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1997-10-23 第141回国会 衆議院 財政構造改革の推進等に関する特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十月二十三日(木曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 中川 秀直君    理事 甘利  明君  理事佐田玄一郎君    理事 白川 勝彦君  理事中山 成彬君    理事 野田 聖子君  理事北側 一雄君    理事 中井  洽君  理事海江田万里君    理事 児玉健次君       浅野 勝人君    大石 秀政君       大野 松茂君    金田 英行君       木村 隆秀君    小林 多門君       佐藤  勉君    桜田 義孝君       実川 幸夫君    新藤 義孝君       菅  義偉君    田中 和徳君       田村 憲久君    竹本 直一君       谷畑  孝君    西川 公也君       能勢 和子君    林  幹雄君       穂積 良行君    松本  純君       目片  信君    持永 和見君       山口 泰明君    渡辺 博道君       渡辺 喜美君    安倍 基雄君       赤松 正雄君    一川 保夫君       太田 昭宏君    岡田 克也君       左藤  恵君    田端 正広君       谷口 隆義君    中野  清君       西川 知雄君    原口 一博君       松浪健四郎君    山本 孝史君       池田 元久君    石毛 鍈子君       生方 幸夫君    五島 正規君       佐々木憲昭君    辻  第一君       東中 光雄君    矢島 恒夫君       秋葉 忠利君    中川 智子君       濱田 健一君    堀込 征雄君       上田 清司君  出席国務大臣         法 務 大 臣 下稲葉耕吉君         外 務 大 臣 小渕 恵三君         大 蔵 大 臣 三塚  博君         文 部 大 臣 町村 信孝君         厚 生 大 臣 小泉純一郎君         農林水産大臣  島村 宜伸君         通商産業大臣  堀内 光雄君         運 輸 大 臣 藤井 孝男君         労 働 大 臣 伊吹 文明君         建 設 大 臣 瓦   力君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     上杉 光弘君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 村岡 兼造君         国 務 大 臣         (総務庁長)  小里 貞利君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 久間 章生君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      尾身 幸次君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      谷垣 禎一君  出席政府委員         内閣法制局長官 大森 政輔君         内閣法制局第三         部長      阪田 雅裕君         行政改革会議事         務局次長    八木 俊道君         警察庁刑事局長 佐藤 英彦君         総務庁長官官房         審議官     西村 正紀君         防衛庁防衛局長 佐藤  謙君         防衛庁経理局長 藤島 正之君         防衛施設庁長官 萩  次郎君         防衛施設庁総務         部長      西村 市郎君         防衛施設庁施設         部長      首藤 新悟君         経済企画庁調整         局長      塩谷 隆英君         経済企画庁総合         計画局長    中名生 隆君         経済企画庁調査         局長      新保 生二君         科学技術庁科学         技術政策局長  近藤 隆彦君         法務省刑事局長 原田 明夫君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部長    朝海 和夫君         外務省アジア局         長       阿南 惟茂君         外務省北米局長 高野 紀元君         外務省経済協力         局長      大島 賢三君         外務省条約局長 竹内 行夫君         大蔵大臣官房総         務審議官    溝口善兵衛君         大蔵大臣官房審         議官      尾原 榮夫君         大蔵省主計局長 涌井 洋治君         大蔵省理財局長 伏屋 和彦君         大蔵省証券局長 長野 厖士君         大蔵省銀行局長 山口 公生君         国税庁次長   船橋 晴雄君         文部大臣官房長 小野 元之君         文部大臣官房総         務審議官    富岡 賢治君         文部省高等教育         局長      佐々木正峰君         厚生大臣官房総         務審議官    田中 泰弘君         厚生省保健医療         局長      小林 秀資君         厚生省保険局長 高木 俊明君         厚生省年金局長 矢野 朝水君         農林水産大臣官         房長      堤  英隆君         農林水産大臣官         房総務審議官  石原  葵君         農林水産省経済         局長      熊澤 英昭君         農林水産省構造         改善局長    山本  徹君         農林水産省農産         局長      高木  賢君         農林水産省畜産 中須 勇雄君         食糧庁長官   高木 勇樹君         水産庁長官   嶌田 道夫君         通商産業省産業 江崎  格君         政策局長         中小企業庁次長 中村 利雄君         運輸省鉄道局長 小幡 政人君         労働省職業安定         局長      征矢 紀臣君         建設大臣官房長 小野 邦久君         建設大臣官房総         務審議官    小鷲  茂君         建設省建設経済         局長      五十嵐健之君         建設省都市局長 木下 博夫君         建設省河川局長 尾田 栄章君         建設省道路局長 佐藤 信彦君         建設省住宅局長 小川 忠男君         自治大臣官房総         務審議官    嶋津  昭君         自治省財政局長 二橋 正弘君  委員外出席者         参  考  人        (日本銀行理事) 山口  泰君        参  考  人 本間 忠世君       (日本銀行理事)        財政構造改革の        推進等に関する        特別委員会調査        室長      大西  勉君     ――――――――――――― 委員の異動 十月二十三日  辞任         補欠選任   稲垣 実男君     大石 秀政君   小野 晋也君     金田 英行君   大野 松茂君     新藤 義孝君   佐藤  勉君     山口 泰明君   津島 雄二君     渡辺 博道君   中野 正志君     菅  義偉君   西川 公也君     田村 憲久君   田端 正広君     山本 孝史君   西川 知雄君     松浪健四郎君   矢島 恒夫君     辻  第一君   濱田 健一君     中川 智子君   粟屋 敏信君     堀込 征雄君 同日  辞任         補欠選任   金田 英行君     能勢 和子君   新藤 義孝君     大野 松茂君   菅  義偉君     松本  純君   田村 憲久君     林  幹雄君   山口 泰明君     佐藤  勉君   渡辺 博道君     津島 雄二君   松浪健四郎君     西川 知雄君   山本 孝史君     田端 正広君   辻  第一君     東中 光雄君   中川 智子君     濱田 健一君   堀込 征雄君     粟屋 敏信君 同日  辞任         補欠選任   能勢 和子君     小野 晋也君   林  幹雄君     西川 公也君   松本  純君     中野 正志君   東中 光雄君     矢島 恒夫君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  財政構造改革推進に関する特別措置法案(内  閣提出第一号)  漁港法第十七条第三項の規定に基づき、漁港整  備計画の一部変更について承認を求めるの件  (内閣提出承認第一号)      ――――◇―――――
  2. 中川秀直

    中川委員長 これより会議を開きます。  内閣提出財政構造改革推進に関する特別措置法案及び漁港法第十七条第三項の規定に基づき、漁港整備計画の一部変更について承認を求めるの件の両案件を一括して議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  両案件審査のため、本日、参考人として日本銀行理事本間忠世君及び同理事山口泰君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中川秀直

    中川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
  4. 中川秀直

    中川委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。穂積良行君。
  5. 穂積良行

    穂積委員 我が国財政が危機的な状況にあるということで、これに対する国としての姿勢をこの法案によって確定するということにつきましては、私は、基本的に適切なことであるとして、これに賛成する立場質疑をさせていただきます。  とにもかくにも、国及び地方長期債務四百七十六兆円、これに加えていわゆる隠れ借金国鉄債務等でありますが、四十五兆円、合わせて五百二十一兆円という借金をこしらえてしまった。これについてどのように解決を図っていくか。もちろん解決は図らなければならない。そこで、この法案趣旨等にも書いてありますけれども、健全な財政収支のもとで、効率的で信頼できる行政を進めるようにするというような決意を盛り込んでの法案でございます。  総理がこの委員会におきまして何回か、この改革をしなかったらこの国にあすはないという総理言葉は、全く私は同感するものでございます。ただ、この財政構造改革を進める手法なり実施の時期なり、これらについて、いろいろときようは私なりの問題意識を申し上げて、考えを伺いたいと思っております。  橋本内閣の最重要課題であります行財政改革、その中での財政構造改革については、財政構造改革会議を経て閣議決定をされ、そして、今後歳出の改革と縮減を具体的に実施する観点から、法律化すべきものを法案として取りまとめるんだという改革会議決定閣議決定に即して、この法案が練り上げられたわけであります。  私は、こうした国民痛みを伴う大変な改革につきましては、その必要性を、この委員会の場で国会を通じて国民に訴え、理解をいただき、そして協力をいただくということでなければならないという意味では、国全体として取り組んでいく体制をつくるための基本的な考え方を整理し、法律にするということにしたことは結構なことだと思っているわけですが、ただ、先日、西川委員の方から、法律に決める必要があるのかということにつきまして質疑がありまして、私は、理論的な詰め方としては随分と傾聴をさせていただきました。  そこで、これについては再度私からも、この問題についてだめ押し的に、私は法律にすることは適切だという立場質問をさせていただきたいと思うわけでございます。  まず、この法律がなければ財政構造改革はできないのかといえば、私は、時の内閣の決意なり、これをやり遂げるための体制づくり等で、法律なしにもやればやれる話だとは思いますが、ただ、このような形で国会を巻き込み、議論をし、法律をもってその覚悟を確認的に定めるというようなことをした方が、この時期においてこれは財政構造改革が進む、うまくいくということで法律とすることとしたのだと思うのであります。  これは特に法制局長官、前回のこの問題のやりとりをお聞きしますと、憲法の予算審議権、それから財政法が既に掲げている、財政はどうあるべきかということについての基本的な考え方、これらとの対比においてこれはどうなるのか。この法律の位置づけについて、法制局長官としての考え方を再度はっきりしていただきたいということをまず伺います。
  6. 大森政輔

    大森政府委員 ただいまお尋ねの前提としてるる述べられた御意見に全く賛成でございまして、改めて申し上げる必要もないとは思いますが、法律的な拘束力観点から、私どもの考えでいるところを若干申し上げたいと思います。  まず、閣議決定法律とではどう違うのかという点でございますが、閣議決定と申しますのは、内閣としての意思決定する重い方式ではございます。しかしながら、閣議決定いたしました事項は、同じく閣議決定で、内閣限りでいつでもこれを変更することができるということでございます。  これに対しまして、この法律案が成立いたしますと、予算編成に当たって政府のとるべき基準、方針が、平成十年度から三年ないし六年間にわたる、中長期にわたって国会意思として示される。したがいまして、内閣がこの間、みずかちの判断のみによって、自由に、法定された方針等変更して予算を作成することは許されなくなるという法律効果と申しますか、拘束力が生じます。これがこの法律案の大きな意義でございます。
  7. 穂積良行

    穂積委員 実はこの構造改革は、橋本内閣在任期間いつまでか、私は立派な仕事をされる中で長いことやっていただいて結構だと思っているんですけれども、いずれ次の総理も引き継ぐことになると思います。  一内閣でこの財政構造改革がなし遂げられるものではないという意味では、とにかく内閣閣議決定でこうするというようなことにとどまらず、後々の内閣なり我々をも法律によって拘束するようなものだということとして、これは大変な法律だ。そういう意味では、野党の皆さんの方からは、これは財政構造改革基本法的なものではないかと、基本法経企庁長官がちょっと口を滑らせたら、基本法じゃないじゃないかというお話がありましたが、実はそういう基本法的なものだと私は思っております。  ただ、特に問題になりました、この法案の第三条、国は、これこれの趣旨にのっとり、財政構造改革推進する責務を有すると条文ができておりますが、私は、これは国にとどまらず、地方公共団体もこの財政構造改革法趣旨に沿って責任を持ってこれに参画していくということが必要だと思っているのでございます。そういう意味では、この法案の第三十九条には、見出しには「責務」という言葉がありますが、地方公共団体について責務を有するという条文上の表現はありません。  これについて、自治大臣、この法案についての経緯等、御説明いただきたいと思います。
  8. 上杉光弘

    上杉国務大臣 お答えいたします。  現下の地方財政は、財政赤字が二・二%に達するなど極めて厳しい状況にございます。国、地方を通ずる財政赤字GDP比三%以下の目標に向けまして、地方財政健全化は極めて重要な課題となっております。  したがいまして、地方公共団体において財政構造改革に取り組むことは当然必要でありますが、地方自治の視点から、総理もたびたび言われておりますように、上下の関係ではない、横並びだ、こう言われておりますように、個々地方公共団体財政運営法律により直接拘束するような手法はとり得ないことを踏まえ、法案第三十九条において「自主的かつ自立的な健全化を図るものとする。」というぎりぎりの形で地方公共団体責務規定したものでございます。  いずれにいたしましても、今後あらゆる機会をとらえまして、地方団体に対しましては財政健全化趣旨を徹底してまいる所存でございます。
  9. 穂積良行

    穂積委員 次に、これは大蔵大臣に伺いますが、この財政構造改革の各項目にわたりまして、当初予算でしっかりとこの改革趣旨に沿った編成をせよということが書かれておりますが、何回かの質問の中で補正予算との関係が出ました。財政法第二十九条に補正予算を組む場合の要件等は明定されておるわけでありますが、今後本法案法律となった後に予算編成をしても、なおかつこれは補正予算として臨機に対応すべき事態が必ず何回かは出てくる、毎年かどうかは別としまして。そういうことが予想されるわけであります。  そこで、この法案におきまして、当初予算について財政構造改革趣旨に沿った編成をやるということと補正予算については、どういう位置になるかということについて、これは後ほど各論的にまたお伺いしますが、まず、これについて大蔵大臣見解をいただきたいと思っております。
  10. 三塚博

    三塚国務大臣 当初予算補正予算関係でございますが、先ほど来法制局長官からも説明がありましたとおり、また、たびたび総理も私からも申し上げておりますとおり、座視できない財政的な危機が迫っております。後世にツケを残さないという観点で、三%という数値目標も明示をいたしたわけであります。構造的な財政赤字はここでなくさなければなりません。そういう点もこれありまして、健全財政を目指すというのが基本であります。  よって、この財政構造改革推進に関する特別措置法を出させていただきました趣旨は、まさに国民的課題である財政構造改革、単に行政府意思表示だけではなく、法律として国民的合意のもとに推進しょうという強い政治意思の表明であります。  そういう観点から、条文個々を御言及、精査されておられるわけでありますが、その精神の中に、財政法二十九条は、御承知のとおり、二点書いております。法律上または契約上国の義務に属する経費の不足を補う場合、二点目として、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出を行う場合に限られますと書いております。「予算作成後に生じた事由」であります。よって、財政法基本からいいましても、当初予算に、一年、年度予算を組んで国会承認を得て、そして執行をするという議会政治基本に忠実に取り組んでおるところでございます。  よって、ただいま御指摘ありましたが、二十九条を厳正に守り、対処をしていくということが財政運営のかなめである。ましてや、集中期間三年プラス三年という赤字公債からの脱却、イコール健全財政を目指す、それも三%以下にいたす努力を政治的責任のもとにやり遂げる、こういうことでありますから、そのように御理解をいただきたいと思います。
  11. 穂積良行

    穂積委員 この問題は、実は後ほど、特に農業関係予算等補正予算と本予算との関係、いろいろ私なりの見解を持っておりますので、話をさせていただきます。  さて、経済企画庁長官にお伺いいたします。  このような財政構造改革を進めることによって達成されるべき目標としての、日本国家社会なり経済なり財政構造というものは、将来どのようなことを想定してこれを進めようとしているのかを、これは一つの、こういうふうなことにしていきたいんだ、こんなことにしたいというような、この財政構造改革が達成された場合における国家像なり社会像なり財政構造なりについて、国民にわかりやすいイメージを与えることが必要なんじゃないかと思います。  そういう見地からお伺いをいたします。  とにもかくにも少子化が進んで、これはこのままでいくと、労働人口も随分と日本民族では少なくなっていく。そういう中で、人口構成それから労働人口構成、そうしたものの将来の日本所得水準はどうなっていくか。そして、十年、二十年先、その社会での租税負担率はどの程度となっていくか。その租税等負担のもとで豊かな安心できる生活国民が続けていけるかどうか、その辺が、これは国民として、将来安心してこの国に住み続けていけるかということにかかわっておるわけであります。  そのようなことについて、これからの経済成長の見通し、これは当然、先ほど言いました労働人口や何やら幾つかの要因を踏まえた結果が出るわけですから、その経済成長が今後どうなっていくのか。財政構造改革を進めていく中でも、これは処置を誤るとかなりの激動する景気変動ということもあり得ないことではない。しかし、それを乗り越えて、どんな姿になっていくんだ。  何年か後には、もう国際化が進んで、産業面でも国際分業が進み、そして日本国国民経済がひとり立ちできないで、各国の国際関係の中で、国際経済の中で位置づけられるということになっていくであろうと思うんですが、どんな格好になっていくのか。  そして、間もなく京都で行われる環境関係会議等議論もされると思いますが、環境レベルはどうなっていくのか。環境を保全しょうとすると、経済成長、特にエネルギ}問題などはどうなるのかということも絡んでおりますが、これら全体を念頭に置きながら、この痛みを伴う、国民に御理解いただきながらやらなければならない財政構造改革を進めた上での我が国の将来像、それについて経企庁長官、どんなイメージを持っているか、国民に説明してください。
  12. 尾身幸次

    尾身国務大臣 今、穂積委員のおっしゃいましたこと、大変に我が国の二十一世紀展望についての根本的な、かつ広範な問題でございます。  私ども、この財政改革法案を提案をしている中でまず考えておりますことは、少子高齢化社会に向かう日本、そしてまた、経済を中心として国際化に向かう状況の中で二十一世紀の将来がどういう展望になるか。私ども、経済審議会構造改革推進部会というのがございまして、そこで、このまま放置したらどうなるかというシナリオを二〇二五年を目途に一応書いてみたところでございます。  このシナリオ、つまりこのまま財政あるいは社会保障を放置した場合には、国民負担率が七割を超えてしまう、財政赤字GDP比で八・九%という数字になってしまう、それから国際貿易国際経常収支の面においてもGDP比で一四%にも上る赤字になってしまう、そういう破局のシナリオを一度描いてみたわけでございます。  そこで、そういうシナリオでなしにもつと健全な、将来に経済の面でもそれから国民生活の面でも展望を持てるような対応をしていくためには、橋本内閣の六つの改革をしっかりやることが大事である。特に財政構造改革それから社会保障構造改革、そういうものをしっかりやっていくことが大事でありますし、それをまた支えるものとしてといいますか、そのバックグラウンドとして経済構造改革をしっかり進めていくことが必要であるというふうに考えている次第でございます。  社会保障の点について申し上げますと、少子高齢化が進む中で、どうしてもこのままの制度を維持していくと医療保険制度国民保険制度が維持できなくなる、それから年金財政も破綻をすることになるわけでありまして、そのことを回避しなければならない。したがいまして、負担給付バランス関係も、今までのバランス関係をそのまま続けていくわけにまいらないということでございまして、厚生大臣がいつも御答弁をされておられますが、負担給付関係について、やはり自己負担も含めまして是正をしていかなければならない。厳しい道でありますけれども、そうしなければならないと考えている次第でございます。  私は、そういう中で一番大事なことは、個々国民の皆様が、こういう条件での医療保険制度は未来永劫に続くな、こういう条件での年金制度はこれからもずっと続くな、少子高齢化社会が来ても続くなということで、制度の安定性といいますか、自分の人生設計の中で、将来こういう制度を前提として自分の人生設計をつくっていけば安心だなというふうに信頼感を持っていただけるような制度。いわゆる給付負担関係について、バランスを考えますと今よりも厳しい制度になると私は考えているわけでございますが、しかし、きっちりとした人生設計ができるような、そういう意味でのめどが立つ制度をつくることが必要であるというふうに考えている次第でございます。  それからまた、財政面におきましても、ずっといろいろなお話があるわけでございますけれども、むだを省き経費を節減をしていきながら、財政の将来が、一応今三%という目標になっているわけでございますけれども、これまたこの財政日本経済を支えていく体制が長期的に可能であるという、そういう意味の安心感が持てる、そういう財政を確立していかなければならないと考えている次第でございます。  それを支える経済状況でございますが、今まではどちらかといいますと、景気対策等につきましても、景気が悪くなったときは直接的な形で国が借金をふやして公共事業をふやしたり、あるいは借金をして減税をしたりして、いわばカンフル注射的な政策で来たわけでございまして、それでうまく経済が軌道に乗って、財政も再び税収がふえて回復するようなことになればいいわけでございますが、実はそれまで続けてきた、ここ数年続けてきたそういう政策が、もちろん経済の下支えという意味では意味がございましたが、なかなかうまくいかず来た。そして他方、財政赤字は、先ほど来お話しのとおり非常に深刻なものになってきたということでございます。  むしろここで発想を転換して、財政については今財政改革法案でやるような体制でいき、同時に、規制を緩和したりあるいは土地を流動化したり、あるいは日本の持っている経済的な事業基盤といいますか、企業にとって経済活動をやれる基盤を国際水準にまで近づけるということをやりまして、そして企業が、これは日本企業に限らず外国企業もでございますが、日本という国を生産拠点、事業拠点として選ぶようなそういう国にいたしまして、そこで雇用をふやし、働く人の数をふやして、そういう人たちの所得も上げる。そしてまた企業利益も上げていただいて、税金をたくさん納めていただいて財政再建をする、そういう方向の、発想の転換をしたシナリオを描いていくことが大事かなと思っている次第でございます。  その中には、もちろん産官学の共同研究等を中心とする技術開発等もしていかなければなりませんし、そういう中で技術水準においては世界のトップレベルに行く。そして、民間の活力ある活動によって日本経済が活性化し、それぞれの人が生きがいを持って生活できるような、そして将来の展望をしっかり立てられるような、長期にわたって安定できる社会保障制度あるいは財政制度というものを確立していって、将来に展望が持てる、それぞれの人が人生設計を安心してできるような、そういう将来が、二十一世紀経済の面での日本の将来のあり方としていいのではないかというふうに考えている次第でございます。
  13. 穂積良行

    穂積委員 何となくわかるような気もするのですが、いずれにしましても、将来のこの日本国土で、できれば好みに合った、しかも社会的に意義のある働き口がちゃんとあって、それで、働いた後は、余暇は十分有意義に楽しめる豊かな生活をこの国に実現していきたい、そのために国が負うべき財政、その構造というものは、そうした将来の社会に合致するようなものとしていくんだ。  今、こういうような各般にわたる改革を進めなければ、それこそ今経企庁長官がお話しになったように、最悪のシナリオ的なことになったら大変なことになる。そうならないようにする。言うなれば総理が言われる、あすはない、地獄に行かないようにしていかなきゃならぬということだろうと思うのですね。  地獄のさたも金次第ということがありますが、望ましい将来の日本国のために、地獄じゃなしに天国なり極楽的な国を目標として、そのためにみんな努力しようじゃないか、今は我慢すべきところは我慢しょうじゃないか、こんなふうなことを国民に訴え、理解をいただかなきゃならぬ。これが基本だと私は思っております。  それじゃ、こうした大変な改革をこれからやろう、平成年度予算からとにかく取り組んでいこう、こういうことなんですけれども、時期の問題ですね、タイミングとしてどうだ。  そこで、私は次に、この改革経済の現況との関係についての質問をさせていただきたいと思います。  もうとにかく日本経済は現在深刻な状況にあって、各方面から景気対策を緊急に進めるべきであるということが望まれているのは御承知のとおりであります。  その景気対策をどうするかということでありますが、実は私ども自民党は、去る十月二十一日に、緊急国民経済対策という対策を党としてはまとめたところであります。お配りいただいたと思いますが。これについて、これで十分景気対策になるのか、それは一部はなるには間違いないにしても、十分かどうかという議論は、いろいろとこれからも論議されると思います。  そうした党の意見を取りまとめる前に、これもお配りをさせていただきましたが、私ども自民党内の政策研究集団としての番町政策研究所というものがございます。私はその一員でございますが、去る十月九日に、日本経済活性化のための緊急提案という文書を取りまとめて公表をさせていただきました。これは、かなり激しく日本経済の現況を深刻に受けとめて、とにもかくにも景気の先行きが予断を許さない状況にある中で、景気対策を先行しなければならないんじゃないか、経済がおかしくなって、改革も何もあったものではないという状況になったら大変なことになるんじゃないかという危機感を持って提案をいたしました。  その具体策としては、一方では、これは野党の皆さんの中で既に出ている所得税の特別減税の発動、二兆円ぐらい、これまでやっておってこの四月から廃止した所得税の特別減税を復活したらどうだというようなことやら、法人税あるいは地方税としての法人事業税を国際レベルになるべく早く引き下げていくことやら、さらに、特に景気の足かせとなっている土地及びその関連産業に活を入れて、景気回復を緒につかせるような有効な土地税制対策というようなことなどを掲げるとともに、これはもう政治的には大問題でありますが、財政出動によって景気対策をやはりやるべきではないかということで、幾つかの項目を掲げさせていただきました。  緊急に取り組むべき災害復旧事業とか、それから、これはまた後ほど申しますけれども、ウルグアイ・ラウンド対策も景気振興面での効果も含めて考えたらどうだ、それから、特に地方都市なり中山間地帯のインフラ整備等の対策を地方の景気振興という点でも考えたらどうか、あるいは福祉なり医療施設について、景気対策の面から緊急にこれを整備するカンフル注射的なことを考えたらどうかとか、いろいろ含めまして、財政出動及び民間資金の活用というようなことを考えたらどうだ、こんなことを提案をしたのであります。  また、特に中小企業が深刻な状況にあることにかんがみて、中小企業対策については、中小公庫など政府関係機関を通じての資金供与、これには財投資金の活用も含めて考えたらどうだということなどなどを党内の議論として提示し、その上で、自民党としては、当面、この財政構造改革ということとの関係では景気対策はこういうことでいこうじゃないかということで、先ほど申しました、お配りした二十一日の当面の対策ということにまとめられたわけであります。  これにつきまして、個人のいろいろな意見は持っておりますけれども、とにもかくにも、これは大蔵大臣、この景気の現況を踏まえて何かしなければならないんじゃないかという声に対して、財政構造改革基本は決めていかなきゃならぬと、気迫を込めた答弁を続けられております。気迫は尊敬を申し上げますが、経済の実態というものを考えますと、やはりこれは大変な問題だと思っておりますので、これについて質問をいたします。  そこで、大蔵大臣のお考えを伺う前に、景気の現況についての経企庁長官の所見を改めてまずお伺いいたします。経企庁長官経企庁長官と言われるけれども、不景気長官というようなことを言われてはまずいと思いますので、そこのところをどう見ているか。  実は、余計なことを申すかもしれませんが、東海地震とか関東直下型地震とかそういうことについては、地震計を幾つか設置したりしていろいろデータをとっても、いつこれが起こるかということはなかなかまだ予測がつきにくいという現況であります。しかし、ごらんなさい、台風が来るときには、衛星を通ずる映像等も含めて、その台風の規模それから進路等はかなり的確に予想できる時代になっております。  ところが、景気については、経済評論家や何や、それを踏まえたマスコミ等のいろいろな見方と、経企庁を中心とする景気についてのデータをとっての予測というものと、実際はどうも、これは政府立場がありますよ、それはわかるとしても、景気の現況についてのとらえ方について乖離があるんじゃないか。その辺、乖離そのままに目測を誤ったら、対策を誤ったらとんでもないことになりかねないという気持ちを込めて、今の景況感についてお話しいただきたい。  二十一日の我が党の緊急の景気対策が出た後の、ここ数日の株価の動きは、余り財界等はこれを評価していない、株価にあらわれる状況からすると、どうも評価されていないという感じかなと。自民党の私がそういうことを言うのはまことにちょっとまずいんですけれども、ちょっとお許しを得て、そこのところをきちっとまずお答えいただきたいと思います。
  14. 尾身幸次

    尾身国務大臣 景気の現状についてでございますが、ここしばらくの間は、実は御存じのとおり、三月までの、消費税引き上げ前の駆け込み需要というのが予想以上に大きいものがございまして、住宅建築の関係、それから消費の関係、それから設備投資につきましても、二%の消費税引き上げということに対応して駆け込みがございました。そして、四月以降、それに対する反動減、これも予想以上に大きかったわけでございまして、四月―六月の数字が、GDP対前期比二・九%マイナスというようなことでございまして、その余波をまだ七月―九月に多少引きずっていたかなという状況でございます。  ただ、詳細に数字を見ますと、雇用も伸びておりますし賃金所得も伸びているということで、消費者の所得そのものはそこそこの水準になっている。それから、企業収益の方も伸びておりますし、設備の過剰感というのはだんだん低くなってきております。つまり、余っている設備が少なくなっているということでありますけれども、したがいまして、設備投資の方も増加するような経済的背景は整ってきている。それから、消費も増加するような経済的背景は整ってきている状況でございます。  しかし、設備投資はそこそこ伸びておりますが、消費がまだ従来どおりの力強さに戻っていないというのは、企業家あるいは消費者の皆様の、経済の先行きに対する信頼感というものが低くなっているという現状ではないかと考えている次第でございまして、私ども、民間活力を中心として経済を活性化していく、そのためには、企業の活動する場をほかの国並みに、イコールフッティングするような条件を整えるとか、あるいは規制緩和をするとか、あるいは不良債権のしこりをなくするべく土地の流動化を図る等々の政策をとっていきたい。  それによって、二十一世紀に向かって民間企業、民間活力を中心とする経済活動をしっかりとやっていただけるような体制ができたならば、そういう将来に対する展望も開けるといいますか、景況感もよくなって、全体の数字が順調な回復軌道に乗ってくるんじゃないかというふうに考えている次第でございます。  先ほどからお話しのとおりの、番町政策研究所のレポートも拝見をさせていただいておりまして、その意欲、大変に私、高く評価させていただいているところでございますし、また、先日は自民党の緊急国民経済対策もまとめられたところでございます。この自民党の緊急国民経済対策、私は拝見をしておりまして、大変にいいものを出していただいたというふうに考えておりまして、これもまた十分踏まえまして、私どもとして、政府としての対策を取りまとめていきたいというふうに考えております。  自民党の対策は、いろいろ税制等の面においてまだ数字の確定がしにくい点もございまして、表現そのものがあいまいになっているように感じておりますけれども、しかし、一つ一つの文章を眼光紙背に徹するという気持ちでごらんになっていただきますと、相当有効な対策を打ち出しているなという感じもございます。それをしっかりとした数字の肉づけをいたしまして、将来展望を開くような方向づけをしていきたいと考えている次第でございます。
  15. 穂積良行

    穂積委員 大蔵大臣、今経企庁長官言葉を選んで、先行きについては非常に慎重なる、しかし決して危機的な話とは言えないというふうに説明しようとされての答弁と伺っておったのですが、これについては、責任大臣としてまたこれも随分と言葉を慎んで発言をされているのは承知しておりますけれども、それにもかかわらず、やはり景気対策は勇断をもって、これはもちろん我が党なり与党の合意の上ででありますが、取り組むという姿勢がないとまずいのではないかと私は本当に思っているんです。  それにつきまして、この法案をとにかくまずは成立させて、財政構造改革の筋道をつけようという意欲は十分承知しておりますけれども、今の点についてどの程度所信をお聞かせいただけるか、お伺いいたします。     〔委員長退席、中山(成)委員長代理着席〕
  16. 三塚博

    三塚国務大臣 ただいま、穂積委員が中核となっておる政策研究会の提案、拝見、拝聴いたしました。同時に、緊急国民経済対策ということで自民党が二十一日、政策を発表いたしたことも御披握のとおりであります。真剣に御論議をされますのは政党政治の基本であります。また、議員間の研究会、これまた大事なことであります。私は、そのことは大事にさせていただいておる一人でございます。  そこで、今回、今経企庁長官言われましたとおり、危機的状況にある日本財政立て直しということ、特に一言だけ申し上げますと、先進七カ国、日本を除き六カ国、深刻な、政治の命運をかけてと言ってよいほどの財政構造改革に邁進をいたしております、三%以下を目指して、今世紀中に達成をしようと。もっと言いますと、九九年一月、統一通貨同盟に参加する基準として明示をし、努力をされておるところであります。  我が国も先進国として信認をいただき、今日の国際的な立場を、また信頼をかち得ておるところでありまして、ひとり我が国がそのことにハンドルを切るということになりますと、国際的に、一体日本はどうなっておるのかという強い懸念と批判を受けるのではないでしょうか。  G7会議におき、たびたび私は、日本経済の再生復活という点について諸改革の断行を説明してまいりました。そして、日本経済のベース、いわゆる基礎的条件ということについても、先進国各位は悲観的には見ておりません。日本大蔵大臣の言うことに理解を示すという形になっております。この基礎的条件をきっちりとさらに高めてまいりますことが日本経済の復活であろう、このように思います。  よって、先ほど来の論議にありました、本法を提案をし御審議をいただく最大の理由は、二点。二〇〇三年、平成十五年度までに国及び地方財政赤字GDP比三%という、これを明示し、その達成に政治責任すべてをかけてやるということになりました。特例公債の脱却、公債依存度の引き下げというこの二点が、国民生活の安定、持続的な経済成長をもたらす最大の政策であるということで、国民的な理解を得ますように、国会法律を提案し、各党それぞれの論議、国会議員お一人お一人の御論議を体し、最終的に院において御決定を賜る、こういうことで取り進めさせていただいております。  そういうことで、与党の有力な幹部のお一人である穂積議員、政策マンでもあられますし、私の言わんとすること、今申し上げたことですべて御理解をいただけるものと考えます。
  17. 穂積良行

    穂積委員 いや実は、経済成長率、今年度一・九%という目標は、まずはもう達成不可能というのが大方の見方になっております。これは〇・九%以下になるんじゃないか。そんなふうなことで、そうした中で財政構造改革初年度を控えて、本当にこの景気対策、それで、先行してとにかく日本経済を活性化し、この財政構造改革に取り組めるような体質にしていく、そういう体制を組ませるというようなことについて、なお引き続き論議させていただきます。  一つ申しますが、この低金利の中で、国際収支、これはG7というよりも対米関係で黒字が増大しているでしょう。こうなりますと、今アメリカは経済活況のピークかという感じなんですが、これに多少陰りが見えて、また日本との関係で、この黒字をどうするんだ、日本で内需拡大、景気対策というようなことをやってくれないかということを、大蔵大臣、これはG7というよりも、アメリカからいずれまた求められる局面が来るんじゃないかということまで心配しておるわけです。  そうしたことも含めまして、これは引き続き、多少これは私から言いっ放しになりますが、ぜひとも、この改革の道筋が立ったところで、次は改革を本当に進めるために、経済の足腰をきちっとさせるというようなことを同時並行的に、私は先行してと言っているのですが、取り組むという局面が必ず来るんじゃないかということを申し上げて、この話は一たん区切りをさせていただきます。  その景気対策の一環なんですが、税制措置につきましてちょっと補足させていただきます。  税制措置については、これは実質減税でなければ景気対策に余り効果が上がらない、これは常識だと思うのですが、実は、所得税の特別減税復活という話は、これは大問題ですけれどもこれ以上申しませんが、法人税に関する国際レベルに向けての引き下げということに関しては、これまでの御答弁ではレベニュー・ニュートラルということで、課税ベースの拡大等によって元を取るんだ、そういうような話になっておりますが、これでいいんでしょうか。  景気対策のときには、こっちを下げてこっちでちゃんと元を取るというようなことじゃ、ごまかすなという話になりかねないと思いますので、これについて補足してちょっと御答弁をお願いできますでしょうか。これは、大蔵大臣、どうですか。
  18. 三塚博

    三塚国務大臣 当委員会におきましても、たびたびの法人税についての御言及がございます。これにつきましては、課税ベースの拡大、適正化、それによって財源を得て、税収中立、こういうことで行ってまいりたい、こう申し上げておるわけでございます。  全体の税制の論議が、党税調また三党において真剣に審議が進められております。政府税調も、本件について真剣に論議を進めておるところでございます。よって、これら税制の審議の状況を注目しながら、収れんされてまいりますのは十一、十二月に入ってからであろうと思いますけれども、その時点における政府の態度というものが決められてまいるものと考えますが、いずれにいたしましても、今申し上げました課税ベースの拡大と適正化を行いまして、それにより得られる財源を法人税の税率の引き下げに充てていく方向でこれからも検討を続けてまいりたい、こう思っております。
  19. 穂積良行

    穂積委員 通産大臣にお伺いいたします。  先ほども申しましたが、景気で一番深刻な業界というのは、やはり中小企業分野ですね一これに対しては本当にどうしてくれるというのが、これは地元に行けば各委員の皆さんもそういうことを求められていると思いますが、中小企業について、この景気のもとでの温かい政策の手をどう進めるかということは、政治の大きな課題だと思います。  そこで、とにかく市中銀行や何やが、これは詳しくは申しませんけれども、実態は貸し渋りで、自分のところの赤字の始末のために大わらわという中で、中小企業金融は非常に問題な状況です。そこで、中小企業金融公庫に問題の財投資金をさらに投入し、これが中小企業に流れるように、財政面でもこれを金利等の面で支えるというようなことや何や、これは緊急な対策として真剣に考えるべきではないかと思います。  中小企業ばかりではありません。環衛公庫その他、中小企業関連の政府関係金融機関等を動員してその対策を進めるということが必要だと思いますが、通産大臣いかがですか。
  20. 堀内光雄

