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1997-03-18 第140回国会 参議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年三月十八日(火曜日)    午前九時一分開会     —————————————    委員の異動  三月十七日     辞任         補欠選任      高橋 令則君     林  寛子君      国井 正幸君     川橋 幸子君      橋本  敦君     上田耕一郎君      山田 俊昭君     西川  潔君  三月十八日     辞任         補欠選任      吉川 春子君     笠井  亮君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長        大河原太一郎君     理事                 片山虎之助君                 佐藤 静雄君                 斎藤 文夫君                 田沢 智治君                 木庭健太郎君                 都築  譲君                 横尾 和伸君                 山本 正和君                 有働 正治君     委 員                 阿部 正俊君                 石渡 清元君                 板垣  正君                 加藤 紀文君                 金田 勝年君                 久世 公堯君                 沓掛 哲男君                 関根 則之君                 竹山  裕君                 武見 敬三君                 谷川 秀善君                 成瀬 守重君                 野間  赳君                 真鍋 賢二君                 依田 智治君                 石田 美栄君                 市川 一朗君                 牛嶋  正君                 菅川 健二君                 田村 秀昭君                 高野 博師君                 長谷川道郎君                 浜四津敏子君                 林  寛子君                 大渕 絹子君                日下部禧代子君                 清水 澄子君                 照屋 寛徳君                 川橋 幸子君                 小島 慶三君                 本岡 昭次君                 藁科 滿治君                 上田耕一郎君                 笠井  亮君                 西川  潔君    国務大臣        内閣総理大臣   橋本龍太郎君        法 務 大 臣  松浦  功君        外 務 大 臣  池田 行彦君        大 蔵 大 臣  三塚  博君        文 部 大 臣  小杉  隆君        厚 生 大 臣  小泉純一郎君        通商産業大臣   佐藤 信二君        運 輸 大 臣  古賀  誠君        郵 政 大 臣  堀之内久男君        建 設 大 臣  亀井 静香君        自 治 大 臣  白川 勝彦君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 梶山 静六君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  武藤 嘉文君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (沖縄開発庁長        官)       稲垣 実男君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       麻生 太郎君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       近岡理一郎君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  伊藤 公介君        会計検査院長   疋田 周朗君    政府委員        内閣官房内閣内        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房内政審議室        長        田波 耕治君        内閣審議官    畠中誠二郎君        内閣官房内閣外        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房外政審議室        長        平林  博君        内閣法制局第一        部長       秋山  收君        地方分権推進委        員会事務局長   東田 親司君        行政改革会議事        務局次長     八木 俊道君        行政改革会議事        務局参事官    坂野 泰治君        警察庁生活安全        局長       泉  幸伸君        総務庁長官官房        審議官      西村 正紀君        総務庁人事局長  菊池 光興君        総務庁行政管理        局長       陶山  晧君        総務庁行政監察        局長       土屋  勲君        北海道開発庁総        務監理官     松川 隆志君        経済企画庁調整        局長       土志田征一君        経済企画庁物価        局長       河出 英治君        経済企画庁調査        局長       中名生 隆君        科学技術庁原子        力局長      加藤 康宏君        科学技術庁原子        力安全局長    池田  要君        環境庁水質保全        局長       渡辺 好明君        国土庁大都市圏        整備局長        兼国会等移転審        議会事務局次長  五十嵐健之君        法務省民事局長  濱崎 恭生君        外務省総合外交        政策局長     川島  裕君        外務省アジア局        長        加藤 良三君        外務省経済協力        局長       畠中  篤君        外務省条約局長  林   暘君        大蔵省主計局長  小村  武君        大蔵省主税局長  薄井 信明君        大蔵省理財局長  伏屋 和彦君        大蔵省銀行局長  山口 公生君        大蔵省国際金融        局長       榊原 英資君        国税庁次長    堀田 隆夫君        文部大臣官房長  佐藤 禎一君        文部大臣官房総        務審議官     富岡 賢治君        文部省初等中等        教育局長     辻村 哲夫君        文部省教育助成        局長       小林 敬治君        文部省高等教育        局長       雨宮  忠君        文部省体育局長  佐々木正峰君        厚生大臣官房総        務審議官     中西 明典君        厚生省薬務局長  丸山 晴男君        厚生省児童家庭        局長       横田 吉男君        厚生省保険局長  高木 俊明君        社会保険庁運営        部長       真野  章君        農林水産省経済        局長       熊澤 英昭君        中小企業庁小規        模企業部長    篠原  徹君        運輸大臣官房長  土井 勝二君        運輸省運輸政策        局長       相原  力君        運輸省海上交通        局長       岩田 貞男君        運輸省航空局長  黒野 匡彦君        郵政大臣官房長  天野 定功君        郵政大臣官房総        務審議官     高田 昭義君        郵政省貯金局長  品川 萬里君        労働省労政局長  松原 亘子君        建設大臣官房長  小野 邦久君        建設省道路局長  佐藤 信彦君        建設省住宅局長  小川 忠男君        自治大臣官房総        務審議官     嶋津  昭君        自治省行政局長  松本 英昭君        自治省行政局公        務員部長     芳山 達郎君        自治省行政局選        挙部長      牧之内隆久君        自治省税務局長  湊  和夫君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局総務局長   涌井 紀夫君    事務局側        常任委員会専門        員        宮本 武夫君    説明員        会計検査院事務        総局次長     平岡 哲也君        会計検査院事務        総局第一局長   深田 烝治君    参考人        動力炉核燃料        開発事業団理事        長        近藤 俊幸君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○平成九年度一般会計予算内閣提出、衆議院送  付) ○平成九年度特別会計予算内閣提出、衆議院送  付) ○平成九年度政府関係機関予算内閣提出、衆議  院送付)     —————————————
  2. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。まず、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。平成九年度総予算三案の審査のため、本日の委員会動力炉・核燃料開発事業団理事長近藤俊幸君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします、     —————————————
  4. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 平成九年度一般会計予算平成九年度特別会計予算平成九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。本日は、六つの改革及び景気等に関する集中審議を行います。質疑者はお手元の質疑通告表のとおりでございます。それでは、これより質疑を行います。斎藤文夫君。
  5. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 自由民主党斎藤文夫でございます。いよいよきょうから集中審議が始まるわけでありまして、私、そしてまた関連で板垣正委員がお立ちをいただくことになっております。ぜひひとつ、各般の問題について率直に御質問を申し上げますので、明快な御答弁をお願いいたすものでございます。さて、ペルー日本大使公邸、占拠をされてちょうど三カ月を迎えました。人質になられた御関係皆様方に心からお見舞いを申し上げますと同時に、ペルーフジモリ大統領、あるいはまたMRTAと交渉をされておられるシプリアニ大司教、その他御関係皆様方の大変な御努力に深甚なる敬意を表したいと思っております。一日も早く平和的に解決をしていただきたいと、日本国民心から念願をいたしておるところでございます。昨日、橋本総理特使として高村外務政務次官が急遽ペルーへ訪問をされました。そして、キューバドミニカ、それぞれの国を歴訪されまして、この問題について新たな展開を期待させていただいておるところでございます。高村総理特使としての役割、あるいはまた最近の情勢について、できる限りお知らせをちょうだいしたいと思います。
  6. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 高村外務政務次官に、昨日日本出発し、議員から今お述べになりましたように、ペルーキューバドミニカの三カ国を歴訪しながら、それぞれの首脳に対して私自身からの親書を持ち、その上で全力を挙げて事態解決のための努力を行うよう指示をし、現在現地に赴いております。ペルーフジモリ大統領に対しましては、今予備的対話が断続して行われている中で、さまざまな微妙な議論が続いておるわけでありますけれども、いっこれを本格的な対話に切りかえていくか、あるいは保証人委員会にオブザーバーとして寺田顧問を送り込んでいるわけでありますが、彼の判断により我々があと表の舞台で何をすべきか、また陰に回りながらどのような役回りを演ずるべきか、常時連絡はとりつつありますけれども・刻々変化する情勢の中で最新の判断を下してきてもらいたいと考えております。また、キューバドミニカニカ国に対しましては、それぞれの首脳フジモリ大統領に対し、国際社会からの要請があれば、場合によってはMRTAの身柄を引き受けるという状況の中で、その必要が生じた場合にはぜひ御協力をいただきたいということを趣旨とした親書を持たせる、日本国政府として礼をもってそうした事態に対応していただけるように御相談を申し上げる、そのような目的出発をいたさせました。詳細、どのような結果が生じますか、現時点では把握の限りではございません。そして、幸いに、今伝えられておりますところでは、人質になっておられる日本人の方々を含め、精神的にも肉体的にもそれなり健康状態を保っていただいておりますけれども、相当疲労が重なっておられる、これは当然のことであります。この状態が長く続いて人質方々の辛抱が続かなくなるといった事態も心配でございますし、またそれに籍口した形で混乱が大きくなる、そうした事態も我々は好みません。それだけに、あくまでも全力を挙げて話し合いの中から解決の糸口を見出してもらいたい、そして全員を無事に救い出し、迎えたい、そのような思いを持って高村君に出発をしてもらいました。
  7. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 重ねて御努力、御苦労に敬意を表します。ぜひぴとつ平和的な早い解決を心から望むものでございます。  さて、大臣の御予定を考えまして、ちょっと順番を変えて質問させていただきます。  夫婦別姓問題につきまして、衆議院に民主党が議員立法を提案されたと報道されておるところでございます。この夫婦別姓問題は、先週の当委員会におきまして総理を初め何人かの閣僚の方々の所感が述べられました。総理の、子供たちが兄弟で名字が違っておったらどう思うだろうかと、御所見を拝聴して、胸にずんとこたえるものがございました。私にも実は名古屋や寝屋川の御婦人の方からお手紙が三通来ております。この方々の御意見は、結婚の原点を別姓は否定する、あるいはまたきずなの薄い夫婦をつくるものだ、こういう立場から反対だという御意見でございます。  日本で庶民といいますか国民名字を許されたのは、御承知のように明治以降でございます。明治政府は公家や武士の時代別姓制度導入考えておったわけでございますが、一般国民夫婦同姓がいいということで、もうだれが決めるともなく夫婦同姓になって、そして明治二十三年の民法の制定のときに、実質的な状況を見て法律が後追いをした。こういう経過のあることを私どもは忘れてはならないと思うのでございます。  戦後は家の概念あるいは家長制度というものが廃止をされて夫婦中心家族制度というものが創設をされました。したがって、どう考えても同姓というのが自然の流れではないかと私は考えております。  今社会のいろんな事象を見ますと、家族きずな、親子の関係というものが極めて希薄になりまして、いろんな社会問題を起こしております。もしもここで夫婦別姓導入したとしたらこういう傾向にさらに拍車をかけることになりはしないでしょうか。  私ども自由民主党参議院では、いち早く本問題を取り上げまして、夫婦日本の伝統を守って同姓としよう、ただ希望する方があれば旧姓呼称を届け出て公的以外の場所で呼称使用を認めようという方向を打ち出したところでございます。個人の固有の権利とか自己主張のためにとか、男女共同参画社会をつくるに別姓でなければとか、こういう御意見をしばしば拝聴いたしますけれども、私は別次元の問題じゃないかな、こんな考えを持っておるところでございます。法務大臣の御見解をお聞きいたします。
  8. 松浦功

    国務大臣松浦功君) ただいま斎藤委員から御発言がございました参議院考え方、この問題についても十分私ども承知をいたしております。選択的な夫婦別姓の問題については、極めてこれが国民生活にかかわる重要な問題でございまして、民法という基本的な法律の存否に関する問題でもあるわけでございます。国民各層関係各方面の意見を十分聞いて、国民意見が非常に分裂をしているような状況でございますので、国民皆様の御理解を得ることができるような状況改正法案国会に提出するという気持ちでおります。なお、この問題については、現在、与野党各党において活発な論議が展開され、なおかつ各党間の協議も始められようとしているものと承知をいたしておりますので、これらの動きも十分に注目しながら適切に対処してまいりたいと思っております。現在の段階法務省考え方を述べることは、非常に正当な論議に対し水を差す結果になりはしないかということから、差し控えさせていただきたいと思っております。
  9. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 我々の思いをぜひ法務大臣、お察しいただきたいと思います。女性問題担当大臣であられます武藤総務庁長官、ひとつこの問題について明快なお考えをお聞かせいただきたい。
  10. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) この間も答弁をさせていただきましたけれども世論調査の結果を見ておりますと、ほとんど賛成、反対、余り変わらないような数字のようでございます。その辺を踏まえながら、今お話のありました従来の日本のよき家族制度あるいは日本結婚の実態、こういうものを考えれば、どうも別姓はおかしいんじゃないかという意見もありますし、また一方においてはこういう男女共同参画社会の中で女性女性で生きていくという時代になってきたんだからという意見もあります。私は女性担当大臣と今おっしゃっていただきました。ただ、官房長官と今仕事を分け合ってやっておりまして、私は渉外担当の方を大体中心でやっておるものでございますから、その中身の方はどちらかというと官房長官のお仕事ではないかと思うのでございます。いずれにいたしましても、女性担当大臣でありますので、その辺を踏まえて対処していかなきゃならぬと考えております。
  11. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 大変恐縮でございます。官房長官担当大臣としていかがでございましょうか。
  12. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 男女共同参画室を所管する官房長官でございます。そして、この本部長総理大臣でございますから、総理大臣の命のまにまに私は動いて努力をしたい、このように考えます。
  13. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 この問題はこれからいろいろ論議がされると思います。きょうはこの程度にさせていただくところでございます。さて、大臣の時間の都合で消費税問題に先に入らせていただきます。いよいよ本年の四月から消費税が二%アップされて五%時代を迎えます。八年前の導入時の混乱思い起こしますと、まさに現状は消費税国民生活の中に定着をしているな、そして今回の二%値上げについても、いろいろ確かに意見はございましても大方の国民皆様方が御認識、御理解いただけている、言うなら新しい段階に入ったという思いをひとしおさせていただいたところであります。先日の質疑で、消費税問題で竹下元総理逆進性や転嫁などにかかわる九つの懸念お話が出ました。当時、私はこの問題で、そういう懸念行政財政の出動で十分薄めることができる、こう質問をいたしましたが、そのときの大蔵大臣が今日の橋本総理大臣でいらっしゃいました。そのときの御答弁を調べてみますと、ちょうど導入後八カ月ごろの時期でございましたが、最大限解消に努め、その効果が既に出ている、こういう御発言をいただいたところであります。改めて消費税逆進性は避けられぬところでございますけれども行政財政が政策的に出動すれば、その問題になっているところを十分薄めることができる。しかも、税制はただ消費税だけを抜き出して論議をするのではなくて、消費税を水平的なレベルでとらえれば、累進所得税、こういうものは垂直的な公平、その当時いろいろ意見がありましたが、あるいは資産税等々によっていわゆる税の総合的な姿の中で調整されている、このように考えておるところでございますが、大蔵大臣、いかがでございましょうか。
  14. 三塚博

    国務大臣三塚博君) ただいま御紹介のように、橋本首相大蔵大臣当時の会議録に掲載されておるような基本的な考えは依然として継承されております。我が国所得税制累進課税であります。ある意味社会主義的な税制ではないかというひところの批判がありましたが、公正公平なという意味我が国所得税制累進制にございます。中堅サラリーマンに対する課税負担をぎりぎりいっぱいのところにとどめる諸改正ども進めておるわけであります。そういう中に消費税逆進性ということいかんと、こういうことであるわけでありますが、逆進性のあることは否定いたしません。しかしながら、全体の税制の中で本件は最小の逆進性にとどめる手だてが講ぜられたところでございます。特に、課税最低限を引き上げるなどの税制度、真に手を差し伸べるべき方々に対しまして激変緩和措置として臨時福祉特別給付金を支給するなど、細やかな配慮をいたしたところてございます
  15. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 少子・高齢時代が到来いたしまして、また同時に我が国の硬直化した財政状況、さらには地方分権時代を踏まえた地方財源の充実、こういうことを考えてまいりますと、今回の消費税アップは避けられないところだなと私は思っておるところでございます。  したがいまして、国民理解協力をよりいただくためにも、改めて今回の消費税二%アップ改正目的、また特別減税、二年間続けてこられましたが二兆円廃止、これが野党の中には相当厳しい増税だといって批判をされておるところでありますが、これらの趣旨について率直に国民にわかりやすくお示しをいただきたいと思います。
  16. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 内容は主税局長からも追加させますが、平成六年、二%アップを決めました折に、恒久減税とあわせまして二兆円の特別減税を行ったところであります。前段の御質疑にありましたとおり、アップに伴う逆進性、こういうものに対する緩和措置として行ってきたところでございまして、ようやく中堅サラリーマン層中心税負担が軽減をされまして、それなりの評価をいただいてきたところでございます。  御指摘のように、医療改正、年金問題、社会保障制度全般高齢化社会を踏まえて、全体のバランスのいい御負担の中で万全を期していかなければならぬという時期が到来をしたわけでございますから、この際、特別減税二兆は将来の世代に、次の世代と言った方がよろしいんでしょうか、二兆円の引き続きの御負担をかけると、こういうことになりまして、世代間の断絶がさらに深まっていくのではないだろうか。現世代として果たすべき役割は、ともに分担し合いながら取り進めることによりまして、高齢化社会に向けての年全体制を含め、また医療の問題がその質の向上を深めるためにも取り組んでいかなければならない財政構造改革であると、こういう点で御理解を賜りたいと思います。
  17. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 平成六年秋に国会におきましてお沫めいただきました税制改革趣旨についてのお尋ねでございました。活力ある福祉社会の実現を目指す観点から、社会の構成員が広く負担を分かち合い、かつ歳出面の諸措置の安定的な確保に資するよう、所得税、個人住民税の恒久減税、それから消費課税、これは消費税の税率アップと地方消費税の創設という形で一体的に実施することが決まりました。これは、急激な少子・高齢化が進む我が国の経済社会税制の面から活性化しようという中期的な構造改革であったと考えております。具体的には、働き盛りの中堅所得者層の負担累増感を軽減したいということで、三・五兆円規模の所得税、個人住民税の恒久減税平成七年から先行して実施しております。これにおおむね見合うもの、福祉の増額も含むわけでございますが、消費税率、地方消費税を含みまして二%アップということにさせていただいたわけでございます。なお、その際、通常であればこれを一挙動で実施するわけですが、当時の景気状況が非常に悪かったということで、税制改革の実施の仕方についての工夫もされました。それは、景気対策の観点から所得税、個人住民税の恒久減税消費税率の引き上げに先立って二年間前に実施する、消費税の方はこの四月から追っかけるという形をとったということでございます。あわせて、景気が大事だということで、平成七年と八年につきましては、特に八年は赤字公債を発行して二兆円規模の特別減税を上乗せした。これが今回の税制改革の姿でございます。
  18. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 ただいまもお話が出ましたが、今回の二%アップのうち一%は新たに創設された地方消費税分でございます。地方分権をにらんだ地方の自主財源の強化は当然の趨勢だ、このように思っておるところでございますが、今までの消費譲与税の配分基準と新たな地方消費税の清算配分との間に差があるのではないか、こういうように思うところでございますし、また一部のいわゆる大きな自治体はかえって配分の金額が減るのではないか、こういう話も聞いております。白川自治大臣に、地方消費税の配分の基本的な考え方、それぞれの地方自治体への影響についてお尋ねいたしたいと思います。
  19. 白川勝彦

    国務大臣(白川勝彦君) 斎藤委員のお尋ねのとおりでございまして、今回消費譲与税が廃止されました結果、率直に申し上げて今までと同じではないことが出ていることは承知でございます。ただ、地方の自主財源の確保という意味では、消費税相当の二五%を地方消費税としていただく、これは地方団体にとりましては自主財源をつくるという面では大変大きな改革だったと自治大臣としてもこの点については喜んでおりますし、地方公共団体もそう思っております。そういう大きな制度の導入でございますので、今までと比べて若干そごがあることはやむを得ませんが、それらについてはできるだけ今までと大差がないように、かつ消費税本来の姿ということでいろいろと工夫をしております。細かいことにつきましては事務当局の方から御説明をさせていただきたいと思います。
  20. 湊和夫

    政府委員(湊和夫君) 若干補足させていただきたいと思います。配分の基準について、従来の消費譲与税と新しく創設されます地方消費税の場合とで異なっているという点について御説明させていただきます。従前は、消費譲与税につきましては、人口と従業者、いわゆるこの大きな二つの指標で配分をされることとされておりましたけれども、今回創設されます地方消費税は地方の独立税として創設されるということでございますので、この地方消費税の性格にかんがみまして、消費課税、いわゆる消費に相当する額に着目して都道府県ごとに清算がされるという視点に立って清算の基準をいろいろ創意工夫を凝らしたところでございます。具体的に申しますと、各都道府県ごとの商業統計の小売年間販売額、サービス業基本統計のサービス業対個人事業収入額、おおむねこの二つの指標で全体の約四分の三を配分し得るのではないかと考えておりますが、残りの部分につきまして、人口、従業者数を加味して全体の都道府県間の清算を行うことといたしているところでございます。それから、都市によりまして、従前の税源配分と今回地方消費税が創設されましたことによります結果との間で差異が生じるのではないかということでございます。これは、税源を一部は所得課税から消費課税に振りかえたということでございます。ある意味では地方全体にとりましては普遍性のある安定的な形になったということでございます。これは言葉をかえて言いますと、従前は所得課税はいわば大都市の地域で非常に税源として確保されていた部分があるわけでございますが、それが普遍性の観点からやや地方にシフトするということに今回の税制改正全体としてなっておりますので、この点については御理解を賜りたいと存じます。
  21. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 大都市関係が今回の導入によって不利になる。白川大臣がお述べになりましたように、なるべくひとついろいろな角度から緩和をしていただく対策をお願いいたすところでございます。なお、昨年の秋以降、日本の景気を支えてきましたのは住宅そしてまた自動車の需要、これらが堅調でございまして、景気が上向きになる、そういう判断が出てきた原因になっておるところでございます。これは、特に消費税の値上げをにらんで駆け込み需要というような思いもなくはございませんけれども、八年前の導入時と比較をしてみれば、あの当時はもうそれぞれ家庭の主婦がスーパーやデパートへ駆け込んで、トイレットペーパー買い占めの二の舞をおやりになるような状況でございましたから、それとこれとを比べますと、今日は本当に国民が賢明で冷静に御対応いただいていると安心をさせていただいておるところでございます。ただ、やっぱり二%上がるわけでありますから、今後の個人消費や景気回復にどういう影響が出るのか、足を引っ張るようなことはないのかな、あるいは仮需の後でありますから今後の個人消費がぐっと落ち込むようなことがないのかなというような思いがいたすわけであります。  率直に言って、先ほど恒久減税とあわせて前倒しの特別減税、年二兆円を廃止した、私どもはよくわかっておるところでありますが、国民は残念ながら一部の宣伝に乗って、消費税で五兆円、そしてさらに特別減税廃止によって二兆円上乗せになる、重税だ、こういう置きかえ方でございます。それはもう全く違う話だと私は思っておりますけれども、しかし国民の可処分所得の総合計の中から七兆円が確かに税として移るわけでありますからそれなりの影響というものが出るんじゃないかな、こう思っておりますけれども、いかがごらんになっておりますでしょうか。
  22. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) 住宅着工のお話が最初にございました。  御存じのように、住宅着工は大体年間百四十万から百四十五万戸ぐらいが適当とよく言われているところであります。平成七年度は平均で百四十七万戸ぐらいだったと思いますが、平成八年度、今御指摘のありましたように、特に十月以降非常な勢いでこの数字が伸びておりますのは事実であります。特に十月がえらく伸びて百八十九万戸ぐらい行きましたけれども、その後百六十九万戸、百六十万戸台がずっと続いて、一月に入りましても百五十七万戸と高水準を維持いたしております。  駆け込み需要が絶対ないと言うつもりはございませんけれども、一番大きいのは、住宅金融公庫の貸出金利というものが、平成二年の十月のときには七・四%ございました分が、平成八年、昨年の十月に、今出た一番大きく上がったとき、今でも同じでありますけれども、それが約半分以下の三二%に下がっておりますので、金利が倍以上違うというのは非常に大きなところでありまして、この金利の差が非常に大きな影響を与えておると思っております。それから、自動車についての御指摘もあっておりましたけれども、自動車も確かに御指摘のありましたとおり、昨年、平成八年の初めでいきますと四−六で一・七%、七−九で五・二%というような伸びだったんですが、十月以降一挙に二けたになりまして、一二%、一一%、一五%、一月に入りましても一三%という台がずっと続いております。これも同じく駆け込み需要が全くないなどと言うつもりはございませんけれども、基本的には各社間で幾つか差が出てきているように思います。その点でいきますと、販売努力というかモデルチェンジやら何やらで非常に大きな刺激が出たところと、それから買い控えがあの時期続いておりましたものが、いよいよ耐用年数も来たせいもございまして、買いかえが出てきているんだというところが大きなものであって、来年度になって、突如これが四月に入って一挙にがくんと激減するというふうに感じてはおりません。それから、今個人消費等いろいろございましたけれども、個人消費につきましてはいろいろ御意見が出てくるところだと思います。収入の点につきましては、一%ではありますけれども、毎月一%ずつぐらい雇用賃金が伸びてきております。それから、民間設備投資というのが特に顕著に伸びてきております。やっぱり先行きがよいと思わなきゃ設備投資はいたしませんので、生産が増加する傾向にあるというのを見込まなければ設備投資をするはずはありません。そういった意味でも、増加傾向が続いております等々を見ますと、基本的には政府が来年度見通しております一・九%という経済成長率につきましては達成できるものと思っております。
  23. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 ぜひ景気回復を期待いたすものでございます。さて、動燃の近藤理事長、おいででございますね。動燃東海事業所の再処理施設の火災、爆発事故についてお尋ねをいたします。最初に報道されたときは軽微な事故かなと思っておりましたところが、その後、単純な計算ミスでしたよというようなことの繰り返しで、結局相当大きな重大な事故であったというようなことが判明をいたしたところであります。「もんじゅ」のときといい、今回といい、原子力発電所における事故や故障はいつも同じパターンで、だんだん後になれば大きくなっていく、こういうところに国民は非常な不安と怒りそしていら立ちを持っておるのでございます。しかも、「もんじゅ」のとき、一年三カ月前でしたね、その教訓が全く生かされていない状況というものを知れば知るほど、私どもも一体動燃は何やつているんだと、こういう思いになるところであります。先日、近岡科学技術庁長官、そして地元であられる梶山官房長官佐藤通産大臣、お三方が現地を早急に視察されました。近岡長官、御感想をお聞かせいただきたいと思います。
  24. 近岡理一郎

    国務大臣近岡理一郎君) お答えさせていただきたいと思います。今回の動燃アスファルト固化処理施設の火災、爆発事故に関しましては、微量とはいえ屋外に放射性物質が放出されるという事態となりまして、地元住民を初め国民皆様に多大な御心配をおかけいたしました。また、事故後の対応に不十分な点があったこともまことに遺憾でございます。そのため、先日十五日に、今もおっしゃられましたように、私自身、梶山官房長官及び佐藤通産大臣とともに現地を訪問いたしまして、現場を視察するとともに、地元関係者とお会いいたしまして、直接状況の把握を行ってまいりました。これらを通じまして、地元の方々の御心配を肌で感じ取り、今回の事故の重さを改めて厳しく受けとめるとともに、徹底的な原因究明及び地元の不安を解消することの必要性を強く認識してまいりました。今後、科学技術庁としては、徹底した原因究明と再発防止対策を講ずるために本事故に関する調査委員会を設置したところでございます。この委員会につきましては、会合を公開で開催することにより、調査の状況を最大限国民方々に公開することといたしております。今後、迅速かつ適切な情報伝達体制の確立等危機管理体制について徹底的にチェックをいたしまして、改めるところは改めることにより、できる限り早期に皆様に安心していただける状況をつくり出すために全力を挙げて今後とも努力してまいりたいと、このように思います。
  25. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 動燃の近藤理事長にお尋ねをいたしたいと思います。最初、被曝した人は十人と発表されました。それが、単純な計算ミスが繰り返されて、結局は三十七人。いかに微量な被曝とはいいながらも、まことにずさんな発表であったと、このように思っております。それらの経緯と、あわせて被曝をされた方々健康状態等々はどうなっておられるのか、まずお尋ねをいたします。
  26. 近藤俊幸

    参考人近藤俊幸君) お答えいたします。まことに発表の不手際がございまして、本来ならば全体の対象者は何名ということを先に申し上げて、それからその中から何名被曝者が出たという報道をすべきところ、毎日やっていた数を挙げてその中で何名と、こういう発表をいたしましたので、非常に御不安を与えたことを深く反省しております。といいますのも、この全体の数が初めになかなか、そこに働いていた人それから周囲にいた人の確認が、特に周囲にいた人の確認がちょっとできなかった点もございまして、そういう結果になりまして、まことに申しわけなく思います。
  27. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 健康はいいですね。健康状態は大丈夫ですか。
  28. 近藤俊幸

    参考人近藤俊幸君) はい。この点は、摂取量は最大値で法令に定める基準値の約二千百分の一以下でございますので、健康には差し支えございません。
  29. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 今回の動燃の事故、いろいろ批判をされておりますが、危機管理体制がやつはり不備だな、「もんじゅ」の経験が生かされていないなというのがほとんど大部分のお声であります。  大体、事故状況の把握がおくれる、初期消火がおくれる、隣の建物に上司の指示を仰ぎに行く、こんなようなことをやっておったら、それは火災が広がるのは当たり前。また同時に、関係方面への報告もおくれる。もちろん混乱を起こしたということになるわけでございましょうけれども、いかにも体制の不備を指摘さぜるを得ません。しかも、火災を想定した安全管理というものが行われていなかった、こういうふうに聞いておりますけれども理事長、いかがですか。  あわせて、時間がないからまとめてお聞きいたします。  防火施設はスプリンクラーと炭酸ガスの施設があった。ところが、自動ではなくてすべて手動だった。時代おくれも甚だしいじゃないですか。こんなものは当然オートマチックにしておくべきである。しかも、アスファルトの火災ということになれば、水をかけてどの程度の消火能力があるか、本当に大科学者がそろっている施設の中でなぜ炭酸ガスを使わなかったのか。こんなことを考えますと、中学生の子供の方が皆さんよりはよっぽどそういう問題についての気は回ると思いますが、いかがでしょうか。
  30. 近藤俊幸

    参考人近藤俊幸君) 後半の問題からお答えいたします。  設備は、御指摘のとおり、炭酸ガスの噴射と水噴霧の両方ございます。両方とも手動でございます。  それから、火災が発生しまして、その担当者は上司に連絡、処置を諮っております。これは今のマニュアルどおりでございますが、これは両方の設備があるので、どちらを適用するかという問題がございますので、諮ることになっていたと思います。しかし、やはりより一般常識的に考えますと、火が発生すれば発見者が直ちに消火に当たるというのは当然だと思います。こういった点、マニュアルは見直していきたいと思いますが、今回は熱を冷やすということで水の方を選択して水噴霧をやったということでございます。
  31. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 水噴霧をやって、しかも消火の確認が不十分でその後爆発をした。大科学者のそろっている施設にしてはまことに私はお粗末だなと。アスファルトは二百六十度で可燃しますよね。そういう可燃性のアスファルトを使って固化処理をなさっておられるわけでありますが、これはかねてから火災の危険があるなと、こう皆さんは承知していたはずなんです。これは、かつてベルギーで同じ事故を起こしたことを皆さんは資料で十分入手しておったにもかかわらず、その安全対策がなされていなかったということ、これは結局、まあまあ大丈夫だよという過信があるからこそこういうようなきめ細かな安全対策がなおざりにされたんじゃないんですか。あるいは、アスファルトよりも、今日、不燃性のセメントによるところの処理が行われている工場もあるわけですから、そういうものにかえていくとか、努力が足りなかったんじゃないんですか。大体、きょうの朝の新聞を見たって、事故のあった翌日、おうちの社員たちが業者とゴルフに行っている。これは大変けしからぬ。そういうことを国民の名において指摘をしておきたいと思います。理事長、なぜこういうことを指摘するかといえば、二十一世紀の日本の、いや世界のエネルギーというものを考えたら、より原子力に期待をするところ、依存をするところ大なんです。いかに人命にさしたる影響がないといいながら、こういう事故を起こす。その処理の不始末、そういうことが付近住民や国民全体に不安やいら立ちを与えて、原子力発電反対だ、原子力発電は危険だと、こういう思いを抱かせる。そういうことにつながるから、特に責任者の皆さんが細心の注意を払って、安全の上にも安全のマニュアルをきちんと整備し、ただつくっただけじ冬なくて.それかたちどころに実行できるような体制というものを日々訓練の中でつくり上げておかなきゃいけませんよ。ゴルフなんかやっている暇ないでしょう。いかがでしょうか。
  32. 近藤俊幸

    参考人近藤俊幸君) 本日の朝刊の職員ゴルフの件でございますが、まことに申しわけなく思っております。事実関係を確認の上、厳格に対処する所存でございます。それから、アスファルト固化処理施設は時代にそぐわないじゃないかという御指摘でございますが、実はこれは御承知のように海洋投棄を前提にしてアスファルトの利点を生かして開発されたものでございます。当社の場合、十二年間で三万本のアスファルト固化体をつくってまいりました。しかし、海洋投棄も禁止されましたので、御指摘のとおり、新しい方法に移行するということで、そっちの計画を進め、設計もほぼでき上がる、そういう段階に来ていたのが事実でございます。以上でございます。
  33. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 理事長、厳しく指摘をしまして、今後、本当に安全対策には十分な努力を重ねていただきたいと思います。この問題について、科学技術庁に事務的にお尋ねをいたします。今回の事故の国際事故評価レベルをどのくらいにお考えになっているのか、お聞かせください。
  34. 池田要

