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1997-06-03 第140回国会 参議院 文教委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年六月三日(火曜日)    午前十時二分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         清水嘉与子君     理 事                 小野 清子君                 鹿熊 安正君                 石田 美栄君                日下部禧代子君     委 員                 井上  裕君                 釜本 邦茂君                 世耕 政隆君                 田沢 智治君                 馳   浩君                 菅川 健二君                 林 久美子君                 山下 栄一君                 本岡 昭次君                 阿部 幸代君                 江本 孟紀君                 堂本 暁子君                 長谷川道郎君    国務大臣        文 部 大 臣  小杉  隆君    政府委員        文部大臣官房長  佐藤 禎一君        文部省教育助成        局長       小林 敬治君        文部省高等教育        局長       雨宮  忠君        文部省学術国際        局長       林田 英樹君    事務局側        常任委員会専門        員        青柳  徹君    説明員        人事院事務総局        給与局給与第一        課長       出合  均君        総務庁人事局参        事官       大西 一夫君    参考人        北陸先端科学技        術大学院大学長  慶伊 富長君        広島大学教授・        大学教育研究セ        ンター長     有本  章君        名古屋大学名誉        教授       沢田 昭二君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○大学教員等任期に関する法律案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  大学教員等任期に関する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人として、北陸先端科学技術大学院大学長慶伊富長さん、広島大学教授大学教育研究センター長有本章さん及び名古屋大学名誉教授沢田昭二さんの三名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人皆様方には、大変御多用のところを本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。  本日は、大学教員等任期に関する法律案につきまして、皆様方から忌憚のない御意見を拝聴いたしまして、本案審査参考にいたしたいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  つきましては、議事の進め方でございますけれども、まず、慶伊参考人有本参考人沢田参考人の順序で、お一人十五分以内で御意見をお述べいただきまして、その後、各委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、御発言は、参考人委員皆様方、着席のままでお願いいたしたいと思います。  それでは、まず慶伊参考人からお願いいたします。慶伊参考人
  3. 慶伊富長

    参考人慶伊富長君) お招きいただきました慶伊でございます。参考人として意見を述べさせていただく機会をお与えいただきまして光栄に存じます。  大学教員等任期に関する法律案に私は積極的に賛成するものでございます。  その理由はいろいろございますが、私、大学を卒業いたしましてから東京工業大学教授になるまでに三つの大学を経験いたしました。その後二十数年間教職にあります間に、世界研究先進国ほとんどに滞在をいたしました。つぶさに日本研究あり方世界あり方との違いを見聞いたしました。そういった経験を踏まえまして、日本大学活性化のためには教員流動性を飛躍的に向上させる必要があるとかねがね考えておったところでございます。  幸い、御紹介いただきましたように、新設の北陸先端科学技術大学院大学のただいま運営の責任をとらせていただいておりますが、これの創設の準備に私は主査といたしまして関係いたしました。  その際に、先端科学技術分野に置かれる大学院レベル大学におきましては、研究教育活性化大学院レベルでなければならないということと、現在の科学技術における国際競争力の激しい中におきまして、日本科学技術に対する基礎研究部門の中核としての実力を維持するためには、絶えず大学をそのレベルにもっておかなきゃならない、これは至上命令であると考えておりましたし、そのためには教員流動化は欠かせない、そういうことでございまして、北陸先端科学技術大学院大学並びに奈良、二校ございますが、この両方の設立の趣旨は、国会の御審議をいただいて通過したわけでございますが、教員流動化を確保すること、これは明文化してございます。そういうことでございまして、流動化活性化に対して欠くべからざるものであると考えているところでございます。  この任期制の導入が流動化に対して大変有効であるという考え方でございまして、これは私的にかねがね京都大学基礎研究所あるいは名古屋大学に一時ありました、最近は変わっていると思いますが、物理学教室においてあるいは東大物性研究所において試行あるいは実施されつつあるところでございます。しかしながら、すべて紳士協定に基づくものでございます。私も北陸でもって現在助手諸公に対しては任期制を導入したところでございます。助教授教授に関しましては、法律制定のこの時期を経ました後でしかるべく考えたい、そういうふうに思っておるところでございます。  私的な紳士協定でやるならばどういうことが起こるか。非常にスムーズにいっているように見える場合もございますが、大学の全体の感じといたしましては、あくまでも紳士協定でございまして、事実、私が勤務しました某大学におきまして、ある助手の人がポストがありませんで、それに対して仕方がありませんので教授の人は無理してポストをほかの方から二年間だけ借りてきたんですが、その二年間でいいかということで本人納得ずくで就任したんですけれども、二年後には案の定組合に駆け込みまして、法律違反であるということで大変教授あるいは貸した方の学科も困ったという事例を私は実際に見聞しております。  さて、法律的制定を得ますならば、これはパブリックになる。そういう点で、今までプライベートに私的に行われたものがパブリックになるということでございまして、この効果は例えば、御承知のように教授は現在、東大、東工大が六十歳定年、ほかの国立大学は六十三歳あるいは六十五歳という定年制をしいております。そういたしますと、例えば四十五歳で教授になりますと二十年間教授職を在職するわけでございまして、四十五歳の教授ができたときに助教授を非常に若く選んでも三十五歳あるいは三十七歳。そういう形になりますと、教授が二十年間在職いたしますと、やめたときにはちょうど助教授は五十歳を超えておるわけでございます。  それから助手の人は、例えば三十五歳の助教授をつくったときに、大学院を出まして二十七歳、あるいは一年浪人して二十八歳、そういうようなところでございますので、そこら辺で助手になりまして、それから教授がやめ、助教授が五十数歳、自分はやっぱり五十歳近く、五十歳を超えるということになりかねませんので、一般には教授が一代いる間に助教授は二代ぐらいかわるあるいは三代かわる、それから助手はそれぞれ数代、数人がかわるという格好になっております。  そういう形で、事実上は一カ所にいたくてもいられないということが起こりますが、これは大学としてその人間の適性を考えて、その中から選別が行われるということでは現状ありませんので、御承知のごとく、教員人事権教授会専決事項でございます。教授会において審議をいたしましてそこで決定をいたしますが、実質的には各学科専門家集団による決定でございまして、それを教授会としてはボーティングにかける、投票するという手続をいたします。  そういう点で、一般にうまくやっているところも多いわけでありますが、間々、教授の私的な判断あるいは少数集団による判断、これが間違うこともあるわけでございます。ハーバードといえども、ある助教授を選任するときにこれに反対でございまして、それが後にイギリスに帰ってノーベル賞をもらった例がございまして、いまだにハーバードでしまった、しまったと言っているのは有名な話でありますが、間違うこともあるわけであります。いずれにしましても、パブリック本人も納得できる、そういった国際的な基準に従う、あるいは国内的な基準でもようございますが、専門家集団における専門家集団による専門性判断、これが大学自治権の尤たるものでございます。  そういう点で、教授会専決事項が与えられておりますが、これがプライベート化する、ローカライズする、局所化することを避けなければならないわけでありますが、現在はやはり流動性を高めるためにいろいろやりますが、えてしてうまくいかない場合も多うございます。特に、これが大学の方針に従って採用し得る教員任期制ということになりますと、これが施行された暁にはいわゆる大学人社会に対するパブリックな、公的な意味での流動性を支える任期制が定着をすることになります。  そういうことによって大学としては、若い人は若いときに研究のトライアルをやる、試行をやる。そういうところで実力を発揮して、それを学科のみではなくて大学学部あるいは大学全体の評価、こういったものにたえ得る、それをパスしたと、そういうことによって本人がそこに昇任の機会を得るなり、あるいはその機会が得られない場合にはしかるべく、それまで得られた知識、能力がございますから、その人に向いた職員ポストに、他大学あるいはいろいろの高等教育機関ございますので、そういうところに行ってもう一回磨き直す、そういった機会になると存じます。  特に私は、例えば現在私どもの方では助手任期制をしいておりますが、任期制をしくことによって助手方たちが、若い方たち自分能力研究成果によって問う、あるいは教育成果によって問う、そういう機会を公的に大学として認めるということに相なります。これは大変大事なことであろうかと存じます。これがしかれた暁には、対象たる教員には研究あるいは教育に対する権利を当然大学としては保障する義務を生じますし、評価を公平にする、評価公平性を高めるために大学として評価基準教育研究において明らかにする必要がございます。明らかにする義務権利を発生するという点で重要な意味を持っておると考えておるところでございます。  施行に関していろいろ不測のことも起こるかもしれませんが、世界の趨勢は、特に私ども理工系におきましては、例えば研究業績評価基準は国際的にはっきりしております。日本の中で通用する、あるいは自分大学の中だけで通用するというものではございませんので、そういう点で国際的な評価基準、これを大学の中に明らかに持ち込むことによって、それをクリアする、カバーする、ある時期において大いに実力を発揮する必要があると思います。  いろいろ申し上げましたけれども、時間が限られておりますので、私の意見は以上にいたしたいと存じます。ありがとうございました。
  4. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) ありがとうございました。  次に、有本参考人にお願いいたします。有本参考人
  5. 有本章

    参考人有本章君) きょうは参考人としてお招きいただきまして、ありがとうございます。  私は、任期制法案は、大学システム組織活性化を意図している点を評価いたしまして、法案には基本的には賛成でございます、問題点もございますけれども。そういった観点から申し述べさせていただきたいと思います。  三十年前に、一九六九年ですが、大学教授のキャリアに関する国際比較研究というものを社会学会に報告したことがございますけれども、それからこの間、大学システム組織人事制度に関して改革を提案してまいりました。しかし、今回の法案は、そういったシステム組織人事制度限界を打開していくというような側面から非常に可能性を持っておるのではないかということでございます。何点か理由はございますけれども、そういったことを少し述べさせていただこうと思います。  まず一つは、任期制法案縦型組織横型組織にするという可能性があるのではないかというふうに思っております。伝統的な大学組織に風穴をあけまして流動化活性化を促していく、そして多様な人材の交流を図っていくということによって学問的生産、これは研究生産性教育生産性といったようなものがありますが、そういう学問発展を図っていくというところにこの法案の契機を見出すことができるのではないかというふうに思っております。  日本の場合は、大学組織閉鎖的構造については既にOECDの調査団とか内外の学者によって指摘をされてきておるわけでございます。社会とワンセット化した大学終身雇用年功序列制、これが我々のタームで言いますと競争異動よりも庇護異動型であったというふうになろうかと思います。つまり、十八歳で選抜をしました人材をできるだけ純粋培養しまして、三十歳前後で講師にいたしますと、三、四十年間はところてん式定年まで庇護されるという構造でございます。  その結果、ピラミッドの上位校から人材をできるだけ確保していきまして、その結果いわゆる系列校学歴主義、学閥、インブリーディングたらい回し人事といったようなものが優勢になる傾向が見られます。これは大学版学歴社会でございまして、世界的に見ましてやはり閉鎖的な構造を持っておったのではないかということでございます。  二番目に、日本大学は現在、欧米モデルキャッチアップする構造から独自のリーダーシップを発揮するという構造に変えていく時期に来ていると思います。つまり、世界的に見て通用性互換性を持ったそういう組織人事制度もそうでございますが、といったものにしていかないといけない段階に来ておるわけでございます。  明治以来の百年間は、先進国大学モデルを移植して、それを日本の中で加工したり応用したりしていくという、基本的にはそういう構造を持っておったわけでございます。こういうキャッチアップ型の構造というのは歴史的な成果、使命というものを果たしてきたわけでございますが、現在はさらに学問世界で国際的な競争も激しくなってまいっておるわけでございまして、そこを突破していくような、世界に通用するような組織構造にしていかなければいけないということでございます。  お手元に資料をお配りしておりますが、資料一ページに、エポニミーという観点から世界学問中心地の移動を調べております。従来のフランス、イギリス、ドイツから、二十世紀には学問中心地がアメリカに移ってまいっております。現在、日本大学では、理工系医学系中心にしまして世界的にトップレベルに到達をいたしておるわけでございます。そういう意味では百年間のキャッチアップ型の構造というのは非常に効果を持ったということが言えると思うんです。しかし、科学引用索引、サイエンス・サイテーション・インデックスといったようなものを使って国際的に学者学問的生産性を調べる、そういう研究などを参考にしますと、現在まだ日本中心地をきわめるというところまで行っていない。ノーベル賞受賞者等もまだ少ないという現状がございます。ピークのところを上げていくと同時に、底上げをしていくという課題があるわけでございます。  やはり大学学問をするところでございますので、組織中心は人、物、金、情報でございますが、特に人が重要でございます。そういう意味で、今回の任期制というのは人の流れというものを非常に重視していく、人事流動化を図っていくということでございまして、先ほどから申しておりますような、日本システム組織底上げをしていくということの根幹をなすというふうに考えられると思います。  三番目に、学問の論理に対応したような組織を構築していくという必要性がございます。これは法案の中でもうたっておりますが、先端的、学際的、総合的な学問領域、これは学問のフロンティアでございますが、ここに対応して創造的な学者研究というものが要請される段階に参っております。  先ほどから申している日本システム中心にあったのは講座制でございます。これは明治二十六年に昔の帝国大学に入れられたわけでございますが、その当時は学者大学へ居つかないという傾向があったわけです。これをできるだけ確保して日本学問発展させるためにつくったわけでございます。これがかなり現在まで大きな大学では中心になってきた制度でございます。  しかし、その制度というのはやはり限界がございまして、三十歳前後で講師等を任用して、将来性にかけてやるわけですけれども、その人が必ずしも能力を発揮するとは限らないということが起こってくるわけです。定年まで三、四十年間、仮に生産性を上げない、非常に言葉は悪いですが無能であった場合には、その学問領域発展が思わしくない、あるいは後継者養成が思わしくないというようなことも起こってくるわけでございます。  任期制というのはそれを五年程度分野によっては、人文・社会科学系は十年程度でもいいと思うんですが、五年程度でそういうリスクを抑えていくという意味も持っているわけでございます。欧米システムというのは、若いときには任期制を設けて年をとってテニュアにしていくというふうにしておるのは、そういう観点からやっておるというふうに考えられるわけでございます。  四番目に、学問中心地をきわめました欧米システムにちょっと目を向けてみますと、全体的に終身雇用制年功序列制人事システムをとっておりません。そういう点で共通性がございます。任期制原理によりまして、試補制度テニュア制度といったものをしいております。それから、不偏主義原理によりまして、庇護異動特殊主義身内主義縁故主義インブリーディング、こういったものをできるだけ抑制するようにしております。それから、競争主義原理によりまして、業績実績をもって評価をしていく。大体四十歳前後になってテニュアを与える、終身在職権を与えるというような構造にしておるわけでございます。  そういったようなシステム特徴をデータ的に見てみますと、カーネギー財団大学教授職国際比較研究というものが最近発表されました。それの結果をちょっと参考にさせていただきますが、資料の二ページに書いておりますように、これは世界十四カ国、香港が入っておりますが、一応十四カ国の二万人の学者に対して調査をやったもので、世界最初の大規模なものでございます。  この調査の結果は、詳細は申し上げられませんが、三ページにありますように、性別では七六%が男性、平均年齢では四十五歳といったような特徴が見られますし、それから在籍した高等教育機関の数で見てみますと、大学専門分野によって違いがある、国によって違いがある。こういうふうに大学教授世界というのは非常に多様でございます。多様であるということを特徴にしております。それから雇用形態も国によってかなり違いがございます。南米では非常勤型が多くなっておるというようなこともございます。興味がございますのは、資料四、四ページでございますが、大学教員というのは大学に対してよりも自分学問である専門分野に対して忠誠心が高いということでございます。こういう特徴を持っておるのが大学教授でございます。  問題は、資料五にありますように、世界平均〇・八回大学を移動しております。日本教員は〇・五二回でございます。生涯では世界平均が一・六三であるのに対して日本は〇・七八でございます。つまり、欧米の国では大体二回程度大学をかわっておるわけでございますが、日本は一回就職をしますとその大学から動かないという傾向があるわけでございます。先ほど終身雇用型でございます。こういった特徴先ほど任期制的なシステムを入れているところとそうでないところの違いとしてあらわれてきておるということでございます。つまり、日本では大学教員の大事に関しては流動性が乏しいという構造を呈しております。その辺を今度の法案では変えていくというところに特徴があろうかと思います。  今メリットの側面から申し上げましたけれども問題点も多少ございますのでその辺を少し申し上げますと、まず一つは、大学教員というのは、流動性に関しては総論は賛成ですが、各論ではやや消極的でございます。資料六は、ちょっと古いですが、日本理工系教員対象にした全国調査でございます。これで見てみますと、流動化には大学教員はおおむね賛成をしておるんですけれども専門分野によってはかなり否定的な側面もございます。医学系が一番流動化には賛成ですし抵抗が余りないということがございますが、分野によって三〇から五〇%程度任期制賛成で、問題点もいろいろあると。資料六のところ、六ページのところにありますような、弊害としては、細かな研究になってしまうとか、そういうような点が指摘をされておるわけでございます。  それから二番目には、任期制というのはどうも研究重視になる傾向があるということです。教育を軽視してしまう傾向が起こるんではないかという危惧がございます。研究の方は比較的評価方法が確立されております。ですから、任期制を五年とか十年というふうに入れていきますと、短期間の間に実績の上がる研究評価中心になっていく傾向がある、教育の方は等閑に付されるという問題が起こってくるんではないかということでございます。  これから日本大学で大事なのは、研究も非常に大事なんですが、高等教育大衆化をしてきておりますので、教育をどういうふうにしていくかということが非常に大事なわけですね。そういうときに教育の方へ力を入れないということになってきますと、これは非常に大きな問題が出てくるわけでございまして、この点は考慮しないといけない。だから、任期制を入れると同時に、評価のやり方を研究一辺倒でやらないで、教育とかサービスとか管理運営とか、こういったようなものを考慮しながら考えていくということが非常に重要になってくるわけでございます。  それから三番目に、持てる大学等がだんだん強くなって、持たざる大学や持たざる教員が弱くなっていくようなマタイ効果が起こるんではないかなということがございます。ですから、これも先ほど評価方式を一元的なモデルにしないで多様なモデルにして、考えていくということによって改善を図っていかないといけないということではないかと思います。  それから四番目に、それと関連しますが、画一的な任期制の実施は問題があるわけでございます。選択的任期制ということを法案ではうたっておりますが、これは私は賛成でございまして、できるだけ柔軟にソフトランディングをしていくということが少なくとも当面は大事なんではないかなと思います。専門分野、セクション、セクターによって大学人世界というのは非常に多様性を持っている、先ほど申しましたような構造を持っておりますので、これを無視していくということはできないということでございます。それから、学問の自由ということを大学人は非常に大事にいたしますので、ここのところをきちっと担保してやっていくということが大事だろうと思います。そういったような問題点というものがあろうかと思います。  大体そういうようなことでございますので、一応結論的には、問題点はありますけれども、この日本組織システム活性化していくという点で重要な法案であるし、基本的には賛成できるということでございます。  以上であります。
  6. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) ありがとうございました。  次に、沢田参考人にお願いいたします。沢田参考人
  7. 沢田昭二

