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1997-03-27 第140回国会 参議院 文教委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年三月二十七日(木曜日)    午後零時二十分開会     —————————————   委員異動  三月十九日     辞任         補欠選任      松村 龍二君     田沢 智治君      戸田 邦司君     田村 秀昭君  三月二十六日     辞任         補欠選任      釜本 邦茂君     橋本 聖子君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         清水嘉与子君     理 事                 小野 清子君                 鹿熊 安正君                 石田 美栄君                日下部禧代子君     委 員                 井上  裕君                 世耕 政隆君                 田沢 智治君                 橋本 聖子君                 馳   浩君                 菅川 健二君                 田村 秀昭君                 林 久美子君                 山下 栄一君                 山本 正和君                 本岡 昭次君                 阿部 幸代君                 江本 孟紀君                 堂本 暁子君    国務大臣        文 部 大 臣  小杉  隆君    政府委員        文部大臣官房長  佐藤 禎一君        文部大臣官房総        務審議官     富岡 賢治君        文部省生涯学習        局長       草原 克豪君        文部省初等中等        教育局長     辻村 哲夫君        文部省教育助成        局長       小林 敬治君        文部省高等教育        局長       雨宮  忠君        文部省学術国際        局長       林田 英樹君        文部省体育局長  佐々木正峰君    事務局側        常任委員会専門        員        青柳  徹君    説明員        内閣官房内閣外        政審議室内閣審        議官       皆川 尚史君        総務庁青少年対        策本部参事官   中澤 見山君        厚生省健康政策        局総務課長    小島比登志君        厚生省生活衛生        局食品保健課長  堺  宣道君        厚生省児童家庭        局母子保健課長  北井 曉子君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○平成九年度一般会計予算内閣提出、衆議院送  付)、平成九年度特別会計予算内閣提出、衆  議院送付)、平成九年度政府関係機関予算(内  閣提出衆議院送付)について  (文部省所管) ○国立学校設置法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付)     —————————————
  2. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十九日、松村龍二さん、戸田邦司さんが委員辞任され、その補欠として田沢智治さん、田村秀昭さんが選任されました。  また、昨日、釜本邦茂さんが委員辞任され、その補欠として橋本聖子さんが選任されました、     —————————————
  3. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) 昨二十六日、予算委員会から、二十七日午後の半日間、平成九年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、文部省所管について審査の委嘱がありました。  この際、本件を議題といたします。  予算説明につきましては既に聴取いたしておりますので、これより直ちに質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 橋本聖子

    橋本聖子君 自由民主党の橋本聖子でございます。  私は本来建設委員なんですけれども、きょうはスポーツ振興のことにつきまして、皆様の御配慮をいただきまして、きょうこの質問の時間をいただくことができまして本当にありがとうございます。心より感謝申し上げます。  私自身スポーツを通じてオリンピック選手としてやってきまして感じたことを、私なりにきょうは質問させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。  橋本総理が以前提唱されました、元気を出せ日本は、我が国政治経済分野にとどまらず、スポーツ世界においても実践されるべきだというふうに考えております。ですが、スポーツは人々の心身の健全な発達に資するとともに、明るく豊かで活力に満ちた社会形成に寄与しているものであり、運動によって爽快感達成感を得ることができ、連帯感やまたいい意味での競争心も蓄えるすばらしいものだというふうに私は思っております。  少子化の進む我が国におきまして、若年層への健康増進人間形成などの役割も果たす重要なものだとも考えております。また、我が国は、日常生活において急速に今洋風化が進んでおりまして、子供たち生活様式が和から洋へというふうに変わっているところもあって、私自身感じるんですけれども、スポーツ医学的な統計から問うてみましても、下にしゃがんでそしてまた上に上がるという動作の可動域が狭まっている分、スタイルがいい子供たちは育つんですが、その反面、昔からの日本人の体型に即さない生活様式ということで体力低下が今著しくなってみえております。  そういう中で、時代体力を育ててくれることがなくなった今、こちら側からやはり子供たち体力というものを考えていかないといけないんじゃないかなというふうに思っております。そういう中で、競技スポーツ人だけではなくて、一般生活の中で健康を意識した取り組みの中でスポーツ振興というものを、ちょっと幅広くなるんですけれども、どのようにお考えかお聞かせいただきたいと思います。
  5. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 少子化が進んでいく中でのスポーツ役割というものは、今橋本委員がおっしゃったとおりでございまして、私はスポーツの持つ効用というものをもっともっと再認識する必要があろうかと思います。スポーツを通じて子供たちが健全に育成される、あるいはまた今日の非常に複雑多様化した社会の中で、ストレス社会と言われる中で、スポーツをやることによって社会に明るさとか元気を取り戻すきっかけを与えてくれる、こういう面で私はスポーツの価値というものをもっともっと高めて、認識を高めていきたいと思っております。  そこで、今お話しのように、スポーツというのは、学校における保健体育とかスポーツのみならず、人生八十年時代における生涯を通じてのスポーツ、あるいは橋本委員が長年やってきました国際級あるいは国内トップクラスの競技力向上、こういう三つ分野があろうかと思っております。  そこで、私は大臣就任以来、この三つ分野でさらにスポーツ充実ということをぜひやりたいという考えから、先般、保健体育審議会に二十八年ぶりに本格的な諮問をいたしました。それは、今後の生涯スポーツあり方競技力向上あり方あるいは学校における保健体育あり方、こういったことについて諮問をして、今精力的に審議をしていただいているところでありまして、これはことしの六月に中間答申をいただき秋に本格答申をいただくということになっておりますので、そういった答申を踏まえまして今後の体育スポーツの一層の充実に取り組んでまいりたいと考えております。
  6. 橋本聖子

    橋本聖子君 私は、きょうはスポーツ振興の面だけに絞ってお話をお聞きさせていただきたいというふうに思っているんです。  文部省の方ではスポーツ教室のようなものをされているかどうかというお話をお聞きしたいんですが、私は、スポーツ少年団中学高校生徒たちスポーツ教室を開催してほしいということで全国各地から声をかけていただいて、時間のある限り回らせていただいているんですけれども、その中で、今びっくりするほど子供たち体力低下をしております。  昨年の体育の日に発表されました調査でも、昨年は史上最低体力ということで、これから二十一世紀の少子高齢社会に向けて大丈夫なんだろうかという心配といいますか危機感を感じている一人でもあるんです。実際にトップを目指して頑張っている子供たちの中でも、けがに弱いといいますか、けがをしやすい子たちがたくさんふえております。単発的な記録で今世界記録等が出されて、また子供たち競技記録も伸びているんですけれども、それは一概に記録だけでは判断できずに、スポーツ用具の著しい発展もありますので、子供たち体力が伸びているということとは比例しないのが今の現状なんです。  例えば、子供たちと触れ合う中で実際に指導者方たち等の動きを見ておりますと、細かい話なんですけれども、ウオーミングアップはすごく重視してやらせるんですね。でも、クーリングダウンを全くさせていないというところを見て、大丈夫なのかなというふうに感じたことなんです。  筋肉というのは、皆さん御存じだと思うんですけれども、練習をすればするほどそのときは体力低下させるだけで、筋肉を細くしてしまうんですね。実際に、ウオーミングアップをして競技が終わってからの例えば腕の長さをはかりますと、どの方も、またどの選手も、日常生活にも言えるんですけれども、一・五センチから二センチは必ず筋肉が縮まっているものなんです。それを休養と十分な栄養を与えてやって、そして二、三カ月後に初めてその日の筋力アップをした練習が生かされてくるというふうになっているんです。  そういうような細かいことも、実際には地域指導者がわかっていなくちゃいけないことが全く伝えられていなくて、間違った状態スポーツ教室が行われているんですね。そういう意味でも指導者というものをこれから育てて、本当意味底辺拡大をしていかないといけないと思っております。  クーベルタン男爵オリンピックをお考えになったときに、もう既に百年前から、百人の方がスポーツをするには五十人のスポーツ選手が必要で、そして五十人のスポーツ選手を育てるには二十人の専門家、そしてその中の五十人の特別な知識を持ったスポーツ専門家が必要だというふうに言われていたんです。もう既に百年も前から、トップスポーツ選手も必要だけれどもそれには底辺拡大が必要だということを言われていたんですけれども、そういうことにつきまして、文部省として今底辺拡大についてどのようなことをされているのか、お聞きしたいと思います。
  7. 佐々木正峰

    政府委員佐々木正峰君) 御指摘のとおり、子供たち体力運動能力については文部省体力運動能力調査を実施しておるわけでございますが、十歳から十八歳までのすべての年齢段階のほとんどの調査項目低下傾向が見られるわけでございます。  その背景といたしましては、生活が便利になった等さまざまな社会変化による運動機会の減少などの要因が考えられるわけでございますが、青少年体力運動能力向上することは次代を担う子供たちの極めて重要なことと考えておりまして、学校教育における体育運動部活動はもとより、家庭地域社会十分連携をし、日常生活における運動機会充実する必要があるわけでございます。  文部省におきましても、施設整備指導者養成確保各種事業充実等所要施策を進めておるところでございます。例えば、総合型地域スポーツクラブ育成モデル事業というのを実施しておりまして、地域スポーツセンター等を拠点とし複数の種目から成る総合型のスポーツクラブ育成、定着させたいと考えておりますし、また九年度予算におきましては、新規事業といたしましてスポーツタウン推進事業を実施することといたしております。  これは、地域に所在する学校地域、職場のスポーツ施設総合的、機能的に活用し、住民ニーズにこたえたスポーツ活動をより一層推進するための市町村全体を挙げての取り組みを支援してまいりたいと考えておるわけでございます。ここにおきましては、コーディネーターの配置あるいはスポーツ相談あるいはスポーツ活動を具体的に実施するといったようなことも考えておるわけでございます。  そういったスポーツ振興にとって、すぐれた指導者養成確保ということが御指摘のとおり極めて大切でございます。その養成確保スポーツ振興を図る上で極めて重要である、そういう観点に立ちまして、昭和六十二年でございますが、スポーツ団体が行うスポーツ指導者養成事業のうち、一定の水準に達し奨励すべきものを文部大臣認定するそういう制度を創設し、地域におけるスポーツ振興観点競技力向上観点、新たなスポーツを実施するものへの配慮、そういった観点、さらには少年スポーツへの配慮観点から資質の高い指導者養成確保に努めているところでございまして、現在までに認定団体養成した指導者数はおおむね七万五千人程度に達しておるところでございます。  文部省といたしましても、スポーツ団体等連携協力しつつ、指導者確保あるいは施設整備等必要な施策充実に今後とも努めてまいりたいと考えておるところでございます。
  8. 橋本聖子

    橋本聖子君 ありがとうございます。  コーチについてのことはまた後でお聞きしたいと思うんです。  今現状の中で、トップアスリート選手の中には中学生や高校生もいるスポーツ競技団体があるんですが、学校教育の中でのスポーツ教育スポーツ少年団等学校教育以外のところで行われているスポーツ団体があるんですけれども、そこら辺の関係といいますか関連をどのようにお考えになっているかお聞かせいただきたいと思います。
  9. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 確かに、学校におけるスポーツ活動指導と、それから地域社会におけるいろいろな団体との連携というものは非常に大事だと思います。  ただ、学校教育の場でトップアスリート養成というのはなかなか大変な手間と暇のかかる話ですし、お金もかかることですが、しかし今御指摘のように、やっぱり中学校あるいは高等学校段階から素質のある子供を見つけ出して、それを継続的に育てていくという視点は非常に大事だと思います。  今国際的に活躍している選手などを見ましても、中学時代あるいは高校時代から芽を出して非常に注目すべき活躍をした人の中からそういう人が育ってきているということでありますので、私たちはできるだけジュニア期におきまして、いい選手、適性のある選手を見つけ出す、そして一貫した指導カリキュラムで育てていくということは非常に大事なことだと思っております。  したがって、文部省としても、各種競技団体そして学校等連携をとりながら、ジュニア層の一層の指導体制というものが確立されるように、今体育局長からいろいろ具体的な例を挙げましたけれども、そうした観点からトップアスリート養成に努めていきたい、そういうジュニア期からの一貫指導体制あり方について保健体育審議会で今検討していただいているところでありますので、その検討も踏まえてより一層その整備をしていきたい、体制を強化していきたいと思っております。
  10. 橋本聖子

    橋本聖子君 ぜひ連携をとっていただきたいというふうに思います。  日本ですと、やはり今は、中学のときの指導者はそのときだけの記録考え高校に送り出して、そして高校高校だけの記録考えてというようなことで、連携がなされていないのがせっかくの金の卵もそこでつぶれてしまっているというところもありますので、ぜひよろしくお願いしたいというふうに思います。  私自身アトランタオリンピックに出場させていただきまして、昨年のオリンピック出場前というのは、日本全体が史上最強軍団と言われて出発をしたんですけれども、帰ってみますと日本惨敗という形で終わってしまいました。それは、私自身が言うのはおかしいかと思うんですが、私自身にも責任がありまして、入賞もできないで帰ってきてしまったんですけれども、今回の結果というのはある意味で予測されていたようなところもあったように私自身感じまして、逆にこれからの日本スポーツ界のいい意味でのスタートラインではないかなというふうに思いました。  それは、やはり日本はどちらかというと、お金によって海外からの指導者を招いたりですとか、また、一流選手だった人がコーチには向かないというのではないんですけれども、そういう一流選手指導を引退した後頼ってしまうというところで、一番大事なのは、国内でしっかりとした指導者を育てることが今なされていないのが今回のアトランタのような結果のつまずきになってしまったのではないかなというふうに私自身思っております。  よくドイツのベルリンのナショナルスポーツセンターを借りまして合宿をさせていただいたんですけれども、そちらではそれほどすばらしい機材を置いていた場所ではないんです。そこでどうしてすばらしい選手が育ったかといいますと、やはりしっかりとした指導者を育て上げて、個々に能力は違うんですけれども、団体運動させる中にも一人一人の個性に合わせてトレーニングプログラム考えてあげて、そしてスポーツだけではない部分、心の面、メンタルの面ですとかいろいろな面でのサポートもしてあげられるような、そういう体制を全体的に考えているから記録が出されているように私は感じました。  ぜひ文部省の方でも、大変難しいことかもしれないんですけれども、文部省認定コーチといいますか、先ほど七万五千人の方がいらっしゃるというふうにお聞きしているんですが、その方たち本当選手のために指導をしていただいているかというと、なかなかそうではない部分が実際にはありますので、本当意味での認定コーチ、また各都道府県の教育委員会を通じて、子供たちに実感を持たせるような体感コーチといいますか、実践コーチ、メンタルコーチなど数多くの種類のコーチを配置して質の高い競技者づくりのプランなどを立てていっていただければというふうに考えているんです。そういう意味で、国家コーチとは言いませんけれども、指導者に対してそのような考え方はどのように持たれているかお聞きしたいと思います。
  11. 佐々木正峰

    政府委員佐々木正峰君) 昭和六十二年から実施しておりますスポーツ指導者養成事業文部大臣認定制度の中において七万五千名の指導者養成されておるわけでございますが、そのうちいわゆるコーチ競技力向上指導者は三十二種目で約六千五百名が現在養成をされておるところでございます。  スポーツ振興のためには、単に技術面だけではなくて精神面、栄養面等さまざまな側面から選手を支援、サポートしていくことが必要でございます。  文部省におきましては、これまでもスポーツ団体連携協力しながらどのような形でスポーツ選手サポートするか、そういう面から競技力向上をどうすべきかということについて意を用いてきたところでございます。  御指摘の点につきましては、今後のコーチあり方としてどのような形が望ましいのか、スポーツ団体の意見も聞きながら研究課題としてまいりたいと考えておるところでございまして、現在、文部省におきましては、スポーツ指導者養成活用システム改善充実に関する調査研究というのを設けております。  この調査研究会におきましては、現在の認定制度を見直し、資質の高いスポーツ指導者養成から効果的な活用に至るまでの現行制度改善充実ということを考えておるわけでございますが、そういった調査研究の中においても御指摘のような点につきましても研究課題としてまいりたいと考えておるところでございます。
  12. 橋本聖子

    橋本聖子君 ぜひよろしくお願いいたします。  次に、文部省が計画のナショナルスポーツセンターについてお聞きしたいと思います。  お話をお聞きしまして、やはり一番の問題にされているのがスポーツ医学科学をどのように競技に生かしていけるかということが今問題になっておりまして、文部省でも国立スポーツ科学センター予算がついたんですけれども、その中で私自身考えますのは、一番大事なことは、せっかく医学科学研究されても、実際に選手にそれがフィードバックされて競技力向上につながっているかということだというふうに思います。やはり、選手ドクターとのパイプラインになります指導者というものの育成が大切になってくるというふうに思うんです。  日本でも、江本先生もいらっしゃいますけれども、野球でよくジョーブ博士のところに行かれる選手が多いんですけれども、技術的には日本ドクターも十分に対応できるということなんですが、なぜジョーブさんのところに行くかというと、やはりスタッフがしっかりしているということらしいんです。ドクター、そして心理学、ストレングスコーチ、そしてまた栄養士というふうに大体六名から七名ぐらいのスタッフがいて初めて一人の選手けがから復活させるまで面倒を見るということのプログラムがしっかりとなされているからアメリカに行くというお話なんです。  そういう意味で、スポーツ医科学における優秀な研究成果を正しく伝えるために一番考えなくてはいけない部分だというふうに思うんですけれども、その点についてどのようにお考えかお聞かせいただきたいと思います。
  13. 佐々木正峰

    政府委員佐々木正峰君) 御指摘のとおりでございまして、文部省におきましても、先ほど申し上げました競技力向上指導者認定を行うほか、例えばスポーツコーチサミットを開催する、日本体育協会が実施しておりますスポーツドクターやトレーナーの養成事業に対して補助を行う等の事業を行っておるわけでございますし、またJOCにおいては、オリンピック強化選手でございますが、オリンピック強化スタッフ制をとり、選手指導サポート等も行っておるわけでございます。  スポーツにおけるスポーツ医科学の果たす役割というものは非常に大きいものがございます。スポーツ医科学研究データ科学的トレーニング方法開発成果というものを国際競技力向上に生かしていくことは極めて重要と考えておるところでございます。  そういう観点に立ちまして、文部省では平成九年度予算におきまして、スポーツ医科学研究科学的トレーニング方法開発国内外のスポーツ情報の収集、提供等を一体的に行う国立スポーツ科学センター建設に着手をすることといたしております。  このセンターにおきましては、さまざまな事業から得られるデータ映像等による諸情報競技会記録成績スポーツ科学に関する文献等データベース化し、通信システム等活用してネットワーク化を図り、我が国スポーツ情報集散基地となるように整備をしてまいりたいと考えておるところでございまして、スポーツ指導者というものがデータを共有することによってジュニア期からの一貫した指導が行われるような工夫をぜひしてまいりたいと考えておるところでございます。
  14. 橋本聖子

    橋本聖子君 ぜひよろしくお願いいたします。  私たちオリンピック選手も、モルモットというと言葉が悪いかもしれないんですが、運動中の血液をとったりですとかいろいろなデータを提供してきているんですけれども、何年たってもすぐに生かされていないということで私も選手を終わってしまったような状態で、ぜひそういう面を考えていただけたらというふうに思っております。  時間があと二、三分しかなくなってしまいまして、お願いの形になってしまうんですけれども、来年は長野オリンピックも控えておりますし、後利用の問題で年間維持費だけでも二十億以上かかってしまうというような状態になっております。  私は、アメリカのコロラド・スプリングズにありますナショナルスポーツセンターでも合宿をさせていただいたことがあるんですけれども、トップアスリートはもちろんですが、パラリンピックを目指している選手にも十分に配慮されたものでありまして、管理も物すごくしっかりとされております。そういう大成功をおさめている国のスポーツ事情というものも研究はされておりますけれども、もっともっといろいろな面で日本もまねといいますか、取り入れないといけない部分がたくさんありますので、ぜひ私自身も頑張らさせていただきたいと思いますので、御指導のほどをよろしくお願いいたします。
  15. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 体験者として、またトップアスリートとしての体験を踏まえてのお話、大変私も身にしみて感じました。  確かに、日本競技力は、ソウル、バルセロナ、アトランタ日本の国民の期待に沿えない成績であったと思います。  そういうことで、今数々の御提言がありましたが、集約すると、やっぱり一つは施設の問題、今コロラド・スプリングズの例を挙げられましたが、アメリカにしても、あるいは韓国がソウル・オリンピックの前に一大トレーニングセンターをつくって、それであんな成果を上げてきたということ、あるいはつい先日のアトランタオリンピックでもそういったナショナルトレーニングセンター整備したフランスとかオーストラリアが大変な成果を上げているのに比べて、日本とかあるいはイギリス、かつては陸上王国と言われたイギリスですけれども、そういった国が不振をきわめた、こういうことを見ますと、やっぱり施設充実ということは重要な要素であります。  そのために我々としても、各委員の協力を得て平成九年度予算で四十一億円で西ケ丘競技場のスポーツ科学センターというものを予算計上したところでありますし、またナショナルトレーニングセンターあり方についての調査費もつけていただいたわけでございます。  もう一つ問題は、やっぱり指導者養成ということでありまして、単に高いお金をかけて外国から有名な人を連れてくるとか、あるいは今まで華々しく活躍した選手をそのままコーチにするということでも、ただ単にお金をかけたからいいというものではありませんし、またすぐれた選手が即すぐれたコーチにはなり得ないんですね。無名の選手だった人が物すごい名コーチになって成果を上げている場合もありますので、そういう選手養成という、指導者とかスタッフ養成というのは非常に重要だということで、各種いろいろなプログラムを組んで指導者養成に努めているところであります。  そして三番目には、さまざまなそういう事業というものも必要だろうと思っております。詳細は先ほどからお話がありましたので、とにかく今度の予算でそういうふうに大いにスポーツ科学センターなど盛り込まれているんですが、これも完成するのは三年、四年後になってしまうので、シドニー・オリンピックには間に合わないわけです。ですから今、体育局に私は、センターができるまで待っているわけにいかないんだから、現状の中でどうしたら競技力向上できるかその策も十分考えるようにということで、私もともに研究しているところでございます。  今後とも、また経験者としての橋本委員のいろいろな御提言をぜひ、そのほかにもこの委員の中には大変なトップアスリートがそろっているわけですから、皆様のそうしたお知恵をぜひ提供していただきたいと思います。
  16. 橋本聖子

    橋本聖子君 どうもありがとうございました。  現状の行き詰まりといいますか、お金のかかることばかりなんですけれども、そういう財源の少なさだけを理由にしても本当スポーツ振興がほど遠くなる一方ですので、きょうは粗っぽい質問かと思いましたけれども思い切ってさせていただきました。青少年に夢と希望を与えるためにも、これからどうぞよろしくお願いいたします。  きょうはありがとうございました。
  17. 菅川健二

    ○菅川健二君 平成会の菅川健二です。どうぞよろしくお願いいたします。  私、参議院議員に議席を置かせていただいて以来わずか二年弱でございますけれども、この間、文部大臣は島村大臣、奥田大臣、小杉大臣と三人おかわりになったわけでございます。そこで、前大臣、前々大臣に私幾つかお尋ねいたしたわけでございますが、その事柄のうち一部は、文部省の皆さんの御尽力のおかげである程度前進したものとか見通しが立ったものがあるわけでございまして、それなりに評価いたしたいと思うわけでございますが、さらに政策を充実、前進させる意味で幾つかの質問をさせていただきたいと思います。  まず、第一点でございますが、私は、一昨年十二月に、いじめ問題が随分世間で問題になっておったときにスクールカウンセラーの全校設置ということを一応申し上げたわけでございますが、それにははるかに及ばないにいたしましても、ここ三年間、設置の委嘱事業予算額、派遣校数とも飛躍的に伸びておるということでございまして、それなりに喜ばしいことだと思っておるわけでございます。  そこで、スクールカウンセラーの調査研究期間は原則として二年ということになっておるわけでございますが、当初委託した市町村教育委員会はほぼ二年経過しつつあるわけでございます。その間の成果と課題について御説明いただきたいと思います。
  18. 辻村哲夫

    政府委員(辻村哲夫君) スクールカウンセラー実施の成果、課題でございますが、ただいま先生御指摘のように二年間でございます、したがいまして正式な報告はこの年度末から来年度にかけましていただきます。ただ、私ども中間報告その他で随時いろいろな情報をとっておりますので、それらに基づきまして、現時点での成果あるいは課題と思われますものを御報告させていただきたいと思います。  まず、全体といたしますと、このスクールカウンセラー事業は、各学校におきまして大変高い評価を得ているということでございます。  成果といたしまして幾つかございますが、一つはまず、教師たちにとりまして、スクールカウンセラーの指導を受けるということで、子供たちのさまざまな悩みに応ずるに当たりまして、これまでに比べましてはるかに安心感あるいは自信を持って接することができる、つまり教師たちにとっての成果がございます。それから、保護者につきましてでございますが、保護者たちもスクールカウンセラーの指導を受けることがあるわけでございますが、自分の子供の、例えば登校拒否といったものに対します見方あるいは理解というものにつきましても、これまでと違った慈養を深めた、精神的にも余裕を持って対処できるようになったということの報告を得ております。それから、子供たち自身につきましても、人間関係のつまずき等から登校拒否となった子供たちがカウンセラーとの相談を通して登校が可能となる、あるいは進級あるいは卒業という形でその成果が上がったというような報告も受けております。  ただ一方、課題も幾つか承知をいたしておるところでございます。  まず一つは、この事業が一週間に二回、一回当たり四時間というそういう積算で行っていただいておるということで、どうしても時間的な制約から来る不十分さというようなものをスクールカウンセラーの方々が感じていることが一つでございます。それから、二年間の研究期間ということでございますので、二年間の研究期間が終わった後さてどうなるのかといった不安も私どもの方で聞いております。  それから、学校の先生とスクールカウンセラーの方々との間で、子供たちにつきましてのさまざまな情報が入るわけでございますけれども、そういった情報をどのような形で交換し合っていくのかといったこと、あるいはこれまで各学校の先生方が担当しておりましたカウンセラー部分をスクールカウンセラーの方が担当するということで、先生方と、それからスクールカウンセラーの方々との役割分担あるいは連携といったものについてもまだふなれな部分がある、こういった点が今後の課題という形で私ども承知しているところでございます。  まだいろいろ細かいことはございますが、大づかみに申しますと以上のような成果あるいは課題というものを我々は承知しているところでございます。
  19. 菅川健二

    ○菅川健二君 それなりの成果があったことは何よりだと思うわけでございます。  ただ、来年度の計画というのは、非常に予算的、派遣校数とも倍々ゲームにふえておるということはいいことだと思うわけでございますが、いずれにいたしましても、スクールカウンセラーというのは臨床心理士の資格などいろいろ条件があるわけでございまして、地元の広島県等におきましても、この対象となる人材が非常に少なくて、それを適切な学校に当てはめるのが非常に困難になりつつあるということも聞いておるわけでございます。  したがいまして、人材確保ということがこれから非常に大きな問題になるんじゃないかと思うわけでございます。それに対する対策はお考えでございますか。
  20. 辻村哲夫

    政府委員(辻村哲夫君) スクールカウンセラーの確保の問題でございますけれども、現在、平成八年度の時点では五百五十三校にスクールカウンセラーが配置されておりますが、その九割が臨床心理士の資格を得た方々、その他の学校に精神科医あるいは大学の教官等で子供の心の問題に対しまして高度の知識、技術を持った方々が配置されているというような状況でございます。  やはり、専門家の方々を学校にお迎えしたいということで、この人材確保は大変重要な課題でございますが、当面、平成九年度、これは現在の五百五十三校から一千校余に、ほぼ倍増するわけでございますが、これへの対応につきましては、現在、臨床心理士の方々が全国で五千名ほどございます。ただ、地域的な偏在等がございますので、地域によってはいろいろと御工夫いただかなければならない点もあろうかと思いますけれども、全体といたしますと、五千名の方々、あるいはその他先ほど申し上げました精神科医の方々、その他の専門家の方々に対応していただくという形で確保できるのではないかというふうに私どもは見込んでいるところでございます。
  21. 菅川健二

