運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1997-03-18 第140回国会 参議院 労働委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年三月十八日(火曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員異動  三月十四日     辞任         補欠選任      小山 孝雄君     亀谷 博昭君      吉川 春子君     上田耕一郎君  三月十七日     辞任         補欠選任      石井 道子君     鈴木 政二君     大河原太一郎君     海老原義彦君      亀谷 博昭君     小山 孝雄君      今泉  昭君     広中和歌子君      上田耕一郎君     吉川 春子君  三月十八日     辞任         補欠選任      広中和歌子君     今泉  昭君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         勝木 健司君     理 事                 石渡 清元君                 坪井 一宇君                 長谷川 清君                 川橋 幸子君     委 員                 上野 公成君                 海老原義彦君                 小山 孝雄君                 佐々木 満君                 鈴木 政二君                 西田 吉宏君                 今泉  昭君                 武田 節子君                 星野 朋市君                 大脇 雅子君                 笹野 貞子君                 吉川 春子君    国務大臣        労 働 大 臣  岡野  裕君    政府委員        労働大臣官房長  渡邊  信君        労働省労働基準        局長       伊藤 庄平君        労働省職業安定        局長       征矢 紀臣君        労働省職業安定        局高齢障害者        対策部長     坂本 哲也君        労働省職業能力        開発局長     山中 秀樹君    事務局側        常任委員会専門        員        佐野  厚君    説明員        警察庁刑事局捜        査第一課長    松尾 好將君        法務省人権擁護        局調査課長    竹田盛之輔君        文部大臣官房審        議官       工藤 智規君        厚生大臣官房障        害保健福祉部障        実福祉課長    林  民夫君        厚生省薬務局医        療機器開発課長  滝澤秀次郎君        社会保険庁運営        部企画年金管        理課長      喜多村悦史君        運輸省運輸政策        局技術安全課長  釣谷  康君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件 ○障害者雇用促進等に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出) ○労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一  部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ただいまから労働委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、石井道子君及び大河原太一郎君が委員辞任され、その補欠として鈴木政二君及び海老原義彦君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 障害者雇用促進等に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 石渡清元

    石渡清元君 ただいま議題となりました障害者雇用促進等に関する法律の一部を改正する法律案について、自民党から質問を申し上げます。  まず、障害者雇用実態についてでございますけれども、最近非常に経済全般、景気の低迷が続いておりまして、そういう中で障害者雇用実態、この調査室の資料は非常にきめ細かく書いてありますので、最近の特徴的な傾向を含めた障害者雇用実態についてまず御説明を願います。
  5. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 御指摘のように、今我が国経済、一部に明るい動きが見られるとはいいながらも雇用情勢は大変厳しい状況でまだ推移しているわけでございます。こういった状況の中で、昨年の平成八年六月一日現在におきます障害者雇用状況について見ますと、法定雇用率が適用されます労働者六十三人以上規模の企業状況について見ますと、常用労働者全体は前年に比べて五万七千人ほど減少しているのに対しまして、雇用されている障害者はそういった中にありまして前年に比べて約一千人増の、トータルで約二十四万八千人ということでございます。そういったこともございまして、実雇用率につきましては一・四七%ということでございまして、前年に比べて〇・〇二ポイントの伸びということで、厳しい中にあっても着実に改善が見られておるのではないか。いずれもこの数字は過去最高ということになっておるところでございます。  このうち、精神薄弱者について見てみますと、雇用されている精神薄弱者の数が約二万四千人ということでございまして、実雇用率で見ますと〇・一四%を占めておるということで、かなり着実な進展を見ておるのではないかというふうに考えております。  また、雇用実態ということではないんですが、公共職業安定所求職登録、求職申し込みしている障害者の数でございますけれども、昨年平成八年十二月現在で約九万三千人ということでございまして、増加傾向にあるところでございます。
  6. 石渡清元

    石渡清元君 本論に入りたいと思いますけれども、今回の改正案の中では精神薄弱者法定雇用率に含めていく、それがポイントでございまして、その精神薄弱者を含む法定雇用率設定について、労働大臣の基本的な考え方をまずお伺いいたします。
  7. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 先生お話しのとおり、今回この場で御審議をいただくようになりました法律改正案は、精神薄弱者、つまり知的障害者を含む全体の身体障害者雇用率というようなものをこれから達成するべく頑張ってまいりたいというのが趣旨でありますが、労働省といたしましては、今まで広く身体障害者雇用について実績といいますか経験を持っているところであります。身体障害者あるいはその中の精神薄弱者皆さんも、それぞれ人間として働く意欲があり、そしてその力があるというような皆さんの場合には、一般健常者とともに職場で働き、その生活というものを謳歌するというような雰囲気づくりをぜひいたしたいものだというようなことで努力をしてまいったのであります。  今まで精神薄弱者雇用されている場合には、その雇用されている方も一般的な身体障害者雇用率の中に含めるというようなことで考えてはいましたが、今回正規に精神薄弱者もその中に掲上をする、そして雇用率達成できているかできていないかというような判断をするというようなことで、より一層今までやってきたことを竿頭一歩を進められる、そういうことができれば幸せだとこう思っている、そんな次第であります。  ぜひひとつ、労働省は前向きに対処をいたしたい、こう思っておりますので、御理解を賜りますようよろしくお願いをいたします。
  8. 石渡清元

    石渡清元君 精薄者に対してどういう対策を講じているか、こういうことでございますけれども、西田大蔵政務次官は京都の会長をされておるようでございますけれども、法定雇用率設定するに当たって、精薄者対策、どのような施策を議じておいでなのか。
  9. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 精神薄弱者につきましては、昭和六十三年の制度改正以来、雇用率制度上、実際に企業が雇った場合に実雇用率にカウントできるということにいたしておりますし、また、雇用促進のために通勤対策ですとかあるいは人的援助のための助成、こういったものを初めとします各種助成金支給対象にいたしまして雇用促進に努めておるところでございます。  また、精神薄弱者に対する職業リハビリテーションでございますけれども、各都道府県に設けられております地域障害者職業センターにおいて職業準備訓練を行っておりますし、また、事業所を活用した職業リハビリテーションですとか障害者職業能力開発校における精神薄弱者向け職業訓練、こういったものを行っております。特に来年度、平成九年度からは、精神薄弱者雇用実績のある事業所を活用した新たな職業リハビリテーション事業実施してまいりたいと考えておるところでございます。また、精神薄弱者雇用に関しましての好事例集といったようなものを作成いたしまして、広く事業主に対して周知を図っておるところでございますし、また精神薄弱者の親の会へ委託をいたしまして、保護者等対象とした職業的自立を促すためのセミナー、こういったものの開催にも取り組んでおります。さらに、第三セクター方式による重度障害者雇用企業の設置、育成、こういった事業実施をしておるところでございます。  今後とも、こういった施策充実にさらに努めてまいりたいと思っております。
  10. 石渡清元

    石渡清元君 精薄者そのものについてはよくわかるんですけれども、それでは事業主の方は精神薄弱者雇用しなければいけないのか、いわゆる雇用義務から法定義務に強化されたわけですから、その辺のところはどうなんですか。
  11. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 今回の改正におきましては、精神薄弱者を含む障害者雇用率設定し、社会全体において身体障害者精神薄弱者双方雇用促進していこう、こういう基本的な考え方でございます。したがいまして、個々事業主の方におかれましては、その職場状況とかあるいは仕事内容等に応じて、身体障害者の方を雇っていただくか、あるいは精神薄弱者の方を雇っていただくか、あるいは両方雇っていただくか、それは個々状況において御判断をいただき、結果としてその法定雇用率達成していただく、こういう考え方での枠組み設定しようというものでございます。  したがいまして、必ず精神薄弱者の方を雇っていただかなければならない、こういうものではございません。
  12. 石渡清元

    石渡清元君 身体障害者精神薄弱者双方のという今答弁だったわけでありますけれども、精神薄弱者というのは障害内容が少し違いますので、職場等々の条件整備を考えたときにおのずとそこが違ってくる。  したがって、単なる量的に障害者雇用を膨らます、膨らますという言葉は適切ではないと思いますけれども、を上げるということと同時に質的な問題をよく考えていかなければいけないんじゃないか、そういう意味法定雇用率の問題になるわけでありますけれども、それじゃ法定雇用率精神薄弱者を入れた場合どのくらい上げようとしているか、その考え方をお伺いします。
  13. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 御承知のように現在の法定雇用率は一・六%でございますが、今回の法律改正によりまして新たに法定雇用率を具体的にどうするか、こういうことでございますが、考え方枠組みといたしましては、これは法律を成立させていただきまして、その後改めて障害者雇用審議会で御議論、御審議をいただいて、政府としては政令を閣議決定する、こういう手順になるわけでございます。  ただ、先生指摘のようにそれじゃどんな考え方になるのか、こういうことでございますが、先般提出されました障害者雇用審議会からの意見書におきましては、「具体的な法定雇用率設定に当たっては、調査結果を基本としつつ、既に精神薄弱者の実雇用率が〇・一四%となっていること、」、これは一・四七%のうちの〇・一四%が精神薄弱者の実雇用率である、こういうことでございますが、「精神薄弱者雇用に伴う事業主の様々な負担を考慮し、その負担過度にならないようにすること等に留意する必要がある。」というふうにされておりまして、このような考え方を尊重して具体的に検討し、定めてまいりたいというふうに考えております。
  14. 石渡清元

    石渡清元君 なぜお伺いしたかというと、現在でも法定雇用率達成されていないんですね。精神薄弱者を入れるということは大事なことでありますけれども、したがって、今答弁がありましたけれども、企業にとりましては非常に負担になってくるわけであります。実効が上がらなければ幾らこっちで決めても仕方がないことでございまして、そういう面で雇用促進企業負担等々については、助成措置等々のお話がありましたけれども、どういうふうに考えているか。
  15. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 御指摘のように、この最終的な目的といいますのは障害者雇用促進するということになるわけでございますが、そのためにはやはり事業主理解と協力が不可欠でございます。  こういった観点から、法定雇用率設定に当たりましては、先ほど局長から答弁申し上げましたように事業主負担過度にならないように、そういった点に留意して定めていくように考えておりますけれども、またあわせましてその施行時期につきましても、この事業主障害者雇用に伴う準備期間、こういったものを考慮いたしまして平成十年七月一日ということにいたしておりまして、こういったことによりまして障害者雇用がより円滑かつ効果的に進むようにしてまいりたいと考えておるところでございます。  さらに、今回、大企業における障害者雇用が容易になるように特例子会社認定要件、こういったものにつきましても緩和をしてまいりたいと思っておりますし、また精神薄弱者に対する人的援助のための助成措置、こういったものも整備をいたしまして、事業主障害者雇用するに当たっての支援策につきましても改善充実を図ってまいりたいと考えておるところでございます。
  16. 石渡清元

    石渡清元君 今までは、法定雇用率のいわゆる達成指導とかそういうことについて、いろいろな各種助成金のようなものでかなりリードしてきたんだけれども、それでは今までの法定雇用率状況というのをみずからどういうふうに評価するのか。というのは、未達成企業というのは約半分あるわけですね、今までの現状で。今までの雇用率関係をどういうふうに評価しておりますか。今までのペースでいいのかどうか。  と申し上げるのは、精神薄弱者を入れるということはかなり質的に違う面が加味される、それを私は強調したいために。一方では、今でも未達成企業は約半分という。その辺の今までの雇用率指導自己評価をお伺いしたい。
  17. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 法定雇用率が現在一・六%に対しまして、実雇用率が最近の時点で一・四七%ということでございます。これは昭和六十三年に比較いたしますと、実雇用率昭和六十三年では一・三一%だったわけでございまして、その後順調に改善を見せてきているのではないか。  また、そのうち特に精神薄弱者身体障害者に分けてみますと、精神薄弱者の実雇用率昭和六十三年当時〇・〇七だったのが現在〇・一四%ということで倍増してきておる。この間に精神薄弱者をめぐるいろんな雇用促進のための措置施策が逐次充実されてきたこともあってこういったことになっておるんだろうというふうに思っております。  これで十分かどうかという点についてはいろいろ御意見がおありかと思いますけれども、私どもとしてはこれまで精いっぱい取り組んできたところでございまして、今後ともいろんな施策充実しながら、また特に福祉部門との連携、こういったものにも十分配慮しながらさらに積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
  18. 石渡清元

    石渡清元君 何回も繰り返してお伺いしたのは、何か数字だけにこだわってやっているような気がしてならない、もう少し個別なあるいは具体的な対策がこれから必要ではないかな、それがやっぱり十分伸びていかない要因にもなっているんじゃないかというふうに考えております。  次に、さっき御答弁ございました特例子会社制度についてお伺いをいたします。  これは認定要件緩和しよう、こういうことでございまして、今までの実績は何社ぐらいあって、その実績評価をまずお伺いします。
  19. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) この雇用率制度は、本来個々企業体ごと達成をするということになるわけですけれども、出資の割合とか役員の派遣とか、一定要件を満たして子会社設立した場合は同一の事業主体とみなして雇用率制度を適用することにしているわけでございます。現在までのところ、この特例子会社は八十一社が認定をされております。この八十一社で雇用されております障害者の数が約二千二百人、そのうち精神薄弱者は約二百五十人ということになっておるところでございます。
  20. 石渡清元

    石渡清元君 今回の認定要件緩和趣旨あるいは内容、理由についてお伺いをします。
  21. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 今回の特例子会社認定要件緩和趣旨でございますけれども、事業主ができる限り障害者雇用しやすいような環境整備を図ってまいろうという観点から、特になかなかいろんな問題が多いと言われております大企業における障害者雇用が容易になるようにこの認定要件緩和を図ってまいりたい、こういうものでございます。  この特例子会社制度につきましては、個々障害者にとって雇用機会拡大につながる、あるいはまた、より配慮された職場環境の中でその有する能力を発揮する機会が増大する、こういったメリットもあるわけでございまして、障害者雇用促進にとっては有効な制度であるというふうに考えておるところでございます。  また、今回の緩和の具体的な内容でございますけれども、幾つかある要件のうち、親会社子会社間の営業上の関係が緊密であることという、この要件を廃止したいということでございます。この趣旨は、親会社から常に一定割合以上の仕事を確保していなければならないということにしますと、それはそれなり合理性がございますけれども、逆に、別の会社から新しい仕事を受けたくても、この要件のためにその仕事が受けられないということもあるというようなことで、かえって子会社自身活動を狭めることにもなりかねない、こういった批判もございました。そういったことを受けまして今回削除をしたいということを考えておるところでございます。
  22. 石渡清元

