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1997-04-16 第140回国会 参議院 日米安全保障条約の実施に伴う土地使用等に関する特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年四月十六日(水曜日)    午前九時三十分開会     —————————————    委員の異動  四月十五日     辞任       補欠選任      鈴木 正孝君     海野 義孝君      田村 秀昭君     高橋 令則君      清水 澄子君     照屋 寛徳君      吉川 春子君     橋本  敦君  四月十六日     辞任       補欠選任      海野 義孝君     鈴木 正孝君      高橋 令則君     田村 秀昭君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         倉田 寛之君     理 事                 石川  弘君                 永田 良雄君                 野間  赳君                 泉  信也君                 風間  昶君                 角田 義一君                 齋藤  勁君                 笠井  亮君     委 員                 板垣  正君                 加藤 紀文君                 亀谷 博昭君                 関根 則之君                 成瀬 守重君                 保坂 三蔵君                 松村 龍二君                 三浦 一水君                 宮澤  弘君                 山本 一太君                 依田 智治君                 吉村剛太郎君                 今泉  昭君                 海野 義孝君                 鈴木 正孝君                 田村 秀昭君                 高野 博師君                 高橋 令則君                 益田 洋介君                 山崎  力君                 照屋 寛徳君                 田  英夫君                 前川 忠夫君                 本岡 昭次君                 橋本  敦君                 島袋 宗康君                 椎名 素夫君                 北澤 俊美君     事務局側         常任委員会専門         員       田中 久雄君     参考人         元駐タイ大使  岡崎 久彦君         琉球大学法文学         部教授     仲地  博君         早稲田大学政治         経済学部教授  山本 武彦君         慶應義塾大学経         済学部教授   島田 晴雄君         法政大学法学部         教授      濱川  清君         弁  護  士 金城  睦君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び  に日本国における合衆国軍隊地位に関する協  定の実施に伴う土地等使用等に関する特別措  置法の一部を改正する法律案内閣提出、衆議  院送付)     —————————————
  2. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) ただいまから日米安全保障条約実施に伴う土地使用等に関する特別委員会を開会いたします。  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定実施に伴う土地等使用等に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本法律案審査に関し、参考人の方々から御意見を承ることとしております。  参考人皆様に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙中のところ当委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。  皆様の忌憚のない御意見を承り、本法律案審査に反映させてまいりたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  本日の議事の進め方でございますが、まず参考人皆様からそれぞれ二十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、まず岡崎参考人からお願いいたします。
  3. 岡崎久彦

    参考人岡崎久彦君) この沖縄問題の重大な時期に際しまして、国政に責任のある先生方を前にしてお話しできることを大変に光栄に存じております。  私は国際政治と戦略問題が専門でございますので、沖縄安全保障条約重要性、それから沖縄基地重要性、それを中心にお話し申し上げたいと思います。  それで、少し迂遠のようでございますけれども、冷戦後の国際情勢というところから始めなければいけないかと思っております。  昨日の夕刊を拝見しましても、大田知事アメリカで講演されて、冷戦が終わったのにどうして安保条約が必要なのかと、そういう趣旨の発言をしておられます。この発言は別に大田知事に限ったことでございませんで、ごく一般にそういう考えを持っておられる方が多いようでございます。そういたしますと、一体冷戦終了とは何かという情勢分析から始めませんと議論できないと存じます。  迂遠のようでございますけれども、まず冷戦後の世界情勢はどうなったかということでございます。  冷戦が終わった時期は大体二つの年次をはっきり覚えていられればよろしいのでございます。一つは一九八九年、これはロシア東欧帝国が崩壊いたしました。その年の暮れにはベルリンの壁が崩れたということで、それから一九九一年、これはソ連邦が崩壊いたしました。その間、一九九〇年に湾岸戦争がございました。大体この三年間で冷戦は終わっております。実は冷戦が終わったと申しましても、これは全部地域によってそれぞれ違うのでございます。  まず、ごく簡単に地域別に申しますと、ヨーロッパでございますけれども、これはもう地政学的にはっきり変わりました。もちろんイデオロギーの対立ということはございますけれども、何より大きいのは地政学的変化でございます。  八九年の革命で、ロシア脅威というものはもうポーランドのピストゥラ川の東まで去ってしまった。これは大体百五十年分のロシアの進出が去ったわけであります。その後、一九九一年のソ連邦の崩壊で今度はドニエプルの東まで去ってしまった。大体三百年分ぐらい去ってしまいました。ヨーロッパにはもう脅威というものはほとんどございません。  ドイツがかつて脅威だったのでございますけれども、ドイツは幾ら強くなっても、米、ロ、英、仏が核兵器を独占しておりますので、これは脅威になり得ないということで、ヨーロッパはちょっと本当に戦争というものの可能性がなくなったように思います。  それから、ECの統合も進みまして国境というものもだんだん意味がなくなってきた。ですから、冷戦が終わって国境のない時代が来た。それで情報化時代であるとか、そういうことをいろいろおっしゃいますけれども、これはヨーロッパに関しては正確でございます。  これと比べるだけでもアジアというのはまさにこれからがナショナリズム時代でございまして、中国韓国統一朝鮮東南アジアタイインドネシア、これはすべてこれからナショナリズム時代でございまして、時代が随分特徴が違っております。  それから、あとごく簡単に時計回りの逆に申しますと、中近東、これも八九年ごろ、ソ連がシリアとか急進諸国援助をとめまして、湾岸戦争でPLOが進退を誤りまして湾岸諸国からの援助もとまってしまった。それが契機で中東和平が進んでおります。今停滞しておりますけれども、大きな流れとしては冷戦終了の結果進んでおります。  それから、インド南アジア、これはソ連インド援助もとまりました。これは八九年なんです。それから、湾岸戦争がございまして、その後アフガン撤兵がございました。これでまたすっかり変わりました。それまではソ連アフガン、それにインドがついて、それに対して米、中、パキスタン、これはもうはっきり対立しておりました。今は、パキスタンは九一年後、むしろ解放されたイスラム諸国との関係の方がよくなりました。インドが全くの親米、親日になっております。これで南アジア冷戦はすっかり終わっております。  それから、特に東南アジア、これはもうはっきり変わりました。冷戦の前というのはカンボジアプノンペン政府、それからベトナムソ連、これはもう一枚岩でございました。それに対してシアヌークの抗越三派、それからASEAN、その後に米中連合日本もつながっておりまして、これもはっきり線が引かれておりました。これがソ連ベトナム援助中止、それからベトナムカンボジア撤退カンボジアの総選挙がございまして、それで米中正常化ベトナムASEAN加盟、これですっかり地図が変わりまして、ASEAN一つの政治的な安定勢力となっております。むしろ、遠い将来に向けて中国との関係が重要になってきた、そのASEANの背後にはアメリカがいる、そういうふうに変わりました。  実はここまで御説明すると、もうこれで冷戦が終わったというのは、非常に大きく世界ががらっと変わったのでございますけれども、実は変わったのはそこまでなんです。今御説明しましたように、変わった一番の理由はソ連援助がとまったことと、それからソ連援助停止というかソ連兵力引き揚げでございますが、この二つが大きいのでございます。  それが朝鮮半島台湾海峡になりますと、これは何にも変わっていない。むしろ安保条約ができたころの時点に大体戻ったと考えてよろしいんです。あの当時はソ連海空軍兵力というのは、極東海軍兵力はまだ微弱でございまして、アメリカの第七艦隊の前に大したことはなかった。それで、朝鮮戦争の直後でございまして、アメリカの一番の関心朝鮮半島台湾海峡にあった。  実はソ連脅威が非常にひどくなるのは冷戦が終わる十年前のことでございます。十年前から十年間。我々はその記憶ばかり大変強いものでございますから、ソ連脅威がなくなってしまったからもういいじゃないかと、そういう議論が多いのでございますけれども、これは歴史も知らないし、ほんの過去の経験だけ、自分の知っている過去の十年のことを知っているだけの話でありまして、本来、安保条約ができたころのことを考えますとほとんどその当時に戻っているという感じでございます。  ですから、まさに沖縄返還のときに、韓国の安全は日本の安全にとって緊要であり、それから台湾の安全は日本の安全にとって重要な要素である、そういう約束をしましたのは、安保条約、特に沖縄中心とする米軍の展開が、朝鮮半島台湾海峡、これを最大目的にしたということでありまして、それが現在大体もとに戻っていると言って差し支えないと思います。むしろ戻っているというよりも、過去三十年間は、朝鮮半島台湾海峡は、これは結果としてでございますが、安定期でございます。これから十年間は流動期変動期に入る、この情勢判断についてはもう世界じゅうどの専門家でも反対する人はないと思います。ですから、むしろこれから非常に重要になってくる、そういうことでございます。  そこで、判断が難しいのは、今度は極東ロシア、これは難しいのでございます。ヨーロッパは地政学的に三百年も後ろへ下がってしまったんですけれども、極東ロシアは一センチも引いていないんだ、北方領土まで来ていると。それから、軍備も、冷戦が終わったころに、もうソ連の西側の軍備というのはがたがたに減りまして十分の一ぐらいになっている。ところが、極東ロシアはむしろ八六年から九〇年にかけて増大しておりまして、そこから後は大体現状維持でございます。  もちろんそれはハード面でございまして、ソフト面は、給料も未配が多い、それから訓練する油もお金もないということで非常に即応戦力は減っております。ですから、現在においてはそれほどの脅威ではない、そういうことが言えるんです。  ただ、もう一つ極東で重要なことは、これも一九八九年でございますが、中ソが正常化しております。ちょうど天安門事件の最中だったものでございますから気がつくことが少ないのでございますけれども、これは非常に大きなことでございました。その結果、ソ連がモンゴルから撤兵しました。それで中国が百万人の北方の兵力を削減しまして、近代化に向けることにした。現在、中国軍事力がだんだんふえているということが問題になっております。これはもとが小さいですから現在はまだ特にそれほどの脅威ではございませんけれども、長期的には非常に重大な問題でございます。その原因が、これは中ソ正常化のころ、一九八九年ごろにさかのぼってそこから始まるわけなんです。  日本にとってはむしろ冷戦終了というのはマイナス要因でございます。ロシア軍の配備にしましても、沿海州ロシア軍がおりますけれども、沿海州ロシア軍というのは満州の方を向いているとも言えますし、太平洋の方を向いているとも言える。ただ、中ソ正常化の後、それが太平洋の方に重点が移ったことは間違いございません。  そこで、この極東ロシアでございますけれども、これがどうなるかは非常に難しいのでございます。最も注意すべきことは、この前の革命、一九一七年の革命帝政ロシアの力というのは全くなくなりまして、日本はもう本当に安全になった。それが急にまた脅威になってくるのが一九三二年ですか、スターリンの第一次五カ年計画が完成したころなんですね。その問約十五年間日本は全く安全だった。たまたまその時期が、この十五年の間に辛亥革命から蒋介石の北伐開始までの十五年間が重なっていたものでございますから、その時期に日本日英同盟も別に要らない、一人でやっていける、そう思ったんですね。それが孤立して、日本の外交が自主路線でございますね、日本一人でもってアジアの中で生きていけるというふうに誤解した一番の原因でございます。  その結果がどうなったかということは、これはもうこの前の戦争御存じ、特に沖縄の方は一番よく御存じの話でございまして、こういうふうに世の中が変わっているときこそ従来の体制を崩さないでじっと抑えていかなきゃいけない。そういうときに軽挙妄動しますと、これは国家と国民の安全というものを脅かしてしまう、そういう教訓でございます。その意味で、これだけの国際情勢を御説明しますと、国際情勢が変わったから安保条約がどうという議論はもう全然成立しないということがよくおわかりと存じます。  そこで、今度は在日米軍基地重要性でございますけれども、これはむしろアメリカ側から見たら日米同盟の根幹でございます。特にスービックとクラークの基地がなくなりまして、そうなりますとアメリカが今持っています基地と言えるほどのものは在日米軍基地とそれからインド洋中心にあるディエゴガルシア、これしかない。ところが、ディエゴガルシアはもう直接間接に沖縄を経由する支援に頼っております。西海岸から大体沖縄を経由して支援されている。ということは、この在日米軍基地をなくすということは、アメリカが全太平洋アジア、全インド洋における介入能力を失ってしまうということになる。ということは、冷戦後の世界を、国際秩序維持するというアメリカ責任を果たせなくなってしまう。  ですから、冷戦が終わってから数年間のアメリカのありとあらゆる国防関係の文書が、日米同盟というものはアメリカ政策の基軸であるとか、かぎであるとか、そういったことを言っておりますのは全部そこから来るわけでございます。  これはアメリカという国が冷戦が終わって世界秩序維持に一番の責任を持っております。これは力が一番強いということもございますけれども、もう一つは、非常に不思議な国でございまして、理想主義的な背景があるわけでございます。理想主義のおかげでいろんな誤りも犯しているのでございますけれども、ベトナムに介入する、いろいろなところに介入しまして、それで数万の犠牲を出しながら寸土も求めないで帰るということで、結局どこの国もアメリカを信用しております。北朝鮮さえもアメリカと一番仲よくしたがっている、そういう国でございます。  したがって、アメリカ国際政治責任を持つということは、世界の平和と安定にとって非常に重要なことでございます。現に、アジアの国がそれぞれの安全保障問題を議論しますと必ず言うことは、一体アメリカはいつまでいるんだろうかと。それで、例えばもし軍備を大いに増強しなきゃいけないとか、あるいはもう脅威に屈しなきゃいけないという議論の場合は、アメリカがいつまでもいるわけではないからと、それが前提になっております。  したがって、アメリカが引かないという姿勢を示すということはアジア諸国にとって大変重要なことでございます。むしろ、日本世界貢献している一番の貢献は、アメリカアジアに残るという体制在日米軍基地で支えているということでございます。これは極めて重大なことでございまして、例えば将来減らすとか漸減するとか、将来情勢が変わってから減らすお考えなら構わないんです。情勢が変わる前に、減らすのは当然であるとか減らすべきであるとか、そういうことを言うだけで世界の平和に対して動揺を与えます。日米同盟というものははっきり持たななきゃいけない、そのためにはアジアにおけるアメリカのプレゼンスは維持しなきゃいけない、これは日本の方針ではございません。これはアジアに対する日本最大貢献でございますし、世界の平和に対する貢献でございます。  そこまで申しまして、あとは特措法の問題でございますけれども、既に細かい点につきましては政府委員の方からいろいろ御説明があることでございますので、細かいことは申し上げません。  私が申し上げたいのは、沖縄の方の中にいろいろ反対の方もおられる。ただ、反対の方の中でもいろいろ種類があると思うんです。その中で決して我々が主張を認めてならないのは、特措法反対ということを利用して反安保反米、反基地闘争にこれを使おうという人たち、これは先ほど申し上げた世界の平和、日本の平和、すべてに対して反対する行動であります。これは冷戦時代の何かイデオロギー的な残りのためでございましょう。それを今回の特措法あるいは沖縄問題に利用して自分イデオロギー的主張を通そうとしている。これに対しては厳しく一線を画すべきだと思います。  これは国民からいってもごく少数であることは間違いないのでございまして、自民党は従来、六〇年安保、七〇年安保でこういう反安保反米、反基地、これに対して毅然たる態度をとって現在の日本を築いてきた。新進党ももちろんその後継でございます。それから、社民党も安保堅持をおっしゃった。安保堅持をおっしゃった以上、責任ある政党としては政策について論理的な一貫性がなきゃいけない。それならば、反安保という勢力に対しては一線を画して切らなきゃいけない、そうあるべきです。  それならば、これは極めて少数の人であるはずです。反対の人がすべてとは申しませんけれども、反対の中で反安保、反基地人たちはこれははっきり国益に反することをしている。そう考えますと、これはもうそういう人に利用されないためというだけの目的であっても、特措法の一部改正は必要と存じます。(拍手)
  4. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) ありがとうございました。  次に、仲地参考人にお願いいたします。
  5. 仲地博

    参考人仲地博君) 琉球大学仲地でございます。  参議院で意見を述べる機会を与えていただきましたことに大変感謝しております。また、聞くところによりますと、朝から晩まで、議員の皆様には昼食時間を惜しんでの取り組みだそうで、この点にも敬意を表します。願わくば、この特措法のように沖縄世論の支持しない法律のみではなく、返還された軍用地跡利用についての特別措置を定めるいわゆる軍転法改正問題、あるいは基地が密集する沖縄において適用される地位協定、この地位協定の見直し、これは国会立法作業の中ではありませんけれども、そういうふうなことについてもこのような取り組みがなされることを期待したいと思います。  さて、今回の駐留軍用地特措法改正につきまして意見を述べさせていただきます。  今回の改正案の柱は、収用委員会で審理中も国に暫定的な使用権を認めるということが中心になっております。このような改正案がいつごろから政府内で準備をされたかということを私は詳しく知りませんけれども、私の新聞スクラップを見ますと、昨年の八月三十一日の読売新聞がこの改正案が準備されているということを報道しております。その記事によりますと、政府は、沖縄問題が争点となる衆議院の解散・総選挙、これを回避するためには沖縄を刺激する特別法は断念する、この特措法の中に、特別立法ではなくて特措法の中に、収用委員会で裁決するまでは引き続き使用権を認めるという規定を盛り込む案が出てきたという内容の報道です。  ところが、この改正案内容国民が具体的に正確に知ることができたのはつい先ごろ、三月の終わりであります。このような重大な法案について、まあこういうふうに集中審議をしておりますから、国会における審議の時間はそれなりに確保されていると思いますけれども、考え、調査し、そして国民世論を聞く時間というのが十分に保障されているとはとても思えない、そういう十分な期間があったとは思えないわけです。  五月十四日に失権するということは十年前あるいは五年前から明らかであるわけです。十年前、五年前の裁決で、ことしの五月十四日で土地使用権がなくなるということは明らかであり、そして少なくとも昨年の八月にはこの法律案政府内で、特別立法は断念してこの法律案が検討され始めたということは報道されているわけでありますから、もっと早く国民公表すべきではなかったか、真摯に議論をするという姿勢政府にはなかったのではないか、この点をまず指摘しておきたいと思うわけです。政府沖縄政策沖縄でなかなか理解を得られない原因がそのあたりにあると思うからです。  最近の例でも、例えば五・一五メモ公表されましたけれども、この五・一五メモ公表というのは、保革あるいは与野党を問わず二十年来の沖縄主張でありました。しかし、合同委員会合意事項公表しないということでこれまで公表されずに来た。公表できることを公表しないで来たわけです。正式の訳文も作成されていなかったということに、はなから公表する気がなかったということをうかがわせしめるわけです。  皆様御承知のように、沖縄基地というのは、フェンス一つ隔てて小学校があり、フェンス一つ隔てて交通の激しい国道があり、住宅地があるわけです。飛行機が落ちます。復帰後の飛行機事故は百二十一件、墜落事故が三十六件です。基地のそばに住む人々が基地使用条件について関心を持つのは、あるいはその住民生活責任を持つ自治体がその使用条件関心を持つのはごく当然でありまして、それに思いをはせることができなかった政府というのが問題であるわけです。  あるいは、嘉手納基地普天間基地騒音規制日米間で昨年合意されました。実に横田、厚木におくれること三十年以上です。五・一五メモ公表もそれから騒音規制も昨今の政治情勢の中で政府は取り組んだわけでありますけれども、この騒音規制も、三十年おくれはもうとやかく言わないにしても、三十年間で国民騒音あるいは静穏権に対する関心あるいは意識というのは格段に高まったにもかかわらず、嘉手納、読谷両飛行場の規制の内容というのは実に厚木、横田に及ばないわけです。横田、厚木よりも緩い条件しか課していない。  あるいは、劣化ウラン弾の誤射の通報おくれの問題がありますけれども、こういうところの政府の基本的な姿勢に県民の不信感がぬぐえない理由があるのだろうと思うわけです。  さて、今回の改正でありますけれども、改正に賛成する立場からは、特別立法を避けたかった、よりソフトな改正である、だからこれでやむを得ないんだという意見があります。  今回の改正は、確かに知事や収用委員会の権限を直接に剥奪したりあるいは制限したりするものではありません。しかし、過去に制定した二つ特別法沖縄基地維持するために沖縄公用地法、沖縄地籍明確化法という二つ法律が制定されましたけれども、これらの二つ特別立法と今回の改正というのは本質的に変わるところがないわけです。すなわち、どういう点で本質を同じくするかといいますと、定められた手続に従って権原を取得できないときに法律で直接に使用権原を与えるという内容であるわけです。  過去の二つ法律と今回の法律は違うように見えるところがあります。どういう点かといいますと、過去の二つ法律は、いずれも略称でありますけれども、沖縄公用地法とか沖縄地籍明確化法とか沖縄において適用されるということが表題からも明らかでありましたけれども、今回の法律は一般的な法律であります。  しかし、しばしば指摘されているように、実際には沖縄においてしか適用が予想されない。本則の方は将来の可能性としては沖縄以外でも契約の拒否というのはあり得るわけでありますが、附則の経過措置は沖縄のみにしか形式的にも実質的にも適用されないわけです。その点で過去の二つ法律と変わることがないわけです。  今回の改正法が前の二つ法律よりもより乱暴になったところは、前の二つ法律は使用期間が明確であったということです。公用地法は五年、地籍明確化法というのはそれをさらに五年間延長するという内容でしたけれども、五年、五年というのが法律で明確でありました。しかし、今回の改正内容は、暫定的ということで、収用委員会で審理中あるいは建設大臣に審査請求をしている間ということで、終期のある明確な期間ではないわけです。権利の制約というのは明確でなければならないというのが法治主義の要求するところでありますけれども、そういう点で前の法律に比べてより乱暴な内容になったと言っていいと思います。  ところで、今回の改正につきましては、改正に賛成する方も反対する方も共通して挙げる理由があります。それは何かといいますと、法治主義あるいは法治国家ということです。  改正を求める方は、米軍用地を法的根拠なしに使うことは法治国家として許されないから、だから改正が必要であると述べます。逆に、改正反対する方は、このような改正は法治主義から許されないというふうに言います。賛成する方も反対する方も法治主義を理由にするわけでありますから、ここでは法治主義というのは何なのかという法治主義の理解が異なっているということになります。  法治主義という理念は、絶対主義あるいは官僚主義に対抗するものとしてその理念が生成され、発展をしてまいりました。近代憲法の中核的な思想であります。国家権力が法によって制約されること、すなわち人が治める人治ではなくて法治なのだというのが法治国家であります。  司法権も行政権も、国民代表である議会の制定した法律の適用として司法権、行政権を行使するわけでありますけれども、ドイツ流の法治国家というのは法律というところに関心を持ちます。すなわち、法を制定するのは国会のみではなくて、行政権もまた法を制定するというのは御承知のとおりでございます。  行政権が制定する法、政令や省令でありますけれども、権力行使の根拠はそういう政令や省令ではなくて、国会の制定した法である法律でなければならない。これがドイツ流の法治主義の考え方でありまして、法の内容の正当性というのは、これは国会判断することであるということになるわけです。  これが悪い方へ行き着くところは、法律がありさえずればよい、法律を制定しさえずれば権力を行使し、国民の権利を制限することが正当化できるということになるわけです。こういう考え方を形式的法治主義と憲法学では呼んでおります。  法治主義を形式のみならず実質においても求める考え方があります。実質的法治主義です。英米法の理念の中に法の支配という考え方があります。これは法によって国家権力を統制するというのみならず、法の内容そのものが正当であることを要求するというのが法の支配という考え方です。国民の権利を守るということが法の支配の核心的な内容になるわけです。  それでは、この特別措置法改正内容というのは、その法の支配が求める正当な法なのかどうかということが問題になるわけです。  法治国家というのは国の権力を法によってコントロールする国家だとお話をいたしました。権力の行使は国民代表による事前の承認が必要なんです。どのような場合にどのような手続でどこまで国民の権利を制限することができるか、これが権力発動の前に法律で決まっていなければならないわけです。そうでなければ、国民は予測を持って行動することができず、自由ではないということになるわけです。  知事が機関委任事務を拒否するということはあり得ることですから、地方自治法は職務執行命令、そして職務執行命令訴訟という制度を準備しております用地主が軍用地の契約を拒否することがあり得ることは予想されたわけですから、この駐留軍用地特措法というのが準備されているわけです。それが事前に決めた権力発動の根拠です。間に合わなかったから法律改正するというのは、正当な法とはとても考えられません。  英米法の権威である伊藤正己東京大学元教授、最高裁判所の裁判官を務められましたけれども、このように述べております。「わが国において、近代革命国民自身による自由獲得の闘争の成果として成立したのではなく、法は国民の自由を擁護するものであるという意識が乏しく、まして通常裁判所が国民の自由のために国王権力とはげしく争ったという経験をもたない。むしろ法は支配者が、権力的支配を行う手段であるという意識が強い。このようなたてまえが、なお残存しているとき、単純な法律の優位を強調することは、国民多数の名において、権力が法の上にあるという考え方を復活させる恐れが大きい」というわけです。  事前に決めてあった法の内容が都合が悪いので、法律の方を都合に合わせるというのでは、法律はあってもなくても同じであり、法律は伊藤先生の言う「権力的支配を行う手段」に堕してしまうということになります。  法の支配は、法の内容そのものが正当でなければならないという点で、行政権ならず、立法権に対してもそれを要請することになります。正当でない法の制定は、伊藤先生の言葉で言えば、「国民多数の名において、権力が法の上にあるという考え方の復活」になるわけです。  もう一つ取り上げたい点は、法律の持つべき一般性です。  ドイツの憲法であるドイツ基本法は十九条でこう述べております。「法律は一般的に適用されうるものでなければならず、個々の場合のみに適用されるものであってはならない」と。個々の場合に適用するのは行政権の作用であり、司法権の作用であるわけです。権力分立てあるわけです。国会は一般的な法をつくる。個別に適用するのは司法権であり、行政権である。不利益を課する場合には、認定する手続を行政権、司法権がとらなければならない。  今回の改正法の附則二項はまさにこの原則に反します。特に楚辺通信所、いわゆる象のおりの一筆の土地については、司法権でその法的根拠が審理中であります。それを国会法律をつくって行政権に対して使用の権原を与えるというのは権力分立に反するおそれがある、あるいは少なくとも立法権が司法権に対して謙譲の精神を発揮しているとは思えないわけです。  特別措置法改正しないとなると不法占拠状態になります。これも法治主義に反するという批判は必ず起きてきます。どっちにしろ法治主義に反するというのが私の意見になります。どちらを選ぶべきか、大変困難な問題でありますけれども、不法占拠の方を選ぶべきではないだろうかと思っております。  なぜかと言いますと、法の改正の方は見えないところで法治国家の内実をむしばむものになるのではないか。不法占拠の方は見えるものですから、それだけに危険性は少ないのだろうと。とりあえず形式的法治国家を選ぶよりは、実質的法治国家への道を遠回りでも歩むべきではないだろうかと思うわけです。  不法占拠は、政府にとってのみならず、国民にとっても好ましいものではもとよりありません。しかし、それは五十年間の政府政策のツケと考えなければならないのではないか。その状態を甘受して、国民そして県民が納得できる基地政策の樹立に真摯な相互の対話や努力を続けていくべきではないだろうか。それが結果的には近道になるのではないだろうかと思っております。  以上です。(拍手)
  6. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) ありがとうございました。  次に、山本参考人にお願いいたします。
  7. 山本武彦

    参考人山本武彦君) 本日は、この機会をお与えいただきましてまことにありがとうございます。  時間が限られておりますので、要領よく私の意見を陳述させていただきたいと思います。私の専門国際政治学でございまして、その専門の立場から、大変つたない意見でございますが要領よくお話をさせていただきたいと思います。  先ほどもお話がございましたように、冷戦が終結いたしまして以降の国際安全保障にかかわる戦略環境は大きく変わりました。友と敵の構造、友敵の構造と呼んでおりますけれども、友と敵の仕組み、関係というものが変わったということ、そしてさらに言えば、冷戦が終結いたしました八九年の末以降、国際関係における力の分布状況も大きく変わったわけでございます。  この場合の力という概念を私なりに解釈いたしますと、軍事力と経済力という最も目に見える形で我々が理解するところのパワーの分布状況の変化を見たということでございます。  それは典型的には、冷戦時代に二極構造と我々がみなしてきました一つの極、つまりソビエトが解体し、そしてソビエトの冷戦時代に持っておりました軍事力冷戦時代ほどの脅威をもたらさなくなったという意味での大きな変化を見てとることができます。また、経済力の面におきましても、旧ソビエトはもとよりアメリカも、これは冷戦時代から続いてきた現象でございますけれども、国際経済の秩序を支配する力というものを衰退させてきて、そして九〇年代に入っても、財政赤字に見られますように、その勢いに決定的に歯どめをかけるところにまでは至っていない。  したがいまして、パワーの力源、パワーリソースという英語を使っておりますけれども、パワーリソースにおける多元化現象がポスト冷戦時代においてさらに加速し、そして世界政治秩序と世界経済秩序の再編をめぐっていわばリストラクチャリング、リストラが今起こっているというふうに理解してもいいのではないでしょうか。  こういう大きなリストラ、世界政治秩序と世界経済秩序におけるリストラが進行する過程で、今我々が直面している日米同盟のアイデンティティーの論理の組み直しという問題に直面し、さらに言えば、その延長線上で沖縄基地問題を今後どう取り扱っていくべきかという問題に直面しているわけでございます。日米同盟関係においてアメリカが今なお決定的な力を持っていることは言をまちません。  それでは、そのアメリカのポスト冷戦時代における戦略的思考は冷戦時代と同じような思考なのか、それとも変わったのか、変わったとすれば何が変わったのかという点に我々はまず目を向けるべきではないでしょうか。  この点について申しますと、冷戦時代は、どちらかと申しますと、ソビエトの力に対抗するという文脈から地政学的な配慮を優先させる世界戦略を追求してきたというふうに私は理解しております。  そして、ソビエトが崩壊した後の九一年以降の新しい時代においては、こうした地政学的な配慮からアメリカ世界戦略を考察するという配慮に加えて、もちろんこの地政学的な配慮が全面的に後退したわけではございません、こういう地政学的配慮に加えまして地経学的配慮、大変耳なれない言葉でございますが、英語でジオエコノミックスという表現を使っておりますけれども、こういう地経学的な発想に立った戦略思考が新たに勢いを得つつあるという点に私は大きな変化があるのではないかと思います。  この地政学と地経学をプラスいたしまして、いわばジオストラテジー、地戦略という概念がポスト冷戦時代におけるアメリカ世界戦略でその思考を規定する枠組みになっているのではないかというふうに理解をしているわけでございます。  そこで、ポスト冷戦時代において北東アジアに対してアメリカがどのような戦略の組みかえを行おうとしているかという点につきまして、私の認識を申し述べさせていただきます。  特に冷戦後期からアメリカ議論になり始めました中国に対するアメリカの関与の仕方の政策、これは冷戦が終わりまして後に、特にクリントン政権が発足いたしまして公式には積極的関与の政策を表面的には推進してきたわけでございます。しかし反面、中国から見れば、アメリカの対中政策冷戦時代アメリカ一つの戦略思考でございました封じ込めの新たな対象にしているのではないかという認識を持ってきたわけでございます。  そこで、国際関係にかかわる論者のいろんな文章で見られるアメリカのポスト冷戦における対中戦略は、中国に対する積極的関与か、それとも新封じ込めの戦略か、この二つの対立の見方で議論が闘わされてきたというふうに私は理解しております。  クリントン政権が発足しまして以降の政策の展開を見ておりますと、これは昨年の日米安保共同宣言でも触れられていた文言でございますけれども、大量破壊兵器の拡散防止という文言がございました。  これにつきましては、中国のイランやパキスタン向けのミサイル技術の輸出に関連いたしまして、中国に制裁を加えようという動きが見られたわけでございますけれども、こういった政策、あるいは台湾の李登輝総統のアメリカ訪問以降米中関係がぎくしゃくしたわけでございますけれども、昨年の春に行われました台湾向けの中国によるミサイル発射実験でアメリカが第七艦隊を台湾海峡に派遣するという大変危機的な状況が、危機という表現が当たるかどうかは別といたしまして、米中関係に緊張の風が走ったわけでございます。  こういう一連の動きを一べついたしますと、少なくとも中国アメリカ冷戦後の対中政策の展開を新封じ込め戦略の展開というふうに一般に見ているのではないか。これは中国のいろいろな文献を見ておりますとそのように理解できるわけでございます。  こういう流れの中で昨年の日米安保再定義、日米安保共同宣言を受けとめてきたというふうに思います。それは、昨年の七月に米豪、アメリカとオーストラリアとの間の安保共同宣言が発せられましたけれども、四月の日米安保共同宣言と七月の米豪安保共同宣言の二つをとらえまして、北と南から中国をカニのはさみのように挟み打ちするのではないかという認識を展開いたしまして、そしてこの新中国封じ込め戦略という受けとめ方を、日米、米豪の二つ安保共同宣言についての認識を公表してきたわけでございます。  したがいまして、アメリカが積極的関与の政策を公式の政策として表明しているにもかかわらず、中国側は決してそのようには受けとめていないというふうに理解できるわけでございます。  したがいまして、このような中国的な要素、それから朝鮮半島的な要素、先ほども岡崎元大使の方から御発言がございましたように、残るアジア冷戦的要素として引き続き不安定要因と不確実性の要因になっていくとするならば、それでは日本の今後の対応はどうあるべきかという点に私どもの関心が移るわけでございます。  この点について申し上げますと、日本アメリカ中国との間に立っていわば橋渡しの役割を果たす、もちろん中国台湾関係というのはある意味では南北朝鮮の統一問題よりもはるかに難しい要素を抱えております。アメリカにとって、台湾冷戦後の、そして二十一世紀にわたるアジア太平洋での中核的な位置を占めているという位置づけを行っておりますので、南北朝鮮とは違った位置づけ、また重要性の認識を持っているというふうに思います。  それはそれで大変複雑な問題を抱えているわけでございますけれども、いずれにいたしましても中国台湾、そして南北朝鮮の対立という冷戦の残りかす、残滓を前提とした戦略を組み立てていかざるを得ない。その際に、これらの問題の軟着陸を志向していくに当たりまして重要なファクターは、中国をいかにして国際政治と国際経済の共通の土俵に引きずり込んでいくか、引き込んでいくかということ、言いかえれば中国をしてこのような国際政治と国際経済のシステムにいかにして積極的に関与させていくかということが重要な戦略に私はなってくると思います。  そういう点で、世界貿易機関への中国の加盟を促進し、また先ほど申し上げました大量破壊兵器の拡散防止レジームというのがございます。時間がございませんので詳細は省きますが、このような大量破壊兵器の拡散防止レジームあるいは通常兵器の拡散防止体制、これらに中国を引きずり込んでいくというイニシアチブを日本がとり、そしてアメリカ中国との間の橋渡しを行っていくということが私は大変重要なイニシアチブになっていくのではないかと思います。  これは沖縄問題とも関連することでございますけれども、日本アメリカから投げられたボールを受けとめるというこれまでの姿勢を転換いたしまして、転換といいますか、むしろ受けとめつつ積極的にアメリカのコートにボールを打ち返すという政策、言いかえますと提案をアメリカに対して突きつけていくということ、イニシアチブをどんどん発揮していくということ、これがアメリカ政策の修正や変更を促す上で私は大変大きな意味を持っているのではないかと思うわけでございます。  中台関係、それから南北朝鮮関係について先ほど言及いたしましたけれども、こういう冷戦の残りかすをいかにして時間をかげながらステップ・バイ・ステップ・アプローチで消していくかということが私は今後の日本の安全保障政策にとって、また外交にとって、創造的な安全保障政策ないしは創造的な外交政策として道しるべになっていくのではないかと思うわけでございます。  その点で私は、軍備管理の政策の中でも最も準備的でかつ補完的な措置というふうに言われております信頼醸成措置、CBMと略称されておりますけれども、ヨーロッパでは信頼安全保障醸成措置、CSBMというふうに略称されておりますけれども、こういう冷戦時代から米ソ対立があり東西ヨーロッパの対立がある中でさいの河原に石を積むようにつくり上げてきた制度、仕組み、これを北東アジアにつくっていくような努力あるいは政策上のイニシアチブというものが今強く要請されているのではないかというふうに感じるわけでございます。  確かに、東南アジアASEANを軸といたしましたASEANリージョナルフォーラム、ARFと略称されている信頼醸成措置のメカニズムができ上がっており、日本もこれに積極的に加わっているわけでございますけれども、南北朝鮮がこれに加わっているわけではございません。また、台湾もこれに加わっているわけではございません。台湾を加えることにつきまして中国をいかに説得していくか、これは大変骨の折れる仕事でございますけれども、こういう仕事が控えている。そういうときにでも、日本が何らかの形で橋渡しをしていくようなバックチャネル外交、前面に出ない水面下の外交というものを辛抱強くやっていく必要があるのではないかという感じがいたしております。  最後になりますが、沖縄の問題でございますけれども、アメリカ冷戦後も前方展開戦略を軸として、アジア太平洋そして中東といった不安定な地域への介入戦力を保持する戦略を今後も追求していくことはまず間違いないと思います。少なくとも予見し得る将来、前方展開戦略がアメリカの基本戦略として存続する限り、アメリカのイニシアチブで沖縄基地を全面返還するということは非常に私は難しいだろうと思います。  しかしながら、先ほどもお話がございましたけれども、この特措法をめぐる議論を外から見ておりますと、いかにも唐突に出され、そしてまた十分な時間をかけて準備された法律のようにも思えません。  しかしながら、国際政治の要請というものを考えますと、国内政治の要請とのバランス上どれを優先させるべきか、これはもう先生方は大変悩みに悩み抜かれた上での御審議であり、また決断であったろうと思います。私は、国益という表現で申しますならば、国家的利益の一面と国民的利益という一面を持っております。その国民的利益を十分に考慮した議論というものがやはり私はこういう重要な政策決定に当たってはなされるべきではないかというふうに考えております。  こういう国際政治と国内政治のぎりぎりのジレンマの中で、これは大局的に見れば避けることのできない決定として特措法改正に賛成せざるを得ません。しかしながら、アメリカの前方展開戦略も二十一世紀以降も続く戦略なのかどうかということを見きわめた上での政策決定であるべきではないか。その意味では、時限的立法として今回はとりあえずおさめておくと。そして、国会政府、また民間を含めた徹底した議論を行いつつ、そして最終的な決定を二十一世紀の前半で決定するというおおような姿勢も必要だったんではないか。大変口幅つたいようでございますけれども、私の個人的意見を申し述べさせていただくとするならば、そんな印象を持っているわけでございます。  時間が参りましたので、これにて閉じさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
  8. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) ありがとうございました。  以上で参考人の方々の御意見の陳述は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  9. 亀谷博昭

