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1997-06-05 第140回国会 参議院 農林水産委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年六月五日(木曜日)    午後二時開会     —————————————    委員異動  四月七日     辞任         補欠選任      三浦 一水君     田沢 智治君  四月八日     辞任         補欠選任      田沢 智治君     三浦 一水君  四月十日     辞任         補欠選任      松村 龍二君     倉田 寛之君  四月十一日     辞任         補欠選任      倉田 寛之君     松村 龍二君      村沢  牧君     三重野栄子君  四月十六日     辞任         補欠選任      岩永 浩美君     橋本 聖子君  四月十七日     辞任         補欠選任      橋本 聖子君     岩永 浩美君  四月二十一日     辞任         補欠選任      三重野栄子君     村沢  牧君  四月二十四日     辞任         補欠選任      三浦 一水君     中原  爽君  四月二十五日     辞任         補欠選任      中原  爽君     三浦 一水君  五月六日     辞任         補欠選任      佐藤 静雄君     南野知惠子君  五月七日     辞任         補欠選任      南野知惠子君     大野つや子君      須藤美也子君     聽濤  弘君  五月十二日     辞任         補欠選任      一井 淳治君     伊藤 基隆君  五月十四日     辞任         補欠選任      聽濤  弘君     須藤美也子君  五月十五日     辞任         補欠選任      伊藤 基隆君     一井 淳治君  五月十六日     辞任         補欠選任      松村 龍二君     竹山  裕君  五月十九日     辞任         補欠選任      竹山  裕君     松村 龍二君  五月二十六日     辞任         補欠選任      須藤美也子君     聽濤  弘君  五月二十七日     辞任         補欠選任      谷本  巍君     清水 澄子君      聽濤  弘君     須藤美也子君  五月二十八日     辞任         補欠選任      清水 澄子君     谷本  巍君  六月二日     辞任         補欠選任      須藤美也子君     筆坂 秀世君  六月三日     辞任         補欠選任      筆坂 秀世君     須藤美也子君  六月四日     辞任         補欠選任      高橋 令則君     山崎  力君      村沢  牧君     清水 澄子君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         真島 一男君     理 事                 浦田  勝君                 高木 正明君                 阿曽田 清君                 谷本  巍君                 一井 淳治君     委 員                 井上 吉夫君                 岩永 浩美君                 大野つや子君                 松村 龍二君                 三浦 一水君                 石井 一二君                 及川 順郎君                 都築  譲君                 山崎  力君                 清水 澄子君                 国井 正幸君                 須藤美也子君                 島袋 宗康君                 常田 享詳君    国務大臣        農林水産大臣   藤本 孝雄君    政府委員        農林水産大臣官        房長       堤  英隆君        農林水産省経済        局長       熊澤 英昭君        農林水産省構造        改善局長     山本  徹君        農林水産省農産        園芸局長     高木  賢君        農林水産省食品        流通局長     本田 浩次君        農林水産技術会        議事務局長    三輪睿太郎君        食糧庁次長    阿部  修君        水産庁長官    嶌田 道夫君    事務局側        常任委員会専門        員        秋本 達徳君    説明員        科学技術庁研究        開発局ライフサ        イエンス課長   藤木 完治君        厚生省生活衛生        局食品科学課長  黒川 達夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○農林水産政策に関する調査  (当面の農林水産行政に関する件)     —————————————
  2. 真島一男

    委員長真島一男君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る五月六日、佐藤静雄君が委員辞任され、その補欠として南野知惠子君が選任されました。  また、去る五月七日、南野知惠子君が委員辞任され、その補欠として大野つや子君が選任されました。  また、昨日、高橋令則君及び村沢牧君が委員辞任され、その補欠として山崎力君及び清水澄子君が選任されました。     —————————————
  3. 真島一男

    委員長真島一男君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が二名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 真島一男

    委員長真島一男君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事谷本巍君及び一井淳治君を指名いたします。     —————————————
  5. 真島一男

    委員長真島一男君) 農林水産政策に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 浦田勝

    浦田勝君 国営の諌早干拓事業につきましてお尋ねいたしたいと思います。  限られた時間でございまして、単刀直入にお尋ね申し上げますので、簡潔に御答弁を願いたいと思います。  去る四月十四日、潮どめの堤防水門の仮締め切りが行われたわけでありますが、急に思い出したかのごとくこの問題が政治問題化いたしまして、自然環境を守れ、ムツゴロウを守れとか、水門をあけろとか、こういうことが言われてきたわけであります。なぜ今ごろになって、十年もたってこういう問題が出てくるんだろうかという思いに私は駆られたわけでございます。  しかも、一政治家の方が現場に赴いて現場管理者に対して、いわゆる公衆の面前において面罵、罵倒しながら水門をあけろと。この姿を見まして私は唖然としたわけであります。少なくとも高いレベルの地位にある人が現場であのようなことを言っていいのかどうか。自然環境を守らきやならないというのはだれでも知っているわけであります。  工事につきましては、多年、地元皆さん方がこの工事自分たち災害から守ってくれるんだという思いと、もう一つはやはりすばらしい営農団地を造成したいという思い。御案内のとおり、島原は本当に棚田みたいなものがたくさんございまして、ああいう広い大規模農業はできないわけでありますが、そういう中でこれができることによって、野菜づくりその他の営農に意欲を持った人たちがたくさんおられるわけであります。  にもかかわらず、今申し上げましたように自然環境を守れ、あるいはムツゴロウを守れ、こういうことでございますが、この水門をあけることによってどのような結果になるのか、まずこの点からお尋ねしたいと思います。
  7. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 端的にお答え申し上げます。  この事業の目的は、今お触れになられましたように営農干拓事業とそれから防災効果でございまして、特に水門をあけるということになりますと防災機能が著しく損なわれるおそれが生じまして、地元が強く希望しております防災対策上、支障を生じることになるだろう、私どもはこういう危惧をいたしております。  もう一点は、この水門をあけることによりまして外海からの海水が非常な勢いで流入することによって、漁業関係者には極めて大きな影響を与える。地元国会議員皆様方からは、そういう地元の事情を十分に承知の上でこの水門を一時あけるようにということを言っているのかどうか、そういう点については疑問を投げかけておられるぐらい問題は漁業関係者にとりましては大きな問題であろうと思います。
  8. 浦田勝

    浦田勝君 潮どめの防災は、地元にとりましてはこれはあらゆる災害から守ってくれるというならば、長崎県においては守りがいがある、こう言っておるわけであります。一日千秋の思いで彼らはこの完工を待っておったわけでありますが、今申しましたように、他からのそういう圧力があって今、大臣がお答えになったようなことになりまして、潮流流入等によりまして変化が多岐にわたって影響が出るというふうに私は思うわけでございます。  私は、この前からいろいろな人たちが言っておるのを聞いておりますと、開田して何が干拓の中に作物ができるものか、こういうようなことを言う人がございますけれども、とんでもない話でありまして、有明海は全域にわたりまして干拓歴史があるわけでございます。私のところの横島というところにも干拓地がございますが、これは立派な営農団地を造成して野菜をつくり、若い者は高粗収入農業に定着をしておるわけであります。これは八代から眺めますと、全部そういうふうになっているわけです。  我が国のようなこんな国土の狭隘なところにおきましては、生きるために農地というものを求めながら昔から広げてきた歴史があるわけです。食糧確保のために干拓をなされてきた、そういう歴史の上に立っての干拓事業でありますから、これにつきましては今私が申し上げましたように、潮流変化等にさらに変化が起こるならば大変なことになるという思いでございます。  それともう一つは、よく除塩のことを言われるわけであります。塩分が多いから農地としては不適格だと。これは素人であります。東京あたり評論家方々がよく使うわけですが、何も現場御存じなくておっしゃる方がおられるわけでありまして、そういう方々原稿用紙の升目の中に文字を書き込んで評論をされること、それも結構であります。しかし、同じ四角でもゆがんだ田の中で額に汗を流しながら営農をやってきた人たちは、これはよく知っておるわけであります。  除塩というのはやはり水田が一番であります。あるいは牧草を植えるとか、こういうことによって除塩が輪作によってなる。ですから、あの中にまず水を入れること、そして、今のような生産調整の中でございますから、飼料作物としての青刈りとか、そういうことで稲作をおやりいただけば、立派な葉たばこでもトマトでもできるわけであります。  私のところの干拓地の中でも、粗収入三千万上げておる者もあるわけでありますから、今度の農地というものは災害の防止と農業と、両面にわたって私どもにとっては大事なのではないか。  私はちょうど諌早湾の前の方に住んでおるわけであります。私の住んでおる向こうは諌早湾がよく見えて、私どもしょっちゅう諌早に行ったり来たりしておるわけでありますから、現場の実情というのはよくよく承知いたしておるところであります。これにつきまして、実態を知らずして自然環境を破壊するとかあるいはムツゴロウが死滅するとかと言う人がおりますけれどもムツゴロウはどこが一番とれるのか、十三トンほど今とれるそうでありますが、ここに岩永先生おられますけれども、鹿島とか佐賀中心でありまして、ムツゴロウが全部死ぬわけじゃありません。七%ぐらい死ぬわけでありますが、ムツゴロウが死ぬのと災害で人間が死ぬのとどっちが大切なのか、私はそれを申し上げたいわけであります。  ムツゴロウが七%死滅すると聞いておりますけれども、本事業防災効果は極めて重要でありますが、その見解をお示し願いたいと思います。
  9. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 干拓歴史につきましては、先生よく御承知のように、歴史をひもときますと推古天皇のときから干潟ができた、そういう歴史がございまして、その干潟が造成される、そしてその干潟干拓していくと、この歴史が続いてきたわけです。特に、明治、大正、昭和とどんどんこの干潟をさらに干拓と、こういうことになりまして、その都度その干潟から干拓になった時点でその地域生物は死滅してきた、そういう歴史がございますので、今回も同じようなことが行われる。地元からいたしますと、なぜ今このような議論が起こるのかなという疑問は、昔からの歴史をずっと知っておる地元からすると非常に不思議に感じておるわけであります。  今回のこの干拓事業によりましていろいろな生物の問題もあります。残念なことだと思いますけれども地元方々の生命、財産を守る、こういうためには、これはやはりこの事業は推進していかなきゃならぬし、また地元方々も長い苦難の歴史の上にこの事業を推進していく、この決定を選択をしたわけでございまして、我々としてはこの事業をこれからも推進してまいります。ただ、環境問題は非常に大事でございますので、モニタリング等を通じまして環境対策については十分にしてまいりたいと思います。  また、有明湾の中でこの諌早湾干拓事業に占める面積は七%でございます。その点につきましては委員が今言われたとおりでございまして、その七%の干潟干拓を今行っている、こういうことでございます。
  10. 浦田勝

    浦田勝君 私は先ほど七%と言ったけれども、それは干拓の七%で、その中のムツゴロウでございます。  私のところの八代郡地区、私ども横島の大開とか大正開とか明丑開とかとずっとあるわけですが、今おっしゃったように干拓歴史なんです。ですから、地元では干拓の歌、干拓の踊り、そして先人に対する感謝のお祭りがなされております。あわせて、災害から守ってきたという歴史もあるわけでございます。  ですから、今、大臣の御決意のほどを承ったわけでございますけれども、環境問題を決して私は無視しろとか自然はめちゃくちゃにしろなんと言う気はございません。ただ、皆さん方の総意をもって、そして多年にわたる体験から生まれたあの諌早湾干拓工事でありますから、私どもはそれに絶対の信頼を置き、地元人たちの要望によって私はきょうの発言に及んでいるわけでありますから、どうか外部からの無法な圧力に屈して水門をあけることによってどんな状態になるのか。一時期はそういう問題が発生することはこれは仕方がございません。しかし、将来にかけてやるためにはあくまでもこの水門というものはきちっと私は閉めていただきたい、こういうことを申し上げたいと思います。  以上です。
  11. 岩永浩美

    岩永浩美君 それでは、通告に従って三、四点ほど質疑をしたいと思います。  まず、ウルグアイ・ラウンド対策関連について伺いたいと思います。  一昨日、政府与党財政構造改革会議が開催をされて、分野ごと歳出削減目標決定をされました。続いて閣議決定をされまして、この過程ウルグアイ・ラウンド対策予算についてのいろいろの議論が行われてきたことは私たち十分承知をしております。このウルグアイ・ラウンド合意に盛られている農業に与える影響を十分考慮して、ウルグアイ・ラウンド対策費として別建て国際競争力を高めていくための対策を講じていく六兆百億円、そのことが議論されてまいりましたが、今回、財政構造改革会議の中で補正予算は計上しないとか、あるいは公共事業に偏重しているといういろいろな批判等々もあって、全体計画で二年間繰り延べをされることも決定をされています。  しかし、私自身は国際競争力に勝っていく農業を再構築をしていくためには、何としてでもさきに決定をされた六兆百億円を十分に農家に還元し、担保されたものについてはそれを実行していくことが公約だと私は思うし、それをぜひやってもらいたい。  大変財政が厳しい折ではありますが、いろいろな批判等々もありますけれども、この財政構造改革会議の中で決定をされ、閣議決定されたことを踏まえて、農林水産大臣は今後この問題にどう取り組もうとされるのか、まずそのことをお伺いしておきたいと思います。
  12. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) ラウンド対策につきましては、私ども一番のポイントはこの対策予算面でどのように実効が担保されるかと、こういうことだと思っております。  今回のUR対策予算の取り扱いにつきましては、財政構造改革会議におきまして、総理より口頭で事業の見直しとあわせて予算編成過程で検討をすると、そういう御発言があったわけでございます。したがいまして、現段階では具体的な方針は定まっておりませんけれども、しかし、政府与党合意、すなわちウルグアイ・ラウンド対策費については農林水産予算支障を来さない、そういう措置をする、この政府与党合意やこれまでの対策予算の大宗を補正予算で措置してきたという経緯を踏まえまして、私は適切な予算を講じていくということが必要であると考えております。
  13. 岩永浩美

    岩永浩美君 それでは、補正予算は今後の予算編成過程の中において、九年度補正予算を計上していただくという前提に立ってちょっとお尋ねをしたいと思います。  ぜひ補正予算は計上してもらいたい。なぜならば、それぞれの市町村等において当初予算で既に今年度の非公共事業部門においても予算を計上していただいています。もしこのことが補正予算として計上されなかった場合には、どうしてもその問題は大きな政治不信につながっていくことになっていくので、やっぱり公共事業にかかわらず非公共のものも含めて、とにかく補正予算というものは、今年度それぞれの地域から出されているウルグアイ・ラウンド関連事業に関するものにおいては、平成九年度においては完全に実施をしてもらいたい、その実施をしてもらうというお約束ができるかどうかお願いしたい。
  14. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 今、委員が言われましたような御意見、私どもも同じ考え方で、特に補正予算で計上されない場合は地元が非常に混乱をすると。準備をして積み重ねてきておるわけでございまして、三年間も補正で対応してきた、しかも中身についていえば当初予算で大体二五%、補正で七五%前後の事業を推進してきた。九年度につきましても、地元としては補正があるという前提でいろいろな計画を立てておるわけでございますから、そういう点から考えますと、仮に補正がないということになりますと非常な混乱が起こるということについては、私どもも同じ認識でそういう意見を申し上げてきたわけでございます。  一方におきまして、景気対策のための財政の出動はない、こういう一つの基本的な方針もございまして、そういう点から考えて今のような表現にならざるを得なかったというふうに認識しておりますけれども考え方としては、委員が今申されましたような同じ考え方でおるということを申し上げます。
  15. 岩永浩美

    岩永浩美君 ぜひ補正予算を計上していただくようにお願いをしておきたいと思うし、特にウルグアイ・ラウンド対策についていろいろな人たちの御意見の中に、ウルグアイ・ラウンド農家並びにその公共事業中心としたそれぞれの地域の業者のためとかいろいろな意見を言う人がおられます。決してそういうことではなくて、今回の場合についてはこの補正があることによって非公共あるいは公共事業、そういうものを含めてとにかく計上していただくことによって、農家人たち安心感そして政治に対する信頼感、そのことを強めていくことになります。  今回の平成九年度においては何としてでも補正予算を計上していただくことを、大臣答弁を今お聞きして少しは安心をいたしますが、毎日毎日、朝の新聞を読むたびに、きょうは予算計上されそうだ、あしたの新聞を見ると補正には計上されない。一日一日変わった報道がなされてきたこの一週間であっただけに、今の大臣答弁を聞いて、予算編成時期において補正予算として対応したいという、そういう一つの意向の中で推移されていることを多として、今後取り組んでもらいたいことをお願いしておきたいと存じます。  次に、先ほど浦田議員の方から話があった諌早湾干拓問題の関連について、重複を避けて少し質問をしておきたいと思います。  先ほど御紹介があったように私は佐賀県の選出であり、諌早湾有明海の一部と認識をしているところでございます。かつて十五年ほど前に、佐賀県も長崎県の南部地域開発総合事業としてこの干拓事業に対する計画がありました。その当時は、今実行されている計画の約三倍ほどの規模干拓事業を進めておられました。当時、佐賀県側は有明海の湾岸を守っていくためにその干拓事業に反対をいたしました。しかし、私たちの住む佐賀県の南部地域は、まさに有明海干潟と背中合わせに生活をいたしております。今回、長崎県が諌早干拓事業防災事業としてこのことを漕手されるに決定を至ったこと、人命を守っていくための防災事業として結果としてその干拓ができることについて佐賀県側は了解をした経過がございます。  しかし、今まで多くの方々から議論をされ、あるいは新聞マスコミ等諌早湾を閉じた是非が問われていますが、農林省としてもっと自信のあるPR、自信のある説明をしていくべきではないのか。ある一つ世論の風潮に流されたり、あるいはその一つ世論の動向によって右顧左眄しているようなところが多分に見受けられるきらいがあり、そのことがかえって多くの方々に対する不信感を増幅してしまっているんではないかという一つ考えを持たざるを得ない。  そういう点について農林省は、この干拓防災事業として果たしてきた役割、そして防災事業としてこれがなかったらその地域災害がもっと大きな被害として起こってきたであろうことをPRして、もっと皆さん方に納得をしてもらう方策を講じるべきだと私は思いますが、いかがお考えでしょうか。
  16. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 仰せのとおりだと思います。  この地域の持つ独自性といいますか特徴といいますか、そういう内容につきましては、恐らくこの諌早湾周辺にお住まいになる方々以外は正確に御承知ないと思います。干満の差が六メートルもある、日本で最高の干満の差が有明湾にあるということ。それから、諌早湾周辺で海抜ゼロメートルまたマイナス一メートル地域が相当な広さであるということ。雨が降ればいつもこの低地に水がたまる、しかも満ち潮になれば非常に、六メートル干満があるわけでございますから、これまた海水が押し寄せてくる、こういうことによって常時水につかっておったと、こういう実態は実は余り御存じないと思うんです。  ですから、我々はこの潮受け堤防、言葉を変えれば防波堤みたいなものをつくりまして、海からの海水はそこで遮断をする。それから、調整池という池を中につくることによって外海との水位をマイナス一メートルに保って、それによって七千二百万立方メートルの内陸部からおりてくる水はそこでためられるわけで、それが大きな防災効果機能を発揮しておるわけです。そういうことについては私ども機会あるごとに説明を行ってきているわけでございますが、残念ながら全国の側から見れば、なかなかこの地域の持つそういう特徴といいますか、水難、水につかったという歴史御存じない方が非常に多いわけでございます。そういう点、重々私どもPRの不足を今痛感しておるわけで、これからも力を入れてそういう問題を正しく国民の皆さん方に理解していただくように努力していきたいと思います。  きょう地元の町長の方々が来られまして、雨が降ればこれはつかるのではないかとか、またポンプアップのために駆けつけていかなきゃならぬのじゃないかとか、そういう毎日であったと、水につかったそういう苦しいことを恐らく国民の皆さんは御存じないだろうと、そういうことを承知していただいたらムツゴロウを救えというようなことだけの意見にはならないだろうと、同じ日本人として我々のことを考えてもらえるはずだと、こういう御意見もございました。  私ども、そういう地元意見を聞きながら、これから十分にPRをやっていきたいというふうに考えております。
  17. 岩永浩美

