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1997-02-20 第140回国会 参議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年二月二十日(木曜日)    午前十時開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         続  訓弘君     理 事                 岡部 三郎君                 久世 公堯君                 浜四津敏子君                 橋本  敦君     委 員                 遠藤  要君                 岡  利定君                 志村 哲良君                 下稲葉耕吉君                 中原  爽君                 服部三男雄君                 林田悠紀夫君                 山崎 順子君                 及川 一夫君                 照屋 寛徳君                 菅野 久光君                 千葉 景子君    国務大臣        法 務 大 臣  松浦  功君    政府委員        法務大臣官房長  頃安 健司君        法務大臣官房司        法法制調査部長  山崎  潮君        法務省民事局長  濱崎 恭生君        法務省刑事局長  原田 明夫君        法務省矯正局長  東條伸一郎君        法務省入国管理        局長       伊集院明夫君        公安調査庁長官  杉原 弘泰君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局総務局長   涌井 紀夫君        最高裁判所事務        総局人事局長   堀籠 幸男君        最高裁判所事務        総局家庭局長   木村  要君    事務局側        常任委員会専門        員        吉岡 恒男君    説明員        警察庁生活安全        局生活環境課生        活経済対策室長  園田 一裕君     —————————————    本日の会議に付した案件 ○法務及び司法行政等に関する調査  (法務行政基本方針に関する件) ○小委員会設置に関する件     —————————————
  2. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  法務及び司法行政等に関する調査議題とし、法務行政基本方針に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 久世公堯

    久世公堯君 先般、法務大臣から所信の御表明があったわけでございますが、私は法務行政全般につきまして、最近の社会経済的な情勢大変変化をしている、こういうものに対する法務行政あり方というような視点から何問かについて御質疑をしたいと思っております。  その前に一つ最高裁判所にお尋ねいたしたいことがございます。  十日ぐらい前でございましたか、中央紙一紙それから地方紙の方は十数紙に、最高裁判所判決につきまして、最高裁で現在争われているところの事実について、予測の記事といいますか、見出しを見ますと、最高裁違憲判断を示す公算が多い、あるいは最高裁違憲判決へと、こういう大見出し記事が出ていたわけでございます。しかも、ちょうど日曜日の中央紙におきましては一面トップ記事で、だれもが見るような形で大々的に報道されておりました。  また、地方紙の方は、共同通信の配信かもしれませんが、それぞれ地方紙として受けとめて、北海道から九州に至るまで十二紙にわたって報道がされていたわけでございます。私が見た限りでもこれだけでございますので、まだほかにはあるかもしれません。  その報道記事を見ておりますと、例えばこれまでの審理経過などから見てこうこうだとか、それから半数を超える裁判官がこういう見方を示すと思われるとか、あるいは大法廷審理ではこうこういうような見解が出されたというとか、これに対して合憲論も出たけれども違憲論が多数に上ったようだというような記事の書き方でございました。私は、判決内容が云々ではございません。事こういう大法廷法廷で争われているもの、まだ判決の日もわからないもの、こういうものが大きな新聞の一面のトップにおいて、あるいは地方紙の場合におきましては事細かに書かれている、内容が紹介されていることを見て、これは確たる情報に基づいた記事で、単なる憶測記事では到底考えられないような内容でございました。  これが、そうなりますと、関係者でなければ知り得ない内容じゃないかという判断がございます。そうなりますと、裁判所法の七十五条による裁判所評議秘密守秘義務に反するという疑いがあるのではないかと。もしそういう義務違反があった場合におきましては、一体その責任はどうなるかという問題がございます。また、このように審理が続いているにもかかわらず、判決の前にこのような記事が出ること自身が大変問題であり、かつ国民はこれを受けとめた場合において、司法というもの、司法独立性というものに対する国民信頼を失うものではなかろうかと。また、それによって裁判自身が誘導されるようなことがあれば、なおさら大きな問題ではなかろうかと思うわけでございます。  最高裁の方ではこれについて記者会見をされて、その結果きょうの朝刊には数紙にわたってそれが出ておりますが、それほど大きな記事ではございません。したがいまして、国民から見たときに、一面のトップを飾る記事、また地方紙では事細かに出た記事、こういうものについて、非常に裁判の公正とかあるいは国民信頼とかそういうものが失われると思うわけでございますが、最高裁見解をお聞きしたいと思います。
  4. 涌井紀夫

    最高裁判所長官代理者涌井紀夫君) 御指摘のありました朝日新聞とそれから共同通信が配信しました通信に基づく記事でございますが、御指摘のように、いずれも大法廷合議内容報道するという、そういう形の記事になっておりまして、これをお読みになる方からしますと、これは事件合議内容がいわば裁判所内部から漏れたのではないか、確かにそういうふうな疑念をお持ちになるのは当然のような記事になっております。また、こういう報道がされますと、実はこの事件はまだ今大法廷で現に審議中の事件でございますので、この報道自体がその審議の方向に何らかの影響を与えるんじゃないかという、そういうふうな疑念をも抱かせる。そういう意味で、裁判の公正に対する国民信頼を失わせるおそれがある。我々の側から言いまして、まことに遺憾な記事であったというふうに思っております。  実は、委員指摘のように、もし裁判所の部内からこの合議内容が漏れたということになりますとこれはゆゆしい事態でございますので、この記事が出ました直後から私どもの方では、この評議関係しております裁判官を含めまして、関係を持っております職員一人一人について慎重な調査を進めてまいりました。その調査の結果、幸い内部からそういう合議内容が漏れたという事実は認められませんでして、報道関係の方にもいろいろ事情をお聞きしますと、報道関係の方がおっしゃるのは、この記事はいわばいろんな学説、判例でありますとか、あるいは法曹関係者の幅広い取材に基づいて、いわば新聞記者が推測で書いた記事なんだ、記者の方が裁判所内部の者から合議秘密を漏らしてもらったというような事実は全くございませんという、そういう釈明があったわけでございます。  ただ、それにしましても、御指摘のようなこの記事自体裁判の公正に対する国民信頼を失わせるというそういうおそれを持った記事でございますので、私どもの方では昨日、事務総長がこの両社の責任者を呼びまして書面で厳重に抗議を申し入れました。  こういった記事があったからといいまして、裁判所としてはいささかも事件内容にそれが影響されることはないということはもちろんのことでございますが、今後とも中立、公正な裁判に向けて力を尽くしていきたい、かように考えております。
  5. 久世公堯

    久世公堯君 ただいまの最高裁の方の御答弁でございますが、やはり新聞記事内容からして、私もここに持っておりますけれども、おっしゃった朝日新聞の日曜の朝刊トップの大きな記事でございますし、特に一番国民が見やすいところの見出しには、最高裁違憲判決へとか違憲判決の見通しとか、そういうような記事が出ているわけです。  したがいまして、確かにきのう記者会見をされましたし、各新聞社は厳粛に受けとめると、ただ厳粛に受けとめるというだけですね。今また御答弁のありましたように、非常に厳重に注意したと言いますけれども国民が見るのは、きょうの小さい記事は恐らく見ない人の方が多いだろうと思います。したがいまして、あのような大きな記事が出ること自身先ほども申しましたように、国民から見て司法権独立、あるいは司法というものの公正、中立国民がそれに信頼をしている、それを裏切る結果になりかねないと思うわけでございます。加えて、先ほども申しましたように、それによって裁判そのものがこの記事に引きずられるようなことがあれば大変ゆゆしき問題だと思うわけでございます。  ですから、これは単に重く受けとめるとかいうよりも、本当に厳重注意どころではなくて、それを取り消せというぐらいのお気持ちでやってもらわなければ困るわけでございますが、重ねて御答弁をお願いしたいと思います。
  6. 涌井紀夫

    最高裁判所長官代理者涌井紀夫君) まさに委員指摘のとおりであろうかと思います。今回の記事というのは、裁判所にとってみましては大変に遺憾な記事であったと思っております。  まず、事実関係内部で明らかにしただけで済む問題でないということは委員指摘のとおりでございまして、やはり国民の皆さんにこの調査の結果を明らかにしまして裁判所に対する信頼を回復していただかないといけませんので、そういう趣旨で昨日、事務総長記者会見を開きまして、事実関係を説明し、また報道二社に対して厳重に抗議をしたということも声明文の形で公表させていただいたわけでございます。  さらに、実はこの事件に関しましては、事件の当事者の側からも事実関係を問い合わせる上申書が出ておりますので、それに対しても今申し上げましたような事実調査の結果をお答えいたしまして、裁判所の方で、内部でそういう合議秘密を漏らすような事実はなかったんだということを御理解いただきたいというふうに考えております。
  7. 久世公堯

    久世公堯君 私は、事件内容、事案の内容自身を言っているわけではなくて、民事であれ刑事であれ、そういう事最高裁判所の大法廷というものが、判決の期日もまだ定まらないときに、このような予断を与えるような記事が出ること自身が問題である。それがまた、皆様方司法権独立なり司法というものに対する国民信頼を裏切るような形になる。それを申し上げているわけでございまして、ひとつ今後とも厳重に御注意を願いたいと思います。  それでは、先ほど申し上げました最近の社会経済情勢が非常に大きく変革をしているのに対して、法務行政全般について幾つかの点をお尋ね申し上げたいと思います。  最近におきましては、暴力団等による薬物なり銃器、そういうものの取引組織の縄張りをめぐる各種犯罪、あるいはオウム真理教事件のような大規模組織的な形態による凶悪重大事犯、あるいはまた会社などの法人組織を利用した詐欺商法というような大型経済犯罪というような組織的な犯罪というものが多発をいたしております。このことが我が国の平穏な市民生活を脅かしますとともに、健全な社会経済維持なり発展悪影響を及ぼしかねない、こう思うわけでございます。この問題は国際的にも非常に問題になっておる、サミットにおきましても取り上げられておる、このように承っておるわけでございます。  ただ、現在の我が国刑法なりあるいは刑事訴訟法というものは、私、必ずしも組織犯罪に対して十分対応していないんじゃなかろうかと。そこで、国際的な立法例等も含めて、この組織犯というものに対して刑事法あるいは刑事手続法というものを整備する必要があると思われるわけでございますが、それについての御所見を承りたいと思います。
  8. 松浦功

    国務大臣松浦功君) ただいまお話がございましたように、近年、暴力団等による各種犯罪オウム真理教事件のような凶悪な犯罪詐欺商法等大型経済事犯など、とても今までには考えられなかったような大変大きな影響力のある各種犯罪が多発しており、我が国の平穏な市民生活を脅かすことになっております。そのため、健全な社会あるいは経済維持発展悪影響を非常に及ぼしておるということもそのとおりだと私も思っております。  こうした組織的な犯罪に適切に対応するためには、現在の刑事法では必ずしも十分とは言えない面があるのではないかと思いまして、法制審議会に対してどうしたらいいかということについて諮問をいたし、御答申をいただくように今検討していただいている最中でございます。できるだけ早く答申をいただいて、それにのっとって皆様方の御意見を賜り、そして新しい立法を目指して国会法案を提出すべく努力をいたしたい、こんな気持ちでおります。
  9. 久世公堯

    久世公堯君 この組織犯罪というものに関する法制整備については、もう既に法制審議会結論も得られて、そして立法段階にまで、やがて御提案にまで行くんだろうと思いますので、それはぜひともこういう事態に対処し得るよう立派な法制というものを御検討賜りたいと思うわけでございます。  こういう組織犯罪に対する法制にも関連いたしまして、先般、公安審査委員会におきまして破防法の適用についての結論が出たわけでございますが、既に衆議院の予算委員会等においてもいろいろ論議が行われておりますけれども、これについて大臣の御所見を承りたいと思います。また同時に、公安調査庁というもののあり方についても御所見があれば承りたいと思います。
  10. 松浦功

    国務大臣松浦功君) このたびのオウム真理教に対する一連の規制請求手続は、同教団に対して自制を促し、さらに破産手続等を進める上において教団に一定の協力的姿勢をもたらすなど、破防法による抑制効果が働いたと言えると思います。そして、それが公共の安全の確保に寄与した、そういう結果ももたらしておるのではないかというふうに考えております。  破防法あり方については、今回の規制請求手続を進める上で発生した諸問題や今回の公安審査委員会決定書内容等について十分検討を加えました上で適切に対処してまいりたい、このように考えております。  公安調査庁あり方の問題でございますが、これは規制請求の棄却に対する内容等を拝見いたしますと、非常に公安調査庁請求効果があったということ、さらには厳重に今後のオウム真理教に対する調査を続けて過ちのないようにしろという御説示もいただいておるわけでございますので、公安調査庁もそういうつもりで一生懸命これから努めてまいりたいと思っております。
  11. 久世公堯

    久世公堯君 ありがとうございました。今の大臣の御所見のように私どもも期待をいたしておるわけでございます。  そこで、先ほど刑事法制についての御答弁をいただいたわけでございますが、今度は民事刑事ともに承りたいんです。  まず民事関係基本法、最近は企業活動が非常に国際化をいたしておりますし、また情報化社会の中において各企業対応しているわけでございまして、そういうような国際化とか情報化社会経済情勢進展に伴いまして民事基本法、特に商法だろうと思いますが、時代に即応した法制度というものを法務省としてはここ十数年来どのように整備してこられたか、またこれからどう整備されようとされておられるのか。商法改正についてはこの国会提案をされるとのことでございますので、これはまたそのときの問題にいたしまして、民事基本法一般についての過去それから将来、これについて御答弁を願いたいと思います。
  12. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 具体的な立法経過を含むものでございますので事務当局からお答えさせていただきますが、民事基本法、これを社会経済情勢に適切に対応できるように必要な法改正を行うことについての御指摘でございますが、大変重要なことであるというふうに認識しております。  そういった観点から最近の民事基本法に関する立法経過を申し上げますと、例えば商法につきましては平成二年、平成五年、平成六年にそれぞれその時々の要請に応じた改正を実現しておりますし、また平成八年、昨年はテンポの速くなった現在の社会情勢民事裁判手続の規律を適合させる、こういう観点から民事訴訟法案を提出させていただいて成立させていただいたところでございます。  現在、ただいま委員から御指摘がございましたように、会社合併手続簡易合理化を図るという見地から商法改正に関する法律案をこの国会に提出して御審議をいただきたいと考えておるところでございますが、なお現在検討中の事項といたしましては、例えば高齢化社会にふさわしい成年後見制度あり方、あるいは経済活性化に資するための債権譲渡法制等について検討を進めておりますし、いわゆる倒産事件国際化といったことへの対応も念頭に置いた倒産法制全般の見直しという検討にも着手しているところでございます。  なお、時代進展に応じた対応のためには、基本法だけではなくてその周辺の民事特別法の分野におきましても、平成三年に借地借家法、新しい法律を制定いたしましたし、平成五年には商法特例法改正平成六年には、これは当省だけではございませんけれども製造物責任法の制定などを行ってきたところでございます。  今後とも時代変化はますます激しくなるわけでございますので、そういった要請も一段と強まってくると思います。今後一層社会経済情勢に即した法制度整備検討を進めていきたい、かように考えております。
  13. 久世公堯