    参考人沢田昭二君) 私は二年前に名古屋大学を退職した者です。それまで物理学の研究をやっていました。きょうは、この委員会にお招きいただきまして、どうもありがとうございます。  この大学教員等任期に関する法律案の目的には、学問的交流とそれから教育研究活性化ということがうたってあるわけですけれども、この任期制法案が通りますと、従来の民主的な研究者の間で自主的に行われていた、紳士協定で行われていた任期制とはかなり質が違っていまして、これが実施されますと我が国の研究教育にとってレベルが低下するんではないかというふうに非常におそれております。それが我が国のいろんな産業とか経済の発展にはね返りまして、ずっと先になりますと、あのとき任期制を導入しなきやよかったということになるんではないかというふうに非常に心配しております。  どのように任期制が弊害を及ぼすかということについてお話しようと思うんですが、先ほどもちょっとお話がありましたが、これまでも幾つかの大学紳士協定による任期制というのは経験があります。よく引き合いに出されるのは京都大学の基礎物理学研究所の例であります。この京都大学の基礎物理学研究所は一九五三年に発足したわけですが、全国で初めての共同利用研究所というわけです。その発足に当たっていろんな新しい試みをやりました。全国の理論物理学の研究たちは、この京都大学の基礎物理学研究所というのは自分たちがそこで研究をしていくんだという、そういう意識でこの研究所を大事に思ってきました。  この研究所に研究部員会というのがあります。これは全国の研究者の中から選挙で選んで、この研究所でどういう研究会を開くか、どういうプログラムをつくるかということをそこで議論して、そして全国の研究者が一緒になって研究発展させるという、そういう議論をする場であります。  私も広島大学助手のときにこの研究部員会に選ばれまして、名古屋大学に移ってからもこの研究部員会で一緒に議論に参加いたしました。この部員会には湯川秀樹先生、朝永振一郎先生、坂田昌一先生というそうそうたる先生方も参加されて一緒に議論してきたわけです。そこでは、全国の研究のアクティビティーをどう上げていくか、それから、その研究所のアクティビティーをどう上げていくかということを一体のものとして議論してきました。この研究所の所員、スタッフは、自分研究ももちろんやりますけれども、そういう全国の研究をサポートするという重要な役割も担ってこられました。その研究部員会では任期制についてもいろいろと議論をしてまいりました。  お手元にお配りしてある資料がありますが、これは、かつて東京大学の原子核研究所の所長を長く務められた、そして最近まで、国際的な基礎的及び応用的な物理学の組織、IUPAPというのがありますが、その会長をされていた山口嘉夫さんが一九八一年ごろに書かれたものです。  この「談話室」に書かれた山口さんの注のところを見ていただきますと、この京都大学基礎物理学研究所で任期制を定めたときの年齢構成が書いてあります。素粒子論グループの年齢構成は、四十代のところに湯川、朝永、坂田というような指導的な先生方がいらっしゃいまして、あとは全部二十代の若い研究たち。そういう中で、特に若手の研究者はほとんどが独身でしたから、そういう研究たち任期制というのをやっていこうと。というのは、実はこの研究所のスタッフの教授助教授助手は湯川先生を除いたら全部二十代なわけです。そういう若い研究所でしたから、教授まで一律に任期をつけるということについては全く違和感がありませんでした。  しかし、指導的な先生方は意見が違っていました。それは、「任期があると、次の職を確保するため小さな仕事で論文を乱作する傾向を生じよう。それでは息の長い大きな仕事をするのに妨げとなろう。即ち、学問の一大山脈を形成することは出来なくなろう。それは、素粒子論という若い学問にとって由々しいことである。」という反論をされていました。しかし、先生方は反対だったんですけれども、大変度量が広くて、若い者がそういうことを言うんならひとつやってみたらということで、渋々でしたけれども任期制を黙認してくださいました。  こういうことがこの山口さんのものに書いてありますから、ぜひ読んでいただきたいというふうに思います。  三人の先生方はいずれも理論物理学の研究で大きな学問の流れを築かれた方々ばかりです。その先生方が御自身の体験も踏まえて任期制について懸念されていたということには大変大きな重みがあると思いますし、実際に先生方の予想どおり、この任期制というのは困難にぶつかってきました。  この基礎物理学研究所の任期制がそういう困難の中でもまあまあうまくいったというのは、渋々懸念され黙認されていた先生方が、任期の切れそうな基礎物理学研究所のスタッフの次の職を探してくださったということがあります。山口さんはこう書いていらっしゃいます。「言い出しっぺの昔の若者たちは内心忸怩たるものがある。近頃のように、ゼロ成長期で空きポストが少なくなれば、任期制をうまく機能させることはむずかしい。」と書いていらっしゃいます。指導的な先生方の努力もあったわけですけれども、この基礎物理学研究所の共同利用を支えてくださった任期のついた研究所のスタッフ、その方々能力を生かせるようなポストを全国の研究者が協力して探しました。そして、それが見つかるまではその任期制というのを非常に柔軟に人間的に温かく見守ってやってきた、こういう経過があります。  私の所属していた名古屋大学物理学教室でも、一時、人事交流を活発にしようという理想を掲げまして、一九六〇年代の理工系ブームで新しいポストがどんどんふえているような状況の中で任期制がスタートいたしました。七〇年代からは原則として全部のスタッフに任期をつけました。しかし、一九九二年にこの任期制は廃止になりました。  教員の間に任期のついた教員任期のついていない教員という差別がありますと、任期のついた教員は再任拒否ということを恐れまして批判的な発言を控えるようになってしまいます。そうしますと、大学研究教育にとって最も大事な自由に相互批判するという雰囲気が失われて、アカデミックフリーダムが大学の内部から失われていくということになりました。  任期のついた教員には、研究に集中してもらわなきゃいけないということで教育負担を軽減するという配慮をしていました。しかし、学生がどんどんふえてきますと、それに見合った教員の方の増員がありませんから、セミナーとか演習、実習、実験などの少人数教育というのが非常に大事なわけで、それを重視しようとしますとスタッフの数が足りなくなります。こうして、任期がついている教員も結局そういう教育負担もやっていただくというふうになってしまいました。  理工系ブームが過ぎ去っていきますと、やがてこの任期制はうまくいかなくなりました。任期が切れそうになると周りの研究者が一生懸命協力して次のポストを探すんですけれども、その人にぴったりはまるようなポストというのはなかなか見つからないわけです。その研究者の研究教育能力を発揮できるようなことがなかなかできない。この紳士協定任期制も、任期がついたそういう研究者の精神的な負担というのはなかなか大変なものでした。したがって、研究にも身が入らないということになっていきました。  それから、任期がついている教員が次のポストを探すまで少し余裕を持って再任を認めるか、それとも任期を延長するかというような、そういう議論をしなきゃいけないんですが、全員のスタッフに任期をつけていますと、しょっちゅうそういう議論をしなきゃいけなくなって、次々に任期が切れたスタッフができますと物理的にそういう議論をすることが不可能になってきました。結局、弊害の方が大きいということで任期制度というのは廃止になってしまいました。  研究活動というのはその人によって千差万別で、一人一人状況が違っています。今申し上げましたように、研究の環境、社会的な環境などが欠けていますと、こういう任期制というのは研究の進展に沿った状況に合わせて幾ら柔軟な運用をやってもうまくいかないということが起こってきました。  今度の任期制法案による任期制というのはこうしたモラルによる任期制とは全く異質のものでありまして、かなり機械的で血も涙もないと言っていいんじゃないかと思うんですが、時間が来たら物理的に首になってしまうというものです。この任期制制定されますと、さまざまな外的環境を考慮して紳士的に人間味を持って研究状況に合わせて運用できるような実質的な任期制がもし可能な状況が生まれたとしても、そうした試みを実際に行うというのはかえって難しくなるんじゃないかというふうに心配しております。  どうしても任期制というのをやっていかなきゃいけないということになるんでしたら、任期が切れてポストが見つからない研究者がその研究者にふさわしいポストを見つけるまで首をつないでその研究者の研究能力を生かすような、そういう別の定員枠をつけなきゃいけないんじゃないかというふうに思います。せっかく大学院まで長い努力によって研究能力を鍛えて、そして難しい審査を経て教員になった有能な人材というのを使い捨てにするというのは、国にとっても損失ですし人類社会にとっても大きな損失だというふうに思います。  ゼロ成長で任期制がうまくいかなかったのは任期制紳士協定だったからという、今度の法案のように法的拘束力を持たせて、任期が切れたら即首になるような任期制にすれば任期制はうまくいくんではないかという議論がありますけれども、私はこれはかなり乱暴な議論ではないかというふうに思います。これは研究とか教育の本当の発展を考えて、そして研究者の能力をどう発揮してもらうかという観点よりも、任期制という制度の方を自己目的にしているような考え方だというふうに思います。  坂田昌一先生は常々こうおっしゃっていました。人事交流のための制度というのは形式あるいは表面的に見える現象であって、人事交流というのも研究発展という本質を背後に考えておかなきゃならないと常々おっしゃっていました。紳士協定任期制でも、それを行う条件がないときには、任期制を厳格に守るということだけを優先させようとしますと研究教育発展にとって本末転倒になって、極めて深刻な害悪をもたらすことになってしまいます。それを法律でもって機械的に実現させようとすれば事態はもっと深刻になるのではないかというふうに心配しております。  ユネスコでは高等教育教員の地位に関する勧告を近く採択する予定になっていますが、その中でテニュア制度、つまり終身在職権というのはアカデミックフリーダムを保障するために必要不可欠であるというふうにしております。任期制というのはこうした世界の大勢にも逆行するものであると思います。  ここにこういうごつい本があるんですが、これはアメリカのブランダイス大学の物理学教授のシユウェーバーが書いた「量子電磁力学とそれをつくった人々」、ダイソン、ファイマン、シュビンガー、そして朝永という現代の最先端の力学理論の形成とそれに貢献した人々を科学の歴史としてまとめたすばらしい本であります。これは、シュウェーバーが一九七〇年代から構想を練りまして、そして資料を集め始めて二十年余りたった一九九四年に出版したものです。  この本の謝辞の中にこういうことが書いてあります。この仕事ができたことが、アメリカの大学テニュア制度、つまり終身身分保障制度が正当であったということを証明していると信じますというふうに書いております。謝辞の中にこういうことを書くというのは非常に珍しいことじゃないかというふうに思います。  まさにこういう大河小説のようなすばらしい仕事というのはこうした息の長い努力の積み重ねでやっと可能になるということで、強制的で柔軟性のない、再任拒否が原則になるような法的任期制度ではこうした研究の芽を摘んでしまうのではないかというふうに恐れております。  この法案についてはマスコミは余り報道してくれていませんから、まだ大学教員の中でも具体的に法案の中身を十分検討しているとは言えません。それでも最近になって、任期制について研究教育の現場で実際の経験を踏まえて多くの懸念が出始めております。  それで、ぜひお願いしたいと思うんですけれども、参議院の良識を発揮していただいて、この任期制法案というのが日本の未来の産業とか経済を含めて国民の未来をひょっとして台なしにするんじゃないかという心配をしておりますので、ぜひ廃案にしていただいて、これにかわって大学研究教育の本当の発展を図ってくださるようないろんな施策を実現してくださるようにお願いして、私の発言を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  8. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  なお、参考人皆様方にお願いを申し上げます。各委員の質疑時間が非常に限られておりますので、恐れ入りますけれども、お答えはできるだけ簡潔にお願いいたします。  それでは、質疑のある方は順次御発言願います。
  9. 馳浩

    ○馳浩君 自由民主党の馳浩と申します。  本日は、大変貴重な御意見をありがとうございました。  まず、慶伊参考人に御質問いたします。  紳士協定という形で任期制を採用されているということでありますが、私は本案賛成の立場から、より多くの大学にこの任期制を採用していただく場合に、その基盤整備といいますか、国として必要な政策あるいは研究環境の整備などでどういったことをすればこの任期制を各大学が採用するようになるだろうかという御意見がありましたらいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  10. 慶伊富長

    参考人慶伊富長君) お答え申し上げます。  大学にはそれぞれ目的がございます。教育を主とするところ、研究を主とするところ、いろいろございますが、その目的に応じて任期制をしく場合には評価されるべきであると存じます。したがって、その場合には当然、例えば若き研究者がその任務に適しているかどうかという点での自己評価をはっきりしていただけるようなことが必要でございまして、そのための条件としては、十二分に本人能力を発揮できる条件を当然整備すべきである、そういうふうに考えております。  以上です。
  11. 馳浩

    ○馳浩君 本案は選択制ということでありますから、昇任あるいは転任の場合に、異動しようとするそのポストに魅力がなければ、やはり本人が納得しなければこれは任期制も本来の意味を発揮しないわけでありますね。  と考えますと、今回、この国会で総務庁所管の法律として国立の試験研究所においての研究者に対する任期制法案が通っておりますけれども、それでは給与の面あるいは手当あるいは裁量勤務制、というのはフレキシブルな時間帯で研究にどうぞ頑張ってくださいという、そういったインセンティブを付与しておるわけでありますが、私は、この法案が通りました後にそういった面においての魅力というものを持たなければ、本当の意味でこの任期制が各大学に採用され、あるいは若手の研究者あるいは本来の大学教員流動化というものが促進できないのではないかという懸念を持っておりますが、その点についての御意見があれば、慶伊参考人、お願いいたします。
  12. 慶伊富長

    参考人慶伊富長君) 例えば私ども大学は大変な設備をお国からちょうだいいたしまして、今、日本最高あるいは世界でも超一流と存じますが、そういう場所に座っている若い方、現在助手をしている。ところが、そこの助手に希望があるけれどもなれなかった方もいる。こういう方たちがかなりいるという状況の中で、たまたま先に入った人が入ったら最後までいられるというのは社会的公平さを欠く、そういうふうに考えておりますし、私どもとしては、若い方々の将来の研究、訓練の場としても非常にすぐれた条件をつくる、そういうことによってそこに優秀な方々が集まっていただく、そして表にいる人も同様にチャンスがあればその場所を使えると、そういう状況にすべきであると考えております。  それから、実際に任期制がついてそこに座っている場合には、当然やはり本人としての十二分な実力が発揮できるような研究設備の個人に対するいろいろなケアが必要であると思いますし、流動させる場合にも、研究費あるいは機械、そういったことについてのいろいろ手配も考えないといけない、そういうふうに考えております。
  13. 馳浩

    ○馳浩君 続けて慶伊参考人にお伺いいたしますが、北陸先端科学技術大学院大学というのは大変若い大学院大学でありますけれども、その立ち上げに当たりまして、慶伊参考人は多分御自身の人脈等を通じまして優秀な研究者、教授などを各企業あるいは全世界の各大学からお集めになったと思うんです。この任期制法案が通りました後に、こういった意味では、慶伊学長が頑張られたというふうな意味ばかりではなくて、全世界的な、横断的な労働市場が形成されるべきであると考えますが、そうでない限りは、学長は、任期が終わった、次のポストにだれをといったときに大変な努力をしなきゃいけないわけですよね。そういった点について、御自身のこれまでの御苦労やあるいは御意見がありましたらお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  14. 慶伊富長

    参考人慶伊富長君) お答えします。  私ども大学は新しい大学でございまして、当然優秀な研究者が集まらなきゃいけませんし、特に北陸というところでございますので、大きな柱をかなり強く立てる必要がございました。関東あるいは関西と違って立地に恵まれていないところにおきましてはなかなか困難がございましたが、大変設備その他を整えていただきまして人を集めることができました。しかし、これもやはり国際的な労働市場、教育者、研究者、国際的なレベルがたくさんおりますので、外国からも私どもは平等に応募させて、これはインターネットで募集して採用いたしております。  それから、先ほど言いましたように、国際的にも国内的にもやはり優秀な方々をうちとしては確保いたしたい。そのために、優秀であるということを絶えず研究者は教育面におきましても発揮する必要がある。そういう点での緊張感は中にございます。その一環として若い方々に今任期制をしいておりますが、これはもともとは、任期任期でもってチェックポイントをはっきりつける、評価をみずからし、それから大学としてもそれを確認し得る、そういう状況を絶えず続けていくという趣旨にほかならないわけでございます。  そこで若い方は育って表へ出ていただく、表へ行ってまた新しい場所で自分の学風を立てていただく、これが大学たるものの使命で、学生を卒業させるということのほかに、すぐれた独立研究者を養成するというのも大学の非常に重要な使命であることは言うまでもないと考えているところでございます。
  15. 馳浩

    ○馳浩君 もう時間がないので最後になりますが、要は、この任期制を採用しました場合に、任期が切れました、さあ異動先のポストが決まらないということは、研究あるいは教育業績評価がなされた上での異動先のポストが決まらないのか、あるいは異動先のポストが少ないから決まらないのかという観点があると思いますが、それはあなたの自業自得だと言ってほっておくのか、あるいはその場合、継続的に一年ぐらいは任用しておきますよというふうに温情措置をとった方がいいと考えるのか。先端大学院大学においてはもう任期が切れる助手が出たかどうか私はわかりませんが、そういった意味での温情措置といった部分が、やっぱり問題点が出てくると思うんですね。その点についてのお考えをいただければありがたいと思います。
  16. 慶伊富長

    参考人慶伊富長君) 私どもでは二つの専門で違いますので、実験系の方は七年、それから理論系の方は五年、それを一応のチェックポイントにしてやっておりまして、再任を認めるというところで出発をいたしております。将来もっといろいろ考える必要があるかもしれませんが、現状では再任を認めるのを前提に、ただしそこで評価による教授会審査を必要とする、そういう形になっております。  そこで認められないということも起こり得るわけでございます。その場合にどうするか。もうあなたは任期だからすぐにやめなさいと、学者仲間ではそういうことはございません。当然本人がその前から、大体において研究業績教育業績、これをうちでは毎年毎年発表しております、自己申告で。それでもって大体のところは見当がついておりますので、本人にも心構えもございましょうし、それから周りといたしましても、本人にもっと適したポスト、これを用意し得なければ異動させることはできないわけでございます。その場合には大学内で若干の余裕を見て臨時再任をするとか、その他いろいろ手配をいたしまして不満が起こらないように、そういうふうにする必要は十二分にあると考えておりますし、そういう皆さんの共通認識を得ております。
  17. 馳浩

    ○馳浩君 どうもありがとうございました。
  18. 石田美栄

    ○石田美栄君 平成会の石田美栄でございます。  いろいろ貴重な御意見、ありがとうございました。私も二つほど三人の先生にそれぞれ御意見を伺いたいんです。  まず第一番目、大学の女性の先生は本当に閉鎖性の中で差別を受けてきたということを私も議員になる前ずっと実感してきた者の一人ですが、先ほど有本先生の資料でもありますように、国際比較をしましても、大学の先生は女性が日本は非常に低い。これは多分私学も入れてのデータだと思いますけれども、これが国立となりますとより一層低いと思います。  今回の任期制がしかれた場合、人事もプライベートなものからもっとパブリックになる。そして、いろいろなそれぞれのお立場でおっしゃいましたが、そういう中で、任期制は女性の先生の場合どういうふうに影響していくのか。いい方向にいくのか、実力を持ってそれが認められ公正に評価されてよくなるのかどうか、それぞれの先生、現場で女性の立場というのはいろいろ見てこられたと思いますので、それぞれの立場で任期制がしかれたときの女性教員のことについて予測をお伺いしたいと思います。
  19. 慶伊富長

    参考人慶伊富長君) お答えします。  任期制は私どもの方では女性男性関係なしと考えております。任期制によって新たにまたそのポストがあくと、その場合には公募いたしますので、女性男性を問わず最もすぐれた人間を選ばせていただく、そういうふうに考えております。それから、もちろん全体的なバランスといたしまして女性が少ないというのはよくないことである、そういうふうに考えております。
  20. 有本章

    参考人有本章君) 先ほどのデータは質問紙調査でございまして、日本で九%ぐらいの数字が出ていたと思います。日本のもう少し体系的な調査ですと一〇%ぐらいです。比率は同じでございます。  それで、世界的に見ますと、四年生の大学については日本の女性教員は非常に低いという結果が出ました。ただし、短期大学では四〇%ぐらいございますので、これを平均しますとかなりその辺は変わってくるということはございます。  四年生大学に関しましては今申されたとおりでございまして、これから任期制を導入した場合どうなるかということですが、フェアサイエンスという言葉がございまして、公平、公正にやっていくということが任期制原理でございますので、属性にかかわらず、属性で見ていくということはプレジュディスでございます。ジャッジする前に偏見が入るわけですが、そういうことをできるだけ排除していくというのが不偏主義原理でございますので、任期制というのは基本的にはそういう方向で運営されないといけないということでございます。客観的な業績によって見ていく。ただし、研究だけで見ていきますと問題がございますので、教育とかほかの要因で見ていく。先ほどの国際調査では大体女性の方が教育が熱心でございますので、これからそういう物差しの当て方によってその辺が考慮されて、女性が不利にならないということが起こってくるんじゃないかなというふうに思います。
  21. 沢田昭二

    参考人沢田昭二君) 私の物理学の分野でも女性の研究者にはすぐれた研究者がたくさんいまして、キュリー夫人の例もありますし、マイトナーなんというのもすばらしい研究をしていますし、それから今日本の物理学会の会長は米沢さんという女性の方なわけですね。ですから、そういう意味では女性研究者というのが特にというか、むしろすぐれている面も持っているだろうと思いますし、今、有本さんがおっしゃったように、教育という面では女性がすぐれた側面を持っているんじゃないかなというふうに思っています。  ただ、今日本社会では、女性がそういう研究とそれから自分の回りの、子供の世話とかいろんなことを両立させようとするのはかなり苦しいことになりますよね。そうしますと、どうしてもじっくりと時間をかけてやる仕事の方にウエートがかかってくるような気がいたします。短期間で業績を上げなきゃいけないというふうになってしまいますと、逆に女性にとっては、一般的には日本社会の現状では不利になってくるんじゃないかというふうに、その点ではちょっと心配をしております。
  22. 石田美栄

    ○石田美栄君 次に、この制度の中で私が一番懸念していることの一つは給与のことなんです。この法律ができれば、それを準用する一般職の任期つき研究員については採用とか給与とか勤務時間の特例がもうきちっと定められていて、特にこの給与表ですね、年齢によってあれに当てはめるとかなりいい給与かな、あるいは業績を上げればそれに報奨金も一カ月がつくとか、そういう規定まで入っておるんですけれども大学の先生の場合にはそういう規定が全然なくて、特に国立大学ですと給与、人件費というのは枠がありますね。一番その点を懸念しておりまして、特に給与の点ですね、お三人の先生、この点でどういう御意見をお持ちか、お伺いしたいと思います。
  23. 慶伊富長

    参考人慶伊富長君) 給料は多けりゃ多いほどいいわけですが、大学の先生、特に国立の方は低くなっております。しかし、私だけではなくてかなりの数の人間の意見では、給料にまさるものがある、それは研究条件でございます。  私個人のことを申し上げてあれですが、私は旧帝大でございます。大学に入りましたのは、旧制中学校の先生になるために入りました。お金をもうけるということの希望はございませんで、教師になりたいと。それはやはり自分が考える仕事ができるという魅力でございます。大学に戻っている研究者はすべてそうでございます。企業研究者の場合には目的のために集中いたしますが、大学の場合は自分の自由な発想による学問へのインパクト、そういう点をやりますので、給料の方は多ければ多いほどいいと思いますけれども、それ以上に研究条件がいいか悪いかということで流動性はかなり動きます。
  24. 有本章

    参考人有本章君) 私も給料は多ければ多い方がいいというのは賛成でございます。  ですけれども日本国立大学は一律の俸給表になっておりますので、職階が上がっていきますと同じように上がるわけでございます。ですから、研究業績が非常に多い人もそうでない人も同じでございます。そういう意味では、先ほど言いました講座制をつくったときに、大学教授職というものを安定させていくという、あるいはそこの人材を確保していくということがございましたのでそういうふうにしたんだと思います。  しかし現在、世界的に見ますと、アメリカとか中国なんかもそうですが、かなりそういう格差を入れてきているということは間違いないことでございます。ですから、基本的には現在のやり方にして、より業績を上げた人は少し何らかのプレミアをつけるとか、そういうことはあってもいいかなというふうに思います。  ただし、大学人は、この国際調査でも出ておりますが、もう一回職業を選ぶとしたらどうしますかというと、大学人にまたなると言っておるわけですね。ですから、日本の先生も含めて給与に対しては非常に不満を持っています。だから、これは上げてほしいんですが、それを差し引いても、やはり大学人という職業に対して、やらないといけないという使命感というものを非常に持っているということでございます。  ですから、給与を上げていただきますともっとやるということにはなると思うんですが、それと同時にその辺のインセンティブを、研究しやすいとか教育しやすいとか、そういう環境整備、条件整備というものをきちっとしていただく。やっぱり二十一世紀に大学教授職が魅力のないものになりましたら若い世代が来ませんので、これは日本の将来にとって非常に問題になるわけですね。ですから、いい学生さんや若い人が来ていただけるように何とか条件整備をしていただきたいと思っています。
  25. 沢田昭二

    参考人沢田昭二君) 日本大学教員の給与というのは諸外国に比べてすごく低くて、私がスイスのジュネーブにありますCERNの国際共同研究所に行きまして、アパートを借りようと思ったんですけれども自分日本での給料を書いたら、これでは貸してもらえませんよ、二倍にしておきなさいなんで言われて書き直しましたけれども、それほど諸外国に比べて日本大学教員の給与は低いわけです。  私が一番心配しているのは、若い優秀な人たち大学に魅力を持って集まってほしいと思っているんですけれども、例えば、特にこれは工学部系の方がそういう傾向が強いと思いますが、企業の研究所の方に入りますと、大学院を途中から出てもすぐ研究職でたくさんの給料をもらえるわけですけれども大学院の方に残りますと、たくさんの授業料を払わなきゃいけないし、それから行き先、今度は任期制のあるようなポストにつくようになるのは嫌だというふうに、若い人はそういう方向に走ってしまうんではないか、その点を随分心配していて、任期制というのをやって、それからさらに給料は低いという状況がありますと優秀な人はかえって大学に集まらなくなる。そうすると、後継者がいなくなってということで、大学教育にもすごく悪影響を及ぼすんではないかと、そういう点を随分心配しております。
  26. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 きょうはお三人の先生方、ありがとうございます。  お三人の先生にお聞きしたいと思います。  今日本大学で求められているもの、さまざまございますけれども一つの言葉で言えば、いかにして魅力ある大学であるかということではないかというふうに思っております。  私は、たまたま外国での学生生活も経験をいたしましたけれども日本と一番違う点というのをもし三つ申し上げるとすれば、一つは、いわゆるチュートリアルあるいはスーパーバイズの制度というのが非常に私にとっては外国での大学生活を送ったときに魅力あるものでございました。一対一で担当教官と議論をし合うということ、そのためにはもちろん学生として大変な勉強をしなければなりません。三千ワードで一週間に一本ずつ論文を書くということはかなり大変なことでございます。平気で十冊ぐらいの本を読んでこいというふうなこともやっぱり大変でございました。しかしながら、そこで魅力ある教師と一対一で討論するということ、これは大変にやはりすばらしい経験だったというふうに思います。  それから二つ目には、やはりゼミナールでした。なぜゼミナールが楽しかったかというのは、これはさまざまな国籍の人、さまざまな人種、さまざまな年齢の学生たちが、それぞれさまざま異なった考え方を述べ合う。つまり学問というのは、異なった考え方というもの、異質なものの中からいかに創造的なもの、独自性というものを見つけ出すかということが学問研究の基本だろうというふうに思うわけでございます。そういう基本的な条件というのがかなり私は経験できたように思います。  それから三つ目というのは、やはり外国人教師の割合が高かったということもあると思うんです。例えば、私が学んだのでは、イギリスのロンドン大学のLSEなんですけれども、そのときの学長は世界的に著名な経済学者ダーレンドルフ、御承知のようにドイツ人でいらっしゃいます。ドイツ人がイギリスのそういった大学の学長というふうなこともございました。  この三つのような観点日本大学に当てはめますと、今の現状では、このようなことを実行するというのはかなり難しいんではないかというふうに思うんですね。  私、このような経験を踏まえましてお三方にお尋ねしたいのは、この短い時間では大変恐縮でございますが、では、日本大学に求められている魅力ある大学であるためには、今、一体最低どのような条件が必要になってくるのか、そのために今回のこの任期制という法律というのがどのように有効に働くのかということも含めまして第一点。  そしてまた二点目は、これは学生にとってだけではなくて、教師にとって魅力ある大学ということも必要ではないか、条件ではないかと思いますが、今、日本高等教育改革が求められておりますけれども、そのためにやはり施策として、任期制ということも含めまして、最低条件として先生方はそれぞれにどういうことをお挙げになりたいのか、非常に限られた時間で恐縮でございますが、お三方に要約してお答えをいただければと存じます。御意見をいただきたいと存じます。
  27. 慶伊富長

