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1997-04-03 第140回国会 参議院 農林水産委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年四月三日(木曜日)    午後一時開会     —————————————    委員の異動  三月三十一日     辞任        補欠選任      三浦 一水君     金田 勝年君  四月一日     辞任       補欠選任      金田 勝年君     三浦 一水君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         真島 一男君     理 事                 浦田  勝君                 高木 正明君                 阿曽田 清君                 谷本  巍君                 一井 淳治君     委 員                 井上 吉夫君                 岩永 浩美君                 佐藤 静雄君                 松村 龍二君                 三浦 一水君                 石井 一二君                 及川 順郎君                 高橋 令則君                 都築  譲君                 村沢  牧君                 国井 正幸君                 須藤美也子君                 常田 享詳君    国務大臣        農林水産大臣   藤本 孝雄君    政府委員        農林水産大臣官        房長       堤  英隆君        農林水産省経済        局長       熊澤 英昭君        農林水産省畜産        局長       中須 勇雄君    事務局側        常任委員会専門        員        秋本 達徳君    説明員        厚生省生活衛生        局乳肉衛生課長  森田 邦雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○家畜伝染病予防法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付)     —————————————
  2. 真島一男

    委員長真島一男君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  家畜伝染病予防法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案につきましては、既に趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 岩永浩美

    岩永浩美君 家畜伝染病予防法改正案に対する要旨を御提案いただきました。まず初めに、家畜伝染性疾病危険度を再評価して伝染性海綿状脳症の追加を行うことが一点。それから第二に、危険度の高い家畜伝染性疾病発生状況などの情報を全国的、組織的に把握して、疾病を発見した獣医師から都道府県知事届け出制度を設けるという新たな規定。そしてまた、輸入検疫証明など輸入検疫に係る手続を電子的に行い簡素化をするということがこの改正の要点になっております。  そこで、過去における家畜伝染性疾病発生状況、あるいは今後新たに警戒すべき疾病状況等があったら、まずそれを教えてもらいたいと思います。
  4. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) それでは最初に私から、最近におきます家畜伝染性疾病発生状況について簡単に御説明申し上げます。  最近におきます家畜伝染病発生状況ワクチンの開発、普及が進むとか予防技術の進歩、あるいは防疫体制の向上ということで、ここ数年総じて比較的平静に推移している、こういうふうに総括的に言えるかと思うわけでございます。  従来からございましたブルセラ病結核病等につきましては、定期的な検査による患畜の淘汰を行いました結果、ブルセラ病についてはほぼ清浄化が達成されている。それから、結核病についてもかなり清浄化が進み、平成八年で言いますと八頭の患畜確認されたのみと、こんなふうなことになっております。こういう中で比較的発生がございますのがヨーネ病でございまして、次第に若干の増加傾向をたどっておりまして、平成七年には約三百頭の発生確認されているということでございます。  そのほか、豚で大変恐ろしい病気でございました豚コレラにつきましては、自衛防疫進展等によりまして発生が激減し、平成五年以降発生確認されていない、ゼロである。また、鶏のニューカッスル病につきましても清浄化が進み、平成四年以降四年間発生がなかったわけでございますが、平成八年にワクチン未接種の一部愛玩鶏発生が十九羽確認されたと。  特徴的な主なものを挙げるとそういう状況でございますが、国内的には総じて平静に推移している、こんな状況にございます。
  5. 岩永浩美

    岩永浩美君 国内において、今御説明をいただいたそのことは理解いたします。  過日の農林水産常任委員会の中で、畜産行政台湾発生した口蹄疫の問題についてのかかわりを御質問いたしました。その折に、口蹄疫が人には影響はないとしても畜産農家にとっては大変な被害をこうむっていくという御説明をいただきました。今、新聞並びに行政当局からお話をお聞きすると、台湾口蹄疫発生をして、その被害があの台湾の全国土を網羅したと、罹患してしまつて大変畜産農家にとって被害をこうむっているということをお聞きいたしております。  過日の質問をした後、その後の被害状況拡大についてどういう認識をお持ちになっているのか、どういう数字を把握しておられるのか、お示しをいただきたいと思います。
  6. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 過日の御質疑の際もお答え申し上げたわけでございますが、私ども発生の通報がございましたのは三月二十日でございました。その前提となった三月十九日現在では、台湾農場で一千五百頭余りの発生と、そういうデータを最初にいただいたわけでございます。それがその後、燎原の火のごとく燃え盛っておりまして、一番最新の私どもが得ている数字は四月一日現在でございますが、豚につきまして発生農場千三百農場発生頭数二十三万五千頭、死亡頭数五万六千頭、こういうことでございまして、台湾全土のうち東部の三県を除いた各地域発生を見ている、こういうような状況だというふうに把握しております。
  7. 岩永浩美

    岩永浩美君 三月二十日に皆さん方のところでその状況の把握をした後、四月一日までの間にまさに台湾国土全部と言っていいほど感染をしてしまった。それは日本で例えて言うと九州の国土と同じような広さ、それがもう一週間か十日の間に一遍に広がっていくという、それはどういう形で伝染をしていくんでしょうか。ただ単に、その一つ畜舎管理等々、あるいはその治療方法等が早く発見でき、その治療方法があるならそういう形で伝染をしていくということは日本国内においてはあり得ないような気がするけれども台湾の国で十日前後でそれだけのものが広がっていくというその伝染の経過、それはどういうことでしょうか。
  8. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) この口蹄疫という病気大変伝播力の強いウイルス性病気でございます。伝染伝播の経路としては基本的には接触ないし空気感染ということでございます。  この口蹄疫の場合の最大の問題は一定の潜伐期間ウイルスにかかってから症状があらわれるまで通常四、五日、最大で二週間と言われおりますが、そういう潜伐期間があって、それから発症して、具体的には熱が出る、水泡が口とかひづめの周りにできる、こういう症状が出てまいるわけでございます。その症状が出るまでの間に患畜自体は外から見てはわからないわけですが、相当大量の口蹄疫ウイルスをその周囲にまき散らしている、こういうような状況がございまして、そういう意味におきまして、かなりの短期間に広範に空気伝染あるいは間に何かが媒介となって、接触ということも当然あるわけでございますが、このように広がっていったのではないかというふうに推定されるわけでございます。
  9. 岩永浩美

    岩永浩美君 国内における畜産農家、特に豚について申し上げるならば、一つ農家の豚の飼育頭数というのは平均して五百ないし六百ぐらいあると思う。しかし、だんだん畜産農家規模拡大をやっていることは事実でありますが、規模拡大をしている割には畜舎の増築等々はなされていない。言いかえれば、畜舎の中における頭数の密度がだんだん高くなって非常に環境がおかしくなっている、窮屈になっていると言っても言い過ぎではないと私は思います。  まずその件について、頭数が百頭とか五十頭ぐらいの管理をやっているところの畜産農家については病気について一つ一つ点検ができると思うけれども、多頭化していく場合には大変その管理というのは難しいと思うんですね。今、局長の方から御説明があったように、潜伐期間が一週間ぐらいあって病状が出て、熱を出し何か水泡を出している状況というのは、発症してからかなりの時間が過ぎてから農家にわかるということになる。  現在、日本国内において多頭化している中で、一升の中に肥育豚であると十五から二十ぐらい置いてある中でそういう豚の発見というのが現実的にできるのかどうか。そういう場合どういう形でその発症を見つけ出すのか、それを見つけ出す方法というのがあるのかどうか、それはどういう御見解をお持ちでしょうか。
  10. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 確かに先生指摘のとおり、例えば養豚経営については大変規模拡大が進んでおりまして、まさに御指摘のとおり日本全体で平均して今一戸当たり飼養頭数が六百頭程度、こういうような水準になってきております。  こういう中におきます家畜管理というのは従来の少頭数の時代に比べますと、やはり群でもって管理をする、衛生問題についても同様でございますが、そういう考え方が基本的な主流になっております。  この口蹄疫の場合には、先ほどたまたま台湾における場合も三農場で千五百頭ばかり発生というのが最初の第一報だったというお話をしたわけでございますが、ウイルス等農場に侵入してきた場合には、大多数の場合、どれか個別の一頭がかかるというよりもやっぱり群でもってその症状が出てくる、こういう形をとるのが一般的な形だろうと思っております。  現在、お隣でああいう状態であるということでございますので、実は各都道府県お願いを申し上げまして、家畜保健衛生所職員に全畜産農家を回っていただきまして、口蹄疫病状症状病性というものを御説明申し上げ、万一それに類似した例があった場合には早急に届け出をしてほしいということをお願いしております。  その場合の主たる症状というのは、まず最初に元気がなくなってくる、足を引きずるようになって、多少熱が出てまいりますと何か一定の囲いの中で飼っていた場合も固まってきてうずくまるというか、そういうような状況最初に見られるわけでございます。そういうものが一番初期状況ということで、そういった事例について十分目を光らせるようにお願いをしている段階でございます。
  11. 岩永浩美

    岩永浩美君 畜産農家皆さん方口蹄疫そのものについて、みずからが飼育している豚について疾病状況について把握していない農家方々というのも数多くおられると思う。まずはその件について周知徹底をさせておくことが必要だと私は思いますが、防疫体制についての周知徹底はぜひ図っていただきたい。  こういう口蹄疫日本に上陸することは決していいことじゃない。仮に、もし日本国内で発病したとしたときに、発病した豚はどういう処置の仕方をされますか。
  12. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 私ども防疫指針というか、一定病気が出た場合どのような対応をとるべきかということについて一定マニュアルのようなものをつくってございまして、口蹄疫を初めとする悪性海外伝染病については極めて厳しい措置をとろうということで、そのマニュアルの中にいろいろ詳細に規定をしております。  基本的には、病性鑑定を行って口蹄疫だということが確認をされた場合、私どもとしては一応その農場ないしその農場を含む地域について通行を遮断して、その中において発生農場の具体的な症状を呈している患畜のみではなくすべての家畜について殺処分をする、その後埋却ないし焼却をしてとにかく外への伝播ということを食いとめるという観点に立って、局地に押し込めるという意味での最大限の初期防疫を実施しよう、こういうふうに一応マニュアル上つくり、もし万が一起きた場合にはそういう対応をとろうというふうに考えております。
  13. 岩永浩美

    岩永浩美君 御承知のとおり、畜産農家皆さん方草地を余計持って経営をなさっている方はおられません。どちらかというと狭い敷地の中でいっぱいいっぱい畜舎だけがあれば経営としては成り立っていく畜産農家、仮に一月の農家平均飼育頭数が五百ないし六百頭のその豚がもし発症したとするならば、それを全部今御説明があったように埋却並びに焼却をしていく処置方法をとるとするなら、それだけの敷地を既に準備しておかなければいけない。その準備は個々農家対応できるとお考えですか。
  14. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 私どもといたしましては、口蹄疫に限らず大変恐ろしい一定病気の場合には殺処分ということを当然実施して蔓延防止を図る。こういう観点から、各畜産農家につきましてそういう病気発生した場合に、死体焼却または埋却する場所確保が必要であるということで都道府県お願いを申し上げまして、個別の農家あるいは個別の農家対応が困難な場合には一定農家群、こういうふうなものについて焼却または埋却の場所確保する、通常から確保して用意をして、いざとなったらそこにやる、そういう場所の見当をつけておくというか、そういうことをお願い申し上げております。  今回、隣でああいうことになっているということを踏まえまして、改めて各農家について、仮にそういうことが起きた場合どこで焼却ないし埋却をするのかということについて再度再点検都道府県お願いしているということでございます。もちろん個別の農家が最終的には決めることであるとはいえ、都道府県家畜保健衛生所職員がその指導に当たる、こういう体制のもとに必要な場所確保ということに今着手しているところでございます。
  15. 岩永浩美

    岩永浩美君 それは今までにそういうことの指示を出されていたんですか。そういう一つ指針行政の何か規則があるんですか。
  16. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) これは規則があるわけではございません。行政上の指導としてそういうことをあらかじめ確保しておくように、こういうことをお願い申し上げているということでございます。
  17. 岩永浩美

    岩永浩美君 それはいつからそういう行政指導をされていますか。私どもが知る限りにおいてそういう指導をされていることは個々農家皆さん方は熟知しておられないけれども、それはいっそういう行政指導をされましたか。
  18. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 今回、この口蹄疫の問題が出てまいりましたので、各都道府県の担当の皆さんにお集まりをいただきましてそういうことをお願い申し上げたということで、ですから今末端でいろいろそういう作業が行われている、こういうような状況ではないかと思っております。
  19. 岩永浩美