    石渡清元君 障害者雇用しているのは子会社でしょう。それを親会社との関係緩和しちゃうことは、障害者を採らない、直接雇用していない親会社にただ数字的には有利になるだけであって、この要件緩和というのが果たして障害者雇用促進につながっていくのかどうかというのはちょっと疑問点なんですね。  それで、今の答弁で八十一社、何でこれが広がっていかないのか、もう今までさんざんやってきても。それで、この要件緩和によって、じゃ拡大見込みというのはどのくらいお持ちになっているのか。その辺のところをちょっと説明してください。
  23. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 拡大見込みの数は、あるいは高齢障害者部長の方から話があるかと存じますが、石渡先生が言われるその問いについて、私は、雇い入れ未達成の会社がけしからぬというよりは、精神薄弱者を含む障害者自身がもっと就職できるということを期待したい、こう思っているのです。  そうすると、子会社の規制を緩和すれば、やはり身体障害者あるいは精神薄弱者皆さんの場合には、そういう皆さん労働が提供でき、休憩その他の職場における生活もやはりもろもろの備えをしなければいけない、こう思います。そうすれば、ある程度集中的にそういうところに備えをして、健常者とそういう皆さんとが一緒に作業ができるということができるということになれば、障害者皆さんもより数多く就職できるのではないかということで、子会社要件というものを緩和すると、一人でも今お話をしたような自分の目的が果たされるという意味合いでこれは評価をすることができるのではないかな、こう思っております。  それから、身体障害者皆さんの場合と知的障害者皆さんとでは、私、現場に行って見てまいりましたけれどもやはり違うわけですね。体がふぐあいでそういう作業ができないというような作業であっても、知的な障害の方の場合には、それが反復継続的なものであるならばできるというようなものがあります。体の故障はないわけですので。そういう意味合いで、知的障害者皆さんを今度カウントの中に入れるということによりまして知的障害者皆さん雇用がふえていくということであれば、これは前向きな考え方である、こう思っております。
  24. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 若干補足をさせていただきますけれども、この特例子会社、これまで八十一社ということでございますが、最近徐々にふえてきておるという実態でございまして、確かに、当初なかなか設立が進まなかったという状況はございました。  また、今後の具体的な設立目標数といったものは特に設定をいたしておりませんけれども、今般この営業上の要件緩和することにいたしましたのも、具体的にこういったことがネックで子会社活動がなかなか制約をされているといったような御意見を踏まえたものでございます。今後とも、いろんな実態に即して雇用促進につながるような形で取り組んでまいりたいと思っております。
  25. 石渡清元

    石渡清元君 次に進みますけれども、企業名公表についてでございます。雇用率を守らない企業というのは法治国家である以上ある程度厳正にやれと、こういう声も一方で強いわけでございまして、さっきできるだけ障害者雇用をできるような企業側の受け入れをというあれがありました。障害者仕事をしたいという意思というのは非常に強いんです、これは身体障害者精神薄弱者も。したがって、雇用率達成のために、守らない企業に対する労働省あるいは大臣考え方姿勢、今まで企業公表をどういう形で行ってきたか、その辺を簡単に説明願います。
  26. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 雇用率達成企業公表の問題でございますけれども、雇用率の特に低い企業に対しましては、これまで法律に定められた手順に従いまして、雇い入れ計画作成命令ですとか、その適正実施勧告、そういったものに加えまして公表を前提とした特別指導を行いました。それでも事業主自主的努力が認められない場合に企業名公表を行うということにいたしておりまして、これまでの実績としましては、平成四年に四社について公表をしたところでございます。  次に、この雇用率を守らない企業に対しての労働省姿勢考え方ということでございますけれども、これまでも消極的な企業に対しましては特別指導を毎年実施してきたわけでございますけれども、平成四年以降公表実績がないということでございますが、これは特別指導対象となった企業それなりに相当な改善が具体的に見られたということで公表までに至らなかったということでございます。  今回、この精神薄弱者を含む法定雇用率設定をされる、そういった意味雇用率制度が拡充されることになるわけでございますので、雇用率達成のための指導について、公表に至るまでの一連の指導における基準を見直しまして、より一層厳正な指導を行ってまいりたい、そして障害者雇用促進に努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  27. 石渡清元

    石渡清元君 次に、障害者雇用支援センターについてお伺いをいたしますけれども、今回の改正趣旨目的、そして現在どのくらい設立をされているか、まずお伺いします。
  28. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) この障害者雇用支援センターでございますが、これは市町村レベルといった地域レベル福祉部門雇用部門とが連携をとって個々障害者の特性に応じたきめ細かな職業リハビリテーションを行いまして、そして職業的自立促進していく、そのための中核的な役割を担っている機関でございまして、平成六年に制度化をされたわけでございますけれども、まだ制度化始まって間もないというようなこともございまして、現在まで全国で六カ所において設置、運営されているところでございます。
  29. 石渡清元

    石渡清元君 全体的に見ますと非常に設置数が少ないわけでございますけれども、今度社会福祉法人を新たに障害者雇用支援センターに指定ということでございますけれども、社会福祉法人でもいろいろありまして、どういったような社会福祉法人を新たに追加していくのか、その場合に支援センターの業務の遂行体制には問題がないのかどうか。
  30. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 今回、社会福祉法人を雇用支援センターに指定できるということで改正をお願いいたしているわけでございますが、御指摘のように、社会福祉法人と申しましてもいろいろさまざまな性格のものがあるわけでございます。  今回の障害者雇用支援センターとして考えられるものといたしましては、例えば地域における福祉に関する事業の総合的な企画ですとか、連絡調整の役割を持って障害者についてさまざまな情報を有しているというふうに考えられます社会福祉協議会ですとか、あるいは、雇用支援センターが主として対象としておりますのは精神薄弱者でございますので、精神薄弱者授産施設の経営、こういった社会福祉事業を行っておられる社会福祉法人、こういったものが考えられるところでございます。  また、社会福祉法人はもともと社会福祉事業を行っておるわけでございまして、今回の改正によって障害者雇用支援センターとして社会福祉法人を指定いたしました場合は、本来の社会福祉事業に加えまして、福祉的就労から一般雇用への円滑な移行のための雇用支援センターの業務というものを社会福祉事業法上の附帯的な公益事業という形で行ってもらうことになるわけでございます。  この雇用支援センターに指定された場合、その業務に関しましては、納付金制度に基づく助成を行うということで考えておるところでございます。
  31. 石渡清元

    石渡清元君 職業準備訓練地域障害者職業センターにあっせんできるようにするということなんでありますけれども、既存の体制でそれかてきるのかどうか。そして、今回の改正を踏まえて障害者雇用支援センターは今後どのように設置していくのか、最終指定目標があったらお示しをいただきたい。
  32. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 今回の改正によりまして、障害者雇用支援センターがみずから職業準備訓練を行わなければならないとされておりましたのを、各都道府県に設置されております地域障害者職業センターに、あるいはまた障害者雇用に豊富なノウハウをお持ちの企業に委託して行うことができる、そういった道を開くことによりまして、そういう職業準備訓練の施設を必ずしも持っていなくても雇用支援センターとしての業務ができるようにしたい、そういった中で社会福祉法人もいろいろ対象にしてまいりたい、こういうことで考えているわけでございます。  これまでの受け入れ体制から見ますと、今の時点では地域障害者職業センターで受け入れることは十分可能であろうというふうに考えておるところでございます。  また、今回の改正を踏まえての今後の設置の予定といいますか考え方でございますけれども、私どもとしましては、基本的には福祉部門との連携に重点を置きまして、職業準備訓練施設を持たない障害者雇用支援センターの設置、いわゆる私どもコーディネート型と言っておりますけれども、こういった形の雇用支援センターの設置を促進してまいりたい、こういうふうに考えております。  今後の設置計画ですけれども、地域の実情に応じて検討していく必要があるわけでございますけれども、将来的にはよりきめ細かな対応が全国的に展開できるように、そういった体制の整備に努めてまいらなければならないと考えておりまして、例えば公共職業安定所の管轄区域ごとに設置するとなれば全国で約五百カ所近くになるのではないかというふうに考えております。
  33. 石渡清元

    石渡清元君 現行体制でやろうというんですけれども、特に未設置地域における雇用支援センターの職業リハビリ体制、これをぜひひとつきちっとやらなければいけないというのが一つと、同時にやはり職業能力開発の方も片方で、職業訓練ばかりでなくて能力開発の方もやっていかなければいけないわけでございますけれども、その辺はどういうふうに取り組んでいるのかということと同時に、総務庁が所沢センター、吉備センターにおける精薄者のための職業リハビリテーション実施検討についての勧告をあれしていると、それについてはどうされていますか。
  34. 山中秀樹

    政府委員(山中秀樹君) 精神薄弱者についての職業訓練でございますが、私どもできるだけ多くの人たちに対して適切な職業訓練実施していく必要があると考えており、障害の特性に配慮した職業訓練を行っているところでございます。  具体的には、現在、障害者職業訓練校は全国に十九校ございますが、そこで縫製あるいは園芸等精神薄弱者のための特別の訓練科を設置して訓練を実施したり、あるいは一般の職業訓練校においても、これはごくわずかでございますが、例えば木工、縫製等の精神薄弱者対象とした訓練科を設置して訓練を実施しておりますし、食品加工とか畜産等まだ公共訓練施設で訓練科目を設置してないものについては、民間の教育訓練施設等に委託して訓練を実施いたしております。そのような形で、多様な障害者の訓練ニーズに対応した職業訓練機会を提供しているところでございます。  今後につきましては、特に重要な課題といたしましては、精神薄弱者の職域の拡大を図るための職業訓練分野の開発や、あるいはどのような形で訓練をしていったらいいかという訓練技法の開発についても大きな課題となっております。そういう意味で、それに向けて私ども今後いろんな形で訓練科目の拡大や、あるいは精神薄弱者向け職業訓練の開発、訓練技法の研究、あるいは特に障害者職業訓練校で精神薄弱者については本格的な職業訓練に入る前に基本的な生活習慣について指導を行う必要があります。そういう意味で、生活指導員の配置等々を行おうというふうにいたしております。  御指摘の総務庁の障害者雇用・就業に関する行政監察におきましては、平成八年五月に、労働省は、精神薄弱者職業的自立促進する観点から、国立職業リハビリテーションセンター及び吉備高原職業リハビリテーションセンターにおいて、それぞれの施設の運営実態を踏まえつつ精神薄弱者のための職業訓練等の職業リハビリテーション実施することについて検討する必要がある、このような旨の勧告を受けたところであります。  私ども、この勧告を真摯に受けとめまして、平成九年度からこの二つのセンターにおける精神薄弱者に対する職業リハビリテーションができるように問題点の整理、検討を行うことといたしております。
  35. 石渡清元

    石渡清元君 結局、職業能力開発と同時に職域開発を能開の方ではどんどんやっていただく、そして今答弁の中にあった生活面、それで定着をさせていかなきゃいけない。そういう面で雇用部門福祉部門連携強化が非常に必要になってくる。  厚生省さんお見えになっておりますので、現在の精神薄弱者に対する福祉施策の現状について御説明を願いたいと思います。
  36. 林民夫

    説明員(林民夫君) 精神薄弱者等に対します福祉施策につきましては、基本的な考え方といたしまして、障害のある人が社会の構成員として地域の中でともに生活を送れるようにということを考えておりまして、そのために必要な保健福祉サービスが的確に提供されなければならないというふうに考えておるところでございます。  平成七年十二月に策定をいたしました障害者プランにおきまして、例えばグループホームでございますとかあるいは授産施設等といったような福祉的な配慮のなされた住まいあるいは働く場といったようなもの、さらにホームヘルプサービス等の介護サービス、また精神薄弱者更生施設等の入所施設の整備等につきまして、平成十四年末を目指しました具体的な数値目標を掲げまして、計画的にその整備を図っているところでございます。  厚生省といたしましては、障害者プランを着実に推進をしていくことなどによりまして、今後とも福祉施策充実に努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  37. 石渡清元

    石渡清元君 授産施設なんかの場合は厚生省所管になるでしょう。だから、非常にその辺のところで雇用と福祉がオーバーラップしている部分が非常に多い。それがまたノーマライゼーションということになるのかもしれないけれども、やはり雇用にしても福祉にしても、福祉インセンティブをいかに地域社会に与えていくかということが非常に大きな課題になってくるんじゃないか。したがって、雇用・福祉ミックスというような考え方で広げていく以外ないと思いますけれども、授産施設等々の障害者プランではどんなような展開、設置数等々わかりますか。
  38. 林民夫

    説明員(林民夫君) 特に授産施設について申しますと、私どもといたしましては、作業訓練の充実等によりまして企業への就労につなげられるようなという観点も含めまして、その設置の促進に努めておるところでございます。  現在の数字で申しますと、約四万六千人分ぐらいの整備でございますけれども、例えば九年度におきましては約五千人分の増を図ることとしております。また、平成十四年末の目標といたしましては、六万七千人強ということで目標にいたしておるところでございます。
  39. 石渡清元

    石渡清元君 ありがとうございます。厚生省は結構です。  精神薄弱者の次にというか、精神障害者問題もその延長にあるわけでございまして、その施策について現状どうなっているか、あるいは今後何を充実していこうとしているか、まず御説明願いたい。
  40. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 精神障害者に対する施策状況でございますけれども、精神障害者につきましては、長期にわたって職業生活に相当の制限を受ける、あるいはまた職業生活を営むことが著しく困難な方、そういった方につきましてこの障害者雇用促進法の対象といたしておるわけでございますが、具体的には精神分裂病、躁うつ病あるいはてんかんにかかっておられる方につきまして、通勤対策ですとかあるいは人的援助のための助成を初めとします各種助成金支給対象といたしましてその雇用促進を図っておるところでございます。また、精神障害者だけを対象といたしまして平成六年度から職業準備訓練を始めたところでございますし、また平成八年度からは就職ガイダンスといったものも実施をいたしておるところでございます。また、精神障害者雇用に関しましても好事例集といったものを作成いたしまして、広く事業主に対してその周知を図っておるわけでございます。  また、精神障害者だけということではございませんけれども、これまでもお話ししてまいりましたように、地域障害者職業センター、こういったところを中心に職業リハビリテーション実施いたしているところでございまして、今後とも身体障害者精神薄弱者ももちろんですけれども、この精神障害者につきましても施策充実を図って雇用促進に努めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  41. 石渡清元

    石渡清元君 精神薄弱者、だんだん広がっていって、結局いわゆる障害者の重度化対策にどんどんつながっていってしまうんですね。それはよくわかるのでございますけれども、身体障害者の程度等級表による重度とは別に、職業能力観点から労働省独自の重度判定基準をつくったらどうかという、そういうこれまた総務庁の勧告を受けていると思うんですけれども、その対応についてはどうなっておりますか。
  42. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 昨年五月に総務庁から出されました勧告で御指摘のような指摘を受けているわけでございます。労働能力をどういった形で評価するのか、大変難しい課題でございまして、日本障害者雇用促進協会を中心にいろいろと研究を行っておるところでございまして、特に重度障害者につきましては障害の種類と職種の関連性を考慮する必要性があるということで、平成七年度から障害の種類、等級別に見た障害者の就業領域に関する研究というものを開始したところでございます。今後、そういったものの成果を踏まえて検討してまいりたいと考えております。
  43. 石渡清元

    石渡清元君 それと、今回の改正は、精神障害者である短時間労働者についても助成金対象にする、こういうことでございますけれども、これについての考え方をお伺いします。
  44. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 精神障害者に対する助成措置ということで、今回短時間労働者についても助成金対象としたいと考えております。精神障害者の方々、現在はフルタイムというか常用労働者のみを対象助成金を支給しているわけでございますけれども、精神障害者の場合は、薬を常時服用していたり、あるいは長時間対人関係の中での緊張を持続することが困難である、そういった障害の性質上、常用労働がなかなか困難な場合、あるいは常用労働が可能であっても短時間労働から徐々に始めていくことが有効な場合、こういったものがあるわけでございます。そういったことを踏まえまして、今回、短時間労働者である精神障害者につきましても助成措置対象として雇用促進を図ってまいりたいと考えておるところでございます。
  45. 石渡清元