    ○亀谷博昭君 自由民主党の亀谷博昭でございます。  お三人の先生方には、お忙しいところをおいでいただき、御見解をお示しいただきましてまことにありがとうございました。  時間がありませんので、早速質問に入らせていただきたいと思います。  まず、岡崎先生にお伺いをしたいと思いますが、先ほど安保重要性について、世界変動期流動期にある今こそ必要なんだという御見解を示されました。その中で、朝鮮半島台湾海峡等はむしろ安保当時に戻った緊張関係があるのではないかという御発言がありましたが、アメリカが展開しているいわゆるアジア十万人体制がカバーしようとしているアジア太平洋地域、中東も含めて、どのような不安定要因があるとお考えなのか。先ほどは朝鮮半島台湾海峡のお話がございましたが、そのほかのものも含めて現在不安定要因と考えられるものがどのようなものがあるとお考えなのか、ひとつお伺いしたいと思います。同時に、その中で現在の北朝鮮情勢をどのように分析しておられるかということもつけ加えていただければと思います。  そして同時に、そのことを踏まえた上で、現在の米軍の十万人の前方展開体制というものをどうお考えになっておられるか。日本に四万七千人がいるわけであります。そして、韓国その他各国にも駐留しているわけでありますが、この十万人体制をどのようにお考えになっておられるか。そして同時に、その中で沖縄の海兵隊が占める役割というものについても言及していただければありがたいと思います。
  10. 岡崎久彦

    参考人岡崎久彦君) アメリカ政府が発行しております諸文書によりますと、アメリカ関心を持っておりますのは、朝鮮半島台湾海峡、南シナ海のシーレーン、それから湾岸情勢でございます。湾岸の安全を守るためにも在日米軍基地というのは非常に必要であると。これはいろいろございますけれども、一番有名なのはジョセフ・ナイの発表しました東アジアにおける安全保障戦略という文書でございます。  それから、北朝鮮はどうなっているかと申しますと、まだ暴発の可能性が排除されておりません。私の考えでもほんの一%か二%でございましょうけれども、これはあるのでございます。  戦争するということは非常に不合理なことでございますけれども、例えば真珠湾の一週間前でございますが、ホーンペックという人がいまして、これが対日政策を全部やった、対日金融から最後のハル・ノートまでやった人でございます。それに対して、ちょうどワシントンに帰っておりました在日大使館員がこんなことをしたら戦争になると言ったら、ホーンペックが歴史の上で絶望の余り戦争をした国が一つでもあったら言ってみろと。それを言えなかったんですね。だから、勝つ見込みがない戦争をするはずがないじゃないかということを言ったんですけれども、やっぱり戦争というのはいろいろ複雑な要因で発生いたしますので、この可能性はまだ排除されていない、そういうことでございます。  そういう状況におきまして、この十万人体制でございますね。これは極東だけで申しますと細かい議論に入ってしまうのでございますけれども、ヨーロッパと比べますと歴然たるものでございまして、極東の十万というのは、これが要るか要らないかとか、それからどのくらい減らせるだろうか、これは議論になり得るわけであります。少なくとも議論の対象になり得る。ところが、ヨーロッパの十万というのはそういう細かい議論の対象にもなり得ないような数字なんですね。  もともと三十万いましたのをブッシュ、クリントンの選挙戦のときに、ブッシュは十五万にすると言い、クリントンは七万五千にすると言って、それの中間をとって十万にしたわけでございまして、今ライン河畔にも強力なる戦車師団がおりますけれども、あんなものは何のために役に立つかわからない。ですから、これは比べてみれば、本来切るべきなのはヨーロッパの方でございまして、アジアの方は切るといってもそうたくさん切れるものじゃございません。十万、十万といっても別にはっきりした数字じゃございませんで、今大体ヨーロッパ十一万、アジア九万だと思います。ですから、少しくらい切れるかどうかという話でございまして、これはほとんど意味のない議論でございます。  海兵隊につきましても、これはあらゆる事態に即応できる部隊でございまして、大規模な戦闘から災害救助、難民の救助、それに至るまで何でもできる部隊でございまして、これを日本ディエゴガルシアに持っている。これがアメリカ冷戦後の国際秩序を守る責任にとって極めて重要でございます。  問題は、これをどのくらい減らせるとか、あるいは少し後ろに持っていったらいいではないかという議論がございますけれども、これは計算してそうたくさん減るものでもございません。詰めていきますと、ほとんどもうシンボリックなものなんです。シンボリックとなりますと、これはむしろ逆効果が恐ろしいのでございます。つまり、シボリツクに引けば、アジアからもうアメリカは引くんじゃないかと。これでアジアが不安定になります。そのためにもこれは減らさない方が政治的に重要でございます。
  11. 亀谷博昭

    ○亀谷博昭君 ありがとうございました。  岡崎先生はタイの大使もお務めになられたということでありますので、そのお立場でちょっとひとつ伺いたいんですが、今お話がありました十万人体制については、日本の四万七千人を含め、橋本総理も再三にわたり現時点では特に日本の四万七千人について削減に言及する状況にはない、こう言っているわけでありますし、中長期的に国際情勢を踏まえてそういう状況があれば別といたしまして、現在ではやはりアジア太平洋地域の紛争の抑止力として、あるいは世界の平和の安定要因として必要であろうと私も考えているわけです。  ただ、この米軍のプレゼンスをアジアではどんなふうに受け取っているのか、そして日本安保体制というものについてアジアの人々はどんなふうに受けとめているのかということについて、大使をお務めの御経験を含めてちょっとお聞かせいただければと思います。
  12. 岡崎久彦

    参考人岡崎久彦君) 実はアジアと申しましても、中国韓国東南アジア、これは違うものでございます。東南アジアは、従来、これはもう陰に陽に日本が安全保障の責任を果たすことを求めております。それで、日米同盟を支持しております。  たしかことし一月の総理の東南アジア訪問に際しまして、各首都で日米同盟アジアにおける公共財産である、これは平和と安定のインフラストラクチャーであるということを言いまして、大変いい反響があったと聞いております。その意味では全部わかっていると思います。  韓国世論政府政策は違いまして、世論は歴史的な過去に基づくいろんな反発なんかがございますけれども、政府政策はもう一貫して、この前も一番重要な時期に沖縄の海兵隊を削減してくれては困るということを言っております。  中国は本来長期的に考えますといろいろな問題があるはずでございます。ところが、まだ公式に反対はしておりません。
  13. 亀谷博昭

    ○亀谷博昭君 次に、山本参考人にちょっとお伺いをしたいと思いますが、さっき山本先生のお話の中で、米軍日本における四万七千人はアメリカ軍側からの削減というのは戦略的に難しいであろう、こういうお話がありました。その上で、今回の特措法は避けられない方策としてやむを得ないのではないかという御発言があったわけであります。  そういうことを前提にして、いわゆる沖縄の心ということがよく言われるわけでありますが、私も返還前を含めて何回か沖縄をお邪魔しておりますが、それぞれの人の思いがみんな違うんだろうと思います。しかしながら、沖縄に住んでいる人の心は多分私を含めてなかなか本土の方々は理解しにくい部分がたくさんある。本当の意味で理解できないのではないかと私も思っております。そういう中でこの沖縄基地の整理、統合、縮小をこれから何としても進めていかなければいけない。しかしながら、今回の普天間もそうでありますけれども、本土に移転するということがなかなか難しい状況にある。  実は、今回の一〇四号線の射撃訓練の移転につきましても、五つの候補地のうちの一つが私がおります宮城県の王城寺原というところでございまして、今いろいろ地元の方とお話を進めているわけであります。沖縄皆様方の負担を軽減しなければいけないということはみんなもちろんよくわかるわけでありますし、痛みを和らげてあげたいという気持ちはみんな持っているにしましても、いざ自分の問題ということになりますと冷静な判断が非常に困難になってくるということがございます。  これは私も含めた反省でもありますけれども、例えば日本基地の周辺、特に本土の基地の周辺対策というものも十分に行われてこなかったという嫌いもあるのではないか。防音工事にしても、航空機の爆撃音に対する防音工事はありましたけれども、射撃音に対するものは実施されてこなかった。さまざまなものがあるわけであります。  同時に、例えば王城寺原にしましても、戦後米軍駐留の時代のさまざまなイメージがありまして、要するに理屈抜きにノーという感情が非常に強い。しかし、その中で私たちも今何とか実現する方向で努力をしているわけでありますが、そういうような状況が現実にある。しかしながら、この沖縄基地の縮小、統合、あるいは痛みをなくするための方策というものは実現をしていかなければいけない。  その中で、山本先生、基地の整理、統合、縮小について、本土移転も含め、今後どうあるべきかというような何かお考えがありましたら、お聞かせをいただければと思います。
  14. 山本武彦

    参考人山本武彦君) 大変難しい御質問でございまして、沖縄は江戸時代以来、琉球処分とか、そして第二次世界大戦の戦場になり住民の三分の一がお亡くなりになったとか、また占領体制、そして七二年の本土復帰以降も七五%の基地がこの沖縄に集中しているという大変な苦しみ、辛酸をなめてこられたところでございまして、大田知事が物にお書きになったりあるいは御発言になったところでそのことはすべて集約されているというふうに思います。  しからば、基地の整理、統合、縮小に絡んで、言ってみれば、かつてこれは大平総理が使われた言葉でございますけれども、共存共苦というこの理念もしくは考え方、哲学というものを本土のそれぞれの住民、市民というものがともにできるかということになりますと、これは非常に難しゅうございます。  これは、自治体あるいは国政のレベルで政治家の先生方それぞれが、じゃどうするかと、特措法は賛成だけれども、じゃ沖縄にある基地を少しでもいいから本土に移転することについて、射爆場の問題もその一部でもいいからこちらで積極的に受け入れようかと。その点でイニシアチブを果たしてどれだけ振るえるのかということになりますと、恐らく、これは大変口幅つたいようで、人の心に入るようなことになってしまって恐縮でございますけれども、本音で言えば、これはノーというのが自治体あるいは政治家それぞれの先生方のお考えではないのかなというふうに思わざるを得ません。  したがいまして、国際政治と国内政治との間の大変大きなジレンマを解決していくことが必要だと申し上げましたけれども、事はそう簡単ではございませんで、一朝一夕にいくものでもない。いざ自分のところに基地が来たり、これはまた別の論点でございますけれども、原発の核燃料サイクル施設が来たりあるいは原発の施設が来た場合はこれは困るということで、本音と建前をどうしても使い分けざるを得ないというのがどの人間にとってもジレンマでありまして、問題点ではあろうかと思います。その辺を勇気ある姿勢として出していけるような環境というものをどうつくっていくか、これはもう釈迦に説法でございますけれども、それぞれ政治の場、立法府の場における先生方姿勢の転換にかかっているのではないのか、あるいは発想の転換にかかっているのではないのかなというふうに思います。
  15. 亀谷博昭

    ○亀谷博昭君 私たちが一生懸命これから考えていかなければいけないテーマでありまして、ちょっとお答えいただくには不適当だったかもしれませんが、ありがとうございました。  仲地先生にちょっとお伺いをさせていただきたいと思いますが、特措法の問題はまた特措法の問題といたしまして、総理も言っておりますように、この問題と今後の沖縄振興開発というものは別に考えていかなければいけない、私たちもそう思っているわけであります。  そこで、琉球大学におられて沖縄にお住まいの先生のお立場で、今後の沖縄のあり方をどんなふうにお考えなのかということをお伺いしたいわけであります。  まあ明治時代の問題もありました。そして、戦後も二十七年空白がありました。不幸にして、私たち本土に住む者と沖縄皆様とは同じスタートに立って歩んでくることができなかったわけであります。そうした中で、これからの沖縄の振興開発に何ができるのか、どんなスタンスで取り組まなければいけないのか、私たちなりに今一生懸命考えさせていただいているところであります。  そんな中で、注目的な一国二制度的な考え方はいかがなものかとか、あるいは法人税、所得税免除等の特例措置は考えられないのかとか、あるいは地理的には日本アジアの橋頭塗になり得るのではないかとか、そういう地理的な意味での優位性もあるのではないかという考え方も反面にあります。そういうことを踏まえた自由貿易地域の問題あるいは国際都市形成構想というものもあるわけであります。  こういうさまざまな意見が今ありますけれども、沖縄の立場として先生はどんなふうにお考えなのか。特に今回、普天間が返還されようとしております。これからいろいろな問題もありますけれども、何とか返還してもらいたいということで努力をしているわけでありますが、この普天間の跡地利用ということもあるわけであります。そういうものを含めた御見解をちょっと伺いたいと思います。
  16. 仲地博

    参考人仲地博君) 復帰後、三次にわたる沖縄振興開発計画に基づきまして、これは国の計画でございますけれども、沖縄の基盤は相当程度整備をされました。復帰前とは見違えるような、例えば道路、学校等整備されましたけれども、大変大きな問題点というのは、いわゆる道路や箱物等は整備されたけれども新しい産業が育たなかったということが問題であるわけです。製造業、例えばビールであるとかセメントであるとか、そういうものはすべて復帰前に沖縄に成立したのが復帰後もやっているという状態でありまして、結局、公共工事に高率補助をつけるという開発政策のやり方が問題点を持っていたのではないだろうか。高率補助で市町村の政策を誘導する。高率補助があるものですから、例えば小学校でもまだ二十年しかたたない建物を壊してまた新しい建物をつくるというふうな形で、常に財政的な支えでもって沖縄の経済というのはもってきた。  それに対して今沖縄が求めているのは、金の卵は要らない、金の卵を産むめんどりが必要なのだという言い方をしているわけであります。特別に沖縄に金の卵を産む鶏を与えよ、沖縄のみの利益を求めては全国民の賛同を得ることはできないだろうと。沖縄にそういうふうな金の卵を産むめんどりを与えることによって、いかに日本全国が、国民が波及的な利益を受けることができるのかというふうな制度の創設が求められるのではないだろうかと思うわけです。  そういう意味で、亀谷先生の御指摘そして御意見は大変ありがたいものだと思います。沖縄が勇気づけられる御意見でございます。  しかしながら、心配をしておりますのは、一国二制度も構わないというふうなのがつい先ごろまでの政府の高官からの発言として新聞報道で流れましたけれども、この特措法改正というのが実現しようとする段階になりますと、ノービザ制度は認められないとか、一国二制度はとり得ないとかというのが、これは省庁の高官の発言としてまた新聞に報道されている。特措法改正までかという疑念を私などは持っているということで、変わらない沖縄への関心をよろしくお願いする次第です。
  17. 亀谷博昭

    ○亀谷博昭君 ありがとうございました。
  18. 山崎力

    ○山崎力君 平成会の山崎力でございます。三先生に特措法をめぐる御意見を伺ってまいりたいと思います。  まず、岡崎先生にお伺いしたいんですが、いろいろな国際情勢の分析の中から沖縄基地というものの重要性を指摘されました。その中で、まず一番最初にその点で問題にしたいといいますか、考えてみなければいけないのは、確かに地政学的に沖縄基地というものは重要だということを認めた上で、ただこういった住民感情あるいは歴史的経緯のある中で、多少の効率の低下は覚悟の上で、沖縄基地を本土に移転するとかあるいはグアムとかそういった別のところに移転することで代替できないかということが考えられるわけですが、その辺についての御意見をまず最初に承りたいと思います。
  19. 岡崎久彦

    参考人岡崎久彦君) それはもうおっしゃるとおりでございまして、私が理解しておりますところでは、それを橋本・クリントン会談で合意いたしました。それで普天間の返還も決まりました。後はその合意を実施するためにSACOを設けました。それで、SACOの報告が昨年十一月に出ました。それを今誠実にやっているというところだと私は了解しております。  最近のニュースによりますと、北海道は分散を受け入れるという話を伺っておりますし、それから山口県もそうなんですね。それから、ほかの自治体も積極的に沖縄と負担を平等に持とうという立場で動いているようでございます。したがって、これは日米合意の線に従って日本の国内も協力して進んでいると私は了承しております。  ただ問題は、日米間で既に合意してそれを今着々としている、各地方自治体も協力している、これが正しい方法でございまして、それが何年かかるかわかりませんけれども、それができる前にまたアメリカに追加要求を出す、これは国際信義に反するわけでございます。だから、それは慎みつつ、これはあくまでも橋本・クリントン会談の両国間の合意に従ってその内容を誠実に充実していくということが政府の方針であるべきだと私は思っております。
  20. 山崎力

    ○山崎力君 おっしゃるとおり理解するわけでございますけれども、それでも、例えば今のSACOの問題にしても、国内に移転されたとしても沖縄の方にとっては極めてこれは不十分な内容である。特に、面積的あるいは実質的な影響度からいって嘉手納の空軍基地あるいは北部演習場、そういった重要なところの面積的にも広いあるいはバイタルなところを占めている土地というものを、もし将来、沖縄人たちが満足できるかどうかは別として、仮によしとする程度まで、表現を変えれば本土並みの基地まで沖縄を持っていくということにした場合、今のアメリカの戦略が続行されていると仮定すれば、それが非常に予想されるわけですけれども、その点について、例えば嘉手納が具体的に言えばグアムのアンダーソンに持っていけないかとか、あるいは東南アジアの、もう一回クラークというわけにもいかぬでしょうけれども、そういった施設を受け入れてくれる国があればそういったところに日本の資金で基地を移転させるとか、そういったことが軍事技術的な面として交渉対象にならないのかどうかということをちょっと追加の形で教えていただきたいと思います。
  21. 岡崎久彦

    参考人岡崎久彦君) 現在のSACOによる措置でも沖縄に不満がある、その現実は私も承知しております。ただ、そういう事情も織り込み済みで、それで日米間で合意したものと思います。ですから、現状におきましては、この日米間の合意を忠実に実施する、それ以外の方法はないと思います。その結果も不公平は残ります。  これはむしろ広く考える必要があるのでございまして、結局、沖縄はもちろん日本の一部でございまして、日本という大きな船の中の一つでございます。沖縄というところは例えばエンジンルームに近くてうるさくて暑い、だから不公平だということでございまして、その負担をある程度みんなで分けようということをやっているわけでございますけれども、完全に分けられるはずのものでもございません。といって、エンジンをとめれば船は難破して沈みますから、そうすると沖縄も一緒に沈むと、そういうことでございます。その場合は、結局そういう負担を負っている方に別の形でもって補償する、それがいろいろな沖縄に対する援助とかそういうことであると私は思っております。  だから、将来軍事技術がすっかり変わった場合の話は、それは別の話でございます。あるいは朝鮮半島情勢が全部片づくとか世界が全く平和になってしまうとか、そうなった場合はまた全然別の話でございまして、それはそのとき考えればいいわけであります。ただ問題は、そうなったら、例えば朝鮮半島が片づいたら引くんだというようなことを今から言うということは、これは変わる前から言っても大体意味のないことでございますし、それは引くべきだということを示すという意味アジア諸国に対して動揺を与える、それからアメリカの議会に対しても、日本は望んでないんだ、望んでいない基地をどうしていつまで置くんだ、そういう議論も出てくるという意味で、これは慎むべき議論と思っております。
  22. 山崎力

    ○山崎力君 それに関連して、もう一点だけお伺いしたいと思うんです。  これはちょっと角度を変えるわけですが、そういった世界情勢の中で、アメリカ軍事力、プレゼンスの度合いを日本の国益という立場から考えた場合、アメリカアメリカの国益で動いており、両国の国益観が一致したところが現状の軍事力を含めた日米関係だと思うんです。そういった中で私が危惧することは、アメリカというのは世界的な中、グローバルな中での情報をすべてある意味では独占に近い形で保持しておりまして、それでしかも明確な国家戦略を持っている。これは覇権という言葉が適当かどうかわかりませんけれども、世界のローカルカンパニーになろう、ローカルネーションになろうという考えは一切ない。いつまでもグローバルな形で世界にコミットしたいという気持ちが国家戦略、国益としてある。  そういった中でのアメリカに対応して、日本が今の政治、外交あるいはある意味で言えばインテリジェンスといいますか、情報の収集の中で、そしてもう一つ、国家の考え方、国家の方針として、果たしてアメリカとそういった意味で対等な交渉ができる体制にあるのかどうかということを非常に危惧するものですけれども、先生、その辺のところのお考えを教えていただきたいと思います。
  23. 岡崎久彦

    参考人岡崎久彦君) まず、大きな国家戦略でございます。  これは私の持論でございますけれども、日本は島国でございまして、これはもう明治維新以来、要するに近代的世界になってからでございますけれども、常に世界を、海洋を支配しているのはアングロアメリカ世界でございまして、これと仲よくしている限りは必ず日本国民は安全でございます。その上に、世界の資源に全部アクセスできるという意味日本国民は繁栄いたします。安全で繁栄すれば、これはもちろん自由も欲しくなる。結局、日本が一番安全で繁栄して、しかも自由だったのは日英同盟の二十年間と日米同盟の五十年間でございまして、アングロアメリカ世界との同盟というのは日本の利益であって、むしろ日本の利益だからやってほしいので、それをいかにしてこれがアメリカの利益でもあるかということを説明するのがむしろ難しいぐらいでございます。  情報の問題でございますけれども、これは私、実は本当に情報ばかり、それだけやっているのであります。私の意見では、情報というのは一次情報、どこに何が起こった、それから人工衛星で見たらこういうものがあった、そういう情報よりも一番大事なのは、これは一体どういう意味を持つかということの総合判断でございます。これが一番大事でございます。  その場合、もうこれは歴史的経験でございますけれども、過去三百年、四百年、世界の情報をずっと全部一番持っているのがイギリスで、それからアメリカでございます。これはアメリカやイギリスの専門家、識者と始終接触して、我が方の情報も出して、それに対して我々の意見も言って向こうのコメントを求める。また、そういう自由な意見交換ができる社会体制を持っておりますので、それをしておきますと情報の中心というのがぶれないのでございます。これが孤立しておりますと、三国同盟のときのような状況になりますと、これはドイツが勝つと思ったり独ソ戦がないと思ったり、非常に偏った情報になってしまう。あんなものは一般的な常識で見ていればわかる話なんです。  ですから、私はハードウエアよりもアングロアメリカ世界と仲よくするということが情報の一番いい方法だと思っております。これは学校で言えば、一番成績のいいグループと仲よくしていれば試験の動向も何もわかりまして大体失敗しないのでありまして、落第生と一緒になっておりますと、これはもういかに情報を集めてもだめなんです。
  24. 山崎力

    ○山崎力君 仲地先生の方にお伺いしたいと思います。  どっちに転んでも法に違背する状況がある。そのうち、苦渋の選択としてどちらを選ぶべきかというお話を伺いました。  ただ、その中で、私どもと若干意見を異にするのは、今度の特措法に関して、法律というのはもともと現状を変えるときに非常に神経を使いまして、現状がそのまま続くということに関しては余り、肯定するといいますか、そういったものがあるものだというふうに理解しております。  ですから、今度の特措法の問題で、もしこれがだめだということになれば、それが自動的に地主の方々に土地が返還されるというような形のものでしたらこれは非常に大きな意味合いを持つんですけれども、多くの方が認めておられるように、タイムラグはあれ土地収用委員会が現状変更を認めない、認めないというか今のままでよろしいだろうという答申が出ることはほぼ予想された前提に出ているわけです。  要するに、五月十四日までは軍事基地として使用がオーケーだと。それから、土地収用委員会が裁決を下してオーケーが出た後、これはいつになるかわかりませんが、それから以降も軍事基地としての使用はオーケーだと。その期間どうするか、どういう権利関係を持たせるかということだとすれば、その部分を法的にスムーズにつなげるという考え方は当然出てきていいのではないかと思うんですが、その辺についてのお考えを伺いたいと思います。
  25. 仲地博

    参考人仲地博君) 収用委員会で審理中は使用権原を認めてもいいのではないか、いずれ収用委員会は使用の裁決をするはずであるからという御質問ですね。  収用委員会の任務というのは、補償金を定めることと、それから強制使用の期間を定めることが主要な任務であるわけです。しかしながら、今回の法改正で却下の場合も想定したように、却下の場合もあり得るということであるわけですけれども、収用委員会で審理中は法的権原がないと絶対に困るのかということであるわけです。  現実に楚辺通信所、いわゆる象のおりでは明確な法的権原がないまま国は使用しているわけでありまして、それが他の基地においてもそういう状態になるということで、それで特に基地の機能に影響があるというわけではないというのが楚辺通信所の示しているところであるわけです。  国がいわゆる不法占拠をしたら、これは国にとっても望ましいことではありませんけれども、しかし基地の管理権はアメリカ側にあるわけでありまして、そしてまた地主の方が返還訴訟を起こしましても裁判所がそれを即認めるというのはまず考えられない、過去の判例からも考えられないことでありまして、法的権原がない状態を恐れる必要はないのではないか。先ほど言いましたように、形式的に法治国家の外形を整えるよりは、実質的な法治国家の道を着実に歩んだ方がいいのではないだろうかということであります。  法的権原がないというのは国にとっては避けたいというのは理解できないことではありませんけれども、法的空白状態を背景にすることによって、国民基地に対する議論あるいは沖縄において基地をどうしなければならないのかという議論が促進されるのではないかということに期待をするわけです。
  26. 山崎力

    ○山崎力君 その立場というのは非常に理解するんですけれども、私ども本土の人間からすれば、今度の特措法の問題というのは、要するに法律改正するとか実質をどうするとかということでなくて、沖縄の方々にとっては自分たちの置かれた環境といいますか状況を本土の人たちによりよく理解してほしいという一種の情報発信のために、これが主なる目的であるというふうに受け取れる今のお言葉だったんです。  現実に言えば、今まで発信し続けて余りにもそれに対する対応がなさ過ぎたという現実もあるわけで、そういった形で受けとめるとすれば、もちろん受けとめた以上はそれに誠実に対応するという義務を我々は負うわけですけれども、沖縄の方とすれば、そういう受け取り方をする人間が本土におるということに関してはどのようにお考えでしょうか。
  27. 仲地博

    参考人仲地博君) 法的空白をつくり出す、そのこと自体が目的ではないわけです。結果として生じた法的空白を契機にしまして沖縄基地のあり方というのを考える機会になるというのは大変結構なことだと思っております。  そして、先ほど申し上げましたように、きょう私がお話ししましたことは国会の役割ということでありますけれども、実質的な法治国家の道を法律というのは求めるべきではないだろうか。  そういう二つの側面から、形式的な法治国家よりは実質的法治国家を求めて法的空白を選んだ方がいいのではないだろうかということでございます。
  28. 山崎力

    ○山崎力君 山本参考人にお伺いいたします。  最後のところで、たしか時限的立法というような表現をされましたが、私自身はこの問題に関しては限時法を持ってくるというのは余り賛成できないといいますか、この沖縄基地問題というのは一にかかって最高政治、外交の課題でありまして、それを縛るような法律をつくるのはいかがなものかというのが一点。  それから、もしそれが切れた場合、政治的に利用される。これは軍事基地でもなかった成田空港における一坪地主の問題とか強制収用のいまだ完了しない問題とか、そういったことを考えれば、そういったごく一部の方でしょうけれども、イデオロギー的にそれを利用しようとする方には非常に武器を与えるという気がして、限時法という形をとるのはいかがなものかと思っているんですが、その辺についてのお考えを伺いたいと思います。
  29. 山本武彦

    参考人山本武彦君) 先ほど最初の意見陳述のところでも申し上げましたように、この特措法改正するに当たっての立法過程で、大変時間的に限られた短い時間の中で国民の権利義務にかかわる重要な問題を行ってきたということについては、私は立法過程論の立場からいって好ましいものでは決してないというふうに思いまして、主たる論点としてそういう問題点を指摘したわけでございます。ですから、アメリカの将来のアジア戦略がどう変わっていくかということも見据えた長期的視点に立った議論というものをすべきだという意味からも、時限的立法にして、そして五年たった後これをまた議論するということでどうなんだろうという問題を提起したわけでございます。  もう少しこの問題は早い段階から明らかになっていたわけですね。昨年の例の楚辺通信所の問題がございました。そのときから政府がこういう特措法という改正問題をなぜ提起しなかったのか。そこに、先ほどの話の類推で申し上げますと、政府は宿題を与えられたらその問題の解決にすぐに取りかかるけれども、問題を考え自分で宿題を課して、そしてこれを解いていくという、どうもそういう姿勢に欠けているのではないか、官僚国家の大変悪い、弱点ではないかなという感じがいたします。
  30. 山崎力

    ○山崎力君 終わります。
  31. 角田義一

    ○角田義一君 社民党の角田義一でございます。  先生方、きょうは本当にありがとうございます。  仲地先生にお尋ねいたしますが、私は社会民主党のメンバーとして、与党の沖縄問題懇談会というのができておりまして、その一人のメンバーとして、この特措法の問題あるいは沖縄の振興策の問題、さらには基地の整理、縮小等の問題について自民党さん、さきがけさんと大変な激論を交わしてきた一人であります。  私は、その与党三党の議論というものは非常に貴重な議論であったというふうに思っておりますが、この特措法の期限切れの問題についてはもう当初からわかっておったことでもあり、しかも村山政権のときからの問題でもありますから、橋本総理になったとはいえ、私ども連立政権の一翼を担う者として非常に苦悩してきたということであります。  そこで、私は、この空白状態というものあるいは失権状態というものを避けなきゃならぬということは行政として当然の要求であるというふうに思うわけでありますから、それをどういうふうに避けなきゃならぬかということになりますと、やはり現行制度のもとで保障されておる一つの手続、はっきり言えば緊急使用の申し立てということはきちっとやるべきではないのかということを主張してまいりました。政府当局と、この緊急使用の申し立てをしても全然意味がない、間に合わないというようなことでなかなか一致点は見出せなかったわけであります。  先生御案内のとおり、緊急使用の申し立てというのは幾つかの事例がありますけれども、その中の一つに、日米安保条約の運用に障害のおそれがあるというようなときにもこれは申し立てることができるわけでありますし、それは必ずしも具体的なおそれではなくて、私は抽象的なおそれでもいいんじゃないかというふうに思いますから、緊急使用の申し立てをして、そして沖縄県の収用委員会の皆さんに特段の御高配をいただいて、そして六カ月間の緊急使用の申し立てをして六カ月間の猶予をいただくということが大事なことではないかというふうに思っておったわけであります。  そこで、私は、現地の情報について必ずしも万全を期しておるわけじゃありませんけれども、もしこの緊急使用の申し立てということを仮に政府が行ったとしますと、その場合には、今日のさまざまな政治状況というものを踏まえて現地沖縄収用委員会はそれなりの真剣な対応をしていただけるんじゃないかと、希望的な観測かもしれませんけれども、私は持っておるわけでありますが、その辺、現地で大変御苦労をされております先生の御意見といいましょうかあるいは御見解といいましょうか、その辺の状況について私は率直にお話をいただければありがたいというふうに思います。
  32. 仲地博