    参考人慶伊富長君) 理工系の方は、先生は文科系でいらっしゃいますからセミナーとかチュートリアルシステムでの教師との相互作用を御経験のようですが、日本は独特でございまして、理工系は学部の四年生から研究をいたします。研究室に入りますので、そこで十二分に教師とのコンタクトがございます。これは、アメリカはマスターでもまだやっておりませんので、日本が独特でございます。これは日本理工系大学の強さと言われておりますが、そういう点でのチュートリアルにまさる、あるいは劣らない制度がございます。そういう形で進行しております。  今度の任期制の導入は何か規制をするとか何か画するための手段という、そういうニュアンスを強く受け取られる方もおられますが、日本社会においては、実はほかの大学に移りたくても、この大学にずっといられるのに移ったという人間は落ちこぼれと言われるんですね。私は一匹オオカミと言われていました。ほめ言葉だと思っておりましたが、最近わかりましたが、根なし草で落ちこぼれのことだそうでございまして、ちょっと私は錯覚を持っておりましたが、そういった雰囲気がございまして、これは終身雇用社会の主流、風潮になっている中でございますので、大学でも、特に某大学は入って卒業してずっとそこにいるのが嫡男主義で一番偉い、そこを出るのはだめだ、ほかから来たらおまじりだとか、実はいろいろございます。  今度これになりますと、任期があるので堂々と動けるというメリットがあります。そういう点は私は特に申し上げたいと存じます。
  28. 有本章

    参考人有本章君) 今申されましたように、チュートリアルというような制度イギリスで非常に発展しておりまして、チューターがきちっとマンツーマンで教育をするわけでございます。これをやるためには学寮型というか、かなり大学の規模が小さいということ、それから教育に比重を置くということでございます。リベラルアーツを中心にしてイギリスからアメリカのカレッジあたりに継承されてきた流れでございますので、日本は旧制の高校あたりではあったと思うんですが、今は非常に大衆化しておりますので、ここのところをきちっとやっていこうとすれば、先ほどの話じゃありませんが、かなり大学にお金をかけて、それで規模を小さくして教員をふやしてやっていくということが必要になろうかと思います。  これが難しいということになりますと、先ほど言いましたように、教育というところにできるだけ比重を置いて考えるという発想の転換をある程度やらないといけないんじゃないかというふうに思います。  任期制というのはそういう点とどういうふうにかかわってくるかということになりますが、先ほど言いましたように研究のところに比重を置きやすい傾向がありますので、それはやはり評価システムというようなものを入れて、そこの中で総合的に考えていく必要があるんじゃないかなというふうに思います。  それから、教師にとって魅力のあるということは、やはり自分にとって専門分野研究ができ、そして若い人たち教育ができるということでございますので、教育研究がきちっとできるということでございますので、任期制というのはそういう点で、先ほど講座制の話をしましたけれども一つ大学にずっと初めから終わりまでいて純粋培養ですから、できるだけ同じ属性の者が多数を占めるようにしていくわけでございます。だから異質な要素をできるだけ排除するわけです。外国人の教師とか、それからほかの大学の出身とか、そのほかいろいろ、さっき女性も出ましたが、こういったようなものを今まではできるだけ少なくしたと思うんです。そうじゃなくて、今からは多様な組み合わせの中でやっていくということで、これはそういう風土ができておりませんから、これを切りかえるというのは非常に難しいところがあります。  だから、任期制というのはある意味で先導的にそういうものを活性化していくという意味評価をしているわけでございます。これが中ができてそれを入れるということになりますと、百年河清を待つごとし、もう百年かかっておるわけですから、これから百年たってもできないわけです。  だから、欧米では少なくともそういうことをきちっとやってきたわけですから、そういう国際化が非常に今から進んでいく段階では、今言ったように通用性互換性というものを持たせていくということが、大学教員にとっても将来的には長い目でみれば非常にやりがいがある、魅力があるものになっていくということじゃないかなというふうに思います。学生にとってもその方がいいし、教員にとってもその方がいいと。ちょっと意識のギャップがございますから時間がかかると思いますけれども、私はそういうふうに今からはしていかないと、やはり日本は今までのようなパターンで終始していくということになるんじゃないかなというふうに思います。
  29. 沢田昭二

    参考人沢田昭二君) チュートリアル制度のように一対一でやれるというのは本当にうらやましいなと思うんですけれども、例えば私のいた物理学教室は、一学年大体百人の学生です。ですけれども、少人数教育というのを重視しないと、それまでの受験競争でやってきたそういう発想から抜け出せないで、自分で疑問を持つということをやろうとしますと、やっぱり少人数教育でのセミナーなどでお互いにいろんな違った考え方を議論し合うということがすごく大事になってきます。  そういうことをやっていこうとしますと、百人の学生で、本当は理想的には五、六人以下に抑える方がいいんだと思いますけれども、十人ぐらいになってしまうわけですね。そうすると、それに今度は十人のスタッフを割り振らなければいけないわけですし、そういう意味でスタッフの負担というのはすごく過重になりますけれども、しかしそれによって教育効果が上がるということで、みんなで議論して、負担にはなるけれども、やっぱりそういう学生を育てなきゃいけないということで、そういうことをやってきました。ですから、本当は学生数に見合った教員の数をどんどんふやしていくということがどうしてもそういうことをやっていこうとしたら必要だと思います。  実は、私の物理学教室には教育委員会というのがありまして、そこには学生も一緒に正式なメンバーとして委員として入って、学生と一緒になって教育改革をずっと議論してまいりました。私も定年になるまでその教育委員会委員長をずっとやってきましたけれども、やはりそういう学生の要求も踏まえながら、しかし今のスタッフの人数ではなかなかここまでできないけどということを議論し合って、教育改革を進めていくということはすごく大事なわけですけれども、そういう中で学生も、それからこれから仕事がどんどんふえていくという感じのスタッフも、ある程度了解していただいていろんな教育改革を進めていくことができました。  そういうことができるわけですけれども、そういう学生ともコンタクトをとりながらやろうとしますと、やっぱり事務組織のサポートがないとできません。教授が一生懸命学生を全部回っていろいろやるということはできませんから、そういうこともやっていこうとしますとサポートするという体制が必要だと思います。そういうサポート体制があれば大学教員というのはすごくやりがいを感じてやってくださるというふうに思います。
  30. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 民主党・新緑風会の本岡でございます。  参考人の先生方、きょうは御多忙の中御苦労さまです。三人の参考人の御意見を興味深く拝聴し、いろいろ勉強させていただきました。  それで、私は有本参考人のお考えに近いなと思います。というのは、何でもかんでも任期制を導入せにゃいかぬという立場には私も立ちたくないわけでして、もし今の大学が閉鎖的であり、その閉鎖的であることが大学教育研究にいろいろ阻害をしているというならば、これは流動化をせにゃいかぬということになるわけで、そのことが各大学判断任期制を導入するということと結びつくというレベルにおいて、私はやってみたらと、こう思うんです。  そして、有本参考人もおっしゃったように、そういう意味で画一的な任期制は問題がある、ソフトランディングでやれ、そして学問研究の自由を担保しながらやるべきだという重要な点を指摘され、そして教育研究とそれから教育活動というこの分野についても評価基準をきちっと点検をして不安のないようにすべきだという重要な指摘をされました。私はそのとおりだと思います。  そこで、質問は沢田参考人にしたいのであります。沢田参考人は反対の立場でお述べになりました。その中で幾つかお聞きしたいんです。  任期制をとると、再任拒否を恐れて自由な研究なり発言を控えるようになるとか、あるいはまた研究に身が入らないとか、次の職のことばかり考えるようになるとかということをいろいろおっしゃいましたが、しかしある意味では、研究の自由というのは、制度的に保障されるということもあるけれども、これは大学人研究人がみずから獲得していくという側面もなければいけないんじゃないかと私は思います。  たとえ任期制というものが大学判断によって任意に、これは選択制ですが、したとしても、今先生のおっしゃるようなことになっていくような、そんな事なかれ主義のそういう人こそが大学の質を低め、そして教育研究というものの活性化ということを妨げることになるんではないかというふうに私は思うんです。だから、大学の中から任期制に対してそういうふうな発言が出てくるということは、私は大学の自殺行為ではないかと思います。だから、任期制はあくまでこれは大学判断で、選択制になっているんだから、そういう心配がある大学は導入しなけりゃいいわけです。  私は小学校の教員ですけれども、勤評導入に大反対しました。そのときに、勤務評定は戦争への一里塚なんというようなことを言う人たちがおって、冗談じゃない、何で戦争と勤務評定が結びつくんだと。勤務評定はもちろん教職員の人事を拘束し、賃金を拘束し、変えがたいものですから、私たちはストライキを何回もやってたたきつぶしました。  だけれども、特にこういう問題が出てきたときに何か飛躍した論理みたいなものが先行して、そしてその中にある、ある種の現状を打破する上の、何か抑圧して、抑えつぶしていくということが起こるんではないかというようなことを私は常々思うわけで、沢田先生、要するに選択制でやろうとしているものですから、押しなべて全部の方向に、強制的に文部省は権力でもってやっているんじゃないんだという点において、この任期制の有為性というんですか、その持っておる現状打破の積極性みたいなものはお認めになりませんか。
  31. 沢田昭二

    参考人沢田昭二君) 研究というのはある程度いろんなスケジュールを考えてやっていくわけですけれども、でも、思ったとおりにすっと進むものでもないわけです。研究発展段階というのはいろいろありまして、枠が先にあってその中でやるというのではなくて、むしろ研究発展状況に合わせてその人の処遇をいろいろ考えていくということが大事だと思います。  私ども物理学教室任期制をやめるときに、任期制の意義として、我々は、ある一定の期間たったらその間にどんなことをやってきたかということをみんなでサーベイして、そしてその人の研究評価をするということをやってきたわけです。任期制をやめるときに、やはりそういういい面は残していこうということで、一定期間がたったらもう一遍その人の研究業績評価してやっていこうということを申し合わせました。ですから、何もやらないということではなくて、自主的にそういうことは考えているわけです。  ですから、そういう自主的なことを一生懸命やっているところがあるわけですから、任期が来たら次はもう退職だというふうなそういうスタイルの任期制じゃなしに、そういう自主的な任期制の方をエンカレッジしていただく。自主的な任期制をどんどんやっていけるような、そういう大学の環境整備をしていただければ非常にありがたいというふうに思います。
  32. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 だから、先生も任期制というものを全面的に否定すべきものではないと今おっしゃっているわけで、紳士的な、プライベートな形でそれぞれ条件を整えるためにやれるところからやっていったらいいというその問題に関して、それを大学のそれぞれの判断でこの法律に基づく任期制を導入しようという決定をしたところはこれに基づいてやりなさいと、文字どおりこういうことですから、どれだけの大学がこの法律に基づく任期制をやるのか、あるいはまた紳士協定の方がいいということで紳士協定でおやりになるところがあってもいいわけです。そこにアカデミックフリーダムというのか大学教育研究の自由はあるわけで、ある一つのこれができたから右へ倣えしなければならぬということこそが私は大変だと思うわけで、そういう意味で、こういう選択制でやるということの中で真っ向から反対だと言わなくてもいいような状態での議論はできないんですか。
  33. 沢田昭二

    参考人沢田昭二君) 今、大学人事交流がなかなか進まないという根本原因は何かという問題があると思うんです。先ほどからいろいろ有本さんからも話がありましたけれども、諸外国、特に欧米大学とそれから日本大学の違いというのは、大学間格差というのがこれはもう全然違うわけです。特に日本の場合大学間格差というのが非常にシビアでして、大学教員になるような研究者を育てる大学というのは指折り数えるところしかないわけです。  ですから、そこから育ったそういう研究者はそこの大学にいる。そこからよそへ行くと都落ちしたという印象になってくるような、そういう大学間格差がすごくシビアにあるということが一番根本原因なわけです。  それから、そういう人事交流をやっていこうとしますと、日常的なそういう研究交流が自由にできる雰囲気が非常に大事だと思います。  先ほど申し上げました基礎物理学研究所というのは、そういう全国の研究者が、同じ分野研究者が集まっていろいろそこで自分たち研究できるんだという、そういう雰囲気がありましたから、どこの大学にどういう人がいるかというのを、ずっと地方大学まで含めて全部研究者のお互いの顔がわかる、そういう活動をやっていました。  そういうところですと、自発的にどんどん人事交流が進むわけです。あそこにはこういうすばらしい人がいるからぜひ連れてこようというふうになるわけです。そういう環境整備をきちんとやらないでおいて、機械的な任期制をぱっと押しつけるというのでは、やっぱりこれはうまくいかないというふうに思います。
  34. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 後段の御意見は私も賛成なわけで、だから私たちも文教委員としてこの法案審議する場合に今おっしゃっているようなところをきちっと押さえております。だから、国家権力でもって各大学のありようを規制したり統制したり、各大学の先生が事なかれ主義に陥って右往左往するようなことをしたら大変ですから、だから、それを文部省の権力によってそういうふうなことにさせてはならぬということで私たち審議の中では参加をしておるということだけは申し上げて、各大学の方も、閉鎖的であるということについて、やはりそれを打破するには任期制でないもっと別のことで打破すべきだとおっしゃるなら、その点で積極的に打破をしていただいて、国際化社会の中で研究あるいは教育、そうしたところで非常に重要な部門を持っておられる大学ですから、ひとつ御検討いただきたいということを申し上げまして、終わります。
  35. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 日本共産党の阿部幸代と申します。  三人の先生方、きょうは貴重な御意見を伺わせていただき、どうもありがとうございました。時間の都合で最初に沢田先生に三点ほど伺いたいと思います。  先ほどのお話の中で坂田先生の言葉を引用してくださいました。人事交流の制度というものも学問研究発展という本質を背景にして進められなければならない、考えられなければならないということで、私は今度の法案審議に当たってこれがかなめになるのではないかなというふうに思うんですが、そもそも学問とか研究発展というのは、その本質というものはどういうものなのか。なかなか素人ですからわかりやすく話すのは大変かと思うんですけれども。  それと、そうした学問研究の本質に基づく先生たちの自由な交流を妨げているのは一体何なのか。逆に言うと、どうしたら自由な交流がもっとできるようになるのか。任期制というのは本当に残酷な制度だと思うんです。期限を定めて追い出すことによって交流するなんというのは、これは本当に残酷なことだと思うんですが、その点を一つ伺います。  それから二番目は、私は日本社会というのは諸外国に比べてまだまだ大学院生や研究者の数というのは少ないのではないかなというふうに思っているんです。日本科学技術発展のためにはそこが本当に厚くならなきゃいけないし、大事にされなきゃいけないと思うんですが、大学院生の教育の問題です。現状、大学院生の数はふやされたけれども、先生たちの数はふやされないで大変な状況にあるのではないかと思うんですが、そうした現状。  また、院生がそういう中でマスターからドクターに残ってじっくり研究する道を選べるのか、あるいは具体的にどうなっているのか、先ほどの話では民間の方に出ていく人もいると、そういうお話があったんですが、そのあたりをお聞きしたいんですね。そういう中で任期制が導入されますと、先生にとっても院生にとってもどういうことになってしまうのかということが二点目。  それから三つ目は、今、学生や国民の期待にこたえる大学づくりというのが随分強調されているんですが、具体的にどのような努力、試みをなさってこられたか、お聞かせいただきたいと思います。
  36. 沢田昭二

    参考人沢田昭二君) 先ほど少しお話をしたんですけれども大学人事交流を進めなきゃいけないということの一番の背景は何かといいますと、やっぱりそこが閉鎖的になるというと、ともすればいろんな広い視点からの研究ができなくなるとか、そういうことが背景にあるわけですけれども、しかし一方ではまた、そこで伝統的ないろんな研究が積み上げられてすばらしい研究システムができている。そういう場合に、それはやっぱり残していかなきゃいけないという側面もあります。  ですから、広い視点で人事交流を進めながら、そして研究発展させなきゃいけないわけですが、でも、そういう人事交流とかあるいは任期制とかそういうものを自主的にやったというのは、一つは形なわけですね。ですから、その形をなぜやったかというと、そのもう一つ背後にある本質的な研究をどう発展させるかという、それはその研究発展状況に応じてそれぞれ違うわけです。ですから、それに応じたいろんな体制をとっていかなければいけないだろうと思うんですね。ですから、研究発展させる、教育発展させるというのが一番根本にあって、そのためにこれをやったらどうなるかということを考えて、そこから判断していかなきゃいけないわけです。  そういう場合に、いろんな社会的な状況、日本のように、異動しますと一般的には不利になるという状況があります。私も広島大学から名古屋大学へ移ったときは三年間単身赴任でした。したがって、家族にも随分迷惑をかけたなとは思っているんですけれども研究面で私の場合は幸い非常にうまくいきましたからそっちの方の弊害はなかったんですけれども一般的に、実験分野研究者なんかですと、自分は今せっかくここでこういう実験をやっていこうと思っていた、しかし、もっと別の大学に行きますと、そういう実験の継続ができなくなるというようなことがあります。  それから、理論の研究者の場合でも、大きな大学ですと、そこにいろんな種類の近い研究者がたくさんいますからいろいろな議論ができるわけです。何か情報がどんどん入ってくるわけです。研究にとって情報が入るということはすごく大事なんですけれども、地方の大学に行って、同じ分野研究者がだれもいない、それから若い大学院生も一緒に議論する相手がいない大学に行きますと、なかなか情報が入ってこないということが出てきます。そうなりますと、その研究者は、自分が本当にやりたいと思っている研究はできなくなっていく。人事交流というのは、そこへ行ったらこういう研究ができるんだという抱負を持って移っていくというのが一番理想的だと思うんですね。そういう体制をぜひつくっていただきたいというふうに思います。  それから、大学院生が、特にマスターコース、最近はいろんな企業の研究所なんかに行こうとしますと少なくともマスターコースは出ないと行けないというふうになってきています。  自分が理想を持って何かこの分野研究したいと思って大学に入るわけですけれども、上の方を見ますと、ドクターコースに行ったら授業料をまだ払わなきゃいけませんし、それからその先には給料の安い助手ポストしかないということになってきますと、マスターコースにいる間にやっぱりこれはだめだなと思ってよその方に行ってしまう。先が見える優秀な学生ほどどんどん先によそに行ってしまうという現象が起こっていまして、例えば名古屋大学の工学部なんかでは、ドクターコースに残る学生というのは留学生がかなり多くなってきています。日本人の学生はむしろ少ないという状況が生まれてきています。  したがって、助手になる人というと、今度は外国人が助手になる。これは、日本大学がいろんな国の人種を問わないでそういう人を処遇するというのは、それはそれなりに人類全体にとってみたらすばらしいことだと思うんですけれども、でも、日本人の学生が魅力を感じないということは、やはりこれは問題だと思います。そういう点で、今の大学院からその先の助手、それから大学教員というところを魅力のあるものにしていかないといけないだろうというふうに思っています。  それから、大学づくりというのは、やっぱりそういう困難な中で日本大学の先生方は忙しさがすごくふえているわけです。学生数に見合って十分な教員ポストが今ありませんし、それからサポートする体制も、定員削減がずっと続いていましてすごく困難な状況の中で、すごく大学の先生、今超多忙化現象というふうに言っているんですけれども、忙しい中で研究教育に精を出していらっしゃるというのが私の実感です。  ですから、そういう中で一生懸命頑張っていて今の状況なんですけれども、これをもっともっと改善していただいて、日本大学研究教育をすることが、もっともっとゆとりを持ってやっていけるように、そういうふうにしていただきたいなというふうに思っています。
  37. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 どうもありがとうございました。  慶伊先生にお伺いします。  先ほどのお話で、先生のおられる大学には世界一流の設備を整えていただいたということがあって、大変恵まれた教育研究環境におられるのだなというふうに思ったんですが、一方、私は地方の大学にも見に行ったことがありまして、電気の容量が少なくて、冷凍庫も電源を切ったりとか、夏でもクーラーもつけられないとか、大変なところで研究庄活をしておられる方もいるんですね。  それで、日本大学におけるこういう教育研究条件の格差の問題についてどのようにお考えになるか、伺いたいと思います。
  38. 慶伊富長

    参考人慶伊富長君) 私どもの方は新設でございます。いろいろ御手当てをいただいて、大学院のみでございます。しかも先端の分野を担当するという使命を持ってつくられた大学でございまして、最低の設備はやっていただけましたし、ほかの一般の現在の日本理工系の中でいろいろなところがございますので、そういう点では大変恵まれたということは事実でございます。  これはどこでもそうですが、それは先ほどの給料と同じで、全部の大学が私学も含めてすべて非常に恵まれた条件にある方が望ましくはあります。しかしながら、限られた資源の配分という問題で、これは社会の方あるいは政府その他の方で決めることでございまして、私どもとしては、どこでも非常に立派な大学が存在し、いろんな機械もすべてどこでもあるというような状態が望ましいと思いますが、残念ながら世界じゅうそういう国はどこもございませんので、やはりどうしても重点化されたところに——各大学の努力もありましょうし、それから国の方針もありましょうし、社会の歴史もございましょう。  いずれにしましても、研究中心大学から、教育中心大学からいろいろなバリエーションがございます。そういう点で、一律に全部私と同じようになれば私はいいと思いますが、そういうふうにはなかなかまいらぬのではないかと、そういうふうに考えております。
  39. 江本孟紀

    ○江本孟紀君 自由の会の江本と申します。よろしくお願いいたします。  この辺まで来ますと、質問も少しひねないと。もう大体いろんな御意見をお聞きしまして、前回もこの委員会をやっておりますので私たちもいろんなことを聞いてはおるんですけれども、そこで、きょうせっかくお越しいただきましたので、私は大変失礼な質問をするかもしれませんけれども、お願いします。  沢田先生、私は教授という職業を、前回もこの委員会でやったんですけれども、先生の名誉教授というのは、私は教授と名誉教授の違いがよくわからないんですが、その辺を少しお話しいただけますか。
  40. 沢田昭二

    参考人沢田昭二君) 名誉教授というのは、その大学にいたということぐらいしか特に何もありませんで、給料も何ももらっていませんし、その大学の図書館を利用するとかそういうくらいのことですし、それから年に一回名誉教授の集まりというのがありまして、そこで顔合わせしてお互いに元気だったかというそういう状況なんですけれども、でも、諸外国ですと名誉教授の場合はちゃんと部屋がありまして、それで研究活動を続けるということが保障されていますよね。日本の場合は、今の大学はすごく狭いわけです。だから、名誉教授室をつくったらどうかという話をいつもしていたんですけれども自分がなったときに自分から言うのは、今みんな部屋が狭くて困っていますからそういうことを言えないということで、実質上、日本の場合は名誉教授というのは名前だけということになっています。
  41. 江本孟紀

    ○江本孟紀君 そういうことで、名誉教授という先生もいらっしゃって、教授という一つの職業というようなことでいいますと、私は、余り世間に知られていない職業の一つではないかと。  ちょっと参考までの話なんですけれども日本のムダ大辞典という本がPHP出版から出ておるんですけれども、その中で、学校・教育部門でむだの五位にランクされておるのが日本教授なんですね。その理由として、「日本教授欧米と違って一人一人専門が違うため、教授同士が互いに議論し、自由に競争するシステムが無い。その閉鎖性、狭量ぶりはいかにも日本的だが、それだけに一度教授になってしまえば、もはや一国一城の主で、それこそ犯罪でも起さない限り、罷免はおろか、まず降格されることもない。だから業績などなくても定年までその職が安堵されるのだ。」というようなことを書かれてあります。  それから、先般この委員会でも話が出ましたけれども、新聞等によると、競争のない大学の教職員を、「患者の楽園」だというようなことをやゆして書いておるような新聞もあったりなんかするんです。  私はその中で、一たん任用されると身分上の保障が非常にしっかりしている、それから研究成果や論文発表の業績評価もない、そういうようなことを言われて、大学教員の実態というものが非常に知られてないんではないかと。  そこでこういった無用論というのが出てくるわけですけれども、そういう実情を書いてあるわけですけれども、実情かどうか知りません。それが的確であるかどうか。それから、そういうことによってこういう無用論が出てくるのかというようなことをどうお考えになるのか、沢田先生に少しお聞きしたいんです。ちなみに政治部門では、その本の中で参議院がむだの第三位になっています。それだけお伝えして、少しお願いします。
  42. 沢田昭二