    政府委員池田要君) ただいま原子力施設に事故が起きました場合の国際評価についてのお尋ねがございました。このように、原子力施設におきまして事故、故障等が起こりましたときには、その度合いにつきまして一般国民にわかりやすい形で迅速に提供する、それから国際間で情報の交換を行いますために国際評価尺度というものが設けられてございます。今回の事故が発生しましたときにも、この評価尺度に倣いますと、迅速に事業者が暫定評価を行うということになってございます。しかしながら、今回の事故につきましては、現在のところ事故の正確な状況把握がまだ行われているところでございまして、レベルの確定がまだできない状況にあると承知しております。科学技術庁といたしましても、できるだけ早くこの事業者による評価が行われるように促したいと考えております。
  35. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 それでは、次に進めさせていただきます。いよいよ改革時代を迎えました。二十一世紀を展望いたしますと高齢・少子、しかもあらゆる面で厳しい環境が私たちの前途に待ち構えておるところでございます。財政的にも、最近大蔵省の国民に対するPRを見ましても、国の借金、公債は二百五十四兆円、とにかく一万円札を積んでいくと富士山の六百七十三倍と。もう一体どのぐらいになるのか予想もつかないくらいでありますが、地方の百四十七兆と合わせますとまさにGDPに匹敵する四百兆を超す中央、地方の赤字があるわけでございます。また、人口の逆ピラミッド型というのは、言うならばその社会活力というものがどんどん低下をしていく。そして、社会福祉費は増大し、それを担う後世代負担というものがどんどん上がっていく。しかも、国内においては国際化によっての平準化の見直しがどんどん行われる。経済的にも大混乱を起こす事態がやってくるわけであります。一々挙げていたら切りがありませんけれども、そういうような二十一世紀を想定すれば、橋本総理が御提唱された六つの改革というものは何としても成功させなければなりません。この改革の成否が二十一世紀の日本を決める、このように申し上げても過言ではないと思っておるところでありまして、その意味では国民も趨勢を期待を持って見ておられると思っております。私は、ただ今回の改革には基本的に理念が必要だと。何でも、改革改革というかけ声だけではやっぱりならないと思っております。明治維新のときに、文明開化の音がすると詠み込まれた歌がありますが、今私たちの頭の中には、改革改革、緩和緩和、こんなような思いがめぐっておるわけであります。ここでひとつぐっと落ちついて、改革の方向づけをどうしていくのか、二十一世紀の日本のファンダメンタルズ、世界のファンダメンタルズをしっかりと踏まえて方向性というものをまず決めていかなきゃいけません。  それには、改革に対する尺度といいますか基準というものを政治理念、政治哲学の中でお考えをいただかなければならないのではないかと思っておるところでございます。  私は、この改革が、ただ一つだけが先行して成功したということでは真の二十一世紀の日本は開けない。行政財政、金融、経済、社会保障、あるいはそれを包括するところの教育改革、こういうものが機能的に、総合的に一体となって、しかもお互いが補完をし合いながらステップ・バイ・ステップで進んでいく、そういう改革でなければ大きな果実は得られないと思っております。  いずれにしても強力なリーダーシップが必要でございまして、橋本総理の政治生命をかけても、火だるまになってもと、こういうお気持ちは私どもには本当に崇高な姿に見えるわけであります。ぜひひとつ、総理の燃える理念を率直にお聞かせいただきたい。
  36. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 大変過大なお話をいただきまして、戸惑います。  ただ、私は、将来この国を背負ってもらう若い方々、それぞれの方々が本当に自分の将来というものに夢を描きながらその夢に向かって挑戦することができる、そしてチャレンジをするチャンスが与えられた上に成功するチャンスもある、そんな能力を発揮できる社会というものをこの国に定着していきたいと思うんです。  そして、そう考えるとき、例えばことしの場合でも、日経連は会社訪問ストップ、青田買いよしと言ったということで、来年卒業する諸君は今からもう非常に就職に対して混乱をしています。ということは、逆に言えば、ことし一年、学生たちが本当に落ちついて勉強する雰囲気ではなくなったと、そう言えるのかもしれません。しかし、そんなことで本当にいいんでしょうか。確かに、第二次世界大戦が終わってこの五十年余り、日本は、本当に豊かな国民生活を手に入れる、こうした目標のもとに、行政のシステムもそうです、民間活動に対する規制もそうでしたし、社会保障や福祉の歩みを振り返りましても、またできるだけ均質性、平等性をとうとんだ教育の仕組みにしましても、そして国と地方公共団体の間、本院でもずっと議論をされてまいりましたように、こうした目標に向けた形でつくられ、そしてそれがこの五十年余りの間は本当に私は有効に機能してきたと思うんです。だから、逆にそのシステムは日本社会に定着してしまった。ところが、今になりますと、今度はもう世界が一体化して、人は自由に移動しますし、企業も自由に移動します。情報も資金も皆自由に動き回るわけです。そうなりますと、今までこの日本という社会を築いてきた仕組みは逆に足かせになります。そして、むしろ社会の流れ、世界的な潮流というものに対して、我が国の国内の産業を保護する、あるいは均質性、平等性を目指した教育システムが全部足を引っ張ることになります。しかし、これではどうにもなりません。そして、社会に根をおろしたシステムですから、どの一つをいじっても大きな混乱がありますし、ほかの仕組みにも影響を与えます。それぞれが密接に関連し合っています。私は、本当に一体的にこれを改革しなければと、そう言い続けてまいりました。言いかえれば、部分だけどこかをいじればこれですべてが終わるというような、そんな特効薬のようなものはありません。例えば、金融システム改革に関連いたしまして、今外為法の改正国会に御審議をお願いいたしております。今我が国の貯蓄千二百兆円、国民の本当に営々と築いてこられた資産です。ところが、外為法の改正だけで金融システム改革が終わってしまった事態を想定してください。この国民が集められたお金というもの、これは国民の安全な資産運用の場に日本の金融市場がなるんじゃない、むしろ、外国で資金を欲しい人あるいは外国で必要とする資金にむざむざそれが使われてしまう、そんな状態をつくり出すわけにはいきません。これだけは本当に一体に進めていかなきゃならないんです。ですから、実は財政構造改革会議を設けまして、今国会中に財政再建の具体的な方向、方策を取りまとめて、それを平成十年度予算のシーリングに反映させたい、そう申してまいりました。本日も、この参議院予算委員会集中審議が終わりましたその直後から財政構造改革会議を開かせていただきます。また、医療保険改革や介護保険制度、これはそれぞれ我が国社会保障、社会福祉の仕組みを変えていくものですし、平成十一年には年金の再計算が参ります。これは、あるべき将来の国民負担のできる仕組みを築き上げる作業であると同時に、企業の国際的な移り変わり、どこへでも移動できる企業に対して少しでも日本に魅力を持たせるようなものをつくれるかどうかということにもなります。「経済構造の変革と創造のためのプログラム」も策定をいたしましたが、この春には政府の行動計画を策定いたしますし、二〇〇一年までに物流、エネルギー、さらに情報通信について国際的に遜色のないシステムというもの、コストというものをつくり上げていかなきゃなりません。こうしてまいりますと、確かに課題が山積をいたしております。どこまで私の力でやっていけるかわかりませんけれども、だれがやろうがこの国はそういう方向をたどっていかなきゃなりません。そして、一月の末には教育改革プログラムを出させていただきました。しかし、これは教育というその本質的なものがありますから、このプログラムに載っていないような部分でも、それぞれのお子さん方、さらにそのお子さんを育てる親御さん方、いろんな格好で協力をしていただかなきゃなりません。行政改革会議におきましても、十一月の末までには中央省庁の再編計画をまとめ上げて、二〇〇一年の一月一日、まさに新しい世紀が参りましたときにその作業が始められる状況をつくらなければなりません。一つ一つ大事なことばかりでありますが、地道にそのレールを敷いていきたい、心からそう考えております。
  37. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 ありがとうございました。私は、先ほど、二十一世紀の日本をちょっと予測しても、ファンダメンタルズとして考えると極めてネガティブなものが次から次へと浮かんできます。しかしながら、そのネガティブなものをポジティブに変えていく、それが私は総理が今体をかけてお取り組みになっておられる改革の道だと思っておるところであります。私なりに夢と希望を持って二十一世紀の日本というものをちょっと考えてみました。確かに世界一の高齢・少子の国ではございますけれども、年寄りもそれから働く人たちもあるいは小さなお子さんも、生き生きとして活力にあふれてお互いが助け合って歩んでいける、生活をエンジョイしていける、そんな二十一世紀をつくっていかなきゃいけない。理想と現実はほど遠いわけでありますけれども、そういうものを一つのグランドデザインとして、それでは今からどうやって諸改革を進めていくかというようなことを考えていかなきゃいけないなと思っております。いずれにしても、この改革を実現し成功させるには、もちろん政治家もみずから襟を正し、改革しなければならないところは思い切って改革する。官僚も今自信を失っておりますけれども、今日まで蓄積されたノウハウの上に、二十一世紀の日本の建設に全力を尽くしていく。国民もこれまた評論家ではなくて、本当に二十一世紀のためにお互いが汗していこうよと、こういうお考えを持っていただかなきゃならないと思います。  総理どうでしょうか。今こそテレビを通じて国民に直接今の日本の現状をお訴えになられて、特に財政事情等の姿をよく国民に知っていただいて、これからの改革を一緒に努力していこうと、こういうことをお呼びかけになられたらいかがですか。私はぜひ総理にそういう機会をつくっていただきたいと期待をいたしておりますが、いかがでございますか。
  38. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 先日、本委員会でお答えを申し上げましたその話を振り返りながら、もう一度申し上げてみたいと思うんですが、そのときに私が冒頭申し上げましたのは、平成九年度予算というものをまず見ていただけないでしょうかということでありました。  そうすると、その中に国債費という項目があります。そして、そこに十六兆八千億円というお金が計上されているわけですが、その国債費というのは、今の子供さん方、お孫さん方、そうした時代の方たちからいわば本当に借金をしながら現在の私ども世代仕事をさせていただいている。その国の借金、それが国債ですけれども、その元利払い、それが十六兆八千億円という数字なんです。  国の税収、今五十七兆八千億円という税金を皆さんからいただいているわけですが、この財政状況の中で、今既に国民の皆さんからちょうだいをしている税金のうち約三割に近いものがその借金の元利払いになってしまっています。だけれども、じゃ、そういう状態を我々はいつまで続けていけるんでしょうか。  私どもはことし、少なくともことしの予算、その国債費というものを除いた部分、その歳出というものを皆さんからちょうだいできる税金の範囲でとめようということで仕事をしました。その仕事それなりにうまくいきましたが、それでも実はあと十六兆七千億円借金をふやさざるを得ませんでした。  しかし、もし今このままの仕組みを全く変えないで将来ずっと続けていったといたします。経済審議会という審議会が、二〇二五年には、皆さんが払っていただける税金、それは国税、地方税合わせてです、そしてまた社会保険の保険料があります、こういうものを全部足すと、皆さんの収入の半分をいただいてもどうにもならない、この財政赤字という、今国債のお話を申し上げましたような借金、これを加えていきますと、皆さんの収入の七割以上をいただかなければつじつまが合わないという時代になってしまう、そんな数字も出ています。しかし、そんなことできるでしょうか。今我々が少しでも楽をするために、その子供の時代、孫の時代、そういったって二〇二五年、そんな先のことではありません、その時代の人々に収入の七割以上を負担してくれ、我々の時代はその分で楽をさせてもらうから、そんなこと言えるかと。言えるわけないんです。そして、こういうことをしてはいけない。次の世代にバトンを渡すときに少しでも借金を減らした形でバトンを渡さなきゃならない。そういうことを考えていきますと、我々としてはこの時期を何としてもしのいでいかなきゃなりません。私が今財政構造改革ということを申し上げております。そして今私ども役割というものは、どうすればこれ以上借金をふやさず次の世代にバトンを渡せるような状態予算をつくっていけるかです。私がそう申し上げると、過去の財政状況の責任はというようなお話にすぐなるんですが、そのときそのとき一生懸命に担当した人はやってきたと私は思うんです。それでも結果としてこういう状況になりました。もうこれはストップをしなければなりません。私は、いろいろな御批判を今もいただいていますけれども平成九年度の予算編成、大蔵大臣にも大変な御苦労をかけましたが、少なくとも皆さんからいただける税金の範囲で何とか国債費を除いたほかの仕事の分を賄う、そんな予算をスタートさせました。ここから、では来年に向けてどれだけの厳しい予算をつくっていけるか、また国民に耐えていただけるか、きょうこの予算委員会が終わりました途端にその議論をまた始めるわけでありますが、実情は率直に国民にも訴えていきたい、そのように思います。
  39. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 ただいま総理からも真情を吐露していただきましたし、また予算編成についての御苦労も今語られたところであります。そこで、いよいよ平成十年度の予算、これから八月の概算要求等を通じておつくりになられるわけでありますが、橋本内閣としての本格的予算の編成を意味すると思っております。それだけに、従来のシーリング方式、マイナスシーリングとかゼロシーリングとか、それなりに三十有余年にわたる方式として成果を上げてきたところでありますけれども、しかし結局は、川の流れをどう細くするかあるいは太くするかとか、そういうようなものにしかならないわけでありまして、やっぱり抜本的には政策順位によって重点的なインセンティブをつけていく、そういう予算を私たちは期待をいたしております。入りをはかり出を制するは財政再建の基本的理念であります。聖域なき財政支出について御努力もいただけると聞いておるところでありますが、言うならば新たな査定システムの導入、しかも省庁別ではなくて、総理大蔵大臣、いわば内閣の主導によるところの重要政策分野別の予算として組み立てをされていくべきではないか。スクラップ・アンド・ビルドを徹底し、予算編成にキャップ上限方式などの取り入れをお図りいただく、そういうようなことが新しい予算編成の中できっと打ち出されるんだろうなと期待をいたしておるところであります。秋には財政再建法が検討されているとも承っておるところであります。ぜひひとつ赤字国債を出さないで、めり張りのきいた、そして国民も一緒に努力をしていくよと期待できる平成十年度の予算編成をお願いいたしたいと思うところでございます。もしも御所見があれば、今も御答弁をいただいたいところでありますが、一言でも御見解をお聞かせいただきたい。
  40. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 昨年の十二月に、内閣としては、この抱えております危機的な財政状況の中で、西暦二〇〇五年度までのできるだけ早い時期に国及び地方の財政赤字対GDPの比率を三%以下とする、そうした財政健全化目標というものを閣議決定いたしました。そして、それに向かってことしの予算もスタートを切ったわけであります。そして、同時に、厚生省の諸君にちょっと数字を聞いてみますと、今高齢化が進展する中で毎年新しく年金の受給権を発生される方が百万人ぐらいずつおられると言います。そうしますと、何ら手を加えないままで新しく年金を受け取られる方々が百万人ふえるとすれば、それだけでも一兆円ぐらいの自然増が出てきます。しかし、あなたは年をとるのを一年待ってくださいなんということは言えるわけないんですから、全体を抑え込みながらその方々の年金もきちんとお支払いができるようにしていこうとすれば、当然ながら本当に、どこかの場所は手を触れないよ、今までどおりだよ、そんな予算編成をするわけにいきません。各国、その意味では大変同じような課題を抱えて苦労しておられ、いろいろなやり方をとっておられます。私たちも、少なくとも五月の半ばぐらいには財政構造改革会議の中に具体的な作業をしていただくグループを指名いたしまして、そこの作業を大体五月の半ば過ぎぐらいには終わっていただき、六月、適当な時期、すなわち平成十年度の概算要求の作業に入る前には、ことしまでの概算要求のルールとはおのずから異なった、それだけの厳しさのあるルールというものを確定して、そこからスタートを切っていきたい、今そのような思いでおります。
  41. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 小泉厚生大臣にお尋ねをいたします。ただいま総理からもお話がありましたが、一年間で年金受給者は百万人近くふえる、いよいよ紀元二〇二五年には全人口の四分の一、二〇五〇年には三分の一、大変な高齢社会が到来をするわけであります。  こういうようなことでございますから社会保障費というものは年々増加をしていくわけであります。ところが、それを支える次世代が少子化によってまことに支え切れない現象を見せておるところでございます。したがって、社会保障の構造改革なしには健康保険も年金も対応できない時代が必ずやってくると思います。その際、負担と受給のバランスをどう求めて福祉国家日本を築いていかれるのか、言うならこれからの最大の問題となることだと思っております。  紀元二〇二五年の国民の租税と社会保障の負担率は五一%に達すると大蔵省は試算をしておられます。これからも社会保障における負担と受益のバランスなくしては二十一世紀の社会福祉は成り立たない、このように考えております。ぜひ御所見をお聞かせいただきたい。
  42. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) これからの社会において給付と負担両面を考えないとやっていけない、御指摘のとおりであります。  いろんなサービス、給付を受けたい、その受ける人はより多くのものを求めます。しかし、その給付を支える人、だれが負担するのか、まさに給付と負担関係を抜きに社会保障もこれから語れない時代になったと思います。特に、年金、医療、介護、これからの社会保障を考えると大変重要な問題であります。  年金にしても医療にしても介護にしても、高齢者がふえていく状況考えますと、給付を受ける側の人はますますふえていきます。年金一つとってもそうです。年金を受ける人がふえるし、なおかつ長生きの時代ですから年金を受ける期間も長くなる。医療一つとってみても、今若い人よりも高齢者の医療費は倍以上かかっております。医療もふえている。今介護保険を導入しています。この介護の問題を考えるとこれはますますふえていきます。となると、だれがよいサービスを受けるために支えるか。総理が今お話ししましたように、財政状況考えますと、今まで我々は子や孫にツケを残してはいかぬ、赤字国債を発行しちゃいかぬ、後のことを考えてといいますけれども、いつの間にか、子や孫どころじゃない、現在の納税者が借金の利払いに苦しんでいる。十六兆八千億円のお金が何の新規の事業にも使われないで、今まで発行した借金の利払いに回っている、償還に回っているということを考えますと、孫子の代どころじゃない、今納税者が一番国債の利払いに苦しんでいる状況であります。そういうことを考えますと、社会保障、年金、医療、介護、いずれも構造的な改革をせずにはますます負担が多くなってしまう。経済成長がないと社会保障の充実はできません。社会保障だけを考えると給付が多ければ多いほどいいんです。ところが、だれが支えるか。税金を多くする、保険料を多くするとなると、肝心な経済成長を支えてきた国民の勤労意欲がなくなってきます。金の卵、これは経済成長です。税負担を軽くしていく、社会保険料負担を軽くしていく、それによって経済成長が生まれる。この経済成長の成果を社会福祉の充実に回していこうというのだけれども社会保障の給付だけを考えると、肝心の金の卵を産んでくれる経済成長をなくしてしまったら元も子もない。その両面を考えて、これからいろんな構造改革をしていかなきゃならないのが橋本内閣の六つの構造改革の大方針だと思います。その中に沿って、私は、年金にしても医療にしても介護にしても、給付と負担のバランスを考えながら国民理解を求めて進めていかなければならない、そういうふうに考えております。
  43. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 二十一世紀、本当に私たちは夢の世紀と期待をしておりましたが、見れば見るほど苦労の多い世紀だと。しかし、何としてもこれを切り開いていくことが今から我々に与えられた使命だと頑張ってまいりたいと思っております。規制緩和の問題がもう現実にどんどん進んでおりまして、国内にはさまざまな影響をもたらしております。もちろん、絶対に大胆に緩和をしなければならないものとか激変緩和措置考えながら段階的に緩和を進めていくもの、長い日本の歴史と伝統の中でこれは守っていかなければというものもあるわけであります。しかし、残念ながら今そういう考え方というものがなくて、緩和なら緩和という洪水のような流れの中でいろいろ流されている。そういうことを考えまして一、二例を申し上げたいと思います。まず、伊藤国土庁長官にお尋ねいたします。私は京浜工業地帯に住んでおります。毎日、町を通過して国会に参りますけれども、かつての日本の経済のリードオフマンだった京浜工業地帯、今日では大きな工場跡地がありまして、しかも草原と化している。京浜工業地帯は牧場かと思うくらい実はリストラとか何かによって活力を失っている姿をごらんになることができます。これは、言うならば昭和三十年代、三十四年でありますか、大都市圏の人口集中排除、産業の全国的に適正なる配置等々をお考えになられて、大都市圏の、特に京浜工業地帯には工業等制限法をおつくりになられた。近畿地方では工場等制限法とか、地域によって多少呼び名が違いますが、工場を新たに新設させない、あるいは増設も厳しくコントロールする。特に京浜工業地帯、私は川崎でありますが、海から小田急沿線まで大学や専修学校もつくらせない。これは、いかに人口集中の排除だと言いながら、学問を私たち川崎市民から取り上げたに等しい網をかぶせて今日に至っておるところであります。時間がありませんから長くは申し上げませんけれども、今その法を制定した当時と現実は余りにも大きく乖離をしている。このままでは京浜工業地帯が二十一世紀の日本産業のリードオフマンの役目を果たせない、あるいは新産業を創出せよと言われても、今日まで集積した工業力、産業力というものがますます衰退をしていく。この現実を、特に長官はよく我々の地域も御存じでいらっしゃいますから御認識をいただいて、私はこれこそ大胆なる改革を、そして規制緩和を直ちにしていただきたいと思いますが、お考えをお聞かせいただきたい。
  44. 伊藤公介

    国務大臣(伊藤公介君) 工場等制限法の法律については、斎藤委員今強く御指摘をいただきましたように、産業の空洞化あるいはまた大学を含めて高等教育の環境が大変大きく変化をしております。そうした中で、特に首都圏や近畿圏におきましてはこの工場等制限法の内容を緩和すべきだという非常に強い御要望がございます。大きな規制緩和の時代の流れの中で、また産業や教育界の大きな環境の変化の中で、私どもは今この工場等制限法の内容を新しい時代に向けて緩和の方向で検討しなければならないと思っております。一、二具体的なことを申し上げますと、今御指摘をいただきましたように、既に工場が移転をしてしまった、その跡地には新しい会社が新しい工場をつくることができる、そういう方向で検討したいと思っておりますし、なお除外の業種がいろいろありますが、その内容も緩和をしていきたいというふうに思っております。なお、学校教育でありますが、最近は大学も環境であるとか情報であるとか新しい学部の創設希望が大変多うございます。そうした時代の変化にも対応していかなければならないと思いますし、看護職員であるとか医療関係であるとか、あるいは海外の留学生、帰国子女、そうした方たちには現在ある大学がその大学のあるところで対応ができる、そういう内容に検討していくことを考えておりまして、少なくとも八月、九月、その時期までには最終的な結論を出して新しい対応をしてまいりたいと思っております。
  45. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 大変前向きの御答弁をいただきました。私は当選してから十一年間、一生懸命この問題を機会あるごとに訴えてまいったところでありますが、本当に明快な御答弁をいただき、ありがとうございました。  申し落としましたが、本当に制限法のおかげで京浜工業地帯、大田区から川崎、横浜にかけてでありますが、最近数字を私は入手してびっくりしたんですが、昭和五十八年に六万工場あった、事業所が。それが何と十年間で二万工場減って四万事業所を切りました。あるいは人口で見れば、百十万人の従業員が京浜工業地帯に勤めておりましたのが三十万人減ってしまった。本当に大変な減退をしている。この事実を御認識いただきまして、一日も早い緩和策をお考えいただきたいと思います。  その次に、緩和をして本当に大きな影響が出ておるのは実は大店法でございます。これは武藤総務庁長官が当時通産大臣をお務めになられて、日米攻防戦の中で必死に大店法を残そうということで御努力をいただいた。そのときの私は次官でございました。  その後、実は大店法の実質的な廃止が進みまして、そのために中小企業に全国的規模で大変な打撃を与えております。今から約十年前に全国で百三十万店あった小売店が、これは特に零細小売店でありますが、今は百十万、これまた二割近い減少を生じておるところでございます。一方、大型店の進出届け出は八五年は五百件、ごく最近は二千二百件。日本全体でもうスーパー対スーパーの戦いの時代がやってきたと言われるくらい激しい状況を示しておるのであります。  理屈では、大型店と共存共栄せよ、あるいは小売店は専門店としてのノウハウを生かせと、いろいろと今まで御指導もあったし、私たちもそう言ってきました。しかし、現実にはもう弱肉強食、やっぱり小売店というものはこれからもどんどんと衰微をしてまいります。例えば、全国に二百四十四の商店街がございます。この中で既に八五%の商店街が一割近い空き家をつくっちゃった。一割以上を超す商店街が三分の一にも達する状況であります。これはもう通産省、佐藤大臣、御苦労いただいて空き家対策という中小企業援助策をお考えにならなきゃならないほど本当に小売店は衰微をした。こういうことを考えたときに、今日まで小売店が果たしてきた役割、そしてまた同時に、小売店が商店街形成という町並み形成には非常に大きな役割をしてきたと思っております。こういう社会的な視点が全く顧みられず、もう何が何でも、外圧によって大店法が骨抜きになると商店街関係者は本当に大きな憤りを持って私たちにぶつかってくるんです。本当につらい。特に、私は商人のせがれでありましたから、なおさらその思いひとしおでございます。アメリカに押されて、そして小売店がつぶれ、地域社会の安定や町並みが崩れていく、こういう思いを本当に規制緩和という明文の中でさせていいのか。規制緩和というのは確かにメリットがあります。消費者から見れば買いよい、すばらしいものができた、いいというメリットはある。しかし一方、こういうデメリットがあるという深刻さをもっともっと私たち政治家がすくい上げなかったら日本全体の発展はない。ドイツで私はつくづく驚いたんです。ドイツでは町並みを保存するために大型店に対する厳しい建築上の規制があるんです。私アメリカも何店かは見に行ってまいりましたが、日本のように狭い領土の中で、駅弁大学とひところ言われましたが、駅の数ほど大型店がひしめいて小売店をつぶしていく構図というものは本当に残念に思います。御関係の閣僚の御意見を聞かせていただきたいと思います。
  46. 佐藤信二

    国務大臣佐藤信二君) 斎藤委員から御下問でございますが、実はきょうの質疑、御存じのようにいわゆる橋本内閣の六つの改革ということで、これから二十一世紀に向かって日本がいかにあるべきか、こういうことだと思うんです。私の方の省に課せられているのは言うまでもなく経済構造改革をやれということでございまして、通商産業省として、その背景というのは、先ほどから出ていますように、高度情報化社会の進展ということで世界の一体化ということ、こういうことからいって空洞化という現象、そして少子・高齢化ということでもって経済的な活力がなくなる、そういうことで規制緩和と高コスト構造を是正しようと。実はそのことが規制緩和の中に今おっしゃる大店法という問題が入ってくるわけでございます。まず、そこで御指摘したいのは、外圧があるから規制緩和をやるんだとかいうことではなく、これは我々としては、やらなければ日本という国が地球の中に陥没する、実はこんな悲壮な気持ちでいるということ、この点はまず御理解いただきたいと思うんです。それから、大店法というものと地方の商店、いわゆる小売商業者、そうした商店街の疲弊という問題が関係がないとは申しませんが、これだけでもって地方の商店街にそういうような空き家ができたとは言えないだろうと思うんです。何といっても商店の方の話というのはやはりお客さんあってのお店屋さんじゃないだろうか、こう思うんです。今非常に消費者の行動範囲というのは変わってまいりました。これはもう急激なモータリゼーション、車社会になっているということ、それから何といっても価格の安い方に流れる、そういうことからして大型店が郊外の方に移ってできるというところでもって町の中央にある商店が疲弊する、こういうことだと思うんです。これは、私は全国でも地域差があると思うので、必ずしも一つのあれじゃないと思うんです。そこで、今申したように、この傾向が続くということです。私は、だからまずこうした傾向というものを抑えることが一体どうなのか、かような実は気持ちがしております。そこで、一つまず申し上げるのは大店法の取り扱い、はっきり言ってこれからこれ以上緩和されたら困るというのと、それから完全撤廃、非常に幅があるわけでございます。その中でまた条件的にどの規制なのかと。出店の問題あるいは営業規制と幅が広いわけですから、これは一応九年度中に見直すと書いている。  こういうことで、小売商業者あるいは消費者、そして学者、あらゆる方の御意見を総合して判断をいたしますが、今いろんな方の御意見というものをお聞きしている最中でございます。私は、それと商店街の振興というのは別問題だろうと。じゃ、大店法というものを完全に今のままというか凍結すればというか、おいておけば何もしなくていいかというと、そうじゃないだろうということでございます。時間も大分過ぎたようでございますので、あとまた御下問があれば申します。
  47. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 ありがとうございました。小売商も五分の魂、ぜひひとつ生きていけるように特に通産行政の中で御配慮をお願いいたすものであります。最後に、港湾の規制緩和をこれからされる分野についてお尋ねを申し上げたいと思います。三月十二日に珍しく全国規模、ゼネストに近いんですが、港湾労務者が二十四時間ストを打ちました。私は横浜の港を承知している一人でございまして、このストは一体何だったんだといろいろ調べてみましたら、理由が二つございました。その一つは、昨年の十二月、運輸省が規制緩和の一環として港湾荷役の新規参入の自由化を発表しておられます。この港湾荷役は、御承知だと存じますが、戦前は警察が免許をしておった。それなりの理由があって警察が免許をおろしておりました。こういう業種でございまして、戦後、全国各地でいろんな波乱がありましたけれども、今日の近代的なステベドアとして統一され、そして港を持つ地域においても秩序ある近代的な企業として成立をするようになったところでございます。もしも運輸省の御方針のように港湾荷役の新規参入が自由化されますと、昔の人入れ稼業の復活につながります。言うならば手配師の活躍の場となって、よい港ができるどころか逆行して戦前のような、昔のような混乱が起きるのではないかとみんな心配しているんです。ぜひひとつ北九州港、お地元でもございまして、事情をよく御理解いただいている大臣でございますからお伺いをいたしたいと思います。  それから、持ち時間があとわずかになってまいりましたから、続けてストの第二の理由に触れさせていただきます。  このストの第二の理由は、アメリカのFMC、連邦海事委員会日本の荷役事前協議制がアメリカに不利であるということで、ヨーロッパの船主も口説いて、日本郵船、商船三井、川崎汽船、言うなら日本の外航の三大汽船について入港するごとに四月から十万ドルの制裁金をかける、こういうことを申し立てました。  アメリカのシステムは、船会社と荷役会社と荷役に携わる労働組合、この三者が一つのテーブルで協議をして、きょうこの港に入る船が次の港へ荷をさらに持っていく場合、そういう仕分けをスムーズに、そして荷役が円滑に行われるように協議のされる場でございます。日本はいろいろ事情がございまして、船主とステベ会社、荷役会社と労働組合、言うなら二者二者同士の協議でブリッジ方式を今日までとってきた。アメリカの船主たちは日本はパラダイスだよと。何でパラダイスなのかというと、労働組合と直接やりとりしなくて荷役会社が我々の意向を聞いて円滑に港湾荷役をやってくれる、しかも日本の荷役関係の組合はストをしないと。かつてストをしたというのは日曜日。日曜日に家族と団らんを持ちたいからこの日は休ませてほしいという、本当に立派な要求でストを打った。  それだけしかないのが、今回まことに不可思議な、アメリカの圧力によって屈しそうだから、よし頑張ろう、もしもこのまま事態が推移をして制裁金をかけられる状態が来たら日本はたちどころにアメリカ船についてストをやる、荷役拒否をする、こういう動きになってきて新たな日米間の火種になりかねない、このように思っております。  ぜひひとつこういう事情を御賢察いただいて、港湾荷役の新規参入という問題に当たっては慎重の上にも慎重な配慮をしていただかなきゃいけない、このように思っております。四分間の御答弁で申しわけありませんが、締めくくりの御答弁をお願いいたします。
  48. 古賀誠

    国務大臣(古賀誠君) 二点御質問をいただいたと思っております。まず最初に、港湾運送事業の規制緩和について先生の御意見を拝聴させていただきました。私も港湾運送という歴史的な背景というのも若干私なりに承知はいたしているつもりでございます。しかしながら、今言われております行政改革それから経済構造改革、運輸省といたしましても真摯にこの規制緩和の問題について取り組ませていただいております。先生も御承知だと思いますけれども、交通運輸の分野の中におきましても、規制緩和を促進することによりまして自由競争を推進していって、そしてそれぞれの経済的な効率化、活性化を図っていくという観点から、運輸省といたしましては、まさに運輸行政の根幹でありました需給調整規制を物流、人流全分野において原則的に目標期限を決めて廃止するということで見直しを決定させていただいております。しかし、今までこの港湾運送の分野においての規制緩和の議論というのはほとんどなされていないというのが実情なんです。まず、手順といたしましては、行政改革委員会の中で御審議をいただきまして、その上で、先生今御心配いただいているような規制緩和を行うことによってどういう環境、条件整備が必要なのか、これをよほど慎重にやっていかなければいけないと思っております。運政審の場でいろいろな検討を行っていくわけでございますが、そういうことを念頭に置きながら、いろんな関係者の方々で、またいろんな角度から御審議をいただきまして、そして円滑な安定的な荷役の確保が行われるように環境、条件整備をしていくということが実は重要なことだというふうに認識をいたしております。また、事前協議の制度の問題についてでございます。この問題につきましても、事前協議という制度が今日までそれなりに果たしてきた役割というのは私は評価すべきところは評価していかなければいけないと思っております。ただ、残念ながら、日本の歴史的な慣習と申しますか、そういったものがアメリカ、外国の方々によく理解できないということで、今この改善について求められているところでございます。運輸省も積極的にこの問題について、労使間の問題ではございますけれども、何とか改善策がまとまるように今協力をしながらこの協議会を行わせていただいているところでございます。そういった中で、今回のアメリカのFMCの一方的な期限を決めた制裁措置というのはまことに遺憾なことだというふうに思っておりまして、私といたしましても米国政府を通じて強く抗議をいたしたところでございます。いずれにいたしましても、この制度につきましても今精力的な改善についての協議会、きょうも実は会議を開かせていただくことにいたしております。何とか大事に至らないように、こちらの面でも協議をまとめるような積極的な取り組みを運輸省として行ってまいりたいということをきょうはお約束させていただきたいと思います。
  49. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 ありがとうございました。私の質問はこれで終わります。あとは、関連で板垣委員質問を申し上げます。
  50. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 関連質疑を許します。板垣正君。
  51. 板垣正