    参考人仲地博君) 政府にとって不法占拠状態が生ずることを避けたいというのは、これは理解できないことではないと先ほどから何度かお話をいたしました。これは国民にとっても避けたいことであるわけです。形式的な法治国家はまだましでありますけれども、生の権力が国民の権利を制限する、侵害をするというのを目の当たりにするというのは国民にとっても避けたいことであるわけです。  しかし、そのために、事前に定めた法の手続に従ってやるというのが法治国家である。国民の代表である議会が、どういう権利をどういう場合にどのような手続でという、事前に定めた手続に従って初めて権力は国民の人権を制約することができる。そうでなければならないというときに、定められた手続というのは緊急使用の手続であるわけですから、緊急使用の手続はとってみるべき一つの方法であったといっただいまの角田先生の御指摘は私も同感であります。  しかし、緊急使用の手続をとったら収用委員会がどういうふうな結論を出したのかというのは、こちらからは推測を交えての話、こうではないかという私の感想程度の話になりますけれども、収用委員会は大変真摯に議論をしております。公平中立な機関として判断を下すと言っておりまして、タイムリミットを設けないであろうということはこれは推測がつきます。とにかく五月十四日までに何が何でも裁決をしようというふうな姿勢にはないということは見てとれるわけです。  ですから、そういう意味で緊急使用の裁決が間に合ったのかどうかというのは不明でありますし、またすべての土地について緊急使用が認められるかどうかというのも不明でありますが、恐らく私が想像するに、緊急性が認められるような、あるいは基地の基本的な機能が阻害されるような、滑走路の真ん中であるとかそういうところについて緊急使用を認めないというふうなことはないのではないか。これもまさに私の推測以上を出ませんけれども、特に根拠を挙げて実証的にお話をすることはできませんけれども、そういうふうに予想をいたしておりました。  以上です。
  33. 角田義一

    ○角田義一君 死んだ子の年を数えても仕方ないんですけれども、十分な審議期間をとって、そして緊急使用の申し立てをすれば、先生が今おっしゃったように、例えばの話ですが、嘉手納基地の滑走路のど真ん中であるとかあるいは普天間の基地のど真ん中であるとかというようなところについては、少なくとも私は収用委員会におかれては緊急使用の申し立てを認めていただけるんじゃないか。そういうことでてんでんばらばらになるということもありますね。一部却下ということもあると思いますけれども、それはそれで甘んじて受けなきゃならぬと思いますが、そういう手段をとるべきでなかったのかなと今でも思っておって、そういう手段もとらないでいきなり特措法改正というのはいかがなものかという気持ちは今でも大変強いわけであります。  それからもう一つ、仮に期限が切れると、これは不法状態とかいろいろなことを言います。余り言葉にはとらわれないで、一つの的確な言葉で言えば、国にとっては一つの失権状態、権利がない状態と。それが不法であるとか違法であるとかというようなことはちょっといろいろまた議論が出てきますものですから、権利がない、失っているという失権状態というのが一番適切かなというふうに思うんです。  問題は、日米安保条約上、政府基地の提供の義務を負っておるわけであります。これはもう御承知のとおりであります。大田知事日米安保条約を別に否定しておられないと私は理解をしております。そうしますと、国が形式的に失権状態を招いても、例えば日米安保条約上の義務をどういうふうに履行したらいいのかという問題は、政治論としてはこれは当然あるのであります。法の完璧を期して、こういう特措法によって国が権原を得るということも一つの方法でありましょう。しかし、それによって沖縄県の大変な反発を受けるし、また多くの国民からいろいろな疑念も出されておるということを考えますと、一つの政治的な解決方法ということも政治家としては考えなきゃならぬ問題だと私は思うんです。  そこで、こういうことを聞くと大変御無礼になるかもしれませんけれども、例えば今の政府沖縄県との極めて良好な関係というものを維持するためにも、これは当然国としてはSACOをきちっとやらなきゃならぬでしょうし、また将来、沖縄基地の整理、縮小ということも大きな課題として取り組まなきゃならぬでしょうし、さらに私ははっきり申し上げますが、反戦地主の代表の方と国はざっくばらんに話をすべきだ、理解を得るべきだと。  そしてまた、大変これは御無理なお願いかもしれませんけれども、大田知事さんにも御理解をいただきまして、仮に失権状態が一時あっても、一応基地は平穏に裁決が出るまでは使えるんだというような政治宣言、こういうものを発して、それでアメリカとの関係というものを維持するというのも政治的な手法としては私は十分に考えなきゃならぬ問題だというふうに思うのであります。これは沖縄の知事さんなりあるいは反戦地主さんなりの相当な御理解をいただけないとそういうことはできないと思うのでありますが、私が言っているような問題は、これは無理な話で夢想だというふうに先生はお考えになりましょうか、それは考慮に値する一つの発想だというふうにお考えになるでしょうか。
  34. 仲地博

    参考人仲地博君) ただいまの角田先生の御意見に私は全く賛成でございます。  基地を取り巻く情勢というのは、アメリカから見たら法的安定性も当然欲しいところでありますけれども、政治的な安定性というのはアメリカ日本の状態に対して疑念を差し挟むようなものではないわけであります。政府姿勢は極めて明確でありますし、また国会でも安保条約を是認する、堅持するということを主張する政党の議席が圧倒的多数を占める状態になっているわけです。ですから、政治的に基地というのは安定的な状態にあるわけです。それを分けまして、政治的には特に困ったわけではない、法的に空白状態ができたから日米間に深刻な亀裂が生ずるということも予想されないわけでありますから、ただいま角田先生の御指摘にありましたように、空白状態は空白状態としてこれを解決するための努力をするというのがむしろ選択の方法ではなかっただろうかと私も思います。
  35. 角田義一

    ○角田義一君 私は、日米関係というものを非常に重大視しておりますし、それから社民党も大変な党内の激論の中で日米安保体制というものを守っていくということも決めておるわけです。そういう立場に立ちますと、私は非常に政治的な要素というものを大事にしたいというふうに思っておるわけでありまして、そういう意味では、これは沖縄の皆さんにとっては大変な苦悩であることはよくわかっておるんですけれども、基地の整理、縮小、統合というような問題はしょせん最終的には外交交渉によって決着をつけなきゃならぬ問題だというふうに思うわけであります。  しかも、今政府と大田さんとの間にはそれなりの信頼関係、きずなというものもできているわけでありますから、これから苦楽をともにしていくという観点から、私が今申し上げたような一つの手法もこれは当然考えられてよかったんじゃないかなというふうに思っておるわけであります。  それから、時間もございませんからお尋ねいたしますが、衆議院でこの法案が通過をする前後だと思いますけれども、コーエン国防長官が、例えば朝鮮が安定をしても十万のプレゼンスを置くというようなことを言っておられる。これは沖縄人たちにとってみるとまたかと、この特措法と絡んで、本当にまた基地というものは固定化されてしまうんじゃないかというお気持ちが大変私は強かろうというふうな気持ちもいたすわけであります。  そういう中で、衆議院で通った段階、そしてコーエンさんのああいう発言を踏まえて、現地沖縄ではどんなお気持ちでおられるのか、先生からちょっとお聞きをしたいと思います。
  36. 仲地博

    参考人仲地博君) 最近、地元の二つの新聞が特措法についての賛否を問う世論調査をいたしました。一紙はたしか、今資料を持っていますので見たら明らかですけれども、私の記憶では改正反対が五六%、もう一紙は六一%ではなかったかと記憶をしております。つまり、沖縄県民の世論というのはこの特措法改正に否定的であるわけです。特措法改正することによって国と沖縄県の関係に悪い影響が生ずるかもしれないという角田先生の御指摘はそのとおりだと思うわけです。  そして、朝鮮半島あるいは台湾海峡情勢が安定しても十万人体制維持するということは、一体沖縄基地というのは何のためにあるのだろうかという基本的な問題を提起しているのだろうということです。特に、冷戦終了後なおアジアには冷戦の残滓が残っているのでという説明も成り立たなくなるのだろうかと思うわけです。沖縄基地を固定化させないというのが沖縄県当局、それから県民の願いであるわけです。全国の七五%という過大な基地を何とかして縮小していきたい、県土の一〇%、沖縄本島の二〇%という基地は余りにも沖縄にとって負担が重過ぎる。それをこのまま固定するのが朝鮮半島の安定後も十万人体制維持なのかということを沖縄県民は心配しているということです。
  37. 角田義一

    ○角田義一君 私は、四月十二日の土曜日に先生と比屋根照夫先生が対談をしておる琉球新報の記事を拝見いたしまして、大変興味深く、また感銘を受けて拝読をいたしました。  その中で、先生が最後に、沖縄の事大主義といいましょうか、それを今度の問題で克服をしたんだとかするんだとかという言葉がございました。私はなるほどなという気持ちもあるんですけれども、その辺の先生のお気持ち、この沖縄のいわゆる事大主義というようなものを今度のことで私どもは克服をしたということを言っておられますので、もう時間が四分しかありませんから、その辺をせっかくの機会でございますから最後に訴えていただいてよろしいんじゃないかと思っております。
  38. 仲地博

    参考人仲地博君) 沖縄の県民性は事大主義であると言われてまいりました。沖縄学の父と言われる伊波普猷という学者がおります。戦後すぐのころ亡くなりましたけれども、この伊波普猷が、それから現知事の大田昌秀先生が昭和の沖縄の歴史を検証する中から、あるいは琉球王国時代中国との関係の歴史を考察する中から、沖縄の県民性は事大主義であると言ってまいりました。  すなわち、長いものには巻かれよ、権威に盲従する、権力に逆らわない、よく言えば従順であると、よくもないのかもしれませんけれども、そういうものとして県民性を把握してきたわけです。そのとおりだっただろうと思います。この過大な基地に対しても沖縄は余りにも自己主張をしなかったというのがこれまでではなかっただろうか。例えば玉野井芳郎という東京大学の名誉教授、晩年を沖縄で過ごしましたけれども、この方が余りにも物を言わない県民性ということを言っております。  ようやくこの七五%の基地の負担を拒否したいというのがこの二カ年間の沖縄の声であったのだろう。職務執行命令という戦後の地方自治の歴史の中で一度しか発動されたことのない権力発動を受けながら、県知事そして県民が訴訟になってもなおかつ自己の主張をしようとしたというのは、巨大な国の権力を恐れなかったということで沖縄県民にとっては大きな自信になったのではないだろうか。それを獲得するためにそういうことをやったというわけではありませんけれども、結果としてそういう役割を果たすことができた。  そして、機関委任事務を拒否するという自治体がなかなかなし得ないことをしたことによって分権論議にも追い風を吹かすことができた。多くの都道府県、市町村の議会で、多分三分の一から半分に近いのではないかと思いますけれども、首長さんたちがこの知事の姿勢を評価したというのは、沖縄県が全国の地方自治体に分権、自治の風を送ったということで、そういう意味沖縄は自治のあり方に貢献をすることができたのではないか。  そういう意味で、事大主義を克服することができるならば、結果として沖縄にとっては大変うれしい出来事だったと思います。
  39. 角田義一

    ○角田義一君 終わります。
  40. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 きょうは参考人の各先生方、ありがとうございます。  民主党・新緑風会の齋藤勁と申します。  本当に国会というのは乱暴だなと今回実は思いました。本当にぎりぎりの、何と言うんでしょうか、本当にある意味では御予定も入っているにもかかわらずこうしてお差し繰りいただきまして来ていただくというのは、私も一委員として心から御礼を申し上げたいというふうに思います。  私どもの党の立場はありますが、今ここで披瀝するまでもございませんし、時間も限られておりますので御容赦いただきたいと思います。  最初にお三方の先生に共通してお聞かせいただきたいのは、この間の委員会での議論もあったんですが、いわゆる日米関係、私どもは日米安保条約を基軸にという立場でございます。今この特別措置法改正をめぐってということではここに焦点を当ててはいないというふうに思うんですが、これは一昨日も私もこの委員会で、そして昨日も某委員から発言があったんですが、ただいまコーエンさんの来日の話が出ました。コーエンさんだけじゃなくて、オルブライトさんからもうさまざまな、私もメモを見なきや名前が出てこないほどたくさん来日をされております。それぞれの方々がそれぞれの目的で来ているわけでしょうけれども、なぜアメリカ側がこれだけ過密なスケジュールの中で立ち寄ったか、あるいは日本にだけ来たかというアメリカ側目的、そしてねらい、これを私ども日本側としてはどういうふうに受けとめたらいいんだろうか。  その辺はやっぱり相互に見なきゃいけないわけでございますから、この時期にそれぞれが来たということについて、アメリカ側そして日本側の受けとめ方、短時間で結構ですので、岡崎先生から、そして仲地さん、山本さん、それぞれお聞かせいただきたいというふうに思います。
  41. 岡崎久彦

    参考人岡崎久彦君) アメリカ側目的でございますが、これは実は日本ではいろいろ憶測がございまして、それで、もうそろそろ日本の問題は後ろに引いて、問題は中国だと。日本パッシングであるとか日本ナッシングであるとかいう議論がございますけれども、実は内情は私はそうでないと思っております。また、現実もそうでないと思っております。  つまり、アメリカ世界じゅうに全部責任を持っておりますので次々に懸案を解決しなきゃいけない。それで、橋本・クリントン会談で、日米関係はもう大丈夫だ、だからもう心配ないと。日米関係を軸にして今後アジア太平洋政策をやっていこう、そういうことでございます。ですから、ある意味日米関係はもう大丈夫ということで関心が薄くなったということが一つ。  もう一つは、日米関係中心にしてアジア政策を行おうということで、まずオルブライト国務長官が参りまして、それからアル・ゴア副大統領が参りまして、それからコーエンが参りました。いずれも言っている内容は同じでございます。日米同盟中心とするアジアにおける前方展開体制維持すると。要するに、現状維持政策を表明しに来たわけでございます。
  42. 仲地博

    参考人仲地博君) 格別にこの問題について関心を持って考えたわけではございませんけれども、沖縄の現地の世論は海兵隊削減というのが大変強い要求でありまして、この海兵隊の削減を沖縄が要求することによって政府橋本総理もそのための努力をする、アメリカに対してそういうふうな要求をぶつけてくるのかもしれない。それに対して、恐らく表面的あるいは水面下で拒否の動きがあったのだろうと思いますけれども、その表面的な日本国民に対する、米国は十万人体制維持したい、日本政府からそれを持ち出してきては困るという明確な意思表示ではなかったかと。  アメリカから見ますと、沖縄の頑強な抵抗に政府もまたアメリカに対して譲歩を求めてくる。沖縄世論というのは、なぜ政府アメリカに対してこんなに弱腰なのか、外務省はアメリカの代弁者かというのが沖縄世論であり、それに政府がこたえる可能性というのを、アメリカがもしそういう危険を感じたんだったら、アメリカとしてはそれに陰に陽にプレッシャーをかけたい、日本国民に対してもアメリカの要求をきちんと説明したいということではなかったかというふうに推測をいたします。
  43. 山本武彦

    参考人山本武彦君) アメリカ側から要人または知識人等、いろいろこの問題をめぐって発言をしているわけですけれども、さきごろゴア副大統領が参りましたときに、在日米軍はこのまま維持するという発言がございました。ただ、副大統領の発言を注意深く読んでおりますと、在日米軍は削減しないという発言、それは確かにございました。しかし、在沖縄米軍については何の言及もしていないんですね。この辺が非常に重要なポイントではないか。これはわかりません。ただ、発言しなかったことの合意、これはインプリケーションと申しましょうか、これを今後沖縄基地の整理、統合、縮小問題の将来を考える上で一つの大切なポイントとして押さえておくべきではないのかなという感じがいたします。  それは、最近のアメリカ国内における日米関係にかかわるさまざまな議論を見ておりますと、例えばもう既に御存じだと思いますけれども、沖縄の海兵隊不要論を言う識者もおります。例えば、これは日系の学者ですけれども、マイク・モチヅキなどはそういうことをはっきり言っている。  また、今QDRが五月十五日に出されるということで、九人のメンバーがこれに参加して四年ごとの米軍の全世界に展開する戦力の構成見直しを行っている。これは五月十五日に出てくる。ちょうど五月十四日が沖縄基地の期限の切れるところでございますけれども、うまく日程がぴたっと合っている。QDRでどういう結果が出てくるかということも大変注目の的ですけれども、このQDRに沖縄米軍兵力構成について何らかの言及がなされる可能性なしとしない。ここに私どもはさっきのゴア副大統領の発言との関連で何らかのリンクがあるのかどうかということを注意深く見ていく必要があるのではないかというふうに個人的には関心を持っております。  それからまた、これとの関連にもなるわけですけれども、日米同盟の見直し論が実はアメリカの中にあるということですね。それは特にジャパン・リビジョニストと呼ばれる連中から出ているということ。そして、先ほど私が冒頭の陳述で申し上げました地経学者、ジオエコノミストと言うんでしょうか、こういう学者からも出つつあるということで、例えば第一期クリントン政権の国家経済会議、その前は大統領経済諮問委員長をやっておりましたけれども、その経済会議のトップを占めましたローラ・タイソン女史も戦略的貿易政策を推進する過程で言外にそういうことをほのめかしてきている。  ですから、必ずしも未来永劫あるいは長期的に十万人体制在日米軍四万七千人体制、そして在沖縄米軍の現在の兵力構成を維持していくということでこの一枚岩が形成されているというふうには私は思っておりません。それほどまだら模様の地図が今アメリカ国内では描くことが可能なのではないかというふうに受けとめております。
  44. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 先生方のお話の中にも、いわゆる海兵隊問題について触れていただいたわけでございますが、即戦力というよりは多分にシンボリックと先ほど岡崎先生の話がございましたけれども、私は抑止力的な効果というのが非常に現時点まで働いていたのかという気がしないわけではないんです。  冷戦構造後、日米がSACOそして日米共同宣言、中間報告、最終報告、いろいろありますが、日米の対等なパートナーシップという中で兵力構成についてきちんと話し合うということもある意味ではルール化ができてきたわけです。  この海兵隊問題についてはシンボリックなというふうにございますけれども、今日の日本側の負担の問題から、それからいわゆるアジア太平洋の十万人体制を含めまして、非常に広範囲な目的を持った米軍ということになりますと、実はこれも国会の中でも議論がございますが、果たして日本だけが負担をする、この負担が嫌だよ嫌だよという意味ではないんですが、少なくとも共通した認識に立つならば、協議をした中でこのアジア太平洋という中でのそういうプレゼンスといいましょうか、そういった考え方というのはあってもいいんではないかというふうに思います。  これは先ほど岡崎先生、そういう意味ではシンボリック、今海兵隊というのは余りさわっちゃいけないんだみたいな御答弁があったんで、今度は山本参考人にここら辺についてぜひお聞かせいただきたいというふうに思います。  今直ちにということについては、やっぱり変わり得るものだ、変わっていかなきゃいけないというふうに、私は日本側のむしろ積極的な役割というのがあるんではないかということで、その中には当然、冒頭の話のとおり、信頼醸成とかさまざまなことがありますが、事兵力問題に限って言えば、例えば変えていく努力というのを日本側がしていく。そして、やはり沖縄に重要な位置を占めていますこの海兵隊問題というのは、少なくとも私どもが実は後方配備という中での指摘をさせていただいているんですけれども、この海兵隊問題についてどうお考えになっているのか、さらに具体的に山本参考人にお聞かせいただきたいというふうに思います。
  45. 山本武彦

    参考人山本武彦君) 特にこの海兵隊問題というのは、現在のこの特措法をめぐる議論の中で中心的な論点に据えられているわけでございますけれども、もう少しこの範囲を広げまして、日米安保体制の中で日本が負っている負担、責任と申しましょうか、これは典型的には思いやり予算という形で日本が負担してきた財政面での貢献もしくは負担ですね。  これはもう御承知のとおり、日本は他の同盟諸国、例えばGNPの規模でほとんど日本に近い国としてドイツを挙げますと、ドイツが一九九四年の段階で、ドルベースでいいますと十四億ドルを負担している。それに対して日本は同じ九四年に三十四億ドル、もちろん計算の仕方がいろいろございますので、ラフな数字でいいますと三十四億ドルという負担を行っているわけです。およそ二十億ドルの差がある。これほどの財政的貢献を行っているということ。また、さきの湾岸戦争でも百三十億ドルの財政的貢献を行う。  その後、いわゆる人的貢献論が出てきてPKOの論議にまでつながっていったわけでございますけれども、こうした財政的貢献というのは他の国にはなし得ない大変大きな負担であるわけですね。それが国際関係における平和の枠組みや平和の秩序をつくっていく上で大変大きな意味を持ってきたということをなぜ政治的な言語に組みかえて発信できないのかという日本外交のもろさ、弱さというものを私は痛切に感じるわけでございます。  先ほど仲地先生の方から、沖縄の県民性に関しまして、長いものには巻かれろ、権力に対する従順という県民性を御指摘なさいましたけれども、これは単に沖縄だけに限られたことではございませんで、私は日本の政治文化、日本人の精神構造に強く根づいたメンタリティーだと思うんです。長いものには巻かれろ、そして寄らば大樹の陰。寄らば大樹の陰は日米関係にも言えることであって、少なくともそういった意味では日本の外交の拘束的な条件になってきた、そういう苦い思いを感じるわけでございます。  そういった意味で、このバードソンェアリング、応分の負担を行っているに見合う政治的なメッセージを明確に発信していくこと、そのことが日本姿勢についてアメリカから好意的な反応を引き出すてこになるんではないかというふうに思うわけでございます。  海兵隊の問題もそういう文脈の中で見れば、海兵隊という戦力がアメリカの四軍のうちの一翼を構成するわけですけれども、これが世界戦略の中で占めている位置は今後も変わっていくであろうということを、周辺の戦略環境の変化に合わせて慎重にかつ綿密に吟味していく必要があるのではないか。そうしますと、四万七千人のうちの何十%かは将来削減可能な数字としてアメリカ側に要請していくことが可能になるのではないか。そういう緻密な議論というものが果たしてこれまでどれだけなされてきたかという点につきましては疑問なしといたしません。
  46. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 ありがとうございます。  仲地先生にお伺いいたしますけれども、私自身は神奈川県に在住しているんですけれども、神奈川県も沖縄に次ぐ基地県として、これは比較になりませんけれども、ただ重要な第七艦隊の横須賀そしてまた厚木基地ということで基地を占めていまして、地位協定の問題が大変な重みを持っているというふうに実はその基地の存在として思っています。  この地位協定をめぐるさまざまな苦労というのは、住民そして自治体の辛酸といいましょうか、今日まで経緯を示しているんですが、痛ましい少女暴行事件の問題でも、この隊員の逮捕問題あるいは引き渡しの問題で地位協定問題というのが大変焦眉の急になりました。  たまたまドイツがあの第二次大戦以降よく比較をされまして、ドイツ地位協定日本地位協定。ボン補足協定という非常に細部にわたって地位協定がございますが、この地位協定に対して、これも国会議論の中で、政府側というのは非常に幅広い判断ができるからということで、この地位協定について、ある意味では基本的には見直す考え方はないみたいなそんな答弁もあるんですけれども、この地位協定は私はどうも日本の市民の立場に立った地位協定ではないと。  そういう意味では、先ほど言った防衛問題についても対等でなきゃいけないわけでございますけれども、先ほどの短い時間の中でなかなか御説明がなかったんじゃないかというふうに思いますけれども、この地位協定のあり方についてぜひお話しいただければというふうに思います。
  47. 仲地博

    参考人仲地博君) 地位協定沖縄が復帰をする以前に日米間で締結された条約であります。沖縄という基地が密集した状態を念頭に置いていなかったのではないかと、これがまず第一の問題です。それから第二の問題は、今の情勢国際情勢も変わりましたし、それから国民の意識も変わりましたし、そういう状態に合った地位協定にしなければならないのではないかというのが第二点目です。  それから、地位協定のような条約というのは戦後のものでありますけれども、第二次大戦以前には平時に一国の軍隊が他国に長く駐留するという状態はなかった。戦後のものでありますけれども、これも例えばドイツや米韓の地位協定、それぞれ少しずつ違うわけです。それを比較しまして、何とか合理的な地位協定考えなければならないというふうに思っております。  特に、対等ではないという今の齋藤先生の御指摘、私も同感でありまして、例えば通常の外国人が犯罪を犯した場合には日本の司法当局が逮捕できるけれども、なぜ米軍人軍属の場合には起訴するまで身柄を拘束することができないのか。対等な関係と言えるのか。あるいは公務外、公務内で裁判の管轄が違いますけれども、この公務外か公務中かの判断が一方的に米軍側にあるというのも対等な両国間の関係と言えるのかどうか。そういうことが問題になるのだろう、そういうふうな点の見直しが必要であろう。特に今の齋藤先生の御質問との関係でいえば、対等な当事国間の条約とは思えないようなところがあるということを述べたいと思います。
  48. 橋本敦

    橋本敦君 きょうは参考人の三先生、御苦労さまでございます。  日本共産党の橋本敦でございますが、私からも先生方に御意見をお伺いしたいと思います。  まず、仲地先生からお願いしたいと思うのですが、沖縄基地のこれまでの経過を見ますと、戦争中はもちろん米軍に占領状態、それから後は沖縄の施政権が日本から切り離されるもとで、布令布告という沖縄米軍の施政権下での基地の取り上げが進みました。そして復帰の直前にいわゆる公用地法ということで、これがまた五年間ということではありましたが続けられるということになりました。  一口で言いますと、沖縄基地の成り立ちのそもそもは日本の憲法の光の届かないところで、憲法の枠の外で基地が形成されてきたということは歴史的経過としてこれは否めないのではないかと思いますが、その点、先生いかがお考えでしょうか。
  49. 仲地博

    参考人仲地博君) 御指摘のとおりと私も思います。戦後二十七年間は米軍の軍政下に置かれまして、憲法の適用がなかった。その間に沖縄米軍基地は形成され、あるいは拡張され、部分的には返還もされましたけれども、存続をしてきたわけです。  復帰時点の公用地法でありますけれども、この公用地法も御承知のとおり法の定める適正な手続というのを住民側から見れば全く欠いていた。土地を強制的に使用する場合には三条件が必要であります。一つは、法律で明確に適格の事業、どういう事業に使うのかという目的を明確にしなければいけませんし、それから正当な補償がなされなければなりませんし、それから適正な手続がとられなければなりませんけれども、これが憲法二十九条の要求する財産権を侵害する場合の要件だと一般的に理解されますが、その一つの要件を欠いたまま沖縄軍用地はそのまま強制使用され続けました。復帰五年目に制定されました地籍明確化法というのはそれをそのまままた五年間延長するというものでありました。  ようやく復帰十年目に駐留軍用地特措法が適用されまして、土地収用法ほど手続は厳格ではありませんけれども、曲がりなりにも一応の手続を備えた法律によって土地は強制使用されることになりましたけれども、結局沖縄基地は、もちろん全部がそうではありませんが、反対をする人の土地は戦後五十年間、半世紀にわたって強制使用をされ続けてきたということです。  五十年間というのは人の一生に匹敵する期間でありまして、そういうふうに長期間にわたって、半世紀にわたって土地を強制的に使用し続けるというのが正当な状態なのかどうかというのは疑問があるところであります。
  50. 橋本敦

    橋本敦君 私は憲法の枠の外でそういう経過があったということを指摘したんですが、さらに今日もまた、本当に沖縄に憲法の光が届くのかどうかが改めて問われている、こういう改正法だと思っておるんです。  先ほど先生の御指摘で、公用地法、地籍明確化法、この二つは五年という期限があった、ところが今度の特措法改正は暫定使用という名で事実上期限がなくなっていくと。つまり、収用申請さえすれば期限が来てもその暫定使用が続く。裁決が出て強制使用が認められないとなっても、施設庁が不服の申し立てをすれば、建設大臣がその判断をしない限りにおいては暫定使用が続けられる。そういう意味では、これまでの二つ法律以上に今度の暫定使用という問題は、期間の定めのない強制使用の継続という意味において先生が御指摘になったように非常に重大な問題だ、私はこう思うんです。  暫定使用するというそのことが、収用委員会の審理の対象にもならず、土地所有者の意見を聞く手続もなくやられていくわけです。収用申請さえすればいい、不服申し立てさえずればいい。これはまさに憲法三十一条の適正手続そのものにもう真っ向から違反をする、そういうものではないかというように私は思うんですが、その点について三十一条との関係で先生の御意見はいかがでしょうか。
  51. 仲地博

    参考人仲地博君) 国民の権利を制限する場合には法の定める手続によらなければならない、法治主義の大原則であります。  しかし、今回の法律は、その法の定める手続を完了しなくとも暫定という名目で土地を使い続けることができるというのは御指摘のとおりであるわけです。しかも、終期が明確ではない。却下の場合には、建設大臣に対する審査請求で、建設大臣の裁決があるまで使い続けることができるわけであります。  過去の例からいいますと、これは地主側が建設大臣に対して不服申し立てをした事例でありますが、五年以上にわたってなお建設大臣の裁決は出ていないわけです。それからしますと、国が、政府が却下に対して建設大臣に審査請求をしても、やはり五年以上にわたって結論が出ない場合というのもあり得るわけです。そういう可能性が多分にあると見なければいけないわけです。  すると、収用委員会での審理で仮に一年、建設大臣への審査請求でそれからさらに何年かかるかわからないということは、これまでの公用地法以上の暴挙であって、終期がわからないということは先ほども述べましたけれども、法律内容は明確でなければならない。特に権利を制限する場合は、その権利の制限の態様、内容等が明確でなければならないというのは、憲法の明文ではありませんけれども、それは当然に憲法の内容に含まれる、憲法の例えば第十章、最高法規等が要求するところであろうと。そういう意味で、憲法的にも問題を含んだ今回の改正だと思っております。
  52. 橋本敦

    橋本敦君 もう一点大事な問題として、私は、収用委員会の機能と権限、これが今回の改正法によって事実上取り上げられるに等しい状況になるのではないかという気がするんですね。  といいますのは、まさに土地の強制使用を許すかどうか、これについて判断権を独立の機関として持っている収用委員会があるんですが、そこへ申請しただけで、その判断が出なくても暫定使用で使用継続ができるぞということは、これはもう収用委員会判断なしにやりますという一方的な国の公権力の宣言ですから、収用委員会はまさに自分判断権、その機能を奪われていくわけですね。  そして、曲がりなりにもこの駐留軍用地特措法が、先生がおっしゃったように、土地収用法の規定の準用をやる。全部ではありません、例えば大事な公聴会の制度などは省かれてしまう。といいますが、曲がりなりにも土地収用法の規定を、手続をということは、これは地方自治を尊重し、憲法の財産権保障を尊重するという法体系からきているはずだと思うんですね。  ところが、今度の場合は収用委員会の機能を無力化し、そういう法体系も侵すということで、この点で先生のおっしゃる法治主義の違反ということも明白ではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  53. 仲地博

    参考人仲地博君) 収用委員会の裁決に不満がある場合には審査請求をすることができる、収用委員会で余り予想はされませんけれども、しかし却下の可能性もあるわけであります。特に、地主の取り違えという重要な手続上の瑕疵が明らかになりまして、却下の可能性も予想の範囲内に入ってまいりましたけれども、却下の場合に不服を申し立てたら、それだけで使用権原が生じるということになりますと、これは収用委員会の結論に関係なしに、収用委員会が強制使用の裁決をすれば強制使用できる一しなければこの特措法でそのまま使うことができるということになりますと、どちらにしろ強制使用があるということになるわけであります。  ですから、見ようによっては、ただいま橋本先生御指摘のとおりに、収用委員会の権限が制約をされたということも言い得ると思いますけれども、ただ、収用委員会はすべての権限が奪われたわけではない。例えば補償金であるとかあるいは使用期間であるとか、そういう点については国側も不服を申し立てるということはないと思います。  仮にこれが極端に短い、半年というふうなことになったりすると不服申し立てもあり得ると思いますが、五年を四年にするとか、それを三年にするという範囲内であれば、これは収用委員会判断、裁量の範囲内であると考えられ、三年より短くなることはその裁量の範囲内かどうか、私は疑問を持っておりますが、基地の機能とか場所とか態様によって多分違うでしょうけれども、嘉手納基地の飛行場の真ん中が三年以下ということになりますと裁量の範囲内を超えるのではないかと思います。しかし、五年を縮めるということは、地主の不利益、補償金の減額という不利益を考え収用委員会はこの期間を短縮することはあり得ることで、この点まで今回の改正で奪われているわけではないと思います。
  54. 橋本敦

    橋本敦君 次に、楚辺通信所の知花氏の土地の問題についての御意見もございました。これは我が党の笠井議員が昨日も質問で取り上げたんですが、一たん権原を国がなくしたその土地について、その使用権原がないために事実上の不法占有になるわけですが、それが後でできた法律で遡及して有効な使用とみなされるというような、こういった法の効果の遡及は基本的には憲法三十九条を基本とする不遡及の原則に違反するのではないかという問題を提起したんです。  かつて、このように一たん国の行為が権原なくなったのを後で権原あるような、そんな遡及効を認めるような法律をこれまでつくったことがあるのかという質問に対して、法制局長官は一つありますと。その一つ、たった一つというのが先生もよく御存じの地籍明確化法で、空白の四日間が生まれましたが、それをカバーしたあの改正だったと、こういうことですね。今度はその楚辺通信所の土地が現に権原のない占有であることは政府も認めているわけです。直ちに違法と言えないという言い方をしているだけの話で、占有権がないことを認めている。  今度はこの法律で、法律本条ではなくて単なる附則によって、それまでも遡及して正当使用権原であるようにするというのは、この点でもまさに憲法なり法治主義から見て大問題になる法律構造だというように私は思うんですが、そういう点、先生の御意見はいかがでしょうか。
  55. 仲地博