    岩永浩美君 じゃ、今まではこういうふうなことを前提にした対策は講じられていなかったということですね。今回、台湾でこういうものが発症したので慌てて一応水際作戦防疫体制強化していく上においてそういう局地に集約をしていく形をとらざるを得ないという、泥縄式でとりあえず皆さん方行政指導をしているということですね。
  20. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 口蹄疫ということを意識してのお話は先ほど申し上げたとおりでございますけれども、先ほどほかの病気ということで豚コレラに関連してちょっと触れましたけれども豚コレラの場合もやはり発生した場合には殺処分、こういうことが出てまいりますので、そのための場所確保というか、そういう意味では八年四月に豚コレラのことを念頭に置いてそういうことをお願いしたと、こういう経緯はございます。  ただ、今回は口蹄疫ということを背景に改めてそこの確認というか、また十分できていないところもあるわけでございましょうから、その辺はしっかりやってほしいというふうにお願いを申し上げたと、こういうことでございます。
  21. 岩永浩美

    岩永浩美君 一戸当たり農家飼育頭数が六百、その六百頭の平均農家皆さん方がそれぞれの地域、それぞれの町村畜産として栄えている。養豚中心にしている集落生産団地、それが今皆さん方の御説明でやっていくと、とにかく一つ集落一つ町村だけにとどまらず、もし発生をしたとするなら空気伝染伝播力がある口蹄疫は、その地域、市郡を中心にしてそこら辺はもうかかっていると見なければいけないような伝播力があるとおっしゃった。それだけの処置をしていく土地確保していくというのは、やっぱり現実的に農家皆さん方にゆだねていたのではどうしてもこれはできないと思う。  今、台湾発生をした口蹄疫の問題が出てきて、畜産局中心として行政当局にいろいろな指導をしておられるということですが、速やかな対応と速やかなマニュアル、それは一つ生産団地単位でやったのでは意味がないと私は思うんです、それだけの伝染力があるなら。  行政一体となってそういうところの土地確保するということを、そこまでちゃんと行政当局に義務づけをされるのか、あるいは農協単位でそのことをさせようとするのか、それはどういう形で指導をしておられるんですか。  行政が中に入ってそういう処置をする場所確保しなさいということを言うのか、生産団地そのものでそれをしろというのか、あるいはそれぞれの市町村あるいは市郡単位農協中心とした形の中でそういう場所確保しろという指導をしておられるのか、それはどういう形の指導をなさっておられますか。
  22. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) もちろん、死体の処理ということ自体は、その死体所有者の義務というふうな法律上の形をとっているわけでございますが、実際には、各農家といっても大変大きな耕地面積を持っておられる農家から、先生先ほど御指摘のように耕地はほとんどなくて家畜だけ、畜舎だけという方もあるわけで、その辺はいろいろ地域あるいは個別の農家によって対応は違うと思います。したがいまして、一律のやり方で、これでみんなやれというふうにはなかなかいかないのではないか。  そういう意味におきまして、私ども家畜保健衛生所職員が各農家お願いをし、実情を聞いて、先生お話しになりましたように個々農家では対応できないといったときに、例えば農協に間に入っていただいて適切な場所確保するとか、あるいは市町村お願いをしてどこか適切な場所を探していただくとか、そういうことを含めて、そこは家畜保健衛生所職員が、当然のことながら家畜防疫の重要な一つの課題でございますので、農家指導農家相談に乗りながら適切な用地確保ができるように努力をしていく。  こういうようなことで、特定の決まった形があるわけではございませんが、そういう努力をしていただきたいというふうにお願いを申し上げているわけでございます。
  23. 岩永浩美

    岩永浩美君 強いて申し上げるならば、畜産農家皆さん方は広大な土地が必要でない経営ができます。酪農とか牛の肥育とか、そういうものについては草地確保しなければいけない、広大な用地を必要とする、自家でその粗飼料を供給していくという、そういう問題等々もあるだろうと思う。  しかし、畜産農家皆さん方には、狭隘な土地の中でも畜舎確保ができればある程度経営規模拡大していくことができる。そういう皆さん方は、そういう焼却をする、処置をする一つ場所は、お持ちになっているところもあるだろうけれども、恐らく持っていない方々の方が多分に私は多いと思うので、そこら辺はよく行政並びに農協とも一体となって、そういう皆さん方が安心して畜産経営のできる、養豚農家皆さん方が安心してそういう一つ仕事が将来に対してできるような形のものを、農家負担だけにゆだねずにぜひやっていただきたいことを要請いたしておきたいと思います。  また次に、今回、家畜保健所をそれぞれの地域に十名以上の皆さん方の人数を確保することによって整備していくことによって防疫体制を確立したい、こういうお話がございました。  当初よりもだんだん合併をされ、交通ネットワークが整備されることによってある程度集約化してきた家畜保健所、そのことは私もそれは認めます。  私自身過去の経験からして、家畜保健所並びに改良普及所皆さん方は、ややもすると農家皆さん方とお互いに情報を交換し、対峙しながら畜産経営に直接携わっているということよりも、合理化されることによって、資料を作成することにのみ非常に時間が費やされて、現実的に農家皆さん方との対話が不足しがちであって、現実的にそういう活動ができていないのではないかという危惧を抱いていますが、皆さん方はどういう御見解をお持ちか、まずお聞きをしておきたいと思います。
  24. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 確かに先生指摘のとおり、家畜保健衛生所広域化ということを進めてまいりまして、そのことは、一つ家畜保健衛生所の何と申しましょうか、物的にも人的にも機能面強化をする、それに交通手段ということを組み合わせることによって家畜防疫体制強化につながっていくんだろうと、こういうことで進めてまいったわけでございます。そういう中で、ともすれば家畜保健衛生所職員皆さん農家との接触の機会というのが減ってくるのではないか、こういう危惧があるのも私ども承知をしておりますし、また、そういうことがあってはならないというふうに私どもも思う次第でございます。  そういう意味で、実は平成七年度でございますけれども、全国の家畜保健衛生所につきまして、どういう仕事にどれくらいの時間を費やしているかということの実態調査を私どもの方でいたしました。その数字で見ますと、いわゆる家畜伝染病予防法等に基づきます伝染病などの検査とか注射とか投薬あるいは病性鑑定、こういった事務家畜保健衛生所業務量のおおむね五割を占めている、こういうような数字でございました。そのほかは、農家への一般的な衛生面での指導あるいは薬事関係仕事、諸打ち合わせ、あるいは先生のおっしゃったようなデスクワーク、そういうふうなものも当然その他の部分としてあるわけでございます。  私どもといたしましては、こういった中で、やはり、冒頭申しましたように、地域における第一線の家畜衛生の責任も持つ機関でございますから、農家との十分な接触というか指導ということが不可欠であると。そういう観点から、例えば家畜衛生技術指導事業というふうな事業を実施しておりまして、農家段階での衛生検査保健所職員が回りまして衛生検査を実施し、それに基づいて、その農家家畜生産性阻害要因を除去し、生産性を向上する対策、そういうものを具体的に指導していく。そういったところに民間獣医師さんにも参加してもらって、そういう民間獣医師さんのお力もかりる。例えば、こんなふうな事業等を通じまして、法律上その必要な業務ということに限らず、できるだけ家畜保健衛生所職員農家との接触というか連絡が密になるように努めているところでございます。  今後とも、そういった形を通じながら、また、民間獣医師さん、まあ民間獣医師さんは何といっても農家との日常の接触は多いわけでございまして、そういう方々とも連携を図りながら農家への十分な指導が行われるように努力をしていきたい、そういう方向で指導していきたいというふうに思っております。
  25. 岩永浩美

    岩永浩美君 今、局長の方では大変立派なお仕事、もちろん保健所皆さん方仕事をやっていないということではなくて、デスクワークにとられている部分というのが多分にあって、現実的にやっぱり農家皆さん方相談相手としての時間が少なくなってきていることは事実なんです。それとやっぱり、だんだん人間の社会においても予想しなかった病気、新しい病気が出てきている。畜産についても、かつて経験したことのない新しい病気というのが出ているのではないかという心配もあります。  そういうことを踏まえて、やっぱり家畜保健所の整備を促進していくということは大変必要なことであるし、今回の法律改正の実が上がるためには、防疫体制を確立していく、そのことのほかにないと私は思います。そのためには、何としてでも家畜保健所職員の資質を向上していくこと、それから畜産農家皆さん方との意見の交換を十分に密にしていただくこと、そのことは大変重要なことだと私は思います。  与えられた時間もあと二分になりました。大臣から、今後こういう問題が新たに派生じないように、防疫体制をさらに確立していくためにどういうお考えをお持ちかお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
  26. 藤本孝雄

    ○国務大臣(藤本孝雄君) 家畜伝染性疾病による被害を最小限度に食いとめますためには、早期発見と早期対応が最も重要でございます。それにつきましては、効果的な家畜防疫制度というものをつくりまして、危機管理体制の充実であるとか強化を図っていくということが重要であると考えます。  そういう考え方のもとに、今回、法改正を提案させていただいたわけでございまして、今後この家畜防疫制度の運用に当たりましては、行政機関と民間獣医師とがそれぞれの役割を適切に果たしながら相連携して効果的に進めていくことが必要である、そのように認識をいたしております。
  27. 高橋令則

    ○高橋令則君 家畜伝染病予防法の一部改正につきまして、私からも質問をさせていただきます。  今、岩永委員から台湾口蹄疫について非常に適切な御質問がございました。私も同じような気持ちで聞いておりました。ぜひこの口蹄疫対策はきちんとやっていただきたい。これは要望にさせていただきます。  別な角度で関連してお尋ねをしたいんですが、きょうの新聞によりますと、台湾産豚肉の輸入を禁止した影響で価格高騰が生じてきている、農水省は二日、豚肉の輸入価格を引き下げる方向で検討に入ったと、このような記事が出ております。  台湾口蹄疫は、防疫対策の面でも十分これは注意をして努力をしていただかなければなりませんが、一面、国民の食生活を守るという観点からも重要でございますので、需給の面についての現状、対策、今後の見通し、こういったものについてお聞かせをいただきたいと思います。
  28. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) それでは、数字的なデータを含めまして簡単に御説明を申し上げたいと思います。  平成七年度の豚肉の輸入という観点で見ますと、豚肉全体の輸入量は約五十三万トンございました。このうち、台湾からの輸入が四六%、五割弱ということで、約二十五万トン。このほか、EUから約十三万トン、アメリカから約十一万トン、この三国が主たる我が国への供給先ということになっております。したがいまして、七年度で豚肉の国内での需要量のうち、台湾からの輸入量というのは一七%程度を占めるという、かなりのウエートを持っているわけでございます。  平成八年度は、若干その後輸入量が増加しているというふうなことがございますが、基本的にはこういった構図が続いているというふうにお考えをいただきたいと思います。  ただ、実は現在、先ほど申しましたように、平成八年度におきましてはかなり輸入が増加をいたしまして、その結果、在庫量が八万トンか九万トンあるというのが通常状況でございますが、一月末現在でございますが、その二倍ぐらいの十七万トン程度の在庫が国内にございます。  それと同時に、実は台湾からは輸入がストップしているわけでございますが、EUとかアメリカというのは潜在的な能力としては我が国への供給力という意味ではかなりの力を持っている、こういうことがございます。そういう意味では、在庫の問題なり代替的な輸入が可能であろうということを含めますと、現在の時点で需給上は直ちに大きな問題が生ずる状況ではないだろうというふうに私どもは思っているわけでございます。  しかし、実際には台湾での口蹄疫に伴って輸入がストップしたというニュースを受けて、国内での豚肉の卸売価格はかなりの乱高下を現在繰り返しております。高いときがキロ当たり六百円を超す水準、落ちたときでは五百円を切って四百九十円台、こういうことで、上げて下げてまた上げてと、こういうふうな状況が続いておりまして、やはり今後の価格の動向というものについては十分注目をしていかなければならない、こんなふうに思っております。  ただ、総じて言いますと、先ほども申しましたように、需給上直ちに今すぐ物が逼迫をするというような状況ではございません。いましばらく需給の動向あるいは価格の落ちつき先というのを見定めた上で今後の対策について検討していかなければならないのではないか、こういうことでございまして、したがいまして、豚肉の減免の問題についても、新聞等に出ておりましたような関税の減免をやろうということで動いている、そういうことではまだございません。
  29. 高橋令則

    ○高橋令則君 今、セーフガードをやっているわけですね。二四%、六月まで上がっているわけですが、新聞ではこれを半分以下の一〇%程度にする方向で検討しているというふうに伝えられておりますが、これはまだそこまで具体的には話は進んでいないわけですね。
  30. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) そのとおりでございます。まだそのような具体的な検討に入っておりません。
  31. 高橋令則