    参考人沢田昭二君) そういう十年も一日の同じ講義ノートでやっている人がゼロだとは思いませんけれども先ほど申し上げましたように日本研究教育条件というのはすごく悪いわけですけれども、でもそういう中で、大部分の教員方々は一生懸命やっていらっしゃると私は思っていますし、私がいた物理学教室でもそんなにのうのうとしているという人はだれもいませんでした。  物理教室の中で毎年教室講演会というのをやっていまして、その一年間でどういう研究活動をやったかということをみんなの前で報告する、そういう会があるわけです。それから、大学院生が学位論文なんかを発表しますけれども、それはもうもろにそういう教授たちがどういう指導をしたかというのがそこで反映されるわけです。そうすると、その教授評価がまたそれでわかるわけですよね。日常的ないろんなそういう活動を通じてお互いの評価はできているわけです。  まだ論文なんか数は少なくても、この人がどういう考え方を持っているかということは、日常的なそういう研究交流を、違った分野の人たちとお互いにやるということをちゃんとやっていけばできるというふうに思いますし、そういうことをもっとエンカレッジするように、できるだけ雑用を少なくするように、教育の方とか研究の方に専念できるようなそういう体制をつくろうとすると、やはりそれをサポートする技術職員とか事務職員、それをぜひ定員削減なんかしないで昔のようにふやしていただきたいなというふうに思うわけです。
  43. 江本孟紀

    ○江本孟紀君 私はこれは賛成の立場でお話しするんですけれども、そういうことで慶伊先生と有本先生にはお聞きしなくてもいいと思っておりますので、沢田先生だけにお聞きしますけれども、この法案に反対するいろんな方の、団体等も含めて陳情、要請を非常に受けましたけれども、その中でおおむね三点問題になっていると思うんですね。  その人たちの提起する問題として、学問の自由に対する侵害になるのではないかという理由と、それからもう一つは合法的首切り法案ではないかということと、先ほどもちょっとお話が出ましたけれども任期中の業績評価、この三点に問題があるのではないかということをおおむね言われておりますけれども、この点についてお聞きしたいと思います。
  44. 沢田昭二

    参考人沢田昭二君) そのとおりになるのではないかと心配しているわけです。  先ほどもちょっと申し上げましたように、全員に任期がついておればまた逆の問題が起こったわけですけれども任期がついている人とついていない教員の間に差別が出てきますよね。周りの研究者が議論してその人を再任するかどうかということを決める場合に、やはりどうしてもそういう配慮をせざるを得ない。特にデリケートでない人、参議院の場合はどうかわかりませんが、大学教員というのはかなりデリケートな人が多いですし、こうやったらどうなるかという先を見る人がすごく多いですから、やはりそういういろんな影響は出てきて、やっぱり思ったとおりをずばずば言うということがすごく難しくなってくるんじゃないか。私はもう名誉教授でずばずば言っていますけれども。  それから、時期が来たらばさっともうそれで首というのでは、やっぱりすごく恐怖感の方が強くなると思いますね。ですから、ぜひこれをやろうとするんだったら、そういう教員ポストのプールみたいなものをつくっていただいて、次のポストが見つかるまでそこにいるということが保障されていて、それで、その人をそのままそこに閉じ込めておくのはもったいないですから、研究教育の方は継続していただくようなシステムをつくって、それでやっていただくんだったらまだそういうモラルの任期制に近づくなと思うんですけれども、そういうこともしないでやればまさに首切り法案だというふうになると思いますね。  それから、そういうことを考えますと、やっぱり自分任期中に幾つか論文を書かなきゃいけない。というのは、ちょっと違った分野からその人を見ようとすると論文の数とかそういうことが問題になってくるわけですが、研究の中身というのは、その人が論文を書こうと書くまいと、一緒にいろんな日常的な議論をしていればわかるわけなんです。  私の大学院の、名古屋大学に来たときにドクターコースの三年生が四人いましたけれども、それぞれいろいろ議論をしますと、まだ論文を一つも書いてない人が、これは将来すばらしい研究者になるだろうなと思っていたその人が京都大学の基礎物理学研究所の所長に今なっていらっしゃいますけれども、ということが起こるわけです。それは日常的なそういう交流をやっていく中で初めてつかめるものですから、ちょっと違った分野から論文の数だけでというふうになってしまうと、本当に独創的な研究というのが見出せないことになってしまう。  湯川先生でも、有名な中間子論でノーベル賞をもらいましたけれども、ボーアという有名な物理学者日本にやってきたときに、湯川先生に、君は新しい粒子が好きだねと言ったわけです。というふうに、そういうすぐれた研究者でも、ちょっと新しいそういう芽が出たものが本当に将来すごく大きな山脈をつくるかどうかというのはなかなか判断が難しいわけですね。研究というのはそういう側面がありますので、任期制というのもそういう点でそういう芽を摘んでしまうという可能性を心配しております。
  45. 江本孟紀

    ○江本孟紀君 ありがとうございました。
  46. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 新党さきがけの堂本暁子でございます。きょうはありがとうございました。  まず、有本参考人に伺いたいんですが、きょうこの表を見せていただいて、おもしろいデータを見せていただきました。先ほど石田さんの方からも質問があったんですが、私は女性の問題について伺いたいんですけれども、この表を見てもう愕然といたしました。とにかく日本というのは七・九%しか女性の大学人がいないということで、一けたなのはここに出ている国の中で日本だけというのは、もう本当に多様性が重視され、価値観が多様になっている時代に何たることぞと思っております。  先ほど先生のお話では、公募するから多分今度女性もどんどん入れるだろうというお話だったんですけれども、実際は大学人事権というのは教授会ですから、そこの教授会も、女性がほとんど教授会に入ってない大学とか、いても本当に一人、二人というような、この絶対数が少ないですから、少ない中で一体どうやって女性が起用されるのかということは非常に問題だろうと思っているんですね。  先ほど沢田先生が学者を客観的にプールするようなところというようなお話もございましたけれども、どうやって大学の自治を守りながら、同時にその評価の客観性が保てるのか、その点を伺いとうございます。
  47. 有本章

    参考人有本章君) 女性の大学教員の比率につきましては各国でかなり幅がございます。しかし、世界的に見て南米諸国は割合が高うございます。これは国際調査でもそういう結果が出ておりますが、全体的に調査をやった国でくくって、研究に熱心な国、教育に熱心な国、研究教育が半々熱心な国、こういうふうに分けてみますと、日本研究に熱心な国で、教育に非常に関心が弱い。大学教員の七五%は研究志向なんですね。アメリカあたりが大体半々で、五〇%近くが教育になってきますので、かなり教育は上がってくるわけですね。南米はそれが非常に高くなっておるわけです。これは国によってどういう活動に重きを置いているかということになるわけです。  そういうふうに見ていきますと、今までは女性の採用というものを研究中心日本は見てきたと思うんですね。それでパーセンテージも低いわけですし、全体的に女性の高等教育の進学率がやはりベースになって、大学院から輩出されてきて研究者にどれだけなるかという、そういうすそ野の部分との関係もあります。  アメリカが多いといいますけれども、アメリカも、昔調べたときは一五%ぐらいでしたが、今が二六%かそれぐらいですから、アメリカでも五〇%を超えるとかそういう数字にはなっていないんです。そういうふうに世界的に比較してみて、やはり教育にウエートをかなり置いていくという時代になってくれば、女性の方が非常に教育の方に執心でございますので、その辺の物差し、評価基準をどういうふうにするかによって上がってくるということがあると思います。  それから、教授会は確かに現在は、工学部あたりは特に女性が少ないんですが、全体的に女性が少ない中でそういう業績審査をやる場合にどうなるかということですが、今まではそうですけれども、これからは任期制もそういうふうに、組織活性化とか、それから考え方の活性化とか、世界レベルで考えるとか、こういうふうに発想を変えてくるわけですから、そうしますと今までとは違う基準教授会も行動するようになってきますから、女性をできるだけ入れていくとか考慮するとか、アメリカあたりですと、同じ業績だったら女性を先に採るとかいうことをやりましたけれども、例えば日本でもそういうようなことが起きてくる可能性はあるんですね。  これは、だから大学人がどういうふうに意識を変えていくかという問題で、これを私は、自己点検・評価をきちっとやっていくということ、それから大学人自分たち教育研究サービスの活動をもう一遍問い直していく。これはFDと言っているんですけれども、ファカルティー・ディベロップメントと言っているんです。これは外国では比較的発展しているんですが、日本ではまだ比較的弱いわけですね。学問の自由とかかわる、その辺のことを大学の中から変えていくということがようやく今動き始めたんですね。  こういうことと今の任期制というのは非常に関係があるわけですから、カンフル注射と言いましょうか、多少そういうショック的なところがあるのですけれども、そういうものを契機にしながらもう一遍考え直していく。それで活力があるものにして、学問的な発展をさせて、それで社会に貢献するというのが一番大事なことですから、そこのところに合わなければもう一遍考え直すということですけれども、とにかくそういう方向で考えていこうということで私は賛成をしているわけですね。  そういう意味で、十年ぐらいこれでやってみて、どうしてもうまくいかないということになりますと考え直さないといけませんが、しかし、二十一世紀は恐らく国際的な土俵の中で日本の学術や教育やそういうものを考えていかなかったら、これだけ経済とかそういう点で世界的に注目されているわけですから、そこは今までの輸入型で、後発国型の百年やってきたシステムでいくというのは、やはり問題ではないかということでございます。
  48. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 学術会議も非常に女性の役職についている方が少ない。米沢さんが物理学の方では役職についていらっしゃいますけれども、やはり非常に少ない。それから、研究者の中で、ここにはそういう表がないんですけれども非常勤が非常に多いということで、確かに常勤になってしまうと、拝見すると九九・三%というふうに女性もなっているんですが、それはあくまでも少ない常勤の中のまたパーセンテージということで、それよりもむしろ非常勤の中の男女の差を、ぜひ先生にも一度表をつくっていただけたらうれしいなというふうに思いました。  それから、これは慶伊先生や沢田先生に伺いたいんですけれども先ほど根なし草とか落ちこぼれとか、おまじりって初めて聞きましたけれども、それから都落ちとか、それから沢田先生はやはり異動することが不利になるというふうにおっしゃった。確かに、システムとして今変えなきゃならない、日本大学が硬直化している、これはもうだれの目にも明らかなことだ。国際性がない、透明性がない、流動性がない。これはもう必然的なことだと思うんですが、必然というより、むしろそれがもう非常に言われていることです。  問題は、今先生方がおっしゃったそういう表現にも言われているように、社会的風土とそれから日本人のメンタリティーだと思うんですね。だから、まさに反対の声を伺っていると、確かに本当にうまく機能すればそれでいいかもしれない。任期五年でもっとよりよい、いい大学自分も行きたい。それから研究自分のテーマも変わるかもしれない。こっちの先生の方は自分のやりたいテーマがあるかもしれない。  それからもう一つ、きょうはたまたま理科の先生ばかりで、それから有馬先生も理科でいらっしゃるんで、飛び級も理科だけの、数学と物理だけで評価するとこの間おっしゃったんで、私はそれは反対ですというふうに申し上げました。もっと音楽のことを考えてくれ、隣にスポーツの方がいらっしゃいますけれども、スポーツのことを考えてくれというふうに申し上げたんですけれども、やはり数学と物理だけではかられるということには私は大変不満でございます。大器晩成という言葉も日本にはあるわけなんですね。  ですから、そういうふうに考えますと、先ほどからおっしゃっている女性の問題でも、女性は研究者より教育者に向いていると、必ずしもそうじゃないと思います。米沢さん一人見たって、非常に優秀な研究者が研究として芽が出ないというのがある。それは男でも同じだろうと思うんですね。とすれば、どうやって本当にその公平な評価ができるか。この日本の、落ちこぼれとか根なし草とか都落ちとか、そういった現実にあるその壁を、どうやって先生方はこのシステム賛成のお立場から、沢田先生は反対していらっしゃいますけれども、これは大学人の方に私は責任があるんではないか。あくまでも大学の自治に任せると文部省は言っているわけですから。とすれば、先生は、その大学教授会だけでいいのか、それにもっと客観性を持たせるようなシステムをつくろうというふうな提案をなさるのか、その辺のところを、本音のところをぜひ伺わせてください。
  49. 慶伊富長

    参考人慶伊富長君) 口が悪くなるかもしれませんが、大学は失業救済機関ではないと考えております。研究者集団は社会に対するアカウンタビリティーを持っております。学問発展させるという義務を持っております。そのために、あくまでも研究条件をよくしていただきたい、こういったことを堂々とお願いをしてまいりました。それはあくまでも目的を果たすためであります。それは社会に対するアカウンタビリティーの我々のとり方であると考えております。  そういう点で、現在いる人だけでなくて、表にもいるタレント、研究に合っている人、それからやっている人、それがすべて緊張関係の中でそれぞれ自分の独特なアイデアを生かす。学問の自由とは、決して勉強しない自由は含みません。学問発展させないような研究を認めるものではありません。それぞれ学問論は違いましょうけれども、そのためにダイアローグがあり、ディスカッションという場があり、ドイツが編み出したセミナーがあるわけであります。そういう形でもって絶えず真なるものを求めて皆でやっていくというものでございまして、いまだに中世期以来同じ場所で同じ業務をやっている機関が世界じゅうでもって七十ばかりございますが、そのうち五十は大学というものでございまして、ここまでずっと続いてまいりましたのは、こういうやり方でもって社会に奉仕ができてきたと、そういうことを社会がお認めになったので、永続したオーガニゼーションとして存在していると思います。  でありますので、あくまでも学問の自由、それからオートノミー、これはすべて社会に対する研究者の役に立つ部分、この役に立つというのは技術を介してという点がございまして大変複雑な点もございますけれども、基礎研究者といたしましては、学問の伝承、発展、その中における次代を担う独立研究者の養成、そういったことをやるわけでございまして、私は心からやっぱりそういう点で、日本がともかくこれほど優秀な若手がいっぱいいながら、それが世界的な成果に近づきながら突破できないでいる唯一のことは閉鎖性にあると考えております。そういう点で、任期制はやってみる価値が大いにあると。また、これをやっているところが非常にあると。  ただ、日本社会でありますので、社会の方がいろいろ終身雇用制その他ございます。大学というのは新しい挑戦をすべきところでございまして、そういう点でもって私は積極的にやってまいりたい。後でまずい点は修正すればいいじゃないか、こう考えております。
  50. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 アメリカでは国会のスタッフが翌日ハーバード教授になったりしますから、ぜひそういうような外との交流も考えていただきたい。  ありがとうございました。終わります。
  51. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 三先生方、本日はありがとうございました。  まず慶伊先生にお伺いをさせていただきます。  きょう、各先生方のお話でもこの議論でも硬直的、閉鎖的というお話が随分たくさん出たわけでありますが、先ほど先生のお話でも、教授の任用は教授会でやるが専門家集団の意思が働くというお話がございました。その専門家集団というのは研究室、医局ということなんだと思うのでありますが、実際にそれほど世上言われるように大学というのはギルド社会、徒弟制度社会なのかどうか。多分そうだと思うんですが、もしもそうであるとしたら、それを打破するための何かはかにシステム的な保障が必要ではないか。今議論されております大学任期制度だけで果たして事足りるのか。  私は民間会社の出身でありますが、閉鎖的な職能集団というのは、伝統を守るためには非常に好都合でありますが、新しいものを生むシステムではないと思う。したがって、今回議論されております任期制度というようなシステムでそういう閉鎖性、硬直性が打破されるのか、もっと私はほかにも必要なシステムがあるのではないかと思う。  ちょっと私の記憶違いかもわかりませんが、多分ハーバードだと思うんですが、ハーバードには自校出身の学生を教授に任用しないという制度があるということを聞いたことがあります。私はこれも一つの見識だと思います。  そこで、申し上げましたように、本制度で保障をされるのか、ほかにシステム的な保障が必要ではないかという点。
  52. 慶伊富長

    参考人慶伊富長君) おっしゃるとおりでございまして、たまたま任期制一つの方式として、あらゆる努力をすべきであるという至上命令の中でこれを考えているわけでございまして、もっと重要なことがございます。  例えば、ドイツは教授を自校出身者、現在いる人からは絶対とらない、これは法律で決まっております。それからハーバードは、実はハーバードが一番アメリカでは自校卒業生の数が多いところです。ただし、全員表に出ております。それから戻っている。日本は、大学から大学院から助手から全部ずっとというのが決定的でありまして、実は先ほど出ました数字は、勤務した学校を幾つ動いたかという数字なんです。その手前で、日本大学を卒業してそこの大学大学院を出てとつながっていますから、日本決定的にまずい。  それを打破する必要があるわけでございます。実際にやっている研究者といたしまして、日本の学生は非常にできる、どこの国の学生よりもまさるとも劣らないと私は確信を持っている。にもかかわらず、世界的な業績が出そうで出ない部分は何かというと、マインドの問題、研究者集団の知的レベルの問題と言った方がいいかもしれませんが、ともかく非常にまずい点が多々ございます。よかった点が最近は特にまたまずくなってきている点もある。大学としては、何とかそういう将来のために、若い人たちの活力を引き出すためにもあらゆる努力をすべきだと思っております。  もちろん、任期制はその一環として私は重要と思いますけれども、これだけでは不十分であると思いますし、現在、国立大学においてはいろいろほかのことも大変改革が進行中でございます。言挙げしないために余り知られていないことを大変悲しく思いますが、ともかく大学はこの任期制の問題で初めて目が覚めてやっているわけではございませんので、そのことだけ最後につけ加えさせていただきます。
  53. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 ありがとうございました。  次に、有本先生に一点お伺いさせていただきます。  今、慶伊先生のお話のように硬直的、閉鎖的であるとしたら、私は、やはり評価が正当ではない、その評価を下すシステムが確立されていないということも一つ側面であると思うんです。  先ほど先生のお話の中で、評価は一元的ではなく多様なモデルで考えなければならないというお話がございました。その多様なモデルという点、もう一遍御説明をお願いいたしたいと思います。
  54. 有本章

    参考人有本章君) 評価システムとか評価過程の問題がこの任期制の非常に大きな問題であるし、哲学にかかわることだろうと思います。だから、任期制だけじゃなくて評価をどういうふうに考えるか、あるいは評価と一緒になっている報奨をどういうふうに与えるか、褒美をどういうふうに与えるかという問題。  だから、日本社会全体が、今まではその評価や報奨の与え方を日本独特のやり方でやってきたということになる。国際的に見てみたら、やはりそれは外国に追いつくためのやり方をしておったと思うんです。だから、外国と互角の競争をするとか、あるいは水準をもっと上に行かせるための評価とか報奨システムではなかったように思うんです。  ハーバードの例が今出ましたけれどもハーバードだけじゃなく、アメリカの大きな大学は大体自校の出身者を三分の一程度に抑えています。若い人たち、特によその大学の人たちに開放しています。教授はできるだけ自分のところをとる傾向がありますが、全体的には三分の一ぐらいに抑えています。  十九世紀の終わりには、ハーバードもエ−ルも一〇〇%自分大学の出身者で占めておったんですね。ジョンズ・ホプキンス大学という大学院大学ができたときに、研究をやっぱりきちっとやらないとその大学に負けるということで、ハーバードもエールもそういうphDを持った人たちをよその大学から入れるようになっていったわけです。そして、それは法律で決めたのじゃなくて、自分たち自分大学をよくするということをやりまして、百年かけて大体三分の一ぐらいに抑えているわけです。  日本大学は逆でして、大きい大学ほど自分大学の出身者で固める。今一〇〇%のところは余りなくなりましたが、まだ九〇%ぐらいのところがたくさんありますし、全体的には日本大学は五〇%、四〇%ぐらいで、流動性は確保されているんですが、研究教育の水準を決めると思われる、研究資源が集中しているところは少ないですから、そういうところの大学はやはり閉鎖的な構造になっているわけですね。これをやっぱり今転換していこうというのが任期制と非常にかかわるところであります。  アメリカは三分の一ぐらいで、ハーバードでも自分のところの非常に優秀な学生を十年に一回ぐらい上に上げる。アップ・オア・アウトという政策があって、アップをされるのはごく少数で、ほとんどはアウトで外へ出していく、外で活動した人たち、活躍した人たちをもう一遍戻してくるというやり方をとっているわけですが、これで世界学問中心地が今大体アメリカにあると言われておるわけですね。なぜそうなったかというと、百年前からそれをやっている。日本は今からやるんですからそう簡単にはいかないだろうと思いますね。百年ぐらいかかるかもしれませんが、そういうことなんですね。  ですから、ドイツやフランスやイギリスは、アメリカがそういうふうに気がついたときに世界中心地であったわけですから、ドイツのシステムをアメリカが入れるときに、大学院をつくって、徒弟制度はやらないで大学院で開放的にやるという養成のやり方をしたわけですね。日本はそうじゃなくて、徒弟制度のドイツ型を入れていって講座制でやったわけですが、そこの違いが百年たってできてきているわけです。  だから、こういうことを今見直そうとしているわけですから、先ほど評価というのは狭い意味評価もありますが、そういう社会全体とか、学問によって日本社会発展させるとか、国際的に考えていくとか、こういう大きな評価とか報奨のあり方と関係があるわけですね。だから、大学社会がワンセットで終身雇用・年功序列型になっていったというのが、日本評価システム、報奨体系がそういうふうになっておったということです。それでは今からやっていけないというところに来ているから、社会大学も変えようとしているということじゃないかと思うんです。
  55. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 ありがとうございました。  終わります。
  56. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) 他に御発言もなければ、参考人に対する質疑はこれをもって終了したいと存じます。  この際、参考人皆様方に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、長時間にわたりまして大変貴重な御意見をちょうだいいたしまして、ありがとうございました。委員会を代表いたしまして心から御礼を申し上げます。  午前の審査はこの程度とし、午後一時二十分まで休憩いたします。    午後零時十分休憩      —————・—————    午後一時二十四分開会
  57. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、大学教員等任期に関する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  58. 馳浩

    ○馳浩君 自由民主党の馳です。よろしくお願いいたします。  前回に引き続きまして、今回の法案任期制導入に伴いましてのインセンティブの付与に関して質問をさせていただきます。  今国会の提出法案の中で、総務庁所管の一般職の任期研究員の採用、給与及び勤務時間の特例に関する法律案があります。いわゆる任期つき研究業務職員法案です。この法案は、御承知のとおりに、科学技術基本計画に基づき、我が国の研究開発能力をより一層向上させるために、国立大学を除く国立試験研究機関の研究者に一定の場合任期制を導入するものでありまして、ではどういう場合にこの任期制を導入するのか、さらには、この任期制導入に伴い給与に関する特例などのインセンティブが付与されておりますが、これがどういう内容のものか、その概略を教えてください。総務庁に御質問申し上げます。
  59. 大西一夫

    説明員(大西一夫君) ただいまお話のありました任期つき研究員法におきましては、研究者の流動化を促進させ研究活動の活性化を図るため、国立試験研究機関等の研究者について任期制を導入することとしたところでございます。  具体的に申し上げますと、二つの型がございまして、一つは、高度の専門的な知識経験を必要とする研究業務に、研究業績等によりその研究分野において特にすぐれた研究者を招聘する場合、いわゆる招聘型と言っております。それと、当該研究分野における先導的役割を担う有為な研究者となるために必要な能力の涵養に資する研究業務に、独立して研究する能力があり、研究者として高い資質を有すると認められる者を従事させる場合、いわゆる若生育成型の二つの場合に任期を定めて採用することができることとしたところでございます。  それから、特例の説明をということでございましたので、引き続きまして、給与に関する特例について御説明いたします。  この任期つき研究員は、特定研究業務にあらかじめ一定の業績を上げることを期待して任期を限って任用されるものでございます。したがいまして、現行の研究職俸給表のように、長期継続雇用を前提として職員の能力の伸長や経験の蓄積によって昇格、昇給を行うという枠組みによらず、その期待される職務と責任に応じ、また必要な人材の確保が図られるよう、新たな俸給表を設けたものでございます。  もうちょっと具体的に説明させていただきますが、招聘型につきましては、国立試験研究機関等に招聘するにふさわしい研究者で、比較的若手の研究員に対応するものから世界トップレベルで活躍している研究員に対応するものまでをカバーし得るよう、一般職職員の最高額を限度として特例的な給与額としたものでございます。また、若生育成型につきましては、博士課程修了者、フェローシップ経験者等、将来優秀な研究者として広く研究社会をリードし得る資質の高い若手研究員を確保できるよう、民間の優秀な初任から若手クラスの研究員との均衡を考慮した水準を設定したものでございます。  以上でございます。
  60. 馳浩