    ○堀内国務大臣 お答えいたします。  委員のおっしゃるとおり、中小企業の活力を増すことが一番重要な景気対策になってまいると思いますし、今の、特に年末に向かっての融資の問題は深刻な問題があると思います。  我が国経済の回復基調を確実に力強いものにするために、政府としては経済構造改革の前倒し等による効果的な経済対策を早急に策定すべく作業を行っておりますが、最近の中小企業の景況につきましては大変低迷をいたしております。大企業との格差がさらに広がっているという面もありまして、特に資金繰りの面が、先生のおっしゃるとおり大変厳しさを増してきております。民間金融機関の貸し渋り懸念というのが、大分あちらこちらからお話を聞いております。  そういう状態の中におきまして、中小企業の現状を踏まえて、中小企業対策、特に金融対策につきましては、先ほど先生からお話がありましたように、自由民主党の発表されました緊急国民経済対策にも盛り込まれているわけであります。金融機関との取引に著しい変化が生じ、資金繰りに支障を来すおそれのある中小業者に対する別枠の資金制度の速やかな創設ということで、自民党からの提案をいただいております。こういうものを十分に検討して、適切に取り組んでまいりたいと思っております。  例えば、中小企業金融公庫におきましては一兆八千億の資金、国民金融公庫におきましては三兆一千五百億の資金、高度化融資事業においても、前年よりもプラスして一千七百二十四億円の資金というようなものを用意いたしておりまして、自民党の御提案による、今までの資金融資の四億八千万どまりであります貸付枠をさらに一億五千万円上乗せする、国民金融公庫におきましては四千八百万円の枠をさらに三千万円上乗せするというようなこと、さらに、基準金利を利用して、低金利のもとにそれを活用できるようにするというようなことについて、中小企業の金融環境変化への対応のための融資制度の創設という通達を出しまして、これは金融機関当局との調整の上でありますが、通達を出して、金融機関の貸し渋り等への対応をしっかりやってまいる覚悟でございます。
  21. 穂積良行

    穂積委員 さて、各大臣お待たせしておりましたけれども、この法案で各所管大臣に大変な責任を負わせることになりますね。私も公務員の組織に身を置いた者ですが、これだけ財政構造改革協力せよ、各省それぞれこういうことでやってくれということを決めるということ、これは毎年毎年、予算編成の際に、自分の所管の分野について一生懸命お国のために予算を確保しようというこれまでのやりようの延長で、さあ、この法律に基づいての縛りのかかった状況で、これしか要求できない、そういうふうな状況になるというのは、これは大変な法律ですね。  しかし、基本は、冒頭から申し上げておりますしお答えもいただいている、この国を破滅の道に行かないようにするんだということで、全閣僚協力して、所管分野について一生懸命やろうということでこの法律を決めるのに賛同されていると思うのですが、大丈夫ですか、いろいろな問題がありますよということでお伺いしたいと思っております。  実は、きょうは、厚生大臣は厚生委員会の方へおいでですので、おいでいただいていませんが、何回かこの委員会で、とにかく社会保障分野で大変な問題を抱えている、しかし、これはもう真正面から取り組まなければならないという決意を表明されました。私は、この人こそこういう問題について本気で取り組んでいただけるんだなという印象を持って、しっかりやっていただきたいと思っているわけでありますが、一言申しますけれども、それであればこそ、この橋本内閣において、厚生省所管の問題について一生懸命取り組む地位を持ち続けてやってもらいたいというような気持ちだけ申し上げて、いらっしゃいませんから、この話は終わらせていただきます。  次に建設大臣、公共投資分野について、これも実は大問題があるわけです。例の国際公約となっております公共投資総額、十カ年計画六百三十兆円、これはどの程度かこれまで消化してきたとしても、まだまだ、目標年度は三年延長になったと聞いておりますけれども、二〇〇七年度に向けてこの公約を果たしていく上では予算の確保に大変な努力を要する、そういうことですね。  ところが、初年度七%削減ということから始まってこれに取り組まなければならないということなんですが、実は御承知のとおり、私どもも含めて、まだまだ地方の道路整備は、これは十年、二十年前に比べれば随分よくなったけれども、まだまだ、早く道路をよくしてくれ、河川整備を進めてくれ、その他下水道も早く進めてくれというようなことなど、地域のインフラ整備などを含めまして、公共事業への期待は非常に強いという現況にあります。  そういう中で、建設大臣、所管分野の道路、河川それから下水道その他、こうした公共事業についての、この法案に基づく、これが法律となった場合に、この公共事業費の確保について、さきの国際公約との関係も含めてどのような覚悟でおられるか、お話しいただきたい。
  22. 瓦力

    ○瓦国務大臣 穂積委員にお答えいたします。  委員よく御承知のように、我が国の住宅、社会資本整備でございますが、これは欧米諸国に比べまして大変おくれをとった部分でありますので、鋭意努めておるわけでございますが、殊に、今御指摘のように地方の要請も強い。これは日本列島全般を見渡してみまして、安心できる国土に仕上げなければなりませんし、時代に即応した体制というものを十分考えていかなければならぬわけであります。  殊に我が国は本格的な高齢化社会を迎えるわけでもございますし、これらのことを考えますと、二十一世紀には早々の期にでもその社会資本整備の概成を得たい、こういう目算を立てながら努力しておるわけでございますが、また一方におきまして、総理大蔵大臣からのたびたびの御指摘もありますように、危機的な財政状況を踏まえて、財政基盤をしかとさせたい、これが目下の重要な課題でございますので、政府方針に沿って私どもも協力していかなければならぬわけであります。  よって、十年度の公共事業予算につきましては、御案内のとおり非常に厳しいものがございます。よって、これらの事業をより一層重点化、効率化、こういったことが必要でございますので、平成十年度概算要求に当たりましては、一つといたしまして、経済構造改革関連の社会資本について、物流の効率化、中心市街地の活性化などに資するもの、これの対象といたしますと、今委員御指摘の高規格幹線道路網の整備、さらに地域高規格道路の整備というのは要請が強うございます。予算が厳しい中でございますが、マイナス七%にしなければならぬ、こういう状況でありますが、それぞれ五%増、九%増を予定して考えておるわけであります。  また、高度情報通信社会に向けた情報ハイウエーの構築支援、こういう問題もございますので、これらにつきましても、厳しい中でございますが、一二%増の概算の要求をいたしてまいりたいと思っております。  加えて、生活関連の社会資本について、真に整備がおくれている分野、地方でございますが、これも今委員御指摘のとおりでございまして、町村の下水道整備、これはまだ十分ではございません。加えて、高齢者向けの公共住宅の供給も、地方におきましてもこれは深刻な問題でございます。これらの問題につきましての重点化の例といたしまして申し上げれば、下水道整備につきましては六%増、また、高齢者向け公共住宅の供給につきましては三八%増、こういうめどを立てながら努力をしたいと思っておるところであります。  加えて、生命財産を危険から守る施策、こういったことが、昨今の災害等を踏まえますと、強い国土に仕上げていかなければならぬわけでありますので、緊急土砂災害防止対策、これを思い切って九五%増を考え、河川、海岸堤防の耐震化などにつきましても三四%、加えて防災とか緊急渇水対策とか、こうした問題も、予算の厳しい中でございますが、積み上げをして思い切って重点化を図ってまいりたい、こう考えておるわけでございます。  たびたび議論になります、六月三日に閣議決定されました「財政構造改革推進について」、これに沿いながらも、地域経済への配慮、こうしたことを踏まえまして、国土の均衡ある発展と整備水準について、地域間の格差の是正という観点に留意いたしまして、厳しい中でございますが、今度の要求をしてまいりたい、こういうことで取り組んでおるところであります。
  23. 穂積良行

    穂積委員 建設大臣、退席されて結構でございます。  運輸大臣、最近、長野新幹線ができて、あの地域の皆さん、大変もう喜んでいますね。私も、随分前に東北新幹線ができて、もうその便益たるや、大変ありがたいと思っています。  そこで、できたところはいいのですけれども、これから早く新幹線通してくれという、いわゆる整備新幹線の問題がございます。その地方の期待を考えた場合、この改革との関係で、運輸大臣、この高速交通体系、今新幹線の例を出しましたけれども、どんなふうにこの改革との関係で仕事をされていくつもりか、お伺いいたします。
  24. 藤井孝男

    ○藤井国務大臣 お答えいたします。  今、穂積委員、長野新幹線、北陸新幹線の長野までのことに触れられましたけれども、十月一日、高崎から長野までの新幹線が開通いたしました。  実は、先般、参議院の予算委員会でも同様趣旨の御質問がございまして、そのときにも申し上げたのでございますけれども、実は九月三十日の夜、私は、在来線の特急あさま号で上野から長野まで参りまして、翌日朝五時半から開通式のセレモニーがありまして、それに出席をさせていただきました。  九月三十日の日は三時間ほどかかりまして長野まで着いたわけでありますが、翌日朝、出発式を終えまして、その後の新幹線でまた東京へ戻ってまいりましたが、そのときは、今度は新幹線の特急あさま号に乗ったわけであります、長野から東京まで。それが一時間二十分ちょっとで東京駅まで来た。前の晩は三時間余かかりまして、翌日の朝は半分以下の時間で東京へ着くことができた。  これは今委員御指摘のとおり、地域の皆さん方の大変な喜びというのは私も肌で感じましたし、また実際私が、在来線とまた新幹線との、前の日、そして当日ということで乗りまして、その違い。そして、それから受ける、何と申しましょうか、いかに新幹線、高速交通網の体系を整備していかなきゃならないか。  まあ、長野というと、大変失礼かもしれませんが、私から見まして、東京から見ますと大変遠いところだなというイメージがありましたけれども、そのイメージが全く覆され、むしろ長野県の方におきましては、東京は通勤圏だというようなキャッチフレーズまで出ておるところであります。  そういう意味からしますと、やはりこうした高速交通網、さらには大量輸送機関としてこの整備を着実に進めていかなければならないと思っております。  したがいまして、既に着工しております三線四区間、今までは三線五区間と言いましたけれども、今申し上げました長野までの新幹線が既に供用開始になりましたので三線四区間ですが、この点につきましては着実に整備を進めてまいる決意であります。  そしてまた、新規着工分につきましては、これからどういうふうにやっていくか。新規着工といいますと、今言った三線四区間以外の未着工区間、これの要望も大変強いわけであります。この点につきましても、我々は整備を進めていく考え方には変わりございませんけれども、昨年十二月の政府・与党での合意に基づきまして、ことしの夏七月から政府・与党整備新幹線検討委員会が開かれ、そこにおいて今検討が行われているところでございます。  その中では、収支採算性の問題、あるいはまたJRの貸付料等の負担、また並行在来線をどうするかについてのそれぞれの自治体の了承等々のいろいろな条件がございます。そうした条件をクリアしなければなりませんし、また同時に、今委員御指摘のとおり財政改革という、こういうときでありますから、その財政改革の流れに矛盾しないような形で適切に対処をしていきたい。  しかし、いずれにしましても、やはり運輸省といたしましては、着実にこの整備新幹線、それぞれの地域の期待は大きいわけですから、そういった困難な課題をクリアしながら進めていきたい、こういう考え方でおります。
  25. 穂積良行

    穂積委員 運輸大臣、もう結構でございます。  文部大臣にお伺いいたします。  教育こそ我が国の将来の命運にもかかわる問題であるということは、申すまでもないと思っております。ところが、この法案に明示されておりますように、義務教育費や私立学校助成の見直し、抑制などなど、これについては文部大臣、冒頭に申しました教育は国の基本ではないかということを踏まえて、どんなふうにお感じになっておられるか、お伺いします。
  26. 町村信孝

    ○町村国務大臣 穂積委員御指摘のとおり、まさに教育というのは国家の基盤である。二十一世紀日本を支える人づくり、そのような意味で、まさに御指摘のとおりであろうと思っております。それだけに、今次橋本六大改革の中で教育改革の持つ意味というのは大変大きい、こう思って、その中身を推進すべく努力しているところでございます。  そういうさなかに、現下の財政構造改革という大きな縛りがかかってきたことは、ある意味では大変つらい面も率直に言ってあるわけであります。ただ、政府全体が挙げてこの財政構造改革に取り組むという中で、文部省だけは例外でありますということもなかなか言うわけにもまいりません。  ただ、それでも、例えば科学技術振興費は五%増という、唯一と言ってもいい政策的な例外をお決めいただいておりますから、そういう中で、大学を初めとするそうした研究の充実強化ということには最大限意を用いてまいりたい、こう思っております。さらに、私学あるいは義務教育、確かに制約は加わっておりますが、その中で、またさらに重点化を図ったり創意工夫をして、現下進めております教育改革に支障がないようにということで最大限の努力をさせていただきたい、かように考えております一〇穂積委員 文部大臣、ありがとうございました。  科学技術の振興ということについては、現経企庁長官、前から一生懸命努力もされてきましたが、現科学技術庁長官にお伺いします。  この科学技術振興の分野などは、やはり予算として重点的に配分すべき分野というふうに私は考えておるのですが、この改革案のもとで、どのようなお考えで今後所管事項に取り組まれるのか、決意のほどをお伺いします。
  27. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 今、穂積委員が御指摘のように、二十一世紀にも日本が元気であるためには、今、橋本内閣は六つの改革ということで、いろいろな動脈硬化を解かなければいけないということでやっておるわけですが、それを超えて科学技術がしっかりしているということが、二十一世紀日本が元気であるための基礎条件であろうと思っております。  それで、この国会でも議員立法で科学技術基本法をおつくりいただきまして、それを受けて去年の七月二日に科学技術基本計画をつくりまして、閣議決定をいたしまして、科学技術創造立国を目指しているわけであります。それに沿いまして、経済フロンティアの拡大、あるいは高度な社会経済基盤の整備、それから新しい産業を創出していく、こういうことに対応できる独創的な、あるいは革新的な技術の育成に努めている、そういう研究開発を推し進めているところでございます。これがやはり、現下進めている経済構造改革にも資するところが大きくあるだろう、こういうふうに考えております。  今御指摘のように、財政構造改革の中で、確かに全体的に厳しいときでありますから、我々も科学技術ばかり言っておるわけにいかぬということもございますけれども、科学技術振興費に関しては、先ほど文部大臣もお触れになりましたけれども、全体を抑制されている中で五%、平成十年度も前年度の五%でやっていこうということで重点的に取り扱っていただいているわけであります。今後の課題としては、やはり研究開発の適切な評価を行って、研究開発資金の重点的あるいは効率的な配分に努めていくということが大事なのではないか、こう思っております。  いずれにせよ、委員の御指摘のように科学技術振興ということは極めて大事でありますので、全力を挙げて取り組みたいと思っております。
  28. 穂積良行

    穂積委員 一言申し添えますけれども、科学技術の課題の一つとして、これは環境問題にも絡みますけれども、今後の人類社会で、クリーンエネルギー、原子力、さらには核融合エネルギーの活用ということがなければ人類の未来はないというくらいの気持ちで、この分野は、これは文部大臣にもかかわりますけれども、基礎研究、それから応用研究、まあ動燃や「もんじゅ」の話がありましたけれども、これはしっかりと取り組んでいただきたいということを申し添えておきます。ありがとうございました。  次は、農林水産大臣関係のことについて、実は、私は、大蔵大臣及び農林水産大臣に幾つか、これは質問というよりは要請をさせていただきたいと思っております。  とにかく、二十一世紀に向けて、日本の農業を崩壊させるわけにはいかない。大変難しい状況にあるのは御承知のとおりでありますが、そういうことで、農林水産行政の各分野にわたって財政面できちっと支えていくということは、農家各位にとって安心していいのかということも含めて、国の姿勢はきちっとしていかなければならないと思うわけであります。  けさも八時から、北海道・東北農業対策協議会に呼び出されまして、現在の稲作経営の面している諸問題について要請を受けてきました。米の過剰というのは、これは別途、時間があればいろいろ議論もしたいところなんですが、とにかく問題は、例のウルグアイ・ラウンドの合意に伴って、我が国の稲作は非常な問題を抱えているわけであります。  これについて、国内農業の経営体質の強化、あるいは地域活性化を緊急に推進するために緊急に要する経費として、ウルグアイ・ラウンド関連対策予算を、これは平成六年十月の決定に基づいてずっと毎年講じてきたところであります。これはいずれも、ウルグアイ・ラウンド関係予算の総体のうち、これまでは七割くらいは補正予算で対応してきた。最初のころに申しましたけれども、財政法第二十九条に基づく、これに適合する支出として予算措置を講じてきたというのは事実であります。  実は、そうしたこれまでの延長の上に、各市町村レベルで、ことしも補正予算が組んでもらえるのだろうな、それを受けて自分たちの地域の必要な事業はやらせてもらいたい、来年の十月の出来秋ごろまでにはこういう仕事もしたいというようなことを、それぞれもくろんでおります。そういう状況のもとで、ことし補正予算でウルグアイ・ラウンド関係予算を追加してもらえないということになると、これは非常に大きな問題になると思いますし、私どもはこれを座視できない、こんなふうな気持ちで自民党内でも議論をいたしております。  そういうことですので、財政構造改革との関係は十分わきまえながらも、財政当局におかれては、こうしたこれまでの経緯と、それから現実の地方の実態、この関係事業の重要性ということにかんがみて、これは今後相談するということになつているのですね。そういう中で、農家の皆さんなどに安心してもらえるような姿勢を農政についてはとり続けていただくという姿勢を示していただきたい、こんなふうに思う次第であります。  特にこれはお答えはいただかないでも結構です。今、大蔵大臣が主計局長を指さされましたので、主計局長、かつての同輩でありますが、しっかりとこの点は頭に入れて財政面での措置を覚悟してください。覚悟しないと政治的に大変な問題になりますからね、これは。  以上申し上げておきます。  それでは最後に、実は、これまでのこの委員会審議で全然取り上げられていなかったかな、漁港整備計画について承認を求める案件がこの委員会にかかっております。これについて、私からとにかく触れさせていただきたいと思います。  漁港整備計画というのは、いろいろな国の計画の中で唯一国会承認事項となっております。これは議員立法だったということもあって、漁港の整備に関しては国会にもきちっと変更等についてはお話をし、御承認をいただくということになっているのだと思うのです。  問題のその漁港整備でありますが、いっとき、非常に公共事業のむだ遣いだ何だといろいろ非難されたこともありました、それは実態を知らない人が言っていたという感じもあるのですけれども。引き続き漁港整備は、その地域それぞれの要望を十分聞き届けて、必要なものはちゃんとやっていくという姿勢でいくべきだと私は思いますが、この辺、これまでどんな状況になっているか、進捗状況。そして、これについてはまたいろいろと難癖をつけられないように、重点的に採択すべきところからきちっとやっていっております、効率的に公共投資を使っておりますというようなことをちゃんと説明できなければならないと思うのですが、これについて農林水産大臣、いかがでございましょうか。
  29. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 穂積議員御高承のとおり、漁港法は昭和二十五年に議員立法によって制定されたものであります。当時の我が国は食糧難に直面しておりまして、国民の食糧確保の見地から、水産業の振興を図ることが大きな課題でありました。このため、漁業生産の基盤であり、かつ水産物の流通拠点である漁港の整備計画を定めるに当たっては、国民の代表で構成される立法府の意思を問う機会を特に設けることとされ、漁港整備の重要性にかんがみ、現在に至っているものと考えられます。  なお、そうした特別の事情から、他の公共事業長期計画と異なり、どこにどのような施設をつくるかが特に重視され、漁港整備計画には、計画事業費ではなく、漁港の名称及び施設を定め、これを国会承認の対象としているものと考えられます。  以上です。
  30. 穂積良行

    穂積委員 時間が参りまして、実は、通産大臣には先ほど中小企業対策についてお答えをいただきましたので、これで省略させていただきますし、自治大臣には、先ほど御質問申し上げた中で、要するに地方公共団体も国と対応してきちっとこの財政構造改革に取り組んでいく、こういうことでぜひともリーダーシップを今後御発揮いただきたいということを申し上げ、また法制局長官、国法についてのきちっとした見解は、今後ともやっぱり元締めとしてウォッチしていただくことを希望して、私の質問を終わらせていただきます。
  31. 中山成彬

    ○中山(成)委員長代理 この際、渡辺喜美君から関連質疑の申し出があります。穂積君の持ち時間の範囲内でこれを許します。渡辺喜美君。
  32. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 日本のあすを担う我が自民党一期生を代表して、質問をさせていただきます。  大臣には、連日御苦労さまでございます。大臣にはお聞きいたしませんので、ゆっくりお休みをいただきたいと思います。  我々は、今、この二十世紀の最後の三年間に当たって、大変な過渡期にあると思います。中長期的な構造改革と同時に従来型のシステムを変化させていく、そういう中で、とりわけ経済運営のかじ取りというのは非常に難しいという気がいたします。恐らく過去の経験というものが通用しない、そういう場面が非常に多いのではないかという気がいたします。  構造改革は、何が何でもこれはやり遂げなければいけません。しかし、目先の経済運営にとって即効薬になるものは、残念ながら余り多くはないという現実もございます。例えば、二〇〇一年からは金融ビッグバンがスタートをする。しかし、我々は今、戦時体制の中で確立をされた護送船団方式という、市場原理とはちょっと異質の金融システムの最終局面にあるわけです。したがって、そういう中でどのようにこの経済のかじ取りをやっていくか、これは本当に大変だなという気がいたします。  政治というのは八割の合理性と二割の非合理性だと、うちのおやじがよく言っておったのでありますけれども、八割は原理原則に基づいて何をなすべきかということを決めなければいけない。しかし、二割は、これは非合理性の部分がどうしてもついて回る。まあ一進一退というようなこともあるんでしょう。  したがって、財政構造改革法は、これは八割の合理性の世界でありますから、これは何が何でも今国会で早期に成立をさせなければいけないと考えております。それがなければ、我が日本の未来はない。これを放置しておけば、三塚大臣や尾身長官が再三おっしゃっておられるように、この国がとんでもない破綻を来してしまう。今せっかく価値のある福沢諭吉先生が紙くずになってしまうかもしれない、そういうことだってあるんですよ。ですから、我々は、断固としてこれを通す、そういう原理原則に立ちます。  それと同時にこの財政改革をなし遂げるためには、どうしても景気を失速させてはいけないんです。当たり前の話です。景気が失速して、とんでもない真性不況になってしまったら、税収が上がらないわけですから、とてもじゃないが、二〇〇三年、国と地方借金のGDP対比三%なんということは、これはもう絵にかいたもちになっちゃうんですね。ですから、このかじ取りはもう非常に難しい。八割の合理性と二割の非合理性であります。  とにかく、今長期金利が、再三この委員会でも出ているように一・七%台の前半にあるということです。これは解釈によっては、日本経済がこれから十年近くの間、名目成長率が一・七%ぐらいにとどまるかもしらぬ、そういう解釈も成り立ち得るわけですね。大蔵省の仮定計算でも、一・七五から三・五%、こういう成長率を思い描いているわけですけれども、それよりも悪い数字になるかもしれない、そういう予感もあるわけです。  結局、民間の金融機関が、お金を貸すよりも国債を買っておいた方が安全だ、こういうお金がどんどん国債市場に回ってくるわけですから、なおさら長期金利が下がっていくわけですね。よく官庁エコノミストの方々は、最近、民間がリスクをとらなくなったじゃないか、こうおっしゃるわけですよ。民間にしてみれば、あんた方に言われたくはないよ、こういうことかもしれませんよ。こんな民間にだれがしたんだ、そういうこともあるかもしれませんね。  結局、こういったクレジットクランチとか貸し渋りというのは、早い話が、来年四月から強制リストラが待っているわけですから、これはもういや応なしに資産の圧縮に走らざるを得ぬという現実もあるわけです。  そこで、目先のかじ取りとして、日本銀行がやっている短期金融市場の金融調節、手形を買ったり売ったり、TBの買い入れとか、いろんなことでもってやっておられるわけでありますけれども、けさの新聞を見たら、異例の二回目のCPオペ、コマーシャルペーパーというものを、おとといオペをやったのに、また再開した、こんな記事が出ておりました。  目先の短期金利の調節というのは、私は、極めて大事な金融政策になると思うんですよ。平成七年の四月くらいでしょうか、いわゆる短期金利の低目誘導といって、公定歩合よりも短期金利を低目に誘導し始めたことがありましたね。とんでもない円高になって、九月に公定歩合をどんと〇・五%に下げて、さらに公定歩合よりも低く金利を誘導してきた、そういうことをやってきたわけですね。  今、短期金利なんというのは毎日変動するわけでありますけれども、思い切って〇・二五%ぐらいまで短期金利を下げちゃったらどうだなんという人もいないわけじゃないのですね。どうですか、このあたり、どういう方針でこの目先の、年末にかけての金融調節をおやりになろうとしているか、御説明をいただきたいと思います。
  33. 山口泰

    山口参考人 お答え申し上げます。  ただいま委員御指摘の短期金融市場における日本銀行の金融調節でございますけれども、御指摘のとおり、日銀では、時にはTBを使いましたり、時にはコマーシャルペーパーを使ったりというようなこと、いろいろな利用可能な金融調節の手段を総動員しながら、適切に資金を市場に供給してまいりたいと思っておりまして、たまたまこれから年末の資金の繁忙期に差しかかっていくものでございますから、先ほど御指摘いただきましたように、再三いろいろな手段を使いながら、資金の不足が起きないように努めてまいりたい、こう思っております。  それから、もう一つ御指摘の短期金融市場の金利でございますが、九五年の九月、平成七年の九月に公定歩合を〇・五%に下げましたときから、おっしゃったとおりに、短期の市場金利を公定歩合よりも幾分下目のところに誘導するというようなことで、金融緩和効果が浸透していくように努めてまいっております。私どもは、当面、この調節の方針を維持してまいるつもりでございます。  これは当然、現在の景気についての判断が前提になっておりまして、きのうはたまたま総裁が記者会見がございましたので、そこでも申しているのでございますが、確かに我が国の景気はこのところ減速傾向が明らかになってきておりますが、幸い設備投資の堅調あるいは輸出の堅調というようなことに支えられまして、景気回復の基盤がすっかり崩れてしまったわけではないという、こういう判断でございます。そういう判断のもとに、ただいま申し上げましたような、公定歩合をやや下回るところに市場金利を誘導する、こういう政策をとらせていただいております。
  34. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 アメリカが金利でも上げてくれれば、多少円安になってほっと一息つくのかもしれません。でも、これはアメリカ頼りというわけにもいきませんからね。ですから、我が国の金融政策をどうするかということは、せっかく国会で日銀法が通ったわけですから、これはもうきちんと責任を持ってやってもらわなければ困ります。それと同時に、国会に対する説明責任もきちんと果たしてもらうという習慣をぜひつけていただきたいと思います。  それで、再三出ている話でもありますけれども、どうも余計なお荷物がと言っては失礼かもしれませんけれども、もう一つ我が国経済に乗っかってきたのですね。それは、要するにアジアの通貨危機ですよ。これは、もうかなり深刻な話になっていくのではないかなという気が私はしておるのでございます。  アジア向けの輸出というのは、日本の全輸出額の四三%ぐらいなんですね。当然、ASEANの通貨が安くなるということになれば、日本のアジアからの輸入はふえていくのですね。そうすると、これは例えば電機とか精密とか、そういったメーカーでも、特に中小のところはかなり深刻な打撃を受けていくわけですね。一方、日本の輸出の方は非常にブレーキがかかってくるわけですよ。恐らくこういうのが、乗数効果も考えると、かなり日本経済成長にマイナスに働いていくということが考えられるわけです。  それと同時に、アジア向けの融資とかあるいはアジアの市場で運用しているお金が含み損を抱える、あるいは不良債権化するということになってきますと、これは日本の景気後退局面にさらにそういうものが上乗せになってくるわけですから、かなり気を入れてこの問題を考えていかなければいかぬという気がいたします。  最近また、日本の金融システムの中でも、関西方面の銀行、何とかいう銀行が消滅して、新設するということで、その預金保険法の改正案が今国会にかかっているわけでありますけれども、今こういった金融の方と、それから、二けた台の株価のゼネコンというのが幾つかあるのですね。こういうのがもし万が一左前になっちゃったというときには、これは今表に出ていない数字が上乗せになってくるわけです。  というのは、例えば、工事は完成したけれどもまだお金をいただいていない、そういうものが上乗せになって一気に表にこれは出てくるわけですから、そうすると、そういうところがばたばたと、ばたばたばたばたぐらいですか、といくと、数兆円のオーダーでの債務超過の合計額になる、そんな試算もあるのですね。要するに、これは雇用にとっても非常に悪い影響が出てくるわけです、今まで製造業が吐き出してきた雇用を建設業で吸収してきた現実がありますからね。  さらに悪いことには、メーンバンクがそれぞれくっついているわけでして、そのメーンバンクの方にこういうものが影響を及ぼさないと言えるかどうか。よく日銀はシステミックリスクという言葉を使うのですけれども、要するに日本語で言ったら、これは金融の連鎖不安ですよ。ですから、こういうものは何が何でも回避をするのだという強い意思を、やはり金融当局は示していく必要があるというふうに私は思っておるのです。  そこで、きのうも預金保険機構の松田理事長が記者会見をやっておられて、金融機関からかき集める預金保険料の値上げはなくてもいいのじゃないかというようなことを言っておられるのですが、一体、今預金保険機構には幾らあって、もしそれが足りなくなったらどうするのですか。
  35. 本間忠世

    本間参考人 お答え申し上げます。  ただいま委員御指摘のとおり、日本の金融システムの置かれました現在の状況というものは、私ども大変厳しいものがあるというふうに認識をしております。特に、まさに今御指摘のとおり関西での金融機関の問題もございますし、金融機関の中での、やはりバブルの後遺症に伴います、これからさらに対応していかなければならない問題に対してしっかり対応すべきは当然でございますが、さらに、まさに御指摘いただきましたゼネコンを初めといたします、これから金融機関のバランスシートにさらに問題を投げかける可能性のあり得る、そこについても十分なる目をもってこれからしっかり見て、問題が仮に生ずるような場合には、まさにシステミックリスクが大きくこの国に飛び散ることのないように、最大限の努力をすべきものだというふうに思っております。  お尋ねは、しかし仮にそういう問題が生じてしまったときに、セーフティーネットと申しますか、日本の今の金融システムでそれをしっかり受けとめ切れるか、こういうことが基本に先生の中におありになると思います。  これは、預金保険もその中で一つの大きな役割を担っておるものでございますが、預金保険は、御承知のとおり基本は保険料、民間金融機関から拠出されます保険料をもって運営されております。現在は預金高の〇・〇八四%というものを毎年積みながら、それも、これまた御承知のとおり一般保険料と、それからペイオフコストを上回る特別保険料、両方で今運営されておるわけでございます。これまでのところはもちろんその中で運営されておりますが、お尋ねのように仮に、それが今の枠組みの中で十分対応できるかどうか、こういうところが確かに一つあるかと思います。  ただ、昨年この保険料率を大幅に改定をいたしまして、これで現在は対応していくということが基本的に重要だと思っておりまして、とりあえずの対応といたしまして、仮に今のファンドが十分でない場合には、日本銀行が、一般勘定それから特別勘定それぞれに対しまして一兆円ずつの貸し出し、預金保険機構から見ますと借り入れができることになっております。  これはいわばつなぎの金でございますが、そういうことも活用しながら、現在もそういうことも入れて運営をいたしておりますけれども、そういうこと全体を総合しまして、しっかりと対応して  いくべきものだというふうに考えております。
  36. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 それで実際足りなくなることはないですか、大丈夫ですか。
  37. 本間忠世

    本間参考人 これは、今後発生する金融機関の破綻というものがどういうものであるかということはなかなか予測しがたいわけでございますが、私どもは、この現在の枠組みの中で基本的には対応すべきものだというふうに考えております。
  38. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 とにかく、お金というのは人間の体の血液と同じことですからね。この流れがとまるとかめぐりが悪くなるということだけは、絶対にこれは避けなければいけません。ぜひ大蔵大臣におかれましても、強い意思を持って日本の金融システムを守っていくんだということを、何らかの機会に国民に表明していただきたいというふうに思います。  もう時間がなくなってしまいましたので……。  自民党が緊急対策というのを出しました。これは、とにかく借金以外にできることは何でもやろうという強い与党の意思のあらわれだというふうにお考えいただきたいと思います。できばえは六十五点ぐらいかなという気がいたしておりますけれども。  それは要するに、規制緩和とか中小企業対策は断定口調で書いてあるのですが、土地の流動化とか有効利用の促進、住宅対策なんというのは努力するとか検討するとかいう表現で書いてあるものですから、やはり六十五点ぐらいになっちゃうかなという気がするわけであります。でも、土地を動かすということは非常に大事なことであって、土地税制について、とにかく自民党が出したことは全部これは丸のみしてもらうということでやっていただきたいというふうに思います。  地価税も廃止ないしは凍結、凍結でも結構です。個人の長期譲渡の重課、これは廃止。法人の長期並びに超短期、それから私は短期重課も、これも廃止。特定事業用資産の買いかえ特例は、一〇〇%まで上げるということですね。それから法人の借入金利の損金不算入、六十二年につくったこんな制度はもう撤廃をする。  それから定期借地権、これも非常に大事なことでして、定期借地権、もっとこれをふやしていけば、もっと優良な住宅がたくさんできるようになるわけですから、例えばこれの阻害要因になっている相続税の評価、これは八掛けなんですね。こういうものを思い切ってどんと下げる、そういうようなことです。  それから、平成の初めぐらいにローンを組んで家を買った人たちがたくさんいるわけですよ。日本経済を支えてきた中産階級がリストラに遭ってしまって、今や極貧階級に転落してしまった人もいるわけです。極貧階級まで行かなくても、大変な含み損を抱えて、子供が大きくなって部屋が足りなくなってしまった、そういう人が買いかえもできないでいるわけですから、こんなものは、今みたいに一年間しか所得から引くのはだめだというのではなくて、三年ぐらい引いてあげるよということをやれば、世の中非常に明るくなっていくんですよ。どうですか、主税局。
  39. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生から御指摘がございましたように、自民党の緊急国民経済対策、税制について多数の指摘事項がございます。  税制につきましては、財政構造改革との整合性をどう図っていくかというほかに、先ほど八割の合理性のお話がございましたが、やはり公平をどう考えるかという税の原則の問題がございます、税の体系の問題もございますので、そういう意味からの十分な吟味、議論が必要であろう、こういうふうに思っております。  いずれにいたしましても、政府、党の、税制調査会における平成十年度税制改正の審議の中で検討が行われていくことになるだろうというふうに思っております。  土地税制につきましては、まさに、今の理論的な問題のほか、土地の有効利用あるいは土地取引の活性化を促進する方策を検討する中で議論をしていきたい、こういうふうに考えております。     〔中山(成)委員長代理退席、委員長着席〕
  40. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 とにかく、世の中お金がないわけじゃないんですね。お金ははっきり言って余っているんです。要するに、お金がめぐっていかないということなんですね。確かに、今、所得税を払っておられないような低所得者が一番困っておる。そういうときにはどうやって世の中の景気をよくするか。結局、世の中には常識には反するけれども真実であるということがあるんですね。低所得者が困っている、そういうときにはどうしたらいいか。お金を持っている人に、借金してでもお金を使ってもらう、資産を持っている人に、借金してでも資産を有効に活用してもらう。つまり、金持ち優遇、資産家優遇をやれとうちのおやじが言って怒られたんですけれども、そういう逆転の発想が大事なことなんですよ。  それで、こういうことはある意味では割と簡単にできるんです。例えば、住宅税制も税額控除というやり方でやっている。主税局流に言えば、年間五千億円まけてやっているんだ、こういうことを言うわけですよ。しかし、では、例えば一億円借りてちょっといい家をつくってもらう、そういうときに、例えば金利三%でお金を借りる。そうすると三百万ですね。三百万分を所得から引いてあげるよというようなことをやれば、かなりこれはインセンティブが違ってくるんですよ。例えば子供の扶養控除が今三十八万です。三百万というと子供八人分ぐらいですから、なかなか子供八人をつくるのは容易じゃないですからね。  だから、そういう単純な発想でお金をもっと使ってもらうということが、私は非常に大事なことだというふうに思うんです。どうですか、主税局。
  41. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 お答え申し上げます。  住宅ローンについて、利子を所得控除に移せば高額所得者はその分有利になるのでというお話でございました。  今、主税局が減収額のことを言うと先に言われてしまいましたが、現在の住宅取得促進税制、減収額六千六百十億円と、最も租税特別措置の中で大きな規模になっているわけです。したがいまして、その結果どうなっているかといいますと、中低所得者の方に非常に有利な制度になっておりまして、例えば、年収七百八十万円までの方が一定の金額を借り入れますと、所得税を払わなくてもいいというような仕組みになっているわけでございます。先生のような、この仕組みを六千六百億円の中でそういうふうに仮に変えるというふうにいたしますると、そういう下の方が非常に薄いものになってしまう。果たしてそのようなことについてどう考えるか。逆転の発想とおっしゃられましたが、その辺の税制上の慎重な議論が必要ではないかというふうに思っております。
  42. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 とにかく、早くこの財革法を国会で通す。そして財革法を通すときに……(発言する者あり)ちょっと待って。財革法が成立するのは恐らく十一月ぐらいになるのでしょう。そうすると、この一カ月の間に景気がとんとことんとこ落ちていくかもしれません。ですから、それは、財革法が通ったら景気判断を変えてもいいんだ、そのぐらいの見通しを私は持っておくべきであろうというふうに思います。ですから……
  43. 中川秀直

    中川委員長 渡辺君に申します。時間が参りました。
  44. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 はい、わかりました。  財革法が通ったら、どんとまとめて景気対策をやりましょう。よろしくお願いします。終わります。
  45. 中川秀直

    中川委員長 これにて穂積君、渡辺君の質疑は終了いたしました。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ――――◇―――――     午後一時二分開議
  46. 中川秀直

