、すべて国会で審議、決定されたものであって、まさに国民国民として選択した結果であって、国民全員の選んでしまった道であって、国民すべての、各位の、私も含めて国民一人一人の責任であろうというふうに思います。
  69. 児玉健次

    ○児玉委員 ありがとうございました。  終わります。
  70. 中川秀直

    中川委員長 これにて児玉君の質疑は終了しました。  次に、濱田健一君。
  71. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 四名の参考人皆さん方には、きょうは大変お忙しい中、ありがとうございました。  私の持ち時間は十分ですので、二点だけ、二人の参考人にお尋ねをしたいと思います。  まず、佐高参考人のお考えをお聞かせ願いたいのですが、先ほど、ウイッシュリスト国民願望と国の政策の方向性や財源投入の重点化の方向性等と差があるというお話を冒頭でしていただきました。財政構造改革視点という立場でいうと、どこに力を入れ、どこを力を抜くか、いわゆる公共事業と教育の問題とか自然環境等々の問題で比較をされてお話をしていただいたと思うのですが、今並行して行われております行政改革、この中で、中間まとめの中で一府十二省構想というものが出てきていますのは、もう皆さん方御案内のとおりでございます。  各役所の既得権その他含めて、さまざまな院内外の駆け引き等々、火花が散っているようでございますが、この財政構造改革という、財源をどのように健全化していくかという視点と、いわゆる行政の組織を国民願いをかなえるために変えていくという接点といいますか、これらが、今ある省庁の構想や特殊法人を含めた部分から、まさにいろいろなものをひっつけたり離したりしながら変えていこうとしているのですが、佐高参考人がもっとこういう考え方もあるのではないかというようなことがございましたら、お聞かせを願いたいというふうに思うのです。
  72. 佐高信

    佐高参考人 ウイッシュリストという言葉は、濱田議員の同僚の秋葉忠利議員のエッセーから拝借したものなんですけれども。  それで、今度の財政改革法案行政改革というのは、申すまでもなく大変深い関係があるわけで、先ほども申し上げましたように、財政と金融の分離というのは、まさに財政の健全化のためにも絶対必要なことだと思いますし、それから、行革会議の案とか自民党の案なんかの中で出たり入ったり、出入りが非常に激しいわけですけれども、そういう中で国税庁の分離ということですね、地方税の徴収と一緒にするとかいう案も、まさに私は本気でやらなきゃならない話だというふうに思います。  巷間伝えられるところによりますと、大蔵省が財政と金融の分離に抵抗し、国会議員がずるずる後退していったのは、予算をつけてもらうという感覚と、あるいは税金で、税務調査でおどされるというその両方でずるずる後退したのだというふうに言われておりますけれども、そういうふうな問題と絡めて、特に妙案というのはないのでしょうけれども、そこら辺の大原則を踏まえると、やはり財政と金融の分離、さらには国税庁の分離というのは欠かせない、一緒にやらなきゃならないことではないかというふうに思います。
  73. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 何といいますか、私たちは札束で生きているわけではないわけでございまして、農業の問題や自然そして環境、十二月の京都会議等々も含めまして、いろいろな場で全くフリーに話をするときには、例えば今社会民主党が提唱している環境省的なものを一番上に持ってくる。人間があくまでもこの地球の上で、生物といいますか、動物の中の一つの種として将来にわたって生きていくためには、環境省的なものを一番上に持ってきて、そこが、公共事業にしてもいろいろなその他の社会資本整備にしても、根本的な、人間として、そしてその他の動植物を守っていくという意味で最初の原案をつくるといいますか、突拍子もないことかもしれませんが、そういうような案なんかも考えるべきだというような話もするのですけれども、佐高先生、いかがでしょうか。
  74. 佐高信

    佐高参考人 私、諌早湾にも出かけましたけれども、まさに無残なことをやっているわけですね。あれは、それこそ世界遺産じゃないけれども、大変な遺産となるべきものをみずからの手でつぶしているという感じがします。  おっしゃるように、環境というふうなものをトップに掲げて、そしてそれを最優先に掲げて財政なんかも考えるということは本当に必要なことだと思いますし、財政むだ遣いというのは、公共概念の見直しというふうにさっき申し上げましたけれども、それと絡んで、やはり公共といったらすなわち環境だというふうな形に認識が広まることが一番大事なんじゃないかというふうに思います。
  75. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 八巻参考人にお尋ねをいたします。  先ほどのお話の中で、財故意思決定の明確化という言葉が出てきたと思います。ちょっとポイントが違うのかもわかりませんが、先ほど児玉委員からもお話というか御質問があったのですが、法案審議の経過の中で、ことしの予算編成から向こう六年間、いわゆる行政府予算編成枠組み、これらも、いろいろな数値によってみずからを縛ることによって赤字財政の縮減を図っていかれようとされておられる。このことは、政府の意思として大いに結構だというふうに私は思います。  しかしながら、憲法の立場からいって、補正とか本予算を含めて、立法府が審議権や立法権というふうに与えられた、保障された中身というものを侵害されるのではないかというような論議、規制というか制約と言った方がいいでしょうか、そういう話もるる出てきたわけでございますが、この法案を見られて、先生はどのように思われるでしょうか。
  76. 八巻節夫

    ○八巻参考人 財故意思形成生活者視点を反映させるということの点で、先ほども申し上げましたけれども、財政民主主義というのはやはり立法府が中心というか優先というか、そこが国民を代表しているわけですから、そこの意思が反映されるということが大切かと思うのですね。だから、今回のこれは法律になるわけですから、予算が法律で縛られていくのですが、そのことが果たして国民にとって、生活権というかそういうことの主張として縛られていいのかという問題があると思うのです。  それが一つということと、それから、若干話は違いますけれども、先ほどの環境のことでちょっと簡単に意見を述べさせていただきますと、財政の中にエコロジカル・タックス・リフォーム、そういう考え方がありまして、これはもうヨーロッパやアメリカでも盛んに論議されております。これは特に非常に象徴的なのは、環境税を取りまして、そしてその環境税で、かなり超過負担、ゆがみが多い従来の、例えば所得税を半減するとか、あるいは場合によっては消費税をなくすとか、そういった論議まで行われておりまして、それが要するに国民の、生活者の意思が財故意思決定の中に反映されている一つの試金石になり得るというふうに思うのです。  ですから、日本の場合にどれだけ環境税が導入できるか。これは、今までの石油税が例えばCO2税にかわれば、CO2含有量によって徴収されれば、むしろ税収はふえた上、逆に従来揮発油税を払っていた人たち減税されるのじゃないかというふうに思いますので、決して景気刺激策として悪いものではないというふうに思っています。そのように国民の、生活者の意思が反映される、そういった制度が非常にこれから大事じゃないかというふうに思っています。
  77. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 ありがとうございました。  終わります。
  78. 中川秀直

    中川委員長 これにて濱田君の質疑は終了いたしました。  次に、北橋健治君。
  79. 北橋健治

    北橋委員 参考人の皆様、きょうはどうもありがとうございました。  時間は五分でございますので、早速質問をさせていただきたいと思っております。  まず、当初予算に縛りをかけて財政構造改革をしようとしている点が、私は一つの大きな不安材料だと思います。場合によってはしり抜けになる可能性がある。そこで、財政構造改革に理解のあるお立場の御意見を賜りました富田先生にお伺いいたしますが、これまで補正予算でこの数年間、景気対策で相当公共事業、建設国債の増発をやってきているわけです。したがいまして、当初予算で七%公共事業を抑えましても、それがまたどんどんふえていくという事情が生まれるかもしれない。そういった意味では、当初予算だけで縛りをかけている点は非常に問題があるのではないかと思うのですが、その点、どうでしょうか。
  80. 富田俊基

    富田参考人 先生の御指摘のとおりだと存じます。
  81. 北橋健治

    北橋委員 今度の法案を見ておりまして私は思うのですが、具体的に削減目標を明確に数字を示しているもの、例えば福祉、文教、あるいは、私どもはこれは削減すべきではないと思っておりますが、高年齢求職者給付金、具体的に書いているものもありますが、しかし非常に抽象的、あいまいに書いているものもあります。その辺が、痛みを分かち合うときに国民には非常に不平等感が出る、大変問題があると思うのです。その点で、私はやはり隗より始めよと。これから国民の皆様方に痛みをお願いする以上は、まずは国会議員、国会、公務員、こういった官業の方から相当程度のリストラの努力を示さないと、財政構造改革法案で御理解をいただくことは非常に難しいと思っているのであります。  その点、二宮先生にお伺いをしたいと思うのですけれども、先生も先ほど、国民視点、立場からの議論が大事だとおっしゃっておられましたが、一般の国民の皆様から見ると、何で今度の財政構造改革の議論の中で、例えば国会議員を百人減らさないのだ、例えば歳費を一割カットしないのだ。あるいは、総人件費の極力抑制とありますけれども、与党の幹部の皆さん方は、例えば公務員を一割削減しようとかいろいろな威勢のいい意見が出るのでありますが、極力抑制という表現しかできていない。例えば、総人件費の扱いについてもっと明確にすべきではないか。あるいは、特殊法人あるいは認可法人などの役員が事務次官以上の給料をもらっている例もある。そういった特殊法人、認可法人、公益法人についても、削減、合理化を図るという言葉だけであります。これでは、過去何十回となく具体的削減を言いながらもなかなか難しかった世界があります。  つまり、隗より始めよで、我々の国会の世界、公務員の世界、そして特殊法人、認可法人、公益法人という世界、こういった官業の世界に対して相当程度血の流れるような合理化の努力を示さなければ、先生がおっしゃるように国民視点からの理解は難しいと思うのでありますが、これらの諸点についての先生の御見解を拝聴できればと思います。
  82. 二宮厚美

    二宮参考人 隗より始めよという精神そのものにつきましてはそのとおりかと思いますが、国会のあり方であるとかあるいは政治のあり方そのものは別途検討をお願いすることにいたしまして、隗より始めよという場合に、一体財政というのはどういう領域にまたがっているのか。これは、経済学といいますか、あるいは広く政治経済学というふうに言ってもいいわけですが、財政がかかわっている分野は大きく四つに分けられているわけですね。  一つは、いわゆる権力財政、これは税であるとか司法であるとか外務であるとか外交だとか、こういう権力機構そのものを維持するための、あるいはその機能を達成するための装置といいますか組織がある。それから、先ほどから問題になっていますような公共事業を典型とするような社会資本管理財政、これが二つ目にある。もう一つは、教育だとか福祉だとか労働行政といいますのは、これはどちらかといえば労働力管理行政に当たっているわけですね。最後が国債などの金融、これにかかわっています。  だから、四つの領域に大づかみに言いますと分けられるわけで、その中で隗より始めよというふうに言うのであれば、これは権力機構がまずは隗ということになりますから、ここのところの見直しを本来やるのが筋だというふうに思っていますけれども、先ほど話題になりました行政改革のプランを見ますと、むしろ権力機構は肥大化しそうな気配があるので、大変その点では危惧しております。
  83. 北橋健治

    北橋委員 あと、もう一点だけ簡潔にお願いしたいと思うのです。  佐高先生にお願いしたいのですが、公共事業については非常に問題があるという御指摘を先生いろいろなところでおっしゃっておられます。それはそれといたしまして、私も細川政権時代、与党になったときに大変残念だったことは、公共事業の箇所づけについてそのルール化、透明化をできなかったことを非常に残念に思う一人なのであります。  公共事業全体が悪だとかそういうことではなくて、今後削減されますし、またいろいろと、政治家とか利益誘導という問題点もございますので、私は、この機会にどうしても、公共事業の箇所づけについてはルールをきちんとつくって透明化を図るということが、公共事業を、大事なものを育てていくためにも大事なかぎだと思います。それを最後にお伺いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  84. 佐高信

    佐高参考人 おっしゃるとおりだと思います。  私は、大蔵の財政と金融の分離の話でも、反対している議員というか、あるいは大蔵に籠絡されたというと言葉がきついですけれども、そういう議員との区分けといいますか、そういうのをむしろ議員の方から、あの人はだめだった、この人はよかったという、それを発表していただきたいと思います。
  85. 中川秀直

    中川委員長 これにて北橋君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして午前中の参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。  午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十分休憩      ――――◇―――――     午後二時開議
  86. 中川秀直

    中川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出財政構造改革推進に関する特別措置法案及び漁港法第十七条第三項の規定に基づき、漁港整備計画の一部変更について承認を求めるの件の両案件について審査を続行いたします。  午前中に引き続き、参考人の方々の御出席をいただき、財政構造改革について御意見をお聞きすることといたします。  午後の参考人として一橋大学経済学部教授石弘光君、東京工業大学大学院社会理工学研究科教授大阪大学社会経済研究所教小野善康君、京都大学経済学部教授吉田和男君及び経済評論家財部誠一君、以上四名の方々に御出席をいただいております。  この際、御出席参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。参考人各位におかれましては、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、両案件審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  次に、議事の順序でありますが、石参考人小野参考人、吉田参考人、財部参考人の順に、お一人十分程度意見をお述べいただき、その後、委員質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  それでは、石参考人にお願いいたします。
  87. 石弘光

