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1997-04-14 第140回国会 参議院 日米安全保障条約の実施に伴う土地使用等に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年四月十四日(月曜日)    午前九時開会     ―――――――――――――    委員の異動  四月十一日     辞任        補欠選任      平田 健二君     今泉  昭君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         倉田 寛之君     理 事                 石川  弘君                 永田 良雄君                 野間  赳君                 泉  信也君                 風間  昶君                 角田 義一君                 齋藤  勁君                 笠井  亮君     委 員                 板垣  正君                 加藤 紀文君                 亀谷 博昭君                 鈴木 栄治君                 関根 則之君                 成瀬 守重君                 保坂 三蔵君                 三浦 一水君                 宮澤  弘君                 山本 一太君                 依田 智治君                 吉村剛太郎君                 今泉  昭君                 鈴木 正孝君                 田村 秀昭君                 高野 博師君                 益田 洋介君                 山崎  力君                 照屋 寛徳君                 田  英夫君                 前川 忠夫君                 本岡 昭次君                 筆坂 秀世君                 島袋 宗康君                 椎名 素夫君                 北澤 俊美君     国務大臣         内閣総理大臣  橋本龍太郎君         外 務 大 臣 池田 行彦君         大 蔵 大 臣 三塚  博君         文 部 大 臣 小杉  隆君         国 務 大 臣         (内閣官房長官梶山 静六君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 久間 章生君         国 務 大 臣         (沖縄開発庁長         官)      稲垣 実男君     政府委員         内閣官房内閣内         政審議室長         兼内閣総理大臣         官房内政審議室         長       田波 耕治君         内閣審議官   及川 耕造君         内閣官房内閣情         報調査室長   杉田 和博君         内閣法制局長官 大森 政輔君         内閣法制局第二         部長      宮崎 礼壹君         行政改革会議事         務局次長    八木 俊道君         北海道開発庁計         画監理官    八木 康夫君         防衛庁参事官  山崎隆一郎君         防衛庁参事官  藤島 正之君         防衛庁防衛局長 秋山 昌廣君         防衛施設庁長官 諸冨 増夫君         防衛施設庁総務         部長      伊藤 康成君         防衛施設庁施設         部長      首藤 新悟君         防衛施設庁建設         部長      竹永 三英君         防衛施設庁労務         部長      早矢仕哲夫君         経済企画庁調査         局長      中名生 隆君         沖縄開発庁総務         局長      嘉手川 勇君         沖縄開発庁振興         局長      牧  隆壽君         法務省民事局長 濱崎 恭生君         外務省アジア局         長       加藤 良三君         外務省北米局長 折田 正樹君         外務省欧亜局長 浦部 和好君         外務省条約局長 林   暘君         大蔵省主計局次         長       林  正和君         文部省初等中等         教育局長    辻村 哲夫君         厚生省社会・援         護局長     亀田 克彦君         郵政省放送行政         局長      楠田 修司君         建設省建設経済         局長      小鷲  茂君     事務局側         常任委員会専門         員       田中 久雄君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び  に日本国における合衆国軍隊地位に関する協  定の実施に伴う土地等使用等に関する特別措  置法の一部を改正する法律案内閣提出、衆議  院送付)     ―――――――――――――
  2. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) ただいまから日米安全保障条約実施に伴う土地使用等に関する特別委員会を開会いたします。  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定の実施に伴う土地等使用等に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 板垣正

    板垣正君 板垣正であります。よろしくお願いいたします。  本委員会におきましていよいよ審議始まります。衆議院の審議等を通じても沖縄の心ということがよく取り上げられました。私もこれは大事な問題であろうと思います。  そこで、去る二月十四日に亡くなられた屋良朝苗さん、沖縄教職員会を率い、さらには琉球政府の主席、そして復帰後は初代の知事として文字どおり祖国復帰のために、また沖縄の再建のために献身をされた方でありまして、まさに沖縄の心を体現されている方と。私も、屋良さんが沖縄遺族会の副会長もお務めでございましたので、お目にかかる機会もあり、尊敬申し上げてきたわけであります。  同時にもう一人、どうしても私には忘れられない、また沖縄県にとっても大変大きな存在、これが沖縄県の遺族会長をずっとお務めでございました金城和信さんという方であります。総理もよく御存じの方でございます。金城さんはやはり小学校先生を十五年お務めになり、さらに小学校校長先生を十年、そしてあの沖縄戦におきましてはまさに奇跡的に生き残った方であります。  この方が、昭和二十一年、つまり終戦の翌年でありますが、米軍真和志の村長さんを命ぜられたわけであります。しかも、当時は真和志に住むことを許されないで、はるか南摩文仁に近い米須というところで村民を集めて始まったわけでありますが、その金城さんが一番初めにやられたことは、山野に累々として放棄されている戦没者の御遺骨、御遺体収集することでありました。  しかし、当時、米軍の監視は極めて厳しく、そもそも遺体を集めたりお祭りをするなどということは敵対行為だと。こういう厳しい中で、非常に苦労をされながら、ようやく許可を得て、連日、村の人々と力を合わせて遺骨収集に当たったわけであります。そして、初めてできましたのが今なお摩文仁にございます魂魄之塔であります。これが沖縄におきましては初めてできた戦没者納骨堂でございますけれども、これができましたのが昭和二十一年の二月であります。  さらに、金城さんは続いてひめゆりの塔をつくられました。つまり、女子学生であの戦争看護婦として従軍され、数多くのいたいけな少女が亡くなっています。金城さんの娘さんお二人もこのひめゆり部隊で亡くなっているわけであります。伺いますと、金城さんは奥さんと二人で何日も何日もかかってその最期の地をつてを求めて捜し歩いてようやく見つけた。第三外科ごうと言われる洞窟であります。しかし、そこは米軍によって火炎放射器で焼かれて遺骨も片々たるものしか残っておらない。そこでつくられたのがひめゆりの塔であります。  さらに、師範、男子中学生高校生、当時沖縄におきましては高校、中学校が約十校、女子中学高校、これが約七校、しかも軍の二等兵という階級を男子の場合は与えられ、軍人として戦争にまさに参加をする。あるいは、女子の場合には軍属という身分を与えられ、看護婦として参加をする。つまり、魂魄之塔が多くの戦没者、そしてひめゆりの塔は女子方々健児の塔は男子方々、この三つの塔が沖縄県の慰霊塔始まりと言われ、その後各地にもあの米軍支配下のもとで多くの慰霊塔がつくられた。昭和二十九年に初めて北海道の碑がつくられたのが各県の慰霊碑始まりでありまして、自来、復帰の四十七年までにほとんどの県にできて、一番最後昭和五十一年の新潟の塔であります。  つまり、あの米軍支配下において、やむにやまれない思い沖縄方々遺骨収集に当たられ、慰霊碑を建てられ、さらには本土遺族方たちが、当時はまだ南方には参れませんので、あの沖縄の地にはるかに南をしのびながら慰霊碑を建て、慰霊巡拝団が送られる、慰霊祭が行われる。こういう中で、金城さんが昭和二十七年には沖縄遺族会を創立され、事務局長あるいは会長として文字どおり献身的にお迎えをする、さらに慰霊祭一緒に参列をする、この明け暮れであったわけであります。  昭和四十年に佐藤総理が初めて沖縄に行かれた。橋本総理も恐らく当時御一緒ではなかったかと思うのでありますが、魂魄之塔あるいはひめゆりの塔に御案内したのが金城和信さんであります。さらには、昭和五十年、当時皇太子であられた現両陛下御夫妻が沖縄の地、魂魄之塔に行かれ、ひめゆりの塔にお参りをされておられますが、これまた金城さんが御案内したと。  こういうところに私は沖縄人々のあの言語に絶する、まさに悲惨な、しかも本土防衛のために文字どおり献身的に散華をされたこの人々に対する思い金城さんが口癖にしていたのは、自分は十八万の英霊を背負っていくんだ、英霊とともにあるんだ、生き残った自分はそれ以外ないと、こういう思いを終始述べてきた。  総理もよく御存じだと思うんですが、そうした金城さんを思い沖縄の心について総理のお気持ちを述べていただければと思います。
  4. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 議員からこの御質問があるということで改めて金城さんの略歴を取り寄せてみました。  私が初めて金城さんにお目にかかりましたのは、佐藤総理沖縄を訪問されました一カ月ぐらい後でありましたか、昭和四十年の八月に参りましたときが初めてでありましたが、私どももまさにあのとき魂魄之塔、ひめゆりの塔、健児の塔、そして黎明之塔、金城さん初め何人かの方々にずっとこの地域を御案内いただきました。たしか島守之塔を御案内いただいたのもそのときではなかったかと思います。そして、私どもの参りました四十年、ことに摩文仁一円の木々の高さはせいぜい私どもの背丈ぐらいにしか伸びておりませんでしたし、斜面を下りますと御遺骨が残っておる場所もまだありました。その後、海軍ごうその他新たなごうが発見され、さらに収骨作業が進み、今日いつの間にか摩文仁一円も木々が生い茂っております。  その後、たしか金城さんは沖縄遺族会会長になられたと覚えておりますが、常に沖縄戦で亡くなられた県民はもちろん、両軍兵士まで含めて慰霊に心を砕かれ続けた方であったと思っております。決してお話しにはなりませんでしたけれども、何かの折に話される中で、沖縄戦というものがいかに県民にとって厳しいものであり、その傷口が大きく残っているかということを知らされた方でありました。
  5. 板垣正

    板垣正君 それともう一つは、日本が独立を回復いたしまして、昭和二十七年に初めて遺族援護法が制定され、本土遺族も初めてささやかな年金、弔慰金を受け取ることができたわけであります。そして、この遺族援護法は翌二十八年には関係者努力によって沖縄遺族皆さん方にもそのままに適用される、あるいは次の年に復活しました恩給法もそのまま沖縄県に適用される。つまり、米軍支配下にありましたけれども事戦没者処遇に対してはある意味では沖縄本土一体でありました。  しかも、それからがまた金城さんの本領発揮でありますけれども、さっき申し上げた学徒で亡くなった方々処遇というものは今までのでき上がった援護法では規定されておらない、十七歳以下の者は処遇できない、こういう厚い壁を身をもってぶち破り、当時私は既に日本遺族会に勤務いたしておりましたが、この学徒に対して軍人としての処遇、ひめゆりの塔のああした女子学生にも軍属としての変わらざる処遇の道を開く。さらには、その後援護の幅も広げられまして、昭和五十六年には満六歳以下のいたいけな文字どおりの児童であってもあの戦中、直接戦争に巻き込まれて亡くなった方々に対する道も開かれた。これは橋本総理等も当時大変御尽力されたわけであります。あるいは、対馬丸遭難学童に対する処遇の道も並大抵のものではなかった。  金城さんが厚生省や役所に行くと金城台風が来たといって皆緊張したそうでありますけれども、これも日本遺族会、私ども一体となりましてこの問題に取り組んできた。  そこには脈々として沖縄方々と私ども本当に心が通うと申しますか、それらを通じて私に映じた金城さんを初めとする沖縄のまさに一番深刻な運命に置かれた言語に絶する苦難をされた方々がいささかも人間としての姿といいますか人間性を失わない、耐え抜きかつそこにはかり知れない人間的な強さと優しさ、加えて明るさ、沖縄県のそうした方々のお集まりには必ず歌があります、踊りがあります。そういう姿に、この沖縄方々がその後のまた厳しい試練の中を今日まで耐え抜いてきていただいている。  しかも、当初米軍沖縄の島は二、三週間で攻略してしまってそれから本土に行こう、こういう計画でありましたのを、三カ月にわたって戦い抜いた。戦いは悲惨でありますけれども、この姿というものを私どもは忘れることはできない。まさに大田海軍少将が、沖縄県民かく戦えり、後世格別の配慮を賜らんことをという最後の玉砕前に打電をされた。あれは当時の沖縄県からも打てない、第三十二軍の牛島さんの方からももう電報は打てない、そういう中で大田少将の決断によって発せられた電報であります。  現在、残念ながら沖縄ではただ戦争の悲惨さだけ取り上げられておりますが、繰り返してはならない悲劇だったことは事実であります。しかし、あの厳しい試練の中で最後最後まで国の安定を、本土防衛を願いながら亡くなっていった方々思い、それをまた背負って生きておられる沖縄の心がそこにあるのではないか。  官房長官、どうでしょうか。こうしたことについて同じ世代の者としての御所見を承れればと思いますが。
  6. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 率直に申しまして、戦後五十一年が経過をし忘却が進みつつあります。私はかつての最後の時代を、戦中を知っているわけでありますから大変痛酷な思いがいたします。これを乗り越えて次なる沖縄が、日本が新たに生々発展することを願うことが過去に対する慰霊の真心であるというふうに信じてこれからもやってまいりたい、このように考えます。
  7. 板垣正

    板垣正君 それでは、本論に入らせていただきます。  沖縄の問題あるいは日米安保の問題がいろいろ論議をされる。当然でありますとともに、やはり私ども日本を取り囲むアジア情勢、東アジア国際情勢軍事情勢あるいはそれの展望、この中にひとしく国が存立をし平和安定を図っていかなければならない。そういう意味におきまして、まず外務大臣朝鮮情勢ということについて、現在の北朝鮮の動きについて伺いたいと思います。
  8. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) アジアは現在でも非常に不確定な点あるいは不安定な要因、いろいろございますが、その中でも何と申しましても朝鮮半島情勢というのが一番我々注目しなくちゃいけないところだと存じます。  それで、今北朝鮮状態をどう見るかという御質問でございますが、まず軍事的な面から申しますと、依然として軍事境界線を挟みまして百五十万に及ぶ地上兵力あるいはそのほかの兵力が対峙している状態がございます。特に、北朝鮮の方は百万を超える地上兵力かなりの部分を境界線の方へ前方展開しているという情勢にあるわけでございます。  もとより、今あの国が全体として非常に苦しい状況にございますから、装備の面でもあるいは練度の面でもどうなのかという声はいろいろございます。それにいたしましても、先般も久しぶりにかなり大規模な演習を展開したわけでございますし、それからまたいろいろミサイル等々の新しい兵器を開発しておるんじゃないか、あるいはそれを装備したのではないかといったようなことも一部には伝えられる、こういう状況でございまして、そういった軍事的な力、そうしてそれの維持あるいは強化という努力は依然として続けているという状態にあると思います。  それで、政治の方も、いろいろ言われますけれども、今の段階ではやはり金正日書記が全体としての指導を行っている、こう見られます。そして、黄長燁書記の亡命に見られましたように、あの体制の中にもいろいろなきしみとか矛盾とか出ているのは事実のようでございますが、しかしまだそれが全般としてのあの体制を早急に壊していくという、そういった程度にまで及んでいるとは見られないところでございます。そしてまた、総理が交代するといいましょうか首相代理になるとか、あるいは軍の幹部が次々と逝去し、その後任人事がどうなるかというのが注目される、こういうふうな状態でもございますけれども、全体としてはまだ今の体制が急に政治的に壊れていくということはないだろう、こういうふうに見ております。  しかし、その根底にございます経済あるいは社会状況はどうかと申しますと、冷戦が終わりまして、それまで北朝鮮がいろいろ貿易あるいは経済的な援助の面でつながりのあった国々もいろいろ事情が変わってまいりました。そういった中で、これまでの体制をきちんと続けていくというのは大変な困難があるのでございましょう。もう現に、過去数年間はマイナス成長がずっと続いているんじゃないかというふうに見られておりますし、その中で特にエネルギー、食糧の面の困窮度はここのところかなり強まっている、こういうふうに考えるところでございます。  そのような経済社会、そしてまた政治の難しい状況にございますので、一体国際社会とのかかわりを北朝鮮はどういうふうに考えていくのか、これも我々非常に関心を持って見ておるところですが、御承知のとおり、最近、四者協議事前説明に顔を出してくるとか、あるいはいわゆるKEDOのプロセスにつきましても若干の進展が見られるというふうに、国際社会とのあり方を少し変えていこうという兆しが感じられないことはございません。  しかしながら、そういったいろいろな接触をするにいたしましても、依然として、少なくとも表にいろいろコメントします場合には、従来からのあの姿勢を維持しながら極めて非妥協的な姿勢というものも維持している、こういうことでもございます。  そういった意味で、いろんな要素を見ますと、これだけの困難があれば必ず変化は出てくるだろう、変化なくしてあの政治体制の存続は難しいと思うのでございますけれども、なかなかそう簡単に変わる状態でもないというふうに見ております。
  9. 板垣正

    板垣正君 防衛庁長官に伺いますが、一部報道によりますと、ノドン一号、アメリカの衛星がこれを捕捉し、日本韓国にも通告したと。北東部海岸に三基の発射態勢にあるノドンが配備される、近々これが十基の態勢に入るであろうと。これが事実とすれば大変関心を持たざるを得ない事態だと思いますが、このことについてどういうふうに情報を把握され、またこれについてどうお考えでありますか。外務大臣ですか。
  10. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) ノドンの件につきましてはいろいろな報道その他が伝えられている、それは私どもも承知しておりまして、私どもなりに従来からノドンも含めましていろいろな情報収集には努めてまいりました。  もとより、私ども、今の段階で伝えられていることが確認されていると、こう申し上げるわけにはまいりませんけれども、最近いろいろ報ぜられているように、かつては射程五百キロと言われたものが、いや、千キロになったんだ、いや、さらにそれを超えるものを開発したんだというふうな話もないことはございませんし、またその中の幾つかが既に配備されたんじゃないかというふうな情報もある程度あるということは承知しております。ただ、それを私どもといたしまして確認するというふうな状態には至っていないところでございます。
  11. 板垣正

    板垣正君 そうしますと、アメリカから韓国日本に通告があった、知らせてきたという報道は誤りですか。
  12. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私ども報道一つ一つについてコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。  また、私どもがその情報収集いたしますのもいろいろな手法なりいろいろなソースがございますので、それがどういうソースでどういうチャンネルで我々が先ほど申しましたような見方をしているかということにつきましては、ちょっと答弁を差し控えさせていただきたいと存じます。
  13. 板垣正

