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1997-03-19 第140回国会 参議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年三月十九日(水曜日)    午前九時二分開会     —————————————    委員の異動  三月十八日     辞任         補欠選任      関根 則之君     宮崎 秀樹君      竹山  裕君     井上 吉夫君      牛嶋  正君     平井 卓志君      林  寛子君     高橋 令則君      川橋 幸子君     今井  澄君      西川  潔君     島袋 宗康君  三月十九日     辞任         補欠選任      清水 澄子君     大脇 雅子君     —————————————   出席者は左のとおり。    委員長         大河原太一郎君    理 事                 片山虎之助君                 佐藤 静雄君                 斎藤 文夫君                 田沢 智治君                 木庭健太郎君                 都築  譲君                 横尾 和伸君                 山本 正和君                 有働 正治君    委 員                 阿部 正俊君                 井上 吉夫君                 石渡 清元君                 板垣  正君                 加藤 紀文君                 金田 勝年君                 久世 公堯君                 沓掛 哲男君                 武見 敬三君                 谷川 秀善君                 成瀬 守重君                 野間  赳君                 真鍋 賢二君                 宮崎 秀樹君                 依田 智治君                 石田 美栄君                 市川 一朗君                 菅川 健二君                 田村 秀昭君                 高野 博師君                 高橋 令則君                 長谷川道郎君                 浜四津敏子君                 平井 卓志君                 大渕 絹子君                 大脇 雅子君                日下部禧代子君                 清水 澄子君                 照屋 寛徳君                 今井  澄君                 小島 慶三君                 本岡 昭次君                 藁科 滿治君                 上田耕一郎君                 笠井  亮君                 島袋 宗康君    国務大臣        内閣総理大臣   橋本龍太郎君        法 務 大 臣  松浦  功君        外 務 大 臣  池田 行彦君        大 蔵 大 臣  三塚  博君        文 部 大 臣  小杉  隆君        厚 生 大 臣  小泉純一郎君        農林水産大臣   藤本 孝雄君        運 輸 大 臣  古賀  誠君        郵 政 大 臣  堀之内久男君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 梶山 静六君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  武藤 嘉文君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  久間 章生君    政府委員        内閣法制局長官  大森 政輔君        人事院総裁    弥富啓之助君        人事院事務総局        管理局長     尾木  雄君        人事院事務総局        給与局長     武政 和夫君        警察庁交通局長  田中 節夫君        警察庁警備局長  杉田 和博君        総務庁人事局長  菊池 光興君        総務庁行政監察        局長       土屋  勲君        防衛庁防衛局長  秋山 昌廣君        防衛施設庁長官  諸冨 増夫君        防衛施設庁総務        部長       伊藤 康成君        防衛施設庁施設        部長       首藤 新悟君        法務大臣官房長  頃安 健司君        公安調査庁長官  杉原 弘泰君        外務大臣官房領        事移住部長    齋藤 正樹君        外務省アジア局        長        加藤 良三君        外務省北米局長  折田 正樹君        外務省経済局長  野上 義二君        外務省経済協力        局長       畠中  篤君        外務省条約局長  林   暘君        大蔵省主計局長  小村  武君        大蔵省主税局長  薄井 信明君        大蔵省証券局長  長野 厖士君        大蔵省銀行局長  山口 公生君        大蔵省国際金融        局長       榊原 英資君        文部大臣官房長  佐藤 禎一君        文部省生涯学習        局長       草原 克豪君        文部省初等中等        教育局長     辻村 哲夫君        文部省教育助成        局長       小林 敬治君        文部省高等教育        局長       雨宮  忠君        文部省体育局長  佐々木正峰君        厚生大臣官房総        務審議官     中西 明典君        厚生省健康政策        局長       谷  修一君        厚生省保健医療        局長       小林 秀資君        厚生省薬務局長  丸山 晴男君        厚生省老人保健        福祉局長     羽毛田信吾君        厚生省児童家庭        局長       横田 吉男君        厚生省保険局長  高木 俊明君        厚生省年金局長  矢野 朝水君        社会保険庁運営        部長       真野  章君        農林水産大臣官        房長       堤  英隆君        農林水産省経済        局長       熊澤 英昭君        農林水産省農産        園芸局長     高木  賢君        食糧庁長官    高木 勇樹君        運輸省運輸政策        局長       相原  力君        運輸省鉄道局長  梅崎  妻君        海上保安庁長官  土坂 泰敏君        郵政大臣官房総        務審議官     高田 昭義君        郵政省貯金局長  品川 萬里君        郵政省簡易保険        局長       金澤  薫君        労働省労働基準        局長       伊藤 庄平君        労働省職業安定        局高齢障害者        対策部長     坂本 哲也君    事務局側        常任委員会専門委        員        宮本 武夫君    参考人        株式会社住宅金        融債権管理機構        代表取締役副社        長        尾形 正二君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○平成九年度一般会計予算内閣提出、衆議院送  付) ○平成九年度特別会計予算内閣提出、衆議院送  付) ○平成九年度政府関係機関予算内閣提出、衆議  院送付)     —————————————
  2. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。平成九年度総予算三案の審査のため、本日の委員会株式会社住宅金融債権管理機構代表取締役社長尾形正二君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 平成九年度一般会計予算平成九年度特別会計予算平成九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。本日は、外交危機管理医療福祉等に関する集中審議を行います。質疑者はお手元の質疑通告表のとおりでございます。それでは、これより質疑を行います。宮崎秀樹君。
  5. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 おはようございます。私は自由民主党の宮崎秀樹でございます。一月二十日に本国会が始まりまして、長丁場で、衆議院の予算委員会、そして今参議院の予算委員会総理初め閣僚皆様方、大変お疲れのところと思いますが、先は見えてきて、年度内成立ということでもうしばらくの御辛抱ということでございますので、よろしくお願い申し上げます。最初に、私は外交問題に触れたいと思います。一つ沖縄の問題であります。御案内のように、嘉手納飛行場など十二の米軍基地施設の一部用地につきまして国の使用が五月十四日に期限切れとなるわけであります。それまでに法的措置が完了しなければ、翌日の十五日からは国による不法占拠状態という異常な事態になるわけであります。これは日本安全保障基軸であります日米安保体制の運用に大きな支障を来すわけでありまして、ひいてはアジア太平洋地域の平和と安定への影響も避けられない重大な問題となるわけです。何としても不法占拠状態となることを避けなければならないと思っております。日本全土のO・六%にすぎない沖縄県に米軍基地の七五%が集中していることを見ますと、沖縄県民に大変重い負担をかけている実態があるわけです。沖縄県民との信頼関係を大切にしていくためには、総理初め関係閣僚などがまた最大限努力をしておられますが、沖縄県の収用委員会審理状況から見ますと五月十四日までに決着を見ることは大変厳しい日程と思っております。今月下旬に予定されている総理大田知事との会談で、この問題をめぐっていろいろ話し合いがなされると思います。二十七日の収用委員会の第三回の公開審理を見きわめた上で、駐留軍用地特別措置法の一部改正法案提出についての最終判断がなされるのではないか、そういう観測もございます。そのタイミングを失しますと五月十四日までに間に合わないという危惧があるわけであります。緊急使用収用委員会に申請すべきだという主張もあるわけでありますが、手続的にとても間に合わないんじゃないかということを考えますと、ここは国を挙げて、沖縄負担軽減振興策に取り組むことにつきまして県民理解も得なければなりません。収用委員会審理中は期限が切れても継続使用できるようにするという最低限の改正につきまして、大局的視点に立って法改正に踏み切ることが目前に迫っているというふうに思います。総理補佐官であります岡本氏が十八日から二十日にかけまして沖縄訪問をされていますことは、これは総理が山場を迎えた沖縄基地問題を軟着陸させるための腐心のあらわれと受けとめておりますが、岡本補佐官への指示内容を含め、大田知事との会談に臨まれるに当たりましてのお考えをお聞かせ願いたいと存じます。
  6. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 順番をちょっとひっくり返したお答えになりますけれども岡本補佐官を現在沖縄に派遣いたしておりますのは、昨日の閣議におきまして自治大臣から報告をされました特別交付税につきまして、この配分、沖縄県並びに関係市に対しての説明を行う、また一部の市町村を訪問いたしましてそれぞれの振興策についての打ち合わせを行わせる、これが今回の一番大きな目的でありまして、現在県内に滞在しているわけでございます。また、駐留軍用地の問題についてお触れをいただいたわけでありますけれども、これも今さら申し上げるまでもなく、日米関係というものが我が国外交基軸であることはどなたもお認めをいただけることだと思うのでありますが、その日米関係の基礎をなしているもの、それが日米安全保障条約であり、私どもはその条約において定められた我々の責任義務というものをきちんと果たしていかなければなりません。そのためには、日米安全保障条約目的の達成のために日本に駐留している米軍に対する施設及び区域を円滑に、しかも安定的に提供する、こうした責任を果たしていかなければなりません。今使用権原の問題について大変さまざまな角度から御心配をいただいておるわけでありますし、また収用委員会作業は始まったとは申せ、従来の実績から考えてみますと大変日程的に厳しいものがあることは私自身も承知をいたしております。しかし、これまで二回の公開審理が整然と行われている状況の中で、五月十四日の使用期限までに何とか使用権原が得られるように迅速な、しかも円滑な審理が行われることを私どもは期待いたしておりますし、またこれに向けて関係者の御協力が得られるように最大限努力をしてまいりたいと考えております。大田知事とお目にかかる約束はしながらなかなか日程の調整がつかず、二十五日にお目にかかることになりました。お目にかかりました際には、無論この問題につきましても御理解、御協力をいただけるようにお願いを申し上げるつもりでありますが、それだけではなく、沖縄県の抱えておられる問題、当然知事さんからもお話がありましょうし、そうしたことに対してもきちんと耳を傾けながら、政府としてできるお手伝いはしてまいりたい、そのように思っております。
  7. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 ただいま総理から円満な解決ということで大変御努力をされているということをお伺いしたわけであります。なぜ特措法を改正しなきゃならないか、今私なりに整理したことを申し上げますと、まず第一点は、一坪地主の問題であります。これは、実際はこれよりも少ない面積の持ち主の方もいるわけでありまして、法律というものはこういうことを想定して実はっくつていない、そういうまことに非常識な事態現実にあるということが実態であります。  二番目は、日米安保条約の第六条に基づく施設提供義務ということを果たしていかなきゃいけないんじゃないかということを思っております。  三番目は、国家の施策で違法状態は避けていかなきゃならない。法治国家でありますから、きちっとこれは国際的にも守らなきゃならない。  それから四番目は、三千八十名の特借法手続対象地主沖縄県の意見を代表しているものではないと思うわけであります。その一方で、二万九千五百四十四名の契約地主方々安保協力している実態をきちんと見ながら、民主主義というものは大変難しいわけでありますが、そういうものをやはり大局的に判断していくということも必要であろうと思います。  また、大田知事意見を尊重することは大切なことでありますけれども、この問題は一つは国益の問題であります。国の問題であるということも考えると、この国会としても責任があるわけであります。  そういうことを考えた中で、ぎりぎりのところへ今来ているということで総理も大変だと思いますけれども、決断を下すときにはやはり総理のリーダーシップというものが必要だと思いますが、そのことについて御所感を伺いたいと思います。
  8. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 先般本委員会におきまして防衛庁長官からもこの点に触れた御答弁を申し上げましたが、確かに、私ども例えばマスコミの報道だけを見ておりますと、沖縄の全地主方々使用権原の延長に反対をしておられるのではないか、そんな錯覚に陥ることがあります。  しかし、現実に二万九千五百四十四名の方々が既に賃貸借契約を締結していただいている、そして対象となって手続をお願いしなければならない方、それは三千八十一名である。そして、本当に在来地主ということでおられる方々は百十三名。二千九百六十八名の方々がいわゆる一坪地主。それなりのお考えのあっての行動でありましょうけれども、全体の圧倒的に多くの方々、九九・八%の方々が既に契約を受けていただいている、この重みも私は本当に御理解をいただきたいと思うのであります。そして、これだけ多くの方々賃貸借契約に応じていただいている、その方々に対しても我々は使用権原切れという不正常な状態で推移することを何としても避けなければならない。これは条約上の責任義務の問題とともに、協力をしてくださっている九九・八%の方々に対してもこの点はきちんとする責任がある、私はそのように思っております。
  9. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 ぜひそれを原点に置いて対応していただくことをお願い申し上げます。続きまして、北朝鮮問題をちょっとお伺いしたいと思います。新潟県の少女の拉致事件というのがございます。アジアの平和と安定には朝鮮半島情勢が大きな影響を及ぼしていることは事実でありまして、特に北朝鮮とは国交が今ございません。しかし、日本にとってこの北朝鮮の存在というのは重大であることは言うまでもございません。北朝鮮の幹部であった黄書記亡命問題も大きな波紋を起こしておりましたが、きのうフィリピンへ出国し、大事に至らずに推移しつつあるということで、実は胸をなでおろしているわけであります。他方、我が国としましては、その解決の糸口さえつかめていないのが北朝鮮日本拉致問題であります。これは重大な問題でありまして、二十年前に、昭和五十二年十一月十五日、新潟県で失除した女子中学生北朝鮮工作員拉致された可能性があるということであります。これは証拠がないわけでありますけれども、証人は出たわけであります。主権国家としても人道的立場からも断じてこの問題はあいまいにできない問題であります。早急な捜査情報収集などがなされなければならない事柄だと思います。新聞紙上情報でありますけれども、その女子中学生横田めぐみさん当時十三歳と酷似する日本人女性を直接目撃したという北朝鮮亡命工作員の生々しい証言がございます。彼女を拉致したとする工作員から直接聞いた事情も詳細に証言しております。この亡命工作員はほかにも北海道から拉致された男性がいることを証言したという記事がございます。警察庁新潟県警と連絡をとりながら捜査を進めておられるようでありますが、問題は国交のない国にかかわる二十年前もの事件捜査でありまして、韓国等も含めた情報ルート、あらゆる情報収集手段を総動員して鋭意捜査を進めるべきでありますが、総理大臣、この問題についてどういう方針をお持ちか。また、外務大臣もこれに対してどんな対応をなさるのか。これから北朝鮮の人道援助問題などもございますので、いろいろな影響が出てくることも考えられます。真剣な取り組みをぜひお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
  10. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 御指摘北朝鮮による拉致の疑惑の問題につきましては、我が国国民の安全にかかわる重大な問題であると認識しております。そして私どもも、そういった疑いのある御家族をお持ちの方々、御両親の話なども外務省といたしましても直接お伺いしたりしまして、何とかこの事件解明、そして解決ということを心から念願しているところでございます。しかし、ただいま委員も御指摘になりましたように、なかなか事件解明するための作業の難しい相手方であり、あるいは事件でございます。当然のこととして、捜査当局もこれまで懸命の捜査、調査をやっておられると私ども承知しておりますし、私ども外務省といたしましても、先ほど御指摘のございました報道等も含めまして、いろいろな情報を踏まえて、さらに正確な事態の把握ができないか、努力は傾注しているところでございます。ただ、事柄の性質上、具体的にどういう手法でどういうことをやったということは、関係する方の安全にもかかわる問題でございますので、御答弁は差し控えさせていただかざるを得ないのでございますけれども、これからも関係機関とも協力しながら、そしてまた今御指摘ございましたが、場合によっては我が国以外のところともいろいろ連携をとりながら、そういったことも考えながら、難しい問題でございますが、何が有効な手段か、手法かを探求しながらあらん限りの努力をしてまいりたいと、こう考えている次第でございます。それからまた、その関係で今支援という話もございましたけれども、その問題は、北朝鮮がこれからどうなっていくかということは我が国にとりましても非常に重大な関心のあるところでございます。そういったことで、いろいろな要素を考慮しながら慎重に考えてまいりたいと、こう思っている次第でございます。
  11. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 外務大臣、ぜひ全力を挙げてこの解明に力を尽くしていただきたいと存じます。それでは、医療・福祉問題に入っていきたいと思います。これは橋本総理小泉厚生大臣もその道の大変造詣の深い方々でございますので、きょうのやりとりで少しでも日本の将来に明るさが出ればと思っております。まず第一番目に、社会保障制度の問題でございます。この社会保障制度というものを維持していくためには全国民がその趣旨を認識して連帯の意識を持たなければできないと思うわけであります。またその財源は、いわゆる国民負担率でございますが、これとは密接な関係にあるわけであります。総理はかつて国民負担率を四五%に抑えよう、とどめるべきという御発言をなさっていらっしゃいます。しかし、十三日の与党党首会談では五〇%以下というふうにおっしゃっておられるわけであります。これは、従来から臨調その他で五〇%という数字は出ているのですが、現在平成八年度の推計で我が国は三七・九%という状況を踏まえた中で、恐らく二十一世紀に超高弟化少子化社会を迎える、そして介護保険制度の創設だとか医療保険制度の改革という、現在そういう状況にある中でこの五〇%ということを頭に置かれて発言なさったというふうに私は思っておるわけであります。  いずれにいたしましても、世界各国を見ますと、これは一九八九年のデータでありますけれども、アメリカは三六・五%、イギリスが五一・四%、それから旧西ドイツが五二・五%、フランスは一九八八年のデータで言いますと六二%、スウェーデンが七五・九%であります。日本はまだ低いわけでありますけれども、しかしこのまま放置していきますと大変なことになる。  また、日本国家財政考えたときに、この国民負担率の問題というものは国民理解を求めた上で租税負担社会保障負担というものを考えていかなければならないと思うんです。  総理、この与党三党の会談で五〇%以下というお話がございましたけれども、このときのお考えをぜひお聞かせ願いたいと思います。
  12. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 実は本委員会が始まりましてからもこの国民負担率平成会牛嶋議員の御質問の際に議論として出てまいりまして、その時点で私はやはり第二次臨調当時の数字を使ってお答えをいたしました。言いかえれば、それは二十一世紀初頭には四〇%台のできるだけ前半、そしてできれば四五%ぐらいという考え方を御説明申し上げたわけであります。  私は、本当に国民負担率のあり方というのは究極的に国民が必要として求められる公共支出の水準と表裏をなすものでありますから、受益と負担のバランスを眺めながら、本来ならそのときそのときの情勢の中で国民に御判断をいただくべきものだと思います。従来私は第三次行革審、臨調以来の考え方を、その目標がいい目標だと本当に考えましたから、それをとらえて御説明を申し上げてまいりました。それはまさに議員が今御引用になりましたように、現時点における租税及び社会保険料の負担、これを合わせた三七%台の状況、これが現在のものであります。しかし、同時に、今これから財政再建に取り組もうと考えました場合に、公債残高、国、地方を通じましてのいわば赤字の部分、これをやはり計算に入れざるを得ません。そうなりますと、現時点で既に、正確な数字を私は今記憶をいたしておりませんけれども、四二から三ぐらいになっておると思います。そうすると、その部分を除いて国民負担率を議論いたしましても、その赤字の部分が膨らむのに、それにブレーキをつけるという作業になりません。昨日、財政構造改革会議及びそれに引き続いて開きました臨時の閣僚懇談会におきまして、私は財政構造改革に向けて当面の目標達成のための五つの原則を示しましたけれども、その中では国民負担率について、その財政赤字分を含む数字としてこれを目標に掲げ、その上で五〇%を超えないという数字の置き方をいたしました。意味するものは変わっておりません。ただ、財政赤字を除いた社会保険料及び租税負担のみで数字を申し上げる、あるいは財政赤字を含めて申し上げる、これがその差というふうに申し上げておきたいと思います。
  13. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 今、総理から重大な御発言がございました。この財政赤字分というものを含んだ考え方、これは大変大切なことだと思います。それが隠れてしまうとなかなかバランスのとれない数字というものが外へ出てくる。それを念頭に置いてやっていただくことは私は大いに賛成でございます。  ところで、医療保険制度が充実いたしまして昭和三十六年に国民皆保険になりました。そこで、昭和三十六年に国民皆保険になったときに、既に日本医師会と政府との間で四項目の合意をしているんですね。一番目に「医療保険制度の抜本的改正」と、こう言っておるわけであります。そのあとの三点は省きますけれども、保険制度が発足した、皆保険になったときに抜本的改正ということを言っている。ところが、現在に至るまで三十数年間、抜本改正抜本改正と言っておきながら、これに全然手をつけていなかった。手をつけたんですけれどもこれは抜本ではなかったと、こういうことであります。そうしますと、これはまさに我々政治家の怠慢であり、そして行政の怠慢であり、ひいては政府の怠慢であるということで、実はつじつま合わせをやってきましたが、とうとう今日に至って今大変なことになってきたわけであります。ですから、今度の医療改革をする前に、まず国民の皆さんに、今まで放置していて申しわけなかった、これは我々がやはり大いに反省すべきである、ここから出発するべきであると思うんですが、総理、いかがでしょうか。
  14. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 確かに、昭和三十六年、当時の厚生大臣、自由民主党政務調査会長、そして日本医師会長、日本歯科医師会長、この間で医療保険制度の抜本的改正についての申し合わせが行われました。それを私はうそだと申し上げるつもりはありません。そして、国民におわびをしてと言われますならおわびも申し上げますけれども、私が議員とちょっと見解を異にしますのは、抜本改正に向けての努力政府も何回か試みたと思います。また、そうした方向に向けようとする努力が何回も行われてきたことを私は存じておるつもりであります。この四項目の中には、ちょうど四番目の項目として「自由経済社会における診療報酬制度の確立」という文字がありますが、現行の診療報酬体系の中でドクターズフィーとホスピタルフィーが混在している状況に着目をし、ドクターズフィーとホスピタルフィーを中できちんと整理をつけることによって薬価差益に依存しないでも医療機関の経営が成立するように直すべきだという議論は何回も行われてまいりました。また、そういう方向に向けての改正を目指して政府国会に法律案を提案した回数も何回かございます。そして、それは必ずしもその当時における国会審議の中で国会の意思として受け入れられるものではありませんでした。昭和四十年代には健康保険制度の改正をめぐって国会史上に残るような大乱闘が起きたこともございます。そうした中で本質的な改革に手がっかなかった。それが過去の歴史でありまして、結果として抜本改正ができていない。その御指摘に対して国民にわびろと言われるなら私はおわびをいたしますけれども、それは必ずしもそういう方向へ向けての努力が試みられなかったからではない、その点だけは私は先輩方の名誉のためにも申し上げておきたいと存じます。
  15. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 それはよくわかっております。努力はしたけれども結果的にはまだなされていないと、こういうことでありますので、今回も努力はするけれども結果が出なかったということではなくて、これはもう全部がそれこそ火だるまになってでも基本的なことを、若い人たちがきちっと将来の夢の持てる制度というものをつくっていかなきゃいけないと思っておるわけであります。一方、そうはいってもこの医療保険制度というのは世界に冠たる制度であるということも間違いないわけでありまして、保険証一枚でいつ、どこでも、だれでもが非常に安い負担で最高の医療サービスを受けられるというような状況我が国にあるわけであります。それが平均寿命を延ばし、そして乳幼児の死亡率を大変低くした、これが実証されておるわけであります。しかし、ここへ来て財政上の理由でこの制度が破綻するということになると大問題でありますので、この制度というものを何とかみんなの努力で堅持していくということに関してはいかがでございましょうか。これは厚生大臣で結構でございますが、お答え願いたいと思います。
  16. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 基本的に医療保険制度を維持していこうと。今の国民皆保険制度が悪いと言う人は少ないと思います。宮崎議員指摘されましたように、我が国が世界一長生きできる国になったという、その目標を達したということも医療保険制度が整備されてきたということと無縁ではないと思います。  そうはいいながら、今御指摘のように、いろいろな矛盾が出てきております。そして、財政的に深刻な状況に見舞われまして、今まで言われてきたような抜本的な構造改革が必要だという声が強く沸き起こってきた、そういう中での今改革を目指しているわけでありますので、今後、この国民皆保険制度を維持しつつ、どうして安定的に運営できるか、また国民負担を過剰な点まで上げないで、できるだけ負担を軽減しながらこれからもよりよい医療制度を構築していくかというのが我々の責務だと考えております。
  17. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 私もこの制度はぜひ存続をしていくということを基本に置いてやっていかなきゃいけないと思っております。  アメリカがクリントン政権で、ヒラリー夫人が大変熱心にこの皆保険制度をやろうと思って、これは失敗いたしました。日本の制度というものはすぐれているということは事実であります。  しかし、ここへ来て何でこういう財源の問題が急にまた浮上してきたかといいますと、やっぱりこれは高齢化社会であります。御案内のように、日本の六十五歳以上の占める人口が七%から一四%になるのに何と二十三年ぐらいでなっちゃったんですね。そういう数字でございます。フランスなんかは百三十年かかっている。それから、イギリスとかドイツは大体七十年、八十年。そういうことで長いスパンでなったけれども日本は急速に高齢化社会を迎えた。ですから、この対応を早くやらないと間に合わない。そこでいろいろなひずみが出てきた。特に、老人の医療費がここのところへ来て急に伸びてきたわけであります。二十一世紀には六十五歳以上の老人が三人に一人の時代が来るわけであります。老人医療費の伸び率は非常に顕著であります。八%前後の伸びを示しております。一九九三年には国民医療費に占める割合は三〇%を超したわけであります。一九九四年には二二’八%となって、その割合はますます増加しております。きょうはパネルを用意いたしました。(図表掲示)パネルで見ますと、皆さんにはこの紙が行っておりますから紙を見て、これはテレビ用であります。実は、老人医療費の伸びというのはいろいろ試算があります、これは京都大学の西村周三博士が試算された図でありますけれども。一番高いEというのがございます。これは医療費の伸びが国民所得の伸びを五%上回る、入院医療費を一〇%削減するということでありますが、こうはならない。今八兆円ぐらいのやつが二〇二五年には七十六兆から七兆円になる、こんなことにはなり得ない。と申しますのは、五%も伸びないし、また入院医療費が一〇%よりももっと削減できるであろうということでございます。それからCでございますが、これは医療費の伸びが国民所得の伸びを二%上回る、入院医療費を一〇%削減したものでございます。それからDでございますが、これは医療費の伸びが国民所得の伸びを二%上回って、入院医療費が二〇%削減される。それからBでございますが、これは医療費の伸びが国民所得の伸びを一%上回って、入院医療費が一〇%削減された場合。Aの伸びが一番低いわけでありますが、これは国民所得の伸びと医療費の伸びがイコールである、一緒である、そして入院医療費を一〇%削減した場合、こういうわけであります。介護保険が平成十二年に導入されますと、これはよく社会的入院と言われておりますけれども、これが療養型病床群等いろいろな病床転換その他で介護のいわゆるファンドが入ってまいります。ですから、恐らく将来Dが一番近いであろうど。そのDにいたしましても、二〇二五年には二十八兆円ぐらいの老人医療費になるわけであります。そんなようなことで、実は老人医療費の伸びが非常に高い。そこで、私がこれから申し上げますのは、もう一つの、次のぺ−ジのグラフであります。(図表掲示)このグラフでありますが、これは(A)で書いてありますが、この線であります。これが(A)の線であります。これは政管健保、年間被保険者一人当たり平均保険料額と家族分を含む被保険者一人当たりの医療給付額の差額であります。ですから、お医者さんにがかった人の差額がここに出ております。これは政管健保。それから(B)というのは、これは組合健保であります。そして点線の部分であります。点線の部分の(B)、これはお医者さんにかからない人を含めた一人当たりの累計、例えば保険料を積み立てて、若いうちはお医者さんにかかりませんからこれを積み立てたわけであります。カーブがこのようになっております。それから、政管健保の場合は下のこのカーブであります、これは単位は千円ですから五十万、百万、百五十万、そういうことです。単位でこれは出ているわけであります。そこで問題なのは、この累計のところを見ますと、組合健保は五十四歳と五十五歳の間で逆転しています。マイナスになっている。それから、政管健保は三十五歳と四十歳の間でマイナスになっているわけです。今政管健保の保険料率は千分の八十二であります。これを千分の九十二にしますと、これが大分右側へ移動いたします。そうしますと、五十五歳と五十四歳の間に移動してまいります。私どもは、若いときに使わないお金、これを年とったときに自分たちで使おうというような積み立て式の方向へ資金を移動させなきゃならない、そういう一つの手もあるんではないかと思うわけであります。今までは、単年度で足りなくなると国費を入れ、そして保険料を上げるというようなことで短期的な面でしのいできたわけでありますけれども、年金的な一つの長いスパンで物事を考えてやらないとこれからはもたないんじゃないか。これは自助努力で、輸血でもそうでありますけれども、自分で前に預血をしておきまして、その分を自分が何かになったときに使わせていただく、こういう精神が全国民の中にわいてこないとなかなかこの医療保険制度というのは私は維持していくのは難しいんじゃないかと、こう思うわけであります。それでまた、若い人との連帯感と申しておりましても、若い人の現在の保険料をお年寄りが食い込んで使っていっちゃうという発想ではなくて、自分が積み立てたものは自分が将来使うんだ、こういう考え方をやはりここら辺で取り入れていかなきゃならない、こういうふうに思っておるわけでございます。このようなことも考えていかなきゃならない。厚生大臣、このようなことについてどういう御所感をお持ちか。また、大蔵大臣も、費用の点で国としてのいわゆる財源というものも有限であるし、こういう長期的な構想に対して大蔵省として、単年度計算は大蔵省のあれでございますけれども、中長期的な観点からこういうものに対する御所感をいただければありがたいと思います。
  18. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 今後ますますふえていく高齢者の医療費を国民全体でどうやって負担していくかということを、昨年来、関係審議会でいろいろ御議論いただきました。この中で、介護保険制度が施行される平成十二年度、二〇〇〇年を目途に抜本的な構造改革に取り組むべきだという指摘を受けております。それを目標に今我々、保険料水準をどういうふうに設定するか、また各保険制度それぞれ分立しております、この一元化の問題をどう図っていくか、あるいは診療報酬支払い制度、医療提供体制、医療保険制度、いろいろあると思います、そういう点を抜本的に見直していこうという準備を進めております。そういう中で、今御指摘の点も含めて幅広く検討していき、所期の目的であります構造的な社会保障制度の改革に結びつけていきたい、そう考えております。
  19. 三塚博