    ○石参考人 ただいま御紹介いただきました石でございます。  時間が限られておりますので、以下、三点に絞りまして、最初の私の意見陳述にかえさせていただきたい、このように思います。  第一点は、財政構造改革についてのそもそもの基本的姿勢、あるいは、今ここで御審議いただいております特別措置法についてどうあるべきかという、そういう大きな問題を最初に整理させていただきたいと思います。  今景気動向が微妙になってまいりまして、この財政構造改革法案、どうしようかということで、大勢の人がいろいろなことを申しておると思います。しかし、結論から申しますと、私は、これまでやってきました経緯等にかんがみまして、この法案はぜひ通すべきであろう、このように当然のことながら考えております。  その理由でありますが、財政赤字の蓄積あるいは累増、これが我が国にとってもゆゆしき事態になった。そういう意味では、財政赤字削減が絶対に必要である。その手段といたしましては、この種の法案、この法律で、やはりしかとした歯どめといいますか、やる手段を確立しなければいけない、このように考えております。  顧みますと、既に二年ほど前から、大蔵省の財政制度審議会の中の財政構造改革特別部会とか、あるいはその後、自民党に幾つかのワーキンググループができまして、この財政構造改革に取り組んできたわけであります。  そういう意味で、中長期的な計画を過去二年にわたって築き上げてきたわけでありまして、これを今の、ある短期的な現象によって大きく修正するとかあるいは変えるとかいうのはまずすべきではないし、中長期的な課題というものは、しかとした視点で、しかとした法律としてつくっていくべきではないか、このように考えております。  欧米各国を見ますと、財政赤字削減につきましては、いずれもこの種の手法をとっております。つまり、健全化目標に類したものをまず法律としてしっかり立てる。一番卑近な例では、アメリカの二〇〇二年までの財政均衡法みたいに、二〇〇二年までに財政を均衡させるといったことをしかと議会で審議し、決めるというスタイル。これは、ほかのヨーロッパの国々も大なり小なり同じようなアプローチをとっております。  そういう意味で、この特別措置法というのは、ぜひ、財政赤字削減のためにまず最初にやるべきことではないか、このように考えております。  それでは、なぜ財政赤字削減にこだわるか。その理由がありませんと、恐らくこの特別措置法案に肩入れするという理由がなくなるわけであります。財政赤字の言うなれば功罪あるいはいい悪いにつきましては、学界でも必ずしも意見が統一されているわけではございません。ただ、四分の一世紀ほど前から、日本は、財政赤字につきましていろいろな形で議論が行われ、かつ、事実として財政赤字が累増してまいりました。  一九七〇年代初頭には恐らく十五兆円ぐらいの債務残高であったのが、今や一般会計で見ましても二百四、五十兆になり、あるいは地方まで入れますと五百兆近くなる。そのほかに、俗に言われます隠れ借金、旧国鉄債務等々を含めますと膨大な数になり、今や一国の総生産量をあらわしますGDPを超えている。こういう事態になって、財政赤字削減ということに対して、かなり真剣に、かつ、これは必要だという論者がふえてきたような気がいたします。  幾つか議論はあろうかと思いますが、やはり一番財政赤字がたまってきて大きくなる問題は、将来世代への負担、ツケ回しと俗に言われます現象が大きくなってきた。これにつきましてもいろいろ意見があるところでありますが、国債というのは、しょせん課税権を担保にした国の借金でありますから、いずれ、償還期限までは利子を払い続け、かつ、しかるべき償還期限が来たら元金を返す、そういう意味においては個人の借金と変わらないわけであります。  そういう意味で、後世代がこの元利を負担しなければいけない。それも税負担しかあり得ないわけでありますから、そういう意味では、私は後世代負担が残ると考えておりまして、この危機意識国民の間でも高まってきた。あるいは、その危機意識というのをしっかりと理解してもらってこの削減に協力してもらうという姿勢、これが重要であろうと思っております。言うなれば、財政赤字になった、これが国民生活に結びついてきたということだと思います。従来、とかく国の借金は、財政当局が悪いとかあるいは政治家が悪いというような形で国民とは一線を画してきましたが、そうではなくなったということ、これが第一点  それから第二点は、やはり財政運営あるいは予算原則の中で、元利償還費に充てます国債費のウエートが見る見るうちにふえた。今二十数%国債費になっておりますが、これは社会保障関係費を上回っておるわけでありまして、こういう過去の借金で手足が縛られるということは、財政の効率的運営にとって好ましくない。そういう意味で、この硬直化という現象は、やはり債務残高がたまっていることに起因するわけでありますから、財政赤字削減するということにおいて解決されるということであります。  言うなれば、これが二つ、私自身、財政運営にとって非常に大きな問題、あるいは国民経済運営上非常に問題だと思っておりますが、そのほかに、一国経済に与える悪影響というのは、欧米各国で既に指摘されております、例えばインフレの懸念であるとか、為替レートに対する影響であるとか、あるいは金利を高く生むと。ただ、幸いなことにというか、現状においては、日本経済はこのようなマクロ的な悪影響というのはまだ顕在化しておりません。ただ、将来こういうものが顕在化するということは絶えず、財政赤字がたまってきたときには考えておくべきことであろう、このように考えます。  第一点は、この種の悪影響が既に明らかになった、あるいは将来もっと顕在化するであろうということを前提にいたしまして、法案できっちりと財政赤字削減、これを財政構造改革を通じてやるという姿勢を打ち出すのが極めて重要なことだと思っております。  それから第二点でありますが、その法案の内容につきまして、やはり細かく見ますと、幾つか不備な点もあるし問題点もあろうと考えておりますが、ただ、財政赤字削減の手法としましては、今ここに盛り込まれておりますような総論と各論を組み合わせたような形でやるほかないと考えております。  どういうことかといいますと、まず最初に、大きな網をかけるといいますか、恐らく健全化目標という言葉で説明されると思いますが、そういうターゲットを決める。つまり、二〇〇三年までに対GDP比率で財政赤字を三%にするとか、あるいは赤字国債から脱却するとか、この種の話。あるいは二〇〇〇年までを集中改革期間とするといった話ですね。こういう大きな目標を立てるというのがまず最初に重要であります。  どこの国もこの種の話を最初にやって、実はこれだけで終わっては何にもならない。昔の財政再建というのは、特例公債をなくすというだけでやってしまいましたから、そのやり方については縛りがなかった。そういう意味では、歳出カットでやるのか増税でやるのか、それの組み合わせでやるのかということにつきまして具体的な指針がありませんでしたから、いろいろなことをやったというふうに理解いたしますが、今回は、はっきり個別歳出削減でやるということを言っているわけでありますので、各論といたしまして、個別歳出に、俗に言うキャップをかけなければ意味がない。要するに、大きく網をかけた後でどこの経費項目を重点的に削減するかというキャップをかける、これが実は必要であります。  例えば、来年度予算公共事業費はマイナス七%とすると言っておりますが、この種のことに関しまして、幾つか各個別経費ごとにキャップがかかったということを私は大きく評価いたしているわけであります。恐らく、このキャップのかけ方なくしては、総論賛成、各論反対になって、また財政赤字削減ということはもとのもくあみになるのではないかと危惧いたしておりましたが、そういう意味で、総論部分と各論部分が二つ合わさったこの法案につきましては、細かい点は抜きにいたしまして、大きな目で見れば評価し得るに足る、このように考えております。  さて、第三点でありますが、この三点目、景気動向との関係、これが恐らく一番の問題あるいは国民的関心になっているのではないかと思いますし、財政構造改革の是非もこの視点に絞られてくる可能性もあります。  そこで、私は次のように考えております。  財政構造改革というのはそもそも中長期的な課題でありまして、現にこの法案でも二〇〇三年までをにらんでやっているわけであります。ところが今、世界同時株安みたいな現象が短期的な現象として株式市場を襲っておりますが、日本景気動向も、バブル崩壊後、後を引きずって、かなり長い間勢いかない、低迷していると言われております。しかし、あくまでやはり景気対策というのは、緊急性を要するという意味においては短期的な課題であろうかと思います。したがいまして、中長期的ないろいろな政策立案にその時々の現象で起こる短期的なものを組み合わせるというのは、まず難しいというか不可能であろうと思っております。  そういう意味では、中長期的な視点をしっかり織り込んだ施策を立てて、あとその時々出てくる経済面の諸現象はそれに合わせて執行面でカバーするほかないだろう、このように考えておりますので、今の中長期的な課題としての財政構造改革の特別法案は、とりあえず最初に確立しておくということがどうしても必要なことだと思います。  ただ、両者はうまく相両立てきないかということを言う方もいらっしゃいますが、究極的に詰めていきますと、やはり景気対策と財政構造改革というのはトレードオフの関係に当面はなるだろう、このように考えますので、この関係はこれからしばしば問われてこようかと思っております。  これは、今日本経済現象をどう見るか、経済の停滞面をどう見るかにひとえによってくるわけでありますが、私は、今の景気低迷は、バブル崩壊後の言うなれば構造的な要因によっていることが大半であって、例えば資産デフレの問題だとか土地が流動化していないとか、あるいは最近での金融・証券不祥事等々が人々の活性化につながらないようなことになったとか、さまざまあろうかと思います。あるいは、アジア発の言うなれば金融面での悪影響、あるいは雇用の慣行が大分変わってきた等々ありまして、こういった構造的な問題はやはり構造的な対応で対応するしかないだろう。  つまり、減税なり公共事業を増大させて有効需要を拡大して、短期的な視点からという、俗に言われますケインズ的な施策というのは今の段階ではなじまない。したがって、過去六回やりました総合経済対策の反省も踏まえまして、私は、今構造的な改革視点を移して、そして議論をすべきであろうと思います。ただ、財政構造改革の方向と矛盾しないような形での税制改革なり、あるいは政府の施策というのはないことはないので、その辺で知恵を絞るという余地はあろうかと思います。  失礼いたしました。後で、質問等々のところで補足させていただきます。(拍手
  88. 中川秀直

    中川委員長 ありがとうございました。  次に、小野参考人にお願いいたします。
  89. 小野善康

    小野参考人 私は、財政再建のための、現在行われている緊縮財政というものの意味をある程度理論的にというか、その理屈をお話ししょうと思います。  現在、赤字財政を、あるいは赤字国債を発行して緊急的な財政支出をふやすというような方式は、今回の法案で一切とめようという意識が強いと思うのですが、その理由を、きょう関係資料を読ませていただいたら二つ挙げてありました。  一つは、クラウディングアウトが起こる。これはどういう意味かというと、もちろん御存じでしょうけれども、国民経済全体で生産量はこのぐらいだ、そうすると、その分政府がある程度とってしまえば、残りの、民間に残る分は少なくなってしまう。そういう意味で、政府の活動はなるべく小さくした方がいい、こういう発想だと思います。  もう一つは、先ほど石さんがお話ししたように、将来世代へのツケ回しがあるのだ、今の世代がそれを使うということは将来へのツケ回しだからよくない、そういう発想だと思います。  私は、この二つは大きな誤解があるということをこれから申し上げようと思います。  まず、理屈をお話しする前に、二つの点を皆さんに忘れないでいただきたいと思います。  一つの点は、お金というものは絶対になくならないということです。  これはどういう意味かといいますと、ここが日本全体だとします。例えば私が一万円を持っている。私が一万円を払って、どなたかから何かを買う。そうすると、その一万円は決してなくなりません。その一万円は皆さんの中で回るだけですね。要するに、お金というものは一切なくならないわけです。少し考えればおわかりだと思いますが、来年になっても再来年になっても、お金はだれかが食べてしまうとか燃やしてしまうということは絶対にないわけです。  ところが、今みたいに景気後退期で遊休設備があったり失業があったりする場合には、その人たちを働かさないと、その人たちが実際働いたらできるであろうものが一切できなくなるということです。ですから、お金を一生懸命倹約することによって、せっかくできるものができないというのが現状だと思います。  では、なぜそういう、普通そうではないような発想をするのかというと、それは、好況期に起こっていることを考えているからです。すなわち好況期には、余剰の労働者なんというものはいないわけです。みんな民間で効率的に働いている。それを政府が無理に引き取って、それで効率悪く、こう言うと恐縮ですが、効率悪く使うということで悪くなっているわけです。  ところが、今は失業があるとか遊休設備があるわけです。それを使わないでどうするのでしょうか。つまり、拝金主義的だというふうに私は申し上げたいわけですね。どっちが本当かと。  それで、もしそういうことをすると、赤字財政をやれば、将来の息子に負担がかかるということをよく言われます。そのメカニズムについて少しお話しします。  これは、国債を例えば十億円、もっと大きいのかもしれません、もちろんずっと大きいのでしょうけれども、例えば十億円余計に赤字国債を発行した。それで、私が政府だとしますと、皆さんに十億円の国債を渡した。それで私は十億円を取るわけです。それで、現在失業がある、例えば、このラインからこちらの方は皆さん失業されている、こちらは皆さん働いていらっしゃる、こういう状況を考えよう。私は、その十億円をこちらの方に渡すわけです。それで、例えば道路をつくってください、あるいは橋をつくってください、あるいは例えば将来の技術開発をしてくださいと言って頼むわけです。そうすると、ここの人たちは、全然働いていなかったのが働けるわけです。新たなものができる。これは明らかに新たなものができたわけです。  しかし、民間の場合には、十億円を使えば必ず十億円以上の意味のあるものをつくらないと経営は成り立っていきません。ところが、公共事業の場合には、残念ながら、十億円のをやっても例えば七億円の価値しかできない、あるいは三億円しかできない、こういうことがあり得るわけです。私が申し上げたいのは、それでも構わないということであります。それは、例えば道路ができた。将来七億円の経済価値を生み出す。これは息子のために生み画すわけですね。つまり、長い間かけて道路ができて、それが将来息子たちへ七億円の価値を生み出す。ところが、先ほど申し上げたように、十億円の国債を取っていると十億円の国債分が子供へのツケになります。ですから、七億円の経済価値が生み出されるにもかかわらず十億円のツケが来る、だから差し引き三億円損するわけです。これが将来世代負担です。  ところが、少し考えてみますと、現在世代はどうなっているかというと、実は、本来寝ていた人たちが十億円分もらえるわけです。ですから、これは考え方とかなんとかじゃなくて事実だと思うのですが、簡単に言えば、現在世代が十億円もらう、それで将来世代は三億円損する、これが将来世代へのツケの本当の意味です。そうしますと、考えてみると両方合計すれば七億円プラスになっているわけです。これは何かというと、先ほど申し上げた、橋が新たにできた、その橋の経済価値は七億円が残っているわけです。つまり、それを放棄しちゃったら何もできないものが、ちゃんと七億円できている。  では問題は何かといえば、現在の我々が十億円を取ってしまって将来の人たちが三億円損する、これが問題なんです。ですから、国債償還の時期、すなわち、現在の世代の人たちが十億円返してもらうときに、現在の世代からも税金を取ればいいわけです。現在の世代はもう死んじゃっているから、いない、そんなことはあり得ません。なぜかといえば、国債償還のためにお金を払う相手がいなきゃいけない。もし現在世代が死んでいたら、その人、死人に別にお金を返す必要はないわけです。ですから必ず返せる。十億円もらった人たちから税金をまた取って、うまく分ければいいわけです。つまり、簡単に言えば、七億円ベネフィットがちゃんと生まれるにもかかわらず、失業者あるいは遊休資源を寝かせておくという政策を緊縮財政というのはやっているということになる。だから、七億円のベネフィットを現在世代と将来世代にうまく分ければ両方がうまくいくというのが現実なわけです。  それで、私が今申し上げたことは、景気のいわゆる刺激効果ということを一切無視してお話ししているのです。いいですか、財政支出をしただけ、それによって例えば消費がふえたとかそんなことは一切なくても、十億円のコストをかけても七億円のものができればちゃんと両方に役立つということを言っているわけです。だから、それでさらに、もし乗数効果的な、要するに景気の刺激効果があればもっといいわけです。それが一切なくてもちゃんと効果がある、こういうことを申し上げたい。  それでは、何でこういう政策を皆さん考えていらっしゃるのか。先ほど石さんもそういうことをおっしゃっていましたけれども、それは好況の時期の政策をそのまま使っているわけです。  好況の時期の政策というのはどういうことかといいますと、フルに皆さんが働いていらっしゃる。私が政府で、このせっかく働いていらっしゃる方を首にして、私の政府の事業にやって、例えば田舎のタヌキの走る道路をつくっちゃったとします。そうしたら、それは完全にむだになるわけです。こういうむだを省かなければいけないというので、政府支出を下げなければいけない。  ところが、あのバブルで好景気のときは実はほとんど下げなかった、あるいはもっと多かった。これは正反対ですね。つまり、せっかく民間でちゃんと働いていたものを悪い使い方をしたわけです。今は余っているわけです。余っているというのは、公共事業の中でも最も効率が悪い公共事業です。つまり、何も働かない人を寝かせるという公共事業をやっているわけです。そういうむだなことをやっている。  絶対正反対で、これは簡単に言いますと、例えば、バブル期健康だった人がいた。その人は一生懸命働いていた。しかし、おまえは太り過ぎだ、少しダイエットしろ、こう言われたとします。しかし、それはダイエットしないで太っちゃった。それで病気になっちゃった。病気になつちゃったらその途端に、ああ、あのときダイエットさせなかったからだといって病人にダイエットさせている。これが今の緊急財政政策だ、こういうことです。  だから、こういうことは今積極的にやることが非常に重要であって、財政支出が別に波及効果がなくても積極的にやるべきだ。それは我々の責務であって、なぜかというと、我々の世代が遊んでいるわけですね。遊んでいるというのは、もちろん喜んで遊んでいるわけじゃないわけで、失業という、いわば民間の活動がうまくいかないから遊ばざるを得ないという状況になっておりますね。  そういう状況で、例えば民間の活力を活性化させるためにいろいろな政策をしよう、例えば、政府は余計なことをしないというようなことをやったとします。すると、民間の活力を利用しようというのはどういうことかといいますと、皆さん一生懸命働こうとするということですね。しかし、一生懸命働こうとする人が働く場がないというのであればほとんど意味はないわけです。それで、今やるべきことは働く場をつくることであって、それは要するに遊休設備をうまく利用することであって、将来世代負担というのはうまく税金の調整でできて、しかも、それを払う人はちゃんと生きている間にできる。  だから、簡単に言えば、現在世代が、将来世代のために七億円しかつくっていないのに、十億円取っちゃった、だからそれは取り過ぎだから少し後で返してあげましょう。それだけのことです。(拍手
  90. 中川秀直