    ○菅川健二君 ぜひ、将来的にもどんどんふえていくんじゃないかと思うわけでございまして、人材の養成確保につきましては特に意を用いていただきたいと思います。  それから、ただいま御指摘がございましたけれども、二年間の委嘱期間が終わりますとその後どうなるんだというようなことも、いろいろその該当校等では問題になっているわけでございまして、やはりこの辺で次の年度に向けて将来的にどう定着していくのか、あるいはどう伸ばしていくのかということが大変重要になってこようかと思うわけでございます。この辺で文部大臣の将来に向けての意気込みのほどをお聞かせいただきたいと思います。
  22. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) スクールカウンセラーの成果ということについては、先ほど初中局長からお話があったように、学校の教師あるいは保護者、子供たち、それぞれに成果をもたらしたという報告がありました。ただ、今後の問題点として、今御指摘のような人材確保とか、二年の後のフォローアップをどうするか、こういった問題について私どもも真剣に考えなきゃいけないと思っております。  私は、確かにこのスクールカウンセラーは倍々ゲームでふえてまいったわけですけれども、しかし、しょせん、例えば中学校は全国に公立だけでも一万五百校ありますし、高等学校も四千百、小学校二万四千と、こういうことですから、仮に現在、今のお話ですと日本全体でも臨床心理士は五千人しかいないということで、精神科医の人を加えても本当に全校に配置するだけのマンパワーがいるかどうかというのは非常に心もとないと思います。したがって私は、スクールカウンセラーを今実験的に導入しておりますけれども、これからのフォローアップをどうするかというのは、単にスクールカウンセラーを学校に全部配置をするという、そういう配置をふやしていくということもさることながら、そのスクールカウンセラーに頼らない何か仕組みができないものか。  例えば、イギリスなどでやっておりますのは、中学校の三年生の中から数人相談をする人を選んで、そして二年生とか一年生とか、大体年代の近い人に相談するというのが非常にやりやすいということで、そういう上級生を一種のカウンセラーに選んで自主的にやって成果を上げているというようなことも聞いておりますし、これからいじめとか登校拒否を減らしていく、そして子供たちの対応をどうしていくかということについては種々検討するべき点があると思っております。今までの体験とか知識を踏まえて、今後のこのスクールカウンセラーの充実については、これからも十分工夫、研究をしていきたいと思っております。
  23. 菅川健二

    ○菅川健二君 ひとつ、より充実強化する方向で考えていただきたいと思います。  そこで、少しいじめ対策にも関連するわけでございますが、小学校、中学校の通学区域についての弾力的な運用についてお聞きいたしたいと思うわけでございます。  これは、いじめ対策はもちろんのことでございますけれども、昨年末に行政改革委員会の意見でも、いわゆる学校選択の弾力化という規制緩和の面からも強く指摘がされておるわけでございまして、文部省局長通知もこの一月に出されておるわけでございます。そこで、この通学区域の弾力化につきまして、もう既に四月の入学の皆さん方は通学区域が決定されておると思うわけでございますが、文部省局長通知以後どのような動きがあったのか、具体的な動きがあればお示しいただきたいと思います。
  24. 辻村哲夫

    政府委員(辻村哲夫君) ただいま先生御指摘のように、私ども通学区域制度の弾力化の通知は本年の一月二十七日に発出いたしました。先ほどの委員会の勧告を受けてのことでございます。  御案内のとおり、四月の入学時期を迎えまして、各市町村の教育委員会ではその時期はちょうど就学区の決定、就学すべき学校の指定という作業が並行して行われているときでございまして、この通知をどのように生かせるかというのはなかなか難しいことであったわけでございます。したがいまして、私ども悉皆のような形でその通知後の実情を把握しているわけではございませんが、幾つかのこの通知の趣旨を踏まえました取り組みも報告を受けているところでございます。  例えば、ある市の例でございますけれども、これまでの学校指定の扱いにつきましてより柔軟な対応をするということを保護者に通知いたしまして、通知をされた後のさまざまな事情について率直に保護者から教育委員会の方に相談してほしいというような周知をした例がございますし、また、特認校と言っておるわけでございますけれども、市町村内のどこからも就学を認める学校、そういう制度がございますが、そういう特認校の制度を新たに設定したというような市町村もあるということを報告を受けております。このように、全体的な統計的な把握ではございませんが、個別にこの通知の趣旨を生かした形での取り組みが進められている、そういう報告は私ども承知をいたしているところでございます。
  25. 菅川健二

    ○菅川健二君 今の教育委員会指導体制からいいますと、なかなかこの通学区域の弾力化というのは難しい問題をいろいろはらんでおるのではないかと思うわけでございますが、しかしながら、この難しい問題もやはり一歩ずつ前進しなければ小中学校の活性化というのは成り立たないのではないかと思うわけでございます。そういった面で、将来的に調整区域の大幅な拡大の問題とか、それから保護者の不服申し立てにつきまして、やはり手続を明確化する等の工夫が要るのではないかと思うわけでございます。いずれにしても、具体的な事例が地域で出ておるようでございますので、そういった事例を全国に早くお知らせをして、それぞれの地教委がそれに向かってより前進するように御努力していただきたいと思います。  次に、教育長の任命承認制の廃止につきましては、先般本岡委員からの御質問がございまして、長年の懸案が解決される見通しが立ったということは、私も教育長をやっておった者としては大変ありがたいと思っておるわけでございます。ただ、いわゆる文部省との足かせが外れるということだけでございまして、やはりこれから教育長の人材を確保すると。都道府県ないし市町村の教育体制というのは、教育委員会、教育委員がおってそれから教育長がおるわけでございますけれども、実質上の最高の責任者は教育長ということになるわけでございます。したがいまして、教育長の地位、待遇について十分な配慮がなされるべきじゃないかと思うわけでございます。  例えば、特別職にして任期制を導入して議会の同意大事にかからしめる等の方策も一つの方策ではないかと思うわけでございます。いずれにいたしましても、教育長の地位、待遇につきましての配慮あり方について御意見があれば伺いたいと思います。
  26. 小林敬治

    政府委員(小林敬治君) ただいまの教育長の承認制度廃止後の任命の仕方と申しますか、あるいはそのあるべき位置づけといった点についての御質問でございますが、教育長を議会同意を必要とする職に位置づけて特別職化を図ること等につきましては、その処遇の改善あるいは地位の充実強化が期待できると考えております。議会同意にかからしめることによって、その選任が慎重な配慮のもとに行われる可能性が大であるというふうにも考えているところでございます。それから、任期制につきましても、計画的な職務執行が可能となりまして、教育長大事について計画性を持たせることもできるというふうな考え方でおるわけでございます。  私どもといたしましては、地域に根差した主体的な教育行政を推進するために、教育委員会において中核的な役割を果たします教育長に適材を得るということは極めて重要であるというふうに認識いたしておりまして、地方教育行政のあり方に関する会議におきまして、御指摘のような特別職化あるいは任期制の問題も含めまして教育長にすぐれた人材を得る方策について検討していくことといたしておる次第でございます。
  27. 菅川健二

    ○菅川健二君 ぜひひとつ早目に御検討いただきたいと思います。  次に、中高一貫教育についてお尋ねいたしたいと思います。  新進党が先鞭をつけた事柄でございますけれども、最近急速に世の背景といたしまして、文部省も前向きに対応していただくことになって大変喜ばしいわけでございます。そこで、中高一貫教育の必要性につきましてはほぼ一定の方向に収れんしつつあると思うわけでございますが、ただ、一度に全校に導入するのか、あるいは一部試験的に導入するのか、なおいろいろな考え方があるわけでございます。先般予算委員会で石田委員から各般にわたって質問があったわけでございますが、その後中教審におきましてもこの六月に結論を出すやに伺っておるわけでございまして、文部省取り組み状況につきまして改めてお聞きいたしたいと思います。
  28. 富岡賢治

    政府委員(富岡賢治君) 御指摘の中高一貫教育でございますが、子供の個性、能力をゆとりある教育の中ではぐくむということを目指しますとともに、学校制度の複線化構造を進めるという観点から、この導入につきまして現在中央教育審議会で御検討いただいているわけでございます。  具体的には、中央教育審議会におきまして、特に受験競争の低年齢化を招かないということを特に留意いたしながら、中高一貫教育を導入する場合の入学者の定め方とかあるいは実施形態あるいは教育内容などにつきまして、御指摘のように六月を目途に結論を出すべく精力的に御審議いただいているところでございます。現状はそういうことでございます。
  29. 菅川健二

    ○菅川健二君 先般の朝日新聞の中高一貫教育の公立への導入についての都道府県の教育長等に対するアンケート調査があったわけでございますが、その結果は、六割が導入に慎重であるという結果が出ておるわけでございます。中高一貫教育の位置づけが明確でない現在、当然の結果ではございますけれども、やはりこのことが受験競争の過熱を招くのではないかという心配が一番大きいのではないかと思うわけでございます。  したがいまして、私は中高一貫教育を導入する場合、中途半端な導入をすることが一番危険であろうかと思うわけでございます。と申しますのは、例えば都道府県に一校だけ設けるとか、あるいはごく限られた地域に設置するということになりますと、やはりそういうおそれが出てくるわけでございます。私は、やはり生徒の自主的、主体的な選択を可能にすることが必要でございまして、そのためには各通学区に中高一貫校が選択できるようにその導入に配慮をすべきであろうかと思うわけでございますが、この点についてのお考えをお聞きいたしたいと思います。
  30. 辻村哲夫

    政府委員(辻村哲夫君) 中高一貫教育のあり方につきましては、ただいま中央教育審議会で真剣な議論がなされているところでございまして、まだこれから議論がさらに続くわけでございます。受験競争の低年齢化を招かないということは大変重要な視点だということで中教審も議論をされているというように承知いたしているわけでございますが、ただいまの具体的にどのような形で設置するかということにつきましては、したがってその一環としてまだ議論が続いているわけでございます。現時点での中教審の議論は、それぞれの置かれた地域の実情、公私立間の関係等を含めましてさまざまな実情が違うわけでございますので、それぞれの設置者の判断にゆだねるという形を基本とした議論が行われているというふうに私は承知をいたしております。  いずれにいたしましても、文部省といたしましては、今議論が続いているわけでございますので、この審議会の答申を踏まえまして適切に対処していきたいというふうに考えております。
  31. 菅川健二

    ○菅川健二君 中高一貫教育の一番の目的がゆとりある教育を実践するということではないかと思うわけでございます。その趣旨が生かされるようにぜひお願いいたしたいと思うわけでございます。文部大臣のひとつ決意のほどをお聞かせいただきたいと思います。
  32. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) なぜ中高一貫教育を導入するかというその趣旨については、今総務審議官からお話があり、また具体的な導入方法とか実施の仕方については、初中局長からお答えしたとおりであります。  今、菅川委員指摘のように、一県に一校とかそういうふうに機械的に割り振っても、やっぱりそこの県の教育委員会なり当事者が熱意を持ってやろうということでなければ、私は実らないと思うんですね。したがって、できるだけその県の自主性を尊重し、その県の熱意とか工夫とかそういうことの期待できるところを重点的にやるというのが一つの考え方じゃないかなと思っております。  いずれにしても、具体的なそういった導入方法とか実施形態については中教審で鋭意協議をしていただいておりますので、幸い公立中高の実績として五ケ瀬中学高校がことし初の卒業生を出すわけでありますし、そういった過去の経験も踏まえまして、中教審の審議等も参考にしながら文部省としての対応は考えたい、こう考えております。
  33. 菅川健二

    ○菅川健二君 ただいま都道府県の自主性に任せるということがございましたけれども、もとより地方の自主性を尊重するということは重要ではございますが、やはりこういうものにつきましては制度の導入でございますので、国としてしっかりしたガイドラインはぜひとも持っていただきたいと思うわけでございます。  次に移らせていただきます。  昨今、予算委員会等でも大変議論になっておるわけでございますが、財政構造改革におきまして、これからあらゆる分野について聖域なしに検討するんだということで、さきの財政構造改革会議でも五原則が示されました。文教行政も当然その対象になって、具体的な検討事項が入れられておるわけでございます。しかしながら、財政再建の名のもとに教育水準の低下を招いてはならないと思うわけでございます。  文部大臣の文教行政に対する財政構造改革五原則への基本的な対応についてお聞きいたしたいと思います。
  34. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 教育というのは、ほかの行政と違ってすぐ効果が上がるという性質のものではありませんで、かなりロングレンジで物を考えていかないといけない分野だと思います。社会のすべての基盤をなすものでありますから、ただ財政が苦しいからといって短期的な視点からこれを切り込むというようなことで果たして将来の日本は大丈夫だろうかと、こういう懸念を持つのは、私のみならずすべての人の共通の考えだと思います。  しかし、そうはいっても今の危機的な財政状況の中で、財政構造改革五原則というものができまして、特に、聖域なしということで今まで比較的言及されなかった高等教育、義務教育、私学助成、これについても検討すべきだと、こういうお話がありました。私どもももちろん聖域なしという政府の方針に沿って今省内で積極的かつ慎重に検討を進めておりますが、ただ冒頭申し上げたように、教育というものがやっぱり日本の将来の人材をつくる、あるいは日本の将来の研究や学術というものを担当する、あるいは文化、スポーツと、こういう非常に基幹的な国を支える分野を担当するだけに、私はそう単純に財政論という観点からだけ切り込むというのはいかがかと、こういう懸念は常に申し上げているところでありまして、今後そういったことを考えながら対処していきたいと思っております。
  35. 菅川健二

    ○菅川健二君 御指摘のとおりひとつよろしくお願いいたしたいと思います。  ただ、私も今大臣が言われましたように、教育水準というものはどうしても後退させてはならないと思うわけでございますが、しかしながら、税金が果たして効率的に文教行政に使われておるかどうか、より効率的な使い方があるんではないかという点におきましては、やはり高等教育、初中教育ともどもいろいろと再検討すべき余地があるんではないかと思うわけでございまして、その辺は弾力的に対応することができるんではないかと思うわけでございます。  最後になりますけれども、第十六期の中央教育審議会が四月の下旬に発足する予定と聞いておるわけでございまして、その委員の一人に前の日教組の委員長が入られるんじゃないかということを仄聞いたしておるわけでございます。長年にわたりまして文部省と日教組の代理戦争の現地の指揮官として任務を負わされました者としては、こちらにもいろいろ現地の指揮官が何人かおられるようでございますけれども、文部省と日教組がようやく雪解けを迎えたのかなということでは基本的には賛意を表したいと思っているわけでございます。  ただ、地域によりましては、主任制度や主任手当の拠出の問題、研修問題、学習指導要領の問題等々、現在でもこれまでの戦争の後遺症が教育現場に混乱や暗い影を残しておるわけでございます。もちろん、現場の教育問題は現場で解決することが基本でございますが、国の制度の導入に伴っていろいろな問題が発生しておるわけでございまして、それはやはり中央レベルにおいても当事者間で解決の努力をしてもらうことが重要ではないかと思うわけでございます。  文部大臣、これらの問題につきまして日教組とフランクに話して、実効ある、地域が活性化するようなひとつ話し合いを詰めていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  36. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 昨年の十二月にいろいろな団体から予算陳情を受けた際に、日教組の委員長も私の部屋に参りまして、そのときに私は、教育界の対立を解こうとする新しい路線を日教組がとり始めたということは評価したい、そしてそうした新しい運動方針が各県の段階でも定着するようにお願いをしたいということを要請したところであります。  従来から、今言われた指導要領とか、国旗・国歌の扱いとかそういうものについては、各学校において適切に対応してくれということで各教育委員会指導してきたところですが、今後とも一層そうした指導を続けていきたいと思っております。  私は、本質的にやっぱり教育改革を進める一番の最前線は教職員でありますので、教職員の方々が本気で教育改革に取り組もう、こういうことが一番の大事な点であろうと思いますので、今後とも私は、中教審のあり方についてもできるだけ幅広く各界各層から意見を出していただいて、そうした意見に謙虚に耳を傾けて、教育改革の輪が広がるように努めていきたいと思っております。
  37. 菅川健二

    ○菅川健二君 未来志向はいいわけでございますけれども、過去の問題、引きずっておる問題もきちっとひとつよく整理していただきたいと思うわけでございます。  以上でございます。ありがとうございました。
  38. 林久美子

    ○林久美子君 平成会の林久美子こと但馬久美でございます。  きょうは、文化・生涯学習に関することについて細かく質問させていただきたいと思いますので、簡潔にお願いしたいと思います。  まず初めに、ことしに入ってO157で死者を一名出しましたが、この病原菌のことに関して、厚生省とそしてまた文部省に一問ずつ質問させていただきたいと思います。  去年の二の舞になりたくないというのはもう皆様の思いでありますけれども、このO157、病原性大腸菌にことしはどういう対策をとっていらっしゃるか。また、今回亡くなりましたこの一名について、その方がどういう方であって、また感染原因がどういう経路をとっているのかちょっとお聞かせ願えますでしょうか。
  39. 堺宣道

    説明員(堺宣道君) お答えいたします。  まず、亡くなられた方についてでございますが、神奈川県の横浜市、六歳の女性というふうに聞いております。  それで、まだ原因はどういう原因で、それはO157であるということは非常に疑わしいということでございますが、それではそのO157がどこから来たのかということはまだわかっておりません。現在調査中でございます。  それで、昨年もいろいろ食材などから検出はできたんですが、去年の例でもそれではどこから食材に汚染したのかということも不明でございました。そこで、発生時の原因究明をさらに確実に行うために、食中毒調査マニュアルを作成いたしました。また、学校給食等大量調理施設に対して、新しい衛生管理要領に基づく衛生指導の徹底でございますとかまた食中毒一斉取り締まり事業の実施でございますとか、そういうこともやっていきたいというふうに思っておりますし、また迅速かつ確実な検査法の研究開発ということもやっていくということを決めております。  また、ことしに入りまして、一月、二月は発生いたしておりましたが数は少のうございました。ただ、三月中旬に入りまして、散発事例でございますが発生をしております。先ほど御指摘の亡くなられた方は、その三月に発生した事例の中のお一人でございます。ちなみに三月中では、昨日の八時現在でございますが、全国で有症者数が六十一、無症者数が二十三という数でございます。  横浜市、神奈川県等に対しましてしっかり調査をするようにということを言っておりますが、また、散発事例になりますとどうしても家庭でのことも注意をより一層しなくてはいけないというふうに考えておりまして、家庭調理のマニュアルというものもつくっていきたいというふうに考えておるところでございます。  以上でございます。
  40. 林久美子

    ○林久美子君 ぜひはっきりと本当に、マスコミにもきちっとした報道をしていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  それでは、同じ点についてでございますけれども、今度は文部省にお尋ねいたします。  今回、学校給食におけるO157の対策は盤石であるかということと、そしてまた、これから夏季休暇になってスポーツ合宿などがありますので、そういう意味でも文部省としてはどういうような取り組みをされていますか、よろしくお願いします。
  41. 佐々木正峰

    政府委員佐々木正峰君) O157等による食中毒事故の再発を防止するため、文部省におきましては専門家等による調査研究協力者会議を設け、実際に食中毒が起こった事例を参考にしながら、現地調査も行って、総合的に検討を行ってきたところでございます。昨年十二月に、今後の対応策として学校給食施設設備の整備、給食関係者の意識改革、具体の調現実施上の改善工夫の必要性など改めて指摘がなされたところでございます。  昨年、O157による事故を踏まえまして、七月以来さまざまな施策を講じてまいったわけでございますが、昨年八月以降は新たに設定をいたしました日常点検の励行などその徹底を図って今日に至っておるわけでございますが、協力者会議の指摘も踏まえまして、改めて会議あるいは通知などにより施設設備の改善、あるいは給食関係者の意識改革など周知徹底を図り、保健所等関係機関と緊密な連携をとりながら、食中毒防止に万全を期すよう指導しておるところでございます。  また、平成九年度予算でございますが、衛生管理を強化する、そういう観点に立ちまして、給食施設のドライシステム化など施設設備面の改善充実を図るとともに、学校栄養職員、学校給食調理員等に対する研修のための経費を計上するなど所要の措置を講じたところでございまして、今後とも都道府県、市町村教育委員会等と連携をしながら、厚生省とも緊密な連携を図って、食中毒防止のため全力を傾けてまいりたいと考えておるところでございます。
  42. 林久美子

    ○林久美子君 ぜひよろしくお願いいたします。  それでは、文部大臣にお伺いいたします。  去る二月二十日の地方分権推進委員会第一次勧告指摘事項の前倒し措置についてです。  内閣官房から二十二項目が発表されました。この中で文部省関係は三項目ありまして、一つは幼児教育、それから保育関係における施設の共用化、また二つ目は義務教育の国庫負担金に関する事務手続の簡素合理化について、そしてまた三つ目が文化・生涯学習の所管組織についてであります。  この三項目ですけれども、その中で文化・生涯学習の所管組織については首長傘下にするか、あるいは教育委員会の所属にするかというもので、果たしてこれが地方分権の名に匹敵するのかというのが率直な感想です。二の義務教育の国庫負担金の事務手続の簡素合理化に対しても同じ思いがするんですけれども、この点に関して文部大臣の御所見をお伺いいたします。
  43. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 今御指摘の三点の指摘を地方分権推進委員会第一次勧告で出されたところであります。  これは、まずこうした事業は地方公共団体の主体的な判断によるところが多々ございます。したがって、文化・生涯学習につきましても、これは地方公共団体の首長の部局と教育委員会というものがあるわけですが、それぞれがそれぞれの機能を発揮しながら連携協力することが一層求められている、教育委員会教育委員会というだけで狭く考えるんじゃなくて、その地方自治体全体の主体的な判断によって一般部局と教育委員会の部局がお互いに協力をして有効な生涯学習なり文化の振興を図れ、こういう趣旨であろうと思っておりますので、私どもその趣旨の徹底を図っていきたいと思っております。  それから、義務教育費国庫負担金、これも大変な事務の負担があるわけでありまして、これも地方の事務負担の軽減を図るという観点から、平成九年度からその事務手続を大幅に簡素合理化しようとしているところであります。
  44. 林久美子

    ○林久美子君 それでは、その中での青年の家や少年の家が、ある県においてでありますけれども、行革の一環としてリストラの対象になっております。これは廃止の方向で進められて、市町村へ移管されようとしております。この担当者にお話を聞きますと、当初の使命が達成されたので、県としては廃止の方向で平成十年までに処分していきたいということでした。  文部省では、この青年の家や少年の家をどういう位置づけで見ておられるのか、また行革の一環でリストラの対象にしてもいい性格のものなのかどうか、このことをお聞かせください。
  45. 草原克豪

    政府委員(草原克豪君) 公立の青少年教育施設でございますけれども、これは青少年を自然に親しませて、自然の中での集団宿泊生活を通じて情操や社会性を豊かにして、あるいは心身を鍛錬し、そして健全な青少年育成を図るということを目的とするものでありまして、極めて地域に密着した施設として設置されているものでございます。昨年の中教審の答申におきましても、生きる力をはぐくむということの重要性が指摘されておりますけれども、この生きる力というのもやはり地域におけるさまざまな体験を通じて初めて子供の中に根づいていくものでありまして、そういう主体的な学習や体験活動の場としてこういった青少年教育施設の重要性が指摘されているところでございます。  したがって、私どもは、こういう機能を持っている青少年教育施設というのは地域社会における教育の重要な一翼を担っているものというふうに考えております。
  46. 林久美子

    ○林久美子君 そういう中で、もし仮に廃止後ほかの機能に衣がえしていくという場合には、助成された施設であれば、その自治体に対してどういうことを要求されますでしょうか。
  47. 草原克豪

    政府委員(草原克豪君) 文部省では、公立の青年の家あるいは少年自然の家の設置促進を図るために、これまで建設費の一部について国庫補助を行ってきたところでございますけれども、この国庫補助を受けて建設された施設を廃止したりする場合には、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律の第二十二条に基づいて所要の手続をとる必要がございます。
  48. 林久美子

    ○林久美子君 青少年施設としての機能を保障されて移管された事例を見ても、運営委員会が廃止されたり、青少年施設教育委員会の事務局が設置されるなど、青少年施設としての機能が大幅に低下しているんです。  事例からいって、移管するにしても慎重な対応が要求されると思いますが、文部省の御意見をお聞かせください。
  49. 草原克豪

    政府委員(草原克豪君) 青少年施設の運営協議会についてのお尋ねでございますが、国庫補助金が交付される場合には、こういった青少年施設に対して運営協議会を設けるように指導しておりますけれども、これは必ずしも設置しなければならないというものではございませんで、最終的にはそれぞれの地域の実情に応じて設置者に判断がゆだねられているものでございます。  それから、その施設の中に例えば教育委員会の事務所を設けるといったような例があることも承知しておりますが、それによって必ずしも当初の青少年教育の目的が損なわれるというふうには考えておりません。いわば、これは目的外使用ということに当たりますけれども、国庫補助金を受ける場合の施設の目的外使用についても、従来からその地域の公共施設の実態とかあるいは住民の利便性とか管理の効率性、こういった点を考慮いたしまして、例えば教育委員会や役場の支所、出張所、こういった事務室等として目的外使用する場合においても、それまでに行ってきた青少年教育活動を確保することができて、そして地域における青少年教育に係る研修活動の機能低下を招かないものについては、この財産処分を承認するという方針を維持してきております。
  50. 林久美子

    ○林久美子君 それでは、今回の平成七年度及び平成八年度における助成を受けている青年の家や少年の家の処分申請について実態を明らかにしていただきたいと思います。  一点は耐用年数の経過したもの、二点目は耐用年数の未経過のもので補助金を没収されたもの、また三点目は未申請で用途変更したもの。結局、今、助成金を受けた施設文部省に申請手続もしないで勝手に用途変更したものがあると伺っております。その点についてお聞かせください。
  51. 草原克豪

    政府委員(草原克豪君) 財産処分の承認を行った施設としては、昭和六十年度以降現在までの間に三十一カ所ございます。このうち二十九カ所については無償で処分を行っております。その中で耐用年数が経過した施設が二つございます。それから、耐用年数が経過していないもので補助金の返納をさせて処分を承認した施設が二つございます。  それから、文部省に処分の申請をせずに用途を変更した施設についてお尋ねでございますけれども、私どもはそういった施設はないものというふうに承知しております。
  52. 林久美子

    ○林久美子君 私は、二件あると伺っておりますけれども、どうなっているんでしょうか。
  53. 草原克豪

    政府委員(草原克豪君) 文部省に未申請で、地方公共団体が例えば条例により用途を変更しているというような例は私どもは承知しておりません。
  54. 林久美子

    ○林久美子君 では、これは後でもう一遍きちっと伺いますけれども、結局、三十一件そうやって処分を行った施設の内訳があるわけなんです。私は、ぜひ文部省はしっかりとこれを見ていっていただきたいということを強く要望いたします。  それでは、大臣にお伺いいたします。  文化・生涯学習の所管組織の自主的判断についてでありますけれども、首長傘下にするか、それとも教育委員会の所属にするかという問題は微妙な問題を含んでいると思います。首長のもとに青年の家や少年の家を置けば青少年対策行政として位置づけられて、また教育委員会に所属すれば青少年教育の一環として位置づけられると思います。  このたびの青年の家や少年の家を廃止、移管しようとしている自治体は、本来教育委員会の直属として充実していかなければならないにもかかわらず、県民部に委託しているなど特異なケースがあり、これがやがて利用率が低下したときに当初の使命が達成されないという理由で簡単に廃止されようとしております。  もっと教育委員会がしっかり力を入れて、青年の家や少年の家の教育機関としての位置づけを明確にし、そしてまた、青少年社会教育やまた野外教育の充実を図るべきであると思います。この所管のあいまいさは行革でもいとも簡単に廃止される危険があると思いますが、それとも文部省の意図の背後にそういうものがあるのかどうか、お伺いいたします。
  55. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 青少年施設の教育的意義というものは、生涯学習局長から今お話ししたとおりでございます。  私は、これから国も地方も財政が非常に厳しくなっていく中で、従来のように箱物をどんどん知事部局もあるいは教育委員会もつくっていくのは非常に困難な時代になってきたと思います。したがって、これからのそういった施設をその自治体にとってどう有効に使っていくかということで、それぞれの自治体の主体的判断というものを私たちは尊重しなきゃいけないと思っております。  しかし、だからといって、今御懸念のように本来教育施設として、あるいは青少年施設として利用されるべきものがほとんど教育目的に使われないで一般部局のいろんなイベントにばかり使われるということがあってはならないわけで、その点は、今後私たちは地方のそういった部局に対しましても、こういう施設の教育的な役割というものを十分認識していただくということと同時に、先ほどから少しお話が出ておりますように、その施設の中にその地域の教育連絡協議会とかそういう教育といろいろかかわりのある事務部門を設けるとか、あるいはそこで一定の教育の事業に使うとか、そういう一つの担保が確保されるような形で、仮に教育委員会の所属あるいは文部省所管施設が一般部局に移管される場合にもそういう担保をできるだけ確保する、こういう視点も大事だと思っております。  いずれにしても、私は、それぞれの地方自治体がこういった施設本当青少年の教育のために活用されることを十分徹底していくように努めたいと思っております。
  56. 林久美子

