○
平井卓志君 私は、
平成会を代表して、山積する幾多の課題について、
橋本内閣に対し質問をいたしたいと思います。
まず、
橋本内閣の
政治姿勢について質問いたします。
先日、
橋本総理は、今
通常国会の開会に当たり
施政方針を述べられました。しかし、総理の演説を聞いて心から感動し、日本の将来を
橋本総理に任せようと腹の底から信じた人が一体何人いたでしょうか。総理の演説は、抽象的かつ総論的であり、かつ改革のメニューを美辞麗句をちりばめながら網羅的に並べたものであり、
改革実行への決意がさっぱり伝わってこないというのが国民の偽らざる実感であります。
総理が
幾ら改革を声高に叫ぼうとも、具体策が出てくるのは早くて今秋以降であり、今国会には
大蔵省改革などおよそ改革の名に値しないような問題のみしか提案されないのであります。
また、総理が
財政構造改革元年と宣言した九年度
予算編成における
自民党議員の姿は、国民はしっかりと目にしております。そこでは、まるで国民の税金を政権党の私物と化したような分捕り合戦が公然と行われたのであります。このような
橋本内閣に本当の改革はできない、旧来の
システムに安住し、
既得権益擁護に走る
自民党内閣にはもはや
我が国の運命を任せることはできないというのが率直な国民の声であることを知るべきです。
言うまでもなく、さきの総選挙で国民は
自由民主党にも過半数を与えませんでした。それは、国民は
橋本内閣を信任したわけではないということを意味しているのであります。総理にはこうした国民の
声なき声に耳を傾ける謙虚さがありますか。このままでは二十一世紀には
日本丸は確実に沈没してしまうという瀬戸際に立たされていながら、改革の
具体的方向がいまだに全く見えてこないばかりか、昨年末の
予算編成でも同様の対応が見られ、総理のかけ声とは裏腹に、
自民党内閣には
我が国の置かれた状況を正しく認識する能力もなければ、まして
危機感などみじんもないと残念ながら断ぜざるを得ないのであります。
これからは、改革なくして未来なしと言われるように、かって経験したこともないような厳しい状況の中で、過半数を与えられなかった
橋本自民党内閣がかじをとるには、まず総理みずからが大いなる痛みと負担を覚悟しそれを実践しなければ、国民の理解と協力は決して得られないことを銘記すべきであります。
総理、この際、国民の前に明確にしていただきたい。
自民党族議員の抵抗を排しても、また、省庁の利益を代弁し改革に抵抗する閣僚を罷免してでも、
国家国民の将来をかけて改革に取り組む決意がありますか。総理の明快な答弁を求めるものであります。
次に、外交問題について二点に絞って総理の見解を伺います。
昨年末に起こった
ペルー日本大使公邸占拠・
人質事件はまことに遺憾なことであります。既に発生から一カ月、いまだに七十名を超える人質が拘束され、解決のめどは立っておりません。人質の
心身両面にわたる
健康状態が心配されますが、どのような状態にあるのでしょうか。また、これだげ長期化してくると、
テロリスト側も疲労や焦りから
精神状態が極めて不安定となり、いつ不測の事態が起こるかもしれないのであります。現状はどうなっているのか、政府は国民に対して必要にして十分な情報を伝えているとは言いかねますが、御説明をいただきます。
今回の事件は、
日本外交の大失態、
日本外交の甘さが露呈した事件であります。一番安全であるべき
在外公館がこうも簡単に
テロリストの侵入を許し、占拠され、しかも各国の大使や
外交官、多数のビジネスマンが人質にとられた事実が
日本外交に対する信頼性を失わせる結果となったのであります。
テロリストの一部は、ボーイの姿をして花輪を持って公邸に侵入したとさえ言われているではありませんか。
危機管理に対する日本のひ弱さをこれほど世界に見せつけたことはないのであります。世界の人々は、後世まで今回の事件を
日本外交の
一大汚点として語り継ぐでありましょう。かかる大失態を招いた責任を、総理、
外務大臣は国民に率直にわびるべきであります。
聞けば、四年前の平成四年十二月末に
爆弾爆破事件に遭った
ペルー日本大使館は、
重点警備をしく