    ○馳浩君 さらに詳しくお尋ねいたしますが、招聘型の研究員の場合には、俸給としては現在の公務員に相当するどの程度の金額が何段階に応じて支払われることになるのか、あるいは若手研究者の場合にはどの程度の金額がというふうな、そういう具体的なものを教えていただければ幸いと存じます。  研究者というわけでありますから、一般の公務員に当てはめれば、具体的に申し上げれば事務次官ぐらいの給与をもらえるのかどうかという、若手研究者の場合にはいかほどなものなのかという、金額のことを申してあれですけれども、お伺  いいたしたいと思います。
  61. 大西一夫

    説明員(大西一夫君) 具体的な金額をということでございますので、御説明させていただきます。  先ほど招聘型につきましては比較的若手の研究員に対応するものからと申し上げましたが、一号俸から原則六号俸までの中で、俸給月額、月給に直しますと四十一万円。それから、世界トップレベルで活躍している研究員に対応するということで、この法律の号俸の枠の外の特例的な給与として百三十二万一千円まで用意させていただいております。  それから、若生育成型につきましては三つの号俸を用意しておりまして、一番初任クラスでいきますと三十三万六千円、これは俸給月額でございます。一番高い三号俸、これが四十万七千円、こういうふうになっております。
  62. 馳浩

    ○馳浩君 というふうに、同じようなというような言い方をしますけれども、国会に提出された法案で、総務庁が所管している国立試験研究所で働く招聘型あるいは若手登用型の研究職に対して、こういうふうに給与についてのインセンティブを設けられていると。最高額が指定職の俸給表の十二号を超えないというわけでありますから、十二号が百三十四万九千円ですね、事務次官レベルで言えば。それを超えないというわけでありまして、今お伺いしたように百三十二万円ですね。恐らくノーベル賞をとろうとするぐらいの、それだけの研究をされる方にはその給与が保障されるということと同時に、もう一つは裁量勤務制といいまして、勤務時間についても大変フレキシブルにお任せといった形と、あるいは特定の研究成果が上げられた場合には手当がつくというふうことも私は承っておりますが、そのとおりですね。
  63. 大西一夫

    説明員(大西一夫君) さらに付言して御説明させていただきます。  先ほど先生からお話がありましたように、まず給与関係では、任期中に採用当初に期待されていた研究業績を超えるような特に顕著な研究業績を上げたと認められる研究員に限って、俸給月額に相当する額を任期研究業績手当として支給することとしたところでございます。  また、勤務時間に関する特例といたしまして、招聘型任期つき研究員につきましては裁量勤務制というものを導入したところでございます。この任期つき研究員法におきます裁量勤務制といいますのは、各省各庁の長が、職務の性質上、時間配分の決定その他の職務遂行の方法を大幅に職員の裁量にゆだねることが研究業務の能率的な遂行のため必要であると認める場合に、勤務時間の割り振りを行わないで職員を当該職務に従事させることができる、そういった制度でございます。招聘型任期つきの研究員という方々は、既に高度の実績を有し、かつ限られた任期の中で明確な業績を上げることが求められていることにかんがみまして、このような裁量勤務制といった制度を導入することとしたものでございます。
  64. 馳浩

    ○馳浩君 大変詳しい説明をありがとうございました。  次に、文部省にこれを受けて御質問申し上げます。  問題は、今御説明いただきました給与に関する特例、あるいは裁量勤務時間といったインセンティブを任期つきの大学教員にも応用できないかという質問であります。とりわけ、大学教員任期法案の第四条一項一号に言ういわゆる流動型と、それから三号に言うプロジェクト対応型に応用できるのではないかというのが私の主張であります。  その根拠を三つ述べたいと思います。  一つ目には、流動型に言う「多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の職に就けるとき。」の一つの場合として、先ほど説明がありました高度の専門的な知識、経験を必要とする研究分野において特にすぐれた研究者を招聘する場合、いわゆる招聘型が含まれるということであります。わかりやすく言いますと、多様な人材の確保、これは大学教員の場合ですけれども、これに特にすぐれた研究者の招聘確保が含まれるということであります。  二つ目の根拠は、プロジェクト対応型に言う「大学が定め又は参画する特定の計画に基づき期間を定めて教育研究を行う職に就けるとき。」、これはまさにここで言う計画プロジェクトの成功にその分野のすぐれた研究者の招聘確保が不可欠であることからも、これも招聘型と一致するという考えであります。  三点目には、この両法案とも、大学教員研究公務員の違いこそあれ、任期制を導入することによりまして特に基礎研究のより一層の推進、活性化を図ろうとする点においては法案の趣旨、目的は一致すると考えます。  この三点を踏まえまして、大学教員研究公務員とで給与などの待遇の面で差別する理由はないと考えます。したがって、任期法で言うところの招聘型には、研究員と同様に給与面のインセンティブを付与すべきであると考えますが、いかがでしょうか。
  65. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 御審議いただいております法案の内容と、それから今先生御指摘の国立試験研究機関の法律とで共通する部分は確かにあるわけでございまして、今御指摘のように、流動性を高めるとか、あるいは任期制というものを導入するのでありますとか、あるいはそれらを通じて活性化させるというねらい、その辺は共通なところがあるわけでございます。  ただし、全体の制度の仕掛けと申すものにつきましては幾つか異なった点があるわけでございまして、御案内のように、これは国家公務員だけではなくて、国公私の大学すべてに適用されるもの、これが一つ。  それから、国家公務員ということに限って見た場合におきましても、さきの国立試験研究機関の場合におきましては、国家公務員でない者を採用する、その点に着目して任期制を付するということでございます。私どもが今御審議いただいている法案につきましては、それもあるわけでございますけれども、既に国家公務員でなった者との間における、例えば配置がえでありますとか、あるいは転任でありますとか、あるいは昇任でありますとか、いわゆる人事制度上言っております任用のあらゆる諸形態すべてにわたって適用されるもの、こういうことでもございます。  また、今先生が一番御指摘の点でございますが、給与の問題がございます。公務員の給与は、先ほど総務庁の方から御説明ございましたように、若干制度の立て方が異なっております。そこはどこかと申しますと、国立試験研究機関の場合の制度の立て方と申しますのは、対象となる職員の職務の特性に着目してということでございまして、職務自体の困難度でありますとか、あるいは期待される研究成果の高度さ、また、他の任期なしの職務につく人と比べて職務内容が異なる、あるいは若干裏返しの議論になるかもしれませんけれども、あえて給与上の特例措置を行わなければならないほどの異なった程度のものがあるという、そういう制度の立て方にしてあるわけでございます。  一方で、私どもが御審議いただいているものにつきましては、任期を付されていないところから任期を付されたところに異動する人間のことを考えてみました場合に、基本的にはその職務の内容に大きな隔たりがない、基本的には同じである、こういう基本前提で制度を立てておるわけでございます。  公務員の給与はいわゆる職務給ということでもございますので、その官職の職務と責任に応じて決定されるということでございます。具体にこの任期制度が導入されてどのような勤務態様になっていくか、これは私どもとしてもよく見ていかなければならないかと思っております。その過程におきまして、これは給与上の特段の措置が必要であるという場面が出てくるかもしれません。これはよく見てみなけりゃならないと思うわけでございますが、私ども、現在御審議をいただいておる制度の中におきまして、あらかじめ任期つきのポストにつきましての職務はかくかくしかじかで、任期なしのポストに比べて違うんですということを一般的な形で、あるいは制度的な意味合いにおいて異なった位置づけをした上で位置づけるということとはしていないというところが一番異なった点であろうかと思うわけでございます。
  66. 馳浩

    ○馳浩君 一番心配するところは、同じ研究に携わる公務員として、片一方の国立試験研究所においてはそういった給与面での、待遇面でのインセンティブがあり、片や大学教員に関してはない。これはもしかしたら差別を生じることになるのではないか。とりわけ、同じ研究分野研究している者にとっての心理的なプレッシャーになるのではないかという懸念が一つあるわけでありまして、そういった差別が生じてもいたし方ないことであるというふうな考えでいればよいのでしょうか。制度が違うと言われたらそこまでなのでありますが、この点の懸念というものに対してのお答えをもう一度お願いいたしたいと思います。
  67. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 職務給の原則という考え方を申し上げたわけでございます。  したがいまして、これはやや理論的に申し上げたいと思うわけでございますが、全く同じ職務に従事しているAとBという人がおりました場合に、一方が任期つきであり、一方が任期なしであるという場合を想定いたしました場合に、AとBとを異なった給与上の取り扱いをするという特段の根拠はないわけでございまして、これは職務給という原則的な考え方からするといたし方ないところであろうかと思うわけでございます。  しかし、見方といたしまして、その任期を付された者にとっては非常に広い意味での、やや言葉遣いも難しゅうございますが、大きな意味での勤務条件ということからいたしますと、任期なしのポストに比べてやや不利ではないかというようなお考えの上に立っての御指摘であろうかと思うわけでございます。  この辺につきましては、先生御指摘の関連の給与上の問題もございますし、また教育研究環境、幅広い研究条件の問題もあろうかと思います。私ども幅広くこれは検討していかなければならないことかと思うわけでございますが、基本的な考え方は先ほど来申し上げたとおりでございます。
  68. 馳浩

    ○馳浩君 この給与面でのインセンティブの付与については、今後の検討課題でもあるというふうな認識を文部省にもずっとお持ちいただければ、私はそれで結構でありますので、これ以上は追及はいたしません。  それでは、五月十六日の衆議院の文教委員会におきましてなされました質疑を踏まえまして、人事院に質問をいたします。  いわゆる招聘型がこの大学教員任期法で明確に特定されていたら、任期つき研究業務職員法と同様に特別の俸給表の採用は可能なのでしょうか。さらには、この任期法で招聘型が特定されていなくても、将来各大学が作成する規則に特定されていた場合にはどうなるのでしょうか。この二点について改めてお伺いいたします。
  69. 出合均

    説明員(出合均君) 公務員の給与についてのお尋ねでございます。  公務員の給与、先ほども御説明ありましたように職務給ということで、その職務の特定性をもってその職務にふさわしい給与を出すということになっております。そういう観点から見ますと、任期つきの今回の法案は、その業務内容、任期等々がそれぞれの大学の自主的な御判断にゆだねられている。したがって、今回、給与上特別の措置を行うということができなかったということでございます。  しからば、どうしたらというお尋ねになろうかと思いますが、任期制につきまして、その範囲であるとか対象でありますとか、その任期が例えば何年というふうな仕組みが形づくられて、その中での教員の業務内容が任期がついていない教員の方と明らかに違うというような特定がなされた場合には、これはその時点において処遇の仕方について考えていかなきゃならない、こんなふうに考えております。  それから二点目の御質問、それはどういう形で規定される、もしくは形づくられればよいのかという御質問かと思います。これにつきましては、ある程度任期制の枠組みが横断的、客観的に整理される必要があるだろうというふうに思っております。今回の場合には、任期制を実施するに当たって各大学がそれぞれの大学の特性に応じた恐らく規則をおつくりになられるのではないかと思います。そこでの対応は非常に多様になってくるのではないかなというふうに思います。  そういう中で、例えば研究職における俸給表のようないわば新しい形での整理を行っていくとすれば、かなりそれがまとまった形で一律的な業務を特定できるようなものになっていく必要があるのではないかと思います。今後、各大学における規則等々のでき方を見ながら判断をしていくことになろう、そのように考えております。
  70. 馳浩

    ○馳浩君 わかりました。今後の検討課題ということで、この法案が成立しました後の私の注目の材料として見ていきたいと思います。  続きまして、私はまた賛成の立場からの質問となるのでありますが、やはり大学教授を初めとしてその横断的な、余り大学教授を労働者という言い方はしたくないんですけれども、その労働市場といいますか、どこにどういった研究をする方がいらっしゃるかという、そういう横断的な労働市場の形成が日本においてはまだまだ進んでいないのではないかと。どうしても、ある分野においては特定の教授によりまして、その人脈に応じて若手の研究生であるとか学者が回されているというふうな印象を受けますし、実際そうではないかというふうに考えますが、日本においての大学の先生方の労働市場といったものに対する考え方というのは、文部省はどういうふうにとらえていらりしゃるんでしょうか。
  71. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 現在、各大学におきましては、公募制の活用とか、あるいは社会人を教官に採用するというような教員採用の改善や、あるいは教育研究組織自体を非常に弾力的なものにするというような工夫、あるいは話題としていただいておりますいわゆる事実上の任期制など、教員流動性を高めるための多様な取り組みが、十分と言えるかどうかはともかくといたしまして、かなり行われておることは事実でございまして、それなりの成果が上がっているものというように私どもは認識しておるわけでございます。  また、数字でございますが、大学教員につきましては、近年、国公私立を通じまして年間八千人ないし九千人が新たに教員として採用されておるということでございます。さらに、昇任するとかあるいは転任するなどの形をとりまして異動する方々は年間三千人ということでございます。合わせまして年間で一万二千人程度の先生方が任用されておる、こういう状況でございまして、この数字がどの程度のものかなかなか評価は難しゅうございますが、それなりの国公私立を通じた大学教員の横断的なマーケットと申しますか、それなりの市場というものはあるのではなかろうかというように考えているわけでございます。  いずれにしましても、このような状況のもとで新たに今回任期制を導入できるようにするということが教員流動性というものをさらに高める上で大きな意義を持つものになろうというように考えておるわけでございます。先ほど来話題になっておりました国立の試験研究機関の任期制任期のこともございますし、またポスドク一万人計画で、やはり二年ないし三年の任期を限られた身分形態のものも出てきているわけでございます。これらさまざまな諸施策とも相まちまして、広く大学教員流動性が高まってくるものというように期待しているところございます。
  72. 馳浩

    ○馳浩君 これは文部省に対するお願いなんでありますが、この任期制が採用されて、じゃこの任期制にこの教授ポスト助教授講師助手ポストとなりましたときに各大学で規則を設けるわけでありますが、その任期についての情報の公表、これを各大学に任せるのではなくて、文部省としても日本全体として取り組んで、何か一冊の本にまとめるなりあるいはデータベースにして、そういったソフトがあればそのソフトに乗っけて、だれでも検索できるようなそういったものの開発をして、意欲的な、次へ次へと昇任を目指したり転任を目指したりする教員の皆さん方に対する基盤整備といった、そういう労働市場の形成についての御努力を、これはぜひ文部省としては全国的にお願いをしたいというのが一点でございます。  と同時に、この質問をする私の一番の懸念は、任期が来て評価をされて、あなたはもううちではいいですよとなったときに、そのポストの任を退職することになった方の次の仕事の問題でありまして、これはあなたの教育研究業績が一定レベルに行かなかったから再任もされなかったし退職になったんですよといって、自業自得だといってほうり投げてしまうと、これはせっかくの任期制が有効に活用されるとは私は思わないわけですね。  そういう観点で、有能な方々がむしろ心理的なプレッシャーを受けて、この任期制に応募をして次の研究所あるいは学部ポストを目指そうというふうな気持ちを持たなくなるかもしれないという懸念はあるわけでありますね。これに対する文部省としての考えはいかがなものか、お伺いしたいと思います。
  73. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 最初のお尋ねと二番目のお尋ねと関連があるわけでございますが、一つは、先月から大学共同利用機関といたしましての学術情報センターにおきまして公募情報を出すことにいたしております。これは今年度からの事業ということで始めておるわけでございまして、既に百件余りの公募情報、すなわち、ある大学のある学部学科のどういうポストが空席になっておって、それについて公募しておるという情報を集めて流しておるわけでございます。こういう情報自体が幅広く収集され、それが流布されるということが先ほど先生のおっしゃった言葉で申しますと横断的な労働市場ということの形成に役立つわけでもございます。こういう事業は私どもとして大いに支援してまいりたい、これが一つでございます。  それから二番目に、先生御指摘任期が切れた方の先の問題をどう考えるかということでございます。私どもして、非常にこれが幅広く定着してきたという状況を考えましたときには、ある程度自助努力ということにも期待するところがあっていいかと思うわけでございますが、それが定着するまでの間は、任期を付されたポストを擁する大学において、当該先生の任期中の教育研究活動の実績というものを常日ごろからよく把握しておくのと同時に、次の就職先ということについてもいろいろな工夫の上で配慮をしていく、平たい言葉で申しますと面倒を見ていくという態度がやはり必要なのではなかろうかというように考えておるわけでございまして、その点につきましては、大学の方にそのような考え方を述べてみたいというように考えておるわけでございます。
  74. 馳浩

    ○馳浩君 最後に大臣に。この任期制が採用された後の制度的な担保が十分必要であるというふうなことについては、大体各会派の皆さんとも意見が一致するのではないかと思います。  けさ、北陸先端科学技術大学院大学慶伊学長はこういうことを申されました。我々は、お金が欲しいのは確かにそれは真実だけれども、そういうものではなくて、大学教員として研究職、教育職につくということは、これは使命感を持って自分のプライドとしてこういう仕事に臨んでいるのだということを申されました。  そういう使命感を持った大学の先生方の気持ちにこたえるためにも制度的な担保というのは必要になってくると思いますので、最後に大臣の御決意と取り組みの意欲をお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
  75. 小杉隆

    ○国務大臣(小杉隆君) 従来からも任期つきの任用というものは行われていたわけですけれども、今回この法整備を行うことによってきちっと位置づけようと、こういうことであります。  そこで、今度の法案でもこの任期に関する規則を定めたり公表しなければいけないということを言っているわけでありまして、私は、より透明性を高めていかなきゃいけませんし、また今局長が答えたように、できるだけその情報を公開していく、こういうことが大切であろうと思います。  今、インターネットのホームページにそれぞれ登載をして、そういう研究者や教育者も自分業績とか実績について訴える手段もふえてきておりますし、また先ほど答えたように、学術情報センターのデータベースにももう既に十三万件以上のデータが蓄積されておりますし、また、新しくこれだけ公募しますよというデータも、先月から始まったのがもう百件も超えている、こういうような状況でありますから、今後ともそうした面の整備を図っていきたいと思います。また、いろいろ業績評価あり方とか大学教育研究環境、こういうことについて御懸念もありますけれども、こうした課題については今後大いに検討を行って、必要に応じて適切な対応をしていきたいと考えております。
  76. 馳浩

    ○馳浩君 ありがとうございました。
  77. 石田美栄

    ○石田美栄君 平成会の石田美栄でございます。  この任期制法案につきましては前回も丸一日を使って議論が進められましたので、前口上はさておきまして、早速質問に入らせていただきます。  近年、多分ここ七、八年でしょうか、大学での自己評価とか自己点検が進んできていますが、このことについて、文部省はこういう場合やっぱり通達を出され、あるいは指導をしてこられているのだと思うんですけれども、現在、具体的に各大学においてどのようなやり方で自己評価とか自己点検をしているのか。  そして、文部省は報告義務を課しているんだと思うのですが、そういう中で、例えば私学なんかは、そういう大学評価をするしない、あるいはその状況によってその大学の成績というんでしょうか、私学助成なんかの場合にはそういうことが査定に影響していくのでしょうか。  また、もう一つ、そうした内部からの評価のほかに、外部評価というのは今行われているところもあるかと思うんですけれども、外部評価については全体的にはどういう状況にあるのか、またどういう方法でやっているのか。  幾つか質問が入っていますけれども、全体的にお答えいただきたいと思います。
  78. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) いわゆる自己点検、自己評価ということにつきましては、平成三年の大学設置基準の改正におきまして、いわゆる大学におきますカリキュラムの大綱化ということと連動した形で各大学にお願いしたものでございまして、大学設置基準上書かれてあることでございます。  私ども大学にお願いしまして調査したところによりますと、平成八年の十月現在の数字でございますが、国立大学で九十七校、国立大学のほとんどでございますが、それから公立大学で四十三校、私立大学で三百五十二校の合計四百九十二校、全体の割合でいきますと約八五%でございますが、これらの大学におきまして自己点検・評価を実施しておるわけでございます。数字は省略させていただきますが、このうちのかなりの大学がその自己点検・評価の結果を報告書の形で公表しておる、こういうことでございます。  自己点検・評価ということの内容につきましては必ずしも一律ではございません。学部レベルの点検・評価をやるところもありますれば、大学院についてやるところもありますれば、あるいは全学的な組織につきましてやっているところもあります。いろいろなものがあるわけでございますが、全体の状況はそんなところでございます。  また、学外者による外部評価を導入する大学もふえておるわけでございまして、これはいわばみずから点検・評価した上に立って、さらに外から見られた場合にどんなぐあいだろうか、こういうことをお願いしてやっているものでございますけれども、平成七年十月までに外部評価を実施した大学は二十二大学でございましたが、平成八年十月現在におきまして四十五大学に増加しておるわけでございます。外国の研究者を含めましてそれぞれの専門分野の学外の研究者等から成る第三者評価委員会等によりまして外部評価が実施されるとともに、その結果についても二十七大学で公表が行われるなど、積極的な取り組みが図られつつあるということでございます。  私大助成との関連についてのお話がございました。特別補助という形で、特色ある教育研究活動が行われておるという私立大学に対しましては、それなりの特別補助という形で一般補助とは別に措置させていただいているところでございます。
  79. 石田美栄

    ○石田美栄君 ありがとうございました。  続きまして、前回の質問のときにも私ちょっと、任期制についてじゃなくて設置法のときでしたけれども、国立大学教員の異動の実態についてお尋ねいたしました。そのときに局長から、平成八年三月三十一日付で国立大学定年退官した教員千百五十人中四百六十人、すなわち三九・七%は採用から定年まで同一大学にいた人であったというお答えを受けているのですが、私も岡山の出身ですが、地元の大学で見ていても、大学に残ると言うんですね、大学に残ると言って、極端に言えば、けさからも話題になっておりますように、十八歳で入学したときから定年の六十三歳あるいは五歳までずっと岡山大学というような先生にはもうたびたび出会ってきております。  大学教員の自校出身者の占める割合をここでもう一度お尋ねしたいのです。その中に、学校別、あるいは国立、私立、あるいは地域などによってそういう差があるのか、特徴があればそれも一緒に割合をお教えいただきたいと思います。
  80. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 平成七年度の学校教員統計調査によりますと、大学の本務教員につきましての自校出身者の占める比率につきましては、国立大学が四三・九%、公立大学で三五・一%、私立大学で三二・七%、これは平均の数字でございますが、そうなっておるわけでございます。平成四年度と比較いたしまして、国公立大学につきましては若干の改善はあるわけでございますが、おおむね最近十年間を通じましてほとんど変化が見られていないということでございまして、そういう意味合いからも、教員流動性は全体として必ずしも高くないという評価を私どもいたしておるわけでございます。  地域別にというのを調査したものはございませんけれども、学校別にということで若干コメントさせていただきますと、やはり古くから大学院課程を擁しておるような歴史のあるところではおのずと大学教員の養成能力というものをみずから持っているわけでもございます。そんな関係で、新しくできました大学、かなり遅くになってから大学院を積み上げることになったそういう歴史の浅い大学に比べまして、そういう意味後継者養成能力という点で異なった面があるわけでございます。そんな関係もございまして、いわゆる古くて大きい大学のところが自校出身者の率が比較的高いということが一般的に言えようかと思うわけでございます。もちろん、自校出身者と申しましても、その間において、現在のポストに至るまでに他校をいろいろ経験してくる、これは流動性という観点で別の配慮がまたあるわけでございますけれども、一応そんな状況になっておるわけでございます。
  81. 石田美栄

    ○石田美栄君 このたびの大学教員任期制の導入については、大学教員流動性を高めて大学における教育研究活性化を図るために、各大学判断でこの制度を導入することができるようにするための法律であるということは繰り返し説明されてきているわけですが、じゃ実態として大学がどういう姿になるのかなとなると、まだどうもはっきりとした輪郭が見えてこないように思います。  現在既に助手とか外国人の教師については任期制がついた任用が行われておりますが、これもきょうの午前中話題になりましたが、日本大学人事欧米に比べて流動性が乏しい一つ理由大学格差が大き過ぎると言われておりますが、この点について文部大臣どのような御感想をお持ちでしょうか。
  82. 小杉隆