    参考人仲地博君) 単純に遡及をしているとは考えておりません。多分、附則の二項はこういうふうに解釈するのが妥当だと思いますけれども、供託金を払った時点から国は使用権原が新たに発生をするということだろうと思うわけです。ですから、この一年以上にわたる楚辺通信所の一筆の土地について不法占拠状態がさかのぼって解消されるということではないのだろう、この期間不法占拠状態であったということはもう変わらないことだと思います。  ただ、気になるのは、その不法占拠状態について損失補償金を支払うという規定の仕方をしていることです。  これは釈迦に説法でありますけれども、損失補償金というのは適法行為の場合に使われる用語でありまして、不法行為の場合には損害賠償という言葉を使うのが法の常識であります。不法行為であれば国家賠償法に基づいて損害賠償を請求するわけでありますし、法に根拠のある財産権の侵害であれば損失補償になるわけです。  この一年以上の楚辺通信所の象のおりの不法占拠期間に対して損失補償という言葉を使うということは、その言葉を使うtとによって、その期間を適法な権力の行使であったという説明をする手がかりといいますか、布石といいますか、そういう意味を持つならば大変問題だと思います。
  56. 橋本敦

    橋本敦君 まさに先生の御指摘のとおり、私どももそういう問題意識を持っております。  同じ問題意識は、裁決却下決定が出て不服の申し立てを国側がやる、建設大臣の判断が出るまでの間の強制使用の継続についても、仮に建設大臣が裁決の却下を認めて不服申し立てを棄却することがあり得ると防衛庁長官も言うんですよ、理論的に。そうすると、その間は何かというと、適正補償じゃなくて、まさに国家賠償法に基づく損害賠償の問題が起こるではないか、今楚辺通信所で。先生御指摘のとおりですね。ところが、この法案にはその損害賠償規定がないわけです。  だから、そういう意味で重大な欠陥法であるし、それがないということは、建設大臣が却下することはレア中のレアどころか、あり得ないということを想定した法律ではないかという指摘を私どもはして、そういう意味でこの問題は大変重大だということを言っておるわけです。そういった問題も、今の先生の御意見を踏まえながらさらに私どもは検討を深めたい、こう思っております。  それから、時間がなくなりましたので、山本先生に一問だけお伺いしたいのでありますが、先生のおっしゃるアメリカの前方展開戦略が基本ということが今日の情勢ですから、これがある限り沖縄基地は使い続けるというのがアメリカの要求であり、そういう期待ですね。しかし、その戦略ということはアメリカ側の話であって、先生のおっしゃる冷戦後の安全保障醸成措置を含めて平和外交を日本がやっていくという観点に立ちますと、これとの関係基地問題は、アメリカの前方展開戦略だけでなくて、日本の平和外交路線としてどうあるべきかということも含めて基本的に検討すべきではないか。  そういった場合に、海兵隊というものは日本を防衛する軍隊としては沖縄にロケーションしていないよというアメリカ側の有力な幹部の発言などを考えますと、アメリカの前方展開戦略に沿うことが果たして日本の国益と直ちに言えるかどうかという重大な問題があると私は思うんです。  こういう点の検討について、先生の御意見はいかがでしょうか。
  57. 山本武彦

    参考人山本武彦君) 現在の冷戦が終わった後のアメリカの位置づけといたしまして、海兵隊が前方展開戦略の主要構成兵力という位置づけを行っていることは御指摘のとおりでございます。  したがいまして、日本有事もしくは極東有事というよりも、グローバルな有事、例えば中東における有事を想定した戦力として位置づけているところがあると思います。もちろん極東有事に対応する戦力としても位置づけられているわけでございますけれども、そういった意味で、沖縄についての戦略的な位置づけはアメリカから見れば依然として高いものがある。  しかも、冷戦が終わった後のアメリカ世界戦略、とりわけ抑止の戦略が引き続き核抑止の戦略に依存すると同時に、これは新しい傾向でございますけれども、高度通常兵器を基礎とした拡大抑止の戦略というものも新しい戦略として追求しようとしております。その高度通常戦力による拡大抑止の戦略に沖縄が非常に都合のいい位置にロケーションとしてあるということ、これも我々は冷静に見ておく必要があろうかと思います。  したがいまして、言ってみれば海兵隊はやりの役割を負わされているという意味では、極東それから中東で依然として不透明かつ不確実な情勢が続く限りは、基本的な修正を施すことはちょっと見えにくいというふうに思います。ただ、将来これが引き続きこのまま現在のままで継続されるという点も、同時に我々の視野に入れておくべきではないか。つまり、海兵隊の全世界に展開するアメリカの戦力構成の中での見直しということが全くあり得ないシナリオではないということも我々は視野に含めておくべきではないかというふうに思います。
  58. 橋本敦

    橋本敦君 時間がなくなりましたので、岡崎先生には一点だけということになります。  先生のお話の中で私どもと大変考え方が違いますのは、沖縄基地の問題について、反土地、反基地の闘いというのはイデオロギー闘争で、これは国益に反するという御意見がございました。しかし、その点については、沖縄県自身が大田知事を先頭にアクションプログラムで二〇一五年までに基地をなくすということをおっしゃっているし、沖縄の県民条例で基地の整理、縮小は県民の大方の合意になっているわけですね。  ここらあたりをどうごらんになっていらっしゃるのか、時間がありませんので簡単で結構ですから、御指摘をお願いします。
  59. 岡崎久彦

    参考人岡崎久彦君) 私は、反安保、反基地闘争沖縄県民全体の意思を代表していると思っておりません。あたかもそうであるかのごときプレゼンテーションが行われている、これがこの問題の非常に重大な点だと思っております。この点をはっきり分別することが沖縄問題の解決の指針であると思っております。
  60. 橋本敦

    橋本敦君 全く意見が違いますが、時間がありませんので、これで終わります。
  61. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 お三方、参考人としてきょう出席いただきまして、大変御苦労さまでございます。  仲地先生に冒頭ちょっとお伺いしますけれども、先生が冒頭お話しの中に、いわゆる軍転特措法、そして日米地位協定の見直しあるいは改正、そういったものが必要であるのでぜひ国会の中でそれをやってほしいというふうな内容のお話がありましたけれども、その軍転特措法、そして地位協定、そういったものについて、なぜ軍転法改正していかなければならないか。  その点についてひとつ具体的にわかりやすく御説明願いたいと思います。
  62. 仲地博

    参考人仲地博君) 私は冒頭で、このように朝から晩までの審議国会議員もなかなか大変で御苦労さまなことだと正直なところ思いました。そして、こういうふうな審議が行われるのは沖縄国会以来だそうでありまして、立法府も政府沖縄を真剣に考えているあかしたというふうな説明がこれでもってなされたら困るということをああいう言い方でお話をしたわけであります。  沖縄が求めているのは、例えば軍転特措法であります。軍転特措法といいますのは、返還された軍用地跡利用についての特別措置法律であります。これはもう二、三年ほど前になりますでしょうか、議員立法で制定されました。沖縄県の長い要求でありました。あの広大な基地が返還されますと、その基地跡利用について県、市町村、自治体はとても対応することはできない。それについての格段の配慮が沖縄に対しては必要である。  なぜ沖縄だけそういうふうな配慮をしなければならないのか、なぜ基地なのかということでありますけれども、基地というのは、沖縄の同意によって、あるいは沖縄が誘致をしてできたわけではないわけです。  御承知のとおり軍用地主の大多数は、三万の地主のうち二万七千名は、特に一坪反戦地主を抜きますともうほぼ大多数、すべてに近いですけれども契約をしております。しかし、その契約をしている人々も、当初に契約をしたわけではなくて、基地ができたから契約をした。基地ができる前に契約をしたわけではないわけです。契約をしなければ強制使用されるわけですから、どっちにしろ地主の方から見たら契約をするか強制使用されるか。どっちにしろ基地は所与のものとしてあるものです。そういうふうな基地なのであります。  これが沖縄県以外の基地と違うところで、基地をつくるから契約してくれという状態で契約地主になったわけではないということを押さえなければいけない。  そして、基地は国の都合で沖縄にできていったのだ。基地の成り立ちというのは、例えば嘉手納飛行場などは戦前の日本軍の空軍基地でありますけれども、これも第二次世界大戦を遂行する上で国の都合でできた。その後、第二次大戦中、地上戦を遂行するためにアメリカが適宜適当な場所に基地をつくっていった。それが沖縄基地の成り立ちであるわけです。国の行為として基地ができていったということを考えますと、その跡利用というのも国の戦後責任として行う必要があるのではないかというのが軍転特措法の持つ意味であろうと思うわけです。  ところが、軍転特措法は現在どういうふうな内容になっているかといいますと、返還された後三年間地主に対して地料相当分の補償を行う、その間に跡利用を図ってくれという法律になったわけです。当初の沖縄県が要求した内容の半分であります。沖縄県が要求しましたのは、区画整理あるいは土地改良をするときに現在の土地改良法などではカバーできない分野をカバーしていただきたい、あるいは自治体に対する財政的な援助をしていただきたいというのが沖縄県の要求でしたけれども、そういうものはばっさり削られてしまいました。  今後、基地の返還があると、この軍転特措法というのがあるとないのでは極めて大きい意味を持ってまいります。国際都市形成構想等もあるわけでありまして、これに対しては政府も理解を示しております。沖縄の振興策について努力をすると政府も約束をしております。具体的に軍転特措法まで法的裏づけを持っていただきたいということを言いたかったわけです。
  63. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 地位協定の問題について。
  64. 仲地博

    参考人仲地博君) 地位協定でありますけれども、先ほど若干お話をいたしました。  地位協定というのは沖縄が復帰する以前にできていた。こういう過密な基地沖縄の人口の五%が米軍人軍属ということになります。一つの市に匹敵するわけです。米軍基地の面積は御承知のように沖縄本島の二〇%、こういうふうな過密の状態を念頭に置いていない地位協定である。例えば演習にしろ行軍にしろ、行軍といいますのは軍隊が歩くあの行軍でありますけれども、こういうものをどう規制するかということ等を考えていないわけでありまして、あるいは基地の郵便などに麻薬が入って送られてくるというふうな問題等もあります。  国内の米軍基地、軍人軍属をどのような法的状態に置くかというのが地位協定でありますが、その地位協定について沖縄の現状にはそぐわない。こういう平時の基地でありますから、それにふさわしい法的規制が考えられるべきだ。通常はできる限り日本の国内法の適用を及ぼすことができるような地位協定にすべきである。  沖縄県が二年ほど前に、例の少女暴行事件の後に見直しを十一項目でしたか、要求いたしました。沖縄県は大変遠慮をいたしまして、地域にかかわることに限定いたしました。国政、国策にかかわる部分は遠慮をいたしまして、地域に密接にかかわる部分について要求をいたしましたけれども、それについて何点かは運用上の改善が行われました。全く成果がなかったというわけではありません。  しかし、最初に地位協定の見直しを要求したときに、政府の高官が、こういうふうな暴行事件が起きただけで地位協定の見直しというのは議論が走り過ぎていないかと言ったと新聞報道は伝えております。時代にふさわしい、それから沖縄というのを念頭に置いた、そういうふうな地位協定を全面的に考え時代になったのではないだろうか。地位協定というのはアメリカ軍がいるということを前提にした条約であります。前提にした上で合理的な条約を考えるべきだというのが私の意見です。
  65. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 法治主義に対する考え方として官僚主義があるというふうに言われておりますけれども、今回の法改正問題はまさに官僚主義の典型だと考えます。その意味では先生の考え方に賛成するものでありますけれども、具体的にそれを例示として示していただきたいと思います。
  66. 仲地博

    参考人仲地博君) 今回のどの部分が官僚的かという意味でお話ししたわけではございません。一般的に法治主義というのは絶対主義や官僚主義に対抗する理念として形成されていったということをお話ししました。  ただ、今の島袋先生の質問の関連でお答えをいたしますと、基本的なところで知らしむべからず、よらしむべしというふうな姿勢が見え隠れするところが非常に残念であるということです。  意見陳述のところでもお話ししましたけれども、半年以上も前からこの法律の検討はされていながら、こういうふうな法律が準備されているというのは二、三行の内容で新聞に報道されました。収用委員会で審理中は国が使用権原を持つ内容改正案だと報道されましたけれども、具体的な案が出てきたのは三月の二十七日か八日ごろではなかったでしょうか。急にこの法律内容を検討しようと言われても、そのための期間が必要です。  審議のための時間はこうして衆議院、参議院は保証されておりますけれども、考えるための時間はなかったというのがこの法律の問題ではないだろうか。そういうふうな、とにかくばたばたとでもいいから乗り切ればいいというふうな考え方があるとすれば、そういうところが官僚主義ということになるのだろうと思います。
  67. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 もう一点です。  法治主義、法の支配ということに関連して、政府は現在の特措法を尊重する義務があると考えます。その点、緊急使用の申請をしなかった点に大きな問題があると思います。  その点について、仲地先生のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  68. 仲地博

    参考人仲地博君) 権力の行使というのは、事前にそれを認める法律があって初めてなし得るんだと。この事前というところが重要だと思うわけです。国民代表である議会が、こういう場合にこういうふうにしたら権力を行使することができる。それが今回の場合、事前にあったのは緊急使用であるわけです。緊急使用をしさえすればすべて認められるわけではない。  その前例が楚辺通信所の一筆の土地でありましたけれども、それでもそれが事前に法が認めた手続であるならばやっぱりこれを使うというのが話の本筋ではあろうと思います。
  69. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 沖縄基地使用条件というものが本土とかなり差があるのではないかというふうに思っております。したがって、先ほど先生が御説明の中で、嘉手納基地あるいは普天間基地騒音問題においては、本土の横田基地、その辺の周辺に比べて三十年もその規制がおくれたというふうな問題があるわけであります。そういった五・一五メモ内容というものが本土とかなり差があるのではないかというふうなことを考えておるんですけれども、その辺についての御見解を承りたいと思います。仲地先生に。
  70. 仲地博

    参考人仲地博君) 五・一五メモというのは恐らく日米間で基地使用の契約だろうと思うわけです。また、騒音規制日米合同委員会の合意でありますけれども、これも日米間の契約であろうと思うわけです。アメリカから見ればここまでは基地を使用することができる、日本側から見ればここまでしか基地の使用は認めることはできないということになる。逆に置きかえてもいいわけですが、日本側から見ればここまでは認めてもよい、アメリカから見ればここからはできないということになるのだろうと思います。  この騒音規制の合意、嘉手納、宜野湾の二つの飛行場は、厚木、横田におくれること三十年以上、厚木は三十八年、横田は三十九年、これは改定ですからそれ以前からあったわけでありますけれども、実に三十年以上もこういうふうな合意が正式に日米間で合意されなかった。三十年後の合意でありますからより厳しくなったかといいますと、例えば夜間飛行の制限ですが、厚木の場合は、合衆国の体制を保持する上に緊要と認められる場合を除き夜間飛行はしてはいけない、つまり合衆国の体制を保持する上に緊要と認められる場合のみしか夜間は飛ぶことができないわけですし、横田の場合も、米軍の運用上の必要性にかんがみ緊要と認められるものに限定される、緊要の場合のみ夜間飛ぶことができるというわけであります。  沖縄基地の場合には「米国の運用上の所要のために必要と考えられるものに制限される。」、緊要という言葉が沖縄では抜けるわけであります。米軍の運用上の所要のために必要と考えられるというと、際限もなく広がってくるのではないか。だから、この合意が結ばれた後も沖縄嘉手納基地騒音というのは変わっていないわけです。  一体合意をした意味があったのかどうかということでありますけれども、本土の基地沖縄基地、一般的な比較はできないとしても、厚木、横田、嘉手納、普天間の比較は、島袋先生おっしゃるとおり基地に違いがあるということになります。
  71. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 ありがとうございました。
  72. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 自由の会の椎名でございます。  先ほどの冒頭の三先生のお話を伺いまして、それから今までの各委員からの質問へのお答え、大変丁寧にお答えをいただいて、ここでずっとじっくり伺ってこれだけメモをとったんですが、本当にいろいろと勉強させていただきました。私の蒙を開いていただきましたことに対してお礼を申し上げます。  これだけいろいろ伺いまして、実はもう余りお尋ねをすることは残っていないように思いますが、一つだけ伺いたいのは、日米安保というのは基軸であるということですが、アメリカという相手がありますね。その際に、アメリカはと我々申しますけれども、例えば外から見て日本はと言われても、国会などで年じゅう相対していろんな議論があったりするように、そう一まとめに日本はと言われても違うよと、こういう気がするんです。アメリカというのは人間の数も倍あり、あれだけ広い、各州がそれぞれ憲法を持っているというようなことですから、アメリカはと言ってしまったときに、一体どういうことになるのか。  これが四年ごとに大統領選挙をやって、場合によっては年じゅう変わってしまう。議会の分布も変わる。それから、時としてぶれがあるという中で、アメリカはというふうに言ったときに、その幅、ぶれとどういうふうにつき合ったらいいのかという点について、山本先生、岡崎先生に伺いたいと思います。
  73. 山本武彦

    参考人山本武彦君) 御指摘のとおりでございまして、アメリカは、先ほども申し上げましたように沖縄問題一つとりましても決して一枚岩ではございません。それだけ複雑かつつき合いにくい国だということを前提で私どももこれまで彼らと話し合い、あるいは我々の考え方を言ってきたわけです。ただ、そういう中でも国家安全保障という点につきましては、アメリカはそう大きな幅とかぶれは私はないんではないのかという感じがいたします。冷戦時代は特にそういうことだったわけであります。  日本との関連で申し上げますと、ちょうどことしから数えて十年前、一九八七年の四月にある事件が勃発しました。例の東芝機械によるココム規制違反事件でございます。あの数カ月間、七月三十日で最終的に外為法が改正されまして幕を引いたわけですけれども、この問題につきましてアメリカ日本に対する不信というものが一挙に膨らんだ。特に国家安全保障という観点で申しますと膨らんだように記憶しております。  それに対して、日本がこの事件に対してどれだけの敏感性を持って対応してきたかといいますと、確かにあの数カ月間、今度も数カ月間でございますけれども、あの数カ月間あれよあれよという間に外為法が改正になっちゃって、そしてそれ以降は、少なくとも輸出管理に関する限りはアメリカの輸出管理政策とほぼ一致するような政策にシフトしていったというような結果をもたらしたわけでございます。  したがいまして、確かに多民族国家であり、いろんな意見が存在し、幅もあり、ぶれもあり、変化もあるわけですけれども、事国家安全保障に関してはそう大きくぶれたり変わることはないんではないかというふうに私は受けとめてまいりましたし、今後も多分そうではないか。  ただ、政権がかわることによって若干の色彩の違いが出てくることもあろうかと存じます。例えば、アジア太平洋地域における安全保障関係の変化と関連づけて申しますと、フィリピンのクラーク空軍基地とスービック海軍基地の返還につきましても、冷戦終了したという戦略上の大きな環境変化に対応する形でいとも簡単に返還してしまった、あの当時はリチャード・ソロモンがイニシアチブをとったわけでございますけれども。今後、そういった戦略環境の変化に伴って大きな政策変更があり得るだろうというふうに思うわけでございます。  私、先ほど時限立法という発言を申し上げましたのは、そういった国家安全保障ですら戦略環境の変化によっては変わり得る可能性が大いにあるということを見据えた上で、それを視野に入れた上での立法措置であるべきではないかということで申し上げたわけでございます。
  74. 岡崎久彦

    参考人岡崎久彦君) もう先生御指摘のとおりでございまして、アメリカという国が本当にわからないというのが二十世紀の国際政治最大の問題なんです。それで、かつて日本も間違えましたし、ドイツも間違えた、いろいろな国が間違えました。最近はサダム・フセインが間違えた。  これは全くわからないのでございますけれども、わからないということを前提にした方がいいのでございます。そのためには、いつも注意を怠らず、アメリカの動向、アメリカの動向と申し上げると間違いでございまして、アメリカの中における有識者、世論、新聞、議会、すべての動向を注視して分析していかなきゃいけない。それをすればまたこれはわからないわけでもないんです。現にイギリスは二十世紀を通じて一度も誤っていない。  現在、アメリカの識者の発言、議会議事録、それから提出された種々の論文、それを全部を見まして、これは時々は例外があります。例えばブキャナンのような完全な孤立主義者がおりますけれども、これはほとんど影響力はないと考えます。それを全部を見ておりまして、日米関係を今後どういうふうに持っていくかと。これは私はかなり簡単な答えが出ると思うんです。というのは、そういう論文が日本に期待していて、これさえやってくれれば日本はもうアメリカの信頼すべき同盟国だということが見えております。  見えておりますのが二つでございます。一つが、あの例の集団的自衛権行使の問題でございます。第二が、在日米軍基地を安定して日本維持してくれること、この二つでございます。これは二つとも日本の国内問題がかかわるわけで易しい問題ではないのでございますけれども、これだけ先行き不透明な世の中でこの二つさえ解決すれば、大体これでもう我々の孫子の代まで平和と安定が保てる、アジアの平和と安定が保てると、そういうのが見えているということも希有なことだと私は思っております。  それで、この沖縄でございますけれども、沖縄沖縄基地をいかに安定して維持するかという話、まさに本日の議題でございますけれども、先ほどから伺っておりまして感銘を受けましたのは、社民党の角田先生がおっしゃった結局政治的解決が一番よかったんだと。私もそれは全く同感でございます。まさに法治主義には形式法治主義、実質法治主義ございますけれども、いずれにしても法律というものは良識を持って運営しない限りこれは意味がないのでございます。良識を持って運営している限りにおきましてはこういう問題はなかったんです。もしこの特措法にしろ、良識を持って運営されればこんな改正は全然必要ないのでございます。  ただ、現に法治主義の最たるものといたしまして最高裁の判決が出ておりまして、大田知事自身が提起した最高裁判決がありまして、沖縄基地使用というものが必要で合理的な範囲だということをはっきり言っているわけなんです。そういう判決が出た以上、その判決に従ってそれに沿った政治的な行動をしていれば今回のような改正は全く必要ないのでございます。  にもかかわらずこういうことをしなきゃならないというのは、法律について欠点を、仲地先生なんかおっしゃいますけれども、あえてそういうものをつくらなきゃいけないというのは、そうした最高裁も言っているような常識的なところ、政治的な判断、そうすれば日米同盟は大丈夫だという判断、それに反するイデオロギー的な反対運動、それと沖縄全体の意向とを混同してそれを尊重しろというようなことを言うと、これは法律をつくらざるを得なくなってくる、そういう悪循環だろうと私は思っております。
  75. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 どうもありがとうございました。  仲地先生には実はもう質問ございませんけれども、いろいろな角度から、また沖縄の側からのいろいろなお考え方について大変知らない角度から教えていただきました。お礼を申し上げます。  これで終わります。
  76. 北澤俊美

    ○北澤俊美君 きょうは参考人の三人の方々、まことに御苦労さまです。私で終わりでございますので、しばらくお願いをいたします。  岡崎参考人にお聞きをいたしますが、先生の著書は幾つか読ませていただいておりますが、その中でロシアの選択肢についてもお触れになっておって、今のロシア中国に接近するのかあるいは日米同盟に接近するのかという中で、もう二者択一の中で選択肢はなくて日米同盟に近づかざるを得ないと、こういうふうに明快におっしゃっておる。  それはそれとして、あと中国の問題になるわけですけれども、中国軍事力というのは私らにはなかなかよくわからないんですが、少なくとも空軍力についてはかなり劣っておるということで、先生の指摘の中の台湾海峡の問題で、もしそこで中国台湾あるいは日米同盟に対して軍事バランスを保持しようとすればそれは六、七年先になるだろうと、こういうふうに言われておりますけれども、中国がそれに向かって軍事バランスを保つための実際的な施策をしていくのかどうかということをちょっとお聞きをさせていただきます。
  77. 岡崎久彦

    参考人岡崎久彦君) それは中国はもう間違いなく実施しております。今いろいろ漏れております計画ございますね、これをもう必ず実行すると思います。と申しますのは、これは武器の購入先がロシアでございますから、両方から情報が来ているわけでございますから、大体その計画を実行するだろうと考えられております。  それを実行しますと、私は六、七年と申しましたが、これは実は世界専門家の中で一番早い時期の予想でございまして、アメリカ専門家は二〇〇五年と言っている人も多いんです。それで、本当の軍事専門家になりますと、それだけの武器を買っても、それを全部訓練して配備して実戦に使えるには二〇一〇年だろうということを言っている人もおります。  私があえて二〇〇三年と言っておりますのは、台湾の方とか中国の方というのは非常に頭がいい方ですから、例えば数年先にこれだけバランスが崩れるということがわかっただけでもう政治的、心理的影響があらわれてくるということで、六、七年たったころ空母機動部隊二つだけではもうちょっと怖いのじゃないか、何かもう少ししなきゃいけないのじゃないかという雰囲気になってくると私は予測しております。
  78. 北澤俊美

    ○北澤俊美君 もう一つお聞きしますが、そういう情勢の中で、日米安全保障条約を堅持していくという方向の中でこの法律が今審議されておるわけでありますが、そこで目先のことで一番気になるのは北朝鮮の状況であります。素人の立場でありますけれども、いろんなことを調査したり聞いておりますと、北朝鮮の緊張というのはそう長くはもう続かないのじゃないか、国内情勢アメリカとの交渉の中で。  そうしますと、北朝鮮の今の状況というのはアメリカにとっては大変都合のいい状況になってきつつあるのではないか。これは表へ出して都合のいい存在であることはないわけですけれども、交渉のカードとしては、今の北朝鮮の国内情勢からアメリカにとって大変都合のいい存在になってきつつあるというふうに思うんですが、そういうことに対する見解をちょっとお聞かせいただきたい。
  79. 岡崎久彦

    参考人岡崎久彦君) まず、崩壊の可能性でございます。それが交渉の切り札になるわけでございます。  事態がここまで参りますと、これはむしろ治安能力いかんにかかってきているようでございます。つまり経済的な決定論から申しますと、国民がこれだけもう食えない、経済はほとんど動いていない、これは破滅的だ、こんな政府がいつまでもつかわからないというわけでございます。  そういうことを言うなら、例えばイラクのサダム・フセインなんというのはアメリカが意図的にそういうことでつぶそうとしたわけですね。それがもう六年もっているんです。これは現につぶれそうなんです。年に二回ぐらい必ず暗殺未遂とかクーデター未遂があるんです。事前に秘密警察が発見してそれで殺してしまう、そういうことをやっております。  ですから、北朝鮮も端的に申しますと、あとは治安能力だけで、事前に暗殺とかクーデターをつぶしている限りは国民の何割が餓死しようとやっぱり何年でももつ、もしそれが一つでも成功すればあしたでも崩れる、そう申し上げるしかしようがないだろうと思うんです。  あとは、確かにアメリカは有利でございます。アメリカはそれを使っていろいろ交渉を進める方法もございます。それに対して北朝鮮も交渉が巧みと申しますか、ありとあらゆるものを条件に使うと申しますか、一度撤去したノドンをまた配備する、同じことを何度でも交渉の種に使える、そういう術を持って今お互いに相譲らず交渉しているというところだと私は考えております。
  80. 北澤俊美

    ○北澤俊美君 今お聞きをしておりまして、我々はこの北朝鮮の状況を見据えながら、当面安全保障条約について議論をしておるわけであります。この法律が成立しますと、条約に対する義務は日本はきちっと果たした、こういうことになるわけでありますが、きのうも質疑の中で総理ともその話をしました。  ここでお三方にお聞きをしたいことは、間もなく法律が成立することを前提にすれば、日米の首脳会談が行われるわけでありますが、海兵隊の削減は今の状況では言い出すべきではないというのが大半の意見になっております。しかし、もうちょっと長い距離で、先ほど岡崎参考人なんかが言われたように、孫子の代まで安全が保障できるようなことが見通せるのはまことに珍しい。これはもう人類の歴史の中でまことに珍しい話でありますけれども、そういう状況を踏まえて、国民的なコンセンサスを得るために、橋本総理は首脳会談でどれだけのことを言うべきかということについてお三方の御見識をお伺いして私は終わりたいと思いますが、お願いいたします。
  81. 岡崎久彦

    参考人岡崎久彦君) 首脳会談の議題でございますけれども、海兵隊の削減に限って申し上げますと、私は言わない方がいいと思っております。  それは、一つは、もう既に合意した線に沿って、現に普天間の返還合意したときにクリントン大統領はここにおられまして、大田知事が感謝する感謝するとおっしゃって、これですべてその路線に沿って日米関係をきちっとしようということを約束しているわけでございます。それを今現に着々と実施している最中でございまして、しかも地方自治体は善意で協力してくださっている。そういうときにまた別の要求を持ち出すというのはいかにもおかしいのであります。これは国際的な信義にも反する問題で、一度決まったことを後からまた新しい条件を持ち出すということはやっぱり避けるべきだと思っております。  また、それが今度は悪い影響があるんです。  一つは、これはアジアに対して動揺を与える。日本アメリカ兵力の削減を要求している、アメリカは一体いつまでいるかわからないとアジアが動揺いたします。  それから、今度は議会の中で、別にアメリカは撤退したくないんですけれども、善意の人、また孤立主義者、いろんな人がおりまして、日本が欲しくないものを一体どうしていつまでも置くんだという議論になってくる。ところが、日本は実は欲しいのでございます。ところが、欲しくないかのごとき印象を与えてしまう。  その二つの欠点がございますので、海兵隊撤退の問題は取り上げるべきでないと思っております。
  82. 仲地博

    参考人仲地博君) 政府が何を望んでいるかということを橋本総理はアメリカ側に対して伝えることになるんでしょうけれども、沖縄世論ははっきりと海兵隊の削減を望んでいるわけです。  一週間ほど前の沖縄タイムスの調査で、大田知事は海兵隊の削減による基地の整理、縮小を要求しているけれども、これについて賛成か反対かという聞き方について、八割の人が大田知事姿勢を評価した。すなわち、沖縄基地の整理、縮小というのは海兵隊の縮小によって行われるべきだと八割の沖縄県民が考えているということになったわけです。国民の意思はどうなのかというのを総理はアメリカ側に伝えていただきたい。  先ほどから何度も出てまいりましたけれども、アメリカ側も一枚岩であるわけはないわけです。民間の研究機関でも、マイク・モチヅキであるとかチャルマーズ・ジョンソンとか、沖縄の海兵隊は削減されるべきだと。多分、政府の中にもそういう意見はあるのだろう。沖縄返還のときに米国政府は一貫して沖縄の返還はないと言ってきましたけれども、内部においてはかなり早くから沖縄返還が検討されていた。沖縄の海兵隊についてもそういう状況があるのではないか、門外漢でありますけれども想像をするわけです。  現に、アメリカ海兵隊の下級幹部が最近沖縄の海兵隊は要らないと準機関紙に書いたということが新聞に報道されました。幾らか前には、かなりの高級幹部が、沖縄の海兵隊基地意味がない、縮小してよい、輸送能力がないんだというふうなことを書いたというのも目にいたしました。  いろいろな考え方が米国の中にもあるわけでありますから、それに対して日本国民はこう望んでいるというのを伝えるというのが民主主義国家のあり方ではないだろうかと思います。
  83. 山本武彦

    参考人山本武彦君) 先ほど来議論になっております日本外交の軸をどこに設定するべきかということで、日米基軸主義、これは戦後日本外交のドクトリンになってきたわけです。これを前提とする限り、特措法国会を通過した後に訪米されてすぐ在沖縄海兵隊の削減をカードとして出すこと、これはアメリカを怒らせる、日本に対する不信感をかき立てることはあっても海兵隊の削減論議をアメリカ政府部内で直ちに引き起こす材料には私はならないというふうに思います。  外交にはフロントチャネルとバックチャネルがあるわけで、首脳外交はまさにこのフロントチャネルです。そのフロントチャネルでいきなり出すこと、これはやはり外交のテクニックからいって問題があろうと思います。むしろ特措法日本政治の最大の課題として解決したと、その後外交ルートを通じたバックチャネルで基地の整理、統合、縮小、さらには海兵隊の削減といったような実質の論議というものを進めて、そして来るべき次、もしくは次々回の首脳会議でそれを提起するといったような下準備がやはり時間的に必要ではないか。つまり、ステップ・バイ・ステップ・アプローチ、漸進主義的アプローチがこの際は最も無難な手法ではないかというふうに思っております。
  84. 北澤俊美

    ○北澤俊美君 ありがとうございました。
  85. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で参考人の方々に対する質疑は終了いたしました。  参考人皆様に一言御礼を申し上げます。  本日は、長時間にわたり貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、ここに厚く御礼を申し上げます。  午後一時三十分に再開することとし、休憩いたします。    午後零時五十三分休憩      —————・—————    午後一時三十分開会
  86. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) ただいまから日米安全保障条約実施に伴う土地使用等に関する特別委員会を再開いたします。  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定実施に伴う土地等使用等に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  引き続き、本法律案審査に関し、参考人の方々から御意見を承ることといたします。  参考人皆様に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ当委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。  皆様の忌憚のない御意見を承り、本法律案審査に反映させてまいりたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  本日の議事の進め方でございますが、まず参考人皆様からそれぞれ二十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、まず島田参考人からお願いいたします。
  87. 島田晴雄