    岩永浩美君 諌早湾干拓事業は決してむだな公共事業を推進してきたということではないこと、やっぱり地域防災のために結果として干拓ができていくことを、防災事業のためにやってきたということをぜひ力強く言ってもらいたい。  しかし、私は大変残念だったことは、六月三日の夕刊に、朝日新聞、読売、日経、東京新聞、今アセスすれば違った判断もとか、現時点でアセスを行えば諌早湾干拓認めずという環境庁長官の記事が載っています。現実的に、現在でアセスをやっていった場合にそういう認識になって、その当時の認識と全然違う認識が出てくるということはおかしいことであって、当時だってそのアセスは完全にやってきたはずなんです。その当時にやった認識と現在の認識と違いがあってこういう発言があるとすれば、私はゆゆしきことだと思いますが、この新聞の記事は正しいんですか。
  18. 山本徹

    政府委員(山本徹君) ただいま先生御指摘になりました新聞の記事の件でございますけれども、私ども直ちに環境庁に事実関係を確認いたしましたところ次のような回答を得ました。  すなわち、石井環境庁長官は記者の質問に答えて、諌早問題という個別の案件について仮定の話をするのは不適当であるという前提で、一般論として、環境アセスメントは科学的知見の水準やその時々の環境保全についての政府、地方公共団体、住民等の考え方が反映されるものであるところから、環境庁の意見がいつも同じということではないとの認識を示したものでありますと、なお環境庁としては、諌早湾干拓事業については、昭和六十三年当時においても干潟の重要性については十分認識した上で意見を述べており、環境庁としては意見の基本は変化していないし、環境アセスメントを再実施するつもりもない。政府としては、従来どおり諌早湾干拓事業実施していくというこれまでの方針にいささかも変わりはない。  以上が環境庁長官の真意という回答を得ております。  したがって、一部の報道は正確でございませんので、環境庁にはあわせて報道の訂正方も申し入れております。
  19. 岩永浩美

    岩永浩美君 今、局長の方から御答弁がありましたが、現実的にその実態を知らない人たち新聞の報道やテレビの報道等によって誤った認識を持たれることによって不信感が増幅をしていくこと、その発言の趣旨が完全に理解されずに報道されたことについては、もしこのことを間違った報道だとして訂正を求められたとしたなら、訂正をされたその記事は記載されたんですか。
  20. 山本徹

    政府委員(山本徹君) まだその訂正の記事は記載されておりません。
  21. 岩永浩美

    岩永浩美君 私は、政治問題化しているこういう干拓の問題について、役所がとってきた今までの経過、正しい認識皆さん方に知らしめる努力、そのことによって批判を受けるべきは受け、正しい判断を行っていく。そしてまた、新たな政策をつくり上げていくということが必要だとしても、間違った形の認識を国民に与えることだけは今後絶対にないように特段の努力をしてもらいたいことを要望いたしておきます。  次に、二百海里体制の早期の確立について伺っておきます。  去年、国連海洋法条約を国会で批准いたしました。この際、日中、日韓の間で批准を受けて新しい漁業協定をつくることにしてありました。しかし、年度内に日中、日韓の漁業協定を締結すべくその作業をしてこられたと思いますが、今なお日中、日韓の漁業協定のことについて全然私どもにその姿が見えてまいりません。  しかし、二百海里を設定する過程の中で、玄界漁民の皆さん方は大変やっぱり、どこの船ということは申し上げませんが、外国船による無法操業が続いている。そして、資源を枯渇させないようにということで国連海洋法条約の中で批准をしてきた約束が守られていない。この実態をどう考えておられるのか。今どこまで進んでいるのか、そのことを初めに伺います。
  22. 嶌田道夫

    政府委員(嶌田道夫君) 韓国、中国との間におきましては、今、先生が言われましたように、国連海洋法条約の趣旨に沿いました新たな日韓、日中の漁業協定を早急に締結するということが、先般実施いたしましたTAC協定の実効をあらしめるためにも必要でございます。このようなために、昨年から今年にかけまして数回にわたり、新たな漁業協定締結のための協議を行ってきたところでございます。  これまでの経緯を申しますと、日中間の協議におきましては、原則的に沿岸国主義にのっとった解決を目指しまして交渉の加速化を図るとともに、日中間で境界画定の必要な水域がございます。この必要な水域については何らかの暫定的な考え方を導入するという大枠の考え方を双方で確認した上で、その具体的な内容につきまして積極的に検討するということで意見の一致を見ておりまして、現在、双方でこの具体的な内容について知恵を出し合おうということで協議を行っているところでございます。  他方、日韓間でございますけれども、これにつきましては、海洋法条約の趣旨に沿った協定を締結するという幾つかの基本的な考え方につきましては意見の一致を見ておりますけれども、他方、境界画定が必要な水域に係る問題につきましては、日本側は、境界画定につきましてはなかなか時間がかかるということもございまして、現実的かつ早期の解決を図るために暫定的な考え方に基づく解決を主張しているのに対しまして、韓国側は、まず境界画定を行った上で漁業協定の問題を解決すべきであるという立場を主張しておりまして、双方立場については平行線となっております。  政府といたしましては、これまで国会での御決議もございますし、また参議院の海洋法特別委員会での附帯決議もありますし、さらに与党三党合意もございます。これらを重く受けとめておりまして、できるだけ早い時期に新たな漁業協定の締結ができますように現在鋭意努力しているところでございます。
  23. 岩永浩美

    岩永浩美君 私は、前の質問でもこの質問をいたしました。そして、年度内に成立をさせるというお話でした。年度内に成立をさせるという話から七月二十日前後をめどにというような話で、少しずれているように聞いています。七月いっぱいにできなかったときはどうしますか。
  24. 嶌田道夫

    政府委員(嶌田道夫君) 昨年の与党三党の合意では、一年以内に合意をするようにというような、そういうお話でございました。一年間の期間というのがどこまでという話もございましたが、一応我々は、昨年の海洋法条約が発効いたしました七月二十日でございますが、それを一つのめどといたしまして、現在、日中、日韓の間で鋭意協議を行っているところでございます。その後の問題につきましては、与党とも今後十分話し合っていきたいと考えております。
  25. 岩永浩美

    岩永浩美君 それぞれ鋭意御検討いただいていることだと思いますが、もし七月までにこの条約が締結をされないと仮定した場合、漁民の方々もこの際破棄をしたらどうかという強い姿勢で臨んだらどうかという御意見もあります。  大臣は今後この問題についてどう対処されようとされるのかお聞きします。
  26. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) この問題につきまして、漁業関係者の御意見について私もよく承知をいたしております。それだけに、七月二十日という非常に大きな区切りに向かって、外務省を中心として新しい漁業協定が締結されるように今全力を挙げているわけでございます。  しかし、この七月二十日に至りましても新しい漁業協定が仮に締結できない、こういう場合には私どもといたしましては与党と十分に相談した上で、その次の対策といいますか、それから先の考え方を決めていかなきゃならぬというふうに思っております。
  27. 岩永浩美

    岩永浩美君 ぜひ早期に妥結できるように、大臣の特段の御努力をお願いしておきたいと思います。  時間がありませんから簡潔に申し上げます。  中山間支援対策について伺います。  中山間地域対策の論点として、デカップリングの導入を過日の行政改革会議の中で官房長が言われたということが新聞に出ておりましたが、このデカップリングの導入について農林省としてはどういうふうにお考えになっているのか。私ども、特に国土の七割が中山間、耕地の六割が中山間に位置する日本の国土の条件を考えていくとき、中山間の支援対策を講じることによって農家の安定した農業の基盤整備が完全にでき上がっていくと思うし、国土の保全上からも中山間地域は守っていかなければいけないと私は思っています。  このデカップリングの導入の件について官房長の御見解をお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
  28. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 中山間地域につきましては、先生御指摘のように、食糧の安定供給あるいは地理的に極めて不利な条件の中におきましてもさまざまな特色もある、それから国土環境保全的な面での役割を果たしている。そういう御指摘があって、これをどうしていくかということが非常に大きな課題というふうに認識をいたしております。  他方で、中山間地域についてのデカップリングにつきましてもさまざまな御指摘、御意見、問題があるということもあるわけでございます。そういうことでございますので、私どもは四月から進めております食料・農業・農村基本問題調査会、ここにおいて広く各界の御意見もいただきながら、この問題をどういうふうにしていったら一番中山間地域の発展に役立つのか、あるいは中山間地域の活性化が果たせるのか、そういうことを視野に置きながら検討していきたいということで、この間行政改革会議がございましたので申し上げたところでございます。  そういう意味で、せっかくの調査会でございますので、国民の皆さん方の御意見をそこにできるだけ結集いたしまして一定の方向づけができたらいいなと、こういうつもりでおります。  以上でございます。
  29. 大野つや子

    大野つや子君 大野でございます。農林水産委員になりまして初めての委員会でございますし、初めての質問でございますので、ふなれな点はお許しをいただきたいと思います。  本日、私はいわゆるバイオ食品、遺伝子組みかえ食品についてお伺いをしたいと思います。  遺伝子組みかえ食品は、ある細胞の中の有用な遺伝子を別の細胞に組み入れるという遺伝子組みかえ技術によってつくられた農作物を用いた新しい食品です。厚生省は特定の除草剤に強い大豆や害虫を殺すトウモロコシなど十五品目の農作物について安全性を確認し、また遺伝子組みかえ作物の大豆、トウモロコシ、菜種、ジャガイモの四品目が輸入許可されているということです。  私は議員として、またそれ以前に母親の立場で、本来の自然界にある作物に人工的に遺伝子を組み入れているという技術が果たして一〇〇%安全であるのか、不安の念を抱かざるを得ません。国民の皆様から本当に安全なのですかと聞かれても、大丈夫です、心配ありませんと私は今答えることができないわけです。  そこで、まず品種改良とどこが違うのか、またどのような方法で遺伝子を別の細胞に組み入れているのか、お答えをいただきたいと思います。  また、この技術によってつくられた作物や食品の安全性について、実験の当初から指針を示した科学技術庁、農林水産分野での利用の指針を示した農林水産省、そして食品の安全性の指針を示した厚生省に、それぞれどのような視点から安全性を評価して指針を示したのか、具体的にお答えをいただきたいと思います。
  30. 三輪睿太郎

    政府委員(三輪睿太郎君) まず最初の、従来の品種改良と遺伝子組みかえ技術によるものがどう違うかという点、また遺伝子を細胞に組み入れる方法についてお答え申し上げます。  遺伝子の組みかえ技術は、先生のお話のように、目的とする遺伝子を取り出しまして、これを人為的に農作物等に導入するものであります。従来の品種改良と比べますと、従来の品種改良では交配による改良でございますので、利用できる遺伝資源が同じ作物あるいは極めて近縁の作物に制限されております。これに比べまして組みかえ技術では、遺伝資源を微生物やほかの生物種にまで広げて求めることができるようになりました。このため、これまでの品種改良ではどうしてもつくれなかったような新しい性質を持つような農作物、そういったようなものの開発が可能になります。  また、従来の改良では目的とする形質と一緒に目的としないものまで改良されてしまうということがございましたが、組みかえ技術を使えば、目的とする遺伝子だけを導入して、例えば味はよくて病害虫に強いといったような改良が可能になります。  次に、遺伝子をどういうふうに導入するかということでございますが、代表的なものといたしまして二つ御説明します。  一つは、微生物の性質を利用した導入法でございまして、アグロバクテリウムという微生物がございます。この微生物は植物の細胞に自分の遺伝子を送り込むような性質を持っております。このアグロバクテリウムの性質を利用して細胞に遺伝子を導入する方法が一つございます。そしてもう一つは、遺伝子を物理的に植物の細胞に撃ち込むような方法がございます。これは金の微粒子に遺伝子をまぶしまして、微粒子ごと高圧のガスで植物の細胞に撃ち込む方法です。これはちょうど鉄砲とよく似ておりますのでパーティクルガンと呼ばれておりますが、この二つの方法がよく使われております。
  31. 藤木完治

    説明員(藤木完治君) 御質問のうち、遺伝子組みかえ技術を用いた実験に関しまして、その安全確保策についてお答えさせていただきたいと思います。  遺伝子組みかえ技術を用いた実験に関しましては、科学技術会議の答申を受けまして、昭和五十四年の八月に「組換えDNA実験指針」が策定されてございまして、その指針に基づきまして実験の安全性が確保されているところでございます。  この実験指針におきましては、遺伝子組みかえ技術を用いた実験の安全性につきましては、新たな遺伝子を送り込まれる生物、通常宿主と言ってございますが、この生物と、導入される遺伝子を提供する側の生物、これを通常供与体と言ってございますが、及びこの遺伝子を細胞の中に運び込む役割をいたしますベクターと呼ばれる特殊な機能を持ったもの、その三つの生物学的性質に基づきましてまず安全評価がされることになってございます。  具体的には、それらの生物の病原性、毒素産生能あるいは他の生物への伝達性等を総合的に評価いたしまして、安全性をまず評価することとなってございます。  これらの安全性の評価に基づきまして、個々の実験前に実験従事者やあるいは外部に対する実験に用いられる資料の伝播あるいは拡散を防ぐことを目的といたしまして、適切な封じ込めなどの措置を講じるということとされておりまして、これによりましてこの遺伝子組みかえ実験の安全確保が図られているところでございます。
  32. 黒川達夫

    説明員(黒川達夫君) 御質問のうち食品の安全性について、どのような観点から安全性評価指針を示しているのかという御質問にお答え申し上げます。  遺伝子組みかえ食品の安全性の評価につきましては、科学的な見地から、経済協力開発機構、OECDや世界保健機関などにおきましてその評価、考え方が取りまとめられております。我が国におきましても、それを踏まえまして食品衛生調査会で専門的に御審議いただき、安全性評価指針を策定いたしておるところでございます。  この評価指針は、遺伝子組みかえ食品について、現在存在します食品とその成分を比較いたしまして、まずたんぱく質などの食品成分の割合が同程度であること、それから遺伝子の組みかえによりまして新たなアレルゲンなどが産生されていないこと、このようなことが確認されれば既存の食品と同程度の安全性が確保されるという考え方でございます。  この評価指針に基づきまして、食品衛生調査会の御意見を聞きながら、個別品種ごとに指針への適合性を確認しておりまして、先ほど先生のお話ございました、現在までに大豆など十五品種の食品及び食品添加物四品目についてこれを確認いたしましたところでございます。  この安全性評価指針は、最新の科学的な知見に基づいて策定されたものでございます。この指針に沿って評価が行われた遺伝子組みかえ食品については、安全性には問題がないものと考えております。
  33. 大野つや子

    大野つや子君 今のお答えでは、それぞれに安全性は問題はないというようにお答えをいただけたと思っているのでございますが、現に遺伝子組みかえ食品は十分安全性が確認されたとは言えないので、食べたくないというような、そういう主張をする人々がいらっしゃるのも事実でございます。  私もこの年齢になって私自身はともかく、これから長期間継続して口にしていくであろう子供や孫たちに対して、まだ長期摂取の与える影響について動物実験さえも行われていない半人工的な食品をあえて食べさせたいとは思っていないんです。  そこで、遺伝子組みかえ食品についての表示についてお伺いしたいと思います。  遺伝子組みかえ食品も従来の食品も見た目は全く同じでございますし、消費者が購入するときに区別はつかないわけです。また、加工食品であるなら、その原材料がどのような素性のものなのか、消費者にとっては表示を見ないと見当もつかないわけです。  農林水産省の食品流通局では、区別の困難性から加工食品においてすべての原材料にさかのぼることは大変困難だというようなことから、問題点を想定しながら、去る五月三十日でございますか、第一回食品表示問題懇談会を開催し、さらに今年度内に数回の会合の開催を予定していると聞いております。  そこで、お尋ねをしたいと思います。  農林水産省においてこの懇談会の経過は一般に広く公開するのでしょうか、また結論はいつごろ発表する予定でしょうか、お聞かせいただきたいと思います。  あわせて厚生省に、とりわけ長期摂取にかかわる食品の安全性といった観点から、表示の義務づけに対して将来的にどのようなお考えをお持ちでございましょうか。農林水産省同様に、表示のあり方について御検討するお考えがあるのか、お答えをいただきたいと思います。
  34. 本田浩次

    政府委員(本田浩次君) まず、第一点の情報公開に関連する件でございますけれども、この懇談会は国民の強い関心事項を御審議いただくものでございますので、できるだけオープンな形で行っていきたいと私ども考えております。  したがいまして、先日、五月三十日の第一回の懇談会におきまして、委員皆さん方にも御相談を申し上げまして、公開することによって公正かつ中立的な審議に著しい支障を及ぼすおそれがある場合などを除きまして原則としてこの懇談会は公開で行う。また、議事録も公開することとしたところでございます。  それから、この懇談会の取りまとめ時期についてでございますけれども、懇談会におきましてどのような意見が出されて、しかもどのような意見集約ができるか、事前に想定することは困難でございますので、検討状況を見ながら考えていくこととしておりますけれども、私ども事務局といたしましては、できるだけ年度内くらいを目途に進めていきたいと考えているところでございます。
  35. 黒川達夫

    説明員(黒川達夫君) お答え申し上げます。  遺伝子組みかえ食品につきましては、食品衛生調査会の御意見を聞きながら、個別品目ごとに安全性評価指針への適合性を確認しているところでございまして、こうした確認が行われた食品は慢性的な影響、つまり長期的な影響でございますけれども、これにつきましても既存の食品と同程度の安全性が確保されているものと考えております。  安全性評価指針への適合を確認しておりますこと、さらに遺伝子組みかえ食品は、遺伝子が組みかわるという点におきましては従来の品種改良品と同様でありますことから、食品衛生法において、公衆衛生上他の食品と区別して表示を義務づけることは難しいと考えておるところでございます。  しかしながら、国際的にはFAO・WHO合同食品規格委員会、コーデックス委員会とも呼ばれておりますが、ここの食品表示部会においても表示の必要性について議論されているところでございます。  厚生省としても、今後ともこれら国際的な動向及び国内での検討状況について情報収集に努めてまいりたいと考えております。
  36. 大野つや子