    国務大臣(三塚博君) ただいま宮崎先生のデータに基づく御質疑を承っておりました。  医療改革、医療制度の見直しをベースに改革を行ってまいるというのが橋本内閣における最大のポイントの一つでございます。高齢化社会、すばらしいことだと思うのでありますが、それが悲劇に通ずるという感じが昨今出てきましたところに深刻な問題があるわけでございますから、これはひとり厚生省の問題ではなく、全内閣として当然国民論議の中で取り組んでいかなければなりません。  大蔵省といえども、単年度主義というのは編成における単年度主義でございまして、昨今は、制度を通じ、また全体の流れを的確に把握することの中で、また世界的な諸制度を勘案、参考にしつつ、どうあるべきかということについては御助言を申し上げ、編成の際に意見交換をし、現時点におけるベストな道を選んできたところでございます。  国民経済や深刻な財政状況と整合性をどうとるか。さらに、かつ効率的な医療保険制度を築く観点から、今後増大が見込まれる老人医療費の公平な負担の仕組みについて、宮崎先生がただいま御提言をされたわけでございます。幅広い国民論議がこの時点からさらに深まってまいりますよう、大蔵省といたしましても、その視点は極めて方向を示す見識でございますから、参考にしつつ取り組ませていただき、また国民論議がそのことによって起きることを期待させていただきたいと存じます。
  20. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 あらゆる知恵を絞って将来にこの保険制度を維持していく上でつなげていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。もう一つの今回の改正の経緯に至った財源問題は薬価の問題であります。薬の問題であります。よく薬漬けとかいろいろ言葉がございますけれども、かつては確かにこの薬価差益というのはあったんですが、はっきり申し上げて今はございません。リーズナブルのものが上乗せを今されておりますけれども、リーズナブルというのは甚だわけがわからぬわけでありまして、私は薬はもう薬そのものの原価でいいと思うんです。ただ、それに管理費だとかそういうものはきちっとかかるわけでありますし、また破損の部分もございましょう。それにかかる人件費もあります。そういうものを何%と決めていただく。はっきり目に見えた形でやらないと大変不透明な部分が多過ぎる、そこに問題があろうかと思います。一つは、日本の薬が高い高いと、こう言っております。なぜ高いのかということをいろいろ検討しますと、まず第一に新薬の決めるところが一体どこでだれとだれが決めるのか、ここら辺が非常に不透明であります。厚生省の業務局の経済課と、そう言っちゃ失礼ですけれども、厚生省の天下った製薬会社の方と決めれば、これはそう安い値段で決まるわけはありません。もちろん、これは理屈はありまして、研究開発費だとか、それは新薬をつくるまでにいろいろな実験もします、そういうものを含んでおります。それから、これの売れる予想という数もきちっとやっております、実際にはその数よりいっぱいつくっておるわけでありますが。一度薬価基準に登載されますと、これは護送船団方式でありますから保護されちゃって、どんどんどんどん売れて利益が上がってきても下がらないわけです。これは実態調査をやって、何年に一度だんだん下がってきますが、これでもうからなくなりますと、ある日突然いい薬がなくなっちゃうんですね。薬屋さんにあの薬を持ってきてくれと言っても、いや、あれはありませんと。なけりゃ探してこいと言ったら、いや、もう製造中止ですと。ある日突然、製造中止であります。こういうことはやはり問題があるわけでありまして、そこら辺をきちっとしなきやまずい。メバロチンなんという薬は、これは日本でつくっているんですが、アメリカで買うと日本の半額で買える。もう一つの問題は、日本の薬がどんどんどんどんいい薬ができて輸出されていくということになりますと、大量にはけるわけですから単価が安くなる。それは逆でありまして、日本は原料を輸入するわけですね。それでつくるから高くなる。これまた事実であります。しかし、結果的に見ますと製薬メーカーはつぶれたところはありません。大手の何社かは大体一千億近い通常利益を上げております。そういうことを考えると、私は企業だからもうけちゃいけないとは言いませんけれども、何でも常識的な範囲内でやっていただかないとやはり問題が出てくるということで、この薬の問題を話すとこれはいろいろ根が深いわけであります。これはぜひ厚生大臣と総務庁長官とこの薬価基準の問題を、つい最近規制緩和の中でお話が出た、こういうことでございますが、その辺のところを含めて厚生大臣にお伺いしたいと思います。
  21. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 今国会医療問題に対する議論の中でも、今御指摘の薬価問題の指摘、これが一番多かったと思います。確かに、薬は諸外国に比べて高過ぎるのではないか、また薬価を決めるときにどうやって決めているのか不透明ではないかという点、この薬価の基準の見直しを図るべきだという議論が一番多かったように今までの議論で私は感じております。そういうことから、先日、総務庁長官とも会談いたしまして、これからの医療制度改革の中でこの問題は重要だという意見では認識が一致しているということで、今後薬価基準の抜本的な見直しをしようという決意を固めております。今までの国会の議論を踏まえて、そのような御指摘、批判にたえ得るような薬価基準の抜本的な見直しに踏み込んでいきたいと思っております。
  22. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 この薬の問題は、よほど覚悟を決めてやらないと、なかなか私は解決しないと思うわけであります。確かに日本の医薬品というものは、最初に新薬というのが出ます。それを使っておりますと、後発で、ゾロという名前でまたこれと同じ成分で中小メーカーがつくってまいります。そうしますと、これはやっぱり差がありまして、そのゾロ製品というのは安いんですね。じゃ、効果はどうかといいますと、私が両方試して使ってみますとそう変わらないんですね、実態として。患者さんがこれを飲んだからこうだと。確かに、薬価基準ですとゾロ製品は安いんです。というのは、なかなかお医者さんというやつは、大学病院なりどこなり、私に言わせるとブランド志向があるんですね。それで、一回使い出すと、それは習性としてブランド品を選ぶ。そこで格差というものがずつとついたままくるというようなことがございます。ですから、そういうこともきちっと意識改革をしながらやっていかないと、なかなか一朝には片づいていかない問題があろうかと思います。この問題はもっともっと時間があれば突っ込んでやりたいんですけれども、きょうは全般にわたってやるので、薬の問題はまた別の方向から今とらえてみたいと思います。ちょっとお尋ねしたいんですが、私ども実態の例を挙げますと、日本医療費でありますけれども、この医療費の単価、これは点数であらわしております。一点単価十円であります。昨年の四月に医療費の改定がありまして、一昨年の暮れに、いつも前の年には予算を大蔵省にいただきに行くわけであります。そのときに、テレビでこういうお話をすると大変ひんしゅくを買うと思いますが、お年寄りが便秘で便が出ない。そうすると洗腸をかけます。出ないんです。下剤をかける。これも出ない。そうすると指で便をほじるわけです。これは便摘という、ちゃんとそういう医療行為が認められている。これは石ころみたいにかちんかちんになるんです。そうすると、それを指で掘っていって、直腸に傷をつけない、肛門に傷をつけないで出すわけですから技術が要ります。その点数があるんですね、技術料が。これは幾らですかと言ったら、国会議員の先生方も大蔵官僚もだれもわからないんですね。しかし、指でやるから、片手だから五千円ぐらいだろうと、こういう話もありましたし、いろいろあったんですが、指一本だから千円と、そういう話。ところが、これは実際二百四十円なんです。それで、たまたま新聞記事にこれが載ったものですから、去年の四月に千円になりました。指一本でございます。  ところが、これは外国、アメリカでございますが、つい二、三日前に私はアメリカからデータを取り寄せました。百五十ドルです。一万八千三百円、百二十二円の為替レートです。だから十八倍ということでしょうか。それから、初診料は日本は今大体二千五百円であります。アメリカは一万九千六百四十円、大体一万五千円ぐらいですね。それから心電図、これは日本は千五百円、アメリカは八千五百四十円。胃の手術なんかは千五百ドル、十八万三千円で、日本は九万九千円です。ですから、大体二倍ぐらいですね、胃の手術は。だけれども、入院料その他を入れたらこれは莫大なもので、アメリカは大変なことであります。そういう技術料が日本は非常に安い。ですから、日本の技術料をアメリカ並みとは言わなくても今の三倍ぐらいにしていただくと、医療費に占める薬の割合は三〇%と言っていますけれども、これはアメリカ並みにぐっとその金額では落ちるわけですね。  ですから、比較というものはいろんな比較の仕方があると思うんですが、従来の薬は、乳鉢があっていろんな薬を入れてかき回してやるから一つ一つに粉でなっているけれども、今は全部その成分成分が錠剤になっているわけですね、一つずつ。だから、もらうと幾つもいただいたということでおなかいっぱいになる、こういう話があるわけであります。ですから、そこら辺、実態というのを見ますといろんなことがあるんですが、日本医療費の技術料が低いということは、大変私はまだ問題があるんではないだろうかと。ただ、この皆保険の中で、国民の皆さんに負担していただいて、そして経営が維持できてやっていければ、それはそれで結構だというのは医師の方々みんなそう思っていると思います。しかし、ここへ来て大変医療機関も倒産するところがふえてまいりました。ですから、そういうことも考えて、今の医療費というのは果たして、医療財源というものがこれはもちろんあって、どんぶり勘定で割っていくということをやらざるを得ないのか。それとも、その技術は技術で積み上げた、それでこれだけのブァンドになった、じゃこのお金をどうしようかと。私は両方の考えがあると思うんですね。私はこれは折衷で考えていくべきだと思うんです、両方の観点から。その辺について厚生大臣、どうでしょうか、御意見があったら伺っておきます。
  23. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 先ほど薬価の基準の見直しの問題をお話ししましたけれども、今実際の技術料といいますか診療費、確かにお医者さんの技術料が正当に評価されていないという面もあるということは否定できないと思います。例えて言えば、薬は要らない、寝ていなさいというお医者さん、本当に寝ていたら薬をもらわないで治っちゃったという人もいますけれども、そういう点は評価されない。  そういう点も含めまして、この医療保険制度の改革というのは単に薬価だけじゃない、診療報酬制度あるいは出来高払い制度、治療をすればするほど費用がかかっていく、薬を上げれば上げるほど費用がかかっていくという点もいけない。本当に過剰投与がないか過剰診療がないかという問題も出て、今抜本的な改革が必要なんじゃないかという議論が出ています。  しかし、基本的に日本は、患者さんの立場に立ってみれば、お医者さんも選ぶことができる、病院も選ぶことができる、そして必要な治療は全部できるという出来高払い制度、これはいいなというんですけれども、どんな制度についても一長一短があります。そういう中で、今言われた点も含めまして、単に一つじゃない、薬価だけじゃない、診療報酬制度なり医療提供体制なり、全般的に見直しが必要ではないかということでこれからの構造改革を進めていきたいと思います。今の御指摘も当然事実としてあるわけですから、その点も踏まえて見直しを進めていきたいと思っております。
  24. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 今出来高払いとかいうお話が出ましたけれども、この出来高払いということはなかなか国民の皆さんはわからないわけでありますから、この問題をちょっとやってみたいと思います。出来高払いというのは、患者さんが来ていろいろな処置をやります。例えば、患者さんが来て診察をいたします、検査をいたします、そして診断がつきました、じゃ、それに対して手術をやります、手術の後に処置をやります、これが積み重なっていったものが結果的に点数でプラスで幾ら、こうなるわけであります。それに対して包括払いというのがあります。包括払いというのは、これはマルメと言いまして、この病気は全体で幾らですよと最初から金額を決めちゃうわけです。その範囲内でやりなさい、こういうことであります。そうしますと、出来高払いに対してメリットとデメリットがあります。それは、金額が丸まっているから、それ以上は出ないから一定の中でおさまるわけですね。しかし、その中でこれ以上やったら赤字になるよといったときにどうするのか、こういう不安が起きてくるわけであります。ですから、これはなかなか難しいので、症状が安定している慢性の疾患はむしろ包括制ということでも理屈がつきますけれども、急性的なものは、急性の疾患は出来高払いでやらないととてもそれは私はなじまない。そして、慢性の方でも急性の例えば肺炎を起こしたというようなときには出来高払いにかえていく、こういうことを整理してやらないと、これは医療を供給する方も受ける方も不安になります。ですから、ぞこら辺は薬だけの問題でとらえるのではなくて、かつては確かに差額があったから薬を使った方もいると思いますよ。だけれども、今はそういう時代はもう既に過ぎて、薬のメリットというのはないです、はっきり言って。だから、そうじゃなくてやはり全体的な考えの中でそこは整理しておかないといけない、私はこう思いますが、厚生大臣、いかがでしょうか。
  25. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 今わかりやすく御説明いただきましたように、出来高払い制度にはそのよさがあります。また、全部出来高払いだとこれは国民医療費の増大にどう対処するのかという問題点も御指摘があるとおりであります。ですから、私自身、この出来高払い制度のよさと同時に、総予算、一定の定額を与えてこの病気に対してはこれだけですよという総予算制度、この組み合わせができないかな、両方のよさを引き出せるような改革ができないかということも率直に考えております。そういう点も含めて、これから改革に結びつけていきたいと思っております。
  26. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 今、厚生大臣も、これはもう大臣はその辺は造詣が深いわけでありますから、そういうメリットを組み合わせた方向で、ひとつ国民に不安を与えないような医療システム、そしてまた現場の方も混乱しないようなことをぜひお願いしたいと思います。私は、前へ戻りますけれども、抜本改正ということは、やっぱり保険制度自体を考え直す時期に来ているんじゃないかというふうに思うんです。一つは、医療保険制度というのはいろんな制度がありまして、例えば政府管掌、組合健保それから老人保健制度、共済組合、労災保険とか、いろんな制度がございます。  問題なのは、この健康保険法というものだけに何と「目的」がないんです、これは。法律に「目的」がない。しかも、この法律は大変古い法律でありまして、大体当初できたときは貧民救済というような、産業労働力の確保というような観点から、さらには富国強兵、戦争中の富国強兵につながっていった、いわゆる兵隊さんの治療というようなことがあって。  この文章は若い人には全く読めない文章ですね。「若」という字を書いて「ハ」と書くんですね、これは片仮名なんです。これは読めますか。「若ハ」と書いて「モシクハ」なんです。これを読める人は大分年配の人で年金をもらっている方ぐらいじゃないでしょうか。ですから、これをまだ残してやっていくこと自体が私は大変問題があると思うんです。既に古い法律がそのまままだ生きている。  私、きょうここで一々読み上げるのもなんですが、国民健康保険法にはちゃんと「目的」が甘いてあります、第一条に。国民健康保険法は「この法律は、国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もって社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的とする。」。それから、国家公務員等共済組合法、これもきちんと「この法律は、国家公務員等の病気、負傷、出産、休業、災害、退職、障害若しくは死亡」、そこまで書いてあるんです。給付内容が同じ保険でこんなに違うんです。私はこういうことをやっているときはもう過ぎたんじゃないかと。  もちろん、老人保健法の第一条にも「この法律は、国民の老後における健康の保持と適切な医療の確保を図るため、疾病の予防、治療、歳能訓練等の保健事業を総合的に実施し、もって国民保健の向上及び老人福祉の増進を図ることを目的とする。」ときちっと書いてあります。船員保険法も書いてある。もちろん、労災保険法も書いてある。私は、この健康保険法に「目的」がないというのはまことにおかしいと思うんです。この辺はどういうふうにお考えでしょうか。
  27. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 現行の健康保険法、これは先生御指摘のとおり大正十一年に制定された古い法律でございます。法律の書き方も片仮名であるという法律でございます。これは立法形式の問題と絡むわけでありますけれども、こういった戦前の法律につきましては、一般的には目的規定というものが置かれていないというのが通例であったようでございます。昭和三十年代、ただいま先生が御指摘ありました国民健康保険法あるいは国家公務員等共済相合法等、昭和三十年代にできた医療保険制度の法律でありますが、これにつきましては目的規定がきちんと置かれておるわけであります。こういった制度の規定の仕方、これについてもやはりこれからの医療保険制度の抜本的な改革を考えていく際に重要な問題であろうと思いますし、私どもとしましても、こういった法形式のあり方、目的規定の定め方も含めまして検討していかなきゃならない、このように考えております。
  28. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 私は、一回各保険制度というものをまず解体して、そして全国民が平等に負担をし、平等な給付を受けられるシステムを構築するときに来ているんじゃないかと思います。  今の状況を見ますと、傷病手当金というものがございます。これはむしろもう生活保障なんですね。それを医療保険で見ていくということになるのも一つまた問題ではないか。それから、組合健保なんかは保養所をつくっている。保養所をつくって保養に行けばいいんですけれども、そこで徹夜でマージャンして、酒飲んで、体壊して帰ってくる。これは保養所じゃないんで、私はそういう時代おくれなことはもう全部整理して、それは厚生福祉という観点で、医療保険という観点じゃなくて、そこら辺はやはり整理してきちっとする時代と思うんですが、厚生大臣、どうでしょうか。
  29. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 基本的に考え方は私もよくわかるんです。保険制度ですから、全国民が病気に備えて負担していこうじゃないか、病気にならない人もなった人もお互い負担していこう、できたら一本化がいいと。ところが、いろいろ調べてみますと、この保険制度の成り立ちから経過から、その保険に入っている方々、さまざまですね。そして、独自に健全にやっているところもあればそうでないところもある刀これを一本化するという点について、今までもいろんな議論はありましたけれども、これについて各利害が交錯してなかなかうまくいかなかったまま現在に至っているというところであります。しかしながら、各制度の役割分担あるいは給付においてばらつきがある。この保険に入っていれば七割給付があったり九割給付があったり、あるいは八割給付があったりというばらつきがある。これを何とか一元化なり一本化しようじゃないかという議論を踏まえて、今後この構造的な改革をどう進めていくか。特に昨日は橋本総理がこれからの財政構造改革の五つの原則を発表しました。これは平時におけるすごい改革ですよ。一切の聖域なし、社会保障制度もそうです。これはみんな総論賛成したんですね。驚くべきことです、閣僚全員が賛成したんですから。この並々ならぬ決意、これを簡単に総論いいと言うけれども、具体的に踏み込むと大変な改革ですよ。社会保障制度をみんな今ふやせふやせという要求です。ところが、十年度の予算というのは、九年度予算に比べてマイナスにやろうというんですから。そして、国民負担率を五〇%超えないというんでしょう、将来。若い世代にもうこれ以上負担をさせちゃいけないと。もういやでも応でもすべての構造改革に踏み込まなきゃならなくなっちゃったんです。給付を受けるためにはだれがどこで負担するのか、その負担をしている立場も考えようと。給付がよければ、給付だけでいいのか、負担している人が大変だぞという両面から考えて、年金にしても医療にしても介護にしても考えていこうというんですから、いや大変な改革をみんなオーケーしちゃったなと、総理の。しかし、やらざるを得ないんですから。ここまで決意を固めた橋本内閣のもとで、橋本総理の指導力をもってこれをやろうというんですから、我々は、もうあれ嫌だ、これ嫌だと言っていられない。もう構造的な改革に踏み切らないといけないということを私は考えております。
  30. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 大変な決意で、決意だけではだめなんで、先ほど言ったように積み立て式のことをやるとか、これに対応するいろんな策を立ててお願いしますと、こういう話になると思うので、よろしくお願いいたします。そこで、時間もたってしまったので次に入ります。実は衆議院の予算委員会で、21世紀の新井将敬議員が質問をしているんですね。それは、日本医師会は圧力団体であるということをおっしゃっておりまして、例の医療保険審議会を退席したと、これに対して大変批判をなさっていらっしゃいます。これに対して小泉厚生大臣は、「ただいまの新井議員の御意見、筋論であり、傾聴すべき意見だと思います。今後の医療保険構造改革審議会、これは仮称でありますけれども、」云々というような、また橋本総理もそれに対して御返事をされております。私はこの審議会のあり方について触れたいと思うんです。実はなぜ退席したかということを私も調べました。そうしましたら、真相は例の今度の改革の中の薬の負担です。これは一日一種類ですね、一剤、これを十五円負担するということであります。しかし、実は原案には頓服も一包十五円負担と、それしか書いていない。それは大変なことですよということで、実際の話は二百五円までの薬で一遍に飲む薬、これは一調剤というふうにもうルールでなっているわけであります。ですから、そのことが抜けていたと。それから、じゃ頓服を三包出したら四十五円負担するのか、これは大変な問題だと。一回に処方する頓服は一回で算定すると、こういうことであります。  私は、きょうはどういうことか実物を持ってきました。実際の話は一回に飲む胃の薬であります。これは胃潰瘍の薬であります。胃の粘膜の局麻剤。そして重酸化マグネシウム、これは制酸剤ですね。ビアサンというのは健胃剤。これは一遍に飲めるわけです。そうしますと、これは一遍に飲めるので全部一つにまとめて飲めるから、これは一日分ですから、これを一つずつ飲む。そうすると、それぞれ十五円取ったわけで、実際全体でこれは六十円になるわけです。  しかし、計算しますと、これはセルベックスという薬ですが、一グラム五十一円三十銭、これを一・五グラム飲むから七十六円九十五銭。いまだに九十五銭、五銭という単位であります。そんなお金見たことないんですが、そうなっている。それからスルカインは、一錠六円四十銭・六錠で三十八円四十銭。それからビアサンという薬であります。こちらですね。これは一グラムが六円五十銭、一・五グラムが九円七十五銭。そして、これが重酸化マグネシウム、これはカマと言いますけれども、一グラムが一円六十七銭、これは非常に安い薬です。一・五グラムで二円五十銭。これを足しますと、百二十七円六十銭になります。  そうすると、これは全体で十五円の負担でいいわけです。ところが、これを全部十五円ずつ取るというわけですね。そうしますと、患者さんに四十五円余計負担させるわけですね。  これはおかしいじゃないのという話で、だめだと言ったら、もう審議しないでそのまま踏襲するんだと替ったので、それなら乗れませんよと言って出たわけであります。しかも、これはそのときに出た頓服でありますが、セデスであります。これは一グラムが三包ございます。そうしますと、これだけで四十五円の負担だと。これは一回に出すから、これだけで十五円。  こういったやつをそのまま通したら、こちらで四十五円、こちらで三十円、全部で七十五円オーバーする負担になるわけですね。だから、そういうことは許されない。実際はこれでいきますと負担が三十円でいいわけです。それはやっぱり問題がありますよと。さらに、血圧の薬があります。これはもう一錠ずつです。これが高脂血症、これは一錠ずつ。みんな一錠でも十五円ずつ取られるわけです。これは十五円以下じゃありませんので取られます。ですから、血圧が高くて、コレステロールが多くて、中性脂肪が多い、そして胃も悪いよという患者さんは結構負担は大変なことになるんですね。意外とこれは大変であります。そういうことが現場でわかっていない人が法律を決める、これはやはり問題があるわけでありまして、そういうことで退席をしたということであります。  ですから、審議会の内容というものは、ディスカッションを十分して、現場の意見を審議会で酌み取っていただくようなシステムをこれからもつくっていただきたい、そういうことを私は要望するんですが、厚生大臣、いかがでしょうか。
  31. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 審議会で医師会の代表の方々に参加していただきまして御協力をいただいている、また現場のきちんとした声を伝えていただく、これは大変貴重なことだと思っています。  ただ、その点をすっきりさせるとなれば、定率の方がすっきりしているんですね。国民健康保険に入っている人は三割定率だ、健保の方は一割、これから二割になる、高齢者だけ定額じゃおかしい、定率にすべきだということに対して最後まで反対しましたね。いろいろ意見は聞いているんです。どうしても定率が嫌だということで出てきた一つの案だと思うんです。もっとすっきりさせれば、私は定率がすっきりしていると思いますよ。それができない、いかに利害調整が難しいかということを切実に感じました。抜本的に改革しようと口では言いながら、いざ本格的なすっきりした制度をやると必ず反対が出る。  そういう点も含めて、今後あるべき医療保険制度の構造改革、どうしたらいいかということで、老人保健審議会とか医療保険制度の審議会をなくしまして、今度は新しい構造改革の審議会を設けて、今まで出たような議論も含めまして抜本的な改革の御審議をいただくということで、どういう先生方にその審議会に入ってもらうか、それは今後幅広い意見を聞いて、ある人はもう利害関係者を入れちゃいかぬと言う人もいます。もっと利害調整の場から離れて、国民全体の立場から考えていろんな人を選ぶべきではないかという意見もあるし、逆に、現場を知っていないとどうにもならぬ、やっぱり現場の方も入れるべきだという意見もあります。  そういう点も含めて、一部の利害のためじゃない、国民全体のあるべき医療保険制度改革はどうしたらいいかという審議会をこれから設置して、公正な意見が反映できるような審議会にしていきたいと思っております。
  32. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 今定率、定額の話が出ましたけれども、老人に対して、私は老人保健制度というのは、老人は弱者である、老人は福祉である、こういうことで敬老だ、いろいろお年寄りを大切にしろと、こういうのが日本国民の感情だと思うんです。  定率にしますと、お医者さんへ行くときに、きょうは幾ら取られるんだろうか、きょうは幾らになるんだろうかと物すごく不安なんです。年金生活者は四分の三ですね、国民の。そうリッチな方ばかりが1確かに貯蓄もあって老人医療なんか受けなくてもやっていける方もいらっしゃいます。私は、そういうことを思うときに、やはりお年寄りにははっきりわかった方がいい。  介護保険は定率定率と言っていますけれども、あれは三十万から六万円までの六段階に分けて、その一割の負担といいますと三十万の方は三万円ですね。これみんな決まっているんです。だから、定率と言いながらこれは定額。そういう総括的なものがわかっていればこれは定額なんですね、定率定率と言っても。ただ、出来高払い制でいくとなかなか大変な差がある。  きょうはぐあいが悪いから行ったら、レントゲン撮られて検査やられた、お金は持ってこなかった、そうなってくるとやはりお年寄りは二の足を踏む。ですから、長生きしていて申しわけありませんというような事態にならないように、やっぱりそこは定額。定額ということは、そこら辺が国民の皆さん方もまた老人クラブの方々もそういう思いは私は一緒だというふうに思っております。これは議論しても、あしたの朝までいってもなかなか議論は尽きないわけでありまして、次に進めさせていただきます。  そこで、細かいことですけれども、これは保険局長でなきやわからないと思いますが、この外用薬、これ実は六枚入っているんです。腰が痛い方に一日分、痛いときはじゃ四枚張ってください、朝晩かえなさい、痛くないときは二枚でいいですよと。出すときに何日分か日にちがわからない、こういうことが起きてまいります。じゃ、二週間に一回来る方に対してどのぐらいこれ渡したらいいのだろうと、こういうことも我々悩むわけですね、なかなか細かいことになりますと。実際、今度の十五円負担というのはそういうことでは問題が出てまいるのは事実であります。  ですから、保険局長、こういう細かい点も私が先般厚生委員会で質問いたしましたら、今調査をしているという御返事をいただきました。これは逆で、調査を先にやって、そして実態というものを踏まえた中で法案をつくっていく。確かに、今回は時間が短くて作業が進まなかったということもございますが、その辺のことはよく私もわかっております。しかし、やっぱり縁密なことを考えた中で法律というものはっくつていかなきゃいけないというふうに、これは反省を込めて、私どもも反省をしておりますが、保険局長、この問題について調査ができたかどうか、お知らせください。
  33. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) まさに今回非常に短い期間で御提案をさせていただいたということもございます。そういった意味では確かに先生御指摘のような点がございまして、私どもとしてもそういった中で極力きちんとした検討をしてきているつもりでございますが、反省すべき点がございます。  先般の厚生委員会での私の答弁につきましての今お尋ねでございましたが、これはいわゆる調査と言いますが、現場における実際の実務というものがどういうふうに流れていくのか、そういった意味で現場で対応をどこまでできるのか、そういった件につきまして、私どもはむしろ実務上の問題等につきまして勉強させていただいておるということでございます。ですから、いわゆる狭い意味での調査ということではございませんで、そういった幅広い勉強をさせていただいているという意味で申し上げたわけでございまして、そういった意味で、私どもはいろいろな御意見等もお聞きしながら現在なお勉強を進めておると、こういう段階でございます。
  34. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 勉強を今しているということでございますが、勉強してからひとつやっていただくということが本筋ではないかというふうに思っております。  それから、時間もございませんので、社会保険庁の所管している全国社会保険協会連合会というものがあります。そこで社会保険病院というものを委託してやっておるようであります。政管健保の一つの事業として、私はこの附帯事業というものはもう考えるときに来ているんじゃないかというふうに思っております。  五十四あるそうでございます。その収支状況等細かく聞きたいんですが、トータル的にこれは独立採算といっても建物その他は一般会計からきちっと入ってやっているわけですね。そういう使命はもう終わったんではないか、単なる総合病院を健康保険のお金を流用してやるという時代ではなくなってきたというふうに思っておりますが、簡単でいいですから、その実態がどうなっているかお知らせください。
  35. 真野章

    政府委員(真野章君) お答えいたします。  社会保険庁から全社連に委託をいたしております病院が五十病院ございます。先生御指摘のとおり、これは施設整備費、設備整備費は政管財政から支出をいたしておりますが、運営費は独立採算ということで、それぞれの施設で民間病院と同様に診療報酬で運営をさせていただいております。  この事業でございますけれども、私ども政管健保の保健福祉事業ということで行っております。今回の制度改正ではございませんが、それぞれ健康づくり、予防、検診ということでできるだけ健保財政本体に資するということを目的にやっております。そういう方に力を入れていきたいというふうに考えております。
  36. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 病院は、収支は赤字なんですか黒字なんですか。
  37. 真野章

    政府委員(真野章君) 今ちょっとお調べいたしますが、大体二対一ぐらいの割合で黒字の方が多いということでございます。
  38. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 後ほどまた詳しくお知らせを願いたいと思います。  それから、きょうは文部大臣に来ていただいております。国立大学の特に医学部の教授でありますが、これは診療をし研究をし講義をして教育をしております。非常に給料が安いというんですね。大変嘆いておられます。と同時に、国家公務員でございますからアルバイトが禁じられております。それで、心配なのは学術講演ですね。これをひとつお願いしたいといっても講演料その他の問題が出てまいります。こういうものの取り扱いについてはどういうふうにお考えでしょうか。
  39. 小杉隆

    国務大臣(小杉隆君) 国立大学の医学部教官の給与につきましては医師とちょっと差がありますので、国立大学病院の医師との均衡を考えて初任給の調整手当というものを支給しておりますのと、勤務の特殊性を考慮した診療業務当直手当というようなことで増額を図りつつ医師との給与格差をなくそうという努力をしているんです。毎年文部大臣から人事院の総裁に対して給与改善要望を行っております。しかし、今の困難な財政状況の中で思うに任せないという実情でありますが、さらに一層努力をしていきたいと思っております。  それから、昨年の十二月に政府全体として倫理規程というものを設けまして、文部省としても国立大学の教員につきましてもそれぞれ倫理規程を設けております。ただ、今御指摘のように、お医者さんはいろいろな面で講演とか執筆を頼まれる場合が多いわけでありまして、一般の公務員と同じ扱いでいいのかという面もあります。しかし、今この職務の公平さが要求されたり、あるいは社会の疑惑を招かないということも十分考えなきゃいけませんので、事前に了解を得た上で発表する、今までの蓄積したそういった知識なり経験を社会に公表していくということは大変重要な社会的な役割でありますので、そうした観点から倫理規程の実施に当たっても十分その点を配慮するということで、ただ透明性だけはしっかりと確保していく、こういうことでやっております。
  40. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 ぜひよろしくお願い申し上げます。  この臓器移植のあれが先生方のお手元に行っております。(資料を示す)きのう臓器移植法の審議が、議員立法でございますが、衆議院で始まりました。長い間かかってここまで来たわけであります。この表を見ますと、脳挫傷を受けた患者さんが発症いたしまして昏睡になります、呼吸停止になります、脳幹反射がなくなります、平たんな脳波になって脳血流がもう停止したと。この段階まではまだ助かる見込みがあるわけであります。しかし、ある時間が経過しますとこれは点々々となりまして、不可逆的になるわけであります。それからBのポイントに来ますと、これはポイント・オブ・ノー・リターン、脳蘇生の限界点に達します。それからさらに時間を経過しまして心停止になるわけであります。  脳死と臓器移植を結びつけることは問題があるんですが、しかし脳死というものを認定しないと臓器移植というものは行われないわけであります。今度の法律はドナーとレシピエント、いわゆる提供者と受ける側、この両方の意思が明確でなければこれは行われないシステムになっております。第三者がやみくもに勝手にやるということは絶対できない。本人の意思でありますから、これを尊重してやります。このB、Cの間というものが明確にわかるわけでありまして、日本は全脳死でありますから、脳全体がもう溶けてくるような状況になって回復しないということで問題をきちっと整理してあるわけです。  先般、NHKの放送で低体温にして助かるというのが放送されましたが、これは私はNHK側に申したんですが、誤解を生むといけないと。はっきりするのは、脳死の人をやっても絶対に助かりません。脳死になる前段階の人たちをあらゆる治療方法をしてよみがえらせる、これはやり尽くしてだめになった例だけがここへ来るわけであります。  その辺で、大変慎重なお考え総理はお持ちというふうに伺っておりますけれども、これは慎重にやることは当然でありますけれども、今後の臓器移植の発展ということを我が国が、もうアジアにおいて我が国だけであります、臓器移植をやっていないところは。ほとんどの国が今やっております。そういうことを考えた中で、総理、臓器移植の日本の将来のあり方について御所見があれば伺いたいと思います。
  41. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 先日、たまたまクローンの問題が論議をされましたとき、私は正直、人間におけるクローンというものについて自分の考えを決めかねておりますという御答弁をこの席で申し上げました。そしてその判断を決め切れないでいるその一つの問題点として、臓器移植とのかかわりを申し上げたわけであります。  その後、横尾議員から大変おしかりを受けまして、クローンに対する答弁で臓器移植を持ち出したことはというおしかりをいただいたんですが、実は私は、人間におけるクローン栽培というものが認められるとすれば、ある意味では臓器移植の問題の相当程度までが消える種類の方向性というものも考えられるものではないかと思います。しかし、私は余りこれは好きではありません、率直に申しまして。  そして、なぜその点で臓器移植に触れたかと申しますと、私も臓器移植というものの必要性を決して否定しているのではないんです。殊に、現在の手術が非常に高いレベルに達していること、それを知らないわけではありません。ただ、これは私は逆に専門家としての議員の御判断を伺いたい部分でもあるんですが、心臓移植が行われ始めました初期に非常に見事な成功例をおさめた医師の一人として南アのバーナード博士のものがございました。私は、当時バーナード博士の驚異的な手技と同時に記録を関心を持って見たことがあります。そして、果たしてこれは本当に許されることなのか、言いかえれば、心臓提供者の死の判定をだれが行い、その倫理性をだれが保障するのだと  いう思いになりました。  そのとき私が何例かの中で非常に気になりましたケースは、糖尿の持病を持ち、そして意識を失っているのが発見された場合インシュリンの投与を求めるというカードを持ったまま昏睡した患者が、警察によって発見され、病院に運ばれ、そのカードが後で発見され、心臓の提供者として昏睡のまま心臓を取られたケースであります。皮肉なことにこのケースが、私の知る限りではたしかバーナードの手術例の中で一番長く生きた方だったと思います。その後もそれに近い事例は幾つかバーナードの手術の中で発見されました。そして、あれだけもてはやされた心臓移植の名医としてのバーナードは、いつの間にか当時の南アという国が持つ人種的な問題点の中で自分の業績を上げたという批判が出たはずであります。  私は、実は臓器移植というものが必要だと思います。しかし、その場合に、その手術に当たる医師そのものの手技のレベルとともに、提供考となる人間の死を判定する人の倫理というものがどこで保障されるのか。今本当にその点を随分考えられた案が提出されておることを私も承知いたしております。そして、人間におけるクローン技術というものが、非常に恐ろしい創造のできるものであることも認めます。ただ、逆に医学の世界によく利用されるケースを想定すれば、移植にかわり得る可能性もある、私は実はそんな思いもありましてこの席で御答弁を申し上げました。  私は、やはり医の倫理というものを、医療に当たられる方それぞれが高いレベルを維持していただく、いやしくも素人の私からこういうことを申し上げるようなことのない水準に保っていただきたいと心から願います。
  42. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 大変重いお話を承っておりますが、日本の脳死の判定というのは、移植をするところでは絶対やってはいけない、そして専門医が二人で、一人ではいけない、大変厳しい規制をかけておることも事実であります。そういう危惧される面も、これは今までの医師自体の倫理観の問題を批判されるということも大いに反省した中で、未来に向かってこの問題を進めていかなきゃいけないと思っております。  最後に、総理にとっては大変皮肉な話をしなきゃならぬのですが、たばこの害の話をしたいと思います。  たばこというのはWHOで第一級の発がん物質というふうに認定されておるわけであります。  私のところへ一通の投書が参りまして、たばこによって私はがんになったと、それはそう思い込んでいるんですね。私はたばこは吸わない、しかし、がんになってドクターに聞いたら、周囲からのたばこの煙を浴びるのも一つの原因でありましようと。サリンをまくのと変わらない。  これは極論でありますけれども、サリンは特定の人がまくからわかるけれども、たばこは不特定多数からいただくからこれはというような話が出まして、日本には、法治国家でありますからこういうものを法で罰するなんということは、私はそうであると書いてもなじまないと。私は、やはり教育の面が一つはあると思います。青少年にたばこを吸うなと言っている大人がばかばか吸っていて、おまえたち吸っていて何で悪いんだと、こういう話も一つあるわけであります。  さらに、今世界じゅうを見ましても、先進諸国は大体禁煙でございます。むしろ喫煙する場所が指定されている。ですから、きょうは運輸大臣が来られているから、新幹線も、我々が切符を買うときに禁煙席下さいと言うんじゃなくて、たばこを吸う方が喫煙席下さいと、これは発想を逆に転換する時代に来ているんじゃないかというふうに思っております。閣僚の先生方は、もう今からたばこをやめても、短い人生と言っちゃ申しわけないですが、先がそう長くないので余り効果は出てこない。やはり十年たたないとだめだそうでありますから、これは白くなってこない。ですから、そういうことで、運輸大臣、そういうような発想はありませんか。  また、国内線もたしかJALは禁煙ですね。ところが、全日空は二十番目までは禁煙で、二十一番目からはたばこを吸う。私はかつて二十番目に座らされちゃって、後ろからがんがんたばこの煙を浴びてひどい目に遭ったことがありますけれども、運輸大臣としての御所見を伺いたいと思います。
  43. 古賀誠

