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1997-01-23 第140回国会 参議院 本会議 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年一月二十三日(木曜日)    午前十時一分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第二号   平成九年一月二十三日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第二日)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、在ペルー日本国大使公邸占拠人質事件に   関する決議案下稲葉耕吉君外八名発議)(   委員会審査省略要求事件)  以下 議事日程のとおり      ——————————
  2. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) これより会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  下稲葉耕吉君外八名発議に係る在ペルー日本国大使公邸占拠人質事件に関する決議案は、発議者要求のとおり委員会審査を省略し、日程に追加してこれを議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 御異議ないと認めます。  よって、本決議案議題といたします。  まず、発議者趣旨説明を求めます。下稲葉耕吉君。     —————————————    〔議案は本号末尾に掲載〕     —————————————    〔下稲葉耕吉登壇拍手
  4. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 ただいま議題となりました自由民主党平成会、社会民主党・護憲連合、民主党・新緑風会及び日本共産党各派共同提案に係る在ペルー日本国大使公邸占拠人質事件に関する決議案につき、二院クラブ、自由の会、新党さきがけ、新社会党・平和連合及び太陽の賛同を得て、発議者を代表し、提案趣旨を御説明いたします。  昨年十二月十七日以来、ペルー日本国大使公邸テロリストによって占拠され、いまだに七十名を超える人々人質になっていることはまことに遺憾であります。  我々は、この許しがたいテロリスト行為を強く非難し、平和的解決を目指すペルー政府努力を全面的に支持し、支援していくことを表明するとともに、事件の一日も早い解決を念願して、次の決議案提案するものであります。    在ペルー日本国大使公邸占拠人質事件に関する決議案   昨年十二月十七日、ペルー首都リマで起きた日本国大使公邸占拠人質事件は、我が国及び国際社会に強い衝撃を与えた。   テロリストによるこの許しがたい行為は、いかなる政治的あるいは理念的な目的によっても正当化することはできず、平和と安全を希求する国際社会に対する重大な犯罪行為であり、強く非難されるべきものである。   事件発生から早一カ月、この間、我が国をはじめペルー政府関係各国国際機関等による平和的解決に向けた努力がなされてきているが、未だに多数の人々人質として拘束されている。   本院は、かかる国際的な重大事件を深く憂慮し、人質とされている多くの方々のご苦労と、ご家族・関係者のご心労を思い、本事件の一刻も早い解決を求め、次のとおり表明する。  一、本事件におけるテロリスト行為を強く非難するとともに、テロリストに対しては譲歩をすべきではないとの考え方に則り、平和的解決を目指すペルー政府努力への支持を表明する。  二、政府は、ペルー政府関係各国国際機関等と緊密に連携し、人命尊重を第一として事態平和的解決を図り、全ての人質が例外なく、安全に、即時全面解放されるよう、引き続きあらゆる努力を払うべきである。  三、政府は、今回の事件にかんがみ、外交実施体制及び外交施策の在り方について十分な検討を行い、特に、在外公館警備等充実を図り、事件再発防止に努めるべきである。   右決議する。  以上であります。  何とぞ皆様の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)     —————————————
  5. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) これより採決をいたします。  本決議案賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立
  6. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 総員起立と認めます。  よって、本決議案全会一致をもって可決されました。  ただいまの決議に対し、内閣総理大臣から発言を求められました。橋本内閣総理大臣。    〔国務大臣橋本龍太郎登壇拍手
  7. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) ただいまの決議に対しまして、所信を申し述べます。  本事件につきましては、その発生から一カ月以上たった今なお解決に至ってしな、ことはまことに遺憾であります。  政府としては、関係各国との緊密な連携等を図っているところでありますが、その基本的立場は、テロに屈することなく、ペルー政府に全幅の信頼を置きつつ、人命尊重を最優先とし、人質方々早期全面解放に向けて全力を尽くすというものであります。  ただいま採択されました決議に関しましては、政府としては、その趣旨を十分に体し、この事件を一刻も早く平和的に解決し、人質全面解放早期に実現されるよう引き続き全力を傾ける決意であります。  また、今回の事件にかんがみ、外交実施体制及び外交施策あり方について十分な検討を行い、特に海外における邦人保護在外公館警備等危機管理体制充実強化を図ってまいります。  この機会に、国会及び国民皆様の御理解と御協力を改めてお願いする次第であります。(拍手)      ——————————
  8. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 日程第一 国務大臣演説に関する件(第二日)  去る二十日の国務大臣演説に対し、これより順次質疑を許します。平井卓志君。    〔平井卓志登壇拍手
  9. 平井卓志

    平井卓志君 私は、平成会を代表して、山積する幾多の課題について、橋本内閣に対し質問をいたしたいと思います。  まず、橋本内閣政治姿勢について質問いたします。  先日、橋本総理は、今通常国会の開会に当たり施政方針を述べられました。しかし、総理の演説を聞いて心から感動し、日本の将来を橋本総理に任せようと腹の底から信じた人が一体何人いたでしょうか。総理の演説は、抽象的かつ総論的であり、かつ改革のメニューを美辞麗句をちりばめながら網羅的に並べたものであり、改革実行への決意がさっぱり伝わってこないというのが国民の偽らざる実感であります。  総理が幾ら改革を声高に叫ぼうとも、具体策が出てくるのは早くて今秋以降であり、今国会には大蔵省改革などおよそ改革の名に値しないような問題のみしか提案されないのであります。  また、総理が財政構造改革元年と宣言した九年度予算編成における自民党議員の姿は、国民はしっかりと目にしております。そこでは、まるで国民の税金を政権党の私物と化したような分捕り合戦が公然と行われたのであります。このような橋本内閣に本当の改革はできない、旧来のシステムに安住し、既得権益擁護に走る自民党内閣にはもはや我が国の運命を任せることはできないというのが率直な国民の声であることを知るべきです。  言うまでもなく、さきの総選挙で国民は自由民主党にも過半数を与えませんでした。それは、国民は橋本内閣を信任したわけではないということを意味しているのであります。総理にはこうした国民の声なき声に耳を傾ける謙虚さがありますか。このままでは二十一世紀には日本丸は確実に沈没してしまうという瀬戸際に立たされていながら、改革の具体的方向がいまだに全く見えてこないばかりか、昨年末の予算編成でも同様の対応が見られ、総理のかけ声とは裏腹に、自民党内閣には我が国の置かれた状況を正しく認識する能力もなければ、まして危機感などみじんもないと残念ながら断ぜざるを得ないのであります。  これからは、改革なくして未来なしと言われるように、かって経験したこともないような厳しい状況の中で、過半数を与えられなかった橋本自民党内閣がかじをとるには、まず総理みずからが大いなる痛みと負担を覚悟しそれを実践しなければ、国民の理解と協力は決して得られないことを銘記すべきであります。  総理、この際、国民の前に明確にしていただきたい。自民党族議員の抵抗を排しても、また、省庁の利益を代弁し改革に抵抗する閣僚を罷免してでも、国家国民の将来をかけて改革に取り組む決意がありますか。総理の明快な答弁を求めるものであります。  次に、外交問題について二点に絞って総理の見解を伺います。  昨年末に起こったペルー日本大使公邸占拠人質事件はまことに遺憾なことであります。既に発生から一カ月、いまだに七十名を超える人質が拘束され、解決のめどは立っておりません。人質の心身両面にわたる健康状態が心配されますが、どのような状態にあるのでしょうか。また、これだげ長期化してくると、テロリスト側も疲労や焦りから精神状態が極めて不安定となり、いつ不測の事態が起こるかもしれないのであります。現状はどうなっているのか、政府は国民に対して必要にして十分な情報を伝えているとは言いかねますが、御説明をいただきます。  今回の事件は、日本外交の大失態、日本外交の甘さが露呈した事件であります。一番安全であるべき在外公館がこうも簡単にテロリストの侵入を許し、占拠され、しかも各国の大使や外交官、多数のビジネスマンが人質にとられた事実が日本外交に対する信頼性を失わせる結果となったのであります。  テロリストの一部は、ボーイの姿をして花輪を持って公邸に侵入したとさえ言われているではありませんか。危機管理に対する日本のひ弱さをこれほど世界に見せつけたことはないのであります。世界の人々は、後世まで今回の事件を日本外交一大汚点として語り継ぐでありましょう。かかる大失態を招いた責任を、総理、外務大臣は国民に率直にわびるべきであります。  聞けば、四年前の平成四年十二月末に爆弾爆破事件に遭ったペルー日本大使館は、重点警備をしく在外公館の一つとされていたようであります。今から二十年前、日本赤軍による日航機ハイジャック事件、超法規的措置による獄中犯六人の釈放と身の代金の支払いという苦い経験を持つ我が国は、その翌年のボン・サミットでテロ問題の討議を提唱し、その後も繰り返しサミットなどの場でテロ根絶のための協議を重ねてきたわけであります。その成果はどう生かされたのか、政府・外務省テロ対策危機管理対策として具体的に何をしてきたのか、しかとお答えを願います。  ところで、総理は、事件発生直後、政府専用機池田外務大臣を現地に派遣しました。外務大臣フジモリ大統領に対して、人質になっている人々の生命を第一に考え、平和的に解決することが日本の希望であり関係国の希望であると求めたと伝えられます。