    中川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。安倍基雄君。
  47. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今まで我が党の若い人々、新進気鋭の新進党の委員がいろいろ質問してきました。あらかた論点は出てきたと思いますけれども、私は私なりに、自民党の長老の中には、おれは球拾いするぞと言っていた人が、最近は球拾いだけではなくていろいろな活動をしているようでございますけれども、私は落ち穂拾いというか、若干の重複もあるかと思いますけれども、今まで余り取り上げられなかったことを中心にやりたいと思います。  この法案を見ますと、それなりのメリットはある。というのは、要するにそれぞれの支出についてキャップをつけて、それは中には非常に厳しいキャップもございます。そのために、例えば厚生の関係だったら薬価基準あたりを見直さなきゃいかぬとか、いろいろな制度的なことを変えていかないとこのキャップのもとでおさまらない、そういう意味でそれなりのメリットはある。ただ、しかし、やはり一番大きな問題点は、経済に対する観点というのが本当にどの程度行われているのかということが一番の問題であると思います。  今までの論議の中に、これから数年間手足を縛ってもいいんだろうか、デフレ予算でやってもいいんだろうかという議論もございました。手足を縛るという面からの観点は一つの大きな問題でございますけれども、ただ、この法案がどの程度経済に対するインパクトを考えているのかなという点について私は非常に疑念を持っておる。  この前提として、二〇〇三年に赤字をGDPの三%にするということを言っておりますけれども、そのためには、支出のみならず、要するに税収がどのくらい伸びるかということに大きくかかわっておるわけです。その税収がどのくらい伸びるかということの基礎には、経済の成長率がどのくらいかということがかかっている。一・七五から三・五%というか、そういうところまで幅を持って考えていますけれども、人ごとのように、一・七かあるいは三・五というような、まるで成長率が自然に決まるような形で、この予算そのものが成長率にどう影響するかということが全く勘案されていない。  この点、これは経済企画庁に聞きたいと思いますけれども、これから現実的にどのくらいの成長率になるのだろうか、その間にデフレ予算がどう影響するのだろうかということについて、単に、このくらいの成長率だったらこのくらいの赤字ができるとか、このくらいだったらこうだというようないわば仮定的な試算ではなくて、本当にどの程度の成長率を考えているのか。その成長率のために、例えば規制緩和をすれば高い成長率にできるなんというようなことではなくて、このデフレ予算がどの程度それにかかわっていくのかという点についての御説明を願いたいと思います。
  48. 尾身幸次

    尾身国務大臣 今後の成長率の見通し及び財政状況の関連についての御質問だと思いますが、構造改革のための経済社会計画というのが一応いわば経済計画とも言えるものでございまして、この計画期間中、一九九六年から二〇〇〇年度まででございますが、年率で実質三%、名目で三・五%の成長を見込んでいるわけでございます。  これは、前提条件といいますか、政策の前提というのが考え方の中に織り込まれておりまして、それは、物流とか電気通信、金融サービス等の分野におきます高コスト構造の是正、活性化の促進等、この計画に盛り込まれました改革が進展すれば、その結果として今の成長率が達成できるということでございまして、言うなれば、私どもが考えております経済構造改革がきちっと進むならばということでその成長率になっていると考えております。  それから、もしこの計画に盛り込まれました構造改革が進展しない場合には、一・七五、一カ四分の三の成長になるというふうに見込まれているということでございまして、そういう意味で、この構造改革のための経済社会計画におきましては、いわゆる構造改革を進めることが前提でその数字を見込んでいるというふうに考えております。  私ども、説明を何回かしておりますが、中長期的な経済成長を確保するためには、民間活力を最大限に生かして、その活力が十分生かせるような経済構造改革を進めることによりましてこれを実現するというふうに考えているわけでございます。  それで、この計画期間中の財政運営につきましては、歳出面においては、制度の根本にまでさかのぼった見直しや、施策の優先順位の厳しい選択を行うという徹底した洗い直しを行うことによって、財政改革を強力に推進するというのがこの計画の中の基本的な考え方でございまして、そういう意味では、まさにこの財政改革法案もその線に沿ったものであるというふうに理解をしております。
  49. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 時間も短いので、余り長々と答弁されると、質問時間がなくなってしまいますけれども。  まあ、単なる規制緩和で三・五%いくなんて到底考えられない。しかもここの、いわば財政のインパクトをどの程度勘案したのか、そういうところの御説明が全くないわけです。でございますから、我々いろいろなエコノミストに聞いても、そんな高い成長でいくわけがないと。そういった点、今度の法案は非常に抽象的だ。例えば、情報産業をどうこうする、規制緩和をどうのこうのする、それで三・五%成長ができると本当に思っているのか、私は非常に疑問です。でございますから、もう一度お聞きしますけれども、本当にこのデフレ財政状況を勘案した上のものであるかどうか。  しかも、今私が触れたいのは、通常、今までは財政が出動できなくなったら金融でいわばカバーしていたわけです。現在は確かに低金利でありますけれども、しかし反面、非常に金融は逆に貸し渋りというかタイトである。タイトというような言葉はまずいかもしれませんけれども。  これは、担保にとった不動産価格がどんどん下がっていくと、企業は担保のいわば追い増しを要求される。設備投資どころの騒ぎではない。しかも、四月一日からの、いわば早期是正措置のためのあれですね。そのために、金融機関は実際どうやって自己防衛するかでいっぱいである。でございますから、本来低金利ならもっともっと資金需要があって、いくわけですけれども、それは途絶えている。  この二つを考えたときに、規制緩和をしても、こんな高い成長率ができるわけがないと私は思います。その点をもう一度お願いいたします。
  50. 尾身幸次

    尾身国務大臣 財政構造改革経済関係でございますが、財政構造改革は、定性的に申し上げますと、短期的には、需要面から景気に対して必ずしもプラスの影響を与えないということは言わざるを得ないと思いますが、中長期的には、国民負担率の上昇を抑える、あるいは公的部門の簡素合理化を進めることによりまして、経済の活性化に資するものと考えております。  私ども、そういう中で規制緩和、あるいは先ほどのお話の、貸し渋り現象と言われているような、いわゆるクレジットクランチの問題もございますから、そういう意味におきましても、不良債権の処理を進める、そのためにも土地の流動化を進め、土地の有効利用を促進することによって、民間活力が十二分に発揮できるような体制を整える、そういう考え方でおります。  いわば発想を転換して、財政に安易に頼ることなく、民間の活力を十二分に生かすような体制をつくり上げて、そして、そのことによりましてむしろ経済を活性化して、ひいては税収もふえるという筋書きでいきたい、また、それがいけるというふうに考えているわけでございます。
  51. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 抽象論はどうでもいいんですけれども、具体的にこの財政でいったときにどうなっていくかというシミュレーション的なものがあるんですか、ないんですか。ただ一言、イエス、ノーでお答えください。
  52. 尾身幸次

    尾身国務大臣 私どもの計算では、いろいろな規制緩和をしっかりやることによりまして、規制緩和あるいはそういう意味構造改革によりまして、年率〇・九%のプラスの成長が見込み得る。そういう意味では、規制緩和の促進とかそういう政策は、成長に非常にプラスにきいてくるというふうに考えております。
  53. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 どうもかみ合わないんですけれども、つまり、このいわばデフレ的な財政の方向で、それをもとにしたある程度のシミュレーション的なものがあるのかないのか。その一言でいいんですから。
  54. 尾身幸次

    尾身国務大臣 先ほど申し上げました規制緩和とかあるいは土地の流動化とか、そういうものを前提といたしまして、民間の活力を十分発揮することによりまして、三%、名目で三・五%の成長は実現できるものと考えている次第でございます。
  55. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いずれにせよ、ちょっと水かけ論になるけれども、この問題は、本当の意味で企画庁は確信を持って言えるのかどうか、本当に疑問に思っているんですよ。しかも、財政と金融両方とも、財政もデフレ、金融は本来これだけの低金利だからいくはずなんだけれどもそうはいかない。クレジットクランチがある。この二つを考えたときに、この法案というのが本当にそれの現実を見据えた法案であるのかどうか、非常に疑問であるのです。  この点は、確かに各省の要求をいわばキャップで抑え込もうという意図はわかるんだけれども、経済的な感覚がほとんどない。この点ちょっと、大蔵大臣、どうお考えか。簡単に、一言一言でいいです。
  56. 三塚博

    三塚国務大臣 本件は、経企庁長官が何回も答えましたとおり、その政府の成長率見通しに向けて、ありとあらゆる努力を積み重ねていかなければならない、ここが一つあります。  金融の貸し渋りいかんということでありますが、これは不良債権解消のため各金融機関の努力が実りつつあり、解消しつつあります、こういうことであり、政府金融機関は、午前中の論議にありますように、党の政策の提言等もこれあり、また経企庁長官中心に取りまとめられておることの中で、景気の下支えが特に中小企業等についてなされますようにという検討が行われております。
  57. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いずれにせよ、どうも答弁も余りはっきりしないので非常にあれなんですけれども、基本的には、もう少しやはり経済の実態を見た上で論議していただきたいんです。この法案というのは、そういうところが非常にまた欠けておる。しかも、財政そのものがどういう影響を経済に与えるかという点についての観点が非常に抜けておる。この点は指摘したいと思います。  それと関連いたしまして、今クレジットクランチの関係で、早期是正措置、これは二年前から、大体来年の四月にやるという話になっておる。各地を回りますと、それを延ばしてくれとか弾力的な運用をしてくれとか、そういう要望が随分強いんです。これだけ金利が低くて金が余っている。そうすると、本当はスムーズにいくはずなのが、もういわば通常の資金だって入ってこない。  やはり一番の問題というのは、不良債権はそのままにして、為替の自由化、いわば金融ビッグバンと踏み出したことが比較的大きな原因だと思う。そこに財政の、いわばデフレ予算が出てくる。でございますから、この早期是正措置についてどう考えているのか。  それから、何といいますか、弾力的運用ということを余り大っぴらに言えないかもしれませんけれども、この早期是正措置をつくったとき、果たしてこのデフレ予算考えていたのかどうか。その二点をはっきりお聞きしたいと思います。
  58. 三塚博

    三塚国務大臣 早期是正措置は、住専の苦い体験、反省の中で、金融機関が本来の使命を達成するべく全力を尽くし、絶えず信認状態をキープすべきであろうということで基準を決めたことは、安倍先生おわかりのとおりであります。  そういう中で、これを緩和するかどうかということにつきましては、既に四月一日とその実施年を決めておるところでございますから、そのために、各金融機関は不良債権の解消について努力をいたしております。経営方針についても、リストラを取り進めておるところでありますので、途中でかじを切ることは混乱だけが予想されますものですから、辛抱を重ね、その基準に従い全力を尽くしていただく、大変御苦労ですが、頑張ればおのずから展望開ける、こういうことであります。
  59. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 要するに、この早期是正措置を決めるときに、果たして今回のデフレ予算的なものを想定していたものかどうか、そこの点です。
  60. 三塚博

    三塚国務大臣 これは、経済の成長は、御案内のとおり、毎年度明示をしながら努力をいたしておることに尽きるわけであります。
  61. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 ちょっと意味が、要するに、この早期是正措置を決めたときに、このデフレ予算のことを想定していたかどうか、それを聞いているのです。
  62. 三塚博

    三塚国務大臣 デフレ予算ということではなく、成長率を、名目成長率、実質成長率、御案内のとおりであります。そして、税収を見積もり、歳出を編成いたすということでありますから、その目標を忠実に守り達成するという総合政策はありますけれども、デフレ的要素というのは、その中で、どういう表現をしたらいいのですかね、デフレ的要素という一概でありますと、まさにデフレを想定しておればそれに対応するものをやるべきだ、こうなるわけでありますが、今、名目成長三・五%、実質一・九というのは、まさにそのことをなし遂げることによりまして、その前提は財政構造改革でありますが、健全体に確実に近づいていく足取りになります。こういうことで理解をいただければと思います。
  63. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今度の、いわば頭を、キャップをやるというのは、ともかく支出をどんどんと詰めるわけですよ、簡単に言えば。ということは、これは必ず経済成長はマイナスの方向に働くわけですよ。でございますから、通常そういった財政のときには金融をもっと緩やかにしていかにゃいかぬ要素がある。  金融は、実際上に金利は下がっておるんだけれども、今のクレジットクランチがあるわけです。これは早期是正措置の導入が決まっちゃっているから、そのために、本当に財政の面では要するにデフレ的な効果を持つんだけれども、それは金融でカバーできない。本来、もしこれからデフレ予算をやるんだったら、要するにクレジットクランチを生むような措置というのはもう少し時期を考えるべきだった、そういうことを言っているのですよ。どうも理解が十分されていないようですけれども。  それでは、企画庁の方に聞きますか。
  64. 尾身幸次

    尾身国務大臣 早期是正措置を決めたのは、たしかしばらく前だと思います。この財政改革法案を出すということを決めましたのはことしに入ってからだと思っておりますが、財政再建の必要性はかねがね言われていたところでございます。こういう財政改革法案という形でやるのか、あるいは財政そのものを立て直すという形でやるのかということについては決まっていなかったと思いますが、しかし、その方向で財政運営をやるということは、早期是正措置の問題とそんなに違わない時期に決まっていたことだろうというふうに考えております。  したがいまして、早期是正措置が、クレジットクランチというような形になるのかどうか。現在金利も下がっているわけでございまして、資金需要がそうないというようなことがむしろ問題になっている状況の中で、私ども、金融機関の資金供給に対する態度が、健全な事業、健全な企業の活動まで損なうようなことのないように、関係方面に十分働きかけ、対策を講じてまいりたいと考えている次第でございます。
  65. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いずれにせよ、財政と金融がうまく連動していくべきところが、どうも金利だけは下がっているけれども金詰まりがしておる、金がなかなか流れてこない、そこにデフレ予算が来る、そういうダブルパンチがあるのですよね。これは、必ず経済成長率にマイナスの影響を及ぼしている。これから本当に三・五%でいけるかなんというのはとんでもない話だ。  でございますから、この予算を計上する上において、本当の意味で、いわば経済成長がどの辺にいくのかということをきちっと踏まえて、シミュレーションができないのなら、ないわけでございましょうけれども、これだけの大きな法案を出すならば、それがどういう影響を及ぼすかということをきちっと企画庁あたりがっかまえた上で提案してほしいと思います。  もう三十分近くなりますので、二番目の問題点を出します。  第二の問題点。これは、各省庁がキャップのもとで一生懸命やっている。確かに、今までの説明によりますと、例えば厚生大臣も、これだけの、本来はもっともっと支出がふえるべきところを頭打ちになっている、要するに薬価基準までも考えていかにゃいかぬ、そういうことになる。文部省の方も、これはいろんな、私学助成も要するに頭打ちになる。そういう状況ですけれども、問題は、やはり公共事業が一番問題だと思うんです。  私は、資料として、私が七年前に書いた論文を皆さんにお見せしています。いささか古い論文でございますけれども、これは、アメリカとの間でいわば公共投資の額を決めたというとき、私は落選中でございましたけれども、「エコノミスト」に投稿したら採用してくれた。その中で言っておりますのは、確実に生じるのは財政の悪化である、建設国債であれば後代に資産が残るからという議論は表面的なものにすぎない、その償還は最終的には大部分が税金に依存する、こう七年前に言ったわけです。まさにそれが現実になってきた。  今回の法案でも、いわゆる建設公債というものに対しては十分な注意を払われていない。それとともに、公共事業は期間を延長するということですけれども、基本計画そのものについては十分触れていない。  私のお聞きしたいのは、各省庁がこれだけいろいろな、いわば自分の部門について制度から変えてでも減らしていこうというときに、公共事業は基本計画を変えるのか、変えないのか。この点についてはっきりお答え願いたいと思う。
  66. 瓦力

    ○瓦国務大臣 安倍委員にお答えいたします。  基本計画について、このたびの財政事情を踏まえて変えるのか、変えないのか、かような御質問でございます。  御案内のとおり、我が国社会資本の整備自体は欧米諸国に比べておくれをとっております。なお、自然災害等々がございますから、国民に対しましても安心、安全、そういったものを考えつつ、今日までの開発、整備に加えてマネジメント、こういったものも要求される中でございます。加えて言いますれば、高齢化社会も到来する。  よって、社会資本整備の推進を図ることは極めて重要でございまして、なお財政状況は近年極めて深刻な課題になっておりますから、このことを背景にしつつも、公共事業関係の長期計画につきましては、御案内のとおり、計画期間を二年間延長する、こういう措置を講ずることによりまして、その投資規模の実質的縮減を図ってまいる、こういう姿勢に立っておるわけであります。五年間で取り組んでいく計画を二年間延長して、それらの課題を消化してまいりたい、こういう姿勢に立っておるわけであります。
  67. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 社会資本整備がおくれているといいますけれども、例えば下水道なんというような問題は、本来、下水道などというものはそこに住んでいる人々が負担すべきものなんですね。社会資本、社会資本と言葉はいいけれども、本来はそれの利益を受ける人間が負担すべき問題なんです。  私は、この論文で書いたんですけれども、かつて、もう十年近く前の大蔵委員会で、東京都で四谷から新宿までの拡幅工事をやる、どのくらいかかったかと聞きましたら、三千億円くらいかかったと。それは、国道だから三分の二は国が負担するという言い方をしているんですね。私は、むしろそれは、そこで受益をするところの人々が負担すべきじゃないかと。すべてこういったぐあいに、今の下水道なんかも本来はその地域の住民が負担すべきものだ。それを、公共、公共という名のもとに国の予算を投げ込む、そこに大きな問題点がある。  だから、公共事業というのは、まず第一に、これは本当に効率的なものであるのかどうか、役に立つものであるのかどうか、二番目には、受益者と負担者との関係はきちっとなっているか、その二つが問題である。そこが、日本の場合に、公共事業というのは税金をどんどん投げ込んでいる。私は、これが一番国の財政を大きく危うくしている原因であると思う。一方において、例えば医療費なんかもどんどんと減らさにゃいかぬとか、そういう状況で、もう本当にいろんな面が削られてきている。  ところが、この公共事業というのは、名前のために幻惑されている。私は、今の日本財政の危機は、本当の意味の効率的な公共事業がされていないと。効率的な公共事業とは何かというと、それは、民間投資を誘発する公共投資であり、本当に経済のボトルネックを解消するのが本当の意味での公共事業です。ところが、現在の公共事業というのは、公共という名前がつくと、もうこれは社会資本整備がおくれているなんとかかんとかという話で、ウルグアイ予算もそうなんですけれども、半分聖域になっておる。  でございますから、これだけいろんな各部門で削りに削ろうというときに、公共事業だけ、年を延ばすだけだ、最終目標は同じだと。とんでもない話だ。公共事業の中で経済効果の少ないものは見直して、むしろ削っていかなくちゃいかぬ。本当に大切なものは、むしろ促進してでも仕上げにゃいかぬ。そういう観点が全ぐ抜けているわけです。  私は、この点、実は総理がいたら、ちょっと総理にお聞きしたいと思うんですけれども、官房長官も、この点どう考えるか。  これとともに、この公共事業が割合と大手を振って歩く基礎は、建設公債は赤字公債と別だと、赤字公債のことばかり主に言っている。今度の案は若干建設公債も含めた国債の縮減のプログラムが出ておりますけれども、本来は、私どもの委員質問しましたけれども、十年前から、建設公債と赤字公債との区別をなくせと、さっき読み上げたように。で、今度の法律は、やはり建設公債と赤字公債は別なんだという逃げ道をつくっている。それがまた公共事業を半ば聖域にしていると思います。  この点について、これは官房長官が総理にかわってお答え願いたい。
  68. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 安倍先生、先ほど、私は落ち穂拾いだと御謙遜されましたけれども、絶えず話し合って、造詣の深い、本当に一家言持っている先生だと私思っております。  今、公共事業の話が出ました。建設大臣からもお話がございました。私、考えていることを申し上げるならば、先進諸国家に比べまして、急速に日本は上昇して、その間景気のいいときもあった。しかし、急峻でありまして、川にいたしましても道路にいたしましても、社会資本の整備が少ない。なおかつ、いろいろな災害が起こります。昨年でしたか、蒲原沢とか、あるいはまたトンネルの崩落とかいろいろ大変な状況がございます。したがいまして、整備するところは整備しなきゃいけない。  同時に、批判されておりますことは、これは直していかなければならない、こういうふうに思っておりますが、何かすべて公共事業が悪だという立場は私はとりません。十兆円近くあるわけでございますけれども、これは今、来年度、この特別措置法によって七%下げていく、そして必要のないものは十分に見直していく、こういうことでございます。一方で、社会保障が、かつて始めたときから見ると十倍にもなっておる、こんな状況もあります。  それで、今のお尋ねの建設公債と特例公債、区分を見直すつもりはないか、こういうことでございますが、私といたしましては、官房長官ですからなかなか難しい。調整役でございまして、総理のかわり、こう言われましたが、負担の世代間公平と見合いの資産が残るということで、公共事業に限って建設公債の発行を認める、こういう考えで来たと思います。この考え方も、今も妥当なものとして私考えておりますが、それだから安易にどんどん出せというものではない、こういうふうに思っているところであります。  以上でございます。
  69. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いずれにしても、やはり公共事業の持つ経済効果、これをもっとシビアに考えなくてはいけないのですよ、はっきり言って。本当に必要な公共事業を行う。それによって民間投資も誘発できる、そういう種類の公共事業であればそれなりの意味がある。さっき私がちょっと例を挙げた下水道とかなんとかいうのは、その土地の人間が、それを享受する人間が負担すればいいのであって、それを公共と言うことそのものが問題なんですよ。  ですから、私は、地方分権という問題がこれに絡まってくるわけですけれども、地方が自分たちだけでやるとなれば、おのずと自分たちの生活に一番必要な部分になるわけです。国全体は、もう少し本当に国全体のものにお金を投げ込めばいいのであって、それは、この前のトンネルの崩落なんかがありましたけれども、お金があるからこそあれだけの道をつくり、トンネルもつくれるわけですから、それがもし、もともと本当にお金がなければ、むしろ移動をするというか移住することだってあり得るんですよ。  だから、これは本当に金持ち時代の発想でやりますから、この点について、まあ余り長くなりますから、私がここでお話ししているのは、いわば公共事業というのはそれなりのシビアな査定を必要とするということ、それで、建設公債と赤字公債というのはそれなりの、要するに、ほかの国では必ずしもそういうことやっていないんですよ。だから、本当に収益を生むものあるいは経済効果のあるもの、そこに限ることにしないと、建設公債という言葉があると、どうしてもそういう聖域になりやすいのです。  ちょっとまだほかに聞くこともいろいろありますから、では、二日。長くなつちゃ困ります。
  70. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 先生のお話、経済効果のことばかり言われておりますね。しかし、これ、下水道のことを話して、東京なんか一〇〇%近くできているんですね。それには国からも相当金が出ているわけであります。今、十何%、二十何%というところもあるわけでございますね。それから、どんどん経済効果のあるところにお金を出せば、そこは一極集中になり、必要のないところに出さなければ、我々の地域みたいな、安倍先生のところは裕福であろうと思いますが、とてもできないですね。  この部面もひとつお考えをいただいて、外国は三百年四百年かかってきた、日本はわずか二、三十年だ。しかし、批判されていることは私どもも気をつけていかなければならぬ、こういうふうに思っております。以上でございます。
  71. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 もう少し時間が長ければいろいろ議論したいのですけれども、次の問題に移りたいと思います。建設大臣、もういいです、大体わかっているから。  ただ、問題は、私の言うのは、例えば東京の下水道なんかでも、本来は東京の人間だけで負担すべき問題なんですよ。それを国が相当金をつぎ込んじゃうから不公平が起こる。もともとは、彼らは自分の施設は自分で賄うべきだったんですよ。そこら辺に問題があるわけです。だから、やはり負担者と受益者とのつながりというのを常に考えないと、公共事業という美名のもとに税金が流れ込む。いかに国からお金を持ってくるかの問題になる。これは、時間もございませんから、もう結構です。次に行きましょう。  それから、今度は、保険の問題です。私は、これだけキャップがかぶさると、本人にやはりしわ寄せになる。そこで、やはりこれからいろいろな医療関係の、あるいは年金関係のお金がかかってくる。一つの傾向として、本来税金的なものが保険料という名目で徴収されるようになるというのが、一つの大問題だと思うのですよ。  私は、介護保険のときに十分議論に参加しませんでしたけれども、保険というもの、私は保険のことを二年間課長補佐でやりましたけれども、保険の場合には保険事故というものが大体あって、そのできる確率が大体あるわけです。確率に基づいて保険料が決まるわけです。介護保険の場合には、介護を要するという確率は果たして十分計算できるのか。自動車だったら、自動車事故の確率がある。それによって保険料がまた決まってくる。生命保険の場合には、どのくらい死ぬかという率があって、決まってくる。介護の場合に、認定ですから、病気とはちょっと意味が違う。  でございますから、私が恐れているのは、本来はこれはむしろ、たしか議論の過程で小泉大臣が、これを税金で取るとなるとなかなか問題もあるので保険料でやると本会議で答弁をしたことは、私記憶しています。私が一番心配していますのは、保険料という名のもとに国民負担がどんどんふえる。介護保険の場合、四十歳以上が全部払うわけですから、強制的に払うわけですから。  片っ方の支出の方は、一つの基準があるにしても、各市町村の認定による。本当の意味の保険事故かどうか。保険とするに値するのかどうか。逆に言えば、これだったら、むしろ税金で取って、給付するという方がみんながはっきりわかるのじゃないか。保険料という名のもとに個人負担がどんどんふえていく、そこが問題だ。  介護保険、今参議院でやっていますけれども、私は、その大きな問題点、これは本来強制徴収ですから、税金に近い。それが保険料という、国会を通じない、保険料の査定というところでもって決まってしまう。今度の財政改革の方は、キャップ、頭から抑えると、そちらの方へどんどん膨れていくという問題点がある。そこを指摘したいと思います。
  72. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 保険でやるべきか、税でやるべきかということなんですが、日本としては、今まで年金にしても医療にしても、保険、税、組み合わせてやってまいりました。ドイツにおいても介護は保険を導入しております。  そして、社会保障制度の根幹をなす年金にしても医療にしても保険であり、確かに、介護という問題を考えてみますと、医療に比べれば危険度というのは少ないと思いますが、今二百万人を超えて、介護を要する人は毎年十万人ずつふえるということが見込まれる。となりますと、だれもが要介護状態にはなり得る可能性を持っているということから、今回介護保険制度を導入することにして、今御審議いただいているわけです。  基本的に、保険でやるべきか税でやるべきかの問題というのは、古くて新しい問題だと思うのであります。  というのは、昭和二十五年度に社会保障制度に関する勧告というのが出ています。それは、簡単ですからちょっと読み上げますが、  国民が困窮におちいる原因は種々であるから、国家が国民生活を保障する方法ももとより多岐であるけれども、それがために国民の自主的責任の観念を害することがあってはならない。その意味においては、社会保障の中心をなすものは自らをしてそれに必要な経費を醸出せしめるところの社会保険制度でなければならない。これ佳昭和二十五年度の社会保障制度の勧告であります。戦後五年、現在に比べれば国民ははるかに貧しかった。社会保障制度も全然整備されていなかった。経済も弱かった。にもかかわらず、社会保障制度の中心をなすものは社会保険制度でなければならないということを勧告しているわけです。  豊かになって、平成七年度、社会保障の財源について  今後、高齢者の介護など立ち遅れの著しい分野への配分を大幅に高めるべきである。この場合、増大する負担については、自立と連帯の精神にのっとり、国民だれもが応分の負担をしていくことが必要である。  社会保険は、その保険料の負担が全体として給付に結びついていることからその負担について、国民の同意を得やすく、また給付がその負担に基づく権利として確定されていることなど、多くの利点をもっているため、今後とも我が国社会保障制度の中核としての位置を占めていかなければならない。したがって、増大する社会保障の財源として社会保険料負担が中心となるのは当然である。 これは、平成七年度の勧告であります。  豊かなときも貧しいときも、社会保険制度の方が適当であろう、妥当であろう。しかも、保険だけでやろうというんじゃないのです。税を半分、保険を半分ということでやるのでありますから、私はむしろ、じゃ、今、公的介護保険必要だといって、やれといって、じゃ、税金でやれといって、どこの税目を増税するかというと、これは増税項目ありませんね、所得税にしても、法人税にしても、消費税においても。だから私は、保険の方が適当ではないかと思います。
  73. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 答弁を短くしてほしいんですけれども。  いずれにせよ、要するに、今度キャップをかぶせるというのが、いろいろな面で国費の投入を減らす、それが保険料という形で国民負担の方へ来る。保険料というのは、自分が出した分と給付される分、これは一つの関連があるわけです。しかもそれは、危険率というか、大体支払うときの一つの率がありますから、それなりの計算ができるんです。  でございますから、介護のように、認定によって、適当と言っては悪いけれども、どのくらい出てくるかわからぬようなものについて、これを保険という構成でやっていいのかどうかという基本問題があるのです。この点の議論が十分されていなかったんじゃないかと私は思うので、改めてこの点を指摘したいと思います。  時間も過ぎました。いろいろほかのあれもあるのですけれども、閣僚によっては、質問が来ないので困っておる方がおるようですけれども、それは別として。  もう一つ、最近の証券・金融不祥事について、私は実はある投稿をしたのです。皆さんにお配りしてありますが、これは朝日の「論壇」に出そうと思ったら「論壇」が採用してくれなかったもので、どういう気持ちかわかりませんけれども。それで、私は産経に出しました。  私がここで言ったのは、今非常に、もう毎日、だれが起訴される、だれが起訴されるという話があります。ただ、私がここで言いましたのは、本来商法の改正というものは、総会屋を排除する、それは暴力団に金が流れるのをとめるためだというのが、商法の改正の本旨だと思います。それは間違いございませんね。いいですか。結構ですね。  そこで、私がお聞きしたいのは、今までいろいろな人が殺された。住友銀行の名古屋支店長が殺された、阪和銀行の役員が殺された、富士フィルムの専務が殺された、証券会社の社員も殺された。  こういった、企業のトップに近い者の犯罪について、これが検挙されて、きちっと処断された例はあるかどうか。調べてみましたら、富士フィルムの専務については検挙した、あとは未検挙だ、迷宮入りだ、こう言うんですよ。これは大問題なんですよね。酒鬼薔薇聖斗なんというのはみんな全力を注いで検挙しましたけれども、それ以上の、企業のトップあるいは金融のトップを殺した、それは迷宮入りだというのは重大問題なんですよ。  こういうものを目にしますと、企業のトップたちが、一種の保険料でもって、暴力団、総会屋とつながるということを知っておっても、要するに金を流すということになりやすい。どこがもとでどこが末かと、本末をもう少しわきまえねばいかぬ。  でございますから、確かに、証券会社が損失補てんした、けしからぬ、けしからぬと。庶民の見方からすれば、むちゃくちゃに高額なものです。我々はああいうのが、まあ留飲が下がると言っては悪いけれども、庶民は留飲を下げているところもあると思います。  しかし、ある意味からいうと、彼らは社会的弱者なんです つまり 彼らは自己防衛のために払っているところも随分あるのです。これをほっておいて、商法違反だ、商法違反だと手を振り上げる。これが本当の姿勢としていいんだろうか。これは、本当に法務はどう考えているのか。  私は、この点について総理に総括のときに聞こうと思っておったので、私は総括に出ませんでしたから、落ち穂拾いですから、だけれども、また総理意見も聞きたいと思うが、まず法務大臣の見解をお聞きして、それからその後官房長官、総理にかわってと言っては悪いけれども。  どうも社会の風潮がすぐに、法というのは法理というものがあるのであって、こういった殺人事件が全く迷宮入りのまま、お金を総会屋に払ったら商法違反ですよ、商法違反ですよと振りかざす。ある意味からいうと、経済の活力というか、それを相当そいでいるんですよ。しかも、金融ビッグバンというのが迫ってくる。そこでもって内部の交代だけ、外部ばかり目にして、商品の開発とか、新しいことが手おくれになるのです。  検察は、果たしてその辺を十分本当に、これは本末がおかしくないかということを考えているのかどうか。法務大臣、お答えください。
  74. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 お答えいたします。  議員御指摘のとおり、いろいろなこの種の事件の犯人が現在まで検挙されていないということは、まことに残念なことでございます。検察当局といたしましても、犯人の検挙及び犯人の適正な処罰に向けまして、警察当局と緊密な連絡をとりつつ、厳正に対処するものと思います。  しかし、だからといって、総会屋の今いろいろ報道されているような行為を、仕方がないんだというわけには断じていかない、このように思います。いわゆる総会屋という言葉が言われているわけですけれども、株主総会等々を利用いたしまして、反社会的な行為によって利得を得ようとする、そういうふうな存在はいかなる事態があっても許すわけにはいかないというふうに私どもは思います。  会社の中には、総会屋に対しまして毅然とした態度をとられまして、最初はなかなか苦しいようでございますけれども、そういうふうな形で定着いたしますと、全然総会屋が寄ってこないというふうな会社も多数あるわけでございます。ところが、片や、特に企業、企業といっても企業のトップの方々とそういう総会屋との間に取引が始まる、癒着が行われるというふうなことになって、ずるずる引きずり込まれていくというのが現実であろうと思うのでございます。  ですから、私どもといたしましては、今お話にございましたように、昭和五十六年に商法改正が行われまして、五十七年から施行されております。そういうことで、一時総会屋の動きが低下したなというふうなことも見受けられました。現在でも約一千名足らずの総会屋の存在を私ども把握いたしておるわけでございまして、そういうふうなことのためには、やはり企業が毅然とした態度で終始される、徹底される。ずるずるなっておると引きずり込まれるというふうな実態があるわけでございます。  そこで、私どもといたしましては、昭和五十七年から施行されました商法が十分機能しているかどうか、抑止的な機能を十分果たしていないんじゃないだろうかというふうな点で、今回、罰則の強化でございますとか、あるいは新しく、要求すること自体を犯罪としてとらえまして、商法の改正をお願いいたしているわけでございます。  いずれにいたしましても、総会屋自体の存在というものは認められないわけでございますから、私どもは、関係当局と一致協力いたしまして、厳正に厳重に対処してまいりたい、そしてその根絶を期したい、こういうことでございます。
  75. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 現実問題として、本当に警察もしくは司法がそういった連中をガードしてやらなかったら、ガードしないでおいて、毅然たる態度をとればいいとおっしゃるけれども、その中には殺される人間もいるわけですよ、あの案件が果たして全く同じかどうかわかりませんけれども。ガードしなければ、それは、自己防衛のためにそういうことはあり得ますよ。  ですから、確かに私も、今の利益供与事件について手心を加えろとは言いません。しかし、本来は、警察は、あるいは司法は、彼らをガードする責任があるんじゃないか、その責任を十分果たさずして片方のことばかり言ってもだめだ、まずそれをちゃんとしてくれということを考えていますけれども、いかがですか。
  76. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 先生、総理の代理で悪いね、こう言いましたけれども、本当に私も、専門の方でないから、どう答えていいか。  しかし、今先生の論文を読ませていただきました。警察当局は果たさなければならないものをしろ、これは全くそのとおりだと思います。しかし、これはなかなか、今までの事件を見ますと、暴力団とか総会屋、いろんなところに、言ってくれなければ警察当局もガードのしようがないんですね。  ところが、これは私の考えで、全く個人的な考えですが、うんとこれは慣習的にあったと思いますね。こういう不幸な事件を機会に、何というか、今までもあったと思います、いろいろ今、つけ届けしたり何かした人、できたら言ってください、そうすれば、その罪というか何というか、それは免除しましょうよと、いわば徳政令みたいなことがあったんですが、それは大分前であったと私は記憶しております。しかし、それがなかなか言い出せない、警察当局もガードもできない。私は、これは、思い切ってもう一回そういうことをして、二度とこんなことが、根絶するようにしなきゃいかぬ、こう思っておるところです。  それからもう一つ、ビッグバンの話でございます。  体力の弱い金融関係、しっかり十分固めてからやったら、延ばしたらどうかという御意見かと思いますが、それでは、この国際化、それに、外国の金融も何も来る、取引状況も来る、そのまままだもう二年三年抑えておいて、どんどん後退するのはいかがかなという私の感じでございます。  代理で、わからなくて申しわけございません。以上でございます。
  77. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 この問題、どちらがもとでどちらが末か、法律ではどこへやるかということをやはり十分考えにゃいかぬ。第一の問題ですね。  ビッグバンの問題も、基本的には、やはり不良債権処理というのをもっともっと迅速にやらなくちゃいけなかった。ところが、本来は金融機関でない、つまり預金者を持っていない、金融機関からお金を借りて貸したという会社に要するに公費導入という問題が起こった。そのために、本当の意味の、いわば預金を持っている金融機関に対する公費導入の道が途絶えたという面が大失敗なんですね。そういうことがやはり不良債権の処理を遅くした。  そのときにビッグバンをやったということで大問題になって、もう一つは、ビッグバンのためにこういう早期是正措置をやる。それはそれなりに意味があるのだけれども、そこに来て、新しいデフレ予算的なものをぽんと打ち上げてくる、そういう食い違い。食い違いが重なっているわけですね。その点をもっとよく認識しなければならないと私は思います。そこに、この法案をこの時期に提出する問題点がある。  だから、冒頭でお話ししましたように、それぞれの省庁がむだ遣いを抑えていこうということを決意することそのものは悪いことではない、ただ、この時期とタイミングと周囲の環境がある、そこを考えてもらいたいということです。  あといろいろ、省庁と権限関係、行革の問題もありますけれども、私の時間が一時間しかございませんので、また残された時間でやろうかと思います。
  78. 中川秀直

