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1997-06-10 第140回国会 参議院 労働委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年六月十日(火曜日)    午前十時八分開会     —————————————    委員異動  六月四日     辞任         補欠選任      星野 朋市君     山崎 順子君  六月六日     辞任         補欠選任      山崎 順子君     星野 朋市君  六月九日     辞任         補欠選任      星野 朋市君     山崎 順子君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         勝木 健司君     理 事                 石渡 清元君                 坪井 一宇君                 長谷川 清君                 川橋 幸子君     委 員                 上野 公成君                大河原太一郎君                 小山 孝雄君                 佐々木 満君                 野村 五男君                 今泉  昭君                 武田 節子君                 山崎 順子君                 大脇 雅子君                 笹野 貞子君                 吉川 春子君    国務大臣        労 働 大 臣  岡野  裕君    政府委員        労働大臣官房長  渡邊  信君        労働省労働基準        局長       伊藤 庄平君        労働省婦人局長  太田 芳枝君        労働省職業安定        局長       征矢 紀臣君        労働省職業能力        開発局長     山中 秀樹君    事務局側        常任委員会専門        員        佐野  厚君    説明員        法務省人権擁護        局総務課長    坂井  靖君        厚生省薬務局審        査課長      鶴田 康則君        厚生省児童家庭        局母子保健課長  北井 曉子君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○雇用分野における男女の均等な機会及び待遇  の確保等のための労働省関係法律整備に関す  る法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ただいまから労働委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨九日、星野朋市君が委員辞任され、その補欠として山崎順子君が選任されました。     —————————————
  3. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保等のための労働省関係法律整備に関する法律案を議題といたします。  この際、岡野労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。岡野労働大臣
  4. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 先般、当委員会において御指摘ありましたとおり、神奈川婦人少年室におきましては、法案審議中でありますにもかかわらず、改正均等法セミナーと銘打ったゼミナールを開催することとし、関係機関協力依頼をしていたところであり、まことに遺憾に存じております。  同室長には厳重に注意し、即刻中止するよう指示をしたところであります。  また、他の婦人少年室長に対しましても、同様のセミナー等の開催を広報していた場合には中止するよう指示をいたした次第であります。  今後、このようなことがないよう厳正に対処してまいります。
  5. 勝木健司

    委員長勝木健司君) この際、委員長より一言申し上げます。  労働省の今回の行為が、本委員会での審議中に行われたことはまことに遺憾であります。  労働委員長としては、政府に対し、今後かかる行為のないように厳重に注意を申し入れます。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 長谷川清

    長谷川清君 平成会長谷川であります。  この均等法改正の問題につきまして、これは衆議院で一巡をいたし、参議院の方も一巡の質疑を終わり、きょういろんな意味においてこの問題に対する幾つかの注目すべき諸課題、問題点というものが浮かび上がってきていると思います。  私は、改正をしていくというその都度よりよい方向に向かって一歩、半歩前進していっていると、その道すがらであるとこれを受けとめ、賛成という立場に立って、がしかし、幾つかの点について、例えれば、この改正が進むことによって一番大事な部分でございます、国際的な約束にもなっておる千八百時間等々の大骨が逆流することのないように、後ろ向きになるようなことのおそれのないように、あるいはまた、履行をしていくに当たりましてのいろいろの不安材料激変をしていくような諸不安の要素についての緩和問題等々、二点か三点にわたって、具体的に私はそこらを中心としてまずお伺いをしたいと思うんです。  大臣には後ほど答弁を求めますが、冒頭の二、三については局長答弁で結構だと思います。  一つは、激変に対する緩和の具体的な策についてでございます。  今、三六協定に基づく時間外労働の上限を年間三百六十時間とする目安制度のもとにあります。女子保護規定解消された場合には、女性労働者にとってはこれまで禁止されておりました百五十時間というものを超える時間外労働が生じ、特に家庭責任を有する女性労働者中心にして職業生活に大きな影響があることが懸念をされます。  この急激な労働条件の変化の緩和を図るための措置がまず必要になるのではないかと思っております。また、この激変緩和を図るための措置を設けることは、女性職域拡大を図り、均等な取り扱いを一層進めることを目的とする改正均等法の円滑なる、しかも確実なる定着を図るためにも有意義なものであると考えております。  そこで、私としては具体的な提案をいたしたいのであります。  それは、労働大臣告示による目安制度について、あくまで経過的な措置として、例えば一定程度期間に限りまして、家庭責任を有する女性労働者については、例えば男性よりも相当程度短い時間を目安として設定するといったような措置を講じていくべきではないかと思います。  こういう意見に対しましてどのようにお考えか、これを求めます。
  7. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 先生から御指摘ありました観点が大変重要であることにつきましては、労働大臣から答弁を申し上げてまいったところでございます。  私ども労働省といたしましても、それを受けまして、中央労働基準審議会におきまして、目安制度に関し、家庭責任を有する女性労働者にかかわる激変緩和措置検討いただくようにお願いをしてまいります。その際、さまざまな議論があると思われますので、ただいま先生提案趣旨も十分説明し、対応策をまとめていただく際の参考となるようにしてまいりたいと存じます。
  8. 長谷川清

    長谷川清君 この件についても大事なことは、一件たりとも異常な事態を発生させないということに重きを置いた措置でなければならぬと思いますので、そのための手段として申し上げているのでありますから、この点をひとつぜひよろしく努力を願いたいと思います。  次に、二点目の問題は総実労働時間、これを短縮するという、この基本に立っての質問でございます。  今回の女子保護規定解消によりまして、これまで禁止されておりました百五十時間を超える時間外労働女性労働者にも可能となるということなどから、女性の長時間労働や終日労働が生じることが懸念されております。私としては、いわば国際公約とも言うべき千八百時間の達成に向けた時短流れが後戻りするようなことがあっては断じてならないと考えます。  こうしたためにも、女子保護規定解消に伴い時間外労働の抑制を図るために、目安時間の実効性を高めることは必要不可欠だと考えます。これまでの審議の中においても、この点については数多くの委員から指摘をされているところであります。  私としましては、この検討に当たっては、目安制度実効性を高める何らかの法的措置を含めた検討というものが必ず行われるべきである、こう考えますが、この点についてはいかがですか。
  9. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 目安制度実効性を高めていくことが今後非常に重要であるというふうに私ども認識をいたしておるところでございます。  したがいまして、中央労働基準審議会お願いする目安制度実効性を高めるための方策の検討を進めるに当たりましては、労働基準法研究会指摘されている法令の中に位置づけることを含めまして、広範な見地から検討が行われることを期待いたしているどころでございます。
  10. 長谷川清

    長谷川清君 この点につきましても、私の考えるところでは、大基本になりますのは、労使双方が主体的に、自主的に、あらゆる意味において早い時間に働き過ぎというものを解消していく、そういう道筋が非常に大事だと思うし、それが基本であると思います。どの国におきましても、この種の問題は一定の何らかの法的措置というものをそこに目安として加えていくことによって効果を上げてきているという事実もありますので、そういう実績をもよく勘案をして、この点についてもよろしくその実行をお願いしておきたい、こう思います。  次に、第三の問題についてお伺いいたします。  以上指摘をしております目安制度に関しますこの二点について、女子保護規定解消との間に空白の期間が生じないよう改正均等法の施行される平成十一年四月までに行うべきである、こう考えますが、この点についてはいかがですか。
  11. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 女子保護規定解消対応いたしました目安制度に関する二点の措置につきましては、ただいまの先生の御質問趣旨中央労働基準審議会に十分説明いたしまして、改正均等法施行日である平成十一年四月までに適切な対応策が実施できることとなるように努力をいたしてまいる考えでございます。
  12. 長谷川清

    長谷川清君 そこで、大臣にお伺いしますが、以上三点の局長答弁の内容について、大臣として責任を持ってこれを確認していただきたいと思いますが、いかがですか。
  13. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 長谷川先生がおっしゃる三点、一つ激変緩和というお言葉を使われました。二つ目は、やはりこの目安告示でありますか、実効を高めるような裏づけをという問題でございました。それから三点は、本改正案に伴いますところの基準法緩和の問題、これは平成十一年の四月からということになっております。  したがいまして、その面について間に合うようにという御発言がございました。これにつきましては、労働基準局長が御答弁を申し上げたとおりでありまして、大臣といたしましても適宜適切に事務局指示をいたしまして、本法円満裏定着し運用をされるよう期してまいりたい、かように存じております。
  14. 長谷川清

    長谷川清君 それでは、これから先はひとつ大臣にいろいろお伺いをしたいと思います。  視点を変えまして、私は、今日の労働にまつわる我が国環境状態というものを大臣はどのように考えていらっしゃるか、まずはこの点をお伺いしたいのであります。  多少説明を加えますと、経済は、我が国先進諸国仲間入りをしておる、ある意味においては一部追いついたり追い越したりもしました。今は大分経済事情が変わってきて下降状況にあります。  例えば、あの中立国であるスイスのある機関が年々発表しております数字の中でも、この十年間日本経済競争力は一位でございましたが、今現在は二十七カ国中の十六位と落ち込んでおります。にもかかわらず、当時からずっと、我が国労働力の質という点においてはなお第一位を占めておる、こういう報告がなされております。  こういうことに関しまして私が思うには、我が国における労働環境背景というのは非常に今厳しい状態に置かれていると思います。  例えば、雇用契約状況一つとりましても、変形あるいは裁量、オプション契約、またパートなどの契約女性の中においては三割を超えて拡大傾向にある。そうした多様な経営形態雇用形態の広がりがありますと同時に、また、少子高齢化と言われて高齢者の数がどんどんふえてそれを賄う世代の者が少なくなる、それだけでも大変な国民負担、これが増大をする。そういう中にありまして、働く人々に対して一番大事な将来における年金という問題や介護、あるいは医療という問題、これらについても大きな不安というものがかぶさっております。  それらの多くのグローバル視点に対して、これまで日本は勤勉だから経済が一流になったとよく言われておりましたが、現実の問題として、私の認識からすると、一口で言うならば、一人一人の働く意欲と個人の能力を発揮しているその成果というものが正しく報われていない、評価されていない、その分配は格差を生んできている、こういう状況にある、こういう認識をするのでございます。  その点について、大臣の当面のお考えはいかにという点をお聞きします。
  15. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 先生がおっしゃいましたスイス世界経済フォーラム、これは私も新聞報道等で拝見をいたしておるところであります。かつて一位だったものが十何位に下がってきた。  例えて言いますならば、金融あたりも、かつてはニューヨーク・ウォール街、ロンドン・シティ及び東京という三極構造が、今や東京にあらずしてシンガポールにとられそうだと。これはまたハブ空港等においても言われております。日本にはハブ空港がない、近い将来、仁川のあの大空港ハブ空港になるのではないか。港湾についても、ハブ港湾というようなものが日本にはないと。いろいろの規制緩和のおくれ、産業経済構造改革のおくれというようなものが先生がおっしゃいました日本全体の経済競争力というものを低めてきた、こう私は思っております。  しかしながら、お褒めを賜りましたように、我々の日本労働力生産性といいますか、これは世界に伍して決して恥ずるものではないというような認識を私も持っているところであります。そういうような意味合いにおきまして、やはり立派な労働力というようなものを、その質的な価値をますます高めていく、少なくも維持していくというためには、先生がおっしゃった年金の問題でありますとか医療介護問題等々、負担が非常に大きくのしかかっているわけであります。  しかし、全体の少子高齢化社会の中ではある程度の負担というようなものがふえてくるということはやむを得ない方向だと思いますが、より一層規制緩和等に努めるとともに、我々は労働行政のよろしきを得て労働者諸君負担というものを軽減し、労働者諸君が本来潜在的に持っているそういう能力というものを十分的に発揮できるような職場環境づくり、これにさお差してまいるのがかなめになる、かように思っております。一生懸命頑張りますので、ひとつまたよろしくお願いをいたします。
  16. 長谷川清

    長谷川清君 働く時間の問題も、これは具体的には、今我が国週休二日、千八百時間を一応の目標に、まだ達成し切っていない、まして三六協定を超える事実、五・二%存在する。あらゆる分野において働き過ぎの現状、こういうものがあります。先ほど申し上げたようなそういう状況すべてをトータルすると、我が国における労働背景環境、置かれた状態は、先進国とは言いがたい、いわゆる労働発展途上国。  そういう意味において、戦後の今日までのいろいろの発展過程の中で、まず最初のころは食わんかなでした。それからは食べるだけではというので我が国は物もつくろうと、物もできるようになり、できた物をどんどん今度は売りさばいて、特にそれが買える諸外国、欧米、特にアメリカにそれを売りさばいて、高度経済成長十数%を何年も続け、右肩上がりをやってきた。  こういうプロセスの中で働く人々意欲というもの、貢献というもの、そういうものがその都度その都度公平に分配されていなかった。また、今日は大きなそういう流れの中で社会構造まで変えていこうという状況下にある。そして、大多数のところがリストラに今追われている。考える暇もないほどあらゆる状況において多くの難問というものがすべて働く人々にかぶさってきている。  私は、こういう意味において、まず認識を一言で言うならば、労働に関する限り諸条件はまだまだ後発国だ、こういう認識でとらえたいのでございますが、現状認識大臣としていかがお考えか。
  17. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 労働環境が厳しいという観点先生がおっしゃるとおりだと私どもは思っております。  したがいまして、やはり日本先生おっしゃった千八百労働時間というようなものを目指して今回時短促進法を御可決いただきました。これを実現するべく、一つには週休二日、そして月火水木金、これを八時間ずつ週四十時間労働制定着、あるいは時間外労働をひとつできる限り削減していくこと、いま一つ年次有給休暇をとっていこうというような時短という考え方があります。  それから、今御審議をいただいております男女雇用機会均等法あるいは育児・介護休業制度というようなもので職場生活家庭生活が両立をできますような職場環境、あるいは社会全般意識構造改革にさお差してまいろうというような、もろもろの制度職業紹介制度自由化問題等々相兼ね合わせまして、先生がおっしゃるような労働環境をつくってまいろうと、かように思っております。
  18. 長谷川清

    長谷川清君 私は、働く人々我が国において意欲を失ったとき、そのとき日本は沈没するという危機感をどこか常に持って、あらゆる意味においてそれを促進する方向を目指してもらいたい。  今は審議会方式でやっております。審議会方式は、世の中全体が安定し、そして道なり運転をしているようなときには役立つと思いますけれども、これほど大きな改革、もう一つ大きな階段を上ろうとするときには、政治として国会として労働省として、こう角度をつけていこうという、そこにあらゆる旗を立てていく。それがいわゆる法制化あるいはそれに準ずる指針、そういう方向づけであろうと思いますので、大きな点や小さい点にわたって後追い後追いの道なり運転程度ではどんどん問題は残っていく、こう思うので、その点もどうかひとつ注意しておきたいと思います。  次は、しからば女性労働環境均等法でいう男女雇用機会均等男女は平等よと、こういう言葉の私の裏のとらえ方は、女性自立ということ、女性がどう自立していくのか。だんだん男手が少なくなるから、じゃ女性労働拡大しようかなどという、そういう経済のところから発想する結果的な女性職域拡大というのでは私は基本的には間違うのであろうと思います。  そういう必要性は、これからはだんだんそういう時代の流れになってくると思いますけれども、いま一つ重要なことは女性にいかに自立していただくか、それを阻害する多くの要素、そういうものをどのようにスピーディーに除外をしていけるのか、こういう問題だろうと思います。ある意味においては、職域の中で女性に任せていて本当に大丈夫か、こういう時期から、そろそろ任せてみようかと、そしてまた、そういう結果の上で、任せてよかったなというような状況というものをどう促進をしていくのか。  大臣、男と女の決定的な違いは一体どこにあるのでしょうか。例えば、妊娠したり出産というような、こういうのは女性固有のものでありまた不可欠の問題です。そういう場合には、性差別という中にこれは当然入る問題だと思いますが、その点についてはいかがですか。
  19. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 先生指摘のように、女性にだけあります妊娠、出産という機能、これは母性ということで非常に重要な機能でございますので、この点につきましては私どももその充実を図っているところでございます。
  20. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 太田政府委員が申し上げたとおりでありますが、やはり女性男性との間で差を設けるとするならば、それは母性というものを女性が持っているという認識で、母性保護ということには私どもは一生懸命努力をしてまいりたい。  しかしながら、それを除きますと、女性男性もそれぞれひとしく自分の志を実現できるような、そういう楽しい人生が送れるような職場家庭生活が両立できるような社会にいたしたい、それを労働行政の中で実現するのが本法改正案であるというような認識でありますので、よろしくまたお願いいたします。
  21. 長谷川清

    長谷川清君 私の言ういわゆる女性自立ということを具体的に促進していくには、それぞれの企業の中で、職場の中で女性を対象としての管理者研修、しかもそういうことを計画的に意識を持って進めるということも大事になるでしょうし、いろんな意味におけるそういう道筋というものをつけていく。そこには多くの知恵が働いてくると思います。  つまり、妊娠したり出産をする、こういう状態ということの理由をもって、いろいろとそこに不利益をこうむるようなことがあってはならないし、これからの雇用という問題についてはいろいろの意味において環境を整えようということになっております。更衣室であるとかおふろであるとかいろんな環境、そういうものはすべてこれからの経営コストの中に織り込まれていくべきで、そこまで行けば、私は労働環境がいわゆる後発国とは言わない、先進国仲間入りをしていく、健全な姿になっていく。そのようなことを一つ一つ道筋を立てながら啓蒙をしていく状況が必ず必要になってくるんではないか、こう認識をするものでございます。  セクハラという問題があります。セクハラというのはかなり広い意味において性的な嫌がらせ、だれが見ても明らかなセクハラ、これはもう厳重に処罰をしなければならないようなものがあります。と同時に、グレーゾーン的なやつがあります。  この間も視察に行って食事をしているときに、坪井先生自分のことをトドだと言うんですね。トドと呼ばれていると。そんな話から、トドじゃかわいそうだからパンダぐらいでどうと言って話をしたんです。そういう話の中で、うち委員長アンパンマンと、私がこう言ったら、本人がそれはセクハラだと言うんです。傷ついたと言うんですな。これも広い意味におけるセクハラだと言うんです。  というふうに考えていきますと、セクハラというのは根本的にはいわゆるマナー、その人の人間性、男と男であれ、男と女であれ、女と女であれ、男女の別なくそういった基本的な、これを一つとりましても我々の社会はまだ経済だけであって、まだまだ本当に先進諸国仲間入りをしていると胸を張れないようなこと。  連合がアンケートしたのを見ますると、どういうわけだか二十代の人にセクハラ被害があるというのが六四%もある。六十代の人には〇・六%しか被害が及んでいない。そして、一番多いのは「若い女の子はいいね・おばさん」なんていうような言い方が約四〇%です。「女じゃだめだと言う対応」、それが三八%。「まだ結婚しないの」なんて言われるのが三六%です。「酒の席で隣に座らせたり」といったようなこと、「男みたい・こわい女などと言われた」とか、「そんなふうだとお嫁にいけない」とか、「うち女の子などと呼ばれる」とか、「女なのに気がきかない」とか、「女に仕事は任せられないという態度」、「ブス・デブなどと言われた」とか、「わい談・性的経験を自慢する」とか、「食事やデートに執拗に誘う」とか。  大臣、日常の中でも何かどれか一つ引っかかりそうな、ありがちな、うっかりするとセクハラと訴えられてもやむを得ないような、こういう行動というのは日常あると気づくんですね。私は、そういう意味においてやはりこれは教養とでもいうか、その人間それ自身を高めていく以外に根本的にはないようにも思いますけれども、こういうセクハラという問題についてなかなか基準化しづらいと思いますが、それらのことについての現状、これは婦人局長、いかがでしょうか。
  22. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 先生指摘のとおりでございまして、セクシュアルハラスメントということはあってはならないことでございますので、今回の均等法の中にも規定をさせていただいたところでございます。  今後、均等法を可決、成立させていただければ、セクシュアルハラスメントが起こらないような、女性たちが、男性もかもしれませんが、女性たちが生き生きと伸び伸びと働ける会社をつくっていく、企業をつくっていくという形で、私どもは精いっぱい努力をしていきたいというふうに思っているところでございます。
  23. 長谷川清

    長谷川清君 さらにこの問題を発展させていきたいのでありますが、私の時間は終わりましたので、これから後に続く円さんや武田さんも厳しくいろんな現象をとらえて皆さん方にお伺いいたします。ひとつよろしく御答弁お願いしたいと思います。  ありがとうございました。
  24. 山崎順子

    山崎順子君 平成会山崎順子こと、通称円より子でございます。  私は正規の労働委員会のメンバーではございませんが、今回の均等法改正につきましては、年間千八百時間労働もまだ実現していないこの時期に、労基法の女子保護規定撤廃を男女共通の規制をしないうちにセットで論議されることに大変な危機感を感じまして、差しかえで委員にならせていただきました。そして、先日、深夜労働職場にも視察に行かせていただきましたし、きょうこうやって質問をさせていただく時間をいただきましたこと、大変感謝しております。  私は、この二十年近く、多くの家庭責任を負う男女からさまざまな家庭内のトラブルについて相談を受けてまいりました。その数は二万人になります。皆さん御存じだと思いますが、昨年、我が国では離婚件数が二十二万件という明治以来最高を記録いたしました。欧米諸国に比べて我が国は大変離婚件数は少ないですけれども、このようにふえてきた背景には、我が国の家庭環境が余りよくないというか、男性労働のし過ぎということがあるのではないかと私は思っております。  どの家庭にもさまざまなトラブルがあり、波風が立つのは当然でございますけれども、離婚まで考えて相談に来るというのはやはり相当な問題を抱えていらっしゃる。確かにその中には経済的な要因、また浮気や暴力やアルコール依存症など、いろいろな病気とかさまざまな要因がもちろんございます。我が国では男性、夫それから父親の不在、これは時間的な不在だけではなくて精神的な不在、その中にはやはり働き過ぎや通勤の過酷さ、そういったものから、疲れ果てて家庭におけるエネルギーがないというか、子供たちや妻を大変大事に思っているんだけれども、時間的にも精神的にも肉体的にも大事にできるだけのエネルギーが残されていない、そういった状況がずっと続いて、二万人近い人々から相談を受け、共通する要因だということを私はしみじみ実感してまいりました。  そして、何十冊かの本にもそのことをテーマに書いてまいりましたが、十年ぐらい前でしょうか、個人だけではなくてさまざまな大企業、中小企業も含めてですが、企業の人事部の方たちが相談にお見えになるようになりました。それは例えば、長い間海外赴任をしていて、そこで夫との関係がうまくいかなくなった、自分の人生をもう少し自己実現したいというような問題、また夫の単身赴任が長過ぎて家庭生活が本当に破壊されているというような問題、そういったことから離婚が企業の中でかなり多く起こってきて、やはり企業の効率だけではなくて社員の家庭生活の質とか関係性の問題を十分考えなきゃいけない時期に来ているのではないか、そういったことで随分人事部からの相談が多くなってまいりました。  私は大変いいことだと思っていたんですけれども、またそれが最近減ってまいりまして、何とかこの国際社会の中で日本がだんだん経済的に沈没していかないようにするにはもっと男性女性も働く必要があるんじゃないか、そういう方向にどうも社会が少し向いてきたような、そんな気配を感じておりましたこのときに、今回この女子保護規定撤廃という形で均等法が強化されるというのはちょっと危機感を感じております。  そこで、今まで衆議院でも参議院でも随分審議されてまいりましていろいろ質問が出たことだとは思いますけれども、きょうは幾つかまだもう少し答弁をしていただけたらなと思うあたりの確認と同時に、私の意見も踏まえながら御質問させていただきたいと思います。  まず、今回の均等法の片面性の修正についてでございますけれども、現行法は、女性のみ募集等は適法とされておりました。これを違法とする解釈変更は、今回法案の改正によって可能なのかどうか、その根拠は何なのでしょうか。また、法律の成立後から施行までにどのように周知なさるおつもりか、お答え願えますでしょうか。
  25. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) お答えいたします。  現行法が女性福祉法の色彩が強いのに対しまして、改正法案は、題名、それから目的規定を初めといたします第一章の規定におきまして、男女の均等な機会及び待遇の確保を目指すものであることを明確にしておるわけでございます。  また、第九条を新設いたしまして、均等の実現に支障とならない女性のみの措置均等法違反とならないという旨を明らかにしまして、これは逆に見ますと、均等の実現に支障となる女子のみの措置均等法違反となるという旨が、これは法制上も明らかになるようにしたところでございます。  以上の点から改正法案におきましては、女性職域の固定化とか男女の職務分離といった弊害が認められます女性のみまたは女性優遇の措置というものは、これは女性に対する差別として違法であるという解釈に変更するものでございます。  なお、女性に対する差別として禁止されます女性のみとか、また女性優遇の措置の具体的な内容につきましては、今後指針及び解釈通達において明らかにすることとしておりまして、法成立後可能な限り速やかに策定をいたし、周知徹底を図ることといたしたいと思っております。
  26. 山崎順子

    山崎順子君 この新設された九条ですけれども男女雇用機会均等問題研究会の報告では、女性のみまたは女性優遇の措置について、欧米諸国と同様に男女双方に対する差別的取り扱いを禁止する法制とすることが求められるとされていたと思います。  本改正案は、こうした男女双方に対する差別的取り扱いを禁止した法律ではないというふうな理解でよろしいでしょうか。
  27. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 昭和五十九年の婦人少年問題審議会の建議に示されました法のあるべき姿とか諸外国の法制度に照らせば、男女双方に対する差別を禁止する性差別禁止法が究極の姿であると考えております。  しかしながら、我が国の実態にかんがみますと、問題となっておりますのは女性に対する差別でございますので、今回の改正法案におきましては、女性に対する差別を禁止することにより雇用分野における男女の均等取り扱いを確保するとしたものでございます。  なお、今回の改正男女双方に対する差別を禁止するものではございませんけれども女性のみまたは女性優遇の措置は原則として女性に対する差別として禁止することとしておりまして、実質的には性差別禁止法に近い内容となっていると考えます。
  28. 山崎順子

    山崎順子君 さらに、この法九条についてでございますが、研究会報告は、法理論上は不徹底なものではあるが、現行法の枠組みを前提に格差是正のための望ましい措置を構ずる旨明らかにするような手法も有効と考えられるとしております。  この九条は、研究会のこうした考え方を採用したものと理解してよろしいのでしょうか。また、この研究会報告が法理論上は不徹底なものと考えていますが、この理由は何なのでしょうか。
  29. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 第九条の新設は、均等の実現に支障とならない女性のみの措置均等法違反とはならない旨を明らかにしたわけでございますので、逆に言いますと、均等の実現に支障となる女性のみの措置均等法違反となる旨を法制上も明らかにしたようなものでございまして、これは平成八年十二月の婦人少年問題審議会の建議を踏まえて策定したわけでございます。その際、先生指摘男女雇用機会均等問題研究会の報告書の御指摘の部分も参考としたわけでございます。  また、法理論上は不徹底なものとしておりますのは、研究会といたしましては、本来的に均等法においても男女双方に対する差別的取り扱いが禁止される性差別禁止法にすることが求められていると考えているためでございます。
  30. 山崎順子

    山崎順子君 さらにお伺いしますが、研究会報告は、雇用における性のみを理由とする取り扱いに妥当性があるのか、真に求められる法体系とはどういうものか、そのような法体系の中での男女機会及び待遇の均等を実効あるものとするための方策や母性保護を除く労働基準法女子保護規定解消への道筋はどうあるべきかという点についての社会的コンセンサスを早期に形成することを望んでおりますが、今回の法改正は女性差別のみを対象としており、男女両性の差別対象とはなっておりません。かつ女性のみ、女性優遇のマイナスの効果に留意しつつも、すべての女性優遇を禁止したものでもございません。  他方、労働基準法における女子保護規定解消については道筋が明らかにならないまま解消が先行したと思うのですが、そうは言えませんでしょうか。
  31. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 本件の見解につきましては、平成七年十月に婦人少年問題審議会においても報告がなされまして、審議の参考といたしまして十分活用されたところでございます。  公労使三者のコンセンサスによる建議におきましては、「企業の募集、採用から定年・退職・解雇に至る雇用管理における女性に対する差別を禁止し、その実効性を確保するための措置を強化するとともに、時間外・休日労働、深夜業にかかる労働基準法女子保護規定解消することが必要である。」とされたところでございます。  改正法案は、この建議の内容を踏まえて策定いたしたものでございまして、男女双方に対する差別を禁止するものではございません。いわゆる新しい法の第九条でございますが、女性のみまたは女性優遇の措置男女の事実上の平等を促進することを目的とする暫定的な特別措置や、社会通念上男女異なる取り扱いをするのに合理的な理由がある場合として適用除外に該当するものを除きましては女性に対する差別として禁止することとし、実質的に性差別禁止法に近い内容となっておりますので、女子保護規定解消が先行したとは言えないものと考えております。
  32. 山崎順子