    石渡清元君 助成金全般にいろんな種類があるんですね。身体障害者雇用納付金、支給金、その他の助成金、その中に調整金あり報奨金あり、あるいは障害者雇用継続助成金とかいろんな種類があるんですが、これが果たして地域の企業に周知徹底されているのかどうか。そういういい措置があれば、仕事に合えば雇用するよ、そういうのが結構あるんじゃないか。非常に複雑で、また制度が細かく分かれ過ぎていて十分理解されていないところがあるんではないかと思うんですが、その辺のところはどうでしょうか。
  46. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 御指摘のような納付金制度に基づきます助成金制度につきましては、それぞれの障害の種類や特性に応じてきめ細かに助成をしようということで大変体系が複雑になってきておるわけでございまして、その点につきましては、今回の法律改正に合わせまして、事業主の方の利便性といったものに配慮しながら簡素化を図って整理をしてまいりたいというふうに考えております。  具体的には、ハード面の支援、障害者作業施設設置等助成金といった施設設備に係る助成金につきましては現在似たようなものが三種類ございますけれども、これを一つに統合するとか、あるいは重度障害者職場適応助成金といった雇用管理のための措置としての人的支援、こういったものにつきましてはそれに関するものについてまた統合する、また、その内容につきましてももっとわかりやすいものにしたいというようなことで取り組むことにいたしております。  こういった助成金につきましては、私ども職業安定所を通じて、あるいは日本障害者雇用促進協会を通じましていろいろPRに努めておるところでございます。また、毎年九月の障害者雇用促進月間、こういったものの中でこのPRといいますか、広報については重点的に取り組んでまいりたいと思っております。
  47. 石渡清元

    石渡清元君 この障害者雇用促進法は非常に私はいい法律だと思うんです。それだけに、障害者雇用のために、労働省中心ということは他の省庁にもかなり関係をしていますから、他の省庁をむしろ巻き込むような形で頑張っていただきたい、そういう面での労働大臣の今後の御決意を最後にお伺いをして、質問を終わります。
  48. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 石渡先生からは、労働省身体障害者雇用の問題につきまして、おまえのところは前向きだ、各省庁にもひとつもっと働きかける、そうして全体の身体障害者諸君の幸せのために努力をせよというまことにありがたいお言葉をちょうだいして、ありがとうございました。  私の基本的考えは、さっき法定雇用率を満たす満たさぬのときにもお話をいたしましたが、雇用主が雇う雇わないの問題ではなくて、身体障害者等が能力と意欲があるならば、一般健常者とともに働く、そこで働く喜びが満喫できる、そうして社会復帰ができ、家庭生活もこれによって確固たるものとなるということを願うべきだ、こう思っているわけであります。  そういう意味合いで、今度の法定雇用率の中に精神薄弱者も含めるというのも一歩前進だと思います。諸環境の整備をしなければならない、こう思っているところであります。先生のお言葉を体して、労働省挙げて、かつは関係各省庁とも相提携をして今後も頑張ってまいりたい、こう思っておりますので、よろしくお願いいたします。
  49. 星野朋市

    ○星野朋市君 私は、きょう本論に入ります前に、労働省は勤労者に対してどういう政策をとるかというようなことで、勤労者を所管している省でありますので、勤労者の恐らくかなりの部分がこれに関するであろうということで、私の経験を踏まえて、厚生年金の受給に関する問題について御質問をしたいと思っております。  御存じのように、厚生年金というのは今は六十歳からの受給資格があるわけでございまして、六十五歳で基準になるわけでありますけれども、企業の定年制というのがまだ六十歳に完全になされていない状態で、この支給を政府は六十歳から漸次六十五歳に持っていこう、こういうことを考えているにもかかわらず依然根強い反対があるわけでございます。  現実に、この六十から六十五未満、ここで厚生年金を受け取る人の割合、それから六十五歳の基準でもって受け取る人の割合、それから、一歳繰り下げることに割り増し金がついてきますから、そういう形で受け取る人、この割合はどのくらいになっておりますでしょうか。
  50. 喜多村悦史

    説明員喜多村悦史君) 今先生お尋ねのように、厚生年金は現在、退職をされますと六十歳から支給を受けることができることとなっております。  そこで、厚生年金に限って申し上げますと、六十五歳より前に受給を開始された方、これは七年度の新規の裁定の方でありますが、この方が八七%、それから六十五歳ちょうどの方が一一%、それから六十六歳以降に受給を開始された方、この場合には実は繰り下げのほかに請求がおくれたという方がございます。この方が二%という割合になっております。  ただ、もう一つ国民年金の基礎年金というものがございます。こちらの方は本来の支給開始年齢は六十五歳になっておりまして、それより前に支給を受けられる場合には一定割合で減額をされまして、それが生涯の年金になる。それからまた六十五歳より後に繰り下げて受給をするということも認められております。この場合には割り増しになります。基礎年金の方で申し上げますと、六十五歳前に繰り上げをして受給をするということを選ばれる方が、これも平成七年度の新規の裁定の方でありますけれども三七%であります。それから六十五歳ちょうどで受給を選ばれる方が六二%、ほぼ三分の二。それから六十六歳以降に繰り下げをする、これを選ばれる方が一%と、比率で申し上げますとそんな状況になっております。
  51. 星野朋市

    ○星野朋市君 今お聞きになったとおりでありまして、この委員会室におられる方は厚生年金の受給というのはまだ経験なさっておらないわけですよね。現職の方と、それから議員でも民間にずっとおられた方は恐らくおらないと思うんで、この受給の実態ということについてはほとんどおわかりになっていないと思うんです。  私は、幸せなことにこの三月二日で満六十五歳を迎えまして、基準の年金の受給資格ができたわけです。物を申すと非常に何なんですけれども、私は最も模範的な年金の資格を持っているんです。なぜかというと、昭和三十年からずっと掛け続けてきて、それから議員になっても民間の会社の顧問という形での給与所得がありましたから、満六十四歳と十一カ月までずっと掛けてきたわけです。そして六十五歳になったから、今言った割合のちょうど六十五歳ぴったりという形で受給資格ができたから、書類を持って申請に行ったわけです。  私の周辺、友だちというのは、私は昭和七年の三月生まれですから、要するに早生まれで小学校から大学まで一番年下でずっと上がってきた。だから、周りの者はもうみんな年金の受給をしている。それから既にもう六十歳ぐらいから受給している人もいる、こういうのが実態です。それで、ある会合のときに、星野、おまえ年金の受給というのは自分で行かなきゃだめなんだよ、六十五歳になったって社会保険庁から通知は来ないんだ、大変なんだよという話は前から聞いておった。  それで、年金の受給資格ができたときにどういう書類を用意したらいいのか、簡単にお答えいただきたい。
  52. 喜多村悦史

    説明員喜多村悦史君) 年金の裁定の請求を行う場合、幾つかの資料を用意いただくことになっております。  一つは年金手帳であります。それから二つ目でありますけれども請求者御本人の生年月日。あるいは加給年金というものが配偶者の方でつくことがありますので、その関係を証明するということで戸籍の書類が必要になります。それからまた、その場合の生計の維持関係でありますとか生計の同一、そういったことを判断させていただくために住民票でありますとかあるいは課税の証明というものが必要になっております。  それからまた、先生御案内のように、年金制度は幾つもに分立しております。私どもですべての制度を所管しておりませんので、他の共済年金などの加入期間がある場合にはその加入期間を証明していただく書類。それからまた、肝心の年金でありますけれども、これの振込先、これをどこに振り込んだらいいのかということで、希望の金融機関の口座等の証明、そういったものが必要になっております。
  53. 星野朋市

    ○星野朋市君 一つ欠けていますよ。戸籍謄本が必要です。
  54. 喜多村悦史

    説明員喜多村悦史君) 先ほども申したかと思いましたが、身分関係等のために戸籍の抄本、御本人だけですと抄本ですが、先ほど申しました加給年金等の場合には謄本ということで必要になります。
  55. 星野朋市

    ○星野朋市君 それで、かなりの部分を占める基準前の六十歳から六十四歳までの人たち、この人たちは、要するにいろんな理由でもってこれを受給するわけですから、まず社会保険事務所へ行って相談窓口というところで相談をする、これは当たり前ですね。これは自発的に行かなくちゃならないわけです。  ところが、満六十五歳になった基準の人間は社会保険庁からは通知が来ないんですよ、さっきも言いましたように。なぜ来ないのか。それは、あるいは繰り下げて割り増しをもらおうという自発的な意図を持った人がいるからかもしれませんね。だけれども、本来的には、六十歳にあなたはなりました、資格はありますからこういう手続をするべきですという通知があって私はしかるべきだと思うんですが、そこのところがないのはどういうわけですか。  そのために、これは推計ですけれども、通知が来ないというだけではないんですが、自分の御主人が亡くなって、その奥さんが手続その他がわからないで結局受給資格があるのにもらえない、こういう人たちが推計だと現に四十人に一人ぐらいの割合でいるんです。ばかにならない数字ですよ。ばかにならない金額ですよ。こういう実態があるんですが、今言った通知をよこさないというのはどういう理由ですか。
  56. 喜多村悦史

    説明員喜多村悦史君) 先生今御指摘いただきましたように、長年にわたって保険料を掛けていただいて、基本的には六十五歳になって老齢年金の権利が生ずるということでありますので、私どもといたしましても、権利がある方は漏れなく受給をしていただきたいと思っておるわけであります。  しかしながら、我が国の公的年金でありますけれども、制度的には次第に統合あるいは仕組みが同じようになるということになっておりますけれども、やはり分立をしておるわけであります。私ども社会保険庁は、先ほども申し上げましたように、そのうち厚生年金、国民年金を所管させていただいておるわけでありまして、他の制度の加入の関係は実はわからないということであったわけであります。しかし、そういたしますと、今先生御案内のようなことで、そういった他の制度の加入の記録を御自身で十分把握をされていないとかいろんな事態が生じます。  そこで、各制度を通じた年金の加入期間の記録、そういったことが把握できるようにならないかということで、これはことしの一月からでありますけれども、私ども社会保険庁、各省庁の御協力をいただきまして、基礎年金番号というプロジェクトを始めさせていただきました。昨年暮れから全国の被保険者あるいは受給者の方にも番号の案内を差し上げたわけであります。  この番号が定着をすることによりまして、制度は分立をしておりましても、どこにいつからいつまで加入をされていたということが把握できるようになるわけであります。ただ、この仕組みは本年の一月からスタートしたわけでありまして、これから定着に向けてまだ幾つもの事務作業を越えていくわけであります。  現時点では、現在のところ各被保険者の皆さん状況がどうなっておるとかいう現時点のものはわかるわけでありますが、今の御質問の、六十五歳になったときにこちらで御連絡しようといたしますと、その方の過去の二十歳からのずっとの記録がないと本当に二十五年の資格を満たしておられるのかどうかといったようなことも十分わかりません。それから、あっちやこっちで記録が分散しておりますと、これを集めないと正確な年金額にもならないということになります。  今後、この基礎年金番号が導入されましたので、これから個々の方の過去の記録を少しずつ集めるという作業に入るわけであります。これには数年かかる見込みでありますけれども、そういった作業を経まして、今御質問いただきましたような一定の年齢になってきた方に対しまして、あなたの記録はこうですよ、あるいはもし六十五歳で請求されますと、概算ですがこのくらいの年金になるのではないでしょうかという御案内ができることになるわけであります。それがまた基礎年金番号導入の一つの目的であります。今後、この制度、仕組みができるだけ早く完全なものになるように努めてまいりたいと思っております。
  57. 星野朋市

    ○星野朋市君 その基礎年金番号というのは確かに私もことしになってもらいました。それで、これは先ほど述べたような書類を持って社会保険の事務所へ行けば、コンピューターではっと打って、あなたは何年何月どういうところにいて、どういう支払いをしたかというのはもう全部わかるようになっているんですよ、実際は。  それで、問題はどうなのかというと、私の認識からすれば、基準前にもらう人は、何回も申し上げますように、いろんな理由がありますから相談に行くというのは当たり前のことです。ところが、要するに満六十五歳になって申請に行く人は、実際は相談じゃないです、受給申請だろうと思うんですね。  私は、何回も足を運ぶのは嫌だからあらかじめ電話をして、どういうものを用意して持っていったらいいかという連絡をしたわけです。そしたら先ほど申し上げましたような書類を言われた。その中に配偶者の非課税証明書というものが入っているんですよ。答えが非課税証明書というから、当然これをとりにやらせて最近の非課税証明書をもらうというのはごく当たり前のことですわな。そして、私はみずから行って手続をした。そしたら、要するに実際の社会保険事務所の窓口というのは上が民にお下げ渡す、まだこういう態度なんですね。だから、この書類は違うから平成六年度のを持っていらっしゃいと、簡単にこう言うわけですよ。ふざけるな、だから電話で前もって聞いたんじゃないかと。そのときになぜ、あなたの生年月日はこうでこうでこうだということを聞いて、何年度のものを持ってきなさいと言うのが本当だろうと。  そして、それだけじゃないんです。だからもう一度平成六年度のものをとり直して、そして再度事務所へ行ったら、今度は、これは違うから平成七年度のを持ってこいと。ばか言っちゃいけない。その証明書をとりに行くだけでもって、これ市役所に行かなくちゃだめですから、お金はかかるわ時間はかかるわ、我々受給者または配偶者は六十五歳ですから元気とは限らないわけです。そうでしょう、とりに行くだけでも大変なことになるんですよ。  それから、社会保険事務所というのは、悪いけれども交通の便は必ずしもよくないところに立地している。東京都だけでも見てごらんなさい。必ずしも便利なところにない。そこへ何回も行かなくちゃならない。  要するに、役所の人は自分が専門家だから簡単に物を言う。ところが、そこに相談または受給申請に来ている人たちは素人なんですから、観念が違うわけですよ。そこを受給者の立場に立ってどうして物を考えられないのか。簡単にこれは違うから別のものを持ってこいと。  そうすると、大多数の民間人はどうなのかというと、一生に一度のことなんだから、二度でも三度でも足を運ぶけれども、それを我慢しさえすればやっともらえるんだからというので大部分が我慢している。私が窓口へ行って待っている間にも相談している人がたくさんいました。この人たちの話を聞いていると、何回も来ていろんなことをやっているということがすぐわかる。  それで、恐らく社会保険庁は、そういうことのないように窓口は指導しています、こう言うんだろうと思うんだけれども、実際にはどうなんですか。
  58. 喜多村悦史