    ○高橋令則君 いただいた資料によりますと、確かに局長がおっしゃるように、わずか二日、三日の間で四百九十七円から三十一日は六百十七円ですか、加重平均で。かなり乱高下をしておりますので、価格帯としてどの辺に落ちつくのか、ちょっと難しいなというふうな感じがします。しかし、量の問題、質の問題、それから価格の問題というのは非常に消費者にとって重要な問題でございますので、十分見きわめた上で適切な措置をとっていただきたい、このように思います。  それから、先ほどの岩永委員の御質問を聞いていて私もはっと思ったのは、島袋先生がいらっしゃいませんが、空気伝染なんですね。沖縄県は非常に豚の飼育が盛んな県で、非常に近い地域なんですね。海の上を飛んでくるとは思いませんけれども、そういうふうな地域的な心配というのはないんですか。
  32. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 過去の口蹄疫発生したときの例ということでいいますと、数十キロを超えて空気伝染発生をしたという事例もあるようでございまして、そういう意味では私どもも、特に沖縄県、八重山諸島等の場合には台湾とも、向こう側が見えるというふうな程度の近さでございますので、大変心配な局面であるということはそのとおりだろうと思います。  ただ、空気伝染については、率直に言って具体的な方法というか、それをとめる方法があるわけではございませんので、先ほど申しましたように各畜産農家に、もちろん人とかそういうものが媒介する可能性の方がはるかに高いわけでございますから、人の立ち入りを豚舎等に制限をするというか、よその方は入れないとか、そういうことのほかに、やっぱり家畜状況を十分見て、万が一おかしなことがあれば早急に届け出をしてほしい、こういうことをお願い申し上げているというのが率直な実情でございます。
  33. 高橋令則

    ○高橋令則君 大変素朴な質問なんですが、これはワクチンのような予防的な措置はない病気ですか。
  34. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 口蹄疫に関しては、ワクチンは開発されておりまして、不活化ワクチンを現に使っておる国もございます。  我が国は全く清浄国でございまして、これは世界的にも口蹄疫の清浄国の場合には、ワクチンを常時打っておられる国からは肉とかそういうものは一切入れない。つまり、ワクチンを打っている状態にあるということは潜在的には口蹄疫ウイルスがそこに存在している可能性がある、存在しているけれどもワクチンのおかげで具体的に発症しないということがあるわけでございまして、そういう意味で、そういう国からは輸入を禁止する、こういうような措置までとっているわけでございます。  したがいまして、我が国としては当面、当然のことでございますが、この清浄状態を維持するというのが今基本的な命題でございまして、万が一発生したときも、私どもは基本的にまず局地で撲滅をするという考えで、直ちにワクチンを使うということではなくて、そういう形で撲滅が図れないか。さらに、それが失敗をした場合にワクチンを使うかどうか、そういうふうな議論がございましょうが、基本は今私どもこの清浄状態を維持する、こういうことで臨んでいるところでございます。
  35. 高橋令則

    ○高橋令則君 わかりました。いずれ適切な措置をとって、ぜひ水際で食いとめるような努力をしていただきたいと思います。  次に、当面の問題であります法改正の問題について幾つかお尋ねをしたいと思います。  まず最初に、ちょうどタイミングが合ったようなものですけれども、この家畜伝染病予防法というのは、改正の経過を見てみますと、今回は内容的には、病気の具体的な指定等々からしますと五十年以来ですか、そんなに頻繁に改正をされているわけではない。六十年は負担率の問題だけですから、二十何年来の改正かなというふうに私は思っております。口蹄疫対策のために改正しようというふうに思われたわけでもないでしょうから、今回の二十数年ぶりという改正のねらい、そしてまたこの時期をタイミングとして必要だというふうに判断された根拠をお尋ねしたいと思います。
  36. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) ただいま御指摘ございましたように、今回の法改正、直接的には昨年四月にいわゆる狂牛病と申しましょうか、その病気がイギリスで大変大きな問題になったということを契機といたしまして、我が国ではこの狂牛病自体は法定伝染病にしてございませんでした。しかし、効果的な防疫対策、水際で対策をとらなければならない、万が一発生したときの適切な対応が必要だということで、政令でこの狂牛病を指定いたしまして、当面暫定的に法律上の各種の措置を狂牛病についても講じ得る、こういう措置を講じたわけでございます。これが法律上一年を限ってそういうことができる、こういう規定になっておりまして、その期間が間もなくやってくる、そういう意味におきまして、私どもとしては最低限の話、狂牛病を法定伝染病にしなければならない、こういうような状況にあったわけでございます。  それと、ただいま先生から考え方というふうなお話がございましたが、最近におきます家畜伝染性疾病状況、急性伝染病等は総じて落ちついた動きになっているとはいえ、一戸当たり家畜の飼養頭羽数が非常にふえてまいっておりまして、万が一発生したときは大変大きな損害を生ずるおそれがある。それからもう一つ気がかりなのは、今まで知られていなかったような新しい病気が、先ほどの狂牛病等もそうでございますし、我が国におきましても豚の流行性下痢、PEDというような新しい病気が幾つか発生をする、こういうような状況がございまして、やはりこの辺で家畜防疫体制強化ということを全面的に検討するべきではないのか、そういうようなことで何人かの学識経験者の方々等に集まっていただきまして、これからの家畜防疫をどうするかという御議論を昨年いただきまして、そういったものを含めて、狂牛病を法定伝染病にするという話を含めて今回御提案するに至ったと、こういうような状況でございます。
  37. 高橋令則

    ○高橋令則君 わかりました。  それに関連して、今回の改正の中身としては削除と新たに法定ということがあるわけですが、それぞれ追加、そして削除をもって、トータルで差っ引きしますと二十五が二十六になったんですか。この削除の理由、これは細かく要りませんので、基本的な考え方だけお尋ねをしたい。私がお聞きをしたいのは、今後はどういったものを指定していくのか、それから今後はどういったものを落としていくのか、その基本的な考え方、判断基準をお聞きしたい、このように思います。
  38. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 今回、法定伝染病の見直しを行いまして、ただいま御指摘ございましたように、流行性感冒、気腫疽、それから豚丹毒、この三種類の病気を法定伝染病から外す、これは実際には届け出伝染病として当然対象にしていこうと思っておりますが、そういうことと、狂牛病を含めて四つ、四・五というか、一つ範囲を膨らます問題がありますけれども、四つの病気を新たに法定伝染病として指定をする、こういうことを考えているわけでございます。  この法定伝染病というものをどういうものとして考えるかということでございますが、基本的には、その病気が我が国に侵入あるいは農家発生した場合の農家の受ける経済的な被害がどういうものになるのか、それから伝播力がどの程度強いものであるのか、それから予防ないし治療方法が確立されているのか、どういうやり方で予防ないし治療が行われるものなのか、そしてさらには人への影響ということがあるのかどうか、こういうような要素に分けて評価をして法定伝染病にするかどうかを検討する、こういうことでございます。  やはり一番最終的な決め手になりますのは、この法定伝染病にしたことの効果というのは、それが発生した場合に、例えばそのかかっている家畜について殺処分を命ずる、強制的に殺しなさいということを命ずる、あるいは隔離をするということを命ずる、そういう強制措置を講ずることが法定伝染病については可能なわけでございます。いわばそういった強制措置を実施しなければ病気発生なりその蔓延ということの防止が図れない、そういうものが法定伝染病として指定されるべきである、こういうふうな考え方で私ども判断をしておるということでございます。  その場合には、当然、OIEと申しますが、国際獣疫事務局、世界の獣医に関するその中心機関でございますが、そこが発表しております危険な伝染病のリスト、そういうふうなものも参照しながら、さっき申したような基準に基づいて判断を今後ともしていきたいと思っております。
  39. 高橋令則

    ○高橋令則君 それから六十二条でしたか、政令指定の疾病がありますね。今回法定の方に持っていった伝染性海綿状脳症は、これは平成八年の四月二十七日に政令指定をされているようですが、一年間様子を見て、それであるものは法定化しあるものは届け出にするんでしょうか、いずれそういう措置があろうかと思うんです。過去の事例では、これは三十年にミツバチの腐蛆病、それから四十八年、五十年に豚の水胞病ですか、そういう事例があるようですが、こういった事例を見ながら、一年で法定化の判断が必ずしもできなかったようなものについてはどういう措置をされるのか、この際お尋ねをしたいと思います。
  40. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 法六十二条によって一年間を限って暫定的に家畜伝染病予防法の関係規定を適用することができるという条項につきましては、ただいまお話しのとおり、海綿状脳症というものを現在これで実施しているわけでございます。現在の狂牛病等の海綿状脳症に関しましては、私ども、イギリスにおける発生状況なりあるいは人への影響その他を総合的に勘案した場合、当然やはり法定伝染病として位置づけて今後措置をしていかなければならないものと、そういう結論というか、そういう考え方を持っておりまして、今回法定伝染病として指定をする、こういう方向で御提案を申し上げている次第でございます。  例えば、一年の間にじゃその辺の判断がつかなかったらどうかというお尋ねでございますが、やはり法では一年間を限ってそういうことができるということでございますので、もしその段階で指定するまでに至らないということであれば自動的に政令は失効する。こういうことで、そのままになるか、あるいは届け出伝染病にするか、もちろんそういう選択はあるわけでございますが、今回の場合には、海綿状脳症に関しましては法定伝染病にすることが妥当であろう、こういう判断を持っているということでございます。
  41. 高橋令則

    ○高橋令則君 これは都道府県サイドというか、現場の家保サイドあたりの意見では、この六十二条の政令指定は当然ながら法指定よりもしやすいというか、そういう制度であるわけですね。したがって、言うなればこれを機動的に運用して、そして知られていない危ない病気が来たときにはこの政令指定をして同じような扱いができるように機動的にやってほしいという要望があるんですよ。そうはいったって、これはそれなりの基準があり、まさに適切な運用が求められるわけですけれども、私はこの政令指定についても機動的な運用の要望が現場にはありますよと、それを適切に運用して防疫対策に万全を期していただきたいということをこの際申し上げておきたい、そのように思います。  それから次に、さっきもちょっとお話が出ましたけれども、病原性大腸菌O157の事例、あるいは鶏卵を汚染するサルモネラ・エンテリティデスですか、SE、こういったように、家畜には大きな症状あるいはそういったものは出ないけれども、人にそれがうつってきますと重大被害が出るといったぐいの病気があるんですね。これについても、家畜伝染病予防法サイドでこういうものについて措置をするのは家畜伝染病じゃないものですからいいのかなと、性格上どうなのかなという議論もありますが、食の安全、そしてまた大きな意味の、広義の家畜防疫対策という面からすると看過できない問題ではないかな、このように思いますが、これらに対する対策の基本的な考え方を伺っておきます。
  42. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 御承知のとおり、昨年大変大きな問題になりました病原性大腸菌O157につきましては、現在私どもが得ております科学的知見においては、我が国においてもごく一部の牛のふん便中には存在をしているということが確認されておりますが、それ自体が牛に何か病気としての症状を起こすかということになると、それについてはそういう知見は得られていないということでございます。したがいまして、いわゆる従来の家畜伝染病予防法の考え方、家畜伝染性疾病だというふうにO157を位置づけて、この家畜伝染病予防法に基づく措置の対象にするということは率直に言って困難だろうというふうに思っております。  ただ問題は、先生指摘になりましたように、O157については人間について大変大きな問題を含んでおります。そのため私どもとしては、まず現状では法に基づく強制措置ということとは別にいたしまして、生産段階対応といたしまして、牛等の体表にふん便等の付着を防止するとか、そういう飼養管理面での指導ということを牛の各飼養農家お願いを申し上げる、指導をしている。そういうことと同時に、何と申しましても屠畜段階において衛生管理を徹底することによって人への感染の防止は可能でございますので、そこに向けて厚生省ともどもできる限りの努力をしている、こういうことがございます。  それから、もう一つの大きな話としては、現在厚生省におきまして人の伝染病と申しましょうか、感染症の今後の防疫のあり方について、調査会の部会で御議論が始まっております。最近では、O157に限らずエイズであるとかエボラ出血熱であるとか、いろいろ新しい病気が出てきている、こういう状況を踏まえた人の感染症の防止対策ということが議論されているわけでございまして、そういう中で出てくる対策について私どもが協力、手を携えてできる部分があるならば我々としても協力を惜しまない、こういうような考え方で厚生省とも今後十分議論をしていきたい、こんなふうに思っております。
  43. 高橋令則

    ○高橋令則君 食肉センターのようなところでは屠場とその後のいわゆる生体の処理、部分肉とかいろんな形にするわけですが、それがもう完全に密着しているわけです。そういう施設は、言うなればある部分は厚生省の管轄下にあり、ある部分は農水省所管ということですが、外から見ると完全にドッキングしているわけです。私が長年役員をしておりました岩手畜産流通センターもそうなんです。  したがって、現場からいきますと、行政は縦割りだけれども、流れは一体なんです。そういった点で、出口と入り口のような関係でしょうけれども、十分厚生省の方とも連携をとっていただいて、衛生対策については万遺漏のないようにやっていただきたい、このように思います。  それで、今ちょうど話が出ましたので、さっき申し上げた屠場を含む屠畜場、そしていわゆる食肉センター、食肉処理場等における衛生管理といったものが関連して非常に重要だと思いますので、厚生省の方からもおいでいただいているわけですが、厚生省の方で最近何か規則をつくられて徹底を期せられているというふうに聞きましたので、その点をお聞きしたいと思います。  また、これは局長の方になりますか厚生省になりますかわかりませんが、諸外国ではHACCPシステムというんですか、食品衛生に関する基準をみずから設定して製造過程で自己検査を行うというふうな、製造サイドでの管理システムができている。これはいいことだというので我が国でも取り入れつつあるというふうにも聞いているんですが、その考え方、対応についてあわせてお聞かせをいただきたいと思います。
  44. 森田邦雄