    参考人(島田晴雄君) 御紹介賜りました島田でございます。私の所見を申し上げたいと思います。  駐留軍用地特別措置法改正といった事態にならざるを得なくなったことは、私はまことに残念なことだというふうに考えておりますが、今日の時点での諸般の状況を考慮すればやむを得ない措置であったというふうに思います。特別措置法改正の決断というものは、現状の困難を打開する最小限の措置であるというふうに理解をいたします。したがって、これは正しい判断であったのではないかというふうに評価をいたします。  なぜならば、日米安全保障条約に基づく安全保障体制日本が国家として選択している基本政策でございますが、米駐留軍に基地用地の使用を保障することは同盟国としての最低限の約束でございます。その約束を守ることは日本としての最低限の義務でございます。国が失権状態に陥ることはその約束を守れない、義務を果たせないということであって、同盟国としての信用を失墜することでもあり、国家としての信頼性も問われることになるというふうに思います。そうした事態を避けるために最低限の措置であったというふうに評価をいたします。  この特措法改正基地の固定化につながるのではないか、こういう御議論がございますが、私は特措法改正基地の将来の整理、縮小というこの二つの問題は全く別次元の問題と考えるべきだと思います。特措法改正は国の失権状態を回避する現時点での最低限の法的な措置であるというふうに理解しておりますが、基地は将来に向けて整理、統合、縮小すべきであると思います。昨年四月、普天間基地の返還方針が発表されたこと、また十二月にSACO、特別行動委員会が報告を行ったこと、これらの一連の努力はその方向へ向かっての努力であるというふうに考えておりますが、さらにこうした努力を進めて、将来、軍縮その他国際協力を一層進めて、また技術進歩等により国際環境の変化も、みずから責任を持って積極的な役割を果たすことによって基地の整理、縮小に向けていくべきだというふうに思います。  大変重要なことは、この特措法改正を行ったということは決して問題の本質的な解決ではないということでございます。この改正は国家の失権というあってはならない事態を避けるためにあくまで現時点での最小限の措置でございまして、このことによっていわゆる沖縄問題が解決をされたというふうに理解をするとすれば、これはとんでもない間違いでございます。最大沖縄問題はお金ではない、最大沖縄問題はこういうことで問題が片づいたというふうに思ってはならないということでございます。  なぜならば、沖縄問題の本質は、私は、日米安保体制もとにおける重圧を沖縄の人々が集中的に担っているというこの重い現実があるということです。そして、この問題を日本、特に日本本土の国民が理解をするということが基本的に重要なことでございます。したがって、この問題を解決するという方向があるとすれば、この重い現実を本土の日本国民がよく理解をして、お金ではなく、お金も重要かもしれませんが、その痛みを共有し、そしてその負担を日本国民全体として受け入れるという状態を実現することだというふうに考えます。何よりも、沖縄県民を初めとして日本国民が互いに理解をし合って、信頼をし合って、日本国民としての誇りの持てる状態を実現することが根本的な解決だということでございます。  以下、やや具体的な話を、なぜそういうことを私は考えるかについて申し上げたいと思います。  沖縄には日本全土の米軍基地の約七五%が集中的に存在しております。本土に比べますと、米軍基地の所在は人口一人当たり三百三十倍、土地面積当たり五百六十倍にもなろうということでございます。これに対して、本土も自衛隊並びに米軍基地はたくさんあるのでございまして、その負担は十分にしておるんだという議論がございます。沖縄の負担というものを過大視すべきではないという議論がありますが、沖縄と本土の米軍基地の負担の仕方は私は非常に大きな違いがあると言わざるを得ないと思います。  なぜならば、沖縄基地は大半が民有地でございました。そして、第二次世界大戦後、いわゆる銃剣とブルドーザーで立ち退きをさせられたというようなことも含めまして民有地が基地に取ってかわられた。そして、最も使いやすい平たんな一等地でございます。これが軍事目的最優先で占拠をされているという事態でございます。したがって、生活あるいは経済の生態系が分断をされております。都市計画もままならない状態でございます。  そして、騒音というようなことも大変なことでございます。例えば、空軍基地を抱えております嘉手納の町ではF15戦闘機が一年間に約八万回も離着陸をするというふうに言われておりますが、この使用密度というのは自衛隊の基地に比べると数倍というふうに言われております。金武町では例の県道一〇四号越え実弾訓練が行われておったわけでございまして、この手のことは随分ございます。  また、犯罪もございます。一昨年九月の痛ましい少女暴行事件、実はこの種の犯罪はたくさんあるわけです。  そして、交通事故などでも、事故が一たん起きるとフォローアップ態勢が必ずしも強くない。したがって、住民はかなり不安な日常生活を送らざるを得ない状態がございます。沖縄を歩きますればすぐわかりますが、米軍のトラックにはナンバープレートがついておりません。ですから、だれがやったのかわからないんですね。本当に追っかけないとわからない。後ほど申し上げますが、私どもは米軍に要望を出しましたけれども、なかなかフォローアップ態勢がしっかりしておらぬというようなことがありまして、住民から見ますと大変な重圧、そしてやりきれない閉塞感があるということは日本国民はすべからく理解しなくてはならないことだと思います。  さて、根はもっと深いのでございまして、歴史的経緯ということがございますが、御案内のように、沖縄太平洋戦争最後の段階で唯一の日本の地上戦の惨禍をこうむったところでございます。当時の県民六十万の約三人に一人が命を失われたと言われておりますが、残られた方も、けが、病気、家族を失い、家を失い、大変な惨禍だったわけでございます。  そして、戦後、米国の施政下に入り米軍の支配を受けたわけでございます。私見でございますけれども、今日、沖縄の経済が自立していないと言われる一つの理由は、終戦直後、ドル経済だったわけですね。戦前の交換レートは一ドル二円程度でございましたが、これに対して本土の場合には、焦土と化しましたので、一ドル三百六十円というのがブレトンウッズ協定で決められて、ワンダラーブラウスなんというのがありましたけれども、このような非常に安い為替レートでつくったものを米国に売ればただみたいな値段をつけられる。しかし、沖縄が焦土と化していて基地中心の消費経済であるときに、ここでブラウスをつくって売ったらどのぐらいのものになるだろうか。生産性も低いわけですから、恐らく二十ドルぐらいにはなったんじゃないかと思うんですね。そうすれば、国際競争力などというものはできるはずがない。ですから、産業は育たなかったはずでございます。  返還後、もちろんこの問題を日本政府の当局あるいは政策関係者は非常に憂慮をいたしまして、何とかして沖縄の経済発展の基盤をつくらねばならないということでいろいろ計画が出されました。民間の大企業も沖縄に進出するという計画が多々あったわけでございますが、大変運の悪いことに、石油危機で大きなショックが参りましてほとんどの計画が立ち消えになって、結局沖縄の開発の努力というのは沖縄開発庁を中心に十年ごとの長期振興計画を繰り返す、それを基軸として補助金をつぎ込んでいくという姿になったわけでございます。今日までのところ約五兆円の補助金がつぎ込まれたと言われておりますが、それでも自立発展に結びつかなかったという評価が専らでございます。  その一つの理由は、公共工事が大半でございました。箱物が残念ながら大半でございました。箱物は補助金でやれますけれども、運営費が出ない。また、沖縄の建設産業もかかわりましたけれども、本土のゼネコンもたくさんかかわっておったわけでございまして、この利益は実は沖縄にとどまらずに大半が本土に還流をした。そして、人材も育たず技術も育たず、しかも運営費が出ない。こういう状態で、再び補助金依存ということになる悪循環を繰り返してきた結果、遂に自立が今日まで十分にできなかったということがあると思います。  所得水準は、御案内のように、日本で最低でございまして、日本の平均値の約七割、失業率は約二倍、そしてとりわけ若年者の失業率が多いということが将来を考えるときに極めてゆゆしき問題でございます。  さて、その沖縄の中に目を凝らしますと、とりわけ基地の重圧を集中的に受けている市町村がございます。沖縄には五十四の市町村がございますが、米軍基地並びに施設が所在するのは二十五市町村でございます。しかし、その中で幾つかの市町村がとりわけ大きな重圧を受けております。  嘉手納町を例にとれば、八三%が嘉手納空軍基地嘉手納弾薬庫でとられております。金武町をとれば六〇%がキャンプ・ハンセンでございます。北谷町は五七%が嘉手納飛行場、キャンプ瑞慶覧。宜野座村は五二%がキャンプ・ハンセン。読谷村は四七%。沖縄市は三六%。伊江村三五%。名護市は広い町でございますが、一一%でございますけれども、キャンプ・ハンセン、キャンプ・シュワブ、さまざまな問題を抱えております。  象徴的なのは嘉手納町の実情でございますが、八三%を基地に占拠され、大変な騒音公害のもとで皆さん暮らしていらっしゃるわけです。一七%の狭い土地で皆さん生活をしております。産業立地の余地はもうだれが見てもございません。何かしなくてはならない、そういう中で生きていこうとしている方々がどれだけの閉塞感にさいなまれながら、将来への希望を持てない状態で暮らしておられるのかということに思いをいたさないわけにまいりません。  今日、日本政府沖縄県庁の間で閣僚レベルの政策協議会がつくられて、そして沖縄県が前々から温めておられた国際都市形成構想、特別の規制緩和措置をも含む沖縄発展計画あるいはその支援計画というものを策定中だというふうに理解しております。私もたまたま多少この問題に関するお手伝いを外からさせていただきました。内閣官房長官の諮問委員会である沖縄米軍基地所在市町村に関する懇談会の座長をさせていただきました。特に、この懇談会は、とりわけ大きな重圧を受けている市町村に焦点を絞って、現地を何度も訪れまして市町村の方々の意見を聞きながら、この方々の将来への自立発展への努力を支援するためのプロジェクトを提案させていただいたわけでございます。  基地の整理、縮小という長期的な展望をも踏まえた上での計画を提案させていただいたわけでございますが、例えば嘉手納の町には嘉手納タウンセンターというものをつくってはどうか。金武町には将来とも高齢化の進む日本一つの心のふるさとになるような健康保養ゾーンをつくってはどうか。沖縄市の子供未来館というのは大変重要な企画だと思いますが、これは沖縄県の委員の方々が大変熱心に推奨されたんです。  よく子供は親の背中を見て育つと言いますが、沖縄県では過去半世紀、少なくとも沖縄に多大の付加価値をもたらすような製造業は育たなかったわけでございます。したがって、親の背中を見ても製造業が見えないわけです。  つい最近までNHKでやっておりました「ふたりっ子」、あの麗子ちゃんが、こんな話をして恐縮でございますが、お父さん嫌いだ嫌いだと言っていながら豆腐ビジネスをつくったというのは、やっぱり子供は親の背中を見ているわけですね。そういう種が沖縄にないわけです。  ですから、今から鉄鋼業や石油化学といったって無理なので、二十一世紀の産業の技術の種になるものを子供たちに、ただガラス越しに見学させるのではなくて、これは情報技術であるかもしれない、バイオケミストリーであるかもしれませんが、実際にその種を手で握って、そして親しむということでないと自立の芽が育たないということを考えまして、そういうものを提案させていただいております。  あるいは、名護市には人材育成センターというようなことでございまして、私ども祈るような気持ちで、今後何年かかっても、箱物をつくっていくということじゃなくて、箱物よりも将来の自立発展の種になるものを一緒につくっていくという心がけで一緒に仕事をさせていただきたい、本当にそういうふうに思っておるわけでございます。  こうした実情を本土の日本国民がどれだけ理解をしておるかということが最大の私は問題だと思います。安全保障というのは国の基本政策でございます。国民の命と財産を守るというのは国の国民に対する責務でございます。その負担は当然国民全体が担うべきものでございます。しかし、私ども日本国民、とりわけ本土の国民に果たしてどれだけその心がけがあるか。  ですから、特措法は私はやむを得ない措置だ、この判断は正しかった、改正は正しかったとは思います。しかし、これを通した後に、のど元過ぎれば熱さ忘れる、この問題は片づいたじゃないかなどと我々が思うようであったら、これはとんでもない間違いでございまして、最大の問題は、沖縄の問題というものの現実を本土の日本国民全員が理解をし、その痛みを理解するように努力をし、そして負担は共通に引き受ける、こういうことを続けてまいりませんと私は沖縄問題の解決はないというふうに思います。  補助金を出せばいいじゃないか、国民として負担をしているではないかという議論があるいはあり得るかもしれませんが、補助金を出せば済むというような問題では全くない。問題はお金よりもむしろ心の問題だというふうに私は思います。今日の状況は、きょうあるいはあす急に変えられるものではないかもしれません。国際政治状況、軍事的要因、技術的な要因、制度的な要因、さまざまなものに制約されておりますから、きょういきなり現実の事態をすぐ変えろといっても無理であるかもしれません。  しかし、重要なことは、この沖縄の人々が安保体制の重い負担、重圧を集中的に受けているというこの現実を国民全体で理解して、その負担を物心両面で受けとめようとしていく努力、これをどのようにして永続させるかということであろうと思います。そして、将来に向けては、あらゆる可能性をとらえて国際協力を推し進めて、軍縮を推し進めて、そしてやがて基地のない世界をつくるという方向を目指して努力していくことが重要だと思います。  私は、安全保障というものは、武器、弾薬も重要かもしれません。しかし、本質はそこにはない。安全保障の本質というのは人々の信頼だというふうに思います。沖縄の人々を含む日本国民全体が互いに信頼し合って、日本を守るために互いに信頼し合って支え合っていくという状態がなければ、どれだけ武器、弾薬を積んでも安全保障は機能しないというふうに思います。  そしてまた、同じことはアメリカ日本日本国民とアメリカ国民がこの問題を理解しなければ、アメリカに抑止力という、日本ではとても負担し得ないし、してはならないものによって日本を守ってもらっているわけです。もちろん日本も応分の負担をいろいろしておりますが、日米両国に心の信頼がなければ安全保障体制なんというのは機能するはずがありません。  そして、実を言うと、日米が基軸になって確固たる日米安保体制を持っているということが、実は近隣諸国、世界にとっても、日本が独自に何かをしようということに比べればはるかに透明度が高い、専門用語で言う信頼醸成に近い事態なんですね。ですから、これは三重の意味で信頼が必要だ。日本国民同士の信頼、日米の信頼、そのことがあることが世界に不当な、不要な軍備拡張を起こさせないで済むということでございまして、そういう意味で最も重要なことは、とりわけ日本本土の日本国民がこの沖縄の問題を真剣に考えて忘れない、忘れないためにどうするかということでございます。  先生方にも大いに頑張っていただきたいんですが、私どもも一国民として、何年かかっても沖縄問題を忘れてはならぬということでやっていきたいと思います。私も教師の端くれですから、教える立場で必ずそれは声を大にして叫び続けていきたいというふうに思っていますが、特措法については今日の時点でやむを得なかったというふうに判断をいたしております。  どうもありがとうございました。(拍手)
  88. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) ありがとうございました。  次に、濱川参考人にお願いいたします。
  89. 濱川清

    参考人(濱川清君) 濱川です。  私は行政法を専攻しておりますので、今回の法律案について行政法上の御意見を申し上げたいと思います。  まず、法律案の基本的な問題点ということをお話しいたします。  法律第十五条は、使用期間の末日までに権利取得裁決がない場合に問題になっている暫定使用を認めようということになっております。最大の私の疑問は、なぜ権利取得裁決がなされなかったかということについて法律は何も限定をしていないということでございます。  今回の具体的な事案を見ますと、権利取得裁決が沖縄収用委員会においてなされない事情にはいろんな要素がございます。根本的には、先ほど島田先生がおっしゃられた沖縄問題についての県民のさまざまな疑問、批判があろうかと思いますが、同時に、細かい点ですが、例えば土地調書等の作成におきまして、防衛施設局と土地の権利者との間にいささか見解の違いあるいは土地の権利者の要望が十分に反映されなかったというふうなこともあったようです。あるいは、最近報道されているところによりますと、そもそも土地の権利者を間違っていたという事態もあるようでございます。  そういうことで、収用委員会において権利取得裁決がなおされていないことの理由というのはさまざまでございまして、これを全く不問に付したまま直ちに暫定使用を認めることができるかに大変疑問を感ずるわけです。  同様の点は、暫定使用の目的といいますか要件それ自体も定かではないということでございまして、これも島田先生がおっしゃっているとおりですが、必要性ということはもちろん一般的には承認できるわけですけれども、例えばその土地によって必要性はおのずから変わってくるかと思います。ところが、今回の法案につきましては、どういう目的で、どういう場合に暫定使用を認めるかについては全く規定がございません。期限末日まで取得裁決がなければもう自動的に使用の延長があるということでございます。これは所有権という国民の権利に対する制限のための法律としては極めてあいまいで、法治主義あるいは適正手続という点から見ましていささかの疑問を禁じ得ないわけでございます。  それから、一般的な問題点の第三点を申し上げておきますと、今日、成田空港の問題で大変典型的でございますけれども、土地収用の制度の運用におきまして、強権的といいますか実力の行使はかなり本土においては控えられているわけです。これは運輸省だけじゃなくて、建設省の実務におきましても同様の傾向がございます。法律上は強制手続に移行できるとしましても、住民の合意あるいは関係地方公共団体の同意、納得がなければいい結果は得られないということでさまざまな合意形成の努力が行われているわけです。  そういう見地からしますと、今回の法案は、本土におけるそうした住民合意形成の中で国家、公益のための土地の使用を進めるという傾向と著しく違うという点で、私ども大変奇異な感じがしておるわけでございます。  さて、大きな第二番目の問題としまして、今回の法案の中に少々不可思議な規定がございますので、その点を御指摘申し上げたいと思います。  それは、暫定使用そのものが、場合によって不適法といいますか不法に行われるということが法律上予定をされているということでございます。  これは二つございまして、大変わかりやすい例は附則において示されているケースでありまして、経過措置の部分ですけれども、附則でいいますと第二項になりますが、ここで法律の施行前に契約、まあ合意と言ってもよろしいですけれども、あるいはその前の使用認定によって使用していた土地につきまして、使用期間の末日以前に裁決の申請や明け渡し裁決の申し立てが行われていた場合であります。ところが、現時点で御審議されております今回の法律の施行の日までに、なお手続、すなわち権利取得裁決が出されていないという場合にもこの法律は適用されることになっております。  どういうことかと申しますと、これもしばしば報道されているとおりですが、現在既に使用期限が切れて、法律の手当てもなく、いわば不法な占拠といいますか使用が続いているわけですけれども、こうした土地について、今回御審議になっている法律が制定、施行された時点で暫定使用に移行するということをこの経過措置は定めているようでございます。そうしますと、法律施行日以降は暫定使用ということでこの法律に基づく使用になるわけですけれども、法律施行までの使用をどう見るかということは今回の法律では明らかではございません。不法な使用について、その処置については何の定めもないわけです。  一点だけございますが、それは損失の補償について協議するという旨の規定でございまして、ここにその手当てがわずかながら示されているわけですが、ただ、これについて大変私は疑問を持っているわけです。すなわち、不法な使用について損失の補償を考えるということは、私ども行政法学の理論的なこれまでのごく普通の常識から見ましておよそ考えられない取り扱いでございます。  もう一点、これはかなりレアケースかと思いますが、不法使用が法律によって予定されていることがございます。これは改正法案の第十七条でございますけれども、条文自体は大変わかりにくいんですが、第十六条第二項の規定による裁決がされる場合を除きまして、暫定使用期間が終了したときは損失の補償について協議するという、先ほどとよく似た規定でございます。  これは実は十五条の第一項にその前提といいますか制度的な背景がございまして、暫定使用というのは本来明け渡し裁決までと、したがって明け渡し裁決がありますとそのまま正規の使用に入るわけです。こういうふうになっておりますが、ところが第十五条第一項によりますと、明け渡し裁決でない暫定使用の終了がございます。その第一は、第一項第一号で定めるとおりでありまして、収用委員会が申請を却下いたしまして、さらにこれは収用法の百二十九条によりまして、収用委員会の裁決について起業者は建設大臣に審査請求をすることができますが、この審査請求が棄却または却下された場合というふうに定めております。  どういうことかといいますと、要するに収用委員会の却下の裁決がそのまま認められ確定したという場合です。こうした場合におきましては、そのときまで暫定使用がありますが、これ以降はもう使用を続けることはできません。そこが終期でございますから、それ以降は使用することはできません。十七条で予定されている一つのケースはこれであろうかと思われます。まだ正式の逐条がございませんので、私はそういうふうに解釈をさせていただいたわけです。  そうしますと、大変奇妙なことが起こるわけでございまして、収用委員会が申請を却下する、あるいは建設大臣がこの収用委員会の却下裁決を認めて起業者の審査請求を退けるということになりますと、そもそも起業者の申請に不適法な補正しがたい違法性があった、違法というのは、ちょっと私人としての立場での起業者については不適当ですが、不正規あるいは不適式と言うべきかもしれませんが、とりあえず違法と言っておきます。すなわち、補正しがたい違法があったということになろうかと思います。  そうしますと、暫定使用そのものは今回の法律で適法に行われるかのように見えますが、当然皆様審議の前提には、この暫定使用の前提となる権利取得裁決の申請であれ明け渡し裁決の申し立てであれ、それらが適法に行われているものとお考えになっているかと思われるわけです。しかし、実際にはこのように法律の中には不適法、不適式な場合も当然予定をしているわけでございます。そうしますと、暫定使用の前提が不適法、不適式だと考えますと、使用そのものも実態的には確かに今回の法律で合法化されるというお考えもあろうかと思いますが、実態的には起業者は誤って暫定使用の制度を用いたということにならざるを得ないかと思うわけです。  今回の法案ではこれをあらかじめ予定しているという意味で、通常、行政関係法令はこうした不法な手続がとられることを予定するというのは極めてまれであるんですが、どういうわけかどうも予定しているようでございまして、十七条第一項に損失の補償の規定を設けたわけです。この損失の補償の規定についても、先ほど第一のケースで申しましたとおり、大変奇異に私どもは感ずるところでございます。  さて、この点で私は一点だけ憲法上の問題をお話しいたしますが、不法な国による国民の財産権に対する侵害だと考えますと、これはいわゆる不法行為に該当するわけでございます。戦前はいざ知らず、日本国憲法第十七条は、国や地方公共団体の不法行為にかかわる損害賠償責任を明定しております、明らかに定めておるわけです。したがいまして、たとえ法律によりましてもこの憲法の原則を覆すことはできないわけでございまして、不法行為であれば不法行為として起業者たる国は損害賠償の責任を負わなければならない。今回の法律は、この点果たして憲法上の疑義がないのでしょうかという私の疑問をお示しいたします。  なお、差し出がましいことではございますが、もし私のような解釈が成り立つといたしますと、果たしてだれが不法行為責任を負うかという問題も生じてきます。もちろん、文字どおりにはそれは起業者たる国、いわゆる私人としての資格というふうに通常は考えられますが、そういう国としての損害賠償責任考えられるところですが、ところがそうしたものをあらかじめ想定して法律で暫定使用を認めるということになりますと、立法府の不法行為責任の問題も当然出てまいります。御承知のとおり、国家賠償法第一条で言うところの国の公権力の行使に当たる公務員には皆様国会議員も含まれることでございます。いささか差し出がましいことですが、私の見解を述べさせていただいたわけです。  あと、第三番目に申し上げたいことは、今回の改正案一つ法律改正案という形をとっておりますけれども、実質的にこれを見ますといささかの疑問も私には感じられるわけです。どういうことかと申しますと、この一、二年のことでございますが、沖縄収用委員会が現在進めている権限の行使について国会が一定の見解をお示しになろうとしていると、このような印象を持つわけです。  もちろん議院内閣制をとり、憲法が定めるとおり国会は国権の最高機関でございまして、行政機関の権限行使について法律を制定いたしまして、一定の統制あるいは一定の方向を示すことは一般的には当然のことでございます。しかしながら、行政機関による審議と申しましても、それぞれ憲法上の人権あるいは地方自治の保障という、そういう原理に基づきまして制度化をされているわけでございます。  現在の沖縄収用委員会の審理のおくれというものは、先ほども私は少し申し上げましたが、必ずしも収用委員会責任とは思えない部分がございます。また、収用委員会は、土地所有権という重大な国民の人権にかかわる、これを制限する手続として慎重に事を進めているとも見られるわけです。  しかも、御承知のとおり、収用委員会は通常の行政機関とは異なりまして、合議制の機関という形態をとって、公正かつ中立、慎重に議論を進めることが法律上予定されているわけでございます。仮に、こうした沖縄収用委員会の権限行使について国会が御不満をお持ちになりまして今回の法律案を作成したとするならば、収用委員会制度そのものに法律が具体化をしております憲法上の諸原理に十分な考慮を払わなければならないということを申し上げたいと思うわけでございます。  第四番目に、同様のことは地方自治との関係におきます今回の改正法案の問題点でも言えるかと私は考えております。  御存じのとおり、憲法第九十五条は、一つの地方公共団体の区域にのみ適用される法律については、国会の議決をもってのみではその法律の制定は認めておりません。当該地方公共団体の住民投票に付しまして、その過半数の同意を得なければならないことになっているわけでございます。  今回の改正法案は、もちろん形式的に見ますと直ちに憲法九十五条に抵触するというふうには断定はできませんけれども、実質的に見ますとその疑いも禁じ得ないということを最後に申し上げたいわけでございます。すなわち、特別措置法は全国どこにでも適用が予定されているということはそのとおりでございますが、現実には沖縄でしかこの特措法の適用は予定されていないのではないかと私は考えるわけです。  例えば防衛施設庁の内部の組織規程を見ますと、特措法の運用、施行、特措法に基づく土地の収用や使用を所管しているのは一般に施設取得第二課というふうに呼ばれております。この施設取得第二課がどこに設けられているかと申しますと、それは一つの防衛施設局、すなわち沖縄防衛施設局のみでございます。このように、組織の面から見ましても、特措法については現実にその施行は沖縄県しか予定されていないという事実がございます。  しかも、今回、最終的にはそのようにならなかったかと思いますが、時限法というふうなお話もございました。いずれにしましても、沖縄収用委員会の今回の事件についての法律改正であるという、そのような実質論は十分に成り立ち得るように思います。  そうしますと、憲法九十五条の問題が形式的にはなおいささか議論がございましょうが、少なくとも憲法の精神という点からかなりの疑問を禁じ得ないわけでございます。  以上、私の疑問点をお話し申し上げました。  ありがとうございます。(拍手)
  90. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) ありがとうございました。  次に、金城参考人にお願いいたします。
  91. 金城睦

    参考人(金城睦君) 弁護士の金城です。  衆議院の段階で私どもと同じように参考人として大田沖縄県知事にお声がかかったときに、知事は、スケジュールの都合もあったようですけれども、それより何よりも、この法案の成立についてはもう確定している、そして具体的なスケジュールもほぼ決まっている、こういうような状況の中では今さら意見を言ったって、ただ沖縄意見も聞いたという格好をつくられるだけにすぎないんじゃないか、こういったような危惧も表明されてこれをお断りになられました。  私も、今回、この審議に当たっての参考人としての意見を述べてほしい旨の要請を昨日受けましたとき、大田知事のことが頭をよぎりました。私は知事ではありませんから沖縄が利用されるとか大げさなことは考えませんでしたけれども、成立は確実だとかあるいはその具体的なスケジュールまで取りざたされているという中では、今さら意見を言って一体何の意味があるのだろうと、本当のところ極めて懐疑的になりました。しかし私は、急な話で、弁護士としてのスケジュールがぎっしり詰まっていて大変だったんですけれども、日程をやりくりして昨夜急速沖縄から飛んでまいりました。  それは、今回のこの特措法改正案というのは、決して技術的な簡単なものではなくて、憲法の大原則に触れる極めて重大な問題を内包している。そうである以上、どうしても今日に生きる主権者の一人として、その成立については重大な関心を払わなきゃならないし、みずからの意思を明示し、多くの国民、代表の先生方はもちろんですが、その他国民一般の皆さんにもあらゆる角度からこの法律案の問題点を明らかにしていただいて、仮に成立がやむなしということになっても、今回は成立しても、この問題があるならば、なるべく近い将来、再改正その他の方法でこの誤りを解消する、あるいは法案に指摘されている内容について、その内容が間違った方向にならないように、少しでも正しい方向に進ませていただきたい、こういう思いを持っているからであります。  どれだけ中身のある意見が述べられるかわかりませんけれども、全国民を代表する、選挙された議員でいらっしゃる諸先生方、国権の最高機関として憲法に規定されている国会の一院を構成される諸先生方におかれましては、決してその場限りの形式的でおざなりの審議で事足れりということではなくて、その傾向がある旨、新聞等で指摘されておりますのであえて申し上げさせていただくんですが、ぜひとも真剣に御検討くださいますようお願い申し上げたいと思います。  早速、特措法改正案について、私は、要点を三点くらいに絞って、かいつまんで意見を申し述べさせていただきたいと思います。  この特措法改正案の第一の問題点は、何といっても、基本的人権の尊重と平和主義、そして国民主権、特に、地方自治を強調する日本国憲法のもとでこれまで形成されてきました現行土地収用制度を実質的に破壊し、各都道府県に設けられております収用委員会を全く形骸化してしまうという点にあると思います。  基本的人権としての財産権の保障と公共目的のための公用収用との調和をよりよく図る民主的な制度として土地収用法が定められ、この法律により厳格な手続が規定されております。そして、それを審査するための第三者機関、準司法機関と言われる収用委員会制度が設けられております。  この改正案は、収用委員会の裁決がなくても、あるいは裁決が却下されても、一たん総理大臣の使用認定を経て裁決申請がなされておれば国の強制使用権原を認めるというんですから、起業者たる国の一方的判断だけで使用できるようにするということになるわけですし、結局、収用委員会はあってもなきに等しいものになってしまいます。第三者であり、準司法機関と言われる収用委員会による審査を経た裁決というのは、他人の財産権を制限、剥奪することになる強制使用を可能たらしめるかなめであります。核心であります。そのかなめがなくてもいいというのですから、収用委員会から肝心かなめの実質的な権限を奪い、全く魂のない抜け殻にするものだというほかないと思います。  裁決の権限を奪うものじゃないんだと、裁決がなされるまでの間の暫定的なものなんだと政府は説明いたしております。しかし、裁決はあろうがなかろうが使用できるというのですから、裁決には何の意味もなくなってしまいます。  しかも、暫定使用と称して、しばらくの一時的なちょっとした応急的なものと、こういった印象を与えておりますし、そのように理解される方々もまだたくさんいらっしゃるようでありますけれども、実はどれぐらいの期間なのか、その定めや限定は全くないのです。暫定という名の無期限、無制限、半永久的なものと言っていいものでありまして、これはまやかしといいますか、あるいは暫定という言葉からすると言語矛盾と言わなければならないと思います。  ちなみに、前回、一九九二年の強制使用裁決につきましては、地主の側からこの裁決に対する不服の審査申し立てを建設大臣にいたしました。あれから五年経過しておりますけれども、結論はいまだ出されておりません。  従来の収用委員会の裁決による強制使用期間というのは五年が多いんですが、その収用委員会の定める強制使用期間よりも長い暫定使用期間ということがこの法律によって現実に想定されるんです。法案の形式、仕組みだけから見ますと、論理的には半永久、無期限なのであります。  私は、無期限といえば、かつてアイゼンハワー・アメリカ大統領その他アメリカの高官が、沖縄を無期限に保有する、こういうふうに言明していたことを思い出さずにはいられません。  収用委員会を形骸化するということは、政府、行政権力の一方的な判断、措置によって有無を言わさず個人の土地、財産権を制限、剥奪するのを可能にすることを意味します。  現に収用委員会審査中の事案で恐縮ですが、差し支えない範囲で一、二の例を申し上げますと、一つは、人違い申請事件と言っていい事案ですね。  たまたま同一市内で同姓同名の人がいたわけでありますけれども、でも、人の特定というのは姓名と生年月日あるいは住所等で普通やります。そこまでいけば明らかに人間が違うことははっきりしているんですが、それなのに、真の所有者でない、全然違う別の人を所有者であるかのごとく手続をしていることが後に判明いたしました。起業者の国側は急いで真の所有者に対する手続をしようと補正という申し立てをしましたけれども、多分従来のこれまでの考え方からすればこれは却下せざるを得ない事案だろうと思うんですね。こういう事案であって仮に却下しても、それでも強制使用を認めるということになるんです。  もう一つは、図をお配りいたしましたが、これは瀬名波通信施設にある事例なんですけれども、真ん中に道路があり、道路を挟んで施設が双方に分かれておりますが、ぎざぎざの部分は基地フェンスですね。A、Bと書いてありますが、これはもともと一筆の土地であったところ、真ん中にフェンスがあるためにフェンス外のBの方が地主に返され、それでAの方の部分について今回強制使用をしようということで手続にかかっています。  現場を見てみますと、事務所用地となっていますけれども、事務所のそばにある土地であって、直接の事務所が建っているわけではない。そして、この事務所もそう使っている様子も外形的には見られない。ですから、よく見てみれば、こんなにまで反対している問題、基地の整理、縮小というのであるならば、このフェンスを、イ、エ、アですね、ア、イ、工、アという形になっているものを直接少しずらしてア、イの方向にしてAの土地を返還するということは十分考えていいし、そうしたからといってこの通信施設基地機能に何ら支障はないと思われるわけです。  これは審理中ですのでこれ以上申しませんが、例えばこういう事案があって審理をしていても、そういう審理は無意味になってしまう。こんなことがあろうがなかろうが、とにかく強制使用で使用権原を認めちゃう、こういうのがこの法案の中身なのであります。  第二の問題点は、この改正案沖縄基地の固定化を図ることを目的とし、そのような機能を果たすということであります。  橋本総理大臣以下、政府高官の皆様、あるいは政党幹部の多くの方々も口をそろえて、沖縄基地の整理、縮小は必要である、そのための努力を惜しまないとおっしゃっています。しかし、この改正案は、基地の整理、縮小のためのものでは全くありません。逆に、基地維持強化、固定化するために企図されていることが明らかなのであります。  不必要、不合理と思われる土地の強制使用の例、一、二今申し上げましたが、沖縄基地全体を見ても一刻も早く整理、縮小、撤去の方向で検討をされるべきだと思いますが、現実には言明されていることとは違う方向でこの法案が提出されてきていると言わなければならないと考えます。  法律を単につくりさえずればいいというのであるなら、かつて米軍沖縄土地の強制収用をしたときのことは、よく銃剣とブルドーザーという言葉で表現されてきました。あのときであっても、決して米軍がいきなり銃剣、ブルドーザーで来たわけではないんです。その前に、そのときの法律である布告布令というものを出しておりました。権力が一方的に出していました。そういうやり方であった布告布令と今回のこの改正案と極めて類似していると私は指摘せざるを得ないのであります。  ということは、第三に、この法案の問題が、近代民主主義社会の大前提であります法治主義に反し、法の支配の原則に真っ向から挑戦するものになっているということであります。  諸先生方国際情勢の見方あるいは安全保障のあり方についてはさまざまな御意見、見方、それぞれおありと思います。しかし、何より大事なことは、我が国のあり方として、大原則である憲法や法の支配の原則ということ、このことを踏まえることではないでしょうか。そういうことを外して、目先の、政府に都合が悪いから、あるいは不法占拠状態が生まれるから、これを取り繕わなきゃならないという、ただそれだけで法の大原則を外したら、それは国民に対して、法への信頼、そのようなことを行う国への信頼をなくしてしまう、私はそのことを大変憂慮いたします。国民の信頼だけではなく、そういうことでは外国だって、直接の当事者であるアメリカだって、そういう形でやる日本政府というものは未熟ではないか、法の考え方に対する不十分な国ではないかというような危惧の念を持つのではないでしょうか。  本物の国際関係、本物の友好関係、本物の安全保障、これを実現していくための方策は何なのかということを今こそ本格的な検討をし、討論すべき場ではないかと思うんですね。このことを可能ならしめたのは、実は一九九五年のあの痛ましい沖縄における少女暴行事件の発生を契機とした沖縄からの問題提起でありました。  今回のこの特措法改正によって沖縄を封じ込めてしまう、押さえ込んでしまうということになれば、またもや真の我が国の平和のあり方、人権擁護のあり方、法の支配のあり方について国民的な討論をする場を失ってしまう、今回はそれこそが最も絶好のチャンスなのではないかと思うのであります。  いろいろ申し上げたいことはいっぱいありましたが、時間のようですので、一応私の意見陳述はこれで終わります。(拍手)
  92. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) ありがとうございました。  以上で参考人の方々の御意見の陳述は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  93. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 自民党の吉村でございます。  きょうは参考人のお三方、大変お忙しいところわざわざ当特別委員会に御出席をいただきまして、委員の一人として心から感謝申し上げる次第でございます。  諸先生からそれぞれの所見が述べられました。また、衆議院でもしかりでございますが、参議院でも当特別委員会でいろいろな問題が論じられてきた次第でございます。そういう中で、私も沖縄は何度となくお邪魔をしております。また、沖縄の友人もたくさん持っておるわけでございます。  しかしながら、この特別委員会に所属をいたしまして、振り返ってみまして、さて、沖縄について私自身がどれだけわかっているかなと。ましてや、沖縄の心ということが頻繁に出てきておりますが、沖縄の心というのがどれだけわかっているのかなと振り返ってみましたときに、大変じくじたるものがあったわけでございます。  確かに、江戸時代の琉球王朝、また明治時代の琉球処分によります沖縄県としての日本政府への組み入れ、また第二次世界大戦におけるあの激烈な地上戦、そして当時の県民の方々の約三分の一がとうとい命を失われた。ほとんどの現在の沖縄の方々のだれかが、身内が親戚が友人がそういう犠牲に遭ったわけでございまして、まさに我々本土にいた者にとっては理解しがたい面が多々あるのであろうと、このように思う次第でございます。  また、先ほどから御説明の中にキャンプ・ハンセンとかキャンプ・シュワブとかいう言葉が出てまいりました。あれは米軍の兵士の名前だと、このように承っております。すなわち、激戦の沖縄戦で武勲を立てた兵士の名前をとってあのキャンプ名にしたということでございます。裏を返せば、彼らアメリカにとって、米軍にとって英雄といいますのは多くの日本兵また民間人を殺したということでございますから、キャンプ・ハンセンとかキャンプ・シュワブとかいうこの名前を、言葉を聞くたびに沖縄の方々の心はいかばかりであろうかと、このように思う次第でございます。私は当委員会に所属しまして、少しでも沖縄の方々のそういう苦労、心を理解すべくこれからも努力をしていきたい、このように思っておるところでございます。  そういう思いと同時に、今回この特別措置法が衆議院では圧倒的多数で可決をされました。また、当参議院でも恐らく大多数の方々が賛成をしていただけるものと、このように思う次第でございますが、私は、今回の特別措置法が圧倒的多数で我が国の国会で可決されたということ、これは大変大きな意義があるのではないかと、このように思う次第でございます。  先ほど島田先生からお話がありましたように、日米同盟アメリカもやはり同盟国として、国会においてこれだけの大多数の賛成で可決をしたということ、そしてそれが安全保障条約といいますものの安定に大きくつながり、ぞれがまたアジアの国々の人々の安心にもつながる。そういう面からいきますと、圧倒的多数で可決したということがアジアの安定に大きく結びついてくるのではないか、このように思う次第でございます。  と同時に、先ほど島田先生もおっしゃいました、この特措法は必要だ、必要であるが、これですべてではないんだ、これから基地の縮小というものについて我々は考えていかなければならないという御意見でございました。まさに圧倒的多数で可決したからこそ、これをもってアメリカとの信頼感の上に立って、ここから初めて我が国が基地の縮小という問題に堂々と話し合いに入っていくことができるのではないかなと、このように私は思う次第でございます。  これが僅差で可決しておれば、アメリカの不安といいますもの、また東南アジアの不安といいますものは、これはまたはかり知れないものがあろうかと、このように思う次第でございます。まだ参議院の方は終わっておりませんが、今回圧倒的多数で可決をするということがどれだけアジアの平和とこれからの基地の縮小につながっていくかということ、これは大変大きな意味を持っておる、このように思う次第でございます。  まず、島田先生にこの件についての御所見をお願いしたい、このように思います。
  94. 島田晴雄