    説明員喜多村悦史君) 先生指摘いただきましたように、受給者の方に御迷惑をかけないように、できるだけ一度で済むようにしなさいという指導をいたしております。  今回の件、六十五歳からの支給ということでありますとこういうことはなかったんだと思うのでありますが、先ほど冒頭に六十歳からというのを申し上げましたが、これは会社を退職された場合と、もう一つは、会社に勤めておられましても報酬が低いので、賃金が低いので年金が出るというのがございます。これを在職老齢年金と言っております。ここで従来は、二十万円ちょっとぐらいより低い方であると権利が発生をする、それ以上の給料をもらって働いておられる方は六十五歳にならないと権利が発生しないという仕組みであったわけであります。  ところが、平成七年四月に仕組みが変わりまして、基本的に収入の、所得の、報酬の多寡にかかわらず権利が発生するとなりましたので、実は平成七年四月の時点で老齢年金の権利が発生したという方が非常に多く出ました。その方々が後になって、そういえば私もということで随分おみえになっていただいております。  そこで、これは言いわけになるかもしれませんが、制度が変わったことによって権利が発生をしたのではないかという誤認をしてしまったのだと思います。これは大変あってはいけないわけでありまして、実は報酬の関係でそれより前に発生していた方の場合には年度がずれできますので、提出していただく非課税証明も一年ずれるということになるわけであります。その点、担当者の事務の引き継ぎ、あるいは制度が変わったことによるものという誤解を、先入観を持ってしまったということで御迷惑をおかけしたことだと思います。  そういうことがないように常々指導しておりますけれども、今後も受給者の立場に立って間違いのないように事務を行うように指導を続けてまいりたいと思います。
  59. 星野朋市

    ○星野朋市君 もう一つ、根本問題にかかわることであります。  企業はまだ六十歳定年という形で、定年でやめられる方が、今までの事業所、ここからどのくらいのところに住居を構えておったかという問題がありますよね。そして、例えば第二の人生を歩いたとしても、その人の厚生年金の受給というのは自分が最終に勤務していた事業所を管轄する社会保険事務所なんですよ。そうすると、定年でやめられたり、それから新たに住所を地方に構えたりする人はどうなるかというと、間違っているからいらっしゃいというのに、大変なところから何回も足を運ばなくちゃならないという問題が実際には生じているわけです。  だから、例えば東京に勤めていて、新幹線の高崎とか宇都宮、あの辺から通勤している人はそのときはどうなるかというと、簡単にほかの書類を持ってきなさいといったら、そこから来なくちゃならないんですよ。こういう大変な問題というのが実は残っているんですね。  社会保険庁は、この問題について根本的に変えようという発想がおありのようなんだけれども、それについて述べてください。
  60. 喜多村悦史

    説明員喜多村悦史君) 私ども、サラリーマンの皆さんの厚生年金、それから自営業者等の国民年金ということで事業を行っておるわけでありますが、社会保険事務所は全国に三百カ所ほどあります。そこで管轄を決めまして、厚生年金の場合には、つまりサラリーマンの方の場合には事業所の所在地、それから自営業者等の場合にはそれぞれの方の住所地の社会保険事務所を管轄事務所ということで適用し、保険料をいただくという事務を行っております。年金の裁定もその割り振りで行わさせていただいているわけでありまして、サラリーマンをおやめになった場合には、最後におやめになった会社があったところの社会保険事務所が管轄ということになります。  と申しますのは、年金の裁定請求をいたしました場合に、過去の記録等をそこで精査をするわけでありますが、漏れていたような場合で申告があってこれを追加するというような場合には、その元の記録があるところでないとできないことにしておりますので、その管轄事務所で行うということになります。  そういたしますと、今先生指摘いただきましたように、会社をやめたのでこの際住所も変わろうかという方、これはこれからも大勢いらっしゃると思います。そういう方の場合には、管轄事務所においでいただくと事務は一度で済むわけでありますけれども、必ずしも遠隔地で不便だという方が出てまいりますので、事務上の扱いといたしまして、その方が現在お住みになっているところが前の会社と随分離れている場合には、今お住みになっているところの事務所に裁定請求書を出してもいいですよ、受け付けますということで事務をさせていただいております。  ただ、先ほど申し上げましたように、その場合には、受け付けた住所地の社会保険事務所では記録の訂正、そういったことはできませんので、その書類をすべて管轄の社会保険事務所に送付をすることになります。その関係で、いろんな場合に時間が余計にかかるということで御迷惑をおかけする事例があるかもしれません。  いずれにいたしましても、管轄事務所というのはあるわけでありますが、今申し上げましたように、御自身のお住みになっている住所地の社会保険事務所でも受け付けはするということにしておりますので、この点についてもさらに周知等に努めてまいりたいと思います。
  61. 星野朋市

    ○星野朋市君 いずれにしても、これから何百万、累計にすれば何千万という人がそういう形でこれを受給するわけでありますから、六十五歳支給開始に至るまでになるべく受給者のための措置というものは真剣に考えていただきたいと思います。  大臣、今のようなやりとりを聞いていて、勤労者を所管する労働省大臣としてはどんなお考えをお持ちだか一言言ってください。
  62. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 我々のはらからであるところの厚生省がお隣で答弁をされておられた。私は余り言いたくないのでありますが、私もある企業でそこの年金の事務の最高責任者をやっておりました。その企業体では六十歳で定年で、先生おっしゃる年金六十五歳というような時代とはちょっと前過ぎてしまうのでありますが、本当の年金が年に何ぼ出るか、月に何ぼ出るかというのは、これから余生を送る、老後の人生を送る、言いますならば退職者の一番大きな関心です。無論、そのときに退職金が何ぼ出るかということもそうです。  私は、やっぱり年金が何ぼであるかということによって老後の生活設計ができるということで、粗計算でありますが、あなたはこれから年金が何ぼ出るかという数字を文章にいたしまして、それを退職辞令の上に乗っけて本人に、私自身、共済ばかりではなくて人事全部の責任者でありましたので、勤続三十五年御苦労さまでありましたとか、二十九年で御苦労さまでありましたということで、これは辞令のほかに退職の予測、年金の予測なんかがありますので、御参考までに乗っけておきましたと、それで一人ずつにお渡しをした、そういう経験があります。小さな世帯でありますのでそういうことができた。  しかしながら大世帯の厚生省とされては、年金受給者あるいは受給予定者、これの全部に私が言いましたようなことはとても事務的に無理で、厚生省の職員を何十倍かにしないと無理だと思うのでありますが、精神はそういう気持ちが必要だなと。先生冒頭言われました、年金払ったよ、くれてやったよというようなことではなくて、長年の労をねぎらう、そしてこれによって老後の生活に自信を持ってくれと。あくまでも国としてはそういう面でも足らぬと思うが、一生懸命やるんだというのが何とはなしにわかるようであるといいなと。率直に言って、そんな感じを持って聞いておりました。
  63. 星野朋市

    ○星野朋市君 それはあえて申せば、岡野先生のような有能な方がおられた会社だからそうなんだけれども、何もこれは総務なり大事なりがしっかりしている会社ばかりとは限らない。むしろそういうことにふなれな会社の従業員の方が圧倒的に多いわけです。だからそれは私の言うように、事前にもらいにいく人たちは自発的に行くんだからいいんだけれども、基準に達した人に、何も厚生省の人間をそんなにふやさなくても全く今のメンバーでできるはずなんですね。これは私の体験をもとにして、社会保険庁の仕組みというのが少しでも改善されれば私はそれにすぐるものはないということで申し上げました。  さて本論でございますけれども、今度の法改正の主眼であります精神薄弱者の問題について、一般には精神薄弱者という言葉が何となく急に出てきたような感じを受けるんですけれども、労働行政における精神薄弱者というものの取り扱い、こういう言葉、この人たちがどういう変遷を経て今度の法改正の一つに至ったのか。その経緯について御説明願いたいと思います。
  64. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 精神薄弱者に対します雇用対策でございますけれども、一番最初は昭和五十一年にさかのぼることになろうかと思います。現在の障害者雇用促進法の前身でございます身体障害者雇用促進法、これが改正されまして、五十一年に身体障害者雇用が義務化をされた。そしてまた納付金制度がその年に創設をされたわけでございますけれども、その際に、精神薄弱者につきましては通勤対策ですとかあるいは人的な援助、そういったものに係る助成金対象という形で施策対象にしたところでございます。  その後、十年経過した昭和六十二年の法律改正におきまして、雇用率制度上、精神薄弱者は、実際に雇い入れた場合には身体障害者とみなして実雇用率にカウントできるようにするということで、この制度が現在に至っておるわけでございます。  昭和六十二年当時にこういった取り扱いにしました背景といたしましては、この当時まだ精神薄弱者の職域が必ずしもそんなに広がりを見せていない、まだ限定をされておった、あるいはまた精神薄弱者に対します職業リハビリテーション等の施策が必ずしも十分ではないといったような状況がございまして、こういった制度をとったところでございます。  その後、全都道府県の地域障害者職業センターにおきまして、職業準備訓練精神薄弱者対象として取り組んでおりますし、また事業所を活用しての職業リハビリテーションですとか、障害者職業能力開発校における精神薄弱者向け職業訓練といった形、こういったものの充実が図られてきたところでございました。  こういった中で、その後十年経過したわけでございますけれども、実際問題として精神薄弱者雇用がさまざまな分野で進んできておる。また、雇用率制度対象となっている六十二人以上規模の企業での雇用状況を見ますと、今のところ実数で約二万四千人、実雇用率にいたしまして〇・一四%ということで、十年前の数字に比べますと大体二倍になってきておるといったような状況もございまして、精神薄弱者雇用がかなり進展をしてきたということでございます。  こういった状況を踏まえまして、今回精神薄弱者を含む法定雇用率設定したいということに至ったところでございます。
  65. 星野朋市

    ○星野朋市君 今、経緯の御説明でございました。大体十年ごとに大きな対策がとられている。ことしが昭和でいくと七十二年になるんですか、そうすると二十年目ということになりますね。そういう意味では非常に重要な問題だと私は認識しております。  現実に、改正によって一般事業者の一・六%というのがどんなふうに変わるのか、これは算定式が口で言うのは非常に難しいから、端的にどのくらいに変わるのかということをお答え願いたいと思います。
  66. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいまの御質問でございますが、現在の法定雇用率は御承知のように一・六%ということでございます。今回の法律改正によります法定雇用率の具体的な率につきましては、これは法律に基づきまして成立後改めて障害者雇用審議会で御審議をいただき政府として政令で定めると、こういう手続になっております。  ただいま御指摘のその考え方の問題でございますが、これにつきましては、先般提出されました障害者雇用審議会からの意見書におきましては、「具体的な法定雇用率設定に当たっては、調査結果を基本としつつ、既に精神薄弱者の実雇用率が〇・一四%となっていること、精神薄弱者雇用に伴う事業主の様々な負担を考慮し、その負担過度にならないようにすること等に留意する必要がある。」、こういう御意見をいただいているところでございます。  したがいまして、このような考え方を尊重し、具体的に定めてまいりたいというふうに考えております。
  67. 星野朋市

    ○星野朋市君 現在でも、その一・六に対して平均が一・四七ぐらいでございますか、その中でこの一・六%の線を超えている製造業などはそのいい例でありますけれども、逆にこの基準に達していない業種というのがまだ相当あるように思うんですね。私なんか錯覚しておりまして、つい最近まで一番悪いのは金融業だと思っておったんですよ。今回のことで調べてみましたら、金融業でも銀行・信託なんかは一・五四ですか、証券が下一六、保険業が一・三五。特に銀行・信託業はかなりの改善を示しているということがわかりました。  私はちょっと疑問に思ったのは、前に金融業は非常に悪いと、一%かすかすぐらいだったですか、どういうことだとお聞きしたら、いや、身体障害者の求職に関するアイテムの中に金融業が余りないんですというのが答えだったんです。今はそういうことで特に大銀行、信託なんかはかなり改善されましたからかなり事情は変わっていると思うんですが、今でもこの雇用率に達しない業種、悪い方から三つぐらい例を挙げて言っていただけませんか。
  68. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 業種別に障害者雇用状況を見てみますと、ただいま先生お話しございましたように製造業は非常に高い水準でございますけれども、これに対しまして実雇用率が非常に低い業種で申し上げますと、一つは卸・小売、飲食店、この関係が実は昨年の六月一日現在では一・○一%ということで一番低くなってございます。さらに建設業について見ましても、これは一・三〇%といったようなことで低くなっておりますし、銀行の方は大分改善されたというお話が出ましたけれども、金融・保険・不動産業という形で分類してみますと一・二八%ということで低い水準にございます。  ただ、いずれも、こういった業種も前の年に比べますと〇・〇四あるいは〇・〇二ポイントの改善ということでございますので、着実にそういった雇用が進展しているのではないかというふうに思っております。
  69. 星野朋市

    ○星野朋市君 徐々に改善されているということはまことに望ましいことなんです。  さて、そうすると、先進諸外国の問題についてどういうふうになっているか、欧米の主要国についてどういう制度がとられているか、おわかりだったらお答え願いたいと思います。
  70. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 先進諸国の障害者雇用制度ということでございますけれども、一般的に年金による所得保障というものがベースにございます。それに加えまして、福祉施設に対して公的援助を行うことによって福祉的就労対策が行われているという状況が基本的にあるわけでございますけれども、そういったものにさらに加えまして先進諸国では大きく二つの流れがございます。  そのうちの一つは、アメリカですとかイギリスのように、雇用を初めとする社会における障害者の差別をなくしていこう、そして障害者機会均等の確保を目指していこうとする流れが一つございます。  それからもう一つの流れといたしましては、ドイツやフランス、これはまた我が国もその中に位置づけされようかと思いますけれども、事業主の社会連帯、こういった理念に立ちまして一定割合障害者雇用企業に義務づける、そして具体的な雇用機会の確保を図る、いわば割り当て雇用制度と言われるもの、この二つの流れがあるところでございます。
  71. 星野朋市

    ○星野朋市君 今分類されたのは、主としてヨーロッパの代表国であるドイツ、フランスというのが一くくり、それからイギリス、アメリカというアングロサクソン系が一くくり、こういう形だったと思うんですが、こういうときに常に話題になるいわゆる福祉先進国と言われるスウェーデン、ここではどうなっておりますか。
  72. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) スウェーデンにおきます障害者雇用対策でございますが、私どもが把握している限りでは、雇用率制度もございませんし、特にまた差別禁止に類似した制度もないわけでございます。  具体的に行われております対策としましては、一般雇用が困難な重度障害者対象といたしまして、国営の保護工場においては、これは国が賃金の全額を支給する、そういった形態の福祉的な就労対策と、それから一般企業につきましては国からの賃金補助制度という形で障害者雇用促進する、こういった対策がとられておるというふうに承知をいたしております。
  73. 星野朋市

    ○星野朋市君 そういたしますと、各国の細かい制度は精査すればわかることですけれども、今度の改正によって労働省は、先進諸外国と比べて今度の日本の制度というのをどういうふうに御自身で評価なさっておられるのか、私はかなり進歩していると思っておるんですが、いかがでございましょうか。
  74. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 諸外国の制度との比較あるいは評価ということでございますが、いろいろな難しい問題はあろうかと思いますけれども、例えば、我が国もその範疇に入るフランス、ドイツ、雇用割り当て制度をとっているこういった国と比較をいたしますと、確かにドイツ、フランスは雇用率が日本の今の一・六に比べるとはるかに高い六%といったような数字になっておるわけでございますけれども、その背景といたしましては、やはり障害者割合が大分違うというふうなこととか、あるいは施策対象となる障害者と申しましても、我が国の場合とは随分違って大変広い範囲で、極端なことを言いますと戦争未亡人なんかもその施策対象に入っているというふうな事情もございますので、一概に比較はなかなか難しいわけでございます。  私どもとしましては、ノーマライゼーションの理念に立ちまして、今回身体障害者精神薄弱者法定雇用率の算定の基礎に入れるということで考えておるわけでございますけれども、こういったことで我が国としては障害者雇用機会拡大につながっていくだろうと思っておるわけでございます。  今後とも、我が国のいろんな状況に即しながら、諸外国の制度も参考にしながら充実を図ってまいりたいと思っております。
  75. 星野朋市

