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1997-10-22 第141回国会 衆議院 財政構造改革の推進等に関する特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十月二十二日(水曜日)     午前九時開議 出席委員   委員長 中川 秀直君    理事 甘利  明君 理事 佐田玄一郎君    理事 白川 勝彦君 理事 中山 成彬君    理事 野田 聖子君 理事 北側 一雄君    理事 中井  洽君 理事 海江田万里君    理事 児玉 健次君       浅野 勝人君    飯島 忠義君       石崎  岳君    稲垣 実男君       小野 晋也君    大石 秀政君       大野 松茂君    木村 隆秀君       小林 多門君    佐藤  勉君       桜田 義孝君    実川 幸夫君       下地 幹郎君    菅  義偉君       田中 和徳君    田村 憲久君       竹本 直一君    谷畑  孝君       津島 雄二君    西川 公也君       能勢 和子君    桧田  仁君       穂積 良行君    目片  信君       持永 和見君    山口 泰明君       渡辺 博道君    渡辺 喜美君       安倍 基雄君    赤松 正雄君       石垣 一夫君    一川 保夫君       漆原 良夫君    太田 昭宏君       岡田 克也君    中野  清君       西  博義君    西川 知雄君       原口 一博君    福留 泰蔵君       藤村  修君    桝屋 敬悟君       丸谷 佳織君    池田 元久君       石毛 鍈子君    生方 幸夫君       五島 正規君    石井 郁子君       佐々木憲昭君    中島 武敏君       矢島 恒夫君    秋葉 忠利君       濱田 健一君    粟屋 敏信君       上田 清司君  出席国務大臣         内閣総理大臣  橋本龍太郎君         法 務 大 臣 下稲葉耕吉君         外 務 大 臣 小渕 恵三君         大 蔵 大 臣 三塚  博君         文 部 大 臣 町村 信孝君         厚 生 大 臣 小泉純一郎君         農林水産大臣  島村 宜伸君         通商産業大臣  堀内 光雄君         運 輸 大 臣 藤井 孝男君         郵 政 大 臣 自見庄三郎君         労 働 大 臣 伊吹 文明君         建 設 大 臣 瓦   力君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     上杉 光弘君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 村岡 兼造君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 小里 貞利君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      鈴木 宗男君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 久間 章生君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      尾身 幸次君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      谷垣 禎一君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大木  浩君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 亀井 久興君  出席政府委員         内閣参事官         兼内閣総理大臣         官房会計課長  尾見 博武君         内閣法制局長官 大森 政輔君         内閣法制局第三         部長      阪田 雅裕君         人事院総裁   中島 忠能君         人事院事務総局         給与局長    武政 和夫君         内閣総理大臣官         房管理室長   榊   誠君         総務庁長官官房         長       菊池 光興君         総務庁長官官房         審議官     瀧上 信光君         総務庁人事局長 中川 良一君         経済企画庁調整         局長      塩谷 隆英君         経済企画庁総合         計画局長    中名生 隆君         経済企画庁調査         局長      新保 生二君         科学技術庁長官         官房審議官   興  直孝君         科学技術庁研究         開発局長    青江  茂君         国土庁長官官房         長       久保田勇夫君         国土長計画・調         整局長     河出 英治君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部長    朝海 和夫君         外務省経済協力         局長      大島 賢三君         外務省条約局長 竹内 行夫君         大蔵大臣官房総         務審議官    溝口善兵衛君         大蔵大臣官房審         議官      尾原 榮夫君         大蔵省主計局長 涌井 洋治君         大蔵省理財局長 伏屋 和彦君         大蔵省銀行局長 山口 公生君         大蔵省国際金融         局長      黒田 東彦君         文部大臣官房長 小野 元之君         文部大臣官房総         務審議官    富岡 賢治君         文部省生涯学習         局長      長谷川正明君         文部省初等中等         教育局長    辻村 哲夫君         文部省教育助成         局長      御手洗 康君         文部省高等教育         局長      佐々木正峰君         厚生大臣官房総         務審議官    田中 泰弘君         厚生省健康政策         局長      谷  修一君         厚生省保健医療         局長      小林 秀資君         厚生省社会・援         護局長     炭谷  茂君         厚生省老人保健         福祉局長    羽毛田信吾君         厚生省保険局長 高木 俊明君         厚生省年金局長 矢野 朝水君         農林水産大臣官         房長      堤  英隆君         農林水産大臣官         房総務審議官  石原  葵君         農林水産省構造         改善局長    山本  徹君         水産庁長官   嶌田 道夫君         通商産業省産業         政策局長    江崎  格君         郵政大臣官房総         務審議官    濱田 弘二君         郵政省郵務局長 長谷川憲正君         郵政省貯金局長 安岡 裕幸君         郵政省簡易保険         局長      金澤  薫君         労働大臣官房長 渡邊  信君         建設大臣官房長 小野 邦久君         建設大臣官房長 小鷲  茂君         建設省建設経済         局長      五十嵐健之君         建設省河川局長 尾田 栄章君         建設省道路局長 佐藤 信彦君         自治大臣官房総         務審議官    嶋津  昭君         自治省財政局長 二橋 正弘君  委員外出席者         財政構造改革の         推進等に関する 大西  勉君         特別委員会調査         室長     ――――――――――――― 委員の異動 十月二十二日  辞任         補欠選任   小野 晋也君     石崎  岳君   大野 松茂君     飯島 忠義君   桜田 義孝君     下地 幹郎君   田中 和徳君     大石 秀政君   津島 雄二君     桧田  仁君   中野 正志君     菅  義偉君   西川 公也君     渡辺 博道君   太田 昭宏君     丸谷 佳織君   左藤  恵君     藤村  修君   田端 正広君     漆原 良夫君   谷口 隆義君     石垣 一夫君   佐々木憲昭君     石井 郁子君   矢島 恒夫君     中島 武敏君 同日  辞任         補欠選任   飯島 忠義君     山口 泰明君   石崎  岳君     小野 晋也君   大石 秀政君     田中 和徳君   下地 幹郎君     桜田 義孝君   菅  義偉君     能勢 和子君   桧田  仁君     津島 雄二君   渡辺 博道君     田村 憲久君   石垣 一夫君     西  博義君   漆原 良夫君     福留 泰蔵君   藤村  修君     左藤  恵君   丸谷 佳織君     太田 昭宏君   石井 郁子君     佐々木憲昭君   中島 武敏君     矢島 恒夫君 同日  辞任         補欠選任   田村 憲久君     西川 公也君   能勢 和子君     中野 正志君   山口 泰明君     大野 松茂君   西  博義君     桝屋 敬悟君   福留 泰蔵君     田端 正広君 同日  辞任         補欠選任   桝屋 敬悟君     谷口 隆義君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  財政構造改革推進に関する特別措置法案(内  閣提出第一号)  漁港法第十七条第三項の規定に基づき、漁港整  備計画の一部変更について承認を求めるの件  (内閣提出承認第一号)      ――――◇―――――
  2. 中川良一

    中川委員長 これより会議を開きます。  内閣提出財政構造改革推進に関する特別措置法案及び漁港法第十七条第三項の規定に基づき、漁港整備計画の一部変更について承認を求めるの件の両案件を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。太田昭宏君。
  3. 太田昭宏

    太田(昭)委員 おはようございます。新進党の太田昭宏です。  今回の財政構造改革の中で、公共事業が七%削減をされる、これがまあ一つの大きな柱になっております。この公共事業につきましては、さまざまな批判もあり、風当たりが非常に強いわけです。公共事業は本来の社会資本整備原点に戻れという声も非常に強いわけですし、景気対策とかあるいは雇用維持手段としての公共事業はもうやめなくてはいけない、あるいは基本計画の六百三十兆円あるいは十六本の五カ年計画への批判、税のむだ遣い、あるいはまた公共工事コストが高い、さまざまな意味で極めて風当たりが強い状況にございます。  私は、間違いなく今公共事業あり方ということにつきましては大きな転換点に来ているというふうに思います。改革は断念から始めよという言葉がありますが、むだな公共事業を思い切ってなくす、公共事業計画や執行の見直しや点検、あるいはアセスメントにおきましても、事前、途中、事後、さらには透明性確保住民参加情報公開などを急がなければならないと思います。公共事業への不信感を払拭して、後代にとって価値あるものとするべく、今こそ公共事業の質的な改革が必要であろうというふうに思います。  財政構造改革でも、景気あるいは経済の上からも、今後の社会資本整備の上からも、どうしても公共事業の質的な転換というものをこの機会をとらえてやっていくということが私は大事だと思います。  長い答弁は要りませんが、私の述べました公共事業構造的改革、質的な改革、あるいは中身改革にどのように取り組まれようとされているのか、総理の決意を伺いたいと思います。
  4. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 長い答弁は控えろということでありますので、細かい部分に触れることは控えますけれども、既に六月三日の閣議におきまして、財政構造改革推進についてという、公共事業あり方につきまして大きくこのような方針を定めました。  一つは、今後の三年間で公共工事建設コストの少なくとも一〇%以上の縮減を目指す。二つ目には、各種事業間の連携や費用効果分析活用などによる効率的な整備推進チェック機能の強化を図る。三番目に、適切な情報開示等による透明性確保を図る。こうした方針を決めてこれからの公共事業を進めていこうといたしております。現実に決めております中身は、議員から御指摘をいただきましたような問題意識を含めまして、細かくそれぞれの留意点、その中には、例えば地域における事業量をいかに確保するかといった視点も含めまして考えておりますことを、冒頭御報告を申し上げます。
  5. 太田昭宏

    太田(昭)委員 公共事業の目的、柱というものは、おくれていると言われている社会資本整備、これについて、とにかく高齢社会を前にして急ぐ必要があるということが言われているわけですが、まさにそのとおりでしょう。  しかし、きのうも同僚議員からありましたように、九〇年代の経済財政状況について説明があったのですが、公共事業ということを見ますと、これが、例えば一九八一年二十四兆七千億、一九八五年が二十四・五兆、九〇年が三十四・三兆、九五年が一気にふえておりまして五十一・二兆、九七年が五十一・五兆。八七年に一三%ふえ、九〇年に一〇・六%ふえている。特に八七年、二十八・四兆でしたから、この十年間で一・八倍になっているんですね。金額にして実に二十三兆円もふえている。大変な急増です。  当然、建設国債の累積が今百七十二兆。これをGDPとの比較でいきますと、八七年GDPが三百五十五兆、九〇年四百三十八兆、九七年、これは見込みですが五百十五兆。例えばこの十年間では一・四五倍、あるいは予算規模においても一・四三倍。これに比べて、公共事業が実に一・八倍という大変な飛躍的な増大になっているという現状にございます。  これは、この委員会が始まりましてから、さまざま総理からも答弁をいただいているわけなんですが、やはりその中で、公共投資効率性維持をされない、どうしてもむだが出てしまう、効率性の低いところへの投資というものが出てしまう、どの町にも同じような箱物の建物が建ってしまう、そこに批判が出てくるというようなことがありますし、そしてまた、社会資本整備のためというよりも、景気雇用対策手段にかなりシフトをしているという現状にあります。そこには業者が当然仕事が得られるということでついていく、その体制がなかなか戻れないという形になっていく。  これが今私たちの抱えている公共事業問題点であろうと思いますが、特に私は、この九〇年代、バブル崩壊を受けて、三十四兆から五十一兆ですから十七兆という莫大な増加の額ですが、補正予算も含めて、公共投資はかなり社会資本整備という原点からずれてきている、このように思いますが、総理、どうでしょうか。
  6. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今議員から御指摘がございましたけれども、例えば下水道普及率あるいは一人当たり都市公園の面積あるいは一人当たり高速道路延長、こうした指標をとってみますと、この間に随分整備が進んだといいながら、まだ欧米の水準に相当なおくれがあることもまた事実であります。  この間に相当な幅を縮めたものとして、例えば下水道がありますが、これは、六一年の時点で例えばイギリスを九〇、アメリカを六八ととりましたところ、これは一〇〇に対してですが、日本は当時六でありました。現在これが五五まで戻ってきている。そういう意味では、必ずしも私は、議員が御指摘になられたような景気ということだけに着目してこれが使われたとは思っておりません。少なくとも、やはり整備の立ちおくれた分野を中心にして積極的な推進を図ってきたということも申し上げられると思います。  しかし、その上で、御指摘になりましたような問題点が全くなかったと私も申し上げるつもりもありません。今回、六月三日に閣議決定をいたしました中におきましても、今後ともに真に整備の立ちおくれている分野地域への一層の重点化を図るべきということを考え、これを文章化したわけでありますけれども、国民生活の豊かさを実感できる経済社会の実現を目指す公共投資基本計画考え方を踏まえながら、今後とも、先ほどの御指摘にもありました費用効果分析活用などによりまして、一層効率的、効果的な公共事業推進に努めていきたい、そのように考えております。
  7. 太田昭宏

    太田(昭)委員 総理のおっしゃっているように、それなりの社会資本整備ということで、おくれておる分野を何とか追いつくようにするという側面と同時に、かなり景気対策的な要素というのがあるということは、今の答弁でも、きのう、一昨日からの答弁でもあるわけですが、特にこの間、補正予算景気対策から組まれて公共事業が非常にふえている。その補正予算、今回の財政再建法では入っていないわけですね。むしろ問題は、この補正予算、そしてその中の公共事業ということにあるわけで、一昨日にもこの件については質問もありましたが、補正予算に歯どめをかけないと財政再建にはならないということは、これは当然のことだろうと思います。  この点、大蔵大臣、厳正に二十九条をという話がありましたが、そのとおりですか。
  8. 三塚博

    三塚国務大臣 予算は当初において一年の計を確立をするものであります。よって、財政法二十五条、厳正にこれを守り、対処をしてまいります。
  9. 太田昭宏

    太田(昭)委員 二十九条ではないですか、二十九条。――今、財政法二十九条のことを厳正に行うと。  ところが、ことしの一月の予算委員会でもたびたびこのことは問題になったわけなんですが、補正予算中身を見ますと、例えばことしの一月の補正予算中身、阪神・淡路大震災復興対策、これはまあいいでしょう。防災対策費、これが入っている。危険度の高い土砂災害対策などで納得できるものもありますが。また、この八月二十五日だったと思いますが、北海道の第二日糸トンネルが崩落をして、私も現地へすぐ行ったわけなんですが、こうしたことが今後もあるから、例えば至急調査をしなさいというようなことについては当然私は補正予算であろうと思います。  しかし、なぜ緊急と思われないものがこの補正予算の中に入ってきているのかということが、たびたびこれは問題になるわけですね。ウルグアイ・ラウンド対策費などはその典型だし、また、本年一月の補正でも、密集市街地をどうするかとか、あるいはまた官庁営繕費なんかが入っている。突然、何か緊急で官庁営繕をしなくてはならない。これは本来は、私は、当然本予算の中に入れてやるべきものであって、その内容というものについて、なぜ補正の範疇なのかがなかなか理解できない。また、そこの箇所づけも予算審議のときにはなかなか出ないというようなことがありまして、これがかねてからの問題になっていると思います。  今、大蔵大臣から答弁のありましたように、この補正予算が当初予算の隠れみのになっているというわけですから、厳正にこの財政法二十九条を適用するという、その厳正にという意味はどういう意味でしょうか。私が今言ったような問題点、例えば官庁営繕費なんかは、本来は厳正にやる易合には入らない、あるいは景気対策としての公共事業というようなものは入るのか入らないのか、その辺をお答えいただきたいと思います。
  10. 三塚博

    三塚国務大臣 財政法二十九条は、太田委員御案内のとおり、一つは「法律上又は契約上国の義務に属する経費の不足を補う」場合と、第二点として「予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出を行なう場合」と、これに限られておると明示をいたしておるところであります。よって、これまで事業ごと必要性緊急性等を勘案の上、計上をされてきたものと思います。  それぞれ御批判のあることは承知をいたしております。よって、集中元年に当たりましては、御批判の出ませんように対処してまいる、こういうことであります。
  11. 太田昭宏

    太田(昭)委員 私は、今までのこの補正予算論議の中で、今のような論調は随分あったと思います。しかし、今回、財政改革法案が出る、財政が非常に厳しい中での補正予算というのは、批判が出ないようにという言い方をされましたが、厳正ということは、例えば景気対策というものに対する公共事業についてはどうなのか、また、官庁営繕費みたいなものはどうなのかということを具体的にお答えください。
  12. 三塚博

    三塚国務大臣 景気対策で所要の経費を計上する、特に言わんとするところはウルグアイ・ラウンド対策等指摘されると思うのでありますが、これは農政の根幹にかかわるものであります。食糧と人口という問題が昨今芳しいわけでございますが、農政農政として、これをどうあるべきかは当初において真剣な論議の中に計上されるべきものである、こう考えておるところであります。
  13. 太田昭宏

    太田(昭)委員 今の答弁で私は明確だと思います。本予算の中でそれはやるべきものであって補正でやってはならない、こういう答弁をいただいたと思いますが、非常に明快だと思います。そこで、今回の財政構造改革法案、とにかく数値的目標にのみ重点が置かれている、こういう嫌いがあります。GDPの三%、公共事業七%削減というのがうたわれ、結局数値のみでキャップがかぶせられている。大事なことは、まさにこの法条のネーミングにありますように構造を変えることで、本来は数値は結果であって、その結果をもたらすための考え方、施策、中身を示すことだ、私ほそう思います。まずここで六百二十兆円の公共投資基本計画について質問をしたいと思いますが、これが日米間で、特に内需拡大が大事であるという強い要請の中で出てきたことは周知の事実です。九三年のアメリカの対日経常赤字が五百億ドルというわけですから、これは当然だと思います。総理も繰り返し、これは聖域でない、こう言ってきた。しかし、中身に踏み込まないで、今回出てきたものは、単にこれを三年延長する、こういうことが出てきました。  まず、なぜ三年間の延長なのか、その根拠を示してほしいと思います。
  14. 尾身幸次

    尾身国務大臣 公共投資基本計画につきましては、去る六月三日の閣議決定におきまして財政構造改革推進についてという決定をしたわけでございますが、計画期間を三年延長することといたしまして、調整費三十兆というのが別にありますが、この六百兆円ベースで見まして、十年間で四百七十兆円程度へと投資規模実質的縮減を図ることといたしまして、最初に計画策定後の諸情勢の変化を踏まえて見直しを行うこととしたものでございます。  我が国公共投資水準は、国際比較、九四年度の数字がございますが、公的固定資本形成の対GDP比で六・六%という数字になっておりますが、他の先進国が、イギリス一・九%、ドイツ二・〇%、フランス三・四%という水準でほぼ二ないし三%になっていることに対して、高い水準になっているわけでございます。  先ほどの財政構造改革推進についてにおきまして、我が国財政危機的状況等を踏まえまして、この財政構造改革集中期間中に、公共投資水準を、おおむね景気対策のための大幅な追加が行われた以前の国民経済に見合った適正な水準にまで引き下げるということを目指しまして、先ほど申しましたような、実質四百七十兆円程度への縮減を図るということとした次第でございます。
  15. 太田昭宏

    太田(昭)委員 今答弁にありましたその適正な水準という基準は何でしょうか。
  16. 尾身幸次

    尾身国務大臣 適正な水準という意味で、参考までに、今までの一九八五年から九一年まで、特に景気対策が非常に大幅に行われました八七年を除きまして、一般政府ベースの公的固定資本形成の比率を、実績をとってみますと、平均五%程度になるというふうに考えております。
  17. 太田昭宏

    太田(昭)委員 その五%というのはなぜ適正かということを私は聞いているわけなんですが、公共事業社会資本整備という原点を保持していた、景気対策としての公共事業の九〇年代ではなくて、その前の八〇年代後半、景気対策としての補正とかそういうものが行われていない時期が適正だと言う。  しかし、その当時の高齢社会を前にして急がなくてはならないというニーズと、そして現時点で、金はないけれども、しかし高齢社会を前に備えるべきものを急がなくてはならないという側面というのでは、八〇年代後半の適正というものが、それが基準であるというよりは、現時点の適正度というのは私は違うと思います。なぜ五%が現時点でも適正なのかということを私は聞いているわけです。
  18. 尾身幸次

    尾身国務大臣 財政状況、非常に厳しい状況でございますし、また社会保障等とのバランス等もいろいろあるかと思いますが、我が国におきましては、先ほど総理から御答弁申し上げましたように、社会資本、インフラがまだ欧米諸国と比べまして、道路にいたしましても下水道にいたしましても、おくれていることも事実でございまして、そういうものの整備も急がなければならないという政策的なニーズがございます。  そういうことを総合的に勘案して、いわゆる景気対策で非常に公共投資が伸びた以前の水準、五%という結果としての実績になっていたというふうに考えております。
  19. 太田昭宏

    太田(昭)委員 私は、それはちょっと納得ができないわけなのですが、しかし、そうしますと、この五%、これから、三年間これがもう経過をした、それから十年ある、先ほど四百七十兆である、毎年毎年、既に三年終わって約五十一兆ずつ来ている、その後の十年間、六百三十あるいは六百を基準にしてあと四百七十だ、これを年ごとに割るということ、その年次別のある目標というのが私は当然試算をされていると思いますが、それはどうなっていますか。
  20. 中名生隆

    ○中名生政府委員 お答え申し上げます。  ただいま大臣からお答えいたしましたように、この二〇〇七年度までの間で四百七十兆ということでございますが、来年度については七%の減ということでございますが、その先については、年度別の数字というのは決めておりません。
  21. 太田昭宏

    太田(昭)委員 一般会計という国の予算の中における七%削減、しかし経企庁が出しているこの六百三十兆というものの公共投資の定義は何ですか。この六百三十兆というものの中の公共投資というのは、何を定義して公共投資と言っているのですか。今の答えは違うのじゃないですか。
  22. 中名生隆

    ○中名生政府委員 公共投資基本計画で四百七十兆、あるいは弾力枠を加えた数字、そういう数字を申し上げておりますのは、定義といたしましては、SNAといいますか、国民経済計算の上での公的固定資本形成、これに用地費、補償費等を加えたもの、こういう定義でございます。
  23. 太田昭宏

    太田(昭)委員 先ほどから経企庁からの話というのは、これは私は五十一兆とかそういう数字を出して、そして四百七十兆。しかし七%削減というのは、その全体にかかっているわけじゃないでしょう、どうですか。本予算にかかった七%なんでしょう。話が食い違っているでしょう。
  24. 中名生隆

    ○中名生政府委員 御指摘のとおりでございまして、七%の削減というのは一般会計の数字ということでございますから、これが直ちに今申し上げました公共投資基本計画で言うところの数字と厳密に一致するということではございません。
  25. 太田昭宏

    太田(昭)委員 厳密に一致するどころか、全く違う数字でしょう。  私はこういうことで時間を使っちゃってもったいないんですが、この六百三十兆、三年経過した、さあ毎年これからどのくらいの目安でいくのかという、そこのところを私は示してもらいたいと言っているわけです。
  26. 中名生隆

    ○中名生政府委員 お答えが若干繰り返しになって恐縮でございますけれども、先ほど大臣がお答え申し上げましたように、この集中的な改革期間中に景気対策が行われる以前の水準まで下げていこうということでございますけれども、年度ごとに、九八年度、九九年度、二〇〇〇年度にどのテンポで下げていくかということについては、年度別には決めていないという状況でございます。
  27. 太田昭宏

    太田(昭)委員 これは現実には、今までの公共投資基本計画というものの延長線上でこの財政改革特別委員会論議をしてはならないと私は思っているんです。毎年毎年毎年毎年が、どのくらいの目安でどこをシーリングかけてやっていくかという目算がなければ、六百三十兆というのは一体何かという話になりますよ。  それは言いにくいかもしれませんが、私たちとしては、毎年毎年どのくらいの公共投資基本計画に基づいてやっているのか、特にこの三年間の集中期間、このときには思い切って下げていく、下げたならば、これからその後の七年間なら七年間というのはどうするかという議論になるでしょう。例えば、平均して、四百七十兆十年間というならば、毎年毎年は四十七兆ですよ。しかし、三年間を集中して下げていくというなら、どういう見込みでやったかぐらいのそんなプログラムはあるのが当然じゃないですか。どうですか。
  28. 尾身幸次

    尾身国務大臣 この財政改革基本法におきます七%減というのは、国費ベースのことであると考えております。  それから、公共投資基本計画は、先ほどの計画局長答弁にありますように、用地費や補償費を含めました全体の事業費ということで考えている次第でございます。
  29. 太田昭宏

    太田(昭)委員 非常に入り口で大事なことなんですが、これは今、はしなくも経企庁長官財政改革基本法という言葉を使われた。間違いですよ。財政改革法案ですよ。基本法というようなイメージを持ってやっているから、漠然とやっているからそういうことになるわけでしょう。数値がある、明確な数値があって三年間延長だ、そういうことがあるからこそこの法案の意味があるというふうに言っているじゃありませんか。基本法という観点で、単なる目安でございますよというような観点でやっていたら、何のためにこれ法案の審議ですか。  毎年毎年ある程度の目安があるのが当たり前じゃないですか。示せないんですか。
  30. 尾身幸次

    尾身国務大臣 財政改革基本法と申し上げましたのは、言い間違いでございますので訂正させていただきます。
  31. 太田昭宏

    太田(昭)委員 私は、今基本法的に政府が考えているということが問題で、これは基本法ではありませんよ。数値が明確に出ているでしょう。それがキャップでしょう。毎年毎年、六百三十兆やるというならば、これは七%の問題だけでなくて、六月三日の閣議決定というものを受けての法案でしょう。そうなったら、毎年どうなるかというようなことは、私は当たり前だと思います。どうでしょうか。
  32. 中名生隆

    ○中名生政府委員 お答え申し上げます。  この公共投資基本計画におきましては、先ほど申し上げましたような形で二〇〇七年度までの公共投資の額というのを決めておりまして、これは、その改定をする以前、弾力枠を含めて六百三十兆というときにも年次別の数字というのはお示しをしてございませんでした。  今度の財政構造改革との関連でも、集中期間の目標というのは、今大臣がお答えしたとおりでありますけれども、年度ごとにどうするかというのは、そのときそのときの状況がございますから、今の段階では決めていないということでございます。
  33. 太田昭宏

    太田(昭)委員 目安が当然あって、三年という根拠というものがあるのでしょうから、粗っぽく言って、ここでとまってしまってはもう何の質問かわからない。  四百七十兆を十年間で、例えば四十七兆と仮にしましょう。その六百三十兆なら六百三十兆さっきの話、補正予算に戻りますが、きのうは同僚の西川議員が法制局長官あるいは総理の前でいろいろな論議をした、内閣の予算編成権を制約すると。そして西川委員は具体的に、例えば予算というものが修正をされた、オーバーした、こういう場合はどうなんだという話をしました。  私は、補正予算ということについても、これはさっき厳正にという財政法二十九条の問題を言ったのですが、実は六百三十兆の、大体毎年毎年四十七兆、四十七兆と仮にいったとします。それがオーバーしていたら何の意味財政改革法案かわかりません。仮に四十七兆というものと、示せないならしましょう。それよりも、補正予算を組んだ場合にオーバーをしたという場合、補正予算、これは内閣の予算編成権を縛るわけですから、六百二十兆ということについても、今までの単なる目安ということの六百三十兆ではなくて、これは数字としてある意味でのシーリングが毎年毎年かかっているという、そういう私は考えに立つべきだ。そうなりますと、仮に四十七兆なら四十七兆と仮置きしましょう。それよりもオーバーするような補正予算、それは組めないということになるんじゃありませんか、どうですか。
  34. 三塚博

    三塚国務大臣 四十七兆、四百七十兆ということが言われたわけであります。  今回の財政構造改革特別措置法は、御承知のとおり、それを三年、縮減をいたしました。この縮減は、投資規模実質的な縮減を図るという基本的な目標がございます。単純計算でございますが、延長実質的な計画縮減であり、また、そのことによってもたらされる縮減効果というものも御案内のとおり期待できるわけであります。編成は、そういう意味で、厳正に費用対効果の中で行ってまいるわけでございます。現行計画に対して五年から七年への延期ということになりますと、単純計算で三割弱の縮減効果があるという計算もございます。  そういう中で、公共事業は、国民生活安定の基盤をつくるものであります。この点は御理解をいただける。補正予算財政法二十九条に、基本的な考え方というよりも基本的な方針が明示をされておるわけで、緊要な事由が生じた場合ということであります。大災害等々のことが起きました場合は、これに俊敏に対応してまいりますのは政府の責任でございますから、この点は御理解をいただく。天変地異の問題でございますので、そういう中で、それをどう自後の財政運営にめり込ませ消化をしていくかというのが、それから与えられる内閣に対する責任であろうと思っております。
  35. 太田昭宏

    太田(昭)委員 私はそういうことを言っているわけではなくて、この法案というものは事実の上で六百三十兆というもののシーリングはかかって、毎年、例えば仮置きして四十七兆としましょう、それを超えるという場合の補正予算は組めなくなってしまうでしょうということを申し上げているわけです。  もっと言えば、これは、この法案には、六百三十兆には入っていませんが、後から述べたいと思ったのですが、五カ年計画の二年延長はかかっていますよ。この法案の中にありますよ。その法案の中にあるという、それは五カ年計画にしてもあるいは六百三十兆にしましても、今までは閣議決定で、私は二月にこの予算委員会質問をしたのですが、これについては単なる目安でございますと。しかし、目安ではなくなったというのが今回のこの財政改革法案の特徴ではないですか。ですから、五カ年計画には、これは制約をされるはずです。そして六百三十兆には、制約をされると断言はできませんが、六百三十兆もこれはシーリングがかかって制約をされるという要素は非常に強いということを私は法的に申し上げているわけです。法制局長官、どうですか。
  36. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 今回の法案におきましては、公共投資予算につきましてはキャップをかけております。それから、先生御指摘のとおり、法律に基づく公共事業につきましては、その法律の修正をお願いしているところでございます。  なお、公共投資基本計画につきましては、これは国全体、国、地方を通じた全体としての公共投資数字を三年間延長するということでございまして、これは法律事項とはなっておりません。
  37. 太田昭宏

    太田(昭)委員 私が質問したことに、この二十分間何も答えがない。これは審議、私はできませんよ。何の答えもないじゃありませんか。今のような答えで時間をつぶされたら困りますよ。わかった上で言っているのですから。六百三十兆は、それは法律事項じゃないからと言って、わざわざ私はそういう説明したじゃないですか。五カ年計画はちゃんと法律の中に入っているから、これはシーリングがかかるでしょうということを言っているわけですよ。  そういうようなあいまいな法案のままで、この法案が本当にいいのですかという根本問題です。どうですか。明確に答えてください。
  38. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 公共投資基本計画は、国が直接コントロールできる、国あるいは公団あるいは補助事業等だけではなく、三千三百の地方団体が自主的に決める公共投資も入っている総体の数字でございます。国としては、それを国全体、中央、地方通じての一つの目安として、十カ年計画ということで公共投資基本計画を決めているところでございまして、国の補正予算に、仮に今言われるような国の予算でコントロールできる部分というのは、先ほど申し上げましたように、直轄、補助あるいは公団等、国がコントロールできるのはその部分に限られるわけでございます。
  39. 太田昭宏

    太田(昭)委員 私の質問に明確に答えてもらわなくては困るのですが、どうしたらいいか、よくわからないのですが……。
  40. 中川良一

    中川委員長 速記をとめて。    〔速記中止〕
  41. 中川良一

    中川委員長 速記を起こして。  太田君、再度。
  42. 太田昭宏

    太田(昭)委員 この法案の中には、先ほど尾身長官がいみじくも基本法という言い間違いをしたりですが、この基本法的な、公共投資基本計画あるいは五カ年計画というものはそういうものであったと思います。  しかし、この法案の中に五カ年計画は二年延長こ明示され、公共投資基本計画というものは六月二日の閣議決定で三年延長となった。そこには四百七十兆という具体的な数が出てきている。それを年次別にということで本当は示してもらいたいのですが、それができないと。しかし、仮置きして四十七兆ということにするならば、それは、それ以上にはいってはいけませんよという意味合いがやはりそこには込められているものでなければこの財政再建ということにはならないのではないか、私はそういうことを申し上げているわけです。  七%というのは、これは国に係る一般会計の問題である。経企庁が言っている公共投資というのは、すべて合わせて、用地費も入れたというものの中で今五十一兆という額になっている。六百三十兆というのは、その公共投資の定義ということからいくと、今五十一兆となっているのが積み上がって六百三十兆という話になっている。しかし、六百三十兆、この問題について三年間延長しようというならば、その根拠というものは、今の財政が逼迫しており、ここから上にはいってはいけないという判断というものがあるのではないかと私は申し上げているわけです。だから、毎年毎年の目安を明確に出すべきでしょうと。  少なくとも、この法案が目指している二〇〇三年までの、毎年の六百三十兆というものは一体どうなるかという年次別の、そういうものを示すのが当然であろうというふうに私は思います。
  43. 中川良一

    中川委員長 よく今の質問を聞かれて、二点あるような気がしますが、御答弁願います。
  44. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 先ほど企画庁の方から答弁がございましたように、公共投資基本計画はあくまでもその期間中全体の公共投資の総額の目安でございまして、毎年度毎年度の数字を今までも示してきておりません。
  45. 中川良一

    中川委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  46. 中川良一

    中川委員長 速記を起こしてください。  太田君。
  47. 太田昭宏

    太田(昭)委員 二〇〇三年まで、例えば各年度ごとの目安というか基準が出るでしょうか。また、私の先ほど申し上げた質問に再度お答えいただきたいと思います。
  48. 三塚博

    三塚国務大臣 二〇〇三年は集中三カ年プラス後期の三カ年、この六カ年をもって財政構造改革の基本的な実績を上げてまいる、こういうことでございます。
  49. 太田昭宏

