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1997-10-20 第141回国会 衆議院 財政構造改革の推進等に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十月二十日(月曜日)     午前九時開議 出席委員   委員長 中川 秀直君    理事 甘利  明君 理事 佐田玄一郎君    理事 白川 勝彦君 理事 中山 成彬君    理事 野田 聖子君 理事 北側 一雄君    理事 中井  洽君 理事 海江田万里君    理事 児玉 健次君       浅野 勝人君    飯島 忠義君       稲垣 実男君    今村 雅弘君       岩永 峯一君    江渡 聡徳君       大石 秀政君    大野 松茂君       木村 隆秀君    小林 多門君       佐藤  勉君    桜井 郁三君       桜田 義孝君    実川 幸夫君       下村 博文君    田中 和徳君       滝   実君    津島 雄二君       戸井田 徹君    中野 正志君       西川 公也君    平沢 勝栄君       穂積 良行君    松本  純君       目片  信君    持永 和見君       渡辺 博道君    渡辺 喜美君       安倍 基雄君    石井 啓一君       石垣 一夫君    一川 保夫君       太田 昭宏君    岡田 克也君       河合 正智君    田端 正広君       谷口 隆義君    中野  清君       西川 知雄君    野田  毅君       原口 一博君    池田 元久君       石毛 鍈子君    生方 幸夫君       五島 正規君    佐々木憲昭君       矢島 恒夫君    秋葉 忠利君       濱田 健一君    粟屋 敏信君       上田 清司君  出席国務大臣         内閣総理大臣  橋本龍太郎君         法 務 大 臣 下稲葉耕吉君         外 務 大 臣 小渕 恵三君         大 蔵 大 臣 三塚  博君         文 部 大 臣 町村 信孝君         厚 生 大 臣 小泉純一郎君         農林水産大臣  島村 宜伸君         通商産業大臣  堀内 光雄君         運 輸 大 臣 藤井 孝男君         郵 政 大 臣 自見庄三郎君         労 働 大 臣 伊吹 文明君         建 設 大 臣 瓦   力君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     上杉 光弘君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 村岡 兼造君         国 務 大 臣        (総務庁長官)  小里 貞利君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)             (沖縄開発庁長         官)      鈴木 宗男君         国 務 大 臣 久間 章生君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      尾身 幸次君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      谷垣 禎一君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大木  浩君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 亀井 久興君  出席政府委員         内閣参事官         兼内閣総理大臣         官房会計課長  尾見 博武君         内閣官房内閣内         政審議室長         兼内閣総理大臣         官房内政審議室         長       田波 耕治君         内閣法制局長官 大森 政輔君         内閣法制局第三         部長      阪田 雅裕君         人事院総裁   中島 忠能君         人事院事務総局         給与局長    武政 和夫君         内閣総理大臣官         房管理室長   榊   誠君         行政改革会議事         務局長     八木 俊道君         公正取引委員会         委員長     根來 泰周君         公正取引委員会         事務総局経済取         引局取引部長  上杉 秋則君         総務庁長官官房         審議官     西村 正紀君         総務庁人事局長 中川 良一君         防衛庁参事官  伊藤 康成君         防衛庁防衛局長 佐藤  謙君         防衛庁運用局長 太田 洋次君         防衛庁経理局長 藤島 正之君         防衛施設庁長官 萩  次郎君         防衛施設庁総務         部長      西村 市郎君         防衛施設庁建設         部長      熊谷 悟朗君         経済企画庁調整         局長      塩谷 隆英君         経済企画庁総合         計画局長    中名生 隆君         経済企画庁調査         局長      新保 生二君         環境庁長官官房         長       岡田 康彦君         環境庁企画調整         局地球環境部長 浜中 裕徳君         国土庁土地局長 窪田  武君         外務省総合外交         制作局長    加藤 良三君         外務省アジア局         長       阿南 惟茂君         外務省北米局長 高野 紀元君         外務省経済局長 大島正太郎君         外務省条約局長 竹内 行夫君         大蔵大臣官房総         務審議官    溝口善兵衛君         大蔵省主計局長 涌井 洋治君         大蔵省主税局長 薄井 信明君         大蔵省理財局長 伏屋 和彦君         大蔵省銀行局長 山口 公生君         国税庁次長   船橋 晴雄君         文部大臣官房長 小野 元之君         文部大臣官房総         務審議官    富岡 賢治君         文部省教育助成         局長      御手洗 康君         文部省高等教育         局長      佐々木正峰君         厚生大臣官房総         務審議官    田中 泰弘君         厚生省保健医療         局長      小林 秀資君         厚生省保険局長 高木 俊明君         厚生省年金局長 矢野 朝水君         農林水産大臣官         房長      堤  英隆君         農林水産大臣官         房総務審議官  石原  葵君         水産庁長官   嶌田 道夫君         通商産業省産業         政策局長    江崎  格君         通商産業省環境         立地局長    並木  徹君         資源エネルギー         庁長官     稲川 泰弘君         中小企業庁長官 林  康夫君         運輸省鉄道局長 小幡 政人君         運輸省港湾局長 木本 英明君         郵政大臣官房総         務審議官    濱田 弘二君         郵政省貯金局長 安岡 裕幸君         郵政省簡易保険         局長      金澤  薫君         労働大臣官房長 渡邊  信君         労働省職業安定         局長      征矢 紀臣君         建設大臣官房長 小野 邦久君         建設大臣官房総         務審議官    小鷲  茂君         建設省河川局長 尾田 栄章君         建設省道路局長 佐藤 信彦君         自治省行政局長 松本 英昭君         自治省行政局選         挙部長     牧之内隆久君         自治省財政局長 二橋 正弘君         自治省税務局長 湊  和夫君  委員外出席者         参  考  人        (日本銀行総裁) 松下 康雄君         財政構造改革の         推進等に関する         特別委員会調査         室長      大西  勉君     ――――――――――――― 委員の異動 十月二十日  辞任         補欠選任   小野 晋也君     桜井 郁三君   佐藤  勉君     江渡 聡徳君   桜田 義孝君     戸井田 徹君   田中 和徳君     大石 秀政君   竹本 直一君     平沢 勝栄君   谷畑  孝君     下村 博文君   中野 正志君     今村 雅弘君   渡辺 喜美君     岩永 峯一君   赤松 正雄君     石井 啓一君   左藤  恵君     野田  毅君   谷口 隆義君     石垣 一夫君 同日  辞任         補欠選任   今村 雅弘君     中野 正志君   岩永 峯一君     渡辺 喜美君   江渡 聡徳君     佐藤  勉君   大石 秀政君     田中 和徳君   桜井 郁三君     渡辺 博道君   下村 博文君     飯島 忠義君   戸井田 徹君     桜田 義孝君   平沢 勝栄君     松本  純君   石井 啓一君     河合 正智君   石垣 一夫君     谷口 隆義君   野田  毅君     左藤  恵君 同日  辞任         補欠選任   飯島 忠義君     谷畑  孝君   松本  純君     滝   実君   渡辺 博道君     小野 晋也君   河合 正智君     赤松 正雄君 同日  辞任         補欠選任   滝   実君     竹本 直一君     ――――――――――――― 十月二十日  国民生活重視財政再建に関する請願(川内博  史君紹介)(第三七号)  同(石井郁子紹介)(第五六号)  同(大森猛紹介)(第五七号)  同(金子満広紹介)(第五八号)  同(木島日出夫紹介)(第五九号)  同(児玉健次紹介)第六〇号)  同(穀田恵二紹介)(第六一号)  同(佐々木憲昭紹介)(第六二号)  同(佐々木陸海紹介)(第六三号)  同(志位和夫紹介)(第六四号)  同(瀬古由起子紹介)(第六五号)  同(辻第一君紹介)(第六六号)  同(寺前巖紹介)(第六七号)  同(中路雅弘紹介)(第六八号)  同(中島武敏紹介)(第六九号)  同(春名眞章紹介)(第七〇号)  同(東中光雄紹介)(第七一号)  同(平賀高成紹介)(第七二号)  同(不破哲三紹介)(第七三号)  同(藤木洋子紹介)(第七四号)  同(藤田スミ紹介)(第七五号)  同(古堅実吉紹介)(第七六号)  同(正森成二君紹介)(第七七号)  同(松本善明紹介)(第七八号)  同(矢島恒夫紹介)(第七九号)  同(山原健二郎紹介)(第八〇号)  同(吉井英勝紹介)(第八一号)  同(佐々木憲昭紹介)(第一〇四号)  同(金子満広紹介)(第一三一号)  同(木島日出夫紹介)(第一三二号)  同(大森猛紹介)(第一六二号)  同(保坂展人君紹介)(第一六三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  財政構造改革推進に関する特別措置法案(内  閣提出第一号)  漁港法第十七条第三項の規定に基づき、漁港整  備計画の一部変更について承認を求めるの件  (内閣提出承認第一号)      ――――◇―――――
  2. 中川良一

    中川委員長 これより会議を開きます。  内閣提出財政構造改革推進に関する特別措置法案及び漁港法第十七条第三項の規定に基づき、漁港整備計画の一部変更について承認を求めるの件の両案件を一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。甘利明君。
  3. 甘利明

    甘利委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま提案をされております二法案のうち、財政構造改革推進に関する特別措置法案につきまして、総理並びに関係大臣に質問をさせていただきます。  我が国財政状況が、中央、地方を問わず、もはやのっぴきならない状態に立ち至っているということは周知の事実であります。この法案は平たく言いますと財政再建法案でありますが、財政を健全化することによって日本の将来に不安がないようにする、これは政治の責務であります。  そこで、ここで我が国財政状況について、おさらいの意味確認をさせていただきます。  我が国財政状況平成九年度予算で確認をいたしますと、歳入は七十七兆三千九百億円でありますが、このうち税収その他の実質収入、実際に入ってくるお金は六十兆六千九百億円しかないわけであります。足りない分を公債金、まあ借金でありますが、これで補っている。その額が十六兆七千億円であります。そして毎年度の借り入れ、借金が積み重なりました九年度末の公債残高、今までの借入金の合計でありますが、これが二百五十四兆円になんなんとしている。それ以外に、表に出ているだけで、旧国鉄清算事業団が抱える債務が二十八兆円ありますし、国有林野事業が三兆円あるわけであります。  金額が大き過ぎていま一つぴんとこないと思われますので、スケールダウンをいたしまして、わかりやすく家計で例えてみますと、年収が七百七十万円の家庭があったといたします。実際に御主人の月給と奥さんのパートタイム収入合計は六百万円しかないわけでありまして、残りのお金の百七十万円は銀行から借りてきて生活をしているという状況であります。  そして毎年毎年生活費が足りないものでありますから、銀行から借りてきたお金合計、つまり借金残高は二千五百四十万円になってしまった。もちろん、この中には家のローンや家の塀をつくったローンも含まれているわけであります。そのほかに車のローンが二百八十万円残っております。それに庭をつくった植木の代金が三十万円未払いで、植木屋さんからもせっつかれている、こういう相当に厳しい家計状況だというわけであります。  ですから、昨年の総選挙の際に新進党の党首が提唱されました十八兆円減税というのは、この家計スケールに置きかえますと、こういった状況の中でさらに百八十万円を捻出してばらまけという話でありますから、とても責任ある政策とは思えなかった。同調しかねたわけであります。  財政の現状を見据えますと、このまま何にもしなくていいと思っている人は少なくともこの中にはいないはずでありまして、大胆な手術をしていかなくちゃならないという点に関しては、与野党のコンセンサスは得られていると思うのです。もちろん、地方にはいろいろと御主張、異論もあると思います。  ただ、昨今、野党の皆さん方から御指摘をされるのは、じゃ、何でこんな状態になるまで放置しておいたんだ、これは政府の責任じゃないのかという指摘であります。対応が遅きに失したという点であります。中には、以前自民党にいらっしゃった人にまで、何でこんなに遅くなったんだなんて言われますと、思わず、おまえがいたからだ、こう答えたくなるのでありますけれども、こうなった原因は一体どこにあるんでしょうかね。  もちろん政府が今日まで手をこまねいていたわけではないということは、私はよく承知をしております。いろいろと対応は行ってきたわけでありまして、十年ほど前には、かの三公社民営化という大事業もやりました。国鉄とか電電公社専売公社、懐かしい響きでありますが、この民営化という大事業をなし遂げたわけであります。その中でも、他に二年おくれて断行をいたしました国鉄改革は、当時としては労働組合を初め関係当事者のもうそれこそ命がけの反対に遭いました。そういった中で、その大反対を押し切って断行をしたわけであります。  当時の総理は中曽根さんでありました。今は評判もいま一つなんですけれども、当時としては大変な大事業をやり切ったわけでありまして、そういえば橋本総理も当時の担当大臣運輸大臣でいらっしゃいました。運輸大臣もよかったですね、これは。実は私もこの特別委員会委員で、この席にいたわけです。あのときは委員もよかったのですけれども。  民営化直前国鉄は、平均をしますと毎年毎年国から約六千億ぐらい補助金が出ていた。にもかかわらず一兆数千億円の穴があいていたわけでありますから、毎年毎年二兆円ずつ事実上穴があいていたということでありました。民営化した後には、国からの補助金は受け取らずに、逆に二千億円の税金を国に納めていてくれるわけでありますから、都合、毎年毎年二兆二千億円財政再建貢献をしている、寄与しているということが言えると思います。  電電公社もNTTとなりまして、税金ももちろん毎年納めてくれているんですが、それに加えて、政府保有株、この売却益が今までに十兆円以上あります。これによって我が国各種社会資本整備がかなり進んだというわけでありますから、相当貢献をしているわけでありますし、専売公社しかりであります。  事ほどさように、いろんな改革はやってきた。それは認めます。それでもなおここまでの財政状況に至ってしまったという原因は、総理、一体どこにあるんでしょうか。
  4. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、我が国財政状況が現在のような厳しいものになりましたもの、これには幾つかの要因があろうと思います。  一つは、議員も軽くお触れになりましたけれどもバブル崩壊後の我が国経済の中で、景気の下支え策として何回かにわたりまして公共投資の追加などを行ってまいりました。それ以外にも、人口高齢化、これが財政を取り巻く状況に大きな変化を与えたことも私は否定のできないことであると思います。それは当然のことながら、社会保障分野におけるような政府の役割の増大に伴って、歳出が拡大していく。年間百万人の新たな年金受給権者が発生するとすれば、それはそのまま現行の制度のもとにおける当然増となっていくわけであります。  しかし、こうしたものを通じまして、大量の公債発行を続けてまいりましたその結果というものは、利払いなどに要する国債費が非常に大きくなった。議員の先ほどの、実質的に国民から税金としてちょうだいをするもの、それと歳出の規模の差、このほとんど全部と言ってもいいぐちいがその利払いというものに当たる。これは非常に大きな構造的な要因として我々が考えるべきことであると思います。  こうしたことが重なる中で、今まで財政健全化の努力というものは、それぞれそのときそのときに政府が払ってきたわけでありますけれども、にもかかわらず公債残高が累増し、バブル崩壊以前には他の国に比べて間違いなくいい方だった我が国財政というものが、今や先進国中最悪の危機的な状況になりました。これをいろいろな数字で御説明をすることもできますけれども、余り長い時間をいただくわけにもいきますまい。  要は、我々は、これ以上時間を置くことなく、この財政構造を立て直していき、これを再建し、未来に夢のつなげる状況をつくり出さなければならない。そのためにもこの財革法を御審議いただき、国会の御承認をいただき、これによって財政再建に大きく踏み出してまいりたい、そのように今心から願っております。
  5. 甘利明

    甘利委員 財政事情が悪化していった原因は、今御答弁がありましたように、直接的にはバブル後遺症対策でありますね。バブル後の経済対策、数次の経済対策を各方面からの要請で行ったわけでありまして、平成四年から平成九年の間に、財政出動を中心にたびたびその対策を組んだわけであります。この結果、五年間で七十六兆円の債務が増加をした、これが直接的な原因、おっしゃるとおりだと思います。  二つ目には、これからの問題も含めてなんでありますが、構造的な要因がある。実はこっちの方がはるかに深刻でありまして、単なる財政収支の改善ならば、一律歳出削減というようなことをしながらつじつまを合わせていけば済むことでありますけれども、要するに、世の中構造的に大変革を今起こしている、そういう状況下の中で、世の中構造的な変革に対して適合するような、いろんな意味でのシステムを構築していかなければならないという点が、総理おっしゃるように、これが一番重要な点だと思います。  つまり、これまでの枠組みを一からそれこそ組み立て直すんだという必要に迫られているわけでありまして、それだけに、総理が今進めておられます六大改革、これはすべて構造改革という側面を持っているわけであります。単なる財政再建ではなくて財政構造改革でありますし、経済改革ではなく経済構造改革していく、金融改革ではなく金融システム改革していくという構造改革であります。それぞれ六つが相互に関連をし合いましてお互いに補完をし合っている、こういう状況でありますから、これを同時進行しなければならない。大変な責務をリーダーとして総理は負っていらっしゃるわけであります。  そこで、我が国構造変化、どういう構造変化を来しているから、今もちょっとお触れになりましたけれども、どういう対応システム構築が必要なんだということを国民皆さんにわかりやすく御理解をいただくことが第一歩だと思いますので、その点についてもう一度御説明をいただけますか。
  6. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 ちょうど私が初めて国会に議席を与えていただきました昭和三十八年、我が国法律制度の中で初めて老人という言葉を法律用語に用いた老人福祉法が生まれました。  そして、この年初めて、日本政府我が国の百歳人口調査に踏み切りました。たしか、その年初めて調査をいたしました我が国の百歳人口は百五十三人であったと思います。ちょうど私が厚生大臣を務めておりました昭和五十四年には、百歳人口は九百三十七名になっておりました。そして、昨年の敬老の日に公表されました百歳人口数字は七千三百七十三名であります。ことしは既に八千名を超える百歳以上の方々我が国は持っています。  ところが、その一方で出生率は低下を続けてまいりました。そして今、世帯当たりお子さんの数が一・五人を下回るという状況が生まれております。このこと一つをとりましても、私どもは、より少ない若い働き手により多くの高齢者を支えてもらうという状況になっています。これは、高齢化に伴う人口構造変化というものがいや応なしに生み出す一つ側面であります。  しかし、それは同時に、例えば私はもともと綿紡績の出身でありますけれども、当時は、綿紡績というものは一つの花形の産業でありました。しかしそれは、今振り返ってみれば、若い、優秀な、豊富な女性の労働力によって支えられてきた産業であります。そして、なお、中学校を卒業して実社会に出ていく方のまだ大変多い時代でありました。たしか、私が大学を卒業しました昭和三十五年ごろにも、中学を卒業して実社会に巣立っていかれる方々がなお四四、五%はあったと思います。今日ほとんどのお子さんが、その出生率の低下している中で高等学校進学をされ、私どもが卒業いたしましたころには短大を合わせましても一〇%ちょっとでありました大学進学率というものが、今もう三七、八%で大体動かない、これを上下するぐらいの数になっております。  学問を多くすること、これはいいことです。いいことですけれども、働き出すスタートが遅くなるということもこれは意味いたします。言いかえれば、若年労働力に依存する産業、これは既に国際競争力を失ってまいりました。産業構造も、この人口構造変化に応じていや応なしの変化を強いられてきたわけであります。  こういうことを考えておりますと、確かに私も、実は高齢化というものは随分前から気になっておりましたけれども、これほどの少子化というものが継続する状態というものは予測しておりませんでした。  さらに、国際的に考えてみるならば、いわゆる東西対立の終えんという中におきまして、まさに経済のグローバル化あるいはボーダーレス化というものが進む中で、自分にとって一番有利な生産基盤はどこか、企業が国を選ぶ時代になってきております。しかし、我が国システムは、そういう時代に対応したシステムになっていない。そうなれば我々が国際競争力をこれからも持ち続け、これからの日本というものを、国際社会においてなお活力を持った社会を維持し続けようと考えるのなら、今までにとってはそれなりに意味のありました、また今日の日本を築いてくる上で大きな役割を果たしてきましたシステムというものを、どの分野においても根底から見直していかなければならない。  企業がどんどん海外に出ていってしまう、国内に職場が減ってしまう、老齢人口の増加に伴って医療費や福祉関係経費などが膨らみ、しかもそれを支える若い働き手の数は減っていく、当然のことながら財政赤字は一層拡大をする、日本からは新たな技術開発の芽もなかなか生まれてこない、こういう活力のない社会にしてしまうわけにはいきません。短期の痛みをこらえてでも、何としてもこの改革をそれぞれにやり遂げていかなければならない。  繰り返し私が皆さんに御協力を求めておりますものは、そのような分析とそのような思いの中からのものだということだけはぜひ御理解をいただきたいと思います。
  7. 甘利明

    甘利委員 この放送をごらんになっておられる国民皆さんにより正確に理解をしていただくために、逆の聞き方をさせていただきます。  もしこのまま六大改革をやらずに放置しておいたら、将来どういう事態に至りますか。年金とか医療とか経済活力とか、日本はどうなりますか。
  8. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 仮に、もし現在の社会保障のシステムをそのままに全く手直しをせず進めていく、さらに、経済構造改革を行わず、現在の国の規制、保護によって国内においてそれぞれの企業は安住をする、しかし対抗する新たな産業は育たないというような状況が続いていきます場合に出てくるもの、それは破綻の方向しかあり得ないと私は思っております。  今詳細な数字をちょっと手元に持ち合わせておりませんけれども、その場合に、当然ながら、このシステムを維持していきますために、例えば社会保障における、これが保険料で賄うことになるのか、あるいは税の世界を導入して賄うことになるのか、いずれにしても要する費用は巨額なものになります。  税も合わせたいわゆる国民負担、私どもは、高齢化に伴ってある程度までふえていくことはやむを得ない、国民に御理解を求めなければならないと考えておりますけれども、それでも何とか五〇%以内におさめたい。しかし、幾つかの数字の中には、そうした場合に国民負担率が七〇%を超える、言いかえれば、収入として得られたもののうち税や保険料で七割以上御負担を願って、なお現行のシステムが維持できるかどうかといった破局的なシナリオもあるはずであります。  同時に、国の仕組みも変えないままに今と同様の支出構造を持っておりましたならば、当然のことながら、GDP対比の赤字幅はどんどん拡大していくでありましょう。これは破局のシナリオであります。こんな状況我が国をするわけにはまいりません。何としてもここで食いとめなければならない。この財革法という法律の裏側には、そうした思いが込められておりますこともぜひ御理解を賜りたいと思います。
  9. 甘利明

    甘利委員 総理の今までの答弁の中で既に、こういうことに対応してこういうふうにして、将来はこうするんだというお話は出てきているわけでありますけれども、六大改革でありますから、改革という以上は、この改革を達成していく道のりというのは部分的には相当つらいということもあると思いますし、国民皆さんにもそのつらさを共有してもらわなきゃならないというわけであります。しかし、そのつらさを乗り越えたときにはこういう国があるんですよというビジョンが提示をされれば、じゃ、今は大変だけれども頑張ろうという気持ちにみんななるし、必ずそのリーダーたる総理を支えていくというふうに思うのですね。  総理は、六大改革によってどんな国を将来つくろうとしているのか。そして、この財政構造改革がその中でどんな役割を果たしていくのか。将来はこうなるというビジョンを、今までの中でも触れられておりますけれども、そのエキスを御披瀝いただきたいと思います。
  10. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、例えば社会保障という仕組み、これは医療につきましても、年金につきましても、将来ともに国が守っていくべき、一つ経済的にもちろん意味のあることですけれども、それ以上に、国民の暮らしの安定という基盤をつくるために必要な機能だと考えております。  そうすると、より高齢化が進展をし、この少子化の状況が改善されない、そういう状況の中においても年金の仕組み、医療保険の仕組み、これを維持し続けることのできる方法は何か。  今、小泉大臣が大変な苦労をしながら、例えば、薬価差益によって医療機関の経営を維持するのではない、供給体制も含めた仕組みづくりに取り組んでいただいているのも一つの大事な問題点でありますし、町村文部大臣のところで、むしろ、今まで中教審等で言われてきたような週休二日制の学校とか飛び級とか中高一貫とかといった、そういうこと以前のもっと根本的な問題として、それぞれの学校に責任と権限をもっと持っていただき、その学校の中に地域の父母の声も取り入れていただくことで、より個性的な、創造性のある学校教育というものがつくれないか、そういう中から、よりチャレンジ精神豊かな、創造力の豊かな子供たちを育てていくことで、将来の日本における新たな研究、技術、さらには産業への芽を育てていくことはできないか、そうしたことを検討していただいているのもその一つでありますけれども、我々が求めるもの、それは、活力を持ち続け、国際社会の中で日本に求められる責任を果たしながら、同時に個々の国民がそれぞれに持つ夢、自分なりの希望、これに向かって積極的にチャレンジし、しかもそのチャレンジに成功のチャンスのある国をつくっていきたい、私はそのように考えておりますし、そのためには今のルールを変えていかなきゃならない、私はそのように考えております。
  11. 甘利明

    甘利委員 今、総理のお話の中に、医療保険というお話も出てまいりました。  今、NHKで人気のアメリカのテレビ番組に「ER・緊急救命室」というのがあります。ごらんになったことありますか。救急病院とそこで働く医療関係者たちの日常を描いたものなんでありますが、二年連続エミー賞をとっている番組でありまして、これはとてもリアルで、それからスピード感があって、私が大好きな番組なんです。実はNHK、何か放送はもう終わって、次は第二シーズンが始まるようでありますけれども、私は、NHKで放映をする前に、ビデオ屋に行きまして全十三巻を全部借りちゃいまして、一通り見てしまったぐらいのファンなんです。  主役のチーフレジデントのグリーンという医師役はアンソニー・エドワーズというのがやっているのですが、これははまり役で非常にいいキャラクターですけれども、私は、小児科医をやっている、ロスという医師役をやっているジョージ・クールーニーというのが大好きであります。彼は、「フロム・ダスク・ティル・ドーン」という映画でタランティーノと一緒に主演役をやっている男優でありますが、最新作のバットマン役の男優と言えばすぐぴんとこられると思うのです。  実は、彼は今ハリウッドで女優に一番もてる俳優でありまして、私もぜひあやかりたい、そんなことはどうでもいいのですが、実はその場面で、患者が担架で救急病院の処置室に運び込まれます。そばに付き添った、主役のグリーン医師が患者に聞くのですね。どんな症状ですか、どこが痛みますか、それから、保険に入っていますかと聞くのです。前の二項目は日本の救急病院でも聞かれると思いますけれども、保険に入っていますかということは日本じゃめったに聞かれませんよね。保険証を持ってこられましたかということはよく聞かれますけれども、保険に入っていますかというのは聞かれないのですよね。なぜなら、国民皆保険というのは当たり前のことでありますから。  しかし、日本では当たり前で、ありがたくも何とも思えないような公的な医療保険制度も、アメリカじゃ当たり前じゃないんだということですよね。アメリカでは、公的医療保険は老人医療があるだけですね。あと、一部、障害者等に何かあるようでありますが、あとは大企業を中心に民間保険会社の団体保険に加入をしているだけであります。ですから、無保険者がアメリカでは四千万人近くいるというふうに言われているわけであります。  このたびの改革というのは、我々が水や空気のように存在自体が当たり前なんだと思っているような基本的な制度も、ほうっておくとその存在すら危うくなるんだということから出発していると思うんです。だから、今から手を打って、健康保険も年金も未来永劫ちゃんと存続をしていくんだ、なおかつ社会の活力もしっかりと維持できるように備えていく、そのためには国家財政にどういうめり張りをつけていくかということを含めて、今からというよりも、今こそ準備していくことだというふうに私は理解をいたしております。  さて、この法案は、歳出に関して言えば、財政再建強化年間とも言えるような前半の三年間には、歳出項目について個々に制約をかけているんですね一御案内のとおり。しかし、歳入について言いますと、これは、経済計画で当然のように名目経済成長率は三・五%だということを前提に置いているわけなんですね。つまり、歳出についてはこれだけ具体的に項目別に指示を出していながら、歳入については、ちょっと言い過ぎかもしれませんが、単なる期待値を前提としているというような感じが見受けられる。言ってみれば、この法案は入りをはからず出るを制するという面があるという指摘があることは事実であります。  そこで、前提としての経済成長、名目成長率三・五、つまり歳入をいかに確保するかということは、この財政構造改革を成功させる一つのかぎでもあるはずですね。これをどういうふうに確保をされていくのか、これは大蔵大臣か経企庁長官かどちらかでしょうか、お伺いをいたします。
  12. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 お答え申し上げます。  財政構造改革法案におきまして、三・五%という経済計画での仮置きの数字があるわけでございます。財政改革を進める中で、中長期的には適切な経済成長を確保することが必要でございますが、そのためには民間部門を中心とした経済活動を活発化することによってこれを進めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。  具体的には、経済構造改革を進めるわけでございますが、私どもその内容を三点考えておりまして、一つは、ほかの国とイコールフッティングで企業活動ができるような経済の環境を整えるということであろうかと思います。具体的に言いますと、例えば法人課税の問題につきまして他国並みにする方向で検討する、有価証券取引税の問題等につきましても、そういう問題もございます。  それから二つ目は、今非常に景気のいわば足かせになっております不良債権というしこりを取り除くことであろうかと思っております。そのためには土地の流動化を進める、土地取引の活発化を進めることによって経済活動を活性化する、そういうことであろうかと思っているわけであります。  三つ目は、規制緩和をいたしまして、新しいベンチャーを育てるとか新しい経済活動を活発化する、そのほかいろいろございますが一要は、民間の経済活動を活発化して新しい二十一世紀に向かっての経済体質の活性化を図る、そのことによって経済の回復を正常な軌道に乗せていきたい、そういうふうに考えている次第でございます。
  13. 三塚博

    ○三塚国務大臣 三・五を大前提としてというお話、その内容いかんということであろうと思います。  我が国経済力は、まさに三・五を達成し得る力があると思っております。この仮置きの三・五は、構造改革のための経済社会計画、平成七年十二月一日の閣議決定に成るものでございます。この計画におきまして、各般の構造改革が進展した場合の経済の姿として、名目経済成長率三・五%が示されておるところであります。  したがいまして、平成十五年度までの財政構造改革の当面の目標達成のためには、目標策定時点における現行の経済計画で見込まれました経済指標を用いることは適切なことである、こういうことで仮置きに三・五とし、その名目成長達成のために、経企庁長官が今三点について言われましたとおり、諸改革断行によりまして、新しい世界の潮流の中に我が国経済をしっかりと位置づけをしていくということをおいてほかにないだろう、こういうことであります。
  14. 甘利明

    甘利委員 経済構造改革についても一部言及がありましたが、財政再建をするためには、支出を精査する、同時に収入の確保を図るということが車の両輪になっているわけでありますけれども、収入を確保するためには経済の活力を維持していかなければならない。そのためには、我が国経済構造改革財政構造改革に並行して行われていかないと成長率が確保できないというわけでありまして、二十一世紀に向けての日本経済構造をどういうふうに変えていくかということが、ここで非常に大事なことになってくるわけであります。  よく言われることでありますけれども、キャッチアップ型の産業政策が終えんした、これからは基礎研究を進める体制を整備していかなくちゃならないし、研究開発型の産業政策に転じていかなくちゃならない、新産業創造型社会へと我が国経済が転換をしていかなくちゃいかぬということが指摘をされているわけであります。  世界的な大競争時代に突入した現在、この大競争、メガコンペティションを乗り切っていくためにどういうふうな構造日本経済というものを改革していくか、これは非常に大切なところだと思います。この点については、通産大臣、どういうふうに取り組まれていかれますか。
  15. 堀内光雄

    ○堀内国務大臣 お答えを申し上げます。  御指摘のとおり、財政構造改革経済構造改革とは車の両輪のようなものでありまして、一体的かつ整合的に推進をしていかなければならないと考えております。つまり、財政構造改革の目標の達成のためには一定の税収確保が不可欠でありますし、これを支える経済活力の維持を目指す経済構造改革は、財政構造改革の前提であるというふうに思っております。  財政構造改革推進に当たって、日本経済構造をどのように変えていくべきかという点につきましては、規制緩和あるいは諸制度改革などによりまして、新規産業や付加価値の高い財・サービス、こういうものの生まれやすい、活力ある経済社会の実現ということが重要だというふうに考えております。  こうした中で、創造性や機動性を持った活力ある事業者が新たな産業を起こして成長することが期待されてくるわけでありまして、あわせて高コスト構造が是正をされて、質の高い雇用の機会がふえてくる、そして、その結果、消費者や労働者にとっても豊かな国民生活が享受できるものというふうに確信をいたしております。  さらに、マクロ経済的な視点からいえば、財政構造改革が進められる中にありまして、こうした経済構造改革というものを実現することによって、初めて、我が国経済の内需主導でかつ民需中心の安定的な成長が可能になってくるというふうに考えております。  こういう認識の上に立って、各省庁間で密接な連携を図りながら、大胆かつ強力に経済構造改革に取り組んでまいりたいと思っております。
  16. 甘利明

    甘利委員 今までお話をさせていただきました、あるいは御答弁がありましたとおり、財政再建を成功させていくためには、歳出を精査していく、同時に、入ってくる方、歳入をちゃんと確保するという二つの要素が欠くべからざる大事な要件でありますけれども、その入ってくる方を確保するというためには、十分な経済成長を担保していかなくちゃいけないということになるわけであります。  政府は、先般、地球温暖化の原因となりますCO2の排出量を一九九〇年レベルに比べて、日本提案を日本にきっちり落とし込んでいきますと、日本はマイナス二・五という目標値になる、これを発表されたわけであります。  経済が成長していきますと、当然、それにパラレルにエネルギー使用量というのは拡大をしていくわけであります。仮に三・五%の成長を六年間連続をして続けたとしますと、六年後には二二・九%経済規模は拡大をいたします。複利計算になりますから、十年間続けていきますと四一・一%経済規模が拡大をしていくわけであります。ということは、エネルギーの効率が今のまま変わらないとしたならば、十年後にはエネルギー消費量も四割以上ふえるわけであります。そしてエネルギー構造が今のままである、変わらないとしたら、四〇%炭酸ガス排出量がふえるという計算に単純にはなるわけであります。  そういうバックグラウンドの中で、二〇一〇年に、以前、新提案をする前の我が国の目標であった、排出量を一九九〇年レベルと同一にしていく、つまりプラス・マイナス・ゼロということすらこれは大変な困難が伴うわけであります。今回は、それをさらに切り込んだということでありますね。経済成長をしなければ財政再建が成り立たない、経済成長をすれば炭酸ガスの排出量はふえ続けるというジレンマに陥るわけであります。そこで、エネルギー構造の転換や省エネルギーの面で血の出るような努力を積み重ねていかなければならないということになるわけであります。  ちなみに、政府が当初目標としていました、CO2排出量を一九九〇年レベルに比べて同一、プラマイ・ゼロというふうにするためには、その前提として、百三十万キロワットの原子力発電設備を新たに二十基、二〇一〇年までに設置をしなければならない。その上でさらに、原油換算でいいますと、五千六百万キロリットル分の省エネをしなくちゃならない。それでやっと一九九〇年レベルと同一、プラマイ・ゼロ%という計算になります。  この五千六百万キロリットル分の省エネというのは、我が国で一番省エネが一挙に進んだというのは第一次オイルショックのときですけれども、その分に匹敵するボリュームであります。だから、いかに大変かということがわかると思いますが、これまでの視点で大まかに間違いはありませんか、通産大臣。それから、さらに五千六百万キロリットル分の省エネをするというのは具体的にどう積み上がっているか、ちょっと説明してください。
  17. 堀内光雄

    ○堀内国務大臣 お答えを申し上げます。  今般のCO2排出削減対策におきまして、ただいま委員から御質問のございました原子力発電について七千五十万キロワットを前提としておりまして、これから、先生の御指摘のとおり、原子力発電所を現行の五十三基から二十基程度増設することになっております。  以下、数字的な問題は、エネルギー庁長官からお答えをいたします。
  18. 並木徹

    ○並木政府委員 お答え申し上げます。  今先生御指摘いただきましたように、足元、九〇年から九五年までCO2の伸びが既に八%ということでもございますし、今後の経済成長に対応するエネルギーの伸びということにつきましても今後の伸びが予想されるわけでございますけれども、しかしながら、先ほど御指摘のような供給面、さらには大変な需要面、省エネルギーというものをぎりぎりの対策を講じることによりまして、先ほどの政府目標値二・五%ということに対応していきたいということでございます。  少しく詳しく御説明申し上げますと、やはり地球温暖化防止対策につきましては、地球温暖化の防止と、その前提でございますエネルギーの供給の安定、それから国民経済の健全な成長というものを両立しながら進めていくことが大変重要でございます。  このような考え方におきまして供給あるいは需要の対策を検討さしていただいたわけでございますけれども、エネルギーの供給におきましては、CO2の排出が大変少ない原子力でございますとかあるいは太陽光発電につきまして、新エネルギーにつきましては現在の三倍の導入を進めるというようなことが必要でもございますし、需要面、省エネルギーにつきましては、乾いたタオルをさらに絞るような、今までの努力に比べてさらに厳しい、産業、民生、運輸、各分野におきまして、例えば自動車の燃費基準につきましては従来よりも二〇%厳しく対応するといった規制的な措置でございますとか、あるいは冷暖房のいわば節減といいましたような、国民全般におきます大変な省エネルギーの理解とその実行ということについてもこれをお願いするといいましたような、ぎりぎりの対策を最大限に積み重ねまして、それでもエネルギー起源のCO、につきましては、以上のような全体的努力によりまして二〇一〇年時点におきまして九〇年レベルの安定化ということができるわけでございますが、これに加えましてエネルギー起源以外の温暖化ガス、例えばメタンでございますとか、そういったものの削減を見込みまして、〇・五%の削減ということをぎりぎりの対策として今積み上げておるところでございます。  こうした中、さらに二・五%の目標の達成ということでもございまして、いわば現在の想定を超えましたさらなる技術革新というものを期待し、また国民各層におきます使用におきますさらなる協力を期待することによりまして、健全なる経済発展を阻害するようなことがなくこのような対策が可能なよう、目標の達成に向かってあらゆる努力をしてまいりたいと思っております。
  19. 甘利明

    甘利委員 また詳しくその部分も聞きますけれども……。  十二月に京都で開かれます気候変動枠組み条約第三回締約国会議、いわゆるCOP3でありますが、COP3というとお巡りさんの集まりかと思っていらっしゃる方いるかもしれませんが、これはCO2の削減会議でありますけれども日本が議長国になるわけでありますし、環境庁長官がたしか議長に就任、おめでとうございます。御愁傷さまでございます。そこに向けて宣言をしました日本のCO2削減目標値というのは、今のその積み上げた〇%からさらに二・五%削るんだという案でありまして、二・五%のマイナス、さらに削り込む部分について、これは積み上げができているのか。何とかこれは達成しなきゃならないんでしょうけれども、これは具体的に積み上げられますか。
  20. 大木浩

    ○大木国務大臣 まず、その二・五%ができるかというところからお話し申し上げますが、これは現在三省庁で、将来に向かっての計画でございますから、ある程度いろいろな施策を、これは総合的にいろいろなものを組み合わせなきゃいけませんけれども、可能な範囲ということで計画を出しておるところでございます。
  21. 甘利明

    甘利委員 ところで、環境庁長官、先ほど申し上げましたように、これらの計画というのは、何度も申し上げますけれども、新たに原発を二十基、二〇一〇年までにできるんだということを前提としています。この点は間違いありませんね。
  22. 大木浩