    板垣正君 質問の順番を変えまして、まず最高裁にお伺いいたします。愛媛県の玉ぐし訴訟、この漏えいの問題についてはいろいろ各方面で論議されております。また、去る三月十一日には本院においても野間赳議員によってただされた。これに対して最高裁は、合議の内容が漏えいした事実はない、厳格に調査をしたけれども漏えいの事実はないと再三繰り返した。現在でもその見解には変わりありませんか。
  52. 涌井紀夫

    最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 私どもの方、内部の者、それから報道機関側、双方について十分念を入れて調査いたしまして、その結果、裁判所の内部からこの合議の秘密が漏れたという、そういう事実は認められないというふうに考えたわけでございます。
  53. 板垣正

    板垣正君 私はある確信を持って重ねてお尋ねしますけれども、もし今の御答弁を覆すような事実が出た場合、つまり漏えいの事実が明らかにされた場合、どのように責任をとられますか。
  54. 涌井紀夫

    最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 私どもの方、念には念を入れて十分調査をしたつもりでございますので、私どもの調査結果が間違っているということはないというふうに考えております。
  55. 板垣正

    板垣正君 これ以上論議は続けません。次に、これもまた順序を変えまして教科書の問題、教育の問題をまずお伺いいたしたい。その前に、基本的な点について文部大臣の御見解を確認いたしたい。いわゆる教科書検定の責任の所在ということであります。これは改めて申し上げるまでもありません。教科書は生徒に使用が強制される、これが学校教育法第二十一条の規定にもあるとおりであります。したがって、教科書の内容が教育基本法及び学校教育法に定める教育の目的に沿っているか否かを判定する検定が必要になるわけであります。したがいまして、検定の責任は当然文部大臣が負うべきものである。教科書検定調査審議会がございます。しかし、これは文部省の附属機関であって、文部大臣の諮問に応じて調査、審議を行うが、ここが検定の決定を行う権限はありません。審議会の審議は文部省が行う検定事務の内部手続、つまり検定内容の国会及び国民に対する責任はあくまで文部大臣に帰する。この点、改めて御確認をいただきたい。
  56. 小杉隆

    国務大臣(小杉隆君) 検定の責任は文部大臣にあると考えております。
  57. 板垣正

    板垣正君 そこで、検定に合格した教科書の記載内容については文部大臣がその責任を負わなければならない。これまた当然でございますね。
  58. 小杉隆

    国務大臣(小杉隆君) これもそのとおりであります。
  59. 板垣正

    板垣正君 以上、確認をした上で、また後でただしますけれども、いわゆる従軍慰安婦の問題について本委員会においても私どもの同僚議員が活発な質疑を展開し、かついろんな事態が明らかになってきた。つまり、政府がいろいろ集めたいわゆる慰安婦関連の資料の中には慰安婦の強制連行を直接指示するものはなかったということ。それから、強制連行を認めた平成五年八月の決定、いわゆる河野官房長官談話、これはその直前に行われた韓国における元慰安婦十六人の聞き取り、これに基づいて全体的、総合的に判断をして強制連行ありというあの河野官房長官談話が出されましたと。外政審議室、そのとおりですね。
  60. 平林博

    政府委員(平林博君) 改めて正確に今まで御答弁申し上げたことを繰り返したいと思いますが、第一点は、先生今御指摘になられましたように、政府が発見した資料、公的な資料の中には軍や官憲による組織的な強制連行を直接示すような記述は見出せなかったと。  第二点目は、その他のいろいろな調査、この中には、おっしゃったような韓国における元慰安婦からの証言の聴取もありますし、各種の証書集における記述もありますし、また日本の当時の関係者からの証言もございますが、そういうものをあわせまして総合的に判断した結果は一定の強制性が認められた、こういう心証に基づいて官房長官談話が作成されたとへこういうことでございます。
  61. 板垣正

    板垣正君 いろいろ言われましたけれども、一番の問題点は、そもそもこのいわゆる慰安婦問題、これに火をつけたのは、吉田清治と称する全く無責任な男が、済州島で二百人も文字どおりの強制連行をやったという本を書いて、これがマスコミにも載る、韓国でも出されるという中で大きな問題になる。あるいは、人権運動家と称する人たちが韓国に乗り込んでいって、訴訟しなさい、訴訟費用は持ってあげますよというような形で始まったわけですね。つまり、あの厳しかった日韓基本条約を結んだときの論議のやりとりの中にもこの問題は出てきておりませんよ。いずれにしましても、そうしたことで初めて軍、政府がこれに関与をして、謝罪をいたしますと言って認めましたのが平成四年一月、宮澤内閣のときの官房長官、このときは加藤官房長官ですね。いろいろ調べた第一次の調査を発表されたのが平成四年七月六日。このときの加藤官房長官は、強制連行を裏づける資料はなかった、広い意味における関与はありましたが、強制連行はありませんと。裏づける資料はなかった。ところが、その一年後、これが問題の平成五年八月四日、河野官房長官談話によって強制連行を事実上認めると。なぜ変わったかという点ですよ。ここがポイントなんですね。この決め手になったのが、これをめぐって最近本院における小山議員、片山議員等の論議、やりとりもございましたし、また産経新聞の石原元官房副長官とのやりとり、あるいは櫻井よしこさんがこれまたインタビュー記事で綿密にこの問題点を言うなれば追跡して明らかになってくる。つまり、慰安婦の強制連行を証明する客観的な資料はない。あるいは平成五年七月に行われた元慰安婦十六人への聞き取り調査、その裏づけ資料もない。にもかかわらず、なぜ強制連行が認められたか。これについて、当時の資料によりますと、つまりは強制連行を日本側が認めてくれれば元慰安婦たちの名誉は回復されるんだと。当時の韓国駐在日本大使も、元慰安婦の名誉回復のため、強制連行だったと日本政府が認めることが第一条件だと。さらには、石原さんが産経のインタビューに答えて、外政審議室には連日、慰安婦訴訟の原告団や支援団体のメンバーが詰めかけ、関与を認めただけでは決着しないと自分も思った、韓国側も納得しなかったと。つまり、十六人の聞き取り調査を取っかかりにして、その証言だけで結論に持っていったことへの議論があることは知っておるし、その批判は覚悟し決断をしたのだから弁解しないと、こう石原前副長官が言っておると。つまりは、名誉を守るために、ここで、相手の名誉を守ると言われるその要求に対して、それを認めるならばこれがおさまるだろう、何とかこの問題はおさまるだろうと。これがいろいろ経緯があってこの発言となった。平林室長、そういうことじゃないですか。
  62. 平林博

    政府委員(平林博君) ただいま先生の引用なさったインタビューというんでしょうか御発言については、政府としては御本人に正確に確認しているところではないのでございますが、当時韓国側に対しまして、その後の韓国側の反応がポジティブな、積極的なものである方がいいという配慮のもとに事前に当方の意図するところを通報したということは直前にあったと聞いておりますが、韓国側と協議をする性格のものではもとよりございませんし、また韓国側の反応によって基本的な事実関係をゆがめたり政府としての見解の根本を変える、そういうことはなかったというふうに考えております。一言で申し上げれば、韓国側と協議をしたり交渉したりといったぐいの性格のものではなく、事前に通報してできるだけポジティブな反応が出るようにという働きかけをやったものというふうに伺っております。
  63. 板垣正

    板垣正君 大分苦しい答弁だと思うんです。これは一つの資料でございますが、八月四日、河野さんが強制連行を事実上認める談話を出した次の日の朝日新聞の記事です。朝日ですよ。朝日新聞の記事すら、「苦心の末「強制」盛る政府の慰安婦調査「総じて」、」、つまり総じて強制があったと。「窮余の3文字」。こういうまことに苦しい中で、端的に言うなら、謝れば済むだろう、こういうことじゃないですか。しかし、それで済んだのでしょうか。済んだどころか、むしろそれから騒ぎがひとり歩きする。大騒ぎがさらにさらに深刻になる。しかも、河野談話によって国際的にも日本が慰安婦の強制連行を認めたものと認識され、全世界にそれが報道される。あるいは、あの国連のクマラスワミ報告というふうな極めてゆがんだ形において国連の人権委員会でも取り上げられる。さらには、教科書問題の教科書に掲載される最大の根拠にされておる。こういう流れについて、現在の官房長官である梶山官房長官はどういう御見解をお持ちになりますか。
  64. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 詳細にその当時の記録を私もたどったわけではございませんし、資料に基づいて判断をしなければならない問題でありますが、外政審議室長が申し上げたとおりだといたしますと、大変いろんな思いで複雑な感情が去来をいたします。
  65. 板垣正

    板垣正君 極めて重大なポイントを握っているのはやはり特定の人であります。談話を出した人もいます。実質的にまとめた元官房副長官石原さんをこの問題の参考人として当委員会にぜひ呼んでいただきたい。
  66. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) ただいまの板垣君の要望につきましては、後刻、理事会において協議をいたします。
  67. 板垣正

    板垣正君 それでは、文部大臣の方に。そうした経緯を経て教科書に載っかったわけですね。裏づけ調査のされていない資料しか根拠のないものが教科書に載せられた。先般、文部大臣は、学術的根拠が必要であって、そうした裏づけのないものは教科書には載せない、いわゆる定説になっていないというものは教科書に載せていないはずでありますと。この問題について、文部大臣としてどうお考えになりますか。
  68. 小杉隆

    国務大臣(小杉隆君) 歴史教科書の検定につきましては、再々申し上げておりますように、検定の時点における客観的、学問的な成果や、適切な資料に基づいてその記述が適切であるかどうかということで検定を行うものでありますが、平成五年八月の政府調査を適切な資料として採用し、検定を行ったところであります。
  69. 板垣正

    板垣正君 文部大臣答弁は、つまりは何の内容もない、そう言わざるを得ませんね。  これが新しい歴史教科書です。(資料を示す)これが一番たくさん使われておる、買われておる。東京書籍の歴史教科書であります。この間の小山質問でも明らかにされたとおり、中学校の新しい歴史教科書は全部で百五十万冊、そのうちこれが約六十万部、四割を超えるほど、言うなれば一番採用率が高い。四億余の国費が投ぜられるわけでありますが、この二百六十三ページには「従軍慰安婦として強制的に戦場に送りだされた若い女性も多数いた。」と、この官房長官の談話を第一の裏づけとして取り上げられておる。  さてそこで、文部大臣、さらに伺いますが、戦前、戦争中、従軍慰安婦というものが存在したのか。法的な裏づけがあるのか、あるいは社会的な裏づけがあるのか、その点どうお考えですか。
  70. 小杉隆

    国務大臣(小杉隆君) 従軍慰安婦という言葉自体については法令上定義があるものではありません。  しかし、この問題については、政府の調査を初め種々の調査あるいは歴史家による研究等が行われておりまして、その結果、従軍慰安婦という用語は歴史辞典等にも広く収録されておりまして、一般的に流布されているというふうに考えております。
  71. 板垣正

    板垣正君 従軍という言葉がまた大変問題ですね。従軍記者、従軍看護婦、従軍僧侶、こうしたものは明らかに法令上の根拠を有し、また社会的呼称としても用いられている。これと全く、従軍という、言うなれば公的な国なり軍なりとのつながりを示す呼称がない。  この問題については、国学院大学の大原教授がいろいろな資料を網羅してこの従軍の使用、従軍看護婦、従軍神職、その他従軍記者、これらはいずれも当時から法的な裏づけがあり、かつ特別な責任を持たされる、こういう形で国との公的なつながりの中で用いられてきた。しかし、従軍慰安婦という言葉は当時もちろんなかった。使われておらない。従軍というのは軍と公的な関係を持つ人に冠せられる言葉であって、軍属でもなく法的な根拠もないこういう慰安婦に従軍と冠することは極めて不適切で、誤りであり、事実ではない。こうしたものを教科書に載せて、文部大臣は認めておられるが、誤りではありませんか。
  72. 小杉隆

    国務大臣(小杉隆君) 従軍慰安婦という言葉は法令上定義はないところでありますが、先ほど申し上げたように、政府の調査を初めとするいろいろな各種調査、研究者の調査というものにあるわけでございまして、今御指摘のこの言葉につきましては、七冊の中学の教科書のうち三冊は確かに従軍慰安婦という言葉を使っております。こういう言葉遣いについては、各種教科書によって違いますけれども、政府の調査の結果を見ますと……
  73. 板垣正

    板垣正君 結構です、後で聞きますから。
  74. 小杉隆

    国務大臣(小杉隆君) さっき報告があったとおりの結論でありますから、その結論が変わらない以上、私たちは客観的な事情の変更はないというふうに思っております。
  75. 板垣正

    板垣正君 これは大変見識のない御答弁と言わざるを得ない。従軍という問題も、これが初めて使われたのは、昭和四十八年に千田という人が双葉社から「従軍慰安婦」という本を出して、これで売りまくって、こういう中からまさに俗語として従軍慰安婦という言葉がはやったんです。マスコミではやった言葉ですよ。それだけのものです。従軍という名のもとで実質苦労した人の立場から見ても、また事実上そうしたものはなかったことを子供たちが、少なくともこれは、六十万冊も出ているのには従軍慰安婦とちゃんと出ているではありませんか。誤りではありませんか。それを責任ある文部大臣はああだこうだ。それで済むとお考えなんでしょうか。さらに追加すれば、今も言われたし、辞書に載っているというようなこともおっしゃるわけですね。これも大原教授が綿密な調査を行っておられます。これは載っている辞書もある、載っていない辞書もある。例えば日本国語大辞典・小学館、大辞泉・小学館、新潮国語辞典・新潮社、これは載っておりません。最近載せたのが広辞苑・岩波、大辞林・三省堂、こういうのがこの問題が社会問題になってから載せたという事実があります。いずれにしましても、大臣答弁されたように、また各辞典においても使われておるというふうなそんな定説的なところまで行っておらない。これが現実の姿じゃないですか。先日の答弁、訂正されるお気持ちはありませんか。
  76. 小杉隆

    国務大臣(小杉隆君) この問題の経緯については板垣委員よく御承知だと思いますが、平成三年十二月から国会等でもあるいはマスコミ等でも大変議論になったところであります。その後、政府として一年八カ月かけましていろいろ調査をした結果が先ほどのお話の政府調査の結末でございます。そういうものから今日に至って客観的な事情の変更がない。先日も官房長官からお答えしたとおり、この政府の調査がそのまま今もなお政府の見解ということでお答えいたしましたように、そういった事情の変更がない限り私どもは検定の修正を求めるということにはならないと思っております。
  77. 板垣正

    板垣正君 これは文部大臣としてさっき冒頭に御確認いただいたように、検定内容、これは文部大臣の責任である。子供たちに誤った事実を指摘され、なおかつ責を他に転じてこれはそのままでいいんだと、そういう未来の子供たちにどうして責任をとれるんですか。これは単にこの問題だけではありません。過去の記述におきましてもいろいろ問題がある。もう時間の関係で一々あれいたしませんけれども、例えば安保条約の改定、これは大きな問題であります。これも国会においては三カ月半に及ぶ審議が行われた。最後は非常な混乱の姿もあったわけでありますけれども、そういう経緯というものを抜きにして、教科書にはどう書かれておりますか。自由民主党は十分な審議もしないまま衆議院で採決を強行した、政府と与党が国会で十分な審議を尽くさないまま条約承認の採決を強行したと、教育出版、大阪書籍、こういうのが検定を通っている、文部大臣の責任のもとで。これが歴史的な過去の事実と言えるのか。あるいはいわゆる三光作戦、これは最近唱えられてきた呼称であって、だれもその内容を詳しく知らない。これは国民党が共産党との戦いの中で千九百三十何年かに展開した戦術、作戦と言われておる。それが、一九四一年から日本軍は、華北の抗日運動などの根拠地に対し焼き尽くし、殺し尽くし、奪い尽くすという三光作戦を行ったと、教育出版ですね。歴史的な裏づけが何にもない。しかも、これが一九四一年と今ありました。一九四〇年ごろが日本書籍、一九四〇年ごろから、これは大阪書籍、あるいは一九四一年と翌年が清水書院。年代も場所も明らかではない、こういう全く根拠のない、裏づけのはっきりしておらない、それこそ定説になっておらない、こういうものが安易に教科書に載り、そのまま検定を通っておる。文部大臣が認めておる。こういう問題について我々は深刻に考えていかなければならないのではないのか。検定のあり方というものももちろんございます。しかし同時に、教科書の編集の段階から採択の問題におきましてももう一度これは検討しなければならない。文部大臣は、これにかかわる検定なり現在の教育教科書の採択のあり方等についてどういう見解をお持ちですか。
  78. 小杉隆

    国務大臣(小杉隆君) 教科書の検定については、再々申し上げておりますように、民間の執筆者並びに民間の教科書発行会社の判断にゆだねているわけでありまして、それを学識経験者から成る検定審議会で慎重に審議をして決める、こういうことになっております。私どもは、その時々の歴史的事象につきましては、その専門家のいろいろな通説とか学説とか学問的な成果あるいは客観的な事実、こういうものを総合的に点検をいたしまして、よりよい記述になるように、そういう観点から検定を行っているところであります。
  79. 板垣正

    板垣正君 検定の問題につきましては、これは武藤総務庁長官にお伺いしたい。  ODAにかかわる教科書の記述がおかしいと、最近行政監察が初の指摘を行ったと一部に報道されておる。これは総務庁が十三日に行政監察の結果を発表された。中学、高校教科書のODAにかかわる記述、過去の事例に基づく一面的な記述、事実関係の誤り、記述内容の適正化を初めて指摘をした。これは文部省、外務省など関係省庁に勧告されたと、こういうことでございます。  つまり、今るる申し上げてきた歴史的事実と裏づけされておらないことが勝手に載っかっておる。これはひとりこうした歴史的事象のみならず、このODAの問題におきましても、日本の企業が政府援助資金を利用してやっているんだ、民間主導でやっているんだという時代のずれたようなことが子供たちの教科書で教えられる。行政監察が初めてこれも指摘せざるを得なかったくらいひどい姿、これはぜひこれらの問題に限らず積極的に教科書問題、あらゆる分野にわたる監察をやってもらいたいと思いますが、いかがですか。
  80. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) ODAについての問題は、私ども、ODAというものが国民からよく理解をされるようにと、こういう立場からODAに対しての教科書の記述が必ずしも事実と一致していないという点を判断して勧告をしたわけでございます。  今お話のありました問題につきましても、私はどちらがどうとは申し上げませんけれども、いろいろと意見が相違をしているものが正直歴史認識においてあるようでございますから、そういう面において教科書の内容について文部行政が正しく行われているかどうか、あるいは歴史教育が正しく行われているかどうかという観点から教科書の記述がどうかと、こういう点について私どもは監察をすることはできると思っております。
  81. 板垣正

    板垣正君 ぜひそれは積極的に取り上げていただきたい。また官房長官にお願いいたしたいんですが、この教科書の問題というのは、今お話がありました、あらゆる問題が取り上げられておる。限られた中での検定なり、いろいろな問題がある。これは、例えばPKOの問題なんかも、まるで海外派兵のいろんな論議があったというようなところが載っかって、いろんな形で自衛隊が苦労しながら国内でも国際でも評価されているような記載がほとんどない。こういうやり方を見ますと、官房長官、これは閣僚にも皆読んでもらって、積極的にやっぱり、若い子供たちに、次の世代にこのままでいいのかと、これは国にとっての大きな問題だと思いますが、その辺について官房長官の御見解を承りたい。
  82. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 私はこの問題に直接言及すべき立場にはございませんけれども、しかし歴史や教育というものは極めて大切な分野でございますから、閣僚懇談会を通じて議論を高めてまいりたいと、こう考えます。
  83. 板垣正

    板垣正君 さっき河野発言、石原さんの発言等を通じて、韓国の人たちの名誉、それが回復されるなら強制連行を認めようと、結果的に。私もそうした方々の名誉、そうした方々の御苦労、そういった方々の不幸、これを決してないがしろにするものでもない、またそれを殊さらに批判しようというものでもない。しかし同時に、日本には日本のやはり名誉があります。日本人の名誉があります。特に、あの戦争に参加をして身命を賭して亡くなった方々、あるいはそれを送り出しともに戦った人たちの思い、そういう人たちが戦後どんな思いで、どんな生きざまでこの廃墟の中から立ち上がり今日の国を築き上げてきたか。そういう人たちの名誉は一体どこへ行ってしまったんだ。国家というものはやっぱり基本的に国の尊厳を守る、名誉を守る、これが基本ではありませんか。余りにも戦後、みずからの国の名誉を傷つけられ、ひたすらに低頭することをもって相手の意を迎えるような姿勢というものが私はむしろ大変不幸な外交関係にもあったのではないのか。そういう意味合いにおきまして、じゃどういう生きざまをしてきたんだ、この生き残りの連中はという、これは一つの例であります。御紹介したいと思うんですが、これは私の陸士の同期生なんですね。下山敏郎さんというオリンパス会長です。これは山本卓眞さん、富士通の会長ですね。彼もこの下山さんも同期生。終戦のときは旧満州における特攻隊ですよ、特攻隊要員です。そして、旧ソ連軍侵入のときには、命を受けて特攻隊として突入をする、戦車軍団に突っ込む、こういう下令のもとに、しかも紙一重に終戦を迎えて生き長らえてきた。かつ、その思いが、これは彼ら山本さんとかこの近藤さん、下山さんだけではありません。不肖私もやはり戦闘機乗りの一人でしたよ。紙一重ですよ。そういう思いで、しかし一番思われるのは戦死をしていった人たち、身近な人たち、多くのすぐれた人たち。しかし、そのもとでこの国が築かれてきていることは間違いない、守られてきたことは。そういう下山さんが、これは三月九日の日経の、広告なのであれなんですけれども、アメリカのエズラ・ボーゲルさんとこれからの問題で大変おもしろい対談をしておりますけれども、つまり、戦後そうやって生き抜いてきた、そういう人たちがどんな思いでこの国を築き上げてきたか、そういう一つの例であり、かつ今の若い人たちをどういうふうに見ておるかという一つのサンプルといえばサンプルだと思うんですね。だから、下山君はこう言っていますよ。「経済にしても何にしても、精神力というか気概が必要だと思う。」「戦後、日本人は明治のころと同じように、坂の上の雲を見ながら一歩、一歩登ってきたと思う。いま日本に必要なのは、坂の上の雲を見て「よし、やらなきゃいかぬ」という気概です。進歩的文化人と呼ばれる人やジャーナリズム、マスコミの責任が大きいと思う。日本はだめだ、日本人は悪いことをしたのだ、ということだけを言っていたのでは、坂の上の雲を見て登れない。日本はそう悪い国ではない、誇りを持っていこう、とリーダーシップを発揮してもらいたい。」、省略しますけれども、一番最後にはやはり同様に独立心も教育によって身につく、その意味でも教育システムの改革は待ったなしの課題と認識しているということを言っております。今の日本の、いろいろな面で行き詰まるといいますか、しかし新しい世紀を目指して、橋本総理の言われる改革第一年、あらゆる面を次の世代のために思い切った見直しをしていこう、こういう中における教育の位置づけというものは極めて大きいと思う。このあたりで総理の教育の問題についての、国会でも再三、やはり若い人たちが歴史の事実を事実と認める、大きな歴史の流れを知る必要がある、同時に重い歴史はみずから担っていかなければいけない、御見解も述べておられますが、その点について聞かせていただきたい。
  84. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、先般来、我が国の教育、殊にその中での歴史教育というものが、この問題だけをめぐって延々と続いております事態を大変悲しい思いで聞いております。よく申し上げることですけれども、私どもが歴史の事実を書きかえてそれで真実を覆い隠すことができるものでもありませんし、その歴史の重みというものは常に背負っていくべきものでありましょう。そしてまた、その中の教訓を未来に生かしていく、当然のことながら私はそうしたものが歴史というものだと思います。問題は、子供たちにどの学年に我が国の歴史のどのぐらいの流れを教えるんだ、伝説の時代から現代に至るまでの歴史を流れというもので教えていくべき、そしてそこに事実をつけ加えていくべき、それぞれの年齢によって私はその教える中身に違いは出てくると思います。問題は、どこまで、いつ、どんな形でということではないでしょうか。  議員も多分御記憶だと思いますが、たしか昭和四十五年でありましたか六年でありましたか、グアム島に太平洋慰霊協会の手で日米両軍プラス現地の方々の慰霊碑がつくられました。しばらくたたないうちに落書きだらけになりました。ほとんど全部が日本の観光客による心ない仕打ちでありました。そして、グアムの戦域において収骨されました遺骨の代表的なもの、そして遺品が葬られておりました鉄の扉をあけてそれを持ち帰ったのも日本人でありました。そして、グアム政庁、当時はグアムは政庁でありましたけれども、その維持管理の責任は負えないということを日本政府に通告してきた事件があったことを御記憶でありましょう。当時、一体我々は歴史で子供たちにどこまで教えるか、随分真剣な議論が行われた時期、それからしばらく続きました。  しかし、そのうちにいつの間にかその歴史の教育という話が切れましたところにいわゆる教科書問題というものが派生じ、そして今日慰安婦のという問題が起きております。私は、女性の尊厳、名誉を傷つけるこれ以上のものはないと思います。そしてそれを、慰安婦というものがあったことを消すことはできないと思います。それを形容詞がつくのか、いわゆるという言葉がつくのか、子供たちの教育の中にそれを取り込む必要があるのかないのか、むしろある程度みずからの専門分野を決めた上での一般教養に移すべきものなのか。そうした点で文部省も検定委員会も今まで十分お考えになってこられたと私は思います。  しかし、こういう問題は、幾ら考えてもよりよいものがあるならば考え直すことを妨げるものではないと、私はそのように思います。
  85. 板垣正

    板垣正君 私は、今までの幅広い論議を通じて、やはりもう一度文部省に、この教科書の問題について、このままでいいのか一権威ある調査会なり検討機関なりを設けて、国民の納得のいける再検討をしていただきたいと思うんですよ。このことについて後でお尋ねいたしますが、その前に、総理から今歴史とのかかわりのように関連するお話があったわけですね。本年一月ですか総理が東南アジアを回られた。インドネシアに行かれたときにあのジャカルタのカリバタの英雄墓地に参拝をされた。この英雄墓地には、インドネシア独立戦争で戦死をしたインドネシアの青年約二千名の中に、これはそこのジャカルタだけでありますが、十六名の旧日本軍人が独立戦争をともに戦い、英雄と言われる戦い、戦死を遂げてそこに祭られているわけですね。そこに橋本総理が参拝をされたということについて大変現地が歓迎して喜んでおると、こういうことなんですね。橋本首相は、これは中島慎三郎さん、金子智一さんというインドネシアに格別関係の深い方々、いつも現地に行っておられる方々の記録でありますけれども橋本首相はカリバタの英雄墓地に献花してから記者団に、独立戦争に参加して戦死した日本軍の将兵はカリバタだけで十六名もいるんですと発言したが、これをテレビと新聞が報道したから大評判になった。欧米の記者は、カリバタに献花したから橋本首相の人気は物すごいものになった、インドネシア人がさすがに剣道の達人と称賛しているからうらやましい、我々も独立戦争に参加すべきだったと発言したが、橋本首相は献花したことによってインドネシアでは大変評判を得た。しかし、これはほとんど日本のマスコミは伝えないわけですね。歴史との触れ合いというときに、こうした場面というのを忠実に事実として、またできれば総理の気持ちも込めてあらわすのがやはり歴史との触れ合いではないでしょうか。言うならば、それが日本とインドネシアとの本当のつながりにも通ずるんじゃないでしょうか。それどころか逆に、昨年は、この日本の例の、韓国に行っても火をつける、あっちこっちで火をつける、そういう悪名高い人たちがインドネシアに行ってまたここで火をつけて、驚くなかれ二万名が登録をしたと。二万名の元慰安婦と称する人が登録したというのは、二百万円もらえるんです、四十年分のお金ですとこうなりますから。しかし、この問題について、インドネシア政府というのはさすがだと思うんです。政府の方針をぴしっと出しましたね。ぴしっと出して、この問題は日本との間の話はもうついておる。我々の方からこの問題について言ったことは一度もない。個人のそうした給付なり民間の運動というものは一切政府は関与しない、認めない。援助的な資金として来るものはいただきましょう。それで施設を、養護施設をつくりましようと。ただ、そうした個人の動きというものは、インドネシア国民の品性のために、品位のために、我々の名誉のために、そういうことについては我々は我々の道を選ぶ。こういうふうに、はっきりこの問題に言うなれば決着をつけると。そうすると、日本人の一部の人たちが、二万人も登録騒ぎを起こすような行き方において、その人たちがどんな信条でやっているかわかりませんけれども、インドネシアの人たちから見れば、イスラムの国ですから、そういう問題を大騒ぎするようなことは一番嫌がる、恥ずかしいことだと。そういう問題について、混乱を招くようなことについては、やはり民族性からいっても、みずからたちの誇り、品性にかかわることだと。私は、総理が黙って行って、黙ってそこに参拝を、献花されたという姿の方がよほど心の通じる外交ということにもつながるんじゃないか。池田外務大臣、せっかくおいでいただいておりまして、もうほかの問題に入れないので、その辺における外交姿勢といいますか、やはりもうこのあたりでそろそろ、近隣諸国を含めて、もっと健全な、お互い胸襟を開くし、かつお互いの立場を認め合うし、国家の尊厳というものをお互い大事にする、名誉は大事にする、こういう方に方向を変えていくべきなんじゃないかと思いますが、その辺の外交の基本姿勢について承りたい。
  86. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私ども、近隣諸国はもとより世界の各国との友好関係を維持し、そうしてその上に立ってこの国の将来、そうしてまた世界の将来を築いてまいらなくちゃいけない、こう考えております。そういった場合、当然のこととして先ほど総理の御答弁の中にもございましたけれども、やはり過去の歴史、その重みからも逃れることはできません。そうしてまた未来に向かっての責任の重さというものもよく肝に銘じながら取り組んでいかなくちゃいけないと思うわけでございます。そういったときに我々としては、決していたずらに卑屈になることもございません。しかし、また逆におごり高ぶることもない。むしろあるがままの姿でお互いに真情を吐露し合いながらそういった中から理解が生まれてくる。立場の違いは違いとして相互の理解の中で未来を築いていく、そういった外交を展開したい、こう思っております。これまでもそういった気持ちでその時々のその担当の方はやってこられたんだと思いますけれども、しかし、そのことがいろいろまた今批判を仰ぐケースもあるということを目の当たりにしまして、現に今こういった外交の仕事をしている者の一人として、みずからを従来以上に戒め、誤りなきを期し、そうしてあすに向かって歩んでまいりたい、こう考える次第でございます。
  87. 板垣正

    板垣正君 戦後の大きな区切りの中で、つまり占領政策のもとで、憲法も占領政策のもとでつくられる、あるいは東京裁判のもとで日本が一方的に侵略国家として断罪される、あるいはその後日教組あるいは進歩的文化人と称する流れの中で専らこの国の歴史が否定される。反省すべき点は多々あるとしても、脈々と流れる日本の歴史というのはやっぱり誇るべき歴史であるはずであります。また、そのつながりの中に我々は次の世代に正しい教育を行い、かつそういう人たちが誇りを持って世代を築いてもらわなければ、そういう面においてこの教科書問題をめぐって、現在慰安婦問題という、本来ならもう常識的にも大っぴらに語られるべきではない、ある意味の恥部に触れるような問題がまるで大ごとのような形で論争されるという姿の中に、歴史をもう一度自分たちの手元に取り戻していこう、こういう国民の切なる思いがあるし、またがっての戦場の経験者なりそういう遺族なり、そういう立場からも果たしてこれでいいのかと切にこの教科書のあり方等をも憂える声が多い。  そこで、文部大臣、さっき申し上げましたが、この問題をめぐってこれほど大きな問題がいろいろ論議をされる。文部大臣がこの間おっしゃったように、この問題はもう定説化しておらない、定説になっているんですとは言い切ることはできませんよ。しかし、事ここに至っておる。そういう中で、文部大臣、ここで文部省にしかるべき教育課程審議会ならそこの中に、あるいは教科用図書検定調査審議会ならそこにしかるべき権威ある検討の機関を設けて、幅広く世論を受けとめ、また専門家の英知を結集して、この教科書のあり方というもの、歴史教育のあり方というものをもう一度謙虚に、しかも文部省、国の責任において検討する、こういうことについてぜひお約束いただきたいと思います。
  88. 小杉隆

    国務大臣(小杉隆君) 教育の場で我が国の文化とか伝統を尊重し、また自分の国に対する誇りというものを持つということは今度の教育改革プログラムの大きな目標でもあります。先ほどインドネシアのお話がございました。私は執筆者がそういう記述を出してくれば、それは史実に基づいて検定をするということはお約束をいたします。  それから、先生がこうした点について、またほかの委員も真摯に議論を展開していただいたことを私は感謝しております。といいますのは、やはり教科書がいかにあるべきかということを問題提起されたと思っております。私どもは、教科書の検定審議会に今まで出されたさまざまな意見はできるだけこれをお伝えし、そしてそうした議論を踏まえて検定を行っていただくということにしたいと思いますし、また教育内容につきましても、教育課程審議会にできる限りさまざまな意見、さまざまな研究成果というものを御報告して、よりよい教科書をつくっていただくようにこれからも文部大臣として努力をしていきたいと思っております。
  89. 板垣正

    板垣正君 ありがとうございました。
  90. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 以上で斎藤文夫君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  91. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 次に、林寛子君の質疑を行います。林寛子君。
  92. 林寛子