    ○林久美子君 ぜひそのようにお願いいたします。  今現在、いじめや登校拒否とか家庭内暴力等の問題のみならず、薬物乱用とか性非行などの青少年の問題の社会問題が指摘されております。さらにまた、少子化問題、環境問題など今日的また将来的な青少年の問題が大きく浮上しておりますけれども、知識の詰め込みだけではあらゆる問題は解決いたしません。  そこで、生きる力、生きる知恵を養うためにも学校の授業以外の野外教育は断じて欠かせないと思います。また、そのためにも野外教育のプログラム開発、あるいはまた指導者育成には不断の努力が必要と思いますけれども、先ほどからたびたび申しておりますが、文部省は野外教育の拠点施設を廃止しようとしている自治体にはどういうような対応をされますでしょうか。
  57. 草原克豪

    政府委員(草原克豪君) 社会教育調査によりますと、平成五年現在で青少年教育施設は千二百二十五ございます。これは、その三年前の平成二年と比べますと全体で七十一施設ふえております。六・二%増加しております。その中で、特にふえているのが少年自然の家あるいは青少年会館とか野外教育センター等でございます。  私どもとしては、先生御指摘のように、やはりこういう青少年教育施設というのは青少年の教育にとって極めて重要な役割を果たしているというふうに考えておりますし、またそういう考えを各自治体、教育委員会にいろいろな機会を通じてお伝えをしているところでございます。  それから、来年度の予算案におきましても、例えば全国の青少年教育施設青少年の野外教室を実施するために必要な経費を盛り込んでおりますし、また国立の青少年教育施設においては、公立の施設の職員を対象とする研修とか、あるいは各種の情報の収集、提供を行うなど、そういう形を通じて公立施設事業運営が充実したものとなるよう支援に努めているところでございます。
  58. 林久美子

    ○林久美子君 そうすると、九年度の概算要求から公立少年の家に対する助成が外されていますけれども、その理由は。
  59. 草原克豪

    政府委員(草原克豪君) 公立の青少年教育施設に対する助成でございますが、この制度が始まって、この制度のもとで全国的に公立の青少年施設整備が進んでまいりました。現状は先ほど申し上げたとおり千二百二十五ですが、そのうち青年の家が四百十カ所、少年自然の家は二百九十四カ所に設置されております。  そして、近年はこういう青少年教育施設を含む公立の社会教育施設整備する際には、各地方公共団体でさまざまな地方債措置が講じられるようにもなっていますし、そしてこの地方債を活用する方が国庫補助金を受け入れるよりも有利な場合もあります。したがって、補助金を受けずに地方公共団体がみずから独自にこういった青少年教育施設整備するという傾向が強くなってきております。さらに、この公立の社会教育施設整備費補助金については、地方六団体からもこれを廃止して一般財源化すべきであるという意見が地方分権推進委員会にも提出されている、こういう状況もございます。  したがって、文部省としては、こういった背景を踏まえ、全国的な施設整備状況、それから、ただいま申し上げました地方公共団体における起債措置の活用、地方六団体からの意見等を踏まえまして、このたび公立の社会教育施設整備に対する国庫補助金を廃止するということにしたものでございます。
  60. 林久美子

    ○林久美子君 地方公共団体にその財源を渡して、そして独自の判断で自由に使えるような体制がとれれば、それはもう本当にそれにこしたことはないと思います。  それでは、最後に文部大臣にお伺いいたします。  青年の家や少年の家で行う各種プログラムは、学校の授業から見ても補助的な観念が強いですけれども、本来、学校の授業と混然一体のものとして考えなければならないのではないかと思います。青少年時代における受験戦争のためということで、机にばかりかじりついて、そしてまた頭ががちがちではなくて、この野外教育とか社会教育とか勤労体験とか、そしてまた今ボランティアがありますけれども、社会奉仕などが排除された青年教育であってはならないと思うんです。その点、大臣はどのようにお考えでありますか。
  61. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) これから学校週五日制というものが普及していく中で、しかも少子化の中で子供たち学校の場での勉強のみならず、そういった週末を利用した社会体験とか、自然観察とか、ボランティア活動とか、親子の触れ合いとか、そういう場がますます重要になってくると思います。いずれにしても、子供の教育というのは学校教育の場だけがすべてではありませんで、家庭教育並びに社会教育というもの、この三者の連携というものが不可欠であります。  したがって、ますますこれからそういった学校外の社会教育活動、家庭教育というものの重要性というものが高まってくると思いますので、そういう観点に立って、今後ともこういった社会教育施設が有効に使われるように、我々としても地方に対しまして要請をし、また文部省としても努力をしていきたいと考えております。
  62. 林久美子

    ○林久美子君 ぜひそのように本当にお願いいたします。どうもありがとうございました。
  63. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 国際化あるいは国際理解というのは、我が国のそして文部行政にとって二十一世紀に向かっての大きな課題であると存じます。今回は留学生問題を取り上げたいと存じます。  まず、我が国の外国人留学生の受け入れの状況を他の主要国との国際比較によって眺めてみたいと存じますので、それぞれの国の留学生の数、そして高等教育機関在学者に占める留学生の割合を示していただきたいと存じます。
  64. 林田英樹

    政府委員(林田英樹君) まず、我が国の留学生の受け入れ状況でございますけれども、現在、御承知のとおり留学生受け入れ十万人計画ということで計画的に増員を図ってまいっておるわけでございますけれども、平成八年五月一日現在の調査によりますと五万二千九百二十一人ということでございます。この数は、それまでの間は各年着実に数が伸びてきておったわけでございますけれども、平成八年度は初めて対前年度減少ということでございまして、約九百入減ではございますけれども、五万二千九百二十一名というのが現状でございます。  それから、諸外国というお話がございましたけれども、比較のしようがいろいろ難しゅうございますのと、それから調査の新しいデータのない国もございますので、それらを御了解いただきたいと思うわけでございますが、比較のしょうはいろいろございますけれども、例えば我が国の高等教育機関在学者数に対します留学生受け入れ数の割合を見てみますと、全高等教育機関の在学者に対します留学生受け入れの割合は一・五一%ということでございます。  これを他の先進国で見てみますと、アメリカの場合五・五四%、フランスの場合六・七%、イギリスの場合九・九八%というようになっておりまして、これらの国におきましては我が国よりも高い割合となっているというような状況でございます。
  65. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 数もというふうに申し上げたのでございますけれども、数をお答えいただけなかったのですが。
  66. 林田英樹

    政府委員(林田英樹君) 失礼いたしました。  留学生の受け入れの数でございますが、アメリカの場合、九四年の数字でございますけれども、四十五万二千六百三十五人でございます。イギリスにつきましては、九二年の数字でございますけれども、九万五千五百九十四人となっております。ドイツにつきましては、九一年の数字でございますが、十一万六千四百七十四名でございます。フランスの場合は、九三年の数字でございますが、十三万九千五百六十二というような数字になっております。
  67. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今お答えいただきましたように、数の上ではアメリカの八分の一と言ってよろしいでしょうか。また、ヨーロッパ諸国の二分のでございます。これは我が国の場合でございます。そしてまた、留学生の高等教育機関在学者に占める割合の場合でございますと、今お述べになりましたヨーロッパの国々の七分の一から八分のというふうに、大変に他の先進国の場合と日本の場合は大きな格差がこの数字の上からあるということがわかるわけでございます。  先ほど局長もお触れになりましたが、我が国の留学生政策の根幹というのは、これは一九八三年でございましたかにスタートいたしました留学生受け入れ十万人計画であろうかと思います。そこでまず、この十万人という目標値を設定した理由がおありになるのでしたらおっしゃっていただきたいと思いますが、この十万人計画が果たして計画どおりに今推移しているのでしょうか。その進捗状況と今後の見通しをお伺いいたします。
  68. 林田英樹

    政府委員(林田英樹君) 御指摘のように、昭和五十八年に十万人計画が策定をされたわけでございますが、その当時いろんな御議論があったようには聞いておりますけれども、大きな要素の一つとして、今お話にございましたような諸外国の留学生受け入れの状況を考えました場合に、日本の教育の国際化、さらには国際的な貢献というようないろんな意味でこれらの諸外国、先進諸国の状況をかんがみまして、かなりそれに近づけるような形の努力が必要であろうというようなことが大きな判断要素であったというふうに伺っております。
  69. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今、私が質問させていただいたのは、その進捗状況と今後の見通しです。
  70. 林田英樹

    政府委員(林田英樹君) 大変失礼いたしました。  先ほど申しましたように、昭和五十八年に計画をいたしまして、平成で申しますと十二年、二〇〇〇年に十万人を達成するという目標を設定いたしまして、その期間中の年度に応じました増員計画というようなものもつくったわけでございます。  平成六年までの間は、想定いたしました数をいずれも上回ってまいったわけでございますけれども、平成七年に至りまして、想定いたしました数字を初めて下回ったというような状況でございます。平成八年度の調査を見ますと、この予定いたしました数字、平成八年度の予定数で申しますと六万三千百六十八人というような想定をいたしておったわけでございますけれども、現実には五万二千九百二十一名というような状況になっているところでございます。  主として、大学院につきましてはまだ伸びておりますが、専修学校で相当な減少が見られるというような、学校レベルにおきましていろいろな傾向の違いはございますけれども、総数といたしましては以上のような状況でございます。  私ども、何とかこの目標に近づけるべく努力してまいらなければならないということで予算充実等を図っているところでございますけれども、今後の見通しとしては相当な努力を必要とする状況に至っているように感じておるところでございます。
  71. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今局長お答えいただきましたように、これは一九九五年ですと目標値を二千五百人ぐらい下回っているというふうに私は聞いておりますし、また九六年の場合には目標値を一万人以上は下回っているということでございます。  こうなりますと、二〇〇〇年までに十万人、あと二〇〇〇年まで三年でございます。そういたしますと、この目標達成というのは非常に悲観的としか言えないのではないかというふうに思うわけでございますが、このような留学生受け入れ、留学生の数の減少の原因というのはどのようなところにあるというふうに大臣はお受け取りになっていらっしゃいますか、そして、それに対する対策をどのようにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。
  72. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 先ほど学術国際局長から答弁したとおり、グラフにいたしますと、ここ遠くて見えないかもしれませんが、昭和五十八年から予想を上回る急ピッチの増加をしてきたのですが、平成五年から少しこれが鈍化しまして、平成七年にはついに目標を下回る、平成八年も一万人以上予想を下回る、こういうことで、この趨勢が続きますと恐らく十万人計画は達成不可能と、こういう見通してございます。  これにはいろいろの原因がありますが、まず一つは日本に対する魅力が失われたということではないかと思います。バブルのときまでは日本の経済はもう非常に好調でして、日本の先進技術を学ぼうあるいは日本の経営を学ぼう、こういう学生がもうメジロ押しで来たわけですけれども、バブルの崩壊とともに日本から学ぶべきものは少なくなった、こういうような一つの魅力の喪失ということが根本にあると思います。  もう少し具体的に言いますと、生活上の問題と教育上の問題と二つに分けられると思います。  まず、生活上の問題ですが、日本で勉強すると大変お金がかかると。最近、オーストラリアが留学生誘致運動を活発にやっておりますが、外国の学生に聞きますと、オーストラリアで生活するよりも日本生活費は二倍かかる、こういうことをよく言われるわけです。これは宿舎の問題が一番大きいと思いますけれども、そういう生活上の問題。  それからもう一つ、教育上の問題は、日本へ留学をすると最初の一年間、二年間は日本語の習得に時間をとられてしまって、それだけ学校を出るのがおくれるというようなことで、そういう話学上の問題点。それから、日本へ来ると学位がなかなか取れない、こういうような問題。さらに、施設が非常にお粗末だ、留学生一人一人の研究スペースなんかも諸外国に比べて劣ると、こういったようなことが理由でだんだん減ってきたと思います。  そこで、私ども、私が文部大臣になりまして日下部委員と同じ問題意識を持ちまして、これを何とか打開しなきゃいけない、こういうことから留学生政策懇談会というものを設けまして今協議をしていただいているんです。今当面考えられることはやはり生活上の問題、これは、日本も今六大改革を進めているわけで、その中で高コスト構造の是正ということが入っておりますので、そういった面を通じてできるだけ日本での生活費がもっと安く済むようにということ、あるいは宿舎の問題にしても、もちろん文部省として留学生会館とかその他整備しておりますし、また各団体もやっておりますし、また諸大学におきましても学校の宿泊施設充実させております。そういった努力を重ねていかなきゃいけないと思っております。  それから、教育上の問題にしても、日本でも学位授与機構なんというのをつくったり、あるいは、やっぱり留学生が国へ帰ってこういう学位を取ってきたよと、こういうのが一つの大きなインセンティブになりますので、できる限り学位が取りやすいようなことも考えていかなきゃいけないと思います。また、施設充実につきましても、努力しているんですが、ぜひ文教委員の皆様に国立大学その他の施設を見ていただきたいんですが、建築してから二十年以上の老朽施設が五〇%以上まだ残っていると、こんなことで非常にその施設充実というのが急がれるわけでございます。  もう一つ、語学の問題ですが、例えば今度短期留学制度というものを設けまして、一年間だけで向こうの大学に在学したまま日本で勉強して帰ってこれるという制度も導入しましたけれども、ここで問題になるのは、やっぱり一年間ですからそこで日本語を勉強している暇がありませんので、できたら英語で授業を受けたいと、こういうことで今各大学でも一生懸命英語による講義というものをふやしていただいております。  今後どういう政策をとるべきか、今一生懸命さっき申し上げた懇談会等を通じまして我々としても一層この留学生を何とか増加するように各種の努力をしていきたいと思っておりますので、またひとつ各委員のいろいろ提言などもいただければ大変ありがたいと思います。
  73. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 ありがとうございました。  ちょっとこれは蛇足かもわかりませんが、文部省学術国際局留学生課がお出しになっていらっしゃいます「我が国の留学生制度の概要」の十一ページでございますが、ここに、留学生受け入れの量的充実、今度は量的充実から質的にというところがございまして、「留学生数が計画を上回っている最近の傾向を踏まえ、今後、留学生受入れの質的充実に特に重点を置いて」云々とございますが、これはやはり少し改められた方がよろしいのではないかというふうに御忠告申し上げておきます。  ところで今、大臣にこれからの対策、そしてまた今の問題点というのをまとめていただいたのでございますが、それに加えて、まず最初に、海外の留学生希望者が現地において日本に留学するための情報というものをもう少し簡単に手に入れられるようなそういう条件整備というのが必要ではないかなというふうに思います。あるいはまた留学相談を受ける、あるいはまた手続についてもっと簡素化するというふうな問題も含めまして、日本に来てからではなくて海外の各地にそのような希望者がすぐ相談に行ける、あるいは情報を手に入れることのできるようなそういう場を設けることが必要ではないか。  例えばイギリスの場合、大変貧乏な国になってしまいましたけれどもブリティッシュカウンシルというのがございまして、そこに行けば留学の問題を含めてさまざまな情報が手に入るわけでございますが、日本の場合には現地においてどのような対応をなさっているのでございましょうか。
  74. 林田英樹

    政府委員(林田英樹君) 確かに御指摘の点は、お話にありましたような外国に比べましてまだまだ努力をしなければならない部分がいろいろあろうかと思っております。留学生等から伺いましても、そのようないろいろな御要望をよく聞くところでございまして、私どもとしても私どもなりに今現在努力をしておるところでございます。  お手元のパンフレットの中にもございますように、留学情報提供や留学相談のための日本留学説明会というようなものを向こうで開くとか、また近年では、コンピューターによりますいろいろな情報伝達の機能も充実をされてまいりましたので、日本国際教育協会の方にそういう情報センターを設けまして、インターネット等を使いまして情報が引き出せるような形にいたしまして、かなりの充実も図られてきていると思っております。  それからまた、大学によりましてはかなり大学自体の大学説明、外国人の受け入れについての情報というようなものを充実いたしまして、そういうところには相当たくさんのアクセスがあるというふうなことも聞いておるわけでございますので、そういう意味で私どもとしても、また各大学にもお願いをしながら情報の受け入れやすい努力をしていかなければならないというふうに思っております。  具体的に海外におきまして御指摘のありましたような常設の独自の機関をつくるということはなかなか容易でないところもございますけれども、今申しましたような新しい機器を使っての情報提供、さらには大使館等におきますいろいろな問い合わせに答えられるような体制のための情報充実というような点で今後とも一層努力していきたいと思っておりますし、また現在、大臣から先ほど触れられました留学生政策懇談会の中でもいろいろその点についての御指摘もあるところでございますので、それらの御意見も伺いながら充実を図ってまいりたいと思っております。
  75. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今大使館というふうにおっしゃいましたけれども、なかなか大使館というのは入りにくいところのようでございます。ですから、例えば私が海外の友人から、日本へ留学の情報というのはどこに行ったらいいのという、いろいろな国の友人から問われたときに、大使館というのがすぐ頭に浮かぶのでございますが、それ以外に今申し上げたブリティッシュカウンシル、アメリカン・カルチャーセンターというふうな、そういうものが日本にございます。例えば東南アジアの各地とか、そういうところにあれば私はすぐにそういうことを申し上げることができるんですけれども、今局長もお答えになったように、そういう場所というのが今のところなかなかないようでございます。  ですから、本当に来てほしいと思うのだったらば、それなりのこちらは条件整備をしなければいけないと思います。これは文部省の問題ではないかもわかりません、外務省あるいは法務省の問題もあるかもわかりませんが、例えば法務省の問題ですけれども、本当に来てほしいというよりはチェックするという態度の方が見えてしまうというふうなことをよく留学生の方々から聞くところでございます。その辺のところをもう少しきちんと整備していくということが必要ではないかというふうに思うわけでございます。  次に、大臣、受け入れ大学の問題として、学位の取得が困難であるということをお答えくださいましたが、本当に文科系のドクターは非常に取得しにくい、これは日本人の学生もそうでございますけれども、特に留学生にとっては文科系でのドクターの取得というのは困難だというふうに言われております。これは大学の中での問題があろうかと思いますけれども、何らかの形で文部省指導ということも必要ではないかなというふうに思います。  それからまた、短期留学のこともおっしゃいましたけれども、短期間の留学ということになりますと、大学あるいは高校での各国との単位の交換制ということがやはり必要ではないかなというふうに思うわけでございます。一年こちらに留学したらばそれが単位としてちゃんと認められる、あるいはまた日本の学生が海外に留学した場合にそれが日本で認められるというふうな、そういう単位交換制というものが整備されますれば留年をしなくても済むということになりますとかなり留学がしやすくなるのではないかと思いますが、現状ではいかがでございましょうか。
  76. 林田英樹

    政府委員(林田英樹君) 先ほど、まず最初に学位の問題の御指摘がございました。確かに、この点につきましては私どもとしても問題意識を持って取り組んでいるところでございます。  手元にありますもので若干現状を御説明申し上げますと、今お話しございましたように、日本の学生、通常の学生も含めましての問題が若干あるわけでございますけれども、これで申しますと、平成五年度の博士の学位取得状況を見てみますと、文科系、理科系その他の合計で、しかるべき時期に入学した者の課程を終わった段階で、課程博士を取得した者の割合を見てみますと六七%ということになっておりまして、このうち文科系だけについて見ますと一二%という大変低い状況にあるわけでございます。これに対しまして、留学生だけについて、平成六年度の数字がございますのでこれで見てみますと、文科系、理科系合わせまして博士課程で、博士取得者の割合というのが八〇%ということになっておりまして、文科系だけで申しますと四三%というような数字になっておるわけでございます。  これをどう見るかではございますけれども、御指摘のございましたように、文科系において割合が低いというふうなこと、しかしその中でも留学生については全体の学生の比率よりも高くなっているというような状況があるわけでございます。  私どもといたしましては、日本人学生も含めまして、この博士の取得の問題は国際的に見てもいろいろ課題であるというふうに思っているわけでございまして、数年前に博士の制度の変更などもいたしまして従来の考えより少し新しい考え方で博士を授与できるようなことも促してまいっているわけでございますけれども、今後ともこの点につきましてはさらに努力しなければならないと思っております。  なお、留学生につきましては、特別に日本から博士の資格を取ったい方にはいろいろな支援措置というようなこともやっておるわけでございまして、そういうものを続けてまいりたいと思っております。  それから、単位の互換のお話がございました。これは確かに今の短期留学生につきましては特別な配慮が必要であることはそのとおりでございます。現在、私ども、両国の大学の協定に基づいたものをベースにいたしまして短期留学生の交流をいたしておりますので、それぞれの大学におきましては、通常おっしゃられましたような単位の互換等についての配慮も努力していただいておりますので、それらの中で十分に配慮されるように今後とも努力してまいりたいと思っております。
  77. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 大臣はまた宿舎の問題もおっしゃいましたけれども、よく留学生の方から、留学生だけが特別に留学生会館に入ってしまうと日本語を習得する機会がないと、自分たち日本に来て英語でしゃべっているんだというふうなことのお訴えもございました。せっかく日本にいらしたのだったら、日本の学生と生活をともにするということでより交流が深まるというふうに思いますので、ぜひともこの点もお考えの中に入れておいていただきたいというふうに思うわけでございます。  もう時間が来てしまいましたが、やはり異質のものに触れるということは、それぞれのクリエーティブな力あるいはプライバシーの大切さということを学ぶ上でも大変に意義が多いのではないかというふうに思います。また、大学におきましてもゼミナールなどももっと活気のあるものになってくるのではないかというふうに思います。  十万人計画の提言の中で非常に高道な精神が説かれております。「帰国留学生が、我が国とそれぞれの母国との友好関係の発展、強化のための重要なかけ橋となることをあわせて考えると、」「留学生政策は、その文教政策、対外政策の中心に据えてしかるべき重要国策の一つであるといっても過言ではない」というふうに述べていらっしゃいます。  ぜひともこれを実現させていただきたいということを切に希望いたしまして、そしてまた期待いたしまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  78. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 まず初めに、国立学校特別会計についてお尋ねします。  それは、各大学への予算配分基準についてお聞きをいたしたいんです。  一九九七年度の国立学校別特別会計歳入歳出予算は、総額二兆六千八百四十八億円で、一般会計よりの繰り入れが一兆五千五百四十九億円となっています。そして、一九九五年度の九十八国立大学歳出決算額を見ますと、東京大学千八百八億九百万円を筆頭に、京都大学一千八十億五千万円、東北大学九百三十一億九千八百万円、大阪大学八百九十四億五千二百万円、北海道大学七百九十九億二千三百万円、これがベストファイブですが、その後九州大学、名古屋大学、筑波大学、広島大学、神戸大学と続いて、上位二十校で九十八校歳出総額の二兆五千三百六十四億円の五〇%を占めるという状況になっているんですが、この各大学の予算配分基準というのは一体どうなっているんですか。
  79. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 一般的な形で申し上げますと、各国立学校に対する予算の配分でございますが、基盤的な教育研究経費、いわゆる校費に代表されるものでございますが、この基盤的な教育研究経費につきましては、予算の積算に従いまして各国立学校の学生数あるいは教官数、講座数等を基礎として配分いたします。  また、施設整備費につきましては、各大学の施設の老朽度や教育研究上の必要性を勘案しながら措置しているところでございます。  また、限られた予算の効率的な執行という観点から、積極的に教育研究の高度化等に取り組んでおります大学などに対しましては、大学改革推進等経費とか、あるいは高度化推進特別経費など各大学の取り組み状況を評価しながら予算のいわば重点的な配分をあわせて行っているというのが一般的な姿でございます。
  80. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 そこで、文部省にお願いしたいんですが、九十八大学別に収支決算を一九九三年度ぐらいから三年度分、資料としていただけませんか。
  81. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 各国立大学ごとの収支決算でございますが、少なくとも歳出の決算につきましては若干数年のずれがあるわけでございますけれども、公表しておるわけでございます。また、大学ごとにつきましても公表されておるわけでございまして、この大学ごとにということの意味合いは、私どもとして取りまとめて、今先生がおっしゃいましたように、北海道大学から琉球大学に至るまでこの大学はごうごうという形で取りまとめた形で発表したことはございません。むしろ、それぞれの大学でパンフレットやらあるいは概要等において我が大学の何年度の収支はかくかくしかじかというような形で公表されているのが一般的でございます。
  82. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 では、そういう資料をいただけるんですか、いただけないんですか。
  83. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 現在そういう資料をつくってはございませんけれども、ただこれは明らかな数字になっておるわけでございますので、ただそれをどういう形で公表するのがいいか、これにつきましては適切な方法についてなおよく研究してみたいと思います。
  84. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 別に隠すことじゃないと思うんです。わからぬのですよ。九十八大学丸めてやっているでしょう。だから、各大学ごとの収支決算を見せていただきたい。  これは委員長、国政調査権にかかわる問題かどうか知りませんが、理事会としてこれを決めてください。
  85. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) 本岡さんの要求の資料につきましては、その取り扱いを理事会で協議いたしたいと思います。
  86. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それで、私は、国立学校特別会計を各大学ごとに経営体として特別会計をきちっとさせることが大事だと思うんです。  それで、現在の国立大学の予算会計は、先ほど言いましたように文部省の国立学校特別会計ということで扱われておるんですね、九十八大学。それで、収入も支出も九十八大学分を一括して、私も資料いただいておりますが、持っておる。  ところが、私立大学の学校法人会計というのは、学校ごとの経営体の会計方式になって、二千九百五十億ですか、あの予算をもらうにしても随分いろいろと文部省がその会計のありようについて詳しく精査なさるようであります。  そこで、私は、大学ごとに国からの繰り入れ、授業料、その他学費収入と教職員の人件費、研究費などの経常支出あるいは資本支出等の収支の態様を経営体に適合する会計として各大学が持って、そして大学の財政会計の公開性を高めて、大学の経営実態を国民に明確にして、経営責任を全面的に大学に求めるべきである。親方日の丸式の文部省にじゃなくて、大学それぞれがみずから経営主体として財政的にも自立していくということをやるべきではないか、こう思うんですが、いかがですか。
  87. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) かつて比較的、いわゆる国立大学、帝国大学と言われていた時代でございますが、非常に限られた大学の時代に各大学ごとに会計区分を設けてやっていた時代もございました。しかし、だんだん数も多くなってまいりましたし、また私ども一つの設置者でございます、その全体の大きなパイの中でそれぞれの国立学校ごとにどういう配分を行っていくか。大きなパイの中で考えていくということの方が予算の配分として効率的ではないかということで現在のような国立学校特別会計という形で全体として管理しておる、こういうことでございます。  なお、若干補足でございますけれども、先ほど来話題になっております国立学校特別会計と申しますのは、今先生御指摘の九十八大学だけではございませんで、それぞれの大学についております例えば医学部でございましたら附属病院もございますし、附属の学校もございますし、演習林もございますし、また例えば高エネルギー物理学研究所とか宇宙科学研究所のようないわゆる大学共同利用機関の予算もすべて含まれておるわけでございまして、それらを一括して管理しているわけでございます。
  88. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 今あなたのおっしゃるようなことがやはりますいんじゃないかと言っておるんです。  護送船団方式というふうな言葉があるけれども、文字どおり文部省が先頭に立って後ろに九十八大学を従えて丸抱えでいっているわけでしょう。一体どこの大学でどういう問題があるのかさっぱりわからないわけですよ。  それで、各国立大学は附属病院を持っている、その附属病院の経営は一体どうなっているのかわからない。小中高どころか幼稚園から国立学校は持っている。一体授業料はどうなっているのか。そういう収入面でどういうことをやっているのかというようなこともほとんど定かでない。  今、改革という言葉の中には、そうした国立大学だから、国立学校だからということで閉鎖的なそういう状態に置かれて、そしてだれも指一本触れてはならぬという形じゃなくて、もっとオープンに公開していくということも大事な改革の一つの視点。  だから大学、私は民営化のことを言っておるんですが、民営化の入り口がそこにあると私は見ておるんですよ。私立各大学はみんなきれいにオープンしておるでしょう。なぜ国立大学だけがみずからの大学の財政をオープンにできないのか、それがわからない。一方、それは税金でほとんど賄われているという状況だけに合点がいかぬわけですが、この点、大臣はどうお考えですか。
  89. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 私はきのう始球式の帰りに大阪大学の学長と話をしまして、大阪大学要覧というのを見せていただきました。そうしましたら、病院会計が幾ら入って幾ら出て、そういう大学としての会計はしっかり明示されておりましたので、こういうものをオープンにすれば本岡委員の疑問は解けると思うんです。  私は二つの側面があろうかと思うんです。会計の経理の仕方、これは昔は、さっき高等教育局長からお話があったように東京大学あるいは京都大学というふうに区分してやっていたんですが、そうなりますと、もう既得権みたいになって、前年度これだけもらったんだからおれの大学はこれからびた一文削られちゃ困る、こういうことでかえって硬直化してしまう。だから、国立学校の経理としては文部省が一元的に見て、やっぱりこの大学にはこの研究をやっているんだからこれは貴重だからここへもっと予算をつけてやろうとか、ここの方はちょっともう削ろうとか、そういうふうにめり張りをつけた予算編成ができるという面では今のように国立学校の特別会計という形で一元的にやるというメリットはあるわけでございます。  ただ、その経理の仕方の問題と、それから情報公開、透明性の問題とは私はまた別だと思います。したがって、今委員長から理事会で資料の公表については協議するというお話がありましたから、私どもとして何ができるか。各大学それぞれ何もなくてやっているわけじゃないので、それぞれの大学がちゃんと要覧もつくっておりますし、受験生のためのいろんな資料もつくっているわけですから、その中には当然経理の問題も出てくるわけでありますから、できる限り情報公開、そして透明性を高める、私はそういう努力は続けていきたいと思っております。
  90. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 今の問題は、九十八大学のそういう個別のを見せてもらって改めて質疑をさせていただきます。  それで、前回も国立大学の民営化問題に触れましたが、その後私はいろいろ勉強しました。臨教審の第三次答申というのがあるわけです。そして、この第三次答申は、文部省に国立大学の経営形態の検討を要請しています。  当時の文部時報一三二二号を見ますと、次のようなことが書いてあります。  現行の特殊法人の在り方は、それ自体としては  「大学」に必ずしも適しないといわなければな  らないが、国立大学の特殊法人化の提案は、大  学の自主・自律性を確立する上で有益な示唆を  与えるものである。新たな特殊法人として大学  にふさわしい形態を模索することは不可能では  なく、政府および大学関係者が、国民の負託に  直接こたえ得るこの意味の新たな設置形態の創  造のため、中長期的にさらに積極的な調査研究  を進め、深めることを強く要請する。というふうに書いてあるんです。  この臨教審の第三次答申を見ると、私は今改めてこんなことを言わなくたって、この答申を受けた文部省の方が新たな特殊法人として何かこの現状を打開していくものはないのかという問題についてむしろ積極的に議論をされて、そして新しい提案が出てこなければならないと私は思うんです。  にもかかわらず、この間、財政構造改革会議というものがなされて、そこで文教予算の中で出てくるのは、この国立学校のいわゆる民営化という問題が出てこないわけなんですよ。一兆五千億も六千億も一般会計から出しているこれにメスを入れないで、どこから何兆もという財政改革ができるんですか。  郵便局を何ぼ民営化したって一般会計は何も関係ないわけですよ。やっぱり一般会計をどう切り詰めていくかというときに、あなた方はすぐ小中学校の義務教育の教員定数をさわったらとか、学校の教科書をさわったらどうとかとすぐ目がいくけれども、本来はこの国立学校という問題のところを、私学が立派に経営をしているという状態を踏まえ、そして現在のあの規制緩和・撤廃の道筋の中で市場原理というものを基調に置きながら、新たな大学経営というものが可能なのか不可能なのかというものを徹底的に追求するという姿勢があなた方になくてどうするんですか。  こんなことを私が言っているのかと思ったら、そうではない。もう十年前に第三中曾根臨調のときにきちっとこういう報告が出されているじゃありませんか。ただ、やらなかったのは、文部省がやる気がなかったというだけのことではないかと私は思えて仕方がないんです。文部大臣、いかがですか。
  91. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 本岡委員は誤解があるんじゃないかと思うんです。  今の大学を含めた高等教育についてこっちはもう余分だからもうちょっと私学助成とか義務教育の方へ回せと、こういう議論のようですけれども、私は決して我が国の高等教育は十分であるとは考えません。高等教育に対する公的財政の支出は欧米諸国の半分です。これはもうはっきりデータに示されております。それから、研究面から考えましても、人、物、金、すべて私たちは不十分だと思っております。  例えば、人の面では、確かに研究者はふえておりますけれども、それをバックアップする要員、研究支援者は非常に不足しておりまして、現場の教授の話を聞くと、定員削減でもう本当に教授はいてもそれを助ける人がいないので研究が十分はかどらないと、そういう不満を私はよく聞きます。  それから、物の面でも、さっきも答弁しましたけれども、国立大学の老朽施設に行ってごらんなさい、とにかく五〇%以上は二十年以上たった老朽施設です。本当に留学生に対してだって一つもスペースを割くことができない。そういう状況をぜひ見てほしいと思います。  お金にしても、研究費が非常に不足しております。今度、科学技術基本計画ができてようやくほかの費目よりもふやしてもらいましたけれども、そういうことで今までの日本の高等教育なり学術研究というものはまさに貧弱と言わざるを得ないわけでありまして、私はそういう学術研究というものが国立大学に支えられているということをぜひ認識していただきたいと思うわけであります。
  92. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 今の文部大臣の話を聞いておったら、私は高等教育を粗末に扱っているような話ですけれども、私は高等教育は大事だと思いますよ。もっともっと金を注いだらいいと思っています。  私の言っているのは、それは国立大学でしかできないというふうにあなたたちは思っているということじゃないかと、今の話を聞くとですよ。大学といったら七〇%は私学が今は受け持っているんでしょう。自分たちのちゃんと経営基盤をして、そして立派な大学をつくっておるんでしょう。何で国立大学が老朽化しておんぼろなんですか、その原因を探ってください。今、私学と比べておんぼろだとおっしゃっているんでしょう。じゃ、私学は何でそういう立派な学校が建つんですか。  いずれにしても、国家予算に大きく影響されながら老朽化を続けていった、あるときは国がお金を出したから学校がきちっといったとか、そういう経営のあり方というのはもうこれから私は通用しないと思う。  だから、やっぱり文部省は、国立大学でしかこの二十一世紀を担う有為な人材は育てられないんだというのは、これは錯覚ですよ。そうじゃなくて、これは私学と一緒になってやると言ってきたこの問題の中で、やはり国のそうしたいろんな規制とかというのを開放しながら、学校あり方、経営形態のあり方というのは抜本的に変える時期に来ている、こう思うんですよ。私は、高等教育を粗末にしてどうでもいいといささかも言っておりません。  だから、やはり今回の行財政改革ということの中でいずれにしても予算を削減せにゃいかぬのでしょう、文教予算を。マイナス予算にすると言っておるんでしょう。そうしたら、どこを削るんですか、文部大臣。その削ることは、ただ削ったということじゃだめなんですよ。それは、やっぱり改革のために削っていかにゃいかぬのでしょう。じゃ、改革とは何ぞやということですよ。  古い形の中で今まで積み上げてきたことが新しい時代に合わないもの、古くなった背広を着がえるように、体が大きくなって服が合わないようになったから着がえるように、やっぱり時代とともに新しいものを生み出していくというそういう創造的なものがなかったら、旧帝国大学時代からずっとやってきたから、いつまでもそれを文部省が後ろに引き連れてやっとらにゃいかぬという、もう教育もそういう過保護的なものじゃないでしょう、ということを私は言いたいわけです。一言どうですか。
  93. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 日本の高等教育をすべて国立大学が受け持っているなんという、そういう傲慢不遜な考えは持っておりません。しかし、現実を見ますと、私も私学の経営者にも随分お願いをして、要するに今まで以上にもっと理科系の教育とか研究開発とか、そういう分野にも充実していただきたいということで私学の方々にも努力をしていただいております。しかし、今の現実を見ますと、私学の学長さんが言うにも、高度な先端的な技術とか、あるいは理科系、医学系、そういうものは国立大学に今のところはやはり依存せざるを得ないということをみずから認めているんです。  現実に、例えば大学院の博士課程の在学者を見ましても、全国公私立大学の中で国立が六三・九%、公立が四・三%ということで、大学院、特に高等教育の上の方の教育はやっぱり国立、公立に相当負っているという現状がありますし、また分野別に見ましても、医学・理工系というのが国立が五三%、公立が三一%、私立が二六%ということで、現実はそういう分野はどうしても国公立に依存せざるを得ない。  また、地域別の状況を見ましても、私立は三大都市圏に七六%行っておりますけれども、その他の地域は二四%しかありません。ここは、国立がその他の地域に六四%あるということから見ましても、私はやっぱりこの分野別の偏りとか地域別の偏り、今直ちにこれを民営化したり特殊法人化したら、そういった偏りというものをどうするのか。  もちろん私は、本岡委員指摘されたように、国公立大学というのは、国立大学というのは特に歴史がありますから古い残滓を残しているところもあります。私自身も厳しく国立大学に、もう少しむだなところを排除して、できるだけ管理運営の費用というものは節減をして、できるだけ研究費とか教育費に回してくれと、こういうことを常に言っているわけです。そういう方向で改革をするということにはやぶさかではありませんが、真っ向から民営化しろとか特殊法人化しろという議論を直ちにされますと、私も少し言葉激しく申し上げざるを得ないわけでございます。
  94. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) 本岡さん、時間になりましたので短くお願いします。
  95. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 後の方のときにもう一つやりますが、私が言っているんじゃないですよ、臨教審もこう言っているということで私は力を入れて物を言っておるんですよ。
  96. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 詳しく説明されましたが
  97. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 いや、だから特殊法人の、これ文部省情報だよ。これは次の法律のところで続きをやらせていただきます。どうも済みません。
  98. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 今国会で、歴史教育、とりわけいわゆる従軍慰安婦問題についての歴史教科書記述に関して繰り返し論議され、総理を初め文部大臣の基本的見解もたびたび繰り返されてきましたが、極めて大事な問題なので私も質問をしたいと思います。  韓国の元従軍慰安婦本人の提訴という形で、歴史の生き証人があらわれ、同時に防衛庁防衛研究所図書館にいわゆる慰安婦関係の資料が発見される中、政府は調査を進めて、九三年八月四日、政府の慰安婦関係調査結果とそれに基づく官房長官談話並びに内閣官房内閣外審議室の「いわゆる従軍慰安婦問題について」という文書を発表しています。  そこで、政府のいわゆる慰安婦関係調査結果について質問したいと思います。官房長官談話によりますと、「慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、」とあります。具体的に軍のどのレベルの要請だったんでしょうか。これは外政審議室、お願いします。
  99. 皆川尚史