    久世公堯君 民事法制、特に民事基本法的なものについてなお細かい問題でお尋ねしたいこともございますが、きょうはひとつ総論の段階でとどめさせていただきたいと思います。  同時に、この民事関係法制国際化情報化の中においていろいろと整備をされ、またこれからも整備していこうという時代のようでございますが、今度は刑事関係においてもいろんなことが予測されると思います。例えば経済取引をめぐる環境が大きく変化をいたしておりますし、今申し上げました高度情報化というものがいろいろと発展をするのだろうと思います。それに伴いまして、やはり刑事法制の方もいろいろ考えなければいけない面があるだろうと思います。  そこで法務省とされては、この刑事関係法制についてどのように整備されてきたのか、特にこれからこういう事態対応して国際的な視点も眺めてどうこの整備をされていくのか、御答弁をお願いしたいと思います。
  14. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 事務当局からお答え申し上げたいと存じます。  委員指摘のとおり、最近の状況を見まして、経済取引をめぐる諸情勢変化また犯罪の実情に適合いたしました刑事法制あり方実体法及び手続法の両面から真剣に検討しなけりゃならない状態に立ち至ってまいっていると存じております。  法務省といたしましては、まず実体法の面では、刑法の中に昭和六十二年にコンピューター関係犯罪ということで、当委員会でも大変御腐心いただいて立法していただきました。これにつきまして、現在のいわゆるコンピューターと申しますか、ハイテクを利用した犯罪に対する実態的な面では相当程度進んだのでございます。  しかし、現在はこれよりさらに進んでまいりまして、世界的なネットワーク化のもとに最新の技術を駆使したさまざまな取引、そこにさまざまな違法なことが行われているということが報ぜられ、また私ども認識を深めている状況でございます。そして、まさに委員指摘のとおり、そういうものが単なる個人の犯罪ということではなくて、非常に大きな力を持った団体の組織力を使った犯罪という形態もとりつつあります。したがいまして、そこへ出てきます被害、また社会全体に与える影響、また国民皆様方の不安あるいは御心配というものも大変大きなものになりつつあるように思うわけでございます。  そのようなことから、法人などの組織を利用いたしました大規模経済犯罪等組織犯罪に的確に対処いたしますとともに、犯罪によって得られた収益をそのままにしておきますと、犯罪がまさにペイすると申しますか、犯罪によってまさにそのことが法執行から逃れて、仮に法執行が行われたとしてもそれ以上の利益が犯罪によって上がるという事態を放置することが大変な事態を生むというふうに認識しておりますので、そのような事態に対処するための方策が緊要と考えております。現在そのような観点から法整備に向けた作業を鋭意行っているところでございます。  また、先ほど申し上げましたように、犯罪自体も大変ハイテクノロジー化してまいります。そうした犯罪に的確に対処するためのいわば規定を設けていくということが必要かと思います。その際、今後ともますます競争社会といいますか市場原理に基づきまして、一般的には国家の管理といいますか、いわば規制をできるだけ緩めてまいりましょうということが大きな流れにあろうかと思います。そうした中には、もちろん自己責任原則ということはあるわけでございますが、そういう事態を悪用した犯罪ということも出てくるわけで、そうしたものに対する刑法的な罰則のみならず、いわば形式犯的な罰則につきましても検討してまいらなきゃならないものと考えております。  それから、まさに御指摘のとおり、実体法的なもののみならず手続法関係でもこのことは検討してまいらなければなりません。客観的な証拠収集要請にこたえまして、まさにコンピューター等を使いました犯罪にも適切に対処するために今後とも種々の観点から新たな捜査手段というものを考えていく必要があるものと考えております。  特に、諸外国の例におきますと通信傍受ということが一つ議題に上がっております。先進諸国のほとんどの国がそういう手段を正式な形でとり得る状態になってきつつあります。犯罪国際化していく中で、そうしたものをいかなる形で導入したらいいのかということについても現在鋭意作業を進めているところでございます。  また、このような捜査手段充実等と調和した形で、全体的な視野に立ちながら、適正な手続を保障するという観点あるいは国民皆様方司法に対する信頼を確保していく等の観点からの手続整備していくということも当然検討していかなければならないだろうと考えているわけでございます。  そういうことで、刑事手続全般にわたりましても新しい時代要請にこたえた検討を鋭意これから続けていかなきゃならないときに来ていると思います。そういう点で、緊急を要するものからできるだけ早急に成案が得られるように関係当局また関係皆様方の御議論を踏まえて作業を進めさせていただきたいと思いますので、今後ともよろしく御指導いただきたいと存じます。
  15. 久世公堯

    久世公堯君 今、両局長から御答弁をいただいたわけでございますが、社会経済情勢が非常に変わっていくのに対応して法務行政をやっておられるわけでございますが、法務行政というのはやはり人による行政、特に検察官の方あるいは法務省自身がほとんどが人による行政でございます。また、最高裁判所の方もこれは裁判官という人が中心になるわけでございます。  そこで、最高裁及び法務省に対しまして、そういう見地から承りたいと思うわけでございますが、二十数年前でございましたが、私は大分県庁に勤務をいたしておりました。そのころ、初めのうちは地域開発とか企業誘致の仕事をやっておりまして、たまたまそのときに最高裁判所裁判官でいらっしゃった田中二郎先生が巡閲というんですか、裁判所の方でおいでになりました。田中判事の御希望によりまして、ひとつ大分県がどういうような課題に当面しているのか説明をしてもらいたいし、できれば現場を見たい、こういうようなお話が予告でございました。そこで、私が担当部長でございましたので、この当時の大分県の臨海工業地帯の開発、新産業都市の建設、それがだれでもが大分県民がみんな見にいく高台のところで、一望のうちに工業団地から全部が見れるところにお連れ申し上げまして、三十分近く御説明をいたしました。  そうしたら、私の説明を聞き終えられた田中裁判官は、今度は裁判所の方々に、このような地域開発をあなた方はどう感じ、どういうふうに評価をしているんですかという御質問をされました。そのときの裁判所長さん初め関係者の方は、こういうような答えをされたことを記憶しております。この高台に来て新産業都市を見たのもきょうが初めてだと、また大分県がこういうような開発をしているということは耳にはしたけれども、直接職務と関係がないから関心もないし特段の意見も持ち合わせておりませんと、こう答えられたわけでございます。  そのときに、田中裁判官裁判所の方々に優しくこのように言われました。確かに現在、事案として裁判所で問題になっているのは開発とかコンビナートとかそういうものではないかもしれない。しかし、裁判事件というものは国民生活のすべてにかかわる側面であり、世の中が日進月歩であり、また社会経済情勢発展をすれば法廷に上ってくる事案というのも違ってくるに違いない。だから、裁判官といえども事件を手にしてから勉強したり知識を得るのでは遅過ぎるのだ、世の中の流れにおくれないようによく世情を持って常識的な面に即して判断をしていかなければいけない、こういうことをおっしゃったことをいまだに記憶いたしております。  そのころの地域開発とかコンビナートどころじゃなくて、ここ十数年来の社会経済情勢発展というのは大変なものでございます。そういうのに本当に裁判所対応していかれるのかなと、疑問なしとはいたしません。  そこで、最高裁判所とされて裁判官の研修なり、しかもそれが司法修習というような研修であるとか裁判官としての法律の研修ではなくて、こういう社会経済情勢変化対応する裁判官というもののあり方についてどういうふうに取り組んでおられるのか、承りたいと思います。
  16. 堀籠幸男

    最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 私どもといたしましては、裁判官の資質の向上ということは、委員指摘のとおり、極めて重要なことであるというふうに考えております。  裁判官に対しましては、いろいろな角度から一般教養や専門的知識の習得及び法曹としての広い視野の育成を図っているわけでございますが、これに加えまして、研修目的で判事補を欧米の大学や裁判所に派遣したり民間企業に派遣するなどの研修体制をとっているところでございます。  今後とも、委員指摘のように、新しい時代要請にこたえられる司法体制の整備に努力していきたい、かように考えているところでございます。
  17. 久世公堯

    久世公堯君 どうも何かどこにでも書いてあるようなことを御答弁されたわけでございますが、我々だって最近のパソコンだとかインターネットとかそういうものについていかなきゃいけないという考えで政治家としても努めているわけでございますが、まして人を裁く立場の裁判官でいらっしゃいますから、どういうような国民要請なり事案が出てきたとしてもそれに十分対応できなければいけない。  また、日本の裁判というものは非常に遅いと言われているわけでございます。最近いろんな数字を聞きましても、多少改善されたようでございますが、なお非常に遅いというのが相場でございます。  一般的な教養を高め、また専門的な知識も研修されなければいけないわけでございますけれども裁判の遅延というものの解消も含めて、そういうところをもっとしっかりやっていただきたいと思うわけでございますが、重ねて御答弁をお願いいたします。
  18. 堀籠幸男

    最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 価値観の多様化、経済国際化社会経済構造の変化に伴いまして、裁判所に提起されてくる事件は質、量ともに増大してきているところでございます。こうした状況を踏まえまして、国民司法に対する期待に的確にこたえていくためには、裁判所としては、このところ毎年継続的に裁判官の増員をお願いしているところでございますが、この増員とともに裁判官の資質の向上ということは、委員指摘のとおり、極めて重要なことと考えております。  私どもといたしましては、裁判官の能力の向上のため従来から、任官後の節目節目に司法研修所において実務と理論の両面にわたる能力の向上、それから裁判官に求められるもろもろの知識の習得を目的とした一貫した合同の実務研究の機会を設けておりますが、適宜研究会を開催し、法律以外の問題に関して、例えば自然科学でありますとか医療問題でありますとか高齢化社会の問題、エネルギー問題、世界経済問題といった専門的な分野に関する知識の付与の機会を設けたりしております。これに加えまして、民間企業の研修として民間会社における研修を通じまして社会経済の実情を勉強する機会を設けたり、各庁において定期的に外部講師を招くなどいたしまして、関連諸科学の研究でありますとか裁判実務に有用な知識の吸収等の機会を設けているところでございます。  今後とも、委員指摘のように、経済社会の実態に対する認識を深めることができるよう努力してまいりたいと考えているところでございます。
  19. 久世公堯

    久世公堯君 社会経済の急激な変化に伴いまして、今度は検察官の方も大変忙しいようでございます。犯罪は多いし複雑困難化をしているために検察の業務が非常に繁忙をきわめているということで、平成八年度におきましても検事の増員が図られたわけでございます。その後も、やはり去年からことしにかけまして中央省庁の幹部級の汚職事件とかあるいは複雑困難化した経済事犯、こういう非常に国民社会的な不平等というものをあふっているような、助長しているような犯罪がふえている。あるいはまた銃器事犯とか暴力事犯とか薬物事犯とか、そういう治安の根幹を侵害しかねない犯罪が頻発しているわけでございます。  そこで、そういうものに対応して、やはり人による行政と申しますか、検察官というものをどう対応しどう増員されるのか、お考えを承りたいと思います。
  20. 松浦功

    国務大臣松浦功君) ただいま久世委員指摘のとおり、平成八年度においては三十五名の増員を得たわけでございますが、その後のいろいろ事情の変化、特に犯罪の複雑化、重大化、こういったものにかんがみまして、平成九年の予算折衝に当たりましては、大臣段階では一切人間に絞りまして三十四人の検察官の増員をお認めいただいたわけでございます。  今後も引き続いて、検察官の増員ということを考えて、検事制度がうまく回転していくように努めていかなければならないのではないか、こういうふうに考えております。
  21. 久世公堯

    久世公堯君 それでは、観点を変えまして民事局長にお尋ねをしたいと思っております。  それは、登録免許税、これはもちろん所管は大蔵省でございますが、不動産登記をやるに伴って登録免許税を支払う。しかも、私も法務委員会で視察をさせていただきましたときに、登記所と申しますか地方法務局の支局、支所でございますかを見に行きましたときに、非常にもう登記がたくさん行われている。登録免許税は、そこにカウンターがありまして、窓口があって、そこでもう横で払う。国民に対して、もうそれが一つ手続の中に行われている。税金を払うというような感じではないわけでございます。そして、その額はどうかと申しますと、非常に額が高いわけでございまして、これは率でいっても千分の六から千分の五十ぐらいまでいろんな段階があるそうでございます。  昔は、不動産を持っている、不動産取引をやるというのは、国民の中でもある程度限られた資産家でございますとかそういう財産関係に従事している人とか、そういう人に限られたろうと思うわけでございます。ところが、最近におきましては、若い人たちもひとつマイホームを建てようということで不動産を取得する、あるいは家を建てる、そういうことで登記をする機会というのが国民が非常にふえているわけでございます。  そこで、この登録免許税、固定資産税の評価額が根拠になっておりますけれども、非常に高いために、この間にいろんな人が入って、ひとつ余りにも高いからそれを免れる意味において中間省略の登記をやったり仮登記で済ませたり、あるいは取引をしたことにして実際はこうするとか、いろんないわゆる脱法行為が行われていると、こう私は聞いているわけでございます。  そこで、お尋ねをしたいのは、一体民事局長としてはこういう不動産登記制度というもの、これは私は日本の登記制度というのは世界に冠たるものだろうと思っております、過去においては。その不動産登記制度がぐらつくようなことがあれば、これまたゆゆしき問題でございます。登録免許税というものが高い、これについて一体どういう認識を持っておられるのか、またどうやってこういう登記制度の尊厳というものを維持しょうとしておられるのか。さらにまた、この登録免許税というものの問題点、特に最近における経済的な情勢変化に伴い国民が広く不動産登記をやるということについての問題点について、この登録免許税というものについてどのように対処しておられるのか。大蔵省が主管のことはよくわかっておりますけれども、しかし一番関係のあるのは法務省でいらっしゃいますから、そのあたりのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  22. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) ただいま委員からも御指摘がございましたように、登録免許税は、税ということでありますが、しかし不動産に関して登記をする際に当事者が負担するものでございますので、不動産登記が実態に即して正しく行われるかどうかという観点から重要なかかわりを持つものであるというふうに思っておりまして、不動産登記を所管する立場において重大な関心を持っていかなければならない問題であるというふうに認識しております。  この問題につきましては、久世委員にはかねてから大変御熱心に御関心をお持ちいただき、御指導をいただいているところでございます。  ただいま委員の方から、登録免許税が社会の実態に即して高過ぎるということから、いろんな脱法行為が行われているのではないかという御指摘がございました。私どもも、今委員指摘されましたように、そういう事例があるのではないかという御指摘は承っているところでございます。  登録免許税の税率というのが、有償取得、無償取得、相続等で税率が異なっているということ、あるいは仮登記というものについての税率は極めて安い、そういう差があるというところから違った形で登記がされているのではないか、そういうことが行われているという指摘があることは承知しております。ただ、その実態がどうであるかということは、これは登記の外形からだけでは把握できないことでございますので、どの程度そういうことが行われているのかということの把握はなかなか困難でございますけれども、今後可能な限りその実態の把握に努めていかなければならないというふうに思っております。  現在の登録免許税のあり方というものにつきましては、今御指摘のような観点を踏まえまして、私どもといたしましても制度全般について検討をしていきたいと考えております。  具体的には、不動産登記制度の適正な維持と登録免許税の公平な負担という観点から、不動産登記制度の運用実態を改めて見直しまして、これを踏まえて、今の登記の種類ごとの税率のあり方経済の実態に応じた定額税率の部分のあり方などについて、民事局としての検討をしてまいりたいと考えております。そういう検討の結果、具体的な方向を得たものについては、これは大蔵当局の問題でございますので、税制改正の要望をしてまいりたい、このように考えております。今後ともよろしく御指導いただきたいというふうに思います。
  23. 久世公堯

    久世公堯君 重ねて民事局長に承りたいと思います。  今、この登録免許税のあり方について検討をしていると、こうおっしゃったわけでございますが、やはり建設省なんかとは最も関係が深いだろうと思います。登録免許税、ほとんどの省庁にまたがることでございますが、なかんずく法務省が一番大きな関連がありますし、しかもこれは国民が非常に大きな負担をするわけでございますから、登録免許税というものの本質をどう考えるのか、これはもちろん大蔵省が考えることですが、それについてはやはり皆様方の方からこういうふうに国民が困っているのだという意見は言わなければいけないわけでございます。  一体、具体的に研究会でもつくっておられるのか、あるいは各省とはどういう折衝をしておられるのか、また大蔵省にはどういう働きかけをしているのか、特に最近の登記件数から見て、あるいは登記はどのような世代にわたって行われておるのか、そういうところをどのように過去において努力されたのか、今後どうしようと思われるのか、重ねて承りたいと思います。
  24. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) この問題はかねてから御指摘をいただいているところでございまして、これまで登記をする当事者を登記手続の面で代理する立場にある司法書士、その団体である日本司法書士会連合会、そういったところとの連絡を密にし、またそして司法書士会においては研究会を設けてその研究をしてこられたわけですが、そういう研究会への関与ということもしてまいったわけであります。  それから、ただいま建設省についての御指摘がございましたけれども、御指摘のとおり、建物の建築ということに絡む問題でございますので、建設省とも事務的な関係におきましては何回か連絡をとりながら相談をしてまいってきたところでございます。  今後どういう取り組みをするかということでございますが、先ほど申しましたように、幅広い見地から法務省としての立場において検討しなければならないと思っておりますが、やはりこの検討をするにつきましては、問題の重要性にかんがみまして、先ほど来御指摘がありましたようなことを含めた登記の実態の調査、それから問題事例についての情報の収集、そういったものの分析、そういうものを尽くしながら税率のあり方ということを考えていく必要があると思っておりますので、今後そういったことに真剣に取り組んで、できるものから具体的な結論を得て大蔵当局にお願いをしていきたい、こういうふうに考えているところであります。
  25. 久世公堯