    中川委員長 これにて安倍君の質疑は終了いたしました。  次に、一川保夫君。
  79. 一川保夫

    ○一川委員 新進党の一川保夫でございます。  この法案の審議が始まって割と時間がかかっている割には、どうもこの法律趣旨なり中身が十分理解できないところが非常に多いわけです。ただはっきりしているのは、量的な縮減目標だけははっきりしておりますけれども、それ以外のことについて、どうも考え方が明確でないというのは、非常に残念でならないわけでございます。  特に、各分野の財政構造改革方針を定めるというような規定がよく出てくるわけですけれども、現時点で、その構造改革の方向づけが十分なされていないというふうに私は思っております。そういう面では、この量的削減目標だけが先行しているという面では、一般の国民の方々なり、また各地方自治体の方々も、この法案のねらいなりその背景というものについて、まだ十分な理解がされていないのではないかというような感じを私は持っております。  ただ、一方で、この財政再建ということは、今日緊急的な課題であることは間違いないわけでございまして、財政の特に歳出面で厳しく抑制していくという考え方理解できるところでございますけれども、その財政支出を厳しく抑制していくと言えば言うほど、当然ながら、各施策の本質めいたものが本来は見えてくるはずだというふうに思いますし、またこれからの政府としての取り組み方針といったものを、こういった量的な縮減とあわせて、しっかりと国民の方々に説明していただきたいというのが私のお願いでもございます。  そういう面で、まず大蔵大臣にお聞きしたいと思いますけれども、この法律の目的に、この集中改革期間中における主要経費に対する量的な縮減目標というものが明記されているわけでございますが、政府は毎年、次年度予算政府予算原案を閣議にかける段階で、一定の仮定のもとに、財政の中期的な見通しといったようなものをこれまで示していたというふうに私は記憶しております。  そういう面で、今回のこの集中改革期間、三カ年あるわけでございますけれども、この集中改革期間を終える平成十二年、この段階の財政の中期展望といったものを、大蔵省としては、それを繰り上げてでも、今の段階で、ある程度その展望国民に明らかにすべきじゃないかというふうに私は考えるわけですけれども、特にそのあたりに対する基本的なお考え大蔵大臣のまず御所見を伺いたいと思います。
  80. 三塚博

    三塚国務大臣 財政の中期展望、一・七五の成長の場合、三・五の名目成長の場合ということで、十五年度まで提出をいたしております。委員にまだこれ配られておりませんですか。後ほどお届けします。  それで、これに基づきまして、集中三カ年の期間における財政運営基本、歳入と歳出の問題、それに伴って不足分は御案内のとおり公債費をもってこれをみてて、全体で一〇〇とする、こういうことであります。  御指摘のように、財政赤字三%というものを達成しよう、赤字公債依存型の体質からの脱却を六年目に達成しよう、相並行いたしまして、諸改革を断行することによって経済の活力を本来の姿に取り戻すということによって活性化を図る、こういう基本命題でございます。よって、この展望については、特徴的なことは、従前の方式でやりますと、要調整額が二二から二・九出ますね、こういう指摘をいたし、今後の事柄の重要性についての御認識をいただくということになりました。  一言で申し上げますと、今申し上げましたGDP比の三%達成ということについて、試算の公債額が実現できた場合の仮定計算として示したものと御理解いただきたいと思います。それによりますと、集中改革期間終了時、十二年度になりますが、国及び地方財政赤字GDP比は、名目GDP成長率三・五%の場合は三・九%、名目成長率一・七五の場合は四%と試算をされておるところであります。
  81. 一川保夫

    ○一川委員 先ほど安倍委員の方からも、この法案考え方でこれからの財政なり経済運営された場合に、日本経済がどういう姿になるかというような御質問もあったと思いますけれども、そういうことに対する明快な答弁もなかったわけです。  仮定を幾つか置いた中での一つの試算というのは当然成り立つというふうに思いますけれども、こういった基本的な法律案をつくって、これから国会で通そうとするこの段階において、やはりもう少しシビアな財政の見通しといったようなものが、私は、経済の見通しとあわせて、もう少し具体的に国民の皆さん方にわかりやすく説明できる状況にぜひしていただきたい、そのように思っております。  では次に、この特別委員会の主管大臣でもございます農林水産大臣、余り質問が出ていないような気もしますので、私の方から二、三お伺いしたいというふうに思います。  御案内のとおり、我が国の農業の重要性なりそういったことは、この特別委員会でも、きょう午前中にも若干触れられたと思いますけれども、非常に今現在、我が国農業そのものが脆弱な体質を持ってきているというふうに私自身は理解いたしております。  それは、御案内のとおり、非常に国際化の波を受ける中で、我が国の農業もそれなりに体質改善には努めてきたのだろうとは思いますけれども、現実問題、御案内のとおり、自給率が四〇%程度まで下がってしまったという問題とか、あるいは農業に従事されている方々が相当高齢化を来してきているという問題もございます。  また一方では、農村地域の、特に山間地域での過疎化現象とかあるいは高齢化現象、そういう中で担い手が非常に少なくなってきている。農村地域に住んでいる、特に農業に意欲を持った方々でも、農業に対する将来展望というものをなかなか持ち得ないという中で、非常に先行き不安な面がたくさんあるわけです。  ただ、そういう中にあって、一方ではまた、我が国の主食である米が非常に過剰な状態にあるということも現実問題でございますし、要は、農家の方々は、何をつくるかということでは非常に皆さん悩んでいらっしゃるというのが今の現状だというふうに思います。  そういう農業なり農村を取り巻く厳しい状況の中で、このたびの財政構造改革という中で、農業関係予算も当然ながら聖域なしで見直しがかかるわけでございまして、そういう面では、予算すべてについて見直しをかけるというのは、当然といえば当然だというふうに思います。  このたび島村大臣が御就任になったということは、私はある面では非常に心強く思っている面があるのですけれども、ある人に言わせると、いや、島村大臣は都会の御出身だから、余り農林水産のことを理解できないんじゃないかということを御心配されている方も、中にはいらっしゃると思いますけれども、ただ私は、これからの農林施策というのは、国民全体のコンセンサスというのが非常に大事だというふうに思います。単なる農業関係者とか農村に住んでいる方々の理解で、農業政策というものはなかなか進められない、そのように思います。  そういう中で、私は、大臣が都会の御出身であるという面では、都会の方々に対しても、また消費者の皆さん方とか、あるいは経済界、一般の皆さん方に、この農業の施策の役割なり重要性なり、そういったところをしっかりとまた理解させるという面では、非常に適任の大臣ではないかというふうに一方では思っておりますので、どうかその期待にこたえていただいて、精いっぱい頑張っていただきたいと思います。  そういう中で、私は、今回のこういった厳しい財政改革という中で、これからの農林水産業を基本的にどういう形で推進されようとしておられるのか、まず、そのあたりの考え方基本的にお伺いしたいと思います。
  82. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 冒頭、都会の私が農林水産大臣となったことについて、御理解をいただいたように思いますが、大変ありがたいと思います。  前にも私、一度申し上げたことがあるのですが、私は十四年前に、農林水産省の政務次官を志願いたしまして、幸い認められて、約一年間農林水産行政に携わりました。その際、私は素人でございますから、全国を回って、できるだけいろいろな方々の意見を聞くことに努めました。  そして同時に、当時はタブーとされていた減反政策について、実際に米をつくっている方々といろいろなお話をしたところでありますが、これは、ある意味では三万百両得の考えなんだ。  一つは、お米をつくりたい放題つくって、まずかろうが何だろうがたくさんつくって、それを国に売りつけるという仕組みの中では、やはりお米はだんだんだんだん人気を失う。ただでさえ手間暇かかる。そういう意味で、お米の消費がどんどん減って、調べてみたら、十年間で一四・七%も減って、定規で引いたように毎年落ち込んでいます。これはやはり農家の将来のために得策でない。したがって、適量生産をお願いして、常においしいお米を食べていただくということと、よりおいしいお米をつくるということにお努めいただくことが、農家の将来のために必要なんじゃないか。  同時にまた、消費者の側からすれば、おいしいお米をつくっていただければ、やはり米食というものは、日本人の主食として十分定着し得るものだと考える。  また、国家の立場からいえば、保管にも大変お金がかかるし、古米、古々米、古々々々米となつてくると一劣化が激しくて、海外へ輸出したり、あるいは家畜のえさにさばくというようなことになると、これは財政上も負担が大き過ぎるというようなことを訴えて、大変理解をしていただいた記憶がございます。  そういう意味で、いわば農業といえばすべてのものが含まれますけれども、その一番主体をなす例えば米の政策につきましても、最近は随分さま変わりしたなと感じておりますが、農業の指導者、あるいはその代表する組織の方々の受けとめ方も、むしろ、こちらがいわばしりをたたかれるような、そういう前向きの御提言もいただいているところでございますから、これから、特に一回先生は専門家でいらっしゃるので、皆さんの御意見等も伺いながら、謙虚に、そして誠実にこの仕事に取り組んでいきたい、基本的にそう考えております。
  83. 一川保夫

    ○一川委員 それで、今回のこの法律の中をちょっと見させていただくわけですけれども、農林水産関係条文の中で、特に担い手に集中して施策を展開すべきだという趣旨のことが集約して書かれております。  担い手の問題は、農政にとって大変大事なことであることは間違いないわけですけれども、特に、農林水産省の施策の中で、担い手に関する施策として重点的に取り組んでおられる施策というのは、どういう施策で取り組んでおられるのか、そのあたりをまずお聞きしたいと思います。     〔委員長退席、中山(成)委員長代理着席〕
  84. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 財特法二十三条には、担い手への施策の集中等による予算の重点化、効率化が規定されておりますが、農林水産政策の主要課題であります国民食糧の安定供給や経営体の体質強化等を推進していく上で、農林水産業の担い手の育成や経営改善等のための施策の周知を図り、政策効果をより高めていくことが重要であると考えております。  このため、来年度の農林水産予算の概算要求に当たっては、中核的担い手となる認定農業者に対する支援策の強化のための新たな低利資金の創設、農業農村整備事業のうち担い生育成に資する事業への重点的配分等により、予算の重点化、効率化を図っていきたい、こう考えております。
  85. 一川保夫

    ○一川委員 今御説明がありました施策が動いているということなんですけれども、基本的には、私は、担い手対策というのは、担い手として今頑張っている方々、それから、これから担い手を目指そうとする方々に対して、やはり我が国の農業というものが先行き非常に明るい展望があるということをしっかりと示すということが、最もその根底にあるのではないかと思います。  そういう中で、先ほども言いましたけれども、国民全体から期待されているということが目に見えてこないと、やはり自信と誇りを持って農業になかなか取り組めないというのが今の実態だろうというふうに思いますので、そのあたりの基本的な考え方でぜひ施策を展開していただきたい、そのように思います。  それから、ウルグアイ・ラウンド対策ということがここ数年来ずっと議論されてきております。これがまた、一方では非常に厳しい評価を受けつつある中で、この対策そのものを、中身を含めて見直しをかけたらどうかということに今現在なっていると思います。  これは、御案内のとおり、当初、六年間ですか、そういうことでスタートした対策だというふうに思いますけれども、それが今現在、二年延長するという中で検討されておりまして、それが今回のこの集中改革期間と一部重複していく格好になるわけですね。そういったときに、当然、このUR対策と称するものの中身を、今のいろいろな情勢の中でいろいろと批判を受けているものを点検しながら見直すということは、これはまた非常に大事なことだと思います。  財政をこれから集中改革するというこの三カ年の中で、このウルグアイ・ラウンド対策というものも非常に厳しい状況に置かれていると思いますけれども、この対策そのものにどういう形でこれから取り組んでいかれようとしているのか、そのあたりの基本的なお考えを確認しておきたいと思います。
  86. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 現在の厳しい財政状況に照らしまして、ウルグアイ・ラウンドの対策費といえども例外ではないわけでございますが、ウルグアイ・ラウンドの農業合意を受け入れるということは、それは、にわかにまさに国際化の波をかぶるということでございますから、国際化の中で農業が将来的にきちんとした展望を持ち、かつ自信と誇りを持って農業従事者が仕事に取り組んでいただく、そういうためには、やはりそれなりのきちんとした対応が必要だと思います。  例えば、生産性の向上とか農村地域の活性化のためにいろいろな配慮をめぐらすとかいうことが必要でございますが、いろいろ御批判等を受けないために、最近、かつての公共事業そして非公共事業六対四であったものを、五対五に改めまして、公共事業については二年延長という形の中で中身を改めたところでございます。  これらについては、これからの予算編成、年末に向けていろいろ検討されることでございますが、私はこの省の責任者として、最善を尽くして理解を得、また予算をかち取り、そして農業者のために施策を講じていきたい、こう考えております。
  87. 一川保夫

    ○一川委員 このUR対策というものも、農業に直接かかわる方々は非常に関心を持っている対策でございますし、また一方一国民全体としましても、この対策の行方ということについても当然関心があるわけでございますので、国民全体に十分理解ができるような、そういう施策の推進方をぜひお願いしたい、そのように思っております。  今回のこの法律に当然かかわってまいりますけれども、漁港整備計画の期間延長という話題が既に出ているわけですけれども、きょうもちょっと話題が出たと思いますけれども、この漁港の整備の問題は、漁港を抱えているその地域にとっては大変重大な施設でございますし、しかも、漁港そのものというのは、そんなに背後地が広いところである施設でもございませんし、その地域にとっては、海岸線の中の割と平場の狭い、漁村としては、立地条件としては相当厳しいところにすべて立地しております。  そういう中で、漁港整備を中心にして、漁村の整備というのは非常に重要な問題だと思いますが、漁港整備の長期計画が今現在動いております。これは第九次だったですか。この計画の現時点までの進捗状況、そのあたりをまずお聞かせ願いたいと思います。
  88. 嶌田道夫

    ○嶌田政府委員 現在は、第九次漁港整備長期計画の四年目でございまして、拠点漁港の整備でありますとか、漁港漁村の生活環境施設の整備などに重点を置きまして、計画的にまた効率的な実施を行っているところでございます。  平成九年度の事業費は約三千六百四十億となっておりまして、これによりますと、第九次漁港整備長期計画、これは一般公共事業それから地方単独費それからあと調整費というのがございますが、それらを含めました計画規模は全体で三兆円でございます。三兆円に対しまして、平成九年度までの進捗率が五二・五%になっております。
  89. 一川保夫

    ○一川委員 今現在ようやっと半分程度だということでございますけれども、そういう面では、これからの漁港整備というものも、相当やはり単年度予算の段階ではめり張りをつけて取り組まなければならない、そういう状況に来ているというふうに思います。  これからの漁港整備の取り組み方針といいますか、重点化、効率化ということが全体の中では言われておりますけれども、基本的にどういう考え方で取り組んでいかれるのか、そのあたりの考え方を聞かせていただきたいと思います。
  90. 嶌田道夫

    ○嶌田政府委員 昨年、国連海洋法条約の批准を受けまして、日本も新海洋秩序、言うなれば、我が国二百海里内資源の高度利用ということが非常に重要となってきております。これに伴いまして、沿岸漁業、養殖漁業のウエートが高まってきておりまして、これらの情勢変化を踏まえました漁港整備が必要となってきております。さらに、活力ある漁港漁村の形成でありますとか、美しい海辺環境の保全というような新しいニーズもございまして、これらの要望を踏まえました漁港整備の必要性が増してきているという状況にございます。  第九次漁港整備長期計画では、これらの課題基本的な課題といたしまして、その達成のために、基本的な施設の整備でございますとか、漁港漁村の環境整備などを計画的にまた効率的に推進していくということを今やっているところでございます。
  91. 一川保夫

    ○一川委員 相当重点的に、また各地域のいろいろな意向を踏まえて、めり張りのきいた事業の推進方をやっていただかないと、なかなか計画期間内にしっかりとした整備が続かないのではないかというような感じがいたしますので、そのあたりのことを十分配慮していただきたい、そのように思います。  特に漁業関係では、私も日本海に位置しておりますけれども、ことしの重油流出事故という大変痛ましい事故がありまして、大変な被害をこうむっておりますし、今依然として一種の風評被害的なものがまだ残っております。そういう面では、漁業者にとっても、いつ何どきどういう、人災か自然災かわかりませんけれども、そういうものが襲ってくるかわからないという御時世でもございます。  また一方、今、特に日本海側の漁業者にとって関心のある、九州方面もそうですけれども、日中、日韓のいろいろな漁業交渉の問題というのが、これまた漁港とも非常に関係があると思いますけれども、そういう漁業交渉というものが今完全にまだまとまっていないというふうにお聞きしております。これまでの日中、日韓のそういった漁業協定にかかわる交渉の進展度合いというのですか、これまでの交渉の状況、そのあたりをまず御説明願いたいと思います。
  92. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 お答えいたします。  日中間につきましては、先般の橋本総理訪中直前、九月三日でございますが、新協定について実質合意を見たところでございます。恐らく李鵬首相訪日の際に正式調印の運びになるのかな、こんなふうに受けとめております。  他方、日韓間におきましては、水域の問題などまだ難しい問題が残されておりまして、合意に至っておりませんが、早期に妥結するため鋭意努力中でございます。
  93. 一川保夫

    ○一川委員 農水大臣、今の、日中の交渉は、一応暫定的な姿であるが、ある程度目鼻が立っているということなんですけれども、日韓についてはまだ十分見通しが立っていないような印象を受けたわけですね。  このあたり、ある程度何か目標を持って交渉されているというふうに私は思うのですけれども、関係の漁業者の方々というのはこの問題については大変今興奮している状況だと思いますけれども、そのあたりの、いつごろをめどにこういった交渉を妥結したいということで臨んでおられるのか。そういうことも含めて、これからの決意のところをもうちょっとしっかりとお聞かせ願いたいと思います。
  94. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 十分御承知で御質問と思いますが、ある程度、水域問題で大変な対立が正直言ってございます。これについては、与党側からも大変厳しい意見も寄せられているところでございますが、我々はあくまで円満妥結に向けて努力をしているところであります。  ただ、将来に向かって悔いを残すような結論に結びつくことは断じて許されませんので、これらは、将来をきちっと見据えて、皆さん、漁業者の方も納得していただけるようなものにしていきたい、こう考えております。
  95. 一川保夫

    ○一川委員 では、次の話題に移らせていただきます。  公共投資の話題がこの特別委員会でよく議題に出るわけです。これは、財政全体の中で公共投資の占める割合が非常に大きいということも含めて、また、それぞれの地域では、公共事業を中心にしたこういった公共投資に対する非常に大きな期待もありますし、また一方では、公共事業は何をしているというような批判もあるわけですけれども、そういう面では非常に関心のある、そういう施策だというふうに私は思います。  この公共投資について、今回もいろいろな質疑があるわけですけれども、この法案の中で重点化なり効率化ということを明記されているわけですけれども、どうも具体的な内容というのが理解できない。余り御答弁の中でもはっきりとしたものが出てこないということなんですけれども、特に、こういった財政を厳しく抑制しながら公共事業をこれから実施するということになれば、従来いろいろな批判を受けていましたように、例えば、各省庁の公共投資のシェアが固定化されているんじゃないかとか、あるいは各事業間のシェアが非常に硬直化しているというような批判が従来からあるわけです。  こういう問題に対する対応も含めて、この厳しい折にやはりしっかりと見直すところは見直しをかけて、本当に今それぞれの地域で必要な事業をしっかりと期待にこたえて実施していくという、めり張りのきいた、そういう重点化ということが今求められているというふうに基本的に私は思うわけですけれども、そのあたり、いかがでしょうか。
  96. 瓦力

    ○瓦国務大臣 一川委員にお答えをいたします。  御質問の冒頭に、大変厳しい財政事情である、この財政事情を克服しなきゃならぬという御認識もちょうだいをいたしておりますし、加えて、社会資本の整備の重要性も今ほどお聞きをいたしております。その中で、めり張りのきいた対策を立てていかなきゃならぬ、こういうことに視点を置いての御質問でございます。  おっしゃるとおり、目下厳しい財政事情のもとにありまして、これからどう進めていかなければならないかということであります。今までは右肩上がりで経済情勢もよく、財政もそれなりにやつてきたわけでありますが、御案内のとおりの状況でありますから、少しはやはり塩気が要るような時代に入ったと思うんです。これは塩漬けにしてはいけませんので、塩気をきかせながら、どうやって工夫をしていくかというような時代に入ったかと思うわけであります。  それと、公共事業の重点化、効率化、透明化、これは避けて通ることのできない課題でございます。具体的には、重点化につきまして、国と地方の的確な役割分担を進めつつ、経済構造改革関連や地域格差の是正に資するものなどへ思い切った配分を行う 新規事業箇所を厳選することが必要である、こういう視点に立っております。  重点化の例をとって、今、見えがたいというお話がございましたが、財政が厳しい折でございますが、やはり地方から、高規格幹線道路網の整備であるとかあるいは地域高規格道路の整備であるとか、加えて言えば、高度情報化時代でありますから、通信社会に向けた情報ハイウエーの構築等があろうと思うわけでありまして、これらには、厳しい財政の中でございますが、要求といたしましては、これらにウエートを置きながら重点化を進めてまいりたいと考えておるわけであります。  加えて、生活関連で申し上げますと、町村の下水道整備がおくれておりますが、これに対しても配慮しなければならず、加えて、高齢者向けの公共住宅の供給につきましても手だてを講じていかなければならぬ、こう考えております。  昨年以来やはり大きな災害もございまして、なお、国土の脆弱性からいいまして、安全な国土づくり、地域づくり、こう考えてまいりますと、緊急土砂災害防止対策、これらにつきましても、思い切って九五%増で要求しなければなちぬ、こういうぐあいに考えておるところであります。  なお、さらに新規採択箇所につきましても、これを厳選しながら、抑制の例として申し上げますれば、下水道等につきましても、平成九年度は百三十カ所でありましたものを、十年度におきましては百カ所に絞り込んで、効率的に予算を使ってまいりたい、こういうようなことを検討いたしておるわけであります。  また、効率化につきましては、省庁間の連携を密接にする、類似事業間の調整を図る。今委員御指摘のとおりでございますが、公共工事コストの縮減対策に関する行動指針に基づきまして、コスト縮減を可能な限り図ってまいりたい。これらにつきましても、建設省といたしましては、それぞれ、四省間の次官による公共事業の実施に関する連絡会議等を設けまして、既に農林水産省と話し合いをいたしましたり、また厚生省等も話し合って これらを効率的に進めなければならぬ、こういうことで取り組んでおるわけであります。  透明化の問題でありますが、やはりこれは、費用対効果分析の活用、公表を行うことによりまして、箇所やスケジュール等を明らかにして整備プログラムを策定する、公表に取り組んでまいることによりまして、それぞれ地域の方々とも理解も得たり、これらの仕事を円滑に進めるような方策を講じてまいりたい、こう考えておるわけであります。
  97. 一川保夫

    ○一川委員 この委員会でよく話題になる中で、公共投資の長期計画がいろいろ話題になっております。大蔵大臣に、ちょっと確認の意味でもう一回お尋ねしたいわけですけれども、公共投資を七%マイナスにするということが明記されておるわけですね。この七%という数字がどうやって出てきたかというところの根拠めいたものが、どうも何か我々十分理解できないところがあるわけですけれども、数字は明確に書かれておるわけです。  また一方、公共投資の事業量は変更することなく長期計画は期間を延長するとか、中身のことは余り見直しをかけないで期間だけ延長するというようなことが言われておるわけですけれども、そういう面では、公共投資を重点化、効率化と一方で言っておきながら、どうも、公共事業の中身の見直しということはなされていないという面では非常に残念なんですね。  どうですか、大蔵大臣、この七%の根拠をもうちょっとわかりやすく教えていただけませんか。
  98. 三塚博

    三塚国務大臣 この七%でございますが、その前に、十年度公共投資予算について、我が国の一般政府総固定資本形成のGDPに占める比率が諸外国に比べまして格段に大きいことはおわかりのとおりであります。特に、景気対策のために公共投資の大幅な追加が行われました近年において、さらにその比率が高まってきたことも、御案内のとおりでございます。  こういう背景を踏まえながら、今後に対応する。その対応の趣旨は、財政的な危機的状況からの回避をすることにより、前段申し上げております二点の重要目標、三%、赤字公債依存の体質からの脱却を六年後に達成する、こういうことを目標に掲げておるわけでございまして、公共投資の水準を、集中期間につきましては、おおむね景気対策のための大幅な追加が行われてまいりました以前の国民経済に見合った適正な水準まで引き下げることを目指すことが必要だという観点で、一般歳出が対九年度比マイナスとすることといたしました。さらに、総合的に勘案をいたす観点から、政府・与党財政構造会議におけるぎりぎりの調整を行いまして、九年度比七%を上回らないこととすると決めました。  詳しくは、政府委員から追加、解説をさせます。
  99. 一川保夫

    ○一川委員 それ以上の答弁はなかなか難しいと思いますけれども、私はちょっと、十分理解できないところは、五カ年計画は、今回すべての長期計画は対象になっていませんけれども、五カ年計画を二年間延長すると言っていますね。それを単純に計算しますと、おおむね三割ぐらいが縮減になると思うのです。そうした場合に、今回、期間を延長する公共投資長期計画に盛られている公共事業と、期間延長の対象になっていない公共事業というのがあると思うのですね。ないのですか。大蔵大臣も前に答弁されたように、全体で三〇%の縮減になるという話と、単年度ベースで七%落とすという今の話、これはどんな関係になるのでしょうか、このあたり。
  100. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答えいたします。  今回、公共投資長期計画の中で、基本的に、十年度に新たに作成する部分については今回の財政構造改革会議趣旨を踏まえて作成するということになりますが、その他の公共事業長期計画については基本的には改定する、要するに二年ないし四年延長するということになっております。その結果といたしましては、残事業量ベースの縮減は、おおむね三割程度減るということになるわけでございます。
  101. 一川保夫

    ○一川委員 ちょっと、私は十分理解できないのですけれども、非常に単純な計算をすれば、五カ年計画を二年延長して七カ年計画にすれば、おおむね三割程度は縮減になるわけです。それは、単年度予算でも、三割ぐらいのものが自動的に減ってもその消化はできるということになろうと思うのですけれども、その三割減るという話と、歳出の七%を落とすという話なり、そういうものとがどういうふうに連動してくるのかというところが十分わからない。そのあたりを、また別の機会にお尋ねしたいと思いますので、十分御検討をお願いしたい、そのように思います。  それから、公共事業関係だけやっていると時間がたちますので、次に、地方財政の問題に関連しましてお尋ねしたいと思います。  今回のこの法案の中でも、地方財政健全化ということがうたわれております。御案内のとおり、地方財政というのは、我が国行政の最終的な歳出という面からすれば、全体の三分の二ぐらいを地方段階で支出していくというような枠組みになっております。  そういう面では、地方財政健全化するという非常に簡単な言葉にはなっているわけですけれども、現実、この三千三百の各地方公共団体の方々は、この法案がこのままいった場合に、じゃ、これからの地方財政健全化するということにはなっているけれども、具体的にどういうことになってくるのかというところが非常に見えてこない。  これは、地方財政の中でも特に大きなウエートを占めるのは公共事業でありますし、また、社会保障なり教育に関する経費といったもので、各地方公共団体でもそうでしょうけれども、おおよそ七割近くのものがこういう分野で費やされているわけですね。  そういうことを考えますと、今回のこの法案に基づいてもし物事が処理されていった場合に、自動的に、公共投資の抑制なり補助金の抑制なり、そういうものにいろいろとキャップがかかってきておりますから、当然ながら地方財政の問題にもろに影響してくるわけです。  そういったときに、これからの地方財政健全化、自主性なり自立性を尊重するというような言い方にもなっておりますけれども、それに対して、必要な措置を講ずるという言い方で簡単に表示されておりますけれども、じゃ、具体的にどういうような措置を考えていこうとしておられるのか、そのあたりをまずお尋ねしたいと思います。
  102. 上杉光弘

    上杉国務大臣 お答えをいたします。  二点お尋ねでございますが、まず、現下の地方財政は非常に厳しいというのは、もう御承知のとおりでございまして、大幅な財源不足と高い公債依存度に地方財政がゆだねられておる。  通常収支不足で四兆六千五百四十四億円という極めて厳しい状況にございますし、地方債の依存度は一三・九%でございます。さらに多額の借入金残高がございまして、平成九年度末で百四十七兆円に上るというものでございます。これは対GDP比二八・五%という比率でもございます。また個別の地方団体財政事情は極めて硬直化いたしておりまして、公債費の負担比率一五%以上というのが四五%の市町村に上っておるわけでございます。このように、非常に厳しい状況地方財政があると認識をいたしております。  また、地方分権の本格的な推進に伴いまして、御指摘のように、地方団体の担うべき役割が増大する、高齢化の進展に伴う総合的な地域福祉施策などの財政需要の増大が見込まれることから、地方財政はさらに極めて厳しい状況にあるというふうに考えております。  このような中で、国及び地方財政赤字の対GDP比三%以下という目標を達成するためには、交付税特別会計借入金や財源対策債の圧縮に努め、財源不足を補てんするための特例的な借入金に依存する財政構造改革を進めていく必要がございます。このため、国、地方双方の歳出抑制につながる施策の見直し、地方単独政策の抑制などにより、平成十年度の地方財政計画の地方一般歳出について対前年度比マイナスを目指すことといたしております。  また、地方公共団体に対しましては、厳しい財政事情を十分踏まえまして、徹底した行財政改革に取り組むとともに、厳しく歳出の抑制を図り、財政体質の健全化に努めるよう要請するなど、地方財政構造改革推進に積極的に取り組んでまいりたいと思います。  なお、もう一つのお尋ねでございますが、地方歳出額が抑制されたものとなるような必要な措置を講ずる、具体的にはどのように考えておるか、こういうことでございます。  地方財政健全化を進めるためには、地方財政計画の規模の抑制に努めることが必要でございます。ご指摘のとおり、地方財政は、国の施策や予算と密接に関連する公共投資、社会保障、教育で一般歳出の約七割を占めておるわけでございます。これらについての制度の検討や、予算の抑制等の国の取り組みが必要でございます。  こうしたことから、公共投資予算社会保障制度につきましても、国地方双方の歳出抑制につながる施策の見直しを進めますとともに、あわせて、地方単独施策の抑制などにも、先ほど申し上げましたように、これらによりまして、平成十年度地方財政計画の地方一般歳出について対前年度比マイナスを目指していく、地方一般歳出が抑制されたものとなるようにいたしてまいりたいと考えております。
  103. 一川保夫

    ○一川委員 地方公共団体にとっては、この法律の行く末というものについて大変関心を持っていることは間違いないというふうに私は思います。集中改革期間三カ年間、補助金ベースの話もこの法律に盛られておりますけれども、まあ補助金、制度的な補助金とその他補助金というふうに一応区分けされておりますけれども、その他補助金については一〇%ずつ削減するというような表示にもなっております。  これは、来年度以降、もしこういうことでなされていった場合に、各地方公共団体は継続的な仕事をたくさん抱えておるわけですね。そうなってまいりますと、国の補助金ベースで削減されていったといったときに、そうかといってその事業を途中で打ち切ることができないということになれば、県はある程度単独事業で対応せざるを得ないというケースが当然出てくるわけです。そういった場合、特にそれが人件費にかかわったような経費があった場合、特に人件費なんというのは、簡単に削減するといったってなかなかできないというのは、もう御案内のとおりだと思います。  そういうことをいろいろ考えますと、今回のこの法案に基づいての処理がなされていった場合に、地方公共団体財政健全化とは言われているわけですけれども、何か具体的な方向性が見出せないと、それぞれの地域も、いろいろな特色を生かしながら地方の競争の時代を今乗り切ろうとしているわけですけれども、そういう面について、どうも地方負担を転嫁していくような流れが出てくるのではないかなという感じを一方で受けるわけですけれども、そのあたり、いかがですか。  これは、大蔵大臣になるのですか、自治大臣になるのですか、何かお答え願いたいと思うのです。
  104. 上杉光弘

    上杉国務大臣 御心配の点は、御指摘の点は、私もそのように、地方団体の心配がなくなるようにしなければならぬと思っておりますが、言うなれば、そのような一つの目標を達成していくためには、これはもう自治省だけではどうにもならないわけでございます。  事業を持つ各省庁との協力体制というものが極めて重要でございまして、国、地方双方の歳出抑制につながる施策の見直しが重要でありますとともに、国から地方への負担の転嫁のようなことは行われるべきでないことはもう申し上げるまでもないことでございまして、この点についても、関係各省庁に対しまして、自治省として強く要請してまいりたいと考えております
  105. 一川保夫

    ○一川委員 また、地方公共団体の財源として、従来から地方交付税を中心にした制度があるわけですね。これは、地方にとっては一種の固有財源といったような性格を持っておりますし、財政力の弱いそういった市町村においては、もう地方税以上の意味合いを持っているのは地方交付税であったりするわけです。  そういうことをいろいろ考えますと、じゃ、こういう財政構造改革といった施策をこれから強力に展開するということになれば、今現在動いている地方交付税制度なり地方債の制度、こういったようなものも含めて見直しをかげながら、新しい考え方で取り組むというふうに理解してよろしいわけですか。
  106. 上杉光弘

    上杉国務大臣 財政構造改革推進に当たりましては、地方交付税、地方債については、当面、まず一つは、国の公共事業や地方単独事業に係る地方財政計画計上額の抑制と、これに対応した地方債計画額、地方交付税算入額の抑制、それから二つ目には、地方債抑制のための地方債充当率の見直しなどを考えているところでございます。具体的な内容については、平成十年度の国の予算編成の動向を踏まえつつ、平成十年度の地方財政計画の策定過程において決めてまいりたいと考えております。  また、地方交付税の算定に当たりましては、自主的な再建努力や行革努力を促す観点からの財政需要を反映することは必要と考えており、今後、地方分権推進委員会の勧告を踏まえつつ、幅広く検討してまいりたいと考えております。  なお、現に存在している地方公共団体財政需要や財政収入と関係なく地方交付税の制限を行ったりあるいは加算したりすることは、地方公共団体に一定の行政水準を義務づけ、それとの関連で必要な財源を保障することとしている現行の地方交付税制度のもとでは想定していないことであり、とるべきではないと考えております。
  107. 一川保夫

    ○一川委員 それでは、ちょっと厚生大臣にお伺いしたいと思うのですけれども 今までの地方財政の中でも社会保障というものが相当大きなウエートを占めているのは現実でございますし、今回のこの委員会の中でも、社会保障制度に関連してのいろいろな質疑があるわけです。厚生大臣の方からは、まずキャップをはめることが大事だ、制度の中身はそれからだというような御答弁もあったように私は聞いております。  しかし、こういった社会保障制度のあり方ということは、これまた非常に国民の関心の強いところでございまして、とのたびこういった財政構造改革という大きな施策を展開しようとするときに、大変大きなウエートを占める社会保障について、その中身、基本的な考え方の方向づけが見えてこないというのは非常に残念なんですけれども、特に今後の社会保障制度のあり方なり、また地方財政健全化を図っていくという観点から、厚生大臣基本的な考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  108. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 社会保障制度の構造的な改革を図るために、まず、今後は年金にしても医療にしても、給付負担の公平をいかに図っていくか。そして、特に社会保障サービスというのは、地方の住民に密着した活動といいますか、市町村が一番、身近な住民サービスをどうすべきかということについては一番知っているはずであります。介護等におきましても、今後は市町村が大きな役割を果たす。そういう中で、今中央から地方へといういわゆる地方分権の流れを踏まえて、できるだけ住民サービスは一番よく知っている市町村に大きな役割を担っていただこう。  そういう中で、お互い給付負担の公平化、特に地方には、住民には高齢者も若い世代も両方住んでおられるわけでありますので、こういう点に関しましても、若い世代の過重な負担にならないような社会保障制度のサービスをどうやって地方が提供していくか、その際の財源問題につきましても、できるだけ地方の実情に沿って、厚生省としても支援体制をとっていきたいというふうに考えております。
  109. 一川保夫

    ○一川委員 では、厚生大臣にもう一点、せっかくの機会なので一つお尋ねしたいのは、今現在、いろいろな制度見直しの一環として、今郵便貯金関係のことも含めてありますけれども、厚生省の年金の運用の問題ということが、財投のいろいろな制度にもかかわってきますけれども、そういうことについて、今厚生省が所管されているそういう資金の運用の今後のあり方ということについて、大臣の基本的な考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  110. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 私も、率直に言って、この時代の流れの速さに内心びっくりする点があるのです。  昨年の十一月厚生大臣に就任してから、年金の自主運用を指示してきました。特殊法人の整理統廃合、財政投融資制度改革考えるのだったらば、今の年金と郵貯と簡保の財投に対する預託制度はおかしいじゃないか。年金資金と郵便貯金を一緒に、性質の違うものを財投に預託している。だから就任直後、年金の方の自主運用を事務当局に指示しました。こっちの方から財投の改革を促そうと思って、まず年金自主運用の検討会を厚生省内に設置しました、厚生省の大臣の諮問機関を、専門家によりまして。  当時、こんなことをやったって、できっこないよというような雰囲気でありました。しかし、今、むしろ郵政省の方も預託廃止を考えている。むしろ、困難と思われたのが、もう預託の廃止は当然だという雰囲気になっていました。これはまさに、今大きな時代の転換期にあるんだなと思いました。  今後とも、年金自主運用を考える場合は、安全で有利な運用を考えなきゃいかぬ。どういう方法がいいかということを、年金自主運用検討会の御審議をいただきましたので、今後とも、その安全、有利をどうやって担保しながら自主運用をしていくかということも鋭意検討していきたい。そして、財投改革につなげ、特殊法人の整理統廃合につなげ、抜本的な行財政改革が本格的に動き出すために、年金の側からもこの改革を促進していきたいと思っております。
  111. 一川保夫