本当にこれだけのことを伝えるために、そしてまた、そうした日本政府の見解に対するペルー側の同意を取りつけるために、わざわざ政府専用機まで使って外務大臣ペルーに行ったのでしょうか。もしそうであるとすれば、私には到底信じがたいことであります。しかも、一部では、外務大臣は日本がテロリストとの直接交渉の場に引き出されることを恐れて早々に帰国したとも言われているのであります。  考えてもいただきたい。一体、人質の生命を危険に陥れるような武力による解決を優先させる国がこの地球上どこにありますか。人命第一、平和的解決は当たり前のことであります。ここにも橋本外交の、稚拙さと言って悪ければ、甘さがあります。しかも、早々の帰国が巷間言われているとおりの理由であるとすれば、まさに日本外交の恥の上塗りであります。どう見ても外務大臣現神派遣は、外交上の戦略も何もない、ただ国民受けをねらったその場しのぎのスタンドプレーと思えてなりません。反論があればお聞きいたします。  事件は、保証人委員会の設置、テロリスト第三国出国といった方向で解決に向かいつつあるように見受けられます。しかし、いっどのように事態が急転するかもしれず、予断を持って語ることはできませんが、総理はこの事件の解決をどのように見通しておられるのか、伺いたいと思います。  我々には、日本の援助が本当にペルーの国民によって感謝されているのか、疑問となります。国民の貴重な財産がかえってペルー国民の反感を買う結果になっているとすれば、一体何のための援助なのか、理解に苦しむわけであります。  人質になっている青木大使みずからがペルーの貧困問題の重要性について、ペルーの高い成長率も本当の意味での経済成長ではなく、都市スラム生活環境改善、生産性の低い地域の振興、雇用の増進が大きな課題であるとして、日本の経済協力は雇用の創出に役立つ技術協力、製造業の振興に重点を置くべきだとの問題提起をしているとも聞いておるわけであります。フジモリ政権に対する経済協力は有効に利用され、所期の成果を上げているのか、見直しの必要はないのか、率直な御意見を伺います。援助に対する日本国民の疑問に答えるためにも、この点ははっきりしていただきたい。  次は、中国、韓国との外交についてであります。  今週末には別府市で橋本総理金泳三韓国大統領との会談が行われ、また、日中国交正常化二十五周年に当たる本年九月には中国の江沢民主席が来日し、日中平和友好条約調印二十周年に当たろ来年八月には橋本総理が中国を訪問されるとのことであります。  その成果が期待されますが、私なりにこれまでの中国、韓国への日本政府外務省の対応を見ておりますと、中国、韓国となるとどうしてこれほどまでに腰が引けて卑屈な態度をとらなければならないのか、率直に言って理解できません。日本として言うべきこと、なすべきことは、だれにも遠慮することなくはっきりと言い、実行すべきではないでしょうか。  いやしくも日本は主権国家であり、あなたはこの国の総理であります。中国に対して過去にいろいろな歴史があり、そのことを十分にわきまえるべきは当然でありますが、だからといって必要以上に卑屈になることは毛頭ないのであります。中国がその対外関係において最も重要な原則としている平和五原則にも、主権の相互尊重、相互の内政不干渉平等互恵などがうたわれているではありませんか。両国関係は全く対等平等であります。橋本総理はこのことをしっかりわきまえて、国民がなるほどと思う対中国外交を自信を持って進めていただきたいのであります。  中国に対する援助再開についても不可解であります。昨年十一月十四日の自民党外交関係合同部会でも、外務省の対中円借款再開基本方針に対してかなりの異論があったと承知しますが、これを抑える形で再開の原則了承を取りつけるや否や、外務省は直ちに調査団を派遣し、実に手際よく、十二月二十四日にはもう第四次円借款初年度分として総額千七百五億円の借款供与に調印したのでありますっこれで対中円借款供与累計額は一兆八千五百億円を超える膨大な額になります。  中国の改革・開放への支援は必要と考えますが、しかし一方で依然として中国の軍備増強路線が続いており、我が国ODA四原則に従って考えれば、中国へのODA供与再開はまことに疑問を感じるものであります。国民の納得いくよう説明願いたいと思います。  我が国ODAは、平成九年度予算では一兆一千七百億円という巨額の援助を予定しており、既にこれまでの実績でも五年連続で世界最大援助供与国となっております。しかしながら、このような膨大な援助を行ってきているにもかかわらず、ペルー事件にもあらわれているように、必ずしも被援助国の国民に本当に喜ばれる援助になっていないのが実態であります。  振り返って我が国の財政は、まさに火の車、国、地方合わせて四百四十兆円を超える財政赤字を抱え、世界の先進国の中でも突出した赤字対策に、橋本内閣消費税値上げなど九兆円の負担増を国民に押しつけようとすらしているのであります。このような切迫した財政危機の中、日本のGNPの〇・三%、全政府予算の二%、国民一人当たり年間一万二千円もの負担がどうして必要なのかという点についてきちんと国民に説明がなされなければなりません。どの国にどのような目的で幾ら、どのように使われたか、国民に理解と支持を得た上でなされることは当然であります。今こそこれまでの政府開発援助あり方を抜本的に見直すべきときであります。  我が国には米国のような対外援助法といった援助を実質的にコントロールする法律が一切なく、ただ政府の決めたODA大綱があるだけであります。しかも、この大綱がゆがめられて実施されてきたというのが実態であります。我が党は二年前からODA基本法を国会に提出してきましたが、今こそ基本法を制定し、援助の基本原則意思決定の明確を図るとともに、真に効果的な援助の実施体制をつくり直すべきであります。そうでなければ、我が国政府開発援助はまさに虚構の上に立った偽善であると批判されても否定できないではありませんか。この際、ODA抜本見直しについて総理の見解を伺っておきたいと思います。  次に、韓国との関係についても私は釈然としないものを感じます。  去る十五日、池田外務大臣が韓国を日帰り訪問した際、民間レベルで行っているアジア女性基金が韓国の元従軍慰安婦見舞金を支給したことについて、金大統領は凍結を求め、柳外相は支給撤回まで求めたと伝えられております。基金の対象となる韓国の御婦人が個人の判断で見舞金を受け取りたいということをどうして政府がストップをかけてよいのでしょうか。池田外務大臣が、本人の意思を尊重して人道的観点から実施したと応じたことは、至極当たり前の発言であります。  しかし、同時に池田外務大臣は、今後のことについては外務省同士の協議にゆだねたいとの考えを伝えたと報じられております。しかし、これには納得がいきません。なぜ民間基金の活動に政府が介入するのか。受け取りたいという本人の明確な希望がある以上、それを尊重するのが国としてとるべき態度であります。  総理は、別府市での首脳会談ではどのような姿勢で会談に臨もうとされるのか、明らかにしていただきたいのであります。  さらに、我が国国民の極めて関心が高い竹島問題については、本年一月の池田外務大臣韓国訪問のときも含めて、ほとんど話題にすらしていないようであります。国際関係において、自国領土の保全は時の政府に課せられた最も重要な責務であります。  今こうしているときにも着々と韓国は竹島に港湾施設を建設し、実効的支配の事実を世界に向かってアピールしているのであります。これに対して日本は、口頭で抗議し、あるいはこれまで七十回近い口上書による申し入れをし、それによって国際法上の領有の要件とされる韓国による平穏な占有の継続の中断を図っていると説明するのでありますが、状況はいかなる変化もありません。なぜもっと日本の国益を前面に掲げて問題に対処しようとしないのか、この点も国民の納得のいかないところであります。今回の日韓首脳会談で竹島問題について韓国側にはっきりと主張していくのかどうか、明確な答弁を求めるものであります。  そもそもその国の歴史に対する認識は、他国と共有できるものとどうしてもできないものがあることは当然であります。すべて一致することは不可能と言っても過言ではありません。一致しないから避けて通る、一致しなければ言わないというのでは外交は成り立ちません。  私は、中国、韓国に対する対応を例に政府の外交姿勢の問題点を指摘しましたが、私は両国との関係を悪くしろなどと言っているのではありません。そうではなくて、我が国の国益を踏まえて、言うべきことは言い行動すべきことは行動し、サミットに参加する大国としてそれにふさわしい、責任ある、尊敬される外交を展開してほしいと言っているのであります。橋本総理アジア外交基本姿勢について答弁を求めるものであります。  次に、総理の六つの改革について伺います。  橋本総理は、行政改革経済構造改革金融システム改革社会保障構造改革財政構造改革、そして教育改革の六つの改革の断行を提唱されております。私は次の二つの理由から、この改革は必ず失敗すると考えるものであります。  まずその第一は、これら構造的改革には失業や倒産といった必ず痛みと混乱が伴うものであり、改革を円滑に進めるためには痛みや混乱を社会的に吸収する経済基盤の確立が不可欠であるにもかかわらず、橋本総理にその認識が全くないということであります。  総理が言われる改革を進めるためにまず必要なことは、長期的な不況に陥っている我が国経済を立て直し、安定した成長の軌道に乗せ、国民の生活不安を取り除き、経営者の自信を回復させることであります。  この点において総理が講ずべき第一は、所得税住民税の減税や法人税の減税などにより需要を喚起し、落ち込んでいる我が国経済を根本から立て直すことでなければなりません。しかるに、橋本内閣は全く逆のことをやろうとしております。すなわち、消費税引き上げ特別減税の中止、社会保険料引き上げなどで、立ち直りつつある景気回復の足を引っ張ろうというのであります。このような経済環境のもとでは、構造改革で影響を受ける人々が生活と命をかけて抵抗するのは当たり前であり、改革などできようはずがありません。  第二の理由は、六つの改革が個々ばらばらで、全体を統一する政策理念がないことであります。  例えば、行政改革の目的は、効率的で小さな政府をつくり、それにより財政支出を削減することであるにもかかわらず、総理の言われる行政改革には歳出の削減という視点がなく、中央省庁の再編という単なる機構いじりを目指したものであり、行革と財政改革との統一がとれておりません。  また、社会保障改革財政改革の間にも政策思想の統一性がありません。高齢社会を展望し、直間比率の是正が財政改革の一つの柱と考えるならば、なぜ介護の費用を税金で賄おうとせず直接税としての介護保険料で賄おうとするのか。政策の整合性がないのであります。  総理・改革はかけ声だけでは済まないのであります。本当に改革を進めるどすれば、改革の理念を明確にし国民の理解を求めると同時に、短期的な財政縮小均衡論にとらわれることなく、大局的な見地に立った大改革を勇気を持って断行すべきであります。総理の見解を伺います。  次に、財政健全化について伺います。  平成二年度に特例国債の依存から脱却したのもつかの間、我が国財政バブル経済の崩壊後のゼロ成長の中で再び急激に悪化し、今や先進諸国の中でも最悪の財政状況に陥っております。  