    ○大木国務大臣 原子力発電所のいろいろな準備につきましては、もちろんこれは関係省庁に御協力をいただかなければなりませんけれども、それを前提としてできるということで、京都会議のための準備として進めておるところでございます。
  23. 甘利明

    甘利委員 原子力発電は一プラント当たりの発電量が圧倒的に大きくて非常に効率のいい発電施設でありまして、CO2に関して言いますと排出量はほぼゼロとも言っていい、そういう点に関してはクリーンエネルギーなんですね。  動燃の事故が原子力に対する信頼性を著しく失墜させました。これは科学技術庁の所管をする実験炉の事故でありますけれども、一般家庭とか民生用に工場に電力を供給している電力会社の原発では起こりようのないような初歩的な管理ミスだったわけでありますね。それだけに非常に私は悔やまれる思いがいたすのでありまして、原子力の安全には最大の配慮をしていくということは当たり前、これは大前提でありますけれども、COP3での日本提案を実現していくためには原子力発電の推進が前提であるということ、これは環境庁としてもそう受けとめていらっしゃるんですか。
  24. 大木浩

    ○大木国務大臣 まず結論から申しますと、そのとおりでございます。  原子力が、原子力発電と申しますか、これが相対的に言えば非常にクリーンなエネルギーであるということは、先生が先ほどからお話しのとおりでございますし、それから、現実に今の日本のエネルギーの供給源としてまた非常に重要な、量的にもまたいろいろな条件的にも大事なエネルギー源であるということは、御存じのとおりでございます。  ということで、政府といたしましては、平成二年の十月だったと思いますけれども、地球温暖化防止行動計画というのをつくりまして、この中でも、原子力を、安全性の確保を前提としてこれを推進していくということを決めております。  また、平成六年の十二月だったと思いますが、閣議決定におきまして、これは環境基本計画というのをつくりましたが、この中におきましても、改めて、安全性の確保を基本として原子力の開発を進めていくということを決めておりますし、平成九年の現在におきましても、これも現在の状況というものは変わっておりませんので、環境庁といたしましても、原子力の発電というものを重要な一部として、今後とも地球環境会議のための態勢をつくっていきたい、そういうふうに考えております。  以上でございます。
  25. 甘利明

    甘利委員 今の御発言で、環境庁としても原子力政策推進には側面から協力をし、努力をするというふうに私も理解をいたします。  それでは、環境庁として、原子力発電の推進のためにどんな側面的な努力をされるおつもりですか。
  26. 大木浩

    ○大木国務大臣 先ほども申し上げましたように、環境庁としては環境の側面から、原子力の開発というものが問題が起こらないようにというようなことで、いろいろと私どもの方の専門的な知識とかいろいろな科学技術的な所見とかいったようなものを随時述べておるところでございます。  開発自体につきましては、これはまた通産省なりあるいは科学技術庁の方でいろいろとお進めになっておりますけれども、私どもとしては、あくまでも環境上問題がないということを常に注目しながら、その開発に御協力を申し上げているところでございます。
  27. 甘利明

    甘利委員 二〇一〇年までにでありますから、今後十三年間であります。この十三年間に二十基の原発をつくるということは、私にはかなり悲観的なように思われます。かなりですよ。だめだとは言いませんけれどもね。仮にこの二十基を石油火力発電で代替したといたしますと、新たに二千六百万トンのCO2が吐き出されるという計算になるわけであります。そしてこの数字は、驚くなかれ、今、日本全体で排出しているCO2総量の一〇%に該当をいたします。  御案内のとおり、GDP当たりのCO2排出量が世界で最も低いんです、日本は。これはさっきもちょっと何か話が出ましたが、日本を例に例えれば、日本はいわば絞り切ったタオルに当たるんです。一方、他国のエネルギー効率、GDP当たりの関係で見ますと、他国は日本の数分の一の効率のはっきり言えば悪さであります。つまり、絞る前のタオルの状態であります。  ちなみに、世界のCO2の二二%を排出しているアメリカは日本の三分の一の効率、ヨーロッパは二分の一。世界のCO2の一三%を排出している中国に至っては、日本の八分の一というエネルギー効率の悪さなんですね。日本の優秀な省エネ技術、エネルギー効率の高さ、この技術を海外に移転をしていくというだけでも、CO2の削減量はこれはもう莫大なものになるわけであります。  意外と一般的には知られておりませんけれども、さきのデンバー・サミットで橋本総理が提唱をされました地球温暖化防止総合戦略、グリーンイニシアチブ、これは私は画期的な提案だと思います。これは、先進国が環境技術を開発し普及し、そしてそれを途上国に技術移転をしていく、そうしていくアクションプログラムであります。これは私は、総理の御提案はもっと評価をされてもいいと思うんです。  総理、この場を通じて、簡潔で結構でありますから、総理の御提案をもう一度説明していただけますか。
  28. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今議員からさまざまな角度から述べられましたように、本当に地球温暖化対策というものを究極的に解決をしようとした場合、世界全体の二酸化炭素の排出量を現在のレベルの半分以下にしなければなりません。しかし、これはなかなかそんなに、今議員が述べられましたように、我が国の例えばエネルギー供給の面で原子力発電所二十基というものが本当にできるかといえば自分は疑問だと言われましたけれども、それでも我々はやらなければ実は目標に到達しないわけです。  それだけ真剣にならなければならない課題でありますから、その地球温暖化防止というものを国際協力のもとで加速できる方法はないかということを考えました。そしてそのためには、先進国が中心となりまして、エネルギー・環境技術の開発普及を行う、これをグリーンテクノロジーと呼びます。同時に、それらの技術に関して発展途上国への協力をいかに行うか、これをグリーンエード、こういう二つの柱を立ててこの問題に取り組みたい、これを環境特総で提唱をいたしました。具体的には、省エネルギー技術の開発と普及、太陽光発電、こういった非化石エネルギーをどこまで導入できるのか、二酸化炭素の固定化など革新的なエネルギー・環境技術の開発をどこまで進められるのか。同時に、それをODAや民間資金を活用しながら人材育成、基盤整備などを進めて、地球温暖化防止対策に関する途上国への協力を進めるという考え方であります。  我々は、かつて公害列島日本と言われた、非常に自然の浄化力の限界を見誤った結果の大きな環境問題を多発させたわけでありますし、人命をも多く失いました。しかも、その後遺症が完全に今も消滅したと言える状況ではありません。そして、そういう中から環境庁も生まれました。  しかし、環境庁ができました後、二十年たちました時点で、では当時の公害に対する投資というものは一体どんな役割を果たしたのかという分析が、環境庁の諸君が外部の学者との間で行われたものがございます。詳細は今記憶をいたしておりませんけれども、非生産的な投資であるにかかわらず、これは完全に有効であったということが一点。同時に、その中から新たな産業分野が生まれたという指摘がここになされておりました。  そして、その次の年の環境白書でこれを受けた分析が行われ、では当時、企業はこれにどう取り組んだのかという部分がございましたけれども、これは実験室段階において成功していた技術というものを生産ラインに乗せていく時点において、国の誘導的な施策が役立った。しかしそれ以上に、国民がそうした商品を求めていた、言いかえれば、環境問題というものにそれだけ国民の目が向いていたというものが基盤にあったという報告が出されております。  そうしたことを考えますとき、我々は新たな技術開発を我々自身のためにもなさなければなりませんけれども、それを途上国にいかに移しかえていくかということも考えなければなりません。  本年、中国を訪問いたしましたときに、地球環境のネットワーク、このアジア版に中国にも加盟を呼びかけましたこと、あるいは両国で、中国の中の問題を抱える都市の複数のものを選び出し、ここに徹底的なその環境技術の移しかえを行うことによってどれだけの改善ができるかに挑戦してみたい、そのようなことを中国側に提起をいたしましたら基本的な賛成を得ましたけれども、まだこれは具体化をいたしておりません。しかし、そういうことを考えてきているのもこの一環、そのように受けとめていただきたいと思います。
  29. 甘利明

    甘利委員 総理は、私と同じように控え目でシャイでありますから、自己PRが余りお得意ではありませんけれども、私は非常に評価しています、これは。それは、ぜひ、いろいろな機会あるごとに積極的に宣伝をしていただきたいというふうに思っております。  さて、法案の中身に戻りますけれども、この法案は、今まで申し上げてきましたように、歳出の各項目ごとにキャップをかぶせる、つまり上限設定をしているわけであります。来年度予算でいいますと、公共事業は今年度予算に比べてマイナス七%を上限とする、ODAはマイナス一〇%、しかし科技予算はプラス五%等々、つまり政策に明確なプライオリティー、優先順位をつけて効率的、効果的に予算執行をするというものであります。  アメリカでは、財政再建の出発点になったの一は、有名なグラム・ラドマン法でありましたけれども、これは宣言法的なものでありましたから、つまり、政府財政収支の均衡に努めなければならないという程度のものでありましたから、結局効果は余り上がらなかったわけであります。そこで、包括財政調整法、このパートワンとパートツー、これを成立させまして、具体的な縛りをかけて初めて成功したわけであります。  今回提出をされております財革法は、いわばアメリカの失敗に学んだと申しますか、各項目に最初からプライオリティーをつけて縛りをかけているわけであります。これはかなり効果が上がると私は思います。  しかし、各方面から常々指摘されているように、この方法にも抜け道があるんじゃないかという指摘です。たしか、前に予算委員会か何かでも指摘されたと思います。つまり、当初予算にどんなにキャップをかぶせても補正という抜け道があるじゃないかという指摘であります。補正予算については安易な編成はしないのだということとされているわけでありますけれども、しかし、災害復旧はこの限りではないわけでありまして、その際に便乗して補正がかなり膨らんでいきはしないかという懸念が指摘をされているわけであります。  そこで、大蔵大臣に伺いますけれども、当初予算と補正予算、それから今回の財政構造改革、この三者をどういうふうに整合性をとっていかれるのでありましょうか。
  30. 三塚博

    ○三塚国務大臣 重要なポイントの御指摘でございます。  もう御案内のとおり、財政法は財政の節度というものを明確に打ち出しております。二十九条、御案内のとおり、「予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出」。御指摘のように災害であります。予見しない事由によりまして、人命そして地域が崩壊の危機にさらされた。二次災害を防ぎ、人命のとうとさをさらに確認をするという意味で緊急災害事業、直ちに補正国会というのもいっかあったような気がいたしますし、まず予備費の出動によりまして、事後に補正措置を行う、こういうことでございます。  まさに、ただいま段々の御質疑の中で、財政構造改革は六大改革のフロントランナーとしての位置づけが明確にされてきた。国民の血税をもって収入となし、そしてこの国家の安全保障、社会保障、各般の施策に資源配分をしながら、この国の安定、その中からこの国の安定的、持続的な成長を達成せしめる。  御説のように、入るをはかって出るを制するは経済原論の骨格でございます。多様な、また広範な業務を行っております政府とすれば、それぞれの中でそれぞれに支出をしていかなければなりませんが、いずれも予算として国会に提出をし承認を得た後にその執行が行われること、議会政治の基本でありますから当然のことであります。  そういう中で、補正のあり方は、二十九条、あえて読み上げさせていただきましたこの原点を踏まえて取り組んでまいらなければなりません。緊急を要する予見しがたい事由の案件については措置をする、こういうことになりまして、仮にその場合の補正の扱いでございますが、こうした財政構造改革推進するという観点もさることながら、財政法の基本に忠実に従い、厳正に対処をしていかなければならないことだけは間違いのないことであります。  特に、今世紀の集中三カ年は、制度全体を見直し、聖域なき歳出の点検、その中でむだがあるものは当然カットであります。これは民間にお任せした方が効果的であるというのも当然移転をしなければなりません。国の固有事務としてやらなければならぬことは、当初予算に明示をして御審議をいただくということになります。  いずれにいたしましても、構造改革会議がこのとおり深刻な形の中で論議をしなければならないということ、これは遅きに失しないぎりぎりのところで提案をさせていただき、国会の御論議をお願いを申し上げておるわけでございますから、後世のために、ぜひとも深い御理解の中で御鞭撻をお願い申し上げます。
  31. 甘利明

    甘利委員 大事な点でありますから、しっかり踏まえていただきたいと思います。  ところで、財政構造改革は景気にはマイナスに働くんだという指摘があります。参議院の予算委員会でもたしかそんな話が出たと思いますが、それは、財政支出が抑えられる、特に公共事業はかなり抑えられるわけでありますから、総需要が抑制をされる、さすれば景気にマイナス影響を与えるといったしか指摘でありました。  本当はそうであってはいけないのでありまして、マイナスになるとしたら、単に財政収支の帳じり合わせ、その域を出ていないわけでありまして、項目ごとにキャップをかぶせるということは、予算の効率的運用と、投資効果の高いところに予算が向かっためのインセンティブ、つまり誘導策となるはずであります。もちろん、財政赤字が累増していきますと、家計でいう可処分所得は減るわけでありますから、財政は硬直化する、こういう点は当然ありますけれども。  端的に伺いますが、橋本総理経済構造改革は景気にマイナスに働きますか、それともプラスに働きますか。
  32. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 経済構造改革そのものは、御承知のように規制緩和あるいは撤廃といったことですから、これはプラスに働いて当然であります。(甘利委員「ごめんなさい、財政構造改革」と呼ぶ)しかし、それでも、その規制に守られていて安易な業務運営が行われている部分があったとすれば、その部分にはマイナスを生じるでしょう。  同様、財政構造改革は、その財政の結果として、競争のない緩やかな世界にいた方々にとりましては、短期的には痛みを伴う部分はあると私は思います。しかし同時に、それは、中長期的には国民負担率の上昇を抑えるという意味でも、また、公的部門の簡素合理化などによりまして新たな業が生まれるということを考えましても、私は経済の活性化に資すると考えております。  今後の経済運営というものは、安易に財政に頼らず、むしろ民間需要中心の自律的な安定成長を図っていくことが基本だと私は考えておりますし、その意味で、たまたま議員のお言葉がちょうど重なりましたので、私は、財政構造改革と並んで、規制緩和を初めとする経済構造改革の実現がますます必要だということを強調したいと思います。  財政構造改革には、短期的に痛みを伴う部分は確かにございます。しかし同時に、その中で、結果としてめり張りがつき、将来に夢をかけていくことのできる、例えば科学技術開発のための研究予算、こういうところは伸ばしていけるわけです。そういうものから新たなものを生み出す努力も我々はしていかなければなりません。私は、そうしたことを含め、国民負担率の上昇率を抑えていく、あるいは公的部門の簡素合理化等を通じて経済の活性化に通じる、資するものだ、そのように思っています。
  33. 甘利明

    甘利委員 中長期的には間違いなくプラスに働く、しかし短期的には多少ダメージはあるであろう、しかし、それを乗り越えることが大事だという話でありました。  そこで、構造改革というのは、言ってみれば、これから大手術に入っていくわけであります。手術に取りかかる際には、多少なりとも患者の体力を回復させておくということが手術をする際には肝要なんでありますが、そこで、今の景気の状況を正確に把握して、体力の状況を見きわめておくということは一方で大事なことだと思います。  要するに、今の景気の状況の正確な把握なんですけれども、尾身大臣、大臣は経企庁長官に就任をされることについて恐らく相当ちゅうちょをされたと思うのですよ、私が思うに。私と一緒になって、経企庁はいいかげんな景気動向を発表するなとか現状認識が甘いなんてことをついこの間まで二人でやっていたのでありますから、その人が長官になってしまったのですから、これは大変なことだと思います。  そこで、経企庁長官、現在の景気動向を長官はどう認識をされておられますか。
  34. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 景気の動向につきましては、御存じのとおり、消費税の引き上げ前の駆け込み需要、これは住宅建築もそうでございますし、設備投資もややそうでございましたし、それから消費につきましても、非常に予想外の大きな駆け込み需要が三月までの間にございました。そして四月からはその反動として大きな反動減があったわけでございまして、四月-六月の期間だけではなしに、七月―九月にもそれがやや残っているという状況でございます。  そういうこともございまして、足元は景気回復のテンポが緩やかになっておりますし、また企業の景況感にも慎重さが見られるという状況でございますが、民間需要を中心とする景気回復の基調そのものは続いているというふうに考えております。しかし景況感も非常に慎重でございまして、いわば足踏みという状態かなという感じで考えております。  景気の状況、従来のような力強さを感じることができないのは、消費及び設備投資につきましても、雇用の状況も一年前と比べてやや改善をしておりますし、一人当たりの賃金所得も上昇をしておりまして、消費者の懐はそこそこ豊かになっているわけでございますし、企業の方も、企業収益はこれまた上昇をしておりまして、そこそこの状態なんでありますけれども、しかし、もう一つ消費の伸びが鈍い。  設備投資についても、伸びてはおりますものの、そう大幅な伸びになっていないというのは、景気の将来に対する信頼感といいますか、不透明感といいますか、そういうものがあってのことであるというふうに考えている次第でございまして、私どもといたしましては、民間需要中心の景気回復のための手段をしっかりととっていくことによって、そういう景気の将来に対する信頼感、英語で言いますとコンフィデンスということでありますけれども、この信頼感が回復をして、年度後半からは徐々に立ち上がってくるというふうに期待をしているところでございます。
  35. 甘利明

    甘利委員 いつもよりちょっと元気がないと思われますけれども、しかし、経企庁長官というのは常に余り悲観的になっちゃいけないんですね。景気はまさに気でありますから、弱気になればもっと弱くなってくるんですよ。GDPの六〇%を占めるというのは個人消費でありますから、景気が悪くなると宣言すれば、当然、生活防衛に入ります。さらに消費はしぼむということになりますから、経企庁長官は、強気でいながら、実はしっかりと景気対策に配慮をするという二重人格的な要素が必要なんであります。  今回提出をされておりますこの法案は、財政再建法でありますから、それと整合性をどうとるか。景気対策というのはおのずと制約はかかると思いますけれども、しかし、若干触れられましたけれども、打つ手は、これは幾らでもあると思うんですね、底力はあるのでありますから。  そこで長官、当面の景気対策としてどんなことをお考えでいらっしゃいますか。
  36. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 先日、十七日金曜日の閣議後の閣僚懇談会におきまして、総理から景気対策の取りまとめを指示されたところでございまして、今年中、できるだけ早期にこの取りまとめをしていきたいと考えている次第でございます。自民党及び与党三党、近く景気対策の素案を提出されるというふうに聞いておりますが、そういう内容も踏まえまして対応していきたいと考えております。  現在、私ども考えておりますのは、先ほどもちょっと申し上げましたが、大きく分けて三つございまして、財政が厳しい折、財政構造改革を進める中で、いわゆる大幅な財政出動を伴うような経済対策というものはなかなか難しい状況でございます。  そこで、お金を余り使わないで経済を発展、成長させていく課題いかんというのが私どもに課せられた問題点でありますが、整理をしてみますると、一つは、経済活動が世界的な展開の中で行われるようになりました。そういう状況のもとにおいて、日本という国が、日本の企業あるいは外国の企業にとりましても、生産活動の拠点、事業活動の拠点として選ばれるような魅力ある国になるような事業環境というものを整えなければならないということでございまして、そのためには、ほかの国と比べて負担が大きい法人課税の適正化の問題あるいは有価証券取引税の問題、連結納税制度の問題などなど、そういう税制面の検討も含めて、事業環境を整えるということをやっていきたいと考えている次第でございます。  第二番目は、経済構造的な要因として、景気の回復がなかなか思うようにいっていない現状にあるのは、不良債権というものがまだしこりが残っておりまして、この不良債権のしこりがかなり経済の回復の足を引っ張っているというふうに感じている次第でございまして、このしこりを取り除かなければならないというふうに考えております。  そのためには、担保不動産も含めまして不動産の流動化、それから、土地の取引を従来の地価抑制から土地有効利用という方向に転換をしているわけでございますが、その有効利用に転換をするための具体的な施策、税制問題も含めて、規制緩和も含めて、具体的な施策を進めていく必要がある。そして、土地取引の活性化そのものもまた経済の活性化に大いに役立つものであるというふうに考えております。  三点目は、経済構造改革に資する規制緩和の促進という問題でありまして、従来から進めてまいりました規制緩和でございまして、新しい技術開発や、あるいは新規ベンチャー企業の創出を活発化し、内外価格差の是正縮小を通じまして雇用を拡大する、民間活力を生かした経済を活性化するということでございますので、これをぜひ進めていきたい。例えば情報通信の問題とか土地住宅の問題とか福祉分野の問題とか、あらゆる分野で規制緩和を進めまして、経済活動を活発化していきたいと考えている次第でございます。  そのほか技術開発の面では産官学の共同研究を進めるとか、各般の施策を実行いたしまして、しっかりとした二十一世紀に向かった我が国経済の民間需要中心の活性化の方向を打ち出していきたいと考えている次第でございます。  そういう施策を打ち出すことによりまして、日本経済の将来に対します中長期的な展望をしっかりと示すことによりまして、国民の皆様、また企業活動をしておられる皆様の将来に対する信頼感というものが回復をし、そして景気も正常な回復軌道に乗ってくる、そのようなことを考えている次第でございます。
  37. 甘利明

    甘利委員 お話にもありましたけれども、税とか規制緩和をうまく組み上げて駆使すれば、かなり大胆なことができると私も思います。  尾身長官は、私も一緒に経済対策とか産業政策にずっと取り組んできましたけれども、大変なアイデアマンでありますし、積極果敢な行動力を持っておられますから、ぜひ頑張ってこの景気の不安感が払拭されるように、そしてきちっと財政構造改革に、大手術につながっていくように御尽力をお願いしたいと思います。  ところで、世の中は官から民へ、中央から地方へというのがトレンドであります。これからますます地方自治体の役割も大きくなってくるわけであります。  国家予算は七十七兆でありますけれども地方財政計画上の歳出会計、つまり地方自治体の予算総計でありますけれども、これも八十七兆円でありますから、国と同等規模以上の財政ボリュームを地方自治体も有しているわけであります。  今回の財政構造改革の目標として、二〇〇三年に、現在五・四%であります国と地方の単年度財政赤字を合わせた総計の対GDP比、これを三%以内に持っていくんだということも明示をされているわけであります。ですから、この財政構造改革というのは、中央も大事だけれども地方もそれと同等に担ってもらわなきやなりませんよということは、法律的には明示をされているわけであります。しかるに、今回の法案には、地方自治体の財政構造改革に関してはたしか三項目ぐらいしか言及をしておらないわけであります、同等に大事なことでありながらですよ。自治大臣に伺いますが、地方自治体の財政構造改革にはこれからどういうふうに取り組んでいかれるのでありましょうか。
  38. 上杉光弘

    上杉国務大臣 お答えをいたします。  財政構造改革は、私たちの世代でぜひやり遂げなければならない、次の世代に残してはならない重要課題であると思っております。その中で、国と並ぶ公経済の車の両輪である地方財政の健全化は極めて重要な課題でございます。  地方財政につきましては、地方自治の視点から、個々の地方公共団体の財政運営を直接拘束する手法はとり得ないものでございまして、こうしたことから、国、地方双方の歳出抑制につながる施策の見直し、地方単独施策の抑制等により、平成十年度の地方財政計画の地方一般歳出を対前年度比マイナスを目指すとともに、地方公共団体に対しましては、徹底した行政改革歳出の抑制に努めるよう強く要請をいたしたいと考えております。地方財政構造改革推進に積極的に取り組んでまいります。  なお、技術的な問題から地方財政に関する条文は三条となっておりますが、基本的に閣議決定された財政構造改革推進についての内容を盛り込んだものであり、閣議決定に沿って取り組んでまいる所存であります。
  39. 甘利明

    甘利委員 私の持ち時間もあとわずかでありますので、最後の質問とさせていただきますが、総理地方分権の受け皿として小規模自治体の合併というのに大変意欲を持っておられますけれども、学者が主張する地方自治体の適正人口規模というのは十万から三十万だというようなことも言われております。その根拠は、十万以下では効率が悪いし、三十万以上になると市民との距離が遠くなって市の顔が見えないという主張でありますけれども、しかし、この規模でも手に負えない行政項目というのが確かにありますよね。ごみ行政であり、これも今大変になっています国保の運営であり、消防防災の行政でありますし、今後は実は介護保険の運営も小規模自治体では大変になってくると思います。  私は、この地方自治体の行政の業務を、市ごとに個別にやっていくものと、それから一定の市が一緒になって画一的に効率よくやっていくもの、先ほど挙げましたような分野でありますけれども、そういうふうに分けて、画一的にやってもいいものについては、今もありますけれども広域行政組合として各市が共国運営をしていくその機能と県にあります行政センターの機能を一緒にして、県の外庁組織としていくのが効率がいいというふうに考えているのです、県の機構を残すならですよ。そうすれば、効率よく運営していくことと、それから血の通った、つまり市民に市の顔が見える行政ができるというふうに確信をいたしておりまして、そのことを提唱しているのであります。  これは自治大臣に伺いますけれども、そういうスタイルをどう評価されますか。
  40. 上杉光弘

    上杉国務大臣 お答えいたします。  市町村は住民に最も身近い総合的な行政主体として、幅広い行政分野にわたる事務事業を実施しており、重要な役割を果たしていくことが期待をされておることは申すまでもありません。  市町村の規模につきましては、さまざまな議論もあるところでございますが、各行政分野ごとの望ましい市町村の規模は異なっておりまして、さらに、それぞれの地域には、自然的、社会的条件の違いやさまざまな事情もあることを考えるべきではないか、このように考えております。  市町村単独では実施できない事務につきましては、従来から、御指摘のとおりごみ処理あるいは消防の分野で一部事務組合が活用されてまいりましたが、御指摘のように、都道府県の事務とあわせて広域行政を実施することが求められ、これに対応する仕組みとして広域連合制度が創設されました。自治法の平成六年度の改正で、七年から施行いたしておるところであります。  広域連合におきましては、都道府県も参画し、市町村と共同して各種の事務を総合的に実施することができ、例えば市町村の一般廃棄物処理の事務と都道府県の産業廃棄物処理の事務を連携して総合的、一体的に実施したり、また、市町村の消防に関する事務と都道府県の防災に関する事務とを持ち寄って実施することなどが可能であります。それぞれの市町村が住民に対し一定のサービスを適切に提供するという観点から、事務の内容や地域の実情に応じまして、最も効果的な方式を選択することが重要であると考えております。  自治省といたしましても、制度の一層の普及に努めてまいる所存であります。
  41. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今自治大臣から述べられましたけれども、まさに私は、自主的な合併というものをできるだけやっていただきたいというお願いはいたしております。  同時に、現在まで合併がなかなか進まず三千三百の市町村が残っている、それにはそれなりの理由もあろうと思います。となれば、一部事務組合あるいは広域連合、私は、その広域連合の中に、議員が御指摘になりました県の出先を含めた考え方というものもあり得ると思いますけれども、要は、それぞれの地域で住民に身近な仕事を行うのにどの仕組みが一番いいのか、その選択肢はできるだけ広げておくことがいいと思っています。  それから、一つ、先ほど私、大学進学率で四七、八%と申し上げたつもりでしたが、今秘書官から注意がありまして、三七、八と言ったという  ことでした。それは大変申しわけありません。ちょっと一〇%どこかでマイナスをしておりましたので、四七、八に訂正させていただきます。
  42. 甘利明

    甘利委員 私の持ち時間が来ました。この後は我が党のホープであります野田聖子議員にバトンタッチをいたしますが、総理の六大改革のフロントランナーと言われました財政構造改革総理のリーダーシップのもとにぜひ財政再建を仕上げていただいて、二十一世紀に向かって安心した国であるよう、我々も微力を尽くして支援をしたいと思っております。ありがとうございました。
  43. 中川良一

    中川委員長 この際、野田聖子君から関連質疑の申し出があります。甘利君の持ち時間の範囲内でこれを許します。野田聖子君。
  44. 野田聖子

    野田(聖)委員 自由民主党の野田でございます。先輩の甘利議員の関連ということで質問をさせていただきます。  今、甘利議員の方から、文字どおり総括的なこの財政構造改革法案に関する質問がございました。私は、もう少し身近な、国民皆さんの暮らしにとってこの法律がどういうものであるかということを、総理初め関係大臣にお尋ねしたいと思います。  率直に申し上げまして、この財政構造改革法案は大変厳しい内容であると思います。実は、きょうから本格審議がこの委員会で始まるわけでございますから、国民の多くはきょうからその内容について順番、理解なり知識を広めていただけるものだと思います。恐らく、この法律の中身が明らかになればなるほど、多くの皆さんは、嫌だな、こんなことはしたくないなというのが本当の部分ではないかと思います。建設関係の方とか教育関係の方からは大変反対の声が既に出ているわけで、前途多難であるな、国民皆さんに理解してもらうには本当に大きな障害を越えなければならないなということを実感しているわけであります。  総理にとっては何度も何度もくどいわけですけれども、まず、この法律案はだれのためにしなければならないのかということをはっきりお示しいただきたいと思います。     〔委員長退席、白川委員長代理着席〕
  45. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 あえて、だれのためにと言われるなら、私は、将来の子供たち、孫たちの世代のためにという言葉を選びたいと思います。  と申しますのは、ちょうど今ここにありますのは経済審議会がシミュレーションをしたときの数字でありますけれども、もし今の構造をそのままにしていた場合にどんな結果が出るか。現在の一般政府債務残高、借入金、国債費とかいろいろなものを足したものですけれども、これが二〇二五年には対GDP比一五三%。とてもこれはファイナンスできるものではないなと。それから経常収支の対GDP比が一九四年度の実績では二・七%の黒字がありました。しかし、二〇二五年には一四・三%の赤字に転落をする。それから一般政府財政赤字を含んだ国民負担率、これは保険料とか税金とかいろいろな形で国民に御負担を願うものですけれども、九四年度の実績が三九・二%でしたが、二〇二五年には七三%に上昇する。これはもうまさに私は破滅のシナリオだと思います。  そうすると、こういう状況になることがわかっていて、今甘い話ができるだろうか。そうなりますと、先ほど甘利議員も引用された数字でありますけれども、この平成九年度の予算を考えましたとき、支出の合計は約七十七兆円。しかし、税外収入と言われるものを入れましても、収入は約六十兆円。その不足の十七兆円分というのは、どういう名前かは別として国債を発行して、つまり借金をしてやりくりをしている、それが今の状況です。  しかし、では支出の方はどうなっているんだ。七十七兆円の支出のうちで、約十七兆円が国債費。これは、今まで国債を大量に発行してまいりました結果、借金が膨らんでしまった。残高見込みが二百五十四兆円。そして、その利払いだけでも年間もう既に十二兆円になっている。国民からちょうだいをしている税収は五十八兆円ですから、皆様からちょうだいしている税の約三割が借金利払いなどに使われているというのがもう現在の状況なんです。そうすると、こんなことをこれから先続けていていいだろうか。私はいいと思いません。そして、その少子・高齢化というのは、先ほども申し上げましたように一層進んでいきます。少なくとも私は、少子の方はもっと回復してほしいと思っていますけれども、しかし我々の予測とは違って、少子の状況というのは大変厳しい数字が続いています。言いかえれば、これから先、年金や医療には今まで以上にお金がかかることが予測されるわけですけれども、それを背負ってもらう、負担してもらう若い人は減っていくということです。  ですから、こういう状況をほっていきますと、これは将来、本当に、税、社会保険料に財政赤字まで含めました、国民の収入から政府に回していただかなきゃならない、これはその所得の七割にもなってしまうことが目に見えているわけですから、これは我々としては何としてもこんな事態にするわけにはいきません。しかもそこには、国際収支が赤字になるだろうということも加わるわけです。  しかし、私は、こんな経済あるいはそんな財政というものを子供や孫の時代に残していいとは思いませんし、これは何とか解決をすることが我々の世代の責任だと思っていますし、そういう思いの中から、平成十五年度までに財政赤字対GDP比を三%以下にしたい、かつ特例公債からもう脱却をしたい。まだ建設国債については資産が残るという理屈はありますけれども、それでも借金借金です。いわんや、借金だけが残り物が残らない赤字公債はゼロにしたい。そして公債に依存する率も下げたい。せめて、現在のように経済規模に比べてもう借金がどんどんふえていく状態というのは何とか食いとめたい。これを当面の目標にすると同時に、何とかこれを達成すべく、今世紀の間に残っている三年間というものを、本当に一切の聖域なしに歳出改革と縮減に乗り出すことにいたしました。  これは先ほども議論のあったところですが、短期的には確かに痛いんです。痛い部分があるんです。しかし、それを痛いからといって先に延ばしていたら本当に致命的なものになってしまう。そんな状態は我々の次の世代に残すことはできない、何としてもここで食いとめたい、その思いをここに凝縮させています。
  46. 野田聖子

    野田(聖)委員 今総理の御答弁いただいたとおり、二〇二五年のいわゆる最悪のシナリオ、そのときの現役世代が自分たちの収入の七割以上をそのツケのために負担しなければならないということを避けなければならないという、大変遠大な目標があるわけでございます。  私は現在三十七歳です。二〇二五年に三十七歳になる人は、今たったの九歳です。この九歳の子供たちは、当然有権者でもありませんし、こういった政策決定の場に参加することもできません。確かに、今の九歳の子の親なり祖父母なりが決断をしなければならないということは十分わかっているわけでございます。しかし、そうであっても、じゃ、なぜここまでツケを回してくれたのだというのが率直な怒りではないかと思います。  今の国の財政というのは、個人のレベルでいえば自己破産会社でいえば倒産。しかし、こうやって借金利払いのために借金ができるということは、次の担保がある、つまり次世代が生まれてくるということであります。私の母の好きなことわざに、親、親たらずとも、子、子たれというものがあります。どんなにいろいろなことがあっても、子供はその親のやってきたことに対して精いっぱい親孝行をしなければいけない。しかし、もう限界が来てしまったんだなということであるわけです。国民にとって、子供たちにそういうツケは残したくないと思う反面、自分たちも結構厳しいんだよということで、今、心相半ばするところがあるわけでございます。  その一つ原因と言われているのが直近の景気対策の問題だと思うのですが、先ほども甘利議員の方から尾身長官に対して、景気の正確な把握が必要であるということがございました。実は私も当選早々から、商工委員ということで、当時の通産大臣であった橋本総理の御指導をいただいて、自分なりに勉強してきたつもりであります。  毎月、月例報告というのが経企庁の方からございまして、景気の動向について、いろいろな経済指標をもとに私たちに報告をしてくれるわけです。私は景気全般のことを語るわけにはまいりませんが、一つのジャンルとして、景気をはかるバロメーターの一つに個人消費というのがあります。つまり、私たち個人がどれだけお買い物をするかということ、これはすごい重要なファクターであるということも言われているわけです。その中で、私がいつも経済企画庁の方に申し上げていたのは、個人消費をはかる指標の中には、従来どおりの百貨店とかスーパーマーケットとか小売とか家電とか、そういう決まった指標を通じての把握がされて、そこから出た指標を通じて個人消費がどうであるということをおっしゃってくださっているわけです。  しかし、振り返ってみて、私が一人の消費者として、最近の消費活動、自分がどういうお買い物をするかと考えたときに、必ずしも今の日本は定価の世の中じゃありません。かつては定価の世の中でしたから、どこへ行っても百貨店に行けばまず間違いないということで、多くの私たち買い物客は百貨店に足を出向かしたわけですけれども、最近は、働く女性がふえたこともあるせいか、なかなか店に行くことができないかわりに、通信販売とか訪問販売、そういうのが随分ふえているということを承っておりますし、また個人輸入という非常に高度なテクニック、これは通産省が随分推進をしているのですけれども、そういうこと。  またさらには、海外旅行の際に私の友人は、内外価格差があるせいかブランド物を、ふだんは倹約をしているわけですけれども、海外旅行先では随分シャネルだのグッチだのというのを買ってきては私に報告をしてくれるケースがあるわけですが、そういう幅広な消費活動について、経済企画庁というのは余りきちんとしたデータを出してこなかったし、私から言わせれば、いわば時代おくれの指標を出しているのではないかという不満がございます。あわせて、今、百貨店やスーパーが厳しいよ、売り上げが厳しいよという中で、私の住んでいる岐阜市、地方都市ですけれども、そこでも随分コンビニエンスストア、いわゆるコンビニがふえているわけであります。  そういう、今、現状の個人消費者が出向く先のデータというのはどの程度把握しておられるのであり、それをもとにどういう個人消費をきちんと御報告していただけるのか、尾身長官にお尋ねしたいと思います。
  47. 新保生二

    ○新保政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のように、新たなチャネルを通じた消費というのは、このところ一般的な消費より高い伸びを示しております。例えば訪問販売とか通信販売、コンビニエンスストア、あるいは海外旅行での消費等々は平均的な消費の伸びを上回っております。コンビニエンスストアですと、九六年度は前年度比七・三%伸びております。それから通信販売も五・七%、それから訪問販売ですと三・二%ぐらいの伸びになっております。こういうものを足し上げますと、大体十兆円ぐらいになります。消費が二百八十兆ぐらいですから、消費の四%弱ぐらいのものになります。  こういうものについては、残念ながら、その統計の発表が年一回とか非常に不十分ですので、我々は、いろいろなインタビューとかヒアリングをあわせてやっておりまして、そういう形で毎月少しずつ更新して、誤りなき消費動向の判断に努めておる、そういう状況でございます。
  48. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 今、局長から御答弁を申し上げましたが、野田委員のような若い世代の方々が新しい分野でいろいろな形で消費をされていくという実態も進んでくると思います。そういう実態を十分踏まえながら、実際の消費の動向の把握にこれからも努めてまいりたいと考えております。
  49. 野田聖子

    野田(聖)委員 データの御答弁をいただき、ありがとうございました。  ただ、残念ながら年に一度しか統計が出てこないとか、それはあくまでも言いわけでありまして、やはり現状認識が足りないのじゃないか。私は、このことに関して、五年も前、当選した早々から、経済企画庁の方には、そういう今までの従来型とは別な消費動向がもう既に始まっているから、そこら辺の数値もきちんと取り入れて本当の個人消費がどうなっているかということを報告していただかなければ困るということを言い続けてきたわけであります。相手が出してくれないからわからないではなくて、本当に国民を安心させる景気の動向を伝える役目を持っている役所であるならば、みずから出向いてきちんととっていくような、そういうアクセスをしていただかなければ、私たちはこの景気に対して自信が持てないということになるわけでありますが、どうでしょうか。
  50. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 今も申し上げましたように、新しい時代の流れに沿った経済のいろいろな構造変革がございます。そういうものが消費の分野でももちろん起こっているわけでございまして、ただいま委員の御指摘の点を十分踏まえて、これから正確な消費動向の把握に努めてまいりたいと思っております。
  51. 野田聖子