    説明員(森田邦雄君) 初めに、屠畜場においてでございますが、屠畜場におきましては、と畜場法に基づきまして牛、豚などの獣畜につきましては一頭ごとに獣医師の資格を持つと畜検査員が検査を行いまして、病気のあるものについては排除をして食品にはしないということを行っております。また、昨年来問題になっております病原性大腸菌O157につきましても、昨年十二月にと畜場法施行規則改正いたしまして、屠畜場の設置者、あるいは屠畜業者が守らなきゃならないような取扱基準、これはHACCPの考えも導入した取扱基準をつくりまして、四月一日から施行しております。  私どもといたしましては、先ほど先生お話もありました食肉処理場につきましても同様に各施設に対する衛生管理指導強化しております。このように、衛生管理の基準の指導を今後とも強化してまいりたいと思っております。  それから、外国での事例等でございますが、屠畜場あるいは食肉処理場におけるHACCPの導入、これは日本も今この導入に向けて進んでいるわけでございますけれども、一昨年の食品衛生法の改正におきましても、食品衛生という中にHACCPの考え方を導入するように法改正を行っておりまして、現在食肉製品製造業などについて大臣の承認制度を発足しているところであります。  また、屠畜場につきましても、先ほど御説明申し上げましたとおり、昨年来、省令を改正いたしまして、現在その施行に鋭意努めているところでございます。
  45. 高橋令則

    ○高橋令則君 局長、通告外の話をちょっとしたいんですが、さっきのいわゆる食品衛生の観点とそれから供給サイド、畜産サイドの観点、これは県ではほとんどが獣医師さんが責任者になっているんです。やっぱりその間の意志疎通といったものが大事だろうというふうに思って、人事異動させたことがあるんです、人事交流を。国の方はどうなっていますか。
  46. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 現在、私どもと厚生省の間では、例えば年に二回とか双方の責任者が出まして定期的な会議を行っているほか、例えばO157等の問題が出たときにはほとんど連日といっていいほど個々に綿密に打ち合わせを行って、そこは十分連携をしながら、対応策についてそれぞれ分担、協力しながらやっているというのが実情でございます。  そういった中で、確かにお話のございましたような人事交流ということも一つの課題になるわけでございますが、現在も多少はございますが、そう大きな規模でやっているというような状況ではございません。
  47. 高橋令則

    ○高橋令則君 こだわるようですが、実はやってみた結果どうなったかというと、しり切れトンボになってしまったものですから、若干反省があるんです。しかしながら、縦割りのあれを解消するためには、やっぱり技官同士の交流というのは非常に大事なんです。私がやって失敗した理由は何かといいますと、佐藤委員もうなずいておられますが、農業サイドの獣医師は偉いんです。それから、厚生省サイドの食品衛生のあれはお医者さんが上にいまして押さえられるものですから、農業サイドの獣医師さんは行きたくないんです。それで何回かやりましたけれども断られちゃったんです、結果的に。それでしりすぼみになったんですが、こういう時代になってきましたので、もう少しやっぱり行政全体の質を上げるということでやってもいいんではないかなと、今回これを勉強しながら、私はしみじみ昔のことも思い出しながら思ったんです。  非常につたない経験で恐縮ですけれども、不期遭遇みたいな形で打ち合わせをなさるのもいいけれども、やっぱり人事の交流というのはこういう場合に行かせてやるのも非常に大事ではないかなと思いますので、これは提案を申し上げておきますから、どうぞ大臣もお聞き取りをいただきたい、このように思います。  それから、家畜伝染病の対象家畜の問題ですけれども、今度新たにいわゆる対象家畜の政令指定制度が導入されました。これも新しい制度ですので、この導入の理由、指定の要件、そして導入された後どのような家畜を指定されるおつもりか、お聞きをしたいと思います。
  48. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 今回、法の対象となる家畜については一部を政令で規定することができるというふうにしたわけでございますが、これについては実は最近の食生活の多様化あるいは地域おこし、こういった中で、例えばの例でございますが、シカとかイノシシだとか、いわば特用家畜と言われているようなものの飼養がかなりふえてまいっております。  例えばイノシシということを例にとりますと、当然豚と親戚というか、お隣同士でございますので、豚の病気というのはイノシシには当然かかってくる。したがいまして、豚の病気自体の発生の予防をするあるいは蔓延の防止を図っていく上で、特に一緒に飼われているような場合には、イノシシについても同様な法的な措置を講ずるということの必要が出てくるのではないか、そういうような状況があるわけでございます。  ただ、こういったシカとかイノシシというのはまだ全国的に定着しているというものではございません。これから先どのような消長をしていくのかも必ずしもわからない部分があるということで、その辺は今後の飼養状況等に応じて弾力的な扱いができるように政令でそういうものを指定するという形、道を開いておきまして、飼養状況あるいはもちろんそれぞれの特用家畜家畜伝染性疾病に関してどういうような感染上の、あるいは本来の家畜でございます牛とか豚にどういう病気が影響を及ぼすか、そういうことも含めてもちろん検討されなければならないわけでございますが、そういったものを法定伝染病の対象家畜として指定し得るような道を開いたということでございます。  その場合、具体的に特用家畜を指定する場合には、それ自体が当然法定伝染病感染するものであることということが当然の要件になります。それと同時に、その特用家畜の飼養実態から見て、特用家畜に法に基づく防疫措置を講ずることがその特用家畜のみならず主要家畜防疫にも資するものと、こういうふうに判断される場合に政令で指定をしようと、こんなふうに考えているわけでございます。具体的な畜種、対象家畜としては当面シカとかイノシシが想定されるのではないかなというふうに私ども思っております。  なお、ちょっとこれに関連いたしまして、水牛とか七面鳥については、現在法律に書いてあるものが形の上で政令指定というか、そういうふうに変更されるという形をとっておりますが、これは水牛とか七面鳥は昭和四十六年の法改正のときに対象家畜として加えたわけでございますが、その後かなり飼育頭数が減っております。したがいまして、今後引き続き政令で指定をするつもりでございますが、今後の飼養動向に応じまして弾力的に対応し得るよう、今回法律から政令規定にこの水牛と七面鳥については扱いを変えると、こんなふうに考えているわけでございます。
  49. 高橋令則

    ○高橋令則君 わかりました。ぜひそういうふうな点にも目を配ってきちんと防疫対策をやっていただきたいと思います。  関連して、ペットの問題があるんですね。ペットについてもやはり家畜への伝染性疾病感染源となることが十分考えられるわけです。実は私は、いわゆる海綿状脳症の質問も少し細かくしようと思って本を読んでみたら、外国ですけれどもオオジカですとか、それからチーターとかピューマ、これはまず簡単にいないでしょうが、猫まであるんですね、海綿状脳症にかかった事例として。例のたんぱく質の変質の問題ですから、伝染性といっても限定されていますから、これはそんなに心配はこの病気に限ってはないかもしれませんが、このような事例にかんがみて、ペット対策といったものも家畜伝染病予防という面からなおざりにできないのかなと、こういう心配をちょっとしたんですが、その辺はいかがですか。
  50. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 確かに、御指摘のとおり、犬とか猫等のペットに感染する伝染性疾病のうち、例えばそれが牛とか豚等の主要な家畜感染する危険度が高いと、そういうものがあった場合には当然法の対象に加えて防疫措置を講ずる、こういうことが必要だというふうに私どもも考えております。  今回、犬などに感染する伝染性疾病について、その病性だとか感受性その他を総合的に勘案いたしましていろいろ検討をいたしました。その中で、犬等と一般家畜との飼養形態の違い等もあって、法定伝染病に位置づけるほどの主要な家畜に重大な影響を及ぼす疾病はまあ一応ないだろうというのが私どもの判断でございます。  しかし、法定伝染病に位置づけるほどではないにせよ、病性かなり強く、犬それ自体だけではなくて主要な家畜への感染の危険性の高い犬の伝染性疾病、これはございますので、今後の検討課題でございますが、犬を対象動物とした届け出伝染病にすると、そういうものとして指定をするということについては現在検討を進めております。そうなった場合には、犬を対象にして国内防疫なりあるいは動物検疫ということの対象として防疫措置が講ぜられるということになるわけでございまして、やはり具体的な個々病気に着目をして、必要なものについては今のような考え方でやっていくということで対処をしたいと思っております。
  51. 高橋令則

    ○高橋令則君 その点もぜひきちんとやっていただきたいと思います。  次に、防疫体制の問題を幾つかお尋ねしたいんですが、今回、家畜伝染病届け出伝染病を監視伝染病という一くくりにして、監視を防疫体制の対象にしていくと、そういう改正であるというふうに承知をしました。これまでの法律を読んでみると、今までの監視体制というのはいわば受動的なサーベイランスだと、それを能動的とまで言えるかどうかわかりませんが、そういった形に変えるんだということが根底にあるようですけれども、その意義を、これは考え方としてちょうどひつくり返すような話ですから、重要な改正点だろうと思いますので、少し局長に強調していただきたいんですがね。
  52. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 御指摘のとおり、従来の家畜伝染病予防法におきましては、伝染病にかかった場合にそれが初めて行政機関に届けられて、そこから事態の把握が始まると、こういうようなやり方で、いわば待っているところにその情報が入ってくるというような形だったわけでございます。  それを今回の法律改正におきましては、諸外国でもかなり採用されているわけでございますが、サーベイランス体制と申しましょうか、あらかじめ、例えば全国的な計画のもとに継続的に家畜の血液検査を行う、そういうことを通じましてそれぞれの病気の抗体がどの程度家畜にできてきているか、そういうような結果を全国的に集めたものを、またそれを各都道府県にフィードバックするという中で的確な発生予防措置が講ぜられるようにと、そういうような大きな転換を図ろうとしているわけでございます。  そういった転換をする場合に、じゃ、どういった病気をそういうものの対象にするかというときに、当然のことながら法定伝染病がその大きな対象になることは申すまでもございませんが、そのほかもう一つのジャンルでございます、いわゆる届け出伝染病と言われている分野についても、これをできるだけ実情に応じて幅広く指定を行いまして、そこまでを監視伝染病という形でこのサーベイランス体制のもとに入れていくと、こんなふうな形を想定しているわけでございます。
  53. 高橋令則

    ○高橋令則君 それから、今度の改正獣医師等の届け出先が市町村長から都道府県知事に変わったんですね、その理由。それから、そうすることによって家畜防疫上の都道府県市町村の役割が変わってきたのかな、このように思いますが、その点についてはいかがですか。
  54. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 御指摘のとおり、今回の改正案におきましては、家畜伝染性疾病届け出先が、従来は市町村長だったものを都道府県知事に変更すると、こういうことをやっております。  これは、法制定当時から市町村長への届け出という形をとっていたわけでございますが、これは昭和二十六年につくられた法律でございます。交通・通信手段自体も今日のように発達はしておりませんでした。家畜が法定伝染病等にかかっていることを発見した場合には、獣医師などは一番近い行政機関ということで市町村長に届け出お願いして、市町村長さんから直ちに都道府県知事に伝えられると、こういうような体制をとっていた、こういうことでございます。  ただ、今日、畜産農家の戸数自体も大変減ってまいりましたし、交通・通信手段も普及してまいりました。また実際に、現在地域におきます家畜防疫の第一線は県の家畜保健衛生所でございまして、ここに置かれている獣医師さんを中心とした家畜防疫員が第一線での現実の家畜防疫を担っているというのが実態でございます。  そういった状況対応いたしまして、特に初期対応の迅速化を図るという見地から、第一報の届け出先を市町村長から都道府県知事に変更いたしまして、都道府県知事から市町村長さんに伝えると、こういうような形で初期対応ということに遺憾がないようにというふうにしたのが今回の改正の趣旨でございます。  ただ、もちろん市町村というのは地域におきます家畜生産というものに最も密着した地方公共団体でございますし、畜産農家の生産活動を支援するという観点から、いろいろ生産者の自主的な防疫活動の推進とか、家畜防疫員の皆さんの活動の円滑化ということに御協力をいただいているわけで、そういった位置づけは今後とも変わらないということだろうと思っております。
  55. 高橋令則