    ○星野朋市君 もう一つ。雇用率が法定の数字に達しない場合、私に言わせれば罰則金だろうと思うんですが、言葉の上では罰則金という言葉は使っておりませんで納付金という言葉をたしかお使いのはずなんです。先ほど申し上げましたように、金融業が非常に悪いときに、なぜそうなのかというのは、実際には障害者の求職が金融業に向いていないのではなくて、金融業自身が、この納付金が比較的安いから、障害者のための施設をつくるよりもそちらの方が安いので、それでなかなか一・〇%ぐらいのところにとどまっているんじゃないかという御質問をしたことがあるんです。そうしたら、金融業にそういうことは言えるかもしれないけれども、ここだけを特別扱いにするわけにいかない、もし引き上げるとなると全部引き上げなくちゃならない、そうすると大変だというお答えが非公式にあったんです。  そのころから比べると、まだ納付金は五万円という数字で、ほとんど変わっていませんね。だから、この納付金というのはどういうふうに決めて、ここのところ全然変わってないというのはどういう理由なのか、お答えいただきたいと思います。
  76. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) この納付金制度のまず趣旨でございますけれども、これは障害者雇用に伴いましての事業主間の経済的負担の調整を図ろうという制度であるわけでございまして、具体的に幾らにするか、その額につきましては、障害者雇用のために特別に必要とされる費用、こういった費用の平均額を基準として定めるということにされておるわけでございまして、現在、お話しございましたように、障害者一人につき月額五万円という水準になっておるところでございます。  この納付金の額につきましては、制度上、五年ごとにその実態を踏まえて見直しを行うことというふうにされておるわけでございまして、現在の納付金の額は、平成三年に見直しを行った結果改定された、引き上げられたところでございます。  今後も、この五年ごとということで、定期的に見直しをしながら適正な額を定めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  77. 星野朋市

    ○星野朋市君 今回の法改正機会に、障害者の就労の場を確保して生活の安定を図ることは大変重要と考えております。  先ほど同僚議員の最後の質問にもございましたけれども、授産所の問題、そこら辺で実際には仕事が相当減っているというような現実も踏まえながら、今後のこの身障者の雇用という問題に関して大臣はどういうふうに積極的に進められていくか、その所信をお伺いして質問を終わりたいと思います。
  78. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 先ほど厚生省さんの年金のときに先生の御質問でお答えをいたしましたが、身体障害者等の皆さんの場合も、企業側雇用すればいい、率を満たせばいいという考え方は、基本的に私は二の次、三の次、こう思っております。  やっぱり身体障害者等の皆さんを主体として、その皆さん能力を発揮できるような職場を求め、それを確保できて、そこで労働を提供し自分の能力を十分示して、ああ楽しい人生だな、こう思うような雰囲気づくりが基本だ、こう思っております。したがって、無理無理に雇わされたとか、無理無理におれ入れてもらってではだめであります。やはり正当に評価されて一般健常者とともに働く喜びは、我々が想像する以上のものを本人はお持ちだと思っております。  そこを中心として、身体障害者等の生きがいを感ぜられるようなそういう人生のお手伝いで、労使関係といいますか労働関係といいますか、その一端を担って頑張りたい、こう思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。
  79. 星野朋市

    ○星野朋市君 終わります。
  80. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時十分まで休憩いたします。    午前十一時四十七分休憩      ―――――・―――――    午後一時十分開会
  81. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ただいまから労働委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、障害者雇用促進等に関する法律の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  82. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 社会民主党の大脇でございます。  まず、本法改正につきまして、障害者雇用率についてお尋ねをいたします。  これまで障害者雇用率達成はどの程度まで進んでいるのでしょうか。とりわけ、達成に関しては大企業ほど達成率が少なく、納付金の納入ということが行われているようであります。さらに、三百人以下の規模の中小企業に関しては、こうした雇用率を充足しているところもありますけれども、納付金等そうした制度が適用されないということになっておりますが、この点についてはどのようにお考えがお尋ねをしたいと思います。
  83. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 障害者雇用率達成状況等々についてのお尋ねでございますけれども、平成八年六月一日現在の障害者雇用状況について見ますと、法定雇用率一・六%が適用されます六十三人以上規模企業の場合は雇用されている障害者が二十四万八千人ということで、率にいたしまして実雇用率が一・四七%でございまして、前年に比べて〇・〇二ポイントの伸びとなっておるわけでございますが、法定雇用率一・六%には依然として下回っておる状況にあるわけでございます。  企業規模別に雇用率達成状況について見てみますと、規模が大きいほど未達成企業割合が多くなっておるわけでございまして、六十二人から九十九人の企業規模では未達成企業割合が四五・六%でございます。また、百人から三百人未満のところでは未達成企業割合が四六・七%でございます。三百人から五百人未満のところでは五七%、また五百人から千人未満のところでは六三・六%、千人以上企業規模では六九・二%が未達成という状況にあるわけでございます。  また、三百人以下の企業についてなかなか改善が見られないのではないかというお話がございましたけれども、中小企業につきましてはリストラの影響等々もかなりあるようでございまして、全体の中で雇用されている障害者はふえているわけですけれども、規模別に見ますと五百人未満のところで障害者はむしろ少なくなっておる、そういった影響をいろいろ受けておるというような実情にあるというふうに認識をいたしております。
  84. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 これまでの身体障害者雇用率制度に基づく行政指導状況でございますが、これなどを見ますと、いわゆる身体障害者雇い入れ計画作成命令件数とか、適正実施勧告件数とか、公表を前提とした特別指導とか、件数がむしろ年度を追って減少をしてきている状況であります。  とりわけ、この法律の実効性担保となっております企業公表制度につきましては、平成四年度以降はゼロというふうになっておりますし、直接指導に関しても平成七年度から一けたになっているというような形で、これはいわゆる労働省の行政指導としては問題ではないかというふうに思うわけですけれども、この実施状況についてはどのような御見解でしょうか。
  85. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 未達成企業に対します雇い入れ計画作成命令ですとか、その後の適正実施勧告の発出の状況でございますけれども、昭和五十二年度の制度発足以来平成七年度まで、これまでの間に雇用率達成企業に対しまして発出しました雇い入れ計画作成命令、この件数は全部で四千七百九十九件、また適正実施勧告の件数は六百五十六件となっておるわけでございまして、それぞれ件数を見ますと、最近は確かに特別指導等減少をいたしておるわけでございます。  こういった中で、適正実施勧告を出してもまださらにその自主的な取り組みが期待できないようなところにつきましては、特別指導を行ってそして公表ということになるわけでございますけれども、この公表につきましては御指摘のように平成四年の四件、実績としてはこれ一度きりということになりますけれども、この四年の公表を契機といたしまして、その後、適正実施勧告あるいは特別指導対象となった企業におきましてはこの障害者雇用についての理解が進みまして、結果として公表に至る事例がなかったということでございます。
  86. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そういう御説明をなされるわけですが、達成率が一・四七でありまして、かわって納付金を納める企業等が約五〇%というふうに伺っているわけです。やはり今後とも企業への対応等についてはどのような形で取り組まれるのかということを前もってお聞きしておきたいと思います。
  87. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 先生、男女雇用機会均等法、改めてまた御審議をいただくわけでありますが、これも女性を均等に扱いさえすればいいという企業の心構えではだめだ、私はこう思うのです。女性の方が職場にあって本当に男女均等であるなどいう実感がわかないと真の実というものはとれない。  この身体障害者の、あるいは精神薄弱者皆さんも同じでありますけれども、さっきからの繰り返してありますが、雇用率を満たしておればいいのではなくて、その中身が、障害者の方からして、その職場におって生きがいを感ずるというふうな雰囲気でなきゃならぬものですから、そこに言いますならば企業を誘導すべく率というものを決めるということであります。  その率を満たしておらないから直ちに処罰だというようなことよりは、やはり個々企業に対していろいろ助言し、指導をし、勧告というようなことで、企業に心の底からそういう職場をつくっていくという心構えを持たせることを優先させた結果が、今お話をしましたように、企業の言いますならば矜持に訴えるという意味での公表制度をとっているわけであります。  公表平成四年にいたしましたが、その事前でいろいろ助言、指導している段階において非常に大きな、先ほどからお話をしているような障害者雇用しようというような雰囲気になってまいりましたので、一応様子を見るかということで今対処をしております。物足らぬというおしかりも私は十分わかるつもりであります。  したがいまして、今お話をした我々の努力とあわせて、この公表制度の仕組みといいますか、それの運営の基準というようなものも、もう一遍改めて俎上に上せてみなければいけないな、こう思っている次第であります。両方絡み合わせて措置をしよう、こんな気持ちであります。
  88. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 確かに大臣の言われるように、企業の矜持に対して雇用率達成を訴えかけるということも重要だと思いますが、ぜひその運営の基準を見直されまして、やはり公表制度の実のある実効性というものを私は望むものであります。  今回は、精神薄弱者を含む新たなる法定雇用率設定のために法律案改正されるわけでありますが、精神薄弱者を含んで雇用をしていくという、それを進めるための前進的な法改正として私も賛意を表するものであります。  今般の改正に対する、そしてそれの実効に対する大臣の御見解を伺いたいと思います。
  89. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 大脇先生には、私ども法律案を提案するという態度について前向きだというように伺えるお言葉をちょうだいして、まことに恐縮でございます。  今、先生お話をなさいました精神薄弱者、これも法定雇用率の中に入れるよということのほかに、やはり企業として子会社障害者雇用するという、言いますならば条件を多少緩和いたしまして、雇用率達成といいますよりは一人でも多く楽しい気持ちで職場で働いてもらえる皆さんをつくりたい、こう思っている二点目と、それから三点目は、今まではどちらかといいますと、失礼な言葉でありますが、心にあるいは体に障害をお持ちの方だと、失礼しますが弱者だと、したがって弱者に手を差し伸べなければいかぬのではないかというような考え方でこの障害者雇用の問題も取り組んでまいったのでありますが、そうではない、もう一歩進めて、福祉的な意味でではなくて一般の雇用健常者と同じように働ける職場にし、そこで働いてもらい、人生に生きがいを感じてもらえるというようなふうに考え方を変えていこうというような、この三点が中心で今度の法律案は案としてつくらせていただいた、こんなつもりでありますので、よろしく御審議を賜りたいと思います。
  90. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうしますと、いろいろな算式が法定化されておりますが、法定雇用率というものは一・六からどの程度までアップしていくのかという点についてお尋ねをします。
  91. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいまの点でございますが、現在、法定雇用率一・六%ということでございます。これが今回、ただいま労働大臣がお答え申し上げましたとおり、精神薄弱者の方もきちんと雇用率に入れて考える、こういうことになった場合に具体的な率がどのぐらいになるか、こういうことでございますが、この点につきましては関係審議会においていろいろ御議論をしていただく、こういうことになっております。したがって、法律の成立後、障害者雇用審議会において御議論をいただき、政令で定めるという手順でございます。  ただ、考え方としては、この関係審議会において意見書として提出されておりますとおり、具体的な法定雇用率設定に当たっては、調査結果を基本といたしますが、既に精神薄弱者の実雇用率が〇・一四%になっていること、精神薄弱者雇用に伴う事業主の方のさまざまな負担、そういうものを考慮し、その負担過度にならないようにすることに留意する必要がある、こういう意見書が出ておりまして、そういう点を踏まえて具体的な検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
  92. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 親会社営業上の関係が緊密であることという要件が廃止されることによって、いわば身体障害者精神薄弱者障害者を一般雇用へ移行するという、そういう流れと逆になって、むしろそういう人たちを一定職場に囲い込むという危険が出てくるのではないかという点を危惧するわけでございますが、その点についてはどうでしょうか。
  93. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 特例子会社制度につきましては、その制度発足当初に、今お話ございましたように、ノーマライゼーションの理念に反する状態を招くようになるのではないか、そういった懸念が指摘をされておりましたけれども、その後実際に設立されております特例子会社の例を見てみますと、例えば親会社と同じ敷地内に設けられているといったようなことで、親会社の従業員との交流も確保されているとかいうような状況がございまして、実態としてはノーマライゼーションの理念に反するものとはなっていないという状況でございます。  したがいまして、この特例子会社の設置を今回要件緩和するということにつきましては、むしろ障害者雇用機会拡大につながりますし、また、障害者に配慮された職場環境の中でその有する能力を存分に発揮する機会が増大をする、そういったメリットもあるわけでございます。この施策については大変有効であるというようなことで障害者団体からも御賛同をいただいたところでございます。  御心配の点でございますけれども、今回この要件緩和いたしますが、そのほかの認定要件、例えば親事業主子会社の株式を五〇%以上保有していることですとか、親事業主と人的な関係が緊密であることですとか、障害者雇用管理を適正に行う能力を有すること、こういった要件につきましてはこれからも満たしていただく必要があるわけでございまして、依然として親企業による経営の安定の努力障害者に対する適正な雇用管理、こういったものへの配慮がなされるものとなっておるところでございます。
  94. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 茨城県のアカス紙器の事件につきましては、前社長に懲役刑が求刑されましたし、さらに不正に受給をいたしました助成金の給付の返還命令が出されたということになっておりますが、就職をあっせんしたその後の労働条件、その他労働環境のフォローアップとか、給付された後の使途の調査とか、あるいは最低賃金すら下回るような給料が支給されていたというような事実が明らかにされておりまして、そういうことに関して幾たびか調査を申し立てたという事例があっても、障害者自身からの聞き取りもなかったという経過など報告されております。こうしたケースが再発しないためのチェックの体制というものを今後どのようにお考えでしょうか。それに関して担当者と、それから大臣の御所見を伺いたいと思います。
  95. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 今般のアカス事件でございますけれども、ただいまお話ございましたように、特定求職者雇用開発助成金が不正に申請をして支給されたということでございますけれども、今回の事件を教訓といたしまして、こういった助成金の審査体制につきましては、支給申請時に記載をしていただく書類がございますけれども、その記載事項の改善について検討をいたしておりますし、また支給決定した後、事業所訪問によりまして実地調査を徹底するといったようなことで適正支給に努めてまいりたいというふうに思っております。  また、これまでも安定所の方では就職先に赴きまして、雇用管理指導ですとかあるいは職場適応指導、こういったものをやっておるわけでございますけれども、こういった指導をさらに徹底をいたしますほか、障害者を五人以上雇用している事業所につきましては計画的に訪問を行いまして、事業主障害者の方、双方に直接面談することによって雇用管理の実態を確認をしていくといったようなことで考えておりまして、先般、この旨を徹底するように関係方面に指示をいたしたところでございます。  さらにもう一つ、地域レベル関係機関との連携を図っていくことが大変重要でございますので、各安定所単位で福祉関係機関も含めて設置をされております障害者社会復帰連絡会議、こういったものも充実強化をして事件の再発防止に努めてまいりたいと考えております。
  96. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 大脇先生大臣にというお話でありますので、今の政府委員お話で事務的には尽きていると思っておりますが、こういう障害を持つ皆さん雇用の面で積極的に挺身されている雇用主、事業主、いっぱいあると思います。その中で、このアカス、まだほかにもあるわけでありますが、本当に精神を踏みにじる、真っ当な経営をされている企業主までこういうことをやっているんじゃないかというように思わせるような事件がありましたことはまことに残念で、この事業主については本当に憎んでも余りあるものだと私は思っております。  問題は、部長が言いましたように、事後の措置で送検をしたとか返還の請求をしたとかいうことではなくて、事前にもう少し早くこういう雇用職場実態というものを我々がつかめれるような体制にしなければいけないと。しかしながら、企業があまたある中で、もう片っ端からというわけにもこれはまいらない。  そうすると、障害を持たれる皆さんのこういう職場における生活がどんなであるかというのはなかなかつかみにくいのでありますけれども、企業の方に行く、あるいはでき得べくんば、今部長が言いましたような社会復帰連絡会議とかいうような関係の機関が一体になってやる、そういう機能もありますので、そういうような意味合いで、企業に行くと同時に御家庭にもお邪魔をするというようなことができたらいいなと。経費も要ります、人員も要ります、あるいはボランティアの皆さんにも御協力がいただけるような世の中になってまいった、したがってその辺でも手があるかなと。  今後、あれやこれやの手を講じて実態というものをつかまえ、未然に防止できるということであるよう努めたいと、こう思っておる次第であります。
  97. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 ありがとうございました。終わります。
  98. 川橋幸子