    野田(聖)委員 ぜひとも、尾身長官の御活躍に期待するところであります。  そういったわけで、景気という言葉は非常にあいまいもことしているものがありまして、景気のいい悪いも、例えば大企業はよいような感じがするし、中小企業はまだまだ苦しいとか。平均株価という話も出てくるわけですけれども、株価自体を細かく見てみると、例えば住専以降いろいろ苦労している業界は総じて株価が低いし、だけれども、情報通信のように非常に新しい産業が次々と花咲いているところは当然株価が高くなる。その平均をとって景気がいいとか悪いという考え方は、非常に不適切ではないか。  さらに、個人消費をする際には、非常に雑な言い方かもしれませんが、周り近所で景気が悪いからというような声を聞くと、ある程度自分のところは収入があったとしても体面を考えて物を買い控えるとか、順番順番、そういう精神的な負担になってくることが間々あるわけでございます。  今尾身長官から、これから現状をきちんと認識した上での景気判断をしてくださるという話もありましたけれども、それらを踏まえて、現在の景気をどう判断されて、そしてこの重要な法案、これは重要だからこそそのタイミングというのが非常にかぎになると思います。今のこの景気の中でやり通すのがベターなのか、それとも野党の方からも与党の一部からも出ているように、もう少し待った方がいいのか、その判断について、総理、御答弁をお願いします。
  52. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、コンビニあるいは通販というものを取り上げて、企画庁の数字に対して今後のあり方を示唆された点、私はまず評価をしたいと思います。  というのは、確かに私どもが見ておりまして、駆け込み需要が予想より大きかったこともあって回復のテンポが予想よりおくれている、これは、事実否定できないことだと私は思います。そして、そういう意味では、確かに足元における景気の回復のテンポが緩やかだ、景況感にも慎重さがだんだん目立ってきている、そういう状況、ここに目をくれれば、いろいろなお考えもあろうと思います。  しかし、基本的に、先ほど申し上げたような厳しい状況というのは変わっていません。そして、今、従来のような力強さがなかなか感じられない、企業のあるいは消費者の経済の先行きに対する不透明感が消し切れない、あるいは企業マインドが弱まっている、これは実はまさに我が国経済の抱えている構造的な課題ということだと私は思います。そして、それにこたえる努力というものはやっていかなければなりませんし、またそうした努力をすれば、それなりの効果があることも間違いはないと思っているのです。  これは、ちょうど委員会の始まります前に、郵政大臣から携帯電話の数字を見せられまして、携帯電話だけ威張るなよ、ほかの、分野全体の問題だよ、情報通信全体の分野だよと言いましたけれども、そういう数字も現実に存在をする。あるいは人材派遣という一つの業種が、従来これだけと決められていた職種にある程度の追加が認められただけで三〇%以上の売り上げを伸ばしている、これは労働力の水平移動という意味でも役立っているでしょう。こうやって見ますと、我々が努力をして新たなものを生み出す余地というのはいっぱいあるはずなんです。だからこそ、構造改革も並行して進めなければならないということを甘利議員にも申し上げたわけであります。  そういう状況の中で、一層我々は、この痛みを覚悟する部分はしながらも、急いでこの財政構造改革というものに取り組み、同時に新たな業が起こり得るような、その中におきましても技術開発といったものに対する投資は厚目にして、次に結びつけていくことができるような努力を今まさにやらなきゃならない、ここを逃して先送りをして、結果としてはよいことはない、本気で私はそう思っています。
  53. 野田聖子

    野田(聖)委員 景気は相変わらず厳しい中、しかし今やらなければならないという総理の強い決意でありますけれども、くどいようですが、この法律案は国民だれにとってもありがたい法律ではありません。  その前提として、今までの政府財政当局に対して、なぜここまで放置しておいたの、あなた方を信用してここまでお任せしてきた結果、突然、情報公開されたと思ったら破綻してしまいますよということでは、国民も理解はしていても、子供たちにツケは回したくないという気持ちはあって、でもそれにしてもひどいじゃないかという気持ちもあるわけです。  私たちは、今、政府や今までの行政に対していろいろな不満が蓄積しているのではないか、国民の間に。それは例えばどういうことであるかというと、税金がちゃんと公平に集められているかどうか。サラリーマンというのは、もう一方的に取られますからフェアなわけですけれども、それは、ほかのことに対しても本当にフェアに税金が収入に応じて集められているかどうかという不信がまずあります。  さらには、財政当局を初めとした役所の情報公開の不十分さというのも挙げられているわけです。今、現状、オンブズマン制度みたいなのが自発的に起きているけれども、私が懸念しているのは、アンチ政府のような形でオンブズマン制度がどんどんできることは、この国にとっての不幸なんです。やはり国がみずから国民に対して情報をつまびらかにして連携をしていくことが本来の国のあり方であり、情報公開を恐れるが余り、そういうアンチの形でオンブズマン、公開しろ公開しろということになると、結局はけんかをして不信感を募らせるだけになってしまう。これもやはり今までの政治または行政のあり方に問題があるんじゃないか。  さらには、これは言い尽くされていることなんですけれども、いわゆる単年度予算の弊害、弊害とまでは言いませんけれども、年度末になると必ず道路の掘り起こしがあるねという非常に身近な問題。それに対しても、普通の家庭だったら、一年これだけでやっていこう、若干余ったらそれを別なことに使おうとか、貯金して将来に備えようということなんだけれども、どうも役所というのは使い切らないとだめだと。それも国民から見ると意味のないような、ただただ交通渋滞を起こすような、それも集中している、そういう不信が積もり積もってきた結果、今こうやって財政が破綻しそうだからやってくださいねと言われても、まずあなた方が信用できないんですよということになってしまうわけです。  そこで私は、この財政構造改革をする以上は、この法律が急場しのぎのものではなくて、将来の、そういう今まで国民が抱えてきた不満とか不信とかをあわせて解消していく、両輪としてよって立っていくようなものにしていくんだという総理初め関係大臣の決意というか、お約束をいただかなければ、これを強引に進めることはやはり無責任なことになってしまうのではないかと思っているのですが、これに対してどうお考えでしょうか。
  54. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 個別の項目はそれぞれ担当閣僚からお答えを願いたいと思いますけれども、公平というのが税の一番の基本、この点は我々も全く同感です。むしろ、どう申し上げればいいのか、社会全体の共通の費用を賄うために税を納めていただいているわけですけれども、その場合には、みんなが公平に負担している、それが税に対する信頼の一番の基礎の部分をなすものだと思います。その上で、今度は、納めた税金が全体のために有効にむだなく使われている、これも重要だということは、これもだれも異論のないことだと思いますし、当然の御指摘だと思います。  そして、その使い道が、むだなく使われたかということを知りたい、これも私は当然のことだろうと思いますし、これは政府全体としてさらに努力をしていきたいと思いますけれども、総論としてそういうお答えを申し上げました上で、幾つか指摘をされましたそれぞれの部分については、関係閣僚から答弁をお許し願います。     〔白川委員長代理退席、委員長着席〕
  55. 三塚博

    ○三塚国務大臣 税は、政治、行政の原点でございます。いささかの不満もあってはなりません。よって、公平、中立、簡素というものを税制の基本といたして今日に対応いたしておるところであります。  その中で、より大きな経済力を有する人にはより多くの税負担を求めるという垂直的公平、累進課税であります、これが重視されてまいりましたが、所得水準の向上とともに平準化が進みます。我が国経済社会の構造変化に伴いまして、経済力が同等の人には同等に税負担を求めるという水平的公平の意義が大きくなってきておるところであります。先般の税制改革におきまして、所得課税から消費課税への税負担のシフトをお願いいたしましたのも、公平、公正、中立、簡素という、ただいままた付言をいたしました水平的公平の考えを背景といたしました。  さらに、近年は、大量の公債発行が続く中で、野田委員指摘のとおり、税負担の世代間の公平という問題が強く意識をされてまいりました。現代に生きる者が後世の負担でもってぎりぎりいっぱい満足な生活レベル、サービス、これを受けるのかと。受けるだけの経済的基盤、財政が健全であれば当然のことでありますが、借金をして、後世に借金をツケ回すということだけは、世代間ギャップを生じせしめないという観点から、政治家の心得ていかなければならない重要な課題であろうと思います。この点からも、財政構造改革は極めて重要なことで、痛みが伴いますけれども、全力を尽くさなければなりません。  御指摘の、納税者の信頼に裏打ちされた公平な税制を実現するため、ディスクローズという問題の御提起がありました。本件につきましては、全力を尽くしてその御期待にこたえていかなければならないと考えております。  ただいまの段階でも、予算書、決算書に加えまして、国会の審議に御参考になりますように、資料提供、各経費の積算を示す各目明細書や財政法二十八条に基づく参考書類を国会に提出をいたしておるところでありますが、さらにこれをよく見ていただけるような方法を探求いたしまして、理解を求めていくということが大事であろうと思っております。  さらに、予算の執行に関しまして、単年度の問題がございました。  これは、予算が決まりますと、各省各庁の長がおのおのの責任において、支出負担行為実施計画や支払い計画に基づきまして、歳出予算の目的を達成するために適切な時期に執行されておるものと考えますが、時折そういう問題のクレームが生じております。年度末になりますと、また掘り起こして何かやっておる、こういうことであり、国営事業、直轄事業もさることながら、地方自治体の事業の中にもこの分野が大きいものでありますから、自治大臣とも提携をしながらこの問題に当たってまいりたいと存じます。  今後の財政運営に当たりましても、先ほど申し上げました定められたものは出しておりますけれども、適切な情報公開や財政資金の効率的な使用が行われてまいりますよう十分留意しながら対応をしてまいります。予算のむだな消化に対する御批判、これはしかと受けとめながら、今後御批判のありませんように全力を尽くします。
  56. 野田聖子

    野田(聖)委員 大蔵大臣、ありがとうございます。  私も、地方の行政の人といろいろ話す機会があるのですけれども、むしろ、地方で節約して、倹約してその年度の予算が余ったのなら、それを国が召し上げるのではなくて、よく頑張ったねということで報奨金でも出してあげれば、そしてそれを地方の基金にしていけば、地方分権の第一歩の財源確保になっていくのではないか。ややもすると、やはり余ると取り上げる、余ると減らしていくということで、無理やりその枠を確保しなきゃいけないということがおおむね地方の方では当たり前になっているような気がするのです。むしろ、切り詰めてよく頑張ったねと、きちんとやってきたということを褒めてあげられるような、プラスアルファになるような逆転の発想で地方財政を育てていただきたいなという思いがございます。どうもありがとうございました。  それで、経済対策、先ほど甘利委員からもございましたけれども、私も実は、今回また景気対策を与野党いろいろな形で出していらっしゃるわけですけれども、過去バブルと相前後してどのくらい緊急の経済対策があったのかという資料を大蔵省からいただいたところ、今日まで八回、ですから今度が九回目の緊急景気対策経済対策ということになるわけです。  それで、事業規模をずっと計算していくと、かなりの、私たち一般からするともうはかり知れない、数十兆円になるわけですから、あえて数字を申し上げる必要はないと思うのですが、私たちは、これがひょっとしたら全然景気対策になっていなくて、そのまま借金の一部になってしまっているのじゃないかという不安があります。  というのは、これをやりますということも聞いています。そして、これをやりましたということも聞いています。しかし、これに対してどういう効果がありましたかということは財政当局からの御報告がないわけで、それでずっと来ていて、またやるのかなという不安があるわけです。とりわけ、今所得税減税という話も出ているわけですけれども、これはかつて実際に実行されました。ところが、それが本当に個人消費の増大につながったかどうかというのは答えが出ていないのですね。効果が知らされていないのです。そういうことについてどうお考えなのかということをお尋ねしたいと思います。
  57. 三塚博

    ○三塚国務大臣 減税の効果は、国会におきましても、両院の予算委員会、大蔵委員会、関係委員会において絶えず論議を尽くしてまいりましたところであります。そういう中で、今後にどう対応するかという視点での御指摘と思います。  前段申し上げました、総理からも提案の基本的な理念の説明がございました。後世にツケを残さぬということ、健全な財政運営が行われる体質に復活をするということが安定した経済成長の基盤になります。そのことは、国民生活の安心と安泰をもたらすことになるわけでございますから、活力がそこから出てまいります。  景気の問題は、両極がございまして、見方が鋭く対立をいたしております。私流にいろいろ話を聞いておるのですが、いずれにしても日本経済力の底がたさの理解は両者に共通であります。消費税の導入によって問題提起がなされておりますが、ようやく反動減を脱しつつあり、本来の姿に戻るのかなと。  速報の問題もありました。月例報告の問題もございました。そういう中で、先般の速報は年間通算で一一%を超える個人消費の低落があるのではないかと言われておりますが、念のため、消費税の導入の影響をフラットにするということで、四―六だけではなく一―三からこれを見てまいりますと、個人消費の伸び率は二%ということになります。年率にいたしましてこれを換算いたしますと三・五、こういうことを数字が正直にあらわしておるということを申し上げさせていただく次第であります。  いずれにいたしましても、後世に借金をツケ回すような財源調達は断じてやってはいけない、これが財政構造改革特別措置法の基本的理念であります。
  58. 野田聖子

    野田(聖)委員 私は、大蔵大臣を攻撃しているわけではありません。私は、前回の所得税減税が果たして個人消費にダイレクトにつながったかどうかということに関しては、私個人では、ひょっとしたらつながっていないんじゃないかなという思いがあるからなんです。  というのは、消費者というのは、物を買うときに、やはり先行きの不安というのが常にあるから、もし少しでもお金が余分に来たら、そこで何かを買ってしまおうと思うよりか、むしろ将来の老後のために置いておこうというふうに進むケースが多いんじゃないか。つまり、所得税減税されたからといって、家族で食事に行こうとか何か服を買おうという気持ちより、将来の万が一のために備えておこうというふうに今の日本に住んでいる国民の多くは思ってしまうんじゃないか。だから、所得税減税をしてもさほど個人消費にプラスになっていかないような気もするわけです。  そこで、私が申し上げたいのは、じゃ、その漠然とした将来の不安というのは何かといえば、まさに老後の問題であって、老後の問題は福祉であり、そして医療であり、さらには年金であるわけです。  大変お疲れのようですが、小泉大臣にお尋ねをしたいのです。世論調査を見ても御承知のとおり、国民の一番の不安はやはり老後の問題、さらに、今医療費等々負担が多くなってきているけれどもどうなっていくんだろうという中で、幾らいろいろな手段を講じても、物を買いに行くよりも、そういう不安が増大している中では、ためちゃおう、郵便貯金しちゃおう、そういう気になってしまうわけでありますよ。  そんな中で 私は、小泉大臣にお尋ねしたいのは、小泉大臣はどのお席でもはっきりと物をおっしゃる。ただ、今回、医療に関しても福祉に関しても介護に関しても、厳しい厳しいということだけははっきりおっしゃるけれども、じゃ、どういう日本の私たちの老後の姿を、大臣は今の大臣として責任を持って示してくれるのかというのを聞かせていただきたいわけでありますが、どうでしょうか。  それで、いろいろ聞くと時間がございませんので、とりわけ私たち三十代、四十代が一番話題にするのは、私たちはもう将来年金もらえないよねという話を随分するわけです。いろいろな新聞や報道を見ていると、公的年金は破綻しかかっているから、四十代、要するに団塊の世代を迎えた後の私たちの世代は、もうそこで破綻しちゃっているから、私たちのときには年金もらえないよねというあきらめ感、無常観が漂っています。これに対して、小泉大臣はどういう希望を抱かせてくれるのか、なるべく具体的に、小泉大臣が思い描いていることをお示しいただきたいと思います。
  59. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 先ほど総理がお答えしましたように、このままの制度を維持していきますと税と保険料負担が七〇%を超えてしまう、現在の三〇%台を将来最も高齢者がふえた時点においても何とか五〇%以下に抑えたいという方向で、各種社会保障制度構造改革に取り組んでいるところであります。  年金に関して言えば、自分たち若い世代、野田議員みたいに若々しい世代が六十五歳になって果たして年金がもらえるんだろうかという不安がよく流布されております。しかしながら、我々としては、この現在の年金制度の基本的な枠組みは維持して、若い世代も老後にきちんとした給付が受けられるような制度にしたいということで、ことしの暮れから、十一年度の年金改正にどのような改革の方法があるかということについて、幾つかの視点から情報を提供して、一つだけではない、何らかの国民が議論できるような選択肢を提供して、本格的な議論を始めていきたいと思っております。  特に、これから受給者がどんどんふえていきます。先ほど総理がお答えしたように、既に六十五歳以上の方が十四歳以下の人口を初めて上回った。そして、今や百歳以上の高齢者がことしは八千四百人を超えている。となりますと、年金一つとってみても、年金を受ける方、給付を受ける方はどんどんふえる。長生きですから、きんさん、ぎんさんみたいに百歳まで生きるのは例外じゃない。もう八千四百人を超えているとなると例外じゃない。となりますと、もらう期間も長くなる。保険料を負担する若い方は減る。今の制度を維持していきますと、大体、厚生年金を例にとりますと、一七%負担しています。企業と個人が折半であります。何の制度改正もしないとなると、これが将来三〇%を超えます。今でも負担を低いと感じている人は少ないのですね。これが倍になって、果たしてこの程度の負担を受け入れるかとなりますと、これまた大きな疑問を感じざるを得ない。  となりますと、年金を考えますと、結局税負担とそれから保険料負担とそれから給付をどの程度にするか、支給開始年齢を何歳にするか、この四つをこれからどうやって組み合わせるかであります。  今のところ、六十歳になりますと年金をもらえますが、二〇一三年には六十五歳支給になっています、段階的に延長していくと。今後そういう点を考えまして、今の給付だったらば負担が倍近くなりますよというのだったら、じゃ、三〇%以上の負担は嫌だ、二〇%程度の負担だったら給付はどの程度になるのか。じゃ、六十五歳だったらばそうだけれども、六十六歳だったら、六十七歳だったらどうなるのか、七十歳だったらどうなるのか。あるいは、今税金は、年金に関してはことしの予算でも四兆円以上投入しております。この保険料と税金と支給開始年齢と給付の問題、これを総合的に、一つしかないという案は出しません。幾つか、国民がどの程度の負担とどの程度の給付を望むのか、また税金をどの程度負担するのかという点を十分今後議論の材料として提供して、この年金制度を将来も安定的に維持し、老後の不安のないような年金制度改革に取り組んでいきたいと思います。
  60. 野田聖子

    野田(聖)委員 大臣は、この年金制度を将来にわたって維持していくという、そういう御決意をされたわけであります。  私は、年金についてこう考えることがあります。  私の祖父母の時代、やはり戦争という厳しい試練を乗り越えてこられた、そういう方たちにはとても重要なものであると思うし、あわせて、私の両親の時代、この日本を高度経済成長でここまで先進国としていい国にしてくれた、そういう思いで自分の先達に対してねぎらいの意味を込めてきちんとした年金をお出ししたい、そういう気持ちは当然あるわけでございます。  それはきちんと維持してもらいたいけれども、私たちに関して言うならば、先ほど絶対やりますよと、続けますよということはありがたいのですけれども、いろいろな調査結果を見ますと、現在の現役世代というのは、何となくやはり小規模の改正というか、年齢の引き上げを少しずつしていくとか、いわば目の前にあるニンジンを食べようと思ったらすっと持っていかれるような、そういう改正が続いていると思うのですね。  むしろ、それよりも早い時期に、団塊の世代の方が六十五歳を迎える以前に抜本的な改革をして、昔は積立方式だったけれども、今は修正賦課方式といって現役世代が出してそれを分配する、そういうふうな制度になっているが、本来、積立方式がいいのか、それともこのまま賦課方式といって現役世代でやっていくのがいいのかとか、そういう抜本的なところに手を突っ込んでもいいのではないか。私たちはそれぐらいの勇気を持っているし、それだけのことを大臣にやっていただきたいという気持ちがあります。  また、公的年金に関しては、それがすべてではなく、それは中心であるけれども、これからいろいろな、金融ビッグバンとかが出てくるわけですから、やはり自分である程度自助努力をして、貯蓄をしたりしてやっていくというふうに今の若い現役世代というのはシフトされてきていると思うのです。  ですから、来年までに大きな改正をされる予定だと聞いておりますが、それが今までのような階段状の改正ではなく、本当に抜本的に、私はだれでもが将来の公的年金の姿が見えるようなものにしていただきたいなと思います。  実は、余談になりますけれども、ことし亡くなった私の祖父は大蔵省に勤めておりまして、当時、年金野田とか言われて、大層自分も自慢をしておりました。晩年、きんさん、ぎんさんまではいきませんで、九十三で亡くなりましたときに、ベッドで寝ている祖父に、おじいさんが自慢していた年金制度が破綻しそうだということをよく聞くんだけれどもと孫の私が尋ねたところ、祖父も、いや、実は僕もこんなに長生きするとは思わなかったんだよと。まさに御名答だなと思ったわけであります。当時は、やはりそこまで考えてはいなかったはずなんです。  ですから、当時の平均寿命が幾つというのは、私は定かではありません。ただ、その形が大きく変わったということをだれもがわかっているわけですから、だからこそ今抜本的に、少しずつ改正して改悪改悪と言われるのではなくて、やはりあるべき方向性を示していただくことが大臣の本当のお務めではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  61. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 大変いい、また参考にすべき指摘だと思います。人生五十年の時代の年金だったからこそ、支給開始年齢は六十歳だった。今人生八十ですか。七十七歳が男性、女性が八十二歳。六十五歳というのは二〇一三年からですから、今言ったように、今取れるのをすぐ引き延ばすということは、今まで厚生省はしていません。よく悪い宣伝をされます。六十歳から六十五歳支給になりますというと、来年から六十五歳になって、六十歳の人はもうもらえないという誤解があるのですが、そういうことは厚生省はいたしません。もう数年前に六十歳から六十五歳に改正しましたけれども、段階的にやって、六十五歳に支給開始年齢がなるのは二〇一三年ですから、先の話であります。現在六十歳支給される方を延ばして支給しないというようなことはしません。  それと、先ほど完全積立方式にした方がいいのではないかというようなお話がありました。現在は、積立方式と賦課方式、両制度を加味したいわゆる修正賦課方式をとっております。というのは、完全積立方式になりますと自分の積み立てたものは老後にもらえますよ、賦課方式というのは現在の若い世代も受給者に対して負担していきますよと、この積み立てと賦課を両方加味しているわけです。これがもし抜本的改革をしょう、自分たちは完全積立方式にしようという今の御指摘としますと、大きく言って二つの問題があると思います。  一つは、この受給者に対して三百五十兆円ほどの負担をどうやって現在の世代が賄うか。と同時に、将来の負担も、今度は自分の積み立てですから自分が負担しなければならない。切りかえ時にこの多額の負担をどうやって調達するかという問題と、物価上昇に対応できるかという問題、積立方式にはこういう問題もありますから、我々は完全積立方式になったらこういうようになりますよという材料は提供いたします。それと、現在の修正賦課方式とどちらがいいかというのを国民に選択してもらわなければならない。  いずれにしても、年金制度に不安のないような改正をしたい。そのために十分な情報を提供していきたいと思います。
  62. 野田聖子

    野田(聖)委員 大臣、ありがとうございました。そういう不安の解消がやはりいろいろな景気の広がりにつながっていくのではないかと私は信じています。  最後に、ちょっと時間がなくなりましたので、お尋ねになるかはあれですけれども、今小泉大臣のお顔を見ていて、ふと財投が思い浮かびました。  今、財政投融資の制度問題につきましては、行政改革の枠組みの中で、郵政三事業民営化すればいいのではないかといったような趣旨で一部議論が進められています。むしろ私は、調査室からもらった資料を拝見しますと、国鉄の長期債務、私の地元の藤井大臣が就任されて大変御苦労されていると思いますが、そういうことが財投といういわば第二の予算と言われ、悪い人は打ち出の小づちとか、今流で言えばドラえもんのポケットみたいな言われ方をして、そういう部分があったからこそ、そこを通じて膨れ上がってしまったのではないかという、そういう文脈としても読み取れると思うのです。  最後に総理にお尋ねしたいのですけれども、財投に関しても、私はむしろ財政構造改革の中で新たにやはり議論をすべき問題ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  63. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 財政投融資の問題に議論を当てるべきだということは、本院でもしばしば御議論がありましたし、私どももそう考えております。同時に、その財政投融資を活用する機関としての特殊法人の存在についても、このままでいいのかということは以前から議論の対象になっておりました。そして同時に、金融システム改革を行っていく中において、公的な金融のあり方、それに対する資金供給のあり方、さまざまな角度から議論をすべき課題として今までもあったわけです。  今、一方では行政改革という中から、国と民間との仕事の分担、そういう中からも議論が出てきています。私は、いずれにしても、財政投融資の問題というこの課題を議論の中から避けていくことはできないと思っています。
  64. 野田聖子

    野田(聖)委員 どうもありがとうございました。時間になりましたので、これで質問を終了させていただきます。この法律は大変厳しい、乗り越えるのには本当に厳しいと思いますので、各大臣、ぜひとも真剣に御審議を賜りますことをお願い申し上げ、終わらせていただきます。ありがとうございました。
  65. 中川良一

    中川委員長 これにて甘利君、野田さんの質疑は終了いたしました。
  66. 中川良一

    中川委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま議題となっております両案件審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁松下康雄君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  67. 中川良一

    中川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
  68. 中川良一

    中川委員長 次に、野田毅君。
  69. 野田毅

    野田(毅)委員 質問に入ります前に、ちょうど私の質問時間が午前三十分、午後二時間という形で、間が中断しますので、経済問題は途中で途切れるわけにいきませんので、午後のときに集中的に質問をしたいと思います。午前は、そういう意味で、総理中心に、政治姿勢について質問をいたしたいと思います。  委員長にお願いですが、答弁の際、やはりお互い政治家同士として質疑をしていきたいと思いますので、私から要求する以外は、役所の方の答弁台に立つことは指名をしないでもらいたい、このことをお願いしておきたいと思います。ただ、私も揚げ足取りとかそういう細かい、ちまちましたことを言うつもりもありません。そこだけは、まずお願いをしておきたいと思います。  さて総理、改造内閣スタート、本当に大変な課題を抱えてスタートしたわけですね。特に、当面考えられるだけで、現在の厳しい経済情勢、これが恐らく今のままでいくと、いずれ貿易黒字がどんどん拡大して、そして日米関係で極めて厳しい摩擦状況に立ち至りかねない様相も呈しているし、国内経済問題としても、下手したら底割れするかもしれぬという悲壮感もある。今足元の問題、そういう問題もある。  あるいは財政構造改革ということについても、率直に言って、ある意味では、内閣の命運をかけたというふうなイメージさえされかねない今回の財政構造改革。後で触れたいと思いますが、どこが構造なのか私にはさっぱりわからない。ただ目先の財政支出を減らすという目先の予算削減だけにターゲットを絞ったような法案になっている。  事のよしあしは後ほど申し上げたいと思いますが、いずれにせよ、国民的立場から見ると、非常に命運をかけたと思われるテーマ、そして行政改革、これもゆるがせにできない。今いろいろマスコミでも、ああでもない、こうでもない、いろんな議論があるし、自民党の中でもあるし、閣内でもある、こういうことでしょう。  そして、いま一つは、いわゆる冷戦崩壊後の安全保障体制をどう構築していくかという中で、日米新ガイドライン、これについて、ある意味ではアメリカ向け、中国向け、それぞれ我々から見ると、下手するとお互いが誤解をしてしまうような表現になってしまっているのではないか、そんな問題もある。  どの一つをとっても、本当に内閣すべてを一つのテーマについてかけるぐらいの重要課題になつている。それを今みんな一緒くたにやらなければならぬ、大変なことだろうと思うのですね。それだけに、総理が本当に火だるまになってやっていこうということであるならば、実は、スタートにおける形というものが非常に大事だったのじゃないかな。そういう点で、この改造内閣がどうもスタートからつまずいてしまった、この印象は否めない。  その最初の改造内閣のスタートのつまずきというのは、もう言うまでもない、佐藤さんの入閣問題であった。そういう点で、この問題で深く立ち入ろうと思いませんが、少なくとも、この佐藤さんの入閣問題のてんまつについて、私は、総理は三つの点で問われていると思います。  一つ総理自身の倫理観、いま一つ総理のリーダーシップ、てんまつに至るまでの間のリーダーシップ、そして最後に総理自身の責任のとり方、この三つが私は問われているように見ておりました。  この点について、総理は現在どう考えておられるのか、お答えを願いたいと思います。
  70. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 本院におきましても何回も申し上げて……(発言する者あり)よろしいですか。
  71. 中川良一

    中川委員長 はい、御答弁お願い申し上げます。
  72. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 何回も本院でも申し上げておりますように、私は、政治の立場でより高い倫理性を求める世論の重みに十分思いをいたさなかった、この点を反省すると同時に、多大な御迷惑をかけておわびを申し上げるという率直な気持ちを繰り返し申し上げてまいりました。  そして、私自身に対する御批判は甘受をいたしますが、私自身の頭の中にありましたものの幾つかを申し上げますならば、本院において永年勤続表彰を満場一致で受けておられたこと、また、WTOあるいは国会移転といった院の特別委員会において全会一致で委員長として選任をされ、それなりの重要な役割を果たしておられたこと、さらに、党の行政改革の責任者として特殊法人等の整理、統合、廃止といった問題に働きをいただいておりましたこと等が頭にありましたことを私は隠しておりません。そして、そういう意味で私は、世論の重みというものに対してもっと思いをいたすべきだったと反省もし、おわびも申し上げております。  そして、私自身の責任と言われますならば、この仕事を少しでもやり上げていくこと、全力を挙げてやり上げていくことがその責任の私なりの処し方、そのように考えております。
  73. 野田毅

    野田(毅)委員 責任のとり方についてこだわるわけじゃないのですけれども、何か一生懸命仕事をやればそれが責任を果たしたことになる。だったら、こういう問題が起きなかったら一生懸命仕事をやらないのかということになりかねない。  そんなことは別として、それはそれとしてやらなければならぬ。問題は、政治倫理に関して、総理自身が具体的にどういうことをおやりになるのかということなんですよ。それがまず総理の政治姿勢の大事なポイントじゃないか。  そういう意味で、政治倫理に関して、特に痛みを伴う大改革国民に求めようというのなら、現にある疑惑について率先して解明していくということは当たり前の話だ。固有名詞は言いませんけれども、重要閣僚の中にも、自民党の三役の中にも、言うなら橋本内閣の中枢そのものなんだ。それが具体的な金額まで出ている。いろいろなところでもう既に報道もなされている。  そうであるならば、総理は、国会でどうのこうのと言う前に、橋本内閣そのものが問われているわけですから、そうであれば、総理大臣として、名前の出されている閣僚から直接お話をお聞きになって、実態はどうだったんだと、あるいは自民党の総裁として、党の中枢のお二人について、人任せじゃなくて総裁として、どうなんだとかいうことをみずからおやりになってしかるべきではないか。その辺はおやりになったかどうか、ちょっと聞かせてください。
  74. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、そこまで言及をされますならば、むしろきちんとお名前は言われた方がみんながよく問題の所在を御理解いただけるのではないかという感じがいたします、率直に申し上げまして。  その上で、私は、国民の政治不信の払拭のために、政治家が常に自戒し、襟を正さなければならないと考えておりますし、これは国会で申し上げたとおりのことをきちんともう一度言わなければなりません。その意味で、明らかにしなければならないことは適切な場で政治家みずからの判断で明らかにされるべきものだと考えておりますということを私は国会の御答弁でも申し上げました。  そして、具体的なお名前がございませんでしたので、もしかすると議員の思っておられる方と私の脳裏にありました方との差があるかもしれませんが、党役員、閣僚、その方々を候補者としてお招きをいたしましたときに、それぞれの方々に、私はそのすべての証拠を持っているわけではありませんから、紙上伝えられることをお伝えするとともに、きちんと御説明にはなれますねということは確認をいたしております。(発言する者あり)
  75. 野田毅

    野田(毅)委員 ちょっと自民党、うるさいですね、あなた方は。  まあ別段、公表されていることですから、ただ、余りこういう場で固有名詞を挙げるのはどうかと思って遠慮しておりますが、既に本会議でも御答弁になっていますから、外務大臣、大蔵大臣、閣僚でいえば。それから、自民党の三役でいうのなら政調会長、総務会長。そのほかにもちょっと名前があります。  しかし、私は今なぜそれを言っているかというと、こういう方々は橋本内閣の一番中枢部に当たる方々だから、だからそのことを申し上げたわけです。いずれこれは予算委員会で証人喚問ということになるんでしょう。  ただ、これは若干、その際にさらに突っ込んで同僚議員からやっていただきたいとは思うんですが、証人喚問が決まった経緯というのは、もうぐじゃぐじゃ言いませんが、少なくとも審議空転というイレギュラーな姿があって初めて実現したことだ。残念です。こういったことは、審議拒否とかそういうことじゃなくて、まず第一に、多数決で決まる国会ですから、最大多数の総裁である総理のリーダーシップなり、自民党がやるということが決まったらそれはすぐ決まるんですよ。  そして、どうしてそれがもっと早く決まらなかったのか。それは、野党三党が欠席している中で、社民党も共産党もどうかと思いますよ、口ではいろいろ言いながら、欠席しておる中であえて一緒になって審議を進めたからそういうことになってしまったのであって、私は、そのことだけは指摘をしておきたいと思います。  いずれにせよこの問題は、決着といいますか、十一月末までには実現をするということで決まっておりますから、それまでに、できれば、十一月末までですから、それよりもっと早く実現をするというのは当然のことだと私は思います。  さて、私は、今回のいろんなてんまつの中で感じましたのは、総理が火だるまになってやるんだというこの期待感が意外と、随分と橋本内閣の支持率を高くしてきたと思いますね、ずっと昨年の秋から、六つの改革を掲げて、断固としてやり抜くんだという。  ところが、どうも総理の決断が意外とひっくり返るということを、最初の、冒頭申し上げた中であったような気がしますね。今お話がありましたように、佐藤氏の国会におけるいろんな活動、国会自身が委員長にしたじゃないかとかいろんな話もあった。いわば考えに考え抜いた上で、言うなら確信を持って御決断をされたことが結局ころっとひっくり返っちゃった。  実は今回だけじゃないように思った。昨年、もう古い話だけれども、蒸し返す必要もないかもしれませんが、ただ、私の記憶に残っているのは、靖国神社参拝問題もあった。あのときにも、かなり間際まで総理はこだわっておられた。しかし、やはりぎりぎりになって、まあ諸般の情勢を考えたのでしょう、おやめになった。  総理自身、本当に一たん確信を持って決断をしたものなら、その中身は別として、総理自身がお決めになったのなら断固としてやり抜くという、そういう強さというものがどこへいっちゃったんだろう。そういうイメージが、実は今回の最初の組閣の後のつまずきの一連の経過の中で、倫理の問題を離れて、非常に国民の中に大きくイメージをされた。(発言する者あり)  そしてそのことが、今やじがありましたが、行革問題についても似たようなことが起きてきたんじゃないか。それを契機に総理自身のリーダーシップというものに陰りが出てきて、役所やら自民党の中でもいろんな動きがあります。そういう中で、場合によってはこれはできるんだよというイメージになってきた。つぶせるかもしれない。それはそうですよ。  いずれ後ほど時間があれば行革問題を集中的にやりたいと思っていますが、少なくとも行革会議、これは政令で決めた会議ですよね。普通なら、政令でつくったそういう審議会まがいのものの責任ある会長という立場は、総理はやらないんだ。あくまで第三者を会長にして、言うならたたき台をつくる審議会程度にして、そして与党なら与党でもんで、そしてお互い政府、与党折衝しながら最終案を持っていくというのが、これは大体従来の手法だった。  それをあえて承知の上で、総理自身が会長をお引き受けになって、三日間か四日間か合宿みたいな形をとっておやりになったという中に、これは今までの話と違って、橋本総理は本当にやるんじゃないか、自民党はどうあろうと、世の中がどうあろうと、本当に火だるまになってやろうと言うんじゃないかと、こういうイメージを持ったんですよ、実はね。中身は別ですよ。中身については我々は決していいとは思っていませんよ。だけれども世の中のこの雰囲気というのは、そういう橋本さんをみんなでバックアップしょうという雰囲気はあった。  ところが、どうも最近は、議論は、あれは単なるたたき台だというふうな雰囲気に後退をしてきているんですよ。実際、自民党の中でもそんな雰囲気になっちゃっているじゃないですか。政府政府だ、党は党だ、過ちを改むるに何が悪いかというぐらいの議論になっちゃって、結局これはどうなってんだ、私は、そういう雰囲気になってしまっていると。この点について、総理、どう感じてますか。
  76. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 大変厳しい御指摘をいただきましたことは、これからの私自身の糧にもさせていただきたいと思います。  その上で、確かに私は、行政改革会議というものを、私自身が会長となり、その調査審議に加わりながらその全体をまとめるという仕組みをとりました。これは、責任の所在を明らかにするという思いもありましたし、従来型のやり方に、私自身が党の責任者等として関与いたしましたときにもいろいろな問題点の意識を持っておったからでございます。それは、当時、委員も私どもと一緒に党内で仕事をされた方として御理解がいただけると思います。  その上で、中間報告というものは、確かにこれまでの会議の中で議論をされましたものを、真剣な検討の中身を取りまとめたものでありまして、これからに当たっての基本的な枠組みであります。同時に、それをごらんいただきましても、まだ検討すべき事項も多数残っておりましたこともこれは事実でありますし、現在もその審議は続いておりますし、今週も委員会の終わりました後に、本委員会の終わりました後に会議は開かれます。議論をしてまいります。  そして私は、この基本、骨格というものは、今後まとめ上げていきます最終報告の骨格であるものと考えておりますし、党にも国会にもぜひ御協力をいただきまして、よりよい行革というものができるようにぜひとも御協力を願いたいと思っております。  しかし、私どもが全力を挙げて取りまとめておりますものに対し、さまざまな角度から御意見があることもまた事実でありますし、その御意見を私は妨害もしておりません。よりよいものがあるなら、その中から取り入れてよりよいものをつくっていこうとするのは当然じゃないでしょうか。しかし同時に、行革会議というものが全力を挙げて議論をしてきていただいているその骨格というものは、それだけの尊重をしていただきたいものだと思っております。
  77. 野田毅

    野田(毅)委員 何か前半はすごく意気込みを感じたけれども、だんだんだんだん、よりよいものに変えていくのは当然だという話になったら、ああ、随分中間報告と変わった姿にしていいんだなということになりますね。私は、それだったら最初から会長をおやりにならない方がよかったですね、もうこれは済んだことですからどうしようもないと思いますけれども。  かつて中曽根内閣時代、三塚さんが当時運輸大臣だったんですが、国鉄改革をやった。もちろん世の中の世論、いろんな話もあったけれども、最後の決定は、最後に決定的になったのは、やはり国鉄の中で随分いろんな反対運動があって、いろいろな根回しもあって、自民党の中も随分いろいろ揺れたけれども、結局は当時の仁杉総裁の首をあなた切っちゃったでしょう。これでぴしゃっとおさまったんですね。私は、どういう改革であれ、おれはこうだと言うのならそれを押し通していくという、この強さが僕はあの改革を成功させたことだと思っていますよ。  だけれども、今度の場合はどうもそのようには見えない。最初はそんな雰囲気があった。だから、その雰囲気を期待をして小泉さんがいろいろしゃべっている。だけれども、そのことはきょうは聞きません。  そんなことよりも、私は、総理自身がこれだけ、もうあと午前中の時間余りありませんが、ちょっと聞いておきたいのですけれども、本気でおやりになるのなら、例えば組閣に当たって自見郵政大臣、何か注文つけられましたか、今度の行政改革へ。あるいは瓦さんもそうだ、建設大臣。これはさっきのよりよいものをという話じゃないんですよ。行革会議の中間報告は、結論の出ないやつは多少結論を先送りする形でさらなる詰めをしましょうという話になって中間報告は結論を出しているのだ。いい悪いは別ですよ。私たちは今度の中身で随分問題があると思っています。  だけれども、いずれにせよ、本当に総理が会長になってそこまでおまとめになったということであるのなら、組閣に当たって関係の各大臣に、この中間報告の線でとにかく命をかけて頑張れということをおっしゃったかどうか、ちょっと聞きたいんですよ。
  78. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 特定の複数の閣僚の名前を挙げられましたけれども、その方々に限らず全閣僚に、行政改革に対する協力と財政再建の協力とは全員に求めております。
  79. 野田毅