    久世公堯君 私ども法務委員会は、先般、東京拘置所とそれから東京入管局を視察させていただきました。私は遅刻していって少し早く帰りましたので、十分意見を聞き、また視察をさせていただいたわけではございませんけれども、私が見た限りにおきましても、この東京拘置所の建物、大変古くて老朽化しておりますし、問題が大きいかと思いました。幸い、平成九年度は公共事業の重点化枠の方から改築費が出ることになったわけでございますので、これはよかったなとみんな委員は共通して思ったわけでございますが、なお全国的に見ますと緊急に整備を要する矯正施設というのがかなりあると承っております。  ちょっと時間がございませんので、本当はこのあたりもお聞きしたいわけでございますが、この緊急整備を要するものの整備充実というものをぜひとも急いでいただきたいと思いますし、また私どもが視察をさせていただいた矯正施設の領置というようなシステムについても、これはなかなか問題である。また、やっておられる職員の方には大変な御苦労をかけておられる。そういうことをひとしく我々は痛感をしたわけでございます。ぜひともこういうところで勤務をしておられますところの矯正局関係の方々の一層の御奮起をお願いしますとともに、やはり改革すべきことは改革をぜひしていただきたい、こういう気持ちを持った次第でございます。  また、東京入管局の方も、まさに社会経済的な発展と申しますか、国際化の波に従って大変な多忙をきわめておられる現場をありありと見せていただきました。大手町という便利な場所にはおいでになりましたけれども、しかしそれこそアジアを中心とする多国籍の方々がそこに来られる。言葉も全く多くの言葉だし、また目的もそれぞれ異なる、それを親切にうまく仕分けながら系統的にやっておられる、こういうお姿を見まして私どもも敬意を表した次第でございます。これからそういうような要員を確保していかなければいけない、またそういう対外的な問題もありますし、語学もありますから研修を積まれなければいけない、体制の整備の必要性というものを痛感させていただいたわけでございます。  これにつきましてはもう少しお尋ねしたいわけでございますが、いずれも最近の時代要請に従って大変整備が必要とされる分野だということを痛感いたしましたことを一言申し上げまして、質問は省略をさせていただきたいと思います。  さて、最後に法務大臣にお尋ねをしたいと思いますが、橋本内閣は一言で言って行革内閣である、総理は火だるまになってもこの行革というものを早急に実現をしなければいけないということを言っておられるわけでございます。  私は、先般の質疑のときにも法務大臣に対して、総理は組閣をされるや否や法務大臣、大蔵大臣、通産大臣なんかを特にお呼びになりましてじきじきに御指示をされたということを御答弁賜ったわけでございますが、今、橋本内閣の閣僚の方々はもう行革というものが絶えず念頭を去らないというのが実態だろうと思います。ひとつ、法務大臣とされましては、法務省所管行政でどのように行革というものに取り組む御決意であるのか、あるいは閣僚としてこの行革全般についてどのようにお感じになっておられるのか、最後にこの御答弁を承りまして私の質疑を終えたいと思います。
  26. 松浦功

    国務大臣松浦功君) 御指摘をいただきましたように、行政改革の推進につきましては当面取り組むべき議題、方針を定めた行政改革プログラムというものが昨年の十二月二十五日に閣議決定されたところでありますが、当省におきましてもこの方針に全面的に従うという趣旨でこれまでも努力をしてまいってきておるところでございます。  しかし、久世議員よく御承知のように、法務省の中には行政改革になじむ問題が必ずしも他省のようには多くないということも事実でございますが、規制緩和、こういう問題を中心に全面的に御協力を申し上げていかなければならないのではなかろうか、こんなふうに考えておるところでございます。今後も最大限、そういう方針で局長を指揮監督して努力をしてまいりたい、こう思っております。
  27. 久世公堯

    久世公堯君 本日は、時間も制限されておりましたが、私は、社会経済情勢変化に伴う法務行政あり方ということに絞って、こういう見地から刑事局、民事局あるいは各局、最高裁判所に御見解を承りましたし、また大臣にはその基本のところ、また最後には今行革に取り組む姿勢について承ったわけでございます。  ありがとうございました。
  28. 山崎順子

    山崎順子君 平成会の山崎順子です。  本日は、民法改正案について質問させていただきたいと思っております。  御存じのとおり、昨年、一九九六年二月に法制審議会は、選択的夫婦別姓制度導入や五年別居による離婚成立、また非嫡出子の相続分差別を撤廃すること等を内容とする民法の一部を改正する法律案要綱を答申いたしました。この答申に基づいた民法改正案がいまだ国会に上程されておりません。  まず、これら民法改正案要綱が出された理由、背景について御説明いただけますでしょうか。
  29. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 御指摘のとおり、法制審議会におきましては平成三年から婚姻制度等の見直しについて検討を始めまして、昨年二月答申をしたわけでございますが、この検討に着手するに至った、あるいは検討を進めた背景ということについて申し上げます。  一つは、女性の地位向上に向けての政府の方針というものがございました。御案内のとおり、国連は昭和五十年の国際婦人年、それに続く国連婦人の十年ということを契機といたしまして、加盟国が女性の地位向上のための施策を積極的に企画推進していくということを提唱しておりまして、我が国におきましてもこれを受けまして、男女平等の観点からのさまざまな施策の一環として婚姻制度等を中心とする家族法制の見直しということが求められるようになった経過がございます。  具体的には、平成三年に総理府の婦人問題企画推進本部、現在は男女共同参画推進本部と改称しておりますが、その本部が策定した「西暦二〇〇〇年に向けての新国内行動計画」(第一次改定)におきまして、男女平等等の見地から夫婦の氏のあり方等を含めた婚姻・離婚法制の見直しを行うということを平成七年度までの政府の具体的施策の一つとして取り上げるということにされた経過がございます。  二つ目は、家族をめぐる状況変化ということでございます。現行の婚姻制度、婚姻法制は、昭和二十二年の戦後の民法の改正以来ほとんど実質的改正がされていないわけでございますが、この間に人口の都市集中や核家族化、少子化、そういったことの進行等家族をめぐる状況が大きく変化していることから、現行の制度が現在の家族のあり方に十分対応できるものであるかどうかということについて再検討する必要があるのではないかという問題がございます。  それから三つ目として、選択的夫婦別氏制度の問題につきましては、女性の社会進出等に伴いまして、婚姻によって氏を改めるということに伴う不利益等を解消するために、別氏制度を選択できるという制度の導入を求める声が時とともに次第に強くなってきておりまして、既に昭和五十年代から数度にわたって総理府でもこの問題を取り上げて世論調査が行われてきたという状況がございました。  こういった状況を踏まえて、法制審議会検討が開始され、答申がされた、このように承知いたしております。
  30. 山崎順子

    山崎順子君 今、民事局長が御説明くださいましたように、今回の改正法案要綱が答申された背景には、先進国の法制影響や、また国内的には両性平等の社会的定着、さらにはその推進という法的、社会要請が働いていたものと考えられます。だからこそ、五年余も慎重な審議をし、その間、中間報告等を二度にわたって発表なさったり、各界に意見照会もなさり、家族法ホットラインという国民の生の声を聞き取る作業もしておられ、そして昨年二月に法律案要綱がまとめられたと承知しております。  それなのに、なぜ前通常国会に上程されなかったのか。私は昨年十一月に、就任なされたばかりの松浦法務大臣に、決算委員会でございましたけれども、ぜひ次期通常国会、というのはことしのこの今やっている国会でございますけれども、ここに上程していただきたい、その尽力をいただきたいと要望させていただいたのですが、今国会に上程できるようまた努力していただけるのか、もう一度ちょっと法務大臣にお聞きしたいんですが、いかがでございましょうか。
  31. 松浦功

    国務大臣松浦功君) ただいまの問題は、民法改正の中での夫婦別姓の問題、さらには非嫡出子の遺留分の問題等、非常に大きな問題が幾つか入っております。そういう意味で、今回先生から御指摘をいただいておる民法改正の問題は極めて国民生活に密接なかかわりを有する重要な問題でございますので、これは国民の皆様の大多数の御賛同をいただいて気持ちよく改めておかないと、やってしまったけれどもまずかったからもう一回もとへ戻そうなどといったぐいの改正問題であるとは考えておりません。  しかも、この問題については国民の間に非常に大きな意見の相違がございまして、必ずしも一致をいたさない状況があります。さらに国民の皆様の理解を十分いただいた上、そういう状況をつくり出すことによって法案国会に提出できるようにすることが最も適当だろうと思って、現在そういった観点から国民の間で行われておる議論を見守っている最中でございます。そういう答弁でお許しをいただきたいと思います。
  32. 山崎順子

    山崎順子君 私が先ほど言いました昨年の決算委員会では、ちょうどその直前に総理府が世論調査をやっておりまして、その結果を受けて選択的夫婦別姓制度の導入については、大臣は、世論調査の結果は余り法改正を急がない方がいいと我々に教えているのではないかというふうに、そのようなことをおっしゃいまして、今と同じように、重要な問題だから国民の多数の意見を聞いて、そして気持ちよくやっていきたい、慎重に取り扱っていきたいとおっしゃいました。  そこで、実は昨年の二月の法制審議会からの答申を受けたばかりのときの長尾立子前法務大臣にも私、質問をさせていただいたのをちょっと御紹介させていただきます。そのときの大臣答弁が、   今回、法制審議会から夫婦別姓の答申をいた  だきまして、きのう私は審議会の総会に出席を  させていただきました。非常に記念すべき日に  法務大臣をやらせていただいていて私は大変幸  せだとそのときに思ったわけでございますが、  ある意味では日本のこういった民法の歴史の中  でも画期的な一時期を今迎えているんではない  かという気がいたしております。その後ちょっと飛ばしますけれども、家族のきずなというもの、家族の一体感の確保というようなところでいろいろ反対意見のあることは知っていると。「しかし、」と前法務大臣が言っているんですね。  しかし、家族のきずなというのは決してそう  いった形式的なものだけではないという気もい  たすわけでございます。   これからの新しい時代というものを考えてみ  ますときに、今既にもう始まっているかと思い  ますが、やはり個人にとりまして多様な生き方  を選択する、そういうことを認めていく、こう  いう時代に私たちは入りつつあるのではないか  という気がいたしております。そして、  それを具体的に表現する方法としてはさまざま  な選択がそれぞれの方のお考えによってあり得  るのではないかという気がいたしているわけで  ございます。このように答弁してくださっているんです。  松浦法務大臣のお気持ちもよくわかるんですが、もちろんお立場もあると思いますが、私は少し前法務大臣との間に認識の違いがあるように思えるのですが、それは何かこの間に変化が、社会情勢として国民の意識として変化があったということなのでしょうか。
  33. 松浦功

    国務大臣松浦功君) 御指摘をいただきましたが、長尾前大臣のいろいろ述べられておられることに一々私はどうこうという批判をするつもりはございません。行政の継続性ということから考えて、できるだけそういった方向へ持っていくべきだと思っておりますけれども、これはいずれにいたしましても、提案を申し上げた国会皆様方に御承認をいただけるかいただけないかという問題、これが極めてこれからの重要な問題だと思います。  そういうことについての考え方に、長尾前大臣の御発言から私が就任いたします間に事情が大分変化をしているということは先生よく御承知のとおりだと思うのでございます。私は理想的に何事も考えて物事を進めるという立場よりは、現実的に物事が成り立っていくかどうかということを中心に物事の判断をしていくべきだと思っておりますので、そういう点から私の態度が長尾前大臣と違っているということについての御了承はいただけるのではないかと思います。
  34. 山崎順子

    山崎順子君 法制審議会というのは法務大臣の諮問機関だと思います。つまり、時代背景や人々の要望に対して法を改正する必要性を感じて審議会に検討なさるように命じられたのは法務大臣で、その法制審が答申したものを受けて法務省が民法改正案作成の準備を進めていたわけですね。この改正案の提出責任法務大臣は負っているんじゃないかと思います。それですのに、民法改正の機運にどうも水を差すような御発言ではないかなというふうに危惧している方々が多いと思うんですね。  それで今、大臣は、国会で承認していただけるかどうかが問題であって、その間に事情が変化しているとおっしゃいました。その事情が変化したことを委員である私も御存じだと思うというふうに今おっしゃいました。私は事情の変化といいますのは、例えば世論調査でございますけれども、昨年の十一月十六日に内閣総理大臣官房広報室が発表された「家族法に関する世論調査」の結果を見ますと、現在の夫婦同氏制度について、法律を改める必要はないと答えた人は三九・八%、法律を改めても構わないと答えた人が三二・五%、つまり別氏制にしてもいいということですね、選択できるようにしても、それからもう一つは、通称として使えるように法律を改めても構わないと答えた人が二二・五%だったんです。ということは、別姓使用を可能とするために法改正をしてもよいとする人の合計を五五%と考えていいと思うんです。これは、その二年前の九四年の世論調査に比べて二倍以上なんですね。ということは、世論調査の総体としての評価は、法改正を容認する方の方が多くなったと、二年前よりも。  それで、世代別で見ますと、法改正の必要がないというのは六十代以上の男性に著しく多いんです。これから結婚して二人で本当に対等なパートナーシップを築いて、そして苦楽を分け合っていい家族を築いていきたいという方々、二十代、三十代の男女ですが、その人たちは、法律を改めても構わないが四五%、通称として使えるように法律を改めてもいいを合わせますと八〇%近くになるという、四十代でもその法改正容認派は六〇%を超えているんですね。  このように、私は、事情が変化したのは認めますけれども、その事情の変化というのはさらに国会に上程して審議をしていただきたいというふうに変化しているのではないかと読めるんですが、違いますでしょうか。
  35. 松浦功

    国務大臣松浦功君) どうも今のお話には私は賛成できないんで、通称を使って云々というパーセンテージはむしろ改めない方がいいという方に加えるんじゃないか、私はそういうふうに理解しております。そこがもう全然違うわけでございます。そういうふうに先生と私との間で意見が分かれるようなことになっているときに、この問題をどういう形で提案するかということ自体に私は非常に、何と申しますか、逡巡をいたしておるわけでございます。  ですから、いつ出すかという問題のほかに、どういう内容で出すかということについてさえ私どもはいまだに結論を得ていないというのが実情であるということを申し上げておきたいと思います。
  36. 山崎順子

    山崎順子君 では、通称使用のところは今おいても、別氏制の選択制を導入してもいいという人は二年前の二七・四%よりも三二・五%とふえているということを確認させていただきたいと思います。  それからもう一つ内容に関して、私どもはどういうものを出していいか、それも今決定しかねているとおっしゃいましたけれども法制審でもうさんざん五年間、専門家やごく普通の人たちの意見も聞いて検討なさって両論併記の要綱案の試案も出されて、それでこれならば何とかというのを出されているわけですから、決定しかねている私どもというのは、どうも私は永田町の国会議員だけではないかなという気がするんです。  ところで、私は賛否両論があるということは当然のことだと思いますし、それはもう反対意見があって当たり前で、それを否定する気は一切ございません。  我が国では、もともと家族法の問題では常に新旧両思想の対立がありました。今回の改正でも、その性格上、強い賛成反対両論があるのは当然のことだと思っております。しかし、そういった重要な問題だからこそ五年もかけてまとまった案を国会に出さないというのでは国民への義務を果たさないことにならないか、そういうふうに私は思うわけですね。国会において、国民の目の届くところでちょうちょうはっしと賛成、反対論を闘わせて、実質的論議を展開すべきではないかと私は思っております。なぜそれができないのか。賛否両論を闘わせて修正すべき点は修正すればいいでしょうし、どうしても反対が多いんだったら改正は見送るということ、それでいいと思うんです。  私はまだ国会議員になって三年半です。ですから素人なのかもしれませんけれども国会の仕組み、立法の仕組みをよく御存じの局長または大臣にお願いなのですけれども、きょう傍聴席に民法改正を待ち望んでいらっしゃる方たちの代表として十人ほどの方々が来てくださっております。その方たちに、つまり国会の外にいらっしゃる国民の皆様にわかるように、一応法律国会に上程されるまでというのはどういう形なのか、上程されてから審議されてどうなるのか、法案成立の仕組みをちょっと簡単に御説明願えないでしょうか。
  37. 頃安健司

    政府委員(頃安健司君) どのようにお答えしたらおわかりいただけるか。  内閣提出の法案として法律を提出する場合は、議院内閣制でございますので与党内の手続がございます。与党の御了承を得た上で閣議決定を経て国会に提出するというのが現在の仕組みになっております。
  38. 山崎順子