    山崎順子君 どうも今のお答え、私は納得できないんです。片面性を残しながら女子保護規定だけ解消するということもおかしいと思いますし、先行したとは言えないとおっしゃいましたが、例えば男女共通の規制というものは夜業に関しても、時間外労働、休日労働に関しても絶対に必要なものではないかと私は考えているんです。  そもそもILOの百七十一号条約、これは日本は批准しておりませんが、今批准している国は五カ国ぐらいだと思いますが、批准していなくてもEU諸国などではきちんと夜業の共通規制などもつくっております。こんなことは皆様御存じだと思いますけれども女性の夜間労働を禁止する措置がとられましたのは一八四四年の英国が最初でございました。そして、スイス、オーストラリア、フランスなどがそれに続きました。  女性の夜間労働の禁止を正当化する根拠といいますのは、一つ女性は政治的社会的権利が十分に与えられていないので搾取されやすい。二つ、女性は生理的に夜間労働から悪影響を受けやすい。また三番目に、当時の社会的通念が女性の夜間労働禁止の根拠として働いた。この社会的通念といいますのは、家庭責任女性が負うべきだというものでございました。  衆議院でしたか、どなたの質問答弁だったかはちょっと忘れましたが、議事録の中で太田局長が、女性はもう弱者ではないのだから保護の撤廃は当然ではないかといったような趣旨のお答えをなさっていたように思うんですけれども、確かに今の夜間労働の禁止を正当化する根拠としての一番、政治的社会的権利が十分女性には与えられていないので搾取されやすい、この辺は女性日本で参政権を得てもう五十年ですから、政治的権利、社会的権利もあると思います。  しかし、女性は生理的に夜間労働から悪影響を受けやすいというのは、これは男性もそうだと思いますけれども、かなりそのあたりはまだ、後でこの質問もさせていただきますけれども、きちんとした研究もない中で、私は産婦人科の先生、婦人科の先生、いろんなお医者さんたちがあると答えていらっしゃる中で、ここの部分とまた三番目の家事労働家庭責任女性が負うべきだというところは、欧米諸国に比べればほとんど女性が負っているような状況の中で日本はこの社会通念もいまだに強いですし、結構根拠があるのではないかということを言って、次の質問に行かせていただきます。  次は、コンビニ等での女性の深夜の一人勤務についてお伺いしたいと思います。  コンビニなどは不特定多数の人が出入りするところですから、女性一人が深夜に店舗の勤務をすることは防犯上問題があると思うのですが、こうした場合、女性が深夜勤務を拒否することができるのでしょうか。  また、労働協約や就業規則で防犯上の理由ということで女性の深夜勤務を認めないとすることを決めることは法制としてどうなるのか、新たに女性を深夜勤務につける場合の条件については労働省令で検討する際、防犯対策は入ると考えてよろしいのでしょうか。
  33. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 女性を一律に排除するのではなくて、個々の労働者との合意によりまして深夜勤務には従事しない旨の労働契約を締結することは、これは均等法上も問題とはならないわけでございます。  また、労働協約や就業規則におきまして、女性であるということで深夜勤務をさせない旨の定めをすることは、これは一定の職務から女性を排除するということになるわけですので、原則として配置に関して均等法違反となるわけですが、社会通念上男女異なる取り扱いをする合理的な理由がある場合といたしまして、適用除外に該当するときは均等法違反とはならないわけでございます。  この適用除外につきましては拡大解釈されるべきではないわけですけれども先生指摘のような防犯上の要請、それから男性に従事させることが必要である職務につきましてはこれに該当をするというふうに思われますので、コンビニ等で女性が一人で深夜勤務をするようなケースについては適用除外となる可能性があるというふうに考えております。  ただ、労働省では事業主が新たに女性労働者に深夜業をさせるに当たりましては、就業環境整備に努めるべき旨を労働省令で明らかにしたいと思っておりますし、また、業務上の負担の軽減とか通勤時の安全の確保など事業主が努めるべき内容につきましても総合的な指針を定めることといたしております。その内容につきましては、今後関係審議会で御議論いただいた上で定めることとなりますが、防犯対策も含めて検討してまいりたいと思います。
  34. 山崎順子

    山崎順子君 次は、差別禁止の法的効力と調停のことについてお伺いしたいのですが、差別的取り扱いを受けたとして、この均等法によっては損害賠償ができるかどうかとか、民法七百九条を介して権利が発生するかというようなことについては、これもたしか衆議院均等法の差別禁止規定違反の行為により損害を受けた場合には、その規定は損害賠償を請求する根拠となるものと考えている。また、均等調停委員会は損害賠償を命じることができるかということについての、これもたしか衆議院での御答弁だったと思いますが、当該紛争の解決の方法として適当なものであれば損害賠償の支払いを調停案として提示することもできると考えている、このように確認できますでしょうか。
  35. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) そのとおりでございます。
  36. 山崎順子

    山崎順子君 それでは、その調停のことなんですけれども、調停がこの十一年間で開始されなかったものが十一社九十七件で、そのうち事業主の不同意が二十二件あったと聞いております。今回は事業主が不同意であっても被用者の側からだけでも調停はできるということで、私など離婚調停とかそういったものを仕事で随分見ておりますので、調停というのは片側からだけでもできるのが当たり前だと思います。ようやく当然のことになったと思っております。  もう一つは、室長判断で不開始の件が五社七十一件あるということなんです。そして、開始されたのはたった一件ということでございますけれども、今回は一方からだけでもできるようになったことで調停はふえ、また人々が大変差別を受けたというときの救済機関となり得るのでしょうか。
  37. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 今回の法律改正によりまして、調停につきましては先生指摘のように、調停を一方の申請によって開始するということになりましたので、どうなるかというのはこれは実際にあけてみないとわからないわけでございますが、今までのような件数ではなくふえていくというふうに、どのぐらいかというのはちょっとわかりませんが、少なくともこれまでとは違った形態になっていくというふうに考えております。
  38. 山崎順子

    山崎順子君 室長判断で不開始となりましたもののほとんどは申請事案案件が調査対象事項に該当しなかったものだというふうに聞いております。そうしますと、多くの方たちが調停というものがあるからここに行けば何とかと思っているものが、対象事項にならないということであれば、その調停の有効性といいますか、それがないのではないかというふうに考えるんですが、いかがですか。
  39. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 調停委員会というのはあくまでも企業における定年、退職、解雇の男女差別についての調停を行うものでございます。男女差別に関する事案については調停を行いたいというふうに思っておりますので、その点につきましては今後室長が懇意的に判断することなく調停委員会へというふうには考えております。
  40. 山崎順子

    山崎順子君 その申請事案の対象事項に該当しなかったものには、コース別の人事とかパートの更新とかそういったものが随分多くあったというふうに聞いておりますけれども、そうなりますと、これは調停の対象事項というよりもこの均等法の対象事項になっていないということと考えてよろしいんでしょうか。
  41. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) これまで調停対象事項に該当しなかったケースといたしましては、先生指摘のようにコース別雇用管理における問題、それからそのほかに同一コース内で未婚女性と既婚女性との取り扱いの問題、それから正社員と契約社員の身分の問題がございまして、これはそれぞれ均等法上の調停対象事項にはならないというものでございます。
  42. 山崎順子

    山崎順子君 コース別雇用管理等、間接差別みたいなものもきちんと今回の均等法に入れていただければ随分このあたりも変わってくるのではないかと思ったのです。  もう一つ、調停の透明性の確保ということが重要ではないかと考えております。これはもちろん調停を十分機能させるためです。さらにもう一つは、企業側に差別がないことの立証責任を課すなど、アメリカなどではやっていると思いますけれども、原告側の負担を軽減するような情報提供、そういった調停を有効に機能させるような方法というのは考えていらっしゃいますか。
  43. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 調停の透明性の問題でございますが、これは先ほど申しましたが、婦人少年室長が恣意的な判断を行ってはならないのは言うまでもないことでございまして、今後ともそういうような批判を受けることがないよう制度の運用には努めてまいりたいと思います。  それから、現在の調停制度におきましても、調停委員会は企業に対していろいろ資料提供等を求めることができますので、その調停案件の実態についてはきちっと把握することが可能でございます。
  44. 山崎順子

    山崎順子君 それではもう一つ、企業名公表について確認させていただきます。  違反企業に対する企業名公表の基準は何でしょうか。また、公表は社会的制裁と説明されておりますけれども、公表された企業が不服申し立てをすることは可能でしょうか。  それともう一つ、面接セクハラについてですが、これも企業名公表をするというふうに解釈してよろしいんでしょうか。
  45. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 企業名の公表は社会的制裁措置でもございますので、公正な手続、基準により実施されるべきでございます。今後、客観的な基準、手続を定めまして適法な運用を行っていきたいというふうに思っております。  また、募集、採用の面接セクハラの問題でございますけれども、これは採用試験の際に女性に不利な取り扱いとして第五条の違反になり得ると考えられます。この場合につきましては女性少年室長の助言、指導、勧告の対象となりますので、勧告に従わない事業主につきしましては企業名の公表の対象となるものでございます。
  46. 山崎順子

    山崎順子君 今の続きで、セクシュアルハラスメントですけれども、このセクシュアルハラスメントに対する救済というのは今回の改正法案ではどのようにされることになるのか。それが均等調停委員会に持ち込まれたときにどういう対処になるのか。また、今おっしゃいましたが、募集、採用にかかわるところの、これは本法案の対象になるということでよろしいわけですね。
  47. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 職場におけるセクシュアルハラスメントの事案は、その特性といたしまして個人間の私的な問題にかかわることでございますので、都道府県の婦人少年室における相談の中でプライバシーの問題にも配慮しつつ十分なカウンセリングを行い、事案に即した解決を図ってまいりたいというふうに思っております。  また、その相談の過程におきまして、事業主が改正法第二十一条及び指針で定める内容を満たしていないことが判明した場合には、新しい改正法案の第二十五条を根拠といたしまして、必要に応じて労働大臣または女性少年室長が報告の徴収、助言、指導または勧告を行っていくことになるわけでございます。  セクシュアルハラスメントの問題につきまして、仮に調停に持ち込まれた場合は、本来調停は事業主と労働者の間の紛争の解決を図ることを目的としているにもかかわらず、結果として被害者と加害者の間のプライバシーにかかわる個別の紛争を調停するような状況となりかねませんので、その性格上、均等法の調停にはなじまないというふうに考えるわけでございます。  募集、採用に係るものにつきましては先ほど答弁したとおりでございます。そして、募集、採用につきましては改正法上第十三条、現行第十五条により調停の対象とはならないというわけでございます。
  48. 山崎順子

    山崎順子君 そうしますと、均等法の調停にはこのセクシュアルハラスメントの問題はなじまないということは、門前払いというか、調停してもしようがありませんよという形になるんですか。
  49. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 繰り返しになりますが、セクハラの問題は非常に重要でございますので、婦人少年室としても真っ当に受けとめて解決を図っていきたいと思っておりますけれども、これは先ほど申しましたように、労働大臣または女性少年室長によります報告の徴収をいたしまして、助言、指導、勧告という形で解決をさせていただきたいと思います。
  50. 山崎順子

    山崎順子君 そうしますと、そういった事件というか事案が起こる前にも、企業にこういったセクシュアルハラスメントについては、例えば先日モトローラという会社に視察に行かせていただきましたときに、対価型と環境型だけではなく男女差別型セクハラまで、いろいろ社長からすべての社員にきちんとセクシュアルハラスメントは人間の尊厳を侵すものであるという研修をしているということでしたが、そういったことをさまざまな企業にするようにというような指導もなさるわけでしょうか。
  51. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) セクシュアルハラスメントに関する相談というのは婦人少年室においても非常に多くなってきておるわけでございまして、今回の均等法におきましてもセクシュアルハラスメントに関しましては規定を設けさせていただいておるわけでございます。  かつ、先生おっしゃったように、非常にあってはならないことでございますので、今後ともこのセクシュアルハラスメントが起こらないような企業をつくっていくという点につきましては一生懸命努力をさせていただきたいというふうに思っております。
  52. 山崎順子

    山崎順子君 先ほど長谷川委員からもセクシュアルハラスメントの問題が出ておりましたけれども、例えば昨日の新聞でしたか、「アカ・ハラ」なんていう言葉が書いてありまして、何のことかと思いましたら、大学での、アカデミックな場でのセクハラだというような話が出ていたんです。  私などもさまざまの友人たちが子育てを終えてから大学院に入ったりとか、随分向学心に燃えた熱心な人たちが女性にもたくさんいらっしゃいます。そして、その研究室内で一番優秀で成績もよく論文もいいものを書いたにもかかわらず、彼女たちが大学院を卒業して今度は講師になるとかという形で仕事をしようと思うと、教授から、君は今度受けないでほしい、男子の学生の方に自分の後継者になってほしいというようなことをあからさまに言われるというようなことをたくさん私は聞いております。こういったものは職場でのセクハラというよりも直接的な差別ではないかと思いますが、これは均等法違反でしょうか。
  53. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 昇進の問題かと思います。例えば、まず大学の先生雇用関係にあるかどうかということで、もし雇用関係にあると仮定しての話でございますが、例えば昇進で同じように助手なら助手になる男性女性がいた場合に、その人たちが性によって差別されずに昇進を決めてもらわなければいけないということはちゃんと均等法上に明記されておるわけでございますので、女性であるというだけの理由でもし差別されたとすれば、均等法違反に当たる可能性が高いというふうに思います。
  54. 山崎順子

    山崎順子君 そういった一つや二つのケースではなくてかなり行われているのが実情のようですので、ぜひとも指導、徹底もしていただきたいと思います。  もう一つ、同じく教員同士で夫が校長になるようなときに妻の側が肩たたきをされ、やめてほしいという勧告を受けるケースが今まで随分多くございましたけれども、やはりこれも退職等の差別になるんでしょうか。
  55. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 公務員につきましては均等法上の差別禁止規定は適用が除外されているわけでございますけれども、国家公務員法及び地方公務員法によりまして平等取り扱いの原則がございまして、性別によって差別されてはならないとされているところでございますので、本人の意に反しての免職はされないわけでございます。そういうことはあってはならないことであり、かつ女性たちにもそういう不合理がもしあった場合にはぜひそういうことを直していっていただくべく努力お願いしたいというふうに思うわけでございます。
  56. 山崎順子

    山崎順子君 今のような努力というか、それは調停委員会にかければ早急に解決されるというふうに解釈してよろしいんでしょうか。
  57. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 先ほど申しましたように均等法は公務員には適用されませんので、調停委員会にはかからないわけでございます。
  58. 山崎順子

    山崎順子君 もう一つ同じような差別についてちょっとお伺いします。  例えば、私どもの相談の中には非婚のまま子供を産む方の相談もございます。今、日本の場合は嫡出子と非嫡出子の差別をしてはならないというようなことがようやく民法改正されつつあるところでございます。まだ改正はされておりませんけれども、その改正されないような状況の中で、社会通念としても非婚の母に対するべつ視とか差別というのはかなり強いものがありまして、企業で働き続けることが難しいというような相談が随分あるんですね。  それで、もちろん親や周りの人たちからも余り応援も受けられないというときに会社もやめなきゃいけないというふうなことになりますと、とても母子の生活が困るということがあるんです。非婚の場合の母親、これは家庭責任を持っている者だと思いますけれども、そのときにもし解雇等の勧告があったりすれば、これは均等法差別になるんでしょうか。
  59. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 女性であるということを理由として解雇等にすることはいけないことでございます。
  60. 山崎順子

    山崎順子君 そうしますと、それは別に婚姻しているしていないとかかわりなく、女性であって子供が生まれたからということで差別することはいけないと解釈してよろしいわけですね。
  61. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 均等法男女差別を禁止する法律でございますので、女性のみ子供を有しているということを理由とした解雇等を行って、男性は子供がいてもそのままという場合は法違反に当たるわけでございます。
  62. 山崎順子

    山崎順子君 といいますと、同じ会社に男性でそういう同じケースがないとだめということなんですか。
  63. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 例えば、会社が解雇をしなければいけないような状態になって何人かの労働者を解雇せざるを得ないというときに、その解雇の条件幾つか出てくるわけでございますが、そのときの条件一つで、子供を持っている女性というような基準をつくってはいけないということでございます。
  64. 山崎順子

    山崎順子君 わかりました。ありがとうございます。  その次に、間接差別についてお伺いします。  先ほども話しましたけれども、今回、配置、昇進などの努力義務規定が禁止規定になりましたが、表面上の男女平等も結果的に女性差別となる間接差別がいまだに存在していると思うのです。先ほどの、転勤可能かどうかを理由に基幹職と補助職に分け女性を補助職にするといったことは、今回の法律では違反とならないということですね。
  65. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) コース別雇用管理制度で、例えば総合職は転勤がある、一般職は転勤がないというようなコース、もちろんそれ以外にもいろいろあろうかと思いますが、一つ条件としてそういうコース別雇用管理で男女ともに募集、採用をしてもらうということが条件でございます。  それから、先生最初に言われました間接差別の問題でございますけれども、婦人少年問題審議会におきましても間接差別に対して議論があったわけでございますが、実際にどのようなケースが差別とされるかということにつきましてはコンセンサスは得られなかったわけでございます。  ですから、間接差別につきましては、どのようなケースが差別になるかということにつきまして慎重な議論が必要であるというふうに思っておりますので、私どもといたしましても諸外国とかの実情、それから判例の動向、いろいろな事例の収集に努めまして、この間接差別につきましては引き続き検討を行っていきたいというふうに考えております。
  66. 山崎順子

    山崎順子君 どのようなことが間接差別に入るか慎重に検討していきたいということですが、世帯主のことやさまざまございますけれども、年齢制限については審議会で話題になったのか、また労働省ではこの件についてはどのように考えていらっしゃるのでしょうか。
  67. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 応募できる年齢の上限が例えば女性たちの場合四十五歳までとか何とかとか、男性もそうかもしれませんが、確かに上限が障害になる事実があるということは認識をしておるわけでございます。企業が応募できる年齢の上限を設けるということは、実態としてこれまで日本では定年までの長期雇用システムというんでしょうか、長期雇用制度が多くの企業で定着していたことと関係があるのではないかというふうに考えているわけでございます。  年齢制限につきましては、男女とも同じ上限を設けている限り均等法に違反するものではございませんので、今後、雇用慣行等の状況も踏まえながらいろいろと議論をしていくべき課題であるというふうに考えております。
  68. 山崎順子

    山崎順子君 確かに男女で、例えば職安での年齢別の紹介件数などを見ますと、男女ともに世代が高くなっていくにつれて紹介件数が減っていくということがわかるんです。  例えば、平成七年の男性の場合、二十代の前半では三十四万一千七十一件の紹介がありました。それがだんだん高くなると減っていきます。二十代の前半を一〇〇としますと、例えば二十代の後半は八六・四二%、それが四十代の後半でも五九・八六%、六割なんですね。これが女性の場合は、二十代の前半が最も紹介件数が多くて六十万六千二百十二件です。ここを一〇〇としますと、二十代の後半ではもうがくんと落ちまして五七%になりますが、四十代の後半になりますと三一%なんですね。  それで、今、太田局長もおっしゃったように、例えば保母さんの資格、教職の資格等がありましても、保母の採用上限年齢は大体全国どの自治体でも二十七歳とか二十五歳とか大変低いところにありまして、子育てをした女性たちがその経験を生かしてまた保母さんになるということが大変難しい。また教員も、教職免状を持っていても、富山県と静岡でしたか、その二県しか採用上限年齢を撤廃しているところはなくて、他はほとんど三十五歳までといったような年齢制限がございます。  そうしますと、答弁の中にも間接差別とはという規定が、太田局長がこれは言っていらっしゃるんですけれども、「一般的には、男女に共通の基準であるにもかかわらず、結果的に女性が不利になるものを指しているというふうに考えております。」とおっしゃっている、確かにそのとおりなんですね。そうすると、今のような数字を挙げてみただけでも、結果的には女性が不利になるというのは、妊娠、出産、育児、介護、夫の転勤等でほとんどが女性の方がやめざるを得ないということで、再就職時の年齢制限があるのは圧倒的に女性の側が不利だと。これは、私は間接差別になるのではないかと思っております。  英国の例などでは、差別的意図なしに適用、継続されてきた雇用上の政策、慣行が結果的に女性に不利な効果を及ぼす場合があると、これを本来の意味における間接差別と言うということで、イギリスの性差別禁止法が間接差別概念を導入した。ここに年齢制限のことなんかも含めていますが、こうしたかかる類型の行為を違法とすることにあったというふうになっております。ぜひとも我が国でも年齢制限の撤廃等を含めて考えていただきたいと思うんです。  それは、これから少子・高齢社会になってまいりまして、労働の面からも女性労働力を確保したいというようなことはもう労働省としても十分お考えになっていることだと思いますけれども、いつも働き続けている女性たちのことについてどうも優先されて考えられ過ぎていて、やめざるを得ない人たち、そしてやめてまた再就職したい人たち、この長い人生の中で生涯教育プラス教育や学習したことをまた生かせるような職場雇用の場の拡大、こうしたことをこれからどんどん考えていかなきゃいけない時代ではないかと思うんですね、人々の生きがいのためにも。そうしたときに、この年齢制限というのはいかにも女性を家庭に閉じ込めてしまうものではないか。これは男性もそうです。  二十歳前後で自分の生涯の職業を決めなければいけないというのが今の日本ですけれども、いつでももう一度訓練をして、勉強をしてまた新たな職業につける。イギリスなどでは、五十歳で三人の子供を育てた専業主婦の方がまた小児科医として出発するというような例もあると聞いております。そういった多様な選択肢が実現されるためにも年齢制限は撤廃すべきだと思うのですが、大臣に御所見を伺いたいと思います。
  69. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 労働省といたしましては、六十五歳現役主義というようなことで各企業等々に対しましていろいろ行政指導、そういう環境づくり、これは一職場環境ではありませんで社会全体の環境づくり、これにさお差しているものでありますが、いかんせん、まだまだ私どもが思っているところまで一般意識革命が行われておらないということは事実でございます。したがって、これらの方向をより一層前進させるために、再就職が可能になるようなそういうような仕組みをつくりたいというように思っているところであります。  きょうはたまたま先生、その種のお尋ねがあると、こう伺いましたので、私は非常にうれしい新聞投書記事を一枚持ってまいりました。つい数日前のある新聞の投書欄でありますが、九州の学校の先生のようであります。「現在、私は育児休業中で、一月に生まれたわが子との日々を満喫している。」と、これから一年間に至るまでの間、「乳児の成長はめざましく、日一日と顔つきが変わる。この貴重な時を母子ともに過ごさせてくれて本当にありがとう。」。涙が出るぐらい労働行政としてこの施策が正鵠を得ていたなと、こう実感を持って味わった次第であります。  今後時短の問題、本改正案、それから育児・介護休業法等々、総合的な施策をもって先生のおっしゃる方向努力をしてまいりたい、かように思っている次第であります。  最後に一言。  山崎先生は、新聞によれば来期国会かち円より子先生とお呼びを申し上げることになると、こう聞いております。私は、少年時代、あそこにおいでになります佐々木先生とともに「すすき円の月を呼ぶ」という歌を、寮歌でありますが、歌ってまいりました。あの「円」という字を「まどか」で読めるという皆さんがどうもこのごろ少ないのではないか。いやあ、いいことだなと。私見で申しわけありませんが、そう思った次第でありまして、何よりでございました。
  70. 山崎順子

    山崎順子君 ありがとうございます。  私も子育てをして本当に子供の日々の成長を見ているのがとても楽しかった思いがございます。多くの女性たちが、その後再就職がしやすいという状況があればなおさら子育ても楽しいということが言えます。今の方は育児休業法ができて本当によかったと思いますけれども、その点、ぜひとも労働省としてお取り組みいただければと思います。  さて、では次に三六協定についてお聞きしたいと思います。  税務統計によりますと、我が国の法人数は約二百七十万に上ると言われております。法人にはもちろん大企業から個人類似の零細企業までありまして、株式会社、合名会社、合資会社など多様でございますが、どのような法人形態であっても雇用者がおります。そこで時間外・休日労働が発生すれば三六協定の締結は必要になるはずです。しかし、労働基準監督署への届け出は約八十万件ということですが、カバー率はどの程度と考えていらっしゃるのでしょうか。  また、女子保護規定解消によりまして、三六協定目安時間の中で時間外・休日労働を命じられることになりますが、現行の三六協定で時間外や休日労働の歯どめは十分と考えておられるのでしょうか、お伺いいたします。
  71. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 御指摘ございました三六協定のカバー率につきまして、全国中小企業団体中央会の調査などをもとに時間外労働を行う民間企業の事業所数を推計いたしますと、約二百三万事業所ございます。三六協定の届け出件数、先ほど先生お話ございました八十万件、これとの比率は約四〇%となります。  こういった三六協定の締結、届け出をせずに時間外・休日労働を行う事業所、これはもちろん労働基準法違反でございまして、監督、指導の重点項目といたしておるわけでございますが、今後ともこういった点を最重要課題対象といたしまして、違法な時間外・休日労働が行われることのないように指導、監督につきまして一層徹底してまいりたいと思っております。  また、この時間外労働協定目安制度の内容を見ますと、約九割の事業所がこの目安時間内で協定を締結しておりまして、相当の成果を上げているものと理解をいたしております。  ただ、女子保護規定解消されることに伴いまして、この目安制度についてより実効性を高めていくことが大変重要でございますので、私ども、この実効性を高めるための方策につきましては、中央労働基準審議会検討お願いし、適切な対応策を取りまとめていただきたいと考えているところでございます。
  72. 山崎順子

    山崎順子君 三六協定の届け出件数の比率が四〇%ということですね。そうしますと、時間外労働協定目安制度について、約九割の事業所において目安時間を遵守した三六協定が締結されて相当な効果を上げているとおっしゃいましたけれども、現実には四〇%掛ける九〇%で全事業所の三六%というふうに解釈してよろしいでしょうか。  私は、他の残り六四%についても指導、監督を今後徹底していくとおっしゃっていますけれども、この辺の数字は、約九割と言われてしまいますと、何かもう全事業所の九割がほとんどちゃんとやっているんだなと思いかねないなと思いまして、数字はちょっと正確に言っていただけた方がいいんじゃないかと思ったのですが。
  73. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) ただいま申し上げました最初のカバー率でございますが、これは分母になる事業所数を、時間外労働を行っているかどうかというようなことを推計いたしますと同時に、全体の事業所数、例えば三百人以上のところについては適切なデータがございませんので、すべてが時間外労働を行うものと推計したり、中小零細企業につきましては、常時事業活動を行っている事業所であるかないかというような判定が大変難しゅうございますが、そういったものを全部まとめて分母に入れておりますので、四〇%というような数字になってまいるわけでございます。  ただ、平成九年の四月、五月に東京労働基準局管内の五つの労働基準監督署でこういった三六協定についての定期監督を一斉にいたしておりますが、その二カ月で約五百四十四事業所を回りまして、その際に、この三六協定等が締結されていないということで出た事業所がそのうち約五十事業所ございまして、約一割ぐらいが三六協定を締結していない状況として把握されております。  いずれにしましても、三六協定を締結しないで残業しているような事業所があってはならないわけでございまして、私ども、定期監督の際のいわば最重要課題として、また今後、女子保護規定解消された後のことをにらめば、そういった点をポイントとして監督、指導に一層力を入れてまいる考えでございます。
  74. 山崎順子

    山崎順子君 では、時間がなくなってまいりましたので、次に家庭責任への配慮についてお伺いしたいと思います。  ILO百五十六号条約を日本はもちろん批准しておりますけれども、今回の法改正では家庭責任を果たすことの意味をどのように取り入れられたのでしょうか、理念のところから消えておりますが。また、育児、介護についての深夜の免除規定を育児・介護休業法の改正に入れましたが、それではとても十分ではないと思うのですが、どうお考えでしょうか。
  75. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 今回の法改正の中には、いわゆる女子保護規定解消が盛り込まれたわけでございますが、これによりまして、子を養育する両親がともに深夜業に従事するケースとか、深夜に介護を要する家族の世話をする者がいないケースも生じると考えられるわけでございます。このようなケースへの対応として、育児・介護休業法上に育児や家族の介護を行う一定範囲の男女労働者は、深夜に労働しないことを請求できる制度を創設することとしておるわけでございます。  家族的責任を担います男女労働者の職業生活家庭生活の両立という課題につきましては、今回の深夜業の制限も含めまして、育児・介護休業法に基づきまして各般の対策を総合的に推進しているところでございまして、ILO百五十六号条約の要請を満たしているものでございますが、今後ともこれらの施策につきましては一層充実をしてまいりたいと思っております。
  76. 山崎順子