    板垣正君 もう一点。  日本にも参りましたコーエン国防長官が、あの後、韓国に行かれまして、十日の日に向こうの国防相あるいは大統領にお会いをして、朝鮮統一後の米軍の残留について、韓国民が同意し両国政府が合意すれば統一後も地域の平和と安定のたの米軍の駐留を望む、こういうふうに言われたと報道もされております。これについてどういう御見解をお持ちですか。
  14. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) もとより、朝鮮半島情勢がこれからどうなるか、なかなか見通しが難しいところでございます。それで、今おっしゃいましたコーエン国防長官自身も他の機会に、朝鮮半島はいろいろ安定の方向に向かうとしてもそれが一体いつか、そんなに早いものじゃないだろうというふうなこともおっしゃっておる。こういうこともございますから、今引用されました韓国における御発言についても、直接それについてどうこうと申し上げることは必ずしも適切でないと思います。  いずれにいたしましても、朝鮮半島情勢がずっと安定していくことは関係者皆が望むことでもあり、そしてそのための努力もしていくわけでございます。しかしながら、仮にいつの日か南北間がきちんと安定した関係になったといたしましても、それだけで、じゃどういう情勢になりどういう軍事態勢韓国においておとりになるかということは、まずは当事国の話ではございますけれども、周辺のいろいろなほかの関係がどうなっているか、これも見なくては一概に言えないと思うのでございます。  そういったこともいろいろ考えながら、基本的に韓国としてどうお考えになるか、そしてそれに対して現在同盟国である米国としてどういうふうに対応するか、そういったこともいろいろ考えながら対応しなくちゃいけない。したがって、現時点において、かなり先情勢変化がこうなるだろうということで確定すれば、それで一義的に軍事態勢がどうこうなるということではないということは、そのとおりだと思います。恐らくそういったことを前提にしながら、お話があるとしたとすればあったんじゃないのかなと、これは推測でございますから、これ以上踏み込むことは差し控えたいと存じます。
  15. 板垣正

    板垣正君 いずれにしましても、差し迫った緊張といいますか、警戒すべきは北朝鮮の動きではないか。予断を許さないということではありますけれども、同時に、いつどういう事態が突発するかわからない。こういう対応について、我が方として、例えば難民が押しかけてくるとか、あるいは局部的とせよ軍事的な紛争が起こるとか、あるいは北朝鮮の中で混乱が起こるのか。これはいずれにしましてももう時間の問題ではないのか、今の状態がいつまでも続くはずはないのじゃないのか。そういう対応について、やはり国民の皆さんも大変不安に思っておられる面があるのじゃないのか。その辺について我が方としての対応、準備ありとお答えできますか。
  16. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもも、先ほども御答弁申し上げましたように、経済状態社会状態、それを踏まえての政治状況というものも非常に北朝鮮は困難な状態になるなと思っております。そしてまた、一方においては、軍事情勢は、先ほども申しましたように依然として大きな兵力を持ち、客観的に見てどうかはともかく、軍事力の維持あるいは強化の姿勢は依然として持っておるわけでございますので、そういったことで、あの国の情勢は目を離せないというのは事実でございます。  今、委員はこの国がそんなにもたないというようなニュアンスのことをおっしゃいました。あるいは、そういうことを前提にしながら、いわば暴発的な動きもあるんじゃないかという御懸念かと存じますけれども、私どももそういった可能性が全くないと言うつもりはございませんけれども、それは当然のこととして、私どもといたしましては、そういう事態というもの、これは我が国を含めて近隣の国にも大きな影響を与えかねないわけでございますから、そういうことはぜひ回避されなくちゃならない、こう思っております。  私どもといたしまして、今外交関係はない国ではございますけれども、よくずっと見ながら、ともかくそういった思わざる、予測されないといいましょうか、好ましくない突発事故が起き、そしてそのことによって大きな影響をこうむることのないように、それなりのいろいろな間接的なもの、あるいは多国間のものも含めまして外交努力はしていく、こういうことでまず対応しなくちゃいけないと考えておる次第でございます。  しかし、それはそれといたしまして、この北朝鮮関係というわけではございませんけれども、我が国に何らかの非常に大きな影響を及ぼし得るような状況が、緊急な事態が起きた場合にどう対応をするか、これは文字どおり我が国の安全保障の問題でございますので、これはこれとして私どももこれまでずっと努力をしてまいりましたし、今日もその点につきまして抜かりのないように政府として考えていく、こういうことだと存じます。
  17. 板垣正

    板垣正君 十分な御配慮をお願いいたしたいと思います。  次は、中国の情勢についてお伺いしたいと思います。  何と申しましても、二十一世紀を展望しますと、中国の今後のあり方というもの、これは我が国にとりましても一番切実な問題でありましょう。日中二十五年の節目という年を迎える、こういう流れの中で私どもは中国の情勢というものを冷静に分析し、またいかにして相互の安定的な関係を図っていくか。そういう面で、やはり鄧小平さんが亡くなった後の中国というのは一体どういうふうなことになっていくのだろうか。  これは内政について云々というよりも、やはりそういう問題も含めて、民間にもいろんな論議があります。何と申しましても、鄧小平さんという大きな改革をやり遂げられ、あるいはカリスマ性と言われるような一つの大きな存在であった。カリスマ性のあれだけ大きな人が亡くなった後は集団指導体制でいくということでありましょうけれども、本当に安定、団結を叫んでいるだけに、今後大きな流れとして、中国のそういう問題については、外務大臣、どういうふうに分析しておられますか。
  18. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員御指摘のとおり、鄧小平氏が中国のごく近い過去においてお持ちになった影響力なり、なし遂げた業績というものは非常に大きなものがあったと思います。それだけに、鄧小平氏亡き後、中国はどういうふうな姿になるんだろうか、まずその指導部はどうなるんだろうかということにつきましては世界じゅうの関心が集まったところでございますが、それはだれよりも中国人自身が、とりわけ中国の指導部自身が真剣に考えたことだと思います。いや、鄧小平氏自身がそのことも真剣に考えたんだと思います。  そういったことで、既にかなり前からそういうことを真剣に考え、いわば後継の体制というものも着々と整備されてきたと申しましょうか、そういう作業が進められておった。そして、もう既に鄧小平氏自身は数年前から第一線から完全に引いておられた、こういう状態があったわけでございます。そういったことで、基本的にはポスト鄧小平の体制というものは江沢民主席を中心にしてきちんとできておると思います。  しかしながら、委員も御指摘になりましたように、カリスマ性とおっしゃいましたけれども、あれだけの大きな業績があっただけに、国民あるいは世界全体に対して持つ心理的な影響も含めて大きなものがあったので、単にその陣容としてあるいは役割として後継体制ができたから、それだけで大丈夫かというところに世間の関心はやはりずっと集中したんだと思います。  しかし、鄧小平氏、逝去されましてからある程度の時日が経過いたしました。その間、私自身も先般中国へ参りまして、江沢民主席あるいは李鵬首相、そしてまた外相はもとよりでございますが、いろいろ話をしてまいりましたけれども、そういったことを通じましても私の感じましたところは、基本的にきちんと後継体制がいっているなと。そして、政治の面でも江沢民総書記を中心にしてきちんとした体制ができ、そして改革・開放路線を中心とするいわゆる鄧小平路線と申しましょうか、そういったことを維持継続していくということで一致しているなと、こんな感じがいたします。  いずれにいたしましても、ことし秋には第十五回の党大会が開かれます。そしてまた、来年はまた全人代があるわけでございますが、そういったところで、今申しましたような現在の体制を中心とする、これから二十一世紀に向かって中国を指導していく体制というものがきちんと安定度を増していくのかどうか、そこのところを関心を持って見ていきたいなと、こう考えている次第でございます。
  19. 板垣正

    板垣正君 今言われたとおりに、中国は、七月の香港の返還、恐らく国を挙げてこの大事業をなし遂げようということ、それから今お話のありました秋の大会というのでこれからの中国の動向というものが非常に注目される。必ずしも中国の内情というものは、安定というよりはむしろいろんな矛盾が集中的にあらわれてきておる、これは個々に申し上げるまでもなく。そういう流れの中で、私どもが非常な関心を持つのはやはり中国の軍近代化の動きであります。  この軍備費の増強、加速が九年連続二けた台の防衛費の近代化を図っておる。過般の全国人民代表大会における李鵬首相の演説におきましても、経済と並んで軍の防衛の問題を非常に大きくといいますか重く取り上げていくと。あるいは中国側の軍事専門家からも、中国の軍隊の近代化あるいは特に海洋権益を守っていく、そういう面におきまして今までよりより積極的な意向が述べられておる。  また、いろいろな報道によりますと、ロシアから新しい駆逐艦を導入するとか、あるいはロシアの爆撃機ですか、これを既に四機入手をしておるという報道とか、あるいは南アフリカとの間で武装ヘリ、これは極めて性能のすぐれたもの、航続距離も千百キロもある、これが導入をされますと台湾海峡をまさに一またぎ、あるいはもう既にソ連の一番優秀な戦闘機と言われるスホーイ27、これの導入あるいは生産、そういう計画も進められている。これらを通じましてアメリカ側も極めていろいろ分析をし、いろいろな情報が伝えられております。こういう動きに対して我が国として、これは防衛庁長官ですか、外務大臣ですか、率直に見解を承りたい。
  20. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 確かに、今、委員が御指摘になられましたとおり、中国におきましては最近、中国自体はもとから核戦力も持っておるわけでございますけれども海軍、空軍にかなりの力を注いできておりますし、特に海洋における活動範囲が非常に拡大してきております。それと同時に、台湾海峡を挟む対岸で統合演習が行われる等、軍においても統合能力を持ってきておる、そういうことにつきましては私どもも絶えず注目しながら関心を持っておるところでございます。  確かに先ほど委員から国防費につきましても二けた台の伸びだということでございますけれども、ただこの辺について言わせてもらいますならば、中国自体がかなりのインフレでございますからほかの予算等もそういうテンポで伸びておりますので、これだけをもって一概に軍事費が伸びているというふうな、そういう指摘になるわけではございませんけれども、やはりこれから先、十分注目しながらやっていかなきゃならない、そういうふうに思っております。
  21. 板垣正

    板垣正君 中国の国防費というものが表にあらわれたのは八百五億元ですか、こういうものは極めて表面にあらわれたものであって、武装の開発とか装備とか、いろいろな面におきまして予算で見えない不透明な部分が非常に多い、表にあらわれた予算の恐らく三ないし五倍あるだろうというのが専門家の見方でもあるわけであります。  劉華清という軍事委員会の副主席、これは海軍の大将ですね、この人が中国は沿岸中心の防衛戦略を超えて第一列島群の海域を管理しなければならない、こういうことを言ったと伝えられておる。第一列島というのは千島、日本、台湾、南シナ海、この海域を指すと、こう言われるわけですね。  こういう面に見られるように、昨年の、過般の台湾における緊張がございました。アメリカの航空母艦の派遣によって、幸いあの地域では紛争が未然に防止をされました。しかし、このことは中国側にとりましては恐らく極めて遺憾なことであったでしょう。  そういう中国の立場からするならば、まさにこれからの十年間は臥薪嘗胆の十年だと。今に強い国に、豊かな強い国に、これは鄧小平さんの目標でもあったわけですね。その軍部の流れというものが、国内的な矛盾がいろいろ出てまいりますと、軍の力というものがどうしても強くなってくる。あるいは対内的ないろんな矛盾の問題というものを対外的に一つの仮想をつくって国民の目をそらす、こういう中における動きというものも十分考えなければならない、こう思うのであります。  いずれにしましても、中国との間は、日米を基軸としながら、中国の問題こそ国の命運を、あるいはアジア太平洋地域の安定と平和を守れるかどうか。ここで積極的に中国と関係を深め、いわゆる関与政策と言われる中国を国際社会のルールの中に組み入れていこうというアメリカの基本政策があり、我が国もその立場において極めて重要な立場にある。  そこで、総理に伺いたいんですが、近く李鵬首相も見えるということですけれども、率直に言って私ども今までの中国外交に対する姿勢というのがいささか遠慮し過ぎではないのか、もっと悪く言うならば謝罪外交じゃないのか、これは多くの国民が抱いている率直な気持ちであろうと思う。  日中友好、健全な関係を望まない者はいない。そうであるならば、やはり健全な立場において両方が相互に内政干渉はしないと、これは日中共同宣言にもうたわれております。教科書の問題におきまして、靖国神社の問題におきまして、多くの国民がこうした問題を極めて憂慮しておる、残念に思っておる。中国との健全な関係をつくり上げていく、これが国益にもかかわることであり、アジアの安定にかかわる。こういう立場におきまして、総理の中国に対する外交の基本的なお考えについて承りたいと思います。
  22. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 昨年、サンタモニカで初めての日米首脳会談を行いました後、四月の東京における日米首脳会談、その際、私はクリントン大統領に対して中国との関係の改善を私の方からアメリカ側に要請をいたしました。  私は、今後のアジア太平洋地域というものの安定を考えますときに幾つかのかぎがあると思いますけれども、その中の一つのポイントは、日米、日中、米中、この三角関係が非常にしっかりと安定し、より深い関係をつくっていくことだと思います。そして、その限りにおいて、昨年の時点におきましては私はアメリカ側の努力を要請いたしました。  殊に、その時点におきまして、これは今後もまだ引き続いている問題でありますが、私は、中国をWTOに加盟させる、国際社会に建設的なパートナーとして受け入れるためにもWTOに迎え入れることの必要性というものを強調してまいりました。これは中国のためにもなることでありますけれども、中国のためになるだけではなく、国際社会、国際経済の立場においても決して私はマイナスではない、むしろ各国に非常に大きなプラスを及ぼすと考えております。それはその後のリヨン・サミットにおいて、またヨーロッパ側の首脳たちにも私自身が主張してきたことの一つでございました。  私自身の不手際もありまして、昨年の後半はむしろ日中が多少ぎくしゃくした関係をつくりましたけれども、APECの機会を利用しての日中首脳会談である程度それは回復ができたと言われておりますし、先般、池田外務大臣に訪中をいただきましたときにも、そうした点では、日中関係いよいよ二十五周年という年にふさわしい関係を構築すべく今動き始めておると思います。  そして同時に、中国の国際社会への迎え入れ、これが一つ試される場面が本年の香港返還、そして返還をされました後の香港を中国がいかに現在の香港の姿を保ち続けていくことができるか、私は一つの大きなポイントはここにもあろうと思います。私は、その点、中国政府は香港に対して、また世界に対して宣言をしている姿を守ろうとするであろうと思います。ただ、問題は香港の経済的繁栄、そしてまさに一国二制度という姿の中での存在というものを他の地域がいつまで容認していくだろう、そうした点になりますと、開発のおくれた地域に全く不安がないと言い切ることもできないと思います。  現在、中国政府は改革・開放路線をとり続け、鄧小平さんの亡き後におきましても国際社会におけるかかわりをふやしていこうとしているわけでありますから、我々はその努力を慫慂心しつつ、より建設的なパートナーとしての中国を国際社会に迎え入れていく、そのためのいわば仲介役を果たしていくところに一つの大きな役割がある、私はそのように考えております。
  23. 板垣正

    板垣正君 アジア、東南アジアの国々もそれぞれ独立、言ってみれば明治維新を迎えたような流れの中で活発な発展を続けつつある。同時に、近代国家としての目覚めとともに、東南アジアを含めたアジア情勢の安定というものについて大きな関心も持たれてくる。  そういう中で、ASEANフォーラムというあり方が、私も先年東南アジアを回りまして異口同音に言われるのは、やはり日米体制というアメリカのプレゼンスというものに対する評価とともに、同時にアジアにおいてはARF、これはあくまで対話と協調の中でいろいろ困難な問題を解決していくんだ、こういう独特ないわばアジア的な旨い方として彼らから話を聞かせてもらいました。  そのASEANフォーラムの信頼醸成作業部会というのが、先般、三月でございますか、中国で開かれました。これは、中国側がこのごろはフォーラムの一員となり、しかも信頼醸成作業部会の議長を買って出て、そして中国で開かれた。これは日本からも当然参加をしているわけでありますけれども、それだけいろいろな面で注目をされました。そしてまた、対話と協調が地域の平和と安全保障を確保する主要な手段である、こういう基本点では認識が一致した。  ただし、地域の安保観にはその違いが浮き彫りになった。日米安保体制をどう見るか、つまり東南アジアの国々の見方、日本の見方と中国の見方というのがある面ではそこで一つ際立って出てきた。これは中国もそういうことをいろいろな機会に言っております。つまり、日米安保体制というのは軍事同盟だと、それを地域の安全保障の基礎とみなすことは正しいとは思えない、そういう立場から随分時間をかけて論議をしたけれども、二国間軍事同盟の地域安全保障における役割に関し合意点は得られなかった。  東南アジア地域を対象とする戦略的な対話、見方によりますとARFというものの限界と申しますか、現にARFにおきましては最大課題である六カ国が地域領有を主張しておりますスプラトリー、南沙の問題、そうした問題については公式な議題にならない、個別の国際問題も取り上げられない、あくまで対話を通じた相互信頼の構築が重点に置かれた、こういうあり方について我々としてどう見るのか。  ある意味では、ARFの効用がそれだけでは地域の平和、安定にはやはり限界がある。むしろ日米安保体制という二国間同盟、あるいはアメリカがほかの国々と結んでいる二国間同盟、ARFがあるからそういう二国間のものはもう要らないんだというような極論が一部にありますけれども、やはりそういう意味における安保体制というものの認識をもう一度新たにするとともに、だからこそこうした問題における、今、総理も言われた日米中の関係、こういう関係における防衛問題について、まさに信頼醸成措置について、基本的な問題について忌憚なく話し合えるような場をつくり上げていくということ、今はこういう時期ではないかと思いますが、その点はいかがですか。
  24. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員御指摘のとおり、ASEAN地域フォーラムはこの地域における信頼醸成の多国間の枠組みとして、あるいはその安全保障問題全般についてもいろいろ話をする、対話を進める枠組みとして近年急速にその役割の重要性を高めてきた、こう考えております。  しかしながら、同時にこれも、委員御指摘になりましたけれども、この枠組みがこの地域の安定をもたらす上で果たす役割というものにも一定のというよりもかなり大きな限界があるのも、これまた客観的な事実でございます。何と申しましても、安全保障を考えます場合に、そういった対話を通じてのその信頼の醸成、その上に立っての二国間あるいは多国間でのいわゆる予防外交の展開というもの、最終的にはそういったものを担保するものとして実力を備えた安全保障の装置というものが必要であることは、これは否定できません。  そういった観点から申しますと、ヨーロッパにおきましてはOSCEのようないろいろ対話の枠組みもしっかりしてきておりますし、しかも根底のところにはNATOのような実力を備えた多国間の枠組みが厳然としてあるわけでございます。  しかしながら、アジアの場合にはそうはなっていない。ARFも役割を高めてきたといいましても、まだ信頼醸成の段階でございます。そして、最後の根っこのところの、その実力を備えた安全保障の装置をどうするかと考えました場合には、やはり基本的に、米国を一方の当事者とする二国間の関係がこれまで日米安保体制も含めまして幾つかこの地域にございますが、現在の段階ではそういったものを、新しいその国際情勢、この地域情勢の中での安定を守っていくための枠組みと考えざるを得ないんじゃないのかなと、遠い将来は別として、そういうふうに考えております。  また、そういった中で、さて中国との関係どう考えるかでございますけれども委員も御指摘になりましたように、中国が多国間のARFの枠組みの中で特に去年あたりから随分積極的な姿勢を示してきたということを私ども高く評価しております。信頼醸成のワーキンググループも、これまでは日本とインドネシアが共同議長を務めてきたわけでございますが、委員御指摘のように、今回から中国がフィリピンと共同議長を務めまして、非常に積極的に地域全般の安定のために役割を果たしてこようとしている。これは非常に歓迎すべきことだと思っております。  しかしながら、その中でも、お話がございましたけれども、まだ完全に安全保障についての考えが一致するには至っておりません。それはいろいろ対話を進める中で、ARFの場でもあるいは二国間の場でも対話を進める中で、次第にお互いの文字どおり信頼関係を高めていくということではないかと存じます。  日米安保体制につきましても、中国からは、昨年のいわゆる日米安保共同宣言以来、いろいろそれを心配だということが表明されてきたわけでございます。その点につきましては、総理もまた私もあらゆる場で、あらゆるレベルで、決してこの日米関係というものは中国その他特定の国を対象に考えながらやっているものじゃないんだ、むしろ先ほど申しましたようなこの地域情勢から考えて、地域全体の安定をもたらすために重要ないわば国際公共財であるというような観点を中国にもるる説明しております。必ずしもわかったとは言いませんけれども、去年の早い時期に比べますと、だんだんとそのあたりの認識の差というものが縮まっているといいましょうか、ああそうか、日本がそう言うならそういう観点もあるのかなというとらえ方も中国側においてあるんじゃないかと思います。  また、それは決してARFの場だけじゃなくて、今申しましたような二国間の対話の場でも十分やっているわけでございますが、とりわけ三月でございますが、日中間で安全保障に関する、事務レベルではございますけれどもハイレベルの、局長レベルの対話を行いました。ポリティカルミリタリーの対話でございますが、その中では随分突っ込んだやりとりをいたしております。それは日米安保体制のあり方についても突っ込んだ議論をいたしましたし、また先ほど委員がおっしゃいましたいわゆる中国の軍事の近代化の持つ意味につきましても、こちらからも随分話をし、そうしてとりわけその透明度を高めるというふうなことについても、その必要性なりについてもいろいろ議論したところでございます。  必ずしもまだ認識が一致するわけじゃございませんけれども、こういったものを積み重ねることを通じて、先ほど総理もおっしゃいましたこの地域の安定のためあるいは国際社会全体のためにも日米中が手を携えて進んでいくということが基本的に大切なわけでございますが、そういった方向に進めてまいりたいと考える次第でございます。
  25. 板垣正