    山崎順子君 実は、昭和五十二年の第八十一回国会から二十年後の去年の百三十九国会までの間、二十年間の、全部の法案を調べるのは大変なので一応参議院と衆議院の法務委員会に出された法案について調べてみたんですけれども、例えば参議院の法務委員会にその二十年間に閣法として、今説明いただいた内閣提出の法案として出されたものが百五十件ございます。そのうちの可決されたものが百三十九件、修正されたものが二件、それから未了という形で、その何回か後の国会で成立しているのが四件、継続になったのが五件あるんですね。  今おっしゃったとおり、閣法ですから閣議決定されなければ国会に上程されず、上程されなければ国会審議されないということになりますから、当然議院内閣制では与党の中で取りまとめということが必要になるんでしょうけれども、つまりそうやって与党内で取りまとめられた閣法が閣議決定されて出てくると、ほとんど修正がなく通ってしまう、否決されることもほとんどないというのが現状でございます。  これは、私たち国会議員は付託されて委員会で熱心に必死で審議しているつもりなんですけれども、結局、閣議決定される前に与党でいろいろ話し合われて、ほとんど通るということが決まったものしか出てこないということですね、言ってみれば。そうしますと、国会に上程されて審議をしても国会審議というのは何か形だけのもので、形だけの審議法案というのを成立させる場が国会なのかというふうに、そう国民から言われても反論もできないのではないかという気がするんです。  そうすると、国会審議とか国会議員の役割というのは一体何なのかというふうに思ってしまうわけです。とにかく私は、国会に上程されて、そしてそこで国民の目の届くところで賛成、反対を闘わせて、そして修正すべき点は修正し、先ほども申しましたが、否決されることになるならその方が国民の目に見えやすいのではないかというふうな気がしておりまして、ぜひとももう一度上程に努力していただきたいと考えているんです。  さて、改正案の中にはいろいろ問題点がございます。それについてきょうはお伺いしたいと思っております。  まず、今回の改正の最も重要な根幹と思える問題は夫婦別氏制の実現だと思います。といいますのは、我が国では氏というのはイコール家名というふうに考えられているような家の残影意識がまだ根強く生きていて、今回の夫婦別氏制、これは選択制ですけれども、それの導入は婚姻の近代化ひいては近代家族の形成、定着のためにも不可欠だと私は思うからです。  法には国民の意識を近代化の方向へ導くという大きな目的があって、そういう意味からもこの選択的夫婦別氏制の導入が今回法務省から出てきたことを高く私は評価しておりますけれども、中で、別氏を選んだ夫婦の子の氏について、なぜ婚姻時に決めるという案を採用されたのでしょうか。子供の出生時にその都度夫婦が協議して決め、兄弟姉妹間で氏が、姓が異なることも認めるという案もございましたけれども、今回、出生時にではなく婚姻時にとした理由をお聞かせ願えますでしょうか。
  39. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 委員御案内のとおり、御指摘のような考え方が法制審議会審議の過程ではあったわけでございまして、いわゆる中間試案、途中で公表いたしました試案の中では、そういう考え方も一つの選択肢として記載され、意見照会をしたという経緯がございます。  その中で、結局答申におきましては、別氏の夫婦の間に生まれた子供の氏については、夫婦が別氏制度で婚姻の届け出をする際にどちらにするかということを決めて届け出てもらう、その氏をもって子供の氏として統一するという考え方になったわけでございます。  どうしてそういうことになったかということは、法制審の審議経過の問題でございますが、概要を承知している範囲で申し上げますと、氏を統一するということによる家族の一体感の問題は、自分の意思で別氏を選択する成人である夫婦とみずからの意思で氏を選択しているわけではない子供とでは区別して考える必要があるのではないだろうか。選択的夫婦別氏制度を導入するからといって、別氏夫婦間の子の氏を統一する必要性が当然になくなるわけではない。子供が未成年の間は兄弟姉妹の氏を統一することによって家族としての一体感が醸成されると考えられるので、氏を統一することが子供の健全な育成の上で有益である、そういう考え方に基づいてその答申のような内容になったものと承知しております。  この問題につきましては、委員指摘平成八年の総理府による世論調査の結果におきましても、別氏夫婦間の子供の氏は統一すべきであるという意見が全体の七二・五%を占めているわけですし、選択的別氏制度の導入に賛成の立場からも過半数の意見がそういうことであったということもつけ加えて申し上げたいと存じます。
  40. 山崎順子

    山崎順子君 子供を欲しくても、望んでも産めない人もいらっしゃいますし、子供を産まないという選択をする方もいらっしゃいます。また、最近は中高年の再婚とか婚姻がふえておりまして、子供を産めないというか、今までに子供さんがいても、当然産めない高齢の方とかいろんな方がいらっしゃるわけで、ライフスタイルが大変多様化しております。  そういう時代に、婚姻すれば子供を産むのが当然という考え方を押しつけるというのは、多様な生き方、多様な価値観に合わせて別氏の選択ができるとする改正の趣旨に反するのではないか、また矛盾してはいないかという考えがございますが、いかがでしょうか。
  41. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) この氏の問題については、委員も御案内のとおり、今なお大変慎重なお考え方から、また現在の制度をもう抜本的に変えた方がいいのではないか、戸籍制度も含めて抜本的に変えた方がいいのではないかという大変積極的な御意見まで、大変幅広い御意見があるところでございます。  今御指摘の問題も、そういった制度の中でどこまで選択の幅を広げるのかという問題であろうと思いまして、その中で今回の法制審議会答申は、基本的に戸籍制度も含めて現行法制を余り抜本的に変えない範囲内で選択的な夫婦別氏制度を導入しようということでまとめられた案であるというふうに私ども理解をいたしております。  したがいまして、その方向性に反するかと言われますと、それは一つの考え方からすれば中途半端な改正案であると、こういう御批判の対象になるということはそれなりに私ども理解をいたしております。
  42. 山崎順子

    山崎順子君 また、日本ではシングルではとても、最近シングルで暮らす人も多くなっていますけれども、男女ともに結婚して子供が生まれて一人前になるというような、そういった社会通念がかなり色濃く残っておりまして、女性にも結婚して子供を産んで当たり前というようなそういった母性神話がありますけれども、母性神話のプレッシャーを押しつけることにならないかというようなこと。  またもう一つ、婚姻時に子の氏を決めてしまって、子の氏が統一されるとなりますと、実態は恐らく父の氏をとるケースが多数となると思われます。同氏強制の今、夫婦の姓のどちらを選んでもいいという一見両性平等に見える法律のもとでも九七%が夫の氏を名乗っているのと同じように、父親の氏をとる人がもしかしてふえるかもしれないと。それは父と子だけが同一の姓で母だけが異なる姓ということで、今までの嫁に来たというような家族観が残ってしまって、氏の近代化の実現が図れないのではないか、子の氏の問題でその効果が半減してしまうのではないか、そういう御意見もございます。この二点についてはいかがでしょうか。
  43. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 先ほどの御質問に御答弁するべきだったかもしれませんが、今、婚姻届け出の際に子供が生まれた場合の氏を決めさせるというのは子供を産めというプレッシャーをかけるのではないかという御指摘がございましたが、これはやはりそのときに決めておかないと、後で一定の時期に決めるということはなかなか難しいであろう。先ほど申しましたように、子供の氏はどちらかに統一するという前提に立つ限りは、そのときに決めて届けていただくということでなければ制度が維持できないということでそうしたわけでございます。  それから、実際に子供を産むという場合のほかに、養子をするという場合に、養子の氏の問題もあるということをつけ加えさせていただきたいと思います。  それから二番目の御質問は、先ほど申し上げたことと同じことになろうかと思うわけでありますけれども法制審議会の議論におきましては、やはり現在の国民の意識の中で大方の理解が得られやすいものということ、その方策としてはどうであろうかということもあわせて考慮されたものと考えております。今の案でも御案内のように大変抵抗が強いわけでございますけれども先ほど申し上げましたようなこの点に限っての世論調査を考えてみましても、子供の氏をその出生の都度決める、場合によっては争いがあって決まらない場合もあるかもしれないということではなかなか現段階では国民の多くの理解が得られないのではないか、こういうような議論の経過もあったことを申し上げておきたいと存じます。
  44. 山崎順子

    山崎順子君 それでは次に、五年以上の別居で離婚ができるという積極的破綻主義についてお伺いしたいと思います。  このことは、昭和六十二年の九月に最高裁判所がこれまでの有責配偶者からの離婚請求を認めない立場を大きく変更いたしまして、特段の事情がない限り有責配偶者にも裁判による離婚を認める立場を採用したことから、その後の判例は下級審などでは、有責配偶者でももう既に七、八年の別居期間が経過し、未成熟子がいないで、また養育費や生活費が相当額支払われているケースでは大体において離婚が認められる傾向になっておりますけれども、今回の民法改正で離婚制度の不備を是正しないで改正をしてしまえば、ただ判例実務を追認するだけにとどまってしまうというふうに私は思うんです。  現在の離婚の約九〇%が協議離婚であることは皆様御存じで、また裁判離婚は全体の一、二%にすぎないのです。その一、二%の裁判離婚について今回の別居五年以上の有責配偶者からの離婚が認められるということが適用されるわけですけれども、しかし現実には裁判離婚の際に認められる離婚原因というものは社会に与える影響力がとても大きくて、離婚は容易というような印象を与えることになっては社会的弱者の切り捨てになるのではないかと私は思って危惧しております。  このあたりについて、先ほども言いましたように、判例実務を追認するだけのようなこの改正案を今回お出しになる理由といいますか、その辺を御説明いただけますでしょうか。
  45. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 委員指摘のとおり、最近の裁判例においては有責者からの離婚請求であるからという理由だけで必ず請求が認められないということではないという状況になってきております。そういう状況の中で、裁判実務の考え方も客観的破綻主義、積極的破綻主義に近いものとなってきておるというふうに私どもも理解をいたしております。そういう意味では、今回の五年以上の別居を離婚原因として掲げる改正というのは、これまでの、現在の裁判の考え方における現行法を根本的に変えてしまうというものではないというふうに思っております。  しかしながら、現在の考え方を追認しただけかという言い方をされますと、これは現在の裁判例の考え方は、基本的には旧来の有責主義という考え方が残っておりますから、有責配偶者からの離婚請求を認めるについては非常に詳細な事実を認定し、それに基づいて非常に厳格な判断のもとで離婚が認められるということになっているわけでございますが、これは今回の改正案におきましては五年以上婚姻の本旨に反する別居をしているということだけで原則的に離婚原因として認められる。もちろん過酷条項、信義則条項等の制約はございますけれども、そういうことになることによって裁判の実務の運用においては紛争が泥沼化しないという効果があるというふうに考えているところでございます。  この破綻主義の明確化ということを法制審議会におきまして考えました理由の主なものは、この裁判の基準としての離婚原因を客観化、明確化するということによりまして、当事者が訴訟の中で感情的な非難中傷等を繰り返すというような事態をできるだけ防止しようというようなことをその理由としているわけでございまして、そういう効果は十分にあるものというふうに考えております。
  46. 山崎順子

    山崎順子君 私は破綻主義に反対するものでは決してなくて、どちらかといえば、お互いに新しい人生をやり直した方がいいと考えているものです。今御説明にありましたように、長引く夫婦の不和が子供に多大な悪影響を与えているケースもたくさん見ておりますし、両親の関係の悪化、泥沼化が、その後の子供との面接権というような行き来、養育費の問題、そういったところにも大きく影響することももう十分見てきていますので、破綻主義には賛成なんです。  ただ、先ほども申しましたように、今の状況下では本当に、弱者というとおかしいのですが、女性の平均賃金が男性の半分ぐらいしかなかったり、それから、結婚、妊娠、出産、育児、夫の転勤等で仕事をやめざるを得ないというのは女性の方に多くて、ようやく再就職しようと思っても年齢制限がある、再就職が大変厳しいという状況です。またもう一つは、夫、男の人が大黒柱で女性は補助的な家計を支えるという、そういった性別分業が歴然と残っているこの日本の社会では、女性が大黒柱となって一つの家庭を支えていくというのは、どんなにその人に気力とそれから体力と特技があったとしても、とてもそれが難しい社会なんですね。  そうしますと、どうしても母と子という残される側の方が弱者になってしまう。そういうことがございまして、ここの離婚制度のというか社会制度の不備と、もう一つは財産分与や慰謝料が、残念ながら協議離婚の場合は、半数の人が一銭も夫から受け取っていない。つまり、ゼロで別れていて、そして住宅も借りにくいとか、先ほど言いましたように就職もしにくいというような状況。また、子供の養育費も一四・五%ぐらいですか、そのぐらいの父親しか払い続けていないというような、そういう状況下では、とても破綻主義大いに賛成というわけにいかないのではないかという気がしているんですね。  そこで質問なんですけれども、まず、五年以上の別居ということで、別居していてとにかく別れたいと思っている側の方は、こういった明確な基準があることで、こういう改正ができればとても喜ばしいことだと思いますけれども、この五年間の別居中、五年間に限らず、今でも何年も別居している人もいますし、大体は一年とか二年ぐらいだと思いますけれども先ほど言いましたように、再就職の厳しい、またようやく就職してもなかなかいい収入が得られないというような女性とその子供たちは一体どのようにして生計を支えているのか。そういった実態調査はなさった上で、今回の改正案、五年別居ということをお出しになっているのかどうか。実態調査の結果、別居中の女性たちは、子供たちはどんな生活をしているのか、お聞かせください。
  47. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) まず前提として申し上げたいと思いますが、「五年以上継続して婚姻の本旨に反する別居をしているとき。」、これを離婚原因に掲げるという改正案でありますが、しかしながら、必ず五年別居していなければ離婚原因にはならないということではなくて、別居期間がもっと短くても婚姻関係が破綻して回復の見込みがないときというのはまた別個の離婚原因になっている。したがって、短い別居期間でも破綻していると認められる場合があるということをまず申し上げておきたいと存じます。  それから、別居中のいわゆる母子の家庭の実情がどういうものであるかというのを調査しているのかという御指摘でございますが、これは、私ども抽象的には委員指摘のような実態が少なくないということは承知しているつもりでございますし、法制審議会においてもそういうことは委員皆様方御承知の上でこの審議がされたわけでございます。ただ、具体的に統計的にどうなっているかということを前提にして議論をしたというわけではないということは正直に申し上げさせていただきたいと思います。  そういう状況をも踏まえながら今回の改正をすることとしたというのは、まずもって、先ほど申し上げましたように、現在の裁判例の考え方と抜本的に違う大転換をする改正という趣旨ではないということ、それから、そういった観点も含めまして、先ほども触れましたけれども、五年間別居という事由がある場合であっても、「離婚が配偶者又は子に著しい生活の困窮又は耐え難い苦痛をもたらすときは、」「請求を棄却することができる」、また「離婚の請求をしている者が配偶者に対する協力及び扶助を著しく怠っていることによりその請求が信義に反すると認められるときも同様とする」と、こういう制約を付して、その五年間別居離婚ということが乱用されることがないようにという配慮もした上で、そういう改正案を法制審議会として策定したという経緯があるわけでございます。  なお、もちろん離婚原因において全く変化がないということではないわけでございますが、その別居中の妻子の扶養の問題、それからあわせて離婚後の養育料等の問題、こういうことについて、その履行を確保するための法制度整備ということもあわせてすべきではないかと。この点についても法制審議会審議されたわけでございますが、現行の制度でも一応の整備が図られているということと、そういった問題は、ほかのいろんなさまざまな保護しなければならない債権、そういったものとの関係において民事執行手続上どう考えたらいいのか、大変大きな幅広い検討を要する問題であるということから、引き続き検討すべき課題とされたところでございます。  したがって、今後ともそういう課題が重要な課題であるということは、法制審議会としても、私どもとしても認識をしているところであります。
  48. 山崎順子