    太田(昭)委員 もう次に、私、一遍移ります。  五カ年計画の問題に移りますが、昨年十二月十三日に七本が閣議決定になりまして、平均しますと一・四一倍と大変な伸びであるわけです。今回これが、あらゆるものが一緒に二年延長ということになりましたが、同じように内容、中身には全く触れられておりません。私は、まさに数字が先にありきだ、こういうふうに思っているわけなんですが、二年延長の根拠というのをもう一度示してください。
  50. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 公共事業の長期計画につきましては、計画期間がそれぞれ異なるわけでございまして、初年度が何年に始まるかとか、あるいは期間も異なるわけでございますが、個々の計画あるいはその事業分野等を総合的に検討した結果として、土地改良については四年、その他の計画については二年延長して、これは実質的な投資規模縮減を図ったところでございます。  その結果といたしまして、例えば、廃棄物処理のように延長後におきましても一・二七倍となる計画もあれば、他方、治水、治山のように〇・九八倍になるようなものもありまして、総じて言えば、廃棄物だとか都市公園とか下水道とかいう比較的立ちおくれていると言われている生活関連分野公共投資計画につきましては、延長後におきましても一倍以上の倍率を確保し、その他につきましてはむしろ一を割るような計画になっている、実質的な縮減を図っているところでございます。
  51. 太田昭宏

    太田(昭)委員 私は、そういうことを聞いているわけではなくて、二年延長の根拠は何ですかということを聞いているわけです。  それで、単純な、小学生程度の算数みたいなもので、一・四掛ける五年ですから、一・四掛ける五を七で割ってイコール一というような、単純なことでまさかしておりませんねということを私は言っているわけです。
  52. 三塚博

    三塚国務大臣 本件、主計局長が具体的に言って、ちょっとわかりにくかったのかなと思います。  要すれば、縮減効果を目指すということであります。基本計画は三年、こういうこと。それで、それぞれの五カ年計画は二年、御指摘のとおりでございます。いずれも実施のスピードを落とすことによりまして、財政構造改革の基本にしたい。落とすということは、年度が長期になるわけですから、そういう中における毎年毎年の予算編成はそれに沿ってとり行う。先ほど、縮減効果が三年程度単純にありますと――三割、三年でございません、全体の事業費の中の三割程度縮減効果が出てまいりますという単純計算もあるわけでございますから、そういう点で、実施のスピードを落とすことによりまして縮減効果を図る。  縮減効果は、費用対効果をしっかりと基本にしながら、それぞれの事業が地域にどう貢献していくか、国民生活の基本的なベースにどのように作用していくかということについての査定を厳正に行うことによって今後に対応していかなければならぬ、こういうことであります。
  53. 太田昭宏

    太田(昭)委員 私は二年の意味を聞いているわけで、お答えいただけませんが話を変えまして、この法案に、二年単純に延長する、しかし「各計画に定める事業の量を変更することなく」ということがわざわざ書いてあるわけなんですが、昨年の十二月十三日に七本が閣議決定をされた。そのときに一・四一倍であった。先ほどの答弁の中で治山、治水というのは、これは建設委員会の中でもことしの四月です。かなり財政再建というものが強くなってから。だからこそこれはかなり減ったものという五カ年計画ができたのでしょう。また、私たちもそういう意識で審議をさせていただいた。ところが、去年の十二月十三日に十六本のうちの実に七本が閣議決定をされている。この一・四一倍というものの内容というもの自体に私は問題かある。五カ年計画の、例えば去年の十二月十三日の七本についての中身を吟味しなくてはならないのに、わざわざこの法案に「各計画に定める事業の量を変更することなく」ということを言っているというのは、これは今までのものは既得権益として全部やらせてもらいますよということを言っているにすぎないと思いますが、いかがですか。
  54. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 期間延長は、すなわち先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、やはり公共事業実質的な事業量縮減することが基本的に大事であります。それから、あとはそのほかに配分をどうするかということも大事でございますが、まず縮減することが基本であるということで、計画期間を延ばすことによってそれぞれの事業計画事業量縮減を図っているということでございます。
  55. 太田昭宏

    太田(昭)委員 きょうは、やけによくわからない答弁が続いて困ってしまうのですが、事業量を減らさないとわざわざ書いてあるということは、構造改革ということにならないんじゃないですかということを私は申し上げているのです。もう一遍、この構造改革というその構造に踏み込むということが一番大事で、その結果が数値ということにならなくちゃ本来いけないのですが、これは今の政府や役所の論理で言えば、とりあえず数でシーリングをかけておいて、あとはそれぞれがその制約のもとでやってもらえば構造も少しは変わるかなというようなことでは私はだめなんで、事業量は減らさないなんという、変更することなくなんということをわざわざここに明記していくということは問題で、優先順位とかコスト縮減とか事業の効率性とか単価の見直しとか、そういうことにもっと踏み込まなくちゃいけないのではないですかということですから、私は――あなたじゃないですよ、これは大臣が答える話です。
  56. 三塚博

    三塚国務大臣 これは、延長実質的に計画縮減なんですね。そして概算要求が、この法律が成立をいたしますとそれにキャップがかかります。公共事業は七%を上限としてそれを超えてはならない、こうなっておるわけでございますから、その出てきたものについて精査をしてまいる。計画そして十年度概算要求の中で出てまいりました事業費の内容の精査によって、これをキャップを超えてはならない形につくり上げてまいる、こういうことでありますから、そう御理解をいただければ委員質問の趣旨にかなうのではないでしょうか。
  57. 太田昭宏

    太田(昭)委員 時間が限られてきたので、私、今回の問題の具体的な部分、七%削減ということについて最後にお伺いをしたいと思いますが、同じように、七%と決めた根拠は一体何でしょうか。
  58. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 七%の根拠でございますが、一つは、やはり公共事業計画延長によって単年度の、一年度あたりの事業量は当然のことながら減るということもございます。それから、やはり一般歳出全体をマイナスにするという原則がございまして、そういうことを勘案しまして、これは財政構造改革会議において議論されて決定されたものでございます。
  59. 太田昭宏

    太田(昭)委員 私が補足をしますと、今答弁のありましたことは、橋本総理が、ことし三月の財政構造改革五原則、その中で「十年度予算においては、政策的経費である一般歳出を対九年度比マイナスとする。」と、これが三月十八日でしたかね、そこで言われた。  そういうものを受けて、さあ何をどう削っていくかという話の中から、伸びる方は、社会保障がまあ三千億、人件費も千数百億、科学技術もある、しかし、マイナスは公共事業とODAだ。そうして公共事業をマイナスにするという方針が立って、どの程度やりましょうというときに、五%ではない、四%ではない、なぜ七%という数値が出たかということは、実は非常に大事な問題です。  七%削減をされたということで、きのうも自民党の委員からもあったように、これは建設業界とかそういうのは非常に大変な状況ですよ。すとんと落ちるような、野茂のフォーク以上の落差ですよ。それだけ落ちたらほとんどの人間が三振ですよ。だから七%というのは大変なことだ。七%はなぜだ。六%にしなさい、五%にしてくれないかという悲鳴が上がっているのになぜ七%かという、そういうことが明示されなければ、国民に私はこれは説明ができない。今の状況でこの七%は大変なことだ、厳し過ぎる。  一方では、減税もやるべきだ、一方では、公共事業の七%は果たして七%でいいのかどうなのか、五%の方がいいのではないのか、厳し過ぎるのではないか、自社さきがけ政権のこの財政改革はまさに野茂のフォーク以上だという、そういうような、そこの一点の七%の根拠というのを私は示してもらいたいと言っているわけです。
  60. 三塚博

    三塚国務大臣 本件は、財政構造改革会議、御案内のメンバーで半歳余にわたって真剣な論議が行われました。その中で、財政構造改革における公共事業あり方いかんという論議の中で、基準としておおむね、公共投資水準景気対策等のための大幅な追加が行われた時点、バブル崩壊後の、御指摘の赤字公債が増加をしていく、建設国債も増加をしていくという、平成四年以降になりますでしょうか、その以前の、国民経済に見合った適正な水準いかん、こういうことで、この水準まで下げることが構造改革として大事なことではないのか。同時に、今も御指摘のように、一般歳出が全体として九年度比マイナスにしてまいる、こういうことの中で、量より質への転換、ODAは一〇%であります、そして公共事業が七%、こういう見合いの中で行われたものであります。
  61. 太田昭宏

    太田(昭)委員 そうしたら話を変えて、今まで投資部門という中で、この七%今回削減ですが、過去最高であったというのは一体何年のときの予算で、そして何%でしたか、お答えください。
  62. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 公共事業関係費で申し上げますと――伸び率でございますか。
  63. 太田昭宏

    太田(昭)委員 七%今回削減なら、今までで最高であったのは何%で、何年度の予算ですかということを聞いておるわけです。
  64. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 伸び率で……(太田(昭)委員削減率です」と呼ぶ)はい、失礼しました。減率で、三十年度以降では、公共事業関係費では六十年、六十一年、六十二年がマイナス二・三%でございます。
  65. 太田昭宏

    太田(昭)委員 概算要求を見ますと、そのときは五十九年、六十年度、六十一年度、六十二年度、四年間にわたって五%削減というのが最高であった、こういうことなんですが、現実に今言った数字は間違いないですか。今、五十九年度は入っていない。六十年度、六十一年、六十二年、三年間、これが同じ数字ですか。
  66. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 シーリング上は、投資部門はマイナス五%と当時設定いたしましたが、激変緩和措置というものがございまして、最終的な姿としては、予算の姿はマイナス二・三ということになっております。
  67. 太田昭宏

    太田(昭)委員 まさに、そのときにはまだ経済成長率が、五十九年は四・一、六十年四・一、六十一年三・一、六十二年四・八。まだまだ経済成長率があって、そしてその後にはバブルの時代に突入をする、そして右肩上がりであるという時代の中で五%削減という、中曽根行革の中でもさらにこれは厳しいなということで、概算要求で五%であったのが、二・三%に激変緩和措置でやったという事例があって、過去の最高は二・三ですか。じゃ、今回七%というのは、余りにもこれは厳し過ぎる数値ではありませんか。  これは、日本の財政ということについても、景気ということの上からも、あるいは公共事業ということの上からも、七%の根拠というのは非常に不明快、そしてこれを何とかしなければ、私は、この日本の経済というのは大変な状況になるということを最後に指摘して、終わります。
  68. 中川良一

    中川委員長 これにて太田君の質疑は終了いたしました。  次に、原口一博君。
  69. 原口一博

    ○原口委員 新進党の原口一博でございます。  総理並びに関係大臣に、この財政構造改革法案について御質問をさせていただきます。  まず、この間、あるテレビで、春風亭小朝師匠の番組だったと思いますが、あれは百歳以上の方に御出演いただく。今、日本の国はもう大変ですねということを師匠がその百歳の男性の方に、百一歳だったと思いますがお聞きになって、その男性の方は、いや、大丈夫だ、日本は大丈夫だ、発明すれば大丈夫だということをおっしゃっておりました。私たち政治の役割は、今この閉塞感の漂う日本の国、財政も健全にすることであり、しかも経済も大丈夫だという自信を国民の皆さんに持っていただくことだというふうに思います。  私たちは、一年前に財政均衡化法案というものを研究して、今のままずるずると現状維持していけば、ますます国家の赤字が大きくなって、そしてそれを私たちはもう賄い切れないぐらいになる、だから、立法府が法案を出して、そして行政府に対して立法府の意思を示そうということをやってまいりました。その中で、ちょうどそのときに橋本総理は解散をなさいましたから、その法案は日の目を見ないままに、中には自由民主党の中の武藤前総務庁長官、そういう皆さんも賛同いただいて出した法案でございました。  そこで私たちは、今のこの危機的な状況の見立て、これが本当に正しいのかどうか。先日、海江田委員の方から大変重要な指摘がありました。それは、日本のグロスの債務とネットの債務が違うじゃないか、長期累積債務は確かにひどいけれども、ネットの債務はそれほどではないのじゃないかという御指摘がございましたが、この御指摘に対してもう一度、大蔵大臣の基本的な見解をお尋ねしたいというふうに思います。
  70. 三塚博

    三塚国務大臣 見方の御質疑でございますが、毎回申し上げておりますとおり、経済の動向、緩やかな足取りであるというこの言葉に表現をされます。それぞれの政府発表、各経済機関、研究機関の発表などもございます。それを見てまいりますと、厳しい指摘も当然ございます。  しかしながら、百貨店、デパートの売れ行きを八月までロングで見てまいりますと、特にスーパー、コンビニは確実な成長の足取りで、消費者動向というものが……(発言する者あり)全体として、そのほかにもありますが、聞いてないと言うが、環境の整備のお話を申し上げておったわけであります。今日の時点における物の考え方として、誠実に、経済の動向に注意力を払いながら、政府見通しに近づけるため、目指して全力を尽くす、こういうことであります。
  71. 中川良一

    中川委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  72. 中川良一

    中川委員長 速記を起こして。  橋本総理大臣。
  73. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 実は、日米経済交渉等をいたしました場合にも、往々にして社会保障基金をカウントする、しないという議論が出てくる、これは事実です。委員の御指摘のとおりです。  しかし、考え方として、果たしてそれはどうなんだろうという思いを今まで私自身持っておりました。なぜなら、国及び地方の債務残高、GDP比、これは九七年に約九〇%に達している、そして主要先進国中最悪だということを私どもは申し上げております。  一方、確かに厚生年金を初めとした社会保障基金が九五年度末現在約二百十五兆円、これをGDP比でとらえれば四四%になるわけですから、これは金融資産として保有されているではないか、だから我が国財政状況はそれほど深刻でない、深刻だ、深刻だと言うのはおまえたち言い過ぎだという御批判があったこともありました。  ただ、社会保障基金の積立金というのは、将来の年金給付などのために国民からお預かりをしている預かり金であります。ですから、これをもし資産として計上するのであれば、負債としても計上しなければならぬということになるのだと私は思います。  そして今、もう申し上げるまでもなく、高齢化が急速に進展している中で、年金の給付費はこれからふえていく。言いかえれば、債務との関係からいうならば、これは巨額の積み立て不足ということも言わなければならないのかもしれません。  ですから私は、果たしてこうしたものをカウントに入れて現状がどうだと言うことが正しいのかな、そういう疑念を払拭できずにおります。海外との論争の際にも実は同じような議論を、日本の高齢化率の変化等を例に使いながら議論をしてまいりました。  ですから、そういうことを考えました場合、私は、財政状況を考える、これにつきましては、むしろ債務の合計額であるグロスの債務残高を用いる方が適当だ、そのように考えております。学説としていろいろな考え方があり得る、これは私決して否定いたしませんが、外との論議の際にも往々にして議論になりました問題点ですので、改めて申し上げたいと思います。
  74. 原口一博

    ○原口委員 大変御丁寧にお答えいただいて、ありがとうございます。私も総理と同じ認識を持っています。  というのは、やはり将来、年金の未払い、将来にわたって払わなければいけないお金、それは三百五十兆になる。ただ、この委員会の中で、借金だけが言われて、実際に国は資産をどれぐらい持っているのだ、この国は借金だけを持っているのか、そうじゃないのだ、ちゃんとした資産も持っているのだということを言わないと、議論が一方的になるということを強くここで示さなければいけない。  委員長、お許しをいただいて資料をお配りさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  75. 中川良一

    中川委員長 許可します。
  76. 原口一博

    ○原口委員 そして、今までのこの議論の中で、私は一つの例をお示しして、今回の法案が少し乱暴ではないか。  と申しますのは、今お手元にお配りさせていただきましたこの一のページ、これはカナダの行財政改革財政改革のエキスを示したものでございます。カナダも日本と同じような危機的な状況にあった。しかし、その中でまず政府がやってきたことは、政府の役割の再定義でございました。プログラムレビューと申しますが、自分たちがやっているプログラムが果たして、まず第一に市民に益をもたらすかどうか、まずこれを検討する。その後に、政府の果たすべき正当かつ必要な役割は何なのか、そして、国じゃなくて地方に移管すべき役割があるんじゃないか、あるいは民間部門、ボランティア部門に移管すべきものがあるんじゃないか、こういったことを検討した後に、その右側の、どこをどう削るかというものが出てきている。  ところが、こういうレビューが全くなしに、単にシーリングだけが出てくる、キャップだけが出てくる。このことは、本当に必要なもの、国民が必要だとお感じになっているもの、そのことまでこの線引きによって削られてしまうのではないか、その危惧を強く感じるわけでございますが、このことについて基本的なお考えをお示しいただきたいというふうに思います。
  77. 三塚博

    三塚国務大臣 ただいまカナダの実態に言及されて、今後のいかん、こういうことであります。  財政構造改革法第六条におきまして、健全化の目標に資するよう方針規定いたしてまいりましたが、この規定におきましては、特別会計を含むすべての歳出分野を対象とした改革推進することといたしまして、その際踏まえるべき観点として、官と民、国と地方の役割分担等六つの視点を挙げております。  官と民が分担すべき役割を見直すこと、二番目に国と地方が分担すべき役割を見直すこと、三は国民の受益と負担の水準の間のバランスを図ること、四は活力ある経済社会を創出すること、五は財政資金を効率的に配分すること、国民負担率が五〇%を上回らないように抑制をすること、この六つの観点が多種多様の歳出分野の改善における基本的な指針であります。ある程度は抽象的なものにならざるを得ませんけれども、現下の行政の課題から、今後の財政運営の適切な指針であると考えております。  この規定における六つの観点は、議員指摘のカナダの政府の役割の再定義とも類似をいたしております。こうした各国の取り組みは、今後我が国も参考になると考えております。なお、およそ行政活動は国民の福祉の向上のためになされるものであり、予算編成に当たりましては国民の関心に意を払いながら行政効果を高めていくことは当然のことであると考えます。  以上のような財政運営の大前提でございますから、今後は、財政運営に当たりましては、特にこの法律案で示しました六つの観点を踏まえて、すべての歳出分野を対象に改革推進してまいりたいと考えております。
  78. 原口一博

    ○原口委員 聞く相手を間違ったとは思いませんけれども、法案の六条がこのレビューに当たるものだと思うのです、私たちが審議している法案の六条。  今おっしゃったような趣旨なんですが、非常に抽象的で、市民の関心や効率性の向上あるいは本当に必要としているところ、優先順位、そういったものをもう一回議論をしながら出てくるもの、それがこの数字だ。だから、先ほどの太田委員質問にもありました、七%という数字がどこから出てきたのかわからない、その根拠は何なんだ、それを国民の皆さんに御理解していただけるような法案になっていない。量的な縮減目標というのはこのような検討の結果決まるものであって、私は、構造改革の手順が逆じゃないか。まず数字ありき、そしてその後、その中で何とかやってください。  私は、去年の今ごろの日記を見て、何をやっていたのかなと思って、国会に来て初めてでございました。難病の六カ月の赤ちゃんの命が何とか助からないかということで募金活動をやっていました。その子は難病認定にならない新しい病気であった。ですから、国や県の認定を待っていたのではとても間に合わない。それで、私たちはボランティアを組織して五百万円の手術費用を集めて、そして手術をしていただきました。  残念なことに、この台よりも小さなひつぎの前で、私たちは本当に申しわけないという涙ながらの、ざんげをしたわけでありますが、本当にそういったところに今、厚生省は、この間の審議会の答申で、難病の皆さんも三分の一は負担してもらう、こういうようなことを出されている。  これは大体四百億ですね。四百億のお金を私たちは惜しむ必要があるんだろうか。こういう優先順位の大事なものも機械的に線を張られることによって、いや、聖域がないんですよ、これにはどの分野も聖域がないから削らなければいけないんだということで削られてはたまらぬ。  これまでの委員の皆さんは、自民党の皆さんも野党の皆さんも、同じような趣旨で質問があったのではないか。それは、どこが欠けているか。最初のこのレビューの手順が逆だからじゃないかというふうに思うのですが、総理の御見解をお尋ねしたいというふうに思います。
  79. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 改めて今、議員から配付をされました「政府の役割の再定義」「プログラムの再検討」というこのカナダの手法を振り返りました。  同時に、三塚大蔵大臣からお答えを申し上げましたように、今回六条に規定しております六つの観点、これは全体を見ますとどうしてもある程度抽象的な表現にならざるを得ないことは御理解がいただけると思うのであります。こうしたものを基盤に据えて取り組もうとしておることは御理解がいただけると思うのであります。  今、議員御自身の活動の中から難病の例を引かれました。一方で、本当に我々は聖域をつくることは許されないと思っておりますし、この財政構造改革のためには一切のものを見直していかなければなりません。その上で、当然のことながら、優先すべき分野、より我慢をしていただく分野、そうした見きわめもつけていくというのは予算編成の作業の上で大事な視点だということを私も決して否定をいたしません。  同時に、このカナダの場合で、例えば「連邦主義の再検討」、これは日本とカナダとの違いがありますから必ずしもそのままにそれを引き受けることはできないと思いますが、まさに分権を進めていこうとしているその方向と相似ているということでは、私は決してこれを全く日本のとろうとしている方向と違ったものだとは思いません。  あるいは、「民間部門またはボランティアへ全部または一部移管すべき」という「パートナーシップの再検討」、こうした分野も逆に、我々が官から民へと言っているもの以外に、あるいはもっと積極的に進めるべきものがあるのかもしれません。  また、「効率性の再検討」というもの、これは、先ほど太田委員から公共事業についての御議論が出されました。そして、傾聴すべき部分も持ちながらその論議を伺っておりましたけれども、一方で、公共事業というものについて、その単価が高過ぎるという御批判を受けた結果、三年間一〇%は少なくともこれを縮減しようという方向は、既に作業が動いておりますし、そうしたものも加味して考えていく場合に、その効率性向上というものは我々の脳裏にも決してないものではない。そうしたことを見ておりますと、私は、それなりに共通した思いが、その上で国情の違いを反映し、この中に盛り込まれておると思っております。  当然のことながら、この六条の財政運営の当面の方針に沿ってすべての歳出の改革が行われていく中に、それぞれの優先順位というものが考慮されるべきであり、機械的なカットというものがなじまない、その御指摘は私も素直にちょうだいしたいと思います。
  80. 原口一博

    ○原口委員 ちょっと視点を変えてまた御質問したいと思うのですが、私たちは改革はやはり必要だと思います。二〇〇三年でGDP比三%以内に抑える、このことも大事だというふうに思います。  ちょっと視点を変えてお話ししますと、次の資料、これは大蔵省からいただいた資料でございますが、二ページ目の資料です。  私たちは、飛行機に例えてみると、日本経済がバブルの後で失墜して、そしてその後を何とか立て直してくれる優秀なパイロットを求めていました。そして、橋本総理という、省庁の課長補佐よりもはるかに現場の御意見を御存じで、しかも高度な判断ができる、そういうパイロットを必要としていたわけです。ところが、この四月、このパイロットが急速な逆噴射をしてしまう。九兆円という大変な負担増をする。まだまだ飛行機は安定飛行にもいっていない、それなのにこういう負担増をなさる。  経済企画庁からさまざまな指標が出ておりましたけれども、その指標が本当にこのパイロットである橋本総理に正しく伝わっているのだろうか。町を歩いてみると、何とかしてください、自分たちはどうなるのでしょうか、悲鳴に似たような、いや、もう本当に悲痛な叫びをお聞きします。そして、きのう自由民主党さんがおまとめになった景気対策。  果たしてこれでいいのだろうか。私たちは、今の日本の経済、この経済を壊してしまってはならないのではないか。飛行機に例えてみると、乱気流、ダッチロールばかりやるもので、その中で機内食を食べようなんという気にはとてもならない。ましてや、その中で機内販売を買って楽しく映画を見ようなんという気にもならない。もう本当にしがみついているというのが今の国民の状況なのではないか。  私たちはこの四月に、二兆円の特別減税、そして消費を刺激してくださいと。この資料をごらんになって、これは単純な資料でございますが、今のまま一・七五%の名目成長率の場合、どういうふうな要調整額が要るのか、それから、もし名目成長率三・五%の場合、どういう要調整額が要るのか。今でもこれだけの要調整額が要る。しかし、ことしの経済成長は果たしてどうでしょうか。一・九とかおっしゃっていますが、実際にはもっと低いのではないでしょうか。  経済企画庁長官、見通しをお示ししていただきたいと思います。
  81. 尾身幸次

    尾身国務大臣 今年度の経済見通し一・九という数字を出しておりますが、御存じのとおり、一月までの、昨年度におきます消費税引き上げに対応する駆け込み需要というのが予想外に高くございまして、自動車を中心とするもの、あるいは家庭電器、あるいは特に住宅関係等についての駆け込み需要がございまして、予想外に昨年が高くなりました。そして、その反動として、四月以降の反動も非常に高かったわけでございまして、その落ち込みが対前期比で全部トータルといたしまして二・九%マイナスという数字になったわけでございます。  そういう数字の中で、経済の基調は回復基調にあると考えておりますが、なお足踏み状態が続いているという状態かと考えております。その中で、この一・九%の達成というのは現時点ではかなり難しいと考えておりますが、私ども従前から申し上げておりますような経済構造改革を進め、規制緩和をし、土地有効利用などなどの政策によりまして、この数字にできるだけ近づけるよう最善の努力を果たしてまいりたいと考えております。
  82. 原口一博

    ○原口委員 白川先生が、まだまだやれる、頑張れということですが、本当にこれは、与党だから野党だからということはありません。経済を本当に成長路線に戻す、このことを与野党問わずしっかりと議論をしていかなければいけない。そのためには、やはり民間投資だと思うのです。それから、個人消費だというふうに思います。それをいかに刺激するのかということをしっかりと考えていただきたい。  尾身長官、特にタイのバーツの暴落がまだ尾を引いています。たしかタイの貿易は、日本が二六%、そしてアメリカが一六%、それから欧州が一三%。そうであるにもかかわらず、タイのバーツはドルにヘッジしている。本当だったら日本の円にヘッジをしておくともっともっと安全であっただろうけれども、日本の国内の規制緩和が進まない、金融の中もまだまだグローバルスタンダードには遠い、そういうことがひいてはよその国の経済状況規定してしまっている。  私たちは、橋本総理が六大改革をなさる、これは、一内閣一改革と言っていた時代からすると、はるかに進歩しているというふうに思います。コンピューターも今並列処理の時代です。一気呵成に改革ができる、そういう人が出てきたというのは、これは評価をしなければいけない。  しかし、その中で、本当にこの改革者が改革者なのだろうか。そして、大きな手術をやろうとしているけれども、その手術をやろうとしているお医者さんの手はきれいなのだろうか。ばい菌がついているのではないだろうか。この手術をしたら自分たちにばい菌がうつってしまうのではないか。それで、これはお医者さんの方から手はきれいですよということをしっかりと明言しなければいかぬというふうに思うのですが、総理、いかがでしょうか。
  83. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 課長補佐以下あるいは医師、いろいろな評価をいただきました。ただ、激励をいただいた部分についてはお礼を申し上げますし、提起されました問題のうちの幾つか、私はちょっとタイの例だけは正面からお答えすることは避けさせていただきたい。  これは、今IMFとの調整プログラムが動き始めたところであります。そして、我々は引き続き注視してまいりますけれども、タイを含め東南アジアの経済が安定し、通貨の水準というものが安定した範囲内で変動する、これは変動があるわけでありますけれども、それが無理のない範囲で安定することを願っておるところでありますから、これについての言及はお許しをいただきたいと思います。  その上で、自分の手は一生懸命にきれいにしているつもりですけれども、すべて目が届きません。顕微鏡検査をしているわけでもございませんので。汚れているものがあれば、それは私自身反省をしながら洗い落としていく努力をするのは当然ですけれども。  私は、今議員が御指摘をいただきましたような角度から考えましても、それぞれの改革というものを結果的に大きく左右していくもの、それは我が国財政構造であると思います。そして、民需を中心に自律的な経済発展を遂げていかなければならない我が国におきましても、公的な支出の効果というものは、今後も一定程度は、それが社会保障支出であるのか、あるいはその他の支出であるのか、さまざまなケースを想定いたしましても、一定の役割は我が国経済の中で果たすと思います。  しかし、その中で、冒頭議員の御指摘にもありましたような視点から、我々の役割をできるだけ民間に移していくこと、また地方に移していくこと、こうした視点なくして改革をすることはむしろ非常に問題を将来に残す、そのような思いでいけという激励は素直にちょうだいをしたいと思います。
  84. 原口一博

    ○原口委員 私は、一刻も早く日本の経済、金融も含めてグローバルスタンダードにしなければいけない。その中でも特に法人税、この法人税については果たして今の税水準でいいのか。ことしはいわゆる大競争時代の幕あけです。通信にしろ、あるいは金融にしろ、運輸にしろ、大変大きな変革の初期に当たる。その初期に当たって、まだまだ日本の中の企業が、この中にいて活動をしたい、そういう思いかない。このことについては、いつこの税制改革をやるのか。法人税の減税、あるいは、本当に今可処分所得が減ってしまって苦労をされている子育て世代の減税、こういったことについて、もう答えを出すときが来ているんじゃないか。私は、早急にこの答えを出していただきたい。  そして、いや、もう橋本内閣は逆噴射だけじゃありませんよ、この財政構造改革法案が通れば、私たちの地方は一体どうなるんだ。先ほど太田委員質問にもありましたが、野茂のフォークどころじゃないということであります。本当に、実際に末端にこの公共事業が行ったときに、工事額はどれぐらいになるんだろうか。二〇%、三〇%の減になってしまうんじゃないか。地方は公共事業に依存をしている、そういうところはたくさんございます。あるいは農業が基幹産業であるという県もたくさんある。  私は、中央の財政出動に頼る、そういう体質をいつまでも残していること、これも問題だというふうに思う。しかし、これを一挙に大きな変革をしたときには、そこの経済はどうなってしまうのか。地方が壊れてしまえば、それこそ治安の安定、人心の安定というのはできるのかどうか。私は、この七%の根拠については結局お示しいただけなかったけれども、もしそれを分配するときに、きっちりとした緩和措置というのが必要だというふうに思いますが、総理、いかがでしょうか。
  85. 尾身幸次

    尾身国務大臣 この財政構造改革、やはりこの厳しい財政事情を踏まえて、私どもこの解決をしていかなければならないわけでございますが、それに伴います各地域における公共事業削減の影響というものも当然覚悟しなければならないわけでございまして、その地域における中小企業対策とか、あるいは経済の活性化のためのきめの細かい対策をとってまいりまして、民間活力を各地域において活発に伸ばしていただく、そういう手だてを全力を挙げてとってまいりたい。  いろんな規制緩和の問題もございますし、また金融等の問題もございますが、先ほど出されました自民党の経済対策なども踏まえまして、私どもとしては全力でそういう対応をしていきたいと考えております。
  86. 原口一博

    ○原口委員 資料の三に、今の地域別の雇用失業情勢、それから都道府県別の有効求人倍率をお示しさせていただきました。これをごらんになれは、いかに四国や九州あるいは北海道、東北、そういったところが厳しい状況にあるのか。これは十八歳から二十四歳、就職をしようという人たちにもろにかぶってくる、そういう数字であります。皆さんが御選出の県もこの中に入っていると思います。  私たちは、急速なその体質改善がかえって日本経済の足を引っ張る、こういうことがないように強く求めて、そして個々の政策に幾つか問題提起をさせていただきたいというふうに思います。  まずその第一点は、教育の問題でございます。総理は教育改革ということを挙げておられますが、財政構造改革の趣旨の尊重は心の教育などの教育改革推進を阻害することになるのじゃないか。心の教育を推進するとしながら、今回の法改正によって教職員の定数改善計画を先送りした理由というのはどこにあるのか、そのことを明らかにしていただきたいというふうに思います。
  87. 町村信孝

    ○町村国務大臣 お答えをいたします。法律案第十六条、「文教予算に係る改革の基本方針」というのが書かれているわけでございまして、もちろん、委員先ほどお話のあった第六条の趣旨を受けまして、さらに教育の分野では「児童又は生徒の数の減少に応じた合理化、受益者負担の徹底、国と地方公共団体との適切な役割分担等の観点から」見直していく、こういう法律になっているわけでございます。  御指摘のように、それは私どもも、財政が豊かでありゆとりがあれば、いろいろやりたいことは山とありますが、しかし、まさに聖域なしということで歳出全般の見直しを行う、そういう中の一環といたしまして、教育職員の配置改善計画の二年延長ということに私どもは賛成をしたわけでございます。でき得べくんば、あと一年でございますから、本当は平成十年度中にこれを完成したいという気持ちはありましたが、内閣の方針といたしまして、これをさらにあと二年延長して、しかし、この改善計画を完成をさせるというところの意味がまずあるというふうに御理解をいただければありがたい。  そして、心の教育という観点に立ちました場合に、やはりこの教職員、なかんずく生徒指導に当たったりとかいうような部分の教職員の配置を、今の改善計画の中でもそれをふやしていこうといったような部分もございます。そのようなことで、この心の教育の推進と教職員の定数改善計画を何とか整合性を保ちながら進めていきたい、かように考えているところであります。
  88. 原口一博