    大野つや子君 最後に私は、農林水産省はバイオテクノロジーを推進している立場と理解しておりますが、農水省ではバイオテクノロジーの開発と普及が将来の日本の農家、日本の農業にどのようなインパクトを与えると考えておられるのか、お答えいただきたいと存じます。  私は、科学技術などの発展のすべては人と環境の明るい将来を約束するものでなければいけないと考えております。  そこでお聞きいたします。  皆様も周知のとおり、日本の食糧自給率は、お米などの一部を除き低下の一途をたどっているのではないかと思います。また、第三次産業、ホワイトカラーの重用と少子化から、農村人口も減少の一途にあり、日本の農家の多くは深刻な後継者不足に悩んでおります。  そこで、バイオテクノロジーによる農業の普及はこれからの問題を解決する一助として位置づけられているのではないでしょうか。既に自家採種をしないで種や苗を農協や種苗店から購入する農家が多くなっております。その種苗費も農家の所得を減らし、生活を圧迫する要因の一つとなっているということを聞いております。  バイオ農家が普及すると、知的所有権の保護といった観点から自家採種が認められず、すべての種苗は購入しなければいけない、また収穫や販売のときに権利料を支払わなければいけないといったことから、農家の支出する費用は確実にふえると思います。それらの費用を支出してもなお増収や省力化が図られるのであればよいのですが、技術の先端を追い求めることによって、農家にかえって負担が多くなってしまうということはないのでしょうか。  また、遺伝子組みかえ作物と従来の作物と同じ圃場で、または隣接した圃場で栽培した場合に、従来の作物が悪影響を受ける可能性は全くないのでしょうか。  以上の点についてお聞かせいただきたいと思います。
  37. 三輪睿太郎

    政府委員(三輪睿太郎君) 遺伝子の組みかえを含むバイオテクノロジーの利用によりまして、従来にない生産性やあるいは付加価値の高い作物や家畜、そういったものの生産が可能になることは、我が国農業の競争力を高めると同時に、新しい技術の導入に伴う農業の収益性の向上が期待されます。その点で、特に若い農業後継者にとって、農業をより魅力あるものにするものと考えております。  また、次の種苗の経費に関することでございますが、そもそもバイオテクノロジーによる品種改良は、農家の種苗選択の幅を広げまして費用を上回る効果をもたらすことを目的に行われております。したがって、先生の御心配のように、仮に農家が必要以上の負担を強いられるというようなことになりますれば、その種苗あるいは種は自然に淘汰されるというふうに考えております。  そういうことでございますが、農林水産省としましては、今後とも知的所有権の確保という観点からも、外国に先駆けて我が国独自のバイオテクノロジーの技術の開発に力を注いでまいりたいというふうに思っております。  また、最後にお尋ねの、同じ作物と並べて植えた場合にどうかということでございますが、私ども農林水産省の安全性の確認でございますが、それは主に環境への影響という視点から行っておりまして、ほかの周りの植物への影響あるいは土壌への影響、そういったものを、実際に組みかえた作物とそれから従来の作物、あるいは他の周辺の植物、そういったものと並べて栽培をして安全性を確認しております。  したがって、その確認を経たものにつきましては、仮に同じ圃場あるいは隣接した圃場で従来の作物と並べて栽培された場合も悪影響はないというふうに考えております。
  38. 大野つや子

    大野つや子君 ありがとうございました。これで私の質問を終わります。
  39. 山崎力

    山崎力君 平成会の山崎でございます。  せんだって、橋本総理がオーストラリアへ行かれた際に、前向きにということで輸入解禁という方向で動いていたオーストラリア、タスマニア産のリンゴのことに関しまして、オーストラリアで火傷病が発生したと、こういう実にタイミングがいいというか悪いというか、そういった問題が起きておりますので、このことについてお伺いしたいと思います。  まず、火傷病という病気自体、リンゴを中心としたバラ科のナシとかスモモとかそういった果物類に対する病気であると、しかもそれが非常に典型的な病気であるということで、関係者にとっては非常に神経を使う病気だというふうに認識しておりますが、その辺も含めてオーストラリアの火傷病の発生状況がどうなっているかという点、お伺いしたいと思います。
  40. 高木賢

    政府委員高木賢君) 火傷病につきましては、先生御指摘のとおり、果樹類に感染をいたしまして甚大な被害を与える病害であります。したがいまして、我が国におきましては、植物防疫法に基づきましてその発生国からの寄主植物の輸入を禁止しております。  オーストラリアにおきましては、これまで火傷病が発生したという記録がなかったので、これまで火傷病の寄主植物であるサンザシとかナナカマドなどの輸入を認めておりました。ところが、先月十五日、メルボルンにあります植物園で、コトネアスターという観葉植物でありますが、このうちの二本に火傷病が発生しているということが確認されたという情報が豪州側から提供されたわけでございます。その後どうかということでございますが、豪州では火傷病の発生調査を今実施しておりますけれども、今のところはメルボルンの植物園以外での火傷病は発見されていないという状況でございます。
  41. 山崎力

    山崎力君 そういった意味からいくと二通り考えられまして、一つは、ないところに起きたというのは極めて重要だということが一点あります。ということは、伝染経路がわからないと非常に不安が残るという点。もう一つは、ないところだから、そこさえきちっとやればそこで問題は終了するであろうと。楽観的、悲観的、二つの見方があるんですが、日本からそういう調査の方を派遣したということも聞いておりますけれども、その辺の報告とあわせて、どのようにオーストラリア側では対応しているか、また日本側ではどういう状況にあるのかということをお聞かせ願いたいと思います。
  42. 高木賢

    政府委員高木賢君) 先ほども申し上げましたように、メルボルンの植物園で発見されたということから、豪州におきましては直ちに発見地点から半径十五キロメートル以内の地域からの火傷病の寄主植物の移動を禁止するということをいたしました。と同時に、豪州全土におきましての火傷病の発生調査実施中ということでございます。それから、その後でありますけれども、豪州はメルボルンを含むビクトリア州から寄主植物を他の州に移動することも禁止をいたしました。  現在、豪州におきましては火傷病調査のための専門家のチームを編成いたしまして、まず一つは植物園を中心に半径三十キロメートルの範囲の地帯、これを徹底的に調査する。これは果樹園に限らず植物関係です。それから、豪州全土におきまして、リンゴ、ナシを栽培しているすべての果樹園を対象に調査実施中であるというふうに承知をいたしております。仮に、火傷病に感染している疑いが少しでもある植物が発見された場合に、最新技術による精密な診断を実施する体制を整えている、こういう状況でございます。  そこで、今申し上げた豪州の状況でございますが、我が国としては火傷病発生の連絡を受けた時点で、まず緊急の措置として豪州政府に対しまして、豪州から我が国への火傷病の寄主植物の輸出の自粛を求めました。それから、タスマニア島を含む全土での火傷病発生調査実施を要請いたしました。それを受けて今申し上げたように豪州で全土の調査をしているわけでございます。  それから、我が国の専門家を派遣いたしまして、しかと豪州側で火傷病の対応ができているのかどうかということを確認させていただきました。それはどういうことかといいますと、火傷病の検出なり診断方法、これが適切であるかどうか、それから周辺の寄主植物の調査なり豪州側の調査体制、対応体制がきちんとできているかどうかということで派遣をいたしましたが、この帰国後の報告によりますと、適切な対応措置はとられているということを確認しているところでございます。
  43. 山崎力

    山崎力君 そうなってきますと、前の話に戻った形ですけれども、先月の早い時期、たしか二日だったと思いますけれども、タスマニア産のリンゴの解禁に関する公聴会が開かれまして、反対は多かったわけですが、制度上の問題から入れる方向だというふうにお聞きしておりますが、この件に関して現状はどういうふうになっておりますでしょうか。
  44. 高木賢

    政府委員高木賢君) 御指摘のように、五月二日に公聴会を開きました。これは同じく病害虫でありますコドリンガの検疫措置を対象にして行われたものでございます。コドリンガに関する検疫措置に関する公聴会としては、これは有効だと思います。ただ、この火傷病というのはそれと別の問題として発生したわけでございますから、そのコドリンガの話とは別に火傷病自体として適切な対応をとらなければならないというふうに考えているわけでございます。  どういうことかといいますと、やはり豪州本土に火傷病の発生が見られたという以上は、ただいま継続され実施されております豪州当局によります火傷病の発生調査によりまして、タスマニアに火傷病が発生していないことが確認されること、これが第一点。それから第二点は、タスマニアへの火傷病の完全な侵入防止策が講じられていること。これがやはり必要ではないかというふうに考えておりまして、このことは既に豪州側にも通知をしているということでございます。
  45. 山崎力

    山崎力君 ということは、確認でございますけれども、今の状況ではこれまでの一連の輸入解禁へ向けての作業というものは凍結された状況にあると理解してよろしいんでしょうか。
  46. 高木賢

    政府委員高木賢君) ただいま申し上げたように、タスマニアに火傷病が発生していないこと、それからタスマニアヘの火傷病の侵入防止策が講じられること、この二つが確認できなければその先へは進めないというふうに考えております。
  47. 山崎力

    山崎力君 そうしますと、今おっしゃられたように、発生していない、あるいは侵入防止策が万全にとられている、こういうことだと思います。  そうしますと問題は、手前勝手な言い方で言えば、タスマニア産のリンゴがいつ入ってくるのかということを心配といいますか、対応を迫られている日本側の関係者にとりましては、これからどういうふうな形で推移していくんだろうかというのが一番の関心事であろうと思います。もちろん火傷病が入ってくるということは問題外でございますけれども、その辺のところが一応どういう形で、どういう時期になれば農水省が動き出すのか。あるいはその前提となる、今おっしゃられた要件をオーストラリア政府側がどういう形でいくのか。  私、素人ですから火傷病の発生を確認する検査というものがどのくらいかかるものなのかということもよくわかりませんが、そういった点を含めて見通しといいますか、今どういうふうな状況にあって、これからどうなりそうだというところをわかる範囲で結構ですので、教えていただきたいと思います。
  48. 高木賢

    政府委員高木賢君) 豪州の全土におきます調査が終わりまして、タスマニアにも火傷病がないということの確認がまず必要だと思います。すなわち、まず調査が終わらないといかぬというのが一つございます。  次に、申し上げましたように、火傷病の侵入性がないと、これのどういうことをやるかという措置について御説明をいただく必要があるというふうに考えております。それにつきましての我が国専門家、豪州側がそう考えたからといって直ちにそのとおりで結構だということにもなりませんので、専門家による技術的な観点からの検討が必要だというふうに考えております。そうなりますと、やはりまだ調査の進捗状況等から見ますと、なかなか短い期間にそういう解禁手続を進めるということが可能な時期は来ないんではないかというふうに思っております。
  49. 山崎力

    山崎力君 単純に素人考えでも、若木といいますか若芽といいますか、そういったところがやられて、結果、つまり実が結ぶ方にいきにくくなる病気だというふうに聞いておりますので、本当にそこまで調べるのであれば、時期的に一年単位の未発生の確認といいますと、季節が反対ですからその辺の問題というのはあろうかと思うんですけれども、相当程度時間はかかるんではないかなというふうに感じているわけです。  もっと具体的に申し上げますと、今回のこういった解禁が、ちょうど季節が逆なもので非常に想像が難しいんですけれども、日本をひっくり返して考えれば、六カ月引いてリンゴのいわゆる出荷時期というのが五月か六月くらいだろうと。現実にオーストラリアでは五月ころにはもうリンゴがとれているとすれば、そのリンゴが保てる時期にオーケーが出るのかどうかというのがまず一番の問題。いわゆる今年産のリンゴが今後の進展状況の中で、日本に輸出する時期にこの問題が間に合うのかどうかというのが具体的に言えば一番問題になろうと。その次には、来年度産のリンゴができるまでにこういうのが結果が出るのかなというのが次の問題になろうかと思うんです。  今のお話ですと、最低限ことしになってからオーストラリアでできたリンゴについては日本に輸入されることがないであろうというふうに受けとめてよろしいでしょうか。
  50. 高木賢

    政府委員高木賢君) これは相手の事情もありまして、断定といいますか確定的な判断をするのは難しいわけでございますが、まさに日本の月に直せば五月から八月ぐらいまでが輸出のシーズンであろうと思います。現在、既に六月にもなっておりますので、甚だこのシーズン中の輸入ということにつきましては、率直に言って疑念を持っているというところでございます。
  51. 山崎力

    山崎力君 それからもう一つ、聞くところによりますとといいますか、事実の問題として、さっきおっしゃられたように、いわゆるタスマニアというのは豪州本土と相当離れている大きな島ということで、豪州サイドとしては、本土には若干残っているけれどもタスマニアにはこれはもうなかったんだと、これは全部調べた。それで、豪州本土からの輸出規制もしておるということによって、豪州本土のやつはともかくとして、我々日本との関係で問題となるタスマニア産のリンゴについては問題なしということを主張してくる可能性が将来十分あると思うんです。  その辺についての見解といいますか、要するに、そこまで言われるとしようがないということなのか、いや、やはり国としてのオーストラリアに火傷病の疑いがある以上はストップするのか、その辺はどういうふうに考えればよろしいでしょうか。
  52. 高木賢

    政府委員高木賢君) タスマニアは御指摘のとおり豪州本土から約二百四十キロ離れております。それから、この病害虫は虫のたぐいのように飛ぶわけではなくて、菌でございますので、その辺の事情もありまして、いずれにしても豪州本土に発生する病害虫が自然に侵入するということは考えられないわけであります。現に我が国は、既にタスマニアはミバエ類とかたばこべと病につきましては本土と切り離した無発生地域ということで認定をしておる実績がございます。この火傷病につきましても豪州本土と切り離して無発生地域というふうに認定することができる地域というふうに考えております。  なお、火傷病は先ほども言いましたけれども、ミバエとは違いまして自然の分散力といいますか、弱いものであるということも考えますと、本土と一体で切り離せないということはなかなか主張しにくいものと思っております。
  53. 山崎力

    山崎力君 受け入れをなるべく避けたいという立場からすると残念ですが、技術的なことからいけばそういうことであるというふうに認識せざるを得ない、こういうふうな形で、次の問題に移らせていただきます。  今のオーストラリアの問題、向こう側の問題はここまでといたしまして、我が国の方の次の作業として、当然のことながら公聴会の問題が出てこようと思うんです。  先ほどおっしゃられたように、この間の公聴会はコドリンガをどうするのかということでの公聴会で、前提としてはオーストラリアに火傷病はないんだということになるわけでございますが、当然のことながら火傷病対策の公聴会を開けという要望が出てくると思うんですけれども、今の時点でまだ先の話ということだと思うんで、恐縮なんですが、その辺についての今の時点での判断がおありでしたらお聞かせ願いたいと思います。
  54. 高木賢

    政府委員高木賢君) タスマニアに火傷病が根づくというのも変ですが、ある程度定着しているということになりますと、これはほっておけないんで、まず輸入禁止区域にしなければいけないという問題があります。しかし、そうではなくて、何もそもそもやっぱりなかったんだということになれば、必ずしも禁止区域にする必要はないと、こういうことになると思います。いずれにしても、その事実がどうなるかということでその後の対応は変わってくる、そういう状況にございます。
  55. 山崎力

    山崎力君 そういう感じだろうと思っていたんですが、ただ、生産者側、関係者側からしますと、やはりそこが一番役所の制度的な面から来るところと、それから国民感情というと大げさかもしれませんが、理屈としておれたちはコドリンガの話を言うためといいますか、聞いてもらうために公聴会を開いたんだ。それで、タスマニアとオーストラリアは違うと言いながら、我々は国との関係ではオーストラリアからリンゴを入れるんだと、そのオーストラリアに火傷病が発生して、タスマニアは関係ないということで、公聴会もそのことで開かずに入れるのかという反発が予想されるわけでございます。これはいい悪いの問題ではなくて、その辺のところを十分に踏まえて対応策を練っていただきたいということをお願いしまして、最後に大臣にお伺いしたいんです。  この問題というのは、広くいえば植物検疫、動物検疫全般の問題になろうと思います。それで、ボーダーレス社会、世界ということで、人間の動きも激しいと同時に植物、動物の動きも、これは生きたままという問題は別としまして、非常に大きくなっていると。そして、なおかつ人間の伝染病の場合も同じように、ないところに発生した、だれかが持ってきたんだ、だれの責任だと、あるいはどこの国から来たんだというようなことを、外交的に相手の国を責めるというような状況に今までございませんで、やはり発生したらそれを防ぎ得なかったその国の責任ですよと、こういうことに今の世界はなっているわけです。  狂牛病という病気が欧州で物すごい問題になったということも記憶に新しいわけで、その辺の今後の農水省としての検疫をどのように持っていきたいのか、持っていくべきだと考えていらっしゃるのか、大臣の所見を伺いまして、私の質問を終わらせていただきます。
  56. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 御指摘のように、この問題は非常に大事な問題でございます。私どもといたしましては植物検疫制度、この問題について病害虫の侵入の可能性が増大をしているということでございますから、この病害虫の危険度に応じた一層的確な検疫を実施するために、植物防疫法を一部改正して本年四月一日から実施しているところでございます。  この法律改正におきまして、重要な病害虫につきましての検疫の強化措置として、輸出国政府に対して栽培地における検査を求める道を開くなど新たな制度を導入したところでございます。また、検疫体制、これも大事でございまして、植物防疫官を今後逐次増員をいたしまして、植物防疫所の施設を整備し体制の整備強化に努めてまいる、そのような考え方でございます。
  57. 山崎力

    山崎力君 終わります。
  58. 阿曽田清

    阿曽田清君 平成会の阿曽田でございます。  私は、現場の問題を二、三取り上げて質問させていただきます。  まず、改良普及員制度についてでありますが、昭和二十三年七月に農業改良助長法のもとで新しい普及制度が発足されて、来年で五十年を迎えるわけであります。時代の変遷を経て、その間に八回の法改正がなされたわけでありますが、その時代の変遷の中で農業・農村の発展に改良普及員の果たした役割は極めて大きいものがあったと私は高く称賛をいたしておるものであります。  例えば生活面におきましては、戦前に比べ、台所の改善や健康管理面で非農家世帯に大変な見劣りをしていたものでありますが、大きく内容が向上し、文化的生活環境ができてまいったと思っております。  昭和三十二年、農家世帯の栄養状況を見てみますと、動物性たんぱく質は非農家の四分の三、脂肪分は八〇%の水準であったものが、平成元年のデータではほぼ遜色のないところまで取り戻しております。また、生産面では米の単収は約二倍に伸びておりますし、データを見てみますと、昭和三十五年のときと平成七年のときの比較でトマトやキャベツの生産性も二倍と三倍に伸びており、乳牛の搾乳量も一・八倍に伸びております。  このことは協同農業普及事業の成果であると思いますし、いわば改良普及員の大きな任務は私は二つあったんじゃなかろうかと思います。国の農政の推進役であったということが一つであり、もう一つは関係試験研究機関と農業者とのいわゆる橋渡し役であったというふうに思うわけであります。  その改良普及員の方々に対するいわば協同農業普及事業、これの予算的な推移を見てみますと、当初は補助金という形で出されておりましたのが、昭和五十二年から法改正になりまして負担金という名前で国が五〇%負担をする、そして昭和五十八年度から交付金ということに変わって助成措置がなされております。  五十八年、最後の交付金に変わった時点で、国と都道府県はフィフティー・フィフティー、五〇%対五〇%の割合であったものが、平成六年には三七対六三、国が三七、都道府県が六三、国の割合が少なくなっております。ついせんだって、一番新しいデータはどうですかと聞きましたら、七年しかありませんということでしたが、七年では三〇%強ということでありますから、国が三〇%、都道府県が七〇%ということであります。  協同農業普及事業という観点に立つならば、こういう負担割合が減っていく、交付金割合が減っていくということは私は望ましいことではないと思いますが、まずその点のお考えをお聞きしたいと思います。
  59. 高木賢