    山崎順子君 私は、多分三年半前ぐらいから、ぜひともその辺の実態調査も、別居中ですから大変難しいことはよくわかっているんですけれども、方法としてはいろいろ考えられますので、そういったものもしていただきたいし、また別居中の妻子の生活権の確保について、今おっしゃったような民事執行法だとか家事審判法ですとか、その辺の改正も含めてぜひとも検討していただきたいと質問で要望してきたわけです。  まず、離婚の場合でも、母子のこれは離別の場合ですと年収が二百五万で一般世帯の三分の一しかないんですね。それで、先ほど言いましたように、財産分与や慰謝料が離婚した人の半分がゼロで養育費が一四%ですから、大変厳しいという状況下にあると思います。それよりもさらに厳しいのが、離婚後でしたら児童扶養手当ですとかさまざまな社会保障の制度を利用できるんですけれども、別居中はほとんどそういったものが利用できませんので、もっと厳しい生活を余儀なくされている。また、別居中ということによって就職もしにくいという方々もたくさん実例を見ております。  ちょっとこれは別居中でも恵まれた方の方なんですが、実例として御紹介させていただきたいと思います。  東京にお住まいのMさんで、一九九三年の十月の家計簿を公開してくださっているんですが、三十九歳でパートです。別居を始めて四カ月なんですね。正社員になりたいと一生懸命今仕事を探しているけれども、なかなかなくて、とにかくパートで働いていて一カ月の収入が八万五千円です。これ三年ほど前ですから、今はもう少しパートでも上がっているかもしれませんし、この人はもちろん今はもうフルタイムの仕事についていらっしゃいます。その当時、十歳と八歳のお子さんがいて、アパートの住居費が八万七千四百円、これはいろんな管理費等さまざまなものを含めてです。ということは、一カ月のパート収入がそのまま住居費になってしまっているんですね。それで、あと衣服費なんというのは八千三百円、交際・娯楽費六千八百十円と物すごく切り詰めて、水道・光熱費だけで一万一千円、国保と生保で一万二千四百円とか電話代が三千円とか細かく出ているんですが、結局支出がその月、十月のが二十四万五千円で、十六万円も足りないという、そういう生活なんです。  これは別居をしたからといって、例えばこの人は、子供たちは公立の学校ですけれども、急に子供たちの生活レベルから何からやっぱり下げるわけにいかないというのもあって、それでも下げてもぎりぎりこのぐらいで、じゃ、この十六万をどうしているかというと、彼女は結婚前に働いていたときの貯金とか、それからたまたま両親からの生前贈与等があったのでその貯金を食いつぶしているという状況ですが、そういった貯金のある人というのはそんなに多くありません。結婚前に働いて得た貯金は、若くして結婚すると夫のお給料が少なくて、何とか生活費の足しにとほとんど女性たちは二、三年でそれを全部使い果たしているというのが現状でございます。だから、別居中の生活というのはやっぱり相当大変なんじゃないかなという一例でちょっと紹介させていただいたんです。  このあたりの婚姻費用の分担請求ということで、別居中、夫からやはり生活費保持の義務とかがあるわけですから、別居中の生活費をきちんと送るようにという話し合いは必ずほとんどの方がしていると思うんですが、なかなかそういう生活費を送るような夫がいない。  そこで、じゃ、家裁の調停に出して婚姻費用の分担請求という形で別居中の生活費を決めたいということがあるんですが、これ、先ほど現行制度でも何とかなっているというふうなところはこういったところをおっしゃったのかと思うんですが、どのくらいで別居中の婚姻費用の分担請求というのは決定するものなのか、それから大体金額はどうなのか、お答えいただけますでしょうか。
  49. 木村要

    最高裁判所長官代理者(木村要君) それでは、平成七年の統計で婚姻費用の分担請求事件状況を申し上げます。  申し立て件数は審判、調停を合わせまして四千五十六件、そのうちの調停事件が三千二百七十四件でございます。その中で、審判なり調停なりで金額が決められた件数といいますのは合わせて千六百十九件、そして調停事件だけですと千三百六十七件という状況でございます。  どのような金額が決められているかということでございますが、これはその金額、支払額についての統計としましては、婚姻費用分担事件として申し立てられたのと、離婚調停として申し立てられて、そこで別居で婚姻費用を決めるというものを合わせた統計としてとっておりますので、そういったものを合わせた統計で申し上げます。  婚姻費用を支払うということが決まった事件の合計数は、今申し上げた事件両方合わせまして二千六百六十四件ありまして、そのうち九九%の事件が月払いで支払うという取り決めがなされております。  月払いで取り決めがなされたケースを金額別に見てみますと、二万円以下の支払いという取り決めが約六・六%、それから二万円を超えて四万円以下というのが約一〇・六%、四万円を超えて六万円以下が約一八・四%、六万円を超えて八万円以下が約一二・一%、八万円を超えて十万円以下が一五・七%、十万円を超えるものが約三五%ということになっております。月額の平均を出してみますと、約十万八千円という金額が出ます。
  50. 山崎順子

    山崎順子君 婚姻費用の分担請求ということをしっかりわかって調停に出された場合も、十一カ月ですとか十八カ月ですとか、結構決まるまでに日数がかかって、その間の生活をよほど実家がしっかりしていて見てくれるとか、そういった形でないとなかなか母子の経済的自立ができないという状況ですので、こういったものも速やかに決めるような、そういった配慮が今後民法改正をした場合は早急に必要なのではないかというふうに考えております。  時間が迫ってまいりましたので、その辺のことはちょっと飛ばしまして、もう一つ子供たちの離婚後の行き来、今回の改正案の中には「面会及び交流」と書かれておりますけれども、この件と養育費支払いについてちょっとお伺いしたいと思います。  この件は、実はこれも平成六年九月十六日、百三十回国会閉会後の決算委員会で当時の前田勲男法務大臣に質問したときに、ぜひとも私は子供の監護に必要な事項の定めのところ、今は七百六十六条一項で子の監護者等の決定となっておりますけれども、ここに面接権について明文化してくれないかという要望を、それから養育費の明文化ということを質問で話したんです。  そのときには、現在の養育費については八百七十七条の規定で明確なのではないかと、その点の改正を特にするまでの必要はないというのが審議の結果で、「現在の規定で実体法上の手当てとしては十分なのではないか。」というふうにお答えになっているんです。今回、これがきちんと、父または母、子の監護をすべき者の決定以外に、「父又は母と子との面会及び交流、子の監護に要する費用の分担その他の監護について必要な事項は、その協議でこれを定めるものとする。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならないものとする。」ときちんと明文化されまして、私とてもうれしいし、またこの件については評価しているんです。  ただ、先ほども言いましたように、養育費の支払い実態は大変残念なことに父親から一四・五%しか来ていないというような状況がございますし、離婚後の行き来というのもそれほどなされているとは思えません。ただ、私ども調査では、父と子が離婚後行き来がある場合は、養育費の取り決めの有無にかかわらず、半分の人が、五六%が払っているんですね。そういったことを見ますと、ないケースよりもずっと高くて、やはりお金だけで解決するのではなくて、離婚した後も精神的または物理的に父親がきちんと援助をしていく。行き来をするというのは、父と子、親と子、どちらにとっても大事なことだと、そういうふうに考えていますので、この明文化したことは大変いいんですが、ただ明文化しただけでこれを実効性のあるものにするためにはどうしたらいいのか、その辺考えていらっしゃるのかどうか、お聞きしたいと思います。
  51. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) いわゆる面接交流に関する規定を入れた趣旨につきましては、現在の解釈におきましても、これは当事者で協議が定まらないときは家庭裁判所が定めるべき対象になっているという解釈でございますけれども、しかしながら、この規定を明文化することによって、こういったことを当事者間の自主的な協議において定めるということも促進されるのではないかという効果をも考えているものでございます。これはやはり親子面接交渉の実行というのは大変微妙な問題でございますので、これは約束したこと、あるいは審判で定まったことについては当事者が自主的に履行していただくということを期待するのがまず第一であろうと思っておりますが、もしその実行がされないという場合については、これはまた調停等の場で解決を図っていただくということになるのであろうというふうに思います。
  52. 山崎順子

    山崎順子君 今度の破綻主義はいわば離婚の規制緩和だと思うんですけれども規制緩和だけではやはり子供たちの生存権というものをしっかり確保はできないと思うんですね。  諸外国では破綻主義離婚法を導入するに当たっては、離婚後の子供に対する扶養に関して詳細な規定を設けたんですが、それでも養育費の支払いが滞って子供の生活が困窮するということがあり、ほとんどの国が社会保障制度の一環として離婚後の扶養料の公的取り立て制度を設けるなどしております。それはつまり養育費というのが私的扶養から公的給付に重点が移っていると考えていいと思うんです。  翻って、我が国では離婚後の子供の扶養ということは子供を引き取った親の側に過重な負担を強いていると。今、二十未満の人口に対して親の離婚を経験した未成年の子供の割合というのは大変ふえておりまして七・二六%、これはかつてない高い割合なんです。平成七年で二十万五千九百一人の子供が親の離婚を経験しているんですが、この子供たちに対してやはりそれの七割を母親が引き取っているんですが、その母親に過重な負担を強いていますし、養育費は払われずに公的給付も十分と言えない状況にあっては、子供の生存権が著しく脅かされていると言って過言ではないと思います。  今回のこの民法改正先ほど言いましたように、養育費のこと、また子供との離婚後の行き来を明文化されてとてもよかったと思っておりますけれども、今後とも養育費の履行確保の制度を設けるなど、改革をぜひ進めていっていただきたい、検討を進めていただきたいと思っております。  そして、破綻した婚姻を解消した方がいいという、そういうふうに社会がなっていくなら、なおさら離婚を支えるだけのコストをかけていく社会であってほしいし、それをサポートする体制であってほしいというふうに要望して、このあと非嫡出子の相続分を嫡出子と同等にするという改正案についても御質問する予定でございましたが、時間がなくなりましたので、これで私の質問を終わらせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  53. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十三分休憩      —————・—————    午後一時開会
  54. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、法務及び司法行政等に関する調査議題とし、法務行政基本方針に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  55. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 大臣を初め各局長の皆さん、大変御苦労さまでございます。私の方からも法務行政全般にかかわる質疑をさせていただきたいと思います。  先日、当委員会で東京入管と東京拘置所の視察をする機会がございました。特に、私は弁護士として東京拘置所で接見をしたことが何度かございましたけれども、拘置所そのものを内部から見せていただくのは初めてでございまして、大変有意義な視察であり、勉強になりました。視察に当たっていろいろお手配をしていただきました皆様方に心から感謝を申し上げる次第でございます。  そこで、東京拘置所を含めて矯正施設の整備充実の問題についてお伺いをするのでありますが、大臣も所信表明において、「東京拘置所を初めとした矯正施設の整備充実を図りたい」と、こういう所信をお述べになっております。申し上げるまでもなく、代用監獄がこれまでの歴史の中で自白の温床になっているという指摘法律関係者からなされてきたわけであります。そういう点では、大臣の所信表明にありますように、東京拘置所を初めとする矯正施設、拘置所の整備充実というのは大変重要な問題だと思いますが、この現状と将来の施設の整備充実の課題についてお聞かせを願いたいと思います。
  56. 頃安健司

    政府委員(頃安健司君) 先般、当委員会で御視察いただきました東京拘置所の主要建物は、昭和四年に小菅刑務所として建築されたものを転用しておりまして、建物の各所に亀裂が入るなど老朽化した部分が多く、大地震等が発生した場合には倒壊等の危険があり、また建物が構内に不規則に散在し非機能的な状況にあります。  そこで、平成八年度から改築工事に着手したところであり、保安警備の充実はもとより、被収容者の生活環境の改善に配慮するとともに、地域の景観にも調和した近代的な施設の早期完成を図ってまいりたいと存じます。  また、全国に所在いたします矯正施設はちょうど三百ございますが、その中には経年により老朽化したもの、あるいは狭隘化したもの、狭隘化により十分な処遇ができないもの等新営の必要があるものが相当数ございますので、関係方面の御協力を得てできるだけ早急に整備を図ってまいりたいと考えております。
  57. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 先日、東京拘置所を視察してびっくりいたしましたのは、在監者の舎房にテレビカメラが付設をされていると、こういう事実でございました。  説明をお伺いいたしましたときに、逃走防止あるいは自殺の予防と、こういうことをお伺いいたしたわけであります。すべての在監者をテレビカメラで監視をすると、こういうシステムではなくして、在監者の一部についてなされておるということでございましたが、そのテレビカメラによる二十四時間監視システムというんでしょうか、それを選択される在監者の基準あるいはまたその在監者に対する同意の手続などがあるのかどうなのか、さらには東京拘置所以外の施設でもこのようなシステムが現に採用されておるのかどうかお聞かせ願いたいと思います。
  58. 東條伸一郎

    政府委員東條伸一郎君) 先生お尋ねの東京拘置所における在監者用の監視システム、先日ごらんいただきましたけれども、これは居房の一部に監視用テレビカメラを設置いたしまして、その映像を職員がモニタテレビ監視室内で監視するというシステムでございます。  先生に申し上げるまでもなく、拘置所におきましては被収容者の身柄の保全、それから身体の保護ということを図ることが私どもの基本的な責務とされておりまして、そのためには基本的には職員が頻繁な巡回を行いまして、居房内の状況を綿密に視察するということが基本でございます。  ただいまお尋ねの監視システムは、この職員の巡回、これは施設の規模によって違いますけれども、例えば十五分に一回とか十分に一回とか、そういうふうに回ることになりますが、その巡回の間隙をついて自殺、逃走などを行うおそれが高く、特に厳重な動静の視察が必要な被収容者を対象といたしまして実施いたしておるところでございます。  その選択につきましては、収容しております施設の長が具体的な事案に応じて、ただいま申し上げたような観点に照らして選択をするということになると思います。  このような事情でございますので、このようなテレビ監視つきの居房への収容に際しまして、当該被収容者に同意を得るという取り扱いはいたしておりません。  それから、東京拘置所以外にもこのようなシステムを採用している施設はあるかというお尋ねでございますけれども、拘置所の支所全部を含めますと、まだ若干居房監視カメラ未整備庁もございますけれども、主要な拘置所にはこのような同様のシステムを採用いたしております。
  59. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 被収容者の身柄の保全ということもよくわかりますし、同時に自殺防止、逃走防止ということも重々承知をいたしているわけでありますが、一方でまた、被収容者はあくまでも未決なわけですからプライバシーの問題等も生じてくるんだろうと思います。同意手続はないようでございますが、在監者自体はそういうシステムの舎房だということは承知をしておるんでしょうか。
  60. 東條伸一郎

    政府委員東條伸一郎君) 収容に当たってそのような設備のある居房であることは告知いたしておりませんけれども、見ればわかるといいますか、中にカメラが天井についておりますので、わかるといえばわかると、こういう状況でございます。
  61. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 去る一月三十一日に、オウム真理教に対する破壊活動防止法に基づく解散指定処分請求の棄却決定がございました。このことに関連して何点かお聞きをするわけでありますが、私はこれまで、国会議員になる前、一人の法律家として、在野法曹として、破壊活動防止法そのものが違憲の疑いが極めて強い法律であり、とりわけ同法の定める団体規制は憲法の保障する基本的人権を侵害するおそれが強い、こういう考えでございました。  今回の公安審査委員会の決定について、社会民主党は幹事長の談話を発表いたしております。その中で、「わが党は、民主主義の根幹をなす表現の自由や団体、結社の自由を侵害する破壊活動防止法の適用については、慎重の上にも慎重を期すべきとの見解を示してきたところであり、今回の公安審査委員会の決定を評価したい。」、さらに、「国民を不安におとしいれたオウム真理教による凶悪な犯罪行為は、今後こうした事件を再び起こさせないためにも、刑法、宗教法人法によって厳しく処断されるべきである。」、こういう談話を発表いたしておるわけであります。  一方、在野法曹の団体であります日本弁護士連合会も、当日、会長談話を発表いたしておりまして、「今回の決定は、同教団の将来的な破壊活動を行う明らかなおそれに対する実体的判断に基づき、その適用を否定したものであり、その結論は当然とはいえ、憲法の下での人権保障と民主主義を護りぬいたものとして、これを心から歓迎する。」という内容になっております。  そこでお伺いいたしますが、このたびの公安審査委員会オウム真理教に対する解散指定処分の請求を棄却する決定をされたことについて、大臣はどのような所信をお持ちか、お伺いいたします。
  62. 松浦功

    国務大臣松浦功君) 法務大臣といたしましては、公安審査委員会の棄却の決定を厳粛に受けとめております。と同時に、公安審査委員会決定書によりますれば、オウム真理教については明白な危険性までは認められないものの、現在なお危険性が存在すると指摘されております。そういった観点から、公安調査庁において今後ともオウム真理教に対する調査を継続し、公共の安全の確保に万全を期してまいりたいと、このように考えております。
  63. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 大臣の所信表明の中でも、公安調査庁の今回の決定を踏まえて、こういうふうなことをおっしゃっております。「公安調査庁において今後もオウム真理教に対する調査を継続し、公共の安全確保に万全を期する必要があるものと考えております。」、こういう趣旨の所信を表明されました。  ところで、私はオウム真理教に対する調査の必要性、これが全くなくなったとは思っておりません。だがしかし、一方で公安調査庁調査国民の基本的人権に対する配慮も大変大事ではなかろうかと、こういうふうに思うわけであります。  日本弁護士連合会の集会で、これは発言をされた御本人の承諾を得ておりませんので名前を公表することができないわけでございますが、神奈川の市民団体が従来破防法の適用に反対をしてきた、こういう市民団体の構成員に公安調査庁の職員が名刺を持参して調査をした、こういうことなどもあるやに聞いております。  私は、大臣が所信でお述べになりました、継続してオウム真理教に対する調査を行っていく、そうすることによって公共の安全確保に万全を期すということは、これは警察の方でも十分対処し得るのではないかというふうに考えております。仮に公安調査庁でやるにしても、人権への配慮を怠ってはならないというふうに思うんですが、お考えをお聞かせ願いたいと思います。
  64. 杉原弘泰