    国務大臣(古賀誠君) 実は私も大変頭の痛い質問でございまして、私ごとで恐縮なんですが、私もヘビースモーカーでございます。しかし、私は私なりに理由を持っておりまして、何となくたばこを吸いますと心が安らぐような気がいたしますし、またアイデアもたばこを吸っているときの方がいいアイデアが出るような気もいたします。安心しましたことは、もう今やめても何にもならないということでございましたので、安心して吸えるなと思ったんですが。  それと、御質問の趣旨でございますけれども、確かに、それぞれの社会の趨勢だとか利用者の方々の要望を踏まえて、JR各社にいたしましても航空会社にいたしましてもいろいろと工夫をしていただいているようでございます。例えばJRにいたしますと、今度のダイヤ改正が間近でございますけれども、それを見てみますと、東日本も西日本も東海も禁煙車両というのが大体六〇%を超すような状況になっております。非常に拡大が順次されているということだと思っております。  また、今飛行機のお話をされましたけれども、JALは、お話しいただきましたように、二時間未満の路線におきましてはもう全席が禁煙席でございます。それから、ANAやJASにおきましては喫煙席、禁煙席と分煙化されておりまして、大変私どもにとっては肩身の狭い思いになるんですが、喫煙席の方が三割程度しかないということで、禁煙席が圧倒的に多いわけでございます。  あくまでもそれぞれの各社によって御判断いただくことでございまして、今指定席の購入の件がございましたけれども、これもちゃんと利用者の方々に喫煙席か禁煙席かということを聞いて発売するという、そういう指導もいたしているわけでございますが、確かにおっしゃるように、これからは、喫煙する方だけが私は喫煙席ですねと言うのも一つの方法なのかな、こんな気がいたしております。  いずれにいたしましても、社会の趨勢や利用者の方々の要望を踏まえながら、今後その対応に万全を尽くしていくように指導してまいりたいというふうに思います。
  44. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 たばこのぼい捨て問題があります。そういうもので被害を与えたときには、法律は何か五万円以下の罰金というのがあるそうでございますが、私は自動車免許証を取るときにこういうことは徹底的に教育をしてほしい。いまだかつて罰則を受けた人は一人もいない、罰金五万円はないということでございます。どうかそれは教育をしていただきたいと思いますが、きょう来ていらっしゃいますか、警察庁
  45. 田中節夫

    政府委量(田中節夫君) 委員指摘のとおりに、道路における交通の安全と円滑を図るという観点から、道路交通法におきましては、道路において進行中の車両等から物を投げてはいけないという規定がございます。この中にたばこの吸い殻等も含まれると。このことにつきましては、道路交通法をわかりやすくするために国家公安委員会が教則というものを定めておりますが、この中で、車からのたばこの吸い殻を投げ捨てることを道路上ではしてはいけないと明記をしてございます。  今お話しのように、この問題につきましては、罰則で取り締まるというよりも、むしろドライバーの意識といいますかマナーにかかるところが多いというふうに考えておりますので、御指摘のように、運転免許証の更新時でありますとかその他いろんな機会にこの法の趣旨を徹底してまいりたいと、かように考えておるところでございます。
  46. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 ぜひお願いいたします。  時間ですのでこれで私は終わりますが、総理もヘビースモーカーでございます。多少はお減らしになることをお勧め申し上げまして、私の質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  47. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 関連質疑を許します。井上吉夫君。
  48. 井上吉夫

    井上吉夫君 私は、橋本総理が各議員の質問に対しまして、与野党を問わず、見解の違いを超えて極めて懇切丁寧に誠意を持って答弁を続けておられることに心から敬意を表したいと思います。  使用期限が近く到来いたします沖縄米軍基地使用延長の問題につきましても、どうか大田知事の立場に立って、沖縄県民の願いにこたえるために最善の誠意と努力を続けられることを心から期待するものでございます。  さて、私は、本日はウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策を中心としてお尋ねを申し上げたいと思います。  この対策は、言うまでもありません、平成五年の十二月、農業関係者はもとより私ども政治にかかわる者も、何回かのいわば国会決議でもって、日本にとって米は格別に大事な主食であり、農業にとってもまたこの自由化だけはどんなことがあっても賛成できかねるという決議を続けてまいりました。それを背景としてのいわば多国間の交渉が続けられたわけでございます。  細川内閣のときでございましたが、たしか平成五年十二月十四日の深夜だったと思います。総理大臣談話で、ウルグアイ・ラウンド関係については合意せざるを得ないという総理大臣談話を発表されて、そしてこのことによって大変深刻な影響を受ける農家や農業団体の皆さん方、私もまた断腸の思いで苦渋の決断をしたんだということを言われました。そして同時に、このことから起こってまいります農業関係者の失望あるいは政治に対する不信や不満、そういうものをどうか乗り越えて、何とかもう一遍意欲を燃やして農業に頑張ってほしいという、そういう趣旨の談話を発表されました。  そして、たしか十二月十七日には閣議を開かれまして、ウルグアイ・ラウンドを成功に導くために農業合意を受けざるを得なかったということを背景としながら、以下申し上げるような基本方針を発表されました。  その主要な点を読み上げてみますと、   今般、政府は、我が国の今日の繁栄がガット  の自由貿易体制の枠組みによってもたらされて  いるものであり、また、ウルグァイ・ラウンド  を成功裡に導くことが我が国に課せられた国際  的使命であることに思いをいたし、ガット・ウ  ルグアイ・ラウンドの農業合意を受け入れるこ  ととした。   この農業合意の受入れが農業に携わる人々に  もたらす影響を最小限に食い止め、その不安を  払拭し、安んじて営農にいそしむことができる  ようにするとともに、我が国農業の将来展望を  切り拓いていくため、   この合意の実施に伴い生ずる農業・農村及び  関連産業の諸問題について、下記により、所要  の措置を総合的かつ的確に講ずるものとする。というのが閣議における了解事項の骨子であったと思います。そして、   以上を強力に推進するため、内閣総理大臣を  本部長とし関係閣僚を構成員とする「緊急農業  農村対策本部」を設置する。というのが十七日に閣議了解されました経緯だったと思います。  結局、ウルグアイ・ラウンド対策は、先ほど申し上げましたように、自由貿易の恩恵を一番受ける日本として、このことを受け入れざるを得なかったといういきさつを述べながら、何としても農家の皆さん方も思いを新たにして農業の振興のために頑張ってほしい、そのための可能な限りの対策を関係閣僚と一緒に必ず実施していくということを約束されて、今申し上げましたような組織をつくられたわけであります。  そして、その具体的な対策の内容を決めるまでには約小一年、政府与党が慎重に議論を重ねて責任を持って決めたのがウルグアイ・ラウンド対策であったと私は思います。  ところが、最近この総事業費六兆百億円の本対策費につきまして、さしたる議論もないまま政治決着によって決まったものであるとか、あるいは積算もどんぶり勘定であるとかいった全く事実と異なる心ない批判を耳にいたします。私は極めて不満であります。そして、このことの経緯というものを全国民が正確に知らなきゃならぬ、そのことを通してやっぱり農家が誇りと自信を持って農業に専念するという、そのことを国民的合意に高めなきゃならぬというぐあいに思っております。  昨年の住専問題の際にも、本対策費六兆百億円の一部を用いることによって農業団体の負担を軽減すべきとの議論がありました。全く質の違った議論だと私は思います。また、ことしになってからは財政構造改革が叫ばれるなど、これはまさに橋本内閣にとって当面最大のいわば財政改革を必要とする状況にありますから、昨日、総理を初めとする関係者の皆さん方のお集まりによって、財政改革をしっかり目標を定めてどの分野にも聖域なしに議論をしながら進めていくという協議をされたことも承っております。  ただ、以上のようないきさつから見まして、あらかじめ六兆百僚のウルグアイ・ラウンド対策というのは、今ほどいろいろな批評があると言いましたような、どんぶり勘定であるとか正確な積算根拠もなしに決められたものであって、まずはここにいわば見直しゃ削減の対象を求めるという、そのことは以上のいきさつから見てまことに私は正確を欠く話だと思います。  この対策は、政府与党責任を持って農家を初めとする国民皆様方に約束したことであります。こうした経緯を忘れ、財政改革の名のもとに安易な削減や見直し論がなされるようなことでは、いたずらに農家の方々に不安を持たせるばかりでなく、政治に対する国民の不信を募らせることになると私は思います。  以上のような私の見解に対しまして、本対策の決定の経緯も踏まえながら、総理大臣の御見解をお伺いいたしたいと思います。
  49. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) ちょうど私ども自由民主党が野党でおりましたとき、ウルグアイ・ラウンドにおける農業合意が成立をするという局面になりました。そして、各国は最後のぎりぎりの自分たちの言い分を少しでも残すために閣僚を現地に派遣し、ひざ詰めの交渉を続けておりました時期がございます。  そして、たまりかねて、当時の野党の私どもの方から政府に、日本だけが事務方にすべての交渉をゆだねているこの姿は異常だ、閣僚をぜひ派遣してくれという申し入れをし、最後の土壇場になって政府閣僚を派遣されましたが、既にでき上がっているものを動かすにはおよそ間に合わない時期でありました。たまたま参議院の御審議のさなかでありまして、あのとき参議院に大変御迷惑をかげながら、参議院は超党派で閣僚の派遣に御協力をいただいたことも私はこの機会に申し添えたいと思います。  しかし、その結果として起こりました混乱はそのまま私どもが引き継ぎ、一体その混乱の中から日本の農業にどういう方向づけをしていくかの責任は我々に残りました。そして、まさにガット・ウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策というものは、その混乱を引き継いだ与党三党が必死で考え、相談をし、その中からまとめ上げたものであります。  これは議員が今まさに御指摘になりましたように、この合意の結果として、我が国の農業農村というものが農業合意の実施によって大変厳しい状況に置かれる。その中で新たな国際環境に対応し得る農業農村を構築するという観点から、それを可能たらしめるために政府与党として必死でまとめ、考え上げたものでありました。  しかし今、同時に、我が国の財政状況が極めて厳しい中にあることも議員は御承知のとおりであります。  そして、昨日、私は、政府与党の財政構造改革会議、同時にそれを終わりました臨時の閣僚懇談会におきまして、財政構造改革の当面の目標を二〇〇三年、そして今世紀中の三年間を集中改革の期間とし、歳出の改革と縮減には一切の聖域は設けないとし、むしろ集中改革期間の間には主要な経費について具体的な縮減の目標を量的に決めていきたい。  当面、平成十年度の予算は政策的な経費であります一般歳出を対九年度でマイナスにしたい。そして、あらゆる長期計画についてその大幅な縮減、そして新たな歳出を伴う長期計画はつくらない。そして財政赤字を含めた国民負担率、今既に四二、三になっております。この期間中、とにかく五〇を超えない財政運営をしたい。そういう目標を立てました。  今、年間百万近い方々、百万を少し超えているかもしれません、毎年毎年これからしばらくの間新たに年金の受給権が発生する方は百万人台です。その社会保障関係費だけを考えましても恐らく一兆円近い自然にふえていくお金があるでありましょう。しかし、だからといって手を緩めたらいよいよ我々は抜き差しならない財政体質に落ちてしまいます。  そして、そういう中で私は、ガット・ウルグアイ・ラウンド交渉というものを受けて行ったこの農業合意関連対策でありますけれども、農業農村整備事業を中心に縮減または期間延長というものを検討するということをその一つの中に入れました。これだけが聖域ということはできません。  私は、議員が最初に述べられましたように、これがどういう経緯で生まれ、どういう夢をかけ、役立たせようとしてつくられたものであるかは存じておるつもりであります。しかし、それでも見直していく努力は我々は払わなければならない。その中で、政府の役割というものもより明確化し、将来に向けて採算性の高い農業というものをつくっていくために知恵を絞っていかなければならないということは、私は申し上げなければならないと思います。
  50. 井上吉夫

    井上吉夫君 総理から一連の経緯も御説明いただきました。そのとおりでありました。  それだけに、財政構造改革の大事さは私も承知をしているつもりであります。そして、すべてのどの省にかかわることも聖域なしに、構造改革のために、財政改革のためにどういう見直しをやっていくかということの必要性もわからないわけではありません。ただ、それだけに、途中で申し上げましたように、世の批判が、六兆百億が何だか根拠なしにつくられたんだというような、そういう批判でもってまずこれの切り込みから検討するということだけは了承できないという、そのことだけを強く申し上げておきます。  当然のこと、この六兆百億の中に占める三兆五千億は、いわば国際的な農業場裏の中で十分太刀打ちのできる足腰の強い農家をつくるために、いわば大区画の圃場整備をこの中に大きな項目として盛り込んでいこうという計画があることは御承知のとおりであります。ただしかし、全体の流れの中で、いわゆる公共事業を例外なしに検討の対象に入れるということを我々だけがまかりならぬと言っても通らぬでしょう。そのことは了解するにしても、少なくともまずウルグアイ・ラウンド対策の削減が優先するということだけは決してないようにしていただかなきゃならぬと思っております。  私は、このウルグアイ・ラウンド対策の決定の経緯からいたしまして、国際化に対応して緊急に体質強化を図ることを第一義といたしまして、基盤整備を、さっき申し上げましたように、その過半を計画の中に入れたと申し上げました。ところが、これらの予算は大部分が補正であります。通常のシーリングの枠とは全然別であるよということを明確にするために、当初予算ではなくて補正で計上されてきた。したがって、その結果として実は年度内に工事が終わらないことの方がむしろ通例となってまいりました。  雪国等では後半になりますと物理的に仕事ができませんし、当然、補正予算ということになりますと関係の都道府県議会でその手続に一定の期間がかかります。それらのことがやっぱり予算が消化し切れないという主たる理由であります。そのことをもってむだな経費だの使い残しだの不要不急だという、そういう論調は予算の仕組みから発しているわけであります。  したがって、これらの場合は財政法上もしっかり認められております明許繰り越しというやり方で処置をしているはずであります。しかしながら、もしこのことが不要不急な事業だという批判を今後とも招く懸念があるとすれば、むしろこれは補正予算じゃなくて当初予算で別枠で計上するということを考えて問題に対処すべきではないのかなと思うわけであります。  ただ、予算要求と今までの経過から見て、農林水産省がどういう要求をするかということもかかわってまいりますが、今申し上げましたような不要不急論の大もとになるとするならば、予算はやっぱり当初に組むべきだということに対する御見解を大蔵大臣にお伺いをしたいと思います。
  51. 三塚博

    国務大臣(三塚博君) 予算は本来当初に組む、こういうことで、概算要求、そして年末の査定、大蔵原案作成、そして閣議に提出をし、合意を得て国会に提出、四月一日を目指して執行ができ得ますように御論議をいただき採決を賜ると、こういう段取りでありますことは御案内のとおり。基本的に、年末編成いたします来年度予算は全体を見て行うわけでございますから、当初において行うと、こういうことになります。  補正予算というのは、緊急な事態を想定し、また税収等の過不足を是正するという意味で行われておるわけでございまして、当初からそれを考えて編成に当たるということはないわけでございます。  そういう観点で御理解をいただいていることを、あえて井上議員はウルグアイ・ラウンド予算についての経過、決定ということに言及をされておるということであろうと思います。総理から言われました段々の経過の中で決定をされたわけで、足腰の強い農業、そして後継者、担い手の育成、基盤の整備、自由主義経済の中でも立ち行ける農業をつくり上げていかなければならない、こういうことでありました政策決定の経過は明確であるはずであります。これは私もそう心得ております。  一点、財政危機が行き着くところまで行き着く前に、日本経済に活力があり、そして今やり抜けば再び日本経済は活力を取り戻し、取り組んでいけるだろう、こういうことの中で財政構造会議が設置をされまして、与党三党の代表の方、政府の代表の方、総理経験者、蔵相経験者等に御参加をいただきまして御案内のような段取りを決定いたしたところであります。  聖域なきでございますから、一つの事業を取り出してやるということはでき得ません。ですから、決まった予算の中で有効適切に運営をし、執行に成果あらしめるということであろうかと思いますし、財政だけではなく地方団体そして各種民間農業団体も含めた民間団体協調の中で取り組んでいかなければならぬときにあると、そういう意味で、別枠で計上するということはでき得ないことでありますので、御理解を賜りたいと存じます。
  52. 井上吉夫

    井上吉夫君 予算は、本来、当初予算に予定する事業を全部計上するのが当たり前だと、私もそう思います。しかし、ウルグアイ・ラウンド決定の経過から見て、今日までこうなっていた、そのことが未消化、したがって何かむだ金ではないかと言われる批判の対象になっていたということを指摘を申し上げました。したがって、自今の予算のいろんな交渉においては、原局であります農林水産省も、大蔵省とのいろんな予算交渉において、今のような話をしっかり頭に入れながら、ウルグアイ・ラウンド対策がどういう経緯で決まったかということに思いをいたしながら、編成時期を含めてさらに両省でしっかりと詰めていただきたいなと思います。  次は、農林水産大臣に、対策の目的や効果などを明確にする必要があるという点についてお伺いをしたいと思うんです。  新聞等で事業効果が疑わしくばらまきではないかという、そういう批判が間々見受けられます。農業と関係のない温泉施設にまで金がつぎ込まれているではないかという、そういう批判もあります。もとより、この対策はまさに断腸の思いでこの合意を受け入れざるを得なかった農家や農業のための対策でありまして、その目的達成のために最も効果的に使われなければなりません。  私ども自由民主党では農林部会を中心としてきょうも実はその検討会をやっているはずです。基盤整備、それだけの効果があるのか、それだけの規模があるのか、そしてでき上がった効果なり進度なりはどうなのかということを含め、同時に基盤整備の対象ではないいろんな地域については、中山間地域対策も含め、あるいは果樹、酪農その他のもろもろの関係者につきまして、ウルグアイ・ラウンドが与えたいろいろなマイナス効果を何としても取り返すためにいろんな対策を講ずる中で、やっぱり農村の生活基盤もしっかり整えて、そしてそこに都会の人たちがどんどんどんどん訪ねてきてくれるという施設として、もし地域にそういう資源があるならばこれを活用しようというので考えられたのが俗に言う悪口の対象の温泉施設だと私は思うんです。  それまで、あれもだめこれもだめと言ったらなかなか、この事業の対策はけちをつけようと思えば何ぼでもけちがつけられる。ただ、この事業の経過は先ほど来申し上げたとおりであります。このことは、もしそういう批判が出たら、担当の農林省が即刻そういうものではない、こういう必要性に基づいてこういう事業は展開しているんだということをしっかりと説明をし、理解を求めなきゃならぬ。私は恐らくは国民の合意は得られると思うんです。  ということで、活力に満ちました農村地域の実現といったウルグアイ・ラウンド対策の趣旨や事業の内容、あるいは事業実施によってどういう効果がもたらされたかという、そういうことについて的確適切な説明をして国民の正しい理解を得られるようにしなきゃならぬ。まさに農林省の責任だと思うんです。農林大臣の御見解を伺います。
  53. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) 先ほど委員がウルグアイ・ラウンド農業合意についての経緯を言われました。私も農林水産大臣として、この農業合意というものが自由貿易体制を維持強化していくということが我が国の発展のために必要不可欠な問題であるという、そういう観点からぎりぎりの決着をしたということ、またそのために受ける農家の対策については万全を講ずると、こういう経緯のもとに政府与党が一体となって責任を持って六兆百億の事業を決定した。この経緯については非常に私どもも重く受けとめ、この事業の達成については全責任を持って進めていかなければならない、そういう責任を感じておるわけでございます。  先ほど、委員がこの予算の計上について、当初予算、なおかつ特別枠で計上すべきではないかという御意見も、これまでの経過、経緯をよく御承知をされている委員の御発言としては私は私なりに理解をいたしております。  それはそれとして、今後の進め方については、申し上げましたように、我々全責任を持って、農家農村が受ける被害を最小限度にとどめるために、また新しい国際環境のもとにおいて足腰の強い農業を構築するために全力を尽くすべきだというふうに思っております。  この事業につきましては、まず大規模でしかも高生産性の農家を育成していくということが何よりも大事な問題でございまして、そのために基盤整備であるとか、それから都市との格差がございます農村の生活環境の整備、こういうことに農村農業の事業費は使われておるわけでございます。そういう点からすると、私は、この事業費の使われている内容からいたしますとこれは広く国民皆様方に十分に役に立っておる、そういうことであると思っております。  高生産の農業ということに我が国の農業が進みますと、これはまたコストの削減ということにもはね返ってくるわけでございまして、これは消費者にとっても非常にプラスするわけでございます。委員が御指摘のように、こういう問題について十分に国民の皆さんの理解が必要だという御指摘、これはまさしく私も同感でございます。要は、大事な問題、重要な問題を進めていく場合に、それをきちっと進めていくことと、それからなぜそういうことをしていかなければならないかという理解を求めるということは同じように私は大事な問題だと思っておりますので、これからもそういうことについては全力を挙げて取り組んでまいりたい、かように考えております。
  54. 井上吉夫

    井上吉夫君 どうかひとつ、いろんな批判が出たら間を置かずに、そういう批判をした人たちあるいはマスコミに対しても、中身はこういうことなんだ、こういう効果が上がっているんだということを的確に説明して、自分たちだけのひとりよがりではなかなかそれを受けとめて説明してくれませんから、マスコミの皆さん方にもこのウルグアイ・ラウンド対策というのがどういう経過で、そしてどういう目的で、どういう効果を発揮している、そういうことについて正確な国民理解が得られるように御協力をいただきたいと同時に、大臣を初めとする役所を挙げてそれらの問題については的確な説明をしていただきたいと思います。  次に、私は新たな基本法の問題につきまして申し上げたいと思います。  農政のねらいや内容を国民に正しく説明し、農政を国民理解と合意のもとに進めるということの重要性は何もウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策についてだけではありません。これからの農林水産省、いや政府を挙げて取り組んでいこうとされております農業基本法にかわる新しい基本法の検討もウルグアイ・ラウンド合意を契機として出てきた政策課題ではありますけれども、その制定の成否はまさに国民的な合意にかかっていると言っても過言ではありません。  現在、食糧、農業、農村をめぐっては国民の間にさまざまな期待がありますが、必ずしも国民意見は一致していないと思います。時には意見の対立も見られます。新たな基本法は、こうした現実を直視しつつも、我が国経済社会の中での食糧、農業、農村の役割や位置づけについての国民的な合意として制定されなければならないと考えております。  地球全体から見る人口と食糧の問題というのは、危機的状態が起こるかもしれないという時期はそんなに遠い先の話ではないと思います。こういうことなどを考えますと、土地の条件には恵まれないかもしれないけれども日本の国土を守る日本農業は、五百万町歩のうちの約二百七十万町歩は水田であります。二千五百万町歩の山と水田が日本の国土を守っている機能の大きさというのは私がちょうちょう申し上げるまでもありますまい。  これらのことを考えますと、新しい農業基本法というのは全国民の合意を得て、どうしても日本の国土にとってどれだけこれらの地域が大事かということと、産業としての農業はなかなか手ごろな後継者も得がたい状態にありますけれども、大事さにおいては決して他の産業に引けをとらないという、そういう合意をできるだけ早く確立する必要があると思います。このことについての御所見を総理大臣にお願い申し上げたいと思います。
  55. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) ウルグアイ・ラウンド合意、農業についての合意の成立する以前から農業基本法による農政というものの行き詰まりというものがしぱしば論議をされ、本院においてもそうした御議論が行われておったことを承知いたしております。そして、ウルグアイ・ラウンド合意、農業合意によりまして、今度は我々は全く変わった環境の中で、しかも二十一世紀の、例えばアジア太平洋地域における成長の制約要因として食糧というものを真剣に頭に置かなければならない時代に向けての新しい農業というものを考えなければならなくなりました。  今農業農村をめぐる情勢の変化にかんがみて新たな基本法の制定に向けての本格的な検討が行われているところであります。そして、この検討を行うに当たりましては、まさに国民各界各層の方々の御意見を伺いながら、その中で新たな時代に対応し得る食糧農業農村政策というものを構築していかなければなりません。そして、その柱になるべきものは、何といってもその時代における農業の中で新たな担い手たらんとする人々にいかなる夢をつくり出せるか、かぎはそこにあると思っております。
  56. 井上吉夫

    井上吉夫君 ありがとうございました。ぜひ国民的合意を得て本当の今の時代に合った新しい農業基本法ができるだけ早く決められるようにお願いをしたいと思います。  その新たな基本法の検討に当たりまして特に希望したいことがございます。  第一は、食糧の安全保障考え方を明確にすべきだということであります。  私は、実は終戦とともに復員して以来、さまざまな立場で農業農村にかかわってまいりました。特に、終戦後の混乱の中で、考えてみますと戦前は一人当たり年間百四十キロ前後の米の消費でありました。ところが、戦後はようやく百キログラムぐらいしか供給の余力がありませんでした。生産者も消費者もともに毎日毎日実はすきっ腹を抱えて、いつの日か腹いっぱい飯が食いたいなというのが日本人のほとんど全部の願いであったと思います。二十年代の大部分はこういう期間を過ごしました。したがって、食糧とりわけ米は国民生活にとって本当にかけがえのない大事なものだということをしみじみ痛感した時期でありました。  しかしながら、現在国民の食生活は飽食と言われるほど豊かになりました。一人当たりの米の消費量も大体六十キロぐらいになりました。あとはパンなりめんなりいろんなもので十分カバーをして余りあります。いつしか食糧や農業の大切さを忘れかけようとしているのではないでしょうか。世界の人口動向から見ましても中長期的に食糧需給が逼迫することは明らかであります。  同時に、近隣諸国、中国を初めとするアジア諸国がだんだんだんだん急速に経済成長が進んでまいりますと、動物性たんぱくの消費の増大から食糧需給の逼迫はさらに加速してまいります。近い将来、食糧問題がアジア、ひいては世界の重要な課題になることは私は避けられないと思います。  こうした状況に対処するために、我が国における食糧の安全保障考え方をしっかりと打ち立て、国内の食糧自給を確保していくことが次の世代に対する我々の責務であると考えますが、農林大臣、いかがでしょうか。
  57. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) 昨年の秋、ローマで世界食糧会議がございまして、私も代表で参加したわけでございますが、その会議を通じまして感じましたことは、食糧の安全保障の問題と自由化の問題をいかに調整するかということでありました。  同時に、先進国で最も自給率が低い日本の国にとりまして、この食糧の安全保障という問題をこれからどう考えていくかということについては極めて重要な課題だと認識しております。今最低の自給率、四二%でございますし、我々としてはこの自給率を十年かけて四六%の水準に戻していきたいということをまず考えております。  それから、御指摘がございました中長期の食糧需給ということを考えてみますと、毎年一億人の人間がふえてきておる、そういう世界の中で食糧の供給体制は必ずしもそれに対応していない。それからさらに、農業に対する投資がだんだんと少なくなってきておるというようなことは、将来の世界の食糧需給ということから考えますと極めて心配な要素であろうと思います。我々としては、そういうことを十分に頭の中へ入れながら、先ほど申し上げましたように、自給率の維持向上に向かって全力を挙げていかなきゃならぬというふうに思っております。  やる気のある農家の育成と優良農地を確保するということを基本に、これからこの食糧安保の問題について頑張っていきたいというふうに考えております。
  58. 井上吉夫

    井上吉夫君 私は、二番目に、実は中山間地に対する直接所得補償、いわゆるデカップリングのこともこの際真剣な検討の対象に入れてほしいなと思うんです。  かなり前からデカップリングはヨーロッパ諸国に幾つか事例があるという話は聞かされておりますし、しばしばデカップリングを考えたらどうだという話もありましたけれども、そうはいいながら、どういう対象でどういう基準でというふうなことなどいろいろ難しいので、なかなか踏み出しに至っておりません。  しかし、農村地域における過疎化や高齢化はどんどんどんどん進んでまいります。特に中山間地域は一番ひどい状況の中にあると思います。したがって、最初はかなり限定的に、しかもかなりな期間そこに住んでその地域を守るという限定的な対象者について最低のやっぱりデカップリングを考えるという、そういう検討が必要な時期に入っているのではないのかなという気がいたします。ぜひ御検討をいただきたいと思います。  先日来日いたしましたEUのフィシュラー農業委員も、長野県における視察において水田の棚田の貯水機能の説明に深い関心を寄せられ、また農村地域開発と環境保全対策の重要性を強調されたと聞いております。農村社会の維持や環境、景観の保全といったことも農業の重要な機能であり、経済効率のみを追求する余りこれがおろそかにされることがあってはならないと私は思うんです。農業のこうした機能についての思いを国民が共通に持ち、その維持保全のために力を合わせていくことが重要だと思います。  かねてからの農政における検討課題でありますが、条件不利地域の農業生産活動の継続を確保し、農業の有する多面的な機能を維持するため、ぜひ中山間地域におけるデカップリングの導入の適否を含めて御検討いただきたいと思いますが、これは実施するとなれば当然大蔵もその検討の相談にあずかってもらわなきゃなりません。中山間地対策にかねて大変熱心な三塚大蔵大臣であります。どうか両大臣で協議をしながら、実効ある方法が生まれることを期待して、大蔵大臣と農水大臣からお答えをいただきます。
  59. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) 中山間地域対策、これは御承知のように約四割の農地面積を持っておりますし、我が国農業にとりましては極めて重要な問題であります。  今の御指摘のデカップリング、所得補償、この考え方はヨーロッパにございまして、価格支持政策から所得補償政策に変わってきた、こういう経緯があるわけです。その先、今ヨーロッパでは考えがまた変わってきつつあるように承っておりますけれども、それはそれとして、この所得補償という考え方には我々も十分な関心を持たなきゃならぬというふうに思っております。  この問題につきましては、非常に難しいまた大事な問題でございますので、ことしの四月からスタートをする総理の諮問機関でございます審議会、仮の名前でございますが、食料・農業・農村に関する調査会、ここで新しい農業基本法の検討をお願いすることにいたしておりますが、その中でこの中山間地域のデカップリングの問題については十分に御検討いただこうというふうに考えております。  なお、この食料・農業・良村に関する調査会は、我々農林水産省としては、構造改革、行政改革、経済構造改革、そういう観点から農業全体の改革をこの調査会で御審議いただこうと、こういう位置づけをして今取り組んでおるわけでございまして、その答申をいただきました上でこの中山間地域の対策も十分に進めてまいりたいというふうに考えております。
  60. 三塚博

    国務大臣(三塚博君) 井上議員の長い間の主張でございますが、中山間地帯の安定なくしてこの国はどうなるか。農山村、漁村を含めまして日本の文化、伝統というものが構築されてまいりました。どんな困難なときもこのよき伝統と文化が中心となりまして今日の日本を築き上げてまいったという井上議員のかねがねの主張、私ども共有をしながら後世によりょきものを伝えるためにということでやってまいりました。  そういう点でデカップリングにつきまして、所得補償でありますが、このままで放置すればとあえてそう申し上げますけれども、等閑視すればということもあるんでしょうが、日本の文化と伝統がどうなるんだろうかと、こういう視点がそこにあると思います。  良水大臣から本件についての新たなスタートを切ってまいるということでございました。炭山村、中山間地の持つ機能、治山治水の効用、環境の効用、そしてよりよき風習がそこに根づいておるという、そういうものがあるわけでございますから、デカップリングがすべてなのか、さらにその思想を引き継ぐことによって、農政上に基本的な理念を打ち出すことによって総合的な観点から何ができるのか、こういうこともあるのかと思っております。そういう点で今後とも勉強をさせていただきます。
  61. 井上吉夫

    井上吉夫君 そういう地域を守る人たちには自力によってこの地域を守るんだという誇りと自信があります。その自信をゆがめることのないように、生活保護的な発想をそのまま持ち込んではかえってためになりません。いろんな方法はあると思いますが、その一例としてデカップリングのことも頭の中に入れながら御検討いただきたいという意味で申し上げたわけであります。  次は、先日、来日いたしましたフィシュラーEU農業担当委員は、日本での講演の中で、西暦二〇〇〇年の次期WTO交渉への展望につきまして、「「自由化はあらゆる問題の解決策となるわけではない」と、自由化一辺倒の貿易ルール見直しに否定的な見解を明らかにした。」と報じられています。また、我が自民党農林関係議員との会談の中では、農産物の貿易ルールは食糧安全保障とかかわる問題であり、国家の主権を維持することが重要であるとの認識から日本の食糧安全保障論に理解を示し、次期交渉に向け日本との連携を強めたい考えを述べられました。  また、三月十六日号のサンデー毎日を読んでおりましたら、元大蔵大臣の武村正義さんとウォルフレンさんとの大変興味深い対談の中でこのことにかかわりのある記述がありました。  武村さんは「地域特有のもの、特に伝統や文化と離れ難い農業については、各国のある程度の壁は認め合わないと、世界はだめになってしまう。地球全体が壊れていくことになります。」ということを言われた。官房長官当時、ウルグアイ・ラウンド受け入れの閣僚でもありましたが、ウルグアイ・ラウンド農業合意による農業まで自由化するというのは間違いだったという、そういう言い方であります。それに対しましてウォルフレンさんは、フランスの事例を出しまして、フランスは「自分たちは美しい農村の風景を守りたいんだ」として、アメリカに対しきっぱりと自国の主張をしたフランスの交渉姿勢には学ぶべきものがあるとのやりとりが掲載をされておりました。  次期WTO交渉はもうそう遠い先ではありません。そして、そのときになってばたばたやってもなかなか間に合うことでもありません。今のような問題意識を持って対処していく必要が私はあると思います。また、このような考え方を持つEUと我が国が連携を強めていくことは非常に重要なことだと思います。  農業関係の問題ということになれば、まずは農林大臣にかかわってまいりますが、やっぱり国際的な交渉舞台では外務省が非常に大きな役割を持ちますので、ここでは今申し上げました私の質問に対して外務大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  62. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) WTOにおきましては、農業問題はこの六年間の実施期間が終わる一年前からまた将来どうするかということを交渉することになっている、御高承のとおりでございますが、その時点における我が国の農業の状況がどうなっているか、あるいは各国の意向がどうなっているか、そういったことなどを総合勘案しながら対応してまいりたい、こういうふうに考えます。  そして、先ほどから委員指摘になっておりますEUのフィシュラー委員の御講演等につきましても、私どももその概要を承知させていただいておりますけれども、確かに農業を、環境の問題であるとか、あるいは土地利用の問題であるとか、あるいは社会的な側面からも考えるべきじゃないかという傾聴すべき提言もしておられます。  それと同時に、それを前提として、自由貿易を推進するというEUの基本的な立場からして、農産物貿易の規制緩和の進展あるいは市場アクセスのさらなる拡大というものに異を唱えるものでもないということも一方に言っておられるというふうに承知しております。  それから、いわゆる食糧安全保障の観点につきましても、確かに、先ほど総理からの御答弁にもございましたけれども、これから特にアジア地域を中心にしてどんどん経済発展をしていった場合に、世界の食粒需給にもいろいろネックが出てくるおそれがあるのじゃないのか、こういったものにどう対応するかというのはグローバルな立場から対応しなくちゃいかぬ問題だと思います。  そういった意味で、私どもも、世界的にも食糧安保の観点なんかの必要性が日本だけではなく広がってきているのは承知しております。しかし、同じ言葉でございますが、その中身の意味するものがその国の食糧の確保ということなのか、あるいはもう少し広く世界全体としてどうなのか、その辺はまだ収れんし切っていないような気もいたします。  いずれにいたしましても、先ほど来農水大臣等からお話のございました国内でのいろんな御論議もよく踏まえながら、WTOの交渉の場におきましては、我が国と同じような認識を持つ国ともよく連携をとりながら対応していかなくちゃいけないなと、こういうふうに考えている次第でございます。
  63. 井上吉夫