在外公館の一つとされていたようであります。今から二十年前、
日本赤軍による
日航機ハイジャック事件、超
法規的措置による獄中犯六人の釈放と身の代金の支払いという苦い経験を持つ
我が国は、その翌年のボン・
サミットでテロ問題の討議を提唱し、その後も繰り返し
サミットなどの場で
テロ根絶のための協議を重ねてきたわけであります。その成果はどう生かされたのか、政府・
外務省は
テロ対策、
危機管理対策として具体的に何をしてきたのか、しかと
お答えを願います。
ところで、総理は、
事件発生直後、
政府専用機で
池田外務大臣を現地に派遣しました。
外務大臣は
フジモリ大統領に対して、人質になっている人々の生命を第一に考え、平和的に解決することが日本の希望であり
関係国の希望であると求めたと伝えられます。本当にこれだけのことを伝えるために、そしてまた、そうした
日本政府の見解に対する
ペルー側の同意を取りつけるために、わざわざ
政府専用機まで使って
外務大臣は
ペルーに行ったのでしょうか。もしそうであるとすれば、私には到底信じがたいことであります。しかも、一部では、
外務大臣は日本が
テロリストとの直接交渉の場に引き出されることを恐れて早々に帰国したとも言われているのであります。
考えてもいただきたい。一体、人質の生命を危険に陥れるような武力による解決を優先させる国がこの地球上どこにありますか。人命第一、
平和的解決は当たり前のことであります。ここにも
橋本外交の、稚拙さと言って悪ければ、甘さがあります。しかも、早々の帰国が巷間言われているとおりの理由であるとすれば、まさに
日本外交の恥の上塗りであります。どう見ても
外務大臣の
現神派遣は、外交上の戦略も何もない、ただ
国民受けをねらったその
場しのぎのスタンドプレーと思えてなりません。反論があればお聞きいたします。
事件は、
保証人委員会の設置、
テロリストの
第三国出国といった方向で解決に向かいつつあるように見受けられます。しかし、いっどのように事態が急転するかもしれず、予断を持って語ることはできませんが、総理はこの事件の解決をどのように見通しておられるのか、伺いたいと思います。
我々には、日本の援助が本当に
ペルーの国民によって感謝されているのか、疑問となります。国民の貴重な財産がかえって
ペルー国民の反感を買う結果になっているとすれば、一体何のための援助なのか、理解に苦しむわけであります。
人質になっている
青木大使みずからが
ペルーの貧困問題の重要性について、
ペルーの高い成長率も本当の意味での
経済成長ではなく、
都市スラムの
生活環境改善、生産性の低い地域の振興、雇用の増進が大きな課題であるとして、日本の
経済協力は雇用の創出に役立つ
技術協力、製造業の振興に重点を置くべきだとの
問題提起をしているとも聞いておるわけであります。
フジモリ政権に対する
経済協力は有効に利用され、所期の成果を上げているのか、見直しの必要はないのか、率直な御意見を伺います。援助に対する
日本国民の疑問に答えるためにも、この点ははっきりしていただきたい。
次は、中国、韓国との外交についてであります。
今週末には別府市で
橋本総理と
金泳三韓国大統領との会談が行われ、また、
日中国交正常化二十五周年に当たる本年九月には中国の
江沢民主席が来日し、
日中平和友好条約調印二十周年に当たろ来年八月には
橋本総理が中国を訪問されるとのことであります。
その成果が期待されますが、私なりにこれまでの中国、韓国への
日本政府・
外務省の対応を見ておりますと、中国、韓国となるとどうしてこれほどまでに腰が引けて卑屈な態度をとらなければならないのか、率直に言って理解できません。日本として言うべきこと、なすべきことは、だれにも遠慮することなくはっきりと言い、実行すべきではないでしょうか。
いやしくも日本は
主権国家であり、あなたはこの国の総理であります。中国に対して過去にいろいろな歴史があり、そのことを十分にわきまえるべきは当然でありますが、だからといって必要以上に卑屈になることは毛頭ないのであります。中国がその
対外関係において最も重要な原則としている平和五原則にも、主権の
相互尊重、相互の
内政不干渉、