国債残高は九年度末には二百五十四兆円に達しようとしており、これに借入金及び地方の債務を加えた我が国の債務の総額は実に四百七十兆円にも上り、これに国鉄債務等のいわゆる隠れ借金を加えれば五百兆円を超えようとしております。さらに年金福祉事業団など特殊法人等の抱える赤字を加えればその総額は五百十五兆円という、GDPをも上回る膨大なもので、まさに我が国経済大国とは名ばかりの借金大国となってしまったのであります。  政府もようやく事の重大さに気づき、財政再建法の策定に向け、昨年十二月十九日、財政健全化目標に関する閣議決定をされました。しかし、その内容は、最終目標として国債の残高が累増しないということに尽きており、それに至る手順も方法も全く示されていないのであります。一体、国債残高が累増しないようにするにはどのようにすればいいとお考えなのですか。それは制度やシステムを現在のままにしても可能だと考えているのですか。お答えをいただきたい。  さらに、国債残高が累増しないという表現は、国債残高を削減するということを含んでいるのですか、それとも国債残高の削減は必要ないということなのですか。なぜ国債残高の削減を最終的な目標にしなかったのですか。明確にお答えをいただきたい。  財政構造の改革と言う限りは、現在の財政制度や仕組み、システムそのものを変えていくことだと考えますが、今後の構造改革を進めていくに当たり、その改革はどれだけの効果を生むかを試算して国民の前に明らかにすべきであると思いますが、総理の見解を伺います。  次に、平成九年度予算案の中身について伺います。  橋本内閣は、昨年の概算要求基準の策定に当たり、九年度予算を構造改革元年と位置づけられました。しかし、ふたをあけてみれば、改革とはおよそ逆方向の予算ばかりがずらずらと並んでいるのにはあいた口がふさがらないというのが国民の声であります。マスコミの評価をまつまでもなく、橋本内閣は史上最悪の予算を編成した内閣として歴史にその名を残すでありましょう。  問題の第一は、公共事業の配分比率が昨年までと全く同じであるばかりか、新たに港湾・空港、下水道等総額五十一兆円、計七本もの公共事業五カ年計画を閣議決定し、聖域化されようとしていることであります。  今国会末までに決めると報じられている財政再建法では、このように各公共事業ごとにあらかじめ五カ年計画を定め、毎年度の予算編成において聖域化していこうという考え方をどのように扱うおつもりですか。公共事業の聖域化を改めない限り、財政構造改革はまさに絵にかいたもち同然と言わなければなりません。  問題の第二は、整備新幹線についての与党・政府の合意であります。  かつての国鉄が政治によって翻弄され、そのあげくに三十七兆円余の債務を抱えて立ち行かなくなったのと全く同じ轍を整備新幹線も踏もうとしているのではありませんか。十年前の国鉄改革では、JRに二度と同じ轍を踏ませないことが改革の目的であり、その責任者として改革に当たった橋本当時運輸大臣が、今、最高責任者の総理大臣になりながら改革をじゅうりんするような暴挙を許すようでは、橋本行革の将来は完全に真っ暗であります。選挙に当選しさえずれば国の将来などどうでもいいと言わんばかりの政権与党の暴挙を国民は断じて許さないことを知るべきであります。  整備新幹線建設の基本は財源と採算性であることは言をまちません。その建設財源をどのようにして確保するのか、各線の採算性はどうかの見通しもないままに建設計画だけが先行した今回の合意ほど納税者を愚弄するものはありません。財源と各線の採算性の見通しはいつ示されるのですか。また、採算がとれないことが判明した場合に整備計画の見直しは行うのですか、行わないのですかつ総理の明確な答弁を求めます。  問題の第三は、十年前の国鉄分割・民営化によって当時の国鉄債務三十七兆一千億円は、JRが十四兆五千億円、国鉄清算事業団が二十二兆七千億円を引き継ぎました。しかし、JRが懸命の経営努力で債務の削減に取り組んでいるのに対し、清算事業団の債務は今や二十八兆円に膨らみ、毎年度の利払い費すら確保できない状況に陥っております。  その原因は、事業団の持っている土地売却を制限するなどの誤った政策が行われてきたためであることは明白で、これによって最終的な国民の負担は実に二十兆円を超えることが必至の状況であります。しかも、平成元年度に閣議決定した債務処理期限の九年度を目前にしてその基本的方針すらも決められないようでは、内閣の怠慢は明白であり、責任放棄に等しいと言わなければなりません。国民負担が当初の見込みの十三兆八千億円から二十兆円に拡大した責任はどのようにとるおつもりですか、総理の明確な答弁を求めます。  二十兆円を超える国鉄債務問題の処理の基本は、増税等の新たな国民負担を求めるのではなく、行財政改革の断行を基本とすべきであると考えますが、総理の見解を伺います。  また、債務の削減には、積極的な土地売却の推進を図るほか、株式の売却を優先的に行うなど、現時点において可能な手段を総力を挙げて実施することが必須の条件であると考えますが、政府の債務削減についての努力と方策を伺います。  さらに、十年前の国鉄改革の際には、鉄道事業の再生も改革の大きな目標でありました。整備新幹線建設をめぐる動きに顕著に見られたように、政治がJRの経営に介入し、鉄道事業再生の障害となるようなことは断じてすべきでないと考えるものでありますが、総理の決意を伺います。  問題の第四は、政府が構造改革のあかしであるかのように喧伝する国債発行額の四兆三千億円の削減は、これが政府の歳出削減努力の結果ではなく、増税によって行われたことであります。  それは消費税引き上げによる五兆円と特別減税の取りやめによる二兆円の合計七兆円もの増税を行った上に、各種保険料の引き上げ等々総額九兆円近い国民負担の増加の上にようやぐできたのであります。九兆円もの負担増に比べて国債発行額の削減が四兆三千億円では、歳出削減どころか、その残りは歳出拡大に使われたわけであり、全く容認できません。この際、政府は、この事実を率直に認め、我々の歳出の抜本的削減要求に従って速やかに九年度予算を撤回、編成し直すことを求めるものであります。  株式市場、為替市場、国際金融市場が我が国に今突きつけている警告と、おぞましいばかりの低い評価を回復するには、公共事業の見直しや不要不急の歳出の大幅削減など抜本的な歳出削減の上で、大規模な減税の実現、消費税を据え置く、特別減税の継続などが必須の条件であります。  総理、多くの国民が平成九年度予算案のまやかしに怒り、実に国民の七一%が予算の修正が必要と指摘しているのであります。これら諸点について総理の明快な答弁を求めます。  次に、介護保険制度について伺います。  二十一世紀、我が国は世界でも類例を見ないような超高齢化社会に突入していくことは紛れもない事実であります。その高齢化社会に対応するためにゴールドプラン、エンゼルプラン等々が策定され、さまざまな施策が展開されようとしております。そうした中において、今、介護保険制度が高齢化社会を支える大きな柱の一つとして位置づけられようとしており、さきの臨時国会ではその法案まで提出されたのであります。  私は、介護の問題は、年金、医療、福祉といった総合的な福祉体系の中で位置づけられるべきものであり、その視点に立った制度改革なしに、単に増税の肩がわりに保険という形で国民に負担増を強いる介護保険制度の導入には反対であります。これを抜きにしても、今なぜ介護保険制度なのかという思いを禁じ得ないのであります。高齢化社会に対する取り組みのあり方そのものに対しても、このままでいいのかという大いなる疑問を持っているのであります。  老いも若きも生きとし生けるものとして、社会の中で人間としての誇りや尊厳を日々かみしめながら、また、互いの喜びや悲しみを分かち合いながら暮らそうとしている人々を、六十歳になれば定年制度という画一的な基準によって社会から切り離し、さらに六十五歳になればすべてを老人扱いしてしまうような今日の社会の仕組みそのものに疑問を感じているのであります。人生八十年時代を迎え、人間としての尊厳を体現しながら社会の中で何がしかの役割を果たそうとしている人々が、生きていてよかったとしみじみ感じられるようにするためには、定年制の延長を含めた社会のあり方、仕組みそのものの見直しこそまず行われるべきではないかと考えるからであります。  これからの高齢社会では、高齢な人々を一般社会から制度の上で隔離するのではなく、一般社会の中で、ともに人間としての誇りと尊厳を持ちながら、いかにしてそれぞれの役割を体現できるようにするかが問われなければならないと考えるものであります。そうした社会の仕組みを整備することこそ政治の責任ではないでしょうか。総理並びに厚生大臣の見解を伺いたいのであります。  次に、官僚の腐敗・汚職事件について伺います。  近年、大蔵官僚、厚生官僚を初め、相次いで高級官僚の汚職事件がマスコミをにぎわせております。もとより、官僚の汚職は今に始まったものではありませんが、これほどまでに広がってきたのは行政や官僚社会の中に構造的な要因があると言わなければなりません。  今日、あらゆる問題が行政の守備範囲の対象とされ、役人もそれを奇貨として権限の拡大に利用してきたことは疑う余地もありません。そうした過程の中で、行政の裁量に任された業務と権限が急速に拡大し、その広がった業務と権限におのれの地位と身分を忘れた役人のおごりが重なり、それが腐敗と汚職の土壌となったのであります。  しかし、我が国では善良な官僚、役人を前提にしてきたため、腐敗防止や倫理維持のためのシステムがほとんどないに等しく、精神論や精神訓話で過ごしてきたのが実態であります。金と許認可権を握った役人に近づき、そこから少しでも多くの金を引き出し、人より有利な認可等を得ようとする力は後を絶ちませんが、不正な手段を使うことができにくい仕組み、システムをどう構築していくのか、今や単なる精神論や精神訓話では済まされないところに来ていることを銘記すべきであります。公務員倫理法の制定を含めて、総理並びに官房長官の見解を伺いたい。  次に、日本海のロシア・タンカー沈没による重油流出事件について伺いたい。  今回の事故は、重油による汚染が沿岸の漁業のみならず海の環境にとっていかに恐ろしい被害をもたらすかを改めて思い知らされました。荒れ狂う冬の海で、重油の回収はほとんど手作業に等しく、現地の皆さんはもちろんのこと、我々も歯がゆい思いを禁じ得ないのであります。  ノリの養殖を初め多くの栽培漁業が被害を受けたと言われますが、その被害総額はどの程度と見込まれるのか。これら災害対策の費用の総額は、とても船の保険料で賄うことのできる規模ではないと思います。したがって、油災害対策に関する財政支出のための特別立法も急務であると考えますが、いかがですか。  それにしても、今回の重油流出事故は、一昨年の阪神大震災や昨年の地下鉄サリン事件の教訓が全く生かされていないではありませんか。初動対応のおくれが被害の拡大を招いたことは明らかです。政府に危機管理への対応が全く整っていなかったと言うほかありません。危機管理の中には重油流出事故は入っていなかったとでもおっしゃるのでしょうか。被害が一府七県にも及び、さらに拡大しておりますが、政府の初動体制のおくれが被害を拡大していることは明らかであります。多数の漁業関係者、自治体職員、自衛隊員並びにボランティアの方々が、厳しい寒さの中、必死で重油の除去作業に携わっておられ、既に作業が原因で三人もの方が亡くなられるなど、重なる疲労や重油による人体への影響などが心配されるところであります。  総理や官房長官は、最高責任者として、なぜ現地を直接自分の目で確認し関係者に感謝と激励をなされようとしないのか、お答えいただきたい。  今後は、外洋における万一の油流出事故に備えて、現在一隻しかない油回収船をふやすことや、国際協力体制を一層強化すべきと考えますが、政府としてどのような対策、対応を考えておられるのか伺いたい。  最後に、依然として官僚に頼り切る橋本内閣では、今日の危機的状況にある日本を救う改革は到底不可能であることを警告するとともに、歳出削減どころか歳出拡大に手をかした平成九年度予算案の抜本的な修正なくしては改革への国民の理解と協力は全く得られないことを申し上げ、私の代表質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕
  10. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 平井議員にお答えを申し上げます。  まず、私の改革に取り組む決意についてのお尋ねがございました。  長い間に築かれてまいりました経済社会システムを変革しよう、そして新しいものをつくろうとすることは、御指摘のように、かなりの痛みを伴うものでありますし、当然ながら、新しいシステムをつくり上げる以上に英知と勇気を必要といたします。与野党を問わず各党各会派の、そして国民皆様の御理解と御協力を得ながら、我が国の将来を見据えて全力でこれに当たる決意であります。  次に、先刻、本院において御決議をいただきましたペルー大使公邸状況についてのお尋ねがございました。  現在なお多数の方が人質として捕らえられており、事態は依然として極めて厳しいものがございます。ペルー政府はこのような背景から不測の事態が起きないようさまざまな対策を講じており、我が国政府もかかるペルー政府対応に対し協力をいたしているところでございます。幸い、国際赤十字等によりますと、邦人の中に特に緊急の治療を必要とする方はいない模様であります。政府としては、厚生省の医療チームを派遣し、ペルー政府、国際赤十字と緊密に連絡をとりながら、可能な限りの支援を行っております。  これまでのテロ対策あるいは危機管理対策についての御意見をいただきました。  危機管理体制の強化は内閣の最重要課題であり、これまでも過去の教訓などを踏まえながら、情報集約機能の強化、関係閣僚の緊急参集体制の整備など、その充実に努めてまいりました。また、テロ対策につきましても、パリ・テロ閣僚会議への参加など国際協力を含め、体制の整備を図ってまいりました。  今般のペルー事件につきましては、事件発生直後に対策本部を設置しながら、政府として全力を挙げて取り組んでおりますが、これらの体制は常に点検、改善していくべきものであり、今後ともさらに適切なテロ対策危機管理体制の確立に万全を尽くしてまいる所存でございます。  また、外務大臣ペルーの訪問につきましては、申し上げるまでもなく、大使以下大使館員全員が人質として、大使館の機能を喪失するという事態に至ったわけであります。当然のことながら、現地の対策本部、大使館にかわる機能を持つものを立ち上げるため、また、事件解決に際して、人質の安全を重視しながらこの事件の平和的な解決を目指すという基本的な我が方の考え方を相手側に伝えること、主要関係外交団との意見調整、さらに在留邦人、日系人の方々との面談といった明確な意識を持って出向いていただいたものであります。これらの目的外務大臣ペルー滞在中におおむね達成されたと考えておりまして、議員の御指摘のようなことはないと思います。  また、事件発生から約一カ月が経過をいたしました。そして、ペルー政府による保証人委員会設置の提案に対して、MRTA側がこの提案を受け入れるという趣旨の表明をしましたが、双方の主張にはなお大きな隔たりがございます。しかし、この委員会の設置に向けたプロセスが進んでおりまして、我が国としては、平和的解決に向けて事態が進展することを心から願っております。しかし、公邸内には依然として多くの人質方々が残されているわけでありまして、事態は依然極めて厳しく、予断を許す状況ではございません。  また、ペルー経済対策についてお尋ねがございましたが、我が国はこれまでペルーに対し、インフラ整備への協力あるいは民生の向上のための社会分野での協力など幅広い分野で経済協力を実施してまいりました。こうした我が国協力は有効に利用され、ペルーの経済発展及び貧困対策という所期の成果を上げている、ペルー政府のみならず広くペルー国民からも高い評価を受けていると考えております。  また、対中・対韓外交についてのお尋ねがございました。  中国韓国との間にあるさまざまの懸案につきましては、我が国としての立場は明確に主張してきております。他方、これらの解決に向けて努力をしながら、我が国にとって極めて重要なこれらの国々との良好な関係を維持発展させていくことも、二国間のみならず、アジア太平洋地域全体にとって極めて重要なことだと考えております。  対中経済協力につきましては、我が国は、中国改革・開放政策のもとで安定と発展を確保しながら、そのような中国との間に安定した協力関係を築いていくことが、アジア太平洋地域、ひいては世界の平和と安定につながるという認識に基づいて経済協力を実施してきております。今後ともODA大綱を踏まえながら対中経済協力を進めてまいります。  また、ODAあり方基本法制定についての御意見をいただきました。  急激に変化する国際情勢の中でODAの機動性、柔軟性を損なわないように留意することが必要であり、政府としては、ODA大綱を踏まえながら、国民の御理解を得て一層効果的、効率的な援助の実施に努めてまいります。同時に、途上国が直面する課題の変化に的確に対応するためにも、援助の質の向上に重点を置いてODAあり方検討してまいります。  次に、元従軍慰安婦の方についての御質問がございました。  「基金」としては、韓国内の七名の元従軍慰安婦方々から、基金事業を受け入れたい、そうした意向が表明されたことを受け、御高齢であるこれらの方々のお気持ちに一日も早くおこたえをすることが大切という結論に達せられ、事業を開始されたと承っております。  政府としては、元慰安婦の方々の置かれた立場も含めてさまざまな要素を勘案し、「基金」の御意向を尊重する考えであります。引き続き韓国政府基金事業に対する理解を求めてまいる所存であります。  竹島問題についての我が国の立場は一貫したものであります。他方、この問題に関する日韓両国の立場の違いが両国の友好協力関係を損なうことは適切ではないと考えており、今後とも両国間で冷静に話し合いを積み重ね、努力してまいる所存であります。  政府の立場は以上のとおりでありますが、日韓首脳会談の内容について現時点で云々することは差し控えさせていただきたいと思います。  また、アジア外交基本姿勢についてお尋ねがありました。  世界成長センターとして注目を集め、国際社会での役割を増しておりますアジアにおいて、我が国は、地域の平和と安定にとって不可欠な米国の関与を確保しながら、アジア諸国との関係を引き続き増進してまいります。また、経済面でのAPEC、政治・安全保障面でのASEAN地域フォーラムなどへの積極的な参画を通じ、開かれた地域協力や対話を重層的に推進してまいります。  次に、経済構造改革、また、経済発展の関係についての御意見をいただきました。  現在、我が国は、高度情報通信の発展などによる世界一体化、急速な少子・高齢化の進展、産業の空洞化等の懸念に直面をいたしております。こうした問題に的確に対応しようとするならば、我が国の活力ある発展を妨げている現在の仕組みを変革し、世界の潮流を先取りする経済社会システムを一日も早く構築することが不可欠であります。  こうした認識の上に、行政へ財政、社会保障、経済、金融システムに教育を加えた六つ改革を最重要課題としたところであり、これらを一体的に進めていくことによって中長期的な経済発展の基盤が構築され、着実な経済成長が実現できるものと思います。  また、大幅な減税などによって財政状況をさらに悪化させることは、我が国の経済活力をむしばんでいくおそれがある二とからも適切ではないと考えておりますし、適時適切な経済運営をこれからも図ってまいります。  また、行政改革に歳出削減という視点がないという御指摘がありましたが、行政改革の範囲というものは非常に幅が広いものであります。当然ながら、補助金の整理合理化でありますとか国家公務員の定数削減といった国の財政支出に直接影響を及ぼすもののほかに、情報公開など歳出削減目的とするものではないものもございます。  そして、私は、行政改革の根本は国の基本を根本から問い直すことだと思っています。そして、国や地方公共団体などが規制などにより民間活動に関与していることを廃止できないだろうか、国の現業や特殊法人などの公的部門が提供しているサービスを民間にゆだねられないだろうか、また、行政が関与する場合でありましてもその主体を国から地方にゆだねられないだろうか。こうした三つの視点から行政のあり方を総点検し、国民のサービスを最少の費用で提供できる行政を目指しております。  次に、介護保険につきましては、この制度が現在、老人福祉は税により、老人医療は社会保険によって賄われており、各種の不均衡などが生じていることから、制度を再編するなど社会保障構造改革の第一歩となるものであります。また、社会保障構造改革財政改革あるいは経済構造改革などと密接に関係を持つものでありまして、だからこそ一体として進めようと考えております。  介護費用につきましては、給付と負担関係が明確であること、受給の権利性あるいは多様な事業主体の参入によるサービスの効率化などの観点から、社会保険方式によって賄うことが適切だと考えております。  次に、公債残高の累増問題につきまして、先般の閣議決定において、「特例公債依存からの脱却後、速やかに公債残高が累増しない財政体質を構築する」との目標を定めました。これは公債残高の縮減をも含むものであります。現在の財政構造を放置すれば公債残高は累増の一途をたどると見込まれるところであり、この目標を達成するため、財政構造改革を強力に進めてまいります。  財政構造改革の効果についてお尋ねがありました。  我が国の危機的な財政状況を踏まえますと、経済構造改革などとともに国及び地方の一体となつた取り組みによる財政構造改革が必要であり、二〇〇五年までのできるだけ早い機会に国及び地方の財政赤字対GDP比が上昇しない財政体質を実現し、その後速やかに公的債務残高が累増しない財政体質を構築する、こうした財政健全化目標を決定いたしました。この財政健全化目標を達成し、二十一世紀の活力ある豊かな国民生活を実現するためにも、財政構造改革は推し進めてまいります。  また、先般設置いたしました財政構造改革会議におきましては、さまざまな歳出の改革と縮減の具体的な方策につきまして、公共事業関係費をも含むあらゆる経費を対象に一切の聖域を設けることなく検討を行い、できるだけ早い機会に国会財政再建のための法律案をお諮りしたいと考えております。  