    説明員(皆川尚史君) 御案内のように、慰安所は必要性を感じた軍の意向を受けて、主として民間業者の手により設置、運営されたものですが、私どもの資料によっても具体的にどのレベルということは判然といたしませんが、たださまざまな現場の要請に基づいて、軍全体としてそういった意向を持ったということを判断してあのような表現になったというふうに考えております。
  100. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 防衛庁防衛研究所図書館で発見された、まず最初に新聞紙上で公表されたと思うんですが、その資料に、陸軍省副官通牒として出された「軍慰安所従業婦等募集ニ関スル件」というのがあります。これです。  これを読んでみますと、  募集ニ任スル者ノ人選適切ヲ欠キ為ニ募集ノ方法誘拐ニ類シ警察当局ニ検挙取調ヲ受クルモノアル等注意ヲ要スルモノ少カラサルニ就テハ将来是等ノ募集等ニ当リテハ派遣軍ニ於テ統制シ之二任スル人物ノ選定ヲ周到適切ニシ其実施ニ当りテハ関係地方ノ憲兵及警察当局トノ連繋ヲ密ニシ以テ軍ノ威信保持上並ニ社会問題上遺漏ナキ様配慮相成度依命通牒ス とあります。  陸軍省兵務局兵務課の起案、梅津次官が決裁、押印をしています。「依命通牒ス」というのは、陸軍大臣の委任を受けて出されていることを意味し、いわゆる慰安婦政策に陸軍省がみずから乗り出しているわけです。この資料で確かめました。  次に伺いたいんですけれども、何のために慰安所は設営されたんでしょうか。
  101. 皆川尚史

    説明員(皆川尚史君) 私どもの手元にある発見された資料の中には、例えば軍人による強姦等の不法行為、それがひいては反日感情を醸成すると、そういったものの防止あるいは性病などによる兵力の低下防止、さらには防諜の必要性などといった用語が散見されるわけであります。
  102. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 これも私、資料で調べましたが、これは一九四〇年九月十九日付になるんですが、陸軍省副官通牒「支那事変ノ経験ヨリ観タル軍紀振作対策」、そういう資料があります。これです。  これを見ますと、「事変勃発以来ノ実情ニ徴スルニ赫々タル武勲ノ反面ニ掠奪、強姦、放火、俘虜惨殺等皇軍タルノ本質ニ反スル幾多ノ犯行を生シ為ニ聖戦ニ対スル内外ノ嫌悪反感ヲ招来シ」、「慰安施設ニ関シ周到ナル考慮ヲ払ヒ殺伐ナル感情及劣情ヲ緩和抑制スルコトニ留意スルヲ要ス」、「特ニ性的慰安所ヨリ受クル兵ノ精神的影響ハ最モ率直深刻ニシテ之カ指導監督ノ適否ハ志気ノ振興、軍紀ノ維持、犯罪及性病ノ予防等ニ影響スル所大ナルヲ思ハサルヘカラス」とあります。今御答弁くださったように、志気の振興、軍紀の維持、略奪、強姦、放火、犯罪や性病の予防が目的だったわけです。  次の質問ですが、軍のこうした要請でつくられた慰安所に関連して、内務省の関与はあったんでしょうか。
  103. 皆川尚史

    説明員(皆川尚史君) 私どもに寄せられた資料の中には、そうした関与を示すものがございます。
  104. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 次は、この資料になります。  陸軍だけでは円滑な運営はできなかったわけです。慰安婦の徴集とか移送に関して当然ほかの国家機関の協力があったわけなんです。  一九三八年二月二十三日付の、これは内務省警保局長が各庁府県長官あてに出している「支那渡航婦女ノ取扱二関スル件」という資料です。  ここで、「婦女ノ渡航ハ現地ニ於ケル実情ニ鑑ミルトキハ蓋シ必要己ムヲ得ザルモノアリ警察当局ニ於テモ特殊ノ考慮ヲ払ヒ実情ニ即スル措置ヲ講ズルノ要アリト認メラルルモ」、こう言って適正を促しながら、「一、醜業ヲ」、これは売春です、「ヲ目的トスル婦女ノ渡航ハ現在内地ニ於テ娼妓其ノ他事実上醜業ヲ営ミ満二十一歳以上且花柳病其ノ他伝染性疾患ナキ者ニシテ北支、中支方面ニ向フ者ニ限リ当分ノ間之ヲ黙認スルコト」、こう言って、身分証明書の発給を求め、いわゆる慰安婦の移送に加担をしています。  こうして、陸軍省、内務省と、いわば国家ぐるみで設営されたのがいわゆる慰安所であり、それは戦争遂行上必要なものとしてつくられていったわけです。  次の質問ですが、「いわゆる従軍慰安婦問題について」の内閣官房内閣外審議室の文書、この中で、  慰安婦たちは戦地においては常時軍の管理下において軍と共に行動させられており、自由もない、痛ましい生活を強いられたことは明らかである。 とあります。慰安婦の募集についても、  業者らが或いは甘言を弄し、或いは畏怖させる等の形で本人たちの意向に反して集めるケースが数多く、更に、官憲等が直接これに加担する等のケースもみられた。 とあります。  官房長官談話も、  甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。 と述べています。  朝鮮人慰安婦についても言及していて、「募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた。」というふうに述べています。  ここで、「本人たちの意思に反して行われた。」ということは、強制されたということではないでしょうか。
  105. 皆川尚史

    説明員(皆川尚史君) さまざまなケースがあったとは思われますが、その本人の意思に反してということを強制というふうに定義づければ、そういうことになろうかと思います。
  106. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 そのとおりだと思います。  私が既に取り上げた最初の資料、陸軍省副官通牒「軍慰安所従業婦等募集二関スル件」、この中でも既に言いましたが、「募集ニ任スル者ノ人選適切ヲ欠キ為ニ募集ノ方法誘拐ニ類シ警察当局ニ検挙取調ヲ受クルモノアル等注意ヲ要スルモノ少カラサルニ」と、こうあって、誘拐まがいのことが実際に行われていたということがわかるわけなんです。  また、国際法を調べてみました。「醜業ヲ行ハシムル為ノ婦女売買禁止ニ関スル国際条約」とか、「婦人及児童ノ売買禁止ニ関スル国際条約」など、こうした国際条約に照らして見ますと、条約上、二十一歳未満は未成年であり、「未成年ノ婦女ヲ勧誘シ誘引シ又ハ拐去シタル者ハ本人ノ承諾ヲ得タルトキト雖」罰せられることになっていました。また、条約上は詐欺も暴行と同様、強制手段とされていました。  このことをもう一つの資料で確かめたいんですが、公表されている資料にアメリカ戦時情報局の心理作戦班の「日本人捕虜尋問報告第四十九号」というのがあります。これは英文です。急いで必要なところだけきのう辞書を引きながら調べました。ビルマで保護した二十人の朝鮮人慰安婦のうち、十二名が一これ私が計算したんですが、二十一歳未満で慰安婦になっていたわけです。また、病院にいる負傷者を見舞い、包帯を巻いてやり、そして、一般的に言えば兵士を喜ばせる仕事とか、楽な仕事と新天地における新生活、こういうぐあいに、売春について無知、無教育な女性たちがまさにだまされていった。このことが報告されています。国際法に照らしても、強制があったことは明らかなんです。  何よりも、慰安所における慰安婦たち生活実態です。これは、次の資料になります。  公表されている資料の中に、一九四四年五月、独立歩兵第十三旅団中山警備隊の「軍人倶楽部利用規定」というのがあります。利用時間を見ると、兵が朝九時半から午後三時半まで、下士官が午後四時から八時まで、将校が午後八時半から翌朝までとされています。三十分当たりあるいは一時間当たりの料金、夜間料金、終夜通しの料金なども定められています。慰安婦たちを待ち受けていたのは、性交の強要でした。一日に七、八人、多い場合は二十人から三十人にもなったという証言もあります。休日は特にないし、あっても月一、二回、許可なきところに外出することを禁止され、逃亡もできず、借金を返し終えて帰国したくても交通手段がないため帰国もできなかったのです。戦況次第で全く帰国する道は閉ざされました。まさに、本人たちの意思に反した強制によってしか成り立たない生活ではなかったでしょうか。   これは文部大臣に伺います。
  107. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 女性の尊厳と人格を傷つけるこうした問題は、私はやはり過去の影の部分ではなかったかと、こういう感想を持っております。
  108. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 私は、客観的な資料で確かめたこういう歴史の真実です。この歴史の真実を踏まえた歴史教育こそが日本子供たちに求められているのではないかと思います。重要なことは、歴史上の過ちを隠すのではなくて、国家の責任として認め、反省と償いによって世界の信頼を回復することだと思うのです。そこから自虐史観の教育ではなくて、自分の誤りを正すことによって世界の信頼を回復した誇るべき歴史教育、これが生まれてくるのではないんでしょうか。  国際社会に羽ばたく日本子供たちの歴史教育から、そして歴史教科書から歴史の真実をかき消さない、大臣のかたい決意を伺いたいと思います。
  109. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 学校における歴史教育は、児童生徒が我が国及び世界の歴史に対して理解を深め、国際社会に生きる民主的、平和的な国家や社会形成者として、必要な資質を身につけるということを目指して行われております。特に、近現代史の教育については、従来から国際理解、国際協調という観点からバランスのとれた教育というものが必要だと考えております。  私は、歴史教育の中では光の部分もあれば影の部分もある、そうした過去の事実は事実として正しく指導をすること。そして、それが学問的、客観的な研究成果を踏まえたものであるということが重要だと思います。  文部省は、これからも児童生徒が正しい歴史理解を持つように指導していきたい、適切な指導が行われるように努力をしてまいりたいと考えております。
  110. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 教育論的に思春期の子供たちにこうしたことを教えるのはいかがなものかという議論もあるようなんですけれども、私はこの議論には飛躍があると思います。愛のある性交とレイプまがいの性交との根本的な違いは、思春期の子供たちであるからこそ本当によく理解することができます。  発達学的に教育学的に言っても、今の中学校の歴史教科書からいわゆる従軍慰安婦に関する記述、私、教科書を全部見てみましたが、ほんの一行、ほんの一言、二言なんです。これを削除する必要はみじんもないというふうに確信をいたしますが、重ねて大臣の見解を伺います。
  111. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) これまでも予算委員会文教委員会でお答えしてまいりましたが、こうした記述を含む社会科の教科書につきましては、専門家から成る検定審議会の審議を経て、さまざまな角度からの検討を経た後に検定がされたわけでありまして、私ども、その後客観的な事情の変更がないという段階で、今の記述を訂正を求めるということにはなっていないと考えております。
  112. 江本孟紀

    江本孟紀君 私は、きょうはスポーツ振興予算についてお尋ねをしたいと思います。  先ほど橋本議員からもスポーツ振興の重要性ということについての話がありました。多少重複するかもしれません。  現在、長野でオリンピックに向けてフィギュアスケート会場、それからスピードスケート会場等競技施設が数多く整備されておりますけれども、  こういった施設に対して国はどの程度の補助を行っているのか。それからまた、競技力向上のためには、こういった施設面というかハード面も大変必要ではありますけれども、ソフトの面として海外遠征の支援、指導者の配置などの充実も不可欠であるというふうに思います。そういったことからも、ソフト面の予算も拡充していくべきだと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
  113. 佐々木正峰

    政府委員佐々木正峰君) 予算面につきましてお答えさせていただきます。  長野オリンピックの開催に必要なフィギュアスケート会場、アイスホッケー会場など六つの競技施設につきましてその事業費の約二分の一を国庫補助しております。平成四年度から九年度までの六年間に総額約三百四十億円の補助を行うこととしておりまして、平成九年度につきましてはアイスホッケーB会場の整備として十七億三千三百万円の国庫補助を行うことといたしております。  また、海外及び国内での強化合宿の実施、あるいは専任コーチを設置するための経費につきまして日本オリンピック委員会に対しまして国庫補助を行っておるところでございまして、平成九年度予算につきましては長野オリンピック対策重点強化合宿の拡充を行っておるところでございます。また、スポーツ振興基金においても、冬季競技種目選手強化事業に対して助成を行っておるところでございます。
  114. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 江本委員指摘のとおり、国際競技力向上のためにはハードの部分とソフトの部分があろうかと思いますが、御指摘のように、すぐれた指導者や専門スタッフを配置したり、あるいは海外における強化合宿とかあるいは国際試合に積極的に選手を派遣するとか、そういったソフトの面の選手強化というものの充実も重要だと考えております。  今体育局長からるる説明がありましたのですが、従来から文部省はJOCの行う選手強化事業に対しまして補助を行ってまいりましたし、また、平成九年度には各地域におけるジュニア選手の強化を図るための事業を行うことに、新たにこれはやることにいたしました。  それから、先ほどからお話が出ておりますスポーツ科学センター、これも平成九年度に建設に着手する、こういうことが決まっておりますし、そういったところを通じて、各種の実践的な研究を通じてすぐれた指導方法の開拓など、競技力向上のためのソフト面の充実を図っていきたいと考えております。  今、保健体育審議会競技力向上についての諮問を行っておりますが、そこの結論が六月に中間報告、秋に本格答申ということで、そういったものも踏まえまして一層積極的に取り組んでいきたいと考えております。
  115. 江本孟紀

    江本孟紀君 そういったソフト面も含めて予算というのが、この金額が今本当に多いのか少ないのかということでいえば、これはちょっと後でまたお話ししますけれども、そういった面を充実していただきたい。重要性が非常に高いということはわかりました。  そこで、長野オリンピックですが、あと三百日余り、来年の二月開催の予定ですが、これは大変世界では注目されておりまして、史上最大、七競技六十八種目選手、役員三千人が参加するというようなことで、これは最近は冬季オリンピックというのも大変な注目を浴びております。  ところが、これはマスコミ等では長野オリンピックの準備、運営というようなことについていろいろ指摘をされておりまして、先般も長野県知事のミズスマシ発言というようなこともありましたように、どうも当事者間で意識が非常に欠ける面もあるのではないかということで、大会に向けて何か心配な面も非常にあると思うんですけれども、そこで大臣、政府としてこの長野オリンピックということに対しての意義というものをどのように考えているかお聞きしたいと思います。
  116. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 江本委員が言われるように、大変大規模な大会になるわけであります。したがって、これは一九七二年札幌オリンピック以来二十六年ぶりの大会でありますし、また長野県とか長野市あるいはNAOC、長野オリンピック委員会、こういうところもなかなか経験も不足ですし、いろいろ人、物、金、すべての面で不十分な点がございます。  したがって、マスコミ等でいろいろな批判もありますけれども、私はやっぱり今まで経験したことのないこういう大規模な大会を開くことですから温かく見守って、私も二度ほど、長野オリンピック会場はエムウェーブのオープンのときにも行きましたし、またこの間のスピードスケートの選手権にも参加しまして激励をしてまいりましたが、幸いことしプレオリンピックということで世界各地で世界選手権等が開かれておりますが、日本選手も大変な活躍をしております。どうぞ、この所管の文教委員会の皆様にもぜひ足らざるところはひとつ御忠告をいただき、またよくやっているところは大いにお褒めをいただいて激励をしてやっていただきたいと思います。  とにかく、世界じゅうが注目をするビッグイベントであり、また日本スポーツ向上やあるいは国際親善にも役立つという観点から、私たちは何とかこれを成功裏に実施したいと考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
  117. 江本孟紀

    江本孟紀君 この長野オリンピックは、そういうことで大変意義のある大会だと思いますけれども、やはり出場する選手に頑張っていただきたい。  そういうことで長野オリンピック関係強化費や選手の強化費ですが、大体五億三千二百万というふうに予算ではなっておりますが、これが十分なのかどうかということもこれはわからないわけですけれども、実際に政府として選手強化ということに対してどのように取り組んでいるのか、またこの五億三千二百万が本当に妥当かどうなのか、その辺も含めて財政的なものを含めてお伺いします。
  118. 佐々木正峰

    政府委員佐々木正峰君) 長野オリンピックについて、我が国選手が活躍をするということは青少年に夢や感動を与える大変有意義なことでございまして、冬季競技種目の強化を重点的に行うことは重要であるというふうに考えております。そういう観点に立ちまして、海外あるいは国内での強化合宿の実施、あるいは専任コーチを設置するための経費について国庫補助を行っておるところでございますし、また合宿につきましてもその拡充を図るなど所要の経費を措置しておるところでございます。  そのトータルの額としては、金額が多ければそれにこしたことはないというふうな意見もあるわけでございますが、厳しい財政事情の中で文部省としては格段の努力をしたつもりでございまして、文部省といたしましては選手諸君が国民の期待にこたえて大活躍をしてくれることを心から期待をしておるところでございます。
  119. 江本孟紀

    江本孟紀君 先日もこのオリンピックの意義というのをお話しさせていただきましたが、今度の冬季オリンピックも金メダルをどれぐらいとれるか、メダルをどれぐらいとれるかということですけれども、いずれにせよ、夏も冬もこのオリンピックの果たす役割、これは大変な役割があるのではないか。  さきのアトランタの場合は、ちょっと橋本さんがいるので言いにくいんですが、余りいい成績じゃなかった。しかし、ある程度の四年間にわたるオリンピックに出るまでの間、間接的にも大変な予算を使って何とかしてほしいというような気持ちで出されたと思います。  このオリンピックが果たす役割というのは、私はプロスポーツでしたから、単なる私は自分の個人的な生活だとかいろんな自分の個人的な欲望というか、そういったものでプロスポーツをやっておりまして、皆さんに感動を与えたかというと、どちらかというと嫌われた部分が多いんですけれども、それとは違ってオリンピックというのはその果たす役割というのは、下手なドラマを見るよりも感動的であり、芸術的であり、まさしく文化的な行為であるといったことからしますと、お金を相当つぎ込んでも私は別にこれは損はない。嫌な世の中をぐずぐす見ているよりも、一瞬にして、今高校野球なんかでも感動とかああいったものを一瞬にして味わえる、これはもう本当に大きなことだと思います。  だから私は、そういった意味スポーツの果たす役割というのは大きいので、ぜひ予算、こういったものを多くとっていただけるようにぜひお願いしたいと思います。最後に大臣の、そのような私の考えについてお願いします。
  120. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 確かに、日本選手オリンピック等で活躍をしている姿というのは、日本人にとって大変刺激を与え、活力を与える。終戦直後の古橋選手を初めとする日本の水泳選手の例を前にも出しましたけれども、やっぱりそういうことで競技力向上ということは非常に意義深いものと考えております。  しかし、今御指摘のように、過去のオリンピックに象徴されるように、世界競技水準が高まっていく中で相対的に日本競技力低下しているということは否めない事実であります。したがって、我々は今度の九年度の予算におきましても、スポーツ科学センター、長年の悲願であったものを約四十一億円の予算で計上することができましたし、またナショナルトレーニングセンターあり方についての調査会の経費も、あれ一千数百万でしたか——一千万。専門家がおられますからあれなんですけれども、そういう調査研究など国際競技力向上のための施策を盛り込んだところでありまして、ぜひ今後、保健体育審議会で国際競技力向上についてのひとつ審議をしていただき、また江本委員を初め当委員会の有力なメンバーの皆さんのいろいろな御示唆をいただきながら、さらにこの分野の前進を図っていきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
  121. 江本孟紀