平等互恵などがうたわれているではありませんか。
両国関係は全く対等平等であります。
橋本総理はこのことをしっかりわきまえて、国民がなるほどと思う対
中国外交を自信を持って進めていただきたいのであります。
中国に対する
援助再開についても不可解であります。昨年十一月十四日の
自民党外交関係合同部会でも、
外務省の対
中円借款再開の
基本方針に対してかなりの異論があったと承知しますが、これを抑える形で再開の
原則了承を取りつけるや否や、
外務省は直ちに調査団を派遣し、実に手際よく、十二月二十四日にはもう第四次
円借款の
初年度分として総額千七百五億円の
借款供与に調印したのでありますっこれで対
中円借款の
供与累計額は一兆八千五百億円を超える膨大な額になります。
中国の改革・開放への支援は必要と考えますが、しかし一方で依然として中国の
軍備増強路線が続いており、
我が国の
ODA四原則に従って考えれば、中国への
ODA供与再開はまことに疑問を感じるものであります。国民の納得いくよう説明願いたいと思います。
我が国の
ODAは、平成九年度予算では一兆一千七百億円という巨額の援助を予定しており、既にこれまでの実績でも五年連続で
世界最大の
援助供与国となっております。しかしながら、このような膨大な援助を行ってきているにもかかわらず、
ペルー事件にもあらわれているように、必ずしも被
援助国の国民に本当に喜ばれる援助になっていないのが実態であります。
振り返って
我が国の財政は、まさに火の車、国、地方合わせて四百四十兆円を超える
財政赤字を抱え、世界の先進国の中でも突出した
赤字対策に、
橋本内閣は
消費税値上げなど九兆円の負担増を国民に押しつけようとすらしているのであります。このような切迫した
財政危機の中、日本のGNPの〇・三%、全
政府予算の二%、国民一人
当たり年間一万二千円もの負担がどうして必要なのかという点についてきちんと国民に説明がなされなければなりません。どの国にどのような目的で幾ら、どのように使われたか、国民に理解と支持を得た上でなされることは当然であります。今こそこれまでの
政府開発援助の
あり方を抜本的に見直すべきときであります。
我が国には米国のような
対外援助法といった援助を実質的にコントロールする法律が一切なく、ただ政府の決めた
ODA大綱があるだけであります。しかも、この大綱がゆがめられて実施されてきたというのが実態であります。我が党は二年前から
ODA基本法を国会に提出してきましたが、今こそ
基本法を制定し、援助の
基本原則と
意思決定の明確を図るとともに、真に効果的な援助の
実施体制をつくり直すべきであります。そうでなければ、
我が国の
政府開発援助はまさに虚構の上に立った偽善であると批判されても否定できないではありませんか。この際、
ODAの
抜本見直しについて総理の見解を伺っておきたいと思います。
次に、韓国との関係についても私は釈然としないものを感じます。
去る十五日、
池田外務大臣が韓国を日帰り訪問した際、
民間レベルで行っている
アジア女性基金が韓国の元
従軍慰安婦に
見舞金を支給したことについて、
金大統領は凍結を求め、柳外相は
支給撤回まで求めたと伝えられております。基金の対象となる韓国の御婦人が個人の判断で
見舞金を受け取りたいということをどうして政府がストップをかけてよいのでしょうか。
池田外務大臣が、本人の意思を尊重して
人道的観点から実施したと応じたことは、至極当たり前の発言であります。
しかし、同時に
池田外務大臣は、今後のことについては
外務省同士の協議にゆだねたいとの考えを伝えたと報じられております。しかし、これには納得がいきません。なぜ
民間基金の活動に政府が介入するのか。受け取りたいという本人の明確な希望がある以上、それを尊重するのが国としてとるべき態度であります。
総理は、別府市での
首脳会談ではどのような姿勢で会談に臨もうとされるのか、明らかにしていただきたいのであります。
さらに、
我が国国民の極めて関心が高い竹島問題については、本年一月の
池田外務大臣の
韓国訪問のときも含めて、ほとんど話題にすらしていないようであります。
国際関係において、