    山崎順子君 この育児・介護休業法規則の方なんですけれども、まず一歳未満の子供を持つ場合には希望者に所定外労働をさせないということが規則の三十四条に書かれております。また二十条では、一歳から小学校就学までの努力義務として、短時間勤務の制度、フレックスタイム制、時差出勤の制度労働者が利用する介護サービス費用の助成制度、その他これに準ずる制度のところに、この短時間勤務の制度として育児休業の制度また勤務時間の短縮の措置に準ずるということですから、小学校就学前の子供を持つ場合でも所定外労働をさせないようにという努力義務が入っていると解釈していいと読めるんですが、それでよろしいのかどうか。  また、休日労働についても免除の措置をすることが望ましいというふうに指導してくださるかということ、家族的責任を持つ男女労働者への配慮としてこれは指針で示されるというふうに考えてよろしいのでしょうか。
  77. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 現行の育児・介護休業法におきましては、一歳から六歳までの子供を有する労働者につきましては所定外労働をさせない制度等が事業主の努力義務となっているわけでございまして、休日労働もこの所定外労働に含まれるものでございます。  これらの制度につきましては、これまでも事業主に対しまして周知を図ってきたところでございますが、これは今後とも引き続き周知徹底には努めてまいりたいというふうに思っております。
  78. 山崎順子

    山崎順子君 家庭責任を有する場合は深夜労働やそういったものを免除できるということでございます。  企業主が皆さん良心的でというのであればいいんですけれども、今回の均等法とか、もしこれを悪用するとしましたら、例えばスーパー等で働いていらっしゃる方で大変優秀だから店長にしたいというようなことがもし女性の場合にあったときに、やはり店長ですとどこへ転勤するかわかりませんし、いろいろな家庭生活上の不都合が出てくるというところで、希望する人は余りいないというふうに聞いております。店長にするからと言われたのにもしそれを断ると、これは解雇なんということになるのかどうか、この辺をちょっとお聞きしたいんですが。
  79. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) それはそれぞれの事業主の雇用管理としてどうされるかでございますが、店長にしたいというくらいの優秀な人であれば企業としてはその方に活躍していただきたいと思っておられると思いますので、店長を断ったがゆえに解雇というようなことにはならないと思うわけでございます。  先生の御質問趣旨が、店長にするのに、女性だけが断って解雇ということになるかどうかということでございますか。  解雇の理由というのは、事業主の必要性とそれから女性労働者がそれを果たしてできるかどうかというような総合的な要因でございますので個別にいろいろと判断しなければいけないと思いますが、男女ともにというのではなくて、女性が解雇、これが均等法違反というのが女性であるという理由かどうかというところに主としてかかるわけでございますが、均等法違反になる場合もあるのかなというような気もいたすわけでございます。
  80. 山崎順子

    山崎順子君 とにかく男女平等なんだからということで、家庭責任があっても、家庭責任というのは六歳までの子供とかそういうふうになりますと、もう少し上の子供たちの場合でもやはり母親が遠くへ転勤なんということはしにくいケースもまだ小学校の在学中であればあるかと思うんですが、そういったときに、男の方は単身赴任をするとかそういうことも可能だとして、女性がそれを断った場合にという、家庭責任がだから何歳までになるのか、その辺の問題もあるかと思うのですが、いかがでしょうか。
  81. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 家庭責任を何歳まで考えるかというのはそれぞれ企業によって違うと思いますので一律に均等法でどうこうという話ではないと思いますが、家庭責任というのはあくまでも男女ともに担うべきものであるというのが基本的な考え方でございますので、女性だけが担うという考え方はやはり均等法上はとり得ないと思います。
  82. 山崎順子

    山崎順子君 とすると、女性家庭責任があるから転勤はできないということは、男女で本来は持たなければいけないものだから、女性がそういうことを理由にできないということでしょうか。
  83. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 家族的責任だけを理由に、その家族的責任も、例えば子供が非常に小さいとか、まさに家族的責任をどこまで考えるかということだと思いますが、現在の私ども考え方といたしましては、一応六歳未満の子供たちに対しては例えば深夜業の免除等も規定をしておりますので、その辺のことにつきましては労使のそれぞれの状況によって考えていただきたいというふうに思うわけでございます。
  84. 山崎順子

    山崎順子君 私は六歳までというのは大変不満でございまして、自分の経験だけではなく、先ほど言いました多くのケースから見ても、お母さんたちは保育園に子供を預けながら働いて、早く大きくなってほしいというふうに思いながらやっと小学校に入ってほっとして、そうするとついもうお姉ちゃんでしょう、お兄ちゃんでしょうというふうに子供に割合責任を持たせようとしがちなところが母親にはあるんですね。  そうしますと、子供は保育園等から小学校に入っただけで環境激変しておりまして、そこでまた母親が時間外労働や深夜業に入っていくとしますと、まず私は子供の側の権利からしてもとても家庭内がぎくしゃくして、母親が、母親だけじゃありません、父親も母親も疲れていると当然子供に余裕のある接し方ができなくなりますし、そこでまた不登校やいろんな問題が起きてくるんじゃないかなということを心配しております。ぜひともこれは早急に年齢を上げていただくなり、また労使間の協定で、今おっしゃったように労使の問題でもありますから、そのあたり、男女ともに家庭責任をきちんとできるような形で指導をしていただければと思います。  最後になりましたが、そこからの関連でございます。男女共通の法的規制について、女子保護規定撤廃は本来はぜひ同時にやるべきものだったと思います。  そういった意味で、ドイツでは女子のみの深夜業禁止規定を廃止しましたが、それにかわって男女共通の深夜業規制を法制化いたしました。諸外国のこうした取り組みをどのように評価しているのか、また日本ではなぜそれができないのか、こうした法的規制がぜひとも必要だと思いますが、いつまでにおやりになるのか、必要と考えるかどうか、そのあたりについてお伺いしたいと思います。
  85. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 深夜業についての規制という御指摘でございますが、深夜業は、我が国経済、生産活動を見てまいりますと、生産技術上の必要あるいは国民生活の利便などの点で欠かせない面があるわけでございまして、これに新たな規制を設けるとすればやはり慎重な検討が必要であるというふうに考えております。  この問題につきましては、中央労働基準審議会で、先ほど来答弁申し上げておりますように、時間外・休日労働のあり方について御審議を願っておりますが、その関連事項として深夜業についても環境整備等のあり方も含め検討がなされておるところでございます。こういった状況、結論を見ながら、こういった問題についての対応考えてまいりたいと思います。  また、諸外国の深夜業に対する規制の御指摘がございました。例えばドイツにつきましては、一九九四年の新労働時間法の制定によりまして女性の深夜業も行うことを認めたわけでございますが、その際、例えば一定家庭責任を有する夜間労働者につきましては、深夜から昼間労働への配置転換の請求権も制度化されている、そういった動きがあることは承知をいたしておるところでございます。  我が国におきましても、今回の均等法改正の際は、育児や家族の介護を行う労働者につきましては深夜業の免除の請求権を認めると、こういった制度整備をあわせて行っているところでございますので、家庭責任への配慮についていろいろ措置を講じている点については御理解を賜りたいと存じております。
  86. 山崎順子

    山崎順子君 ドイツの新しい法制度では配置転換の請求権がありますよね。我が国では今回育児・介護休業法に基づいて育児や介護家庭責任を負う、六歳までの子供がいる場合とかは深夜業の免除の請求権は与えられておりますが、配置転換の請求権はないわけですよね。そうしますと、深夜業ができないとなって、この期間だけ昼間に変えてくださいというふうなことがあった場合はどうなるんでしょうか。
  87. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 深夜業の制限の労働者の権利といたしましては、深夜に労働をしないことを請求することでございますので、この結果といたしまして、深夜に労働者が労働しなくなったといたしましても、事業主にその労働者を他の時間に移すという義務が生ずるものではないわけでございます。  ただ、深夜において労働しない労働者の処遇についてどの程度規定すべきかということにつきましては、これまで十分なコンセンサスが得られていないということで法律上は規定をしていないわけでありますけれども、個々の事業所におきまして深夜業制限の制度が今度できるわけですので、深夜に労働しない労働者の処遇につきましては事前に取り決めをしていただくことが望ましいというふうに思っております。
  88. 山崎順子

    山崎順子君 例えば、その家庭でその人だけしか収入がないという主たる生計維持者の場合に、もし子供がまだ小さくて、そして深夜業が入ってきたなんというときに、配置転換の請求権がなければその間休業になってしまい、また収入もなくなるということも考えられるわけです。そうした場合、事前に取り決めがあることが望ましいとおっしゃっていましたが、どの程度労働省としてはアドバイスというか警告なりができるのか、またそうした労働者の方の場合は調停とか相談とか、そういったことを使うことができるんでしょうか。
  89. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 今後これは新しく設けられる権利でございますので、どのように事業所が対応していくか等々につきましては注意深く見守り、実態も把握して対応していきたいと思っております。現在その程度のお答えしかできないことをお許し願いたいと思うわけでございます。
  90. 山崎順子

    山崎順子君 この男女共通の法的規制については、まず深夜業については先ほど女性の体にさまざまな影響があるのではないかというようなことがあって夜間労働の禁止になったと言いますけれども、確かに女性にも影響があります。そしてまた男性にも、まだまだこれは調査が私は少ないと思います。やはり深夜業等は人間の体のリズムに逆行するものですから、今後どんどん調査願います。  今、国際的な社会の中で、また人々のニーズも夜間に高まっているということもございますけれども、できるだけ深夜業は男女ともに少なくしていく方向、また家庭責任や子供の権利の立場からも時間外労働や休日労働などを規制していくという方向労働省として進めていっていただきたいということ、また私たちもそれに向かって努力したいということを申し述べて、私の質問を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  91. 武田節子

    ○武田節子君 平成会の武田でございます。  私はまず、本会議でも質問いたしましたが、時間外労働拒否の合理的理由について伺ってまいりたいと思います。  三六協定が適法に締結されたとしても、女子保護規定が撤廃されますと、女性労働者にとってはこれまで禁止されていた百五十時間を超えた時間外労働が命ぜられることが想定されるわけであります。そのため、職業生活家庭生活との両立、調和が困難な場面が多くなることが危惧されるわけであります。それに対して労働省は、時間外労働を拒否できる合理的な理由がある具体的事例の判例を中心に整理し、周知するシステムを考えたい旨の答弁をなさっております。  そこで、これに関してどのような判例が出ているか御報告いだだけるでしょうか。
  92. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 裁判例といたしまして正当な理由が認められなかった例といたしましては、これは地裁の判決でございますが、第三者のための選挙運動のために残業拒否をした場合に、これが正当な理由として認めがたいとしているものがございます。  また、正当な理由が認められたものといたしまして、これも地裁判決でございますが、解雇との関係においてでございますけれども、会社が女性従業員には水曜日と土曜日は残業のない日であるという旨の通告をしていた場合に、その女性従業員がその曜日に残業を拒否することは、正当な理由なく会社の指示、命令に従わないときという解雇事由には当たらないとしたものなどがあると承知をしておるわけでございます。
  93. 武田節子

    ○武田節子君 判例は、個別事案における複雑な背景労働者の日ごろの仕事ぶり、人間関係等をしんしゃくしたり、業務命令の内容と拒否理由との比較考量などから判断されておりますから、単純に、こうした事例では拒否してよいと短絡的に判断し得る材料としては役割を果たすことは無理ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  94. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 正当な理由につきましては、時間外労働等を命令する使用者側の必要性とその命令を拒否する理由との相当性の比較において個々具体的に検討されるべきものでありまして、個々の具体的事例を他の事例にそのまま当てはめることができるというのは少ないというふうに思うわけでございます。  しかしながら、正当な理由につきましては、家族的責任という観点から事例の収集、整理を行うことによりまして、事業主や労働者が個々の具体的な事例に直面した場合に正当な理由に該当するか否かを判断する材料の一つとして使うことができるようにしたいと考えておりまして、こういうことをすることによって労使間のトラブルの防止にも資するのではないかというふうに思っております。
  95. 武田節子

    ○武田節子君 私は、労働者が知りたいのは、具体的にこうした事例では業務命令を拒否しても構わないといったわかりやすい事例の集積ではないかと思います。使用者側に立って言えば、時間外勤務を強制できない具体的事例が明白になり、お互いに円滑な時間外労働の関係ができ上がるのではないかと思っております。  例えばここで突発的な事例を四点挙げますので、その判断をどうされるかお尋ねします。  一つ。例えば自分自身の体の調子が悪く、残業には耐えられないという事例が多いのではないでしょうか。他人にはその人の痛みはなかなか理解してもらえません。当然、診断書など間に合うわけではありません。この場合、残業を拒否することはどうでしょうか。これが一つです。  それからその二は、いつも迎えに行ってくれる母親が体調を崩したため、自分が保育所に子供を迎えに行かなくてはならなくなった場合はどうでしょうか。  その三。家族の病気や出産の場合はどうでしょうか。  その四。家族で観劇やスポーツ観戦をするため指定席を確保していたが、時間外勤務を命ぜられた場合はどうでしょうか。  この四つの問題に対してどう判断されますか、簡単にお答えください。
  96. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) どのような場合に時間外労働の命令を拒否できるかにつきましては、これは使用者側の必要性と、それからその命令を拒否する理由の相当性とを比較して労使で話し合いがなされ、決められるべきものだというふうに考えるわけでございます。  このようなことから、労働者側の理由のみをもって当該命令を拒否できるかどうかという判断は非常に難しいわけでございますが、一般的に言いまして、育児や家族の介護を行う者が労働者本人以外にいない状況にある場合とか、それから労働者本人の健康上の理由によって時間外労働ができないような状態にある場合は、これは正当な理由があるというふうに判断されることがあり得るというふうに考えるわけでございます。  いずれにいたしましても、いろいろと先ほど来申しておりますが、事例の収集、整理を行うことによりまして、正当な理由に該当するか否かを判断する材料というものをつくっていきたいというふうに思っておるところでございます。
  97. 武田節子

    ○武田節子君 もう一件の事例を紹介させていただきます。  輸入雑貨貿易業の従業員三十五人の中小企業で働いている練馬区に住む二十七歳の女性の事例ですが、彼女は平成八年十一月に英語が堪能ということで五十名中の一名に選ばれて採用されました。この会社の就業規則は一応週休二日制、一日労働時間は九時半から十七時三十分の八時間労働となっております。しかし現実は、帰宅は毎日午後十時か十一時で、一カ月の時間外労働時間は百時間、しかも残業手当は一銭も出ないため、月収は税込み二十三万円、手取り十九万円、基本給どおりしか収入はありません。また、有給休暇なし、休暇をとれば給与からその分を差し引かれます。  とても信じられない状況なんですが、これが現実なんです。こういった例はたくさんございます。結局、彼女は入社して三カ月ぐらい過ぎたころ、貧血と不整脈がひどくなって日大病院で診断したところ、過度の疲労ですぐ仕事をやめなさいと言われました。結果的に無理がたたって、平成九年三月に倒れてやめることになりました。  そのほかにも、現場の実態は想像しがたいものがございまして、四カ月で四人が体を壊して退職して、男性労働者さえも続かず退職している人が多いようであります。しかし、不景気なのでみんな我慢して働いております。  そこで伺いますが、この会社は時間外はすべてサービス残業ですので、拒否をしても当然不利益をこうむることはないと思いますが、例えば時間外労働で賃金支払いがあったとしても、いわゆる目安時間一週十五時間、一カ月四十五時間の時間外をオーバーしての業務命令であったとき、それを拒否したとき、合理的理由はどうなるのでしょうか。また、恒常的に毎週十五時間をオーバーしている、あるいは毎月四十五時間をオーバーしている場合はいかがなのでしょうか、お尋ねいたします。
  98. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) まず、ただいまの御指摘になりました事例に即しまして申し上げたいと存じます。  先生からも御指摘ございましたように、時間外労働を拒否する際に、それは拒否する側の事情と業務上の必要性からの時間外労働命令、それとの比較考量、こういう個別ケースごとに判断しなくてはいけないことになるわけです。ただ、御指摘のあった事例から見ますと、例えば残業に伴う割り増し賃金が払われていない、また有給休暇について実質賃金が引かれているようなことを考えますと、労働基準法上かなり問題がある事例ではないかというふうに思われます。  そういったケースにつきましては、もちろん残業を命ずる権限に相当する三六協定等も締結されていないのではないかというふうに思われますので、そういった際は当然拒否して、それは正当理由に該当しますし、それ以前に、健康上の問題もあるとすれば、私どもとしてもそういった問題に的確に対応したいと存じます。労働基準監督署の方でもそういった申告事案につきましては丁寧に対応する姿勢をとっておりますので、ぜひ御相談いただいて、私どもとしても適切な対応をまずとらさせていただきたいと存じます。  もう一つ指摘ございました三六協定の枠を超えた時間外労働を命ずる場合、これは二つケースがあるかと思いますが、まず、三六協定自身が目安時間を超えているとしたならば、私ども目安時間内におさまるように再検討の要請等を丁寧に再三行ってまいりたいと思います。そういった上で、三六協定を超えて時間外労働を命じているケースにつきましては、これを拒否してもそれは正当な理由があるというふうに扱われるのが一般的だと思っております。
  99. 武田節子

    ○武田節子君 なかなか単純には考えられない問題があろうかと思いますが、しかし、何らかの基準を示さないと労働者は業務命令違反を恐れていつも時間外勤務に応じる体制をとらなければならない結果になるのではないかと思いますので、円滑な労使慣行が確立している職場、あるいは労使の話し合いでうまく解決できる職場だけを前提に労働省は議論していてはいけないのではないかと私は思うのでございます。  したがいまして、まず一つの方法は、時間外労働を拒否できる最低限の事由、例えば家族生活を維持していくためにどうしても不可欠と思われる事柄を法令や通達で明示すること。第二の方法は、三六協定などでそうした事例を列記したモデル協定を示すなど円滑な労使関係の確立、仕事と家庭責任の両立の支援のために行政が一定の指導的役割を果たすことなどが考えられますけれども労働大臣いかがでございましょうか、お尋ねいたします。
  100. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 先生から、基本的には労使間の安定的な職場づくりというお話がありました。私は結論的にはそこだと思っております。  私は自分で超過勤務もやり、休日労働もやり、深夜労働もやり、三番交代勤務もやり、しかも三番交代の十六勤で超過勤務を四時間ぐらいはこなすというようなことまでやりましたし、三十六条協定を何回も何回も結ぶという団体交渉的な話し合いもやった経験からいたしまして、一律にこういうような場合には拒否できるということをここで断言的にお話をすることは無理でございます。  例えば、代替制がどのくらいあるかというようなことで、私などはとても超勤できないというときには、自分の班の昔からの仲間に、おれなあもうこういうことで指定席を買ってあるんだと、それも突然手に入ったんだ、キャンセル待ちで入ったんだ、何とか頼むよと、そういう代替者が出れば、管理者の方も余人をもってかえがたいということでなければ、どんどん当該本人は帰って、自分の方のやらねばならない仕事はやれるというような両立が可能だと思っております。  要は職場労働環境づくりがどうなっているかということだと思いますが、先生がおっしゃるように職場といえどもあまたあります。業種もいろいろございます。したがいまして、最大公約数的に言うならば、正当な理由があって超過勤務をしなくてもよかったというような裁判例はどんなの、こんなの、あんなのがあるよというようなことを我々が取り集め、これをいろいろな形で周知をするというようなことも一つのやり方だと思っております。  先生の御要望の趣旨は私も理解ができますので、何かいい手があるかどうかこれからも勉強してまいりたい、こう思っております。
  101. 武田節子

    ○武田節子君 次に、公表制度について伺いますけれども、まず第三十三条に基づく平成八年度の勧告件数はどうなっておりますか、御報告ください。
  102. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 平成八年度に婦人少年室が行った勧告は五件でございます。
  103. 武田節子

    ○武田節子君 それでは、違反事業主に対する公表は勧告に従わない場合にできることとなっております。さきの参考人質疑の中でも強調されたところでありますけれども、前提となる勧告が非常に事例として少ないため、公表がどれだけ行われるかは推して知るべしであります。  女性少年室長の事業主に対する助言、指導、勧告の基準を定めるとのことでございますが、どのような内容をお考えでしょうか、お尋ねいたします。
  104. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 事業主に対します行政指導は迅速かつ効果的に実施することが重要であると認識しておるわけでございます。  このため、今後は違法状態の速やかな改善を促すという観点から、事案の内容、事業主のそれに対する対応状況、それから指導に要している期間などに応じまして、文書によります指導、または勧告の措置を積極的に活用することを含めまして、助言、指導、勧告の基準手続については検討をしてまいりたいと思います。
  105. 武田節子

    ○武田節子君 公表制度が、労働大臣が言われるように、企業に対するチリングエフェクトを発揮して罰則以上の効果を持つために制度の積極的活用が必要と思いますけれども、いかがでしょうか。
  106. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 企業名の公表は、これは伝家の宝刀というようなものとして事業主に強く法の遵守を求めるものでございますので、この新しい制度背景といたしまして、助言、指導、勧告といった行政指導の効果を高め、法律の実効性を十分に確保していきたいと思っております。  また、その勧告に従わない悪質な事業主に対しましては、公表制度を発動いたしまして厳正な態度で臨んでいきたいと思っております。
  107. 武田節子

    ○武田節子君 私は基本的には、均等法では公表制度が非常に機能しにくいと思っております。すなわち、均等法の問題は、障害者雇用のように公表の対象となる行為が数字で客観的に出てくるものではなくて、公表の対象となる行為労働省が差別と認定しなければならず、それに不服である企業が裁判に持ち込むことを考えますと、労働省も差別の認定に慎重になり、その結果、公表に至らなくなること。また、さきに述べましたとおり、公表の前段階として勧告が義務づけられていることから、勧告を受けてから改善に乗り出せばよいといった企業の開き直りも可能であるからであります。  したがって、本改正の施行状況を点検する中で公表制度のあり方も当然見直すべきと思いますが、いかがでございましょうか。
  108. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 女性労働者に対する差別の是正に当たりましては、女性労働者がその企業に継続して勤務できるということが非常に重要であると思うわけでございまして、そういう意味で法違反の状態の速やかな改善を図るという観点で助言、指導、勧告という行政措置があるわけでございますが、そういう各段階を通じまして企業に対して粘り強く行政指導を行い、女性労働者がその企業にまた伸び伸びと勤務できる状況をつくっていくということが一番大事なのであろうというふうに思うわけでございます。  その上で、その勧告をしましても、勧告に従わない事業主に対しましては、今回の公表制度を厳正に適用いたしまして、行政指導から公表に至るまでの一連の制度を効果的に運用していきたいというふうに考えております。  また、公表制度も含めまして、改正法の施行状況につきましては随時その的確な把握に努めて、必要な検討は行ってまいりたいと思います。
  109. 武田節子

    ○武田節子君 私としましては、均等法違反は、言ってみれば憲法の両性の平等に反するものでありますから、国として社会的正義に反する行為であるという意思を明確に示すために公表制度とあわせて罰則を設ける方向検討すべきであると思っております。基準法、安全衛生法は送検した時点で新聞発表し、公表しておりますが、いかがでしょうか、労働大臣に御答弁を求めたいと思います。
  110. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 先生おっしゃますように、基準法はこの違反について罰則を設けておりますことは御存じのとおりであります。  しかしながら、今度新たに一歩前進をする男女雇用機会均等法改正法案は、言うならば、職場環境づくり、その裏に社会意識変革というようなものを志しております。したがいまして、罰則によって一件上がり、これは本会議で先生にお話しした言葉と同じ言葉でありますけれども、一事不再理であります。罰金うん十万円払ったら終わりということよりは、今お話をしましたような勧告、それに基づいての企業名公表で、世間、周りの皆さんから非常な異なった眼で見られることのそのつらさ、言いますならば矜持をゆがめられるという意味でのつらさが周りから非常に大きな圧力でもってかかりますと、セクシュアルハラスメントあたりが一番そうだと思いますけれども、企業名公表によるところの是正力というようなものを私は非常に大きく評価している次第であります。  同時にまた、その衝に当たる各県の女性少年室、これの実行力といいますか、質的な意味を含めてといいますか、全部が女性でたった一人だけ男性職員がいるというような現状からして改めてまいろう、こう思っております。  いずれともあれ、そういうような考え方でこの新しい法律、もし可決いただきますならば鋭意努力をしてまいりたい、かように存じております。
  111. 武田節子

    ○武田節子君 例えば、従業員を募集、採用する際には、過去何年間かの女性の採用実績、管理職等への登用実績等を公表する義務を課して、社会にその評価を問う場を設けること。その実績が芳しくないところについては、女性少年室長にその理由や改善計画などを出させることなど、いろいろな形の公表あるいはペナルティーも検討すべきであると思いますけれども、いかがでございましょうか。
  112. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 女性の採用実績とか管理職への登用とか等の実績について、男性と比べて差が生じているようなケースがあるわけでございますが、これは必ずしも結果だけで均等法違反を問えない場合もあるわけでありまして、むしろ男女労働者の間に事実上生じております格差を解消するための取り組みといたしまして、今回の改正法に規定をさせていただいておりますポジティブアクションを推進することが非常に重要であるというふうに考えているわけでございます。  このポジティブアクションの取り組みは、個々の企業の実態とか考え方に応じて自主的に行っていただくことが重要でありますので、現段階においては、一律に雇用状況の分析とか計画の策定とかいうような義務を課したり、また、それに対して制裁を設けたりすることは適当ではないというふうに考えておるところでございます。  ただ、労働省といたしましては、このポジティブアクションの重要性、それから手法について事業主の理解を深めるような周知ということは一生懸命図ってまいりたいと思いますし、企業のポジティブアクションの具体的な取り組みにつきましても積極的に援助をしてまいりたいと思っておるところでございます。
  113. 武田節子