    ○林寛子君 きょうはテレビ中継ということで、平成会の質問時間が午前中あと五分ぐらいしかございませんので、質問が中途半端になりますけれども御了承いただいて、午後に続けたいと思います。まず、先日十四日の参議院の本会議で同僚の益田議員質問をいたしました。その答弁がございますのでちょっとお聞きいただきたいと思いますけれども、いらしていますね。郵政大臣、見えていませんか、見えていますね、いいですか。本会議で益田議員に対しての郵政大臣の御答弁がございました。「郵便貯金は、高齢化の進展がとりわけ顕著な離島や山間辺地はもちろん都市部においても、民間金融機関の店舗配置の手薄な住宅地などを含めバランスよく店舗を配置し、」云々がございまして、「今後ともこの体制で」事業の進展を図りたい、「この体制で」ということを堀之内郵政大臣がおっしゃいました。続きまして、小泉厚生大臣。「いわゆる郵便貯金、簡易保険、郵便事業、この郵政三事業は民営化が必要であり、可能だと言っている」「内閣の方針として、民間にできることは民間に任せようというのが大方針であります。」「郵便局の仕事は役所でなくてもできると言っているんです。」「民間人に任せても、民間企業に任せても十分できると言っている」「民間企業は、」「利益を上げて、法人税を納めて、固定資産税を納めて、設備投資は自分の金でして、国民によい商品、よいサービスを提供します、」「官の仕事は、民間と同じ仕事をしているにもかかわらず、法人税は納めない、固定資産税は納めない、設備投資をするときは予算を要求してくる、これでは経済は活性化いたしません。」、こういう答弁があるんですけれども、まず郵政大臣、今御発言、本会議でおっしゃったんですけれども、どうお思いになりますか。
  93. 堀之内久男

    国務大臣堀之内久男君) ただいまの林委員の御質問にお答えいたします。先般の参議院の本会議場で御答弁申し上げたことについては今も考え方は変わりません。後で小泉厚生大臣からの意見も述べられたようでありますが、これは小泉厚生大臣の日ごろの主張を述べられたものと私は受けとめておるわけであります
  94. 林寛子

    ○林寛子君 結構です。
  95. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 答弁中でございます。
  96. 林寛子

    ○林寛子君 結構です。その言葉だけでいいんです。
  97. 堀之内久男

    国務大臣堀之内久男君) 行財政改革橋本内閣の最大の課題であり、私も内閣の一員として真剣に取り組んでいく所存であります。郵政事業というものをもう少し御理解賜るために少し意見を述べさせていただきますが……
  98. 林寛子

    ○林寛子君 そのことに関しては午後聞きますから。  小泉大臣、今の郵政大臣の御意見をお聞きになって、本会議場で自分の意見と違うなとお思いになったのか、同じだとお思いになったのか、どっちでしょうか。
  99. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) もちろん違います。国会全体が今まで私の郵政民営化論を暴論とみなす方が圧倒的に多いということは承知しています。しかし、これからの時代にそれでいいのかと。行政改革をしていく上において、財政改革をしていく上において、これから内閣の方針を決めようというんです。かんかんがくがく議論して賛否両論があるのは当然であります。これからもいろんな機会を利拝して利は利の主張を展開していく、私に反対するのは堂々と主張を展開して、結果は落ちつくところに落ちついてくる、その方針には従っていくと。
  100. 林寛子

    ○林寛子君 総理、こういうのは内閣不一致と日本語で言いませんか。
  101. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、まさにオープンで議論をしていることを悪いと思いません。そして、小泉さんは自由民主党の総裁選で私と戦ったときにもこの主張を述べておられました。そして、その主張を持っておられることを知った上で、閣議で決定したらこれには従ってもらう、しかしプロセスにおいて個人の意見を言うことは構わない、そう言って私は厚生大臣を受けてもらいました。
  102. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 林寛子君の残余の質疑は午後に譲ることといたします。  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十四分休憩      —————・—————    午後一時一分開会
  103. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  平成九年度一般会計予算平成九年度特別会計予算平成九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、休憩前に引き続き、林寛子君の質疑を行います。林寛子君。
  104. 林寛子

    ○林寛子君 午前中の時間切れということで、厚生大臣そして郵政大臣、御両人のそれぞれの違った意見、個人のいろいろな所信の一端であるというようなお話がございました。総理からも一言だけお話がございましたけれども、これは本会議場で担当外の省についての御発言であって、私どもは、その委員会の中でその議論を随時なさることは自由だと思いますし、また予算委員会等々中身のある審議をする上では必要だと思いますけれども、全く違う部署の話を本会議場の答弁であったり、あるいはきょうの予算委員会でも冒頭五分間でしたけれども両方お聞きになって、郵政大臣も同じですかと言ったら、違いますとはっきりおっしゃるんですね。  これは、やっぱり私どもが審議していく上に、担当の委員会の話ならともかくも、本会議場でまで意見が違うことが出るということは、私どもとしては納得できないことでありますので、それについてもう一度総理からお話をいただきたいと思います。
  105. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 午前中、議員から厚生大臣、郵政大臣意見をただされましたとき、確かに私は、閣内不統一ではありません、なぜなら決定したそれには従ってもらう、しかしそれぞれ国務大臣としての立場で私たちは大いに議論を闘わしております、そうしたことをとめるものではないということを申し上げました。  今、本会議場あるいはその所管外の委員会、私は、本会議場は御質問があったからこそ答弁をするわけでありますけれども、その答弁の仕方はその場にふさわしいお答えの仕方というものがあるだろうと思います。その意味において不適切であるという御注意は、ある程度お受けをすべき部分を持つものであろうと。そして、所管外の委員会での御質問に対しましてもその範囲内でお答えを申し上げる。本来なら、所管委員会以外のところで所管外閣僚にその所管外閣僚の全く守備範囲ではないことをお尋ねになることの方にも私は多少の問題があると思いますけれども、その上で不適切という御注意があるならば、場所が不適切であったという点については、先ほどの答弁を補足いたします。
  106. 林寛子

    ○林寛子君 まだ納得ができません。というのは、持論は持論として、内閣にお入りになったときの条件として、それが条件であったかどうかわかりませんけれども、私は持論を展開するよということで御就任になったと伺っておりますけれども、小泉大臣、いかがですか。
  107. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) それにお答えする前に、本会議であろうがどこの委員会であろうが、質問者に誠実に答えるのがなぜ悪いのか、私はこれは納得できません。国会議員として議論の活性化を図れというのは国民の声であります。それを質問者が聞いて、誠実に答えたのがおかしいと言う方が私はおかしいと思っている。  なお、私は、厚生大臣に就任する際に、郵政三事業民営化の私の持論は撤回しないし、厚生大臣になっても発言しますよ、それでもいいんですかと総理に確かめて、結構だと言うから就任したんです。
  108. 林寛子

    ○林寛子君 そのとおりだと思いますので、私も御意見を封じるつもりもさらさらございませんし、今これが国民的課題であるし、日本の再生はこれをおいてないと思うくらい私も思い込んでおりますし、新進党もその件に関しては法案を出す準備を、郵政大臣のお言葉に沿ってではございませんけれども準備いたします。  けれども、この件に関して、衆議院の予算委員会の中でもこういう問題があって、官房長官が記者会見までなさいました。あの記者会見はどういう記者会見だったか、もう一度官房長官、お願いします。
  109. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 私から求めてこの件で記者会見をした覚えはございませんが、記者の中からの質問に答えて幾ばくかのお答えをいたしております。
  110. 林寛子

    ○林寛子君 じゃ、官房長官、そのときにお答えになった中で、二人の意見が違うことは橋本内閣として当たり前のことだというふうにお答えになったんでしょうか。
  111. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 当たり前かどうかはその発言をきれいには覚えておりませんが、いずれにしてもこれだけの財政再建や構造改革行政改革をするわけですから、場合によっては船が壊れるぐらいの議論をしながらでなければ次の時代を展望することができない、その意味での議論は大いに歓迎をすべきことだと、こう申し上げました。
  112. 林寛子

    ○林寛子君 歓迎するとなりますと、これは民営化をすることも聖域ではないというふうに理解してよろしいですか、総理大臣
  113. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 総理に取ってかわって言うわけではございませんが、決定するまでには聖域というのはなく、あらゆるものを討論し合う。そして、いいものが決まれば、それが閣議で一致できればそれは採用していく、その姿勢であります。
  114. 林寛子

    ○林寛子君 そういうことになりますと、先ほどからお答えになりました郵政大臣のお答えは、あるいは今の内閣の方針、あるいは私どもが期待している、総理がおっしゃる、火だるまになって行革をやるということとは反する答弁であったと思いますけれども、いかがですか、堀之内大臣
  115. 堀之内久男

    国務大臣堀之内久男君) 先ほどもお答えいたしましたが、行財政改革橋本内閣の最大の課題であると申し上げております。私も閣僚の一人として今後精いっぱい取り組んでまいります。それと私の所管する郵政三事業の民営化の問題とはつながらないと思います。  というのは、これから政府、与党で一体となって検討するわけであって、民営化ありきでこれは検討するものではない。現在、郵政三事業が国民に高い支持を受けておることも御承知のとおりであります。したがって、国民全体の利益、そうしたものを考えながら今後幅広く御検討をいただき、その結論が出れば私もそれに従ってまいりますが、私は現体制が一番いい方法だと、かように考えております。
  116. 林寛子

    ○林寛子君 現体制が一番いいのであれば変える必要はないんです。なぜこの郵政三事業の民営化論が出ているかという根本を理解していらっしゃらないんです。この体制がいいんだったら、それを民営化しようとかという話はどこにも出てこないんです。現体制は一番いいんだと、最良だとおっしゃるんであれば、これは同じ方に聞いていても仕方がありません。総理総理がなさるという行革の中に聖域はない、現体制が一番いいんだったらなぜ変えるんですか。
  117. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私、大変複雑なお尋ねだなと思うんです。なぜなら……(発言する者あり)まじめにお答えをしますから聞いていてください。
  118. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 不規則発言は慎んでください。
  119. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) なぜなら、最初から私たちは閣内で大いに議論をしております。そして、その結論が出たら全員が従います。そして、郵政三事業について議員がお取り上げになりましたのは、私に御質問になりました時点では、少なくともお二人の閣僚の意見を対比させた上で、閣内不統一ではないかというお尋ねでした。ですから、私は不統一ではありませんと申し上げております。  そして、郵政三事業に対して二つの意見が国内にあります。当然ながら閣内にもあります。一つは、まさに郵政三事業というものが離島や山間僻地までをカバーし、郵便事業においても国民の暮らしに確実に密着した存在であり、また他の金融機関が店舗を持たないような場所においても預貯金の受け入れあるいは簡易保険の加入申し込み受け付け、こうしたことで国民生活に密着し、長い歴史がある、そしてこれは守るべきという考え方が一つあります。同時に、民営化しかるべしという意見もあります。その中間に、むしろ規模を縮小できないかと。両方の存在が、言いかえれば現在の郵政三事業に民間も参入させてもよいのではないかという意見もあります。  そして、歴代内閣、私が知る限りにおきまして、この問題は必ずしも閣内で閣僚同士が真正面から議論をするテーマではございませんでした。先ほど厚生大臣自身が言われましたように、私は持論をとめないと申し上げております。そして、議論は現にいたしております。  議論なしのどちらかの意見一方だけをとって、それで押しつけていくことが今の時代にふさわしいでしょうか。私は、それぞれの問題について論議を交わすのは閣僚懇、閣議の場、さまざまな場でこれからもお互いが続けていくと思います。そして、厚生大臣が主管しておられるその分野に対して、他の閣僚が意見を言うことも決してまれではありません。
  120. 林寛子

    ○林寛子君 議論をしちやいけないと言っているんではなくて、大いに議論していただいていいんですけれども、私は、橋本内閣が火の玉になって行革をやるとおっしゃった限りは、残すにしろあるいは民営化をある部分導入するにしろ、今はゼロからの出発ですという確認だけはいただきたいと思います。いかがですか。
  121. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 現実に郵政事業というものは三事業が存在し、国民の暮らしに密着し、この瞬間も郵便が配達され、預金が受け払いされ、簡易生命保険も存在をいたします。  議論について、すべての分野聖域なしに議論をするということとゼロということとは違いがあると思います。
  122. 林寛子

    ○林寛子君 こればかりで時間をとってしまっては肝心の、大事な話もたくさんございますけれども、要するに今のままでは両方の大臣のスタンスがまるで違うんです。少しでも接点があればいいんですけれども、片方は現体制でいくと言うし、片方はやっぱり官が民を圧迫してはいけないという持論をお持ちで、私は大変国民の側に立ったお話だと思うんですけれども、そういう話が橋本内閣の中で、それぞれのお立場でそれぞれの話があると、私ども橋本内閣の向いている方向がどっちなんだろうとわからなくなるんですね。  ですから、そういう意味では、私どもは何としても、言いたいことを言うのは結構ですけれども、基本はこうなんですよというスタンスだけはきちんととっていただかなければ、どの政治家の言うことも信用できないということになるんです。片一方は右向いている、片一方は左向いている。じゃ、橋本内閣の両足はどこに立っているんだということになるものですから、そういう意味では、私は今後、橋本内閣の閣僚、皆さん方のそれぞれの立場での御発言は、国民を惑わさないような、私たちの論議に、私たちの気持ちをそれに誘導するような御発言は厳に慎んでいただきたいと思いますけれども、その点は委員長、よろしくお願い申し上げます。
  123. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 私が答えるところではございません。
  124. 林寛子

    ○林寛子君 官房長官、今の件について、官房のかなめでいらっしゃいます官房長官に、この問題で今後いろんなことが起こってくると思いますので、橋本内閣の屋台骨を支える官房長官、いかがでしょうか。
  125. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 先ほども記者の懇談会で申したあらましを申し上げたんですが、行政改革財政再建やもろもろの改革というのは、船で言うと船の屋台骨が壊れるようなことすら予想しながら、あるいはそれを回避しながらやらなければならない問題でありますから、私自身が屋台骨でもつかどうかわかりませんが、いずれにしても甲論があり乙駁があり、そして正反合の方向に間違いなく私は議論は終結をする、このように確信をいたしております。  議論は高め、そして結論は淡彩に最後には割り切る、そういうのが政治の姿勢だと考えます。
  126. 林寛子

    ○林寛子君 最後に一つ、それではもう一度小泉厚生大臣、一つに決まったらそれにまとめていくというお話ですけれども、もし持論が通らなければどうなさいますか。
  127. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 橋本内閣は一切の聖域なしにあらゆる改革問題について議論する。今までタブーと言われていた郵政三事業民営化論が国会の場でもこうして議論される。今までの内閣になかったことなんです。いかに橋本内閣が改革に意欲的か、そのあらわれでもあると思います。  私は、その過程で行財政改革について必要だと思う郵政民営化論を唱えていく。結論はやってみなきやわかりません。やってみなきやわからないでしょう。それまでであります。
  128. 林寛子

    ○林寛子君 ずっと橋本内閣の閣僚の御発言が多岐にわたっておりまして、多士済々なのは大変結構なんです。けれども、皆さんのお言葉の中に今までおっしゃっている総理の御決意と違うことが種々あるものですから、一体橋本内閣の皆さん方は、言いたいことを言って橋本内閣としての一本筋が通っていないんじゃないか、こういう疑いを国民も私も含めて、どうも私は頭が悪いからかもしれませんけれども、ぜひそういうことを私は伺っていきたいと思うんです。  まず、いろんなことをおっしゃっていますけれども、亀井大臣、就任のときに、公共事業はもういいじゃないかという議論はおかしいという御発言があったんですけれども橋本内閣にお入りになりましてこれだけ時間がたったんですけれども、お考えにお変わりありましたか。
  129. 亀井静香

    国務大臣(亀井静香君) 全然変わっておりません。
  130. 林寛子

    ○林寛子君 堀之内大臣、先ほどからもたびたび御答弁いただいておりますけれども大臣も就任のときに、国民から預金部分を民営化しようという意見はないということを記者会見の冒頭にもうおっしゃつちゃったんですね。今これだけ議論が進んでおりますけれども、今の橋本総理のお言葉にもありますように、もしも橋本内閣で言われたときには、この冒頭におっしゃったお言葉は撤回なさいますか。
  131. 堀之内久男

    国務大臣堀之内久男君) 私もちょうど閣僚に就任して約三カ月半になりますが、今までのこの間におきまして、郵政三事業に対して与党の皆さんから、あるいは野党の先生方からも民営化すべしというような御指導は一つもまだいただいておりません。ただ、この委員会で二、三の方からいろいろ御質問はいただいておりますが、それぐらい私は高い支持をいただいておるんではないかと。今の郵政三事業が大変立派な仕事をして、独立採算できれいに仕事を進めておりますので、そういう意味で評価を受けているなと思います。  そこで、今後、郵便貯金その他におきましても、私はこれからも国民のささやかな貯蓄サービスとして十分理解をいただけるものと、かように考えておるところでありますので、就任のときの発言をそのまま私は守っていきたい、こういうように思っております。
  132. 林寛子

    ○林寛子君 まだそれぞれいらしていますから、稲垣大臣、稲垣大臣も就任のときにいろいろおっしゃっていますけれども、北海道は本州にある各地域の都府県とは別で、これを一省庁に統合して、その中に組み入れて十把一からげにやるというのはいかがなものかというお話がございましたが、これは変わっていますか。これは就任のごあいさつです。
  133. 稲垣実男

    国務大臣(稲垣実男君) お答えをいたします。  十把一からげというんですか、そういうような発言はいたしたことございません。  北海道開発庁の今日まで尽くしてまいりましたことは委員も御承知でございますが、北海道というのは、何にいたしましても、歴史も浅いし、広大な国土を持っておりますし、また非常に自然にあふれているところでございます。そういう意味で、これをどのようにしていくかという視点も、私は二十一世紀を踏まえていろいろ見方も変わってくると思います。  例えばの話でありますが、私ども長い間、日本国というと、地図を見てみると一番北の端だというふうに見ておりますが、グローバルに地球を見てまいりますと、北の大変重要な拠点でありますし、ロシアの上空が開放されてまいりますと、やはり北の物流のセンターとしてこれから大いに活用されるところであろうと私は思います。  いずれにしましても、北海道開発庁のあり方といたしましては、個々の組織の問題としてではなくして、ただいま中央省庁の再編等々、見直しをやれということでありますから、中央省庁全体の見直しの中で検討されるべきだと思っておる次第であります。  その検討に際しましては、現行の体制が北海道開発を推進する上で相当の成果を上げてきたことを踏まえまして、今後とも北海道開発が着実に推進される体制が確保されることでありまして、そのためには、従来の縦割りの弊害を排し、地域の事情を踏まえた総合的な行政を推進するシステムが確保されることが極めて大事だと思う次第であります。  以上です。
  134. 林寛子

    ○林寛子君 聞かないことを長々と御答弁いただかなくても、御親切ですけれども結構でございますので、要領よく短く言っていただければ結構でございます。  これ言っておりますと、橋本総理、本当にいろんな個性豊かと申しますか、ばらばらと申しますか、散らしずしみたいで、いろんなものを、ばらばらなネタを入れればおいしくなるのかもしれません。(発言する者あり)おいしいという声もありましたけれども、やっぱり国民橋本内閣の姿を見ているんですね。ですから、一人一人の大臣のお言葉によって、国民橋本行革火だるまというのはうそじゃないかなんて思う人もいますもので、これは何としても、こういう発言が全部自分の省庁を守るためだけに大臣になったというような人は、大臣から厳正に、これは天下国家のためにいる国務大臣なんだ、各省庁の担当は国務大臣の下についているんだということをよく御教育いただきたいと思います。いかがですか。
  135. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これは、私がお答えすべきことなのかどうかわかりませんが、例えば小泉大臣医療保険改革あるいは介護保険の御質問がありましたら、郵政三事業にかける情熱以上に一生懸命に小泉さんは御説明を申し上げると思います。  それぞれの閣僚は自分の受け持った省庁に責任を持っております。その上で、国政全体の中で国務大臣としての識見において議論をする、これを封殺することは私は必要のないことだと存じます。
  136. 林寛子

    ○林寛子君 それでは、きょうも予算委員会審議がされておりますけれども、私どもに提出されましたこの政府の九七年度予算案というものは、「案」と書いてある以上はこれは訂正可能なんですか、どうなんですか。
  137. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 政府としては、現在の時点において最善と信じ平成九年度予算案を策定いたしまして国会に提出をいたしました。そして、衆議院の御審議は終了し、今参議院予算委員会で御論議をいただいておるところであります。  法的にはいろいろな議論をすることは可能でありましょうが、私どもは最善と信じ国会に提出をいたし、両院においてこのまま無修正で可決していただけることを心から願っております。
  138. 林寛子

    ○林寛子君 この予算案が衆議院を通過いたしますときに、与党三党の合意がされました。それは御存じだと思いますけれども、修正はしないが執行段階では節約に努力する、こういう合意事項があるわけです。  これを執行段階で節約していくというのであれば、どこをどう節約できるのか、ちょっと大蔵大臣、その点簡単におっしゃってください。
  139. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 事務的経費は毎回節減をかけてスタートを切ることにいたしております。その範囲で行う、不用額が立てば不用額と。  以上であります。
  140. 林寛子

    ○林寛子君 今度の予算案の中に、当然のことながら、四月一日から行われる消費税の五%、これを組み込んだ予算案でございます。  衆議院を通過した時点で、それぞれの大臣はいろんなマスコミ報道等々を目にしていらっしゃると思います。すべて、すべてと言ってもいいくらいの皆さん方が、なぜあの予算が修正なしに素通りするんであろう、野党の力がないからだろうか、あるいは与党が強引過ぎるからだろうかとか、いろんなことがあるんですけれども、この法案が通ることによって消費税が五%になって国民はどれだけ生活に影響が出るか。  私は、届け出てありますこのパネルを使わせていただきます。(図表掲示)  消費税五%、それによって上がるもの、値上げされるもの、公共事業あるいは運輸関係、サービス関係、物販等々、これはもう書いていれば切りがありません。そして、今までは内税で三%にしていたものも、今度は外税で全部五%が外になります。  公共料金もこれだけ上がるわけですね、全部。電話も上がります。公衆電話も上がり、電気も上がります。ガスも上がります。交通関係もそうです。そうですね、運輸大臣。JRも上がります。営団地下鉄も、あるいは東京札幌間の飛行機も。サービス関係、銀行の振り込みの手数料も上がります。身近なところでは、子供を連れていく豊島園の入園料も上がります。美術を愛好しようという、西洋美術館の入場料も上がります。早稲田大学、上がるんです、大蔵大臣。授業料も上がるんです。そして、進学ゼミも当然上がります。そして、ビールも上がるんです。庶民がわずかな、一杯飲んでという、これも上がっちゃうんです。橋本総理はヘビースモーカーと伺っておりますけれども、たばこも上がるんです。  あらゆるものが上がって、橋本内閣は火だるまになって行革をするとおっしゃいますけれども、五%に上がると国民生活は火だるまになるんです。橋本内閣が行革で火だるまになって、節約できるところ、切れるところを全部切って、それから国民にお願いするというなら、これはまだ話がわかります、日本の将来のために。それを何もしないで、火だるまになって行革をやりますという言葉だけで、国民生活だけがなぜ火だるまにならなきゃいけないんですか。これは全く納得がいかないことなんです。  私はそういう意味で、橋本総理はこの国民生活に与える影響をどのように理解していらっしゃいますか、御意見を伺わせてください。
  141. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 一点まず冒頭申し上げたいのは、昨年の衆議院選の間じゅう、百何カ所の街頭遊説をいたしたか忘れましたけれども、そのすべての場所で私は、規制の緩和、地方分権によって仕事を地方に渡していくこととともに、消費税率を二%引き上げさせていただきたいと全部の場所で訴えてきました。そして、それが必要なんですということも訴えてきました。  そして、私は改めてここで一々申し上げようとは思いませんけれども、少なくともこの平成九年度の予算を編成いたします前に大蔵大臣に三兆円以上の国債縮減を求めたわけでありますが、結果としては四兆三千億円の国債発行額の縮減に大蔵大臣は努めてくれました。そして、国債費を除いて、国民からちょうだいをする税金などの範囲内で歳出をまとめてもらいたいと。これも財政再建目標の最初のところですが、一つの大事なところですけれども大蔵大臣はそうした努力もしてくれました。  そして、先ほど御質問がありましたが、政府は今までも、当然のことながら、予算の執行の中で節約に努力することはやってまいりました。今回も一層そうした努力、同時に予算の効率的な執行というものに今まで以上に努めていかなければならないと考えております。
  142. 林寛子

    ○林寛子君 努めていかなければならないとおっしゃるお言葉だけはよくわかるんです。努めていかなければならないということと努めるということは違うんです。目標はあっても、実行をするかしないかなんです。それを私は橋本内閣が実行していないと。言葉はある、確かに。火だるまになって行革をやるとおっしゃった言葉を私も伺いました。けれども、それを実行するかしないか。目標だけで、国民にだけは実行しなさい、四月一日からですよと。  それまでにしなきゃいけないことは、この消費税五%に関しても、業者の手元に税の一部が残る益税の解消もいたしますとおっしゃいました。また、それだったら食料品の税率も、食料品だけは何とか考えようではないか、そういうことも五%に上げるまでにこれは審議するということになっていたはずでございますけれども、その審議はどこでどうされたでしょうか、大蔵大臣、短く。
  143. 三塚博

    国務大臣三塚博君) これは新内閣になりましてから、平成六年決定事項、それを踏まえて閣議で再確認をし、法制の従うところによりましてスタートを切らせていただく。よって補正予算の際にも、後でありますけれども論議が、そして衆参あわせての予算委員会における論議が行われておる、いずれも適法に行われておるものと存じます。
  144. 林寛子

    ○林寛子君 論議が行われているとおっしゃいますけれども、少しはどこかを解消できたんですか。
  145. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 何の解消ですか。
  146. 林寛子

    ○林寛子君 今の益税の問題等々の何かしるしがあるんですか。
  147. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 益税についても御案内のとおり、詳しくは主税局長から答えさせますが、できる限りの解消策を講じました。それと同時に、立場の弱い各位に対する特別福祉金というものの交付も行うと。両々相まちまして、益税についてはほぼ解消に向けて、一〇〇%ではございませんが、御批判にこたえておると、こう思っております。
  148. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) いわゆる益税関係につきましては、この四月から実施されるわけでございますが、一番問題が多いと言われていました限界控除制度、これは平成元年からずっと続けておりましたけれども、今度これをやめることにいたしました。  また、簡易課税制度、スタートのときには年商五億円までの人にこれを使っていただくということで、中小事業者の事務負担の解消ということを考えましたが、大分おなれいただいていると見られますので、この四月からは二億円以下の方だけに使っていただくというようなことをしております。  また免税点につきましても、法人の方々がこれを悪用している例も見られるので、資本金一千万円超の法人につきましてはいわゆる免税点制度の最初の二年を使わせないということも実施いたします。  これによりまして、大臣が今申し上げましたように、かなりの益税解消に役立つと思っております。
  149. 林寛子

    ○林寛子君 お言葉なんですけれども、かなりのということでは国民は困るんですね。やっぱり不公平ではないかと、そういう気持ちがあるものですから。これ以上私申しませんけれども、実行するときにはそれなりに不公平がないように公正な取り方と、そして五%によって一番困る所得の低い人あるいは年金をもらっている人たちへの、生活の一番苦しい人の立場に立ってそういう不公正は一刻も早く直していただきたいと思いますので、かなりな部分ではまだ承諾できませんけれども、時間がありませんから次へ進みます。  先ほど総理がおっしゃいました、行革はやっていくんだ、私はこれからも火だるまになって行革をやるんだと、そうおっしゃっております。私はそれを信じたいと思いますけれども、行革をする面で一つやはり地方分権ということが大きな問題になってくるだろうと思うんです。地方分権になりますときに、一番大きな問題は、官官接待でありますとか、このごろの新聞とかあるいはテレビ、マスコミ等々で盲官接待のことであらゆるところからオンブズマン制度というもの、情報公開によって私どもの目にさらされるようになったんです。(図表掲示)  私は、これも一例だけで、書き切れません。四十七都道府県中大きいところだけ、二十一県取り出してみました。本当にあきれるんですね。空出張、官官接待、不正経理。北海道二十一億四千百、青森県一二十億七千六百、これは九三年から九六年。もうこれ読んでいると切りがありませんからやめますけれども、本当に次から次へよくこれだけのものが出てくるなと思うぐらい私はびっくりしているんです。  そして、なぜこういうことが起こるんだろうと、これは国民の皆さんも本当に気にしていらっしゃると思うんですね。まじめにやっている人が損をするような、そしてその手口たるや本当に私は恥ずかしいと思うんです。  総理、自治大臣にも聞きますけれども、基本的なことなので、まずその前に総理に伺いたいんです。予算というものは単年度予算で使っている限りはその年度内に使い切らないと次がもらえないものなんでしょうか、そういう予算でしょうか。
  150. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) そう切り口上でお聞きをいただきますと、厳密に私も承知をいたしておりませんが、本来、年度内にその予算は執行する、ただし格段の理由があるとき不用を立てることは可能と、そのように思います。
  151. 林寛子

    ○林寛子君 やっぱり官官接待の大きなもとは補助金制度だと思うんです。皆さん方も御存じのとおり、この補助金の大きさというもの、これは郵政に関係がありますから、またこれは別の問題にいたします。  ちょっとお聞きいただきたいんです。名前は出しません。ある県です。九四年度、七つの課で千七百万円を東京事務所に送っている。半分は国の補助金を充てていると考えてもらって結構ですと。これがA県です。あえて県の名前は伏せます。お心当たりのある人もあるでしょう。ある県、年末の予算編成に向けて公共事業費の確保目的で、十一月九日、日本料亭でお酒四十三本、ビール二十九本、計四十四万円支出。ある県、結婚式場で盲官パーティー、二回で二百人、コンパニオンの人件費も含めて四百七十万。ある県、東京事務所では九四年度一年間に週末と祝日以外ほとんど連日実施した。九四年度食糧費は九百三十九件、総額約八千七百万。これは言っていると大変なんですけれども、大体今わかっているだけでも官官接待は全国で年間三百億円くらいに達しているんです。  この官官接待のもとになっている補助金というもの、国の裁量でそれぞれの補助金を地方に分配するシステムというものではどうしても地方は中央に、卑屈になると言うと言葉が言い過ぎかもしれませんけれども、お願い申し上げる立場になるのは当たり前だと思うんですね。また、地方自治体は、何かをしたいと思う目的があってお願いに上がるわけですから、そういう意味ではこの争奪戦、何としても私は考え直さなきやいけないと思うんです。  陳情合戦というのが毎年行われます。地方から何回も出張して、補助金をいただくためには、補助金の交付申請書、どういう種類にどういうお金が要るかということ、事業箇所別の調書、事務費の調書、補助金をいただくために段ボールに入り切らないような書類を出すわけです。そして、その書類づくりの人件費、陳情の出張費、これだけのものをつくらなければ補助金というものをとれないのか。世の中によく言われております。今五十万ということはなくなりましたけれども、五十万の補助金をもらうのに百万使ったという話もあるんです。  自治大臣、これをどうお考えになりますか。
  152. 白川勝彦

    国務大臣(白川勝彦君) 補助金という制度は、地方自治体にとりましては非常に大事な制度だったと思うわけでございます。  この補助金という制度がなかったならば整備できなかったこともいっぱいあったと思います。例えば、委員が文教関係で大変御努力されましたが、豪雪地であるとかいろんなところでは、一般では二分の一の校舎の補助金が、三分の二にそういうところはなっておるために、私のところは豪雪地でございますが、非常に財政力の弱いところの校舎はほとんどおかげさまで整備されました。  今まで補助金というものがそういう役割を果たし、日本財政力のあるところ、ないところ、自然条件が厳しいところ、そういうところを含めて均てんな国土をつくるところに大きな役割を果たしてきたことは私は事実だと思います。  ただ、地方分権という時代にこれをこのまま続けていっていいかという問題が提起され、これは地方分権推進委員会で今真剣に議論されているところであります。
  153. 林寛子

    ○林寛子君 本当に私は取り組んでいただきたいと思うんです。  補助金というものはやっぱり一度ゼロにして、地方分権とおっしゃるのであれば、総理がお考えになっているように、きちんとある県にまとめてお金を上げて、それぞれの地方分権が本当にひとり歩きできるような、それが本当の地方分権だろうと思うんです。ただ、いつまでもこういう補助金を分配しているようではいつまでたっても私は自立ができないと思うんです。  私は、自立自助、そういう意味でも地方がそれぞれの立場で有効なその土地に合ったお金の使い方をするべきだという気持ちを持っております。新進党としても補助金は一度ゼロにして、そして地方にある程度今申し上げたような分配をして、各地各地のその県に合った、その府に合った、その道に合った事業をそれぞれにしていくべきだと思っておりますけれども、それに関して総理はいかがでしょうか。
  154. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 模範解答ですと、現在地方分権推進委員会で鋭意議論をしていただいております。その答えをいただきまして、地方分権推進計画に盛り込みと言うのかもしれません。  しかし、今私は、議員が御指摘になりました官官接待から補助金についての議論、半分より多いかもしれません、同感の部分を持っております。その上で、補助金の中であなたの言われるようにできるなと思うものもありますが、例えば生活保護でありますとかあるいは義務教育国庫負担金とか、そうしたある意味では白紙に戻して地方自治体にお渡しをするというにはなじまない性格のものもある。  いずれにせよ、補助金というのは常日ごろの見直しの必要なもの、そうした点をきちんと厳格にやりなさい、一般財源化できるものは積極的にしなさい、そういうサジェスチョンをいただいた、私はそう受け取り、その上でそれは私も異論がありませんと申し上げます。
  155. 林寛子