    川橋幸子君 民主党・新緑風会の川橋幸子であります。  私も、同僚の大脇委員がお尋ねになったアカス事件につきましてお尋ねしたいと思います。  質問に入ります前に、障害者雇用促進法の改正については賛成でございます。法案改正そのものについては賛成でございますし、また、さらなる達成率の上昇等努力すべきことがありますが、当面の改正努力は賛意を表したいと思います。  大部分、こうした雇用促進努力というものはいい方に企業の中でも活用され、あるいは障害者の方も雇用促進されるといういい面があるんだと思いますが、悪用されたという非常に残酷な悲惨な事件がこのアカス事件でございます。これは最新号のアエラでございましょうか、ちょっとタイトルだけ読ませていただきますと、「知的障害者を食い物水戸「福祉工場」の地獄」というような、こういう表現でございます。  大臣も大変憂えておられた御答弁があったわけでございますけれども、いま一度労働省といいますか大臣にお答えいただきたいのは、これからは助成金を給付した後のフォローアップをよくやる、直接に事業場に行って障害者自身にも会って話を聞くということはわかるのですけれども、今回のこの件は、検察の起訴に至る前にも、さまざまな報道によりますと、監督署、安定所、福祉事務所、そして警察等々、再三にわたり関係部署を回ったけれども、相手にされず黙殺されてしまったと。  知的障害者の方々、表現力等々非常に困難なことを持っていらっしゃる。その方々が窓口に来られて、そのSOSのシグナルを察知できなかったという、あるいは自分のところが察知できなければ関係のところに相談してみてあげるという、そういう関係行政機関同士の連絡もなされなかったということが非常に大きな問題のように思います。  大臣、恐れ入りますが、その点についてもう一度お答えいただきたいと思います。
  99. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 先ほど話をしましたように、実態について事前に我々が情報が入手でき、事前にいろいろな手が差し伸べられること、これが私は理想であり、何とかその理想を現実化しなければならないとお話をしたとおりであります。  アカスにつきましては、たまたま元従業員の方が平成七年の十月に水戸の職安においでになった、情報を提供していただいたと。それから十一月にはそのお母さんから情報の提供があったと。直ちに手が打てなかったかということでありますが、私もそう思いますが、実は送検をしましたのが翌年の正月であります。そうすると、一カ月あるいは二カ月の間に送検まで持っていったと。それからまた返還請求については、これは同年の七年の十二月に出しております。したがって、事前にこういうような実態が積み重なって、この元従業員の方が来た、そのお母さんが来たということだから、もっと前から情報をキャッチできなかったかと思いますが、初めてこの情報を入手してからの措置は、僕はよくわからないのでありますが、余り遅過ぎたというほどでも――怒られますか。というように、今私は先生の御質問にあわせて部下の者から聞いたところではそういった日時があります。  極力事前に情報が入手でき、事前に手が打てるようこれからも努力をしてまいろうと、こう思っている次第であります。
  100. 川橋幸子

    川橋幸子君 新聞報道によりますと、例えばこういうことがあります。  九四年春に、余りのひどさに逃げ出して、監督署、安定所、福祉事務所を訪ねたけれども何の対応もしてもらえなかったと、警察も福祉事務所も職安も愚痴かと思ったという記事がございます。その事実のほどは私は知りようがありませんけれども、そうした弱い方々のSOSに対する、人権の問題としてキャッチする人権意識というものがちょっと労働省は薄かったのではないかと大変残念に思います。  もう既にこの件につきましては厚生大臣も衆議院の予算委員会でお答えになられたようでございますが、厚生省、お見えだと思いますけれども、厚生省いかがでございましょうか。
  101. 林民夫

    説明員(林民夫君) 御指摘のような事件につきましては、障害者の福祉を担当いたしております厚生省といたしましてもまことに遺憾であるというふうに考えておるところでございます。日々就労を目指して訓練をされておる障害者の方々にも就労についての不安を与えたのではないかというふうに思いまして、非常に残念に思っておるところでございます。  本件を契機といたしまして厚生省といたしましては、具体的には茨城県に対しまして再発防止の対策を検討するように指示をいたしまして、これを受けまして茨城県におきましては、電話相談でございますとか、あるいは法律面を含みます専門的な相談を行います障害者一一〇番事業というものを九年度から実施をされる予定であるというふうに承知をいたしております。  また、茨城県におきましては平成七年十一月に告訴がなされるまでは人権侵害の事実を認識できなかったというふうに報告を受けておるわけでございますけれども、私どもといたしましては、知的障害者の方というのは人とのコミュニケーションに困難が伴う、自分の意思や気持ちを十分に伝えることが難しいという面があるということを踏まえまして、こういった人権侵害の再発を防止するために、各都道府県に対しまして累次、福祉事務所等におきまして知的障害者の相談の趣旨を的確に把握してください、また関係機関と密接な連携をとるようにというふうに指導をいたしておるところでございます。  今後ともその指導を徹底いたしますとともに、障害者の権利擁護につきまして、保健・福祉の立場からさらにどのような施策を講じたらよいのかという点につきましても検討してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  102. 川橋幸子

    川橋幸子君 さて、警察にも再三にわたり障害者の方々が訪れたようでございます。警察の方は八月一日に助成金の詐欺ということで、これは逮捕されたのでしょうか、とにかく立件されたものにつきまして送検をして、今月末ぐらいの公判それから判決ということになっているようでございますけれども、さまざま報道の中を拝見しますと、知的障害者の方々には証言能力に不安があるというようなことから、ともすれば初動段階で捜査がおくれる。今回も結局は立件されたものは詐欺と暴行傷害罪ということであって、本当にここに報じられております数多くの被害者、女性の場合は強制わいせつどころか強姦、準強姦というような性犯罪の大変悲惨な事件があったわけでございます。  警察も、捜査をして間違いなく構成用件を固めて送検することに熱意が入り過ぎると、むしろ初めのうちのキャッチ、身障者、障害者の方の人権というもののキャッチが遅いのではないかと私は思いますが、いかがでしょうか。
  103. 松尾好將

    説明員(松尾好將君) 今のお尋ねの件につきましては、平成七年の十月十一日に私どもは最初の被害届を受理したというふうに承知をしているところでありまして、もとより捜査におきましては、その関係者の人権というものを十分尊重した上での活動をやるということは当然のことでございます。
  104. 川橋幸子

    川橋幸子君 何か大変そっけないお答えのような気がいたしまして、私は残念でございます。人間の財産、生命をしっかりと守るというのが警察の仕事であって、送検することだけが仕事であるわけはない。むしろ、警察でキャッチされたら関係行政機関に自分の方からちょっと一報を電話してあげる、それが一番の身近に感じる警察の務めではないかと思いますが、いかがですか。
  105. 松尾好將

    説明員(松尾好將君) 警察といたしましてはおっしゃるとおりでございまして、その事案の内容ですとか、あるいは被害者等からの要望等を総合的に勘案いたしまして、今後とも適切に対処してま、いりたいというふうに考えております。
  106. 川橋幸子

    川橋幸子君 適切に対処の中身を聞いておりますけれども、適切に対処としかお答えいただけないということで、時間がむだですので先に進みます。  再犯防止につきましては労働省の方も早速手を打たれたようでございますけれども、不正受給がないようにというよりも、むしろこれは助成金が悪用されて人権侵害のおそれを生むような、そういう温床を生み出さないようにするということが大切かと思うんです。  安定局の方の職場適応指導の通達も拝見しまして、大変よくできているなとは思うんですけれども、日常的な暴力行為というのが一言あるだけで、今回の事件の本当の深刻さというのが何かちょっと伝わらないような、人権という言葉も出ていないような感じがいたしました。これは感想でございます。  労働省には、労働者労働条件を守る労働基準行政というのがもう一つあるわけです。最低賃金違反もございましたし、今度は賃金不払い事件もあるということであったわけですけれども、そういう労働関係法規の違反の前にこういう非常に人権侵害の問題があったということは、労働者の権利をちゃんと守る、それを監視する、監督するという監督行政の立場からも、この点は今後の再発防止について何か手を打つ必要があると私は思いますが、いかがでしょうか。
  107. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 今回の事件につきましては大変残念な事件でございますが、平成七年の十一月に所轄の水戸の労働基準監督署に母親の方から最低賃金違反の問題につきまして申告、相談がございまして、私どもはそれを受けまして直ちに事実確認に入りましたところ、賃金台帳の虚偽記載、また最低賃金を下回る賃金、そういった事実が発見されまして、平成八年の一月には書類送検をいたしたところでございます。  ただ、こういった法令上の問題の背後には、御指摘のような重大な人権にかかわる問題があったわけでございまして、私ども、労働者の方の保護に当たるこういった労働基準監督機関は、人権問題については所管の法令にかかわることなく幅広にこういった問題について注意するようにかねて指示をしていただけに、そういった事実を大変重く受けとめておるところでございます。  今般の事件を踏まえまして、改めまして、そういった相談、申告等がありました場合には、表面的にとらえるだけではなくて、注意深くそのお話を聞き取り、そこからうかがわれる背後にもし重大な問題等があれば、それらを十分留意して対応するように、またそういった具体的な指示を発したところでございます。  今後ともそういった指示をさらに徹底させますとともに、関係機関と連携を密にいたしまして、こういった情報の早期把握、問題の早期発見に努めてまいりたいと思っております。
  108. 川橋幸子

    川橋幸子君 本省段階では適切に手を打つ、警察の方もおっしゃったように適切に対処するということであるのですけれども、やっぱり第一線の職員の方々にこれを周知徹底していただきたいというのが私の要望、希望でございます。  報道によりますと、報道によりますとですからその信憑性はわかりませんが、でも、そういうことがあって不思議はないなというようなことを感じさせる記事の中に、例えば最賃が払われていないというふうに監督署で言ったら、そんなことを言ったらあんた解雇されるよと逆に監督署の職員が言ったというようなことが出ているわけでございます。ぜひ第一線の職員の方々に対する人権意識というものをいま一度しっかり徹底していただきたいと思います。  さて、最後に法務省の方に伺いたいと思いますが、障害者の人権侵害、これは古くからありますし今もあります。特に精神障害者の方々、知的障害の方々にとっては、自分でそれをチェックする能力がないことから非常に弱い立場に置かれるわけでございます。今回は助成金にまつわって職場ということがありますが、さまざまマスコミのキャンペーンによりますと、学校、病院、福祉施設等々の中で、密室状態の中で人権侵害が行われることが後を絶たないわけでございます。  さて、人権擁護を所管するところといいますと、やはり法務省でいらっしゃるわけでございます。私どうも不思議なのは、こういうふうな事件が起きたときに、法務省の人権擁護局、それから人権擁護委員という方もいらっしゃいます。人権擁護委員の職務を拝見しますと、絶えず人権侵害がないかそれを監視するということまで書かれているわけでございますけれども、どうしてそうした機能が発揮されないのかということが不思議でなりません。  特に女性の場合でございますけれども、一昨年、北京で国連の女性の世界会議があったわけでございます。世界的な傾向としましては、性というのは人格の一部、女性の性犯罪といいますか性暴力の根絶というのが非常に大きな課題になって、それを取り入れまして日本の国内行動計画の中でも、多分法務省が出された文言だと思いますが、二〇〇〇年プランの中ではそれをはっきりと明記していらっしゃる。女性に対するあらゆる暴力の根絶を図る、性犯罪には厳正に対処する、被害女性には救済を図るというようなことがプランの中に盛られているわけでございます。  どうか法務省の方から、今後しっかり取り組んでいただくという意味でこの総合的な取り組みについてお話しいただきたいと思います。
  109. 竹田盛之輔

    説明員竹田盛之輔君) お答え申し上げます。  障害者の人権問題につきましては、障害者の完全参加と平等の実現ということを私たち人権擁護機関の最も重点的な強調事項といたしまして各種啓発活動を行ってまいりました。なかんずく、障害者に対する虐待等あるいは不法な人権侵害に対しましては人権侵犯事件等として対処してきたところでございますけれども、障害者の人権擁護の見地からいたしますとなお十分なところでなく、その結果といたしまして先生指摘のような人権侵害が生じ、重大な問題となっていることを大変遺憾に思っているところでございます。  法務省といたしましては、今後とも障害者の人権擁護に十分配意いたしましてさらなる啓発活動充実強化に努めるとともに、人権侵害の疑いのある具体的な事案につきましては、これを人権侵犯事件といたしまして積極的に取り組んで、障害者の人権擁護がされるよう努めていきたいと思っております。  また、先生がただいま御指摘になられました女性あるいは幼児、児童に対する性的暴力等につきましては、近年、国内のみならず国連等の場におきましても非常に関心の高い問題となっておりまして、特に幼児、児童に対する性的暴力、性的搾取につきましては、我が国国民の人権意識が国際的にも問われるという重大な問題であると認識しております。  私たち法務省といたしましては、障害者、なかんずく女性あるいは児童の人権に対する国民一般の理解促進を図りまして、障害者、女性、児童に対する性的な暴力その他虐待を未然に防ぐために、この問題に対する国際的動向にも留意しながら、人権教育のための国連十年における取り組みを初めとしまして、各種啓発、広報活動充実強化を図るとともに、人権侵害の疑いがある事案につきましては人権侵犯事件として積極的に取り組んでいく所存でございます。
  110. 川橋幸子