    ○武田節子君 最後になりますけれども、これは労働大臣の御所見を賜りたいと思っております。  最近、映画俳優の丹波哲郎さんの夫人が亡くなられましたときに、本当に今もって忘れられない一言でしたけれども、丹波さんは、自分の胸にあいた、心臓にあいた穴は、息子も娘も孫もいやすことはできないという非常な悲しみの言葉を話されました。私は、夫婦というものは生きているときは空気か水のようなもので、余りありがたみがわからないのか、亡くなられてみると、そのぽっかりあいた心臓を娘も息子も孫も埋められない。ただただ女房に亡くなられたことの悲しみの表現だったと思います。  私は、こういうことを思いますと、今度の女子保護規定の撤廃によって、女性の過労死に一直線に走ることの内容に、女性の人権を尊重して、女性の生き方、働き方を考えて、男性に合わせるのではなくて、やはりこれから男性の働き方を女性の働き方に合わせていく新しい時代をつくっていくことが大事ではないかな、こんなふうに思っております。この法律の施行される二年の間に男女共通の労働時間の規制が何とか実現されるように、ぜひとも御検討いただきたくお願いする次第でございます。  以上で終わります。
  114. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 先生おっしゃられました丹波夫人の御逝去、私は全然存じませんでした。  ただ、私自身も家内が二年間入院をいたしまして、はらわたを全部摘出いたしました。したがって、身体障害者に認定をされております。かつて共働きの時代も経験をいたしております。そういうような経験を頭の中で描いて、丹波夫人の御逝去に伴って丹波さんがどんな御心境にあるかということは十分わかるような気がいたします。  いずれともあれ、女性の皆さんが、自分が十分に能力を発揮できるような、そういう職場環境をつくって、職域拡大され、私は生きていてよかったな、そういうような人生を送られるような法律の運用を図ってまいりたい。  冒頭、長谷川先生に三点について答弁を申し上げました。言いますならば、具体的にはその三つの手段等々を講じてまいりたい。  以上であります。
  115. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時十五分まで休憩いたします。    午後零時十六分休憩      —————・—————    午後一時十五分開会
  116. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ただいまから労働委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保等のための労働省関係法律整備に関する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  117. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 社会民主党の大脇です。  私は、先回の参考人のさまざまな御意見や御提案に関連して、数点質問をさせていただきたいと思います。  まず第一に、雇用機会均等法十一条において、定年、退職、解雇等につきましては、出産、妊娠その他婚姻をしていることを理由としてそうした処遇をしてはいけないということが書いてございます。募集、採用、配置、昇進その他、さまざまな雇用のステージにおきまして、妊娠、出産を理由とする差別というものに対して不利益の処遇をしてはならないということが均等法の精神、それから女子差別撤廃条約の精神から導き出されると思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
  118. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 先生指摘のとおり、現行法におきましても、女性の妊娠、出産を理由とする退職制度や解雇は禁止をしているところでございまして、その点につきましては、法違反に対しては厳正に対処してまいりたいと思っているところでございます。  また、妊娠、出産を理由とする配置転換などにつきまして、どの程度までの行為を不利益取り扱いとして禁止することが適当かどうかにつきましてはコンセンサスが得られていないこと等にかんがみまして法律には明記されていないところでございますが、妊娠や出産を理由として配置、昇進などについて著しく不利益な取り扱いをすることがあってはならないものというふうに考えております。
  119. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 女子差別撤廃条約第四条に基づきますと、母性保護に関しては、とりわけ妊娠、出産という意味ですが、差別の理由としてはならないということを明記してありますので、この点についてはでき得る限り早くコンセンサスを得るように努めまして、不利益処遇ということを原則禁止するという形でしっかりと法の解釈を進めていただきたいというふうに考えるものであります。  それから、募集・採用区分ごとのいわば男女比較を前提とした性差別ということで、これまでのコース別雇用あるいは女子のみのパートの採用といったものに関しましては、今後指針はどのように変わっていくのでしょうか。
  120. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 募集、採用につきましては、例えば女性は受付とか細かい仕事に向いているというような先入観に基づきまして、一定の職種、職務について女性のみを募集、採用とすることは、これは女性職域を限定したり、女性男性との仕事を分離してしまう、いわゆる職務分離という弊害をもたらすわけでございますから、こういうような弊害が認められます女性のみとか女性優遇の措置は、これは女性に対する差別として禁止することとしたところでございます。  御指摘のように、コース別雇用管理におきましても、女性のみを対象とするコースを設けることも均等法に違反するということになると考えております。
  121. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 調停委員会の位置づけに関しまして先ほど円議員の方からも質問があったかと思いますが、調停開始の必要性というものを婦人少年室が判断する場合について、既に各婦人少年室に対してはその判断基準が懇意的にならない旨の運用基準を指示されているというふうに聞いておりますが、どうでしょうか。
  122. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) おっしゃるとおりでございます。
  123. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 今後、そうした考え方については何か通達などでしっかり明示されるのでしょうか。
  124. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 婦人少年室長が紛争の解決のために必要があるかどうかを判断するに当たりましては、現在、申請が当該紛争に係る事業主の措置が行われた日から一年を経過した紛争に係るものであることなど、調停に付すことが適当であるとは認められないケースに当てはまるかどうか、また、あるいは企業内における自主的解決の努力が行われているか等を考慮の上決定することとしているわけでございます。  そういうような考慮の結果、調停の必要がないと明らかに認められる場合を除けば、原則として調停を行う必要があるものと考えるのが相当でございますから、今後とも婦人少年室長の調停の開始、不開始の決定に当たりましては適切な判断が行われるように制度の運用に努めてまいりたいと思いますが、通達におきましてもきちっと整備をしていきたいというふうに思っております。
  125. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 調停委員会の申し立てで、今まで相手方の同意を得ていたものが取り払われるということについて一定の進歩が見られたわけですが、婦人少年室のそうした判断基準にこれまで問題があったということが多々指摘されておりますので、この点は通達にしっかり明記していただきまして、調停制度の活性化を図っていただきたいというふうに思います。  さらに、調停委員の人選につきまして、現在の状況はどうなっておるでしょうか。とりわけ、女性委員の人選についての状況はどのようになっておりますか。
  126. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 機会均等調停委員会は各室三人の委員で構成されておるわけでございますが、現在も運用上女性委員を必ず一名以上入れるという形で運営をさせていただいておりまして、少なくとも最低一人は女性が登用されておるわけでございます。そして、現在、調停委員に占める女性の割合は三五%になっております。
  127. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それでは、労働大臣の公表制度の創設について、これは勧告に従わなかった場合に企業名が公表されるわけですけれども、この制度が果たして活用されるのかどうかということでさまざまな懸念が表明されておりますが、これはどう受けとめられますか。
  128. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 今回、公表制度を新設させていただいているわけでございますが、公表は伝家の宝刀というんでしょうか、そういうものとして事業主に強く法の遵守を求めるものでございます。  この制度背景といたしまして、助言、指導、勧告といった行政指導の効果を高め、法の実効性を十分確保していきたいというふうに思っておりますし、勧告に従わない事業主に対しましては公表制度の発動につきまして厳正な態度で臨んでいきたいというふうに思っております。
  129. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 大脇先生にはまことに失礼でございますが、先ほど公表制度の中でセクシュアルハラスメントもその対象に含まれると武田先生にお答えをいたしましたが、セクシュアルハラスメントにつきましては、これは企業主と労働者という関係にとどまりませんで、その企業内のプライベートな関係を伴うものでありますので、企業名公表の制度から外れているということをここでお断りをいたします。  大脇先生には失礼をいたしました。
  130. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 今のは武田先生質問に対するお答えですか。
  131. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 私のは先ほどの武田先生への回答に対する訂正でありますので、大脇先生には大変失礼いたしました。
  132. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それでは、ちょっと大臣の御答弁はこちらへ置きまして、これまでの文書指導や勧告の取り組みについてどのようになっているのかということと、それから文書指導や勧告がしっかりされない限り公表制度ということも明快に動かないというふうに思いますので、それをより有効にするための方策についてどのように御検討をなさっているのか、お尋ねいたします。
  133. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 事業主が均等法を遵守していない場合には、婦人少年室長はまず口頭による助言をいたすわけでございます。そして、必要に応じまして、指導、勧告、これは文書を交付して行政指導を行っているわけでございますが、多くの場合は助言の段階で改善が図られているところでございます。  そういうような点で、これまで文書指導の件数は多くなかったわけでございますが、本年度からは法律に指導、勧告という制度が規定されておりますので、そういう制度が一層有効に機能するように今後は積極的にこの指導書、勧告書の交付による指導というものに努めてまいりたいと思うわけでございます。  そして、この公表制度をより有効に機能させるための方策いかんという御質問でございますが、この勧告に従わない事業主に対しましては公表制度を厳正に運用していくことにいたしまして、行政指導から公表に至るまでの一連の制度を効果的に運用していきたいということを考えております。ですから、公表制度につきましても、今後、手続、基準を定めまして適切な運用を行ってまいりたいと考えております。
  134. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 次いで、セクシュアルハラスメントに関する事業主の予防措置についてどのような基本的な考え方で指針を策定されるのでしょうか。
  135. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するためには、やはり個々の行為を引き起こす根本的な要因であります職場環境ないし雇用管理のあり方を変えることが最も重要であると思うわけでございます。  すなわち、セクシュアルハラスメント事案というのは、職場における女性に対する、またその女性の役割に対する誤った認識とか、男女間のコミュニケーション不足などがその職場環境のあり方に根差して個々のセクシュアルハラスメントの行為が生じている場合が多いわけでございまして、指針の策定に当たりましては、そうした根本要因にさかのぼって検討をしていきたい、また研究会においても検討していただく必要があろうかというふうに考えておるところでございます。
  136. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 この指針は大体いつごろ策定される予定をしておられるのでしょうか。
  137. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 法律をつくっていただいてからできるだけ早くと思っておりますが、遅くとも年度内にはつくりたいというふうに思っております。
  138. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 セクシュアルハラスメントに対しましてその検討委員会の中でぜひ御検討いただきたいことは、セクシュアルハラスメントもいわゆる対価型のセクシュアルハラスメントと環境型のセクシュアルハラスメントがあるわけでありますが、私はそうしたセクシュアルハラスメントの中に男女差別、性差別を構成するセクシュアルハラスメントがあると考えるわけであります。  とりわけ、性差別として構成されるセクシュアルハラスメントの類型を抜き出していただきまして、均等法の五条以下の配置、昇進、教育その他に関しまして、すべてのステージにおけるセクシュアルハラスメントの類型化をしていただきたいというふうに思っておりますので、その検討委員会でそのように厳格な形でセクシュアルハラスメントの類型化をぜひ研究をして、ガイドラインの作成をしていただきたいというふうに思います。  さらに、今回の均等法ではポジティブアクションの施策が奨励策ながら入ったということでありまして、企業ではこれまで活用されなかった女性能力というものが積極的に活用される端緒になるとともに、男女のいわゆる分布比などが明らかになることによって、構造的な形である差別が大きな枠組みとして一層是正されていくということを期待するものでありますが、このポジティブアクションの施策についてどのような指針が策定され、その定着に向けてどのような取り組みをしていかれるのかお聞きしたいと思います。
  139. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) ポジティブアクションの重要性、また手法については、事業主の理解を深めたいというふうに思います。そして、各企業におけるポジティブアクションの取り組みを促すとともに、均等法とあわせて研究会が既に取りまとめましたガイドラインとワークシートも盛り込みました、総合的なわかりやすいガイドとも言えるようなパンフレットをつくりまして、これを積極的に活用して周知に努めてまいりたいと考えておるところでございます。  また、実際に各企業においていろいろと取り組んでおられるところもおありかと思いますので、そういう各企業の取り組みについては積極的に収集をいたしまして、それを参考に好事例集を策定し活用していくことによって、またさらに具体的取り組みを促進していきたいと考えているところでございます。  また、人事管理におきましては、透明、公正な人事管理を行うということが大変重要なことであるというふうに認識をしておるわけでございまして、ガイドラインにおきましても具体的取り組みの例としまして、例えば女性の採用拡大という目標を掲げて選考方法の改善を行っていただくとか、女性管理者の増加という目標を掲げて昇進、昇格基準の明確化、透明化を行うというようなことがガイドラインにおいても挙げられているところでありますが、このガイドラインを活用いたしまして、周知も積極的に行ってまいりたいと思っております。
  140. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 諸外国では、このポジティブアクションは既に法的な義務としてさまざまな報告書の提出などが考えられたりしておりますが、我が国においては単なる奨励策となっているということで、将来に向けてそうした報告義務などを企業に求めていくような展望というものはお持ちでしょうか。
  141. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 先生指摘のように、諸外国においてそういうお国も幾つかあるということは承知をしておりますが、我が国の場合は現在、今回の法律においてポジティブアクションに企業が自主的に取り組んでいただくものについて国が援助をするという規定を入れさせていただきました。私どもといたしましては、まずこのポジティブアクションが新しい概念でございますので、企業が有効に取り組んでいただくよう、そこに対して積極的に取り組みを進めていきたいというふうに考えております。
  142. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 次の段階は、日本におけるそうしたポジティブアクションのシステムを大きく動かしていく方向でぜひ活用をしていただきたいと思います。  さて、さまざまな議論がされております労働基準法の女子のみ保護規定の解消につきましては、先回、時間外労働、休日労働につきまして質問をさせていただきまして、時間外労働の適正化指針の実効性確保の強化ということを一九九九年四月実施を合致させるような形で努めていただくという点については確認されたと思いますが、今回は深夜労働に関してお聞きをいたしたいと思います。  一九八五年の十二月十九日の労働基準法研究会第二部会報告というのがございます。この中で「深夜交替制労働に関する問題点と対策の方向について」報告がなされているわけです。その後、この第二部会の報告についてはどのような検討が行われてきているのかということについてお尋ねします。
  143. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 御指摘のように、一九八五年の労働基準法研究会の報告の中では、深夜交代制労働の問題につきまして、当面、労使が考慮すべき事項を指針として示すこと等が指摘されたところでございます。  私ども、こういった点について関係者と論議を始めたところでございますが、ただ、経済関係のグローバル化が進む中で、今まで主としてそういった分野で議論の対象になっておりました製造業に加えまして、小売業、あるいは特に金融・保険関係、そういった部分でも深夜業が不可欠になるような状況の変化がございまして、この基準法研究会の報告が出た時点とかなり深夜業をめぐる基盤に変化が出てきたという状況がございます。  そういった状況の中で、当面はまず全体としての労働時間の短縮を進めるということに重点が置かれまして、例えば週四十時間労働制の実施を六十二年の労働基準法改正で取り上げ、それの全面的な実施に向けて関係者は精力的に取り組んでいただいたというような状況がございまして、この深夜業のその後の指針の策定等につきましては、当面全体としての労働時間短縮ということを前面に出して、現在具体的な成果を得るには至っていない状況でございます。
  144. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 この報告書によりますと、当時、深夜交代制労働に従事する労働者数が一〇・四%、企業の割合が一四・六%となっているわけですけれども、これは現在ではどの範囲に拡大してきているかということについては何か御調査がありますでしょうか。
  145. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 大変申しわけございませんが、そういった詳細な統計データは現在整備されていない状況でございます。  ただ、私ども、関係者から労働条件に関するいろんな動向等を聞いたり調べる中で、やはり当時の製造業を中心とした深夜交代制が多かったケースから、現在は小売関係、それから経済のグローバル化に伴いまして、金融・保険、そういった分野での深夜勤務に従事する方がふえているというふうに承知いたしております。
  146. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 この報告書におきましても、業種、業態は非常に多様化していて、画一的な把握は大変難しいというようなことが出ているわけであります。  しかし、深夜労働一般に関しましては我々の体が持っている生態リズムが乱れるということで、深夜労働に関しては回復可能な勤務表を作成することとか、深夜勤務の回数をできるだけ最小限にすることとか、時間外労働は抑制すること、夜間の睡眠、仮眠が有効であること、あるいはその連続の日数を検討することなどさまざまな提言がなされているわけです。労働省は、今回、こうした根本的な深夜労働に対する認識としてはこれを基礎として維持しておられるのでしょうか。
  147. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) まず、これからの深夜業の勤務をめぐる私どものとらえ方、認識でございますが、当面、現在、中央労働基準審議会で今後の労働基準法制のあり方について御議論願っている中で時間外労働、休日のあり方も大きなテーマでございますが、労使の間ではそれに関連する範囲で深夜業の問題も議論していくという合意がなされておるところでございます。  それから、もっと基本的に深夜業全体の問題としてとらえる際には、一つは、やはり現在の生産技術あるいは国民生活の利便、そういったことから深夜業というものが欠かせない面があるわけでございまして、こういったものを全体、労働基準といった法制レベルでとらえる際には、例えばこれから国際的な競争がどう進展するのか、また製造業を中心とした国際的な分業体制がどういうふうに進むのか、あるいは生産技術上に影響を及ぼすいろいろな技術革新がどう進んでいくのか、あるいは国民の生活慣行がどう変わっていくのか、いろんなこと等全体の中でこの深夜業というものをとらえてどうあるべきかということを議論をしなくていけないわけでございます。  これにつきましては、私どももそういった認識を全く持っていないというわけではなくて、そういったものを注意深く状況を見ながら考えていかなくてはいけないと思っておりますが、当面、個々の企業の中でやはりそういった状況全体を勘案して、適切なシフト編成初め、また四十時間制等が完全に定着する中で、深夜勤務をする方につきましても休日がふえる、あるいは労働残業というようなものが減少していく、そういったことについて私どもも労使ともども努力をしていきたいというふうに考えておるところでございます。  もう一方、深夜業につきましては健康問題との関連がございます。現段階で深夜業と健康への関係につきまして必ずしも明確な医学的知見があるわけではございませんが、やはり健康面に万全を期していくことは大変大事でございまして、例えば、深夜業に従事する方については深夜勤務に配置される際、それから六カ月以内に二度の健康診断を義務づけたり、あるいは、健康診断の結果何らかの問題が発見されれば、事業主は医師の意見を聞いて時間の短縮あるいは職場の配置がえ等の措置を講ずるように労働安全衛生法上義務づけを行ったりいたしまして、そういった方々の健康の管理にアプローチしていこうというようなことで、私ども深夜勤務の問題は常に念頭に置きつつそういった施策もあわせて進めてまいっているところでございます。
  148. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうしますと、まず、当面、労働基準法における深夜業に係る女子の保護規定が廃止されるわけですから、この点に関しては中央労働基準審議会で時間外・休日労働のあり方などと関連して御審議いただくということは間違いないわけですね。
  149. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 深夜業の問題につきましては、例えば残業というものをどう考えていくか、それの全体的な削減策を講ずる中で深夜に及ぶ残業等も抑制されていく、そういう姿は当然労使間で頭に置いて、この時間外労働、休日労働のあり方を論ずる際には議論がされていくものと考えております。
  150. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 とりわけ、この第二部会の報告書によりますと、深夜労働については時間外労働は抑制されるべきことという形の提言が入っておりますので、ぜひこの点はしっかりと検討をしていただくようにお願いをしたいというふうに思います。  さらに、先ほど言われましたように、深夜業に関する健康問題に関しては労働安全衛生法の問題として対処をしていくということであるかと思うんですが、この労働安全衛生法と深夜業の問題で特にこれからその運用について留意される点をもう一度述べていただけますか。
  151. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) この深夜業につきましては先ほど申し上げましたように、労働安全衛生法上、事業主が深夜勤務に配置する際、それからその後六カ月以内二度の健康診断の義務を課しておるところでございます。そういった形で健康への影響というものを常にチェックし、健康管理に万全を期していく体制をつくっておるところでございます。  さらに、昨年の十月から新たな労働安全衛生法の改正を施行をいたしまして、健康診断の結果、問題等が発見された場合には、事業主は医師等の意見を聞くべきこと、また、それに基づいて時間の短縮その他必要な措置をとるべきこと等を定めたわけでございまして、こういった規定を今後さらに徹底をさせていく。そういうことを通じて、この深夜勤務につかれる方の健康の問題等にも十分留意される企業内の健康管理体制というものをつくってまいりたいと思っておるところでございます。
  152. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そのように当面中央労働基準審議会で議論をするということと、労働安全衛生法を活用して個別具体的な健康の維持に努めるということの上に立って、さらにただいま議論をいただきました経済のいわゆるグローバリゼーションの中で、産業構造が変化する中で深夜労働のあり方について大きな枠組みで議論をする必要があるというふうに思うわけです。  一九八五年の調査では製造業中心であったわけですが、新たな産業の構造の変化をもとにして、深夜業が労働者の健康と家庭及び社会生活に及ぼす影響について今後調査研究を進めていかれる御計画はおありでしょうか。
  153. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 深夜業をめぐりましては、先生指摘のように、この八五年の労働基準法研究会の報告が出た時点よりも、経済関係、国際的にもまたその内容の点でもさらに複雑化しておるわけでございまして、そういう上に立った深夜業と健康の問題、これについては私ども十分留意してまいりたいと思っております。  現在でもその深夜業と健康の問題についてさまざまな研究等も行い、またいろんな分野の研究成果も集めておるところでございますが、今後とも例えば産業医学総合研究所等の基礎的な研究等も活用いたしまして、そういった深夜業の問題と健康の問題についての調査研究、あるいは実態把握は十分努めてまいりたいと思っております。
  154. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そして、そうした調査研究の上に立ってできる得る限り早く深夜業のあり方について根本的な法的な問題を検討しつつ、深夜労働の制約に向けて私は社会全体が進んでいかないといけないのではないかと思います。確かに、生産技術上の問題とか国民生活の利便の問題がありますが、それがどのような産業、どのような職種において必要不可欠なのかどうかということについて早急に検討を始めていただきたい、始めなければいけないと思うわけであります。  とりわけ、一九八五年にガイドラインをつくれ、法規制までは必要がないけれどもガイドラインをつくれというような提言が、ガイドラインすらないという日本現状については、特に、労働行政としてきちっと労働者の生活を守るという視点から、その施策について決意を新たにしていただきたいというふうに思うわけであります。  次は、家族的責任を有する男女労働者の深夜業と時間外労働に対する配慮措置についてお尋ねをいたしたいと思います。  私は、女性に対する労働基準法の保護規定というのは、いわゆる家族的責任を有する母性保護、すなわち妊娠、出産の問題と家族的責任を有する男女労働者の深夜労働、時間外労働の問題、さらに健康の問題、この三つの分野に移り変わっていく、今その転換点にあるというふうに思うわけであります。  家族的責任を有する男女労働者のそうした深夜労働、時間外労働に対する配慮措置について、育児・介護休業法で、就学前の子を養育する男女労働者に関して深夜労働を拒否する権利というのが規定されましたけれども、一般的にILO百五十六号条約の基準からすれば、配慮義務ないしは配慮措置というものは、家族的責任を有する男女労働者に対しては当然のことに原則的に確立しなければならないというふうに思っておりますが、その点いかがな御見解でしょうか。
  155. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 現行の育児・介護休業法におきまして、働きながら子供を養育することを容易にするための措置といたしまして、所定外労働をさせない制度というのが事業主の義務または努力義務の一つとして規定されておるわけでございます。その重要性につきましては、今後さらに事業主に対して周知をしていきたいと思うわけでございますし、また、家族的責任を有する男女労働者につきまして、時間外を命ずるに当たりましてはやはりその事情を配慮するということが望ましいと考えておるところでございます。  そういう家族的責任を有する男女労働者につきましては、深夜業に従事させるに当たりましても、同様にその事情というのを配慮することが望ましいというふうに考えているところでございます。
  156. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうした考え方をぜひ通達あるいは指針、そうしたものに明快に書いていただきまして、行政指導を徹底していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  157. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 先生指摘のように、そういう深夜業等々に対する配慮の旨を通達等にも盛り込み、啓発、指導には努めてまいりたいと思っております。
  158. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それから、最後に母性保護についてお尋ねいたします。  現行の均等法の二十六、二十七条の事業主の配慮義務、配慮措置について、いわゆる通院等について努力義務が改正法では義務化されたわけであります。それで、労働基準法における多胎妊娠の期間が延びたという点は非常に大きな進歩であるというふうに評価するわけですが、ただ、本来こうした均等法二十六条、二十七条に規定してあるような通院休暇等は、産前産後休暇の母性保護、妊娠・出産保護と同質のものでありますから、本来労働基準法に入れるべきではないだろうかというふうに考えるわけでありますが、とりわけ均等法に置かれた理由は何かあるのでしょうか。
  159. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 現在の均等法の二十六条に、先生指摘のように、母性健康管理に関する努力義務が定められておるわけでございまして、現在そういう実施割合、例えば通院休暇を設けている企業を調べますと二二・七%という低い水準にあるわけでございます。  こういう状況を前提といたしますと、これらの措置を罰則を伴う基準法に挿入するということは、かえって混乱を招くことになるということで、妥当ではないのではないか。したがって、まずは規定の義務化を図りまして、これらの措置の徹底をいたしたい。そして、あわせて企業内における母性健康管理体制の強化を図るような実効性を裏づける措置を講ずるということがまず求められていることであろうというふうに考えた次第でございます。
  160. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 法体系の位置づけとして、やはり将来的には労働基準法の中に位置づけられるべきものと考えますが、これはいかがでしょうか。
  161. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 通院休暇の措置とか医師の指導等に基づく措置等は、これは個別の判断を行う面があるわけでございます。特に、通院休暇についての配慮は、事業主の都合とか、例えば休日、土曜日に通院することが可能かどうかとか、それから、通院をする医院、病院の特定の問題など、やはり調整を要する問題が多く含まれているわけでございまして、仮に将来的に状況が変わった場合でも、労働基準法上の罰則による一律の規制になじむかどうかという点につきましては、これは慎重な検討が必要であると考えております。
  162. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それでは、当面その均等法の二十六、二十七条の実効性が上がるように行政指導を強化していただきたいと思います。  さらに、妊娠・出産機能を持つ女性に対して、化学物質の有害性についての学識経験者の調査の結果などを踏まえまして、危険有害業務等について見直す用意はあるかどうか、お尋ねをいたします。
  163. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 妊産婦の就業が制限されております危険有害業務につきましては、昨年十月の母性保護に係る専門家会議報告におきまして、具体的にどの物質が妊娠・出産機能に有害であるかについては、今後とも新たな医学的知見を踏まえ検討していく必要があるというふうにされたところでございます。学識経験者の調査結果等、新たな医学的知見の把握には努めてまいりたいというふうに考えております。
  164. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 今後その作業はどのような段階を踏んで御検討なさいますか。
  165. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 中央労働基準審議会に報告されています化学物質の有害性の調査というのがたくさんあるわけでございまして、どれが例えばがん等の重大な健康障害を発生させ得るものであるか、またはその程度などを決めるための資料として実施しているものでございますが、がんなどは妊産婦のみに特有な疾病ではないことから、当該調査によっては、特に健康上有害であるか否かは判明し得ないというふうに考えておるところでございまして、また新たな何か出てくればきちっと把握をして措置していきたいというふうに思っております。
  166. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それでは最後に一点。  深夜業のILO百七十一号条約がございますが、私はこれの批准をすることによって新たな国際的な状況の中で我が国における深夜業の規制を考えるべきだと思いますが、このILO百七十一号条約の批准について御検討をなさったことがあるのでしょうか。あるいは、どの点が障害になって批准ができないのでしょうか。
  167. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) ILO百七十一号条約、すなわち夜業に関する条約は、これは夜業に従事する男女労働者の健康を確保し、その家族的責任を果たすための措置等を内容とするものでございますが、この条約につきましては幾つ問題点がございまして、本条約の第一条(b)というところに定義されております夜業労働者と基準法などの関係法令上保護されている労働者の間で差異があるということとか、それから条約の九条において要請されております、夜業労働者には適当な社会的な便益が与えられるとなっておりますが、具体的にどのような範囲なのか。また、我が国の現行法令で定めるもののほかどのような措置が必要とされるかなどの点につきまして、国内法制との整合性についてやはり検討を要する点が幾つかあるものと考えているところでございます。
  168. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 健康上の問題につきましては労働安全衛生法が整備されましたし、あるいは母性保護につきましては、妊娠、出産に関しては我が国も規定を整備しているわけであります。夜業時間の範囲につきましても、確かに違っておりますけれども、それはこれから深夜業を検討するについてぜひその国際的な基準に合わせる形で法整備がなされるべきだと思いますし、九条の社会的な便益につきましても、当然これからの深夜労働に対して必要な国内法の整備だと考えますので、あわせてILO百七十一号条約の批准ということをぜひ緊急に検討に乗せていくべきだというふうに考えるものであります。  もう時間が参りました。最後に大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  少子高齢化社会において、男女労働者がともに職業生活と家族的な責任を両立してゆとりある生活を享受していくということが二十一世紀において少子高齢化を克服する最もかなめな施策であるというふうに考えるものであります。家族的責任を持つ男女労働者のあるべき姿というものを大臣雇用分野においてどのようにお考えか、そしてそのような積極的な施策をとっていかれる決意か、お尋ねをいたします。
  169. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 少子高齢化社会にさお差してまいる場合に、一番中心は、先生がおっしゃった職場生活家庭生活の両立ということが基本条件だろう、こう思っております。  したがいまして、労働行政の中では、本改正法案及び先般いただきましたところの時短促進、それから育児・介護制度の活用等々、他省庁とも相提携をいたしまして先生のおっしゃるような社会の実現に今後も一層努力をしてまいりたい、かように思っております。
  170. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 終わります。
  171. 川橋幸子

    川橋幸子君 民主党・新緑風会の川橋幸子と申します。  参議院の労働委員会では、今回この法案の審議につきましては五月二十九日に続きまして二回目でございます。先週は参議院らしい審議といいますか、現地視察をしまして、外資系の企業でございましたけれども、ポジティブアクションやそれからセクシュアルハラスメントの企業の実態を見ましたり、あるいは製造現場の中で伝統的には男性職場と言われているような技能職に女性がついている、そういうところの実情を見ましたり、あるいは深夜業が現在許可されておりますお弁当屋さん、お握りとかおすしとか、そういう深夜業の実態などを見まして、大変いい審議ないしは調査が行われている、少々手前みそかもわかりませんけれども、そのように思います。  けれども、やはり現地視察をし、参考人の方々から意見を伺い、結果としまして強く感じますのは、均等法改正に伴いまして労働基準法の一部が改正されますと、女子の保護規定が廃止されることによりまして労働時間が女性にとって負担とならないかというところが相変わらず懸念されるというのが今の私の気持ちでございます。ということで、またやはり質問の最初は労働時間について伺わせていただきます。  まず、きょうが委員会審議の最終日になるわけでございますけれども大臣労働時間についてどんな認識をお持ちでいらっしゃいましょうか。今までの審議を集約いたしますと、労働時間といいますのは、国民の健康にかかわる問題、それから少子高齢化が進む中で職業と家庭との両立が求められている今日的な問題、それから国際公約ともなっております千八百時間に時間短縮する公約、それとも密接にかかわる問題でございます。私は、やはり大臣みずからがリーダーシップを発揮されまして、みずから決断していただいて結論を出していただきたい問題だったと思うわけでございますが、大臣の所信をお伺いしたいと思います。
  172. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 川橋先生には大変失礼な返答でありますが、私、声が大きいものですから、先生のお声が余りよく聞こえませんので、間違っておりましたらお許しを賜りたい、かように存じます。  先生、勤務時間の問題が、労働時間の問題が一番の大きなテーマだと、こういう観点からお話をなさった、こう存じております。やはり保健の面からもそれから先生おっしゃいます家庭生活職場生活の両立の面からも、時短というものは私どもがこれから以前にも増して努力をしていかなければならない基本問題の一つである、かように思っております。  したがいまして、千八百時間というものを目標に、手段的には週四十時間労働、超過勤務の可及的な縮減、それから年次有給休暇の消化、こういうような三点を中心にして本問題に取り組んでまいろう、かように思っております。  間違っておりましたらお許しください。
  173. 川橋幸子