    政府委員(杉原弘泰君) 公安調査庁におきましては、各調査官に対しまして、調査上思想、信教の自由を不当に制限してはならないとする破防法三条の規定を指針といたしまして、いやしくもこれを逸脱するような調査は厳に慎むように平素から指導しております。  また、当庁は、日本国憲法の保障する民主主義体制を暴力をもって破壊しようとする団体について、その組織や活動状況等を調査するための組織でございます。したがいまして、そうしたおそれのない市民団体あるいは市民運動そのものを、その正当な活動を調査するということはございません。破防法三条にもその趣旨は明記されているところであります。  しかしながら、これらの市民運動等に対する調査指定団体、つまり私どもが将来破壊活動に及ぶおそれがあると考えて内部的に指定して調査をしている団体のことでございますが、そうした調査指定団体からの働きかけ、あるいはこれら市民団体内における調査指定団体構成員の活動等がある場合には、これら活動を調査することもございます。  ただ、このような個別的な内容につきましては、今後の調査に支障がありますので、答弁を差し控えさせていただきたいと思っております。
  65. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 それでは次に、民法改正問題についてお伺いをさせていただきたいと思います。  昨年一月の橋本内閣発足に際しまして、新しい政権へ向けての三党政策合意がなされました。この政策合意においても、民法改正問題は検討すべき重要課題として掲げられておることは大臣御案内のとおりだというふうに思っております。私も、また我が社会民主党・護憲連合もこの民法改正問題に強い関心を持っておりますし、同時に、三党政策合意に基づいて速やかに民法改正案が国会へ上程されることを願っておるわけであります。  大臣の所信表明の中ではどうも私、いまいち民法改正へ向けた政府の強い熱意みたいなものが伝わってこないように思いますし、同時に、何か幾つも前提条件があって、民法改正問題についての大臣の本音のところは一体どこにあるんだろうかというふうに察しかねておるわけであります。  まず、民法改正そのものについての大臣のお考えをいま一度お聞かせいただきたいと思います。
  66. 松浦功

    国務大臣松浦功君) 民法は国民の間に通用する極めて基本的な法制制度でございます。十分に国民の御理解をいただいた上で改正をするということが必要だろうということをまず第一に申し上げたいと思います。  御質問の趣旨をそんたくいたしますると、先般の国会に原案として考えられながら提案されなかった民法改正についてのお尋ねだと思いますが、その中で、特に選択的夫婦別氏制度の導入、さらには嫡出子でない子の相続分の取り扱い、この二つについては国民の意見が極めてはっきり二つに分かれております。問題の所在を正しく理解をしていただいた上で、国民皆様方の御理解を得ることができる状況に何とか持っていきたいと。  そういう意味で、そういう状況をつくるように、醸成するように努力をして、それができ上がつた段階改正法案国会に提出することが適当であるというふうに考えております。今のところ、どういう内容でいつ国会提案するかということについては申し上げる段階までには至っておりません。
  67. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 民法の一部を改正する法律案要綱が平成八年の二月二十六日に法制審議会の総会で決定をされました。法制審の総会決定から間もなく満一年になるわけでありますが、私は、法制審総会の決定を経て一年になんなんとするのに民法の一部を改正する法律案国会へ提出されないというのは極めて異例なことではないかというふうに考えるわけであります。結婚適齢の問題、あるいは選択的夫婦別姓制度についての改正問題、婚外子差別撤廃についての改正など、確かに今回の民法の一部を改正する法律案の中身はいろいろ議論を必要とするところだろうと思いますが、一方で、これまで五年以上もかけて法制審でも十分に議論を尽くして要綱ができておるわけであります。そのこともまた尊重されて、私は速やかに法律案国会へ上程されることを強く希望いたします。  同時に、社民党・護憲連合の法務部会においても、三党の政策協議の場に民法改正問題を上げて、その中で議論を尽くし、どうしても今国会に上程できない、こういう事態になりましたら、場合によっては議員立法提案をすることも考えざるを得ない、こういう議論の集約でございました。  そこで、お伺いいたしますが、民法の改正問題で、一つは選択的夫婦別姓問題というのが非常に大きな柱だろうと思います。もう一つは婚外子差別撤廃についての法改正が今回の大きな柱だろうと思われますが、この二つについてどのようにお考えになっておるのか、あるいはまた法改正に至る背景というんでしょうか、そこら辺についてのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  68. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 今二点についての、法改正に至るという御指摘でございましたが、法制審議会答申がされるに至った背景というようなことについての御説明をさせていただきたいと思います。  これは、法制審議会では平成三年からこの見直しの検討を行いました。その背景といたしましては、昭和五十年の国連婦人年を初めとする国際的な女性の地位向上のための施策の推進の提唱があり、我が国においても、これを受けまして、男女平等の観点からのさまざまな施策の一環として家族法制の見直しが求められるようになって、具体的には、平成三年の総理府婦人問題企画推進本部が策定いたしました「西暦二〇〇〇年に向けての新国内行動計画」(第一次改定)におきまして、男女平等の見地から、夫婦の氏のあり方等を含めた婚姻・離婚法制の見直しを行うことが平成七年度までの政府の具体的な施策の一つとして取り上げられたということ、それから選択的夫婦別氏制度の導入の問題につきましては、女性の社会進出に伴いまして婚姻により氏を改めることに伴う不利益等を解消するために選択的な別氏制度の導入を求める声が次第に強くなってきたということ、それから嫡出子と非嫡出子の相続分の問題につきましては、現行制度は正当な家族関係を保護するという観点から相続分に区別を設けているということでございまして、それは一応の合理性があると考えられてまいりましたが、しかし立法政策の問題としては、子供の立場から考えれば区別する理由がないのではないかという意見が高まってまいりまして、裁判事例におきましても、高等裁判所段階では現在の制度が憲法に違反するというような裁判例が登場し、最終的には最高裁で憲法には違反しないという判断がありましたけれども、そういう裁判例も登場してきたこと、また国際社会におきましても、これを平等化するという立法の動向があり、我が国の制度についての国際的な批判の声も高まってきたということ、そういった背景を踏まえて法制審議会答申がされたわけでございます。  もとより、法務省といたしましては法制審議会答申を尊重するという立場でございますけれども、しかし、それに基づいていつどういう形で法案を提出するかということは、これは省として、法務大臣としての責任の問題であろうというふうに考えておるところでございます。
  69. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 一九八五年に国連の女性差別撤廃条約を日本政府は批准いたしました。その上で、男女共同参加型社会の実現を目指して法整備を図っていくというのが政府の方針でございます。選択的夫婦別姓、さらには婚外子の差別撤廃、これは憲法の理念である個人の尊厳、両性の本質的な平等というところから導かれてくるんでしょうけれども、今申し上げましたように、その内容は日本政府が十年以上前から国際社会に約束したことでもあると私は考えるわけであります。  そういう点では、法制答申を尊重されて速やかに具体的な法案が提出できることを強く希望申し上げまして、時間がなくなってしまいましたので私の質疑を終わります。
  70. 千葉景子

    ○千葉景子君 既に同僚議員の皆さんからも質問が出ている部分がございますので、できるだけ重ならぬよう、そしてまた、ちょっと違う観点で幾つか質問をさせていただきたいと思います。  まず第一点は、今もお話に出ておりました民法の改正問題でございます。  重なるので大変恐縮でございますけれども、この民法の改正問題、昨年の二月に法制審議会から要綱の答申がなされて、はや一年を経過しようというところでございます。法制審議会で長年にわたって各界各層の多様な意見も聴取をされながら取りまとめられたという経過もございます。また、この民法改正内容を考えてみますと、基本的には個人の尊厳、あるいは両性の平等、そして子供の人権、こういう人権に大変深くかかわる、そういうものを含んでいる内容でございます。  人権の保障というのは、決して世論の多数によって決められるということではなくて、少数の人権もきちっと保障する、これが本来の人権保障ではないだろうかというふうに思います。国際条約あるいは日本の憲法、こういうものに照らしても、この民法の改正内容というのは私は当然なされるべきものであろうというふうに考えているものでございます。  また、大臣も所信の中でお触れになっておられますように、この民法の改正国民生活に密接にかかわる、そういう意味ではいろいろな幅広い意見を慎重にはかられるということは決してわからないわけではございません。  しかし、だとすれば、むしろ活発な論議を幅広い公の場でされるということが求められているのではないだろうかというふうに考えているところでございます。  こういう点などを考えますと、法制審の答申からこれだけ長い時間にわたりましてこの改正案が提案をされないというのは一体どういうことであろうか。普通でありますと、法制審の答申がいただければ、それを早急にも法案化をして議論の場に提案をするというのが普通の、通常の例であろうかというふうに思いますので、法制審の存在もちょっと無視されてしまうんではないかなという、そういう懸念も私は今感じるところでもございます。  また、このような内容が公の論議に付されないと、何か一部の意見に左右をされてなかなか国会の場に提案がなされないのではないかと、そういう不信といいましょうか、そういうことも私は多少感じるところでございます。  国会というのは、論議をし、そしていい結論を導いていくという場でございますから、提案されたものを通過させる場ではございません。そういう意味では、反対の意見もあるいはいろいろな問題点もそこで指摘されてしかるべきであろうというふうに思います。むしろ、何で提案されないのだろうか、提案されないことが何か大変不自然な感じがしているところでございます。  そういう意味で、こういう幾つかの問題点などを踏まえていただきまして、先ほども御答弁がございましたけれども、改めてやはり法務大臣として決断をいただきたい。そしてこの国会の場で大いにいろいろな意見、多様な意見を交えて論議をする、そういう場をぜひ法務大臣のもとでつくっていただく、こういうことを私は要求させていただきたいというふうに思っておりますけれども大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  71. 松浦功

    国務大臣松浦功君) 御指摘をいただきましたように、公の場での議論、もっと活発にすべきではないかというお尋ねでございます。それは賛成でございます。  現在、千葉先生の御意見に対して私が答弁申し上げているのも公の場における論議だと私は思っております。法案の提出という形でなければ論議ができないという論法には私は賛同いたしません。  それから、法案は出す以上法案を通すのが国会だという考え、それは私は持っておりません。しかし、通る可能性がないもの、出せないものを提案しろと言われても私は非常に無理だと思うんです。特に、法案の提出については皆さんよく御存じのとおり、これまでのルールがあるわけでございます。慣行があるわけでございます。その慣行に従って、途中で提出という線が途切れてしまうというような形になるんであればよほど慎重に考えなければいけないだろうということを、国民の大多数の意見によって決めてまいるという方向に加えて、そのことを重ねて申し上げて、御理解をいただきたいと思っております。
  72. 千葉景子

    ○千葉景子君 にわかに、はいと言うわけにはまいりません。こういう議論も公の場でございますけれども、とすれば、むしろ法案を出していただいて公の場で議論というのも何の不思議もないなと、こういう気持ちもいたします。ぜひ前向きな御検討をお願いしておきたいというふうに思います。  次に、破防法の問題について二、三お聞きしたいと思います。  これも先ほど議論が出ておりましたけれども、一月三十一日にオウム真理教に対する破防法の適用問題につきまして棄却の決定がなされました。私は、この棄却の決定は極めて妥当な判断であろうというふうに考えている一人でございます。破防法につきましては、これまでもこの法律が憲法で規定をしている結社、言論あるいは思想、表現の自由に抵触をするものではないだろうかと、こういう疑問も呈せられてまいりました。そういう意味で、これまでこの法律の適用についても団体規制というのは今回以外には一回も適用されておりません。また、個人に対する適用も非常に慎重な限定的な判断がされてまいりました。そういう意味では、今回の結論というのは私は当然のことであろうというふうに思っているところでもございます。  ただ、だからといって、これですべてが終わったというわけにはまいりませんで、この決定の内容の中、理由の中でも指摘がされておりますけれども、今後、例えば被害者の救済、そしてまた一般の社会の中に今存在をしている信者の皆さんのこれからの社会の中での生活、こういうものに非常に私たちは関心を寄せていかなければいけない。そして、そういう本当に信仰という意味で社会の中で生活ができ、そしてこういう危険な方向へまた二度と向いていかないような、そういう社会復帰の道も考えていかなければいけないだろうというふうに思っております。  この棄却という決定を踏まえ、そしてその中でも指摘されている、こういう信者の社会復帰などの面、今後の問題について大臣としてはどんなお考えをお持ちでしょうか。
  73. 松浦功

    国務大臣松浦功君) 今回の決定については非常に厳粛に受けとめております。そして、棄却の理由の中に述べられております危険性が全くなくなったわけではないということでございますが、これに関しましては、公安調査庁が引き続き調査をしていくということで世の中の平静というものを保ってまいりたい、こう考えております。  また、最後にお尋ねの社会復帰の問題でございますが、被害者の中に二色あると思います。完全に社会復帰を考えてあげなければならない方々と必ずしもそうでない方とがオウムの中にも出てくると思います。社会復帰を何とか考えてあげなきゃいけない人については、これまでと同様、関係各省と十分連絡をとりながらその結果がよいように努力をしてまいりたい、こう考えております。
  74. 千葉景子

    ○千葉景子君 それと同時に、この破防法そのものの問題もあろうかというふうに思っています。  この破防法というのは、先ほども申し上げましたように、憲法のさまざまな基本的人権の保障、こういうものに抵触をする、そういうところもこれまでも指摘をされてまいりました。また、この審議経過を見ておりますと、この審議が非常に非公開性、公開をされないというそういう形で行われる、そういう手続になっていること、あるいはまたその手続が非常に一方的な、強権的といいましょうかそういうような側面を持っていること、それから証拠のあり方を見ましても、相手方といいましょうか調査の相手方の氏名などが明らかにされないとか、いわゆる白抜きの調書というようなものがほとんどであるというようなこと、これは確かに性質上そういう部分があろうかというふうに思いますけれども、そういうものをもとにして審議がされるということが本当に今の適正な手続ということを考えたときに妥当なものかどうかと、いろいろな問題点があろうかというふうに思っています。  そして、結果的には、この破防法そのものが、よく言われますように、伝家の宝刀を抜かないことに意味があって、抜いたら意味がないんだというような、これはちょっと言葉の使い方がどうかとは思いますけれども、そういう点もある。つくられた歴史的な背景、こういうことも考えますと、そろそろこの破防法、とりわけ団体規制などについては検討し直す必要があるのではないか、むしろ新しい時代における現代的な組織的な犯罪、こういうものに何らかの形でまじめに取り組んでいく、そういうことが必要ではないだろうかという気もするんですけれども、その点について大臣のお考えがございましたらお聞かせいただきたいと思います。
  75. 松浦功

    国務大臣松浦功君) まことに申しわけございませんが、スタートの考え方については意見の相違がございます。憲法違反などということは私どもは考えたことはございません。  そういう意味でスタートの考え方が違うということを前提にお話を申し上げたいと思いますが、オウム真理教による一連の凶悪事件、こんな事件が発生するということは容易に考えられない事態だと私どもは思っております。こういうことがあり得ますので、破防法というものはオウム真理教に対するだけのものではございません。将来そういう団体が出てこないだろうというふうに善意に私は思っておりますけれども、出てきた場合には困ります。そういう意味では団体規制的な法律というものが必要なくなったとは私は考えておりません。  したがって、破防法を廃止するというような考え方にはつながらないということだけを申し上げておきたいと思います。
  76. 千葉景子

    ○千葉景子君 これは時間がございませんので、また意見が全く異なる部分ではあろうかと思いますけれども、私の方から指摘だけさせておいていただきたいと思います。  次に、最高裁の方にお尋ねをしたいと思いますが、裁判の速記制度についてちょっとお尋ねをさせていただきたいと思います。  まず、現在、裁判につきましては、それぞれ調書などを証人尋問などで作成するわけですけれども、普通採用されておりますのは、書記官の皆さんがつくられる要領調書と申しましょうか、それから速記官が入ってそれを反訳する調書、こういうのが大きく使われている方式であろうかというふうに思います。  現状では地裁段階などでそれぞれの調書がどれぐらい使われているのか、速記官が入っている庁とそれから入っていないところもありますし、それから速記官がどのくらいの人数、体制としてあるのか、ちょっとその現状についてまずお知らせいただきたいと思います。
  77. 涌井紀夫

    最高裁判所長官代理者涌井紀夫君) まず、調書のつくり方で、速記録の形で調書をつくっておるものと書記官の要領調書の形でつくりておるものとの割合でございますが、これは実は全国的な調査というものをしておりませんので全国の正確な数字というのはわかりません。ただ、速記官が配置されております地方裁判所、そこでの速記が付される証拠調べの割合といいますか、人証を調べました件数のうちどれぐらいに速記がついておるかというところの数字ですと、これも庁によってかなり差はございますけれども、およそ平均しますと二十数%、全体の四分の一程度が速記録の形でつくられておる、残りの四分の三ぐらいが書記官の要領調書になっているという、そういう状況かと思います。  それから、速記官の人数でございますが、昨年の十二月現在の数字で申しますと、実はこの中には速記官になるために研修所でトレーニングを受けておる人も含んでおりますが、それを含めました総数で約八百七十名でございます。
  78. 千葉景子