    井上吉夫君 アメリカでは将来の一層の自由化をにらみ、九六年農業法で生産調整廃止を決めて、輸出志向を強めているというぐあいに聞いております。したがって、次期交渉ではもっと厳しいいわば対立が生まれてくるでしょう。フィシュラーさんが日本考え方に同意をしたからといってそう安易な問題ではありません。したがって、外務大臣が言われたように、世界の食糧輸入国、家族農業重視の立場で連携できる国々とも今のうちにしっかり連携をとりながら、同じ意見にまとまるようにやってほしいなと思います。  世界じゅうの食糧がこんなに逼迫して餓死者の多いときでありますから、ぜひこれから先農業が可能な限り自給体制が推進するようにお願いをしたいと思います。  時間が参りましたので、終わります。
  64. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 以上で宮崎秀樹君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  65. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 次に、平井卓志君の質疑を行います。平井卓志君。
  66. 平井卓志

    平井卓志君 平成会の平井であります。午前中さして時間もございません。午後まとめて総理並びに大蔵大臣に御質問をしたい。  午前中、短時間でございますから、厚生大臣、あなたに一、二問お聞きしたい。  当内閣の中では大変政策に詳しく、率直に物を言われる方、お世辞抜きに私は大変評価しているんです。そういう意味で、大変長いおつき合いであるし、しかしながら言いにくいことを一つだけ言わせていただく。  各省庁で今いろんな不祥事がある。さらには、各大臣諸公と言わず各議員も、いろんな形で浄財として当時いただいた献金が、後日、会社が問題を起こす、それは神ならぬ身のわかる人はおりませんよ。返却する、ないしは問題はないといういろいろな答弁がございますが、一般議員だったら私はそれでいいと思う。全大臣含めて、御自分の各傘下には数万の人がおられる。それで不祥事が起きる。綱紀粛正を言う。そうしますと、それだけの行政の責任者になりますと、一般議員よりはさらに高いモラルが要求されざるを得ない。そこのところをひとつ十分に御理解いただいて今後の対応をしていただきたい。  わかりやすく申し上げれば、それだけの責任者ですから、単に法的に問題がなかったというだけでは、その程度のモラルの方が責任者ですかということを言わざるを得なくなる。お答えいただきたい。
  67. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) どういう御質問かという趣旨はちょっと理解しかねる点もあるんですが、政治家ですから政治活動の資金をどうやって調達するかということも考えなきゃいかぬ、与野党を通じてこれに大変苦労しているのが現状であります。  そして、過去の献金についていろいろ指摘をされておりますけれども、出す側と受ける側、受ける側は、政治資金規正法にのっとってその範囲内であるならば、しかも特別のわいろ的な意味もない、若干の資金を政治活動に役立ててくださいと言えば、政治資金規正法にのっとれば、しかも知っている方から見れば何ら問題ない。しかし、後でこの企業に問題があったということがあれば、それは受け取らない方がよかったかなというのは後でわかることであります。  しかも、政治資金規正法の改正で、今は年間五万円以上は企業名を公表することになっているという状況で、しかも年間五十万円以内ですか、それ以上受け取ることはできない。その範囲内で応援者が出れば、私はこれを受けるのは当たり前だと思います。  それをいけないと言うのだったならば、じゃ、政治家はどこから資金を調達すればいいのか。税金で面倒を見るというのか、これはだめだと。個人でやればいいのか、これまた問題があるということで、それぞれ政党のよって立つ基盤が違う。そういう中にあって、今の政治資金規正法にのっとって政治活動資金を調達している、そして政治活動に用立てるということは、私はこれは非難されるべきことでもないという中にあって、今政治資金のあり方をめぐっていろいろ議論がありますから、その点については批判を受けるような人物とか企業からは受けないように注意が必要だなと。そして、今後、政治資金というのはどういうものがいいのかという議論は国会で議論いただき、各政党会派で議論していただく問題だと。  基本的に政治献金というものが必要だということは皆さんわかっているわけですから、その中で一つのあるべき方向というのは今後国会の議論にまつべきではないか、私はそう思っております。
  68. 平井卓志

    平井卓志君 もう時間がございませんので、午後から大臣にはもう一問お聞きいたしたい。  ありがとうございました。
  69. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 平井卓志君の残余の質疑は午後に譲ることといたします。  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十四分休憩      —————・—————    午後一時開会
  70. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  平成九年度一般会計予算平成九年度特別会計予算平成九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、休憩前に引き続き、平井卓志君の質疑を行います。平井卓志君。
  71. 平井卓志

    平井卓志君 厚生大臣に残る一問だけお尋ねしたい。  高齢化に対する対応としていろんな施策がなされてきたが、非常にウエートの重い問題として早晩介護保険法なるものが審議に入る。そこで、私が申し上げたいのは、これがすべてに優先するんだ、待ったなしだ、あるところではこれさえ通ればと。大臣、私はとんでもないと思う。そういう論議だけをやりますと、老人はとにかく介護されるべきもの、世間の片隅でいる場所がないじゃないですか。ですから、ささやかでも社会的意義のある老人のいる場所が要る。これは幾ら頑張っても厚生省だけでできる問題じゃないと思う。  私は介護保険法の中身は全部見ておりませんから、きょうこの席で賛否は申し上げませんけれども、そういう形で関係省庁とひとつ御協議をいただいて、そういう老人のきちっと座るべき場所、若干の社会的意義を与え、いるべき場をつくる。同時に、並行して介護保険法なるものをきちっと整備すればかなりのところがカバーできるんじゃないか。大臣のお考えを。
  72. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 介護保険制度を導入する、そのための法案を今国会で今御審議いただいております。その中で、介護保険制度が導入されれば高齢者の問題はすべて片がつくという問題ではありません。今介護を要する方々が二百万人を超え、毎年十万人ふえるだろうという、そういう想定のもとに、介護を個人の問題、家族の問題だけに押しつけるのはもう限界がある。これは単なる高齢者の問題でもないし、負担のことを考えれば若い人にも及んでくる。そういうことから、介護の問題を家族の問題、個人の問題にとどめないで社会全体で支えていこうじゃないかというのが介護保険制度導入の趣旨でございます。  そして、高齢者の問題についてはさまざまな施策が必要だと思います。高齢者に生きがいを持ってもらう。そのためにはまず、最近は七十、古希、古来まれどころじゃない、七十歳なんというのはざらに元気で活躍している方がたくさんいるわけですから、高齢者に社会参加もしていただかないと日本の経済発展を考えるとおぼつかない。高齢者の社会参加、そしてこれから高齢者が生きがいを感じて自立できるような制度なり、連帯感を若い人もどうやって持っていただくか、これが主な視点であります。  そして、今は老人クラブ等が代表的なものでありますけれども、高齢者自身も活発に地域で活動されている。この老人クラブに参加している方なんかを見ますと、本当に七十過ぎかなとぴっくりするぐらい元気な方もいる。あるいは七十かと思うともう九十という方もおられる。これは、本当にいろんな活動をして、こういう活動というのは大変すばらしいことだなと。  自主的な、高齢者が生きがいを持って参加する場というものを社会的にもまた地域的にも支えていく環境というのは関係省庁とも連絡してとっていかなきゃならない。高齢者の問題は、介護問題だけではなく、この社会に今まで貢献してきたその知恵を生かして、高齢者にも生きがいを持って今後も元気に働いてもらいたいという施策を全体で考えるのは当然のことだと思いますし、これからも関係省庁と連絡して高齢者の生きがいづくりに努力していきたいと思っております。
  73. 平井卓志

    平井卓志君 次に、旧国鉄の清算事業団の債務償還の問題を若干運輸省にお尋ねいたしたい。  この債務問題というのは、つまり中身は保有する土地と株式しかないんですね。それでもう日限も詰まってきた。運輸省がこの問題に対して可能な限り早期の全株式売却に努めるのは私当然だと思うんですね。お考えはどうでしょうか。
  74. 古賀誠

    国務大臣(古賀誠君) JRの株式についてでございますけれども、先生おっしゃるとおり、まず第一にJR各社ができるだけ早く完全民営化を図っていくという観点、それから今御指摘をいただきましたけれども、旧国鉄の長期債務を償還していくという観点、そういう意味でJRの株式の売却というのは可能な限り速やかに、また株でございますので、一方では効果的に処分を進めていくということが必要であろうというふうに思っております。  先生も御承知かと思いますが、昭和六十三年の一月の閣議決定におきましても、JR各社の経営動向また株式の市場動向等を踏まえてできるだけ早く適時適切な処分をすることと、こうされているわけでございます。  具体的には、平成五年にはJR東日本におきまして二百五十万株、これは全体の六三%に当たるわけでございますけれども、株式を売却、上場させていただきました。昨年はJR西日本におきまして百三十七万株、これは全体の六八%に当たるわけでございますが、株式を売却そして上場させていただきました結果、約一兆六千億の実は収入を上げてきたところでございます。  平成九年度におきましても、昨年暮れの閣議決定を踏まえまして、JR東海の株式の売却、上場を目指すということを決めさせていただいているところでございます。  また同時に、JR東日本等二次売却につきましても、先生今御指摘いただきましたように、可能な限り早期に売却すべく関係者間で調整を進めさせていただきたい、このように考えているところでございます。
  75. 平井卓志

    平井卓志君 運輸省の姿勢としては私はそれで結構だと思うんです。もう大臣結構です。  ただ、ここで大蔵大臣、運輸省からいかにきちっとした答弁をいただいても株式の放出はできないんです。要はあなたのところなんですね。あえて証券局長とは言いませんけれども、あなたも国鉄改革当時最有力議員だった。そして、失礼ながら総理は当時の運輸大臣。改革特別委員会ができた。あなたはお忘れかどうかわかりませんけれども、私は新米大臣としてあなたのお供をして、衆参、朝から晩まで座らされた。それで、不当労働行為不当労働行為でやられたんですよ。そのときに、さすがあなたは総理になるだけの人だ、立派な答弁されたんですよ。民営化、債務処理問題、これしか国鉄が再生できる道はないと。お世辞じゃないんです、私、感心したんです。その当時のお考えがいささかも変わらないのであれば、この株式問題というのは、公社であろうと何であろうと一部公開いたしますと、理事者側、会社側の責任というのは全株公開したケースと全く変わらないんですよ。同じように責任を持たなきゃいかぬ。しかも、片一方は債務処理をしなければ利息はふえるでしょう。  全部株式をできるだけ早く放出するのに、じゃ、何がネックになるか。私、先回りして申し上げるわけじゃございませんけれども、かつて大蔵大臣は証券市場、資本市場の動向について、まさしくそれは市場に聞けと。このお答えはその限りにおいて正しいんですよ。地合いがよくなる、少しでも高く売りたい、そしてその市場を混乱させたくない、こんなことは常識でだれでもわかりますよ。しかし、経過をよく見てみますと、JRの株式を公開して全く市場は混乱していない。しかも、JTなんか随分知恵を出して株の放出で非常にうまくいったと私は思うんですよ。だから、そこのところは知恵を出してやれば幾らでも方法はある。  ですから、秋には東海さんもそういう方向でいくと思いますけれども、残る東西両社についても、惜しんでいるとは思いませんが、惜しみなく、早期に、本格的処理案ができる前にやるのが責任ではないか、至極当然ではないかと、こう私は思いますが、いかがでしょうか。
  76. 三塚博

    国務大臣(三塚博君) 運輸大臣が答弁されましたエッセンスは、昨年十二月二十五日の閣議決定であります。その後、閣議決定の執行いかんという、言葉をかえて言えばそうであろうと思います。  私も、本件は閣議決定いたしました以上これの処分については早期に行わなければならないと、そのように思っております。平井委員の民営化後の経営問題についての御見識も承りましたし、趣旨を踏まえて対応してまいります。
  77. 平井卓志

    平井卓志君 総理からもこの問題で御感想ありましたら。今のやりとり、いかがでしょうか。
  78. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 確かにあの当時、労働大臣として雇用の問題に特に御苦労をかけましたこと、改めてお礼を申し上げます。  そして、当時の空気を同時に思い出していただきたいと存じますのは、私どもは、清算事業団が立ち上がれば、まず資産償却の中で行うべきもの、それは不動産、土地の売却、そう考えておりましたこと、御承知のとおりであります。ところが、バブルの中で、むしろ他の国の関係の土地が異常な高値で取引をされたことから、東京都の方から清算事業団用地の売却にブレーキがかかりましたことも御記憶のとおりでございます。そして、それを受けて閣議でも、当分の間、売却をストップするという決断がございました。  ところが、その時期が、後で振り返ってみますと一番不動産の取引の盛んなときであり、高値の時代だったわけであります。そして、その後、清算事業団用地として抱えておりますもの、今、汐留が動きましたり、大分また動き始めましたけれども、価格低落の時期になかなか手放すチャンスをつかみ得なかったということもあろうかと思います。それは本当に当時予見できなかったという御注意であれば、これは私は素直に伺わなければならないと思います。  そして今、証券市場の能力を見ながら、できるだけ早く株式の放出に努めるべきではないか。その御意見は、先ほど運輸大臣からも御答弁を申し上げましたように、また大蔵大臣からも御答弁を申し上げましたように、新年度にJR東海の上場をも私ども考えているわけでありまして、ありがたくちょうだいをし、でき得る限り清算事業団の抱えております債務の減少に資するような処置をしていきたい、今伺いながら、そう思っておりました。
  79. 平井卓志

    平井卓志君 ぜひとも東西JRをあわせて早期の全株放出へ御努力いただきたい。運輸大臣、結構です。  そこで、総理にお尋ねしたい。  これはかねがね私が一つの持論として持っておる考え方ですが、選挙後、どの党も過半数を制し得ない。当然のことながら、比較第一党というのができる。この比較第一党という政党の責任についてどのようにお考えか、承っておきたい。
  80. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) かつて長い間、我が国国会、特に衆議院におきましては二大政党対立という歴史を続けてまいりました。そして参議院でも、スタートの当時には緑風会が存在し、政党政治とは一線を画しておられたわけでありますが、たしか、私ども国会に出てまいりましてしばらくして最後の緑風会所属の議員の方が自民党に入党されたように思います。そして、完全に衆参が同じような政党政治という枠に入るようになりました。そして、衆参ともに自由民主党が過半数を制していた時期の後に、衆議院において過半数は制しながら参議院において過半数に到達し得ないという時代があったこと、御記憶のとおりであります。その意味では、私は多党化現象と申しますか、そういった状況のあらわれは衆議院の我々よりも早くに参議院は御経験になられたと思います。  そうした中での比較第一党の責任というものは、全体をできるだけ相違点を探すのではなく調和できる点を求めて努力される、国会運営の立場からいえばそういうことだったのではないでしょうか。その意味では、参議院の議院運営というものに対して衆議院の私どもは、非常に御苦労が多いという与党としての立場で拝見をしておりました。  今その現象は衆議院も同様であり、昨年の選挙の結果も過半数を制する政党はございませんでした。今私どもは、比較第一党として、社民、さきがけ両党の閣外協力を得ながら、議論を交わし、そのオープンな議論の中から将来への方向を見出す努力をし、進んでおります。そして、今の時期について申し上げますなら、この点は私は、国会を構成される、衆参両院を構成されるすべての政党に対して、現在ペルーで起きております状況について情報を共有し、国会の両院の満場一致の決議をもって私どもがこの事態解決に当たれるようにしていただいている点にも、これはお礼を申し上げなければなりません。  第一党の責任、強いて申しますならば、基本的な考え方を一にして、それぞれの主張の中で共通する部分を見つけ出す努力をする、そういう役割を持つべきではないかというのが一点であります。そして、もう一つ申し上げますならば、その共通点を見出すことによっての協力関係をできるだけしっかりしたものにすることによって、過半数を制する政党のないがゆえの政局の不安定要因というものを少しでも国際社会に対して取り除いていく、そうした努力をしていくこと、国内はもちろんでありますけれども、そういう努力が問われているのではなかろうか、そのように存じます。
  81. 平井卓志

    平井卓志君 基本的な考え方はおおよそわかりましたけれども、率直に申し上げて、あなたはもう大変な時期に組閣をし、今後の困難性を予見いたしますと、これはもうめぐり合わせとはいいながら、本当にあなた御自身の口から言われた六つの改革その他についておやりになれるのかなと、非常な疑義を持たざるを得ない。  じゃ、その理由を申し上げましょう。  これも私の率直な感じでありますが、三党連立というのは、当然数が足りないから閣内であろうと閣外であろうと安定数をとりたい。ところが、そこで政策論議が行われた場合に単独政権との違いがどうしても出てくる。環末なことはどうでもいいんですよ。国の将来がかかった、まさに今回のような大改革を不可欠の問題として対応したときに三党合意はどうしても守らなきゃいかぬ。そうすると、あなたたちの連立内閣で守り得る国益というのは、その合意を超えることはできない。幾ら話し合っても、政党が違うのでありますから、全く違いが出ないなんということは私はあり得ないんじゃないかなと、こう思います。  いま一つ、言葉を飾らないで素直に申し上げると、戦後いろいろな消長はございましたけれども、今で言う自由民主党がおおむねかじ取りをやった、保守政権として日本を運営してきておる。当然のことでありますけれども国家予算の配分権も持つ。ある角度で見れば利益の再配分権も持つ。そして、橋本総理はそういうふうな政党の中で半生を過ごしてこられた。あなたがおっしゃるように、火だるまになっても、血を流しても、痛みを覚えても、ここはどうしても突破しなければならぬということを本気におやりになると、角度を変えてみるとあなた自身の自己否定につながりはしないか。それでも断固おやりになると決意を決めておられますか。  そういたしますと、六つ並んでおりますけれども、あとは一遍にやるのか一つずつやるのか。あえて私どもの希望的観測も踏まえて言えば、絶対に後戻りできないだけの切り口をあらゆる反対を押し切ってあなたがおやりになるならば、これはもう平成史に残る名宰相だと思う。しかし、これはなまじっかなことでは私はできないと思う。これはもう既得権の消滅どころじゃないんですね。どんなところに反乱軍が出るかもわからない。それをあえて押し切るというところまでの御決意がおありでしょうか。
  82. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は何が何でも全部を自分でやってみせるというほど思い上がっているつもりはありません。しかし同時に、この改革をやり上げなかったらこの国のあすがないとは思い詰めております。言いかえるなら、私がどなたにバトンを渡そうと、いつ渡そうとこの改革は仕上げなきゃなりません。そのいずれをも欠くことはできないんです。  戦後築いてきたそのほとんどは自由民主党の政権下のもの。議員もその自由民主党におられましたが、自由民主党にもいろいろ欠点はあったと思います。しかし同時に、国というものを真剣に考えて全力を尽くしてきた集団であることもお認めがいただけると思います。東西二大陣営対立の時代と言われた中で、あえて日本は単独講和を選択し、自由主義陣営の一国として今日の日本を築いてきました。その道を選んだのも自由民主党の先輩方であります。いろいろ過ちはあったかもしれません。しかし、先輩方もその時代その時代を真剣にこの国のあすをにらんでこられました。  そして今日、私は六つの改革という言い方をいたしますけれども、いずれも今日までの日本を築いてきたシステムというものが行き詰まっておるということは議員もお認めいただけることだと思うんです。それを改正しようとするなら自己否定だと言われるかもしれません。それは、私だけではなく、日本全部がその危機を乗り切っていかなきゃならないんです。  私は自己否定だとは思っていません、ここまで築き上げてきたものを新しい時代に合わせていこうとするんですから。そして、私はそれだけの努力をかける値打ちがある国だと思っておりますし、それに役立つならば私の力の限りを尽くしたいと思って申し上げておることもまた事実であります。しかし、力足らず途中で倒れれば、必ず次の方が同じ目標に邁進しなければならない状況にこの国があるということだけは間違いはありません。
  83. 平井卓志

    平井卓志君 若干角度を変えましょう。  危機管理ということが言われて久しい。ところが、総理、率直な話、民間会社にも危機に対処をする若干大げさながら危機管理体制というのはある。国がまとめて危機管理体制を統合しようどうしようという、この危機管理というのはどこまでを言うのであろうか。  私はいろいろ疑問に思って考えてみましたら、これは非常に広範にわたるんですね。重油の流出一つだって一定量を超せばこの間の騒ぎと同じですよ。これは大変な危機なんです。密入国もそうなんです。何百人がどうかと言っている間はまだいい、実際の数はつかめない。  これは想像で申し上げて申しわけないが、仮に、中国大陸は江沢民主席の体制下でやるとはいいながら、なかなか内陸、沿岸部の格差も激しく、まさか中国政府が今後棄民政策をとるなどとは私は考えておりませんけれども、昨今、朝鮮半島その他を見ておりますと、もう何が起こっても不思議でない。そういうことですから、例のカルトの殺人集団、世間を震憾せしめた、これだってそういう意味では危機管理の中に入る。動燃の事故の内容は詳しくわかりませんけれども、原子力問題の事故というのも当然大型になれば危機管理に入る。  そういう意味で、総理がお考えになっておる危機管理に対してどのような理解をされておるのか、お答えいただきたい。
  84. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今まで危機管理が十分にできていないという例でよく引かれました一つが阪神・淡路大震災とそれに対する政府の対応でございました。そして今日、ペルーにおける日本大使公邸において起きております事件に対しても、政府危機管理が問われております。そして、議員が述べられましたようにナホトカ号の油流出、これはもともとは荒天下におけるタンカーの遭難であり、人命救助が最初の要請でありました。それが重油流出事故と変わり、その危機管理責任を問われる状態になりました。  私は、危機管理とよく一言で言います場合に、自然災害から邦人の救出まであらゆる範囲のものが政府責任を問われておると思います。例えば、湾岸危機から湾岸戦争に至るプロセス、あるいはホルムズ海峡でイラン、イラクの間が非常に緊張しておりました時代に我が国のオイルタンカーの航路をいかにして確保するか、これも政府の問われた危機管理でありました。  その意味では、こうした事件、事故、さらに自然災害が一定の規模、これはちょっと定量的に申し上げようがありませんけれども、一定の規模を超えたとき、政府にその危機管理体制というものが求められる状態を惹起する。幸いに、そこでそれがうまく機能し、それ以上に問題を大きくせずに処理することができましたときにはそれですぐ忘れていただくことになりますが、その初動における過ちのあったケースが後で危機管理の麦任を問われるケースになる、そのような感じを持ちます。
  85. 平井卓志

    平井卓志君 一連の危機管理の中で論すべき問題かどうか、若干問題なしとしませんが、公安調査庁、来ていますか。——一つ、二つお聞きしたい。  例のオウム問題の処理で法務省は公安審査委員会に処分申請をやったわけですね。結果は棄却になった。当然のことながら、その挙証責任は全部公安調査庁にある。結論は出たんです。出たけれども、もう時間がございませんから余り詳しくはお聞きしませんが、私、見ておりまして、三千数百名の死傷者を出した。日本じゅうを震撼せしめた。教団という形でテロ分子が国家転覆のために組織化されていった。その結果はかなり壊滅状態になり、今日、主要幹部は逮捕されて法廷で裁きの場にいるということです。  そこで、公安調査庁に私がお尋ねしたいのは、あなた方は申請を出した方ですから、やはりああなった結果というのは挙証が足りなかったのか、証拠が不十分であったのか、公安審査委員会委員を十分に納得させるだけの証明ができなかっ−た。しかし、今でも当然発動あってしかるべしというふうなお考えなのか。そのおそれは全くなくなってしまったんだ、あの決定のとおりでいいんだとお思いなのか。お答えしにくいところもあろうかと思いますけれども、率直にお考えを聞かせていただきたい。
  86. 杉原弘泰

    政府委員(杉原弘泰君) いろいろ多方面にわたる御質問でございますが、まとめてお答えを申し上げます。  公安調査庁といたしましては、いわゆる地下鉄サリン事件の発生後、オウム真理教を調査指定団体にいたしまして総力を挙げて調査を行い、破防法所定の要件を立証し得る証拠の収集に努めてまいりました。そして、これらの証拠及びその後に行われました弁明手続における教団側の主張等を慎重に検討いたしました結果、なお所定の要件を満たしており、公共の安全を図るために団体の解散指定も必要であるという判断に達しまして規制請求を行ったわけでありまして、その処理は適切なものであるというふうに考えております。  しかしながら、当庁がオウム真理教に対する解散指定請求を行いました平成八年の七月の時点と、その後、公安審査委員会が棄却の決定をいたしました本年の一月の時点とを比較いたしますと、その間に逃走しておりました指名手配中の信者八名中五名が逮捕された、あるいは山梨県や静岡県の教団施設から信者が立ち退いたというような事情の変化がございました。公安審査委員会におかれましては、そのような事情の変化などを重視して、そして問題となっております教団のいわゆる明らかな将来の危険性というものについて必ずしも十分に認める証拠がない、このような判断に達したものというふうに考えております。  そこで、さらに委員のお尋ねの点につきましては、私ども公安調査庁としましては現在の教団にはなお危険があるというふうに考えておりまして、また私どもだけではなくて、この公安審査委員会の決定におきましても明らかな危険性まではないもののやはり危険性があるということが示されておりますので、そういう観点から現在も引き続き教団の動向について監視をし、必要な調査を進めているという状況でございます。
  87. 平井卓志

    平井卓志君 おおむね経過はわかりましたけれども、私の率直な感想を申し上げると、もうこの程度の事件では破防法の発動は我が国ではないのではないか、これは私の考えですが。そうだとしますと、今後非常に国際化してくる、朝鮮半島も正直な話なかなか見通しがつかない。あれこれ考えておりますと、やはり先進諸国には団体を規制する法令等は当然あるはずなんですね。我が国では恐らく破防法以外に団体規制する法律は私はないと思う。逐一どこの国がどうだということはもう時間がないからお聞きいたしませんけれども、個人的に申し上げれば、もう発想を思い切って変えて、破防法を消滅せしめて、別途発動しやすい、実効あるような法律の考え方、そういうお考え方は、法務大臣、どうでしょうか、お考えありますか、いかがですか。
  88. 松浦功

    国務大臣(松浦功君) お答え申し上げます。  審査の過程なりその中でいろいろ疑問を感じましたような問題点につきまして現在検討をいたしておりまするけれども、破防法を廃止して新規の立法化をするというような考え方は現在のところ持っておりません。
  89. 平井卓志

    平井卓志君 極めて重大な問題が抜けておりますので、今度は総理にお尋ねしたい。  先ほども、午前中質疑を聞いておりますと、当然日米同盟これあり、我が国外交基軸はアメリカだとおっしゃった。私とそこのところ全く同じなんですね。そして、皆さん方のやりとりを聞いておりますと、非常に同盟が重要だという論点が非常に強くて、今後のあるべき姿の困難性についてほとんど議論がない。御承知のように、同盟というのは幾らかのきちっとした前提がなければ結べないものですね。  私の基本的な考え方を申し上げれば、一つには共通の敵、敵を言いかえれば共通の脅威がなければ同盟は成立しない。いま一つは、やはり経済的な利益がある程度一致しませんと同盟を阻害する要因になる。そして次は、よく言われるような、相当程度の価値観が共有できるかどうか、それなくして同盟というのは過去ないんですね。  私が何を言いたいかといいますと、共通の脅威というのがソ連邦崩壊以来すっかりぼけてしまった。そうすると、これからの基軸とすべき確固たる同盟を結んでいかなきゃならぬ対米交渉において今のままでいいんだろうか。  一つだけ横道にそれて沖縄のことを申し上げましょう。交渉の当事者でございませんから、沖縄県側等々いろいろおありで御苦心のこととは思いますが、日米同盟、この関係からこのことを論じますと、我が国が負うべきこの同盟の最もわかりやすい我が国義務というのは、きちっと整備された基地の提供なんです。それ以外のことは余りとやかく数え上げる必要はない。ここのところだけはどんなに御苦心があるところでも、あとの問題は国内問題でございますから、米軍出ていけとか、半分に減らせとか、少々減ったら沖縄県民が納得するとか、これは両立しない問題なんですね。基地の問題は、当然のことながら同盟の義務としてこれは当然きちっとやらなきゃいかぬ。  若干沖縄のことに触れましたけれども、そうしますと、この共通の脅威、敵と言われたものが全く影を潜めてしまった場合、今後の日米のお互いに価値を認め合うような、永続性のあるような同盟の共通の目標というのは何に定めたらよろしいとお考えなのか、総理のお考えを承りたい。
  90. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今、議員は大変広範な問題を提起されました。そして、そのうちの相当部分を議員も同じと言われましたが、私も議員の見方と一にする部分がございます。  その基本は何かというならば、日米安全保障条約というものを基盤にした日米関係我が国にとって今後も最も大切な外交関係であり続けるということであります。そして、その日米関係というものを安定させていく、そのベースにあるものが日米安全保障条約であるというその点も変わりません。そして、日米安全保障条約体制というものを維持していこうとする限りにおいて条約上の義務を我々は履行する責任がある、この分析もそのとおりであります。そして、その条約上の義務とは、日本国内における米軍の基地、施設というものを円滑にかつ安定的に供給し続けるという責任を果たすということであります。そしてその点も私は全く議員と変わりません。そして、それは本院、この予算委員会におきましても何遍も私は繰り返して申し上げてまいりました。  そして、その中に、今我々は沖縄県における非常に困難な状況を迎えておりますが、まさに議員が言われるように、これは国内のことでありまして、五月十四日から十五日に我々は使用権原の存在しない状態でカレンダーをめくるわけにはいかないということも先般来申し上げ続けております。そして、これは御質問にありませんでしたが、私は本当に収用委員会日程の厳しいことをよく承知しておりますけれども沖縄県側でこの事態をぜひ受けとめていただきたいと願っていることも事実です。  その上で私は、今我々にとりましては日米安全保障条約というものは我が国の安全を維持していく上で大きな存在でありますし、それによって我々は身分不相応な防衛費というものを使わないで、ここまで戦後の五十年というものを過ごしてまいりました。同時に、その米軍のプレゼンスというものがアジア太平洋地域の安定の上に大きな役割を果たしているということは、昨年例えば日米安保共同宣言を発出いたしました後の各国の反応、随分離れていると思いますけれども、例えばオーストラリアその他からもこれを歓迎される、日米関係というのが安定していることに対して国際社会がそれだけの意義を認めている、これは我々は大きなことだと思います。  そして同時に、我々がその信頼の上に立って果たしていくべき役割というものは、決して安全保障の面、経済の面、限定すべきものではありません。今おかげさまでどうやら日本とアメリカの間は経済関係は比較的問題の少ない時期であります。比較的少ない時期です。それでも幾つかの問題できしみを立てております。我々はいたずらに妥協を繰り返すつもりはありません。日本として主張すべきことはきちんと主張いたしますけれども、経済問題でこれが決定的な状況に陥ったりしないことは、我々自身が心がける、アメリカ側にも心がけてもらうべきことですけれども、そうした視点の御指摘も私はそのとおりだと思います。
  91. 平井卓志

    平井卓志君 御案内のように、日米関係というのは経済問題も含めて非常に重層的に重なり合った関係がございますから、これは簡単に破綻するなどということは考えておりませんよ。  しかしながら、共通の目標が消えてしまうと、日本人の感覚というのは若干敗戦時の恨みは残ったにしても非常にアメリカを見る目が善意だと思う。そういう人が圧倒的に多いんですよ。ところが、昨今いろいろな人にお会いしておりますと、やっぱり一つの国益がかかったときにアメリカというのは非常にシビアに対応する、日本人の思い入れほど甘くはないのではないかなと。  そういう意味では、この日米同盟は簡単に破綻しませんけれども、要件が変わった場合には怠りなくオーバーホールして共通の目標を探し、そこで初めて相互の信頼感が生まれる、そういう作業が私たちに言わせれば日米双方とも若干怠りがあったのかなと、こんな感じもするんです。  そして、橋本総理が来月訪米なさるかどうか私は聞いておりませんけれども、重要だ重要だと言うだけでなく、私の認識では今後の確固たる日米同盟を固めるには非常に困難が伴う。そこのところを踏み込んであなたがその根回しを、向こうへおいでになって、今クリントン政権でございまして、会う人にもよりますけれども、これは外務大臣も同様ですね、本当の腹はどう考えておるか、最低限こっちがしなけりゃいかぬものは何だと。  よく言う、日本は文民国家で防衛はアメリカに任せる、問題が起こればそれ相応の資金だけ提供する、そういう国家をアメリカは望んでいるんではないかなと言う人もいる。ところが、別の角度から見ると、一見そう見えながら、そうじゃないんだ、普通の民主主義国でいいんだと。  ここで誤解がないように申し上げておきますと、普通の民主主義国と言い始めると、すぐに個別集団の自衛権問題に入ってくる。このことは時間がないから論じませんけれども、個別自衛権はある、集団自衛権もある、あるけれども憲法九条何がしによってこれは行使しないというのは、アメリカが決めたんじゃないんですよ。日本の戦後の国対政治の中で、法制局長官も入れて、そういう解釈が固まってきたんだ。きちっとした法理の裏づけでそんなものが決まったんじゃない。  しかし私は、その解釈を変えて、そういう意味での普通の国になってアメリカとつき合えとは言っていないんですよ。今の解釈の延長線上ぎりぎりのところで、今後の日米同盟を新たなる目標を設定して確固たるものにできるのかそうでないのか。外務大臣、どうでしょうか。
  92. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員指摘のように、私どもは、時代がいろいろ変わってまいりましたそういった新しい時代の中で、依然として日本外交基軸である日米関係をどうやって維持していくか、そのためにはその目的あるいはその意義をどこに見出すか、これは大切なことだと思っております。  そういった中で、先ほどの御質問の中で、共通の敵あるいは共通の脅威、こういったことがやはり確固たる同盟のためには必要な要素の一つじゃないかという御指摘がございました。これは冷戦下で考えてみましても決して我が国はどこか符定の国を敵であるとかあるいは脅威ということにしておったわけじゃございません。我が国我が国として、あの時代の国際情勢の中でどうやって我が国の安全を確保するかという観点から日米安保体制も組んだわけでございます。  しかし一方、アメリカの立場からすれば、二つの体制といいましょうかイデオロギー、あるいはその社会、国家運営のシステムを異にする考え方に立った二つの世界が対峙している中で、一方の陣営のいわば盟主として世界全体の平和を守っていくという立場からいろいろな布石をしておった。その中の一つとしてやはり日米安全保障体制というものも米国の立場からすれば考えておったと、これは否定できないと私は思います。.さて、冷戦が終わって今の時代で一体どうなのか。そういった意味では共通の何か脅威か敵があるかということでございますが、それはあえて言葉で言いますと見えざる敵だと私は思います。今世界全体においてもそうでございますが、特にアジア太平洋地域でこの国が危ないんだ、この国が何か侵略的な姿勢をとってやっていくんだということを特定するわけじゃございません。しかしながら、社会的な、経済的なあるいは政治的ないろいろな要因を見てまいりますと、今この地域がきちっと安定しているという点で自信を十分持てるかというと、どうもやはりそこに不安定さといいましょうか不確定なものがある。  そういった状況の中で、どうやってそれをより安定した状態にしていくか、そしてそのためにその見えざる敵、この安定さを壊していくような要因をいかに予防していくかという、それが我々の共通の目的であり、日米安保体制というものも、この地域でいざというときにはきちんと対応するんだよという体制を組んでおくということがそういった見えざる敵に対処するという意味があるんじゃないかというふうに考えております。  それと同時に、それはすぐれて軍事的あるいは政治的な要因だけではなくて、経済その他も含めました、委員も御指摘でございましたが、そういった面での両国の幅広い協力関係の基礎もなしているものである、これもまたこの地域あるいは世界全体の安定をもたらすものであると、こう考える次第でございます。  そういったことを政府といたしましてもいろいろ考えまして、新しい段階における日米関係をどうするか真剣に考えてまいりました。その上に立って、昨年四月でございますが、クリントン大統領の御訪日の際、橋本総理との間で首脳会談を持ち、こういった新しい世界情勢の中で日米関係がいかに重要であるか、しかもその中のいわばベースをなす日米安保体制をなぜ維持し発展していかなくちゃいけないかということを国民に対してあるいは国際社会に対して訴えかけていった、それが昨年のアピールなりメッセージなりあるいは日米安保共同宣言の持つ政治的な意味であると考えております。  その上に立って私どもがそれをきちんとやっていくためには、沖縄に存在するものも含めまして米軍の基地というものもきちんと提供していかなくちゃいけない。そのための努力も、委員御承知のとおり、今懸命にやっているところでございます。  それからさらに、今御指摘になりました日米協力を具体的にどうするかと、そういった問題についても、ガイドラインの問題もございますが、その他の面も含めまして私どもは今米国とも共同しながらいろいろ対応していこうと思っております。委員の御指摘になりました世界の中で我が国が果たすべき役割、とりわけ米国との協調のもとに果たすべき役割をしっかり踏まえてこれからもやってまいりたいと思います。
  93. 平井卓志