自国領土の保全は時の政府に課せられた最も重要な責務であります。
今こうしているときにも着々と韓国は竹島に
港湾施設を建設し、
実効的支配の事実を世界に向かってアピールしているのであります。これに対して日本は、口頭で抗議し、あるいはこれまで七十回近い口上書による申し入れをし、それによって
国際法上の領有の要件とされる韓国による平穏な占有の継続の中断を図っていると説明するのでありますが、状況はいかなる変化もありません。なぜもっと日本の国益を前面に掲げて問題に対処しようとしないのか、この点も国民の納得のいかないところであります。今回の
日韓首脳会談で竹島問題について
韓国側にはっきりと主張していくのかどうか、明確な答弁を求めるものであります。
そもそもその国の歴史に対する認識は、他国と共有できるものとどうしてもできないものがあることは当然であります。すべて一致することは不可能と言っても過言ではありません。一致しないから避けて通る、一致しなければ言わないというのでは外交は成り立ちません。
私は、中国、韓国に対する対応を例に政府の
外交姿勢の問題点を指摘しましたが、私は両国との関係を悪くしろなどと言っているのではありません。そうではなくて、
我が国の国益を踏まえて、言うべきことは言い行動すべきことは行動し、
サミットに参加する大国としてそれにふさわしい、責任ある、尊敬される外交を展開してほしいと言っているのであります。
橋本総理の
アジア外交の
基本姿勢について答弁を求めるものであります。
次に、総理の六つの改革について伺います。
橋本総理は、
行政改革、
経済構造改革、
金融システム改革、
社会保障構造改革、
財政構造改革、そして
教育改革の六つの改革の断行を提唱されております。私は次の二つの理由から、この改革は必ず失敗すると考えるものであります。
まずその第一は、これら
構造的改革には失業や倒産といった必ず痛みと混乱が伴うものであり、改革を円滑に進めるためには痛みや混乱を社会的に吸収する
経済基盤の確立が不可欠であるにもかかわらず、
橋本総理にその認識が全くないということであります。
総理が言われる改革を進めるためにまず必要なことは、長期的な不況に陥っている
我が国経済を立て直し、安定した成長の軌道に乗せ、国民の生活不安を取り除き、
経営者の自信を回復させることであります。
この点において総理が講ずべき第一は、
所得税、
住民税の減税や
法人税の減税などにより需要を喚起し、落ち込んでいる
我が国経済を根本から立て直すことでなければなりません。しかるに、
橋本内閣は全く逆のことをやろうとしております。すなわち、
消費税の
引き上げ、
特別減税の中止、
社会保険料の
引き上げなどで、立ち直りつつある
景気回復の足を引っ張ろうというのであります。このような
経済環境のもとでは、
構造改革で影響を受ける人々が生活と命をかけて抵抗するのは当たり前であり、改革などできようはずがありません。
第二の理由は、六つの改革が
個々ばらばらで、全体を統一する
政策理念がないことであります。
例えば、
行政改革の目的は、効率的で小さな政府をつくり、それにより
財政支出を削減することであるにもかかわらず、総理の言われる
行政改革には歳出の削減という視点がなく、
中央省庁の再編という単なる
機構いじりを目指したものであり、行革と
財政改革との統一がとれておりません。
また、
社会保障改革と
財政改革の間にも
政策思想の統一性がありません。
高齢社会を展望し、
直間比率の是正が
財政改革の一つの柱と考えるならば、なぜ介護の費用を税金で賄おうとせず直接税としての
介護保険料で賄おうとするのか。政策の整合性がないのであります。
総理・改革はかけ声だけでは済まないのであります。本当に改革を進めるどすれば、改革の理念を明確にし国民の理解を求めると同時に、短期的な
財政縮小均衡論にとらわれることなく、大局的な見地に立った大改革を勇気を持って断行すべきであります。総理の見解を伺います。
次に、
財政健全化について伺います。
平成二年度に
特例国債の依存から脱却したのもつかの間、
我が国財政は
バブル経済の崩壊後のゼロ成長の中で再び急激に悪化し、今や
先進諸国の中でも最悪の