    ○千葉景子君 ちょっとついでというか、地裁、支庁も、支所も入りますけれども、速記官が配置されている割合というのはどのくらいになるでしょうか。
  79. 涌井紀夫

    最高裁判所長官代理者涌井紀夫君) 地裁の本庁で申しますと、那覇の地裁以外の庁には全部配置されておりますが、地裁の支部になりますと、実は配置されている支部というのは相当大きな支部だけでございますので、ごく一部であるという、そういう状況でございます。
  80. 千葉景子

    ○千葉景子君 その今の調書の作成の仕方なんですけれども、その中で、今実情をお知らせいただきました速記官による調書の作成ですが、これは逐語録、逐語になりますので、ここでも速記をやっていただいていますけれども、それをそのまま現場で速記するということもあり、その内容については大変これまで評価がされているところであろうかというふうに思います。専門的な技術も持っているということにもなりますし、それから裁判官が交代をされる、そういうときにこういうきちっとした調書があることによって非常に内容がきちっと伝わることができる、あるいは上訴審での審理などに大変役に立っていると。  それからもう一つは、やはり速記自体が速記官という公務員がなされるということで、秘密保持などについては公務員の守秘義務という形で大変制度的にも保障されている。裁判は公開ですから、全部が秘密であればいいという意味ではありませんけれども。そういういろいろなもろもろの条件の中で大変高い評価を受けているのではないかというふうに思いますけれども、その点について裁判所ではどのように考えておられるのでしょうか。
  81. 涌井紀夫

    最高裁判所長官代理者涌井紀夫君) 裁判になってまいります事件のうち、どうしても非常に微妙な事実認定というのが必要になってくる事件というのが最近だんだんふえてまいっております。事件内容が非常に複雑で難しい事件、こういうものについて適正な裁判をやっていく上で速記録という、証人等の供述を正確に逐語的に記載しましたそういう調書が果たしてきた役割というのは非常に大きいものがあったと思っておりますし、これは恐らく裁判関係者の大方の皆さんから一致してそういう評価をいただいておるのではないかというふうに考えております。
  82. 千葉景子

    ○千葉景子君 最近、この速記の問題につきまして、いろいろな実情を踏まえて最高裁の方では新たなこれからの方向性というものを検討されているということをお聞きしているのですけれども、その内容についてちょっと御説明をいただきたい。そして、もしそういうことであれば、これまでの現行の速記官による調書の作成の問題点といいましょうか、そういうことがございましたら御説明をお願いしたいと思います。
  83. 涌井紀夫

    最高裁判所長官代理者涌井紀夫君) 実は、現在の裁判所の速記制度といいますのは、委員御承知のように、速記官が非常に特殊な速記タイプという機械を用いまして供述をタイプの形で符号にまず一たん記録する、それでその記録をもう一度速記官が読み直しながら文章に直していくという、こういう形での作業をやるわけでございます。  実は、この速記タイプを用いた速記という仕事自体、非常に精神的にも肉体的にもハードな仕事でございまして、文字どおり一言一句聞き漏らさないように精神を集中しながらタイプを打ち続けるということでございますので、実は一人の速記官が連続して速記をできる時間というのは非常に限定されております。裁判所の速記制度というのは、ある意味では非常に深刻な職業病との戦いという歴史を持っておりまして、速記官の立ち会い時間というものを延ばしたり、あるいはその立ち会いの頻度をふやしていきますと腕とか肩に職業病が出てしまうという、そういう非常に難しい問題がございます。  そういうことがあるものですから、現状で申しますと、およそ平均的なところで言えば大体速記官というのは一回当たりの立ち会いを一時間以内に限る、しかもそういう立ち会いを週に二回程度やるのが限度といいますか、したがいまして月間の立ち会い時間を計算してみましても八時間程度にしかならない。それを延ばそうとするとやはり健康上の問題が出てくるということでございます。  実は、最近の裁判では非常に難しい事件が質、量ともにふえてきておりますので、裁判官の立場からしましても、あるいは代理人である弁護士さんのお立場からされましても、何とか証人の証拠調べは速記をつけてほしいという御要望がある事件が非常に多いわけですが、今のシステム自体でなかなかこの需要に応じ切れなくなってきております。今後、事件の動向を見ますと、恐らくこういう傾向というのはさらにふえていくだろう、裁判の過程での逐語的な調書に対する需要というのはますます増大してくるだろうと思われるわけですが、今の速記システムではなかなかそういう増大にとても応じていけないのではないかという、そういう一番大きな問題を抱えておるわけでございます。  それだけではございませんで、実は裁判所が使っております速記タイプというのは国内でも裁判所にしか需要のない機械でございますので、年間の必要台数というのも数十台程度のものでございます。これを民間のメーカーがつくってくれておるわけでございますけれども、採算の問題もございまして、いつまでこの製造が確保できるかという非常に将来が危惧されるような状況になっております。  また、速記官といいますのは、最近では高校を卒業されたくらいの年齢の方に二年間非常にハードなトレーニングをやっていただきまして速記官の技術を身につけていただくわけなんですが、全体的に大学への進学率が高まってきたというふうな状況もございまして、速記官になってもらえる適性を持った方を多数確保するということが非常に難しくなってきております。  こういうふうな状況を踏まえますと、これからの裁判あり方というものを考えていく場合に、やはり今のシステムではなかなか逐語調書の要望にこたえていけないのではないか。  他方、民間の状況を拝見しますと、会議録でありますとか対話録でありますとか、そういうものを逐語的につくっていくというそういう市場というのは非常に大きくなってきておりまして、そういうところは現在民間ではむしろ速記技法を使わないで録音テープでまず会話を記録されている、その録音テープを聞きながらそれを文字に起こしていくという、いわゆる録音反訳方式というふうに呼ばれておりますけれども、そういう方式がどんどん広がってきております。  そういう状況を踏まえまして、裁判所の方でもむしろこれからは録音反訳方式を採用していくべきではないかということで、そういう方式の採用に向けて今方針を決定しつつあるところでございます。
  84. 千葉景子

    ○千葉景子君 私も、非常に事件内容が複雑になり、そして微妙な内容を含んでいる、そういうことが多くなってくる、そういう状況の中で多くの皆さんが速記官の入った法廷を求められるというふうに思うんですが、今のような問題点があることはよくわかります。それから先ほども、地裁の支部ではほとんどまだ速記官が入っていないという状況もあり、やはり書記官による要領調書だけでは不十分な部分がたくさん出てきているだろう。そういう意味で、現代の裁判、しかも適正でそして迅速な裁判に合う何らかの新しい制度を考えていくということが必要だろうというふうに思いますし、そういう意味で録音反訳というのも一つの方向ではあろうかというふうに思うんです。  ただ、お聞きしたところによりますと、その反面、せっかく非常に評価もあるこの速記官の制度をいずれは廃止していくといいましょうか、養成をストップしていくというお話も聞いています。確かに負担も大きいですし、それから機械の製造の問題もあることはわかるんですけれども、これだけ評価もあるしそれから需要もある。何かやはりこれも速記官による調書の生かし方、そしてその足りない部分については録音というものも当然検討しなければいけないと思いますけれども、何か録音にしたらもう速記の方は要らない、あるいはなくしてしまうという考え方をとる必要は全然ないんじゃないかと。何か評価のあるものを生かしていくことも考えていかなければいけないのではないかというふうに思うんですけれども、その点については今後どうお考えでしょうか。
  85. 涌井紀夫

    最高裁判所長官代理者涌井紀夫君) やはり問題は、録音反訳方式で従前の速記録と同じような正確な調書というものができるかどうかという点が一番大きなポイントになってくるかと思います。実は我々の方もそこがいろいろ心配であったものですから、昨年六月から半年間、全国の裁判所でかなり大がかりな録音反訳方式の実験をやってまいりました。実験時間といいますか証拠調べの総時間でいいますと二千時間を超えるような実験をやって、現実にこの録音反訳方式で調書をつくってみたわけなんです。その尋問にお立ち会いになった弁護士さんからも個々にその調書のできばえについての御意見をお聞かせいただいたんですが、九割方の弁護士さんからはこういう方式でも従前の速記録と変わらない正確な調書ができるという御回答をいただいております。ですから、調書のできばえという面ではこの新しい方式で速記録と同じものができると言っていいんじゃないかという、そういう認識を持っておるわけでございます。  そういう認識を前提にいたしますと、やはり今までのような二年間の非常にハードなトレーニングを伴うような形での養成を続けていくことが裁判所自体にとっていいかどうかという問題があろうかと思うんです。速記の全体の容量としては録音反訳方式を使った方が飛躍的に大きくなるということは、これは明らかでございますので、そういった点とか、あるいはまた速記の仕事をしてもらうために裁判所に入っていただく若い方の将来という面も考えましても、これは恐らく機械の問題等もございますし、さらに最近のような目覚ましい技術革新の時代ですので、将来どういう技術が出てくるかというような予想もできないような部分がございます。今のシステムで安定的に、いわば定年までと申しますか、仕事をしていただけるという見込みがとても立たない、非常に不安な職業ということになってしまうわけです。  そういうふうなことを考えますと、やはりこれからの逐語調書の作成を担当していただく人というのは、従前のような機械速記じゃなくて、この新しい録音反訳方式という形で担当していただく、そういう人として養成し採用していく方がいろんな面で見て合理的じゃないかと、こういうふうに考えているところから、速記官の新規の養成は停止しようという、こういう方向で停止を今考えておるところでございます。
  86. 千葉景子

    ○千葉景子君 御説明は十分お聞かせいただきました。ただ、先ほど最初にも、裁判所の方でも大変これまで評価をされていた、そういう速記の制度について、そのよさといいましょうか、やっぱり十分にそれを考慮されて、今後の本当にあるべきシステムというものをぜひ検討いただくことを私から要請いたしまして、質問を終わらせていただきたいと思います。
  87. 橋本敦

    ○橋本敦君 友部議員が起訴されるという事態に至りまして、まことにゆゆしい問題でございます。私は、この友部議員関連のオレンジ共済問題についてお伺いをさせていただきたいと思います。  最初に警察庁にお伺いをいたしますが、そもそもこの友部議員関連の詐欺事件の全体像としては、およそ何人ぐらいの人たちから総額どれくらいの金を集めたか、現在の捜査の状況としてどうなっているか、お知らせいただきたいと思います。
  88. 園田一裕

    説明員(園田一裕君) お答え申し上げます。  年金会オレンジ共済による広域多額詐欺事件につきましては、平成六年六月から平成八年十月までの間、オレンジスーパー定期等の元本名下に九名の者から約一億九千万円の金銭を詐取したという事実で起訴されたということを承知しておりますが、これまでの捜査によりまして、同様の方法で約二千六百人から八十億円以上を受け入れておったものというふうに見ております。
  89. 橋本敦

    ○橋本敦君 起訴はごく一部でありますが、実に膨大な、また重大な詐欺事件であります。  刑事局長にお伺いいたしますが、今のお話のように、起訴された公訴事実はこのごく一部ですが、今後この関係について、捜査の結果、全面的な詐欺事件としてもかなりこれからも追起訴その他、そういった方針で犯罪の全容解明に検察庁は当たるものと思われますが、今後のそういった方向はいかがですか。
  90. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) ただいま委員お尋ねのように、このオレンジ共済事件をめぐる詐欺事件につきましては、警察当局が第一義的に捜査いたしまして、これに検察官といたしましても全面的に協力いたしまして、現在鋭意捜査を進めてきたところでございます。  先ほど指摘にございましたように、そのうちのある部分につきまして公訴を提起したということでございますが、今後とも検察といたしましては、事案解明に当たり、鋭意所要の捜査を進めてまいるものと考えております。その中身につきましては、検察当局が捜査の経過につきまして判断してまいることと考えておりますので、御理解願いたいと存じます。
  91. 橋本敦

    ○橋本敦君 そのとおりですが、現状として、一般的に言えば、今後追起訴も大いにあり得るという状況だというように見ていいのではありませんか。それは当然ではありませんか。
  92. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 所要の捜査を進めてまいりまして、まさに事案の解明ができまして、法と証拠により適正に処理してまいるだろうと考えております。
  93. 橋本敦

    ○橋本敦君 適正な処理の中にはそういった方向が当然考えられるわけであります。  法務大臣にお伺いしたいのでありますが、所信表明でも最近の犯罪について厳しい指摘がございました。中央省庁幹部公務員による悪質な汚職事件についてもお触れになりまして、こういった犯罪に対して一層今後とも検察態勢の充実で対処していくというお話がございました。所信表明には触れられておりませんが、まさにこのオレンジ共済事件も今全国民が注目する重要な事件であることは言うまでもございません。友部議員が一部につき起訴されたという今日の時点で、法務大臣としてこの事件についてどのような御認識、お考えかどうか、伺いたいと思います。
  94. 松浦功

    国務大臣松浦功君) ただいま御指摘をいただきましたように、オレンジ共済組合の詐欺事件は、被害額も非常に大きいように報道されておりますし、また関連している方々も非常に数が多いという意味では、これまでにない異常な重要な事件であるというふうに認識はいたしております。
  95. 橋本敦

    ○橋本敦君 それで法務大臣、これまでにない異常な重要な事件であるというだけでなく、さらに友部議員という国会議員が、つまり国会議員がこの詐欺事件の事実上の主役として登場しているという意味において国会としてもゆるがせにできない事件だということですね。  そこで、この問題について警察当局にお伺いいたしますが、友部議員らが預金事業で集めた金、その全体の八割近く、つまり六十億円以上が実際、九五年、九六年、友部議員が立候補の決意をし、それに向かって準備をし始めて以後、参議院議員に当選して以後も含めて、この時期に集中しているという状況があるというように私ども見ておりますが、実情はいかがですか、警察に伺います。
  96. 園田一裕

    説明員(園田一裕君) 受け入れた金銭の時期につきましては、それが平成七年の参議院議員通常選挙の以前か以降か、詳細な点につきましては現在解明しておるところでございますが、これまでの捜査では、平成七年と平成八年の二年間で相当額を受け入れておったものというふうに見ております。
  97. 橋本敦

    ○橋本敦君 その相当額というのは全体の何割ぐらいに当たるという判断ですか。
  98. 園田一裕

    説明員(園田一裕君) お答え申し上げます。  全体が約八十億円以上というふうに見ておりますので、そのうちの七、八割方だというふうに見ております。
  99. 橋本敦

    ○橋本敦君 その問題で私ども調査でも、友部氏は立候補を決意して以後、新進党からの出馬を決めて、九五年七月の参議院選挙に向けて、共済組合の代理店経営者を集めて特別のプレミアムをつけるなどして勧誘をするということを強力にやったという事実を聞いております。そういう事実について承知しておられますか。
  100. 園田一裕

    説明員(園田一裕君) この事件につきましては、金銭の受け入れた方法等につきまして現在全容の解明に努めておるところでございますが、具体的な内容につきましては答弁を差し控えさせていただきます。
  101. 橋本敦

    ○橋本敦君 状況について具体的な細かい説明は要りませんが、ある程度の状況はわかっている限り国会の国政調査要請にこたえて答弁してほしいですね。  今、私の手元に一通の書面がありますが、これは平成七年八月吉日ということになっております。友部氏が当選した直後であります。この書類は、「財団法人21世紀青少年育英事業団設立(仮称) スーパー定期記念セールのお知らせ」と、こう書いてあります。  どういうことかといいますと、「いよいよ本年九月、「財団法人21世紀青少年育英事業団」の設立認可のはこびとなりました。つきましては、オレンジスーパー定期の実績残高証明を報告することになり、ここに更に実績を高めるため、下記により「スーパー定期・財団法人21世紀青少年育英事業団・記念セール」を行うことになりましたのでお知らせ致します。」、こう書いて、自分が議員になった直後にこの財団設立を、これをうたい文句にしてさらに金を集める特別記念セールを行うという通知であります。  これによりますと、これは実際問題として大変な利率を予定しておりまして、一年定期七%、三年定期で実に一〇%、今の低金利時代に驚くべきことである。客が一千万一年物に預けますと六十七万四千円の利息が入る。そしてその支部代理店は七十万円のバックマージン、手数料が入るという仕組みであります。  こういうことで一体どれだけの金が集められたか。情報によりますと、九五年三十億円、九六年三十六億円ということが警視庁の調べでもほぼ明らかになっておると思いますが、先ほどあなたがおっしゃった七割近い金、つまり六十六億円を超える金というのはこの記念セールの問題と時期を同じくしていると思いますが、こういう文書が出されて記念セールがやられた事実は御存じですか。
  102. 園田一裕