    参考人(島田晴雄君) ただいま吉村先生の御指摘で、圧倒的多数で可決をされたということが日米安全保障体制の信頼を確認する上で極めて重要であるという御指摘でございますが、私も同様の意見を持っております。  しかし、先ほど強調させていただきましたように、これは冒頭に、私はこうならざるを得なかったということは残念な事態である、本来はこういうことでなくて、人々の理解の上にのっとって、国民が全員でこの安全保障問題の負担を担うという心の上で土地使用権原の更新がなされるべきであった。これは理想の姿でございますが、そういう理想のあり方から見ると、極めて特異な状況でこれを乗り越えたわけでございます。しかし、結果としてはこれを一つの出発点として、私どもは誠意を持って、先刻申し上げました真の信頼を国内においても日米間においても国際社会においても築くために努力をしていくということが重要であるというふうに思います。
  95. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 まさに先生がおっしゃったとおりだ、このように思います。  特別立法というお話もありますが、やはり国防というのは、国も地方も国民一体となって当たって初めて真の国防というものがあり得るんだろう、このように思う次第でございます。  島田先生は米軍基地が所在する市町村に関する懇談会の座長ということでございまして、沖縄開発についてのいろいろ御努力、御提言をいただいておるところでございますが、復帰して最初の大きな事業といたしましては沖縄海洋博がございます。あのとき、私も沖縄にお邪魔をしたわけでございまして、予算額にして二千三、四百億ぐらいの資金を投入した、このように思っております。  ただ、あのときにずっと盛り上がったのが、沖縄の海洋博終了後極端にしぼんでしまいました。沖縄海洋博の功といいますものがその後の発展につながらなかったというところ、その点について先生の御意見をちょっとお聞かせいただきたい、このように思います。
  96. 島田晴雄

    参考人(島田晴雄君) 吉村先生に私が何か申し上げるのは釈迦に説法だと思います。  沖縄の返還後の発展について関係者がさまざま努力をされたことは事実だと思いますが、沖縄が真の自立的な発展のために付加価値を生む産業をみずからの手で育てていくということよりも、むしろ補助金によって箱物をつくるということに残念ながら力点がかかっていったのではないか、結果としてですけれども。そして、この箱物については補助金で賄えますけれども、運営費というものは出ないわけでございますので、最後は箱物の残骸が残る、これがまた県民の大変な負担になる、こういう悪循環になったわけですね。  ですから、これは沖縄皆様方は当然のこととして日夜心を砕いておられると思いますが、本当に日本国民全員で、沖縄が真に自分の力で付加価値をつくり出していく産業を育てるにはどういうふうな努力が必要なのか、そして日本全体としてどのようにそれを支援することが効果的なのかということを本気で考える必要があろうかと思います。  私が懸念しておりますのは、先刻も金城先生おっしゃられましたが、少女暴行事件というものを一つのきっかけとして、日本国民はここに大きな問題があるということを改めて自覚をさせられたわけですが、あのような事件をきっかけとして我々が自覚をさせられるというようなこと自体、非常に問題のあり方が間違っているわけです。国民全員で安全保障というものを担うならば、沖縄がみずからの力で付加価値を生み出していけるような状況を国全体として本当に効果的に支援していく。私は完全な答えは今ないんだろうと思いますが、これを多くの方々が真剣に考えつつあるということだと思いますので、全力でその方向を熱を冷ますことなしに努力を続けていくべきだというふうに思っております。
  97. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 補助金、それも高率補助金による沖縄振興といいますものが必ずしも成功しなかった。もちろん必要ではあったと思いますが、そういう面ではもう交付税の方に切りかえるというようなこと、それによって沖縄自身の自主性によってみずからの手で沖縄が振興していく。  私は福岡県選出でございますが、産炭地を多く抱えておりまして、最後の三井鉱が閉山になったわけでございます。とかくそういう過疎地振興には公共投資だ公共投資だといって、それは結局その場限りで後につながらないということは沖縄を含めて全国共通のことであろうと思うし、これからの地方分権の中で過疎地対策として我々国民がみんなで考えていかなければならない一つの問題であろうか、このように思っております。  それと、これはちょっと話が飛躍するわけでございますが、フリーゾーン構想というのがございます。  本土資本といいますのは、やっぱりさすがに沖縄は遠うございまして、例えば最西端の与那国なんというのはもう本当に遠いところでございます。ところが一方では、与那国から百キロ、百二十キロ行けば台湾なんです。だから、高速ボートで飛ばしてくれば一時間で来るというようなところ、そしてあそこは海も大変きれいで本当にレジャーランドとしてはすばらしい。しかし、そういうポテンシャルを持ちながら日本人は行かない。だから、日本の資本が行かないというときに、台湾資本といいますものを大いに呼び込むということは大変有用ではないかなという気がするんですね。  特に、台湾の置かれた今日のアジアにおける存在、大陸との存在の中で台湾の資本といいますのは、ある意味ではいつでもどこにでも行けるように分散して、アメリカとかカナダとかヨーロッパとか、そういう性向を持っておるときに、台湾資本が沖縄に投資するということは、投資ということだけではなくてまだまだ大きな意味台湾の資本は含んでいるんではないか、こんな感じがするんです。  これからの先生のお考え、そういう呼び込むための施策として先生がアイデアを持っておられればちょっと教えていただきたい、このように思うんです。
  98. 島田晴雄

    参考人(島田晴雄君) 吉村先生御指摘のように、台湾の方々が官民挙げて沖縄を投資先として非常に強い興味を持っておられることは私も承知しております。台湾は大変な努力によって今世界で最高水準の電子工業技術を発展させた実績もございますし、これは大いにこの投資受け入れとしての沖縄の発展ということも考えるべきだというふうに思います。  また、とりわけ沖縄にとって重要な問題は、人材をどう形成していくかという問題だと私は思います。  これは沖縄の方々のみならず、沖縄というのは実は近隣諸国から見ると、私も随分ケースを聞いておりますが、勉強しに来るときに日本の本土に来るよりも沖縄に来る方が何かなじみやすい、大変国際的な開放された物の考え方があるということを多数の方から聞いております。それは沖縄一つの無形の大変な強みなんだろうと思うんです。そういったものが生きていくように、これは沖縄の方々のまず主体的な御努力なんだろうというふうに思いますけれども、その御努力が効果的に生かされるように私は日本全体として規制緩和も初めとして考えるべきだと思うんですね。  よく一国二制度という話がありますが、安全保障の問題については、形式はともかく実態としては一国二制度になっていると言って間違いはないと思うんです。そうであるとすれば、それを経済面その他の面で支えるために事実上の一国二制度があっていいのではないかと私は思うんです。しかし、これは言葉がやや今先行し過ぎておって、さまざまな政策を組み合わせることによって実質的な一国二制度に近い状況をつくることは私は可能だろうと思うんです。そういう実質的な議論というものをぜひ発展させていただきたいというふうに思っております。
  99. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 時間がたってしまって残念なんですが、金城先生にお伺いしたいと思います。  金城先生、きのう沖縄の方から出てこられたんですね。大変お疲れさまでございます。  先ほどちょっと私が申しましたように、キャンプ・ハンセンとかキャンプ・シュワブというのがアメリカの兵隊のヒーローの名前だということ、そういうことを先生はしょっちゅう耳にされていると思います。先生を初め沖縄の方々の心情というのは、これは一つの端的なことでございますが、いわゆる沖縄の心を私なりに少しでも理解するためにこの件についての御感想をお聞かせいただきたい、このように思います。
  100. 金城睦

    参考人(金城睦君) 沖縄の心ということが昨今では市民権を得たように多く使われるようになってまいりました。  いろんな側面があると思いますが、一つ重要なところは、やっぱり沖縄戦体験を中心とし、そして戦後のアメリカ軍支配の経験から培ってきた平和を志向する心ということだと思うんです。先ほど島田先生、開放性があるとか国際性があるとかということもありましたけれども、それも平和志向と関連しているんだろうと思います。  このことを端的に示している言葉として私が紹介申し上げたいのは、もしかすると先生方は既に御存じかもしれませんが、沖縄南部の方に平和祈念資料館という資料館がありまして、そこに沖縄戦のときのさまざまな物的な資料や体験をされた方々の証言集などが展示されています。その最後の結びの言葉にこういうふうにあります。  沖縄戦の実相にふれるたびに  戦争というものは  これほど残忍で  これほど汚辱にまみれたものはない  と思うのです  このなまなましい体験の前では  いかなる人でも  戦争を肯定し美化することはできないはずです  戦争をおこすのはたしかに人間です  しかしそれ以上に  戦争を許さない努力のできるのも  私たち人間ではないでしょうか  戦後このかた私たちは  あらゆる戦争を憎み  平和な島を建設せねばと思いつづけてきました  これが  あまりにも大きすぎた代償を払って得た  ゆずることのできない  私たちの信条なのですここに集約的にあらわされていると思います。  もう一つ、先ほど来安全保障の関係議論をお聞きしていてふっと思い出しましたのは、沖縄の昔から言われていることわざにこういうのがあります。「チュンカイ クルサッティン ニンダリーシガ チュクルチェー ニンダラン」、沖縄の方言ですが、これを直訳しますと、チュというのは人です、人間、他人。クルサッティンというのは、ぶん殴られても、痛めつけられても。他人に痛めつけられても眠ることはできるけれども、他人を傷つけては眠れない、こういう言葉ですね。  ですから、我々が安全保障ということを考える場合であっても、例えば本土と沖縄との関係でいえば、沖縄を犠牲にして日本の安全保障ということ、そういうことで平和で幸福だというふうに言えるかということへの疑問があります。  と同時に、国際的な関係でいっても、日本の安全安全と言っていますけれども、今やこれは人類の安全でなくてはいけないのではないか。日本という自分たちだけを考えてはいけないのではないか。もちろん、我々は一人一人のことを通じて我が国である、国民である日本考えますが、と同時に人類全体の他人のことを含めた安全ということを考える。これが真の安全保障であるし、そこの根っこのところに沖縄の心はあるのではないかと思っております。
  101. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 ありがとうございました。島田先生、失礼いたしました。
  102. 今泉昭

    ○今泉昭君 新進党の今泉でございます。  きょうは、三人の先生方、大変お忙しい中を時間を調節、繰り合わせて出席していただきまして大変ありがとうございました。そしてまた、大変参考になるお話を今聞かせていただきまして、私も大変参考になった次第でございます。  戦後五十二年間にわたって沖縄の皆さん方が大変な御苦労を経験されていること、私自身沖縄に深い関係があるわけではございませんのでそう多くのことを知っていたわけではございませんけれども、けさからのいろんな話を聞きながら、また本委員会における各委員のいろいろな意見を聞きながら、改めて実は考えさせられた次第でございます。そういうのを前提に置きまして、幾つか先生方に御意見を伺いたいと思うわけでございます。  戦後、沖縄問題が我が国におきまして論議をされる際には、いわゆる冷戦構造下におけるところの五五年体制におきまして、イデオロギー論争のはざまの中でいつも埋没していたような気がして私はならないわけであります。問題にはなるけれども、常にイデオロギー的な対立の意見の交換が前面に出てきたような気がしてならないわけであります。  そういう意味で、国民の間には沖縄の皆さん方の本当の苦しみが何であるのか、実態がどんなものであるのかということを実は十二分に自分の身にして考えるという機会を逸してきたのではないだろうかと思うわけでございまして、今回もそういうもののツケが実は回ってきたのではないだろうかなという気がしてならないわけでございます。  冷戦構造が崩壊をいたしまして、新しい時代に向けてこの問題も実は新しい角度で論議ができるのかなというふうな期待を私自身持っていたわけでございますが、昨今のこの法律をめぐるいろいろの論争を聞いてみますと、再びどうもこのイデオロギーの問題が中にちらちらと頭をもたげてまいりまして、本当の意味での沖縄の問題の解決につながるのかなと、こういう危惧を実は私は持っているわけでございます。  例えば、いつも沖縄の方々からお聞きするのは、沖縄の者の全体の意向だ、沖縄の総意だというようなことを言われておりますけれども、この問題についてはいろいろな意味での意味合いが違うのではないだろうか。この法律に関しましても、反対の中身をただ単に同一の反対として単純に受け取っていけないような側面が大変多くあるのではないかと思うんです。  例えば、純然たる意味で反戦の一坪地主の問題が中心になって論議をされてまいりましたから、その方が前面に出て論議をする反対の気持ちと、七五%を占めるような多くの米軍基地を持っている沖縄の負担、苦しみ、そして不公平感、本土に対する不満というものから反対をされる方々の中身と、あるいはまた純粋に先祖代々の土地をとにかく返してもらいたい、そういう意味でおれはこの法律には反対なんだよ、意見があるんだよと言われる方々、さらにはまた今まで沖縄に対していろいろ政府がやってきてもらったことがどうも本当の意味沖縄のためになされた措置ではなかった、援助策ではなかったという意味から反対される方、ごっちゃまぜになりまして、沖縄の意向として反対なんだというような形のものが実は非常に前面に出ているような気がするわけです。  具体的な一つの例を申し上げますと、事ほどさように、土地は全部ブルドーザーでもって強制収用された、本人たちの意向を無視して接収されたというものが前面に出ますけれども、私は資料をいろいろ見てみますと、実は、基地が集中している五つの都市の中ですら町長を中心として基地の誘致運動をされたという記録も幾つか散見するわけですね。  そういう意味では、沖縄の方々の気持ちというのも非常に複雑で、その差というものは多様ではないかと私は思うわけでありまして、そういう意味イデオロギーを前面に出した反対運動というものが中心になって論議されるというのは私は大変不幸だと思うわけでありまして、冷戦構造下に再び返っていくような気持ちがしてならないわけです。  具体的に申し上げますと、例えば反戦の方々は何とおっしゃっているかといいますと、アメリカ沖縄駐留基地に置いている大砲は皆北朝鮮に向いているんだよ、だから我々は北朝鮮の皆さん方と連帯してこの反米運動をやらなきゃならないというニュースも流れてくる。  さきに亡命をしたあの黄書記のチュチェ思想を中心に置いて連帯活動をしようではないかというようなことが前面に出てきますと、本土にいる我々が一緒になってこの沖縄問題を解決しなきゃならないと思っているのに、これは大きなマイナスだと私は思うんです。せっかくこういう実態が明らかになった、何とかして沖縄の皆さん方に負担をかけたから我々としても熱心にやらなきゃならないと思っている方々を実は離していくような結果にならないのかなという心配があるわけでございます。  そういう意味で、島田先生にちょっとお聞きをしたいと思うんです。  島田先生は、沖縄米軍基地がある市町村の懇談会の座長をやられていたということをお聞きいたします。そして、沖縄の各市町村をずっと一カ月ほど回られていろいろな意見を聞いてこられたというふうにお聞きしております。今私が申し上げましたように、沖縄の方々の気持ちというのはいろいろな形で反対の意向の中身というものは違うと思うのでございますが、先生が受け取られました率直な沖縄の方々の客観的な気持ちというものはどのようにお感じになられたか、ちょっとお聞きしたいと思います。
  103. 島田晴雄

    参考人(島田晴雄君) この問題は、私は大変浅学でございまして、私ごときが気持ちがこうであるということを申し上げる資格はないと思いますが、しかし、多くの方々といろいろ親しくお話をさせていただき、いろいろな御要望も伺い、多少の勉強はしたつもりでございますので、その限られた経験の中から感想を申し上げさせていただきたいというふうに思います。  先ほど金城先生が、沖縄の心といえば他人を傷つければ眠れない、そういう平和を愛好する心だということを言われたわけですが、それが基本なんだろうというふうに思うんですね。平和をとりわけ愛好したい、追求したい、それは、あれほど悲惨な経験をなめた方々であって、今日御活躍の皆様方も随分御両親、御家族を戦争の惨禍で失われているわけですから、本土の日本人が考える以上に非常に強いものを持っておられるということが基本にあると思います。  しかし同時に、生活をし、経済活動を営み、市町村の行政をしていくこの現実の中で最も有効な手を打とうということで懸命に毎日努力をされているという印象が大変強うございまして、きょう急に基地を全部なくするというわけにいかない。しかし、長期的には必ずやそういう方向へ持っていこうという希望を持たれながら、現実の中で市町村民の先ほどるる触れましたような閉塞感あるいは不安、こういったものを取り除こうということで建設的な努力をされているというのが私の受けた強い印象でございます。  住民の方がこんなことを言われる。例えば、基地があって、今自分たちの子供たちが基地の周りをずっとめぐって長い道のりを歩いて学校へ行く、何とか基地の中を通してくれないかと。私は最初この意味が十分理解できなかったんですが、いろいろお話を伺って、これが実は大変象徴的なことだというのがわかりましたのは、おじいさん、おばあさんの世代には自分の部落から学校へ通っていったわけですね。それが、基地が間に入ったために、いたいけな子供が回っていくというのはこれは耐えがたい閉塞感なんです。そういうことがもう山ほどあるわけですね。  そういう現実を直視しながら一歩一歩若い人たちが希望を持てるような状況をつくれないものかということで努力されている、こういうふうに私は観察をいたしました。
  104. 今泉昭

    ○今泉昭君 ありがとうございました。  私どもも、そういう沖縄の実態を自分たちの身に感じて、できるだけ早くそういうような問題点を基本的に根本的に解決していくための施策というものが、我々政治に携わる者のこれは責任だろうというふうに思っているわけでございまして、特に沖縄出身者の皆さん方が、本土の人間は余りそういうことを感じていないんだろうとはひとつぜひ思わないで、私どももでき得る限りの努力をしていきたいというふうに思っているわけでございます。    〔委員長退席、理事永田良雄君着席〕  そこで、先ほど島田先生は、今回のこの法改正は現状のものとしてはベターなものであろう、賛成をするということをおっしゃいましたけれども、しかし基本的な問題解決にはならないだろうということをおっしゃいました。私も、実はその点に関しては全く考え方を同じにするものでございます。  そこで、特に沖縄の問題、基地の問題を根本的に解決するための課題の一つとして、いわゆる国が責任を持つ外交、防衛という問題を地方の機関委任事務のような形で任していいかどうか、特に外交、防衛問題に関しては、国が責任を持つという形の基本的な法改正が必要だという意見もあるわけでございますが、これに関しまして先生はどのような受け取り方をされるかということをまずお聞きしたいと思います。
  105. 島田晴雄

    参考人(島田晴雄君) 外交と防衛というのは、基本的に私は国の責任であり国の専管事項であるというふうに思います。強いて言えば、もろもろの行政というのは、その中で国しか果たせないものは何かといえば、外交と防衛だろうと思うんです。あとは、財政にしても税制にしても産業政策にしても教育にしても、全部地方でできないものではないわけです。極端に単純化するとそういうことだろうと思います。  それはそういうふうに整理することができると思いますが、この土地の収用という問題は、先ほども濱川先生、金城先生が法律の観点からるる解説されましたように、これは基本的な国民の財産権あるいは基本的人権にもかかわる問題であり、ここについては、現状では、地方の自治の中にこれは大きくゆだねられている問題でございますから、私はこれ以上の発言は控えたいと思うんですが、外交と防衛は基本的に国の根幹をなす専管事項であるということだけ申し上げておきたいと思います。
  106. 今泉昭

    ○今泉昭君 難しい問題をありがとうございました。  金城先生にお伺いしたいんですが、先ほど先生の御説明の中で、法治国家として今回の法改正は大変問題がある、このような法改正をやると近隣諸国からも、実は日本の政治というのは民主主義ではないのではないかと思われるとか、あるいはまた、アメリカからも幼稚な法治国家ではないかというふうに思われるというようなお話がございました。  私が聞く限りにおいては、今回の法改正においてアメリカから発信される内容というのは、むしろほっと一安心をしたというようなニュースの方しか入っていないのでございますが、先生がお考えになる、もし幼稚でないというような、法治国家としてはどういうふうな形が望ましいというふうにお考えなのか、ちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  107. 金城睦

    参考人(金城睦君) 現在、憲法に基づいて土地収用制度があり、そのための手続等が定められているわけですね。その土地収用というのは個人の財産権に対する重大な制限、侵害ということをもたらす、そういう内容のものでありますので、その手続は厳格でなくちゃいけないし、そしてまたそれは地方自治の考え方とも連動しながら地方における収用委員会という第三者機関を通じて手続をきちっとして使用権原を認めるようにするか、認める場合には補償は幾らにするか、期限は幾らにするかといったようなことを含めて冷静に判断される、こういう仕組みになっているわけです。その中でもさらに、もし緊急の事態がある場合には緊急使用というそういう例外的な措置までも定められている、これが現行法の仕組みであります。それはずっと国会を通じてつくり、そして内閣、政府などがこれを実行してきたことなんですね。  その過程で、今回五月十四日に間に合いそうにないということで改正問題が起こってきたわけですが、一つには、なぜそのような事態が、事態といいますのは間に合わないというような緊急事態みたいなことが起こってきたんだろうか、そのことを深刻にとらえることが大事だと思うんです。これは決して法制度を不備ではないと私は思います。そうではなくて、この法制度を運用する過程で、政府沖縄の全体に対してもあるいは沖縄の地主に対してもその対応の仕方が不十分であったということを私は指摘せざるを得ないと思いますし、大田知事を初めとして多くの指摘があるとおりだろうと思います。  それにもかかわらず事態は推移してきたわけですが、その事態の推移の中でも、決して地主が悪いということでもないんですね。一つおくれた理由には、大田知事がそれまでのように簡単にサインしなかったというようなことがあって、裁判までなったというそういう過程があったり、そのこと等を含めながら多くの県民を初めとする基地への関心があって、基地反対というものが盛り上がっているということがあるのは事実だと思います。また、収用委員会が審理の手続をおくらせているとか、あるいはサボっているとかというそういう関係は全くないんです。過去三回、既に例があるわけですけれども、いずれも一年以上収用委員会ではかかっているわけですから。  そういうことは客観的に事前に全部わかっている事柄であった。なのにその制度をきちっとうまく活用できなかったのは、これは政府側にあると思うんですね。それをちゃんとやることが政府であって、やり切れなくなったら、じゃ自分の都合のいいように試合の途中からルールを変えるというようなそういう形ではなしに、今本当に困っている事態が起こるんだったら、現に昨年の三月三十一日をもって終わった楚辺通信所の例があります。あれも放置された状態にあるわけですが、この一年間特別なことは起こっていません。よく宣伝されていましたのは、万一期限が切れて不法占拠状態になったら大混乱が起こると、その大混乱の中身は余りおっしゃっていませんでしたけれども。まるで嘉手納基地飛行機が一挙に飛ばなくなるとかいうようなぐらいに響くような声も一時ありましたけれども、現実にそういうことは起こらない。  それは法治国家の国民であれば、不法占拠だからといってそのまま突入するとかということにはならないわけですね。それは、そのことをめぐって法的にどういうふうに処置するかということを、裁判所を通じたりあるいは当事者間の協議を通じたりしながら実行していくものである。その中で今後の沖縄のあり方というものを考えるべきであって、いきなり間に合わぬからといって不法占拠状態をこういう形で解消するということは法の大原則にもとるやり方。そういう大原則にもとるやり方について、もしかすると多くの国民や国々、アメリカも含めて、私はこういうやり方はまずいということをアメリカの一部の人が言っているというのを聞いていますけれども、学者の皆さんなどからは、歴史的に見てもそういうことを守らないのが外交関係においてまずいことなんだと、長期的な目で見るとまずいことなんだということを聞いていますし、私もそう思っているところです。
  108. 今泉昭

    ○今泉昭君 ありがとうございました。  時間が参りましたので、濱川先生、失礼しました。
  109. 角田義一

    ○角田義一君 社民党の角田義一でございます。参考人先生方、本当に御苦労さまでございます。  まず、金城参考人にお尋ねをいたします。私は午前の部でも申し上げたんですけれども、与党三党で沖縄問題懇談会というものがつくられまして、自民党さんが五名、私どもが四名、さきがけさんが二名で、沖縄の抱えております当面のこの特措法の問題、あるいは振興策の問題、基地の整理、縮小の問題等について、与党の中で時には大変激しい議論も闘わせてきました。  そういう状態の中で、現行制度のもとにあるこの緊急使用の申し立てという制度は、やはり活用すべきだということを私は終始主張してきました。政府当局、防衛庁当局と私はその辺大変事実認識なり食い違いがあるわけですけれども、私はある程度十分な審理の期間を収用委員会に保障するならば、この緊急使用の申し立てというのは、御案内のとおりいろいろなケースがありますけれども、安保条約の運用に障害のおそれがあるということで一応認められる制度になっておりますから、しかも今日の時点では知事さんと政府との関係というのは非常に私はよろしいと思っておるのであります。一定の信頼関係もある。  そういう状況の中で、やはりその政治的な状況というものを、これは準司法機関とはいえ一つの行政機関でもあるし、大所高所に立って、例えば嘉手納とかあるいは普天間とかいうところのものについては、これは一時使用を認めるが、しかし先ほど先生がお示しのようなものについては、あるいは一時使用を認めない、緊急使用を認めないといってんでんばらばらの判断もあるかもしれないけれども、しかしながら、この嘉手納とかあるいは普天間とか、そういう大どころというか急所というか、そういうことについては少なくとも理解をいただけるんじゃないのかなという、一つの希望的な観測かもしれませんけれども、持っておりまして、そういうことも含めてやっぱり緊急使用の申し立てばして、そして特段の御理解をいただくようにすべきだというふうに主張してきました。  しかし、政府の見解というか政府の情報では、それはどだい無理だと、そんなことはできないというふうに言っておるわけでありますが、私は、私のこの主張なり判断というのは決して間違っていないんじゃないかなというふうに思うのでございます。裁決の審理等に携わっておられます先生は、その辺どういうふうな御判断を持っておられるか、ちょっと意地が悪い質問かなというふうにも思うんですけれども、お答えいただければありがたいと思います。
  110. 金城睦

    参考人(金城睦君) 先生がおっしゃいますように、現在の制度の中で緊急使用というのはちゃんとあるわけですね。ですから、政府としては必要とする限り、ある制度はすべて活用していくのが筋だろうと思います。  現実に緊急使用の申し立てをしたら果たして認められるかどうかということは、これは収用委員じゃありませんので、私の方で見通し、判断はできませんけれども、ただ、先生も予測されますように、どうしても最終的な判断をするまでの間に緊急の事態が起こって、それを回避するための措置として重要な施設について一定期間の、それこそ暫定的な緊急使用ですから認められるということは十分あり得るだろうとは思うんですね。  そうだとすれば、制度として現にあるものを当局は活用すべきであって、それを安易に避けて今回の改正案のような道を選ぶというのは、やはり権力的志向といいますか強引な方策に寄りかかったと言わざるを得ないのではないかという印象を持っております。
  111. 角田義一

    ○角田義一君 この案件は村山政権のときからの懸案でありますから、私は、これはまあ歴史にイフということは余りないんですけれども、もし村山総理が総理大臣をやっていたとすればこの事態を一体どういうふうに乗り切ったらいいのかなと。要するに、五月十四日に仮に、私はあえて言いますけれども、失権状態というんですか、国が権利がない状態になるということをどう避けたのかなということをいつも考えておりました。  そのときに、先ほど金城先生もおっしゃっておりましたけれども、日本は法治国家であるし、仮に形式的に失権状態になったからといって、世間では大変な騒乱状態になるとか、えらい大混乱が起きるとかということには簡単にならないんじゃないか。現に、例えば嘉手納なり普天間なりの滑走路上の若干の土地について無権原状態になったとして、落下傘でそこへ飛びおりるというわけにはいかないのでありまして、「ベニスの商人」じゃありませんけれども、一滴の血も流さずに肉を一ポンドとるわけにはいかない。要するに、圧倒的な敷地は国が権原を持っているわけなんですから、そこを国の了解なしに通っていって仮に自分の無権原になった土地に入っていくということはできないはずでもありますし、それから刑事特別法でも保護されているわけです。  また、もし仮に、そんなこと私はあり得ないと思うけれども、そんな乱暴な手段をとることになれば、それは沖縄県民の私は理解というものは得られないんじゃないかと思うんですね、そういう運動は。だから、そういうことはそう簡単には考えられないのであって、政治的な一つの決着ということを私は目指すべきではないのかなというふうに思うわけです。  そうなりますと、私は、こういうことは大変沖縄人たちにとっては酷な物の言い方かもしれませんけれども、事実上無権原状態になっても、その裁決が出るまで一応平穏に使えるような状態というものをお互いが保障し合う。例えば、大田知事さんなり、私どもの例えば土井党首なり、総理なりで共同した政治宣言をきちっとやるというような形で政治的な決着を図るということも当然、私どもは政治をやっているわけですから、単なる法律をつくるというだけじゃないんですから、そういうことも私は真剣に考えたんですけれども、そういう対応は沖縄では絶対受け入れられないでしょうか。  簡単に無権原状態というものを、ただそれが不法だ不法だ、反対反対だということではなくて、やっぱり政府と協力をしながら基地の整理、縮小を図っていくということになれば、その辺はかなり大胆な取り組みも私はしていただきたかったなと。また、そういうことも選択肢としてはあったんじゃないかなということを考えますが、率直に先生のお気持ちを聞かせていただきたい。
  112. 金城睦

