運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1997-11-06 第141回国会 衆議院 科学技術委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十一月六日(木曜日)     午前九時一分開議 出席委員   委員長 小池百合子君    理事 小野 晋也君 理事 河本 三郎君    理事ッ林弥太郎君 理事 山口 俊一君    理事 井上 義久君 理事 斉藤 鉄夫君    理事 辻  一彦君 理事 吉井 英勝君       江渡 聡徳君    奥山 茂彦君       木村 隆秀君    田中 和徳君       塚原 俊平君    平沼 赳夫君       望月 義夫君    渡辺 具能君       近江巳記夫君    鍵田 節哉君       笹木 竜三君    中西 啓介君       中桐 伸五君    鳩山由紀夫君       辻元 清美君    堀込 征雄君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      谷垣 禎一君  出席政府委員         科学技術政務次         官       加藤 紀文君         科学技術庁長官         官房長     沖村 憲樹君         科学技術庁長官         官房審議官   興  直孝君         科学技術庁科学         技術政策局長  近藤 隆彦君         科学技術庁科学         技術振興局長  宮林 正恭君         科学技術庁研究         開発局長    青江  茂君         科学技術庁原子         力局長     加藤 康宏君         科学技術庁原子         力安全局長   池田  要君  委員外出席者         工業技術院総務         部エネルギー技         術研究開発課長 杉原  誠君         工業技術院総務         部地球環境技術         企画官     楠田 昭二君         参  考  人         (動力炉核燃         料開発事業団理         事長)     近藤 俊幸君         参  考  人         (動力炉核燃         料開発事業団理         事)      中野 啓昌君         科学技術委員会         調査室長    宮武 太郎君     ――――――――――――― 委員の異動 十一月六日  辞任         補欠選任   近藤 昭一君     中桐 伸五君   羽田  孜君     堀込 征雄君 同日  辞任         補欠選任   中桐 伸五君     近藤 昭一君   堀込 征雄君     羽田  孜君     ――――――――――――― 十月二十日  原子力政策核燃料サイクル計画の全面的見直  しに関する請願(秋葉忠利紹介)(第一〇号  )  同(深田肇紹介)(第一六号)  同(辻元清美紹介)(第二四号)  同(吉井英勝紹介)(第二五号)  同(保坂展人君紹介)(第二八一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  科学技術振興基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 小池百合子

    小池委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  科学技術振興基本施策に関する事項  原子力開発利用とその安全確保に関する事項  宇宙開発に関する事項  海洋開発に関する事項  生命科学に関する事項  新エネルギー研究開発に関する事項 以上の各事項につきまして、本会期中調査をいたしたいと存じます。  つきましては、衆議院規則第九十四条により、議長の承認を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小池百合子

    小池委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  しばらくお待ちください。      ――――◇―――――
  4. 小池百合子

    小池委員長 科学技術振興基本施策に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として動力炉・核燃料開発事業団理事長近藤俊幸さん及び同理事中野啓昌さんの出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 小池百合子

    小池委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  6. 小池百合子

    小池委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野晋也さん。
  7. 小野晋也

    小野委員 谷垣大臣には、九月に科学技術庁長官に御就任になられたわけでございますけれども、幅広い御見識と若き情熱を持って、これから日本科学技術行政を力強く御推進いただきますように、まずお願いを申し上げたいと思います。  実は、今この日本の国の科学技術行政を見ておりまして、私は大きな転換点に遭遇をしている気持ちがいたしております。これはひとえに、日本科学技術のみならず、世界じゅうが今科学技術の進路を模索をしているというような状況が生まれている中でございまして、これまでの人類歴史を振り返ってまいりますならば、いつも道具とともに人類というのは進化、発展を遂げてきたわけでございますが、これからの時代に、どのような道具が果たして人類社会に必要とされているのかというところに一つの戸惑いが生まれてきているように思います。  そしてまた、この日本の国にとりましても、戦後半世紀を過ぎたところでございますが、これまでの半世紀は、どちらかといえば、この科学技術分野におきましては、キャッチアップ時代であったということが指摘できるだろうと思います。西洋の先進的な科学技術に対して、日本科学技術がそれを追いかけて、追い越していくプロセスを歩んできたというわけでございますが、今や追随型から、むしろ自立しながら、みずからがフロンティアを求めて挑戦をしていかなきゃならないというような状況も生まれてきているわけでありまして、そんな大きな認識のもとに、当院におきましても、科学技術基本法が審議され、そして制定を見たところは御承知のとおりでございま す。  そんなことを考え合わせてまいりましたときに、日本科学技術にとりましても、また二十一世紀日本というような視点考えてみましても、大変大きな課題をこの科学技術委員会が抱え、そしてまた科学技術庁がその大きな責任を負っておられるということになろうかと思います。  ぜひ大臣には、繰り返しになりますが、大いなる夢を抱いていただいて、そして情熱を持っていただいて、二十一世紀日本に対する責任のもとに、力強いお仕事を御期待を申し上げる次第でございます。  さて、そういうような大きな話から始めさせていただいたわけでございますが、日本科学技術が今分岐点にあるという視点の中で、大きな指針になりますのが、この夏に発表されました科学技術白書であると私は認識をいたしております。  この白書の中で、通読をいたしますと、全巻を通じてテーマとして挙げられている問題というのが、「開かれた研究社会創造」という問題でございまして、これまで、どちらかというと閉鎖的だと言われてまいりました研究社会そのものを、これからは開かれたものにしていかなくちゃならないだろう、そして、産学官というそれぞれの分野の間での交流というものももっと活発に進めていかなくてはならないだろう、さらに、日本科学技術も国際的な責任を負う時代になってきているわけでありますから、国際社会に開かれたものにならなくてはならないし、さらには、国民の強い支持のもとに科学技術政策が推進されねばならないという観点に立つならば、国民に対しても開かれた科学技術にならねばならない、こういったことがこの中に書かれているわけでございます。  ここで私が注目をいたしましたのは、最後の結論というところが、実は「意識改革」ということでくくられているわけであります。これは、研究者自身意識改革でありますと同時に、関連する皆さん方、広く言えば国民も含めての大きな意識改革が行われなければ、この「開かれた研究社会創造」ということが実現できない、こういう指摘でございまして、これは非常に大きな問題提起をいただいていると私は認識をいたしました。  この点を考えてまいりましたときに、基本要素の大きな一つが、私は、コミュニケーションという問題になると認識をするわけでございます。  そこで、谷垣大臣のこれまでの経歴を拝見させていただきますならば、郵政の政務次官をなされたり、党におきましては通信部会長代理をなされたり、この院におきましては逓信委員長、こういうことを考えてまいりますと、非常にこのコミュニケーションということに強い御関心をお持ちになってこられ、そしてその分野を専門的に扱ってこられているということでございますし、また、議運委員長というようなお立場の中で、異質のいろいろな考え方を通い合わせるというようなことについても随分御尽力をいただいてこられたということでございますから、コミュニケーション重要性ということについては、恐らく御同意をいただけるだろうと私は信じているわけであります。  そこで、質問をさせていただきたいわけでございますけれども、このコミュニケーションの問題というのが、私は、このしばらくの科学技術庁行政を見ている中で非常に大きな課題だったという認識を実は持っているわけでございます。昨日も、「ふげん」における放射性物質漏れ出し事故がありました。少し前には、動燃改革の中で、動燃の中における問題の洗い出しということで、随分多くの項目が出されてまいりました。  恐らく大臣は、そういう問題が起こりますたびに、これはまた大変な問題になるだろうと身構えられたと思うのでありますが、世論の方は、それだけのものが提起をされても決して以前のような騒ぎは起こらない。これは、私自身認識でとどまるかもしれませんが、その様子を私自身も見ておりまして、やはりコミュニケーションということを、誠実に、真実を迅速に伝えていこうという姿勢を持つならば、社会はそれをきちんと御認識いただけるんだというような気持ちを持ったわけでございます。  今までの問題というのは、むしろコミュニケーションにおけるトラブルによって、必要以上に大きな騒ぎを引き起こしてきたというようなところを感じたわけでございますが、そんな点に立脚をいただきましたときに、これまでの科学技術行政において、このコミュニケーションという部分にどんな問題点が存在してきたと大臣が御認識になっておられるのか、そしてまた、今後これを改善していくということについて、どのような方向性を持ったお考えをお持ちになっておられるのか、まずこの点についてのお尋ねをいたしたいと思います。
  8. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 今の小野先生の御質問にお答えいたします前に、小池百合子委員長が御就任になりましたことをまず心からお祝いを申し上げたいと存じます。そして、小池委員長のもとで、今科学技術政策、大変重要な時期でございますので、当委員会において、私もどういう政策を推し進めていくべきか、御一緒に委員先生方と論戦をさせていただくのを楽しみにしているわけでございます。  そこで、今小野先生からの御質問でございます。白書を引用されて、今の社会に対する御認識をお述べになったわけでありますが、私も、大きく申しまして、明治以降といいますか、戦後の日本社会、追いつき追い越せということで、キャッチアップ目標としてやってきたけれども、今やフロントランナーに立たざるを得ない、そのためにどう社会を変えていくかということが、今橋本内閣で六つ改革ということが行われておりますけれども、その六つ改革を貫くテーマも、キャッチアップからフロントランナーへどう変身し得るかということなのではないかと思っております。  科学技術におきましても全く同様なことが起こっておって、それでそのフロントランナーに立つためには、やはり開かれた研究者というもの、研究体制をつくっていかなければならない、こういう小野先生の御指摘は、私は全くそのとおりだというふうに思っております。  そして、今までどこに、その開かれた体制コミュニケーションという意味で問題があったかということを御指摘になりましたけれども、私も、確かに今までの動燃事故等につきましても、とかく研究者が専門の中に閉じこもって、タコつぼということが言われますが、タコつぼ的な発想を持っていたのではないか、それをやはり壊して乗り越えていかなければ科学技術のあすはない、こういうふうに思っております。  研究者同士コミュニケーションをどうやったら図っていけるかということを我々一番考えていかなければならないわけでございますけれども、今まで科学技術創造立国、当委員会でも科学技術基本法を御審議いただいて、科学技術創造立国をつくっていくという中で、いろいろ政府として考えてきたわけでありますけれども研究者交流の機会をできるだけふやしていかなきゃならない。  そのためには、例えば、ポストドクター一万人計画等によって、若手研究者交流を図っていくというようなことも考えてまいりましたし、また、国立研究機関任期制というものを導入する、これも法律をつくっていただいたわけでありまして、任期つき研究者の採用が可能になったわけであります。それを研究費の面で支援して、流通促進研究制度というようなものをつくっておりますが、そういうものを活用していく。  あるいは、これはまたいろいろ問題があるわけでありますが、国立研究機関ももう複数、各省庁にわたっておりまして、その壁をどう取り払って融合して研究できるような制度をつくっていけるか、開放型融合研究推進制度というようなところをどう推し進めていくか、今努めているわけでございます。  今後とも、研究者コミュニケーションを図っていくということを一つのキーワードとして各種の施策を推し進めていきたい、こう思っておりま す。
  9. 小野晋也

    小野委員 大臣が今御指摘になられました点が、これからしばらくの間の科学技術行政の眼目になる点だろうと私は思います。いろいろな制度面での改革提起をされて、それが着実に実行されているところでございますが、ぜひさらなる推進方お願い申し上げておきたいと存じます。  加えまして、この白書の中を拝見しておりますと、科学技術行政に携わる者自身意識改革という項目もわざわざ一項目挙げて語られているところがございます。この点は、私どももいろいろと科学技術庁職員ですとか動燃職員ですとかおつき合いさせていただく中で、確かにこの部分についても一考せねばならない点があるという認識を持つわけでございますが、大臣のお立場から、科技庁の職員また動燃等外部組織職員等を含めて、どのような形の意識改革が今求められているというようにお考えになっておられるのか。そして、大臣自身が、ある意味でこういう分野取り組みというのはリーダーシップの求められる分野一つであると考えるわけでございますが、どのような形でこれから行動をしていかれようとしておられるのか、この点、お尋ねを申し上げたいと存じます。
  10. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 科学技術行政に携わる者の意識改革という問題を提起されました。  先ほどの御質問の中でも、動燃等事故の際にどういうふうに説明をしてきたか、外部に発表してきたかというようなことの問題点指摘されたわけでありますけれども、やはりひとりよがりであってはいかぬということが基本なのじゃないかと思うんですね。国民理解を得ながら科学技術行政を推し進めていく。  私も、ここへ来まして、今全体として、科学技術行政に対しては予算面でも非常に配慮していただいている。いろいろな大きなプロジェクトは正直申し上げてなかなかお金も食うわけでありますから、何を推し進めているかということを国民に十分説明していく、そのための行政マンも、科学技術行政に携わる者もそういう意識を明確に持っていくことが必要なのじゃないかと思います。  総理府で世論調査をしていただいたり、科学技術庁研究者アンケート調査をしたわけなんですが、そうしますと、国民の約六割が科学技術関心があってわかりやすい説明を求めているわけですが、研究者の五割は科学技術に対する理解を求める活動というものには余り関心を持っていないし、そういうことも実際にはしていないというようなアンケート調査の結果も出ておりまして、相当ここは意識改革が必要なのじゃないか。  ですから、研究者ももちろんですが、特に科学技術行政に携わる者が、国民理解支持を得られるように的確に発信をして説明をしていくということが、国民理解を求めていく、オープンにして理解を求めていくという姿勢がまず必要なのではないかと思います。  それから、もう一つつけ加えますと、この動燃事故等につきましても私つくづく思いましたのは、行政をやる者がやはり現場を踏むということが必要なのではないかと思います。現場に出かけていきまして、それぞれの職員研究者がどういうことを考えて、やろうとしているのかという、生の声をやはり行政に携わる者がみずから感じていく、こういう意識改革が必要なのではないかと思っております。
  11. 小野晋也

    小野委員 大臣のおっしゃられますとおり、コミュニケーションというものの原点は生の声同士のぶつかり合いだろうと思います。ぜひ、大変お忙しい中だろうと存じますけれども、時間を見て、大臣並びに政務次官現場研究者等との交流の時間をとっていただいて、彼らの悩みも聞いていただいたり、また、大臣また政務次官立場から、日本の国におけるこの科学技術というものの意味、それから国民というものをどういう目で見ていかねばならないのかというような、研究者がふだん関心を持たないようなテーマについては十分皆さんの方からお声がけをいただきますように、この点もお願いを申し上げたいと存じます。  さらに、このコミュニケーションの問題を取り上げさせていただきたいと思うわけでございますが、私は、この日本科学技術の将来ということを考えてまいりましたときに、一つイメージといいますのは、魅力ある研究者があちこちにおられて、その皆さん方の間に魅力あるコミュニケーションの輪が広がっていて、そしていろいろな、ある意味でぶつかり合う場面もあれば、ある面ではお互い共感し合って、そしてその中から力を合わせてやろうというようなものも生まれたりしながら、この輪の中から新しい科学技術が生まれ、新しい社会を開いていく、こういうようなイメージを持たせていただいているわけでございます。  そんなことを考えてまいりましたときに、これからの日本科学技術世界に求められるものというのは、一番原点のところへ立ち返るならば、個々の魅力ある研究者がどのようにたくさんこの日本の国の中に誕生してくるのかというのが一つと、それからもう一つは、それらの研究者の間にいかなる形でネットワークが形成され合いながら、それらが融合し合いまたは議論し合い、そして新しい着想がまさにぶつかり合いの中から生まれてくるというような仕組みづくりをやってくるのかということで、個々の魅力とそのネットワーク体制づくり、この二つ要素にまで還元できるのではなかろうかと思うわけでございます。  そこで、その最初の点でございますが、個々の魅力ある研究者というものをいかにこれからこの国の中で育てていくのかということが問われてくるわけでございますけれども、実は、私どもの地元の方で、もう十二、三年になろうかと思いますが、東予テクノクラブという異業種交流グループをやっております。  この異業種交流グループをスタートするときに、私どもにも相談がございましたから、私どもの方から申し上げたのは、やはり、魅力ある技術者がいて、それらの人たちがおつき合いをすることを通して本当意味でのコミュニケーションが生まれるのであって、体制をつくる、そういう場所をつくる、規則をつくる、こういうことだけでは本当意味での融合ということは難しいでしょうということを語らせていただいて、自己錬磨目標というものを掲げて、技術者自身がみずから成長していくような考え方をこのクラブには取り入れるべきではないかということを申し上げた次第でございます。  五つ自己錬磨目標というものを挙げたわけでございますが、一つは、使命感を持つ技術者たらんということでございます。二つ目には、深く探求し広く研究する技術者たらん、三つ目には、経営と社会を知る技術者たらん、四つ目には、人間を知る技術者たらん、五つ目には、自分考えでいることを人に伝えられる技術者たらん、こういう五項目を挙げて、その方向に向けてみんなで研さん、努力をしながらそこから新しい実りを得ようではないか、こういう異業種交流グループ活動をやっているわけでございます。  ちょっと手前みそのお話を申し上げたわけでございますけれども、開かれた研究体制ということをこの白書はうたわれるわけですが、これは、必要以上の規制については、もちろん制度的にそれを撤廃するなどをして促進方に努めることが必要でありますが、結局は、最後は人であるという御認識も同時に必要であろうと思うわけであります。人の心がっくる壁こそがベルリンの壁であって、そのベルリンの壁は人の心が変わればあっという間に消えてしまったというこの歴史の教訓に学び、各省庁の研究所間の交流ですとか技術者間の交流の問題ですとか、これは人の心の問題を抜きにしては語れないということの再認識お願い申し上げたいと思う次第でございます。  そこで、質問でございますけれども大臣もいろいろなお考えをお持ちになられながら今科学技術行政にお取り組みをいただいているわけでございますが、先ほど来申し上げております研究者技術者に期待される人間像、この部分について、どのような人間像を確立されればこの日本における開かれた研究体制というものがつくり上げられ てくるとお考えなのか、この点について、ちょっと抽象的な御質問で申しわけないのですが、お尋ねをさせていただきたいと存じます。
  12. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 研究者御出身の小野先生に、期待される科学者像といいますか、期待される人物像研究者像を説くのは、甚だじくじたる思いがございまして、的確にお答えできるかどうかわかりませんが、今小野先生が御指摘になるように、最後人間の問題に帰着するというのは、私はそのとおりだろうと思います。  科学技術庁でいろいろ科学技術政策を推し進めさせていただいておりますけれども、帰するところは、科学技術政策成果が出てくるということももちろん大事ではありますけれども、次世代の若い人たち科学技術フロンティアを発見して、夢を持って取り組んでくれるような体制がっくれるかどうかということが、長い目で見て、日本科学技術創造立国世界のこういう意味でのフロントランナーになり得るかどうかというのは、結局そういうところにかかってくるのじゃないかと思います。  それで、期待される科学研究者像というのは、一概に私もお答えできないのですが、これはごく常識的な答えになってしまいますが、何といってもやはり、既存の考え方にとらわれないで、豊かな創造性というか、そういう人でなければ、そういう創造性を発揮できる人でなければいけないと思います。それからもう一つは、そういう創造性を持って、その自分のアイデアで主体的に研究開発に取り組んでいけるというような人物像といいますか、研究者像がやはり期待されるのじゃないかと思います。それと同時に、今まで科学技術は随分大きな成果を達成してきたわけですし、これからもいろいろな分野での新しい成果が期待されるわけでありますけれども、そういうみずから開発した科学技術というものが人間社会にどういう意味を持っていくのか、そういうことに対する責任感と洞察力を持った研究者が育っていくということが私は望ましいのじゃないかなと思っております。  期待される研究者像をうまくまとめられませんが、そんなようなことを考えるわけであります。  それから、先ほど申し上げたようなことの繰り返しになりますが、大きな科学技術というのはやはり国民支持がないと進められないわけですから、先ほどの先生の地元の研究者のお集まりでのあれにもございましたけれども自分たちが推し進めていることに対して、わかりやすく説明して国民理解を求めていく、また、そういうことを通じて若い子供たちが科学技術の将来に期待を持てるような、そういう発信をやはり研究者にしていただきたいと思うわけですね。  それでは、そんなことで政府としては何をすべきかということになりますが、若者が積極的に科学技術にかかわっていこうとするような社会環境をいろいろな方向からつくっていかなければならないということだろうと思いますし、それから、研究者自身の研究環境あるいは勤務体系、そういう中で柔軟性を持って仕事ができるように、それと同時に、適切な評価というものが今十分に行われているのかどうか、適切な評価体制というものを考えながら、自由で競争的な研究開発環境をつくっていくというようなことも考えていかなければならないことではないかと思います。  それから、先ほどの繰り返しになりますが、何をやっているかということの情報発信といいますか、そういうことにも行政としては意を用いていかなければならないのじゃないか、こんなことを考えております。
  13. 小野晋也

    小野委員 ぜひ、その方面についても御尽力をお願い申し上げまして、この日本の国の未来を切り開く科学技術科学技術者の皆さん方が大いなる夢を描いて、そして挑戦的に仕事に取り組んでいけるような風土と、そしてそういう考え方を確立をいただきますように、この点をお願い申し上げたいと思います。  なお、具体的なコミュニケーションの手法といたしましての情報ネットワークの問題、また省庁間の研究機関の人事交流の問題、質問項目を挙げさせていただきましたが、ちょっと時間を欠くようでございますから、この点は御要望にさせていただきたいと思います。  次に、先ほど大臣が触れられたことにも関係するわけでございますが、子供の時代から技術というものに関心を持ち、そしてみずからがその問題に対して問題意識を持ち、挑戦をしていくという風土を築いていく上に、私どもこれまでずっと取り上げて議論をさせていただいたロボットのオリンピックという問題が、これから極めて大きな意味を持ってくるのではないかという認識を持っております。  二十一世紀という時代は、恐らく人間は技術という問題を離れて生きられる世紀にはならないでございましょう。どうしてもこの技術という問題とともに生きねばならないとするならば、この人間と技術という問題をきちんと確立して、技術と融合しながらともに生きていく社会というものを構想してまいりましたときに、そのシンボルとしてやはりロボットというものが、人間のある意味での友人であり、ある意味でのともに働く仲間であるというような位置づけをしていかれるということが大事な問題だろうと思います。  さらに、情報ネットワーク時代ということが語られるわけでございますが、情報ネットワークの端末として、現在コンピューターのディスプレーが使われるわけでございますが、これにはある意味で限界がございまして、恐らく二十一世紀の情報端末は、私はロボットになるはずだという認識も持っておるわけでございます。  この事業を細かくお話しする時間が既にもうなくなっておりますから、もう簡単にこれだけに触れさせていただこうと思いますが、既に歴代大臣に御質問させていただきながらやってまいったテーマでございますが、谷垣大臣はこのロボリンピックヘの取り組みについてどのようなお考えをお持ちになっておられるのか、お尋ねをしたいと思います。
  14. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 今小野先生がおっしゃった人類とロボットの共生というのは、これから大変重要なテーマになっていくだろうと思っております。前から小野先生がロボリンピックについて大変御熱心に御提言をされてお進めになっているということ、私も承知しておりまして、人類とロボットの共生ということを考えていく機会を国際的に提供していく大変有意義な御提案だと思っております。  科学技術庁としても、今まで内部的な検討を進めてきておりますが、ことしの一月に、有識者からの意見を聞くロボリンピック懇談会というものを開催しております。一方、財政事情が厳しい折でもございますので、これを現実のものとするためには、やはり社会的な盛り上がりといいますか、関係者の積極的な参画とか協賛が必要ではないかというふうにも思っておりまして、いずれにせよ、工夫してロボリンピックの構想を前進させるように、官房審議官以下を構成員とするタスクフォースを科技庁の中にもつくっております。  それで、今後、二十一世紀初頭に開くということで一生懸命委員がやっておられますが、私どもも、二十一世紀初頭にロボリンピックが実現するということを念頭に置いて、諸外国の関係者や関係機関の感触などを探って、具体的な調査を行って検討を進めていきたいと思っております。
  15. 小野晋也

    小野委員 ありがとうございます。  この点は、この白書の中に書かれております国民に対して開かれた科学技術という点から考えましても、極めてシンボリックなイベントになってくると思いますし、世界人類に対して日本としてこの分野での貢献を示すことにもなると信じている次第でございまして、何とぞ大臣政務次官を中心に、科技庁としての精力的なお取り組みお願い申し上げたいと思います。  きょうは、この白書を中心にさせていただきまして、基本問題として、今までどちらかというと科学技術行政が見落としてきた点、余り関、心を払ってこなかった点について御質問をさせていた だきました。極めて基本的な部分の問題でございまして、いろいろな点、まだまだ議論が足りない部分があるわけでございますが、こういう視点にも関心を持っていただいて、ぜひ二十一世紀に雄々しく飛躍される科学技術行政を展開していただきたいと心からお願いをさせていただきまして、質問を閉じさせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  16. 小池百合子