    平井卓志君 総理、わかりやすく言いますと、ソ連の脅威がなかったら私は日米同盟は存在し得なかったと思っているんです。だから、今後は脅威、敵という言葉は使わなくても、やはり双方が理解し得るような共通の目標の確たるものがありませんと同盟は風化してしまう。そのいい例が、かつて近代史の中で日本が一番評価された同盟は日英同盟なんですね。どうなったか。三回目ですよ。八年たった。政策立案者は恐らく同じように考えたんでしょう。周りの環境が違ってしまった。自然に風化、消滅となった。  私だけの考えを申し上げれば、アメリカと切れては発展的に来世紀生き残れないというのが私の考え方なんで、だから申し上げている。クリントン大統領も訪中するでしょう。江沢民主席も第十五回党大会をやる。その後はまた恐らく訪米するんじゃありませんか。それぞれが一つ国家目標を持ち、戦略を持ち、やっておる。どうも我が国の場合は、現状対応型といいましょうか、目的追求型の国家運営に見えないところがある。それでは今後の確たる日米関係の構築は雄しい。重要であるけれども、重要性よりも私は困難性の方をあえて強調したい。そんな生易しいものじゃないと思う。外交というのは人の善意と好意だけを信じてやったって成果は全く出ない。戦略も要る、粘り強さも要る。そういうことで、今後の日米関係というのは非常に全力投球をしなければならぬ時期に入っている。  ですから、私が総理にお聞きしたのは、来月行かれるかどうか知りませんけれども、もう瑣末なことはどうでもよろしいですから、そこのところをきちっと築かれたら平成史に残る宰相ですよ。どなたもできていない、それが。一番難しいときに来ているんですよ。その理解がみんな足りない。  時間が来ましたから、あといろいろ申し上げたいことがございますけれども、また次の機会にODA問題その他を改めてやりたい、こう思っております。  ありがとうございました。
  94. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 関連質疑を許します。都築譲君。
  95. 都築譲

    ○都築譲君 平成会・新進党の都築譲でございます。  きょうは危機管理あるいは医療・福祉などについての集中審議ということでございます。危機といってもいろんな対応があります。一昨年の阪神・淡路大震災、そしてまたことしの日本海重油流出事故あるいはペルーの人質事件、いろいろな問題がございますけれども国民の命とか財産を守るという観点からどういう危機が今あるかと言われると、きょうの新聞などにもいろいろ出ておりますし、連日新聞や週刊誌、こういったところにも出ております。  一つ今問題になっておりますのはいわゆる金融の不良債権、これがどういう影響日本経済に、ひいては国民の経済生活に影響をもたらすか、こういう問題があるわけでございます。また、きょうの新聞にも出ておりましたけれども政府の方では危機管理の体制を強化するというふうなことで準備を進めているということでございますけれども、こういった問題についてぜひ政府の見解をただしていきたい、このように思っております。  と申しますのも、きのう実は労働組合の、連合の主要単産の指定集中回答日ということでございました。金属産業などでは九千四百円から幾らと、こういう状況で回答がなされております。ただ、労働組合や企業の経営者、こういった人たちが真剣に議論を重ねて、これからの賃金は幾らにしようとか労働時間をどれだけ短縮しようとか、あるいは従業員の福祉をどのように図っていこうかと、こういう努力を幾ら真剣に積み重ねてきても政治が一つ間違えてしまったら全部台なしにしてしまいかねない、こういったところが政治の怖さであるわけでございますから、私は本当に国民の皆さんにもぜひもっと政治をしっかりと見詰めていただきたいということをお訴えしつつ、以下質問をしていきたいと思います。  今の金融機関の抱える不良債権の問題、実は住専ということで去年の今ごろは私ども新進党は衆議院の方で強行採決反対ということで座り込みをやっておった時期でございます。ただ、あれだけ大きな問題になって、ことしになったら何かもう片づいてしまったかのように言われておりますけれども、実はそうではないんじゃないか。今各銀行とかあるいは信用金庫とか、地方銀行とか第二地銀とか、いろんなところがささやかれている問題はそこにも遠因が相当あるんではないかと、こういうふうに思うわけでございまして、そういった点をぜひただしていきたいと、このように思うわけでございます。  きょうは、まず住専処理のその後の状況についてお聞きをし、幾つかの銀行の、あるいは信用組合の破綻の処理、そういった問題についてお伺いをしていきたいと思いますし、また最後に時間がありましたら、この間官房長官が言われた人勧凍結の議論の問題についてもぜひもう一度見解を改めてお聞きしたい、このように思っております。現在の金融機関の状況については、先週の金曜日に一応大蔵省の銀行局長さんの方からかなり詳しく説明を聞かせていただいたわけでございまして、そういったところを踏まえてきょうは議論を進めていきたいと、このように思っております。  きょうは住宅金融債権管理機構の副社長の尾形さんにも参考人ということでわざわざお越しをいただいております。実は私、大蔵省の方に資料ということで、競売等の執行状況とか、あるいは住専七社からの債権の譲り受け、その処理、回収状況、こういったものを聞かせていただきたいと、こう申し上げましたんですが、去年十月一日に発足したばかりで、決算はこの三月ということでその状況はまだ出ておりませんというふうなことでございました。ただ、実際に担当されておられるお立場で、差し支えのない範囲でそういう状況についてまずお聞かせをいただければと思います。
  96. 尾形正二

    参考人尾形正二君) 尾形でございます。本日は私どもの社長の中坊が病気療養中のため、代理で出席させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。  ただいま先生の住専処理のその後の状況という御質問でございますので、御説明を申し上げます。  当社は、昨年十月、住専七社から財産を譲り受け、中坊社長を陣頭に債権回収に全力を挙げております。昨年十二月には延滞債務者に対しまして一斉に督促状を送付いたしまして、返済計画の提出を求めて回収を推進しているところでございます。また、預金保険機構と連携をとりまして、指導、助言並びに特別調査権などの御支援をいただいているところでございます。そういうことで、末野興産などから既に隠し資産などの発見をするという成果も上がっております。  当社の八年度の事業計画では債権回収目標を約二千七百億といたしておりまして、現在この目標に向けて全社を挙げて取り組んでいるところでございます。
  97. 都築譲

    ○都築譲君 今お話がございましたが、もう一度おさらいで恐縮ですけれども、住専の処理スキームというのは、いわゆる住宅金融専門会社七社がたくさんお金をいろんなところから借りた。いわゆる母体行から三・五兆円、あるいは一般銀行から三・八兆円、農協系統金融機関から五・五兆円、これだけ借りておったわけです。  そのうち正常資産と言われるのは三・五兆円弱、それから回収の見込みがあるだろうと言われるのが約三・三兆円、そして損失見込みということで完全にもう回収できないだろうといったものが六・二七兆円、あるいは欠損見込みが約一千四百億円ということで、六兆四千百億円実は要処理額があったということで、この負担を実は母体行は三・五兆円を放棄する、それから一般行は三・八兆円のうち一・七兆円を放棄する、農協系統は五・五兆円のうち五千三百億円を贈与するという形でいって、それで足りないから六千八百億円を税金でというか公的資金でやってくれと、こういう話だったわけでございます。  私どもがその六千八百億円について猛烈な反対をしたのは、なぜこういうことになってしまったのか、そして今一体どういう状況にあるのか、だれが責任を持つのか、そしてなぜこういうスキームになったのか、その説明が十分になかった。今回の金融機関の不良債権の処理の問題についても大蔵省の方は情報公開を進めていきますと、こういうことで言っておられますけれども、まだまだわからないところがたくさんある。  そんな中で一つの問題は、最近自民党の山崎政調会長などもしきりに言われておりますが、何か公的資金を投入すればいいんじゃないかということを言われておる。ただ、これに対しては自民党の中でも、あるいは官房長官なり大蔵大臣も否定的な見解を言っているというニュースを新聞などで見ておりますけれども、こういう公的資金の議論、住専こそが典型的な公的資金導入のケースであったわけでございまして、国民は何も知らされないままに実は税金の負担だけ、あるいは財政資金の投入だけを勝手に了承してくれと、こういうのでは納得できない、こういう話になるわけです。  そして、今申し上げた住宅金融債権管理機構が実はスタートしたわけでございますが、先ほど申されました状況の中で二千七百億円の回収を目途にと、こういうことでございました。  ただ、去年成立をしたいわゆる住専関係の法律、この処理に関する特別措置法があるわけですけれども、その中で住専七社から住宅管理機構が受け取った債権、これは指定期間ということで一年以内に譲り受けた債権についていろいろな措置があるわけですね。それはもう住専七社からほぼ全額受け取っておられるのか、そしてその中で当面その二千七百億円というのをこの年度ということで目標にしてやってこられたのか、そこのところちょっとお聞かせいただけますでしょうか。
  98. 尾形正二

    参考人尾形正二君) お答えします。  今御質問の件でございますけれども、先生御指摘のとおり、私ども譲り受けました額は六兆九百億円強でございまして、当初のスキームから見ますと約七千億ほど減っているわけでございますが、それはスリム化したというふうに私ども考えております。  と申しますのは、借入金もほぼそのくらいの額で減っておりますものですから、必要額が減るものですからこれは大体見合うと、こんなふうに考えております。その譲り受けにつきましては去年の十月一日を基準日といたしまして引き受けております。
  99. 都築譲

    ○都築譲君 譲り受けは十月一日から一年間ですね。
  100. 尾形正二

    参考人尾形正二君) いえ、終了をいたしております。
  101. 都築譲

    ○都築譲君 今の尾形参考人お話でいきますと、当初六兆九百億円ということでいわゆる住専の方から債権を買い取ったということで、これは見込みより七千億円少ない、こういうことでございます。この点についてはまた後で触れたいと思います。  先ほどのお話の中で恐らく抽象的にお答えになっておったのは、今の状況として、競売の状況とかあるいは譲り受け債権等の処理、回収の状況といったことについてはまだつまびらかに御説明できる状況にないということなのかなと、こう受けとめておりますけれども、もう一度改めてその点をちょっとお聞かせいただけますか。
  102. 尾形正二

    参考人尾形正二君) お答えします。  まだ発足して十分でございませんので、そういう制限の中で申し上げさせていただくわけでございますけれども、私ども旧住専からの財産の譲り受け以降は個別債務者ごとに具体的な回収方針をいろいろ検討して、それに実態の上で競売をかけるようにいたしております。そういうことで、確かに十月一日以降の新たな競売の申し立てばさほどの件数に上っておりません。  当社の回収の方針といたしましては、まず債務者との話し合いで任意に返済をしていただく、その方が買いただきだとか競売による値下がりとかそういうことが避けられますので、その上で必要に応じて積極的に競売手続を進めていく、こういうことでございます。現時点での競売申し立ての係属件数は約六千五百件でございます。
  103. 都築譲

    ○都築譲君 それから、これからいずれ問題になってくるのは、先ほど言われた六兆九百億円の買い取り債権の額でございますけれども、これが実際どのようになってくるのか。競売というような形もございますし、任意の弁済ということも言われております。できるだけたくさんの債権を回収してもらわないことには、また二次損失と申しますか二次ロスといった問題が出てくる。二次ロスが起こると何が問題かというと、民間金融機関とまた公的資金で二分の一ずつ折半をする、こういう話になっておったわけで、それがどれぐらいになるかさえ見当がつかない、こういう状況だったわけです。  いただいた資料によると、抵当権がついているのが、いわゆる担保不動産ということでついている第一順位のものが約八割ありますというのがサンプル調査ということで出ておりますけれども、ただ、私が去年議院証言法に基づいて住総の原元社長に問いただしました。その際に、いろんな資料も出していただいたわけでございますけれども、そのときにいただいた資料の中でざっと見ると、第一順位がそんなに八割もあるとはとても思えないような事例があったわけでございます。  第一順位が八割というのは口数で、いわゆる優良な、本当に個人の住宅ローンのところまでカウントしておられるのか、あるいは事業融資ということで住専各社がやっておったいろんな不動産開発業者、建設業者、こういったところに貸しておった巨額のもの、こういったものについて額のベースで調査をされたのか、そこら辺のところをちょっとお伺いできますか。
  104. 尾形正二

    参考人尾形正二君) お答えいたします。  御指摘の抵当順位につきまして、当社でも事業性の貸付金についてサンプル調査を行ってみました。その結果によりますと、第一順位のものが今お話が出ましたように八割になっているわけでございます。これは必ずしも件数だけではなしに、評価ベースで見ましても七五%ということで、サンプルということで考えますとほぼ近似値ではないかというふうに思っております。  それから、個人に対する住宅ローンにつきまして見ますと、個人の場合は借入先が単独でございますのが一般的でありますので、個人住宅についても当社の債権は高い順位の抵当権を有している、このように考えております。
  105. 都築譲

    ○都築譲君 今、尾形参考人から御説明がございました。だから、本当に参考人が今言われるような形で高順位のものがついていればいいんですが、ちなみに持ってきたものをちょっと見てみますと、いろいろなものが本当にあるんです。去年わざわざ理事会で決定して議決をやって出してもらったもの、これは住総がTという開発会社に出したあれですが、新宿のある土地ですけれども、二百九十二坪、坪単価が九千九百万円、そしてまた建物も合わせて三百七億円をやっている、この順位は十一番なんです。  じゃ、十番目までにどんなものがあるかというと、生命保険会社とか信託会社とか、ずらっといろいろ並んでいる。それぞれ三十八億とか十徳とか三十億、四十億、四十億、六十五億、ずらっと並んでおる。これが実は平成三年の融資のケースなんです。もう土地が下がり始めているときにこんなずさんな融資をやっておった、こういう事例もあるわけですから、ぜひそういったところを本当にしっかりと、債権は債権でございますから回収をしていただきたい、このように思います。  また、もう一つ心配な要素を言って恐縮なんですけれども、この間も銀行局長さんからいろいろお聞きしました。債権の回収の状況、一般的なものとしてあるのは例えば共国債権買取機構といったのがあります。ここも、最近の状況では、額面約十三兆円の債権を約五兆二千億円ぐらいで債権買取機構がいろんな銀行とかそういったところから買った、そのうち回収したのが約七千億円にすぎないということですから額面に対してはわずか六%しか回収できていない、こんな状況なんですね。ですから、もっとしっかりとした回収をやっていかないといずれまた公的資金という問題になってきかねない。  先ほどの二千七百億円に戻りますけれども、この二千七百億円というのは額面金額に対してどういう、あるいは買い取り金額に対する回収額なのか、それをちょっと教えていただけますでしょうか。
  106. 尾形正二

    参考人尾形正二君) お答えいたします。  私ども、御案内のとおり、第一次ロスを除いた金額を譲り受け金額に決めていただきましてそれを譲り受けているわけでございますけれども、対債務者との関係、法的関係では旧債権、つまり一次ロスを含めた債権がそのまま残っているわけでございまして、一次ロスを含めてとっているわけでございます。ただし、一次ロスの分は極めて少なくて、実際に入ってきているものの大部分は譲り受け債権額の方ということになろうかと思うんです。
  107. 都築譲

    ○都築譲君 今のお話を聞いていてよくわからないので、これはちょっと大蔵省の方にお伺いをしたいんですが、特定住宅金融専門会社債権債務処理促進特別措置法施行令の七条でございますけれども、これで要は二次ロスが出たら政府が二分の一を負担する、こういう話になっておるわけですね。この二次ロスについては結局補助金という形でやるんですが、「同項に規定する損失が生じた年度の翌年度以降の年度であって当該損失の発生並びに債権処理会社及び預金保険機構の財務の状況を勘案して当該交付が必要と認められる年度において、行う」ということでございますから、尾形参考人が今言われた二千七百億円、全体として一次ロスの分も含めてとりあえず二千七百億円は回収しようということだから、ある額面金額に対して幾ら回収するとかそういう話ではないように思うんです。  そうすると、この七条というのはどういう形で発動するのか、来年度、平成九年度に発動される予定があるのか、そこら辺のところについて御見解を、これは通告していなかったと思いますけれども、ちょっと今お聞きしてわからなくなりましたので教えていただけますでしょうか。
  108. 山口公生

    政府委員(山口公生君) お答え申し上げます。  今、先生御紹介いただきました施行令での規定は、確定のロスが出たときに後年度にその諸情勢を勘案しつつ入れるということでございまして、今の時点では確定したロスというのはまだ生じておりませんので、九年度の予算にも計上はしておりません。
  109. 都築譲

    ○都築譲君 そうすると、そのロスの確定というのは従来のスキームですと十五年かけてやるということですから、十五年後のことを想定して言っておられるということですか。
  110. 山口公生

    政府委員(山口公生君) それは十五年かけてそのトータルをということじゃございませんで、例えば相手方の債務者が既に破産してしまってもう取れないということになりますと予定した金額からロスが発生してしまうわけです。そのときにはそういった処理という形になってございます。
  111. 都築譲

    ○都築譲君 そうすると、去年の十月からやり始めていて六カ月間あったわけですから、この間に破産したケースがあれば確定してしまうわけですね。そうすると、平成九年度の予算においてそれを措置しておかないといかぬ、こういう話になるわけでしょう。その点はいかがですか。
  112. 山口公生

    政府委員(山口公生君) 確かにそういった破綻した例ということはございますけれども、譲り受けの時点で既にそれはロスを見込んであるというケースが今の場合はほとんどでございますので、そうしたことで九年度に計上するという状況ではございません。
  113. 都築譲

    ○都築譲君 そういうことで平成九年度の予算にはそういう二次ロス分は計上されていないと、こういうことでございますので少し安心をいたしました。というか、もっとしっかりとやっていただく必要があるなと、こういうことでございます。  次の問題は、住管機構への銀行等からの低利融資の状況について、私どもは債権を買い取るために必要なお金ということで聞いておりました。それは約六兆八千億ぐらいの話で聞いておったんですが、先ほどの尾形参考人お話だと七千億円少なく済みましたと、こういうふうなことだったんです。  ただ、この低利融資については、我々は低利低利ということで母体行、一般行、農協系統と、こういうことで聞いておったんですが、聞くところによると、一般銀行は短期プライムレートで、農協系統はいわゆるTIBORと言われる東京銀行間取引金利プラス〇・一二五ということで、母体行とか一般銀行が貸し出している金利約一・六二五%よりも一%も低い金利で借りているという話だったんです。私どもは、低利低利ということだからみんな一緒かと思ったら、何でまたここだけ金利が違うんですか。  それは大蔵大臣がお答えになるんですか。
  114. 山口公生

    政府委員(山口公生君) まず、事実関係を御説明申し上げます。  母体行からの借り入れば二兆六百八十億円、一般行から一兆七千九百四十九億円の借り入れでございまして、その金利はいずれもTIBOR金利に〇・一二五%の上乗せ水準でございます。系統からは一兆九千三百十五億円の借り入れが行われておりまして、県信連などからの借り入れ一兆三千二百十五億円は短期プライムレートによるものでございますが、農林中央金庫などからの借り入れ六千百億円は母体行等と同じくTIBOR金利に〇・一二五%上乗せした水準になっております。
  115. 都築譲

    ○都築譲君 ちょっと私も貸す借りるの漢字を勘違いして逆に言ってしまいましたけれども、今農林中金からのあれはTIBORプラス〇・一二五ということで同じだと、こういうお話だったんですが、そこのところは本当にどうしてそうなのか。農林中金が一番大きいんでしょうから、大部分のところはそれかもしれませんが、またまた私どもが全然知らされていないところでだれがこういう金利を決めたのか、教えていただけますか。
  116. 山口公生

    政府委員(山口公生君) これは当事者間の話し合いで決まったものでございます。当事者間の契約で合意されております。
  117. 都築譲

    ○都築譲君 それでは、尾形参考人にお伺いいたしますけれども、その金利を決定するに当たってどういう話し合いをいろんなところとやられたのか、その概要をちょっと教えていただきたい。  もう一つ、農協系統には実は一・九兆円のうち一・二兆円、本来なら十年とか十五年借り受ける期間があったはずなんですけれども、早々と返却をすると、こういうふうなお話があるんですが、これはどうして返すことができるのか。先ほど七千億もスリムになりましたというのだったら、最初からそんなの少な目に借りておけば済んだ話じゃなかったのかという気もいたしますし、そこら辺のところをちょっと御説明をお願いできますか。
  118. 尾形正二

    参考人尾形正二君) まず、金融機関の融資額の配分とか金利条件でございますが、それは金融機関の調達構造とか経営に与える影響等、そういうものを交渉過程でいろいろ勘案して決定されたというふうに理解しております。  それから、返済の問題でございますけれども、プライムレートの分は現在の金利情勢では約一%に近い逆ざやになっております。そういう状況考えることが一つと、それからもう一つは資金繰りの面で今後問題がないか、こういうものを検討いたしまして、今回十分それでやっていける、こういうふうに見通しが立ちましたので、当社の財務基盤を強化するためにそのような経営判断をし、現在手続を進めているところでございます。
  119. 都築譲

    ○都築譲君 やっぱりよくわからないんですね。何で経営判断で農協系統だけ一兆二千億円も返すのか。利率が高いという理由であれば、一つのやり方は、利率を同じようにすればいいじゃないかという議論もありますし、今聞くところだと、農林中金の方は一般行や母体行と同じ利率で貸しているということだったら、なぜ農協系統の分だけ返すのか、そこがわからぬのです。  農水大臣は、こういった点について御相談とか何かをされたことがありますか。
  120. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) 先ほど政府委員また参考人から答弁していただきましたように、これは関係者間で金利を決めたということ、それから返済につきましては、一兆九千億円の融資の中で一・二兆円を三月末までに返すと、こういうふうに承っております。
  121. 都築譲

    ○都築譲君 恐らくどの大臣にお聞きしても同じようなお答えしか返ってこないんだろうと思います。ですからもうお聞きしませんけれども、こういう状況こそが去年問題だったんです。当事者間で話し合いになりましたと、住専とか農協、農林中金といろいろ話し合いになりましたとか、いろんな話し合いが出ている。ただ、裏で何がありたのか。大蔵省の幹部と農水省の幹部とが覚書を結んでいたなんという話が後になってぼろっと出てくるんですよ。  だから、住管機構ということで今一生懸命二次ロスが起こらないようにということでやっておりながら、またこんなことで何かわけのわからない状況になってきているんじゃないか。情報公開をやるやると言いながら、実際本当に国民が知らなければいけない国民の税金がどのように使われるかわからない。そういう必要な判断をしなければならないための情報というのが全然出てこないまま、やみに隠れたまま、それで国民負担だけ押しつけるという、こういう状況が進むのではとても納得がいかないだろうというふうな気がいたします。  それで、あと幾つか個別の銀行の話をしたいと思っておりましたけれども、簡単に紹介をいたします。  例えば阪和銀行に、この間業務停止命令というのが出されました。今まで信用組合とかそういったところではあったんですが、銀行については初めてのケースというふうに私は受けとめております。ただ、これについてはいろんな議論がありました。銀行自身が不服審査をやって異議申し立てをやっておりましたが、これについては却下をされたと、こういう状況でした。  どうしてこういうことになったのかというところについて、実は大蔵省の方にも資料をお願いしました。従業員組合からの上申書というのがあったはずなんですが、それは出せないと、こういうことでございましたので、私はどこかから入手をしてまいりました。  それによると、どうして阪和銀行が突然業務停止命令になったのか、急転直下の業務停止命令だったらしいんですけれども。これについて、この従業員組合の上申書によると、昨年の十一月五日に発表した業績修正予想では、監査法人である朝日監査法人も認めた数字であって、だれしもが認めていたということです。  ところが、中間決算発表の数日前になって監査法人の態度が急変をして、大蔵省の検査結果に基づく回収不能債権はすべて償却する必要があるということを主張し始めたということのようでございます。こういったことの原因は、大蔵省による従来からの検査方法や不良債権の償還基準を一転して厳しくした大蔵省の方針変更にあることはだれしもが認めるところであると、こんなことになっている。また、朝日監査法人のトップには大蔵省のOBの方が就任されているというふうなお話のようでございました。  だから、一体どういう基準で検査をやっているのか、例えばどういう基準でこれから問題になるだろう早期是正措置をやるのか、こういったことがわからない状況の中で、このままではまだ相変わらずの護送船団方式をやっていくということを言っているんじゃないか。  今回、金融監督庁という案を政府の方は出してこられました。でも、中を見てみると、結局、企画立案という頭の部分は大蔵省に残り、そしてまた検査・監督という実行部門は大蔵省の財務局の職員を使うということで、中の検査・監督一生懸命やりましようという検査監督庁だけ中抜きにしている。実際これで何が変わるのかというところが、私ども新進党の実は私も大蔵省改革部会のメンバーでございますから、きょう朝八時からも議論をやってきたところでございまして、もっと本当のこれからの情報公開、透明性あるいは国際ルール適合性、こういった金融市場システムをつくるための、それを支える行政組織としての金融行政庁の考え方とかあるいは日銀の考え方とかいろんな考え方がございます。そういったものをやっていかにゃいかぬと、こう思っておるんですが、一つの例が今の阪和銀行の例です。  それから、木津信組の破綻処理についてもいろいろ資料を出していただきました。これについても、この間新聞に出ておりましたように、預金保険機構から一兆三百四十億円もの資金贈与を行う。預金保険機構のどこにそんなにお金があるんですかと、こう聞きたいところですが、どうも日銀からの融資を使って資金援助を行っていくと。とにかく二〇〇一年まではいわゆる一千万円以下の預貯金者に対して元本を保証するというペイオフというのはやらないんだ、やらないかわりに一千万以上の預金者の預金も必ず保護しますと、こういうことだろうと思うんです。  この間、実は都銀の預貯金量の数字を見ておりましたら、約九九・三%の預金者が一千万円以下です。〇・七%が一千万円以上です。ところが、実は預金額比で見ていきますと、約六割の預金を○.七%の人がしている。こういう状況ですから、預金者保護といいながらも、実は膨大な法人とかあるいは団体とか企業とかこういったところの預金が相当保護されなければいけない。これは当然経済、信用秩序の維持の問題もありますからそういうことになるんだろうと思いますけれども、そんな状況の中で一兆三百四十億円も資金援助をする。実はペイオフコストとして木津信用組合が必要としておるのは約五千億円というふうに私は聞いておるわけでございまして、これに対してまたどういうふうにするのか。  去年、預金保険料率といったものが七倍に引き上げられました。今までは預金総量の約〇・〇一二%だったのが、七倍になって〇・〇八四%も国民の皆さんが預金した預金承の中から保険料ということで引かれていくと、こういう状況になっておるわけでございます。     !  そういった預金保険機構からの資金援助の問題、これについても実は預金保険機構自身がそういう破綻処理についてどれぐらいの資金援助をするのか、我々も参画してほしいなんという新聞の記事も出ておったわけでございまして、こういった問題についてもどこで決めておるのか、これはみんな大蔵省の方で決めておるのか。これからどういう形で、本当に透明性で、あるいは情報公開を徹底した中で、国民から信頼されるようなそういう金融行政をやっていくのか。  そういった問題について今二つ、阪和銀行の例と木津信用組合の例を申し上げましたけれども、大蔵大臣から、これからのそういう早期是正措置あるいは情報公開の問題についてもどういうふうにやっていかれるのか、ちょっとお答えをいただきたいと思います。
  122. 三塚博

    国務大臣(三塚博君) 本件は、情報公開ということで、特別記者会見も含めましてまず行い、そしてその後関係者に説明を申し上げると、こういう手だてを講じてきています。阪和銀行は初めての業務停止命令でございましたが、却下されたことでおわかりのように、共同で地域のそれぞれの銀行を一緒に取り進めるという地域の要望も強かったことで、既存金融機関等による合併、営業譲渡ということで民間金融機関に精力的に当たったわけでございましたが、御案内のとおり副頭取が暴力団によって刺殺をされた件等があり、努力のかいが報えませんでした。  本件は既にその直前まで行っておりますものですから、取りつけ騒ぎ、大騒動の中でいくことは金融秩序の上から好ましくないと、私の判断で早朝、業務停止命令を発したところであります。その後は、御案内のとおり整然と処理に向かって行われておりますし、御質問がございませんでしたが、雇用の問題についても県と一体となりまして取り組ませていただいているところでございます。  木津信組につきましてもこれをそのまま自己倒産に追い込むということでありますと、御案内のとおり代表する信組でありまして、信組のスケールをはるかに超えた巨大な信組であり、倒産の結果として及ぼす影響極めて甚大につき、本件について金融三法に基づき処置を講じたと。本件についてもそのことは関係者に申し伝える前に、もちろん当事者には伝えてありますけれども、マスコミを通じまして詳しく質疑応答を加えて公開をして対応しておるところであります。
  123. 都築譲

    ○都築譲君 なぜ信用不安になるおそれがあるというふうに判断されたのか。私自身はまだよくわからないと思いますし、もしそういうことを本当に今の時点になって言うのであれば、例えば木津信組の総資産なり不良債権の推移というのを見ますと、平成三年が一兆二百八十七億、不良債権が百二十三億円ということだったんですね。ところが、平成四年には一兆三百八十六億の総資産に対して不良債権が二千八百二十七億円、約三千億円、以後もどんどんふえていく、こういう状況だった。  だから、それをずっと放置しておいたのか、あるいはもっと速やかな対応をとっておれば、この二千八百二十七億、これだって実はもう三〇%近い不良債権になるわけですから、これが本当に金融機関として許される水準なのかということをなぜもっと早くやらなかったのか、そういった問題だってあろうと思います。こういったところももっと情報公開が進んでおれば敏速に対応できたのではないか。だから、一体どういうことが行われておったのか。これは大いに反省をしてもらわなければいかぬ話じゃないのかなと、こんなふうな気がいたします。  そして、今の銀行の状況について私がとやかく言うまでもなく、大手二十行と言われる銀行においても相当数が実は不良債権を抱えているということで、これからの状況考えると、例えば第一勧銀がこの間、約三千億円も赤字決算という形で不良債権の償却をやっていくということを、これからの金融市場への体制のために体質強化ということで踏み切ったと、こういうふうな話が出ておりました。  要償却不足額としては相当な額が実は銀行を合わせますと出てくる。ただ、自己資本対策というところまで広げると約四・六兆円が不足というふうな記事が三月一日付の週刊東洋経済という経済誌に出ておりましたけれども、そんな状況で大手の本当に優良銀行と言われているところが軒並みおかしくなってきているんじゃないかと、こんな気がしております。  こういった状況を踏まえて、本当にこれからしっかりと国民が安心できるようにしなければいけない、そのためにはどうするか。ただ単に公的資金公的資金なんということをやってもらっちゃ困るわけです。公的資金と言うからには、やはりそれなりの国民が納得するような情報公開をまずやってもらう必要があるだろうと思います。  そしてまた、いざというときに、先ほどは木津信組については大蔵大臣が判断したと、こう言いました。ただ、本当に大きな問題が、これから想定しなくても済めばよろしいわけですけれども、そういう状況にないかもしれない、そういったときはどういうふうに危機管理というものに対応されるのか、これはちょっと総理大臣にそのお考えを聞かせていただきたい。情報管理と危機管理、二点についてお願いします。
  124. 三塚博

    国務大臣(三塚博君) 本件、危機管理がこれからないかもしれないと言いつつ、危機管理があるのではないかという意味を込めての御質疑でございました。  本件はその基本は不良債権をどうするのかと、こういう一言に尽きるであろうと思います。現状の報告を受けておるわけでございますが、不良債権総額、要処理見込み額とも着実に減少しております。必要があれば銀行局長答弁をいたすことになります。  その処理が進んでいる点を踏まえながらも、なおかつ金融機関に対しましてはリストラを断行するようにということ、これはすべての面であります。組織のあり方あるいは人員それから給与等も含めてということでございます。経営合理化、この努力も行われておるわけでございます。個別金融機関の経営状況はさまざまでありますけれども、金融機関全体としてこれを見てまいりますと、不良債権問題は克服することが可能であると、こう判断をいたしております。  また、金融危機の管理体制については、さきの通常国会で成立をいたしました金融三法において、預金者に対し自己責任原則を問うことが困難な当分の間、預金の全額を保護し得る時限的な制度の整備をいたしたところでございます。破綻が免れない金融機関の処理を円滑かつ迅速に行い得るような破綻手続の整備もいたしております。  また、金融機関の健全性確保のため、新しい監督手法である早期是正措置の導入をいたしたところでございまして、大蔵省としてはこうした仕組みを最大限に活用し、今後とも金融システムの安定性の確保に万全を期しておるところでございます。
  125. 都築譲