    川橋幸子君 声も小さかったようでございますが、的確な御答弁をありがとうございました。  さて、それではそうした大臣の御見解のもとでございますけれども、今回は、男女共通の時間外の上限制限を設けてほしい、こういう要望が非常に強かったわけでございます。  この点に関しましては衆議院でもあるいは本委員会でも、まず第一点目としましては、目安制度といいますか、時間外労働の適正化指針の実効性を高めるための方策について審議会に検討お願いする、それから二点目といたしましては、新たに深夜業なりあるいは時間外労働なりが増加する女性たちにとっての激変緩和措置、これも審議会の方にお願いするというような、そういう御答弁であったわけでございます。総じてやはり結論は審議会待ちというような御答弁の印象が強かったと私は思います。  労働条件を決めるということから、労働行政の場合は労使の協議にゆだねるという、こういう行政の進め方というものはあるわけでございますけれども、しかし一方では、男女共通の労働時間の上限規制を設けるというこの点、一点に関しては割合労働省の見解ははっきりしておられまして、現段階では否定的な見解が強かったようにうかがえます。労使の協議待ちと言いながら、ある一点で労働省の意向が強く示されるというのが私は少し脇に落ちないのでございますけれども、いかがでございましょうか。
  174. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) この時間外・休日労働のあり方については、かねてから中央労働基準審議会の方で検討が進められてきているテーマでございまして、今回御議論の中で出てまいりました時間外労働協定に関する適正化指針、いわゆる目安につきましても、ぜひそういった中で保護規定の解消後の姿もにらんで御議論願いたいということで、審議会の方にお願いしていこうというふうに私ども決断させていただいたわけでございます。  もちろん、この時間外・休日労働のあり方を論ずる際に、また千八百時間というものに向かう中でも、一つの柱である長時間残業の削減ということは私どもかねてより積極的に進めてきているテーマでございますので、それを進めていく上でどんな手段があるのかというのはいろんな角度から議論がされるかと思っております。  そういった中で、先生指摘のいわゆる男女共通の上限規制という御意見も承ったわけでございますが、この規制の内容は具体的にいろんな段階が考えられるのではなかろうかと。参考人の方々の御意見の中でも、拒否権から三六協定目安に関する根拠を与えること、あるいは割り増し率との関係、いろんな広範なテーマがこの上限規制という中でお話しされているようでございます。  私ども、この規制というものを仮に非常に強い意味の規制というふうに受け取らせていただくとすれば、やはり我が国で超過勤務というものが果たしている一つ雇用調整機能、そこから出てくる雇用の安定という効果、こういづたものを損なう形になってはまずい、したがって慎重に検討を要するのではないかということを申し上げさせていただいているところでございます。
  175. 川橋幸子

    川橋幸子君 今の局長答弁、それから一番最初、参議院本会議での総理の答弁でも、景気変動に対する雇用調整機能というものを時間外労働が持っているからというようなことが強調されたと私も思います。そのほかに、国民生活の利便の問題ですとか生産技術上の問題ですとか、そのような要素が挙げられまして、慎重に審議する必要がある、考える必要があるということのようでございました。  しかし、雇用調整の問題あるいは国民生活の利便の問題、生産技術上の問題、いずれをとりましても諸外国も我が国条件は一緒でございます。グローバリゼーションの中で同じ条件のもとで経済活動が行われる、そういう傾向が強くなっているわけでございます。  我が国の場合は、終身雇用慣行という独特な雇用システムがあるので、残業時間で雇用調整をすることによって景気変動に対応する必要性が言われているわけでございますけれども、今後は裁量労働制ですとか変形労働制あるいは期間契約制の緩和というものが審議会の中で審議されていくという、そんな予定であるわけでございます。  また、雇用慣行が硬直的だと申しましても、パートタイムあるいは派遣が現にふえてきておりまして、終身雇用慣行の日本雇用市場の中でのシェアといいましょうか、量的なシェアは随分小さくなってきているのではないか、こういう学者の指摘もあるわけでございます。  一方、諸外国の方は、先任権制度によりましてそう簡単に解雇ということでもなさそうだと、こういう資料もあるわけでございます。日本が景気変動へ対応するために時間外労働による雇用調整が必要なんだという説得力ある何かデータというものをお示しいただけるものでしょうか。
  176. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 今、時間外労働が景気変動等に対応する雇用調整の機能について具体的なデータという御指摘でございました。  過去、景気の変動に対応して雇用調整が具体的にどのような形で行われていたかというようなことを調べてまいりますと、例えば景気の谷と言われていました平成五年の十月から十二月の時期でございますが、こういった時期におきまして雇用調整を行った事業所は全体の約五割に及んでいるわけでございます。そのうち残業の規制によって調整をしたというのが三八%、一方、一時休業とか解雇等の雇用面にかかわる調整を行ったというものが、一時休業で七%、解雇等が二%でございまして、こういった面からも我が国における雇用調整のやり方としてやはりまず残業で調整をしていく、こういったことが行われていることは先生も既に御承知のとおりかと思います。  また、こういった点が諸外国と比べてどうなのかということを調べてまいりますと、過去二十年間、アメリカにつきまして、例えば生産量が変動する、それに対応して雇用者数あるいは労働時間がどう変わっていくかというようないわば標準偏差で示したデータを見ますと、過去二十年間、アメリカの生産量の変動の幅五・四四というふうに出されておりますが、そこでは雇用者数の変動が三・八、労働時間の変動が一・五でございまして、雇用者数の変動が労働時間の変動に比べて約二・五倍大きい。これはドイツでも同じ事情にございます。  日本の場合は、同じ二十年間で生産量の変動幅が六・一五、その生産量の変動に対応するための雇用者数の変動が一・八九、労働時間の変動が二・六ということで、アメリカ、ドイツの場合とそのウエートが全く逆転いたしておりまして、労働時間の変動が雇用者数の変動を上回っている、こういったデータも出てきておるわけでございます。やはり我が国の長期雇用というものを大事にしつつ、基本的にはそういった雇用慣行を根底から覆すことなく雇用の安定につなげていこう、こういう配慮、そういった中で景気の変動に対応する際には先任権等を前提としたレイオフに行く前に、まずこういった時間の調整で対応していこうという意識が行動にもよくあらわれているのではないかというふうに考えております。
  177. 川橋幸子

    川橋幸子君 次に、家族的責任を有する男女労働者につきましては、時間外・休日労働、深夜業の面でその事情を配慮するよう事業主に指導する、このような御答弁が何回かございました。その具体的な内容をお聞かせいただきたいということ。  それから、現行の育児休業法でございますが、事業主の努力義務に掲げられている項目の中で、時間短縮の措置というところで書かれているわけでございますけれども、短時間勤務の制度、フレックスタイム制、始終業時刻の繰り上げ繰り下げ、そして所定外労働をさせない制度というようなことが書かれている一方で、介護休業制度のところについては、これに並んだ事項が規定されているわけでございますが、所定外労働をさせない制度というところがないわけでございます。  介護につきましてもさまざま社会的な条件整備がそろってまいりますと、その期間休むことなく短時間勤務であるいは通常の勤務帯で、時間外労働がなければ両立し得るということが体験としてもわかるわけでございますけれども、このあたりの女性少年室の指導は今後どのように改善していくおつもりか、その内容と指導のあり方についてお尋ねしたいと思います。
  178. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 家族的責任を有する男女労働者につきましては、時間外労働を命ずるに当たりまして、また深夜業に従事させるに当たりましては、その事情を配慮することが望ましいというふうに考えておりまして、この旨は通達等に盛り込んで啓発、指導に努めてまいりたいと思うわけでございます。  婦人少年室における指導のやり方ということでございますが、まず、私どもの方でわかりやすいパンフレット等をつくりまして、そういう活用などで工夫をしていきたいというふうに思っております。  また、働きながら家族の介護を行うことを容易にするための措置として、育児・介護休業法におきましていろいろな措置が事業主の義務または努力義務とされているわけでございますが、これらの措置が講じられている場合でも、安易に時間外労働を命ずることがあっては法律の趣旨が没却されることがあり得るものでございますので、事業主に対しましてもこの旨の周知徹底には努めてまいりたいと思っております。
  179. 川橋幸子

    川橋幸子君 次は、時間外労働の業務命令を断れるのか断れないのか、この議論もかなりございました。本日もございました。時間外労働を命ずる方の必要性の理由がちゃんと立つか、あるいは断る方の側にも正当な理由があるか、その相対的なものだというようなお話がありまして、今回は、そうした事例をいろいろ収集して周知するという答弁があるわけでございます。  女子保護規定の廃止に伴います女性たちの不安が大変大きいことを考えますと、こういう不安を解消するためにも、できるだけ早い事前の周知が必要ではないかと思います。行政の側として、行政の側から説明するということは義務ではないかと思います。  また、事例というとやはり懇意的なものという、そういう不安が残るわけでございまして、いずれ将来は一定の基準ないし指針として考え方を固めていくということをお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  180. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) できるだけ早く周知徹底をという御指摘に対しましては、できるだけ早く本当に周知、啓発につきましては行っていきたいと考えております。  それから、個々の正当な理由の一律の基準を策定するということでございますが、これは先ほど来も申し上げておりますが、やはり時間外労働等を命令する使用者側の必要性とその命令を拒否する労働者側の相当性との比較もしつつ、個々具体的に検討されるべきものであるというふうに思います。労働者が当該命令を拒否することができる正当な理由につきまして、一律の基準を策定するということはやはり極めて困難であり、適当ではないというふうに考えるわけでございます。
  181. 川橋幸子

    川橋幸子君 労働時間につきましては、何回も繰り返しになりますが、適正化指針の実効性を高める、それから激変緩和措置をつくる。それから、ただいまのような個人の側が時間外労働を断ることができる正当な理由というようなものもPRとしては明らかにするというようなお話になりますと、何といいましょうか、現在の労働時間に対する労働行政というのは行政指導が中心になるような印象が私には否めないのでございます。  これはもう本当に皆さんプロでいらっしゃいますから言わずもがなでございますけれども労働時間といいますのは賃金と異なりまして、賃金は労使の自主交渉によってその水準を決めるということでございますが、労働時間というのは、一日をようかんに例えますと、ようかんをどういう時間で区切っていくかというような、一つの市場のルールを定めるというものではないかと思います。ルールを設定すると。それから個の尊厳を保つ、弱者にはセーフティーネットを備えるというのがこの間の行革会議のヒアリングで労働省が大変強調されたことだというふうに聞いております。ルールの設定というのが労働行政の使命ではないかという感じがするわけでございます。  また、行政指導という言葉は、行政指導という言葉そのものが外人にも通じるようになっておりまして、日本的なあいまいさとか、デメリットとしては官主導になり過ぎるというような、そういう批判も出ている今日でございます。  労働省の場合の行政指導といいますのは、なかなか利益が伴わないものですから、そういう意味のいわゆる行政指導とちょっと違いますけれども、ただ労働省の場合は、社会的な規範性を持って何か基準を示すという、そういう行政である部分にまでも行政指導をすると、お願いをするというような形になりやすいのではないかと思います。  そこで、労働時間の関係では最後に、大臣に一言見解を伺いたいと思います。  このようにルールに欠けるといいましょうか、行政指導でやっていくといった場合に、一番の問題は、中小零細企業の労働者に対する労働時間面での保護に欠ける嫌いがあるのではないか。労使協定、三六協定のカバー率の話もございましたし、それから労使協定そのものの実効性というようなものにも絶えずいろんな批判が出てくるわけでございますけれども、やはりルールをきちっと決めることによって個々の労働者にそこをちゃんとわかってもらって、労働者側の自立も促せるということを考えますと、中小企業の労働者のことを特に考えますと、そのあたり、労働時間に対する行政指導について大臣の見解をお伺いさせていただきたいと思います。
  182. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 先生申しわけありません。川橋先生労働行政に長く携わってこられた方、私は労働行政を長く受けてきた者でありますので、あるいはすれ違っているのかも存じません。  私は、賃金も最賃制度というものがあって、その下支えの上に立って労使で話し合いをして賃金を決めるということだと思いますし、労働時間につきましても、週四十時間労働制というようなことでルビコンを渡りました。したがって、そういうセーフティーネットの上で労使が話し合いをして、三十六条協定ならば三十六条協定ということで、やっぱり労使で決める点については賃金も労働時間も基本的な労働条件ということで、どうも私はありざまは似ているんじゃないか、こう思っております。  しかしながら、その三十六条協定あたりを、私が第一線の現場へ行かせていただきまして眺めてみますと、一年間の期限を定めて三十六条協定を定めているようでありますが、私のささやかな経験からいたしますと、やはり一般的に二月、八月というような、どちらかというと閑散期というものと、三月、六月の決算あるいは十二月の忙しさというようなものは非常に違うと思います。あるいはまた、同じ事業所なら事業所の中でも経理をやるところ、営業をやるところ、一般的な製造工場の過程にあるところ、それぞれ私はその忙しさが違うと思うんです。したがって、三月や十二月を考えて一年間の総労働超過勤務時間を決めると、これがうんと長い超過勤務、三六協定の中身になる、こう思うのです。  そういう意味合いでは、やっぱり忙しい月と忙しくない月、あるいは忙しい係と比較的忙しくはない係というようなものを、やっぱり別に三十六条協定なら三十六条協定を結んだ方がいいのではないかなという私ながらの感じ方を得てまいりました。  いずれともあれ、先生がおっしゃいますような零細企業において、やっぱり労働時間というようなものを労働者の側に立って保護していく必要性というものは、現下の状況の中で極めて必要なことだと思っておりますので、目安、あるいは今私がお話をしましたようなことが、事務当局の宿題にはさせておきましたけれども、どういう結論が出ますかまだわかりませんが、あれやこれやの手段を使いまして、明るい楽しめるような、そういう職場づくりに努力をしてまいりたい、かように思っている次第であります。
  183. 川橋幸子

    川橋幸子君 前回の委員会のときには、EU指令の適用を受ける諸外国の例等、労働時間法制についても十分情報提供はしていただけるということでございますし、参考人の意見聴取等々のこの国会での議論も御紹介いただけるというふうに伺っておりますので、そういう意見もあるということをぜひお忘れなく、審議の材料にしていただきたいと思います。  それでは、均等法の部分に入らせていただきます。多少ダブりがあるかもわかりませんけれども、ダブりはダブりでまた要望が強かった部分というふうに御理解いただきまして、私なりの質問をさせていただきたいと思います。  均等法は、今度は福祉法からより差別禁止法の性格を強めたというふうに言われておりまして、第二条の基本的理念の中では、女性労働者の自助努力のようなものがカットされ、性別により差別されないといったこととか、母性を尊重するという理念が強まったと思っております。  婚姻、妊娠、出産を理由とする差別というものは、はっきりと法律上差別として禁止するようなことがとれないものでしょうか。また、その担保を具体的に措置すべきではないか、お伺いします。
  184. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 現行の均等法におきましても、女性の婚姻、妊娠、出産を理由といたします退職制度や解雇は禁止をしているところでございます。  また、婚姻を理由として女性労働者についてのみ不利益な配置転換を行うこととか、昇進をさせないということは女性に対する差別に該当するものでありまして、均等法に違反をするわけでございます。このような女性に対する差別として禁止される内容につきましては周知徹底を図るとともに、その違反に対しましては厳正に対処してまいりたいと思っております。  なお、妊娠、出産を理由といたしまして、配置とか昇進について著しく不利な取り扱いをすることは、これはあってはならないことでありますので、その旨の周知も一生懸命やっていきたいというふうに思っております。
  185. 川橋幸子

    川橋幸子君 このあたりは先ほど大脇委員からも詳しい質問がありましたので次に移りたいとは思いますけれども、一点要望させていただきたいと思いますのは、妊娠、出産を理由として配置、昇進などについて著しい不利益な取り扱い、ここのあたりをより具体的に担保することを考えていただけないか。妊娠、出産で直接ノーワークになった部分、労働の提供がなかった部分の不利益はさておいても、それ以上の不利益をこうむることが多いのがまだ職場現状ではないかと思います。その辺の御研究をお願いしたいと思います。  さて、次は、セクシュアルハラスメントについて何点かお伺いさせていただきます。  面接セクハラが助言、指導、勧告の対象になりまして、公表もあり得ると、これは女性にとっては朗報でございます。人生の入り口で、社会人としての入り口でそうした個の尊厳を傷つけられるようなことがなくなるということはありがたいことでございますが、採用以降のステージではセクシュアルハラスメントというのは事業主の雇用管理上の配慮義務ということにとどまっているわけでございます。どうも、やはり法律上の均衡を逸しているのではないか。特に、対価型のセクシュアルハラスメントについては、面接、入り口のところと職業人になってからの後の待遇考えますと、どうも整合性がとれていないような気がいたします。  例えば、入り口、面接の部分ではセクハラが禁止されるということであれば、出口のところでセクシュアルハラスメントによって退職に追い込まれるというような事例はもっと厳しく禁止されてしかるべきではないかというのが常識的な感じ方でございますが、このようなところはどのように考えればよろしいでしょうか。
  186. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 面接セクハラ、すなわち採用面接におきましてセクハラ質問をすること、それ自体は直ちにセクシュアルハラスメントを構成するものではないわけですけれども女性に対してのみ不利益な質問を行うという点をとらえまして均等法第五条違反となるというふうに考えているところでございます。  そして、先生質問のような、セクハラによって退職に追い込まれたりするケースにつきましては、いわゆる対価型のセクシュアルハラスメントといたしまして、第二十一条におきましてその防止のための事業主の配慮義務を定めているところでございます。  今後、この指針を定めて事業主の配慮すべき具体的内容を示すこととしておりますので、御質問のようなケースにつきましては、女性少年室で相談に応じますとともに、事業主が配慮義務を満たしていない場合には第二十五条に基づき助言、指導、勧告の対象となり得るものでございます。
  187. 川橋幸子

    川橋幸子君 助言、指導、勧告の対象となるということは、勧告に従わない場合は公表もあり得るということですね。  それでは、その辺は少しガイドラインを待つということかということで、期待させていただきたいと思います。
  188. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 済みません、先生。  公表の対象には入らないのであります。婦人少年室長の、現在の第三十三条、行政機関としての助言、指導、勧告の対象に入るということでございます。
  189. 川橋幸子

    川橋幸子君 先ほど大臣も武田委員質問への御答弁を大脇委員に何か言っておられまして、これはしめたと思いましたけれども、やっぱりだまされないときはだまされないということでございましょうか。ガイドラインの検討はしっかりやっていただきたいと思います。  さて、セクシュアルハラスメントといいますのは、口で言う、目で見る、あるいはさわるというような性的言動と言われますが、午前中の委員の皆様からもハラスメントのさまざまな例が紹介されておりました。  私は、日本の場合はセクシュアルハラスメント以前の問題として、家事時間が、共働き夫婦の妻の方は平日二時間三十何分、男性は七分というようなことがある。それからこれは一つの笑えないジョークでございましたけれども、本会議でちょっと使わせていただいたのは、閣僚のお一人の中から、うちの奥さんは炊事、洗濯、掃除もしてくれない、余りきれいではないかもわからないけれども、器量は悪いかもしれないけれども、これじゃ隣の奥さんに頼むしかないというような、こういう比喩が人を傷つけることがあるかないかという思慮がないままに用いられる日本現状というのを非常に恥ずかしいと思うわけでございます。  女性差別的な言動、これは現地視察をしましたモトローラでも、それはセクシュアルハラスメントに入りますと、はっきり言われていたわけでございます。差別的言動や固定的な性別役割分担意識に基づく言動、あんた、御主人が働いているんだからもうやめたらとか、働いている女性なら大体身に覚えがあることが多いのでございます。いわゆるジェンダーハラスメントということなのでしょうか、これも私は差別的な言動だと思います。女性に不利益をもたらし、あるいは就業環境を非常に悪化させるという意味ではセクシュアルハラスメントと同じように問題視すべきだと思いますが、こうしたハラスメントには今後どのように対処していかれるのでしょうか。
  190. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 女性に対する差別的発言とか固定的な役割分担意識を前提といたしました発言が、改正均等法案の第二十一条に規定いたします職場におけるセクシュアルハラスメントに直ちに該当すると考えることはできないと思います。  しかしながら、これらの言動の背後にあります固定的な性別役割分担意識は、職場におけるセクシュアルハラスメントが生ずる原因の一つでもありますので、指針を検討するための研究会におきましてこうした原因も含め幅広く御議論をいただこうと考えているところでございます。  また、ポジティブアクションの促進方策について検討してきました研究会が取りまとめましたガイドライン、ワークシートにおきましても、職場環境、風土の改善という項目がございまして、この中で男女の役割分担意識に基づく慣行の見直しとか、男女の役割分担意識解消のための意識啓発を実施することを挙げているところでございます。  労働省といたしましては、各企業がポジティブアクションに取り組んでいく中で、このようなことを踏まえて取り組みがなされるよう援助してまいりたいと考えております。
  191. 川橋幸子

    川橋幸子君 さて、セクハラの指針づくりでございますが、どのような事項が盛り込まれることが予想されるのでございましょうか。  雇用管理上の配慮として企業としての方針をつくるとか、トップなどに対する研修を行うということがございますけれども、特に海外に進出している日本の企業の中で配られているモデルというようなものを見ますと、苦情処理から、あるいは就業規則の中で懲戒処分といいましょうか、そういう規定が置かれていることが多い。大企業の場合は海外支店を持つことが非常に多いわけでございますけれども、海外の基準と国内の基準とダブルスタンダードというのも私は企業の倫理観としていかがなものかというふうに考えます。どのような事項が盛り込まれる予想になるのか、お知らせいただきたいと思います。
  192. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 職場におけるセクシュアルハラスメントに関しましては、事業主が配慮すべき事項に係る指針につきまして、今後、公労使から成る研究会において具体的な内容を御検討いただく予定にしているわけでございます。  指針の内容につきましては、先生指摘の点も含めまして、アンケート調査などによる実態を踏まえ、具体的にどのような行為が許されないのか、また防止のために事業主が配慮すべき具体的な内容をどうするか等は検討してまいりたいと思います。
  193. 川橋幸子

    川橋幸子君 セクシュアルハラスメントといいますのは性的嫌がらせというよりも、やはり性の尊厳を傷つけるような人権侵害というふうに認識されるのが今日でございます。  となりますと、職場のみならず社会全体の中でこうした人権が擁護される、人権侵害が起こらないように防止するというバックグラウンドが整備されることが必要なのではないかと思います。いつか、大臣からも職場の中だけでやるには限界があるというような、そういう御答弁を伺ったように私は記憶しておりますが、諸外国の法制等はどのようなものがあるのでしょうか、御紹介ください。
  194. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 職場におけるセクシュアルハラスメントに関する諸外国の法制は、労働関係法制として特別に規定している国が多いわけでございます。  例えば、ドイツでは職場におけるセクシュアルハラスメントから就業者を保護する法律というのがございます。フランスでは労働法に規定を置いております。アメリカでは公民権法第七編に基づきまして、判例や雇用機会均等委員会のガイドラインにおいて、職場におけるセクシュアルハラスメントは雇用における性差別に該当するとされているところでございます。  雇用の場以外におけるセクシュアルハラスメントに関する諸外国の法制につきましては、詳細は把握はしておらないわけでございますが、幾つかの国におきましては人権法とか性差別禁止法、刑法等にセクシュアルハラスメントに関する規定が置かれている例があると聞いております。
  195. 川橋幸子

    川橋幸子君 実は、お隣韓国で、これは女性発展法というのですか、女性基本法のような宣言的な法律だと言われているようでございますが、その中にセクシュアルハラスメントについての禁止規定が置かれている、こういう情報を私は労働省からいただいたところでございます。アジア諸国の中でも日本が一番のお姉さん、お兄さん格で、アジア諸国に対してリーディングな役割を果たすという割にはどうも追い越されているような感じがするわけでございます。  さてそこで、法務省、お見えでしょうか、お尋ねしたいと思います。  昨年秋、人権擁護施策推進法というものができたわけでございます。この法律の中には、女性に対する不当な差別やあるいはセクシュアルハラスメントについても教育ないし救済の措置検討するということになっているように伺っておりますが、どのようにこれから進めていくのでしょうか、お伺いします。
  196. 坂井靖

    説明員(坂井靖君) お答えいたします。  この人権擁護推進審議会に対する諮問事項は二つございます。一つは、人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項、もう一つが、人権が侵害された場合における被害者の救済に関する施策の充実に関する基本的事項でございます。  この審議会におきましては、ただいま委員指摘のありましたようなセクシュアルハラスメントを含めた女性に対する差別の問題につきましても、このような諮問事項との関連で審議がなされるものと理解しております。
  197. 川橋幸子

    川橋幸子君 それでは、その審議会の審議の推進を期待させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。  さて次は、ポジティブアクションについてお伺いさせていただきたいと思います。  ポジティブアクション、これも努力義務、企業の側にとっては義務的なものではなくて、国の側の方が逆に援助していく、ポジティブアクションの推進を援助することができる規定になっているわけでございますが、そういうことになりますと、これはどの程度実効性を持つのかというのはひとえに行政の側の推進施策にかかるわけでございます。  このポジティブアクションの実効性を確保するために、ある程度の規模がある企業、社会的な影響力のある企業を中心に計画的に推進していく必要があるのではないかと思いますが、どのような方針をお持ちでしょうか。
  198. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) ポジティブアクションにつきましては、まずは多くの事業主が御自分の企業の実態とか考え方に応じて自主的に取り組んでいただくことが非常に重要であるというふうに考えるわけでございます。  労働省といたしましては、各地域におきまして経営者団体とか各種の業界団体と連携を図りまして、このポジティブアクションの重要性とか手法につきまして事業主の理解を深めるよう周知をしていきたいと思うわけでございます。例えば、やり方といたしましては、トップセミナーだとか地域における業種別使用者会議を開催することなどによりまして、企業のポジティブアクションの取り組みを援助していきたいと考えておるわけでございます。  そして、規模についてもという御質問でございましたが、雇用状況の分析等を行うためには、先生指摘のようにある程度の規模が必要であるというふうに考えるわけでございますけれども、しかし、中小企業がやらなくてもいいというわけでもございませんので、やはり中小企業におきましても、中小企業団体等とも連携を図りまして、均等法の周知を図る中でこのポジティブアクションについても理解を求めていきたいというふうに考えております。
  199. 川橋幸子

    川橋幸子君 百人以上の規模というようなある程度の規模の事業所については報告義務がある諸外国の立法例ですとか、アメリカが中心でございましょうか、連邦政府契約をする企業の場合のアファーマティブアクションの義務づけとかというようなことを考えますと、私は、国民の税金、補助金をもらっている企業とか特殊法人、さまざまな姿勢が問われております特殊法人なんかも指導対象にしていいものではないかというような感じがいたしますので、これは一つのアイデアとして要望させていただきます。  さて、このポジティブアクション、セクシュアルハラスメント、いずれも法的な枠組みはできましたけれども、まだまだ芽が出たというところで、諸外国の水準、立法例に達するまでには幾つかのトライアル、幾つかのハードルを越えていかなければいけないものであると私も考えております。  大臣は、女性に関する施策は底上げをする部分とそれから上から引っ張り上げる部分と両々相まって女性の地位向上に御努力してくださるというような、そういう答弁を伺ったような気がいたします。社会的な制裁としての公表というのは多分下から上げる方だと思いますが、ポジティブアクションについては、むしろモデルとして表彰するような公表というのがあるのかなというふうに思いますが、大臣、お考えがありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  200. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) ポジティブアクションというのは、その企業における積極的な努力、これを評価しようということで、ポジティブアクションが大きくいろいろな企業で定着をするように、これを願っております。  したがいまして、今の時点におきましては、私は、立派な企業を選びまして、ポジティブアクションについてこういうような行動をしているというようなことをめでる表彰制度を実施をいたしたい。表彰しますときには当然その企業名を記者会見等で私は公表をしてまいりたい、かように思っております。
  201. 川橋幸子

    川橋幸子君 今回の改正法案は見直し規定が特に明記されていないわけでございます。前回はたしか附則に見直し規定が置かれたかと思いますし、それから最近のさまざまな労働省関係の法律もそうでございましょうけれども、例えば女性に関連の深い児童福祉法にしても、あるいは現在審議入りするかしないかと言われております介護保険法にしましても、かなりはっきりと施行後何年以内に見直すというような規定が置かれる、そういうやり方が非常に多くなっているような気が私はいたします。  今回の法改正は、法制定当時から女性たちの間では次期の改正というものに非常に大きな期待が持たれておったわけでございますが、十年余の時間を要しました。それはそれで必要な変化だったかもわかりませんが、これからの時代の変化の速さを考えますと、情報通信化の進展によります企業の側の変化、それに伴います人の働き方の変化、それからグローバリゼーション、それから世代交代による意識変化などを考えますと意外にこれからの変化は大きくて、次期改正といいますものを実情に合わせてやっていただける時期が展望できるのではないかというような感じがいたします。前回のように十年間というそう悠長なものではないような気がいたします。  私は、女性の問題というのは、さまざまな日本改革の中で一つ構造改革だろうと思っております。女性とか男性とか中高年とか若年とかというグループでとらえるのではなくて、一人一人の個性、意欲に基づくと。そういう意味日本がモラルを取り戻し活気を取り戻すというような、そういう意味構造改革に当たるのではないかと思っております。二十一世紀の初頭の比較的早い時期を想定して見直しを考えていただきたいと思います。要望させていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  202. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 今回の法律改正法案の内容は、婦人少年問題審議会におきます長期にわたる真摯な議論の末、現段階で可能な最大限のものとして公労使の三者のコンセンサスによりまとめられました建議に基づくものでありまして、本法案にあえて見直し規定を設ける必要はないというふうに考えたわけでございます。  ただ、改正法の施行状況につきましては、当然のことながらその的確な把握に努めまして必要な検討は行ってまいりたいと考えます。
  203. 川橋幸子