    政府委員高木賢君) 協同農業普及事業交付金の割合が三十数%、平成七年度でも三五・七%ということでございます。御指摘のように漸減をしておるわけでございますが、これは国の財政事情、いろいろな事情もございまして、やむなくそういうことになっているわけでございますが、あくまで協同農業普及事業という法律の枠組みの中で国と県が相協力しながら進めていく、この基本的性格は当初からずっと変わっていないわけでございます。そういった意味合いで国と県が協力して進めるということでやってきておりますので、その負担率の点、これが全然ゼロだとかいうなら話は別なんですが、という点ではきちんと事業実施されているというふうに考えております。
  60. 阿曽田清

    阿曽田清君 五〇%を満たしておったときは普及員の数が大体一万三千人ほどいた。それが、やはりどんどん国の予算の割合が減っていくことによって、県もそれに応じて普及員の数が減ってきた。既にもう一方一千を割っておるという状況までなっておることは、おのずから国の負担が少なくなると、県も力を入れたいんだけれども徐々に、普及員の資格持っているけれども、その方々を行政の方に向けていくということにならざるを得ない。  私は、これは協同農業普及事業でありますから、やむを得ないということじゃなくて、やはりこれはあくまでもフィフティー・フィフティーでやっていくべきだというふうに思います。むしろ、国の政策の推進役という役割を担っておりますし、また新しい技術なり品種なり新しい情報なりというものを農業者へ的確に伝えていくという大事な役割を持っておる方々でありますから、まさに今の農村、農業者のよりどころになっておるということをかんがみた場合に、漸減ということはとってもらいたくないと思いますが、平成九年度の見通しはどんなものでありますか。
  61. 高木賢

    政府委員高木賢君) 普及事業の持つ役割については、先生御指摘のとおりだと思います。ただ、現実問題として農地面積が減少していたり農業者の数が減少しているということから、いわゆる普及事業の対象は残念ながら徐々に縮小しているということでございますから、そういった客観的事情は勘案せざるを得ないというふうに思っております。  それから平成九年度は、これはまだまさに執行中でございますので、先ほど申し上げたように、最新の数字が平成七年度でございますので、ちょっと何とも今申し上げる材料がない状況でございます。
  62. 阿曽田清

    阿曽田清君 我々は、普及員の先生方のイメージとして緑の自転車と四Hクラブというのが昔からの改良普及員の先生方の一つの表現としてあらわしておったわけです。それだけに、農家方々との密着性が強かったし、また四Hクラブの方々をちゃんとした将来の地域のリーダーに養成すべくいろいろな教育をされて、そして二十七、八歳になったときに嫁さんをもらう、もらった後農協の青壮年部に入っていただいてということで、ずっとそれが関連づけられて、それぞれの地域で頑張っていただけるように実は基本を育てていただいておった。  その改良普及員の先生方の指導の形が個別指導から集団指導へ変わったのはもう十年ぐらい前だと思います。集団指導体制という形に形を変えて普及体制がとられてきた。ですから、農業者の方々に入っていくという、それは従前よりも少なくなってきておるんですが、ニーズが逆に高く広まってきたわけであります。  というのは、今まで技術指導をしておればよかったのが、これからは経営分析、診断というところまで教えていかなければならなくなったし、はたまた税務対策も指導していただくというようなことも出てきたでしょうし、あるいは新しい情報ということでのいわゆるパソコン通信あたりも御指導になってくるという。  その中で、二年前に法の改正があったときに約四、五百人しか経営能力を持った方々が普及員の中にはまだいらっしゃらないということで、そういうニーズにこたえ得る、経営分析にこたえるような能力を持った普及員をつくっていく。同時に、稲作中心からほかの作物の技術へ転換していただくというようなこと等も踏まえて新しい体制準備がなされたと思うんです。どうですかその成果は、二年間でどれだけ進んだと思われておりますか。
  63. 高木賢

    政府委員高木賢君) まさに御指摘のとおり、その法律改正の時点では経営の指導をするに足りる人は少なかったわけですが、その後計画的に研修を進めておりまして、今では逐次ふえております。  それから、現場農業者の方から、まさに御指摘のように、もっと経営指導を充実してほしいという声も大変高くなっておりまして、それらの方に個別にこたえていくという対応も普及センターの一つのあり方としてそういう選択をしているところも出てまいっております。  そういうことで、全体的に資質が高く求められる、あるいは多様な要請がある。また、そういうことにこたえなくちゃいかぬということで、現下の状況は大変普及員さんにとっては難しい状況と思いますけれども、外国への研修も加えたりさまざまな形で資質の向上に努めているところでございます。  定量的にこれはなかなか難しいので、その成果というのは言いにくいんですけれども、やはり現場の人のニーズにこたえられるかどうかということがポイントではないかと思いまして、その点に重点を置いて推進しているところでございます。
  64. 阿曽田清

    阿曽田清君 それで、面積が減ったり対象者が減ってきているということと裏腹に、いわゆる精鋭主義で、そして高度なものを要求していくという要素が大きく生まれてきている。だから、人間が縮小されていくことによって十分な対応ができ得なくなってしまいはせぬかということで、国の交付金の割合が減っていくというようなことじゃなくて、少なくとももっと頑張れという方向へ国の交付金の割合を、都道府県と同等に国も支えていくんだという基本的な姿勢をやっぱり示すべきだと思います。恐らく、平成九年はもっと減りますよ。私はそのように思っておりますが、現実として漸減をしているわけですから、平成九年三百六億でしょう。ふえていくことはない、私はそう見ております。  ですから、少なくとも、もとの五十八年度の交付金に変わった時点のフィフティー・フィフティーというような形で取り組んでいくことが基本であろうと思います。なぜならば、国で運動指針を決めて、そして県でそれに基づいて実施方針を出して、そして普及センターで普及計画を立ててやるという、まさに国がそのリード役をしているわけですから、そういう意味で、フィフティー・フィフティーの線は農林省でぜひ出資していただきたい。そうせぬと、普及員の方々に元気がついてこない。余り国は大事に思っていないんじゃないかというふうにとられますし、名前からして協同農業普及事業でありますから、名のとおりにひとつ組み立てを願いたいというふうに思います。  そこで、今では各県事務所単位に大体普及センターができております。今農林省、県も一緒になって、広域合併等を進めておられますが、ほぼ普及センター単位に農協も広域合併をいたしております。私が一番求めたいのは、普及センターと農協の営農センターが全く別々な目的のもとでやっているんです、対象は農家であっても。この営農センターと普及センターが一体となって取り組むというようなこと、これが相乗効果を生んでいくんではなかろうか。  例えば、普及センターでは企画部門とか情報とか、そういう経営指導とかといった観点での任務を担当して、営農センターはどちらかというと生産技術面なり販売面にウエートを置いて、一体となって取り組んでいく。極論するならば、同じ事務所に双方が出会って、双方から出し合って、同じ事務所で絶えず地域の問題を協調し合い連絡し合いながら取り組んでいく、機能分担をそこで分けてやっていく。そういうようなことになると大変助かる話であるんですが、それはどのように将来の方向としてお考えなのか、教えていただきたいと思います。
  65. 高木賢

    政府委員高木賢君) 御指摘のように、広域合併をした農協とは非常に連携がとりやすい状況になってきたと思います。  そこで、現実にも普及センターと広域化された農協が、例えば野菜団地の育成に当たりまして、普及センターが新しい作物なり技術の導入といった生産技術の組み立て、実証を行う。一方農協は、規格の統一とか品質の高位平準化とか販売に向けての活動をする。こういうことで両者が非常に協力し合って成果を上げている実例は見られております。  一方で、先生御指摘のようにまだそこまでいっていないところ、まだ中途の段階といいますか、途中の段階のところ、区々あるのが実態だと思いますが、私どもはそういういい事例を集めまして、それからJAの中央組織とも話し合いも進めておりまして、両者の協力体制が円滑にいくようにという方向で目下いろいろと整理をし指導をしているところでございます。  それで、現場の、例えば第三セクターで取り組むとかあるいはいろんな形があろうかと思いますが、その辺については柔軟な対応ができる方向で今後対応していきたいと思っております。
  66. 阿曽田清

    阿曽田清君 今の局長の話を私なりにいい方向で解釈すると、柔軟な方向でということの考えを私なりに勝手な解釈をしますと、運営指針にそういう方向で営農センター、普及センターは今後体制づくりを進めていく方向で検討しなさいとか、そういうのもある意味では国の指針として織り込んでいただかないと、なかなか実施方針は出せないと思うんですよ。私はその運営方針の中に挿入していただけるものだというふうに今解釈したんですが、そのように理解していいですか。
  67. 高木賢

    政府委員高木賢君) 何か一つを決め打ちだと、これしかないという言い方をすると、またそれなりの別の問題点もあると思います。それぞれの地域の実情があると思いますが、一つのパターンとしてそういう形もあるということは明確にしていっていいんじゃないかというふうに思っております。
  68. 阿曽田清

    阿曽田清君 ありがとうございます。  私の農協でもそれで大変今苦慮しておりまして、合併をいたしたものの、営農指導体制というものをどうやって今まで以上に組合員の方々に受け入れやすいといいますか、指導員、指導体制がよくなったと言われるためには、もう目いっぱい数で出し切っておるのに何もかもやらなきゃならないというところで大変苦労をいたしておるんです。そこに普及センターのお力をかりて機能分担を図ってやっていくということになると、相当組合員の方々に対してのサービスが徹底していくなというふうに思っておりますので、どうぞ運営指針の中にそういう方向もひとつ示唆していただきたいというふうに思います。  二年前の改正の段階で、さらに今度は末端の方の話でありますが、ボランティア方式で普及協力委員の委嘱の道が開かれておりますが、指導農業士や農協の専門家が多く参加できる、うまく機能して受け皿となってそういう普及協力委員というものをふやしていくというようなことが織り込まれておったわけでありますが、その実績と活動の状況はどうなのか、教えていただきたい。
  69. 高木賢

    政府委員高木賢君) 普及協力委員制度につきましては、先生御指摘のとおり平成六年度の法改正によりまして農業者の多様なニーズに対応するということで、普及員が手の届きにくい農産物の加工、販売などの農業関連する事業とか、普及員に協力してそういう活動を行う制度として設けられたわけでございます。  普及協力委員平成七年度末で三千百七十五名でございます。御指摘のとおり、約九割が指導農業士などの農業者でございます。その他一割がその他民間の専門家ということでございます。九割の指導農業士などの方々は新しい作物なり新しい品種、新しい技術の実証とか、農村青年の学習の指導、助言とか、あるいは新たに就農しょうとする方の受け入れの研修などの活動を行っていただいております。それから、民間の専門家は経営管理方法についての助言とか、加工技術の助言とか、あるいは流通、消費に関する助言とか、こういう活動を行っていただいております。  これからの地域の活性化などの課題に対応していくということにつきましては、やはり農業生産技術だけでなく加工技術とか商品化のためのデザインとか、こういった総合的な取り組みが必要であろうと思います。そういう意味で、多彩な経験を有した普及協力委員方々の活躍というものがぜひ必要でありますし、今後とも各分野の人材の発掘、確保、あるいはそのデータベース化を進めるということによりまして、普及協力委員制度の効果的な運用を図ってまいりたいと考えております。
  70. 阿曽田清

    阿曽田清君 今の局長答弁によりますと、かなりの数の方々が精力的に普及協力委員として頑張っておられるように見受けられるんですが、実態はそうなんでしょうか。私、現場におりまして、普及協力委員という看板をしょってそういう頑張りをしていただく方々を余り聞かないんです。むしろ、町が農業アドバイザーという形で町長が委嘱をして、それなりの助成措置も講じてやって初めて動くような形でありまして、実は私の農協でも管理不良園とか、もっとこれは徹底して園を改造させなきゃいかぬなというようなことで責任を持たせる意味で、アグリパートナーという三十代の人を二十人ぐらい養成をしたんです。  だけれども、ボランティアではなかなか協力がうまくいかないんです。やっぱり参加していただいた分だけの相当の対価を払うぐらいでないとうまく活動をしないんです。残念ながら、うちのアグリパートナーという制度はつぷれたんですが、普及協力委員というものに対しての支援の仕方というのを改めて考えていただいて、目に見える協力委員であってほしい、そういう思いをいたしておりますので、再度その点の御検討をいただきたいというふうに思います。  それから、次に参りますが、農村に今失われてきておるものは何かというと、有形無形の農村の文化であります。そして、食文化というのもだんだん少なくなってきております。景観等も十分守られておるかというとそうではないわけであります。普及員の先生方のお力をかりて、農村文化とかあるいは食文化、さらには景観といったようなものも普及員の先生方の広範な知識とそして連携をもって対応していただき、それを継承していただくことが農村のよさというもの、また環境という面まで守れることになるんではなかろうかなというふうに私は思うんです。  今の普及事業からもう一歩踏み出す形になりますけれども、その点の織り込みを、入っていく必要があるかどうか、どうお考えなのか、局長の御意見を承りたいと思います。
  71. 高木賢

    政府委員高木賢君) 協同農業普及事業におきましてはもう御案内のとおりでございまして、人づくりを基本として中山間地域などの農村地域の活性化あるいは農業技術の向上ということを本旨として取り組んでいるわけでございます。  これまでの取り組みの例といたしましては、今お話にもありましたように、地域の伝統食とか特産物を活用した地域おこし活動とか、それから農村らしい文化、伝統、景観、こういうものを生かしました都市と農村の交流活動、具体的には農家民宿なり農家レストラン、産直、朝市、いろんな姿があろうかと思いますが、こういったことにつきましても支援を行っているところでございます。  先生のおっしゃられる農村文化という意味合いがどの程度広がりがあるのか、ちょっと私もわかりかねるところがございますが、こういったものが農村文化の内容をなすということであれば、こういったことの継承、発展がその地域の活性化にとって重要である、それが関係の市町村なりJAとか関係の機関でも合意されている、そういう枠組みの中でありますならば、そういったことの支援に取り組むということは当然やっていかなきゃいかぬことだというふうに思っているわけでございます。
  72. 阿曽田清

    阿曽田清君 局長考え方はわかりました。  普及事業として今その取り組みもなさっておるというようなお話でありましたが、私のとらえ方からするとさらにもう一歩踏み込んでいただきたい。といいますのは、グリーンツーリズムとかあるいは村おこしとか、その地域農業振興計画とか、そういうもののいわゆる企画立案、仕掛け人というような役割も、普及貝の方々が町なりJAなりあるいはその部落に入って役割を果たしていただくということが、私は普及員のこれからの役割としてあるんじゃないかなと。  先ほど申し上げましたが、そのために農村文化とかあるいは景観とかという問題もさらに一歩踏み込んでみませんかと言ったのは、そういう村づくりあるいは農業振興計画の立案、さらにはグリーンツーリズム等の取り組みというものを普及員の皆さん方が今までの指導の範囲からもう一歩入ってやっていただくことによって普及事業のエリアが広がると同時に、また逆にそれが農業者が普及員の方々信頼していく大きな道になるんじゃなかろうかなというふうに思いましたので、前段、文化問題についての御意見も承ったわけであります。現場におってそこまで入っておるというところの普及員は果たして全国どのくらいおりましょうか、私はそう多くはないというふうに思います。  そのような思いで、普及員の方々が技術指導あるいは研究機関との橋渡し、国の農政の推進役にとどまらず、農業の振興計画あるいはグリーンツーリズム、そういう村おこしの問題まで、普及員の先生の皆さん方が広範な力をもって参加をしていただくということの役割を今後担う極めていい立場におられるんじゃなかろうかなというふうに私は思います。  大臣、そういう普及事業をさらに広範に超えた形の普及員の方々に対する期待を持つことは少々大き過ぎましょうか、どうでしょうか。
  73. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 今ずっとお話を承っておりました。委員現場におられまして、肌で感じていろいろとこれまで農業全般の問題について取り組んでこられたわけでございまして、この農業普及員の問題につきましても非常に傾聴すべき御意見だと感じながら承っておりました。  私も今の農業・農村が大きな曲がり角に来ていると、このような認識をしておりますし、取り巻く環境は非常に厳しい。しかし、国土の八割は農地と森林で占められておるわけでございまして、この八割の面積で二割の国土を養っておると、こういうことを言っても決して過言でない。そういう観点からいたしますと、さらに踏み込んだ考え方というのは非常に大事だろうと思うわけでございます。  非常に勉強させていただきましたので、私なりに取り組んでまいりたいというように考えております。
  74. 阿曽田清

    阿曽田清君 ありがとうございました。  時間がありませんので次に参りたいと思いますが、学校給食の問題であります。学校給食の評価というものをどのようにとらえておられますか、まずその評価からお聞かせいただきたいと思います。
  75. 阿部修

    政府委員(阿部修君) 私ども学校給食にお米を供給しておるわけでありますけれども、日本型の食生活を子供のうちから体験させていくと申しましょうか、身につけさせていくという面では非常に大きな役割を果たしておるというふうに認識しております。
  76. 阿曽田清

    阿曽田清君 時間がありませんので簡単に質問したいと思いますが、日本での学校給食の助成は二百四十二億円であります。これは農林水産省の予算の〇・六%。そして、アメリカでは八千五百億、農務省予算の一〇%以上を学校給食の予算として使われております。  これを熊本県の場合でちょっと計算し直しますと、熊本県では大体七千四百三十四万円ほど予算を使っておるわけでありますが、それを全国ベースに引き直して計算しますと、これはアバウトですけれども、全国都道府県の補助推定はそれで四十三億円ぐらいになるかなと。そうすると、国の補助と合わせて、二百四十二億円の国の補助ですから、両方合わせて二百八十五億円、全体の給食総額が二百十円で計算した場合に四千六百九十四億円が学校給食の総額と、こういうことになります。そうしますと、国、県で見ておる二百八十五億は五・七%の公的補助、全体の学校給食の中の五・七%が国、県の公的補助の割合であると。  ちなみにアメリカは八千五百億でありますが、それを一食二百十円と計算しまして八五%ほど、これはアバウトですけれども、アメリカは国が見ておると、こういうことになるわけであります。  私は、日本食という食文化というのは、学校給食によってある意味では子供の時代からちゃんと教え込むのに絶好のいい機会ではないんだろうかと思います。アメリカの学校給食の材料は全部国産を使えと、こういうことになっておるんですが、日本の場合は米と牛乳ぐらいで、あとは肉類からその他のものは海外だろうと、こう思うんです。国産使用ということを進めるために、国産をより使えというようなことでの国からのバックアップ、そして米も余りぎみの状態でありますから、米飯の使用というものは、少なくとも週に最低三回か四回、今二・六回でありますから、最低三回か四回は米飯給食で。アメリカは過剰農産物はもう無償で提供するわけでありますから、そういうようなことで、この学校給食も日本食文化になじむようなメニューをつくっていきながら、そして国産の原材料を使うという方向で、そして週に少なくとも三回から四回は米飯給食と。  そういう方向での指導といいますか、それは農林省として考えていくべき時代ではなかろうかなというふうに思いますが、いかがなものでありましょうか。
  77. 阿部修