    ○高橋令則君 先ほど岩永委員から御質問がありまして、私はその必要がないなと思いましたので、これはあわせて要望を申し上げたいんですが、家保の充実が非常に大事なんですね。今度の改正から見て一層大事になったというふうに思います。そういう意味で、家保の充実整備、家畜保健衛生所の機能の充実整備に今まで以上に意を配っていただきたいと思うんですね。  家畜保健衛生所病性鑑定機能といったものが特記して付加されたのはたしか四十六年改正のときでしょう。当時、私は農政部におりまして、この病性鑑定機能をつけるためにある一カ所に集中しまして、盛岡に集中して、そして全部建て直していろんな施設整備をやったんですけれども、今思い出してみて大分古くなったなと。古い話になりましたが、その後ちゃんと整備しているんだろうなとちょっと心配になってきたんですけれどもね、こうなってきますと。当然その後、国としてはいろんな対策を講じていらっしゃると思いますけれども、こういう法改正のような大きな時期に合わせて予算的にも対応してきちんと整備するということは非常に大事でございますので、ぜひ大臣にも御努力をいただいて、家保の機能強化に意を配っていただきたい、これはお願いを申し上げておきます。  それから、時間も来ましたので、輸入検疫のことで一つだけお伺いしたいと思います。  今回、電算化ということで手続的には非常に通関、いわゆる関税局の方の通関システムとも連動するということで、これは関税局の方の改正の際もいろいろお聞きをした記憶がありますけれども、それはそれとして、これは役所としても、そしてまた、何よりも手続をする一般の方々、業者の方々にとってメリットがあるということでなければ困ると思うんですけれども、そういった今回の電算化のメリットといったものについて局長からお聞かせをいただきたいと思います。
  56. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 現在は、畜産物等を輸入された方は動物検疫所に届け出をいたしまして輸入検査を受けなければならないわけでございますが、そのための申請書というのを直接動物検疫所に提出しなければならない。そして、検査が終わった後、検疫証明書というものの発行を私どもの方でいたしまして、それを持って税関を通ると、こういうような事務というか、手続が必要だつたわけでございます。  それが、ただいま御指摘の電子化によりまして、コンピューターに申請を打ち込むことによってすべての手続、税関であるとか私どもの動物検疫とかあるいは植物検疫、食物の検疫、こういうものをインターフェースで一挙に処理ができる。それから、私どもの方が発行しておりました輸入検査証明書につきましても、それが電子回路を通じて税関の方に届けられることによって、それをわざわざ持参しなくても通関ができると、こういうふうなことでもって届け出、輸入をされる方にとっては大変実務的に楽になるという意味では朗報ではないかと思っております。  これについては、今私どもが一番最後でございまして、この法律改正がお認めいただけました場合には、そういった装置が既に整えられている各場所では私どももそれに参加をするという形で、できるだけ早期に実施が可能になるように努力をしていきたいと思っております。
  57. 高橋令則

    ○高橋令則君 ありがとうございました。  法をめぐる問題はこの程度にしまして、時間も時間でございますので、大臣に一般的な問題について二つ三つお聞かせをいただきたい、このように思います。  一つは、今一連のいろんなやりとりをお聞きになられまして、これまでの我が国の家畜防疫対策の成果といったものをどのように評価をしておられるか。そしてまた、ある程度問題点も含みながら来たわけで、それに対して今回手当てをされたわけですが、そういったものについての御認識、そして今後この家畜防疫対策に取り組んでいかれる展望と申しますか、抱負と申しますか、そういったことについて大臣の所見をお聞かせいただきたいと思います。
  58. 藤本孝雄

    ○国務大臣(藤本孝雄君) 家畜伝染病予防法に基づきまして各般の防疫措置を実施しております。法定伝染病発生は、その実施によりまして近年平静に推移をしておる、そういう認識をまず持っております。  しかしながら、これまで国内で見られなかったような疾病が次々と発生しているという状況、また食肉などの輸入量の増加などに伴いまして海外からの家畜伝染性疾病の侵入機会が一段とふえている、こういう状況も考えますと、これらの状況に対処いたしまして効果的な家畜防疫体制をつくっていく、そのための今回の法改正ということでございまして、この改正によりまして効果的な防疫体制が確立てきる、そのように考えております。
  59. 高橋令則

    ○高橋令則君 次に、地方分権とのかかわりについてお聞かせをいただきたいと思います。  地方分権推進の時代でございます。一方、この家畜衛生家畜防疫事務も国と地方にまたがる事務でございまして、この間の整理が今日的な課題でございます。  地方分権推進委員会の第一次勧告ですと、従来の機関委任事務を廃止して、これに伴って自治事務と法定受託事務に再編成をされるわけですけれども家畜伝染病予防法関係もこれに絡んで、発生予防は自治事務、そしてまた蔓延防止は受託事務と、このような形になるのかなというふうに思いますが、これについて、防疫事務の実効性の確保という観点も含めて大臣の所見をお尋ねしておきます。
  60. 藤本孝雄

    ○国務大臣(藤本孝雄君) 今、委員が申されましたように、自治事務と法定受託事務、この二つの関係がございます。  事務の一部を地方公共団体の事務、つまり自治事務とすることと地方分権推進委員会の勧告でされておるわけでございますけれども家畜伝染病は県境を越えて急速に蔓延をすると、その事務の性質上からいたしますと、全国的視点で実施することが不可欠でございますので、都道府県に対する国の指示を行えるように、そういう防疫事務の実効性が確保されるように対応していくということが大事でございまして、その点からいたしますと、家畜伝染病蔓延防止に関する事務都道府県の法定受託事務とするということであろうかと思います。  今後とも、国が責任を持ってこのような危機管理に万全を期すという観点に立って努めてまいりたいと考えております。
  61. 高橋令則

    ○高橋令則君 最後でございますけれども、先ほど局長が話をされた、今回の改正をする過程で懇談会でしたか審議会でしたか、憲法二十九条、私的財産権の保障との問題で一部疑問を提起された委員もおられたというふうにちょっと聞いたんです。先ほど岩永委員も話をされたように、いわゆる多頭飼育がどんどん進んできますと、伝染病発生したときに処分と財産権の問題で、これはもう畜産農家はわかっているわけですけれども、非常に被害が大きくなる。そうしますと、やっぱり権利の問題とかいろんな問題が出てくるのかなということでちょっと私も別な意味で心配をした一人でございます。処分指針マニュアルの策定でありますとか、処分後の経営再建の対策とか、そういったことも場合によっては必要になろうかなという感じもしますので、そういう点にも配慮をしていただきたいと思います。  いわゆる畜産農家に求められるそういう公益的な要請としての家畜防疫、衛生に対するコミットメントと、その個人の財産権を守らなきゃならないという問題との関係については十分理解をしながら常日ごろきちんと徹底をしていかれるということが大事ではないかな、こう思いますが、大臣のお考えをお聞かせください。
  62. 藤本孝雄

    ○国務大臣(藤本孝雄君) まさにそのとおりであると私も考えております。  憲法第二十九条は、第一項で「財産権は、これを侵してはならない。」、財産権を保障しております。また、第二項で「財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれは定める。」、さらに第三項で「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」と規定しておるわけでございまして、この規定に基づいて適切に対応していきたいと考えております。
  63. 谷本巍

    ○谷本巍君 初めに、口蹄疫と狂牛病問題に関連して若干お伺い申し上げたいと存じます。  初めに、口蹄疫の問題でありますが、台湾の衛生当局が材料を入手したのが三月の十四日、口蹄疫と判定したのが三月の十九日ということであります。新聞報道によりますというと、このころ既に十の自治体で口蹄疫が発見されたというふうに伺っております。我が国が輸入禁止をいたしましたのは、二月二十一日以降屠殺のものということにしております。そうしますというと、台湾の衛生当局が材料を入手した三週間ちょっと前ということになるわけであります。  どうもそれ以前に口蹄疫というのが発生していた可能性がありはしないのか。ないという前提に立って二十一日という日にちを決めたのでありましょうけれども、その根拠は何なのでしょうか。
  64. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 初めに、まず私ども三月二十日に第一報を伺いまして、当然、台湾側当局におきましても輸出禁止という措置を講じたと。その日以降、台湾から出ていくものは当然のことながら、どんなものでも我が方としては受け入れ不可能であると、これがまず大前提としてございます。  既にもう台湾から出て我が国に入ってきているもの、こういうものの取り扱いのお話でございますが、その点につきましては、私どもは三月十四日に口蹄疫と疑う臨床症状最初確認されたと、こういうふうな台湾当局のお話と、それから口蹄疫最大潜伐期間通常は四日ないし五日程度と言われておりますが、最大潜伏したとして二週間というのがOIE等でも認められた期間でございます。そこで、三月十四日という日を起点といたしまして、実は二週間でございますが、一週間安全を見込んで三週間前ということで、二月二十日という日を設定いたしまして、それ以前には台湾には口蹄疫は侵入していなかったと、そういう前提でもってお話しのような輸入禁止措置の対象の起点の日をそこに定めた、こういうことでございます。
  65. 谷本巍

    ○谷本巍君 台湾口蹄疫ウイルスが侵入したのは、汚染物質の密輸が原因ではないかというふうに言われております。ということは、例えば台湾と沖縄の関係にいたしましても、台湾と中国とは、これは別でありましょうけれども、距離的には似たようなものであります。そして、そういう中で仮に密輸入のようなものがあったとしても、これはまあ不思議ではなかろうというふうに判断することもできるだろうと思います。  一番問題なのは、どうもこの密輸の問題というのが取り締まりが難しいのではないのかと。でありますから、密輸対策も含めて、どういう侵入防止対策をとっておるのか、簡潔にひとつお答えいただきたい。
  66. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 家畜畜産物の輸入禁止については、先ほど申し上げたとおりでございます。そのほか講じております措置といたしましては、航空会社等を通じまして、一般旅行者が台湾から畜産物を持ち帰らないこと、これの周知徹底に努めているということと同時に、帰国された方々の靴の底を消毒するという措置を講じたいということで、これも航空会社にお願いを申し上げまして、今那覇空港では始まっております。そのほかの空港においても、順次そういった措置で万全を期していきたいと。  それからもう一つは、我が国におきます生産、輸入あるいは食肉加工、流通関係者を対象といたしまして防疫対策説明会を開催いたしまして、輸入禁止措置の内容や、本病の防疫の重要性ということをお話し申し上げると同時に、先ほどの二月二十日より後に屠殺された肉で二十日より前に我が国にもう入ってきておるものがございまして、これについての自主回収等をお願いし、加熱等の処理をして菌の汚染源にならないようにという措置を実施しておるところでございます。  それから、新しい話といたしまして、台湾から大分稲わらが我が国に輸入されております。この稲わらは、御承知のとおりそのまま畜産農家に持っていって使われるということで大変危険ではないか、こういうことがございますので、口蹄疫ウイルスを媒介するおそれのある台湾産稲わらについては、輸入検査と消毒ということをお願いしておりまして、侵入防止の徹底を図る、こういうふうなことをやっております。  それから、最後に密輸というようなお話がございました。そういった面でも、実は船舶による台湾からの豚肉等の不法持ち込みの監視の徹底、これは海上保安庁の当局に私どもの方からお願いを申し上げました。さらに密入国者による台湾からの豚肉等の不法持ち込みということも考えられるわけで、その辺の防止の徹底を法務省あるいは警察庁の担当部局にお願いを申し上げていると、こういうような手を現在までのところ打っているという状況でございます。
  67. 谷本巍

    ○谷本巍君 そうすると、密輸対策はそれで万全だというぐあいに伺っておいてよろしいんでしょうか。
  68. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) なかなか大変難しい課題だろうというふうに思っておりますが、率直に申しまして、私ども、もちろん各動物検疫所を通じまして税関等に畜産物等の輸入についての目を光らせていただくということについて強化お願いし、私ども努力しておりますが、大変広い我が国の海岸線全般にわたって密輸等の防止を図るということになりますと、やはり海上保安庁当局なりそういうところにお願いをすることになるわけでございます。今そういうことでお願いを申し上げ、その点については快く、可能な範囲で協力をいただくという御返事をいただいているところでございます。
  69. 谷本巍

    ○谷本巍君 それからもう一つ気になりますのが、これは狂牛病の方の関係でありますが、輸入飼料と狂牛病の問題であります。御存じのように、狂牛病というのはこれは言うならば人間がつくった病気だとも言うことができると思います。牛の主食は草であるのに対して、羊が持つ病原体を含むたんぱく飼料を与えたのが原因だからであります。  ところで、家畜伝染病予防法では輸入飼料は対象にしていないわけですね。輸入飼料による狂牛病侵入防止対策というのはやっているのかいないのか、そこはどうなんでしょうか。
  70. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) ただいま先生指摘のとおり、イギリスでの狂牛病の発生要因というのは、加熱不十分な羊の肉あるいは骨粉等がえさとして使用された、そこに起因するのではないかというふうに言われております。それから、英国以外における発生例におきましても、英国からの牛の輸入あるいはそのイギリスから輸入した加熱が不十分であった動物性飼料、これの給与が原因ではないかというふうに言われているわけでございます。  したがいまして、輸入飼料を介した本病の侵入ということは我々も防止しなければならないということでございまして、具体的な方法というか、手としては、まず第一にイギリスでは牛の肉骨粉等をえさとするということは一九九〇年からそういうことは実施しておりません。これがまず第一点。  それから、昨年三月、この狂牛病の問題が大きく取り上げられましたときに、英国からの牛肉加工品と並んで加工原料として使われる牛の肉骨粉、これは輸入されるものでございますが、これについてもイギリスからは輸入禁止という措置を講じました。したがいまして、我が国に狂牛病で汚染された飼料というものが輸入される可能性ということは一応これでとまっている、こういうことだろうと思います。  ただ、もう一つの問題として国内の綿羊等の肉骨粉、これを反すう動物用に使うということがあってはならないということで、これは従来、調べましたところほとんど利用されておりませんでした。  ただ、今般の英国での狂牛病の発生に関連いたしまして、飼料の安全の確保に万全を期するということで、昨年四月に綿羊等の肉骨粉等が反すう動物の飼料原料として使用されるということについては、そういうことをしないように関係業界に対して指導を徹底し、現在もフォローしておりますが、全く使われていないという状況にございますので、一応手は打たれたというふうに私どもは考えております。
  71. 谷本巍