    ○国務大臣(小杉隆君) いろんな理由があると思うんですけれども、確かに諸外国と比べると流動性が低いということは事実でございますが、今局長からも答えたように、昔からある国立大学と戦後できた新設の大学というように、それぞれの大学に固有の歴史があって、現状においてもそれぞれ規模とか内容も異なっております。大学院が非常に学生が多い大学もあれば、むしろ学部学生を中心にする大学もある。あるいは理科系を得意とする大学もあれば文系に多くの人材をそろえている大学もある。  こういうようにそれぞれの大学によって特色があると思うのでありまして、私は、今度のこの法案を通じて、そうしたさまざま歴史とか特色のある大学同士がお互いに多様な人材を交流し合って、そして違った分野研究者とか違った経験や発想のできる人と出会うことによって学問的な関心や刺激を受けて豊かな着想力を生む、こういうことが望ましいと思うわけでして、その一つの方策として今度の法案があるというふうに御理解いただければ幸いでございます。
  83. 石田美栄

    ○石田美栄君 私も、確かに欧米大学はある程度全国的に拠点の大学があって、日本ほど大学問の格差が歴然としている国はないように思えます。そのことは日本社会全体がある程度、どういうんですか、伝統的に、歴史的に差別をすることが好きというか、そういう特徴のある社会かなとあらゆるところで思う。そういうことが大学にもあって、こうした制度でそういうことを多少ともというか、今後解消していくのに役立つのかなというふうな感想も持っております。  さて、次に移らせていただきますが、この法案の第四条についてもう少し詳しく、あるいは具体的に考えてみたいのですが、助手の職については、若手を養成する育成型というんでしょうか、既にかなり採用もされていまして、これは場合によってはプロベーショナリーシステムというんですか、試補制、こういう偏見のようなところもありますし、三については、特定のプロジェクトについて、本当はこれは特別待遇によって広く人材を集めて、期限つきで、あることを達成して解散するというふうなことを想定しているのではないかと思いますから、したがって分野もある程度特定の分野科学技術研究とか何か特別な調査研究のプロジェクトといったことになるのかなというふうに少しイメージがわくのですけれども、一についてはどうも漠然としているように私は感じています。あるいは何でも当てはまって、ここのところからかなりこの制度が意図しているようなことが広がっていくことを期待しての法案なのかなとも思うのですけれども、今、法案をつくる段階で難しいかもしれませんが、文部省としては例えば具体的にどんなことを想定しておられるのか、お話しいただければと思います。
  84. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 大学審議会の答申におきまして使われている言葉で申し上げたいと思うわけでございますが、例えば最先端の技術開発現場の情報などを取り入れた教育研究でありますとか、あるいは人文社会系と理工系が融合した学際的な教育研究でありますとか、あるいは実社会における経験を生かしました実践的な教育研究などを推進する教育研究組織におきましては、絶えず大学以外から人材を確保したり、広範囲の学問分野に属する人材を確保する必要があるものというように考えられるわけでございます。そのように答申が述べられているわけでございまして、その答申の考え方に従って第四条の第一項の第一号もその例示として、「先端的、学際的又は総合的な教育研究」云々というような書き方をしておるわけでございます。  基本的にこういう考え方であるわけでございます。したがって、ある学問分野を特定いたしましてこれが先端的であると言うことは、その時点時点においてはある程度可能であるかとも思うわけでございますが、十年前の先端的が現在の先端的かというと、これは必ずしもそうでもないということもございますし、そういう意味合いにおきましては、先生御指摘のように、百人の人が百人ともこうだと断定するような明確性というものはあるいは十分でないかもしれないわけでございます。しかし、私どもの気持ちといたしましては、あらゆる教育研究組織についてこれが適用されるということではなくて、これらの例示を含めて、「多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の職に就けるとき。」というように限定いたしまして、そういう限定のもとでそれぞれの大学がこの条項の趣旨に応じて判断してその職を指定すると、こういう仕組みを考えたわけでございます。  したがいまして、それぞれの大学が実質的にこれがそうであるということを判断するわけでございますので、私どもの方でこれがそうである、あれがそうであるということを一般的な形であらかじめ申し述べるということは必ずしも適切ではないというように考えておるところでございます。
  85. 石田美栄

    ○石田美栄君 ですから、若生育成の部分と、あるプロジェクトによって広く人材を集めるのと、もう一つは、例えば一つの学際的な学部を編成がえしてそこが任期つきでやってみるとか、そんなことも想定できるのでしょうか。
  86. 小杉隆

    ○国務大臣(小杉隆君) 局長は慎重にああいう答弁をしましたけれども、私は端的に実感を申し上げたいと思うんです。例えば環境問題なんかは、地球環境がどうやって悪化していくのか、地球温暖化がどうして起こるのか、そういうような科学的な解明と同時に、それではその地球の温暖化を防ぐために我々のライフスタイルはどうあるべきか、あるいは企業活動がどうあるべきか、そういうような社会学的アプローチも必要だと思うんですね。そういう環境とか防災なんというのは理科系と文科系を組み合わせた学際的な研究が必要だと。そういうのは今日なかなか人材が少ないわけですね。そういうようなテーマの場合には、やはり学際的な教育研究に本当にふさわしい人を任期つきで来ていただくと、こういうことは考えられると思います。  一方、最先端の研究ということになりますと、今盛んに進んでおります情報であるとかあるいは材料とかバイオ、こういう分野が考えられるんではないでしょうか。これはまた十年先になれば最先端の分野というのは変わってくるかもしれませんが、当面、私見ですけれども、そんなようなことが考えられるんじゃないかなというふうに私は考えております。
  87. 石田美栄

    ○石田美栄君 どうもありがとうございました。これから育てていくということだと思います。  そうは言っても、もう一つ、一番みんな知りたいのは、一体一つの学園の中がどの程度任期制の部分になるのか。そういたしましても、長期的視野に立つ研究とか教育、学校運営の継続性も大学の重要な面でありまして、終身雇用・年功序列という雇用習慣が社会的に多少崩れ始めたとはいっても、この制度の導入によって欧米のような、いわゆるプロベーショナリーシステムテニュア制ですか、これを制度化するところまではまさか考えていないだろうと思うのですが、これも非常に答えにくい質問かもしれませんが、総定員に対してこういった任期つき任用者の割合をどの程度予測しておられますでしょうか。
  88. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) この法律につきましては、「公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。」ということになっておるわけでございまして、この施行後、それぞれの大学がこの任期制法律の扱いにつきましていろいろと検討していくことになろうかと思うわけでございます。  中には、任期制の導入はいたさないというところも当然出てくると思いますし、また一部分導入しようというところも出てこようかと思うわけでございますが、実際にどの程度大学でこの制度を活用することになるのか、今の時点で申し上げることは大変難しいということでございます。  ただ、平成七年度の時点におきまして、国公私立を通じまして約百の大学におきまして、これはそれぞれの大学のそれぞれの部分的な教育研究組織についてでございますけれども、事実上のものを含めまして教員任期制が導入されているということでございまして、これらの大学におきましては、それなりの任期制というものについての一種の、習熟という言葉が適当かどうかあれでございますけれども、なれというものがあるわけでございます。  したがいまして、これらの大学におきましては、新しい法律に基づきます任期制の導入ということが行われやすいのではなかろうかというように一般的に推測はいたしておるわけでございますが、いずれにいたしましても、今の時点でどの程度ということをお答えするのは大変難しいということでございます。
  89. 石田美栄

    ○石田美栄君 次に移らせていただきます。  先ほどもう既に馳委員からも質問が出ておりますけれども、この第六条での任期制が準用される一般職の任期つき研究員には採用、給与、勤務時間等の特例が定められていること、先ほど御答弁がございました。招聘型の給与にしましても、特に助手の給与にしてもかなり高額がきちっと決められていて、でも、これは条文を読みますと、この任期つきの研究員の場合には扶養手当もないし、それから住居手当、勤勉手当等は支給しない、昇給もないというふうな制度であるようですけれども教員の場合にもこの任期がついていて、五年なら五年、そうしますと、退職金だとかそれから年金だとか、そういったことが気になるのですが、給与にも今のところ特例がなくて、ある業績によって号俸が決められるとそこの給与で働くということになるんですが、昇給は普通今の終身雇用ですと一年ごとに号俸が上がっていくわけですけれども、そういう適用とか、やっぱり給与体系というのは気になるのです。特に、助手のところよりも四条の一とか三の枠のところに本当に優秀な人材が集まるのかなと。  なぜそういう給与の規定がなかったのかということについても先ほど既にお答えがあったのですが、たしか国立大学の場合は人件費も教授助教授助手という枠がきちっとあって、その枠で予算枠も決められるようになっていると思うんですが、そういう中でこの任期制が入ってくると、独自性に任されても、給与の特別な査定というのはほとんど不可能なのかな、それからまた将来的にはそれを検討しなきゃならない時期が来るのじゃないかというお答えもあるのですが、そういう点についてやっぱり何とかならないものかと思うのです。  実際今の国立大学の非常勤講師なんかの場合は、ある枠でとってくるとそれを学内で配分して、私も非常勤で行ったことがあるのですが、そういう場合には、教授なんかで、私なんかが行くと百五十人、二百人という一般教養の講座を持っておりましたから、大講演会のようなのを百分やっても、あるいは若い人が英語のクラスに行って三十人四十人のクラスでちょっと英語を教えても、非常勤というのほとんど同じ一時間、余り違わない報酬が出るんですね。それは大学の中で操作しているんですけれども、そういったことの運用が各大学に任されるのか、そのあたりについて御説明がいただけたらと思います。
  90. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) この法律によりまして任期が付される教員も定員内の職員でございます。したがいまして、いわゆる総定員法の中の定員として組み入れられておるものでございます。また、給与につきましても、基本的に一般職の給与法上の給与の扱いを受けるということでございます。  今、先生御指摘の非常勤講師の場合につきましては、非常に大ざっぱな言い方でございますけれども、これは予算上の措置ということでもございますので、それぞれの積算単価等はございますが、基本的には予算上の措置で措置される、こういう違いが出てこようかと思うわけでございます。
  91. 石田美栄

    ○石田美栄君 そうすると、今のお答えですと、この任期制ポストができても、大学独自の判断ではこういう給与上の措置というのは難しい、特別措置は難しいということでございますね、今の段階では。  さて、質問を変えさせていただきますが、午前中の参考人のときにも出た話題ですが、雇用機会均等法ができて十年になりますけれども国立大学教員の採用においては従来、女性の差別というのは本当に大変なものだったのを実感しています。例えば英文関係、私は英文関係ですけれども国立大学なんて、ほとんど学生は女性でも、私立てもかなりそうなんですけれども、先生はもうほとんどが男性という実情の中で、教育的にもそれなりの問題を感じたこともよくありました。  例えば、男の先生ばかりですと、一生懸命勉強しようと思って女性が入っても、女性はいい家庭の人になれとかいい奥さんになれなんてことを堂々とゼミで先生が言われるというふうなこともあって憤慨したものでありました。それも近年は少しずつ改善されてきているとは思いますけれども、午前中も有本先生の方からいただいたこの女性教員、(資料を示す) よその国に比べて非常に低いんですけれども国立大学と私学に分けて、もしわかれば、女性教員教授助教授講師といったようなところの比率をお教えいただけたらと思います。
  92. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 国立大学におきます女性教員の割合は、平成七年度におきまして全体としては七・二%ということでございます。職種別にこれを見てみますと、教授が三・五%、助教授が六・六%、講師八・九%、助手一一・三%ということでございます。  また、私立大学におきます女性教員の割合でございますが、同じ年度の数字でございますが、全体としては一三・六%でございます。職種別に見ますと、教授が七・六%、助教授が一四・三%、講師が一六・四%、助手が二二・三%という状況でございます。  このデータを見てわかりますことは、全体として国立に比べまして私立大学の女性教員の割合の方が高いというのが一点。それからもう一つは、職種別に見た場合に、国立、私立を通じまして教授から助手に至ります職位の区分でいきますと、助手の区分、いわゆる下位の職位区分の方に行きますごとにパーセントは高まっている、こういうことが一般に言えようかということでございます。  また、今の数字とは別に、平成七年度よりも数年前の数字と比較いたしました場合に、平成七年度国立大学は七・二%と先ほど申しましたが、平成四年度の数字でいきますと六・三%ということでございました。また私立大学も、平成七年度は一三・六%ということでございましたが、一二・四%というのが平成四年度の数字でございます。  したがいまして、徐々にではありますけれども、全体として女子教員の割合は高まりつつあるというのがデータの示すところではなかろうかというように考えております。
  93. 石田美栄

    ○石田美栄君 女性の採用も徐々に改善されていることを伺わせていただいたんですが、これも午前中参考人の方にお伺いしましたら、今回の任期制の導入で研究活性化大学教員流動化が進んで、女性が本当に力があれば任期制の導入によって実力で勝負ができるようになるのかなと心配しておりましたが、お二人の先生は、任期制の導入というのはより女性に有利に働くのではないかというふうにおっしゃっていただいて、それに期待をかけたいなと。これを御質問したいと思っていたんですけれども参考人の方にお答えいただいていますので、次の質問に移らせていただきます。  主として国立大学についての議論が進んできたわけですけれども、この法律は私学にも運用できるというふうになっています。私学の場合ですが、今でも大量の非常勤教員に過度に依存しているというのが実情であろうと思います。今後といいますか、今もう既に十八歳人口の減少が始まっておりまして、将来はつぶれる大学もどんどん出るかもしれないというふうに言われている中で、そういう時代に向けて私立大学では人員の整理とか、もう既に定年を早めているというふうなところも聞きます。  私もこういう年ですから、友人がさる民間会社からある大学に七十歳定年ということで入ったら、次の年には六十五になったといってがっかりしておりましたけれども、ますます非常勤の先生に頼り、多分文部省の定員の認可されるぎりぎりのところまで抑えて非常勤の先生で賄うというふうなことがあるようですね。恐れますのは、実態は変則的にこういうことも行われるということが私立ては本当に心配されます。それに、理事者の見識によっては相当の悪用も心配されるのですが、だんだんそういうことがあらわれてきたときに、文部省としてはそういうことに対して御指導いただけますでしょうか。
  94. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 既に御案内のように、本法案任期制のねらいとするところは、教員流動性を高めて大学教育研究活性化させるということでございます。したがいまして、今お話の中にございましたように、単に教員を解雇するとか、あるいは大学の経営上のリストラのために任期制を乱用するというようなことはあってはならないことだというように考えるわけでございます。今回の法案におきましては、私立大学教員任期制につきましても、学校法人が教員任期を定めようとするときには、あらかじめ任期に関する規則を定め、公表しなければならないことといたしておりますし、制度的にも透明性を高める工夫をしているところでございます。  文部省といたしまして、この任期制をとるとらないは各大学判断ではございますけれども、以上のような趣旨にかんがみまして、今回の法案のねらいというものを十分各大学に対して周知することによりまして、この制度が本来のねらいのもとに運用されるように配慮してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  95. 石田美栄

    ○石田美栄君 従来は私学振興といった助成のもとに、私学に対してもいろいろな認可等を通じて、悪く言えば文部省の圧力、よく言えば指導いただいてきたわけですけれども任期制の導入に当たっても今後いい意味で御指導いただきたいというふうに思います。  最後にもう一つ、これも今まで何回も出てきましたが、前回のとき大臣も、人事の情報について学術情報センターでデータが出ている、また、雨宮局長からも公募情報というふうなことをおっしゃったんですけれども、この制度が本当にうまく運用されていくためには、大事に関して公平で、公正で、包括的な、そして有用な情報というのが準備されることがぜひ必要であると思います。  そういう意味で、馳委員も要望されましたように、任期制の枠だけではなくて、今まで全般に行われているような公募等についても、特にポストの情報が包括的にわかる情報センターといいますか、そういうものをつくっていただいて、情報がうまくいくような制度をぜひ要望したいと思いますので、もう一度大臣に、この運用をうまくするために、そういったことの御決意をお願いしたいと思います。
  96. 小杉隆

    ○国務大臣(小杉隆君) この法案の成否とは別に、やっぱり大学間で人事交流というのが盛んに行われる、そして研究が活発化するということは望ましいことでありますから、私は今おっしゃることにおおむね賛成するものでありますが、特に教員研究者に関する人材情報の流通というものを活発化することはどうしても必要だと思います。  そのために、今、猪瀬先生が所長をやっておりますけれども、学術情報センターというところで例えば研究者のデータを全部収録しておりまして、平成七年五月現在で十三万件を超える件数になっておりますし、それには研究者の経歴とか研究課題とか論文等が全部記載されております。そういうものをこれからもより充実させていって、だれでもがそこで情報がわかるというようなことが必要だと思います。  そして、研究者の公募情報データベースということも始めたばかりですけれども、これもできるだけ情報をよく集めて、そして透明性を高めてだれでもが、どこの大学が、どこの研究機関がどういう人材を求めているかということが明らかになるように努めていかなければいけない、この法案と相まって私はそういう整備もきちっとやっていかなきゃいけない、こう考えております。
  97. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 もう私がお聞きしたいということもほとんど出ておりますし、かなり繰り返しになってくどいということになるかもしれませんが、与えられた時間やってみます。  先ほど委員の方から出された質問と関連をします。任期満了によって退職になってその後再任できないという場合はどうするんだということがありました。しかし、五年か十年か任期を了解して働いたんだから、任期が終われば、はいこれでと覚悟よくやるのが私は本来だと思いますけれども、そうはいかないのがこの社会だと思います。  そこで、雨宮局長が、定着したら自助努力でやってもらいたいと思う、しかし、定着するまでの間は次の就職先の面倒を見ていくということ、非常に思いやりのある話が出てきまして、そしてそういうことも大学意見として述べていきたいということを馳委員の答弁でなさいました。  そこで、就職先の面倒を見ていくというふうな事柄に関してですが、定着するまでの間、それぞれの学校の教員が個別に対応するというようなことになってはまずいと思うんです。人間、好き嫌いみたいなものがありますから、だからそういう恣意的な好き嫌いとかというようなことじゃなくて、任期制のもとで働いた教員任期が終われば、やはり次の就職問題等について大学側がその人の意見を聞くというふうな場をだれにも与えるというふうなことが、先ほどおっしゃられた定着するまで私はあってもいいんじゃないかというふうに思うんですよ。  だから、就職先の面倒を見ていくというのは、個別にこうなるんじゃなくて、制度とは言わなくても、それぞれの大学がそうした場を設けて、皆公平に平等にそうした次の就職先の問題について自分意見を述べ、また大学が面倒を見るなら、同じように面倒が見ていけるような場をつくるというふうに、面倒を見るとおっしゃるならそこまでされるべきではないかというのが私の意見です。いかがですか。
  98. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 任期を付された教員教育研究活動をするのに当たりまして、全く一人で教育研究活動をするという場合もないわけではないと思うのでございますが、一般的にはやはり同僚と、あるいは先輩とと申しますか、の研究者とともに仕事をしておるというのが通常の事態であろうかと思うわけでございます。したがいまして、次なる職としてどんなものが適当かどうかというのは、そういう日ごろの教育研究活動をともにしている者、あるいはそれを指導している者、これが日ごろからその状況をよく把握しておくこと、これが一番重要なことじゃなかろうかと思うわけでございます。その中から就職先がどうのという話が出てこようかと思うわけでございます。  その過程におきまして、本人はどういう希望を持っているのかというようなことも当然耳に入ってくるでありましょうし、本人が述べることもありましょう。いろいろあろうかと思うわけでございますが、日ごろから教育研究活動をよく把握して、それをできるだけ客観的な目で評価して、次の異動先のところにそれが申し送れるような形にしておくということが大変重要なことであるというように考えておるわけでございます。
  99. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 いや、定着するまで面倒を見るとおっしゃったんだから、面倒の見方のことを私は言っているんですよ。個別にやっぱり好き嫌いはありますよ。あんなやつ出ていってくれたらいいと思うのもあるし、だから、そういうものを個別にやると首切り法案だなんというような話が出てくるわけで、じゃなくて、大学が定着するまでやはりそういう場をきちっと公平に設けるということを文部省としてきちっと御指導なさったらいかがですかと、こう言っているんです。
  100. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 大学としていろいろな取り組みの仕方があろうかと思います。今、先生御指摘のようなことも含めまして、それぞれの大学で円滑な運用ということで大いに配慮してもらいたいというように考えております。
  101. 小杉隆

    ○国務大臣(小杉隆君) 今度の任期制導入というのは、これはあくまでも選択的導入ですから、本人が嫌だと言えばこれは任期つけられないわけですから動かなきゃいいわけであって、やっぱりそういう新しいプロジェクトなり新しい先端的な研究に携わりたいという本人の希望で動くわけですから、本人も動く以上はそれなりの覚悟で行っていると思うんですね。しかしそうはいっても、一つのプロジェクトが終わって、じゃ次どこへ行くかといった場合には、今先生が御懸念のような心配も出てこようかと思います。  したがって、制度が定着するまでは、やはり主任教授なり学部長なりが、次それじゃ君はどこへ行ったらいいか、いろいろ同僚の情報も聞いてみようというようなことで面倒を見る場合も必要だと思いますし、先ほど来お話が出ている学術情報センターでできる限りそういう人材の情報をもっと活発にするということも必要でしょうし、そして本人の自助努力ということで、本人がやはり自分の命までの業績なり実績というものをインターネットのホームページに登載してどんどん売り込むとか、そういう両々相まって任期制というものをきちっと定着させていくべきだと、こう考えております。
  102. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 問題が起こらないようにひとつよろしくお願いします。それで、この委員会でこういうことが起こったじゃないかということにならないように念を押しておきます。  そこで、この助手という立場の皆さんのことについてお伺いします。  法律の二条の「定義」のところの一項二号に「教員」とあって、「大学教授助教授講師及び助手をいう。」ということで、助手教員というのに入っているわけですね。そしてこの助手が一体どういう位置づけられ方をしているかというと、四条の一項二号のところでこういう項目もあります。「助手の職で自ら研究目標を定めて研究を行うことをその職務の主たる内容とするものに就けるとき。」と、こう書いてあるんですね。「自ら研究目標を定めて研究を行うことをその職務の主たる内容」、こういうことがこの助手という職上あるんですか、ということを私は思うんです。  というのは、学校教育法第五十八条の職務規定に、私のこれが間違いなければこう書いてあります。「助手は、教授及び助教授の職務を助ける。」と、こう書いてあるんですね。助けるんですよね。こちらは助けるじゃなしに、「自ら研究目標を定めて研究を行う」と、こうある。ということになると、学校教育法五十八条に定める職務規定の助手とこちらの助手と、これは矛盾があるというふうに思うんですね。だからこの矛盾をやはり解決しなければいけないと私は思います。  だから、そういう意味でこの助手の皆さんの任期制の問題は、学校教育法第五十八条の職務規定に言う助手との矛盾の問題がきちっと解決するまでここの四条一項二号のようなわけにまいらぬと私は思う。やったらこれは間違いだと思うんです、学校教育法上の。だから、それは例外的、限定的な範囲にとどめるべきであるというふうに私は考えます。その両方の関係、矛盾が解決するまではと私は思うんですが、いかがですか。
  103. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 学校教育法の規定は、確かに御指摘のように、「教授及び助教授の職務を助ける。」ことを助手の職務として書いてあるわけでございます。この職務規定に基づきまして現実の助手が置かれさまざまな職務を行っているわけでございます。もちろんこの学校教育法の規定のもとにおいて行っているわけでございますが、ただしその助手の職務の態様は必ずしも一律ではございません。文字どおり教育研究活動について教授及び助教授の指揮監督のもとにと申しますか、お手伝いをしているというような形の助手もありますれば、すべてとは言わないまでも、かなりみずからの主体性を持って目標を定め研究を行う、いわゆる研究助手と俗に言われておるような、そういう助手の者も含まれておるわけでございまして、濃淡があるわけでございます。  したがいまして、今回、四条で書かせていただいておりますのは、そのすべての助手ということではございませんで、その助手のうちの「自ら研究目標を定めて研究を行うことをその職務の主たる内容とするものに就けるとき。」ということで、助手の中の一部分ということに限定して書かせていただいておる、こういうことでございます。
  104. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 そうすると、私は勘違いをしていたということですか。私は、ここに「教員」と書いて全部あるでしょう。だから助手という方はすべて任期制の採用というんですか、該当するんだと思っておったんです。  そうすると、あなたの今の説明であれば、助手の中のこの四条の一項二号に該当する人だけが任期制助手になると、こういうふうに考えていいわけですか。
  105. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 御指摘のとおりでございます。
  106. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 わかりました。文部省が矛盾のあることをおやりになるとは思わなかったんですが、それではそこの点は了解をいたしました。  それで、私が任期制の問題について持っておった問題点は二点で終わります。  そこで、文部大臣、ちょっと時間がありますので、財政構造改革会議の問題をお伺いしたいと思うんです。  教職員の第六次定数改善、来年完結するというのを二年延ばして二〇〇〇年までに延ばすということになったようで、まことに残念であります。この法律が出てきたら私は大反対をしなければならぬと今から腹を決めておるのであります。  一方、中教審の「二十一世紀を展望した我が国の教育の在り方について」という五月三十日付の冊子をいただきました。私は、ここに書かれてあることと、教職員の定数改善を来年で完結するものを二年先延ばしするということは、これは全く矛盾することをおやりになっていると思うんです。  特に、この中教審の言っていることですが、この本の四十七ページにこういうことが書いてあるんですね。「これまでも、学習の進度の遅い子どもに対しては、各学校において、一人一人の子どもの実態や学習の途中でのつまづきの原因を的確に把握し、個別指導や補充学習、ティーム・ティーチング、習熟の程度に応じた指導、教材・教具の工夫・開発やマルチメディアの活用など、個に応じた指導方法の工夫・改善」、これをするために第六次教職員定数改善をやっておるんですよね。  あの中の主たるものは、チームティーチングを学校で実施していくための教職員の定数改善なんですよ。来年度で完結するものを先に延ばすということはどういうことかというと、そういうことをもしおやりになるなら、一体チームティーチングというような問題をどういうふうにやっていくのか。それで第七次改善もその後にやって、ここに言っていることの教育条件の整備をきちっとやることと一緒にやってきたんでしょう。  そうすると、今度は財政構造改革ということで、教職員の定数改善なんかの教育条件整備の問題は、これは予算を削減したり中身を悪くしたり切った張ったで後ろへやって、そして教育をこうせいという改革の中身だけは出していって、これは一体どういうことかと。しかもそれが財政構造改革というんだから腹が立つんですよ。予算を削れというのだったらそれは何かを削ろうとする、しかし構造改革という名を打つ以上、教育改革の問題と表裏一体でなければならぬ。ところが、もう教育改革の問題とこれと表現は悪いけれどもまた裂きになってしまう。それでこの犠牲はだれが負うといったら子供が負う、このリスクは。リスクを子供に負わせたらいけないというところで努力するのは現場の教職員ですよ、改善なしにやるんだったらね。  そこで文部大臣、この第六次教職員定数改善を二年先に延ばして、そして第七次の問題は聞くところによるともうないんだというふうな状態であれば、もう中教審のこの本の中に私が今読んだようなことは書かぬことですよ。私はそれで腹が立っておるんです。文部大臣、腹立ちませんか。おかしいですよ、実際。口で言うことと実際することが違ったら、それは現場の教員だって信用しませんよ。この大学任期制の問題だって首切り法案やと言うのがやっぱり文部省に対する不信ですよ。口で言うこととすることが違うという。  一言、私の言うことに反論があるのだったら反論してみてください。お願いします。
  107. 小杉隆