    ○林寛子君 総理にぜひこのことは、私ども考えが同じであるところは何も反対のための反対をするような政党でもございませんので、大いにやっていきたいと思います。  ただ問題は、自治体が監査委員を置いているわけですね。これをごらんいただいたらわかりますけれども、九二年、九三年からのものを書いてあるんですけれども、それぞれの監査委員がありながらなぜこれがあるのか。これは後で自治大臣に伺います。  それから、もう一つ不思議なのは国の会計検査院なんですね。会計検査院がありながら会計検査院の中で、この間も私びっくりいたしました。これを確かめようという会計検査院が身内同士で、何で検査院が、検査する人がなぜ悪いことをするのか、一体だれを信じたらいいのかなと思ってびっくりしちゃったんです。検査院と監査事務局ぐるみで空出張の宴会をしているんですね。空出張のお金を出して宴会したんです。  会計検査院来ていますか。1ちょっとこの事件、信じられないようなことなんですけれども、これおやりになったんですかおやりにならなかったんですか。
  156. 疋田周朗

    会計検査院長(疋田周朗君) ただいま先生からお話がありました件につきましては私まだ承知しておりません。後ほど調査いたしましてお答えいたしたいと思います。
  157. 林寛子

    ○林寛子君 それじゃ申しましょう。大事なことがあるんです。  会計検査院は天下り先がないんです。どうしてか。会計検査院は特殊法人や国の機関へ天下りがありませんから、OBが現在特殊法人、石油公団だとか都市整備公団だとかそういうところへ六法人。また、国立国会図書館、衆議院事務局、これわかりますね。そのうち、関係者がこう言ったんです、会計検査院の人ですようちは所管する財団や特殊法人がなく、他省庁に頼んで天下りポストを開拓してきた、OBの面倒を見ていただいているのだからお手やわらかにと言われれば無視できない雰囲気だと。  これは誤りでしょうか。
  158. 疋田周朗

    会計検査院長(疋田周朗君) お答えいたします。  私どものOBで、過去の検査経験などを買われまして、相手方からの要請に応じまして一部公団の監事などをやっている者は確かに委員御指摘のとおりございます。これは、それぞれの公団、事業団の内部におきまして、監事として、検査経験を生かしながらその団体内部での会計経理の適正化に努めているところでございます。したがいまして、OBが監事、監査役で活躍しているからということで検査に手心を加えるということは決してございません。その点、御理解いただきたいと思います。
  159. 林寛子

    ○林寛子君 私は信じているんです。会計検査院がきちんとやっていただかなかったら、私どもの手の及ばないところなんですから。しっかりやっていただきたいにもかかわらず、こういう話が外に出てくるということは大変情けないと思って、叱咤激励しようと思って申し上げているんです。  ですから、OBの方がその能力を買われて、どこかにいらして次の職業についていらっしゃるということを責めているんじゃないんです。ただ、それによって手心が加えられたなどと言われないように、私は会計検査院というものは本当に信念を持って国民の要望にこたえた検査をしていただきたいということを要望しておきたいと思います。  続いて、ちょっと橋本総理にお聞きしたいことがございますけれども橋本総理は寄附金のいわゆる政治団体というものを幾つお持ちでいらっしゃいますか。
  160. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 届け出て一つということに決められております以外に任意のグループは幾つかあろうと思います。今ちょっと数は私よくわかりません。済みません。
  161. 林寛子

    ○林寛子君 別に政治団体をお持ちになっているのが悪いことだと言っているわけではございませんで、正規のルールであれば私はちっとも構わない、政治活動をする上に大事なことだと思っております。  ただ、先日来から国会答弁の中でも何度か政治献金をお返ししたという御発言がございまして、どのようなものを、どれくらいの金額をお返しになったのか、覚えていらっしゃる部分で結構です、ちょっとおっしゃってください。
  162. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) まず第一に、ワタキューセイモア株式会社、独禁法違反に基づく警告を受けておりました。それは九四年の六月に受けたようでありますが、それ以降の寄附合計二百万円、これは昨年の十二月十日に事務所の者が持参をいたしました。また、財団法人成研会、これが国からの補助金を受けていたという指摘を受けまして、一月二十日、百万円を事務所の者が持参をして返還いたしております。  また、その後、同種のものがないか、財団法人と公益法人を調べましたところ、日本公衆衛生協会、津山慈風会、真愛会、梁風会というものが出てまいりました。そして、日本公衆衛生協会からの十万円、これは二月二十五日に事務所の者が持参をいたしました。津山慈風会からの十万円につきましては、二月二十五日に現金書留で郵送をいたしました。真愛会からの十万円、これは三月八日に現金書留で郵送をいたしました。梁風会からの二十四万円は三月十五日に現金書留で郵送いたしております。  こうした公益法人、補助金を受けているとは知らず寄附の受け入れをしておりました点は申しわけなかったと思います。
  163. 林寛子

    ○林寛子君 今お返しになったということを幾つか聞かせていただきました。ただ、余りにも総理関係の寄附が福祉等々に偏っているのではないかということも私はちょっと拝見いたしまして、これはやっぱり橋本総理は厚生族のドンであるということを如実に示している。私は、すばらしいことだな、長年の親子二代にわたって厚生大臣をなすったりいろんなことをなさいましたから、そういう意味でこれだけの権力がおありになるので、やっぱり実力者だなと思って拝見したのです。  今官報に載っております大臣の寄附金の受領者の一覧表を私は拝見いたしておりますけれども、あらゆる福祉団体、薬品、きょうは時間がありませんから全部これ言えません。言っていると夜が明けそうなくらいございます。本当にすごいのですね。  そういう意味で、国民が一番不信に思うことは、総理は今申しわけないということで謝られました。私は大変素直でいいと思うんですけれども、謝ればいい、もらっても後で気がついてお返しすればいいんだということが、国会議員がみんなそういう気持ちになってしまってはいけないのだと思うんですね。返せばいいということは、国民の中には、ああいいのかなと。  去年も住専のときに学校で住専ごっこというのがはやったんです。消しゴム借りたり鉛筆借りたり、借りて返せよと言ったら、返さなくていいんだよ、住専ごっこだもの、こう言うんです。それくらい子供たちにも住専というもの、借りて返さないということが学校で住専ごっこと言われるくらい国民に影響を与えたんです。子供にも影響を与えたんです。  ところが、ここにざっと書いている中から抽出したものだけでも、八九年から九五年八百六十万ミドリ十字、九〇年から九三年五百万日本病院寝具政治連盟、九〇年一月から九三年まで二百万日本メディカル給食政治連盟、九三年千五百万日本薬業政治連盟、九三年一千万MDS、同じくMDS、これは個人でしていらっしゃる、個人の開業医さんのグループですけれども、そこで百万、九三年七月から今おっしゃった日本公衆衛生協会が十万、津山慈風会十万、真愛会十万、そしてまた同じくMDSが九四年に百万、ワタキュー、今おっしゃいました五十万、五十万、五十万、五十万で二百万、アール・エコ、衛生センター、これも指定寄附会社なんですけれども、五十万、五十万。  それで、この中で不思議だなと思いましたのは、正式なルートで寄附をお受けになるのはいいんですけれども、後でわかったら返せばいいと。子供たちが不正なルートでお金を持ってきて、何かを買えよとお小遣いだといってもらった、後でそれが不正なことで得たお金だとわかって、じゃ返すよといって返して済むものかどうかという、その感覚だけちょっと伺わせてください。
  164. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 政治資金規正法という法律に基づき正式に受け入れました政治献金は、議員が今お手元にお持ちのとおり、届け出をいたしております。  そしてその中で、これは私自身今おわびをいたしましたけれども、国から補助を受けている公益法人は政治献金をしてはならないというルールがございます。そしてまた、それを知っていて受けてはならないということがございます。恐らく事務所の者たちもそれだけの注意をしておったと思いますけれども、補助金を受けておられるおられない、必ずしもわからない中にこうした寄附がございました。先般御指摘を受けましたので、今もまだ調べております。  今たまたまお尋ねがありましたので、わかる範囲内のもの、そして少なくとも政治資金規正法上、知らないで受けた場合どうだという議論をするつもりはありません。少なくともそれが事実としてありましたので、それは私は返済すべきだと思って返済をいたしました。
  165. 林寛子

    ○林寛子君 総理の親しいといいますか、長いおつき合いだと思いますけれども、八田武志さんというお名前を御存じですか。
  166. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 岡山県の方であり、恐らく二十年、二十四、五年、まだ私が若い議員のころに、二度目の選挙か三度目の選挙か四度目の選挙か、それぐらいのころから応援をしていただいている方としてお名前を覚えております。
  167. 林寛子

    ○林寛子君 皆さん方が善意で募金をなさるんです。私、共同募金というのは本当に皆さんの善意で、毎年小さな子まで、自分のポケットのわずかなおやつ代まで募金に入れてくださる小さな子供の手を見るときに、ああ本当にすばらしいな、日本はまだ本当に温かみがあるなと思っていつも拝見しております。  ところが、共同募金に使途指定寄附、使い道を指定した団体に送ってもいいという規定があるんですね。びっくりいたしました。それはどこかへ集めたお金を寄附なさるんでしょうから、私はそれはいいんですけれども、ただ単に自分のお金を共同募金に寄附をして、そして寄附するかわりにそれは私が指定するところへ差し上げてくださいねという指定寄附なんですね。  ところが今、私二十年来のおつき合いであるとおっしゃいました橋本総理、八田さんという方がいらっしゃいます。社会福祉法人岡山千鳥福祉会理事長でいらっしゃいます。そして、これはアール・エコだとか、いわゆる浄化槽の会社なんですけれども、衛生センター、これも清掃会社です。それを御自分が設立なすって身内の方が、息子さんも含めてですけれども経営していらっしゃいます。  ところが、一九八九年二億、九〇年六千五百万、九一年五千七百万、九二年一億六千九百万、九三年一億八千万、九四年三億四千五百万、これは言っていると切りがないんですけれども、ここで見ただけでも約十億近いお金は、一たん共同募金に納めて、そしてここに還元されているんですね。還元という言い方がおかしいんでしょう。これは指定されて、そしてこの寄附したお金は損金ということで免税の特典があるんですね。ですから、これはそのとおりでいけば、政治団体にそこから、その人の政治団体から政治問題研究会へ、総理のところへ百万円の献金も来ているわけですね。  そういうもの、指定寄附というものを今後どういうふうに変えていこうとお思いになっているか、大蔵大臣、ちょっと教えてください。
  168. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 大変申しわけありませんが、指定寄附で大変たくさんの金額を挙げられましたけれども、それは議員、指定寄附で共同募金にされたものですね。私にではありませんね。
  169. 林寛子

    ○林寛子君 そうです。
  170. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 申しわけありませんが、そこだけははっきりさせていただきたい。今非常に微妙な言い方をされました。  私は確かにアール・エコという会社、それから衛生センターという会社、また全国浄化槽対策推進政治連盟から寄附を受けている。これはそのとおりであります。
  171. 林寛子

    ○林寛子君 私は政治団体をつくることも皆さん方の浄財をいただくこともいけないと言っておりません。  ただ、そういう疑いを持たれて、あるいは総理関係のあるお友達の長いおつき合いの方がそういう共同募金の使途指定の寄附金というものをして、そしてそこで利益を、免税できれいになったお金で、そして補助金としてそれを利用し、しかもその会社から政治献金を受けていると疑われるようなことが私ども総理大臣にあってはならない。そういうことを疑われること自体も、橋本さんを私たちが総理としていただいている上には何としても疑いは持たれないようにしていただきたい。  今後もそういうことはぜひ御注意いただいて、そしてこれは基本でございますから、共同募金の寄附の指定というものをぜひ私は見直すようにお願いを申し上げたいと思います。これは所管が大蔵大臣なんです。
  172. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 社会福祉法人の施設整備ということは望まれるわけですが、そういったところに対しまして共同募金会経由で支出がされるということは、大半というかほとんどのケースがむしろ望ましいケースでございまして、これを仕組みとしてやめてしまうことの問題の方が大きいかと思います。  ただ、彩の問題で一つ問題が出てきましたが、そういった誤解を招くような基準が設けられているとすればこれはきちっとすべきだと考えておりまして、厚生省とこの点については詰めております。三月中にも結論を出したいと思っております。
  173. 林寛子

    ○林寛子君 今のお答えで私は結構だと思うんです。そういう疑いをぜひ持たれないように、私もお気の毒だと思いますけれども、こういうことで私は、総理が一生懸命火だるまになってと、二十一世紀のためにとおっしゃっている気持ちが国民に伝わるような、そういう内閣であっていただきたいし、そういう行動もしていただきたいと思います。  関連の横尾議員質問に譲ります。  ありがとうございました。
  174. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 関連質疑を許します。横尾和伸君。
  175. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 平成会の横尾和伸でございます。  二十一世紀を目前に控えて、我が国社会の仕組み、国内の諸制度がその骨格からぼろぼろと疲労破壊を起こしております。さらに、国際社会の中にあっても、ひとり浮き上がるばかりでなく、通用さえしなくなりつつあります。我が日本丸はどうなるのか、世界はどこへ向かうのか、極めて重大な時期を迎えております。このようなときにこそ、私たち政治家はもう一度政治家は何のためにあるのかという原点に立ち返ることが求められていると思うのであります。すなわち、国民のためにこそ政治家があるという原点から出直すべきと考えます。  応援しないと地獄に落ちるぞなどと言って報復予算をほのめかす大政党の大幹部が出てくるなど、政治家や政党が国民を管理する、統率するなどということは絶対にあってはなりません。また、政治家の自己保身のために国民が利用されてもいけません。私は、あくまで政治家はたとえ自己を捨ててでも国民のために働く、これが本来の姿でなければならないと思います。  私は、この観点から質問をさせていただきます。  さて、多くの方々から私は御意見やお便りをいただきますけれども、ここに何点か要点をかいつまんで御紹介をしたいと思います。  一つは、ある御婦人からのものであります。お子さんの誕生日のお祝いに家族四人でステーキを食べに行ったそうであります。単価七千円のステーキを奮発して、飲み物、デザートなどを若干追加した。支払いは四万円を超えて、思ったより高額だったので内訳を見た。消費税の三%のほかにさらに三%の税金が取られていた。レジの店員の説明を聞いたが納得できなかった。これから消費税が五%に上がったらと思ったら気分が悪くなったというものであります。  またもう一つは、あるサラリーマンの方の訴えでございます。両親と子供たちとともにそろって正月を温泉のある旅館でのんびり楽しく過ごそうと計画し、ことしの正月に初めてそれが実現したということでありました。ところが、支払いのときになって、先ほどの例と同じように消費税の三%のほかにさらに三%の税金を取られていて、すっかり旅行の出費計画が狂ってしまった。温泉で体が温まってほぐれたと思ったら、支払いのときに腹が立って心が冷えた、そう言って寂しそうに笑っておりました。  私がまず問題にしたいのは、この消費税のほかに取られているところの三%の税金のことであります。  この特別地方消費税というのは、一人一回当たり七千五百円を超える飲食、また一人一回食事込みで一万五千円を超える宿泊に対して、消費税に加えてさらに三%の税金をかけるということであります。これは本来、普通税としては二重に課税をしている、消費税で十分取っているはずのところをさらに課税をするという意味で、これまで八年の間、消費税導入されてからずっと二重課税の批判をされ、強くその改正を求められてきたところであります。  私は、この件について、まず自治大臣にお伺いします。  特別地方消費税を、この件について、昨日提案されて、きょうとあしたと委員会でも審議をされるということでございますが、地方税法の改正によって地方消費税を三年後に廃止するということで、その案が提出されているんですけれども廃止するのはいいけれども、何で三年後に廃止するのか。  そこで、伺いたいんですが、まず廃止はなぜしなきゃいけないのか、そしてまたなぜ三年後なのか、ここのところをしっかりわかるようにお答えをいただきたいと思います。
  176. 白川勝彦

    国務大臣(白川勝彦君) 特別地方消費税というのを逆に取られていること自身をほとんどの方は知らないと思いますけれども、料理飲食税というのが昔あったと言うと思い出すと思います。昔は一〇%いただいておりました。これらは俗に言う間接税でございます、サービスに伴う間接税。そして、平成元年に消費税導入するときに、二重課税ということでこういうものは随分廃止されましたが、一〇%ということで地方公共団体にとりましては大変大きな税目でございましたので、これをいきなり廃止されたのでは地方財政に穴があく、こういうことで三%だけは残してくれないかということで、当時の自由民主党の中で、そして政府で決めてそうなったわけでございます。  したがいまして、昔は高額な飲食をしますと一〇%取られたのが、消費税で三%、特別地方消費税で三%、合わせて六%と。本来なら三%にしたかったけれども、地方自治体にとって大変大きな税目であるから何とか存続してほしいという地方自治体の事情も考慮してそうしたわけでございます。  さて、今回五%に消費税が引き上がるわけでございますが、これは消費税が五%に上がるのではございません。四%の消費税と、さらに地方消費税というのが一%できるわけでございます。合わせて五%になるわけでございまして、今度は地方自治体として地方消費税というものを課す以上、地方自治体が二つかけるというのはいかがなものだろうかと、こういう強い声が関係業者からも起こりましたし、理論としても起こりました。  しかし一方では、この特別地方消費税に頼っている市町村、一部の市町村ではこのウエートが大変大きいわけでございます。昨年の十一月、十二月、与党内においてけんけんがくがくの議論をした結果、基本的には廃止するけれども、その影響が極めて大なる地方自治体もあるものでございますから、三カ年の猶予期間をいただいて廃止するということで結論を見たところであります。  そして、衆議院では通過をいただきましたが、参議院の地方行政委員会できょうから審議をいただいているところでございます。  以上でございます。
  177. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 必要がないという判断をした、しかし財源がどうのということで三%。これは、国民の側からしたら、何で取られるのか、国を助けるために、地方を助けるために取られるのかと、こういうことになりますが、事実、これは政府部内でかんかんがくがく、けんけんだかかんかんだか言いましたけれども、かんかんがくがくなる議論がされたそうであります。  そこで、その前段に、平成九年度の税制改正に関する要望事項ということで、各省が自治省に対して税制改正についての要望を出して、その検討をされたということを今言われたんだと思うんです。その要望事項、厚生省、運輸省、これはホテル、旅館などの観光事業の指導監督に当たったり、あるいは飲食店などの営業許可と衛生管理を所管するということで厚生省でございますが、その二省庁がこれは即刻廃止すべきであるということを主張しているわけです。それに対して今の結論が、何か存続の意味は薄いけれども、三カ年は継続をするという結論になったところのようであります。  念のために申し上げますと、これは厚生省の主張でありますが、「(特別地方消費税廃止) 旅館、ホテル、料理店等における宿泊、遊興、飲食等に係る特別地方消費税廃止すること 特別地方消費税は、遊興飲食を賛沢とみなした戦時税制の発想を受け継いでおり、レジャー・余暇活動を重視する時代の流れにそぐわないものであるとともに、消費税との併課は課税の公平を欠いており、さらには、旅館、ホテル、料理店等に対し過重な事務負担を課していること等から、廃止する必要がある。」、九年度から。こういうことを言われているわけであります。  そこで、先ほど大臣が説明された分も含めまして、私はこういう図面をかいてみました。(図表掲示)  本来これは、今申されたように、平成元年に消費税が新しくつくられたときに、物品税とかトランプ類税、入場税、電気税、ガス税、こういうものを消費税で一本化して吸収をして廃止する。それと同じような料理飲食等消費税が特別地方消費税として吸収されずに残った。そして今回、この四月から、これも吸収されるべき地方消費税が新しくできたわけですけれども、このときにまた特別地方消費税廃止をせずに残っている、こういう意味であります。  今、大臣がこの特別地方消費税は地方の財源になっていると。これは数字で見ると、地方財源全体の税収入の一%にすぎない。一%であればもう少し別な方法で努力ができたのではないか、こういう疑問があるんですけれども、その努力についてはいかがでしょうか。
  178. 白川勝彦

    国務大臣(白川勝彦君) 宝石とかトランプとか、そういうものが廃止されたのになぜ特別消費税というのが形は変えても残ったかということでありますが、宝石等にかかる物品税は国税でございました。そして、三%の国税ができた関係で、そちらについては廃止できるものは一本化するということであります。  一方、料理飲食税は地方税でございましたので、消費税導入されたからといって直ちに地方の税収がふえるわけでないので、結果としては額は縮減いたしましたが特別地方消費税という形で残させていただいた。しかし、今度は地方消費税が一%、五%のうちの一%は地方がいただく間接税でありますから、これはダブる形では申しわけないということで検討されたわけでございます。  ただ、今おっしゃったとおり、地方税収全体の一%といっても三千億近くであります。そして、御案内のとおり、観光とかそういうのをやっているのは、例えば過疎地でありながらそういう観光等が非常に主力の地域が多いわけでございまして、そういう小さな自治体あるいは県にとりましては大変ウエートが大きいわけでございます。ですから、直ちに廃止されることは地方財政の運営に大きな支障がある。  しかし、一方ではそういう強い御要望もあるということもまた各地方公共団体も御理解をいただいて、ぎりぎりの折衝の結果、三カ年間で廃止をする。しかも、今まで県と地方との配分も県の方に重かったのでございますが、小さな市町村を中心にするということで、配分を道府県で一、それと同額を市町村に割り振るという内部の改正をいたしまして、三カ年だけお認めをいただくということで今審議をいただいているわけでございます。
  179. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 今言われている説明なんですけれども、確認をしますと、二重課税であるということは認めているわけですね。二重課税だから廃止すべきであるという考えについてはいかがですか。
  180. 白川勝彦

    国務大臣(白川勝彦君) いわゆる各種の間接税が平成元年の消費税導入のときに廃止されたのは、原則、各種の間接税というものはやめて、すべてのものに一律にかかる消費税というものでやろうと、こういうふうに決めたので廃止されたのは事実でございます。しかし、俗に間接税と言われている、しかし大きな財源であって、これを直ちに廃止したら国の財政運営に大変大きな支障があると言われている自動車税とかその他については若干の例外を認めさせていただいたのは、委員御案内のとおりでございます。  それと同じように今回も、理屈としては将来は廃止する必要があるということで廃止することにしたわけでございますが、それは受ける一部の市町村にとりましては大変大きな財政運営上支障があるということで、そこで三カ年間はお許しをいただいてさらにいただくということにさせていただいたのでございますが、基本的には二重課税になる疑いが十分あるわけでございますから、議論をいたしまして、今回廃止をするということにいたしたのはおっしゃるとおりでございます。
  181. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 そこで、今言葉を濁したんですけれども、二重課税の疑いがあると。疑いがあるどころじゃなくて二重課税そのものなんですよ。だから廃止をするということを決めたんだと、私はそういうふうに受けとめました。  そこで問題は、額の問題、財政的な問題のために残したんだと。これが三年間さらに継続する、本来もらうべきでない税金をお願いしてもらうというのが先ほどの答えでありました。そして、何で三カ年間ももらうのかというと、それは財政的に困るからだと、こういうことでございますね。  そこで、財政的に困るというのはなぜなのか。今この特別地方消費税で税収があるのは、ここで言うと年間千三百億円なんです。(図表掲示)今回、地方消費税が新しく創設されて、消費税が五%に上がるという分の実質的には一%分ですけれども、このピンクで書いてある地方消費税の分は二兆五千億です、約二十倍です。新しく二十倍の収入を国民にお願いしている。一方でその二十分の一の特別地方消費税の財源がどうのこうの。これは理屈として合わないんではないか。二十分の一のことをしっかり手当てすれば、財源については対応ができるはずじゃないかと、私はこう思うんですけれども大臣、いかがですか。
  182. 湊和夫

    政府委員(湊和夫君) 幾つかの点について、補足をさせていただきながら御説明させていただきたいと思いますが、まず今御質問にありました財源に関する点でございます。  確かに、ことしの四月から地方消費税の創設が予定されておりますが、この地方消費税は、住民税の減税、消費譲与税の廃止、こういったものと見合った形のものになっておりまして、財源的にこうした新しい税の廃止等を補うものの税源確保はこれによってできているわけではないということでございます。  それから、微妙な言葉の話になって恐縮なのでございますが、二重課税の論議でございます。最終的に、これは政策選択として一般的に言う消費行為にいろんな形の税がかかっておるという意味大臣答弁申し上げておりますが、たばこ消費税あるいはゴルフの利用税なんかもそうでございますけれども、同じ消費行為に税がかかることそのものをすべて二重課税のもとに理論的に根拠がないというわけではないというふうに承知をいたしております。  最終的には、今回の場合は消費税、地方消費税、そして特別地方消費税と、しかも地方の分が二つ同じ普通税としてかかり、課税標準も同じくしていると、こういった特殊的な観点も考えて、政策選択としていろんなただいま先生がおっしゃいました過去の経緯等も踏まえて今回の廃止の決断がされたものというふうに考えておるところでございます。
  183. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 全然わかっていない。二年半前にこの消費税の五%ということが決まって、そして特別地方消費税も検討するとはいえしばらくそのままで来た。それまでの間、決まってから現在までの間、二年半あるんですよ。二年半前の足し算引き算を今説明しているんです。二年半前にどういう足し算引き算をしたか、つじつまをどうやって合わせたかということを言っているんです。  私は、そうじゃなくて、そこから先、決まった後二年半の間十分検討、勉強ができたじゃないか。その間全然その理屈が動いていない。動かすのに、今回新しく税収があるたった二十分の一で何とかなるんですよ。  また、別な観点からこの額を言うと、一千三百億円というのは、地方交付税という国の税金からもらった国のお金を地方に回している分が十七兆円ありますが、これから言うと〇・八%です、一%に満たないんです。そして、ことしの住専処理に使った六千八百五十億円、この額からするとたったの五分の一なんです。これを本気になってやれば、地方の財政の問題なんというのはまた別な展開の仕方があるんですよ。  私は、二年半前のあのときの足し算引き算で決めた、そのまま何にも検討していないんじゃないか、そんなことはいけない。本気になって国民の皆さんの懐から九兆円、税制関係では七兆円いただくんですよ、大変な状況の中で。こんなときに、国として二年半前の理屈を、二年半の間に何の理屈も詰めないで同じ理屈をこねている、何をやっているんだ、私はそう思います。  そこで、伺いますけれども、この二年半の間どういう観点から検討したのか。例えば、先ほど言いました地方交付税、国のお金を地方に回すという十七兆円。これをちょっと〇・八%、一%以下頑張れば今の一千三百億円というのは地方の財源として出るんです、数字上は。そういったこともあるし、先ほど言った住専処理の一次分の六千八百五十億円の五分の一でも一千三百億円は出るんですよ。  こういう観点から、広く大蔵省としてこの二年半の間地方財源をどうやって工面するかということに、担当は地方省庁である自治省ですけれども大蔵大臣、今言われた国全体の財政の中で地方にどれだけ回そうかという、こういう努力は一緒だと思うんですけれども大蔵大臣努力はどうであったか、お伺いします。
  184. 白川勝彦

    国務大臣(白川勝彦君) まず、私の所管する地方税のことでございますから、何度もお話をしておりますが、今回地方消費税導入されましたが、これが丸々上乗せになるならば、その中の小さなことかもわかりませんが、御案内のとおり、特別減税等をやっておりまして、もう既に地方には大きな穴があいているわけでございます。今回初めてそれに見合う新たなる税収が入ってくるわけでございまして、一部の地域ではいただくだけでは足らない自治体もいっぱいあるわけでございます。これが一つ。  それから、地方交付税、確かに十数兆円ございますけれども、御案内のとおり、これはすべてまず使途が決まっております。最低限払わなきゃならないものがいっぱいあるわけでございます、平成八年度でも。最低限交付しなきゃならないものに対して圧倒的に足らないために、大蔵省といろいろ協議しながら数兆円のお金を別途つくった上で地方交付税としてやっと配っているわけでございまして、地方交付税があり余っているならおっしゃるとおりかもわかりませんが、地方交付税そのものが今最低限国が払わなきゃならないのに足らないのでございます。  そういう全体の中で、特に観光地とかはそういうものに伴う特別の事情があります。観光地を営むためにはその市町村は市町村なりの特別の税源が要るわけでございますが、その観光地であるとか飲食店を成り立たしめるために必要な財源を自前で調達するという極めて貴重な財源なんだということをどうぞ御理解をまず賜りたいと思います。
  185. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 何を言わんとしているのか、ちょっとつかみがねているんですよ。  問題は、遊興飲食税というので一〇%、そのとおりであります。それで、長年本件は、リゾートのホテルも含まれますが、ほとんどが温泉にある日本式の旅館なんです。なぜこれに税金をかけるのかと、こういうことで、撤廃運動が旅館団体から出ておりましたことは御案内のとおりでございます。それに地方消費税が出ることによって、トリプルでなぜ中小零細の旅館に課税をするのかという、そういう議論があったということを白川自治大臣が丁寧過ぎる説明をしたわけであります。  ですから、地方財源はよくわかりますし、三年という意味もわからぬわけではありません。
  186. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 大蔵大臣とどうも波長が合わなくて、全然お話を聞いていただいていないような気がしますが、時間の都合もありますから、それにこだわっているわけにいきません。  白川大臣から先ほど、地方の中小の市町村、県や市町村が大変だというお話があったんですが、特別地方消費税の額を見てみますと、この税金が入っているのは大都市が多いんですよ。東京と大阪で三分の一、約三三%、たった二つで。さらに、東京、大阪に愛知、神奈川を加えると四〇%。残りの六〇%を全国で分けているんですよ。額からするとそんなに地方に回っていないんです、今や。昔の一〇%時代の話、消費税がなかった時代の話をされているんじゃないかと思うんですよ。今違いますよ。  そのことと、私、次のこともありますのでもうこの件について申し上げますが、要するにこの件については、三年後の廃止というのは、旅館、ホテル、飲食店等の関係者や私たちの強い主張に政府は論理的に破綻したと、私はそういうことだと思います。また、三年間を継続するというのは、これまで十分な時間があったにもかかわらず、地方財政の財源の確保策の検討を怠り、または手を抜いてきたためであり、またさらに、悪い意味での役人根性として、せっかくの金づるを手放したくない、そういうことが私は明らかになったんだと、こう思います。  そこで、次の問題に移りますけれども、特殊法人の合理化について伺いたいと思います。  今一生懸命政府も言われておりますけれども、特殊法人の整理合理化は行政改革の一環として国民から強く求められている。国民はこの四月一日から消費税の増税を強いられる、また特別減税は打ち切られる。これを強いる政府の側も、みずから努力をして人員、それから国費を、費用を削減する、この努力を一生懸命本来ならばしてから増税をするという順序でしょうけれども、それをしないで、先にしようか、あるいはそれを同時並行でやろうか、恐らくそういう意味だと思うんです。  そこで、総務庁長官に伺いますけれども、これまでの与党三党の特殊法人の整理合理化に関する閣議決定の取り組みと意欲、ポイントをわかりやすくお話しいただきたいと思います。
  187. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) 御承知のとおり、平成七年、村山内閣当時にお決めいただきました十六の公団並びに事業団を八つにする、それから五つを廃止する、合計十一と、これが昨年、ことしと続いて国会にお願いをしておる分でございます。行政改革プログラムで閣議で決定をいたしましたものは、それを着実に実行するということでございます。  それで、それにあわせて、今新たな私ども行政改革考え方として、それはそれとして、いろいろとこの特殊法人の問題については、その後も天下り人事の問題であるとか、あるいは子会社、孫会社、大変すそ野の広いところへ行って、しかもそこに競争原理が働いていないとかいろいろ言われたわけでございます。私の方といたしましては、新たに平成九年度の行政監察ですべての特殊法人を対象としてもう一回洗い直しというか、必要であるのかどうかということも踏まえて行政監察をやらせていただき、そして一方、与党においてもいろいろ御議論をいただいておりますので、それらを踏まえまして、今度の行政改革の中でできるだけ思い切って、目的からして今や存在理由がなくなったものなどについては廃止の方向でやっていきたいと、こう思っているわけであります。
  188. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 橋本総理はみずから、火だるまだか火の車かわからないけれども、何か一生懸命になって行革を進めるということを殊さら強調されているわけであります。  そこで、その強調されていることの現段階でのエキス、今国会に特殊法人の合理化の法案を三本、少ないんですけれども三本提案をされている。その三本についてちょっと表にまとめてみました。これが今国会に整理合理化について提案される法案の三つだと。(図表掲示)  ちょっと説明しますと、三本というのは、文部省から一本、運輸省から一本、労働省から一本、そしてこの二つの団体が一つになると。こういうことですけれども、それぞれ一つになった場合に、前年に比べて国の予算はどうなるのか、常勤役員数はどうなるのか、職員数はどうなるのか、こういう観点から、今特に人員、費用について政府自体が自助努力で一生懸命やらなきゃいけない、そういう中での法案の提案でございますので、それを抜き出したわけであります。  例えば、一番目の私立学校教職員共済組合と日本私学振興財団、この二つが一つになるということで、八年度の予算が三千五百二億円だと。来年度、一緒になったときに予算はどうなるか、三千六百十六億円、百十四億円ふえるんです。そして、常勤役員数は合計九人が七人になる。これは二人減ります。職員数については千三百六十人、来年度はわからないと答えているんです。そのかわり五年後には減らします、どれだけ減らすかと聞いてみると、十一人減らしますと、これが実態であります。  そして二番目、運輸省から提案されている鉄道整備基金そして船舶整備公団、これを一つにするということですが、それぞれ足した予算は千三百十六億円、九年度は千三百五十四億円でプラス三十八億円、全然削減になっていないんです。九人が七人になる。職員数は百三十六人が来年度は百三十五人になる、一人減ります。五年後には九人減ります。  そして三番目に、労働省が提案している中小企業退職金共済事業団、特定業種退職金共済組合、この二つが一つになる。二つ合わせた予算は二百十六億が二百三億円になる。十三億、なるほど少しは減ります。しかし、常勤役員は十二人が十二人のまま。職員数については二百九十四人が二百九十二人、二人減る。  今、国民に大変な負担をかけなければいけないこの大事な時期に提案される三つの法案、しかもその法案が、先ほど総務庁長官が言われたように整理合理化、簡素化、スリム化、これがキーワードになっている。これをやるぞと言っている。その言っているそばから、三つの提案されたこの特殊法人の整理合理化案、これがどこが整理合理化になっているのか、簡素化、スリム化になっているのか、国民にわかるように説明をしていただきたいと思います。
  189. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) ですから、先ほども答弁申し上げましたけれども、今御指摘のものも、先ほど申し上げました平成七年に村山内閣のときにお決めをいただいた十一法人減らす分の中身の一つ、同じものでございます。  ですから、それについては私どもも、今御指摘のとおり、必ずしも役員の数もそんなに減らない、職員の数もそんなに減らない、そしていろいろ御批判をいただいた。ですから、改めて平成九年度に私どもとしてはもう一回すべての特殊法人を対象にしてその必要性を含めて検討を、行政監察という形でぜひひとつチェックをさせていただこう、こういうことになっているわけでございますので、それに対して、私自身もこれでは必ずしも十分ではない。  ただ、昔と比べますと、とにかく十一法人をこれで減らしたということは、確かに今までで一番、大平内閣のときには十減らしただけでございますから、それよりは確かに一つ多いのでございますけれども、決してこれでは十分ではないという認識のもとに今作業に取り組もうとしているわけでございます。
  190. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 大事な時期の大事な問題でありますので、総理に同じ問題を伺いたいと思います。これが本当に整理合理化だと、こう言えるのかどうか、伺いたいと思います。
  191. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今、武藤総務庁長官から非常に率直な御答弁を申し上げました。そして同時に、これから先我々がどう考えていかなければならないかということもそのとおりであります。  ですから、特殊法人について大事なこと、それは民間会社並みのディスクロージャーに加えて、特殊法人というものの持つ公共性から求められるディスクロージャー、一層積極的なディスクロージャーを行う。しかも、それを全特殊法人の足並みをそろえて行うために、財務内容を明らかにする書類の作成、報告及び一般の閲覧に関する所要の規定の整備を行おうと、去る十一日、特殊法人の財務諸表等の作成及び公開の推進に関する法律案を国会に提出いたしました。  そして、これはぜひ御審議をいただき、できるだけ早く成立をさせていただきたいと願っておりますけれども、やはり特殊法人問題を進めてまいりますには、整理統合に努めていくと同時に、その内容というものを、本当に必要かどうかということを国民の目に見ていただく努力というものも必要だと思います。そういった意味から今回この法律案を提出いたしました。
  192. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 いろいろ言いわけめいたことを聞きましたけれども、私は一言申し上げますと、羊頭狗肉、看板に偽りあり、そう言いたいんです。橋本内閣の行革というのはこんなものか、今さらながら大きく失望したということを申し上げて、次の問題に移ります。  自治大臣に伺います。  政治献金で借金の穴埋めをする、穴埋めをするために献金を、穴埋めをするための要請をするということはこれは献金に当たるかどうか、伺いたいと思います。
  193. 牧之内隆久