    ○谷本巍君 日本の場合は配合飼料に魚粉というのを随分使ってまいりましたが、外国の場合は、これは御存じのように死んだ家畜の肉、骨などを大分使っておるというふうに聞いております。この狂牛病発生以前でも日本でそういう家畜の粉を配合飼料で使ったという話などもども聞いておるのであります。  この種の問題については、どうもえさ問題というのは対象にしておりませんけれども、これからはやっぱり行政的に見てきちっと位置づけというか、この場合も調査検討の対象にしていく必要があるのではないかと思うのだが、いかがでしょうか。
  72. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 一応そういう形で私どもとしては現時点ではそれなりの手は打っているわけでございますが、確かに御指摘のとおり、えさの安全性の確保という意味で、ただいま先生から御指摘いただいたことを含めてさらに万全を期し、検討を続けていきたいというふうに思います。
  73. 谷本巍

    ○谷本巍君 そこは新しい問題でありますので、ひとつ研究、検討をぜひお願いしておきたいと思います。  次に、大臣に伺いたいのであります。  狂牛病は人間がつくった病気であります。それは、不自然な飼育方法が生んだものと言ってよかろうと思います。なぜこういう状況が生まれてきたのか、問題は私はそこにあると思います。  生産の低コスト化、そのために自然な生産のあり方、安全性が二の次にされがちになってくるというのが最近の一般的な傾向とも言われております。したがって、検査検疫のたぐいの体制はますます強化しなきゃならぬという状況になってきた。ところが強化をしても、一方で競争は激化してきますというと、これまでやってきたような不自然な生産というのがさらに広がっていく可能性というのが私はあり得ると思うんです。悪循環ですよ。  そこで、どういうふうにすればいいかとなってくるかというと、これはやっぱり生産のあり方と食べ方を変えなきゃ私はしょうがないだろうと。それがどうやら根本的な解決になってくるのではないかというふうに思います。つまり、つくり方、食べ方を変えることが必要になってきているのではないかということであります。  ということは、生産と消費が遮断をされて、生産の側はもうかりゃいいと、消費の側は安けりゃいいと、こういうふうな状況というのが広がってくる。そして、生産と消費というのが信頼関係で結ばれなきゃならぬものが、そういう状況でなくなっていった。そして、その距離というのが国内からさらに外国へと広がっていったと、こういう現実。どうもここのところと競争の原理というのが生み出した問題ではないかと私は思うのです。  そうしてみますと、生産と消費の関係を近づける、最近市民運動団体などがよく言っております顔と顔との見える関係、こういう中で生産と消費をやっていく必要があるのではないのかということが言われてきているところであります。つまり、地域自給、国の自給、ここを基本に据えないとどうやら根本的な解決が得られないのではないか。  したがって、本改正法案のような、さらに何といいましょうか、検疫体制をしっかりさせていこうというようなこととともに、食糧の自給を引き上げる、そこのところに根本的な姿勢を置かなければ問題解決が得られないのではないかと思うのだが、大臣の所見を承りたいのであります。
  74. 藤本孝雄

    ○国務大臣(藤本孝雄君) これはなかなか難しい問題でございまして、食糧の自給率という問題にまでさかのぼっていくという委員の御指摘であったと思います。  基本的には、二〇二〇年の食糧、エネルギー、環境のパニックという問題が今言われ始めておるわけでございまして、このことにつきましては我々も十分に今後念頭に置きまして対応していかなきゃならぬ非常に大きな課題だと思っておるんです。総理もよく言われております、APECで、一昨年の大阪会議でこの問題が取り上げられまして、日本だけではなくてアジア全体につきましてもこのような認識を持っている今の状況でございます。  一方、総理府の世論調査におきましても、将来の食糧について供給に不安を持っている国民が大多数いるという結果であるとか、それから少々高くても日本人は日本でできたもの、生産されたものを食べたいということを多数の人が考えているというようなこと。それと食糧の自給の関係を考えますと、人口増に対して農業に対する投資が必ずしもそれに対応しないという現実。また、食糧の供給がそれに対応できないという現状、現実。そういうことが予想されますので、そういうことからいたしますと相当この問題は深刻な問題になってくるというふうに思います。  これは私個人の考え方でございますけれども、まさに農政の基本的な方向としては、食糧の自給率をどう持っていくかということは極めて基本的な問題でございますので、これは四月、まさに今月からスタートいたします食料・農業・農村の基本問題に関する調査会で本当に十分に議論していただきまして、この問題はきちっとした答えを出していかなきゃならぬと思うんです。  その場合に、やはり農業の所得の問題があろうかと思いますし、また担い手の育成という問題もございましょうし、それから耕地面積という問題もございましょうし、いろいろな問題があろうかと思うわけでございます。そういう点もきっちりした議論を積み重ねていただいて、将来の食糧問題が心配のないように、少なくとも今よりも自給率が上がるように持っていかなければならない、そのような非常に大きな大事な課題だというふうに思っております。
  75. 谷本巍

    ○谷本巍君 防疫の規制を解いていけばいくほど安全性確保の措置は強化されなきやなりません。そういう立場で見てみますと、これは概括的に今度の法案を見てみますというと、これまですべての家畜伝染病を対象にしてきたが、この新しい法律案では監視伝染病に限定するということにしております。そうなってきますというと一体どうなのか。手抜き合理化ということになりゃしないのか。とりわけ、輸入検疫国内防疫体制はどうなっていくのかということが案ぜられるのでありますが、その点いかがでしょうか。
  76. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 今回の改正におきましては、御指摘のとおり、監視伝染病、いわゆる法定伝染病届け出伝染病というものを対象にした輸入検疫を行うというふうな改正案ということになっているわけでございます。  これは、現在実は届け出伝染病自体はたしか十五でございましたか、かなり限定的に書かれているわけでございます。私ども国内での監視体制をつくっていく、そういう中で届け出伝染病については家畜飼養の実態なりあるいは伝染病の実情というものを踏まえてできる限り幅広く届け出伝染病の範囲については拡大をしていく、こういうことを考えております。  したがいまして、検疫の対象にならない伝染性疾病というのは既にもう国内的に常在している、それは家畜飼養者等による自主的な防疫措置なり一般的な家畜衛生施策で対応が十分可能だ、こういうものにごく限られたものになる、こういう前提で制度自体を仕組んでいく。こういう方向で対応したいと思っておりまして、そこは決して手抜きとかそういうふうな形にはならないようにしてまいりたいと考えております。
  77. 谷本巍

    ○谷本巍君 これまでの動物検疫体制の推移を見てみますというと、指定港それから家畜収容可能頭数などの増大とともに家畜防疫官の数もふえてまいりました。昭和四十五年対平成八年で見ますというと、それぞれが約三倍というようなことでふえてきております。  この間の状況というのは非常に大きく変わってきた。どういうふうに変わってきたかと、冒頭に岩永先生から御指摘がありましたように、畜産農家の一戸当たり飼養頭数が非常にふえてきたし、密集飼いという状況が一般的になってきた。そして、他方では原因不明の悪質な病気もふえてきたというような状況変化があるわけであります。したがって、動物検疫は重大になってきたし、検疫体制強化しなきゃならぬということになってくるわけであります。  私は今、指定港、家畜収容可能数と家畜防疫官の数の問題で申し上げましたけれども、そうした点を踏まえて、今後の警備体制づくりをどう考えておるのか、お聞かせいただきたい。
  78. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 現在、全国六十二カ所の海港、空港におきまして、そこを検疫場所ということで定員二百五十九名の家畜防疫官のもとで検疫を実施している、そういうような体制を組んでいるわけでございます。  ただ、近年の家畜畜産物の輸入動向でございますとか、特に地方の空港等におきまして国際化が進んでいる、こういう状況から、いろいろ新たな指定港の増加ということについて要望も寄せられております。  私どもといたしましては、そういった皆様方の御要請にこたえて、施設の整備、防疫官の確保、あるいは予算の確保という面でできる限りの努力をして、そういった要望にこたえつつ、十分な家畜検疫の体制確保できるように引き続き努力をしていきたいと思っております。
  79. 谷本巍

    ○谷本巍君 終わります。
  80. 一井淳治

    ○一井淳治君 ちょうど谷本議員から動物防疫について質問がありましたので、まずその件に関連して、私からも質問をさせていただきます。  岡山県内に水島港という港がございます。ここでは年間の貨物取扱量が約九千五百万トン、これは平成六年の統計数字でありますけれども、全国第六位に達しています。そして、外国との定期航路も非常に増加しつつある。また、周辺には相当数の飼料メーカーが立地しておりまして、配合飼料の原料でありますいろんな飼材について動物検疫を必要としています。  地域の経済の発展のためにも、このあたりで水島港においても動物検疫を実施していただきたい、指定港としていただきたいという要望が非常に強いわけであります。特に御配慮をお願いしたいのでありますが、いかがでございましょうか。
  81. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 指定港についての基本的な考えは先ほどの谷本先生の御質問にお答えしたとおりでございますが、ただいま御指摘の水島港につきましては、御指摘のとおり、現在は指定港の指定はされておりません。ただ、ただいま先生から御指摘ございましたように、岡山県当局から具体的な計画をもとに指定港としての指定を我が方に要請が来ているという状況がございます。  私どもといたしましては、具体的なそういった運行計画なり輸入計画ということを踏まえて、今後必要な予算の確保を含めて指定に向けて検討していく、こういうことで対処をしたいと思います。ただ、それぞれ予算措置その他が必要でございますので、当面の目標としては次の年度変わりと、こういうふうなことが目標かなと考えております。
  82. 一井淳治

    ○一井淳治君 この指定港につきましては、指定検疫物の種類というのがございます。水島港の場合は、特に今必要としておりますのは肉粉、骨粉、血粉という種類であります。そういったものにつきましては、例えば岡山空港の場合は神戸から御出張いただいているとお聞きしておりますけれども、そういう御出張の体制でやっていただくとなれば、特に来年度の予算とまでいかなくても、場合によっては今年度中に御配慮を賜るということもあり得るんじゃなかろうかと非常に期待しているわけでございますけれども、どうなんでしょうか。
  83. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 基本的に私ども、もちろんこれから県当局と御相談をする中でいろいろ議論をしていくことというふうに思っておりますが、別にどこどこの、何と申しましょうか、例外的に取り扱うということを抜きにいたしまして、基本的にはそれぞれ必要な予算措置がございますので、それが可能になった時点で対応していく、こういうことで行っておるということで御了解をいただきたいと思うわけでございます。
  84. 一井淳治

    ○一井淳治君 こういう場で余りこの種のことを質問するのは適切でないかなという気もするわけでありますけれども、非常に需要があるわけでございますので、いろいろの御配慮をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いしたいと存じます。どうなんでしょうか、今年度中には絶対だめだという状況なのかどうか、その辺をちょっと。
  85. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) ちょっとその辺につきましてはまた後ほどお答え申し上げたいと思いますので、ここではお許しをいただきたいと思います。
  86. 一井淳治