    板垣正君 それでは、沖縄の問題に入ってまいりたいと思います。  これは三月の一部の報道でありますけれどもアメリカの上院において、上院議員が沖縄問題について決議の案を提起し、この決議が成立するんじゃないか、こういう報道がございました。このことについてもどうなったか承りたいと思います。  その内容的に伝えられるものが、アメリカアジア情勢なりあるいは沖縄問題に関する考え方が上院の有志議員が提起された一つの決議案という姿でうかがわれるものがあるんではないのか。アジア太平洋地域における主要な安保上、政治上の対立が平和的かつ恒久的に解決するまで同地域に展開する十万人体制は維持すべきである、アジア太平洋地域の安定は米国の国益にも大きく寄与する、東シナ海は太平洋からインド洋、ペルシャ湾に至る極めて重要な水域に当たる、あるいは米軍の削減は地域の軍拡を誘発する、これはアメリカの立場からの見方でありますけれども沖縄の基地の問題というものは極めて深刻な問題であります。  沖縄皆さん方が、まさに極端な基地の集中の中でいろいろ日常生活においても支障が生じる姿というものを何とか軽減しなければと、こういう思いはしながら、同時に大きな流れというものの中における沖縄の基地の価値というもの、これはアジア太平洋情勢というものが今なお不安定、不透明あるいは紛争が起こる可能性をはらんだ地域というものがある、この面におきましてはヨーロッパ情勢とは大きく趣を異にする。  そういうことで、アジアの安定のかなめというくらいの位置づけが日米関係にあり、かつそれを象徴する沖縄の基地の問題というものがあると思う。言ってみれば、一つの今のアジア情勢における現実の中における沖縄の基地、そういう面におきまして沖縄皆さん方の御苦労はわかりながら、私どももより広いといいますか国際情勢の深い認識の上に立って、そして同時に冒頭申し上げた沖縄の心を察するならば、もっと平和、安定のために日本の役割を積極的に果たしてもらいたい。  こういう沖縄皆さん方の根底にある思い、後からまた申し上げたいと思いますが、いわゆる一坪地主等に象徴される、諸悪の根源は基地にあるんだ、基地をなくせば、あるいは沖縄側においてもアクションプログラムという名のもとに二〇一五年にはアメリカの基地を全部なくす、そういう展望の中でいろいろな構想も立てられると。  私ども沖縄に参りましてもそういうお話も承るわけでありますけれども、その辺にこの日米安保体制の中における、あるいはアジアにおける現状を踏まえながら、日米安保体制の位置づけ、沖縄基地の、これは本土に移転し得るものは、可能性のあるものは、これからの検討もいろいろあり得るとしても、おのずから成るあの基地の戦略的な要衝としての立場、これが沖縄の基地というものが現在の内外情勢の中、アジア情勢の中では、ある期間にわたって、相当長期にわたって沖縄の皆様方にその現実は現実として受けとめていただかなければならないのではないのか。  その辺の沖縄の基地の価値ということについて、もっと政府の立場からも率直に県民皆さん方にも日本国民の皆さん方にも、平和のために必要である、アジア安定のためにより日本が積極的な行動を展開していく、言うなればそういう立場において必要であると。同時に、戦略的要衝であるということは経済的にも要衝でありましょう。特に開かれたアジア、開かれた世界のもとにおける沖縄経済的要衝としての価値というのもまたこれは高いものがある。こういうことについての見解を承りたい。
  26. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員も御指摘のとおり、沖縄にございます基地も含めまして我が国にございます米軍の基地の果たす役割、これは当然のこととして日米安保条約に基づく米国のコミットトメントを担保するためのものでございます。  そういった意味では、我が国の安全そして極東地域の安定と平和のために役立つ、そのために米国としてもそういった軍のプレゼンスを維持しよう、そして日本米軍が活動できるようにいろいろな対応をしなくちゃいけませんが、その中心的なものとして施設区域の提供をしようと、こういうことになっているわけでございます。しかし、それは同時に、そのように米軍日本に駐留してきちんとこの地域の安定を維持しているということが広くアジア太平洋全体の安定のためにも役割を果たしているというのはそのとおりでございます。  そういった意味におきまして、冷戦が終えんして大分年月もたちましたけれども、依然として不安定要因、そして先行きのはっきりと見えてこないこのアジア太平洋の地域でございますので、いわばこの地域全体の安定を守るという意味において、駐留米軍の果たしている役割といいましょうか持っている効果というものは非常に大きいものがあろうと思います。そしてまた、これも委員御指摘になりましたけれども沖縄という地域の持つ戦略的な観点からの有利性というものがその根底にあるということは事実だと存じます。  そして、現在の時点に立って見ます限り、こういった沖縄におけるものも含めまして駐日米軍のプレゼンス、そしてそれも含めたアジア太平洋地域全体としての米軍の十万のプレゼンスというものはこの地域の安定のために必要であろうと、こう米国も認識しそのような役割を果たそうとしているわけでございますし、日本政府といたしましても現時点ではそのように考えているわけでございます。  ただ、そういった前提の中でも、我々、沖縄県民方々の担っておられる大きな役割と同時に大きな御負担というものもよく考えなくちゃいけない、そしてあとう限りその軽減に努めなくちゃならないということで、その削減のSACOの作業を初めといたしましてその面での努力もしているところでございます。  また同時に、委員御指摘になりました沖縄のそういった戦略的な利点というのは、同時に通商あるいは経済面その他のもろもろの面においても沖縄の有利な地位を示しているのではないかという御示唆がございましたが、それはそのとおりでございまして、そういった点も生かしながら沖縄のこれからの振興という道も、これは安全保障の問題とは別個のものとしてではございますけれども、政府としても進めていかなくちゃいけない、このように考える次第でございます。
  27. 板垣正

    板垣正君 ここで沖縄の問題からちょっとずれますけれども、関連はあると思うんですが、防衛庁長官防衛費の問題です。  いわゆる新しい大綱のもとに中期防が現在進められているわけであります。そして、内外情勢は先ほど来いろいろお話のあったとおりであります。そういう中における自衛隊の存在、我が国の防衛体制、いろいろな不備な面がありますけれども、逐次問題が提起され、かつ進められております。  こういう中で、我が国として財政的な改革を初めもろもろの改革を思い切ってやらなければならない。一切聖域を認めず、こういうことは総理が陣頭に立っての我が国の置かれた現実でありましょう。過般、経済構造改革の問題について各省庁の聴取があり、防衛庁長官も出席されていろいろな見解を述べられたということも承っておりますけれども、私どもも聖域なしという形で大いに検討されるということは当然だと思うんです。  同時に、一国の安全、平和、こういう問題におきましては、これこそまさに国家存立の根本であります。しかも、防衛の問題については、新しい防衛計画の大綱がいろいろ検討される、中期防のもとに、私どもから見ますると相当出血を強要されるような、師団の数も減らす、現職の自衛隊の第一線の数も減らす、航空部隊も減らす、艦艇も減らすと。大きな流れは軍縮にあるという主張もございますけれども、東アジア情勢は決してそういう流れを安心して受けとめられる情勢にはない。  したがいまして、防衛の問題については相当これは検討しなければならない。特に防衛費というものは極めて特別な構成といいますか、四割は人件・糧食費で、四割は歳出化経費、訓練等に充てられる、あるいは米軍の基地対策費はわずか二割しかない。  こういうある意味の枠の決まった中で、とにかく思い切って中期防の見直しの前倒しもやるんだと、こういう形で扱われる方向というものを私は大変懸念いたしております。  この問題について、まず責任者である防衛庁長官の御見解を承りたい。
  28. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 委員御指摘のとおり、新しい時代に即応して防衛大綱が一昨年つくられたわけでございます。そして、それに基づいて向こう五年間の中期防衛力整備計画も策定されまして、平成八年度を初年度とする五カ年計画がスタートしておるわけでございます。  その防衛大綱並びに中期防衛計画をつくる当時から大変厳しい財政事情だということは言われておりましたので、防衛大綱におきましてもまた中期防におきましてもかなり思い切ってそのような検討を行いまして、効率化、合理化、コンパクト化、これをモットーにしてかなり詰め切った計画になっております。したがいまして、御承知のとおり、定数等にしましても先ほど言われましたように十八万人から十六万人というふうに減らしましたし、師団を旅団化する等の方策もとっておるわけでございます。  そういう中で中期防がスタートしたわけでございますが、ただこの場合に、三年を経た時点で一応これについて検討するという余地は残しておりました。ところが一方、財政状況が非常に逼迫してまいってきておりますだけに、総理みずからが先頭に立たれまして財政構造改革元年だということでスタートしておられまして、そういう中で財政構造改革会議におきましても、この防衛費についても聖域ではないんだ、やはり検討はすべきであるというふうな御指摘がなされたわけでございます。  私どもは、先ほど委員御指摘のように、節度ある防衛力をみずから整備しながら、それと同時に日米安保体制という米軍との関係を構築して、その中でとにかく我が国の安全をいかにして守っていくか、そういうことで努力しておるわけでございますけれども、今言うような状況でございますので、やはり聖域なしという原則には従いましていろいろと検討していきたいと思っておるところでございます。  ただ、委員が今御指摘になられましたように、防衛費につきましては若干性格を異にしております。例えば、中期防も五カ年計画といいますけれども、その中には人件費とか糧食費とかそういうものが入っているわけでございまして、これをほかの公共事業みたいに五年を六年、七年に延ばせと言われましても、五年間で払う給料を、あるいは五年間で食べさせる食糧を六年、七年でというわけにはいかぬわけでございますから、全く性格は違うわけでございます。それとまた、いろいろと八年、九年度に発注いたしました経費については後年度負担ということで、いわゆる歳出化経費としてもう決まっておるわけでございまして、そういう残りの分にしか手の入れようがないわけでございます。  それと同時に、もう一つは、ほかの計画と違いますのは、私どもは現状を一応維持しようという形でやっておりますから、新たなものを取得するというよりも、現状のいろいろ持っている艦船、飛行機あるいは陸上自衛隊の持っていろいろんなものがだんだん陳腐化して使えなくなる、耐用年数が来る、そのときに新たなものをそれに取ってかわろうとして入れるわけでございますから、新たに入れるものにつきましてもこれまた更新にすぎないという点があるわけでございまして、その辺で大変苦慮しているところでございます。  幸いに、先般の財政構造改革会議において取りまとめられました文書の中においても、「基本的考え方」において、防衛費分野について「我が国の安全保障上の観点と経済・財政事情等を勘案し、節度ある整備を行うことが必要であり、現下の国際情勢及び危機的な財政事情の下財政構造改革が喫緊の課題となっていること等を踏まえ、SACO関連事業を着実に実施するとともに、」中期防衛力整備計画の縮減等、「当面の防衛関係費の抑制について検討する。」というふうにされております。今この中で企画委員会等が中心になられましてヒアリングを行っておられますので、先ほど述べましたような趣旨等も開陳させていただきまして、これから先もいろいろと作業に加わりながら、防衛力整備について落ち度のないようにといいますか、我が国の安全上問題を起こさないように、しかしさりとて財政構造改革のこれから先の進め方にもできる限りの協力をしながらやっていこうと思っているところでございます。
  29. 板垣正