    政府委員(阿部修君) 学校給食の関係でございますけれども、今私ども学校給食に対する助成と申しますと、先ほども申しましたお米、それから牛乳、温州ミカンの果汁というようなものにつきまして一定の助成を行っておるところでございます。  それで、実はアメリカの例も先生御指摘になられたわけでございますが、若干私どものあれと違いまして、アメリカでございますと学校給食というものが低所得者向けという面もあるわけでございます。かなりの規模で無償なり値引きというようなことをやっておりまして、低所得者層の栄養改善といった社会福祉的な観点からの意味が強いというふうに伺っておるわけでございます。  それで、私どもの今の米飯給食でございますけれども、当初スタートしたころは大変低い段階から行ったわけでありますが、現在週三回程度を目標に推進しておるところでございまして、現時点でございますと週二・六回というようなことになっておるわけでございます。  ただ、この学校給食の米穀の値引きの問題につきましては、先日の財政構造改革会議の結果を踏まえまして、この学校給食用の米穀の値引きについて廃止の方向で見直すという閣議決定が行われておるところでございまして、今後のあり方につきまして、これも踏まえた検討が必要であるというふうに考えておるところでございます。
  78. 阿曽田清

    阿曽田清君 時間がありませんので、とにかくアメリカは国産に限定して使えと、これはある意味じゃガット違反だと私は思うんです。ならば、日本でも国産を使うのは当たり前じゃないかということで、私は使うべきだと思うんですけれども、何かちょっと後ずさりみたいな話になっていますので、私は今の農業事情からして農林省の姿勢はもう少し突っ込んでいくべきだというふうに思いますから、よろしくお願いをいたしたいと思います。  もう時間がありませんのでたった一言だけ。学校給食のことをまだたくさん述べたかったんですが、もう時間がありませんので、最後にO157の問題です。  昨年は、O157の問題で野菜農家は本当に七転八倒、大変な苦しみをいたしました。数量は半分出しても価格は半分という、キャベツやレタスあるいはキュウリ等は影響をもろにかぶったわけでありますが、まだ原因、犯人がわからないという状況であります。昨年は厚生省のおかげで農林省がそのとばっちりを食ったような感じで、どちらかというと厚生省の一本勝ちみたいな形で、その影響をもろに野菜農家がかぶった形であります。O157で共済金が来るわけじゃありませんので、泣き寝入りです。  どうぞことしはああいうマスコミ報道にならないように、農林省が安全宣言を絶えず先に打ち出していって、カイワレの被害イコール野菜の被害ということで、もう市場に出せない、出しても原価も取れないというのが四カ月も続いたわけでありますから、どうぞことしは昨年の事態にならないように、厚生省が出す前に農林省野菜安全宣言を絶えず出して、ああいう一方的な出し方だけにはならないように御配慮いただきたい。  一日も早く原因はどこにあるのか明らかにすることが一番だろうと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  79. 清水澄子

    清水澄子君 四月十四日に農水省は諌早湾の潮受け堤防の締め切りを行いました。その前後から一挙に諌早湾干拓事業を見直す声が高まった感がございます。  私は、三月十三日の参議院の予算委員会でこの問題を取り上げました。ここでまた改めて農水大臣にお尋ねしたいわけですけれども諌早湾干拓事業の目的は農業振興にあったと思いますが、そのことは今も変わりありませんか。
  80. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) お答えいたします。  諌早湾干拓事業は農用地の造成と防災対策でございます。
  81. 清水澄子

    清水澄子君 防災は後からつきましたけれども、やっぱり農地造成というのが、干拓というのはそうなんじゃないんですか。
  82. 山本徹

    政府委員(山本徹君) 昭和六十一年の諌早湾干拓事業計画書におきましても、第一章の目的のところで、生産性の高い農地を新たに造成するとともに、諌早湾奥部の低平地及び沿岸地域において防災上緊急の課題となっている高潮、洪水、常時排水不良等に対して総合的かつ効率的な防災対策を可能とし、本地域一帯の振興に大きく寄与するものであるという目的がございます。  したがって、当初からこの干拓にはこの地域の長年の課題でございます高潮、洪水の被害からこの地域の住民の生命、財産を守るということが計画の大きな目的でございました。
  83. 清水澄子

    清水澄子君 諌早湾の潮受け堤防締め切り後、その営農計画とか防災効果とか調整池の水質の汚濁など、環境問題のさまざまな問題が浮かび上がっているわけです。私は、全体を見て計画そのものにやはり無理があったのではないかと思います。  大臣の何か答弁がちょっとはっきりしなかったわけですけれども、やはりこの事業目的の一つに総合的な防災対策、これは一九八六年のときからそうなるわけですが、その防災対策を掲げております。しかし、五月の十三日、十四日に百五十一ミリの雨が降っただけでも、百五十七ヘクタールが冠水をしておりますね。そのとき農水省は防災対策は成功したという発表をして、その後また訂正をされておりますけれども、やはり私は、その前に農水省が昭和五十八年の十二月に専門家に委託た防災対策検討委員会の中間報告では、この防災効果に根本的な疑問が出されていたと思います。  現在の締め切り面積は三千五百ヘクタールですが、この値に近い三千三百ヘクタール案について、この諌早湾防災対策検討委員会の報告書にはこのように書いているわけですね。  計画洪水に対して調整池だけでは対応できなくなるため干陸地を遊水池として利用せざるを得なくなる。しかし、その導水に当たっては、構造、水理、管理等の面から技術的に極めて困難な問題が残されている。また、この場合、潮受堤防がELマイナス三メートル程度の浅い海域に築造することとなるため、基礎処理の施工性も極めて悪く、これを克服するには事業費の大幅な増嵩は避けられないであろう。更に将来背後地の排水改良の余地がほとんどなく、堆砂による調整池の寿命も短くなることから国土保全上からの問題が多いといえよう。というふうにこの報告は出されておりますね。  これを読みますと、農水省は、防災効果に重大な問題があることを知りながらこの工事に踏み切ったことになると思いますけれども、農水大臣は、この報告書との関係では絶対にそういうことはあり得ない、この報告書の方に問題があって、そして今二百ヘクタールふやしたから絶対にここに書かれている危険性とか疑問は問題にならないのだということは断言なされるのでしょうか。
  84. 山本徹

    政府委員(山本徹君) 先生御指摘の中間報告は昭和五十八年十一月に取りまとめられ、かつその当時の全国紙、地方紙等にも報告書について掲載がございますが、公表されまして、地元長崎県の県議会あるいは県、市町村等々で長く検討されたものでございます。  なるほど、三千三百の中間報告の案は、これは調整池の面積が千二百ヘクタール、干陸地の面積、すなわち農地が二千百ヘクタールで問題の多い案という指摘が中間報告でなされておりますが、その後、地域の住民の方あるいは漁業者の方、農業関係者等々、議会も含めて長い期間かかって種々御検討いただきまして、昭和六十一年の事業計画として地元、県、市町村等の同意を得て取りまとめられたのが現在の三千五百五十ヘクタールの案でございます。  この案は、三千三百の問題が多いとされた中間報告の案と異なりまして、調整池の面積が千二百ヘクタールが千七百十ヘクタールと約五割面積が拡大されており、かつ農地の面積が二千百ヘクタールから千八百四十ヘクタールと縮小されております。  かつ、潮受け堤防等の構造にも工夫を凝らしまして、調整池の容量を七千二百万立方どいう形でこの中間報告の案で許容し得る案とされた三千九百ヘクタールの締め切り面積とほぼ同水準の調整池の面積を維持し、昭和三十二年の諌早水害やまた伊勢湾台風クラスの洪水、高潮が到来した場合でもその被害は極めて少ないものであるという検討結果に基づきまして、広く地域で、地元で御検討いただいて、この工事計画を取りまとめ、現在この計画を推進しているものでございます。
  85. 清水澄子

    清水澄子君 それでは、この報告書を参考にしながら、そして、その後いろいろ工事、面積などを変えたから大丈夫であると断言できますね。  それで、時間がありませんから次に行きます。きょうはもう断言していただいたわけですから、それであるならば、今後そういう問題が起きたときそれはどういうふうになさるのか、私はそれは断言できない問題がいっぱいあるんだと思っているんですが、まずそこは次に回します。  次に、営農の見込みについてお尋ねいたします。  八六年に農水省が提示した営農計画では、六百戸が入植して酪農とか肉牛肥育とか野菜栽培をすることになっております。しかし、諌早周辺の中核農家はこの十年で半減しましたし、周辺の農民から入植を希望する声は聞かれません。私も現地へ行っていろいろ周りを歩いて聞いてみました。現状において、営農計画そのものの見直しが迫られているのではないかと思います。  ですから、総務庁の行政監察がこういう大規模干拓事業に対して、情勢の変化を踏まえて、実施中の事業についても環境に十分配慮し、それから事業の進捗状況に応じて土地利用とか営農等の確実性について確認し、必要に応じて事業計画を見直すべきだという勧告をされていると思いますけれども、それに対して、五月三十一日に農水省は、干拓事業を継続して、営農計画については長崎県の意向を踏まえて具体化を図るという回答をされておりますね。  しかし、平成四年の長崎県の諌早湾地域環境計画、これ長崎県のものなんですが、これを見ますと、干陸地に広大な空間を活用しようというので、サイクリングコースとかお花畑とか乗馬場とか、こういうレジャー型の、複合型の農業構想という形で、中はほとんど観光的なものがもう、長崎県自身は営農という干拓の最初出された目的とは随分、農水省の目的とはかけ離れておると思います。  高田知事はこの間、五月二十六日の毎日新聞の記事を見ますと、企業が何百人かの従業員を雇って営農することがあり得るというふうに語っておられるわけですね。これもひとつ大臣お答えください。干拓の目的というのはだれのためのものだったのでしょうか。企業にも農地を配分するということは、農地法にそういうことは決められておりますか。農地法にはみずから耕作をしない者に農地取得は決めていないはずなんですが、そうすると農地法には違反をしないんですか。そのことをお尋ねしたいと思います。
  86. 山本徹

    政府委員(山本徹君) 最後の、企業が農業経営ができるかという御質問でございますけれども、これは長崎県の当局にも確認いたしておりますけれども、企業といいますのは現在農地法で認められております農業生産法人、すなわち有限会社、合名会社、合資会社及び農事組合法人、こういった法人の形で効率的な農業経営を展開することは、現在農地法上認められております。  こういった農業生産法人による農業経営というのは、農業の労働関係の近代化あるいは女性の農業従事者の地位の明確化、向上、あるいは経理の家計との区分による近代的な経営感覚による合理的な農業経営等に役立つものでございまして、私どももこういった法人経営による農業というのはこれからの一つのあり方であると考えておりまして、これの振興をしております。  したがって、この諌早湾干拓地では、長崎県としても二十一世紀に向けて全国でも誇れるような模範的な農業経営をここで実現したいというお考えがございまして、農業生産法人という形での企業的な農業経営、これも一つ諌早湾営農のあり方として御検討しておられると承知いたしております。
  87. 清水澄子

    清水澄子君 そうしますと、今の長崎県のこういう方針は、干拓事業をやる目的と合致していたとおっしゃるわけですね。それは全然目的が違うと思います。  実はこの干拓事業費が、当初千三百五十億円から現時点では二千三百七十億円になっておるわけですね。この総事業費が一・七六倍、約二倍に膨れ上がっているわけですが、じゃ総事業費の上昇に伴って十アール当たりの農地の取得価格は最終的に幾らと見積もっておられるんでしょうか。それが周辺農地の価格とどのような価格差になっているか、お答えください。
  88. 山本徹

    政府委員(山本徹君) 農地の配分価格でございますけれども、これは周辺のこの諌早地域農地の売買価格の実例等を参考にいたしまして、十アール当たり約百十万円を予定いたしております。  この周辺地域農地の価格は、平成七年の全国農業会議所の調べによりますと、平均して約百二十万円、これは地区によってこの半額であったりあるいは二百万円を超える価格であったり、これは地域農地の実情によっていろいろ違いますけれども、平均すると百二十万円でございます。この配分する農地は平たんで生産性の高い優良な農地でございますので、十アール当たり約百十万円というのは妥当な水準であると考えており、また長崎県、地元でもいろんな農業後継者等に打診いたしましたところ、大変ここの入植営農に対して関心を持っておられまして、当初の営農計画の具体化をこれからさらに県と御相談しながら進めてまいりたいと考えております。
  89. 清水澄子

    清水澄子君 それであるなら、百十万円の価格というのはこれは固定された価格と見てよろしいですね。今後また事業費がふえると、これは買う人が二〇%負担しなければならない仕組みになっておりますが、ずっとこれは百十万円で保証できるというふうに伺ってよろしいですか。
  90. 山本徹

    政府委員(山本徹君) これは実際の配分が数年先になりますので、またそのときの経済事情等もございますけれども、いずれにいたしましても、配分の価格は周辺地域農地の売買価格等を参考にいたしますので、その水準で、少なくとも現在は約百十万円が妥当な線であり、これで配分したいと考えております。
  91. 清水澄子

    清水澄子君 何か非常に理解しにくいんですね。農水省は標準的経営モデルというものを出されて、その中でこういうふうに一ヘクタール幾らになるか出されて、それがまた状況に応じてどうなるかわからないと。こういうふうなことが私は農水省に対する皆さんの不信というんですか、何か将来そうならないんじゃないかという問題ばかりが非常にたくさんある、この問題に非常にたくさん潜在しているということが問題になってくると思います。  次に、自然環境についてお伺いします。  まず、諌早湾奥部の調整池の水質については、堤防締め切り以前に農水省は調整池の水質について九州地方建設局あて文書を作成しておられますね。この文書によりますと、アオコの発生を予測されておりますし、農水省は潮受け堤防の締め切りによって生ずる水質悪化についての認識を事前に持っておられたわけですね、当然だろうと思うんです。  そうすると、農水省は水質汚染の可能性を知りつつそのまま事業を推進したということになりますと、現在もう既に水質汚染が始まっているんですけれども、水質汚濁防止法第十四条の三には「国及び地方公共団体の責務」というのがあるんですけれども、それらとはどういう関係になるんでしょうか。水は環境庁ということなんでしょうか。農水省はこの点に関して国の責務をどのように認識しておられるか、それから現段階においてどのような改善策を検討しておられるのか。農水大臣、ぜひ一言お答えください。
  92. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 委員現場をごらんになられたようでございますから、よく御理解いただいておると思いますが、今の現状は、潮受け堤防工事中でございまして、土木工事が行われております。それによって当然海水また調整池の水もこの影響を受ける。それから二番目に、調整池の水位は今約二、三メートルの水位でございますから、あの地域の風の強さ、ほぼ毎日六、七メートルの風が吹いているという状況からいたしますと、表面の海水はこの風速によって大きく動いておるわけでございまして、具体的に言えば底にある泥が水面に出てくる、こういうことも現実にございます。  それから、淡水化に向かっておるわけでございますから、生態系が海水から淡水に変わりつつある。こういうことでございますから、今の時点での環境、水質の問題について調査をいたしておるこの内容については、いましばらく状況を見ないと私どもはこの調整池の環境基準、環境の中身について的確な判断、結論が出ないものと思っておるわけでありまして、環境庁とは連絡協議会をつくってこの環境に対する影響の評価については十分に考えております。  なお、この事業につきましては、委員も御承知のように、地元は一致して各党ともに賛成し、地域選出の国会議員全員がこの事業の推進を強く願っております。地方分権の時代におきまして、地域意見を吸い上げるということは今の大きな流れであるわけでございまして、そういう点を考えますときに、私どもはこの地域意見を十分に頭に入れながら、この事業に取り組んでおるということについても十分に御理解はいただけておるものと思っております。
  93. 清水澄子

    清水澄子君 地方分権の問題はむしろ私どもが一生懸命推進してまいりましたので、その地方分権を私は無視するとか破壊するということを言っているのではありません。ここで起きている水質悪化の問題、これについてどうすべきかというのはやはり政治の課題です。行政の課題です。ですから、そのことをお尋ねをしているわけですから、問題をぜひすりかえないでいただきたいと思います。  そこで、長崎県の調査でも潮受け堤防締め切り後に水の汚れを示すCODは二倍に達しておるわけですね、燐も窒素も。そして、私どももいろいろ交渉していますけれども、環境庁は非常にもう危機的だということは言っております。そして、今涼しい日はいいんですが、暑くなるとこれは大変アオコの発生と赤潮につながるというので、非常な危機的な段階にあることは現実なんです。  特に、諌早湾周辺地区の公共下水道の普及率が今市街地で一六%でしょう。ですから、あの調整池にあらゆる雑排水が流れ込んでいる。本当ならば、そういうことをもっと早くから市町村との協議で調整池に流させないようにすべきだったはずですね。しかし、それが入り込んでいるのが現実なんです。そのために、大腸菌群数の環境基準に達しているものは一つもないわけです。全部、今のままでは調整池は巨大などぶ池になろうとしております。  これまで、じゃ諌早湾の水質がなぜ問題にならなかったのかというのは、やはり海水とそれから干潟による浄化作用のためであったと思います。ですから、農水省はこれまでの環境アセスにおいて干潟の浄化作用について調査をしてこられたのかどうか、干潟というのは水を浄化作用するどういう能力、機能を持っているのか。  そのことと、もう一つは、諌早湾というのはとても水が出てきて魚がわいて出るような海だと言われてきたわけですが、諌早湾干潟の海洋資源の生産力、どのように認識しておられるのでしょうか。やはり干拓事業を進めるに当たって、干拓による農業生産で得られる利益と干拓によって失われる利益というのを対比する、そういう計算をするべきだろうと思いますが、そういうものをされたのかどうか、お答えください。
  94. 山本徹

    政府委員(山本徹君) まず、調整池の水質でございますけれども、この調整池地域住民の長年の悲願でございます、高潮、洪水の被害から生命、財産を守りたいという強い気持ちのもとにこの調整池の整備を進めているわけでございますけれども、この調整池の水質対策ももちろん重要な課題でございます。  これは、数値が高くなっておりますのは、現在みおのしゅんせつ等の工事実施しておりますこと、また従前の海洋の生態系から淡水の生態系に切りかわる時期でございまして、生態系がまだ安定していないごと、また水質のデータは天候等によっても左右されますので、ある程度長期間のデータの採集が必要であるというような事情にございますけれども、私どもこの水質保全にも万全を期するために、大臣の御指示によりまして、諌早湾干拓調整池等の水質委員会、これを六月、今月早々に開催することにいたしますとともに、環境庁と環境保全対策を協議するための協議会を設置し、この問題についても協議いたしておるわけでございます。  水質保全の対策といたしましては、こういった委員会等でも御検討いただきますが、淡水湖になりますので、アシ等の植栽、それからカキ殻、これは水質浄化効果が大変高うございます。カキ殻を利用した浄化対策等々の実施、それから公共下水道や集落排水の整備の促進等をこれからさらに県等とも協力しながら推進して、水質対策に万全を期してまいりたいと考えております。  それから、干潟の生産力あるいは環境浄化機能の御指摘がございましたけれども、確かに干潟は水質等の浄化機能がございます。これはヨシの湿原等々にも同様な効果がございまして、何も干潟だけがそういった機能を持っておるわけではございませんので、私どももアシ等の積極的な植栽等に取り組んでまいりたいと思っております。  また、干潟の漁業の効果でございますけれども干潟はもちろん漁業の対象となっておりますけれども干潟自身がこれは毎年五センチ程度堆積してまいりまして、そのまま放置するということは、海岸の陸地の低湿地域の住民の方々生活あるいは営農に重大な支障を生じるおそれがあるわけでございますので、干潟は、これはそれこそ平安時代の昔からこの地域干潟干拓して、陸地として利用し、そこに定住してきた長い長い歴史がございます。したがって、そういった長い干潟干拓による住民の生活の安定を図るというような歴史の上に今回の諌早湾干拓事業はあるものでございまして、私ども計画どおり防災対策、また農地の造成のためにこれからもこの事業を着実に推進してまいりたいと考えております。
  95. 清水澄子