    政府委員牧之内隆久君) 一般論として申し上げますと、借金の返済に充てる等を含め、また借入金の返済の免除も政治資金規正法上の寄附に当たると解されているところでございます。
  194. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 借金がある、その借金の穴埋めをしてくれということで穴埋めあるいは棒引きをするということに対して、これは政治資金規正法上は政治献金であるということを今一般論としてお答えいただいたんだと思います。  そこで、昨年の二月に、住専問題が一番大変だったときなんですけれども、自民党は住専問題で銀行をこれから責めなきゃいけない立場もある、そういうことから銀行からの政治献金は受けないようにする、自粛をする、こういう方針を発表されたんですけれども、そのとおりかどうか、総理に伺います。
  195. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) たびたび同じ問題で御質問を受けるわけでありますけれども、銀行業界から受けておりました政治献金、平成七年の時点に戻りますと二つの種類のものがございました。一つは我が党の経理に充てるものでありまして、もう一つは我が党の借入金の返済に充当するものでございます。そして、平成八年の二月、党として自粛することを決定いたしましたものが前者でありまして、現在もこれに関する寄附の要請は行っておりません。後者は、平成七年からの計画で、借入金の返済の目的に限定するものとして平成七年、八年といただいてまいりました。
  196. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 先ほどの自治省の部長からの答弁ですと、返済金、借金の返済に充てる、そのために棒引きにしてもらう、あるいはそこにお金を寄附する、これは政治献金であると、こういう一般論でありましたけれども総理の今言われたのは、まさに借金を返済する、その部分について銀行からは別途いただいているんではないか、こういうニュアンスのお答えがあったと思うんです。  じゃ、具体的にそのことを伺います、総理ちょっと首をかしげているので。  自粛後、献金の要請を行ったことが自民党としてあるかどうか、これが一つ。それからもう一つは、事実、今言った借金の穴埋めも棒引きも含めて献金を、これは献金と定義するわけですから、献金を受けた事実はあるかないか、この二点について伺います。
  197. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私、今申し上げたと思うんですけれども、まず第一に、一般論として先ほど自治省の事務当局からお答えをした、借入金の返済の免除も政治資金の寄附に当たる、これはそうだと思います。そして、住専の母体行からの寄附につきましては、先ほど申し上げましたように、昨年の二月、当面の間自粛するということを党として決定をいたし、この部分について現在もその自粛を続けております。  そして、寄附を要請したか、献金を要請したかということでありますが、私が今報告を受けております限り、党として自粛を決定して以来、寄附の要請をいたしておりません。ただ、借入金の返済枠充当分については別枠としての御協力をいただいていることは申し添えておきます。
  198. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 借入金の返済について要請をし、それについてはいただいているということでございますけれども、それだったら、先ほど自治省が言った、その借入金の返済についても政治献金に当たるという一般論そのままじゃないですか。  私はそういう意味で、総理が言われているのは、みずから別枠を設けてこれは別だと、こう言っているようですけれども、実は客観的に見ると、その借入金の返済あるいは借金の棒引きをする、こういう種の話は、まさに現金をもらうのと政治資金規正法上は何ら変わりはないということであると私は思うのであります。そうでないと、まさに鎌倉時代、室町時代に徳政令というのがありました。御家人、幕府を守る側近の武士の元祖みたいなものです。その御家人の借金については棒引きにする、こういう法令をつくった歴史がありますけれども、今の話を聞いていると、自民党だけはこの徳政令でこれは別なんだと、そういうふうに私には聞こえるんです。  今、世の中は五十万円、百万円の借金、これを返すために一生懸命頑張っている人がどれだけいるか。そういう人たちに、借金を返すためだったらこれは論理は別だ、実際にもらった、あるいはもうけた、いただいた金そのものを使うことと借金の穴埋めにすることとこれは全く別だなんという理屈があるんだったら、こんな楽なことはありません。  私は、そういう意味で、自民党だけが平成の徳政令みたいなことを平気でやっている。もしそうであれば、法律違反かどうかは別にしまして、やはり道義的に御家人の借金を帳消しにするような、それに類するような銀行からの献金、これはやめるべきだと、私はそう思うのであります。(発言する者多し)がたがた言っているけれども、あなた方の、いいですか、自民党の皆さん、議員一人一人がお金を出し合って借金を返さなきゃいけないんですよ。あなた方が返さなきゃいけないんだから、がたがた言わないでいただきたいと思うね。
  199. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 質問をきっちりやってください。
  200. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 私は一言言いますけれども、これは借金だから、返済だから別なんだと、こう言われるのであれば、私はこれこそ自民党のおごりだ、このおごりが国民の利益、財産、安全を食いつぶして、ひいては国民の将来を台なしにしているということを指摘しておきたいのであります。おごれる平家は久しからずとは昔の話ではありません。心の中のおごりこそ最大の敵であることを申し上げて、私の質問を終わります。
  201. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 以上で林寛子君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  202. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 次に、大渕絹子君の質疑を行います。大渕絹子君。
  203. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 橋本総理は、行政財政社会保障、経済、金融システムそして教育の六つの改革を一体的に断行し、この国で暮らすすべての人が正義や公正を重んじ、他人や弱い者への思いやりを持ち、人生の先輩を敬い、郷土や国、そしてかけがえのない地球を愛する心を持つことができる環境をつくり出すことこそ政治の役割であると申しております。この考え方は私も全く同感でございます。  公正公平な社会づくりや弱い者への思いやりと言うならば、今回の医療保険制度の改定や消費税五%への引き上げの措置というのはそれとは少し逆行するのではないかなという思いをしているところでございます。私たち社会民主党は、医療保険制度についても、今国会の中で議論をする中で、何とか弱い立場の人たちに負担増にならないような方策はないだろうかと一生懸命努力をしているところでございます。  消費税については、五%に引き上げる前提条件として徹底的な議論がなされなければならないということであったわけでございますけれども、その議論がないままに今四月一日を迎えようとしています。行政改革の断行は今始まったばかりですし、不公平税制の是正はほとんど手がつかずの中で消費税だけが上がるということは、国民には今まだ大きな不満がある。  先ほど総理大臣は、ほかの方の質問に対しても、自分は選挙のときに一生懸命訴えてきた、だからもう国民理解をしていらっしゃるというふうにおっしゃいますけれども、まだ理解は浸透しておらないと思いますので、一言ございましたらどうぞ。
  204. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は国民がすべて理解してくださると申し上げるほど思い上がっているつもりはありません。  ただ、少なくとも私は、衆議院選挙というその場、私のお手伝いに参上したすべての場所で消費税率をあと二%引き上げさせていただきたい、そのうちの一%は地方への財源なんです、そしてもう一%は既に先行して行っている所得税減税なんかの穴を埋める部分なんです、そしてそのほかに介護だとかいろんな仕事をやりたいんですと、私はそう申し上げてまいりました。  すべての方が納得してくださっておりますと言うほど、私はうぬぼれているつもりはありません。
  205. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 少し言葉が過ぎたかもしれませんけれども、それではきょう、この場所をかりて議論をちょっと深めていきたいというふうに思っているところでございます。消費税を五%に上げるに当たって、平成八年度の補正予算逆進性の緩和ということで予算措置がとられたと思いますけれども、その予算措置それから益税解消のためにとられた措置というものについてお聞かせをいただきたいと思います。
  206. 小村武

    政府委員(小村武君) 消費税引き上げに伴う措置のうち、給付金について御説明申し上げますと、まず第一に生活保護世帯、老齢福祉年金等の受給者に一万円の臨時福祉給付金を支給する、第二に低所得者の在宅寝たきり老人等に対して三万円の臨時介護福祉金を支給する、第三の範晴は六十五歳以上の低所得者、住民税非課税の方でございますが、に対しまして一万円の臨時特別給付金を支給することとしております。これらは、消費税引き上げにより生じます物価上昇に対する激変緩和措置の観点から行われるものでございます。  このほかに、社会福祉・医療事業団に対しまして五百億円の出資をいたしまして、高齢者、障害者の在宅福祉等整備基金を設置することといたしておりまして、ボランティア団体等の多様な主体が参加する在宅福祉の充実等を図ることとしております。
  207. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 益税についての御質問がございました。本年四月から消費税率が引き上がるわけでございますが、それと同時に益税の中心と言われておりました限界控除制度を今回やめることにいたしました。  また、簡易課税制度、これは中小零細の方の事務負担を軽減するための措置ではございますが、消費者から見ればなるべく小さい方がいいということで、導入当時は年商五億円までこれを使えるようになっておりましたが、今回二億円に下げます。  また、みなし仕入れ率というのが当初九割と八割ということで、もっと仕入れの低い人がいるではないかという批判がございました。いろいろ経緯ございましたが、今回は五〇%まで下げる規定一を設けておるわけでございます。  また、免税点につきましても、これは三千万円はなかなか下げることが難しいということで、資本金一千万円以上の方がこれを悪用しないようにということで、その方々については使えないようにするというように、益税について大きな前進を見たわけでございます。
  208. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 食料品について何とか複数税率が導入できないだろうかということを私たちは一生懸命主張してまいりました。  平成二年の六月、消費税導入されたときでございますけれども、自民党内閣によって、流通段階一・五、小売段階非課税という法案が衆議院で議決をされたことは、これは皆さん御存じのとおりでございます。このときでも、食料品についてはこうして複数税率が導入できるような法案が出たわけでございますから、今回の五%引き上げに当たって何とか食料品については非課税にするかあるいはゼロ税率にするかというような検討はなされないでしょうか。
  209. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 食料品の扱いにつきましては長い議論を続けてまいりました。  今回、平成六年にこの改革をするに当たっても議論を重ねましたし、その後も各場面で議論がされてきております。  委員御指摘のように、ヨーロッパで付加価値税がございまして、その付加価値税の中で食料品について軽減税率を設けているといったような実情があることも承知しておりますが、標準税率が五%あるいは三%という低い国はないわけでございまして、そういった国で軽減税率をとっているかということになりますと、むしろそれが混乱のもとになって、食料品の値段が必ずしもこの消費税という特別の仕組みの税制だと下がるわけにはいかない面もあるわけです。そうなりますと、将来の問題としてこのことは常に私ども関心を持ってまいりますけれども、五%という段階において食料品について軽減税率を設けるということについてはいかがかという気がしております。  なお、かつて政府が一・五%という食料品に対する課税の法案を出したという御指摘がございました。これは消費税法を廃止するという法案と一緒に提案いたしたわけでございますが、廃止の方は当時の野党から出ました。政府・与党の方からは一・五%という食料品課税の法案を出したわけでございますが、国会では、これは問題が多いじゃないか、むしろ混乱を招くんではないかということで廃案になったわけでございます。私ども反省いたしまして、この種のものを今後出すということについてはやめようということを考え今日に至っている、そういう経緯がございます。  その後、与野党の協議会等でもこのことは議論され、平成三年の部分的な改正につながっているわけでございまして、結論的に申し上げますと、現在のような低い税率のもとでの複数税率についてはいかがかと思いますが、将来的な問題としてこれは常に我々の課題として勉強してまいりたいと思っております。
  210. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 議論を深めたいと思いますので、なるべく簡潔に答えていただきたいと思います。  衆議院で先ほどの一・五%の税率のものは議決をされているわけでございますから、その御答弁は衆議院を冒涜する御答弁だろうというふうに思います。  それでは、もしこのゼロ税率というのができなければ、せめて米だとかミルクだとか、あるいは水道であるとかという個別なものについてゼロ税率にすることも不可能でございますか、検討の余地はありませんか。
  211. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 最初に、私、先ほど廃案と申し上げましたが、衆議院で議決されて参議院で廃案になったということかと思います。  それから、ゼロ税率についての御質問でございました。  ゼロ税率という制度を用いている国がないわけではございません。イギリスにおいては、ヨーロッパの付加価値税制度に倣っていわゆる付加価値税を入れなくちゃいけないということで、かなり苦労したあげくにゼロ税率というものを制度として取り入れましたが、付加価値税制度においてゼロ税率を設けることは、ある意味では税目の性格を否定するものでございまして、これにつきましてはなるべくとらない方がいい、またとることがかえって混乱を招くと思っております。  なお、特定の品目だけ何か手当てできないかということでございますが、それこそそのこと自体が、一般的な幅の広い課税ということで公平性があることでこの税金の特徴があるわけでございまして、この点につきましては、先ほど申し上げたように税率が高くなったときの一般論として出てくる話ではないかと思います。
  212. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 検討するかしないかだけ答えていただきたいと思います。  医療費だとか教科書代とか、いわゆる社会保障の方に関係のあるものについては今でも非課税になっているわけでございますから、本当に必要な主食である米とかミルクとか水ぐらいは非課税にするぐらいの逆進性の緩和があってもいいと思うんです。  いわゆるぜいたく品と生活必需品が同じ税率というのは納得ができません。複数税率を導入するためにも、今の帳簿方式から伝票方式に変えるべきだと思いますが、大臣答弁してください。いかがですか。短く。
  213. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 薄井主税局長、まず答弁してください。
  214. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 帳簿方式を現在とっておりますが、今回、この四月から証慰も一緒に保存していただくということで、今御指摘のインボイスにほとんど近くなってくると思っております。
  215. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 できるだけ早い段階でインボイス方式に変えていっていただきたいと思います。  憲法で保障されている最低生活を維持するのに必要な消費について負担した消費税額を所得税から控除する、いわゆる生命保険などで五万円の控除というのが今あるわけでございますけれども、そういう控除を考えていただけないか。なお、最低生活費に満たない所得階層については、支払った消費税については全額還付する申告制度を考えていただけないかということでございます。
  216. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 各税目には、それぞれいい点と悪い点、長所短所がございまして、それをうまく組み合わせて税負担を求めるということが税制の仕組み方かと思います。  したがって、ある税目の税負担をある税目から引いてしまうということ、そういう手法をとることは適切でないと考えております。
  217. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 四月一日からの五%引き上げに向けて公共料金が一斉に値上げを決めましたが、これを機会に端数の切り上げや便乗値上げ等、物価上昇は避けられない状況にあると思います。  この結果、国民の購買意欲は低下し、景気上昇の足を引っ張り、結果として国の税収入も予想を下回ることになるのではないですか。
  218. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 付加価値税方式の消費税は、消費の値段を上げる、上がることによって負担をしていただくということでございますので、御指摘のように値段は上がりますが、今回の改革平成六年に、一方で消費のもとになる、前に入ります所得について所得減税をしているわけでございます。所得減税した上で可処分所得がふえて、消費の値段が、物価が消費税分上がる、こういう形でバランスがとれているわけでございまして、全体を通してみれば先行減税することによって景気全体にはプラスに役立っているというふうに考えております。
  219. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 五%に引き上げるならば高齢化社会を乗り切るためというふうに、消費税を上げるときにはまくら言葉のようによく使われていたわけでございます。今導入が検討されている介護保険制度の財源に消費税アップ分を充てたらどうかという議論がございますけれども、これはいかがでしょうか。
  220. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 全体の予算編成の中で、税収のあり方、税収の見込み等を勘案しながら、これまた歳出を聖域なき形の中で縮減する中でどうするか、今後の検討課題です。
  221. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 地方自治体では、原案だと国民健康保険の二の舞になりかねないということで大変懸念をしています。財源が確立しないと介護制度はできても絵にかいたもちになりかねないような状況でございますので、高齢化福祉に使用するという大前提の中で消費税五%の議論を進めていただきたいものだと思っているところでございます。  以上いろいろ申し上げてきましたけれども、これは消費者側からのお訴えでございます。ぜひ、先ほどの主計局長ですかのようにそっけない御答弁をなさらないで、これから先国会の場所でこういうことについて徹底的に——主税ですね、ごめんなさい、徹底的に議論をしなけりゃならない状況だろうというふうに思うんですよ。検討して、お互いに議論をし合って、納得するところに持っていかなければならないというふうに思っています。  今度は、納税義務者であります事業者の立場から消費税についての問題を指摘させていただきます。  転嫁の関係が非常に不透明で不公平であるということが指摘をされています。経済取引上の弱者は転嫁できないことが多くある。転嫁できなくても帳簿上は消費税の納入義務を負う。つまり、消費税は間接税と言われるが、顧客への転嫁について税法上何らの保障もない、大きな欠陥であると指摘をされていますが、これはいかがでしょうか。
  222. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 国民皆様から税負担をいただくときにどういう経済活動からいただくかということを考えた場合に、所得だけからいただくことが適当かと、そうなると消費からもバランスよくいただくことが大事である。その消費から負担をいただくについては、昔ありましたような物品税やあるいは取引高税のようなものだとなお不公平である。そういうものをクリアしてたどり着いたのが付加価値税方式の消費税でございます。  この消費税がパーフェクトな税でないことは御指摘のとおりですけれども、それ以外の手法がそれではあるかとなると、これはすばらしい税ではないかなと私は思っております。
  223. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 あらゆる税制は産業間に申立てなければなりません。ところが消費税は、輸出企業に対して特別扱いをしている輸出還付制度によって、負担した消費税相当額が還付されるゼロ税率による課税方式をとり、その差額を還付する仕組みになっています。これによって、全消費税納入分の二〇%、一兆二千億円もの税金が戻し税として輸出取扱業者のところに返っているという現状がございます。  ほとんどの大手輸出会社が法人税も支払っていないという状況の中で、こういう還付がされていくことにこの仕組みの大きな欠陥があると思うわけでございます。同名会社間で売買の取引をして輸出をしていけば、不正な還付も当然仕組むことができるような内容になっているわけでございますので、このことについては議論をこれから徹底的にしなけりゃならないと思いますけれども、大蔵省はいかがですか。
  224. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 先ほど申し上げました付加価値税方式の消費税のよいところは、外国に物を輸出したときに国境税調整というのができる。わかりやすく申し上げますと、日本では消費税はかけません、裸で輸出する、しかしそれがフランスに輸入されればフランスの税金がそこでかかる。つまり、消費地国で中立的な同じ税金がかかるようにするには国境を出るときに裸にしないといけないということから、今日のような、さっき御指摘のような輸出還付制度が設けられているということでございまして、決してこれは何か得しているということではありません。  例えば、輸出業者は輸出するためには仕入れをしているわけです。その仕入れしたときの物の値段というのは税金分高くなっているわけですから、その分をお返しする、そこで裸にして輸出する。ところが、フランスで輸入されますとフランスの付加価値税がかかるということでバランスがとれているという仕組みでございます。
  225. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 輸出業者が負担をする消費税は三%で、国家から返されるわけですね。そっくり三%返されるわけですけれども、その流通の段階で本当に三%の返される分が国庫に入ってくるかというと、その保証はないというのがこの輸出戻し税の欠陥だというふうに思うわけでございます。  それでしたら、現行三千万円の免税点の仕組みがあるわけでございますが、免税店は税金を払わない、転嫁させられないということであるならば、消費者にはゼロ税率で売って、それで免税店は、自分で仕入れたところの消費税については戻し税をしていただけるという方式ができますか。
  226. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 現在、日本にありますといいますか免税点制度は、年商三千万円以下の方は売り上げなり仕入れについて、計算をして税務署に行って納めていただく必要はありませんという仕組みですが、もう一つつけ加えて申し上げますと、日本の仕組みにおきましては、免税業者から課税業者が物を仕入れたときに、課税業者は免税業者から買ったものでも、その値段のうちの百三分の三は税金であるとみなして控除できるという仕組みになっております。  なぜこうしたかといいますと、それをしないと中小零細の免税業者から物を買わなくなってしまうということから現在そういう仕組みをとっているわけでございまして、その仕組みからすれば今御指摘のようなことはとり得ないというふうに考えております。
  227. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 とり得ないのでなくて、今現実に免税店は消費税を取るところと取らないところと二つあるんですね。そして、取っているところは、消費者から預かりながらそれを全然国庫には納めない、いわゆる益税として発生している、取らない人は自分が負担した消費税について損をしていると、こういう構図になっている。取る者と取らない者との間に大きな格差があり、消費者の間にも、あるいは消費者と小売業者の間にも非常に不信感があります。納めていないのに取られる、預かっていないから払わないと、こういうことになるわけですね。  先ほどの輸出戻し税の理屈からいえば、最終消費者からもらえない部分については、転嫁できない部分については国から戻すということであるならば、中小小売業者、いわゆる免税店の皆さんが消費者に売った商品について戻し税方式で戻すことというのは可能なわけなんです。同じ原理なんですよ、消費者に転嫁をしないということであるなら。  だから、益税が発生している免税店では一切消費税という名目でお客から金銭を取ってはならないということにしていただければ消費者も助かりますし、その免税店は税務署に申告をして還付していただけるという手法ができるはずなんです。これを考えていただきたいのです、大蔵大臣
  228. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 免税業者は仕入れにがかった税金の分を値段に乗っけて売っていただきたい。それを仕入れにがかった税金以上に乗っけられては困ワますし、逆にそれ以下だと損をさせますからそれも適当でないということで、仕入れにがかった税金分を乗っけていただくというのが付加価値税方式の前段階税額控除方式の税制の仕組みとしてどうしても必要なものでございます。  委員御指摘のような手法をとるということは、物の値段の中にどの部分がどの部分かということを区分けすることは不可能でございまして、結局は値段の中に消費税分が課税の場合には入っているし、それから免税業者の場合であれば仕入れにがかった分が入っているのだということで、全体が整理されているということでございまして、御指摘のような仕組みをとることによって免税業者の方々はどうしていいのかわからなくなる、事務的には非常に無理な話になると私は思います。
  229. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 無理なことではないです。
  230. 三塚博

    国務大臣三塚博君) ただいまの議論を聞いておりますと、免税店のあり方について両者の意見、私は必ずしもそこで断絶はないと思っております。今後とも免税事業者の事務の実態等を踏まえつつ検討を行っていくべき課題であると考えます。
  231. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 検討できると思いますよ。導入前の状況をよく思い出していただければ、事業者によってそれができないということは絶対にあり得ないんですね。  税の公平原則に基づぎますと応能負担の原則、あるいは勤労所得には軽く不労所得には重くする、生活費には課税しないというようなことが言われているわけでございますけれども、納税者番号制度の早期導入をこれまでも随分と主張してまいりました。消費税の真の逆進性とは、適正な所得把握が実現できて初めて確定できるというふうに思います。あらゆる逆進性緩和策は、納税者番号制度を導入して所得の把握をすることから始めなければ本来の機能は果たし得ないと思いますが、いかがですか。
  232. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 納税者番号制度については常々関心を持ち、また政府税調等におきましてもかなり深い議論を続けてまいっております。  そういった中で、納税者番号というものが存在しない時代、今も存在しないわけですが、ことしの一月から年金番号ができた、あるいは自治省において住民台帳コードということですか、そういうものが今考えられております。  そういった中で、手法ができてきたときに納番制度をどうするかということも踏まえまして議論をしておりますが、ここで大切なことが二つありまして、一つはまさにプライバシーの問題でございます。アメリカにおいては年金番号に当たるものが納税者番号として使われておりますが、例えばイギリス、ドイツ、フランスにおきましては、いろんな議論の末、番号制度には入らない方式をとっております。北欧は一方で住民票番号をとっているということで、この点について相当深い議論をしていただかないと、税務の執行にとってみれば楽かもしれませんけれども国民皆様にとってきちっとした議論が大事だというのが政府税調の議論でございます。
  233. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 資産課税に適正な課税が行われない限り税の公平性というのは保たれていかないと思います。その観点から歴代の大蔵大臣もこの番号制導入については積極的に御答弁をされてきておられます。三塚大蔵大臣から答弁を求めます。
  234. 三塚博

    国務大臣三塚博君) ただいま主税局長から本問題に対しての税務当局としての認識が表明をされました。  問題点は、プライバシーの問題、資金シフトの問題、官民のコスト等が残っておりますけれども、私どもは今後とも、この制度が国民の中に受けとめられますよう、また受けとめられておるかどうかを十分把握していかなければならないと思っておりますし、幅広い視点から論議を深めてまいりたいと思っております。
  235. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 ぜひ早く導入をされましてキャピタルゲイン総合課税がされますように。  土地譲渡所得の課税を直しますと六千四十億円、利子配当金で二兆円、それから有価証券で二千八百十二億円、配当控除で二百六十億円、給与所得控除無制限の廃止をすると二百八十七億円、これらの財源が確保できる見通しが立っております。財源が足りないというなら、ぜひ早急にこういう検討をなさるべきだというふうに思います。  法人税ですが、税率が高いということで四二%から三七・五%に引き下げられましたが、日本の法人税の負担は租税特別措置法で手当てをされていますので、税率そのものは、数字的には高いにしても欧米諸国と比べて決して高くはない。そこに社会保障の負担金も加えれば、むしろ欧米諸国よりも負担はうんと少なくなります。法人税率を下げるならば課税ベースを広げる手当てをしていかなければならないと思っています。  租税特別措置の廃止をしていくために、これは一つ一つの項目について徹底的な議論をしていかなければならないと思っています。いわゆる退職引当金であるとか貸倒準備金であるとか、そうしたもろもろの一つ一つの税目について検討をして、今現在でこの租税特別措置法というものを全廃したという想定でいきますと、国で十三兆七千三百三十億円、地方では九兆九千四百四十八億円ということが税収で見込まれているわけでございます。しかし、全部を一遍になくすことができるということは私自身も思っていないわけでございますけれども、とりわけ退職引当金などは今非常に企業の方に過重に積まれているような状況がございますので、ここらあたりから手をつけていっていただきたいというふうに思っています。  今さまざま申し上げてまいりましたけれども、こうした税のあり方について本当にまだ議論が足りない。我が党首が三党合意をするときに徹底的な税制議論をしなければならないということを申し上げているわけでございますから、ここは本当に、これから予算案が終了した段階で、国会の場所で明快に税制改革について議論をする場所を設けて国民にわかるように徹底的に議論をしていただきたいと思いますが、いかがですか。
  236. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 大渕議員税制に対する深い御造詣の御質問敬意を表します。  法人税の引き下げから申し上げますと、グローバルスタンダードになりますことが大変企業活動に平等とチャンスを与えることになりますので大事なことでございます。その場合の財源について御指摘のような引当金、準備金等々がございます。これらについては、御指摘のように法人税引き下げ、そしてこれらの準備・手当金の今後のあり方等は、課税ベースを広げるという議論も当然ありますけれども、そういう中でこの特別措置法について論議を盛んにし、政府税調にも三党の協議会にもプロジェクトにおいても御検討を賜り、最終的には国会の御論議を盛んにしていただきたいと思っております。
  237. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 それでは次に、会計検査院の平成七年度の決算検査報告書についてお尋ねをしてまいりたいと思います。  国と地方自治体の官僚による金銭不祥事事件が相次ぎ、国民の中には政治家不信とともに官僚不信が沸き上がっています。そんな中で会計検査院の皆さんは大変地道な努力を続けられて、頭が下がる思いがいたします。毎年の検査報告、大変厳しい御指摘をされているわけでございますけれども、まだまだ不正支出や不算入が後を絶たないというような状況は本当に困った状態だというふうに思っているわけでございます。  そこで、今回の検査結果を大まかに教えていただきたいと思います。
  238. 平岡哲也

    説明員(平岡哲也君) 平成七年度決算検査報告において不当事項等として指摘をいたしましたものは、件数二百七十二件、指摘金額二百八十六億六千六百八十七万円となっております。  このほかに、社会的関心が高い問題につきまして検査の状況を広く明らかにするための記述でございます特定検査状況といたしまして、これは平成二年度検査報告から始めたものでございますが、四件掲記をいたしております。  なお、実地検査の施行率でございますが、本省、本庁、本社その他の重要な箇所につきましては四割を超えておる状況でございますが、全体として見ますと、検査対象箇所合計三万八千七百余カ所のうち九・三%の施行率となっております。
  239. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 ありがとうございました。  全体で九%で、二百八十六億六千六百八十七万円の不正支出があったということでございますから、これを日本全体で換算すれば大体どのぐらいになるかということは計算ができるわけでございます。本当にまだまだむだ遣いが多くあるということをここで認識しておかなければならないというふうに思います。  それで、特定検査対象になりました、特に国庫補助事業に係る事務費の執行についてお尋ねいたします。  これは、昨年とことしのたび重なる官官接待や空出張などの食糧費や旅費の不正使用事件を受けてのものと思いますが、検査の結果についてお知らせをいただきたいと思います。
  240. 平岡哲也

    説明員(平岡哲也君) 会計検査院におきましては、食糧費等をめぐる問題についての社会的関心の高さなどを踏まえまして、国庫補助事業に係る事務費の執行について検査を実施してまいっております。  まず、食糧費につきましては、一昨年の本院の指摘によりまして、農水、運輸、建設三省におきましては既に一昨年改善の処置を講じたわけでございますが、昨年検査をいたしましたところ、これら三省以外の省庁におきましても、本院の指摘などを踏まえまして原則として懇談会の経費は補助対象としないこととするなど、食糧費の使用及び経理処理を適切に行うよう三省と同様の措置をとっていることが認められたところであります。  次に、旅費等につきましては、四十七都道府県からの内部調査の取り組み状況などの報告によりますと、八年十月末現在で北海道外五県におきまして不適正な経理処理が行われており、国庫補助金の返還等を実施あるいは実施を検討しておる状況であります。これら六道県につきましてはなお内部調査が継続して行われておりまして、また他の都府県においても内部調査が行われているものがある状況であります。  私どもといたしましては、食糧費及び旅費等の事務費の執行につきましては厳正な経理処理が求められることから、今後とも十分留意をいたしまして検査してまいる所存であります。
  241. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 平成七年度でODAに拠出したお金が七千八百五十億円ありましたけれども、これらについては適正に使用がされておりましたか。
  242. 深田烝治