    板垣正君 大変困難な問題と思いますが、防衛庁長官、ぜひ頑張っていただきたい。  ここで、私は宮澤先生に一時交代をいたします。
  30. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 関連質疑を許します。宮澤弘君。
  31. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 私は、日米安全保障条約に関連をいたしまして幾つかの質問をいたしたいと思います。  昨年の四月、ちょうど一年前になりますが、クリントン米国大統領が来日をされまして、日米両首脳の間で日米安全保障共同宣言が署名されました。世間では、これによって日米安保の再定義、再定義と申しますのはマスコミが再定義という言い方をいたしておりまして、外務省は再確認という言葉を使っておいでになるようでありますけれども、これによりまして日米安保の再定義、再確認に一区切りがついた、こういうふうに世間では言われております。  そこで、外務大臣に伺います。  再確認あるいは再定義、どちらの言葉でもよろしいのでありますけれども、どういう背景のもとにどういう理由でその再定義なり再確認が行われたのか、その点からまず伺いたいと思います。
  32. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 日米安保条約あるいは安保体制はもう既に非常に長い歴史を持っております。それがスタートいたしました時点あるいは一九六〇年において現在のような新たな安保条約になった時点、その当時は御承知のとおり冷戦構造と言われる世界情勢あるいは我が国周辺の状況、そういった中でのことでございました。  そして、そういった状況の中で我が国がずっと安全を確保することができ、そういった中でまた経済的な発展も遂げることができた。そういった意味日米安保体制というものは大変大きな役割を果たしてきたんだと思います、我が国の安全、発展のために。それと同時にまた、これは我が国だけではなくてその地域の安定のためにも役割を果たしてきたんだと思います。  しかし、その後世界情勢は非常に大きく転換いたしました。一九八九年にベルリンの壁がなくなる、これが非常に劇的な姿で冷戦の終えんを象徴したわけでございますが、それからも相当な年月がたちまして、現在はもう冷戦というものほかなり過去のものだと、こういうことになっております。  そういった状況の中で、冷戦下で役割を果たしてきた日米安保体制というものは一体どうなるんだろうか。これはだれしもが考え、これまでもいろいろな観点から議論がされてきたところでございます。そして、日米の政府間におきましてもいろいろ緊密に協議が進められてまいりました。  そして、現在の世界の情勢、とりわけアジア太平洋の状況というものを考えますと、確かに冷戦は終わったんだけれども、それでは本当に確固たる平和の基盤あるいは安定の基盤というものがあるか、将来に向かって完全に平和への道がますます固まるような方向に進んでいるかと申しますと、なかなかそこまで確信が持てない。確かに大きな流れは安定化あるいは平和の方へ向かっているとはいいましても、それはまだふわふわとした不安定な状況であるということがございますし、先行きどういう形になるかというのは正直言ってわからない。  それから、先ほどからいろいろ議論もございますけれども、しかもそういったものを担保していくためのきちんとした多国間の枠組みというものが、これはグローバルな国連の枠組みも含めて、あるいはリージョナルなあるいはその他のものも含めまして、きちんとしたそういった国際的な枠組みもまた確立しておるとは申せません。  そういった状況の中で、やはり我が国の安全を、そしてこの地域の安定をどうするかと考えた場合には、冷戦時代に役割を果たしたと同じ意味ではございませんけれども、現在の時点での日米安全保障体制というものが大きな役割を果たす効果を持つと、こういうふうなことを日米共通の認識として再確認し、そういった上に立ちまして、この日米安保体制がこれからもきちんとその役割を果たしていくようにお互いに協力、努力しようということを再確認したわけでございます。それと同時に、これは安全保障面だけではなくて幅広い日米関係全体の基礎にもなっているんだということ、こういったことも同時に確認したわけでございます。  もとより、これまでもちょっと申しましたけれども、これは日本のためだけではなくてこの地域全体の安定のためにも役割を果たしているんだぞということも確認いたしまして、そういったことを日本、米国、そしてまたそのほかのこの地域の国々に対しても宣明した、明らかにした、そういうふうに再確認というものを私はとらえております。
  33. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 この共同宣言を読みますと、今まで日米安保条約で極東という概念がございましたけれども、新たに日本周辺地域という新しい概念が出てまいりました。これについてはかねてからいろいろ議論が世間でもあるところであります。しかし、私はきょうはそれについて究明はいたしません。共同宣言を読みますと、「アジア太平洋地域」という呼称が随所に非常にたくさん出てまいります。  そこで、外務大臣に伺います。  現在の日米安保条約第六条に極東という概念がございます。「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍日本国において施設及び区域を使用することを許される。」と。極東の中でこういうことをアメリカ軍が許されるんだということが書いてあるわけであります。  この極東の範囲でございますね。これは従来から政府の統一見解がございまして、昨年、衆議院の方の質問に対する内閣の答弁書も、これを読みますと、極東という区域としては、大体においてフィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であって、韓国、台湾地域もこれに含まれるということであります、こういうふうに政府答弁をしておいでになる。  これは従来の解釈だと思いますが、共同宣言がございましたけれども、極東の範囲ということについては従来と同じでございますか、あるいは異なっておりますか。
  34. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 極東の地域につきましては、委員も今おっしゃいましたけれども、政府としては、日米安保条約上の極東というものは、日米両国が平和、安全の維持に共通の関心を有している区域でありまして、具体的には大体においてフィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域である、これが従来からの政府の一貫した考えでございまして、これは昨年の安保共同宣言におきましてもいささかも変更されるところではございません。
  35. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 極東の概念は変更されていないということをおっしゃいました。  外務大臣、世間では、この共同宣言によって両国政府日米安保体制の適用範囲を従前の極東からアジア太平洋地域に広げる考えを示したんだ、あるいは米軍の活動範囲がアジア太平洋地域に広がった、日米安保再確認、再定義の意義はまさにそこにあるんだと、こういうことを議論する者があります。あるいは、そういう考え方というものが少なからずある。これについてどうお考えですか。
  36. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 先ほど申しましたように、極東の地域は全く変更しておりませんし、そういった意味日米安保条約そのものも全く変わっていないわけでございます。  それで、今御指摘になった点でございますが、米軍の活動という観点から申しますと、今おっしゃいました安保条約六条は、従来から、米国が安保条約に基づきまして日本の安全そして極東地域の平和と安定のために役割を果たしている、それに必要な基地、日本施設区域を使うことができるというわけでございます。極東の地域の平和と安定を守るためでございますけれども、しかし米軍の活動は、だからといってそれじゃその地域だけに限定されるのかというと、必ずしもそうではございませんで、極東の地域の平和や安定に非常に大きな影響を与える、そういった状況にあれば、その活動はその外に広がることもあり得るんだということは、これも従来から政府はずっと答弁してきたところだと思います。  それから、適用云々という御指摘がございましたが、これは変わりません。先ほども申しましたように、日米安保条約は全く変わっていないし、極東の範囲も変わっていないわけでございますから、それを超えてより広い地域に適用されるということはないわけでございます。  先ほど私は効果だとか役割という言い方をしましたけれども、このような日米安保条約に基づいて米軍がきちんと活動する、あるいは必要があれば活動するぞということでプレゼンスを維持するということがその作用あるいは効果としてより広い地域にいわば安心感をもたらし、アジア太平洋地域全般の安定要因としての役割を果たす、あるいは効果をもたらす、こういうことはあるということでございます。  そして、国際情勢変化に伴って、そういった効果あるいは作用という面が従来よりより強く、またより広い範囲において認識されるに至ったという点はあるいはあるのかと思います。
  37. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 私も、共同宣言によって安保条約の適用範囲が広がったとは考えておりません。こういう言い方がいいか悪いかわかりませんけれどもアジア太平洋地域日米安保体制の視野の中に非常に大きく入ってきた、こういう言い方も言えるのではなかろうかと私は考えております。  そこで、総理に伺いたいと思います。  総理はこの一月、シンガポールで演説をなさいました。その演説の中で、アジア太平洋地域では米国のプレゼンスが必要不可欠であるということを前提にされて、日米安保体制はこの地域の安定及び経済的繁栄の維持のための一種の公共財の役割を果たしている、こういう演説をしておいでになります。  公共財というのは大変含蓄のある表現だと思いますが、もう少し具体的に総理意味されようと思われたことを御説明いただきたいと思います。
  38. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 議員の読み上げられましたその後ろを、すなわち省略されました部分をつけ加えさせていただきたいのでありますが、私は、まさに議員から今御指摘のありましたように、日米安保体制はこの地域の安定及び経済的繁栄の維持のための一種の公共財の役割を果たすものであり、いかなる意味においても特定の国に向けられたものではないことが正しく理解されるように望んでおりますという文句をその後ろにつけて発言いたしました。  これは先ほど来外務大臣が御答弁申し上げましたものを土台にお聞きいただきたいと思うのでありますが、昨年の日米安保共同宣言はまさに私自身の気持ちからまいりましても日米安保体制というものの再確認でありまして、新たに定義し直したとか範囲を拡大したとか、そういった性格のものではない、私自身そう考えております。  その上で、東西二大陣営対立といった時代が大きく変化をして、しかしその中でまたさまざまな原因における地域紛争が現に発生し、あるいは将来発生する可能性が懸念される。そうした地域国際社会の中に分散してまいりますにつれて、私は、世間から、言いかえれば他国からこの日米安保条約、日米安保体制というものを見る視野というものに随分大きな変化が生じてきたと思っております。  昨年の日米首脳会談以前に、既に豪州あるいはニュージーランド、こうした国々から、日米安保体制というものが今後も継続すること、これが安定していることを求める声は出ておりました。また、今年の一月、その講演をいたします前にASEANのうち五カ国を回っておりましたわけでありますが、この訪問だけではなく、APECの際等の二国間協議あるいはコーヒーブレークの間の首脳同士の雑談、そういったものの中で、かつて懸念あるいは批判の声の聞かれましたような地域の首脳たちからも、日米安保体制というものが存在し、それが健全に維持されていることを評価し、それが地域のバランスの上に非常に大きく微妙に影響してこの地域全体の安定を保っている、そうした御意見というものがこのごろよく聞かれることであります。  私が、この地域の安定及び経済的繁栄の維持のための一種の公共財のような役割、そのような思いを持つと同時に、これが特定の国を意識し、その特定の国に向けられたものではないことが理解されるようにという発言をしたのはまさにそのような思いからであります。
  39. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 総理の御趣旨は理解をいたしました。  そこで次に、在日米軍のあり方との関連におきまして、有事駐留あるいは基地の日米共同使用という問題について伺いたいと思います。  先般、これは新聞によりますと米国防総省の前高官と書いておりますが、私は恐らくペリー氏ではなかろうかと思います。ペリー氏が来日をいたしまして、その際に、これも新聞の報道するところによりますと、「沖縄県が求めている駐留米海兵隊の削減問題についても、「プレゼンスが大事で数字ではない」」、こういうことを言い、さらに「沖縄に海兵隊装備の事前集積施設を設ける有事駐留や基地の日米共同使用が認められれば、将来の削減は理論的に可能だ」という見解を示して、「さらに、こうした代替案を検討する場として、秋をめどに結論を出す「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)の見直し協議をあげ、削減問題とガイドライン見直しを結びつけて検討することが望ましい」、こういうふうに報道をされております。  そこで、まず外務大臣に伺います。  有事駐留について伺いたいと思います。まず、有事駐留の概念と申しますか、それについてひとつ御説明をいただきたいと思います。
  40. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 有事駐留と申しますのは、その有事というもの自体が国際法的にきちんとした定義があるわけじゃございませんから、もとより有事駐留というものについても厳格な意味の定義というのがあるわけじゃございませんが、一般的に考えられておりますのは、常々から使用し得るいわば基地であるとか、あるいは有事が起こった場合に必要となる武器弾薬、輸送手段等々を一定の場所に、いわば基地に集積しておきまして、そして兵員あるいは人員は、そういったものを維持するために必要なものは置くけれども、現実に有事が起きたときに対処していく、いわば戦闘活動などを行う兵員というものはその場には置かない。そして、何か事が起きたときに他の場所から、米軍でいえば米本土その他の基地から急邊派遣してきて、事前に集積してある兵器、武器等を使用しながらその基地を、ベースを使いながら有事に対処していく、そういうあり方であろうかと思います。
  41. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 有事駐留につきまして、我が国としてはこれまで検討をしたことがありますか。検討をしたことがあるとすれば、それについてどういう結論をお持ちですか。
  42. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 日米安保体制ができましてから国際情勢、我が国周辺の安全保障環境には当然のこととしていろいろな変化がございましたけれども、そういった変化を超えて、ずっとこれまでの状況考えますときに、そういうような米軍の実際の、実際のといいましょうか、有効に緊急な事態に対応し得るような力を日本に置かなくても済むというような情勢はなかったと思うのでございます。やはりそれが必要であったということが一つある。  それからいま一つは、こういった米軍のプレゼンスというものは、いわゆる有事に対処するというだけではなくて、平時であってもそこに存在するということ自体が事を起こすのを防ぐ、いわゆる抑止効果、抑止力と申しますけれども、そういう部分もある。こういう観点もございます。基本的にそういった二つの事情もございまして、我が国につきましてはそのようなことを検討し得るような情勢はこれまでになかったと存じます。  したがいまして、そういったことを具体的な問題として話し合うというような場面はなかったものと承知しております。
  43. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 では、これからも検討することはまずあるまいと、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  44. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 現時点であるいは今予見し得るかなり近い将来を見通しましたときに、我が国周辺あるいはアジア太平洋の状況は依然としていろいろ不安定な状況がある、あるいは不確定要素があるということは先ほど来るる申し上げているところでございます。それからまた、今申しましたようなプレゼンスの持つ抑止力という側面をよく考えてみなくちゃいけない、こう思う次第でございます。そういった意味で、当面そのようなことを議論し得るような状況は出てこないんじゃないかと思います。  先ほど引用されました米元高官のコメントというものの中にも、理論的にはという面があったと思います。それから、この面のほかにまだほかにも、例えばこういう要素があればということがいろいろ前提になっているんじゃないかと思います。  現実的な問題として、有事駐留というようなことをかなりの具体性がある事柄として議論していくという状況はそう近い将来出てくるとは考えておりません。
  45. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 防衛庁長官に伺いますが、日米基地の共同使用につきましてはこれまで御検討になったことがありますか。
  46. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 米軍の方からそのような要請等は目下のところございませんし、これから先も余りそういうことはないんじゃないかと思っております。  ただ、今ガイドライン等をいろいろと検討しておるわけでございます。日本有事の場合はもちろんでございますけれども、あるいはまた日本の周辺においていろいろと大きな問題が起きて、そして我が国にとっていろいろ重大な事態になった、そのときに米軍が活動する場合におけるその基地の使用あるいは施設使用等、そういうことについてはこれから先のガイドラインを検討していくときに十分検討していくべき問題だと思っております。ただ、いわゆる常駐的に駐在するという形でのそういうニーズ等は今のところはございません。  それともう一つは、現在の自衛隊の基地あるいは駐屯地、そういう施設に対して、それだけの余裕がある我が国の自衛隊の施設かといいますと、今最小限の基地、駐屯地を航空、海上あるいはまた陸上それぞれが持っておるわけでございまして、なかなかそれだけの余裕もないんじゃないかというような気がいたしております。
  47. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 防衛庁長官、ちょっと違う問題でありますが、一つ伺います。  沖縄県道一〇四号越え実弾射撃訓練の本土移転につきまして、これは防衛施設庁を中心に大変努力をしておいでになる、大いに多といたしたいのであります。当初は年度内に決着をしたいということであったようでありますけれども、地元の事情があってなかなかそうはまいらないということでありまして、現在中止をされている射撃訓練がもし本土の方でうまくいかなければまた再開されるんじゃないかというような危惧も一部にあるようであります。  そこで、この話し合いの現状、それから見通し、特に近く総理アメリカに行かれますが、その時期にある程度の見通しがっくのかどうか、この辺のお考えを承りたいと思います。
  48. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 私どもは、年度内にと、年度末までにというような言い方をしたかどうかわかりませんけれども、平成九年度からはぜひ五カ所の演習場で実施させてもらいたい、そういう気持ちで今までやってきたわけでございます。今もその気持ちには変わりございません。  そしてまた、各地区におかれましても反対その他いろんな動きもありましたけれども沖縄でもうあれだけ長い間一〇四号越えの演習があったんだから、それを分散して本土で行う場合には、多くても十日以内で、しかも年間で三十五日以内だと。しかも、そこに施設を移転してくるんではなくて、向こうから十日間とかそういう問、言うなれば出張みたいな形で来てやるんだから、それなら引き受けてやろうじゃないかというようなお気持ちにだんだんなってきていただいておりまして、全国の五演習場で何とか平成九年度からは実施できるんじゃないかと、今そういうような空気になっておるわけでございます。  御理解いただけた地方自治体とまだそうでないところ、いろいろございますけれども、これから鋭意努力することによって、総理が行かれますまでにとはなかなかいかないかもしれませんけれども、できるだけ早く一つのめどをつけたい、そういうふうに思っているところでございます。  どうか委員各位におかれましても、各地それぞれ関与しておられるわけでございますので、各地区で御支援していただければ大変ありがたいと思うところでございます。
  49. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 どうぞ、せっかく努力をしていただいていますので、なるべく早い機会に実現するように御期待を申し上げ、またお力添えもできればいたしたいと思っております。  最後に私は、私の考えを申し上げまして、外務大臣総理の御所感を承りたいと思います。  現在、アジア太平洋地域に十万の米軍が駐留をいたしておりまして、そのうちの約半数は日本にいる、それから日本に駐留をしておりますまた半数以上が沖縄に集中をしている、これは申し上げるまでもないところであります。そこで、総理沖縄の負っている負担を全国民で分かち合おうではないかということをかねてから国民に訴えておいでになります。そして、現に今話題になりました実弾射撃訓練を本土に移すべく努力が行われております。  そこで、共同宣言にもございますが、日米安保体制アジア太平洋地域全体の安定的繁栄の基礎であるということが安保再確認のポイントであるといたしますならば、国内的にはもとより対外的にも、日本沖縄だけに重い負担を負ってもらうということではなくして、アジア太平洋地域全体でこれを支え負担し合おうという考え方が出てきていいのではないかと私は思います。  そして、それは詰めてまいりますと、米軍基地のアジア太平洋地域における多極分散的展開と申しますか、あるいは広域的な再配置というふうに申しますか、そういうことへの検討を促すことにつながっていくことになるのではなかろうかと考えます。もちろん軍事基地でありますから、将棋のこまを動かすように右から左にというわけにはまいりません。当然戦略的な視点というものが重視されるわけでありますけれども、これも共同宣言によりまして、日米両国政府は「防衛政策並びに日本における米軍兵力構成を含む軍事態勢について引き続き緊密に協議する。」、こういうことになっているわけであります。  そこで、今後いろいろな場合に協議が行われると思うのでありますけれども、その協議の際には、我が国としてアジア太平洋地域全体をにらんだ米兵力の広域的な再配置という視点をも念頭に置いて協議に臨むことが必要ではなかろうか、こういうふうに私は考えております。  いずれにいたしましても、我々がなすべきことはバードンシェアリング、負担を分任するという立場に立って、沖縄の痛みをあるいは沖縄の負担を国内的にもまた対外的にも他の地域と分かち合う方策を何とか見出す努力をすることではないか、私はそのように考えております。これにつきまして、外務大臣総理大臣の所感を承りたいと思います。
  50. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員のおっしゃいます精神と申しましょうかその趣旨ですね、国内において全国民がひとしく分担すべきである、そしてまたアジア太平洋地域全般の安定のための役割を果たしているとするならば、やはり広くアジア太平洋地域全体で分かち合うべきじゃないか、そういった精神という点につきましては私もよくわかるところでございます。  しかし、また一方でこういうことも考えなくちゃいけないと思います。この地域の安定のために日米安保体制は大きな役割を果たしておりますが、そのほかにもいろいろな装置がございます。米国を一方の当事者とする二国間の協定なり条約はたくさんあるわけでございます。そうして、そういったものはそれぞれ性格は違います。確かに米軍のプレゼンス、現実の駐留ということから申しますと、日本そして韓国というのは大きゅうございまして、ほかはそれほど大きくないかもしれませんけれども、他の二国間の条約というのは基本的にいわゆる相互的なものでございます。いわゆる集団的自衛権の上に立ったものでございますので、一たん有事になった場合には、その国のためだけではなくてこの地域の安定を図るためにも共同して対処するという仕組みになっている、これが日米安保体制とは違うんだということがあります。そういうこともございます。  そのほかには、先ほど委員も提起されましたいわゆる有事駐留だとかあるいは後方支援とかいろいろな要素を持ったものもあると思います。そういったものも全部勘案しながら、それぞれの国がどういうふうにこの責任を分かち合っていくかということは考えていくべきものではないかと考える次第でございます。  そして最後に、具体的にそういったことを踏まえてこれから日米間で協議をする場合に、アジア太平洋全体の情勢、その中でもまたそれぞれが責任を分かち合っていくべきじゃないか、そういった視点も踏まえながら協議すべきじゃないかという御指摘でございますが、私も、基本的に申しまして、これから協議をしていきます場合には当然日本の安全を中心にしていろいろ話をするわけでございますが、当然地域の安全保障環境も踏まえなくちゃいけない。そのときに、そういった地域の安定のためにどういうふうな対処をみんながしていくか、あるいはそれぞれどういう役割を果たしていくかということも、それこそ委員の先ほどの言葉をかりて言うならば、視野に入れながらいろいろ協議はしていくべきものかと考えております。  ただ、その協議というのが、日本における駐留を具体的にそれこそ変化させるかとかなんとかということにすぐつながるものと御理解されますとあるいは誤解を生むかもしれません。間断なく、いろいろな情勢がどうか、それに対してどういうふうに備えるべきかという話し合いをするべきだという観点から申し上げているわけでございます。
  51. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今、議員のお話を拝聴し、また外務大臣のそれに対する答弁を聞きながら、一つ私の心を離れない点がございます。  議員が提起をされましたような形で仮に我が国が今後の日米安保条約上の義務としての我が国自身の施設、基地の提供問題に対処しようといたしましたとき、その影響を受けた日米関係というのはどう変質するだろうという疑念が一点であります。  少なくとも我々は現在この条約を基礎に置き、その義務の履行に責任を負う姿で日米関係というものを構築いたしております。その中で私どもは、沖縄県としてまとめられた例えばアクションプログラムのようなお考えを拝聴しながら、そうしたものを念頭に置きつつ、沖縄県における基地の整理、統合、縮小という目的に向け、昨年、SACOの最終合意を築き上げることに全力を尽くしてまいりました。  そして、沖縄県民の皆さんにとってそれが満点の答えでなかったということは私自身もよく承知をしておりますけれども、少なくとも現在日米両政府が全力を尽くしてまとめ上げた合意、それすら全く実行できないということでは、今後この問題の発展はいかな理屈をこねましても私はあり得ないと考えております。  それだけに、国会の方でお時間をいただければ、できるだけ早い時期に防衛庁長官にも一〇四号線越えの射撃訓練を受け入れてくれるよう、本土の五つの各射爆場に行ってもらおうと相談もしておりました。  参議院における本問題の御審議が終了し次第、できるだけ早く久間防衛庁長官に各地域を回っていただき、少なくともこの問題の解決策を確定したい。また、岩国基地にKC130を受け入れていただいておりますが、こうしたものも含めて少しでも実現を図っていこうとしているのもまたそのゆえであります。  同時に、当然のことながら、今後とも我が国の周辺における、またこの地域における変化というものは安全保障の観点においてもさまざまな姿が出てくると思います。そうした変化に対応して両国の必要性を最もよく満たす防衛政策、これは当然ながら兵力構成を含んで軍事態勢というものについても緊密に協議をしていく、これは共同宣言の中においても確認をしておることでありまして、私どもはそのようなことを当然のことながらこれからも考えていかなければなりません。  同時に、その中で将来のこの地域全体の軍事態勢のあり方といったものをもちろん考えていく、それは当然のことでありますけれども、それは必ずしも、現在日本において米軍に提供しております基地能力というものを日米両国の相談の中で変化させていくということではありましても、他の国に移転し得る状況ではないと考えております。むしろ、私はこうした提案が現実のものとなりましたときの日米関係の変質という点においてどのような問題が生じるかを非常に今懸念いたします。
  52. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 時間がございませんので、私も十分意を尽くせませんでした。いずれまたそういうことについて議論をさせていただく機会があれば幸いだと思います。  終わります。
  53. 板垣正