    ○一井淳治君 次に、家畜伝染病対策であります。  先ほど来御質問に出ておりますように、全く急に発生して急に拡大していくという、非常に対策の困難な問題であると思います。そして、危機管理と言えばやや大げさかもしれませんけれども、これは最近のマスコミの伝える動燃などの状況をお聞きいたしますと、例えばマニュアルなんかきちんとできておるらしいんだけれども現実の場面ではそれがそのまま実行されないということもあるようでありまして、やはり職員の方の日ごろの責任感とか敏速な活動力とかそういった対応が一番大事じゃないかと思うわけであります。  そういうことで、国内で突発的に発生した際の緊急的な対策、これが十分にそういう緊急体制ができておるのかどうか、職員が即応できるような状態が確保されているのかどうか、その辺について御所見をいただきたいと思います。
  87. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 口蹄疫等の海外悪性伝染病に関しましては、万一これが我が国国内発生をした場合にどういうふうに対処をするか、大変大きな課題だというふうに我々受けとめております。  このために、既に二十年以上前からになりますが、海外悪性伝染病防疫要領というものを定めておりまして、具体的に一定の地点で発生した場合、それぞれ市町村都道府県、国、どういうような体制を組み、初動的にどういうことを行い、どういう対応をしていくかということを事細かに定めたマニュアルがございまして、基本的にはそれに従って、万一発生の場合の第一弾としての活動が開始される、そういうような一応の手順を持っているわけでございます。  ただ、御指摘のとおり、それがあるということをもって十分というわけにも必ずしもまいらないわけでございまして、私ども都道府県お願いをいたしまして、図上作戦というか図上での演習ということを一定程度繰り返してやってほしいということをお願い申し上げているのと同時に、やはりこういう問題、万が一起きたときには対応する人の資質というか責任感というかそういうところが非常に大きいわけでございます。  こういった業務の円滑な推進を図るということから、都道府県家畜防疫員の大宗を占める家畜保健衛生所職員に関しまして、国の主催によります家畜衛生講習会というものを、いろいろ総論の部分あるいは個別のいろいろな部分にわたりまして高度な専門的知識あるいは新技術の習得を含めて開催をしております。生産現場で活躍している民間獣医師についても家畜保健衛生所でまたそういう日常業務とあわせて講習を受ける、そんなふうな活動を通じて技術水準を上げると同時に、そういったいわば危機管理と申しましょうか、万が一のときにどういうふうに対応をするか、そういうことについての研修というか、そういうことに努めている、こういうような状況でございます。
  88. 一井淳治

    ○一井淳治君 予防あるいは蔓延の防止という観点からした場合に、五十一条にあります家畜防疫官または家畜防疫員の畜舎等への立ち入りあるいは動物その他の物の検査、血液等の採取というふうなものが非常に大きく自後の対策に影響してくると思うわけであります。  そこで、家畜防疫官あるいは員の方々が遠慮しておったらいけない、相当思い切って状態を強力に把握するということが大事だと思うんですけれども、この五十一条の趣旨、例えば畜舎の主が反対しておってもそこにぐっと抵抗を排して入り込んで動物の状態を見ることができるとか、抵抗をどの程度排することができるのか、この強制力の行使の程度ですね、そのことについて、五十一条の趣旨について御説明いただきたいと思います。
  89. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 実際の実例で、五十一条に基づく立入検査、施設等に立ち入り動物等の検査をしたり関係者に質問をしあるいは検査のために動物の血液等を採取するということに関して、基本的にはその飼養者の御協力というか同意をいただいて実施をしているというのが大部分でございまして、そういう緊迫したというか対立的な場面ということは余り実例としては聞かないわけでございます。  基本的にこの検査につきましては、こういった検査あるいは採取等についてその飼養者なり管理者が拒否した場合には五万円以下の罰金に処せられると、こういうような厳しい規定がついているものでございます。家畜防疫官なり家畜防疫員として当然に権力の行使として強制的に実施し得るものと、そういう位置づけでもってこの規定を活用して立ち入り等を行う、こういう心構えで対処をしているところでございます。
  90. 一井淳治

    ○一井淳治君 もう一つお伺いしたいのが十七条でありますけれども家畜を殺すことの命令を出すことになっているんですね。家畜所有者がこの命令に反して家畜を殺さない場合、これもまずないと思うんです。今お答えがあったように、農家の方の協力があるのが普通なんですけれども、しかし命令しても相手は殺さない、十七条を真正面から適用した場合、どのようになるんでしょうか。
  91. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) いわゆる殺処分の命令、こういうことでございますが、家畜伝染性疾病感染した動物というのは、いわばその原因となった病原体というものを濃厚に体内に持っていて、周囲に対する感染源になる、こういうことでございますので殺処分により可及的速やかにその感染源を絶つ、清浄度を維持するということが家畜防疫上どうしても必要だ、こういうことから殺処分命令と、こういう制度があるわけでございます。  そういったことを家畜の飼養者に理解をしていただくということを通じて、基本的には御協力をいただいているわけでありますが、この規定に関しましても万一行政当局の殺処分命令について同意をしないということの場合には、ぎりぎり最終的な法的手段としては行政代執行を行うということを含めて強制的に実施し得るものと、こういうふうな考え方で我々は対処をしているところでございます。
  92. 一井淳治

    ○一井淳治君 この十七条の規定から、もろにいくんではなくて、ほかの法律の代執行を使うということなんですか。
  93. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 基本的にはこの十七条の規定に基いて殺処分命令を出す、また十七条の二項にはその飼養者等がいない場合にはみずから殺すことができる、こういう規定もございますので、これで対処するというのが本筋だというふうに考えております。  ただ、どうしてもそれに対して言うことを聞かないということが万が一起こりますれば、行政代執行法による措置も可能ではないかというふうに我々は思っております。
  94. 一井淳治

    ○一井淳治君 次に、一年以内に限って政令を定めまして、動物の種類、疾病の種類、あるいは地域を定めて蔓延防止規定を適用するということになっております。今回のこともそれと同じようなことであったわけでありますけれども、一年以内の期間を限って政令で定めたという場合に、この期間内に法律が制定されなかった場合にどうなるのかということが一つは問題になってくるんですけれども、どのようになるんでしょうか。
  95. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) この六十二条で一年以内に限ってというふうに規定されておりますのは、本来国民の財産権なりそういうものをかなり制約する、いわば先ほどお話が出ました殺処分であるとかそういうところまでつながる規定を動かすというものを法律なしでやるという意味において政令で行えるのがこれが限界であるぞと、これを超えてまだやる必要があるのであれば、当然法改正をして対処すべきであるというのが基本的な趣旨であろうというふうに私ども受けとめておりまして、今回の改正も一部そういったことが内容に含まれているわけでございます。  もし、万が一法律改正ということが不可能であった場合どうなるかということに関しましては、そういった法令の本来の趣旨からすれば、そこで政令は失効し、そういう措置はとれなくなるということでございましょうが、それはそれぞれの場面においてそういう事態でそういうことを迎えるのか、さまざまな状況がございますのでその場での判断ということに相なるかと思いますが、基本的には政令は失効して、措置が講ぜられなくなるという状態が現出するというのが基本的な考え方ではないかなというふうに思います。
  96. 一井淳治

    ○一井淳治君 政令自体にはその一年後のことは書かれていないんですね。そういたしますと、例えば法の二十三条のような焼却義務というものは、焼却はできなくなってしまうということでよろしいわけでありますけれども、二十四条は、もう既に家畜死体等を埋めているわけですね、埋めたものを掘ってはならないというわけです。政令が消滅するともう掘ってもよろしいというふうになるのか、あるいは政令が有効なときに埋めたんだから、それはもうやはり同じように埋めたものは掘ってはいけないんだということなのか。そのあたりもやはりきちんとこれからはしていただく必要があるんじゃないかという感じがいたします。  それで、今おっしゃったように、単純にこの政令の効力が失効してしまうんだと。そして、蔓延防止等の措置ができなくなるんだといって終わりになるものでもないような気がするんですが、いかがでしょうか。
  97. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 先ほど私がお答え申し上げましたのも一種の仮定の話を申し上げたということでございまして、基本的には、例えば伝染性海綿状脳症に関しましては、今回法改正ということで正規の法定伝染病として指定をするということをお諮り申し上げているわけでございますが、そういった形で措置をされていくというのが基本的な姿であろうというふうに思っております。  万が一、突発的な状況によってそういうことができなかったときどうかという状況に関して、理屈の上でいえばそういうこともあり得るということでお答え申し上げたというふうに御理解をいただきたいと思います。  それと、例えば今お話のございました二十四条等については、法的に有効な状態で例えば焼却処分が行われたということであれば、この二十四条は仮にそういった政令が失効しても当然その規定自体は働いていると、そういうふうに私どもは考えて対処していけるものだと理解をしております。
  98. 一井淳治

    ○一井淳治君 そういったことがないように、そういう政令を、一年の時限の政令を定められた場合には、例えばその問題だけ切り離して臨時国会等にお出しいただくというふうになれば、非常に我々も何といいますか、三月の末までに幾つかの法案を一生懸命上げなくちゃいけないということで大変厳しい状態になるわけですけれども、そういったことがなくて済むわけですから、今後はそういったことも御参考までに頭に入れておいていただきたいと思います。  次に、獣医師さんの問題について質問をさせていただきたいと思います。  たしか平成四年に法改正をした記憶がございます。これはたしか獣医師さんの高齢化が大変進んでいくと、そして産業動物に対する獣医師さんが不足をして畜産業の発達に支障を生ずるんではなかろうかということも危惧されておったわけであります。  そういった中で、獣医師さんの法律改正されましてかなり整備がされてきておるんではないかと期待しておるわけでございますけれども、そのあたりについて御説明お願いしたいと思います。
  99. 藤本孝雄

    ○国務大臣(藤本孝雄君) 先ほどの水島港の問題、私も勉強させていただきますので、そのようにお含みくださいませ。  それから、獣医療法制定後の産業動物獣医師の問題でございますが、これは先ほど言われましたように、平成四年、獣医療法が制定されまして以降、産業動物獣医師確保するために、産業動物獣医師を志向する学生への修学資金の給付であるとか産業動物獣医師の臨床研修、また産業動物診療施設の整備に必要な長期低利資金の給付などの対策を積極的に推進しております。  その結果、産業動物開業獣医師を含めました産業動物獣医師の数はほぼ同水準で推移しておりまして、平均年齢もやや改善の方向にございます。  なお引き続きまして、産業動物に対する適切な獣医療の提供がなされますように指導してまいりたい、このように考えております。
  100. 一井淳治

    ○一井淳治君 獣医師さんは、都道府県では家畜防疫員として非常に御活躍いただいておるわけでありまして、家畜保健所の中でも非常に重要な役割を果たしておると。そういった方々の養成と、そしてこういった方々が大勢出てきて畜産業の振興のために大いに働いていただけるように、今後ともいろいろの御配慮や御指導をいただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
  101. 須藤美也子

    須藤美也子君 今回の改正案は、家畜伝染性疾病危険度を再確認し、法定伝染病に狂牛病を含む五つの伝染性疾病を追加し、予防体制の確立のために獣医師に新疾病届け出義務を設けたことについては評価いたします。  しかし、問題点は、国内の予防体制の対象家畜伝染性疾病を、家畜伝染性疾病から特定疾病または監視伝染病に範囲を制限するとともに、先ほど答弁もありましたけれども、プルセラ病、結核病、馬伝染性貧血の検査業務をなぜ廃止されたのか。もう一つは、豚丹毒など三種類を伝染性疾病から削除する理由は何なのか。この二点を先ずお聞きいたします。
  102. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 初めに、結核病、プルセラ病に関連したお話でございますが、本法制定当時、このプルセラ病、結核病あるいは馬伝染性貧血、いずれも国内に大変広く蔓延をしており、速やかな摘発、淘汰、こういうことが要請されていたわけでございます。  特に、これらの病気は、慢性病でございまして、感染初期での発見、処置ということがなかなか行れがたいと。こういうことで、法律上、定期的な検査ということを法定いたしまして、患畜の淘汰を繰り返して、清浄化を図ってきたと、こういう経緯がございます。こうしたことを積み重ねてまいりました結果、ブルセラ病及び結核病については、かなり清浄化が進みました。  途中経過としては、両疾病の清浄度が進んで蔓延のおそれがない地域については定期検査の義務を免除して、なお危険な地域について検査を継続すると。あるいは五十年以降は、いずれかの病気について清浄化した地域については検査義務を免除する等、必要なところに防疫体制強化しながら絞っていくと。こういうふうな形で、清浄化に向けて一歩一歩、歩んできたというような経過がございます。  こういったことで、冒頭申しましたように、かなりの改善を見ているわけでございますが、近年、散発的になっているとはいえ、まだ二つの病気とも注意すべき病気であるということは言うまでもございません。  したがいまして、現時点でも、既に清浄化されているという地域については、今回の改正法により新たに設けることとした監視体制のもとで、サーベイランス体制のもとで、具体的には改正法の第五条の規定に基づく検査という形で検査を行いたい、続けていきたいと思っております。それ以外の地域については、法第三十条に基づく、蔓延防止措置のための検査という形で検査を継続して患畜の摘発を行っていくというところについては、そういうことを実施するということは基本的に変えないと、こういう形で対応していきたいと思っております。  それから、今回三つの病気について、法定伝染病からいわば届け出伝染病に変更するということを考えているわけでございますが、これらにつきましては、豚丹毒を初めとする三つの病気につきましては、的確なワクチンの接種とか飼養環境の改善によりまして、農場個々の一般管理においてかなり容易に予防し、あるいは蔓延防止をすることが可能になった。  言いかえますと、法定伝染病に指定することによって、患畜が出てきた場合、殺処分をするとかあるいは隔離を命ずるとか、そういった強制措置を伴わないでも十分な防疫措置が可能になったと、こういう判断のもとに届け出伝染病に変更するというものでございまして、いわばこれまでの家畜防疫の成果というものを法の中に反映させていくと、そういう考え方だというふうに御理解を賜りたいと思う次第でございます。
  103. 須藤美也子