財政状況に陥っております。
国債残高は九年度末には二百五十四兆円に達しようとしており、これに借入金及び地方の債務を加えた
我が国の債務の総額は実に四百七十兆円にも上り、これに
国鉄債務等のいわゆる
隠れ借金を加えれば五百兆円を超えようとしております。さらに年金福祉事業団など
特殊法人等の抱える赤字を加えればその総額は五百十五兆円という、GDPをも上回る膨大なもので、まさに
我が国は
経済大国とは名ばかりの
借金大国となってしまったのであります。
政府もようやく事の重大さに気づき、
財政再建法の策定に向け、昨年十二月十九日、
財政健全化目標に関する
閣議決定をされました。しかし、その内容は、
最終目標として国債の残高が累増しないということに尽きており、それに至る手順も方法も全く示されていないのであります。一体、
国債残高が累増しないようにするにはどのようにすればいいとお考えなのですか。それは制度や
システムを現在のままにしても可能だと考えているのですか。
お答えをいただきたい。
さらに、
国債残高が累増しないという表現は、
国債残高を削減するということを含んでいるのですか、それとも
国債残高の削減は必要ないということなのですか。なぜ
国債残高の削減を最終的な目標にしなかったのですか。明確に
お答えをいただきたい。
財政構造の改革と言う限りは、現在の
財政制度や仕組み、
システムそのものを変えていくことだと考えますが、今後の
構造改革を進めていくに当たり、その改革はどれだけの効果を生むかを試算して国民の前に明らかにすべきであると思いますが、総理の見解を伺います。
次に、平成九年度
予算案の中身について伺います。
橋本内閣は、昨年の
概算要求基準の策定に当たり、九年度予算を
構造改革元年と位置づけられました。しかし、ふたをあけてみれば、改革とはおよそ逆方向の予算ばかりがずらずらと並んでいるのにはあいた口がふさがらないというのが国民の声であります。マスコミの評価をまつまでもなく、
橋本内閣は史上最悪の予算を編成した内閣として歴史にその名を残すでありましょう。
問題の第一は、公共事業の配分比率が昨年までと全く同じであるばかりか、新たに港湾・空港、下水道等総額五十一兆円、計七本もの公共事業五カ年計画を
閣議決定し、聖域化されようとしていることであります。
今国会末までに決めると報じられている
財政再建法では、このように各公共事業ごとにあらかじめ五カ年計画を定め、毎年度の
予算編成において聖域化していこうという考え方をどのように扱うおつもりですか。公共事業の聖域化を改めない限り、
財政構造改革はまさに絵にかいたもち同然と言わなければなりません。
問題の第二は、整備新幹線についての与党・政府の合意であります。
かつての国鉄が政治によって翻弄され、そのあげくに三十七兆円余の債務を抱えて立ち行かなくなったのと全く同じ轍を整備新幹線も踏もうとしているのではありませんか。十年前の国鉄改革では、JRに二度と同じ轍を踏ませないことが改革の目的であり、その責任者として改革に当たった橋本当時運輸大臣が、今、最高責任者の総理大臣になりながら改革をじゅうりんするような暴挙を許すようでは、橋本行革の将来は完全に真っ暗であります。選挙に当選しさえずれば国の将来などどうでもいいと言わんばかりの政権与党の暴挙を国民は断じて許さないことを知るべきであります。
整備新幹線建設の基本は財源と採算性であることは言をまちません。その建設財源をどのようにして確保するのか、各線の採算性はどうかの見通しもないままに建設計画だけが先行した今回の合意ほど納税者を愚弄するものはありません。財源と各線の採算性の見通しはいつ示されるのですか。また、採算がとれないことが判明した場合に整備計画の見直しは行うのですか、行わないのですかつ総理の明確な答弁を求めます。
問題の第三は、十年前の国鉄分割・民営化によって当時の国鉄債務三十七兆一千億円は、JRが十四兆五千億円、国鉄清算事業団が二十二兆七千億円を引き継ぎました。しかし、JRが懸命の経営努力で債務の削減に取り組んでいるのに対し、清算事業団の債務は今や二十八兆円に膨らみ、毎年度の利払い費すら確保できない状況に陥っております。