    ○原口委員 財政が豊かだったらやりたいことはもっとあったけれども、それがやはり本音だと思います。大臣は本音をおっしゃったのだというふうに思います。  私は、ここで問題提起をしておきたいのは、子供の心の状況でございます。三歳までの子供たちが一体だれに育てられているのか。  心理学の実験にこういう実験がございます。生まれたばかりのお猿さんの赤ちゃんで、本当の自分のお母さんに預けられて育った赤ちゃん、それから、そうじゃなくて、布製のお人形のお母さんに育てられたお猿さん、針金でできたお母さんに抱きついて育った赤ちゃん、二番目と三番目は情緒障害を起こす、人格障害を起こしてきます。  私たちは、今、パートタイマーが一千万人を超えた未曾有の労働状況の変化の中にいます。私は、女性が社会進出をして、そして自己実現をなさる、大変結構なことだというふうに思います。しかし、子供たちは一対一で親との間で自分の自我を形成してきますが、その一対一の対象である親がどこにも見当たらない。中学校、高校ぐらいまでの間に、いわゆるスーパーエゴといいますか、超自我という、自分を導く自分というのをつくらなければいけない。しかし、その自分がどこにもいないということが起こっている。  今、ボーダーライン・パーソナリティー・ディスオーダーズというものが取りざたされています。これは何かというと、小学校、中学校、高校、いい子で、どこにも攻撃性が外に出ないで、二十代、三十代で外にぽんと出てくる、それが殺人やあるいはさまざまな問題を起こしてきている。私は、このことについてもう正面から取り組むときが来ている。三歳までの子供たちが一体どういう育てられ方をしているのか。小学校、中学校、きのう理科教育の話がありましたが、理科教育も大事です。しかし、まず、自分を導く自分というものをどこでつくっているのか、とのことについて、総理、本格的に政治がシステムとして取り組むときが来たのじゃないかというふうに思うのですが、御見解をお尋ねしたいというふうに思います。
  89. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、議員の問題提起に対して専門的にお答えをする知識は持ちません。ただ、国会における御論議というものがこれだけ変わってきたということを私はある意味では素直に喜びたいと思います。  と申しますのは、当時社会党の参議院におられた粕谷照美先生たちと、育児休業制度のスタートの時点で議員立法を書いた私は当時の関係者の一人であります。ところが、この育児休業に関する法律というものは、当初は教育職公務員に関連する部分のみに限定されてつくられようといたしました。そして、それを医療に関係する分野、福祉に関係する分野まで広げてスタートをさせたわけでありますが、今ちょうど議員が展開されましたような御議論の中で、むしろ、母親の役割というものを強調する余り、育児休業制度が普及する場合の、育児というその問題をとらえた賛成論と反対論の両方がございました。そして、結果として一年提案がおくれました。  ところが、その後に残りました問題は、実は零歳児保育の問題であります。そして、率直に申して、私は当時零歳児保育に反対を唱えた一人であります。むしろ育児休業制度を拡大して、少なくとも生後一年母親のもとに置きたいという議論をいたしましたが、これは女性を家庭に閉じ込めようとするものであるという御批判を大変強く当時受けました。  今、そうした意味では、社会情勢は随分大きく変化をしてきております。そして、一方では、我々はより積極的な女性の社会への進出を求めております。これは、我が国の産業構造というものを考えましても、また経済社会構造というものから考えましても、これを求めるのは私は当然のことであると思います。問題は、その場合に、子供に対しそれぞれの地域社会の中に家庭にかわる環境をいかにつくり出すかということが我々に求められている一番大きなことであろうと思います。  その意味で、従来から、幼保一元化論あるいは幼保の役割分担、さまざまな議論がその角度からもありました。そして、義務教育就学時点における教育水準というものはそろえながらも、ある程度カリキュラム性を持った教育という視点からの幼稚園教育と、家庭にかわる環境というものを保育という世界につくり出し、その一日の子供の暮らしの中に教育をちりばめていき、水準としては同レベルを維持するという考え方と、この二つの考え方が併存してきたことも事実であります。  どちらかといえば、子供たちにとっては、私は、一日の生活のリズムの中に教育というものが知らず知らずにちりばめられている方が、その姿としてはよいのかなという思いを持っておりますが、しかし、それは逆に言えば、家族というものと離れている状況の中でのことでありますから、私はどちらが本当によいものなのかわかりません。むしろ、こうした分野の専門家としての議員の御意見を私は傾聴をさせていただきたいと思いますけれども、少なくとも、そのような問題意識を持ちながらこの問題を見詰めておる、それだけはぜひ御理解をいただきたいと思うのであります。
  90. 原口一博

    ○原口委員 私は、これはもう本当に緊急を要する問題だというふうに思います。  文部省が心の教育の問題で今概算要求、大体二・五倍ですか、そういう要求をされている。こういったものについてはできるだけ伸ばして、しっかりと対策をとる。そうしないと、治安のコストとしてどこかでまた別のコストを払わされるのだということをぜひお心にとめていただきたいというふうに思います。  時間がもう迫りましたので、あと、郵政の問題についてお尋ねをしたいというふうに思います。  選挙区に帰り、あるいは今一番たくさん手紙が来るのはこの郵政の問題ではないか。体協の会長さんの名前であったり、婦人会の会長さんであったり、いかにもたくさんの方が、郵政三事業は絶対に民営化しないでくれ、今財政構造改革の件で財投を改革、スリム化するというような議論が出ているけれども、自分たちの郵便局はどうなるんだ、何とかしてください。ただ、こんなにもたくさん来ると、逆にこの組織力とは何なのかなということも感じます。  私は、現在ユニバーサルサービス、これは逓信委員会でもきっちり議論をしていかなければいけない問題ですが、財投の関係でどうしても避けては通れない部分だというふうに思います。  郵便事業は、大都市圏の収入によって過疎地域をカバーしてネットワークを維持しています。私は郵政省に対して、個々の郵便局の収支を出してください、大都市圏の特定局がどういう収支なんですか、あるいは地方の特定局がどういう収支なんですかということをお尋ねしましたが、それはない、三事業別々でやって、コストはそれぞれの局で計算をしているのだということであります。こういうコスト体質について、どんぶり勘定というような指摘がありますが、このことについて私たちはどういう答えを持っていればいいのか。  あるいは、民間が参入してくる、郵便法の五条を改正して民間も参入させてもっと自由にやらせたらどうだということを言う方がおられますが、このことについて、郵政大臣、どのようにお考えなのか、お尋ねをしたいというふうに思います。
  91. 自見庄三郎

    ○自見国務大臣 原口委員から郵便事業につきましていろいろな御質問があったわけでございます。  先生御存じのように、手紙、はがきの配達コストは大都市と過疎地では大きく差があるにもかかわらず、利用者の皆様に利用しやすく、かつ安価なサービスをするために全国均一料金を取っております。もう先生御存じのように、全国均一料金というのは近代郵便制度の原則の一つだというふうに私は思っております。  そういった中で、今御質問がございましたが、この手紙、はがきの配達についても民間事業者の参入を認めるとどうなるのかという話でございました。そういう状態になると、もうかっている大都市に限っていわゆるクリームスキミング、いいとこ取りが起きるのではないかというふうに思っております。  これは、慶応大学の教授の石井威望会長の郵政審議会で試みに計算をしていただいたわけでございますが、大都会、東京二十三区を含む政令指定都市あての大量郵便、大体今二百五十億通ぐらい手紙、はがきがございますが、実はそのうちの約五分の一、五十二億枚が先生御存じのようにダイレクトメール、先生の家にも非常に今ごろ来るようになったと思います。あるいは請求書、領収書など、いわゆる大量郵便という範疇になるわけでございますが、この料金が、大都会だけでございますが、これを約半分にする。今手紙が八十円でございますから、ちなみに四十円にする、はがきが五十円でございますから二十五円にする、こういうふうに仮定しますと、一方、地方あての一般郵便物の料金が大体三倍になるだろう。ですから、地方あての一般手紙が今の八十円が二百四十円、それからはがきが五十円が百五十円になるという試算もあるわけでございます。  その結果、今私が申しました近代郵便制度、十九世紀の中ごろにイギリスで始まったわけでございますが、その全国均一料金制度の維持が不可能となり、また、当然簡便なポスト投函制も崩壊するだろうというふうに我々は考えております。  不採算地域からの郵便局の撤退、それから政策料金、これはもう御存じのように、文化的なもの、定期刊行物ですね。これは第三種、定期刊行物は非常に安い料金にしておりますし、また第四種、盲人用の郵便物は無料にいたしております。そういった政策料金で約二百八十億円赤字になっておりますが、そういったサービスは廃止せざるを得ない。ひいては赤字になれば税金の投入が必要となるなど、国民の利用者の方々の利便を大きく損なうのではないかというふうに思っております。  このようなことから、信書、すなわち手紙、はがきのサービスに関しては、やはり民間参入を認めることは適当でないというふうに考えております。  先生御存じのように、自由な国だ、こう言われますアメリカでも、基本的には手紙、はがきサービスは郵便局が独占している、こういったことを御理解をいただければというふうに思うわけでございます。
  92. 原口一博

    ○原口委員 質問に一部お答えですが、個々の都市部の郵便局と地方の郵便局のコスト、それとどれだけの事業収入があるか、それも知らないで、それも私たちが全然手元になくて、今おっしゃった試算というのはどうやってできるんだろうかというふうに思うのです。その資料を出してください。
  93. 自見庄三郎

    ○自見国務大臣 委員のところには郵便のユニバーサルサービスコストという表をお持ちしているというふうに私お聞きしておりますが、簡単に言えば、これは……(発言する者あり)ええ、出しているというふうに聞いております。  ただ一つ、関東、東京、東海近畿だけが実は黒字でございまして、ほかの北海道、東北、信越、北陸、中国、四国、九州、沖縄は、これは全部実は郵便は赤字だということでございまして、合計すれば、黒字局が三千七百五十四、赤字局が三千四でございまして、全国では七百五十の黒字になっておりますが、今言いましたように、黒字なのは関東、東京、東海、近畿だ、この地域だけだということですね。先生のところに資料をお持ちしておると思いますが、詳しい数字はそれを見ていただきたいというふうに思っております。  以上でございます。
  94. 原口一博

    ○原口委員 私の質問の仕方が悪かったんだと思います。  確かに北海道、東北、関東、東京、各ブロック別のユニバーサルサービスのグロスのコストはいただいております。しかし、それぞれの郵便局が郵政三事業の中でどういう収入があるのか、例えば佐賀の何とか郵便局というものの中で、そこのコストを教えてください。  そして、何でこんなことを言うかというと、郵政三事業はそれぞれ独立てすよね。この委員会の中で、財投に預託しているもの、まあその預託というものは見直すというような話がある。そして、この資金は自主運用する、そんな話もある。そうしたときに、果たしてこの金融ビッグバンの中で郵便貯金というものが生き残ることができるのか。  今るるおっしゃった、これだけ赤字ですとおっしゃったわけですね。この赤字が、さらに金融が悪化して、そして郵便貯金の収支がもっと悪化した場合に、果たしてまた第二、第三の国鉄になる、その心配はないのか。あるいは、逆に大きな、巨大なプレーヤーができることによって民業を圧迫する、その心配がないのか。そのことを検討するにも、個々の局のデータがなければその材料にならないじゃないかということを申し上げているのですが、資料を出していただけますか。
  95. 濱田弘二

    濱田政府委員 お答え申し上げます。  事実関係でございますけれども、今回、郵政審議会で「郵便局ビジョン二〇一〇」を取りまとめるに当たりまして、民営化した場合の郵便局のユニバーサルサービスコストを算定するために、それぞれの、全局、普通局、特定局合わせて二万局でございますけれども、個々についてその収入、費用を分計を作業してほしいということがございまして、私どもやりました。したがいまして、全部の悉皆調査でございまして、これはもう世界的にも初めてというぐらいの作業でございます。そういうことで、具体的な資料はございます。  ただ、先生との間に若干行き違いがあるいはあったのかもしれませんが、一定の前提を置いての試算でございます。それも、民営化した場合にという前提でございますので、例えば、九州の何々県のA局はこれだけの赤字だ、あるいは北海道はこれだけの赤字だ、あるいは黒字だとなりますと、局名までオープンになりますと、一定の前提を置いて、しかも今申し上げましたけれども、民営化したという前提でございますので、地域の方に無用の御不安とか混乱を与えてはいけないということで、先生の方に統計的な形で資料をお渡ししておるわけでございますが、さらにブレークダウンは可能でございますので、これからさらにお求めいただけましたら、先ほどの限度はございますけれども、資料は積極的に提供させていただきたいと思います。
  96. 中川良一

    中川委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  97. 中川良一

    中川委員長 それでは、速記を起こして。  ただいまの原口君の資料の件は、後刻理事会で再度協議をいたします。  原口君。
  98. 原口一博

    ○原口委員 もうあと時間がございませんので、財投に。  今回の法案の中には財投の部分が入っていない、特別会計も入っていないと議論にあったわけです。これが駆け込み寺になることがないように、その出口の特殊法人のディスクロージャーをしっかりとやっていただく、このことが必要であるというふうに思いますが、小里総務庁長官、お答えをいただきたいというふうに思います。
  99. 小里貞利

    ○小里国務大臣 行政改革委員会におきましても、御承知のとおり、昨年の十二月の十六日であったかと思うのでございますが、ただいま先生御指摘の特殊法人の情報公開化は進めるべきである、こういう指摘をいたしたところでございます。  なおまた、行革委員会といたしましては、特殊法人は法律上、国の機関とは別途に人格が定めてある、そういう法的性格あるいは事業内容と申し上げますか、そういう諸点にかんがみまして、行政機関に対する情報公開法をそのまま直接適用するのは不適ではないか、やはり特殊法人に関する情報公開は別途にきちんと対処するべきである、そういう意向を示しておりますことでございまして、私ども担当庁といたしましても、総務庁でプロジェクトチームを、その特殊法人に限るチームを編成いたしまして、目下検討を進めておるところでございます。
  100. 原口一博

    ○原口委員 行政改革の中の一つ財政構造改革の中の一つに、やはりオープンにすることがあるというふうに思います。前の住専のときのように、一つのところを縛ってほかを縛らなければ、そこに変なことが起こってくる。  私は、最後に農林大臣にお尋ねしたいのですが、UR対策、この補正予算、このことについては藤本農水大臣が、私はきっちりやりますということを前の大臣はおっしゃったのですが、大臣、このUR対策、補正で上げるのか上げないのか、お答えいただきたい。
  101. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 お答えいたします。  ウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策は、農業の将来的展望を切り開き、かつ農村の活性化を図るために必要不可欠な事業ということで決定されたものでありまして、その着実な推進が必要である、こう認識いたしております。  このため、これまでも本対策につきましては、その趣旨あるいは緊急性等を踏まえて、各年度の予算補正を含む所要額を計上し、適切に対応してきたところでありまして、本年度におきましても、本対策の効果ある推進が図られるよう、追加補正措置の検討も含め万全を期してまいる必要があると考えております。  いずれにいたしましても、このウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策に係る経費の取り扱いにつきましては、事業内容の見直しとあわせて予算編成過程で検討することとされておりますので、今後財政当局と鋭意調整を進めてまいりたい、こう考えております。
  102. 原口一博

    ○原口委員 昨日の、農林大臣が各地域を回るとおっしゃったことは、私はこれを高く評価したいと思います。今、農家はどういう現状か。米の価格が三分の二に減ってしまう。この三分の二に減ってしまうということは、所得が三分の二に減ってしまうということでございます。この上に公共事業、農家の方の多くは公共事業にも行かれている、ここもアウトだということであれば地域経済はもっていきません。ぜひ頑張っていただきますように。  ただ、ここで、これは新聞ですが、住専処理のお礼に農協団体の幹部が、昨秋の総選挙の直前に献金があった。これは、お礼で献金というのは一体どういうことなのか。私たちは、農業と緑の代表を国会へ送る会というところの収支報告を手に入れてみました。この中には、個々の議員の名前は出ていません。会館の、これは会館なんでしょうね、永田町二の九の六何とか、今のはちょっと読み過ぎました。そういうものが出ている。  こんなに厳しい農業情勢の中で、果たして、農業団体は自分たちのために本当に農業、農村を守るために頑張ってくれるのか、その疑念が出ています。こういうものを払拭するように、しっかりとした農業対策をしていただきたいというふうに思います。農水大臣の決意をお伺いしたい。
  103. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 今の申し出に沿ったこれからの活動を徹底したい、こう思います。
  104. 中川良一

    中川委員長 原口君、時間です。
  105. 原口一博

    ○原口委員 先ほどもお話ししましたように、この手術が必要なことはもうだれでも、私たちも必要だと思います。そのために総理にも頑張っていただきたい。ただ、その手術を国民が受け入れていただく、そのためには、本当に自分たちの身の潔白もきっちりしてこの改革に取り組んでいくことが必要じゃないかというふうに思います。  そのことを指摘させていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございます。
  106. 中川良一

    中川委員長 これにて原口君の質疑は終了いたしました。  次に、岡田克也君。
  107. 岡田克也

    ○岡田委員 新進党の岡田克也でございます。  私の方は、きょうは経済協力と社会保障の関係を中心に質問したいと思います。  まず、経済協力について質問したいと思います。  この法案の中で、第二十二条第一項「政府開発援助費の量的縮減目標」「平成十年度の当初予算を作成するに当たり、政府開発援助費の額が平成九年度の当初予算における政府開発援助費の額に十分の九を乗じた額を上回らないようにするものとする。」つまり、一〇%減ということを決めているわけであります。  今まで経済協力の予算というのは、いわば聖域扱いであって、財政再建の中で防衛費と並んで一定の伸びが確保されてきたという歴史がございます。そういう中で見ると、この一〇%減というのは唐突な感じがする。いいか悪いかということは、私の考えは後で申し上げたいと思いますけれども、ほかの項目を見ても、公共事業七%減というのはあっても、一〇%の大幅カットというものはほかにないと思うわけです。  これだけの大幅カットをするということは、今の経済協力予算に対していろいろな基本的な考え方、しかもそれはネガティブな考え方があってこういうことになっていると思うわけですけれども、総理のこの一〇%減についての基本的なお考えを聞かせていただきたいと思います。     〔委員長退席、佐田委員長代理着席〕
  108. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 ODA、いわゆる政府開発援助、これが我が国の国益の維持増進あるいは安全保障の観点から重要な施策として位置づけられてまいりましたこと、そして、我が国が平和国家として国際社会で積極的に活動してまいります上でも非常に大きな国際貢献の柱の一つであったことは議員指摘のとおりであります。そして、そういう位置づけというものは、基本的に私は将来にも変わらないものだと思います。  その上で、この何年間かの間、我が国のODAの量的な拡充というものが国際的にもひどく飛び抜けた状況になってきている。そして、国連の新たな財政負担の議論を見ておりましても、非常に多くのものを日本が求められる。しかし、日本が求めておりますような国連改革というものがなかなか進まない。そういう状況等があり、一方では、我が国の本当に危機的な財政状況の中で、やはりこのODAというものについても量から質へ変えていく必要があるということを考えまして、十年度のODA予算というものを対九年度比一〇%マイナスの線を上回らないということにいたしました。  この効果が最大限に上がりますような重点的、効率的な予算配分というものを今まで以上に心がけていく、そして、その質の向上及び効果・効率的な実施に努めていきたい、そのように考えておるところであります。
  109. 岡田克也

    ○岡田委員 今の御説明で私は納得しがたいわけですけれども、まず、量的にかなりふえてきたと。確かに予算ベースではそうだと思いますけれども、最近の円高傾向でむしろ量的にはここ一年をとれば厳しいというのが現実だと思いますし、それから、全体の財政状況が厳しい中でこのODAもということを御説明だったと思いますけれども、なぜODAが一〇%減になっているのか、ほかと比べて大きくカットされているのかということについての説明では私はなかったように思いますが、この点についていかがでしょうか。
  110. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 財政改革会議におきます議論では、ODAにつきましては、我が国のODA実績が平成三年以来六年連続で世界一の水準となり、既に量的拡充は国際的に顕著であるということ、それからもう一点は、欧米先進国においては厳しい財政事情を背景として援助額を抑制する、いわゆる援助疲れの動きが見られる一方で、我が国財政赤字が主要先進国中最悪になっているということにかんがみまして、我が国のODA予算水準を引き下げるべきだという議論がなされ、最終的にマイナス一〇%という決定になったわけでございます。
  111. 岡田克也

    ○岡田委員 今、主計局長の方から経過説明はいただいたわけですけれども、そういう議論を踏まえて、総理としては今大蔵省の方が説明されたような議論を是としてお決めになった、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。
  112. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 財政構造改革会議の中で議論をしてきました議論の帰結として、この数字を確定をいたしました。
  113. 岡田克也

    ○岡田委員 さて、そもそも論なんですが、経済協力というのは一体何のためにやっているのか、そういうところがきちんとしていないと、果たして一〇%カットがいいのか悪いのか、あるいは、そもそも経済協力について今までふやしてきたことがよかったのか、そういうことがはっきりしないと思うわけであります。ここのところがなかなかわかりにくいというか、いろんな御説明をいただくのですが、聞いているうちにわからなくなるというのが私の実感でございます。  一言で言って、もちろん経済協力は非常に多様でありますからなかなか一言で言えない部分があることはわかりますが、大きな柱として経済協力というのは一体何のためにやるのかということについて御説明をいただきたいと思います。外務大臣。
  114. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 抽象的になるかもしれませんが、一言で言えば、世界の平和と安定に寄与するために支出するものだろうと。我が国としては、憲法の前文にもありますように、国際的に名誉ある地位を占めたい、こういうことに尽きるんじゃないかと思います。  もちろん、経過で、戦後、賠償から始まって経済協力に進んでいった点もありましょうし、いろいろ、我が国が発展する過程で世界の各国からの協力あるいはまた国際機関からの融資そういうものを受けて我が国がこれだけ発展してきた、そういう背景を考えると、これだけになった日本としても応分の対応をしていかなければならないのじゃないかと思いますし、要は、世界のそれぞれの国々に経済的にも非常に差異がある、こういう意味で、やはり世界各国が水平化してそれぞれが自立できるような形になっていくことが冒頭申し上げましたように国際的な平和と安定につながるということですから、この理念に向かって努力してきた、こういうことだろうと思います。
  115. 岡田克也

    ○岡田委員 世界の平和と安定に寄与するというお話でありますが、世界の平和と安定というのは非常に重要なことであることは間違いないわけですけれども、そのことと、それじゃ、これだけ日本の国内が非常に厳しい中でこれだけの援助をしなければいけないのか、一兆円の援助をしなければいけないのかということがどういうふうに結びつくのかということだと思うのです。  私どもよく有権者の皆さんとお話をしておりますと、経済協力に対しては大変厳しい意見が多い。それは、もちろん誤解も一部あるとは思います。しかし、例えばこういうことを言われますね。総理や外務大臣に大変失礼ですけれども、総理や外務大臣が外国に行かれる、そのときに必ず援助の金額が示される。何かこう手土産みたいな、ばらまきでやっているのじゃないかというのが、これは国民の受けとめ方です。  それからもう一つは、いろいろなむだがあるのじゃないか。これはマスコミの報道に基づいて国民が判断しているわけですけれども、例えば立派な病院がつくられて、その病院が結局使いこなせる人がいない、そういう報道がよくされますね。あるいはむだなダムがつくられる、そういうこともあります。  それからもう一つは、不正の温床になっているのじゃないかということですね。経済協力で、いろんな裏で資金が還流しているのじゃないかとか、そういうことも報道を時々されて、そういうことに対する疑念もある。  そういう国民の、ばらまきじゃないかとか、むだがあるのじゃないかとか、不正があるのじゃないかとかいうそういう疑念に対してきちんと答えないと、私は、幾ら世界の平和と安定に寄与するというきれいごとを言っても、それで国民がわかりましたということにはならないと思うわけですけれども、この点について、総理、外務大臣、いずれでも結構ですけれども、お考えを聞かせていただきたいと思います。
  116. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 実は私、昨年、党におきまして総裁から命ぜられたただ一つの仕事は対外経済協力委員会委員長、こういうことでございました。そのときに、ただいまお話にありましたように、来年度以降ODA予算については一〇%カットという財政改革会議の報告がなされるということも聞きました。  その過程でいろいろ議論しましたが、結局党内的にも、今委員が御指摘したような点に触れての御意見もありました。あるいはまた、現在の景況に関して、中小企業その他大変厳しい環境の中で対外的に経済協力をする意義はどうかというようなこともございました。あるいはまた反面、もっともっと各国に対する協力は、せっかく世界のトップドナーになったんだから、この地位は占めていくべきだという議論もありました。  そこで、一〇%について私自身も考えまして、ここにおられる総理大蔵大臣にも、一〇%からもっと削減できないかというようなことも考えてはみましたが、やはり私は、今日ODAに対しては大きな変革期だろうと考えております。そのことは役所におきましても、外務省はもとよりですが、通産省あるいは経企庁等々につきましても、内部的にいろいろの審議会をつくりまして、新しいODAのあり方について検討を始めているということでございまして、そういった意味で、一〇%カットというのは非常に厳しいことです、厳しいことですが、この機会にやはり、戦後ずっと続けてまいりました援助のあり方等も含めまして、新しい二十一世紀を目指してのこのODAのあり方ということを検討すべきある意味では絶好の機会ではないかとも考えまして、そのことを甘受して政府の決定にもなっておるわけであります。そういう意味で、御指摘をいただいたような点も含めまして、これから全力を挙げて新しいODAのあり方、姿、こういうものを徹底して検討しなきゃならぬと思いますし、何といってもそれは国民の皆さんの理解と協力がなければできないことですから、せっかくの機会ですからこのことも含めて努力を傾注すべきだ、こう考えております。
  117. 岡田克也

    ○岡田委員 そこで、今総理もお話しになったところでありますが、二十一条の一項で「その量的拡充から質の向上への転換を図る」という表現が出てまいります。このことの具体的意味というものはどういうことでございましょうか。
  118. 三塚博

    三塚国務大臣 本件、外務大臣からも言われました。基本は総理から言われたところであります。御案内のとおり、厳しい批判がございます。  同時に、御案内のとおり各国から、途上国だけではなく中進国まで要請が相次いでおります。九一年からだと思いますが、ODA拠出国ナンバーワンであります。九一年から連続して今日まで巨額の資金提供を行ってまいりました。そういう中で、量より質への転換、これが最大のポイントであります。御案内のとおり、各省庁にまたがっております。よって、所管の枠を超えた総合調整が行われなければなりません。  今後、これは重点的、効率的な予算配分を行うことによって質の向上を図り、その内容が被援助国の理解と信頼を得るものになりますよう、今後、国際貢献の責任の重大なことを加味しながら最大の努力をしてまいります。
  119. 岡田克也

    ○岡田委員 今の大蔵大臣の御説明は、量から質への転換というのは、要するに、実施体制の話だと。そこで各省ばらばらにいろいろなことをやっている、そこにむだがある、だからそれを総合調整してやっていけば効率的になる、こういう御趣旨だというふうに理解をいたしましたが、それだけでございますか。例えば、援助の中身について構造的な改革というものをお考えではございませんでしょうか。
  120. 三塚博

    三塚国務大臣 本件は、外務大臣からも指摘、また岡田委員から段々の、援助のあり方批判について御指摘がございました。当然私どもも本件は知悉をいたしております。よって、その内容の点検、構造改革推進についても明示をされておるところでございますから、内容にわたり点検をし査定をしてまいりますことは、原案作成権のある大蔵の責任であると思います。
  121. 岡田克也

    ○岡田委員 大蔵大臣というよりむしろ外務大臣にお聞きをしたいと思いますけれども、この量的拡充から質の向上というときに、体制以外にどういう質的向上というものをお考えなのでしょうか。従来の経済協力の基本的考え方を変えるとかあるいは重点化するとか、そういった観点はないのでしょうか。私には、体制を一元化するということだけで、一〇%カットに相当するそういうものが出てくるというふうには、ちょっと思えないわけであります。
  122. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 先ほどもちょっと御紹介いたしましたけれども、前外務大臣のときでございましたが、この問題については、二十一世紀に向けてのODAを検討すべきだろう、こういうことで、外務省におきましてもODA改革懇談会というのをつくりまして、現在中間報告の段階でございますが、いずれ今年末から来春早々にかけて報告が出ると思うのです。  そこでの取り上げた項目を御紹介しますと御理解いただけると思いますが、一つは、国別の計画を策定して、もう少し国々の、それぞれの実態を考えていくべきだ。あるいは現場主義、途上国のニーズに即したものにしなきゃならない。それから実施体制、これは今大蔵大臣申されましたが、我が国の十九省庁にわたる体制の中でそれぞれ取り組んでおりますけれども、こういった点についても、最も効果的、合理的にするのはどういうことかというような点もあろうかと思います。それから南南協力の問題。さらに国民参加ということでありまして、最近はNGO等の非常な努力が認められるわけでありますが、こうしたところとの協力関係をどうするか。そしてまた、何といっても、これを実行するためには人材が必要である。その養成には心がけてはおりますけれども、まだまだ諸外国などに比べますとその点では残念な状況でありますので、こうした諸点をいま一度レビューしまして、それぞれ実のある方向にいたしたいと思っております。  なお、先ほどODAについて、戦後ずっとと言いましたが、先ほどお話し申し上げたように、それぞれの国に対して、日本が独立する過程におきまして、それぞれ賠償問題の支払い等に出発した点もございまして、そうしたものから出発した点もありますが、ODAとしては、昭和四十年以降そうした形で、非常に額も増額の一方でやってきた、こういうことでございますので、申し上げたいと思います。
  123. 岡田克也

    ○岡田委員 今外務大臣から国別の話が出ましたので、一つの例を取り上げて、国別の援助額の決定というのがどうも惰性に流れていないかということを申し上げたいと思うのですが、具体的に国の名前を挙げるのはどうかと思ったのですが、例えばインドネシアですね。  インドネシアは、一九九六年の日本からの最大のODAの供与国であります。九・七億ドル、大変な額だと思います。全体のODAの二・六%を占めます。二番は中国でありますが、中国は八・六億ドルですから、中国より一億ドル多いわけですね。それから、円借の累計で見ますと、インドネシアに対して、今まで二・九兆円の円借を供与しています。二番は中国で、一・九兆円ですね。  なぜインドネシアにこれだけ力を過去に入れ、そして今も力を入れなければいけないのか、そこについてぜひお考えを聞かせていただきたいと思います。
  124. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 お答えいたします。  今委員が御指摘のように、インドネシアにつきましての累計額は御指摘のとおりでございます。最近の数字で、九七年では第二番になっておりますが、いずれにいたしましても、その数字の多いことは確かであります。  そこで、インドネシアにつきましては、国自体が、五カ年計画に基づきまして各援助国に計画的に支援を要請しておりまして、特に他の東南アジア諸国と比べて大きなインフラ需要に対応するため、円借の期待が非常に高いということにこたえたものだろうと思っております。  そこで、インドネシアにつきましては、伝統的に我が国と非常に友好関係にあるのみならず、我が国の海上輸送及び天然資源供給にとりましてまことに重要である、また途上国のリーダー的役割を果たしている点でも外交的に重視をしておるということでありますが、いずれにいたしましても、インドネシアが今日これだけ大きな期待がありまする以上は、それにこたえていきたいということの結果がそうした数字になっておるものだと思っております。
  125. 岡田克也

    ○岡田委員 いろいろ今御説明されたのですけれども、期待が高いというのは、これはどこの国も期待は高くて、日本の援助をたくさんほしい、そういうふうに言っていると思うんですね。伝統的な関係というのは、これは要するに惰性だということの裏返してはないでしょうか。  今外務大臣がおっしゃった中で、天然資源の供給国として重要だ、確かに過去においてはそうだったと私は思います。インドネシアは石油の供給国であります。中東依存度を下げるという国策があります。そういう国策から見れば、インドネシアにいろんな意味で援助していくということは大事なことだと思います。しかし、インドネシアは二〇一〇年には石油輸入国になるんです。そういうふうに言われています。つまり、今や輸出国じゃないんです。そういう国に対して、今の理由で、大事な石油供給国であるという理由で援助を続けているというのは、それは私は惰性だと思います。いやいや、そうじゃなくて天然ガスがあるじゃないかと言われるかもしれませんが、天然ガスは、インドネシアだけではなくて、オーストラリアもアメリカも、タイでもマレーシアでもブルネイでも出しますから、別にインドネシアが特に大事だということはないはずですね。  それから、もう一つ申し上げたいんですが、中立国、非同盟国のリーダーだとおっしゃった。それはそうかもしれませんが、非同盟国という概念は、東西対立があったときに非常に意味があったんであって、今や色あせていると思うんです。そういう意味でも、インドネシアに特に出す必要性というのは薄れている、そういうふうに私は思います。  あわせて、インドネシアという国が今どういう国なのかということも指摘しておかなければいけないと思います。選挙はやっていますけれども、その選挙が果たして民主的に行われているのか。同じ人がずっとトップに立って、その一族がいろんな意味で利益を得ているという、そういう報道も無視できないと思うんですね。  そういうこと全体をひっくるめて考えたときに、本当に我々の大事な税金をこの国にこれだけ出す必要があるのか。一年間で九・七億ドルの、これは円借ですけれども、供与している。そういうこと一つ一つをとらえて、やはり国別に本当に出す必要があるのかどうか。  その中で、重要な視点の一つは、我が国にとってどうなのか、国益から見てどうなのかという観点だと思うんです。そういう観点から見直して、そしてもう一度、この二国間の援助についてリストラをやっていただきたい。そういうことをきちんとやらないと、国民に税金をこれだけ投入することについて納得してもらえない、そういうふうに私は思うわけですけれども、外務大臣の御見解を聞きたいと思います。
  126. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 お答えいたします。  先ほども御答弁申し上げましたように、財政改革という立場でありましたけれども、削減率で最も高い数字をお示しをされたんです。ですから、それに対して、我々としてもこれにどうこたえて  いくべきかということで、申し上げましたように、大変いいゴールデンチャンスだという見方もできるわけですから、今御指摘のような点について、先ほどもお話し申し上げましたが、国別の問題につきましても精査して、過去からの継続は、これは大切にしなきゃならない問題だと思うんですね、一遍に切るということはできないわけですから。しかし、同時にまた、これから、それぞれの国と我が国との関係をも含めまして、十分検討しながら、その数値についても正しい数値が生まれるように検討していくべきだ、このように思っています。
  127. 岡田克也

    ○岡田委員 経済協力についてはもう一言だけ申し上げたいと思いますけれども、どうしても二国間は切りにくいということで、国際機関を通じた多国間が予算カットのターゲットになっている。その中で、特に任意の拠出金が切られているという、予算要求ベースでそういう事実があると思います。  例えば、緒方さんがトップを務める国連難民高等弁務官事務所、これに対する予算が、九十四億円が三十七億円カットされた。これはやはり、緒方さんという日本人、非常に頑張っておられる、我々は同じ日本人として応援してあげたい、そういう気持ちは、それは国民の気持ちだと思うんですね。それに対して、三十七億円のカット、三九%のマイナスです。こういうこともやはりもう少し考えるべきじゃないか。  確かに国連の機関の中には非効率で何をやっているかわからない機関もあるかもしれませんが、しかし我々は、緒方さんの活躍というものは、それは評価している国民がほとんどだと思うんです。そういうことについてもぜひ御配慮をいただきたいと思いますが、大臣のもし何かコメントがございましたら、おっしゃっていただきたいと思います。
  128. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 予算編成、概算要求過程におきまして、先ほどお示しをいたしました数字に基づいて、外務省としては、その拠出金の問題につきましても、ある意味では削減率が三五プロから四五プロということになっておるわけですね。その中において、どういう機関がどのようなお仕事をされておられるかということも、それは十分検討しなければならない問題だと思っております。  そういった点で、私自身も国連に参りました折に、まず国連の事務総長からもいろいろ御指摘がありましたが、いずれにいたしましても、それぞれの機関に対する拠出金問題につきましては、最終的には、これから予算編成過程におきまして、外務省としても十分検討した上で、財政当局とも御相談させていただきたいと思います。
  129. 岡田克也