    野田(毅)委員 個別に聞いてもしようがないかもしれないので。  いずれにしても、僕は、国鉄改革のときに、当時の運輸大臣に対して、それこそ不退転の覚悟で、特命として、命をかけてやるということが伝わっておったように思う。しかし、どうも自見さんの発言、それはそれなりに大変説得力のある部分もあるのですよ。だけれども、余りにもちょっと、今までの立場からすると、いわばスタンスがはっきりしているわけね。それはよくわかりますよ。  だから、総理自身のいわば組閣に当たってのスタンスそのものが随分ぶれたのかなというふうに思いますね。どうせなら小泉さんを郵政大臣にすれば総理の言うことをできたのかもしれない。本当ですよ。私は、この点はまた後で時間があったときにやりたいと思います。  そこで、この行革に関連して、ちょっとあれなんですが、いろいろ、骨格が変わらなければいい、大筋においてしっかりできればいいわけでという話が時々最近出るようになりました。中間報告だからあくまで最終案ではないのだ。そうすると、一体骨格とは何だと。  私は報道しかわかりませんが、どうも総理は一府十二省庁という数さえ確保できればいいのだと。これは総理じゃなくてだれかが言ったのですかね。そんなことを言う報道もありました。一府十二省庁という数が大事であって、そうなると中身は、どことどこをくっつける、どことどこを離す、そんなことはどうでもよくて、数さえ合わせれば、看板の枚数さえ減らせばそれでいいんだというようなイメージに実はなってしまっているのですよ。  本当はそうじゃないはずですよ、行革は。中央省庁の数というのは。数よりも何よりもまず仕事減らしをすること、中央省庁の仕事を減らすこと、うんとスリムになって身軽になった中央省庁だから似たもの同士をくっつければ数は減るじゃないですかというのが本来の中央省庁の発想でなければならない。  ところが、どうも議論を聞いていると、いつの間にか、いや、どの役所は権限が大き過ぎるから分割するとか、そういう話がごっちゃになってしまった。それは、今やっている役所の仕事を分割したって、どこの役所がやろうとしても、やっている仕事をやるなら同じなんですよ。そんなだったら、一つの役所に権限が集中するというのなら、じゃ今の役所の数を倍にふやせばいい。そうすると一つの役所の仕事の権限は減りますよ。だけれども、そんなことじゃ意味がないのだ。我々は、少なくとも、本当に改革をするというのは、数は最後の姿であって、仕事の中身をいかに減らすか、国は余分な仕事をやり過ぎていないかと。ところが、そこが今見えてない。  いろいろ言いましたけれども、どうですか、総理、そういう点で、今回の中央省庁の再編に当たって何が一番大事だと考えているのか、ちょっと聞かせてください。
  80. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 大変恐縮でありますけれども、私が総理という座につけていただきます以前から、地方分権推進委員会地方分権についての議論を進めておられたことを委員はよく御承知であります。  そして、国の行政から地方に移しかえるべきものが、いわゆる地方六団体の御要望の趣旨に沿った形の内容の点検から入り、既に進行をいたしておりました。そして、行革委員会もまた、官から民へという立場での議論を継続しておられました。当然ながら、この仕事は中央省庁の業務をスリム化する仕事であります。その上に、それぞれから出していただく答えを前提に、中央省庁の論議に入ったことをよく議員は御承知であります。  そして、地方分権委員会は、特に先日、第四次の勧告を出されましたが、これで終わりではないですねということは私の方から逆に申し上げていることであり、六団体から提起をされた問題以外の問題にこれからもお入りをいただくでありましょう。ここで地方分権というものは一つ動くんです。現に国の業務から地方の業務へ移り変わるんです。  そして、規制緩和の方向もどんどんどんどん動いていることはよく御承知のとおりであります。これは官から民へです。そういうスリム化の努力は既に進みつつあり、その上で、今中央省庁の議論が進められております。  そして、一府十二省庁とかいろんなお話をすぐされますけれども、問題の中核で出てきておりますものは、内閣の機能がどうであるのか刀危機管理というものが非常に強調される中で、現在の内閣機能のあり方はどうかから論議が始まっておることも御承知のとおりであります。  私は、中間報告の骨格は動かしません、動かしたくありませんということを繰り返し申し上げておりますけれども、内閣機能というものが中央省庁論議の中核をなすものであることは、誤解のないようにお願いを申し上げます。
  81. 野田毅

    野田(毅)委員 あと午前中一分ほどですが、もう中途半端になります。後、何かお昼、宮中行事がおありだそうで、午前中の質問はこれで終わります。
  82. 中川良一

    中川委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十七分休憩     ―――――――――――――     午後一時開議
  83. 中川良一

    中川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。野田毅君。
  84. 野田毅

    野田(毅)委員 これから後半二時間、主として経済財政問題中心に質疑を重ねたいと思います。  午前中、後半部分で、総理が確信を持って行った決断が意外とひっくり返るということを幾つかの事例で申し上げたわけで、行革もどうかなと。ただ、今非常によく映っている、総理が確信を持ってやっている一つは、現在の景気情勢に対して、ともかく財政出動はしないというこの一点だけは余りぐらついていないというイメージを受けます。この一点が逆に、非常に、現在の経済情勢あるいは将来の経済の姿について、いわば先行き悲観論を醸し出しておる原因になっているのではないか。むしろ、総理が確信を持って行った決断については、この経済についての確信だけは一刻も早く本当は変えてもらった方がいいのではないかという思いをしておるわけであります。  過日、総理が、体力があるうちに財政再建しなきゃならぬということを国会で答弁もしておられましたね。そこで、総理は、今の日本経済は体力があると考えているのか。あるいは将来、体力がなくなる事態というのは、どういうときに体力がなくなるのだろうか。そこのところが非常に文学的な表現なものですから、意外と、将来高齢化が進めば体力がなくなるのだというその前提が、むしろ先行きに対するいろんな不安を世の中にばらまいてしまっているのじゃないか。  今の経済の低迷の一つには、循環論的な要素もあるが、もちろん、不良債権処理について、やはりきちっとした枠組みがつくられていないということ、これも二つ目の要素だ。  しかし、いま一つは、尾身さんが午前で強調しておられたように、構造的な要因がある。その構造的な要因というのは、実は、いろんな規制がどうだとかいうような、あるいは国際競争力がどうだとかいうようなことだけじゃなくて、社会保障のシステムヘの信頼性、いわゆるコンフィデンスですね。  それは経済の先行きに対してだけじゃなくて、つまり、日本経済が将来ゼロ成長になっちゃうんじゃないのということを総理が意外とイメージしてしまって、超高齢社会というものが、何か国民にとって非常に暗い姿になっている。だから、今は体力があるけれども高齢化が進んだら体力がなくなっていくんだという、どうもそういう前提に立っておられるんじゃないか。  私たちは、超高齢社会にあっても、雇用をしっかりと確保して民間の経済の活力をなくさないようにしていく。そして社会保障の仕組みを、今からそういう超高齢時代に対応できるような仕組みをどうつくっていくかということであって、むしろ将来、経済の体力がなくなるんじゃなくて、将来においても体力をなくさないようにしていくということが大事になってくる。  ところが、どうも総理の話は、今はあるけれども、先行き成長率は何か限りなくゼロになっちゃうんじゃないかという、どうもまずそういうイメージを受けるんですよ。だから、今まず体力のあるうちに財政再建するんだというイメージに聞こえるんですが、そのあたりどうですか、ちょっと。
  85. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今のお話を伺っておりますと、私は、基本的に認識は違っていないんじゃないかと思います。その上で、現状をどう判断し、現在のシステムがそのまま残ることがどうかということにあるいは違いがあるのかもしれないと思います。  我が国が、長期的に見た場合、今後世界に例を見ない急速な高齢化が進展する、この点については、私はどなたも同じ認識をお持ちだろうと思うのです。しかもそれは、平均寿命の伸長だけではなく、出生率の低下というのと両面からの高齢化でありますから、この問題が極めて深刻であることは間違いがありません。  そして、今はしなくも例に引かれましたが、その時代においてもなおかつ、私は、医療保険にしても年金制度にしてもこれを堅持していく必要性があると考え、その時代になってもたえられるような医療保険の仕組みあるいは年金の仕組みをこれからつくっていかなければならないということを申し上げてまいりました。しかし同時に、出生率の低下ということは、今のルールでいくなら生産年齢人口の減少ということになります。私どもは、もっとお年を召した方々にも働いていただきやすい環境をつくらなきゃならぬと思っておりますけれども、今の社会構造はそうなっていないことは御承知のとおりであります。我々は、これは高齢者ということだけではなく、さまざまな障害を持った方々にとりましてもより働きやすい環境はつくらなきゃならぬ、そのように思っていますし、その妨げになる社会慣行は変えていかなきゃならぬと思っています。  また、このままの仕組みがそのとおりに続いていくとするならば、貯蓄率の低下等をこれは想定しなければなりません。これは間違いなしに経済の潜在的な活力が低下するおそれというものを惹起いたしますし、それは非常に恐ろしい課題だと思います。  だからこそ、そうした問題に的確に対応して、経済活力を維持し続けながら豊かな国民生活を実現していこうとするなら、我が国の活力ある発展というものを妨げている現在の仕組みというものを変えていく、そして世界の潮流を先取りできるような経済のまた社会のシステムをつくらなきゃならない、私はそう思っております。  そして、それが今、六つの改革をお願いを申し上げ、国民にも御協力をお願いをし、努力をしている方向でありまして、むしろ、超高齢社会というものになってもこの国が活力を維持し、豊かな国民生活というものを維持していこうとするなら、ここで、行政もまた財政もその構造を改め、社会保障をも、その時代においてもなお存続し得る仕組みを、言いかえるなら、減っていく若い働き手の世代でも担い切れる仕組みというものをつくっていかなきやなりません。  経済のあり方も、かつて私は紡績産業の一員でありましたけれども、これはまさに豊かな、優秀な若い労働力というものに、しかも女性の労働力というものに依存して競争を続けてきた産業でありますが、既にそういう産業が競争条件を失っているのは御承知のとおりでありまして、高齢化が進展し、超高齢社会に入ってもなおかつその方々が働き手として働いていけるような、そうした分野も我々はつくり上げていかなきゃならないのです。私は、そのために今改革が必要だと申し上げております。
  86. 野田毅

    野田(毅)委員 改革の必要性はそのとおりなんです。実は、経済問題なものですから、あえてお話ししたのは、どうも、今は体力があるんだから、体力のあるときに財政再建をあえてやらなければだめだ、そうでなければ、長い目で見て経済も悪くなるよということで、当面の最大の優先課題というものが、今は経済の体力があるんだから財政再建を最優先なんだというイメージになっているのですね。  そこで私は、では、本当に現在日本経済には体力があるのかないのか。総理は、どうも今はあるとおっしゃったので、この前の本会議における答弁なんかを聞いておりましてもそういう表現だったものだから、総理は、今の日本経済にはそれだけの体力がありと見ているわけですか。
  87. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 我々は今大きな変換の中におりますけれども、なおその条件の厳しい中でも、国際競争の中で働き抜いていけるだけの体力を持っておると思います。  それはしかし、一つは、徳川時代にさかのぼってもいいのかもしれませんが、職人国家としての日本という部分が本当に今日の日本を支えてまいりました。それは中小零細の、しかし非常にすぐれた、特化された技術を持っている方々に支えられた部分であります。例えば、試作品づくりとか金型づくりなどに代表される分野で、まさにこれは職人の世界でありました。  今、次第次第にそういう分野に、一方では後継者の不足、一方では、その業がしっかりしているうちに他の分野に事業の新しい軸を移したいけれども、人材が得られないといった問題も生じております。紡績に代表されるような非常に多くの人々の手を使うという産業が付加価値で競争力を維持する状況になったことは先ほども申し上げたとおりでありますが、しかしなおかつ、我が国が世界のいわゆる経済大国と言われる国の一つである状況は間違いがありません。  その中で、今のうちに我々は次の産業を育てていかなければなりませんし、その芽を見つけていかなければなりません。そして研究投資に、これだけ全体を厳しく抑え込むこの財革法の御審議をお願いしても、それでもそこではプラスの予算を計上しょうとするだけ将来にかける力もあります。  しかし、ここにも実は将来を考えましたときに問題がないわけではありません。大学進学率四七、八%という状況でありますけども大学院以上、修士、博士課程に進んでいただく、そうした人材の数が他国に比べてなお低いという状況は事実であり、研究開発に対する投資を我々は怠るわけにはいきませんが、これを行う体力も持っております。  そうしたすべての思いをトータルしていきますと、私は、人口構造変化からくるプラスの要因というものは既に失われた部分を相当持っている。職人国家日本として今日までを支えてきた部分にも今や相当な深刻な状況が生まれてきている。しかしなおかつ、研究開発投資に全体を抑え込んでもプラスの資金を投入しょうとすれば、それができるだけの条件は持っておりますから、その意味で体力はある、私はそのように申し上げております。
  88. 野田毅

    野田(毅)委員 社会全体のそういう意味での体力ということでお使いになっているというのなら、それはそれで理解できます。ただ、経済の体力ということで言うと、これはまたちょっと違うと思っております。それはもう時間の関係上余り聞きませんけれども。  最近は尾身さんが随分言葉を選んで修正しておられる。政府の公的見解というのは月例経済報告に表現されている。緩やかな回復基調というのはやはりちゃんとついているのね。景況感は悪化しているけれども、やはり基調は緩やかな回復だ、こう言っている。だけれども、別途個人的見解として、足踏み状態だ、こう言っている。これは、政府の公式見解というのは、足踏み状態まで公式見解なのかどうか、一言ちょっと教えてください。
  89. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 消費税の引き上げに伴います駆け込み需要が三月まで建築関係それから消費、投資等にございました。これは私どもにとりましても予想外でございまして、大方の方々の見方から見ても予想外でございました。そしてまた、その反動が四月以降出てきておりまして、それが非常に谷も深かったというのが現状でございます。七月―九月にもややその影響が残っているという状況でございます。  景気は緩やかな回復基調にある、回復基調にありながら足踏みをしているというふうに考えているわけでございますが、なお詳細に景気の現状を見ますと、消費者の所得、例えば一人当たりの賃金所得は増加をしております。それからまた雇用者数も増加をしておりまして、一年前と比べて消費者の懐そのものはそこそこの状態になっているというふうに認識をしております。  それから企業関係でございますが、企業につきましても、企業収益は一年前と比べればかなりの増大をしておりまして、また設備の過剰感というものも、バブルがはじけた後いろいろな形で需要が伸びてまいりまして、設備の稼働率も上がってきておりまして過剰感が低くなってきている。  つまり、消費も、設備投資、企業家の行動も、バックグラウンド的には、設備投資は上向きになってきておりますが、上向きになってもいい状態にはなっている。しかし、先ほど来お話にありますような企業の景況感、消費者の経済の将来に対する信頼感というものが低い状態にある。したがいまして、そういう点では力はある、潜在的な力はあるというふうに考えているわけでございます。  先週の金曜日、十七日に総理から、そういう状況に対して経済対策の取りまとめをせよという御指示がありました。これを進めてまいりたいと思うわけでございますが、そういう状況の中で、もう一つ構造的な要因がある。  構造的な要因といいまして、じゃ何があるかといいますと、一つは、まだ処理が終わっていない不良債権というものが景気の足を引っ張る壁になっている、大きなしこりになっているというふうに感じております。  それからもう一つは、これはここ数年の現象でありますが、製造業を中心としての空洞化の動きがある。そのために、いわゆるケインズ的な需要拡大ではなかなか景気が上向きにならないということがある。  それからもう一つは、戦後長い間続いてまいりましたいわゆる日本的な経済システムというものが制度疲労を起こしているのではないか。  いわば、分けますとそういう三つのことがあるというふうに感じているわけでございまして、そういう三つのことに対します対策もしっかりして、そして二十一世紀に向かって日本経済の展望を切り開いていくということが大変大事である。そして、そのことをしっかりやることによって、いわゆる将来に対する信頼感というものを、消費者の皆様にも、それから企業活動をやっておられる皆様にも回復をしていただいて、経済を順調な回復軌道に乗せていきたい、そういうふうに考えているところでございます。
  90. 野田毅

    野田(毅)委員 要は、現状認識としては足踏みだということが政府の公式見解だ、こういうことですね。  中には、もう既に後退局面だ、あるいは一時的な後退局面だとか、いろいろな議論があります。しかし、いずれにしても今全然調子がよくないということはそのとおりだし、短期的な向きの方向でいくと、今むしろ少しまた右肩が下がってきているという印象もある。まあしかし、これはいずれ統計でわかることでしょうね。  ただ、いわゆる四半期ごとの方向づけがどうのこうのということじゃなくて、バブル崩壊後の、少しロングスパン、長い目で見た場合に、日本経済はやはり長期低迷という状況を脱していないという、まずここの基本認識があるのかないのかが物すごく大事なんですよ。目先の三カ月ごとの動向がよくなったとかどうとかこうとかいうようなことじゃなくて、もっと根本的に今の日本経済の体力はどういうことなのか。  つまり、長期金利のレベルでいうなら、世界大恐慌のときでさえ一・八一と言われている。今、日本は下回っている。二年前、公定歩合を〇・五という史上最低のレベルにした。これをずっと据え置いちゃっている。その上に成り立っている今の四半期ごとの動向の話をしているんじゃないのか。  だから、本当に体力が回復傾向にあったり、基調が上昇トレンドにあるのだと、四半期ごとのベクトルの方向がどっちに向いておろうが、本当に体力がそういうふうになっているんだと言うなら、金利だってもっと引き上げてしかるべき話なんだ。それを、今もう完全に最低のところにへばりついたまま二年間いるんですよ。これが今の日本経済の体力なんだ。そういう意味で、長期トレンドの中で、今の日本はやはり体力があると、尾身さん、そう思いますか。
  91. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 私は、先ほど申しましたとおり、いわゆる個人資産、千二百兆と言われておりますが、そういういわゆるストックの面でもございますし、それから消費者の懐もそこそこの状態にはなっている、それから企業収益も上がってきている、そういうことから考えますと、潜在的な体力は十分あるというふうに考えております。  ただ、マスコミやこういう国会で景気が悪い悪いという話を、いろいろと話題になっていることもございまして、そういう意味での景況感あるいは将来の経済に対する信頼感というものが低くなっているという実情にあると考えておりまして、私ども、これから規制緩和を進め、それから不良債権の処理を促進させるような土地流動化、土地有効利用を図り、そしてまた企業活動が日本で十分しっかりとやれるような法人課税の是正も図っていく、そういうことの中でみんなが元気を出してやることが大変大事だというふうに考えております。
  92. 野田毅

    野田(毅)委員 恐らく、政府の立場ではせいぜいそういうことでしょうね。企画庁長官の立場というのは、私も経験したからよくわかる。やはり出てくる政策に合わせてしか物が言えない。  そこが、私はよく言うのですが、気象庁の予報というのは素直にできるのですよ。傘を差すか差さぬかは個々人の自由です。しかし、経済の予想に関して言うと、どしゃ降りだということを政府として発表するのなら、やはり雨具を用意しなきゃいけない。だから、本当に小雨としか言えないんですね、これはどんなどしゃ降りでも。それは、やはり財政対応が、つまり、そこの政策手段が用意されないと、どうしても本当に正しい認識を表現できない。ここに企画庁長官のジレンマがあると思う。  ただ、この問題、ごちゃごちゃやってみるつもりもないんです。それは、既に国民生活実感から随分もう離れてしまった。今さら景気がよいか悪いかとかそんなことを議論していたって、まあ夏場までは、先行きどうなりましょうかねぐらいだった。今は、もうよい悪いを通り越して、まずは何とかしてくれよというところに行っていることは確かですよね。  そういう点で、経済認識について余りにも実感とのギャップがあり過ぎるということが、一方でまた非常にマインドを悪くしていますね。本当におれたちのことをよくわかっているんだろうか、本当に経済がしっかりわかっているんだろうかという、このことがまた不信を招いている、そういう要素がある。  そういう点で、今度景気対策をおやりになるということは、言葉で現状認識をどう表現されようとも、今はよくない、これはえらいことになるかもしれぬという認識がやはりあるから一生懸命おやりになろうと、こうしているんでしょうね、このまま放置したらとてもとてもこれは容易じゃないぞという思いがあるから。  何でそういうことになってきたのか。さっき現状認識で尾身さんは、消費税の反動減というか、駆け込み需要の反動減がまだいろいろあるというお話がありました。しかし、果たしてそれだけだろうか。私はそうではないと思うのですよ、これは。俗に言う政策不況の要素があると思っていますよ。政策不況というのは、政策がしっかり行われていれば起きなかったであろう不況ですよ。  それは、昨年から我々が言っていたように、今の日本経済の実態からいくと、本当は金利の是正をすることの方が先なんです。消費税の引き上げのタイミング、特別減税打ち切りのタイミング、こういったことが早過ぎるのではないか。だから、今長官は予想以上に消費税の反動が大きいというような感じをおっしゃったが、我々はそれは最初からわかっていた話なんです。だから我々は言ってきたわけですよ。我々はあえて法案まで昨年からことしにかけて出したのですよ。それをあなた方はつぶしてきたわけですからね。そういう意味で、ぜひここは言っておかなければならぬ。  まず、消費低迷についての政府の見通しの誤りは、ただ単に実額の話だけではないのですよ。消費税の増税分が取り上げられたから、そういう意味で前倒しになったからとかいうような数字だけではない。特別減税打ち切りの話も、懐に入るお金がその部分だけ足りなくなった、そういう意味で実需面に数字の上で計算して反映される部分もある。  しかし、それだけではない。特に医療費の問題、医療保険の問題も、これは、病気になった人がお医者さんに行って二割負担取られるようになったとか、薬について自己負担がふえたとか、その負担のふえた部分だけが消費を下げているという世界ではないのです。つまり、そういうことを通じて将来への生活不安ということが表面に出てきているのです。  つまり、一足す一は二ではなくて、今度の消費税を初め特別減税打ち切り、こういった数字は、正確には九兆よりもうちょっと少ないかもしれません。しかし、いずれにせよ俗に言う三点セットで約九兆と、こう言われている。その影響は九兆だけでは実はないのです。これを契機に生活防衛の方向に、将来不安という方向に一歩突き進んでしまっている。それが数字の上ではなかなか表現できていないのです。しかし、本当に構造的に心配なのはその部分なんですよ。  そういう意味で、我々は、今非常に大事なところにあるだけに、総理の言う抜本的な、構造的な改革をしなければならぬ、消費税もいずれは引き上げするのはやむを得ない、だって高齢化はどんどん進んでいくのですから。しかし、今それだけの体力が日本にあるのかというと、そうではないんだ、そういうことを去年から一年言い続けてきた。  それをあえて、いや、消費税を引き上げても生活習慣は余り変わらない、むしろ、一遍いい生活になれたら、その生活水準を維持するためには貯蓄をおろしてでも消費するのです、つまり消費性向は上がるのですと。消費税引き上げのときには現にそういうこともあった。  しかし、我々は違うぞと。むしろ、逆に今回は消費性向は下がる可能性がある。統計が今ないからしょうがないけれども、後になって、恐らく逆に貯蓄率は上がっているのではないか。これは、超低金利ということによって年金生活者を直撃していますよね。  そういったことを含めても、私は、今回の景気低迷の一つの大きな原因は、そういう三点セットの国民の負担増ということが、単なる目先の数字だけでない大きな下振れというのですか、経済全体の下振れ、消費の下振れというものを引き起こしているということ、このことを私は指摘をしておかなければならぬと思うのです。  この点について、尾身さんは自民党におられて、入閣する前は大体僕らと似たようなことを言っていたから、むしろあえてそれを決断された三塚大蔵大臣、どう見ますか。
  93. 三塚博

    ○三塚国務大臣 野田委員の議論は、日本経済がこのままでありますとアウトになるのではないだろうか、あるいは、低成長からマイナスに転換をするのではないかという視点、その視点に立って特別減税復活、所得減税、以下等々の施策を考えられておるのではないだろうか。そういう背景の中で、心配の余りいろいろと御指摘をいただいていること、それは見方ですから、まるっきりあなた間違っておりますよと言うつもりはございません。  ただ、尾身長官も言われましたとおり、政府月例報告、あるいはQEでありましたりDIでありましたり、それぞれの調査がありますね。それと、民間機関がまたそれぞれ、こういう世並みでございますから、真剣な検討が行われております。  先ほども紹介申し上げましたとおり、消費税の反動ということで四―六が深刻な状態になったのではないか、こういうこともありますけれども、それを半期にならしますと、御案内のとおり、一―六では個人消費は前年前期比二%の伸びを示しておることだけは数字が正直にあらわしております。それと同時に、四-六がGDP、マイナスニ・九%と言いましたが、これも一月から六月に直してみますと〇・四の伸びを確保していることは、数字は確かな形であらわしておるわけです。  ちなみに、百貨店、スーパーの話も先ほど出ましたが、その販売額は前年を上回る水準に達しております。コンビニは、ぶつ続け毎日やるものでありますから、消費者のニーズに完全にこたえておるという意味で、売り上げは好調であることは御案内のとおりであります。それと、旅行を初めサービス消費も堅調であり、雇用もふえておることも御承知のとおりであります。  設備投資は、各種アンケートにありますとおり、底がたい動きでございまして、このこともしっかりと日本経済を支えておることだけは間違いございません。その結果として、先行指標である機械受注も緩やかな回復傾向にありますし、同時に企業収益の改善が見込まれる。二極化でありますから、その部分で業種によって違いは御案内のとおりであります。  不動産でありますとか建設業でありますとか、ある意味金融でありますとか、こういう問題がありますけれども、ここは不良債権の解消ということの努力が真剣に展開されておりまして、着実に改善の方向にあることも野田さんは御承知の上で質問をされておるだろう、こんなふうに思います。  ですから、全体の展望からいいますと、この緩やかな成長というものを底がたいものに展開をしていくということでありますと、六改革断行するということによって、尾身長官が言われますとおり、通産大臣が言われますとおり、ニュービジネスの誕生を促す、またビジネスチャンスを多く与えることができるということであります。  そんな中でまいりますならば、本年度の経済見通しも、さらなる注意力を集中しながら、財政出動を除くありとあらゆる努力を展開をすることによって、緩やかなものを底がたいものに押し上げていく努力を内閣挙げて、与党挙げてこれに取り組んでまいるということでありますと、体力は、先ほども総理が言われました、一千二百兆のうち個人の預貯金は五百五十兆のランクをそのまま維持いたしておるわけであります。外貨準備高は、二千二百億ドル。こういうことの中で、それが下支えの中にあるわけでございますから、体力はまさにあると言って過言でありません。あるうちに思い切った諸改革断行してまいるということで健全体に戻らせていただける、こう思っております。
  94. 野田毅

    野田(毅)委員 いろいろ熱心に御答弁いただいた。ただ、若干いろいろな話が一緒くたになっているものですから、ちょっと交通整理するのに大変なんですけれども、結論において、私は、大蔵大臣としてやはり今すごく頭に置かなければならぬことは、金利の正常化なんですよ。こんな超低金利に置いておいて、何が体力があるんですか。そうでしょう。大蔵大臣かちこの金利の話が出なかったのはちょっとあっと思ったんだけれども、これはまあいい、後でまたやります。この問題はもうちょっと集中的に、日銀総裁にも来ていただいているから。  ただ、今の御説明の中で、需要項目についていろいろお話があったのだけれども、要するに、今尾身さんもおっしゃったが、設備投資がいいみたいだとかいろいろな話がある。しかし、みんな外需に支えられているんじゃないですか。外需関連の設備投資が大きいんじゃないですか。中小企業、非製造業、決してよくないですよ。しかも、先行きがどうなんだということを聞いたら、アジアだって決してよくない。日米間だってかなり厳しいところへ来るだろう。そうすると、先行き、そんなにいいんですか。  あるいは、通産省がとった統計ですか、ことし上半期かな、工場の立地件数、工場用地の取得面積等について言うと、やはり対前年比減なんですね、まず工場用地そのものが。もちろん設備投資の額が工場用地の取得面積だけに、あるいは件数だけにかかわるものとは思いません。しかし、まず土地の手当てがあって上物が建っていくわけです。それは現に減っているじゃないですか、さまざまな要素はあると思うけれども。  そういったことをいろいろ思うと、さらにまた、これから年末に向けて金融機関がかなり、自分の生き残りの方が大変だというので、現に、貸し渋りどころじゃない、取り立てに今一生懸命じゃないですか。だから、今史上最大の倒産件数になって、負債金額になってきている。そういう客観情勢を頭に置いたときに、雇用だってこの先どうなるかわからない、その不安感にみんなおびえているんじゃないんですか。  それを、いや、先行き堅調でございますなんて言ったって、すごく現実の感覚からずれてしまつている。ずれているということがまた一ずれた認識で誤った処方せんを書かれると、これは薬害が発生するんじゃないか、処方せんの誤りによって。どうもそういう危険な感じを抱いているわけですよ。  それから、さっきおっしゃった消費について、いや、四―六は減ったけれども、一―六は一緒に合わせていくと去年から二%ふえているんですよと、こうおっしゃったんだけれども、問題は一―六じゃなくて、今度は、じゃ七―九、どう見ているんですかということ。  だから、やはりこれから七-九から、去年はどんどんどんどん駆け込み需要だとかそういうものがあるんですから、これから先、対前年度の比較でいくのなら、そんなにいい数字出るわけないじゃないですか、駆け込み需要があってと言っているんですから。そうでしょう。ことしの四月に先立つ半年間にかなり駆け込み需要が発生したから反動だ、こう言っているんだかち。だったら、去年は実力以上の消費が出ているわけですから、ことしと比較するのなら、去年の秋に比べて、あるいはことしの一―三に比べて来年の一―三が消費がプラスになるような、そんな数字が出ると思いますか。  ですから、そういったことを余り、私も数字をもてあそぶつもりもないけれども、余りそれをおっしゃると、おっしゃればおっしゃるほど何か株価が下がるような気がして心配をしているのですよ、本当に。だから、僕は、素直に実態をおっしゃった方がいい。  特に僕がさっきからこだわっていたのは、今の日本経済体力を長期的なレンジで見た場合どうなんだというと、平成四年は〇・四%、平成五年度〇・五、六年度〇・七、七年度に入って二・四%になっている。ただし平成七年度は、御承知のとおり、二年前、最低の金利にしましたね。これは相当景気にプラス影響があった。  それから、大変な大型補正をやりましたね。これが実は平成八年度にも若干ずれ込んで、平成八年もプラスになってはね返ってきている。昨年は二・九%、八年度。この中にかなりの部分が駆け込み需要があるというようなことを考えると、本年一・九という成長率を想定していますが、民間は、御承知のとおり十三機関あるけれども、中にはマイナスを予想する向きもあります。平均しても軒並み〇%台になっているわけですね。  ですからこれは、口で言うのは簡単だけれども、本当に容易じゃないのですよ。もし仮に政府見通しの一・九%を達成しようというのなら、残り三・四半期、つまりことしの七月から来年の三月までの間の成長率は年平均で八・八%の伸び率が必要だ、こういうこと。そうじやなきゃ達成できない。それから、〇%成長だということでも、年率で三・二、三%ぐらいの成長率がないと〇%にさえならないという、これはもう機械的に出てくるわけですね。ですから、循環論的に言ってもこれは容易なことじゃないな。これは当然なんですよ。  そこで、さっきから話が行きつ戻りつしましたが、私はさっき言いましたように、やはり増税は本当に体力を回復してからの話じゃないの、そのタイミングを誤ったのじゃないか、私は本当にそう思いますよ。この点だけは指摘をしておきたい。  それからいま一つ、僕らが政策不況だと言っているポイントは、やはり不良債権問題なんですよ。特に来年の四月から、いわゆる早期是正措置、金融機関がより正直に決算内容を自己監査してオープンにしていく、そういうオープンな中で競争にさらされてやっていくんですという、そういう形になっていくものですから、それは今までのいろいろなお行儀の悪さ、その他いろいろあったでしょう。しかし、不良債権の計算にしたって、国際的な水準にどんどんどんどんさや寄せされていく。  だから、いよいよ本当に生き残るために、今まではなあなあでいろいろやってきたことを全部切っていかなきゃならない。そのことが非常にやはり経済実態に影響を与えているということ、そういったことを思いますと、特にビッグバンを総理一つの柱としておやりになろう、今さらこれは引っ込められないでしょう。  そうであったなら、今、一つ大事なのは、不良債権処理について本当に早期にやるということなんです。ここの決断がなかった。これはなぜか。例の住専問題、僕はこのことが大変な失敗だったと思う。住専問題というのは、住専だけを処理すれば不良債権問題は卒業できるような印象でやってしまった。そうじゃないのですよ。住専だってノンバンクの一つなんだから。ゼネコンであろうが、場合によっては卸、小売であろうが、要するに金融機関から金を借りている相手が持っている不良債権、最後は銀行がみんなかぶるわけでしょう。  そういう意味で、その預金者保護という一点に絞って、必要なら、我々はアメリカがやったように日本版RTCをつくるならつくれと。住専だけじゃないんだよと。そのかわり、きちんと民事、刑事の責任を明らかにした上で、公的資金を入れるなら入れなきゃしょうがない。そして一刻も早くやるべきだということを言ってやってきたのだけれども、そのときに政府の方は、一遍住専処理で決めてしまったから最後まで突っ走ってしまった。我々も、座り込みだとかいろいろなこともあった。そのことが世の中に決して共感を、最後は、ちょっと長過ぎたのが失敗したけれどもね。  しかし、このことがよかったことじゃない。それが今日なお尾を引いて、今いろいろな関西系の銀行だとかが合併だ、どうだこうだと。これはいずれ時間があったときに別の機会にお話ししたいと思いますが、預金保険法の改正だとかいろいろなことをやっていますけれども、要は、もう一つ政策不況の原因をつくったのは、まさに不良債権の問題を早期に克服をして、そして一刻も早く健全な金融体制に移行した上で、そして堂々と日本経済が胸張ってやっていくような体制をいかにつくるかということが大事だった。ところが、そうしないで、何か一部分のことだけやればうまくいくんですよみたいなふりをして、結果的に今何にもできていない。このことを、大蔵大臣、どう思いますか。(発言する者あり)
  95. 三塚博

    ○三塚国務大臣 今答弁するのですから、静かにしてください。  不良債権の問題は、産業の血液である金融でございますから、これは全力を挙げてやらさせていただいております。  八年三月、三十四兆七千でありました不良債権総額が、九年三月で、統計が出ておりますが、二十七兆九千ということで、約六兆減額になっております。その後も、ただいま御指摘のように早期是正措置、内部監査、これに外部監査を導入をして、不良債権が出ました場合には、早期是正措置の命ずるところにより、リストラを敢行し、不良債権の早期解消に向けてありとあらゆる経営努力をするようにということで、相当本件は進捗をいたしておるものと思います。  こういうことの中で、まず、本件の重要な不良債権問題の解決、金融面から、それともう一つは、尾身長官も言われましたとおり、不良担保、これに対する証券化、流動化策を強く推し進めることによって、両方から不良債権の解消というものに努力をするということで、日本経済の下支えである最大の金融機関が正常な活動に戻っていただいて、さらなる力を発揮していただけるようにしなければならない、こういうことでございます。  四月一日のビッグバン、外為法、これまたフロントランナーでありますが、スタートを切るに当たりまして、これに対する危機管理の問題、それから預金者、契約者、預託者の保護という観点の法律も出させていただいておりますし、来通常国会にそれも出すことによりまして、日本版ビッグバンが順調に前に進んでいきますように、しかし、自由市場、自己責任でございますから、血のにじむリストラと経営改善をやりません限り、これは淘汰されていくのは当然のことでありますから、今、全金融機関それぞれこの問題に深刻にスタートを切っておると認識をいたし、そのことをしっかりとサポートしてまいりますのが大蔵として大事なことだと思って全力を尽くしておるところです。
  96. 野田毅

    野田(毅)委員 今後どうするのかということは、実は聞いてなかったので……。  今まで、だったら、何でそういうことはもっと早くしなかったのでしょうね。二年間も何で放置してきたのでしょうかね。つまり、今度、預金保険法の改正にしたって、そんなことはあのときから指摘をしてきたのです。これはちょっと場が違うからあれですけれども、この問題で時間は余りとりたくないのだけれども、これは、だって合併でしょう。  二年前に、まあ一年半前にあなた方が言っていたのは、いわゆる信用組合に関しては、つぶすものはつぶす、残ったものは整理回収銀行で引き受けて処理する。だけれども銀行以上はそういうやり方はしない、強いところに吸収合併させるんだという感じですよね。そして、銀行は絶対つぶさないという話だった。  だけれども、今になってどうにもならぬから、今度は合併しようということになった。強いところは、弱いところに足を引っ張られちゃたまらぬから、もう引き受け手がない。そんなことは当時から見えていた。何でもっと早くからそれをしなかったのか。今回、弱い者同士の合併を認めようという話になった。しかし、それならどうしてつぶすというところまで行き切れないのか。  そういったことを、本当に、不良債権処理の問題について、もっと倫理性をも含めてきちっとした体系を出すということが大事なんだ。それで、必要な資金なら必要な資金だということで、もっと正面から国民に訴えるべきじゃないですか。  それを何かちまちまちまちま、ごまかしてごまかして、いや、これ以上入れませんみたいなことを言ってきたから、預金保険機構だってもうパンクしてきているじゃないですか。この先どうするんですか。穴があいたらまた日銀から借り入れするんでしょう。そういういいかげんさ、不透明さが非常に景気の足を引っ張っているということ、私たちは、政策不況の二つ目はそれも大きな原因だと思いますよ。  それからもう一つ、これは今度政府でお出しになる対策、土地流動化策、いろいろあるそうです。しかし、どうも見てみると、土地の譲渡益課税あるいは買いかえの問題、あるいはそれに関するいわゆる法人の重課の話ですね、あるいは地価税の話、あるいは有価証券取引税の話、全部私が、この私自身が提案責任者になって、二年前、この国会で提出してきているんです、同じことを議員提案として。我が国国会では珍しかったと思う。我々新進党は二年前からそういうことを言い続けてきた。ことしの通常国会でも、我々はそれを対案として出してきた。  だけれども、それをわかっていてどうして自民党はっぶしちゃったんですか、二年前に。どうして今大きな顔をして、いや、対策をやるんですと今いろいろ言っているけれども、何で二年前にちゃんとやらないんですか。何でつぶしたんですか、二年前に。あのときにきちっとやっておれば、今こんなことになっていないはずなんです。  今、土地の証券化、どうのこうのと大蔵大臣お話しになった。なぜ二年前我々が言ってきたときにそういうことをおやりにならないのか。あえてそれをつぶすだけつぶしてきて、事態を悪化させてから、恐る恐る今ごろになってそんなことを言うからおかしくなってくる。大蔵大臣、どうですか。何でつぶしたのですか、二年前に。
  97. 三塚博

    ○三塚国務大臣 私は、つぶすつぶさないというのは、国会でありますから、政党間の政策協調、信頼関係、そういうことの中で危機の共有をしながらとり行うということが、国民の側から見ますと国会に対する熱い思いだと思うのです。政党政治の宿弊として、次の総選挙、次の定期参議院選挙、主要な地区の選挙については独自性を主張しながらやらなければならない、これまた政党政治の試練であります。  そういう中で、なぜつぶしたのかと言われますけれども、なぜつぶしたのではなくして、機が熟さなかったのではないのかと、あえて答えとして申し上げておきます。
  98. 野田毅