    参考人(金城睦君) 政治的な決着ということであるならば、幾つかの政治措置ですから、十分あり得るわけです。また、先生おっしゃるように、歴史にイフというのはありませんから、さかのぼって想定することも難しいわけです。  ただ、現実にありましたことは、楚辺通信所の土地について、昨年の三月三十一日をもって使用権原がなくなり、四月一日から今日まで一年以上失権状態、先生のおっしゃる失権状態が続いております。それをめぐって現場周辺で集会が持たれたり、あるいは裁判所の仲介のもとで二回ほど人数を制限して当該土地に入って土地を確認したりというようなことがありましたけれども、それ以上おっしゃるような突入とかなんとかといったような大混乱と言えるような事柄は何一つ起こっていない、これは現実のことなんです。  現在の法体系のもとで、今回のようなことを見ると、私の方では法の大原則に反すると思っていますけれども、法の大原則は住民の側に言えばもう一つ自力救済の禁止というのがあります。住民側にあるいは地主側に権利があるからといって、あるいは相手方の政府米軍が失権状態になっているからといって自分の力で突入するというようなことは、これは法の原則の一つとして禁止されております。そういうことはしていないですね。本当にはぐれ者の中で一部そういうことを考えるのがいるということはあるかもしれませんけれども、そういうことを措置するための仕組みは我が国は十分でき上がっていますから、そのためにどうこうなるということはあり得ないわけです。  そうしますと、失権状態が一方では生まれる。他方では、だからといって自力救済ができるわけではないというのであれば、この状況をどう打開するかについて真剣な、それこそ政治的な手段を含め、あるいは法的な手段も含めて、法的な手段といえば地主側は裁判所に対して明け渡しの請求をしていますが、裁判所は直ちに明け渡せという結論は出していません。そこの中でいろいろ議論をするということがあるわけです。そういったものを通じて、法的あるいは政治的な、民主的な方法で解決していく、これが一番の望ましい措置といいますか、考えられる措置なのではないかというふうに思います。
  113. 角田義一

    ○角田義一君 私が主張してきたことが政府の入れるところではなくて、私はこういう形で法改正をされるということはまことに残念だというふうに思っておりますし、我が党はこの法案には反対であります。    〔理事永田良雄君退席、委員長着席〕  島田先生にお尋ねいたしますが、この特措法に対する評価は先生と私とはちょっと異なるわけでありますけれども、それはそれといたしまして、先生が大変御苦労されて、俗に言う島田懇という形で立派な御提言をされた。与党三党といたしましては、我が党は特措法には反対ではありますけれども、それを乗り越えて、最近は御承知のとおり三党で沖縄の振興策についての合意をいたしました。その中で、島田懇で提起をされておる問題についてはこれを着実に実現していくということが合意されてございます。私は大変結構なことだというふうに思っておるのであります。  そこで私は、先生に率直にお尋ねをいたしますけれども、これは基地の固定化にはつながらないといいましょうか、その辺のことを大変配慮されながらこの御提言はなされていると思います。  ただ、私は、例えば自由貿易地域というようなものをつくるにいたしましても、那覇軍港だけではだめですし、かなり広大なエリアというものが必要ではないかというふうに思います。そうなりますと、当然のことながら、沖縄が求めております自由貿易構想あるいは自由貿易圏というようなものをつくるにしても相当なエリアが要るということになれば、そこの部分についての基地の返還というようなことは、テーブルに着いてもらってアメリカと談判をして、そういうものを実現しなきゃならぬというふうに私は思うわけであります。  したがって、率直に申し上げまして、島田懇の提起と基地の縮小の問題ということは、私は非常に関係が深い問題だというふうに思っておるのでございますけれども、その辺、先生は現場に何回も行かれて、そしてこういう御提言をまとめられて、基地との関係についてどのようにお考えになっておられるか、お聞かせいただきたいと思います。
  114. 島田晴雄

    参考人(島田晴雄君) 私が座長をさせていただきました沖縄米軍基地所在市町村に関する懇談会でございますけれども、これはマンデートが明確に定められております。この最大目的は、基地所在市町村の住民の皆さんの目の高さから自立発展のための努力を支援するということ、それから住民の皆さんの目の高さから米軍に対するさまざまな要望を行うということでございまして、基地の整理、統合、縮小という問題については、私どもの委員会ができたときにSACOが活動しておりまして、私どもの最終報告ができた後でSACOが十二月二日に一定の提案をしたわけでございます。  そういうことで、私どもはこの問題を制度的には完全に切り離してやっておりました。それは切り離せないだろうという御意見ももちろんあると思いますが、それは私どもにとっては越権行為でございますし、基地で重圧を受けている皆様が自立発展の手がかりをつかめるように少しでもお助けすることができればということでやってきたわけなんです。ですから、これはもう全く別の問題として取り扱ってまいりました。
  115. 角田義一

    ○角田義一君 それから、この島田懇で提起されておりますものを仮に実現するということになりますと、相当な財政負担といいましょうか、そういうものは考えなきゃならぬと思っております。  これについて、具体的にどういう方策といいましょうか、先生の方では御提起されておるのでございましょうか。
  116. 島田晴雄

    参考人(島田晴雄君) まさにその問題が非常に大きな問題でございまして、私どもが最終報告を出しましたときに記者会見で報告をいたしまして、本文には書いてございませんけれども、座長の見解として、最大一千億ぐらい、数百億から一千億ぐらいまでの資金が向こう七年ぐらいの間かかるだろうというふうに申し上げました。  そういうふうに申し上げたのは、実はさんざん考えたあげくのことでございます。といいますのは、日本の財政の仕組みからいたしまして、今例えば特別交付金という形でそれを仕組むということにもさまざまな技術的な困難がございます。あるいは、これは長期間にわたるプロジェクトばかりでございますから単年度ではいかないわけですけれども、長期にわたって今基金をつくるということも容易ではないということで、日本の財政の仕組みの中で、これを超える政治的判断としてそういうことを政治の側で受けとめてもらって、これはある種の信頼でございますが、やっていただくということで申し上げたわけです。現状では、内閣の正式の記録としてこの島田委員会の千億円というオーダーの問題は受けとめてやっていくと。  橋本総理も本会議でおっしゃられたと思いますが、今日、財政状況が非常に厳しい折で、あらゆる部面において財政削減していかなきゃならないんだけれども、沖縄の問題についてだけは、これは安全保障問題ということがありますので例外として扱うということを言明されたわけでございます。  そういうことで、予算は長期にわたって政治的に確保していただきたいということが私どもの願いでございますし、現状のところはそういうことで動いていると思います。
  117. 角田義一

    ○角田義一君 最後に、金城先生に伺います。  衆議院でこの法案が通って今参議院に来ておりますが、衆議院を通った後、沖縄ではこの法案が衆議院を通ったことに対してどういう状況といいましょうか、県民の方々はどういうふうに思っておられるか、率直にお尋ねします。
  118. 金城睦

    参考人(金城睦君) 一言で言えば怒りに満ちているという感じであります。  衆議院でしたか、沖縄の新聞は何か偏っているみたいな批判的な言説があったように聞いていますが、現実には沖縄の新聞は沖縄世論を十分反映しているということなんです。  その新聞などの記事を見ますと、単に反戦地主とか一坪反戦地主とか直接の当事者だけではなくて、知事や自治体の長を含め、その他の一般県民がこのような措置に対して多くは、またも沖縄を差別するのか、その道具として国会が多数をもってやってしまうのかという落胆とともに怒りの感じであります。しかし、多くの県民は、そうであっても最後まで基地をなくすために、そして世界の平和のために努力していきたいという気持ちを持ち続けていることは間違いないと思います。
  119. 角田義一

    ○角田義一君 ありがとうございました。
  120. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 民主党・新緑風会の本岡昭次と申します。  三人の参考人の皆さん、お忙しい中、きょうはどうもありがとうございます。先ほどは貴重な御意見を賜りましてありがとうございます。  私は、国会に出るまでは安保廃棄ということを何のためらいもなく言葉として出しておりましたし、反安保の闘いの先頭にはいつも立ってまいりました。しかし、国会に参りまして、議員として政党に所属をした段階で、反安保安保ということを言っているだけで問題が解決するのかというふうに懐疑的になりました。安保反対という立場で議論している政党に属しておりました私は、反対のための反対とかいうふうなそんな安易なことではありませんでしたけれども、そういうことを言い続けることができたのはやっぱり自民党が安保をしっかり受けとめてやってくれるという安心感みたいなものが私はあったんではないかというふうにも思うわけなんです。  それで、あのときに自民党さんが、そうかあんたら安保反対かと、反対なら反対でやってみろと言って政権をこっちへ投げ出されたときに、果たして安保反対を言う側がそれをしっかり受けとめていく力があったかということを私は国会議員になって思い始めたのであります。そして、やがて私も安全保障条約というのは認めるべきであるというふうに自分の政治信条を変えていくことに相なります。それは一つ時代の流れの中で皆人間はこういうふうに変わっていくわけであります。  そこで、今回のこの法案について賛成すべきか反対すべきか、それでもなおかつ私は悩みました。最近は悩むことが多いんですが、それでもこのことはこの委員会に所属させていただいて悩み続けました。そこで、結論は、島田先生がおっしゃったように、まことに残念だがやむを得ぬ措置ということの結論に私も行き着くわけであります。  それで、そのまことに残念だという部分でありますが、濱川さんや金城さんがおっしゃったように、沖縄基地の現状をずっと放置してきた責任は一体だれにあるのかという問題、また日米安保条約もと日米地位協定というものがあって、地位協定の二条には基地の返還を目的として絶えず基地のありようを検討するということが日米双方の締結国に義務づけられ、また日本の側からすれば、そのことをアメリカに求めていくことが権利と言えるような意味もあったと私は思うのであります。  そういうことを本当にやってきたのか、そしてまた沖縄との関係で信頼関係を醸成していくという努力を政府がやってきたのか。何かと言えば安保条約やないかと、安保条約があるから仕方がないんだという安保条約の重圧、強圧のもとにこの沖縄基地の問題を組み敷いてきた自民党の歴代内閣の責任は重い。そのことを私はまことに残念だと思うのであります。  この前、質問のとき橋本総理にそれを言うと、血相を変えて怒りましたけれどもね。怒られるということは何か胸にこたえるものがあって怒られたんだと思うのであります。  そこで、私もやむを得ない措置だと思うんですが、そのやむを得ないというときにいろんな対応の仕方があると思うんです。今回限りこういう無権原の状態に置くことを回避するとか、あるいはまた五年という時限を切った時限立法にするとかいう方法も一つの選択であったと思うのであります。  私が今所属しております民主党・新緑風会の会派は、そうしたやむを得ないということで賛成する立場で、せめてそれは時限立法として今回の問題を措置して、そしてその五年なら五年の間にしっかりとした沖縄との新しい関係をつくるというふうにすればどうかというふうな思いで今対応しようとしているんですが、このことについて島田先生の御所見をひとつ伺いたい、このように思います。
  121. 島田晴雄

    参考人(島田晴雄君) 大変率直な胸に響く御発言の後で、厳しい質問をいただきました。大変本質的な問題だというふうに思います。  私は、今回の法改正について暫定使用だと、ミニマムな措置であるという説明がなされているわけでございますが、きょうの公聴会は実は大変建設的な意味を持っているのではないかというふうに思って伺っておりました。濱川先生も金城先生も、この暫定使用をめぐるさまざまな法的な、まあ私は法律専門家ではございませんから言葉は適切かどうかわかりませんが、法律の瑕疵と言えるのかどうか知りませんが、問題があるということを提起されて、法治国家としての問題にもつながりかねないということを言っておられるわけです。  しかし私は、五月十四日の時点で国が失権状態になるということ、冒頭もお話し申し上げましたように、同盟国としてそれはあってはならないという判断から今回の判断を多くの先生方がとられたことは適切な判断だったと思いますが、これで問題が解決したというふうに理解しない方がいいのではないかと思っているんですね。  それはいろんなレベルでそうでございまして、この制度をもっと適切に活用するということですが、制度はわかっているわけですから、その前から政治的な適切なステップが十分に踏まれてきたかといえば、それは人間は不完全なものでありますから十分ということはないと思いますが、もっとやれたのではないかということが多々あると思うんです。  そういう意味で、これを一つのステップにして、過去の問題よりも未来に向けて、我々が定めた制度の中でよりよき結果を生むような運用と努力をしていくということ、これは政治の問題なんですね、法律の問題ではないと私は思います。法律が人間行動のすべてを規定するわけじゃないので最低限の枠組みは決めますけれども、その与えられた余地の中で望ましい方向に持っていくというのは政治の役割、そして政治は政治の先生方ばかりでなくて私ども国民全体が実は政治決定にかかわるわけですから、私どもの意識の問題だと思います。  そういう意味で、この暫定使用というふうに決めたものが人々の基本的人権を侵害するというような形でもって使われていくのか、それともそうではなくて、これはこういう非常に特殊な事態において行われたことであって、常に再検討を加えながら、将来、国民が広い範囲でお互いを信頼して安全保障を考えていけるような方向へ持っていくというのは、すぐれて私は政治の努力だと思うんです。  そういう意味で、私は今回のものは肯定したいと思いますけれども、第一歩であると。この政治の努力、特に沖縄の問題というものを忘れない、そして確実にその結果を実現させる方に努力していく、このことを私どもは肝に銘じるべきだ、このように考えております。
  122. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 島田先生は、特措法改正をめぐる問題の本質は、沖縄日米安保の重圧を耐えがたい過密な状態の基地によって受けている、そのことを解決するということがこの本質だとおっしゃった。私はそのとおりだと思っておるんです。だから、私もこれに賛成する以上はそのことに全力を挙げなければ賛成する意味がない、こう思っています。今までだったら、反対と言えば賛成した人がちゃんとやればいいじゃないかというふうなことになるけれども、今度はそうはいかないというふうに腹を決めております。それで、濱川、金城両参考人にお伺いするんですが、この特別措置法改正案を可決するのか否決するのかという、そんなことはもう決まっているじゃないかということになれば議論になりません。しかし、反対ということはこれを否決せよということであります。そうしたら、これを否決した場合、今私と島田先生とお話ししたように、今後日米安保条約に基づくその基地沖縄だけが集中的に一つの重圧として受けている問題を解決するためにどう立ち向かっていくかというふうな事柄に対して、賛成することと反対することとどちらがそうしたことの力が強く発揮できるのか、私はそこも悩んだところの大きなゆえんなんです。  無権利状態にしておけばいいじゃないか、あとは何とかなるだろうとか、権原というんですか、権限か権原かよくわかりませんが、そういう状態にしておくことが抵抗の姿勢を示すことになるんだとか、あるいはまた日米安保条約反対の力をさらに強めていくことになるんだとか、これは私の従来型の思想であり発想であるわけなんですが、やはり本当に沖縄の問題を解決しようと思えば、そこからもう一歩抜け出さなければならないんじゃないかという気持ちがありまして、今必死になって私は物を言っているんです。  どうですか、お二人、私も率直に自分の胸のうちをさらけ出してお話し申し上げているんですが、そこのところで、否決したら沖縄の人間はこれからこういうふうにしてやってみせるという御意見をひとつ伺いたいのであります。
  123. 濱川清

    参考人(濱川清君) 今回の法律がなければどうなるかというお尋ねだと思うんですが、それは金城先生が先ほど申しましたとおりに私は一応考えてはおります。  すなわち、使用権原が法律的になくなったからといって直ちに明け渡さなければいけないかどうかは基本的に裁判所が判断することになろうかと思うのですが、既に、既得の状態がありますので、先ほどから御指摘があったとおりだと思うんですけれども、正当な権原を有して使用している場所もかなりあるわけでありまして、そういう意味で直ちに変化はないだろうと私は思っておったわけです。だから、なぜこういう法律をつくられるのかというのが私には大変わかりにくかったわけです。  したがいまして、私に言わせれば何もしなくていい、ただ無権原に陥ったその責任を政治的に果たせばよかったのではないか。今回のような法律をつくりますとかえって問題を混乱させるのではないか。  いささか問題が私の専門を越えておりますが、印象を言えといえばそういうふうな印象を持っております。
  124. 金城睦

    参考人(金城睦君) 国の方は今度失権状態が生まれると困ると。確かに困る部分はあると思いますよ。全くないとは思いません。ただ、困る内容は、具体的に見るとそれほどのものではないんじゃないかというのが一つあります。言われていることの中では大混乱が起こるというようなことがありましたけれども、そんなことはないんだと。それから、国際関係や信頼関係ということも言っているけれども、それもあることはあるでしょう、しかし一方では、それほどではないという認識なんですね。  もう一つ、そうではなくて、これを強引に今回のようなやり方でしてしまったら、長い目で見たらもちろんのこと、法の原則に反するようなやり方なんだという烙印を押されるのではないか。そのことの持つ悪い影響の方が大きいのではないかという認識が一つあります。  それからもう一つは、国の場合の失権状態に対して、住民、県民の場合の無権利状態というのは物すごい長い間ありました。このことが、沖縄の復帰に際して沖縄基地の整理、縮小をするんだということをわざわざ国会で特別決議をいたしました。だけれども、ずっとこの間ほとんどなされてこなかったことはもう諸先生方の御認識のとおりであるわけです。  今回だって、ある反戦地主の一人が言いました。沖縄の問題を全国民にわかってもらうために一人の少女を犠牲にしてしまったと。私は、この言葉を言うたびごとに涙が出てくるんです。つまり、一人の人間であれ多数の人間であれ、人間の個人個人の命や人格や尊厳というものを長い間放置するようなこと、それと引きかえに国の不都合というものを簡単に解消するという発想の仕方、そういうやり方、これはやっぱりこの際真剣に考えていただきたいということが私の意見であります。そうすることによって、賛成の方々が心配しておられるような大混乱が起こって大変なことになるというようなことはそれほどないんだと。  しかし、この機会に本格的に何が問題なのかということを国民的規模で議論できるし、そして沖縄の救済策を含めた、その他さまざまな御意見がございましたが、それについてのあり方についても、決してきょうさまざま言っていらっしゃった方々は口先だけとは私は思いませんけれども、これまでは、沖縄側から見ると口先だけじゃないか、その場限りだったんじゃないかというふうな批判を受ける内容だったわけです。  現に、沖縄復帰の前後に沖縄問題が中心になりました。しばらくして政府の高官は、沖縄を甘やかすなということを言い出してきたことがあるんです。そういう間に沖縄基地がどんどん今日の状態まで進んできちゃったんですね。  そういう轍を踏むことなく、今度こそ本物をやってほしい。そのためには、失権状態というようなことを無理に直すんじゃなくて別の方法を講ずべきであるというふうに考えます。
  125. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それで金城さん、きょうこういう資料を見せてもらいましたね。(資料を示す)  沖縄米軍が使用している専用施設の中にこの種のものがたくさんあるんですか。どうなんですか。
  126. 金城睦

    参考人(金城睦君) 私の知っている限りではそうたくさんあるわけではありません。ほかに例えば、沖縄の幹線道路に五十八号線という那覇から北の方に進んでいる道路があって、その五十八号線沿いに嘉手納基地なんかもあるんですが、弾薬庫基地もあるんですが、その近くに幾つかの強制使用の対象になっている土地があるんですね。これは一般的な視点で見ると、その部分は返したって基地機能には何の支障もないのになと、そういうふうに判断されるようなものが幾つかあります。
  127. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 最後は島田参考人にお願いしたいんですが、内閣官房長官の直属の一つの組織として島田懇と通称言われる、大変御苦労な仕事をしていただきました。  それで、私は、日米安保条約地位協定の二条からいえば、基地の総点検みたいなことは可能じゃないかと思うんですね。  機密という中まで入って見なくたって、外形的に見てこれは返還してもいいんじゃないか、整理してもいいんじゃないか。縮小してもいいんじゃないか。本当にそういう点検が行われているかというと、そういうこともなかったし、我々安保反対と言っている者もそういうきめの細かいことはやってこなかったという反省もあるので、できればそういうことを、島田懇というのも続けてやれるとは思いませんけれども、やはり島田参考人の方からそういう提言をしていただければありがたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  128. 島田晴雄

    参考人(島田晴雄君) 私は、参考人の立場か、懇談会の座長ということも今言われましたので、座長の立場でお答えするのか、やや難しいところがあるんです。  といいますのは、懇談会ははっきりしたマンデートがあるものですから、個人の意見はまた別のことがありますけれども、マンデートで言うならば今の問題にもかかわるところがありますが、地位協定の問題そのものはマンデートの外なんです。  ただ、住民の立場から見た米軍とのかかわり方については私どもは真剣に検討をいたしまして、たくさん意見を吸い上げました。五つないし六つの問題を提起いたしまして、直接私どももデミング代理大使に申し上げ、かつ外交ルートを通じて米政府当局に申し上げ、実はたまたまきょうもデミング大使にあるところでお会いしたんですが、真剣に考えて進めておりますということでございました。これは地位協定全体にかかわることではございませんが、住民の方々から見たら本当に、先ほどの交通事故のフォローアップのような問題は実に多くの不安があるんです。  この辺はまだまだ改善の余地が多々あるというふうに思いますので、これはぜひあらゆる手段を通じて、双方の働きかけによって、今まで余りきめ細かくやってこられなかった分野ですけれども、やはり住民の利益という観点から推し進めていくべきだと、このように考えております。
  129. 笠井亮

    ○笠井亮君 きょうはどうも三人の参考人の方々ありがとうございました。貴重な話をいただきました。  今、この審議をしている中でも、私の事務所にもファクスや手紙、それから要請に見える方がたくさんおりまして、これまで私とおつき合いのなかった方々からもいろいろと御意見をいただいております。特措法改正は、平和主義、国民主義、基本的人権の保障という憲法の基本原理すべてに抵触するおそれがある、このまま特措法改正案の強行を許すならば、ぬぐい去ることのできない一大汚点となって残るであろうという形での御意見もあったわけであります。  いろいろこの問題をめぐっては意見があるわけですけれども、やはり国会としては徹底した審議というのをしなければいけないと思いますし、私は、昨日実は政府に質問をいたしまして、今回の法案というのは基地の固定化につながると改めて痛感したところであります。使用裁決申請理由の中でも、相当長期にわたって米軍に安定的な使用を確保するためということが述べられておりまして、長期にわたるというのはどれぐらいかと聞きましたら、防衛庁長官が短期ではない、少なくとも裁決申請十年と出しているので十年以上だというお話もありました。  日米安保共同宣言では、クリントン大統領の立場としては二十一世紀の五十年という話もありましたので、まさにそういう長期にわたって土地の強制使用を米軍のために、どう転んでも裁決申請をやりさえずればやれるようにするというのが大きな目的になっているということを痛感しながら、特にその点では憲法とのかかわりをきちっと詰めた検討が必要だろうというふうに、先ほどのお話を伺いながらも痛感したところでございます。  そこで、まず濱川参考人に伺いたいと思います。  憲法で規定をされている財産権の保障ということでは、やはりこれは手続的にも極めて厳格でなければならないというふうに思います。収用委員会制度を基本にした現行法が予定している財産権保障のための行政システムというのがあると思うんですけれども、これが今回の改正法案によってどのように変えられようとしていると御認識なさっているか。  その点についてまず御質問をしたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  130. 濱川清

    参考人(濱川清君) 最大の問題は、先ほど申しましたとおりでございまして、現在の制度は、土地収用法で申しますと、建設大臣または都道府県知事が事業の認定をすると。今回の特措法の場合にはそれが変わりまして、内閣総理大臣が使用の認定をするという手続がまず前段にございます。その上で、各都道府県に置かれている収用委員会に申請をいたしまして、慎重な検討を加え、最終的に権利取得裁決と明け渡し裁決を行う。これが現在の土地収用法の仕組みでございます。  さて、問題として懸念されますのは、今回現実に起こっていることでございますけれども、県の収用委員会への申請段階でかなりいろいろな問題がございました。昨年八月二十八日の最高裁判所の判決で出ました職務執行命令訴訟も、そうした問題をかなりはらんだ中での判決であったかと思うわけです。  ところが、今回のような改正法案が成立いたしますと、法律自体にそれを直接書いているわけではありませんが、収用委員会における土地調書あるいは土地の権利者等の意見について慎重な配慮をもはやできなくなる、してもむだである、そうした空気が醸成される、醸し出されるという危険を我々は大変強く感じるわけです。  しかし、とりわけ問題は、使用裁決、権利取得にせよ明け渡し裁決にせよ、それはまだよろしいんですが、暫定使用というこの使用の形態の合理性、合理的な根拠、法律の要件が明らかでないというところに最大の問題を感じているわけです。  その関連で一言。  ちょっと関係のないことを申すかもしれませんが、先ほど金城先生から国際的な日本の信頼ということが言われておったわけですけれども、日本土地収用制度は国際的に見まして、実は特措法だけじゃございませんで、さまざまな問題をはらんでいるわけです。そういう国際的に見た場合に、人権保障、手続的な民主主義、参加、公開という点で問題をはらんでいる現在の手続にさらに強引なシステムを乗っけるということには大変危惧を我々は抱いているということでございます。
  131. 笠井亮

    ○笠井亮君 さらに、濱川参考人に伺いたいんです。  今、土地収用法の体制の問題についても触れられましたけれども、本土における土地収用法の体制の運用の実態とのかかわりでこの問題をどう見るかということで伺いたいんです。  先ほど参考人は、今日、成田空港をめぐる長期にわたる紛争もあって、権利者の強い反対があるときには、土地収用法に基づくものであっても強制手続の安易な発動は問題解決につながらないということが広く認識されつつあるということの御指摘があったと思うんです。本土における現在の土地収用体制の運用実態、もう少し具体的な例も挙げていただければ挙げていただいて、それとの関係で本法案をめぐる問題点についてどのようにお考えか伺いたいと思うんですが、どうでしょうか。
  132. 濱川清

    参考人(濱川清君) 成田空港に絡む円卓会議の話はもう皆様十分御承知のことかと思います。  ところで、成田空港の場合も法律的には土地収用法に基づいて行いますので、実力を使って収用するとなれば、それは不可能ではないわけです。しかし、そういう形で問題を解決することができない状況が現実には起こっていたようでございます。  ところで、同じようなことは建設省所管の事業でも多く見られることでございまして、平成七年に建設省の河川局長の方で出した文書に従いまして、現在、おおよそ全国ですけれども、各地方建設局レベルでダムの建設事業についての懇談会といいますか協議会といいますか、名称は審議委員会のような名称を使っておりますけれども、こういう作業が一斉に行われております。対象ダム事業は十ないし二十のダムに上っているようです。  この建設省の出している文書を見ますと、ある一定の事業を決定する際に、現行法は住民の意見を聞くという意味で大変不十分だというふうに反省をしております。このままでは、もう既に事業は実は決定されておるわけですけれども、決定されているからといって実施に移すことは無理だということで、関係地方公共団体の長や議会議員などから、もちろん学識経験者も入ってですけれども、各地方建設局ごとに委員会をつくりまして、そこで改めて住民の意見を聞くという方法をとっているわけです。  なぜかといいますと、先ほど日本土地収用法に問題があると言いましたが、最大の問題は、事業を認定する際に地域住民や権利者の意見を聞く機会がないという点でございます。公聴会というものが、事業によってはあるんですが、一般的にはございません。  そういう点で、例えば建設省が今やっているような現行法の不備、その結果、事業が実際には進められない、法律は幾ら実力措置を定めておりましても、実際には発動できないわけです。そういった現状が現在あるようでございまして、成田のケースもそうかと思いますが、大変印象深かったわけです。  ところが、本土におきましてはそのような収用法の運用についてかなり改善が図られておりますが、事沖縄の米軍用地に関してはそういう十分な考慮がなく、逆に今回のような法案が出てきた。これにも危惧を感じたということでございます。
  133. 笠井亮

    ○笠井亮君 参考人のお話の中で、立法府の責任ということで触れられたというのも私は非常に印象に残ったことであるんですけれども、御指摘がさまざまありました。今回の法改正の問題をめぐっては、憲法の原理とのかかわりで大変に重大な問題があるという思いを改めて深めているところであります。まさに立法府としては審議を尽くさなければならないということだと思います。  その点では、短期間の衆議院の審議の経過の中で、そして参議院では今始まったところでありますが、多くの国民に問題点を明らかにされないままにこれを短時日で決めるというような全体の動きがあるということについて、立法府の責任ということとのかかわりで、濱川参考人としてはどのようなお考えをお持ちでしょうか。
  134. 濱川清

    参考人(濱川清君) 私が立法府の責任と申しましたのは、改正案の中に不法な申請に基づく使用、あるいは無権原状態のまま途中から暫定使用に入る、こういう箇所が見られまして、一私人の地位ではありますが、これは、国会が立法によりまして、国が行う不法行為を適法化しようというふうに見えるわけです。  そうしますと、例えばこのまま暫定使用が行われた場合、しかも先ほど金城先生御紹介の、去年の四月一日以降不法に無権原状態のまま続いているということで、暫定使用が今回の法律施行後入りますが、そうした場合に、例えば損害賠償請求が当然裁判として起こってまいります。  その場合、起業者のみが責任を負うのか、それとも起業者である防衛施設庁長官あるいは那覇防衛施設局長、もちろん損害賠償ですから国が被告になりますが、そういう資格で国が被告になるのか。私は、場合によっては、そうした本来不法な行為をあらかじめ予定して、法律によってそれを適法化、合法化して暫定使用状態に入る、こういうことをお決めになる国会議員の皆様方の不法行為責任議論の対象にはなろうかというふうに申し上げたわけです。  それ以外に、一般的に国会責任を云々しているわけではございません。
  135. 笠井亮

    ○笠井亮君 今まさに不法な使用も予定するような法案だというようなことで御議論がありまして、先ほどもお話があったと思うんですけれども、実は私が昨日も政府に対していろいろ質疑をした中で、収用委員会が裁決をしないで却下するという場合については、これは政府の答弁でも違法なときに、法律に反したときに却下をするということがあると。しかし、それ自身は非常にレアなケースだということが一つありました。  その上に立って、それで政府の側、要するに防衛施設局の側が不服審査請求をする、そして建設大臣がそれに対してどうするかというときに棄却や却下をするということも、実際上は別として、法律の仕組み、理論上としてはあり得るんだということが言われたわけであります。  私も非常に問題点を指摘したわけでありますけれども、そういう中で、結局そういうことで裁決が出ないで、そして却下をされ、建設大臣も棄却、却下をするということは、違法なときに棄却がされるということで政府も言っているわけですから、それを最終的に建設大臣が却下、棄却をするということは、その違法ということが、違法であったことが建設大臣によって最終的に確定するということになるというふうに私は思うんです。その状態について、濱川参考人の御意見としても、違法であったということが確認をされ、それに対しては当然損害賠償がなければならない、損失補償ではなくて損害賠償でなければならない、そういうことが明記されていないというのは法律上の欠陥であるということについてどういうようなお考えをお持ちかということを伺いたいんです。
  136. 濱川清

    参考人(濱川清君) 損害賠償の条項を今回の改正法案に書かなきゃいけないとは私は思っておりません。  結論的に申しますと、申請が収用委員会で却下される、あるいは建設大臣においても却下裁決を支持して棄却ないし却下をした場合に、改正法では、暫定使用がこの間入っているという前提でですけれども、その場合、防衛施設局長とそれから土地に関する権利者との間で損失の補償について協議をするという文言が入っているわけですが、これがいかにも変だと私は申し上げているわけです。  協議をするのは損失補償の協議ではないはずでございます。当然権利者は不法行為を理由とするところの損害賠償請求権を持っているわけでございまして、もし何らかの形式的な補償をするのであれば、例えば冤罪で刑務所に入って後で無罪が確定したという場合に一定の補償措置があります。これは不法行為という確定がなくても補償措置があるわけですけれども、こういう制度を御用意されるのは一つ考え方ですけれども、御承知のとおり、だからといって、例えば裁判官や何かの有罪判決に違法な行為があれば国家賠償請求は最高裁判所も否定をしていないわけでございます。  したがいまして、もし誤った不法な行為について暫定使用を認めるというのであれば、それを国会が何らか明確な形でお認めにならざるを得ないでしようと私は申し上げておるわけでありまして、あたかもそれが適法になるかのような、すなわち損失補償で問題が解決するという規定を置いておられる、これは全く理解しがたいということでございます。
  137. 笠井亮

    ○笠井亮君 次に、金城参考人に伺いたいと思うんですけれども、特措法をめぐる沖縄世論、それから地主の皆さんの気持ちについて私はいろいろ教えていただきたいと思います。  政府は、繰り返し二万数千人の軍用地主の中のわずか百数十名、〇・四%にすぎないそういう反戦地主の問題だとか、あるいは政府広報も新聞に掲載されておりますが、安保反対する人がイデオロギー闘争にこれを利用して政府政策を妨害しているということで、国民の税金、沖縄の方々の税金も含めて使った形での一方的な宣伝というのがされているというふうに私は思うのでありますが、これはやはり大変な問題だというふうに思うんです。  基地問題については、私が認識しているところでは、先ほどもありましたが、昨年の住民投票で示された圧倒的な意思がある、それから特措法の改悪についても知事それから市町村長の九割の方々が反対をされる、先ほどおっしゃっていました。ここにも問題の性格と県民の意思が出ているんじゃないかなというふうに思うわけであります。  先ほど来のお話で沖縄の苦難の歴史ということがございました。日本軍による接収に始まり、戦後、米軍土地を強制的に取り上げるという国際法にも違反するやり方で土地取り上げをやり、米軍基地が確保される歴史があったと。まさに県民全体の今日までの痛みだと思うわけであります。  そういう中で、軍用地主に対して、戦後長い間、国の側、施設局の側がさまざまな手だてを使って、私は地主の方にも伺ったことがあるんですけれども、おどされたりとか泣き落としをされるとか、あるいは親類縁者に説得をして嫌がらせをするとか、あるいは差別、村八分というようなことがある中で、今政府の側としては形をつくってきている。そして、圧倒的には契約いただいているのだということになっていると思うんです。にもかかわらず、〇・四%の方々、百数十名の方々が頑張り抜いてこられたし、それ以外の契約地主の方も決して今の状態をよしとしないというお気持ちではないかというふうに思うんです。  最近、嘉手納基地土地を持っている軍用地主さんの中にも、戦前は軍国主義によって接収され、戦後は日米安保の中で土地を奪われ続けてきたというので、この今回の経過も踏まえて、もう我慢ができない、黙っていられないということで契約拒否に立ち上がった方々のニュースも伺っているわけであります。  金城参考人、反戦地主の方々、あるいはもっと広く軍用地主の方々の率直な気持ち、特措法問題を含めて、どんなふうな今気持ちをお持ちになっていると受けとめていらっしゃるか、それについてお話を伺いたいと思うんです。
  138. 金城睦