    江本孟紀君 ありがとうございました。
  122. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 私はきょう、医学教育とテレクラについて質問させていただきます。  まず、医学教育なんですけれども、現在医療保険制度改革の中で、二十一世紀の高齢社会に向けて日本の医療の質的転換、そして抜本的な改革をどう実現していくかということで目下検討を重ねているところでございます。その中で医師あるいは歯科医師の需給の見直しの必要性が指摘されています。  厚生省の平成六年の医師需給統計によりますと、平成十二年には九千人のドクターたちが過剰になるというふうに言われています。しかし、医学部の定員を見ますと、昭和六十一年から平成七年までの十年間の削減率は七・七%、目標とする最小限一〇%をはるかに下回っているわけなんですね。やはりドクターがふえるとそれに伴って医療費がふえるという必然がございまして、これは今後大変な問題になってくるのではないかというふうに思っています。  医療の質的、量的改革を行うに当たって、医学部における医学教育の質的転換、あるいは入学定員の削減ということもまたこれ必要不可欠なのではないかということで、むしろ文部省医学教育の方が先行すべきことではないかと思いますので、この辺をどうお考えか。もし大臣に最初にお答えいただけたらそこをお答えいただいて、後で細かいことを——数字は後から伺いますが、その質的転換とその削減に関してどうお考えか、そこを大臣に。
  123. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 近年における医学医療の変化というものは大変急ピッチでありまして、今まさに過渡期にあると思います。  今、堂本委員指摘された質的転換というものは大変重要なテーマでありますし、また将来のドクターの過剰という問題も深刻に受けとめていかなければなりません。こうした人材養成をつかさどる文教行政におきましては、できるだけ長期的な見通しに立った養成計画というものが必要だと思います。国立大学の医学部等におきましては比較的この計画に沿った削減を行っておりますが、残念ながら公立、私立におきましては十分そうした削減が行われていないということを遺憾に思っておりまして、今後そういった指導についても文部大臣として努力をしたいと思っております。
  124. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 それでは局長に伺いたいんですけれども、単に削減するというよりもその質的転換の内容なんですけれども、高齢社会を迎えて老人なんかは特に慢性期の医療、それから介護の問題もあります。そこで必要になってくるのがいわゆるパラメディカルの領域、あるいは看護婦さんや看護士さんといった部分の方がさらに大きく活躍しなければならない時代になったと思っています。理学療法士、PT、あるいは作業療法士、OT、それから言語療法士、それからケースワーカー、精神科のソーシャルワーカー、PSWと言いますけれども、そういった医療の周辺の人たちが大いに活躍する時代になったというふうに思います。  ところが、こういった領域の教育が大変立ちおくれている、量的に立ちおくれている。それから、それぞれに専門的になり過ぎていて、相互に乗り入れをしていない。例えばOT、PT、STなどそれぞれがもっとお互いにいろんな能力を持てば、小さい病院とかそれから地域でも一人の人でいろいろ対応できるのが、一つの専門しか持たないというようなことを聞いています。こういったパラメディカルの部分、それから看護婦さんや看護士さんとの関係、そういった点について教育の場から改正していく、改正と申しますか転換していく必要、教育のあり方を変えていく必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  125. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) ただいま委員指摘のとおり、高齢化社会を迎えまして高齢者に対する医療サービスや介護サービスの需要が大いにふえてくるわけでございます。そういう状況の中で、単に従来言われておりました医師、看護婦以外に、パラメディカルあるいはコメディカルと言われておられる方々、理学療法士や作業療法士、社会福祉士、介護福祉士などの方々の需要というのは量的にも確かに不足しておるわけでございまして、これにつきましては、私どもとしてもできる限りの努力を今後ともしていかなければならないというようにまず一つあるわけでございます。  もう一つ、質的な問題といたしましては、先生も御指摘でございましたけれども、やはり医師、看護婦あるいはそれらの方々が各個別に動き回る、立ち回るということではやはり総合的な医療ということができないわけでございまして、実は昨年、私どもの方にもたらされました二十一世紀医学・医療懇談会の報告の中でも、これらの方々をすべて含めまして医療人という新しい概念を打ち立てまして、医療というのはそういうすべての機能を備えた方々によるチームによって総合的な医療を行うべきであるというようなことがうたわれておるわけでございまして、そういう考え方に従って、やはり医療あるいはそのベースとなります医学教育というものも行われていかなければならないということで今後とも対応していきたいと考えておるわけでございます。
  126. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 今、チームとしてとおっしゃったんですが、ドクターにしても、三時間待ちの三分医療と言われるように、大変大病院志向が強うございます。一方で地域の開業医、いわゆるかかりつけ医はもう平均年齢が六十歳、こういう状況を生み出してしまった一つの原因は、やはり高度医療の発達に伴って医学が専門化、細分化していった。そして一方で、プライマリーケアを行う地域の医療、あるいは全人的、総合的な診療が軽視あるいはないがしろにされてきたからではないかというふうに思うわけなんですけれども、二点伺いたいんです。  一つは、今後できるだけ高齢者も予防が大事です。それから健康の増進が大事です。それから在宅医療が大変大事になりますが、こういった部分を担うかかりつけ医の役割は非常に重要になってきていますから、体の部分とかそれから病気ごとに専門医を養成するのではなくて、カリキュラムでもそれからインターン制のインターンシップの中でも、そういったかかりつけ医を徹底的に教育するということを進めていただきたい。それが一つです。  それから二番目には、今少しお答えの中にあったんですけれども、医療改革の中で、病院でもそれから地域でも総合診療科を普及しなければならない、そういう科をつくっていこうということが今指摘もされ浮上もしてきています。高度医療の領域でも全人的、総合的な診療能力あるいは教育が必要だと思いますけれども、教育の内容的にもそれから時間的にも充実するということをぜひ進めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  127. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 先生の御指摘のところは、要するにある一つの専門ばかりにこだわってすぐ隣の領域もわからないというような医療であっては困るというような御指摘であったかと思うわけでございます。これにつきましては、医学関係者の間におきましても問題点であるというように指摘されておるわけでございます。  もちろん、専門的な研究それ自体はそれぞれ大いに先端的なものであってしかるべきでございますけれども、医療の現場におきましては幅広い視野のもとに医療が行われるべきであるということでございまして、そういう意味合いにおきまして、特に卒後の臨床研修の場におきましてはそれぞれ主たる診療科もあるわけでございます。また、いわゆる何とか教室というものがあるわけでございますが、隣のところが全然わからないというようなことのないように、それぞれの診療科同士で連携を保った卒後の臨床研修ができるようにということで提言もいただいておるわけでございます。  また、組織の上でもできるだけ大講座化を図るというようなことで、余り専門分化した形で臨床教育が行われていることのないようにというような動きも現実にあるわけでございまして、それらの動きを大いに私どもといたしましても支援してまいりたい、こういうように考えておるわけでございます。
  128. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 医療財政が破綻しそうな時期で、どうしても医療改革というのは非常に近い将来やらなければならないわけでございまして、医学教育の方が後からついていくようでは大変困るというふうに思っています。  臨床教育ということ以前に、カリキュラムの中にもそれから入学するときにもそういったかかりつけ医というのが、例えば脳外科の専門家と同じだけ価値があるのだという視点をきちんと教育の中でする。そして、そういった総合科の、総合的に診療できるということを一年生からずっと、六年間あるんだったらばその間ずっとどこかで必ず続けていくというような形で、終わってからどこかでちょこちょこと総合的な形で臨床をするというのではない抜本的な改革をしていただかないと、今日本の医療というのは本当に大変大きく変わっていく中で医師の能力が対応できないというふうに思います。  それだけではなくて、これからは地域でのかかりつけ医が大事になるんですけれども、厚生省にもいらしていただいていますが、今度はそういったかかりつけ医が生涯教育を必要としています。そのためにやはり文部省と厚生省で垣根をなくして、例えば国立大学の医学部を活用するというようなことで教育していくべきだと思いますけれども、厚生省の見解を伺いたいと思います。
  129. 小島比登志

    説明員小島比登志君) 先生御指摘のように、かかりつけ医の養成のためには医師の生涯教育が大変重要であるというふうに考えております。  昨年、厚生省の懇談会におきましても報告が出されまして、医学、医療、技術の進歩に対応してかかりつけ医が継続的に地域医療の発展に寄与できるよう生涯教育を充実することが必要であるというふうに報告をされているところでございます。  医師の生涯教育につきましては、従来から日本医師会あるいはまた各医学関係学会でかなり積極的に取り組んでいただいているところでございますが、御指摘文部省との協力ということでは、医師の生涯教育の出発点ということになろうかと思いますが、卒後臨床研修につきまして、文部省と厚生省が共同でこの三月に医師の卒後臨床研修に関する協議会を設置いたしました。こういった機会を設けまして、かかりつけ医養成のための生涯教育についても文部省と積極的に協議をして医師の質的向上に努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  130. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 本当にやはり医学部とそれから実際に今検討している医療改革とはこれは切っても切れない関係にあるので、ぜひ大臣にも、行政の縦割りというところを取り払って、協議だけではなくて具体的な合同の施策をどんどん展開していただかないと間に合わないのではないかということだけお願いさせていただきます。  次に、去年、ちょうど一年以上前になりますが、二月にテレクラの質問をさせていただきました。以来一年たちますが、そういったテレクラで少女たちの電話による援助交際というようなものが減っているかと申しますと、そういうことはございません。  きょう持ってきましたけれども、中は全くのヌードの写真がいっぱい、それもティーンエージャーのヌードの写真がいっぱいあるようなこういった雑誌がコンビニなどで毎日のように売られているわけです。  前回、質問を申し上げたときに、初中局長もおかわりになりましたけれども、それは例外であるというふうにおっしゃった。しかし、今やテレビを見ても雑誌を見ても、そういうことが数限りなくあります。今やこれは社会的な病理というふうに考えざるを得ない。テレクラ等についての情報がこんなにはんらんしている以上は、その情報から子供たちを隔離するなんということは不可能なことです。また、すべきでもないかもしれません。  ただ、重要なのは、むしろそういった子供たち本当に必要な情報あるいは教育が与えられているかどうかということなんです。前回は、学校家庭の場ではそういうことは関係ないんだというふうにおっしゃっていましたけれども、家庭はそうでもないかもしれませんが、学校の教室ではそういうことでは違うんだとおっしゃいましたけれども、私は、やはり被害を受けるのは女の子でございまして、さっき大臣がお使いになったまさに女性の人格と尊厳が傷つけられていると思っています。  前回の質問のときにも申し上げましたけれども、コギャルと呼ばれる中学生は大体五万から八万で児童売春をする、それから女子高校生になると四万から五万、大学生は三万円だと。子供たちの川柳が一番如実に彼女たちの思いをあらわしていて、「テレクラも なれてしまえば 大金持ち」とも言っていますし、それから「テレクラで金につられる 女子高生」、これは自分のことをある種非常に比喩的に言っていることでもあります。  こういった中で、一年前はまだ条例は十九でしたけれども、今は四十五の道府県で条例ができた。長野と東京だけがない。にもかかわらず、国としては一向に進展していない。文部省にはさんざん私は何回も何回も質問をしてお願いをしてきたんですが、具体的な対策は講じておられるんでしょうか。
  131. 辻村哲夫

    政府委員(辻村哲夫君) 子供たちの環境をきれいなものにする、これは文部省限りではできない課題でございまして、関係省庁にお願いをしているところでございますが、一方、子供たち自身も自分たちの生き方、あり方の問題として、あるいはみずからの人権はみずから守るということ、こういった教育の面においては学校教育が大変重たい責任を持っているというふうに考えます。  そこで、昨年の二月二十二日に先生から御指摘があったわけでございますが、その後私ども、二月二十七日でございますが、いじめ問題も大変大きな問題になっていたということもございまして、各都道府県の担当者を招集いたしまして、この問題につきまして率直な説明をし、学校家庭地域社会に訴えると同時に、学校みずからも真剣な取り組みをしてほしいという要請をいたしたところでございます。  また、五月には警察庁の担当者にお越しいただきまして、やはり都道府県指定都市教育委員会の生徒指導担当者の会でございますけれども、このテレクラ問題等に焦点を当てまして、その現状等について説明を行い、学校におきます指導充実に努めたところでございます。  それ以外に、やはり家庭地域社会にもお願いをしなければいけないということもございますので、私ども生徒指導担当の推進会議というのを持っておりますが、それは学校関係者のみならず家庭地域社会、保護者の方々も加わった会でございますが、そういうところでもテレクラ問題を含めます性非行の問題等をテーマとして取り上げまして情報交換をし、各地域地域において取り組みを強化するという情報交換等を行っているところでございます。  私どもの担当といたしまして、昨年の二月、先生からの御指摘を受けまして以降対応いたしましたものは以上のような、主として啓発そして問題の重要性の認識の強化、こういうことでの取り組みを進めてきたということでございます。
  132. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 その程度ではとても無理だと思います。やはり一つ一つの教室で、性教育のあり方自体が雌しべ雄しべというような時代ではなくて、本当に女の子と男の子が人格的に、肉体的にも精神的にもどれだけ相手の尊厳を大事にしていくかということの教育をきちっとしていく。スウェーデンなんかですと幼稚園からそれをやっています。大学までやっています。ですけれども、周りで何となく地域とか家庭、とても間に合わないと思います。  きょうは厚生省にもお越しいただいたんですけれども、実際に、そのために望まない妊娠をしてしまう、これは生涯にわたって女の子にとっては大変なことなんです。そのためにやはり子供たちが何とか中絶をしなくて済むような、そういった領域にまで入ってきているわけです。厚生省としてはどう対応されているのか。  それから、昨日連絡協議会が開かれて少女売春についての問題が取り上げられたと伺っていますので、そのことについては総務庁の方からお話を伺いたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。
  133. 北井曉子

    説明員(北井曉子君) 御指摘の望まない妊娠の防止につきましては、女性の健康につきまして大変重要な課題だというふうに認識をいたしております。これを未然に防止するためには、いろいろな対策を講じておりますが、まずは生命のとうとさというのを認識を高めていただく、そしてまた正しい知識の普及というのが何より重要な課題だというふうに考えておりまして、思春期体験学習授業というのを推進しているところでございます。  また一方、性に関するさまざまな相談に応じるために、電話相談あるいはまた思春期クリニックを設置いたしまして、その推進に努めているところでございます。  また一方、本年度から私どもの心身生涯研究におきまして生涯を通じた女性の健康づくりに関する研究というのをスタートしていただいておりますが、その中で、青少年に対して行う性教育のあり方、またメディアの性に関する報道の若者に及ぼす影響というような内容につきましても研究をしていただいているところでございますので、これらの研究成果もその施策の一つ一つに反映をさせていきたいというふうに考えております。
  134. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) 恐縮ですが、時間が来ておりますので簡略にお願いいたします。
  135. 中澤見山

    説明員(中澤見山君) 先ほどのテレクラ等に絡みます少女の性的被害の問題でございますけれども、御指摘の非行等問題行動対策関係省庁連絡会議におきましては、委員の御指摘をも踏まえて、平成七年度以来引き続き会議を開催しておりまして、被害の実態とか実態調査結果を踏まえて、関係省庁の施策の中でこの問題の解決に取り組むよう意思統一を図ってきたところでございます。  具体的には現時点で、先ほど先生のお話にございましたように、四十五の道府県でテレクラ等を規制するための条例も制定されており、地域の環境浄化が進んでいるところでございますが、児童自身が被害に遭わないための意識の啓発、それからまた地域社会の大人が児童を安易に性の対象としないということを中心に据えて、各種の広報啓発活動等を進めていくこととしているところでございます。昨日の会議もほぼそのような趣旨で話をしているところでございます。
  136. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 一言だけ。大臣、これは今総務庁や厚生省からお話がありましたけれども、この内容はやはりお教室で子供たちに話していただく以外にないわけです。周りから間接的にやっていたのでは、何しろPTAのあれですと、中学の二年、三年の四十万人がテレクラをやっている。ですので、ぜひ省庁の垣根を取り払って、これも医療と同じように子供たちのことをお願いいたします。
  137. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) じゃ一言だけ。  今、お話を傾聴いたしました。この問題は、やっぱり生徒自身の自覚を促す教育が必要ですし、また子供を取り巻く社会環境というものも整備していかなきゃいけない。各省力を合わせて、できるだけ壁を取り払って垣根を低くして我々協力してやっていきたいと思っております。
  138. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) 以上をもちまして、平成九年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、文部省所管についての委嘱審査は終了いたしました。  なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  139. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  140. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) 次に、国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより直ちに質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  141. 馳浩

    ○馳浩君 自由民主党の馳浩でございます。よろしくお願いいたします。  政策研究大学院大学の設置に絡みまして、大学院の重点化政策に関しましてまず質問をさせていただきます。  平成三年の五月に、これは井上裕文部大臣のときに大学審議会の答申として「大学院の整備充実について」という答申が出されております。内容を簡単に申し上げますれば、学術研究と専門教育の中心を大学院に置き、質量ともに大学院を拡充し、さらに大学院の人事、予算施設の面において学部から独立させる政策であると、まさしく大学院の予算部局化策として答申が出されております。  そこで、細かいことは抜きにして、なぜ大学院を充実させなければいけないのか、大学院教育によってどのような人材を社会に送り込もうとしているのかというこの件につきまして大臣に質問を申し上げます。
  142. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 大きく言って二つあると思います。これは、学術研究というものをもっと高めていくということ、それから専門的なそういった能力を有する人材の育成、この二つに私は主たる眼目があると思っております。
  143. 馳浩

    ○馳浩君 という答弁を期待しておりましたが、現実問題として、十八歳人口の減少という問題を考えましたときに、もしかしたら大学側が学部に入ってくる学生が少なくなる、では大学院修士、マスターを拡充して経営のことも考えて学生を確保するためにといううがった考え方も一つあります。  と同時に、十八歳人口が増加しておったときに大学の教員をふやしました。ふやした教員は勝手に簡単に首を切ったりやめさせることはできないわけでありまして、そういう意味では、学部とそれから大学院におきまして教員を差別化することによって、行き場のなくなった大学教員をカットしょうという考えもあったのではないかなという、これは大臣のお答えには全くありませんでしたけれども、そういう見方もあるわけでありまして、そういった一般の皆さん方からの懸念が違うんだよということを言うためにも、少しこれは文部省、いろいろお答えいただきたいと思います。  つまり、学部教育における専門職業教育をどの程度行うかという問題でありまして、これは文科系と理工系に分けて私はちょっと指摘したいと思います。  実は、主要な国立大学におきまして、理工系大学生の大学院進学率は五〇%を超えているということでありますから、理工系に進んだ学生は大学院まで行ってマスターまで行って勉強せぬことには就職のときに相手にしてもらえないというような風潮があると思います。ところが、一般に言うところの学部教育におきまして、文科系は学部教育において専門的な職業教育が修了すると言われておりまして、大学審議会が答申で出しましたように大学院でも文科系の教育を充実拡充するということになりますと、文科系におきましては、学部教育で専門職業教育を一回完結してさらにまた大学院のマスターにおいてもということになりますと、重複が避けられないわけであります。  文科系の大学院におきまして、学部教育と大学院教育のこのすみ分けというものをどういうふうになされておるのか、考えておられるのかを質問いたします。
  144. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 大変難しいお尋ねでございます。  学部から大学院に向けていろいろな教育が行われているわけでございます。御承知のように、学部におきましては専門教育だけではございませんで、その基礎、基礎と言うべきかどうかあれでございますが、いわゆる一般教育あるいは教養教育というものもあわせて行われているわけでございます。また、大学院教育のレベルにおきましては学部の延長的な色彩のものもございますし、若干それを絞った形での教育も行われているということもございます。  また、今御指摘のように、文系と理系とでは一般的に非常に進学率において随分と違いがあるわけでございまして、理工系につきましては学部から大学院に二三・四%が行きますけれども、文科系は三・二%ということでございまして、確かに委員指摘のように、現在の状況を数字の上から見ますと専門教育の終点と申しますか、それにつきましてはやはり理工系と文系とによって全体として違いがあるというのは事実でございます。  ただし、文科系におきましても学部教育では十分ではなくて、やはりその上に大学院教育を載せないと不十分な領域というのが最近ふえてきたというように私ども理解しておるわけでございまして、例えば、人間科学でありますとか地域研究でありますとか、あるいは実務法学でありますとか社会情報システムでありますとか、いろいろな学問の発展やらあるいは社会経済の変化ということによりまして、単に学部だけでは修め切れない、あるいは非常に最先端的なあるいは学際的なと申しますか、そういうような領域というものが文科系の面でも出てきているということは言えようか  と思うわけでございます。  そういうことで、社会人として一たん学部を出て社会人になった者であっても再び大学院に入って学び直すという、そういうインセンティブというものは従来に比べてふえてきているのではないかというように思っておるわけでございますが、ただし量的には、先生も御指摘のように理科系に比べてまだまだ不十分なところがあるというのは事実でございます。
  145. 馳浩

    ○馳浩君 まさしく、文科系の大学院の拡充をされるのはいいんですけれども、それによって行われる教育内容が重複しないように、下手をすると大学の学部教育が高校の補習科になってしまうと。恐らく、初等中等教育と高等教育の連携の悪さだと思うんですよ。大学の先生は、高校から上がってくる学生はどの程度のことを、物理におきましても数学におきましても、私は国文学でしたからそういう文学的な問題にしましても、どの程度習得しておるのかということは余りよくわかっていない点が多いわけですね。そういう点におきまして、学部教育と大学院教育のこの重複が、余りむだがないようにしてもらいたいということをまず申し上げます。  二点目としましては、大学院教育を拡充する場合に、これは施設もそうですし教員もそうですし、それからまさしく予算、これが独立されなければいけないわけでありまして、その点の取り組みはいかがになっておるものかといいますれば、学部教育の寄生的存在と言われているようではまだまだ大学生き残りのための大学院拡充と言われても仕方がないわけでありまして、この点コメントをいただきたいと思います。
  146. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 大学院に対する予算措置についてのお尋ねでございます。  一般的な校費という面から申しますと、現在の仕組みのもとでは学部も大学院も込みで一般的な運営費というものが積算されておるわけでございますが、それだけではもちろん不十分なわけでございます。したがいまして、それに加えまして、大学院のための高度化推進特別経費でございますとか、あるいは最先端の教育研究設備を重点的に整備するための大学院最先端設備費の充実など、いわゆる教育研究条件の充実のための予算措置も講じておるわけでございます。  また、学生の経済的な生活ということにも配慮をいたしまして、育英会の育英奨学事業充実あるいは日本学術振興会の特別研究制度等、それらの施策を通じまして大学院学生の処遇の改善にもあわせて配慮しておるということでございます。
  147. 馳浩

    ○馳浩君 よろしくお願いいたします。  そして、最も私は重要だと思いますのが卒業生の就職先の問題であります。この点、文系と理系で違うとは思うんですれども、それに分けて、さあ教育はいたしましたよ、進路に関しては学生さん勝手にどうぞというわけにはいかないわけでありますから、文部省としてどういう施策をとっておられるのかお伺いいたします。
  148. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 就職ということに関しましては、非常に一般的な言い方であれでございますが、どちらかといいますと私立大学の方が進んでおるわけでございまして、国立大学はおくれておるというように一般的に言えようかと思うわけでございますが、昨今の情勢にかんがみまして、やはり学生の就職をきちっとするということ自体が大学の重要な機能でございます。  そういう意味合いにおきまして、昨年度から私どもの方といたしまして、大学関係者それから企業の関係者、それぞれ両者の参加を得まして就職採用情報等の交換、すなわちどういう人間を欲しいかということ、あるいはどういう人間を採ってほしいかというようなこと、それらの情報交換を行うための全国就職指導ガイダンスというものを年二回設けるようにいたしておるわけでございます。  また、就職指導体制充実ということで、学生部中心でございますけれども、就職指導体制の強化についても、まだ不十分でございますが、やり始めておるところでございます。  また、いわゆる就職枠の確保ということにおきましては、昨年来現大臣におかれましても各経済団体を回っていただきまして、それぞれの能力、意欲のある人物をたくさん採ってもらえるようにということで各経済団体にも要請をお願いしているところでございます。
  149. 馳浩

    ○馳浩君 まさしく、これから科学技術創造立国として日本は新たな分野に進出していかなければいけない段階にありますから、研究者が大学で教員として非常に自分の業績を評価されていくようなシステムになるとか、あるいは専門職的な職業人として企業に勤めるようになったときに有効な就職先を産官学が連携をとりながら確保するということは必要なことだと思いますので、今後の一層の取り組みをお願いいたします。  ちょっと次は大きな質問になるんですけれども、大学院を拡充する、重点的な施策をとるということにおきまして、偏差値教育との関係を私は質問させていただきます。  私は、本音は大学には希望すればできるだけ入れてあげればいいと思うんですよ。ただし、入った以上は進級進学はもう厳しくやるべきだと思っているんです。その最たるものが大学院であるべきだと私は思います。  それをすることによって、一般に言われますどこの大学を出たから就職に有利になるとか、どこの大学を出るというその学歴主義がステータスになるような社会的な風潮ではなくて、大学で何を学んだかということを評価されてそれが進路に結びつくような社会あり方でなければいけないと思います。  そういう面におきましては、塾というものはもうお受験から始まりまして小、中、高、大学とありますけれども、大学院へ入学するための塾というものはこれはまさしくないわけでありまして、大学院さえ国としてしっかり金をつけて、予算をつけて、教員も充実することによって、むしろそういった大学で何を学んだかということが問われるシステムにしていかなければいけないと私は思います。  巷間言われます偏差値教育の弊害と、それから大学院重点化施策というものの関連性というものをどうお考えになっているのかを、お答えづらいかもしれませんが、お願いいたします。
  150. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 二点申し上げたいと思うわけでございますが、一つはどういう勉強をしたか、単に名目ではなくてどういう勉強をしたかということが問われるべきなのは、大学院だけではなくて学部段階の教育についても同じように言われるべき事柄ではなかろうかと思うわけでございます。  ただし、今先生御指摘の多分背景にありますのは、学部段階への入学というのはとりあえずは入っておこうかというような学生なしとしない、それに比べて大学院の方は勉学意欲と申しますかあるいは進路に対する確信と申しますか、そういうものにおいてかなりきちっとしたものが比較的あるだろうというような事実認識のもとにおっしゃっておられることだろうと思うわけでございますが、世の中全体としてやはり実質を重んじていくという傾向にあること、これを助長していくことがいわゆる過度の受験競争を緩和するということにもつながるということにおいてそれが一つ意味合いがあろうかと思うわけでございます。  もう一点は、大学院の機能といたしまして学部卒をそのまま受け入れるということのほかに、やはり一たん社会人に出た者を再び受け入れるという、リフレッシュ教育とも言っておるわけでございますが、そういう機能をあわせて持っているわけでございまして、いわゆる勉強をする機会というのは生涯を通じて何回もあるんだということを通じて、単に十八歳の時点あるいは十五歳の時点、そういうことだけがいわゆる勉学の上での平たい言葉で申しますと勝負の時期ということに限定されるものではないという意味合いにおきまして、さまざまな機会が提供されるという意味合いにおきまして大学院の場が活用されるということは非常にいいことではないかというように思うわけでございます。
  151. 馳浩

    ○馳浩君 わかりました。  では、引き続きまして政策研究大学院大学の設置に関しましての質問に移ります。  ことしの十月一日に設置し平成十二年度から学生を受け入れると、三年間の準備期間があると思いますのでぜひその期間内により社会に、国家にとって必要な大学院大学として整備されますよう願いまして、幾つかの質問をさせていただきます。  今回の政策研究大学院大学を設立するに当たりまして、埼玉大学の政策科学研究科を廃止することにしていると。そうですね。しかし、今までお答えいただきましたけれども、大学院の形態の多様化という時代になってまいりますと、この埼玉大学の政策科学研究科も残して、まさしくおっしゃったように社会人を受け入れることもできるように夜間大学院とするとかあるいは昼夜開議制大学院にするとか、そういう意味での高度専門職業人の養成を埼玉大学の研究科に任せて、政策研究大学院大学では研究研究者の養成に当たる、こういうすみ分けをしてもよかったのではないかと思いますが、なぜ埼玉大学の研究科を廃止するのでしょうか。
  152. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 今回の政策研究大学院大学の母体が埼玉大学政策科学研究科にあることは、御指摘のとおりでございます。  したがいまして、埼玉大学政策科学研究科というものを残してということも論理的には可能であるわけでございますが、一つには厳しい行財政事情のもとでいわゆるスクラップ・アンド・ビルドということもございますし、また政策科学研究科というものがやはり大いに発展するということのためには、埼玉大学のたくさんある部局の中の一部局として行くということよりもやはり独立した方がいい、その方が将来の発展に役立つということで新たな独立の機運があったわけでございまして、したがいまして今回政策研究大学院大学を設けるのとあわせまして、埼玉大学の政策科学研究科を廃止するということにいたしたわけでございます。
  153. 馳浩

