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政府委員(原田
明夫君) ただいま
委員御
指摘のとおり、ただいま御審議賜っております入国
管理行政に係るさまざまな新しい施策の観点からいたしましても、事柄が特に
集団密航事件に関しまして、そこで行われる犯罪が、まさに御
指摘のとおり、
組織化し、そしていわば
ビジネス化しているという
状況が認められることは、そのとおりであろうと存ずるわけでございます。
ただいまお尋ねのとおり、法務大臣から法制審議会に諮問させていただきまして、
組織的に行われるさまざまな犯罪に対して有効に対処するための方策を御検討いただいております。それはまさしく、従来個人犯罪を
対象としておりました基本的な刑事司法のあり方の中で、やはり最近のさまざまな
状況を踏まえまして、事柄が
組織的に行われるといった場合に十分対処し得ない問題が
指摘されるに至りました。そういう観点で、鋭憲法制審議会の刑事法部会は検討を続けていただいておるのでございますが、ただいま御審議いただいております
集団密航事件に関しましても、幾つかの接点があるだろうと考えております。
中でも、先ほど
集団密航の中で、それを手引きするといいますか、むしろ
組織化してそれを
ビジネスとしている
集団がある、しかもそれは
蛇頭等、御
指摘のとおり、暴力的な
組織といいますか、暴力を背景としたいわば国際的な
組織を念頭に置かなければ
事案の真相が解明できないというような
状況もあるだろうと思います。そういう観点からいたしますと、
ビジネスとして、
組織として行われる犯罪に対して刑事司法が有効に対処する方策をやはり真剣に考えるべきときが来たというふうに考えているわけでございます。
中でも、現在審議していただいている中で二、三例を挙げて申し上げますれば、
一つは、犯罪によって得られた収益をきちんと没収するといいますか収奪するということで、利益をそのままにしておかないような体制、法制が必要なのではないだろうかという点でございます。これは一言で申し上げますと、犯罪をペイさせない。刑事的な
処罰でもって幾ら
処罰いたしましても、犯罪が刑を受けることによって済まないでその利益が蓄積されていくということになりますと、この犯罪を根源から絶つということはできません。そういう観点で、犯罪によって得られた利益を何らかの形で、さまざまな観点から検討して、そのままにしておかない法制を今後は考えていかなきゃならないだろうというのが
一つの考え方でございます。
それから、事柄が
組織的に行われる場合、実際に表面にあらわれる
事案の
関係者は実は末端の
組織の者であって、その
組織の根源でこれを操り、そして利益を得ている
組織的な体制があるということを考えてまいらなきやなりません。
そういうものに対しまして、刑事司法もその体制をさまざまな観点から検討していかなきゃならないのでございますが、その
一つのあり方として、この
集団密航事件などでも考えられますが、
組織的に行われる犯罪の端緒をどうして得ていくかという面、そしてそれを解明していくためには、例えば海外あるいはそういう
組織間で行われる通信を裁判官の令状によって傍受していくという観点も必要ではないかという声もございます。ただ、これにつきましては、通信傍受という点につきましては、さまざまな観点からの検討が必要ということで、まさに真剣な論議がこれから行われていくだろうというふうに考えております。
さらには、例えば、今回審議していただいている中で、証人に対する保護的な観点についても考慮しなければならないという点がございます。これは、犯罪が
組織化、しかも暴力
組織を背景にして行われるということになりますと、その
組織の解明のために裁判で証言していただく、あるいは法執行に
協力していただくという方の保護を図り、そして安んじて刑事司法に
協力していただくためにはどうしたらいいだろうかという観点からさまざまなことを考えていかなければなりません。
ただ、この問題につきましても、一方では、被告人の防御権あるいは弁護権との調和ということもございますので、十分審議した上で、そして国民の皆様方、また、そういう
組織犯罪を解明するために
協力していただいた方が不必要ないわば迫害といいますか、仕返しといいますか、そのようなことを心配しないでいいようにするにはどうしたらいいだろうかという観点も含めて御審議をいただいているという
状況でございます。
事柄が多岐にわたり
問題点が広範でございますので、なお若干の時間を要すると思いますが、審議を尽くしまして、そして可及的速やかに成案を得まして、それに基づき
法案の形につくり上げることを全力を挙げて取り組んでまいりたい、その上でぜひ国会において御審議を賜りたい、そのような
目的のために私
ども、法務大臣の指揮のもとに全力を挙げてただいま取り組んでいるところでございますので、よろしく御理解のほどを賜りたいと存じます。