    小池委員長 田中和徳さん。
  17. 田中和徳

    ○田中(和)委員 自由民主党の田中和徳でございます。  実は今、小野委員からもロボットの話が出ておりまして大変感銘を受けたわけでありますけれども、私は、川崎市の南半分を舞台に活動している議員でございます。今川崎の臨海部では、アトム・ワールドをつくるということで話題が沸いてきております。手塚治虫さんの名作「鉄腕アトム」をテーマとしたすばらしいテーマパークをつくろうということでありますけれども、なぜ川崎市にアトム・ワールドかといいますと、やはり川崎はハイテクの都市として日本の産業のためにあるいは世界の産業の発展に寄与したと、実際にもその成果を上げてきましたが、市民挙げてその自負を持っている町であるからだと思っております。しかしながら、そういう輝かしい実績もありますけれども、一方におきましては、厳しい不況の中で、本当に輝かしい二十一世紀がやってくるのかどうか心配をしている一面もあることは事実であります。  現在、行革会議の最終報告の取りまとめ、大詰めが近づいてきております。省庁再編について、行革会議のメンバーや国会議員だけでなく、マスコミや一般国民の間でも連日活発な議論が展開されております。その中で、科学技術行政を国家組織全体の中でどのように位置づけていくのが一番大切なのか、重大な論点であろうと思っております。  また、そんな問題を考えるときに、大前提として常に頭にたたき込んでおかなければならないことがあると思うのであります。それは、将来の日本、そして将来の世界にとって、小野委員指摘されましたけれども科学技術のさらなる発展は、その日本世界の存立を図るために不可欠の極めて重要な要素だということであります。  世界全体に目を向けると、食糧問題、エネルギー問題、環境問題と、個人あるいは一国の努力では解決不可能なグローバルな問題が山積をしております。また、特に我が国では、今後、世界に類を見ないペースで高齢化が進展をすることになっており、労働人口の大幅な減少は経済活力の著しい低下を招くのではないかという危惧があります。  国民の生活水準の低下を最小限度に食いとめるには、財政構造改革を初めとする六つ改革の実現に加えて、科学技術の進歩により、経済の足を引っ張るマイナス要因をはっきりときちっとカバーしていく、これが重要であろうと思っております。やはり我が国にとってとるべき選択肢は、科学技術創造立国の着実な推進以外に道はないと思うのであります。そのためにはどのような行政組織、予算の配分が望ましいのか、このことを常に意識して議論を進めていく必要があると思います。  以上のような立場に立って、順次、今後の科学技術関連の施策についてお尋ねをしていきたいと思います。  先ほど科学技術立国の実現が不可欠と申し上げましたけれども、具体的な質問に入る前に、まず、科学技術の推進に向けた谷垣大臣の御決意をお伺いをしておきます。  また、今の時点では答えにくい質問かもしれませんが、行政改革の議論の中の、文部省と一体化された文部・科学技術省ではなく、単独の形で科学技術省という省を設けるべきとの主張について、私もその考えの一人でありますけれども大臣のお考えをお聞かせをいただきたいと思います。我が党のこの委員会のメンバーあるいは多くの同僚のメンバーが、この問題には本当情熱を傾けて、今一生懸命関係者と協議をさせていただきながら、独立省に向けて発言をさせていただいております。ぜひ大臣のお考えをお伺いしたいと思っております。  それともう一つ、内閣府の中に設けるとされている総合科学技術会議についてでございますが、この科学技術会議も、本当に今後生かしていき、日本のために、世界のために大きく貢献ができるかどうか、重要なポイントの議論であろうと思っておりますので、大臣からこの点についてもお考えお尋ねすることができればと思っております。よろしくお願いいたします。
  18. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 今田中先生から、これからの科学技術政策を進めるについての覚悟を問うという御質問がございました。  田中先生のお話の中に、川崎で今アトム・ワールドに取り組んでおられるというお話がございました。田中先生もそうだと思いますが、私も子供のころ手塚さんの鉄腕アトムの漫画を愛読しまして、やはりああいうところに未来社会の夢というか、そういうものを感じながら育った一人でございます。あの時代もそうでしたけれども、これからもやはり科学技術というものがきちっとしているかどうかということが、我々が将来に夢を描けるかどうかということのポイントだろうと私は思っております。  そういうわけで、国民に夢を与えられる場でこの仕事をさせていただくことを、私、大変ありがたく思って、全力を傾けてやらせていただきたいと思っている次第でございます。  それで、もう一つは、行革についてどう取り組むかというお話がございました。  今の御指摘の中にもございましたけれども、今の行革会議の中間報告では、内閣府に総合科学技術会議というものを設けて強力に科学技術政策を調整し、立案し、推進していくということになっております。それからもう一つ、文部・科学技術省、これは仮称でございますが、そういうものをつくるということも中間報告に書いてあるわけでございます。そしてまた、与党の御議論の中で、科学技術庁というのは独立させるべきであるという御議論をしていただいていることも承知をいたしております。  私としては、やはり科学技術創造立国ということを考えた場合に、科学技術政策を後退させない組織をつくっていくということが一番根本なのだろうと思います。  ですから、内閣府に総合科学技術会議というものがつくられるという方向で今御議論が進んでいると思いますが、総合科学技術会議がおつくりになった基本戦略のもとで具体的な科学技術政策の企画、立案、総合調整を実施していくという機関がやはりなければいかぬ。それから、基礎的・創造的研究、あるいは宇宙、地球、原子力、生命、こういうものに関する戦略的総合研究開発などの科学技術政策を推進していくところがやはり必要だろうと思います。それから、研究開発基盤等、国全体の横断的な科学技術振興施策を推進するというようなところが必要だろう。そういうものを合わせて、科学技術全体の推進に責任を持つ中核となる行政組織が存在することが必要なのではないかな、私はこういうふうに思っております。  今、行革会議と与党の間でもいろいろと御議論がされていることは承知をいたしておりますが、ぜひ、そういう中で科学技術責任を持てる行革というものを実現していきたいし、またそういう御議論をしていただきたい、このように思っております。
  19. 田中和徳

    ○田中(和)委員 谷垣長官の力強い決意の言葉をお聞きしまして、ひとまず安心をいたしました。我々、一期の議員で非力でありますけれども、力を合わせながら、大臣の今後の、今お話をされた本当にすばらしい理想に向かってサポートさせていただければ、このような思いでございます。  そして、やはり科学技術というのは一省庁でとどまることではなくて、日本のすべての機関に、民間も含めて広く開示をされ、実用化されていってこそ価値があると思うわけでございまして、そ ういう意味で御尽力をいただければと思っております。  次に、原子力エネルギーの問題についてお尋ねをさせていただきます。  資源エネルギーに恵まれない我が国にとって、原子力政策を着実に推進させていく以外に道がない、このように思っております。特に、高速増殖炉の開発による核燃料リサイクル体制の確立は、科学技術庁が中心となって前向きに取り組むべき課題であります。しかし、科学技術庁姿勢を見ると、余り前向きではないのではないかと私に感じられる部分が幾つかございます。実際にあちらこちらで耳にしていることですが、表向きには積極的のようでありますが、開発に取り組んでいると言っていても実はもうどうでもいいのじゃないかな、こういう共通認識が周辺で既にでき上がっているのではないか、こんな感じがするのであります。  前回、私がこの委員会質問に立った際、動燃の一連の事故、不祥事が、平成六年の長期計画に定められている高速増殖炉の二〇三〇年実用化を目指すという方針に悪影響を与えないのかという確認をさせていただいております。そのときは科学技術庁から、二〇三〇年とまだまだ先の目標であり、今回の動燃事故が直ちに影響するのではないとの答弁もいただいております。  しかし、その後、私が心配していたとおりに、あたかもフランス同様に、高速増殖炉の実用化を白紙に戻すことが原子力委員会の懇談会で決められているかのようなマスコミ報道もありましたし、火のないところには煙が立たないのではないか、原子力開発に対する弱腰の姿勢をマスコミの皆さんがかぎつけて報道したのではないかなどと、私自身いろいろと邪推をするところもあるわけでございます。  私は、今でも科学技術庁の言葉をしっかりと信じて受けとめているつもりでございますが、少し不安がよぎっているのも事実であります。国民を安心させるために、もう一度科学技術庁の高速増殖炉実用化へ向けた御決意をお伺いし、確認させていただきたいと思います。お願いいたします。
  20. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 今田中先生から、科技庁は原子力政策を進めているとは言うけれども本当は腰が入ってないのではないか、邪推するというお言葉がございました。大変御心配をいただいて、叱吃激励をしていただいているのだというふうに受けとめるわけでございますが、これはお言葉を返すような言葉になりますが、決して腰が引けたり、表ではそう言っているけれども裏では別なことを考えているというようなことはございません。  それで、いろいろな動燃等のあれがございましたから、確かに我々も反省すべき点、それからうみを出し切らなければいかぬということも申し上げてきましたけれども、そういう点は多々あると思いますが、私は、やはり原子力エネルギーというものは、委員が御指摘になったように今後とも必要なものであり、そしてそのためには核燃料サイクルというものは必要だと思っております。  ただ、高速増殖炉懇談会の報告書等の報道につきまして今いろいろ御議論がございました。いろいろな報道のしぶりがあることも事実でございます。実は、この高速増殖炉懇談会の報告書につきましては、あそこの懇談会で御議論をいただいて、そうして今国民各層の意見を聞いていただいているところでありまして、やがてまとまりましたら私のところにその御報告が来る。まだその御報告を承っておりませんので、私から、あの内容はこうだ、こうだということはちょっと今コメントしにくいわけでありますけれども原子力エネルギーの開発の重要性ということについて、腰が引けているわけではないということは明確に申し上げておきたいと思います。
  21. 田中和徳

    ○田中(和)委員 大臣から反論というお話でございまして、ありがたい反論でございますので、そういう不安が払拭されるように、強い決意で御尽力願えればと思うわけでございます。  さて、原子力開発利用といえば、最近の省庁再編の議論にも関連をすることですが、原子力発電についてどこの省庁が中心となって政策を推進していくべきなのか問題となっております。産業政策の円滑な遂行のためには、原子力発電に関連することは通産省に一括して任せるのが合理的ではないかという主張がなされております。確かに、原子力発電の商業化により電力供給の円滑化を図り、産業の安定的発展に役立たせるという視点も重要だとは思います。しかし、供給安定性とともに国民生活への危険も表裏一体のものとして伴うのが原子力発電であります。だとすれば、産業界のみならず一般国民理解と協力を得ていくことも原子力発電の発展のためには不可欠であります。そのためには、国民の安全を確保し、そのことを説明していくための施策を講ずるなど、科学技術庁が一定の役割と責任を今後とも引き続き果たすべきであると思います。この点については、今女性が新しく委員として任命され話題となった原子力安全委員会原子力委員会の機能強化を図るべきだと思います。  今般の科学技術庁は、今後、原子力開発利用推進についてどのような責任と役割を果たしていくおつもりなのか。原子力の推進と規制というのはやはり一体としてあるべきではないか、このような認識を私も持っております。両委員会の今後の取り扱いはどうあるべきかも含めて、お考えを承っておきたいと思います。  たまたま六ケ所村を地元に控えていらっしゃいます江渡先生が今メモをどんどんと入れておられますけれども、私は、江渡先生とともに、やはり科学技術庁が歩いていっていただくことが日本原子力行政推進の大きなポイントだと思っておりますし、ぜひひとつ御答弁を願いたいと思います。
  22. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 原子力研究開発、利用に今後とも科学技術庁が役割を果たしていくべきではないかという御主張でございます。  原子力は、多くの方が取り上げられる場合に、やはりエネルギーという観点からお取り上げになる場合が多いし、それは確かにそうだろうと私も思います。ただ、原子力研究開発というのは、エネルギーだけにとどまるものではないのだろうと思うのですね。医療に放射線が使われていることはもちろんですけれども、医療や農業あるいは工業、それから基礎研究等におきましても放射線利用というのは重要な役割を果たしているわけでありますから、そういう広い目で研究開発、利用というものを進めていくにはどうしたらいいかという視点も私は必要なのではないかと思っております。  それで、行政改革の議論は、先ほども申しましたように今行革会議と与党の中ですり合わせというか、御議論が進んでいるわけでありますけれども、今私が、では行革後の原子力開発利用推進体制についてどう考えるか、こう言われましたら、今原子力基本法というものがございますが、その原子力基本法のもとで、それに基づく原子力委員会それから原子力安全委員会、こういうものを中心として、そのもとでいろいろな関係行政機関が安全の確保というものを大前提として一致協力して推進するというのがやはり基本なのではないだろうか。それで、それをやはり拡充強化すべき点があろうかと思いますから、拡充強化するところは拡充強化していくというのが必要なのではないかな、こういうふうに思っているわけです。  そういう中で、例えば自民党の科学技術部会が提唱をされているのは、原子力委員会を内閣府に設置したらどうだ、それから産業省がエネルギーとしての原子力利用をやり、科学技術を担当する役所が原子力研究開発を担当するという考え方を示しておられるというふうに承知しておりますが、これは原子力開発利用推進体制を充実強化をしていく上で大変示唆に富んだ考え方ではないかなというふうに私は思っているわけであります。  いずれにせよ、今後さらに行革会議と与党の間で議論が進められるということになっているわけでありますから、私は、原子力行政が的確に進められるような御議論を慎重にやっていただきたい、こういうふうに思っております。
  23. 田中和徳

    ○田中(和)委員 大臣のただいまの答弁、ごもっともだと思っております。ただ、過去を振り返って考えるときに、なかなか組織が機能していなかった、こういう御批判があることもひとつ受けとめておいていただきたい、このように思っております。  話を変えますけれども、実は私の机の上に、昨日届きました「季刊生命の島」、これは屋久島の環境問題を中心に取り上げて話題になっている季刊誌でございます。大変これは、なかなか内容も充実しております。私は大学時代から屋久島というところに縁がありまして、多くの仲間がおりますし、議員も町長もおります。年がら年じゅう私の国会の部屋には屋久島の皆さんがお訪ねになりますけれども、やはり、世界遺産として登録をされて、大変すばらしい誇りとあわせて、どうやって飯を食っていったらいいのだろうか、農業や産業の面での心配が実は皆さんそれぞれあるわけであります。  今環境問題も、実はそのことで世界が揺れ動いておるわけでございます。二酸化炭素を排出しないクリーンエネルギーとして、地球環境問題の解決というグローバルな視点からも重要であることもつけ加えて、今後の科学技術庁の積極的な取り組みに期待をしていかなければならない、このように考えております。  さて、今言ったように、原子力エネルギー開発利用の推進の必要性にもかかわることでありますし、環境問題について少しお尋ねをしてみたいと思っております。  地球環境問題は、現在、産業の進展、人口の増加とともに非常に危機的な局面も迎えつつあります。この問題に関しては、我が国も国際社会の一員として、また先進国と言われる国の一つとして、解決に真剣に取り組んでいかなければなりません。特に、地球温暖化防止に関しては、十二月に京都で気候変動枠組み条約第三回締結国会議が開催されますけれども日本は、議長国にもなっておりますし、より強い責任を負っていくべき立場にあると思います。  COP3開催に向け、現在CO2の温室効果ガスの排出量削減目標値をどうするかが大きな議論でありますけれども、御承知のように各国の意見の一致を見るのは非常に困難な状況になっております。それどころか、日本の国内でさえも、原発をあと二十基増設をしないととても現実的な対応はできないのではないかという御意見もありますし、また、その数値をめぐって関係省庁間でも激しい綱引きが展開されております。  その背景として、温暖化が環境に及ぼす影響についての科学的な検証が現時点では不十分であることが指摘できると私は思うのであります。豊かさへの欲求を抑えつけ、我慢に我慢を重ねてしなければならないほど温暖化が危機的なものなのかどうか。漠然とは理解していても国民は明確には意識できていないのではないか、このようにも思うわけであります。いざ具体的な議論の段階になると、消極的な議論に終始してしまう、そういったところが実情ではないのかな、このようにも思っております。  この点、温暖化が及ぼす悪影響について検証をより一層明確なものとして、そしてそれぞれに切実な問題として受けとめられるようにするには、地球環境についてのより正確な情報を集積する必要があると思います。地球観測や海洋調査研究の充実を図るべきだとも考えますが、科学技術庁では今後どのような取り組みをされるのか、お伺いをしておきたいと思います。
  24. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 今、地球温暖化問題を初めとする地球環境問題、特に京都で行われますCOP3に関連して御質問がございました。  地球温暖化問題を初めとする地球環境問題というのは、かけがえのない地球を守って良好な環境を維持していく上で、本当にこれは人類共通の課題であろうと思います。科学技術はその解決に重要な役割を果たすと思いますし、科学技術庁が果たしていかなきゃならないことも多いのではないかと思います。  こういう認識のもとで、地球温暖化などの地球変動現象の解明とその予測のための研究を初めとして、いろいろな研究開発を進めて、この温暖化というものがどういうものなのかということをきちっと科学的にも分析をしていかなきゃならないと思っております。  科学技術庁としては、地球温暖化を初めとする地球変動予測に関する研究開発の強化、それからCO2削減に資する研究開発の推進、それから発電過程においてCO2を排出しない原子力エネルギー開発利用の推進、ここらあたりに我が役所の、当庁のまずやるべきことがあるのではないかと思って、やはりここに力を入れていきたいと思っております。  それから、ちょっとそれに関連して申し上げますが、原子力につきましては、やはりこの地球環境問題で先生が御指摘になったように、とにかく貧乏してもCO2を排出するなというだけではやはりなかなかいかないのではないか、そういうことを考えると、原子力エネルギーというものはやはり必要ではないか、こう思うわけでありますが、我が国におきましては、特に動燃における一連の問題で、地元の方々を初め国民の方々に大変不安感、不信感を与えたことが、こういう方向を推し進めていく上で大きなネックとなっているというふうに認識しておりまして、今後とも、動燃の抜本的改革取り組みますとともに、安全確保の充実強化や積極的な情報公開、それから国民との対話の促進などに努めて、信頼回復を図っていきたい、こう思っております。
  25. 田中和徳

    ○田中(和)委員 いよいよ時間が参りましたので、最後に端的にお話をさせていただきたいと思います。  いろいろと大変な経過の中で海洋地球研究船「みらい」が就航しましたし、熱帯降雨観測衛星が打ち上げ予定とも伺っておりますし、情報集積面では相当前進をするのじゃないかと思っております。ただ、情報提供体制をどう築くかということが非常に重要だろうと思いますので、ぜひ、科学技術庁としても体制をきちっとして取り組んでいただきたいと思いますが、そのことだけ、どういう方向なのかお承りをして、終わらせていただきたいと思います。
  26. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 少し具体的なことなので局長に答弁させます。
  27. 青江茂

    ○青江政府委員 状況をちょっと御説明させていただきます。  まず、地球を知るという意味におきまして、宇宙からの、衛星からの写真、それから、海洋観測船とかブイを展開するとか、そういったことで海を知る、それから、地球の深部というものをいわゆる掘削をして知る、こういったふうな諸般のデータ、地球を知る、きわめるという上でのデータというのが大変重要でございます。  これは、科学技術庁の機関のみならず、関係省庁、いろいろな機関がございましてやってございまして、そのデータというものを皆さんがまさにアベーラブルに研究の用に供し得るようにということでもちまして、まさにオープンな形でやってございます。と同時に、そのデータを使いまして変動のメカニズムを解明するということがこれから先大変重要だというふうに思ってございまして、多くの研究者の方々に集まっていただきまして、その研究に今取り組もうとしておるというやさきでございまして、研究データの開示につきましては十分に留意をしてまいりたい、かように考えてございます。
  28. 田中和徳

    ○田中(和)委員 終わります。ありがとうございました。
  29. 小池百合子

    小池委員長 奥山茂彦さん。
  30. 奥山茂彦

    ○奥山委員 自由民主党の奥山茂彦でございます。  このたびは谷垣長官も、科学技術はぜひ取り組んでみたいということで、積極的に頑張っていただいておるということを聞いておるわけでありまして、私も長官と一緒に今度また新しくこの委員会に入れていただきまして、ひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。  先ほどから科学技術行政の話が小野先生、また 田中先生からも出ておりましたので、私もその問題をやらせていただくとともに、それから、青少年に夢を与えるということから、科学技術庁で宇宙少年団というものがつくられて、子供たちに積極的に宇宙について勉強をする機会を与えたい、このような努力もされているわけでありますし、松本零士さんにその代表を務めてもらっておるわけであります。  宇宙開発というのは、我が国にとって、昭和三十年代に東大の宇宙研の糸川英夫先生によるペンシルロケットというものが我が国のロケット技術、宇宙開発のスタートということが言われておったわけであります。その後、格段の進歩が我が国の場合遂げられて、そして、今やHⅡロケットは世界のトップレベルに達しておるのではないかというようなことが言われておるわけであります。そして最近では、アメリカのヒューズ社というところですが、ここが日本のHⅡロケットでもってこれからの衛星を打ち上げたい、このようなことで発注が来ておる。こんなことも聞きますと、まさに日本宇宙開発技術というものは格段の進歩が遂げられたのではなかろうかと思います。  しかしながら、最近、地球観測衛星の「みどり」が昨年打ち上げられて、太陽電池の故障でもって機能停止をしてしまった、こういうことで、その原因解明がずっと行われてきたわけでありますが、その解明がどのようになったのかということが一つ。それから、その後、通信技術衛星「かけはし」の打ち上げの予定が、当初八月になっておった、これがずっと延びて来春になるということも聞いておるわけでありますし、さらにまた、技術衛星の「きく七号」、これがいつごろ打ち上げられるのか。それからもう一つ、熱帯降雨観測衛星のTRMM、これが日米協力によってこれから進められようとしておるわけでありますが、これら打ち上げの予定はどのように立てられておるのか、最初にまずお尋ねをしたいと思います。
  31. 青江茂

    ○青江政府委員 お答えさせていただきます。  まず第一点、「みどり」の機能停止の問題につきましての原因究明に関してでございますけれども、先生御案内のとおり、本年の六月の段階でもちまして「みどり」の太陽電池パドルからの電源というものが停止をし、機能停止、ダウンという状態に陥ったわけでございます。  その原因につきましては、もちろん宇宙開発事業団自身の中でも、実は特別のチームをつくりまして原因究明に当たったということでございますが、一方、宇宙開発委員会におきまして、技術評価部会というのがそのもとにございますが、ここでもちましてその原因究明、非常にインテンシブな議論をいただきまして、大体テクニカルにはこういうことであろうというふうな原因究明というのがなされまして、本年の十月の段階におきまして宇宙開発委員会に報告され、オープンにされたところでございます。  その報告書では、テクニカルな原因究明のみならず、これから先の、いわゆる次の衛星にどういうふうにこの教訓というのをつないでいくのかというふうな点につきましても指摘がございまして、そういった指摘を踏まえまして、これから先の衛星につきまして所要の対応措置というものを今講じておるというふうなところでございます。  八月の十七日の打ち上げを予定してございました「かけはし」につきましては、そういう状況下にございましたので、打ち上げを延期いたしまして、そして今回の原因究明のレポートに沿いまして所要の再点検を行いまして、そして今、この冬期、一-二月期の打ち上げということを目指して所要の準備というものを進めておる、こういう段階にございます。  それから、技術試験衛星Ⅶ型「きく七号」、それから日米協力によります熱帯降雨観測衛星TRMM、この打ち上げでございますけれども、これにつきましては、この十九日、種子島からの打ち上げということでもちまして、準備を今着々と進めておるという段階でございますが、とりわけ技術試験衛星Ⅶ型につきましては、これはランデブードッキングを行うという非常にチャレンジングな課題に立ち向かうわけでございまして、非常に注目をしている。一方、熱帯降雨観測衛星につきましても、先生御案内のとおり、日米協力ということのシンボルのような衛星でございます。また、これは地球環境にも非常に資するということでもって注目されておるというところでございますが、いずれにしましても、十九日、同時打ち上げということでもって進んでおるというふうな状況にございます。
  32. 奥山茂彦

    ○奥山委員 私は、ことしの春につくばの宇宙開発事業団に行ってまいりました。そして、NASDAのこのパンフレットをもらったわけなんですけれども、ここで、一つは、日本も月に向けてこれから衛星を飛ばしたい、それからもう一つは、火星に向けてこれからもまた衛星を、ロケットを飛ばしたい、このような計画がるるこの中でも述べられておるわけでありますけれども、最近は、アメリカあるいはまたロシアと並ぶ宇宙開発を目指して、今我が国の宇宙開発の努力がなされておるわけであります。  こういうことも含めまして、そしてまた今度の財政構造改革の中においても、科学技術予算は五%アップという特別の配慮が払われて、先ほどからも出ておりますけれども、我が国はいわゆる科学創造立国というものを目標として日本の夢をかけていきたい、このように進められているわけであります。まさにその夢を科学技術庁が背負って、これからの宇宙開発を進めていかなければならないわけでありますので、そういったこれからの夢を、ひとつ長官に語っていただければありがたいと思うんです。
  33. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 NASDAを御見学になって、月それから火星、こういうことに対してどうかという御質問でございます。  我が国の月探査につきましては、平成十年度に宇宙科学研究所が、月内部の地殻構造及び熱的構造を解明するということを目的としまして、第十七号の科学衛星を打ち上げる予定になっております。  それから、平成十五年度ごろに、今開発しておりますHⅡAロケットによる打ち上げを目標にして、月探査周回衛星というものを平成十年度の概算要求において、開発研究に着手すべく要求をしているところであります。この月探査周回衛星は、宇宙開発事業団と宇宙科学研究所との共同プロジェクトでありますが、月の利用可能性の調査及び月の科学の発展を図ることを目的としておりまして、着陸実験も行う予定にしているわけであります。  一方、火星探査につきましては、宇宙科学研究所で、火星大気の構造とか運動並びに太陽風との相互作用を研究することを目的としまして、平成十年度に第十八号の科学衛星を打ち上げる予定にしております。  こういうふうなことで、我が国としても独自の月及び惑星探査計画を着実に推進していくことにしているわけでありますが、一方、先ほどからお話もございますように、こういうことをできるだけかみ砕いて国民にお伝えをして、先ほどからいろいろお話がありますが、こういうところにやはりフロンティアがあるんだな、自分もこういう分野に飛び込んでみようか、あるいは科学技術の推進に自分もかけてみようか、こういうことを考える若い人たちをぜひつくっていきたい、そんなふうに思っております。     〔委員長退席、井上(義)委員長代理着席〕
  34. 奥山茂彦