    ○岡田委員 それでは、次に社会保障の問題についてお聞きしたいと思いますが、まず社会保障関係費の伸びについてでありますが、これは八条で、平成十年度の社会保障関係費の額は平成九年度の当初予算の額に三千億円を加算した額にする、それから十一年度、十二年度は百分の二を乗じた額を上回らない、こういうふうに書いてあります。これは、高齢者の人口の伸びの範囲に予算の伸びをとどめた結果こういう数字になっている、こういうことでございますが、なぜ高齢者の人口の伸びによって社会保障費の伸びというものを決めなければならなかったのか、そのことについて、総理の基本的なお考えを聞きたいと思います。
  130. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 我が国のさまざまな変化の基本的な要因の中に、人口構造の高齢化、同時に少子化というものがあることは、議員がよく御承知のとおりであります。  財政構造改革会議財政構造改革のためにあらゆる歳出を議論をいたしました中で、社会保障関係費というものの性質も随分議論になりました。そして、高齢化の進展に伴いまして、そのままにいたした場合、毎年多額の当然増の生ずる経費、そういう性格を持っておりますことから、集中改革期間中にも一定の伸びは持たさなければならない。同時に、社会保障関係費の当然増のうちで、物価あるいは賃金の上昇に伴う単価の増などによる影響、こうした部分について制度改革などによって吸収することを考えまして、集中改革期間中の社会保障関係費の増を高齢化の進展に伴う高齢者数の増に伴う増分以下に抑制する、このような方針決定をいたしました。
  131. 岡田克也

    ○岡田委員 高齢者の伸び以外の、いわばそれ以外の当然増部分については制度改革でのみ込む、こういうお話でございます。  しかし、一方で、じゃその制度改革というものについての具体的な道筋、青写真というものはあるのかということであります。もちろん、今医療制度についてあるいは年金について、それぞれ議論が政府の中で進行中であることは私も承知をしておりますけれども、しかしどういう方向になるのかということについての具体的な絵がまだ見えてこない。そういう中で、伸びをこれだけキャップで抑えてしまうということは、それはいたずらに国民の不信、不安を招いているのではないか。  構造改革の道筋が一方で見えていれば、ああ、こういうところで予算を何とか削減していくのか、したがって実際には自分たちにとっては影響はないことだあるいはやむを得ないことだ、こういうことがわかるわけですが、そういう全体の構造改革の姿なくして予算だけをカットしていくという、そういう手法が本当にいいのだろうか、そういう気がいたしますが、この点についてはいかがお考えでしょうか。
  132. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 私は、財政構造改革五原則が出てきたとき、総理が、これをやり抜かなければあすの日本はない、非常な決意だなと思いました。容易ならざることであると。だからこそ、これが具体的になったときには大変だなと思いましたけれども、そこまで総理が決意を固めている、これは、これを支えていかなきゃならないと。  当然、今国民の税金がどの分野に一番使われているかといいますと、今までの借金の利払い、いわゆる国債費であります。このまま税金が利払いに回ってしまう。借金を払うために税金を投入する、これは大変なことだということから、財政構造改革、あらゆる聖域なしに踏み込んでいこうということになりますと、多くの政党の方々も国民も、まず歳出を削減しなさいという総論は全部賛成だったのです。  しかしながら、一律に全部マイナスというのは、これは厚生省の予算を預かる私にとっては不用能ですよと申し上げました。そういうことから、厚生省だけは来年度予算、前年度に比べてマイナスにはしない。厚生省だけではありません、科学技術庁と厚生省だけはマイナスにはしない。プラスの部分は、ほかの省庁がより多くのマイナス部分をかぶってもらう、これまた大変なことであります。今までには考えられない。予算というのは毎年ふえるものだということから、来年度はマイナスするということ自体、これは大きな時代の転換期に来たなと思っております。  そういう中で、国の予算が一番使われているのは社会保障関係費と公共事業費であります。私が日ごろから言っているのは、この財政構造改革なり財政再建というのは大変なことだというのは、なぜ大変かというと、最も国民が要求しているところの予算を減らさなきゃならない、それは社会保障関係費と公共事業費であります。選挙区へ帰ってみればわかります、一番ふやしてくれといりのが公共事業と社会保障関係であります。だからこそ、財政再建というのは口では言うけれども容易じゃない。このままマイナスしたら、経済は縮小しちゃう。いかに民間の活力を発揮させなきゃならないか、両面でいかないとこれは大賀なことになりますよと言いますけれども、ここまで非常な決意を固めたのだからやりましょうと。一番不満が来るところでありますよ。しかし、三千億円増を認められたところで、これから集中三年間というのは、総理の決意にこたえて、非常の決意で我々も、この財政構造改革と同時に社会保障改革に取り組まなきゃいかぬということで今進めているわけであります。  そして、介護保険導入、さらには医療制度の改革におきましても、今まで三十数年間でき得なかったことを、厚生省、主体的な責任を持って意見を出せというから八月七日に提示したわけであります。  これは、今までは考えられないような、薬価から診療報酬から医療提供体制から、ほとんど総合的に網羅した案であります。これを今後、患者負担をできるだけ避けるというのだったら、今まで各政党、各会派で最も抵抗の強かった薬価の部分においても、診療報酬の部分においても、医療提供体制の部分においても大幅に切り込まなきゃならない。これは総合的に考えてもらわなきゃいかぬということで、案を出しました。  しかし、固定しておりません。かなり柔軟な案です。大枠の基本方針は示しましたけれども、これから総合的な観点から眺めて、かなり私は幅のある柔軟な案だと思っております。委員も厚生委員ですから、その点は十分御承知のことだと思います。  そういう中で、私どもとしては、これから予算編成に向けましては、現行制度の中でそれぞれ削減しなきゃならない。さらには、来年度に向けて、抜本改革案と並行して、抜本改革案の示す方向の中で、現行制度を中心にしてカットしなきゃならない。整合性をとるということでこれから苦労するわけでありますけれども、ともかく、もうこれ以上若い世代にツケを回すことはできない、増税もできない、だから行財政改革が必要だということで出てきた中で、総論の中で各論を進めていく中で、それぞれが痛みを伴う、汗を流す、これを国民に理解を求めながら苦しいながらもやっていかないと、あすの日本はないという気持ちで私は取り組んでいかなきゃならないと思っております。
  133. 岡田克也

    ○岡田委員 今の厚生大臣の基本的な考え方は、私は全く共通するものがございます。ただ、今、公共事業と並んで社会保障について、それを削減することについて国民の不満が一番強い、こういうお話がありましたが、私はそうではなかろうと思うのですね。つまり、国民は説明をすればわかってもらえる話だと私は思うのです。現実にそうだという実感もあります。  しかし、何を不満に思っているかというと、結局、この前の医療費もそうなんですが、負担が先行するからなんですよ。負担増が先行して、構造改革構造改革というけれども、それが後から来る。本当にそれをやるのかどうかわからない。結局、全部国民に単純に負担をかぶせるだけで、従来の構造は変えないでいくんじゃないかという不満があるから国民は今怒っているわけですね。そこのところをしっかりやってもらいたい、そういうふうに思うわけであります。  今も、昨日もいろいろな議論が出ておりますけれども、例えば難病の問題、あるいは高額療養費の問題私はこういう問題についても今までどおりではいかぬ、変えなきゃいかぬというふうには思っています。しかし、そういう話ばかりが先行いたしますと、結局国民の負担、税がふやせないからほかの自己負担とか保険料でふやしていって、そこでお茶を濁そうとしているんじゃないか、そういう一般的な感覚が国民にある。それを、構造改革をきちんと道筋を示すことでそういう感触を払拭していただきたい、そういうふうに思っているわけでございます。  医療費につきましても、私は非常に残念だったわけですけれども、本来は負担増と並行して構造改革をやるという話であった。それができなかった。今度は、医療費の負担増を始める九月までには構造改革の案をまとめると与党三党はおっしゃった。しかし、これも出てこなかった。結局、先送り、先送りであります。そういう姿勢が私は国民の不安感を増している、そういうふうに思うわけであります。  具体的なことは、時間がございませんので申し上げませんが、ぜひこれから、私ども野党でありますけれども、議論にはどんどん参加をしていきたいと思いますので、構造改革について、ぜひいい案ができるように厚生大臣、総理の御努力をお願い申し上げたいと思います。
  134. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は今、議員の御質問と厚生大臣のやりとりを聞きながらいろいろなことを思い起こしておりました。今、薬剤の問題がたまたま提起になりましたが、薬剤差益に着目した医療機関経営というものが不健全だという議論は、私どもが国会に出てきたころからございました。そして、四十二年に、それを是正するために薬剤の一部負担というものが導入され、結果として、これは大変な国会での紛争のあげくに成立をいたしましたが、二年後にこれはまたもとに戻されたわけであります。あるいは、将来の医療機関の膨大な増加を考えると、無医大県解消という名のもとに全国に医科大学を設置することの是非というものも随分議論がございました。しかし、結果として、これはそういう方向に動いていきました。医療供給体制の根本的な変化がこの時期に起きてまいりました。  一方、私自身も、ドクターズフィー、ホスピタルフィーを分離した診療報酬体系をつくり、それによって医療機関の経営は安定すべきであり、薬剤差益を中心とした医療機関経営はおかしい、繰り返しいろいろな機会に、自分自身が厚生大臣をいたしましたときも含めやってみましたけれども、結果としては今までなかなかそういう方向に向かわなかったわけであります。そして、その中で、いつの間にか財政的にそれぞれの保険財政が逼迫するという事態にもなってまいりました。もちろん、その間に老人医療を工夫いたしましたり、いろいろなことはやってまいりましたけれども、根本的な効果を生ずるに至らなかったわけであります。  今回、この財政危機を逆に利用しという言い方は非常に不謹慎な言い方になるかもしれませんので、そこは、そういう言い方は避けたいと思いますけれども、これ以上どうにもやりようがない、その中で、しかし将来に向かっても安定した医療保険制度というものはこの国の未来に必要であり、安定した年金制度を維持していくことは、将来の国民の暮らしを考えたときにも絶対必要なものだ。とすれば、この高齢化の進展する中、しかも一方で少子化が進行しているわけでありますから若い働き手も減っていく中で、どういうシステムを組み立てることができるか、全力を尽くして私たちも取り組んでまいりますので、どうぞ御協力を心からお願いを申し上げます。
  135. 岡田克也

    ○岡田委員 次に、年金改革についてお尋ねをしたいと思います。  年金の問題は、この委員会でも何人かの委員が取り上げたところでありますが、私も、今若い世代に年金の将来について非常に悲観的な受けとめ方がある、最大の問題はやはり制度の安定性に対する疑問だろうと思います。もっと言えば、五年ごとに見直すことになっている、その五年ごとにだんだん条件が悪くなる。このままいったら、五年、五年で、二十年ぐらいたったらなくなってしまうのじゃないか、こういう不安があるわけであります。  これは、私も五年前の改革にはかかわっておりましたので自戒を込めて申し上げるわけですけれども、当時、何とか三〇%に保険料を抑えよう、二九・八%でしたか、抑えた。ところが、今の新しい人口統計に基づいてやると、いや、三四・六%か八%だ、こういうことで、全然違ってきちゃうわけですね。わずか五年、あるいは五年たたないのに全然違ってきちゃっている。  そういうことじゃなくて、二年後の制度改革はあるわけですけれども、そのときには、少なくともこれから二十年ぐらいはこのままで大丈夫ですよとはっきり胸を張って言えるぐらいの、そういう改革をむしろやった方がいい。その結果、かなり厳しくなると思います。厳しくなっても、これはもう変わらないんだと胸を張って言えるようなものにした方がいいんじゃないか、私はこういうふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
  136. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 基本的に今の御意見に私は賛成なんです。  ただし、平成元年に年金改革案、私、厚生大臣のときに大きな話題になりました。当時から、このままでいくと、六十歳支給になると若い人の負担は大変だ、もたないよということで、六十五歳支給の改正案を出しました。しかし、結局、国会に出す前に、反対が多くて提出することはできなかったのですが、その中でも、六十五歳にするのは二十二年後のことを考えてやったんですけれども、いろいろな偏った宣伝によって、来年から六十五歳になるという宣伝をされまして、これはとんでもないという反対が強くなった。あの当時でも、六十歳から六十五歳でやるというのは二十二年かけてやるんですよというのがなかなか国民にわかってもらえなかった。ここが非常に難しいところです。ぱっと出すと、もう来年から、六十歳でもらえると思ったのが五年また延ばされるのかという誤解を与えられた。  しかし、ようやく自民党が、そういう批判というものを反省しながら、各党の協力を得て、六十五歳支給開始年齢を二〇一三年からやることになりました。これも、ようやく、ああ二〇一三年から六十五歳になるのかと、六十五歳支給開始年齢が通ったというとすぐ六十五歳になると思ったのですけれども、結局まだ先の話だな、たしか十七、八年かけて六十歳から六十五歳にするよというのがだんだん理解されるようになりました。  こういうふうに、いかに国民に理解してもらうかという情報提供やら啓発活動等は大事かと思いましたけれども、これからも、今の御指摘を踏まえまして、五年が適当なのかどうかと言いますけれども、国勢調査も五年ごとですね。それで、十年を考えました。しかし、十年では長過ぎるんじゃないか、この時代の変化。五年でも、人口の高齢化と少子化の問題、我々、予想しなかったような進行で進んでいる。これを、じゃ十年まで延ばすと、これほど転変の激しい時代において対応がおくれるんじゃないかという批判もある。となると、十年が長過ぎるとなるとやはり五年というのが適当ではないかなということも出てくるものですから、今言った五年が適当かどうかというのも踏まえて、できるだけ情報を提供して、給付と負担等、あるいは支給開始年齢の点も論点を整理しまして、今後、国民の議論を巻き起こして、お互い合意のできるような改革案を目指していきたいと思っております。
  137. 岡田克也

    ○岡田委員 PRの件で言えば、国民はいまだに六十から六十五は一銭ももらえないと思っている人が多いですよ、将来にわたって。この辺もいかに厚生省もPRが足らないかということだと思うのです。部分年金というのも知らないです。  それから、私は二十年というふうに申し上げたのは、二十年間見直しをしないのではなくて、実質的に見直しをしなくて済むような、そういうアローアンスを持った改革をすべきだということを申し上げているわけであります。  年金の将来推計というのは人口の見通しに基づいて行われているということですけれども、現在の数字が、平成四年の九月の推計、例えば二〇五〇年の人口が一億一千百五十一万人。ところが、最新の統計では一億五十万人だ。一千百万人減っちゃったわけですね、わずか五年の間に。見通しが狂った。それから、老年人口が三千百四十二万だったのが、これはむしろふえて三千二百四十五万人。それだけ少子化についての見通しが甘かったわけですけれども、この中位推計をそのまま使うのではなくて、もう少し幅を持って私は計算した方がいいのじゃないか、そういうふうに思って申し上げた次第であります。  それから、いろいろな不安を抱かせないという意味では、この場でも取り上げられたのですけれども、自民党の加藤幹事長が七十歳と言ったと。私は、厚生省の審議会の中でもいろいろな議論が出ていると思いますが、例えば六十五歳をさらに少し、六十七とか、そういう話は議論としてはあっても、しかし七十という議論は私は出てないのじゃないかと思うのですね。突然出てきたのです。しかし、政権与党第一党の幹事長が言うわけですから、国民は、そうなるんだ、あるいは政府もそういうふうに検討しているんだ、こういうふうに思うと思うのですね。  大臣、ここは国民の不安をぜひ取り除くために、今政府の中で七十などという意見が出ているのかどうか、この点について御答弁いただきたいと思います。
  138. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 我が党の加藤幹事長がどのような発言かというのは詳しくは聞いておりません。新聞報道でそのような御趣旨の発言をしたというのは見ましたが、実際に七十歳にするということ、した方がいいという意見はあっても、これをしようという議論の方向には私はなってないと思います。  これからは、支給開始年齢と今の給付で、そのままでいいのか。あるいは今の給付だと三〇%を超えるのが耐えられるのだろうか、こういう問題がありますから、いろいろな御意見を踏まえながら総合的に、総合的にというのは、税金をどのぐらい投入するか、給付をどのぐらいにするか、保険料をどのぐらいにするか、支給開始年齢をどのぐらいにするかという、こういう点を含めていろいろな選択肢を提供していかなきゃならないな。  当面は、六十五歳の前提でやります。しかし、この六十五歳で、今の給付を下げるのは嫌だ、保険料を上げるのも嫌だとなると、じゃ、支給開始年齢はどうするかという問題が出てきます。その点も含めて、できるだけ国民に、こういう状況だったらこのような給付になりますよ、あるいはこのような保険料になりますよ、このような支給開始年齢になりますよというのは、わかりやすい資料をこれだけ整理して、これから提供して、多くの国民に関心を持ってもらって議論を進めていきたいと思います。  厚生省が七十歳支給開始を検討しているということは全くありません。
  139. 岡田克也

    ○岡田委員 それから、世代間の公平それから世代内の公平という問題を一言申し上げたいと思います。厚生省も最近はかなり情報公開が進んでおりまして、今七十歳の方、厚生年金ですけれども、幾ら平均して保険料を払っているか。本人と事業主負担合わせて八百万です。八百万払って、年金は六千百万受け取る。これは平均の姿ですね。それは、いい、悪いということは私申しませんが、事実としてそういう数字になっています。それかり、五十歳の方も三千万払って六千二百万もらう。ところが、十歳の方は六千八百万払って五千八百万しかもらえない。これから生まれる、平成十六年生まれの子供は七千二百万払って五千八百万しかもらえない。  これは、やはりどう考えてもおかしい。七千二百万払って、もちろん半分は事業主ですけれども、七千二百万払って五千八百万しかもらえない、それなら貯金の方がいい。だれが考えても、私はそういうふうになってしまうと思うのです。  それから、今までの日本の経済成長を支えていただいた私よりも年上の皆様に言うのは申しわけないけれども、しかし、八百万で六千万とか、三千万で六千二百万という話を聞きますと、先ほどの若い世代の負担と比較したときに、国家がこういうことをやっていいのか、そういう気持ちすらするわけですけれども、ここを何とかやはり変え、いかなきゃいけない、私はそういうふうに思いますけれども、総理、この点についてはいかがでしょうか。     〔佐田委員長代理退席、委員長着席〕
  140. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今小泉大臣が、さまざまな選択肢を国民にお示しをしたい、そして、給付と負担の関係についても今非常にうまい例示をされ、例えば、保険料はもうこれ以上持ちたくな.い、給付水準も落としたくない、そうすれば一体とこをいじるんだという形で問題を提起されましたけれども、今私が議員指摘されました部分を伺いながら、こうしたことを含めて情報公開が、これは先ほど六十歳から六十五歳の間に年金がないと思っている方がたくさんいますよという御指摘も含めて、情報公開、周知徹底の必要性というものを今改めて感じております。  今議員が提起をされました問題意識、これは私は、先ほど小泉大臣が答弁をした中にも含まれておると思いますけれども、十分注意をしてまいりたい、そのように思います。
  141. 岡田克也

    ○岡田委員 私も地元で有権者の皆さんにこの話をしていて、大体年金を受け取っている世代の方は理解してもらえますよね。心底理解しているかどうかわかりませんが、確かにこれは大変なことだ、もう少し何とかしなきゃいかぬ、自分たちの子供や孫がいる、そういうお話がよく出ます。ところが、残念なのは、十歳の人はともかくとして、若い世代がこういうことにほとんど関心を示さないのですね。そこが私は非常に残念でならないわけであります。  今、世代の公平の話をしましたが、これは世代の中でもあると思うのです。厚生年金に入っている人と、自営業でそういった公的年金の非常に限られている人。先ほど言いましたように、例えば五十代で三千万で六千二百万円もらえる、これは厚生年金に入っている人ですね。しかし、そういう公的年金に入っていない人は、国民年金だけで、そういう三千万のプラスアルファというのはないわけですね。  そういう意味でも、やはりこれは同じ世代の中でも不公平が出ているのじゃないか。国の制度でそういうふうになっているということは、私は、いろいろな意味で信頼感を損なっているのじゃないか、そういうふうに思いますが、世代内の不公平の問題について、厚生大臣、いかがお考えでしょうか。
  142. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 これはよく税制の議論でも出るのです。いわゆるクロヨン。サラリーマンに比べて、自営業者の収入の把握度、所得の把握度、問題がある。保育園に入る場合も、近所から見てみればサラリーマンよりもいろいろ裕福ではないかなと思われるのでも、実際は保育園に入る場合は負担が軽いとか、よく言われます。  しかし、所得の把握度、これは私はある程度やむを得ないと思うのです。サラリーマンにはサラリーマンのよさも悪さもある。自営業者には自営業者のいい面もあるし、苦しい面もある。両方ある。それをどうやって整合性をとるかというのは、個人の職業選択にもかかわってきますけれども、これを全部一緒にしろというのはなかなか難しいのじゃないか。  そして、今の年金の計算においても、大体四十年加入で計算していますから、サラリーマンの場合は、今まで大体終身雇用ですから、入って多いから給付も多くなる。自営業者の場合はなかなか、今のところ四十年加入というのはサラリーマンに比べれば少ないでしょうね、満期でも。そういう点において、サラリーマンに比べれば確かに給付は低いのですけれども、これを一緒にしようとなりますと、これまた実際の今の保険料を自営業者は払えるかどうか、私はとても払えないと思いますよ。  そういう点もありますから、私は、この職業についている方と別の職業と一緒にするというのはまた別の議論だと思いますが、ある程度サラリーマンと自営業者の間での差が出るのはやむを得ないな、どの程度までは許されるかというのがこれからの問題ではないかと思います。
  143. 岡田克也

    ○岡田委員 ちょっと私は観点が違うと思うのですが、クロヨンというのは、そういう人もいるということであって、自営業者全員が税金をごまかしているわけではないんですね。この年金の話は、全員がそうだから、国がやっている制度でこうなっているから申し上げているわけで、ちょっと私は今の御答弁は納得しがたいわけであります。  もう時間も限られておりますので、あと年金についてもう一つだけお聞きしたいと思いますが、この法案の十条の二項で、所得の多い人に対する年金の給付制限、書いてありますね。ここは平成十二年までに検討する、こう書いてあるんです。ほかのところについては財政再計算に合わせてやる、書き分けてあるんですね。ということは、所得の多い人に対する年金の制限というのは、例えば来年度予算でやるとか、そういうこともお考えなんでしょうか。  私は基本的に、所得の多い人に対する年金の制限というのは、国民受けはするでしょうけれども、しかし年金、保険という制度から考えたときに本当にこれはいいのかどうかというきちんとした議論をやっていただきたいと思うんです。  本来は、私は、年金は払う、しかし所得税で、累進課税で取るというのが本来の姿だと思うんですね。たまたま所得の多い人、報酬比例ですから保険料もいっぱい払わされるわけですね。保険料をいっぱい払って払って、いざ年金をもらおうと思ったら全然もらえない、これは詐欺じゃないかという感じもいたしますが、いかがでしょうか。
  144. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 いや、確かに今の議論、多いんですよ。所得のある人から、高額所得者から年金をカットすればいいじゃないかと。今御指摘のように、俗受けはするんですが、年金制度の趣旨からいうとこれは問題が多いという議論も出ています。その点も含めて、十分両論を考えながら、どちらがいいか、あるいはどの程度が妥当なのかという点も含めて、しかるべき時期にしかるべき結論を出したいと思っております。
  145. 中川良一

    中川委員長 岡田君、時間です。
  146. 岡田克也

    ○岡田委員 時間も参りましたので終わりますが、きょう質問できなくて大変残念だったんですが、小泉大臣は永年在職議員の表彰を辞退されると。ちょっと御意見を聞けずに残念なんですが、国民はこれだけいろんな意味で我慢させられている、削減される。そういう中で、二十五年勤めた、何で長いことをもってよしとして、そして毎月三十万も交通費をもらうんだ、そういう声は非常に多いですね。そういうことについても、やはり私は、国民に負担を求めていくのであれば、みずからが襟を正していく、そういう観点が必要ではないか、そういうふうに思っております。  終わります。
  147. 中川良一

    中川委員長 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ――――◇―――――     午後一時一分開議
  148. 中川良一

    中川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。石毛鍈子君。
  149. 石毛えい子

    ○石毛委員 民主党の石毛鍈子でございます。よろしくお願いいたします。  法案の内容に直接入る前に、現在の景気とそれから社会保障を含めます消費の関係について、少し質問をさせていただきたいと思います。  景気状況につきましては、この委員会で初日以来さまざまな議論が進められてまいりましたけれども、私は、例えば設備投資といったような、そうしたところとは少し違う角度から景気の問題を取り上げてみたいと思います。  お読みになられておられるかとも思いますけれども、ある経済誌ですが、「財政再建が招いた消費氷河」という特集を組んでおります。改めて申し上げるまでもないわけですけれども、この間、家計の実質消費支出減が起こりましたり、何度もこの委員会でも指摘がございましたけれども、デパートの売り上げの減が起こっているというようなことと並びまして、財政再建、具体的に言えば歳出の削減ということでございますけれども、この九月からは医療の一部自己負担が上がりました。それから、振り返ってみれば、入院の患者さんの給食費が新たに集められるというようなことも起こっております。それから、午前中の委員会でも議論がございましたけれども、若い世代の人にとっては、年金は将来どうなるかというような、そういう不安感がございます。  そうした不安感と申しますか、個人の暮らしが先行きどんなふうに推移していくのかということが必ずしも今明瞭に私たちに受けとめられない、国民に受けとめられないという、そうした先行き不透明感あるいは不安感、そういうものがあって国民の財布のひもがなかなか緩まないのではないか、かたく縛られているのではないか。消費マインドの落ち込みということでございましょうか、そうしたことが言えるのではないかというふうに考えるところでございますが、特に、こうした歳出削減の問題ですとかあるいは消費マインドというようなところをめぐりまして、経済企画庁長官、大蔵大臣、どのようにお考えか、御認識をまずお伺いしたいと思います。
  150. 尾身幸次

    尾身国務大臣 財政事情大変厳しい中で、今後ますます少子・高齢化が進むと予想されている状況でございます。そういう状況の中で、国民皆保険制度を維持しなければならない、そしてまた、年金財政も破綻させないようにやっていかなければならない、そのためにどうするかということで、社会保障構造改革に厚生大臣、大変御苦労されている状況でございます。  そういう状況の中で、財政赤字を含めました国民負担率が五〇%を超えないように、制度全般について給付と負担の関係を幅広い観点から見直し改革をしていくということでございます。そして、これはまた逆に言いますと、そういうことが消費者の心理に微妙な影響を落としているのも事実であろうかと考えております。  ただ、実際の経済の統計的な動向を見ますと、雇用者数もことしの八月で一年前と比べまして四十七万人増加をしておりますし、また、一人当たり雇用者所得も一年前と比べて一%ふえているという状況でございまして、トータルとして雇用者所得対前年比で一・九%増という数字にはなっております。  したがいまして、消費者の皆様の懐の方はそこそこの状態であるというふうに考えておりますが、しかし、先ほど来のお話のような状況の中で、もうひとつ消費がはっきりした伸びを示していないということも事実でございます。これはやはり経済の先行きに対する信頼感というものがやや低くなってきているということが原因かというふうに考えているわけでございますが、では、これを回復するにどうしたらいいかというのが御質問の御趣旨であると考えております。  まさに私ども、その点に最大の力点を置いて考えているわけでございますが、やはり、回り道になるかもしれませんが、日本経済の二十一世紀に向かっての展望をしっかりさせて、民間活力で経済を立ち上がらせる、そのことに全力を尽くさなければならないというふうに考えております。  その一つは、経済の国際化、あるいは企業が国際的な展開をする中で、日本という国を生産拠点、事業拠点として選ぶようなそういう環境条件、事業に対する環境条件を整えていく。法人課税の問題あるいは有価証券取引税の問題、連結納税制度の問題等々、企業が日本で事業をやりやすいような環境を整え、そのことによって、例えば生産をふやし、そこで働く人の数をふやし、雇用者をふやし、そして所得をふやし、そして消費者の皆様の懐がさらに豊かになるような対策をしていかなければならないと考えております。  それから、いわゆる不良債権の問題にいたしましても、土地有効利用、土地の流動化という点から見まして、不良債権がしこっているということも実は経済の大きな足かせになっているわけでございまして、土地をもっと流動化させることによりまして、いろいろなところでビジネスが行われ、事業が行われ、そしてその中で雇用者がふえ、そして収入がふえていく、そして消費者の懐を豊かにする、国民の皆様の懐を豊かにするということが、そういう形で実現ができると考えております。  それから規制緩和でございますが、規制緩和は即効性がないとかいう議論もございます。しかし、新しい事業活動を起こしたり、あるいは今までできなかった投資ができるようになったりする、そのことによって民間の事業活動を活性化する。そして、その部分で雇用者の数をふやし、また賃金水準もそこそこの水準になるということによりまして、全体としての日本経済の活性化を民間の経済活力を中心として実現をしていく。そして、二十一世紀には民間の活力中心で、夢のある、将来性のある経済をつくり上げていきたい、そういう展望をしっかりさせることが、ひいては消費者の皆様の将来に対する信頼感を回復し、経済を立ち上がらせる原因である。そしてまた、それが国民生活を豊かにする方向であるというふうに考えている次第でございまして、全力を挙げて取り組みたいと考えております。
  151. 三塚博

    三塚国務大臣 経済の見通し、経企長官から出されました。私も、今構造改革を大胆に進めることによって全力を尽くし、政府目標を達成することができますように、国民各位の御支援と、国会における論議を通じての御鞭撻をお願いを申し上げます。  マスコミによりましてまちまちの経済の見方がございます。そういう中で、決してそればかりではない、それぞれのよき点も指摘をされております。もう既に先生御案内のことでありますから繰り返すことはいたしません。よき材料をベースに、悪き材料をさらによきベースにこれを取り込んでいくというのが政治でなければならないと思います。  本日の各社の社説を、毎朝見るのでありますが、通読をさせていただきました。一部を除きまして、「改革に逆行しない景気対策を」あるいは「「改革」を追い風に生かせ」「構造改革逆行の対策は困る」等の極めて力強い、改革の実態を見詰め、景気の実態を見詰めた分析がなされております。  これしかないということで必死の思いで構造改革をつくり上げました。それで、キャップを設け、聖域のない形でこれを実行していこう、こういうことでありまして、展望を開くためにはこの道しかないわけであります。こういう点で、一生懸命やり抜いてまいりますので、格段の御鞭撻、御指導をお願い申し上げます。
  152. 石毛えい子

    ○石毛委員 私は、今の景気状況で、消費者マインドが冷え込んでいることが景気の回復に対して一つのかせになっているのではないだろうか、そのことについての御認識というふうにお伺いさせていただきました。  経済企画庁長官からは、民間活力、とりわけ企業の活力を活性化することによって雇用や賃金所得を上げていき、そして消費を活性化させていく、あるいは景気を回復していくという、この委員会始まって以来の御答弁をもう一度お伺いさせていただいたと思いますけれども、そういう方法もあろうかと思います。  そういうふうにしまして、若い方々が所得がふえ、安心して保険料の負担拡大に賛同してくだされば、それも一つの方策かとは思いますけれども、今、高齢者の方々が二〇二五年、全人口の三〇%になろうとしている時代に、高齢者の方々にとっても雇用の場をふやし直接所得の道を開いていくのと同時に、今、高齢者の方々、シルバーマーケットをねらえばマーケットは拡大する、そういう時代に入っているわけですから、高齢者の方々が安心して消費にお金を回すことができるかどうかというようなことはとても大きな経済的な課題だというふうに私は考えております。  そういう意味で考えまして、やはりこの間、歳出削減、とりわけ今回の法案の内容を見ますと、私の立場からは社会保障に随分厳しい内容になっている。繰り返しになりますけれども、これまでにも入院医療費の問題ですとかあるいは給食代の問題ですとか、そしてまた直近では、九月から自己負担がかなり大幅に上がっている。大体、お医者さんに九月以降かかっていれば、その前の二倍半ぐらいが普通じゃないでしょうか、多い方の場合は三倍ぐらいというふうになってきているわけでございます。  ですから、そうしたことを考えまして、もう少し消費需要を喚起していくことによる景気循環の回復に向けた道筋をつけていくということに御認識をお示しいただいてもよろしいのではないか、こういう観点で御質問申し上げました。  同じ質問でございますが、この点に関しまして総理大臣はどういうふうにお考えでいらっしゃいますか、お考えを承れればと存じます。
  153. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は今議員経済企画庁長官、また大蔵大臣の議論を拝聴いたしておりまして、基本的に、議員の御議論も、私は一つの見識と認めることにやぶさかではありません。  問題は、特に社会保障に触れられたわけでありますけれども、今後を考えますとき、私は、この少子化という状況がどこかで回復してくれることを本当に願いますけれども、同時に、少子化ということイコールしばらく後の若年労働力の低下ということでありますから、そういう状況の中においてもなおかつ、年金制度にせよ医療保険制度にせよ、また今国会ぜひ成立をさせていただきたいと考えております介護保険の仕組みにいたしましても、その高齢・少子化社会においてもこれが維持できる仕組みをつくるということは、今喫緊の課題であろうと考えております。  そして、その中において、例えば介護という問題一つをとりましても、これによって新たな民間における雇用が発生をし、産業が生み出されるという試算もございますが、現実に国民に非常に必要な仕組みであることは言うまでもありません。問題は、その負担と給付とのバランスをどこにとるかということでありますし、同時に、将来を考えましたときに国民負担率が余り過剰にならないようにということを考えますと、おのずからその制度設計には一定の限界があろうかと思います。その中における組み合わせの問題になっていこうかと思います。  そして、議員指摘をされますように、社会保障というものがある意味で消費性向に影響を与える、これも私は否定をするものではありません。しかし、同時に、それをショートレンジでとらえるのか、将来までを含めて制度として国民の暮らしの中に定着し得る仕組みを今つくろうとするのか、問題はそこだと私は思います。  そして、今この財政状況の中におきまして、確かに我々は非常に厳しいキャップをかぶせた財政構造改革法案を御審議をいただいておりますが、同時に、一方で進めておりますのは、産業構造をどう変えていくか、規制をどう変えていくことによって新たな業が生まれるかという方向でありますし、土地の流動化等に努力しておりますのも、ある意味でこの財政構造改革とは違った視点から国民経済というものを考えてとろうとしている施策でありまして、私はこの時点におきまして、やはり将来を考え、国民の暮らしの中に、医療保険の仕組みにいたしましても、年金の仕組みにいたしましても、新たに生もうとする介護の仕組みにいたしましても、それぞれの役割を継続して果たし得る、そうした方向にこれをまとめ上げていきたい、そのように考えております。
  154. 石毛えい子