    中川委員長 ありがとうございました。  次に、吉田参考人にお願いいたします。
  91. 吉田和男

    ○吉田参考人 吉田でございます。よろしくお願いいたします。  日本財政が破綻状況にあるということで、昨年来その解決法を探ってきて、そして、このたび財政構造改革法という形で政府の方針というのを法制的に行うということで、私はその点に関して非常に評価したいと思うわけです。  日本財政が、平成九年度末で四百七十六兆円という、国と地方を合わせての債務ということになるわけですが、そのほかの債務も合わせますと、大ざっぱに言って五百兆円ということになるわけです。これは、一人当たり四百万円、一家族一千七百万円。これはほかの人が払ってくれるわけでもありませんし、国有地から金や石油が出てこない限り、税金という形でファイナンスするということで資金調達しているわけであります。  現在、家計には千二百兆円金融資産があるということで、これがファイナンスされているわけであります。ただ、千二百兆円といいましても、住宅ローン等で家計自身が借金している部分、それがありますから、ネットでは八百兆円。実は八百兆円の金融資産は、銀行あるいは郵便貯金等を通じてこういった債務のファイナンスに充てられているわけですから、結局自分自身にお金を貸しているということになるわけです。ですから、それもネットアウトしますと、結局三百兆円しか私たちは金融資産を持っていないということになるわけです。三百兆円しかなくても別に問題はないのですが、千二百兆円持っていると勘違いしているところが大きな問題ということになるわけです。  今後、それがどういうふうに問題を引き起こすか。一つ経済への影響、それからもう一つは、後世代への影響ということを考える必要があるかと思うわけです。  まず、後世代への影響を考えますと、二十一世紀になりますと高齢化時代。私ども団塊の世代がまず高齢化の非常に厳しい状況をつくるわけでありますが、二十一世紀の百年間、ほとんど四人に一人が高齢者という時代になるわけです。その時代、高齢者が働いて自分で稼げばいいというのは、これはまあ一つの発想でありますが、既に、年金制度なり医療制度で担保していこう、もちろんこれを改革していこうという話になっているわけでありますが、しかし、これを全くやめてしまうわけにはいかない。  そうしますと、これの負担というもの、財政負担というのは、結局若い人が、働いている人が税金を納めるということでありますから、その税金の額というのは決して少なくない状況にならざるを得ないわけです。もちろん、国民という概念から見ましたら、片方で税金取って片方で年金で給付するわけですからプラス・マイナス・ゼロなわけですが、しかし労働者に課税する、働いている者に課税する、若い人に課税するというところに問題が生じてくるわけです。  そういった時期に、この国債利払い、償還のためにさらに負担を大きくする。もちろんこれは、先ほども申しましたように、税金で取って利払いで払うわけですから同じことなんですが、しかし、若い労働者に課税して国債を持っている人に支払うということになるわけでして、これ自身が問題なわけです。  こういった後世代にそういったトランスファーを無理強いすることになるわけでして、これが大きな問題、特に若い人に大きな影響がある。さらに、経済成長自身、今後下がっていかざるを得ない。これはもう仕方ないのですね。人口減りますから、経済成長率が下がるのは全く当たり前のことなわけです。個人個人をとりますと、一人当たりのGNPなりGDPというのは決して下がらないわけですが、しかし、財政はみんなで支えているものですから、支えている人の数が減ってくると、これはなかなか厳しいものにならざるを得ないということになるわけです。  また、今までのような高度経済成長を生むような要因はなくなる。特に高齢化になりますと、高齢化社会では貯蓄率が低くなる。そうすると、資本の蓄積が小さくなる。労働人口が減少するのに加えて資本の蓄積率が下がるわけですから、経済成長率は下がる。そういった状況の中で、果たしてこれだけ大きな債務をどう処理していくかという問題が生じるわけです。  欧米でもずっと低経済成長が続いているわけですね。そうしますと、何が起こったか。アメリカのように、労働者の半分以上は実質賃金がこの十五年間上がっていない。むしろ下がっているわけでして、それからヨーロッパの場合を見てみますと、これが下がるのは嫌だということで失業が発生する。どこの国も、イギリスは別にして、失業率が一〇%を超えるというのはそれほど珍しくない状況になっているわけです。  賃金が下がる、そして失業率が高くなる。この状況にとってだれが一番困るかというと、やはり若い人ですね。新たに入ってくる人は厳しいわけで、その労働市場に新たに入る人たちが厳しいところに、付加価値税なりいろいろな形の税金がかぶってくるわけです。今後の経済を考えますと、基本的に今までのような高い経済成長を維持するというのは難しい状況ですので、できるだけそれに負担をかけないということが重要かと思うわけです。  それから、経済そのものにも大きな影響がある。すなわち、資源を国が使う。非常に難しいのは、やはり財政というのは制度で運営されているために、これを自由自在に変えることができない、運用ができないということに問題があるわけでして、その制度の運用のために十分に税金でファイナンスされないということになりますと、これは民間の資本蓄積を阻害するということにならざるを得ないわけでして、長期的に見ますと、このままの財政制度が運営されていきますと、いずれにしろ、二〇一五、六年ごろからマイナス成長、これは潜在成長率としてマイナス成長になる。そして、二〇二五年にはマイナス七%、そのときの水準は現在よりも一〇%以上低いという状況を計算することができるわけです。  そうしますと、政府の方に資源をシフトさせないようにする。それは歳出削減、あるいは今言いました、国債による資源の配分をやめて税金でやろうというふうにいたしますと、結局、二〇二五年までぐらいはマイナス成長にならないで済むということになるわけです。  ただ、そのためには、GDP比の六%歳出カット、また国民負担率でいいますと、増税でやるなら六〇%ぐらいまで引き上げなきゃいけない。いずれをとるかということになってくるわけです。税金は高いのはやはり困るわけでして、何とかその程度を小さくする努力はしていかなきゃいけない。しかし、財政というのは制度で運営されているわけですので、長期的な視点から、徐々に少しずつ制度を変えて、国民経済に影響の少ない形に持っていくべきではないかということになるわけです。  そういう意味におきまして、今回のそのGDP比三%以下にするという考え方は、国、地方の債務をがんとかに例えますと、体が大きくなる範囲内にそのがんの大きさを抑えていこうという考え方であるわけでして、そういった形で日本経済というものに対する影響を最小限に抑えようという考え方かと思うわけです。  また、それを実行するためにキャップ制を採用するということになりまして、これは、シーリング制よりもやはりすぐれた制度だと私は思うわけです。省庁の要求枠を一定率、一律削減するというのはやはり乱暴な話で、これは政治的には容易であっても、財政効率としては非常によくない。したがって、キャップ制が導入されるということは非常に評価される点ではないかと思うわけです。  また、債務を国、地方合わせた債務で考えるということは非常に重要なことでして、これまで特例債というものの脱却、すなわち財政法に反する発行をやめようというターゲットでやっていたわけですが、このために何が起こったかといいますと、建設国債それから地方の債務、これによってしり抜けになってしまって、そして、今申し上げましたような非常に巨額の債務をつくってしまうことになったわけです。ですから、全体の中でこの債務を抑制していくという考え方は、非常に評価される点だと思うわけです。  また、本来、財政の効率化に関しましては、この構造改革法では私は不十分だと思います。もっと積極的にやっていく必要があるかと思うわけです。社会保障公共投資改革は当然のこととして、地方財政制度も変えていかなきゃいけませんし、特定財源制度も廃止しなきゃいけないというふうに思うわけでありますが、しかし、今回の構造改革法は、最低限これを達成しなければ、日本経済の将来、それから日本の後世代の人々の負担、トランスファーを無理強いするということの負担を引き起こしてしまうことを防止するためには、最低限必要な措置ではないかと考えております。  以上です。(拍手
  92. 中川秀直

    中川委員長 ありがとうございました。  次に、財部参考人にお願いいたします。
  93. 財部誠一

    ○財部参考人 財部です。よろしくお願いします。  私は、今回の財政構造改革特別措置法案に対して、初めに意見を申し上げたいのですけれども、この法案に込められた精神に関しましては、全く同感です。もはや財政改革は避けて通れない、この点においては全く同感です。ただし、幾つか問題点があろう。  その第一は、今景気が大変厳しい状況にある、この認識もそう御異論のないところだと思うのですが、そういう中で、一つ大きく財政改革をする際に欠けているもの、これは私は、国民の問題意識、さらに言うならば、国民の覚悟がない、ここが一番大きな問題であろうというふうに実は思っております。ここがないと、先生方が幾ら熱心な御議論を重ねても、行く先々でいろいろな問題点にぶつかってしまう。これは避けがたいという気がします。  実は、お手元にお配りした資料の中の表紙をあけていただいて、第一ページ目にございますのは、これは、私のやっております政策シンクタンク、ハーベイロード・ジャパンのインターネットのホームページの中で展開をしております「日本借金時計」というものです。  実は、この春の予算委員会の公聴会の折に、私もその場でも発言の機会をいただきまして、その際、ニューヨークにありますナショナル・デット・クロックというのを御紹介しました。これは、時々刻々と国の借金がふえていく、しかもそれをファミリーシェア、各家族ごとに置きかえたときに幾らぐらいふえていくか、こういうものがあります、こういう御紹介をいたしました。  それをぜひ、日本版ナショナル・デット・クロックをつくりたい、こういうふうに申し上げたのですけれども、これはなかなかすぐに進む話ではないということもありましたので、何か我々にできることはないかと考えたときに、日本国債、特にこれは非常にシンプルなところなんですけれども、国債の発行残高をベースにして、それが一年間にどのぐらいふえていくのか、これを一秒単位に置きかえていったときにどういうようにふえていくのか、こういうものをつくってみたわけです。  実は、これは単なる子供だましてはなくて、財政の問題というのは大変難しいです。説明をすればするほどわけがわからなくなって、逆に切迫感がなくなってしまう、こういう非常に難しい問題。簡単そうで難しい。ましてや、国が大変でもなかなか自分の懐とは直接結びつかない。ましてや、数字が余り大きいとますます実感がない。こういうところをいわば補うものとして、この日本財政赤字時計、時々刻々とふえていくという、これを私はぜひ大きな形にして、例えば銀座であるとか東京駅の駅前であるとか、そういうところに一つ二つとかけていく。そうやって、国民全体が日本借金というのは時々刻々とふえているのだなと。これは後ほど委員部の方が、先生方の実際に見えるところに回覧いただけるというふうに聞いていますけれども、やはり目の前で数字がふえていく、これは理屈抜きに、ああ、こんなに大変なんだな、こういう思いを実感します。  ですから、私は、財政問題に関しては、まず、国民日本財政状況を正しく、また実感を持って認識できるかどうか、そのための施策の一つとして日本借金時計といったものをおつくりいただきたい、こういうふうに考えておる次第です。  その上で、今回提出されています財政構造改革特別措置法案について、今幾つか問題点があろうと私は考えておりまして、その点に関しまして、三点申し上げたいと思います。  それは、精神は大変すばらしいのですけれども、本当に目標を達成させるための制度上の担保がない、これは一つ真っ先に指摘をしておきたいと思います。目標は立てました、しかし達成できませんでしたと。そのときには内閣もかわり、だれが責任をとるということもない。ただ目標が達成されませんでしたでは、これはやはり意味がありません。これが第一点です。  第二点目は、目標値の設定が大変正しいように見えますけれども、実は実務になじんでいない。確かに欧米の事例を見ますと、GDP比赤字目標を設定しております。しかし、欧米がやればそれが絶対的な真実であるか。とんでもない間違いです。それは、欧米もこういう目標を掲げて随分前からやっていますけれども、なかなか進まない。進まないところか、数字の改変とは申しませんけれども、実は、統計というのは大変誤差、脱漏が多いです。  しかも、例えば今回のGDPに関して申し上げますと、GDP数字あるいは財政赤字数字、これは速報の公表は三カ月後です。確報の公表は九カ月後です。これを一体どちらを使うのか。あるいは、速報と確報との間も大変乖離がある。さらに、統計上の性格として、仮定とか推計、要するに恐意性というものがなかなか排除できない。こういうものを絶対的な目標にして果たしていいのか。これが二つ目の問題点です。  それから、三つ目の問題点としましては、支出削減の手法がやや硬直的で抜け道があるのではないか。それはどういうことかといいますと、やはり今回の形は、従来のシーリング制度をいわば法律に高めて厳しくしたというところはわかるのですけれども、基本的にはシーリングの手法が踏襲されている。それから、確かに平成十年度については大変厳しい目標が設定されていますけれども、これは十年度の当初予算のみであって、平成十年度以降の予算については、さらにその補正予算についても目標の対象外になっている。ということで、本当に永続的に日本財政赤字をなくしていくのかという点に関してはやや問題点があろうかということでございます。  時間も余りないので、一応問題の指摘というところだけにとどめまして、最後、四枚目の「いま実行すべき緊急経済対策」というところをごらんいただきたいのですが、正直に言いまして、今、即財政再建だといって厳しい措置を講ずるには、日本経済の体力はかなり厳しいのではないか、こういう認識を私自身持っています。しかし一方で、私自身も、財政改革は避けて通れないし、一刻も早く着手しなければいかぬ、こういうふうにも思っています。それは相矛盾するかのように一般的にも言われます。財政改革経済対策は一緒にできない。しかし、私はそうではないと思っています。  若干整理して申し上げますと、それはタイミングをずらすということが一つあります。まずは財政赤字時計等々によって国民の認識を新たにして、意識を喚起するという時期を設けながら、厳しい財政改革に着手をしていく。その一方で、いわば経済対策といいますともはや減税しかない、こういう話になるわけですけれども、減税というものもただやればいいとは思いません。所得減税二兆円やって本当にきくのか、これは私は甚だ疑問だと思っていまして、そういうことよりも、むしろ、どうせ減税をやるならそれが必ず消費に結びつく減税の仕方、こういうのがあるはずだろう、こう思っておるわけです。  若干時間もあれなので、はしょりながら申し上げますけれども、例えば、今、日本には大きな問題が幾つかあります。その中の一つ、不良債権対策としては、とにかく土地の流動化を促さなきゃいかぬ。これに関しては、とにかく流通税に類別されるような、土地を買ったり売ったりするとその都度金がかかる、税金がかかる、これを全部撤廃しようという考えが一つです。  それから二番目は、若干説明を要しますので、後で申し上げます。  三番目は中小企業対策。これは、実は法人税の中に欠損金の繰り戻しによる法人税の還付という制度がございます。それは、前の年税金を納めました、今期赤字になりました、その欠損分を前期に納めた法人税から還付してもらう。実は、そういう規定が法人税にもあるにもかかわらず、租税特別措置法でこれが今停止をされています。平成四年に二年間の期限を切って実行されたものが、その後二年たつと、また二年、また二年と言って延長されて、中小企業が本来得られる特典が停止をされている、これは大変問題です。これなどは非常に簡単に、その措置法の停止を排除するだけでかなりの意味がある措置ができるのではないか。  それから、消費対策。これは一つのアイデアで申し上げるのですが、例えば、サラリーマンに必要経費を認める。本代であるとかスーツ代あるいは交際費、こういったものを、上限等々を定める形でよろしいと思いますけれども、とにかく消費に向かう減税という点でいいますと、これは私は一つのアイデアになるのではないかと思っています。  それから消費者対策。これは平成徳政令の実施と銘打っているのですが、中身はそれほどすごいことではないのですけれども、例えば、住宅ローン支払い金利の完全控除。ローンの問題は、今後、多分ローン破綻という形で相当厳しい状況が来年以降出てきます。ここには少なくとも早急に何らかの手を打たなければいかぬという思いであります。  それから、先ほど飛ばした、二番の銀行の貸し渋り、これは大変大きな問題なので、後ほど質問に答えられるものがあればお答えをしたいと思います。  以上で終わります。(拍手
  94. 中川秀直

    中川委員長 ありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。
  95. 中川秀直

    中川委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木村隆秀君。
  96. 木村隆秀

    ○木村(隆)委員 自由民主党の木村隆秀でございます。  きょうは、参考人の先生方、大変御苦労さまでございます。順次お尋ねをしてまいりたいと思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。  今の御説明にも、吉田参考人お触れになられましたけれども、国及び地方を合わせて長期債務残高、九年度末で四百七十六兆円、そして対GDP比九〇%を超える、主要先進国の中でも最悪の財政状況だというお話をされたわけでございます。ですから、今政府財政改革推進のための法案を提出されたわけでありますけれども、この法案の趣旨に、「安心で豊かな福祉社会及び健全で活力ある経済を実現することが緊要な課題である」としており、国民にとって大変ストレスを感じない表現になっていますけれども、財政構造改革が進められた結果社会が具体的にどういうふうになっていくのか、その将来像が余り明らかにされていないように思います。  諸制度の改革を進めていくと当然小さな政府を目指すということになるのだろうと思いますけれども、この改革によってどんな国になっていくのか、財政制度審議会財政構造改革特別部会の部会長でもあられます石先生にお伺いをしたいと思います。
  97. 石弘光

    ○石参考人 今のお尋ねの件、ストレートに的確にお答えできるかどうか、自信はないのでありますが、確かにストレスのないような説明の仕方をこれまでやってきたかと思っております。つまり、今、現世代借金を重ねて、それを後世代に言うならば負担を任せる、負担を転嫁するといったような、そういう形じゃよくないだろう、それから、高齢化社会が来る前にそういう借金の問題も解決するようなことをすべきである、こういうような説明をしてきたわけであります。  ただ、財政構造改革が御指摘のようにだんだん進捗していきますと、恐らく国民の方にもそれなりの影響は持ってまいります。典型的には医療制度の改革。もろに受益者負担みたいな格好でいくわけでありまして、そこで、欧米のケースをまた持ち出すわけじゃございませんが、国民の方の側で、政府にどれだけ頼んでいいか、あるいは自分でどれだけ自助努力でやるかといったところの仕切りが次第についてきたとき、恐らく皆で政府に頼める守備範囲というのはどこだということが明確になってきたときに、私は、それなりの透明性が増し、それなりの健全性というか安心感ができるような、そういった政府が出てくるのだと思います。私は、まだ国民の方にはこの点は浸透していないんじゃないか、これから大いなる努力が必要だと考えています。
  98. 木村隆秀

    ○木村(隆)委員 今、石先生やまた財部先生からも、財政構造改革景気ということについてお話、それぞれ御意見を伺ったわけでございます。  午前中の質問にも、やはり現在の景気状況を踏まえるとこの財政構造改革のスピードを緩めるべきではないかというような御意見もあったわけであります。そして、その他いろいろな意見があるわけでありますけれども、財政再建のためには、現時点ではむしろ大幅な減税を断行して、そして経済の成長を高めて税の増収を図るべきじゃないか、こういう意見もあります。また、今大変な超低金利が続いているわけでありまして、利払いが大変負担が少なくて済むこの現下、むしろ前倒しをして公債を発行して、社会資本整備を図るべきではないか、こういう意見もあるわけであります。  そこで、景気という短期的視点財政構造改革という中長期的視点との折り合いをどのようにつけていくか、これが非常に難しい局面になっているのではないか、こう思われます。そこで、財政構造改革景気との両立について、吉田参考人の御意見を伺いたいと思います。
  99. 吉田和男

    ○吉田参考人 景気の問題、特に現下の景気の問題というのは、また注目されてきたわけです。  振り返ってみますと、平成四年からこれだけ長い、いわゆる不景気、不況の中にあったことはなかったわけです。しかし、これまでの経験を考えてみまして、財政が出動して果たしてどこまで景気が回復できたか。特に平成六年度から始まりました減税を行ったわけですが、皮肉なことに平成五年度よりも実質消費の伸び率は低かったわけです。したがって、財政が出動して、そして景気がよくなるというメカニズムというものを考えるのは非常に難しいのが現状ではないかと思うわけです。  確かに、経済理論として、私の学生のころは、すべて公共投資をやれば景気がよくなるというふうに教科書には書かれておりました。しかし、現実にヨーロッパ、アメリカでいろいろなことをやって、ほとんどうまくいかない。日本でも、考えてみますと、五十三年度に例のボン・サミットを受けて七%をやるということで公共投資を非常に広げたわけですが、やった年とやらない年の経済成長率でそんなに差がない。また、平成四年度以降いろいろな対策を打ってきたけれども、ほとんど見るべきものがなかった、残ったのは借金だけになったということですので、私は、今の段階でこういった財政出動をして果たしてどれぐらいの効果があるか、余り期待しない方がいいんじゃないかというふうに思うわけです。  実際、私もいろいろな研究をしておりまして、かつての研究ですけれども、財政が出動して、それは確かに購買をふやすわけですから、そのためにいっときの有効需要の拡大というのは正しいわけですが、それはやがて経済に組み込まれてしまいますと違う経済になってしまうわけでして、今度は逆にそれを前提とした経済活動になって、結局、経済活動を引き上げるということはできない状況になるかと思うわけです。  今の、現下の状況と比較してみますと、確かに、例えば税を引き上げる、あるいは歳出削減する、これは有効需要を減少させるわけですからショックはあるわけですが、しかし、これがもたらすデメリットと、そして財政がこのまま制度が改革されずにずるずると、公共投資が、平成四年のときに景気対策をやったのに対しては、ツーレート・ツースモールと言っていたわけですね。そういうことを受けて年々拡大してきて、ほとんど見るべきものがない、そして巨大な赤字をつくってしまったということかと思うわけです。ですから、比較考量すれば、余り効果のないことをやって重要なことを放棄するということには私は賛成しがたいと申し上げたいと思います。
  100. 木村隆秀