    板垣正君 引き続いてお伺いいたします。  これは特措法の衆議院成立の問題であります。  「国会議員の大多数が、自らの問題としてとらえていない結果、こうなった。沖縄にとって日本とは何なのか、問わざるを得ない。百万人の生身の人間が住む沖縄での基地問題を、真剣にまともに議論してほしかった。」、遺憾だ、残念だと。これはどなたが言ったと思いますか。大田知事であります。もう一つあります。「どれだけの議員が特措法の改正の意味をつきつめて考え沖縄の基地問題を解決する方策に思いをはせただろうか。」、日米安保は大事というが「安保体制の現実に対して思考停止になることではない。」。これはだれでしょうか。朝日新聞であります。  こうした方々の見解というもの、社説というものを幅広く我々も受けとめていかなければならないと思いますが、その朝日新聞が沖縄県における世論調査をやりました。これは朝日新聞と沖縄タイムスが協力をいたしまして、去る四月五日、六日にかけて電話聴取による世論調査を行った、これが発表されております。特措法改正案に反対ですか賛成ですか、改正案に反対が六一%、賛成一五%、答えなし二四%、こういうことでございますが、これをどう受けとめるか、こういうことですね。  昨年、あの県民投票がございました、沖縄の住民投票ですね。これもまさに鳴り物入りで、基地の整理、縮小なり安保の問題-安保そのものを問うわけじゃありません、ただ非常に注目されましたが、あの住民投票は八割を超す投票があるだろうと注目されましたが、あのときの投票そのものが五九%、六割を切っているわけですね。  そういうことで、今度のこの特措法の問題についても、あたかも沖縄全島を挙げて反対であると、こういうイメージを、特に沖縄の新聞なんかを見ますと、それから朝日新聞なんかを見ますとね。だから、朝日新聞が、この六一%という結果を受けて、同じ社説の中でこう言っているんです、「県民は基地問題の現状を冷静に受け止めつつ、沖縄の負担軽減や振興策など、政府や各党が言葉で約束したことをきちんと守るかどうか、じっと見つめているように思われる。」と。これは比較的冷静なことではないでしょうか。  総理、率直にこういうのをどう思われますか。
  54. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、これは委員と多少意見を異にするかもしれませんけれども沖縄方々に本当に基地が要るか要らないかと素直に問いかけた場合、ほかの要素を一切抜きにすれば、基地が欲しいとおっしゃる方は多分いないと思うんです。殊に、それは語り伝えられ当時を御存じの方が多数おられる、我が国の国内においてたった一つ激戦の戦場となった地域です。その思い出が消えていない中で、ほかの要素を全部抜きにすれば、私は基地が欲しいとおっしゃる方は多分いないだろうと思います。  その上で、さまざまな現実の中で少しでも理解をいただき、その上で本土政府の我々にさらなる努力を求めておられる方々の現実に存在しておることを私は本当に幸せに思います。何人か若い方々から、衆議院の審議の途中、手紙をいただきました。そして、マスコミの伝えている声だけが沖縄の声ではない、少なくとも自分のような意見があるという手紙をいただいたことに私は大変感銘を受けました。  その上で、やはり沖縄県内における基地の整理、統合、縮小に向けての努力というものは、我々は払い続ける責任のあることだと考えますし、そのためにもSACOの最終報告を実現していく上で、本土の皆さんにも、また県内移設で御迷惑をかけることになる場所があるんですが、県内の皆さんにもぜひ御協力を賜りたいと願っております。
  55. 板垣正

    板垣正君 当然、基地があった方がよろしいと言う方はおられないでしょう。ただ、それを現実として受けとめる、かつ基地がむしろ平和をつくり出していく拠点として、私はそういう立場から、後から取り上げる一坪地主の方々の動きというものについては問題が大きいと思うわけであります。  これは日経ですけれども日本関心沖縄の基地問題と絡めた海兵隊の削減論議、国内問題のツケをアメリカに持っていく、このあり方というものについて見解を述べております。きょうも冒頭申し上げてまいりました冷戦後の現在のアジア情勢朝鮮の平和にまだまだ予断を許さない状態、あるいは平和統一と言われた朝鮮が、じゃ統一した朝鮮はどんな姿になるんでしょう、これすらいろんな角度から検討されなければならない、これに対応していくことも検討しなければならない、中国の出方ということについても先ほど申し上げたわけであります。  つまり、アクションプログラムでは二〇一五年には全部基地をなくすんだと、これはごく理想的なことかもしれませんが、そう言っているうちに、何かあたかもそれが現実の意識になり、前提になって、期待感になって運ばれるということは私は極めて不健全なことだと思う。  そういう意味で、さっきも申し上げましたが、日経も言っておりますアジア太平洋の安定装置としての日米安保の現実、安定装置としての日米安保の現実を現実として受けとめていくということを沖縄方々にもお願いしなければならない。  あの島田懇談会の島田晴雄さんが今度は中央公論にいろいろ書いておられますけれども、その中でこうおっしゃっているんです、「沖縄問題は、二十一世紀の安全を確保するには何をすればよいのか、私たち日本の国民に本質的な問題を問いかけている」と。二十一世紀の安全を確保するには何をすればいいか。日米安保の問題で日本国民自身が、日本国家そのものが今問われている。  総理、そういう立場では、現在、維新に匹敵する、あるいは戦後改革に匹敵する第三の開国だと、こうして陣頭でリーダーシップを発揮していただいておりますが、そういう意味合いからも、まさに憲法も見直していく。あるいはもろもろの歴史認識にかかわる問題、そうしたものも含めた出直しの中で、日本が今問われている。二十一世紀に向けて、やはり日本という国がきちんとした形でアメリカ初め諸外国と肩を並べて国策、平和政策を展開していく。その中に今申し上げた沖縄の基地問題も位置づけられ、またそうした御理解をお願いしなければならないと思いますが、いかがでしょうか。
  56. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 大変幅の広い御質問だけに、問題提起だけに、お答えをしにくい部分は率直に申し上げてございます。そうして私どもは、この沖縄県の抱えております問題に対し、就任以来全力を挙げて、少しでも状態を改善していこうという内閣全体の努力を払ってまいりました。  そうしてその中で、知事さんと何回もお目にかかる中から、官房長官を初め関係する全閣僚と同等の地位沖縄県知事に座を占めていただき、今後を議論していくための政策協議会、それとは別に、基地所在市町村に対してどのような青写真を描けるかを県内の代表の方にも何人かお入りをいただき官房長官のもとで積み上げていきました島田懇、さらに県のアクションプログラムとか、そうしたものも御意見を拝聴しながら、県との間の問題を一つずつ解きほぐすことに全力を挙げてまいりました。  そして、今回問題になりました使用権原切れを迎える可能性のある土地に対する手続、これは平成七年の三月三日に手続を開始いたしました。過去三回の体験からまいりまして、それなら十分に時間があるという判断であったと思います。ところが、一昨年九月、大変不幸な事件が沖縄県で発生をいたしました。そして、これを契機に起こりましたさまざまな問題の中で、それでも我々は収用委員会の裁決に本当に大きな望みをかけてまいりましたし、平和裏に収用委員会が期間内に裁決を終了していただくことを、そして使用権原が継続して付与されることを心から願っておりました。  知事さんにもぎりぎりお願いを申し上げたり、いろいろな努力をしてきたと思います。また、第一線であります施設庁の諸君も彼らなりに全力を尽くしてきたと私は存じますが、ついに収用委員会の開会日程が決まらないという事態になり、我々は国益というものを考え、五月十四日から十五日、カレンダーの回ります間に使用権原切れの状態を起こすことは、日米安全保障条約というものに我が国の安全保障をゆだね、その条約上の義務として基地、施設の提供を義務づけられております日本国政府として断じてとれない、そうした思いの中からこの特措法の御審議をお願い申し上げた次第であります。特措法改正案の御審議をお願い申し上げた次第であります。  この特措法の審議に当たりまして、先日の本会議に続き本日も参議院で、また先週は衆議院で、さまざまな角度からの御意見をちょうだいいたしました。ある意味では、こうした問題に真剣に論議をする、今までそうしたテーマがそれだけ少なかったのかという思いもいたしますが、これほど国の安全保障、あるいはそれをもう一歩進んで、あるべき姿、ぎりぎりの議論を続けてまいりましたこともまた少なかったと思います。  しかも、今回は非常に幅が広く、政府のとりました今回の特措法改正では手ぬるいという、そしてもっと積極的に国が前に出て行動すべきであるという御意見から、県民の心の痛みを中心に考えるとき使用権原切れを起こしてもやむを得ないという御意見まで、非常に幅広い御意見に対し、政府は御答弁を申し上げる立場になりました。  私は、この議論が今回で尽きることなく、今後もこのような問題意識に立った論議が国政の中で行われていきます中により大きなこの国の未来を形づくっていく、そのような力を見出していくことができるもの、そのように信じております。
  57. 板垣正

    板垣正君 橋本総理の国政全般、特に沖縄問題にまさに精魂傾けてのお取り組み、これは今の六一%の反対は出ましたけれども沖縄の人たちも冷静に総理初め皆さん方努力というものは見詰めておられると、こう思うわけでございます。  そこで、一坪地主の問題についてただしたいと思うんですが、まず初めに伺いたいのは、人数においては九八%ですか、面積においてはまさに九九%ですか、そういう正常といいますか、土地を提供していただいているいわゆる地主の皆さん方から国が借りておるその土地は、契約はいつまで使えるようになっているんですか。
  58. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) お答えします。  この一坪地主の方々というのは、いわゆる昭和四十七年以降、私どもが反戦地主と称する方がおられまして、当初から駐留軍用地特別措置法に基づく使用をお願いしておりまして、四十七年当時は一坪地主はおられませんでしたが、昭和五十七年に至りまして一坪地主が発生いたしまして、それ以降私ども駐留軍用地特措法に基づく手続をずっととっておると。私ども今回も大体十年間の期間を要求しておりますが、前回は五年間のいわゆる裁決が出ておる、こういう状況でございます。  契約しておる方々の期限は、民法六百四条の規定がございまして、私ども契約しておる方々との間では二十年間の契約をしていただいております。予算上の制約もございますので、賃借料につきましては毎年協議をしながらアップをしておる、こういう状況でございます。
  59. 板垣正

    板垣正君 聞かれたことを言ってくださいよ。  つまり、期間二十年なんです。今からですと平成十四年までですか。もちろん地主の方も土地を返してもらいたい、有効に利用してもらいたい、そういう方々も多いと思う。約三万の方々、九八%を超える方々はそうした形で安定的に基地の土地を提供していただいておる、これは大変ありがたいことであります。そして、安定的に二十年間、今から平成十四年まで利用をさせていただく、こうなっているわけですね。  そうすると、面積からいいますとわずか二%、本当に座布団地主とかハンカチ地主とかテレホンカード地主とか言うんですよ。しかも、それは意図的に普天間とか嘉手納の滑走路の地主さん、二人ぐらいの地主さんから皆分けてもらって、そしてやっているという姿。特措法をつくらなきゃ、今度の改正やらなきゃならないとか延々と沖縄じゅうが大騒ぎしているような、国じゅうが大騒ぎしているような事態というのは、まさにその本当にごく一部の方々のために我が国は極めて民主的な手続を踏んでいる。あくまでも憲法にのっとり財産権を守っていかなければならない、そういう立場で裁判が行われたり審理が行われておりますけれども、しかしこの姿が本当の健全な民主主義の姿かと、この点を我々はやはり考えざるを得ません。つまり、一坪地主という人たちは、まさに反基地、反安保、そういう形で米軍基地を全部なくしてしまえ、こういう政治的な目的達成のためにあの運動をやっているのではないのか。  伺いますが、二千人ぐらいおって、半分は東京とか大阪とかにいるというが、どういう方々がなっているんですか。もう少し具体的に、主な方はこういう顔ぶれでございますというのをちょっと言ってみてください。
  60. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 一坪地主の方は約三千人、正確には現在二千九百六十五名おられます。そのうちの約半数、千四百四十八人は本土におられる方々でございます。  個人個人の名称については、従来から私ども公表は差し控えておるところでございます。ただ、一般的に申し上げますと、いわゆる大学の教授の方とかあるいは市町村議会、首長の方も含みますが、そういう方々、あるいはマスコミ等に奉職されておるような方、こういう方々が含まれておるところでございます。
  61. 板垣正

    板垣正君 これは一部で報道もされておりますね。特に大田知事のブレーンと言われる琉球大学の先生、教授ですね、こういう方々。このブレーンの方々がアクションプログラムとか国際開放経済体制というプランをつくられる、こういうお立場の方、あるいは労組とか教職員の組合あるいは議員ですね、国会議員もいるんじゃないですか。国会議員それから県会、市会、社民党あるいは共産党系の議員が多いんですね。さらには、中核派と言われる、革マル派と言われるメンバーもまさに信念的立場で参画している。こういうことも、我々は我々の立場で本当に民主主義を守るために考えなければならないのではないのか。さらに、沖縄タイムス、琉球新報、こういう相談役とか編集委員、編集担当者、こういう人たちがまた誇りを持って参加しているんじゃないでしょうか。  そういうところから、それが沖縄の心である、まるで一坪地主と言われる反戦地主の声があたかも沖縄の声、沖縄を代弁するんだと言わんばかりのムードがつくられているということは恐らく心ある沖縄方々も大変憂慮しておられることではないでしょうか。  現に衆議院では参考人の聴取が行われました。反戦地主の代表も出られました。あるいは地主側の代表も出られた。この中で、沖縄では契約してもう二十年にわたって基地を提供していただいておる大多数の声が反映されていない、知事からも国際都市構想に関する打診は一言もないと、これは軍用地地主連合会の副会長務めている方です。あるいは琉球新報、沖縄タイムスは一坪地主の発言だけを載せ、沖縄の声はそれだけに代表されているのかどうか、こういうことについても国会の参考人の論議の中でやられるということは大変異常なことと言わなければなりません。  私どもはこの問題について、ごく一部の人があえて混乱を起こす、むしろそういう事態を招来しようという目的のもとにやられているというふうに判断せざるを得ない。ごく一部の動きによってかえって事柄が混乱をしている。今回そうした人たちが言っているのは、不法使用になってもいいじゃないかと、あるいは混乱が起こったら起こったでそれが現実だからそれを見詰めて対話すべきだというふうな学者先生もいるんですね。どうです、防衛庁長官、こういう問題について。
  62. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 基地の問題について、基地をなくしたいあるいは基地を縮小してもらいたい、そういうお気持ちは私どもも痛いほどよくわかります。しかしながら、現在の状況の中でやはり基地の果たす役割等もありますために、なかなかその御要望にこたえることはできない。そういう中で、できるだけのことはできないかということで橋本総理も、また基地があるために経済発展ができない問題については官房長官も一生懸命苦慮しているわけでございます。  ただ、この問題と、それを実現するために、一坪地主というよりも、一坪でございませんで、もっと小さい面積のそういう土地について、本来利用の形態としては考えられないような状態でこの問題を提起して、それによって基地返還を迫るというやり方は、情理を尽くして、あるいは時には情に訴えて、こういう国会の場で国民に向かって、あるいはまた議員に向かって、政府に向かって訴えていくのと本質は違うと思うわけでございます。  この問題については、既に成田闘争のときにあの一坪運動が挫折したといいますか、ああいうことじゃ先へ進まない。確かに一つの転機になりましたけれども、そういう一坪土地を持っておられる方はだんだんと退いていかれて、今はそういうことじゃなくて、在来からの土地を持っておられた方、もう本当に昔から持っておる自分の土地を取り上げられたくないという気持ちの方々の心とどうやって話し合うかというような状況に、運輸省あるいは公団と話し合いを持たれておる、そういうことになっております。  それと同じことが沖縄についても私は言えるんじゃないかと思うんです。こういうような形で三十数坪のところに六百何名の人が共有してしまう、たった二人の人の土地をそういう形でみんながわっと共有するということは、土地の利用の仕方からいって、幾ら手段とはいえ、私はやはり好ましいことじゃないんじゃないかという気がしてならないわけでございます。  しかし、そういうことにつきましても、今回の議論の中で、基地問題についてはあるいは沖縄経済の問題については何とかしなければならないという議論が結構出てまいりました。また、土地の問題については、そういう問題は問題としてきちっと見据えた上で法律的な措置はしなきゃならないというのが衆議院の議論の中でも出てまいりました。だから私は、今回の特措法の改正の論議が国会で決して不毛だったとは、質問を受ける方の立場から考えて結構問題点は浮き上がってきたんじゃないか、そういうふうに理解いたしております。  だから、この問題はこの問題として、また基地の問題、あるいは先ほどの沖縄の振興の問題、それは私も防衛庁長官としての立場だけではなくて閣僚の一人としてこれから先も一生懸命取り組んでいこうと思いますが、土地の問題につきましてはそのような背景があるということについても、土地の利用の仕方からいってもこれは後々問題が出てくる、そういうことについてぜひ皆さん方にどうかひとつ御理解しておっていただきたい。  今度、普天間が返ることになっております。普天間飛行場が返りましたときに、その真ん中にたくさんの方々の共有地があります。この人たちが孫子の代に移ったときに、これを区画整理しようとしたときはもう大変なことになるわけでございます。土地の利用形態としてこういうことを一時的な便法として使うことが果たしていいのかどうか、その辺については真剣に皆さん方考えていただきたいという気持ちがあることもまたお伝えさせていただきたいと思います。
  63. 板垣正