    須藤美也子君 ワクチンの開発とかいろいろと御努力は認めますけれども、例えばそちらの方からいただいている資料の中に豚丹毒、この発生数は断トツに多いわけですね。平成八年に千八百七十二頭、ずっと四けたを推移しているわけです。そういう中で削除をするということについては問題があるのではないか、こう指摘せざるを得ません。  それから、先ほどの三つの検査義務を廃止した問題については、どこにでもあると言われていた大腸菌が去年のO157であれだけの事件を引き起こしたわけです。そういう点からいえば、私は完全にこの病気が、病原体やあるいは伝染病は撲滅されたと確認するまで、こういう検査義務を外したり、あるいはほかの方に、これは法定でなく届け出にするとか、そういうようなことはするべきではないというふうに考えます。そういう点での畜産局の方でも見直しなり、そういう伝染病を撲滅するための努力をぜひ進めていただきたい、こういうことを申し上げたいと思います。  次に進みますけれども輸入検疫の対象が、これまでのすべての伝染病から基本的に法定、届け出伝染病のみになり、その他の疾病は検疫対象から外す、こういうことですね。これはWTO協定中のSPS協定による国際基準に基づいた検疫に原則として日本の検疫体制を合わせようとするものではありませんか。
  104. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 御指摘のとおり、SPS協定によりまして、国内での防疫措置というものと輸入検疫というものとを整合的に扱わなければならない、そういったことが今回の改正一つの要因になっていると。今回の改正によりまして、いわゆる監視伝染病、法定伝染病届け出伝染病を総称して監視伝染病というふうに言っているわけでございますが、それについて国内で的確な防疫措置を講ずるということと同時に、これについて水際において輸入検疫を実施するということにおいて調和が図られるというのは御指摘のとおりでございます。
  105. 須藤美也子

    須藤美也子君 農水省からいただいた資料によりますと、法定、届け出以外の伝染性疾病の摘発状況というのをいただきました。この六年の間に相当な数が摘発されているのではないですか。
  106. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) ただいま御指摘のとおり、この六年間で輸入検疫で摘発された現在の法定伝染病あるいは届け出伝染病以外の伝染性疾病ということでいいますと、牛では、牛白血病、ブルータング、サルモネラ症、牛ウイルス性下痢、あるいは豚では萎縮性鼻炎、あるいは馬では馬ウイルス性動脈炎等々、相当の病気が摘発をされているというのは御指摘のとおりでございます。
  107. 須藤美也子

    須藤美也子君 こうした疾病を持っている畜産をどんどん輸入自由化して、これは問題になりませんか。重大な問題ではありませんか。
  108. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 先ほど来申し上げておりますとおり、私どもは今回の制度改正というか、そういうやり方に移行するに当たりまして、いわゆる届け出伝染病については従来であれば十五か十六程度の病気を指定していたわけでありますが、我が国において侵入しあるいは我が国において発生した場合、畜産に大きな影響を与えると、危険度があるというものについては、より幅広く届け出伝染病として指定をしようというふうに考えておりまして、これからいろいろ関係の皆様方の意見を聞いた上で届け出伝染病については省令で指定をするということを考えております。  基本的に、ただいま申し上げましたような、例えば現在届け出伝染病にはなっておりませんが、摘発されたといって幾つか挙げたような病気については、そのほとんどは改正後におきまして届け出伝染病として位置づけると、そういう方向で考えていきたいと思っているわけでございます。
  109. 須藤美也子

    須藤美也子君 そうしますと、この届け出以外の、先ほど申し上げましたサルモネラ症、PRRS、家禽疾病とか、こういうものは監視体制に置かれるわけですね。
  110. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 個別にどこまで届け出伝染病に指定をするかということは、今後なお専門家の御意見を聞きたいということで、個別に一つ一つはお答え申し上げられないわけでございますが、基本的に先ほど挙げたような病気のうちのかなり部分届け出伝染病にするということでもって、国内での防疫体制も明確にいたしますし、水際でもはっきりととめると、こういうことで対応したいというふうに考えているわけでございます。
  111. 須藤美也子

    須藤美也子君 わかりました。  では、例えば検疫対象から外される疾病のうちサルモネラ、今北海道で大きな問題になっているそうです。平成八年、サルモネラ症の発生は、乳牛で二百三十六頭、戸数で六十三戸、肉牛では八十三頭、戸数で二十一戸、こういうふうに広がっております。牛乳の出荷もできず、次々にこのサルモネラの牛がふえていく。共済の対象にもならない。そういう中で、離農した農家も出ているほど今大きな影響を与えています。  この法律の目的は、家畜伝染性疾病発生を予防し、蔓延を防ぐことにより、畜産の振興を図ることであり、家畜にとって危険な疾病はふやさない、持ち込まない、こういうことではありませんか。そのほかの疾病に対してもこれまでどおりに輸入検疫の対象にすべきだと、繰り返すようですけれども、このことも含めてぜひこれまでと同じように検疫の対象をふやすように再度お願いをしたいと、こういうふうに考えておりますが、大臣、いかがでしょうか。
  112. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 基本的な考え方は先ほど申し上げたとおりでございます。したがいまして、これから新しい体制に仮に移行した場合、法定伝染病及び拡大された届け出伝染病、これが検疫対象になるわけでございます。  それ以外の検疫対象にならない病気というのはどういう性質のものになるかと申しますと、そもそも本来もう我が国に常在をしている病気であるということと、家畜に対する危険度という意味では極めて危険度が低い、容易に治療ができると、そういうふうなものについて輸入検疫の対象にならないということになるわけでございまして、依然として危険な病気については当然のことながら輸入検疫の対象になると。そういう考え方のもとに、具体的な個々病気については専門家の意見を今後聞きながらどこまで届け出伝染病にするかということについてはさらに検討を深めてまいりたいというふうに思っております。
  113. 須藤美也子

    須藤美也子君 では、大臣にお尋ねをいたします。  大臣の趣旨説明で、輸入によって海外からの家畜伝染性疾病の侵入機会が一段と増加しているので、より効果的、効率的な家畜防疫体制を構築する、こういうふうにおっしゃっております。検疫の後退であってはならないと思います。そのためには、人員、検疫対象の拡充など動物検疫体制強化するとともに、輸入を減らして国内で安全な食糧、畜産物生産の拡大を進める、このことが極めて重要になっていると思います。とりわけ、口蹄疫によって四割を占める台湾からの豚肉の輸入が禁止になりました。この豚肉の値段が四百円台から六百円台になり、今は八百円台に値上がりをしている、価格にも大きな影響を与えております。地域経済にも大きな影響を与えつつあります。  そういう中で、自給率の向上と国内畜産物生産の拡大を今真剣に考えるときだと私は思いますが、大臣の見解はいかがでしょうか。
  114. 藤本孝雄

    ○国務大臣(藤本孝雄君) お尋ねは、動物検疫体制の整備の問題と、今の口蹄疫の問題に絡んで豚肉の価格の上昇、その関係で自給の問題、こういう御意見、御質問だと思います。  まず、最初の動物検疫の問題につきましては、これは先ほどから御答弁申し上げておりますように、現在全国六十二の指定海空港におきまして動物、畜産物の輸出入の検疫を実施しております。また、今後この検疫の問題につきましては、家畜防疫官の増員をしたり、検疫施設の整備をしたり、また地方空港の国際化等を踏まえまして十分に体制を整備して努めてまいろう、このように考えておるわけでございます。  今の後半の御質問の価格の問題は、これは私どもは一時的な問題であろうかというふうに思っております。確かに、今は供給面での不安、これから多少思惑が出まして価格は高くなっておりますけれども、これは一時的な問題でありまして、いずれ落ちつく、そのような認識をいたしております。  その後の国内での自給率の向上の問題は、これは私もこれからの非常に大きな課題だと思っておりまして、真剣に検討していかなければならない非常に基本的な問題だと、そういう認識を持っております。
  115. 須藤美也子

    須藤美也子君 時間が来ましたのでこれで終わりますが、大臣、本当に国内畜産農家のためにも、今回の問題は真剣に考えて取り組んでいただきたい、このことを最後に申し上げまして、質問を終わります。
  116. 真島一男

    委員長真島一男君) 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  117. 須藤美也子

    須藤美也子君 私は、日本共産党を代表して、家畜伝染病予防法の一部改正案に反対の討論を行います。  世界じゅうを震憾させた狂牛病の発生や、我が国でのO157の深刻な蔓延、それに最近の口蹄疫による台湾からの豚輸入禁止などの事態は、家畜防疫、輸入動物・畜産物の検疫の重要性をいやが上にも国民に知らしめることになりました。そうした中で出された本法案は、狂牛病等を法定伝染病に指定したり、獣医師に新疾病届け出義務を課すなど評価できる点はありますが、国内防疫輸入検疫の後退となる次の重大な問題があるために反対するものであります。  第一に、国内の予防措置の対象になる伝染病をこれまでのすべての疾病から、法定及び届け出の監視伝染病に限るとともに、ブルセラ病結核病、馬伝染性貧血の検査義務条項を廃止するとしています。これは、国、県のすべての伝染性疾病予防に対する責任を軽減し、生産者の自助努力、負担を強める方向であります。現在、法定・届け出伝染病以外にも深刻な被害を与えている疾病は各地で発生しており、これらを法の対象から除いていくことは問題であり、またブルセラ病等の検査義務条項廃止には慎重を求める意見も出ております。  第二に、WTO協定の衛生植物検疫措置の適用に関する協定、SPS協定と整合性を図るという理由で、検疫の対象を監視伝染病及び新疾病に限ることとし、それ以外の疾病を検疫対象外にしていることです。しかし、これまでの検疫でも、法定・届け出以外の疾病は相当数摘発されており、こうした疾病がそのまま輸入されることは国内家畜の生産振興に見過ごすことのできない影響を与えるものであります。しかも、除かれる疾病のうち、現在、重要課題として浮上している人畜共通感染症があり、公衆衛生、国民の健康の上からも問題であります。  以上が主な反対理由でありますが、危険度の高い疾病に的を絞った防疫、検疫の効率化ということで家畜伝染病予防体制を後退させるのではなく、もっと拡充強化するとともに、国内で安全な畜産物生産の拡大、自給率向上策の強化で輸入を減らしていくことこそが重要であるということを強く申し上げまして、反対の討論を終わります。
  118. 真島一男

    委員長真島一男君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  家畜伝染病予防法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  119. 真島一男

    委員長真島一男君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、阿曽田君から発言を求められておりますので、これを許します。阿曽田君。
  120. 阿曽田清

    阿曽田清君 私は、自由民主党、平成会、社会民主党・護憲連合及び民主党・新緑風会の各派共同提案に係る附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     家畜伝染病予防法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   家畜防疫制度は、家畜伝染性疾病発生予防やまん延防止により、畜産の振興に寄与してきたが、近年、畜産経営の大規模化に伴う被害の大型化、狂牛病等の新たな疾病発生等の状況に対処し、より効果的かつ効率的な制度の構築が求められている。   よって政府は、本法の施行に当たり、次の事項の実現に万遺憾なきを期すべきである。  一 家畜防疫体制に万全を期するため、動物検疫所及び家畜保健衛生所の機能の充実を図るとともに、防疫対策を強力に推進すること。また、獣医師家畜伝染性疾病の予防に果たす役割の重要性にかんがみ、新疾病等に関する知識・情報について、研修等により、その資質の一層の向上に努めること。  二 狂牛病等プリオンが原因で発生する家畜伝染性疾病は、家畜に甚大な被害をもたらし、畜産業に大きな打撃を与えるのみならず、人にも危害を及ぼすおそれがあることから、その発生メカニズムの研究及び防疫方法の確立に全力を尽くすこと。また、牛、めん羊等の肉骨粉等を牛、めん羊等の飼料原料として用いないよう、今後とも指導すること。  三 病原性大腸菌O−一五七による被害発生伝播を防ぐための措置の一環として、と畜場、食肉センター等における衛生管理の徹底を図ること。また、安全な畜産物を国民に供給するため、HACCP方式の導入を推進すること。  四 台湾において豚の口蹄疫発生し、深刻な事態になっていることに対処して、日本国内への侵入防止と国内における防疫体制の整備に万全を期すること。   右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をよろしくお願いいたします。
  121. 真島一男

    委員長真島一男君) ただいま阿曽田君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  122. 真島一男

    委員長真島一男君) 全会一致と認めます。よって、阿曽田君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、藤本農林水産大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。藤本農林水産大臣
  123. 藤本孝雄

    ○国務大臣(藤本孝雄君) ただいま御決議いただきました附帯決議の趣旨を尊重し、今後最善の努力をいたしてまいります。
  124. 真島一男

    委員長真島一男君) なお、本案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  125. 真島一男

    委員長真島一男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。本日はこれにて散会いたします。   午後三時三十二分散会