    ○都築譲君 大蔵大臣から大変懇切な御答弁をいただいたんですけれども、そういうことでしっかりといくことを祈っております。  あと、いわゆる年金原資とか郵貯、簡保の資金の問題もございます。運用の実態とか運用先、こういったものについてももう既に情報公開を進めておられるということですから、その点について、これはそれこそ本当に国民の皆さんから預かった貴重なお金でございますから、ぜひそういったところも情報公開を進めていただきたいと、このように郵政大臣にはお願いをし、厚生大臣にもお願いをします。  厚生大臣に一つお伺いしたいのは、今いわゆる海外投資先ということでLPSというものに委託をして年金福祉事業団が運用をやっていると、こういうことですが、平成八年度から急増しておるわけでして、これについてはどういう理由でそうなのか。  それから、SPCという会社があるようなんですけれども日本のある銀行がそのSPCに役員を派遣して、そしてまたその銀行の系列の投資顧問会社に年金原資を運用させているのではないかと、こんなお話があるようなんですが、この点については一体どうなのか。そういったSPCとかいうところの運用の実態も含めて公表するお考えがあるのか、その点についてお聞かせください。
  126. 矢野朝水

    政府委員(矢野朝水君) お答えいたします。  まず、LPSでございますけれども、年金福祉事業団でかねてから投資顧問会社を活用したい、こういう要望を行っておったわけですけれども、その投資顧問会社を活用する手法として平成七年度からLPSという形で認められたということでございます。これは海外に一種の投資組合をつくりまして、そこに資金を投資いたしまして、その資金については投資顧問会社が助言をする、こういう仕組みでございます。  このLPSによる資金貴が非常にふえておるということでございますけれども、これは実は平成七年度末から八年度にかけまして生命保険会社の一般勘定でかなり多額の資金を運用しておったわけですけれども、この一般勘定の保証利率が四・五から二・五に下がるということになりまして、とても借り入れコストの関係で一般勘定で運用し続けることは難しい、こういうことになったわけでございます。そういうことで、一般勘定を解約いたしまして、LPSの仕組みによりまして投資顧問会社の活用を図った、こういうことで投資顧問会社の利用が非常にふえてきたということが一つあるわけでございます。  それから……
  127. 都築譲

    ○都築譲君 もういいです。また後で詳しく聞かせてください。  わざわざ官房長官を初め総務庁長官そして人事院総裁にもお越しいただいておりますので、金融の危機管理の問題についてはそういったところでちょっと区切りをっけまして、人事院勧告の取り扱いについて官房長官そしてまた総務庁長官、それぞれどういうお考えをお持ちなのか。そしてまた人事院総裁には、簡単で結構でございますから、そういう発言があったということ。  私自身は、人事院は今まで本当に人勧制度を維持しながら公務員の権利、こういったものを守ってきていただいたと思うんですが、今は逆に職務に忠誠というよりもどちらかというと組織に忠誠、そして組織を通じて自分の利益に忠誠というのが去年の厚生省の汚職とか、あるいは大蔵省でもいろんな方たちが指弾を受けた話になっておるわけでございまして、そういった意味でもう今の人事院制度は古くなってきているんじゃないか、こういう感想を実は持っております。  そういったところを踏まえて、それぞれ一言ずつお答えをいただければと思います。人事院勧告について今後真剣な議論をしていただけるのか。
  128. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 格別の予断を持っているわけではありませんが、給与の担当閣僚会議を主宰している関係で、あとう限り人事院の勧告は完全実施をしたい、これがまず第一であります。しかし、さりとて、国家国民が大変な危急存亡のときには若干のことがあったという過去の事実を全く無視するわけにはいかない、このような感じでおります。
  129. 武藤嘉文

    国務大臣(武藤嘉文君) 人事院勧告については、これはもう御承知のとおり、公務員の労働基本権を制約している代償としてあるわけでございますから、人事院勧告を尊重しなきゃいけないというのは当然の方向だと思います。  ただ、今御指摘があったのは現時点ではなくて今後の将来の人事管理の中においてどうあるべきか、多分こういう御質問だと私は承りまして、そういう面からいけば、予算が成立すればこの四月から発足予定の公務員制度調査会、ここにおいては人事管理を長期的な視野に立ってあらゆる面でいろいろと調査をしながら審議をしていただくことになっております。私は、今後の人事管理という立場からいって、公務員の給与のあり方というものについても当然議論をしていっていただかなければならない、こう考えております。
  130. 弥富啓之助

    政府委員弥富啓之助君) お答えを申し上げます。  昨年の人事院勧告におきましても公務運営の改善につきまして我々も御報告をさせていただきました。人事院といたしましてはそれを守って十分にやってまいりたい、かように考えております。
  131. 都築譲

    ○都築譲君 終わります。
  132. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 以上で平井卓志君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  133. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 次に、日下部禧代子君の質疑を行います。日下部禧代子君。
  134. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 日下部でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  まず最初に、財政構造改革について始めさせていただきます。日本は戦後しばらくたってから豊かな国そして経済大国というふうにずっと言われてきたわけでございますが、今日、先進国の中で最も公債依存度が高い、つまり最も借金が多い国となってしまいました。国と地方の借金を合わせますと、国民一人当たりでは三百五十二万円という額に上っております。また、国家予算に限ってみますと、本年の三月末までの国債累積発行残高は二百四十兆円でございます。そのうち公共事業に充てられる建設国債が百六十四兆円で六八%を占めておりまして、国の借金の大部分が公共事業というふうに言ってもよろしいのではないかというふうに思います。  さて、このように我が国国家財政状況を今少しお話ししたわけでございますが、国民の側からしてみますと、なるほど大変な状況なんだなということは認めましても、一体なぜこんなに借金がかさんでしまったのかな、なぜこれほどになるまで有効な手だてが講じられなかったのかなという素朴な疑問を持たざるを得ないのではないかというふうに思うわけでございます。  財政構造改革を進めるに当たりましては、国民のこのような疑問にこたえ、国民理解と納得を得ることが必要ではないかというふうに思うわけでございます。納税者の納得なくしては負担という痛みを分かち合う財政構造改革というのは進まないと思うわけでございます。  そこで、総理にお伺いしたいのでございますが、公債発行残高がこのように大きくなってしまった原因をどのように分析なさっていらっしゃるのか、またなぜこれほどになるまで有効な手だてが講じられなかったのか。改めてこのようなことをお尋ねいたしますのも、これまでの財政改革が十分な成果を上げ得られなかった、そのことを分析いたしまして、その原因を除去しないままであるならばまた同じ失敗を繰り返すかもわからないというふうに思うわけでございます。  そこで、総理にそれぞれ三つずつ最大の原因と思われるものを挙げていただきたいと思います。どうも試験問題のお答えのようで申しわけございませんが、よろしくお願いいたします。
  135. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今、議員から御指摘のありました財政悪化、これは日本だけではなく、現在既に積極的に財政健全化に取り組んでおられる欧米先進国にもある意味では共通した課題になっています。そして、これらの国々で財政が悪化してきた原因、議員の今御指摘のように三つという言い方をしますと、一つは成長率の低下傾向、そして人口の高齢化などの財政を取り巻く状況の変化、さらに社会保障分野に見られるような政府の役割の増大による歳出の拡大、こうしたものが共通項として挙げられるだろうと思います。  一方、日本のことを考えてみましたとき、戦後初めて特例公債の発行を余儀なくされたのは昭和五十年でありますけれども、それ以降、懸命の歳出削減努力が繰り返されてきました。その過程におきまして、例えばお米、食管制度、あるいは国鉄、さらに政管健保、よく三Kと言われたテーマでありますけれども、こうしたテーマを初めとして、医療保険制度の改革あるいは電電公社の民営化などいろんな努力が積み重ねられてきました。そして、平成二年には特例公債からの脱却という一つの目標を果たすことができ、その時点では国際的に見ても非常に健全な財政の姿になった時期があります。  しかし、その後、バブルの崩壊の中で、先ほど先進国に共通するさまざまな要因を三つ申し上げましたが、そうした流れとともに、バブル経済の崩壊という事態に遭遇し、その中で景気の下支え策などに対する財政の出動が国民からも求められました。国会の御論議の中にも大変そういうものが強く出ていたことを御記憶でありましょう。そして、九〇年代に入りまして諸外国が皆財政健全化への努力を強化していく中に、我が国はそうしたバブル崩壊後の景気の下支え策というものに追われ続けてきたという問題が一つあります。  それだけに、現在になりますと主要先進国中最悪という財政状況になっているわけでありますけれども、この中で何とかして経済を活性化させなきゃならない、活力のある二十一世紀我が国の経済社会を維持していかなきゃならない、そのためには少しでも早く財政健全化という、言いかえれば健全な財政体質というものを取り戻していかなければなりません。  昨日、財政構造改革会議におきまして私なりに当面の財政構造を変えていくための五つの原則を発表させていただきましたし、それに基づいて歳出の改革と縮減の具体的方策を議論するに当たり基本的な考え方を整理し取りまとめることができましたけれども、私どもとしては、この基本的な考え方に基づいて、財政構造改革会議の中に設けました企画委員会で五月半ばまでを目途に歳出の改革と縮減の具体的方策についての検討をしていただく、その検討結果を次年度の概算要求基準そのものに生かしていきたい、そのように考えております。
  136. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 そこで、財政構造改革を行うに当たりましては、当然のことではございますが、改革の目的とそれから手順というものを国民に、納税者に明らかにする必要があろうかと存じます。  なぜならば、財政の構造改革あるいは財政再建には歳出の削減、民営化の促進あるいはまた負担の増大というものが伴うために、納税者の理解協力なしには進まないというふうに思うわけでございます。したがいまして、一体何のための改革か、だれが改革を担うのか、どのように改革を進めるのか、そういった前提条件、そして改革の原則というものを明確にしなければならないというふうに思います。  改革の目的を明らかにするということは、政府が最終的にどんな社会をつくろうとしているのか、そのことを国民に示すことでもございます。もちろん、借金のツケを子孫に残さないということは当然でございます。しかし、それだけではなくて、その目的とするところは、本当の意味での豊かさが実感できるような社会、国民の生活の質、クオリティー・オブ・ニフイフが実感できる、そしてそれが保障されるそういう社会、そして総理がよくおっしゃいますが、長生きしてよかった、そう思えるような社会を創造すること、そこにあるんではないかというふうに思います。その点に関しては御異存はないというふうに私は思います。  言いかえますと、財政構造改革というのはいわば生活構造改革と言ってもいいのではないか、あるいはまた豊かさの物差しを変えるということでもあるのではないかというふうに思います。そのビジョンあるいはまた具体的な目標を示して私たちの後に続く世代に対して責任をとる、そのような政治姿勢を明確にするということが歳出削減や負担の増大を国民に対して合意を求めるということの大前提ではないかというふうに政治家の端くれの一人として思うわけでございます。  そこで、歳出削減の一般的な手法としてこれまでいわゆるシーリング枠内で一律に削減するという方法がとられてまいりました。しかし、この手法というのではどうしても既得権益や各省庁の利益を排除するということは難しいように思います。例えば、マイナスシーリングといいましても、各省庁がその減額分というものを前年度予算のどこからか捻出するという、そういうことで今まで問題が片づけられてきたというふうに思うわけでございます。財政構造改革というならば、このような従来の手法というのは根本的に改めねばならない、そうじやなければ構造改革にはならないというふうに思うわけであります。  そこで、総理にお伺いしたいのでございますが、財政構造改革のための歳出削減に当たりましてはどのような考えをお持ちでいらっしゃるか、具体的な手法総理のお考えになる手法をお示しいただきたい。そしてまた、それはどのようなポリシー、政策理念に基づいているのかということをあわせてお尋ねしたいと存じます。
  137. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私がまず申し上げたいこと、それは現在の財政構造を放置したまま財政赤字のさらなる拡大を招いていけば経済もまた国民生活も破綻することは間違いがない。そして、二十一世紀我が国が本当に経済社会の活力を維持すると同時に、子供たちゃ孫たちに対する責任を果たしていこうとするならば、財政構造改革というものはやり上げなければならないということでございます。  そのため、昨年十二月、二〇〇五年度までのできるだけ早い時期に国と地方の財政赤字対GDP比を三%以下に、また国の一般会計予算におきまして特例公債依存から脱却する、こうした財政健全化目標を整理いたしました。  そしてその上で、昨日、財政構造改革会議の席上私から、財政構造改革の当面の目標としてこれを二〇〇三年と画きまして、同時に今世紀中のあと三年間を集中改革期間と位置づけながら、歳出の改革と縮減というのは一切の聖域を認めないという方針を決定いたしました。さらに、集中改革期間中におきましては主要な経費について具体的な量的な縮減目標も決めていきたいと皆でまとめております。  そして、当面考えなければならないのは平成十年度予算でありますけれども平成十年度予算におきましては政策的経費であります一般歳出を対九年度に比べましてマイナスにするという決心をいたしました。そして、あらゆる長期計画など大幅な縮減を図っていきますとともに、歳出を伴う新たな長期計画はつくらない、そして最後に国民負担率、これは財政赤字の分も含みまして国民負担率を五〇%を超えない財政運営を行う、きのう財政構造改革会議で決断をいたしました目標はこうしたものでございます。  これは言葉で言うのは簡単ですけれども、やることは大変な作業を伴います。殊に、これからしばらくの間、毎年大体百万人ぐらいずつ年金の新しい受給権が発生すると思われます。ということは、その自然増に対するだけで社会保障関係のふえる金額というのは恐らく一兆円近いものになるんじゃないでしょうか。これをことしの予算に比べてマイナスでやろうというんですから、本当にこれは聖域なんてつくりようがないんです。しかし、それだけの意気込みでいきましても、赤字国債発行をゼロにし、GDP比三%に二〇〇三年までかかります。  正直言いますと、初め私は本当に二〇〇五年までかかるかと思いました。それだったら〇・三%ずつ落としていけば何とかいける数字です。しかし、それでは間に合いません。そうすると、これは〇・四%ずつこれから落としていかなきゃならない、しかも制度改革をできるだけこの期間の早い時期に仕上げることによって制度改革の効果も織り込んでいかなきゃならない。これは考えてみればそう簡単な話ではございません。それだけに、非常に思い詰めたような言い回しをさせていただくことになりますけれども、今後の状況というものは非常に厳しいものがあります。  同時に、今申し上げました目標を具体化するために、これだけの考え方を整理したものを各閣僚にもお渡しし、昨日の閣僚懇で了解を願い、この枠内で国会のお時間をちょうだいできるとき全員で集まって徹底的な議論をしようと今言い交わしております。あらゆる分野に影響が出ますだけに、どうぞ御協力を心からお願いを申し上げます。
  138. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今、総理がお触れになりました、そして昨日御発表になりました財政構造改革五原則の中の一つ国民負担率の問題がございます。国民負担率は財政改革達成時期の二〇〇三年を目標として五〇%を超えないものとするというふうにございます。五〇%を超えない財政運営を行う、財政赤字を含むというふうなお言葉が添えてございますけれども、これは総理も今おっしゃいましたように、いろいろな影響がもちろんあるというふうに、影響の非常に大きな部分ではないかというふうにも思うわけでございます。  午前中の同僚議員の御討議の中にもございましたけれども、御承知のように、ヨーロッパ社会では国民負担率というのは押しなべて五〇%を超えております。この国民負担率という言葉は甚だ誤解を招きやすい言葉ではございますが、一応一般的に国民負担率と申し上げておきます。五〇%を超えないということにつきましては、先般、社会保障関係審議会会長会議の中間報告がございました。そこで国民負担率を五〇%以内にとどめるためには医療・年金給付を二割削減する必要があるという文言がございます。  そういたしますと、この五〇%を超えないということは、いわゆる給付水準というものを下げざるを得ないということを意味するのでございましょうか、そのように受けとめてよろしいのでございましょうか。この社会保障関係審議会会長会議の中間報告とあわせて、総理のお言葉をいただきたいと思うわけでございます。  また、言葉をかえますと、いわゆる高福祉高負担の否定ということにもつながりかねない、そういうふうな深い意味合いも持っていると思いますので、ぜひとも総理のお言葉をもう少しいただきたいと存じます。
  139. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 逆に私ちょっと、これはお尋ねをしてはいかぬのですが、福祉に関する支出のためであれば国民は五〇%どころか七〇%近いような、あるいはそれを超えるような国民負担率を受けてくださるでしょうか。私、本当にそれは考えてみて、そんな話にはなかなかならないだろうなと率直に思います。  世界の中で北欧等を振り返りましたときに、国民負担率がそうした水準にある国がある、そういう実例があることも存じております。また、さまざまな国で既に五〇%を超えている、そうした国があることも承知をしております。そして、財政赤字の分を省きました場合、多分今我が国国民負担率は三七から八の間ぐらいだと思いますし、そして財政赤字を加えました場合、四二、三に既になっているだろうと思います。そうすれば、五〇%までというのは非常に幅が少ないということを言わなければなりません。  そして、あえて社会保障に限定してお尋ねでありますから、私はその方向づけをしてこれから制度全部を見直していかなきゃならない中で、年金あるいは医療福祉等社会保障給付というものが現在の制度のままでは高齢化の進展に伴ってその給付が大幅に拡大していくことが見込まれる、そう推測をいたしました。.  したがって、高齢化のピーク時においても国民負担率が五〇%を超えないような、経済、財政と調和のとれる社会保障制度を組み立てなければならない、これがまず第一。そして、これは利用者本位の仕組みにならなければならない、社会保障給付にならなければならない、同時に公平な給付と負担というものを実現しなければならない、効率的な給付を行う、こうした視点を持ちながら改革を進めることが必要だと思います。  そして、そういう中で私は、国民の皆様が、おまえのように五〇%という国民負担率に拘泥しなくてよろしい、むしろ我々はより高い負担をしてもより高い給付を求めると言われるなら、これはまた一つでありますけれども、むしろ私は社会保障の世界に、私の保険、民間の保険、もっと民間の力というものを取り入れることはできないのかということを前から考えております。  医療の世界におきましても保険診療か自由診療かの二本立てたけでありまして、保険の給付の上にみずからプラスを求める場合、そこを支えるための仕組みを別に組み合わせることは今許されておりません。こういう点に工夫を凝らすことはできないだろうか。  年金においてもしかりでありまして、そういった意味では、むしろこれから我々はそうした時代を想定しながら、その中でどういう仕組みが一番望ましいかを真剣に考えていかなきゃならないと思います。その中で、一つ考え方として私は私保険との組み合わせというものも自分の頭の中に前から持っておりました。
  140. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 この問題に関してはまたこれから国会でいろいろと御議論があろうかと存じます。またその際にお話も伺えると思いますし、意見を申し上げることができると思います。  歳出の見直し削減を具体化する。そこで私は、一つはどうしても現行の予算制度の構造改革、これもなくちゃいけないんじゃないかなというふうに思うわけであります。  どういうふうに改めなきゃならないのか、私の考えをまず最初に少し申し上げさせていただきますと、先ほど私は財政の構造改革というのは生活の構造改革だというふうに申し上げました。そういたしますと、予算配分のパラダイムというのも、これまでのハードあるいは公共事業中心ということから人間中心、アメニティー、ソフト中心へというふうに転換するということが必要ではないかというふうに思います。  次に、現在の財政状況の悪化というのは過去のさまざまな経緯から生じているのでございますから、過去の予算実績にメスを入れなければならないというふうに思うんですね。過去の予算実績の評価というのは決算委員会で審議されております。しかし、なかなかそれが十分に予算に生かされてきたとは思えないのであります。予算がどれだけの効果があったのか、どのような使われ方をしたのか、その事後評価というものが反映される、そういうシステムが必要ではないかというふうに思うわけでございます。  それから三番目には、予算書をわかりやすいものにすべきではないかというふうに思います。  総理は非常に財政問題は御専門でエキスパートでいらっしゃいます。私どもはやはり予算書をきちんと読む。確かに数字は読めます。しかし、読むということはかなりの方たちは難しいというふうにおっしゃっております。  なぜ難しいかというと、現在の予算書には積算根拠あるいは事業内容というものも記されていないわけでございます。あるいはまた公金の流れ、国家財政の全体像あるいは真の姿というのはなかなか見えないんですね。ですから、なかなかその数字を本当に読むということが難しいわけでございます。これはまた国民にとりましても、納税者としての自覚と責任、そしてまた負担という痛みを理解し、納得してもらうということがこういう予算書のつくり方ではなかなか難しいんじゃないかというふうに思うわけでございます。  予算というものが、特定のあるいはまた一部の人々のお財布というのではなくて、国民一人一人のお財布であるという本来のあるべき姿を取り戻すためには、予算書のつくり方、あるいはまた予算の記述内容についても大胆な構造改革が必要ではないかと私は思うわけでございます。難解であるというのは何か一種の権威づけであるというような風潮が日本にはまだまだ根強いような気がいたします。特にこれは行政関係の文書に非常に多く見えるわけでございます。時に法律関係なんかも非常に難しい。これは先ほどの御論議の中にも出ておりました。これはいわば「由らしむべし、知らしむべからず」といったお上意識のあらわれのような気もいたすわけでございます。  その次に、もう一点つけ加えますならば、当然のことながら情報公開ということがございます。予算書とかその添付資料を単なる、ここまで言ってしまっては言い過ぎかもわかりませんが、通行手形にすぎないようなそういった現状を改めて、公共事業とかあるいはまた補助金関係の資料、情報というものを公開するシステムをきちんと確立しなければこれは国民の皆様に納得していただくということはなかなか難しいような気もいたすわけでございますが、総理、いかがでございましょうか。
  141. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私ちょっと意味がつかみ切れない部分があったんですが、一つ問題点として提起をされましたものは、今までと同じ手法予算編成はだめだと。これは私どもそのとおり同じ感じを持っております。  ですからこそ、私どもは今、来年度予算を編成するための概算要求、その概算要求をするための概算要求基準を今までと同じやり方であったのでは意味がない、そこをどういうやり方にするかから議論を始めているわけであります。来年度予算に向けて、本年度予算を編成するのと同じシーリングの手法を用いるつもりは我々はありません。それだけに、その仕組みをどうやればいいか、今非常に苦労しております。  しかも、マイナスにしようということで、閣僚一同、また財政構造改革会議一同が決意を固めたわけでありまして、これからその手法は徹底的に煮詰めていかなければなりません。その点は私は議員と意見が同じなんだと思います。  それから、ハード、ソフト、あるいはアメニティーといった分野からの予算、私は別にそれにいけないと申し上げる理由もないわけですし、そうでなければならないということを申し上げるのもちょっと行き過ぎなのかな、そしてアメニティーといった言葉の中に議員はどこまでの内容を包含させて提起をされているのかなと、そう思いながら今実は伺っていたわけであります。  そして、予算盲は本当に少しでもわかりやすくという努力をしていくことは私はやはり当然一つの目標だろうと思います。ただ、その中で例えば箇所づけ説明といったことまで求められますと、御審議をいただく項目によりましては、その総枠を御審議いただき、それが予算として認められました執行の段階で箇所づけをしていく、そういうものの事前下にその箇所づけを決めた資料というのはっくりょうがない。そういう意味では、予算書の中に書き込むべき事項としてどのようなものが新しい視点から必要になるのか。  ただ、組織的に御説明ができる一つのまとまった形をつくり、そして計上された金額が具体的に国民にわかりやすいような説明を工夫して、もっと予算書を効率的に使いやすいものにすべきだ、それは私はこれまでも大蔵省の諸君はやっていたと思いますけれども、これからも不断に心がけるべきことだと思います。
  142. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 予算盲というのは本当に国のこれからの大きな未来像をつくっていくものでありますから、ただ数字の羅列と、その数字の裏にあるものがわかるような工夫というのはやはりこれからやっていただきたいというふうなことをお願いしておきまして、次の課題に移らせていただきます。  医療保険改革についてでございます。  現在医療保険改革法案が国会に提出されております。しかしながら、この法案の中身を拝見いたしますと、現行の医療システムをいかに改革していくかということよりも、むしろ当面の逼迫している医療保険の財源対策、そしてまた患者負担を強化するというふうな点がどうも強調されて国民の目にも映るのではないかというふうに思うのでございます。  しかも、改正案どおりに実施されたとしても黒字になるのは初年度だけでございます。そして平成十年度には再び赤字に転じてしまうということになってしまうのは皆様がおっしゃっているところでございます。これは三党の協議の中にもございますけれども、本当に医療保険改革ということの、つまり医療費のむだをいかになくすのか、その赤字を生む構造の抜本的改革なしには、患者に負担を求めるだけではその場しのぎになってしまうのではないかというふうなお声が強いわけでございます。ですから、まずこれは医療改革の全体像を明らかにして、医療サービスの受け手である国民が納得をしてから負担をお願いするというのが筋ではないかなというふうに思うわけでございます。  非常にタイムスケジュールも、今与党三党で代表者がいろいろとこの課題について論議を重ねているところでございますが、三月いっぱいにそのような御協議が終わるともなかなか思えないわけでございます。そういたしますと、この法案に関しまして、今のような課題を含めましてこの法案の取り扱い、もちろんこれは早く可決をしてほしいという思いでお出しになったことはわかっておりますけれども、その辺のところにつきまして御意見を承っておきたいなというふうに思うわけでございます。五月一日施行というのはなかなか難しいのではないかというふうに思いますが、いかがでございましょうか。
  143. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 今回の医療保険制度改革は、患者さんに負担を求めるというので単なる財政収支の帳じり合わせじゃないかという御批判だと思うんですけれども、これからどのような改革がなされても今程度の負担は私は必要だと思  います。  今、総理お話しされたように、昨日、財政構造改革五原則を言いました。内容は、平時において私は革命的な改革だと思います。今野党の皆さんも、歳出は聖域なく見直せ、縮減せよと言っています。しかし、社会保障制度、年金・医療改革にとってももっと公費負担をふやせという要求が実際の議論の場では多い。しかし現実に、九年度はともかく、十年度においては九年度予算からマイナスに落とせと言っているんです。  これは黙っていても一兆円以上の自然増が社会保障関係費には出てくる。その際に、五〇%以上の負担は嫌ですよ、赤字国債も発行してはいけません、患者負担もいけませんというのでは何の改革もできないんですよ。構造改革もやる、薬価基準も見直します、診療報酬支払い制度も見直します、医療提供体制も見直します、なおかつ国民の皆さんにも受益者には負担をいただきます、この組み合わせしか私はないと思います。どこをやったって全部が賛成する案はなかなかない。どこかで必ず反発が出る。  しかし、これをやらない限りは、それでは重負担、高負担になってしまう。そうすると、肝心な経済成長が成らなくて福祉の充実も成らない。その瀬戸際に来ている段階で、少なくとも最低限度段階的に、まず今回医療保険で、今まで外来の高齢者に対しては千二十円を一月御負担いただいたけれども、今回は一回五百円、上限は四回、二千円以上は取りまぜんというのでも反対が出ている。いかにこの社会保障改革が難しいか、国民理解を得るのが難しいか。  口ではみんな賛成です。増税はいけません、歳出全部縮減しなさいと言いますけれども、いざ現場で省庁が担当してやると、これだけ考えてみても私は頭が痛くなるほどです。きのうの総理の五原則、これをやらなきゃいかぬ。これからの新しい時代に対応するためにはやらざるを得ない。そのための構造改革に踏み込もうと。  今回はこういう、患者さんにある程度の負担をお願いしますけれども、この案が出てきたからこそ皆さんから、薬価基準を見直しなさい、診療報酬制度を見直しなさい、医療提供体制を見直しなさいという声が出てきたんだと思います。この案が出なかったら、ばらばらで出ませんよ。  これは、私はまず第一段階の改革であると。この改革を進める中で、今後一年以内に根本的な構造改革に取り組みたい、私はそういう決意でおります。
  144. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 私は、その御趣旨は非常によくわかります。しかし、やはり順序が少し反対ではないかなというふうに思ったのでお聞きしたわけでございます。  こういう改革を、赤字を生む体質がこういうものなんだからここのところをこう変えるということで、国民はだれも今の赤字だということも知っています。しかし、それに対して、その構造そのものの欠陥というのはここでありますということをきちっと示す、そして負担をお願いするというのが順序というものであって、私は順序を申し上げたのであります。  だんだんと時間がなくなってまいりましたけれども、特にこの医療保険制度の構造的な赤字を生む要因というふうに言われている二つの問題がございます。いわゆる診療報酬の問題、出来高払い制度というものの問題でございます。それからまた、医療費、薬価差の問題がございます。  今、大臣もおっしゃいました、構造的な赤字を生むこの二つの大きな要因に対してどのようなこれから取り組みをなさっていくのか、それこそその順序をお教えくださいますように。
  145. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 薬価基準の見直しも、今まで言われているように、薬の値段の決め方が不透明であると。また、診療報酬の点についても、薬の使い過ぎがあるんじゃないか、あるいは過剰な診療があるんじゃないかという批判も受けております。そういう点について今回の医療保険制度改革案を提出して、どれをやるべきかという結論は出ませんが、もうかなり前から薬価基準にしてもあるいは出来高払い制度にしても改革が必要だという声はあったわけです。しかし、この問題について反対も一方で強いものですから根本的な改革に踏み込めなかった。  しかし、もうそんなことは言っていられません。三月いっぱいには与党内でこの問題について案を出さなきゃいけないという研究が進んでおります。私もそう認識しておりますし、この法案を成立させていただいた段階で、早い段階で薬価基準の根本的な見直し。さらに、出来高払い制度だけじゃない。急性期の患者さんは、それは必要な治療をやらなきゃいけないでしょう。慢性期の患者さんについては、ある程度総予算的なあるいは定額的な制度を導入してもいいんじゃないかという議論が、今だんだん委員の皆さんからも出てきております。  いずれにしても、私は、薬価基準においても出来高払い制度においても、現状では進まない、かなり思い切った改革をせざるを得ない、その決意を既に固めております。
  146. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 改革をしなければならないというのは国民の皆様すべてが合意なさっているだろうと思います。  したがいまして、私が申し上げたいのは、いかに納得してもらうか、その資料をきちっと出していく、そしてその手順を、順序を間違えないようにということを申し上げておきたいと思います。  次に、文部大臣、おいでいただきまして、時間が少なくなりましたけれども、教育、文化問題について少し触れさせていただきたいというふうに思います。  今ちょうど進学、卒業の時期でございまして、子供たちは非常に進級、進学に胸を膨らませております。ところが一方、親というのは、特に大学に進学した子供を持つ親は、これは大変だ、家計がもう大変だということでやはり頭を悩ませているんじゃないかというふうに思うわけでございます。  これは東京の私大に自宅外から通っている人たちの調査でございますけれども、親の負担というのは年間三百二十五万円にも上っているそうでございまして、負担を重いと感じている世帯が全体の九〇%にも達しているという、こういう実態調査がございました。  これは文部省資料の教育指標の国際比較というものを見ましても、国と地方が支出している学校教育費の国民所得に対する比率というのは他の主要国に比べてかなり低いわけでございます。これは既に一九七〇年代にOECDの調査報告もそういうことを指摘しておりました。特に、高等教育に関しては低いわけでございます。  その点に関しまして、今財政が大変であるというときにこういうことを申し上げるのは文部大臣としてもなかなかお答えなさりにくいかもわかりませんけれども、特に高等教育に関しての支出の問題。  そしてもう一つ、文化の問題がございます。これも国際比較をいたしますと、日本が非常に低いと言われているだけではなくて、数字にもそう出ております。やはり文化というのは、もう本当に財政構造改革が目的とする国づくり、つまり本当に人間が豊かに暮らせる、それは物質的だけではなく心も豊かに暮らせるという、そういうふうな文化への投資というのは未来に対する投資ではないかというふうに私は思います。  そういう観点から、教育行政、文化行政に関して文部大臣に、非常に文化に御造詣の深い総理にもお聞きをしたがったのでございますが、文部大臣にお聞きしたいと思います。
  147. 小杉隆

    国務大臣(小杉隆君) 御指摘のとおり、保護者の家計における負担というのが非常に大きいことはそのとおりだと思います。  昨日、政府として取り組むべき財政構造改革五原則、聖域なしということで非常に厳しい案が示されております。文教予算につきましても、例えば高等教育あるいは義務教育、そして私学助成、こういった面でも見直す、こういう厳しい内容となっております。そうした財政構造改革の中でどのようにその予算を確保していくか、これは非常に難しい課題だと考えております。  高等教育と文化予算について今お話がありましたが、確かに国立、公立、私立大学に対する国の支出、いわゆる公財政支出は、イギリス、ドイツ、アメリカ等に比べまして国民所得との対比でいいますと半分になっております。それから、文化庁の予算も幸い年々ふやしていただいておりますが、八百二十八億円ということで、フランスの全体の予算の中での比率を比較しますと、フランスはちょっと例外的に高いんですけれども日本の九倍近い。それから、イタリアとかドイツあるいはイギリスとか、そういうところと比較しましても、大体そういう国は三倍から四倍ぐらい日本の文化庁の予算に比べますと一般財政の中での比率は高いわけでございます。  しかし、冒頭申し上げたようなこの厳しい国家財政の中でどういうふうに確保していくのか、これはぜひひとつ、またいろいろとお知恵をかりながら私どもも一生懸命頑張っていきたいと思っております。
  148. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 高齢社会というと日本ではとても暗いイメージが定着しているようでございますけれども、お年寄りがふえる、老人医療費がかさむというふうに聞かされると、長生きしていて申しわけなかったのじゃないかというお声も私は至るところでお年寄りから聞かされるのでございます。せっかく平均寿命が長くなったわけでございます。本当に人生の最期まで人間として輝きを失いたくない、そのような社会というものを我々はつくっていかなければならない、政治家にとってはそういう義務責任があるかというふうに私は思うわけでございます。  本当にお年寄りが長生きしてよかったと思える社会というのは、子供たちにとっても未来に対しての夢と希望が持てる社会じゃないかなというふうに思うわけでございます。  願わくは、これからの財政構造改革が魅力と活力のある、そのような社会の実現のためのものであってほしいことをお願いいたしまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  149. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 以上で日下部禧代子君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  150. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 次に、今井澄君の質疑を行います。今井澄君。
  151. 今井澄