    ○国務大臣(小杉隆君) 今読み上げられた趣旨は全く同感でありますし、私はその趣旨にのっとって今日まで、財政構造改革会議の中でも一切の聖域なしと、こういう原則のもとではありましたけれども、企画委員会におきまして四月十五日にその義務教育費の問題、教職員定数の問題について力いっぱい主張したところでありますし、その後たびたび閣僚懇談会も何回か開かれましたし、またその途中では大蔵大臣との意見交換もありました。その都度、私は恐らくどの閣僚よりも発言回数は多かったと思いますが、強く要請をして、とにかく教職員の定数改善と教育改革とは一体的に行っていきたいんだ、ぜひそこら辺は慎重に配慮してもらいたいと、こういうことの意見を展開してきたわけです。  したがいまして、この財政構造改革会議でも、最後の懸案事項、ODAとか防衛費とか、その他いろいろな懸案、農林予算もありました、そういうものと並んでこの教職員定数の問題も最後まで政治的な課題として議論の対象に残ったと、こういうことであります。  まだ私は正式に二年延長になったなんということは聞いておりませんし、これはきょう午後五時から財政構造改革会議の全体会議で恐らく出されるんではなかろうかと思うんで、仮定の話で話をするのはどうかと思うんですが、もし仮に二年延長になったとしても、最初のころはこれは完全にことして中断、凍結と、こういう意見もあったわけですけれども、この六次計画そのものは何とか総数は確保できて、その実現年度数を二年繰り延べるということですから決してゼロになったわけじゃないんで、私は改善計画自体は変更しないというのは大いに評価していいと思います。  現今のこの危機的な財政状況を考えますと、これだけが聖域だと書って頑張り抜くということもなかなかできにくい状況でありますし、せめて私は子供さんたちへの影響とかあるいは新しく教員を志望している方たちへの影響が急激に起こらないように、なだらかにひとついくように、そういった努力は今後とも続けたいと思います。  これはあくまでも仮定の話ですから、きょうの夕方にならないと最終的なあれはわかりませんので、あくまでも仮定の話としてお聞きいただきたいと思います。
  108. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 終わります。
  109. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 大学審議会の答申の中で、「大学教員に占める女性の割合が低い現状を踏まえ、各大学においては、女性の教員への積極的な採用に配慮していく必要がある。」、こうありますが、この点にも関連して幾つか質問したいと思います。  まず、大臣に伺います。  衆議院の文教委員会において大臣は、我が党の石井議員への答弁の中で、男女共同参画型社会教育も例外ではない、保護的規定で男女差別があったが、女性研究者だからといって保護されるという甘い考えは許されない、家庭、育児への配慮は必要だが、別の扱いをすることはあってはならないと、こういうふうに述べておられます。  女性の教育者・研究者の場合も、子供を産む性として母性が保護されるのは当然ではないでしょうか。また、男女共同参画型社会に向けて女性のためのポジティブアクション、つまり積極策が求められていますが、女性の教育者・研究者のための積極策についてどのように考えておられますか。
  110. 小杉隆

    ○国務大臣(小杉隆君) 今回の任期制は各大学がその責任において行うわけでございます。今お話しのとおり、大学教員の中で女性の占める割合が低いということも事実であります。しかし、最近女性の進学率も上がっておりますし、また大学院等への進学率も上がっている。そして、公立、国立あるいは私立の大学を見ましても概して女性の学生の方が成績がよろしい、こういうことですから、先ほど局長から答弁あったように年々女性の大学教員における比率も高まってきておりますから、私は決してこの任期制が女性のそうした比率を阻害するというふうには考えておりません。  今までの労働法制その他を見ましても、女性には特別の保護規定というものがありましたけれども、男女共同参画型社会の実現に向かってできるだけそうした男女間の差をなくしていこうと、こういうのが一般の流れでありまして、私はこの前の衆議院の答弁ではそういった一般的なことを申し上げたわけでありまして、もちろん女性特有の出産とか育児とかあるわけですから、これは女性の教員の比率が高まるにつれて職場で互いにそうした配慮といいますか考慮というものが十分なされることは必要だというふうに考えております。
  111. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 母性保護についてはお認めになりますね、大臣。
  112. 小杉隆

    ○国務大臣(小杉隆君) これは当然保護されるべきものだと思います。
  113. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 女性の時間外・休日労働や深夜業の規制は母性保護にもつながる最低限の保護措置であるというふうに私は考えています。実際に男性にも保護措置、つまり時間外労働の法律による上限規制などを設けて男女共通規制を実現したドイツ、こういう国の例もありますから、そういう方向に日本が進むことも考えられるわけです。ですから、甘えは許されないなどと一方的なことは言ってほしくありません。  高等教育局長は衆議院で、我が党議員への答弁ではありませんでしたが次のようなことを述べておられます。任期制が幅広く導入されていくという将来のことを考えていくと、教員採用のチャンスはそれだけふえていくことになる、女性のライフサイクルに応じた就業の機会が増加するというメリットもあながち否定できないと。これは、女性の教育研究者が出産、育児の間はそれに専念して、一段落ついたらまた戻ればよいと、教育職、研究職に戻ればよいということですか。
  114. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 私が申し上げましたのは、任期制が導入されてきました場合には、そうでない場合と比べまして、要するに応募する側の立場からいたしますと、任期制がとられている場合の方が応募するチャンスがふえるわけでございます。  したがいまして、そういう意味合いにおきまして、これは男性であると女性であるとを問わないわけでございますけれども、今先生は女性のライフサイクルとおっしゃいましたけれども、女性のライフサイクルだけではなくて、そのいろいろな事実上の生活条件と申しますか、個別の状況に応じて応募するチャンスがふえるでありましょうと、ただし、それは任期制が非常に限定された形で導入されたとしても余り効果はないのではなかろうかと、こういう趣旨で申し上げたわけでございます。
  115. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 文部省ですからもっと女性の研究者・教育者に着目をしていただきたいと思うんですけれども、女性の教育者・研究者の場合は、研究の充実期と、それから妊娠、出産、育児の時期とが重なるわけなんです。そういう特性をきちんとつかんで対策を立てていただきたいと思うんですね。  それで、日本学術会議は一九七七年に「婦人研究者の地位の改善について」という要望を提出しているんですけれども、それ以来、女性研究者が科学研究と母性の二つの責任を果たすことができるような施策の強化を求め続けているんです。  ですから、女性教育者・研究者の本流というのは、母性も研究もともにその責任を果たしたいということです。時期をずらせてやればいいというのは、女性たちの願いの本流にも反するし、研究の論理にも反するんです。中断するということはできないんです、研究というのは。  科学技術庁の「女性研究者の現状に関する基礎調査」、九三年七月に発表されておりますが、ここでも育児をしながら研究を継続できる体制の整備を求めています。結局、任期制というのはこの流れに反するんです。任期制の導入によって、出産や育児が業績評価のマイナス要因にならないと保証できますか。
  116. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 業績評価というものはいろいろな意味合いにおいて公平なものでなければならないと思いますし、今、先生がおっしゃったような母性保護というような立場をも念頭に置かれてしかるべきであろうかと思うわけでございますが、いずれにいたしましても、業績評価ということに際しまして、女性であるということのゆえに差別があるというようなことがあってはならないことは申すまでもないことでございます。
  117. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 女性の教育者・研究者が任期の期限切れを妊娠、出産を伴って迎えればどういうことになるか考えてみたいと思うんですが、次の職場、仕事を探すこともできなくて、結局、教育研究も中断して出産と育児に専念せざるを得なくなります。それを避けるために妊娠や出産をあきらめたとしても、期限が来れば、次の職場と仕事が保障されるわけではありません。任期制はメリットどころか、今でも少ない常勤のポストをさらに狭めて、育児をしながら研究を継続できる体制の整備を求める科学技術の女性政策にも反するもの以外の何物でもないと思います。  次の質問に移ります。  非常勤講師と私立大学の問題について質問いたします。  日本大学には以前から、一年任期の非常勤講師が大量にいることによって、いわゆる流動化が進んでいるという指摘もあります。とりわけ現在、首都圏の私立大学では講義の半分近く、語学や音楽は大半が一年契約の非常勤講師に任されているといいます。その理由は、専ら安上がりだからにすぎず、先生との触れ合いを求める学生から不満の声が出るのは当然で、例えば、第二外国語はほとんどが非常勤講師の先生で、授業が終わったらすぐに帰るし、週に一度しか来ない、わからないところがあっても聞けない、こういう不満の声などがあるそうです。生活のために複数の大学をかけ持ちする非常勤講師の場合、授業が終わったらすぐ帰る、つまり、次の大学の授業に向かうということになるわけです。  任期制の導入は、常勤の教員の中にも期限つきの教員を広げていくわけで、私立大学教育研究条件の改善という意味での活性化にはつながらないのではないでしょうか。
  118. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 私立大学の非常勤講師についてのお尋ねでございます。申すまでもなく、大学の常勤の教員、これは必要数は必ず確保しなきゃならないわけでございますけれども、それらの方々だけでは分担しがたい分野について、学外の適任者を非常勤講師として採用しているものだというように考えておるわけでございます。  また、それ以外に常勤者の部分について、任期制を導入することが活性化につながらないのではないかというお話でございますけれども、私どもとしては、今回の任期制のねらいとするところがその趣旨どおり理解され、実施されるということでありましたならば、教育研究活性化につながるものだというように考えておるところでございます。
  119. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 私学助成を増額すれば私立大学がこんなに苦労して安上がり対策をしなくても済むんだと思います。  私立ては、非常勤講師のほかにいわゆる嘱託講師とか特定任用教員など任期つき教員がいろいろいます。この教員の場合ですが、現行の労働法制下では不当解雇からは救済されることになっています。実際に、十二年間特任教員として勤務した旭川大学のギャラガー先生とか、十七年間声楽の非常勤講師として勤務した徳島文理大学の杉尾先生とか、駒沢女子短期大学の音楽担当の先生とか、明治学院大学の常勤嘱託職員十数人等々が解雇を撤回しているんです。これらは、労働基準法第十四条が一年を超える期間の有期雇用を禁止し、一年契約の雇用でも、更新を繰り返せば期限の定めのない雇用と同じとみなすという判例が定着してきているからなんです。任期制の法制化はこうした努力に逆行して、一握りの終身雇用教員と、大半を占める有期雇用教員から成る大学のマクドナルド化を招くものだと、こういう指摘もあります。教育研究活性化とは言いがたい大学教員の首切り合理化のために任期制が悪用されるようなことがあってはならないと考えますが、どうですか。
  120. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 単なる経営上の問題のためにこの任期制が乱用されるということがあってはならないことは、先ほど申し上げたとおりでございます。また、先生おっしゃいましたのは、いわば一種の解雇権の乱用という部類に属する事柄であろうかと思うわけでございますが、今回の任期制につきましては、あらかじめきちんと任期を定め、その任期を定めることについて一定の要件、手続を課しているわけでございまして、そういう透明性の高い制度を立てておるわけでございまして、それに基づいて任期を区切るということによって、これは労働者側にとりましても雇われる先生方の方にとりましても、非常に透明度の高い、単に将来どうなっていくかわからないというようなものではなくて、将来の見通しのきくそういう雇用形態であるというように考えておるところでございます。
  121. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 任期制の乱用を防止するためにも、選択的任期制の運用が重要なかぎを握ることになります。  そこで確認をしたいのですが、私立大学任期制を導入する場合、つまり法律案の第五条に関してですが、「学長の意見を聴くものとする。」とあります。その際、理事長が学長を兼任している場合、教学部分の意見を尊重し運用されることを期待している、教授会の議を経るかどうかは大学判断と、衆議院における我が党石井議員への答弁でありましたが、ということですが、学校教育法第五十九条に照らしてどうなのか、伺いたいと思います。  学校教育法第五十九条は、「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない。」としています。任期制を実施するかしないかは、まさにここで言う重要な事項、教育研究体制にかかわる重要事項であり、憲法上の要請である学問の自由と大学の自治にかかわる重要事項であります。この立場に立てば、教授会任期制を実施しないと決定したときには、それが尊重されるべきではありませんか。
  122. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 本法案任期制は、大学におきます教育研究活性化を図ることを目的としておりますことから、各私立大学任期に関する規則を定める際には学長の意見を聞くよう定めたところでございます。一般に各私立大学におきましては、教学部門の運営に関しまして、それぞれの経験や実情を踏まえて独自に規則を定め、これに基づいて運営が行われているものと承知しているわけでございます。したがいまして、任期制につきましても各大学運営のルールに従って教学部門の意見が適切に集約され、制度の趣旨に沿った運用に努めていただけるものと期待しているわけでございます。  教授会は重要な事項を審議するという学校教育法の規定の御指摘がございました。そのとおりでございます。ただ、学校法人におきまして、任命権は学校法人、具体的には理事会が持っているわけでございまして、教学部門の審議機関であります教授会との調整をどう図るか、この辺は私学の運営の自主性に任せるのが得策ではなかろうかということでございます。  したがいまして、教授会等が何らかの意向を表明したときにそれをどう酌み取るか、これにつきまして、国の法律段階であらかじめこうこうだというような定め方をするのは必ずしも適切なことではない、むしろ各大学の自主的な判断にゆだねることが適切であるというように考えたものでございます。
  123. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 各大学判断による選択的任期制の導入だということを耳にたこができるほど法案審議の中で聞かされてまいりました。各大学判断による選択的任期制、これを本物にするためにも、教授会任期制を実施しないと決定したとき、そのときにはそれが尊重されるべきだという立場にも立てないのですか。
  124. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) それぞれの大学におきまして、学長の意見を聞いてというところが教学部門とのコンタクトポイントになっているわけでございまして、これをどう実質化するか、それはそれぞれの大学運営にお任せする、こういうことでございます。
  125. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 今の答弁で、今回の法案学問の自由や大学の自治の侵害にもかかわる非常に危険な内容であるということがよくわかりました。  二日間、七時間の審議では、私自身、質問時間の不足で、教育研究並びに教育研究労働の本質論に照らした任期制問題点、つまり、今も触れましたが、学問の自由と大学の自治を初め、諸外国に比べても今でも少ない大学院生や研究職の将来構想、産業の発展大学の役割などなどを明らかにすることができませんでした。日本の将来にかかわるこんな重要なことを十分な審議もなく結論を出すというのは、国民にとって本当に不幸なことであると思います。
  126. 江本孟紀

    ○江本孟紀君 先日、私はこの委員会大学教授に知人がいないと言いましたけれども、とんでもない間違いをしておりまして、私の大変親しい人の中に、国立大学の医学部の教授で、そしてある専門の何とか課長というのをされている方ですけれども、先日偶然会いまして、今こういうことをやっているという話を聞いたところが、うちでも教授会でこれは話題になった、そのときにこの任期制の問題は当然だというような話が出て、話が進んでいく中で、これは教授も適用されますよと言った途端に教授会がしいんとなったというような話を聞きましたけれども、私の大変親しい教授は、年齢も私ぐらいの年齢なんですけれども、これはもう大いに結構なことだ、どんどんやるべきだというような御意見でした。  私もこの法案には賛成をしておりますが、いろいろこの件については審議をされてきて、先ほど午前中は参考人も来、それから、私は五年間この委員会におるんですが、傍聴の方がずっとこれだけ熱心に来られたことは今までにかってなかったんですね。だから、そういう意味で大変関心が深いのかなと。どういう方が来られているのかわかりませんけれども、この問題については真剣に、ほかのことを真剣にやっていないわけじゃないですけれども、これは真剣にやらにゃいかぬと。逆に言えば、ほかの委員会もこれぐらい来ていただけたら我々が何をしておるかということも御理解いただけるんじゃないか、そう思いました。  そこで、先般の委員会からずっと続いて、私だけじゃないんですけれども、どなたかの先生も言われておる、非常に悪い例えだと思うんですが、ある新聞に「患者の楽園」というふうなことと任期制という問題について書かれた文章があるんですけれども、その中身をもう一度皆さんに聞いていただきたいと思います。  それは、いろいろ書いてはあるんですけれども、幾つか問題点を提起しております。その中にやはり業績評価の問題ということを書かれております。これはちょっと業績評価という面について批判的に、日本大学の仕組みはよくない、ほとんど研究評価の仕組みなんていうのはないに等しいというようなことを書いてあります。  それから二つ目に、社会一般人事流動性がないのに、大学にだけ研究者の自由な市場を期待するのは現実的かどうかというようなことを問題としております。  三つ目が、学問の自由との関係。米国でテニュア制と呼ばれる教授の終身制は学問の自由を守るために始まった歴史がある、大学人の身分保障の持つ意義はないがしろにしてはなるまいというようなことを書かれて、そういうことの問題点をいろいろ書いてはあるんですけれども、この新聞の最後にやっぱり一番大事なことを書いているんです。  この締めくくりの中に、「自己改革を怠り、外部から任期制という創業を処方される事態を招いた大学人は、不明を恥じるべきではないか。」、みずからを恥じるべきだとようなことを最後に締めとして書いてあるんです。  私は、そこがやっぱり一番の問題ではないか。きょうの参考人の先生の中にも、この法案に反対されておる沢田参考人のお話の中に、こんなものはなくても我々は紳士協定を結んでその中で自主的にやっておるんだというようなことを言われておりました。しかし、それがすべてこの大学という中で紳士協定を結んで任期制みたいなものをとって大学がうまく運営されている、機能しているということであれば、大勢がそうであればこういうものは出てこなかったのではないか、実はそう言われているのはごく一部の大学ではないかなというような気がします。  そういうようなことも考えて、私はこの法案自体は、これは何度も言いますように、扱いをもてあましておる教授にも適用するということが一番の原因ではないかというふうに私は思っておるんですけれども、こういう解釈が本当に正しいのかどうか、またそう思っておられるのかどうか、お答え願いたいと思います。
  127. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 大学審議会におきます審議の過程におきまして、どの職種を対象とするかということについていろいろな議論があったわけでございます。一つの議論といたしましては、いわゆる若手の方々だけに適用したらどうかという御議論もございましたし、あるいは逆に、今、江本先生がおっしゃったことに関連するわけでございますが、教授にこそ適用すべきであるというような御意見もなかったわけではないわけでございます。  制度的な問題といたしましては、すべての職種について適用され得るという位置づけを行ったわけでございまして、それらの職位の中の一体どの部分についてそれぞれの大学で具体的に導入するかどうか、これについてはそれぞれの大学判断にお任せする、こういう制度的なしつらえをしたわけでございます。したがって、基本的な姿勢といたしましては、どの職位におきましても多かれ少なかれやはり流動化が足りないわけでございますので、それらの流動化のために役立てる方策の一つとして考え得るのではなかろうか、こういうことでございます。
  128. 江本孟紀

    ○江本孟紀君 私は、そういう中で、問題はやはりちょこちょこ出てくると思うんです。  まず、教授という仕事というのは大変な仕事だというふうにはもちろん思います。しかし、ちょっと質問がさっきの話と違ってくると思いますけれども、学校の中で学生というのは、学生の方から見ると、これは教育という話からいいますと、教授になるためにどんな苦労をしているかというようなことは学生側にとったら余り関心はないわけです。それよりもいかにいい講義をしてくれるか。そういうことでいくと、話の聞きやすい人とか、本当に勉強されている方が学生のために教授という仕事をしている、そういったことが一番大きな問題だと思います。  そういうことでいいますと、日本教育でいえば、中学校あたりで英語の授業をやっても、英語がほとんど実際にはしゃべれない人たちが多い。そういうことでいいますと、せめて教授は、最高学府ですから、いろんな研究発表等をするにしても外国語ぐらいは簡単にできるという力が備わっていてもいいんじゃないか。そういうことでいいますと、教授のそういう資格要件、そういったものはあってもいいのではないか。それから、そういうことがあった上でこの任期制というようなものを採用すべきではないか。  それから、任用に当たっての資格審査委員会というようなものをこういったものに設けるとか、これはずっとお話ししていますとどうもその辺があいまいになっていて、実際に具体的には、公正かつ客観的にどういった人たちがいいかということを受けられるような第三者機関、外部からのそういう機関みたいなものもつくった方がいいんではないかというふうに思っておりますけれども、その点いかがでしょうか。
  129. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 今の点は非常に重要な点であろうかと思うわけでございまして、小・中・高の先生の場合、教育職員免許状というので、また教育実習をしなければならないとかいろいろな要件が課されているわけでございます。もちろん、大学教員につきましても大学設置基準上資格要件が書いてあるわけでございますが、やはり高校以下の先生とは扱いが異なっているわけでございます。  まず、トレーニングする、要するに日ごろの授業を行うということについての基礎的なトレーニングを必ずしもしなくても済むような仕掛けになっておるとも言えるわけでございます。  また、評価の問題がまたかかわってくるわけでございまして、学生の立場からしましたら四年間だけいるわけでございます。したがって、多少我慢したら四年間過ぎてしまうということかもしれません。そこで、授業をいかに充実するかということについての最近の傾向といたしまして、まだ大勢を占めてはございませんけれども、目立った動きといたしまして学生による授業評価というのも出てきておるわけでございます。甘い点を出してくれる先生の方にいい評価をするのではないかと思われていた時期もあったわけでございますが、実際に行われている例を見ますと、学生の方はかなりまじめに評価をしておる、こういうようなことも指摘されておるわけでございまして、そういう学生による授業評価の問題。  それから、先ほど来触れられておりますように、教員業績評価としてとかく研究面についての評価ということに傾きがちではないかということが言われているわけでございます。これと並んで、それにまさるとも劣らぬ重要なものとして、やはり教育面の評価ということもこれまた重要であって、それなりの重みを持って評価されるべきだということでございます。これにつきましては大学審議会の答申におきましても触れられておりまして、各大学においてそういう方向で努力していただけるようお願いしているわけでございます。  それらさまざまなことを含めまして、大学の先生の単に教育研究能力ということだけではなくて、やはり日ごろの教育活動をきちんとやっていただくということが必要でありまして、その点は先生、第三者委員会評価云々ということもおっしゃいましたけれども、まずもって日ごろのそういう授業活動を大切にする、それはそれぞれの教員自身の御努力によるのが一番でございますけれども、やはり側面的には今申し上げましたような諸種の努力というものも必要ではなかろうかというように考えておるところでございます。
  130. 江本孟紀