    説明員(深田烝治君) お答え申し上げます。  会計検査院では、政府開発援助に関する検査の一環といたしまして、平成八年中におきまして六カ国八十二事業について現地調査を実施いたしました。そして、相手国に対しましては検査権限が及ばないというようなことなどの制約のもとで調査いたしました限りでは、現地調査を実施いたしました事業の大部分につきましてはおおむね順調に推移している、そういうふうに認められました。しかしながら、相手国が自国予算で実施することとなっております施設等が完成していないということなどのため、援助の対象となったダム等が十分利用されていない、そういうことなどのため援助の効果が十分発現していない、そういう事態が六件見受けられました。  これらの事態が生じておりますのは主として相手国の事情によるものでございますが、我が国といたしましても今後も相手国の自助努力を絶えず促すとともに、相手国が実施する事業に対する支援の措置を一層充実させることが必要であると認められましたので、特定検査対象に関する検査状況として掲記したものでございます。
  243. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 先日も動燃の事故があって大変驚いたわけでございますけれども、「もんじゅ」が事故を起こしまして、ナトリウム漏えい事故でございますけれども、この件についても会計検査院は詳細に検査をなさっているわけでございますね。建設費は五千八百八十五億円、この中で国が拠出をしている部分が四千五百三億円、もう今は使えなくなった「もんじゅ」にこれだけの巨費が投じられています。そして、さらに「もんじゅ」を今の状態で安定的に維持していくために百七十三億円もの予算が毎年毎年かかるという状況になっています。これはもう全くのむだ遣いと指摘せざるを得ないと思います。  それからもう一件、東京共同銀行に対する日本銀行の出資についても、平成七年一月、東京協和信用組合及び安全信用組合が東京共同銀行となったときに日本銀行から二百億円が出資をされています。回収がされれば損はないわけでございますけれども、回収の見込みが立っていない、これも指摘せざるを得ないと思っています。  会計検査院が検査できる対象は毎年国全体の一割に満たない数でございますけれども、これだけの多くのむだが指摘をされています。公共事業におきましても、木曽岬干拓事業や宍道湖・中海の干拓事業、そしてあいたままの公団住宅など、多くの疑問が投げかけられています。  新聞報道によりますと、歳出削減の基本方針が固まったようでございますが、総理、どうぞ、健全な財政を取り戻すために、しっかりと基本方針に沿って頑張っていただく決意を国民の前に示していただきたいと思います。
  244. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 本日、この参議院予算委員会の終了後、財政構造改革会議を開く予定にいたしております。今までにも随分よい御論議をいただいてまいりました。そして、その中の議論を集約しながら、平成十年度予算編成のための概算要求、すなわちその概算要求をつくるルールそれ自体から変えていかなければなりませんので、その作業にかかる御了解を得たいと思っております。  そして、もしそういう御了解が財政構造改革会議でいただければ、五月の半ば過ぎぐらいまでにはそこの考え方を整理し、総会を経て、その新しいルールで来年度の概算要求そのものからスタートをいたしたい。その中にはまさに本当に聖域を設けない、そうした考え方で取り組んでまいりたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  245. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 ありがとうございました。国民消費税五%という強い痛みを受けるわけでございますから、国会におきましても本当に徹底的な歳出削減ということをやっていただきたいことを重ねてお願いを申し上げておきます。  それでは次に、行政改革について総務庁にお伺いいたします。  行政改革というと、まず公務員の定数削減ということが挙げられますが、国も自治体も出先から民営化をするという手法が今までとられてまいりました。国民の暮らしの安全を確保するのに一番重要な部署での業務が民間に委託されていくという状況を私は黙って看過できないのではないかというふうに思っています。国や自治体が責任を持てる管理体制を維持すべきだと思いますけれども総務庁長官、いかがでございますか。
  246. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) やっぱり行政改革は私どもはスリムな体質にするというのが一つの大きな問題でございますので、今お話がございましたけれども、地方からとか中央からとか言わず、すべての行政機構について要はスリムにしていく。ということは、組織があって人があるのではなくて、仕事があって人がある、組織がある、こういう形になっていかなきゃいけないのじゃなかろうか。組織のために人を置いておるのじゃなくて、必要な仕事に人がいなければならないと思います。それは、国であろうが地方の出先であろうが同じことだと思います。そういう考え方に立ってやってまいりたいと思います。
  247. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 人命が危険にさらされるような業務については、本当に大事な任務でありますから、廃止をするというようなことにならないようにぜひお願いをしたいと思います。  建設省にも同じくお聞きをいたします。  昨年の豊浜トンネルの事故についても今裁判が行われていますけれども、国の管理責任というようなものが問われるような問題になっています。  国の発展の基盤であり、国民の生命に直接かかわる道路の管理は、民間委託は最小にとどめて、道路管理者である国及び自治体が責任を持って直轄で管理すべきと思いますが、いかがですか。
  248. 亀井静香

    国務大臣(亀井静香君) 道路につきましては国及び自治体が責任を持って管理をすることは当然でありますけれども、しかし具体的な管理業務の中身について、民間において実施をしても差し支えない業務、またその方が効率的であり、国の経費等においても節約になるということであれば思い切った民間委託等もやっていかなければならない。要は業務の性格であろうと思います。
  249. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 業務の性格とおっしゃいましたけれども、それでは、建設大臣にお尋ねしますけれども、本当に道路の維持管理、例えば。パトロールなども民間に委託をして本当に安全管理ができるとお考えですか。
  250. 亀井静香

    国務大臣(亀井静香君) どこまでが民間に委託して大丈夫か、あるいは直接実施をしなければならないか、そのあたりについてはやはり厳しい判断が必要と思います。しかし、現に道路公団等にいたしましても国道の管理等にいたしましても民間に委託を実施しておる面もあります。しかし、その結果、委員の御指摘のように、管理が万全じゃなかったんじゃないかという御指摘をいただく場合もあるわけでございますので、これは個々具体的なケースについて我々としては検討して実施をしたいというふうに考えております。
  251. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 最後に、保育行政についてお尋ねをいたします。もう時間がありませんので言いっ放しになるのかもわかりません。  今回五十年ぶりに児童福祉法の改正がなされますが、私の住んでいるところは大変な過疎地でございまして、大都会の保育所のありようと過疎地の保育所のありようというのは当然違うわけでございます。同じ物差しではかるのではなくて、ぜひそれぞれに合った物差しを当てていただいて、少子化時代の中で子供たちが豊かに保育が受けられる環境づくりというものをつくり上げていただきたいというふうに思っております。  ぜひ厚生大臣から一言だけお願いします。
  252. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 子供さんがだんだん少なくなっている中で、保育をめぐる環境もだんだん変わってきております。  特に、今までだと保育に欠ける児童というものが保育園に入るということでありますが、過疎地においては、親御さんが働きに出ていなくても周りにお子さんがいないという場合には、よそのお子さんと交わる、遊ぶ機会をつくらなきゃいかぬとか、あるいは保育園も幼稚園もないという、地域によってばらつきがございます。そういう点を考えて、子育ての環境に保育所の役割もこれから違ってくると思いますから、そういう点については柔軟に対応する措置が必要だということを考えまして今国会に児童福祉法の改正案を提出したいと考えております。
  253. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 終わります。  ありがとうございました。
  254. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 以上で大渕絹子君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  255. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 次に、小島慶三君の質疑を行います。小島慶三君。
  256. 小島慶三

    ○小島慶三君 私は、きょうは少し変わった角度から御質問を申し上げたいというふうに思っております。  まず、内閣の金看板というのは何といいましても地方分権とそれから規制緩和ということだと思うんです。きょうの新聞にも、財政健全化の目標を繰り上げて規制緩和、地方分権についても思い切った推進策を講ずるというお話がございました。  それで、一生懸命この角度からやっておられる総務庁長官に、規制緩和についてどういうふうな話し合いが大臣間でなされたか、これお話をいただけますか。
  257. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) 私ども、規制緩和、今御指摘のとおりで、従来から行政改革委員会法律に基づいておつくりをいただきまして、飯田委員長のもとでいろいろ各省とも協議をしながら規制緩和の方向をやってきていただいております。そして、そこから意見を昨年の暮れにちょうだいをいたしました。  それからもう一つは、行革推進本部、これは各閣僚が全員出席をすることになっておりますが、そこで内外の各団体からも規制緩和についての御要望をちょうだいいたしまして、それらの意見をすべて私どもとそれぞれの関係省庁との間で事務的に詰めてまいりました。  詰めてまいりまして、私どもが言っておるのは、経済的な規制は原則廃止をしていくという方向、社会的な規制はできるだけこれも見直しをしていこうという観点でやってまいりまして、事務的に詰まってきたものも相当あるわけでございます。現実に大体二千件ぐらいのうちでほとんど詰まってまいりました。  ただ、最終的に詰まっていないもの、例えば昨日通産大臣とやりました問題は、特石法が廃止になりまして、これからは供給元証明というものはガソリンスタンドが登録する場合には要らないんじゃないかというような問題を、これは廃止でいいじゃないかというようなことで私どもの方からお願いをして、通産大臣からはそれは結構だ、やめましようと、こういうお話をいただきました。  あるいは、厚生大臣との間においては、簡単な薬で特に薬局の御指導をいただかなくてもいいような薬については、スーパーとかあるいはデパートとか、いろいろのそういう薬局でないところでも売れるようなこともお願いをしたいということで、これもそれでやりますという御了承をいただきました。  あるいは、薬価基準の根本的な見直しをぜひやっていただきたい、そして薬価についてもっとオープンにしていただきたいというようなこともお願いをいたしまして、これもオーケーをいただきました。  あるいは、自治大臣との間においては、現在のガソリンスタンドの中にはセルフサービスはございませんから、アメリカあたりもセルフサービスがございますので、無人スタンドではございませんけれども、有人スタンドの中にいわゆるセルフサービスのラインを設けていただけないだろうかということで、これも安全が確認できればやりますというお約束をいただきました。  時間が大分たってしまって大変申しわけございませんが、その他労働大臣との関係においてもいろいろお話をいたしましたし、あしたまた引き続いてそれぞれの役所の大臣の皆さんとお話をして、ぜひとも前向きのお答えをいただくように努力をしていきたい、こう思っておるわけでございます。
  258. 小島慶三

    ○小島慶三君 ありがとうございました。  そういう形でどんどん推進されるということで、推進の計画を少し前広に取り上げてもう少しスピードを上げていただきたいというのが私のお願いでございます。  ただ、例えば諸井君のやっている地方分権にいたしましても、分権について関係者が協議をして同意を得るというふうなものがたしか七十八件か何かあったかと思うんですけれども、そういうことではなかなかこれは進まないという感じがいたします。  それから、規制緩和につきましても、例えば許可を認可にするとか認可を届け出にするとか、そういう手続上の緩和というかそういうものが非常に多い。ほとんど大部分がそれで占められている。期日の延期とか短縮とか、そういうふうな手続的なものが非常に多くて、一番やっぱり必要な規制緩和は交通とか通信とか情報とか、こういうふうな大物が残っていると思うのでございますけれども、この辺の進め方についてはそういう形でやっていただく方がいいんじゃないかと思っておりますので、これは総理からひとつお答えをいただきたい。
  259. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今、武藤総務庁長官が幾つかの代表的な例を挙げ、現在閣僚ベースで詰めておられるその努力ぶりの御報告がございました。  例えば、運輸省の場合にもう需給調整はやめるという方向ですべての分野が動いておりますように、私はそれなりに本当に努力を各省がしてくれており、総務庁長官の手元でなおそれを加速させる、そういう意味では規制緩和についての作業は順当に進んでくれておると思います。  ただ、地方分権の方でも機関委任事務廃止という方向を打ち出された第一次勧告、そして分権推進委員会が国と地方の関係を上下とかいうことではない対等、水平な関係としてとらえ直して事務の再配分をしていこう、こうやって努力をしておられるというのは私は非常にいい方向に作業をしていただいていると思うんです。  今御指摘がありましたように、それでも国と地方公共団体の間でやむを得ず調整を必要とするというのは確かに私も考えてみるとあるだろうと思います。しかし、その場合にもやはり対等、協力という関係を前提にした事前協議、それが原則ではないだろうか。特によほど限定をするような場合が、ちょっと今私も自分の頭で想像がうまくっきませんけれども、国の同意を要するというのは非常に数少ない例、特殊な例ということにしていかなければいけない、その点は私は議員の御指摘のとおりだと思います。
  260. 小島慶三

    ○小島慶三君 私が今申し上げたような交通とか通信とか、こういう方面の推進というのがこれから残った問題だと思っておりますけれども、例えばイギリスのサッチャーがやりました改革でも、最初にやりましたのは一九八〇年のイギリスの航空、ブリティッシュエアロスペース、これが最初でございました。それから、その後が通信の第一次、通信の第二次、石油、また通信、それから航空機の第二次、それからブリティッシュガス、そしてまたもう三遍ブリティッシュエアロ、それからロールスロイス、これは航空機のエンジンといったように、航空関係の規制緩和というか、これが次々と行われて非常に成果を上げたというふうに聞いております。イギリス航空なんかは国営から民営になって初めのうちは苦しんだようでありますが、世界一の今収益を上げているというふうなことも言われておりますし、それからヴァージンアトランティックなんという新しく参入したところも大変いい成績を上げているようでございます。  そういうものに関しまして、世界的にはイギリス、それからイギリスを含めたヨーロッパ、アメリカ、ニュージーランド、オーストラリア、こういうところのフリーな空というか、そういうふうなフリースペースといいますか、そういうふうな動きが大変推進されておるように聞いております。  日本はその点がっちりした三社の寡占体制でやってきたわけでありまして、それを今度新規の会社の参入を認めるという本当に運輸省としては画期的な政策をとられたようであります。その辺の事情につきまして運輸大臣からひとつお示しをいただきたい。
  261. 古賀誠

    国務大臣(古賀誠君) お答えいたします。  新しい航空会社が航空運送事業に参入してくるということは、今後の利用者の利便の増進、そのための競争を一層高めていくという意味で私は大変歓迎すべきことだというふうに思っております。また、そのことが今さまざま議論されております規制緩和という点でも大変重要な課題だというふうに思います。  ただ、ここで一番私たちが気をつけなければいけないのは、この航空運送事業というものは安全の確保という点がどうしても忘れられないことでありまして、また一番重要な課題だと思います。その点についてはどういう体制で安全についての整備ができているかということを十分見きわめてこの新規参入についての問題は進めていきたい、このように考えております。
  262. 小島慶三

    ○小島慶三君 何かアメリカでやりました航空自由化法、これは非常に規制緩和の大きな要素であつたようでありますが、これはかえって非常に航空会社の乱売というんですか、乱戦を招いて、航空会社が幾つかつぶれるとかそういったマイナスもあったように聞いております。物の本には「規制緩和という悪夢」なんという変な本も出ておりましたけれども、これは日本の場合には全くそういう心配は私ないんじゃないか。アメリカは非常に多くの航空会社の競争でそういうことが起きたわけでありますが、日本の場合には三社からの新しい市場原理に基づく展開ということでございますので、日本の場合にはそういう心配はないと思うんです。伺いますところによりますと、何か新しく参入を認められたルートというのは全体で六便というふうなことになっておるようでありまして、それに北海道関係の二社が手を挙げているということのように聞いておりますけれども、そうなりますと、果たして三社というふうなことで事業がペイするのかどうか、どうしてそういうふうな厳しい姿が残ったのか、その辺のところをお伺いしたいと思います。事務局で結構でございます。
  263. 黒野匡彦

    政府委員(黒野匡彦君) 今、先生おっしゃいましたとおり、新規に航空事業に参入したいというグループが全国で四つか五つぐらい既にございます。率直に申し上げまして、今度羽田の枠がふえるとその一部を新規会社用にリザーブしましようという提案を私どもの方からさせていただいたんですが、反響が非常に大きかった。要するに、我々が当初予想した以上にそういう新しい動きが出てきたということは歓迎しているところでございます。  ただ問題は、今も大臣からお答え申し上げたとおり、安全をどうやって確保するか、これは非常に難しい問題でございます。  それで、今回、羽田がこの三月二十七日に新しい滑走路がもう一本できまして、四十便ほど枠がふえます。その枠をどういうふうに使ってもらうかということでいろいろ御議論を進めさせていただきましたが、結果といたしまして、新しい会社には六便、これは積算の根拠というものはないんですが、一応一社三便ぐらいかなと、それを二つで六便という数字にさせていただいております。  この数字を六にするか幾らにするかということで実は私ども最後の最後まで迷いました。関係方々のいろんな話を伺いまして、規制緩和を主張される方々は、六じゃ少ない、もっともっと多くしろとおっしゃいます。これは当然だと思います。一方、航空の専門家、こちらの方は、いわば素人の会社がいきなりたくさん飛ばすというのは安全上問題がある、ですから最小限からやった方がいいですよというアドバイスもございました。  そういうことを総合的に考えまして、私ども六便という数字をとりあえず今回の枠の拡大については提供をすることにいたしたものでございまして、これにつきましては、これからのまた拡大もあり得ますし、とにかく安全に第一歩を踏み出していただいて、それを見た上でこれなら大丈夫だなというときに適宜またふやしていくということかと思っております。安全というのはどうしても無視できないものですから、とりあえずそういう形でスタートをさせていただきたいと思っております。
  264. 小島慶三

    ○小島慶三君 ありがとうございました。  それで、どうも私も素人でわかりませんが、三便というもので果たしてペイするのかどうか、その辺ちょっと心配があるわけでございます。  例えば、一九八六年にこれはシカゴでやりました例でありますが、全体の既存の各社から抽せんで五%ルートを供出させて、それでそれを新規の事業者に当てたとか、そういう例も聞いております。あるいは可能性として入札みたいなこともあり得るんではないか、そういう話もございます。  いずれにしても、そういう形でやりますれば十四、五便というのは楽に供出できたのではないかというふうに思いますので、これはとりあえずお決めになったことでありますからなんでございますが、やっぱり次の可能性として、今ちょっとお話がございましたように、新規参入したところに便数をもうちょっと割り当てをお願いしたいというふうに思いますが、いかがでございましょうか。
  265. 黒野匡彦

    政府委員(黒野匡彦君) 私も先生の御意見にほぼ同感でございます。  とりあえず三便ということで始めていただきまして、それに対します利用者あるいは国民の反応がどうかというところが一つのポイントになるかと思っております。我が国の国内航空の新しいパターンといいましょうか、そういうものをその会社が積極的に展開するということになれば、当然のことながら我々といたしましてもそういう会社につきまして枠をふやすという努力をしなければいけないと思っております。  実は、三年後に羽田にもう一つ新しい滑走路ができます。そのときにある程度のまた枠が発生いたしますから、そういう枠を利用して、真に国民に支持されるエアラインならば、そちらの方に枠を使っていただくということも考えたいと思っております。
  266. 小島慶三

    ○小島慶三君 今、話が出ていますのは東京−千歳ということでございますが、もう一つ私は、沖縄と羽田の間にもそういう参入者ができるということが望ましいのではないかと。  今のアジアの航空情勢を見ますと、ソウルの新しい空港なんというのはすばらしいポテンシャルを持っておりまして、これあたりが国際的なハブ空港として、拠点としてそういったものが乗り出すという形勢が濃厚である。それから、香港、シンガポールといったようなところも手ぐすねを引いておりますので、日本は、成田がああいう状態でハブ空港にはなりませんし、それからほかの空港も非常にポテンシャルといった点では問題があるようでございますから、ひょっとするとアジアのそういうところに国際ハブ空港が持っていかれてしまうという危険性があるのではないか、そんなふうにも思っております。  したがって、日本もそういう角度もひとつ踏まえて新規の参入者をどう扱うかというふうなことを御検討いただく必要があるのではないかというふうに思っております。その辺はいかがでございましょうか。
  267. 古賀誠

    国務大臣(古賀誠君) 全く先生が御指摘をいただいているとおりだと思っております。  これからますますボーダーレス化が進んでくるわけでございますが、そういう意味で、今諸外国の例も先生の方から具体的に御指摘をいただきましたけれども我が国といたしましても今後国際競争の中で着実に経済を伸展させていく、そういう意味からも、また国民の安定的な生活の向上という意味からも国際ハブ空港の整備というのは必要、また喫緊の重要な課題だというふうに思っております。  国際ハブ空港のこれからの整備につきましては、御承知のとおり、第七次空整の中でも積極的に整備に取り組んでいきたいということで、我々といたしましても全力を挙げて整備の促進に努めてまいりたい、このように考えているところでございます。
  268. 小島慶三

    ○小島慶三君 ありがとうございました。  ぜひそういう形で、日本の空というものを守るという姿勢が大変重要かと思っております。  それで、例えば千歳のルートが確保されるということになりますと、今北海道は、北海道のほかの区域との収支は赤字でございます。北海道は、北海道でなくてヤッカイドウだという説もありますが、そういうことのためにも空路ができるということは大変いいことだと。北海道の旅行者の利用のウエートからいいますと空路が八割だそうでありますから、そこに新しい会社が参入をして、できればそこで市場原理が働いて、そして運賃でも低減されるということになればもっともっと北海道に脈が生まれてくるというふうに思います。  それから、沖縄についても全く同じことでありまして、今基地問題で総理、大変御苦労でございますが、沖縄の振興という点についても、そういった空からの応援というか、こういうことが大変重要ではないかと思っております。そういう点でこういう方向の推進をぜひお願いしたいというふうに思っております。  それから、これは運輸省の関係で、港湾関係から見ますと、海の方から見ますと、例えば神戸とか横浜とか、こういうところはかつてはアジア向けのルートとしては大体四割から五割、それぐらいの大きなウエートを占めておった。ところが、今は現状から見ると一七、八%。この間の神戸の災害も影響していると思いますが、そういうことになっているということで、海の関係ではハブがないわけでございますが、これもやっぱり釜山とか仁川とかあるいは香港とか、そういうところに下手するととられてしまう。  日本の産業の空洞化、金融の空洞化だけでなくて、そういった海の空洞化も起こってくる、こういう危険性があると思うんですが、この辺は同じ運輸省でございますので運輸大臣からこれに対する対処とかひとつお聞きをしておいて、また飛行機の問題に戻りたいと思います。
  269. 古賀誠

    国務大臣(古賀誠君) お答えいたします。  国際ハブ空港と全く同じように、先生が御指摘をいただいておりますように、国際ハブ港湾というのも大変大事な分野だというふうに思っております。  先般もこの委員会で申し上げましたけれども、具体的に近隣諸外国を見てみますと、非常に大型コンテナが多くなった今日、水深十五メートルという国際ハブ港湾というのは、シンガポールだとか香港、それから韓国なんかでは大変なスピードで整備をされているということでございます。  そういったことを踏まえまして、運輸省といたしましても、第九次港湾計画の中に、二〇〇〇年を目途といたしまして、水深十五メートルのバースを持ちます大型コンテナターミナルと申しますか、こうした国際ハブ港湾を東京湾、伊勢湾、そして大阪湾、北部九州と、中枢港湾ということで十四バース、目標といたしましては二〇〇〇年を目標に整備して、諸外国に負けないような対応をしていきたい、そういうことで今整備を進めさせていただいているところでございます。どうぞ御支援のほどよろしくお願いしたいと思います。
  270. 小島慶三

    ○小島慶三君 大変力強いお話で、ありがとうございました。  海と空と両方のポテンシャルというのをどれだけ日本は伸ばしていくかということが残された課題であると思いますので、ぜひそういうふうな角度で、総合的な輸送計画というか、あるいはそれをもとにした工場立地計画といいますか、あるいは国土計画といいますか、そういったものを、例えば陸上の鉄道だけでなくて、それを含めた総合的な輸送計画というものでぜひこれからは進めていただきたいというふうに思っております。  今各地方でもローカルの空港をつくるという計画が非常に目立っております。しかし、例えば新潟が東京−新潟間の空路はなくなる、あるいは仙台も東京−仙台間はなくなる、そういうところに今度は逆に福島に空港ができる、あるいは富山とか金沢とかこういうところも大きな空港の要請があるということで、そうするとこれは果たして新幹線との競争がどうなのかなと非常に私は気になるわけでございます。  そこで、新幹線を利用すべきところはどこ、空路によるべきところはどこ、あるいはハイウェーによるべきところはどこというふうな形で地方の整備というものをお進めになる必要があるのではないか。そういう総合的な計画というのをぜひお進めいただきたい。そうでなくて、例えば新幹線だけとか、あるいは空港だけとか、そういったものが例えば十五年計画みたいなもので推進されるといたしますと、これは後で、どの空港が要らなくなるとか、そういうふうな話も出てこないとも限らないと思います。そういう点で、ひとつぜひそういう総合計画をお進めいただきたいというふうに思います。よろしくどうぞ。
  271. 古賀誠

    国務大臣(古賀誠君) 答弁は要りますか。
  272. 小島慶三

    ○小島慶三君 お願いします。
  273. 古賀誠

    国務大臣(古賀誠君) 交通サービスの提供というのは、もう先生も御承知のとおり、基本的には市場原理によるだろうというふうに思います。  今具体的にそれぞれの交通機関に触れていただきましたけれども、例えば鉄道というものの特性というのは大量輸送であり、また確実性というのではほかの交通機関よりは大変な優位性を持っていると思います。一方、じゃ、航空の方はどうかといいますと、これはもう高速性では圧倒的に優位でございます。また一方、高速道路はどうかといいますと、機動性、随意性というものの優位性がある。そういうものを総合的にどう検討して交通体系を形成していくかということは全くおっしゃるとおりだろうというふうに思います。  そういうことを総合的に勘案しながら、これから我が国の交通体系をどう形成していくかということについて考えていかなければいけないという御指摘、十分踏まえながら今後検討してまいりたいというふうに思っております。  ただ、ここでいろいろと先生と御論議をさせていただいておりますけれども、一番大事なことは、そういったことによって、例えば過疎地におきます路線バスだとか、日本の国は圧倒的に離島が多いわけでございますけれども、離島を結びます生活維持路線のための航空でありまた船舶であると。そうしたものについてどのように政策的な支援をやっていくのか、環境を整備していくのかということが規制緩和には必ず必要になってくることだろうと思っております。  そういう点を、条件、環境の整備を図りつつ政府として政策的に国民生活の向上のために努めていかなければいけない点については、しっかりそうした点を踏まえて整備をしていくということを忘れてはいけないことだということを認識しながら、先生の御意見を十分踏まえて今後総合的な交通体系の形成に努力をしてまいりたいと思います。
  274. 小島慶三

    ○小島慶三君 それから、これは今私の手元で扱っている問題の一つなんですけれども、神戸の空港の問題でございます。  神戸は大震災であれだけの破滅的な影響を受けているわけでありますが、ここへ空港をつくろうという動きがある。そうしますと、関西空港があり、伊丹があり、こういった空港はかなりのキャパシティーをまだ残しておる。全体で八百便ぐらいの可能性の中で、今使っているのは五百便だと。すると、三百便ぐらいはまだ使えるというところに神戸の新しい空港ができますと、果たしてこの三つの関係というのは一体どうなるのか。あの三つの地域をコンパスで引いてみますと大体二十四キロぐらいのスペースであります。その中に三つも果たしてそういう空港が必要になるのかどうかという点が大変気になるわけでございますが、こういう点は運輸省の方ではどうお考えでございましょうか。
  275. 黒野匡彦

    政府委員(黒野匡彦君) 実は私、航空局長になりまして、そのときに神戸の空港の話をブリーフィングを受けました。そのときに、今の先生と同じ感想を実は正直申し上げまして持ちました。  ただ、その後、阪神地区といいましょうか、あの辺のポテンシャル、それから空港というのは普通はつくり始めて完成するのに十年ぐらいかかります。そういう将来の需要を見ますと、決してむだにならない空港だなということを確信いたしております。特に、先生、ニューヨークとかあるいはワシントンあたりへ行かれますと、ごく近いところに複数の空港があって、それぞれが機能を果たしているというのが現実でございまして、阪神のようなポテンシャルのあるところにつきましては、三つの空港があったとしても十分それぞれの空港の利用価値はあると思っております。
  276. 小島慶三

    ○小島慶三君 将来神戸が完全に復興した段階でそういうプランができるというならわからぬでもないんですけれども、今あれだけの災害を受けて、寝る場所もない、生活も困っているという市民が多い中で、これから空港をつくるんだと。たしか三千五百億と聞いておりますけれども、それだけの金をどうやって一体調達するのか。今の災害復旧のほかにそういう負担というのは、これは神戸の市民としては過重ではないかという感じがいたします。その点はいかがでございましょうか。
  277. 黒野匡彦

    政府委員(黒野匡彦君) 私ども、神戸空港の扱いにつきまして、震災が起きた後、市長さんを初め皆さん方といろんな議論をさせていただきました。  私どもの方からも、少しペースを落とすということもあり得ますねということを提案いたしましたが、神戸市の考えとしては、震災は震災で万全を尽くす、これは当然の対策だ。それに対しまして、空港そのものは神戸市の百年、二百年の大計を考えた場合にどうしても必要な施設である、これはこれでやりたい。空港をつくるために震災対策に手を抜くとかあるいは資金が足らないということには決してならない。したがって運輸省も協力してほしい。設置者である神戸市長さんからこういう極めて熱のこもった御説明をいただきました。  したがいまして、それだけ地域の社会が期待しているものならば、我々としましてもおつき合いをさせていただこうということで設置の許可をさせていただいたものでございます。
  278. 小島慶三

    ○小島慶三君 それで、私の素人考えでは、過密な航空基地というものをつくるということは、果たして地域の振興のためにいいのかどうかということが非常に気になるわけでございます。  ですから、例えば空港をつくるのに必要な土地造成とか埋め立てとか、こういうふうな問題も実は出てきているそうでございますが、かつては環境庁の方では非常にそういった点の心配をしていた。これは最近の新聞報道によりますが、空港をつくるということは環境的には別に問題ない、むしろ環境にプラスになるというふうな結論が出たというんですけれども、どうしてそういう結論が出てきたのか。  これは環境庁長官にお伺いしようと思ったんですけれども、環境庁長官きょうはお見えでございませんので、環境庁の事務当局の方で結構ですがお答えをいただきたいと思います。
  279. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 御指摘のとおり、神戸空港の建設に際しましては、瀬戸内海の埋め立てが必要になるということになります。埋め立てでございますけれども、その埋め立ての計画につきましては、これから神戸港に係る港湾計画の変更というものを港湾審議会で諮られるというふうに伺っております。  環境庁といたしましては、瀬戸内海環境保全特別措置法を所掌している立場から、この審議会の場におきまして、その法律にのっとりまして環境保全上必要な意見を言ってまいりたいというふうに考えております。御意見を申し上げるのはこれからでございます。
  280. 小島慶三

    ○小島慶三君 あるいは、これも新聞が先取りをして、環境庁がそういう結論を出したというふうに書いたのかもしれません。私の方の誤解かもしれません。  瀬戸内海の埋め立てというのは、ああいうところでございますので、私は相当これは慎重に考えるべきだと思うんです。まして空港という限られた地区での埋め立て計画というのは、これは慎重の上にも慎重を期さないといけないというふうな感じを私は持っております。したがって、これは慎重に結論をお出しいただくということでお願いをしたいというふうに思います。  それから、だんだん時間もなくなってまいりましたので、これが最後の質問になるかと思うんですけれども、先ほど港湾の関係で御質問申し上げましたように、だんだん日本に対する期待が減ってくるというか、外国の船が寄らなくなる、こういうふうな動き、それから空港の面でもハブ空港がなかなかその資格に相当するものが出てこないといったようなことがございまして、これは人によりますと、日本バッシングでなくて日本パッシングだと。要するに、日本をだんだん通らなくなるということが言われておるわけでございます。そういう点は、今後の内閣の施政によりましてきっちりとした規制緩和、地方分権というものができて、そして日本の各地域が新しい活力を取り戻す、これはもう絶対に日本がこれから生き残っていくための必要条件ではないかというふうに私は思っております。  そういう点に今の空港問題も重ねまして、北海道と沖縄をつなぐ新しいネットワークといいますか、そういうものができれば大変にいいことではないかと思っております。新しい日本の国土計画というよりも空間計画というか、そういう言葉の方が正しいかと思うんですけれども、そういう日本の立地性のよさを十分に生かしたような計画がこれから進められるようにぜひお願いしたいと思うのでございますが、これはひとつ総理からお答えをいただきたい。
  281. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 本日、空港、港湾、特に国際的にハブ空港、ハブ港湾の整備の進む中で、今後の日本の総合交通体系の中における空港の位置づけ、港湾の位置づけ、こうした御指摘をいただきました。私は、この御指摘は非常に時宜を得たポイントを御提起いただいていると思います。  なぜなら、先般も本院で御答弁を申し上げたところでありますけれども、阪神・淡路大震災というものを閣僚の一人として体験をいたしました。通産省という仕事の性格上、まず私に課せられた責任はライフラインの整備でありましたけれども、その後、実は一番影響が残りましたのが、まさに神戸という現在の総合交通体系における一本しかない国土軸の結節点での被害、これがいかに物流の上で広範にしかも長期間影響を残すかということでありました。  気になりまして、何回か中小企業庁に調査を指示いたしましたが、こうなりますと、鉄道で結ばれていない沖縄県だけが実は影響からの戻りは早かったんですが、本当に中小零細の流通の面では鹿児島県から北海道まで、その後数カ月間にわたりまして、大きな金額のケースはそれほどありませんでしたけれども、ボディーブローのようにその影響というものは残り続けておりました。そして、そのポイントは何かというと、実はお得意様が被害を受けた、納入先が被害を受けたという以上に、東西の物流の結節点が切れた、そのために復旧・復興資材が優先をする中で、物の、商品の流通に非常に影響を来したということであります。  私どもが本当に国土軸を複数必要とする、そしてそれは日本国内のことだけではなく、国際社会におきましても、港湾におきましても空港におきましても、今既に二十四時間空港、二十四時間港湾が当然の資格になっております世界の中で、我が国も一刻も早くそうした意味での国際的に通用する二十四時間空港であり、二十四時間の港湾、土、日も使えるこうした港の整備を急ぐべきだと常々考えておりました。  今後のさまざまなことを考える場合に今の御指摘は非常に貴重なものとして受けとめさせていただきます。
  282. 小島慶三