その原因は、事業団の持っている土地売却を制限するなどの誤った政策が行われてきたためであることは明白で、これによって最終的な国民の負担は実に二十兆円を超えることが必至の状況であります。しかも、平成元年度に
閣議決定した債務処理期限の九年度を目前にしてその基本的方針すらも決められないようでは、内閣の怠慢は明白であり、責任放棄に等しいと言わなければなりません。国民負担が当初の見込みの十三兆八千億円から二十兆円に拡大した責任はどのようにとるおつもりですか、総理の明確な答弁を求めます。
二十兆円を超える国鉄債務問題の処理の基本は、増税等の新たな国民負担を求めるのではなく、行
財政改革の断行を基本とすべきであると考えますが、総理の見解を伺います。
また、債務の削減には、積極的な土地売却の推進を図るほか、株式の売却を優先的に行うなど、現時点において可能な手段を総力を挙げて実施することが必須の条件であると考えますが、政府の債務削減についての努力と方策を伺います。
さらに、十年前の国鉄改革の際には、鉄道事業の再生も改革の大きな目標でありました。整備新幹線建設をめぐる動きに顕著に見られたように、政治がJRの経営に介入し、鉄道事業再生の障害となるようなことは断じてすべきでないと考えるものでありますが、総理の決意を伺います。
問題の第四は、政府が
構造改革のあかしであるかのように喧伝する国債発行額の四兆三千億円の削減は、これが政府の歳出削減努力の結果ではなく、増税によって行われたことであります。
それは
消費税引き上げによる五兆円と
特別減税の取りやめによる二兆円の合計七兆円もの増税を行った上に、各種保険料の
引き上げ等々総額九兆円近い国民負担の増加の上にようやぐできたのであります。九兆円もの負担増に比べて国債発行額の削減が四兆三千億円では、歳出削減どころか、その残りは歳出拡大に使われたわけであり、全く容認できません。この際、政府は、この事実を率直に認め、我々の歳出の抜本的削減要求に従って速やかに九年度予算を撤回、編成し直すことを求めるものであります。
株式市場、為替市場、国際金融市場が
我が国に今突きつけている警告と、おぞましいばかりの低い評価を回復するには、公共事業の見直しや不要不急の歳出の大幅削減など抜本的な歳出削減の上で、大規模な減税の実現、
消費税を据え置く、
特別減税の継続などが必須の条件であります。
総理、多くの国民が平成九年度
予算案のまやかしに怒り、実に国民の七一%が予算の修正が必要と指摘しているのであります。これら諸点について総理の明快な答弁を求めます。
次に、介護保険制度について伺います。
二十一世紀、
我が国は世界でも類例を見ないような超高齢化社会に突入していくことは紛れもない事実であります。その高齢化社会に対応するためにゴールドプラン、エンゼルプラン等々が策定され、さまざまな施策が展開されようとしております。そうした中において、今、介護保険制度が高齢化社会を支える大きな柱の一つとして位置づけられようとしており、さきの臨時国会ではその法案まで提出されたのであります。
私は、介護の問題は、年金、医療、福祉といった総合的な福祉体系の中で位置づけられるべきものであり、その視点に立った制度改革なしに、単に増税の肩がわりに保険という形で国民に負担増を強いる介護保険制度の導入には反対であります。これを抜きにしても、今なぜ介護保険制度なのかという思いを禁じ得ないのであります。高齢化社会に対する取り組みの
あり方そのものに対しても、このままでいいのかという大いなる疑問を持っているのであります。
老いも若きも生きとし生けるものとして、社会の中で人間としての誇りや尊厳を日々かみしめながら、また、互いの喜びや悲しみを分かち合いながら暮らそうとしている人々を、六十歳になれば定年制度という画一的な基準によって社会から切り離し、さらに六十五歳になればすべてを老人扱いしてしまうような今日の社会の仕組みそのものに疑問を感じているのであります。人生八十年時代を迎え、人間としての尊厳を体現しながら社会の中で何がしかの役割を果たそうとしている人々が、生きていてよかったとしみじみ感じられるようにするためには、定年制の延長を含めた社会の