    ○木村(隆)委員 次に、財部先生からもさっきお話がありました減税財政構造改革とのかかわり、関係についてであります。  今、自由民主党の方も、個別の政策減税をすべきではないかということで検討をしているところでございます。では、どの程度範囲までが財政構造改革と矛盾をしない減税になるのか、また、それが実際実現可能であるかということをお伺いをしたいと思うのでございますが、今財部先生はお話を伺いましたので、石先生、お考えをお聞かせをいただきたいと思います。
  101. 石弘光

    ○石参考人 財政構造改革減税の取り合わせばいかんというお尋ねだろうと思います。  やはり日本全体の経済構造を変えていくという視点から見ますと、私は、企業関係、特にグローバル化した中での企業戦略というのは極めて重要だと思います。そういう意味で、海外からの企業の進出といった面から見ても、やはり法人税が高過ぎるということは事実だろうと思います。そういう意味で、私はそもそもトレードオフだという言い方をしましたが、もし可能ならば法人税率を引き下げるという方向で税率を考えるのが一番順当だし、この効果がやはり景気の方に結びつく。  ただ、財源をどうするかというところで、我々、税制調査会のときも議論をいたしましたが、やはりますは税収中立性という過程で、課税ベースを広げる。引当金、準備金等々を一応整理して、その財源でやるというスイッチ。ただ、これは効果がないんじゃないかという声もないことはないと思いますが、さはさりながら、今まである、既存の企業が恩恵をこうむっております引当金等々を一応整理して、税率引き下げが全企業に均等に恩恵が行くわけでありますから、私は、これは産業構造を変える、新しい仕組み等々を生み出すという意味ではかなりの効果があると思っています。  あと、時間もございませんが、もう一つ言うならば、土地の流動化という点でいうならば、確かにキャピタルゲイン、土地譲渡益課税あたりで何かあるかなと。あるいは法人の超短期の譲渡益に対する重課税がかなりまだ残っているものがありますから整理するとか、あるいは買いかえ特例のあたりで何かいじることがあるかなと思いますが、こういう点あたりが構造改革のかなめだと思います。  ただ、個別に少子化対策だとか教育減税等々、細かいことが今急に出ておりますが、これは課税の公平、中立という視点からいって景気の方と余り関係ないので、私は、この辺になると経済構造改革とは関係ないんじゃないかと考えております。     〔委員長退席、中山(成)委員長代理着席〕
  102. 木村隆秀

    ○木村(隆)委員 次に、公共投資基本計画というのは、日本の機関車論の延長として国際経済への貢献という側面があると思います。今後の対米輸出の推移いかんでは、貿易摩擦というのがまた再燃する可能性もあるのではないかと心配をしているわけであります。我が国経済政策が海外からの要請によって意図せざる方向へ動かされたという過去によって我々は経験もあるわけでございまして、この財政構造改革と国際社会の内需拡大要請というものを今後どのように調和をさせていったらいいのか、これは非常に難しい問題ではないかと認識をしているわけであります。  そこで、国際経済にお詳しい小野先生、そして吉田先生の御意見をお伺いをしたいと思います。
  103. 小野善康

    小野参考人 私は先ほど申し上げたように積極財政論者ですので、どのように調整するかというお話ですと、積極的にいろいろなものをつくるべきであるということです。  一つだけ、先ほどの吉田さんのお話との関連で申し上げたいのは、財政支出をすると景気がよくなるということは、その効果は小さいというのは私もよくわかっております。それは、消費がふえる方向に行くかどうかというのは別問題です。私が申し上げたいのは、失業があるときにその人たちを有効に使うということが必要であるということを申し上げているわけです。  それで、今の御質問との関連でいきますと、その人たちを有効に使うということは、少なくとも財政支出の分だけ物ができて需要ができるわけですから、それは、国際的な社会においての我々の責務を果たしているということになる。つまり、需要をつくるという意味ですね。  それからもう一つ申し上げたいのは、せっかく余っている人材を使って将来の、例えば新しい技術とかそれから新しい設備とかそういうものをつくるということは、将来我々が何か新しい消費活動をするときに非常に魅力的な製品ができるとか活動しやすいとか、そういう場をつくるわけです。そういう形で経済を発展させて、我々は、さらに欲しいもの、例えば一時のCDができたような形で新しいものができるということで、我々がさらに消費をすることで景気を上げていくということが世界経済に対する我々の責務でもあるし、我々自身のプラスにもなるというふうに私は思います。
  104. 吉田和男

    ○吉田参考人 特に経常収支黒字を制御するというのはいまだかつて成功したことがないものですから、逆に、経常収支赤字を解決するために各国努力しているところもあるわけでして、それを解決するのもなかなか難しいというのが現実かと思うわけです。  特に、貿易摩擦ということになりますとアメリカとの関係ということになるわけですが、アメリカ自身、今急速に財政赤字が解消してまいりましたので、これの効果もあって恐らく経常収支赤字というのは減少する傾向が定着するということになれば、たとえ日本が黒字であってもそれほど摩擦といういわゆる外交上の問題になるようには私は思えないわけです。  ただ、おっしゃられるように、経常収支黒字が、今現在特に円安傾向を受けて拡大した、去年とことしの円安傾向を受けて拡大しているという事実があるわけでして、これが外国から見れば需要減になっているということは否めないことであるわけです。しかし、これを公共投資を拡大して制御できるか、あるいは減税をして制御できるかというと、現実にはなかなかうまくいかないと思うわけです。  それで、ある意味日本経済システムにビルトインされている側面があるように思います。例えば、これだけ円安になってくる、そんなに激しく円安になっていませんが、円安傾向になってくると輸出が伸びてくる、そうすると今度黒字で円高になるといった、ある意味の内蔵されたメカニズムの方が非常に強く働いていて、これを一気に解決する現実的な方法というのは今のところあり得ないのではないかなと思うわけです。  バブル期にちょうど、考えてみますと、特に経常収支黒字をつぶさなければならないということで非常に無理をした政策を行ったわけです。その無理の結果、あのようなバブル経済も引き起こしたわけでありますし、やはり経済政策というのは、経常収支黒字を無視するというのはこれはなかなか難しい面はあるわけですが、それに全力投入してほかの政策目標をないがしろにしてしまったという苦い経験があるわけですから、それをターゲットに公共投資をふやしたり減税をしたりするということには賛成しかねるということでございます。
  105. 木村隆秀

    ○木村(隆)委員 また、限られた財源を有効に利用していくことが大切だという意味では、政策の費用対効果をどのように評価していくか、その制度を確立していくことが大切ではないかと思うのです。  そこで、この評価制度についてどうあるべきか、これは各先生の御意見をお伺いしたいと思います。
  106. 石弘光

    ○石参考人 簡単に申し上げます。  実は、PPBSとかコスト・ベネフィット・アナリシスとか、いろいろ学問の世界では議論されていることがございますが、適用できる、あるいはそれを使って有効に機能するというところは極めて限られているとは思います。  しかし、それを全然無視してきたのが今までの傾向でございますので、少なくとも、公共事業とかあるいは財投の金を貸し、将来の償還計画を立ててもらうというようなときには、私は、今かけるコストと将来出てくるベネフィットを現在価値に割り引いて企画するといったような手法、これは最低限度できると思います。あるいは、道路等々を企画するときに、同じものでありますから、同じような形の計算というのは当然できるわけでありまして、少なくとも、予算査定においてこの種のものは最低限度これから考える必要があろうかと思っています。
  107. 小野善康

    小野参考人 私も今の石さんの御意見は大賛成でありまして、各事業、私は公共事業とずっと申し上げてきましたけれども、具体的には、道路とか橋とかいうイメージの公共事業もありますが、それよりは、将来の例えば環境投資とかハイブリッドカーとかそういうたぐいの、もっとベネフィットの大きいものにもちろん投資を向けた方がいいのは明らかであります。コストよりも小さなベネフィットであってもやる方が意味があるということは最初に申し上げましたが、もちろんベネフィットが大きい方がいいに決まっているわけです。その評価が今は余りなさ過ぎるという気は確かにいたします。  さらにもう一点だけつけ加えさせていただきますと、そのコストベネフィットという点からいっても今はコストが非常に低いときなんです。なぜかといえば、失業があって遊休資源があるわけですから本来ならただであると。まあ、ただというのは極端かもしれません。いわゆるコンクリート代とかそういうようなのほかかるかもしれません。いずれにしても非常に低いわけです。それで、好況のときは高いわけです。なぜかといえば、そのとき、もっといい、効率のよい生産をすべての労働者がやっているわけですから、そのときは高い。だからそのときにやってはいけないのですが、今、まさに石さんのおっしゃったようなコストベネフィットをやれば、その結果としては、より積極的にやるべきだという結論しか出てこないと思います。
  108. 吉田和男

    ○吉田参考人 特に社会資本等に関しまして、評価制度をつくってしっかり評価したところに重点投資する、私はそれをやっていく必要は十分あると思います。しかし、なかなか難しいのが現実かと思うわけです。  まず、同じ分野に関しては、例えば、A地区につくる道路とB地区につくる道路ではどちらの方が効率的かというのは割合わかりやすいかと思うわけですが、道路と環境改善、どちらが優先されるかというのはなかなか難しい問題になってくるかと思うわけです。やはり最終的に財政評価するのは、国民国民がきっちりそのプロジェクトを理解して、それに対して評価して、そして、それに対して資金を割り当てていくというふうな形がとれる制度が私は重要だと思うわけです。  今申しましたのは、全国のお金を集めてそして予算をつくっていく、そういうふうにしたらできないです、不可能です。ですから、私は、地方財政自分の身近に行われている事業を自分負担する税金評価する、そして、税が高いと思えばプロジェクトをやめてもらう、そして、税をもっと払ってもいいからこういうプロジェクトをやってほしいというふうな提案があったときにはそれに賛成するという制度であれば、比較的理にかなった制度かと思うわけです。  ですから、やはり重要なのは地方分権ではないかと私は思っております。
  109. 財部誠一

    ○財部参考人 私は、評価制度というのは一見正しくて必要なものだというふうに思えるのですけれども、実は余り意味がないと思っています。  と申しますのは、今行われている公共投資が果たして本当に意味があるものなのかどうか。これが、個別の事案が非常に微妙な差であればその評価制度を利用する、なければいかぬということになるのでしょうけれども、実は私、随分道路等々についても取材をしました。取材をした結果非常に痛感するのは、いわゆる地方ごとにおいては、公共投資がなければ生活が成り立たぬ、こういう事情が一方にあって、仕方なくというか、いわばその事情が全部を納得させてしまって、何でもいいからつくっちゃえ、こういうところがあるわけです。  そういう今の現実を言いますと、評価をするかということは問題ではなくて、本当に意味のある道路を、今現在、計画としてある道路をどうやって意味あらしめるかという、そこに腐心した方がはるかに意味があるし現実的ではないか、こういうふうに考えています。
  110. 木村隆秀

    ○木村(隆)委員 午前中に、本法律案が財政構造まで手がついていないのじゃないかという参考人の方の御意見があったわけであります。  そこで、石先生にお伺いをしたいのですけれども、この法律案、どのように評価をされておいでか、お伺いをしたいと思います。
  111. 石弘光

    ○石参考人 私、たまたま機会を得まして、財政制度審議会の中にあります財政構造特別部会というところで、これと全く同じような審議をやってまいりました。その観点から申しますと、このような法案にまでなるのかなという心配を実は持っておりまして、そういう意味では、ここの衆議院で特別措置法までできたということにつきましては、内容をまず精査する前に、まあよく来たなというような感じがいたしておるわけであります。  したがって、総論としては大いに評価しているわけでありますが、恐らく、細かく見ていきますとどんな法案でも不備があるのは当然であります。例えば建設国債について言及がないとか、あるいは地方の方の歳出について、国ほど一般的なルール、キャップがない。これはそもそも三千三百もあって難しいのですけれども、そういう問題とか、あるいは国の中のキャップのかけ方も、個別の歳出のくくりが少し粗過ぎる、あるいは単に前年度を上回らない額にするという程度にしてしまった項目もあるという点からいきますと、ここにはまだ不備があろうかと思いますが、まあこれ、初めてやることでありますし、かなり大胆に踏み込んだという意味で、そちらの点を評価しますとこちらの方は少し我慢してもいいことかなと思います。そういう意味では、トータルで評価すれば私は合格点だろうと思っています。
  112. 木村隆秀

    ○木村(隆)委員 先ほど小野参考人からお話を伺ったのですけれども、公債は国民の資産であることから、赤字国債の発行は将来世代への負担となってツケ回しになるのではないかという考えは誤りだ、実際は同世代間の所得の再配分である、所得再配分であれば、配分された所得に課税し不平等を補正すればいいというような先生の御意見だろうと思うのであります。  そこで、先生ではなくて吉田先生に、その御意見、どう思われますか、ちょっとお伺いをしたいと思います。
  113. 吉田和男

    ○吉田参考人 国債発行が将来の負担になることに関しまして、先ほど石先生の方からも、経済学者の間ではたくさん議論があること、御紹介ありましたが、いろいろな考え方があるかと思うわけです。  そして、その中の重要なポイントは、どういう視点から見るか。資源配分の観点から見るということになりますと、例えば異時点間、ことしと来年の間で、存在する資源を、まあ、資本蓄積とかそういうのは若干あるのですけれども、ことし労働者が余っているから来年に回そうというふうなことはできないという意味において、先ほど小野先生のおっしゃったような形のもの、議論というのもあるわけです。  しかしながら、どういうものを負担と見るかということに関して、一般的な理解としては課税をすることが負担である。例えば先ほどの資源の視点から見ますと、年金を給付するために保険料やら税金を取って移転してもこれは同世代移転で、国民にとって負担にならないという議論があるわけですね。これは、資源の観点から見れば確かに移っているわけじゃありませんから、同世代の中で行われていることなわけですね。しかし、国債発行を行って、将来税金を取ってそして利子償還に充てるわけですから、その間のトランスファーになるわけです。ここが重要だと思うのですね。そういうふうな課税が行われるということ自身が、国債を発行した時点において将来約束されて発生するということになっているわけですね。ですから、これは、そのとき課税が行われるという現象に対して原因になっているのが国債発行、すなわち、国債発行が将来の子孫に対して負担を強いているということになるかと思うわけです。  ですから、確かに、元利償還で入ってくる人に一〇〇%税金かけて納税者に戻したらいいわけですね。でも、そんなことをしたらだれが国債買いますか。結局重要なことは、国債を発行することによって課税行為が行われる、そしてまた、国債を発行することによって金融市場で資金調達をするというふうなことがいろいろ問題を引き起こしてくることになるというのがポイントかと思います。
  114. 木村隆秀

    ○木村(隆)委員 先ほど吉田先生、地方分権が大切だということ、ちょっとお話が出たと思うのですけれども、地方における財政改革も大変重要になってくると思うのです。  これから地方財政のあり方について、国と地方との関係を見直すということも含めて、今後どういうふうにしていくべきか、これは先生方の御意見をお伺いをしたいと思います。
  115. 石弘光

    ○石参考人 四人いますと討論が長くなりますので簡単に申し上げます。  私は、やはり今の地方分権というのは時の流れであろうし、これを積極的に進めるべきだと思います。ただ、ポイントは幾つかありますが、私は、地方の方から、果たして地方分権の担い手になり得るかなという視点も重要で、私は、そういう意味では元来、市町村合併というのは避けて通れない地方分権の受け手としての資格、これが重要だと思っています。  それから、市町村に一挙に権限なり財源がすべて行くというのは無理でありまして、私は、やはり府県のレベルで一回受けとめて、その府の段階で下の市町村、下と言ってはいけないかもしれませんが、一緒にあるところの市町村といろいろコンタクトをとるべきだ、このような地方分権を考えています。
  116. 小野善康

    小野参考人 私は、地方に実際の、例えば財政の、使う権限を徐々に移譲していくというのは正しいと思います。その意味は、要するに国が決める場合に、例えば各地方のバランスを考えて、しかし共通の制度をつくるとか、そういうことをどうしてもやらざるを得ない。ところが、各地方地方はもちろん違うということと、各地方地方の事情はその人たちがよく知っているということ、そういう意味で、地方のちゃんとした情報を使うということが重要になるのです。  しかし、全部地方から出てくる情報を使うということになると相互比較が全然できないわけですね。だから、先ほどのコストベネフィットという意味でいえば、中央がちゃんとそのベネフィットを比較するということを残して、しかしそれぞれが、いわば我々が大学の中で科研費をとるときに、こういう研究は非常に有意義であるということを言って中央でそれを比較するということをやりますね。そういう意味で、支出項目の選定については移譲するけれども、中央でちゃんと比較するということは必要だと思います。
  117. 吉田和男