    ○石毛委員 総理からは、社会保障と関連した消費性向の仕組みをショートレンジでとらえるか、あるいは将来展望と申しますか、将来構想を見据えながら制度的にどう改革していくかということと、国民経済の発展、両々相まって大切という御指摘をいただいたと存じます。  私も、ショートレンジで物事を見ようというつもりはございませんけれども、今国民がどうして消費が萎縮しているかということは、不況がなかなか明るさが見えてこないというような状況とともに、私たちが安心して暮らせる、国民が安心して暮らせる社会システムがどうなっていくかということに対する不安感も大きな要因になっていると思いますので、ショートレンジだけの問題ではなくて、まさにおっしゃられたことと重なる部分があると思いますけれども、構造改革を今の時点できちっとお示しいただくことの中で、安心感を持てるような政策をぜひ実現していただきたいというふうに要望したいと思います。  厚生大臣にお伺いしたいと思いますけれども、この九月からの医療費の自己負担の増加、このことが個人消費の停滞に影響を与えていると言われますが、どのような御認識をお持ちでいらっしゃいますでしょうか。     〔委員長退席、野田(聖)委員長代理着席〕
  155. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 自己負担の消費に対しての影響ということだと思いますが、これは、当面医療保険財政の破綻を防ぐという意味において健保法を改正したわけでありまして、これが消費にどの程度影響を与えるかという点については、私よりも尾身経企庁長官の方がその辺は詳しいのではないかと私は思います。  そこで、先ほどお話しのように、将来に対する展望が開けないということから今なかなか財布のひもがかたいのではないかという点は、私は否定できないと思います。将来に対するしっかりした展望が開ければ、多少現在我慢しても頑張ろうという気が出てくると思うのであります。その点、私は、医療制度におきましても構造改革をしっかりやって、国民皆保険制度は今後も二十一世紀に多くの国民の理解と協力を得て安定的に運営していくのだ、そういう展望ある構造改革を示すのがこれから大事な仕事であると思っております。
  156. 石毛えい子

    ○石毛委員 せっかく厚生大臣が経済企画庁長官というふうにおっしゃってくださいましたので、お伺いしたいところですが、時間の関係もありますので――それでは、一分でお答えいただければと思います。
  157. 尾身幸次

    尾身国務大臣 時間をいただきまして、ありがとうございます。  例えば、社会福祉の介護事業のようなものに民間事業を参入させて、民間の力でそういうサービスをさせるということも一つあろうかと思います。  それからもう一つ、私、石毛委員大変いいことをおっしゃっていただいたと思うのでありますが、それは、たとえ多少自己負担が大きくなるにしても、これで国民皆保険制度が維持できる、それからこれで年金財政が破綻しないというきちっとした展望を開くようなシステム、社会保障構造改革をやっていただきますれば、人生設計が計算できる、そういう意味において、ある種の将来展望が開ける、そのことも実は大事であろうと思っております。  そういう意味でも、厚生大臣にお願いして、しっかりとした長期にわたって安定的な社会保障システムをつくっていただきたい、そうすれば、また我が消費の方にも大変いい影響があるのではないかと考えております。
  158. 石毛えい子

    ○石毛委員 長官が御専門だとは思いますけれども、私は、その点余り知識を持っておりませんけれども、先ほど紹介させていただきました「財政再建が招いた消費氷河」というところに掲載されております論文を読みますと、これは、この九月からの医療費の自己負担の増大が消費にどういう影響を与えているかというところまではまだデータ的には無理でございますけれども、過去九〇年代のトレンドで、医療費を含む自己負担の増大などが非裁量的支出、つまり個人の思いで支出を変えることができない税金とか社会保険料負担とか、そういう非裁量的支出の増大が個人の家計の貯蓄率を引き上げている、そういうデータ紹介がございます。  この九月から続きますのが、言われておりますタクシーの例えば料金を上げたときに、数カ月すればもとに戻るというような言われ方もございますけれども、今回、例えば景気が本当によくなるだろうかとか、さまざまな要因を重ね合わせて、この自己負担が家計に影響なくあるいは消費心理に影響なく推移するかどうかというのは、大変注目をすべきところだというふうに思います。  今御紹介申し上げました個人の家計の貯蓄率を引き上げているというようなところも、大変僭越ではございますけれども御記憶にとどめていただきまして、ぜひ、これからの構造改革方針決定していかれますときに、きちっとそのことも踏まえていただきたいと思います。  質問を続けさせていただきます。  ただいま申し上げましたような理由で、私は、社会保障の将来に対する不安が個人の消費の足を引っ張っているという一つの、全部とは申しません、一つの要因であるということは、今厚生大臣もそのことに対して肯定的な御答弁をくださいましたし、そのように考えております。  こうした状況ですから、政府はこの際、財政支出に工夫を凝らして、社会保障に関しましては必要な公費はきちっと投入して社会保障給付の水準維持していくという、そうしたステートメントをはっきりと国民に向けてアピールされれば、お出しになれば随分変わってくるのではないかというふうに考えます。  そこで、総理大臣そして厚生大臣にお伺いしたいと思いますけれども、一九九五年の七月に、社会保障制度審議会の勧告が出されております。  この勧告は、少しわき道にそれるお話をすることになりますけれども、女性の立場からも、社会保障制度原理を世帯原理から個人原理に変えていくというような点、随分注目をされた勧告でございますが、その勧告の中に、「急速な高齢化による社会的必要性の増大等に配慮し、特に公費負担の確保について格段の努力をする必要がある。」というふうに記されております。  この勧告の趣旨をもう一度御確認いただきまして、先ほど申し上げました、状況は非常に厳しいとはいえ、国民の生活に安心というそうした確認といいますか、そのことをきちっとお伝えいただくために、社会保障についての公費負担の確保について努力をするというそのメッセージをいただきたいと思いますけれども、いかがでございましょうか。
  159. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 平成七年の社会保障制度審議会における勧告、短いですからちょっと読ませていただきます。公的年金のように持続的に行われる所得保障の制度は、消費支出を安定的にし、ひいては国民経済を安定化させてきた。公的年金の積立金は社会資本の整備等に用いられることによって、経済成長の基盤を強化することに役立ちさえしてきた。さらに、医療保障制度は労働能力の回復を助け、保育のサービスなどと合わせて良質な労働力の確保に役立ってきた。このように社会保障制度は経済の安定や成長に寄与してきただけでなく、生活の安定を妨げる事故が起きた時に国民に生活保障の給付を行うことにより、社会や政治の安定に大いに寄与してきた。 私はそのとおりだと思います。  そういう観点から、今後、この社会保障制度が、単なる国民に対する社会保障のみならず経済発展等に寄与するということも十分留意しながら、これから社会保障の構造改革を進めていきたいし、同時に公的な役割がどの程度か、民間の活力をどのように導入していくか、規制緩和をどうして進めていくかという点も考えながら、社会保障制度はこれからの政治、経済、社会の安定のためにも大変重要なものである、国民経済に大きく影響していくものだという点を踏まえながら進めていきたいと思っております。
  160. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私自身、先ほどの答弁でも申し上げましたように、社会保障制度、すなわちこれは所得保障あるいは各種のサービスの提供を含んでのことでありますけれども、これが、今厚生大臣からも述べましたように、安定した購買力を国民に付与する、あるいは新たな産業あるいは労働需要を創設する、そうした役割を持ち、経済発展に寄与する、そういう積極的な役割があるということを先ほども私は全く否定をいたしておりません。  そして、この分野において、我々は、民間活力をいかに導入していくか、言いかえるならば、技術開発をどう促進し、人材をどう育て上げ、同時に、そうした人材が働き得るようにいかに規制を緩和し、あるいは変えていくか、こうした総合的な施策を一方では進めなければならない。これを私は全く否定をいたしておりません。  その上で、先ほど私は、そうした仕組みが将来世代にわたっても安定して維持されていくような、言いかえれば、少子社会と言われる時代にありましても、その時代における働き手の方々が担い得るどういう仕組みをつくれば安定的にこれを維持していくことができるかを真剣に考えなければならないということを申し上げたところであります。
  161. 石毛えい子

    ○石毛委員 将来世代のことも考えながら、そして、経済発展と社会保障制度が密接に関係していて、社会保障制度は経済発展にも寄与するような位置を確保できるように考えることが必要だという御答弁をいただいたと思います。この点に関しましては、御答弁に対して私も賛意を表したいと思います。  そこで、続けさせていただきたいと思いますけれども、先ほど小泉厚生大臣が読み上げてくださいましたその文章をもう少し続けてまいりますと、こういう文章がございます。内外市場における一層の競争を促し、経済の活力を高めることが期待される規制緩和も、セイフティネットとしての社会保障制度が整備されて初めて有効な政策となり得る。このように、社会保障制度を抜きにしては、国民生活の安定ばかりでなく経済の発展も制約を受ける以上、その存在を前提とした上で、大局的にみて社会保障の財源を生み出す経済活力の安定的な発展にプラスとなるような制度づくりが求められている。 こうした文言でございます。  私は、この「大局的にみて社会保障の財源を生み出す経済活力の安定的な発展にプラスとなるような制度づくり」、この「制度づくり」というところがキーになる、かぎになるところだというふうに考えておりますけれども、そこで、具体的な質問をさせていただきたいと思います。  これもある雑誌に掲載されていた論文でございますけれども、一九八九年以降、高齢者の保健福祉に関しましてゴールドプランが制定され、その後新ゴールドプランというふうに変わりまして現在進行中でございますが、この新ゴールドプランの生産誘発効果、難しい概念で、私は十分に産業連関表などというのは理解しかねるところがございますので結論の部分だけ申し上げますと、生産誘発効果は公共事業と同等である、そういう論文がございます。「週刊社会保障」に掲載されております。総理府の宇野さんという方の論文でございます。「今こそ福祉型成長パターンヘの転換を」というタイトルで掲載されておりました。官庁の方が書かれた論文でございます。その生産誘発効果は公共事業と同等であると。しかも、これは高齢者の方の保健福祉にかかわるゴールドプランでございますから、確実に内需として展開されるものでございます。  そしてまたもう少し申し上げれば、社会福祉施設費といいますのは、予算分類の中では公共事業ではなくて社会福祉費の中の社会福祉施設整備費ということで計上されておりますし、あるいはホームヘルパーさん等についてはハードではなくてソフトの部分になるわけですけれども、ともあれ、公共事業と同等の付加価値誘発額と申しますか、生産を拡大していく、そういう効果を持っているという指摘がございます。  先ほど、まさに「経済活力の安定的な発展にプラスとなるような制度づくりが求められている。」ということをこの制度審の文章の中から引用させていただきましたが、それと、今申し上げましたこの新ゴールドプランの効果というようなことを考えますと、社会保障費は、抑制するというよりは、むしろ福祉型経済発展を促すような制度をつくるという観点で、ますます、むだはむだなものとして省くことは必要でございますけれども、整備していく、方向性を大きく広げていくということが必要なのではないかというふうに考えますけれども、もう一度、厚生大臣と総理大臣にこの点をお伺いしたいと思います。
  162. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 これは総論的な話にも関連してきますが、このままの制度を維持していきますと、将来、国民負担率は七〇%を超えます。現在三〇%台。それでは余りにも国民の活力をそぐのではないか、負担に耐え切れないのではないかということから、総合的、構造的な改革をしなきゃいかぬ。五〇%以下に抑えたいという方向で、あらゆる聖域なしに改革しようということで、厚生省関係予算もかなりの削減を前提にしてこれから組んでいかなきゃならないし、制度も変えていかなきゃならない。いわば、全体的な国民負担率を低く抑えようという中で、社会保障関係も例外ではないということでやっているわけであります。  私は、予算をふやす改革というのはそんなに苦労はないと思います。民間でも、もうお金がない、これ以上人をふやせない、そうしたときに合理化が始まっている。血を流すような大変な苦労をしたときにこそ、真の改革が多くの面で始まっております。  私は、今回厚生省予算を組む場合にも、予算をふやしてくれれば、こんな楽な厚生大臣はおりません。国民のいろんな要望にこたえられる。しかしながら、削減する中でやるときに真の改革が始まるんじゃないか、むしろ、この困難を一度全部むだを排除するチャンスに生かさなきゃならないという点で取り組むのも、ある時期は必要ではないかなということで取り組んでおります。  この厳しい、予算を減らすという中で、増額できない、減額しなきゃならない中で、徹底的な見直しこそむだを排除でき、効率的な社会保障改革を構築できるチャンスと受けとめて、苦しいながらも頑張っていきたいと思います。
  163. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、厚生大臣から考え方を御説明を申し上げましたけれども、議員が御指摘になりましたゴールドプラン、これは、恐らくゴールドプランだけではなく、子育て支援のためのエンゼルプランにしても障害者プランにしても、同様のことを求めて御質問に立たれたと思います。  その上で、多少私事にわたることをお許しいただきたいと存じますが、私の父親は障害者でありました。そして、第二次世界大戦前の日本の家屋構造の中で、大変びろうな話でありますけれども、洋式のトイレがなければ生活のできない人間でありました。また、日本式の浴槽には外側に階段、また浴槽の中にも階段をつけなければ自分で入浴ができない体でありました。我が家の階段には手すりがつけられ、滑りどめがつけられておりました。私はそれが普通のうちだと思っておりました。むしろ、小学校に入り、次第に友人がふえ、その友人のうちに遊びに行くようになりましてから、我が家が特殊であることを知りました。  逆に、なぜそういうことを申し上げるか。福祉というものに視点を置いて、今はたまたま福祉施設整備費だけを例示に挙げられましたが、例えば公共事業というものを考えました場合にもそうした投資誘発効果があるという御指摘だと私は思います。そして、それは大事な視点だと思っておりますし、厳しい財政事情であればあるほどそうした点に思いをいたした工夫、努力をしていけという叱咤激励と私は受けとめさせていただきたいと思います。
  164. 石毛えい子

    ○石毛委員 確かに、総理がおっしゃられましたように、福祉の社会化と申しましょうか、福祉を特別の領域とするのではなく、社会の福祉化ですね、社会そのものを福祉化する、そういう意味では、このごろ町づくりもそうですし、住宅についても最初から、障害を持ったときに対応できるような段差のない住宅というようなことも進められてきております。そうしたことを含めまして、公共事業でも生産の誘発効果があるということは、これを私は否定するものではございません。そういう方向がぜひ広がってほしいというふうには思っております。  ただ、そこで、厚生大臣がお答えいただきましたことにかかわることでございますけれども、GNP七〇%になるということと、それから削減の中で真の改革があるということは、少し乖離しているところがあるのではないでしょうか。例えばGNP七〇%、それを肯定するか、よしとするかしないかというのは論議のあるところでございますけれども、例えばGNP五〇%に抑えるにしましても、従来型の公共投資予算を割いていくということから、福祉関連に注目をして、そうしたところで新しい資金投与を行っていくということになりますと、それは配分の内容の問題になってくるわけでございますから、そのあたりはもう少し厳密に区別していただくということが必要ではないかというふうに感じました。  それから、これからの経済発展を何を重点に置いて考えるとすれば、従来型の公共投資よりはむしろ私は福祉というところに、これは広義、狭義さまざまございますけれども、そこに注目をして、これは決して所得移転として、再分配として所得を分けていく話だけではなくて、分けることが再生産の規模を大きくしていくことに重なっていく。だから、福祉は経済発展に寄与する側面、このところ福祉は投資であるとか生産であるという論調が随分されるようになってまいりました。  そして、途端に非常に具体的な話になりますけれども、私の友人の障害者の方たちは、御自分たちが自立生活センターなどの運営に携わるようになって初めて、自分たちは給付されるだけの存在ではなくて、社会活動に参加し、生産に参加、サービス生産ですけれども参加するようになったということをおっしゃっておられます。  そうしたことごとも考えますと、福祉をいわば特別の分配、再分配というふうに見るのではなくて、経済発展の重要な、大きな要素であるという位置づけのもとに政策展開をお考えいただく必要があるということを私は強調したかったわけでございます。いかがでございましょうか。
  165. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 福祉の、また社会保障の果たす役割というのは、各般にわたって国民経済にも影響を与えていくということは否定いたしません。  と同時に、これは程度の問題だと思うのですけれども、結局、福祉の給付をよりよくしようとするためには、税と保険料を国民により多く拠出を求めなきゃならない。そうなりますと、じゃ、おれたちは余り働いても、給料を多く取ってもそうでなくても大して変わらないんだと、程度を超えますとかえって働く意欲がわいてこなくなるというヨーロッパの例もあります。どの程度まで国民の税負担を求めるか、保険料負担を求めるかというのと、どの程度給付を厚くしていくかというのは裏腹の関係であります。これを今後どうやって果たしていくか、これが経済にプラスに働くのかマイナスに働くか、私は、これは程度の問題だと思います。  その点、やはり五〇%を超えるのは、これはかえって国民の自助努力、活力をそぐのではないかということから、その負担は五〇%以下に抑えようという前提の中で、これから活力ある社会を築いていこう。そして、その国民のみずから助ける精神の旺盛なことによって初めて福祉が充実できるんだという観点から、この国民負担と経済活力と給付と負担の問題今後大変大事な問題でありますので、その点、よく国民の議論をわきまえながら、いろいろな情報、選択肢を提供して合意点を見出していくのが必要ではないかと思います。
  166. 石毛えい子

    ○石毛委員 今厚生大臣がおっしゃられました給付とそれから負担の関係に関しましては、例えば介護とか育児をめぐりまして、家庭でインフォーマルな労働として、多くの場合女性ですけれども、支えているその労働をカウントしたら、果たして今、広い意味での国民経済に対しまして何割ぐらいの水準になるかとか、そのことを負担と見るのか見ないのか、それを貨幣換算してもう一回割り戻していくといいますか、そういうことを考えるということはどうなのかとか、いろいろ論点があると思います。  それから、北欧を中心にして、負担率が高いことに対して批判があるというふうに言われましても、国民は、納めた税金がどう還流していくかが見えないという日本の社会の構造でそういうふうに見ている、そういう指摘もあるわけです。ですから、多義的な議論が必要だというふうなことだけ、言わずもがなのことでございますけれども申し上げまして、次に移りたいと思います。  法案の内容に入っていきたいと思います。  社会保障に関してでございますけれども、九八年度は前年度当初予算比で三千億円の増、九九年、二〇〇〇年度は二%の増という形で、主として予算総枠の縛りになっております。先ほど来厚生大臣、これからの構造改革をどのように進めるかということは御指摘になっていらっしゃいますけれども、その制度をどうつくられていくかということに対して、内容については余り御指摘いただいていないと思います。  例えば社会保障にも、単に自己負担をふやしていくというような、単にと、大臣はそれだけおっしゃったわけじゃないですけれども、そういうことだけではなくて、制度が戦後五十年、制度によってはいろいろ短期、長期ございますけれども、経てきました中で、いろいろなひずみですとか非効率ですとか、そうしたことが起こっております。医療に関しましては過剰な投薬とか検査がよく指摘されておりますし、それから事業の執行の非効率ということもあるわけでございます。  財政構造改革、そういう視点でこのことをとらえ返していくならば、まずは、むだや非効率をどういうふうになくしていくのかというその手順が示されるということが最初ではないでしょうか。そうしたことが具体的に法案の中には示されることなく、三千億、それから二%、二%というキャップがかけられていて、私は、これは初めにキャップありきだというふうに受けとめました。  その前に、どのように構造改革を進めていくか、非効率、不必要な経費をどういうふうに洗い出していくか、あるいは財政需要の優先順位をどういうふうにつけていくか、よって、そのことが全体的な国民経済の発展にどのように寄与するかというようなことをまずお示しいただくということが物事の手順だというふうに思います。  そういう意味で、私は最初に強調したいと思いますけれども、社会保障費のキャップについては、私はこの立場から、社会保障費についてのみ、まずは申し上げますけれども、凍結すべきだというふうに考えておりますが、厚生大臣、いかがでございましょうか。
  167. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 お話の趣旨は私は理解できますが、現実の問題として上限を設けない限り、どのような視点にいたしても、私は増額要求ばかりだと思います、現実の手法として。費用は関係ありません、見直しますよと言ったら、恐らく減額の要求は出ないと思います。全部ふやしてくれ。私はあらゆる省庁に言えると思います。  だからこそ上限を設けて、もうお金はこれしかありませんよという中でしか、お互い政治家だからわかると思いますけれども、自由に、どれが必要か、あれが必要か不必要かといったら、不必要なものは余り出てこないんじゃないか。全部必要だという議論になって抑え切れないからこそ、今まで予算削減する場合は、各省一律マイナスを設定してきたわけです。今回、社会保障はマイナスはできないから三千億円増ということでありますが、これでも苦しい。  私は、現実的な、政治家として考えて、上限を設けない限り構造改革は無理ではないかと思っております。
  168. 石毛えい子

    ○石毛委員 上限を設けない限りというふうにおっしゃられましたけれども、果たしてそうでしょうか。これまで、それでは社会保障制度なら社会保障制度、より具体的には医療ですとか年金についても言える部分はあるでしょうか。  社会福祉、それぞれの施策について、例えば非効率であるとか不必要であるという、そのことをどういうふうに洗い出しをする、あるいは、例えば社会福祉ですと審議会から九〇年代の方針について意見具申等が出されておりますけれども、その観点からすれば何の施策を優先するか、そうした観点で今まで、政治家といいますか、きちっとお示しをして、そして行政庁の方に、それで整理をしていったら予算はどれぐらいになるのか、なおかつまだ削らなければならないとすれば、次にどういう観点を示していくべきなのかというようなことが、具体的にどれほどされてまいりましたでしょうか。  今まで大体がシーリングというようなことでされてきて、そしてあとは、何を削るかはそれぞれの省庁に委任してきて、そして結果とすれば補正を組まなければならないというような状況で来たという、その繰り返しであったように私は受けとめております。  ですから、この際上限を設ける、キャップを示すことがいいか悪いかというところは、それぞれの政策分野によって議論があるかと思いますけれども、少なくとも私は、社会保障に関連しましては、キャップを設けていいというほどの論拠を、幾つかの点にわたりまして基準としてお示しいただいているというふうな認識はできないのでございますけれども、いかがでございましょうか。
  169. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 具体論に入っていきますと、例えば医療制度の改革ですね。これも、できたら自己負担をふやさない方がいいというふうには政治家ならだれでも考えると思います。そうすると、薬価の問題、診療報酬の問題、これに切り込むかというと、これまたいろいろな医療関係者の抵抗が強い。じゃ税金を上げようかとなると、消費税にしても五%でも不満が多い中、もうこれはできない。  それで、今回、増税しない、保険料も上げない、赤字国債も発行しないという前提で考えている医療保険での改革案でありますけれども、じゃ自己負担、上限を三割設けますよということでも総反発であります。私は、自己負担を少なくするんだったら薬価の問題と診療報酬の問題に大きく切り込んでくださいよ、厚生省の案は生ぬるいと言っているんだったら政治家がやってくださいよと言っているんです。なかなか出してくれない。上限がないと、必ずどこかにしわ寄せをしようという勢力ばかりですから、ばかりと言っちゃ語弊があるかもしれませんが、それは多い。しかしながら、もうやらざるを得ない。  そこから本格的な、もう薬価もこのままじゃだめだから今までの制度を全部廃止しちゃいましょう、薬価差益が出ないような新しい基準を設けましょう。これから将来を見ると、薬価の切り込んだ分はお医者さんの診療報酬を上げるようにしますよ、ところがそういう状況じゃない、お医者さんも覚悟してもらわなきゃいかぬ。薬価を切り込んだその分、自分の診療報酬にはね返ってくる。そういうわけにいきません、我慢してもらわなきゃならない。国会議員の皆さんも我慢してもらわなきゃならない、説得してもらわなきゃならない。そういう本当の構造改革、薬価の問題においても診療報酬においてもメスを入れますよという、このメスの入れぐあいが大きければ、深ければ深いほど、患者の負担は低くて済むのです。税の負担も低くて済むのです。保険料の負担も低くて済むのです。  それを総合的に見てやろうということでありますので、私は現在の政治情勢を考えると、上限、いわゆるキャップを設けないと根本的な構造改革にはならないではないか。むしろ、これはきつい仕事でありますけれども、思い切って見直す一つのチャンスだと見て、苦しいけれどもお互い知恵を出してやっていこうと、気持ちを切りかえてやっていかなきゃならないと思っております。
  170. 石毛えい子

    ○石毛委員 厚生大臣の御答弁は、やはり上限を決めなければそれぞれ削減していくことに納得しない、そういう政治状況があるというお答えだったと思いますけれども、それでも、厚生省の二十一世紀の医療構造改革のプランの中にももう出始めていることでございますけれども、十月二十二日、きょうの日経新聞の記事ですと、「医療費過剰請求三千二百二十二億円」、これはほとんど来年度予算編成に向けて厚生省が医療費で削減する金額に匹敵するぐらいですね。六千億当初増で千八百億ですから四千二百億、ちょっと低いですけれども、それぐらい匹敵する金額が過剰請求であるというわけです。恐らく、これは九五年度だけの話ではなくて、もっと前にもあったでしょうし、このほかにも岡光事件の問題だってまだ記憶に新しいところであるわけです。  ですから、二%のキャップをはめる、あるいは三千億で抑える、それはそれであることもあるでしょう。ですけれども、それ以前の問題にきちっとどういう論拠を立てて構造改革を進めていくのか、そのことの柱立てがなければ、キャップをかけるということだけでは安易に流れ過ぎてはおりませんでしょうかというのが私が申し上げたい点でございます。
  171. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 私は、不正請求の点につきましても、上限があるからこそ今までの審査の体制でいいだろうかという視点が入ってくると思うのであります。  新聞に出ている三千二百億円のいわゆる不正請求の問題は、これは全部が全部じゃないと思います。詳しくは事務当局から必要ならば答弁させますけれども、ある人は健康保険組合に入っていたのが抜けて国民健康保険に入っちゃった、その場合健康保険組合に請求が来たとか、あるいは逆に、国民健康保険なのに別の制度に行って、もとの制度に要求が来たから請求がふえたという点もあります。  全部が全部不正ではないと思いますが、いずれにしても、上限があるからこそ、今までの診療報酬請求にしても不正がないかどうか、不正に対してどのような厳正な対応をとったらいいかという点も、当然、この抜本見直しの中で改正していかなければならない大事な点だと認識しております。
  172. 石毛えい子

    ○石毛委員 このままいきますと水かけ論になるような気がしておりますけれども、ただ、私は、例えば家計の赤字、毎月一万円足りないから、まずは一万円減らすことを考えて、それからどうやって節約するかをやっていこうというような、何かそういう論法と同じように聞こえて、政治というのはそういうものなんだろうか、あるいは国の政策を預かる行政官庁はそれでいいんだろうかという大変素朴な疑問を持ちます。財政構造が非常に厳しい状況にあるということは、今に始まったわけではなくてこれまでにも続いてきたことであるわけですから、当然、これまでの過程の中できちっと基準が立てられ、それで進められてきてしかるべきだったと思います。  この議論は、これでとどめさせていただきたいと思います。もう少し具体的な質問に入ります。  二〇〇〇年までに至る社会保障費にかけられております二%のキャップは、これまでの御説明ですと、高齢者人口の増加に伴う増加分として二%を認めますという、そうした説明がされております。この二%の予算増で、今厚生省は、例えば高齢者介護については新ゴールドプラン、少子化対策としてはエンゼルプラン、障害者対策としては障害者プラン、いわゆる三プランを実施しておられます。二%のキャップがかぶされている状況で、この三プランは計画終年度までに確実に達成できるのでしょうか。厚生大臣、いかがでしょうか。
  173. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 各種項目、徹底的な見直し削減できるところはないかという準備を進めておりますが、三プランについては、増額し、所期の目的が達成できるよう全力を尽くしていきたいと思っております。
  174. 石毛えい子

    ○石毛委員 ぜひ全力をお尽くしいただきたいと思います。  私も、ちょっと細かくなりますけれども、厚生省からいただきました概算要求をずっと拝見しておりました。目標年度までそれぞれのプランを割り返してみますと、個別の細目にわたっては多少違う点がありますけれども、概して、来年度に向けた概算要求よりも、それ以降に実現しなければならない各年度の予算費目といいますか、それは大きいと思います。つまり、もっと予算規模は大きくなるのではないかというふうに推計されるというふうに思います。  そうしますと、今年度三千億の枠内でということもほぼ二%近い金額でございますから、この二%、二%で積んでいく場合に、来年度の予算要求よりももっと多く要求されなければならないであろうプラン、障害者プランにつきましては二〇〇二年が終年度ですから、もっと多く積んでいかなければならないだろうというそのそれぞれのプランが、確実にこの二%のキャップのはめられた中で実現するだろうかどうだろうかというところは大いに不安感を持ちます。  そういう意味も含めまして私は先ほど来申し上げてきているつもりでございますので、厚生大臣のお気持ちは先ほどの御答弁でわかりますけれども、もう少し確実な御答弁をいただきたいと思います。
  175. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 お答えを申し上げます。  三プランございますけれども、代表を新ゴールドプランにとりまして説明をさせていただきます。  厚生大臣、御答弁申し上げましたように、新ゴールドプランについて申し上げれば、平成十一年度が最終年度でございます。その最終目標の達成に向けまして、そういう努力をするという中で予算の要求もさせていただいております。もちろん、その中では、こういう時節柄でございますから、その手法におきまして、できるだけ民間の活力を活用する、あるいは各地域におきます既存の資源を活用する、あるいは事業の中身におきまして、執行状況等をしっかり把握をしてむだのない施策を進めていくというようなことは、当然前提としてやりますけれども、全体としては、現在私ども進めております予算、これが執行されればできるような方向で持っていきたいというふうに思っております。  それで、今、来年度の概算要求、これは概算要求でございますから、これから決定までに編成の過程があるわけでございますけれども、要求に関して申し上げれば、もともと新ゴールドプランを立てましたときの要求の、全体の各年度の進捗の状況にほぼ沿った形で来年度も要求をさせていただいております。したがいまして、そういう意味での、極端な落ち込みをして、極端に十一年度に大きくしわを寄せるというような形ではなくて、今の要求をさせていただいているということでございます。
  176. 石毛えい子

    ○石毛委員 一つ一つ全部挙げていってもよろしいのですけれども、今、羽毛田局長は新ゴールドプランだけについて申されました。このことに関しましても、デイサービスセンターの落ち込みですとか、ケアハウスの落ち込みといいますか、未達成率は非常に高い。それから、緊急保育になりますと、最終年度十一年度で、十年度の概算要求、これが全部査定で確定するかどうかわかりませんけれども、十年度の要求に比べまして、十一年度に達成しなければならない目標値というのは、大体二倍から、多いものでは十倍ぐらいございます。障害者プランに関しましても、箇所づけ数などといいますのは三倍、四倍というようなところで、ですから、後になればなるほど概算要求、十年度より積んでいかなければならないという状況があります。それで二%のキャップをかぶせて果たして可能なのでしょうかどうでしょうかということを私は再度申し上げたいのですけれども、厚生大臣、もう一度御決意のほどをお願いいたします。
  177. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 毎年度二%程度の増しか見込めない中で、あらゆる項目を見直しながら必要な予算確保していく、できるだけむだを排除していく、この作業は大変困難でありますけれども、やり抜かなければならないことだと思っています。
  178. 石毛えい子

    ○石毛委員 やり抜くというふうにおっしゃっていただきたかったところですけれども、やり抜かなければいけないと思っているというふうにおっしゃっていただきましたので、私は、やり抜くというふうに言ってくださったと、うなずいてくださっていますので、そう受けとめさせていただきたいと思います。  続けて、総理にもう一度この件に関して御確認いただきたいのですが、御承知のように、新ゴールドプランにつきましては、新ゴールドプランを達成しても、厚生省の発表しておりますデータによりますと、在宅介護につきましては整備率四割の水準です。今、参議院の方で介護保険の審議が進められておりますが、介護保険に対する国民の信頼性、そのことをきちっと確保していくためにも介護基盤の整備、大変重要なことだと思いますので、社会保障三プランにつきまして、目標どおり実現するということを御確認いただきたいと思いますけれども、いかがでございましょうか。
  179. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今私の手元にありますのは、平成六年十二月十八日、大蔵、厚生、自治三大臣合意に基づきます高齢者保健福祉推進十か年戦略についてのみであります、ここに資料として持っておりますものは。その上で、私どもは、財政構造改革のいわゆる集中改革期間中におきましても、それぞれの地域における事業の執行状況等を踏まえながら、また同時に、民間活力の活用といったさまざまな手段の、手法の活用による事業の効率化といったものも考えながら、目的達成のために全力を挙げて努力をしてまいりたいと思います。
  180. 石毛えい子

    ○石毛委員 それでは、次の質問に移りたいと思います。  法案第六条に関連してでございますけれども、六条は、第一項各号で、国の当面の責任と当面の方針としまして、「行政の各分野において国及び地方公共団体と民間が分担すべき役割を見直す」、ただいま民間活力も活用しながらという御回答がプランにかかわってございましたけれども、そうしたこと。それから第二号で、「行政の各分野において国と地方公共団体が分担すべき役割を見直す」。あるいは国民が受ける利益の水準と負担の水準との衡平等々、第一項にかかわりまして六項目掲示されてございます。  ただ、これは抽象的にこうした項目が並べられてはおりますけれども、この規定を政府に具体的に義務づけてはおりません。また、例えば一番目に挙げられております「国及び地方公共団体と民間が分担すべき役割を見直す」という、その見直しの基準はどういう内容であるのかというようなところも、これではわかりません。それから、費用と便益についての分析もどういうふうにするかというようなことも、これだけでは不明です。  この法案は、二〇〇三年までに財政赤字をGDP対比で三%にするとか、そしてまた具体的なところで事業別のキャップが書かれておりますけれども、考えるまでもなく、ここに掲示されております役割分担のあり方とか、それから便益と負担ですとか、このような基準をクリアして、それぞれのキャップが実現して、最終的に対GDP財政赤字三%というこの筋道になるはずだと思います。  ですから、具体的な方法として大変重要なところがここに掲示されているんだというふうに私はこの法案を受けとめておりますけれども、この中間の基準について政府に具体的な義務づけがありませんけれども、ここのところは大蔵大臣、どのようにお考えになるのでしょうか、お尋ねいたします。
  181. 三塚博