    野田(毅)委員 済んだことを責めてみてもしょうがないが、今は機が熟した、こういうことですか、大蔵大臣。
  99. 三塚博

    ○三塚国務大臣 ここまで参りますまでは、外為法の審議、日本銀行法の改正の審議、大蔵委員でお世話に相なりました委員各位もおられます。大変な激論を両院において展開をしながら、これからの金融というものはどうあるべきか、また、これに対応するための諸施策はいかん、こういうことで、特に金融不安というようなさなかの論議でございましただけに、日産生命もございました、こういう中の論議の中で、やはりこれを法律化をして思い切って前に進めなくちゃいけない、国会の論議を踏まえて政府がその決心をし、提案をいたし、御協議を、審議をお願いをする、こういうことであります。
  100. 野田毅

    野田(毅)委員 景気対策の話、具体的にはもうちょっと後になろうと思うのですけれども、その前に、あした自民党が何かまとめるとかいう話が伝わっていますね。自民党はどうでも、どうでもいいと言うと言葉が悪いんだけれども、やはり最後は政府が責任を持ってやらなきゃならないわけですよね。そこへいく過程の中でのいろいろ与党の論議はあるんでしょう。  政府としていつおまとめになります、大蔵大臣。
  101. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 先日、十七日金曜日に橋本総理から、日本経済の長期展望を踏まえ、国民に対して景気の将来に対する不信感を除き、景気回復を正常な軌道に乗せるという趣旨で経済対策を取りまとめるようにという御指示がございまして、私ども、年内できるだけ早期に取りまとめたいと考えております。  自民党あるいは与党の取りまとめもなされるわけでございまして、そういうものを踏まえましてやっていきたいと考えております。
  102. 野田毅

    野田(毅)委員 政府としては年内の早期ということですかね。年内早期というと、十二月三十一日まで年内。そうすると、来年度予算編成と一緒に出すということもあるということですか、ぎりぎりの場合は。  総理、十一月末にはクリントン大統領とお会いになるんでしょう。そのときに、当然日本の内需問題というのはやはり話題になるはずですよね。むしろそのときには、ある程度総理としての何らかの物言いをしなきゃいけないですね。
  103. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、党で作業している日程は既に御承知で議員お話がございました。そして構造改革に関連し、今見直し作業が進められております。一つの流れはこれです。  それから、予算あるいは税制に関連した部分での回答を求めておられましたものにつきましては、大蔵大臣が恐らく答えるでありましょうけれども、これは、ある程度予算編成に並行しながら税制も含めて議論が進められていくことと存じます。  その上で、クリントン大統領と会うと言われましたのは、恐らくAPECの機会を利してということでありましょうが、APECの際、多分それはクリントンさんとも会うでしょうし、いろんな場面がこれはあろうかと思います。その場合に、内需中心で日本経済を進めていかなきゃならないということについては、これは当然私自身も、そう言われましたものを否定する場面ではございません。  そして、そういう意味では、この数日間海運の交渉で大変御心配をかけましたけれども、こうした問題も含めながら、日米間の経済問題、今後ともに処理していかなければならない課題を持っておりますが、それとは別に、我が国自身の対策というものもつくっていかなければならない、御指摘のとおりであります。
  104. 野田毅

    野田(毅)委員 この前、九月ですか、九月二十日ごろG7が行われましたね。そこで、G7でもそうだったんですが、日米蔵相会談でも、報道によると、お約束をしておられる、大蔵大臣も。単に口約束じゃないと思うんだけれども、米国は日本の景気の予想以上の弱さと経常黒字拡大に懸念を表明、日本は内需主導の景気回復で黒字の大幅拡大を避けるよう努力すると表明、こういうこと。これは国際約束だとみんな受けとめているんですけれども、大蔵大臣、そういうことでしょう。
  105. 三塚博

    ○三塚国務大臣 決して国際約束ということで進めておるわけではございません。しかし、世界経済をリードする立場にある、グループセブンと言っておりますが、先進七カ国、大蔵大臣、中央銀行総裁、一緒に会議を開くわけでありますが、その前に、同盟国であると同時に、トップリーダーであるアメリカの財務長官日本の大蔵大臣が必ず協議をするということに相なります。以下、ドイツ、フランス、イギリスと、そういうことで取り組むわけでございますが、懸念表明ありましたことは御指摘のとおりであります。日本経済、聞くところによると大変なようだが大丈夫かね、簡単に言いますとそういう言い方です。  これに対しまして、ようやく消費税の反動減という問題も消化できる見通しに立ちました、不良債権、本件については最大の努力を傾注をしながら取り組んでおります、特に不動産、建設等の不良債権・担保、こういうものが動かないわけでございますから、この土地を動かすということの中で証券化を初めとした流動化対策にかくかくしかじかの方式をとることといたしましたと。  グリーンスパンさんからアメリカの不良債権の経験なども披瀝がありました。そういうことで、そこまでしっかりおやりをいただくのであれば御健闘を願う、こういうことで終わったというのが率直な中身であります。
  106. 野田毅

    野田(毅)委員 じゃ、アメリカとのお約束ではない、アメリカの要望事項である、そういうことですか。
  107. 三塚博

    ○三塚国務大臣 それは、最大の同盟国であり、マクロ経済の両翼に立っておるわけでございますから、その意見交換は誠実にやはり実行をするべく、効果あるものにしてまいりますために、直ちに総理にも報告を申し上げ、経企庁長官、関係経済閣僚と協議の中で本日の段取りと、こういうことになっております。
  108. 野田毅

    野田(毅)委員 ここで公約か公約でないかということを言ってみても、当然、アメリカ側だったら、言ったことを受けとめて、努力するということを言っているんだから、今度のガイドラインじゃないけれども、ある意味じゃお互い義務づけているような、実効性を高めるということを閣議決定までしているわけですから。僕はそうだと思う。  ところが、現実はどうなんだろうか。きょう発表された数字でも、本年度上半期は貿易収支が七六%対前年でふえているんですね、七六%。先行きこれはまだやはりふえますよ、去年と比べて。去年は日本の国内は、少なくとも、さっきからお話があったように、消費税の前倒しの要素があって、去年の数字は。だから、今回はその反動減の要素があるんでしょう、内需に関連して言えば。それで円は安いわけですよね。  そうすると、そんな、短期的に拡大するが先行きそうはならぬだろうというのは、私は、場合によっては的確な表現かもしれない。何で先行き伸びないか。それは、これ以上迷惑をかけられちゃたまらぬというリアクションがあって、為替レートに反映してそういうことになる可能性が非常に強いんじゃないか。  やはり今の超低金利というこの怪物は、モルヒネ効果はあるんだけれども、二年間、これは本当に今あっちこっちをむしばんでいるんですよ。今、生保の関係だってみんなおかしくなっているでしょう。年金だっておかしくなっているでしょう。  午前の質問で、自民党の野田委員の質問で、小泉さん、いろいろ力んでおっしゃったんだけれども、そんな簡単な数字じゃないですよ、この超低金利が続くとしたら。それはえらいことになりますよ、予定利回り五・五でしょう、あれ。今はどうですか。  そんなことを考えたら、本当に、それがまた円安にもつながっているわけでしょう、口先介入で一生懸命円高に触れるように触れるようにやっているんだけれども。その上に、これ、実績が数字であらわれてきたら、一体どういうことになるんだろう。  ちなみに、これは数字の話ですからなんですけれども、もうここまで半年間、本年度走ってきたわけですから、少なくとも貿易収支、あるいは経常収支でもいいんですが、本年度の貿易収支の当初の見通しと半年間の実績の見込みというのをちょっと聞かせてもらえませんか。  尾身さん、企画庁長官、ちょっと無理かな、役所わかるかな、数字はまだないんだろうけれども、当初と実績見込み。
  109. 塩谷隆英

    ○塩谷政府委員 今年度の当初見通しによりますと、経常収支のGDP比、平成九年度は一・三%でございます。実績につきましては、四―六月のQEが出ておりますが、それによりますと、GDPに対する経常収支の割合は二・五%でございます。
  110. 野田毅

    野田(毅)委員 ついでに聞かせてください。  過去、日本が一番GDPに対するこの数字が高まったときというのは、いっ、どの数字ですか。
  111. 塩谷隆英

    ○塩谷政府委員 手元に今数字がございませんが、たしか昭和六十一年ぐらいで、GDPに対する比率は大体四%強であったかと思います。
  112. 野田毅

    野田(毅)委員 僕も今ちょっと数字を持ってきていませんけれども、一番心配しているのは、バブル崩壊直後――バブル期には海外から高級品がどんどんどんどん入ってくる、そんなこともあって、多少一九九一年ぐらいはよかったと思うんですよ、改善されてきて。それがだんだんおかしくなって、それでこれが非常に大きな問題になった。日本バブル崩壊後の不景気の中で急速に内需が縮こんでいった。  そういう中でいろんなことがあって、総理も苦労されたが、結局日米貿易摩擦ということになり、それで結果的に、最終的に為替レートをという話になり、みんなが二年前、夏前ですね、二年前の春、のたうち回っていたということを私は思い起こすわけです。  本当に今このような形のままでいったら非常に危険だ、僕は、その危険性をやはり何とかして回避しなきゃいかぬと思うんですよ。大蔵大臣、何としてもそれは避けるんだということだけは言っておいてください。いいですか。そうでなきゃ責任になりますよ、これ。  というのは、外国から見たって、これは本当にみんな困るわけでしょう。日本が自分の財政再建をしようということはよくわかるけれども、そのことのために日本の内需も抑えつけ、超低金利をやる、そのおかげで円安になる、結果的にアジアの通貨危機の、一説によると遠い原因一つでもある。  一方ではそのことが、アメリカにもお金が流れていって、アメリカにもプラスにはなっているんだけれども、いずれにせよこの問題が世界の自由貿易体制そのものによくない影響を与えるんだという一このことが今一番深刻な問題になってきているわけで、そういう意味で、ぜひ日本財政再建、自分の庭だけきれいにして、あとはどうでもいいんだという印象にならぬようにだけする必要はあると思うんですよ、これは。大蔵大臣、よろしいでしょうか。
  113. 三塚博

    ○三塚国務大臣 本件は、二カ月に一遍、三カ月に一遍ぐらいになるときもありますが、財務長官とのミーティングがございます。そういう中で、我が国経済は、経済構造改革、高コストの解消によるビジネスチャンスの展開、よって、民需を中心として内需振興を図っておりますと。こういうことが昨年度、その前の七年度において、経常収支に明確にあらわれておるわけです、内需中心の経済運営という数字が出ておりまして。  それで、本年度に入りまして、特別この経常収支の問題で強い懸念が先般の香港会議においても出されておるわけではございません。全力を挙げての構造改革をやり、民需中心、内需振興の形の中で取り進める、こういうことであり、我が国経済政策のために円安政策を断じてとるものではない、このことも重ねて申し上げ、理解を得ておるところであります。  昨今の貿易、経常収支の黒の伸びは、対前年同月比あるいは三カ月比、大体同月比できているわけでありますが、御指摘のとおり出ております。これは米国が未曾有の好況に恵まれておりまして、輸出が振興しておることの事実は認めます。しかしながら、平均的に、外需主導でない日本経済の運営の昨年の毎月の数字との対比の中でありますから、げたが低い、そういう中で対前年同期比ということで、この形は強く出ておりますことは御指摘のとおり。だからといって何も私はこれでいいと思っておりません。  そういう中で、万般に気を配りながら政府として対応していかなければなりませんし、また、その対応を経企庁長官や通産大臣が言われるような形の中で努力を、全力を挙げて進めておるところであります。
  114. 野田毅

    野田(毅)委員 僕がなぜこの問題をいろいろ言っているかというと、さっきからちょっと脈絡があるのですけれども、やはり大蔵大臣としていろいろ経済政策をお考えになる上で、今最優先して考えなければならない課題は何かということなんですよ。それは、今の超低金利をどう是正できる環境をつくるかということにあるはずなんです。  今アメリカの反応をいろいろおっしゃった。我々もアメリカ側と意見交換していますよ、いろいろなシンクタンクの人たちと。政府側だって、アメリカの政府の高官だって、我々と話したときに、日本政府はこう言っているけれども本当にそのとおりになりますか、どうですかという話なんです。あからさまに日本政府の批判ができないから、せいぜいその程度で終わっていますよ。だけれども、報道されているアメリカ政府高官の発言というのはもっと厳しいじゃないですか。  それから、何より今の日本政府のやり方は、やはり円安政策だ。これが円安政策でなくて一体何だというのですよ。だって、超低金利を動かせないのでしょう、今。だから、みんな高い金利を求めるのは当たり前なんです。だから日本国内で運用するよりも高い金利のところへ行くのでしょう。だからお金の流れは、当然のことながらお金は出ていくのでしょう。だから円安になっていくんじゃないですか。  だから、為替レートは経済のファンダメンタルズを反映するような程度のものでなきゃならぬというのは、そのとおりなんです。じゃ日本経済のファンダメンタルズは何だというと、日本経済の超低金利は、まさに円安がファンダメンタルズの表現なんですよ。  だから、こんなことを言うと不謹慎かもしれないが、ゴルフに例えると、グリーンはこっちにあることはわかっている、だけれども、どうも日本政府はこっち向いて打っているんだな。本当にこっち向いて打ったらOBするよとわかっている。だけれども、これはスライスする人があるかもしれないからね。だから、ボールが着いてみなきゃ文句は言えない、だけれども、どうもスタンスが違うのじゃないか。本当にそういうことなんですよ。  さて、その着地するのがいつごろだろうかというと、私は、意外と早いのじゃないかな。忍耐の限度が来ることが早いんじゃないかな。それは何もアメリカがどうだからどうという話じゃないんだ。少なくとも我が国が一番大事なのは、まさにこれからの日本経済が、これからも中長期的にしっかりとした活力を維持してそういう姿をつくっていくために、金融政策が動かせるような体力をどう早くつくるかということじゃないんですか。  今、金融政策を最低に張りつけて、その結果、年金生活者のまさに生活不安まで、消費減退を呼び起こしているでしょう。現に実質預金金利のあれはマイナスじゃないですか。これがみんな消費需要までおかしくしているじゃないですか。  それだけじゃない。年金の将来だっておかしくなっているじゃないですか。現に生命保険会社がつぶれている。これだって、金利がもしこういう低水準でなかったらまた違った形になっているはずだ。もちろん運用の誤り、いろいろありますよ。だけれども、こういう今のままの超低金利があと何年も何年も続くのなら、日本の生命保険会社なんて成り立っていかないじゃないですか。そして、つぶれたときに保証されるスキームは何にもないじゃないですか。それがまた自分たちの生活防衛意識を高めているのですよ。  つまり、超低金利そのものが実は生活防衛を呼び起こしている部分があるのですよ。だけれども、今ここでいきなり上げたら、これは逆回転になると、不良債権処理の問題はえらいことになるだろうし、中小企業だって大変なことになるのでしょう。動かすに動かせないじゃないですか。  そういう意味で、ずうっとこのところ聞いていて、世界恐慌でさえ見ていない超低金利をこれだけ続けているんだ。この異常性をしっかり認識しないで、目先の循環論的に、いやもうこの何とか四半期は設備投資はこうで消費がこうでとかいうことばかり言っているから、世の中はわからない。  もっと根本的に、今の日本の本当の経済の体力はどういう姿なんだという診断をして事に処さないと、私は、話が長くなってなんですけれども、そういう意味橋本総理をお医者さんに見立てるのなら、どうもこれはやはり誤診しちゃったんじゃないかな。まだまだ重病ですよ、日本経済は。多少熱が下がったぐらいの話だ。熱が下がったというのも、熱冷まし飲んだわけだ、超低金利で。そして、ちょっと熱が下がったからと思って、いやもう体力は回復してきているんです、緩やかながら回復基調ですと、一体何年間言い続けてきたんですか。  それを、治りかけたということで頭から水ぶっかけたのが、この前からの消費税の引き上げであり、特別減税の打ち切りであり、あるいは社会保障改革ということに寄せて、結果は何のことはない、保険料の引き上げと自己負担の引き上げたけだったじゃないですか。しかも超低金利でしょう。ですから、治りかけた病人に頭から水ぶっかけたから今本当に肺炎を起こしているよ、そういう意味で私は、本当にこれは政策不況だということをやはりしっかりとお話ししておかなきゃならぬ。  そこで、日銀総裁に来ていただいたので、恐縮なんですが、今さまざまなことを言いましたけれども、少なくとも今すぐ上げられる局面にはなかろうと思うのです。しかし、今の水準が正常であると考えているのか。いずれ何らかの機会に上げるべき時期というのはあるはずだ。それは、具体的な時期を言う必要はありません。僕も聞こうとも思いません。聞くべきじゃないと思う。しかし、少なくとも、そういう金利政策は、超低金利の超を取る、正常化させる、そういう環境づくりのためにはどういう環境が整わなければならないのか、この点についてお伺いをしたいと思います。
  115. 松下康雄

    ○松下参考人 私ども金融政策を考えますときには、その時々の経済情勢や、また、景気、物価の見通しに応じまして、インフレなき持続的成長の達成という観点から、そのときそのときに最も適切と見られます金利水準が形成されるように運営をしていくものでございます。  私ども、二年前に公定歩合の〇・五%への引き下げを含みます思い切った金融緩和措置を講じましたねらいは、我が国経済がデフレスパイラルに陥るということを回避をいたしまして、また、企業や家計のコンフィデンスを強化いたしますとともに、経済を自律的な回復軌道にしっかりと移行させようということでございました。そのような判断に従いまして、私どもの判断と責任におきましてこの金利を決定をいたした次第でございます。  その後の情勢を見ますというと、この金融緩和は、企業収益を下支えいたしまして設備投資を促すというようなさまざまな側面から経済活動の回復に貢献をしてまいったものと考えておりますし、また、この間にデフレにもインフレにもならずに、長い目で見まして物価の安定を確保するということも行われてまいったと思うところでございます。  ただ、その一方におきまして、御議論がございましたように、金融緩和に対しますところのいろいろの御意見がございますことは、私も承知をいたしております。利子収入に多くを依存される方々家計に及ぼす影響につきましては、特に私どもも心苦しく思っている次第でございます。  しかしながら、私どもといたしましては、やはり国民全体が豊かになってまいりますためには、まず経済の全体の足取りをしっかりさせることが先決であると考えておりますので、引き続きこのような観点を基軸に据えまして、適切な金融政策運営に努めてまいりたいと思っております。
  116. 野田毅

    野田(毅)委員 そう言われると、何を言われたか、全部を一口で言うとどういうことになるんだろう、こういうことだと思うのです。それだけ一言一言、総裁の発言は重みがあるから、慎重な表現をなされたことだと思います。ただ、わかりやすく言えば、しっかり内需拡大という状況がないとやりにくいねと、こういうことでしょう。  つまり、それ以上は言いませんが、今は行革議論の中で財政金融の分離やらいろんな話があるけれども、実は今、財政政策金融政策を縛っているということじゃないですか。金融政策が動けなくなっちゃっている。じゃ、これ以上金利低下できますか。ですから、本当に私は、今の状況日本が、これは本当に底抜けたらえらいことになるだろうと思いますよ、金融政策が動かないような状況になっちゃっているのですから。そこの恐ろしさをぜひ強調しておきたいんです。  実は、そこまで端的に日銀総裁がお話はできないんだろうとは思ったんだけれども、今のお話を聞くと、今すぐは上げにくいね、だけれども、将来へのそういう筋道、シナリオというものができてくればそういうタイミングは必要である、早く言えばそういうことでしょう。簡単に、日常会話のような表現でお話ししていただくと大変ありがたいと思います。
  117. 松下康雄

    ○松下参考人 私どもは、経済がしっかりとした自律的な回復軌道に乗ったと認められます場合には、その状況に応じた適切な金融政策をとってまいります。
  118. 野田毅

    野田(毅)委員 非常にわかりやすかった。だけれども、ということは、裏を返せば、今、自律的な回復軌道に乗っていないということなんですよ。いいですか。体力があるとかいろんなことを言わないこと、ここが一番大事なんですよ、本当に。そこでどう対応するかという話なんですよ。そこの基礎認識がないとまたちまちまちまちま小手先だけになるんですよ。  だから、今度いつおやりになるか、年内にお出しになると言うんだけれども、その中に財政出動しないといったがをはめて、減税論議はやらない、法人税の実質減税もやらなければ所得税の減税もやらない、もうこれだけはどんなことがあっても動かせない、こういうようなイメージなんだけれども、本当にそういう姿勢で、大蔵大臣、最後までいきますか。
  119. 三塚博

    ○三塚国務大臣 大変大事な御質問でありますから拳々服膺して申し上げますが、財政構造改革に関する特別措置法の原点は、まさに赤字公債依存体質からの脱却という最大の柱が、大黒柱が立っております。この大黒柱が外れますと、このうちはつぶれてしまいます。つぶすわけにまいりませんので、自律的回復の基調に乗って経済成長が安定、持続的な形になりますまで御理解とサポートをいただきますればと思います。
  120. 野田毅

    野田(毅)委員 だんだん時間が少し押してきました。  何か勘違いしておられるんじゃないでしょうか。つまり、所得税減税、法人税減税は、今景気が悪いから、尾身さんが時々おっしゃるんだけれども、いわゆるケインジアン的な発想というと何かな、民間にお金がないから所得減税をして、そしてお金を出して、その範囲の中で消費がふえていくだろう、こういうようなやり方はしません、そういう意味での財政政策はやりません、こう言っていますね。  私たちが言っているのは、そういう発想じゃないんですよ。これは、総理のもう一つの大事な柱である経済構造改革と連動しているんです。つまりこれから、超少子・高齢化社会においてどうやって雇用をしっかりと確保して、空洞化を防ぎながら、そして競争力を保持しながら、民間の投資と消費が中心になって支えられるような、そういう経済活動をどう保障していくか。こういうことを展望したときに、どうしても税の世界において、特に直接税の世界においては国際水準並みの税制にするということが中長期的課題として今非常に大事なことじゃないですか。そういう展望がしっかり出ることによって初めて投資活動も本腰が入る。  サラリーマンにしてもそうですよ。やはり自分たちの雇用不安というのがある間は、なかなか減税したからすぐ消費に回すとかいう話じゃないでしょうし、あるいは年金不安やら、あるいは病気になったときのいろいろな不安がどんどん出てきたら、やはりそういう問題はあるんでしょう。  そういう意味で、私たちが言っているのは、ちょうど我が党の、ほかの、自民党もぜひこういうのをおつくりいただきたいと思うんですが、「日本再構築宣言」、つまり、二十一世紀の超少子・高齢社会においても、どうやったらその活力を失わないように、何でもかんでも役所におんぶするんじゃなくて、民間がより自由な活動領域を自己責任の中で、しかもお互いが安全ネット、そういった社会保障システムへの信頼性をいかに高めるか、そういう一番前提になる民間の経済活動をどうやって活性化するか、そういう角度から私たちは法人税の話をし、所得税の話をしているわけです。目先、景気が悪いから云々じゃないんですよ。その戦略なんですよ。それを大蔵大臣みたいに、次の、来年の予算編成で財政赤字だけは絶対ふやしちゃならぬという、こればかりやっていたら物事動かないじゃないですか。  財政再建ということは、目先目先の収支を合わせることが意味があるんじゃないはずだ。六年間なら六年間、途中の年度は多少でこぼこがあったっていいんじゃないですか。トータルとしての収支が合うということが一番大事なことであって、それを目先の収支にばかり目を向けるから、結局は構造改革は逆にできなくなるんですよ。ここが、減税論議についての認識が違うんじゃないか。  何か、景気が悪いから追加需要を財政面でふやしてやるとその分だけ目先の景気がよくなるよとか、そういう在来型の発想はしないということです。そういうやり方はしちやだめだ。むしろ構造的な、そういう先に向けたものをきちっとやることが、考えてみれば目先の、足元の景気対策にも非常に有効なんだという発想を持つことが大事だ。どうですか。
  121. 三塚博

    ○三塚国務大臣 よくわかるのです、話は。ただ、一点、税制は公正、中立、簡素でなければならぬという大前提があります。そして、法人税、国際水準にまで横並びにできるようにすべきだという御主張もわかります。しかし、特例公債を財源として法人税を下げるということができない、こう申し上げているわけです。といいますのは、この対象になりますのは、上場企業等を中心として利益の上がっておるところであります。  しかしながら、その政策の必要性は私も知っておるわけです。ですから、レベニュー・ニュートラルで、課税ベースの拡大そして適正化をやることによりまして、二%であれば、一%四千億円でありますから、八千億円の財源を見出していくことにお許しをいただきたい。それが二・五であれば一兆円になります。全体、租特法を含め、引当金、準備金等々を含めまして財源の調達をさせていただきまして、その範囲内でやらさせていくことでなければなりません、こう申し上げておるわけであります。
  122. 野田毅

    野田(毅)委員 言葉じりはいけないと思うのだけれども、今ちょっと大蔵大臣気になることをおっしゃったので、訂正された方がいいと思う。それは、法人税減税は一部上場大企業の利益の大きいところにしか有利にならないという、私は、そういうような認識をしている間はこれはだめだと思いますよ。この発言は株価を下げる発言だと思う。私たちは、どこに有利とかどうとかじゃなくて、国際的なレベルということが大事なんですよ、そこは。わかっていておっしゃっているのかどうかわかりませんが。  それで、今財源論をお話しになった。つまり、財源があればやれるということでしょう。じゃ、財源をつくればいいじゃないですか。そうでしょう。つくる努力、しているんですか。ないないないないばかり言っているんでしょう。課税ベースの拡大だとかいろいろおっしゃる。私たちは、本当に、実質的に実効税率、法人税一〇%減だ、削減する、減らすと、国、地方を合わせてね。そのかわり、既存のいろいろな引当金やら、現在ある、本法にある措置までいいよと、租税特別措置法にあるようなことだけじゃなくて。場合によってはそこまで切り込むよと。それでも実質減税なら私はやるべきだと思うのですよ。これが大事なんですよ。そうすると、本当にそれができるなら、一体何兆円お金が出ると思いますか。  それから、いま一つ。所得減税もそうなんですが、やる気になればできるのですよ。だから今、行革を一生懸命やっているんでしょう。じゃ、一生懸命行革をやって全然お金出てこないんですか。お金が出てこないような行革をやっているんですか。私は、例えば今度の公共事業改革にしても、今おやりになっていることではお金は出ないと思う。だって、予算規模を減らすだけでしょう、単純に。景気が悪くなるだけじゃないですか。  私たちは、単価を下げたら、下げた分だけむしろ事業量をふやせというんだ。五年計画を七年に延ばすのじゃなくて、本当に必要なら、どっちみちやらなきゃならぬなら、七年計画を五年計画に前倒ししてやったっていいじゃないですか。単価を下げて事業量をふやす方がはるかに正解じゃないですか。  しかも、今の超低金利の間に借金した方が、先延ばしして金利が高くなってから、高齢化が進んでから借金するよりか、同じ事業をやるなら、足元の経済対策としてもその方がはるかに正解じゃないですか。長い目で見ての財政のためにはどっちが役に立つのでしょうか。目先のことにばかり向かっているから、どうもおかしなことになっているんじゃないか。財源は出るんですよ。  例えば公共事業の話、私たちはかねてから提案をしています。それは、今の長期計画にしても補助金の問題にしても、もう国はつくりなさんな。国がやらなきゃならぬような事業はやっていい。だけれども地方で決めればいいものを、どうして一々国が全部事業ごとに、縦ごとにまとめてやらなきゃならぬのでしょう。もともと公共事業が悪いのでもない。性悪説でも性善説でもないのですよ。要らぬことをやるから悪いのですよ。そこのところを、今度の財革法にしても大事なのはそこなんですよ。全然構造じゃないじゃないですか。私たちはそういう意味で、もう計画は国はつくりなさんな、丸ごと地方へやりなさい、包括交付金で地方にやりなさいと。  例えば、漁村に行けば漁港は一番優先の事業でしょう。大都市では漁港なんて要らぬと思っているかもしれない。大都市にいる人が漁港は要らないと言うのは僣越なことだ。逆に言えば、都市公園なんかは田舎では余り要らないかもしれない。そうでしょう。地域によって違うはずだ。  農業予算にしてもそうだ。いや、これは要るの要らぬのといって、何かまとめてけしからぬとか、まとめて大事だとかいう縦割りの議論をするからみんな横並びになってしまう。むしろ、何が優先順位があるかということはもう地元に任せなさい。今本当にそういうやり方をすれば、恐らく重複投資はなくなるはずだ。  そういうふうに公共事業のやり方の仕組みを変えることが実は構造改革じゃないんですか。そういうことをやること自体が実は地方主権そのものじゃないんですか。  そうすると、本当に年末、もう永田町も霞が関もすがすがしますよ。陳情団なんか要らない。もう官官接待もなくなるよ、これは本当に。そうなると本省のお役人もうんと減る。その分、田舎に、地方に帰って、ふるさとに帰って一生懸命やってくれればいいじゃないですか。  そのことによって、計算すると二兆円違うのですよ、その部分だけで、単価とは別に。今一割はみんなついているでしょう、公共事業に。そのほかにそういういろいろなむだなお金、集めてごらんなさい。じゃ、それが来年からすぐできるかどうかというと、それは時間差はあるでしょう。  しかし、問題は、その来年の数字を、見せかけの赤字の幅をどうするかということに意味があるのじゃなくて、もう少し中長期的な視点の中で構造をどうビルトインするかなんですよ。埋め込むかということが構造改革じゃないですか。そういうことをやることによって財源論議というのは出てくるはずだ。  それをやろうとしないで、ただ単純に、来年の予算の規模をこれだけ減らせればいいんだよとか、減税これだけやれば財源どうするの、こんな子供だましみたいな議論はもうやめた方がいい。それは、アメリカの例を私は一々言いませんよ。それだって軍事費の削減だけでできているわけじゃない。  そういう意味で、財政再建ということも、これは総理歳出カットと増税で、それだけで財政再建、本当にできると思いますか。やはり経済がしっかりと立ち直って、そこから生み出されてくるのが、その成果が税金じゃないですか。そこのところを履き違えて、経済の体力がまだないうちに、増税すれば財政再建だとか、歳出カットすれば財政再建だとか、そういう世界じゃ私はないと思う。どうでしょう。
  123. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、今の野田議員の御議論を聞いていて、それを全く否定するつもりはありません。なぜなら、公共事業事業量も目標を定めて抑え込むことにより計画そのものも見直しになっていくことは、現実のものとして我々は見込んでいるからでありまして、そういう意味では必ずしも私は議員の御意見、正面から否定する話では全くないと思います。  同時に、増税という言葉を使われましたが、先ほど大蔵大臣の答弁の中には、必ずしも課税ベースのすそ野を広げるという従来の答弁だけではない部分があったように私は聞いております、「等」という言葉で。議員がたまたま各種の引当金その他に言及をされましたけれども、私は、三塚大蔵大臣として、現時点において大蔵大臣が答えられる限界の部分まで答えられたと思って聞いておりましたが、それが議員のお気には必ずしも召さなかったかもしれません。しかし、論点として掲げられましたようなものを大蔵大臣が、私は、全く脳裏に持つことなく議論をいたしておるとは考えておりません。大蔵大臣の立場として、発言のできる時期というものはおのずからまたございましょう。  要は、この国のあすのためにどうすればいいか、お互いにこうして議論をしていく中で、私はよりよい御意見に耳を傾けることに何らやぶさかでもありませんし、それは大蔵大臣だって全然変わりないと思うんです。私どもその意味で、今議員の御意見を、部分的にそれはそうはいかないなと思ったところもありますし、なるほどそういうとらえ方もあるなと思いながら伺った部分、それぞれの部分にそれぞれの思いを持ちながら、しかし真剣な議員の御意見として拝聴をいたしました。
  124. 野田毅

    野田(毅)委員 要は、財源論議、よく出るのは、とにかく金がないから、やりたいけれどもできないんだというのはよくあるわけですね。それが実は財政出動しないよということの一つでもある。この中には、金がないからというのと、在来型の発想はしないよということと、両面入っているだろうと私は思います。そういう点で、在来型はよくないよということは、私はそのとおりだろうと思う。  しかし、さっきからくどくど言いましたように、これからの高齢社会にどうやって競争力を保持し、活力をなくさないようにするかという角度からの、そういう意味での所得減税あるいは企業減税というものはあわせてやることが、中長期的な意味と今回の足元の意味と両方あるんだよということだけはしっかりとインプットをしておいてもらいたいと思うんです。  それからいま一つ、そういう財源論議で、いや、特別措置をやめて幾らとか、あるいは行革で幾らとかいうことと同時に、私は、税収計算というもの、今何か自民党の税調に大蔵省から提示をされたそうだけれども、一兆円減税した場合に、それが次の年度でどれぐらい回収されて、その次の年度ではどれぐらい回収されて、結局は、足し算すると、やはりなかなか回収はし切れないんですという数字が出されておるように思うのですね。しかし、これ、もういつまでこんなことをやっているんだろうかなという思いがあります。  私は、意外と、増減収の計算というのはなかなか難しくて、素人ではなかなか立ち入りがたい領域だから、どうしても大蔵省が言うと、ああそうかということで、なってしまうのです。しかし、なかなか大蔵省だって本当のことはわからないのですから。それは当然であって、だって経済がどう動くかわからぬのに、こんなこと、かっちりと税収が合うわけがない。あくまで推計しかないのです。問題は、その推計をするときに、何を前提にするかということだ。つまり、一足す一は二にはならぬのですよ。増税額イコール増収額にはならぬということだけは申し上げておかなきゃならぬのです。  かつて、私も反省していることがあるのですが、酒税の引き上げをしたことがあります、昭和五十九年。あのときは所得税一兆円減税ということが大問題になって、結局、五十八年暮れの総選挙の後、所得減税が実施された。その財源探しを実はやらされたことがある。そのときには、たしか法人系統で四千億、酒税が四千億、物品税その他で二千億か、そんな感じだったように記憶していますが、問題は、酒税を四千億増収になる前提で四千億の増税をしたのです。決算を組んだら減収になってしまった。増収どころか、たしか減収になったはずです、当初見込みが。定かな数字は覚えていません。経済というのはそういうものなんです。  つまり、減税額イコール減収額ではないということなんです。税率を上げれば税収がふえるというものじゃない。税率を下げたら税収がふえるものもある。だから、そこがわからぬから、大体、従来のルールは、土地税制については減収計算しないことになっているはずだ。あれはたしか、薄井局長、今でもそうでしょう、土地税制は余り減収計算していないでしょう。
  125. 薄井信明

    ○薄井政府委員 土地関係の税制改正の中でも、例えば地価税とか計算すれば出てくるものと、それから譲渡益課税のようなものと違いますので、それぞれに対応しております。
  126. 野田毅

    野田(毅)委員 土地の譲渡益課税の増減収計算、あるいは税率とか特別控除とかを動かすときに、あれはたしか増減収計算やっていなかったように思うけれども
  127. 薄井信明

    ○薄井政府委員 譲渡益の計算に際しましては、税率が下がった場合に取引がふえるという前提というか、経験的に土地譲渡については相当大きくぶれますので、この点は推計のしようがないという状況にあります。
  128. 野田毅

    野田(毅)委員 ということなんですよ、大蔵大臣。  ですから、減税したら、例えば二兆円減税すると、さあ二兆円の財源を耳をそろえて出せ、もうそういうような議論はしないこと。それよりも、仮に法人税を減税するのなら、そのことによって投資活動が盛んになり、経済成長率が上がり、雇用がふえるなどということになれば、法人税の世界だけじゃなくて、所得税の世界、消費税の世界、いろいろな税目において影響も出てくるだろう。  だから、アメリカだって、あれだけ最悪の悪循環の米国経済が、あるいは財政が、今非常に好循環の過程に入っている、いつまで続くかは別ですけれども。やはりそこのきっかけは、単に軍事費とかの歳出削減だけじゃなかった。それに先立って、規制緩和と、やはり直接税の減税ということが大きくそのベースとして役立っていたということも確かなんですね。減税だけでそうしたとは言いませんよ。  ですから、短期的に見ると赤字は拡大されるかもしれないが、大事なことは、目先の単年度ごとの話じゃなくて、そこが大事なんだということをぜひ認識してもらいたい、おわかりだとは思うけれども。  これからの、今度の経済政策を考える上で、その辺は大蔵大臣どうですか。私が今申し上げていることについて、御賛同をいただけますか、それとも、やはりだめなんだ、目先の財政の収支の方が大事なんだということになるのでしょうか、大蔵大臣。
  129. 三塚博

    ○三塚国務大臣 その前に、先ほど法人税の問題で御指摘いただきましたが、上場企業がプラスになると。といいます背景は、先ほど日銀総裁が言われた超低金利の利子政策、これは日本経済の下支えになって、それぞれの企業が、つらい立場にある業種を含めまして、そのことによって自律回復に向けてのベースができておる。総裁も言われましたが、預貯金者、高齢者の方が多うございます。低利の利子で御辛抱いただいておるということを考えますと、政治家としてそこのところは、また内閣としても十二分に考えていかなければならないことであろう。  要すれば、法人税減税ということで経団連中心に御要請いただいております。御要請をいたします以上、今日置かれておる日本経済の現況をよく御案内の方々ばかりでございますから、私どもも、財源はかくかくしかじか捻出をいたしてまいります、こういうことになるのが、これだけ連帯をして国民が辛抱をしながら頑張っておるときでありますから、決して罰が当たる話ではないだろう、わかりよく言えば、そういうことであります。  そういう意味で、経済成長を見とれる形で物事を進めるか一また私の言うように、これ以上後世に赤字を残すということはしてはならない。行政改革、規制緩和・撤廃、それと財政構造改革、社会保障改革等々のものを取り進めることにより、スリムな行政機関に生まれ変わることにより総人件費、総員のスリム化も成功するわけでございますから、こういう点が六大改革の中に盛られておりまして、一つが欠けてもいかぬわけで、六者一体となって困難なこのところを乗り越えることによりまして日本経済が安定をしていく、こういうことにしていきませんと、万が一、悪性インフレに巻き込まれるような経済運営の失敗をしてはならないということもあるわけであります。  先ほど来、総理からも答弁がありましたとおり、御提言は御提言として受けとめて、今後私どもの立場も御理解をいただきながら、これはお国と国民のためでありますので、またひとつ御教示をいただければ、こう思います。
  130. 野田毅

    野田(毅)委員 恐らくきょうのこのやりとり、期待している人もあるかもしれない。それは、大蔵大臣が法人課税について実質減税に言及するのかどうか、それから所得減税についてやるのかやらぬのか。多くの人は期待していないかもしれないが、まあ期待していたら株価はもっと上がっているのでしょうね。  いずれにせよ、今の大蔵大臣の答弁では、年内に予定をされている政府としての経済対策というか、景気対策の中に入れる考えはないということで確認しておいていいのですか。それとも、入れる可能性があるということで見ておいていいのですか。
  131. 三塚博

    ○三塚国務大臣 税制は、党でいいますと、野田議員よくおわかりのとおり、党税調が本件について既に検討、研究に入りました。三党の協議会も、税制に関し、十者会議のスタートを切ったと聞いております。政府税調またしかりでありまして、全体の税制のあり方について御審議に入ったということであります。  私は、その動向を注意深く見守りながら、全体の経済政策の中で何がとり得るのかということが収れんをされてまいりました段階で、財政構造改革の基本が守られつつどう進めるか、こういうことで取り組んでいかなければならないのかな、こう思っております。
  132. 野田毅