    今井澄君 民主党・新緑風会の今井澄でございます。  本日は集中審議の二日目ということで、外交危機管理、それから医療・福祉ということですが、私は時間の関係もあり医療・福祉に絞って質疑をさせていただきたいと思います。  それで、質疑書を用意してきたわけですが、けさからの御議論を伺っていて、どうしても例の国民負担率という言葉についてまた一言申し上げたくなりました。十二月十六日の行財政改革・税制の特別委員会でも申し上げたんですが、先ほど日下部議員が国民負担率という言葉には実は問題があるんだけれどもと、時間がないからその先を言われませんでした。  日下部議員も私と全く同じ気持ちだと思いますが、議事録を見ましても、三月六日から始まったこの参議院の予算委員会、それから本日の朝からの委員会でも、この国民負担率という言葉自身の持つ意味について大分あいまいになってきているというふうに思います。  国民負担率という言葉は、保険料と税との合計が国民所得に占める比率を国民負担率と言うわけで、今三八%をちょっと超えたところだと思いますが、しかしこの問題、こういうふうに取り上げるといろいろ問題があるということ。  簡単に申しますと、一つは、国民負担率と言うと国民一人一人が負担する率というふうにとられるんですけれども、実は国民負担しているのは税と保険料だけではなくて、医療費だったら窓口の自己負担もあるわけですね。だから、国民負担率というのを下げれば逆に自己負担がふえる。負担という意味では、この国民負担率という言葉が国民負担をそのまま意味しないとか、それから総理もきょうも何回もおっしゃっておられますけれども、これは実は累積債務が含まれていないので、本当に国民がどれだけの負担を今しているかということを意味しないという意味では、年々の税と保険料だけの率をとっても意味がないと、これはもう総理が主張しておられるとおりだと思うんです。  それからもう一つ、これが上がると経済の活力がなくなるというふうな問題がよく言われるんですけれども、必ずしもそういう問題ではないということは大蔵大臣もかつて御指摘になったところでありますし、この言葉はみんながそれぞれの意味で使うのを何とかある程度整理しなければならないと思わざるを得ません。  実は総理も、累積債務を入れながら検討しなければいけないと一方でおっしゃっておりながら、これは十二日の本予算委員会の中では、「国民負担率、その時代の皆さんの収入から半分以上税金や保険料を徴収しないで済むぎりぎりまでは持つていきたい」ということで五〇%以下というお話をなさっているんですが、これがまた誤解を生むんですね。何か給料の中から五〇%持っていかれるというふうな感じで国民負担率をとらえると大間違いじゃないかと思うんです。  今、国民負担率が三八・何%と言われておりますけれども、実際にサラリーマンの場合に、月収の中から税と保険料を幾ら払っているかというと一七%なんです。これは国民経済全体の中で言っているわけであって、一人一人の負担率を言っていないわけですから、こういうふうに発言をされますとさらに誤解を生むという意味で、余り国民負担率という言葉をいいかげんな定義でもう使わない方がいいんではないだろうかということを最初にちょっと申し上げておいて、この議論を始めると切りがないので、医療保険制度のところに入っていきたいと思います。  今回の政府案、国会に提出されているわけですが、この医療保険改革は、私はこれは改革の名に値しない、当面の健保財政の赤字対策だと。それは先ほど日下部議員が指摘されたとおり、今回の案を通してみたところで三年たてばまた同じことを繰り返すわけですよね。ですから、もうこれは厚生大臣もお答えになっておられますが、医療保険制度、それからそれを支えている根本である医療制度そのもの、この抜本改革の案を示さないで、ただ自己負担を求めるというのは、とても国民は納得できないことだ、これは一致できると思うんです。  先ほど、厚生大臣は日下部議員の質問に答えられて、この案が出たからこそみんな真剣に考えるようになったんじゃないかということを言われた。事実そのとおりでありますけれども、しかしそれは私は開き直りだと思うんですよ。  と申しますのは、ここまで財政を危機に追い込んできたのは一体だれなんですか。これまで手をつけずにやってきたのは一体だれの責任なんですかということなんですよね。少なくとも国民には責任はないんです、とも言い切れない、後でちょっと資料を出して言いますけれども。だけれども国民は知らされていないんですよ、知らされないままに来ているんです。それどころか、例えば今度の財政危機のまず取っかかりである政管健保の赤字に関しては、これは政府がつくり出したんですよね、率直に申し上げまして。  平成五年二月でしたか、本会議で私は参議院議員に当選したばかりのときに質問しました。そのときに、政管健保への国庫負担を繰り延べたい、繰り延べても財政は大丈夫だということを言ったから、そんなことはないでしようと。これから景気が悪くなって保険料の収入は落ちる、それで医療費が伸びますよ、高齢化も進みますよ、だから政管健保はこれから赤字になるんだから繰り入れをここで先延ばしする、借金をするということはしない方がいいと私は申し上げたんですが、当時の厚生大臣も、それから総理は宮澤総理でしたが、大丈夫だということで、その法案通っちゃったんですね。  さらに、それよりもさかのぼると、実は今度の政府の改革案に政管健保の保険料率を上げるという案が出ているんですが、実は千分の八十二ですか、今はそうですね、八十二ですね。前は千分の八十四だったんじゃないですか、たしか。ところが、それを下げたんですよね。というのは、政管健保の財政はよくなった、これは当分いいから保険料率を下げましようというのを政府案で出したんです。しかも、同時にそのときに国庫からの繰入率も下げたんですよ、一緒に。そうしておいて、政管健保がやっぱりまた大赤字になっちゃったんですよ。  この責任は、そういうふうにして繰り返して楽観的な見通しのもとに政管健保の財政を悪化させてきた政府の原案にあったんじゃないんですか。私はそうだと思いますよ。そのことの反省を抜きにして、今大変だから何とかしてくれだけじゃだめなんですよ。  いや、これから一緒に考えるのはいいんですよ、改革を。私は別に、ただ政府だけを責めようと思いませんし、ともにやっていこうと思いますし、端的に言えば、先ほど厚生大臣が言われたように、この程度の自己負担と言っては国民の皆さんに怒られるかもしれないけれども、私はやっぱり必要なんだと思います。やらざるを得ないんだと思うんですよね。だけれども、その前にこの責任を明らかにしていかなければならないと思います。  そこで、さらにその責任ということで言いますと、この改革案改革案ということだけが、だけでもないですね、薬剤費をどうするとかかなり具体的な話もある程度出てきております。翻って考えてみますと、実は一九八四年の健康保険の抜本改革、このときに健康保険、本人も原則二割負担、当面一割、それから特定療養費制度という、先ほどから総理が言われる保険だけで見ないという世界も入れようという、こういうある意味では抜本改革が行われた。  そのときに、その議論をめぐってほとんど、あらゆる議論が出ているんですね。簡単に言えば抜本改革のメニューはほぼ十二年前に出ていると言えるんですよ。そしてその後、確かにつけ加えられたものも、深められたものもあるけれども、この十二年間、じゃ、そういうメニューがそろったのに何をしていたかということなんですね。  ですから、私どもは、今から新たなメニューをほとんどっくる必要がない、メニューは出そろっている、その中からどういう選択肢を国民の皆さんに示して選んでいただくか、あるいは我々の中で議論するか、そういうふうな決断のときだと思うんですけれども、いかがでしょうか、厚生大臣。
  152. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 私は、社会保障改革にしても財政改革にしても意識改革が必要だと思います。今言ったように、何でこんな状況にしてしまったんだというのも確かにわかります。現に赤字国債、特例公債、これは当初、特例公債を発行するのでも政府・自民党と野党というのは対決法案でした。一年限りですよと、だから特別に例外な公債だから赤字国債。いつの間にか、大して反対もなく与野党毎年毎年出しちゃう、特例じゃなくなっちゃった。何とも思わない方がおかしいんです。いいときに非常時に備えようという気持ちがなくなっちゃった。  しかし、経済、いつも成長ばかりじゃありませんよ。不況が来た。一時期は株だって、毎年株価というのは上がるのが当然だという考え方でした。株は下がる。土地だって上がるというのは神話だった。土地も下がってきた。こんなことみんな信じなかった。予定外のことが起こってきた。  私はそういうことから考えると、もう何とかなる時代じゃない。これだけの赤字国債を抱え、借金を抱え、やらなきゃならないことが多い。につちもさっちもいかないからこそ、あらゆる構造改革が必要だということで、今本格的に取り組もうとした。まだ信じなかった。しかし、ようやくこの改革は大変だなというのにだんだんだんだん気づいてきた。  今、今井先生が言われたような医療改革においてもほぼ問題点は出尽くしています。どれを選択するかなんです。出来高払い、薬価基準、みんな今出ていました。しかし、これはだめだよと。しかし、だめだと言っていたのなら負担がふえるばかりだからやらざるを得ないという雰囲気が出てきたこと、この改革への環境を政治家がぜひとも生かしていって新しい時代に対応するような制度をつくっていくべきだと思います。
  153. 今井澄

    今井澄君 そこで、薬価の問題とか薬剤費の問題、出来高払いの問題、これはもう大分論じられているので、きょうはそこは取り上げませんが、厚生大臣の答弁の中で薬価基準の抜本的見直しということをきょうも何回も言われている。これは薬価基準制度、公定価格を設けることの見直しも含むという意味ですか、一言。
  154. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) どのように抜本的に見直すにしても一つの基準は示さなきゃならない、なくすにしてもね。実勢価格に合わせるといったとしても一つの基準は示さなきゃならない。それはいろいろあると思いますね。しかし、根本的に見直すということを私は言っているわけです。
  155. 今井澄

    今井澄君 私は、薬価基準の決め方の見直しではなくて、これは公定価格を決めること自身をもう一度見直してみて、市場原理に任せた上でどういう保険の償還をするかという、そこまで踏み込まないとだめだと思っております。  さて、抽象的な議論をしてもしようがないので、皆様方にも資料を配りましたが、少し具体的にお尋ねをしていきたい。  ちょっと厚生省、政府委員の方にお尋ねしたいんですが、最近の医療費を見ますと、むだがどこにあるかということを知る手がかりの一つ医療の地域格差があると思うんです。この狭い日本の中で、四十七都道府県、医療費が結構違うんですよね。  一般の医療費を見てみますと、ワーストスリーと申しますか、医療費の一番高いのが北海道、次が福岡県、そして三番目が徳島県。老人医療費は一、二位は変わりません、北海道、福岡県。そして三番目が大阪府となりますね。こういうところが医療費が高いという理由について簡潔に答えていただきたいと思います。
  156. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) まさに医療費の地域格差がかなりあります。これはいろんな要因が重なっていると思いますが、一つに、高齢者が非常に多いという場合には、高齢者の医療費というのは若人の五倍ぐらいかかりますのでどうしても高くなっているという、そういう人口要因が一つございます。  それからまた、人口当たりのベッド数、病床数あるいは医師数、そういった医療提供側の要因、こういったものもございます。  それから、ただいまお話しになった高い各県で見てみますと、例えば入院と入院外ということで見た場合には、やはりこれらの高い県というのは特に入院の医療費が高い、そういうような傾向が見られます。
  157. 今井澄

    今井澄君 確かに、なぜ北海道の医療費が高いのか、いろいろ分析してもこれだというものがなかなかないように私も聞いております。  きょうのお配りしました資料、ひとつこれを見ますと、医療費は入院の医療費と外来の医療費に分かれますが、入院の医療費というのが非常に大きな要因です。これを見ますと、北海道、徳島が高いということ、高知もワースト幾つかに入るわけですが、やっぱりベッド数が多いとそれだけ医療費も高いということは明らかですね。  それから、老人が多いところはそうなんですけれども、じゃ、老人医療費だけ見てみたらどうなるかというので次の老人医療費の棒グラフを見ていただきたいんです。(図表掲示)この中で、真ん中のあたりに一番低い長野県というのがあります。  私は長野県で医療をやってまいりました。(「山形も忘れないでね」と呼ぶ者あり)山形も低いんですね。山形も低いんですが、私はたまたま長野県で二十年ぐらい、まあ長野県に行った理由もそうなんですけれども、病気にならない運動、病気の予防、早期発見をやってきました。これは、つまり医者にかからない運動なんですよね。  一方、院長を八年ほどやりました。それで、その前後に副院長をやったり名誉院長をやったりしましたから、十年余り、・今度は病院の経営を一生懸命成り立たせる、稼ぐ方をやったんです、医療費を上げる方。と同時に、その間、国保の審査委員を十二年間やりました。これは医療費を削ること。三つのことを並行してやったんですね。医者にかからないことと、患者さんを集めて医療費を、収入を得ることと、その収入を得る病院の医療費を削ることと三つやってきたのでいろいろわかるんです。  これを見ますと、長野県が一番医療費が低い。その長野県が一番医療費を使っていないということは、医者にかかっていない。そうすると、ばたばた死んでいるのかというと、皆さん御承知のとおり、そうじゃないんですよね。男は長野県が一番長生きなんです。女性は四番目なんですよね。男女合わせて日本で一番長生きの県なんです。医療費を使わないで長生きなんです。逆に見てみますと、大阪あたりなんというのは結構平均寿命が短いんですよね。どういうことを意味するんで、しょうか。  それで、例えばお金の問題でいいますと、長野県と最高の北海道は約一・九倍違うんですね。平均が七十一万幾ら、長野県が年五十一万幾らです。老人医療費が八兆一千億円余りあるんですが、もし全国一律に長野県と同じように健康でかつ医療費が少ないという、こういう医療をやりますと、概算をしまして一人当たり約二十万円の七十歳以上が一千百万人ぐらいいますかね、二兆三千億円老人医療費が少なくなるんですよ。老人医療を全国で長野県と同じようにやったら、これだけで今度の健康保険改革は必要ないんですよ。財政的にはとりあえず二兆円浮くんですから。どこかにむだがあるんですよね。  そこで……(「薬剤費が一番使われている。薬剤費も言え」と呼ぶ者あり)そう。そこで、もう一つ、薬剤費なんですが、もう一つの資料を見ていただきたいんです。(図表掲示)  これは厚生省の資料で、A、B、C、Dという四つの都道府県で、例えば、上の方は高血圧という病名の患者さんのレセプトだけ抜き出して調べた。下の方は急性上気道炎、つまり風邪ですね、風邪だけ抜き出して調べてみた。  その中身を分析して見てみると、高血圧の病気は、この四つの都道府県で多いところと少ないところで一・二倍ぐらいの違いですが、何とそのうちの薬の違いが二倍以上あるんですよね。何で同じ高血圧でこれだけ薬の値段が違うんでしょうか。(「医薬分業を片っ方はしているから」と呼ぶ者あり)いや、これは長野県は入っていないんです。  下の方は風邪ですよ。風邪の薬の値段の違い、何と三倍近く違うんですね。どうして風邪でそんなに違うんでしょうか。これは端的に言えば、風邪でもどんどん抗生物質を出しちゃうようなところと、風邪はばい菌じゃありません、ウイルスですから抗生物質は原則として効かないわけですよね。だけれども、肺炎になったら困るからというので抗生物質を予防的に出すところもあるというふうなことがありまして、こういう違いがあるわけですね。ですから、こういうところから具体的なむだを削っていったらどうかなと思うんですね。  それに関連して、今保険者機能の強化ということが言われております。例えば、国保は市町村が保険者、それから政管健保は国が保険者、組合健保は保険者がそれぞれの企業などでつくった保険者。この保険者が、残念なことにお金を集めるのと医療機関にお金を支払う機能しかほとんどやつていない。もちろん、医療費通知をやったり、診療報酬明細書の点検をして、多過ぎるんじゃないかといろいろ文句をつけたりもやっておりますが、ほとんどがお金を集めて支払うだけしかやっていないんですね。アメリカあたりは保険者が医療機関と厳しくやっているわけですね。ドイツでもそういうふうにやっているわけで、少なくとも支払い側である保険者がもうちょっと、本当にこの医療費はちゃんと払っていいのかどうかということについて機能を強化しなきゃならないと思うんです。  そうしますと、一つの提案なんですけれども、今国民健康保険は三千二百幾つの市町村でやっている。とても小さな市町村ではやっていけないということはもう明らかで、国民健康保険の一番大きな問題点がそこになっているんです。都道府県ごとにこういう医療費の違いがあるのならば、いっそのこと国保は都道府県単位にしちゃったらどうだろうか。一方、政管健保は国ですよね、国がやっているためにここはほとんど何のチェックもしないでただお金を集めて支払うだけ。政管健保だっていっそのこと都道府県単位にしちゃったらどうでしょうか。  都道府県で国保と政管健保、一緒になるかどうかわかりません。まあ難しいこともあるけれども、例えば一つの保険者機能を持たせて、都道府県ごとにどうしてうちの県あるいは府は高いのかということを検討しながら、高いところは悪いけれども保険料をたくさん払ってもらうしかないんですよ。自己負担も払ってもらうしかないんですよ。ここに住民参加をやるといいと思います。国民の皆さんにも考えていただきたいんです。風邪で抗生物質をもらうことがいいのか悪いのか、それを考えてもらう。  こういうふうな形で、今保険者だって幾つにも分かれている、小さな保険者に分かれている。これを思い切ってこの際、例えば政管健保と国保は都道府県にしちやっとか、そういうふうな案も出してみてもいいと思うんですよね。市町村だって国保は大変だって言っておられるわけですから、そういう案も一つあるんではないだろうかなというふうに思います。  あわせて、組合健保も千八百もあるのはおかしいですよね。小さいところもあって非常に苦しいらしい。そして、いろいろ聞いてみると、組合健保は付加給付をしたり保養所を持ったりいろいろやっている上に、いろいろ天下りもあって、一つの再就職先としてその小さな健保も維持されているというむだもあるという。健康保険というのはみんなで支え合うものだとすれば、やっぱりそういうむだもなくさなければいけないだろう。大胆に統合するということをこの際出すべきだろうと思うんです。  けさほどからの質疑の中でも、いろいろな経過があって難しいと、そのとおりなんですね。いろいろな経過があって難しいけれども、まさに大改革をしなければならない時代、もうそれぞれの利害を言っていられないんですね。うちの健保はいいところにいい保養所を持っているから、この財産を持って何も財産のないのと一緒になるのは嫌だとか、そういうことをもう言っている時期じゃないと思うんですけれどもね。そんなようなことでいろいろ考えていったらどうだろうなというふうに一つは思います。  そんなことで、厚生大臣、この辺についてはいかがでしょうかね。
  158. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) さすが、今井先生は診療もされる、経営も経験がある。率直に伺っていていい案だなと思います。長野県の医療費が少ないのにどうしてこんなに元気で長生きの人が多いのか。長野県を私は参考にしなきゃいかぬ。そして保険集団をどのような形で持っていくか。都道府県単位、難しいからだめだというんじゃなくて、難しいけれどももうやらざるを得ない状況に来ております。今のいろんな御意見を参考にしながら、抜本改革の中で検討させていただきたいと思います。
  159. 今井澄

    今井澄君 私は、国民の皆さんに自己負担をどうしても、すぐかどうかということは別として、近々のうちに自己負担をお願いせざるを得ないと思います。これは高齢化も進みますし、医療技術も進歩するし、国費を入れるとか保険料を上げると同時に、そういうことがあったとしても自己負担をふやさざるを得ないと思うんですが、そのためにはむだの生じない医療制度にしないと国民の皆さんに納得していただけないだろうと、そういう意味で今幾つか申し上げたのです。  同時に、やはり医療制度そのものも改革していかなければならないというふうに思っております、よりよい医療が受けられるように。  各種のアンケート調査を見てみますと、今国民の皆さんあるいは患者さんがどういうことに不満を持っているかというと、やっぱり説明が不十分だということですね。薬の説明とか療養の仕方とかその辺が不十分だということが一番です。それから次には、三時間待って三分診療なんということ、待たされるという不満も非常に多いと思うんです。  その前者の方なんですが、今の医者は、説明をする、患者さんに納得してもらうという教育を受けていないんです。医学部教育が病気の考え方、いわゆる科学といいますか、そういう教育しかやっていなくて、患者さんあっての医療なんだ、患者さんにどういうふうに満足してもらうかという教育をしていないと思うんです。  こういう意味では抜本的な改革が必要だし、特に今偏差値の高い人が医学部に入るなんというおかしな制度になっちゃいまして、これは非常な問題を起こしているんです。偏差値が高くて受験戦争を勝ち抜いてきた人というのは自分の出した答えは正しいと信じているわけですよ。それを理解してくれない人は相手が間違っていると、こう思っちゃうわけです。全く逆なんですよ。患者さんの立場に立たなければいけない。そういう意味で医学教育を根本的に変えなければいけないというふうに思います。それが一つ。  もう一つは、私は今の大学の医学教育に連続する医局講座制というのは非常におかしいと思うんです。例えば患者さんに説明するということは頑張ればできるわけですけれども、説明できないことがあるんです。何ができないかというと、例えば隣の市から自分のところへかかった。あなたは自分の市の住んでいるところの病院にかかった方がいいですよというふうに紹介してあげればその患者さんは楽なわけです、遠くまで来なくて済むから。だけれども、私たち医者は隣の病院の中身を知らないんですよ。その病院にどういうお医者さんがいて、どういう専門で何が得意かわからないから紹介できないんです。自分が紹介するとき知っているのは、自分の出身大学か医局しか知らないんです。  だから、遠くの大学病院とか先輩のところあるいは後置の専門医を紹介するんです。ということは、医者は医局系列で全部縦に分断されているんです。隣り合った病院同士が、違った大学から医者が来ている。同じ大学でも違った医局から医者が来ている。隣は何をする人ぞと、わからないんですね。これは医局講座制の弊害なんです。  私は、大学の医局講座が現場の病院を縦系列で支配しているという、こういう構造を根本的に変えるべきだと思うんです。この大学の教育及び医局講座制のあり方について、文部大臣。
  160. 小杉隆

    国務大臣(小杉隆君) 患者に対するインフォームドコンセントは今後ますます重要になってくると思います。そこで、今大学の医学教育におきましては、できるだけ患者さんに親切にいろいろ説明をする、そしてこれをきちっと理解してもらう、そういうコミュニケーション能力とかあるいは説得力、こういうものを重視しております。  それは、ひいては医者が倫理観を持たなきゃいけないし、それから今言ったようないわゆる説明能力、こういったことが要求されるわけでありまして、私は今後の医学教育におきましてはこのインフォームドコンセントということをますます重要視して取り組んでいきたいと思っております。現在も臨床実習とか医学概論でやっておりますけれども、医学教育全体の中でそういう教育を充実させていく必要があると思います。  それから、二番目の講座制なんですけれども、確かに小さく第一内科、第二内科、第三内科ということで、いわば教授一人に助教授一人ということで非常に閉鎖的、硬直的になってきている。今大学におきましてもできるだけ小さな講座制から大講座制に変えていこうということで、現在四十二の大学のうち十六大学、約三分の一強は大講座制に変えまして、人事の柔軟性というものをもっと取り込もう、こういう努力をしているところでございます。
  161. 今井澄

    今井澄君 まだまだいろいろやりたいんですが、今の医局講座制のことでは、二十六年前、もっと徹底的に本当に医局講座制を壊しておけばよかったなと後悔をしております。  それはそれとして、いずれにしても大改革をしなければならないわけですが、もうメニューは出そろっている。そして、今のような議論を徹底的に詰めてやっていかなきゃならない。昨年の暮れの医療保険審議会から出たのでは、三段階で改革を進めるんだと、それが何か十年か十五年かけてやるような案が出ていたので、これではとてもじゃない、遅過ぎると思うんです。  私は、やっぱり三年以内に改革に着手する、完成するのは五年後、十年後のものもあるでしょう。教育の問題なんかすぐ変わらないかもしれません。医療保険制度だってすぐ変わらないかもしれませんが、三年以内に着手する必要があると思うんです。そのためには、よほど大胆にやっていかなければならないし強力にやっていかなければならない。  それで、その方法、プロセスについて厚生大臣に御意見を伺いたいと思うんですが、私が思うには、もう審議会方式というのは終わった、破産していると思うんです。その証拠に、去年老人保健福祉審議会は答申を出せませんでした。二論、三論併記。医療保険審議会も年末に何とかまとめたようですけれども両論併記ですよね。結局、そこには現場の利害関係者といいますかそういう人たちが入っていて意見が一致しないものですから、まとまった意見が出せない。そうすると、審議会の方向はもうだめだというふうに言えると思います。  そこで、厚生省も知恵をひねったんでしょうね、そういう審議会を廃止して、医療保険構造改革審議会ですか、新たにそれを設置するということで、恐らくこれは賢人会議だろうと思います。現場の利害関係者でない有識者とかそういう人たちを集めてそこでやろうと。  だけれども、私はそれはうまくいかないと思うんですね。なぜかというと、賢人会議というのはだれに対しても責任性がないんですよ。現場のことを知らない学者や文化人やどこかの偉い企業人を呼んできたってこれは決められない。これは政治の決断で決めるしかないと思う。私は、厚生大臣が主導権をとるべきだと思うんです。そして、厚生大臣が、私的諮問機関でもいいですけれども、政治家を含めて若干のいろんな方を入れるのはいいと思うんですよ、政治家を中心に厚生大臣の相談役といいますか私的諮問機関をつくって、今まで出そろったメニューを整理して、その中からこれとこれを選ぶということの骨格を決める。  そして、それだけじゃだめだ。その後、国民に提起する必要があると思うんですね。さっきの薬の問題にしても、医者にかかる問題、北海道の越冬隊という長期入院にしても、これは住民の皆さんの納得が得られなければ変わりませんから、制度だけ変えても。そういう意味で国民に提起する。  三月いっぱいで与党の案がまとまる。私ども民主党は中間報告をもうまとめました。そして、あと三カ月かけて具体案をつくる、そしてそれを国民に提起して三カ月から半年議論する、大体そういうペースで厚生大臣が早速主導権をとって私的諮問機関をつくられてはどうかと思うんですが、いかがでしょうか。
  162. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) これから医療保険についての構造改革案を考えてもらおうということで、名前はまだ決まっていませんけれども、そういう審議会を設けようということは既に決まっております。  昨年の審議会でもなかなか一本化できませんでした。そういう反省も踏まえまして、もう単なる利害調整では済まないなという時代に来ているのは事実であります。そういうことから、今政治家同士で与党内で議論をしていただいているということは、私はこれはいいことだと思っております。  今後、どういう方にこの審議会に入ってもらうか、審議委員になってもらうかというのはまだ決定はしておりません。しかし、今言ったように賢人会議みたいだと現場を知らないということになってしまう。現場のことはやっぱりよく聞かなきゃなりませんから、どういう形になるにしても最終的に決めるのは国会です、政党であり政治家です。そして一つのあるべき方向を出すのも厚生省の責任です。ここで批判を浴びながら、政治家で議論をしていただきながら国会で決めてもらわなきゃいけない、そのためにどういう審議会がいいかということを今幅広く検討している最中であります。
  163. 今井澄

    今井澄君 質問は幾つか準備してきたんですが、時間が足りなくなってきましたので、本当はやりたかったんですが、高齢者対策のことはちょっと省略をさせていただきます。  ここで総理にお尋ねしたいんですが、今までの議論、質疑をお聞きになられて総理としてもお考えがおありだと思います。特に、具体的にどう解決するかというプロセスや手段のことについて、もしそれを中心にお考えを例えればありがたいんです。  それと同時に、私のきょうの質疑も、医療保険そして次に老人福祉をやろうと思っていたんですが、非常に大事な問題としてこの予算委員会でも何人かの方が質問されましたけれども、人口推計が一月に発表されましたが少子化がどんどん進んでいっているわけです。  その中で、今度は児童福祉法の改正案も政府から提案されるわけですが、どうもその議論が保育料を幾らにするかとかそんな話になってしまつ.て、本当に子供に夢のある保育をどうするか。あるいは、それこそ子供の教育の問題になると文部省と厚生省と一緒にやらなきゃならないのを、相変わらず文部省は幼稚園、厚生省は保育園、聞くとそれはそれぞれが教育と保育で違うんだと言うけれども、そんなことじゃないと思うんです。  ですから、今の医療の話とあと少子化について、ちょっと私は危機感を持っているんですけれども総理の御見解をお伺いしたいと思います。
  164. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、問題意識、実は最近は余りみんな変わっていないだろう、そして非常に問題があるという認識は皆さんが持っていただくようになったんじゃないだろうかと思います。  その上で、先ほどから御自身で三つの立場をとおっしゃったんですけれども、確かに本当に医師としての立場、医療機関の経営者としての立場、さらにその請求を審査する立場、その三つの立場からの御議論というのは私も実は初めて伺う話で、大変興味を引かれて聞いておりました。  そこで、先生、これは恐らく経営者としての立場のお答えをいただくのが一番ふさわしいのかもしれないと私は思うんですけれども、例えば医療というものを考えました場合、私は、健康保険の仕組みは将来ともに残さなきゃならない大事な仕組みだと思います。そして、国民のそれが負担に耐えられる範囲内でこれを維持していく。その場合に、今の診療報酬体系、これをドクターズフィーとホスピタルフィーに整理をする。  同時に、その時点で私は実はそれをやると見かけの医療費が膨らむんじゃないかと思います。しかし、そこでドクターズフィーとホスピタルフィーを整理をつけることによって、薬価差益に依存しないでも医療機関の経営が成立し得るような、そうした言いかえればホスピタルフィーというものをきちんと位置づけた診療報酬体系というものをつくったらどうなるだろう。実は素人なりの考え方として、私は昔から一つの方向と考えておりました。  加えて、自由診療と保険診療のみの現行体制に対し、保険給付の上にみずからの意思によって付加給付を受ける、私保険を組み合わせる。こうした体系はとれないものだろうか。そんなことを実は昔から考えておりました。  一方、この人口推計、これは私にとりましても大変ショックでありました。というのは、ちょうど厚生大臣、昭和五十四年のころ、私は高齢化社会というものを大きな声で唱えながら、一方では世論調査をするとまだ世代間同居志向というものが七割前後ありましたので、しかも相当ピーク時までに時間の余裕もありましたし、一番高弟化のピークが進むころでも高齢化率が二二から三ぐらいで済む、それだけの出生率のある時期でありましたから、私はある程度その世代間同居を中心に自分の考え方を当時組み立てておりました。  ところが、それが非常に大きく崩れ始めましたのは、一つは核家族化の傾向が非常に顕著になり、それとともに世代間同居志向の率が下がり始めた。しかも、なおかつ欧米に比べてははるかに高いわけでありますけれども率的に下がり始めた。そして、それに追い打ちをかけるような形で少子化が進展をいたしました。そして、今この少子化の議論というもの、出生率の低下の原因というものが未婚率の上昇というところに一つのポイントを置かれております。  しかし、その未婚率が上昇した。その結果、出生率が落ちた。これは言いかえれば、家庭という枠組みのほかに地域社会が子育てを受けとめる仕組みができていないということではないでしょうか。家族という単位、世帯という単位を超えて地域社会が家庭にかわる環境を子供たちにつくり出す、そういう仕組みを持っていない例証ではないだろうか。私は実はそんな思いを持ってこの数字を見ておりました。  たまたま私は暴れん坊でして、スポーツ少年団に手を出したり、ボーイスカウトだったり、子供たちと触れ合う機会の比較的多かった人間でありますが、始めました当時と近年とで大きく違いますのは、要するに兄弟の多かった時代はある程度兄弟で取っ組み合いをやったりなんかしているんだと思うんですけれども、そういう中である程度一つの社会的なしつけというものを受けてきている。一人っ子で育ってきた子供たちは、スタートの時点で集団で何かをするということ自体を覚えさせるのに骨が折れる。  これを地域でどうにかできないか、そういうことを思い続けてまいりましたけれども、私は、子育て支援策的な話だけではなくて、地域社会の中に家庭にかわる子供を育てる環境をどうつくるか、これは本当に幅の広いテーマとして広く国民的な御議論をいただきたいと思います。  政府としては、これは人口審で御論議をいただくテーマでありますけれども、こうした点についての議論はできるだけ幅広く広げていただけることを幸せに思います。
  165. 今井澄