    ○奥山委員 最近、文部省だったと思うんですけれども、子供の意識調査をしたときに、特に授業内容について、科学技術に最近はやや関心が薄れている、こういうふうな統計も出ておるわけでありますので、我々はやはり、これからも子供たちの夢を何とかさらに膨らましていけるように、また科学技術庁が宇宙少年団というものを今全国的につくっておられるということで、もっともっと多くの子供たちがここに参加してくれるように、これからも努力をしてもらうべきでなかろうかと思います。  それから、科学技術行政にいきたいと思うんですけれども、我が国は明治以来、本当に東洋の小さな島国であって、資源小国であるわけでありまして、これは言うまでもないんですけれども、しかもその日本が生きてきた道は、高度の教育を施すことによって、また人的資源を発掘して、さらにまた一方において、貿易でこの国をつくってきたわけであります。そして最近は、非常にその貿易が活発になって黒字を生んで、逆に海外の多くの国々から非難を受けるというような状態にまでなっておるわけでありますけれども、翻って考えてみまして、いわゆる技術開発に関する国際収支から見ますと、これはもう明治以来一貫して我が国はずっと赤字になっているわけでありまして、この技術貿易というんですか、こういうものは、いつも外国から技術を導入し、その対価を支払う、こういうことで、戦後これが黒字になったということはほとんどなかったわけであります。それだけ日本が、今日の高い工業製品を生んでいるにかかわらず、基礎的な技術開発力は十分でなかったということが言われておるわけであります。  そういう中で、ノーベル賞学者と言われる方々が我が国にも何人か出ておられるわけでありますけれども、このノーベル賞学者でも、日本の国内の研究の成果で受賞されたというよりも、外国で研究されてその成果が認められて受賞されたというような、こんな場面も多いわけでありますので、我が国の科学技術界にとっては本当にありがたいようで寂しい思いをするわけでありますが、こういったいわゆる基礎研究というものがどうしても弱いということがこれまでも言われておったわけであります。  そういう点で、これからどういうふうな科学技術行政を進めていったらよいのかということで、科学技術基本法というものもこのたびつくられたわけでありますが、長官の御意見を聞かせていただきたいと思います。     〔井上(義)委員長代理退席、委員長着席〕
  35. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 明治以来、我が国は外国の科学技術を輸入してきて、その面では赤字といいますか、いつも入超だったのではないか、それを克服していくためには我が国ももっと基礎研究を充実すべきではないか、こういう御趣旨だと思います。  ただ、我が国の技術貿易額につきましては、いろいろ総務庁でも統計をとっておりますが、アジアを含めた全体では近年輸出超過になってきております。ただ、奥山先生御指摘のように、欧米諸国に対しては輸入超過になっておりますし、それから、今ノーベル賞等御指摘になりましたけれども研究者の出入りでは、やはり出国数が入国数を大きく上回っているというのも、残念ながらといいますか、事実だろうと思っております。  それで、奥山先焦御指摘のように、議員立法で科学技術基本法をつくっていただいて、科学技術基本計画を去年閣議決定をしたわけであります。その中では、二つ基本的な方向といいますか、一つは、社会的、経済的なニーズに対応した研究開発を推進していくということをうたっておりますが、もう一つ、基礎研究の積極的な振興ということもその中でうたっているわけです。  これが基本的な方向だということで掲げているわけでありますが、こういうことを踏まえまして、基礎的研究の中心的役割を我が国で担っております大学とか国立試験研究機関における研究開発を強化していっている。先ほど御指摘のように、大変財政の厳しい中でありますけれども科学技術関係については特段の御配慮もいただいて、御理解を得て進めているというところであります。  具体的には、いろいろ法律等もつくっていただいたわけでありますが、柔軟かつ競争的で開かれた研究環境を実現していくということから、国立試験研究機関への任期つき任用制を導入するという制度もできましたし、それから公募によって競争的研究資金を拡充していくというようなことも推進してきたわけであります。  いずれにしましても、その社会的、経済的ニーズへ対応していくという方向と、きちっと基礎研究を振興していくということをバランスよく進めていきたい。また、そのことが同時に、出超、入超という議論がございますけれども、我が国が果たしていく国際貢献の中でも大きな意味を持っていくのではないか、こんなふうに思っております。
  36. 奥山茂彦

    ○奥山委員 私のたまたま知っている方で、ある研究に従事しておられる方がおるのですが、かなり一言居士でなかなか頑固なところがあるのですよ。大体科学技術の研究をされておられるという方は、ある意味でいうと変人が多いということも言われているわけでありますけれども、そういう方々がやはり自由なもとで研究開発に従事できるように、そのような環境を我々はつくっていかなければならないと思うのです。  最近は、待遇面とか給与面とか、そういう面では欧米各国に比べても我が国の場合はそれほど遜色はないというふうに聞いておるわけでありますけれども、いろいろな人に聞きますと、日本ではやはり居心地が悪い、十分に評価をしてもらえないしという声を我々はよく聞いておるわけであります。  大学の研究室では、やはり教授を中心として序列が非常にきっちりしておるわけでありますので、なかなか若手の研究が自由にやらせてもらえない。役所は、今度は縦割り社会がきつくて、官僚的なシステムの中で動きがとれないとか、それからまた民間の事業者は、やはりすぐに実利に結びつくような研究でないとなかなか評価してもらえないとか、このようなことが言われて、やはり日本の研究室ではまだまだ居心地が悪いということを我々よく聞いておるわけであります。  こういった方々が柔軟なシステムでもうて自由に研究できるような、そういう場を提供できるかどうかということがこれからの大きなかぎになってくるのじゃないかと思います。それから、その研究成果が、ここにもいろいろうたわれておりますけれども、やはりそれなりに評価して、そしてそれが社会的にいろいろな面で活用できるような、そういう環境づくりを我々はしていかなければならないのじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  37. 宮林正恭

    ○宮林政府委員 お答えさせていただきます。  先生の御指摘のポイントというのは、まさに昨年できました科学技術基本計画における一つの大きな柱になっているポイントではないかというふうに私了解をしているところでございます。  先生が先ほどから述べておられます問題は、我が国の研究環境が欧米に比べると魅力性を欠いているのではないか、こういうふうなお話かと理解するわけでございますが、こういうふうな状況を踏まえまして、我が国の研究環境をよりグローバルスタンダードといいますか、国際的な標準に合ったような研究環境にしていく、こういうふうなことが非常に基礎研究の推進なり活性化に役立つ、重要なことだ、こういうふうに認識しております。  このために、若手研究者層の養成拡充を図るという観点から、ポストドクター等一万人支援計画ということで、ポストドクターがより多くの方が支援を受けられる形にしていく、こういうふうなことでございますとか、あるいは若手研究者創造的能力を涵養いたしまして、より柔軟に流動性を持って動けるようにするというふうな観点から、国立試験研究機関に任期つきの任用制を導入いたしますとか、あるいは外部の人材の活用とか各種研究費の拡充によりまして研究支援者を確保していく、こういうふうな環境条件。  あるいは、競争的な条件といいますか、十分な評価が行われて、それに基づいて資金提供が行われるような、そういうふうな条件を設定をするということで、戦略基礎研究推進事業でございますとか、さきがけ研究21といったような枠組みも設定され、資金が投下されている、こういうふうなことになっております。  さらにまた、施設とかそういうふうなものにつきましての計画的な改善や研究機関の研究情報ネットワークの活用といったようなことを含めまして積極的に推進をしていきたい、こういうふうに思っております。  研究コミュニティーの問題につきましては、これは先生御指摘のようなことも今後十分議論をしていかなきゃいけない問題ではないかということで、ことしの科学技術白書におきましても、開かれた研究社会、こういうふうなことを取り上げて議論を始めている、こういうところでございます。  今後とも、先生の御指摘のようなことを踏まえまして進めてまいりたい、こういうふうに思っているところでございます。
  38. 奥山茂彦

    ○奥山委員 具体的なことで一つ申し上げたいのですが、ことしの十月六日に、長官が兵庫県の大型放射光施設の開所式に出席されたわけでありますけれども、これはある意味でいうと、これからの大型の研究開発の基盤整備というのですか、それの一つの試金右になるように私は思いますが、これからどういう形でこれを進めていかれるのか、ちょっとその辺のことも含めてお尋ねしたい。
  39. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 この十月にオープンをしました、供用されましたSpring8でございますけれども、これはこれから基礎研究、あるいは成果にすぐに結びつけたようなことを言うのはいけないのですが、これを利用していただいて、これからノーベル賞クラスの研究が出てくるんじゃないかと大いに期待が持たれるわけであります。  それで、これは原子力研究所と理化学研究所が共同でやっておる施設でありますけれども、この施設によりまして物質科学とか地球科学、生命科学、医学等の応用ですね、生命現象がどうなっていくのか、あるいは分子構造がどうなっていくのか、すばらしい光で解明されることがたくさん出てくるんじゃないかと期待しているわけであります。  このSpring8はどういうふうに使っていくかということでありますけれども、国の内外に広く開かれた利用研究施設として世界の中核的な研究拠点に育てていきたい。それから、研究施設の充実や円滑な運営が今後の重要課題になってくるだろうと思います。  それで、多様な研究を進めていくために、共用ビームラインとか専用ビームラインを今後増設しなきやなりませんが、産学官、国内外を問わず、広く外部の研究機関との共同研究を進めていく必要があろうかと思います。海外からも大変関心を持っていただいて、一緒にこれを使いたいという要望がたくさん来ております。  供用開始時点では、共用ビームラインについては八本が利用に供されておりまして、年度内にはさらに二本供用する予定であります。それから、製作中及び計画中のものがほかに四本ございます。こういったビームラインの平成九年度後半の利用課題につきましては、百二十八件が採択されておりまして、高温高圧下における物質の構造解析等の研究を実施しております。  それから、専用のビームラインについては、原研とか理研とかあるいは無機材質研究所、あるいは大阪大学、それから兵庫県あるいは産業界、こういったところを合わせて平成十二年までに十一本が整備される予定であります。これらを利用して、原研はウラン化合物等の重元素物質の解析、理研は医薬品の開発等に資するたんぱく質の構造解析、産業界ではLSI用の薄膜の解析やシリコンの精密評価、こういった研究を実施することになっておりまして、大きな成果を上げてくれることを期待しております。
  40. 奥山茂彦

    ○奥山委員 これで終わりたいと思いますが、今長官がくしくもおっしゃったんですが、いわゆる国立の研究機関と、それから大学の研究室並びにまた民間がそれぞれ持っている研究機関との交流とか情報の交流化ということは、これはもう二十一世紀科学技術振興にとっては非常に大事なことになってくるわけでありますので、特に科学技術庁が、これから省庁再編でどうなるかわかりませんけれども、コーディネーター役として積極的な役割をひとつ果たしていただきたいと思います。それを最後に要望して、終わります。  ありがとうございました。
  41. 小池百合子

    小池委員長 斉藤鉄夫さん。
  42. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 新進党の斉藤鉄夫でございます。  谷垣長官、加藤次官、御就任おめでとうございます。ちょっと時間がたってしまいましたが、野党の立場からお祝いを申し上げたいと思います。  自民党の両エースの登場で、本当科学技術行政に対して本腰を入れていこうという橋本政権の意気込みがうかがえるわけでございますが、我々野党としても、科学技術政策というのは本当に大事であるという立場で、きょう、大臣、次官といろいろな議論をさせていただきたいと思います。  今国会の初めに、我が新進党それから民主党、太陽党三党で、政府委員制度の廃止という提案を議院運営委員会でさせていただきました。この委員会では、政治家同士が骨太の議論をする場にしよう、委員会をそういう場にしよう、こういう提案でございました。この提案、用いられるところとはならなかったわけでございますが、基本的に、骨太の議論を政治家同士がしていくということについては大臣も次官も御賛同をいただけると思いますので、まずきょうは、その予行演習と言ってはなんですけれども政府委員の方、大変たくさん来ていただいていて申しわけございませんが、大臣、次官とさしの議論をさせていただきたいと思います。さしの議論と言うとちょっと語弊がございますが、よろしくお願いいたします。  きょうは三つの質問をさせていただきます。一つ科学技術政策そのものについて、それから二番目が宇宙開発について、三番目がエネルギー政策でございます。  最初に、科学技術政策についてですが、まず最初に大臣と次官に同じ質問をさせていただきたいと思います。それは、今の日本科学技術レベルをどう評価されているかという質問でございます。  そう質問するからには私自身認識を最初に申し上げたいと思うんですけれども、私は、日本科学技術レベルは相対的に低下している、こういうふうに今認識をしております。世間的には、キャッチアップ型からフロントランナーへ、そして、科学技術基本法もできて科学技術予算については非常な厚遇がされているというふうなことを考えますと、一般的に相対的なレベルが低下しているというのは一見信じられないようなことでございますが、現実に私は低下していると思います。  その原因は、一つは、やはりいまだに基礎研究に対しての投資が欧米諸国に比べてはるかに劣る。研究総額に対する基礎研究費の割合は、いろいろ数字変わっておりますが、一般に欧米は四割、日本は二割、欧米の半分でございます。そういうことが一つ。それからもう一つは、特にアジア周辺諸国の追い上げであると思います。  この夏、科学技術政策の会という超党派の会で韓国へ行ってまいりました。中山先生が団長、近江先生が副団長で行ってきたわけですが、韓国は、大変科学技術の振興に国を挙げて取り組んでいる、国策として取り組んでいる、非常に優秀な人材が集まるシステムをつくって国を挙げて取り組んでいるという姿を見てまいりましたし、また、中国にも行ってまいりましたが、この中国でも、清華大学を中心に大変な研究開発投資がされているという姿を見て、日本科学技術レベルはアジアの周辺諸国からも追い上げられている、そして、フロントランナーであるべき科学の最先端でも、欧米に比べてまだまだ基礎研究費が足らなくて実は水をあけられつつあるというのが私の個人的な認識なんですが、大臣、次官、今の日本科学技術のレベルをどのように評価をされてこれからの科学技術行政に取り組もうとされているのか、そのお考えをお聞きしたいと思います。
  43. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 今、日本科学技術がだんだん、どういう言葉で表現されたのか、衰退とまではおっしゃらなかったですけれども、少しずつ相対的にダウンしてきているんではないかという御認識を示されたわけであります。  科学技術庁では、平成八年度に先端科学技術研究者に対する調査というのをいたしまして、いろいろな分野日本が優位に立っているかどうか、こういう質問をしたわけであります。それを見ますと、一九九三年当時と一九九六年当時を比べま して、いろいろ出入りがありますが、ライフサイエンス分野、物質・材料分野、情報・電子分野、海洋・地球科学分野でそれぞれ統計をとりましたところ、そういう研究者の回答が、日本優位というところから若干トーンが下がってきているということがこの調査からあらわれているように思うわけでございます。  それで、やはりそれではいけない。今斉藤先生が御指摘になったように、キャッチアップからフロントランナーという大きな日本社会の曲がり角だと思いますが、何とかそこにてこ入れをしていかなければならない。そしてもう一つ、私自身、憂慮というとちょっと大げさな表現になるのかもしれませんが、先ほどの与党の御質問の中にもありましたけれども、若い人たち科学技術というものに夢を持って、よしやろうという雰囲気が少し薄れてきているのではないかな。  私自身は、ちょっと脱線したことを申し上げていけませんけれども、スプートニクの打ち上げとかアポロ三号とか、あるいは昭和三十一年から始まった南極観測とか、それからクストーの海洋映画とか、ああいうものに一種のフロンティアを感じて、なるほど、こういうおもしろいことがあるんだなというようなことで胸躍らせた。先ほどの手塚治虫さんの鉄腕アトムもそうですけれども、ああいうことにいろいろ夢を感じながら育った世代なんですが、そういうことが少し落ちてきているんじゃないかな。こういうことも実は心配をしておりまして、全体そういう雰囲気を高めていくためには、やはり政治を挙げて取り組まなければならないのではなかろうか、こう思っております。
  44. 加藤紀文

    加藤(紀)政府委員 大変難しい御質問で、どうお答えしていいのかなと先ほどから考えておりましたが、対欧米と対アジアという視点から見て果たして我が国のレベルがどうなのかな、なかなかこれはお答えできにくいのじゃないかなと思っております。  先ほど来お話がございますように、まさにもう我が国の科学技術キャッチアップからフロントランナーに移行しなきゃいけないというお話がございましたが、だから、どの辺のレベルかというよりも、これから一生懸命頑張っていくしかないのじゃないかなという気がしますので、私も頑張ってまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  45. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 私自身、一昨年の科学技術基本法成立をお手伝いさせていただきましたけれども、そのときの問題意識は、このままでは日本は二十一世紀科学技術のレベル、ということはすなわち経済レベルにおいても二流国になってしまう、科学技術に力を入れていかなければいけないということで、科学技術基本法をつくりました。そういう意味では、先ほどの大臣と次官のお答えを聞きますと、私と同じ問題意識を持っておられるというふうに認識をいたしました。  それで、この科学技術基本法ですけれども、平成八年から平成十二年、この五年間に十七兆円というお金をつぎ込んで科学技術の振興を図ろう、キャッチアップからフロントランナーへ、また相対的な技術レベルも底上げしていこう、こういうことでございました。そして、基本計画がつくられまして閣議決定されたわけでございます。  その十七兆円という金額ですけれども、財政構造改革の論議の中で、確かに科学技術予算は、ほかはゼロなのに、また公共事業はマイナス七%なのに科学技術予算は五%と非常に優遇をされているとはいえ、この一たん約束された十七兆円というのは、この五%という数字では到底追いつかない、こういう状況に今あると思うわけですが、このギャップについてどうお考えか。また、そのギャップについて回復していこうというおつもりがあるのか、そのおつもりがあるのであればどういう努力をされるのかについて、大臣にお聞きしたいと思います。
  46. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 ことしの六月三日に閣議決定されました「財政構造改革の推進について」におきまして、「科学技術基本計画については、同計画の実施に当たって、」「危機的な財政事情を勘案して弾力的に取扱い、財政構造改革予算と整合性のとれたものとする。」こうされていることがございます。そういうことにかんがみますと、斉藤先生が御指摘科学技術基本計画、期間中二〇〇〇年度までに十七兆円の政府研究開発投資を行うということになっているわけですが、極めて厳しい状況にあると言わざるを得ないと思っております。  しかしながら、政府研究開発投資の拡充というのは、科学技術基本計画の重要政策、柱と言ってよろしいかと思いますが、柱の一つでありますから、厳しい財政事情の中でも、関係省庁の協力を得ながら極力科学技術関係経費の確保に努めていきたい、こう思っております。なかなか、ここは御協力を得ながら進めなければならないわけでありますが、科学技術振興費、これはほかのところが抑えられている中で五%ということに配慮していただいているということもあります。  今後とも、研究開発の適切な評価を行いながら、研究開発資金のできるだけ効率的、重点的な配分を図りながら、こういう状況の中でも本当に必要なところは落とさないようにやっていかなければならないと思っております。
  47. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 そうしますと、今のお答えは、計画とギャップが生ずるけれども今の財政事情からすればもう仕方がない、しかし努力はしていくということですけれども、そうすると、じゃ計画というのは一体何だったのかということになるわけでございます。  計画を最初に立てたからもう最後まで、どういう状況の変化があっても必ずそれをやり遂げるんだという態度が一〇〇%正しいとは思いませんが、状況状況に応じて変化していく、対応していくというのは当然必要だと思いますが、つい一年前に立てた計画がすぐほごになるということについては、科学技術基本法を議員立法でつくったという経緯もあり、提案をさせていただいた我々としては非常にじくじたる思いがございます。  これは、議員立法だから余りその計画は重要視しなくてもいい、こんなことが政府部内にあるのかどうか、それについてお伺いいたします。
  48. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 斉藤先生おっしゃるように、確かに十七兆円という計画を決めた後、少しトーンが落ちてきた、いろいろ柔軟に考えなければならないにしてもけしからぬではないかという御指摘、私も胸にちょっと痛いものが、ちょっとというか相当痛いものが今の御質問であるわけでございます。  ただ、斉藤先生がおっしゃったような、議員立法だから軽く見ていいではないかというような雰囲気が政府部内にあるとは思っておりません。むしろ、私は、こういう基本法というようなものを議員立法でつくっていただけるというのは、今まで長い間、基本法というものはやはり役所が、昔はいざ知らず、最近においての基本法というのは大体役所が提案してつくってきたというのが流れだったと思います。そういう中で、こういう法案を議員立法でつくっていただいたということに私は非常に大きな意義がある、そしてまたそこを強調していかなければいけないと思っております。
  49. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 わかりました。よろしくお願いいたします。  基礎研究、日本が非常に力を入れていなかったと言われている基礎研究に力を入れる、これが科学技術基本計画の一つの柱でございますが、次の問題は、それでは、お金をつぎ込むにしても、どういうテーマにお金をつぎ込むかという点が非常に重要になってくると思います。基礎研究といいましても無限にあるわけでございます。研究者の数だけ基礎研究テーマはあると言ってもおかしくないと思います。そういう中で、どのテーマを選んで我々の血税をつぎ込むのか。  それから、そうやって得られた研究結果を評価して、やめるべきものはやめる。基礎研究ですから、当然、やってみたけれども何もわからなかったというものも出てくると思います。たくさん出てくると思います。そういうものについてはやめるとか、このテーマについてはおもしろそうだからもっとやってみようとか、そういう結果の評価、 こういうシステムが非常に大事になってくると思うわけです。  私は、そういう意味で、日本とアメリカは、そういう、これからどこにお金をつぎ込むかという科学技術国家戦略を立てる、また、出てきた結果を評価する、そしてそれを国家戦略の次の立案に役立てるというのは、アメリカも日本も、ある意味で両極端で失敗していると思うのです。  政府委員の方、たくさんいらっしゃって大変申しわけないのですが、例えば日本の場合は、科学技術庁が主導で研究テーマを決めて、一たん決まった研究テーマは世の中がどう変わろうとも最後までそれを完遂する、ある意味では美しい姿かもしれませんけれども、そういう姿勢がある。一つのいい例が原子力船「むつ」なのかな。私は、原子力船の研究というのはそれなりに大切だと思いますけれども原子力船という、商業船に原子力を使うという社会的要請がなくなった段階で、あそこまで血税をつぎ込む必要はあったのかどうか議論の余地があると思いますが、しかし、最後まで完遂をする。  一方、アメリカは、これまで何百億ドル、何十億ドルとつぎ込んだようなプロジェクトも、すぐに、政権がかわるごとにつぶれてしまう。これも、ある意味では国家戦略がないのかなというふうな気がします。  国民にとって一番幸せなのは、その中間どころでいいシステムをつくるということだと思いますけれども、この科学技術国家戦略についてどうあるべきか。今度の行革案ですと、内閣府に科学技術会議をつくる、そこで科学技術国家戦略をつくるということですけれども、私どもは、国会にその機能を持たす方がいいのではないかとも今考えておりますけれども、この点について、科学技術国家戦略がどうあるべきか。今まであるのか、あるというふうに御認識があるのか、それと、今後どうあるべきとお考えかについて、これは非常に重要な問題なので、大臣と次官のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  50. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 まず、日本科学技術国家戦略というものがあるのかないのか。従前の仕組みは、科学技術会議という場で御議論をいただいて大きな方向をつくってきたと思っておりますが、やはりそれをもう少し力強いものにしていかなければならないということで、今、行革会議の中で、今御指摘になった総合科学技術会議という形で、より強力なものにつくりかえていこうという御議論がされていると思っております。  それで、私は、今斉藤先生が御指摘になった中で、今まで確かに日本科学技術政策の中ですぐれているところ、弱かったところ、いろいろあると思うのですが、一つのポイントはやはり、今おっしゃった評価のあり方ということをどうしていくか、それからこの行革議論の中でも、科学技術政策科学技術戦略に対する評価というものをどうしていくかということが一つ大きなポイントなのではないかと思っております。  今、アメリカと日本の比較をされましたけれども、先日も、日米科学技術協定のもとで、アメリカのギボンズ科学技術担当の補佐官がお見えになりまして、日本側とアメリカ側で会議を一日したわけでありますけれども、そこで私が感じましたのも、今斉藤先生が御指摘になったような評価のあり方の違い、アメリカ側の科学技術に対する評価が我が国よりもかなり厳しい姿勢で行われている、そこのプラスもあり、また問題点もあるのかなということを実は感じたわけであります。  それで、基礎研究が十分でないという御指摘でありましたが、基礎研究につきましては、研究所における経常的な研究活動として行われるもののほか、公募等を通じて競争的に複数の候補の中からすぐれたものを選択していこうというようなことも最近試みてきている。こうした競争的資金による研究開発課題について、従来もちろん評価が行われていなかったわけではありません、課題選択の際の審査で事前評価は相当厳正に行われてきたのではないかと思いますけれども、「むつ」の例をお挙げになりましたが、研究の中間評価とか終了後の事後評価というものが必ずしも十分ではなかったのかな、こういうふうに思っております。  ことし八月に、「国の研究開発全般に共通する評価の実施方法の在り方についての大綱的指針」というのが内閣総理大臣名で決定されたわけでありますが、今後、これは評価を実施していく上でのガイドラインになっていくわけでありまして、競争的資金による研究開発課題について、事前評価の一層の充実を図るとともに、研究開発の中間及び事後における評価の徹底を図るというふうになっております。  ただ、斉藤先生御指摘のように、余り短期間でぱぱっと結果を出したり、画一的、短期的な視点から余り性急に評価をすると、十分に基礎が伸びていかないということもあるわけでありますので、評価のあり方というのがやはり今後の科学技術の国家戦略を決めていく上で、今まで必ずしも視点が十分でなかった、これから少し我々もそこを工夫し、研究していかなければならないところだ、こう思っております。
  51. 加藤紀文