    川橋幸子君 どうかしっかりお願いしたいと思います。広報、啓発、麗しい言葉がいっぱい並びますけれども、現実の事件に対して鋭い感覚を持ってほしいということ、それから被害者に対しては個別の救済にちゃんと具体的に乗り出していただきたい、そのために国民一般の教育の前に公務員の教育をしっかりやっていただきたいと思います。  終わります。
  111. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 昨年の九月だったと思いますけれども、私たち労働委員会から九州に視察に参りました。これは希望の里というところで、それでその中のホンダというところでこのパンフレットをいただきましたけれども、この視察に行ったときに私ははっとするような感動を覚えたことがあります。それはまさに、身体あるいは精神に障害を持つ方、あるいは今の法律用語で言いますと精神薄弱者と言うんでしょうか、そういう人方が寮で仕事をしているところへ行ったときに、薄弱者の皆さん方はともすると家の中でちょっと過保護になっていて、時々言うことを聞かなくて困ることがある、そういうときには、そんな言うことを聞かないとあした仕事をさせないよと、こう言うと一遍に言うことを聞いて、どうぞあしたも仕事をさせてくださいと、こういうふうに言うということをその係の方から説明を受けて、私は全くはっとするような感動を覚えました。  我々がもししかられるときには、そんな言うことを聞かなかったらあした仕事をさせるぞと言うと慌ててやめるというのは、私の子供のときなんかそんな身に覚えがありますけれども、仕事をさせないと言うとびっくりしてすぐに言うことを聞くというのは、勤労ということがいかに人生にとって楽しく重大で生きがいのある問題だということを、この今の時代はそこまで私たち人類は持ってきた。かつて勤労というのは本当に苦痛で苦悩なものだった。それが、働くということが非常に楽しいという、そういう社会まで持ってきたというのは、私は本当に人類の英知を出してここまで発展させてきたんだというふうに思います。  そういう意味では、そういう社会をつくったという労働省に大いなる拍手を送った方がいいかどうかちょっと考えながら、いずれにしましても、そういう普通の私たちも含め、そして障害を持つ人力も含め、勤労ということが本当にすばらしいことだという社会、そして障害を持つ人も働けるという、こういう喜びを感じるようになったこの社会はノーマライゼーションと呼ぶのでしょうか、私はこのノーマライゼーションという考え方は本当にすばらしい、人類が歴史の発展の上でここまで人間の尊厳というのを持ってきた社会ということで、大変うれしい思いがいたします。  そこで大臣にお聞きいたしますが、労働行政をする上でノーマライゼーションという考え方をどういう位置づけでもってお受けとめになっているのかを聞きたいと思います。
  112. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 一人の人間としてというか、一個の人格として、やはりすべての皆さんが完全に社会に参画をする、あるいは平等に活動をするということが私は一つの理念として先生のおっしゃるノーマライゼーションという言葉になっているのだろうと、こう思っております。  私は、石渡先生の最初のお話のときに、先生が今お話をしたことをこんな表現でいたしました。やっぱり能力があり、やらんかなという気力のある身体障害者等の皆さん健常者とともに仕事に励むということは我々の想像を絶する大きな喜びではないかなと、こう思ったのでありますが、天草における先生の御感想は私の感じとぴたっと合っているのではないかというような意味合いで、一個の人格として平等に参画する、つまり福祉行政ということでそういう皆さん雇用機会を与えるのではない、健常者とともに一個の人格として平等に職場にも参画をすることができるような環境づくりをする、これが私どもの考えで、今回御提案を申し上げておりますところのこの障害者雇用法律案に相なっているわけであります。
  113. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 本当はもっともっと大臣の大演説をお聞きしたいんですが、時間が限られておりますので、後にさせていただきたいと思います。  今、大臣お話のように、こういう非常に私から言いますとすばらしい発想を具体的に実現するのが労働行政だというふうに思いますので、この考え方を常にしっかり押さえながら今後とも労働行政にお励みいただきたいと、まずもってそのように申し上げたいというふうに思います。  それでは、具体的な質問に入らせていただきますけれども、法定雇用率等があるんですが、ドイツ、フランス、オランダという国は非常にすぐれているというふうに聞きますが、まずドイツ、フランス、オランダの法定雇用率をお聞かせください。
  114. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) ドイツ、フランス、オランダにおきましては、我が国のように事業主の社会連帯という理念に立ちまして、一定割合障害者雇用を義務づけるということにしておるわけでございます。  その具体的な雇用率でございますけれども、ドイツでは六%、これは十六人以上の常用労働者雇用している事業所が適用されるということでございます。また、フランスでも雇用率は六%、フランスの場合は二十人以上の企業に義務がかかっておるようでございます。オランダは実は雇用率が業種別に設定をされておりまして、高いところで七%、低いところで三%という状況になっております。
  115. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 これは日本と比べるともう雲泥の差と言っていいぐらい大きな開きがあります。本来でしたら、どうしてこんなに開きがあるんですかとお聞きしたいところだったんですけれども、時間がありませんのでこの次に具体的にお聞きしたいんですが、どっちにしても、十六人以上は六%、フランスでは二十人以上が六%というふうに日本とは比べものにならないぐらい高い雇用率ですので、できれば世界に通じる日本の温かい障害者に対する思いやりという、そういうことにこれからも配慮していただきたいと思います。  その一環として、私は、先ほど石渡先生の方でも訓練によってできるんだという御質問がありましたけれども、やっぱり障害を持つ人というのは健常者よりもずっと訓練が必要だというふうに思うんです。  そこでお聞きいたしますけれども、能力開発の訓練校というんでしょうか、その現状をちょっとお知らせください。
  116. 山中秀樹

    政府委員(山中秀樹君) 先生のおっしゃるとおり、精神薄弱者障害者雇用の場の確保あるいは雇用の維持を図っていく上において、適切な職業訓練実施するというのは極めて大切なことだというふうに思っております。  具体的に、現在、障害者職業訓練校は全国で十九校ございます。その中で、精神薄弱者に対する特別なコース、縫製あるいは製本、洋裁、園芸等々、こういう形で特別の訓練科を設置して訓練を実施いたしておりますし、あるいは食品加工とか畜産等、これは職業訓練校にない訓練科目でございますので、そういうものについて民間の教育訓練施設等に委託して訓練を実施する等柔軟に対応しております。  このように障害者の多様な訓練ニーズがございますので、それにできるだけこたえられるような職業訓練機会の確保に努めていると、こんなような現状でございます。
  117. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 私は、これから一にも二にも、職業の訓練というんでしょうか、能力開発というんでしょうか、そういうことにやっぱり力を注がなければ、こういうノーマライゼーションの社会というんでしょうか、あるいは職業をかえたいと思う、そういう自由というのが図られないというふうに思いますので、その点も十分これから力を入れていただきたいというふうに思います。  さて、先ほど日本の雇用率と外国の雇用率に非常に開きがあるということが明らかになったんです。私はこれから文部省にお聞きいたしたいと思いますが、文部省というのは教育、文化を担当するわけで、いよいよ私は日本の将来の夢と希望を持った行政だというふうに思うんですね。文化を概念づけなさいというと大変私は難しいと思うんですが、しかし文化というのは、やっぱり野蛮性とか暴力的なこととか、そういうことを排除する社会の実現というふうに言ってもいいのではないかなというふうに思うんです。ですから、やっぱり昔のように直接暴力をするのではなくて、現代の野蛮というのは、私は人を差別することが現代の野蛮だというふうに思います。  ですから、そういう点では文部省というのは人を差別しない社会を具体的につくっていく省だというふうにかたく信じ、信頼しているんですが、どうもこの法定雇用率を見ると私の信頼を余り裏づけないように思うんです。さて、文部省の教育委員会における法定雇用率の率をちょっとお聞かせください。
  118. 工藤智規

    説明員(工藤智規君) 先生おっしゃいますように、教育の場で子供たちに弱者への思いやりの心をはぐくみながら差別のない社会の実現というのは大切なことでございまして、私どもそういうふうに取り組んでいるつもりでございますが、今先生お話し障害者雇用率という点で見ますと、昨年、行政監察で示されたデータによりますと、〇・九八%、約一%という水準のように承知しております。
  119. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 〇・九八%と一%とでは随分違うと思いますので、繰り上げないでいただきたいというふうに思います。これは一%以下ということなんですから、ここが重大でして、私が文部省に夢と希望をかけて差別のない社会を実現する省としてのあり方としているのに、一%もいかない理由はどこにあるのでしょうか。
  120. 工藤智規

    説明員(工藤智規君) いろいろあろうかと思いますけれども、御承知のように、教員になるためには教員免許を持っていなければいけないというのがございまして、そもそも教員免許の取得者がいかがなものであるかということと、最近少子化の状況がございまして各都道府県での教員採用の全体の数が少なくなっているというのが一つございます。また、教員に採用されるためには教員の採用選考試験があるわけでございますけれども、障害者の方になかなか多数応募していただいていないという状況もあるわけでございます。  ちなみに、私どもが各県市に御照会して調べたところによりますと、各県市とも障害者雇用について随分いろいろな努力をしているのでございます。教員採用試験に当たりまして募集要項でちゃんと明記したりとかいうことはもちろんでございますけれども、例えば視覚障害者のためには点字受験を認めたりとか、あるいは拡大鏡の使用を認めたりとか、時間延長をしたりとか、さらには、そのほかの障害者の方も含めて別室での受験、あるいは介添え者ですとか、手話通訳の配置をするとか、実技試験を免除するとかといういろいろな配慮をさせていただいているわけなんでございます。  近年の志願状況を各都道府県から聞き及んだところによりますと、ここ数年で実際の志願者が百人弱なんでございます。ただ、志願者数はそうでございますけれども、実際に採用された方々の数というのは二割から三割というぐあいでございまして、一般の応募者に比べては合格率が高いといいましょうか、採用率が高い状況なんでございます。  いずれにしましても、各県とも別に門戸を閉ざしているわけではなくて、特段の配慮をしながらできるだけ雇用促進に努めていると私ども承知しておりますけれども、今後とも各県を御指導させていただきながら法の趣旨の実現に努めてまいりたいと存じております。
  121. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 こういうことというのは言いわけではなくて結果だというふうに思いますので、特に非現業職場では二%という法定雇用率ですから、半分にも満たないというのは非常に私は問題だと思います。  そういう意味では、やっぱり教育の現場というのはいかに差別をなくするかという現場なんですから、障害を持つということがいかに今差別されているかということを排除するためにも、先生の中に障害を持つ先生がいても私は一向に構わない。  というのは、去年、私は図らずも転んで足の靭帯を切りまして、まさに車いすの生活になりました。やっぱりいつどこで障害者になるかわからないんだなというふうにつくづくいい経験をいたしました。まあ障害課の皆さん方には大変お世話になって、労働省もいいことをするんだなというふうにつくづく思ったわけですけれども、私もいつ自分が障害者になるかわからない。だからといって、先生が適職でないかというと、そうではないというふうに私は確信を持っております。  やっぱり応募が少ないというのはそれだけ門戸が狭いからみんな応募しないのであって、私はやっぱりどこかにやる気がないというふうに思います。別に文部省を責めるのではなくて、文部省を信頼するがゆえにもっと頑張って法定雇用率達成のためにいろいろと御配慮いただきたいというふうに思います。  さて次に、除外率の件についてお聞かせいただきたいというふうに思います。  昭和五十一年に、障害者雇用促進法施行規則によってこの除外率というのが定められたのですけれども、昭和五十一年というともう今から随分前の話になります。依然としてこの表は改正されていないように思います。今の時期は、例えば車にしても、これは車の運転とかバスは非常に除外率が高いんですけれども、しかしいろんな機器の発達によって随分改善されていると思うんですが、この除外率の率の改善というのはどのようになっておりますか。
  122. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 現行の除外率制度でございますが、ただいまお話ございましたように、昭和五十一年以来二十年近く現状のまま来ておるわけでございます。  ただ、この除外率制度につきましては障害者雇用審議会でもいろいろ御意見がございまして、問題提起がございました。現行の制度については、技術革新とか作業環境の改善等によって実態とかけ離れてきているのではないか。障害者の一層の職域拡大を図る必要があるわけであるから抜本的に見直すべきである。しかしながら、実態面を考慮すると直ちに抜本的な見直しを行うということにはなかなか困難な面がある。これまでの取り扱いも考慮すると、当面、現行の除外率制度の存続はやむを得ないというふうな御意見もいただいておるわけです。  ただ、それにあわせまして、今後、除外率設定業種につきましては、その業種における障害者雇用事例の収集ですとか、あるいは提供ですとか、あるいは職域拡大を図るための措置、こういったものを講じながら除外率設定業種の障害者雇用促進を図って、除外率制度については基本的に縮小することを前提に検討を行うべきである。そして次回の見直し、五年後の見直しに合わせて措置することが適当である。こういった御意見もいただいておりますので、今後、この審議会の意見書に沿っていろいろ検討をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  123. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 本当に、これはやっぱり雇用率を高めるという意味も含めまして大幅に見直した方がいいんじゃないかというふうに私は思います。  では最後に、納付金制度についてお尋ねをいたします。  簡単に言いますと、企業の規模によって納付金制度は違いますけれども、五百人以上あるいは三百人から四百九十九人というようなところは雇用率が比較的順調に伸びていると言ってもいいんですが、百人から二百九十九人の間の企業が、これは納付金制度とかいろんな問題がちょっと違うわけですので、伸び率がかえって横ばい、ちょっと下がっているという傾向があるんですね。これはやっぱり私は、百人から二百九十九人の間の企業に対する政策がちょっと間違っているんじゃないか、こういうふうなことのどこかが順調にいっていないから雇用率が伸び悩んでいるんじゃないかというふうに思うんですが、その点はいかがでしょうか。
  124. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 御指摘のように、納付金の徴収等の対象範囲、従業員三百人以下の企業へも拡大するように検討すべきことは、昨年五月の総務庁の行政監察結果に基づく勧告におきましても指摘がされているところでございます。  ただ、しかしながら、現行制度上におきまして、中小企業におきましては全体として実雇用率が高い水準にある中にありまして、中小企業におきます経済的能力が大企業に比べて大きくないこと、従業員が三百人以下の中小企業からも納付金を徴収することとした場合に、徴収コストの面から非効率なものになること等の問題がございまして、従業員が三百人以下の規模の企業からは徴収しないこととしているのが現状でございます。  ただ、いずれにいたしましても、この問題につきましては勧告で指摘もされておりまして、今後の検討課題であるというふうに受けとめているところでございます。  なお、百人から二百九十九人規模の企業におきまして実雇用率が横ばい傾向にございますが、これにつきましては、常用労働者数、障害者数ともに減少しておりまして、新規に雇い入れられた障害者も減少していること、さらには離職した障害者も多いことなどを考えますと、景気の低迷による事業縮小がこの規模で行われておりまして、これによる影響が大きく出ているのではないかというふうに推察いたしているところでございます。
  125. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 終わります。
  126. 吉川春子

    吉川春子君 障害者が経済的に自立するということは非常に重要なことでして、障害者雇用促進法はそれを支援し援助する法律です。第一条で、障害者がその能力に適合する職業につくことなどを通じてその職業生活において自立することを促進する措置を講じ、障害者の職業安定を図ることを目的としています。  私は、憲法二十七条の勤労の権利義務、この法律の総論はこの憲法二十七条に発すると思うんです。このことをやっぱり明記すべきだと思うんですけれども、なぜそれがこの法文に言及されていないんでしょうか。  ちなみに、労働省関係法律というのは、例えば労基法、労組法は、憲法二十七条、二十八条が根拠規定ですし、職安法は憲法二十二条に言及していますし、雇用機会均等法も憲法十四条に言及しているということなのですが、憲法二十七条ということをこの法文に明記すべきではないのかと思いますが、いかがですか。
  127. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 先生指摘のように、憲法二十七条第一項におきまして、「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」とされております。これにつきまして、一般的にこれは国民に対して保障されるべき権利でございまして、判例通説はこの責務が国にあるということでございますが、国の責務のあり方としましては、これは基本的人権の中の社会権と言われるものでございます。  これを具体的に実現する方策としては、失業した方々について、職を求める場合に国として職業紹介により仕事のあっせんをする、そのあっせんがうまくいかないでなおかつ失業が継続される場合には失業給付により生活の安定を図る、こういうようなことを義務づけているもの、こういう考え方から、ただいま御指摘のように、職業安定法及び雇用保険法、こういうものが制定されているというふうに一般的に解されるところでございます。  これらの法律につきましては、当然これは障害者の方々にも適用されるわけでございまして、そういう意味で職業安定法、雇用保険法等の政策があるわけでございますが、それにプラスいたしまして、特に障害者の方々についてはこの雇用がなかなか進まないという観点から、特別法として障害者雇用促進法が設けられて、これによって対策がとられる、こういう考え方であろうというふうに考えております。
  128. 吉川春子