    説明員(園田一裕君) 年金会オレンジ共済が御指摘のような点も含めましてさまざまな方法で金銭を受け入れていたということにつきましては承知いたしておりますが、その具体的な内容につきましては、現在捜査中の事項でございますので、答弁は差し控えさせていただきます。
  103. 橋本敦

    ○橋本敦君 詳細はいいです。この事実は知っているということですね。  そして、この事業団の理事には、理事長が友部議員本人、理事に小沢辰男氏、鳩山邦夫氏、初村謙一郎前衆議院議員、こういう名前のほか、学園関係者などを列挙してそういう宣伝をしていたということは、これはもうよく知られているとおりでしょう。  そこで、この九月にいよいよこの財団法人が認可をされることになりました、「認可のはこびとなりました。」というのは、これはうそじゃないですか。まさに認可をされなかったんですよ。認可申請中であると書いてない、「認可のはこびとなりました。」。国会議員になって自分の地位を利用するだけじゃなくて、さらに新たな虚偽のことまで申し立ててこういう金集めをするなんということは、これは本当に悪質きわまりない、もう許せないと思いますね。  ですから、この事件について言うなら、参議院議員になって、同僚の参議院の方にスーパー定期を勧めたという話も御存じのとおり新聞にも出ておりますけれども、参議院議員になって平気でさらに詐欺行為を続けているという驚くべきことなんですね。  本当に私は国会として許せないことだと思います。こういうような人物を、これを公認して選挙に出し当選をさせたという政党の責任は極めて重大であるし、国会としても大問題だと思いますが、大臣、これらの点についてどうお考えですか。
  104. 松浦功

    国務大臣松浦功君) 比例代表選挙における名簿登載者の選定あるいは当選順位の決定、これは各名簿届け出政党等において所定の手続で行われる、こういうことでございますので、お尋ねの点については私としては御意見を申し上げる筋合いではないんではないかと、こう思いますので、お許しを願いたいと思います。
  105. 橋本敦

    ○橋本敦君 大臣の立場上、わかります。わかりますが、細川氏自身も、この問題については、これはもう細川氏自身の言葉からいっても、これについては不明を恥じると、こう言っておりますし、新進党の西岡幹事長も、あるいはまた西岡幹事長だけではありません、党首の小沢氏自身の発言でも、まことに遺憾であり、この点についてはうみをすべて出し尽くす覚悟だ、不正、不法行為があったら厳正に対処する決意だとして、みずからの責任を認めておられるのは当然だと思いますね。  私は、国会も全面的に解明をする責任がある、政府も国民信頼にこたえて徹底的に解明する責任がある、こういう問題だと思いますが、大臣いかがですか。
  106. 松浦功

    国務大臣松浦功君) 全く先住のおっしゃるとおりだと思います。特に、私どもは治安の維持ということと、国民の権利を保全するという立場が一番法務省の重要な使命だと思っておりますので、そういう観点からも現在検察当局において鋭意捜査中でございます。その過程においていろいろな事実が出てくると思いますが、出てきた事実につきましては法と証拠に基づいて厳正に処置を検察当局がしてくれるものと期待をいたしております。
  107. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、次に警察庁にお伺いしますけれども、現在、使途不明金と見られるものは三十数億とも二十八億とも言われておりますが、衆議院でも答弁されておりますが、幾らぐらいあると見ておられるんですか。
  108. 園田一裕

    説明員(園田一裕君) 本件につきましては、本件詐欺で得た資金の使途等も含めまして、現在その全容解明に向けて鋭意捜査中でございますが、捜査の具体的な内容につきましては答弁を差し控えさせていただきます。
  109. 橋本敦

    ○橋本敦君 衆議院の方で使途不明金が約二十八億あると答弁されているじゃないですか。
  110. 園田一裕

    説明員(園田一裕君) 現在までのところ、いろいろと解明を続けておるところですけれども、いまだもって未解明というものになりますと二十数億程度というふうに承知しております。
  111. 橋本敦

    ○橋本敦君 いまだもって未解明というそのことの中に、あるいは一部解明されておるかもわかりませんが、友部議員のいわゆる政界工作資金の流れがどうなのかという次に重大な問題があるわけですね。  それで、この問題について話を伺ってまいりますが、これまでの国会論議でももう明らかになっておりますことですけれども、もしもこの政治工作資金ということが、友部議員の新進党からの立候補についての候補者の選定、順位の決定ということに向けてこれが出されたものであるということになれば、もろにこれは公選法の問題になってくるということはもう既に議論されております。  ですから、もしもそういった政治工作資金の流れがあるとすれば、公選法の二百二十四条ですか、これの関係での問題が出てくるし、それだけでなくて、政治家に資金の提供が政治献金として行われ、それが届け出されていないとなれば、その政治家の政治資金規正法違反という問題が起こるし、そういうことと別に、金が渡されて、それがその議員の所得ということに使われて、それが税務申告されていなければ所得税法違反という問題が起こるし、こういった使途の流れの徹底解明は、今私が指摘した犯罪の有無にかかわって極めて重大な問題だと思いますが、刑事局長のお考えはいかがですか。
  112. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) ただいま委員指摘のさまざまな観点ということは、一部報道されたこともございますし、御論議があることは存じておるわけでございますが、まさに委員も御指摘のとおり、刑罰権の行使に当たりましての法の適用ということになりますと、具体的に、証拠によりどういう事実が認められるかということを捜査当局において判断いたしまして、それに対して当てはめていくということで、そこにはまさに法と証拠に基づく厳正な判断ということが必要になるものだと思います。  そういう意味で、法務当局といたしまして、どういう観点からとか、あるいはこういうことについてということを申し上げるのは適当でないと存じますので、大変恐縮でございますが、答えを差し控えさせていただきたいと存じます。
  113. 橋本敦

    ○橋本敦君 私が言うのは、観点の問題よりも、そういう事実が出てくれば今私が指摘した法律違反の問題が出てくるのではないか、それは理論的には当たり前ではないかと。単純なことなんですけれども、どうですか。
  114. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 一般論としてはそういうことになろうかと思います。検察当局はそのように取り扱うものと存じます。
  115. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、この問題では政治工作資金が動いたという疑惑は払拭し切れないというところにこの事件の深刻さがあるわけです。だから、国会でも証人喚問を含めて徹底的に解明しなきゃならぬし、大臣がおっしゃったように検察庁としても、警察庁としても全力を挙げて全容の解明が国民の期待にこたえて必要になっている事案であるわけです。  御存じと思いますけれども、参議院選挙直前の九五年七月四日、港区のホテルオークラで友部議員の実質上の出陣式とも言われる友部達夫必勝全国支部長大会なるものが開かれた。これはテレビ等で放映されてごらんになった方もあるかと思います。そのときには、党首の海部元首相、細川元首相が出席をして激励されておるんですね。そして、参議院比例名簿の決定を新進党がやったのが六日の未明ですから、まさにその直前も直前、最も重要な時期の集会であるわけです。  この席上、細川氏は、私どもがその細川氏のあいさつを起こしたもので正確に言いますと、万雷の拍手を受けて登壇されて、きょうは、今度の参議院の選挙で新進党から比例区で何としても上がっていただかねばならないということで、私ども一生懸命推挽申し上げております友部さんの会ですと。何としても上がってもらわなきゃならぬ人だと。これはあいさつにしろ、はっきりそう言っているわけですね。そこで、友部さんが比例区の中で、新進党の中でいいポジションを得られますように、私どもも一生懸命そのつもりで、恐らくこれから二、三日の間に決まると思いますが、全力でそういう努力をさせていただきますと、こう言ってあいさつしているわけですね。だから、極めて深く関与していることはもう間違いない、細川元首相。  そこへ党首の海部氏も出席をしている。全くこれまで無名の新人で、供託金まで没収されるという、そういう状況で選挙に出て、見込みもなかった友部氏が、選挙の直前に、党首が出席をする、そして日本新党枠で出ていくんですが、その元総理の細川氏が出席してここまであいさつをするというのはこれは全く異例ですよ。こうなるまでに何らかの政治工作がなされた、その結果だと見るほかないですよ。  我々の調査によりますと、平成六年、九四年十月上旬に新渡都議が友部氏に初村謙一郎氏を紹介している。そこからそのルートでの工作が始まった。これと別に、初村氏が政治ブローカーだと言われる、不動産もやっておられる斎藤衛氏に紹介をして、友部氏が政界工作を斎藤氏に依頼をして、これ以後始まったという状況だというように私どもは調べております。九五年の二月に友部氏が新進党の新人候補コンテストに合格をすると。そして、その年の六月には都内のホテルで政治ブローカーと言われる斎藤氏の立ち会いのもとで友部達夫氏と次男の百男氏が細川氏と会って、そこで記念写真を撮ると。その記念写真というのはいろんなところで使われていますが、ここにも出ていますね、(資料を示す)細川氏と並んで。そして、そういう状況があった翌月に今私が指摘した選挙直前の総決起集会と、こうなっていくわけですね。  こういう状況の中で、我々の調査では政界工作には二つのルートがあったと言われているようにつかんでおるんですが、その一つは初村謙一郎前衆議院議員と日本新党の新渡都議のルートであり、一番重要なのが、今お話しした初村氏とそれから政治ブローカーと言われる斎藤氏のルートと。この二つのルートが政界工作としてかなり大きく動いていったということが我々の調査で明らかなんですが、こういった関係について、警察庁はこの点について関心を持って調べておりますか。
  116. 園田一裕

    説明員(園田一裕君) お答え申し上げます。  御指摘のような点に関しまして、いろいろと報道がなされておるということは承知しております。  現在、この事件につきましては捜査中でありまして、個々の事案について捜査しているかどうか等につきましては答弁は差し控えさせていただきますが、いずれにしましても、この年金会オレンジ共済による広域多額詐欺事件につきましては、現在、本件詐欺によって得た資金の使途の事実関係も含めまして、その全容の解明に向けて鋭意捜査中であるということで御理解願いたいと思います。
  117. 橋本敦

    ○橋本敦君 それはもうおざなりの答弁で、わかります。全容解明の鋭意捜査中の中に、今私が指摘したような政治工作のルートを含めて、重大なそういった政治工作そのものがどう行われたかということについて関、心を持って調査していかなきゃだめじゃないですか。どうなんですか。
  118. 園田一裕

    説明員(園田一裕君) 本件に関しましては、いろいろと報道がなされていることも承知しておりますし、そういうものに対して十分解明すべきだという御指摘のあることも十分承知しております。現在、詐欺事件の使途の解明ということで鋭意捜査中でございます。
  119. 橋本敦

    ○橋本敦君 表向きは詐欺事件の解明だが、その解明の中に今私が指摘した問題もあり、その情報も承知しながらやっているというんですから大いにやってもらいたいですよね。そういったところに友部氏側から五億円流れたとかなんとかという話でしょう。逮捕された石崎氏のメモでは、私どもが入手したのでは、選挙関係と政治工作に十億円流れたというんですよ。ですから、そういう意味では、この政治工作資金の流れの全容解明というのは、詐欺事件の莫大な金の流れの全容解明の中の極めて大事な部分としてこれは極めて重大な問題。  そこで聞きますけれども、全容解明はまだまだこれからですわな。時間もかかるでしょうよ。そしてまた大変なことでしょう。全力を挙げて警察もそれから検察庁も協力し合ってやっていただいていることに私は期待をしておるんですけれども、要するに、政治工作資金と見られる金が莫大な使途不明金も含めそういった金の中で流れた可能性がある、あるいは疑いがある。こういった状況については、現時点の捜査としては、その政治工作資金の流れが、だれにどれだけとは言いませんよ、我々は調べているけれども、しかし、政治工作資金と見られる金がこのオレンジ共済の詐欺事件の中で動いた疑いがあるというそういった状況については、そこをにらんで捜査しているというのはこれはもう今当たり前じゃないですか。警察、どうですか。
  120. 園田一裕

    説明員(園田一裕君) 先ほども申し上げましたとおり、この詐欺事件につきましては、本件詐欺によって得た資金の使途の事実関係も含めて現在捜査中でございます。  なお、捜査の過程で他の刑罰法令等に触れる行為がございますれば、法と証拠に基づき厳正に対処してまいりたいと考えております。
  121. 橋本敦

    ○橋本敦君 その他の刑罰法令に触れる問題は私が指摘した三つしかないんだよ。だから、政治工作資金、公選法違反にも直結するかもしれないそういった問題について、そういう容疑も含めて今解明をしているというのはこれははっきり言っていいじゃないですか。どうですか。当たり前のことでしょう。
  122. 園田一裕

    説明員(園田一裕君) 繰り返させていただきますけれども、使途先の事実関係等も含めて現在捜査中でございます。当然、捜査の過程で刑罰法令に触れる行為がありましたら、その実態に即し、法と証拠に基づき厳正に対処する方針でございます。
  123. 橋本敦

    ○橋本敦君 触れる刑罰法規があればというその中に、公選法二百二十四条の三ということも視野にあるということはこれは言えるでしょう。刑事局長どうですか。何もわからぬのに調べるだけじゃ話にならない。捜査方針というのがある。
  124. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 委員お尋ねの状況につきまして、捜査当局としてもあらゆる観点から検討してまいるものと存じます。
  125. 橋本敦

    ○橋本敦君 警察庁の方も、私が指摘した問題はこれは軽視しない、重要な問題として受けとめて捜査をやってくれますか。
  126. 園田一裕

    説明員(園田一裕君) この問題につきましては、いろんな観点から報道がなされておりますし、またいろいろと十分な事実解明が必要だというような御指摘も十分承知しております。現在、警察といたしましては、本件の全容解明に向けて鋭意捜査中でございます。
  127. 橋本敦

    ○橋本敦君 この国会で私が指摘した重要な問題も頭に置いて鋭意捜査をやるかと、こういうことを聞いているんですよ。私の言ったことを相手にしないの、どうなの。そんなことはないだろう。
  128. 園田一裕

    説明員(園田一裕君) 先ほど申し上げましたのは、いろいろと御指摘をいただいておると、委員の御指摘も含めまして、いろんな観点から捜査を進めてまいるということでございます。
  129. 橋本敦

    ○橋本敦君 それがこの事件について大事なんだよ。  最後に、時間がなくなりましたので法務大臣の御見解を伺って終わるんですが、ロッキード事件のときは、まさに我が国の民主政治の根幹にかかわる、国政の重大な根幹にかかわるということで、国会の国政調査権にこたえて、捜査が結了した段階法務大臣国会に捜査の結果を御報告なさいました。秘密会で報告された部分もありました。それからまた、政治的、道義的責任の解明という国会要請にこたえて灰色高官の公表ということもありました。  この事件が今後どう進展をしていくか、これはわかりません。わかりませんが、いやしくも政治工作ということがあったという事実が明らかになってくる状況になれば、これは国会にとって大問題ですし、政治にとって大問題でありますから、こういった先例も参考にされて、将来この政治工作という問題が明らかになってきたという、法と証拠に基づいた事実が出てきた段階においては、国会の国政調査権にこたえてロッキードの先例に照らして報告していただくのは私は当然だと思いますが、今すぐとは言いませんが、そういったことも含めて将来御検討しておいていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  130. 松浦功

    国務大臣松浦功君) 国政調査権に全面的に御協力を申し上げるということは当然のことだと思っております。ただ、捜査の妨害になるような事項の公表ということはできるだけ避けて、一つでも多くの事件を摘発することによって国政の安定を図っていくということを踏まえなければならないと思います。  その後半の部分の事情というものをごしんしゃくいただきたいと思いますが、そうでない限りは全面的に御協力を申し上げるというつもりでおります。
  131. 橋本敦

    ○橋本敦君 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。
  132. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) 本件に対する質疑はこの程度といたします。     —————————————
  133. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) この際、小委員会の設置に関する件を議題といたします。  民事訴訟法改正に伴う情報開示について総合的に検討するため、小委員九名から成る民事訴訟法改正に伴う情報開示に関する小委員会を設置いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  134. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) 御異議ないと認めます。  つきましては、小委員及び小委員長の選任は、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  135. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) 御異議ないと認めます。  それでは、小委員に岡部三郎君、久世公堯君、志村哲良君、中原爽君、浜四津敏子君、山崎順子君、照屋寛徳君、菅野久光君及び橋本敦君を指名いたします。  また、小委員長に岡部三郎君を指名いたします。  なお、小委員及び小委員長の辞任の許可及びその補欠選任、並びに小委員会から参考人の出席要求がありました場合の取り扱いにつきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  136. 続訓弘

    委員長(続訓弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時三十四分散会