    野田(毅)委員 税に関してはこの程度に終えたいと思います。余りかたくなではないよ、党の動き、政府税調の動きによっては、結論はまだ出していないのだから、こんな印象のようにも受けとめたのです。  いま一つ、今度は財政支出の方。  今度の法案は、来年度の予算は対前年度のカットはこうしますよというようなことが中心、つまり金額を落としていくということなんですね。構造の話はほとんどないのです。仕組みに関しては何にもない。それは、何か抽象的に検討して必要な措置をするという程度で終わっていて、予算規模だけの話になっているわけですね、今度の構造改革法は。それも来年以降、来年、再来年、その次、三年間にわたって、いわば緊縮財政型で毎年毎年直線的に行くんですよと、こういうことになっている。  ではこれ、本当にそんなことを法律で決めてしまっていいのだろうか。毎年毎年そんな予算編成、当初予算で対前年でマイナスだよとかいうことを今から三年間縛るような法案を、本当にそれでいいのでしょうか。もし途中で景気が底割れして、どうしてもどうにもならぬといったときには、場合によっては、金利政策を動かせないのなら財政がどこかで、これはやむを得ないところだって出てくるのじゃないか、その経済政策の手足をみずから縛ってしまうような、そんなこの法案というのは一体どういうことなんだ。しかも、構造問題は全然関係ない、予算規模だけを減らすという話なんだから、僕はこれは本当に怖いと思います。  その点で、そうなると恐らく、当初予算で対前年度必ずマイナスだよということは、補正でしり抜けになったら何の意味もないわけですから、補正予算においても景気対策のための追加補正はやらないということをいわばあわせて宣言しているようなことじゃないか、こう受けとめているのだけれども、その辺はどうなんでしょうか。景気対策の補正は別よ、いや、これは当初予算だけの話だから補正予算は別ですよ、こういうことなんでしょうか、この法案は。
  133. 三塚博

    ○三塚国務大臣 本件は、前質疑者にも申し上げたところでありますが、財政の節度を明確にしました財政法、特に補正の扱いについては二十九条で明示をされておるところであります。  当初予算において、一年の歳出、そして見合う歳入、歳入に見合う歳出と、両々相まって調整をされるわけでありますが、スタートを切るわけでございます。予期しない事由によりまして補正事項が生まれる。この場合はそういうことと、いつも言うように、災害等、これに対して、該当いたしますねと、こういうことでございますので、予定されない経済政策について、直ちにそのことが補正要因になるとは私は考えられないのではないのか、考えるべきではないと言った方が明快かもしれません。そう申し上げさせていただきます。
  134. 野田毅

    野田(毅)委員 これはすごく大事なところですから、総理からも一言。
  135. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今まで、ややもすると、補正事由というものが財政法上の非常に緩やかな解釈の中で運用されたケースがなかったとは申せないと思います。今大蔵大臣から、非常にこれを厳しくとらえる、その上での答弁がございました。私もさように考えます。
  136. 野田毅

    野田(毅)委員 ということは、景気対策のための補正もやらないということで、みずから両手両足を縛った、対前年度当初でマイナスを三年間続けるということは絶対に動かせない、こういうことですね。確認をしておきます。大蔵大臣。
  137. 三塚博

    ○三塚国務大臣 集中三カ年ということで、この三カ年において我が国財政が健全な体質を回復をし、国民の期待におこたえをできる、こういうことでありますから、まさに三カ年はそのペースでいかざるを得ない、また、いくことが財政構造改革特別措置法にかなう原理である、こういうことであります。
  138. 中川良一

    中川委員長 野田君、時間です。
  139. 野田毅

    野田(毅)委員 あともう一分になったのですが、最後に、今の話を聞いて、また株価が下がるのかもしれません。まあ、ここまで総理が思い入れをしてやってこられたことですから、やむを得ないと思う。かくすればかくなるものと知りながらやむにやまれぬ橋本内閣なのかなという感じがしますね。  だから、そうなると、今の路線は変えられないということになると、これは日本経済容易じゃないな、そんなところから、どうやら、市場ではいろいろな話が出て、この法案が通らないと橋本内閣は大変だ、だけれども、通ったら日本経済は大変だ、どっちをとるかというので、市場の方は何となく期待感を込めて辞任説が流されたということになっているのかな、そんなふうに思います。  最後に、どうぞ本当に、途中で申しましたが、この内需拡大路線ということが、ただ単に我々が嫌みとか、野党だから言っているのじゃないのですよ。本当に日本経済をそうしないと、日米関係そのものも世界貿易全体にいろいろな影響を及ぼすんだということを申し上げておきたいと思います。
  140. 中川良一

    中川委員長 野田君、時間です。
  141. 野田毅

    野田(毅)委員 はい。以上で私の質問を終わります。
  142. 中川良一

    中川委員長 これにて野田毅君の質疑は終了いたしました。  次に、海江田万里君。
  143. 海江田万里

    ○海江田委員 民主党の海江田でございます。  今から私の持ち時間はおよそ四十分でございますので、よろしくお願いを申し上げます。  この法案財政構造改革法案でございますが、財政ということはとかく大変難しいものだという理解がございます。私がきょう国会財政の問題で質問するということを言いましたら、どうかできるだけ易しく話をしてくれということを言われましたものですから、私も私なりにそしゃくをしまして易しくするつもりでございますが、総理初め各大臣もぜひ、特にきょうはテレビ中継もございますものですから、易しく、わかりやすくやはりお話をいただきたいと思います。     〔委員長退席、甘利委員長代理着席〕  ただ、易しく、わかりやすくお話をするということ、実は、易しくすることによって事実が少しねじ曲がってしまうということもまたあるわけでございますね。  きょうの委員会、九時から始まりまして、自民党、与党の当委員会理事であります甘利議員から、我が国財政家計に例えるとどういう状況になるかということでお話がございました。もとになるのは恐らくこの「財政構造改革への取組み」という大蔵省が出している資料だろうと思いますけれども平成九年度予算の税収、税外収入、これを合わせると約六十・七兆円になります。これはもう当たり前のことでございます。これを年収七百万円の平均的なサラリーマンの家計に置きかえますと、ボーナスは五・二カ月としますと毎月の月収は約四十万七千円になります。これもそういう計算だろうと思います。  そして、ボーナス時も通常の月と同率で田舎への仕送り、これは地方交付税交付金、それから住宅ローンなどの返済、これは国債費、これを行っているとして、月々の収支を計算しますと、月収四十万七千円のうち、十万三千八百円は田舎への仕送りに、十一万二千七百円は住宅ローンなどの元利払いに充てるために消えてしまい、可処分所得は十九万円程度しか残らないことになります。そして、月々の生活費として三十万二千五百円は必要ですので、足りない分、十一万二千円分はクレジットカードなどを使って支払いに充てているという状況です。これはわかりやすく書いてあるわけでございます。  最終的に、この結果、ただでさえも二千九百二十五万円のローンがあるのに、ローン残高がますます膨らんでいき、到底現世代では返済できそうになく、子供たちに膨大な借金を残さざるを得ないという、まさに火の車の状態にあるというところですというふうに書いてあるわけでございまして、ここまでの数字は、確かに大蔵大臣も先ほど来何度もおっしゃるように、数字はうそはついおりません。  ただ、西洋の箴言に、数字はうそをつかないけれども、うそつきはどうも数字を多用するという言葉もございますので、このあたりはかみしめてみなければいけないわけでございますが、今のこの我が国財政家計に例えた場合でございますけれども、大きな問題が抜け落ちております。  その大きな問題が抜け落ちているというのは、実は、ここには確かにローン残高、一世帯当たりにしまして約三千万円、二千九百二十五万円のローンがあるということが書いてございますが、それならば、この家計は一体幾ら貯蓄があるのかということがどこにも書かれていないわけでございます。  この貯蓄は、一番新しい、先ほども実は消費が落ち込んだのかどうなのかということでるる議論がございましたけれども、本当は、日銀の外郭団体であります貯蓄広報中央委員会、ここは、総理も覚えていらっしゃると思いますが、以前は貯蓄増強中央委員会と言っていた。ところが、貯蓄をこれ以上増強してはいけないというので、わざわざ名前を貯蓄広報中央委員会に変えた。  それから、世論調査をやりまして、世論調査のタイトルも、以前は貯蓄に関する世論調査でございましたが、今は貯蓄と消費に関する世論調査に直っております。これが全国四百カ所の調査地点を選んで、六千の調査対象の世帯、これをもとに調査をしているんです。ここを見ると、実は先ほど出ていたこの一年間の消費の落ち込みなんかももうはっきり書いているんですね。  これは、調査時点は六月の時点でございます。六月の二十日から六月三十日までの調査の結果でございますけれども、ここでもう一年前と比べて消費を減らしたという人が一七・七%、約一八%の人がやはり消費を減らしている。五年前は、一年前と比べて消費を減らしたというのは一〇%そこそこだったわけですね。八年の場合も一六・一%ということですから、実はニポイントぐらい消費を減らしている、この六月の時点で。こういうデータがもうあるんです。  このデータは、私はそれだけを言うんじゃありませんで、やはりこれを見ましても、平均世帯の貯蓄額というのがおよそ一千四百万円、正確に申し上げますと一千三百四十七万円あるということでございます。これは普通の世帯で、あるわけですね。  国の場合、じゃ一体どのくらいの資産があるんだろうかということでございます。ただ、国が持っております土地でありますとか、あるいは道路でありますとか、あるいは飛行場でありますとか、あるいは漁港でありますとか、こういうものはなかなか評価がしにくい。これは、本当は評価ができると一番いいんですね、わかりやすいわけですから。  だけれども、ここは評価がしにくくても、それならば、国も金融資産を保有しておりますから、じゃ、その国が保有をしておる金融資産がどのくらいあるんだろうかということが、例えばこの数字の中に置きかわっできますと、これだけ借金はあるけれどもこれだけ貯蓄もあるんだよということがわかるわけでございますが、大蔵大臣あるいは総理大臣あるいは経済企画庁長官でもよろしゅうございますが、国がどのくらい今金融資産を持っているか、それをこの年収七百万円の世帯に置きかえたときに、大体どのくらいの貯蓄があるというふうになっているよというようなことを大蔵当局なり財政当局なりから聞いたことありますか。  大臣にまずお答えいただきたい。それから、できたら財政当局からもお答えいただきたいわけでございます。大蔵大臣、いかがですか。
  144. 三塚博

    ○三塚国務大臣 財政上の二百五十四兆、政府、それに対する要処理額と特別会計の赤字等、聞いておりますのはそういう点で借入金ということであります。
  145. 海江田万里

    ○海江田委員 もし財政当局でわかりやすい数字がありましたら、教えていただきたいのですが。
  146. 新保生二

    ○新保政府委員 お答えいたします。  政府のグロスの債務残高は、御承知のように非常に大きいわけです。GDP比で九〇%とかそういうレベルになっているわけですが、ネットの債務残高が一七%ということですから、この差額は資産を政府が保有しておるということだど思います。
  147. 海江田万里

    ○海江田委員 その差額だということ、確かに計算上はそういうふうになるんですが、それがどのくらいになるかということは、本当は、せっかくこういうようなわかりやすい話をつくるわけですから、私は、やはりつけてもいいんではないだろうか。そういうものがなければ、これは非常に、まさに火の車だという状況だけを説明するためにそういうふうに自分たちに都合のいい数字を引っ張ってきたんではないだろうか、そういうような感想を持つわけでございます。  それからもう一つは、ここで書いてございます二千九百二十五万円のローンということでございますが、この借金というのは果たして本当に家庭が、家計金融機関から借りてきているような借金でしょうか、どうでしょうかということもやはり考えていただかなければいけないわけですね。  ブラジルでありますとかメキシコでありますとか外国から借りている、あるいは世界の金融機関から借りている、こういうことであれば、これは当然のことながら家計銀行などから借りているのと同じ話でございますけれども、これは、むしろ家庭の中で借金をしているというような性格がある。  あるいは、もう少し正確に言いますと、最近、金融機関も、住宅ローンなどで二世代や三世代にわたる承継ローンというのがございますね。そして、まあ住宅ローンの承継ローンというのは、これは元金も払わなきゃいけないわけでございますけれども、むしろ教育ローンなんかで、学生さんが学校にいる間は元金の払いがほとんどなくて利息だけを払っていて、学生さんが卒業してから自分で働いて元金を返すというような性格の借金であるということ、もちろん六十分の一ずつで毎年元金部分の返済もしているわけでございますが、ほとんど金利の負担分であるということ、このことはやはり指摘をしておいていいのではないだろうかということでございまして、私はどうも、こういう数字をそのまま載せるということは、やはり読む人に誤解を与えるのではないだろうか。  もし本当にどうしても家計に例えたいというのであれば、できる範囲で、先ほど言った差額でもいいわけでございますけれども、国としてこれだけの貯蓄はあるのだよということ、あるいは、本当は個人としては一千二百兆円という資金があるわけですから、この一千二百兆円が今は形を変えて国債などの購入にも当たっているわけでございますから、そういう数字も含めてやはりお出しになるか、あるいは、こういう数字はわかりやすいけれども誤解を与える、あるいは、火の車なんだということだけを強調する余りに自分の都合のいいデータだけを取り上げているというそしりを、私は、どうしても持つことになってしまうので、何らかの形で変えた方がいいのではないだろうかというふうに考えておるのですが、総理にお尋ねしますか、あるいは大蔵大臣、どちらでもよろしゅうございます。
  148. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、そういう資料のつくり方自体は否定されるべきものではないと思っています。  その上で、何回か、それを出版いたしますまで基礎の数字そのものが実は躍りまして、人口統計のとり方ですとかいろいろなところに問題がありまして、整理をするのに気を使いました。  議員が御指摘になりましたような角度から他の種類の数字をという発想は、私自身もありませんでしたので、今後そうしたものをつくるとき、一つの考え方として参考にさせていただきたい、そう思います。
  149. 海江田万里

    ○海江田委員 私どもの党では資料要求をしておりまして、財政の問題、わかりにくいというのは、確かに用語が難しいとかいろいろございますけれども、その前に、やはり資料が出ていないのですね、本当のことを言いまして。  先ほどお尋ねをしました、政府の保有する金融資産が一体どのくらいあるのだろう、額面があるものは額面を、時価があるものは時価を。あるいは、政府も株を持っておるわけですから、政府の保有する株式の一覧と、株式をどのくらい持っておるのか。まあ銘柄なんかは書くといろいろ差しさわりもあるからいけませんけれども、A株を大体これくらい持っておる、B株をこれくらい持っておるでもよろしいわけですけれども、そういうものの株式数でありますとか額面総額、時価総額、こういうものをやはり資料として出していただかないとこれは議論が進みませんので、ぜひその方は、今ちょうど資料要求をしておりまして、本当はきょう間に合えばよかったのですけれども間に合わなかったという事情がありますので、これはぜひ財政当局がそういう資料を出していただきたいということをお願いしておきます。  それから、具体的に財政再建あるいは財政赤字の問題に入りますが、財政赤字を放置できない理由、一番大きな理由というのは、もちろん世代間で、先ほど少しお話がございましたけれども、次の世代、野田聖子さんのような三十代ですとかそういう世代の方たちがやはり大変な世代間の不公平を生ずるとか、そういうような問題もございましたけれども、一番はっきりして、もっと身近な形でわかるのは、いわゆるクラウディングアウトと言いますが、民間資金が逼迫をしてしまうのではないだろうか。  つまり、公債を大量に発行することによって、この公債が民間の資金を吸い上げて民間の経済活動に資金が回らなくなる。あるいは、公債の大量発行によって市場の金利が上昇する。これらを総称してクラウディングアウトと言っているわけでございますが、ところが、現下の経済状況というのは、とてもではありませんけれども、このクラウディングアウトが発生をする、そういう状況に陥るというような可能性はないわけでございます。  一体、いつごろの時点でこのクラウディングアウトが発生をする可能性があるのか。今度の財政改革法の二〇〇三年ぐらいまでにそのような可能性が少しでもあるのでしょうかどうなのでしょうか、お尋ねしたいと思います。これは総理、お願いいたします。
  150. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 これは私、本当に、大蔵大臣がお答えになる種類だと思っていましたので、ちょっと今一瞬困りました。  確かに、私は、今、これまでのところ、逆に金利の水準というものもありましてクラウディングアウトを起こす状況にはない、これは議員の御指摘のとおりだと思います。そして、ここから先は、今度はこれをどう見るかになるわけですけれども、中長期的に考えました場合に、一つは、高齢化の進展によります貯蓄の減、減少、これをどう見るか、こうした中で公債残高など政府債務が増大することの問題性というものをどうとらえるかということにかかるだろうと思います。これはもう御意見、現時点においてクラウディングアウトが起こる状況ではないということについては私もそう思いますけれども、その上で、まさに今高齢化の進展、それによる貯蓄の減、減少、こういうものをどう見るのだろう。  私どもとしては、いずれにいたしましても、民間需要中心の中長期的な安定成長というものにつなげていくためにも、財政構造改革あるいは経済構造改革、各般の構造改革というものを積極的に進めながら適切な経済運営を志していくべき、模範解答は多分そういうことなんだと思うのですけれども、現時点においてクラウディングアウトを起こす状況にないということ、これは意見、違いません。その上で、将来になりますと幾つかの注目すべきポイントがあるように思います。
  151. 海江田万里

    ○海江田委員 今、総理、貯蓄率のお話をしましたけれども、まさに貯蓄率が大切でございます。  御存じのように、貯蓄率、現在日本は一三%ぐらいですね。イギリスが五%ぐらい、アメリカが四%ぐらいになっておりますけれども。実は経済審議会の二〇一〇年委員会報告というのが、もう六年ぐらい前になりますか、出てございます。これで、貯蓄率が高齢化に伴い低下をするということが書いてございますが、これは二〇〇〇年から二〇一〇年の間、この十年かけて二・七五%ぐらい低下をするのではないだろうかという数字でございます。ということは、今一三%だとしますと、二〇一〇年になってもそういう意味では大体一〇%ぐらいだ。イギリスの二倍ぐらい、アメリカの二倍強あるということが実はあるわけでございますね。  実は、こういうデータがありますものですから、先ほど野田委員からも指摘がございましたけれども、やはり政治家だけではありませんで、エコノミストの多くも、果たして今この時期に本当に財政再建に直ちに取りかからなければいけないのだろうかどうなんだろうかという議論があることは確かでございますね、これは。この委員会の議論を通してまさにそういうことの一つの方向性というものが出ればいいと私は思っておりますけれども。  ただ、外国のエコノミスト、これは日本で大変人気の高いリチャード・クーさんという方が雑誌に論文を載せました。お読みになったかと思いますけれども日本のとるべきポリシーミックスは、財政を拡大し、超低金利をもとに戻すことだということをおっしゃっています。欧米が財政赤字を削減しなければならないのは、金利が高いからだ。大蔵省は日本財政赤字はイタリアを抜いたと騒いでいるが、イタリアの金利はG7の中では一番高く、日本は一番低い。日本は金利、金利というのはつまりマーケットの声でございますから、このマーケットの声というものをやはり無視してはいけないのではないだろうかというような指摘でございますね。やはりこれにどういうふうにこたえるのかということ。これは世界の多くのエコノミストがそういう考え方を持っておるわけでございます。多くの世界のエコノミストが持っているということは、実は外国の投資家もやはりそういう目で日本経済を見ているということですから、そういう声に対して、いやそれは違うんだということをやはりどこかで発信をしなければいけない。理論的に違うんだということをやはり発信をしなければいけない。  それから、もう一つございます。  この財政赤字を、フローの部分でございますけれども、循環的な赤字とそれから構造的な赤字に分けて考える考え方。循環的な赤字というのは、これは潜在成長率を定めまして、この潜在成長率を成長が下回っているということ、これによって生じた赤字が循環的な赤字でございます。この潜在成長率を経済が達成をしたところでも、なおそこから出てくる赤字を構造的な赤字というわけでございます。  これは経済企画庁も国民経済計算年報で統計を出しておりますが、一九九五年の暦年で一般政府ベースの財政赤字は三・七%、うち構造的な赤字は一・八%になっています。これをOECDのエコノミック・アウトルックで比較をしますと、構造的な赤字が、イタリアは六・八%、イギリスが四・七%、フランスが三・五%、ドイツが三・三%、アメリカは二・〇%ということで、アメリカも比較的この構造赤字の割合は低いわけでございますが、日本はそれと比べてさらに低いということ。つまり、実は日本の赤字というのは、これは構造的なものではなくて循環的なものであるという指摘があるわけですね。  これはもちろん潜在成長率のとり方などによっても大きく違ってくるところでありますが、今現在経済企画庁が出している数字がそういう数字でありますから、構造的な赤字が一・八%なのに、循環的な赤字の方に問題があるのに、そこのところを何で刺激しないんだという声は当然出てくると思いますから、この問題についても、できましたらお答えをいただきたい。総理が無理なら経済企画庁長官。
  152. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私、あなたと議論して得したことないんですけれども。  今の御議論を聞いておりまして、ちょっと私――あるいは企画庁の諸君は違う考え方を持つのかもしれません。しかし、その構造的な赤字あるいは循環的な赤字というものにそれほど意味があるんだろうか、とらえ方によって全然違った議論は成立しないだろうかということです。  というのは、間違いなく、我が国財政が悪化いたしましたのは、単にバブル崩壊後累次にわたる景気の下支え策としての公共投資の追加といった要因だけではなくて、むしろ税収が好調でありましたバブル期においても、一般歳出の伸びの抑制などの努力を払っていた、にもかかわらず公債残高は縮減しなかった、むしろ累増している。こういうところにもあらわれておりますように、人口高齢化など財政を取り巻く状況変化、あるいは社会保障分野に見られるような政府の役割の増大、これも当然ながら人口構造変化を受けているわけですけれども、それに伴う歳出の増大、あるいはこれまでの大量の公債発行、これ自体が問題はありますけれども、それを続けてきた結果として利払いなどに要する国債費が巨大になってきた、これはまさに構造的な要因なんですね。  そして、こういうものを考えましたときに、確かにここにIMFやOECD等で構造財政収支を算出しているというこの部分もございます。その上で、私は、その景気変動部分と構造的部分に厳密に区分するというのは結構難しい作業だと思いますし、必ずしもそれがポイント、論点として的確なものかといいますと、その分類そのものに多少私は異論があるように思います。
  153. 海江田万里

    ○海江田委員 どうして私はこういう問題提起をするかというと、先ほどもちょっと指摘をしましたけれども、やはり海外の人たちが、とりわけエコノミストなんかですけれども、そういう見方をしている。これにちゃんとした理屈が通った反論ができるのかどうなのかというところであります。  私は、日本高齢化というものが、かつてイギリスや、まあアメリカは相変わらず合計特殊出生率が二%ありますからアメリカは高齢化しておりませんけれども、ヨーロッパの国々と違って大変短い期間に高齢化をするから、だからこれはやはりかなり早目早目に手当てを打っておかなければいけないんだというお話をするわけでございますが、それでもやはりなかなか納得がいかない。  それからもう一つ私はやはり指摘をしなければいけないのは、実は確かに、構造的な赤字と循環赤字の問題、いろいろ議論がございますけれども、今度出てきましたこの法案の中で、財政赤字の削減の目標というものが、いわゆる財政構造改革の、二〇〇三年の時点で国と地方財政赤字の対GDP比三%以下という、フローのところで毎年毎年の国と地方財政赤字をGDPの三%以下に抑えなさいよという基準を設けております。  ヨーロッパなどでは、御案内のようにマーストリヒト条約で、累積債務ですね、長期債務残高がGDPの六〇%という基準を実は設けている。そちらをとらずに、どうして単年当たりの、毎年毎年の国、地方財政赤字の対GDP比三%というものだけを一つの削減の目標にしたのかということ。私は、このこととも実は関連があるのではないだろうかというふうに考えてくるわけでございますね。  やはり国際的な基準ということ、もちろん一年ごとの国、地方財政赤字の対GDPの比を三%に抑えるということも一つの国際的な水準になっていることは明らかでございますが、それと同時に、今私がお話をしておりますように、長期債務全体、累積の長期債務をGDP比六〇%以下に抑えろということもやはりもう一つの国際的な基準になっておるわけですから、どうして、そちらの方を全く無視をしてしまって、一年当たりの財政赤字だけでいいのかということ。これはどういうことでしょうか。
  154. 三塚博

    ○三塚国務大臣 今御指摘のとおり、全体がそういう中でいきますれば大変よろしいことであろうと思います。  御案内のとおり、マーストリヒト条約の基準は御指摘のとおりであります。我が国がストックの面における、地方、国、合わせましてGDPに対する比率は九二ということでありまして、放置をいたしますと、建設国債が公共事業の財源でございますから、そういう点で累憎いたしていくことは間違いございません。  そういう状態を認識しながら、まず当面の目標として、財政構造改革法案におきましては、御指摘のように、GDP比三%以下とする、こう定めさせていただき、この目標は、集中三カ年プラス三年で、六年目に発行ゼロということで赤字公債依存から脱却をいたしました健全な姿の予算編成に入ろう。そうすることによりまして、毎年、平均しますと一兆二千五百億円ずつ減らしていくわけでございますから、建設国債、特例国債、トータルにおいて抑えることができる。しばらくは今日の九〇のところで抑えることにより、そのことが六年後には赤字公債発行ゼロになりますので、その後、元金がふえない措置をとることによりまして、我が国もヨーロッパ並みの形に取り進めていかなければならない。速やかに公的債務残高が絶対額で累増しない財政体質をまず構築しよう、こういうことで取り決めをさせていただいたところであります。
  155. 海江田万里

    ○海江田委員 余りわかりが悪かったと思うのですけれども、どういうふうに言えばいいんですか、なかなか難しいのですが。  一つ、私はパネルをつくってきたのですけれども、今度のは、この一般政府の中で中央政府地方政府がありまして、裏にも書いてございますが、まさにここのところのいわゆる貯蓄投資差額という言葉を使います。  この財政赤字というものの定義は、これは本法案の第四条に書かれていますが、一会計年度の国及び地方公共団体の赤字ですね、国際連合の定めた基準に準拠して経済企画庁が作成する国民経済計算の体系における中央政府の貯蓄投資差額及び地方政府の貯蓄投資差額を合計したもの。  一般政府といいますと普通は社会保障基金も入りますが、ここは除いておりまして、中央政府地方政府、この貯蓄と投資の差額、これを財政赤字と定義しますよということで、実はこの貯蓄投資差額という言葉自体なかなか難しい話でございますけれども、だけれども、中央政府地方政府を入れまして、公的企業と呼ばれるものが全く入っていない。実は、この公的企業の中に、国有林野事業でありますとか国鉄清算事業団でありますとか、こういう、今大変赤字を抱えております、債務を抱えております会計が、実はこの中に潜り込んできている。  そして、むしろこの中で、この中央政府で調べてみますと、特別会計というのは、外国為替資金でありますとか、これなんかは、為替の市場介入をやりますとかなりここが黒字になる可能性がある。あるいは年金福祉事業団でありますとか、こういうところはその事業団の性格上どうしても黒字にならざるを得ないということで、やはりこういう黒字がたくさんあって一そしてなるべく、これから将来的に発生をするであろう赤字の方、本当は一番解決しなければいけない赤字を今度の財政構造改革法案の中では解決をしない、解決先延ばしにするためにわざわざ中央政府地方政府の貯蓄投資差額を利用した。これですとGDP比三%というこの計算ができるわけですから。  先ほどお話をした公的企業の方を入れてしまいますと、どうしても、先ほどお話をした長期債務、累積債務というものをどういうふうにやって減らしていくかということについてやはり処方せんを書かなければいけないというふうになってくるからだと私は思うのでございますけれども、私のこの考え方が若干偏っておるのか、あるいはそのとおりだというのか、まあ、そのとおりだとはおっしゃらないだろうと思いますが、お尋ねをします。
  156. 甘利明

    甘利委員長代理 涌井主計局長。――橋本総理大臣。
  157. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 主計局長に話させますと長いので、便宜上私から簡潔にお答えを申します。  要するに、黒字と赤字の問題をどこでとらえるか、そしてそのベースに何を採用するかという問題になるわけであります。そして、今回、貯蓄投資差額という概念を選びましたのは、国際的な概念として非常に正確度の高い概念ということであります。  簡単に申し上げれば、そういうことでこれを採用いたしましたということに尽きるわけですが、そうすると多分、じゃ清算事業団と国有林野特別会計の赤字はなぜお外しになりましたかという御質問をなさるのでしょう。わざわざ図面に書かれて別紙特掲をされておりましたように、そこに問題があることを知らないわけではありません。ですから、これらは年内にきちんとした解決策をお示しをいたします。別途そういうお答えを今までも申し上げてまいりました。  その上で、国際的に認められた正確な概念として貯蓄投資差額を用いた、その点は御理解をいただけることだと思います。
  158. 海江田万里

    ○海江田委員 それはおっしゃるとおりだろうと思いますが、今、ぽろっとおっしゃった、その林野と国鉄。林野と国鉄の方はこの後だということで、ですから、そこが決まらない限りこれを入れるわけにはいかない。これを入れるわけにいかないということは、片一方で、この臨時国会の期日も限られておりますから、そこでこの法案を通すために、そこを入れてしまうと、GDPの六〇%と入れてしまうと、どうしてもこれはやはり出るまで待っていなきゃいけないということがありますから入れなかったんだというふうに解釈すれば、これは納得できるのですけれども
  159. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 それは少々推理小説的にお考えをいただいたと思います。  むしろ、正確な用語として、それならば、こういう場合に何を使うかという定義の問題があります。私どもは、国際的にこの投資差額を用いることが一番正しいと思ってこれを採用いたしました。  その上で、投資差額を用いました場合に、今議員自身例示で出されましたように、たまたま今私も清算事業団と林野だけを申しましたけれども、上に抜ける部分というものはあるわけであります。そうした問題点を、存在を承知していなかったわけではありません。その上で、概念として、最も法律用語の上で適正に表現できるものとしてこれを選んだ。非常に素直にお答えを申し上げております。
  160. 海江田万里

    ○海江田委員 あと、累積債務の、長期債務のところで計算をしますと、さっき冒頭に私は言いましたけれども、まだ、日本の貯蓄率の高さでありますとか、それから構造的な赤字と循環的な赤字の違い、これももう少し議論しなければいけませんけれども、やはり循環赤字が多いというようなところからいって、累積債務の問題はそれほど日本は心配しないでいいんだよという意見もまた片一方であるんですね。だから、それを避ける、そういう議論をしないという、これは出さなければできないわけですから、そういうような考え方も一つ、これはあるかもしれません。恐らくあるんでしょう。私はそう思っております。  まだいろいろお尋ねをしたいことがございますが、景気対策との絡みで、土地の有効活用ということでございます。  皆様方は、地価税の凍結あるいは廃止でありますとか、あるいは譲渡益課税の軽減でありますとか、そんなようなことをいろいろ議論されておるようでございますが、私、ぜひお願いでございます、もう何度も予算委員会の席上などでもお願いをしておりますけれども、地価税の凍結でありますとか譲渡益課税の問題は、若干これはやはり議論があるんです。新聞なんかでも、土地を景気対策に使うなというような社説もあります。それよりも、だれに聞いてもこれは賛成をしてくれる、例の土地の定期借地権つきの住宅の問題でございます。  この定期借地権の問題につきましては、ことしの二月十日に閣議で新総合土地政策推進要綱が決められて、ここで、良質で安価な住宅宅地の供給の促進のために、「融資の充実、税制上の措置等により、定期借地権を活用した住宅・宅地供給の一層の推進を図る」というふうにあるのですね。  ところが、今一番ネックになっておりますのは、五十年の定期借地権をつけて、そしてその上に住宅を建てて、そして貸し出しをしようと思うと、この土地の評価が更地の八割という、こういうような評価。これは、実は法律でも何でもないのです七政治家が悪いのじゃないのです。大蔵省がそういう評価を、相続税の八割評価というような評価をしてしまったのですね。ここなんかはまさに、土地の有効活用、所有から活用の時代へ、利用への時代だというのであれば、ここを大蔵当局に命令をして、そして相続税の評価を軽減すべきではないだろうかと思いますが、大蔵大臣、いかがですか。     〔甘利委員長代理退席、委員長着席〕
  161. 三塚博

    ○三塚国務大臣 かねがねの御主張であります。党税調、政府税調ともに本件の研究に入ると思っております。私の方も、その世論を、動向を見ながら対応してまいります。
  162. 海江田万里

    ○海江田委員 あと、もう一題だけになりますが、村岡官房長官、四十五分まででございますが、実はこの問題も、私、以前に、官房長官が梶山さんだったときでございますけれども、祝日を月曜日にしてはどうだろうかという提案をさせていただいたのですね。  ついせんだって、十月十日、体育の日でございましたが、これはたまたま金曜日だったものですから、十月十日と十一日と十二日と三連休になりました。少しほっとされた方もいらっしゃるかもしれませんけれども、アメリカなどでは、例えば十月の第二月曜日をコロンブス・デーにしている。それからレーバー・デー、労働祭でございますけれども、これも九月の第一月曜日にするなどしまして、つまり、何月何日を体育の日でありますとか、何月何日を敬老の日ですとか決めませんで、十月の第三月曜日とかあるいは九月の第三月曜日とか、そういうふうにつくるわけですね。  もちろん、天然、自然の摂理と関係のあるものは余り動かしてはいけません。春分の日は春分の日、動かすわけにいきません。それから皇室絡みも余りこれは動かすわけにはいかないだろう。ということで考えていくと、年間のうち四日か五日あるのですね。この四日か五日の国民の祝日、これを月曜日にしますとまさに三連休ができて、しかも大体、春夏秋冬に四回ぐらいできまして、そしてその間に国民が、まあ三日あれば、金曜日の夜に出れば、月曜日に帰ってくれば高速道路の渋滞にも巻き込まれませんし。  これは祝日をふやす話じゃ全然ありません、十四日あるので、これはもう多過ぎるわけですから。これをさらにふやせという話じゃありませんけれども、やはりそういう問題をそろそろ、これは先ほど来、お金をかけないで何とか景気回復できないか、知恵を出せ知恵を出せということを何度もおっしゃっているわけでございますから、やはり知恵を出す上ではこういうようなアイデアもよろしいのではないだろうか。これは民主党がいち早く提唱をしたわけでございますが、そんなのはどうでもいいのです。もうそんなのはどうでもいい話で、それならだめだというのはこれはとんでもない話でありまして、どこの政党が出したっていい話でございますから。  何とかやはりそうやって景気の回復と、それからゆとりと豊かさ、そういうものが実感できるような世の中にしなければいけないと思うわけでございますが、これは村岡官房長官国民の祝日に関する法案でもございますので、もし御意見等ございましたらお聞かせください。
  163. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 祝日の三連休化ということでございます。この問題でございますが、昨年の十一月ですか、民間の二十団体によりまして、祝日三連休化推進会議、これが設立をされまして、ことしの一月の初めから一千万人の署名運動をやつて、現在まで五百九十万、署名しているようでございます。全国で百八十二の自治体が意見書を採択しているようであります。  ただいま民主党さんからも提案していると言うけれども、自民党でも、一部祝日を月曜日に指定することにより、土曜、日曜日と合わせて三連休を実現し、ゆとりある生活スタイルを実現すべく祝日二連休化、ハッピーマンデーと言うそうでございますが、提唱をしているのであります。  先生御承知のとおり、祝日法がありまして、もしそうなるとこの法律を改正する必要があります。またこれは、今までの祝日については歴史的経緯を踏まえてっくられたものですから、これも検討しなければいかぬ。しかし、この三連休化の実現によりまして、産業の需要増なり地域活性化による経済浮揚効果が見込まれ、またゆとりある生活スタイルの実現というようなメリットもあると、これを望む声も強い。  したがって、今までの祝日法案をやるのは大体議員立法が主でございます。したがって、もう一方で社会経済に対する影響や国民世論の動向も踏まえておく、国民の意見も踏まえることが必要でございますが、議員立法で今までやられてきた経緯もありますので、この点も踏まえながら私どもも検討してまいりたい、こう思っております。  以上でございます。
  164. 海江田万里

    ○海江田委員 議員立法ということですので、党派を超えてぜひやりたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。  私、もう時間が切れましたので、五島委員にかわります。どうもありがとうございました。
  165. 中川良一

    中川委員長 この際、五島正規君から関連質疑の申し出があります。海江田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。五島正規君。
  166. 五島正規

    ○五島委員 海江田議員の関連質問として質問させていただきます。  朝からこの委員会での審議、聞かせていただきました。いろいろな御意見がございましたが、現在の状況について、まさに日本財政状況についてはがんである、早急に手術をしなければいけないというようなお声もございました。同時に、現在の日本の景気の状態について、かなり問題がある、風邪なのか肺炎なのかというお声もございました。私も医者の端くれでございますが、がんの患者は大急ぎで手術をしなければいけない、それはよくわかるわけでございますが、やぶ医者ほど患者の病状を考えずに、状態を考えずに手術をして、往々にして失敗するのも事実でございます。まさに手術に耐え得る体力をどのように回復させるかということ、このことは極めて大事であるというふうに思います。  先ほど大蔵大臣からこの二つの問題は車の両輪とおっしゃいましたが、車の両輪ということはこうした場合通常使わないのではないか、まさに政策選択のプライオリティーをどのようにしていくかという問題なのではないかというふうに思いながら聞いておりました。  一方、こうした話を聞く中において、先ほど来の御議論を聞いている中で、この法案は本当に財政構造改革法案なのか、歳出構造改革法案なんだろうかというふうに考えていたところでございます。とりわけ今回の法案の中において、社会保障の問題について、先ほど厚生大臣も含めさまざまな御指摘がございました。また、自民党の野田聖子議員からも極めて明確な形で国民の声がお伝えされたと聞いておりました。  そこで、総理あるいは厚生大臣にお伺いしたいわけでございますが、二十一世紀の我が国の社会保障をどのようにお考えなのかということが一つでございます。すなわち、往々にして社会保障の問題がいわゆるセーフティーネット、社会全体の中において社会的弱者が出てくる、それを社会全体が引き受けなければいけない、そういう観点からのセーフティーネットとしての社会保障、いわゆる社会的弱者に配慮した政策として、もっと明確に言うならば、救貧対策の従来の考え方、明治時代の考え方を色濃く残した、その観点からの議論、同時に、成熟国家として、まさに社会保障というのが国民の安心やゆとりといった、そういう基本をなし、こうした制度のもとにおいて豊かな消費生活、そして豊かな経済生活を送ることができる、そういう新しい今日の成熟社会の中における社会の骨幹としての制度、この二つの制度が明確に使い分けられないままに、一人の閣僚からもその両方に使われているような感じがしてなりません。  一体、二十一世紀の社会保障というのはどのようなものとしてお考えなのか、少し具体的にお伺いしたいと思います。
  167. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 お尋ねですが、私は二者択一をとりません。セーフティーネット、いわゆる低所得者を支えるという救貧法みたいなものにとどまらない、今や、年金にしても医療にしても介護にしても、社会全体で支えて、この制度が安定しているということにおいて、単なる貧しい者ではなくても安心して働けるという社会をつくらなければならない、両方大事だと思います。  最も弱い者に対して、どこまで国が支えるべきか。さらに、みずから助ける精神のある者、自立できる者ができるだけ多ければ多いほど弱い者を助ける人がふえるわけですから、社会全体で支えていこうというために、自立できる人にはどんどん自立してもらいたい。そういう中で、いかに経済を活性化し、経済成長の成果を社会福祉の充実に回すかということで今後考えなきゃいけない。  でありますから、今後、医療制度改革におきましても、介護保険の導入におきましても、あるいは年金改革におきましても、給付と負担の公平化を図りながら、できるだけ国民負担の少ない状況において、どの程度のことまで国がやり、そして個人の努力を期待するかというのは、お互いいろいろな情報を提供し、幾つか選択肢を出して、国民的議論のうちに私は決めていくべきものではないかなというふうに考えております。
  168. 五島正規