    加藤(紀)政府委員 大臣の御答弁のとおりでありますが、まさに評価のあり方、これをもうちょっと充実していかなければいけないのかなと率直に感じました。
  52. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 国会がその評価に加わるべきではないかという議論については、いかがでございましょうか。
  53. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 これは、国会の審議あるいは国会の中の組織がどうあるべきかは、私ども、当選しましたときに先輩から教えられましたことは、国会の中の御議論のあり方については、今行政府にいる者が余り差し出がましいことを言ってはいけないと先輩に教えられてきたわけでありますけれども、私は、こういう科学技術委員会でも、日本が行っております、科学技術庁が行っておりますいろいろな研究プロジェクトについて、さまざまな観点から御評価をいただき、御審議をいただくということは、余り国会のあり方に口を挟んではいけないけれども、そういうことで大いに議論をしていただくのは結構なことではないかと思っております。
  54. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 この点につきましては、またこの委員会でも議論をしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  それでは次に、宇宙開発について、その基本的なお考えをお聞きしたいと思います。  ここで哲学論議をするつもりはありませんが、そのような禅問答になるかもしれませんが、何のために宇宙開発をするのかという点について、認識をともにしたいといいましょうか、明らかにしていただきたいのですけれども宇宙開発をするのは実利を得るためだ、何らかの実利が我々の人間社会人間生活にある、それを目的に行うのだという考え方と、それから、実利というのは宇宙の場合は関係ない、真理を追求するために行うのだ、ニューフロンティアだからそこに出かけていくのだという考え方と、二つあるわけでございます、非常に簡単に言いますと。  あるとき、そういう議論をしておりましたとき、ある研究者が、例えば月に人間が行く、これは将来の月面開発のために行くのだ。じゃ、月面開発をすればどんないいことがあるのですか。月面にはヘリウム3という地球上にはない元素がある、これはヘリウム3重水素核融合の燃料になる。この核融合は、放射線も出てこない非常にすばらしい核融合なんだそうです。将来、そういう無限のエネルギー源を地球にもたらすために月に行くのだ。  こういう話をする人がおりましたら、それを聞いていた評論家の立花隆さんが、何をばかなことを言っているのだ、確かにそういう面もある、しかし、そんなために大枚かけて月へ行くのではない、それは、そこにニューフロンティアがあるから行くのだ。何万年も前にジャングルに住んでいた類人猿が、ジャングルの一番外側、その外側に広がっているサバンナを見て、とても怖くて足を一歩踏み出せなかった。ところが、非常に勇気ある類人猿がいて、そのサバンナに一歩踏み出した、 そこに今の人類の繁栄の礎がある。それと同じで、ニューフロンティアに出かけていくというのは、人間が持っている、また命というものが持っている本能的なものなのだ、だから宇宙をやるのだ。こういう議論を聞いたことがあるのです。  基本的に、血税を投入する宇宙開発について、端的に今二つ考え方を申し上げました。実利を求めての宇宙開発はこれは当然として、その実利はなくともニューフロンティアのために、命そのものが持っている本性として、やはりある程度の血税投入は当然なのだ、そういう考え方にくみされるかどうか、この点について、大臣と次官にお伺いしたいと思います。
  55. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 斉藤先生が長い間宇宙開発の仕事を手ずからなさってこられて、その過程の中で、これは一体どういうことなんだろうと随分自問自答もされ、御研究をされてきた一端を今お聞かせいただいたと思っております。  私も、この宇宙開発には、実利と、それから何というのでしょうか、人間が真善美を求めると言うとちょっと言い過ぎかもしれませんが、真理を求めるといいますか、フロンティアを開拓していくというか、そういう直接実利に結びつかない両側面があるのじゃないかと思います。  実利という点からいえば、やはり宇宙開発をしてきたことが、先端技術やいろいろな新しい知見を、知見といいますか、新技術を開発したことによって新産業が生まれてきた、そのことによって人間が豊かになったという面もこれは否定できないだろうと思いますし、それから、これは実利に入るかどうかわかりませんけれども、衛星を打ち上げて、宇宙を利用しながら、地球をいろいろ観察したことによって、地球環境というものがどうなっているのかというような知見が広がり、そういうものをまた防止したり、地球環境を改善していくような、我々の知恵なり技術を推進していくという、これは実利と言っていいのか、あるいは人間の真理探求の過程と言っていいのか、ここらはよくわかりませんが、そういう面での実利もあるかと私は思います。  それからもう一つ、これもあるいはだんだん実利から遠くなるのかもしれませんが、やはり若い方たちが夢を描いて、こういうところにさっきおっしゃったフロンティアがあるんだと感じて、科学技術に興味を持ったり、人間社会のあすに関心を持ったり、そういうことで人材を育ててくる大きなよすがになってきた、こういう面もあると思いますし、もっと一般的に言えば、先ほど斉藤先生が御指摘になりましたように、まさに真理を求め美しいものを求め、そうやっていく人間性の発露そのものなんだ、実利なんか問題でないんだ、こういうようなことがいろいろ言えるのではないかと思っております。  こういった多面的な意義を踏まえながら、御指摘のように、率直に申しまして宇宙開発というのはなかなかお金も食うものでございます。血税を投入してやっているわけでありますけれども、やはり人類の共通課題という認識に立って、それぞれの国がそれぞれの国力に応じた研究開発、貢献をしていくということが、今我々がこの宇宙開発に臨むときの一つの方針なのではないかな、こんなふうに思っております。
  56. 加藤紀文

    加藤(紀)政府委員 今大臣から申し上げたとおりでありますが、ちょっとつけ加えさせていただければ、科学技術創造立国を目指す我が国といたしましては、この宇宙というのがまさに先端科学技術分野の面で大変マッチするというか、まさにこの推進をすることによって知的財産の蓄積も進められますし、また世界に貢献していくこともできるのではないか。そういった面では大変重要な課題ではなかろうかな。それで、実利的、また真理の探求というのは、大変難しい面がありますが、両方相まってこれをやらなきゃいけないのかなと思っております。
  57. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 両方価値があることだ、こういうお答えだったようでございます。私も基本的には同感でございます。  そうしますと、地球観測とか宇宙空間利用とか、実利がすぐ見込めるもの、これについて投資をするということについては、これは国民も何ら異論を唱えないと思いますが、今回のNASDAが宇宙研と一緒に計画されている月の周回衛星につきましても、ある意味ではそう簡単に実利と結びつくものじゃない、しかしお金はたくさんかかる。じゃ、どの程度までの血税の投入が許されるのか。真理の追求だからといって、国民総生産の半分をそこにつぎ込むというふうなことは、これは極端な例ですが無理でございますし、かといいまして、先ほどおっしゃった全くゼロということでは、何のために生きているのかわからないというところがございまして、じゃ、どの辺が適当なのかという議論になってくるわけで、これは宇宙開発基本的な考え方だと思うのですけれども。  アメリカは日本の十倍の宇宙予算を持っている。これは半分が軍事関係ですから、それを差し引いても五倍以上。GNP比で比べましても、だから日本の倍以上あるわけでございますが、その程度つぎ込むというのがある意味で上限でしょうし、全くつぎ込まないというのが下限なわけですけれども、今の日本宇宙開発への投資について、どのような評価をされて、またどの程度が血税投入にふさわしいレベルなのか、そのお考えがあれば大臣からお聞かせ願いたいと思います。
  58. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 どこが妥当な線かというのは、答えを出すのがなかなか難しいことだと思います。  今斉藤先生がおっしゃられたように、我が国の宇宙関係予算とアメリカやヨーロッパの予算を比べてみますと、平成九年度で、我が国の宇宙関係予算が約二千四百億、一方アメリカは、軍事予算とかほかにいろいろあると思いますが、NASAの予算だけでも一兆六千四百億となっている。それから、欧州宇宙機関が約三千七百億ということになっておりまして、アメリカと比較しますと、現状では我が国はアメリカの六分の一ぐらいということなんでしょうか。  こういった数値がアメリカと比較しあるいはヨーロッパと比較してどうかということは、なかなか一概には言えずに、今御質問を受けながらどう答えようかと思っておったわけでありますけれども国際社会に置かれている我が国の果たすべき役割や我が国が置かれている今の財政状況等を踏まえて総合的に勘案していくというしか、ちょっと今にわかに大体このあたりが妥当であろうとぽんとなかなか申し上げにくい。非常に漠然としたお答えになるのをお許しいただきたいと思いますが、やはり一つ一つ吟味して積み上げていくというしか申し上げようがないなと思っております。
  59. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 この点につきましても、この委員会宇宙開発のあり方、どの程度の国民投資が適当なのかという議論を引き続きさせていただきたいと思います。  三番目の質問に移らせていただきます。  エネルギー政策でございますが、この十二月に京都で気候変動枠組み条約締約国会議、COP3が開かれます。その会議日本としては五%削減案、この削減案も各国で基準のとり方が違って一概には同じレベルでこの数字は扱えないのですが、その議論をしておりますと時間がなくなりますので、その議論はさておきまして、この日本の五%削減案をどのように評価されているかという点についてお伺いしたいと思います。  大臣として政府案におかしいという意見はなかなか言えないかと思いますが、しかし、この二酸化炭素排出抑制の一つの大きなキーは科学技術である。これからどれだけの科学技術がそのために開発されていくかということも大きなキー要素になっておりますし、また、原子力というのも大きな要素になっております。そういう大きな要素を所管される科学技術庁大臣として、この五%に対する評価、大臣としての評価が難しいということであれば、政治家谷垣さんの、京都出身の衆議院議員としての評価をお聞かせ願えればと思います。
  60. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 なかなか国会でお答えをすると きに、科学技術委員会に出てきて科学技術庁長官として以外のお答えができるのかどうかは、大変難しいボールを投げていただいたなと思います。  ただ、私としては、国内のCO2の削減対策につきましては、省エネルギーやそれから自動車の燃費の向上とか、さまざまな努力を積み重ねなきゃならないですし、それから今も御指摘になりましたように、エネルギー供給面においてはやはり原子力発電というものを避けて通れないだろうと思います。試算では、やはり二十基程度増設するということ、あるいは新エネルギーの供給を現行の約三倍にふやす等のぎりぎりの努力を積み重ねて、CO2の排出量をようやくゼロ%にできるかどうかという状況であるというような算定もあるわけでございます。  私としては、五%削減という日本案につきましては、議長国として、地球温暖化防止に意味があって、公平で、何とか実現可能であるということを三原則として、合意を目指すための交渉の基礎となるものとしてぎりぎりのボールを投げているのじゃないかな、こういうふうに理解をいたしているところでございます。科学技術庁長官として、そう考えております。
  61. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 いろいろな意見がございますが、日本の場合、アメリカの立場を考慮して、京都会議で合意を得るということをただただ目標にした、こういうふうに見られております。ところが、会議の目的は、合意を得るというその一歩先の、現実に地球温暖化を具体的に阻止するというところでございまして、そういう意味からいえば、この五%削減案では甚だ不十分だ、会議の根本的な目的から外れている、こういう意見がございますが、この点についてはいかがでしょうか。
  62. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 斉藤先生から大変厳しい御指摘がございましたけれども、私としては、私も京都出身の議員でもあるわけでありますけれども、合意を目指すことを求めなくていいというわけには、なかなか言いにくいな。やはり合意を目指して実現可能なものを追求していくという努力をしなければならないのではないか、こう思っております。
  63. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 それでは、この議論は果てしなく続きますので、この辺で終わります。  しかし、その五%削減案そのものも非常に大きな問題があると思います。それは、原子力発電を少なくとも二十基ということですけれども、現時点において計画もない原子力発電所がそんなに忽然とあらわれるわけはありません。原子力発電は、計画から実際に運開まで十五年ないし二十年かかると言われております。そういう意味からすれば、この二十基そのものがもう最初から幻の原子力発電所と言ってもいいわけですけれども、この現実とのギャップ、これを埋めるということが非常に大事になってくるわけですけれども、これについての御見解をお伺いしたいと思います。
  64. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 今御指摘のように、CO2を削減していくというために原子力エネルギーというものは現状においてはやはり極めて大きな役割を果たさざるを得ないというふうに思っております。  それで、その二十基というのが今のままでは机上のプランではないかという御指摘だったと思いますが、確かに国民原子力に対する不安感あるいは不信感が高まっている、そのことは否定できない事実であろう。二十基増設という目標はなかなか容易ではないなと思っております。  私といたしましては、当委員会でも繰り返し申し上げているところでありますけれども動燃の抜本的改革、うみを出し切って抜本的改革をなし遂げる、そして安全確保の充実強化、それからやはり積極的な情報公開、それから国民各界各層との対話の促進、こういうことに取り組んで国民の信頼回復を確立していく、信頼回復をきちっとなし遂げていく、こういうことを全力でやるしかない、このように思っております。
  65. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 私、先日柏崎の原子力発電所を視察してまいりました。視察の前の晩に地域住民の方との討論会に出席をしたわけでございますけれども、大変な不安をぶつけられました。特に、プルサーマルが柏崎で計画をされております。そこに集まった方は我が党の支持者の方でございまして、我が党のエネルギー基本政策基本的には支持してくださっている方ではございますが、それでも大変な不安をおっしゃった。その不安は、東電、原子力発電事業者も自治体もまた行政も信じられないと。それをよくよく聞いていきますと、やはり動燃の問題に突き当たってくるわけでございます。  確かに、私自身技術屋といいましても、はっきり言って原子力発電所が安全なのかどうかというのはわかりません。それはもうその専門家の人を信じるしかないわけでございまして、その信頼関係の上に成り立っている。その信頼関係をめちゃくちゃにしたのが今回の動燃の一連の不祥事ではないかと思いますが、この動燃また原子力の信頼を回復していく御決意を最後にお伺いして、私の質問を終わります。
  66. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 柏崎で、特にプルサーマルについて不安を持っておられるというお話でございました。そういう不安、不信感が、せんじ詰めれば動燃の一連の不祥事である、こういうことで、私としては、これは斉藤先生の御指摘を正面から本当に真蟄に受けとめるしかないと思っております。  先ほど申し上げたことの繰り返しになりますけれども、今法案を準備している過程でございまして、来年の通常国会ではこの動燃の抜本的改組の法案を御審議をいただくことになると思いますし、今も私は、例えば当庁の者にも、現場を踏んで、要するに体で当たっていけとかいろいろなことを申しております。それから、情報を公開するのに憶病であってはならないというようなことをいろいろ申しておりますが、あらゆる手だてを講じて信頼回復に努めてまいりたい、このように思っております。
  67. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 ありがとうございました。
  68. 小池百合子