    ○吉田参考人 日本地方財政制度というのは物すごく変なんですね。規模も非常に大きいですし、世界的に見て何か異常なんですね。  それの理由は、結局、地方で行うべき仕事、それを中央政府がやっていて、中央でやるべき仕事も地方政府でやっている。これ、入り組んでいるんですね。これは日本が、そもそも明治政府がつくった政府のあり方をずっと引き継いでいるというふうに考えたらいいと思うわけです。戦後、地方自治制度が明確に規定されるようになりましたけれども、しかし現実の問題として、行政を運営していくのに補助金あるいは交付税というふうな制度を活用して、実は一体で動いてきたというのが現実かと思うわけです。  中央に資金を集めて、そして地方で実施していくというやり方は、これはやはりキャッチアップのときに非常に有効であったことは間違いないわけです。例えば、我々団塊の世代が小学校に入るというと小学校をつくらなければいけない、中学校に入るというと中学校をつくらなければいけない。こういうものを地方で、それぞれの負担でどうぞ御勝手にやりなさいといってもなかなかうまくいかないわけですね。やはり、中央から補助金を出して、足りない分を交付税で出してということは意味のあったことなわけです。  しかし、今日に至ってそういうふうな仕組みが果たして意味があるかというと、私はほとんどないと思うわけです。中央で設計して、道路は何メートルでなきゃいけないという、ある程度の基準を決めるのはもちろん結構ですが、何メートル以上だったら補助金を出して、どうだったらこれを出さないとか、そういうふうな政策を行う理由がほとんど見当たらないわけですね。  したがって、私は、地方でやるべき仕事、例えば公共事業の九〇%は現実、地方で行われているわけですから、それはもともと地方で企画して地方でやってもらう、ほとんどの行政の仕事はそういうふうなことになると思うわけですね。すなわち、地域の人間にしかベネフィットが及ばないようなものは地方公共財と理解して、それは地方でやっていただく。そして、それは地方の税で負担するということが重要かと思うわけです。  そうすると、先ほども少し申し上げましたけれども、住民は要らないものをつくることを要求することはあり得ないわけです、自分税金を払うわけですから。中央政府からお金を取るなら、要るか要らないかというのは余り関係なくなってしまうわけですね、要らないものでももらった方が得ということになってしまうわけですから。そういうものが排除される。  したがって、この財政の構造自身、中央、地方の仕分けをまず第一にする必要がある。中央のやるべき仕事は中央で、地方のやるべき仕事は地方でと。そして、地方がその地域で税金を取ってそれをファイナンスする。そうすれば、住民は十分監視できるわけですね。  それを実行していこうと思いますと、地方自治体の数がやはり三千数百は多過ぎるわけでして、これを整理していかなきゃいけない。私どもの計算では二百程度に集約することが望ましい。それは通勤圏という概念を使って計算してみたわけですが、職住、仕事と住んでいるところと同じ地方自治体の中で運営されるべきというふうに考えて計算してみたわけです。  そういうふうにして計算してきますと、現在の国、地方赤字が全部吹き飛んで、なおかつ十三兆円程度減税ができる。なぜなら、自分でお金を払うならむだな仕事はしてもらいたくないというふうに考えるであろうというふうに仮定して、そういう計算もしております。  以上です。
  118. 財部誠一

    ○財部参考人 最近、ビッグバンという金融改革の話の中で、自己責任原則という言葉がよく言われるのですけれども、実は、私の考えは今の吉田先生に非常に近いものがございまして、基本的には、いわゆる中央政府予算を全部集中管理して地方にばらまく、これはやはり、その地方地方における自己責任原則の欠落だろうという気が大変しています。  一つのイメージとして私が持っておるのは、旧国鉄、JRの姿なんです。それは、全国一律の旧国鉄という体制でやった場合には、仮に民営化してもこれは多分うまくいかなかっただろう、こういう議論がございます。それは、実は鉄道の利用者の実態を調べてみると、今のJRの線引きというのは、その域内で大体九割以上が往来をしている、その地域を越えて往来をするのは一割程度だ、こう言われているわけです。つまり、その線の引き方によって非常に独立した経済圏ができるわけですね。  そういうイメージで言いますと、地方分権だからといって今の都道府県の姿がいいとは私は言えないと思っているのですが、少なくともよく一般的に言われている道州制、こういうものとのいわばセットで考えながら、その地方地方で必要なものを地方の財源で賄っていく、予算で賄っていく、こういう姿がないと本質的な財政改革というのはできないのではないか、こういうふうに思っています。
  119. 木村隆秀

    ○木村(隆)委員 ありがとうございました。
  120. 中山成彬

    ○中山(成)委員長代理 これにて木村君の質疑は終了いたしました。  次に、安倍基雄君。
  121. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 本日は、参考人の諸先生方、どうもありがとうございました。午前中からずっといろいろな意見が出ておりまして、余り重複しないようにお聞きしたいと思います。  今まで出てきましたように、現在債務がべらぼうに多くなっている。財政改革が焦眉の急であるという面と、もう一つ、一体景気に対してどうであろうか、これが一番根本でございますけれども、それと関連しまして、今まで出てこなかった議題、議論ですけれども、従来は、いろいろな景気は、財政が出動できないときには金融が見る、金融がないときは財政というような形でどうにかカバーしてきたわけですね。  ところが、現在は、財政は今まで出てきましたけれども、金融はもうべらぼうに低金利になっている。しかし、それで一つも、いわば世界にまれに見る低金利でありながら、一向にその効用を発揮していない。これにまた、財政もこれからデフレになってくる。  それで、最初の質問でございますけれども、結局、現在金融がワークしていない。いろいろ議論があると思います。不良債権の処理がおくれている。そこで、早期是正措置というのが一応四月から導入される。そういうことで、何か金融機関は自己防衛に走っていますね。低金利にもかかわらず、一向に信用が伸びないということでございます。それとともに、過去において、現在においてはそうですけれども、またこれから為替管理の自由化が起こってきますと、金利はなかなか思うようにならない。思い切って低金利政策を続けますと、国際移動が始まって、本当に金融で、要するに今までどおりの効用を発揮できるか。そういう状況のもとに、いわば財政がデフレ予算でいく。  この点、最初に石参考人にお聞きしたいのですけれども、現在において、景気浮揚に対して金融が十分ワークしていると判断されるかどうか。それから、今後為替自由化を導入したときに、今でも相当資金は移動があると思いますけれども、まだまだこれが激しくなる。そうすると、金利政策がワークしないのじゃないか。いわゆる金融政策景気浮揚に今まで役に立っていたかどうか、そしてこれから立つであろうかということについての御意見をお聞きしたいと思います。
  122. 石弘光

    ○石参考人 金融が、公定歩合、今〇・五%、そのまま動きませんという意味においては、私は役に立っていないのだろうと思います。  というのも、やはりバブル崩壊後の不良資産、これが張りついていまして、恐らく金融機関にとってはこの問題が解決されるまで身動きができないということだろうと思います。したがって、私は、しかるべき手を打つなら、マクロの金融政策なり財政政策というよりは、例えば公的資金というものの活用を本当に預金保険機構と一体にして考えて、早く金融機関の不良資産を整理する方に向かわせるべきなのかどうか、そういうことを考えないと、単なる大きなマクロ政策ではだめだろうと思っております。  それから、恐らく、日本もビッグバンをやったとき何が起こるかというと、ウィンブルドン化と言われておりますように、イギリスのシティーみたいな格好になるのじゃないかというおそれを持っているかもしれませんが、私は、これから自由に行き来する時代において、それを恐れては何もできない、積極果敢に日本の金融機関がまさに自己の能力を発揮してやるべき土台、土壌をつくって、そこで戦わせるべきだ、それで外資系に乗っ取られたのだったらもうしょうがないだろう、こう考えております。  そういう意味では、早期の是正措置等々のようなさまざまな形のものでやはりマーケットを整理する、あるいは金融機関自身の今持っている問題点を、やや強制的になるかもしれませんが、なるべく早く整理させるということが重要であろうと思っております。
  123. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 そこで、今お答えの中で、私は、もう一遍お聞きしたいのは、将来において金利政策、金融政策が、従来は景気浮揚にいろいろ使ってきましたけれども、使っていけるかどうかということに疑念を持っておりますけれども、その点についていかがでございましょう。
  124. 石弘光

    ○石参考人 金融システムの方がより活発化する、つまり、さっき申し上げた不良資産等々の問題、資産デフレが解消すればですね。解消するために恐らく利子というのを低く抑えて、何か自力でということをやっているのでしょうが、もうそろそろこの種の、利子によってこういうことをやる、低利子によってこういうことをするというのは限界ではないか。そういう意味では、私、さっき申し上げたような例えばSPC、スペシャル・パーパス・カンパニーみたいで、土地を、とりあえず凍りついているのを引きはがすとか、あるいはさまざまな資金を公に少し活用してやるとか、あるいは、規制、制度、これを見直すという形が必要かと思っています。  低金利は、かえって今、景気に関して、利子所得がふえなくて、個人消費の足を引っ張っているという面がだんだん顕在化してきたと思っていますので、やはりその金融政策自体の、金利を低く抑えるということ自体転換期というのがいずれ来ようかと思っています。
  125. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 それと関連しまして、財部参考人が、さっきいろいろ緊急政策一つとして、貸し渋りをどう是正するかという話を質疑応答の間でお話をということでございましたから、一言。
  126. 財部誠一

    ○財部参考人 私は、資料の四枚目をごらんいただきながらお話ししたいと思います。  その貸し渋りの現状は大変厳しいです。これは、マクロの金融政策がどうであるということとは実は別な問題があって、これは銀行の事情です。  それは、不良債権の償却が随分遅いという批判に対して、銀行はそのようにこたえています。逆に言いますと、こたえたがゆえにまた貸し渋りと、こういう悪循環に陥っていまして、今の状況はどういう状況かといいますと、これは東京三菱銀行が大変多額の償却をしました、それに対して体力の限り、住友、三和がそれにさらに追随する、こういう償却競争のようなことが起こっていまして、実は、大手都市銀行といえども相当な償却によって手元の資金にかなり詰まっています。そこで、いわばあつものに懲りてなますを吹いてしまうような状況と相まって貸し渋りが起こっている、これが現状なんですね。  そこで、一つ提案を申し上げたいのが実は自行預金担保つき債権、これは非常に専門的なんですが、簡単に言いますと、それは、預金と貸し出しの債権が百万円ありますと、この預金と債権貸し出しの額とを一緒に見てもらって、いわば自己資本比率数字が下がらないように、そういう施策がとれるわけです。非常に専門的な制度なんですけれども、そういういわば制度のちょっとした手直しによって動く。  ちなみに数字を申し上げますと、ある大手都市銀行によると、三兆円ぐらい動く、貸し渋りは解消できるということです。
  127. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いずれにせよ、石参考人がおっしゃるように、これから、いわば金融政策という形で景気浮揚というのは難しくなる。そうすると、今、この新しい法案の基礎として成長率を一・七五から三・五と置いているんですね、それによっていろいろの赤字がどうのこうのと。そうすると、この一・七五から三・五というのを、本当に成長率がそこまで行くのか、一・七五は相当低目ですけれども、現実問題として金融としても手は打てない、デフレ予算でもやる。  これからの本当の、本音で言ったところの成長率をどのくらいに見ておられるか、それぞれ、時間もございませんけれども、簡単にお答えください。四人聞くのもちょっと多ければ、石先生と小野先生。
  128. 石弘光

    ○石参考人 これは神のみぞ知るでありまして、なかなか難しいお答えだと思いますが、私は一・七五が下限で三・五〇が上限だろうと思って、この上下の関係は、ことし、来年、短期的に見るといろいろ問題があって、もっと下がるかという御心配はあるかもしれませんが、まあほどほどの設定ではないかと考えております。
  129. 小野善康

    小野参考人 私は、具体的数字について申し上げる力はありませんけれども、定性的に言えば、実は一・七より低くなるんじゃないかと思っております。要するに、今までよりもさらに絞るわけですから、下手すればほとんどゼロに近いということすらあり得るのではないか。特に、株がこのように下がっている状況では、消費マインドは非常に冷えていますから、財政支出の減少分に加えてそういう効果が出てくるんじゃないかということを非常に懸念しております。すなわち、むだが非常にふえるということです。
  130. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 お二人の意見、大分食い違うわけでございますけれども、ではあともう一人、吉田先生に。  そこで、それとともに規制緩和すれば成長率そこまで行くよというのが、通常政府側の答弁であるのですけれども、果たしてそれで行くのかなと。その場合に、ではどこをどう規制緩和すればそこまで行くのかなと。私は、非常にこの三・五なんというのは、今のアメリカのあれで、ちょっと考えられない状況ではないか。それとともに、今お話ししたように、金融政策でできないならば、これはやはり財政でもやらなければいかぬ。財政も手足を縛られている。そういう環境のもとに三・五なんというのは到底考えられない、私は一・七五も危ないんじゃないかと懸念しておりますけれども、その点、先生いかがですか。
  131. 吉田和男

    ○吉田参考人 成長率を考えるときには、二つのポイントがあるかと思うわけです。それは一つは、経済の供給側の側面としての成長率、それからもう一つは、需要側の成長としての側面ということかと思うわけです。供給側の側面としての成長率、例えば規制緩和なんというのはそういうふうなところに属することかと思うわけです。  過去、ずっと見てまいりまして、供給側としての成長率低下している、しかもバブル崩壊後の、いわゆるマインドの冷えているという意味での需要が減退しているということで、両面から成長率が低く、例えば平成四年、五年、六年なんというのはゼロ成長でしたが、これは需要が不足しているということは多分当たっているわけです。供給力がゼロでゼロしか成長していないということは多分なかったと思うのです。  今の状況を考えてみますと、ことしのいわゆる需要の動向というところでいきますと、成長率は多分下がると思います。しかし、お金をもらってそれを銀行にずっと預けて、その数字が大きくなるのを楽しみにしている人は別にして、普通は所得を得て消費をするのが目的ですから、いっかはふえるはずなんですね、ずっと預金している人もおられるとは思いますが。  したがって、長期的に見ますと、長期の成長率、供給の成長率に合わそうとするわけですね。ですから、不況から立ち上がっていこうとするときは高目になりますし、それから乖離しようとするときには低目の成長率になるということで、先ほどの数字を挙げられましたのは経済計画の数字ですから、長期の数字に近いものと理解した方がいいと思うわけです。ですから、ことしの成長率いかんという問題ではないと思うわけです。  長期の成長率がどれぐらいかといいますと、徐々にやはり低下しているわけでして、これはもう言うまでもなく、人口が減少することになりますから、これは下がるのはやむを得ないわけでして、そういう目で長期を見ますと、二%から三%の間ぐらいから将来にかけてゼロに近づくということはもう避けられないと思うわけです。先ほど申しましたように、二〇二五年に仮に財政が完全に再建されても、そこまでぐらいしか行かないということかと思うわけです。
  132. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 では、小野先生に聞きますけれども、小野先生は積極財政論者でございますけれども、私がちょっと展開した論理は、まず金融が当てにならないというか、金融が成長に役立たない。そうなると、やはり財政が出るしかないんじゃないか。それとともに、どういう規制緩和が必要なんだろうか。ただ規制緩和だけでそこまで行くのだろうか。本当に、政府規制緩和を万能薬のように言いまして、規制緩和しさえずればどんどん伸びますよ、こう言うのですけれども、その点、御見解をお聞きしたいと思います。
  133. 小野善康

    小野参考人 まず、金融政策景気が回復するということは、今の御指摘のとおり、私は全くないと思います。財政しかない。それで、規制緩和との関連で申し上げますと、私は、財政支出と先ほど申し上げて、端的なもので道路という例を申し上げましたけれども、実は、規制緩和と関連のある財政支出というのが重要なんじゃないかと思います。  これは少し整理してお話ししなきゃいけないと思いますが、吉田さんが先ほどおっしゃられた規制緩和というのは、サプライサイド、いわゆる生産能力の方の成長を上げる。これに対して、もう一つ需要サイドがあるということをおっしゃったわけです。そのとおりだと思うのですが、現在はどう考えても需要サイドが実際の成長を決めているわけです。そういう時点で供給側の能力を上げるような規制緩和をやったら何が起こるかといえば、デフレギャップが広がるということなんです。デフレギャップが広がれば、さらに不景気がひどくなる。だから、今、もし生産能力を上げるという方向で規制緩和をやるとすれば、不況をひどくするということなんですね。  それに対して、私も実は、そうはいっても規制緩和はいいと思っているのですが、その理由は、新しい産業を生み出すような規制緩和はいい。ですから、情報通信網、端的な例で我々がついこの間見てきたことは、例えば携帯電話みたいなものがあるわけです。ああいう産業に対しての規制緩和、つまり、自由に参入していいという規制緩和をやったことによって、携帯電話はあれだけ売れた。それによってその産業は非常に広がった。それによって実際経済成長は上がっているわけです。そういう方向の規制緩和。ですから、先ほどちょっと申し上げたハイブリッドカーとか、そういうものもあるかもしれません。そういう、よりみんなが欲しがる、あるいは実際に世の中に貢献するような意味で、それを阻害するような規制はすべて取っ払うようにする。  もう一つさらに加えて、それをさらにプロモートするために、日本にもビル・ゲイツのような人が実際にいるわけで、それは例えば情報産業のソフトウエアの開発とか、そういうことをやっている。そういうのに対して例えば補助金を出すとか、そういう方向の財政支出の使い方の方がいいんじゃないか。そうすれば、生産能力が増大するのではなくて、みんなが欲しいものをつくる方向で規制緩和が動く、みんなが欲しいもので動けばみんなが買うことになるので実際に景気を押し上げる、そういう方向だと思います。
  134. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 この法案キャップをつくって支出を抑制しようという気持ちはわかるのですけれども、この法案全体を見ますと、ともかく一・七五とか三・五というのはあたかも外から与えられたかのごとく論議されている。本来、金融が余り動かないとなると、財政支出成長率に相当影響するわけですね。でございますから、私はこの法案について、気持ちはわかるけれども、経済的側面を十分勘案していないのじゃないかということが言えるかと思うのです。それは私の見解でございますけれども。  それとともに、今度は、経済的な考え方とは別に構成の問題でございますけれども、今までいろいろ議論ございまして、例えば公共事業あたりの効率化云々という問題、私も日本のこの赤字財政というものがどうしてできてきたのかなと。基本的には建設公債という名のもとに、いわば本来公共事業というのは、それによって民間投資が誘発されるような、あるいはボトルネックを解消するようなものが公共事業であったと思います。それがいつの間にか、生活関連もいいのですけれども、下水道なんか、さっきお話が出ましたように、本来その地区の人間が負担すべきものを国税で全部やっちゃう、波及効果も十分考えないで。でございますから、公共事業を十分審査していなかったことが、私は大きなこの財政危機の原因だと思います。  そこで、私、以前から言っておったのでございますけれども、エコノミストに一九九〇年に、アメリカの言うとおり公共事業をやったら財政がだめになるぞという論文を出したことがあるのですが、結局、建設公債、赤字公債の区分をむしろ取り払って、そういうことによって、むしろシビアな公共事業に対するいわば見方ができる。もちろん地方自治体がそれぞれ評価するという点もあるかと思いますけれども、それも一つ観点でございますけれども、建設公債、赤字公債の枠組みを取り払ってみる。今度の法案は、建設公債も若干触れていますけれども、専ら赤字公債の解消を中心としている。これについて、この区分をなくして一本で考えることについての諸先生の見解を一言ずつお願いいたします。
  135. 石弘光