    吉川春子君 長い御答弁でしたけれども、端的に伺います。  大臣、やっぱり障害者雇用促進という点についても憲法二十七条にきちっとその根拠があるというふうに考えていいですね。
  129. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 二十七条第一項、「すべて国民は、」とありますので、身体障害者もすべて国民のこの中に入っている。それがなぜ促進法の一条に入っておらないかと、これは法技術上の問題でありますので。
  130. 吉川春子

    吉川春子君 それから、法定雇用率対象になっているのは特定の障害を持った障害者ということになっておりますけれども、障害者の経済的自立を援助するということが国の責務であるとすれば、障害の軽度重度はもちろん、障害の種類も問わず、やはり経済的な自立ということを図れるように国が施策を行わなくてはいけないと思うんですけれども、これも法律にこのことを明文でお書きになるべきではないかと思いますが、いかがですか。
  131. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) そういうお考えも一つの考え方であろうとは思います。ただ、国がどこまで具体釣にそういうものを実現するかという点になりますと、やはり社会通念上あるいは社会、経済の実態上、必ずしもなかなか諸般の問題があってすぐにはできない、こういう問題もあるわけでございます。  現実に、例えば障害者問題でありますれば、今回精神障害者の方々についても一定対策をとるわけでございますが、これについてはなかなか難しい問題があって、例えば身体障害者、あるいは今回精神薄弱者の方に対策を強化するわけですが、それと同じような形で対策をとることは困難である、こんなことから、今回関係審議会におきましても十分議論はいたしたんですが、問題の検討について先送りをしている、そういうこともございます。  そういうことから言いますと、お気持ちはわかるんですが、全体の障害者の方を全部同じように考えていくというのはなかなか難しい、そういう問題もあろうかと思います。
  132. 吉川春子

    吉川春子君 当面、同じように考えるということじゃなくて、やっぱり基本的には全部の障害者対象にした法律なんだと、そして今できなくても将来的にはきちっとそういうものを踏まえていくんだと、そういう立場ではあるわけですね。ちょっと端的にお願いします。
  133. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 基本的な方向としては先生指摘のような考え方です。
  134. 吉川春子

    吉川春子君 具体的に伺いますけれども、一九九六年度の障害者雇用されている実数、そして就職を希望しながら就職できない方々の数を示していただきたいと思います。数字だけでいいです。
  135. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) まず、我が国の障害者の数でございますけれども、これは厚生省の調査でありますが、身体障害者について見ますと、十八歳以上で在宅をされている方、そういった前提で調査いたしますと二百七十二万三千人。精神薄弱者につきましては、同じように十八歳以上在宅という方は十九万五千人ということになっております。  また、雇用者の数でございますけれども、これは昨年六月一日現在の一・六%法定雇用率が適用されます民間企業、六十二人以上の企業での雇用状況でありますけれども、二十四万七千九百八十二人。このうち身体障害者が二十二万三千九百四十五人、精神薄弱者が二万四千三十七人となっております。  また、公共職業安定所求職登録しております有効求職者である障害者の数でございますけれども、これは平成八年十二月末現在でトータル九万二千六百六十七人。このうち身体障害者が七万二千二百七十人、精神薄弱者が一万五千七百十八人、そういう状況でございます。
  136. 吉川春子

    吉川春子君 ざっと言って三百万人の対象障害者がいらして、就職しているのは企業規模五人以上で四十万人ということで、非常に就職率が低いわけでございます。  そして、企業法定雇用率を守っていないということが基本にあるんですけれども、法定雇用率達成企業割合企業規模別にちょっと大急ぎで言ってください。
  137. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 平成八年六月一日現在におきます法定雇用率達成企業割合企業規模別に申し上げます。  六十三人から百人未満のところでは四五・六%、百人から三百人未満のところでは四六・七%、三百人から五百人未満で五七・〇%、五百人から千人未満の規模では六三・六%、千人以上規模では六九・二%というふうになっております。
  138. 吉川春子

    吉川春子君 企業の規模が大きくなるに従って法定雇用率を守っていない、こういうことが今明らかになったと思いますが、すべての企業雇用率達成すればあと雇用はどのぐらいふえますか。
  139. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) そういう試算は私ども持っておりません。
  140. 吉川春子

    吉川春子君 労働省からいただいた数字なんですけれども、六万三千二百二人という数字をいただいています。時間がないのでいいです、私言っちゃいました。  つまり、全部の企業法定雇用率を守れば、今八万八千人の人が職安に就職を希望している、そのうちの六万三千人が雇用されるということになるわけで、これはぜひ今の雇用率達成させなくてはならないというふうに思うわけです。  そのほかにも、福祉施設とか作業所等で就労している人々も、実際やっぱり会社に就職したいという人もたくさんいるわけで、そういうところにもぜひ目配りをしていっていただきたいというふうに思います。  それで、法定雇用率達成企業に対して、計画書を提出させて、そして計画書を作成した企業の中でさらに勧告をして、そしてまたこれを公表するという形をとっているんですけれども、未達成企業数と計画作成企業数、そして勧告数、トータルでいいです、ちょっとおっしゃってください。
  141. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) まず、未達成企業の数でございますけれども、昨年の六月一日現在の調査で申しますと、全体として二万七千百五十八社ということになるわけでございます。  一方、これまで雇い入れ計画作成命令を発出した件数は四千七百九十九件、それから適正実施勧告を発出した件数――
  142. 吉川春子

    吉川春子君 平成八年度でいいです。
  143. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) トータルで六百五十六件ということになっておるわけでございます。  平成八年の数字は、計画作成命令の八年度分の集計はまだ今やっておりません。
  144. 吉川春子

    吉川春子君 私、労働省から数字をいただいています。  計画作成を要求した企業は百二十四社、勧告件数は十七社ということでして、これは平成八年かどうかはわかりませんけれども、とにかくそういう数字をいただいておりまして、未達成企業が二万数千いるのに、その中で計画書を出させているのが百二十四社、さらに勧告をしているところが十七社というのはいかにも少ないわけですよね。だから、私は、雇用率達成していない企業にはみんな計画書を出させる、そしてその出させた企業の大半は勧告をして公表する、そういうことをぜひやっていただきたいと思いますが、どうですか。どうしてできないんですか。
  145. 坂本哲也

    政府委員坂本哲也君) 障害者雇用率改善指導につきましては、基本的には企業の自主的な取り組みを促していくということが重要でございまして、こういった観点から、現行の雇い入れ計画の策定命令といたしましては、実雇用率が〇・八%未満、それから今後雇い入れなければならない身体障害者の不足数が六人以上、それからまた今後新規雇用労働者の雇い入れが相当数見込まれる企業、そういったところに対して発出をいたしておるわけでございます。  また適正実施勧告につきましても、正当な理由がないにもかかわらず計画どおり雇い入れが進んでいない企業のうち、計画実施率三〇%未満である企業について発出をしているところでございます。  未達成企業割合が大変高いわけでございますけれども、そのうち約半分以上はあと一人雇えば達成する、四分の三は一人あるいは二人不足企業ということになっているわけでございまして、こういった企業に対しては九月の障害者雇用促進月間を中心にその雇用改善を図っておるところでございます。  しかしながら、今回精神薄弱者を含む法定雇用率設定して雇用率制度が拡充されるということでもございますので、雇用率達成のための雇い入れ計画作成命令から公表に至るまでの一連の指導基準について見直しを行って、厳正な指導を行ってまいりたいと存じます。こういったものを通じて雇用促進を図ってまいりたいと思っております。
  146. 吉川春子

    吉川春子君 大臣にちょっと一言お答えいただきたいんです。つまり、二万七千も未達成企業がいて、そして未達成企業には計画書を作成させるという法律の規定があるんですが、そのうち百二十四社しか計画書を出させないというんじゃなくて、あと一人か二人で達成するんだったらば、みんな計画書を出させて、一人か二人といっても二万七千人になるわけです。二人だったら五万四千人になるでしょう。大臣、そういうことをもっと積極的にやっていただきたいと思うんですが、どうですか、一言だけでいいです。
  147. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 身体障害者につきましての雇用促進されるよう、いろいろな知恵をこれから出していきたいと思っております。
  148. 吉川春子

    吉川春子君 私は、最後に、ペースメーカーの問題について厚生省と運輸省、労働省にそれぞれ伺いたいと思うんですけれども、私のところに実は先日、ペースメーカーを装着していた男性が出勤途中に電車の中で急死して労災認定できないだろうかというお話がありました。原因ははっきりしませんけれども、携帯電話の影響ではないかと考えられています。この携帯電話が出す電磁波と健康への影響、とりわけ医療用機器への影響が問題視されていますが、厚生省、その対策をどうしていますか。
  149. 滝澤秀次郎

    説明員滝澤秀次郎君) お答えをいたします。  携帯電話使用とそれから医療用具の関係でございますが、例を心臓ペースメーカーということで申し上げますと、昨年三月に携帯電話等の使用に関する暫定指針というものが出されておりまして、これを私ども関係者にも参考にしていただこうということで、同じタイミングで関係者に通知いたしたところでございます。  その中に書かれております装着者に対する留意事項でございますが、ペースメーカー装着部位から二十二センチ以上離して使用した方がいいとか、あるいは本人以外に携帯電話を使用する人がいるわけでございますから、そうした本人の近くで携帯電話を使用される可能性のある混雑する場所では十分注意しなさいとか、そのような留意事項が示されているところでございます。
  150. 吉川春子

    吉川春子君 つまり二十二センチ以上近づいて携帯電話が鳴ったり使用されたりすると、ペースメーカーを装置している障害者は命にかかわる影響を受けるわけですね。そういう形の人が約二十万人いるわけなんです。混雑している列車で二十二センチ以上離すというのはすごく難しいわけですが、運輸省、二十二センチ以上離せば大丈夫だということで、やっぱり誤作動のおそれを生じさせないためにそういう点はどういう指針を出しているんですか。もっとそういう対策を講じてほしいと思いますけれども、どうですか。
  151. 釣谷康

    説明員釣谷康君) お答えいたします。  本件に関しましては、今般、郵政省の方から携帯電話等の使用に関する暫定指針というものにつきまして、鉄道事業者を初めとする関係事業者、特にバス等も含めまして関係事業者に対して周知してもらいたいという旨の依頼を受け取ったところでございます。私ども運輸省といたしましても、今後こういった公共交通機関関係事業者に対しましてその周知を図る所存でございます。
  152. 吉川春子

    吉川春子君 つまり、スイッチを切ってもらわなきゃいけないんですよね。鳴ったらだめなんですよ。特急の中で使ってはいけない、デッキで使ってくださいという放送はありますけれども、スイッチを切ってくださいという放送はまだないと思うんです。  それで、けさからこの委員会でも障害者通勤対策という問題が大分議論になって質問されて答弁もされているんですけれども、やっぱり障害者の命にかかわる問題ですので、この通勤対策について労働省としてもきちっとやっていただきたいと思うんですけれども、どうでしょうか。あわせて大臣答弁もいただければと思います。
  153. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) お話のございました事例について、現実の具体的な事例については承知しておりませんが、そういった可能性があるものと私どもも考えております。  一つは、そういった通勤あるいは退社時間の混雑の問題につきましては、基本的な問題として私ども運輸省とも連携をとりつつ時差出勤あるいはフレックスタイム制の普及等に努めておるわけでございます。そういった点について、早急な効果がないではないかという御指摘があるかもしれませんが、なお努力をしてまいりたいと思っています。  もう一つ、労働安全衛生法に基づきまして健康診断を受ける、そこで何らかの異常、所見のある方につきましては、事業主は産業医の方の意見に基づいて労働時間の短縮など必要な措置を講ずることが定められております。  先ほど携帯電話等の使用に関する暫定指針の話がございましたが、そういった指針が利用者の方にもいろいろ普及していく、そういうことと私どものこういった措置とがうまく相まっていくことも一つ方向としてあり得るのかなというふうに思っているところでございます。
  154. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 身体障害者等の通勤対策につきましては、労働省意見を付して関係省に相談をしていこう、こう思っております。
  155. 吉川春子

    吉川春子君 終わります。
  156. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  157. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。――別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  障害者雇用促進等に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  158. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  159. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  160. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 次に、労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。岡野労働大臣
  161. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) ただいま議題となりました労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を説明申し上げます。  労働時間の短縮は、ゆとりある勤労者生活の実現の観点から不可欠な国民的課題であるとともに、国際社会との調和のとれた国民経済の発展のためにも重要であります。このため、政府といたしましては、完全週休二日制の普及、年次有給休暇の取得促進、所定外労働の削減、これを柱として労働時間の短縮に取り組んできたところであります。  特に、週四十時間労働制については、昭和六十二年及び平成五年の二度にわたり労働基準法の改正を行うなど、計画的かつ段階的に実施を進めてきたところであり、本年四月一日からは従来適用が猶予されてきた中小企業においても実施されることとなっております。  これら中小企業において、週四十時間労働制が円滑に定着するためには、その実情にかんがみ、確実に定着するまでの間、懇切丁寧な指導や援助を精力的に行うなどの特別の措置を講ずることが必要不可欠であります。  また、これまでの労働時間の短縮に向けての施策の展開や労使による真摯な取り組みにより、労働時間の短縮に大きな進展が見られてきたところでありますが、今後とも労働時間の短縮のための施策を積極的に講ずることが重要であると考えております。  政府といたしましては、このような課題に適切に対処するため、中央労働基準審議会の報告を踏まえ、検討を加え、労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を作成し、同審議会の全会一致の答申をいただき、ここに提出申し上げた次第であります。  次に、この法律案内容につきまして、その概要を説明申し上げます。  第一に、週四十時間労働制の定着及び労働時間の短縮の促進のための指導、援助を効果的に実施するため、本年八月末とされている労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の廃止期限を、年間総労働時間千八百時間の達成、定着を図る旨をうたっている構造改革のための経済社会計画の計画期間に合わせ、平成十三年三月三十一日まで延長することとしております。  第二に、週四十時間労働制の適用が猶予されていた中小企業等に対しては、本年四月一日から平成十一年三月三十一日までの二年間を指導期間とし、国は、最近における経済的事情の著しい変化にかんがみ、本年四月一日以後週四十時間労働制が適用されることとなったことを考慮しつつ、きめ細かな指導、援助等を行うよう配慮しなければならないこととしております。  なお、この法律は、公布の日から施行することとしております。  以上、この法律案の提案理由及びその内容の概要につきまして説明申し上げました。  何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  162. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 以上で本案の趣旨説明の聴取は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時四十分散会      ―――――・―――――