    小池委員長 鍵田節哉さん。
  69. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 新進党の鍵田でございます。  さきの国会までは商工委員会に所属をしておったわけでありますが、トレードによりまして、今回初めてこの科学技術委員会に所属をさせていただきました。  私も、先ほどの斉藤委員と同様に、大臣なり、また次官と対話をさせていただきたい。特に大臣は京都の御出身と今お聞きしましたし、委員長も兵庫の出身でいらっしゃる。私は大阪や奈良を中心に活動しております。これは関西弁の世界でございますので、ひとつ十分に対話をさせていただければというふうに思っております。  私も少年時代は、自分で言うのもなんですが、大変な科学少年でございまして、非常にそういうものに興味を持って、いろいろな本を読みあさったりなんかしておりましたが、長じましてからは泥臭い人間関係の世界に飛び込みまして、長年そういう仕事をしてまいりましたので、科学技術が現在どうなっておるのか、我々が日常の生活を通じて享受をする、そういう世界しか余りわからないわけでございますけれども、やはり科学技術というものは、国民に対して夢を与えたり、また安心とか安全とかいうものが保障される、そういうものでなくてはならないのではないかなというふうに思っておるわけでございます。  そういう観点から、科学技術基本法ができたり、また基本計画が出されておったりなんかしておるわけでありますが、そのことにつきましては大変結構なことだし、大いにそういう問題を進めていただきたい、こう思っておるわけでございますけれども、ことしの通常国会などの議論を見させていただいておりましても、どうも国民に安心とか安全とか夢を与えるとかというふうな次元とは随分違った形で議論をされておる。  先ほどからいろいろ話題になっております動燃の問題でありますとか、あってはならない事故でありますし、さらには、事故は、またこれはもうどうしようもなく発生する場合もあるかもわかりませんが、しかし、それをめぐる処理の仕方が、これは人間がやっておるわけでありますから、それを 誤りますと大きな不信感になってくるわけでございます。  実は私、連合の仕事をしておりまして、原子力発電所で働いておる仲間もたくさんいるわけなんです。連合の中で、原子力政策をできるだけ理解をしていただくために原発を見学に行こうということで、今まで反対しておった仲間の人もみんな引き連れまして、我々の仲間がこうしてここで働いているんだと、つぶさにそういう現場を見てもらったりして合意形成に努力をしてきたわけでありますけれども、ああいう事故が起こってしまいますと、またああいう処理の仕方をされますと、何かもう原子力政策全部が信用できないんだというような風潮が出てまいりまして、実際そこに働いておる仲間の皆さんも大変困った状態になったわけでございまして、ぜひとも、こういう問題につきましては適切な処理をしていただきたいというふうに思うわけでございます。  ただ、もう間もなく二十一世紀を迎えるわけでございますので、余りそういう暗い話ばかりしておるのもいかがかというふうに思いますので、といってまた、夢のあるといっても、本当に実現するかどうかもわからないずっと先の夢のことを語るのも余り、私もその能力もございませんし、できれば二十一世紀の早い時期にぜひとも実現をしてもらいたい、そういう科学技術世界について幾らかお聞きをしたいというふうに思っておるわけでございます。  さきの国会におきましても、科学技術庁長官の近岡大臣が、   尽きることのない知的資源である科学技術は、二十一世紀に向けて、我が国が経済構造の改革を実現し、創造性あふれた経済社会をつくっていくための原動力であり、さらに、次代を担う若者たちが夢と希望と高い志を持つことを可能とするものであります。また、科学技術は、人類の共有し得る知的資産を生み出すとともに、地球環境問題、エネルギー・資源問題などの地球規模の諸課題の解決に資するものであり、世界の平和と繁栄に積極的に貢献し、人類の未来への展望を開くものであります。 このように述べておられるわけでございます。  そこで、そういういろいろな不幸な事故もありますけれども、これから二十一世紀に向けまして、長官としてどのような展望を持って、二十一世紀を完全に全うされるとは思いませんけれども、その初期の段階においてどのような科学技術の進歩が見られるのかというふうなことにつきまして、大臣としての展望をお聞かせをいただければというふうに思っております。
  70. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 今鍵田先主がおっしゃいましたように、やはり科学技術というものは、国民にあるいは若い世代に夢を与え、それからあすに対して暗い気持ちにならない、安心して暮らしていける、こういう働きをすべきものだし、またできるものだというふうに私は思っているわけなんです。  ただ、御指摘になりましたように、最近動燃等のいろいろ不祥事があり、今まさに御指摘されたように、事故もさることながら、その後の処理に大変おかしな処理があったために、もういやが上にも本当に大丈夫なのかという不安感をかき立てている。  私は、科学技術政策責任者として、一方でこういう暗い材料というか悪い材料があるものですから、本来もっと光を当てて国民の御支持を得ながら進めていかなければならないものが進まなくなってしまったとすると、これは大変困ったことである。それがためにも、まずやはり、先ほど斉藤先生の御質問にもお答えしましたけれども動燃等の抜本的な改組というものをして、国民の信頼をかち得る努力を全力を挙げてしなきゃならないと思っております。  そういう中で、これからどういう科学技術を二十一世紀の初めに展望していけるか。いろいろなことがありますので、極めて抽象的なお答えになりますが、科学技術基本計画を昨年策定いたしまして、この中では、基本方向二つというふうに言っております。一つは、社会的、経済的ニーズに対応した研究開発を進めていく。それからもう一つは、基礎的な研究を積極的に振興していかなきゃならない。  この二本が柱でありますが、社会的、経済的ニーズに対応した研究開発としては、一つは、新産業等を創出していく、そういうものに対応できるようなものを推進しよう。それからもう一つは、先ほどから地球温暖化等の御議論が出ておりますが、地球規模の諸問題の解決に資する研究開発をしていかなきゃいけないだろう。それからもう一つは、生活者のニーズ、例えばアルツハイマーのような病気は治せないのかどうか、脳というものはどうなっているのかというような、これも、基礎研究の面もあり、いろいろな面もあると思いますが、そういう生活者のニーズに対応した諸課題にこたえていく研究開発、こういうものが挙げられているわけであります。  こういう柱に沿って、関係省庁とも連携をとって進めていきたい、こう思っております。
  71. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 先ほど斉藤委員の方からも質問ございましたし、他の委員の皆さんからもありましたけれども、現在の日本科学技術の現状、そういう研究の現状につきましてどのように認識をなさっているのかということについて、重複しますけれども、再度お聞きをしたいというふうに思います。  特に、基本計画におきましては、我が国の科学技術の現状は、近年経験したことがないほど厳しい状況であるという分析をされておるわけでありますし、研究開発投資額は、日本全体で平成五年度、六年度と二年連続して減少しておる、さらには、GDP比で欧米主要諸国を依然として下回っておる、こういうふうな認識をこの基本計画の中でなさっておるわけでありまして、これらを克服していくためにどのようなお考えを持っておられるのか、そしてまた、研究者の数でありますとか、また研究費などの比較におきまして、質、量ともに欧米諸国などとどのような格差があるのか、また、ないのか、その辺につきまして大臣の御認識をお聞きしたいというふうに思います。
  72. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 欧米諸国と日本との研究に対する質的な評価はどうなのか、量的な評価、比べろとどうなるのか、こういうことだと思います。  まず、量的な面と申しますか、こういうところから申しますと、我が国の研究費総額は平成七年度で十四兆四千億円であります。それから、研究者数は六十五万九千人であります。そして、これはアメリカと比べますと、アメリカが円に換算して十六兆八千億円、それから研究者の数が九十六万三千人、こう言われておりますが、金額面それから研究者数、どちらもアメリカに次いで世界第二位ということになっております。  ただ、政府負担研究費のGDP比、これを見ますと、我が国は、さっき御指摘のように〇・六七%である。これに比べますと欧米主要国は、アメリカが〇・八六%、それからドイツが〇・八四%、フランスが一・〇三%。それぞれの国のGDP比でそれだけの投資をしているということでありますから、主要各国に比べて低い数値になっておりまして、必ずしも我が国の経済力に見合ったものになっていないということがあります。  それから、今、量的なことを申しましたが、質的な面は、これはなかなか比較も難しいわけでありますが、やはり研究成果のすぐれた論文というのは、他の論文に引用される回数が多くなってくるわけであります。論文の質をあらわす指標として、全世界での論文引用回数の国別シェアというものがあるようでありますが、我が国は八%、これに比しまして、アメリカが五二%、イギリスが一一・六%、こうなっておりますので、どうも低いな、これはあるいは言語等の問題もあるのかもしれませんが、低いな、こう思うわけであります。  それからもう一つ、基礎研究の成果の質をあらわす指標としてよく引用されるのは、自然科学分野におけるノーベル賞の受賞者数でありますが、我が国の受賞者は今まで五人であります。ところが、アメリカは百八十四人、イギリスが六十八人、 ドイツが六十一人、こうなっておりまして、これは主要国に比べて大きく劣っていると言わざるを得ないのだろうと思います。  そういうような状況でございますので、先ほど、科学技術基本計画十七兆円はどうだという御質問も斉藤先生からいただいたわけでありますけれども、こういう財政の厳しい折でも科学技術振興費は五%伸ばすというような努力を引き続き進めていかなければならない、こう思っております。
  73. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 こういう研究の質、量の差というのは直ちには経済なり生活に影響はしないけれども、だんだんボディーブローのようにきいてくるわけでありまして、やはり、長い時間をかけていきますと大きな格差になってくるということもあるわけでありますから、そのときの財政事情とか、また経済事情とかいうのももちろん無視はできませんけれども、しかし、そういうことから離れたもっと高い次元での研究開発というものを考えていかなくてはならない。先ほども、国家戦略としてというお言葉もありましたけれども、私も全くそのように同感に考えておりますので、ぜひともそのように考えていただきたいというふうに思います。  それで、具体的に幾つかの、宇宙開発とかというふうな話もありましたが、もっと、次元は低くないと思うのですが、もっと低いところでの、空気が存在するかしないかぐらいのところから下の課題について幾つか、二十一世紀の早い時期に実現をしてもらいたいというような、そういう課題についてお尋ねをしたいというふうに思います。  一つは、やはりエネルギー問題でございます。  実は、商工委員会でもNEDOの問題などがいろいろ議論をされまして、この通常国会でもいろいろな課題につきまして議論されました。また、科学技術庁からも来ていただいたりして、原子力問題でもお話がありました。しかし、どうも、通産省などでやられております新しいエネルギーの問題についての施策にしましても、ウエートというのは、全体のエネルギーのわずかなところでの問題の議論しかなされておらないわけでありまして、やはりそのほとんどは化石燃料でありますし、そして原子力であるわけでございます。  しかし、化石燃料につきましては、先ほどからもお話ございますように、COP3でも、日本目標値が低いんじゃないかということを海外からもうるさく言われておるわけでありますし、できるだけこれについては抑制をするということ、いわゆる省エネをやっていくということが大切でございますし、当面、原子力というのはクリーンなエネルギーということで、これに頼っていかざるを得ないと思うのですけれども、一〇〇%安全である、こういう信頼がなかなか得られない以上は、やはり新しいエネルギーを開発していくということが大変重要なのではなかろうかなというふうに思うわけです。  化石燃料にかわって、では原子力がそれに取ってかわれるというような状況にあるのかどうか。先ほどもお話ございましたけれども、COP3の日本目標の中には二十基の原発の設置ということが言われておるわけでありますけれども、これは私は、いろいろ関西電力などの実情を見てまいりましても、なかなか地元住民の同意が得られるものではないのじゃないか。私は、初めから目標自身が過大な目標に、過大な目標じゃないけれども本当は過小な目標と言うべきかもわかりませんが、しかし、その中身を見ますと、到底達成し得ないような状況になっておるという認識をするわけでございます。  そういうことで、化石燃料や原子力にかわります新しいエネルギーをどう今後開発していくのか、こういうことにつきまして、科学技術庁としてどのようにお考えになっておるのか。新しい研究開発が、NEDOなんかでやられておるそういう対策以外の問題でどのように研究開発がなされておるのかということをお教えいただきたいと思います。
  74. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 今、我が国のエネルギーの現状は、確かにまず化石燃料であり、それから原子力であるということになっておりまして、新エネルギーの比重というものは非常に少ないわけですね。ただ、やはり資源制約が少なかったり二酸化炭素の排出が少ない、こういう環境に与える負荷が小さいし、それから潜在的には大きな供給力を担っていく可能性、これはまさに技術開発にかかってくるわけですけれども、そういう可能性を秘めているわけでありまして、私は、この分野にやはりきちっと力を注いで推し進めていくということが基本的に必要なのじゃないかなと思っております。  これは先生もう既によく御承知のとおりでありますが、平成六年十二月に総合エネルギー対策閣僚会議で新エネルギー導入大綱というものが策定されまして、基本的にそれを踏まえながら物事が進められているわけであります。さらに、平成七年七月にエネルギー研究開発基本計画というものが内閣総理大臣決定をされまして、そこで新エネルギー研究開発についていろいろ規定されて、そのもとでいろいろなことが進められているわけであります。  この中では、太陽光発電あるいは風力発電、それから廃棄物の熱利用、それから燃料電池、こういったものに関する研究開発が重要課題として挙げられているわけでありますけれども、そのほかに科学技術庁で今実施しておりますのは、波力発電、それから高温ガス炉を利用した水素製造システムの技術開発、それから廃棄物焼却熱の有効活用に関する研究開発等、こういうものを今実施しているわけであります。  今後とも、政府一体となって新エネルギーの開発努力をしてまいりたいと思っております。
  75. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 今おっしゃられたようなことにつきましては、商工委員会でも既に議論がありまして、なされておるということについてはよく承知をしておるのですけれども、化石燃料や原子力に取ってかわるというまでのパワーをなかなか発揮し得ないということでありますから、さらにこれらの研究開発にやはりもっと力を入れていただきたいというふうに思います。  それに関連して、これも省エネに非常に大きく影響するし、他の産業の発展にも大きく影響するであろう、こう言われております課題に超電導がございます。一時期、超電導がマスコミでもてはやされました。特に、低温時における超電導が起こるというようなことが発見されましてから、また今度は高温時における超電導も可能であるというふうなことが発見をされて、発見というのか発明というのですか、それでノーベル賞を受けられたりというふうなことになったわけであります。また、そういう超電導が開発されますと、リニアなども実現性がさらに加速されるというようなこともありましたし、また発電所から実際に家庭への電力を配送する場合にもそのロスを最大限なくせる、こういうことも可能になるというようなことも聞いておるわけであります。  最近何か、超電導の灯が消えたのかどうか知りませんが、余り話題にならなくなりましたので、これらがどのように今研究がなされておって、どの程度でそれの実現性というものが可能になってくるのかというようなことで、大臣の御承知の内容を教えていただきたいと思います。
  76. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 今鍵田先生がおっしゃいましたように、昭和六十一年に、従来よりはるかに高い温度で超電導現象が起こる物質が発見された。そのときから大変マスメディアでも超電導というものが取り上げられたり、これがブームという言葉が妥当かどうか知りませんけれども、大いに議論をされたわけです。  そのときに、科学技術会議でも超電導に関する懇談会というものをつくって報告書を出していただいた。一応、そこの科学技術会議の報告書に従って今いろいろな施策が行われているわけでありますが、確かにそのときに比べるとマスコミ等に登場する機会も少なくなりましたし、我々政治家もいろいろな場で超電導という言葉を口に出すことが少なくなっているような印象を私も受けております。  ただ、やはりその当時言われましたように、超電導技術がうまく応用でき、普及するようになってくると、国民経済上も非常に大きな貢献が行われるということが期待されますので、重要な研究開発分野である、現在もそれは変わっていない、こういうふうに考えております。  科学技術庁では、昭和六十三年度から超伝導材料研究マルチコアプロジェクトというものを行っておりまして、基礎的、基盤的な研究開発を行っております。その成果としては、世界最高レベルの強磁場を発生する磁石を開発したとか、あるいは電線に加工しやすい新材料、ビスマス系超電導体等の発見、こういうような成果が上がっております。  それから、平成七年度からは、今申し上げたプロジェクトの第二期ということになっておりまして、今まで上げてきた成果を活用した高度な解析技術の開発や環境問題等への応用を含めて研究開発をさらに展開している、こういう段階になっておりまして、いろいろな成果が上がってきている。  それから、医療分野でも、磁気共鳴映像診断装置というもの、あるいは脳磁気検知装置、こういうあたりに超電導技術が応用され始めて、実際にもう超電導技術が使われているということになっております。  今後とも、超電導材料に係る基礎から応用に至る研究開発というものを進めていかなければならないと思っております。
  77. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 その超電導を活用した乗り物として、超電導がなくても、もちろんリニアなんかは今実験もされておりますし、実用化に向けてのいろいろな角度からの実験がされておるわけであります。実は、中央新幹線というふうな計画がこのリニアによってなされておるということでありますが、私の地元でも大変これの実現を夢を見ておるということでありまして、新幹線というのは整備新幹線ということもあって、財政改革の折から、いろいろな話題を投げかけておるわけでありますが、しかし、その計画にあります地元につきましては大変な大きな夢でございまして、何とか一日も早く実現をしてもらいたい、こういうふうに言っておるわけであります。  さらにはもう一つの、陸の乗り物から空の乗り物で、特に航空機の関係でございます。  もともとレシプロエンジンのプロペラ機というのが主流であったものが、ターボプロップによるプロペラ機が主流になり、さらには、昭和でいいますと四十年代の初めのころだったと思うのですけれども、ターボファンジェットエンジンというものができて、それが今のジャンボなどに使われておるわけであります。その後、コンコルドなども出てきまして、音速を超える旅客機ということで、非常に我々の夢をかき立てたわけでありますけれども、その後ソニックブームなんかのこともございまして、どうもそれらのコンコルドの製造も中止をされておると聞いておりますし、ターボファンジェットエンジンにつきましても、それ以上のエンジン開発というものが今のところまだ、若干その中の改変、エンジンの改良はなされてきてはおるようでありますが、大きな変革はない。  したがいまして、そういう航空機に関します新しいエンジンといいますか、今はエンジンも余り進んでいないけれども、輸送の量とか航続距離とか、そういうものはかなり大きくなってきてはおるわけでありますけれども、エンジンそのものの画期的な開発というものがまだなされておらないように思います。それらにつきまして新しい情報があれば、できるだけ国民に開示をしていただいて夢を与えていただきたいというように思っております。
  78. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 次世代の乗り物として、最初にお触れになったリニアでありますが、これは直接当庁が主管してやっているわけではございませんけれども、ことしの四月からですか、山梨県で建設された実験線で走行実験が開始されたというふうに承知しておるわけでありますが、空の方は、次世代の乗り物としてコンコルドの後継機となる次世代超音速輸送機というのでしょうか、二十一世紀にやはりそういうものを実現したいということがあるわけですね。  それで、コンコルドは先ほど先生が御指摘のとおりの現状であるわけですが、やはりマッハ二・幾つでしょうか、二を超える、そういうものを開発したいということであるわけです。しかし、コンコルドの今までの経緯を踏まえるならば、コンコルドよりも経済性にすぐれたものでなければならないでしょうし、それから騒音、排気ガス等に関しても、もっと少なくて地球環境に優しいというのでしょうか、そういうようなものを開発しなければならないということになるんだろうと思います。  科学技術庁では、産官学と連携して、こういう次世代の超音速技術に関する研究開発を今いたしておりますが、今はまだ基礎的な段階というふうに申し上げるのが適当だろう、こう思っております。
  79. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 もう少し具体的な研究があるのかなと思っておったわけでありますが、まだそれがお示しいただけるような形まではなっておらないということでありますが、ぜひともこちらの方も頑張っていただきたいというふうに思っております。  次に、生命科学分野に入るのでしょうか、特に痴呆症の原因の究明なり対策、これは厚生省マターの分野ももちろんあろうかと思いますけれども科学技術庁あたりではこれらの課題についてどのように取り組まれているのか、お教えいただきたいと思います。
  80. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 痴呆症の原因究明といいますか、より大きく脳の研究、これがやはりこれからの科学技術が取り組むべき一番大きなターゲットの一つなのではないかと思っております。一番大きなフロンティアと言っていいかと思うのです。  脳の研究も多面的な側面があるわけでありますけれども、脳の働きを解明して、脳というものは何なのかという、まず脳を知るということが一つあると思いますし、今御指摘になった脳のアルツハイマー症や痴呆症の克服といいますか、脳を守っていくという領域があると思います。それから、人間の脳を研究することによって、脳をつくると言うと神をも恐れぬような表現になるわけでありますが、人間の脳というものを十分研究した上で、さらに今よりもすぐれたコンピューターのようなものに応用できるのかできないのか。おおむね脳研究は三分野があるのではないかと思いますが、大変大事な課題として今取り組んでいるところであります。  平成九年度からは、関係省庁連携しまして、その脳科学研究に取り組んで、今御指摘の脳・精神疾患の克服を目指す領域においては、例えば十五年後には痴呆症の原因の一つであるアルツハイマー病を解明しよう、こういうことを目指しまして計画的に研究を進めているところであります。  厚生省やいろいろなところにまたがっておりますので、よく連携をして、痴呆症克服等ができるような研究を進めていきたいと思っております。
  81. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 今も大臣の方から、いろいろなところの連携というお話がございました。これもさきの委員の皆さんからの質問にもあったわけでありますけれども、官の中でもいろいろな分野にわたって研究がなされておるし、さらには民間の分野での研究も多くあるわけでございますけれども、それらとの研究の連携なり、また情報交換なり、こういうふうなものがどのようになされておるのかという、一つは現状についてお教えいただきたいというふうにも思います。  それで、これからの行政改革という中で中央省庁が再編されるということになってきておるわけでありますけれども、今議論されておりますのは、文部省なり科学技術庁が一緒になりまして、文部・科学技術省というふうなことで議論がなされておると聞いておるわけでありますけれども、特に通産省がやっております工業技術院、これは二千五百人ぐらいの研究者も持っておられる、全国に今散らばっておられるようでありますけれども、こういうものと一緒になって、こういう工業 技術院も加えた新しい教育科学文化省というふうなものを新進党としては提言をしておるわけでございますけれども、それらにつきまして、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  82. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 今新進党として、教育科学文化省、今の科学技術庁と文部省あるいは工業技術院等の組織も一体化した役所をつくれという御主張だろうと思うのです。  今行革会議の方は、中間報告は文部・科学技術省という仮称になっておりますし、それぞれ与党の方でもまた少し違った議論が行われている。今議論の最中でありますけれども、私は、いずれにせよ、科学技術行政を進める体制が強化されなければならない。先ほども質問にお答えしたところでありますけれども、こういう言い方が妥当かどうか知りませんが、日本では、総合調整官庁というものが必ずしも十分に成功しているかどうかという点は、これは成功していないと言うと言い過ぎかもしれませんが、調整官庁というものの機能についてはいろいろ議論のあるところでございます。  私としては、総合科学技術会議というものが内閣府にできるのであれば、そのもとで具体的な科学技術政策の企画、立案、総合調整というものを行い、それから具体的に科学技術基本計画に定められている基礎的、創造的な研究であるとか、あるいはきょういろいろ御議論いただいております宇宙とか地球とか原子力とか生命とか、国家的な、戦略的な意味合いから行う総合的な研究開発があると思いますが、そういうものを主体的に進めていく役所、それから全国の研究開発基盤をつくっていく、研究開発のためのインフラを整備していく、そういうものを中心になって責任を持って行う役所がやはりこの行革の中でできなければいかぬのだろうと思います。  それで、先生は商工委員会で工業技術院のことはもうよく御承知でいらっしゃるわけでありますけれども、私は、今のような考えを申しますと、今度の財政再建の法案を今御審議いただいておりますが、国立研究機関を、これから新しい形をどらやっていくかというのをこの期間中に出せ、こういう条項があの法案の中にはあるわけでありますけれども、そういったものがどう今の研究開発状況に合った、そしてオープンな開かれた組織になるかどうかということが、やはり非常に大事々行革のポイントなのではないかと思います。  先生の御質問に十分お答えできたかどうかわかりませんが、そこらあたりは、この一、二カ月でぱたぱたと議論が進んでしまうわけではなしに、今後三年間ぐらいでじっくり議論されていくことだろうと思っておりますが、非常にそこが大事なポイントなのじゃないかと思っております。
  83. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 お互いに競い合って研究をするということも、それは一つ成果を上げる手法かもわかりませんけれども、お互いに持っておるそれぞれ違った情報を交換し合ったり、また共同で研究していくとかいうことによって、その成果も上がっていくというふうにも思います。それが縦割り行政によってなかなかうまくいかないということでは、これはやはり日本の将来にとって禍根を残すことになるわけでありますから、そういう意味で、同じような研究をするグループについてはできるだけ一つにまとめていくということが大切なのではなかろうかということが新進党の案にもなっておるわけでございまして、ぜひとも、これも今後研究をしていただきたいというふうに思います。  それからもう一つ研究者に対しての評価なり処遇の問題なども議論がございました。  どうも技術者とか研究者というのはもうダサイというような風潮が随分ございまして、例えば枝術系の大学を出ましても、そういう研究者などにならずに、第三次産業の方へ流れていくとかいうようなことが、特にあのバブルのときなんかにはあったわけでございます。  今度、これも商工の方でもかかったわけでありますが、ストックオプションなんかの関係で、その成果について研究者につきましても、もしそういうことが実現しますと大変大きなインセンティブということになってこようかというふうに思うのですが、民間産業しかこういう手法は使えないわけでございますので、そこらが民間産業なり民間の研究機関とそして国立の研究機関との間で大きな格差になってきて、それが研究開発の足を引っ張るというようなことにはならないのかどうか、そこらの処遇の問題につきましてどのように考えておられるのか。  それからもう一つは、実は、物づくりというのを我々は大切にしなくてはならないということで、ものづくり基盤技術基本法というのをやっておるわけでございまして、この国会か通常国会にかけるつもりで今準備をしておるところでございます。幾ら先端技術が進みましても、この基盤技術がなければその先端の技術も駆使し得ないということになるわけでありまして、これらにつきまして大臣のお考えをお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
  84. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 研究者の評価、そしてその評価に相ふさわしい処遇をしていく、これはやはり研究者創造性を引き出していく上で私は極めて大事な点だろうと思うのですね。  それで、科学技術庁が今やっておりますことは、人事院に要望しまして、研究者の公正な業績評価に基づいて、顕著な研究業績を上げたと認められる研究者に対して特別の昇給等が可能となるような制度をつくったわけであります。  それから、科学技術基本計画を受けまして、各省庁研究者個人による研究成果の利用に道を開くために、特許権等、これを研究者個人へ帰属することを可能にする道を開いたというようなことを今までやってきております。  今後とも、これらの制度だけではなく、公務員制度という枠はあるわけでありますけれども研究者の意欲というものを十分に引き出すにはどうしたらいいか、表彰制度等いろいろあると思いますが、そういう制度を工夫していかなければならないと思っております。  それから、物づくりといいますか、あるいは昔の言葉で言えば職人さんということになるのかもしれませんが、先端的技術も、そういう物をつくる、本当に熟練した職人さんといいますか、そういう人によって支えられている面が多分に、多分というか極めて大きいわけでありますけれども、そういう方々が、技術者が、技能を持った方々が高齢化してきている。だんだん少なくなってきて、このままでは日本科学技術というのも本当に支える人がいなくなるのではないかというのは大きな問題だと私は思います。  ですから、技術士というような制度、製造技術等に関して高度な専門的能力を持っている方にそういう資格を付与する、それから技術の改善、向上に貢献した方に対する表彰制度とか、そういうようなことをいろいろやっているわけでありますが、それと同時に、科学技術基本計画に基づきまして、産学官研究開発機関で人材の円滑な確保を図るために、労働者派遣事業の対象業務の中に研究開発業務を加えた。これは、研究支援者を労働者派遣事業の対象として加えて、研究等がいろいろうまく行われるようにしよう、こんなことも、物づくりに対して少しでもバックアップをする一つの試みでございます。  まだまだ、この物づくりをどうするかというのは、さまざまな工夫もあり、お知恵もあると思いますので、今後ともいろいろと御議論をさせていただきたいと思っております。
  85. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 終わります。
  86. 小池百合子

    小池委員長 午後四時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十一分休憩      ――――◇―――――     午後四時十一分開議
  87. 小池百合子

    小池委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。辻元清美さん。
  88. 辻元清美

    辻元委員 社会民主党の辻元清美です。  私は、先日、地球温暖化防止京都会議の事前会 議の、ボンで行われています会合の方に与党のプロジェクトで参加してまいりました。そのことに関連いたしまして質問させていただきます。  日本に対しては、非常に議長国としての責任が問われている、かつ批判も随分多うございました。そういう中で、十二月の会議に向けて、それからその後日本がどういう温暖化対策をとっていくかということは、これは世界的に注目されていると言っても過言ではないと思います。そういう中で、科学技術政策、これは全然無関係ではなくて、非常に根幹をなす部分であるという実感を持って帰ってまいりました。  といいますのも、アメリカや、それからEU諸国、アジアの皆さんとも意見交換をしてまいりましたが、特にアメリカなどでも、科学者の意見を十分反映させて政策をとっていくことが大事であるという話が出たり、クリントン大統領も科学者の直接の意見を聞くというようなことをしてきたと聞いております。そういう中で、科学技術政策について幾つか質問させていただきたい。  特に、我が国は、一九九〇年に既に地球環境保全関係閣僚会議というのが開かれまして、そこで地球温暖化防止行動計画というのを立てました。このときには、主に、二〇〇〇年には一九九〇年レベルのCO2の排出量を保つというか、に抑えようという努力目標を決め、その二年後の一九九二年のブラジルのリオデジャネイロでの地球サミット、あの折も世界各国でその努力目標を達成するように決めました。  ところが、先日発表されました数値によりますと、二〇〇〇年を待たずに、既に九〇年レベルより九・六%CO2が増加している。これは、この関係政策がやはり不十分であったのではないかというふうに私はとらえております。実際に、この九・六というのは世界一の伸び率を示してしまいまして、省エネ国、省エネ技術立国と言われてきたわけなんですけれども、決して日本は、もうそう言えないような状況に今いる、そういう中で議長国を引き受けているという厳しい状況があると思うんです。  さて、そういう中で、現在こういう九・六%の伸びを示してしまった、こういう現状をどのようにとらえ、これは科学技術庁も関係しているかと思いますが、どのような御認識でこの現状を見ていらっしゃるか、そして今後、京都会議を契機にどういうふうな施策をとっていかれようとしているか、大臣にお聞きしたいんですが。
  89. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 地球温暖化について、科学技術庁としてどういう姿勢をとっていくかということでありますが、地球環境問題、これは温暖化だけではなくて、辻元先と言われたように、科学技術がこの問題にやはり腰を入れて取り組まなければならないというふうに私は思っております。  先日も、アメリカの科学技術担当の補佐官のギボンズさんがお見えになりまして、日本側とアメリカ側といろいろ、全般の科学技術で意見交換をいたしましたけれども、やはり、科学技術がこの地球温暖化の問題で果たしていく役割が多いということでは共通の認識で、今ボンでのごらんになってきたことをお話になりましたけれども、私はやはり、どこでも科学技術というものが真剣に取り組まなければならない、こういうことではないかと思っております。  それで、科学技術庁としては、まず一番やらなきゃならないことは、やはり、地球温暖化などの変動現象の解明といいますか、あるいは予測といいますか、その研究開発を、まず私どもの役所の守備範囲としては一番やらなきゃならないことだと思っております。  地球観測衛星や「みらい」、海洋観測研究船等が、この間十月三十日にオープンといいますか御披露することができたわけでありますが、そういう最新の観測技術を駆使して地球の観測を行っていく、それで地球変動メカニズムの解明のための基礎研究を我々のところがやはり中心になってやっていくことが必要だろうと思います。それから、スーパーコンピューターの大きなものを使いまして、地球変動を予測するためのシミュレーション等も、我々のところでやはり中心になって進めていかなきゃならないのではないかと思っております。  それからもう一つ科学技術庁でやっております、これからクリーンなエネルギー一つ原子力等があるのですが、原子力のことはちょっとおきまして、海洋科学技術センターでは、波の力を利用した波力エネルギーの利用について今研究を進めておりますし、それから理研が中心になりまして、光合成というのでしょうか、二酸化炭素の固定化に関する研究も行っております。例えばこの光合成に関する研究がどれだけ実際的な推進力になっていくかまだ未知数のところがあると思いますが、そういう多面的な研究開発に取り組んでいきたいと思っております。
  90. 辻元清美

    辻元委員 幾つかの取り組みについて今御紹介いただいたわけなんですが、その中で今長官が横においていただいた原子力の件なんですが、私、ボンに行きまして、原子力についても意見交換をしてまいりました。  その中で、これはちょっと報道もされた、それで御存じかと思うんですけれども日本政府が温暖化防止策として、それぞれの、議定書を結ぶ条約国が小グループに分かれてディスカッションしているその一つのグループの中で、同議定書案に、再生可能なエネルギーの利用拡大という項目がございまして、これはエストラーダ議長が提案された議定書の中にあったわけなんです。そこで日本政府の方から、ここに原子力を含めてはどうかという提案をしたんですね。そうすると、一斉に反発を受けた。これは新聞報道にもあったかと思うんですが、これは事実なんです。  実際に私も現場でその話を見聞いたしまして、やはり非常に原子力については各国の政策も分かれておりますし、一概に、温暖化対策と声を大にして言うことはできないというふうに現場で感じたんですね。その分やはり、クリーンなエネルギーとして別の研究方法をこれは追求していかなきゃいけないなという気持ちを強くいたしました。  さて、そういう中で日本は、これは総理の御答弁の中にもあったことなんですが、日本は二十基の原発を新たに増設しなければいけないような事態であるというような御答弁がございました。これは私、そういう国際的な状況から見ても、ちょっとこの政策は変えていかなきゃいけないのではないかという認識をボンで持って帰ったわけなんですけれども、長官はいかがお考えでしょうか。
  91. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 原発二十基、これから必要だということが言われております。私も、きょうの委員会で、そういうことが必要だということを申し上げたわけでありますが、原子力につきましては、国情の違いによってさまざまな意見があるということは承知しているわけであります。  ただ、そうは申しましても、原子力は既に全世界の発電電力量のたしか一七%、我が国でも三〇%を超えて今三四%ぐらいになっていると思いますが、現実にそれだけのウエートを占めております。それから、これは今さら言うこともないのですが、二酸化炭素を排出しないエネルギー源として、地球温暖化防止上、やはり極めて重要なオプションであるのではないかと思っております。  それで、辻元先生は、そういうボンの会議でのいろいろな国の反応などからごらんになって、余りそれを重視していくのはどうかという御趣旨と今伺いましたが、我が国の現状を踏まえますと、やはりこの原子力エネルギーというものを、さっき御説明の中では横においてと申しましたが、先はどのような波の力のエネルギーとか、あるいは午前中も御議論が出ましたけれども、いろいろな新エネルギーというものの開発に努力しなければならないというのは、私はそのとおりだと思ってはおりますが、では、それをおいでおいで一九九〇年レベルを達成できるかというと、私は、やはりそれはやや難しいのではないか。  現実にはやはり原子力の、もちろんこれは安全性を確保し、国民理解をしていただかなければ できないことでありますから、公開性、透明性、それから特に我が国では、これも朝から申しておりますけれども動燃等の問題でいろいろ国民の間に不信感が出ているのも事実でございますから、そういうものの改組を通じて国民の信頼を得ていくという努力をしながら、やはり原子力発電というものを位置づけておくことが現実の選択としては欠かせないのではないか、こう思っております。
  92. 辻元清美