    ○一川委員 以上で、質問を終わります。
  112. 中山成彬

    ○中山(成)委員長代理 これにて一回君の質疑は終了いたしました。  次に、山本孝史君。
  113. 山本孝史

    山本(孝)委員 新進党の山本孝史でございます。きょうは、この財政改革法案について質問をさせていただきたいと思います。  この法案をいただきまして、読んでみても、あるいはこの委員会の審議の御答弁等あるいは質問者の内容を聞いておりましても、関西弁で言えば、ほんまにけったいな法律やなという感じしかしません。ここしばらくといいますか、この委員会の審議の中でも何回も指摘がされておりますけれども、歳出増につながる補正予算について全く触れられていない。国鉄債務等についてもやはり触れられていない。私はずっと厚生委員会に所属をさせていただいておりますけれども、例えば厚生年金への国庫負担の繰り延べあるいは政管健保の部分、これも触れられておりません。自賠責から借りておられる部分、これもどうするのか、いわゆる隠れ借金の部分は全く触れられていない。  これは多分、資料を見まして、今回の法律はアメリカの包括財政調整法をお手本にしておつくりになっているんだろうと思いますけれども、アメリカの法律は歳入も歳出も両方ともに触れているのに、歳入について全く触れていないという、日本型のこういう法律をおつくりになっているという部分もよくわかりません。増税と減税について一体どうするのかというところが、全然これは書いていない。こういう部分において、何でこういう法律を今つくらなければいけないのかというのが、やはりよくわからない、正直なところ。  何でかということを一つだけ思いつくとすれば、多分、各省庁の抵抗があって、縦割りの予算編成をしている中で、調整をするのが非常に難しい。あるいは、族議員と言われている皆さんの歳出圧力が随分あって、そこを抑え込むのがどうも難しい。ここの質問を聞いておりましても、申しわけないですけれども、いわゆる道路特定財源についても、どう使うんだという話にしても、私の地方の方に早く高速道路を引けというようなお話が公然として出てくるという中において、そういうのが非常に難しいので、これはもう予算の立て方というものについて、いわば内閣が手を縛ってくれと。  この間も、予算編成権を縛るものですという内閣法制局長官の御答弁がありましたけれども、そういう形で縛ってもらって、方法としては余り望ましいことではないけれども、こういう方法でしか財政再建はできないんだということを、まあ言ってみれば、内閣国会もともに無力であります、非力でありますということを国民に言っているような法律をつくっているのかなというふうにしか私は思えません。  まあ、与党の皆さんがことしの年末の予算をきっちりおつくりになれば、こんな法律は要らないんじゃないかというぐらいに私は思うわけですが、これから年末の予算編成になって、皆さん方のつくられる数字を見てみたいというふうには思っておりますが。  きょうは特に、お忙しい中ですが、厚生大臣にも来ていただいております。今回の法律の中に特に詳しく書き込まれています社会保障関係費についての御質問をさせていただきたいと思います。  この法律の中にいろいろ書いてありますけれども、一番よく細かく書いてあるのは、結局は、社会保障のところしか書いていないのですね。言ってみれば、これは財政構造改革推進に関する特別措置法という名前を持っていますけれども、実際のところは、社会保障費削減法律だというような感じが私はするわけです。  それで、三千億円の増にしましたというふうになっていて、各部門は全部減らされている中で、厚生関係特に社会保障関係費は三千億ふやしてもらったのですよ、うちは特別扱いをしていただいたのだというふうに厚生大臣はお話しになるのですが、自然増で八千五百億円ふえるところを、五千五百億削って三千億というふうにしたわけですから、やはり削っているわけですね。非常に大きく削っているわけですね。  それで、何でこの三千億の増にとどまるということにされたのですかという御説明を求めましたら、高齢者関係社会保障費用が八兆二千億円ある、それで、高齢者数の増加率で減らすと書いてありますので、高齢者の増加率三・五%を掛け合わせれば約三千億になるのですという御説明なのです。  厚生大臣にお尋ねをしたいのですけれども、こういうふうな改革方針を決められました財政構造改革会議、与党と政府でおつくりになりましたけれども、この財政構造改革会議には厚生大臣はメンバーではありませんでした。今この中におられる閣僚の方で、この改革会議のメンバーは三塚大蔵大臣だけかというふうに思いますけれども、この社会保障関係費の削減の方策、あるいは三千億円、大臣に言わせてみれば、ふやしてもらったというふうにおっしゃいますが、三千億円という数字、これは厚生省が改革会議の方にお示しになった数字なのか、あるいは、どこか別のところで決められてきてこの数字になったのか。この数字が決められたいきさつをぜひ教えていただきたいと思います。
  114. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 日にちは忘れましたけれども、財政構造改革会議に出てこいという会議がありまして、厚生大臣としてその財政構造改革会議出席しました。  そのときに、政府歳出を削減しなさい、しなさいというのをみんな賛成しているけれども、厚生省関係予算というのは大変なんですよ、みんな総論賛成だけれども、もし来年の予算を一般会計歳出マイナスにするということで各省庁マイナスにやるんだったら、一番反対が出るところは厚生省予算だと思う、本当にできるのですか、厚生省関係予算を前年度マイナスすることは容易でないというか、ほとんど不可能ですと申し上げました。しかし、どうしてもやるんだというので皆さんが決めればやりますけれども、そう決めて一番反対するのは恐らく与党ではないのかなと言ったことがございます。そういう経過があります。  しかし、最終的に、恐らく私のそういう発言も一部取り入れてくれたのでしょう。来年度予算は、九年度予算に比べて一般歳出はマイナスにするけれども、厚生省予算はマイナスにしない、三千億円増を認めるという結果が出ました。これでみんないいですねと。いいというならやりますけれども、やって、後で驚かないでくださいよということは申し上げておきました。
  115. 山本孝史

    山本(孝)委員 大臣としては、財政構造改革会議に呼ばれて、厚生省としてのお立場というかお考えをおっしゃったけれども、ここのメンバーの皆さん、あるいはその後閣議決定をされているわけですから、内閣あるいは閣僚その他の皆さんも、厚生予算は大変なことはよくわかるけれども、これでやるしかないんだ、したがって小泉厚生大臣、これをやりなさいという話になって、大臣としては今この数字を受けているんだという御説明かと思います。  そうしますと、三千億という数字、あるいは高齢者の増加率に抑えるという考え方、どちらも構造改革会議の中で決まってきている話であって、そのキャップの中に我々の厚生予算を抑えればいいんだというお立場ということになれば、この数字そのものは、不本意ながら受けとめておられるというふうな理解でよろしいんでしょうか。あるいは、反対したけれどもやはり抑え込まれたんだ、我々はこれじゃ無理だ。  あるいは、聞き方を変えれば、自然増として八千五百億伸びていく中を五千五百億削る、この削るという算段についてある程度の腹づもりといいますか、めどをお持ちになって、じゃ、この数字を厚生省としては受けましょうというふうに厚生大臣はお答えになったんでしょうか。
  116. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 今後日本経済発展を維持するために、国民負担率を五〇%以下に抑えるということに私は賛成であります。増税をできるだけ避ける、これも賛成であります。赤字国債を増発しない、賛成であります。総論の中で決めよう。総論、賛成しました。この総論を実行するためにどういう方法があるかということで、各論も賛成していきたいと思っております。
  117. 山本孝史

    山本(孝)委員 閣僚の一員として、この数字の実現に努力するんだという一種決意表明かというふうにも思いますけれども、私、後でも触れますけれども、問題は、この構造改革会議が実は非公開なんですね。我々は、新聞でしか内容を漏れ承ることがない。  非常に激しい議論がこの中でなされて、言ってみれば、そこでの議論を今回法律にされたわけですから、この財政構造改革会議議論というものが、議事録があるのであれば、ぜひこれを出していただいて、そこで、一体閣僚の皆さんそれぞれが、どういうふうな考え方でこの法案に、あるいは財政構造改革に、各省を代表して臨もうとしておられるのかというところを、ぜひこれは国民の前に明らかにすべきだというふうに思うんですね。  でないと、これは議論の前提が我々にはわからない。それで、こういう変な法律だというふうに私が言わなきゃいけない話になってしまうので、ぜひ議事録を出していただきたいというふうに思いますので、委員長、取り計らいをお願いします。(発言する者あり)官房長官、来られましたか。済みません、官房長官、官房長官もそのときのメンバーでないのであれですけれども、ぜひ構造改革会議の、非公開になっておりますので、このときの議事録をぜひこの委員会なり国会にお出しをいただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いします。
  118. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 今来たばかりで、御質問ありましたが、私、参画をしておりませんし、何か議事録をつくっていない、こういうことでございまして、いろいろな話し合いが行われたことは事実だろうと思いますが、これを出すというようなことは考えてない、こう思っております。
  119. 山本孝史

    山本(孝)委員 国会審議を深めるために、あるいはこの法律を通すことで国民の皆さんに理解をしていただくためにも、この法案の作成の前提になっている部分を、ぜひその会議の内容というものを、まあ議事録というものがないのであっても、メモはとっておられるはずですし、担当の方たちがそこのところの議事要旨というものか議事の概要は必ず残しておられると思うので、ぜひこの点は、議事録がないとおっしゃるのであれば、その議事要旨をお願いしたいと思います。
  120. 中山成彬

    ○中山(成)委員長代理 委員長より申し上げますが、議事録についてはないということで報告を受けておりますが、要求資料につきましては、後で理事会でまた諮らせていただきます。  質疑を続けてください。山本孝史君。
  121. 山本孝史

    山本(孝)委員 情報の公開をしていくということが、国民に対しての理解を求めていく一番の近道であるというふうに思いますので、まあ薬害エイズの資料とまでは言いませんけれども、あるものをないというふうな言い方はぜひやめていただきたいというふうに思います。  それから、質問を続けさせていただきます。  自然増として五千五百億円を削るということになったわけですけれども、御答弁を聞いていますと、これからどういうふうに削るかは考えるんだという御答弁ですけれども、この自然増五千五百億円を、どの分野で幾らずつ削るというふうにお考えなんでしょうか。
  122. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 五千五百億円の分のうち、約四千二百億円程度を医療関係費で削ります。これは、年末の予算編成までに具体的に決めていかなきゃならないところであります。
  123. 山本孝史

    山本(孝)委員 五千五百で四千二百、残りが千三百億。千三百億はどういう形で削るということなんでしょうか。
  124. 田中泰弘

    田中(泰)政府委員 お答え申します。  医療費の四千二百億のほか、年金の関係で三百億、それから、その他一千億の自然増がございましたが、社会保険事務費、国立病院繰り入れ等縮減方策を講じまして、一千億の削減を講じたということでございます。  以上でございます。
  125. 山本孝史

    山本(孝)委員 厚生大臣、お尋ねします。  四千二百億円を削る。医療費ベースでいけば恐らく一兆五千億ぐらいの金額になるかというふうに思うのですけれども、この一兆五千億円、薬価、診療報酬あるいは患者の自己負担等々考えておられると思いますが、それぞれの領域でどの程度ずつ削り合わせて、四千二百億という数字を出そうというおつもりでしょうか。
  126. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 今後すべての項目を洗い直して、その中で年末までに結論を出したいと思います。
  127. 山本孝史

    山本(孝)委員 最終的に五千五百億削り合わせる。年金の三百億は既に制度改正として決まっている部分ですからそれはそれとして、福祉の部分で事務費だとかいろいろな部分を削り合わせて千億ぐらい削れるだろう。すると、どうしても残ってしまうのが、この医療費の四千二百億というお金が残る。  ということは、五千五百という数字を聞かれたときに、あるいは計算されたときにわかる話だというふうに思うのですが、医療費で四千二百億削るという段取りにならざるを得ない。そういうふうに気がつかれたというか、判断された時点で、これはできるというふうなお考えだったでしょうか。
  128. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 できるできないではなくて、やらなきゃならないと思いました。
  129. 山本孝史

    山本(孝)委員 我々普通の考え方でいけば、積み上げてきて、これぐらい必要なのでどうしてもこれだけ必要だなと、大体むだばなしにつくってきているはずですから、それを前提に考えていったときに、削るところなんてないのになという話。しかし、それをあえて削らざるを得ない、もうやるしかないんだということをおっしゃるわけです。  ということは、四千二百億という数字が残ったときに、それの削り方というか、どこで、診療報酬で削るのか、あるいは薬価ではさっと削るのか、診療報酬のパーセントをぱっと変えるのか、あるいは患者負担をもっと、ここでもいろいろ議論になっていますけれども、給食費であるとかあるいは高額医療費の見直しであるとかといったようなところで考えるのか。そんなことはとにかく後回しにして、とにかく金額だけが先に行っているんだという感じなんですよね。  それで、そういう考え方も一つはあるのだろうと思います。この間来、フランスの医療改革等を聞いておりましても、あるいはヨーロッパの医療改革、結局は総予算制をしいて、この病院の予算はこれだけですという形に頭を抑えてしまって、後は、なくなってしまえば、どうぞ手術は来年にとか、お薬はこれだけしか出ませんよというような形の、非常に激しいやり方かと思いますけれども、そういう方向もやり方としてはあるのだろう。  そういうやり方が、社会保障という領域の中において望ましいと思っておられるのか、仕方がないと思っておられるのか、そこは、大臣としての受けとめ方はどうなんでしょうか。
  130. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 財源が豊かであれば、望ましいことは全部するというのが一番いいと思います。給付負担考えながらやるしかないのではないでしょうか。病院でも総予算制をとっているヨーロッパの制度もあります。この額しかもう見ませんよというなら、やらざるを得ない。  この点は、できれば必要な点は全部やって、お金に相談することなくやれたらば一番いいのだと思いますけれども、現実的にはそういうことはできないのならば、それぞれいろいろな状況考えながら、いろいろ知恵を出すしかないのではないかと思っています。
  131. 山本孝史

    山本(孝)委員 もう一度違う形で聞きますけれども、今回は来年度の予算案について、こういうキャップ制をしいて、全部抑えるという形をとろうとしている。同じ手法でもって、厚生省が所管しているいろいろな予算の中で、こういうふうなキャップ制をしいて、あれば何でもできるけれども、お金がないんだから、こういう形で抑えていくというお考えをもって厚生省の全体の予算編成に臨むというおつもりがあるんですか。
  132. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 それはケース・バイ・ケースという場合が多いと思いますけれども、全体として予算というのは、例えば公益法人の補助金は前年度に比べて大幅に減らせという指示をしないと減らしませんね。全部必要で、増額要求です。しかし、だめだと。個別に全部、例えば半分減らせとか三分の一減らせとは言いませんけれども、総額全体で三分の一なり半分なり減らせという指示を出さないと、なかなか減らせないという実情は現実的にあると思います。
  133. 山本孝史

    山本(孝)委員 ことしの予算の中で、どういうふうな形で、どの領域をどういうふうにして切り込んでいかれるのか、もう少しこの組み立て方を見てから、また質問をさせていただきたいというふうに思います。  申し上げていますように、年金改革あるいは医療改革について、随分細かくこの中に書き込みがしてあります。それで、年金改革についてお尋ねをしたいというふうに思っているのです。  社会保障関係費については、増加額をできるだけ抑制するという表現がしてあります。公共事業予算や農林水産省関係予算は、重点化及び効率化を図るという書き方がしてあります。抑制という言葉はこの中にはありません。中小企業対策費は、すべての歳出を見直すというふうにされておられて、各分野ごとにその基本方針の書き方が少しずつ違います。  分野によって、多分これはやり方が違うというか、取り組み方が違うんだな。長期計画は、年数を延ばすだけで総額は減らしてないんだから、それは抑制にはなってないから抑制という言葉は使えないんで、抑制とはしてないんだというふうな考え方も思いましたけれども。  この社会保障改革の中の年金部門で、きのうも同僚の岡田議員が質問をさせていただきましたが、高額所得の高齢者に対する医療あるいは年金の給付を制限するという条項があります。  第九条で医療保険制度改革、あるいは第十条で年金制度改革について検討するということがありますけれども、それぞれの条項の第二項めのところにわざわざ別建てにして、高齢者の置かれた経済状況を踏まえ、一定額以上の収入等を有する高齢者に対する医療、年金給付等のあり方について検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずるということで、わざわざ別書きをしておられます。  これは、新聞報道では、橋本総理が高額所得者の給付についてはやるんだということを構造改革会議の中でおっしゃって、こういう形で盛り込みがされているという新聞報道もありましたけれども、まず、年金についてお尋ねします。  第十条の第一項で改革の検討項目を細かくお書きになった上に、第二項で別建てで高額所得者への給付制限を明文化しておられる。これだけはやる、これはやらなきゃいけないことなんだという強い意思のあらわれとしてこういうふうにお書きになっておられるのか。そこの気持ちを、お考えを、厚生大臣、お述べいただきたいと思います心
  134. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 この高額所得者に対しての年金給付なんですが、一部に、御承知のとおり、たくさん収入があるのに年金要らないじゃないかという声が出ているのは事実であります。そういう議論がなされましたけれども、年金というのは長年培ってきた約束事ですから、すぐにはできませんと私の方からは主張してきたわけであります。  しかしながら、高額所得者は要らないのではないかという声もあることを考えながら、そういう点も含めて検討してみましょう。しかし、年金制度趣旨からいうと、これはいろいろ問題が多いのではないですかということから、検討材料として今後議論していかなきゃならないなということであります。
  135. 山本孝史

    山本(孝)委員 大臣、恐れ入ります。検討材料として出すということであれば、私が申し上げているのは、そうであれば第十条の一項の一つとしてお書きになればいいことであって、第十条の第二項にわざわざ別建てでお書きになっておられるというのは、この項目はほかの第一項に書いておられる項目とは違う意味があるんです、これは同じように検討するについても、必要な措置を講ずるということにはちょっと意味合いが違うんですよということをおっしゃっている。この法律は、そういうふうに書いてあるんじゃないんですか。大臣、済みません、こういうふうな法律をお出しになったという、そこのところをはっきりしていただきたいのです。
  136. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 法的な、事務的なことは事務当局から答弁させます。
  137. 矢野朝水

    ○矢野(朝)政府委員 お答えいたします。  これは確かに条文を分けて書いてございます。これはいろいろ経緯があったわけですけれども、私どもは、これは条文の整理の問題だ、立法的な、法律のつくり、立て方の問題だという理解をしております。この問題というのは、実は、年金だけでなく医療につきましても、高額所得者は医療給付をカットしていいんじゃないか、こういう議論もございまして、そういう共通の問題なんですね。それで、どこに書くかということで、最終的には別建ての書き方になった。  しかし、これは先ほど大臣も申し上げましたとおり、年金制度の非常に根幹に触れる問題でございましてこれは年金の信用にかかわる問題ですね。したがって、いろいろな御議論がございまして、これは、次期改正の中でほかの問題とあわせてこの問題も検討する、こういうことになっておりまして、現に年金審議会におきまして、ほかの問題とあわせて、この問題についても既に御議論をいただいておる、こういう状況でございます。
  138. 山本孝史

    山本(孝)委員 であれば、単にこれは法文の整理でこういうふうに別建てにしたというのではなくて、第一項の中に入れ込んでしまえばいいわけですね。こういう形で第二項を別建てされるということは、そこに一定の強い意思があって、第二項の別建てをしておられるというふうにしか、ここは私には理解ができないのです。  それで、きのうの岡田委員質問に対して、確かにこの高額所得者の年金カットという部分について支持する声が多いんだというふうにおっしゃいました。これも新聞報道でしか見ておりませんけれども、財政構造改革会議では、平成十年度から実施しろ、つまり十二年じゃなくて平成十年度、もう来年度からこの話は実施したらいいんじゃないかという議論構造改革会議の中であったというふうに聞いておるのですけれども、そういう議論があったのでしょうか。出ておられないのでわからないかもしれませんが。
  139. 三塚博

    三塚国務大臣 毎週二回……(山本(孝)委員「済みません、ちょっと待ってください」と呼ぶ)御指名がありましたから出たのですよ。
  140. 山本孝史

    山本(孝)委員 財政構造改革会議の座長は総理であるので、官房長官にお願いします。(発言する者あり)
  141. 中山成彬

    ○中山(成)委員長代理 もう一回質問してください。よくわかりません。  山本君。
  142. 山本孝史

    山本(孝)委員 財政構造改革会議の中で、高額所得者に対する年金給付のカットというものを平成十年度からやったらいいじゃないかという議論があったというふうに聞くんですけれども、これは総理が座長でいらっしゃるので、きょう総理はおられませんので聞けませんので、官房長官に、かわりにお答えをしていただきたい。
  143. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 それは、私が出ていた会議の範囲しか知りません。その私が出ていた会議で、どなたが言ったのかわかりませんが、そういう問題があるけどどうだという質問を受けたことがあります。私に対して、そういう世間の声があるがと。私は、それは来年度からは無理だということを主張しておきました。
  144. 山本孝史

    山本(孝)委員 厚生大臣、済みません、私が出ていた会議というのはどの会議なんですか。
  145. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 日にちは忘れましたけれども、私呼ばれて、厚生省予算を前年度マイナス予算組むのは大変ですよ、皆さん総論で賛成と言っているけれども、いざ具体的にやったら厚生省予算をマイナスというのはほとんど不可能だ、どうしてもやらなきゃならないと言うんならやるけれども、やって一番びっくりするのは恐らく与党でしょうというような発言をした会議だと思います。  その中でいろんな議論が出てきて、こういう意見があるがどうか、厚生大臣どう思うかと言われた中で、たしか、高額所得者に対する年金給付を削減するのがあるけれども、来年できるかどうかというのは、質問があったと思います。そのときに私は、来年はそれは無理ですと言った覚えがあります。
  146. 山本孝史

    山本(孝)委員 財政構造改革会議に出られたときにそういう話を聞いたと。どの会議ということがわかりませんでしたのでお聞きをしました。  財政構造改革会議でそういう議論があったけれども、そういうふうに大臣はおっしゃったということですね。最終的に、一種反対はされたんだけれども、こういう形で、法律の中には検討項目として別建てで書き込みがされているということである。  問題は、きのうも議論になっていましたけれども、要は、一生懸命働いて、その働いている間に苦労して保険料を払って、例えば事業がうまく成功して将来非常に所得が多くなったというか高額所得になったとなると、あなた、そのときに年金はもらえませんよ、保険はもらえませんよという話になる。言ってみれば、一生懸命働いた者が将来は一種ペナルティーを受けてしまうという形になるようなものは保険の中には全くなじみませんし、そうであるならば、一生懸命やっている人、あるいは将来に向かって高額の所得が期待される人というのは、年金も保険も払いたくないという話になってしまう。  当然そんなことは御理解した上で、こういうふうなものをお書きになっておる。政府はこれから検討を加えるというふうに書いておられるので、どうかというふうに思いますが、大蔵大臣、恐れ入ります、大蔵大臣、ずっとこの改革会議にも出ておられて、そういう議論も直接耳にしておられるというふうに思いますが、大蔵大臣として、この高額所得者の年金のカットということについての御所見をお伺いしたいと思います。
  147. 三塚博

    三塚国務大臣 小泉大臣、招請を受けて、社会保障全般について議論がございました財政構造改革会議であります。そして、三党与党政策責任者だけではなく、党の責任者、党首、そして内閣総理大臣経験者、大蔵大臣経験者の参加の会議でございました。小泉大臣言われるようなやりとりがございました。その後も、社会保障全般について、受給と、受益と負担という基本的な命題の論議が行われております。  そういう中で、この負担の問題いかんということでありますが、私は、政府を代表する大蔵大臣として出席をいたしておりますものですから、本件の論議を見ながらこれに対応してきたことは事実であります。大論議が白熱をいたしておる中で、法制上の問題、それと国民感情、高額所得者は辞退をして、権利があるわけですから、権利のある中でなおかつ辞退をして、年金会計がよくなるようにすべきではないか、自発的にこれに臨んでいただくことを期待するという声もありました。しかし、これは、国民論議の動向を聞いてまいることも大事ではないのかということでこれが収束され、このような形になったものと思います。
  148. 山本孝史

    山本(孝)委員 大臣、恐れ入ります。私の質問に答えていただいていないのです。高額所得者の年金を、給付をカットするということについて、大蔵大臣あるいは三塚先生としてのお考えをお尋ねしています。
  149. 三塚博

    三塚国務大臣 大蔵大臣であろうと衆議院議員であろうと同感、同じでありますから、私はそういう政治信念を持っております。  国務大臣という立場がもう一つあります。国務大臣とすれば、何が公正、公平なのか、バランスをとることも大事、高額所得者の自発的な辞退によりこれに御参加をいただくことはよいことではないかと考えております。
  150. 山本孝史

    山本(孝)委員 先ほどの御答弁では、こういう声もありましたというふうにおっしゃったので、大臣のお声が聞こえませんでしたけれども、今、実はその意見は御自身の御意見だったということですね。  伊吹先生、恐れ入ります。自民党の社会部会長であられ、あるいは厚生の問題に非常にお詳しい先生にお尋ねをしたいと思います。  同じ質問でございますが、年金、医療等の高額所得者に対する保険制度の中での給付のカットということについて、伊吹労働大臣はどのようにお考えでしょうか。
  151. 伊吹文明

    ○伊吹国務大臣 労働大臣としての御質問ではないという前提でお答えをしたいと思いますが、年金というのは一種の保険計算によって掛けられているわけでありますが、これは、長寿’少子化、それからもう一つはバブル崩壊に伴う運用利回りの低下、そういうことを踏まえて、年金財政というものが将来的には極めて難しいという状況になっているわけですから、できる限り約束事を守っていくためにどこで修正をしていかなければならないかという問題だと思います。  したがって、今大蔵大臣の、あるいは政治家としての三塚先生の御発言として、自発的にという御発言がございました。そこのところが非常に難しい問題だろうと私は思いますが、自発的にそういうことをやりながらシステムを守っていこうという方が出てきてくださるということは、何ら否定すべきことではないと私は思います。  ただ、これを強制的に、幾ら以上の所得についてやるかどうかということについては、これはやはり民主主義の世の中でありますから、多くの受給者の権利を守っていくために、高額所得の方が遠慮をするということを法定していくかどうかということについては、これは今後の課題だと私は思っております。
  152. 山本孝史

    山本(孝)委員 大蔵大臣のところで反論をさせていただければよかったのですけれども、あり方について検討を加え、自発的に返上していただくというのは、一種寄附ですね、あるいは辞退ですね。そういうことを法制化するのは難しいという、個人のお立場として今伊吹先生お答えになったのだというふうに思いますけれども、これは制度として仕組むわけですね。年金をカットするということを言っているわけですね。ですから、大蔵大臣は巧みに質問の答えをそらしておられるというふうに私は思うのです。  それで、官房長官、恐れ入ります。これから年末に向かって、各省庁が予算の調整をする中で、この問題はどうしても残ってくるんですね。高額所得者に対する社会保障のあり方。給付をカットする、あなたは所得が多いから、保険制度ではありますけれども、たくさん保険料を払っていただきましたけれども、たくさん所得をお持ちですから給付をカットさせていただきますよという、今議論になっておりますこの考え方について、官房長官あるいは村岡先生としてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  153. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 山本先生、先ほどから総理の代理、こう言われておりますが、実は、私は代理ではございません。官房長官として男女共同参画担当、沖縄担当それから阪神・淡路担当、こういうことでございまして、代理であれば私もうれしいのでございます。しかし、代理になるときは、何か総理が行けないときに、何か大会へ総理の代理と、これはその都度言われるわけでございまして、官房長官で来ているので、誤解のないようにお願いします。  個人的に今のお話を聞いておりまして、いろいろ年金の給付、大変厳しいな、これから払えるかどうかと。この財政状況でそうなっているんじゃないかと。したがって、先生のおっしゃるのは、今まで掛けた人を今度は制限したらだめじゃないか、こういう論もありますし、片一方、年間三千万も四千万も取っている人を全部月二十万とかなんかというのはうまくないな。全部まるっきりなくするか、あるいは途中である程度制限するか、こういうのがこれから検討されるものだ、こう私は思っております。  財政構造会議にも、私、メンバーとして参画させてくれませんので、内容はわかりませんが、これらはもう検討してもいいんじゃないか。これはだめだと決めつけないで、いろいろな、それは国民理解も得なきゃならぬ問題だけれども、そういうふうに、私は、今ここでどうだこうだという意見は、知識が乏しいので申し上げません。  以上でございます。
  154. 山本孝史

    山本(孝)委員 法案を提出されておられる政府の一員として、政府は必要な措置を講ずるというふうに書いてありますこの法案を提出する中において、当然これはどういうふうに受けとめればいいんだということはお考えをいただいているだろうという、国民の一人として、あるいは国会議員の一人として御質問をさせていただいているつもりです。  恐れ入ります。官房長官としての記者会見がおありになるということですので、あとの質問は、聞きたいですけれども、官房長官には御遠慮をさせていただいて、どうぞ、御退席いただいて結構です。  今、いみじくもおっしゃいましたように、これからの議論だということをおっしゃっておられますが、実は、片一方で、年金審議会で今議論が進んでいます。平成十一年度の財政再計算に向けて、平成十年六月、来年六月までに年金審議会としては一定の方向性を出すということで、実は公式の審議会でこの議論がされている。ありがたいことに、年金審議会は議事録が公開されております。インターネット上でも見ることができます。残念なのは、若干遅くて、最近の議論を見ることができません。しかしながら、議論は一応公開をされております。  その議事録を読ませていただきますと、こういう声がいろいろ出てまいります。年金審議会でいろいろこれから議論をしようという中で、国民負担率を五〇%以下に抑えるとか、あるいは基礎年金の国庫負担の額については増額を見送るとか、あるいは今申し上げているような高額所得者への給付カットとかという議論がいろいろと出てきている、これは年金審議会の審議の手足を縛るものじゃないですかというふうに年金審議会の委員の皆さんがおっしゃっておられる。それが、この議事録の中では読み取れます。同じように、国会の自由な審議をどうも縛ってしまうんじゃないかというふうにも思っているわけです。  もう少し端的に申し上げれば、今、それぞれ大臣の受けとめ方は少し違いますけれども、年金審議会の委員の先生方の中には、こういう高額所得者への給付カットというものは政府財政の側からのつまみ食いであって、そういう形で議論をするべきではない、あるいは、社会保険方式との整合性だとかあるいは税制との関係もあって、安易に議論するべきものではありませんということが年金審議会の中に出ているんですね。  そういう意味では、ここはしっかりと、年金審議会という従来の審議会の中で、あるいは国会審議の中で、もっときっちりとした議論をしてから、この中にこういう形で盛り込みをされた方がよかったのじゃないか。非常に安易な形で、しかも非公開の密室でお決めになって、今ここにお座りになっている皆さん方も、私はそのときのメンバーじゃなかったのでどういう議論があったかわからないけれどもという形でできてきているこの法律の中で、今申し上げているような年金だとか医療だとかというものをこんなに安易な形で取り扱うべきではないというふうに私は思うのです。  ここまでやるのであれば、これは、年金法改正案とか、しっかりとした年金に対する考え方をお持ちになった上でこれをお出しになればいいのです。今お聞きしていても、大蔵大臣と小泉厚生大臣と伊吹労働大臣と、大臣の立場あるいは個人の立場とおっしゃいましたけれども、それぞれおっしゃっていることがやはり違うのですね。これは国民の側からすると、この議論は私は非常に危ないというふうに思います。  支給年齢をさらにおくらせようという議論もこの中にのっています。きのうの岡田先生からの質問で、加藤幹事長が七十歳というふうにおっしゃったそのことについては、厚生省としては検討していませんというふうに厚生大臣はお答えになりました。七十歳はないけれども、六十七歳だったらあるのかなという感じが、何となくアメリカの動き等も感じて、いたします。  厚生大臣にもう一度ここのところも確認をしておきたいと思っておりますけれども、年金支給年齢の引き上げという部分も、これは、保険制度の中では私は政府の約束違反だというふうに思います。  私が働き始めたときは、年金は六十からもらえるものだというふうに思っていました。私の年から実は年金は六十五歳からしか出ない。これは一部、部分年金だとかいろいろな議論がありますけれども、基本的には六十五歳からしか出ないという年回りに私は当たっております。いまだ、その前回の改正の中で、六十一に下げるということもまだやっていない、六十二までも動いていない。まだ一歳も動いていない状況の中で、今度はもう六十五から後ろに下げてしまうんだという話をするのは、二重の約束違反じゃないかというふうに思うわけですね。  私は、厚生大臣にも委員会のときに同じ質問をさせていただいて、支給金額を減らそうとするのであれば、年齢は動かさないで年金の支給額を下げる方が、年金を受給しようと思っている側からすればまだ生活設計がしやすいんじゃないかということを、この前も申し上げました。  やはり、老後の生活設計が立ちにくくなるという部分を考えても、保険料を納めたくなくなる。特に高額の所得者の皆さんに保険料を納めていただかないと困るんですね、保険制度としては。そういう方たちにも納めていただけるような年金の仕組みというものをつくっていかないといけない。そこを、安易な形で出すんじゃなくて、しっかりとした議論をしていただかないと、国民が迷惑をする。これは、財政構造改革法案の中にこういう形でこそくに潜り込ませる話ではないというふうに私は思います。  先ほどの一回先生の年金の自主運用の件について、これは、大蔵大臣にぜひ先ほどの質問の続きとしてお伺いをさせていただきたいのです。  厚生省としては、年金の自主運用というのをかねてから言っておりますね。年金福祉事業団で一部自主運用をしておられる中で、今一兆五千億程度でしょうか、赤字を出しておられます。平成八年度末の残高が、厚生年金、国民年金で、財政投融資の中で百二十六兆円、平成九年度の財政投融資原資の状況では、五十六兆円の中で、厚生年金、国民年金が七兆三千億円という大変大きな金額になっております。これを自主運用したいんだというのが小泉大臣あるいは厚生省の御意向だというふうに受けとめておりますけれども、申し上げましたように、年福の中で大変に大きな赤字を出している部分もあります。  大蔵省としては、厚生省の意向どおりに、年金の自主運用というのを任せても大丈夫だというふうに、大蔵大臣としてはお考えでしょうか。
  155. 三塚博

    三塚国務大臣 今、行政改革会議、これは総理大臣を議長として、民間十三人の見識者の中で行われております。また、与党は、中間取りまとめを受けて論議をいたしております。いつも本院で申し上げておりますとおり、預託はこれを廃止する、廃止する方向で検討しろ、こういうことになって、廃止を前提に大蔵省とすれば指示をいたしております。  こういう中で、今後、その自主運用のあり方については、党の審議、改革会議の審議、有識者においていわゆる預託に関する懇談会、資金運用に関する審議会に預託のあり方、自主運用についてのあり方の懇談会、こういうのがありまして、今真剣な論議が行われておりますので、その論議の結果を踏まえて取り組んでまいりたい。
  156. 山本孝史

    山本(孝)委員 論議のあり方を踏まえてということですが、長年といいますか、ここしばらくずっと、小泉厚生大臣が問題提起をされて以来、財投のあり方あるいは融資の貸付先の問題一いかにして預けている側に損を出さないでうまく運用していくのかということは大変大きな問題になってきている。それはもう重々御認識の上、今専門的なところで議論をしているのでその議論の結果を待つというのは、少し預け過ぎているのではな  いでしょうか。  大蔵大臣として反対をする立場でおられたのかなとも思いながらおりましたけれども、国民の側からすると、今申し上げているように、年福、年金福祉事業団に預けている金額の中ですら一兆五千億円という赤字を出してしまっている。なぜこんなに赤字が出るんですかという内容については、なかなか御説明はいただけない。どういうポートフォリオになっているんですかと言うと、それは秘密です。今どういう状況ですかと言うと、それはなかなか、証券市場に与える影響もありますので発表するわけにはいきません。非常に秘密の中で巨額のお金が運用されている。  それで、国民の側は、損さえしてくれなければいいですよというぐらいの実は気持ちがあるのかもしれない。実際損をしてしまう、赤字になっている、だめじゃないか。いや、一兆五千億ぐらいの赤字は将来うまく運用していけばすぐ取り戻せるんですよというふうに厚生省の皆さんはおっしゃるんだけれども、大変にそういう意味では大切な、将来の生活を支えてくれる年金というお金を政府が運用しておられて、その中で、まだまだかなというふうに思っている。それを全部、厚生省が自主運用させてくださいというふうにおっしゃっておられる。その点について、危険だと危惧の念は大蔵大臣としてはお持ちになっていないのですかということです。
  157. 三塚博

    三塚国務大臣 その話はいろいろと聞きます。よって、自主運用の場合のあり方について、専門審議会の懇談会、有識者の御意見を聞いていくということは極めて重要と。  前段、基本的な分野については、預託制度廃止になるということになりますと、入りの分の大改革でありますから、出の分でこれがどうなりますかということになりますと、民間移管、長期政策、必要性という観点だけではなく、有利、償還、民業の補完という哲学の中で行革が進んでまいる、こういうことになります。  よって、前段申し上げましたとおり、自主運用で心配はないか、心配があるのではないかという趣旨のように聞こえましたが、それに対して、私がただいまの段階で心配であるとも安全であるともということを申し上げません理由は、審議会が専門家を集めて真剣な論議を進めておりますので、それを見て是非を決定するのが、そのとき最終的な意見を申し上げるのが政府という立場じゃないでしょうか。主管大臣はかくあらねばならないと思っております。
  158. 山本孝史