    ○江本孟紀君 最後の質問を大臣にさせていただきたいと思いますけれども、大臣は以前に、私ちょっと調べましたら本を書かれておって、その中の教育問題の中で、「高学歴化にともない数多くの弊害が生じていることを認めなければならない。大学は巨大になり機能は多様になるとともにその役割が不明確になってきている。」と。ちょっと要点だけ抜粋しますけれども、「戦後の教育はややもすれば、国民、地球人の立場を軽視し、個人のみに重点をおいていた。」、「また国際社会において指導的役割を果す人材の養成も必要である。このためには、小学校、中学校からの外国語教育あり方を改善するとともに、教育の体系を国際化時代に見合ったものに変えていかなければならない。」。「教育制度の画一化、硬直化を改めて、多様化、弾力化を実現する点におかれるべきである。」。「教育だけが社会から切り離されているというものではなく、むしろ、密接に結びついているからである。」というようなことを教育の問題として、根本的なお考えということで書かれた本があるんですけれども、私はそういうものをにらんで、ある程度そういう背景があって、大臣もこの任期制というものについては関心がおありになってこれを推進されたというふうに思っております。その点について大臣、最後にこの任期制についてのお考えを聞きたいと思います。
  131. 小杉隆

    ○国務大臣(小杉隆君) 私は、教育改革プログラムの中でも二つの視点と三つの手法ということを要約として申し上げているんです。  二つの視点とは、一つは、知識どか偏差値というものに優先される教育ではなくて、もっと豊かな人間性というものを育てる。それから第二の視点は、新しい時代、例えば今言われたような国際化とか情報化とか高度な経済グローバル化というような、そういう時代に合った人材養成、こういう二つの視点が必要だと。それを進めるに当たって、フレキシビリティー、柔軟性、多様性、あるいはオープンであること、社会教育との垣根をできるだけ低くしてお互いに連携していくということ。そして三つ目には、百の議論よりも一つの実行、ディスカッションの段階からアクションの時代ということで、実行を第一にということを基本にして今度の教育改革プログラムをまとめたわけです。  そういう基本的な立場から考えますと、大学教育の改革ということもやっぱり実行していかなきゃいけない。この大学任期制については、昭和四十六年の中教審のいわゆる四六答申、それから十年ほど前の臨教審の答申でもこの任期制ということは提案されてきたんですけれども、残念ながら今まで日の目を見なかった。今回、こうした時代の激しい変化の中で、今こそ長年の懸案である、このような人材流動化を通じて教育あるいは研究活性化を図ろう、このチャンスをぜひとも逃さないでこの法案を実現させてほしいと、これが私の率直な気持ちでございます。
  132. 江本孟紀

    ○江本孟紀君 ありがとうございました。
  133. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 まず大臣に伺いますけれども、まさに今この任期制を通じて大学活性化を図りたいというふうにおっしゃったわけでございますけれども、多分、これから二十一世紀に向けての教育は、創造性があふれる教育、あるいはアドベンチャーの精神が生かされるということが大変大事かと思います。  そういう中で、けさ、参考人の先生方がおっしゃったのは、大学を動くと落ちこぼれと言われ、根なし草と言われ、都落ちと言われというようなお話をされました。それが現実なんだろうというふうに思います。といたしますと、どうやってこういった社会の、日本のメンタリティーあるいは社会習慣のようなものから抜け出して、この改革的なことを文部省として本当にポジティブに、有効に機能させるかということだと思うんですけれども、その場合やはり私は一つ気になるのは、大学の管理機関である教授会、そこに任し切れるのかどうか。けさからずっとそのことが質問の中で出てきていますけれども、どうやって若い可能性のある研究者なり教育者なりの芽を摘まないために、そこに本当に客観的で公平な評価ができるのか、その辺のことをどのようにお考えになっていらっしゃるか、まず伺わせてください。
  134. 小杉隆

    ○国務大臣(小杉隆君) 日本の場合は、転々と職を変えるというとマイナスイメージがつきまとう、変なレッテルが張られるというのが今日までの社会風潮だったと思います。アメリカでは逆に職が頻繁に変わることによって地位もあるいは待遇もよくなっていくということで、むしろプラスイメージで受け取られていると、そういう社会の風潮の違いというのは厳然としてあると思います。  しかし、任期満了者が再就職に当たってどうしたらいいのか、大学審議会でもさまざまな意見があったと聞いております。この任期制が円滑に運用されるためには、各大学において教員業績評価というものが適切に行われ、日ごろのすぐれた人材を採用するとともに、任期の途中でもその教員業績評価をして必要なガイダンスを行うというような、事情に応じて所属の長などが、学部長とか主任教授とかそういう方々が相当程度面倒を見ることを含めてさまざまな工夫をお願いしたいと思います。そういうことを通じてできる限り、動くということがマイナスイメージじゃなくてむしろプラスイメージに働くような社会風潮をつくっていければ大変いいと思いますし、私はそのためにもいろんな工夫や努力が必要だと思います。  先ほどお答えしたように、大学共同利用機関の学術情報センターにおいてさまざまな教員の公募情報を、インターネットのホームページで研究者の公募のデータベースを整備させたりしているところでありますが、今後ともこうした施策を通じて人材情報の流通を図ってまいりたいと思っております。
  135. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 局長に、もしかしたら失礼な質問になるかもしれませんが、小学校から大学まで男女の教育の平等は確保されているというふうにお考えでしょうか。
  136. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 現実の進学率の動きなどを見ている限りにおきまして、昔に比べて男女の進学機会というのはかなり平等に保障されるようになってきたというように考えておるところでございます。
  137. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 けさ、参考人の方が下さったデータですけれども大学人の男女の比率、ドイツでは女性が一六・九%、アメリカは二六・七%、オーストラリアは三四・八%、ブラジルは三九・五%、大体四〇%ですね。十四カ国の中で唯一日本だけ一けたで七・九%。これは局長、余りにも何か仕組みに不公平性があるのではないかと思いませんか。
  138. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) この数字の低さ自体がいわゆる学校という職場に固有な原因によって生じたというようなことよりも、私の個人的な考えに及ぶかとも思うわけでございますが、むしろ社会全体への女性進出という面がやはり日本としては相当出おくれていたと、こういうことが影響しているところの方が大きいのではなかろうかというように考えておるところでございます。
  139. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 それは急に文部省が社会全体に責任を転嫁しておしまいになったように思います。そういうことではないというふうに言わせていただきたい。  本気で入れたいと思うのならば、私はジャーナリズムにいましたけれども、女性が少ないということでどんどん採用するようになりました。今までやはり文部省がそういうことをやってこなかったんじゃないですか。
  140. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 若干言葉が足りなかったわけでございますが、転嫁する云々ということではなくて、例えば大学教員につきまして申しますと、そもそも大学の学部への女子の進学率というのが男子と比べて非常に差があったわけでございます。それがだんだんに女子の進学意欲あるいは家庭における経済状況あるいは社会全体の風潮、いろいろな諸要因が絡まって女子生徒の大学に対する進学率が非常に高まってきて、現在では男子学生と同じ程度のものになってきているわけでございます。それがさらに大学院レベルまでその層が押し上がってきているわけでございます。  その大学院学生がいわゆる大学教員の主たる、言葉はなんでございますが、供給源になっているのは事実でございます。したがって、大学の学部への進学率が高まり、大学院に行く女性がふえればふえるほど、それだけ女性が大学教員になるチャンスというものは実際のところ高まってくると、こういう関係になっておろうかと思うわけでございます。  したがいまして、現在、助手という職員に占めます女子教員の率が教授に占める女子教員の率に比べてはるかに高いと、はるかにというかかなり高いということを申し上げたわけでございますが、その傾向というものは女子の進学率の高まりという傾向が続いていくに応じてやはり高まっていくものだというように考えているわけでございます。
  141. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 私はなぜしつこく女性の問題を伺っているかというと、別にこれは女性の問題だというふうに思って伺っているわけじゃないんです。非常に典型的に教授会なりなんなりの考え方がここに懇意的に出てきているというふうに思うから伺っているわけです。  ですから、今回この制度が取り入れられたときに、大臣がおっしゃったように本当に前向きにポジティブに機能していくためには、教授会が今までのような体質で自分の気に入った人だけを入れるというような、きょうは身内とかいろいろなおっしゃり方がありましたけれども、そういったものがあるからこそ非常に怖いというふうに思うので、そこを断ち切らなければいけない。  とすれば、アメリカも四分の一だし、先進国は少なくとも四分の一ぐらいはおられる。それが日本だけが八%しかいない。これはたまたま女性は数字で示されています。だけれども、女性じゃなくて、もう少しマイナーな学問をやっている人だとか、それからこの間、文学部の古典というふうな申し上げ方をしましたけれども教授がそういったような課題を持っていない場合でも、そういった才能のある人が埋もれてしまうのではないかという危惧があるので、こういう形で伺っているわけなんですね。  ひとつこれは大臣にもお願いしておきたいと思いますけれども、今の国公立大学教授会の中での女性の教授のパーセンテージ、それをぜひ後で結構ですからお示しいただきたいということをお願いしておきます。女性の教授がいないということは、同時にまたいろんな意味大学が硬直化している一つの原因だろうというふうに思っております。  次の質問に移ります。  けさも出ましたけれども、大変日本は自校出身者が多いと。けさのお話によると、ドイツでは自校の出身者を採用することを法律で禁じているとか、それからハーバードなんかでも十年間は自分の出た大学に戻らせないとかいろいろあるそうですけれども、やはりそこのあたりも、これは大学の自治ということも大事ですけれども、もし本気で改革をなさるというのであれば、そのぐらいのところまでメスを入れるぐらいの本気さがあるのかということも問われてくるというふうに思います。  この任期制で本当に創造性のある大学大学活性化というふうにおっしゃるのであれば、首切り法案などという言い方をされるのは、それがそこまでの大胆な大きな改革ではなくて、首切りだけがされちゃうんではないかという危惧を持つ人がいるからだろうというふうに思うんですね。ですから、やはり自校出身者だけで固めないというような方策を文部省としてはおとりになるおつもりがあるかどうか、その辺をはっきり伺っておきたいと思います。
  142. 小杉隆

    ○国務大臣(小杉隆君) この任期制法案の趣旨が、先ほど来申し上げているように、異なる経験や発想を持つ多様な人材を積極的に受け入れることによって活性化を図るということにあるわけですから、私は、そういう趣旨を体して、大学側がそれだけの見識と自主性を持って大いにそういう女性とかあるいは他校出身者でも採用する、そういうひとつ運用をしていただきたい、これは強く希望しておきたいと思います。  私自身、文部大臣になりましてから、文部大臣の諮問機関十幾つありますけれども、できるだけ女性の比率をふやそうと、こういうことで努力をしております。そういうことで率先して文部大臣としても、文部省内の大事についてもできるだけ女性を登用したり、あるいは外部の人を採用するということにも柔軟に対応していきたいと思っております。  これはあくまでも、さっき局長が答弁したように各大学の自主性に任せるべき問題ですけれども、私はそう期待したいと思っております。
  143. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 これからも大いにそこは大臣がしっかり目を見張っていただいて、この任期制の行方を見ていただきたいというふうに思います。  同時に、やはり地域社会に開かれたサービスというのが大変大事だと思うんですね。こういった任期制の採用で、研究そして教育、そしてもう一つ開かれた大学ということで、盛んにけさは、研究だけではなくて教育能力評価すると。しかし同時に、もっと地域に開かれたそういったサービスについて、それからマネジメントについて、その辺の評価というのが大事だと思いますが、大臣いかがでしょうか。
  144. 小杉隆

    ○国務大臣(小杉隆君) 御指摘のとおり、大学の役割というのは、教育研究だけではなくて、地域社会のニーズにこたえるということも重要な使命の一つだと認識しております。  今回の法案大学活性化ということが目標ですけれども、今後、こうした大学活性化を通じて、その結果として地域社会に対して一層貢献を果たす、ちょっと間接的ではありますけれども、そういう機能が高まることを期待しております。  もっと端的にお答えいたしますと、大学と地域との連携というのはかなり最近行われてきていると思います。例えば、昼夜開議制で社会人がなるべく大学の講義を聞けるようにするとか、社会人のための特別選抜を行うとか、あるいは公開講座、あるいは産業界との共同研究管理運営に対して地域社会の関係者の意見をできるだけ吸収するというような、さまざまな工夫を通じて地域社会教育界との連携強化というものを図っていきたいと思っております。  私は、先日、教育改革プログラムについて経済界と教育界との意見交流を図ろうということで、教育改革フォーラムというのを第一回目をやりました。お互いに相当活発な意見が出されまして非常に有益だったと思うんですが、第二回目もまた大阪でやりたいと思っております。  こういう形で各大学と地域、あるいは各地域の教育委員会と各地域の社会というふうに、教育世界が閉鎖的であってはいけない、地域との連携、社会との連携ということをもっともっと広げていかなければいけない、それがつまり開かれたオープンな学校運営ではないかというふうに考えております。
  145. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 専ら大学の間の流通というか流れがずっと問題にされていますけれども、民間の企業とかあるいはNGOとか、そういったところと大学一つ任期、五年なら五年間大学研究して、それから例えば国会のスタッフとして政策立案をして、アメリカなんかはそれからいろんな大学教授になっていくケースも多いわけですけれども日本では本当にそういう専門家が国会のスタッフにもならないし、それから逆に国会のスタッフが大学教授になるということも少ないと思います。  そういう形で任期制の中で、そういう外へ出た方を今度は大学が拒否しないでどんどん活用していくということもやっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  146. 小杉隆

    ○国務大臣(小杉隆君) 昭和六十年に大学設置基準を改正しまして、社会人を大学教授等に採用できるように大学教員の資格に関する規定を改正した経緯がありますし、また平成六年の大学審議会の答申では、教員の採用の改善ということで、社会教員の積極的登用、こういうことを提案されております。  先ほど申し上げたように、具体的に企業の研究者等の社会人の登用が図られておりますし、今言われたような市民団体とかNGOとか、そういった在野の才能を広く社会に求めていくことは重要なことだと思っております。  今まで長い歴史がありますのでなかなか一足飛びにいかないところですけれども、私は、やはり任期制の導入に伴って、よりそうした積極的なあるいは柔軟な対応が進むことを期待しております。
  147. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 ありがとうございました。
  148. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 本大学任期法案は、労働基準法第十四条の、一年を超える労働契約をしてはならないというその規定をクリアするためのいわば法律であるわけでありますが、従来、紳士協定紳士協定というのは言葉はきれいですが、これは実際は労働基準法で厳しく禁止をいたしておりますやみ協定なわけです。この紳士協定法律的な根拠を与えるという法律であるわけでありますが、法律でありますので、法制局の審査を経たものでありますから法解釈上問題ないものであるかもわかりませんが、労働基準法第十四条の一年を超える労働契約をしてはならないという規定と、条文どおりいきますといささか整合しないというのが率直な感想であります。  本来であれば、派遣社員だとか契約社員だとかということが一般的になっております今の労働形態の中で、私は労働基準法第十四条を改正することこそが本来の筋であると思うのでありますが、ここは文教委員会で労働基準法を審議する場ではありませんので、それについてはこれ以上触れませんが、やはり法案というのは関連法案と明確な整合性が、だれが説明してもわかる整合性がないとこれはうまくないんじゃないかと思う点でいささか問題なしとはしないという意見を申し上げます。  質問でありますが、私の用意させていただいた質問は既に二日間で、角度は違いますが大体お答えをちょうだいいたしておりますので、一点だけ。  けさの参考人質疑でも若干話題になりましたが、ユネスコの高等教育教職員の地位に関する勧告で、終身在職は学問の自由を保護するために不可欠のものであるという案が出ておるそうでありますが、これは明らかに今審議しております任期制と対立する概念であると思うんです。  ユネスコでこういう問題が出てきた背景は何であるか、また文部省、我が国政府はこれに対していかなる対応をせらるるのか、お答えをいただきたいと思います。
  149. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) ユネスコが高等教育教員の地位に関する勧告について検討を進めていることでございますが、私どもといたしましては、ユネスコ加盟国といたしまして、それぞれの加盟国が抱えております高等教育機関教員の地位を高めようという意図に発したものだというように理解しておるわけでございます。  その内容的には、今加盟国からの意見等をもとにしてユネスコ事務局で種々検討しておりまして、本年の秋にユネスコ総会、これはパリで開催されるわけでございますが、審議が行われることになっておるわけでございます。今、先生御指摘の素案はユネスコ事務局がいわば審議のたたき台として作成したものだというように承知しているわけでございまして、加盟各国からいろいろな意見が提出されて、それについて事務局が検討を加えている、こういう段階でございます。したがいまして、秋の時点におきましてどういう最終のテキストになってくるのか、これは今の時点でまだ不確定でございます。  こうした前提があるわけでございますが、素案に含まれております終身在職権、いわゆるテニュァに関する記述でございます。大学教員にとりましては、終身在職権の有無にかかわらず、採用、昇任だけでなくて、懲戒等の処分を含めた大学教員の大事につきまして、大学の自主性が尊重され、また恣意的な判断を排除することが特に重要であるというように考えておるわけでございます。そのような考え方の上に立って、各国の高等教育制度多様性に応じて、教育研究上の必要性に基づいて、任期を定めた雇用やあるいは定年までの継続雇用など、多様な雇用形態が認められることが必要なことであろうというように考えておるわけでございます。  まだ最終案が先ほども申し上げましたように確定していないということでございますので、私どもとしては、今申しましたような基本的な考え方でこれまでも素案に対して臨んできたものでもございますし、その上に立って、それらの考え方も反映された形でテキストが出てくることを期待しておるところでございます。
  150. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 IEA等の資料によりますと、我が国の初等教育世界最高のレベルにある。しかしながら、残念ながら中・高等教育世界最高のレベルにはまだ達していない。したがって、大学制度には大きな問題があるというような指摘がなされておるわけであります。  午前中の参考人質疑でも、研究室、医局といったいわば閉鎖的な大学システム人事が硬直しており、さっき堂本先生のお話にございましたし、私も午前中ハーバード大学の例で触れましたが、システムそのものが根本的に違うのではないかという感じが強くいたしたわけであります。大学一般社会と同様の終身雇用と同じシステムで運用されている限り、決して新しい大学制度は開けないというふうに考えるわけであります。  よく引き合いに出されるノーベル賞の問題でありますが、日本は平和賞と文学賞を除いたノーベル賞の受賞者が五人でございます。アメリカが二百四人、ドイツ六十二、英国七十二。ドイツや英国に比べてもそれぞれ十数分の一であるわけです。ノーベル賞の受賞が学問レベルを正しく評価しているかどうか、それはいささか議論の分かれるところであるかもわかりませんが、歴然としたこういう状況があるわけであります。  今回の任期制度の改革は、午前中の参考人質疑でも申し上げましたが、たまたま一つの小さな改革であると思うわけでありますが、どうかさらに大学の改革が進みますことを希望いたしまして、質問はすべて終了いたしておりますので、終わります。
  151. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  152. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  153. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 私は、日本共産党を代表して、大学教員等任期に関する法律案について反対の討論を行います。  本法案は、大学教育研究活性化の名のもとに、我が国で初めて大学教員任期制を本格的に実施するものです。本来ならば一国会かけても十分な審議をしなければならない本法案に対して、参考人質問を含めてわずか二日の審議で議了採決を行うこと自体、無責任であり、良識の府であるべき参議院の名を汚すものと指摘せざるを得ません。私の質問も準備したテーマの大半は残されたままとなりました。解明すべきはまだまだ山積しています。将来に禍根を残さないよう、徹底審議を貫くべきと思います。  短い審議の間でも、任期制の持つさまざまな弊害が明らかとなりました。  衆議院で我が党が強調したように、大学が最も進めなければならない中長期的研究を困難にし、時代を画する研究の芽を摘み取る危険、また、教員研究業績を上げることに追われ、教育が軽視されるということも明らかとなりました。  我が国のように大学間格差が政策的につくられ、その差が歴然としているところでは、自由な意思による学問的交流を困難にし、任期制導入がかえって教員の一極集中を強めることも浮き彫りとなりました。また、今最も進出が求められている女性研究者の継続的任用を困難にし、我が国学術の発展に大きな損失を招くことも明らかとなりました。私学ではこの任期制大学教員リストラの道具にもなりかねません。  大学研究教育を本当に活発にするというのなら、政府が行うべきは任期制の導入ではありません。自由な人事交流を可能にするため、大学間格差を根本的に改めるべきです。大学予算を欧米並みに引き上げるべきです。学問の自由と大学の自治を保障するべきです。今、多くの大学任期制反対の意見表明を行っています。その声はますます広がり、強まっています。  日本共産党は、学問の自由と大学の自治を守り、教育研究の一層の充実と発展のために全力を挙げることを表明し、反対討論を終わります。
  154. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  155. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  大学教員等任期に関する法律案賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  156. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  石田さんから発言を求められておりますので、これを許します。石田さん。
  157. 石田美栄

    ○石田美栄君 私は、ただいま可決されました大学教員等任期に関する法律案に対し、自由民主党、平成会、社会民主党・護憲連合、民主党・新緑風会、自由の会、新党さきがけの各派及び各派に属しない議員長谷川道郎さんの共同提案による附帯決議案を提出いたします。案文を朗読いたします。     大学教員等任期に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、学問の自由及び大学の自治の制度的な保障が大学における教育研究の進展の基盤であることにかんがみ、この法律の実施に当たっては、次の事項について、特段の配慮をすべきである。  一 任期制の導入によって、学問の自由及び大学の自治の尊重を担保している教員の身分保障の精神が損なわれることがないよう充分配慮するとともに、いやしくも大学に対して、任期制の導入を当該大学教育研究支援の条件とする等の誘導や干渉は一切行わないこと。  二 任期制の適用の対象や範囲、再任審査等において、その運用が懇意的にならないよう、本法の趣旨に沿った制度の適正な運用が確保されるよう努めること。  三 任期制を導入するに際して、教員業績評価が適切に行われることとなるよう評価システム等について検討を行うとともに、特に、中長期的な教育研究活動が損なわれることがないよう、大学側の配慮を求めること。  四 国公立大学教員については、一般の公務員制度との均衡等に配慮して、任期付き教員の給与等の処遇の改善を検討すること。  五 任期付き教員の異動が円滑に行われるよう教員研究者に関する人材情報の収集提供活動を一層充実し、雇用環境を整備すること。  六 高等教育活性化と充実を図るため、各地の大学が優れた教員を確保できるよう、教育研究条件の整備を検討すること。  七 私立大学における任期制の実施については、労働協約事項の対象となることを認識し、制度の円滑な運用に努めること。   右決議する。  以上でございます。  どうぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  158. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) ただいま石田さんから提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  159. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) 多数と認めます。よって、石田さん提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、小杉文部大臣から発言を求められておりますので、これを許します。小杉文部大臣。
  160. 小杉隆

    ○国務大臣(小杉隆君) ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと考えております。
  161. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  162. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二分散会      —————・—————