    清水澄子君 歴史的な話は私もよく向こうへ行って聞きましたし、勉強しています。しかし、やはり私たちがこういう工事を推進している時代というのは、環境という問題はどちらかというとそういう価値観はまだ弱かった。ですから、私たちは何も先ほどのムツゴロウか命かという、そんな話ではなくて、ここまで予算も投じたわけですから、やはり諌早湾と環境とそして防災と、本当にそういう目的が効果的に達成できるようにどうすべきなのか、こういうことのために質問をしております。  では、内部の堤防は一体いつ完成するんですか。これは一万七千六百メートルの工事がこれから始まる、これからそういう干拓の方ができるわけですね。私は、この事業についても疑問があるんですが、それはそれとして、これからですよね。そうすると、調整池の水質悪化だけは予断を許さぬ状況になっていく。どぶになっちゃったら、今度は外へ出すこともできない、それこそ漁場に対して被害を与えますから。私はそういう意味で、やはりこの際、環境と共生するというんですか、その辺に人間の政策的英知を今行使すべきだと思いますので、私はその問題を、まだ堤防がこれからできるわけですから、一時水門をあけて、一応海水を入れて浄化する、そして、やはりこの水質改善のために努力をする。そういう中で、すべての今までの工事がむだにならないような方法を考えるべきだと思います。  それと、その調査のさっきの方法も、これからもっともっと海の生態系の調査というのは実証的経験に支えられなければならないわけですね。中海干拓調査でも潮通しを含む実証的な研究が取り入れられることになったのもそのためであったと思います。  ですから、そういう意味で農水省はやっぱりこういう問題についてはかたくなではなくて、必要なことはやっぱり見直す、それからやり直すべきことはやり直してみる、こういうことをぜひやっていただきたいと思います。  時間が来ましたので、そのことを最後にお答えいただいて終わりたいと思います。
  96. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 水門をあけて海水を入れろというところにどうも結論があるように伺いましたけれども、我々としてはそういうことは、漁業関係者の強い反対意見もございますし、何よりもせっかく外海調整池との水位の差マイナス一メートルをつくりまして、そのことによって最高七千二百万立方メートルの水をためられる、そういう貯水池をつくって、防災対策防災機能をそのことによってつくっておるわけでございます。これから梅雨期を迎えて、水門をあけて海水を入れることによってそういう調整池の調整量が減り、防災機能が低下をするということになるようなことは、この事業防災目的に反するわけでございますので、そういう点については私どもといたしましてはいたしかねるという結論でございます。   〔委員長退席、理事高木正明君着席〕  ただ、中の水を外海干満の差によりまして放出するということは、これは当然のことでございまして、そのことによりまして本明川から流れてきた水も外海に流れ出すということにもなるわけでございまして、そういうところに環境、水質保全の問題についてプラスする、そういうことは十分に考えられることでございます。
  97. 一井淳治

    一井淳治君 農林水産省は、水産庁も含めまして世界各地で技術援助を展開しておられますけれども、いずれも着実な成果を上げておられまして、大変好評であると思います。よその省庁の中には、せっかく援助をしながら現地人から批判されるという声のある援助もあるようでありますけれども、本当に農林水産省の援助というものは現地に根づいておりまして好評であると思います。  私、最近中国へ参りまして、中古機械の修理とか、あるいはかんがい排水の技術援助の状況を勉強させていただきましたが、本当に中国の農業の振興にも大きく貢献しておりますし、現地からも大変温かい感謝の気持ちを持たれているということを感じたわけでございます。  ところで、これは中国の国内事情でありますから、こちらの委員会でとやかく余り言い過ぎたらいけないことであることはもちろん自覚しているわけでありますけれども、文献などを見ますと、中国では、穀物が一定の産地では大量に出産されてその付近では穀物が余るけれども、他方、大量に生産された穀物がうまく消費地へ回るような機能が果たされていないということも言われておるわけであります。  私も中国に参りましてその間の事情を聞いたわけでありますけれども、聞いたというのは正式に事情聴取するというのではなくて、一般的に現地の人たちに話を聞いたわけであります。例えば、これも正確に現地に行って確認をとったわけじゃないんですけれども、例えばトウモロコシなどが大量にできるところは道路に干すまで生産されるようであります。しかし、日本のように倉庫とかあるいは備蓄等の機能が十分ではありませんから、十分に活用されていないということもあるようであります。  そこで、今後中国に対する技術援助でありますけれども、もちろんこれは我が国が決めるわけにはいかないんで、中国の方の御希望があった上の話であるのでありますけれども、例えば農業の統計とか、収穫予想とか、数量の管理とか、全国的な計画の立案とか、あるいは貯蔵や輸送手段の援助とか、そういったものの技術等の援助が提供されれば、非常に中国の方々も助かるし、大きく国際貢献することになるんじゃなかろうかと思うわけでございます。  そういうことで、農林水産省におかれましてもそういうことをお考えになりながら、今非常に評判のいい農林省の技術援助を今後とも大きく展開されることを期待しているわけでございますけれども、御所見を伺いたいと思います。
  98. 熊澤英昭

    政府委員(熊澤英昭君) お答え申し上げます。  農業に関します技術協力に関しまして、開発途上国を中心にかなり幅広く積極的に取り組んでおります。特に、中国におきましてもかなり多岐にわたる技術協力をこれまで進めてまいっております。今、先生が御指摘になりました中古の機械の修理とか、あるいはかんがい排水の技術協力、そういったものも相当力を入れてやってまいったわけでございます。  ただいま先生から御指摘のありました点で、大きく二点に分けられるかと思います。最初の点の統計に関する点でございますけれども、中国政府は一九九七年の一月に農業センサスを実施しておりまして、現在この分析に着手しているという状況にございます。中国政府の方からはこの農業センサスの分析に関しまして、日本に技術協力をお願いしたいということで現在要請がまいっておりますので、現在外務省を通じて先方と具体的にどういった面での技術協力ができるかということで、本年度の技術プロジェクトとして取り上げることで具体的に準備を進めているという状況にございます。  それから、二点目の流通の関係でございますけれども、ただいま先生から御指摘ございましたように、全体でいえば国内のインフラの整備、鉄道でありますとか、道路の整備でありますとか、私ども文献で読む限り最近の経済成長になかなか追いつかない、まだまだ十分ではないということもございまして、中国国内の大きな流通、特に流通経路の長い穀物等については大変大きな課題があるということは承知しておりますけれども、こうした長距離の物流についてはなかなか私どもの技術協力の範囲を超えるという問題もございます。  他方で、流通面につきましては、特に中国政府の方からは生鮮食料品の流通につきまして、こちらの方にも技術協力の要請がございます。平成四年度からは生鮮農産物を中心といたしまして、流通に関する現状の調査、さらには市場を整備する構想を策定するための協力、それに関します専門家の派遣、そういったことを逐次実施してきております。    〔理事高木正明君退席、委員長着席〕  また、その関係で、本年度は中国から生鮮農産物卸売市場考察団ということで、日本の生鮮市場のシステムについて視察をしたいということで先方の要請が参っておりまして、本年度この視察団を受け入れるということにいたしております。  今後とも先方、中国政府の要請を踏まえながら、関係省庁、特に外務省とも連携をとりながら十分に進めてまいりたいというふうに考えております。
  99. 一井淳治

    一井淳治君 穀物の関係で数量の管理とか、日本はお米の管理なんかは非常に完全にやっているわけですけれども、そういった技術援助ができればと思いまして質問したわけでございますので、その点、今後機会がありましたら念頭に置いていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  100. 国井正幸

    ○国井正幸君 何点か御質問をしたいと思います。  まず最初に、九年産麦の政府買い入れ価格について現在諮問をしているわけでございますが、これの消費税の取り扱いについてお伺いをしたいと思います。  現在、政府管掌作物の生産者価格には消費税が内税として、物財費相当分だろうと思いますけれども、含まれておるように聞いております。消費税が三%の時点では、米で一・五%、麦で一・六%、こういうふうに聞いているんですが、これ見ますと、その分だけ麦の方が物財費が多いのかなと、つまりなかなか利益が出ないんだなとつくづく思います。  そういう中で、本日諮問した麦価の中に、消費税が三%から五%に上がったことによって七十円が買い入れ価格に算入されているんだろうと思いますけれども、この七十円とした根拠というか考え方、これを示してもらいたい。
  101. 阿部修

    政府委員(阿部修君) 麦価算定におきます消費税アップの算定の件でございます。本年産の麦価の算定に当たりましては、実は消費税が導入されました平成元年と同じ方法を用いておりまして、今年産の場合は消費税が改定されたすぐ後、すなわちことしの四月のデータを用いまして物財費を物価修正するというような算定をしておるところでございます。そうしたことによりまして、消費税の三%から五%への改定の影響を価格に適正に反映しておるというようなことでございます。その算定の値につきましては、先生今御指摘になりましたように七十円というふうになっておるわけでございます。
  102. 国井正幸

    ○国井正幸君 そういうことになりますと、これから先消費税の税率というのは不確定なものはありますけれども、当然ことしの場合は七十円ということで、三%の時点で進んできたものと五%になってから使うであろうものとの関係で七十円にしたということですから、来年の麦については一〇〇%というか、七十円ではなくて丸々消費税相当分を織り込むと、こういうふうに理解していてよろしいわけですよね。
  103. 阿部修

    政府委員(阿部修君) 算定におきます消費税の織り込み方でございますけれども、現在私どもが算定しております産地におきます生産費に基づく算定方式、この方式のもとにおきましては消費税は物財費の物価に反映されるというようなことでございまして、その分はこの方式のもとでは適正に転嫁されるという、そういう方式でございます。
  104. 国井正幸

    ○国井正幸君 済みませんが、なるべく短目にお願いします。  そういう中で生産者の方々からは、消費税分が物財費の部分で、僕は事前に説明聞いてある程度理解はしているつもりなんですが、完全に転嫁されているかどうかよくわからぬという話があるんですよ。そういう意味からすると、この政府管掌作物についても外税にしてくれたらどうだというふうな要望があるんです。それらについてはどうですか、考え方として。
  105. 阿部修

    政府委員(阿部修君) 外税化するということでございますが、我が国の麦の生産農家の大部分の方々がいわば免税事業者でございまして、これを一律に消費税をかけるというようなことになりますと、実際に生産者が負担しない部分まで価格に織り込むというようなことになるわけでございまして、いわば益税が発生するというようなことの問題があるわけでございます。  また、そういう問題がありますので、一方で課税農家、これは三千万円以上の売上高がある農家でございますが、これは麦の販売に伴う消費税を納税するということになるわけでございまして、免税農家と課税農家の間の負担の公平というものを図る観点から、課税農家に対しましては納税を確認した上、政府買い入れ価格とは別に加算金といたしまして販売に伴う消費税相当額を支払っておるというようなことで、両者の公平を確保しておるところでございます。
  106. 国井正幸

    ○国井正幸君 非課税の農家からすれば、いわゆる益税になるんじゃなくて僕はかぶっちゃうんだと思いますよ、転嫁できない。だけれども、これは時間もないから先に行きたいというふうに思います。  次は、六月三日に政府においては財政構造改革会議の意を受けるという形で来年度政府予算の概算要求基準を閣議決定されているわけですね、大臣。その中で、ウルグアイ・ラウンド対策費については期間を二年延長するということ、それから公共事業枠と非公共事業枠、これを一対一にしていく、こういうふうな見直しがされたと報じられているわけなんです。  そもそも、ウルグアイ・ラウンド対策は九三年の十二月に農業合意を受け入れた、ここからスタートしているわけですね。一つは次回の見直しまでの間に我が国の農業の生産性の向上を図っていくんだと、それともう一つ国際競争力のある農業をぜひつくっていくんだと、こういうふうなことで一つの目標の年次というのがあるわけです。そういう意味で、政府というか与党においても大変御努力されたことは私どもよくよく理解できる部分はありますけれども、しかし、期間を二年延長するということは、ある意味じゃ二〇〇〇年までに事業が完成しないということも意味するわけでございまして、そういう意味ではやっぱり見直す中身というのが大変重要になってきているんだろうと私は思うんです。  そういう意味でちょっとお聞かせをいただきたいというふうに思うんですが、このウルグアイ・ラウンド対策の見直しに対する基本的な考え方、これについて簡略にひとつ大臣考え方をお聞かせください。
  107. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 二〇〇〇年までに六兆百億、六年と、こういうことでスタートしたわけでございます。これはやはり私どもとすれば一つのお約束として考えておるわけでありますが、今までの経緯は御承知のようなことで、総額は確保いたしましたけれども、二年間の延長ということになりました。しかし、それは公共事業中心とした延長でございまして、必要な事業については重点的、効率的に取り組んでいく。特に生産、加工、流通の面について非常に地域の要望が高いこともございまして、そういう点についてはこれから積み重ねをいたしまして、その事業は的確に進めていきたい。  それから、公共事業については何も重要性がないということではございません。依然としてコスト削減のために大規模化というのは重要でございますので、それはそれとして、これからも六兆百億の中でやっていくわけでございますが、これも重点的、効率的にやっていく、こういうことを考えておるわけでございます。
  108. 国井正幸

    ○国井正幸君 私は、生産性の向上対策あるいは国際競争力のある農業、これをどういうふうに実現していくかということになると、やっぱり圃場を大区画化していって、あるいは経営面積を拡大していって効率のいい経営をやってもらう、このことが一つだろうと思うんです。それからもう一つは、やはり共同利用施設です。例えば、米でいうならばカントリーエレベーターとかライスセンターとか、こういう共同利用施設を普及していく、あるいは大型のコンバインとか、こういう収穫機具を初めとする農機具等を集団化するあるいは共有化する。こういうふうなことで、できるだけ物財費のコストというものを下げていくんだと。このことがやっぱり二つの大きな柱なんだろうというふうに思っているんです。  そういうことからしますと、基盤整備とこの共同利用施設の導入というのが極めて大きい要素になってくると思うんです。この点について、土地基盤整備と共同利用施設の導入要望というのが各地から相当あると思うんです。私の県なんかでも相当強い要望があるんですけれども、そういう見直しの観点の中で、どのようにこれを受けとめておりますでしょうか。この基盤整備と共同利用施設の導入に関してお聞かせください。
  109. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 具体的にいえば、そのとおりでございます。
  110. 国井正幸

    ○国井正幸君 そこで、これは大変難しい問題にもなってくると思うんですが、将来我が国として残すべき農家あるいは残すべき農業地域、こういうものがあると思うんです。現在の土地利用計画においても、例えば農業振興地域とか、こういうふうに指定してやっているわけなんです。その一方で、今米が大変余っていて、昨年も議論をしましたし、ことしも何度か私も申したことがあるんですが、やっぱり生産性の実効性を確保しなくちゃならないということで、いわゆる補助事業の優先採択、こういう問題もあるわけです。  しかし、広い意味で考えると、やっぱり残すべき農家なり残すべき地域というものに対してはこういうものも入れていかざるを得ないというのは、これ一方の事実なんだろうと思うんです。そういう観点からして、非常にこれは難しい問題なんですが、農業に意欲のある地域あるいは農業がやれる地域、こういうところに対しては生産性の実効性確保ということとうまいぐあいにやっぱりミックスさせながらきちっとこの政策を実行していかないと、例えば大きい市があるとしますね。それは市街化区域も入っていれば調整区域もあるし農振地域も、いろんな地域がある。しかし、トータルとしてその市が全部クリアしなけりゃ、生産調整が守られておって、農振地域農業に意欲のある方がいっぱいいて、やりたいというところについても補助事業が入らない。これでは、やっぱり画一性だけでは難しいと思うんです。しかし、それを余りやると、これまた生産調整がうまくいかない。  大変難しい問題だと思うんですが、この点については時間もないわけですからやっぱりきちっと対応してもらいたい。本当に難しい問題だと思うんですが、それらについて、いかがでしょうか。
  111. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 御指摘のように、それぞれの地域の実情なりなんなりから考えますと大変難しい御指摘であると思いますが、考え方としては、恐らく残すべきところ、残すべき農地、残すべき農村、それから残すべき農家、意欲のある農家、そういうところにできるだけ政策を集中していくということがこれからも基本だというふうに思います。そういう意味では、方向としては私どもとしても基本的には先生と同じ考え方ということはまず言えると思います。  あとは、それをどういう形で実行していくことが必要であるかということと、それからそれぞれの地域におきまして、それだけで割り切れるかという問題がございます。そういった点につきましてのそれぞれの地域の御理解なりなんなりが得られるかどうかという問題もあろうと思います。  それからもう一点、やはり特にお米の場合を考えました場合には、特定の農家、特定の地域だけでなしに、ある程度の広がりを持って生産が行われている、かつ農村自体がかなり混住化してきている。そういう中でぽつんぽつんということであってもかなり意欲のある農家もおられることも逆に事実でございますから、そういうところをうまく取り込みながら、なおやはり生産をしていかなきゃならないという面もあるということは御理解いただきたいと思います。  ただ、基本的には先岳おっしゃったような方向で我々としましても知恵を出しながら対応し、また地域地域の御理解も得ていかなきゃならないだろう、こういうふうに思っております。
  112. 国井正幸

    ○国井正幸君 そういう意味で大変難しい問題だと思いますが、余り画一性だけを求めるのではなくて、やっぱりウルグアイ・ラウンド対策ということで限られた期間内にこれを仕上げるという事業の特殊性も考えながら、ぜひ適切に対処をしていただきたいなと思います。  それから、時間も余りないんですが、大変諌早湾の問題が出ています。今もいろいろ出ました。私は、ここまでお金もかけてきていますし、地元の皆さんの要望も強いということですから、それはそれとしてきちっとやることは必要だというふうに私は思いますが、その中で一つ危惧する点があるんです。  これは、いわゆる干拓して千六百三十五ヘクタールの農地をつくるということなんですが、これまでお聞きしていると、じゃ幾らでそれを農家に分けるんだということになると、何か今の時点では十アール当たり百十万ということなんです。制度資金を使って三年据え置きの二十二年払いですか、二十五年償還でやってみると、一年間八万三千円ぐらいになるというんです。これはちょっと私は高過ぎるというふうに思うんです。これ平成十二年までに工事を上げるということになりますと、もう今からそういう意味で、これから二十一世紀は飢餓の世紀とかいろいろ言われているわけですから、私は農地を確保するというのは非常に大切なことだというふうに思うんです。  中山間地なんかの耕作放棄地についてもこれは当てはまるんですが、何らかの形で公共的な団体といいましょうか、自治体なりあるいは第三セクターなり、農業振興公社なり、そういうものでこういう農地というものを保有して、そのリースをできるような方法というのはないんだろうか。やっぱりそういうこともひとつ考えて、これは麦の生産費調査からだってわかりますように、八万三千円も地代を払っちゃったら、とてもじゃないけれども何をつくったって僕は難しいんじゃないかと思うんです。せいぜいいいところ十アール当たり一万か二万、そのくらいでないとなかなかペイできないんではないかなと思っているんです。  したがって、工事平成十二年に完了するということであれば、その辺が今からでも危惧されるわけですから、ぜひ何かうまい仕組みというものを農水省においても考えていただいて、これは単に諌早だけの問題ではなくて、中山間地域における耕作放棄地なんかの問題についても対応できるような新たな仕組みをぜひ研究していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  113. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 今の御意見、私どもも非常に賛成でございまして、県、知事ともお話をしておりますが、例えば県がその干拓地全部を買い上げまして、それで今度は農家にリースをする、少ない負担でやってもらおう、しかもそれは大規模にお願いできる、そういう可能性もあるわけでございます。今そういう点について知事、県側におきましていろいろとお考えをいただいておるようでございまして、私どももそのような考え方が実現できるように願っておるわけでございます。
  114. 国井正幸