    ○五島委員 やはり、厚生大臣のお話というのは、かなりその辺の混同があるんではないかと思います。自立てきる者は自立しろ、そして自立できない人たち、その数を比較的多くとっておられるのでしょうが、その方々が安心して暮らせるための制度であるというこうした観点というのは、やはり救貧思想に基づいた社会保障の観点、その観点を単に少し水増ししているのにすぎないのではないか。  今の社会の中において、まさに先ほど野田聖子議員指摘になったように、決して今の日本国民経済状態、貧しいわけではない。そして、今回の医療費の改正等々の議論があったとしても、そのことによってたちまちそれが支払えないというほど生活が厳しい人が多いというわけではない。にもかかわらず、こうした医療保険の改正の問題、あるいは年金不安の問題というものが出てきた途端に、やはり、国民が万一のリスクに対する貯蓄、あるいは高齢期のことに備えての貯蓄、あるいは個人の資産の形成ということで非常に消費を控えていく、これが現在の状態である。まさに、社会保障というのは、そういう従来の救貧政策というものから完全に決別して、社会全体を支える一つ制度になりつつあるんではないか。いや、既になってしまっているんではないか。  事実、私が地元で話しましても、あるいはいろいろ意見を聞きましても、従来であれば、医療保険問題等について、非常に一般の国民は結果についてしか関心がなかった。しかし、今例えば参照価格制、何か難しい言葉は出ているけれども、これからお医者へ行ったら、一体、医療費、薬代、何ぼ払ったらいいかわからないという制度になるの。あるいは、厚生省が出された案、私が説明したわけでもないんですが、どうも、お医者へかかったら差額ベッドがどんどんふえて、どれだけ医療費がかかるかわからないらしい。あるいは、ある病院へ行ったら手術代の差額が取られて、病気になったときに何ぼ要るのかわからないという時代に逆戻りしそうなんだねという話が聞こえる。そして、そういう話が、決して今経済的に困っている方々でない方々の中で非常にそういう不安だけが先行していっている。  これは何か。まさにこの財政構造改革、その中で社会保障の改革の問題を指摘されているわけでございますが、その社会保障の改革というものについて不安材料だけが先行して、どういう社会保障を二十一世紀につくるのか、その姿が見えないままに不安だけが先行していることのその結果ではないかというふうに考えるわけでございます。  そういう意味において、とりわけそれの前提となります少子・高齢社会、この社会の問題についてお伺いしたいと思います。  先ほどから、高齢社会そして少子化が進む中において、いわゆる生産従属年齢が非常に減少する時代なんだというふうに一律に年齢を軸に固定的にとらえた御答弁がございました。私は、そのこと自身を見直さない限り、社会保障の構造改革なんかできない。  私は、昭和三十三年に大学に入学しました。その時代の六十五歳の教授、今でも覚えております、申しませんが、少なくても現在の七十歳の方の方がはるかにお元気ではつらつとしておられることは事実でございます。そして、現在の六十代の方々の健康度と、同時に、さまざまな労働現場における労働の質の変化というものを考えた場合に、本当に生産従属年齢が六十歳までなのか、六十五歳までなのか。これは、たまたま今日の日本において、六十代いっぱいの方々がそれぞれの御経験を生かした形で何らかの形でお仕事に就労していただける、そういう労働の場、あるいはそういう就労の場、そういうものがっくれていないことによって、あえてそこに触れずに、年齢的に厳しい、厳しいと言っているのじゃないか。  どのように人口統計を見てみても、仮に六十代いっぱいが、仮に賃金が労働者の平均賃金の八割とか七割に下がったとしても、保険やあるいは税の負担者の側に回る、もちろん、その二割ぐらいは病気になって年金やそういうもので社会全体で支えなければいかぬ方が出る可能性はございます、しかし、大半の方がそういうふうになる社会をつくるとするならば、単に労働人口が後ろの方にずれたというだけのことであって、この問題は大きく変わってまいります。その辺について、労働大臣並びに通産大臣、どのようにお考えになるか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  169. 伊吹文明

    ○伊吹国務大臣 今の御質問、私は大変共感を持って伺っておりました。現在、御承知のように、六十五歳以上の人口は六人に一人、こう言われておりますが、二〇二〇年には大体四人に一人ということになってまいります。  そこで、御年配の方々の勤労の能力というのがどの程度であるかというのは、的確な資料はございませんが、むしろ先生が御専門だと思いますが、ある全国紙で読みましたところでは、昭和三十年を標準とすると、〇・八を掛けるのが正しいのじゃないかと。だから六十歳であれば四十八歳、七十歳であれば五十六歳ということだろうと思います。  そこで、社会保障構造改革の一環として、先ほど来お話がございますように、長寿化、少子化の中で、二〇一三年には厚生年金の支給年齢も六十五歳に引き上げられていくということでございますので、そのことと、それからまた、六十歳、六十五歳、七十歳の方の、社会の中で何か役割を果たしながら生きているというその存在感を考えても、私どもは、やはり現在の六十歳定年は、六十五歳、七十歳へと将来的に考えて延ばしていかねばならないと思っております。  当面は六十五歳まで継続して雇用をしていただくように企業にお願いをし、そして奨励金を出してやっておりますが、現在、大体七割程度の企業で六十五歳まで定年制を延ばすか、あるいは六十歳で切っても六十五歳まで働けるという制度に、何らかの手を加えていただいております。しかし、残念ながら、働きたいと思う人がすべて六十五歳まで働ける企業はまだ二割しかないというのが現状でございます。そこで、シルバー人材センター等いろいろなものを活用して、先生が今御指摘のような方向に努力をしているわけであります。  もう少し中期的に考えますと、やはり橋本内閣が提唱しております六つの構造改革の中で、将来的には高齢者を雇用するに足る経済の大きさをつくり出していかねばなりません。そのためには、日本に生産拠点を持ってくるということも必要でありますし、教育改革の中で自助自立の気持ちを持った立派な労働力を養成していくことも必要でございますし、あるいはまた規制緩和によって職場を拡大していくことも必要でございます。  したがって、これは、単に年金あるいは福祉の分野の話ではなくて、六つの構造改革が一体となってやはり日本の将来のためになし遂げていかなければならない大きな切り口を先生にお示しいただいたと考えて、我々はその方向で努力をしたいと思っております。
  170. 五島正規

    ○五島委員 今の労働大臣のお答え、これは通産大臣にも答えてもらうわけでございますが、やはり今の現役の労働者、仮に二〇一〇年としますと、やっと十二、三年間、かつての製造の時代から非常に変わりました情報社会の中で十三年間現役世代を過ごした方が六十代に入っていかれます。そういう社会構造あるいは経済構造あるいは産業構造全体の変化、そういうふうな中において、どう六十代の雇用の場をつくるかという問題であろう。また、今労働大臣が、雇用の継続、すなわち定年の延長というところにかなり限定しておっしゃいました。そういう努力があって当然だと思います。  しかしながら、基本的に大事なことは、六十代の方々が、第二の仕事でもいいじゃないですか、そういう方々が中心になって就労できる、そういう新たな就労の場をどうつくっていただけるかということが大事なんだろう。そうした形での新たな産業をどう起こしていただけるかということを含めて、通産大臣、ちょっとお答えいただきたいと思います。
  171. 堀内光雄

    ○堀内国務大臣 お答え申し上げます。  ただいまの先生のお話にございましたような、高齢化社会において、経験豊かな高齢者方々の労働能力、こういうものを引き出してさらに御活躍をいただくということは大変重要な貴重なことだというふうに思います。豊かな高齢化社会と経済活力の維持というものを両立させるためにも、高齢者は単に扶養される者の立場から支える側の立場に立つということも大変重要なことになるというふうに思います。  通産省といたしましては、今後、高齢化の進展に伴いまして労働力人口の減少が見込まれる中で、我が国経済が安定的な成長を実現するためには、高齢者の能力の活用それから発揮、そういうものができる環境を整備することが重要だと考えております。  このために、高齢者の就業機会を拡大する必要があるわけでありまして、高齢者がみずからの能力を高めて雇用を求めていかれる可能性を増大させること、あるいは高齢者に対して就業に関する十分な情報を提供するような準備をすること、こういうことが重要と認識をいたしております。  こうした観点から、経済構造変革と創造のための行動計画におきまして、関係省庁と協力をいたしまして、有料職業紹介事業が一層活用できるような規制緩和の推進をいたしておりまして、さらに、高度の熟練技術者、技能者だとか、あるいは高度の経営能力をお持ちになる方々の活用促進のための支援体制の整備などにしっかりと取り組んでまいりたいというふうに思っております。  今後とも、本行動計画に定められた諸施策の着実な推進はもとより、可能な限りさらに前倒しをいたしまして、新規施策の追加を含めた計画の推進、フォローアップを年内に行ってまいりたいと思っております。
  172. 五島正規

    ○五島委員 このままいけば年金については破産する、あるいは現状のままで年金制度を維持しようとするならばそれだけでも所得の三〇%要る、そういうふうなことだけのアナウンスの中で国民は大変いら立っているというのが実態であろうと思います。むしろ、六十代いっぱい、仮に労働時間が週三十時間とかそういう短時間労働であったとしても、就労によって生活できる、そういうふうなシステムをつくることによって、この社会保障については確実なものにしていくんだということをやはりきちっと政府の責任において明確にされるべきであろう。  一年や二年でできるものとは思っておりません。しかし、少なくても高齢化のピークが始まります二〇一五年ぐらいまでにはそうした側面からのことが確実にできない限りは、これは社会保障もヘチマもないというのが実態だ。そういう意味では、給付の問題だけの議論ではなく、国民が期待を持てるような社会の構造をどうつくるかということについてもぜひ御議論をいただきたい、あるいはお示しいただきたいというふうに思います。  そして、最後になりますが、もう一つは、今回の法律の中でいわゆるキャップの問題がございます。私は別に社会保障についてはキャップを外せとか、なくてよいとか言うつもりはございません。しかし、公共事業については五カ年計画を七カ年計画に繰り延べる、これが構造改革かどうかというのは私は非常に疑問に思っているわけでございますが、それは私の議論するところではございません。しかし、それと同じような形で社会保障に対するキャップというものをはめていくということが果たしてできるのだろうか。  これまでの社会保障に関する財政を見てみますと、逆に、政管健保やあるいは厚生年金あるいは国民年金等に対するいわゆる政府の繰り延べなどの多額の隠れ借金を繰り返してきております。そして、それをいわゆる補正予算の形で幾らかずつ返してきている。そして、そのことによって一年単位における財政のつじつまを合わせてきたというのが現状だろうというふうに思います。  果たしてこれから、国民の持つ、いわゆる病気に対する例えば万一のリスクとかあるいは高齢期の不安というものに対して、このキャップで抑えていくということによって本当にうまくいくのだろうか。そこのところが、公共事業と同じようなそういうシステムというものが、果たして他の財政と同じようにやっていくということが正しいのかどうかということについては、私は大変疑問視せざるを得ないと思います。  そういう意味において、今国民の中で大変不安が広がっております。医療費の問題等を含めまして、結果においてそのことが国民の自己負担という形での負担への広がりになっていくとするならば、私は社会保障制度崩壊であると思います。  よく厚生大臣は、税、保険そして自己負担、この三つのバランスというお言葉を使われます。この三つとも国民の負担でございます。この三つの負担の中でどのような負担が一番ふさわしいかという議論、そのことと、現在のシステムそのものの中において、どのように変えることによってむだを省き、より合理的なものにしていくことができるかという努力、この二つは、私は本来は別のものであろう、後者の方の問題は不断にやっていかないといけないという内容だと思っております。  その点について、総理、どのようにお考えでしょうか。
  173. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私、先ほど来の御議論を聞いておりまして、議員もその二つを分けることに固執し過ぎておられると率直な印象を持ちました。  なぜなら、これは先般、他の委員会委員と議論をさせていただいたときに申し上げたことですが、現行の医療保険制度は、健康を壊してから治すための給付が中心であります。しかし、これが予防から体系づけられたらどう変わるのでしょう。そういう意味で、私は、こういう分野も発想を変えていく必要が当然のことながらあると思います。  同時に、議員も、ある意味では常用に近い形での高齢者雇用を述べられました。しかし、ある意味では、先ほど他の議員に私は職人の世界というものを例に引いてお話を申し上げましたけれども、みずからの特技をお持ちの方々は、既にその壁は抜けております。むしろこういう形態をもっとふやしていく工夫はないのか。  そういう意味では、私は、我々自身の発想を変えていくと同時に、少なくとも、例えば人生六十五歳まで現役として働き得るような仕組みを用意するために何を考えるのか、むしろ私は問題をそのようにとらえて対応をしていきたいと思います。さもないと、例えば児童福祉、これは、両親がともに職を持つ時代が定着してきつつある中で、子供たちに地域で家庭にかわる環境をいかに与えるか。これを救貧思想から組み上げるのは、私は間違いだと思っています。いかに地域の中に子供たちに家庭にかわる仕組みをつくり出すか、むしろこれは前向きなとらえ方をしていかなければなりません。  その意味では、私は、両極端を挙げられました議員の提示のその真ん中に答えがあるような、率直に感じがいたしました。そして、例えば医療を考えるとき、疾病が起きてから治す医療という以前に、健康を保持するためにどうあるべきかというところからシステムが組み立てられるような、そのような発想を持てば変わるのではないか。キャップは、私はその意味でも役に立つもの、そのような感じがいたしております。
  174. 五島正規

    ○五島委員 時間が参りましたので、終わります。
  175. 中川良一

    中川委員長 これにて海江田君、五島君の質疑は終了いたしました。  次に、佐々木憲昭君。
  176. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。  危機的な状況にあります日本財政再建が緊急課題だというのは、だれもが認めるところであります。そのためには、我が党が一貫して主張してきたように、財政の浪費とむだの構造に徹底的にメスを入れることが不可欠であります。  ところが、今国会に提案されている財政構造改革法案は、財政危機の根源となっているゼネコン奉仕型の公共事業費について、十年間六百三十兆円の事業を三年間延長するだけで、浪費の構造には全くメスを入れないものとなっております。そして、一切の聖域なしという名で、専らその矛先を社会保障予算の大幅削減、医療保険の改悪、中小企業対策や教育予算の削減に向け、国民の命と暮らしの分野をねらい撃ちにしたものと言わざるを得ません。  この法案の本文を見ますと、「抑制」という文字が十六カ所も出てまいります。「上回らない」、この文字が十四カ所。「下回る」、これが五カ所も出てくるわけであります。三年にわたる集中改革期間を設け、さらに六年先まで削減の枠をはめる。しかも、それを法律でやろうとしているわけであります。こんなことは前代未聞のことでございます。  経費削減の最初に挙げられておりますのが社会保障であります。高齢者人口が毎年三、四%ふえていくわけでありますが、ところが社会保障の予算の伸びをこの法案では二%以下という低い水準に抑えております。特に、初年度の九八年度予算では、物価、人件費などの要因もあって、現在の水準を維持するのに約八千億円の伸びがどうしても必要でありますが、これを五千億円以上も削減して三千億円に抑制するとしております。法案に具体的な金額を書き込んでいるのはこの部分だけでありまして、「三千億円を加算した額を下回ること。」と明記されております。  例えば医療はどうなるのか。この法案の初年度に当たります九八年度の概算要求では、新たに必要とされる六千億円を四千二百億円も削減し、三分の一以下の一千八百億円に圧縮する、このようにしております。  そこでお聞きをしたいわけでありますが、四千二百億円の削減の中身は何か、何を幾ら削減するのか、これによって国民負担は幾らふえるか、この点についてまずお答えをいただきたいと思います。
  177. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 来年度予算におきましては、今年度に比べて一般歳出をマイナスにする。しかしながら、今、役所の中で一番国民税金を使っている役所が厚生省であります、社会保障関係。そこで、このままの制度をそのままにしておきますと、当然約八千五百億円ふえます。各省庁、来年度マイナスにするというのはとても不可能だということで、公共事業関係は前年度に比べてマイナス七%、あるいは海外経済協力費はマイナス一〇%とマイナスしておりますが、厚生省は前年度に比べてマイナスは無理だということで、ようやく前年度に比べて来年度は三千億円の増が認められた。  しかしながら、黙っていけば八千五百億円ふえるんですから、実質的には約五千五百億円削減しなきゃならない。これは容易なことじゃないんです。総論においては、みんな予算は減らしなさいということには賛成してくれますが、いざ各論になりてきて、これから年末の予算編成、この三千億円ふえているからいいじゃないかと言いますけれども、実際には五千五百億円削減しなきゃならないので、これは容易なことではない。  その中で、四千二百億円程度、医療関係費で出さなきゃならない。どこで出すのかというのですが、これは薬価、診療報酬その他あらゆる面において、聖域なくすべて見直して、何とか、五千五百億円削減の中で、約四千億円程度、医療関係費で捻出しないと予算が組めないという状況にあるということを御理解いただきたいと思います。
  178. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今厚生大臣の答弁の中で、一番予算を使っていると。国の一般会計では確かに数は多いかもしれないけれども地方も全体も含めますと、公費負担は約二十兆円。それに対して公共事業は五十兆円であります。国と地方財政全体を問題にしているわけでありますから、社会保障が多いとは言えない。国際関係で見ましても、日本の社会保障の負担は非常に低いというのは統計上も明白であります。  もう一つは、薬価というお話がありましたけれども、世界一高い薬価、ここにメスを入れることは、我が党は一貫して主張してまいりました。しかし、政府・与党の案では、薬価差益はなくなっても、ヨーロッパに比べて一・五倍あるいは三倍という薬価そのものにはメスが入らない、二倍から四倍になる新薬にはメスが入らない、こういう問題があります。ドイツ並みの比率にするだけで、日本の医療費というのは二兆円から三兆円節約ができるわけであります。そこで問題なのは、どのように国民負担にかぶされてくるのか、国民負担がどれだけふえるのか、こういう点について国民は不安を持っているわけであります。  あらゆる分野を削減する、このように言いましたけれども、実際にどの分野をどの程度削減するかというお答えはなかった。その結果医療がどういう姿になるのか、具体的内容を全く示していないわけであります。ともかく大幅削減だけは押しつける。初めに削減ありき、中身は白紙委任してもらいたいというのと全く変わらないわけであります。  ここで少し具体的に伺いたい。  例えば、入院給食費の負担増が検討されているというふうにお聞きをいたします。これは新聞にも報道されていますから事実だと思うんですけれども、この入院給食費の負担、どのようにこれを行うつもりなのか、国民負担はどのくらいふえるのか、その結果国庫負担は幾ら減るか、この点をお答え願いたいと思います。
  179. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 現在、入院の食費が一日七百六十円、これをどの程度にするかというのは、今与党の協議会で議論してもらっております。その与党の議論を踏まえながら、年末までに予算編成ですから、予算は皆さんに審議していただくわけです。まだ具体論が決まっていないというのは、あらゆる点を検討しているわけですから、年末までには具体論を詰めていきます。それは、さっき言った医療費においても薬価にしてもそうであります。今のところ、一日七百六十円が適当かどうかというのは与党で協議しておりますから、その議論を踏まえて、年末には、どの程度になるかというのは具体化すると思います。
  180. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 年末までにということでありますが、現に、今回の財政改革法案で削減の問題が枠がはめられるわけであります。この法案で枠をはめるわけですから、具体的にどこがどういう内容になるのかということを明らかにしないで、何で議論ができますか。中身をはっきりさせてください。
  181. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 しかし、今の法案は、全体として三千億円増を認める。具体というのはこれからですよ。今決まるわけないじゃありませんか。
  182. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 具体的な削減の内容を聞いているわけです。三千億円認めるというけれども、当然増を減らすわけですから。四千二百億円、これは、今の制度、水準を維持するためには当然ふえるわけでしょう。それを削減して一千八百億円にしようというわけですから、これを削減することになることは明らかでありまして、それが具体的な中身はどうなるかということをこの場で出さないで、枠だけ決める、中身は任せてくれ、白紙委任してくれ、これではだれも納得しませんよ。
  183. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 来年度予算において具体化すると言っているのです。今、来年度予算を審議しているわけじゃないのです。全体として三千億円増を認めている。来年度予算においては、当然増八千五百億円を認められているうちの約五千五百億円を削減しなきゃならない。その中で四千億円程度は医療関係費であろう。それを、来年度予算を今審議していただくわけじゃないのですよ。年末に来年度予算を編成して、来年の通常国会で審議していただくのです。そのときにはちゃんと具体的な法案を出します。
  184. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今回枠を決めるという法案を出しているわけですから、その枠の中身がなければ具体的な審議というのはできないはずであります。  では、もう一つ具体的に聞きましょう。  高額療養費の自己負担限度額、現在六万三千六百円ですけれども、これも引き上げを検討されていると言われております。幾ら引き上げるのか、それで国民負担はどのくらいふえるのか、この点明らかにしていただきたい。
  185. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 これも、今、一月百万かかろうが一千万円かかろうが、上限が六万三千六百円御負担いただいている。これが適当かどうか、今後の議論なのです。これも年末には具体的に決めて、来年の通常国会で御審議いただく。総額五千五百億円をカットしなきゃならない、削減しなきゃならない中であらゆる項目を見直そうとしているのです。  ですから、今、六万三千六百円を、来年度予算を審議しているなら具体化しないとおかしいという議論はわかります。しかし、これから、来年出すのですから、何でおかしいのですか、決めないで。検討させていただくということで。
  186. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 審議の内容を我々は問題にしているわけです。枠を決めるということは、その枠の中で減らされる部分が出てくるから、どこがどう減らされるのかということがないと具体的な審議ができないというようなことを言っているわけです。  もう一つ、検討しているわけでしょう、実際に。例えば、与党の医療保険制度改革協議会、ここで丹羽雄哉座長が、高額療養費の自己負担限度額について、財政効果は一万円上げると百二十億円、二万円では二百三十億円になる、こう言っているわけですね。限度額を一万円、二万円上げるということが検討されているんじゃありませんか。
  187. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 あらゆる項目を検討しております。どの程度引き上げるか、下げるかというのは、これからの問題であります。
  188. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 検討の中身はあらゆるということですから、例えば漢方薬、ビタミン剤、パップ剤、これを保険から外すということも検討されている、有力な意見がある、こう言われている。このように、何を聞いても具体的な内容をお答えにならない。  国民が一番知りたいのは、今回の財政構造改革法案によって枠をはめられ、それによってどれだけ自己負担がふえるかということでございます。こういうことも検討されている、検討されていながら中身は示さない。それは隠したままで削減のこの法案だけは通してくれ、これはだれも納得できないと思うんですよ。  今、例えば入院給食費、それから漢方薬などの薬剤、高額療養費の問題、この問題をとっただけでも、全体としてざっと三百億円とか五百億円です。そうなりますと、四千二百億円の削減、じゃ、そのほかはどういうふうにこれをやろうというのか、国民にどう負担させようというのか。このことが全く今の答弁では明らかになりません。これがどのくらいの規模になるのかということについては、国民は本当に今不安を持っているわけであります。  お答えになりますか。
  189. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 今回の法案におきましては来年度予算案のことを決めているんですよ。来年度に三千億円増を認められているんですよ。その中身は年末までに詰めるというんです。そのときに明らかになります。その明らかになったのは、来年の通常国会で御審議いただくんです。おわかりですか。  それを具体的に今示せといったって、十二月に予算編成するんですよ。(発言する者あり)ですから、今総額だけ枠をはめられていますから、その範囲内で四苦八苦、七転八倒とも言っていいですね、もう苦しみながら予算編成をするようにこれから十二月にかけて作業するわけです。十二月の予算編成時には、来年の御審議に間に合うように具体的な項目を出す予定でおります。
  190. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 委員長
  191. 中川良一

    中川委員長 ちょっと待って。佐々木君、まだ発言を許していない。  審議の邪魔にならぬように静粛に願います。特に委員外の不規則発言は、厳にこれを慎んでください。  佐々木君。
  192. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 来年度予算で、つまり年末までに中身を明らかにすると。しかし、今回の法案では枠を決めるわけだから国民は中身を知りたい。そうしなければこの法案の是非は決められない、こういうことになるわけであります。ともかく、今の答弁では私は納得できないということを申し上げたいと思います。  今までで、例えば昨年度までで、国民負担が一番多かった年はいっか。平成六年度、一千八百億円負担させている、これが一番過去で多かった。ことしの九月では国民負担は二兆円です。これによって大変な事態になっておりまして、受診の抑制、診療中断というのがあちこちで起きているわけであります。今回の医療改悪による打撃というのは、これによりさらに大きな打撃になりまして、まさに命を削るような事態が広がるおそれがあります。  この法案では、厚生大臣がおっしゃいましたが、ともかく削減だけを決めたい、何をどう削減するのかは任せてほしいと。そうなりますと、国民の医療がどういう姿になるか、これは全く明らかではないわけであります。そういう中で国民の不安が今広がっているわけです。来年度だけではありません。再来年度もその次の年も連続して同じような大規模な歳出カットが行われる、こういうことになるわけです。まさに史上空前の医療保険制度の連続大改悪。ここに財政構造改革法案の恐ろしさがある、こういうふうに私は感じるわけであります。  ところで、次に難病問題についてお聞きをしたいと思うんです。  重大なのは、難病の患者にまで医療費の自己負担を導入しようとしていることでございます。難病というのは、原因が不明で治療法が確立されていない病気です。現在約三十六万人の患者さんがいらっしゃいます。筋萎縮性側索硬化症(ALS)、重症筋無力症、多発性硬化症、パーキンソン病、悪性関節リューマチなど、三十八の疾患が指定されております。  これまでは、難病の患者負担分は全額公費で治療を受けることができました。この公費負担は、難病患者にとっては生きる命綱のようなものであります。ところが、来年度からこれを見直して、医療保険の患者負担分の三分の一程度を負担させる計画だと言われております。  これに対して、全国難病団体連絡協議会の会長さんは、厚生省は触れてはいけない部分に手を出した、財政赤字を言うが、これくらいのお金で大勢の人の命が救われるのなら、ほかにもっと節約できる部分があるはずだと言っております。  我が党は、患者団体にもお会いして切実な声を聞いております。ある四十八歳の重症筋無力症の女性は次のように訴えております。  私は十九歳のときに発病しました。近年、膠原病の合併症も出てきた。酸素吸入器をつけないと生きていけない。治療のために順天堂病院で二週間に一度血漿交換の治療を受けているが、医療費は一カ月六十万円に上る。一泊して治療を受けるが、差額ベッド代が一日六千二百円にもなる。通院のためのタクシー代は片道二千円。酸素吸入器の酸素料月額三万円は、東京都の制度では賄えるけれども、千葉県など他県ではこうした助成制度がないから負担は大変だ。補助食も、病院で出る分では足りないから、カルシウム、ビタミンなどを市販品でとっており、これも月五万円程度かかる。こういう訴えがあるわけです。  難病患者の皆さんは皆、あすどうなるか、他の病気を併発するのではないかと大変な不安を抱えて生きている方々であります。患者負担の医療費の全額公費負担は、まさに命綱であります。それを政治が断ち切ってはいけないと思うのです。  厚生大臣はこれまでも繰り返し、必要な診療は抑制しない、こう言ってまいりました。我が党の志位書記局長の質問に対しても、必要な診療は抑制されているとは思っていない、こう述べました。しかし、難病患者への自己負担の導入というのはまさに必要な診療を抑制することにつながる、こう思うわけですけれども、いかがでしょうか。
  193. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 あらゆる項目を見直していこうという中で、難病対策についても、制度が発足してから二十五年たった。この間、医学、医術の進歩は目覚ましいものがあります。  そういう中で、今後、公衆衛生審議会の専門家の意見の中で、見直すべき項目として、対象疾患はこのままでいいんだろうか、難病に指定されているけれども実際指定されていないよりも軽い症状もある、これをどう考えるか。あるいは、難病に指定されている同じ病気の中にも重症度の人と軽症度の人がいる、これはこのままでいいだろうか。さらに、自己負担できる方とそうでない方がいる、この点についてどうだろうか。この三点について今専門家の中で審議していただいております。その報告を見ながら今後検討させていただきたいと思います。
  194. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今答弁の中では、この難病患者の自己負担というのを導入していく、こういう姿勢をとっている。これはもう本当に大変なことだと私は思うのです。  そして、例えば対象患者の問題について今おっしゃいましたけれども、現実は、どの疾患を見ても、いまだに原因や治療法は確立していないわけであります。このもとで対象から外されるということになりますと、やっと明るい光が見え始めた治療研究を後退させることになってしまう。  また、重症度の低い患者に問題が、いろいろ検討をしなければならない、こうおつしゃいましたけれども、低い患者でも実態把握に努めなければならないというのが患者の強い願いであります。そうして初めて原因の究明や治療方法の確立、こういうことができるわけでありますが、そういうことを軽視するとその確立の後退も招いてしまう、この点を私は強く訴えたいと思うわけであります。  この法案では、こういうものも含めまして、本当に命にとって重大な内容が切り込まれていくという不安が国民の中にも広がっております。医療について三年連続して巨額の歳出カットを行う、ともかく初めに大幅削減ありき、こういうものでありまして、日本の医療がどのような姿になるのか、具体的な内容を示さないままに医療保険制度の連続的な大改悪を行うものであります。私はこんなひどいやり方は許せないと思うのです。医療は国民の命にかかわる重要な分野でありまして、その削減というのは命を削ることにつながるわけであります。私は、このことを絶対にやってはならない、この点を強く申し上げておきたいと思います。  次に、中小企業の問題について触れたいと思うのです。  言うまでもなく、日本経済の活力、景気回復を支える二つの大きな柱、これは個人消費と中小企業であります。これはだれも否定できないことで、昨年の経済白書でもこのことを指摘しております。  しかし、今度提案の財政構造改革法案というのは国民に大きな負担を押しつけることになり、これによって個人消費はますます冷え込むというおそれがあります。  もう一つの柱である中小企業はどうか。日本の中小企業というのは全企業数の九九%を占めております。従業員でいいますと七八%を占めております。まさに日本経済の主役であります。重要な役割を果たさなければならないのに、極めて深刻な状況にあります。ことしの上半期の企業倒産は七千九百六件、前年同期比で約一二%増、負債総額は倍増して史上最悪の五兆九千三百億円に上っております。大企業との格差もますます開いており、中小企業の生産水準は依然として水面下にあります。  ところが、六月の閣議決定、財政構造改革推進について、この中では、十年度、つまり来年度の予算については「一般歳出を対九年度比マイナスとすることとしていることを踏まえ、思い切って抑制する。」と、わざわざこの中小企業予算を「思い切って抑制」という言葉を使って、三年間は前年度を上回らない、財政構造改革法案でもそのように書いているわけであります。今まさにふやさなければならない、そういう分野なのにこれを減らす、私は、これは全く逆方向を向いているのではないかと思うわけでございます。  中小企業対策費というのは本当に減らさなければならないほど大きいのか。まず、数字でここを確認したいのです。一般会計の当初予算に占める中小企業対策費でこれまで一番大きかった年、これはいつか、金額ではいつ、比率ではいつ、こういう点でお答えをいただきたいと思います。
  195. 堀内光雄

    ○堀内国務大臣 佐々木委員のおっしゃるとおり、国際的な競争の激化、流通機構の激変などによりまして、中小企業を取り巻く環境は非常に厳しいものがございます。こうした状況の中で、我が国経済の活力の源泉である中小企業がこれらの課題を克服して力強い成長を実現できるように、政府が環境整備を図っていくことは重要だと考えております。  このために、非常に厳しい財政事情の中ではございますが、中小企業対策予算の重点化、効率化を図ることを通じて、中小企業対策費は本年度予算においても前年と同額を要求してまいります。  残余の今の数字につきましては、中小企業庁長官から申し上げます。
  196. 林康夫

    ○林(康)政府委員 お答えを申し上げます。  中小企業対策費、総額は昭和五十六年度が最高でございました。総額約二千四百九十八億円で、この年の一般歳出予算総額に占める割合は〇・七八%でございます。  それから、過去において一般歳出予算総額に占める割合が最大の年でございますが、これは昭和四十三年度予算額でございまして、一般歳出予算額の〇・九〇六%となっております。
  197. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今のは決算ベースだと思うのですけれども、最高時でも予算の一%にも満たない。企業数でも雇用数でも、先ほど申し上げましたように日本経済の中で圧倒的な地位を占めているのに、予算というのは本当に微々たるものであります。ここに歴代政府の中小企業の位置づけがあらわれている、私はそう思います。  では、今年度の予算額と一般会計に占める比率は幾らでしょうか。
  198. 林康夫

    ○林(康)政府委員 平成九年度予算額でございますが、総額で一千八百六十五億円でございます。一般歳出予算額の〇・四二六%でございます。
  199. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 先ほど過去最高ということを言われまして、今、今年度予算の数字をお聞きしましたが、非常に全体として低下をしているということはもはや数字でも明らかであります。予算額で過去と比較しますと、絶対額で四分の三に減らされております。予算に占める比率も、ピークの三分の一になっております。余りにも冷たいというふうに思うのです。この史上最低の中小企業対策をさらに抑え込もうというのがこの財政構造改革法案で、これでは景気対策から見ても全く逆行していると言わざるを得ないと私は思うのです。  中小企業は、地域経済にとって極めて重要でございます。周知のとおり、中小企業は大体二種類の集積をしておりまして、一つは、いわゆる産地を形成し、地域経済の中核となっているものであります。もう一つは、東京の大田区あるいは東大阪、浜松など、基盤技術を持った中小企業が集まった地域で、これは下請中小企業の多いところであります。中小企業の発展ということを言うならば、この産地も下請もどちらも的確な施策が必要でございます。  そこで、まず産地の問題についてお伺いをします。  生産額五億円以上の統計、これは通産省がとっておられるわけですけれども、この産地の数の推移、これはどうなっているでしょうか。八五年と九六年の総数、それから輸出型産地、それぞれについてお答えをください。
  200. 林康夫

    ○林(康)政府委員 お答えを申し上げます。  生産額が五億円以上の産地の一九八五年度と一九九六年度の総数との御質問でございますが、一応一九九五年度の数字までとっておりますので一九八五年度と比較させていただきますと、一九八五年度が五百二十四、そして一九九五年度が五百になっております。  このうち、輸出型産地でございますが、これは産地の生産額に占める輸出額の割合が二〇%以上の産地を輸出型産地とするわけでございますが、一九八五年度の輸出型産地の数は八十二、そして一九九五年度の輸出型産地の数は二十九でございます。
  201. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今おっしゃいましたように、総数でも極めて大きく落ちており、特に、輸出型産地の落ち込みというのは大変な状況であります。特に、輸出型産地は、企業数でいいますとこの間に二万三百三十六社から四千二百八十九社、約五分の一に落ちているわけですね。従業員は二十三万人から六万人、四分の一に激減しております。確かに、この間には円高不況、バブル崩壊後の不況、アジアからの逆輸入などの問題がありました。だからこそ逆に中小企業対策費をふやして十分な対策を打つべきなのに、この予算を年々減らしてきた。これは全く理解しがたいことでござ  います。  産地のうち、例えば特定産業集積活性化法に基づいて指定されている産地、全国で九十八地域ありますけれども、これは全産地の二割にも満たないわけであります。新潟の燕、三条地域の金属洋食器、静岡の家具製造業、岐阜の織物業、洋食器などがこの中に入っておりますけれども、その全予算わずか十八億円でございます。一地域当たりの金額にしますと二千万円にも満たない。私は本当に、これはけたが違うんじゃないか、今こそこういう分野は思い切って何倍にもふやさなければならないと思うわけです。しかし、この財政構造改革法案によりますとこれを思い切って抑制する、本当に今の中小業者の苦しみ、また国民の期待、こういうことから完全に逆行していると私は言わざるを得ないと思います。  もう一つの重要な分野であります下請問題についてお聞きしますけれども、九〇年代不況の中で大企業は、リストラ、海外進出、こういうことで労働者や下請中小企業に大きなしわ寄せをしてまいりました。このために中小企業は大変な大きな打撃を受けております。大企業の下請に対する横暴な行為は、例えば下請代金の一方的な減額、買いただき、支払い遅延、購入の強制など、悪質な法違反事件は全く減っておりません。このことは公取の白書でも明らかでございます。下請に対する違反行為というのは、下請が親会社の報復を恐れてなかなか訴えることができないんです。本当にこれはやみに葬られている。それでも毎年千数百件の違反事件が報告されております。  一体なぜこのように、法律がありながら違反事件が繰り返されるのか、政府はその取り締まりを放置しているんじゃないか、こう言わざるを得ないと思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。
  202. 林康夫

    ○林(康)政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のように、現在、下請検査官を置きまして下請の代金の支払遅延等防止法に基づく下請代金検査を行っておりまして、私どもの人員は十四名をもちまして、年間、件数にして、書面調査平成八年度の数字でございますが、六万五千四百三十一件、そして親事業所三万三千、下請事業所三万一千ということで、相当検査を的確にやっておる、こういうふうに承知しております。
  203. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今そのようにおっしゃいましたけれども、現実には、例えば最近の報道を見ましても、三菱重工長崎造船所が下請業者の集まりを持ちまして、外注費を七%から一〇%引き下げたい、吸収してほしい、こう通告をした。あるいは、自動車のマツダでは、八月販売のカぺラから部品価格を三割下げるように要請した、こういうことが報道されているわけであります。これが一次の話ですから、これが二次、三次とどんどん小さくなっていきますと、犠牲転嫁の割合はますます大きくなっていく。これをきちんと規制するということが必要であります。  今おっしゃいました下請検査官制度、これは、あるわけですけれども実際には有名無実化しているのではないか。大体、今、中小企業の下請検査官の数、十四名というふうにおっしゃいましたが、本当にこれは少ないわけであります。中小企業庁で本局が十四名、地方事務所も入れますと、地方事務所十五名で、全体で二十九名しかいない。これにさらに公正取引委員会調査官二十九名、全体合わせても七十一名なんです。余りにも少ないと言わざるを得ない。大体中小製造業の六割が下請企業でありまして、五十万社近くあるのです。たった七十一人、これではまともな検査ができないことは明らかであります。  ですから、私は、この下請検査官、当然こういうものを見直してもっと充実させる、こういう方向に転換すべきだと思いますけれども、この点で通産大臣、御見解をお願いしたいと思います。
  204. 堀内光雄

    ○堀内国務大臣 今の中小企業対策は、橋本内閣においても大変重要な課題として取り組んでおります。先生のお話を含めてしっかりと取り組んで、中小企業の方々の御期待にこたえられるようにしっかりやってまいりたいと思っております。  それと同時に、先ほども予算のお話を承りましたけれども、私の方でも、一般の予算ではなく融資制度というのが非常に中小企業にとっては大きなものでありまして、設備近代化事業における既往貸付金の回収金等を貸付原資とすることによりまして、事業規模を年々拡大させております。平成十年度におきましては、補助金額は普通の十一億円でありますが、事業規模は一千二百億円と必要な額を確保することができるようになっております。  さらに、政府系中小企業金融機関の貸付規模におきましては、中小企業者の資金需要に十分こたえられる規模を確保するように配慮しているところでありまして、平成十年度の要求におきましても、中小公庫においては一兆八千三百四十四億円、国民金融公庫におきましては三兆一千五百億円、これを確保することにして万全を期しておるところでございます。
  205. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 中小企業の融資のお話もありましたけれども、貸し付け条件の改善、借りやすくしてほしい、これが中小業者の皆さんの要求でございます。ぜひそういう方向で改善をしていただきたいと思います。  この財政構造改革法案、これは全体として、今見てまいりましたように、社会保障あるいは医療、中小企業対策費、さらにこのほかにも文教ですとか農業予算ですとかさまざまな分野がありますが、そういう国民生活に密着する分野、こういうところを大幅に抑えていく。こういうことになりますと、国民生活にとっても極めて重大な事態が起こってくると言わざるを得ないと思うのです。私は、こういう点で、今出されているこの法案の性格、その影響、こういう点をしっかりと、国民の声も聞きながらこの問題点を根本的に手直しをし、そして、こういう法案そのものをやめるべきだというふうに思うわけであります。  この法案そのものが、全く過去にも例がない法案だということは、この内容を見ましても明らかでありまして、ほとんどの省庁にわたって歳出削減が要求されております。予算の本体は言うまでもありません、補助金、負担金、交付金、補給金、委託費、すべての項目について包括的、網羅的な歳出削減を三年にわたって拘束するような法案、こういう法案はこれまでに前例があったのかどうか、この点をお聞きしたいと思います。
  206. 三塚博