    辻元委員 今そういう御答弁をいただいたのですけれども、現実を見てみますと、決して原発をめぐる状況は甘くないと思うのですね。  実際に、二〇一〇年までに運転開始に間に合いそうなものは十基に満たない状況だと思います。このままこれに依存していくならば、例えば二〇三〇年を見てみますと、実際に原発に対して一億キロワットまで拡大していこうというような政府の関係の報告なども私読みましたけれども、二〇三〇年には、日本で動いている五十二基の原発はほとんど廃炉になる可能性もありますし、その方が高いと思うのです。そうしますと、これを維持していこうと思ったら、計算によりますと、原発を九十基ぐらい新たに建てていかなければいけないような計算になるわけなんですね。そうすると、それに頼った政策をとり続けると、三、四カ月に一基建てていかなければいけないというような計算になってしまうわけなんです。  実際に、原発は建設の申請をしてから運転開始までに、七〇年代では平均九年かかっています。八〇年代では十二年かかっているのですね。九〇年代になったら、まだ一基のデータですが、申請してから建設まで二十五年かかるという。こういうのが今の現状で、そして立地条件も、なかなかいろいろな地域が、これはいろいろな安全性の問題等で御不信が今国民の皆さんにありますから、受け入れるところもないような状況というのは、これは一方にあるわけなんです。  そうしてくると、この地球温暖化防止という観点で今議論されているときに、やはりこれは政策のかじ取りを現実的に少し比重を変えていかないと、これが十年たった後で今の選択がよかったのかどうかということが問われかねないのではないか、そういう危惧を現実的にしているわけなんです。  そういう中で、今御答弁いただきましたけれども、実際に予算を見てみますと、先ほど長官の方から御趣旨を説明いただきました温暖化対策、私は非常に重要だと思います。シミュレーションも、これは十月から始まった計画だと聞いておるのです。その他、日米の共同の研究所、これをハワイに設けるという御報告も受けました。その他さまざまな施策、大事なんですが、予算的に見ましても、本年度の予算が七千三百四十五億円ということで、このうち原子力関係が三千五百四十七億、そしてさらに、この中で動燃関係が一千五百九十八億、これは一般と特別会計なんですけれども、あれだけ不祥事を起こした動燃にそれだけ使っているのですが、実際にこれから取り組もうとする温暖化に向けての非常に重要な研究は六百億円ちょっとというふうに聞いているわけなんです。  今私が申し上げましたように、原子力依存というか、原子力も大きな柱にという政策が果たして現実的なのかどうかという判断を多角的にやる重要な時期だと思うことと同時に、財政再建と言われておりますけれども、予算を大幅にふやすことはできませんが、科学技術政策の予算の中の割合を、やはり先ほどから出ております自然エネルギーや、それから、今六百億となっておりますけれども、これからの新しい研究の方にこの際決断をして振り向けていくべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
  93. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 原子力政策に関する予算につきましては、今御審議をいただいております財政再建の法律の中でも、財政再建期間三年間というわけでありますが、その中で、先ほどから申しておりますように、科学技術振興費については五%伸ばす、こういう取り扱いをしていただいている。しかし、その中で原子力についてはやはり抑え目にというか、ちょっと今条文がありませんので正確な表現ではありませんけれども、そういうことも現実にはございます。  それで、新エネルギー等について、あるいはそのほかの温暖化対策、原子力以外のものについてもっと予算をふやしていけ、そちらに大きく方向転換せよという御趣旨かと思いますが、確かにそういうものを研究する必要はございます。しかし、今、現実的かと辻元先生おっしゃいますが、では本当原子力をやめてそっちの方にわあっと行ったら、それが現実的にCO2を抑えられるかというと、私はやはりそういうものではないのだろうと思います。  私、先ほどおっしゃった九十何個、何かこれから原発が何カ月に一個必要だというのは、ちょっと今よく頭に入らなくて、私の頭にあるのは二十個という数字でございますけれども、現実にはそういうものをやはり推し進めていくということが、一方柱として、そういうものというのは原発でございますけれども、柱を立てていくことが、現実の選択としては、やはりまだそれは取り下げますよと、先ほどからの御意見でございますが、そういうわけにはいかないというふうに私は考えております。
  94. 辻元清美

    辻元委員 ですから、私は、やはりこの地球温暖化の問題というのは百年先を見た政策を今立てようというので、世界中の人たちが知恵を出し合って、そのためには、今エネルギー依存のこの社会をどう循環型に変えていくかということも含めての大きな時間的な見通しを立てた議論をやっている最中であると思うわけです。その中で、原子力についてこれからどう取り組むのかという視点で議論していくべきだということなんです。  今のままで、確かに長官がおっしゃるように、では今すぐ全部ストップするというのはこれはもう不可能です。ただ、これから、今議論というか、あちこちで、日本じゅうでも話題になっておりますこの二十基という数字がひとり歩きしていますけれども、これも果たして現実的なのかという点をもう一度再考してみないと、あら、できませんでした、ほかもやっていませんでしたでは済まないわけですから、そこのところを私はやはりボンに行って痛感して帰ってきたのです。  コージェネレーションとか自然エネルギーその他の、先ほどの波動の研究も非常に重要だと思うのですけれども、やはり特にヨーロッパの国々では、そちらへのシフトと、研究者を育てるためのお金というのを今大幅にがんと投入するというのが政策としてとられております。それは非常に参考になるのではないかという視点で、百年先に後悔しない政策をとるべきである。私は、谷垣長官、非常に活発に取り組んでいただけると思いますので、この京都会議に向けてぜひ努力していただければというふうに思うわけなんです。それで、今あえて原発の話を出しました。  実際に、廃棄物の処理の問題につきましても、どんどんたまっていくというのを私たちは処理をどうするか、これも頭を痛めている問題であるというのは皆さんが一番御存じだと思うのですね。ですから、そういう長い目で見た政策の転換を含めた研究であったり方向性のかじ取りを今ぜひしていただきたいと思います。  持ち時間がもうなくなってしまったのです。これで終わります。
  95. 小池百合子

    小池委員長 中桐伸五さん。
  96. 中桐伸五

    中桐委員 民主党の中桐伸五でございます。  私は、十月二十二日に動燃の人形峠事業所に現地調査に入りまして、その現地調査の結果を踏まえて質問をしたいと思います。質問は、大臣及び政務次官、並びに現地調査の関係で動燃の方に絞ってさせていただきたいというふうに思っております。  今、国会を言論の府とする方針で民主党は頑張っておるところでございますが、今国会でも副大臣制という制度を新進党さん、太陽党さんと共同で提案する準備をしておりますので、そういうことからもぜひ政府委員の方の答弁は避けて、大臣及び政務次官、並びに関連の事業所のところで動燃の方に限って議論をさせていただきたい。委 員長の方、よろしくお願いいたします。  まず、私ども民主党は、動燃に関するこれまでのさまざまな事故や不祥事に関連いたしまして、調査団をその都度出してきております。「もんじゅ」の二次系ナトリウム漏えい事故や、東海事業所のアスファルト固化処理施設における火災、爆発、あるいは「ふげん」などのたび重なる動燃事業団の事故並びに不適切な対応に対しまして調査団を派遣して、国会審議を行ってきたところでございます。  このたび、人形峠の事業所においても、鉱山保安法あるいは瀬戸内海環境特別措置法、さらに原子炉等規制法違反等が明らかになりまして、去る十月二十二日に調査団を派遣したということでございます。  さて、谷垣大臣におかれましては、八月に発覚した東海事業所のウラン貯蔵施設のずさん管理問題で、科学技術庁が現地調査を早急に開始するようにという指示を出されたということをお聞きしております。また、午前中の質疑におきましても、現地に行くことが極めて重要であるという御発言をされており、極めてその姿勢に共感をするところでございます。  つきましては、まず最初の質問でございますが、大臣並びに政務次官におかれましては、人形峠の事業所に、現地に視察に入られたことはございますか。
  97. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 十月二十二日に、先生初め民主党の調査団と申しましょうか、人形峠を御視察いただいたと承っております。それで、自分の目で見たか、こういう御質問でございます。  率直に申しますと、まだ私は人形峠には行けておりません。九月に着任しましてから、東海事業所、それから「もんじゅ」及び「ふげん」については、まず行って自分の目で見てきたわけでありますが、人形峠につきましては、これまでのところ、現地を訪れる機会がまだないわけであります。  それで、先ほどからいろいろ問題点を御指摘いただいておりますが、動燃改革というのは、私に課せられた、私がここの職におります間に課せられた最大の問題だろうというふうに私は考えておりまして、動燃の施設についてもできる限り自分の目で見て、自分の目で見たら直ちに何かするりと目からうろこが取れるようになるとは思いませんけれども、やはり現場を踏むということが大事ではないかと思っております。  国会の出席とか、行革等懸案がございますが、できるだけ早い機会をとらえて人形峠を自分の目で見たいと思っております。
  98. 加藤紀文

    加藤(紀)政府委員 まことに申しわけございません。私も人形峠、自分の選挙区でありますが、政務次官にならせていただいてからは、まだ一度もお邪魔しておりません。近い機会にぜひ行かせていただこうと思っております。  しかし、所長さんやまた地元の村長さん、また科技庁、動燃の方、いろいろお話は聞かせていただいておりますが、まだ実際に見ておりませんので早い機会に行きたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
  99. 中桐伸五

    中桐委員 前向きな御答弁、ありがとうございます。ぜひ一度、早い機会に現地に行っていただければというふうに思います。  さて、この間、鉱山保安法とか瀬戸内環境法とか原子炉等規制法、さまざまなそういった法的な関連あるいは規則、基準に照らし合わせたところ、平成九年の十月二士一百現在で動燃事業団が安全性の総点検を実施した結果、総まとめした結果が報告されておるのですが、ここでは千七百四十三件という件数が報告をされております。それで、「これら項目のなかには、」ということで、千七百四十三件の問題が挙げられたのですが、その文書の中で、評価として、「これら項目のなかには、現時点で環境安全上また施設の安全確保上早急な対応を必要とするものはないと考えております。」というふうな文言がございます。  私が人形峠事業所に現地調査に入って、一つの大きな問題は、ウランを濃縮する過程を経て廃液を処理するところで、十四年間、法律で決められた届け出を出した後に処理のシステムを変えたにもかかわらず、それを報告していなかったという問題であります。技術的な余り細かいことは深く立ち入らないことにしたいと思いますが、つまり届け出をしておった処理システムを変えたにもかかわらず、それを届けていなかった。  最終的には、先ほど動燃の報告書の中にありますように、安全上早急な対応を必要とするものはないというふうに考えられているということは、つまり、廃液を処理するため、吉井川という川がありまして、そこの川に最終的に放流をする、その放流をする直前に濃度を調べた結果、それは許容濃度の範囲内にあるということがわかっているから、つまり処理のシステムを変えても、結果はいいのだから結果オーライだ、こういう意味にとれるわけであります。  千七百四十三件がそういった問題点であったということに報告書がなっているようなんですが、私は、これは大変よくない。このような考え方でやっていくと、人間というのは不注意をする動物だというふうに、私は医学を、特に産業医学、労働医学を専門にしてきておりますので、不注意をする動物なので、その観点に立って、ミスをしても事故が起こらないように、人間は不注意をする動物ですから、その不注意をしても事故が起こらないようにというフェールセーフという考え方、あるいはそういう不注意が起こらないように対策を前もって講じてしまうというふうな、要するに誤動作が起こらないような装置にしてしまう、そういう考え方が重要なのであります。  この千七百四十三件に上る問題点は、結果オーライでこのような報告書になってしまうということは、確かに人形峠の事業所から放流される放射性廃棄物は許容濃度の範囲内だからいいのだよという形で、周辺の住民に不安を与えないという気持ちで書かれたのかもしれない。しかし私は、この考え方の背景には極めて重大な問題が含まれているというふうに思うのですね。千七百四十三件がいろいろ問題があるということは、それに関連する管理の姿勢だとかシステムだとか、そういったいろいろなところに問題があって、それは不注意をする動物である人間がそのような中で仕事をしておればどういう大事故が起こるかもわからないというふうにも私は心配するのですが、その点、大臣はいかがお考えでしょうか。
  100. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 今回の動燃の安全性総点検ですが、ウラン廃棄物貯蔵ピット問題等を特に重く受けとめまして、そして新法人に改組をしていくということになっておりますから、新法人に業務を引き継ぐ前に施設や設備にかかわる問題点を、これはもう大小問わずすべての項目を洗い出す、こういうことで動燃で自主的に実施されたというふうに承知しているわけです。  それで、今中桐先生御指摘のように、私も報告を受けまして、動燃より発表された、これは数からしますと千七百四十三件というから大変な数でありますが、大小、細大漏らさず挙げていただいたのだろう、こう思っております。  それで、私も、現時点では環境安全上、また施設の安全確保上早急な対応を必要とするものではない、こういう報告を聞いているわけでありますが、結果オーライだったらそれでいいという思考に基づくのではないかと中桐先生おっしゃいましたけれども、私はそういう考えであってはならないと思います。やはり、こういう原子力の安全性等をやっていく場合には、結果がオーライでなければこれはもちろんいけないのは当たり前であります。結果が危険なものであったら、これは許すことができない。しかし、それと同時に、国民あるいは周辺の住民の方の安全感というか安心感ということからしますと、手続という言葉が適正かどうかわかりませんけれども、結果だけではなしにそれに持っていくプロセス、こういうものが私はやはり大事なのではないかと思っております。直ちに安全性を脅かすものではないという結果は、私は、これはそれなりによかったと思いますが、同時に、手続を無視したものがたくさんあったということは、今後これは徹底的に改めていただかな ければならないことではないか、こう思っております。
  101. 中桐伸五

    中桐委員 結果オーライではいけないということで一致できたと思うのです。  そこで、もう一つこの調査で明らかになった点について質問をさせていただきたいのですが、これまで動燃のいわば社会に対する対応といたしまして、例えば「もんじゅ」でのビデオを隠していたという事実であるとか、あるいは東海再処理工場における低レベルの廃棄物の問題に関して、長いこと事実を表に公表していなかったというふうな失態が、不祥事が連続して起こってきたと思うのですね。  私は、十月二十二日に現地に行って、科技庁の原子炉等規制法に関する違反の指摘を受けた動燃の人形峠の事業所の対応について、次にちょっと問題にしたいと思うのですね。  結果から申し上げますと、私ども調査団として現地に行って、開発試験棟、これは棟の名前はどうでもいいのですが、開発試験棟というところに、当時、科技庁が、タスクフォースという名前の、これは新聞紙上でそういうふうに書かれてあるのですが、この調査団を派遣したときに、三十四本のドラム缶が本来保管しておいてはいけない場所に置いてあった、低レベルの放射性廃棄物ですね。私どもが行ったときには、それが三本まだ残っていた。その指摘をされた場所に、低レベルの放射性廃棄物を入れたドラム缶が三本残っていた。1ところが、私どもが現地の人形峠事業所の調査を終えて、岡山県との県政における環境影響等について、あるいは動燃の人形峠の事業所に対する瀬戸内法による規制のあり方、対処のあり方について調査をしたところ、今まではいろいろな連絡が余り十分迅速に報告されてこなかったのだけれども、最近は非常にスピーディーにさまざまな情報を県並びに記者クラブに提供するようになりました、前進しましたと、そこまではよかったのです。  ところが、ファクスが送られてきておりまして、そのファクスの中に実は、科技庁が指摘をしたドラム缶はすべて処理をしました、こういうファクスが入っておるわけです。ところが、私どもは三本残っているということを確認しているわけですね、現地の案内をしてくれた事業所のスタッフからはっきり聞いているものですから。しかし、これはちょっと忙しい調査団でありましたから、十分な聞き取りができていない場合もあるから、プレスの方に、記事にする前にちゃんともう一遍確認してくれ、現地と確認をとってからやってくれということは言っておいたのですが。  実は、十月二十三日付で、動力炉核燃料開発事業団の、これはたしか本社からだと思いますが、文書が私のところにも届きましたが、実は処理しましたと言ったのは間違いでしたと。それで、その理由に、何でこういう間違った報告をしたか、事実と違う報告をしたかということで、本社の広報室と関係部署及び事業所間のやりとりの中で意思の疎通が十分でなく、発表文作成者の、処理は済んだとの思い込みで作成されてしまったこと、また、発表時間が迫っていたため、関係者の十分なチェックがなされなかったことにあると、その原因を書いた文書が私のところへ届けられたわけであります。つまり、連絡体制が悪い、あるいは発表時間が迫っている。迅速に発表するということは重要だと思うんですが、これまで非常に放置してきたわけですから、それを反省されたんだと思うんですね。  しかし、これはどういうふうに考えればいいのか。大臣としては、こういうことがつい先日起こっているわけですが、今後どのような形で動燃に対して指導されていくおつもりか、お聞かせいただければと思います。
  102. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 御指摘の放射性廃棄物の保管管理の問題については、十月二十日付で原子力安全局長名で動燃に対して出された文書で、放射性廃棄物が本来の廃棄施設以外の場所に一時保管されていたということについて改善を指示して、動燃はこれを受けて、一時保管していた廃棄物はすべて既に整理して廃棄物保管庫に搬出するとともに、処理すべきものは処理した、こういう御指摘のとおりの発表をして、岡山県にもそのように報告していたわけですが、実際はまだ処理作業が完全に済んだわけではなくて、処理作業中であったということで発表文や報告を訂正した、こういう経緯は御指摘のとおりであります。  これは、私は、発表資料を取りまとめる際の、先生が御指摘のような単純ミスにより生じたものである、こういうふうに報告を受けておりますが、動燃において信頼回復を図るべく職員一同の意識改革に取り組んで、このようないろいろな情報の公開と申しますか、そういうのを細大漏らさずやるようにということで取り組んでおりますときに、これは単純ミスとはいえ、そういう取り組みの信頼性を損なうような結果になったのはまことに私は残念なことだと思っております。  今後、このようなことが起こらないように動燃を科技庁としても指導していきたいと思っております。     〔委員長退席、井上(義)委員長代理着席〕
  103. 中桐伸五

    中桐委員 せっかく動燃の方をお呼びしているので、今の点と、それから、先ほどちょっと失念をしてしまって動燃の方に質問するのを忘れたんですが、千七百四十三件ですか、こういったものに対して、とりあえず緊急を要する安全上の重大な問題は含まれていないというふうな形で書かれてある、そういうことについて、やはりそういう形で対応されるとやや問題が生じるんではないかと思うので、その二点について、時間がありませんので簡単にお答えいただければと思いますが。
  104. 近藤俊幸

    近藤参考人 済みません。先ほどの報告の件、処理しているところを処理したという表現で報告をしたという点でございますが、まことに申しわけありません。ミス、不注意から関係方面に御迷惑をかけまして、深くおわび申し上げます。  そういうことにつきましては、今、動燃職員としての心構え、それから、どう行動すべきかという動燃行動憲章を作成いたしまして、この研修に一生懸命取り組んでいるところでもあります。  それで、先ほど先生がおっしゃいました、結果オーライならいいじゃないか、こういう考えではなくて、御指摘のとおり、ルールを尊重する。かねて私は社内で言っておりますけれども、交通ルールを守れない人は原子力研究開発に携わる資格ない、とにかくいかなる場合でもルールを守っていくというのが基本だということで今鋭意指導しているところでございます。  それから次の、千七百四十三件の総点検の結果でございますが、この中には、千四百二十四件という日常の業務改善提案、これが入っております。大体、八割方がそういった身の回りの小さい日常の業務改善でございます。  もっと問題なのは、その中に、今先生がおっしゃった、法令上の問題になると思われるものが実は十三件入っております。それからまた、許認可書類と現状に不整合があって、整合させるためにはハード及びソフト対応が必要だといったものが二十二件入っております。ここいらは非常に重要な意味を持っておりますので、この対策を早急に進める必要があると思っております。  以上でございます。     〔井上(義)委員長代理退席、委員長着席〕
  105. 中桐伸五

    中桐委員 ありがとうございました。ぜひ迅速に対策をとっていただきたいというふうに思います。  時間がありませんので、最後に二点ほど質問と要望を兼ねて、質問もございますが、させていただいて終わりたいと思うんです。  多分、人形峠の事業所においてこのような問題点が出てくるということの背景の中に、タスクフォースの方式で――私は、そのタスクフォースというものがどういう人たちによって構成されているかわからないところがややありますが、民間の研究者とか、そういった方も入っているんでしょう、タスクフォースの中には。
  106. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 今おっしゃったタスクフォース は、一方、動燃で自主的に事業所等を点検するということをされたわけでありますが、それと同時に、私就任しましてから、科技庁の職員動燃現場をやはり目で見ることが必要だ、そういうことで科技庁の職員がみずから見てこい、こういうことで組織をさせたものでございます。
  107. 中桐伸五

    中桐委員 新聞報道によりますと、国立機関か何かの人も入っているとかいうふうなことが書いてありますが、そういう方は入っていないんでしょうか、タスクフォースには。
  108. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 放射線医学研究所から一人入っております。
  109. 中桐伸五

    中桐委員 わかりました。  そういう、できればいわゆる指導官庁、それから、もちろん当事者、そして第三者も少し入れて定期的にチェックをする。やはり、そこの職場にずっといる人がチェックをしているとマンネリということもございますので、そういうことから、ひとつそういうシステムを。これから、法人化だとかあるいは他の経営形態も含めて検討するということがあるようでございますから、ウランというものについては、影響が半減するのに長い場合は四十億年もかかるというものでございますから、これは内部だけじゃなくて、きちんとそういうシステムをつくっておやりになれば、非常に問題点指摘が的確にできるんじゃないかというふうに思うんです。その点、いかがお考えかということ。  それから、これは質問としてかなり大きな問題でございますが、動燃事業所の整理縮小が予定されているというふうに、この人形峠においても予定されているというふうにお聞きをしているんですが、それに伴う安全管理ですね。先ほど言った、半減期が四十億年もかかるようなものについて相当しっかりした安全管理の体制をとる必要があると思うんですが、それはどういうふうにお考えかということ。  それから、それに伴う職員の、現地に行ったときに労働組合の方ともお会いしましたけれども、大変雇用問題で心配がある。  それから、動燃の人形峠の事業所のある上斎原村という村の村長さんにも会ってきましたけれども、ここでは、二十二億の歳入に対して税を中心として三億を人形峠の事業所が占めている。それに電源開発費、今まで多かったんですが、急に減っているんですが、それを入れると、相当の財源において人形峠の事業所が大きなウエートを占めているのですね。これが例えば非常に短期間で移転するということになると非常に激変が起こるので、その辺でどういうふうに考えているのか。私は明確な立場は、見解はまだ今持っていないのですけれども、その点について大臣はどのようにお考えなのかお聞きして、終わりたいと思います。
  110. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 まず、先ほどのタスクフォースに関連して、今後ともいろいろな安全の専門家等を入れてきちっとしたらどうだという御質問に対して、私どもも今後、一般の安全の専門家というものを入れて調査をする必要があるのではないか、こういうふうに考えております。  それから、人形峠の事業所の今後でございますけれども、これはもう申し上げるまでもありませんが、ことしの八月一日に出ました動燃改革検討委員会の報告書で、動燃については新法人に改組すると同時に、ウランの濃縮や海外ウラン探鉱及び新型転換炉開発の三事業は、立地自治体等とも協議をして、適切な過渡期間を置いて廃止していくという方針が示されているところでございまして、これを受けまして人形峠事業所もそういう方向になっていく。そういたしますと、その整理の進め方に関しては、立地自治体である先ほどおっしゃいました上斎原村、それから岡山県、事業主体である動燃、それから動燃の指導官庁である私ども科学技術庁、その四者の枠組みで今検討を進めているところでございます。  ですから、その成案が得られるまでにはまだ若干お時間をいただかなければならないのだろうと思っておりますが、成案が得られるまでの間の安全管理等はどうするんだというのは、これは当然その間、動燃を新法人に改組してまいりますから、新法人になったら知らぬなんということはこれはできるわけはございませんで、新法人が安全管理業務を引き継いで、責任を持って対応していくということにするのは当然だと思っております。  それから、雇用問題等についても御指摘がございましたけれども、やはり地域においてはこれは相当大きな影響がある話でございますので、地域社会への影響を十分配慮しながら、先ほどの枠組みの中で協議を進めたいと思っております。
  111. 中桐伸五