    ○石参考人 建設国債赤字公債の区別をしているのは、たしか日本とドイツだけだろうと思っております。長いこと慣行でやってきましたが、私は、そろそろ見直すべき時期、つまり、建設公債だからよくて赤字国債はだめだという二分法はよくないと思っておりますので、一本化して財政赤字、国の借金という形全体で議論をすべきであろうというふうに理解いたしております。
  136. 小野善康

    小野参考人 私も賛成でありまして、それは、ある特定の支出項目にいわば限定された金ということは、二つの目的がある場合にどちらが有利であるかという調整が一切できないということであって、既得権のようになってしまうわけですから、その方が機動性はあると思います。
  137. 吉田和男

    ○吉田参考人 赤字国債と建設国債というのは、確かにある意味で、資源配分をコントロールするということで意味があったかと思うわけです、これは過去形で言った方がいいと思うのですが。  しかし、今日において、国債の問題、国の債務の問題、つまり利子を払って資本市場で調達して、そしてそれがいろいろ問題を引き起こすということを考えたときには、区分は必要ないというふうに思うわけです。さらに、地方債まで含めた、すなわちSNAベースで今回の法案の中で定義されていることは、私、評価したところでございます。
  138. 財部誠一

    ○財部参考人 私は、その区分け云々というよりも、実は財政構造改革の目的の設定の仕方として、単年度の収支均衡、つまり、赤字国債も建設国債もいずれは発行をゼロにすべきである、こういうように考えています。
  139. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今国会でもそういった質問も出たし、私も実は、本当に七、八年、十年くらい前から建設国債赤字国債の区分をなくせということを言ってきたわけでございますけれども、諸先生方も、もう今の時期になって、財政改革一つの眼目としていかに公共事業評価するかということと、それに関連して、やはり一番もとに赤字国債それから建設国債の区分が根底にあったことは非常に大きな問題であったということの御意見かと思います。  それと関連して、この新しい法案の中の一つの問題点、もちろん今まで個々の問題はあるがとおっしゃいましたけれども、一つ大きな問題点は、公共事業について単に期間延長だけした。いわゆる五年の公共事業を、要求の額は減らしたけれども、本来基本計画そのものは変えなくて、要するに少し時間を延ばしたんだということが一つの大きな問題点である。  それとともに、私は、社会保障を当然増の分があるからということで少し、年々ある程度認めましたけれども、しかし社会保障というものは、別に困っている人を助ける、そういう同情のみならず、保険料のいわば増加という形で、例えば介護保険という問題がございますが、結局、本来は税金でみんなから取るべきところが保険料の名前で取ってしまう。でございますから、社会保障的なものをぐっと頭打ちしますと、基本的には保険料の形でもって、しかも低所得者は相当の額を強制的に支払わされる。  介護保険なんていうのは特に私は大反対したのでございますけれども、ああいうのは民間に任すべきだと議論したのでございますけれども、今度の法案の場合に、やはりそういう公共事業の方をほっておいて、期間延長するだけで、社会保障的なものを削っていくと、基本的には国民負担の増加になって、しかもそれが割合と、いわば消費税みたいな形で大勢の人間の負担になる。逆に、その消費性向というか、低所得者からお金を取り上げることによって消費を抑え込むという可能性さえあるんじゃないかと考えておりますけれども、この点、石先生、どうお考えでいらっしゃいますか。あるいはそれぞれの先生の御意見を承っても結構です。
  140. 石弘光

    ○石参考人 これからの高齢化でやはり一番項目がふえてくるのは社会保障関係費、これはもう避けて通れないと思っております。したがって、公共事業をうんと削って社会保障を削らないようにしようというのもそもそも無理。ほっておいても一年間に一兆円は国の財政でふえる。自然増一兆円あるわけでありますから、そういう意味では、医療、年金の制度に切り込んだ改革を、やはりある年が来ればやらなきゃいけないということだろうと思いますので、私は、やはり社会保障というのをめぐってこれからどんどん議論があり、そしてそのとき、どれだけ自分たちが金を納めて政府に頼むというふうな形にするのか、自助努力でやるのか、おのずからいずれ解が出てくると思います。  公共事業はまた別の次元から私はうんと切り込むべきであろうと思いますので、公共事業社会保障の間のリンクをさせるのがちょっと難しいのではないかという感じがしております。
  141. 小野善康

    小野参考人 先ほどの建設国債との関連でおっしゃった目的税、それと似たような側面があると思うのですが、つまり、保険料といういわば目的税で取っているということで、それは財政の硬直化的な要素でもあるわけです。  少し違った側面でお話しさせていただくと、要するに、先ほど私が申し上げた所得の再分配のシステムにおいて、現在の問題は例えばこういう社会保険料であり、要するに、目的税としてあるいは目的国債としていろいろなものが発行されているということがその硬直化を招いている。ですから、そういう意味では総合的に考えるべきである。  先ほどの、例えば国債を出した人から税金を取ればいいというのも実はこれと少し関連しておりまして、吉田さんは、それではできない、国債を持っている人から一〇〇%税金を取ればいいということはできないとおっしゃいましたが、全くそれは違う理解でありまして、要するに、余裕のある、所得の高い、しかも資産の余っている人から取って、それで、ない人へ回すという基本的な構造の中で、その一部としていろいろなシステムがあるというふうに考えるべきであります。  ですから、特にある目的、先ほどは国債の返還をおっしゃっていましたけれども、それから今回のでいうと保険ですが、そのことも含めて、全体的に考えるべきだと思います。ですから、一つだけの制度という問題ではないんじゃないかと思います。
  142. 吉田和男

    ○吉田参考人 今御指摘の中で、公共投資長期計画は余り手をつけないで長く延ばして薄くするということの指摘があったのは、私は正しいと思います。  すなわち、基本的に、もう公共投資をしなきゃいけないようなものというのは非常に少なくなってきたわけです。すなわち、公共投資というのは年々のフローですから、ストックが充実してくれば、それに合わせて減額するのが常識なわけです。ですから、計画をつくって、それで拡大させようとしてきたことに私は物すごく大きな失敗があったように思うわけです。  また、公共事業というものが果たしてくる役割というものをやはりここで見直すということが必要であって、この構造改革法の中で減額するということを示しただけでも私は評価するのですが、今後、もっとこの公共投資について本質的な議論をしていただきたいなというふうに思っております。  それから、社会保障に関しましては、社会保障制度というのはこれは必要なものであるわけですが、しかし、特に年金制度の場合は、これはどう考えても、当初からできないことをやろうとしたわけです。すなわち、人口構成がだんだん広がっているときは、少ない受給者をたくさんの人で支えるわけですから、それはうまいこといくに決まっているわけですが、今度反対になったときにはもう手も足も出なくなってしまうわけでして、やはり制度の問題というものが重要なことかと思います。  ですから、これも非常に長期の時間がかかるわけですが、何とか根本的な、抜本的な改革をしていくということが私は必要かと思っております。
  143. 財部誠一

    ○財部参考人 期間延長による減額、これ自体は私も評価します。しかし、やはりこれは小手先の策ではないかという批判は免れないのではないかと思います。  先ほどお話がありましたけれども、では公共投資をいかに効率よくやるか、そのための評価制度も要るだろう、こういう話の中で、ある意味では、今回のこれを機会に、公共投資の長期基本計画そのものを見直すきっかけにすべきである、こういうふうに考えます。
  144. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 それから、今の医療制度、年金制度、基本的に見直さなければいかぬのですけれども、私、ちょっと心配していますのは、本来、税金でやるとなると非常に皆抵抗が多いものだから、今度の介護保険なんていうのは、ある意味からいうと、四十歳以上がみんな払うわけですから、保険料という形でやると何となくみんなのためにというような格好で、基本的には同じ、要するに税金と実質同じなんだけれども、保険料の形で負担になってしまう。これは、社会保障関係の国費を削減していくのが、すりかわって保険料という形で国民負担がふえるのではちょっとおかしいんじゃないか。むしろ、それだったら、税という形でやった方がきちっとみんなに認識される力  でございますから、この社会保障関係費を削ることが、基本的に保険料の名目、形でもって国民負担をふやすのでは困る。この点については私は非常に危惧をしておるのですけれども、石先生、いかがでございますか。
  145. 石弘光

    ○石参考人 保険料でやるか税でやるかというのは、これはその国の持っております特性あるいはカルチュラルな差もございまして、さまざまなところで選択肢があろうかと思います。  税金でやるときには、私は、世代間の社会連帯感が、きずなが強いところでないと難しいと思います。税金というのは、要するに第三者的な方に払うわけでありますから、自分の母親ならおれは面倒見ていいよという人も、全然関係ない人に税金で扶養するということについて抵抗がある人は随分いると思いますね。だから、デンマークみたいな小さな国だと税金で全部できるのです。日本が果たしてできるかどうか、若干というか、大いに心配しておりまして、保険料というのは目的税でありまして、使途がはっきりしているという点においてメリットを認めている人が多いので、私は、やはり保険料という形の方が今後好まれると思っています。ただ、御指摘のように、隠れみの的に保険料をどんどんふやすのはまずい。  そういう意味で、税でやるか保険料でやるか、これは、日本は大蔵省と厚生省、分かれていますから統計的にも非常に難しいのですが、そこを必ず明記しつつ、リンクをはっきりさせつつやって、どっちでも負担だよということをはっきりさせるべきだと思っています。
  146. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私が指摘しているのは、介護保険のような場合に、本当に介護が受けられるのかということはわからないわけですね、もうどんどん市町村が認定しちゃいますから。払った分だけもとへ戻ってくるならまだいいんだけれども。これは、民間であれば払った分がもとへ戻る、はっきりするのですけれども、どうも介護保険なんというのは、保険という名前を冠した税じゃないかというふうに思っております。  小野先生の御意見もひとつお伺いしたいと思います。
  147. 小野善康

    小野参考人 先ほど私が申し上げたのとコンシステントな話で申し上げると、保険料というのは目的税である。目的税として集めるときに、その規模によってもうそれは保証されているわけですね。例えば介護保険というのであれば、介護にしか使えない。  そうしますと、例えば介護で、しかも今のような制度だと、多分、認可とかいう問題が起きて、介護にかかわる人は認可される、そういうことになるわけです。そうしますと、その認可された人は、その保険、いわば与えられた保険いっぱいまで値段を平気で上げることができる。それは今の医療制度もそうであります。そうしますと、いわば一種の利権構造になって、幾らでも稼げるという構造になってしまう。そういう意味でも非常に危険ではないか。もちろん民間でやられる方がいいのじゃないかという気はしますが、その難しさがあったとしても、そういう、ほかの目的に使われるお金とそことのベネフィットを非常に注意してつくらないと危ないのじゃないかという気がします。
  148. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 もう時間でございます。  私は、最終的にこの法案が、財政の持つ経済効果というものに対して比較的認識が薄いのじゃないかということとともに、構造的に、そういった公共事業の基本計画を見直さないというふうな話とか、あるいは社会保障費を削ることによって実質的に国民負担をふやす、そういう面があるのじゃないかという点を指摘して、これは政府に指摘するので、参考人の方々に言ってもあれでございますけれども、そういうことで私の質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  149. 中山成彬

    ○中山(成)委員長代理 これにて安倍君の質疑は終了いたしました。  次に、海江田万里君。
  150. 海江田万里

    ○海江田委員 参考人には、お忙しいところお越しいただきまして、ありがとうございました。  実は、私、冒頭に赤字公債と建設公債のお話をしようと思ったのですが、今、安倍委員からもお尋ねがございました。ただ、参考人の四人の皆様がほぼ意見を一にしている。赤字公債と建設公債の区別はもう既に役割を終えたのではないだろうか、あるいは、役割を終えたというより、むしろ、特にバブル崩壊後の中で公債残高が膨れ上がったのは、どうも赤字公債に対しては非常に禁欲的になって、しかし建設公債に対してはそういう歯どめがなかったというような認識を持っておられるというふうに私は理解をしまして、大変意を強くしたところであります。  特にきょうお見えの皆様方というのは、政府の審議会等にも出席をしておられて、それぞれに発言力のある方でございますので、まあ橋本総理は、我が党の生方委員の質問に対して、赤字、建設公債の区別を議論するのに時宜を得た議論だということをお話ししたのですね。ところが、大蔵大臣は、そういう議論をするのについて時宜に適したなんということは全然言いませんで、何を言ったか余りよく私もわからないわけでございますが、ただ、この議論はぜひやっていただきたい。  現実に、公債の償還の方では、二百五十四兆ありましても、そのうちの七十五兆ぐらいの赤字公債はもう三分の一ですから、それが全部一緒くたになって六十年償還でやってあるわけですから、もう見合いの資産がなくなっちゃっているのですね。最初のうち、小さいうちは、まだそれでも全体の中で六十年償還でやってもよかったわけですけれども、今もうそういうのが全くなくなっているので、それは考えようによっては、建設、赤字を区別しておくということは、国民に一種のうそをついているようなことにも私はなると思いますので、きょうの参考人の皆様方、いろいろな機会がありましたら、ぜひそのお立場を表明していただきたいということでございます。  それから、質問でございますが、先ほど小野参考人は、今回のこのアジアの株価、あるいは為替、通貨の危機というもので成長率がゼロになる可能性があるというお話がありましたが、これはことしの成長率ですか、来年の成長率ですか。
  151. 小野善康

    小野参考人 私はそういう数値に関して答える能力もありませんし、私は理論家ですので、数値を回して例えばある結果が出たから、それが出るかどうかという予想を言う自信はありませんが、理論的な関係として私が一番申し上げたいことは、よくアメリカの景気の動向を評価する方なんかがおっしゃるのは、アメリカのファンダメンタルズがいいから株がいいんだ、こういうことをおっしゃいます。しかし、それは全くの間違いと私は思っておりまして、因果関係が反対でありまして、株が高い、株が膨れている、すなわち、例を言えば、この紙を私が一億円だと言った、そうすると、皆さんが信じたら実際に一億円豊かになるわけです。それはお金も一緒ですけれども。それで、一億円豊かになったから皆さんが使うわけです。使えば企業は売れるわけです。そうすると、ファンダメンタルズが上がったように見える。こっちのコーザリティーが本当の動きだと思っています。  そうしますと、今のアジアのバブルの崩壊とか、それから、私はアメリカは非常に危ないと思っているのですが、そういうことが起こった場合に、要するに、一億円だと思っていたものがいきなり百円になっちゃうわけですね。現に我々はそれをついこの間経験したわけです。そういうことが起こったら、もちろん経済成長は非常に危なくなってくるだろうと思います。特に今のような緊縮財政という非常にいわばシンボリックなビヘービアをやれば、それが日本の株にももちろん影響するのじゃないか。現にこの間少し下がったのはそれだと言われております。そういうことです。
  152. 海江田万里

    ○海江田委員 財部参考人にもお尋ねをしますが、特に大切なのは来年の我が国成長率でありまして、来年のことを言うと鬼が笑うということになるかもしれませんが、アジアの危機というのは、実は来年、本当に日本成長率に大きな影響を与えてくるのではないだろうかと思うわけでございます。  政府の方は、この財政構造改革法案を出すに当たって、名目成長率一・七五から三・五までの試算を一応しているわけですけれども、どうですか、今回のアジア危機等を踏まえて、来年の成長率がどのくらいになるかということがある程度おわかりになりましたら、お示しいただきたいのですが。
  153. 財部誠一

    ○財部参考人 これは厳密な数字を私も述べることはできないのですけれども、感覚的に申し上げますと、丁七五%の成長というのは、多分それが上限なのではないかというのが私の認識です。  と申しますのは、今回、株が随分乱高下をしました。その中で、アジアのマーケットの動きとニューヨークのマーケットの動き、日本の動き、それぞれみんな状況は違っていたと私は思っておりまして、特に日本の場合は、アジアにおけるバブルの崩壊というものを受けて、実は、特にこれはまた銀行の不良債権の問題に発展しかねない、こういう状況があります。  そうしますと、仮に公共投資が七%減りますと、実際に建設業界に取材をしてみますと、個別の業者の業績という点には大体二〇%から三〇%のマイナスではね返る、こういう認識が大変多いのですね。そうしますと、重層下請でただでさえ苦しいという状況がさらにまた来年苦しくなる。一方で、銀行の貸し渋りも含めて、金融はさらに金が詰まってくる可能性がある。こういうことを考えてきますと、やはり、とてもではないけれども一・七五というのは苦しいというふうに私は考えております。
  154. 海江田万里