    川橋幸子君 それでは、その他の部分について伺います。  均等法改正と直接関係があるかどうかですが、今回の改正の中では女性の自助努力の部分がなくなった関係でしょうか、職業能力の開発向上の部分が削除になっているわけでございます。  レディス・ハローワークという、特にこれはパートタイマーの方々への職業紹介のための通称レディス・ハローワークというものがございます。女子のみの片面性をなくすということから考えますと、レディス・ハローワーク、今後かなりの変身を遂げていかなければいけないのではないかと思いますが、どのように考え対応をしていかれるのでしょうか、伺います。
  204. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 少子高齢化社会の中で特に近年女性の方の就業意欲、これが非常に高まっております。一方で、そういう社会の中で経済的にも女性の方に積極的に働いていただく、そういうことが必要である、こういうことから出発いたしまして、女性の再就職援助のためのレディス・ハローワーク、これは平成三年からスタートしてちょうど五年目になるわけでございますが、設置して就業希望に応じた女性の方の職業紹介を行ってきているわけでございます。  今回のこの法律改正後この点がどうなるか、こういうお尋ねでございますが、明確に申し上げられますことは、この新しい改正法案の施行後、職業安定機関におきます求人の取り扱いを原則として男女共用とするということを予定いたしているわけでございます。したがって、この点についてはレディス・ハローワークのあり方をどうするかということが検討課題になるわけでございますが、その点ははっきりしていると、こういうことでございます。  なお、いずれにいたしましても、現在のレディス・ハローワークという名称は非常に定着し、かつ厳しい雇用情勢の中で大変お客さんが多く積極的に活用されていると、こういう実態もございまして、そういう実態を踏まえて今後さまざまな点について慎重に検討してまいりたいというふうに考えております。
  205. 川橋幸子

    川橋幸子君 もう一つ、職業訓練校の中に女子のみの施設が七校あるというふうに伺っております。女子職業訓練校はどうされるのでしょうか。
  206. 山中秀樹

    政府委員(山中秀樹君) 女子職業訓練校は先生指摘のとおり、都道府県立の施設として現在七校ございます。これらの学校は、女性の何と申しますか、受講機会を確保するという観点から設けられ、かつ女性の訓練ニーズあるいは就業ニーズに合った形で介護サービス科とかOA事務科等の訓練を現在実施いたしております。  今回のこの均等法改正案趣旨なり目的を踏まえまして、私ども、年々確かに女子職業訓練校は減少しつつありますが、この現在の七校について男女共通の施設とするよう、その訓練全体のあり方について都道府県に対して必要な指導なり助言を行ってまいりたいというふうに考えております。
  207. 川橋幸子

    川橋幸子君 女子のみについては、解消すべき女子のみと、それから暫定措置としてポジティブアクションのようにむしろ必要な女子のみという部分があるかと思いますが、ぜひこの均等法趣旨に沿いますような形で対応していただくことを要望したいと思います。  次は、時間が短くなりましたので質問はやめまして、演説だけさせていただきたいと思います。恐縮でございます。  同様の質問も既に出て、お答えも出ているようでございますが、私も、ILO百七十一号夜業の条約と百七十五号パートタイム労働に関する条約、この二本の条約について労働省の方のお答えが、夜業条約につきましては定義が違うと。ゼロ時から午前五時が条約上の定義で、日本の深夜業というのは十時—五時というようなことで説明なさることが多かったり、あるいはパートタイム労働につきましては、公務員の場合は建前としてフルタイマーの採用であり、パートタイマーとして採用する制度がないからというようなことが言われることが多いのですけれども、それはどうも形式論にとどまるような感じがいたします。  夜業にしろパートタイム労働にしろ、先ほどの御答弁にもありましたように、これからのグローバリゼーションの中あるいは市場経済の中でさまざま新しい局面を迎えていくかと思いますので、パート労働法の見直しを検討する必要があるのではないか。このお答えはまだでしたでしょうか、初めてでしたでしょうか。だったら、この点はお答えいただきたいと思います。  その次、夜業につきましては調査研究を新たな観点を含めてお願いしたい。これは御答弁なさるということでございましたので、パートの方だけお答えをいただければと思います。
  208. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律につきましては、現在、学識経験者より構成いたしますパートタイム労働に係る調査研究会におきまして、パートタイム法施行後の状況の分析を中心といたしまして、パートタイム労働者総合実態調査の結果の分析をしたりしておりまして、パートタイム労働に係る問題点を整理、検討しているところでございます。  この研究会での検討結果につきましては、本年夏ごろをめどに報告書をまとめる予定としております。パートタイム労働法及び指針の見直しにつきましては、この研究会での検討結果を踏まえて適切に対処していきたいと考えております。
  209. 川橋幸子

    川橋幸子君 橋本総理がよくおっしゃる経済改革ないし諸改革の中で、グローバルに、フリーに、フェアにというようなことをおっしゃいます。労働の面についても考え方は私は同じではないかと思います。  パートタイム労働につきましては、夜業もそうでございますけれども、グローバルな点、それからフリーにすべき点、これは割合日本人はよく考えるのでございますけれども、フェアネスの点についての検討というものも私は欠かせないものではないかと思います。パートタイム労働につきましては、正規社員との労働条件の均衡を保つということが大きな課題かと思いますので、そうした視点の研究も加えていただければありがたいと思います。  参議院の審議段階になりまして、夜業の話が大変大きくマスコミでも取り上げられているように思います。特に、深夜業と女性の健康管理の問題が記事になることが多いと私はこのところ見ているわけでございます。  この母性の健康管理といいますのも、実は職場の中だけでは部分的といいましょうか、一貫性が乏しくて、国連の女性会議、北京で開かれました九五年の女性会議、そのまた一年前の九四年のカイロの人口と開発の国際会議、いずれもリプロダクティブヘルス・ライツと、いささか舌をかみそうな、そういう表現で言われる新しい概念が出てきたわけでございます。子供を産みたい人が産みたいときに産みたい人数を産めるようにする。子供を産むというのは、女性にとっては自分の人生を自分で決定することなんだからというような、そういう概念でございます。  リプロダクティブヘルス・ライツ、こうした視点から、やはり厚生行政においても従来の母子保健の範囲にとどまらない、生涯を通じた女性の健康支援、こうしたものの指導の強化が必要だと言われておりますが、どのように事業を進めていらっしゃるのでしょうか、伺います。
  210. 北井曉子

    説明員(北井曉子君) 御指摘いただきました問題でございますが、妊娠、出産、子育て期に限定しない、女性の生涯を通じた健康の確保、またその推進につきましては、大変私どもといたしましても重要な課題だというふうに考えております。  これまでさまざまな母子保健事業の推進に努めてまいりましたけれども、これらに加えまして、昨年度から生涯を通じた女性の健康支援事業に着手いたしました。この事業の内容は、女性特有の健康問題に対しまして、健康教育あるいはまたさまざまな相談支援体制の整備を図るということを目的といたしたものでございます。  また一方、生涯を通じた女性の健康づくりに関する研究班も設置いたしておりまして、御指摘のリプロダクティブヘルスの観点に立ちまして、健康支援のあり方、その方策等につきまして研究を進めていただいているところでございます。  今後は、そういった成果も踏まえまして、それらの推進に努めてまいりたいというふうに考えております。
  211. 川橋幸子

    川橋幸子君 ありがとうございました。  自分の人生を決めるという点では、出産というのは非常に大きなことになる。あるいは出産という機能を持つ母性というものも、単に母性というだけじゃなくて、人間の生涯なり、その人の人間の尊厳なりとかかわってまいるわけでございます。非常にわかりにくい言葉かもわかりませんが、何回か質問をさせていただくうちにきっと同僚の男性議員の方も御理解いただけるのではないかと思います。  さて、職業と出産との調和というものを女性自身は絶えず苦労しながらやってきているわけでございますが、そのためには望まない妊娠を避けて産みたいときに産めるようにする、そういう選択ができるような条件整備が必要でございます。  かねてから低用量ビルの解禁が必要ではないかと言われているわけでございますが、ここ十年ぐらいでしょうか、十年はたたないでしょうか、しかし、かなり長い期間にわたって審議中ということで結論がまだ出ていないのでございますけれども、この点についての展望を厚生省にお伺いしたいと思います。
  212. 鶴田康則

    説明員(鶴田康則君) 経口避妊薬ビルにつきましては、平成二年七月以降、製薬企業から承認申請が提出されております。この承認の可否につきまして、中央薬事審議会の医薬品特別部会で、現在、その有効性、安全性について審議を継続中であるわけでございます。  また、その医薬品特別部会における審議と並行いたしまして、この中央薬事審議会から公衆衛生審議会に対しまして、ビルの使用がHIVエイズウイルス感染の拡大に及ぼす影響等を公衆衛生上の観点からの意見を求める、こういった意見照会が行われております。公衆衛生審議会の伝染病予防部会におきまして、ビル使用がHIV感染の拡大に与える影響につきまして、公衆衛生上の観点から議論がなされているわけでございます。  今後、中薬審におきましては、さらにビルの有効性、安全性に関する審議を行うとともに、公衆衛生審議会からの回答もあわせてより広範な視点から慎重な審議をいただきたい、こういうふうに考えているわけでありまして、したがいまして、現在の時点では承認の可否及び時期については申し上げられる段階ではないわけでございます。現時点では未定であるわけでございます。
  213. 川橋幸子

    川橋幸子君 何年か同じ答弁を伺っているような気がいたします。先進国の中でビルが許可されていない、認可されていない国というのは日本と北朝鮮だけという、こういうお話もあるわけです。確かですね。  それから、薬害エイズの話が出ましてから、ビルを使うとコンドームを使わなくなるからエイズが蔓延すると言いながら、実は厚生省の方のかかわられた血液製剤でむしろエイズは広がったということがあるわけでございますし、女性の選択肢をふやすという、そういう意味でぜひこのビルの問題、早く解決していただきたいと思います。  私のいただいた時間、実は次の笹野先生の分に食い込んでおります。最後に大臣から、職場の中の母性の健康管理についてお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。大臣お願いいたします。
  214. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 先生のおっしゃいましたリプロダクティブヘルス・ライツというようなことを労働行政の面からいろいろ法制度をつくりまして、これの実践によって女性の権利、人権というものを保障してまいろうということであります。  もうきょうも何度もお話が出ましたが、一つは、この男女雇用機会均等法あるいは育児・介護休業制度というようなもので、今お話をしましたような妊産婦等々についていろいろな支援体制を組んでいると。より細かくお話をいたします必要がありましょうか。
  215. 川橋幸子

    川橋幸子君 御決意を伺えば結構です。
  216. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) そうですか。というような制度を実態に照らし合わせて定着し発展をさせ、そして女性の働く皆さんが自分能力を十分発揮し得るような、そして社会から正当に評価され、生きがいのある一生であったと、そう思っていただけるような労働生活を送っていただけるようにいたしたい、かように思います。
  217. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 私の好きな言葉にこういう言葉があります。真理は単純なところにあるという言葉ですが、全く真理というのは単純なところにありますし、単純なものこそ真理であるというふうに思います。  そういう意味では、男性女性というこの二つの性のかかわりというのは、非常に単純でありますけれども女性を大切にするという真理は、どんなときでも、どんな時代でも、人類にとっては非常に単純であるけれども、真理であるというふうに私はかたく信じております。  そういう意味で、労働行政女性を大切にし女性にとって最もすばらしい行政を行うということは、これは人類にとっては真理であるということをかたく私は信じております。そういうことを前提にいたしまして、これから質問をさせていただきます。  労働省は、何か大きなものを決めるときには審議会にかけます。これは法律で決められているわけですから、当然そのことはよろしいんじゃないかというふうに思いますが、時として隠れみのに使うようなときもあるんじゃないかなというふうに思いますが。しかし私は、その審議会で審議されたものを一生懸命読むときもあり、勉強をいたします。私ども立法府も、大きな問題のときには規則に基づいて参考人というのを呼んで、その参考人の意見を聞きながら慎重に結論を出すこともあります。  この均等法改正について、先日来の委員会のときに参考人を五人お呼びいたしまして意見を聞きました。そのとき私は、何でも物事を単純にした方がわかりやすいと思って、五人の方に点数をつけていただきました。その点数の結果は別といたしまして、私たちが呼ぶ参考人に対して行政としてはどのような態度で聞いていただいているのか、その点をまずもってお聞きしたいと思います。
  218. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 先般の参考人質疑におきましては、各参考人から貴重な御意見を伺うことができたところでございまして、今後は本法案に基づく施策の推進に当たって十分尊重してまいりたいと考えております。
  219. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 さて、そのときの参考人は私も非常に参考になりましたけれども、五人の皆さん方に十点満点でこの法案に対する評価をお聞きしましたところ、もうすぐさま十点と答えたのは企業側代表であって、あとの四人は、プラスの点もあるけれどもマイナス点もあるので、なかなか点数をつけられないという条件つきでした。特に厳しいのは、もう零点もつけられない、マイナス点だという弁護士さんもいらっしゃいました。  これは非常に私はわかりやすいんじゃないかと思うんですが、まず、全員が十点じゃなかった、マイナス点もあるというこのことについてどのようにお考えでありますか。
  220. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 多くの参考人の方々から先生指摘のように男女共通の規制が必要な旨の御意見があったと承知しておるところでございますが、時間外労働といいますのは景気変動とか雇用調整機能を有しておるわけでございますし、また深夜労働というのは生産技術上の必要性とか国民生活の利便性という点で不可欠な面もあるわけでございますので、これらに対しまして新たな規制を設けることは慎重な検討が必要であるというふうに考えているところでございます。  ただ、これらの問題につきましては、現在中央労働基準審議会におきましても時間外・休日労働のあり方及びその関連事項としての深夜業について検討がなされているところでございます。さらにこの中で、女子保護規定解消対応いたしまして、目安制度実効性を高めるための方策について検討していただくようお願いしているところでありますので、労働省としてはその結果を踏まえて対処してまいりたいというふうに考えております。
  221. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 私といたしましては、立法府でお呼びした参考人の方々が、今局長がお答えになったところを非常にマイナス点として、そして危惧をして御発言なさった部分だと思います。やっぱり学者、文化人の方々の意見というのは私ども国会議員と同じように国民の意見を反映している大きな部分だというふうに思いますので、どうぞこれを参考に今後の審議会の中でこの事情をしっかり労働省としてとらえて審議にかけていただきたいというふうに思います。  さて、それでは続きまして、この間じゅうから局長はこの法案ができたら女性職域拡大になるんだと胸を張って発言をなさっているんですけれども、そんなに胸を張るようなことかなと私はちょっと不安に思いますので、まず現状からお聞きいたしたいと思うんです。  今、現状雇用機会均等法、そして労働基準法のもとで私たちは働いているわけですが、女性の働いている産業別、職種別の構成はどのようになっておりますか。そして男性との比較はどのように違っていますか。
  222. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 平成八年の労働力調査でございますけれども、職種別で見ました女性の就業状況でございますが、事務従事者が一番多くて七百十六万人、それから技能工、製造・建設作業者が三百六十七万人でございまして、この両者で過半数を占めているところでございます。  それから職業別に見ますと、専門的・技術的職業従事者三百十五万人、それから管理的職業従事者二十一万人というあたりが増加をしてきておりまして、女性の就業分野拡大をし、職場において大きな役割を果たすようになってきていると言えるのではないかと思います。  それから産業別でございますが、サービス業が七百十一万人と最も多く就業しておりまして、次いで卸売・小売、飲食店が五百七十三万人、それから製造業が四百五十五万人でございまして、これらの三産業で八割以上を占めておるわけでございます。  最近の特徴といたしましては、経済のサービス化等を反映いたしまして、サービス業の比重が高まって製造業の割合が低下しているというふうに存じております。
  223. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 男性の割合はわかりますか。女性男性の比率。
  224. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 同じく労働力調査でございますが、女性比率の高い職種といたしましては、事務従事者五九・四%、サービス職業従事者五三・三%、専門的・技術的職業従事者四四・八%などでございます。女性比率が高い産業といたしましては、サービス業が五二・二%、金融・保険業四九・八%、卸売・小売業が四九・四%と  いうような状況でございます。
  225. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 今の現状を見ますと、女性の職種は非常に偏っていると思うんです。この原因は何でしょうか。
  226. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 職種とか業種における男女の偏りの原因としましては、さまざまな要因があると思うわけでございますが、女性労働者が例えば事務職につきたいというような意識の問題とか、それから男女の役割分担がいまだ存在しているというようなことも影響していると考えております。例えば、男性が多い建設業とか運輸は深夜業も多いというようなこともございまして、女子保護規定の存在も一つの要因かなというふうに思っております。
  227. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 それでは、今この基準法があるので女性の職種になれないというのは何でしょうか。
  228. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 使用者側、企業側から見て女性が使いにくい存在であるという部分は否定できないかと存じます。特に深夜業等が多い職種、産業においてはそうであろうというふうに思われます。
  229. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 そこで、ちょっと私と意見が違うんですけれども平成七年女子雇用管理基本調査という調査がありまして、その調査を見ますと、女性雇用するために問題点となっているのは何かということを企業に聞いている調査があります。共通の資料を見た方がお互いに理解しやすいので、ちゃんと敵に塩を送りましたので、どうぞ局長も資料を見ていただいて、お互いに共通認識した方がいいと思いますよ。  この調査を見ますと、「女性の勤続年数が平均的に短い」から女性を採用できないというのが四六・六%、圧倒的ですね、これが一番目。二番目が、「家庭責任を考慮する必要がある」から女性を採用できないというのが三七・七%で二番目。そして、「一般的に女性は職業意識が低い」からが三二・三%で三番目なんです。そして、やっと四番目に出てきたんですね、「女性には法制上の制約がある」からというのがたった二六・四%。  ですから、企業としては今の基準法があるから女性を採用しないというのは数字的に言ったらすごく低いんですけれども、これはちょっと局長と私の意見が違うんですけれども、いかがなものでしょうか。
  230. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 私は、先生とそう意見が違うとは思わないのでありますが、先ほど法制上の制約があると言ったのは、全産業ではなくて、やはりそういう深夜業が多い業種、業態においてはこういう点が一つの問題になるだろうというふうに理解をしているというところでございます。  調査をいたしますと、女性の勤続年数が平均的に短いとか、先生指摘のようなもろもろの点が挙げられているのも事実でございます。これもまた先生御承知のとおりでございますが、平成四年と平成七年でこの女子雇用管理基本調査を比較いたしますと、あえて抗弁するわけではございませんが、「女性には法制上の制約がある」というのが一七・二%から二六・四%にふえているという事実もぜひ御認識いただければ非常に幸いでございます。
  231. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 全くよく理解しております。していますけれども、第一義的じゃないということだけはわかりますね。女性を採用するときにはそういう法制上の規制があるから、だからいろんなところに採用するのに待ったをかけるというのではなくて、違ったところに原因があるということの方をよく理解していただけると私の方も幸運なんです。  ですから、そういう点では女性もこれから職域拡大するというためには、局長が言うところの、この法律が改正されると職域がたちどころに拡大するという発想は私はちょっと違うのではないかという、そういう持論の持ち主です。  さて、それではこういうことを考えますと、日経連の方はこの法案のときに一生懸命要望書を出しまして、日経連の要望書を見ますと、この法を早く改正してほしい、「時間外労働、休日労働、深夜業の規制および重量物取扱い業務での就業制限など女子保護規定の存在」が非常に問題であるから早く改正してほしいという、こういう要望が出ていますが、これの真意はどういう意味が一番その中にあるでしょうか。
  232. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 日経連から直接その真意を聞いたことはございませんが、やはり女性男性も同じ枠組みの中で雇用され活躍できるようにするということが前提であろうかと思います。
  233. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 これは私が聞いたわけじゃなくて、日本経営者団体連盟「政府規制の撤廃・緩和要望」ということで平成八年十一月十四日に出しているものを見たわけですから、これも資料がありますので、どうぞ局長もお目にかけていただきたいと思います。  ということは、片方で、採用するときは法規制というのは余り重要じゃないんだということで四番目に挙げておきながら、要望するときにはやいやい要望するというのは何か違うところに意味があるんじゃないでしょうか。どうお考えですか。
  234. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 繰り返しになりますけれども労働者として女性男性も生き生きとその企業において働けるには、やはり同一の枠組みで働ける機会を与えられ、それに対してそれぞれが意欲能力を発揮していくということが非常に重要であるというふうに私は思うわけでございまして、その一つの原因として法制上の制約ということがあって、そういう撤廃を要求しているのであろうというふうに思うわけでございます。
  235. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 では、規制を緩和してほしいという具体的な職種は何でしょうか。
  236. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 規制を緩和しろという具体的な職種という御質問でございますが、逆に答えさせていただきたいと思うわけでございます。  今後、女性たちがどのような職域に進出していけるかというような想定で考えますと、いわゆる女性の活用が進む職域といたしましては、例えば商社のディーリング部門だとか、それからいわゆる総合職、監視及び品質管理業務とか流通業界、それからトラック・鉄道の業界、自動車・電機などの生産部門などがあるのではないかというふうに考えます。
  237. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 そうしますと、今、日本は規制がありまして、そのもとで女性の職業、産業が偏っているという事実、これはデータで見ました。ところが欧米に行きますと、もう既にこういう規制はないんですね。  ではお尋ねしますけれども、欧米で規制のないところの女性の多くとっている職種は何でしょう。
  238. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) これはILOがまとめたデータでございますが、産業別に見ますと、スウェーデン、カナダ、フランス、アメリカなどでは、対地域社会・個人サービス業に女性雇用者の五割から六割が就業をしております。  職業別に見ますと、アメリカそれから旧西ドイツでは書記及び関連従事者、これが女性労働者の三割前後で多くなっております。スウェーデンでは、専門職、技術的職業従事者及び関連従事者が女性労働者の五割弱となっておりまして、これらの産業、職業については女性雇用者の方が男性より多く、女性比率が高くなっております。
  239. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 それでは、欧米でそういう規制があったときとないときに、どの職種がどのように変わりましたか。
  240. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 申しわけございません。そういうような資料を手元に持っておりませんけれども、欧米諸国においてもやはりある程度の職務分離がありまして、ただその程度とか内容は国によって異なっているわけでございまして、女性の比率の少なかった職域とか男性だけが配置されていた職務への女性の進出の度合いにつきましてはなかなか判断が難しいというふうに思っております。
  241. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 そのなかなか判断が難しいというのが物すごく私にしたら重大な発言でして、私がこのデータを見る限りにおいては、日本女性がとっている職種と、もう既にそういう規制がない欧米の職種を見てもそんなに変わらないんですね。やっぱり女性がとっている職種と男性が主にとっている職種というのは、やや同じような状況なんです。  ですから、私にしたら、女子の規制があるから女性職域拡大できないという前提条件というのは、私はちょっとおかしいんじゃないかなと。なぜかというと、そういう規制がない欧米型と日本とがこんなに変わっているんだ、やっぱりこの規制があるから日本はこれだけ職種が狭められているんだというデータがないと、ちょっと説得力がないですけれども、どうでしょう。
  242. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 先生、今いろいろなお話の中でどういうような、例えば法制上の制約があるがゆえに女性の活用がうまくいっていないと、印刷物を読んでおりますので言葉がおかしい点はお許しください。そのほかに、一番が勤続年数が短いとか、職業意識が低いとか、けしからぬ言葉遣いでずっと書いてありますが、家庭責任を考慮する必要があるからだとか、こうあります。  これは全部男女社会意識として均等でないという何よりの証拠だと、こう思っています。こういうような社会意識基本的に労働行政の中から改めてまいろうというのが今度の雇用機会均等法と、こういうふうになるのだと思っております。  そういう意味合いで、先を展望して、女性の皆さんが大きく職域を広げる。どういう職域にも女性の立派な能力を持たれた方が大勢おいでになると。例えばイギリス、フランスの新しい内閣、女性の閣僚が何人、何人だと、我が国は今何人であるかということだと思いますが、やはり政治家の中の層が厚ければ、その中から経験豊富で閣僚になるという方も大勢出るのでありますが、その層がいろいろな職域において薄いと、どうしても幹部というか、社長だとか専務だとかいうようなのが出てこない。  そういう意味合いでは、この男女雇用機会均等法という意味で、労働行政の面から、職場というような面から女性職域拡大が行われ、どんどんこの層が厚くなるということを私はこいねがいたいものだ、こう思っております。
  243. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 大臣のおっしゃることは私も全くそのとおりだと思います。女性がどんどん進出するといいと思います。でも、進出するためには進出する条件をちゃんと整えなきゃいけないので、条件なしに進出して、片っ方では大変な犠牲が出てくるということであっては私はいけないと思います。  先日の委員会のときに、政治というのは最大多数の最大幸福というのが一番重大なことであって、この均等法で最大多数の女性が最大幸福になるかどうかということを、これは私たちとしてはしっかり確かめなきゃいけないということなんです。最大多数の女性が最大に幸福になるかどうかという今重大なところなんで、私はそれに対して何も異議がありません。  ただ、基準法に制約があったからという、この一点が余りにも今大きく取り上げられ過ぎている。そして、これがあるから職域拡大しないんだというところに異議ありということなんです。  そういう意味では、この間、モトローラという外資系のところに視察に行って話を聞きましたところ、こういう会話がありました。社長は女性をたくさんとれと言うんですが、女性を募集すると技術系のエンジニアの人が少ないので、結果的には多くとれないんだと、こういうことがありました。つまり、この会社は技術系が欲しいんで理工学部を出た学生が応募してくれるとその中からとるんであって、理工学部を出ない女子学生が来てももう最初からとれませんと、こうはっきり言っているわけです。ですから、社長はたくさんとれと言っても、絶対数が少なければとりませんというふうに女性の部長さんが言っておりました。  そうすると、日本女性職域ですね、私はこの間、局長職域の概念というのはありますかというふうにお尋ねしようと思ったんですけれども、通告しなかったのでやめました。どうも職域と職責を混同しちゃっているんではないか。女性職域拡大するというのは、もっと深い意味で、もっと広い意味女性職域拡大する行政がなければならないので、夜、仕事をさせるように変えたら全部職域拡大するというような発想は間違っているということを私はここで何度も何度も言っているわけですから、その点を取り違えないでいただきたいと思います。
  244. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 間違っていると先生がおっしゃいますと、私は間違っているわけではないと。  この前、ここでちょうど先生の御質問に対しまして、ピント外れではありますけれどもお話をいたしました。私どもと同期の女性で、東京大学の工学部火薬学科、この間は地雷学科と言いました、修正いたします。火薬学科に入ったと。ところが、このごろは工学部へ入る女子学生というのは非常に多うございます。したがって、そこを卒業してエンジニアになるという皆さんも非常に多くなって、つまり先ほどお話をした層が厚くなりました。  そういうように女性の皆さんがいろいろな職場自分能力を生かすようにという意味合いでは、本法の意義というものは非常に大きいものがある、かように信じております。
  245. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 大臣が信じていただくのは御自由なんですけれども、しかし、信じるならばそれが本当に確約できるような、そういう条件整備というんでしょうか、そういう施策をとっていただかなければ、ただ深夜、危険有害物という規制を外したからすぐ女性職域が広がるんだという、こういう短絡な結びつきに対して私は警鐘を鳴らしているということです。  私にしましたら、女性職域拡大するというのは教育、家庭の面から、この間、大臣日本のお父さん、お母さんというのは、女性が二時間三十四分の家事労働男性は七分、こういう日本の家庭の親の背中を見ていて、どうして子供が平等の夫婦の姿というのがわかるのですかというふうに質問いたしました。この間、啓発活動のこともお話ししましたけれども、もっと違った意味で行政をしなければ、ただ夜間の規制を外したからすべてそこでうまくいくんだという短絡な発想はしていただきたくないということを言っているわけですから、その点は御理解いただきたいと思います。
  246. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 先生、たびたび一対一の討論になりまして申しわけありません。私は、お答えしているつもりであります。  やっぱり、家事労働が七分だというような夫婦の背中を見て育つ子供はそういうことだと思います。そうじゃないと、男女雇用機会均等法というのは労働行政から見たんだけれども家庭生活全般も男女が同じように家事労働に従事をすると。私ども労働省女性の幹部の家庭は、もうほとんど同じぐらい家事労働もやるという諸君が結構おります。  そういうような意味合いで、やはり七分が七十分になりというようなふうになれば、社会そのものの認識というものが変わる。変わることを前提として、我々は労働省でありますので、労働行政の面からさお差していこうという次第であります。  だから、労働行政だけではだめでありますが、あらゆる省庁がそういった同じような姿勢で、川橋さんがおっしゃられたカイロの人口と開発の国際会議のような姿勢でみんながスクラムを組んでやれば、我々は今までのような均等法ではなくて、新しい均等法には具体的な施策がうんと盛り込んであることは御存じのとおりであります。  そういうような意味合いで、先生、前向きに見ていっていただきたい、かように思います。
  247. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 大臣、私はこの法案には不承不承賛成ですから前向きなんです。  ただ、危険がいっぱいある。だから、参考人が言ったように、もろ手を挙げて十点満点を上げれないと、この危惧している点をこれから労働省はきっちり押さえていただかなきゃいけない。そこを言っているわけですから、大臣、やっぱりその点は肝に銘じてしっかり聞いていただかなければいけないというふうに思います。  さて時間が、大臣との話は別枠もらわなければだめですね。  それでは、続きまして質問させていただきますけれども、この改正法案が成立した後、正社員と非正社員、正規社員と非正規社員、その非正規社員の中にはパートとか派遣労働者も入るわけですけれども、これにどのような影響を及ぼすでしょうか。
  248. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 本改正法案は、働く女性が性において差別されることなくその能力を十分発揮できる雇用環境整備するということを目的としているわけでございますので、この男女雇用機会均等法改正によって正規社員がどうなるか、非正規社員がどうなるかということとは直接的には関係はないものであるというふうに考えるわけでございます。
  249. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 全く関係なしに今のとおりということですか。私はそうは思わないんですけれども。  確かに、男性と一緒にばりばり夜もいろんな仕事をする女性はいるでしょう。でも、家庭責任を持ったり、いろんな問題がある人はそれについていけなくなってパートになったり、そういう非正規社員になっていくんではないか。私は、意外と二極分離をしていくんではないかという危惧を持っているんですけれども、その点はいかがですか。
  250. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 繰り返しになりますが、今回の改正は、女性意欲能力に応じて男性と均等な機会及び待遇が確保されることを目指すものであるわけでございまして、調査を見ますと、職場男性と均等な機会待遇を得たいという方々もかなり多くの女性の中に共通して見られるわけでございます。  このような状況の中におきまして、女性たちがみずからの働き方を多様な選択肢の中から主体的に選択できるようにするということが重要であろうと思うわけでございます。そういう意味で、これまで女性の比率の少なかった分野等々で女性が活躍できるようになるというふうに考えているわけでございます。  また、労働省といたしましては、職業生活家庭生活の両立支援対策が非常に重要であるという認識はもう十分に持っておるわけでございますので、そういう両立対策、またさらにパートタイム労働対策も推進していき、個々の女性労働者たちが多様な働き方を主体的に選択できるような環境をつくるべく努力していきたいと思っております。
  251. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 女性職域拡大とか多様な選択というと本当に耳ざわりがいいですね。何かそうかなとうっとりしちやうんですが、うっとりするところが危ないんですね。昔から言うように甘いものには気をつけろという言葉がありますけれども、そういう甘い言葉というのは、私はそうあってほしいと思います。  しかし、現実を言いますと、私は今でも女子大で教えておりますが、このごろ私の学校にもパートとか派遣とかそういう求人が圧倒的に多くなりました。パート労働とか派遣会社からそういう求人が見る見る多くなってきたという傾向があります。私にしたら、女性が働く環境をどういう方向に変えていくのかということは大変心配な一つです。  そこで、きょうはたくさん質問を通告していたんですが、私と大臣との禅問答になってしまいまして質問が消化できなくなりましたけれども、私はやっぱり最終的に女性の働き方が、深夜とかあるいはそういうことの規制の撤廃によって、今まで家庭責任とあるいは育児あるいは介護問題等を抱える女性がある程度職場というものを快適なものとすることができたというこの領分、これを今私も考えたら未知の世界に入るんですが、しかし欧米の例を見ていますと、そんなに変わってないということがわかります。そうすると、何度も言うように、局長が胸を張って変わるんだ、女性職域はどんどん変わるんだということは、私は欧米の例からするとそうではないという確信を持っております。  そういう意味で、この法案が改正された後は、危惧をされているところにどう労働行政として対処していくかというその心構えが一番重大になってくるというふうに思います。私ども、連合を含めまして、女性激変緩和するという措置をとりながら、いかに速やかに男女共通の規制をこの審議会にかけていただくかということが最大の願いだというふうに思います。そういう意味で、それに対する御決意を最後に御答弁いただきたいと思います。
  252. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 今回の改正によりまして、女性たちが性別により差別されることなくその能力を十分発揮できる雇用環境の実現に向けて大きく近づいていくというふうに考えておるわけでございます。  それで、いろいろ先生方が御提示されました問題点につきましても真摯に受けとめて、今後とも私ども精いっぱいやっていきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
  253. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 済みません、これは労働基準局長への質問だったんじゃなかったでしょうか。
  254. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 先生、やっぱり女性職域が大きく拡大するということは先生も賛成ですよね。だから、我々は拡大をしようという意味合いで本法案を出しました。  だって戦後、例えば婦人警官だとか、もう昔の言葉だけれども、それから婦人自衛官というのがあったでしょう、婦人の自衛官の将校になろうという皆さんは、日本が閉ざされているとわざわざアメリカまで行って、ウェストポイントにはもう前から日本人の女性の生徒が入っていたわけです。臓器移植は残念なことに外国へ行ってする。同じように日本では閉ざされているから外国へ行って士官学校に入るというようなことで、どんどん広がってきているわけですね。  というような意味合いで、私は職域拡大ということを考え人間の働く意欲というようなものを、もう女性の人権として私どもは尊重し、鼓吹するために本法案を出した次第であります。  先生は百点満点ではないと、こういうお話でありますが、もしそうであるとするならば、実際の運営は百点に近づけるようにこれからも努力をしてまいりたい。以上であります。
  255. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 終わります。
  256. 吉川春子