    ○国井正幸君 ぜひよろしくお願い申し上げます。終わります。
  115. 須藤美也子

    須藤美也子君 五月二十一日の梶山官房長官の記者会見の内容について、まず大臣にお尋ねをいたします。  諌早干拓後の営農形態について、団体ないし企業として世界に冠たるものができないのか、地元の要望にこたえて農家から入植者を募るという農水省の営農計画、これに異論を唱えた、こういうふうに各社も書いております。企業参入を認める発言であり重大な問題でありますので、本来であれば私は官房長官に来ていただいて真意を聞きたいところですけれども、忙しくて来れないということですから、大臣からかわって答弁をお願いいたします。
  116. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 官房長官の御発言は、個人的な立場でということを言われた上で、大規模で平たんな干拓地ができるわけでございますから、こういう良質の大規模な平たんな生産性の高い農業を築いていくために、小さく小さく今考えているようなそういう区分、経営ではなくて、大規模な平たんな農地ができる、できることであれば、そういう特性を生かして世界に冠たる農業がそこで実現するようにしたらいいがなと、こういう個人的な見解でございます。  私どもは、今県と十分に協議をした上でいろいろな営農計画考えておるわけでございまして、そういう計画の中で官房長官のそういう個人的な意見も十分に傾注する価値のあるものだというふうに今考えておるわけでございます。
  117. 須藤美也子

    須藤美也子君 この官房長官の記者会見の全文を持っているんですけれども、少なくとも官房長官ですよ、個人的な私見としてというふうな形では言っておりませんね。  そして、その企業に対して、ある記者がこう言っているんです。「長官、先ほどの農地の企業化の話ですけれども、まだ農水省の方は、これ結論を出してないんですけれども、長官としてはどのように」ということに対して、官房長官は、「出してないでしょうね、もちろん。」、肯定しているんです。農水省の考えでいること、結論出していないことを、官房長官はもちろん出していないでしょうねと言いながら、そういう計画を話しているわけです。  そういう中で、今のこの農地法は耕作者が土地を取得することができるのであって、家族経営を基本とし、それに一定の農業生産法人を加えた農業しか認めていないわけですね。企業による形態とは、その企業の中には当然株式会社も入ります。先ほど合名会社とか有限会社とかいろいろおっしゃいましたけれども、当然企業の中には株式会社も入ります。株式会社の農業直営とか農地取得を考え発言につながるのではないか、こういうふうに考えられる面もあると。それからまた、株式会社形態は現状では農地法違反になるわけですね。ですから、新農基法の検討課題に株式会社も視野に入れていこうという、そういう話があちこちで出ているわけです。  そうしますと、諌早干拓でその株式会社参入の先取りによる大型農業営農計画になるのではないか。こういう発言になるのではないか。こういう点では農水省の意見とも違うわけですね。違うんでしょう、さっき大臣がおっしゃったわけですから。そうすれば、こういうときにそういう官房長官の発言は慎むべきである、こういうことを大臣は官房長官に厳しく進言するべきだと思うんです。これ言っていますか。
  118. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 官房長官の発言の抜粋を今見ましたけれども、ちょっと委員考え過ぎじゃないかと思いますのは、「私見ですと言って断りながら」という言葉が入っております。  千五百町歩という極めて平坦な農地というのは、日本の中でなかなか確保することが難しい、営農の形態をどうするか、今までのように、個人の家族農業中心としたものに入植を求めてやるという在来の方法が良いのか、それとも、団体、ないしは企業として干拓が出来ないかどうか。千五百町歩というスケール面を活かして、世界に冠たる日本の得意な農業、適地適産という意味での農業の振興開発が出来得るならば、将来に向かって、食糧がタイトになる世界の状況から見れば、大変、私は良いことではないかと思って、云々、こういうことでございます。  この企業は、委員も御承知のように、株式会社が今農地参入できないというのは法律上御承知のとおりなんで、官房長官が言ったのは、よくその点も承知した上で生産法人の意味で言われたわけでございます。正確に言えばこの生産法人、こういう言い方であるわけでございまして、その点はどうぞひとつ御理解をいただきたいと思います。
  119. 須藤美也子

    須藤美也子君 私は、官房長官がやっぱり明らかに農水省と考えが違うことを発言している、この記者会見で。そうでしょう。  そして、読売新聞ではこう言っていますよ、異論を唱えている。(「異論じゃない」と呼ぶ者あり)そんなこと言ったって、官房長官がここにいないわけですから、大臣とこう言い合いしたってしょうがありませんけれども。  農水省の干拓地での営農計画は、これ見ますと、肉用牛の肥育で三十九戸、野菜づくりで五百二戸、それから酪農四十二戸、酪農はやめるとかなんとかって何か言っているようですけれども、これで五百八十三戸ですね。こういう計画を立てているわけですよ。そうすると、ここに官房長官が農水省の営農計画に、そういう団体とか企業で世界に冠たる営農ができないのか。こういうことは農水省に対する、この営農計画に対してやはり私は異論を唱えているんだと、こう思わざるを得ないんです。  まず、農水省と官房長官の間でそういう食い違いがある。そうしますと、十年前に立てたこの農水省の営農計画、五百八十三戸の営農計画の確実性と現実性が既にもう破綻しているんではないか、これは見直さざるを得ないんではないか。これも私はこの記者会見の中をずっと読みますと、将来的に激減していく、もう既に長崎農家もそれから農地も減ってきている。そういう中でいろいろ考えられているのだと思うんですけれども、そういうのであれば、農水省が出している十年前のこの営農計画はもう既に破綻しているんだから見直しが必要なのではないか、こう思うんですが、どうですか。これでずっといくんですか。
  120. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 委員は何を言わそうとしているのかわかりませんけれども、まず第一として、官房長官のこの記者会見また行革特別委員会での発言は個人的にということを言っておりますので、私見という意味で一つの自分の個人的な考えだと、どうぞひとつ夢を言ったというふうに御理解いただければありがたいと思います。
  121. 須藤美也子

    須藤美也子君 そんなの認められませんよ、官房長官の発言は。
  122. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) それから、営農計画は十年前につくったものでございまして、その計画に沿ってこれから具体的に進めていこう、今こういう段階でございまして、どうぞひとついろいろとお考えがあれば、私の方にまたお教えいただければ大変ありがたいと思います。
  123. 須藤美也子

    須藤美也子君 官房長官の私見とか個人的見解なんというのはあり得ないと思うんです、公職の人ですから。しかもこれを全部記者会見で、新聞で発表しているわけですから。その点は厳重にやっぱり大臣認識を変えていただきたいと思うんです。私見だから何を言ってもいいというふうにはいかないと思うんですよ。そんなことを言ったら、大臣があっちこっちに行って自分の考えだ、自分の考えだなんていうことで言っちゃったら大変なことになりますよ。しかも官房長官がそういうようなことを正式の場で記者会見するということは、これは重大な問題なんです。それは、かばう気持ちはわかりますけれども。  そういうようなことで諌早問題でこの営農計画はもう既に破綻しているから、こう言わざるを得ない。しかも、先ほど来いろいろな方々がおっしゃいました価格の問題、そういう問題も含めて私はこの計画の見直しが必要だと。そうすると、例えば私見であっても官房長官と農水省との間で意思統一が必要だと思うんです。その間、私は水門をあけるべきだと思うんです。
  124. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) なるほど、それが結論ですか。
  125. 須藤美也子

    須藤美也子君 結論ではないんですよ。そして国民的な論議をする、そういうことを私は要求したいんです。  それともう一つは、先ほど清水さんがおっしゃいました、県の計画がまた違うわけでしょう。地元の要請、地元の要請と言いますけれども地元の要請は諌早湾地域環境計画という中で、農水省は農地造成と言っているわけですけれども、県はこの環境計画の中に、干拓地でサイクリングコース、大草原、乗馬場、レジャー農園、ふるさと村、クラインガルテン、ファームステイ、教育・研究・研修施設など、まだまだいろいろ挙がっていますけれども調整池を利用したボートレースなども計画しているわけですね。  そうすると、この営農計画及び土地利用計画の中にある一千六百三十五ヘクタールの中にこの県が立てている計画のこの部分はどこに入るんですか、この土地利用計画の中に。これもおかしいんじゃないんですか。これはどうなんですか。
  126. 山本徹

    政府委員(山本徹君) ただいま御指摘の環境計画でございますけれども、これは長崎県の保健環境部が平成五年に策定されたものでございますけれども、これからの地域環境の一つの姿をビジョンとして描かれたものだと考えております。  この内容には、例えばこの干拓地の中に当然用排水路、農道等も整備いたしますけれども、そういった施設について水辺環境として整備する。具体的には、三面コンクリート張りではなくて、石組みにして蛍とかメダカの生息するような、動植物が生息できるような豊かな水辺の環境を整備するとか、あるいは何十戸かの入植者もいらっしゃいますので、小さいポケットパークというような地域の住民のための公園を整備するというようないろんな構想が描かれておるわけでございます。  こういったいろんな地域での振興計画、ビジョンというのはいろんなところから提案されるわけでございますけれども、これから干拓地営農計画地域計画を具体化する中でこういった計画の中で採用できるものはこれを参考にして採用するし、また当然のことながらこれが事業計画営農計画の本来の趣旨に反するものについては採用できないわけでございまして、これからの計画の具体化の中でこれも一つ考え方として参考にさせていただきたいと思っております。
  127. 須藤美也子

    須藤美也子君 そうしますと、地元の県とそれから農水省がこれから調整するということなんですか、この千六百三十五ヘクタールの中で。
  128. 山本徹

    政府委員(山本徹君) 営農計画については農林水産省が長崎県の農業担当部局と御相談しながら具体化を進めてまいりますけれども、あくまでその際の参考としてこの環境担当部局のおつくりになったものは拝見させていただくということでございまして、調整ということではございません。
  129. 須藤美也子

    須藤美也子君 きょうは総務庁の方からも来ていただいているんですが、総務庁では諌早に対して、厳しい情勢のもとで関係の一市十町の中核農家が半分に減っている、そういう中で、「環境に十分配慮し、事業の進ちょく状況に応じ、土地利用、営農等の確実性について確認しつつ、所要の検討を行い、必要に応じ事業計画の変更を行い、適切に対処すること。」、こういうことを勧告しています。  それは、先ほど清水さんもおっしゃいました。それに対してはあっさりとした回答しかしておりません。これはただ、長崎県の意向を踏まえて営農計画の具体化等を行い、適切に処理をする、こう回答しているわけですね。  そこで、総務庁の方、済みません、きょうは時間がありませんので、本当はもっと総務庁から聞きたいんですけれども。この総務庁の勧告に対してやっぱりきちんと実践していく、総務庁の方できちんと監視もしていく、こういうことを強く求めたいわけです。勧告しているわけですから、この勧告に対して本当に誠実に実施しているのか、こういう点で総務庁の方はこれからもぜひ監督を強めていただきたい。  今まで申し上げましたことは、つまり農水省のこの営農計画と、それから片方の官房長官は団体と企業で冠たるものをつくれないかと言っている。
  130. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 生産法人です。
  131. 須藤美也子

    須藤美也子君 生産法人か何かまだ書いていないですよ、ここには。よく見てくださいよ、これ、大臣
  132. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 生産法人です、僕は聞きました。
  133. 須藤美也子

    須藤美也子君 それはそういうふうに理解しているだけでしょう。
  134. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 本人から聞きました。
  135. 須藤美也子

    須藤美也子君 それから、県は環境計画の中で別のことを考えているわけでしょう。三者三様、全く諌早干拓について意思統一されていないわけでしょう。(「時間です」と呼ぶ者あり)まだ一分あります、二十一分までです。  ですから、そういう中で、私はこの間十分な検討を加える、そして地域住民も含めた合意を得る、これが重要だと思うんです。そういう点で、それまでの間、何回も言いますが、大臣はにこにこしていますけれども水門をあけるべきだと。これを強く要望したいわけです。  時間がありません、あと一分で申し上げます。麦価の問題で引き下げ諮問をやった。これは麦づくり農家にとっては大変深刻な問題です。しかも、麦づくり農家は九〇年の三十六万戸から九五年には十四万戸に減っているわけでしょう。もう小麦が九千二十三円では食っていけないと、これでまた小麦づくり農家が激減する。そういうことを考えると、今回の引き下げ諮問は私は絶対に認められない、こういうことを申し上げて私の質問を終わります。  官房長官に、ぜひその点は大臣から強く申し上げておいてください。以上です。
  136. 常田享詳

    ○常田享詳君 私は、この四月二十八日から五月一日の間、同僚議員の方々と一緒にミャンマーを訪問してまいりました。旧ビルマであります。そして、第一書記、外務大臣、国家計画開発大臣意見交換をしてまいりました。  その中で、国家計画開発大臣は、二〇一〇年から二〇四五年にかけて地球規模で食糧危機に直面するだろう、飢餓の世紀だと、しかしミャンマーには食糧も資源も十分にあると、私たち自信に満ちた発言をされました。  そこで私は、日本の食糧安保の観点から何点か質問させていただきます。この質問につきましてはきょうの委員会でもそれぞれ出ておりますけれども、視点を変えて質問させていただきたいと思います。  我が国の国土の七割を占め、農業粗生産の四割を占める中山間地域について二点、農水大臣に御質問をさせていただきます。  まず、農水省は現在策定が進められております新農業基本法の中で、中山間地域の多面的公益機能の価値をどのように評価し、それをどのような方法で農業所得の源泉として取り組んでいこうとしておられるのか、お伺いいたします。  次に、藤本農林水産大臣は、昨年十二月四日の参議院本会議で、中山間地域対策としてのデカップリングは国民的同意を得にくいと答弁されましたが、これは恐らく京都大学頼平名誉教授の弁をかりますと、日本のマスコミの誤った情報により、日本農業が外国に比べて過度に保護されていると国民が信じ込まされているためと思われます。  実際には我が国の価格・所得支持関連予算は一〇%以下でありますのに対し、ECにおいては農業予算の九一%、アメリカでも一七%、金額換算でECが日本の十六倍、アメリカが四倍という実態であります。WTO、世界貿易機関のいわゆる国境措置を考えに入れたとしても、中山間地域農業予算は今後直接所得補償へ転換していくべきではないかと考えるわけであります。  例えば、耕作放棄地のうち再生可能な地域にはヨーロッパ型のデカップリング制度を導入して定住化を確保する、それくらいのことをしなければ、我が国の中山間地の集落は近いうちに消滅してしまうくらい危機的状況にあると考えております。  まず、この点についてお伺いいたします。
  137. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) まず、中山間地域における農業対策として直接所得補償制度の導入、デカップリングの問題について先にお答えいたします。  この問題につきましては、この中山間地域農業の持つ重要性は私どもも十分に理解をいたしております。条件が不利な地域でもございまして、いかにこの地域農業を振興していただいて、また地域の活性化のために大いに頑張っていただかなきゃならぬわけでございまして、この地域対策をどう進めていくかということは農政上重要な課題の一つだという認識を持っております。  そういう意味におきまして、今、四月からスタートいたしました食料・農業・農村基本問題調査会において御検討をいただいておる大きな柱の一つでもございまして、そういう御検討の結果も十分に念頭に置いて、中山間地域農業また地域の活性化のために力を入れていきたいと思っております。  さらに、デカップリングの導入について国民的なコンセンサス云々というお話が出されましたけれども農業が過保護にされている、そういう意味で国民的なコンセンサスが得られないのではないか、そういうことを申し上げたのではなくて、我が国の場合には農家がこの中山間地域におきましても非農家と混在をしている。地域全体として考えた場合に非常にこれは難しい面もございまして、そういう点でなかなか難しいというふうに申し上げたわけでございます。  それから、最初の御質問につきましては、先ほどお答え申し上げた中にもございましたように、いかに中山間地域農業を振興させ、またこの地域の活性化を図るということは日本の農業の持つ非常に大きな課題でございますし、また四割を占める農地面積を持っているこの地域農業の振興を図るということは、我が国の今後の農業考える場合に非常に大きな課題であるという認識を持っておるわけでございまして、この問題については私どもも真剣に取り組んでまいりたい。その一つの取り組み方として食料・農業・農村基本問題調査会において今御検討いただいておるわけでございまして、その御検討の結果を見て、私どもも努力をしていきたいというふうに思っております。
  138. 常田享詳

    ○常田享詳君 重要な時期でございますので、農水大臣初めぜひ積極的に進めていただきたいと思います。  次に、中山間地域の多面的公益機能については、特に地方自治体レベルで認識が高まっております。  例えば、神奈川県においては、本年四月一日から県営水道料金を改定し、料金の一%を森林の水源涵養機能の回復に充てる水源の森林づくり事業を開始しております。  また、私の地元の鳥取県でも昨年、中山間地域活性化基本方針を策定し、中山間ふるさと保全施策を創設しております。これは、公益的機能の維持をしてくれる担い手をバックアップするために、これまでは担い手自身が負担してきた費用の一部を行政が肩がわりする施策で、鳥取県型デカップリング施策と呼んでおります。この施策については他県からも多くの問い合わせが来ております。  このようなすぐれた自治体レベルの取り組みを国としても強力に支援するとともに、国レベルの体系的な施策に底上げすることをぜひやっていただきたいと思いますが、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  139. 山本徹

    政府委員(山本徹君) ただいま先生御指摘のように、各地方自治体で中山間地域の振興のためにいろいろな工夫、政策が展開されているのを私ども承知いたしております。  ただ、今財政改革は大変大きな課題の中で、国の助成措置等がどういった水準でどういった範囲にまで及ぼすのが適当かというのは、これはおのずと国または地方自治体のそれぞれの役割分担の中で国の役割というものを考えていかなければならないわけでございます。したがって、そういった範囲でおのずと国の施策の対象とできる範囲というのは限界があるかと思います。  いずれにしても、地方自治体がいろいろ展開しておられる施策について私どもも十分これから勉強させていただき、国と地方自治体との役割分担あるいは協力、協調の中で中山間地域の振興対策というものを展開し、その実を上げていきたいと考えております。
  140. 常田享詳