    ○馳浩君 私は、それはおかしいと思います。政策研究については、これは政党は幾つもありますかもしれませんが、政策というのは幾つか複数の中から最良のものをその時代の国の方向性に合ったものについて選んでいくべきものであって、その一つに集約して研究の拠点を今回の大学院大学に置けばいいというものではない、私はまずその意見は申し上げておきたいと思います。埼玉大学なら埼玉大学なりの役割というものを持たせればいいのではないかということをまず申し上げます。  それでは、次に行きます。  この政策研究大学院大学の性格、設置するところの目的につきまして申し上げます。  二十一世紀は知識が重要な時代と言われておりますけれども、今までのような大量生産大量消費ではなくて知識の生産によって国家の経済を上昇させていこうというふうな時代になってくると思いますが、よく言われるところのアメリカでいいますればロックフェラー研究所のようなセンター・オブ・エクセレンス、卓越した研究拠点という英訳をするのだそうでございますが、そういったものをこれから設立していかなくてはいけないのではないか。  センター・オブ・エクセレンス、わかりやすく重要なポイントを私が解説させていただきますと、人材を広く世界に求めまして研究の内容の幅を広くいたしまして、若い研究者に研究の自由を与える、それを支えて豊富な資金を用意して、研究所を統括する学長が時代の流れを読み取ってその中で研究をさせるというところであるということでございます。センター・オブ・エクセレンス、その世界的な代表的な研究所がロックフェラー研究所であるということであります。  そこで、先般いただきました国立学校設置法の一部を改正する法律案資料集によりますと、これは「学際的な教育研究を行う中核的機関として大学院のみを置く大学を設置するものであります。」と中核的機関としてこの政策研究大学院大学をとらえておられますが、私はむしろこのセンター・オブ・エクセレンス、COEと言いますけれども、そういう性格をこの大学院大学に持たせるべきだと思いますが、文部省としてはこの政策研究大学院大学をどのような位置づけとしてとらえていかれるのでしょうか、お伺いいたします。
  154. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) あえて従来の学部の上に載っかった大学院ということではなくて、政策科学分野で学部を持たずに大学院だけを持つ大学として構想しておるわけでございますので、私どもといたしましては、この新たな大学院大学というものが政策科学分野におきましてリーダーシップを持っていくだけの力量を持ってもらいたいという期待を込めてお願いしておるわけでございます。  ただいまCOEという御指摘がございました。COEという定義をどうするかということにつきましてはいろいろございますけれども、現在文部省の方で特に学術研究という角度から学術研究の中核的な拠点というような意味合いにおきましてCOEというような言葉が使われておるわけでございまして、これは文部省の中での話でございますのでCOEと言ってはいけないということはないわけでございますが、一応そんな文脈があるものですから。  それに対しまして、この政策研究大学院大学の場合には研究もやりますし教育もやるという二つの機能をあわせ持っているということからして、COEのようなものを目指したいということでは共通なんでございますけれども、あえてCOEという言葉を使いませんで中核的機関というような言葉を用いたものでございます。
  155. 馳浩

    ○馳浩君 まさしく卓越した研究拠点としての期待があるということでございますけれども、三点大臣に申し上げます。所見を伺いたいと思います。  ぜひ研究の優秀性、卓越性を基準にして研究費等の予算配分をしていただきたい。私は大学の教授として籍を置いたことがないのでこれは石田先生に伺った方がいいのかもしれませんが、大学の研究予算というのはどういうふうに配分されるのか。何か学閥的とかいろんな人的な力関係でというふうな私は不安を覚えますので、そういう意味での研究の卓越性、そういったものが評価されるような予算配分。予算の配分というのは最終的にだれが決定するのか私もちょっとよくわからないんですけれども、新しくCOEのようなものとしてこの大学院大学を設置するならばその点をもっと明確にしていただきたいという点について。  二点目が、これは教員の任期制、大学の自己点検評価、さらには外部評価制の採用、こういったものを取り入れていただきたい。  三点目として、これは学長の在任期間の長期化という点でありまして、やはり先見性のある学長が長期間いることによって時代の流れを読み取る、そういう研究を行っていただきたいという意味でこの三点を提言として申し上げたいと思いますが、大臣、この三点につきましていかがでしょうか。
  156. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 政策研究大学院大学に大いに期待するという意味合いにおきまして、しかるべき予算措置を講じたいとは思っておるわけでございますが、ただし、具体の教育研究活動、特に研究活動という面を見てまいりますと、やはりそれなりの実績を積んでもらわなければならないということでございまして、その実績に応じてしかるべき予算措置を講じてまいりたい、こういうことでございます。  それから、任期制のお話がございました。  任期制のことにつきましては、今国会にも任期制のための法案を提出すべく今準備中でございますけれども、本来この政策研究というテーマ自体の性格にも由来するわけでございますけれども、やはりいろんな実務的な経験のある方々、あるいはそれぞれの分野での専門家が、固定的にではなくて、一つのテーマのもとにかなりの流動性を持って出入りするという形のものがやはり望ましかろうということで、現在の構想もでき上がっておるわけでございます。そういう意味合いにおきまして、任期制も活用してもらいますし、あるいは客員部門というようなことを通じまして流動化を図るというような措置を講じてまいりたいと思っておるわけでございます。  外部評価の点につきましては、現在でもかなりの大学で、単に自己点検評価だけではなくて、外部の方々にもお願いしてそれぞれの教育研究活動を評価してもらうという動きがかなり起きてきているわけでございます。この新しい大学院大学におきましても、当然そういう方向での努力がなされるものと期待しておるわけでございます。  学長の任期の点でございます。  御意見ございますけれども、基本的にはやはり大学院大学みずからの判断でお決めいただくことだろうというように考えておるわけでございます。
  157. 馳浩

    ○馳浩君 実は、この教員の任期制という問題については大変な問題をはらんでおりまして、法改正の問題でありますとか、あるいは私学の場合には労働基準法の改正とか、国公立大学の場合には人事院規則の改正という問題まではらんでおりますので、これは私は改めてまたこの委員会で議論をさせていだだきたいと思いますので、これ以上は申し上げません。  最後に、今回の政策研究大学院大学の目指すところは、アメリカで言うロックフェラー研究所であり、あるいは政策ということでありますればケネディ・スクールのようなものに私はなっていただきたいと思います。そういう意味では、私、よくわからないんですけれども、今回の大学院大学は、我々政党、政治家、あるいは労働組合、財界などとの交流、そのための講座、そういった意味で人事の流動的なもの、あるいはもう本当に政策についてあらゆる、言いますればシンクタンクとしての活躍を担うような人材の育成であるとか、あるいは国家的な政策への提言とか、そういう縦横無尽の活躍が期待されるのではないかと思います、私たちは期待はしているのでありますけれども。  この点、絞って質問するわけにはいかないので、政党や国会議員への政策提言あるいは私たちとの意見交換、もっと大きく言えば労働組合とか財界とかあるいは官僚の皆さん方との交流、こういった点に向けて何か明確な指針がおありなのか、ないのならば、その点についてのコメントをいただければありがたいと思います。これを最後の質問にしたいと思います。
  158. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 政策研究分野ということで、今御指摘のように、現実の政策課題との結びつきというのがかなり密接なわけでございます。そういう意味で、俗っぽい言葉で恐縮でございますが、大学ではございますが、どん欲に触手を伸ばして現実の政策課題のための研究を熱心にやってもらいたいということではございます。  ただし、大学は学術研究ということでもございますものですから、やはり現実の政策課題を研究するということでありましたとしても、それはある特定の政治的な主張のための研究ということではありませんで、やはり独自の論理を持った学術研究としてなされるべきは当然でございまして、ただし、その結果が政治の世界を含めましていろいろな世界で熱心に議論をしていただくための有効な材料として活用してもらえるということであれば、これは非常に結構なことではなかろうかというように考えておるわけでございます。
  159. 馳浩

    ○馳浩君 ありがとうございました。
  160. 菅川健二

    ○菅川健二君 再度登場で恐縮でございます。お疲れのところ本当に申しわけございません。  まず、国立学校設置法の一部を改正する法律案につきまして、新設される政策研究大学院大学について若干お聞きいたしたいと思います。  本大学院大学は、埼玉大学の大学院に昭和五十二年に設置された政策科学研究科が発展・独立するものであると聞いておるわけでございますが、これまで研究科が果たしてきた実績とか成果、入学者の割合とか卒業生の進路等、おさらいの意味でお示しいただきたいと思います。
  161. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 今御指摘のように、埼玉大学の政策科学研究科は昭和五十二年に設置されたわけでございます。この間、教育面におきましては、科学的思考と手法に裏づけされました政策分析能力、あるいは政策形成能力を備えた行政官あるいは政策アナリストの養成を行ってきたわけでございます。特に、他大学に先駆けまして早くから社会人教育を積極的に行いまして、地方公共団体あるいは政府関連諸機関などからの派遣学生を積極的に受け入れるなど、再教育に重点を置いた教育活動を展開して、派遣元からも高い評価を得ているというように理解しているわけでございます。  また、研究面におきましては、国内外の研究者等との学際的な共同研究プロジェクトに積極的に参画するとともに、各教員が多様な個別研究を展開するなど、高度の政策研究に積極的に取り組んでいるということでございまして、まとめて申しますと、政策研究分野での草分け的な存在として貢献をなしてきたというように理解しておるわけでございます。
  162. 菅川健二

    ○菅川健二君 新設の大学には新たに博士課程を設けるというふうに聞いておるわけでございますが、これまでの埼玉大学の実績を踏まえまして、どのような役割、機能をより充実強化しようとしておるのかお聞きしたいと思います。
  163. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 御指摘のように、埼玉大学の場合でしたらマスターコースだけであったわけでございます。これに加えまして、新たな大学におきましては博士課程も設けるということでございまして、したがっておのずと、これは相対的なことではございますけれども、研究養成ということについてもかなり力を入れるような形になろうかと思うわけでございます。
  164. 菅川健二

    ○菅川健二君 入学者は、従来は国や地方公共団体の公務員の再教育というのがかなり重点が置かれておったわけでございますが、これからは研究者の養成もふやしていくということではございますけれども、今後の方向として、大学から継続して入学する者と、それから再教育して、そういう面から入学する者との比率というのはどのようにお考えでしょうか。
  165. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 御指摘のように、広く国公私立大学の学部卒業者あるいは修士課程の修了者のほかに中央省庁を初めとしまして地方自治体、民間企業等からの社会人も積極的に受け入れることといたしておるわけでございます。  また、ただいま学生の割合ということについてのお話がございましたけれども、基本的には幅広く受け入れるという考え方のもとに、どういう割合で入試を行っていくかということにつきましては今後創設準備委員会あるいは開学後大学において検討されることだ、こういうように考えておるわけでございます。
  166. 菅川健二

    ○菅川健二君 政策研究ということになりますと、先ほど話もございましたけれども、現実に行われておる政策と密着した研究が必要だろうかと思うわけでございます。このことから、実務経験を有する者から適材者をスカウトするということも重要ではないかと思うわけでございます。現在、埼玉大学の研究科についてお聞きしておりますと、教官二十五名中七名が中央省庁の出身者であると聞いておるわけでございます。中央省庁出身者だけが実務者ではございません。広い意味での実務者ということをとらえて考えてみますと、新設の大学院ではそういった面で純然たる研究者上がりの人とそれからそういった実務者との教官コース制、その辺をどのようにお考えでしょうか。
  167. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 御指摘のように、分野自体の性格から生ずるところでございますけれども、単にいわゆるアカデミズムの中で育った方々、それらの方々がいけないということではございませんで、そういう方々だけでなくて、やはり行政機関、民間企業等の実務経験者を採用するなど広く各界からその担当分野について多様な知識、経験を有する方々が集まるということが必要だと思っておるわけでございます。  具体的には、大学創設のための準備委員会に教員選考のための専門部会等が設けられまして、そこで選考がなされるということでございまして、具体的にはそこでおのずと定まってくるものというように考えておるところでございます。
  168. 菅川健二

    ○菅川健二君 特に実務者につきましてより広く人材を確保する点に留意していただきたいと思います。従来、ややもすれば準備室というのは大体学者ばかりの集まりが準備室になっておる例が多くて、どうしても学者優先、いわゆる研究者優先ということが行われておるのが実態ではないかと思うわけでございまして、その辺十分実務に通じておる人の採用についても配慮していただきたいと思います。  さらに、ケーススタディーということになりますと、まさに実際の政策と結びつくわけでございます。そういった面で、現に政策立案に携わっておる者を非常勤講師として弾力的に採用するということも重要ではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  169. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 今御指摘のように、それぞれの政策課題についての教育研究ということでございますので、いわゆる正規の形での教職員ということだけではございませんで、客員の教員でありますとかあるいは非常勤講師の活用でありますとか、いろいろな形の雇用形態の方々に参加していただくということがやはり有意義なことではなかろうかというように考えておるわけでございます。
  170. 菅川健二

    ○菅川健二君 そういった面で、教官、専任の教官、非常勤講師あわせまして多彩な人材をぜひ採用していただきたいと思うわけでございます。  この問題の最後で、政策研究大学院大学の新設に対する文部大臣としての思いをひとつお示しいただきたいと思います。
  171. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 社会がますます高度化し複雑化してまいっておりますし、最近は情報化、国際化というものが急ピッチで進んでいる中で、私なんかもいろいろ環境問題に取り組んでみまして、単にこれは自然科学だけでアプローチしていったのでは限界があるということを痛切に感じておりまして、これからは社会科学と自然科学の融合といいましょうか、そういう学際的な分野の融合というものが非常に大事だというふうに痛感しております。そのほかにエネルギー問題とか情報の問題、そういう点でますます私は自然科学からのアプローチ、そして社会科学からのアプローチ、そういうものを融合した問題が非常に大事になってくると思います。  こうした分野のすぐれた研究ということも大事でありまして、今度の政策大学院大学はまさにそうした高度な学際的な研究役割と同時に、今お話がありましたように高度な政策企画能力を有する人材の養成、例えば国家公務員にしても地方公務員にしてもそういう方々に対するそういう教育を施すということも大事でありますし、さらに今申し上げた高度な研究をする研究者の養成、こういうことを目指しているわけでございます。こうした大学ができることによって一層この分野研究が発展することを願っているものでございます。
  172. 菅川健二

    ○菅川健二君 今大臣が言われましたような、ぜひそういった趣旨の大学に育てていただくように御努力をお願いいたしたいと思います。  次に、一般的な大学院につきまして若干御質問いたしたいと思います。  政策大学院大学は独立の大学院で四番目というふうに聞いておるわけでございますが、今後独立の大学院の設置の計画はあるのかどうかということが一つでございます。  そして、大学審議会では、先ほどもございましたけれども、一九九一年、平成三年に大学院の倍増計画を打ち出しておりまして、今世紀中に学生数を二十万人にする計画があるわけでございますが、その達成状況はどうなっておりましょうか。  また、そのうち留学生を三万人受け入れるということを想定しておるわけでございますが、その達成状況もあわせてお聞きいたしたいと思います。
  173. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 第一の、今後独立の大学院大学を国立として設置する予定はあるのかというお尋ねでございます。  今回の政策研究大学院大学につきましては、本年十月の創設後も施設設備を初めといたします教育研究条件の整備を推進する時期がしばらく続くわけでもございます。そんなことで、現下の厳しい行財政事情のもとでそれ以外に別途国立の大学院大学を設置するということは当面考えていないわけでございます。ただし、将来ともおよそないのか、こういうことになりますれば、将来のスパンにもよりますけれども、それはそのときにまた考えてみたいということでございます。  それから二番目に、大学院の量的整備ということに関連しまして、当時、先ほど先生御指摘の大学審議会の答申で量的整備をうたったときの二倍にするというのが達成されつつあるのかというお尋ねでございます。  当時十万人程度の規模だったわけでございます。現在十六万人余りの状況になっておりまして、毎年一万数千人のペースでふえておるわけでございます。修士が主でございますし、また分野といたしましては工学系が主でございますけれども、そのようなペースで拡充が図られつつあるということでもございますので、一応目標に向かって順調に推移しておるというように理解しておるわけでございます。  最後に、留学生の件でございます。  留学生の十万人の計画でございますけれども、二〇〇〇年におきまして大学院レベルに限って申しますと三万人を受け入れるというように想定しているわけでございます。現在のところ二万人程度を受け入れているということでもございます。したがいまして、学部レベル等に比べまして順調に推移しているものというように私どもは理解しているわけでございます。
  174. 菅川健二

    ○菅川健二君 先ほど日下部委員からも話がございましたけれども、一般の学生とそれから留学生の達成状況の数字を一応私が試算してみますと、現状において二十万人計画に対しては達成率が八割強になっておる、ただ留学生につきましては達成率が六六%ぐらいだということで、やはり留学生についての達成率が低いわけでございます。先ほどいろいろるる理由がございましたけれども、大学院におきましても同じような事情でございましょうか、それとも特に大学院で低いという特別の事情がありましょうか。
  175. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) むしろ、十万人計画の中ではやはり学部レベルの方が量的には非常に大きな割合を占めておるわけでございます。それに比べまして大学院につきましては、それらのレベルに比べますとその達成度は高い方ではないかというように見ているわけでございます。
  176. 菅川健二

    ○菅川健二君 学部レベルに比べては高いわけですが、いわゆる達成目標についてはやや低いんじゃないですか。
  177. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 三万人に対してまだ二万人という、そういうことで申しますと御指摘のとおりでございます。
  178. 菅川健二

    ○菅川健二君 それについての特別な理由というのはございますですか。大学院にかかっての低い理由というのは。
  179. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) これは、留学生の十万人計画がかねて進捗してきた状況の推移と基本的には共通の理由であろうかと思うわけでございます。やはり日本生活することの難しさ、あるいは日本におきます教育研究の状況、あるいは先ほど来日下部委員の方からもるる御指摘もございましたけれども、日本で留学しようとする学生の生活の問題等々、諸種の問題が総合的に絡み合っていることではなかろうかというように考えておるわけでございます。
  180. 菅川健二

    ○菅川健二君 留学生につきましてもできるだけ目標を達成するようにひとつよろしくお願いいたしたいと思います。  次に、同じく大学院の問題でございますけれども、平成三年から大学院の講座重点化ということが始められていまして、現在九大学の学部研究科で実施されておると聞いておるわけでございますが、その成果と今後の見通しについてお聞きいたしたいと思います。
  181. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 平成三年の大学審議会の答申におきまして、卓越した教育研究実績を上げることが期待される大学院や、また、教育研究上の新しい試みに意欲的に取り組もうとしている大学院に対しては重点的な財政措置を講ずる必要があるということが提言されているわけでございます。  私どもといたしまして、平成三年度から先生の御指摘の大学院重点化ということでの整備を行い始めたわけでございますが、それは、いろいろな大学院がある中で、特に顕著な教育研究上の成果が期待される大学院に対しまして、特に教育研究拠点としての役割を期待するという意味合いを込めまして、教育研究条件の重点的な整備を図ろうということで始めたものでございます。平成九年度の整備予定のものを含めまして、九大学四十六研究科において重点化による整備を行っておるわけでございます。  成果はいかにというお尋ねでございます。  それぞれ、大学院重点化ということによりまして、大学院におきます教育研究充実が多かれ少なかれ充実されておるということは報告は得ておるわけでもございます。もちろん学部教育をなおざりにということではございませんで、学部教育もあわせて行ってもらっているわけでもございますが、全体といたしましてやはりそれなりの成果は上がっているものというように理解しているわけでございます。
  182. 菅川健二

    ○菅川健二君 この大学院の重点化につきましては、まだ重点化されていない大学につきましても大変注目されておるわけでございまして、特に今後地方ブロックの中核となる大学の実績のある学部につきましては、ぜひ早期に実施していただくよう要望しておきたいと思います。  それから次に、今度は大学の将来構想についてお聞きいたしたいと思います。  ことしの一月二十九日に大学審議会におきまして発表されたわけでございますが、大学の規模は急増期の臨時的定員の五割は残してもよいということになったわけでございます。このことが実現しますと、四年制の大学でも平成二十年には志望者が全員入学できるという状況になるわけでございまして、このことは、アメリカの教育学者のマーチン・トロウ氏が「高学歴社会の大学」という本を、古典的な名著でございますが、書いておられるのでございますけれども、その高等教育段階移行説によりますと、日本の大学もエリート型から現在はマス型に移行しておると。さらに万人の義務として行われるユニバーサル型に移行するんではないだろうかということでございまして、今後の大学教育というものはまさに質的な転換を迫られているんじゃないかと思うわけでございます。  そこで幾つかの質的な転換の問題についてお聞きいたしたいと思います。  まず、大学入試でございますけれども、従来のエリート型、マス型の大学入試に加えまして、個人の教育上の経験が大学での教育内容に接続可能かどうかで判定されるということではないかと思うわけでございます。そうしますと、今度は中高一貫教育から高大一貫教育といいますか、あるいは高大連携教育が非常に重要になってくる。あるいは推薦入学というか、選考なしの入学というものがかなり行き渡ってくるということになるんではないかと思うわけでございますが、いかがでございますか。
  183. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 御指摘のように、大学初めいわゆる高等教育機関への進学率が既に四六・二%という数字でもございますし、今後ともふえていくであろうということを予測しているわけでございます。したがいまして、現在でもかなり学生の能力やらあるいは意欲やら適性やらということを考えますと、大変多様化している状況があるわけでございますが、それがさらに発展していくであろうという見通しを持っているわけでございます。  そういう中にあって、高校から大学に向けてというその接続のポイントというのは大変ある意味で重要な意味合いを持っていることは御指摘のとおりでございまして、非常に大ざっぱな言葉で申しますと、やはり多様化を図っていかなければなるまいというように考えておるわけでございます。推薦入学のお話もございましたし、また、現在面接とかあるいは小論文等を加味した多様な入試の仕組みがとられているわけでございまして、これらの多様化のためのさまざまな試みというのはやはり今後とも推進されなければならないものというように考えておるわけでございます。  また、高校と大学の教育上の連携ということもいろんな形でやはり必要になってこようかと思うわけでございまして、例えば、高校生でありましても、意欲ある生徒でありましたら、場合によって大学の提供する一定の例えば講座的なものを受けて、それを大学に入ってからも生かすことができるようにするとか、あるいは大学の方で、高校段階で非常に教育自体が多様化しておるわけでございますので、その関係で、大学教育上必要な場合にはある一定の科目については補習を施すであるとかいうような高校と大学の間の諸種の連携策ということは、これまた現在もある程度行われておるわけでございますが、今後ともその点に配慮した取り組みがなされることを期待しておるわけでございます。
  184. 菅川健二

    ○菅川健二君 それから、大学の在学中のいわゆるプロセス管理というものが重要ではないかと思うわけでございまして、そういった面で大学の教育の質的向上を図りますためには、これは先ほどお話がございましたけれども、大学の自己点検あるいは他の第三者による評価、そしてさらに重要なのは、情報を開示していくということが欠かせないんではないかと思うわけでございます。  現在、自己点検や第三者による評価はかなり定着しつつあると伺っておるわけでございますが、その状況と、情報開示に対する今後の取り組みについてお聞きいたしたいと思います。
  185. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 自己点検評価ということに関しましては、平成八年の十月現在までに国立大学で九十七校、ほとんどの大学におきまして、また公立大学で四十三校、約八割でございます。私立大学でもやはり八割強でございますが、三百五十二校におきまして自己点検評価を実施しているわけでございます。また、学外者によります外部評価を導入する大学もふえておりまして、平成八年十月現在におきましては四十五大学に増加しておるということでございます。  自己点検評価に関しましての課題といたしましては、平成三年以来自己点検評価ということを実施し、それを何らかの報告書に取りまとめ公表するということにおきましてはかなり熱心に取り組まれておるということは言えようかと思うわけでございますが、問題はそれをどう具体的な改革に結びつけていくかということがそれぞれの大学にとっての課題になってこようかと思うわけでございます。  また、大学の情報開示ということにつきましては、従来に比べましてそれぞれの大学が大変熱心に、受験のためということが非常に大きいことでございますけれども、受験のためだけではございませんで、例えば大学の先生の研究業績を毎年発表するというようなこと、それから非常に俗っぽいあれでございますけれども、俗っぽいと言ったら語弊がございますが、大学のキャンパスを訪ねてくる市民のためのガイドマップを作成するんでありますとか、さまざまな形で大学が社会に対してみずからこういうことをしているんだということを公表する、あるいは知らしめていく、知ってもらう、こういうための活動というのは大変幅広く行われてきているわけでございます。これにつきましては、そういう動きというものをぜひ私どもとしても支援してまいりたいというように考えておるわけでございます。
  186. 菅川健二

    ○菅川健二君 特に、情報開示につきましては、受験生に大学の情報というものを生に提供するということになりますと、従来とかく偏差値によって大学は輪切りにされておるという状況がなくなるんじゃないか、改善されるんじゃないかと思うわけでございまして、よりわかりやすい大学の開示というものにぜひ力を置いてやっていただきたいと思うわけでございます。  それから、もう一つユニバーサル型ということになりますと、従来の大学というのは、教育面とともに研究面という両方の機能をあわせ持っておったわけでございますけれども、ユニバーサル型の教育ということになりますと、どちらかと言えば教育面に非常にウエートがかかってくるということになろうかと思うわけでございます。そういったことによりまして、ただユニバーサル型になったからといって全部の大学がそうなるわけではございませんで、エリート型とマス型とユニバーサル型が併存するという形になろうかと思うわけでございます。そういった面で、先ほどお話がございましたように、大学教育の多様化を図ることが重要ではないかと思うわけでございます。  その際、先般も本岡委員から話がございましたように、設置形態についてもやはり多様な設置形態を模索する必要があるんではないかと思っておるわけでございまして、従来の国公立中心の大学教育から国公立と私学との役割分担、それから設置形態におきましても、行政改革という面だけでなくて、地方分権、あるいは地方において多様な人材を育てていくという観点から従来の国立大学を見直してはどうかというふうに私も思うわけでございます。  これは全く私の試案でございますが、一つの雑駁な試案というものを申し上げますと、国は高度で専門的な教育、研究を担う観点から、大学院の重点大学とか、大学の附属研究機関、こういったものを直接設置運営する。一般の大学は、一般大衆教育としてそれぞれの地域の特色ある教育を実践する観点から、地方公共団体や民間、これは私学ということになろうかと思うわけでございますが、そういった私学への移管を推進する。そういったことを将来的に見越していろいろな施策考えるのも一つの案ではないかと思うわけでございます。  いろいろ議論のあるところだと思うわけでございますが、文部大臣に、文部大臣という立場でなくて個人的な感想でもよろしゅうございますから、ひとつ御意見をいただきたいと思います。
  187. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 先生の言われる大学の大衆化という側面と、それからやっぱりそうはいっても新しい時代に対応できる質の向上といいますか、そういった面の両面があろうかと思います。  教育の大衆化ということにつきましては、小中、高等学校もほとんどもう九六%以上という非常に普及した率になっております。大学というのは位置づけとしては今まで高度の研究と人材養成というところに、これは国際的に見ましても大体高等教育の役割分担というものはその二つにあったと思うわけであります。国の責任は何かと問われれば、やっぱり高度の学術研究とすぐれた人材の養成、こういうことが考えられるわけでございます。  我が国におきましても、国立大学に大学院の学生の約六割が在籍をして大学院教育の主翼を担っており、高度な学術研究の推進に役割を果たしているわけであります。また、医学とか理工学とかそういう各分野、そして大都市だけではなくて地方の過疎地域等にも地域的な偏りがない、学問分野でも偏りのない、そういうことに国立大学が寄与しているところも見逃せないと思います。  この前も申し上げたと思いますが、国立大学が民営化したり地方に移管になりますと、経営上の配慮というものが優先されたり大都市に集中してしまう。現に、昔、県立大学であったものがとても維持できないということで国立大学に引き取ってくれと、こんなような事態もあったわけでございます。とにかく地域的な偏り、学問分野の偏り、こういうものを考えますと、やっぱり国立大学を維持していくというのは、今の現実を考えた場合には私はそういう方向はやむを得ないと思っております。  ただ、今進行しております大学改革の中では、地域への貢献ということも重要でございますので、例えば公開講座とか生涯学習ニーズへの対応とか、そういったことで地域のニーズにこたえておりますし、また地域の多様な意見を反映する仕組みというものの整備も行っているところであります。  国立、公立、私立、それぞれがやっぱり特性を持っているわけでありますから、それぞれがその特性を生かして高等教育や学術研究の維持充実を図っていく、こういうことが必要であると思いまして、私はその際、国立大学の果たしている意義は大変重い、こう考えております。  ただ、やはり今いろいろと世間には国立大学の組織や運営のあり方についての御批判もあるところでありますので、私はより柔軟で活発な運営が確保できるように今後とも努力をしていきたいと考えております。
  188. 菅川健二