    ○吉川春子君 日本共産党の吉川春子です。  まず、労働大臣にお伺いいたします。  けさこの委員会冒頭で委員長からも厳重注意がありましたように、労働省は参議院の審議が始まる前に改正均等法の学習会等を全国で計画をしました。指摘を受けて、労働大臣はこれを取りやめたと釈明しましたけれども、重大な国会無視があったと思います。しかも、この法案はきょうの委員会でもまた衆議院委員会でも労働基準法改正等についてたくさんの懸念が表明さている問題点の多い法案です。法律は衆参両院で可決されなくては成立しないという憲法の大原則が念頭になかったと、こういうことなんでしょうか。これは大臣です。
  257. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 吉川先生がおっしゃいます神奈川県の婦人少年室、これがまだ法の可決、成立を見る前に、たまたま男女雇用月間というように、前からやっている月間であったというふうな重なりは若干考慮するとしても、私としてはまことに私に対してけしからぬ行為である、かように存じて種々指導をいたしましたが、一般国民の皆様にもあらぬ誤解を招くというような意味合いで冒頭私が申し上げましたような指導をしているところであります。
  258. 吉川春子

    ○吉川春子君 神奈川だけではありませんで、全国各地でやられていたわけで、私はこのことを十分心に刻んでいただいて、国会は国権の最高機関です。行政権に対する監視機関でもあります。その点を念頭に置いて今後労働行政を担当していただきたいということを申し上げたいと思います。  職域拡大という問題について質問をしたいと思います。  労働省は、女性労働者に係る時間外・休日労働及び深夜業の規制の廃止、すなわち女子保護規定を廃止する理由として、女性職域拡大を図り、均等な取り扱いを一層進めるためであると説明しています。また、意欲能力のある女性が時間外労働をしたいと思っても今まで制限規定があるためその希望に沿えないという事態を解消するために今回の法改正を準備した、意欲を持ち能力のある女性の皆さんの御希望にこたえる法改正ですともおっしゃっています。  労働省が今回の法改正の対象としておっしゃっている意欲能力のある女性とは一体だれのことなのでしょうか、具体的に説明してください。
  259. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 仕事を持って働く者にとりましては、男性女性も含めて、その仕事がやはり人生にとって有意義であるということが非常に重要であろうと思うわけでございます。  そういう意味で、意欲能力というのは、これは男性女性を問わずもうすべての働く者が有しているものであるというふうに考えます。
  260. 吉川春子

    ○吉川春子君 すべての男性女性とおっしゃっていないんです、意欲能力のある女性、このようにおっしゃっているわけです。ということは、私の方から申し上げますが、深夜業もできる、時間外労働男性と一緒にできる、そういう女性のことを意欲能力のある女性というふうにおっしゃっているんですね。
  261. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) そういう女性もいますけれども、そうではない方々もそれぞれ仕事に対して意欲能力はもう十分お持ちであるというふうに思うわけでございまして、それぞれの労働者の意欲能力に応じて処遇をしていただくということをお願いしているものでございます。
  262. 吉川春子

    ○吉川春子君 そうすると、意欲能力を持つ女性の皆さんの御希望にこたえる法改正であるという、この答弁は撤回されるんですね。
  263. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 意欲能力のある女性たちに対する法改正であるということは、もう何度も申し上げたとおりでございます。そして、そういう形での法律改正であるというふうに思っております。
  264. 吉川春子

    ○吉川春子君 こんなところで時間をとりたくないんですけれども意欲能力のあるということは、意欲能力のない女性もいるわけですね。
  265. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 私は、仕事をしてまいりましたが、少なくとも仕事をし、それなりの賃金をもらうためにはそれぞれの方々が意欲能力はすべてお持ちであるというふうに思っております。
  266. 吉川春子

    ○吉川春子君 だから、すべての女性に深夜業と時間外労働男性並みにやりなさい、こういう法案だと思うんです。  今、就職シーズンが始まっています。それで、意欲があり能力がある場合に、そういったところまで働いて能力を発揮できる状況が生まれると考えていると、これは伊藤局長答弁です。  女子保護規定の撤廃によって、女子学生の就職差別がなくなるんでしょうか。
  267. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 今回の均等法改正は、募集、採用において男女差別をしてはいけないということをはっきりとしたわけでございますので、そういうことをしている企業があれば法律に明確に違反するわけでございますので、募集、採用において大きな変化が出てくるというふうに考えております。
  268. 吉川春子

    ○吉川春子君 採用試験の際に、時間外・休日・深夜労働をこなせるかどうか、企業がこれをチェック項目とすることが予想されるわけです。あなたは毎日十時まで残業できますか、深夜勤務をいつでもできますかと面接で質問されて、そのときにできませんと言ったら、それでは我が社では採用できませんと言われかねないんですが、その結果、女性が採用されなかった場合、これは法律違反になるんですか、どうですか。
  269. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 面接時の質問項目につきまして、選考に関係のある事項について的確に定めることが重要なわけでございますので、深夜業が必須の会社において深夜業ができるかどうかということを質問しまして、できることを採用の条件とするのはやむを得ないというふうに考えるわけでございますけれども、その場合においても、当該企業における深夜業の必要性、頻度につきましては、労働者というんですか、面接者にきちっと説明をし、理解を求めることが必要であると考えております。
  270. 吉川春子

    ○吉川春子君 今までですと、こういう質問をされて落とされれば、努力義務規定ではあるけれども女子差別だということで行政指導をしたと思うんですね。今後は、もし法律が通れば時間外・休日・深夜業を男性並みにできないという理由で女性を採用しないということは合法とされるわけですよね。  そうしますと、女子学生を採用したくなければ巧妙なやり方でこういうことを質問に加えて、そして落とせるということになると間接差別の疑いすらあり、こういう点ではやっぱり女性差別というのは広がっていくのではないか、こういう懸念はありませんか。
  271. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 今回の法律改正男性女性も同じ枠組みの中でやっていただくという形でのものでございますから、私は、今後非常に少子高齢化の中で労働力不足が懸念されていますし、若年労働力が減ってくる中で、女だからというだけの理由で採用をしないというようなことは企業にとって決して賢いことではないと思うわけでございます。  そういう点で、先ほど申しましたが、深夜業が必須の会社であるかどうかというようなこともいろいろあろうかと思いますけれども、それだけの理由で女性を落とすということは決して企業にとって得策ではないということは信じておりますし、また企業もそういうことをわかっているはずであろうというふうに思いますので、女性たちに対する差別はこれまでとは違ってきてだんだんとなくなっていくというふうに思うわけでございます。
  272. 吉川春子

    ○吉川春子君 私が伺っているのは、企業にとって得策かどうかという、企業の立場に立った答弁ではないんですね。つまり、こういう項目が女性差別というふうになるのかならないのかということなんです。その点はどうですか。
  273. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 深夜業が必須の会社かどうかということで随分違ってくると思うわけでございますが、深夜業が必須の会社において深夜業ができるかどうかを質問して、そのことを採用の条件とするのはやむを得ないというふうに思っております。
  274. 吉川春子

    ○吉川春子君 やむを得ないのではなくて、法律に違反しない、合法であるということですね。その点はっきりさせてください。
  275. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 本人がしないということであれば、それはいたし方ないことであろうと思います。
  276. 吉川春子

    ○吉川春子君 女子差別の範囲が結局は広がるという、そういうことになるということを私は指摘しておきたいと思うんです。  総合職の問題についてちょっと伺いたいんですが、総合職というのは均等法が生んだというふうに言ってもいいと思うんです。彼女たちは、男性と同一の業務を遂行したい、自分の専攻分野を生かしたかったからという理由で総合職についているわけで、労働省の言うまさに意欲能力のある女性ということになるわけですが、実際には総合職の女性たちはせっかく入った職場をやめていくわけです。  連合の調査とか社会経済生産性本部の調査によりますと、勤続年数が七年を超えると六割が退職する、それから総合職の男性では退職が一割にとどまっているのに対して、総合職の女性は四割に及んでいる。このように総合職の女性たちの職場定着率が男性に比べて極めて悪い原因はどこにあるとお考えですか。
  277. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 女性の総合職の中には退職をしたり転職をしたりする者が見られるわけでございますが、平成五年に二十一世紀職業財団が実施した調査によりますと、職務内容が自分に合わないとか責任のある仕事が与えられずやりがいが感じられないなどの理由で、現在の仕事に不満を感じている者が約四割弱という調査がございます。
  278. 吉川春子

    ○吉川春子君 社会経済生産性本部の調査だと、結婚が八割、転職が三割五分、出産が三割、連合の調査だと、仕事に将来性がなかった、結婚が三割弱、妊娠、出産が一五%、こういうふうになっているわけですね。非常に家族的責任の問題に絡む退職理由が多いということが注目を引きます。  労働省も行っていますけれども、それでは、女性総合職はどのような働き方をしているのでしょうか。時間外・休日・深夜労働の実態について端的にお答えいただきたいと思います。
  279. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 時間外でございますが、一週間の所定外労働時間は、三時間から六時間程度という者が二六・五%と最も多くて、その次が一時間、零時間から一時間程度、また一時間から三時間程度と合わせまして約三分の二が六時間以下でございます。また一方、六時間程度以上の所定外労働をやっているというのが三三・六%でございまして、このうち十時間以上は一一・〇%となっております。  休日労働につきましては、完全週休二日制が九割弱を占めております。月間の所定外休日労働については、ありが二割弱見られるわけでございますが、あるとする者のうち、月一回の休日労働の者が六八・二%を占めております。  それから、深夜に労働することがある者は二割弱、一七・七%となっております。深夜に労働することがある者について一週間当たりの深夜の労働時間を見ますと、一時間から三時間未満が三二・六%、一時間未満が九・八%となっております。
  280. 吉川春子

    ○吉川春子君 非常に時間外も休日労働もかなり行っているということだろうと思います。  それから、時間の関係で私の方から申し上げますけれども、転勤について、労働省の調査では六割が転勤に応じるというふうに言っているんですけれども、よく調査の内訳を見ますと、いつでも転勤に応じたいという人は八・三%、結婚したら無理だというのが三二%、出産後は無理というのが一〇%、子供が大きくなればというのが五%、できればしたくないという人が一六%など、合わせて女性総合職の八割が転勤に否定的だと、これが労働省調査の結果です。  それから、これも労働省調査で、女性総合職で女子保護規定の廃止を希望しているのはどうか、この数字だけちょっと答えてください。
  281. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 基準法の規制は、緩和または廃止すべきと考えている者が四〇・五%で最も多く、それから女性の負っている家庭責任女性の体力を考えると規制は存続すべきである、二三・七%、現行の労働基準法の範囲内でも男性と同じように働くことができ、特段規制の緩和や廃止は必要ない、一九・六%となっております。
  282. 吉川春子

    ○吉川春子君 結局、女子保護規定を存続してほしいという人が四三%なんですね。総合職においてもなんです。  それで、やっぱり仕事と家庭を両立させて働きたいという気持ちがにじんでいると思うんですけれども、そういう女性たちの要求に合わせてこういう就業規則を結んだ場合、その効果はどうでしょうか。例えば、女性の時間外や深夜業を特別扱いするとか転勤はしなくてもよいとか、効力はどうですか。
  283. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 女性たちを一律に規制することはいけないことでございます。
  284. 吉川春子

    ○吉川春子君 具体的に何条に違反しますか。
  285. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 配置、昇進に対して女性を排除することになるわけでございます。
  286. 吉川春子

    ○吉川春子君 つまり、女性は家族的責任を負っているので、そういうものを無視しては働き続けられない。しかし、そういうものを配慮した就業規則を結べば均等法違反になるということですね。
  287. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 一律に女性たちを排除するということは法律の違反になるわけでございます。
  288. 吉川春子

    ○吉川春子君 一律に排除するとかと言わないで、要するにそういう内容を就業規則で結んだら法律違反ということですよね。
  289. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 働きたい女性たちもいるわけでございますので、そういう女性たちの機会を奪うということはいけないことでございます。法律違反になるわけでございます。
  290. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 要するに、法の趣旨にまず反します。それから、それが特定の職場につくつかないというような意味合いで差別があれば、これは明らかな違法になるということであります。
  291. 吉川春子

    ○吉川春子君 つまり、今度の均等法改正によって、家族的責任を配慮した就業規則というのは均等法違反になるということです。  そういうことで、やっぱり家族的責任をもう顧みずに残業も時間外も転勤もどんどんさせられる、そういう女性たちでなければ働き続けられない。そういう人たちにとっては確かに職域拡大でしょう。しかし、多くの家族的責任を負っている、家庭も大事にして仕事も大事にしたいという女性たちにとっては、むしろ正規の雇用労働者として働き続けられなくなる。それを選別するのが女子保護規定の廃止だと思います。ですから、二極分化というよりは、一握りの、もう本当にいろんな条件に恵まれていて何でも男性と一緒にできる女性と、多くのそういうことはできない女性とに分けられていく、これが今度の均等法だということを指摘しておきたいと思います。  続きまして、私は、労働時間の男女共通規制の問題が大分議論されましたので、それについて質問をしたいと思います。  委員長、パネルを使用させていただきます。  まず、女子保護規定を廃止して現行の時間外の上限時間百五十時間をなくしてしまうというのは、政府の千八百時間の目標に、公約に矛盾するということが明らかになりました。すなわち、有給休暇も一〇〇%消化した上で時間外労働は百四十七時間にしなければ達成できない。しかし、その上限規制の廃止は女子保護に逆行するわけです。    〔委員長退席、理事長谷川清君着席〕  大臣は、時間外のあり方について中基審に検討をゆだねると、あたかもそれが回答のようにおっしゃっているわけですけれども、私はそれは到底納得できません。なぜなら、千八百時間への時短計画は政府の公式の計画です。その実施に責任を持つのは審議会ではなくて政府自身です。したがって、政府が時間外の上限を百四十七時間にするための方策を審議会に諮問するというのではなくて、自分でやらなきゃいけない。審議会に任せるというのは無責任です。  そこで聞きますけれども労働省は、改正案施行までに百四十七時間、少なくとも現行の女子保護基準の百五十時間までに上限を規制する、こういう方針を貫きますか。局長で結構です。
  292. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 先生から御指摘ございましたように、私どもこの時間外労働の長時間なるものを削減していかなければならないという政策課題を負っているわけでございまして、そういう観点から審議会においても議論をお願いしているわけでございます。  御指摘ございました千八百時間のモデルとして出されております百四十七時間の目標でございますが、これは千八百時間自体がそうであるように、いわば日本の勤労者の方々の平均的なモデルケースとしてこの千八百時間というものを目指し、またそれを達成するための一つ考え得る姿として平均的な所定外労働を百四十七というモデルを描いておるわけでございまして、これはあくまで先生指摘の上限という意味の数字とは意味合いがかなり違うということは御理解をいただきたいと存じます。  私ども、今回の御審議の中でもいろいろ御意見を受けて、目安、指針制度につきましてさらに実効性を高めながらやってまいりたいというふうにお答えを申し上げております。さらには、審議会でいろいろ他の角度からも議論されて出てくるもの、そういったものを今までの施策に合わせまして平均的な姿としてこの百四十七というものは当然目指してまいりたい。これは放棄するものではなくて、引き続き私どもの目標であることには変わりございません。
  293. 吉川春子

    ○吉川春子君 だとすれば、男女とも百四十七時間、百五十時間前後で規制するというふうにしないと千八百時間は達成できないんじゃないですか。モデルと言いますけれども、有休を一〇〇%取得するということも一方にあるんですよ。    〔理事長谷川清君退席、委員長着席〕 だから、やっぱりこの時間外については百四十七時間以内におさめると。だとすれば、女子の百五十時間を廃止するんじゃなくて男子の方を百五十時間以内に規制すると、こういうことこそやるべきじゃないですか。
  294. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 現時点の正確な数字はあれでございますが、年間の総実労働時間の中で所定外労働というのは大体今百五十時間ぐらい来ておるわけでございます。  これはなぜ平均的にはそうなるかといいますと、要するに会社の危急存亡のときに働く人もおられるし、また残業がほとんどない職場で働いている人もおられるわけでございまして、国民全体がそういったいろんな立場立場をお持ちの中で、できるだけ千八百時間というものに収れんしてこようというのがイメージでございまして、先生指摘のように、だから上限を百五十時間あるいは百四十七に規制するという意味のモデルとは違って、危急存亡のときにはある程度働かれる方もおられる、そうでない方もおられる、いろんな方の平均的なイメージとして私ども目指してまいりたいと考えている数字でございますので、そこは上限規制と意味合いが違うことはぜひ御理解をいただきたいと思います。
  295. 吉川春子

    ○吉川春子君 これまで伊藤局長男女共通規制ができない理由として景気変動、雇用調整機能についていろいろおっしゃっているんですけれども、それについて聞きたいと思います。  端的に聞きますが、昭和六十年の労働白書は時間外労働について、「景気変動に対応して増減する部分とそれ以外にかなりの恒常的な部分が存在している。」というふうに述べていますね。そして、製造業を例にとって「六十年の月間平均所定外労働時間十八・四時間を分けてみると、景気変動による部分が四・五時間、恒常的部分が十三・九時間、」というふうに分析しています。さらに、「所定外労働時間が恒常的になるのは、企業にとって、新たな労働者を雇入れて働かせるよりも既存の労働者に追加的な労働を行わせる方が有利となるためと考えられる。」としていますけれども、いずれも六十年版の労働白書にこういう記述があることは確かですね。
  296. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 御指摘の分析を六十年の白書でしていることは承知いたしております。
  297. 吉川春子

    ○吉川春子君 ですから、少なくとも昭和六十年までは月平均十八・四時間、年間二百二十時間の所定外労働時間のうちのかなりの部分が景気調整部分ではなくて恒常的なもの、こういう認識労働省も持っていたわけです。その理由は、その方が企業にとって安上がりだからということも労働省認識でした。  平成四年の労働白書にどう書いてあるかといいますと、所定外労働時間の「増加傾向が続いてきたのは、雇用に関して固定費用が存在することから、」新たに人を雇うよりも「所定外労働の増加で対処する方が費用が少ないことも影響しているとみられる。」というふうに言いまして、この「有利性がとりわけ大規模企業に現れているといえよう、」というふうに分析しています。そして、この関係がつり合うのは時間外労働手当を七割にしなければならない、そういう記述をしていますね。
  298. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 平成四年の労働白書においてそのような記述があることは承知いたしております。
  299. 吉川春子

    ○吉川春子君 つまり、人を新たに雇うよりも時間外をたくさん労働者にさせて切り抜けた方が企業にとって利益が大きい。とりわけ日本の時間外労働の割り増し率が低いですし、そしてそれは大企業ほど有利だということが書かれているわけです。  したがって、少なくとも平成四年までは時間外労働の主な要因は雇用調整機能にあるのではなくて、安上がりに使うための恒常的残業にあるというのが労働白書に示された認識でした。  こうした見解が続いてきたわけですけれども平成六年の労働白書にはどう言っているかといいますと、最近までの所定外労働時間を変動要因別に試算してみますと、恒常的な残業と言える部分のその水準はなおかなり大きい、今後とも改善に向けた一層の努力が求められる、こういうこともおっしゃっていますね。
  300. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 平成六年の白書においてそのような記述があることは承知をいたしております。
  301. 吉川春子

    ○吉川春子君 それで、ちょっとこれがそうなんですけれども。(資料を示す)このオレンジのところが恒常的な残業なんですね。これは労働白書の表をそのまま大きくしただけのものですから御安心ください。この白い部分が景気変動の部分なんですよね、景気変動の部分。  伊藤局長、要するに雇用調整というのはこの白い部分なんですよね。それで、白書でも言っている恒常的な部分を減らさなくてはならないというのは、このオレンジの部分なわけなんですよ。そして、百歩譲って雇用調整のために時間外労働一定の役割を果たしてきたというならば、百五十時間もあれば十分だということなんです。  これはもう一つの表なんですけれども、これも労働省からいただいたもので、出所は毎月勤労統計調査からとったんですけれども、要するに事業規模別労働者一人平均年間所定外労働時間の推移、こういうもので三十年間の統計をとっております。この赤い部分、ここが大体百時間なんです。だから、雇用調整で必要だというならば、これがあればいいんです。最初に示しました一番規模の大きい五百人以上の企業でも百時間の雇用調整の部分があればいいわけです、残業で。したがって、このオレンジの恒常的な残業時間というのはどうしても減らしていかなきゃならない。  そういうことを考えますと、労働省雇用調整のために男女の共適時間規制はできないんだというのは、今までおっしゃっている労働省の立場からは言えないわけで、それをひっくり返して言っているわけなんです。だから、やっぱりこれは非常におかしいわけですよね。その点、局長、どうですか。
  302. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 幾つ先生の分析に対して私ども考えを申し上げなくてはいけないと思いますが、一つは、今までの安上がりであるから時間をふやして人をふやしていないという部分につきましては、これは当時平成四年で、したがいまして非常に人手不足等の山が平成三年にあって、かなりそういった景気が持続していた段階でございます。  そういった段階で、いわば今までの時間をふやして事業をこなすというところが限界に来て、人をふやさなくちゃいかぬかどうか。したがって、人をふやす際のコストと時間をふやす際のコスト、そういったものが割り増し率のあり方論議等もあった点でございまして、その当時は、リセッションの時期に人をふやしていたらどうなるかという分析には踏み込んでいないという点をひとつ御理解いただきたいと思います。  それからもう一つ申し上げなくてはいけないのは、これは全体の平均的な構造をモデルとして描いておりまして、一つ一つ個々の企業がこのパターンにはまっていないという問題もございます。  したがいまして、法律で画一的に百時間と先生指摘があったような上限規制をするとすれば、これは具体的には一つ一つの企業を見ると、先生が御指摘になったこの百二十時間というのは平均でございますから、それが八十時間である事業所、雇用調整部分、その白い部分が非常に大きい事業所あるいはもっと小さい事業所、いろいろなものが個々にあるわけでございまして、法律でそこに一線を引いてしまった場合に、果たして企業が本当に生産性が上がらないままでそういった残業を人の調整なしにやり切れるのかどうかというのは、本来ミクロの点から見なくちゃいかぬ、そういった分析もしなくてはいけないということは申し上げておかなくてはならないんだろうと思います。
  303. 吉川春子

    ○吉川春子君 局長はいろいろおっしゃいましたけれども、私は全部労働省の白書の分析に基づいて申し上げているものであって、もう耳にたこができるくらい、雇用調整のためにできないんだと、時間規制はできないんだということは、自分たちの今までの立場を全部ひっくり返して、とにかく労働基準法の女子保護撤廃を導入するための論理を新たに組み立てたということにほかならないということを指摘しておきたいと思います。そういう点で、非常に労働省の弁解というのは許しがたい、私は強くそのことを申し上げておきたいと思います。  もう一つの問題に行かなくてはなりません。それは深夜労働の問題です。  まず、続けて伊藤局長伺いますけれども、報道によりますとトヨタ自動車は、現在十時から五時までの女性の勤務を制限していますけれども女子保護規定廃止により男女の別なく完全な二交代制勤務が可能になるとして、女性の生産関係の採用を来春からふやすということです。また、先日当委員会で視察した日野自動車でも、男性労働者がやめた後女性を採用したいということもおっしゃっていました。  局長は、深夜業を認める基準について、公益の必要の高いもの、グローバル化した市場のもとでどうしてもやむを得ないもの、生産技術上やむを得ないもの等があるとしていますけれども、自動車を深夜に組み立てなければならない、こんなことはないんじゃないですか。
  304. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) その点につきましては、これはいろいろな分析をしなくてはいけないと思いますが、端的に申し上げれば、生産技術上あるいは資本効率上、国際的な競争力を失わないで車を生産して世界の中で競争していく、そういった際に深夜業なしに今の競争力を維持できるのかどうか。これは女性の方を新たに深夜業に入れるかどうかということはともかくとして、深夜業なしに車の生産を国際的にやっていけるのかどうかは、これは私は疑問を正直に感じております。
  305. 吉川春子