    ○小島慶三君 終わります。
  283. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 以上で小島慶三君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  284. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 次に、上田耕一郎君の質疑を行います。上田耕一郎君。
  285. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 日本共産党の上田でございます。私は、消費税増税を初め国民負担増の問題と、それから財政再建のための一つの重要な手段と思っております国債借りかえ問題、この二つをテーマにして質問をしたいと思います。  今審議中の今年度の予算案の最大の対立点は、消費税増税の五兆円、特別減税廃止の二兆円、医療保険の新しい負担の二兆円で合わせて九兆円の国民負担増が生まれるということだと思うんですね。税金というのは国家、政治の基本問題ですから、非常に前例のない負担増、これに賛成か反対かということが最大の対立点だと思いますが、総理の認識はいかがでしょうか。
  286. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 長々と繰り返すつもりはありませんけれども、しばしば申し上げてまいりましたように、選挙期間中、私が国民皆様に訴えましたのは、消費税率を引き上げさせていただきたい、二%引き上げるうちの一%は地方の財源であり、残る一%の相当部分は先行して行っている所得税減税等の穴を埋めて、同時に将来に備えていくもの、ぜひ御理解をいただきたいというお願いをしてまいりました。  また、議員はどうせ多分それにもお触れになるでしょうから、特別減税を今回終わりにいたしましたのは、現在の財政状況の中で特別減税を継続することによって生ずるプラスよりも、特別減税を財源の裏打ちなしに継続しようとすれば赤字国債という名前で財源を調達しなければならない、これは将来に悔いを残す、そうした判断をしたことでありまして、確かに議員と私の間ではこの点は一番意見の違うところかもしれません。  しかし、私は、将来を考えるとき非常に厳しいものがあります、間違いなく。そして、増税をお願いする、その意味では国民に対してお願いをするのでありますから申しわけない思いもいたします。しかし、あえてここでお願いを申し上げることの方が正しいと、私は政策選択としてこう判断をいたしました。
  287. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 九兆円といいますと、単純に割りますと、国民一人当たり七万五千円、四人家族で年間三十万円という恐るべき負担増なんですね。ですから、国民の怒りは非常に激しいです。  国会請願、消費税率の引き上げ反対の請願署名は、きょう現在で千百十六万。参議院に主婦連、日本生協、公団自治協、全商連、地婦連、全建総連等々、きょう一日だけで九十五万人の請願署名が来ているんですよ。それから、医療保険改悪反対の請願署名は、きょう付で二百九十六万七千六百七十三名、三百万ですよ。  しかも、我々ずっと追及してまいりましたけれども、昨年の総選挙で当選した自民党議員の半数を超える百二十名以上の方が消費税アップ反対、凍結、延期なんですから。三塚大蔵大臣は、これ私どもは全部調べてありますけれども、新聞アンケートでは延期だったんです。  今度の五兆円の中で福祉、医療にどのぐらい回りますか、これまで六%だったという数字がありますけれども
  288. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 上田議員は共産党の大幹部ですから、指導者としていつも論陣の基調は同じであります。医療改革改善に向けて、高齢化社会に向けても盤石のものをつくりあげようということでやっておることにつきましても、改悪以外の何物でもない、消費税は収奪であると、こういうことの論陣を張られております。しかし、国民代表でありますから、誠実に総理以下私どもお答えを申し上げておるわけであります。  医療にどれだけ回るかということでありますと、財政構造改革の中で聖域のない歳出の見直しをするということは何度も総理も私も担当大臣として申し上げてきております。これはやり抜きます。そういうことの中で二%アップでございますが、地方一%、二・五兆参ります。こちらに残るのが二・五兆オンします。その一般財源を大事に、構造改革の見直しの中でプライオリティーが決められたものに使わせていただく。当然丸々医療改革に行くとは思いません。全体を見て消費税アップによる一%分を大事に使わせていただくと、こういうことであります。  原点を置かないで、心からひとつ柔軟に御審議を賜り御提言ください。
  289. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 そこで、三塚さんのグループで二十一世紀を考える会というのがあります。そこで「医療保険制度改革考え方について」というのを二月十三日におやりになって、その録音テープの速記録がここにあります。そこで自民党政務調査会社会部会長の長勢議員が今の問題をこう言っています。「消費税の引き上げ分は、医療費に回す分はもともと当初からフレームに入っていなかったというのが」「事実でございまして、」とちゃんと述べておるんです。  この報告を聞いて、玉沢徳一郎元防衛庁長官質疑で、「総理も選挙の最中に言ったし、僕は、消費税に賛成の理由としまして、財政が非常に厳しい、だから引き上げの一%の分は地方財源としてやるんだ、あとの一%は福祉、年金、医療費の方にも充当と。ところが、今の説明だと、最初からそんなもの考えでなかったんだと、こういうことでは政治家として余りにも乱暴」だと嘆かれまして、「こんなことでは、自由民主党はうそをついたと。消費税反対して当選した人は、そこでうそを一つついてますね。それからこれもやったら、二回うそをついたことになる。」、そう嘆いているんですよ。  どうですか、どう責任をとられますか。
  290. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 共産党のネアカの大将の上田先生でありますから、私も同年代でもありますから率直に申し上げます。  二十一世紀を考える会は、清和会という派閥を解消させていただき、新しく政策集団としてスタートをいたしました。小生が会長であるわけでございますが、ただいま大蔵大臣を拝命いたしておりますものですから、研究会にも総会にも三分ぐらい顔を出す程度で、たまにしか行きませんが、ただいまの勉強会をやられたとは聞いております。  そういう中で、長勢社会部会長は、社会部会長でありながら、どういう根拠で言われたのか定かでありませんが、よく聞いてみます。それから、玉沢元防衛庁長官殿は農林部会の大御所でありますが、選挙中そういう演説をしておったことも聞き及んでおります。多士済々でございまして、ああ言えばこれが正論、いや、こちらが正論と。しかし、最終的には収れんをしてまいります。
  291. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 どういう答弁だか私よくわからなかったんですけれども。  さて、このままいくと四月一日に、参議院が頑張らないと値上げになる。国民の一番の不安は自分の家計でどのぐらい負担するだろうということなんですね。  そこで、大蔵省にお聞きします。平均的サラリーマン世帯、年収七百六十六万円の世帯の現行の消費税三%での負担額と五%での負担額、それで幾ら負担がふえるのか、試算を報告してください。
  292. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 今七百六十六万という細かい数字ですので、ここは後ほどちょっと頭の中で計算しますが、手元に持っています七百万円で計算させていただきますと、消費税の税率アップによりまして六万七千円程度負担がふえます。一方、平成七年から行っている制度減税によりまして六万六千円ほど負担が減りますので、これが大体対応していると。  一方で、先ほど総理からお話がありましたが、特別減税、これは追加的に景気のためにやっていましたから、これが元に戻るということはこれがなくなるということになります。この分はことしと来年ということだけを比較すれば負担がふえる、これは六万円程度ふえるのかと思います。  なお、七百六十六万円ですと、七百万円に対して一割ぐらいふえるわけですから、消費税で七万四千円ぐらいふえるんではないかなと、そう思います。
  293. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 七百六十六万円で七万四千円、珍しく私どもの試算とぴったり同じですね。  九五年度の総務庁の家計調査、これで負担を試算してみました。消費税二%増で七万三千四百八十八円、ちょっと共産党の方が少ない。特別減税廃止で六万六千九百十二円、医療保険改悪で三万九百三十六円、このほかに厚生年金の保険料増が八千五百九十二円ありますので、年間十八万円ですよ。一カ月で一万五千円なんですよ。  今、春闘でしょう。このごろ回答が出始めているけれども、九千何がしですよ、回答が。一万五千円の負担増というのは政府、大蔵省から一万五千円の賃下げを押しつけられたと同じですよ。大変なことじゃないですか。これが十八万円の負担増。大蔵省、どうですか。大体賛成でしょう、この計算は。
  294. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 今の計算の中には平成七年から先行している減税の分が入っていないと思います。七百六十六万円の方ですと、これも標準世帯で計算しないといけませんので、いろんなケースがあろうかと思いますが、もし標準世帯で御主人だけが働いている場合ですと、多分前に比べて十一万円ぐらい減税になっているんではないかなと、速算するとそんな感じです。
  295. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 減税は別次元の話。今度の予算負担増がどれだけか、これが国民の一番の関心なんですから。  首相はお笑いになっているけれども、私は厳しいことを言いたい。今までこれだけの負担増をやつた首相はいないんですよ。一番多いのは鈴木首相のときの一兆六千五百億円ですよ。  そうなりますと、戦後たくさん首相がいらっしゃるけれども、例えば吉田首相、アメリカべったりの仕組みを日本につくった。岸首相、警官導入で安保条約を通した。田中角栄首相、ロッキード、信濃川河川敷、すごい金脈でしょう。あなたはそういう首相に並べられるような、戦後国民に対して最大の前例のない負担増を押しつける首相、そういうことになりつつあるんです。そういう自覚はありますか。
  296. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私が先ほど少し議員の御論議を伺いながら笑いたくなりましたのは、減税は別ということで、減税がちゃんと先行していることはお認めになりながら、あえてそれを別に議論をされたのでおかしくて笑いました。そして、それは相当なへ理屈であるということを上田さんもお認めになったんだと私は思います。  その上で私は、上田さん流に言うなら、そういう汚名を着るんだと言われればそうかもしれません。それだけ真剣にこの国の財政状況を私は心配いたしております。甘いことを言う方が楽であることは自分でも百も承知をしております。しかし、現に先行している減税があり、それを埋めていき、地方に財源を付与していくために消費税を引き上げなければならないということは、現実の問題として、限られた選択肢の中で将来に悔いを残さないようにするためにもこれを私はとらなければならない、そういう判断をいたしました。  そういう判断がけしからぬと言われれば甘受いたしますが、どうも私は議員とその辺について考えが違う。それはそのとおりでありまして、私は、これ以上この国の赤字が積み重なっていく状態を放置して、将来の国民に、今我々が努力をすれば少しでも負担を減らせるものを、あえて子供や孫の時代の借金がふえることを知りながら我々の世代だけが甘く過ごしていくつもりはございません。
  297. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 総理は、先日、三月七日、聴濤議員質問のときに増税なき財政再建と私は言わなかったと言われましたよね。しかし、確かにそう言わなかったかもしれぬけれども財政再建なき増税ですよ、これは。消費税というのは自動的な増税装置みたいなものなんですから。  竹下内閣のときに三%入れましたね。あれだけ反対運動があった。それから、自民党内閣はいっこれをアップできるかというのをねらったんです。なかなかそれを決めることができなかった。社会委員長の村山内閣で二%アップを決めたんです。だから、村山さんの最大の功績はこの消費税アップだと自民党は評価しているぐらい。  それで、一度上がりますと、今度は二けた増税が敷かれるんですよ。政府税調の加藤会長は一八%が理想だと、そう言っているんですから。一八%というと四十四兆円ですよ。そうすると、今度の予算案の税収の五十七兆の八割も全部消費税で取ろうという、そういうレールさえ敷かれつつあるんだから、ですから本当に財政再建なき増税ですよ。  そこで私は、総理が真剣に今の財政危機を考えてこういう道を批判を恐れずに私は進めているというふうに言われたので、国債借りかえ問題に移りたいんです。  この国債借りかえ問題というのは非常に大事な問題で、私たちは財政再建のために、日本共産党としても十カ年計画をきちんと出して、財源を具体的に示している。公共事業についてはこの問題は何とかしなきゃならぬ。これは衆議院で私どもの志位書記局長が、六百三十兆円、これは聖域でないという答弁総理もおやりになって、やっぱり公共事業を何とかしようという合意は生まれつつあります。  私どもはもう一つ軍事費を挙げている。四兆九千億ですよ。アメリカに対する思いやり予算二千七百億円ほどある。これを削ろうというのを私ども提起しているけれども、これはなかなか自民党を含めて一致できないでしょう。これは、我々強く主張するけれども、ひとつ大事な課題としておいて、自民党の藤尾政調会長もかつて提唱したことがありますので、国債借りかえ問題、この問題を提起したい。  私ここに持ってまいりましたのは「月刊自由民主」、自民党の機関誌です、八四年九月号。その年、軽井沢で軽井沢セミナーがあった。このときは国債残高百二十兆、今の半分ですよ。それでも財政危機、大変なのでというので、藤尾政調会長は、こういうすごい赤字国債をつくったのは経済界にも責任があるのでひとつ一緒にやろうじゃないかと、こう言っている。   六十五年度までに赤字国債を完済しようというのですから、経済界の方々がお持ちになっている国債の利子といったものについても「こういう非常事態だから、私どもにも協力させてくれ。我々が受け取る利息は半額でよろしい、三分の一でも結構。場合によっては利息分はいらない」というぐらいの協力態勢を経済界も、あるいは国民の立場からも言っていただくような空気が出てこないものであろうかと。 こういう提唱を今から十三年前に藤尾正行政調会長は、自民党の政調会長ですよ、軽井沢セミナーで提案されている。  これが今二百四十兆ですよ。次には二百五十四兆円になるというんですから、これはいよいよ考えなきゃいかぬ。そういう重要な課題で、これについては自民党とも一致できる可能性があると思う。  それで、藤尾さんは、場合によっては利息は要らぬと、かなり過激ですよ。日本共産党はもっとおとなしいです。一%か二%利率を下げて借りかえをすれば、市場に流通している分もあるし短期国債もあるから全額とは言えないけれども、例えば全額で計算すると二百四十兆の一%で二兆四千億でしょう。二%で四兆八千億でしょう。そうすると、かなりの財源が出るんです、これ。  そこで、今この国債利払い費、今年度予算で十一兆七千億です、十一兆七千億払う。この利子、利率、どのぐらいになっていますか、答えてください。
  298. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) お答え申し上げます。  九年度の予算で、委員が今言われましたように、確かに利払い費十一兆六千八百二十一億円を計上しております。  そこで、利率についてのお尋ねでございますが、最近の時点でございますけれども平成八年十二月末の国債発行残高につきまして、表面利率の加重平均でございますが、これは四・三九%でございます。
  299. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いろいろありますけれども、一番高いのは七・九%ですよ。今だんだんだんだん下がってきて平均四・三六です。  ところが、庶民の場合はどうかというと、銀行の一年物定期〇・二五%でしょう。それで、郵政大臣にお越しいただいているけれども、定額貯金一年物もやはり〇・二五%ですよ。〇・二五%というんだから、これは百万円預けて二千五百円ですよ、年に。税金引かれると二千円ですよ。かつては五万円ぐらい入った。それが全部今銀行に行っているんだから、これは銀行への所得移転と言われて、去年銀行は七兆円の史上最高の業務純益を上げた。  そこで、郵政大臣、郵便貯金の目玉商品の定額貯金の利率を銀行の定期の〇・九から〇・九五%にすることを九三年一月の大蔵省との合意で決めた。あなたは当時大臣じゃなかったけれども、これは金融自由化の名で銀行のそういう暴利を守るために横並びの低金利システムを国民に押しつけることではないかと思いますけれども、いかがですか。
  300. 堀之内久男

    国務大臣堀之内久男君) 上田委員ももう御承知のとおりでありますが、郵便貯金の利率の決定につきましては、郵便貯金法第十二条の趣旨にのっとりまして、まず市場金利を勘案し預金者利益を確保するとともに、民間の預金金利にも配慮して決定することと定められておるわけであります。したがって、定額貯金の金利につきましても、ただいま御指摘のとおりでありますが、この原則を踏まえまして平成五年六月以来、委員質問のとおり、三年定期預金の〇・九五掛け程度を目途として設定されているところであります。  しかし、これによって民間金融機関とのトータルバランスは図られておると思います。すなわち、長期的にしかも総合的に見るならば、安定的な金融サービスの提供が確保されることによりまして預金者の利益にも合致するものと認識をいたしておるわけであります。
  301. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 銀行もそれから郵便貯金も一年物で〇・二五%というと、さっきの加重平均四・三六は十七倍ですよ。それだけの金利をこれだけ大変なときに国債を持っている方々は手に入れていて、十一兆七千億国会度の予算で払っている。  そこで、大蔵省にお伺いします。国債の所有者、これはどうなっていますか。
  302. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) 委員のお尋ねの国債の所有者別の内訳でございますが、実績であります平成七年度末での国債の残高が二百二十五兆円でございますが、その保有者別の内訳は、順に申し上げますと、日本銀行十七兆円、資金運用部六十一兆円、市中の金融機関七十兆円、それから証券会社五兆円、それから個人等、個人とそのほかを含めてでございますが、六十九兆円というぐあいになっております。
  303. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 問題は個人等ですよ。何度聞いても個人等で、データはないとかなんとか言われる。  それで、パーセントで言うと、九六年十二月末で個人等保有三二・四%だと。ところが、正森議員、衆議院の大蔵委員ですけれども、正森議員が大蔵省の方から、この三二%、七十七兆円のうち純個人は一%だということを聞いたんですよ。ほとんど大企業の人ですよ、きっと。恐らくこの純個人もかなり富裕な方だと思うんですけれども、どうですか。純個人は一%、こういうことを正森さんがはっきり大蔵省の方から聞きましたけれども、ちゃんと事実を明らかにしていただきたい。
  304. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) 個人等の内訳という話でございます。  これは、個人等の中にはマル優、マル特等によりまして個人保有が特定できるもの、いわば名前もわかっているもの、この部分が、先ほど委員も言われました純粋の個人で名前もわかっているものは一・二%でございますが、実を言いますと、そのほかに信託口八・九%とか証券発行分というのがございます。そういう中には、これは名前は出ておりませんが、実質、個人が相当程度持っておられるのではないか、また投資信託等を通じての実質的な意味での個人保有ではないかと。そういうものが含まれておりますものですから、それは個人、実質という意味ではもう少し高くなっていくんだと思います。
  305. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いずれにせよ、市中銀行、大銀行、それから個人としてもかなり富裕な方々が国債をほとんど持っている。一般庶民の平均十七倍の金利をいただいている。藤尾さんが言うように、こういう経済危機、財政危機のときにひとつ経済界も協力しようというふうにしていただく非常に重要な時期が今来ていると私は思うんですね。この国債を借りかえることは法的にも制度がきちんとできていると思いますが、どうなっていますか。
  306. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) お答え申し上げます。  今、委員が言われましたのは国債の繰り上げ償還についてのことであろうかと思います。  これは国債二関スル法律、これは明治三十九年以来の法律でございますが、その第一条で償還期限に関しまして必要な事項は大蔵大臣が定めることとされていることを受けまして、国債の証券名、国債の発行条件等に関する告示等におきまして繰り上げ償還を行うことがある旨の記載がなされております。その意味では法的には可能でございます。
  307. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 今答弁がありますように、法律もきちんとありますし、各国債を発行するたびごとにその告示で償還期限を明示して、繰り上げ償還もあり得るという旨のただし書きが書いてあるんですね。  それで、実際に日本もまた国際的にもこれを実行したことがあると思いますけれども、その実行例を教えてください。
  308. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) 我が国の場合に、過去に繰り上げ償還して低利借りかえをした例がございます。例えば、明治四十三年、一九一〇年、日露戦争後に内国債等を発行いたしまして内国債を償還した事例がございますし、昭和十一年、一九三六年、戦前にやはり内国債を発行いたしまして内国債を償還した事例はございます。
  309. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 外国でもイギリスで一九三五年にやっているんですね。今言われたように明治四十三年の桂内閣のときは、五分利債を四分利債、一分下げたんですね。広田内閣の馬場蔵相の場合は年利五%を年利三・五%に一・五%下げたんですね。こういう実例もある。法律もきちんと決まっているということなんです。国際的にも例がある。  今、日本の国債残高は国際的にもトップでしょう。これはもう周知のことです。財政制度審議会が財政構造改革白書をお出しになった。あの中に絵が出ていますよ。一万円札を積み上げると富士山の六百三十倍になるという絵が載っていますよ。一万円札を積み上げると一億円で一メートルになるんですね。だから、二百四十兆円積み上げると富士山の六百三十倍という天文学的なあれになっているんです。それで、大蔵省の財政中期展望でも目標を掲げて仮定試算をいろいろやっているけれども、なかなか大変でしょう。それをどうやって減らすかということですよ。  我々は公共事業のむだ、軍事費のむだ、それから特権的減免税のむだ、こういうことをずっと主張して具体的に提案しているけれども、一つ大事なのは、この十一兆七千億円もの国債利払い費、これを何とか減らさにゃいかぬ、庶民が〇・二五%で苦しんでいるときに。私はこれは考えるべきときが来ていると思うんですね。  だから、自民党の政調会長でさえ、今の国債残高の半分の百二十兆円の時期にちゃんと軽井沢セミナーで提案しているんだから。ひとつやろうじゃないですか。参議院でみんな一致してやれば、これはやれるんですよ。これを私がNHKの討論会で言ったら、村上幹事長も少し検討すると言ってくださったんで、これはやっぱり最後は大蔵大臣と首相と、このお二人がこの問題を真剣に検討するかどうかということになるので、最後に、大蔵大臣と首相のお考えをお聞きしたいと思います。
  310. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 大変御研究の上の熱弁でお話を承りました。藤尾政調会長の御発言も出ました。当時、筆頭副会長をしておりまして、オイルショック後の不況克服のために国債発行をいたしました。よくなったんですから、ちゃんとしろよと藤尾先生らしい演説をされました。それはそれとして、石油業界、経済界にそれなりのインパクトがありましたが、出てくるまでインパクトはございませんでした。そういうことで、このときは藤尾会長言いっ放しということで、ざんきの至りと言っていたことを思い出すところであります。  そこで、借りかえあるいは繰り上げ償還の点についてお話がありました。特に、借りかえをすれば、本件は低利借りかえであれば大変負担が少ないのではないかと、こう言われるのでございますが、上田議員も御案内のとおり、低利借りかえは制度的には可能でございますけれども、これを実施いたしますと、国債保有者が償還期限までの利子を受け取ることができなくなるなどの問題が出るわけでございます。国債保有に対する安定性というのが国債政策をとらざるを得ない今日の政府にとりまして信任を得るポイントなものでございますから、これを損なうことになりかねないことはできないと、こういうことになります。  その結果、今後発行される国債の発行条件の悪化をもたらし、必ずしも財政負担の軽減には結びつかないのみならず、国債の消化が今後重大な支障を生ずるおそれもあるというふうに分析をいたし、したがいまして、せっかくの御提言でありますが、御指摘のような低利借りかえは実施すること適当でないと考えておるところであります。
  311. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私も大蔵大臣と同様に思いますし、少なくとも今後発行される国債の発行条件が悪化する、私は、これは間違いなく将来国債の消化そのものに影響を及ぼすと思いますし、それはとるべき策ではないと思います。
  312. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 終わります。
  313. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 以上で上田耕一郎君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  314. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 次に、西川潔君の質疑を行います。西川潔君。
  315. 西川潔

    西川潔君 短い時間でございます。よろしくお願い申し上げます。  私は、橋本総理が掲げておられます六つの改革のうち、社会保障の構造改革についてまずお伺いをいたします。  全国一人一人の人たちの痛みや訴えを抜きにした社会保障の構造改革は私はあり得ないと思っております。この構造改革によりまして国民一人一人に痛みが生じる場合に、総理はどのような方策をお考えでしょうか。
  316. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) もしきちんと申し上げようと思いますと、これだけのチャートを全部御説明申し上げることになります。というよりも、それだけ今私たちは深刻な状態にあると申し上げた方がいいでしょう。  少なくとも高齢化は我々はある程度予測しておりましたが、これほど出生率が急激に低下するというのは、少なくとも十年、十五年前に想像していた状況ではありませんでした。  これは厚生省あるいは経企庁等にお尋ねをいただいた方が正確な数字になると思いますけれども、出生率が改善されないまま今の各制度をそのままに続けていくとき、二〇二五年ぐらいになりますと、国の借金分、そして税、各種の保険料、恐らく一人一人の収入の七割以上をちょうだいしても今の仕組みが維持できないという状況になってしまいます。我々はそんなわけにはいきません。  そして、今の状況を非常に単純にあらわすなら、これからしばらくの間、一年に新しく年金を受ける権利の発生する方が大体百万人ぐらいというのがずっとしばらく続きます。ということは、恐らくそれだけで大体一兆円ぐらいの自然増があるということでしょう。そういう状況の中でありますだけに、私たちは、介護保険という柱を一本しっかりと立てながら、これを中心にして年金も医療保険制度も根底から見直したい、そう選挙中にも実は訴えてきました。  そして、私たちは社会保障制度というものの横断的な再編成を図ろうとするわけですが、そうすると、どうしてもあなたがおっしゃるように痛みの出る部分というものが出てきます。これはまさに、例えば所得の低い方、一つの例をとるならばそういう言い方ができるでしょうが、社会的に弱い立場にある方に対しては必要な給付を確実に行えるような仕組みをきちんとあわせて用意していかなければなりません。私はそう思います。
  317. 西川潔

    西川潔君 次に、この生活者の痛みと訴えという視点から一つの例をもとにお伺いをしたいと思うんです。  先般政府は公的年金制度に基礎年金制度の番号制を導入されました。私も賛成、大変喜んでおる一人でございます。なかなか複雑で難しい一人一人の自己管理や手続面、請求漏れ防止、かなりの国民負担の軽減につながると思うわけです。  中でも特に期待するのは、各制度間の併給調整のトラブルを未然に防げるという点で、昭和六十一年の年金制度の改正によりまして原則一人一年金になったわけですけれども、しかし一部には併給調整をスムーズに行うことができずに二重払いのケースが大変多うございます。この二重払いについては、別に他意、悪意があるわけでもないわけですけれども、何らかの手続のミスによりまして生まれるケースであります。この二重払いについて、これまでにどれぐらいの件数、一番高い額などを教えていただければと思うんです。
  318. 真野章

    政府委員(真野章君) 併給調整を必要とするにもかかわりませず過払いとなっているものの総数でございますが、これは現在保険者がいろいろ分かれておりますので、その総数の把握はいたしておりません。  ただ、社会保険庁におきまして、各共済組合から提出を受けました受給情報を活用することによりまして、過払いになっているのではないかということでどちらかの年金を選択してほしいという申し出書を受給者にお送りいたしました件数は、平成六年度で四百十三件でございます。  このうち、社会保険庁の方の年金を支給停止すべきというお申し出をいただきましたのが百九件でございまして、そのうち百五件が既に返済中または返済が済んだ方でございます。その百五件のうちで一番多額であったケースは約四百四十一万円ということでございます。
  319. 西川潔

    西川潔君 ありがとうございました。  ひとつこのケースをお聞きいただきたいと思います。  私は、長年にわたり農林団体職員として勤めました。ある事情で退職した後、脳こうそくで倒れ身体が不自由となり、障害基礎年金を頂くことになり、妻のパート収入とで、なんとか生活をしておりました。その後、二十三年間加入していた農林共済年金から退職共済年金が受けられる年齢となり、既に、受けていた障害基礎年金約六万円と、共済年金の約十万円とで夫婦二人で細々と生活しておりました。ところが、思いもよらぬ一通の通知が届きました。これまで、頂いていた年金は二つ同時に頂けないので一つの年金を選んで下さい。そして、これまで二重払いになっていた一方の年金約二百六十万円を返金するようにということでした。今になって二百六十万万円もの大金を返せと言われましても、どうして返せばいいのか、途方に暮れている というお手紙をいただいたんです。  この方は障害基礎年金を受けておられた約一年後から農林年金の減額退職年金を約四年間にわたって受けられていたわけですけれども、この方は役所の言われるとおりに手続をしました。事実、二度にわたっていたしました、私は障害基礎年金を受け取っていますと。これは農林年金に提出されていることも確認をさせていただきました。  そういたしますと、その時点で二重払いが発生していることを制度側は確認しているわけです。少なくともそれ以降についてはこの方には責任がないというふうに僕は思うわけですけれども、これは総理大臣はどういうふうにお感じになられたでしょうか。
  320. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 事務方からちょっと訂正しろと。何か私は、百万人増、それだけで約一兆円と先ほど申し上げたようですが、百万人増などで社会保障予算が大体年間一兆円ぐらいふえると、正確にそう申し上げろといってメモをもらいました。済みません。これは訂正します。  私、実は先ほど議員からこの事件の御質問があると聞きまして、この国民年金障害基礎年金支給停止処分取り消し請求事件というものの判決書を一生懸命になって読んでいたんです。どうしてもその意味がもう一つつかみ切れません。というのは、要するに、今あなたが御紹介になられた方が社会保険庁長官に対して処分の取り消しを求めて訴えられたわけですが、判決の趣旨としてきちんと出されているものは、「原告の請求をいずれも棄却する。」ということでありまして、これは原告の請求を棄却するとなっているわけです。言いかえれば、保険庁の方が正しいという判決が下っているんです。
  321. 西川潔

    西川潔君 済みません、それは先の質問ではないでしょうか。
  322. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) いやいや、そうじゃないんです。  それで、読んでいて、そこでわからないのが、そこの半分から後ろの方にオーバーに今まで重複して払っちゃったものを返す必要はないんじゃないかと読めるような文章がついていまして、さっきからその判決を眺めて首をかしげ続けておりました。
  323. 西川潔

    西川潔君 新聞の判決でございますか。
  324. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 東京地裁のです。
  325. 西川潔

    西川潔君 ちょっと済みません。総理はお間違いになっていると思います。
  326. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) いや、だから農林と国民年金でしょう。
  327. 西川潔

    西川潔君 これは障害者基礎年金と農林の分です。
  328. 熊澤英昭

    政府委員(熊澤英昭君) 先生のお尋ねのケースで、事実関係もございますのでちょっと説明させていただきます。  先生が御指摘のケースは、農林年金と国民年金の障害年金の両方を受けていた方のケースだと思いますけれども、その方は、両方受けている時点で、農林年金に対する報告書の中で国民年金の障害年金を受けているという申告記載をしていたわけでございます。ただ、その時点で、農林年金の方から御本人に対しましてどちらか一方を選択するよう助言、確認すべきだったというふうに考えておりますが、そのような助言、確認を行わなかったということで、その点は遺憾であるというふうに存じております。  ただ、本年一月から、先生が今おっしゃいましたように基礎年金番号制度が導入されておりますので、こうした制度の活用によりまして、今後こういう事態が生じないように農林年金の適切な運用につき指導してまいりたいというふうに存じております。
  329. 西川潔

    西川潔君 ありがとうございました。  総理、おわかりいただけましたでしょうか。
  330. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) わかりました。
  331. 西川潔

    西川潔君 じゃ、次に進ませていただきます。  こういうふうにトラブルが起こるわけですけれども、併給調整のトラブル、二重払いが発生した場合は、原因が国のミスであっても結果のみの判断だけで返金を求めるというのが現在の国の方針です。  一つ飛ばしてさせていただきます。もう時間がなくなりました。  現在の国の方針ですけれども、僕が今御紹介したのは、実は四年前に相談いただいた、四年前にもこちらの方で質問をさせていただきました。その当時はこの方に大変申しわけがないという気持ちでございました。そして、自分も四年前にどうあるべきかと、つまり論点を絞って質問させていただいたんですけれども、ここに一つの総理が今お答えしようとしていました裁判の結果を読ませていただきます。  「二重払い年金の返還は不要」という部分ですけれども、   老齢年金を受け取っていることを理由に障害  基礎年金の支給停止処分を受けたうえ、二重払  いになった金額約二百万円の返還を迫られた金  沢市の男性が、社会保険庁長官を相手取り処分  の取り消しを求めた訴訟の判決が二十七日、東  京地裁であった。富越和厚裁判長は、「併給禁止  は生存権などを保障した憲法に違反する」との  原告側主張を退けて請求を棄却したが、二重払  い分の取り扱いについては、「国側のミスによ  るもので男性には何の責任もなく、国が返還を  強制することは信義則に反する」とし、不当利  得として返還を求める権利は社会保険庁にはな  い、と述べた。こういうことでございます。  四年前に、やむなくこの方には辛抱していただくというようなことで、私も努力をさせていただきました。でも、今回、当時の資料を見直して振り返ってみますと、きょうもう一度この質問総理を初め閣僚の皆さんにもしたいなということで、改めてきょうさせていただいているわけですけれども、こういう事実、厚生大臣は、この判決内容を今お聞きになってどういうふうにお感じになったかというのを言いただけないでしょうか。
  332. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 法律は、二重払いの場合は返還してもらうと。そして、二重払いですよという場合は通知して、不審な点があったらどうぞ相談してくださいという通知を出しているということで、判決も読んでみますと、「併給調整は憲法の規定に違反するところはなく、またそれが有効であり制度上の合理性がある以上、違法」ではない、しかし返さなくてもいいと。これはちょっとおかしいなと。  保険料というのは、国民が、みんなが保険料を納めたのを財源としているんです。それで、保険というのはいろいろ分立しているから、中には幾つかもらっちゃうだろう。その場合には高い方を選んでください、低い方は返してください、貴重な保険料ですからと。それは、国会でみんなやっぱり併給はよくないということで決めていただいて、その法律のとおり社会保険庁は執行している。だから、あなたは二重取りですよ、どっちか返してくださいと。私は当然だと思うんです。  その通知が不審な点があったらどうか相談してくださいと。しかし、それはしなかった。もう使っちゃった。もう返せないというところで訴えたわけでしょう。しかし、裁判所もこの法律は憲法違反ではない、しかし返せないんだから返さないでいいといったら、これはどうなつちやうのかなと。私はこの判決は理解に苦しむところであります。
  333. 西川潔

    西川潔君 先ほど、早い質問のときに総理が来られましたので、このことを総理は言いたかったと思います。少し時間をあの分をおまけしていただきたいと思うんです。  先ほどは障害基礎年金の部分だったんです。ですから、厚生大臣も今おっしゃったんですけれども、そこを我々はあえてきょう質問をさせていただいた。もう大臣のおっしゃるとおり、皆さんの保険のお金ですから当然であると思うんですけれども、これは政治家、そして政治の判断。前段の部分の質問もそうですけれども、これも含めて政治判断で何かいいアイデアがないかな、考えていただくことはできないかな。使ってしまったものを返せないという部分も多々あると思うんです。そこのところをまとめてひとつ総理大臣に御答弁いただいて、終わりたいと思います。
  334. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 厚生大臣もこの判決文を読んでいるとわからなくなると今言われましたが、繰り返して読めば読むほど、「併給調整は憲法の規定に違反するところはなく、」と明確に言い、「有効であり制度上の合理性がある以上、違法及び信義則に反する事情はない。」、そこまでの文章と、その後続いております、その払い過ぎたお金を原告に返せということは、「原告が善意の債務者であり、自己の責に帰さない事由によるものであり、現存利益がないと推認できることから、著しく不当である。この認定を覆す立証がない限り、各過払金の返還請求権は存在しないと解されることを付言する。」と書いてあるんですね。  それで、これを読んだ瞬間から実は前と後ろがつながらなくて混線をしておりました。  ただ、法的に私はその点は御理解をいただきたいと思うんです。立法府で御決定をいただきました法律案に従って行政府は仕事をするわけですが、判決趣旨の理由は何とも複雑なんですけれども、ちょっとこういう問題を、少なくとも政府に責任なしという判決が出ております。返納をいただかなければならないというその理由は御理解をいただきたいと思います。
  335. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 以上で西川潔君の質疑は終了いたしました。(拍手)  これにて六つの改革及び景気等に関する集中審議は終了いたしました。  明日は午前九時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十一分散会