公共事業の長期計画の今後の取り扱いについて、社会経済の動向、財政事情などを勘案しながらも弾力的にその実施を図り、今後の財政構造改革の論議も踏まえながら、必要に応じてその見直し検討していくことになります。  整備新幹線につきましては、その財源は、既設の新幹線譲渡収入全額を国の分とみなし、これに国の公共事業関係費を加えました額を国の負担分とした上で、その二分の一を地方公共団体の負担分、JRについては受益の範囲を限度とした貸付料などによることといたしております。  整備新幹線の未着工区間につきましては、整備区間ごとに収支採算性などの基本的条件が整えられていることを確認した上で、その取り扱いを厳正に判断してまいります。  次に、議員が御指摘のとおり、国鉄清算事業団の土地・株式の資産売却のおくれやこの間の資産価値の低下などにより、最終的に国において処理すべき国鉄の長期債務等が増加しており、この本格的処理の実施が喫緊の課題となっていることは御指摘のとおりであります。  政府としては、このような認識のもとに昨年末に閣議決定を行い、平成十年度から国鉄長期債務の本格的処理を実施することとし、その具体的処理策について平成九年中に成案を得ることといたしております。その本格的処理策については、行財政改革との関連も踏まえながらこの策定努力をいたしてまいりますし、国鉄清算事業団が保有している土地や株式など残る資産につきましては、国民負担の軽減を図る観点から、その早期処分に全力を挙げてまいります。  また、政治がJRの経営に介入し鉄道事業再生の障害となるような事実はないものと考えております。  次に、大規模な減税の実施及び消費税率の据え置きなどについて御意見がございました。  我が国財政は、主要先進国中最悪と言える危機的な状態にあります。急速な少子・高齢化の進展などを考えますと、財政構造改革は喫緊の課題であります。九年度予算において大規模な減税などを実施すれば財政赤字が拡大してしまうことになり、私は適当ではないと思います。財政赤字の拡大はむしろ我が国の経済活力をむしばんでしまう、こうしたおそれがあることからも、大規模な減税等は適当ではないと思います。  また、高齢者ができるだけ健やかで自立した人生を過ごし、社会の中で生き生き働いていけるように、この御指摘は議員御指摘のとおりであり、六十歳で引退するのではなく六十五歳まで現役として働いていただく、しかもその後においてもなお御努力をいただける方々にはその場を提供できるように、社会経済の各分野における発想の転換が求められると考えております。  介護保険法案は、だれもが長生きしてよかったと言える社会を建設するために、老後生活の最大の不安の一つであるその介護の問題について社会全体で支える仕組みを早急に構築しようとしているものであって、議員とは異なり、私は早期に創設することが必要だと考えております。  また、公務員に対する不正な手段を許さない仕組み、システムという御意見をいただきました。  政府としては、昨年発生した不祥事というものを厳しく受けとめながら、昨年十二月、実効ある綱紀粛正の方策と不祥事の発生を防止する適正な行政執行体制の確立を図ることを内容とする事務次官等会議申し合わせを行いました。この申し合わせに基づいて各省庁において制定された公務員倫理規程の厳格な遵守を図るとともに、全省庁の事務執行体制を再点検してまいります。  次に、ロシア・タンカーの沈没による被害総額についてお尋ねがございました。  現時点におきましては、いまだに相当量の油が海上に浮遊し、さらなる被害の拡大が憂慮されている上、被害を受けた沿岸住民の方々も油の防除に全力を尽くしておられる状況にありますために、被害総額は把握し切れておりませんが、今後その把握に努めてまいりたいと考えます。  油濁損害に対する補償につきましては、油濁関係条約及び国内法に基づいて、民事上の手続により、船舶所有者からの賠償及び国際油濁補償基金からの補償がなされ得ることになっておりますが、政府としてもこの油濁損害の補償等が適切に実施されるよう的確に対応してまいります。  ナホトカ号の重油流出事故につきましては、事故発生後直ちに人命救助が行われ、引き続いて、冬の日本海の荒天下にもかかわらず、タンカーからの流出油の監視・防除や、漂流している船首部の沖合曳航等の作業に海上保安庁の諸君は全力を挙げて取り組んでまいりました。しかし、結果として船首部の曳航は成功せず、また、流出油の一部が沿岸に漂着し事態が拡大したことは本当に残念でありますし、事態状況を踏まえ、もう少し早く関係閣僚会議を開催するとか、政府対応に反省すべき点があったことは率直に認めます。  現在、関係機関の総力を挙げ、また、石油業界など関係業界、民間のボランティアの方々などの協力を仰ぎながら全力を挙げて流出油の防除等に取り組んでおりますが、政府といたしましては、本件事態の重大さにかんがみて、被害状況の把握、環境に与える影響の調査、賠償問題などの被害総額対策、再発防止策に内閣を挙げて取り組んでいるところであります。  我が国における油流出事故への備えにつき、外洋型油回収船を例として御指摘をいただきましたが、政府関係閣僚会議などにおき、今後の油防除体制のあり方について総合的に検討しながら、適切に対処してまいりたいと考えております。  また、事故の再発防止のため、国際海事機関等を通じ、各国政府協力しながら、旗国による船舶検査の徹底と外国船舶に対する立入検査の強化等の対策に取り組む所存であります。  残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁申し上げます。(拍手)    〔国務大臣小泉純一郎君登壇拍手
  11. 小泉純一郎

    国務大臣(小泉純一郎君) 高齢化社会への対応についてのお尋ねですが、これからの高齢者は、健康や知識の面においても、また、所得や資産の面においても一様ではないと思います。さまざまな面で幅の広い集団となっていくことが予想されておりますので、私どもとしては、こうした多様な高齢者像を視野に入れまして、できるだけ高齢者に在宅で自立した生活をしていただく、そして社会参加をしてさまざまな分野で活躍していただく社会が必要ではないか。そして、自立が困難となった場合には社会全体で温かく支援していく仕組みをつくっていくことが必要であると思いまして介護保険法案を提出しております。  毎年、介護を必要とされる方が十万人ずつ増加しております。そして、介護をしている家族の負担は容易ではありません。そういうことを考えまして、皆様方の御理解を得て、この法案の早期成立を図っていくために全力を尽くしますので、どうか御理解と御協力をお願いしたいと思います。(拍手)    〔国務大臣梶山静六君登壇拍手
  12. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 私に対する質問は、公務員の不祥事対策、それからロシア・夕ンカー沈没による重油流出事故についてでありますが、総理から事細かに答弁があったとおりであります。  あえて加えるならば、法令や刑罰のみによって公務員の綱紀粛正ができるかどうかという問題が一点ございます。私は、公務員としての国民へ奉仕するという高い倫理観、それから、これからの社会をよくするという旺盛な使命感、これが充実してこそ初めて不祥事の根絶ができるというふうに確信をいたしております。全力を尽くしてまいりたいと思います。  なお、油の流出については、海上保安庁を中心とする運輸省あるいは各省庁、府県、市町村、農協その他数多くのボランティアの方々全力を尽くしておられることは敬服にたえません。しかし、残念ながら十分な手段方法を持っていなかったという深い反省をいたしております。  今、総理が述べられましたように、各種のこれからの対策について、関係閣僚会議を一千日に設置いたしまして広範な対策、対応を期してまいりたい、このように考えます。(拍手)     —————————————
  13. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 坂野重信君。    〔坂野重信君登壇拍手
  14. 坂野重信

    ○坂野重信君 私は、自由民主党を代表して、先日の総理施政方針政府演説に対し、総理並びに関係大臣に質問いたします。  我が党といたしましては、総理が提唱され、まさに橋本内閣の旗印でもある六つ改革を中心に、私のほか、竹山、小野両議員より質問がなされますので、私からは行政改革財政再建、外交等、内外の重要課題について質問を行います。  質問に入る前に二、三申し上げます。  まず、去る十二月十七日、日本時間で十八日ですが、ペルー日本大使公邸の占拠事件発生し、多くの皆さんが人質になられたことに心からお見舞い申し上げるとともに、総理みずから日夜真剣に取り組まれ、テロには屈しないという基本姿勢で、人質の全員解放に向けてフジモリ大統領と連携をとりながら日夜尽力された労を心からねぎらいたいと思います。さらに全員解放実現まで、先ほどの決議を踏まえて引き続き御努力をお願いしたいと思います。そして、これを契機としてテロ防止に今後万全を期していただきたいと思います。  先刻ちょっとお聞きしたのですが、総理フジモリ大統領とけさ電話で御連絡いただいたようでございますが、何か新しい情報でもあれば、この際お聞かせいただきたいと思います。  外務大臣も御苦労さまでした。また、総理は、正月早々ASEAN五カ国を訪問され、友好親善に努められ、御苦労さまでした。  さて、正月早々に日本海で重油流出事故が発生し、広範囲な被害に発展、沿岸の皆様は大変苦労され、漁民の生活にも影響が出てまいり、環境破壊も生じています。本件について、政府は災害対策として万全を期して取り組まれるようお願いいたします。また、今後の事故再発防止のため、関係各国と連携の上、外国の老朽タンカーのチェックシステムを強化されるようお願いしたいと思います。  以下、質問に入ります。  まず、政治姿勢についてお伺いいたします。  戦後、我が国は豊かになりましたが、時代の変化に伴い、従来の諸制度や生き方も改革を迫られており、このままでは日本丸は沈没必至であります。高齢化・少子社会を迎える二十一世紀に向けて、六つ改革目標は何か、目指す日本国と日本人像、そのための改革の基本理念国民に改めてわかりやすく説明し、国民理解を得なければならないと思います。総論賛成各論反対が予想される中での基本理念と総括的なプログラム及び実行への決意総理に御披露願いたいと存じます。  橋本総理は、火だるまとなって頑張るとのことですが、ローマは一日にして成らず、不退転の決意で先頭に立って大道を歩んでください。  さて、最近、公務員不祥事が続発、国民の極度の信頼失墜に対して徹底した綱紀粛正が必要と考えますが、果たして各省庁の公務員倫理規程にゆだねるのみでよいかどうか。国家公務員法のほかに新たに公務員倫理法が必要ではないでしょうか。  また、参議院の行財政機構及び行政監察調査会においてかねて検討中のオンブズマン的機能を持った制度に関する報告が近く提出されます。たまたま民主党から同趣旨によるGAO法案が提出されており、与党三党においても協議が開始されますが、いずれ調整が必要と思います。総理の御見解を伺います。  同時に、国民から選ばれた国会議員の政治倫理は公務員以上に重要だと思います。