    山本(孝)委員 審議会で審議をしていてその結果を待ってから、そこに任せているんだ、預けているんだという理屈でおっしゃるのであれば、年金審議会でやっているんだからこんな話はやりなさんなという話にもなるし、大蔵大臣として、それはどこかで決めてくれたらそれに従うよというのではなくて、私は、大蔵大臣として、これだけの巨額のお金をこの財政投融資の中で動かしていく中で、どういうふうにお考えなのかなというふうに思ったので、お伺いをさせていただいているわけです。  いずれにしても、負担のあり方というものについて、皆さんにお伺いをさせていただかないといけないのでありますが、伊吹労働大臣、恐れ入ります。  ことしの七月二十四日に、朝日新聞で「どうなる社会保障 どうする社会保障」というインタビュー記事がありました。その中で、大臣の、これはコメントといいますか、インタビューとして書かれておりますので、どういう発言をされたのか、私はわかりませんけれども、皆年金、皆老人医療、皆介護なら、負担も皆負担でやってもらわなくては社会の活力は低下する。一部の人や企業が納める所得税や法人税だけでみるのは、保守主義の基本である自己責任、市場原理に反します。国民すべてが払う消費税で賄うべきです。  構造改革の一番大きな部分は、ここ十年の間に税体系を抜本的に変えられるかどうかです。というふうにお答えになっておられます。  介護保険の議論の折も、これは議事録に残っておりませんけれども、介護目的の消費税で高齢者介護をやるのが本当はいいんだけれどもなという御自身の御意見をお述べになったというふうにも思っております。  構造改革の一番大きな部分は、この十年の間に税体系を抜本的に変えなければいけないんだというこの点についての大臣のお考えは、今も変わっていないのでしょうか。
  159. 伊吹文明

    ○伊吹国務大臣 どうも労働大臣として答弁の機会がないのはまことに残念でございますが、私は、私が申し上げた信念は今も変わりません。  しかし同時に、橋本内閣、橋本総理考えておられることは、そのような税体系に持っていく前に、まず現在の財政の中で、民にお願いできること、地方にお願いできることを、財政構造改革という形でまず搾り取ろうという作業を今やっておられると思います。したがって、橋本総理は、自分の在任中には税負担率というのか消費税率は上げないという趣旨の御発言があったように、私、確認しておりませんが、伺っているのもそういうことだと思いますので、これは、ここ十年という期間と私は個人的には発言をしておりますが、橋本総理の御方針とは別段変わったことはないと思っております。
  160. 山本孝史

    山本(孝)委員 次の質問は、労働大臣としてお伺いをさせていただきたいと思います。あわせて堀内通産大臣にもお伺いを、同じ質問としてさせていただきたいと思いますので、お聞きおきいただきたいと思います。  きょうは、この法案の中に盛り込まれている社会保障の点についての御質問をさせていただきました。要は、こういう法律をつくるということもありますけれども、例えば年金でいいますと、労働大臣でありますれば、将来、高齢者、特に六十歳から六十五歳という年齢層ですけれども、の皆さんの就労状況、あるいは働きたいと思っているお気持ち、あるいは多分早期退職したいのではないかとか、いろいろあると思います。どの程度に社会が高齢者に対して仕事を、シルバーサービスというような仕事じゃなくて、ちゃんとした仕事を提供できるのかというイメージがあると思うのですね。労働大臣としては、どういうふうな、例えば二〇一五年、二〇年というこの二十一世紀初頭の時代における高齢者の就労状況というものをどういうふうにお受けとめになっておられるのか、ぜひお伺いしたい。  あわせて、時間がありませんので、通産大臣にもお伺いをしたいと思いますが、こういう法律を通すことによって、将来の高齢者を取り巻く産業状況あるいは日本の産業社会というものがどういうふうに、先生の頭の中で、通産大臣の頭の中で、二十一世紀の初頭の日本の産業社会というのはどういう形になっているというイメージをお持ちになっておられるのか。それぞれ個人的なことでございますが、お伺いさせていただきたいと思います。
  161. 伊吹文明

    ○伊吹国務大臣 やっと労働大臣としての答弁の番が回ってまいりましたが、一九八五年、これは昭和六十年ですが、このときは大体六人に一人、現在は四人に一人、そして二〇二〇年には二人に一人が六十五歳以上になると言われております。したがって、もはや、平均寿命が六十歳に達していなかった終戦以前あるいは終戦直後に比べて、いわゆる六十五歳、七十歳の方というのは、私は、社会的に極めてマイナリティーのグループであるとか、特別なグループの方だという意識は、もうなくしなければならないと思っています。  この方々が、やはり生きているという生きがいを持たれるということは、もちろん健康や生活保障のこともありますが、自分がやはり社会に参加をして、社会で何らかの役割を果たしているということが大切だと思います。  したがって、一方で、先ほど来お話があるように、年金財政は大変悪化をいたしております。したがって、二〇一三年までに六十五歳という支給年齢、それまでは段階的に、そして既に権利の発生している人は何ら変わりませんし、そして老齢在職年金という制度もありますから、そのあたりは誤解のないようにしていただきたいと思うのですが、さて六十五歳以上の方をどうするかという議論は必ず出てくるでしょう。  そのときに、私は、我々は統制社会や統制経済社会主義、共産主義社会に生きているわけではありません。市場経済と自由社会に生きているわけですから、企業も雇用に耐えられる経済体制の中でやらせてもらわねばならない。それから同時に、いろいろ、ボランティアとは言いませんが、セミボランティア的なお仕事が高齢者の方々にもふえてくると私は思います。例えば、図書館の司書だとか、あるいはまた介護に御自分も御参加になるとか、こういうお仕事はふえてくると思います。  したがって、まず根本的には、この橋本内閣の言っている六つの構造改革を実現させていただいて、雇用の創出ができる経済体制というものをまずつくり上げなければならない。その中で年金の財政的なことを考えれば、これは厚生大臣のお仕事ですが、少し後ろにずらすだとか減額するだとかという話が、先ほど来先生との間にあったように、あるかもわかりません。  しかし、私は、その検討が行われる際には、必ず、六十五歳以降においても働き続けたいという方は、放棄をされた年金の予想受給額ですね、これを、自分が働かなくなったときに、その半分でも結構ですし、何らかの形で将来やはり上乗せをするような年金の形であってもらいたい。それを私は、この検討の詰めが入ったときには、御年配の方が働き続けられるような明るい社会になるためには、ぜひ厚生大臣に私はお願いしたい、労働大臣としてお願いしたいと思っております。  それから、もっと大切な問題は、将来的には働く人がいなくなる可能性があるのですよ。そのときに、今高齢者と言っている方をごく当たり前の社会のパートナーとしてやっていただくのか、それとも外から労働力を持ってくるのか。これは、単に経済という問題を超えて、国家や社会というあり方、日本の文化を考える上で非常に重要な問題を含んでいると私は認識をいたしております。
  162. 中山成彬

    ○中山(成)委員長代理 堀内通商産業大臣。時間がありませんので、手短にお願いいたします。
  163. 堀内光雄

    ○堀内国務大臣 お答え申し上げます。  最初の部分は労働大臣のお答えと似通ったものになるかもしれませんが、豊かな高齢化社会経済活力を維持していくということを両立させるためには、高齢者を、単に扶養される者から、支える側の立場に立ってもらうことも必要ではないかというふうに思っております。  通産省としては、今後、高齢者の高齢化の進展に伴って労働人口の減少というものが見込まれる中で、我が国経済力が安定的に成長を実現するためには、高齢者の能力を活用する、発揮できる環境を整備していくことが重要だというふうに思っております。そのために、高齢者の就業機会というものを拡大する必要がある。高齢者がみずからの能力や、いろいろの経営能力や技術や、そういうものを含めて雇用の可能性を増大させることに対して、いろいろな情報の提供ができるようにする、そういうことが重要だろうというふうに思っております。  そういう面と、もう一面、将来二十一世紀においての展望のようなお話にお答えを申し上げるとすれば、通産大臣として、一つそれにつけ加えさせていただくことになりますが、財政構造改革、福祉や年金を含めまして、こういう改革目標を達成するためには、やはり一定の税収の確保というものが不可欠でありますから、それを支える経済構造改革というのは、財政構造改革の前提になってくるというふうに思います。ですから、経済構造改革財政構造改革はまさに車の両輪であると私は申し上げております。  このために、本年五月に閣議決定をいたしました行動計画においても、経済活力の維持向上の観点から、公的負担の増大を抑制する必要性を掲げるとともに、新規成長分野の一つとして医療福祉関連分野を挙げまして、技術開発の推進だとか、人材の育成だとか、規制緩和の総合的な施策を推進するということにしております。これによって、民間事業者による多彩なサービスが効率的に国民に提供をされて、安定した国民生活が実現されるものというふうに考えております。  ちなみに、経済構造の変革と創造のための行動計画におきましては、二〇一〇年を目標に立てておりますが、雇用の部門においては、二〇一〇年に現在より百三十二万人の増加、もう一つは、九十一兆円市場に上がるようになりまして、五十三兆円規模の市場が拡大するというようなものを考えて、医療厚生分野において取り組むようにいたしておるということでありまして、今後とも、財政構造改革社会保障構造改革と整合性を持った形で経済構造改革推進して、活力のある、国民  が安心して生活できる社会を目指してまいります。
  164. 山本孝史

    山本(孝)委員 御丁寧にお答えをいただきまして、ありがとうございました。
  165. 中山成彬

    ○中山(成)委員長代理 これにて山本君の質疑は終了いたしました。  次に、海江田万里君。
  166. 海江田万里

    ○海江田委員 時間が三十分でございますが、主に大蔵大臣にお尋ねをすることになると思います。そんな難しい話じゃありませんので、よく聞いていただきまして、御答弁をいただきたいと思います。  今、大変な超低金利の時代だと言われておりますけれども、国が発行しておりました、特に、高い金利で発行していました国債を、現在の超低金利の時代で、これは借りかえというわけでございますけれども、新規に超低金利の国債を発行すれば、それはそれだけ金利の負担分が安くなるということだろうと思います。  特に国債は、御案内のように六十年で償還をすることになっておりますが、実際には、十年物の利付国債でありますとか、五年物の利付国債でありますとか、割引債でありますとか、毎年毎年満期が来る国債があるわけでございますから、それは当然のことながら、この借換債で手当てをしなければいけない。  ことし満期が来ます国債というのが大体三十一兆円ぐらいあるわけでございますけれども、これは種類は幾つかありますけれども、主流が十年物の利付国債ですから、十年前のクーポンの利率はどのくらいかということで調べてみますと、大体六%台の上から、六・六とか六・七から、それから高いところでは七%台のものもあるということでございますね。これが今度、新規の十一月債を調べてみますと二%、わずか二%ですから、実はもう五%ぐらい違ってきているわけです。ちょっと単純計算ですけれども、ことし満期が来まして、十年とは限りませんけれども満期が来まして、この借換債で手当てをしなければいけないのが三十一兆円ありますから、七%と二%で計算をしてみましても、ざっと一兆五千億円ぐらい、ことしはいわゆる国債の利払いというものの負担が軽くなるということでございますね。  この毎年来ます借換債と、それから、やはりこういう超低金利の時代ですから、金融情勢を見ながら借換債を前倒し前倒しでやっていく、前倒し債などとも呼んでおるようでございますけれども、これが毎年毎年、特に低金利のときはあるわけでございますね。  大蔵省から資料をいただきましたら、ことしについては、借りかえを前倒しをします前倒し債が四兆五千億円の枠があるということでございます。この四兆五千億円の枠というのは、平成七年も四兆五千億円あった、平成八年も四兆五千億円あった。特に七年、八年というのは、もうこのころは低金利になっておりましたから、八年分を七年に前倒しをしましたのが四兆二千六百四十七億円、昨年に至っては四兆四千九百九十三億円でありますから、ほぼ一〇〇%この限度枠を使い切っているわけでございます。  恐らくことしも、このままでいきますと、この四兆五千億の枠を全部使い切ることになるということでございますが、私は、今の金融情勢などを見ますと、やはりこの前倒し債をできるだけ多く発行して、そして、できるだけ国債の利払いの負担というものを軽くすべきではないだろうかというふうに考えるわけです。これはもうだれが考えても、そういうことができる条件があれば、そういうことはやった方がいい、しかも、今はそういう条件が整っているのじゃないだろうかというような考え方がある。来年も三十兆近い借換債があるわけですから、それを先取りしていくということを考えればいいわけでございます。  ただ、大変残念なことでありますけれども、ことしの当初の予算のところで四兆五千億という枠を決めてしまいましたから、もしこの枠をふやしたいということになると、やはりそれは補正予算などの手当てをしなければいけない。補正予算で新たに枠組みを広げておけば、その分については実際に借換債の前倒しをすることができるということでございます。今から補正の話を言うのはなんでございますけれども、ただ、この前倒しを行うことによって利子の負担を軽くするというのは、今、この超低金利でなければできない状況でございますから、私はやはり、財政再建を言うのならば、そのようなこともお考えになっていいのではないだろうか。  これはお役人の考え方よりも、むしろ政治家がそういう判断をすべきではないだろうかと思いますので、大蔵大臣のお考えをお聞かせいただきたいということでございます。
  167. 三塚博

    三塚国務大臣 言わんとする意味はわからないわけではございません。既に内容は御披瀝のとおりの問題で、また額が、上限が押さえられている点、御指摘のとおりであります。  国債の借換債の前倒し発行は、御案内のとおり、国債の大量の償還、借りかえに円滑に対応するために、借換債を年度を超えて、前年度に前倒しをいたし発行することにより、発行の平準化を図るという目的があります。一時の大量償還に備えるとの趣旨により、昭和六十年度制度改正によって導入されたものでございます。  現在、国債の借換債の前倒し発行につきましては、金融環境が良好で翌年度分の国債を有利な条件で前倒しして発行する環境が整っておる場合、そして二点目として、翌年度初の大量償還に対応するためには、市場の消化能力から見て借換債を前倒しして平準発行することが必要かつ適当であると判断される場合等でございます。  国会で議決を経た金額は、御説のとおり、九年度予算では四・五兆円を限度として行っておるところでございますが、また限度額については、これまでも増額を国会にお認めをいただいているところでもございます。  今後も、国債の借換債の前倒し発行につきましては、本制度趣旨を十分に踏まえながら、適切に対処してまいりたいと思います。     〔中山(成)委員長代理退席、委員長着席〕
  168. 海江田万里

    ○海江田委員 今のお話で、これまでも増額をしたことがあるということでございますから、そういう意味ではこれからも増額をする可能性があるというふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  169. 三塚博

    三塚国務大臣 この点が判断の残るところであります。  もう既に御案内のように、借換債を発行するといえども、国債の発行でありますことには間違いがありません。ある程度の歯どめは必要であります。状況を判断して対応していかなければならない。  この程度にさせていただきます。
  170. 海江田万里

    ○海江田委員 今のお話はちょっと違うと思うんですね。  国債の発行でありますけれども、今度発行します国債はまさに条件がいいわけですよ、国の財政立場からすれば。だから、そこでは禁欲的になる必要は全くありませんで、むしろ市中の消化能力でありますとか、そういうこととの関連の中から、やはりタイミングが今だと思ったら積極的にやることが財政の再建につながっていくということでございます。もし、全くそういう借りかえでないものを新規に発行するということになれば今おっしゃったようなお話になりますけれども、そうではありませんので。  私はむしろ、ここはまさに政治が、特に去年なんかはもう目いっぱい。今までは使ってないんですよ、限度の枠の方を大分大きくしていて、実績はその五割でありますとか六割でありますとか。去年なんかは、四兆五千億の枠を使っていて四兆四千九百九十三億ですから、ぴたっと使っているんですね。  だから、本当だったら、ことしの年初のときの予算でこの限度枠をもう少し広げておけばよかったんですけれども、それがしてませんから。このままだったら恐らく一〇〇%全部実績として残ると思うんですけれども、ただ、せっかくのチャンスですから、年初のときの枠だけじゃなくて、補正で手当てをすれば枠が広がっていくわけですから、もう少し広げてもいいのではないですかという提案を申し上げているのですけれども、いかがでしょうか。
  171. 三塚博

    三塚国務大臣 御提案は受けとめ、拝聴いたしました。
  172. 海江田万里

    ○海江田委員 すぐ、補正というと土木工事をどこにつけるとか、そういう話ばかりでございますから、ぜひこういう前向きな補正といいますか、本当は、考えようによっては減税の財源だってここをうまく使っていくことによって出ないわけでもないわけですから、私は、やはりそういう方向で、減税にするかどうかということになりますといろいろな御議論があると思いますけれども、これはむしろ大臣から、何とかそういう方向でできないかということを、大蔵当局にそういう指示を出すくらいの心構えでやっていただきたい、そういうふうに思っております。大蔵当局の顔色を見るのではなくて、大臣の方から指示をするようなことをお願いしたいと思います。  それから、これは我が党の主張でもございますけれども、建設国債と赤字国債の区別はもう要らないのではないだろうか。先ほど、我が党ではございませんけれども、大蔵省の先輩であります安倍委員からも同じような指摘がございましたけれども、私は、この建設国債と赤字国債の話では、一ついつも不思議に思っている話があります。  これはむしろ自民党が、例えば景気対策をこれまで何度もやってまいりましたけれども、その景気対策の中で、いわゆる情報インフラなどのような新社会資本の充実に建設国債を使ったらどうかというような議論をしたことが随分あるはずでございます。ところが、大変残念なことでありますけれども、今現在まだそういういわゆる新社会資本、インフラの整備などにこの建設国債が使われていないという状況があるわけでございますね。  これは一体どうしてなのか、その理由をお聞かせいただきたいと思います。
  173. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 財政法第四条におきまして、公債発行の対象となるものについての規定がございます。その規定趣旨を踏まえまして、従来から、公債を発行するにふさわしい性格と、一定の耐用年数を有する資産を取得、形成する経費に限ると解してきているところでございます。
  174. 海江田万里

    ○海江田委員 一定の耐用年数というお話が出ました。それから私、冒頭にお話をしましたけれども、いわゆる建設公債は六十年で償還をする、つまり毎年六十分の一ずつ償還をしていくわけですけれども、その根拠になっておりますのが、いわゆる国債整理基金の特別会計の中で、国債を発行するに当たってその裏づけになります資産の耐用年数が大体六十年ぐらいあるのではないだろうかということをもとにして、それで計算をしているということなわけですね。  ところが、では赤字公債の場合、赤字公債の場合は裏づけが全くないわけですけれども、この赤字公債の償還というもの、これも一緒の会計にして六十年でやっているのではないですか。どうですか、これは。
  175. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 先生御指摘のとおり、赤字国債につきましても、やむを得ざる事情により六十年といたしております。  本来、赤字国債については早期に償還しなければならないわけでございますが、現在のような厳しい財政事情のもとでございますので、短い償還期限ルールを設定いたしますと、その償還の財源がまた要るということでございますので、やむを得ず六十年償還というルールにしておるところでございます。
  176. 海江田万里

    ○海江田委員 大蔵大臣、今のお話で明らかになったと思いますけれども、発行するときは、赤字公債と建設公債、これは大変区別がございますね。特に赤字公債に対しては、大変厳しい一つの制限を設けている。そのたびに法律で決めなければいけない、国会承認を得なければいけないということでありますけれども、肝心の償還のところでは、実はもうごっちゃになってしまっていて、そしてしかも、国債の残高が今二百五十三兆円ありますけれども、そのうち赤字国債が八十一兆九千億円でありますから、実に三分の一がもう赤字公債になっているわけですよ。  そうすると償還のところでは、三分の二については、確かに今お話があったように大体六十年ぐらいの資産というものが裏づけとしてあるわけですけれども、残りの三分の一については、全くそういう資産の裏づけのないものをわざわざ六十年で償還をしているんですね。これはやはりおかしいんじゃないですか。赤字公債の発行額がわずかだったときは、まあ大体全体で一つの会計に入れても、特別会計の中に入れてもこの六十年というものがある程度根拠があったわけですけれども、ここまで来てしまうと、私はもう既に六十年そのものが根拠がなくなってしまうのではないだろうか。  これはやはり、先ほどお話をした国債整理基金の特別会計というものをもう一回考え直しをしてみる必要があると思うのですが、大臣、いかがでしょうか、私のお話を聞いて。
  177. 三塚博

    三塚国務大臣 海江田委員の御指摘、私はここで全面的に反論するつもりはありません。よって、原点に戻るわけでありますが、財政構造改革推進に関する特別措置法の原点は、特例公債からの脱却であります。そして、本年発行いたしました七兆四千七百億円の赤字公債、六年度目にはゼロ発行。ゼロ発行ですから、公債依存度はそこで終止符を打つ、こういうことにさせていただいて、十年度予算は一兆二千五百億円、六分の一に該当する分でありますが、減額に立てるということにいたしております。これからはその減額が続いてまいるわけでございまして、増発は考えておりません。そうでありませんと、赤字体質からの脱却、依存の体質からの脱却がなくなることになりませんので、ここは厳しく取り進めてまいりたいと思っております。  公共事業を中心とした建設国債、それ以外の行政費等々、政策費等々の特例公債をもってということの仕分けがございました。これは見合いがあると主計局長が言ったとおりでございます。  しかし一点、政策減税という観点で物事をとらえてみましても……(海江田委員「そんなこと聞いていません」と呼ぶ)聞いてないですね。ですから、この辺でとめておきます。     〔委員長退席、甘利委員長代理着席〕
  178. 海江田万里

    ○海江田委員 限られた時間でございますので、聞いておりませんので。お人柄でございますね。  実は、この赤字公債と建設公債の区別の問題につきましては、我が党の生方議員からも一昨日でございますか質問をしまして、ただ、そのとき橋本総理がお答えになったことと三塚大蔵大臣がお答えになったことが、私は若干違うと思うのですね。  速記録、まだ未定稿でございますけれども、取り寄せてみましたけれども、橋本総理は、生方議員が提起をされました問題意識というものは極めて時宜に適したものだ、そのように思っておりますということをお話しになっている。つまり、時宜に適したというのは、そういう議論を今しなければいけないときに来ているのじゃないかなというような、これは理解でございますけれども。それに対して三塚大蔵大臣は、やはり今の前段でお話をしたように、とにかく今回は赤字公債だけについて厳しく制限をする、それが結果的に全体の国債の削減につながるものだというような発言をされております。  私は、やはり本当に、今回この委員会でもっともっと議論を深めて、今のような、もう三分の一が裏づけがない国債を発行していて、それをも六十年で償還をしているということの意味合い。実は、何年で償還をするかということは、当然、償還期間を短くすればそれだけ毎年毎年の国債費にも非常に大きな影響が出てくるわけですね。それから、長くすれば毎年毎年の国債費というものが圧縮をされるわけですから、実はこれは財政再建のところとも非常に密接に関係のあるところですから、やはりもっともっと、これまでどおりのお考えをお話しするんじゃなくて、この問題についてかなり徹底した議論をしなければいけないんではないだろうか、私はそういう考え方を持っております。  それからもう一つは、景気対策の観点からいっても、私はやはり、いつまでも裏づけがあるもの、しかもその裏づけというのが、耐用年数がある程度の長い期間でなければいけない。これは、まさに六十年に引っ張られちゃっているわけですよ。六十年という決まりがあるからそっちに引っ張られて、長いものでなければいけないということで、やはり今これだけ世の中が変化をしてきて、しかも景気の回復に重要なのは新しい社会資本の整備だというときに、この建設国債があると。赤字国債はもう手を封じられていますから、そうしたら建設国債で発行しなきゃいけないというときに、その建設国債が六十年という長さに引っ張られちゃうと、そっちの方の手当てもできなくなる。  これは結果的に、そういう新しい景気対策が全くできなくなるというふうにつながっていくんではないだろうかと考えるのですが、尾身長官、先ほどから聞いていただいておりますので、経済企画庁から三一日お願いします。
  179. 尾身幸次

    尾身国務大臣 建設国債と赤字国債につきましては、家計でいうならば、いわばマイホームを建てるお金か、その日その日のお米を買うお金かということでございまして、マイホームを建てるために借金をして、長い間そこに快適に住むというのはそこそこ理由があると思いますが、毎日のお米を買う金を借金をしていくということは大変に問題があるというふうに考えていまして、そういう意味で、建設国債と赤字国債は性格が異なるというふうに考えております。  ただ、六十年の間にその償還をするかどうかということにつきましては、私は、理由がないのではなくて、お金がないという理由があってそういうことになっているんじゃないかというふうに思っております。
  180. 海江田万里

    ○海江田委員 今ローンの話が出ました。私は、余り国の財政を家計に置きかえるのはよろしくない、いろいろ誤解を生むという立場でございますが、あえて反論をさせていただきますと、ローンというのは最近は多様化をしてきまして、住宅とそれからその日のお米を買うローンだけじゃありませんで、車を買うローンでありますとか教育費のローンですとか、いろいろあるわけでございます。むしろ、今まさに問題なのは、それだけローンがいろいろ多様化している、民間のローンは多様化しているわけですけれども、国の場合はその中間的なものが一切なくて、それこそ家を買うローンしかありませんよというお話になってくるから、そこのところが問題なんじゃないですか。ただ家があればいいという問題じゃなくて、やはりテレビも欲しいだろうし、車も欲しいだろうしという、そこのところをやはりこれから考えていかなければいけないんではないかなということが私のお話でございます。  まだまだ議論したいところでありますが、これはこの財特委でじっくり時間をかけて議論をさせていただきますので、時間もいっぱいあるようでございますので、そちらに譲るとしまして、やらせていただくということにしまして、一つだけ、地方債の問題でございますね。  この地方債の発行につきましては、現在、許可制度ということで、これはもう大蔵と自治との間で大変厳しい条件をつけて、そして許可がなければ発行できないということになっておりますが、これからの地方分権の大きな流れの中で、これは地方分権の推進委員会ですか、地方分権推進委員会の第二次勧告というものが出ております。ことしの七月八日に第二次勧告が出ておりますけれども、これは、これからの地方分権の時代を考えますと、この地方債の発行につきまして許可制度を廃止をして、原則として事前協議制度にしようではないかというような結論に達したということでございます。  ただ、せっかくそういう形で事前協議制度へ移行をするということを言っておるわけでございますけれども、この後で、少なくとも財政構造改革期間中は許可制を維持するということを一項目盛り込んでいるわけですね。  そうしますと、今度の財政構造改革期間中というのは二〇〇三年まででございますから、そういう意味では二〇〇三年まではこれまでどおりで許可制ということになってしまうわけですね。そうなると、この問題は二〇〇四年度からでなければ協議制に移れないということ、このことは随分やはりいろいろな議論があるのではないですか。  自治大臣、できましたら、この地方分権推進委員会会議等で出た意見なども踏まえていただいて、自治省としてどういうふうにお考えになるかということをお聞かせください。
  181. 上杉光弘

    上杉国務大臣 お答えいたします。  地方分権推進委員会より、地方制度については許可制度を廃止いたしまして、原則として事前協議制度に移行するという勧告をいただいたところでございます。この勧告においても、財政構造改革期間中においては、国及び地方財政赤字の縮小の目標を達成するため、地方債の抑制を図る必要があるとの観点から、許可制度を維持することとされているところでございます。  自治省といたしましては、地方自治新時代に向かいまして、地方財政健全化を早期に達成するとともに、勧告に基づく新しい制度の具体化に向かいまして努力してまいりたい、このように考えております。
  182. 海江田万里

    ○海江田委員 実は、今度のこの法案の大きな問題というのは、やはり地方財政、これにかなり大きな縛りをかけるということは、これはもう私が改めて指摘をするまでもなく、これまでの短い時間の質疑の中でもそういう意見のあったところでございます。そして、私が聞いておりますこの地方分権推進委員会議論の中でも、やはり随分、そのときはまだこういう形での財政再建というものが、もう既に会議自体は始まっておりましたけれども、こういう形では法案化はされていなかったわけですけれども、私は、やはりこういう地方分権推進委員会の例えば会長などにも来ていただいて、どういう議論があったのかということをいろいろ説明をいただきたいということで、これは後で委員長にお願いをしますが、理事会で、そういう参考人などの意見を聞くという機会もぜひつくっていただきたい、そういうふうに思います。
  183. 甘利明

    ○甘利委員長代理 後ほど理事会で協議いたします。
  184. 海江田万里

    ○海江田委員 それから、先ほど一川委員からも指摘がございますけれども、やはり地方への負担の転嫁というものが大変心配をされると。  この地方への負担の転嫁ということでお話をしますと、地方財政法の第二条の第二項は、「国は、地方財政の自主的な且つ健全な運営を助長することに努め、いやしくもその自律性をそこない、又は地方公共団体負担を転嫁するような施策を行つてはならない。」とはっきり書いてあるわけでございますね。  地方財政法の第二条、一番初めのところに書いてあるわけでございますから、この法の精神と、このたびのこの財政構造改革法案とが矛盾することになりはしないだろうか、地方財政法を侵すことになりはしないだろうかということについて、これは自治大臣からお答えをいただきたいと思います。
  185. 上杉光弘

    上杉国務大臣 御指摘のとおり、国の責任地方に転嫁することについては、そうなってはならないと私は思っております。  加えて、地方分権を推進いたしますと、仕事量がふえて人手が足りなくなるという心配が地方の団体にはあるわけでございます。私は、地方が困るようなことにはならないようにしなければならないと思っております。
  186. 海江田万里

    ○海江田委員 困らないようにしなければいけないという決意のほどはよくわかったわけでございますが、これは非常に明確に、「国は、地方財政の自主的な且つ健全な運営を助長することに努め、いやしくも」「いやしくも」です。「いやしくもその自律性をそこない、又は地方公共団体負担を転嫁するような施策を行ってはならない。」というような条文があるわけでございますから、これをそのままに読みますと、やはりかなり今度の法律案というものはこの法律を損なうことになりはしないのだろうかということで、大変私は危惧を持っております。  やはりこれから一つ一つ、まだまだゆっくり時間をかけまして、そしてその中でそういう危惧が本当にないものかどうなのかということを、もし議論を通じてそういう疑念が晴れればこれはいいわけでございますが、ますます深まるようなことがあってはならないと考えますので、まだ質問もしたいところでございますけれども、後の委員がございますので、私はきょうはこの限りにさせていただきます。どうもありがとうございました。
  187. 甘利明

    ○甘利委員長代理 これにて海江田君の質疑は終了いたしました。  次に、生方幸夫君。
  188. 生方幸夫

    ○生方委員 民主党の生方幸夫でございます。三十分間質問をさせていただきます。  本日の新聞各紙を見ますと、昨日行革会議が開かれて、郵政三事業について政府基本的な方向というのが、どうもその三事業についてはエージェンシー化ということで見通しがついたというような報道がなされております。私はここで郵政三事業をどうするのかということについて論じるつもりはございませんが、まずそのエージェンシー化ということについてお伺いしたいと思っております。  行政改革は、言うまでもなく、中央の省庁をスリム化して、民間ができるものは民間に任せ、地方に任せられるものは地方に任せて、小さな行政府をつくっていくというのが目的でございます。今エージェンシー化という形で民間に事業の一部を移していくというときに、そのエージェンシー化された事業体に出ていく職員の身分というのが一体どうなるのかというのが焦点になっております。  今の行革の論議の中で見ますと、国家公務員のままでいくというのがどうも大勢を占めているようでございます。これが続いていきますと、エージェンシー化はしたけれども、実際に中にいる方は国家公務員であるということになれば、スリム化というものにはつながっていかないのではないかというような懸念を私は持っております。  また、この行革会議の中で出されました中間報告について、いろいろな意見がさまざまなところから出されており、ある官庁などは、局とか部とかというものは一切減らすことはないのだというような意見も出されております。これですと、ある省とある省が結びついて名称だけ変えただけであって、中身は全く変わらない。せっかくこれだけ論議をして、小さな行政府をつくろうというふうに努力していたにもかかわらず、終わってみれば、一府十二省には確かになったけれども、中身は全く変わらなかったというようなおそれもなきにしもあらずだと私は思っております。  郵政三事業についてだけではございませんが、エージェンシー化されたところに出ていく国家公務員の方々の身分について、私は、現在国家公務員として働いており、当然雇われたときも国家公務員であったわけですから、その人たちについてはその国家公務員的な今までの保障あるいは退職金等の問題について同じようなことはなされなければいけない、これは当然そう思いますが、エージェンシー化されて、次に新しく雇われる人たちについては、これはやはり国家公務員とは違った形で採用なり退職金というのを考えていき、長いレンジで見て、何年かたって今の公務員の方たちがおやめになったとき、新しいエージェンシー化されたところの本当の意味の民営化ということが視野に入ってくるのではないかというふうに思います。  そのエージェンシー化された職員の身分について、まず小里総務庁長官の御意見をお伺いしたいと思います。
  189. 小里貞利

    ○小里国務大臣 先生がただいまお尋ねの行政法人化の問題でございますが、昨日の行革会議委員会等におきましてその話が相当議論されましたことは、お話しのとおりでございます。  同時にまた、行政法人化の取り扱い、その制度を誘導いたしまして、それに過分なる、相当な一つの誘導を既存の行政組織の中から持っていかなければならないという本質的な重要性、これはお話のとおりあるいは御期待どおりであると私も思っておりますけれども、率直に申し上げまして、しからば現段階におきまするその行政法人の人格あるいは規模あるいは性格、いわんや身分等につきましては、目下鋭意検討中でございます。  ただ、この機会に私としての考え方を申し上げますと、この制度というものは可能な限り最大に活用することが、先ほど先生も基本でお話がございましたように、今次の行政改革を最も大幅に、有効に展開できる大きな手段である、これだけはきちんと申し上げておきたいと思います。
  190. 生方幸夫

    ○生方委員 エージェンシー化するということが決まったわけでない時点でお伺いするのは大変早いとは思うのですが、エージェンシーというものについて我々がイメージしていいものは、一つだけのエージェンシーであるのか、あるいはいろいろな性格があるエージェンシーというのをおつくりになるおつもりなのか、そこの点をお伺いしたいのですが。
  191. 小里貞利

    ○小里国務大臣 踏み込んで申し上げるわけでもありませんが、いろいろ業態がございまして、御案内のとおり大変メリットのある、明確に営業収支等が見通されるものがある。しかしながら、それはこの際民間にゆだねたいけれども、民間にゆだねることによって公共性というものが保持できるのか。そのような場合には、今おっしゃる行政法人に誘導することが効果的であろう。  あるいはその逆の場合もありまして、あるいはまた中間的なものと思料せられるもの等がたくさんございまして、その分類いかんによって、ただいま御質問行政法人の体系も、二つかあるいは三つかぐらい考えられるのではないかと議論されたいきさつはありますけれども、まだその辺を定めて御報告する状況に至っておりません。
  192. 生方幸夫

    ○生方委員 もう一点だけお伺いしたいのですが、いろいろなタイプがあるであろうということでございますが、職員の身分についてもいろいろなタイプがあるというふうに考えてよろしいのでしょうか。
  193. 小里貞利

    ○小里国務大臣 先ほど申し上げましたように、同じ法人でも、その体系が若干というよりも基本的に違う側面もあるわけでございまして、したがいまして、公務員という一つの身分認定をまだ結論を出したわけではございません。  昨日の分が本日、活字等になって出てきておりますが、一つの有効なと申し上げましょうか、参考資料の一つとして出てきた、そういうふうに御認識をいただきたいと思います。
  194. 生方幸夫

    ○生方委員 行政改革と、今ここで審議をしております財政構造改革というのは、橋本総理が掲げております六つの中でも特に重要な法案である、いわば二本柱というふうに言ってもいいと思うわけですが、これは先行きどうなるかわかりませんが、一府十二省という形に中央官庁が再編されるというふうに考えますと、これが財政再建に与える、ないしは貢献する影響も非常に大きいと思うのです。  行政改革推進ということと、財政構造改革推進の、その構造改革の部分に行政改革がどのように寄与するのかという点を長官にお伺いしたいのですが。
  195. 小里貞利

    ○小里国務大臣 しばしば総理も申し上げておりまするように、要するに、危機なりあるいは内外の急激な情勢変化等、御案内のとおりであります。これに弾力的に対応するために、いろいろなことを、創意工夫が尽くされておる。特にその中身を申し上げますと、まず簡素でなければならぬよ、そして効率性が高くなければならないよ、それからまた透明性がなければならないよと。  その中でも、ただいまお話がございました財政構造改革に最も貢献すると思われる経済構造改革、その一環を担わせるために規制緩和、しかも規制は、緩和どころでなくてこれを徹底しなければいけません。この辺に大きな着目もありますこと、御承知のとおりであります。  したがいまして、財政運営の当面の方針として、国と地方、官と民の役割を徹底することではなかろうか。いわゆる国と地方、そして官と民の役割分担というものを徹底してこの際メスを入れ、かつまた、その歳出分野というものを対象として大きな改革推進することが一番大事である、さような一つの考え方に基づきまして、あらゆる分野で集中的に相当議論されておると申し上げていいかと思うのでございます。  したがいまして、行政改革財政構造改革はまさに一体である、そういう認識でございます。
  196. 生方幸夫

    ○生方委員 一府十二省に再編するということでございまして、先ほど私が指摘しましたように、これが名称の変遷だけになっては困るということでございますから、一府十二省に変わるということによって、具体的に、例えば人数がどれぐらい減るのか、あるいは予算がどれぐらい減るのかということの見通しを、もし示していただければ示していただきたいというふうに思います。  この財政構造改革推進方策の中では、集中改革期間中、適切な措置を講ずることにより総人件費を極力抑制する、定員については事務事業の見直しに関する論議を見きわめつつ、定員削減計画の見直しを行うことを含めさらに徹底した抑制に努めるという文章だけございますが、この具体的な中身。もちろん、何人を減らすというような現実的な数字でなくても結構なんですけれども、どの程度まで減らして、どの程度まで予算も減らすことを考えておられるのか、長官の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  197. 小里貞利