あり方、仕組みそのものの見直しこそまず行われるべきではないかと考えるからであります。
これからの
高齢社会では、高齢な人々を一般社会から制度の上で隔離するのではなく、一般社会の中で、ともに人間としての誇りと尊厳を持ちながら、いかにしてそれぞれの役割を体現できるようにするかが問われなければならないと考えるものであります。そうした社会の仕組みを整備することこそ政治の責任ではないでしょうか。総理並びに厚生大臣の見解を伺いたいのであります。
次に、官僚の腐敗・汚職事件について伺います。
近年、大蔵官僚、厚生官僚を初め、相次いで高級官僚の汚職事件がマスコミをにぎわせております。もとより、官僚の汚職は今に始まったものではありませんが、これほどまでに広がってきたのは行政や官僚社会の中に構造的な要因があると言わなければなりません。
今日、あらゆる問題が行政の守備範囲の対象とされ、役人もそれを奇貨として権限の拡大に利用してきたことは疑う余地もありません。そうした過程の中で、行政の裁量に任された業務と権限が急速に拡大し、その広がった業務と権限におのれの地位と身分を忘れた役人のおごりが重なり、それが腐敗と汚職の土壌となったのであります。
しかし、
我が国では善良な官僚、役人を前提にしてきたため、腐敗防止や倫理維持のための
システムがほとんどないに等しく、精神論や精神訓話で過ごしてきたのが実態であります。金と許認可権を握った役人に近づき、そこから少しでも多くの金を引き出し、人より有利な認可等を得ようとする力は後を絶ちませんが、不正な手段を使うことができにくい仕組み、
システムをどう構築していくのか、今や単なる精神論や精神訓話では済まされないところに来ていることを銘記すべきであります。公務員倫理法の制定を含めて、総理並びに官房長官の見解を伺いたい。
次に、日本海のロシア・タンカー沈没による重油流出事件について伺いたい。
今回の事故は、重油による汚染が沿岸の漁業のみならず海の環境にとっていかに恐ろしい被害をもたらすかを改めて思い知らされました。荒れ狂う冬の海で、重油の回収はほとんど手作業に等しく、現地の皆さんはもちろんのこと、我々も歯がゆい思いを禁じ得ないのであります。
ノリの養殖を初め多くの栽培漁業が被害を受けたと言われますが、その被害総額はどの程度と見込まれるのか。これら災害対策の費用の総額は、とても船の保険料で賄うことのできる規模ではないと思います。したがって、油災害対策に関する
財政支出のための特別立法も急務であると考えますが、いかがですか。
それにしても、今回の重油流出事故は、一昨年の阪神大震災や昨年の地下鉄サリン事件の教訓が全く生かされていないではありませんか。初動対応のおくれが被害の拡大を招いたことは明らかです。政府に
危機管理への対応が全く整っていなかったと言うほかありません。
危機管理の中には重油流出事故は入っていなかったとでもおっしゃるのでしょうか。被害が一府七県にも及び、さらに拡大しておりますが、政府の初動体制のおくれが被害を拡大していることは明らかであります。多数の漁業
関係者、自治体職員、自衛隊員並びにボランティアの方々が、厳しい寒さの中、必死で重油の除去作業に携わっておられ、既に作業が原因で三人もの方が亡くなられるなど、重なる疲労や重油による人体への影響などが心配されるところであります。
総理や官房長官は、最高責任者として、なぜ現地を直接自分の目で確認し
関係者に感謝と激励をなされようとしないのか、
お答えいただきたい。
今後は、外洋における万一の油流出事故に備えて、現在一隻しかない油回収船をふやすことや、国際協力体制を一層強化すべきと考えますが、政府としてどのような対策、対応を考えておられるのか伺いたい。
最後に、依然として官僚に頼り切る
橋本内閣では、今日の危機的状況にある日本を救う改革は到底不可能であることを警告するとともに、歳出削減どころか歳出拡大に手をかした平成九年度
予算案の抜本的な修正なくしては改革への国民の理解と協力は全く得られないことを申し上げ、私の代表質問を終わります。(拍手)
〔
国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