    板垣正君 長官のおっしゃるとおりだと思います。やはりこうしたことが論議を重ねてその実態が明らかにされ、より多くの国民の皆さん方がみずからの問題として実態を、真実の姿を御理解いただく。そして、耐えがたいけれども、しかしこれは平和のために、平和をつくっていく拠点として、この戦略的な立場における沖縄一つの宿命的な地理的な位置という中で沖縄皆さん方の御苦労をしのびながら、しかしそれを利用して反対のための反対運動、混乱のための混乱運動は我々は認めるわけにはいかない、そんなものは県民の意思とは全く関係ない、こういう立場で貫いていかなければならない。今後も御検討いただきたい。  特に、防衛施設庁の現場の人は大変な苦労なんですね。そういう連中が皆踏ん反り返って、一人一人訪ねていって理解を求めようとしてもなかなか会わないで、踏ん反り返って何しに来たんだと言って追い返す。しかし、仕事でありますから三拝九拝しながらそういう無理難題を言っている人のところへ訪ねていって頭を下げてお願いする、この繰り返しをずっと続けてきているのが防衛施設庁の現場の方々なんです。こんなことは本当に人道的にも許せないですね。  さて、この問題についてはお互い取り組んでまいりたいと思いますが、次は沖縄の関連する基地返還問題です。  普天間基地の返還というのは物すごいことですよ。これは総理もおっしゃっているとおり、恐らく私どもも想像できませんでした。それだけあの基地の価値、重要性というものは高い。同時に、あの基地に参りますと、あの周辺はそれこそぴっちり民家、学校、いろんな施設がありますから、万が一あそこで大きな事故が起こったらこれはもう大変であります。そういう中で、沖縄県民の熱望にこたえてまさにトップ会談においてクリントンさんの決断を導き出した、これはまさに画期的なことであります。  それで、沖縄復帰以来今日に至るまで二十五年になるわけですね。そのとき返ってきた基地よりもさらに上回る五千ヘクタール、そういう大きな範囲の土地が戻ってこようという計画がこのSACO計画であります。これがまだあいまいなところで、基地をどうしろあるいは海兵隊を削れなどと言ったらアメリカが怒るのは当たり前ですよ。一体日本はどうなっているんだと、こうもなりますし、またアメリカの立場というよりは、まさに総理がおっしゃるこの問題を中途半端なままにして一体この国の立場があるでしょうか。この国の国家存立の信頼感が持てるでしょうか。  そういうことで、今後さらに取り組んでいかなければならない、現地の御理解もいただかなければなりませんけれども、幸いこのヘリポートの代替地における名護周辺の調査の問題も一歩を、ささやかな一歩でありますが、踏み出すと。現地も御理解をいただけるような方向に行っている、漁業組合も調査をしていただくのはというところまで行っているとも伺っておりますが、その辺の実態をちょっと聞かせていただきたい。
  64. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 今名護市の方も、先般大田知事と名護市長との会談等が行われまして、一応調査の基本的なものについては地元のいろんな部落に対して市長さんみずからお入りいただいて説得をしていただいているというふうに承知しております。  一方、漁業組合、県漁連の方につきましても私どもいろいろとお願いをしておりまして、何とか基本的調査については受け入れてもらえないかということで今鋭意努力をしておる、こういう状況でございます。
  65. 板垣正

    板垣正君 このヘリポートの問題も年内には具体的な事業計画まで持っていかなければならない公約、国同士の約束でもあります。これは、我々もまた努力をして、お手伝いをしながらこの問題に取り組んでいきたいと思うわけであります。  私も先日沖縄へ参りまして、返還された土地が住宅なり商店街になっている北谷の地域とか、あるいはこれから始まります天久の副都心地域、ああいうところを見てまいりましたが、伺うと、返還されてからもう二十年近くたっていると。だから、返還計画で返還されますと一番のあれは那覇軍港ですね。那覇軍港はもうアメリカがよろしい、お返ししますと。ただし、アメリカの場合はやはり基地でありますから、それにかわるものをと言わざるを得ない。すると、現地ではなかなか話がつかない。結果的には那覇軍港があそこにずっと居座っているわけですね。こういう姿がまた普天間でも同じく繰り返されるということになったら、万一のときに事故をこうむるのは沖縄の住民の皆さん方でもあります。  そういうことで、返還の場合、返還されてその手順をなるべく早くする手だて、それは現地の住民と地元自治体の長が協議をして計画を立てるということでありましょうが、何となく県の方が距離を置いて、今度の名護の問題も県知事さんは何か距離を置いた形で、とにかく現場でやれ、県は関知しないと言わんばかりの姿も見えましたけれども、今までもそういう姿勢が見られたのではないのか。その辺が返還されて開発の問題にすぐつながらないとか、あるいはこれはいろんな難しい問題があるでしょうけれども、予算の問題について国がどの程度これに配慮しているのか、国は全くそういう問題は関知しないのか。地代はあと三年続けて払うというふうな軍転法はありますけれども、その辺について現状を伺いたい。
  66. 稲垣実男

    国務大臣(稲垣実男君) ただいま委員から御指摘のありましたとおり、何にしましても跡地の返還をできるだけ軌道に乗せるように、時間のかからないようにと、このことは極めて大切でありますし、私どもといたしましても沖縄の振興開発を進める上で極めてこの問題は重要な問題でございます。  返還跡地の利用を促進するためには、何にしましてもその所有者の方たち、地元関係者の人たちが非常に多いわけであります。数は非常に多いわけでありますので、先ほどからお話ありますとおり、合意形成ができれば早くできるわけですが、なかなか合意形成が早くいかないという欠点等がございます。そのことで早目に行うことが極めて大切であります。例えば駐留軍用地返還特措法におきましても、国は返還の見通しが立った場合には速やかに所有者にまず通知を行うと、このことに努めなければなりません。  沖縄開発庁といたしましては、できるだけ前広に跡地利用に関する相談に応じてまいりますとともに、跡地利用計画が固められたものについては事業期間の短縮のために工夫を図っておるところでございます。そして、土地区画整理事業など必要な事業を積極的に推進してまいります。  さらに本年度、沖縄総合事務局におきまして跡地利用対策推進のために組織の整備を行ったところでありますし、今後とも返還跡地の早期開発に積極的に取り組んでまいる次第でございます。また、政策協議会におきましても基地跡地の利・転用プロジェクトチームの中で今後幅広く検討を進めてまいりたいと思う次第です。  以上です。
  67. 板垣正

    板垣正君 沖縄復帰してことしが二十五年に当たるわけであります。この間、三次にわたる振興計画のもとに五兆を超す国費を投じ、まさに沖縄県民皆さん方の御努力のもとに沖縄も様相を新たにしてきている面もあると思う。また同時に、基地経済依存とか公共事業費に偏っていて地場産業が育たないとか、いろいろな問題点があると思うんです。  それで長官、この二十五年を顧みて、沖縄の問題について総括するとどういうふうな御見解をお持ちですか。
  68. 稲垣実男

    国務大臣(稲垣実男君) 委員御指摘のとおり、沖縄本土復帰してまいりましてから二十五年の間でございますが、三次にわたりまする振興開発計画に基づいて沖縄の振興開発のための諸施策が講じられてまいったわけでございまして、総体として沖縄経済社会は発展してきているな、こう思うわけでございますが、まだ道半ばというところでございます。生活あるいは産業基盤の面ではなお整備を要するものが非常に多いわけであります。産業の振興や雇用の問題など見てまいりますと、若年労働者の方たちが職を求めてもそういったところがないといったような解決すべき多くの課題がございます。  そこで今、三月二十五日の沖縄振興開発審議会におきまして三次振計の後期展望がまとめられたところでございまして、社会経済情勢変化に応じて沖縄にどのような影響を与えておるか、それをもっとグローバルな見方で進展をしていく必要があろう、高齢化社会あるいは高度情報社会の到来に対応して三次の振計後半の施策転換の方向づけをしておるところでございます。  これを長々と申し上げますと時間がかかりまけれども、やはり地域特性を生かした特色ある産業を振興していく、あるいはまた県民性豊かなところでございますから、南の国際交流拠点の形成を推進していく、あるいはまた自立発展を支える社会資本の整備をしていく、あるいは自然環境の保全継承など環境配慮を十分していく、あるいはまた交通、情報通信体系の整備や産業の振興、県内外の交流を促進していくと。ただいま委員から御指摘がありましたとおり、米軍施設区域の整理、統合、縮小等返還跡地の有効利用をするといったようなこと等を行いながら、沖縄県が特に望んでおります国際都市形成構想、この具体化の状況を見ながら、国としてしっかりと今後の発展に寄与してまいりたい、こう思う次第でございます。
  69. 板垣正

    板垣正君 それで、振興開発の話を承りたいと思います。  さっきもちょっと名前が出ました島田さんのもとで、基地を抱えた沖縄現地市町村の懇談会をつくって具体的なプロジェクトの提起がなされた、昨年報告されたと。  これは官房長官に伺いたいんですが、この懇談会というものは私は非常にユニークな存在だと思うんです。県全体としての大きな問題もいろいろあります。今度はそうしたいろんな専門的なお立場あるいは社会的ないろんなお立場の方々が、基地を抱えた二十五市町村ですか、それを実地に回って、島田さんが言われるのは、つまり現地の方の目線で、現地の方が何を望んでおられるか。今のいろんな制約された中で一挙に基地を全部なくせとか言ったってそれはすぐの問題ではない。今のこういう制約の中で、沖縄の現地の町長さん、市長さんがどんなプロジェクトを一番望んでおられるか、住民が何を望んでいるかをずっと回って聞いて歩かれたんです。  それで、いろいろ具体的なプランも出されているようでありますが、これは今までにない極めて現地に密着した、しかも具体的な、いろいろな学術の分野におきましても産業の分野におきましても、現地の期待に沿える、そこを起点にして活力を見出せる、そういう期待感も持つわけでありますが、取り組んでおられる官房長官、それについての御見解を承りたい。
  70. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 総理から特に沖縄に少しく関心を持っていろんな意味での沖縄のいわば振興策等を考えろという御下令がございまして、昨年もろもろ考えた末に、やはり沖縄全体としての今までの取り組み方、それから大田知事さんを初めあるいはその他の方々が、基地がなくなればこういう振興計画を組むというはざまにあって、いわば現在基地のある市町村がどんな状態に置かれているのか。これで一番懸念をしたのは、基地の固定化につながるのではないかという問題が一つございました。  しかし、まさに委員今言われるとおり、草の根運動というか、全地域を彼らがくまなく踏破をしてそれぞれの地元の御意見を聞く、基地が早くなくなるにこしたことはないけれども、基地があればそれでは振興されなくていいのかどうなのかという視点もこれまた極めて大切であります。そういうものをひっくるめまして、彼らが労作をつくっていただいて、これから取り組むべき基地所在市町村にかかわる諸問題を幾つかのテーマに分けて答申をしてくださいました。  必ずしも具体的な問題だけではございませんけれども、それでもこれから五年ないし七年間に数百億ないし一千億程度のものを市町村の単独のものにがければ、この市町村の今の悩みを若干でも和らげることができるだろう。それと、ハードの面ともう一つはソフトの面で、例えば米軍の基地内を、子供が学校へ通っために三辺を回るよりは一辺を通って歩かせるような提案をこれからやったらどうかとか、あるいは砲弾で荒れただれた畑地に苗木を植えるような運動を、苗木を我々が提供して米軍がやったらどうかと、そういう問題を大変事細かに提起をしていただきました。  必ずしも基地所在市町村だけの問題ではなく、むしろもうちょっと沖縄全般の問題、当然逢着はいたしますけれども、彼らはそういう視点に立って大変な答申をまとめていただいたわけであります。総理以下、厳命をして、この問題にこたえようということで、ようやく市町村サイドというか目線の高さでのそういう施策がこれから盛り込まれようとしております。必ずなし遂げるようにしてまいることが彼らに、いや、沖縄の現地の方々に報いる道だというふうに考えますので、努力を払ってまいりたい、このように思います。
  71. 板垣正

    板垣正君 今お話しのとおりに、いろんな制約の中で、しかしその中でやはり明るい方向を見出していこう、解決できるものは解決していこうと。顧みますと、戦争の惨禍の中から沖縄方々がああして立ち上がってこられたその姿でもあるし、それだけに私どもは本当に誠心誠意沖縄方々と同じ気持ちで、そして今お話のありましたような試みられた、本当に現地に行って現地の方々とひざを交えてお話をされ、それを具体化していく、これはぜひ推進をしていただきたいと思うわけであります。これはいろんなプランも出ているようでございますけれども、そしてまた沖縄の振興開発問題、これはまさに一国二制度と言われるような、そこまで思い切った踏み込みで沖縄のいろんな特色を生かしながらやっていこうという、我が党でもあるいは与党の中でもいろいろ方向づけもなされているようであります。  そういう中で、これは帝京大学の志方教授が提起されているんですが、この方は自衛隊上がりでありますから、世界の平和的なことに貢献できるような、例えば国連NGO支援センター、あるいはさっき申し上げた、質問にも出しましたASEAN地域フォーラムの信頼醸成センター、あるいはこれは医学の方でありますが熱帯病の医学研究センター、こういうふうな広くアジアの振興、アジアの開発に役に立つ、かつアジア太平洋の安定、平和のための一つの拠点にもなり得るASEANの地域フォーラム信頼醸成センター等、そういうものもやはり一つの理念を入れて打ち出して、織り込んでいただくことも意義があると思いますが、これはいかがでしょうか。
  72. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 沖縄の振興策を考えていく上で、国際的な交流というだけではなくて、その中にアジア地域の安定と繁栄というものを追求する、そういった理念も大切にしながらいろいろなプロジェクトを考えていくということは傾聴すべき御提言だと思いますし、現に今、政府におきまして各省庁一丸となって振興策を考えておりますが、その中で私ども外務省といたしましてもそのような国際的なプロジェクトについてもいろいろ考えている次第でございます。  現在におきましても、例えばいわゆるJICAの沖縄のセンターなどいろいろその役割を果たしておりますけれども、そういった技術協力の面だけではなくて文化の面、あるいは今おっしゃいますような地域の安定を図るという理念も考えながらそのことを考えてまいりたいと思います。
  73. 板垣正

    板垣正君 それでは、いろいろ御質問してまいりましたけれども総理は近くアメリカに行かれましてクリントンさんとの首脳会談に臨まれる。これは今までもいろいろ積み重ねてきた経緯もございますけれども、この沖縄の問題、日米安保体制の問題、さらには今後の日米の提携の中で二十一世紀を展望しながらの国家戦略、平和戦略、こういうようなことについても両者胸襟を開いてお話し合いいただき、かつ総理としてのさらなるリーダーシップのもとにこの国の前途を切り開いていただきたいと思いますが、どういう御決意を持ってこの会談に臨まれるか、またこの国の方向づけ、その御信念を承れればと思います。
  74. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 本日から特措法の審議がこうして参議院で始められまして、恐らく今週もほとんど国会に私はくぎづけになろうかと存じます。そして、その意味では訪米の準備というようなものにも今入っておりません。  ですから、実は今回クリントンさんとの間でどういう問題がテーマとして事務的にとらえられているかをまだ聞いていない状況ですが、私はその上であり得ると思いますのは、まず一つはやはりデンバー・サミットに向けて一体日米がどう手を携えて臨んでいくかという、これが一つ大きなテーマであろうと存じます。  今回はクリントン大統領の非常に強い要請を受けまして私も同意をいたしましたが、従来はエリツィン大統領が一日おくれて到着をされる、ですからG7で話し合う部分とP8で話し合う部分と時間差を日程上も設けていた、今度はその意味では同じ時間帯に着いて同じ時間帯に終わりたいと。それは結構だけれども、例えばマクロ経済とか国際金融とか開発の問題とか、むしろそれでは議論のできない部分もあるんじゃないですかと、それはそうだと。だから、G7で議論をする部分とP8で議論をする部分が分かれるけれども、形式としては初めから終わりまでエリツィンさんがデンバーにいられるようにしたいという新しい問題が出てきました。  ですから、このデンバー・サミットに対して、もともとどういう論議を行うか、日米は足並みをそろえていくことが一つの大きな眼目でありました。その上で、当然ながら双方が久しぶりにひざを突き合わせて会うわけでありますから、それぞれの国内の状況を説明する、これは政治的、経済的、両面がありましょう。その中におきまして、当然ながら沖縄県関連の問題も論議の対象になろうと思います。また、アジア情勢といったものも議論になっていくでありましょう。  ただ、先般、ゴア副大統領が見えましたときの私との話し合い、マスコミの皆さんはほかの部分に興味をお持ちであったのか、その部分は余り出ませんでしたけれども経済問題を結構議論したいという感じで見えまして、私の方がある程度それをそらしたような結果にもなりました。しかし、恐らく二国間経済について、その上で二国間経済を踏まえた通商問題について、こうした議論もありましょう。  いずれにしても、その首脳会談は相当幅の広いものになろうかと思います。しかし、いずれにいたしましても日本アメリカ、この両国がしっかりと手を結びながら今後の国際社会の中でそれぞれの役割を果たしてまいりたい、そのような思いで臨むことは当然のことと存じます。  また、今回の一つの特異な問題として、その時点における状況がわかりませんけれども、いずれにいたしましてもペルー日本国大使公邸に起きております事態がその時点でいかようなる状況になっておりましても、これもまた論議の対象になるテーマかと思います。
  75. 板垣正

    板垣正君 懸案が山積しておりますが、どうか総理、各閣僚、御健闘をぜひお願いいたしたい、お願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  76. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) これにて板垣正君の質疑は終了いたしました。(拍手)  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十五分休憩      ―――――・―――――    午後一時開会
  77. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) ただいまから日米安全保障条約実施に伴う土地使用等に関する特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定の実施に伴う土地等使用等に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  78. 泉信也