    ○小里国務大臣 要するに、一府十二省、一行政委員会、八庁でございますか、これを、ぐっと行政機構そのものも縮小してきますよ、それがもたらす人員、規模、予算、事業内容等はどのように具体的に縮減されてくるのか、そういうお尋ねでございますが、いわば、簡素効率的、そして透明な政府を実現するために、先ほどの答弁でも申し上げましたように、国の役割をこの際根本的に見直そう、このことが一つ主眼に置かれまして作業が進められております。  これは、率直に申し上げまして、もう御承知のとおり、私、大臣を拝命してからのことではございませんでして、もう既に一両年前から、行政改革委員会あるいは地方分権委員会等で相当議論が進んでおりますことも御承知のとおりでございまして、それらの、先ほど申し上げました問題等の条件整備、思い切ったメスを入れて、そしてその答えを進めるところに初めて組織、人員、予算の規模を縮減できるものである、かように思っております。  先ほど先生のお話の中でも、具体的に、物理的にここで数値を示されるものではなかろうがという意味のお話がございましたが、まさにそのとおりでございまして、これからこそ本当に、来月いっぱいで最終目標、最終結果を報告しますが、そのときに、なるほど、これを具体的に実践ができるなれば明らかに稜線が見えてきたな、そういう実感を、確実な期待を皆様方に与えられるようなことを目標にして、今、諸君、頑張っておるところでございます。
  198. 生方幸夫

    ○生方委員 私は、こういうことを聞いたのは、行政改革、火だるまになっても総理はおやりになるというふうに決意は非常にかたかったわけですけれども、今度の組閣を経て、本当に行政改革をやられるのかということが国民の間に不安として高まってきたということがございますので、具体的に、例えば、この行政改革をやることによって三分の二にするんだというような数値が示されれば、国民も、いや、これは本当にまた本気になってやる気になったんだな、お茶を濁すことはないのであろうなということを含めて長官にお伺いしたわけで、特に数を示さなくていいということではなくて、もし決意して示せるのであれば示していただきたいというふうに考えます。
  199. 小里貞利

    ○小里国務大臣 お話のとおりでございまして、私も実は、きょうはもう総理官邸に三回呼ばれました。そして、今お話がありました問題点だけではございませんけれども、今お話しの問題などを中心にいたしまして、この辺でと申し上げていいのではないでしょうか、縮減目標というものを、国民にわかりやすい一つのテーマに基づいて、行革会議のトップであるすなわち総理大臣に近々明らかにしていただこう、こういうような話なども詰めたところでございまして、もうしばらく気長にお待ちいただければ、きちんとした方向が明示できると思っております。
  200. 生方幸夫

    ○生方委員 できれば思い切った数字を出していただいて、それは数字だけではなくて、実際にきちんとそれを達成するということをお示ししていただきたい。いろいろ族議員さんの反論というか反発というのもあるでしょうけれども、ぜひそこをはねのけて、国民立場に立って行政改革を断固として推進をしていただきたいというふうにお願いを申し上げます。  本日は自治大臣にもおいでいただいておりますので、次の質問に移らせていただきます。  九日に地方分権推進委員会から、いわば最終答申とでも言える第四次答申が出されました。この答申を見ますと、国の機関委任事務廃止等を含んで非常に抜本的な地方分権というのを盛り込んでいるのは、私はそれなりに評価できるというふうに思っております。  行政改革を行っていくには、当然その前提として、国の事務を地方に移していくという大胆な地方分権が必要であるということは言うまでもございません。きょうは財政構造改革特別委員会でございますから、地方分権を推進することによって、財政構造改革にどのような貢献があるのかという観点から御質問をさせていただきたいと思います。  この地方分権推進委員会の答申を見ましても、分権については先ほど申し上げましたように触れておりますが、肝心の税財源について、具体的な方針というのは盛り込まれておりません。  国と地方自治体の関係で一番大きいミスマッチというのは、私は、地方が得ている税収が三分の一つまり、国が三分の二税収を得ているにもかかわらず地方がやっている仕事が三分の二あるという、この三分の二仕事があるのに三分の一しか税収がないから、あとの三分の一を国から持ってこなければいけない。ここに補助金や地方交付税の問題が出てきて、官僚が地方自治についてあれこれ口を出す余地が入ってしまうというふうに考えておりますので、最終的には、地方が仕事をする三分の二の分は当然地方が税を徴収するという形にして、ミスマッチを解消するのが正しい姿だと思います。  ここに至るまでの経過的な措置として、この答申では、補助金、負担金を生活保護などの義務的な負担金と政策誘導のための奨励的な補助金に分け、負担金は十年ごとに見直し、補助金は五年後に廃止縮小し、自治体の自主財源とすることを提案をしておりますが、先ほど私が述べましたように、これは経過的な措置でございます。  最終的には、私が申し上げましたように、地方で使う分は、地方がその分の税収を確保できるだけ取れるようなシステムにするべきだというふうに考えますが、自治大臣のお考えはいかがでございましょうか。     〔甘利委員長代理退席、委員長着席〕
  201. 上杉光弘

    上杉国務大臣 三つほどでございますが、お答えをいたします。  まず、国と地方の歳出と歳入の分でございますが、これは最後にお答えをいたしたいと思います。  まず、補助金行政がございますが、この件は、地方分権を推進しまして地方自治を確立するためには、国と地方団体との役割分担を明確にしなければなりません。そして、明確にした上で、地方団体の自主性を高めるよう国庫補助負担金の整理合理化を進めることが重要と考えております。  それから、国庫補助負担金の整理合理化は、地方分権の推進のために極めて重要な課題でございますので、地方分権推進委員会の勧告を踏まえまして、国庫補助負担金の整理合理化がなされるよう各省庁にも働きかけていく考えでございます。事業を持っている各省庁の協力がないとこれはできませんので、協力要請は絶対必要なことと考えております。  それから、補助金の一割カットの問題がございますが、この点については、御指摘のとおり地方団体において大変心配をしておるわけでございます。財政構造改革における補助金等の削減合理化の具体的な内容、地方財政への影響につきましては、今後の予算編成過程で検討していくことになると思います。  地方分権推進委員会の勧告にありますとおり、地方分権に資するよう、まず一つは、存在意義の薄れた事務事業に係る補助金等の廃止。それから二つ目には、地方財政として同化、定着をしているものもございますから、これらの一般財源化。三つ目には、公共事業の重点化等を進めていく必要があると考えております。  いずれにいたしましても、国、地方を通じる財政健全化を図る観点から、国、地方双方の歳出抑制につながる施策の見直しが重要であり、国から地方への負担転嫁のようなことは行われるべきではないと思っております。この点についても各省庁に強く協力をお願いし、要請をしてまいりたいと考えております。  それから、国と地方の歳出で、三分の二を地方が受け持ち、歳入も、そうであれば三分の二の配分を受ける必要があるんじゃないか、こういう意味質問でございますが、この点につきましては、我が国行政は法令等に基づきまして国、地方が役割を分担しておるわけでございます。その役割分担に基づきまして、最終的な支出では地方が約三分の二を受け持っておるのに対し、租税総額に占める地方税の割合は約三分の一となっておるわけでございます。ここに地方財政の苦しさというか、厳しさがございます。この地方における歳出規模と地方税収との乖離をできるだけ縮小する、こういう観点に立ちまして、地方税の充実確保を図る必要があることは御指摘のとおりでございます。  しかし、その一方で、地方税収は地域で格差というか、地域間における偏在という問題がございまして、したがって、地方の財源は地方税と地方交付税で、この組み合わせた形におきまして確保する仕組みとなっておるということはもう御案内のとおりでございます。  今後、地方財政の自主性を高める見地から地方税の充実を図りますとともに、財源調整や財源保障の役割を有しております地方交付税の必要額の確保を図ることによりまして、地方税財源の充実に努めてまいりたいと考えております。
  202. 生方幸夫

    ○生方委員 小里長官、もう結構でございますので……。  今申し上げました政策誘導のための奨励的な補助金についてなんですが、これは私の考えなんですけれども、たまたま、今私たちがおります衆議院の定数は五百で、小選挙区が三百になっております。三百の小選挙区が、一つ一つならしますと大体四十万人という数字になっておりまして、四十掛ける三百で大体日本国民の数になるというふうになっております。私の選挙区は三市にまたがっておりまして、これが一市のところもあればいろいろな条件のところがあると思いますが、四十万人という単位は、一つの行政単位として見ると非常に適当な単位であるというふうに私は考えております。  市町村合併、これから大胆に推し進めていかなければいけないというとき、今の選挙区の線引きがいい、それを固定しろという意味ではございませんが、四十万人程度の単位というところを一つの市町村単位の合併の目的として、そうすると三百市ということになるわけでございまして、地方分権もそうなると非常に効率的にやりやすくなるんではないかというふうに私は考えております。  そこで、今のこの政策誘導のための奨励的な補助金、五年間で見直しないし廃止というふうに言っておりますが、この奨励的な補助金というのを三百選挙区に均等に割り振ったらどうであろうかというのが私の考えでございます。  そうなりますと、その中でいろいろな市が、例えば三つ市があればその市が三つそれぞれアイデアを出し合って、自分の市であればこういう使い方をしたいというような形で、補助金の有効活用について市町村同士での話し合いが始まる。こうしたことを実験的に通していく中から、市町村合併も無理やり上からやるのではなく、そういう実績を通して新しい形の自治体というのができてくるんではないかというふうに考えておるのです。  この私のアイデアについて、自治大臣、どのようにお考えになっていますでしょうか。
  203. 上杉光弘

    上杉国務大臣 地方行政体制の整備については、すなわち市町村合併でございますが、さまざまな議論があるところでございます。おっしゃるように、最低十万にすべきだ、十五万にすべきだ、あるいは三十万だ、今の御提言のような四十万にすべきじゃないか、こういう御意見、いろいろ議論のあるところでございます。  ただ、地方の団体は、その構成、例えば市街地の地域がどうだ、あるいは農山村の地域がどうだ、あるいは人口がどうだ、その面積がどうだと、それぞれ違った個性的な条件もその中にはあるわけでございまして、一概に人口で割り振った市町村体制というか地方行政体制を決めていくことについては、いささか問題を感じておるところでございます。しかし、御提言につきましては、御提言として十分考えてまいりたいと考えております。  なお、これらの行政体制の整備は、分権推進行財政改革と一体的なものでございまして、自治省といたしましても積極的に、これらの問題については、地方団体の自主性あるいは自立性というものを十分見きわめ、また行政的な指導助言も行いまして対応してまいりたいと考えております。
  204. 生方幸夫

    ○生方委員 私がこういうことを言ったのは、地方財政白書に書いてあることを見てこういうことを思いついたのです。都道府県別の歳入決算額の比較資料によりますと、地方交付税も含めた歳入総額が最も多いのは島根県の七十四万五千百二十五円であり、二位が高知県の七十二万五千百四十四円である。いずれも全国平均の三十九万三千八百五十二円を大きく上回っている。さらに、投資的支出を見ると、島根県は三十一万三百九十円、高知では二十八万七千二百一円で、全国平均の十三万一千三百八十九円の二倍強、神奈川県の五万二千六百三十四円と比べれば何と六・五倍にもなるというふうに指摘をされております。  ひとしく税金を払っているわけですから、国民はひとしく税金のサービスを受ける権利があるというふうに思います。これは過疎対策等もございますから、一概に、一律にしろと私は言うつもりは毛頭ございませんが、少なくとも三百選挙区に同じ額の補助金を割り当てれば、人数は四十万でほとんど同じですから、それ全部じゃございませんから、それぐらいの額を有効に活用することによって、こうした格差というのもなくしていくことができるのではないかというような観点から質問をさせていただきましたので、この辺の趣旨をお酌みいただいて御検討をしていただければというふうに思います。  これで終わります。
  205. 中川秀直

    中川委員長 これにて生方君の質疑は終了いたしました。  次に、東中光雄君。
  206. 東中光雄

    東中委員 この法案は、六月三日の財政構造改革推進についての閣議決定で書いてあるような、要するに、少子高齢化社会の進展、冷戦構造の崩壊等々、我が国財政を取り巻く環境は大きく変容しているが、「その中で財政は、現在、主要先進国中最悪の危機的状況に陥っている。」「財政構造改革財政の再建を果たすことが喫緊の課題であり、もはや一刻の猶予も許されない。」この前提に立っていると思うのです。  私は、危機的な財政状況を招いている原因の一つに、防衛関係費、軍事費の異常な増強があるというふうに思っています。  それで、我が国の防衛関係費、いわゆる軍事費についていえば、社会保障、公共投資、それから文教及び科学技術振興費に次いで、予算上第四番目の項目になっております。国際的に見ますと、この軍事費は、世界第三位という有数の軍事費になっておる。最近の「ミリタリー・バランス」九六年から九七年版の「国防支出と兵力の国際比較」を見てみますと、抜群の第一位は米国ですが、次いでロシア、それから日本。フランスもドイツもイギリスも中国も、日本の軍事費よりずっと少ないということが出ております。いわばアメリカに次ぐ軍事費大国と言ってもいいと思うのです。  まず、大蔵大臣財政の面から見まして世界有数の規模になっておるということ、これは事実だと思うのですが、いかがでしょう。     〔委員長退席、佐田委員長代理着席〕
  207. 久間章生

    ○久間国務大臣 後ほど大蔵大臣からもお答えしていただくかもしれませんけれども、日本の軍事費が世界第三位だというふうにおっしゃられました。この第三位の規模とはいかなる方法により比較されましたものか承知いたしておりませんけれども、各国の国防費の定義とか範囲等が明らかでありませんし、また、為替レートによる換算であれば、その変動が実態以上に大きなものとなる場合がありますので、我が国の防衛関係費と各国の国防費をそのまま数字で比較するというわけにはいかぬわけでございます。  ちなみに、実態の比較に当たりより適当と思われる購買力平価を用いて欧米主要国とあわせて比較してみますれば、一九九五年度の我が国の防衛関係費は米国、英国、フランスに次ぐものであり、また、国際比較を行うことが極めて困難でありますけれども、ロシアの国防費を勘案しますれば、当該年度の我が国の防衛関係費の規模は米  国、英国、フランス、ロシアを下回るものと考えられます。  いずれにしましても、我が国の防衛関係費も国際的にはある一定の規模に達しているということは考えられるわけでありますけれども、これは一つには、人件費について諸外国との比較をしてみますれば、我が国の人件費が割高になっていることが一つであります。二番目には、装備品の価格について、一概には比較はできませんけれども、我が国は武器輸出を行うことができないために調達数量が非常に限られております。それが価格押し上げ要因になっていると一般的には推測されるわけであります。それともう一つは、基地対策費につきまして、やはり手厚いものとならざるを得ない状況にありますために、防衛関係費に占める割合が高いというふうになるわけでございます。  このように考えますと、我が国の防衛関係費は、国際的に比較すると一定の水準に達しているとは言えますけれども、我が国の防衛にとって必要最小限の経費を計上したものであることを御承知願いたいと思います。
  208. 東中光雄

    東中委員 結局、「ミリタリー・バランス」は一つの権威のある国際比較ですから、そこが三位と言っているよということを言っているので、えらい弁解せぬでもいいですよ。大きくなった理由なんて聞かぬでもいいです。どっちにしても、軍事費は大きくなっているんですから。  そして、去年の十二月十二日の財政審の財政構造改革特別部会最終報告を見ると、「国際的にみても、近年では韓国の国防費の約三ないし四倍にのぼる世界でも有数の予算規模となっている。」と言っているじゃないですか。そんなに一生懸命に弁解せぬでもいいですよ、大きくなっていることは事実なんだから。  そういうことで、なぜそんなに世界有数になったのか。日本国憲法では陸海空軍その他の戦力を有しないというようになっておるのに、どんどんふえていったのはなぜなのかということでありますが、八〇年代からの軍拡がずっと積み上げられてきたということだと思うのです。八〇年代に、中曽根内閣、臨調行革でゼロシーリングということでずっと抑えてきたはずなんですが、軍事費は聖域で、五%、六%という突出した伸び率が保障されてきました。  八六年度から五年間で十八兆四千億円というあの中期防が決まりました。そこでは実質平均伸び率五・四%、まさに軍拡であります。そして、続いて九一年度から中期防は二十二兆一千七百億円……(発言する者あり)このころはソ連は崩壊しておるわけです。ソ連の脅威によってと言いましたけれども、なくなっておるときに、今度は二十二兆一千七百億円にふえておるわけであります。さらに、九六年度からの二十五兆一千五百億と、この十数年の間に実に六十六兆円です。  そういうことでどんどん大きくなってきたのであって、七九年度の防衛費は二兆円、八五年度は三兆円を超した。そして九七年度は四兆九千四百十四億円、物すごいカーブであります。こういうふうになって、先進国の中でも有数の軍事大国になってきたわけであります。この十二年間で、日本は実に一・五倍の軍事費の増強です。  ここに私、各国のものを防衛白書に基づいて計算してみたんですが、伸び率を見ますと、八五年を一〇〇として、日本は九七年で一五七・七です。それから、ドイツの場合は八五年を一〇〇として九四・四です、減っているんですね。それから、アメリカでも八五年と比べて一〇三・七であります。特に九〇年、九一年、あのソ連崩壊の後は各国とも軍事費が減っていますね。マイナスになっておる。日本だけはどんどん上がって、この十二年間で五割を超す、こういう事態になっております。世界の大勢と違った軍事費拡大の経過だと思うのですが、それは間違いありませんか。
  209. 久間章生

    ○久間国務大臣 先ほどもお答えいたしましたとおり、各国との比較というのも一律になかなかできない点もございます。そしてまた、ヨーロッパ各国と比べますと、いわゆるソ連邦が解体しました後の国際情勢がかなりヨーロッパ等では変わっているかもしれませんけれども、我が国の周辺の場合は、御承知のとおり東西冷戦の時代からそうでございましたけれども、その後、終わりましてからも依然として不透明、不確実なそういう状況が続いておりまして、従来の状況をやはり維持していくということになっておるわけでございます。  そのときに、やはり年数がたちますと古い装備を新しいものにかえなければなりません。かえますときに、やはりそれが割高なものになっておるのは確かに事実でございまして、これは先ほど言いましたように、我が国はどうしても大量につくって大量にそれを諸外国に売るということはできませんで、自衛隊だけがそれを購入する形になりますから、どうしても新しいものを開発しましたときの開発経費等を数少ないいわゆる装備品の中に含めることになりますから、それが割高になっておる、こういう事実もございます。  ただ、私どもとしましても、これから先、このように厳しい財政状況の中で、どうすれば維持管理費も含めまして取得経費を抑えることができるか、そういう研究はしておるわけでございますけれども、決して軍拡、軍拡という形でふえてきたわけじゃございませんで、その間には人件費もずっと逐年上がっているというのもお知りおき願いたいと思うわけでございます。  そういうような状況で、決して私どもの装備の内容が、いわゆる台数にしましても機数にしましても隻数にしましても、従来のものを基準としながら、決してふやしているわけじゃない。その中の装備の内容は、確かに充実はしてきております。これは専守防衛に徹する我が国としてはやむを得ないものでございまして、やはりできるだけ新しいもの、一たん急あるときには十分に対応できるようなものにしたいというようなことでやつてきているわけでございます。
  210. 東中光雄

    東中委員 私は軍事費のことについて聞いているのです。軍事費がふえる理由を、人件費であるとか、つまらぬものを買っているとか、例えばP3Cというような非常に高い、一機百億もするようなものを百機体制なんというようなことをつくる、そういうばかげたことをやってきたということを今言っているのじゃない。  今言っているのは、八五年から見て今までの間に、五八%近く日本の軍事費が、日本の円で、日本予算で、五割以上、六割近くふえているよ。ほかは、米国は、ドルで八五年と現在と比べればわずか三%しかふえていない、むしろ途中ではずっと減ってきているということを今指摘したのですよ。それは事実、防衛白書に載っておる数字でやっているわけですから。あなたの、そういうことを聞いているのじゃないのだ。趣旨を、問題をそらしたらいかぬのです。防衛論争をしているんじゃない、今、財政論争をしているのですから。そういう点で、非常に伸びておる。  こういう状態について、こう言っているじゃないですか。財政審の財政構造改革特別部会の最終報告、去年の十二月十二日は、「防衛」の項で諸外国で行われている改革に触れて、「米国を始めとして、欧州各国とも東西冷戦構造の崩壊後、防衛費を大幅に削減してきている」「その中で各国とも数万人から十数万大規模での人員の削減、装備品の調達抑制(米国では戦闘機等の開発のキャンセル、英国では旧ソ連の新型潜水艦に対抗して建造された潜水艦の退役等)を行っている」と指摘していますね。だからそれは、それぞれそうやっている。  ところが、日本はどうか。逆にふえておる。このことを僕は言っているので、日本は今度の財政改革で軍事費について、こういう……(発言する者あり)余計なこと言うな。国際的には軍事費と言っているんだ。
  211. 佐田玄一郎

    ○佐田委員長代理 静粛にお願いします。静粛に。
  212. 東中光雄

    東中委員 だから、私の言うのは、非常に高くなっている軍事費日本では防衛費と言うけれども国際的には軍事費、それを切り込むのか。イギリスでもアメリカでもやっておる。今度の財政改革で切り込むのか切り込まないのかと聞いているんです。
  213. 久間章生

    ○久間国務大臣 先ほどからも申し上げておりますように、我が国の置かれている状況、これはその冷戦によって変わりましたけれども、しかしそうはいいながらもヨーロッパ周辺における内容と比べますと……(発言する者あり)ちょっと聞いてください、答える間。
  214. 佐田玄一郎

    ○佐田委員長代理 静粛にお願いします。
  215. 久間章生

    ○久間国務大臣 そういうふうな状況で、状況が変わっていないものですから、そういう中でなぜ防衛関係費がふえているかといいますと、先ほど言いましたように人件費は着実に伸びております。そしてまた、我が国は必要最小限の防衛力を整備しておるわけでございますから、今言われたように、そう人数を減らすとか機数を減らすとか隻数を減らすとか、そういうようなことはできないわけでございます。やはり我が国は、従来から我が国の防衛のために必要最小限の防衛力を整備しておるわけでございますから、そんなに急激に変わるわけではございません。  そういう意味で、要するに規模が変わらないとするならば、今言いましたように人件費の問題、あるいは基地対策費の問題、あるいはまた先ほど言いましたように取得に要する経費等がふえてきておるというようなことの中で、防衛関係費が割高になってきておるというのは事実でございます。  そういうことで、今回の財政構造改革に当たりましても、この防衛費関係につきましては、本法案の第十九条において規定されておりますように、「我が国の安全保障上の観点経済事情及び財政事情等を勘案し、」「節度ある防衛力の整備を行う必要があることを踏まえつつ、財政構造改革推進の緊要性に配慮して、抑制するもの」とされているところでございます。このため、我が国防衛関係費の国際比較の観点から先ほどおっしゃられましたので、そのような答弁をしたわけでございますけれども、我が国、国内の問題としても、これから先そういうような観点を総合的に勘案しながら、抑制的に配慮していかなければならないと思っておるところでございます。
  216. 東中光雄

    東中委員 冷戦構造の崩壊等々によって財政状況は大きく変わっているというように政府が言っているわけです。それで、軍事費はどうかといえば、これは国内予算でいえば四番目になっている、国際的には非常に高くなっている。それについてどういうメスを入れるのかということを聞いているのであって、そこであなたの言うたのは、基本方針で抑制する、量的目標としては前年度を上回らないようにする、そう言っているだけで、実際上はまともにやろうとしていないなという答弁をされたように私は思います。  それで、これは大蔵大臣、今申し上げたように、軍事費は客観的に上がっているでしょう。上がっているんです。そして、その点を下げるについて、今度財政危機、一刻も許せないと言っているのだから、財政再建の立場からいうならば、それをやるのかやらないのか、防衛庁の言っているだけでいいのかどうか。
  217. 三塚博

    三塚国務大臣 本件につきましては、既に財革法においても明示をいたしておるところでございます。専守防衛という我が国立場、同時に、平和国家を国是としつつ、日米安保条約によって我が国の独立と安全をキープをしてまいるという問題がございます。そういう中にありまして、財政構造改革は、この国の安定成長、持続的な成長、そして国民の安心、こういうことに視点を置きまして、赤字公債からの脱却を目指し、三%ということになりました。  そういう環境の中におきまして、我が国防衛関係費につきましては、財政が危機的な状況にあるわけでございますから、安全保障上の観点経済財政事情を考慮して、節度ある防衛力の整備を行う必要があることを踏まえ、現在の危機的状況のもと、あらゆる経費の節減努力を行い、厳しく抑制をしていく必要があると考えておるところであり、聖域を設けず厳しく査定をしてまいる。もちろんこの法律をお通しいただければ、法律の条項に基づいて専心をいたします、こういうことです。
  218. 東中光雄

    東中委員 中期防衛力整備計画、削減すると言っていますね。二十五兆を超す五カ年計画のうち、今度九千二百億円削減するんだと。何を減らすんですか。
  219. 久間章生

    ○久間国務大臣 これは、ことしの暮れまでに、要するに十二月までに、安保会議あるいはまた閣議等の議を経ながら決めていくわけでございまして、目下鋭意検討しているところでございます。  御承知のとおり、中期防といいましても、もう既にいわゆる契約化して後年度負担になっているものもございますし、あるいはまた人件費等につきましては、これはもう削れないわけでございますから、そういう意味で削れる分野というのが非常に少のうございます。その中で九千二百億を削減するわけでございますから、かなり厳しいものがございますが、鋭意、十二月を目途に一生懸命、今検討しているところでございます。     〔佐田委員長代理退席、委員長着席〕
  220. 東中光雄

    東中委員 この法案を見ますと、社会保障の場合は、現行制度を維持するだけで必要な経費八千五百億円が要る。これは当然要るわけです。しかし、そのうちの三千億円しか認めない、五千五百億円を削減する、そのために制度改革を順次実現する、こうなっているんでしょう。国民社会保障だったらこうなんです。  それで、防衛費はどうかです。人件費を削るわけにいかぬ、そういうことを言って、二十五兆円のうちの九千二百億、その内容も言えないと。これはまともにやっているとは思えません。  ついでに具体的な内容で聞きましょう。空中給油機は中期防で整備する、そういう方向だった。これはどうなるんですか。
  221. 久間章生

    ○久間国務大臣 ただいま申しましたように、中期防衛力整備計画の中でこの九千二百億をどうやって削減していくか、これを今検討しているところでございまして、今空中給油機と言われましたけれども、空中給油機は、中期防の中でこれを購入するということは決めていないわけで、それを検討して結論を得るというふうにたしかなっていたと思います。  そういう意味では、これを今期中に買うというような新たなそういう計画をするよりも、むしろ、いかにしてこの九千二百億を捻出するか、それに今一生懸命知恵を出しているところでございますので、どうかその辺、苦労している事情を御理解いただきたいと思います。
  222. 東中光雄

    東中委員 中期防では、一機当たり約百二十億円のF2、私もF2を見ましたけれども、随分、国際的な価格から見ても非常に高い。それを四十七機入れるという方向ですね。これはそのままですか、削るんですか。
  223. 久間章生

    ○久間国務大臣 先ほど言いましたように、とにかく、中期防衛力整備計画のこれから先の支出経費の中で九千二百億を削るというのはなかなかのことでございます。そういう中で、そういう問題も含めて今検討しているところでございます。
  224. 東中光雄

    東中委員 先ほどの特別部会の、アメリカにおける、あるいはイギリスにおける態度、最終報告書にありましたね。そういうふうなことについて、日本の防衛庁は全く、ただ検討していると言うだけで、まともに財政再建のための措置をとろうとしているわけではないというふうに思います。  次に、米軍の駐留経費、いわゆる思いやり予算についてお聞きしたいんですが、防衛施設庁に聞きますが、一九七八年にいわゆる思いやり分担ができました。そして九七年度まで、最初は六十二億円で出発した、それが九七年は二千七百三十七億円。施設庁の予算の中で占める割合でいえば、七八年は三・三%だった、今は四七・四%、約半分がアメリカに対する思いやり予算になっている。これはもう異常な状態ですね。カーブで見てみますと、ほんのちょっとだったのが、こんなに、四十四倍になっている。  毎年毎年、思いやり分担がふえているのですが、それは間違いありませんか。
  225. 久間章生

    ○久間国務大臣 詳しい内容については施設庁から答弁をさせますけれども、その前にお知りおきいただきたいのは、かつては特別協定に基づかないでおりましたが、その後予算化されたり、あるいはその後は特別協定に基づいて日本負担するということを、しかも、その特別協定は国会の方で御承認いただいて、それに基づいて負担することになりました義務的経費になっているわけでございまして、そういうような事情等についても、やはりそこで質的な違いも出ているということについて御理解賜りたいと思うわけでございます。
  226. 東中光雄

    東中委員 ふえているという事実を確認しないで、そしてその弁解というか理由を盛んに言われても、私はそんなこと聞いていないのです。まあ、いいです。数字は動かせない事実なんです。  ところが、今、特別協定云々ということを言われましたけれども、地位協定の二十四条の原則は、施設提供の経費を除いて、在日米軍のすべての経費日本国負担させずに米国において負担すると書いてありますね。その原則、だから基地提供についての費用は、なるほど提供の義務はあってそういうことになっているけれども、いわゆる思いやり分担みたいなものは、あの二十四条の規定からいえば原則的にアメリカが負担する、合衆国において負担することに合意したと書いてありますね。それを、アメリカが負担することで合意しておったものが、特別協定をつくって、そして特別に思いやりをやっていくんだと。しかも、その額が、この十数年の間に四十四倍になっておる。  その金を一体どういうふうに、それが異常に高いのですよ。ほかと比較してみますと、例えば、ことしの在日米軍駐留にかかわる日本側の負担総額、いろいろありますね、いわゆる思いやり分担、そのほかに基地周辺対策費、それから沖縄の民公有地賃借料や国有地等の借り上げ料試算、そういうものを全部含めますと六千四百七十六億円です。これははっきりしていますね。これは、もちろんSACOの六十一億円も含めてですが。  この状態というのは異常に多いのですけれども、それで在日米兵一人当たりにこの駐留関連費を割り当てていくと幾らになるかといいますと、去年の六月末の在日米軍の数四万三千百四十九というので割りますと、米兵一人当たりに在日米軍駐留経費として支出している額が、何と年間で千五百一万円になるのです。これは報酬にしたって高いものですね。そういう状態になっています。  これは、世界のほかのところと比べてみますと、本当に異常なのです。九五年度について、私、日本とそれからドイツのものを比較してみた。そうしたら、日本は米兵一人当たりに千四百四十二万円です。ドイツは三十九万七千円です。けたが違うといいますけれども、けたが二けた違うんですよ。だから、日本におる米兵は一人当たり、我々の税金で出している駐留経費、千五百万。ドイツはわずかに、わずかにといったってこれは出す必要もないと思うんだけれども、三十九万七千円。これだけ日本は異常に米軍に対する支出をしているのです。  しかも、それは思いやりだと通称言われるような状態で、地位協定の二十四条の原則からいったら、やらぬでいいということになっておるものがやられているんですよ。こんなものは切るべきじゃないかと私は思うのです、財政ということからいうならば。  これに対して、今度切り込むということがこの抑制の中であるのかないのか、これはひとつお伺いしたいと思います。
  227. 久間章生

    ○久間国務大臣 各国それぞれ、外国の駐留軍が駐留しますいろいろな理由はあろうかと思います。  我が国の場合、国際社会に引き続き不安定要因が存在する中で、やはり日米安保体制というのは我が国の安全及びアジア・太平洋地域の平和と安定のために重要な役割を果たしており、我が国としては、日米安保体制の円滑かつ効果的運用を図るという観点から、先般、地位協定だけでなくて特別協定をこの国会で御承認いただいて、そういうような負担をするということを決めていただいた上で我々は予算を執行しているわけでございます。厳しい財政事情にもかかわりませず、そういうようなことを配慮しながらも、やはり今までそういう予算を講じてきたわけでございます。  確かに、先生おっしゃいますとおり、防衛関係予算というのは、我々から見ますとなかなか頭打ちになって伸びなかった、その中で、そういうような基地対策費がずっとふえてまいりましたために、我が国の国内の基地周辺対策費が非常に抑えられてきたのも事実でございます。  しかしながら、一応最高の水準といいますか、いわゆる少しずつ上がってきて頭打ちのところまで参りましたので、これから先はそういう基地周辺対策にも回せるなと思っておりましたが、今度はまたさらに厳しい財政事情になりましたので、その中で抑制を図っていくということになりました。そういうことで、この特別協定に基づきます分につきましても、義務的経費でございますけれども、その枠内で何か配慮の余地がないかということでいろいろ検討しているところでございます。
  228. 東中光雄

    東中委員 社会保障は、当然増が義務的経費として法律で決まっている。しかし、それは思い切って削除するんだ、法律も変えるんだと言っているんです。アメリカに対するこの思いやりというのは、ドイツと比べれば二けた違うようなべらぼうなことをやっておって、それは特別協定でやったんだからその範囲内で当たり前なんだというこの根性は、私はもう本当に、この日本財政危機を何と思っているんだというふうに言いたいわけであります。  この思いやり負担について米側はどういうふうに言っているかということですが、九五年の十月二十五日、当時のロード国務次官補が下院の国際関係委員会アジア太平洋小委員会の証言でこう言っています。米軍に対する日本の直接財政支援は年間五十億ドルに上る、これは駐留経費のほぼ七〇%である、これは他のどの同盟国が提供している額よりも多い。実際、それは他のすべての同盟国が提供しているものを合わせた額よりも多い。米国内よりも日本で米軍を維持する方が我々にとって少ない費用で済むのである、こういう証言をしているんですよ。それが思いやりの結果なんです。私は、これこそ本当に削らなければおかしいというふうに思います。アメリカ側の姿勢は、一貫した姿勢がそうなんですから。  九月二十三日、2プラス2で新ガイドラインを最終合意したときの会談で、米側は思いやり予算を問題にしたというふうに言われています。コーエン長官は、日本の思いやり予算に関連して、日本のホスト国支援は日米関係に必要不可欠のものであって、どうしても続けられなければならない、これは単に金銭的な問題でなく、戦略関係の中核にある大事な問題であると指摘して、今までの支援を続けることを希望すると言ったというふうに報道されていますね。これは、日本に置いておく方が米国におるよりも安うつくんやから今までどおりやっていけ、こう言っておるわけですよ。  この2プラス2に出席されました外務大臣及び防衛庁長官、向こう側の話とこちら側の言い分と、ちょっと明らかにしてほしい。
  229. 久間章生

    ○久間国務大臣 コーエン長官との会談のときに、思いやり予算と今おっしゃられますけれども、最近では我々は思いやり予算と言っておりませんけれども、この予算のことについて言及があったのは事実でございます。  しかし、今おっしゃられましたように、米軍をアメリカに置いておくよりも日本に置いた方が我々にとって有利だとか、そういうような観点ではございませんで、現在駐留している米軍に対する日本のホスト・ネーション・サポートとして、これは非常に戦略上意義があるという言い方をしたわけでございまして、こちらよりもこちらが安いとか高いとか、そんな話ではございません。  我が国に駐留するのは、あくまでも我が国の平和と安定のために必要だということで、日米安保条約に基づく安保体制の一環として我が国に駐留しているわけでございまして、その経費についてどちらがどういうふうに持つべきか、それはやはり双方が決めるべき問題でございまして、それを、アメリカと我が国が特別協定を結んで、地位協定及び特別協定に基づいてやっているわけでございますから、政府としてはその協定に基づいてこの予算を執行しているわけでございます。  したがいまして、相手国のあることでございますから、これを一概に我が国が一方的に切るとか、そういうようなことはできないので、その枠内でできるだけの努力をして、向こうにも理解を得ながらやっているところでございまして、そのような事情等を御賢察いただきたいと思います。
  230. 東中光雄

    東中委員 外務大臣にもお聞きしておきたいんですが、向こうはそういうふうに言ったということは、今私も言うたとおりなんですね。だから、こっちはどう言うたんですかと。ホスト・ネーション・サポートについてどう言ったのか。何も触れぬで、向こうの言うとおり黙って聞いておった、こういうことなんですか。
  231. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 先般の日米安全保障協議委員会、いわゆる2プラス2でありますが、在日米軍のケースにつきましては、我が方より国内の厳しい財政状況を説明いたしました。これに対しまして米国から、我が国経費分担が日米安保体制のため中核的役割を果たしているということの説明がございました。
  232. 東中光雄

    東中委員 そうすると、ドイツと比べればこんなに高い、そこまで言わぬでもいいかもしらぬけれども、思いやり分担はこの二十年で四十四倍にふえておるんだ、そういう状況でで一言も言わぬ。向こう側は非常に重要だと言っておる、それでこっちが何も言わんかったら、結局それを認めたということになりますね。これはもうだめですよ、そういう考え方では。  ここに、財政構造改革会議企画委員会ヒアリング用資料という、防衛庁が平成九年四月に出したのがあります。これによりますと、在日米軍駐留経費についてこう書いているんですね。日米安全保障体制の円滑かつ効果的な運用を確保するためのものであるが、米側にも、合理化、効率化努力を求めていくと書いてあるんです。それを求めているのかどうか知らぬけれども、求めていくと書いてある。さらにそれを超えて削減するとなれば、特別協定の円滑な遂行にも支障を生ずるおそれがあり、その結果、日本政府のHNS、ホスト・ネーション・サポートに対する姿勢の後退ととられ、日米関係に悪影響を与えるおそれがあると。だから一切言わぬでおくんだ、こういう姿勢になっておるんですね。  私はこれはもう、こんなむちゃくちゃな、もうそれこそ人をばかにしたようなものでしょう。アメリカで米兵を維持するよりも日本へ持っていったら安うつくんや、そこまで言っておるんでしょう、公式に。それで、日本財政はどんどん切り詰めされているんですよ。しかし、それについて、やめてくれということもよう言わないのです。何ということですか。
  233. 久間章生