    ○三塚国務大臣 これは、御党からも、行政改革、さらに補助金の適正な活用、むだは省け等々各項目にわたって、国会論戦を通じ、また時に文書を通じ行われてきたところでございます。  もう前段申し上げましたとおり、異常な財政状況でございますから、国民生活の安定、安定的な持続的成長を確保するためには、この方式をもって協議をいただき、賛同をいただきたい。(発言する者あり)初めてでございます。
  207. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 これは、過去なかった、そういう意味で大変重大な法案だと思うわけであります。中身も明らかにしない、先ほどの議論でも明らかになりました。中身も伏せたままで三年連続の削減の枠だけを決める、そして、もう決まったことだからというので、どんなに国民反対があろうが制度改悪を次々と強行する、歳出削減を連続的に行う、こういうことでは、制度改悪の白紙委任状を政府に与えるようなものでありまして、余りにも私はこれは横暴だと思うんです。三年間を拘束する立法形式にしても、これは、予算を国会で審議するという、憲法に規定された国会の予算審議権をも侵害するおそれがあります。  財政構造改革法案は、中身も形式も私は問題だと思う。こういう法案は、結局、浪費を温存し、国民に犠牲を押しつける、このレールを将来にわたって敷いてしまおうというものであります。私は、絶対にこれは認められない。日本共産党は、この法案の撤回を求めたいと思います。  財政再建というならば、我が党が財政再建十カ年計画で提唱していますように、肥大化した浪費的な公共事業を思い切って縮減させる、抜本的な軍縮に転換して、また大企業優遇税制を是正する、そのことを通じて、社会保障など国民生活のための予算の拡充を図りながら財政再建を図っていく、ここにただ一つの道理ある道があると思うわけであります。  私は、暮らしを守り、社会保障を守り、そういうことをやりながら財政再建は十分に可能だという点を強調いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  208. 中川良一

    中川委員長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。  次に、濱田健一君。
  209. 濱田健一

    濱田(健)委員 社会民主党の濱田健一でございます。  けさほどから、財政改革の目的、そして、どのようにどこを変えていくのかというような論議が各委員から出ているところでございますが、私も、総理に三点ほど、この委員会のスタートに当たりまして、見解をお聞きしたいというふうに思っているところでございます。  まず、連立与党が求めております財政構造改革の真の目的というものを、政財官の癒着によって肥大化した既得権益を打破すること、そしてそれによって、しがらみと惰性の歳出から人間と環境優先の未来への歳出というようなものへ大胆に切りかえていくことというふうに私は考えているところでございます。それはまた、国民の負担に十分に見合う、つまり納税者の要請にこたえ得る安全、安心な公共サービスを提供する、効率的で信頼ある行政府再建するということでもあるというふうに私は考えます。  要するに、財政赤字の削減は、財政改革の結果でありまして、目的であってはならないというふうに私は思うのでございます。財政赤字の削減ばかりに目を奪われますと、既得権益が温存されたままで歳出構造のさらなる硬直化が進むおそれありというふうに考えるところもございます。今回の財政構造改革法に盛り込まれた部分について、雇用動向、そして地域経済に及ぼす影響など必要な目配りをした上で、歳出削減の手法として一定の評価が与えられてよいというふうにも考えております。  しかしながら、本当に重要なことは、財政危機の最大の根本的な根を断ってしまうというところにあるというふうに思うわけでございます。当然のことながら、国民の支持なくしては成就しないこの改革を進めるに当たって、まず何を目的とする財政構造であり、その結果としてどのような新しい社会を具体的につくっていくのか、これらを明確に国民皆さん方にお伝えするのが、スタートとして必要な認識ではないかというふうに思います。  けさほどから総理の方から詳しく御説明がございますが、改めて総理としての御認識をお知らせいただきたいと思います。
  210. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 初めに、この財政構造改革法案を取りまとめます以前の段階として、財政構造改革会議、与党三党、非常に積極的な御協力をいただき、あらゆる角度から論議をいただきましたことを、まず冒頭お礼を申し上げておきたいと存じます。  その中で、さまざま議員の述べられたような角度からのいろいろな御議論がございました。そして、それを集約した形で、私どもは今この財政構造改革法案の御審議を願おうとしているわけであります。  そして、ここに盛り込まれておりますことそれ自体は、我が国財政が主要先進国中最悪の危機的な状況にある、そしてこの現在の財政構造をこのまま放置すれば、経済の活力が低下し、将来に背負い切れない負担を残すことが明らかであり、こうした事態を回避するために、そして安心で豊かな福祉社会及び健全で活力ある経済の実現などの課題に十分対応することのできる財政構造を実現する、そのためにはこの取り組みを一刻の猶予も許されないといった思いで取り組んでいかなければならない。  では、なぜこのような状態が生まれたのか。それは、バブル崩壊後の累次にわたる景気下支え策としての公共投資の追加などのほかに、人口高齢化など財政を取り巻く状況変化社会保障分野に見られるような政府の役割の増大に伴う歳出の拡大、そしてこれまで大量の公債発行を続けてきた結果として、利払いに要する国債費が巨額に上っている、こういった構造的な要因が考えられるわけであります。  特に、最後に申し上げた部分は、財政の既得権益による硬直化と並んで、新たな施策に、必要と思っても手出しのできない財政構造になろうとしております。これは何としても直さなければならない。私は、財政構造改革会議の論議に参画をせられた御党の代表も含めまして、全員が同じような気持ちの中から今回御審議をいただくような考え方に至ったということを改めて申し上げ、御協力をぜひ願いたいと思うものであります。
  211. 濱田健一

    濱田(健)委員 改めて総理の決意をお聞きいたしたところでございますが、改革の結果として財政均衡の達成は、私はどうしても必要であると思います。しかしながら、財政赤字の責任を、受益が負担を上回っているという現世代に求めるのを当然とする主張がこのまままかり通っていくことには、若干の抵抗を覚えているところでございます。  政治に携わる者として忘れてはならないことがあると思うのですが、空前の最低水準ともいえる金利、限りなくゼロ%に近い、そういう張りつきの状態ですね。そして、消費税五%への引き上げというような現実の状況の中で、前者は、景気を支えるためであればこれは仕方ないなという我慢を、国民皆さん方、甘んじてというか、辛うじてやっていただいているというふうに思います。  そして、消費税の引き上げに関しても、その目的が、少子・高齢化社会に伴って増加していく、先ほどから出ております財政需要を社会の全体で広く負担をして分かち合っていくというような、安定的な財源を確保するという意味合いからも、国民皆さん方に、ある意味でいうと多くの負担感が生じている部分があるにもかかわらず受け入れてもらっている現状というものを認識せざるを得ないというふうに思うのでございます。  それで、国民皆さん方も、もう既にこれほどまでに私たち与党の政策に対してさまざまな協力をいただいているという状況の中から、単なる財政上の帳じり合わせということにこの財政改革法が終始することは許されることではないというふうに私は思うのでございます。  これらの点を踏まえまして、次のような正当な国民感情に沿う立場から、政府が今求められている取り組みは何かを問いたいというふうに思います。  例えば、国民負担を元手に公共財を生み出す政府の役割というものは、家計よりも企業に近いものと見るべきだというふうに思います。そう考えるならば、生産の合理化と効率化を図りながら消費者に対するサービスの水準は落とさないということが大事であるし、経営者としての務めではないかということも私は考えます。政府、とりわけ行政に欠けていたのは、こうした公共サービスへの生産者としての自覚と言えるのではないかというふうに私は思います。  そこで、歳出削減のみが至上命題化してしまうと、その痛みは当然公共サービスの削減や負担増という形で国民の身にしわ寄せをされていくということは当然のごとく考えられるわけでございまして、これを避けるには、行政、社会保障そして経済などの改革を同時に進めていくということ、公共サービスの効率化や、高コスト体質を是正していくということがこの財政改革を進めるに当たって不可欠な前提条件となるのではないかと思うのですが、総理いかがでしょうか。
  212. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 幾つかの問題を提起されましたが、公定歩合、金利の問題というのは私が触れてはならない世界の問題ですから、これについての見解はお許しをいただきたいと思うのであります。  その上で、議員の御議論の中で一つだけ私は必ずしも意見をともにいたさない部分がございます。現世代で負担し切らない、すべてを負担するわけにいかない、そう言われますと、それは後世代に残すということになります。しかし、これ以上我々は大きな負担を後世代に残すことは果たして許されるのだろうか。我々は、やはり今のこの巨額の債務というものは我々の世代で解決すべき課題ではないだろうか、これ以上次の世代にツケ回しをしてはいけないという思いが、少なくともこの財政構造改革を議論する与党三党の共通の考え方の中にあった、これは私はぜひ思い起こしていただきたいと思うのであります。  その上で、財政は行政のコストを支えるものでありますし、議員指摘のように、財政構造改革のためには簡素でかつ効率的に公共サービスを提供するための行政改革というものが不可欠である、これはもうそのとおりだと私は思います。  また、少子・高齢化の進展によりまして社会保障が財政の大きな分野となっておりまして、社会保障のあり方が財政に大きな影響を与えるわけでありますけれども、同時に、社会保障を支えるためにも健全な財政が必要であり、不可欠であり、その意味で、社会保障と財政、これは相互に密接に関連しているもの、連携しているものと申し上げても間違いではありますまい。経済財政についてもその意味では同じことでありまして、車の両輪という言い方が時々されるのもそうした思いからであろうと存じます。  その上で、現在その少子・高齢化、また経済のグローバル化というものが進む中において、今やはり改革をしなければ、あるいは次の世代に安易なツケ回しはこれ以上しない、債務を解消していくために全力を尽くさなければならない、それでなかったらこの国のあすはないのじゃないか、それが私はこの財政構造改革というものを議論し始めたときの原点だったと思っておりますし、すべてのシステム改革しなければならないということを申し上げてまいったのも、その点からでございます。  私は、あえて議員に先ほど一点異論がありますと申し上げましたのは、過去の世代にツケを回すことは不可能でありますけれども、今の世代が楽をするために次の世代にツケを回すことは、お互いの良心に恥じない限りできないことではありません。しかし、それはこれ以上やってはならないことなんじゃないでしょうか。私どもは、何としてもやはりここで財政構造改革というものに真剣に取り組んでいく、その中において、でき得る限りの努力をお互いに払っていく責任がある、我々はその世代に属している、私はそう思います。
  213. 濱田健一

    濱田(健)委員 私の真意がちょっと正確に伝わらなかったと思いますので。  いわゆる財政構造改革を進める中で、入りと出の問題だけではなく、後世にツケ回しをしてもいいというふうに私は申し上げているわけではなくて、現在私たちと同じように生きている人たちのサービスの水準その他を限りなく落とすことがない構造的な改革を含めての方法というものをやるべきではないんですかというふうに、私の思いとして申し上げたところでございますので、総理がおっしゃっていることと私の思いというのは一致しているというふうに言わせていただきたいというふうに思います。  もう一点ですが、この際、行革問題について総理の真意を確認しておきたいというふうに思います。  行政改革の着眼というのは、行政と市民の関係をどのようにつくり直すかというところに一点目的があるはずというふうに私は思っているところでございます。つまり、国民の意思の反映たるべき政が、官に対する指導力を発揮しながら、官僚政治を民主的な行政に変革していこうというのを一つの目的化するものである、また、そうであってほしいものというふうに私は思うわけでございます。  行革の肝心かなめなところは、行政を国民の手に取り戻すと同時に、国民、住民の視点で二十一世紀を展望する、そしてその必要な分野へ重点化、組みかえを行っていくということ、そして、国民や住民が真に豊かさとゆとり、それらを実感できるような時代の要請にこたえる政府、行政のモデルチェンジというものができるかどうかにかかっているのではないかというふうに思うのでございます。  ところで、総理がこれだけは絶対に譲ることができないというふうに、そういう立場で臨んでおられると思うのですが、一府十二省構想、これはこの基準に見合うものかどうか、若干の疑問なしとし得ないというところがございます。一般的には、省庁の一くくりに、大くくりといいますか、よって広範な行政分野を一人の国務大臣が担うことになり、その全領域に民主的コントロールを加えることを困難にしながら、反面として官僚の権限の肥大化を招きかねないのではないかというような話も多くの皆さん方から出てきているのも事実でございます。  行政の民主化というものが国民皆さん、そして私たち国会で仕事をする者たちにとっても、この行革に対する第一義的な目的だというふうに考えますが、この一府十二省という構想は具体的にどのようにこれからの行革の役割を果たし、また成果を上げられる状況になるのか、その辺の御見解を教えていただきたいと思います。
  214. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私、ちょっと議員と行政改革というものについて取り組みますベースに違いがあるような感じがいたします。  私がバトンを受け継ぎましたとき、既にスタートをいたしておりました一つの仕事、それは規制の緩和、見直し、撤廃という作業でありました。これはまさに官から民へ仕事を移しかえていくという作業でありまして、非常に大事なことであると思い、これを受け継いでおります。  もう一つは、地方分権の推進でありました。これは、国から地方に国の抱えている行政の中でできるだけ多くのものを移しかえていくということであり、ここで目指しているものは、住民に身近な仕事はできるだけより住民に身近なところでできるようにという願いであったと存じます。  そして、今日まで地方分権推進委かち、主に地方六団体が国から地方にこれは渡せという御要望をしてこられた項目を中心にして、四次の勧告をちょうだいをいたしました。この第四次勧告で終わりではありませんね、まだ続けていただけますねという念は押しておりますけれども、同時に、これにより分権推進計画に我々は本格的に作業に入ります。  そうした規制の緩和・撤廃、言いかえれば国が今まで持っております、官の立場で持っておりましたものを民間に移しかえる作業、そして抱えております業務、国があるいは地方公共団体が抱えていかなければならない業務であっても、できるだけ住民に身近な仕事を身近な自治体でお願いをするということから一方で分権が進む、これによって業務がスリム化する、それを前提にして中央省庁の議論に入っておるということをどうぞ御理解をいただきたいと思うのであります。  中央省庁を大ぐくりにすることが目的でスタートしたのではございません。まず分権があり、同時に規制の緩和・撤廃というものにより中央省庁の業務そのものがスリム化していく中から、これを行政目的別に大ぐくりにしていこうということで出てきた考え方が、結果として中間報告においては今申し上げたような考え方から出てきたものだということでございます。  これは一々、長々と私は申し上げるつもりはありませんけれども、この中間報告以降についてもさまざまな御議論が世間からもございますし、行革会議は毎週水曜日を定例とし、現時点におきましても、国会の終了後、私も参加のできる限りさせていただいて議論を続けております。  中間報告に盛り込まれておりました部分以外にも検討すべき課題を残しております。全力を挙げて、十一月末と決めましたその中で最善の結論を得るように努力をしてまいりたいと考えておりますが、まず分権、そして官から民へという流れの上に議論が進められておりますことだけはぜひ御理解をいただきたいと存じます。
  215. 濱田健一

    濱田(健)委員 時間がありませんので、今の部分についてはまた後日論議をさせていただきたいと思います。  大蔵大臣にお伺いをいたします。  我が党の横光議員が十七日の本会議代表質問の中で、いわゆる徹底した経費の節減合理化による特別減税の可能性ということでお尋ねを申し上げました。大臣の方からは、節減合理化に最大限の取り組みをしていただきますように各国務大臣にも督励をしていただいている、そして留保率や留保対象経費なども最大限の取り組みを行うよう努力をしておられると。しかしながら、いわゆる特別減税というものについては、特例公債発行によらなければならないのでできないというような趣旨の御答弁があったように思います。  財源の問題については、当然、厳しい状況にあるということはだれでも認識を一にするところでございますが、これだけはしっかりと頭に入れておいていただきたいということがあるわけでございます。  それは、我が党が九七年度予算承認に当たっての申し入れを二月二十五日にしております。消費税の改定に伴う消費減退が景気の最大の懸念材料になり得る可能性は否定できないという観点から、従来の節約努力の額を大幅に上回る節減の実を上げる、また、この節減によって生じた財源の使途は、景気の回復、生活と消費に資することを最優先の課題にすべきだというふうに申し入れをさせていただきました。  自由民主党の方から三月四日にその回答として、節減財源の使途については節減額が明らかになった時点で検討をする、その場合、社会民主党の提案の趣旨を十分踏まえて、国民生活を最優先にし、国民の負担増に対応する、これを翌五日に与党合意として政府に申し入れをさせていただいたという経過がございます。  きょうも朝から、特別減税、法人税の軽減等々について何人かの委員からお話がございました。いわゆる財政構造改革法案を論議しながら特例公債ということは飛躍をし過ぎているというような論議になるのではないかというふうに思いますし、我が党が主張している、この経費削減による、まあ余ったお金ということではないのですが、それらの財源を特別減税、過去三年間やってきたのはいわゆる消費税等々の負担増に伴う軽減措置でありましたが、今の状況では景気をいかに刺激するかという意味での特別減税、こういう与党・政府間の確認、合意があるわけですが、これについて、全く最初からだめというふうに大蔵大臣がけってしまわれるのかどうか。  先ほど若干の前向きな答弁があったように思いますけれども、大蔵大臣の見解をお聞かせいただきたいというふうに思います。
  216. 三塚博

    ○三塚国務大臣 ただいま濱田議員の三党協調の中における御党としての自民党に対する申し入れ、しっかり大事にしながら持っておるところでございますが、御案内のように、本格的な集中三カ年の元年に向けて平成十年度予算に取り組むということになります。  御指摘また御披露いただきましたとおり、経費の節減ということについては、御説のように、国務大臣各位におきまして格段の努力をしていただきたいということで、行っていただいておるところであります。  そこで、財政構造改革は、後世にツケ回しをしない、借金をして財政運営を行ういわゆる赤字公債依存型の財政運営はやめた、このことを明言いたし、集中三年、そして六カ年で達成をしょう、こういうことに、三党で構成する財政構造改革会議において、半歳にわたる論議の中で御協調をいただいたところでございます。  しからばどうするのか、こういうことになるわけですが、三・五%の経済成長を目指して積算をいたしました試算、濱田議員もおわかりのとおりであろうと思います。これによりますと、歳出と歳入の全体を展望する、試算をするということになりますと、それが一体になるということ。歳入に見合う歳出歳出に見合う歳入、こういうものの最終調整をいたしますと、二兆一千億に上る要調整額が残るということになっておるところであります。もちろん、試算に置きました三・五という成長率の前提、これの確実性それから見通しいかん、こういうこともあろうかと思いますが、パーセンテージが下がることによって逆に今度は要調整額がふえてまいる、これは、財政構造改革の原点を踏まえて試算をいたしますとそのようになります、こういうことであります。  できるだけ歳出カットをやる。これはキャップをそのとおり決めておるわけでありますが、全制度を見直すことによってやらさせていただきます。そして、全力を尽ぐして、バランスをとる編成ができるようになるということになりますと、医療保険制度改革が深刻な状態にある中でありますから、当然増経費三千億、これを認めることといたしておりますので一全体の中でそういう位置づけなども、今後、党対党の、また与党内における協議の結果を踏まえながら、全体を展望して考えていかなければならぬことなのかなと思っておるところであります。
  217. 濱田健一

    濱田(健)委員 これも後日、もう少し詳しい提案を含めて論議をさせていただきたいと思います。  小里総務庁長官に人事院勧告のことについて御見解を伺いたかったのですが、時間がなくなりましたので、これは後日に回させていただきたいと思います。  とにかく、家族を含めて、せっかく準備していただいたのですけれども申しわけございません、家族を含めて一千万の国家公務員、地方公務員の皆さん方、いわゆる景気の問題を含めて、この人事院勧告に対する期待というものを強く持っておられますので、これはあさって質問させていただきたいと思います。  これで終わります。ありがとうございました。
  218. 中川良一

    中川委員長 これにて濱田君の質疑は終了いたしました。  次に、粟屋敏信君。
  219. 粟屋敏信

    ○粟屋委員 私は、この法案の位置づけ、また平成十五年度、国、地方を通ずる財政赤字をGDP比三%以内に抑える、それに関する問題点について御質問をいたしたいと思っております。  国、地方を通ずる財政収支状態我が国は非常な危機的状態にあることは既に周知のところでございます。OECDの見通しによりますと、ストック、フローを問わず、先進国の中で我が国は非常に低い位置にあるわけであります。  また、これをこのまま放置すれば一体どういう状態になるか。午前中に総理から、経済並びに国民生活に対する影響についての御説明がございました。国民負担率が七三%になる。これは普通言われております社会保障負担と税負担のほかに、財政赤字も二一・九%でございますが、これがやはり子供たち、若者に対しては負担になるのだから、それを合わせての国民負担率というふうに私は受け取らせていただきましたが、いずれにしろ大変な状態でございます。しかるがゆえに、財政再建を速やかにやらなければ日本の将来が危ない、そういう状態であると思っておるわけであります。  ただ、今回の法案を拝見いたしますと、支出の数量的な削減目標については各事業費日ごとに詳細に述べられておるようであります。しかし、そういう量的な削減と同時に、私は、財政の質の変革をしなければならない、これが財政構造改革であろうと思うわけであります。総理も、六つの改革を標榜されまして、これに取り組んでおられるわけでありますが、財政改革はその中に入っております。しかし、これは他の五つの改革と表裏一体なものであると思うわけであります。  先般、行政改革会議の中間報告におきまして、司馬遼太郎さんの言葉を引用されて、国の形の再構築ということをおっしゃっておられるわけでありますが、私は、まさに国の形の再構築、これが今言われている諸改革の目標であろうと思うわけであります。フリー、フェア、グローバルな経済社会をつくっていこう、それには国の形をどうしたらいいか、これが大きな課題であると思うわけであります。  ところが、今回の法案は、先ほど申し上げましたように、各事業についての量的削減目標は示されておりますけれども、国の形、国の構造改革財政構造改革については必ずしも明確になっていないと思うわけであります。それは、別に経済構造改革、行政改革、社会保障構造改革等で結論を出して、それを受けて財政改革をしていくんだ、こういうお話かもしれませんけれども、少なくとも財政構造改革法案とは言えない内容であります。むしろ、アメリカの財政収支均衡法とか包括財政調整法とか、その種の性格を持つものではないか、こう思うわけでございますけれども法案の位置づけ、また財政構造改革は、他の改革と絡んで国の形を変えることに伴って財政構造も変えていくんだ、そういうことについての総理の御見解をお伺いいたしたいと思います。     〔委員長退席、中山(成)委員長代理着席〕
  220. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 少子・高齢化から始まる繰り返し御説明をしてきた言葉を、もう一度議員に申し上げるのは失礼だと思います。ただ、今改革をしなかったら、この国のあすがないという思いについては御理解をいただけたと思うのであります。  同時に、これは議員が御指摘になりましたように、この財政構造改革関連の仕事だけですべてが終了するものではございません。まさに、この財政構造改革法案の中にあります部分に、例えば社会保障構造改革も含まれておりますし、経済構造改革に関する部分も含まれておりますし、他の改革はすべてこれと連動いたす性格を持っております。その中で、特にこの財政構造改革に関しましては、現在の財政構造をそのまま放置した場合、これはただ単に経済の活力を低下させるといったことだけではなく、将来に背負い切れない負担を残すことになります。それはやはり我々としてどんなことがあっても避けなければならない、そうした思いからこの法律案をつくらせていただきました。  私は、議員から今、質的な転換が示されていないという御指摘をいただいたわけでありますけれども、むしろ、社会保障関係費あるいは公共投資などの主要な経費ごとに量的縮減目標を設定しておりまして、この目標に経費ごとのめり張りがあること自体、財政構造を質的に変えるものととらえております。  同時に、これは量的縮減目標でありますから、当然ながら主要な経費について具体的な金額の上限を抑えることになるわけですが、それを達成いたしますためには、当然ながら現在の歳出の中身に踏み込んだ検討をいたさなければなりません。したがって、量的縮減目標の達成を図ること、それは各主要経費の質的な転換もいや応なしに促す性格がございます。  また、この財政運営の当面の方針として、官と民、あるいは国と地方の役割分担、こうしたことについて、歳出全体の見直しに当たっての具体的な観点を含めて硬直した財政構造に直接切り込むことになっております。  その意味では、私は、議員は質的な転換にならないと言われましたが、この量的な上限設定そのものがいや応なしに歳出構造を変えざるを得ない、その意味で質的な変化をもたらす、そのように考えておることを申し添えたいと存じます。
  221. 粟屋敏信

    ○粟屋委員 量的な削減が質の、内容の変化をもたらすという総理のお言葉でございました。私は、ある意味ではそういうことも考えられると思いますけれども、どういうふうに質的な転換をするかということがやはり国民の前に示されなければならないのではないか、そういう思いを持っております。  これはいずれ経済構造改革、社会保障構造改革等の内容が具体化するにつれまして明らかになってくると思いますけれども、またその節、論議をいたしたい、こう思っております。  三塚大蔵大臣には、別の機会に財政再建経済の問題について御質問をしたことがあります。財政再建をするためには、やはり適切な経済成長がなければ税収の増加もない、これがマイナス成長、ゼロ成長になってくると税収が減ってきて、せっかく歳出削減をやっても財政再建はできないということを申し上げました。アメリカも、平成四年には二千九百億ドルという膨大な赤字を抱えておりましたが、今や千億ドルちょっとでございます。これも先ほど申し上げましたように、財政収支均衡法とか包括財政調整法、これによって歳出削減の努力をすると同時に、経済が活性化したことが大きな原因ではないか、こう思っておるわけであります。  そこで、その財政再建するための、特に平成十五年度、国、地方財政赤字をGDP比三%以内にするということで、そのプロセスをお示しをいただきたい、こういうことを申し上げたことがありますが、先般の財政構造改革会議に「財政事情の試算」というものをお出しになったようであります。そのことについて若干御質問をいたしたいと思っております。  確かに、この試算によりますと、一般歳出については、二%増、一%増、〇%ということで試算をなさっております。歳出削減の努力をしていくことをお示しになっております。また、公債金収入については、平成十年度には建設国債と特例公債合わせてマイナス一・九五%、あとは特例公債を一・二五%削減で最終年度に至るということでございます。そうして、その結果が、GDP比、国、地方財政赤字が平成十五年度には二・六%。これは経済成長を一・七五と見た場合でありますが、三・五の場合には二・五%に減る、こういうことが出ております。  ただ、問題は要調整額でございまして、これが歳出の伸びをゼロといたしましても非常に膨大な額になるわけであります。三・五%の経済成長を前提としても十三・五兆、それと国鉄長期債務とか国有林野特会の累積債務、これを平成十年度予算の各省の要求ベースに当てはめてみた場合には、これが九・三兆でありますから、二十二・八兆になるわけであります。  このGDP比三%以下の目標とこの要調整額の関係について、どういうお考えをお持ちになっているのかお伺いをいたしたいと思います。
  222. 三塚博

    ○三塚国務大臣 この試算は、財政事情の展開を経済成長率と並行しながらやったものでありますことは御指摘のとおりでございます。  問題は、「財政事情の試算」は、本試算が平成十五年度までの中期的な試算であるという性格にかんがみまして、作成時点における現行の経済計画に見込まれました経済指標を用いて推計を行うことが適切であると実は考えたところであります。  御案内のとおり、構造改革のための経済社会計画、平成七年十二月一日の閣議決定でありますが、各般の構造改革が進展した場合の経済の姿ということで、名目経済成長率三・五と仮置きをさせていただきました。そして構造改革が進展しない場合の経済の姿として、名目経済成長率一・七五と仮置きさせていただき、一定の仮定のもとに機械的に試算をいたしました。しかし、その目指す動向はおおよそ御推測をいただけるもの、こういうことで、経済を見、現法案の御審議をいただくに当たりましての御参考になればと思って提出をさせていただきました。もちろん、本試案に計上されました計数は、試算の前提等に応じ変化するものでありますことは当然でありますし、将来の予算編成を拘束するものではございません。  いずれにいたしましても、この経済計画において示されました構造改革が進展した場合の経済の姿を実現していくためには、本内閣の六つの改革が同時並行で成果を上げ、結果を上げていくということが名目成長率三・五を達成する前提であることは御理解がいただけるものと存じます。
  223. 粟屋敏信

    ○粟屋委員 私の質問にお答えいただいたこともあるし、そうでない点もあると思いますが、問題は、要調整額というものをどういうふうに今後始末していくかということが問題だろうと思います。  歳出削減の努力をさらにしていくということもありましょう。また場合によっては、もう歳出削減は限界に来たから公債を増発するということもあるかもしれません。しかし、そういうことになりますと、この試算そのものが前提から崩れるわけでありまして、また目標も達成できないということになるわけでございますから、この辺については、特段の御検討をお願いをいたしたいということであります。  また、経済成長率三・五%、これは平成七年の十一月二十九日の経済計画であります。ただ、まだバブルに対する対策を一生懸命やっておった時代でございまして、その前の九月には十四兆二千億という公共事業を中心とする経済対策をやった、そういう時代でございまして、まだ今の日本経済のような認識は、私は恐らくなかったんだろうと思うんです。消費も堅調に推移する、また公的資本形成については公共投資基本計画を、財政の事情を考慮しつつということはあるけれども確実にこれを実施する、それから対外貿易収支の問題についても、輸入が輸出を上回り経常収支の削減につながる、こういうようなことが書かれておるわけであります。  今、対外収支の問題について見ましても、きょうの夕刊を見ますと、貿易黒字が七五%増というようなことも書かれておるわけでございまして、認識は大分変わってきたなという感じがします。それをいつまでもそのときの三・五%の成長率を前提として財政収支の試算をやることが果たしていいかどうか、そういう疑問を感じますが、経済企画庁長官、御見解があれば伺いたい。     〔中山(成)委員長代理退席、委員長着席〕
  224. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 平成七年度の経済計画におきましては、GDP成長率、実質で年平均三%というふうに見込んでいるわけでございます。  財政再建と両立する、あるいは財政再建を支える経済構造改革を実現をしていく、そして日本の持っている潜在的な経済の成長率を十分に発揮させるということが経済構造改革の課題であるというふうに考えておりまして、先ほど来申し上げております、企業活動にとりまして魅力ある事業環境の整備のための法人課税の問題とか、あるいは不良資産の問題の解決とか、あるいは規制緩和によります企業の活動の活発化等を通じまして、経済構造改革を進め、日本経済の活性化を進めて、財政再建と両立する形でこれを実現していきたいと考えているところでございます。
  225. 粟屋敏信

    ○粟屋委員 大分時間が迫ってまいりましたので、また後刻いろいろとお尋ねをしたいことがありますけれども、私ども総理もおっしゃいましたけれども、この異常な財政状態を早急に解決をして、そして負担を後世の国民に残さないように努力をする、これが我々の責務であろうと思いますので、これからも十分な論議をさせていただきたいと思います。  本日は、これで質問を終わります。
  226. 中川良一

    中川委員長 これにて粟屋君の質疑は終了いたしました。  次に、上田清司君。
  227. 上田清司

    ○上田(清)委員 無所属クラブの上田清司でございます。  各党会派の御理解をいただきまして、十分程度のお時間をいただいております。私たち五人のメンバーは、都市のいわゆる新中間層という日本経済の担い手であり、あるいは日本の税収入の最大の担い手である都市中間層の勤労者が、必ずしも日本財政や税制の中で利益を得ていない、そういう意味において、都市新中間層の利益を代弁するグループになりたいという思いを持っております。また、今日の高齢者も大事にしておりますけれども、三十年後の高齢者を大事にしなければならない、そういう認識で固まっているグループであるということをまず表明させていただきます。  さて、早速ですが、この法律案の骨子やあるいはまた趣旨は大賛成でありますが、しかし、一般会計七十五兆に比べて、例えば特別会計が二百六十兆、しかも一般会計から四十兆繰り入れを受けております。あるいは財投の五十兆にしても、こういう大きな枠をどう見るかというところからスタートしなければ、一般会計の歳出をどういじくるかという議論では片手落ちではないか、私はそう思っておりますし、この法案の一部に「特別会計を含む」とは書いてありますが、特別会計の大きさを考えれば、どちらかといえば、「特別会計を含む」ではなくて、特別会計を重点的に改革していくという姿勢が必要ではないかということを私は意見として持っております。総理の御見解を伺いたいと思います。
  228. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、特別会計というものを一つの視点としてこの中から選ばれる、これに対して全く異論はございません。その上で、特別会計は、この法案におきましても、財政運営に当たって「特別会計を含むすべての歳出分野を対象とした改革」を進める、これを当面の方針として規定しているところでありまして、当然ながら、これに絡めて進めていきたいと思います。  特に、この法案との関係で申しますならば、一般会計から特別会計への繰り入れが増加いたしますと、今の財政状況のもとでは、これは特例公債の発行にどうしてもつながります。ここでもチェックが働きます。また、財政健全化の当面の目標として国の一般会計の特例公債脱却を掲げておりますから、これは間違いなしに、私は、一般会計から特別会計への繰り入れの安易な増加に対する非常に厳しい歯どめとしてワークすると思っているのです。  そうした点で、いろいろこれからも御論議をいただく部分はありましょうけれども、具体的には、この法案の中でも、国立学校特別会計への繰り入れの量的な縮減目標、あるいは一般会計から石炭並びに石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計石油及びエネルギー需給構造高度化勘定、いわゆるエネルギー対策に係る改革の基本方針としてこうしたものを具体的に量的縮減の目標として定めておりまして、私は、議員の問題意識に敬意を表しながら、我々もこういうものがしり抜けにならないようにここで歯どめをかけたい、そのように思っていることをお伝え申し上げます。
  229. 上田清司

    ○上田(清)委員 総理の見解をよしとしたいと思います。  それで、主管大臣であります農林大臣、やっと出番が参りました。ここで一番気になるところは補正予算との絡みであります。せっかくお座りになりながら出番がなかったので、ちょっと何とかつくってあげようと私なりに配慮をさせていただきまして、一番大事なところですが、大蔵大臣、ウルグアイ・ラウンドの補正予算は組まないと、この間、十六日の閣議後の記者会見で述べておられますが、これは間違いないですね。
  230. 三塚博

    ○三塚国務大臣 そのとおりでございます。
  231. 上田清司

    ○上田(清)委員 農林大臣、九七年度補正要求、一千九百億出されておりますね。これは間違いありませんか。
  232. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 一定の機械的な試算を前提とした数値であることは承知しておりますが、補正予算で措置することとした場合の具体的な計上額につきましては、今後、予算の編成過程で財政当局とも十分議論した上でこれを詰めていくべきだ、そう受けとめております。
  233. 上田清司

    ○上田(清)委員 質問に正確に答えておられません。出すのか出さないのかと聞いているんです。
  234. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 御承知のとおり、ウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策は、これは農業合意受け入れ後の農業の将来展望を切り開き、あわせて農村の活性化を図るためにこれは必要不可欠である、いわばこういうことで決定されたものでありまして、今後とも着実にこれを推進していくことが必要であると私は認識いたしております。  このため、平成十年度概算要求におきましては、本年六月三日の財政構造改革推進についての閣議決定に示された、農業農村整備事業対策期間を公共事業部分につきましては二年延長いたしまして、同時に、その他の事業との事業費の比率がおおむね五対五となるように、見直し方針に即して要求内容をまとめたところであります。  また、ウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策に係る経費の取り扱いにつきましては、事業内容の見直しとあわせて予算編成過程で検討することとされておりまして、本対策の趣旨等を十分に勘案の上、適切に対応できるよう検討を進めてまいりたい、そういうことであります。
  235. 上田清司

    ○上田(清)委員 私が日ごろから敬愛しております島村農林水産大臣とも思えないような役人的答弁をなさって非常にがっかりでありますが、総理、大蔵大臣の趣旨と全く同じでございますか。
  236. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、補正予算というのは、まさに財政法二十九条、これをベースにして考えていくべきもの、そのように考えております。
  237. 上田清司

    ○上田(清)委員 それでは、時間が余りありませんので少しはしょりますが、農林水産大臣には、補正予算に一千九百億を要求されているのをぜひ撤回していただきたいと思います。そうしないと、閣内不一致で審議がとまったりします。  次に、実は既に閣僚の皆様方は、この厳しい財政状況の中で給与を一〇%カットされておられるということを伺って……(橋本内閣総理大臣「返上しているのです」と呼ぶ)返上ですね、返上されているということを伺っております。まさにそういう姿勢が非常に大事ではないかなというふうに思います。  とりわけ、今日大きな問題になっておりますのは、政府、国家公務員並びに地方公務員もさることながら、その周辺におられる特殊法人や公益法人に必ずしもメスが入っていない、こんな思いがいろいろな新聞報道などで国民皆さんの関心を高めているところであります。  そこで、私も具体的に幾つか特殊法人の役員の皆さんの給与や俸給というのがどんなふうになっているかということをちょっと確認をしました。(パネルを示す)これは高いなというのが私の感性であります。建設大臣が月額百六十五万、事務次官が百三十二万、日本道路公団総裁百五十三万、副総裁百二十五万、道路施設協会理事長百三十万、衆議院議員百三十四万。これは、それぞれ特別手当の年額を見られてもなかなか立派な給与を取っていただいている。これは退職金八千万、この建設事務次官は勤続三十四年ですので、驚かないでください。あとはとりあえず四年で計算しております。大体建設事務次官をやったら道路公団の総裁になります。総裁が終わったら道路施設協会の理事長になります。出るたびに幾ら取れば気が済むんだ、こういう思いが庶民にあるのですね。  こういうことを建設大臣、今まで許してきた。これはやはり許されざることだということを明確に言っていただき、こういうことを許さないから、これからさまざまな分野においてむだな部分を歳出カットするんだという決意をしていただきたい、こんな思いでこの一覧表をつくってみました。建設大臣に御答弁をお願いしたいと思います。
  238. 瓦力

    ○瓦国務大臣 上田委員にお答えいたします。  特殊法人の役員給与、これは御案内のとおり、民間及び公務員との均衡を図る、こういう政府の基本方針に基づきまして行われておるものでありまして、昭和五十二年でございますか、閣議決定によって、それぞれが総合的な見地から、それぞれの法人の業務内容、事業規模にかんがみまして、これを決定されておるわけであります。このことは御案内であろうと思いましたが、改めて申し述べさせていただきました。
  239. 上田清司

    ○上田(清)委員 時間がありませんから、最後に申し上げます。  道路公団は、国の予算から約二千五百億助成を受けております。そして一千七百億の赤字を出しております。合わせれば四千二百億と見てもおかしくありませんし、この十年間の九路線はすべて赤字です。こういう赤字法人がこれだけ高い給与をもらっていいのか。これはすべての民間企業に勤める、あるいは経営する人たちの思いです。お伝えします。ありがとうございました。
  240. 中川良一

    中川委員長 これにて上田君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十一日火曜日午前九時委員会、正午理事会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時散会