    ○吉川春子君 車を深夜組み立てるなんというのは生産技術上の問題じゃないんですよ、そうですね。それから、局長は単に経済的な理由にだけよる深夜業というものは疑問を呈しているわけですよ。まだそんな何カ月も前じゃないんです、衆議院での議論なんですから、そう簡単に自分の言ったことを撤回しないでもらいたい。  とにかく経済的な必要があれば無制限に深夜業を認めるというのは、これは労働者の立場じゃない、これはもう企業の立場です。労働省は企業の立場に立ってはならないんです。やっぱり労働省労働者の利益の立場に立ってもらいたい。そういう立場で、フリーハンドで深夜業を認めるなんということは許されないじゃないですか、その点についてもう一度伺います。
  306. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) やはりこういった分野で、生産技術上という言葉がどうしても問題であればあえて避けますが、いろんな国際的な競争力を維持するために資本効率、そういったことから深夜業がどうしても欠かせない面というのは、これは正直認めざるを得ないだろうと思います。  労働省としてやるべきことは、例えば深夜がある密度を超えて休日が非常に減っている状況とか、そういった状況が生まれる場合に、やはり私ども、そういった方にも休日の確保ということは必要だとか、そういった当然発言すべきところはするわけでございまして、労使のいろいろなシフト編成等の話し合いの方向に助けになればこれは労働省として非常にありがたい、こう思っておるわけでございます。そういう視点での私どもの姿勢は今後とも貫いてまいりたいと思っているところでございます。
  307. 吉川春子

    ○吉川春子君 太田局長は前回私の質問に答えて、深夜業は一般にストレスや健康の面から労働者にとって好ましくないということは当然で、できるだけ避けることが望ましいというふうに言われました。そして、伊藤局長も、深夜業の割り増し率は過酷な労働に対する保障だ、こういうふうに前回労働基準法の深夜業の性質を説明されたわけなんです。  だから、男性女性も双方深夜業の規制をするということが必要であるにもかかわらず、今逆に、女性の方にある規制を取り払ってしまうというのは一体なぜなのかと私は強く抗議して伺いたいわけです。  自由法曹団の発行している事例集シリーズ第二集で、産婦人科医の丸本百合子さんが診察室にやってくるまだ妊娠、出産前の女性たちについて、非常に月経不順や痛みが強くなった、出血が多いというものがかなりある、そして最近はもう働き続けられないとやめてしまう人もふえていると言っているわけです。  そして、  若い女性に現れるのは月経異常。ことに生理痛がきついという人がすごく多い。生理休暇も事実上取れずに働いている。  もっとひどくなると無月経になる。ストレスが増すと脳の中枢が抑制されて、視床下部の命令によって出る卵巣ホルモンの分泌がうまくいかなくなる。それで月経が来なくなる。  特に多いのは深夜業。深夜業の回数が多くなってくると、視床下部の働きが抑制される。昼夜のバランスが崩れるのが一番影響する。昔から深夜業のある職場では月経不順、無月経が報告されている。 と言っていますし、朝日新聞に投書をした産婦人科医の堀口雅子さんも同様な指摘をしていますし、多くのお医者さんが言っているんですね。  丸本さんは重ねて、「これは大変だといって婦人科に来て治療する人、この人たちは体の危険信号を重大なものととらえ、」「結局は仕事を辞める方向にいってしまう。」、「女子保護規定が撤廃された職場は、これから男女ともますます、体の弱い人、病気の人、耐えられない人たちが職場を辞めざるを得ず、経済効率のいい人たちしか」「残れないような職場になってしまう。」、こういう懸念を表明されているんですけれども、そのとおりになるんじゃないですか。
  308. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 働く女性の一部の職種に月経不順が多いという調査研究の指摘があるわけでございますが、この月経不順というのは仕事の内容とか質からくる疲労とかストレス等が重要な原因となっておりまして、そのさまざまな要因を総合的に考えることが必要なのであろうというふうに思うわけでございます。  それで、月経不順には重度のものから軽度のものまであるわけでございますけれども、働く女性の疲労やストレスに関係する月経不順というのは周期が不規則になるなどの軽度なものが多い、そして仮に月経不順が生じたとしてもそのことが直ちに不妊症など妊娠機能の低下につながるものではないというようなことも言われているところでございます。
  309. 吉川春子

    ○吉川春子君 つまり、本当に体の強い人しか働き続けられなくなってしまうのではないかと私は聞いたんですけれども、それについて端的にお答えいただけますか。
  310. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 前にもお答えいたしましたけれども、深夜業の妊娠、出産に及ぼす影響につきましては……
  311. 吉川春子

    ○吉川春子君 妊娠、出産じゃないんです。
  312. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) ごめんなさい。  月経不順等には、これは今申しましたように軽度のものから重度のものまであるわけでございまして、もしも月経不順等になったら、先生の御指摘のように、お医者様に行って治していただくということが重要であろうと思うわけでございます。
  313. 吉川春子

    ○吉川春子君 もう時間がないので先に進みます。  この間、私たちは深夜業の視察をいたしました。戸田市にあるお握りをつくっている会社でパートの女性労働者とも懇談しまして、十時から五時まで働いて、昼間は雨戸を閉めて寝ているんだと、こういうお話もありましたし、子供を学校に送り出した後寝るというお話もありました。  それで、私、小学校の先生からファクスをいただいたんですけれども、「先日も、朝遅れて泣きながら一年生がきました。わけをきくと、朝早くお母さんは弁当屋さんに仕事にいき、めざましをかけていってくれたんだけど、ねぼうしてしまったというのです。起きてみるとお母さんはいない。不安いっぱいで一人でごはんを食べ、カギをしめてくる一年生。深夜業も増えています。子どもからお母さんまで奪わないで」と、こういうファクスをいただきました。  また、私、埼玉に住んでいますけれども、埼玉新聞の報道によると、六月三日の午前十一時に、上尾市のアパートの駐車場にとめてあった乗用車の中で二歳の女の子が倒れていたと。それで、このお子さんは亡くなりました。上尾署の調べでは、お母さんが深夜業の後、朝寝ていたわけです。母親のまくら元にあったキーを持ち出して、一人で車に乗ったと見て調べていると。母親は食品会社の深夜勤を終えて帰宅。午前八時半ごろ、女の子がテレビを見ているのを確認して就寝したということなわけですね。  本当に痛ましくて胸が詰まるような事件なんですけれども環境も何も整わないうちに母親を深夜業に引っ張り出すということは本当に重大な結果を招くことになるんだと、こういうふうには思いませんか。
  314. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 女子保護規定解消に伴います就業環境整備につきましては、これは、労働省といたしましてはきちっとした形で対応をしていきたいというふうに考えておるわけでございます。  その先生の御指摘になった事例は、私も新聞で読ませていただきましたし、本当に痛ましい事例だと思いますけれども、就業環境整備につきましては、今後とも事業主に対しましてきちっとした対応をしていっていただくよう努力していきたいというふうに思っております。
  315. 吉川春子

    ○吉川春子君 私、本会議でも質問しましたし、私だけじゃなくて、報道されましたけれども、医労連が看護婦さんを中心とする医療労働者のアンケート調査をしました。妊娠中は深夜業が免除されることになっているのにもかかわらず、多くの女性たちは深夜業の免除を受けずに働いていると。こういうことについて、労働基準監督署はここに調査に入ったんでしょうか。
  316. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 医療保健業の監督、指導につきましては毎年、例えば平成七年ですと大体千三百を超える病院に、あるいはそういう医療機関に監督に入っておりまして、そういった中で何らかの違反件数、やはり千件を超える違反件数を見つけたりもいたしております。  御指摘のございましたような事案につきましても、もちろん基準法の六十六条で認められている権限でございますから、それを事業主の方が認めないとなれば、これは労働者の方から申告があれば直ちにそういった対応をいたしてきておりますし、今後ともそういった申告、相談があれば直ちに対応するように、これは監督署の方にも十分そういった意思は伝えてあるところでございます。
  317. 吉川春子

    ○吉川春子君 これは労働基準法上の刑罰で六カ月以下の懲役刑ですね。そういうものも申告を待たないと調査に入らないんですか。労働基準法はもう施行されて五十年もたっているわけですよ。そういう事実が明らかになれば、環境整備を行う、行うとおっしゃるんだったらば、今ある法律に基づいて司法警察としての権限もあるわけだから、そういうのに直ちに入るべきではありませんか。簡単に言ってください、もう時間がないから。
  318. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) もちろん申告、相談があれば直ちに対応いたしますが、先ほど申し上げましたように、大体ここ毎年千三百前後の医療機関に対して監督を行い、そういった違反事項についても把握に努めているところであります。
  319. 吉川春子

    ○吉川春子君 入っていないんですね。ちょっとそれだけ一言。この件については調査に入ったんですか。新聞報道に接した後入ったんですか。入っていないんですね。
  320. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 定期的な監督、指導は計画的に行っておりまして、そういった新聞情報等をもとに、私どもどういうところに行くかということは、常に計画の中に組み込んでそういった違反の把握に努めておるところでございます。
  321. 吉川春子

    ○吉川春子君 申告に基づいてやるというのはもちろんなんですけれども労働基準法は刑罰があるわけですよ。新聞報道でそういう疑いがあるというようなことは直ちに調査に入っていただきたい。そして、今ある規定ですよね、母性保護の今ある規定に基づいてそういうことをきちっと労働基準監督署がやっていないということは非常に遺憾だというふうに思います。  私は、もう持ち時間がそろそろなくなりそうですので、最後にちょっと指摘をしておきたいんです。  今も幾つ質問しましたけれども雇用調整の問題とか、あるいは女性職域拡大の問題とか、どれをとってもやはり労働省答弁は納得いくものではなくて、繰り返し質問しているうちにもつと疑いが深まると、私は、これは絶対に成立させてはならない法律だと思うし、やはりもっともっと審議をして明らかにしていくべき法律だと、そのことを指摘して、時間が来ましたので質問を終わりたいと思います。
  322. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」「異議あり」と呼ぶ者あり〕
  323. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 御異議があるようでございますから、改めて採決を行います。  質疑を終局することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  324. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 賛成多数と認めます。よって、質疑は終局することに決定いたしました。  本案の修正について吉川春子君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。吉川春子君。
  325. 吉川春子

    ○吉川春子君 私は、本案に対し修正の動議を提出いたします。その内容は、お手元に配付されております案文のとおりでございます。これより、その趣旨について御説明申し上げます。  まず第一は、労働基準法女子保護規定すなわち時間外・休日労働の制限及び深夜労働の禁止規定の廃止を行わないこととしております。また、やむを得ず深夜業を行う場合でも、交代制勤務における深夜勤務は月間所定労働日の三分の一以内とするなど、女性労働条件をより改善することとしております。  第二は、母性保護の充実です。妊産婦の時間外・休日・深夜労働、変形労働は原則禁止し、裁量労働やフレックスタイム制は同意を必要とします。産前の休業期間を現行六週間から八週間に延長します。  第三は、均等法実効あるものにするために次の措置を定めたことです。まず、現行法の女子であることのみを理由とする差別に加え、性別以外の名目によるのであっても男女の均等な機会及び待遇の確保を不当に妨げることがあってはならない旨を明記します。次に、女性差別について労働大臣の是正命令を定め、命令に違反した場合には、罰則規定を新設します。  また、救済機関として、女性少年室長のもとに公労使三者構成の男女雇用平等紛争処理委員会を設置し、迅速できめの細かいあっせん、調停を行うとともに、必要な場合には労働大臣女性少年室長に勧告できるようにします。  行政サービスを拡充するため、現在、都道隣県に一カ所ずつしか設置されていない女性少年室を労働基準監督署単位にふやし、体制を抜本的に強化します。  さらに、ポジティブアクションについては国が指針を作成し、三十人以上の労働者を雇用する企業には実施を義務づけます。セクシュアルハラスメントについては、事業主に対し、雇用管理上、必要な措置を強化させます。  第四に、育児または家族介護を行う労働者の深夜業の制限について、労働基準法女子保護規定を残すことに加えて、政府案が「小学校就学の始期」までとしているのを「中学校就学の始期に達するまで」とし、時間外・休日労働も対象にするなどの拡充を行っております。  以上が本修正案の趣旨でございます。  この修正案は、豊かさを実感しながら働ける勤労者生活の最低基準を保障するものであり、雇用における男女平等を求める女性労働者の願いにこたえるものです。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いして提案といたします。
  326. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ただいまの吉川君提出の修正案は予算を伴うものでありますので、国会法第五十七条の三の規定により、内閣から本修正案に対する意見を聴取いたします。岡野労働大臣
  327. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) ただいまの修正案につきましては、政府としては反対でございます。
  328. 勝木健司

    委員長勝木健司君) これより原案並びに修正案につきまして討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  329. 吉川春子

    ○吉川春子君 私は日本共産党を代表して、雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保等のための労働省関係法律整備に関する法律案に対する我が党の修正案に賛成、政府原案に反対の討論を行います。  本法律案の本質は、女性の深夜業を全面的に解禁し、時間外・休日労働の法的規制を取り払うという労働基準法女子保護規定を撤廃するという労働基準法の大改悪にあります。  私はまず最初に、戦前からの苦難の歴史を経、戦後、労働基準法の成立て権利として確立されてから五十年にもなる女子保護規定の撤廃という重大な問題をわずか四日、実質三日間の審議で終局させ、採決することに深い憤りを持って抗議します。  反対理由の第一は、女子保護規定の撤廃が、女性に深夜労働や長時間の残業を強制し、過労死に象徴される男性並みの長時間労働を押しつけるものであるからです。  反対の第二の理由は、時短計画に真っ向から反するからです。時短のためには、法定労働時間の遵守、有給休暇の完全消化とあわせて、時間外労働を女子保護水準以下の月百四十七時間にしなければならないことは政府答弁でも明らかになりました。にもかかわらず、女子保護規定撤廃を強行することは、全体の時間外労働を延長させこそすれ、決して短くしないことは火を見るよりも明らかでしょう。労働省が持ち出した雇用調整機能論が全く根拠がないことは、今の私の質問でも明らかにいたしました。  反対理由の第三は、政府の言う女性職域拡大論とは裏腹に、女性を正規雇用から不安定雇用へ追いやることが目に見えているからです。今後、女性の就職に当たって、時間外・休日・深夜労働が新たなハードルにされるでしょう。そしてこれは、もはや男女差別ではなくなるのです。さらに、一たんは就職した女性たちも、非人間的な長時間労働に数年は耐えられるとしても、出産、育児によって大多数が退職を余儀なくされることも先ほど私が明らかにしたとおりです。再び働きたいときには、パートや派遣など低賃金、不安定就労の道しか残されていないことは、何万という女性たちが今味わっている現実です。  反対理由の第四は、この措置女性の健康破壊に直結するものだからです。このことは労働省も認めざるを得ませんでしたが、健康への悪影響と母性への悪影響を意識的に切り離したことは、何が何でも女子保護規定の撤廃に突き進む労働省の反労働者的な姿勢を浮き彫りにするものです。  最後に、均等法について一言します。この十年間の女性たちの均等法に対する切なる願い、すなわち脱法的な差別、いわゆる間接差別の禁止や差別された場合の迅速で実効ある救済機関の設置について何ら要望にこたえるものとなっていません。  こうした問題点について解決し、真に人間らしい労働男女とも行う観点から平等を実現するためには、我が党提出の修正案によるほかありません。  以上申し上げまして、私の討論を終わります。
  330. 石渡清元

    ○石渡清元君 私は、自由民主党を代表して、内閣提出のいわゆる男女雇用機会均等法等の改正案に対しまして賛成、また、日本共産党から提出された修正案に対し反対の立場から討論を行います。  働く女性が性により差別されることなく、その能力を十分に発揮できる雇用環境整備するとともに、安心して子供を産むことができる環境をつくることは、働く女性のためだけでなく、少子高齢化の一層の進展の中で、今後引き続き我が国経済社会の活力を維持していくためにも、極めて重要な課題であります。  政府案は、こうした課題に適切に対処するため、男女雇用機会均等法に関し、募集、採用、配置、昇進から定年、退職、解雇に至る雇用管理の各分野について女性に対する差別を禁止し、企業名公表制度の創設、調停制度の改善等により法の実効性を高めるとともに、ポジティブアクションの促進、セクシュアルハラスメントの防止といった新しい課題に対する対応も図られているところであります。  また、女性が働きながら安心して子供を産むことができるよう、妊産婦の健康管理に関する規定を強化するなど母性保護の充実も図られているところです。  女性労働者に対する時間外・休日労働及び深夜業の規制の解消については、女性労働者の就業実態、意識等が大きく変化し、労働者の健康確保、母性保護職業生活家庭生活の両立に関する諸施策も充実している今日、女性職域拡大男女の均等取り扱いの確保の観点から、均等法の強化とあわせて行うこととしたことは妥当なものと考えます。  さらに、規制の解消とあわせて、育児や家族の介護を行う男女労働者の深夜業の免除について請求権を創設することとしたことは極めて意義のあるものと考えます。  今回の法改正は、二十一世紀に向けて女性男性があらゆる分野に対等なパートナーとして積極的に参画する社会を実現していくための大きな流れを加速するものと考えるところであります。  なお、日本共産党から提出された修正案につきましては、これまで述べたことと相違するものですので、反対であります。  最後に、家族的責任男女がともに担い、バランスのとれた職業生活家庭生活を送ることができるようにするための環境整備が必要であります。政府がこの問題にさらなる努力をされることを期待して私の討論を終わりますが、いずれにいたしましても、社会経済環境は激しく変わりつつあります。これからは問題解決型アプローチではなく、課題そのものを根本から創造する課題創造型アプローチで取り組むことを強く望んで、終わります。  以上です。
  331. 武田節子

    ○武田節子君 私は、平成会を代表いたしまして、雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保等のための労働省関係法律整備に関する法律案について、原案に賛成、共産党提出の修正案に反対する立場から討論を行います。  近年、女性社会進出が進み、雇用分野においても、全雇用労働者数の約四割を占めるまでになりました。さらに、少子高齢化の進展による労働力人口の減少を危惧する声もあり、今後女性労働の重要性はますます高まるものと思われます。  したがいまして、女性が持てる能力を十分に発揮し、意欲を持って、生き生きと働けるような環境整備が重要かつ喫緊の課題となってまいります。  しかし、こうした環境整備に向けて重要な役割を担う男女雇用機会均等法は、残念ながら十分なものとは言えず、制定時より幾つかの問題点指摘されてきました。すなわち、募集、採用、配置、昇進における女性の均等な取り扱いについて、事業主の努力義務にとどまったこと、労働者が均等待遇に不満があった場合、事業主の同意がなければ調停を開始することができなかったことなどであります。  これらを改善し、法の実効性を高め、男女平等を実現することは、二千万人を超える女性労働者の切実なる願いでありました。私たちもこうした声を背景に、国会で均等法の見直し問題を再三再四取り上げ、政府にただしてまいりました。政府もようやく重い腰を上げ、今回の改正に踏み切りますことは、遅きに失した感もありますが、働く女性の声にこたえるものであると評価いたします。  そして、本改正案では、こうした問題点の改善が図られたほか、一歩踏み込み、セクシュアルハラスメントやポジティブアクションに関する規定が盛り込まれました。これらの規定に対して、女性労働環境整備男女平等を進める上で大きな効果が期待できることから、法制化に向けた関心が近年とみに高まっているところであります。こうした状況から、今回の措置は時宜にかない、適切なものであると思います。  また、本改正案の中では、労働時間にかかわる女性保護の解消が図られました。一部に女性の健康を害するのではないかとの声も上がっておりますが、男女平等の精神、あるいは世界の潮流からすれば当然の方向と言わざるを得ないと思います。  また、女性労働者自身から解消を望む声も出ていること、また均等な取り扱いの推進、さらには女性職域拡大といった効果を考え合わせますと必要な措置考えます。しかも、保護の解消とともに、妊娠中や出産後の労働者の健康管理に関する措置の事業主への義務づけ、育児や介護を行う労働者に対する深夜業の制限などといった母性保護の強化や家族的責任のある労働者への配慮を行うなど、きめ細かい措置がとられているのであります。  以上、申し上げましたような理由に基づき、本改正案に賛成いたす次第であります。  なお、共産党提出の修正案については、これまで述べた理由から反対いたします。  最後に、一点要望しておきます。  先ほど、女性保護の解消については、男女平等の精神から見て必要な措置であると申し上げました。しかし、働く女性家庭責任の多くを担っている現状から、この解消によって女性に過重な負担が生ずるのではないかとの疑念をも持たざるを得ません。また、働き過ぎとされる男性労働者の実態をも考慮する上で、これを機に男女共通の労働時間の規制というものを導入すべきではないでしょうか。  この点、政府は、中央労働基準審議会検討する旨の答弁にとどまっておりますが、重要な問題であり、法施行までの二年間、十分な検討を進め、こうした疑念を払拭するような結論をぜひとも出すよう望みまして、私の討論を終わります。
  332. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 私は、社会民主党・護憲連合を代表して、雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保等のための労働省関係法律整備に関する法律案について、原案に賛成、修正案に反対の立場から発言いたします。  まず、今回の法改正は、男女雇用機会均等法施行十年を機になされた改正であり、雇用における男女平等の実現を求める女性労働者のこれまでの強い要望にこたえる規定が盛り込まれたことを評価すべきと考えます。  均等法においては、雇用のあらゆるステージにおける全面的な差別の禁止がなされたこと、調停制度における相手方の同意要件の廃止、さらに企業名の公表制度などが導入されたことを評価いたします。  セクシュアルハラスメントについての事業主の防止措置、ポジティブアクションの奨励等、さらに、妊娠中及び出産後の健康管理に関する事業主の措置、多胎妊娠の場合の産前休業の延長等もなされました。さらに、育児・介護休業法改正による家族的責任を有する男女労働者の深夜業の免除請求権などであります。  第二に、審議の過程で、現行労基法の女子のみ保護規定の解消に伴う諸施策が論議されました。現行の時間外労働協定の適正化指針の実効性を高めるために法令の中で位置づけることを含めての方策及び実効性を高める措置の実施が、均等法改正法が施行される一九九九年四月一日に間に合うよう努められること。さらに、家族的責任を有する女性労働者激変緩和措置などについて、明確に国会の意思として今後の労働基準法等の改正に向けての道筋がついたと確信しております。  第三に、今後取り組むべき課題がより明確になりました。今般の改正法案は、男女雇用平等の推進と家族的責任を有する男女労働者の職業生活家庭生活との両立保障に向けた法体系への組みかえの転換期における第一歩となったと思われます。これを踏まえて、男女共通のより質の高い労働条件基準の確立のための労働基準法改正、あわせて、女性一般ではなく、家族的責任を有する男女労働者へのより手厚い保障のための育児・介護休業法の改正、将来的にはあらゆる性を理由とする差別を禁止する性差別禁止法の制定が展望されなければなりません。  二十一世紀を直前に、私たちは少子高齢化社会における重要な政策課題にこたえる責務があります。社会民主党・護憲連合は、男女労働者が性差別解消し、ともに職業生活と家族的責任を両立し得るより質の高い労働条件の確立に向けて積極的な法政策の推進のために全力で取り組む決意を表明いたしまして、賛成討論を終わります。
  333. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 私は、民主党・新緑風会を代表し、政府提出の雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保等のための労働省関係法律整備に関する法律案に賛成し、共産党提案の修正案に反対する立場から討論を行います。  政府提案の理由説明にもあるとおり、政府案は、働く女性が差別されることなく能力を発揮できる雇用環境整備するという今日的かつ重要な課題に対処するために提案されたものであり、私たちは、雇用の各ステージの差別の禁止、調停制度における実効性の確保、セクシュアルハラスメントに関する事業主の配慮義務が明記されたことについて評価しております。  現行法は、その成立直後からさまざまな見直し意見が提示されてきましたが、一昨年から婦人少年問題審議会で審議が開始され、十二年を経てようやく今回の改正案提案にこぎつけたわけです。今後、男女労働者に対するあらゆる性差別の禁止やいわゆる間接差別禁止など、包括的な性差別禁止のための画期的な一里塚となるよう、本案の厳正な運用と将来的な法整備に最大限の努力を払うことを特に期待いたします。  また、本案の提案理由として、働きながら安心して子供を産むことができる環境整備をうたっています。その中で、職業生活家庭生活の両立を可能にするための条件整備が進展しているとの政府認識が示されています。  しかし、現在、こうした労働者の福祉の条件整備されているとは到底思えません。さらに今後、本法案によって女性雇用機会が増大し、また女性労働者に係る時間外・休日労働及び深夜業の規制が撤廃されることを考えれば、両立支援施策は今後政府を挙げて本腰で取り組むべき重要課題と言わざるを得ません。さもなければ、本法案はまさに職場と家庭において女性に深刻な二重の負担を強いることになりかねません。  労働省は、男女がともに職業生活家庭生活責任を全うし、また総実労働時間千八百時間を早期に実現するために、時間外・休日・深夜労働について男女共通の実効ある規制措置を講ずるべきだということを指摘し、労働省の引き続きの努力を要請して、私の政府案に賛成をする討論を終わります。
  334. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  335. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保等のための労働省関係法律整備に関する法律案について採決に入ります。  まず、吉川君提出の修正案の採決を行います。  本修正案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  336. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 少数と認めます。よって、吉川君提出の修正案は否決されました。  それでは、次に原案全部の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  337. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、長谷川くんから発言を求められておりますので、これを許します。長谷川清君。
  338. 長谷川清

    長谷川清君 私は、ただいま可決されました雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保等のための労働省関係法律整備に関する法律に対し、自由民主党、平成会社会民主党・護憲連合及び民主党・新緑風会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保等のための労働省関係法律整備に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について適切な措置を講ずべきである。  一 男女双方に対する差別を禁止する「性差別禁止法」の実現を目指すこと。また、いわゆる「間接差別」について何が差別的取扱いであるかを、引き続き検討すること。  二 時間外労働の抑制について労使の認識を高めるよう努めつつ、中央労働基準審議会における時間外・休日労働等の在り方についての検討に際しては、諸外国の例など参考となる情報を提供し、時間外労働協定の適正化指針の実効性を高めるための方策等について、平成十一年四月から改正均等法が施行されることに留意し、速やかに実施されるよう、労使の意見を十分尊重しつつ、検討が行われるように努めること。  三 国際公約ともいうべき年間総実労働千八百時間の早期達成に向けて、関係省庁間の連携・協力を一層強化し、政府が一体となって労働時間短縮対策を総合的に推進すること。  四 中央労働基準審議会における時間外・休日労働等の在り方についての検討に際しては、女子保護規定解消により、家庭責任を有する女性労働者が被ることとなる職業生活労働条件の急激な変化を緩和するための適切な措置について、労使の意見を十分に尊重しつつ、検討が行われるように努めること。  五 家族的責任を有する男女労働者の時間外・休日労働及び深夜業については、その事情を配慮するよう事業主に対し指導等の措置を講ずるとともに、事業主が配慮すべき事情について、参考となる情報を十分に提供するよう努めること。  六 事業主が新たに女性労働者に深夜業をさせようとする場合は、労使間で十分な協議を行うとともに、深夜業に就業することに伴う個々の労働者の負担を軽減するための就業環境整備に努めるよう指導を強化すること。  七 深夜業が労働者の健康及び家庭・社会生活に及ぼす影響について調査研究を進め、その実態把握に努めること。八法の実効性を高めるために、都道府県女性少年室長の「助言・指導・勧告」について明確な基準を定めるとともに、調停制度及び公表制度については、法の趣旨が十分生かされるよう積極的な活用を図ること。  九 あらゆる分野労働者に関するポジティヴ・アクションの促進のための対策を強化するとともに、セクシュアル・ハラスメントに関しては、その原因を分析することにより実効性ある指針を策定し、行政指導を強化すること。  十 労働基準法趣旨にのっとり、男女の賃金格差をもたらしている原因を分析し、速やかな改善方法の検討を行うこと。  十一 少子高齢化の進展を踏まえ、看護休暇、保育・介護施策など職業生活家庭生活の両立支援対策を充実強化すること。  十二 均等法の円滑な施行を図るため、都道府県女性少年室の充実強化を図ること。  十三 「パート労働法」及び指針の実効ある見直しを速やかに行うこと。  十四 この法律の施行後適当な時期に、この法律の施行状況を勘案し、必要があると認めるときは、この法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。   右決議する。  以上でございます。  何とぞ御賛同いただきますよう、よろしくお願いいたします。
  339. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ただいま長谷川清君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  340. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 多数と認めます。よって、長谷川君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、岡野労働大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。岡野労働大臣
  341. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) ただいま決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、努力してまいる所存でございます。
  342. 勝木健司

    委員長勝木健司君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  343. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時六分散会      —————・—————