    ○常田享詳君 局長は十分御理解をいただいていることと思いますけれども、ただ私がなぜこの問題を申し上げるかといいますと、農水大臣が先ほど言われたような基本方針がいずれ決まるだろう。しかし、中山間地はもう今どんどん消滅的状況にあるわけであります。したがって、そういうときに、地方が地元にあって知恵を出して何とかそれを支えていこうとして頑張っている中で、他の県にも全国的に展開できるようなことについては余り国、地方にこだわらずに、これは国土的な問題ですからぜひとも取り上げて、国のバックアップをして消滅的状況にならないようにやっていただきたい、これを要望しておきたいと思います。  次は食糧の問題でありますが、先ほど大野委員も取り上げられました遺伝子組みかえ食品の問題であります。  私も、安全性の問題や表示の問題に関心があります。私も薬剤師でありますので、大変このことに対しては漫然とではありますけれども、危惧の念を持っております。しかし、安全性、表示の問題は先ほどお話が出ましたので、そのほかの側面から、国の食糧安保の点からこの問題が大変な問題になるのではないかという点でお尋ねをいたします。  まず第一に、たとえ遺伝子組みかえ食品の安全性に問題がある可能性があっても輸入をストップするわけにはいかないという点であります。例えば、今回の認可済み品目のうち大豆は九五%、菜種については実に九九%を輸入に頼っておりますので、海外から入ってこなければみそもしょうゆも食用油もほとんどつくれなくなってしまうわけであります。これは、輸入依存率を異常に高めた結果でありまして、国民の健康、食糧安保という面で大変ゆゆしき問題であります。これが第一点であります。  次に、ジャーナリストの渡辺雄二氏はその著書の中で、今後大量に遺伝子組みかえ食品が入ってくれば、我が国の食糧自給率は一層低下し、もし組みかえ稲の輸入が解禁されれば、日本農業は滅ぶと言っても過言ではない、日本で組みかえ作物を栽培しても、田畑の狭い日本では省力効果は上がらず、海外の作物に対抗するのは不可能と述べておられます。  私も、このままでは将来日本の農業がアメリカやカナダといった日本よりもずっとバイオテクノロジーの研究が進んでいるそういった海外のアグリ企業に支配される可能性が極めて高いと危惧をしております。  以上の二点についてお考えをお聞きしたいと思います。
  141. 高木賢

    政府委員高木賢君) 国産大豆の自給率を高めるという方向につきましては、平成十七年の長期見通しにおきましてもその方向を提示しているところでございます。特に、国産大豆は豆腐とか煮豆とか納豆などの食品用として評価が高いものでありますので、この生産拡大を図っていきたいと存じております。平成七年、八年産は作付面積も拡大いたしまして、増加傾向にございます。  一方、菜種につきましては、我が国におきます数少ない国産の油脂資源作物でございます。地域によってでございますが、青森あるいは鹿児島県におきます作物として地域振興上重要な地位も占めているわけでございます。菜種の生産量は最近横ばいということで、平成八年で千百トンということでございます。  大半は輸入に依存しているということは、今、先生御指摘のとおりでございますけれども、大豆につきましては、今申し上げたように、稲、麦に次ぐ基幹的作物でございますし、菜種も重要な地域特産物でございます。このために、地域の実情あるいは消費者ないし実需者ニーズを踏まえながら、大豆菜種交付金制度による生産者の所得の安定とか省力多収技術の導入、普及、さらには産地における生産条件の整備、こういうことを通じましてこれらの作物の生産拡大に向けて取り組んでまいりたいと考えております。
  142. 常田享詳

    ○常田享詳君 実はもう御存じ思いますけれども、現在組みかえの大豆は、輸入されるときに遺伝子組みかえの大豆だという形では入ってきていないわけです。通常の大豆とまぜた形で輸入されているわけであります。ジャガイモもトウモロコシの加工品についてもそういう形であって、まざって入ってきている状況でありますから、これがどんどん進んでいきますと、極端にいえば遺伝子組みかえ食品ばかりになる。それをどんどん輸入しているというようなことになりますと、これは大変ゆゆしき問題をいずれ引き起こす。そして、ひいては日本の食糧自給率そのものも下げていってしまうということになりますので、ぜひともそういう観点からもこの問題を見ていただきたいと思います。  時間がありませんので、もう一点、お尋ねをいたします。二百海里の問題であります。  私の県も境港を初め大きな漁港を抱えておりますし、目の前に竹島がございます。二百海里体制の早期確立は、我が国漁業の存続にとって基本課題となっており、我が国漁業者の長年の悲願であります。  ところが、六月一日の毎日新聞によりますと、韓国海洋水産省は、竹島を漁業前進基地とする開発計画を発表し、接岸施設の工事も現在進行中であると報道しております。このことがもし事実であるならば、韓国の竹島に対する実効支配が着々と進んでいることになるわけであります。これは二百海里問題にとってもゆゆしき事態であります。この点に関する事実関係、及びこのことがもし事実であれば、どう対処されようとしているのか、お尋ねをします。  あわせて、今、国連海洋法条約批准に伴う日韓、日中漁業協定に関する三党合意が、先ほどお話がありましたようにぎりぎりの期限を迎えようとしております。その間に日本海沿岸の各地では、はっきり私は申し上げますけれども、うちのところなんかでは韓国漁船等の無法操業によって漁場の荒廃と漁業経営の悪化が一段と深刻さを増しております。  大臣は、期限までに政府間交渉が決着しない場合、どうされるおつもりか。先ほどお話がありましたけれども、私はもう直ちに現協定を破棄することも含めて思い切った決断をされなければ、先送りをすれば先送りするほどどんどん状況は悪くなっていって、外交上においても解決できないような一方的な状況に日本は追い込まれていってしまうのではないかという危機感を持つのでありますが、あわせてお尋ねをいたします。
  143. 嶌田道夫

    政府委員(嶌田道夫君) まず、先生が言われました竹島の韓国の漁業前進基地の話でございますが、これは、私どもよりも外務省の方が実は担当しておりまして、我々としましては、外務省の方が韓国に対して抗議したというふうに承知しております。
  144. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 新しい漁業協定、特に日韓の漁業協定につきましては、今外務省を中心として努力をしていただいております。  私どもも、今、委員が言われましたように、七月二十日という期限を念頭に置いて、国内の漁業関係者も非常な思いでこの七月二十日という大きな区切りを見詰めておられるということをよく承知をいたしております。  まず、全力を挙げて新しい漁業協定が締結されるように外務省と協力しながら進めてまいりたいと思いますが、もし仮に、この七月二十日までに新しい漁業協定が結ばれない、こういう事態になりました場合には、その時点で与党と相談をいたしまして、私どもも新たな考え方で対処するということも考えざるを得ないというように考えております。
  145. 常田享詳

    ○常田享詳君 大臣の強い決意のあらわれと受け取らせていただきます。漁民は一日千秋の思い、今苦しい中で待っておりますので、また裏切るというようなことのないようにしていただきたいと思います。  最後に、質問ではなく要望して終わりたいと思います。  先ほどミャンマーに行ってきたということを申し上げましたが、実はミャンマー、タイを初めとするASEAN諸国は、日本に入ってきております麻薬のケシの栽培地として大変大きく報道されているわけでありますが、私は、ミャンマー、タイの高官に対して、この問題を取り上げて質問いたしました。ミャンマー、タイを初めASEAN諸国は、今一生懸命このケシの栽培の撲滅に取り組んでいる。タイあたりは国王が直接その命令を出して、そのことに取り組んでいる。しかしながら、ケシの栽培をしている人たちというのは非常に貧しい人たちであります。特に国境地域の貧しい人たちで、それにかわる代替的な作物が必要だということで、例えば日本のソバのようなものを栽培させることによって切りかえていくというようなことで、日本政府に対して、そういった麻薬の根本的な撲滅のためにケシの栽培にかわる代替品の提供、それから技術援助、そういったことについてぜひお願いしたいという要望がありましたので、ぜひとも、麻薬対策は大変重要な問題だと思っておりますので、要望して終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  146. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 質問に入る前に、私の日程の都合で質問時間をずらしていただきましたこと、委員長の御配慮に対して厚く御礼申し上げます。  私は、まず沖縄県の水産業の課題について幾つかの質問をしたいと思います。  御承知のように、沖縄県は東西で千キロ、それから南北で四百キロというような海域を有しておりますけれども、残念ながら、水産業というものが今日までこれというふうなことが見られませんので、何とかあれだけ有している沖縄の海域を生かして沖縄の水産業というものをもっと振興できないか、そういうような観点に立って幾つかの質問をしていきたいと思います。  まず、平成六年の海面漁業、養殖業の総生産量は三万四千三百九十一トンで、前年に比べ五千五百三十二トン、一三・八%の減少である。また、同じく総生産額は二百三十八億六千万円で、前年に比べて十七億六千七百万円、六・九%の減少となっております。これは、主として海面養殖業のモズク及び沖合漁業のマグロはえ縄漁業の減少によるものと言われておりますけれども、それぞれの落ち込みの原因は何か、また、その対策についてお伺いしておきたいと思います。
  147. 嶌田道夫

    政府委員(嶌田道夫君) 沖縄の主要漁業でございますモズクの養殖業でございますが、これにつきましては、現在のところ、需要が限られておりますために生産過剰に陥りやすいというようなことで、そのために価格の低下を招き、生産量、生産額の減少につながっているわけでございます。  ちなみに、平成五年の生産量が前年対比約三割ぐらい多かったということがありまして、それが、まだ現在も過剰在庫になりまして価格の低迷につながっているというような事情にございます。今後は、価格の安定を図るための計画的な生産と販路の拡大を図る必要があると考えております。  また、マグロはえ縄漁業でございますが、これは沖縄の問題というよりも全国的な問題でございまして、近年、台湾、韓国、中国等から輸入がふえておりまして、そのためにマグロ価格全体が低下しておるという状況がございます。その影響も受けまして、沖縄の方から本土の方に移出しておりますマグロの価格が下がっておる、それに伴いまして生産額の減少にもつながっているというようなことがございます。  さらに、沖縄の場合には、移出する場合には空輸、飛行機を使っておりますので、出荷コストがかかるということもございます。そういう意味で、例えばブロック化するとかいうようなことで出荷コストを低減するとか、さらにある程度さくまでつくりまして、加工して付加価値を高めるというようなことも考える必要があるんではないかと思っております。  このようなことも踏まえまして、現在、生産、加工、流通、消費におきます新たな展開の方途を探るために、本年度、モズク、マグロにつきまして、販路の拡大でありますとか加工品の開発等の調査研究を現在実施しているところでございます。
  148. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 モズクの話が出ましたので、ついでにちょっと申し上げておきたいと思いますけれども、最近、モズクがO157の予防に非常に効き目があるというふうな報道がなされておりますけれども、そうすればもっと、今過剰生産だとおっしゃいますけれども、それを宣伝することによってO157が防げるんじゃないかというふうなこともございますが、その辺について何か御認識がありましたらお尋ねします。
  149. 嶌田道夫

    政府委員(嶌田道夫君) O157の事柄につきましては私もよく承知していないわけでございますが、ただ、モズクの販路拡大という観点からいたしますと、例えば、昨年だと思いますが、たしか天皇賞をもらいましたのが山口県の加工業者の方がつくられたモズクであったと思っております。ヘルシーフードというふうな名前でもってつくっておりまして、これもやはり加工の仕方では相当販路の拡大が見込めるのではないかというふうに考えております。
  150. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 平成六年の部門別生産量、構成比を全国と沖縄で比較してみますと、沖縄は全国に比べ沿岸漁業と海面養殖業の比重が高くなっております。沿岸は、全国の二二・八%に対し沖縄は四四・五%、海面養殖は、全国一六・九%に対し沖縄は三一・五%、それぞれ約二倍になっております。  これは沖縄水産業の零細性を示すものと思いますけれども、同時に、これらの部門の重要性を示すものであると私は思っております。この辺について何かお考えがありましたら、そして、これらの部門に対する振興策がございましたら、お聞かせ願いたいと思います。
  151. 嶌田道夫

    政府委員(嶌田道夫君) 今、先と言われましたように、沖縄県におきましては、全国平均に比べますと確かに沿岸漁業及び海面養殖業の比率が高いということがございまして、そういう意味では、県にとりましては重要な漁業でございますから、今後とも一層の振興が必要なわけでございます。  このために、水産庁といたしまして、沖縄県の要望も踏まえまして、沿岸漁場整備開発事業、沿整事業と言っておりますが、これによります浮き漁礁、これはカツオ、マグロ等を専ら蝟集するものでございますが、浮き漁礁設置の漁場整備。さらに栽培漁業による種苗放流、これはハマフエフキ、これはフエフキダイの言うなら一種でございますが、ハマフエフキでございますとか、あと、ガザミ、これはカニの一種でございますが、そういうようなつくり育てる漁業。さらに資源管理型漁業の推進、さらに漁業近代化施設の整備ということで、これは専ら製氷貯蔵施設、さらに荷さばき場でございますが、こういうのを整備いたしまして沿岸漁業の振興を図っているところでございます。  また、海面の養殖業でございますが、沖縄県はやはり台風の常襲地帯であるということもございまして生けすが流されるということがございまして、なかなか養殖適地が少ないというようなことがございます。そのためにモズクでありますとかクルマエビを除きまして養殖は盛んではないわけでございますが、沿整事業によります養殖場の造成、さらに栽培漁業センターの整備によります養殖用種苗の供給等の施策を講じて、海面養殖業の振興を図っていきたいというふうに考えております。
  152. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 今、浮き漁礁の話がありましたけれども、いわゆるパヤオですね。これについて、沖縄県の漁業についてはパヤオの設置が非常に重要な要素であると思います。政府の設置計画、そして増設の計画等について、具体的にお考えがありましたらお聞かせ願いたいと思います。
  153. 嶌田道夫

    政府委員(嶌田道夫君) 浮き魚礁、パヤオと言っておりますが、これにつきましては、カツオ、マグロ等の蝟集効果があるということがございまして、平成六年から全国的に実用化されておるわけでございます。  沖縄県におきましては、この浮き魚礁につきまして、平成六年度から平成八年度にかけまして、先ほど申しました沿整事業によりまして五基設置しておりまして、平成九年、本年度は三基設置する予定となっております。  また、平成十年度以降の沿整事業によります浮き魚礁の設置につきましては、水産庁といたしまして、今後沖縄県を通じまして、地元の要望をよく聞いた上で適切に対処してまいりたいと考えております。
  154. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 ひところ、このパヤオについて宮崎県の漁業関係者が沖縄県議会まで来て非常にトラブルがあったようですけれども、その辺についてはもう解決済み、もうそういった紛争は起きないというふうなことでございますか。
  155. 嶌田道夫

    政府委員(嶌田道夫君) 確かに、一時期そのような話があったわけでございます。  これにつきましては、平成八年十二月九日、昨年の末でございますが、宮崎県かつお・まぐろ漁業者協会と、それから沖縄県の漁連でございますが、この間におきまして協定を結びまして、現時点におきましては解決しているわけでございます。
  156. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 沖縄県の栽培漁業センター、本部町にありますけれども、その役割と整備については、水産庁としてどのようにお考えになっておられるのかお尋ねします。
  157. 嶌田道夫

    政府委員(嶌田道夫君) 今言われましたように、沖縄県の栽培漁業センター、本部町にあるわけでございます。これにつきましては、種苗の生産という意味でこれから拡充等をしていかなきゃいけないと考えております。  これにつきましては、昭和五十五年度から五十八年度にかけまして、この本部町の栽培漁業センターの基本施設の整備を行ったわけでございますが、さらに昭和六十二年度までにその施設の補完整備も行っております。そのほか、さらにこの栽培漁業の重要性ということから、その一層の推進を図るために、本年度、九年度から十一年度までの三カ年間でこのセンターの施設の拡充整備を計画しておりまして、言うなれば、水槽の容量を約二倍強にするというような整備を計画しておりまして、水産庁としても、これに対して所要の助成を行っていきたいと考えております。
  158. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 ぜひ、この栽培漁業センターをもっと充実させて、沖縄の漁業問題について振興を図っていただくように特に要望しておきたいと思います。  今、久米島で安定水温の深層水を活用してクルマエビあるいはヒラメ等の養殖が可能になるというふうなことで、海面養殖の振興における深層水の役割に大きな期待が寄せられておると聞いております。現在、久米島で深層水利用の実験がスタートしていると思っておりますけれども政府はこの点についてはどのような御見解を持っておられるか、またそれに対する助成措置等についてお聞かせ願いたいと思います。
  159. 嶌田道夫

    政府委員(嶌田道夫君) 今言われました深層水でございますが、これは海面よりおよそ三百メーター程度の深さの海水を言っておりまして、言うなれば栄養物質が豊富でかつ清浄である、さらに温度もかなり安定しているという特性を持っているわけでございます。  平成四年度から六年度に水産庁の補助事業一つといたしまして、富山県でこの深層水を利用いたしました種苗生産技術、それから親魚の養成等の開発に取り組んだところでございます。また高知県や、それから今、先と言われました沖縄県の久米島の北部地域におきまして深層水の総合的な利用の取り組みがなされていると承知しているわけでございます。ただ、深層水の利用につきましては、これはかなり深くからとるものでございますからコストの問題、さらに安定的な供給等の面で幾つかの課題も指摘されているわけでございます。実用化に向けてさらなる検討をしていきいたいと考えております。
  160. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 魚種別漁獲量を平成六年で沖縄と全国を比較してみますと、とれる魚種がかなり異なっているのは当然でありますけれども、私が注目したいのは、全国では貝類が総漁獲量六百五十九万トンのいわゆる六・一%に当たる四十万トンがとれておりますけれども、沖縄では総漁獲量二万三千五百七十三トンの中に貝類の統計数字が全く見られない、恐らくほとんど漁獲がないからだと思います。私は、貝類は暖かい亜熱帯の海域である沖縄に適した魚種であると思っておりますけれども、つくり育てる漁業が将来の水産業の方向であるとすれば、沖縄における海面養殖漁業にとっては貝類の養殖を重視していく必要があると考えます。  そこで、沖縄の海域に適した貝の種類を選定して、その養殖に力を入れるべきではないかと考えておりますけれども、水産庁としての御見解を承りたいと思います。
  161. 嶌田道夫

    政府委員(嶌田道夫君) 沖縄県は、県土が外洋に面しているということと、そのために内湾が少ないということがございまして、基本的には養殖業に適した漁場が少ないということから貝類の養殖業も現状ではほとんど見られていないという状況にございます。  しかしながら、今、先生が言われましたように、亜熱帯という特有の立地条件を生かしまして、一部の漁業者によります我が国の海域では見られない貝類、これはミドリイガイなどでございますが、そのようなミドリイガイの養殖への取り組みでございますとか、あと県の水産試験場におきましてシャコガイの種苗生産の取り組みが行われていると承知しているわけでございます。  今後、これらを中心としました貝類の養殖業の振興方策につきましては、まだ技術的課題でございますとか、それから一番重要なのは販路の確保でございますが、そのような解決しなければならない問題もございます。しかしながら、国といたしましても、今言いましたシャコガイの種苗生産を安定させるための研究等につきまして支援を行っていきたいというふうに考えております。
  162. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 ぜひ沖縄のいわゆる亜熱帯海域をそういうふうな力を入れて推進していただきたいというふうに思っております。  もう時間ですので、最後に大臣に沖縄県における水産振興について基本的な方針を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  163. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 沖縄県は平成四年に策定されました第三次沖縄振興開発計画に基づきまして、昨年沖縄県水産業振興方向を策定されました。この水産業振興方向に沿いまして沖縄県では各般の水産業施策を今推進しておられるわけでございます。私どもといたしましても、沖縄県のこの施策を積極的に支援いたしまして、県の漁業の振興に努めてまいる所存でございます。  私も沖縄開発庁長官経験者の一人でございまして、ことしの七月に十年ぶりに沖縄を訪問させていただきます。沖縄県の農林水産業の実情につきまして、限られた時間でございますけれども関係者の皆様方から十分にお話を承り、沖縄振興計画の推進のために力を入れさせていただきたいというふうに思っております。
  164. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 どうもありがとうございました。
  165. 真島一男

    委員長真島一男君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時散会      —————・—————