    ○久間国務大臣 何も言わぬわけではございませんで、九八年度の概算要求については予算上いろいろな問題があるからそういうふうに努力をしてもらうことになりましたという、そういう現在の概算要求で出している内容については説明しているわけでございまして、それについては理解を示してくれているわけでございます。  ただ、今委員が言われましたように、向こうが、ここでやった方が安いんだ、そんな話は出ていないわけでございまして、こちらは九八年度の概算要求については一応言っているわけでございます。そして、それについて向こうは理解を示してくれておりまして、御承知のとおり我が国の自衛隊と同じように、あるいはそれ以上に、今度の概算要求において、見ていただければわかりますとおり切り込みをしているところでございます。  ただ、特別協定がありますから、特別協定にさわるというわけにはまいりませんので、その枠内でできるだけのことをするのと、それ以外のいろいろ、いわゆるペースダウンを図っておるということでございます。
  234. 東中光雄

    東中委員 大蔵大臣にお伺いします。  この法案は、財政構造改革について一切の聖域なし、こうなっているわけです。この在日米軍駐留経費負担については、私先ほど申し上げましたように、国際的に見たら本当に異常にたくさんになっているという状態ですね。提供施設の整備、労務費、光熱水料等、それから訓練移転費等々となっているのです。これに対してこの法案では、それについてどういうふうにメスを入れるかというふうなことは一切触れていないわけですから。  社会保障の場合は金額まで挙げて、これこれ要る、何ぼ減らすんだ、必要な法制を変えるとなっているのですが、いわゆる駐留経費についてはこの法案ではどうなっているんですか、もう一切手を触れずじまいですか、お伺いします。
  235. 久間章生

    ○久間国務大臣 とにかく防衛関係費についてはキャップをきちっと押さえられているわけでございますから、その中でやれというふうに言われているわけでございますから、我々としてもできる限りの努力はいたしていきます。
  236. 三塚博

    三塚国務大臣 今防衛庁長官大蔵大臣の分も答えてくれました。  二十条では「当該各年度の前年度の当初予算における防衛関係費の額を上回らないようにするものとする。」と、対前年度より減らすということを、縮減目標を掲げておるところでございます。  段々の御指摘、拝聴いたしました。日米安保条約の基本、日米信頼、同盟国としてのきずな、このことがアジア諸国に安心と安定を与えておるわけでございます。特に、故国を離れて有事に備えるということでありますと、よりよき環境を米軍が、米国がっくるのが基本でありますけれども、まさに思いやりということでやり得ることを取り進めていく、歴代内閣がそのことでまいりましたことは御承知のとおりでございます。  今後は、日米安保条約上の体制を守りながら効果的運用を確保していくという極めて重要な観点から、財政的見地を踏まえながら我が国として必要な負担を行ってきたところであります。そういう点で、予算編成上に当たりましては、財革法に盛られました基本方針を踏まえながら、財政事情と安保条約の観点から適切に対処をしてまいる。  適切に対処は、必要な経費経費として認めつつも、削減の努力を防衛庁にお願いを申し上げておるところでございまして、この点は縮減目標を明示しておるということで御理解をいただきたいと思います。
  237. 東中光雄

    東中委員 異常な状態になっておる在日米軍駐留経費負担については、具体的にこの法案は何のメスも入れない。「上回らないようにする」というのですから、それ以下にするというだけで、現状維持ということに結局なると思うのです。  もう時間がありませんが、最後にお伺いしたいのですが、この法案は、しかし、この軍事費についてはSACO経費を除くというふうになっております。だから、財政構造改革法の抑制、縮減の枠外に置くということでありますが、六月三日の閣議決定では「沖縄振興策及びSACO関連事業については、着実に実施することとする。」と書いています。だから(減らすどころか着実に実施をすると書いてあるのです。  そこでお聞きしたいのですが、SACOの関連事業というのは、普天間飛行場返還のための海上ヘリポート基地建設の問題、それから楚辺通信所返還のためのキャンプ・ハンセンに新しい象のおり、アンテナを建設する問題、それからキャンプ瑞慶覧と桑江の米軍住宅、千八百戸の住宅統合、高層住宅をつくると言われておる。そういったくさんの事業がございます。そういう事業は着実に実施をしていく、こういうわけですね。  そこでお伺いしたいのですが、経費という点からいいまして、海上ヘリポート基地建設、それからハンセンの象のおり、アンテナ建設、それから住宅千八百戸の統合建設、着実に実施する内容はどれくらいの額なのですか。
  238. 久間章生

    ○久間国務大臣 SACOの経費については、今度の財革法で関係経費を除くとなっておりますけれども、これは先般の閣議決定で、SACO関連事業が重要な政策課題であることを明らかにする趣旨で、これを着実に実施するという、そういうふうに記述されておりますからやったわけでございますけれども、それと同時に、平成十年度以降のSACO関連事業については、現時点でその内容とか所要額等がはっきりしない、不分明であることも踏まえましてこういう扱いをしてもらっているところでございます。  したがいまして、具体的に幾らになるのか、どうなるのかと言われるわけでございますけれども、これらはとにかく今一生懸命努力しているところでございまして、その全貌がなかなかまだ見えてこないというところでございます。
  239. 東中光雄

    東中委員 財政が危機的状態にあってそれを再建していくんだというときに、ヘリポートをつくると。海上ヘリポート、どのくらい要るのか。数千億から一兆円という言葉も言われている。千八百戸の高層住宅を建てる。何百億で済みません、何千億になるでしょう。そういう規模のものじゃありませんか。  そういうことについて、全然何もわからぬけれども着実に実施するんだ、こういうのは、財政削減どころか、アメリカのためにつくってやるわけでしょう、新しい基地を。そういうものについて一切内容にも触れないということなんで、私は、それはもうそのまま進めていくと、内容的に言えば思いやり予算と同じような内容を持っています、住宅建設とか基地の整備費とか。そういうことなので、これを枠外に置いたというのは、むしろ縮小じゃなくて拡大していく方向がこの法案の中には含まれておるということを指摘します。  もう時間がありませんので、最後に、せっかく房長官に来ていただいたので、一言はお伺いしないと申しわけないんで、一言申し上げますが
  240. 中川秀直

    中川委員長 東中君に申します。時間が参りました。
  241. 東中光雄

    東中委員 はい。  海上ヘリポートですね。この間、住民投票の条例ができました。それで、住民投票の結果、住民が反対だと言った場合はヘリポート建設はやめるということに……
  242. 中川秀直

    中川委員長 再度申し上げます。時間が参りました。
  243. 東中光雄

    東中委員 はい。  ひとつその点、答弁ありましたら、ぜひ長官にお願いをしたい。
  244. 中川秀直

    中川委員長 これにて東中君の質疑は終了いたしました。  次に、秋葉忠利君。
  245. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 先日の質問で十分カバーできなかった何点か、引き続いて伺いたいと思います。  建設それから運輸、お二人の大臣に来ていただいておりますので、最初に、もう大分遅いですから、最初に一問だけですので、その質問を伺って、後はゆっくりと、農水の問題についてはゆっくりとお願いしたいと思います。  一つですが、今回の財政改革のさまざまな問題がありますけれども、その中の一つ、特別会計、この点についてもやはり大きな焦点になっております。しかしながら、十分なその具体的な措置が盛り込まれていないというところがちょっと心配なんですけれども、その一つが、例えば国鉄清算事業団の持つ二十八兆円の債務について、これをどうするのかといった方向性が出ておりません。やはり非常に大事な問題でありますし、それから、先日総理に伺おうと思っていたんですけれども、時間がありませんでしたので、この点について一体どういうふうにしていったらいいのか、与党内でもさまざまな議論をしておりますけれども、その観点が一つ。  それからもう一つは、環境の面。財政の面だけではなくて環境の面も含めると、交通行政というのがやはりこれから非常に重要になってくる。その中で一つ考えられることは、現在ばらばらに行われている道路それから空あるいは船といった、陸海空ばらばらに行われているいわば特別会計のシステムを改めて、交通という観点から総合交通会計といったようなものをつくる、そういった中で総合的な交通政策を練っていくということで、かなりの経費の削減ができるのではないか。もちろん、それ以前に交通政策というところで非常に重要な貢献ができるのではないかというふうに思いますけれども、それぞれ立場が違うんだと思います。  例えば道路の場合には、建設省、そろそろ第十一次の五カ年計画、七十六兆円ですけれども、これが九五%もう既に終わっている。この時期に改めて建設省としては、新たな計画が始まる以前の段階で、一本化した交通会計といったような中で総合的なシステムを考えていくおつもりがあるかどうか、まず建設大臣に伺いたいと思います。  それから、国鉄清算事業団の二十八兆円の債務について、これもこの一本化された特別会計の中で考えていくということになれば、運輸省としてもそれなりの意味を見出していただけるんじゃないかと思います。運輸大臣、それから特別会計ということの扱いも含めて大蔵大臣にも、それぞれ交通会計を一本化するということについてどうお考えか、伺いたいと思います。
  246. 瓦力

    ○瓦国務大臣 秋葉委員のお尋ねは、総合的な交通整備が必要ではなかろうか、また道路五計が新たに出発するが、この際、特別会計、こういったものを考えてはどうか、こういう御質問であろうと思うわけであります。  御案内の、総合的な交通体系を実現する、こういう上で重要なことは、交通機関が相互の連携を確保、改善することであろうと思うわけでありまして、このために、道路整備に当たりましては、空港、港湾等へのアクセス道路の整備、加えて鉄道の高架化事業、さらには各種交通機関全般の利便性の向上を建設省としては今図っておるところであります。  それぞれの施設の特性を踏まえまして、利用者負担を前提として、それぞれの利用者の自由な選択を反映してまいる、こういうことで形成されていくものと考えるわけでありまして、道路特定財源は、御案内のとおり、我が国の道路整備はおくれておるわけでありまして、緊急かつ計画的に進めるためには、受益者負担考え方というものに基づきまして、自動車利用者にこれからも負担を求めてまいりたい、こういうぐあいに考えておるわけであります。  道路財源が他の目的に使われる、こういうことであれば、今度は受益者と負担関係を崩すことになるわけでありまして、納税者の理解も得がたい、こういうぐあいに考えるわけでございます。  なお、道路整備につきまして、私も、就任いたしまして、全国知事会、加えて今各地域からお話を伺っておるわけでありますが、非常に強いニーズがございます。これは地方にありましても、それぞれの交通体系をどう組み立てて我が国の基盤を整えていくか、このことには極めて熱心な声を聞くわけであります。  自動車重量税、揮発油税等につきまして、これをその整備に充てる、こういうことで、暫定税率を課して財源確保を図ってまいりたい。加えて、一般財源及び道路特定財源に加えまして、借入金まで利用しながら緊急に道路整備を行っておるわけでございまして、道路特定財源制度をしっかりと支えまして、これらのニーズにこたえながら道路整備費に充当してまいりたい、建設省としてはこう考えておるわけであります。
  247. 藤井孝男

    ○藤井国務大臣 お答えいたします。  先生の質問は二点だろうと思います。一つは、国鉄の長期債務に今後どういうふうに当たっていくのかという点、それから、特別会計の創設という観点の二つがあると思います。  国鉄長期債務問題につきましては、委員御承知のとおり、これはもはや先送りができない問題であります。昨年の十二月に、国鉄長期債務の処理につきましては、平成十年度から本格的な処理を実施するという決定がなされまして、それを受けまして、現在、これは政府・与党一体となった財政構造改革会議の企画委員会というところで、この具体的処理についての検討が行われているところでございます。  その中で、いろいろな項目について幅広く今議論をしているところでございますし、何といいましても、国民の皆さん方の理解も得ながら、本年中にこの具体的な処理を出すべく、今運輸省といたしましても最大限の努力をしている最中でございます。  そうした中で、秋葉委員のお話は、この国鉄長期債務の返済に、財源の一部として、道路財源等々も含めた中で総合交通特別会計というのを創設して、それに充てたらどうかというようなことを念頭に置かれての御質問かと思いますが、ただいま建設大臣の方からもお話がありましたように、委員のおっしゃられる総合交通特別会計の創設につきましては、特定財源制度というものをどう考えるかというのは、お話がありましたように、やはり受益者負担という中でこの制度がつくられてきた経緯がございます。  ですから、委員のおっしゃられることも一つの考え方として拝聴いたしましたけれども、ある施設の利用者の負担で別の施設を整備するという考え方が、実際、国民の、いわゆる受益者、利用者の理解が得られるかどうか、この辺はやはり慎重に検討をしなきゃならないんではないかな、このように考えております。  いずれにいたしましても、あらゆる角度からの議論を踏まえて、本年中に国鉄長期債務の返済の具体的な処理を出していきたい、このように考えております。
  248. 三塚博

    三塚国務大臣 特別会計を一本化し、交通関係特別会計ですね、一本化して新たな特別会計の財源を捻出し、長期債務解消に努力する決意いかん、こういうことであります。  運輸大臣からも説明がありました。今、財政構造改革会議におきまして真剣な論議を進めております。ありとあらゆる選択肢を検討しながら、次の世代に先送りすることなく取り組まなければならぬということで取り組んでおります。今年中に結論を得なければなりません。今後とも、この目標に向けて、あらゆる選択肢の検討を進めていく必要があると考え、努力をしてまいります。
  249. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 ありがとうございました。  従来のやり方を余り変えるおつもりはないようなんですけれども、やはり、非常に大きな問題があるときには、視点を変えて考えることが大事なんではないかと思います。そういう意味で一つ提案をさせていただきましたけれども、同じような視点から、食糧それから農業問題について伺いたいと思います。  江戸時代はお金のかわりにお米が使われていたわけですから、お金を何とか節約しようという話は米を節約しようという話とある意味で同じになるわけですが、日本では余剰米が非常に多くなっている、そういう現状があるというふうに理解しております。ところが、皮肉なことに、世界的に見ると、飢餓の問題が地球的な規模の非常に大きな問題の一つになっているという現実がございます。  まず最初に伺いたいんですけれども、世界的に見て、本当に食糧は余っているのか。今は余っているのか余っていないのかその判断はいろいろありましょうけれども、今後どうなるのか。それと、人口等の関係もありますけれども、島村大臣は、そのあたりの世界の食糧事情、それから日本の食糧事情、どういうふうに認識していらっしゃるのか。まず、そこのところから伺いたいと思います。
  250. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 世界の人口は、私の記憶に間違いがなければ、一九五〇年、昭和二十五年当時二十五億、現在が約六十億を少し欠けるぐらいでしょうか。それで、二〇五〇年、ちょうどこの百年間で約四倍、百億近くになるであろう、こう言われています。このペースで世界人口がふえるとなれば、当然、世界的な規模では飢餓の問題が起きてくると思います。  また、国内の人口につきましては、御高承のとおり、少子化でございまして、昨年が一・四二、ことしが一・四三ということですが、大体この程度のレベルでいきますと、約四十四年で一億人を割り、そして百二年で五千万人を割り、二百三十一年で一千万人を割り、四百十七年では何と百万人を割る、まさにこの国は滅びてしまうという恐ろしい数値が出ています。  こういうことごとを考えますと、国内の食糧事情というのは、現在時点が食糧自給率四二%、穀物三〇%でございますけれども、これらをいろいろ考えまして、実は私は今、非常にこのことに関心が深いものですから、専門に、先行きの食糧の自給率について検討を依頼しているところでございます。
  251. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 これから伺おうと思っていたことをたくさんお答えいただいてしまいまして、ちょっと困っているのですが、一つには、確かに世界の人口が非常に多くなる。それで、現在、飢餓の状態とは言えないまでも、栄養不足の人口が非常にある。  実は、プラス、マイナスをしますと、現在の時点では、世界の食糧生産は、世界のすべての人を飢えさせないだけの食糧は生産されている、しかしながら、同時に、その食糧が手に入らない人たちがいるというのが現状だというふうに認識をしております。  その中でも、栄養不足という、マルニュートリションですね、昔の言葉で言えば栄養失調、栄養失調というととても深刻に聞こえますけれども、栄養不足というとちょっとやせているぐらいかな。栄養失調といえば、それで死んだ人がたくさんいたというような戦後の記憶がありますけれども、そういう状態の人が世界で現在八億人、十億近くの人がそういう状態にいるということなのです。  その人たちと、それから現在の日本の、米の自給率は一〇〇%ですけれども、米余りの状態、一方では食べ物が余っている、もう一方では食べ物の手に入らない人がいる。これは、それだったら、余っている食べ物を、食べ物が手に入らない飢餓の状態にある人、あるいは栄養失調の人、栄養不足の人のところに届ければいいじゃないかというのがごく単純な発想なんですけれども、そのことでなぜそういった状況がなかなか生まれないのか。そのあたりの認識をどういうふうにお持ちになっているか、お願いします。
  252. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 確かに、素人考えで言えば、お米が余っているなら飢餓に苦しむ人たちにお米を送ればいいではないかと言えば、農村もそれなりに活性化するのではないかという御意見があるところですけれども、やはりお米をつくっているのは日本だけでございませんで、例えばタイにしてもアメリカにしてもつくっておって、そしてそれぞれ海外に市場を求めているという現実もあるわけですから、日本の国にお米に余裕があるからにわかに海外に持ち出すということは、なかなか許されない面があります。  また同時に、日本の国内では、トン約三十万円ぐらいで買っているものが、これが海外援助ということになると、これが本当に数分の一に落ち込んでしまうわけですから、それによって生じる財政上の負担もまた大きくかさむわけでございます。そういうことごとも含めまして、余ったらすぐ海外へ出せばいいということにはつながらないということは、秋葉委員は十分御存じと思います。  なお、先ほど来の、ああ、後にしましょうか。
  253. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 御配慮ありがとうございます。  そうすると、難しい問題があるということはわかりますけれども、現在三百七十万トンある日本の余剰米がこれからふえるのか減るのか、それと、三百七十万トンあるものがいわば使い道がないわけですから、その三百七十万トンの行方はどういうふうになるのかお教えいただきたいと思います。
  254. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 これは、私ども農林水産省が一方的に考え、あるいはこれを主張していることだけでなくて、JAの方でも極めて最近は物の考え方が前向きでございまして、将来に向かって米の生産はいかにあるべきか、相ともどもによく勉強していきたい、向こうからもそういう積極的なお申し込みがあるところでございます。  また同時に、今農林水産省の所管の中での公共事業で批判を受けます土地改良事業でございますが、この土地改良事業、御承知のように、圃場の整備とかかんがい排水とか農道の整備等をやり、農業をより効率化しようという動きがある一方で、用排水路とか暗渠排水路の整備を行うなど、いろいろな事業を行います。  これをした結果、水田を、今まで稲作以外何もできなかったというような農地が今では野菜栽培とか畑作ができるようになった、こういうような結果につながってきているわけであります。具体的には、この二十年間で、排水条件が悪くて稲作しかできなかった水田が半分に減少いたしまして、約百万ヘクタールの水田が、農地の要件としては、新しく野菜栽培や畑作等にも利用が可能になったという結果につながっております。
  255. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 ありがとうございます。  土地改良によって米以外のものができるようになった、ということは、だから米の生産量が減るということで結構なんですけれども、これから米の余っているものはふえるという予測の方が常識的ですね。例えば、これから豊作が続けば三百七十万トンが五百万ぐらいになるだろうという予測もあるのです。  長期的な問題としては、今おっしゃったような、JAと相談をしながらいい知恵を出していくということで、その具体的な内容も伺いたいのですが、短期的な問題として、五百万トンに余剰米がふえたときに、現在のままでは、その五百万トンというのは海外に援助にも出せない、食用以外のものにもなかなか転用できない。これは、備蓄米の場合ですけれども。  ということで、どうなるんですか。これは腐って、さっきおっしゃった暗渠の中に捨ててしまうようなことになるんですか。それとも、ほかにどういう行く末をたどるのかというのが、実は一般の消費者にはわからない。そこのところをちょっとわかりやすく御説明いただきたい。
  256. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 私からお答えしたいと思うのですけれども、せっかくの御質問ですから、きょうは、専門に長年汗を流してきている食糧庁長官、農産園芸局長等がおります。少しく専門的に御返事をいたしたいと思います。
  257. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 お答え申し上げます。  今、備蓄の問題、御指摘ありましたけれども、五百万トンになるかならないかはこれからの作柄が来年以降どうなるかということでありまして、現在のところは、先生御指摘のような水準であります。  ただ、備蓄というのは、御案内のとおり、平成五年の未曾有の大不作の中で緊急輸入を約二百六十万トンせざるを得ないという中で、大変な国民的な議論の中で出された。それで、食糧法に政府責任として備蓄制度が位置づけられたものでございます。そういうことで、不測の事態に備えるためのものでありまして、百五十万トン、プラスマイナス五十万トンということで運営をしているわけでございます。  御指摘のとおり、三年連続の豊作ということで、需給緩和が続いております。備蓄の水準も、今申し上げた水準を超えているということでございますが、基本的には、やはり生産調整によってこれをだんだんと減らしていくということであります。ただ、生産調整についてもいろいろな問題が指摘されておりますので、私ども、米政策全般の再構築を今、大臣の御指示も受けまして、鋭意進めておるところであります。  備蓄については、今の水準をどうするかということについては、生産調整の規模、期間をどうするかということによって対応をしていくというのが基本であります。
  258. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 何度聞いても、その余った米、結局米の主要目的は食べることなんですが、我々の口に入らない米がどうなるのかというのはお答えいただけないんですが、やはりこれは秘密にしておかなくちゃいけない何か理由があるんですか。何か錬金術みたいなのがあって、どこかで金に変わっているとか、それは秘密にしなくちゃいけないみたいな話があるんだったらわかるんですが、どうも、どこかでやはり捨ててしまうんではないかというような感じですね。  やはり、そうはならないにしろ、価値が落ちる。その部分はだれかがどこかで負担をすることになるわけですから、そうなる以前に、物々交換の時代に返るというのが最近世界ではやっておりますから、例えば非常に食糧不足で困っている北朝鮮、これも長期的な問題ではありません、一、二年の問題で、本当に緊急時だから緊急的な方法で、我々が例えば三百七十万トンたまたまあった、これからは生産調整で減ってくる、しかし今はあるんだかちということで、一時的にそういう緊急的な方策をとることも十分考えなくてはならないと思うのです。  これまで日本が援助として米をどのくらい海外に送っているのか、最近の実績で結構ですから、御説明いただきたいと思います。これは、外務省に伺ったらいいんでしょうか。
  259. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 お答え申し上げます。  最近ということになりますと、まず一番の最近では、八年度は十万トンを現在実施中でございます。九年度においても、一定の数量を援助としてやっていくことで今考えておるところでございます。  そのほか、最近では、北朝鮮に対しまして、人道的な見地から、例外的な措置として五十万トンを、緊急輸入米を活用して援助したということがございます。また、北朝鮮に対しましては、先般、六万七千トンをWFPに拠出することによりまして、政府米を活用して支援をするということが決定を見たところであります。  以上であります。
  260. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 米の援助の場合には、これは最近勉強した結果わかったのですけれども、米を直接送るということではなくて、米の金額に相当するお金を出して、例えばFAOがそのお金を使ってお米を買って、それで被援助国に渡すというようなことが行われているらしいんですけれども、それだと日本に備蓄されている米の消費にはつながらないということで、直接米を、物としての米を援助するような方法はないのかということをだれでも考えるわけです。  直接米を援助として外国に出すということにどういう障害が、そういうことができない、あるいはそういった方法をとるのが難しい理由というのはどの辺にあるんでしょうか。外交的な問題もあると思いますから外務省、それから食糧庁に最初にお答えいただいて、もし外交的な問題があれば外務省にお願いしたいと思います。
  261. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 お答え申し上げます。  今、先生おっしゃられた直接お米を出す、これは、WFPなりODAなり、また食管が負担して出すということと、基本的には、余り実質的に変わらないと思うのでありますけれども、いずれにいたしましても、先ほど大臣が申し上げましたとおり、例えばODA予算と食管特会で負担をする場合には、国産米の場合はトン当たり三十万円かかる、こういうことであります。  そのことは、仮に、先生がどういう形をお考えになっているのかあれでございますが、直接物を、日本の国産米を出すとしても同じような問題は生ずる。また、国際ルールもございまして、その整合性をとるという問題は同じようにございます。当然、今行っていることも、すべて国際的なルールにのっとってやっているということであります。
  262. 大島賢三

    ○大島(賢)政府委員 米の援助利用につきましては幾つかの国際的なルール、約束事がございますので、この辺も勘案しながら実行していく必要がございます。  例えば、食糧援助規約というのがございますけれども、価格上の問題につきましては、特定の買い入れ先国から買い入れることによる価格上の利点に対しては特別の考慮を払わなければならないといったような趣旨規定がございますので、規定趣旨に反することは控えなければいけない。  さらに、農業協定を含みます世界貿易協定、WTOの協定の関係からも、最小限のアクセスの機会を認める、いわゆるミニマムアクセス米が市場に出回る場合にそういう最小限のアクセス機会を提供しなければならない、それから、具体的な生産制限措置がとられている必要があるといったような、WTO協定上の関係もございます。  それから、世界食糧農業機関、FAOにおきまして、余剰処理の原則といったようなこともございまして、余剰農産物を特別な条件によって処理する場合に、受益国の農業生産及び通常の国際貿易に支障を与えることなく行わなければならないとか、あるいは関係国に通報して必要な協議を行わなければならない、こういった一連のルールがございます。
  263. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 備蓄と余剰米についてもう少し議論をしたいんですが、ちょっとほかの問題もありますので、時間がありませんので、とりあえずこの問題についてはこのくらいにして。  ただ、備蓄政策は、生産調整で全部うまくいくほど簡単ではないと思います。それは識者が既に言っていることですし、それから、仮に生産調整がうまくいったとしても、それは時間がかかることですから、短期的な問題、中期的な問題は解決されません。そこのところを伺っていたつもりなんですが、全然答えが出てきませんので、それはまた別のところで議論をしたいと思います。  もう一つ問題なんですが、実は、先ほど申し上げた世界の飢餓の現状を見ると、食糧不足で一番苦しんでいるのは、これはアジア、アフリカ。その中でも、驚くべきことなんですが、アジアが圧倒的に多い。三分の二は大体アジアの人口であるということになっております。  このアジアの人たちを日本が何らかの形で助ける。これは、援助というのは短期的な解決策ですけれども、長期的には、やはり自分たちで食糧をつくり出すだけの能力をアジアのほかの国々の人たちが身につけるというのが一番大事だと思います。そのために、日本は積極的な役割を果たせるのではないかというふうに思います。  そのための幾つかの方法というのは、当然、環境のこともお考えになっている、アジアのことも心配している農水省の皆さん、特に大臣はお考えになっていると思いますけれども、どういう方法で、これから日本がそういったアジアの食糧問題に、特に日本の米つくりの技術が世界的な水準にあることはだれでも認めていることですので、そういった技術をどういうふうに生かせるのか、そのあたりの方針を伺いたいと思います。
  264. 熊澤英昭

    ○熊澤政府委員 お答えを申し上げます。  先生御指摘のとおり、基本的に、世界の食糧需給の安定のために開発途上国の食糧増産、特にアジアですと稲作の増産というのが大変重要だということでございます。  そこで、私ども、日本の稲作技術、あるいは稲作を含めまして、畑作、畜産、技術としては大変高度な専門家が大勢おります。そうした専門家を、開発途上国の要請に応じまして派遣しているわけでございますが、ちなみに一九九六年度で申し上げますと、稲作関係だけでも百三十四人の専門家が海外に派遣をされまして、研究、指導を行っております。畜産、畑作その他含めますと、千五百十人ほど専門家を派遣しているということでございます。  また、開発途上国の要請にこたえまして、日本の高度な農業技術を研修していただくということで、千三百名ほどの研修生を受け入れておりますし、また、それ以外にも、研究者としては千五百名程度を八年度においても受け入れて、そうした技術の指導を行っているという状況でございますので、こうした日本の農業技術の活用につきましては、今後とも力を入れてまいりたいというふうに存じております。
  265. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 積極的にいろいろなことをお考えになって実行されていること、大変うれしく思います。  せっかくですので、特に今の日本の農業の姿というのは、やはり農家の高齢化ということが進んで、後継者がいない。そういう状況で、後継者づくりに般立つとは思いませんけれども、少なくとも若い働き手がいない。そのために海外、特にアジアからの若者たちに、もっとたくさんの若者たちに、日本の農村、特に中山間地あたりでそういった人たちに来てもらって、働きながら日本の米つくりの技術を身につけてもらう。  同時に、日本文化も十分に味わってもらう。日本ファンになってもらうというようなことは、ただ単に食糧という問題だけではなくて、アジアと日本のこれからの関係考える上でも、非常に重要なことになるのではないかと思います。できれば人数は、十倍ぐらいにしてもまだまだ余裕があると思いますから、そういったことをぜひ考えていただきたいと思います。  もう一つ重要な問題で、先ほど土地改良の話をされたので、諌早の問題に移りたいと思います。  私は、現在日本で行われている幾つかの干拓事業、進行中の干拓事業、それから、まあ一時ストップしているものもありますけれども、こういった干拓事業を抜本的に見直すべきだと思いますし、規模の縮小あるいは中止といったことを根本的に考えなくてはいけないというふうに思います。  その理由は、たくさんあるのですが、例えば諌早の場合には、環境を守る、あるいは国際的なラムサール条約というものがある。そういったことも大事なのですけれども、もう一つ、これはお金の面から考えても、余りペイする話ではないのではないか。干拓事業をやめることによって、結局財政状況をよくすることができるのではないかという観点から、この問題をきょうは伺いたいと思っているのです。  農水省の計算では、投資対効果ですね、どのくらいのお金を投資してどのくらいの効果がある、その投資係数といいますか、投資効果の係数が幾らぐらいになっているのか、伺いたいと思います。  この投資係数が一以上、つまり投資したお金以上のものが得られなければ、これは土地改良ということにはならないわけですから、しかも土地改良法という法律もありますから、法律違反ということもかかわってくる。この係数が一より多いのか少ないのかというところが非常に大きな問題ですが、農水省はどういうふうにお考えになっているのか、この点を伺いたいと思います。
  266. 山本徹

    山本(徹)政府委員 諌早湾の干拓事業の投資効果でございますけれども、これは事業実施開始の昭和六十一年に費用便益分析という形で行っておりまして、妥当投資額が千三百八十五億円、総事業費千三百五十億円、投資効率一・〇三という形となっておりまして、一以上であれば投資が適当であるということでございますが、こういった結果、及び地元の関係者から優良な農地造成と防災効果に対する大変強い期待を受けて、この事業を開始したわけでございます。
  267. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 六月に、私たち五人の国会議員で質問主意書を提出いたしました。  その中に、この諌早の工事費についての詳細を教えてもらいたいという項目があるのです。一つ  一つ、例えば堤防をつくるのに幾らかかったか、あるいは地元対策費というのもありますけれども、項目を挙げて大体十項目ぐらいについてそれぞれの費用を示してほしいということを伺いましたけれども、残念ながら、これはあれですか、農水省の方、老眼が進んでいて細かい字が見えなかったのかもしれないのですが、なぜか、そこのところは答えていただけなくて、総額が出てまいりました。  総額を足すと、今の数字の千三百五十億じゃないのですよ。大体二千七百億ぐらいになるのです。ですから、これは投資額が約半分ぐらいになっているわけですから、今の話で、千三百五十億投資して出てきた効果というのが、大体とんとんだというのが一近くですから、一・〇二というのはそのくらいの話ですが、投資額がこの質問主意書によると倍になっちゃっている。ということは、この係数が〇・五ぐらいになっているということなんです。  当初の計画では確かに千三百五十億なんですが、実際にかかっているお金が、質問主意書の答えによると、倍になっているわけですから、それはやはりそのお金できちんと計算をしなくちゃいけないのじゃないでしょうか、そういうふうに常識的には思えるのですけれども、いかがでしょうか。
  268. 山本徹

    山本(徹)政府委員 先ほど御説明申し上げました費用対効果につきましては、昭和六十一年の事業開始時に、その当時の価格体系で計算したものでございます。  それ以降、地元の強い御要望に沿って事業を進めておりまして、現在までに約七割の事業が完了しておりますけれども、平成七年度の単価では、総事業費につきまして二千三百七十億円を一応見込んでおりますが、本年四月に潮受け堤防の締め切り以後、ことしは特に雨が多い年でございましたけれども、この雨に対する地元の防災効果、及び地元の農業団体等から優良な農地造成に対する期待が大変強く、事業を計画どおり促進するようにという強い要望をいただいております。
  269. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 地元の要望があるかどうかというのは全然伺っていないのですけれども、それから、雨の話も全然していないのですが、先に言っていただきましたからお見せします。これは、ちょっと済みません、上田議員のようにもうちょっと大きなパネルにすればよかったのですが、諌早で雨が降ったときの写真です。島原鉄道というのが写っているのですが、土地の人の話によりますと、この島原鉄道が冠水したのは、四十年前の諌早大水害以来ということです。  ほかにもいろいろデータがございますけれども、この堤防ができて、ことし雨が降って、それで防災効果があった。もっとも、畑あるいは田んぼの冠水、これが災害だというふうに考えること自体が私はおかしいと思います。  そもそもここは干拓地ですから、干拓地は大体海より低いところにある。ゼロメートル地帯にある。それを農地として使えということであれば、その干拓を行った責任者がきちんと排水の措置を講じなくてはいけない。冠水が起こらないようにしてからそれを売らなくてはいけないというのが常識だと思いますけれども、欠陥商品を売っておいて、それで、今度は新しく堤防をつくったから冠水がなくなりました。しかも、実際にはなくなっていないものをなくなったというふうに強弁を使って、しかも、過去の自分たちの欠陥商品がそれであたかも隠せるようなことを言うというのは、本当にふらちな話だと思いますが、済みません、ちょっと感情的になりまして。  実は今のお答えの中では全く出てきておりませんけれども、かつての計算であるということですけれども、かつての計算で、ですから、何十年前の計算であろうと、それがそのまま通ってしまうというのは、現実問題としておかしいわけです。しかも、今地元のいろいろな要望があるという話でしたけれども、その声も、それではこれが農地として実際に使われた場合にどのくらいの収入があるのか、現在の時点できちんとした計算を行って、それで、その責任ある数値をきちんと出した上で議論をするのが最低限農水省の責任だと思いますけれども、大臣、それはどうお考えになりますか。
  270. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 前々から御説明がなされておりますように、この諌早の干拓事業というのは、大きく言って二つの目的を持っております。一つは、御承知の、平たんかつ大規模な農地を造成し、意欲のある農家による生産性の高い野菜や畜産の農業を実現するための事業、いま一つは、高潮、洪水の常襲地帯である諌早湾地域の防災対策も目的としているわけです。  そこで、論より証拠、地元がどう受けとめているかの例を私申し上げますが、実は七月十七日に藤本元農林水産大臣あてに感謝状が来た旨は前に御報告したところですが、実は十月六日、まだ何の仕事もしていない私あてにまた同じようなお手紙をいただ込ております。ちょっと読みます。  本年諌早湾沿岸地域は、五月から八月にかけ、年間総雨量に匹敵する豪雨に見舞われました。しかし、潮受け堤防の締め切り効果により、外潮位の影響を受けることなく調整池の水位が低く保たれていたため、湛水時間が短く、  被害が最小限度に抑えられました。このことから、諌早湾干拓事業の防災効果を実感し、改めて感謝申し上げる次第でございます。  諌早湾干拓事業は、地形的に平坦な農地に乏しく、優良農地の維持確保が困難な長崎県において、平坦でかんがい用水が確保された生産性の高い農地を造成して、農業振興による地域の活性化を図るものであり、併せて、諌早湾地域において過去幾度となく発生してきた高潮・洪水などの災害を防止するという面からも緊急不可欠な事業であり、 云々。  それで、結びに、  何百年も前から先人達が潟と闘いながら干拓を続けてきた歴史を知る私たちは、将来に向けて安心してこの地に暮らすため、国営諌早湾干拓事業の促進と早期完成を強く要望します。これは、潮受け堤防内一市四町……
  271. 中川秀直

    中川委員長 農水大臣、質疑時間が過ぎましたので、簡単に御答弁願います。
  272. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 はい。一市四町のいわば代表者の感謝状であります。
  273. 中川秀直

    中川委員長 秋葉君、時間が参りました。
  274. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 済みません、一言だけ言わせてください。  今、手紙をお読みになりました。私は、ここに写真を持ってきております。それぞれ言っていることが違います。こういうふうに、それも第三者、島村大臣と私ではなくて第三者が、片方はいいと言い、片方は悪いと言っている。そういうときにどういうふうにするか。これは、人類の文明史の中で、例えばガリレオという偉い人がいましたけれども、何をやるかというと、実際に事実をもって確かめるということで決着を図るというのが我々の知恵だと思います。  ですから、先日は諌早には行かないとおっしゃいましたけれども、大臣が直接行って、やっぱり自分の目で確かめていただくことが一番大事だと思います。その証明を、図らずも今手紙を読んでいただいて、されたわけですから、ぜひ諌早に行っていただける、そのことをお願いして、私の質問を終わります。
  275. 中川秀直

    中川委員長 これにて秋葉君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十四日金曜日午前十時委員会、午前九時理事会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十三分散会