    三塚国務大臣 これは何回も答弁を申し上げておるわけですが、財政構造改革、半歳余にわたりまして熱心な論議をいたしてまいりました。相並行いたしまして、行政改革会議総理大臣の議長になりましたこと、とやかくいろいろな意見がありますが、それだけ責任を痛感をし、行革にすべてを集中したと言っても過言ではない行政改革、同時に相並行いたしまして分権の委員会における分析とその結論、それぞれ出ております。さらに、社会保障は小泉厚生大臣が責任を持ってやられておりますけれども、この分野についても極めて造詣の深い総理大臣でありますから、あらゆる観点からこれを指摘をいたしておるところであります。  ですから、六つの視点、これはすべて、ここ一年ないし半歳余にわたりましての点検を経た結果として、かくせねばならないという原則を、方針規定いたしたものと御理解ください。  この規定については、特別会計を含むすべての歳出分野を対象としたものでございまして、その際踏まえるべき観点として、官と民、国と地方の役割分担等を決めさせていただきました。  この六つの観点は、多種多様な歳出分野改革における基本的指針であります。ある程度抽象的にならざるを得ませんでしたけれども、現下の行政課題から見て、今後の財政運営の適切な指針となるものと考えております。  委員も御承知のとおり、省あって政府なし、局あって省なしとよく言われましたのが行政改革の基本的論点であります。こういう観点で、行政の細部にわたって点検をいたしました。そういう結果として、本日、指針を明確にし、規定いたしたものと考えております。考えておるよりも、そのとおりであります。
  182. 石毛えい子

    ○石毛委員 行革会議ですとかさまざまな会議で議論がされてきたということは、そのとおりだろうと思います。ただ、これは特別措置法として可決、成立すれば、この法律は国民の目の前に流通していく、流通という表現がいいのかどうかわかりませんけれども、流布されていくということになるわけです。国民はこれを見るわけです。これを見まして、基本方針というふうにはおっしゃいましたけれども、そのほかのところでは、対GDP比三%におさめるようにするとか各年の財政赤字額を公表するとかという、かなり具体的なことが書かれているわけですけれども、一番肝心なのは、こうした方法を採用し、駆使することによって対GDP赤字三%を実現していくということになるわけですから、実は、ここのところがどのように遂行されるかということに財政構造改革が完成するかどうかということの盛衰がかかっている、大変重要なところだというふうに私は認識しております。  ここのところがブラックボックスに入ってしまえば、先ほど大蔵大臣がおっしゃられましたように、省あって政府なしですか、それが続いてくる、あるいは続いていくわけですから、この基準をもっと具体的にきちっとお示しいただくことと、それから、その基準に基づいて予算編成がどうなったのかということを、予算審議をする通常国会にきちっとお出しいただくということが肝心なところなんだというふうに思います。  ここのところは基本的な精神、理念で書かれていまして、あとは省庁に具体的な予算編成はお任せしましたという、大蔵大臣はそうはおっしゃってないですよ。でも、ここが具体化しなければ、従来と同じような手法がともすれば継承されがちになるとしたら、これは構造改革ではないのではないですかということを私は申し上げたいと思いますし、それから、もう一つ強調したいのは、これを各論として展開しました基準をきちっとお示しいただいて、そのことを国会に提示していただく、このことが国民が財政構造改革を理解できる一番ポイントのところではないでしょうか。そのことを申し上げたいと思うわけです。
  183. 三塚博

    三塚国務大臣 ですから、キャップを決めたわけであります。ここ三日間議論がございますODAの問題、公共事業七%の問題、それから社会保障、二%はお認めを申し上げますが、五千について歳出カットのために御努力を賜りたい。そのあり方は、厚生大臣が中心となりまして、法律改正を提案し、取り組んでおられる。時間がありませんから、これ以上項目は申し上げません。  抑制であり、前年度以下にこれを抑えるということ。一律にではなく、御承知のとおり、科学技術、これから新しい展望を切り開いてまいりますためには、日本人の英知を結集して、基礎研究、応用研究で、この国の利益のため、世界人類の幸せのためにやるという、そういうめり張りのきいた予算編成の基本方針を、法律によって今次明示をしたい、こういうことであります。  ですから、この法律が、御理解を得て、御賛同をいただき、成立をいたしますと、法律が決めました量的縮減目標の範囲内において、これだけ要求がありましても、きちっと仕上げてまいるという制約、規制がそこに働くということであります。おわかりでしょうか。
  184. 石毛えい子

    ○石毛委員 私は今、縮減のことについて質問をさせていただいたのではなくて、この第六条第一項に掲げられている項目について、具体的にもう少しわかりやすい基準を示すべきではないかということを質問申し上げたわけでございます。  と申しますのは、大蔵大臣は今そういうふうにお答えくださいましたけれども、私は、念のために政府の予算編成方針がどういうふうに示されているかということをコピーして持ってまいりました。各年度にわたりまして書かれている内容は余り変わっておりません。財政規模につきまして、「一般会計予算においては、既存の制度・施策について見直しを行うなど経費の徹底した節減合理化に努めることとし、特に経常部門経費は、厳しく抑制する。」こういうことが書かれているということで、毎年出されているわけです。これでは余りにも茫漠としているのではないか。  せっかく、せっかくというか、この法律はこれから審議がもっと深まっていくわけですから、せっかくという表現はちょっと言い過ぎだと思いますけれども、こうしたことを書かれていましても、それでは、ある事業はなぜ国がやるということに決定するのかという、それは費用対効果のことを考えてとか、あるいは事業の地方での普遍化状況を考えてとか、いろいろな考えのもとになる基準というのがあるだろうと思います。そのことについて代表的にお示しいただくということがなければ、ここは抽象的な文言に終わるのではないだろうか。  最後の六項目めに挙げられている、国民負担率が百分の五十を上回らない、ここはずっと数字が発表されて生きていくでしょうけれども、その前の五項目につきましては、抽象的なままに終わってしまうだろうということです。  そして、もう私の時間がなくなってまいりましたので、先ほど大蔵大臣が言われましたことに関連して指摘だけさせていただきたいのですが、この法案は、抑制するという文言で整理されている部分、それから重点化、効率化を図るという文言で整理されている部分、量的拡充から質の向上へ転換を図る、歳出の見直しをする、予算項目の内容によって、それぞれ抑制とか重点化、効率化とか表現が書き分けられております。  これに関しますと、公共事業は、午前中もずっと議論がございましたけれども、重点化、効率化は図るのかもしれませんけれども、規模は変わらない。社会保障は、抑制する。書き分けているわけですよね。(三塚国務大臣「いえ、変わるんです」と呼ぶ)規模は変わらないじゃないですか、七年間で。七年間では変わらないですよね。  じゃ、どういう基準を観点に、これは国でやり、これは地方でやりというようなことがわからないというようなことを、私は関連して指摘だけさせていただきたいのです。ですから、これに対する御答弁は結構でございます。それは結構でございます、もう時間がございませんので。それは、大蔵大臣が御指摘になられましたから、私も関連して御指摘をさせていただいたということでございます。  最後に、もう時間もございませんので、今の質問に関しまして総理大臣に確認させていただきたいと思います。  内閣及び各省は、毎年の予算編成において、第六条第一項各号に基づく、国と民間とか、そうしたことですけれども、基づく配分、また査定の基準を制定、公開をすべき、そして、どのような判断をして予算編成をしたのか、そのことを国会に提出して予算審議に当たるべきだというふうに考えます。この六条に関しまして、今申し上げました方向で見直しをすべきだと存じますけれども、御見解をお伺いしたいと思います。
  185. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 午前中、他の委員から、カナダのいわば評価基準というものを例にとられながらこの問題が提起をされたときにも、実は同様のことを申し上げました。私は、現在進行しております例えば地方分権とかこういうテーマを、それぞれに触れながらそのときは御答弁を申し上げましたけれども、時間の制約ということでありますので、長い答弁を繰り返すことはいたしません。  その上で、多種多様な歳出、それぞれの分野改革における基本的な方針というものはある程度抽象的にならざるを得ないということは、私は御理解をいただきたいと思うのです。  そして、それぞれの項目に対する原則を全部列記いたしました場合、むしろ非常に、どの項目をどれにというような議論まで入っていきますと身動きがっかなくなる。むしろ、抽象的という御評価をいただきましたけれども、それぞれに通じる基本的な指針というものは、ある程度抽象的であってもよいと私は考えてまいりました。そして、これは現行の行政の課題から見ました場合、今後の財政運営における指針として十分に役立つと私は考えております。  その上で、議員は、こうしたルールのもとで編成された予算、当然ながらその内容等についてそれを明らかにする責任ということに触れられました。これは、当然のことながら各年度の予算においてお示しすべきことでありますし、また、予算だけではなく、その結果につきましては決算審議というものも通じてお示しをしていく、そして評価をいただくということになろうかと存じます。  私は、そうした意味で、これらの基本的な考え方というものを、あえて抽象的という評価は私甘受いたします。それは、非常に幅の広い歳出項目全体に通用するルールをつくろうとすれば、抽象的なものにならざるを得ない部分があるのですから。その上で、予算についてはきちんと国会にお示しを申し上げ、御審議を願い、またその執行状況についての決算の御審議をもお願いをする、そのような姿勢で臨みたいと思います。
  186. 石毛えい子

    ○石毛委員 時間が参りましたから終わりますけれども、私は、全部をそのことでくくろうと思えば抽象的にならざるを得ないと思いますけれども、各項目の代表的なものにつきまして、例えば費用対効果がどうなるのかとか、それから、なぜこれは国でやるべきことなのかというようなことをお示しいただくことは可能だと思います。そのことを明らかにしていくことが、国民にとって財政というものが明瞭に認識できるという、そして国民の合意を得ていくという、その方向になるのだというふうに考えております。  今、情報公開、そして民主党は財政の透明化ということを主張しておりますけれども、私は、大事なのは、結論も大事ですけれども、プロセスが大事だろうというふうに思います。そうした観点で、第六条については再考を私としては主張したいということで終わらせていただきたいと思います。     〔野田(聖)委員長代理退席、委員長着席〕
  187. 中川良一

    中川委員長 これにて石毛君の質疑は終了いたしました。  次に、石井郁子君。
  188. 石井郁子

    石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。  私は、財政構造改革推進に関する特別措置法案が日本の教育と子供たちに何をもたらすか、財政構造改革会議の主宰者である総理並びに関係大臣にお尋ねをいたします。  法案の第十六条は、「児童又は生徒の数の減少に応じた合理化、受益者負担の徹底、国と地方公共団体との適切な役割分担等の観点から、」文教予算を抑制するとしています。法案の十七条の二項には、「私立学校に対する国の補助金の総額が当該各年度の前年度の当初予算におけるこれらの規定による補助金の総額を上回らないようにする」としています。今日の日本の私立大学、短大の学生数は八割を占めているわけであります。この私学への助成金を抑制するわけですから、今でさえ高い授業料に悲鳴を上げている私立大学の学費ですね、この学費の値上げの引き金を引くものではないのか。総理にまずお伺いをいたします。
  189. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私自身、現時点におきましても、大学院及び中学、二人の私学に在学する子供を持っております。そして議員が述べられるような御論議、耳にいたしたこともございます。そして、私学助成というもの、これは私立学校が果たす役割の重要性というものにかんがみながら、また教育費の保護者負担というものにも思いをいたしながら、適切に対処していく必要がある分野だと思っております。  他方、今般の財政構造改革というものが、あらゆる歳出分野を例外なく対象としているということもぜひ御理解を賜りたいと思います。
  190. 石井郁子

    石井(郁)委員 この法案によりますと、向こう三年間にわたって対前年度の総額を上回らない、抑制するわけであります。こういうことが日本の教育に何をもたらすのか。これを国民に押しつけるわけですから、そのことをお尋ねしているわけであります。どうですか。国庫補助を抑え込むということでは、これは学費の値上げにつながるということをお認めになりますか。
  191. 町村信孝

    ○町村国務大臣 お答えを申し上げます。  今、昭和五十年ごろからずっと見ておりますと、昭和五十八年、五十九年、二回、経常費補助金が減らされたことがございます。そのころ学納金がどうであったかというと、補助金が下がったことに対応してすぐ学納金が上がったかというと、必ずしもそういうことにはなっていないようであります。  といいますのは、これは私学の経営の問題というのもあろうと思いますし、その中での最大限の経営努力といいましょうか、経費の節減等々もあるでございましょう。あるいは育英会の事業を充実することによって、生徒あるいは保護者に対する助成をより強化していくというようなこともあろうと思います。したがいまして、私学助成をやれば必ず父母の負担が増大するかというと、必ずしもそういうことではないのではなかろうか、かように考えております。
  192. 石井郁子

    石井(郁)委員 この十年間で見ますと、私学の経常費は約一兆円増加しています。今回の法案では、補助金は上げない、しかも受益者負担の徹底ということまでうたっているわけですよね。  今、私学の経営の話が出されましたけれども、私ここへ持ってまいりましたけれども、この夏出されました第六次の全国私立大学白書を見ておりますと、ごく近い将来に手数料、給付金、資産運用収入などが増加に転じる見込みはほとんどないだろう、このままの状態が続くならばますます学生納付金に依存する体質が強化される危険性がある、もう私学の方は経営努力は限界だということがいわばここから読み取れるわけですよね。これは、しかもこの法案が出される以前のものであります、実態は。経常費が上がる、補助金はない、これが向こう三年間。これは学費をやはり上げざるを得ないということになるんじゃありませんか。これははっきり答えてください。
  193. 町村信孝

    ○町村国務大臣 確かに、私学全体の経常費の金額は、御指摘のように大変ふえてきております。ただ、これの基本的な要因は何かということを考えてみた場合に、例えば昭和六十二年と最近の平成八年、これを比べてみたときに、例えば私立大学の大学、短大の学生数が百七十万人から二百三十万人へと六十万人ふえている。これは、ある意味では、高いレベルの学校で学びたいという本人あるいは親の気持ちのあらわれという意味では喜ばしいことなのかもしれない。ただ、それだけの人数がふえているからある意味では私大の経常費が非常にふえていくという面もあるということだけは、先生、御理解をいただけるかと思います。
  194. 石井郁子

    石井(郁)委員 この十年間、国庫助成で見ますと、年平均四十三億七千万円の増額になっているわけであります。そのもとでも学費の平均は毎年二万七千五百円上がっているんですね。  私は試算をしてみたんですけれども、この私学助成の伸びがゼロということになれば、この四十三億七千万円をどこが負担するのか。今の私学の経営ではもう本当に限界に来ている、やはり授業料にはね返らざるを得ないということになるわけですね。ですから、この毎年の値上げ分二万七千五百円を加えますと、三年後には低く見積もっても十一万一千円の値上げになるだろう。そうすると、学費は百三十四万円にもなるわけですね。  文部大臣、なかなかすぐ値上げに結びつかないというようなことですけれども、私は、大変そういう認識は甘いというふうに思うんですね。それは私学の経営者を一層苦境に立たせることになるんですよ。どうですか、本当に上げないということを断言できるんですか。
  195. 町村信孝

    ○町村国務大臣 お答えを申し上げます。  これは、上げる上げないというのは、私大の学納金の話を文部大臣が決めるわけにはまいりませんので、それは私大の経営者の御判断かと思いますが、私どもも決して今私大の経営が楽だということを言うつもりはございませんし、それ相応に親御さんが負担をしておられるという実態も、それは私どもも認識をいたしております。  したがいまして、財政事情厳しい中ではございますけれども、経常費助成の確保、そしてその中でも特に重点的にそれを配分をしていく、あるいは特別のプロジェクトの方にそれをできるだけ回していく、重点化、効率化というものを図りながら、私大経営が少しでも楽になるように、あるいは保護者に対しては奨学金の充実等々を図りながら、双方に対して、可能な限りでの配慮をさせていただいている、かように考えております。
  196. 石井郁子

    石井(郁)委員 先ほど来奨学金の話も出されておりますけれども、今学生の中で奨学金を受けているという学生は、私立ていえば四%ぐらいです。日本の奨学金制度は非常に貧弱ですよ。  ですから、それはふやしていただくのは大いにしていただかなくちゃいけませんけれども、そういうことでは済まないんだということを私は申し上げていますし、今度の補助金の抑制、上回らないということによって、そういう事態が起こるじゃないのか、必ず授業料への父母負担ということが起こるじゃないかということを言っているわけです。大臣の御答弁でも、授業料が上がらざるを得ないということは明確に否定はされないわけですから、次の問題で、具体的にちょっとお聞きしたいと思うんですね。  平成八年度の政府の国民生活白書がございますけれども、今私立大学生、下宿している場合の負担ですね、家計の負担が、家庭の可処分所得の四二・五%を占める、これはもう異常な事態ですよね。二人の子供を私立大学に通わせたら、家計はパンクするということになるわけです。実際に学生たちから切実な声が上がっています。自分の学費が高くて、妹がせっかく合格した私立高校に行けなかったとか、弟が専門学校へ行くのであきらめかけているとか、そういう声が国会にもたくさん届いていると思います。  どうですか、総理。やはり行きたい学校へ行けない、授業料が高くてもう行けない、こういう子供たちが、私は、この財政構造改革法案によってもっとふえることにならないのかというふうに思いますが、いかがですか。
  197. 町村信孝

    ○町村国務大臣 確かに、家計調査その他で、お子さん方の学費負担というものが相当な金額に上っているという数字もまた、私どももよく認識をしているところであります。したがいまして、私どもも一般会計でこうした私学の補助等々をやっておりますし、また税制の面でも、特に育ち盛りのお子さん、十八歳から二十三歳未満でしたでしょうか、これに対する特別の控除の割り増しというものもやっております。  昨日、自民党の方でお決めになりました対策の中でも、大きな検討項目の一つとして、その割り増し額をさらに積み増したらどうだろうかというような御提言もありますし、これは私ども文部省も既に年度改正要求として出しているところでございますが、ぜひそうしたようなことなどを通じまして父母の負担をできるだけ軽減をしていきたい、このような努力は最大限させていただきたいと考えております。
  198. 石井郁子

    石井(郁)委員 今御答弁にございましたように、教育費の父母負担は本当に限界に来ていると思うのですね。  総理、ぜひ見ていただきたいのですけれども、これは議員に配られました官報ですね。このきょうの官報にも、破産宣告、これがもう随分と掲載されてございます。私もこう今改めて見て驚いているのですけれども、私はこの件で最高裁に聞いてみました。今、年間六万人が自己破産。破産一歩手前の民事調停の件数は、十年前が五万八千件でしたが、昨年度が十六万五百件、三倍ですよね。また、警察庁の統計でも、借金苦の自殺が三千人とか、十一万人が借金取りから逃げ回っているということがあるわけであります。  自己破産といいますと、大体ギャンブルとかそういうこと、かけごととかが多いのじゃないかというふうに思われるかもしれません。しかし、最近、教育費の借金による自己破産、そういうことが調査の結果も出ております。これは日弁連の調査ですけれども、教育費破産の方がギャンブル破産よりも倍もある。  私は、今日ではそこまで来ているという事態だと思います。またその上に教育費の父母負担ということになれば、本当に国民はたまらないというふうに思うのですね。どうですか、総理にお伺いしたいと思います。
  199. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先ほど来、文部大臣から繰り返し御答弁を申し上げておりますように、そうした事態を全く知らないというのではなく、だからこそ私学助成というものを、また父母の教育費負担というものを少しでも和らげるための努力は、さまざま今日までも努めてまいりました。これからもそういう努力は、当然ながらしてまいるということでございます。
  200. 石井郁子

    石井(郁)委員 重ねてちょっと申し上げますけれども、本当に私学の子供たち、家庭の負担というのは重大だという問題を強調したいというふうに思います。  そこで、別な角度からちょっと問題にしたいのですけれども、これは文部省の資料で先ごろ発表になりまして、驚くべき数字が出ております。これは平成八年度の学生生活調査でございますけれども、五分位の階層区分がありますが、最も収入の低い第一・五分位層の大学進学率がどうなっているのか。二年前の調査では四五・二%あったものが、ことし発表された調査では一挙に三五・六%に低下しているのですね。これはかつてない事態であります。だから、こういう事態に一層拍車がかかる、今日、消費税増税、医療費の負担等々、国民負担が非常に各分野にわたっているわけですから、これはもう容易に察しがつくわけであります。  そこで、じゃ、別の角度でお聞きしますが、国立大学についてお尋ねします。  国立大学の場合でも、一般会計からの繰り入れを前年を上回らないということにするわけですが、それでは一体どうなるのか。これは総理閣議決定の中には、授業料の見直しが明記されているわけであります。これは、国立大学の学費も上げるということですか。
  201. 町村信孝

    ○町村国務大臣 国立学校につきましては、集中改革期間中における国立学校特別会計への繰り入れを対前年同額以下に抑制するということが本法案に盛り込まれているのは、今石井先生御指摘のとおりでございます。  文部省といたしましては、教育研究条件の水準維持、これに十分配慮しながら自己収入の確保、例えば病院の収入を確保する、あるいは最近は産学協同の研究がかなり円滑に進むようになってまいりましたので、そうした委託費の増加といったような面、あるいは既定経費見直しをする、こうした各般の努力を行いまして、国立大学が本来果たすべき学術研究の推進及び人材の育成、確保、こうした面で遺漏なきようにやっていきたいし、またあわせて大学改革、これも今教育改革全般の中で大変重要なテーマになっているわけでございますが、そうしたものへの支障を来しませんように努力をしてまいりたい、かように考えております。
  202. 石井郁子

    石井(郁)委員 では、大臣に伺いますが、授業料の見直しというふうに掲げられている閣議決定でございますけれども、その点は考えていないというふうに理解してよろしいですか。
  203. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 お答えさせていただきます。  国立大学の授業料でございますが、これにつきましては、従来から大学教育を受ける者に対して一定の負担を求める、そういう考え方に立ちまして対処しておるわけでございますが、教育の機会均等の理念を踏まえ、さらには私立大学の授業料水準、社会経済情勢等を総合的に勘案しつつ、予算編成過程の中で決定をしておるところでございます。
  204. 石井郁子

    石井(郁)委員 大臣の答弁を再度お伺いしたいと思います。  先ほどの御答弁によりますと、これは授業料を上げないというふうに考えるわけですけれども、そう理解していいですか。明確にお答えください。
  205. 町村信孝

    ○町村国務大臣 お答えいたします。  平成十年度の概算要求の中で、国立大学の授業料につきましては、これまでも相当な配慮をしながらやってきておりますが、他方、国立大学と私立大学の格差という別途の御指摘もあるものですから、実は国立大学の授業料というのはかなりのペースで各年、最近は上げているのが事実でございます。  ただ、平成十年度の概算要求におきましては、事務組織の合理化、一元化でありますとか、定員の削減、その他の経費削減によりまして授業料額は上げないことで対応するというふうに、概算要求では、一応対大蔵省に対しての要求にはなっております。
  206. 石井郁子

    石井(郁)委員 私はやはりちょっと内容が変わってきていると思うのですけれども、来年度の概算ではそうかもしれません。しかし、特別会計一・一五%伸ばしているわけですね。これは三年後には九百二十億円の増が見込まれるのじゃないでしょうか。こういう伸びが学費に転嫁しないという保証はどこにあるのかというふうに言わざるを得ません。先ほどいろいろ大学の努力ということを言われましたが、しかしその中でも、定員削減だとか事務職員も減らすだとかというようなことになれば、これはこれで高等教育への国の責任の放棄という点でも重大になるわけですね。  私は、この法案によりまして、本当に国立大学の学費もやはり上げざるを得ない。ごれは私ども考えただけでも九百三十億円の増。いろいろほかで収入があったとしても、この半分を学費で補おうとすると、学生一人当たりの学費値上げは四十二万一千円です。だから、三年後には国立大学の学費が百十六万円です、そうなれば。私学は百三十四万円ですから、これはもう本当にひどい事態になるわけですね。その点で、国立大学の学費についても、結局私立も国立も含めて、今の御答弁ではあいまいにしかお示しになっていないと言わざるを得ません。  ですけれども、国からの予算を抑え込めば、これはもう学費が上がらざるを得ないでしょう。暗にそういうことをにおわせていたというふうに私は受けとめているのですけれども、そういう点になるということがこの法案の重大な問題だということを指摘をしたいと思います。  そこで、私は改めて別の角度からまた問題にしたいと思うのですけれども、教育基本法にどのように書かれているかという点ですが、やはり教育の重要性につきましては、民主的で文化的な国家を建設する、この理想の実現は根本において教育の力にまつべきものだという前文がございますけれども、第三条の「教育の機会均等」を読み上げるまでもないと思いますが、いろいろな人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位または門地によって教育上差別されない、ひとしく教育を受ける権利があるということがあるわけですが、私は、今日の学費をめぐる事態というのは事実上この教育基本法が踏みにじられているというふうに言わざるを得ません。  それで伺いますけれども、こういう教育政策をとっている国がほかにありますか。イギリス、フランス、ドイツで高等教育の学費はどうなっているのか、ちょっとお尋ねします。
  207. 町村信孝

    ○町村国務大臣 先に一点訂正をさせていただきますが、私、先ほど所得税の子育て減税割り増しを十八歳以上二十三歳未満と申し上げたのは、十六歳以上、要するに高校生からということでございますので、ちょっと一点修正をさせていただきます。  今先生お尋ねの諸外国の状況でございますが、イギリスは戦後無料となっております。ドイツも七〇年代から大体無料ということでありますし、フランスも大学の授業料は無料、アメリカは州立大学、私立大学とも授業料を徴収をしているということであります。  ただ、最近の動きといたしましては、イギリスは来年から授業料を取るという方向で動いておりますし、ドイツの幾つかの州立大学でも授業料徴収が検討されている、かように聞いております。  ただ、お言葉を返すようでありますが、先ほど石井先生が、教育の機会均等が奪われ始めているのではないか、こういう御指摘がございましたが、私は、現実にもう高校進学率が九七%、八%に達し、さらに大学進学率も世界の中でも最も高い、五〇%近くになっている、この一事を見ましても、教育の機会均等が、極めて教育基本法の趣旨に沿って日本は現実に達成されてきているということの証左ではないだろうか。むしろ、そんなに大学進学率が高くて本当にいいのですかという声さえ出始めている昨今で、それは何%がいいかと文部大臣の立場で一律に申し上げることはできませんが、私は少なくとも今の高校進学率あるいは高等教育への進学率の高さ、これはまさに教育基本法を如実に体現をしている、戦後の私どもの、言うならば文部行政が正しかったことの証明ではないだろうかとさえ自負しているところでございます。
  208. 石井郁子

    石井(郁)委員 進学率の高さだけでいえば、日本だけがすぐれているわけではありません。それは欧米諸国がほぼ同じであります。文部省施策のこの文章の中でも、日本がようやく世界に追いついてきている、こういうふうに評価しているところでありますから、別にそれだけを日本の特殊な水準だというふうに言うわけにいきません。  しかし、私が申し上げましたように、学費の点でいうと、今まさに大臣御答弁のように、極めて日本は、国際的に見ても異常ですよね。  そして、私はここで総理にあえてお伺いしたいのですけれども、この法案の審議中にも、総理の方からはいろいろ日本の社会システムの上でグローバルスタンダードという言葉が盛んに聞かれるわけですよね。ですから、そういう点でいうと、教育の分野では国際的な水準に匹敵しないものが本当にいろいろあるのではないか、これはもう率直に認めていただきたいというふうに思うわけですね。  そして私は、今の進学率もやはりその中身が問われるわけでありまして、今、先ほど申し上げたように、行きたくても行けない、二人とも私学に通わすことができない、現実にそこまで来ているという点でいうと、機会均等がやはり崩されかけているというふうに言わざるを得ないわけです。  私は、何よりもやはり進学という、進学というか教育を受けたいという若者の夢に対して、あるいはその将来の人生設計までも狂わすようなこういう文教施策を、この法案によって枠をはめていいのかということを問題にしているわけであります。  総理に、この点での御見解をぜひお聞かせいただきたいというふうに思います。
  209. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、教育改革というものの中にさまざまな課題を持っておると思います。そして、我が国の教育システムの中における私学の重要性を否定するつもりは全くありません。私自身が私学育ちであります。また、私の子供たちの中にも私学に通っておる者もおります。  その上で、私は、日本の教育システム全体が他のシステムと同様に今一つの壁に突き当たっていると思っています。むしろ、等質の社会を目指し等質の教育を行ってきた、その壁に我々は突き当たっているんじゃないでしょうか。そして、より個性的な、より創造力のある、チャレンジ精神の旺盛な子供たちが育つような教育が求められているのではないでしょうか。そして、そういう質的な変化というものが必要でないとは私は考えておりません。  その上で、先ほども申し上げましたように、私学教育の必要性というもの、また受け持っております役割の重要性を何ら否定をいたしておりません。そして、そのために国は、今までも、私学助成あるいは家計に対する教育費の負担を少しでも軽減する、そうした努力は繰り返してまいりました。その精神は、これからも変わるものではございません。
  210. 石井郁子

    石井(郁)委員 総理はそのようにおっしゃいますけれども、事実上、この予算で三年間この総額を上回らない、前年度比を上回らないということがどういうことを招くのか、これについてはやはり事実として見ていただきたいというふうに思うのですね。  私あとちょっとの時間なんですが、法案の第十八条で教職員定数の改善も先送りをしています。これは、今子供たちの中にさまざまな問題が起こっていて、やはり一人一人に目が行き届いた教育をしなければいけない、また、教師にゆとりも欲しい、これはもう全国民的な声になっているというふうに思うのですね。不登校の子供たち、あるいは保健室登校というようなことがある国、これはもう、この点でも世界にはありません。  ちょっと具体的な数字でお聞きしたいのですけれども、この教職員定数の問題の中で、不登校の子供の対策として、毎年百四十八人の教員を配置していたのです。来年度の概算要求でも、本来なら百四十九人の配置を措置しなければいけない。ところが、この法案、先送りのために三十八人しか措置されていない。それから、保健室登校についていえば、わずか残り百九十八人であります。一年当たりで六十六人です。私は、試算でも、予算というか額にして六億円程度ではないのかというふうに思うのですね。  だから、こういう部分をやはり削らなければいけないという中身になっているのですよ。具体的に見ればそういうところが問題だ。法案の条文を読んだら、そこには出てこない。しかし、出てくる結果は、法案によってこういうことになるじゃないですか。被害を受けるのは子供なんですよ。  そういう意味で、こういう先送りということもやはり許せないし、本来なら直ちに三十人学級の計画に取り組むべきところであります。そういうことを申し上げておきます。  大変、これはもう答弁要りません。もう時間になりました。わずかの時間でしたけれども、こういう問題を見てまいりましても、私にとっては納得のいく答弁は得られませんでした。  しかし、総理大臣が私学の重要性について強調されたことは受けとめたいと思いますけれども、結局、今日の国家財政の危機をつくり出した問題にはメスを入れないで、向こう三年間の文教予算を抑制する、そして父母負担をふやすということで国民の教育権を奪うものになる、教育の機会均等を掘りましてしまうものだというふうに言わざるを得ません。私は、二十一世紀の日本の教育のためにもこのような法案は断じて許すことはできないし、撤回を強く要求をするものであります。  以上で質問を終わります。
  211. 中川良一

    中川委員長 この際、中島武敏君から関連質疑の申し出があります。石井君の持ち時間の範囲内でこれを許します。中島武敏君。
  212. 中島武敏

    中島(武)委員 私は、まず総理にお伺いしたいと思っています。  総理は、さきの通常国会で、志位書記局長公共事業縮減を求める質問に対して、公共事業も決して聖域とはしないと明言されました。そして、本法案でも公共投資関係費の量的縮減目標を掲げておりますが、率直に言って、公共事業費はこの法案で縮減できるのでしょうか。お尋ねしたいと思います。
  213. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 それ以前の問題として一つ触れておきたいと思いますのは、六月三日の閣議決定をいたしました財政構造改革推進方策の中に、公共工事建設コスト縮減について、「九年度以降三年間で諸施策を実施し少なくとも一〇%以上の縮減を目指す。」という目標を設定し、これを踏まえ、施策を早急に実施するということを述べておる、これは御承知のとおりであります。  その上で、今回の法案を作成いたすにつきましても、公共投資基本計画公共事業の長期計画について、その計画期間延長し、投資規模の期間内における実質的な縮減を図ることといたしました。当然のことながら、この計画を進めてまいります中には、コスト縮減対策の早急な実施、あるいは費用効果分析活用による効率的な整備、こうしたものの推進によりまして、より効率的であり効果的な事業の実施に努めていこうといたしております。  御質問の点につきましては、私どもはそれなりの効果を発揮いたすと考えております。
  214. 中島武敏

    中島(武)委員 総理から御答弁がありましたが、私は、それが本当に縮減の名に値するのかということを実は思います。  それで、具体的にちょっと聞きたいのですが、大蔵大臣公共投資基本計画を指針にして公共事業の長期計画が策定されることは周知のとおりであります。それで、この長期計画が毎年度の予算の指標となることも周知のとおりであります。  ところが、昨年の十二月の閣議決定をされました九七年度予算予算化されております七つの公共事業長期計画、五カ年計画ですけれども、海岸、港湾、空港、下水道、廃棄物処理施設、都市公園、交通安全施設の長期計画の合計額は五十一兆五千億円であります。前の五カ年計画、つまり九一年から九五年の計画の合計額は三十六兆五千三百五十億円なんです。つまり、率にしますと四〇・九%ふえているわけなんです。  それで、前の五カ年計画の場合には、単年度にならしますと七兆三千七十億円になります。新計画は、九六年から二〇〇〇年までですけれども、この五カ年計画を今回の法案で五年を七年に延長するとやりましても、単年度どれだけになるかというと、単年度は七兆三千五百七十一億円なんです。いいですか。これは単年度で見ましても五百一億円の増なんですよ。ふえこそすれ、減りはしないのです。  私は、この法案の考え方では、異常に膨張した公共投資はさらに将来にわたって続ける、そういうふうに宣言しても同じじゃないかと思う。大蔵大臣お答えいただきたい。
  215. 三塚博