    ○海江田委員 石参考人。石参考人成長率のことをお聞きするよりも、むしろ、お手元に恐らくあると思いますが、政府の試算で、一・七五のときは要調整額が二兆九千億出るという話でございます。三・五なら二兆一千億ということでございますが、もちろん成長率が低くなれば、この二・九兆というのはさらに膨らむ可能性がございます。  既に当委員会でも随分議論がされまして、三兆ぐらいは考えておかなければいけないのじゃないだろうかというお話がございますが、この要調整額をどういう形で処理をするのか、まさに調整をするのか。石参考人のお考えは那辺にありか、お聞かせいただきたいと思います。
  155. 石弘光

    ○石参考人 那辺にあるかと言われましても難しいのですけれども、今回の要調整額を出した特色は、歳出削減をもう既に織り込んでいる結果ですよね。従前は、単に自然体で延ばして、それで税負担もそのまま延ばして、そのギャップだよという形で何となくぽんと出していたのですけれども、今回は、かなり政策的効果が入っているという意味では従来と違う。それでもなおかつ出ているというのは、僕は非常に大きな問題だと思いますね。私は、歳出カットが足らぬのじゃないかと思っていますね。歳出削減の方でもう少し頑張るほかないだろう。  それから、景気も、今皆さんがおっしゃっているように、三・五の方に行くというよりは、一・七五近辺、あるいはそれを上回る程度であれば、当然のこと、この要調整額は大きい方で見なければいけませんので、税外収入を使うとか、いろいろそのときの状況で手当てできる部分もあろうかと思いますが、私は、景気の見合い等々あるかもしれませんが、この財政構造改革に関して言うならば、やはり歳出カットの方がまだ甘い点があるのではないか、このように思っております。
  156. 海江田万里

    ○海江田委員 恐縮ですが、吉田参考人も今と同じ質問でございます。
  157. 吉田和男

    ○吉田参考人 今、石先生のおっしゃったように、政策を考慮した額からまだ削らなきゃいけないということになるわけですから、これはかなり厳しい問題かと思うわけです。  ただ、景気の話とリンクさせる場合、先ほど申しましたように、短期的な成長率と長期的な成長率を分けて考えた方がいいというふうに私は思うわけです。ですから、ことしの成長率、たしか第二・四半期はマイナスニ%でしたか、そういった大きなショックがあったというのは、これは、ことしの成長率がそこまで下がるというのは間違いのないことなわけです。しかし、これを上げようとしても、別に消費がふえる方法というのはないわけですね。  それで、私は、基本的に、マイナス一一になったというのは、消費が、前倒しの話ですね、ある意味のショックが大きいと思いますから、先ほども申しましたように、所得が急激に減っているわけじゃないですから、それをずっと貯金として残しておくというふうに考えるのは、やはり考え過ぎかなと思うわけです。過去も、例えば昭和四十八年とか、それからこの間の石油危機とか、いろいろなときにショックがあるんですね。ショックがあって、そのときにぴんと貯蓄率が上がるんですね。ですから、そういうことは過去にも何回もありまして、ただ、それがずっと継続して貯蓄率が高いまま続くということは過去なかったと思いますので、私は、余り心配し過ぎるというのもどうかなというふうに思っているわけです。  長期の財政との関係でいきますと、当面の間、増税するとしたら消費税しかないというふうに考えますと、その消費税増税が可能か、あるいは可能な条件をつくることができるかというと、なかなか難しい。となると、歳出削減ということになっていくかと思うわけです。この財政構造改革そのものの考え方が、歳出削減するということを起こすために構造的な問題を解決していこうということだと思うわけです。ですから、まさに、皆さん御議論いただいて、本当に根本的なところから財政制度のあり方、あるいは歳出をつくっている、例えば年金制度、医療制度、あるいは公共投資の制度、そういったものを根本的なところから議論していただいて、スリム化に役立つようにしていただければなと思っております。
  158. 海江田万里

    ○海江田委員 まさに、私どもも、長期の問題と短期の問題を区別すべきだという立場でございますから、まさにその観点がありますから来年の問題をお尋ねしたわけでございます。ここはお間違いのありませんように。  そういう意味では、本当のことを言いますと、国債の整理基金の繰り入れ等の停止とか、いろいろテクニックはあるのですが、それをやったんじゃまさに財政構造改革の名前に値しないわけですから、まさに来年の予算が、本当はことしが財政構造改革元年という話だったんですが、法律を決めまして、来年の予算からということになるわけです。しかし、そこのところがやはり、現実的にこの要調整額がまだ膨らむということになると、私も、正直申し上げまして、財政構造改革のこの法案がもし通るようなことになって、そしてこの法律にのっとった要調整額を調整するのは、石先生もおっしゃったように、これは歳出削減しかないわけですね。この歳出削減景気との観点がどうなのかということが非常に私は気になっておるということは指摘をしておきたいと思います。  本当はもっと議論をやりたいんです。大臣とやるよりもこちらの方がはるかによろしいかと思うのですが、ただ時間も限られておりますので。  もう一つ、私どもの提案としましては、国と地方財政赤字の対GDP比三%ということで、国と地方財政赤字は貯蓄・投資差額だということは、これは国際的に確かに認められた数字であるのですけれども、ところが、これが実際にはっきりしできますのは、GDPの方は先ほど財部さんからもお話がありましたが、貯蓄・投資差額というのは大変複雑な計算をやりまして、これが本当にわかっておるのは経済企画庁の担当者四人しかいないとか、そんなような事情もこれありなんですね。結果が出るまで二年ぐらいかかってしまうとかいうことで、もっとだれにもわかりやすい物差しというのは、国と地方が発行しました公債あるいは借入金があるわけですから、これと対GDP比で比較をした方がはるかにみんながわかりやすいんじゃないだろうかという意見があるのです。  しかも、すぐ結論というかその評価も出てくるわけですから、その時々で軌道修正等もできるということで、確かに国際的にはおっしゃるような貯蓄・投資差額というものもございますけれども、もっとわかりやすくということでいえば国と地方の公債プラス借入金ということで、これは何でできないのでしょうか。  確かに、それをやると三%を上回ってしまうということはあるのです。ただ、それを上回ってしまうということだけでもしやっているとしたら、私は、むしろそこに問題があるのではないだろうかという考え方を持っておりますが、これは吉田先生から、なるべく手短にしてください、もう時間がありませんので。
  159. 吉田和男

    ○吉田参考人 先ほど言いましたSNAベースでやるというのは、結局ほかの経済システムとの整合性ということで考えられたのだと思うのです。おっしゃられるように、財政指数がすぐ出ますけれども、SNAベースではなかなか時間がかかるというのは確かだと思います。しかし、その間には非常に相関がありますから、恐らく大蔵省の人は考えるんじゃないかと思いますが。  以上でよろしいでしょうか。
  160. 海江田万里

    ○海江田委員 石先生、今のお話でもし御意見がございましたら。
  161. 石弘光

    ○石参考人 従来の一般会計ベース、あるいは地方地方の普通会計ベースだけでやりますと、そこの庭先だけきれいにしようというような配慮が働いた財政再建策になるので、やはり国際的標準であります国民所得会計に基づいたものを使うことが僕は正論だと思うのです。ただ、御指摘のとおり、概算の期間が長い。したがって、やはりそれは丸い数字で見ていくべきなんだと思いますね。したがって、絶対三%にならなきゃいけないんだという、今のヨーロッパの、EUのマーストリヒト条約もありますけれども、その辺は少し幅を持って大らかに、大らかにと言うとだめかもしれませんが、その辺は概算的な配慮を持って今回の指標は使うべきだと私は思います。
  162. 海江田万里

    ○海江田委員 あと、これはまさに、財政再建法案ではなくて、財政構造改革法案なわけです。ここにはいろいろな思いがあると思うのです。それは財政再建法案であればまさに歳出削減の話でいいと思うわけですけれども、財政構造改革法案ということでいうと、経済構造そのものを変えなきゃいけないということですけれども、端的に言えば、やはり歳入構造も変わっていかなきゃいけないわけですね。  ところが、これをどう読んでみましても、歳入構造がどういうふうに変わっていくというところが少しも見えてこないんですね。特に石先生は、そういう意味では、税調のところでも重要な役割を果たしていらっしゃるわけですけれども、ここで出てくるあるべき税収の姿、歳入構造の姿、とりわけ税制改革の姿というものがどんなものなのかということをお話しいただきたいのですが。
  163. 石弘光

    ○石参考人 まことに残念ながら、審議会も縦割りでございまして、税調で議論している世界が、この財政審等々に入り込めない。というのは、委員が文句を言うんですよね、やはり歳入側も言わないと歳出カットなんかできないじゃないかと。したがって、そういった情報を密にするようなことを今後考えるというのが一つだと思います。  したがって、今の御指摘には、税制あるいは社会保障負担の方の細かい配慮をこの財政改革法案の方には入れていない、これはまさに御指摘のとおり。恐らく今後、歳入面も見て議論しなきゃいけないと思います。ただ、大きな筋は直間比率の見直したと思います。
  164. 海江田万里

    ○海江田委員 確かにそのとおりだろうと思いますので、やはりここからどういう税制改革、これから年度改正、国会でも議論が始まるわけですけれども、どういうふうな姿なのかというのが見えませんと、本当の意味では議論できないんですね。それは大変残念なことだな。その意味では、この法案自体がかなり拙速だったなと言わざるを得ないと私は思うのです。  財部参考人が幾つか、「いま実行すべき緊急経済対策」というものを出していただきました。これは、単なる減税ではお金が消費に回らない、貯蓄に回ってしまうから、消費と結びついた減税をやらなければいけないということで、私どもはこの意見を大変重く受けとめさせていただくわけでございます。  一つ、これは財部参考人にお尋ねをしたいのですが、例えば消費税を、我が党の中にも実は消費税、我が党は消費税三%から五%に移るとき賛成したのですけれども、党内の議論がいろいろありまして、今は三%に据え置くべきだというような議論も随分あったんですね。ところが、これ、五%にしてしまいましたから、一度決めた五%を三%にするというのは、これはなかなかできる話ではありません。  むしろ、カナダなんかで逆人頭税というのがありまして、要するに低所得の方たちに、その人たちが一年分に消費をする、支払いをする消費税分を還付するような制度があるのですけれども、こういう制度を利用しまして、確かに年金生活者等は年金の額である程度面倒は見ているわけですけれども、もう少し幅を広げたこの逆人頭税、あなたのところは何人いるから、では、一人幾らだから幾らの還付だよみたいなアイデアがあるのですが、それについてどうお考えか、ちょっと突然のお話で意見がまとまらないかもしれませんけれども、御意見等がありましたらお聞かせください。
  165. 財部誠一

    ○財部参考人 私は、基本的にはそういう考え、アイデアというのはよろしいと思います。  ただし、その場合、繰り返し述べますけれども、それが消費に結びついていく、そこにこだわった、何か制度と一緒に実行しないとなかなか成果が出ないのかな、こういう感じがするわけですね。ですから、単に現金を還付するのではなくて、例えば百貨店の金券であるとか、それをもらってそれが直截的に消費に結びつく、そういうふうな工夫を凝らした形で行えば大変意義のある政策になるのではないかと思います。
  166. 海江田万里

    ○海江田委員 時間が来ました。ありがとうございました。
  167. 中山成彬

    ○中山(成)委員長代理 これにて海江田君の質疑は終了いたしました。  次に、矢島恒夫君。
  168. 矢島恒夫

    ○矢島委員 参考人の皆さん、本当に御苦労さまでございます。  私の持ち時間は十五分ということでございます。しかも、お聞きしたい主要な部分につきましては相当程度出てきております。今までの先生方の発言だとかその他も引用させていただきますけれども、お答えいただければと思います。  小野先生に、最初に景気の問題でちょっとお聞きしたいのですが、この四月から消費税が上がって五%になった、特別減税は打ち切られた、九月一日からは医療費負担も増大した、大まかに言いますと九兆円負担増、こういうのがあります。これが消費を冷え込ませた。それで、四月から六月ぐらいまでの間にこの影響はなくなるよという見通しを経済企画庁はやっておりましたけれども、とんでもない、今もずっと続いている。こういう状況の中で、この財政構造改革法案なるものが今出されてきているわけです。  この法案について、私はこれは委員会でも質問したのですが、法案が出されただけで消費に非常に影響が出てくる、冷え込むぞ、これは経済企画庁の前の調整局長あたりが新聞で言っていたことですけれども、そういうような意見もありました。確かに一般庶民から見ますと、これから年金が大変なことになるぞ、医療費なんかについても大変だぞ、こうなりますと、老後を何とかするためには貯金しなければという方向へ行くと消費がますます冷え込んでいくだろうということは言えると思うのです。  ですから、出された段階で、法案を見ただけで、マインドの問題として景気にどういう影響をするか。実際にやってもこれは、例えば福祉や医療やそういう方面は一つの雇用、電気通信、情報社会もそれは伸びていく方向はありますが、やはりこの医療だとかあるいは社会保障、福祉関係というのは、これまた雇用の面でも非常に大きな、産業という形で見た場合に、雇用の創出を生むだろうと思うのです。  そういう面から全体的に見ましても、今度のこの構造改革は、どうも消費はどんどん冷え込んでいくのじゃないかと私は思うのですが、先生、もし見通しでもありましたらお聞かせいただければと思います。
  169. 小野善康

    小野参考人 私もそのとおりだと思います。それで、景気はさらに悪くなると思います。  税の構造との関連で申し上げますと、私はフラット化よりも累進化的な構造の方がいいと思っているのですが、消費税はその意味では反対にしていると私は思っているのですが、その理由は、実は今不況状態にあるということが重要なんです。  フラット化が導入されたのは、それはそれでいいことがあった。なぜかというと、好況のときは、先ほどの吉田さんのお話との関連で言いますと、能力と買うものとのバランスの問題で、要するに生産能力のところに需要がついていたわけですね。そうすると、生産能力をふやさなければいけないので、働く意欲がある人が一生懸命働いたり税金をいっぱい取られてしまう。それでは働きかいかない。そういう意味でフラット化は重要たったわけです。ところが、今のような状況でありますと、一生懸命働こうとしても働く場が余りないということか重要なわけです。だから、非常に問題になっている。その意味でいいますと、そちらの働く方ではなくて、より消費の、より使う方向に税制を変えるべきだ。少なくとも短期的にでも変えるべきだ。そうしますと、低所得者、それは高所得者に比べたら絶対に低所得者の方が消費性向は高いわけですから、そちらに回るような構造にすべきだ、そういうふうに私は思います。
  170. 矢島恒夫

    ○矢島委員 石先生にお聞きするのですが、ちょうど財政構造改革会議が結論を出したときですか、六月四日の読売新聞をちょっと見ておりましたら先生のいろいろな御意見が出ておりまして、その中に、焦点のウルグアイ・ラウンド農業対策費の問題と公共投資基本計画はその絶対額を減額できず、延長しただけだと。やはりこういうのは構造改革ということで言えるのだろうかという疑問だろうと私なりに思うのです。  それから、あと、先ほどの小野先生への質問と同じようですが、福祉、医療、こういう社会保障の問題でもちょっと触れられていて、医療改革について、さらにこういうところをやるべきであって、多分受益者負担だけに負わせるべきではないというような内容だったろうと記憶しておるのですが、もし、それらの問題について、お聞かせいただければと思います。
  171. 石弘光

    ○石参考人 ウルグアイ・ラウンド対策費あるいは公共投資基本計画を絶対額で削らないで延長するという形で実をとったということに対して私は不満を述べておりまして、今もってその意見は変わりません。やはり公共事業を見直せという時代、あるいはウルグアイ・ラウンドを抜本的に見直せという国民の声も、またそうでない声も強いのは承知しておりますけれども、財政構造改革といえばそこまで切り込まないと意味がないと考えております。それから、医療に関しましては、私は供給サイト、例の薬価のところの差益の問題であるとか、あるいは乱診乱療的な医療費のむだ遣いであるとか、それをやらなくして、やにわに需要側の方の弱みにつけ込んでと言っては恐縮ですが、受益者負担にすぐ行くのは問題である、こういう意見を申しました。今もこれは変わっておりません。
  172. 矢島恒夫

    ○矢島委員 財部参考人にお聞きしたい。  一つは、建設国債をゼロとすべきだというお考えでありました。赤字国債だけをいつまでにゼロにするのだぞというのは入っていますが、その辺についての問題が残されているわけです。ただ一方、一つ景気対策ということもありますけれども、もう一つは、日本は社会資本がまだ不十分だから少し国債でも発行して整備する必要があるのじゃないかという意見も一方にはございます。それらの意見について何かございましたら。
  173. 財部誠一

    ○財部参考人 実際に公共投資が各地方経済において欠くべからざる存在になっている、これはもう否定できないと思うのですね。ですから私も、公共投資等の予算というのは、これはずっと長い期間をかげながら減額していくしか道はない、こういうふうに思っております。  しかし、ただ一つ考えなければいけないのは、日本財政構造を変えるといったときに、長期債務が一円も減らない構造改革というのがあるのか。いわば単年度の、それこそ一般会計の単年度の収支均衡という極めて小さな目標だと私は思っております。まずここが収支の均衡を見ない限り長期債務は永遠に減らない、これは動かざる真実だと思うのですね。  ですから、そういう意味では、いわばこれは時間の問題だと思うのです。いつまでにゼロにするかという期間の問題です。ここを政治の判断として十年かけるのか、あるいは十五年かけるのか、こういうところを先生方にお任せするしかないのですが、最終的にゼロにするんだということを、単年度の収支均衡を目指さない限り長期債務は永遠にふえ続ける、これはだれもが認識しなければいけないことではないかというふうに思います。
  174. 矢島恒夫