    中桐委員 ありがとうございました。質問を終わります。
  112. 小池百合子

    小池委員長 辻一彦さん。
  113. 辻一彦

    ○辻(一)委員 限られた三十分でありますので、きょうはちょっと、五つほど私は問題意識は持っております。「もんじゅ」の報告書がいよいよもうまとめられようとしているというその中身について、それから核燃料サイクルの問題をどう見直しをしていくか、それから廃棄物問題、原子力防災、そして動燃改革という五点ぐらいの問題意識を持っておりますが、きょうは、序論ということでちょっとマクロに三点ほど、大臣政務次官に少しお尋ねをしたいと思います。  まず、先ほどから問題が出ておりますが、地球温暖化の問題はこれは非常に大きな問題で、ぜひ取り組まなければならない問題である、これはもう言うまでもないと思うのです。しかし、その中で非常に短絡的に原発を、二酸化炭素が原発は出ないから、原子力発電をふやせばそれで何とかやれるという、こういう短絡的な考え方がかなり広がっておるのですね。私はこれはやはり、幾つかの問題がありますが、廃棄物という点からいったときに、将来これは一体どうなるかという大きな問題があると思うので、安易な考えがあってはいかないと思うのですね。  私も、ロシア、旧ソ連の状況はまだ本格的に調べてはおりませんが、軍事開発をソ連からロシアはやって、冷戦時代に核兵器の開発を随分やって、軍事優先をしたから安全性はぎりぎりのところ、廃棄物の処理であるとかそういうものは余り十分手を入れなかったのですね。  だから今、シベリアの方には、北極海に向けて鉄条網を張った閉鎖都市がなお残っている、原子力の都市が残っている。その周辺等には高レベル廃棄物がタンクにいっぱいあって、管理が十分できないから、あふれて湖を汚染をし、さらに北極海に流れ込んでいく。まだロシア全土に散らかっている段階ならいいのですが、これは北極海まで及べば地球汚染の重大な原因になる。  ウラジオストクヘ行けば、四十隻の原子力潜水艦の廃船が並んでいる。今までは原子炉を日本海の真ん中にほうり込んで済ましていたわけですが、批判が強くなってこれはやれなくなってきた。それで、ウラジオに今四十隻ぐらいつないでいますね。これをどう処分するのか。  そういう、軍事優先で安全性はぎりぎり、そして廃棄物等のこういう陰の部分に十分な管理をせずに、今そのツケはロシアに大きく及ぼうとしている。だから、後世に大きなツケをこれは残しておるのですね。それがロシアだけで済めばいいけれども、まあ、済んでもよくないのですが、さらに北極海に流れ込むとすれば、これは重大な地球の汚染につながっていく。  この問題を考えると、原子力は、一面では非常に有効なエネルギー源ではあるけれども、安全問題とあわせて廃棄物の将来について、めどがまだ世界はどこも立てられていないという状況にあると思うんですね。そういう中で、安易に原発でやれるんだというような感覚を持つと、私は、それをやれば、将来この狭い国土の中に廃棄物という形で大きなツケを残すことになりかねない。  アメリカやロシアは、例えば原発の使用済み燃料をワンススルーで捨てようとする、まだ水につけていますがね、砂漠かどこかの中に処理をしようとする。一回で使い捨てをやる、そういうことも考えられている。しかし、広大な国土を持つアメリカの大砂漠、ロシアの砂漠、中国の砂漠というようなところ、あるいはドイツのような安定し た岩塩地帯があるとか、そういうものと違った狭い我が国土においてこの問題は、将来長い目で見ると非常に重大な問題を持つのではないかと思います。  温暖化防止をする、地球温暖化への取り組みは非常に大事であるけれども、似た地球汚染の問題をやはり原子力は片面でははらんでいるという、この部分について十分な慎重さを持たなくてはならないと思いますが、これについての大臣の見解をお伺いしたいと思います。
  114. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 辻先生から、地球温暖化の問題を考えるについても、安易にあるいは短絡的に原子力で解決しょうという発想は間違いではないかという御指摘で、私も、安易、短絡的に原子力でいけばすべてがハッピーだというような考え方はとるべきではないと思っております。  今度の京都で行われます会議に向けましても、もちろん、原子力に頼ればすべて解決というようなことではなくて、例えば車の燃料等についても相当身を削るあれがなければいけないでしょうし、あるいは新エネルギーの開発、いろんなことを総合する努力をした上で、しかし、現実としては日本の電力のうちで三十数%原子力発電が占めているわけでありますから、やはりそれをきちっと位置づけていくということが必要ではなかろうか。ただ、いきなりそこに飛びついて、ほか何も要らぬという考えは、私もやはりとるべきではないと思っております。  辻先生、年来この原発問題、原子力問題は御研究でいらっしゃるわけでありますが、私も辻先生と同じ日本海に面したところを選挙区に、お隣の選挙区でございますから、今までのいろんな、廃棄物を安易に日本海に投入して、その結果どうなるか、非常に私はそういう点も憂慮の念を持つものでございます。  まだ、廃棄物処理の方策というものはいろいろ問題も抱えているわけでありますけれども、今まで既にそういうあちこちに捨てられているものも含めて、これをきちっと、これからの人類の生存や地球の環境のためにはどうしていくかという技術開発も私は必要なのではないかと思っております。
  115. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私は、原子力発電を全面否定は決してしておりませんし、今日の状況の中で、一定の依存度を原子力に持たざるを得ない状況があるということはわかっておりますが、短絡的に、安易な取り組み考え方が広がるということはいろいろ問題があると思うので、この点をひとつ慎重に取り組んでほしい。時間の点から、この問題はこれで切り上げます。  これに関連して、動燃の、幾つか私も、「もんじゅ」それから再処理工場の爆発、「ふげん」の問題、それから低レベル廃棄物問題、この間人形峠も行きましたが、いろいろ見て、かなり厳しい批判は今までしてまいりましたから、そのことは今、きょうは申し上げませんが、ロシアの場合も、軍事的研究開発が進めばあとは多少どうあっても目をつぶっていこう、こういう考えが随分あって今日に至っておる。動燃も、新しい研究成果が上がればほかの方は多少いいのじゃないか、やはりこういう体質や考え方がなおあるのでないか。  それは動燃に限らない。科学技術庁の中にも、成果が上がる新しい研究開発にはお金をつけよう、しかし、廃棄物の処理であるとか影の部分にはお金を余りつけたくない、難しい。財政当局、大蔵省もそうですね。予算をつけるなら目に見えるところへっけよう、廃棄物のような過去の後始末には予算は余りつけられない。  この考え方は、例えば、動燃は批判されるべきでありますが、プルトニウムが七十キロかわからない、機械の中に回り込んで。そこでIAEAから、国際機関から厳しい批判を受けて、予算がない、何とかこれはやらにゃいかぬということで、法律的に予算の流用の可能な中で、そっちの方に随分回しておったという事実はもう明らかにされている。それは責められるべきですが、しかし、影の部分にお金はつけない、そういうような姿勢が科技庁にもあり、財政当局にもある。  今や、こういう影の部分をきちっと始末をしていないと前に進めないという時代に入っておる、国民も厳しい批判がありますから。そういうことを、動燃を批判すると同時に科技庁も財政当局もこのことを考えないと、私は、日本の前進的な科学技術、新しい開発ということはやはり成り立っていかないのじゃないかと思いますが、この点をひとつあえてお尋ねいたしたい。
  116. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 今の辻先生の御指摘は、何と表現したらいいのでしょうか、私は的をついた御批判のように受けとめるわけでございます。  核燃料サイクルとか核燃料リサイクル、こう言っておりますが、一種の円環構造と申しますか、やはり全体ぐるつと回して初めてその技術、原子力エネルギーの技術というものが私は完成するのだろうと思います。行け行けドンドンのところだけ予算をつけたりというのは、私は、今までにそういうところがあったのならば反省をして、全体の構造といいますか、一循環というものをやはり視野に置いてきちっと進めていくということがこれから一番肝要ではないかと思います。急がば回れというわけではありませんが、そういうことをきちっとやるということが原子力政策に対する信頼を回復する一番の方途なのではないか、こういうふうに思っております。
  117. 辻一彦

    ○辻(一)委員 詳しくやればいろいろありますが、この問題はひとつ切り上げたいと思います。  今、原子力発電を持つ立地の市町村、地方公共団体が非常に心配をしておるのは、私のところは十五もありますから、これはもう世界一集まっているから一番端的に心配しておりますが、使用済み燃料がどんどんたまり続けて、それで将来とも長い間これを保管せざるを得ないということに追い込まれはしないかという懸念が、原発を集中して持っている自治体、地方公共団体に非常に強いと思うのですね。  それで、青森の再処理工場が動き出すのはちょっと先であろうと思いますが、今青森の受け入れ状況というものがどういう状況にあるのか、いろいろ県の交渉はあると思いますが、これはもう簡単で結構ですから、ちょっとお伺いしたい。
  118. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 六ケ所村の建設中の再処理工場は、これは先生御承知のように、二〇〇三年一月操業開始の予定でございますけれども、これに先立ちまして、使用済み燃料の受け入れ貯蔵施設に設置される燃焼度計測装置の使用前検査受検のための使用済み燃料、試験燃料の搬入を行うこととしているわけですが、この試験燃料の受け入れに当たって、事業者、青森県六ケ所村間の安全協定の締結を行うべく今当事者間で調整が行われているわけでございますが、まだその調整が妥結して安全協定を結ぶというところまでは至っておりません。
  119. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これは、政府と青森の間でいろいろお話し合いがあって将来進むであろうと思いますが、仮にその協定が妥結をして青森の工場がフル回転をするようになっても、一年間に大体八百トンしかその使用済み燃料を、容量いっぱいですね、八百トンが。フランスのラ・アーグの再処理工場と同じ規模だと思いますから。そうなると、今、日本の場合は九百トンとかあるいは千トン前後一年に出ると思うのですが、いずれ足りなくなるのですね。そのときに、一体その使用済み燃料をどうするのか。  再処理路線をあくまでとるとすれば、新しい工場をつくるか、あるいは海外にまた委託をして処理をするのか。あるいは、フランスやアメリカやロシアがやっておるように、水の中に、プールにつけて、将来ワンススルーで使い捨てにする。これはさっき申し上げましたが、砂漠や広い場所があるところはそういう道があるけれども日本のようなこんな狭いところで一回の使用済み燃料をワンススルーで使い捨てにするには、環境負荷が大き過ぎるでしょうから大変だと思いますね。  しかし、もう一つの道は、水の中につけて三十年とか四十年様子を見るという方法があるのですね。IAEAで私は、ローゼン安全部長とか皆さんと、ちょっと前に行って随分論議をしたことが ありますが、日本やフランス、イギリスは、再処理をやってプルトニウムを取り出してそれを燃やそうという。しかし、ロシアやアメリカは、水の中につけて当分様子を見る、それで将来ナトリウムやプルトニウムを人類本当に制御できるのかどうか、放射能を失わすような新しい科学の開発があるのかどうか、そういうことを見定めてやっても遅くはないというので、水につけておりますね。  我が国も、全部再処理をするということだけではなしに、水の中につけて三十年や四十年様子を見て、これから科学の進歩の中でそれをどう考えるか、こういう道が第三の道としてあり得ると思うのです。  これと非常に共通した考え方が、原子力委員会、閣議で了承した使用済み燃料の中間貯蔵、保管設備という構想、考え方ですね。これは支援を決めておるのですが、こういう考え方が私はあり得ると思うのです。選択肢の非常に大事な一つとして、水の中につけて様子を見る、こういう中間貯蔵設備、保管の考え方が十分成り立ち得るのでないかと思うのですが、これについてはどういう御見解か、お尋ねしたいのです。
  120. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 今、辻先生がおっしゃったように、我が国、これから使用済み燃料をどうしていくかということで、閣議了解で一時保管といいますか、中間貯蔵ということを出しているわけであります。  当面の対策としては、幾つかの発電所で、その貯蔵能力の増強ということを地元の御理解を得ながら行っていくことが必要だと思いますが、長期的には、使用済み燃料の貯蔵量が増大してくるわけで、それに対応することが必要だということで、発電所外の施設における貯蔵について検討することが閣議了解をされまして、二〇一〇年を目途に発電所敷地外における貯蔵も可能となるような環境整備について結論を得ようとして、今、科学技術庁、通産省、それから電気事業者から成ります使用済み燃料貯蔵対策検討会というのを行っておりまして、きのうも行いましたが、今まで四回やっております。これは、通産とも連携をとりながら進めていかなければならないと思っております。  今先生が、直接処分かあるいは再処理かという中に、水につけて数十年様子を見る方法もあるではないか、こういう御指摘でありました。ただ、結局最後には、最終的には直接処分をするのか再処理をするのかというのを、どこかでこれは決めなければならないわけでございます。  それで、私もまだ諸外国がどうしているかということについてまで必ずしも勉強が十分ではございませんけれども、先生の御指摘になった中に、アメリカの考え方というものが一つあるように今承ったわけでありますが、アメリカの場合は、使用済み燃料というのは再処理しないで直接処分をするというのがやはりアメリカの見解の中にあるのじゃないかと思います。  その上で、最終処分場に係るサイト特性調査を実施しているネバダ州に使用済み燃料の中間貯蔵施設の設置を可能としてはどうかということで、先月末ですか、下院において可決されたと聞いておりますが、一方、類似の法案がことしの四月に上院でも可決されておりまして、今後どういうふうに調整されるのかという問題が残っているように聞いております。  アメリカの考え方も我々はもちろん参考にしなければならないとは思いますが、あくまでアメリカの場合は直接処分をするということがその前提にあるのではないかと思っておりまして、直接処分はやはり我が国ではできないという前提の我が国とは少し、全く立論の基礎を同じにしていいかどうかということはよく考えなければならないのではないかと思っております。
  121. 辻一彦

    ○辻(一)委員 アメリカのお話は聞きましたが、ただ、アメリカは、直接処分を最終的にやる場所がどうしてもアメリカの中で決めかねる、だから中間貯蔵をやって、とにかく何十年か、もう一遍やらなくちゃいかないということで、恐らくこの上下院は、この法案を可決をして、中間貯蔵を具体的にいつまでにどうするかということを法律で明らかにしようとしていると思うのですね。  私は決算委員会でも随分論議をしましたが、政府は閣議や原子力委員会の了承という点で中間貯蔵をやるということを打ち出していますが、そのときにも法律に書き込めと言ったのですが、なかなかそれは難しいと言うのですが、アメリカは、やはりこの問題は非常に、いつどうするかということになると、やはり法律によって書き込むぐらいのことはやらないと、これは結論は出せない、そういう意味でこの法案を上下院は可決したと私は思う。大統領はあと拒否権をどうするか、これはこれからの問題ですが。  そういう意味で、私は、中間貯蔵は今日本の中で原子力委員会も閣議もやるということを、やらなければいかぬということを確認をしているのですから、法律にひとつ書き込んでこれをやるぐらいのことを政府考えるべきじゃないか。それができないならば、やはり我々は議員の立法によってそういうことを呼びかけなければいかぬと思うのですが、それぐらいの決意を持ってやっていただきたい。  私は、中間貯蔵は、アメリカは最終処分の方法は日本と路線が違いますが、科学の進歩というものは一体どういうふうになるのか。今のままなら、ナトリウムもプルトニウムも制御できぬですよ、人間は。だから使いようがないわけですが、将来一体どういう可能性を持つのかは、なお科学の進歩にまたなくてはならない点もあると思う。そういうものをいろいろ見きわめるためにも、水での保管ということは、これは水中じゃない乾式保管だってあるわけですが、十分選択肢として検討すべきだ、こういうことを申し上げたわけです。  この問題は、いずれ詳しく、また時を改めて項目ごとに論議をしたいと思います。  最後の三点目は、原子力災害に対する防災の問題です。  この間、三月に、東海の再処理工場爆発事件の後、すぐ見に行きました。そのときに東海の村長さんと随分論議をしたのです。選挙の前の東海の村長さんですね。今まで東海村の村長さんは、安全や防災は、まあそれは政府に任せておけば大丈夫だ、こう思っておったと言うのですね。ところが、あの爆発事故の最中に周辺の市町村から電話がかかってきて、あなたのところぐらいはどうしたらいいか、どうなっているのかということはわかるだろうという電話が来たのだけれども、台風なら、風が強くなって、木が倒れる、家が倒れる、わかるし、大雨が降れば、洪水、水かさが上がるからわかるが、五感に感じない原子力災害は、もうこれはちょっと市町村長の判断ではどうにもならぬ。だから、どうするかということについては、初期の対応は全然本格的にはできない。だから法律によって、原子力防災の特別措置によって防災体制をとってもらいたい。そういう意味で、宗旨がえをしたとはおっしゃらなかったけれども、今までの御主張とは随分変わってきている。茨城県の知事もやはり同様な要請を、今一緒にやりましょうといって福井の知事にも申し出をされておる。  動燃事故等を中心にして、これはさかのぼればスリーマイルがあり、チェルノブイリがありますが、最近の続く事故の中で、防災の必要性ということは今までと違って広く理解されつつあると思うのですが、こういう時期に私は原子力防災特別措置法を制定すべきでないか。政府としては一体どう考えているのか、そこをちょっとお尋ねしたいのです。
  122. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 一般に、防災対策については、地域の実情に応じた迅速な対応が必要だということで、災害対策基本法や地方自治法に基づいて、地方公共団体が主となって、国がそれを支援するという枠組みでやってきたわけであります。  原子力防災についても、こういう考え方で今までやってきたわけでありまして、国においては、現地へ専門家とかモニタリングチームとかあるいは医療チームを派遣する、現地事故対策本部の設置等、地方に対する支援体制の充実強化を図っている。  こういう形でやってきたわけでありますが、今先生お話しのように、原子力防災特別措置法を制定すべきだという声が地方自治体から私どものところにも来ているわけであります。これは、この要望については真蟄に受けとめまして、防災対策の充実強化を今までも図ってきましたが、今後ともそれを十分考えていかなければならないと思っております。  ことしの六月に、もう先生よく御承知でございますが、国の防災基本計画を改定しまして原子力災害対策編を新たに追加して、国と地方公共団体それから事業者等の役割と連携の明確化を図りましたし、それから現地事故対策本部の設置等国の初動体制の充実強化ということもやったわけであります。  それから、当庁におきましては、去年の十二月から原子力防災検討会を開催しまして、関係地方公共団体の参加も得まして、法的措置の必要性の有無を含めて今検討を行っているわけであります。  それから、昨日、辻先生の党内で御勉強された成果のペーパーを当庁もいただいております。まだ、私、さらっと読ませていただいただけでございますので、十分それについて御答弁をするだけの勉強ができておりませんが、先生方の御勉強の成果も参考にさせていただいて研究をしたいと思っております。
  123. 辻一彦

    ○辻(一)委員 災害基本法があって、そしてその上に防災基本計画があり、原子力編があり、今までの状況に比べればかなり知恵を絞って前進をしたと思いますが、なおいろいろ足らざるところがある。そういうものをやはり原子力災害の特殊性から補わないと、実効ある防災活動はできないのじゃないかと思いますね。  例えば、今地方公共団体が非常に要請しているのは、初期の対応が、さっき言ったように、村長さんのお話じゃないけれども、できないですね。だから、初期の対応を、専門の専門官がおって、判断をし、それからどうすべきかということの指導をするとか、私たちは、地方は勧告や指示までやってくれと言うけれども、なかなか地方自治法と災害基本法、市町村の責務等々考えると、そこらはどこに線を引くかという難しい問題があると思うのですが、例えば安全運転には運転安全官がおるわけですが、防災には防災専門官のような専門のメンバーを現地に配置をして、東京で判断しておったんじゃ遅いから、だから現地に防災専門官を配置をして、初期対応がきちっとできるようにやってほしいというのが非常に強い要求ですね。そういうものは、現在の防災計画やあるいは原子力編の中にもないわけですよ。  だから、これは時間があれば幾つも挙げますが、たくさんそういういろいろな例がある。例えば、原子力施設の平常の放射能の数値や、あるいは異常なときの、そういうものが地方自治体に直ちに、ストレートに情報が入っていく、オンラインでわかるようにするとか。  それから、今まで紳士協定で結んでおったいわゆる立入検査や、調査や、あるいは通報をしなくてはいかないという、これはみんな紳士協定なんですよ、立地協定の。そういうものをきちっと法律で裏づけて、そして、現在の災害基本法とその上に乗せた原子力編が本当に生きるようにするには、なお足らざる幾つかの点がかなりある。そういうものを補うために原子力防災特別措置法の必要ありというのが我々の判断であり、取り組みですが、ここはその中身を詳しく論議することはないのですが、そういう声が、必要があるということを認識をされて、政府政府としてひとつ取り組んでもらいたい。その決意のほどを伺いたい。  大体、今まで自治省や消防庁は割と熱心だったですね。科学技術庁や通産省はだめなんですよ。地方に安全と言った、引っ張っていったこの発電所が今避難までしなければならぬというのだったら、これはどういうことだという声があると、それは通産や科学技術庁もちょっと腰が上がらなかったのですが、時代はやはり大きく変わってきた。そういう点で、より政府の積極的な取り組みを望みたい。長官の決意をひとつ伺って終わりたいと思います。
  124. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 緊急時における対応を迅速かつ的確にする、そういう地方自治体の不安も取り除くということは極めて大事だと思います。  科学技術庁としても、施設の運転状況を平常時から把握するために運転管理専門官というのを置いておりますが、それと同時に、国の初期対策ということを特に御指摘になりました。運転管理専門官のほかに、科学技術庁としてあらかじめ事故対策チームを設けまして、迅速に派遣するというようなことも仕組みをつくっているわけでありますが、今後とも、先ほど申し上げました原子力防災検討会、こういうところの議論も踏まえながら、防災基本計画を具体化していく。それから、地域の方々に安心していただけるにはどうしたらいいかということを真剣に勉強させていただきたいと思っております。
  125. 辻一彦

    ○辻(一)委員 終わります。
  126. 小池百合子

  127. 吉井英勝

    吉井委員 日本共産党の吉井でございます。  十二月に気候変動枠組み条約第三回締約国会議、温暖化防止京都会議がいよいよ開かれるということになってきておりますが、これからも非常に長い時代にわたって存在する可能性を持つ私たちのこの地球と、そしてそこに住む人類の将来を考えたときに、地球温暖化のメカニズムの解明と温暖化防止のために科学技術の果たす役割は極めて大きいというふうに思います。  現に今、科学技術庁は、「地球変動の解明と予測を目指して」という取り組みなどを進めていらっしゃいますし、そういう点で、地球温暖化のためにもつと科学技術取り組みを強化して、CO2の固定化の技術であるとか、あるいは一次エネルギーを電気エネルギーに転換するエネルギー転換効率をうんと高めていくこととか、それにしてもなお廃熱は残るわけですから、その熱エネルギーなどの有効利用をもっと進めていく。そういったことについて、私は今、科学技術庁の総力を挙げた、そういう取り組みや努力が必要だというふうに思います。  その点で、最初に谷垣長官の決意というものをまず伺っておきたいと思います。
  128. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 きょうのこの委員会で御議論をさせていただきまして、温暖化あるいは地球環境、地球変動の取り組みについては、たびたび私も申し上げさせていただいておりますけれども、これはやはり私どもの英知を集めてやっていかなければならない、取り組んでいかなければならない課題だと思っております。  そして、先ほど御指摘になったような、例えばCO2固定化の技術であるとか、そのほかにも、新エネルギーを開発していく、いろいろな課題があると思いますけれども、そういうことに対して日本科学技術がきちっとした、これは短期間にできるとは思っておりません。これまでサンゴ礁によるCO2固定の技術開発等を行ってまいりましたけれども、こういういろいろな試みをきちっとやっていくということが日本のできる大きな国際貢献の一つでもあるのではないか、こう思っております。  そういう意味で、日本でああいう会議がこれから十二月に開かれるわけでありますから、私ども気持ちを新たにして取り組みたい、こう思っております。
  129. 吉井英勝

    吉井委員 そこで、幾つかのことをお聞きしていきたいと思いますが、一次エネルギーですね。最初に物を燃やして出てくる熱エネルギー、これをいかに有効に活用をしていくかという、その科学技術的なアプローチというのは物すごく大事な分野一つでもあります。  そこで、ちょっと最初に、エネ庁の方に来ていただいておりますから確認をしておきたいと思うのですが、「一九九四年度における主要電源の電力量等」という資料をいただきました。それで、原子力と、火力の場合は石炭火力、LNG火力、石油等による火力というふうにあるわけですが、原子力の発電電力量を発電所設備数、九四年度の分で すね、割りますと、これは一基当たり五十六億キロワット・アワー、こういうふうになってこようかと思うのです。それから、平均発電端効率というのが約三四%だというふうにお示しいただいておりますが、仮に発電端効率がそれぞれ一ポイント向上した場合、発電電力量というのは七十九億キロワット・アワーがふえるという、単純計算をやった場合ですけれども、そういうことになろうかと思うのですが、最初に数字の方だけ確認しておきたいと思います。
  130. 小池百合子

    小池委員長 エネ庁というふうにおっしゃいましたけれども、工業技術院でよろしいですか。  じゃ、今の数字を挙げられる方で、工業技術院杉原エネルギー術研究開発課長
  131. 杉原誠

    ○杉原説明員 工業技術院の杉原でございます。  お出しした資料はエネ庁の方から出しておりまして、ちょっと私どもの方からは答えようがないのですが、お出しした資料は正確なものだと思っております。
  132. 吉井英勝