    三塚国務大臣 この公共投資基本計画、また長期計画、その計画期間は御指摘のように延長することになりました。投資規模実質的な縮減を図る、その効果を出していかなければなりません。  また、公共事業に係る予算については、平成十年度以降二年間、集中改革期間といたしました。この期間におきまして、経済構造改革関連の社会資本の整備について、物流の効率化対策に資するものを中心として、優先的、重点的な整備を行うことといたしたところであります。引き続き、相対的に立ちおくれております生活関連の社会資本への重点化をいたすことといたしました。  三点目といたしまして、コスト縮減対策の早急な実施や、費用効果分析活用による効率的な整備の促進等を図ることとする基本方針を立て、改革に取り組む所存でございまして、こういう中で集中期間は七%という枠内に入る、こういうことであります。
  216. 中島武敏

    中島(武)委員 私が指摘したことにはちっともお答えがないですね。  私が言ったのは、繰り返しては申しませんけれども、わからぬかったか、わかったのかわかりませんけれども、私が思うには、要するに、今度は七カ年にする。延長する。しかし、いいですか、大蔵大臣聞いていますか、昨年の暮れに閣議決定した七つの長期計画、五カ年計画、これはその前の計画に比べるとふえるということになっているじゃないかということを私は指摘したんですよ。それについて、大蔵大臣の方からはちっともこれはお答えがない。  実は、もう大蔵大臣もよく御存じのとおりなんだけれども、昨年の暮れというのは一体どういう時期か。その前に総選挙が行われて、公共事業問題が大問題になってこれをどうするか、財政再建が大問題になってどうするかということが選挙の争点になっていたんじゃありませんか。そういうことを経て、後に行われたこの予算編成、この中で具体化をしているものが、実は、縮減縮減と言うけれども、縮減になってないということを私は指摘しているんです。だからこれは、何のことはない、減らすという話を大分やりました、やられましたけれども、ちっとも減らすことになってないじゃないかというのが私の指摘なんです。  それで、縮減ということを言いますけれども、さっきも総理が触れられた対米公約として打ち出した四百三十兆円、この公共投資基本計画を決めて、公共投資の肥大化をさらに促進をするということを決めたのが一九九〇年。それで、このときの国と地方の公共投資公共事業費は合わせると幾らか。三十六兆八千億円なんだ。ところが、縮減するとしている来年度の投資計画は幾らか。四十七兆ですよ。もう五十兆近いんですね。ほとんど変わらない。九〇年と比べても二八%の増じゃありませんか。これで縮減ということが言えますか、皆さん。これは、再び公共事業に、それこそ聖域をつくるものじゃないですか。私は、このことを指摘をして、次の問題に移ります。  この肥大化に次ぐ肥大化、これを続けてきた公共事業、今やマスコミの問題にもなる、社会問題にもなる、こういう事態ですよ。この公共事業の浪費構造にメスを入れて、大胆に削減して、国民が豊かさを感じられるような公共事業とかあるいは社会保障に、何で回すことができないんですか。これは私は、政財官の癒着があってこれを正せない、ここに一番の根源があると思っています。  そこで、具体的に聞きます。  建設省の認可法人で社団法人日本橋梁建設協会という団体があります。この団体はどういう目的で何をやっている団体か、建設大臣、お答えいただきたいと思います。
  217. 瓦力

    ○瓦国務大臣 中島委員にお答えいたします。  今御質問の点につきましては政府委員をしてお答えをさせていただきますが、公共事業は、御案内のとおり、我が国の脆弱な国土、狭隘な国土の中で社会資本をいかに整備していくか、このことが重要な課題でありまして、国民のニーズにこたえて国土整備を図っておるわけであります。よって、それぞれの財政につきましては、これからも厳しく見直しながら、効率的に、また整然と行われるように、一層公共事業につきましては留意をしながら、国民のニーズにこたえてまいりたい、こう考えておるわけでありまして、中島委員の一方的な御意見には了としない点がありますので、一言前段に申し上げておきたいと思います。
  218. 佐藤信彦

    佐藤(信彦)政府委員 お答えいたします。  社団法人日本橋梁建設協会についてでございますが、昭和三十九年六月十二日に設立されました建設大臣の主管の公益法人でございまして、現在橋梁建設の関連会社六十九社が会員登録されております。  この協会の定款によりますと、同協会の設立目的としましては、「橋梁建設業の健全なる発達を図ることにより国土の開発を推進し、もって公共の福祉増進に寄与することを目的とする。」というふうに定められております。また、定款には、目的の達成のために同協会が行える事業といたしましては、幾つか挙げられてございますが、橋梁建設に関します技術の調査研究並びに試験、さらには、資料の収集、編さん、刊行、さらには、啓発宣伝、それから、政府機関、公共団体並びに学術団体に対する建議並びに意見具申等々の内容が挙げられております。
  219. 中島武敏

    中島(武)委員 ところが、この協会の九月二日に開かれた「九月度運営委員会議事録」によりますと、明らかに今答弁のあった設立目的に反したことが行われている。専務理事の伊東仁史氏ほか、石川島播磨、宮地鉄工所、横河ブリッジ、川田工業、駒井鉄工、高田機工、東京鉄骨橋梁、トピー工業、日本鋼管、三菱重工、日立造船など鉄鋼メーカーの各委員が出席をして、幾つかのことを決めました。  これはその議事録ですけれども、その中に非常に重大なことが書かれております。それは、「三、脇雅史氏(前建設省近畿地方建設局長)の自民党参議院議員比例区候補者への推薦について」を議題としたというんです。そして、「伊東専務理事から、平成十年七月に実施が予定されている参議院議員選挙に自民党の比例区候補者に脇雅史氏を当協会から推薦したいとの提案説明があり審議の結果、原案の通り脇雅史氏の推薦を第二百八回理事会に諮ることを決定した。」とあります。  私は、非常にこれは重大な決定を行ったことだと思うのですけれども、建設大臣はこれを御存じですか。
  220. 瓦力

    ○瓦国務大臣 中島委員にお答えをいたします。  公益法人が特定の政党を支持したり政治活動を行うことは、政党は社会の公益のために活動するものであるという観点から考えますと、公益法人の目的の範囲内において法律上許されるものと考えるわけでございますが、今、具体的な事例、事案の適否につきましては、その目的を逸脱しているのかどうか、こういったことを含めまして十分検討してみる必要がある、こう存じますので、委員指摘指摘といたしまして受けとめておきたいと思います。
  221. 中島武敏

    中島(武)委員 私も、公益法人問題についての閣議決定をされたものを持っております。「「公益法人の設立許可及び指導監督基準」及び「公益法人に対する検査等の委託等に関する基準」について」という平成八年九月二十日付の閣議決定なんですけれども、これは何が書いてあるか。  これによりますと、「目的」というところがありまして、これは「公益法人の設立許可及び指導監督基準」、ここに書いてあるのですけれども、「一、目的 公益法人は、積極的に不特定多数の者の利益の実現を目的とするものでなければならず、次のようなものは、公益法人として適当でない。」ちょっとお触れになりましたけれども、「後援会等特定個人の精神的、経済的支援を目的とするもの」、これは適当ではないと非常にはっきり閣議で決めているわけなんです。ところが、実際には、推薦を行うということを決定した、こうあるのです。これは全く目的に反する、適当でないことがやられたのじゃありませんか。
  222. 瓦力

    ○瓦国務大臣 せっかく中島委員の御指摘でございますので、当方はまだその状況を得ておるところではありませんが、調べておきたい、このようなことを先ほど以来申し上げておるところであります。
  223. 中島武敏

    中島(武)委員 全く適当でないのです、これは。まあ、調べるというのですから調べてください。  それから、さらに別の、これも建設省です。建設省認可の公益法人である高層住宅管理業協会というのがありまして、ここが傘下の加盟企業に自民党特定候補の選挙支援を依頼している事実があります。  ここに実は私持ってきているのですけれども、高層住宅管理業協会が、「代表者各位」、傘下企業ですね、ここにあてた文書があります。  その文書はどういう文書かというと、「代表者各位」で始まっているのです。それで、ここには、ちょっと前の方省略しますが、「さて、来年七月に参議院議員選挙が予定されておりますが、当協会設立時に多大なるご尽力を戴きました自由民主党清水達雄議員から、比例代表候補に内定したことに伴い、同封案件につきまして協力依頼がございました。」こうなっているのです。「社団法人高層住宅管理業協会理事長川崎達之」と、こういうふうにちゃんとはっきり書いてあります。  さて、これを受けた傘下企業は何をしているか。これを受けた傘下企業は「参議院議員「清水達雄後援会」入会について(依頼)」というのを出しているのです。それで、何を依頼しているか。時間もあれですから簡単に言いますけれども、後援会員を集めてもらいたい、こういうことを指示しているわけですね。こういうことが、あのいまさっきの指摘のところだけじゃなくて、この文書でも出しているのですね。これも、言うまでもなく、さっき私が読み上げました閣議決定、これに反すること明白じゃないですか。官房長官からも伺いましょう、所管ですから、公益法人の。どうですか、こんなことが許されますか。(発言する者あり)
  224. 中川良一

    中川委員長 静粛に願います。
  225. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 質問あろうかと思いまして、公益法人というのを調べましたけれども、国の所管が六千八百十五、それから委任事務で都道府県が一万九千(中島(武)委員「聞いたことに答えてください」と呼ぶ)まず、それだけあるわけです。それで、主管大臣と言うけれども、主務大臣の判断で設立が行われる。私どもの方の仕事は、公益法人行政推進室で六名の人員で公益法人の指導監督に関する総合調整、各種基準の策定、公益法人年次報告の作成等、これを行っているわけでございまして、各省で主務大臣がこれをやっている、こういう状況でございます。今の事実もお聞きをいたしました。これは、本当にやっているとすれば、公益法人のあれではないと私も思っております。
  226. 中島武敏

    中島(武)委員 総理、実はさらに重大なのは、これらの公益法人を通じての高級官僚OB支援の事実上の選挙運動が自民党本部の指示によって行われているのではないかという疑惑があります。  実は、長野県議会でも、全国公立学校事務長会をめぐる自民党特定候補者の事実上の参議院選挙活動が問題になっています。ここでも、「自由民主党とともに歩む田沢ともはるを支援します」という文書が配られて、後援会員十名連記するようになっています。様式が全く同じなんですね。どんなものかと申しますと、こういうものなんです。違うところなんですけれども、全く同じものなんです。この一番最初に、だれだれを支援します。これも、だれだれを支援します。そして、その次には、左の肩には顔写真、その下には若干の経歴、こういうふうになっています。そして氏名、年齢、判、それから住所、電話、書式は全く同じものが、全然別のところですけれども、こういうものが配られている、こういうことなんですね。  私はこの点は非常に重大だと思うのですけれども、しかも、先ほど紹介をしました「清水達雄後援会名簿の署名集めのお願い」という文書がありまして、ここには御丁寧にも「署名して頂いた後援会の入会者には自民党から確認の電話が入る場合があります。」となっておりまして、それにどう答えたらよいかというマニュアルまでついているんですよ。いいですか、これですよ。この文書なんです。「署名して頂いた後援会の入会者には自民党から確認の電話が入る場合があります。その時は次のようにお答えをお願いします。」となっている。それで「質問」と書いてありまして、「清水達雄後援会に入会していますか。」「答え 入会しています。」「質問 比例代表選挙ではどの政党を支持しますか。」「答え 自民党を支持します。」  公益法人がこういうことを傘下のところにやっていていいですか。私は、この点については非常に重大な問題だと思うんですね。これは何かといえば、自民党本部が公益法人や関連業界を通じて事実上の参議院選挙を強要していることをうかがわせるものじゃないかと思うのです。  自民党総裁でもある総理大臣、自民党総裁としてこんなことが公然と行われていることを容認されますか。答弁いただきたいと思います。
  227. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、中島議員の御指摘の中には幾つかの問題点が含まれておるように思います。  まず第一は、自由民主党の来年度参議院選の比例代表に立候補を予定しているそれぞれの人々の後援会活動という部分であります。そして、それは各本人が自分に後援会をつくり、その後援会の名簿の正確を期すためにさまざまな注意を書くことはあろうかと思います。これがまず第一点であります。  二点目は、自由民主党本部が云々というお言葉の後に、「という疑惑がある」という言葉をお使いになりました。私は、政党対政党の中で、他党に対しそのような言葉を私自身用いる気にはなりません。そして、私どもの候補者それぞれが自分たちの努力によって党勢拡大の力を積み重ねていくこと、これを私は何ら否定するものではありません。  第三に提起をされましたのは公益法人の行動についてでありまして、これは、それを主務しております建設大臣の方から調べてみましょうというお返事を申し上げたとおり、その主管する閣僚が知らない状況のことで、急に私がお問い合わせを受けても、私もわかるわけがありません。
  228. 中島武敏

    中島(武)委員 今総理から答弁がありました。ありましたけれども、一番最後に言われたように、公益法人がこういうことをやるというのはよろしくない、それは総理も認めておられる。先ほどは答弁もあった。それで、調べてみる、こういう話になっております。  私が言いたいのは何か。やはりこういう例というのは絵にかいたように政財官の癒着を鮮明に浮かび上がらせているのではないか。だからこそ公共事業にメスが、浪費構造にメスが入らないのではないかということを私は言いたいのです。  皆さん、先ほど指摘した日本橋梁建設協会の議事録では、また別のところに書いてあるのですよ、この先ほどの議事録には。「平成十年度予算案の公共工事費は財政構造改革により大幅に削減されることは理解出来るが、概算要求の平成十年度道路関係予算確保と新たなる道路整備五箇年計画の財源確保等のためには道路特定財源制度の堅持等が絶対に必要であり、早急に自民党国会議員に要望すべきとの結論に達した。」そして、朝食会をやるということが決められている。  私は、こういう癒着のもとでは、公共事業、中でも道路というのは特に聖域扱いにされようとしているのではないか。全体として公共事業は七%減であります。ところが、現に来年度の概算要求を見ますと、国費の部分は一般道路事業ではわずかに二%の減、有料道路事業では国費で一%増、これは一%増です。こうなっているのではありませんか。  私は、時間もないものですから、こういう癒着は断ち切るべきではないかということを申し上げたい。そして、こういう癒着構造の結果、むだと浪費構造を拡大するとともに、動き出したらとまらない仕組みですね、これが温存されているということが私は重大だと思うのです。  その一つは、今言いました道路特定財源、これは道路建設整備だけに財源を保障する仕組みであります。自動車がふえれば道路特定財源がふえる、道路特定財源がふえれば道路がふえる、道路がふえれば自動車がふえる、こういう悪循環にメスを入れないということになっています。  また……
  229. 中川良一

    中川委員長 中島君に申し上げます。時間になりました。
  230. 中島武敏

    中島(武)委員 公共工事については、計画段階から、費用対効果、費用はどれくらいかかるのか、またその費用に見合うだけの効果があるのか、環境に与える影響はどうなのか、採算性はあるのか等々のあらゆる面から検討して、その結果を住民に公開し、判断を住民、国民に仰ぐべきであるが、そういうシステムを本格的につくろうとしない。  また……
  231. 中川良一

    中川委員長 再度申し上げます。時間です。
  232. 中島武敏

    中島(武)委員 はい、もう終わります。  状況が変化したり、国民や住民の要求が変わって当初の目的が失われても、一たん決定したことだからと見直しをせずにどこまでも突っ走る、こうしたやり方が国民、住民の要求から離れた道路やダムをつくり、財政危機の根源となっているのです。私は、公共事業の問題や浪費には手をつけないで……
  233. 中川良一

    中川委員長 再々度申し上げます。時間です、中島君。
  234. 中島武敏

    中島(武)委員 医療や年金、教育など、国民生活ばかりに負担を強要することに道を開く今回の財政構造改革法案には賛成できません。撤回することを要求します。  答弁を求めようと思いましたが、時間でありますから、これでおしまいにいたします。
  235. 中川良一

    中川委員長 これにて石井君、中島君の質疑は終了いたしました。  次に、濱田健一君。
  236. 濱田健一

    濱田(健)委員 財政構造改革を含めて六大改革推進当たりましては、中央、地方、各公務員の積極的な努力が求められている今日、公務員の賃金、そして労働条件、その安定的な確保というのは不可欠なものだというふうに私は思います。  今回の財政構造改革法案のもととも言える財政構造改革推進についてが六月三日に閣議決定されていますが、そこでは人事院勧告の尊重という政府の基本方針が明記されております。この基本方針はきちっと確保しなければならない、放棄してはならないというふうに考えているところでございますが、総務庁長官大蔵大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  237. 小里貞利

    ○小里国務大臣 憲法上、労働基本権の制約にかかわるいわば代償措置の根幹をなすのが、ただいまお話しの人事院勧告制度である、かように考えております。
  238. 三塚博

    三塚国務大臣 御指摘の、人事院勧告制度を尊重するという基本姿勢は財政当局も変わりはございません。
  239. 濱田健一

    濱田(健)委員 財源的に厳しいものがあるということは承知しております。しかしながら、既に今年度の予算には給与改定財源一千百億円確保されているのは御案内のとおりでございます。  総人件費の抑制ということとの関連性もあるというふうに思うのですが、今回の勧告は、九七年度の部分として早期にそして完全にこの勧告を、今お二人お話しくださいましたように、労働者のいわゆる交渉権、争議権というものが与えられていない、この基本権の代償措置としての尊重、これが大事だというふうに思うのですが、再度そこの部分を念を押してお聞きしたいと思います。
  240. 小里貞利

    ○小里国務大臣 ただいまの話は、いわば九七年度のものとしての人事院勧告制度をどう思うか、そういうお話であろうかと思うのでございますが、一つは基本的考え方を申し上げますと、当然先ほど申し上げましたように勧告は尊重されるべきものであります。しかしながら、ただいま議員も御指摘がありましたように、国政全般なかんずく財政上の事情も配慮しないわけにはいきません。重ねまして、また財政構造改革推進に関する去る六月三日の閣議決定事項等もございまして、これらのことも十分横にらみをしながら総合的に判断しなければならない側面もある。しかしながら、先ほど申し上げましたように、この人勧は尊重をするという基本に立ちまして、できるだけ早期に、そして完全支給が実現できるように努力をいたさなければならない、そういう責務を感じておるところでございます。
  241. 三塚博

    三塚国務大臣 人事院勧告制度を尊重することは、前段申し上げたとおりでございます。  したがいまして、政府とすれば、「総人件費を極力抑制する。」といっただいま御指摘のような閣議決定がございます。九年度の人勧実施が、十年度予算、人件費の当然増になることになりますので、人勧抑制以外の手段、例えば定員削除等による総人件費抑制の見通しを含め、給与関係閣僚会議等の場において議論を尽くし、検討し、結論を出してまいりたいと考えております。
  242. 濱田健一

    濱田(健)委員 自民党の方も、きのうの景気対策会議の中で、人事院勧告の部分について触れておられるというふうに聞いております。  前回もお話し申し上げましたが、この人事院勧告という部分は、当の公務員だけではなくて、家族を含めて一千万人と言われる皆さんに影響を及ぼすというふうに考えられます。そして、その他多くの国民生活の部分にも直接間接の影響を持っているというふうに、私自身が学校の教員でしたので、実感として持っているというふうに私は訴えさせていただきます。個人の消費を、差額追給とかになりますと、年末、お金の要るときでございますので、上向かせながら、内需拡大による景気回復ということの一助にもなるというふうに思うのです。  やはりこのことを、しっかりと早期に完全実施をしていただきたいというふうに思うのですが、景気の対策の一助という意味でも、早期に完全実施という方向性を訴えさせていただきたいと思うのですが、総務庁長官大蔵大臣、いかがでございましょうか。
  243. 小里貞利

    ○小里国務大臣 今次の人事院勧告がなされまして以来、それを真摯に受けまして、関係閣僚会議等を二回ほど開きました。その関係閣僚会議におきましても、ただいまお話がございました景気関連の発言があったことも事実でございます。  しかしながら、先ほども申し上げましたように、いろいろな国政上の、殊に財政に基づく配慮をしなければならないもろもろの点等もございますので、心情的には、先ほど申し上げましたように可能な限り早期に、しかも完全実施ができるべく関係政府機関にも御相談を申し上げなければならぬ。また、そういう協議も今調いつつあるところでもございます。殊に、昨日開かれました自民党の経済対策会議におきましても、お話のとおり早期実施を促す意見が集約されましたことも重要な一つの参考である、さように考えております。  なおまた、年内差額支給に関連しての話がございましたが、そのことも十分、これが実施をされるとした場合に必ず間に合うように、長年の経験、実績に照らしまして、私としては期待を申し上げておるところでございます。
  244. 三塚博

    三塚国務大臣 重ねての御質問でございます。言わんとする御趣旨は痛いほどわかるわけでございますが、前段申し上げましたとおり、総人件費の抑制という閣議決定を踏まえまして、財政の責任者といたしますと、総定員法等の関係も精査をしながらこれに対応していかなければならぬと思っております。これからも給与関係閣僚会議等におきまして、全般を見ながら取り組んでまいりたいと思っております。
  245. 濱田健一

    濱田(健)委員 連立内閣といいますか、連立の時代が始まりまして、この公務員のいわゆる代償措置としての人事院勧告、先ほど小里長官もお話しくださいましたとおりに、給与関係閣僚会議等々開かれておりまして、平成五年から見ますと、取り扱いの閣議決定が九月段階、十月段階で行われております。いわゆる給与法案を提出するための閣議決定が、去年は少しおくれてしまいましたけれども、過去三年間は十月台ということでございまして、公務員の仲間、たくさん私の周りにもいるわけですが、ことしはどうなるのかということの心配がたくさんあります。  まして、御勇退された先輩たちの年金にもこれはひっかかってくるということも含めまして、ぜひとも早期の閣議決定を行っていただき、給与法を提出していただきたいというふうに思っているところでございまして、くどいようでございますが、総務庁長官大蔵大臣そして総理にも、その方向性、決意をお伺いしたいというふうに思います。
  246. 小里貞利

    ○小里国務大臣 議員がおっしゃることは十分わかりました。なおまた、先ほど大蔵大臣の方からも、財政的視点に立ってのお話もお聞きのとおりでございます。  率直に申し上げますと、この関係閣僚会議というのは私は重要な一つの検討の機関である、かように思っております。この座長はここにおいでになる内閣官房長官にいろいろ煩わしておるところでございまして、先ほどの大蔵大臣を初め関係機関に、私の立場といたしましては、それらの実情を十分しかも旺盛に説明を申し上げました。できるだけ先ほど申し上げました方向で整理されることに努力を尽くしたい、かように考えております。
  247. 三塚博

    三塚国務大臣 重ねての御質問でございます。  給与関係閣僚会議におきまして、十分に今後も論議を尽くしていかなければならないことはおわかりいただけると思います。当財政当局といたしますれば、いたずらに決定がおくれることは適当でないと考えております。仮に人勧を実施する場合には、これまで長年にわたって差額が年内支給されるということで行ってまいりましたことを踏まえますと、可能であれば十月中に、十一月中に政府としてもその方針を決めなければならぬという目途で、ただいま座長、官房長官を中心に議論を詰めておるところであり、今後もそれをめどとして取り組んでまいりたい、こう思っております。
  248. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先ほどからの御議論の中で私一つ気になることがありますので、冒頭それは申し上げさせていただきたいと思うのであります。  これは、濱田議員、私はむしろこの勧告の早期の提出を求める意味から景気に絡めての御指摘をいただいたのだと思います。しかし、私は、人事院勧告はやはり労働基本権に対する制約の代償措置という位置づけからのみ議論をした方がよい性格のもの、率直にそう感じておりまして、この点だけは、他の要素を省いたその上でこれはお答えをすべきことではないかと思います。  そして今、給与関係閣僚会議等の実質的な部分についても、それぞれの閣僚から触れてのお答えがございました。差額が年内に支給されるようにということから考えます場合に、勧告を実現に移そうとした場合に、遅くとも十一月には政府としての取り扱いの方針を決めなければなりません。労働基本権制約の代償措置としての人事院勧告の重みは十分わきまえて、諸般の論議を待ちたいと思います。
  249. 濱田健一

    濱田(健)委員 ありがとうございました。  大蔵大臣が十月中ということから十一月中と言われましたが、十一月中ということが正しい答弁で……(三塚国務大臣「そうです」と呼ぶ)ありがとうございます。ぜひ御努力をいただきたいというふうに思います。  次の点に移らせていただきますが、財政構造改革、中央、地方を含めて対応をしていく必要があるというのは、この三日間の論議でも当然のごとく各委員がお話をされておられます。  私は、行革会議財政構造改革会議等の論議が進む中で、地方分権推進委員会論議が少し影が薄くなってしまったんじゃないかなという、これは私自身の感想であるわけでございまして、そうではないというようなお話も当然あると思うんですが。  私は、国と地方の間の税収配分と歳出区分の食い違いというのが受益と負担のアンバランスを構造的につくり出してきたという点もあると思うんです。それで、この乖離の解消こそが地方分権の本来の姿であらなければならないんじゃないかなということを考えます。つまり、分権の進展が、地方財政だけではなく、国家財政の健全化というものも促す最も着実な方策になり得るのではないかというふうに考えるのでございます。  いわゆる財源の問題は大きなことでございまして、歳出に対する住民のチェック機能を回復するためには、権限の移譲とともに自治体の税財源を充実し、受益と負担のバランスをはっきりさせることも不可欠であるというふうに私は考えます。住民に、納税を通じて、行政コストが本当にどれだけかかるのかという実感も感じていただくということも大事ではないかというふうに思うわけでございます。  それで自治大臣に見解をお伺いしたいんですが、国、地方の財政構造あり方そのものの改革を前提とした財政再建でなければ、財政赤字問題の根本的な解消はできないのではないかというふうに思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  250. 上杉光弘

    ○上杉国務大臣 お答えいたします。  我が国の行政は、法令等に基づき、国、地方が役割を分担しておりまして、その役割分担に基づき、最終支出ベースでは地方が約三分の二を分担しているのに対し、租税総額に占める地方税の割合は約三分の一となっております。ここに厳しさがあるわけでございます。  この地方における歳出規模と地方税収との乖離をできるだけ縮小する、御指摘の点もここがあると思うのでございますが、この点を、歳出規模と地方税収との乖離をできるだけ縮小するという観点に立ちまして地方税の充実確保を図る必要があることは、御指摘のとおりでございます。  しかしながら、その一方で、地方税収は地域間で偏在するという問題がございます。したがって、地方の財源は地方税と地方交付税を組み合わせた形で確保する仕組みとなっているわけでございます。  今後、地方財政の自主性を高める見地から、地方税の充実確保を図るとともに、同時に、財源調整、財源確保の役割を有する地方交付税の必要額の確保を図るなど、地方税財源の充実強化を図ってまいる所存であります。
  251. 濱田健一

    濱田(健)委員 自治大臣がおっしゃいました今の観点、非常に大事だというふうに思いますので、御努力をいただきたいというふうに思います。  次の点ですが、いわゆる消費動向の回復を含めて景気刺激をやっていく部分について、前回も特別減税の話をさせていただきました。今、与党の中でも特別減税の話を社会民主党は出しておりますし、自民党の方は、政策減税はどうかというようなお話も、ある部分について出ているようでございます。  私は、政策減税は、対象をある部分、こういう人たちにというふうに限定できることから、特別減税に比べて財源面での制約は受けにくい、ある程度これだけあればしっかり足りるというような部分がわかるわけでございます。しかしながら、それがゆえに、国民全体への恩恵が、という言葉を使っていいのかどうか、広がっていかない、限られた部分しかその波及効果がいかないというふうに思っているわけでございます。  これは尾身経企庁長官に御見解を伺いたいと思うんですが、純粋に景気対策の観点からすると、やるやらないは別にして、特別減税と政策減税、どちらの方に有効性があるのか、変な聞き方かもしれませんが、御見解をいただければ幸いです。
  252. 尾身幸次

    尾身国務大臣 いろいろなことを考えなければならない経済政策でございますから、純粋にということになるかどうかわからない点がありますし、また、特別減税はいわゆる消費税の特別減税というふうに理解をいたしますが、政策減税が具体的に何を示すのかというまた問題もございます。それからもう一つは、税の問題は、党税調、与党税調また政府税調の御議論を踏まえた上で最終的には決定する問題であるという前提で、私の今の考え方を申し上げさせていただきたいと思います。  現在、景気状況は、従来からお話を申し上げておりますとおり、一応回復過程にあるというものの、ややその足取りが鈍いという状況でございまして、その中で、消費者心理あるいは企業家心理というものが非常に大きなファクターになっている。つまり、消費者も、消費者所得トータルとして、また企業家の方も、企業の収益が上がっているという中におきまして、懐の方はそこそこであるにもかかわらず、これが必ずしも消費の増大あるいは設備投資の大幅な増大につながらないという実態にあるというふうに考えております。  他方、財政は御存じのとおり大変に厳しい状況でございまして、私どもといたしましては、そういう厳しい財政状況のもとで、また、先ほど申しましたような経済状況のもとで、赤字国債を出して借金をして、そのお金を減税という形で消費者にというか国民に回しまして、その減税をしたお金で物を買ってもらって景気をよくするという形の方式は、効果の点におきましても、それから内容の点におきましてもなかなか難しいのではないかというふうに考えております。  むしろ私どもは、経済運営の基本は、安易に財政に頼らず民間活力中心の経済の活性化を図っていくというところに置くべきであるというふうに考えております。例えば、このメガコンペティションの中で法人課税の軽減の問題も考えておりますが、それは法人課税の軽減をしたそのお金で法人が物を買うということではございませんで、法人課税の減税という事業環境を整えることによって、法人が日本という国を事業活動の拠点として選ぶ、そしてそこで工場をつくったりあるいは生産をふやしたりすることによって経済活動を活発化させて、その経済活動の活発化の中で国民の所得をふやし、税収も上げていく、こういうことになるのではないかというふうに思います。  それから、バブルの問題に関しまして土地税制等についても、いろいろと土地流動化あるいは土地の有効利用を図って、それを通じて経済の活性化を図っていきたいと思いますし、そのための税制の手当てというものも、実は、減税によって、その減税の財源で支出をふやして、税金そのもので支出をふやしていくということではなしに、減税あるいはそういう対策をとることによりまして土地取引を活発化させる、あるいは企業活動を活発化させるということの中で、その活発化した企業活動によって国民所得をふやす、経済水準を上げていく、そういうことによって結果的には消費者の懐も豊かになり雇用もふえる、それによって消費活動あるいは設備投資等の経済活動が活発化する、こういうふうな筋書きで考えていく方が、全体としての日本経済の活性化といいますか、全体としての方向としては妥当なのではないか。そして、それによってまさにいわゆる経済構造改革財政構造改革が車の両輪としてやっていけるのではないか、そんなふうに考えている次第でございます。
  253. 濱田健一

    濱田(健)委員 政策減税、特別減税、どちらが効果的かという部分につきましては、もう尾身長官、当然閣僚の立場としては今のような御答弁になるだろうというふうに思います。私たちも最初から、今の現状の中で特例公債、赤字国債出してということを直接的に申し上げているわけではないということは理解をしていただきたいというふうに思います。  その上で、例えば私の手元にある新聞の記事なんですが、これは書かれているとおりにちょっと読ませてもらいますと、  自民党は内々に景気対策として法人税の引き下げなど税制改革、土地流動化策、規制緩和の前倒しを検討していると伝えられている。財政支出に頼らない内容であり、この考え方は評価できる。しかし、気になるのはこれらがすべて企業優先の対策にあることである。  法人税の引き下げは本来、景気対策ではない。日本の税制改革全体の中で検討すべき重要課題である。土地流動化策も土地政策の在り方として考えるべき問題である。景気浮揚の名の下に安易に決めるべきではないだろう。  政府には消費者の視点に立った対策を要望したい。今回の景気停滞は消費税引き上げによる消費の冷え込みにある。税制改革も企業向けだけでなく、所得税減税なども視野に入れた消費者本位の対策を考えるべきである。 これは、財源の問題を当然考えながら、我が党のある程度考え方といいますか、何とかならないのかなという主張と相まっているという意味で御披露申し上げました。  大蔵大臣にその他御質問の予定をしておりましたが、時間が参りましたので、きょうはこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。
  254. 中川良一

    中川委員長 これにて濱田君の質疑は終了いたしました。  次に、粟屋敏信君。
  255. 粟屋敏信

    ○粟屋委員 まず、私は、この法律の性格、また、それをめぐる諸問題につきましてお伺いをいたしたいと思っております。  およそ法律というのは、国民の権利義務にかかわるものは、これは法律で制定をしなければなりません。また、最近では、政策の目標を明らかにしてそれを実現するための手段、手法についての法律もあると思うわけでございますが、今回のこの法律案は内閣の予算編成機能を制約する法律であろうと思うわけであります。  法制局長官に伺いますが、こういう法律は初めてであるか、異例であるか。また、今橋本内閣が財政再建をぜひやろうとするならば、法律の形よりも閣議決定による財政再建方針というものであってもいいのではないかと思いますが、その辺の御見解を伺いたいと思います。     〔委員長退席、中山(成)委員長代理着席〕
  256. 大森政輔

    ○大森政府委員 閣議決定と申しますのは、御承知のとおり、内閣としての意思を決定する重い方式ではございます。しかしながら、閣議決定いたしました事項、これは内閣限りでいつでもこれを変更することができるということでございます。  これに対しまして、この法律が成立いたしますとどういう効果を持つかという点を考えてみますと、ただいま御指摘になりましたように、予算編成に当たって政府のよるべき基準、方針が、平成十年から三年ないし六カ年という中長期にわたって国会の意思として明示されるということになりまして、内閣がこの間、みずからの判断のみによって自由に、この法律によって定められました方針等を変更して予算を作成することは許されなくなるという法律的な効果が生ずる、この点にこの法律案の大きな意義があるということでございます。
  257. 粟屋敏信