    ○泉信也君 平成会の泉信也でございます。  ただいま議題となりました駐留軍用地特別措置法の問題は、国益あるいは県益、個人の権利、公共の福祉、そうした葛藤の中での議論であろうと思います。改正に賛成する方もあるいは反対をされる方もそれぞれ心に痛みを感じてこの問題を論じておられることと思います。  そうした意味で、総理のお気持ち、衆議院を通って本日からこの参議院の特別委員会で議論をする段階になりました今日のお気持ちをお聞かせください。
  79. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 議員から今述べられましたように、私は衆議院の審議を通じましても同じような思いを持ちましたが、この問題についての賛否いずれを投じられた方も、これまでのそれぞれの方々沖縄へのかかわり、あるいはその国の安全保障というものへのお考え、そうした中で御自分の判断というものを決めていかれた。その意味では、議員の御指摘もまた同様かと思います。  その上で、今回の特措法の改正に至りますもとといいますならば、五月十四日に使用権原の切れる土地が基地内に存在をする。同様の事態が過去三回ございました。その過去の三回の経験の中から収用委員会の作業の時間等を考えながら、平成七年三月三日にこの手続を開始いたしました。ところが、その後、御承知のように、九月に全く思い出したくない悲劇が沖縄に発生をし、それとともに状況が大きく変化する中で随分の時間を経過してまいりました。そして、国会内においては随分早い時期からその状態を御心配いただき、さまざまな御指摘があったことも事実であります。  そうした中で、政府としてはぎりぎりまで、収用委員会の裁決によってこの事態を終わりたい、しかし五月十四日から十五日にカレンダーのかわります時点で使用権原のない状況だけはどんなことがあっても避けなければならない、そうした思いの中で関係者は全力を挙げて努力をしてまいりました。  私自身も、三月二十五日でありましたが、知事さんと二時間近い議論もし、事態の打開に努めてまいりましたが、ついに収用委員会がその後の日程をお決めいただけないという事態を迎えることになり、やむを得ぬぎりぎりの措置として、今回御審議をいただいている法律案を国会に提案させていただくに至りました。  この間、院におかれましてもさまざまな角度から御心配をいただきましたことにお礼も申し上げますとともに、今後、この法律案が成立をいたしました後にも沖縄県の基地は残っておるわけでありますし、また沖縄の振興策をつくり上げていく責任もございます。どうか、こうした点にも御協力を引き続いて賜りますように心からお願いを申し上げます。
  80. 泉信也

    ○泉信也君 そこで、今回の特措法の議論の根本になります一つ考え方として、なぜ米軍日本に駐留するのか、沖縄に駐留するのか、こうしたことが根っこにあると思うわけです。安保反対運動が華やかなりしころの世代の人間にとりましてはこのことはよくわかっておると思いますが、若い方々には、安保条約ということを耳にすることはありましても、その中がどういうふうになっておるかということについては必ずしも御承知でない方もいらっしゃるかと思います。  きょうはラジオもテレビも入っております。政府委員の方から、安保条約の五条と六条の前半部分だけ御紹介いただけますか。
  81. 林暘

    政府委員(林暘君) 日米安保条約の第五条は日本が攻撃された場合でございますけれども、前半部分は、「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」、以上が第五条の前半部分でございます。  第六条の前半部分でございますが、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍日本国において施設及び区域を使用することを許される。」、以上が六条の前半部分でございます。
  82. 泉信也

    ○泉信也君 今お読みいただきましたように、五条の前半は、まさに日本国の施政下にある領域における安全確保のために危険に対処するよう行動する、こういうことが宣言されております。六条は、日本の安全と極東における国際平和のためにアメリカ合衆国日本国において施設及び区域を使用することを許されると。こうした条約が根底になっておるということであると思っております。  そこで、この特措法の問題はまさにそうした我が国の問題、極東の平和という観点から論じられなければなりませんが、領土の保全あるいは国民の生命、財産を確保するための法改正を議論しておる真っ最中に、実は、きょうどうしてもお尋ねをしなきゃならないことが二つございます。  それは、四月八日、外務省の報道官が記者発表されました、韓国が竹島埠頭で建設の再開を始めたと。このことに対して外務大臣はたびたび抗議をしたということをおっしゃいますが、今回の件についてはいかがでございましょうか。
  83. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今回も我が国の立場をきちんと申し入れております。
  84. 泉信也

    ○泉信也君 実効的支配がまさになされようとしておることについて、口頭なり文書なりで抗議をするだけで済む話でございましょうか。
  85. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) この問題につきましては、委員御承知のとおり、我が国の立場は一貫したものでございまして、そういった立場に基づきまして累次我が国としての立場を申し入れてきたところでございます。  そして、それだけで済むのかという御質問でございますけれども、我々といたしましては、我が国の一貫した立場をきちんと堅持しながら、あくまで事柄を平和裏に話し合いを通じて解決していく、そういったことで粘り強く対応をしていきたい、こう思っておるわけでございます。  この問題はもとより大切でございますけれども、それと同時に、日韓両国の友好関係を維持するということはお互いの国にとって非常に大切であると同時に、さらには北東アジアを初めアジア太平洋全域の安定あるいは繁栄という観点からも大切だと思うのでございます。  そういったこともすべて総合勘案しながら、我が国としての立場を損なわないように今後とも対応していく所存でございます。
  86. 泉信也

    ○泉信也君 おっしゃいますように外交問題でございますので話し合いをしていくということは鉄則だろうと思います。しかし、まさに国家主権にかかわる問題であります。八十メートルの埠頭ができる。それを看過しておる日本政治は、果たして沖縄県民が味わっておられる苦痛、重荷を思うときに許されるのか。特措法の議論をしておる一方で我が領土が侵されておることにただ抗議をするだけで済まされるのかということであります。歴史をひもとくつもりはございません。しかし、外務大臣、笑い事じゃないですよ、この問題は。  仮に、私が我々の領土である竹島に上陸するということを試みました場合には外務大臣としてはどういう対応をとられますか。
  87. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) この問題に対する我が国の立場は先ほど申し上げたとおりでございますし、そういったことであくまで平和裏に対話を通じながら解決を図っていくということで、粘り強くその努力を重ねていく、こういうことで対応してまいる所存でございます。
  88. 泉信也

    ○泉信也君 大変難しい問題であることは承知をいたしておりますが、漁業問題等にも絡む我が国民にとっては見過ごすことのできない状況を迎えておることをお忘れいただきませんようにお願いをしたいと思います。  またもう一つは、尖閣列島の問題でございます。これは衆議院でも議論があったようでございますが、まさに沖縄県の地域に入っておる尖閣列島に対して、モンデール前駐日大使が、安保条約五条の日本国の施政下にある領域ではないということを、新聞記者か何かわかりませんけれども、そういうところでお話しになったということであります。沖縄の返還協定では尖閣諸島は沖縄の一部として明らかに返還をされた場所だと思うんです。  このことに対して外務省として正式に抗議をする、あるいは取り消しを申し入れる、こういうことをなさいましたでしょうか。
  89. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 事実関係のところで申し上げますと、モンデール大使の発言というものでございますが、九月十六日にニューヨーク・タイムズに報道されたところでございますけれども、その中でモンデール大使は、だれが島を所有するかについては米国は立場をとらないとしつつ、米軍は島をめぐる紛争に介入することを条約によって強制されるものではないとの趣旨を述べたというふうにされているわけでございます。  私どもとしては、モンデール大使がどのように正確に発言されたかということを知る必要があると考えましたので、直ちに米側に確認を求めたところでございますが、この記事自体はさらに数カ月前のインタビューによるものでありまして、発言の実際の正確な内容は不明であるというのが米側の回答でございました。そして、米側とのそのほかのやりとりを通じまして、アメリカ側の立場というのは、尖閣諸島に日米安保条約が当然適用されるという日本の立場を承知し、理解するというのが米側の立場でございます。  さらに米側は、米国政府は締結した国際約束を遵守するとしつつ、仮定の状況で米側がどういう対応をとるかについて、推測することは差し控えたいというのが米側の立場であるということを我々に確認したところでございます。
  90. 泉信也

    ○泉信也君 今の御返事をお聞きしまして幾らか安心をいたしました。しかし、駐日大使をした方がそれはどこの国に所属するかコメントしないというか、そういうお話がございましたね。そういうお話があったとしますならば、今後の推移を見ながら日本の立場をぜひさらに強く主張していただきたい。そうした一つ一つの積み重ねが、きょう議論をしております特措法の改正に向けて国民の多くの御支持を得られることにつながってくると私は思っております。  そこで、次の課題に移らせていただきます。駐留米軍の規模の変化につきましてお尋ねをいたします。特に沖縄に限ってでも結構でございます。
  91. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 駐留米軍もこれまでいろいろ国際情勢変化あるいはそれに対応する米国としての考え方等々に応じまして駐留の規模を変えてきております。沖縄返還時、昭和四十七年の時点で申しますと、日本全体で六万五、六千であったと思います。その中で沖縄が二万六千前後だったと思います。それが現時点では、御承知のとおり、全体で四万七千と言われておりますけれども、これはいわば定員的な考え方でございまして、実数は今それよりも少し低いレベルになっていると思います。そして現在、沖縄は一万七千前後というふうに承知しているところでございます。
  92. 泉信也

    ○泉信也君 四十七年の沖縄の返還当時から比べますと実態的にも駐留米軍が減っておる、沖縄についてもしかりであるということはよくわかりました。  しかし、それでも沖縄の位置、沖縄の基地機能というものは大変重要であるということを政府は力説されておられます。十一日の参議院本会議におきましても、総理から、沖縄の地政学的あるいは戦略的な位置というものは、「周辺諸国から一定の距離があり、本土にない縦深性がある」という御答弁をいただいておるわけであります。  そこで、戦略的にも大変重要な位置、ここから考えますときに、沖縄米軍基地というのは私どもが頭で考えるよりもなかなか大切な位置を占めておるなという思いをいたします。  実は、そうした思いの中でではございますが、新聞報道によりますと、日本側から再三にわたって米軍基地の削減についての発言があったのではないかと。中長期的には当然変更されなければならないということではありますと、まずそういう御発言があり、また在日米軍勢力の見直しを協議してもいい時期ではないかと。あるいはまた、総理がオルブライト国務長官との会談で述べられたと書いてありますけれども、在日米軍の将来の削減を含めて柔軟に対応すべきだとの考えを示した、首相は米軍削減問題ではこの表現はぎりぎりだろうと、こういうふうに新聞情報では伝えられております。  このことは、昨年の共同宣言の中でも協議を続けていくということは承知をいたしておりますけれども、この特措法の改正のごく迫った時期にこのような発言というのはアメリカ側に間違ったシグナルを送ることになったのではないかと思いますが、外務大臣、いかがでしょうか。
  93. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今、オルブライトさんに私が云々というお話がございましたので、その点の正確さも含めて私からお答えをさせていただきたいと思います。  オルブライトさんに私は兵力の削減を申し出ておりません。そのほかの方にも、このところ国防長官、副大統領あるいは統参議長、お目にかかっておりますけれども、私は、現時点において米軍兵力構成の削減を求めるつもりはない、なぜなら、現在我が国並びに周辺の状況考えるとき、そういう問題を提起するときではない、これは公式に国会でも申し上げておりますし、各要人に対しても全部同じ申し上げ方しかいたしておりません。  ただ同時に、その日米安保共同宣言の中にも確認をしておりますけれども、国際的な安全保障情勢の中で起こり得る変化というものに対応して、両国の必要性を最もよく満たすような防衛政策、また日本における米軍兵力構成を含む軍事態勢を話し合うということは共同宣言の中でも申し上げていることでありまして、明らかにしていることであります。そして、その状況を変えるような発言をいたしておりません。ですから、そういう意味での混乱は私はないと思います。  その上で、国会でこの問題について繰り返し御質問がありましたから、私は繰り返し同じことを申し上げてまいりました。それがあるいは議員の誤解を生むことになっていたとすればこれは大変失礼な話でありますけれども、私は現時点での兵力構成を問題にする状況ではないということをずっと申し上げ続けております。
  94. 泉信也

    ○泉信也君 よくわかりました。  昨年四月の共同宣言のその日、午後からの参議院の予算委員会でこの共同宣言問題について御質問させていただきましたときに、池田外務大臣ともこの十万人、四万七千人ということについて議論をさせていただきました。それだけに私は、わずか一年しかたっていない、状況変化もさほどない中でこうした削減論がまことしやかに流れるということについて、アメリカだけではなくて日本の周辺国に対しても間違った感覚で受けとめられるおそれがないかということを心配したわけです。  特に昨今、アメリカからおいでになるゴア副大統領初め次々とお見えになるしかるべき方々の口から、十万人の削減はあり得ないということが再三にわたって強調されておるやに私は伺うものですから確認をさせていただいたわけですが、今総理がおっしゃったように、その時期ではない、協議をすることはあっても今そのような考え方はないということを前提にしてこの先の議論を進めさせていただきたいと思います。  私がこのことをお聞きしましたのは、国内問題と二国間の約束事がごっちゃになってこの特措法の議論がなされておるということに大変混迷の一因があるのではないか、こんな思いを持ったからであります。  そこで、午前中の質疑の中でも反戦地主の話がございました。いわゆる一坪反戦地主と言われるものでございますが、この方々が急に、突然と言っては変ですがふえてまいっております。この背景は何でございましょうか。
  95. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) お答えします。  一坪反戦地主運動は、沖縄においては昭和五十七年ごろから始まっておりまして、一坪反戦地主会という会がございます。そこに一坪反戦地主会の会則とございまして、背景といいますか目的として「この会は戦争に反対し、軍用地を生活と生産の場に変えていくことを目的とする。」ということで、運動の実態としては一坪反戦地主を拡大し、相互の団結を強化するとか、契約拒否運動を拡大するというようなことがこの地主会の会則でうたわれておるところでございます。  私どもとしては、こういう軍用地に対する一つの手段といいますか、そういう契約拒否をする一つの手段としてこういうものが昭和五十七年以降急速に沖縄において展開されてきた、こういうふうに理解しておるところでございます。
  96. 泉信也

    ○泉信也君 五十七年にふえたというのは、新しい契約時期なんですね。それがまた、いただきました資料によりますと、五十七年当時で二千人余りでありましたのが今日では三千人弱ですか、数値が出てきておりますが、これはどういう格好で細胞分裂みたいにふえてきているんでしょうか。
  97. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 当初、嘉手納飛行場におきまして五十七年九月から五十九年十二月までの間にこの運動が始まっております。それからその後、平成二年六月に同じように土地の共同購入というのが行われております用地主さんはもともと二名でございます。それで先生今御指摘ございましたように、昭和六十二年の特措法の適用の際は千九百七十九名が対象でございます。その後、平成四年には二千四百九十七名となっておりまして、きょう現在では二千九百六十五名でございます。  これは内容的には、この地主さん方がいわゆる自分の持ち分を契約によって再度譲り渡す場合もございますし、あるいは相続が行われるのが一番数が多くふえていく理由の一つでございます。したがいまして、一応、一坪地主の方がお亡くなりになりますと、その方の相続人が例えば五人おられますと五人急にふえるというようなことで逐年ふえていく、こういう傾向でございます。
  98. 泉信也

    ○泉信也君 今のお話を聞きますと、数だけではなかなか議論しにくい点があるということになろうかと思うわけです。私は、こうした運動が沖縄だけではなくて国内ではどういう動きになっておるか、国内にもこうした一坪地主あるいは先ほど読まれましたように、(「愛知」と呼ぶ者あり)失礼いたしました、本土ではどうなっておるのか。契約拒否運動を拡大するというような目的を持って、事業活動をもって動いておられるグループが本土にもあるのかどうか、いかがでしょうか。
  99. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 先ほど言いました二千九百六十五名のうち千四百四十八名は本土在住の一坪地主でございまして、大体東京それから大阪、こういうところに非常に多くこういう方々がおられまして、ちなみに大阪府だけで二百六十六人、東京都で百七十二人というふうに、北海道から九州まで全国いろんな形で分散されておるところでございます。
  100. 泉信也

    ○泉信也君 今御説明ありました一坪反戦地主と言われる方々が全国各地に散在しておるということは承知をいたしておりますが、いわゆる自衛隊基地に絡んでこんな動きがございますでしょうか。
  101. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 現在、自衛隊におきましてはまだ一坪地主という運動はございませんが、いわゆる反戦地主の持ち主の方がかつておられまして、これは自衛隊については土地収用法の適用がございます。したがいまして、私ども従来土地収用法の発動はしておりませんので、自衛隊基地においてもこういう反戦地主の方が発生いたしますと、その部分を私どもは返還しておるというような状況になっておるところでございます。
  102. 泉信也

    ○泉信也君 ちょっと聞き漏らしましたが、今のは、そういう運動が起きてきた場合には返還をしておられるんですか。自衛隊として必要な空間として確保している部分を、そういう運動によって返還しておられるという御説明ですか。
  103. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 本土の場合あるいは沖縄にももちろんこういう状況がございまして、いわゆる自衛隊用地につきましては、契約に応じていただけない場合に、私どもはこういう収用法の適用を自衛隊の場合はしておらないということでございます。
  104. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) ちょっと誤解のないように申し上げておきたいと思いますけれども、自衛隊の場合あるいは本土の場合、今必要なところについてはそういう実態がないわけでございます。しかしながら、可能性としてないかと言われますと、これはあり得る。しかも、あったときに、今沖縄でございますと特措法がありますからいいですけれども、国内でも土地収用法の対象に実はなるわけでございますけれども今までやったことはないということがございまして、今幸いにそういう事態に至らない、そういう場所で返すようなケースはあるというふうに理解していただいておったらいいと思います。
  105. 泉信也

    ○泉信也君 これは後でお尋ねをしたいという思いを持っておりました。国の安全にかかわるものは、米軍の駐留だけではなくて、自衛隊の場合においても国が直接責任を持って必要な空間を確保していくということが私は必要ではないかという思いがあったものですから前もってお尋ねをしたわけでございます。また後ほどこの点には触れさせていただきたいと思います。  そこで、今回の法改正に当たりまして、先ほど総理から、平成七年三月から余裕を持って手続を開始した、しかし不幸な事件があったり思わぬ手間がかかってぎりぎりの時点でこの法改正に取り組むことにしたというお話がありましたけれども、具体的にはいつごろこの特措法の改正に取り組もうということになったんでしょうか。これは防衛庁長官にお尋ねいたします。
  106. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 私どもは、大変手続がおくれておりますために心配をしてかねてから勉強はいたしておりました。しかしながら、収用委員会への申請が行われましてからは粛々と審理が行われておりましたし、しかも沖縄県と国との信頼関係に立ってあのように公告縦覧をしていただきましたので、何とかこの裁決が期限までに間に合うようにしてもらえるんじゃないかと、そういう期待をずっと抱いてきておったわけでございます。端的に言いまして、三月いっぱいに、せめて四月の初めに裁決が行われれば間に合うなと、そういうことをしてもらえないかと思っておったわけでございます。  今振り返ってみますと、三月十二日に審理がありまして次が二十七日だと、しかも公開審理が二十七日に行われるという話を聞きましたときに大変危惧したわけでございます。そして、三月二十七日を過ぎまして、今度は次の収用委員会の日取りも決まらないということになりまして、これはもうどうしてでも結論を法律で出してもらわないとしようがないという気になりまして、その後に急速法案をまとめて提出に至ったということでございます。
  107. 泉信也