参議院においても友部議員の疑惑が報道されており、参議院の議院運営委員会において、友部議員が速やかにみずから辞職されるよう勧告しているところであります。我々政治家たる者、厳しい倫理観を持って改めて襟を正す必要があると思いますが、総理の御所見をお伺いいたします。  次に、行政改革について伺います。  行政改革のポイントは、行政のスリム化、総合化を目指して、官と民との役割分担を明確にすることであります。すなわち、規制緩和の基準を明確にして、外交・防衛、危機管理と治安対策、国家財政、教育政策、食糧政策、社会保障政策、国土保全、総合交通対策、地球環境等の国家戦略的分野と、民間において役割分担すべき分野とに区分することであります。  いま一つは、中央と地方の役割分担を明確に区分することであります。そして、この地方分権には、補助金の整理縮減と相まって地方の自主財源対策が同時に講じられなければならないと思います。総理の御所見を伺います。  そして、具体的計画は行政改革会議において各党とも連携しながら策定することが望ましいと考えます。  また、行革には行政側から各論反対も出てこようかと思いますが、中央省庁の再編等に伴い、天下り抑制の中で、みだりに国家公務員に首切り解雇等の不安を与えないよう、人員配置転換の計画の策定と定年制の延長なり再雇用など公務員制度についての見直し方策を講じること等により行政側からの協力を得るようにすることが大切だと考えますが、総理の御所見はいかがでしょうか。  いま一つ重要なことは、地方分権における地方の受け入れ体制の整備であります。現状のままでは地方にオーバーロードを課すこととなるので、市町村、県等の自治体の広域連合なり広域合併による受け入れ体制の整備を同時に行う必要があると思いますが、総理の所見を伺います。  次に、国会改革と選挙制度の問題について伺います。  行政改革と並行して国会改革が重要であります。衆議院のコピーであるとか、参議院不要論が論じられる中で、この際、参議院改革を実行する必要があると思います。  我が参議院自民党においては、既に参議院改革に関するプロジェクトチームを編成し検討中でありますが、参議院議長の呼びかけで、参議院創設五十年目の行事の一つとして、ことし五月、上院議長サミットを開催されることはまことに時宜を得たものであります。  二院制下における参議院の役割を再点検し、参議院が抑制、均衡、補完の機能を十分に果たすことが大切で、参議院議長を中心として各会派の間で数項目にわたる具体的な改革案について目下検討を進めており、近く各会派協議の上、コンセンサスを得た成案が得られるものと期待しております。これにより参議院らしい国会審議が可能となると思っております。  例示すれば、代表質問のあり方を各会派代表一名に限らず複数とし、小会派にも機会を与えるようにすること。また、採決に当たり押しボタン方式を採用すべく、平成九年度予算に計上したこと。任期六年を活用して長期的な政策策定し、議員立法を充実すること。参議院先議をさらに増加すること。参議院独自の調査会を中心として議員同士の討議をふやすこと。委員会審議の公開をさらに工夫徹底すること。前述のオンブズマン的機能を持った制度とあわせて、参議院においては決算を重視し、決算審査を参議院先議とすること。特別委員会を整理し直したが、さらに常任委員会の構成を省庁別でなく総合政策別に改編すること。また、請願の扱い方を改善すること等であります。  来年は参議院選挙の年であります。これらの改革により国民の参議院に対する関心を高め、前回の選挙のように最低四四・五%ということではなく、投票率をさらに高めたいと期待しております。行政の最高責任者として、参議院改革についての総理の御所見をお伺いいたしたいと思います。(発言する者多し)  次に、選挙制度について、我が党衆議院側において、先般の衆議院議員選挙における小選挙区比例代表並立制選挙で幾つかの問題点が指摘され、見直し検討作業が開始されました。(発言する者多し)静かに聞いてください。  衆議院選挙制度との整合性を図るべく、我が党参議院側においてもプロジェクトチームを編成し、来年の選挙には間に合わなくとも、中長期的な考え方で検討を始めたところであります。  なお、これに関連して、昨年九月十一日、最高裁において参議院選挙区間における議員一人当たり選挙人数の格差について、衆議院に準じた考え方に立って違憲かどうかの判断がなされましたが、そもそも参議院選挙区は地域代表の性格が強いとされており、各県選挙区定数二名ずつが適当であるという意見もあり、これらについて論議することも必要かと思います。あえて答弁は求めませんが、言及しておきます。  さて、行政改革により、国家公務員の定数削減を行う前にまず国会議員の定数削減をということで、衆議院において定数削減を行うこととなれば、参議院においても同様、定数削減検討すべきではないか。以上の諸点について、総理にお考えがあればお伺いしておきたいと思います。  次に、財政再建についてであります。  国と地方を合わせた債務は、今やGDP比九割を上回る五百兆円に迫っており、主要先進国中最悪であります。このまま赤字財政を放置すれば、急速な高齢化の進展に伴い、将来の国民負担は高水準となって双子の赤字に転落するおそれがあり、外国有識者の中には、日本は二〇二〇年には消えるとまでも指摘する人もあります。財政構造改革は緊要であります。多くの党派が行財政改革重点公約としてうたっておることでもあり、国務大臣演説に関する件(第二日)私は、論議を尽くせば大局的な見地から合意可能と思っております。  平成九年度は財政再建元年と位置づけられ、九年度予算はその一環として厳しいものとなりました。細かい制度改革具体策は申し上げませんが、約四兆三千億円の公債発行を減額し、歳出の伸びを一・五%、実質伸びゼロに抑えたことは特筆すべきことではありませんか。一方、創造的研究等の分野を思い切って伸ばし、めり張りをきかせたものであり、年度内成立を期したいと思います。総理見解を求めます。  さらに、財政再建の実を上げるためには、旧国鉄の債務や国有林野の赤字会計なども視野に入れた財政再建法に基づく財政再建計画を策定すべきであると思いますが、大蔵大臣はどのようにお考えでしょうか。  関連して、このたび政府・与党の財政構造改革会議が設置され、総理みずから議長となられましたが、これについて改めて総理から設置の趣旨、プログラム等を説明願いたいと思います。  なお、政府財政支出を軽減するためには民間の活力を活用することが大切で、受益者負担制度の一層の活用等も必要と思いますが、大蔵大臣の御見解を伺います。  ここで、国民負担の水準目標を極力低くすることが望ましいと思いますが、総理はさきに四五%にとどめることが望ましいと言われましたが、このお考えは今でも変わりございませんか。改めて見解をお伺いします。  次に税制問題について、このたび本年四月から消費税率三%を五%に引き上げることに確定したのでありますが、これはそもそも直間比率の是正の観点から財政改革の一環として採択された処置であること、また、消費税引き上げを見越して減税を先行していたこと、税率引き上げによって影響を受けやすい弱者の救済を逆進性緩和のためにも特に力点を置いて実行すること、さらに行政改革を断行すること、また、税率引き上げ二%分のうち一%は地方に回すこと及び消費税の使途としては高齢者福祉用が多くを占めていること等についてしっかりと国民理解を求めることが大切であると思います。この際、総理から改めて国民に対して所見を披瀝してほしいと思います。  また、このたび固定資産税の合理化に合わせ住宅促進税制や流通税等の改正が行われますが、毎年多額に上ると言われている脱税ないし税金逃れ防止策の強化が重要であって、これによる税収の確保のための一層の工夫と努力がぜひとも必要であると思います。一方、当面、企業の国際競争力強化のための法人税や地価税、有価証券取引税等の見直しの要望がなされておりますが、これらの諸点について大蔵大臣の見解を伺います。  さて次に、外交・防衛について伺います。  昨年四月、日米安全保障共同宣言が発せられました。これは日米安保条約を基盤とする日米パートナーシップの強化と、日米関係を基軸としたアジア太平洋地域の平和外交に向けての確固たる決意を表明したものであると思います。  朝鮮半島では、最近、緊張緩和に向けて一歩前進したようでありますが、南北が分断されたま主であり、ロシアは内政不安の中で、極東ロシアには依然として核を含む膨大な軍事力が保有されており、アジアの多くの国々でも軍事力を拡大しつつあります。台湾海峡問題もあり、アジアの情勢は必ずしも安定しているとは言えないと思います。特に、我が国に近接している韓国中国我が国との間に存在する竹島や尖閣諸島等の領土問題に対しては毅然たる対処をする一方、両国との友好関係を維持していく努力がさらに必要であると思います。北方四島復帰の課題もあり、総理及び外務大臣の御所見を伺います。  また、広く国連の平和外交協力し、国際貢献の立場から、我が国ODA等を通じて各国に対して経済・技術協力に努めてきたほか、PKO注に基づく国際平和貢献を行って国際的な評価をも得ております。  総理は正月早々ASEAN五カ国を訪問され、これら諸国との国際交流と友好関係の増進に力を注がれたことは時宜を得たことであり、多大の成果もあったと思いますが、総理、いかがですか。  さてしかし、世界の至るところで紛争が絶えません。アジア地域の平和のためには、有事の際、仮に防衛上の問題が発生した場合には、やはり日米安保に基づく米国の協力を得ながら、必要に応じて自衛隊による自衛力行使をせざるを得ないこともありましょう。国際紛争を解決する手段としての武力の行使は憲法により禁じられていますが、例えば後方支援等を求められた場合の出動の可否、支援活動の範囲、規模等については、あらかじめ論議をしておいて考え方をまとめておく必要があろうかと思います。  また、仮に外から多くの避難民が漂着した場合、その受け入れをどうするとか、今回のペルー日本大使公邸占拠のような場合の在外邦人の安全確保等における即時機動的な対処の仕方、あるいは今回の重油流出など突発的な事態への対応について、早急な危機管理体制の整備、官邸の機能強化が必要であり、所要の立法も必要と思います。また、東京で大震災発生等、国内問題での緊急初動体制の整備も緊要であります。  これはまさに内閣の重要課題であります。総理及び外務大臣の御所見を伺いたい。  次に、国土の均衡ある発展についてであります。  最近の人口動態を見ると、依然として過疎化が進行し、超高齢化集落が多発しております。大都市の地方分散や地方振興対策が次々と講じられており、また、ふるさと創生事業も推進されてはいるものの、依然として若者の都市への流出の傾向がとまらない地域が存在しております。これらの地域では超高齢化が進んでおり、生活環境整備や文化施設等も充実されつつありますが、産業の空洞化等の影響もあり、若者に適した働き場も不足しております。今後一層の工夫と努力が必要であると思います。  そのような中で、大企業に恵まれない地域では、三Kと言われた作業現場の環境改善も進んだ公共事業の執行が就労の場を提供する上で役に立ち、地域経済の活性化にもかなりの効果を上げております。したがって、おくれた地方には、社会資本の整備という本来の目的に加えて、このような観点から可能な限り切れ目のない公共事業が望まれております。  以上の諸点について労働大臣の御見解をお伺いします。  このような地方においては、特に次期全総計画に期待が寄せられております。この計画には、今までの計画になかった複数の国土軸、そしてこれへの連携軸、さらに環日本海経済圏のような国際交流も視野に入れた経済圏、生活圏の考え方が組み込まれ、全国的に均衡のとれた開発発展が見込まれると承っております。これにより、二十一世紀を迎えて豊かな国土づくりの夢を国民に与え、その夢の実現を期したいものだと思います。計画の基本的な考え方について、計画実現のための政策手段とプログラムを含めて、国土庁長官から要点を御説明願います。  最後に一言申し上げます。  橋本政権はこの一年間、日米関係、沖縄基地問題等外交面で大きな成果を上げ、内政面でも住専問題、薬害エイズ問題等、真っ正面から取り組んでまいりました。改革への総理のリーダーシップに大きな期待が集まり、支持率も五割を上回っております。どうか自信を持って政局運営に当たられたい。まさに国家百年の大計に命をかけた明治維新の元勲の気概を持って頑張っていただきたいと思います。  最後に総理の所見を承って、私の代表質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣橋本龍太郎登壇拍手