    ○菅川健二君 国立大学は重要な役割を果たしてきたし、またこれからも果たしていく役割が非常に大きいんだということは御指摘のとおりじゃないかと思うわけでございます。  しかし、これまでの国立大学をすべて依然として全部国立大学として抱えておくことがいいのかどうかということはいろいろ議論があるんじゃないかと思うわけでございます。何でも設置形態が一つということになりますと、それなりの一つの画一化に流れるという嫌いがどうしても出てくるわけでございます。  私だけでなくて、例えば兵庫県の知事の貝原さんは、かねてから教育の地方分権ということを唱えております。若干申し上げますと、大学教育がここまで大衆化した今日、大学卒業までは地方自治体が担当することにしてはどうだろうか。それぞれの地方自治体が、歴史や文化、産業、福祉などの地域の特性に応じて一貫したシステムのもとに初等教育から大学教育までを担当する。それぞれの地域が特色ある教育制度を競うことによって、多彩な才能を持った人材を輩出することになるのではないでしょうかという論文を出しておられるわけでございます。私も同じ県におりまして、貝原さんが部長のとき私が次長でやっておったわけですけれども、全く同意見でございます。こういった意見もかなりあるということを、大臣、知っておいていただきたいと思います。
  189. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 東京とか大阪とか名古屋とか、あるいは今言われた神戸とか、そういう三大都市圏で条件の整ったところは、あるいはそう  いうことも可能になるかもしれませんけれども、例えば過疎地域の大学ですぐれた教員を確保できるかどうか、財政的に維持ができるかどうか、そういったことを総合的に考えまして、私はやっぱりいろいろな問題点があると。  しかし、御意見は御意見として承りまして、私たち現状をそのままいいと思っているわけではありませんで、改善、改革は常にやっていく必要があろうかと思いますが、そういった現実もぜひ御理解いただきたいと思います。
  190. 菅川健二

    ○菅川健二君 この問題は大変大きな問題でございまして、我が党でまだ議論をしていない問題で、私自身が非常に大胆な話をしてあれでございますけれども、これからひとついろいろとお互いに検討し、かつ議論をし合いたいと思うわけでございます。  最後に、まことに今度は次元の低い現実の話になるわけでございますが、大学の非常勤講師の待遇についてお聞きいたしたいと思います。  昨年末の朝日新聞に、「ああ大学非常勤講師」と書いてあるわけでございます。これは、学生アルバイト並みの低賃金、身分の不安定、研究室も教材費もないない尽くしの改善進まぬ労働条件について述べておるわけでございます。  実は、私も一年余りでございましたけれども、広島大学の大学院に少し来ないかということで、非常勤講師をやっておったわけでございますが、最初の給料をいただいたときは大変愕然といたしたわけでございます。もう少し何かあったら飲みに行けるんだがなと思ったんですが、大変少ない額でございました。他に本業のある人は別にいたしまして、専ら講師をしている人の収入はせいぜい、これは新聞記事でございますけれども、二百万から三百万どまりで、まさに悲惨な状況でございます。  文部大臣、この待遇は御存じでございましたですか。
  191. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 確かに、今の物価水準から見ると、私は高いものとは言えないと思います。  現在、非常勤講師は、各大学における非常に多様化した教育を実施する上での非常に必要欠くべからざる存在でありますし、教官のみではなかなか担当できない部分についても、学外からそういう非常勤講師として適任者を確保しているところでございます。  現在の非常勤講師の手当は、常勤講師の手当を参考として、その授業時間数に応じて支払われているんですが、文部省としても、厳しい財政状況の中ですが、待遇の改善については適切に対処していきたいと考えております。
  192. 菅川健二

    ○菅川健二君 ただいまお話がございましたけれども、国立大学の非常勤講師だけでも四万二千人おられるわけでございまして、時間当たりの積算単価は四千七百十円でございます。もとより、時間当たりで刻みますとパートのおばさんなんかに比べますと非常に高いなと言われるわけでございますが、しかしながら、これに要する準備期間とかあるいは教材費というものを見ますと、これはまさにゼロに限りなく近いわけでございまして、これからの非常勤講師の役割考えますと、ぜひとも抜本的な待遇改善に御努力をお願いいたしたいと思います。  以上でございます。よろしくお願いいたします。
  193. 山本正和

    ○山本正和君 今、菅川委員からいろいろ中身の濃いお話がございました。私は、この法案を見まして、新しい大学院大学の問題、これからいろんな議論があろうかと思います。しかし、この法案については賛成でございまして、特に質問は申し上げません。違ったことで、少し大臣の意見を伺いたいと思います。  放送大学が、装いを新たとは言いませんけれども、今の情報社会の中で通信衛星、放送衛星を使いまして非常に規模が大きくなってきておる。この状況は、勉強したい者、放送大学で学びたい者、これに全国どこの地域でも全部対応し得る状況であると、こういうふうに判断してよろしいか、まずその辺はどうですか。これは事務方で結構です。
  194. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 放送大学につきましては、全国化ということを目指して努力しているところでございます。
  195. 山本正和

    ○山本正和君 そうじやなしに、放送大学に入学したい、放送大学で学びたいという人は、今の状況でも対応できるでしょうということを聞いているわけです。
  196. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 現在の放送大学の放送エリアにつきまして、御案内のところであろうかと思うわけでございますが、関東地域などの一部に限られているということでございます。したがいまして、すべての地域に平等な機会が与えられているということにはなっていないということでございます。
  197. 山本正和

    ○山本正和君 これ私が質問通告していなかったので申しわけないんだけれども、全国で放送大学に学べるようにしようという取り組みは今行われている、やがてそれが実現するということについては御承知ですね。  正直言って、私も放送大学にも行ったし、あそこでスクーリングしている状況も見たりもしたんです。非常にすばらしい。勉強したいという人が来てやっているわけですから、自分の家で勉強しながら一生懸命取り組んでいる人ですから、勉強したい人が勉強している大学だという感じがするんです。  ところが、例えば、私は高校の教師をしておったことから言うと、自分の教えている子が東大に入ったといったら大喜びするんですよ。ところが、卒業した子が大分数もおりますけれども、いい年になったのもまだ若いのもおるけれども、そうするとその連中は、おい、本当の話はどうだと聞くと、いや、入った瞬間にちょっと安心してしまって、入るまでの勢いでの勉強がとまると。要するに日本の大学というものは、勉強したいから中へ入って勉強するんだと、そして自分でいろんなものを専門的な段階までずっと進んでいって卒業するんだと、こういうシステムになっていないと私は思うんですけれども、その辺は大臣、いかがですか。
  198. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) かつて東京都、ほかの県もやったと思うんですが、学校制度というのをやりまして、大体希望者を割り振ってやったことがあるんです。それ以来、都立高校というものは活力を失ってきたということでありまして、私は、ただ機械的に全部の人を割り振って入らせればいいじゃないかという教育はいかがなものかなと思います。やっぱり、生徒、学生の個性とかあるいは自分の希望とか将来に対する進路とか、そういうものに沿った大学選びというもの、あるいは学校選びというものが行われてこそ、本当学校へ入って、目的意識を持って、意欲を持って勉強に励むと思うんです  したがって、私はかねてから、だんだん少子化になって全員大学に入れるんだから余り特定の大学に集中させないで、だれでも入れちゃったらいいじゃないかというお考え一はないてすか。
  199. 山本正和

    ○山本正和君 違う違う、全然違う。
  200. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) そうですが。  とにかく、放送大学が全国化することによって、学びたい人が大いに学べるというシステムができることは大変すばらしいことだと思います。
  201. 山本正和

    ○山本正和君 ちょっと大臣は私の意図を勘ぐって、全員大学入学と。違うんです、私の言うのは。  大学へ入ることが目的で現在の制度になっていると。これを子供を抱えているお父さん、お母さんに聞いてもらっても、小学校、中学校高校の教師に聞いてもらっても、今の学校というのは大学入試の準備といった場所で、そこに大きくウエートを置かざるを得ないと。実際に、消費税が上がるからけしからぬとかなんとかということを言いながら、実は義務教育に年間二十万も三十万も、小学校の一年生や二年生の子供を抱えている親が本当にむだな金を使っているんです、実際の話。これ全部将来の大学入試を控えた訓練。  だから、今の日本の教育のどこが間違っているかといったら、大学に入るための準備が小中高という重要な段階で行われている。これは直しょうがないんです、妙案がない。私も、ずっと長い間いろいろ関係していますからいろんな議論をするんですけれども、次男坊が慶応の教育学の教員をしている。ところが、教育学者として勉強してもおまえはだめだと私はよく言うんですけれども、学生とどういうコミュニケートしているかとよく言うんです。  私が思うのは、今の制度の中で救いがあるとしたら、勉強しょうと思ったら、例えば東大ならばだれでも入れる、ほかの学校はだめですよ、東京大学だけは勉強しておったらだれでも入れる。一年間、例えばスクーリングで勉強する、放送衛星を使って全国のすべての東大に入りたい人が。そして、しかし二年生になるときは、その一年間のスクーリングだとかあるいは通信教育だとかでもって、勉強する意欲のない者は二年生になれない。今度は二年から三年になれないと。こうすると、私でも今から東京大学に入学できます。そして、日本じゅうの今の親が、実際の話、自分の子供は東大ならいつでも入れる、こうなったら意識が変わるんです。何かそういうことをしなければ、制度をどんなにいじっても、日本人の今考えている学歴社会、そして企業もそうです。だから、大学というものが勉強するための大学というふうに切りかえぬことにはよくならないと私は思うんです。  だから、言いますけれども、私どもは旧制中学です。旧制中学の先生を囲んで今でも同窓会をやって、八十八になる先生に来てもらう。そうすると、何を言うかといったら、今の先生はかわいそうだなと。おれたちのときは進学教育なんてしたことないよと言うんです、大体が。それで、旧制高校に行くというやつはみんな自分で勝手に勉強したんです。何もそんな予備校なんか行かなかった。  しかし、私は言うんです。別に大日本帝国の教育が今よりいいというのではないですよ。しかし、自立して自分で本気になって勉強するという学生の質は、戦前と戦後と比べてどっちがいいかと。これは、どうも私は戦前の方がいいような気がするんです。だから、勉強したい者が大学に行って、卒業するために相当勉強しなきゃ卒業できないよというふうに切りかえぬことには絶対よくならないですよ。  それをするのに、実験的にやるのは、私は東京大学を放送大学と合併させてしまう、放送大学に借りると、一年生だけ。そして、放送大学を通じて全国もう北海道から沖縄まで全部東京大学に上がるわけです。二年生になるときには東京に来てもらう。大変なこれは試験になるわけです、難関だから。しかし東大には入れるわけです。今度は、そのかわり二年から三年に上がるとき、三年から四年に上がるときも、何かそういう勉強しなければ卒業できませんということを、まず天下の東大がやることです。それをやって本当の東大の卒業生として値打ちがある。今も役所には東大出の優秀なのがたくさんおるけれども、それよりももっと優秀な者が、私は東大卒ができるというふうな気がするんですけれども、何かそういう変わったことをやらぬことにはよくならないと私は思うんですが、大臣どうですか。
  202. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 放送大学と東京大学を合併してという話はちょっと奇抜なアイデアだと思いますけれども、私は少しずつ変わっていると思うんです。  これはやっぱり悪循環といいますか、いい会社へ就職するためにはいい大学、いい大学のためにいい高校、いい中学というふうにだんだん循環してなってきたんですが、私は経済界の人とも話をするときに、学歴だけで選ばないでくれ、やっぱり本人が何を勉強してきたか、どういう人間性を持っているか、多面的にひとつ判定をしてもらいたいと。こういうことで、就職なんかの場合も最近は非常に評価も多面的になってまいりましたし、また大学におきましても、何も昔の国立大学ばかりじゃなくて、私学の中にもあるいは公立の中にもいいところを選ぶ学生もどんどんふえておりますし、また現にそういうところですばらしい教育をやっているところもあるわけでございます。  ですから、そういう方向で、先色が今言われたように、私は本当に目的を持って学ぶ意欲を持つ者だけが大学へ、あるいは教育を受けるというのが私は理想だと思いますし、そういう方向へ持っていかなきゃいけないと思います。今は、ただ大学卒とか高校を出たというブランド志向で、ということはやっぱりいけないと思いますので、そういう方向性は私は同じ考えでございますが、さて、じゃ放送大学でまたその一年間の成績で決めるということになると、またそこで大変激烈な競争があるということもありますが、まあ一つのアイデアとして、お考えとしてお伺いをさせていただきました。
  203. 山本正和

    ○山本正和君 かつて玉川大学が通信教育を非常に一生懸命やったんです。昔から早稲田には通信教育があったんですね。そこで学んだ中に随分優秀な人がたくさん出ているわけです。  私は、東大がなぜ通信制を取り入れないんだと。優秀な子が私はどんどん来ると思います。例えば東京大学通信教育学部でいいんです。そうすると、田舎の子でどんなに頑張っても、例えば私の三重県でいうと、県庁所在地の津の予備校と東京の予備校といったら、これ全然問題にならぬですよ、受験の仕方が、教え方が。もっと言えば、三重県の津市ならいいけれども、南の方の熊野市に行ったら、もうこれ予備校ないんです、そんなもの。そういう地域的なアンバランスの中に我が国青少年は置かれている。そこで非常な都会と地域とのアンバランスがある。解消するのにどうしたらいいかと。何か考えなきゃいかぬです。東京大学の先生ちょっと大変かもしれぬけれども、定数ふやしても構わぬから、東大に田舎の高校を卒業しても入れますよ、通信教育でと。こうすると希望がわくんです。  そして、今私が言うのは、学歴社会は悪いからと何ぼ言ってもすぐには直らぬ。直らぬのを直すのは、おれも東大生だというのが全国どこでもおると。しかし卒業はできぬよ、勉強しなきゃと。何でもいい、そういうようなことを一遍大学改革の中にひとつ組み入れぬことにはよくならないんじゃないかというのが、私の実際に高校たちに教えたOBの感覚なんです。  それで、正直言いますけれども、大学入試のときに非常に優秀な子も、高校卒業して三年から五年たってから本気になって勉強する子もいろいろあるんです、差が。だから、そういうものを天下の東大が、ひとつ受けましたというふうなことをまずやったらどうだろうか。  そんなことをひとつ、大臣はちょっと個性豊かな大臣なもので、話をしたら通じるんじゃないかと思ってきょうは発表しました。
  204. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 山本委員のおっしゃることはよく私も共感するところもありますが、この間、私、放送大学の卒業式に行って本当に感動したんです。最高齢八十四歳の方がいろんな悪条件を克服して卒業された。それから家庭の主婦とかあるいは勤めている人も、本当に大変だったろうなと思うんですが、四年間、仕事の傍らあるいは生活の傍ら勉強して卒業した、こういう人たちばかりが本当に大学に学んだらすばらしいなと思いました。  今度放送大学が全国化いたしまして、放送大学で勉強を終えた人でまたさらに大学院に行きたいという人もどんどんふえていくことを私は望んでおりますし、生涯教育という観点から見ると、たかだか二十数年の大学とか教育が終わってもうそれですべて終わりという人生はまことにはかないわけでありまして、私は、先生の言われるもう生涯学ぶという意欲をかき立てるような、そういう社会的な風潮とか仕組みをつくっていくことは大事だと思います。  一つのアイデアとして拝聴させていただきます。
  205. 山本正和

    ○山本正和君 高等教育局長以下担当の方々も、今の議論をお聞きになったと思いますから、きっと反映していただくということを期待いたしまして、私の質問をこれで終わりたいと思います。
  206. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 私も今議題になっております法律案には賛成でございます。したがって、特に中身に触れずに先ほどの質問と関連させて大学問題をやります。  今度はちょっと別の角度から、十八歳人口動態と大学のありようをやはり議論すべきだと思うんです。というのは、まず一九九六年度の十八歳人口と大学志願者、そして、短大も含めた大学入学者の割合というものを見てみました。すると、一九九六年度ですよ、十八歳人口、百七十一万一千人です。それに対して大学志願者数は百九万七千人、そして大学に入学した人が八十万人、こうなっているんです。そして、この数字をもとにして大学志願者の十八歳人口に対する割合を見ますと六四%、それから大学入学者は約四七%、短大を除くと約三四%という状況が今一つの現実としてあります。  そして、今度は、二〇一〇年になったらどうなるかということを、この一九九六年度の大学志願者数と入学者数は変わらないものとして推計する。それより推計のしようがないから、何%ふえるとか減るとかやってみても仕方がないので、これを固定して考えてみました。そうすると、二〇一〇年度の推定で、統計上出てくる十八歳人口は百二十万八千人なんですね。それをもとにして割合を出すと、大学志願者、その同年齢の九〇%が大学を志願するという状態になりますね。そして、大学入学者は、その同年齢の六六%が大学入学するという時代が来るんです。  現状の中で、私は、大学を志願するとか大学で勉強したいとかいう人が減るということは絶対ないと思うんです。ふえても減ることはないと思うんですね。これを考えたら、どういうことを我々は、政治の場にある者が教育というものに対して将来の見通しをつけていかにゃいかぬかという、ある示唆があります。  さらに、二〇一一年になったら百十八万四千人、二〇一二年も百十九万八千人、一三年で百十八万四千人、二〇一四年で百十二万といって、とても一九九六年のこの時点に戻らぬわけです、ずっと見ても。そして、私はこう思うんです。結局、大学の大衆化が徹底的に進みよるということなんですよ。高等学校が全入に近い形になったというのも、私たちが昔中学校へ行ったときには二〇%しか旧制中学に入らなんだのが、戦後どんどん六〇になり七〇になり八〇になり九〇になって大衆化して新しい高等学校の中等教育というものが生まれてきたんですよ。  大学も、帝国大学といって、文部省が国の力とお金をかりてつくった。その時代は、国立大学でなければやはり日本の将来のリーダーはつくれない、国立大学こそ日本の将来の有為な人材をつくり得るところだという自負もあり、また国民もそれに期待をして国立大学がスタートした。そしてその任務を立派に果たした。しかし、今言うような状態になったときに、これどういうふうに考えるんですか。だから私は言っているんですよ。  国立大学の設置、運営を文部省がやらにやいかぬと。先ほど文部大臣が、教育は大事だ、高等教育を、学問の研究をいろいろやるのにやっぱり要ると。それは当たり前なんで、それを国立大学がやらねばならぬ、私学ならだめなのかという、私学であればできないのかという問題を、今大学の大衆化が進んでいる中で国立大学でなければならないという根拠は私は失ったと思うんです。  そして二番目に、なぜ少数の国立大学に税金を大量に投入するのか。それは先ほど言ったことと関連しておるんです。日本の将来に対して有為な人材を送り出すというのは国益であり公益であるということで、それは国民も許容したんですよ。だけれども、このように大衆化が進んでくると、それでもなおかつ大学に一般会計から一兆五千億、国立学校の特別会計全部合わせて締めて二兆六千億という金をさらに投入しなければならないのかという問題。これは、国民の負担と、負担した税金がどう使われるかという問題を見直さなければならない、これは私はあると思うんですよ。  だから、もし国が、文部省が税金を使って公益、公の利益のために使う部分とすれば、やっぱり義務教育ですよ。義務教育の部分は当然そうしていくべきですよ。しかし、高等学校を卒業し、大学に入ってくるというのは、さっきの山本さんのお話じゃありませんけれども、これはみんな個性豊かにそれぞれの人間がどう生きていくかという自分の自己目的でしょう。そして、どういうところに就職していくのかというのもその人の将来の利益につながることでしょう。その大学に何で国民の税金を大量につき込んでやらなきゃならぬのか。一方、私学はそうでない。二千九百五十億というお金がたくさんの大学にばらまかれている。あとはその大学の経営上の大変な苦心と努力と、学生の授業料その他、その負担金で賄っているんですよ。全部私学になったら一体どうなるのや、大変な負担が要るやないかと。その負担を減らす方法は、これ税制を変えたり、いろんな手段は一方にあるわけですよ。  だから、私は、この人口動態がずっとこう進んで少子化になってくるときに、大学のありようももう一遍、余りかたくなに、何かみずからの宝物を取られるようなそんな思いじゃなくて、日本の未来を将来を見直して、やはり大胆に踏み出して、だから私言っているでしょう。こういう議論をお互いにやることの中に何かいいものが生まれるんと違いますか。大臣、どうですか。
  207. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 先ほどは大分私もちょっと興奮したようなことを言いまして……。  私は、議論は大いに歓迎しますし、こういう議論を通じて日本の高等教育なり国公私立のあり方というものを考えるのは非常にいいことだと思っております。  長くなりますから簡単に言いますと、私は、これから十八歳人口がどんどん減っていく中で、国立といえども、あるいは公立、私立も極めて競争が激化していくと思うんですね。生徒の取り合いというようなことの中で。  ただ、私が言いたいのは、先ほども言いましたけれども、国立も公立も私立も含めて、我が国の公の税金、公財政が支出しているお金は欧米の半分にすぎないということで、これは国立に限らず私学も公立ももっとやっぱり高等教育については充実をしていかなきゃいけないという点が一つ。  それから、教育という非常にロングスパンで物を考えなきゃいけない、直ちに成果があらわれないこういう分野は、なかなか理解されにくいんですけれども、ただ、財政支出の削減という観点からだけ教育の問題を考えていいんだろうか、こういう基本的な私は疑問を持っております。  しかし、そうはいっても、こうした財政状況の中で聖域なく見直すと。こういうことで、私どもは、高等教育も、義務教育の問題についても、私学助成のあり方についてもこの際真剣に検討しよう、こういう立場でございます。
  208. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それで、最後に一問申します。  だから、今財政構造改革、もう後戻りできない、火の玉になってやるんやと、火だるまになってやるんだとか、もういろいろな表現がありますが、しかし、過去の改革でもシンボルがあったんですよ。賛否は別ですよ。国鉄、電電というふうにね。それはやり玉に上がったところはたまらぬでしょう。だけれどもシンボルがあった。今度のシンボルは何か。それはぎょうさん出たらわからんですよ、専門家のわしらが見ても余りようわからぬのやから、やっぱり改革には国民が一番わかりやすいものを一つどんと出していく必要があると思うんです。  それをどうやら、ある大臣なんかが、郵便局や、郵便局や言っているけれども、郵便局をどないしたって国民の財政一つも変わらぬ。そして、あれは結構あんた黒字を出して機嫌ようやっているでしょう。ああいうところを別にどうこうさわる、さわってもいいですよ。だけれども、そうじゃなくて、文部大臣がこの際国立大学の民営化、これこそを財政構造改革のシンボルだといって打ち上げるべきです。そうしたら、僕はこれはまさに一石三鳥の値打ちがあると思うんですよ。  まず一つは、十年も前から、いわゆる臨教審だとかいろんなところでずっと議論されてきたことで、今唐突に出た問題でないということですよ。民営化という言葉は使われなくとも、特殊法人化とか、大学の経営形態を時代に合わせていろいろと考えるということはずっといろんなところで言われてきたことだ。文部省というのは、教育長の任命制のあの問題をやめろというのも、いろいろ出てきたけれども、あれは三十年間頑張って辛抱したから、かなり辛抱強いと思うんです。しかし、これはもう十年ぐらい前から出てきて、唐突に私が言ったことじゃないということですよ。それが一つ。  それから二番目に、民営化されると、私が言ったように一般会計から一兆円規模の実質的な拠出削減が、歳出削減ができるということですよ。実利がある。  それから三番目に、教育をゆがめてきたのはだれかというときに、やっぱりこれは受験教育の、受験競争の頂点に立ってきた、間違いなく、さっきの山本さんの話じゃないですが、東大初め国立大学なんですよ。だから、そこがいろいろと装いを改めることによって、この受験教育、受験戦争というものが私は下火になっていくと思うんです。そして、大学入試制度の問題もおのずから変わってくるんじゃないかというふうに思う。そして、今言った大学の問題の検討の中から新しい教育改革が本物になって出てくるんではないかというふうに私は思っております。  それで、きょうはもう時間もないから大臣の答弁を求めませんが、私は、今言いました一石三鳥のこの問題について一つ一つこれからもしつこくしつこくここで大臣と討論をしていきますから。その討論の結果はどっちになるかはいいじゃないですか。やっぱりそういうふうな私は文教委員会にしていかなきゃいかぬと思うんですよ。個々人がかくあるべきでないかという意見を出しながら、文部省文部省で、そんなもの民間にできるかい、私立大学に任せられるかいと、国立大学がなかったらあかんのやと言うのやったら、大いにその論陣を張ればいいじゃないですか。そういうふうに私はやっていきたいと思います。  きょうはこれで終わります。
  209. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 質問いたします。  大学は国民の教育機関であると言われます。文部省の重点施策の一つとして進められている大学改革、これも当然国会で十分な論議が必要であるというふうに私は考えます。  ところが、今回の法改正によると、大学改革に密接にかかわる国立大学の学部の設置や改組等は国会での審議を必要としなくなってしまいます。わかりやすい例でいいますと、受験生にとっては、大学というのはまず学部、学科を選ぶ対象としてあり、それはまた国民生活に密着したものです。その意味でも、国民の代表が集まる国会の審議なしに学部の改編の結果だけ押しつけられるのは、国民無視にもつながるんではないかというふうに思うわけです。  大学改革を進めるに際し、国民に開かれた大学づくりということがしきりと言われます。文部省の白書の中でも言われていますが、国民に開かれた大学づくりというのであるならば、手続上も国民に開かれたものであるべきだというふうに思うんです。つまり、国民にとっての重要な関心事である学部の設置、改組は、原則として国会審議が不可欠ではないか。今回の法改正による措置は、結局国会軽視、国民ないがしろのそしりを免れないのではないかと思うんですけれども、どうでしょうか。
  210. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 今度、学部の名称を政令で定めることを含むこの改正案を出しましたのは、今まで長い間衆参の文教委員会等で、学部設置までそんな一々法律で決めなくていいんじゃないかということ、そういう御指摘が長く行われてまいりました、そういうものを踏まえたものであります。  それから、今幾つか御懸念がありましたけれども、今時代が激しく動いていく中で、学部編成というものも非常に機動的に動いております。大学によってもいろいろ人間科学部とか環境工学部とか、そういう新しい分野あるいは学際的な分野、そういう学部編成が行われておりますし、そういう学部の再編成というのはますます私は柔軟性を持ってやっていかざるを得ない時代を迎えたと思います。そういうときに、一々法律を出してその間にどんどん一年も二年もたってしまうということじゃなくて、大学が自主的にそうした時代の変化に対応して速やかに柔軟に対応できる、そういったことで今度の学部の名称については政令で定めることが適切ではないか。  それから、開かれた大学の運営ということですけれども、毎年国立大学の組織については国会の予算審議でも審議いただくわけでありますし、また数や何かにつきましても国家行政組織法の規定に基づいて国会への報告義務が課されているわけでありますから、決して国会を軽視するとか国民に開かれていないということは当たらない。要するに、より柔軟で弾力的な学部編成を行うために各大学にぜひ自主的にやっていただきたい、そういう趣旨でございます。
  211. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 国民生活に密接にかかわりもあるし、また国民にとって重要な関心事でもある学部の改編について、国会がみずから審議することを放棄するというのは、私はこれは国会の自殺行為であるというふうな立場をとります。国会から要請があったというふうに大臣おっしゃいましたけれども、私はそう思うわけです。国民の代表として、国会議員として私は審議をするべきであるという立場に立って質問しているわけです。  それで、法律事項として出されると一年とか二年とかかかって急いでできないというようなことをおっしゃいましたけれども、それならなおさら私は危惧の念を深めるわけなんです。大学の改革というのは大学人自身の自主的な粘り強い取り組みであるべきで、国会審議も省略して急いでやるという性格のものではないというふうに思います。つまり、国会審議を省略することによって文部省の一存で大学改革が進められてしまうのではないかという危惧がやっぱりあるわけです。今の答弁を聞いて一層そう思いました。  私は昨年この委員会で、一般教養教育の充実観点から、教養部改組に伴う問題点について質問し、大学改革というのは大学関係者の自主的な熱意とあわせて、それを支える人的、物的な条件整備が必要である、このことを要望いたしました。学部の設置等が今回政令事項になるということになりますと、政府、文部省の意向が大学改革に一層反映されることになるんですよ。その危惧を強めるわけです。  そこで、大学改革に当たって、大学の自主性を尊重し、指導助言の名目で改革の内容に不当な介入をしないこと、改革のための物的、人的条件整備に力を注ぐことを要望したいんですけれども、どうでしょうか。
  212. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 二つの側面がございます。  一つは、国会との関係でございます。これにつきましては、先ほど大臣から御答弁申し上げたとおりでございますけれども、国立大学の学部、学科の改編につきましては毎年度の予算審議でも御審議いただくことになっておるわけでございますし、また、国家行政組織法の規定に基づきまして国会へ報告させていただくという手続もあるわけでございます。したがいまして、およそ国会の審議を経ずしてある学部ができたりできなかったりということにはなっていないということをまず一点申し上げておきたいと思います。  もう一つ、今度は大学との関係でございます。文部省が大学の自主的な改革の動きを妨げはしないかというようなお話でございますけれども、私ども、大学の自主的な改革によって改革の意欲のもとに提出されましたいろいろな学部改組あるいは教育研究上の改善措置につきましては、極力これまで大学の自主性を尊重してまいってきたわけでございます。もちろん予算等の制約があるわけでございますし、また大学自体の優先度もあるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、私どもとして、今回の学部を政令に落とすということに関しまして、これによって文部省と大学との関係が変わるというようには認識しておらないわけでございます。  最後に、教育研究条件の整備を進めろということでございます。これは当然でございまして、私どもとして精いっぱいの努力をしているところでございます。
  213. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 事後承認というのは、民主主義的な手続においてやはり一歩大きく後退することを意味するんだと思います。そのことを指摘して次の質問に入りたいんです。  大学改革の重要な柱の一つに大学院改革が挙げられます。そこで、大学院とりわけ大学院生の教育研究条件の問題について質問したいと思います。  まず、大学院の量的拡充が進められた結果、この十年間に大学院生の数が八六年時の約四万六千人から九六年の約十万五千人へと約二・三倍ですか急増しています。一方、定数削減で教員や職員の数はそれに見合った増員がなされることなく推移しているはずなんですけれども、どうなっていますか。
  214. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 大学院の学生数がかなりふえており、また一方において定員の削減の計画が進んでおるという事実につきましては、御指摘のとおりでございます。
  215. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 この間、院生は二・三倍に急増していますが、教員は一・三倍しかふえていないんです。したがって、教員一人当たりの院生の数が一・五人から二・六人へとふえているわけなんです。これは、教員は学部指導もするわけですし、それから研究支援スタッフの手ももぎられていて、院生の立場から見ると本当にきずなの深い丁寧な指導やあるいはそれによる研究というのがどうしてもできにくいという、そういう不利益をこうむっているんです。ぜひ改善を要望したいと思います。  次に、大学院生が急増する中で施設の狭隘化が深刻となっています。文部大臣も全国の国立大学の老朽施設が五〇%と先ほどおっしゃいましたか、それと重なると思うんですが、今日、大学院生協議会の調査では、研究室の机が足りなくて居場所がないとか、研究室そのものが足りないとか、そのために学外にアパートなどの一室を借りて研究室がわりにする院生までいるということなんです。文部省はこうした実態をつかんでいるでしょうか。
  216. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 数年前でございましたでしょうか、教育白書で高等教育の特集ということをやった際に、大学院学生のアンケートをとったことがございます。教育研究条件が不備である、あるいは大学院学生の処遇が不十分であるというようなことが出されているわけでございます。また、私ども幾つかの大学を視察する機会もあるわけでございますが、大学院学生の居場所自体がなかなか厳しいというような場合も目にするわけでございます。私ども、そういう事実はそれなりに承知しておるつもりでございます。  しからば、どういう手を打っておるのかというお尋ねかと思うわけでございます。非常にいろいろ制約の多いところではございますけれども、例えば国立大学の校舎基準面積の改定につきまして、平成六年度に二〇%のアップをいたしました。また、大学院の整備充実のための予算ということで、大学院の最先端設備費あるいは高度化推進特別経費というようなことにつきまして、かなり重点的な投資を行っておるところでございます。  また、人の面につきましても特別研究制度の拡充を図り、また育英奨学金制度につきまして、特に修士課程につきましてはかなり急増しておるというようなこともございまして、なかなか当たらないというようなこともございますものですから、修士課程を中心に貸与人員の増あるいは奨学金の増を図っておるところでございます。  あわせまして、ティーチングアシスタントでありますとか、あるいはリサーチアシスタントの経費というのも新規に措置しておるところでございまして、いずれにいたしましても大学院の関係につきましての整備のための努力はさせていただいておる、こういうことでございます。
  217. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 今局長がおっしゃった文部省調査、外部に委託して調査なさったそれを見たんですけれども、学生は大学院をどう見ているかというこの調査結果ですが、入学前後の大学院のイメージの変化についての調査です。  教育研究施設充実しているというイメージは、入学前は四一・四%だったのが入学後は二〇・四%と激減するんです。それから、大学院への要望では、研究や実験、実習などの施設設備の充実を求めるものの比率が最も高くて五〇・一%に達しているんです。  私は、一月に国大協の会長にお会いしました。それで、院生が研究室がないとか、机がないとか、建物が一つ足りないとか、いろいろ陳情に見えるんだけれども東大ではどうですかと聞いたら、東大も例外ではないそうです。近くのアパートの一室を借りて研究室がわりにしている人もいるとおっしゃっていました。大変深刻な実態ですので、抜本的な改善を切望いたします。  次が、もう答弁なさったんですが、大学院生の生活実態、質問より答弁の方が早かったんですが、日本育英会の奨学金の貸与率です。これがやはり院生の数が急増しましたから非常に激減しているんです。修士課程がこの十年間で三〇・九%から二四・二%、博士課程が五九・八%から四八・五%ですか、大幅に減少しているんです。  それで、日本の奨学金制度というのは、給付ではなくて貸与で、しかも利子までつけているのもあるわけです。私は、希望者全員に貸したらいいのにと思うんですけれども、育英会資金の抜本的な拡充が必要ではないでしょうか。
  218. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) お尋ねを先取りいたしまして失礼いたしました。  育英会の貸与でございます。今御指摘のように、平成八年度におきましては大学院の貸与率、これは大学院の全学生に占める奨学生の割合という意味合いでございますが、マスターコースにつきましては二四・二%、ドクターにつきましては四八・五%となっている状況にございます。ただし、いわゆる貸与率とは別に、私ども採用率と言っておるわけでございますが、日本育英会への奨学金出願者に対する採用者数の割合ということで見てまいりますと、修士課程で五九・二%、博士課程で八六・九%という数字になってございます。  ただ、いずれにいたしましても、全体として学部レベル、それから修士レベル、博士レベルと三つ比べてみますと、比較的採用率が高いというのが博士課程と言えようかと思うわけでございますが、修士課程につきましてはかなり差があるわけでございます。国公につきましては、先ほどお答えしましたとおり重点的な充実を図るべく努力している、こういうことでございます。
  219. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) 阿部さん、時間が来ています。
  220. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 じゃ、最後に大臣に。  大学院は研究者の養成機関として最も重要な役割を担っているんだというふうに思います。大学院生の教育研究条件の改善について特段の力の発揮をお願いしたいんですけれども、大臣の見解を伺います。
  221. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 大学院の学生の要望としては、今指摘された施設設備の充実という点と奨学金という経済的な援助の充実が主な点でありますが、大学院の目的というのは、やはりこれからの高度の専門的な能力を有する人材の養成ということと独創的な学術研究を進める、こういう二つの目標があるわけでありますから、大学院の充実については、厳しい財政状況の中ではありますけれども、特にめり張りをつけて、今度も育英奨学金の返済免除をするかわりに大学院に特に奨学金を厚くしてもらうということを財政当局にも理解していただいたわけでございまして、今後とも、これからの科学技術基本計画その他、新しい時代に対応した人材養成、高度の研究のために一層こういう面の努力を続けたいと思っております。
  222. 江本孟紀