    ○粟屋委員 今いみじくもお話しになりましたが、この法律は橋本内閣が御提案になったわけでありますけれども、今後六年間の内閣の財政機能、あるいはまた財政再建の目標達成の義務を課することになるのではないか、私はこういう感じがいたします。  そういうような問題をはらんでいると思いますが、橋本総理があえて閣議決定によらず法律の提案に踏み切られた理由をお伺いいたしたいと思います。
  258. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 昨日も同様の視点からの御指摘がございまして、委員会における議論がございました。今、法制局長官から法制的な見解を述べられましたので、そうした重複を避けて申し上げたいと存じます。  我が国の今置かれております財政状況というものが、それぞれの原因の積み重ねの中で、今や破局的なという言葉を使うにふさわしい、遺憾ながら先進国中最悪の状況にあるということは、既に申し上げるまでもありません。そして、この状況を放置することはできないということも、私は、恐らく大半の皆さん、御意見は同じであろう。そしてその上で、とるべき施策として幾つかの視点があり、それが今日の御論議を呼んでおるものと存じます。  しかし、私は、この法案に盛り込みましたような、前期三年、後期三年、二〇〇三年までにGDP対比三%以下という国債の縮減目標を立て、赤字国債から脱却をしたい。許されるならば、これが国会の御承認を得、法律として定められ、そのもとに全員が力を注いでいく。その皆という言葉を使いましたのが、昨日大変おしかりを受ける原因になりました。しかし、国会がその法律を認めて成立をさせていただきました場合を想定するなら、皆という言葉を使わせていただくことは許されると思います。  そして、同時に、産業構造経済構造を変えていく努力、行政の仕組みを変えていく努力、その他それぞれの目的に向かって努力をしながら活力のある社会を築きますためにも、この目標達成のための法律をつくらせていただきたいと願いました。
  259. 粟屋敏信

    ○粟屋委員 財政の危機、これは総理のおっしゃるとおりでございまして、私も深刻に感じております。これを再建をする、また構造改革を実施をする、これは今喫緊の課題であって、この成否が、また私は日本の将来にもかかわってくると思うわけでございます。これは単に橋本総理、橋本内閣だけの課題ではなくて、国会の力をかり、国民の理解を得て、六年間、あるいはさらに延びるかもしれませんけれども、行政権を持つ者がその拘束を受けてしかるべきである、そういうお考えであると私は思うわけであります。それはそれとして結構なことであります。  ただ、私は、単年度の財政抑制、これはそれぞれの努力によって達成は容易であるかもしれないと思いますけれども、平成十五年度の財政赤字GDP比三%以下、また特例公債ゼロ、これは、言うはやすくしてなかなか困難なことであろうと思うわけであります。  一昨日にも申し上げましたように、要調整額、それに国鉄、林野の債務をどうするかという問題もありますし、また三・五%の成長をいかにして確保するかという問題もあるわけであります。構造改革のための経済計画、そこで描いておられた経済の姿が、私は今実現をしていないと思うわけであります。  平成八年度、これも三・五%ではなくて実質、名目ともに二・五%。平成九年度名目三・一%、実質一・九%と言うけれども、尾身経済企画庁長官が、目下我が国経済は停滞状況にある、一・九%実質経済成長は難しいんではないか、そういうような状態であると私は思うわけでございまして、これから三・五%の成長を達成することは容易ならぬことであろうかと思うわけであります。その間における政府の努力、私はこれから大変御苦労が多いと思っておるところであります。  それと、それに関連しまして御質問申し上げますけれども、補正予算。当初予算にはキャップがかかっておりますけれども、補正予算にはキャップはかからないという御答弁がきのうあったようであります。財政法規定によって処理すると総理大蔵大臣もおっしゃいますけれども、財政法上は、予算編成後の緊急の事態に対応しては補正予算の編成を認めておるわけであります。  私は、先ほど申し上げましたような経済状態からすれば、今回自民党で御発表になりました緊急経済対策と称される景気対策、これは、規制緩和を中心としながら土地の流動化とか政策税制とかそういうことを言っておられますけれども、それだけで済まない事態が今後も予想をされるわけでありまして、その際に、財政出動を余儀なくされる面もあるいは出てくるかもしれません。そういう場合に補正予算が編成をされ得るものかどうか、大蔵大臣の御所見を伺いたいと思います。
  260. 三塚博

    三塚国務大臣 粟屋議員は、バブル崩壊後の経済状況に対して政府がとりました経済政策を引例をされながら、そういう場合が参りました際に政府はどうするのかという基本的な御質問と承ります。  よって、総理からも言われましたとおり、財政構造改革に関する特別措置法ということで提案をされましたその理念と目的、全貌は、待ったなしの財政危機をいかに回避をするかということを基本に置きまして、半年余にわたる財政構造改革会議、与党三党の代表、総理経験者、大蔵大臣経験者等を踏まえた中で、与党・政府一体の中で論議を進めた結論として推進策を閣議決定をいたしたところであります。  その間、規制緩和、これに全力を尽くしていく、そして前倒しで、さらに緩和だけではなく撤廃も視野に入れて行っていくことで、ビジネスチャンスをつくり上げていこう、経済の高コスト構造を変えることによる安定した基盤を、ベースをつくり上げていこう。さらに、金融システム大改革を断行することによりまして、一千二百兆に上る個人預貯金を有利に活用させていただくシステムの中で、国益のため、産業界のため、国民の生活安定のため、大きくは世界の市場としての役割まで果たそう、こういうことで取り進めさせていただいておるわけであります。ですから、着実にその成果は上がっていくものと思います。  私は、一・九という政府目標は、全力を挙げて取り組んでいく姿の中から展望が開けて実現をされていくのではないか。また、させるために内閣・与党挙げて、また各党の理解を得てサポートをいただいてまいりますならば、そのことも安定した政治の中で展望が開けてまいるわけでございますから、私は、この状態を打開することができるということであります。  よって、そういう危機を想定をいたしません。しかし、私も政治家の一人ですから、いろいろな御意見は拝聴をいたしております。そういう中で、なおこれを避けてまいりますために、閣議において、また総理の指示をいただき、また懇談の中でやらさせていただいているところであります。中長期的に日本経済を活性化させるためにこの改革は絶対必要なものであり、今後も安易に財政に依存することなくやり抜いていかなければなりません。  よって、財政法二十九条、かつてそれの拡大解釈の流れで行われた節もあります。明定された二つの原則に従って財政の運営をしていくということに尽きるわけでございます。景気対策は当初予算の中で行われていくべきもの、こう考えます。
  261. 粟屋敏信

    ○粟屋委員 大蔵大臣の御姿勢はよくわかります。財政構造改革経済構造改革、その他の構造改革を進めて、これによって日本経済の体質を変えていけば日本は安定的な成長を遂げるであろうというその御確信は私も敬意を表しますけれども、しかし、経済は生き物でございまして、経済成長率を何ぼ想定してもそれに達しない例は過去何回もあるわけでございまして、その際に、財政の出動をしても経済を救い、国民生活を救わなければならないということもあり得るのではないか。  その場合に、キャップがかかっていないからこれは補正予算として計上される場合もあるわけですが、いずれにいたしましても、私が申しておりますのは、GDP比三%以下ということを達成するには大変な努力が要るし、また周辺の環境もよくなければならない。要調整額、GNP三・五%の達成、それと補正予算が起こった場合にも対応し得ること、そういうことがあって初めてその目標が達成される。そうすると、六年先の政府というのは、私は大変な責任をお持ちになっていると思うわけでありまして、その点を一つ申し上げておきたい、こう思っておるわけであります。  次に、厚生大臣にお伺いをしたいと思います。  厚生大臣、本委員会の御答弁においても、また平素も、とにかく医療保険財政の公開をしていかなければならない、医療保険財政の公開をすることは、国民皆保険、このシステムを壊してはならない、そういう意味であるということをおっしゃっているわけであります。  私も全く同感でございまして、私どもも、先通常国会の健保法等の改正の際に、そのことに強く思いを抱きまして、抜本改革をどうしてもやらなければならない、抜本改革の可能性、これが見通せるならば、緊急避難として健保法等の改正は容認しようではないかという措置をとったわけであります。  ところで、抜本改革でありますけれども、厚生省で、八月初めでございますね、案をお示しになりまして、八月の末に三党の案が出たわけでございますけれども、この両案を比較されまして、違うところがあるのでございましょうか。特に、三党案に対する厚生大臣の御見解を伺っておきたいと思います。
  262. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 与党三党で精力的に御審議をいただきまして、薬価の問題、診療報酬の問題、また老人保健の問題について、それぞれ重要な提案をいただいておりまして、今後ともこれらの協議というものを、十分参考にしていくべき協議だったと私は評価しております。
  263. 粟屋敏信

    ○粟屋委員 私も、内容においては基本的にはそう変わらないと思っております。特に医療提供体制、三党案も相当踏み込んで書いておられまして、インフォームド・コンセントの徹底とか、カルテ、レセプトの情報公開とか、今まで論ぜられてなかなかできなかったことに思い切って踏み込んでおられることに敬意を表しております。また薬価制度も、今までの公定価格制を廃止して、そうして保険で支払うべき基準価格を設定する、そういうようなことも決められておる。診療報酬については、これは橋本総理が以前からおっしゃっておられましたドクターズフィーとホスピタルフィー、こういう分類をしながら技術料を評価していく。それから慢性的な病気については、これは定額制を導入する。そういう基本的なお考えにつきましても私どもは賛意を表しているわけでありますが、問題は、これからが大変だろうという感じがいたしております。  薬価につきましても、今一万四千点ですか、薬の種類があって、それぞれ値段をつけておりますが、これをグルーピングをして価格を決めていく。グルーピングの仕方にも問題がこれから出てくるのではないかと思いますし、それから診療報酬も、今までの複雑な、積み上げ積み上げ、直し直ししてきたやつを、もう一遍再編成をしなくちゃならない。  そういうことで、大変な作業であると思いますけれども、その抜本改革の姿が見えるまで、どのくらいの時間がかかるものでしょうか。
  264. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 今後、十一月中には新たに審議会が設置されるように、今準備を進めております。その審議会で御審議をいただき、合意を得られるものから順次法案化したい、そして抜本改革の法案を来年の通常国会には御審議をいただきたいと思っております。  来年の通常国会に法案を提出できるよう審議を進めていただかなきやなりませんし、いろんな意見を踏まえて厚生省も準備しなければなりませんが、通常国会に御審議いただくためには、来年の三月中には案をまとめなければいけない、法案を提出しなければならないと思います。  そして、今御指摘の、薬価基準を全く新しいものにする、診療報酬体系を、定額包括払いを大幅に拡大するというものにつきましては、相当時間がかかるのではないかと思っております。しかし、抜本改革案の基本方針、骨格の案は、来年の三月中には国会に提出できるよう準備を進めていきたいと思っております。
  265. 粟屋敏信

    ○粟屋委員 今、抜本改革の基本的なものは、来年の三月までにまとめて通常国会に提出する、こういうお話でございました。  そこで、やれるものは来年度から実施する、こういう話でございましたが、この場でもいろいろ論議がなされましたように、来年度の社会保障関係費の当然増八千億を三千億に抑える、これは大変な御努力が要ると思うわけでございますが、その削減一つの内容として、今厚生大臣お話しの来年度から実施すべきものというものが入ると思うのですが、どういうものでございましょうか。
  266. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 来年度予算編成におきまして、約四千二百億円程度を医療関係費で出さなければいけない、削減しなければならない。ということは、抜本改革案の中では出すことはできないと思います。現行制度の中で出さなければいかぬ。それと抜本改革案との調整といいますか整合性をとりたいと思っております。  現行制度の中で薬価の基準も見直します。診療報酬体系も見直します。しかし、それが将来の抜本改革案と全く違うものだということは、なかなか理解は得られないだろう。一つの抜本改革案の理念を踏まえながら、現行の中で見直していきたい。その際は、当然、薬価の問題、診療報酬の問題これが四千二百億円の中で大部分を占める、そういうように私は今のところ考えております。
  267. 粟屋敏信

    ○粟屋委員 抜本改革の完全実施といいますか、それは大体平成十二年度を目標とする、こういうふうに三党案でも厚生省案でも書かれておるわけですが、今厚生大臣のお話で、来年度の予算、また法律を通じて、来年度に抜本改革元年の姿が見える、こういうふうに理解をしてよろしゅうございましょうか。  それと、もう一点でございますが、厚生省案の中に、医療保険制度体系の改革というのがございましたね。一つは、地域保険に一元化をする案、それから一つは、被用者保険プラス国保プラス高齢者医療、こういうことになっております。これは三党案には載っておりませんで、三党案では高齢者制度だけが取り上げられておる。それからまた、今度の法案を見てみますと、高齢者について、これは応能負担という、ごく限られた範囲のことであろうと思いますけれども、これが取り上げられている。  私は、やはり医療保険制度体系全般の改革とあわせて高齢者医療を位置づけるべきではないかと思いますが、その点のお考えを伺いたい。
  268. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 これからの高齢者の問題を考えますと、いろいろな統計調査を見ていますと、高齢者だからといって、二十代、三十代の世代の可処分所得と遜色ない、むしろ高齢者であっても若い世代と同じように、あるいはそれ以上に可処分所得を得ている層がかなりあるわけです。そういうことを考えますと、高齢者にも、そういう余裕のある方には応分の負担をしていただき、お互い、給付だけでなく負担の面も考えていただこうではないかという視点が、私はこれから欠かせないと思います。  そういう点を含んで、保険者集団の改革につきましても、二案を出しております。一案は、都道府県単位で、これはまさに抜本的案にふさわしい構造的な案だと思います。非現実的だと言う方がおられますが、私は、これは抜本改革一つじゃないかと思っています。もう一つは、現行制度の中で調整をしようという、これは極めて現実的だと考えられております。  しかしながら、いずれにしても、老齢者だけを取り上げてやりますと、これはかなりの部分、税負担を投入しないと無理な面があるのじゃないか。高齢者は若い世代に比べれば、どうしても病気になりがちであります、お医者さんにかかりがちであります。その老齢者だけを抜き出しますと、その老齢者だけで保険を集めてやったら、それはとても保険料も高くしないとだめでしょうし、給付の面も考えなきゃならぬ。結局、保険というのは、病気になった人もならない人も、両方拠出していただかないと成り立たない。  そういうことから考えますと、都道府県単位で、住んでいる方は、若い人も高齢者も全部一つの集団に入っていただきますよというのと、今の制度の中で、その保険集団の中で調整しますよという案、これから議論していただきますが、どっちがいいか。私は、十分時間をかけて、将来にとってどちらがふさわしいのか、これは十分、皆様方、両案賛否両論あると思います、審議の行方を見守って、どちらがいいかというものを見きわめて、今後結論を下さなければならないなと思っております。
  269. 粟屋敏信

    ○粟屋委員 医療保険制度を健全に維持していくということは、国民生活の基本にかかわる問題でございますので、厚生大臣の一層の御健闘をお祈りいたしますし、私どもも折に触れ意見を申し上げさせていただきたいと思っております。  抜本改革は平成十二年度にその全貌が見えてくるわけでございますが、やはりその抜本改革の全貌が見えるまでは、できるだけ患者負担の引き上げを避けていただきたい、そういう思いを持っておるわけであります。  私どもが健保法改正に賛成いたしましたのも、とにかく抜本改革をやることによって患者負担の次から次への値上げを抑止したい、そういう思いもあったわけでございますので、これは私から厚生大臣に強く御要望を申し上げておきたいと思います。  以上で質問を終わります。ありがとうございました。
  270. 中山成彬

    ○中山(成)委員長代理 これにて粟屋君の質疑は終了いたしました。  次に、上田清司君。
  271. 上田清司

    ○上田(清)委員 一昨日の続きをさせていただきますが、高過ぎる特殊法人あるいは公益法人の役員給与の問題について、瓦建設大臣にもお尋ねをいたしましたが、私の知るところでは武闘派の雄である瓦大臣には珍しく、極めて役所の文言を読まれたような気配がいたします。  改めてパネルを掲げさせていただきますが、この道路施設協会の理事長などは、実は道路公団の総裁を六年やった後に、また今六年目にかかっている方でありまして、これは四年で計算していますから、六年いたら大体四千万いただくことになるわけであります。そして、退職金をここで四千万いただいて、またここで四千万いただく。  五十二年の閣議で、民間給与等々を考えながらきちっとやっておりますということでありますけれども、五十二年から今日約十五年たっておりますが、きちっとやった結果がこういう結果なんでしょうか。私にはそう思えません。やはりおのずから節度というのがあってしかるべきだと思います。この特殊法人やあるいは公益法人という、いわば政府に関連する諸団体が、ある意味では政府の信用を失わせております。  先ほど官房長官からもお話がございました。全国で約二万六千、こうした公益法人がございます。職員だけで約五十二万人、役員で二万人。実は、この十年だけで十万人ふえております。確かに、公務員の定数削減や、またさまざまな形での抑制という中で、人員の不足を公益法人であるいは少しカバーしなきゃいけない、そういう局面もあったのかもしれませんが、隠れみのになってはいけないという視点から見れば、こういう点に関して、建設大臣として、程度を超えているじゃないかという指摘が、おのずから内部からきちっとした指導がなされてしかるべきだ。五十二年の閣議決定で適当にやっておりますというような御返事では、私は納得できない。したがって、大臣にもう一度御答弁をお願いしたいと思います。
  272. 瓦力

    ○瓦国務大臣 上田委員にお答えいたします。  私は、今まで武闘派と言われたことはございませんで、体が大きい方ですから、常に優しい力持ち、こう言われておりますので、前言はどうかお取り消しをお願いしたいと思います。  先般、実はお尋ねをいただきまして、私は、特殊法人の役員給与、こういったものの成り立ちを御説明をさせていただきました。これは改めて申し上げるわけでありますが、民間及び公務員との均衡を図るという政府の基本方針に基づきまして、各法人の業務内容及び事業規模等にかんがみ、総合的な見地から決定されている、こういうことであります。  私は、きょう改めてこう申し上げますのは、やはり特殊法人、いろいろ団体がございますが、それぞれの給与体系が、建設省だけの問題ではございませんで、これは民間企業や国家公務員の給与の状況等に配慮して、常に私ども問題意識を持っておるわけでございますが、給与の体系そのものはそういうぐあいに総合的に勘案して決定されておる、こういうことでございますので、そのとおり先般申し上げさせていただいたわけであります。  その上に立って、今後どうすべきかという問題もこれあろうと思いますが、なべて政府のそれぞれの法人、機関におきましての体系は、今申し上げたような考え方に立ちまして、総理府でございますか、そこで全体を考えて検討して決めておる、こういうことでありますので、一般論でございますが、さような経緯を先般申し上げさせていただいたわけであります。
  273. 上田清司

    ○上田(清)委員 今の答弁であれば、私は特にいただきたくなかったですね。  今申し上げましたように、普通のサラリーマンが一生かかって二千万いただけるかいただけないかというものを、どうかすれば三年ぐらいで、渡りとしてどんどんどんどんいただいていける。それで、他の民間との均衡を図るとか、本当に言えるんでしょうか。国民が見ると、そんなこと言えると言えませんよ、絶対。それで検討しますなんて。五十二年からそういう話をしているんですから。きように限ったことではありません。何らかの形でこれはきちっと結論を出すべきじゃないでしょうか。今、こういう構造改革のための法案が提起され、真剣に国会で議論をされているところであります。  これだけではありません。もちろん、たまたま私は建設省を出しました。なぜこの道路施設協会を出したかというのは、それなりに議論があります。例えば、この道路施設協会の成り立ちも、建設省の局長だけの通達で、その通達が根拠になってサービスエリアとパーキングエリアの占用権をいただいて、その占用権を利用して商売をなさっておられる。そして、この道路施設協会の中には六十六社の子会社があり、すべて黒字であります。売上合計だけでも五千四百五十億。この道路施設協会で七百三十億、経常利益が百億です。  こういうものを道路公団との関連の中でどれだけきちっとくみ上げながら、連結決算などさせながら、国の赤字を減らしていくかというような、そういう元種の議論をもっとしなければならないということを私は申し上げているのであって、ただいまの建設大臣の答弁であれば、何のために建設大臣をやっているのだということを、大変申しわけありませんが、恐縮で、失礼に当たりますけれども、大先輩に対して……。  特に、道路公団に関して、年々、国の助成費が上がってきておりますことも御承知のとおりだと思います。一九八五年に九百六十九億からスタートしまして、一昨年は二千九十七億、今年度は二千五百億、そういう国の支出もなされているわけですから。そして、その関連業種のところでは大もうけにもうかっている。  理事長がもう六年目に当たりますから、多分これは、前国会で亀井建設大臣が何か答弁を政府委員の方が嫌がっているのをちゃんと言えと言って、今退職したら幾らになるかということで七千万だということも聞いております。その数字が正しいかどうか私も確認はしておりませんけれども、大臣の口からもそういうお話が出るぐらいでございますから、これはどう考えてもおかしい。親方たちがこういう給与を取って、あるいは退職金を取って、下部の職員の人たちのモラルがきちっとできるわけないでしょう。きっとどこかにやみ給与や、やみ手当はございますよ、調べていけば。必ずそういうふうになるんです、世の中は。私は、そう思っております。  そういう意味で、建設大臣のきちっとした指導力、あるいはきちっとした答弁を私は伺いたいと思います。是正するのかしないのか、直すのか直さないのか。  これは建設大臣だけの問題ではありません。大変調子がいいんです。申しわけありません、続けますが、これは日本銀行でございます。  もう大蔵委員会で日銀法の改正のときにさまざまな議論が出ました、御指摘も出ましたけれども、もちろん中央銀行の総裁は大蔵大臣と同格ということでしょうか、大蔵大臣が百六十五万なのに、総裁は二百八十三万。五年間で退職金が七千四百七十一万。それは、確かに一万円札を十一円でつくって、九千九百八十九円もうかっているかもしれない。だから何でも取っていいんだという議論にはならない。  この政府系関係の金融機関の高過ぎる給与というのは、金融機関として都市銀行の上位の給与に合わせているんですよ。都合のいいところだけ都市銀行の上位の役員の給与に合わせているじゃないですか。リスクはないんですよ、政府系関係の金融機関は。リスクのないところで調子のいいところだけつまみ食いしたら、どうにもならないじゃないですか。  このことを真剣に、閣僚の皆様方が一〇%の給与を返上されている。実は、私もこの質問をする前に返上しておかなければいかぬなと思って議員課に確認しましたら、それは寄附行為に当たって政治資金規正法に違反するんだということで、実は私はできませんでした、きょう。しかし、やはり国会もそういう思いを持って取り組み、政府も取り組み、野党も取り組み、そしてこの日本の改革は成り得るんじゃないか。この点についていいかげんな役人の答弁をしているようじゃ、総理には、即罷免してもらいたいと私は思います。  以上の観点から、大臣によろしくお願いします。
  274. 瓦力

    ○瓦国務大臣 委員のおっしゃることは、政治家でございますから理解はできるわけでございますが、今申し上げたように、給与体系はさようなことで検討され、決められる。  なお、常勤の理事の報酬及び退職金等は、当該法人の資産及び収支の状況並びに民間の給与水準と比べて不当に高額に過ぎないものとすることとか、こういうようなことも添えて決められておるようでございますが、よって、どこをどういう目安にして考えればいいかということは、やはり私は、政府関係機関は、それぞれにある一定の物差しが必要であろうと思うわけであります。  また、協会につきまして申し上げれば、これはある種の専門的な知識や技術を有することや、また経験が必要であることも申すまでもありませんが、これらのことを踏まえて、御指摘のように渡りとしてどうかというような問題もこれあろうと思いますので、各般の状況を、今日の時世でございますから厳格に検討をする必要があろう、こう思うわけであります。  一方におきましては、公団も新しい時代への対応が今求められておりますので、先般委員から御指摘のように、協会自体は安穏としているというような状況下ではございませんで、それぞれコスト縮減、また新事業の検討等改革が求められておりますので、今までの経験を生かして思い切りの改革をしてもらいたい、こういうような課題も付しておるところでありますので、双方勘案しながら私も指導に当たりたいと思っておるわけであります。  以上、御返事を申し上げておきます。
  275. 上田清司

    ○上田(清)委員 極めて私にとりましては不満足な回答であります。  公益法人に対しても、実は補助金で五千八百三十六億出ております。道路公団だけではありません、全国の公益法人の中に政府関係から五千八百三十六億補助金が出て、委託費が六千五百九十三億、合わせると一兆二千億以上の補助金、何らかの形で政府関係のお金の支出がなされております。そういうところも極めて重大に考えていかなくちゃいけない、私はそう思っております。  この高過ぎる役員給与の問題、退職金の問題、これはだれが見ても不当だというふうに私は思っておるのですが、それぞれの事情でというようなニュアンスの御回答がございました。そして、民間給与等を勘案しながらというふうに言っておられます。それは上位のところと合わせていいという議論にはならない、むしろ、政府の関連機関であれば、おのずから国家公務員に準ずるような給与体系が図られてしかるべきであろうし、退職金の問題も、一度退職された方々がつかれているのであれば、おのずから自制されるべき問題だというふうに私は思っておりますが、どうも建設大臣ではきちっとした答えが出ないということがわかりましたので、恐縮ですが、橋本総理に御見解を伺いたいと思います。
  276. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、事務的な模範解答をすれば、これは平成八年の九月二十日の閣議決定というもので「「公益法人の設立許可及び指導監督基準」及び「公益法人に対する検査等の委託等に関する基準」について」というのを読み上げることになるのだと思います。  ただ、私は、今議員の御指摘を受けながら、二つのことを感じておりました。  一つは、私自身が失敗をしたなという思いでありまして、それは、第二次臨時行政調査会の論議が盛んな当時に、国の抱えております検査・検定あるいはその他の業務のうち、民間に移すということを非常に強調した時期があり、その時期に公益法人の数を、結果として後に悔いを残すという意識は当時ございませんでした。そして、資格認定等々で、公益法人を随分当時つくった。しかも、それがその当時は行政改革という感覚でこれを進めておりました。  そして、当時そういうルールをつくることにかかわった一人として、その後の公益法人の運営のあり方がどのようになっておるのか、今内心心配になっております。これは、そういう問題を改めて思い起こさせられたと正直に申し上げておきたいと思います。  その上で、私は、議員指摘をされましたように、少なくとも公務員に準ずるという気持ちはこれらの関係者にも持ってもらいたいと思います。  その上で、なお申し上げることを許されますならば、私は、それぞれの組織の中で、本当に生え抜きで来た人々、その人々と、他の一定の地位から転じてきた人と、果たして同一の扱いをしちゃっていいのかなという思いは率直にございます。  ただ、その上で、特定の省庁の重要なポストをこなされた方が特殊法人あるいは公益法人にその籍を移すケース、その時点における処遇のあり方と、その職に最初から就職をされ、こつこつとその道一筋で来られた方と同一に論じていいのかという思いは率直にあります。そういった思いも持ちながら、私は議員の御指摘を非常に真剣に聞かせていただきました。  どういう場でこれを検討するのがよいのか、今とっさに私も思いつきません。しかし、問題意識を持ってこれを眺めたい、素直に感想を申し上げます。
  277. 上田清司

    ○上田(清)委員 各省庁に特殊法人並びに公益法人がたくさんあることは御存じのとおりだと思います。中にはなかなか、非常にいい機能を持った公益法人もございます。  私どもが海外にいろいろな機会を通じて行くときに、在外公館の中に、国際交流サービス協会という外務省の傘下の公益法人でありますが、そこで、学生が休学して二年間とか三年間とか、いわば派遣社員という形をとって仕事をなさって、国際的な感覚を身につけるとか、そういうことをやっておられて、事実上、人件費を八割ぐらいに抑えて、いわば外務省の応援団みたいなことをやっておられる。  そういうのも、なかなかいい意味での公益法人の柔軟な動き、あるいは機能を果たしているのではないか。外務省であれば、なかなかそういうことはできない。外務省の職員がやらなくてもいいような雑多な仕事をしておられるわけであります。本当の外務省の方々には立派な仕事をしていただく。そして、それをサポートする、そういうサービス協会の皆さんがいるとか、そういういい意味での公益法人であれば、私は、それはそれでいいのですが、そうじゃない部分に関して、徹底的にこの機会に洗い直すことが絶対的に必要だということを再度申し上げます。     〔中山(成)委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、先ほど、公務員に準ずるべきだというような議論も出しておりますが、ちょうど濱田議員が人事院の勧告問題を議論されておられました。私も、いわば労働組合の基本権を奪われている公務員の皆さん方に人事院勧告が非常に重要な位置を占めているということに関していささかも否定するものではありませんが、この給与勧告の基準があるいは必ずしも妥当ではないじゃないかという議論をあえて総理を初め政府の皆様方に申し上げてみたい、こんなことを思っております。  先般、機会がありまして、人事院の担当の方に、どのぐらいの民間の労働者の方々をカバーしておられるのだと聞いたら、五七%だというようなことを伺いました。人事院の総裁、おいでになっていると思いますが、これは間違いありませんか。
  278. 中島忠能

    中島政府委員 間違いございません。
  279. 上田清司

    ○上田(清)委員 私も、どうもおかしいなと。百人以上の企業規模の民間の給与を参考にしながら、低い、高い。特に、低いわけでございますから昇給の勧告があるわけですが、そんなに、百人以上の企業規模で全労働者の五七%がおられるのかということを確認するために総務庁の資料を取り寄せましたら、百人以上の従業員の数というものは、全体でいいますと、四百九十四万三千五百七十三人、これを。パーセンテージで見ていくと――失礼しました、これは百から百九十九ですので、二百から二百九十九あるいは三百人以上全部含めると約二四・六%になっておりまして、五七%にならない。なぜだろうということで、改めて人事院の方に聞きましたら、実は人事院で、百以上の企業の中から、必ずしも公務員の職種に合わないようなものは全部捨象しているんだということでございまして、捨ました中で五七%だと。そういうのは余りこの報告書にはきちっと書いていなくて、やはり何か都合の悪いところだけは隠しているなという感じが私にはいたしました。  実は、ちょうど同じころに、富士総合研究所で九七年度の年末のボーナス予測が出ております。この予測を正しいと見るかどうかということに関して若干議論があるかもしれませんが、大体の概数値は出ていると私は信じている者の一人であります。  そこで、どの程度だろうというふうに申し上げますが、公務員の一人当たりの支給額は九十三万九千九百円、前年比二・二%増の見込みだと。そこで、民間の方々はどうなのか。五人以上の規模の事業所で見ますと五十二万、それから五人から二十九人、つまり二十九人以下の企業でございますが、これは三十六万七千、それから三十人以上でくくっていくと六十三万五千、こういうふうな数字になってきまして、なかなかこの百人以上という規模をどう見るか――私は、かつての日本の経済の実情の中では、百人以上というものと百人以下というものの二極の差は今日ほどはなかったというふうに見ておりますが、最近では、いろんな統計でも、この二極の差、つまり上位の企業と下位の企業のさまざまな意味での経済の力の差あるいは給与の差ということがはっきりしてきております。  そのはっきりしてきた状態の中で、二四%の労働者しかカバーできない、給与所得者しかカバーできない人事院の勧告が是なのかどうかということに関して言えば、私は、これは政府が物を言う立場ではないとしても、人事院自身がしっかりと、今日の状況の中で妥当性があるのかどうか、これは考えるべきではないかなというふうに思っておりますが、総裁、いかがでしょうか。
  280. 中島忠能

    中島政府委員 一つは、企業規模の話がございました。  これは、公務員の給与をどの規模の企業の労働者と比較するのがいいかという議論は戦後早くから行われておったわけですが、議員御存じのように、昭和三十九年に当時の池田総理太田総評議長の間でお話がございまして、現在の百人以上というところで話がまとまっております。それ以来三十数年間、この方式が踏襲されておるわけでございますが、その間、いろいろな議論がございました。ございましたけれども、三十数年間この方式が定着しておるということは、おおむね国民の間で納得が得られているんじゃないかというふうに私たち考えております。  もう一つ、今のお話の中で疑問がございましたけれども、労働者の賃金というのは、同種の職務を行う労働者同士というものを比較するのがやはり比較の方法としては妥当性があるんじゃないかというふうに思うわけでございます。先生がおっしゃいますように、総体としては大変多くの労働者というものがございますけれども、その中で、公務員から見ると職種が違う、例えて言いますと農業関係の方とかあるいは飲食業関係の方とか、そういうところで働いておられる方の賃金と公務員の賃金を比較するというのは、賃金論としてもやはりいかがなものだろうかという気がいたしますし、賃金の専門家に話をお聞きいたしましても、やはりそういう比較というものよりも、同種の労働を行っている者同士の比較というのが妥当だろうという御意見でございます。  そういう御意見に従いまして私たち仕事をしているわけでございますけれども、先生がお話しになりましたように、より小さな企業の規模の賃金というものにもよく目配りしろという議論は、国民感情としては私はわかるわけでございますけれども、やはり公務員組織というものの現在の態様とかあるいはその機能というものを考えました場合に、三十数年間続いておりますこの方式というものをこれからも採用させていただけないだろうかというお願いでございます。
  281. 上田清司

    ○上田(清)委員 一つだけ総裁に欠けておられるのは、公務員にはいわば失業という意味でのリスクがございません。そういう論点がやはり欠けているのではないかな。そういう意味で、おのずから自制しなければならない部分がある、私はこんなふうに思います。  民間の給与と比較して、現実に冬のボーナス一つ見ても、平均値から見れば、これは倍いただけるような形になっております。そして、もちろん、ここに来ておられます政府委員の皆様みたいに、毎晩十一時ぐらいまでこうこうたる電気の中でお仕事をなさっておられる方々もおられますが、五時過ぎに丸ノ内線の地下鉄に行きますと、どかっと出てくる人たちもおられます。  そういうことも踏まえて、おのずから、これはもう一度真剣に、公務員の給与の問題、人事院の勧告そのものは制度として是としながらも、その基準のつくり方については大いに研究をなされるべきだということを私は申し上げます。  また、これを総理にお尋ねしても、人事院は独立機関でありますからという回答が来そうですので、総理にはお伺いいたしませんが、政府の皆様方にも、当然、そのことについてはしっかりと考えていただきたいというふうに思っております。
  282. 中川良一

    中川委員長 上田君、時間が参りました。
  283. 上田清司

    ○上田(清)委員 時間ですか。では、以上で終わります。ありがとうございました。
  284. 中川良一

    中川委員長 これにて上田君の質疑は終了いたしました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十七分散会