    今井澄君 今お話の出ました人口問題審議会は、普通の審議会とちょっと違っているようで、厚生省の審議会だけれどもほかの省や総理にも答申、具申ができるということですので、それでいいのかもしれませんし、また余り総理直属のもとに少子化対策のものをつくると、昔の産めよふやせよを思い出してちょっと問題が起こるかもしれませんが、これはやっぱり省を挙げて取り組んでいただきたいと思います。  かつての村山内閣当時の与党福祉プロジェクトでやってきた障害者プランは、十七省庁の御協力を得てかなりいいものができたんですが、エンゼルプランの方は厚生、文部、建設、労働の四省庁ぐらいまでしか広がらず、しかも結局緊急子育て支援策しかできなかったので私も非常に悔やんでいるんです。今の総理お話にもありましたように、何か保育園をどうするとかというだけではなく、本当に子供に夢のある、そういう夢のある子供を見ていれば親もまた子供を産もうかな、育てようかなという気にもなってくると思うので、政府を挙げた対策をお願いしたいと思います。  用意した質問ができないで、総務庁や労働省には来ていただきながら、精神医療の問題も老人福祉も取り上げられなくて申しわけなかったんですが、ちょっと一分ありますので、先ほど言い落としたことですが、患者さんが持っている大きな不満の一つの待たされるということです。三時間待って三分診療、この大部分は……(「薬をもらうのに一時間」と呼ぶ者あり)薬の問題もあるんですけれども、その前に、行かなくてもいいのに風邪でも大学病院に行くという今のかかり方、これが医療費のむだも生じているし、時間のむだも生じているし、病院の機能のむだ遣いにもなっているし、病院にかからなきゃならない患者さんまで待たせているということがあると思うんです。  それを考えると、今のような日本のフリーアクセス、どこへでもかかれるというのが本当にいいのかどうか。かかりつけ医機能ではなく、かかりっけ医制度もそろそろ考えなければならないのではないか。ところが、これはやっぱり国民の皆さんの合意がなければできないことだと思います。  事ほどさようにこの問題は、今までのように、審議会にかけて、そこで答申をもらって、厚生省が法案をつくって国会に出して、国会では反対があっても何であっても与党が数で押し切る、こんなことではもう抜本改革ができないわけです。ですから、先ほどもちょっと提案を申し上げましたが、もう急がれるわけです。私は三年以内に始めるべきだと。そのためには、あと三カ月の間にぜひ厚生大臣に主導権をとっていただいて、そして国民全体の議論を起こすような改革に着手していただきたいということをお願いして、質疑を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  166. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 以上で今井澄君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  167. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 次に、上田耕一郎君の質疑を行います。上田耕一郎君。
  168. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 日本共産党の上田でございます。  きょうは、日米防衛協力のための指針、ガイドラインの見直し問題と沖縄問題について質問させていただきます。  まず、池田外務大臣に、日米安保共同宣言に基づくこのガイドライン見直しの中身と、それからどういう進捗状況か、簡潔にお答えいただきたいと思います。
  169. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) このガイドラインの問題につきましては、まずことしの秋をめどにまとめていこうと、このように考えております。  その中身でございますが、御承知のとおり、我が国が平時から米軍とどのような協力関係をやって米側と協力していくかということ。それからまた我が国自身が、簡単に言えば有事でございましょうか、非常に難しい状態になったときにどういうふうに協力していくかという問題。それから、我が国自体はあれでございますが、我が国の周辺地域で非常に我が国に大きく影響を及ぼすべき重大な事態が発生したときにどういうような協力関係をやるか。こういった三つの面について検討を進めようとしているわけでございますが、今申しましたうちで、一番目、二番目の問題については現在までも一応のガイドライン的なものはあるわけでございます。  ただ、国際情勢その他の変化に伴いましてこれも見直す必要があるかどうかを検討している。それから、我が国周辺地域に緊張した状況、重大な状況が発生した場合にどうするかということにつきましては、正直申しまして、これまでその検討がかなりおくれておったといいましょうか未整備の状態にありますので、このあたりもいろいろ詰めていこうということで、今鋭意作業を進めておるところでございます。
  170. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 今言われました三番目の、日本周辺地域に重大事態が起きた場合の日米防衛協力は全く新しい重大な問題で、今度のガイドライン見直しの中心問題なんですね。  そこで、総理にお伺いしたい。  私はここに四月十六日のペリー国防長官の記者会見の記録を持っております。この記者会見で、ペリー国防長官はアメリカの新聞記者にこう聞かれている。日本政府の約束、「極東で非常事態が起きた時、いわゆる防衛協力の指針の改定を含めて、日本がより広く、より広範にアメリカと防衛協力するという約束のことだ、これが普天間の返還の鍵となる要素だという理由は何か?」と。普天間飛行場の返還のかぎはガイドライン見直しかと聞かれている。ペリー長官はこう答えている。「私が信じるところでは、それは古く一九七八年に制定された指針の根本的徹底的な見直しとなる。」と。  ですから、総理は四月十二日の夜八時、普天間飛行場の返還問題で意気揚々と記者会見されたけれども、それは、このガイドライン見直しをのんだのでああいうふうになったんです。アメリカというのは、何か言われて、はいはいとなかなか言わない、これをのめぱ普天間は考えましようと。総理、のんだんじゃないんですか、ガイドライン見直し。
  171. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) のんでおりません。
  172. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 平然とそういう事実をお隠しになるのが自民党の首相たるゆえんだと私は思います。
  173. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 人をそういうふうに疑っている……
  174. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 しかし、総理はなかなか正直に答えていることもある。この安保共同宣言の二国間協力のところで「日本周辺地域」が出てきますね。それから、地域における協力のところで「アジア太平洋地域」が出てくる。総理は、国会でこれが問題になったとき、四月二十二日の本会議、アジア太平洋地域というのはどこか、「強いて申し上げるなら、これは基本的に東アジア及び大洋州の両地域を念頭に置いたものと考えていただいてよい」と、本会議答弁です。それから日本周辺の地域、これは日本共産党の東中議員に対する本会議答弁、四月二十三日です。  これはその時々の国際情勢によって変動し得るものであり、明確に境界を画する性格のものではございません。したがって、今回の日米安保共同宣言に言う「日本周辺地域」とは、政府が昭和三十五年二月二十六日の政府統一見解によって示したところの日米安保条約に言う「極東」の範囲とは別の次元の問題であり、比較することに意味はないと思います。 これは本会議答弁ですよ。  それで、総理にお伺いする。  そうすると、この日本周辺地域というのは、オーストラリアまで含むアジア太平洋地域、これと重なるんですか、それより広いこともあるんですか、いろいろと国際情勢で変わると言うんだから。総理が答えられなかったら、お二人どちらかでも結構です。
  175. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) その日本周辺地域と申しますのは、その地域で起こる事態我が国の安全に影響を及ぼすことがあり得べき地域、トートロジーという御批判もあるかもしれませんけれども、そういうことでございますので、そのこと自体について余り明確に地域を、どこが入るとか入らないということを議論することには余り大きな意義があるとは思わないわけでございます。  いずれにいたしましても、安保共同宣言等々でいろいろ議論いたしましたけれども、そのことをもって安保条約六条に言います極東地域のこれまで考えてまいりました範囲に何らの変更も来すものではございません。
  176. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ですから、日本語の使い方としておかしいんですね。日本周辺の地域と言うからそこら辺かと思ったら、日本の安全に影響があるような、これは今地球は狭いですからヨーロッパから何から全部入りますよ、ヨーロッパで起きた事件日本の安全に。次元が違うというんだ、極東の範囲と。そういうものを前提にしてガイドラインを今度見直すわけですよ。  それで、池田外務大臣は、この二月十二日の衆議院予算委員会で我が党の松本善明議員の質問に対して これは安保条約の何条に基づくのかと言われて、「日本の国内の法律のどれに基づいてということはあり得ましょうけれども、必ず安保条約の規定に根拠がなくちゃいけないというものではない、」と、そう答えられた。これは、日本周辺というのは極東の範囲とまるで性格、次元が違うというんでしょう。それで、安保条約に必ず根拠がなくちゃならぬというものじゃないというんだから、安保条約とは別なんですよ、このガイドライン見直しというのは。  それで、池田外務大臣日米安保条約に根拠がないとすると、では、何に基づいて行っているんですか。
  177. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 日米安保条約自身もいろいろな意味合いがございます。すぐれて安全保障、狭義の安全にかかわる規定もございますし、また広く経済問題なんかに触れている条項もあるところは委員御承知のとおりでございます。  今議論になりましたのは恐らく五条、六条、とりわけ六条の関係だと思いますけれども、五条で言っておりますのは、我が国自身の平和、安全が脅かされた場合に日米で共同対処していこうとそういったいわば条約上の約束であり、またその根拠が与えられておるわけでございます。  それに対しまして六条の場合には、そのような共同対処をするという役割は米軍にもある、それと同時に、極東地域でのいろいろな事態に対処するために米軍日本の提供する区域・施設を使う、そういうことを規定しているわけでございます。しかし、そのときに、極東の地域で起こる事態に対してそういった施設・区域を用いて米軍が行う行動に対して、日本としてこういうふうな協力をすることができる、こういうふうな行動をすることができるという具体的な根拠を六条は書いておるというわけではございません。  それじゃ、日本はそういった行動ができないのかといいますと、それは安保条約上も、その条約目的からして、やはり日米間のいろいろな協力というものは広い意味ではあるいは前提にしておるかもしれません。しかし、それは具体的な根拠を与えているわけじゃない。それはどこにあるかといえば、まずそれは当然日本の憲法の中で認められることでなくちゃいけませんし、それからあといろいろな国内法に個別具体的な規定があることもございましょうし、あるいは国内法にいろいろ規定してある条文の解釈によってできるということもある。  だから、そういった意味において、我が国政府の機関の一部が、米軍安保条約の六条で提供される施設・区域を用いて行動する場合にいろんな形で協力するということはできると、こういうことでございます。
  178. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 日本の国内法の問題も私は秋山防衛局長に聞いたことがありますけれども、自衛隊法の何条かときちんと答えられなかった。本会議でうちの議員が首相にも聞いたことがあるんですけれども、これは今後の問題。つまり、アジア太平洋地域日本周辺地域に出動して日米防衛協力をやるという条項は自衛隊法にないんですよ。国内法もこれからなんですよ。国際法上も安保条約の根拠はないんです。  それで、私は外務省に法的根拠を持ってきてくださいと言ったら、二つ持ってきました。一つは四月十七日の日米安保共同宣言。もう一つは去年の十二月二日の日米安全保障協議委員会、2プラス2ですよ、お二人出ているわけです、その共同発表。この二つが法的な根拠でございますと言って外務省が私のところに届けたんですけれども、外相、それでいいんですか。
  179. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) いわゆる日米間の安保共同宣言あるいは2プラス2のときに発出されました声明というものは、これはいわば政治的な意味合いの声明、宣言でございまして、法的根拠というものではないと、私はそのように思っております。  恐らく、外務省の担当官が参りましたときも、厳密な意味での法的根拠ということではなくて、いろいろ日米間で協力していく、その協力というものはどういうものかということを御説明する際に、日米間ではこれまでもいろいろ幅広い協力をしておりますし、これからもその協力のあり方についていろいろ検討していく、それはこういった政治的な性格を持った宣言の中でも明らかにしておりますという趣旨で御説明を申し上げたんだと承知しております。
  180. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 でも、この日米共同宣言は単に宣言じゃないんですよ。この中に、例えばガイドラインもこの第五項目の(b)で、「総理大臣と大統領は、」云々云々で、このガイドライン「見直しを開始することで意見が一致した。」と。「日本周辺地域」で云々でしょう。それで、「研究をはじめ、日米間の政策調整を促進する必要性につき意見が一致した。」と。  大統領と首相、これはお二人とも条約締結権者です。そのお二人が合意をして文盲で発表しているんですから、首相、このガイドラインをつくるというのはやはり義務でしょう、その責任をお持ちなんでしょう。ただ宣言して終わり、つくらなくても結構だというふうにはいかぬでしょう。
  181. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) そんなに一々おっかない顔してにらみつけなくたっていいじゃないですか。  確かに、日米安保共同宣言は私とクリントン大統領の間で交わしたものであり、そういう意味では間違いなしに公表した政治的な文書です。
  182. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 政治的、一方的宣言じゃなくて、政治的拘束力があるんですよ。首相が大統領と約束したんだから、合意文書で、ガイドラインをつくるという約束を。つくらないで、私は知らぬよというぐあいにはいかないんですよ。  さてそれで、これがいかにそういう重大な問題かというと、例えば朝鮮有事が一番問題です。朝鮮有事のときに何を日本はやらされるかというんです。  一つ材料があります。元駐タイ大使岡崎久彦さんが読売新聞の三月三日付で、一月に開かれた日米同盟プロジェクトの最終会議のことを書かれている。ここでいろんな方々がペーパーを出したそうです。この中で、朝鮮有事の際、日本に何が期待されているかのペーパーを出されたのはペンタゴン、国防総省安全保障局元日本部長のジェームズ・アワー氏。これは有名な方だ。  それで、北朝鮮が南進を始めたらどうするか。アワー氏のペーパーには、「日本総理は、」、あなたのことですよ、「日本総理は、在日米軍基地米軍による自由な使用を表明し、また、日本周辺の海域の自衛隊による哨戒、対潜哨戒を行い、沖縄海兵隊の韓国急派のために日本の輸送船を提供する。米大統領は、インディペンデンス」、インド洋に行っている仮定です、「の帰投を護衛するために海上自衛隊と沖縄のF15の台湾海域への出動を要請し、日本はこれを受諾し、台湾水域の安全のための日米共同パトロールを実施する。」と。ペンタゴンの元日本部長だった人が公然と日本でのシンポジウムにこういうぺーパーを出すんだから、何を望んでいるか明らかですよ。  外務大臣、このガイドライン結ばれますと、この日米防衛協力にはこういうケースも想定されることになるんですか。
  183. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今、委員指摘の岡崎氏もあるいはアワー氏も、それぞれこういった防衛問題等についてなかなか知識をお持ちの方であるとは私ども承知しております。しかし、いずれも現在日本政府あるいは米国の政府の一員じゃございませんし、そういった政府とはかかわりのないお立場であるいはいろいろな議論をされたのかもしれませんけれども、そのことが日米それぞれの政府あるいは両国政府の間のいろんな協議事項を示しているわけではございません。  そして私ども、ガイドラインにつきましては、これも先ほど申しましたように、この秋にまとめるべくいろいろこれからも協議を進めてまいりますけれども、これは当然のこととして我が国として行えるその行為あるいは協力というものは日本国憲法の範囲内でございますし、それからまた集団的自衛権の不行使等、これまで憲法の解釈について我が国政府が表明してまいりました基本的な立場は変更しないという、こういう前提の中で進めるものでございます。
  184. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 言葉で覆い隠すことはできないんです。  先ほど外務省が持ってきた二番目の文書、日米安保協議委員会の十二月二日の共同発表の中にはガイドライン見直しについてこう書いてある。「指針の見直しを通じた日米防衛協力の強化は、アジア太平洋地域の」、首相によればオーストラリアまで入るんですから、「平和と安定の増進及び日米安全保障条約の効果的な運用に資するもの」となる。  この「効果的な運用」というのは、安保第五条の日本の施政権の領域が攻撃されたときじゃなくて、日本の施政権外に出ていくわけですよ、アジア太平洋地域に自衛隊が。これ非常に重大な問題で、だから安保条約が二国間にとどまるのならいいけれども、それより拡大することに批判、警戒をあれだけ何度も何度も例えば中国は、また韓国も表明しているじゃありませんか。中曽根元首相は不沈空母と安保条約下の日本を言ったことがある。その不沈空母が今度、アジア太平洋にいよいよ出動するんですよ。  そういう重大な、安保条約に根拠のない新しい政府間合意を首相はクリントン大統領と結ばれたんですよ。それに基づいて極めて危険な、ペリー国防長官が根本的、徹底的見直しと言っている。つまり、新しいものをつくるんです。見直しじゃないですよ。それをいよいよつくることになるんですよ。  それで、外務大臣にちょっと幾つか聞きたいことがある。  このガイドライン、今までは政府間の協定じゃなかった。制服間の、制服の間で決めて閣議決定した。今度ガイドライン見直したものは、日米安保共同宣言で大統領・首相の合意に基づいてつくられるものだから、新しいガイドラインというのは政府間合意になるんじゃありませんか。
  185. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもといたしましては、今そのガイドラインの検討を進めてまいりまして、一体両国間でどういうふうな協力を進めることができるか、また進めることが適当かということをいろいろ検討してまいりたい。  そして、そういったものにつきまして、それを進めていく上において、これまでの例えば日本の法制の中で、国内法の中できちんとその根拠があり対応できるものはそれでよろしいわけでございますが、仮にその国内法の手当てが必要というものがあれば、それはその段階でまた所要の措置は講ずる、そしてまた国会にも当然のこととしてお諮りするということになると思います。  しかしながら、ガイドラインそのものを政府間の協定にする云々ということは、今想定しているわけじゃございません。  委員がいろいろおっしゃいます。その前提として、日米安保共同宣言そのものが大統領・総理間の約束であるから、それに基づくガイドラインは当然政府間の協定じゃないかとおっしゃいますけれども、先ほど来御答弁を申し上げておりますように、日米安保共同宣言は政治的な意味合いの宣言でございます。法的な意味での政府間の約束ではない。もどより政治的な宣言でございますが、そういった意味での重みは持っておりますけれども、いわゆる法形式あるいは条約等々の観点からいってどうなのかという意味においては法的な存在ではないということでございます。  そして、ガイドラインについての作業を進めようという両首脳間の合意というのもそういった政治的手続の中のものでございますから、だから議員がおっしゃるように、ガイドラインも政府間の約束であり、また法的な意味においてのそういうふうな形式を整える必要があると御主張されるのであれば、そういうことではないと私は承知している次第でございます。
  186. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 なかなか苦しい答弁で、後で議事録でよく研究しておきます。なかなか大事な問題なんですよ。  もう一つお伺いします。  七八年のガイドラインは、防衛協力委員会の報告によれば、「研究・協議の結論は、」「両国政府の立法、予算ないし行政上の措置を義務づけるものではない。」、こういうことになっている。今度はこの共同宣言で、「日米間の協力に関する研究をはじめ、」、研究だけじゃない、「日米間の政策調整を促進する必要性につき意見が一致した。」となっているので、政策調整もやるわけですよ、日米間の。日米防衛協力に関する政策調整も進めるわけですよ。単なる宣言じゃない、政策を進めるんですから。  そうなると、外務大臣、どうなりますか。政策調整を進めなきゃならぬのだから、「両国政府の立法、予算ないし行政上の措置を義務づけるものではない。」、これは若干、義務づけでなくても、進めなきゃならぬ努力義務ぐらいになるんじゃないですか。変わるでしょう、これ。
  187. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 従来からもいろいろな防衛協力あるいは安全保障協力をやってきております。その中で、いろいろな情報の交換であるとか一緒になっての研究だとか、あるいはその政策の方向についての意見の交換等もやっており.ます。そういった意味で、今回はそういったことを共同宣言の中で、例えば政策協議をやろうということ、これまでもある意味では行われておったわけでございますが、それを明記したということでございます。  しかし、そういったことは、全体として共同宣言そのものが政治的な宣言でございますから、法的な意味においてそれを義務づけるものではない。しかし、政治的な意味において我々は、日米両国はこういう協力をしましようということを合意するならば、それはそれぞれの政府責任においてそういった協力が実行できるような条件あるいは体制を整える政治的な意味での責務というものはあろうと思います。そういった意味で、先ほど私が申しましたように、例えばガイドラインの作業の結果、何らかの新たな国内法的な措置が必要となるならば、そういうことはやることがあり得ましようと御答弁申し上げた次第です。
  188. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 わかりましたよ。かなり重大な答弁ですよ。  法的な拘束力はない。それは破ってもアメリカ一も国際裁判所に提訴なんかしないでしょうからね。だけれども、政治的責任は生まれるんですよ、政治的責任は。政治的責任政府が負って実行してごらんなさい。自衛隊も動くし、国民も税金の負担が新たになるし、いざとなればアジア太平洋に出て行かなきゃならないんだから。そういう政治的な結果を生むものをつくろうとしているんですよ。  それで、法制局長官にお伺いします。  条約法に関するウィーン条約第二条で、条約というのはどういうものとなっておりますか。
  189. 林暘

    政府委員(林暘君) 条約法に関するウィーン条約の第二条において、条約につきましては、「国の間において文書の形式により締結され、国際法によって規律される国際的な合意をいう。」というふうに規定をされております。
  190. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 括弧の中も読んでください。
  191. 林暘

    政府委員(林暘君) 括弧の中は、「単一の文書によるものであるか関連する二以上の文書によるものであるかを問わず、また、名称のいかんを問わない。」ということが括弧の中に書いてございます。
  192. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 「名称のいかんを問わない。」と。  それで、国際法の本をコピーして持ってきました。「条約は、具体的名称には、条約と呼ばれる以外に、協定・取極め・規約・憲章・規程・宣言」、宣言が入っている、「議定書・決定書・交換公文・交換書簡・合意書・暫定協定などと名づけられることがある。これらのうち、「宣言」は、国際法上の一方的行為として行なわれることの方がむしろ多く、その場合には、もちろん、条約としての法的効果は生じない。」、一応宣言はそうなっている、確かに。  しかし、政治的責任は生まれるんですよ。しかも、大統領と首相というのは条約締結権者ですから、条約を締結する権利を持っている人が外国でお二人でやれば、文書でなくて口頭でさえ効果は生まれるんですよ。佐藤・ニクソンのあの核密約なんというのはそうですから。あれは佐藤さんが焼いちゃったらしいけれども、国際的に縛るんですよ、日本政府を。そういう重要なものなんです。  今までの質問で明らかになったことは、法的な拘束力についてはいろいろ意見があった、だけれども政治的拘束力は明白なんですよ。安保条約と結ぴついているけれども、一応別個の政治的体系を、日米安保共同宣言と日米安保協議委員会の共同発表とそれから今度結ばれる新しいガイドラインによって、安保条約に規定されていない日本の自衛隊が、アジア太平洋さらにはヨーロッパまで日本の安全に影響があるというと、日本は何ら攻められていないのに出ていこうと、こういう極めて危険な行動にいよいよ出つつあるんですよ。それは首相に責任あるんですよ。  あなたは、普天間の飛行場返還問題、一生懸命アメリカに頼んだら、これをのめと。のんだんですよ、あなたは。それが日本国民全体に物すごいことになりつつあるんですから。まあ、いろいろ反論あるでしょうけれども
  193. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) まず第一に、先ほど故佐藤栄作首相に言及をされ特定のことを述べられましたけれども、既に亡くなられた方で反論の場を与えられていない方の不正確な引用は私はお慎みをいただきたいと思います。  それから、大変フィクションストーリーとして興味深く拝聴いたしましたが、約束のないものは、ありません。
  194. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 政治的約束をされたんです,日米安保共同宣言でね。  佐藤さんのことを言われたが、私はあれを取り上げましたけれども、若泉敬さんが膨大な本を書かれて、あの中で佐藤首相の日記を佐藤さんの奥さんの了承を得て引用しているんですよ。私はこれを読み上げたんです。だから、佐藤首相の日記以外の佐藤さんを、亡くなられた方を冒涜するようなことを私は何ら言っておりません。そのことだけ申し上げておきます。  あと六分ありますので、この引きかえの対象となりました普天間飛行場問題、これを取り上げたいと思います。  先月の十八日に、参議院の国際問題調査会、私は理事をしておりまして、林田会長らと御一緒に普天間基地を視察しまして、アメリカの海兵隊に  いろいろ案内をされ説明も受けました。  沖縄に関する特別行動委員会、SACOの普天間飛行場についての最終報告というものがございます。あの最終報告には、ここにありますけれども、こういうことがあります。キャンプーシュワブ沖に海上施設をつくろうということになっているんだけれども、この滑走路は短いと、あれは千二百メートルなんですよね。普天間飛行場は二千八百あるんですから。「海上施設の滑走路が短いため同施設では対応できない運用上の能力及び緊急事態対処計画の柔軟性」として、「(戦略空輸)」というのを書いてあるんです。緊急事態が起きると戦略空輸というのをやるわけですよ。  それで、この戦略空輸というのは何ですかということを私は、アメリカ海兵隊の普天間実施委員会のメンバーであるキング大佐、私どもを案内してくださったキング大佐に聞きました。そうしましたら、いざというときにはアメリカ本国から三百機ヘリコプターが来ると。必ず三百機来るかどうかは別として、三百機のヘリコプターを受け入れる整備能力、これが必要なんだということをキング大佐は私どもに言われました。  これは、いざ有事になりますと、今普天間にはヘリコプター六十機あるんですけれども、それは常時訓練の飛行機で、日本周辺有事等々、アメリカ有事の場合には普天間飛行場にも三百機新たに来るんですよ、ヘリコプターが。ヘリコプターだけじゃありません。これはスターズ・アンド・ストライプスあるいはロサンゼルス・タイムズが詳しく善きましたけれども、いざというときにはアメリカ本国から莫大な兵器、兵員、物資が日本に来るわけですよ。横田飛行場その他では足りないので、羽田から札幌から成田から、民間飛行場を貸せということが今既に始まっているわけね。  外務大臣、どうですか、三百機ヘリコプターが来る、その受け入れ能力。この施設については「現存の米軍施設及び区域内に設置する。」というふうに最終報告はなっていますけれども、三百機のヘリコプターを受け入れる施設はどこにつくられることになりますか。
  195. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) まず、我が国の平和が本当に脅かされ、我が国が侵略された場合、そういったケースを想定して議員今いろいろおっしゃっていましたけれども、そういうときにはいろいろな対応があるんだと思います。そのときというのは、その事態のいかんによっては、これは現在日本に駐留する米軍だけで対応し切れなくて、それはまた来援を求めるということもあると思います。  いずれにいたしましても、緊急事態にどういうふうに対処して、そのときにどうするかということは米軍の運用の問題でございますから、その運用の細部の一々についてこちらはお答えする立場でないということを申し上げます。  ただ、先ほど委員お話の中で戦略空輸ということを言われて、それがあたかもヘリコプター何百機というふうな御指摘ございましたけれども、私ども理解している戦略空輸というのは、緊急の事態が発生したときに大型の輸送機を利用して物資や人員を輸送する、そういうことを戦略空輸と言っておると、このように理解しております。
  196. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私は、普天間実施委員会のメンバーの、アメリカ海兵隊のキング大佐から直接聞いたんですから。外務大臣は知らないんですよ。困ったものですね。  それで、私が想定している事態のアメリカ有事というのは、日本は攻められていないの。日本周辺有事というのは、武力攻撃を日本は受けていないのに日本周辺で何か起きたことですよ。それはアメリカ有事なんですよ。アメリカが何か起こすんですよ、自分で。自分で起こして、有事と称して日本を巻き込むんですよ。そういう事態だということを申し上げておきます。  普天間問題でもう一つ大事なことは、ヘイズ准将、この方に質問しましたら、五年−七年で返還というふうに言われているけれども、海上施設をつくっても、台風も来る、塩分がすごくて塩分防止のために莫大な金がかかる、それを全部詰めなきゃいけないので七年では済まないかもしれぬと言いましたよ。  ですから、私は、沖縄問題を解決するためにもやっぱり海兵隊の撤去が必要だ。こういう危険なガイドライン見直しは直ちに中止することを要求いたしまして、質問を終わります。
  197. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 以上で上田耕一郎君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  198. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 次に、島袋宗康君の質疑を行います。島袋宗康君。
  199. 島袋宗康

    島袋宗康君 私は沖縄の基地問題を中心にして質問をしたいと思います。  御承知のとおり、現在沖縄では県の収用委員会による公開審理が進められております。前回の公開審理以降、大幅に委員の構成が変わった現在の収用委員会は、繰り返し公平、自主的な審理を目指すことを表明し、収用される側、収用を申請する防衛施設庁側の真ん中に位置し、県民の圧倒的な支持を得ています。つまり、沖縄収用委員会による審理は法にのっとり、みずからの財産権を制限され土地を収用される地主側とも信頼関係を築き上げ、平穏哀に手続を進めているわけでございます。  ところが、そうなると起業者である、つまり政府の、あるいは与党側の雑音がいろいろな面から議論として聞こえてきております。例えば、テレビ番組で諸冨防衛施設庁長官や山崎自民党政調会長は、契約に応じない反戦地主の中でいわゆる一坪反戦地主のことを、地主の中では圧倒的少数であり特定の危険思想を持った集団であるかのようなレッテルを張り、集中攻撃をしておられます。  総理は、この一坪反戦地主の存在に対してどのように評価をしているのか、お伺いいたします。
  200. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 今公開審理が粛々と行われておりまして、それはもうおっしゃるとおりでございます。そしてその中に、先生今おっしゃられました一坪反戦地主と言われる方々もいらっしゃいます。しかし、地主皆様方はやはりそれぞれの考え方で反対をしておられる方もいらっしゃるわけでございますし、また特に一坪地主の方といえども、そういった方々に共感されてそういうような運動に参加しておる方も多数おられるわけでございます。  ただ、言えますことは、全体の沖縄の皆さん方の数の中でいえば非常に少数である、それはもう事実でございます。特に一坪地主と言われる方は普天間と嘉手納の飛行場に四筆の土地に共有地を持っておられるということでございまして、これが圧倒的に数が多い。そのために収用委員会の皆さん方も非常に苦慮しておられる。そういうようなことも事実でございますので、そういう中で今しかし粛々と行われているという状況でございます。  だから、私どもとしましては、決して一坪反戦地主だというようなことでそれを軽視しているとかそういうことはございませんで、それぞれの歴史的な経過の中で御努力をしておられるのもわかりますけれども、それとまたこの米軍施設・区域を提供しなければならないという日本国としての義務との関係でどうやって調整するか、それで現在法律に基づいて収用委員会が行われているというふうに理解しております。08袋宗康君実は私も一坪反戦地主の一人であります。私は沖縄県民として、国民の一人としてこのことについて誇りを持っております。なぜなら、戦争や人殺しのために使用される基地として自分の土地を貸さないということは、とりもなおさず憲法十九条の保障する思想及び良心の自由の権利行使に当たり、第九条の平和主義にも合致するわけでございます。  沖縄には、契約地主の中では表に出てこられない事情を抱えた潜在的地主のいわゆる反戦地主もおります。数限りないほどおるわけでございます。これらの諸事情にも負けずに、長い聞自分の土地を軍用地としては貸さないという地主が今百名以上も現存しているわけでございます。約三千名もの一坪反戦地主がいることこそ私は驚きである、こういうふうに評価をしております。患法の精神から評価されるべきではないでしょうか。このことがはっきり確認されるならば、軍用地全体のわずか何%であるとか、各自の土地の持ち分が小さいこととか、地主が県外に居住することとか全然問題にならないと私は思います。  総理はこの場で、一坪反戦地主が他の地主同様立派な権利主張のできる地主であることをひとつぜひ確認をしていただきたい。総理の御答弁をお願いします。総理、お願いします。
  201. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 一坪反戦地主云々というような言葉で私がおしかりを受けるというのは、私は大変大変残念です。  その上で、本当に多くの、二万九千人ぐらいでしたね、二万九千の方々が既に協力の意を表明してくだすっております現在の状況の中で、残る地主方々にも本当に協力をしていただきたい、心から願っております。
  202. 島袋宗康

    島袋宗康君 私は、橋本総理が歴代の自民党総理の中で珍しく沖縄問題解決に非常に熱心であるということについては評価を申し上げております。しかし、残念ながら沖縄の基地問題に関しては立場が全然違います。その根本には、沖縄の心をどのようにとらえているかということの違いがあると思います。  私は沖縄の社会大衆党の委員長をしておりますけれども、我が沖縄社会大衆党が戦後の沖縄の政治や祖国復帰運動などの大衆運動を牽引してきたという自負と同時に、これまで沖縄の心を県民にかわって主張し続けた地域政党だという自負がございます。沖縄の心とは、つまり沖縄の良心であり、それはすなわち戦争を拒否する平和の思想であります。ほんの一握りと言われる反戦地主がこの平和の思想をしっかり体現しているわけでございます。このことがおわかりいただければ、けさの新聞で報道されているような継ぎはぎだらけの特措法改正による土地取り上げ、その方法や土地収用問題に対する政府の取り組みの姿勢もおのずから改善されるべきだと思って、私は総理にもう一度所見をお願いします。
  203. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 本当に何遍申し上げたらおわかりいただけるでしょう。私は東京生まれの人間であります。それは沖縄県の心がわからないと御出身のあなたが決めつけられるなら、わかっていないんでしょう。その上で、沖縄県の皆さんに少しでも幸せになっていただきたいと努力をしてきたつもりです。  同時に、日本という国が国際的に果たさなければならない役割があり、国に果たしていかなければならない責任がある問題、国益というものを私はともに考えなければなりません。そのような立場の中で、私は、二万九千を超える方々が既に同意をしてくだすっている、どうか残る方々も力をかしていただきたいものだと心から願うということを繰り返して申し上げます。  政府がと言われましたが、けさの新聞にどういう記事が出ていて、そのどの記事を指してあなたが私に政府の態度としておっしゃるのかわかりませんが、私にとってはその言われる記事がわかりませんので、申し上げようがありません。
  204. 島袋宗康

    島袋宗康君 「継続使用条文」というけさの朝日新聞でございます。  それで、そういうふうなことを踏まえて……
  205. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) それ、何か私が決心したと書いてあるんですか。
  206. 島袋宗康

    島袋宗康君 わかりません。  午前中の総理答弁でもその意思は明らかになっております。  私は、そういう民主主義の根幹、その土台を破壊するものであり、民主主義、法治主義に対する重大な挑戦であると断ぜざるを得ません。総理は特借法を改正されるお気持ちなのかどうか、もう一遥お尋ねいたします。
  207. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) たびたびこの委員会でも申し上げておりますとおり、今粛々とその審理が行われておりまして、三月二十七日に第三回目があるわけでございます。第三回目あるいは遅くても四月の初めぐらいまでに裁決をいただければ時間的にも間に合うということで、今それを非常に期待を込めて見詰めておるわけでございます。  ただ、御承知のとおり、法律というのはその後の手続がスムーズにいくことを普通なら想定してやっているわけでございますけれども、裁決が出まして通知がされてもその文書も要らないと拒否されたり、あるいはまた補償金を払おうとしても受け取らないというふうに言われますと、そのための手続が一カ月半ぐらいかかるものですから、そのために非常に苦慮しているのが現在の実情でございます。  したがいまして、現在いろいろなことが報道されておりますけれども、今の時点では少なくともこの次の、あるいはそれからしばらくしてでもいいからできるだけ早く裁決をいただければスムーズに手続が終了するという、そういう期待を込めて今見守っておる状況でございます。
  208. 島袋宗康

    島袋宗康君 ところで、橋本総理は来る三月二十五日に大田知事とお会いするというふうに報道されておりますけれども知事との話し合いはどういうふうな事柄についてお話し合いをするか、もしできましたらそれをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  209. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 前回大田知事にお目にかかりましたとき、三月の半ばごろにはお目にかかりたい、お互いにそう言い交わして別れました。そして、参議院の予算委員会の公聴会の日を十七日に設定されたことを伺いました後、ちょうどその日ならばお目にかかれると思い、あるいは土、日を利用して沖縄に私の方から伺ってもいいけれども、またそうすると警備だ何だと面倒くさいから、もしこちらへ来ていただけるなら土、日でも結構ですということを申し上げましたが、知事さんの御要望として三月二十五日にということでありますので、二十五日にお目にかかるつもりでございます。別に肩ひじ張って何と何はどんなことがあってもというようなテーマを用意してのことではございません。  しかし、私の立場として、現在の状況の中で沖縄県のさまざまな問題を解決していきます上で、県の御協力が得たいということはうそ偽りのないことでありまして、そうした思いをお伝えすることになることは間違いないと思います。
  210. 島袋宗康

    島袋宗康君 また総理は、四月二十五日ですか、米国のクリントン大統領と会談する予定だと承っております。その際には主としてどういう問題を話し合いをする予定であるのか、お聞かせいただきたい。  私は、その際に沖縄に駐留している海兵隊の削減、撤退を議題にして強力に交渉すべきだと考えておりますけれども総理の御所見をお伺いしたいと思います。
  211. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) まず第一に、四月の私の訪米自身がまだ現在調整中のものでありまして、決定を見たものではありません。  その上で、クリントン大統領との会談が実現をいたしますなら、私は沖縄県の抱える問題、さまざまな問題について引き続き真剣に取り組んでいく必要性というもの、こうしたテーマも含めまして日米安保体制のさまざまな課題についてもほかの問題とともに議論をするでありましょう。しかし、それだけがテーマになることは恐らくなく、国際情勢あるいは国連、いろんな問題が出ると思います。経済問題がどれぐらいのウエートを占めるか、これもわかりません。  ただ、議員から今海兵隊の撤退を求めろというお話でありましたが、私は、現時点においてその削減や撤退を求めることは考えておりませんという答弁を今までも議員にも申し上げたように思います。そして、他の方々にも同様にお答えを申し上げてまいりました。私は、今この問題を議論するタイミングではない、そう考えております。  同時に、将来ともに我々は本当に、先ほど日米安保共同宣言が大変違った意味での議論になりましたけれども、国際的な安全保障情勢において起こり得る変化というものに即対応し、両国の必要性を最もよく満たすような防衛政策、並びに日本における米軍の兵力構成を含む軍事体制というものについて緊密かつ積極的に協議を継続していく将来の論議までを封じているものではない。今私はこの時点でそれを考える意思はないということは申し上げておきたいと思います。
  212. 島袋宗康

    島袋宗康君 終わります。
  213. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 以上で島袋宗康君の質疑は終了いたしました。(拍手)  これにて外交危機管理医療福祉等に関する集中審議は終了いたしました。  次回は来る二十一日午前九時三十分から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十六分散会