    ○矢島委員 引き続いて財部参考人に聞きますが、公共投資のあり方、今のに関連ありますけれごも、たしか整備新幹線を例に挙げていっか論じられていたことがあったかと思うのです。結局、一度着工すれば十年とか二十年のいわゆる公共投寅というものが地方の自治体にとっては約束されるわけだというようなことで、例は新幹線の問題だったと思いますが、今との関連あるいは地方自治の確立という意味とも関連してくるかと思いますけれども、こういう公共投資の問題について何か御意見ございますか。
  175. 財部誠一

    ○財部参考人 恐らく、整備新幹線で私の記事なり何かごらんになったのかと思うのですけれども、私は一律に整備新幹線が反対というわけでもないのですけれども、もちろん、全部オーケーかというと、それもまた反対である、こう思っているわけです。  新幹線の問題をちょっと調べてみますと、東京とか大阪と直結している線は、実は黒字になるのです。これは、直結したところが実は大変経済メリットを受けます。ところが、よく見ると、その途中は飛ばされてしまって、逆にデメリットを受ける、こういうこともあるわけですね。ですから、そういう意味で言いますと、私は、同じ整備新幹線、公共投資の一つの象徴として申し上げると、それを引くことによって実際どういう経済効果があるのか、ここをきちっと論じた上で、しかもある程度受益者負担というようなものを課していかないと、真剣にそこが議論されないのではないか、こんなふうに考えています。
  176. 矢島恒夫

    ○矢島委員 吉田先生にお伺いしたいのですが、ちょうどこれも六月四日の朝日に先生が出されておるのですが、公共事業などへの国からの補助金と地方交付税、地方財政というものはこれで支える仕組みになっている、今度の財政構造改革の行き方ではそこに十分にメスが入っていないのではないか、地方が安易に公共事業に飛びつく構造が問題なんだということを書かれていらっしゃると思います。  それから同時に、これは税経通信というのですか、井堀先生との対談をされて、地方分権とそれからいわゆる補助金の問題、こんな対談をされていらっしゃるかと思います。  この辺についての先生の御意見を、時間は余りありませんけれども、終わりまで使っていただいて結構ですから。
  177. 吉田和男

    ○吉田参考人 先ほども少し申し上げたのですけれども、基本的に補助金というのは、国の政策地方で実施するというのが補助金の趣旨なわけですが、現実は地方の事情に応じて要請するということになるわけですね。やはりそこに矛盾があると思うのです。ですから、地方が必要なものは自分のところで資金調達してもらう、補助金という仕組みでやらない方がより効率的なものだということです。  補助金をもらってくると、何かただのお金をもらってきたみたいですけれども、あれは結局、自分のポケットから税金で行って向こうを回ってきただけですから、より財政錯覚が大きい、不適切な仕組みであると私は思っております。     〔中山(成)委員長代理退席、委員長着席〕
  178. 矢島恒夫

    ○矢島委員 小野先生、やはり小野先生も公共事業の使い道には首をかしげるようなものがあるということを言っていらっしゃいます。  私たちも確かに、今の公共事業を見たときに、実際に計画は前にあって着工も前だけれども、もう十年も十五年もかかって、本当にそのまま続けていいのかというような、例えば港にしても農道空港の問題にしても干拓事業にしても、あるわけなんです。やはりそういう部分にメスを入れてこそ構造改革ということになるし、一方的に福祉や医療、いわゆる社会保障関係に何となく負担がどんどん来るんじゃないかなという国民の意向が、やはり構造改革というので、ここにもメスを入れ、ここにもメスを入れる、しかし、そうしなければなかなか三%を達成できないのだよとなれば、今よりは幾らか国民の反発も少なくなるのではないかと思うのですが、そういう、公共事業でメスを入れるべき点というのはどんなところでしょうか。
  179. 小野善康

    小野参考人 従来型の道路をつくったりする、そういうものがほとんど経済効果を生み出さないのではないかというのは、私自身が例えば経済的に計算したわけではないのですが、しかし、そういう感想はもちろんございます。  ですから、先ほど私はそれでもやるべきだと申し上げたのは、時期として失業がある場合に、例えば吉田さんのお話で言えば、地方でそれにのっとって、生活がそれで組み入れられている。これは問題だとおっしゃったのですが、じゃそれを全部やめたとしましょう。そうするとどうなるかというと、そこで、まあもちろんただトンネルをつくるんじゃ意味ないのですが、少しでも役立つものをつくっていた人たちは何もつくらなくなる。これで終わりなんですね。  ですから、今、ちょっと御質問の趣旨と違うことを言いましたけれども、御質問の趣旨で言えば、そういうものよりもより意味のあるもの、だから、我々は、高齢化社会であれば、それに対する、例えば設備とかあるいは介護に対する教育とか、その方が重要だということは、これは私の理論というよりは、主観としては思っております。
  180. 矢島恒夫

    ○矢島委員 ありがとうございました。  時間になりましたので終わります。
  181. 中川秀直

    中川委員長 これにて矢島君の質疑は終了いたしました。  次に、秋葉忠利君。
  182. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 参考人の皆さん、長時間、貴重な御意見を大変ありがとうございます。時間が十分ですので、基本的なことを一、二、確認をさせていただきたいと思います。  主に財政再建景気の関係について伺いたいのですけれども、まず石参考人にお願いしたいのですが、先ほどのお話、簡単に景気とそれから財政再建の関係を要約しますと、財政改革は中長期的な課題である、本来、景気はどちらかというと短期的だけれども、現在の日本の不況の状況というのはこれは構造的な不況であるというふうにとらえるべきである、構造的な対応が必要だろうということです。  大ざっぱに考えると、財政、つまり支出を切るということ、これは景気対策とは逆方向を向いている。同時に、中長期的な視野で景気対策もしなくてはいけない。相反する目的を相反するやり方でやったのでは、相殺効果でゼロになっちゃいますから、一つの整合性のあるやり方でこれに対処していかないとということになると思うのですが、財政改革の中にそれが埋め込まれているというふうにはなかなか見えないのですが、構造的な景気対策、しかも財政再建と整合性のある対策といったようなところでは、我々としてはどういった方向性を打ち出していけばいいのか。その辺について基本的なところを少しお教えいただければ、大変ありがたいのですが。
  183. 石弘光

    ○石参考人 基本的には相矛盾している面もありますので、二兎を追うというのは難しい面もあろうかと思います。  ただ、先ほど申し上げたのは、やはり一口で言うと規制緩和あるいは構造改革と言われておりますが、構造改革の中には、税制を使うなら、私は、法人税のところの企業税負担を何らかの形で低くするというのが、今、グローバル化された社会での企業活性化、あるいは海外から企業を呼ぶとかあるいはビッグバンに備えてといったような意味合いで、極めて有効であろうと考えております。  それから、減税したり公共事業をやったりという形の景気対策よりは、構造的と言っておりますのは、もうちょっと、今の資産デフレ以降のさまざまな形の不良資産化等々には、やはり規制緩和的な制度で立ち向かうほかないだろう。そういう意味では、土地の流動化を促進するようなことを、今SPCというようなことが言われておりますし、あるいは金融のシステムで、今不良資産化してしまってどうしようもないところを何か活性化する意味で、預金保険機構あるいはそれに絡めての公的資金等々の、そういう手段がより有効であろう。  従来型のマクロ経済政策というのは、それはやって全然むだとは思いませんが、残るツケが大きいので、それより制度的な見直しを含め、構造対策をすべきである、税制もその一環で、探して知恵があるところはやるべきであろう、こういう意見でございます。
  184. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 ありがとうございました。  それと非常に対照的な御提案を財部参考人から伺ったのですが、対照的といいますか、非常に具体的かつ効果というところに焦点を当てたようなところで、先ほど少しお話しになり始めて時間が足りなくて、数字を恐らくお持ちなんだろうと思いますが、銀行の貸し渋り対策のところで、大体例えばどのくらいの効果があるというふうに試算されているのか、せっかくですからお教えいただければと思います。  ほかの項目についても少しデータをお持ちでしたら、その部分についてもついでに簡単にお話しいただければ大変ありがたいのですが。
  185. 財部誠一

    ○財部参考人 どうも御質問ありがとうございます。  実は、銀行の問題に関しましては、貸し渋りは単に銀行が悪いと言ってもだめなんですね。今、銀行が一番気にしているのは何かといいますと、これは自己資本比率です。八%の自己資本比率がどうも達成できない。自己資本比率というのは、簡単に申し上げますと、分母、貸し出しの債権が多いとどうしても比率が低くなってしまう。ここの部分を減らしたい、こういうニーズがあるわけです。  実は、リスクアセットと申しますが、それを簡単に減らす道があります。それは、預金との見合いで相殺してしまう、預金がある貸し出しに関しては相殺ができる、こういうことを認めてあげると相当の貸し出しの余力が出ます。  御指摘の数字を申し上げますと、ある大手都市銀行に聞いてみますと、三兆円ぐらい、つまり、預金と貸出金の見合いで、それをセットで、リスクアセット、これを減らすと三兆円は貸し出し余力が出るというのです。これは議論がありまして、ほかの銀行に聞いてみると、そんな多くはないと。しかし、少なくとも一兆円はあるというのが大手都市銀行に対して私がヒアリングをした数字です。としますと、これは、今の貸し渋りの中で、大手都市銀行だけでも一兆円から三兆円という数字が本当であれば、相当な経済効果が期待できるのではないかというふうに考えております。  そのほかについては、私、ちょっと具体的な数字を今手持ちがございません。  これで終わります。
  186. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 時間がありませんので、ほかの点についてはまたいうか数字をお教えいただければ大変ありがたいと思うのですが。  小野参考人にこの景気のところで一つ伺いたいのですが、これは時間がなくて、御準備いただいた資料の三ページのところに経済対策ということで景気の面が触れてあります。先ほどのお話ですと、これは恐らく誤解だろうと思うのですが、主要目的以前の問題として、好況時、不況時ということを考えると、まず仕事があることが大事である、物をつくる、付加価値をつくるということが大事であるということで理解をいたしました。その中でも特に景気対策あるいは環境といったようなところに投資をすることによって、一方では景気の対策になり、もう一方では将来世代に対する貢献度が高まるというような形での御提案だと思うのですけれども、それについてコメントをいただければ大変ありがたいのですが。
  187. 小野善康

    小野参考人 今、まさに私の申し述べたいことをうまくサマリーしていただいたので加えるということでもないのですが、将来世代のための貢献になると同時に現在の景気に対するいわば刺激効果にもなる。さらに、将来世代ということは日本における将来世代ということなんですけれども、同時に、今まで日本がうまくいってきたのは、今までというのはバブル期までというか高度成長期ということですけれども、それは、新しくて非常にいい技術というのは次々、アメリカとか先に進んでいる国からもらえたわけですね。ですから将来像が見えた。そういうことで、新しいものを持ってくると、我々は欧米のような生活をしたいとあこがれて、それが入ってくればすぐ消費した、そういう形になつているわけです。  ところが、もう今ほとんどキャッチアップしてしまった。下手すればそれを過ぎてしまった。そういうときには、ほかの国が実はそういうものを導入したいというようなものに対してさらに投資を促進するとか、あるいは技術開発を促進するとかいう政策をすべきだ。そういう意味で、一石二鳥にも三鳥にもなるということでそういうことを申し上げているわけです。
  188. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 吉田参考人に伺いたいのですが、やはり景気財政再建のところなんですが、非常に広い範囲にいろいろ御著作を物にされているので幾つか読ませていただきました。そういった関係から、少し幅広い、例えば行革といったような関連までも、あるいはそれ以上の社会的なさまざまな変革ということを考えた上で、景気対策、それから財政構造、その関係、より幅広い社会的な意味から、どういった方向をとるべきか、済みません、時間が一分ぐらいしか残っていないので、無理な話なんですが、二百御意見を伺わせていただければありがたいと思います。
  189. 吉田和男

    ○吉田参考人 やはり今大きな変革になっておりますのは、日本社会のあり方、あるいは、例えば企業のシステムのあり方それ自身ももう変革しなければいけない、財政自身が果たしてきた役割も変革しなければならないということになってきたかと思うわけです。  ですから、規制緩和をしたら景気が悪くなるという側面もありますし、財政構造改革をしたらそれは景気に対してマイナスということは否定できないと思うのですが、しかし、今我々がやらなければいけないのは、今までのシステムを本格的に改革するということではないかと思っております。
  190. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 ありがとうございました。  時間ですので終わります。
  191. 中川秀直

    中川委員長 これにて秋葉君の質疑は終了いたしました。  次に、上田清司君。
  192. 上田清司

    上田(清)委員 無所属クラブの上田清司でございます。  参考人の先生方、大変貴重な時間、ありがとうございます。  一つだけ御質問をさせていただきたいと思います。やはり、財政再建をしなければならないという点に関しては、もう各党みんな共通の認識ではないか、また先生方の共通の認識ではないかと思いますが、今、日本経済状況の中で、政府、特に経済企画庁レベルでは、緩やかな景気回復の基調は動いていない、消費税引き上げの反動的なものでの一時的な落ち込みだというふうな認識でございますが、各先生方におかれましては、今日の経済状況を、緩やかな景気回復状況にあるのか、それとも本格的な腰折れになっていくのかどうか、幾つか既に指標の数字は出ておりますが、九月、十月を見なければわからない部分もあるかもしれませんが、考え方として、ほんの一分で結構でございますので、それぞれの参考人の先生方から、感想でも結構ですのでお聞きしたいと思います。
  193. 石弘光

    ○石参考人 景気回復に向かったというのが一九九三年十月ですかね、四年ぐらい前から景気回復景気回復というわけでありまして、景気循環というのは、そのぐらいたつとそろそろ落ち出すわけですよ。  そういう意味で、私は、腰折れとかなんか、急激な不況は来ないと思いますが、いつまでも景気回復、それで構造改革大丈夫だよというシナリオを言うよりは、そういった意味で、財政構造改革、やはりダメージを与えるというようなこともはっきり言いつつ、長期的なビジョンを出し、政治的なリーダーシップを発揮して、国民を説得すべきではないかと考えています。
  194. 小野善康

    小野参考人 私も、景気の腰折れとか、そういうことよりも、回復という意味では非常に遅い、何かこういう今回のような緊縮財政ということを出せばまた下がってしまうというような意味で、非常に遅い、時間のかかる回復だと思います。  それは実は株と関係がありまして、つまり、株というのはさらに言うと我々の心理と関係ありまして、景気が物すごくいいときにはみんな消費するので、ファンダメンタルズも上がって株も上がってといういわば好循環が起こったわけですが、それは単に紙が一枚一億円がただになってしまったということで、それに気づいてみんな引っ込めてしまったわけですね。それで、これを忘れるまで、つまり、我々は一度経験してしまったので、これから株がまた同じように、例えば四万円近くになるなんということは思えない。それを忘れるまでは非常に時間がかかるという気がします。  そういう意味でも、その間じゅうずっと失業をほっておいて、せっかくできる、将来のためだということをおっしゃっていますが、将来のためにお金をためるのではなくて、実際に役に立つものをためるというのが我々の義務だ、そのように理解しております。
  195. 吉田和男

    ○吉田参考人 景気回復が非常に遅いというのもやはり日本の特徴かなという気がするわけです。  すなわち、例えば不良債権問題でも、ぱっと償却して、それで一斉に用意スタートでやれば随分早いわけですが、それができない、少しずつしか償却できないとか。あるいは、この財政の問題でも解決するのに物すごく時間がかかっている。  会社でもそうなんですね。アメリカのように、ぱっとレイオフをして利益が上がる体質にして、そして企業の活力を上げて、それからまた雇用をふやすというやり方をアメリカのような場合はさっととるわけですね。日本はなかなか調整するのに時間がかかる。  こういうだらだらした不況というのがまた日本の特徴で、今、規制緩和あるいは民間での自主的な改革をやっておりますので、私はそれに期待したいと思っております。
  196. 財部誠一

    ○財部参考人 現状は、私は、八九年以降、大変大きな超長期の構造変化が起こっておって、その中で小さな景気の好況、不況が繰り返されてきた、こういう認識です。その意味で言いますと、小さな景気の盛り上がりというのは昨年度で終わって、今年度は、かなり緩やかな回復というのは、私は表現が違うと思っています。むしろ下降局面に向かっているというのが正しいのではないかと思っています。
  197. 上田清司

    上田(清)委員 ありがとうございます。  時間がありませんので、財部先生に一点お伺いいたしますが、ペーパーの三枚目の財特法の難点というところで、罰則規定がない、目標を達成させるための担保がないと。例えば、先生、イメージとしてどんなもので担保を図ればいいかというようなことを御教示いただければと思いますが。
  198. 財部誠一

    ○財部参考人 これは、GDP比で具体的に制度上の担保というのは、私は、申しわけないのですが、現在ただいま答えを用意しておりません。それは、私は、内閣がこういう形を、責任をとりたいという、それを表明するべきものであるというふうに考えています。
  199. 上田清司

    上田(清)委員 どうもありがとうございました。
  200. 中川秀直

    中川委員長 これにて上田君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  次回は、明三十一日金曜日午前十時委員会、午前九時五十分理事会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十一分散会