  15. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 冒頭、ペルーについて何らか新しいことはというお尋ねがございました。  刻々状況の変化する中でペルー政府とは常時連絡を保ち続けておりますが、特に今、御報告を申し上げる問題はございません。  また、ナホトカ号重油流出事故につきまして、事故発生後直ちに人命救助を行うと同時に、真冬の日本海の荒天下の中、タンカーからの流出油の監視・防除あるいは漂流している船首の沖合曳航などの作業に海上保安庁を中心に全力を挙げて取り組んでまいりました。しかし、結果として船首部の曳航は成功いたしませんでしたし、また、流出油の一部が沿岸に漂着し事態が拡大していることは非常に残念であります。事態状況を踏まえてもう少し早く関係閣僚会議を開催するとか、政府対応に反省すべき点があったことは率直に認めなければなりません。  この事態の重大さにかんがみて、被害状況の把握、環境に与える影響の調査、賠償問題などの被害対策、さらに事故原因の究明や老朽タンカー対策などの再発防止策につきましても、内閣を挙げて全力で取り組んでまいりたいと考えております。殊に、漁業関係者方々への被害復旧対策につきましては、被害漁業者に対する金融の円滑な実施の対策を講じたところであり、さらに漁業被害の状況を踏まえて適切に対処していきたいと考えております。  なお、ロシア側に対しては、事故発生直後から、油汚染の防除、原因の究明、補償の確約、再発防止などに関し累次の申し入れを実施してまいりましたが、今後ともロシア側に対する働きかけを行ってまいる所存でございます。  また、六つ改革について、その目標、私の決意、そうしたお尋ねがございました。  私が目指す社会、それは国民一人一人が将来に自分の夢や目標を抱き、創造性、チャレンジ精神を存分に発揮できる社会、世界人々と共通に分かち合える価値をつくり出すことのできる社会であります。  戦後の五十年間、我が国は豊かな国民生活を手に入れる、これを目標としてまいりました。そして、行政のシステムも民間活動に対する規制も、社会保障や福祉の仕組みも、教育行政あるいは国と地方自治体との関係なども、その目的に沿った形でつくられ、長い間総じて効率的に機能してまいりました。それゆえにこそ、これらのシステム日本社会そのものに深く根をおろしております。しかし、これを変えなければこれから先の我々はありません。現在の仕組みが、人も物も資金もあるいは情報も自由に移動する世界にありまして、かえって我が国の活力を阻害している、活力のある発展を妨げていることは明らかでありますし、世界の潮流を先取りできる経済社会システムを一日も早く創造しなければなりません。  社会に深く根をおろした仕組み、これを変えることは、当然のことながら大きな痛みを伴います。そして、困難を生じます。しかも、それらのシステムが密接に絡み合っております。私が、行政、財政、そして社会保障、経済、金融システム、教育、この六つ改革一体的に断行をお願いしており訴えておりますのはまさにこのためでありまして、すべての国民の熱意と創造力を結集させていただきながら、何としてもこれをやり遂げなければなりません。  次に、公務員倫理法の必要性につきまして御指摘がございました。  昨年十二月の事務次官等会議の申し合わせに基づいて各省庁が制定いたしました公務員倫理規程は、具体的禁止事項の明定、実効を担保するチェック体制の整備、違反行為への処分等を含むものでありまして、綱紀粛正策として実効の上がるものとなっておると考えております。今後、その厳格な運用、遵守によりまして綱紀粛正を徹底し、国民信頼を回復するよう努力してまいりたいと考えております。  次に、国会の行政に対する監視機能の強化についてお話がございました。  私は、参議院が時代の変化に対応した行政の監査のあり方をテーマにして調査会を設置され、精力的に御議論をしておられることに対して敬意を表します。  私は、国会が行政監視機能を強化される観点から、憲法の諸規定を踏まえて活動されることは大切でありますし、そのあり方というものは国会で御判断されるべきものだと、そのように申し上げてまいりました。今後ともに、さらなる御活動をされる中から、より実りのある成果を上げられることを期待しております。  次に、政治家の倫理観についての御意見がありました。  まさに議員御指摘のとおり、国民の代表として我々は不断にみずからを戒め、常に襟を正していかなければならない、そのように思います。  次に、行政改革のポイントについての御指摘がありました。  御指摘のとおり、行政改革に当たりましては、国が果たすべき役割、機能というものを見きわめることが重要でありまして、規制緩和、官民の役割分担、地方分権の三つの観点から、一切の聖域を設けることなく行政のあり方を総点検することといたしております。  官民の役割分担の見直しは、行政改革会議におきましても重要な切り口の一つでありまして、官民の役割分担を思い切って見直してまいる所存であります。また、中央と地方の役割分担も大切なポイントであり、国は国が本来果たすべき役割を重点的に担っていく、地方公共団体は地域における行政の自主的かつ総合的な実施の役割を広く担うべきもの、私も同様に思います。  また、その中で、地方の自主性、自立性を高めるために、いわゆる地方分権、すなわち国から地方への権限委譲などを進めるとともに、補助金などの整理合理化、地方税財源の充実強化を図ってまいります。  また、地方分権の推進に応じて、地方公共団体の行政基盤を強化していただかなければなりません。徹底した行財政改革を地方公共団体にもお願いするとともに、市町村の自主的な合併や広域連合制度の活用などをより一層積極的に活用しながら、地方分権の時代にふさわしい行政体制の整備を図ってまいりたいと思います。  その際、国家公務員制度につきましては、議員が御指摘になりましたように、国民信頼をいかにして確保するか、行政の総合性をいかにして確保するか、また、公務の活性化、高齢化への対応などが重要な課題となっておりまして、政府もこれの全般的な見直しを行うことといたしております。  議員からは、配置転換計画、定年制の延長、再雇用等、見直す方向をお示しになりながら、行政改革に行政の協力を得ることの必要性を述べられました。こうした見直しを行いますについても、国政の最重要課題である行政改革を進めてまいりますために、各方面の理解協力を得ながら見直しを進めてまいりたいと考えております。  次に、参議院改革について御意見がございました。  私は、参議院が、我が国の二院制のもとにおける参議院のあり方に関する諸問題、そしてその改善策について、議員からの御発言でも御紹介がありましたように、幅広く検討を行われていることに心から敬意を表します。院におかれて今後一層の御論議がなされて、実りある成果を生むよう強く期待をいたしております。  また、国会議員の定数削減につきましては、先般の与党三党政策合意におきまして、「衆参選挙制度については議員定数の削減を前提にし、民意がよりよく国政に反映されるよう、早急に選挙制度見直しを開始する」とされております。各党各会派の十分な御論議を踏まえて対処してまいりたいと考えております。  次に、平成九年度予算についての御指摘をいただきました。  本予算は、医療保険制度改革を初めとする各般の制度改革の実現に努めながら、一般歳出の伸び率は一・五%と、九年度物価上昇率見通しを下回る実質伸びゼロの予算といたしております。その一方で、経済構造改革に資する創造的、基礎的研究の分野に重点的に配分するなど、限られた財政資金の重点的、効率的配分に努めてまいりました。  次に、財政構造改革会議についてお尋ねをいただきました。  私は、当初、財政再建会議という名称を用いておりましたが、この財政構造改革会議につきましては、我が国財政の危機的な状況を踏まえまして、昨年十二月に閣議決定をいたしました財政健全化目標の実現に向けて政府・与党が一体となって検討を行う場としてこれを設け、私自身その検討作業の先頭に立つことといたしたわけでございます。今後、この会議におきまして、さまざまな歳出の改革と縮減の具体的な方策について、諸外国の取り組みなども参考にしながら、あらゆる経費を対象にして一切の聖域を設けることなく御議論をいただきたいと考えております。  また、財政再建法につきましては、この会議でその骨格を決めて、できるだけ早い機会に法律案を国会にお諮りしたい、そういう運びを考えておりますが、その財政再建法の骨格を含めました歳出の改革と縮減の具体的方策の検討につきましては、平成十年度予算概算要求基準にも反映できるようなタイミングで取りまとめていただきたい、そのようにお願いを申し上げており、ぜひそうした御協力をいただきたいと考えております。  次に、国民負担率について御質問がございました。  産業構造審議会や経済審議会の試算によりますと、現状を放置いたしました場合、二〇二五年には国民負担率は五〇%を上回ることになる、さらに財政赤字を加えた潜在的な国民負担率は七〇%を上回る、こうした厳しい姿が予測をされております。  急速な高齢化の進展などに伴いまして国民負担率は相当程度今後上昇していかざるを得ないと見込まれますけれども、次の世代の負担考え、経済の発展、社会の活力を損なわないように極力その上昇を抑制する必要がございます。そのためには、経済構造改革財政構造改革社会保障構造改革などを早急にしかも一体的に実施していくことが不可欠であると考えておりまして、これらの改革全力を尽くしてまいりたいと考えております。  次に、この四月から消費税率の引き上げ及び地方消費税の導入が行われるわけでありますが、これは活力のある福祉社会を目指すという観点から、地方や福祉の充実のための財源を確保するためのものでございます。平成七年度から、所得税、個人住民税の恒久減税が既に先行して実施されております。これらは平成六年に一体のものとして決められているものであることをぜひ御理解をいただきたいと願っております。  