    吉井委員 余りこういう数字で食い違いがあると、大臣にもいろいろ聞いていただくにしても、そごがあってはいけませんので、事前にちゃんと話を突き合わせをしてやっておりますので。  それで、そのこととともに、発電電力量というのを、原子力にしても火力にしてもそれぞれ数字できちっとお示しいただきました。それをこの発電端効率というもので割って、さらに、捨てられているもの、これは一〇〇%から、例えば発電端効率三四%だと、引いたら六六とすぐ出るわけですが、それで計算すると、廃熱であるとかあるいは部分的には機械的ロスその他が入ってくるわけですが、要するにエネルギーロス、これが生まれてきます。  それで、原子力とそれから石炭火力とLNG火力と石油等火力と全部合わせますと、総熱量というのが二兆二百八十九億キロワット・アワーという、ちょっと想像のつかない巨大なものなんですが、その中で、大体その六七%に当たる一兆二千七百七十五億キロワット・アワー、もう目が回るような巨大な熱量が要するに活用されずに出ているわけなんです。その多くは廃熱ということになりますが。  つまり、原発にしろ、火力発電所にしても、有効活用すれば、これはもちろんエネルギーとして有効に使えるわけですが、有効活用されないということは、逆に言いますとヒートアイランド現象、要するに地球温暖化の巨大な源になっているわけですね。そのことは、私たちは非常に重視して考えていかなければいけない問題だと思っているのです。  そこで、数字の方は、出していただいたのはもともと通産省エネ庁、工技院の方にも行っている数字ですので、廃熱などになっている発電ロスが一兆二千七百七十五億キロワット・アワー、巨大な地球温暖化の根源の一つになっているということ、この点だけ確認をさせていただきたいと思います。
  133. 杉原誠

    ○杉原説明員 先生お持ちの資料、ちょっと私今手元に持ってこなかったのでございますけれども、約四割前後が発電に使われておって、六割程度がその廃熱として捨てられておるということは事実でございます。
  134. 吉井英勝

    吉井委員 どうもやりにくいのですけれども、エネ庁からちゃんと資料が行っているように、ついさっきも――もらってもろうていますね。資料はもらってもらっていますので、そごを来すことはないのですが。  ですから、発電所一基当たり、百万キロワット級とかいろいろありますから、平均的に見て、日本の原発でいいますと五十六億キロワット・アワー、これが発電所の発電電力量なんです。これでいきますと、さっき確認していただきました、一ポイント発電端効率を引き上げるとどうなるか。実は、一ポイント上げるだけで、全然新設しなくても、原発一・四基分を新設したと同じ効果が出てくるのです。  それから、原発と火力発電所を全部合わせますと、実は一ポイント発電効率を上げるだけで二百三億キロワット・アワー、これは平均的な原発でいきますと、もちろんこれは単純計算の話ですからあれですが、三・六基分に当たるわけなんです。  これもちょっと、余り数字ばかり並んだらややこしいから、数字だけ確認しておきたいと思いますが、それでいいですね。
  135. 杉原誠

    ○杉原説明員 先生御指摘のとおりだと思います。
  136. 吉井英勝

    吉井委員 それで、一ポイント上げるとそういうことなんですが、これも単純計算でいきますと、ここは大臣も驚かれるかもしれませんが、五ポイント上げる。実は火力なんかでは、今の四〇%ぐらいを五二、三%に上げる、こういう取り組みなんかもありまして、大体そのめどもついて、かなりやっているものもあるのです。そういう努力をして仮に五ポイント上げますと、何と原発十八基分新設したに相当するわけです。  これを一〇ポイント上げるというのは、幾ら三四%ぐらいで発電効率が今悪いといっても、一〇ポイント上げるというのはこれはなかなか大変な努力が要ることは事実ではありますが、一〇ポイント上げると実は三十六基分の原発を新設したと同じ効果をもたらすということになるわけなんです。  そこで、これらの数字は先ほど工業技術院の方にも確認をしていただきましたので、このエネルギー転換効率を高めるということと、それでももちろん廃熱として残る、うまくいかない部分があるのです。私は、その全部がハッピーにいくというふうに決めつけて言っている議論じゃないのですよ。本当言うたら、三四%であれば六六%全部うまくいけばいいじゃないかというふうになりますが、そんな単純なものじゃありませんから、乱暴な議論はしていません。  しかし、そういう取り組みと、なおかつ残る廃熱、その廃熱がまた地球温暖化の巨大な要因の一つになっているわけですから、ここにどう切り込んでいくかということが、私は、科学技術庁も、それから通産省、あるいはそこの工技院の方にしても、その他日本科学技術の総力を挙げて本当に取り組んでいく大事さがあるということを、それをぜひ大臣に見ていただきたいということで、少しやりとりしながら御紹介したわけです。  実は、先日私は、佐賀大学の海洋温度差発電の研究グループのところを見学に行ってきました。近くここは、インドと約一億円ぐらいの実証プラントで、実用プラントに近い実験を行うという話もしておりました。  この海洋温度差発電というのは、送電端効率というので見ますと、これは発電電力量で見ても発電コストの面でも、直ちに大きな威力を発揮する、そういう簡単なものだというふうには私ももちろん見ていないわけですが、ただ、低温領域なんですね。海洋温度差発電というのは熱帯地方ですと有効なんですが、表面の海水温度と深層の低い温度のその温度差で、大体十五度とか十六度ぐらいの温度差で発電するのですよね。これは作動流体としてはアンモニアガスなどを使うわけなんです。ですから、この低温領域での温度差で発電するというこの原理そのものは、現在東京周辺の工場から、物によっては二百度Cぐらいの排熱が出されているのですよ、温排水が。そういうところではもちろん使えるわけなんです。  原発、火力になりますと、海水と余り温度差が大きいと環境への負荷が大きいというので厳しく制限を設けておりますから、七度ぐらいの差しかとっておりませんから、ここでそれがそのまま使えるという話じゃありませんが、いずれにしても、私は、そういう点では、今大量に海に捨てられているこの熱エネルギーを熱供給源として有効に利用することと、それから、可能なものについては電気エネルギーに転換する、使える分野があるわけですから、こういう点での技術開発を進めるということ、それがやはり非常に大事だと思っているのです。  この点について、ちょっと工技院の方に、熱エネルギーの有効利用という点では多分思いは同じで、それで取り組んでいらっしゃると思うのですが、この点だけちょっと確認しておきたいと思い ます。
  137. 杉原誠

    ○杉原説明員 先生御指摘のように、都市から出る排熱の有効利用というのが、地球温暖化の観点、それからヒートアイランド現象の解消ということで非常に大切だというふうに我々も認識しておりまして、このための技術開発として、平成五年から力を入れて、いわゆるエコエネ都市プロジェクトというものでございますが、工場などの排熱をうまく回収をして、それを民生のために使うという技術を開発するように努めておるところでございます。
  138. 吉井英勝

    吉井委員 それで、大臣、物事は単純にいかないのをもちろんわかった上で言わせていただいているのですが、例えば発電所にしても、火力発電所は比較的近いところにありますね。こういうところは近い地域に熱供給源として送る、これは技術開発を含めて取り組みをやっていけば有効利用も可能なんです。ただ、原発のように、大都市部では危ないというので遠いところへ、福島とか、つくっているものをそのまま熱供給源として都市へ引っ張ってくることはとてもできないのです。  しかし、それが廃熱として巨大な温暖化の要因の一つになっておるわけですから、そういうところであれば、例えば海水との温度差、かなり無理して冷却してやるものですから七度ぐらいまでいっているのですが、その七度差をゼロにする、海水との温度差をゼロにする、そのために例えば海洋温度差発電を活用するとかしますと、海洋温度差発電だけで考えると、率直に言って、工業技術院の方は専門家だからよく御存じなのですが、現在のところ、送電端レベルでいいますと、余り効率がいいというふうに言えるものでもないし、例えば百万キロワットの原発で仮に低温領域でこれを使ったとしても、うまくいって二万キロワットとか三万キロワットぐらいの発電にしかならない。一方、設備費が結構かかるとか、いろいろな問題が出てくるのはよく承知した上の議論なのです。  しかし、少なくとも電力というところに着目すれば、必ずしも、せいぜいうまくいってとんとんぐらいかな、余りペイするものにならないとしても、海水との温度差を限りなくゼロにしてしまうという点で活用するならば、二重の効果が生まれるわけですね。一つエネルギー転換による効果と、もう一つは、温暖化そのものについて、その要因を取り除くという効果が生まれてくるわけですね。私は、そういうふうな点で、科学技術庁、また通産省など、関係の研究機関としてやはり本当に総力を挙げた取り組みというものをぜひやっていただく必要があるのではないかなというふうに思っております。  そして、なぜこれをくどいように申し上げているかと申しますと、総合エネルギー調査会が国際エネルギー部会の中間報告というのを九五年に出したのを読みますと、御承知のように、アジア地域の一次エネルギーの需要見通しを、石油換算であらわして九二年実績の十五億トンから二〇一〇年には三十億トンヘ、二倍だと、とりわけ石炭が二倍以上の伸びだと。  ですから、従来型のエネルギー消費を続けて、かなり多くのものを廃熱として海に捨ててしまっているというのでは、エネルギー効率という点でもそうだし、温暖化の要因をますます拡大するという点でも、これは本当に大変な問題になってくると思うのです。それは、従来型でいけば間違いなくCO2は急増します。ですから、やはり経済成長率は二%台で維持しながら、なおかつ増加するエネルギー需要をCO2の排出を抑えてやっていく。そのためには、私は、この点で、既存の発電所のエネルギー転換効率をやはり飛躍的に、まあ飛躍的には難しくても、非常に困難は伴っても、少なくとも数%から一〇%のオーダーぐらいに高めることと、廃熱の有効利用のための技術開発に、これは科学技術庁として、関係の省庁とももちろん連携してですが、もう全力を挙げて真剣に取り組んでいただく必要があるというふうに思うのです。  この点については、ひとつ大臣に伺っておきたいと思います。
  139. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 今、吉井先生から大変よいことを教えていただいたという気持ちがしております。私、今まで今の問題を研究したことがなかったものですから、エネルギーロスをきちっと活用することが、有効利用だけではなくて地球温暖化に対する防止にも非常に効果がある、なるほど、いろいろなところに技術開発をしていくものがあるものだなと、今お話を伺いながら思ったわけであります。  もちろん、先生も御指摘のように、恐らく、想像で物を言ってはいけませんが、今おっしゃったようなことを実現していくためには乗り越えなければならない技術の壁がたくさんあるのだろうというふうに想像いたしますが、今、きょうそういうことを御指摘をいただいたので、私としても研究をさせていただきたいと思っております。
  140. 吉井英勝

    吉井委員 大臣としても研究していただきたいし、同時に、科学技術庁としてそういう分野本当に力を入れていただきたいというふうに思います。  それで、もう一つの問題は、やはりCO2の固定化、これが非常に大事だというふうに思うのです。  中国などが大量に石炭を使用するということになってくると、いろいろな報告書でもそれは示されているわけですが、そのときに、今の状態でいけばもう間違いなくCO2が大量放出される。もちろん日本を含めての話ですが、その排気ガス中のCO2を固定化する技術開発というのは、実はこれは非常にやはり急がれている分野だと思うのです。  現在どういう状況かというのをほかのガスについて見ますと、日本の場合には、六〇年代に大きな公害反対の住民運動が全国各地でありました。そういう中で、地方自治体そして国も、厳しい規制を設けていった中で目標も示して、それがやはり取り組みを前進させたというのは、率直に言ってそれは事実だと思うのです。その結果、例えば排煙脱硫装置などをつけて、工場等から出てくる排気ガス中の硫黄分そのものを脱硫装置で取ってしまう。それから、自動車、もちろん工場もそうですが、自動車なども含めて、脱硝装置を取りつけたり、その効果を持たせるものを開発するとか、私もこれは以前、国会でも取り上げまして、環境庁や建設省も頑張ってもらって、今度は、走っている自動車から出てくる窒素酸化物を、大気中はなかなか難しいのですが、例えば高速道路のトンネルなどのところで、その脱硝装置を使って八割以上カットする、そういう技術開発も進めてきたわけですよね。  ですから、やはり真剣にその気になって取り組めば、脱硫も脱硝も進んできたし、炭酸ガスの固定化技術というのも本当はもっと進むと思っているのですよ。やはり率直に言って、これは取り組みが随分遅いというふうに思うのです。  しかし、それにしても、私はけちばかりつけているのじゃないのです。皆さんの取り組みの中で、例えば炭酸ガスの生物的固定化技術では、実験段階のものですから、それがそのまま実用化につながるというわけではありませんが、六二%の成果、化学的固定化では三六%の成果も上げているというふうに聞いておりますが、とりあえず最初に、現在の研究状況、この二点だけ伺っておきたいと思います。
  141. 楠田昭二

    ○楠田説明員 先ほど先生御指摘のCO2の固定化技術開発でございますが、地球温暖化問題を究極的に解決させるために世界全体の二酸化炭素を現在のレベルの半分以下とすることが必要ということで、これは既存の技術では到底実現できない大きな課題だと考えております。  そういった意味で、一九九〇年、平成二年から、通産省におきましては、先ほど先生御指摘のありました、化学的あるいは生物的手法によります二酸化炭素固定化・有効利用技術等の革新的な技術の開発を積極的に進めてきておるところでございます。
  142. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 通産の方から今御答弁がございましたけれども科学技術庁としても行っている ことを申し上げたいと思います。  一つは、従来から、植物が空気中の二酸化炭素から有機物を生成するメカニズムである光合成科学研究というのをやってまいりました。それからもう一つは、平成七年度から新たに開始された戦略的基礎研究推進事業において、環境低負荷型の社会システムという研究領域を設けまして、この中で、先ほどもちょっと申しましたが、サンゴ礁による二酸化炭素固定技術の研究開発を推進しているわけであります。  先ほど通産省からも御答弁がございましたけれども、関係省庁とも協力をして、この分野の研究を大きく進めたい、このように思っております。
  143. 吉井英勝

    吉井委員 実験室段階で事前にお聞きしたところで、生物的手法で六二%の成果とか、化学的固定化で三六%の成果とか、この間の取り組みで前進してきていることは大事な点だというふうに見ているのです。やはりそれをもっと進めていく。  そういう点では、私は、研究開発費という点で見ますと、「もんじゅ」などの研究開発動燃関係で取り組んできた二兆円を超えるものからすると、エネルギー転換効率を高める問題にしても、炭酸ガスの固定化技術の研究開発にしても、集計の仕方によってばらつきがありますが、これまでの間、ある集計の仕方によれば一%に満たないのですね。ちょっと高目に見ても数%ぐらいかなというところで、これだけ、ある一定の展望が見えるところまで来ているものがあるのに、やはりこの分野取り組みは弱かったというふうに思います。  こういう点で、地球温暖化の防止というのは、今、人類と地球の将来がかかった重要な時期に来ているわけですから、そのときに科学技術の持てる能力などすべてをかけてこの重要問題の解明に当たるということが、私は、まさにその点では科学技術庁の存在意義が問われるぐらいのところへ来ているというふうに思っているのです。  そういう点で、温暖化対策を進める上で、エネルギー問題というのは、一つは消費段階での浪費をなくすこと、それからエネルギーの転換段階のむだを省いて効率を高めるという、きょう前半に取り上げました問題、それから新エネルギーの導入、そして同時に、炭酸ガスの固定化に成功すれば排出ガスそのものが大幅に減らせるわけですから、こういうことについて本当に全力を挙げて取り組んでいただきたい。  そういう中での十二月のCOP3です。ただ、この点で非常に残念なのは、他の方からも指摘がありましたように、十月二十五日の朝日の社説なんかを見ておりましても、日本の五%削減案を基本として、アメリカがゼロ削減を出してきたこと、一五%削減目標を主張するヨーロッパや国内でも多くの国民からの批判の声が上がっているということを踏まえて、「日米は地球の運命に鈍感だ」という主張も出ておりました。私は、日本はやはり二〇%目標を掲げて取り組んでいくという姿勢が必要だと思うのですよ。  そして、時間が参りましたから締めくくらせていただきますが、九五年度のエネルギー消費量だけで見ますと、最終エネルギー消費は、産業界が三億三千八百万キロリッター中二億七千四百万キロリッター、八一%を占めているのです。だから、やはり産業界自身本当に努力を求めるということを政府として強くやっていただく必要があると思います。  そして、京都会議を誘致したからには、議長国としてもっと積極的な役割を果たすべきじゃないか。これは国民の声ですよ。そういう点で、橋本内閣の国務大臣であるとともに、地元京都の大臣として、長官にはもっと積極的に内閣の中で働きかけをやってもらう必要があると思うのです。  最後にこの点についての決意を伺って、時間が参りましたので終わらせていただきたいと思います。
  144. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 私は、京都出身というわけではありませんけれども、この京都会議をきちっと成功させて、地球温暖化あるいは環境問題に対して大きな前進が少しでも得られるように頑張らなければいけないと思っております。
  145. 吉井英勝

    吉井委員 時間が参りましたので、終わります。
  146. 小池百合子

  147. 堀込征雄

    堀込委員 大変お疲れでございますが、最後になりましたので、よろしくお願いします。  最後になりますと、質問通告した質問も大体前の方がやられておりますので、多少ニュアンスを変えて、長官の姿勢ども踏まえて答弁をいただければ、こんなふうに思うわけであります。  きょう、財政改革法案が衆議院を通過したわけであります。午前中、隣の斉藤先生からも御質問がございましたように、科学技術予算、一〇五ということで、この評価は議論の中でいろいろあったわけであります。一体これで科学技術は大丈夫なのかという議論と、何で科学技術だけ一〇五なのという議論もあったことも確かだと思うわけであります。さらに、かてて加えて、十七兆円でしたか、これらの八年から十二年の基本計画は一体どうなってくるのだろうかというような心配の質問もございました。  私もその点で、きょうの法案を見て、一体これはどうなってくるんだろうかなということについて、長官の考え方をひとつお聞きをしたいということであります。  これは、午前中も答弁がございましたので、考え方を聞かせていただくと同時に、私は、もう一つ科学技術基本法という法律があって、日本の国家にとって科学技術の振興は最重要課題だ、こういうふうに決めているのですが、実際は、この法律が国民に知られていて、我が国は科学技術立国でいこうよということに必ずしもなっていない現状があるのではないかというふうに思うわけであります。  今、六つ改革ということで橋本内閣はやられておりまして、いろいろ改革をされているわけでありますが、私は、もう一つ、ぜひ、そういう意味では戦後のシステムを変えるという改革でありますから、戦後の外交というか国際社会における日本姿勢みたいな、特に対米関係を中心に来た日本のこれからの世界におけるあり方みたいなことについてもやはり見直して、きちんとしていくべきではないかな、そういう時期に来ているのではないかなというふうに思うわけであります。  そういう意味で、二十一世紀日本の国のあり方の中で、例えばアメリカや中国のような、核も持ったり、いろいろな大国と違って、非核国際社会のリーダーとしていくというようなこともあるでしょうし、あるいは、この基本法にあるような、科学技術あるいは環境問題を中心にしながら世界のリーダーシップをとっていくんだというような、やはり国のありようみたいなことを、私は、六つ改革で国のシステムを変えるわけでありますから、国際社会の中で我が国もそういう姿をきちんとしていくんだというようなことをぜひ示していただきたい。そういう顔のある外交というものを確立していくべきではないか。そのために、科学技術庁長官に自民党の次期ホープと言われる谷垣さんがなられたので、ぜひひとつ内閣の方針としてそういうことを打ち立てていただきたい、こういうふうに思います。  通告と少しずれましたけれども、見解をお聞かせをいただきたいと思います。
  148. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 午前中に御答弁申し上げたこととできるだけ重複にならないように申し上げたいと思うのです。  私は、科学技術基本法というものを、いろいろ国会改革ということが言われておりますが、そういう中で議員立法でつくっていただいたということの意味、私はこれを重く受けとめて、非常に日本の政治のあり方、今行政府にいる者が国会のあり方をむやみに口にしてはいけないと教わっておりますが、国会の議論のあり方としても私は非常に大きなものであったのではないかなと思っているわけです。  そういう中で、午前中も御答弁を申し上げたように、科学技術基本計画をつくって、十七兆円、これは今度の財政再建の三年間集中期間だという中では正直言ってなかなか難しい。しかし、そうい う中で、五%という科学技術振興費というものの伸びをするという決定をしていただいているということもやはり大きなことだと私は思うのです。  それが、先ほど堀込先生が、じゃ、日本の国会がそういう法律をつくって、そういう方向に持っていこうとしているのだということを国民が知っているかというと、私は、余りまだよく理解していただいていないと思っております。これは、科学技術委員会委員長にもお願いをしたいことでございますし、また私どもとしても努力をしなければならないわけでありますけれども、やはり科学技術重要性のスポークスマンといいますか、委員長はスポークスウーマンでいらっしゃいますが、そういうようなことも我々は努力をしなければならぬのではないかなと思っているわけであります。  それから、戦後のいろいろなあり方を見直していく時期だということで、国際貢献のあり方や何かにも科学技術が大きく関係しているのじゃないかという御指摘は、もう私はそのとおりだと思います。私は、科学技術庁長官になりましてまだそう長い期間ではございませんけれども、この間海外のいろいろな方ともお会いしまして、日本の外交の中で科学技術の占めるウエートというのは私が想像していた以上に大きいと思います。やはり、日本との科学技術交流を求めておられる国々というのは非常に大きな数に上りますし、その日本との科学技術交流で何か成果を上げたい、何か自分の国をよくしたいというような気持ちも非常に強いように思うのであります。  ただ、この分野は、率直に申しますと、国によっては科学技術を、国によってはと言うのはいかぬのかもしれませんが、科学技術をどういうふうに持っていくかということは、その国の安全保障あるいは世界戦略、こういうものも絡まってまいりまして、時によっては非常に難しい問題も生むことは間違いありませんけれども、私どもは、そういう中で日本科学技術によって貢献をしていくということ、国際貢献もしていくということ、それを一つの柱にしているということを誇りを持ってもっと打ち出したい、進めていきたい、こう思っております。
  149. 堀込征雄

    堀込委員 ぜひ、そういうことで頑張っていただきたいと思います。  もう一問だけ。高速増殖炉の懇談会、十月十四日に報告書案が公表されて、今何か意見聴取といいますか、意見募集を行っているというふうにお聞きをしているわけであります。「もんじゅ」の事故以来、この次は一体これはどういうふうになっていくのだろうか、新聞報道なんかを見ると、これは新聞によってまちまちでありまして、見直しだ、いやいや、継続するのだよというような報道もあったりして、ここはやはり新長官としてきちんとしていただきたいということが一つと、その場合、日本原子力発電の設計、研究の取り扱いは一体どうなってくるのかというようなこともお尋ねをしたいわけであります。  ただ、そのことは多少お触れをいただくと同時に、最初に御質問申し上げましたように、懇談会の報告があって、そして役所が決めて政治が決断していくみたいな、何かそういうシステムがあるわけでありますが、私はやはりこの問題は、ある意味ではしっかりした、信頼される研究成果あるいはしっかりした情報公開とか、そういう上に立って、これもやはり最終的には日本国家のありようとして最後は政治が決断すべきものではないか、こういうふうな考え方を持っておるのですが、あわせまして、長官のお考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  150. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 まず、高速増殖炉懇談会の報告書の問題でございますが、今国民各層から御意見をいただくということで作業を進めて、まだ最終報告になっているわけではありません。私は、そのときにお受けする立場、午前中も申しましたので、今余り中身に立ち入ってとやかく言うのはちょっと差し控えなければならないと思っているのですが、その流れについて、新聞によって報道がまちまちであるという御指摘がございました。  これにつきましては、動燃のいろいろな事故等がございまして、科学技術庁としてもやはり公開性というものを重んじなければならない、できるだけ開かれた中で政策決定を行っていく、その決定過程もできるだけ開いていこうということで、原子力委員会にいたしましてもあるいは原子力安全委員会にいたしましても、公開をして議論をしていただくようにしたわけであります。  したがって、この高速増殖炉懇談会もすべてオープンにして議論を聞いていただいたわけでありますが、私は一つ感じますのは、公開をしたときに、公開をする方もまだどういうふうにこの公開の議論をしていったらいいかという方に、つまり料理の言うなれば過程なわけであります。最後にどういう料理になるか、素材をいろいろいじくっている最中なわけでございますから。また、オープンにいたしますと、それぞれの方が料理の、調理の過程をごらんになって、それがいろいろな反響を呼んでいくということがございます。  さて、そういう中で情報公開について、我々も、議論をしていく方もいろいろ試行錯誤の過程であり、また報道される方も試行錯誤の過程なのではないかと思っております。ただ、私一つ、そういう試行錯誤の過程であっても、やはりできるだけ開いて、開かれた形でやっていくということだけは基本に置いて、これは不退転に進まなければいけないのじゃないか、こんなふうに思っているわけであります。  それで、先ほど申しましたように、まだ最終的な報告を私はお受けしておりませんので、中身を申し上げるのはやや早いわけでありますけれども日本原子力発電の実証炉計画についても、見通しはどうかということをおっしゃったわけでありますが、この間の報告書案、それによると、高速増殖炉実証炉の具体的計画については、「もんじゅ」の運転経験というものを反映することが必要であるし、また「もんじゅ」で得られた種々の研究開発成果ども十分に評価した上でその決定が行われなければならない、こういうふうになっているわけであります。  それから、実証炉計画を進めている電力によりますと、実証炉の具体化には「もんじゅ」の運転経験が必要不可欠であるから、実証炉開発計画は、二〇〇〇年代初頭着工という現行の原子力開発利用長期計画よりは遅延するというふうに判断しているというふうに聞いているわけであります。  いずれにいたしましても、今月下旬に恐らく取りまとめられて、私もその報告をお受けすると思いますので、そのときにそれを踏まえて、原子力委員会できちっと対応していくということであろうと思っております。
  151. 堀込征雄

    堀込委員 終わります。
  152. 小池百合子

    小池委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十八分散会