    参考人(金城睦君) 沖縄意見ということや沖縄反対意見の中にはいろいろあるんじゃないかという意味のことも先ほど今泉先生も御指摘がありました。  反戦地主と一口で言っても、それは確かにいろいろあります。先祖伝来の土地は手放したくないということやら含めてありますけれども、共通していますことは、権利と財産を守る軍用地主会という反戦地主会の皆さんの名前に示されておりますように、自分たちの土地自分たちが管理をし、自分たちが使い、そして多くの人がこれを軍用地ではなくて平和のために使いたい、こう言っているわけです。そういう思いでいるわけです。一坪反戦地主と言われている皆さんも、そのスローガンにありますのは軍用地を生活と生産の場へという、これがスローガンです。  その根っこにありますのは、先ほども申し上げましたように、沖縄戦の悲惨な体験や戦後の米軍支配における軍事支配、軍事というものがどのような人権侵害をもたらすかということへの深い体験、沖縄戦にしても戦後の体験にしても実は本当は沖縄だけではないんですね。日本国民の体験のはずなんです、直接か間接か、深いか薄いかということはあっても。日本国憲法が生まれたのも、戦前のあの軍国主義のもたらした日本国民自身の悲劇、そして他国を侵略したことによる他国民への侵害の加害の痛さを反省するという中から生まれたわけです。そのことを最も強く沖縄軍用地主だちは感じているということは言えると思います。  軍用地主の皆さんはまず復帰前に米軍の強権的なやり方で土地を取り上げられました。復帰によって平和な世の中が来るはずだ、だから土地は返ってくると思っていたら、公用地法でそのまま使われて、それが十年に延長され、また三回もの強制使用を特措法によってなされてきた。その過程で、どなたかもおっしゃっていましたが、幾ら反対をしても、国の仕組みあるいは米軍権力、そういうものの中で毎日毎日、日々を生きていくことが大変困難な目に遭ってさまざまな差別や抑圧やいろんな攻撃、脅迫などがある中で、やむを得ず契約に応じた方々もいるわけです。でも、根っこにあるのは、やりたくないんだ、平和を求めるんだということが一番あります。  ですから、数はだんだん減らされてきて百数十名になったということがあり、あるいはまた一坪反戦地主という皆さんが積極的に一坪地主になっていてもまだ三千人程度だということではありますけれども、しかしその人たち基地に対する思い、権利に対する思い、人権に対する思い、平和に対する思いというものが沖縄県民みんなに広がっていって、それが市町村の代表者それから県民全体の代表である知事に対しても御存じのような行動をとらせた。  ですから、県民の意向、反戦地主の皆さんというのはどんなに苦しい目に遭ってもやっぱりやりたいことは原点に戻ってやりたい、人間らしく生きたい。人間らしく生きることは、自分だけではなくて周囲の者ともやりたい。だから、平和であり連帯を尽くそうという気持ちです。その基本にあるのは、日本では国の仕組みや国の政治のあり方の基本をなしている憲法ではないかということであるわけです。ですから、その憲法に触れるような問題が提起されている今回のような特措法には何としても反対しなきゃいけないという気持ちでいると思います。
  139. 笠井亮

    ○笠井亮君 ありがとうございました。
  140. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 二院クラブの島袋宗康でございます。よろしくお願いします。  沖縄基地問題というものがどういう形で形成されるかということは、この委員会の中からも随分皆さんから出されまして、私がこのことを言う必要があるかどうか非常に迷っているところでありますけれども、参考人の皆さんにせっかくおいでになっていただいておりますので、質問をする前に二、三私の考えでいることを申し上げておきたいと思います。  実は一九四五年に沖縄戦が終了して、そして七年間ぐらいは割方平穏に、自分もとあった集落に戻って、そこで畑や田を耕してこれからいい生活ができるかなと。また反面、沖縄では軍に勤めている人たちは一括して軍作業といいますけれども、その軍作業をしながら自分の田や畑を耕す。割方のんびりした暮らしをやっていたわけでありますけれども、一九五二年に安保条約が制定されることによって、アメリカ沖縄基地をむしろ本土から海兵隊を移転する形でどんどん拡張していった。それが一九五二年から三年、四年にかけてでございます。  その中で、私は旧真和志村というところにおりましたけれども、そこも米軍の住宅をつくるために広大な住宅地域として使用されてきました。それが今沖縄の都心部として開発をされております。これは返還されてもう二十数年になりますけれども、細切れ返還で、五十八号線から見えるところは適当に返しましたよというふうなことで返しましたけれども、一部返されたからといってこれが直ちに全面積を区画整理するということはできない、あるいは部分的な区画整理はできないわけです。したがって、全部返される間その土地は本当に賃貸料も何ももらわないで放置されたまま二十数年たっているわけです。今日に至ってようやく開発公団が手がけて、そして那覇の本当に都心部として国際都市形成構想の中にも位置づけられまして、今開発が進んでいるような状況です。  この五二、三年ごろはちょうどアメリカが何とかして棄民的な農民、失礼かもしれませんが棄民と言わせてもらいますけれども、そういう方々をボリビアに何とか移住をさせようということで、アメリカが中に入って沖縄の県民の一部が自分の生活をするために、あるいは農耕をするためにボリビアに移住をいたしました。今ボリビアでは成功されている方もおりますけれども、要するにそういうふうな沖縄に住めなくなって海外移住を迫られた人たちもたくさんおったというふうな経過がございます。  私は、今までいわゆる銃とブルドーザーでとられたというふうなことは何回言っても飽き足りないぐらい、米軍によって大きな基地拡張がなされたという点については非常に残念に思っております。  そして、一九五二、三年あるいは四年まで本土のゼネコンが大勢来まして、そしてあの沖縄基地拡張のためにブルドーザーを入れてどんどん兵舎をつくったり、あるいはまた土地を地ならししたり、そして本土のゼネコンの利益によって今のあの基地が供与されたというふうな経過がございますので、真剣にこの特措法の問題についてはどうしても反対をしていかなくちゃならない立場が私たちはあるわけでございます。  それでは、本論に入りますけれども、そういう経過のもとに、きょうは参考人のお三方がせっかくお見えになりまして、この特措法の問題について我が参議院のこの特別委員会で真剣にお話し合いをすることができますことを非常に光栄に思っております。これから質問に入りますけれども、どうぞよろしくお願いしたいと思います。  まず、金城参考人にお尋ねいたしますけれども、我が国の法治主義あるいは民主主義国家の大原則が非常に危機に瀕しているんじゃないかというふうなお話が先ほどございました。私も全く同意見でございます。沖縄基地を確保するため、公用地法あるいは地籍明確化法、そして今回の特措法が次々と適用されましたけれども、これらの法律の間、いわゆる法体系、特に地籍明確化法の制定の過程について、その辺をひとつ金城参考人から御説明をいただければありがたいと思います。
  141. 金城睦

    参考人(金城睦君) 今、島袋先生がおっしゃったように、復帰前の沖縄の状態というのは全く無権利状態だったわけです。それが復帰によって日本国憲法のもとへ返るんだから、その違法状態は回復されるはずだとみんな期待していました。ところが、復帰に際してとられたことは、そのままの沖縄基地維持強化策であったわけです。  しかし、復帰の際の行政主席でありました、せんだってお亡くなりになって県民葬が行われ、橋本総理大臣も出席なさっておりましたが、屋良行政主席は、沖縄の立場を代表して、国会に対して、政府に対して建議書を持って要請に来ました。たくさんのことが書いてありますけれども、エッセンスは核も基地もない平和な沖縄の建設でありました。そのときに、国会で準備されていた公用地法のような沖縄基地維持するための法律には反対であるというものを持っていたんですが、当時の国会沖縄代表の予定されていた質問も途中で打ち切って、屋良主席が空港に到着したちょうどその時刻ころに強行採決をいたしました。復帰の直前であります。そうやってあの公用地法というものができた。  実は、アメリカ軍が沖縄を軍事占領したときに土地を囲い込んで使用したわけですが、それ自体ヘーグ陸戦法規には反することなんです。その後、平和条約と安保条約ができたときに沖縄を切り離してアメリカの施政権下に置きました。そのやり方がこれまた国際連合、国連憲章を含めた国際法あるいは日本の憲法にさまざまに違反する内容でした。そのもと沖縄県民の人権侵害は行われたんです。その行われたものをそのまま復帰後も引き継ぐ形をとってきた、そして今日に至っている。その過程でもあの特措法を三回も適用してきた。それをさらにさらに今回、期限が切れるからといって引き続き改悪した形のものをしようとしているわけですから、これはどう見ても悪さに悪さを積み重ねるという、まあ毒食らわば皿までというふうには言いたくないんですが、そういうふうに言われないようなことをぜひ考えていただきたいと思います。
  142. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 今のような、いわゆる本土復帰前は布令布告によって土地が強制収用された。今回は、いわゆる一定の、公用地法あるいは地籍明確化法、そして今回の駐留米軍用地強制使用といったような一連の強制使用が、またまさしく法改正によってなされようとしておりますけれども、私が一番危惧するのは、これから自衛隊の問題でこの法律を適用されるんじゃないかというふうに思っております。そういう意味で、これは沖縄だけにさらにまた適用した大変ないわゆる改悪じゃないかというふうに思っておりますけれども、自衛隊の問題についての意見はどうでしょうか。
  143. 金城睦

    参考人(金城睦君) この法律自体はあくまで米軍用地のための特措法ですので、自衛隊に適用されることはございません。ただ、戦前も土地収用法というのはありましたけれども、そこでは真っ先に公共目的とされていた事業は軍隊その他軍事目的でありました。二番目には皇室関係のがありましたが、それが戦後平和憲法、国民憲法といいますか、国民主権憲法といいますか、あるいは基本的人権尊重の憲法ができたときに、軍事目的と皇室関係の部分は強制使用の対象事業から削除になったわけです。  それで、ずっと自衛隊のための強制使用というのは土地収用法によってはできない、軍事目的ですから本来なら米軍のためにもできないはずなんだけれども、それは安保条約に基づいて特別法としての今回の特措法ができていたために行われてきた。ただ、政府の一部の皆さんの中からは、自衛隊のための強制使用も解釈によってできるんだという声が出されてきております。一九八二年、沖縄において特措法が始めて発動されたとき、土地収用法によって自衛隊用地も収用できるんだという動きがございました。しかし、最終的にこれは断念されて、那覇基地内の自衛隊用地については、契約に応じなかった地主さんの土地は全部解放されました。  ですから、この法律は適用されませんけれども、今のような国防だとかあるいは国際関係とかいうようなことを理由とする場合であれば、そのうち自衛隊ということも、そのための強制使用ということで自衛隊法の改正なりあるいは強引な解釈による適用なりということがないとも限らないという感じはいたします。
  144. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 島田参考人にお伺いいたしますけれども、沖縄基地所在市町村懇談会の会長として非常に活躍されていること、大変敬意を表しております。  それで、島田会長のもとではいわゆる米軍基地の所在市町村に限られた振興策というふうなものがうたわれておるんですけれども、私が危惧するのは、それでは二十七年間も意味なく支配を受けて、そして復帰後もなおあっちこっちで基地の重圧が加えられている。これはやはり沖縄の県民所得あるいは失業者の問題、かれこれすると、全市町村を対象にしなければ沖縄の全面的な振興策というものはこれはあり得ないと思うんですけれども、単に基地の所在市町村だけに限られるということはちょっと私は疑問を持つものでありますが、その辺についての御所見があれば承りたいと思います。
  145. 島田晴雄

    参考人(島田晴雄君) 沖縄全島のさらなる発展については、沖縄県庁と日本政府との間で閣僚レベルの協議会がつくられて、全体構想の発展のための推進の努力を鋭意なされているということは、私ども十分承知しながら私どもの懇談会の作業を続けているわけなんです。  沖縄を拝見いたしますと、もちろん県民の皆さんお一人お一人がさまざまな問題を抱えて、あるいは地域がさまざまな問題を抱えておられますけれども、基地の比重が非常に高い、あるいは面積だけではなくて嘉手納のように大変な騒音があるとか、さまざまな問題がありますが、そういうところの市町村の方々の暮らしぶりを拝見するのも大変胸の痛む状況でございます。何とかそこにできるだけ早く、できるだけ重点的にお手伝いをして、そしてこの全体構想の中に組み込まれていくようなことができないかというのが私どもの考え方なのでございます。  そして、この最終報告書に五つのモデルというのを書きましたけれども、これは市町村の方々と御相談もしながら、そして私どものやや付加価値のようなものを、僭越ですけれども、沖縄の有識者の方々と御一緒に御相談しながらつけ加えてやっていくという形でやらせていただいたわけです。  そういうことで考えますと、基地あるいは施設を抱えていらっしゃる市町村は、その比重の大小合わせて二十五ほどあって、ある意味では広さからいいますと沖縄の半分以上になるわけで、ちょっと中央政府と県とでおやりになっていることに対して二重構造ではないかというような見方もあるいはあり得るかもしれませんが、そうではなくて、お互い相補いながら相乗効果を持たせる。しかし、やっぱり基地の重圧の厳しいところの方々の暮らしぶりは、これは拝見するのに、一緒に話をしても非常に心痛むことだということを痛感いたしまして、何とか機動的に少し早目にここのところはできないか、そんな気持ちでやっております。したがって、先生のおっしゃられる懸念は私どもはないと信じてやっております。  よろしくお願いいたします。
  146. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 ありがとうございました。終わります。
  147. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 自由の会の椎名素夫でございます。  きょうはお三人の参考人先生方、大変お忙しいところをこういうふうに長時間いただきまして、本当にありがとうございます。  最初のお話、それからその後の質疑に対するお答えで、先生方の御主張というのは大体もうすっかりそれなりに私なりにわかったという気がいたしますので、余りこれ以上質問をつけ加えることはございませんけれども、ただ一つ、先ほど島田参考人のおっしゃった、この沖縄の負担を日本全体で受けとめるということはこれから何を考えるにしても一番大事だというお話がありました。そのとおりだと思うんです。  これはもう何をやるにしても、かぎだと思いますが、実際、復帰以来、当時本土にあった基地というのはたくさんこの周りにもございましたけれども、それがどんどん減ってしまって六〇%以上は本土からはなくなった。沖縄は、少しは減ったにしても、ほとんどくぎづけ状態である。極端なことを言うと、私自身も日本国民の一人として責任を感じておりますけれども、ちょうどいい埋立地ができ上がったというような扱いをしてきたことに対して、我々はこれから本当に考えていかなきゃいかぬ。  その手だてなんですが、先生は大学で教えていらっしゃいますが、例えば若い方ですね、前の大戦の記憶もないというかむしろ知識もないと。そういう人たちはこれに対してどういうふうに考えているかというようなことをまず教えていただきたいと思うんです。
  148. 島田晴雄

    参考人(島田晴雄君) 私は日ごろ若い人たちと接しておりますが、さまざまな理解の程度があろうかと思います。一色でこれを表現することはできないかと思うんですけれども、認識の高い若い人たちは真剣にこの沖縄の問題も考えており、また安全保障の問題も考えておりますが、やはりかなり多くの人たちが戦後のいわば平和ぼけといいますか、この問題はだれかがやっているんだと、だれがやっているのかということを本当に考えずにきたということが今日の、積年の問題を生んだのではないかというふうに思うわけです。橋本総理も、昨年、我々は沖縄の問題を本当に真剣に考えてきたかといえば大いに反省するところはあるというふうに率直におっしゃっておられるわけです。  そういう意味で、私はかなり分布していると思います。若い人たちは全然考えていないと言い切ってしまっては、これは正確じゃない。しかし、かなりの人たちが、だれが負担をしていてどういうことになっているのかというのをよく知らないということは事実だと思うんです。  私は、沖縄問題というのは、補助金の問題も重要かもしれませんし、基地の問題も重要かもしれませんが、もちろん基本的には基地の問題があることによって問題が起きているわけですが、多くの国民が安全保障の大切さ、そしてこの重圧をだれかに預けてしまって忘れておるということがもう最大沖縄問題だというふうに思っているんです。ですから、これをどういうふうにいい方向へ持っていくかということになりますと、これはもうメディア、教育、あらゆる関係者が総力を挙げてこの問題を率直に考えるということだと思うんです。  今日の日本の姿を考えてみますと、この狭い列島に大変な貴重な人命と資産を蓄積しているわけですが、やはり国家である以上、これは守らなきゃならない。守るとするとどうするんだというと、現代の軍事技術と国際関係でいえば、残念なことですけれども、抑止力というものを活用せざるを得ない。そうなると、やっぱりアメリカと組んでこれはやらざるを得ないというのが残念ながら現実です。将来はそれは変わるかもしれない。しかし、この現実を同盟関係ということでまず確保して、その上で世界全体の軍縮なり平和なりを追求するということでないといけないのではないかと思うんです。このことは若い人たちも、多少物を勉強している人たちは理解をしております。  国際安全保障というような考え方があります。例えば、アジア地域でそういうことができるかということを考えて皆さん努力しているんですが、この前も私はアジア台湾海峡の問題があったときにARFの方々とお話をしましたが、こういうときには役に立たないと言うんですね。本当に重要なのは、みずから血を流す覚悟でお互いに防衛をするという同盟関係だと。この信頼関係というのはやはり非常に重要でございます。ですから、日本が持っているアメリカとの同盟関係の基盤というものは非常に大切である。  今日の非常に難しい問題は、先ほどからるる話がありますが、人権の問題、地方自治の問題、法治国家の問題、どれもこれも大変重要な基本的な問題であります。同時に、私一言申し上げたいと思いますのは、国家間にも同盟関係という厳しい約束の関係があるわけです。そして、国家間にも、法治国家としての尊厳と同時に国家の信用、国家の信頼という問題もあるわけです。  この問題は若い人たちはわかっております。しかし、多くの人たちはそこのことを考えていない。ですから、人権の問題、法治国家の問題、地方自治の問題、そして国の信用、信頼、非常に難しい問題ですけれども、この答えは私は実はそんなに難しい問題ではなくて、国民全体がこれまで沖縄人たちに重圧をかけてそれを十分理解してこなかったという、ここが最大の罪だと思うんです。  ですから、この特措法の問題で問題が片づいたと思ったら大間違い。今私が申し上げた問題を、これを契機に本気でみんなで考えていくということであれば、私は案外答えは見つかるんじゃないかと、このように思います。
  149. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 金城先生に伺いたいと思うんですが、先ほど、仮に今回の措置が反対で否決されたとしても大したことは起こらないだろうとおっしゃいました。これは、その問題に限って言うとあるいはそうなのかもしれないんですが、私は、実は与党でも野党でもないような存在でありまして勝手に言えますので、ちょっと感じているところを申し上げます。  確かに、今、島田先生のお話があったけれども、しかし沖縄に対して何かしなければいけないという気分は非常に高まっていることは確かだと思うんです。総理大臣も確かに真剣に考えておられる。しかし、一番やはり頭にあるのは、日本の国家としての信頼、同盟国との関係基地の安定使用ということであって、これはそういうことであってはいけないと言いながらも、それに協力していただけるか、そして沖縄のためにどれだけのことをやるか、極めてビジネスライクな言葉を使いますと、幾分心理的にはギブ・アンド・テークみたいなところが私はないではないと思うんです。  確かに島田先生のところで、一千億ぐらいかかると、これはもうあらゆる困難を克服しても尊重してやっていく、こう言ったけれども、先ほど島田先生からもありましたように、今の財政の仕組みからいえば、積み上げて供託金みたいに置いてあるわけでもない。これから沖縄政策協議会の場などでいろいろ出てくる中で、これをまた実際に今までのような公共事業中心でなくて本当に発展させるような仕事につき込みたいと言っても、これもお金が要る。その熱意が何となしに薄れてくるようないわば政治的効果というようなものも、マイナスの効果ですね、考えなければ現実的な話にならないのじゃないかという気が私は実はするんです。  そういう例えば無権原状態になったっていいんだ、みんながそう言えばいいんですが、政党政治であって、どちらかといえば政権基盤の弱い政権がこの無権原状態をこんなにつくっちゃって一体どうする気だという話が今度は野党から出てくる。そういう意味で、政治自体が非常に沖縄問題に関して不安定になってくるということが先ほど私が言いましたようなことに響いてくるというそんなような効果について、私は与党でもありませんから、おどしととっていただいても決して何の役にも立たないことなので、ただそういう感じを持っておりますが、これについてどうお思いになるか、お聞かせをいただきたい。
  150. 金城睦

    参考人(金城睦君) 私も政治家ではありませんけれども、政治の現場において先生の御指摘のような問題といいますか悩みといいますか、さまざまな側面というのは十分あり得るだろうと思います。  ただ、それにもかかわらず、私や沖縄側が今回の法案に反対の声を大にするような立場にありますのは、戦後だけとってみても、この五十年の間、冷戦やそれが変わったりということはありますけれども、いわば基本的には、日米関係あるいは安保体制あるいは国防といったような、そういう言葉で表現されるような事柄を理由としてずっと沖縄があったわけです。  したがって、そのこと自体を日本政府アメリカ政府も含めて本格的に検討していただかないと、沖縄が一方では足を踏みつけて痛い思いをしていても、それを我慢して、いい洋服を着せてあげるからと言っても痛さはとれないわけです。沖縄には人権問題やら地域開発の問題やら御指摘のようなさまざまな問題があることについていろいろ検討した結果、その根っこにあるのは米軍基地である、諸悪の根源は基地にある、したがって沖縄の発展あるいは人権の擁護のためには、この基地問題が根本的に解決の方向に行かぬ限りは解決のしようがないという認識があるんです。  ですから、沖縄日本の一部であって、日本全体として防衛問題にしろ安保問題にしろ考えるのであるならばそういう視点で考えてほしい。知事の主張していますのは、本当にそうであるならば沖縄の痛みを全国で分かち合ってほしいということを言っております。  そういうことも含めてどういうことをやることが日本の、お互い一人一人を基礎にした、つまり個々の国民から離れた国民抜きの国家というものはないと思うんですが、国民の一人一人が結集して寄り集まったのが国家だと思うんです。ですから、一人の国民も犠牲にしないんだということを基本に置きながら、より多くの全国民であればなおさらだということで安全保障も考える、そういうことを沖縄は提起していると思うんです。  だから、安保は全部なくてもいいとかいうこととは違うんで、安易にそういうことに寄りかかる姿勢、これまでずっと五十年間もそうであったんじゃないだろうかということがあるわけです。人によって、諸悪の根源は基地にあり、その根源は安保なんだから、安保を徹底的に即時なくせという意見ももちろんあります。でも、それ一色ではないわけです。それぞれに意味あることを考える場合、憲法の原則などを踏まえて、我が国自身この際、そういう位置づけをして考えていただくべきではないだろうかという意見であります。
  151. 北澤俊美

    ○北澤俊美君 御苦労さまでございます。私が最後でございます。限られた時間ですから、島田先生に対する質問で、多分濱川先生、金城先生にはないかもしれませんので、どうぞおくつろぎをいただきたい。  島田先生、島田懇でまとめられて、私も羽田党首と沖縄へ行ってまいりまして、さまざまな人たちとお行き会いした中で、先生がまとめられたものに大変大きな期待があることもよく承知をいたしております。  そこで、政府政策協議会が十のプロジェクトにして三十四の事業にまとめたわけですけれども、沖縄沖縄県独自の振興策を出しておりますし、島田先生の提言もあります。そういうものを含めまして政策協議会でまとめた十のプロジェクト、三十四事業というものはそういうものをうまくまとめ上げておるのか、置いてきぼりにされちゃったものが既にあるのか、いかがでしょうか。
  152. 島田晴雄

    参考人(島田晴雄君) 政策協議会でおまとめになられたプロセスというのは私は克明に承知しているわけではございませんけれども、私の理解では、政策協議会で協議をされてまとめられていく方向は、基本的には県が深くかかわって、県の国際都市形成構想と連動する形でおまとめになっているわけですが、県はまた同時に、私どもの懇談会の提言についてこれを担当する部局も置いておられまして、全体の整合性を図って進められているというふうに理解しております。
  153. 北澤俊美

    ○北澤俊美君 今度の問題は、この法の成立はもう予測されておるわけでありますけれども、その後我々が何をしなきゃならぬかということは沖縄の振興策をきちんとやるかどうかということですね。沖縄の歴史を戦後だけ見ましても、基本的には二度失敗しているんです。占領政策の中で産業振興に失敗をしている。それから復帰後に、今度は日本政府として、先ほど先生もおっしゃられましたように、箱物に頼った公共投資をしてきちゃったということです。今度もフリーゾーンだとかいろいろなものが打ち出されておりますけれども、大蔵省が反対をしているとか、あるいは法務省が不法入国を増加させるというようなことで反対をしているとか、さまざまな省庁でやっている。  基本的に言いますと、役人というのは金を出すことについては結構気前がいいんですよ。それは税金で毎年入ってくるんだ、自分のお金じゃないんだから。どうしても足りなきゃ税金を上げりゃいいわけだから。これは役人に対して申しわけない話だけれども、そういう体質がありますよ、我が国の役人は。  ところが、制度を変えるということには大変憶病なんです。なぜ憶病かというと、自分たちの領域を侵されるからなんですね。ここから一番大事なことは、その壁を我々が打ち破れるかどうかだというふうに私は思うんですけれども、先生、どうですか。
  154. 島田晴雄

    参考人(島田晴雄君) お役人の習性についてのコメントはいろいろおありだと思いますが、私は、お役人は基本的に大変有能な方々だと。この方々が使命感を持ったときというのは大変いい仕事をなさるんですね。昨今、非常にお役人批判が強いですけれども、勝手なことを申し上げますが、これは沖縄懇の座長という資格ではなくて全く個人の資格ですが、日本をどう持っていくかについての使命感、目的性をやや見失っておられるのかなと、しかし大変優秀な方々ですから、時々問題が起きるのではないかなと、こう思います。  私どもが懇談会をやりましたときに、この問題については先ほど椎名先生の御質問もありましたが、もうちょっと私もつけ加えるべきだったと思うんですが、少数ではあるけれども相当の方々がだんだん沖縄問題に大変強い熱意あるいは理解を持とうとされている。この懇談会をやりましたときのお役人のサポートは実は見事でございました。これは正直言って、いや役人はこんなにやるものかと思うぐらい見事でございました。ちなみに、懇談会の報告書を書きましたのは実はお役人さんではなくて委員自身の手で書いたので、これはかなり異例の報告書だと思います。  本題に戻りますけれども、確かに箱物でやってきて、沖縄は自立発展の芽をつかむことはできなかったということは言えると思うんですね。したがって、今後どうすべきかということを考えるときに私は二つの大きなポイントがあろうかと思います。  一つは、箱物ではなくて、お金を出せばいいじゃないかという話ではなくて、沖縄の方々が付加価値を将来つくっていけるような活動をみずからの手で育てていただくという、これは目に見えないものですけれども、ここを最重点にいたしませんと、私ども懇談会の提言も、部分的には箱物のように見えるかもしれませんが、実は箱物ではなくて産業の芽、人材を育てるというところに力点がかかっているわけです。  これについては今後ともずっと市町村の方々と議論をしながら、箱物ではございませんよと、みずから価値を生み出す活動をぜひやってくださいということでフォローアップ委員会というのをつくりまして、本当の付加価値を生み出せるようなものを確認するまで七年でも十年でも提言をずっと続けよう、こういう覚悟で私どもおります。  それから、それを支援するのにやはりある種の思い切った規制緩和が必要なんだろうと思うんです。私は先ほども触れましたが、一国二制度という言葉が言われるんですけれども、いささかシンボリックになり過ぎていて、一国二制度の内容は何かというと、ノービザ制度だとかあるいは航空運賃の問題ですとか法人税の問題、そういうのがどんと出てくるわけです。  例えば、投資減税というようなものをうまく活用するといろいろなメリットがあり得るわけでございます。あるいは先ほども触れましたが、沖縄は大変国際的な、本土にないオープンな雰囲気のあるところだというのは、外国人の方々は皆さん評価されているわけです。こういうところで、例えば世界の人づくりセンターとしての人材形成、ここを拠点というふうにすることが沖縄の方々と一緒にできればこれは日本にとってもすばらしいし、沖縄にとっても大変な雇用効果も教育効果も生む。  あるいは、この情報化時代沖縄が情報基地になって、日本全体あるいは世界の中継基地としてのネットワークの中心になるような仕掛け、こういうことをもし進めるときに、今申し上げた、世上言われている一国二制度の三点セットを実現しなきゃ何もできないのかと。私はそんなことはないんだろうと思うんですね。事実上の一国二制度になるような、もっと具体的なきめの細かい政策の積み上げということをやる。  そういう実質的な議論は実はこれからなんだろうと思うんですね。私どもの懇談会も比較的集中的な仕事をして提言を出しましたけれども、これが本当に成果を結ぶかどうかは今後七年か十年ぐらいかかるだろうと関係者は見ております。ですから、これからなんだと。  先ほど椎名先生がおっしゃられたように、その間に日本の国内における沖縄に対する関心の熱が下がったらうまくない。予算の制度も、実は政治的な配慮で、今、内閣で三塚大蔵大臣の発言で確認されております。橋本総理も言っておられますが、これは政治的なものなんで制度化されているわけではない。ですから、この熱をどこまで保っていくか、これは私は政治だと思うんですね。そんなことでぜひよろしくお願い申し上げたいというふうに思います。
  155. 北澤俊美

    ○北澤俊美君 私はきのうの質疑でも、熱が冷めちゃいかぬということで政府の決意を促したんですけれども、一国二制度的なものというのはシンボリックになったと、まさにそのとおりですね。そうすると、これを外すと沖縄の県民にとっては大変な失望感を増幅するんです、そういうものになっちゃったんですよ、この論議をしてくる中で。だから、こういうものは制度を変えて、沖縄は少し違った地域になったというものをつくり上げていかなきゃいかぬというふうに私は思うんです。  それで、先生は冒頭に、沖縄に製造業が見えないと言われましたね。沖縄の戦後のスタートは、もう私から申し上げるまでもないんだが、私はちょっと検証してみたいというふうに思っているんですけれども、米軍基地を建設していく中で、それはもう消費財も生産財も何にもないところで、それを全部入れなきゃいかぬということで輸入促進の経済体制をつくっちゃったわけです。これは、百二十円のB円で極端な円高政策をとった。一方の日本は三百六十円で円安政策をとって輸出型の経済構造をつくったわけですね。ここでもって沖縄と本土との大きな格差が出ちゃったわけです。そして、基地依存体質の経済体制になっていっちゃった。これが大きな沖縄のおくれをいまだにまだ僕は引きずっていると思うんです。  約十二年ぐらいやったんですか、その後ドル体制になって、それからやっと日本の国に復帰をして、そこから始まったのが、先ほど先生が言われた公共投資でやってきた。しかも、沖縄経済の中に建設やそれから労働力が十分に供給できない中で大きな金をつぎ込んできたから、本土から資本が行って、これをまた本土へ持ってきちゃったと、これを約五十年やってきちゃったわけですね。だから、ここで沖縄をもう一度振興させるためには、私はある意味で全く新しいスタートだというふうに思うんですよ。そういうことを私は考えておるんですが、先生はどうですか。
  156. 島田晴雄

    参考人(島田晴雄君) 今、北澤先生が戦後五十年の沖縄の発展の難しさ、非常に明快に詳細に御説明くださっている、全く同感でございます。  したがって、リープフロッグと言いますけれども、おくれていた地域が跳び越して先へ行くというくらいの仕掛けを考えませんと沖縄は大変難しいだろうなと。しかし、今日のグローバル化時代で実はリープフロッグがさまざまなところで起きているんですね。世界的に見ますと、ベルギーにしてもルクセンブルクにしてもあるいは香港にしてもシンガポールにしても、みんな大国ではない、国境地域がグローバル化、情報化の中で飛躍的な発展を示している。それらはかなり真剣に制度改革をしているんですね、規制緩和を初めとして。ですから、決して希望がないわけではない。ですから、私は全く賛成でございます。  先ほど言いました意味は、ちょっと誤解されるといけないんですが、私は、事実上安保が一国二制度になっている以上、少なくとも現時点では経済を一国二制度にして支援するのは当然だという気持ちでございます。  金城先生がおっしゃるように、安全保障などというものは日本国民全体でその負担も痛みも分かち合わなきゃいけない、これが本来の姿で、そっちへ向けて努力をすると同時に、しかし現状は沖縄にリープフロッグをさせる、そういう本格的な支援をするということで、沖縄が常におもしろい、そういうことでいい意味でいつも熱をかき立てていくという努力をするのは私どもの責務ではないか、このように思っております。
  157. 北澤俊美

    ○北澤俊美君 時間的にもう最後になると思います。先生の個人的な見解でいいんですけれども、今のようなことを象徴するような意味で、先生は沖縄に何度も入られてしかも相当な人たちとお話しになってきた中で、海上ヘリポートの問題はなかなか難しい話でありますけれども、これからこれをクリアしてあそこへヘリポートができるという前提でいった場合に、海上でやれば五千億とも一兆円とも言われているんですね。これは日本の資本がかなり興味を持って見ている。  一方で、地元の人たちにお聞きすると、埋め立てがいいじゃないか、基地がなくなったときに埋め立てならばまた利用ができる、サンゴ礁を破壊するとかなんとかと言っているけれどもあの辺はそれほどじゃない、地元の本音からいえば、どうしてもできるということになればそれはもう十分の一ぐらいでできるんだと、こういうふうに言っているんです。  これはこれからの沖縄に対する基本的な考え方になるんだろうというふうに思うんですけれども、個人的な見解で結構ですから、ちょっと教えてくれませんか。
  158. 島田晴雄

    参考人(島田晴雄君) これは私ども、十一月十九日に最終報告書を出して、大変集中的に討議をしてやってまいりましたんですが、先ほどもお答えを申し上げましたけれども、個人でいいんだとおっしゃられるので個人の気持ちを申し上げたいんですけれども、その問題はマンデートの外でございますものですから、これは私も、その問題については先生方以上の情報を持ち合わせておりませんものですから、ちょっと発言は控えさせていただきたいというふうに思います。
  159. 北澤俊美

    ○北澤俊美君 終わります。 どうもありがとうございました。
  160. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で参考人の方々に対する質疑は終了いたしました。  参考人皆様に一言御礼を申し上げます。  本日は、長時間にわたり貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、ここに厚く御礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四分散会