    江本孟紀君 私も、国立大学の存在意義というようなことから質問をさせていただきます。私は、本岡先生のように余り極論がちょっと言えないんですが、国立大学を含めてこうあるべきじゃないかということを一点ほどお伺いしたいと思います。  平成不況と就学人口の減少で大学教育のあり方が問われようとしておりますけれども、二十四日付の朝日新聞には、「短大・大卒、いま専門校生」というタイトルで、就職難で専門学校への再入学がふえているという現状を伝えております。これは毎年五万、十万入減少していく受験人口と、慢性不況の中で少しでも就職に有利な実務を学ぼうという学生の危機感からの自然な行動だと思います。高等教育のボーダーレス化とも表現をされておりますが、国公立も私学も含めて大学はサバイバルの時代に突入していったのではないでしょうか。  そういった意味で、規制緩和、行財政改革の流れの中で、国立大学の設置についても、聖域というのは非常にいろんな意味がありますけれども、聖域扱いをしてはならないのではないかと思います。  そこで、私も別な角度からお尋ねしたいと思いますけれども、二十日付の新聞記事によりますと、平成十年度から福祉ボランティア活動など学校外活動を高校の単位に認めることなどを決めたという報道がありましたが、その中で企業実習とかボランティア活動というのが出ておりました。その中で文化・スポーツ活動を単位として認める方針という項目がありましたけれども、これは大臣、どういう意味でございましょうか。
  223. 辻村哲夫

    政府委員(辻村哲夫君) お尋ねの点でございますが、御案内のとおり、現在、政府におきましては平成九年度までの規制緩和推進計画を策定中でございますが、その過程といたしまして十二月十九日、文部大臣と総務庁長官とがお話し合いをされまして、教育関係の規制緩和について話されました。  その中で、規制緩和の一つとして高等学校の単位認定につきまして、高等学校学校外の活動につきましてもこれを高等学校の単位として認めていく、そういう方向を検討してはどうかということが話し合われ、意見の一致を見たところでございます。  その際、今先生から御指摘がありましたように、例えばとしてボランティア活動あるいは企業実習等に参加した場合と並びまして、生徒たちが文化・スポーツ行事において一定の成果を上げた場合についてもこれを単位認定していくという方途を検討してはどうかということでのやりとりがありまして、そういう方向で検討していこう、こういう意見の一致を見たということでございます。
  224. 江本孟紀

    江本孟紀君 いまいちこの文化・スポーツ活動のボランティアというのはどういうことをするのかわかりにくいのですけれども、近所のだれかが町内でやるようなものに参加するとか、そういったことでしょうか。
  225. 辻村哲夫

    政府委員(辻村哲夫君) どうもちょっと説明があれだったんですが、生徒がボランティア活動に参加した場合とか企業実習に参加した場合と並んで、生徒が文化あるいはスポーツ行事に参加し、そこで一定の成果を上げた場合、それを単位として認めるかどうか、そういうことでございます。そこでのボランティアではございません、そこでの成果を上げた場合でございます。
  226. 江本孟紀

    江本孟紀君 文化、スポーツというのはなかなかわかりにくいのですけれども、まあこれはいいです。  いずれにせよ、ボランティア活動をするということで高校生に単位を認めるということですが、私は何を言いたいかというと、国公立大学にボランティア単位を導入すべきじゃないか、このことを言いたかったわけです。  先般、阪神・淡路大震災、それからナホトカ号の油流出事故等のボランティア活動に高校生が大変参加をしておるんです。ところが、実際参加をしておるんですけれども、ちょっといろんな資料を読みますと、専門にボランティアをやっているというのはちょっと言い方はおかしいかもしれませんが、そういう人たちからは、実は高校生というのはどっちかというと暇がないということと、それから組織立ってボランティアの活動をしていないというか訓練を余り受けていない、だから、これは言ってはいけないんですけれども、せっかくやっているんですが、役に立たないことが多いとかいったようなことを言われております。  そういう点に関して、むしろ私は、国立大学の学生に組織立ってボランティアの訓練をまずしておく、それを日ごろから国立大学の単位として入れておく。何はさておいても、国立大学ですから国がお金を出した学生ですから、社会貢献ということを率先してやるということが一番大事じゃないか。ただやれと言ってもやりませんので、ボランティア活動の単位は必ず入れておく。そして入学案内等にも、ボランティア活動を単位として入れます、この大学はこういうことをしますというようなことをやるべきだと思うんです。  特に私は、医学部はこれはお金のことを余り詳しくやってもあれですけれども、先ほどもちょっと医学部の話が出ましたが、大変な国のお金を使っておると思うんです。確かに運営をして、その収入で医学部の附属病院は運営しているとは言いますが、しかし大変なお金を使って、私学の医学部へ行くよりは国立に行った方がはるかにいいわけですから、親の負担も少ないといったことからしまして、ただ、医学部へ行く場合にお金がない、あっても国立に行けないというような人たちもいるわけです。そういうことでいいますと、医学部の国立の学生というのはかなり優遇されているんじゃないか。ちょっと聞きましたところ、国立の医学部の駐車場に行くと外車だとかすごい車がびかびかあるというような話も聞きましたから、お金のことではなくて、とにかく優遇されているというようなことからいえば、医学部の学生だとかは特に阪神大震災等でも大変要求をされたわけです、知識のある医学部の学生にボランティア活動をしてほしかったと。そういった事柄を含めまして、私は、国立大学は率先して最初からボランティア単位というものを導入すべきではないかというふうに思っております。  私は、国立大学はやっぱりある程度必要じゃないか。例えば、これはちょっと冗談で悪いんですけれども、東京六大学には東大があるおかげで法政の野球部なんかも随分助かるんです。あそこはいつまでたっても弱いんですけれども、しかし負けるとえらい目に遭いますので一生懸命頑張る。せめてスポーツで頑張る。東大には頭で負けてもせめてスポーツで頑張るとかいって、何かの役には立つわけです、そういう意味では。  ちょっとそれは冗談ですが、私は、いずれにせよ、義務づけろとは言いませんけれども、ある程度そういったボランティア活動の単位というものをそれぞれ合った学部に創設すべきじゃないか。  例えば、いろいろ今言われていますように、民営化論が出たりするということは、多少国立・公立学校に対する批判もあると思います、それだけの予算も使っているわけですから。そういったことに対して、やはり世間的にも国立校はこれだけやっているんだということをアピールするということも必要ではないかというようなことで、この委員会も半分ぐらいが大体国大出身でして、半分が私大でございますけれども、そういったことでどっちがいい悪いとかということを言うのはおかしいんですが、国立大学出身の大臣のお考えをお聞かせいただきたい。
  227. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 最近、大学におきましてもボランティアを取り入れた授業を実施するところがふえてはおるわけでございます。その場合に、ボランティア活動を授業科目の中に組み入れて実施しているところが平成七年度におきまして七十四大学ございます。また、ボランティアに関する講義を実施しておる大学というのも平成七年度で三十大学あるわけでございますが、いずれにしましてもこのような大学がだんだんふえているのは事実でございます。  また、阪神・淡路大震災に伴います学生のボランティア活動につきましては、各大学等に対しまして授業の一環として位置づけるなどの協力も要請しているところでございます。  八年度予算におきまして、学生のボランティア活動への啓発を目的といたします防災ボランティアハンドブックというものを今つくっておるところでございます。  九年度予算におきましても、国立大学でボランティア養成講座というものをこれは課外活動の一環として構えておるものでございますが、そういうものの経費も計上することにいたしておるわけでございます。  委員指摘のように、ボランティア活動をどうやって学生の間に奨励していくかというのはいろんな考え方があろうかと思います。御指導も得て、いろんな研究もこれからしてまいりたいと思うわけでございます。
  228. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) ボランティアに対する意識を高めるということは必要ですし、それに対応する施策は今高等教育局長が答弁したとおりでございます。  特に、お医者さんなどはそういう意識を持っていただくということは大事なことだと思います。現に、AMDAですか、国際医療チームとして率先してやっているようなケースもありますし、私は国立、私学を問わず、やっぱりそういった医学等に携わる人、そして国立大学の学生は特に税金を多く使っているわけですから、そういうボランティア意識というものをますます高めていただくように、これは国公私立を通じて今後とも力を入れていきたいと思っております。
  229. 江本孟紀

    江本孟紀君 ぜひよろしくお願いしたいと思います。  今、国立大学の意識としては、先日のどこかの国立大学の卒業式で、学長が、最近の汚職・腐敗の現象は政治の世界にとどまらずと、皆さんただ酒、ただゴルフは気をつけようと言った後、今後さまざまな分野指導的な地位に立つと思うが、社会に出るときに気をつけなさいというようなことを言われたわけですね。そうすると、日ごろから国立大学は本当に我々もすばらしいものだと思っていればこういう発言もそのとおりだなと思うんですけれども、ちょっとかっとするところもあるわけです。というのは、今後さまざまな分野指導的な地位に立つと思うがというようなことを言う、もう我々国立大学は常に指導的立場に立つんだというようなことを言うわけですね。  でも、そのテレビを見ていたら、たまたま卒業式なんですけれども、何かおかまの格好をしたり、女の格好をしたり、赤ちゃんの格好をしたりして出てくるような大学ですから、ちょっとその点を実は心配したんです。指導的立場でこいつらはいけるのかなと。だから、そんなことで一々こちらが目くじらを立てることもないですが、指導的立場に立つということであれば、国立大学から率先してボランティア活動、ボランティア社会貢献といったことをぜひやらせていただきたいと思います。  質問を終わります。
  230. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 それでは、今度政策研究大学院大学が埼玉大学に設置されるということで、その質問から始めたいと思います。  先ほどは、医学部のことで細分化されているということを伺いましたけれども、医学部に限らず、大学の学問が非常に細分化されていて学際的である必要があるということは限りなく言われているのですけれども、実際にはなかなか実行されない。官僚組織の縦割り行政の体質がもうなかなか直らない、それから中長期的な政策を立案するためには、どうしてもそういった横断的なことが必要だと言われながら実行できない、それが行政改革の一つの大きな必要性というか、必然なんだろうと思いますが、学問領域でも同じようなことが言えるのではないでしょうか。  例えば、環境の分野ですけれども、政策の企画立案というのは、自然科学だけでもだめであるし、技術だけでもだめだし、そしてそこにもう経済、政治、国際、ありとあらゆる社会科学的な分野が必要になってきます。  今度の学部の中で、果たしてそういう総合的な観点から戦略が立てられるようなそういったダイナミックな研究ができるのかどうか、特に今後二十一世紀に向けてどういう具体的なビジョンを持っておられるか、大臣にそのお考えを伺わせてください。
  231. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 堂本委員と一緒に環境問題をやっていまして、確かに先ほど申し上げたように、社会科学、自然科学両面からアプローチしないとなかなか問題が解決できない。最近のクローンの研究なども、あれはもう科学技術の大変なすばらしい成果だと思いますけれども、一方においては倫理の問題が生じますし、また原子力発電におきましてもチェルノブイリ、スリーマイル島あるいは最近の東海村、こういうことで常に自然科学万能ではないというやっぱり自然に対する恐れとか、そういう社会科学的な、倫理的なあるいは道徳的な側面からのアプローチもどうしても必要なんですね。したがって、私は今おっしゃるように学際的、総合的アプローチが本当に必要だと思っております。  このために、例えば今までの講座制というもののあり方も、余りにも細分化、専門化しちゃったためにそういう領域にまたがる問題の広い視野というものが失われがちであったということから、これからは大いにもっと大講座制ということで横断的な幅広い研究ができるような仕組みを導入しなきゃいけないと思いますし、また大学は大学だけというんじゃなくて、国公私立と行政機関あるいは民間企業、こういうところとの実務経験者の交流というようなことも必要でありますし、そういった各界からの有能な者を採用することによって流動性を高め、研究の活性化を図る、こういうものがまさにこの政策研究大学院大学の一つのあり方だと思っております。
  232. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 ぜひダイナミックに、何とか小手先で済ませないでそれはもう実現させていただきたいと思うんですが、同時にやはり国立大学をもう少し開いていただきたいと思うんです。  私、個人的な経験なんですけれども、環境の法律の立案ということを一番たくさんやってきたことで、たまたまある国立大学で環境法の講座が開かれたものですから傍聴させてほしいといって、大学院なんですが、行ったら断られました。相当しつこく言ったんですが、後ろに立っているだけならいいけれども傍聴は許せないということで、入れてもらえなかった。  それから、まだ会社員をやっていたころですけれども、やはりこれも国立大学で集中講座があったんですが、それも頼みに行ってどうしてもだめということで入れていただけなくて、聴講費は三千円だったんですが、結局何かそれじゃ録音をとることにしましょうということで名目はつけてもらって、五万円ぐらいかかった。でも、それはこちらも税金を払っているんだからおかしいと申し上げたんですけれども、やはり入れられなかったわけです。  やはり社会人が必要があるときに、もう非常にそのことに対して積極的に関与している場合には認めるというぐらいのことはあっていいと思うんですが、国立大学であればこそ、私立なら申しませんけれども、国立だったらば専門家が傍聴するということぐらいはいいんではないかと私は思うんですが、いかがでしょうか。
  233. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 今、先生の御指摘の個別の事例がどんなものかということにつきましては私ども具体には承知しておらないわけでございますが、一般的な問題といたしまして、社会人の大学への受け入れということにつきましては、学部であれ大学院であれ、特に大学院レベルにおきましては積極的に進めておることでございまして、昼夜開議制の実施をするとか、あるいは夜間の大学院を設けるとか、あるいは編入学の設定ということで途中年次から社会人を受け入れるとかいうような方途を通じまして、できるだけ社会人の方々にも大学教育を受け得る立場ということで引き受けられるようなことを支援している、こういうことでございます。
  234. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 この次はきょうの議事録を持って交渉に行くことにいたします。  次は、今度は看護等医療技術教育の充実という観点から、三年制の医療技術短期大学部が四年制の医学部の看護学科になるということになりました。これも医学教育なんですが、先ほどのドクターたちの教育と同じように看護婦さんの場合も大変に細分化されているんではないかというふうに思います。  と申しますのは、ドクターほど細分化されていないかもしれませんけれども、大変小さい診療所とか小さい病院であったらもっとパラメディカルの分野も看護士でも看護婦でも教育を受けていればいろいろなことができるというふうに思うんですけれども、そこが、看護婦の領域はここまで、それからここはパラメディカルな部分というふうに非常に仕事が細分化されているように報告をいろいろなところで聞きます。委員長専門家ですけれども。もっとその辺を、四年制になるのであれば、その一年でそういった看護の職にある方はもっとパラメディカルな領域まで広げてのまさに学際的な教育をぜひしていただきたい、そして余り医療の領域で細分化されない方がいいと思うことが一つです。  その点については、局長いかがでしょうか。
  235. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 三年から四年にするということで一年余計に教育を受けるということになるわけでございますが、その趣旨とするところは今先生が御指摘のとおりでございまして、もちろん専門的な技術、技能というものを高めるということはあるわけでございますが、それよりもむしろ幅広い教養と申しますか、同じ専門であっても隣の専門もあわせて視野の中に入れられるような、そういう素養を磨くというような幅の広さということを余計に身につけるということの方にむしろ重きがあるというように私ども理解しておるわけでございます。
  236. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 その幅は大変結構だと思います。  もう一つ、ぜひ医学教育の中に取り入れていただきたいこと、それはやはり病人というのは大変弱い立場ですね。医師もそれから看護に当たる方たちもやはり強い立場なんです。ところが、今の入学試験のシステムでいうと、偏差値で医学部に行く人が非常に多い。そのためかどうかわかりませんけれども、私はそれがどういう形であらわれているかというと、言葉だと思っています。  私の知っているお年寄りで、病院に入院したらば、おばあさん、おばあさんと呼ばれて、何の何氏というちゃんと姓があるにもかかわらず、みんなおじいさんとかおばあさん大丈夫かね、まるで幼稚園の子供に語りかけるような言葉つきで語られる。それは私自身も経験していますからよくわかります。これは、その八十年なり七十年なりの人生を生きてきた方を病人だからといって下に見る言葉遣いに、私は医師あるいは看護婦の体質がもうむき出しにあらわれていると思うんです。その方はついにその言葉が嫌で入院しないまま亡くなりましたけれども、周りでそれを指摘される方はいっぱいいらっしゃいます。  ですから、それは言葉だけの問題ではなくて、医師が別に勉強ができるからといって、ずっと一生畑を耕していた方より偉いわけでは決してありません。そういったところが日本医学教育の最大の欠点だというふうに私は認識しております。ですから、そのことをきちっと、医師の立場というのはそういう弱い病人を助ける立場なんであって別に偉いんではない、病人は自分の目下のものなんではないんだというその立場をぜひともきちっと医学教育の中で教えていただきたい。事によったら、患者に対しての言葉遣いのクラスぐらい持ってほしいと私は思います。外国とそこが一番違う。外国だったら、ドクターがプリーズというようなことをきちっと言うし、丁寧語できちっと患者さんに話しています。それを全部命令とかまるで子供に話すような言葉で治療をされるということは、非常に患者さんの精神衛生上よくないというふうに思いますので、ここのところはきちっと教育していただきたいと思います。  一番そのことを思うのは、このごろはいろいろな病院で、呼ぶときに何々様とつけるんですね。これ非常に形式的、そういうところは「さん」で結構だと思うんです。様なんてわざわざつける必要がない。しかし、実際に入院している方のところを見て歩くと、本当に汚い言葉ですね、ドクターの患者さんに対しての言葉は。  このことは局長にしっかりと、そして大臣にも、ぜひ医学教育を、こういうふうに三年を四年に看護婦さんもなるし、それからこれから医療の質的転換を図るときに徹底的にわかっていただきたいことは、医師が別に偏差値が高いから医師になるんではない、もっとまさにボランタリーな昔から言う医の道で医師になるのだということを徹底的に教育してほしいし、それからアメリカのように入学試験のときにそれを調べるというところもあるわけですから、医師の資格としてそれをもう最初に調べていただくぐらいのことがあっていいと思いますが、いかがでしょうか。
  237. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) まず入試の関係で申しますと、例えば東大の医学部におきまして、従来一部にしか面接を実施してこなかったということがございましたが、十一年度でございましたでしょうか、全員面接というような方式に切りかえるという動きがございます。それがすべてだというわけではございませんが、ただ、いわゆる学力試験中心ということだけで将来医師になるべき人を選抜してはいけないという、そういう考え方が基本にあることは事実でございます。そういうような動きというものはやはり私どもとしては歓迎したいというように考えておるわけでございます。  また、今先生御指摘の、患者の方とそれから医師側あるいは看護婦さん側との人間関係の問題でございます。  種々、例えばインフォームド・コンセントでありますとか、世上いろいろ表立って議論されている事柄ももちろん重要であるわけでございますが、今先生御指摘のような、どういうような名前で呼ぶかというようなことも含めました日常の人間関係というものをきちっとしたものにしていくということが医療活動の上で非常に重要なものであるというのは、実は昨年の二十一世紀医学・医療懇談会の中でも指摘されておることでございまして、ぜひそういう方向で医学教育が行われることを、また医療の現場がそのようなことで行われることを期待いたしたいというように考えております。
  238. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) おっしゃることは全く同感でございまして、私は特に、医療に従事する医師、看護婦には、やはり幅広い教養とかあるいは弱い者に対するデリカシーといいますか、そういった豊かな人間性とか感性、あるいはアカウンタビリティーというんですか、そういうことを特に要求されると思います。  そこで、きのうも阪大の学長とお会いしたんですけれども、例えば医学部の入学試験なんかでも、今回は前期とかほかの学部は足切りをやめたんですが、医学部だけはどうしても面接をやりたいということで、物理的に二次選抜をやらざるを得なかった。それは、やっぱり学力だけじゃなくて、そういう人間性とかそういった要素を見きわめるためにそれだけ時間がかかるので、どうしても足切りはせざるを得なかった、こういうお話も聞きました。今後そういう方向で一生懸命頑張りたいと思っております。
  239. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  240. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  241. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 国立学校設置法の一部を改正する法律案に反対の立場で討論を行いたいと思います。  もともと国立学校設置法において国立大学の学部の新設、改組等が法律事項とされてきたのは、国立大学の学部が大学を構成する基本的構成要素であり、国民の教育機関として広く利用され、国民の生活に重要な関係を持つ機関であることから、大学と同様、国会での審議が必要であるという考え方によるものです。  とりわけ、学部の設置や改組は大学改革に密接にかかわるものであるところからも、国会審議が不可欠であるにもかかわらず、それを省略するということは、大学改革が文部省の一存で進められ、大学の自主的な改革がゆがめられるおそれがあります。  したがって、併設短期大学部の改組など賛成の事項もありますが、今回の法改正案には反対です。  なお、政策研究大学院大学については、衆議院でも取り上げ、問題点を指摘しましたが、その設立の経緯や内容等から見て、この大学が真理の探求と学術研究を通じて国民の利益と社会進歩に奉仕するという大学としてふさわしいものとなるかどうか、日本共産党としては責任が持てないということを念のために申し添えて、討論を終わります。
  242. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  243. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  国立学校設置法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  244. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  245. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時散会