すなわち、今回の税制改革は、所得税などの減税消費税引き上げなどを組み合わぜて全体として、働き盛りの勤労世代の負担を分かち合い、かつ歳出面の諸措置の安定的な確保に資する、そうした税制を実現するものでございます。  次に、日韓・日中関係等についてお尋ねがございました。  政府は、竹島及び尖閣諸島について一貫した立場を堅持いたしております。他方、竹島に関する日韓両国の立場の相違というものが両国関係を損なうべきではないとも考えておりまして、冷静に話し合いを積み重ねて努力してまいります。また、尖閣諸島をめぐる事態によって日中関係の健全な発展が損なわれないようにしたいと考えております。  北方領土問題につきましては、東京宣言に基づきこの問題を解決し、平和条約を締結するため粘り強く努力していく所存であります。  次に、ASEAN訪問につきましては、ASEANの訪問いたしました各国は、あるいはこのペルー日本大使公邸事件のために訪問が取りやめになるのではという思いを持っておられたようでありまして、訪問したこと自体をASEAN重視と受けとめていただいたことは大変幸いでございました。  そして、三十周年を迎えるASEAN、ことしがちょうど創立三十周年であります。それを機会尺経済面を中心とした交流だけではなく、それぞれの国々が独自の文化を、伝統をはぐくんできたこのASEANという地域に対し、文化面等を含めたより幅の広い交流を進めていきたい。また、このテロ等についてお互いが協力していく課題についても話し合いを行うことができました。多くの国際問題につき有益な意見交換ができたと考えております。  次に、有事の際の後方支援、危機管理体制の整備等につきましては、御指摘の例示で挙げられましたようなケースを踏まえ、我が国の周辺地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態発生する場合にどのような必要な対応策をとるか、現在、政府において鋭意検討を進めております。また、阪神・淡路大震災等の教訓を踏まえながら、緊急事態発生時における初動体制の強化を図ってまいりました。  しかし、いずれにいたしましても、危機管理体制の強化、これは内閣の最重要課題でありますし、今回のペルー事件あるいは重油流出事件等を通じて得た教訓も生かしながら、さらに官邸の機能強化を含めた適切な危機管理体制の整備に万全を期してまいりたいと考えております。  最後に、御激励をいただきましたが、私は、先ほど申し上げましたように、今あるシステムを変えていく、新しいシステムをつくる、これは大変なエネルギーを必要とすることだと思います。規制を撤廃すれば、その規制の傘のもとで保護されてきた事業者、これは競争の中にさらされることにもなりますし、利用者にもみずからの責任において商品やサービスを選択する目が求められます。こうした点からいきますと、この改革を進める、これは光の部分だけではなく影の部分、すなわち痛みを受ける部分というものを覚悟しなければなりません。しかし、それを乗り切らなければこの先がない、そうした思いで全力を尽くしてまいりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。  残余の質問については、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)    〔国務大臣三塚博君登壇拍手
  16. 三塚博

    国務大臣(三塚博君) 総理大臣から、私の申し上げることまできっちりと、哲学として、政策として開陳をいただきました。しかし、せっかく坂野先生の御指摘でございますから、簡明に申し上げさせていただきます。  基本的に、財政再建会議、有力なメンバーとして坂野議員も御参加をいただくわけでございますが、三党連立体制の中で、この国の財政が健全でなければならないという、世界的な常識になりました財政運営理論の中でこれに突入をするということであります。全般を見直しながら、橋本首相が言われました歳出の聖域なき見直し、平年度、九年度においてもそれは断行させていただきまして、全歳出がほぼ同じということであります。経済成長率二・五ありますから、大体それに一致する予算編成というのが行われるのでありますが、その点を公共事業ゼロシーリング、めり張りをつけてシェアも変えました。こういうことまで断行しながら、十年度の予算編成に当たりましては、従前の方式をやめまして、新しい財政再建なるほどと言われる体制をつくり上げていくための会議が設置をされたこと、どうぞその点において野党の方々も適切なひとつ御提言をいただきたいと思います。  議院内閣制でございますから、選挙を目指して公約を掲げて論争をするのは当然でありますが、生活と二十一世紀をにらんでの我が国の超高齢化社会、少子化社会を乗り越えるために論議をしてまいりますと共通の事項に行くんだろうと思いますから、深い、お国と国民を愛する至情の中で御論議を賜りますよう、よろしくお願いを申し上げます。  また、坂野議員から、納税の義務及び国際的な競争力の強化のための民活、いわゆるそのために政府として、法人税、地価税、有取税の見直し、これらについて総合的にどう考えるか、こういうことであります。  納税は義務でございますから、国税庁もその思想の普及に頑張られておるわけですし、国会もその役目を果たしておるところでありますから、期して待つことといたします。  それと、国際競争力の強化の見直しにつきましては、法人税は国際ベースに直すというのが今回の税制協議の基本でございましたが、財源を得ることが極めて至難、こういうことの中で、引き続き十年度見直しの中でやろうということであります。私も税担当の主管大臣として、競争力にふさわしい国際並みの法人税率でありますようにお願いを申し上げてまいるつもりでございます。  その他、地価税、さらに有取税等々については、全体の税制の論議の中で行われるものと理解をいたしておるところでございます。(拍手)    〔国務大臣池田行彦君登壇拍手
  17. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 坂野議員の私に対する御質問の第一は、日韓・日中関係にかかわる問題でございました。  総理からも御答弁ございましたように、竹島及び尖閣諸島の領有権については、我が国政府は従来から一貫した立場を堅持し、累次にわたりそれを明らかにしてまいりました。今後ともその立場を堅持してまいります。他方において、竹島に関する日韓両国の立場の相違あるいは尖閣諸島をめぐる事態によって、我が国韓国あるいは中国との友好協力関係が損なわれることのないように努めてまいりたいと思います。  次に、北方領土問題を解決し、平和条約を締結して日ロ関係を完全に正常化することは、我が国対ロ外交の基本であります。昨年十一月の外相間の定期協議におきましても、東京宣言に基づき両国関係を前進させることを改めて確認いたしました。今後とも、さまざまな分野での対話あるいは協力を進めると同時に、特に東京宣言に基づく北方領土問題の解決のため一層努力を傾けてまいる所存でございます。  三つ目に、ペルー大使公邸占拠事件に際しましては、事件発生直後に、外務省といたしまして緊急対策本部を設置し、また、同じ日のうちに橋本総理フジモリ大統領との間で電話でお話もしていただきました。さらに、十九日には私自身現地に入りまして、現地対策本部の立ち上げ、また、我が国の基本的な考え方をしっかりとペルー政府に伝達する、このように人質の安全を最優先して初動の対応に遺漏なきよう努めてきたつもりでございます。  今後におきましては、今回の経験も踏まえまして、邦人保護、特に即時機動的な対応につきまして万全を期すためにさらに努力を傾注してまいる所存でございます。(拍手)    〔国務大臣岡野裕君登壇拍手
  18. 岡野裕

    国務大臣(岡野裕君) 労働省がいただきましたお尋ねは、公共事業と雇用との関係、これについてだと存じます。  先生、もう御存じのとおりと存じますが、過疎法による過疎地域の指定というのがございます。労働省におきましても、雇用の確保、それの推進というような意味合いで、若者の諸君の雇用の場が少ない、どうも都市部に流出しがちである、こういうような地域について独自の指定をしているところでございます。そのような地域におきまして、事業主が事業所を新設あるいは改めて増設する、あるいは事業所の中で新たな施設をつくるというようなことによりまして雇用者がふえるといいますような場合には、雇用保険の資金を利用いたしまして支援をいたしているところでございます。先生のお地元でありますと、例えば東伯郡関金町あるいは八頭部智頭町等々であります。  そういうような意味合いで、当該地域に公共事業が執行されるというようなことにつきましては、雇用が増進されるという意味合いにおきまして、労働省といたしましても大きな関心を持って見守っているという次第でございます。  以上であります。(拍手)    〔国務大臣伊藤公介君登壇拍手
  19. 伊藤公介

    国務大臣(伊藤公介君) 次期全総計画の基本的な考え方について、どういう経過になっているかという御質問でございました。  先般、国土審議会の計画部会におきまして、新しい全国総合開発計画に関します計画部会の調査検討報告を取りまとめて公表したところでございます。  この部会報告では、二十一世紀の文明にふさわしい人と国土とのかかわりを「二十一世紀の国土の構想」として描かせていただきました。これまでの太平洋ベルト地域あるいは東京一極集中にしてまいりましたこの国土構造の流れを、複数の国土軸を持ちます多軸型の国土構造に明確に転換をしていく必要がある、こう位置づけております。  具体的には、農山漁村などの豊かな自然環境に恵まれました地域を、質の高い居住を実現する国土のフロンティアとして位置づけ、誇りの持てる美しい自然と文化を有する活力ある多自然居住地域の創造を推進するとしております。また、第二には、複数の地域がそれぞれの持つ資源あるいは魅力を相互に共有補完をして、多様性に富んだ国土をつくる地域連携軸の展開をしていく。最後に、すべての地域が世界に開かれ、東京などの大都市に依存をしない、いわゆる国際交流を可能にいたします複数の広域国際交流圏の形成などを掲げております。  ことしの夏前を目途にいたしまして、新しい全国総合開発計画の策定に向けて、本報告をもとに国民各層との意見交換をしつつ、引き続き検討を深めてまいりたいと思っております。  社会の変化、経済の仕組みの変化、あるいはまた人々生活様式が大きく変化をしておりますときに、国土政策も当然のことながらこの新しい変化に対応して、十分二十一世紀への魅力のある国土政策を展開していかなければならないと考えております。本院の皆さんの御協力もあわせてお願いを申し上げます。(拍手
  20. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  21. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 御異議ないと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時十二分散会      ——————————