    ○泉信也君 今お話しのように、公開審理の三回目が二十七日に行われて四回目の日にちも決まらないと、こういうことでございますけれども、これまでの例からしますと若干内容は違うようですが、八回の場合もあったし九回の場合もあったというふうに伺っておりまして、この法改正への取り組み方が少しおくれたのではないか、もっと議論をして国民の多くの皆さんにも理解をいただくような機会もたくさんつくっていくべきではなかったかという思いを私は持っております。これは私の意見だけで、お尋ねするわけではございません。  ここに踏み切るまでには幾つかの代替案があったのではないかというふうに思いますが、どんな代替案を考えておられたんでしょうか。
  108. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 代替案というわけでございませんけれども、たびたび御党の議員から予算委員会等でも質疑がございましたが、そもそも国の安全に係る問題について、地方自治体がその立場上いろいろ問題になってくる、そういうときに国がきちんと最初から最後まで自分のところで手をつけてそして終わる、そういうような仕組みを考えるべきじゃないかというような議員の御指摘等もございましたし、いろんなやり方の議論はありました。  しかしながら、事沖縄の問題につきましてああいう雰囲気の中で、しかも今粛々となされているときに、そういうような土地収用委員会の権限あるいは市町村の権限、役割、知事の役割、権限、こういったことまで全部変えてしまうようなことが果たしてできるかどうか。それは今でこそこういう議論がいろいろありますけれども、そういう議論を持ち出すことすらできないような雰囲気も一方ではあったわけでございますので、そういうような中でいろいろ議論しながら、ここは県や市町村やそういう権限、役割等、特に収用委員会の役割等には全然手を触れないでこの暫定使用期間制度をつくらせてもらうと、これが現時点で考えると一番ベターな方法じゃないかということでこのような案に集約させていただいたわけでございます。
  109. 泉信也

    ○泉信也君 この法律の中でたびたび議論がなされております一つは、収用委員会の裁決が半年とか一年とかというふうになった場合にはどうするのかという質問がございました。これに対して、これは衆議院の方の質問の中でございますが、極端な場合は再審理を申し出ると、極端に短い場合ということだと思いますが、そういう御答弁があったわけであります。  この極端に短い場合というのは、どの程度を想定しておられるんでしょうか。
  110. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) これは一概に言えないわけでございまして、例えば地価がもう非常に単年度で上下しておる、そういう場合には、例えば一年の裁決の期間がありましたとしてもそれは無効とは言えないわけでございます。  しかしながら、もう本当に一年を切って短い半年とかそこらの裁決の期間でございますと、そもそもこの収用委員会に上がってくるまでの手続からいたしましてもずっと手順を踏むわけでございますから、そういうこととの妥当性といいますかそういう期間を考えますと、そういうようなもし裁決があったとすればそれはもう当然無効だということで、その無効であるということは裁決がないのと同じだということで、無効を確認するための審査請求をすると、そういうようなケースになろうかと思います。  だから、一年だったらどうだ二年だったらどうだ、それは土地収用委員会の裁決がありましたとしても、それを期間でもってこれは無効であるとか無効でないとか一概にそういうことは言えないと思いますし、そもそも収用委員先生方につきましては、公平な判断をされる、しかも法律の専門家、経済の専門家、そういった方々を県が選んでいるわけでございますから、そういう委員会が無効とかあるいはまた不当なそういうことを裁決されるということを前提にして議論することは非常に問題だと思います。  今、委員が例を挙げて言われたのでお答えいたしますけれども、決して沖縄の収用委員会方々がそんなことをされるとはよもや思っておりませんので、そこは一応念頭に置きながら、仮定の話として、例として出されましたので答えさせていただきましたけれども、誤解のないようにしていただきたいと思います。
  111. 泉信也

    ○泉信也君 今回の法改正の中で、例えば使用認定後裁決申請までの期間が、これは土地収用法の三十九条で一年以内ということになっておりますが、これが延びるというようなことは、この部分も改正をしておく必要があるというふうにはお考えになりませんでしたでしょうか。
  112. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 論理的に申しますと、そういうことはあり得ないことはないと思います。しかしながら、現実に使用認定がされましたら一定期間内に申請をしなければならないということになっておるわけでございまして、一定期間内にしなければ使用認定そのものが効力がなくなってしまうわけでございますから、一定期間内に当然使用認定がされるであろうと。だから、いかにも暫定使用という限られた効果ではございますけれども、その使用認定が行われたということと裁決の申請あるいは明け渡し裁決の申し立てが行われたというのを前提にしてこの暫定使用期間制度をつくるべきじゃないかということで、その二つをやはり前提条件にさせていただいたわけでございます。  だから、片一方があって片一方がおくれる、その期間に延び延びになってしまうという場合は、本来その一年以内にしなければならないというそちちの方でまずもってだめになってしまうおそれがあるわけでございますから、そういうことでその二つを前提にさせていただいたということでございます。
  113. 泉信也

    ○泉信也君 想定されたような事態が発生しないということを期待するわけですけれども、しかし今回の件も、七年の五月九日から八年の三月二十九日までほぼ一年に近い期間を要しておりまして、何か段取りが狂ったら認定が無効になるということも起こり得るケースがあるんではないかという思いを私は持っております。  それからもう一点、いわゆる公共用地の関係で緊急裁決というようなものがございます。収用委員会の審理期間を限定する、特別措置法の緊急裁決の場合には二カ月間でというふうに切ってありますが、こうしたことを盛り込むことはなぜなさらなかったんでしょうか。
  114. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 国が必要とする事業について、今度みたいに使用認定が行われたそういう事業についてどういう形で収用委員会にゆだねるかということは、まさに今検討されております地方分権推進委員会等でこの機関委任事務のあり方についてどうするかという問題とも非常に密接に絡んでくるわけでございます。  そういうこともございまして、収用委員会の裁決の現行の制度はそのままにして、とにかく今回はそういうことに触れないで、いろんな事情で裁決がおくれている、その間に無権原状態になったら非常に困るという、もうそこだけ一点に集中して、これだけは避けていただきたいということで法改正をさせていただこうということで提案させていただいておりますので、収用委員会の、今言われましたようないわゆる公共用地の場合の建設大臣が召し上げてやる、そういうような期間とのバランスはどうだとか、そういうことまで今回は考えずに、もう収用委員会については手をつけないで、ただ暫定使用を認めていただく、それを今回お願いしているわけでございます。
  115. 泉信也

    ○泉信也君 政府側がお答えになります。その必要最小限という意味は私なりに理解をしておるつもりですけれども、何か今回の改正がかなり強引ではないか。収用委員会は触れないようにしておるから、権原には一切手を触れないようにしておるということは確かにそうかもしれませんけれども、裁決が出るまで、あるいは収用委員会の結論が出るまではとにかく使えるというその状況は、全体の法体系から見るとかなり無理があるんじゃないかと私は思っておるわけです。  その点が第一点と、先ほどお尋ねいたしましたように、駐留米軍に限らず、自衛隊の用地というようなものにつきましてはやはり国が直接裁決をする、そのかわり例えば沖縄についての振興策なども直接国が責任を持つという、使用についてあるいは収用について国が責任を持つかわりに振興策等についても、地方とよく御相談することはもちろんでありますが、国が責任を持って対応するという仕組みを本来考えるべきではなかったかというふうに私は思っておるわけです。  そこで、先日の橋本・小沢会談で三つの確認事項がございました。その中で、防衛庁長官は、このことをなし遂げるためには必ずしも法律をつくることを意味していないという御答弁があったやに聞いておりますが、そういうことでございましょうか。
  116. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) いや、そういうわけではございませんで、仕組みについては幅広くいろいろ検討してもらうのは必要であろうと思いますけれども、法律をつくればすべてうまくいくという前提に立って議論をしていただくと大いに間違うことになりゃせぬかと。  やはり、こういうことについてはできるだけたくさんの方々に理解をしてもらって進めなければ、仮に本土に移転するにしても、あの一〇四号線越えの射撃訓練を、基地を移転するんじゃなくて訓練を十日間だけでもお願いするのに、あれだけやはりなかなか踏み切っていただけないという、そういうことを考えますと、法律をつくったからといってうまくいくわけじゃないんで、法律をつくりましても大多数の人が反対しているところでなかなか強制収用というのは、道路にしたってできない、飛行場だってできないような状況でございますので、そういう意味で、これは法律がまずありきという話ではないんだということを言いたかったわけでございます。  それと、先ほど委員が使用、収用の問題でちょっと自衛隊について言われましたけれども、実は基本的には若干違います。  沖縄米軍の問題でなぜこういうことが起きているかといいますと、米軍は言うなれば仮の、いずれ帰るんだということになっているものですから、強制収用ではなくて強制使用という形をとります。だから、五年ごとに契約しておってもこの問題が出てくるわけでございます。  ところが、自衛隊の場合は、原則として我が国の安全のために必要最小限のまずは自国の防衛ということでやりますから、これはある程度固定していくということで、ほとんどやはり必要なところについては買収でやっているわけでございまして、そこのところの違いが若干あるわけでございますから、どうかひとつその辺についても御配慮賜りたいと思います。
  117. 泉信也

    ○泉信也君 少し考え方が違うところもございますけれども、この問題は横に置いて、もう一言総理にお尋ねをいたします。  三つの項目がございますけれども、三項目め、国が最終的に責任を負う仕組みということについては総理はどういうことを具体的にはお考えでございましょうか。
  118. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今、久間大臣とも話しておりましたのですが、多少誤解を生んで久間さんに質問されましたもとは、もしかすると私かもしれません。というのは、私も法律制度だけの話ではないというのは、これはむしろ実は私が千葉県の土地収用委員会の例を挙げてお答えを申し上げたケースがございます。  御承知のように、成田空港問題で千葉県の土地収用委員全員が辞任をされ、その後任の選任ができないという事態の中で、完全にこの機能が停止をいたしました。その辺の問題について、私は確かに答弁の中で法律だけの問題じゃないんだということを申し上げましたので、あるいはそこが誤解を生じたかもしれません。  私は、駐留軍用地の使用権原の取得に関する事務につきましては、まさにこの駐留軍用地特措法という現行の仕組みがございます。  この事務は、我が国の生存と安全を確保する上で極めて重要かつ高度の公共性を有する米軍の活動の基盤にかかわるもの、さらには我が国が日米安保条約上負わなければならない義務の履行に関するものでありますので、以前にも私は国会答弁で申し上げたことがございますけれども、本来国が執行責任を負うべき性格のものだ、そう考えております。  しかし、その上で申し上げたいことは、そのあり方につき現在、地方分権推進委員会で第一次勧告の中に調整中とされているこれは事務であります。政府の責任者として、この地方分権推進委に審議をお願いしております立場上、その御意見なども見ながら幅広く検討してまいりたいと考えております。  四月三日、小沢新進党党首との会談でも、その考え方を申し上げております。
  119. 泉信也

    ○泉信也君 この特措法と直接かかわることではございませんが、内容的には大変我が国の安全に重要な関係がございます、いわゆるガイドラインの問題について若干お尋ねをさせていただきます。  参議院の本会議でも、今日までの検討状況、今後に残された課題についてお尋ねをいたしましたけれども、五月中旬以降の適当な時期に発表すると、しかも国会の議論を当然ちょうだいしたいという御趣旨の御答弁をちょうだいいたしました。そこで、その内容につきましてはもうお尋ねすることは取りやめにさせていただきます。  きょうお尋ねしたいことは、指針というのは恐らく日米間の約束事であろうかと思いますので、どなたがサインをなさるのか、サイナーはだれか、これはいかがでしょうか。
  120. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 指針は現在、防衛協力小委員会、いわゆるSDCというところでいろいろ検討を進めているところでございます。  したがいまして、そういうところで検討は進めるわけでございますけれども、国内的には、現在の指針もそうでございますけれども、これは国会における承認の対象になる協定とかそういった性格のものじゃございませんで、現在の指針の場合には、先ほど申しました防衛協力小委員会から報告がなされまして、それを受けまして翌日の閣議で報告をし了承されたと、このような手続になっております。今回も恐らくその同じような手続、手順を踏むことになろうかと、こう考える次第でございます。  それから、委員ちょっと恐縮でございます。この場をかりまして、先ほどの私の答弁にちょっと誤りがございましたので訂正させていただきたいと存じます。  在沖縄米軍の推移でございますが、返還の時点では大体四万人程度でございました。そして、その後いろいろ変動がございまして、現在も、先ほど申しましたように、ある程度の幅を持って変わるのでございますけれども、全体として沖縄におります米軍が二万六千ないし八千、その中で海兵隊が一万七、八千。失礼いたしました。私先ほど海兵隊の数を全体の数のように申し上げましたけれども、訂正させていただきます。
  121. 泉信也

    ○泉信也君 外務大臣に早回りしてお答えをいただきまして、国会承認を要するものではない、こういうお答えをいただきましたが、実はこれは当然両国を拘束する、これは当たり前のことでありまして、責任と義務が発生する代物だろうと私は思っております。  したがって、総理からは、さきの本会議で承認行為はないという御答弁をいただいておりますので、それを承知の上でなおかつお伺いをさせていただきたいわけですが、少なくとも国家間の文書で国家間の権利と義務を発生させるものである、そういうものであれば当然国会に諮るべきではないか。逆に言いますと、条約とは何なのかということについてお答えをいただきますと、このガイドラインが条約に相当するものかどうかの判断ができるかと思います。
  122. 林暘

    政府委員(林暘君) 条約とは何かというお尋ねでございますけれども、これは名称のいかんにかかわりませんけれども、条約とか協定とか取り決めと言っておりますのは、いわゆる国家間において、国家間の国際法上の約束として権利義務を規定している文書、そういったものが一般に簡単に申し上げれば条約というものになります。  その趣旨は何かというと、国家の権利義務を規定した文書ということでございます。
  123. 泉信也

    ○泉信也君 恐らくこのガイドラインは、日米両国間の権利と義務を規定したものだろうというふうに私は思うんです。これをやっていただきたいという米側の要望であり、日本がそれにこたえましようという約束事でありますので、私は条約に相当するものだというふうに考えますが、きょうは問題の指摘にとどめさせていただきます。  そこで、このガイドラインの問題を考えますときに、沖縄の基地問題というのはまさに序論ではないか。日米安保の根本的な課題を冷戦構造が終わった段階で改めて議論する、言いますならば国際情勢の新たな変化に対する安全保障の構造的な問題だとしてとらえなければならないというふうに思っております。  先ほど来、幾つかお尋ねをさせていただきましたが、国の安全保障にかかわる問題が新しい時代を迎えておる、それに対応していく。憲法問題もそうだと思いますし、集団的自衛権の問題もそうだと思います。広くこれから議論を続けていかなければならない、こんなふうに思っております。  しかし、そうした議論をするにしては余りにも日本の国民が、こうした問題をよく承知していただいておる中ではございますけれども、平和というものに対する思いが戦前、戦中を経験した方から見ますと少し違っておるのかな、こんな思いを持っておるんです。愛国心でありますとか国家でありますとか国益だというような事柄を口にすることすらはばかられる雰囲気すらあるように私は思っております。  そこで、文部大臣にお尋ねをしたいわけでございますが、国を守るというようなことに対する現在の教育のあり方については大臣はどのようにお考えでございましょうか。
  124. 小杉隆

    国務大臣(小杉隆君) 学校教育におきましては、憲法や教育基本法に基づきまして、国を愛する心とか、あるいは自分の国の防衛とか安全という、国を考える、そういう心を育成するという見地に立って教育を行っております。
  125. 泉信也

    ○泉信也君 大変文句のつけようのない御答弁でございます。  そこで、文部大臣、サイパンにおいでになったことはございますでしょうか。私、サイパンに機会があって訪ねました。いわゆるバンザイ・クリフと言われるところもございますし、あるいはまたその少し背後に自殺岸壁と申しましょうか、スーサイド・クリフというところもございました。いずれも慰霊碑とか記念碑、忠魂碑というんでしょうか、そういうものが建っておりますけれども日本人が非常に少ない。それから、こういう記念碑等が本当に荒らされておる。だれが荒らしておられるのかはもちろんわかりませんけれども。  こういう実態を私は見ましたときに、今大臣がお答えになりましたような通り一遍のことでは、戦時中に亡くなられた方々あるいは戦後も苦労された方々に対する、今に生きる私どもの気持ちが十分にあらわれていないのではないか、それは教育のどこかに欠点があるんじゃないか、私はこんなふうに思うんです。  そこで、これまで議論がありました具体的な教科書の問題でございますが、参議院の予算委員会でも外政審議室長が、いわゆる従軍慰安婦に関する限り、強制連行を直接示す政府資料は発見されませんでしたと、こういうことを答弁しておられます。そうなりますと、ことしから使われております教科書、七種類のうちの三冊に従軍慰安婦という言葉が出ておりますし、あとの七冊、ともにニュアンスは若干違いますが、いずれも強制連行をにおわせる表現になっております。  文部大臣は、この参議院の委員会で、明らかに事実と違う、その後の客観的事実の変更により事実でなくなったときには文部大臣として訂正勧告ができると、こういうことを同僚の田村議員の質問に答えております。外政審議室長は、強制連行の事実はなかった、資料はなかったと、こういうふうに答弁をしておられますが、これを受けて教科書の訂正を文部大臣としてなさいますでしょうか。
  126. 小杉隆

    国務大臣(小杉隆君) ただいまの質問は、政府の従軍慰安婦に関する調査の信感性について問題を提起されたと思いますが、今御指摘の最近の予算委員会での政府答弁におきましては、一定の強制性を認めた平成五年の政府調査の結果は現在でも変更されていないという立場を明らかにしております。したがって、教科書の記述についても、その後の事実の変更ということには当たらないということで、変更、修正の必要はないと考えております。  また、中学校の教科書では、強制連行という記述をしているわけではありませんで、いずれの記述も政府の調査の範囲内であるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  127. 泉信也

    ○泉信也君 強制連行の記述をしていないというふうにおっしゃいますけれども、背景を知らない子供たちがあの教科書を読んだときには、私は決してそういうふうには受け取らないと思います。  大臣、政府見解は訂正されていないと、こういうふうにおっしゃいましたですね。文部大臣として、閣議か何かで訂正する必要があるのではないかという御発言はなさいましたか。
  128. 小杉隆

    国務大臣(小杉隆君) そういう発言はしておりません。
  129. 泉信也

    ○泉信也君 子供たちの教育の全体を預かっておられる文部大臣が、一方で、政府の中の一部局ではありますけれども、強制連行に関する資料はないというそうした事実を表明しておられる。私も資料を見せていただきました。参議院予算委員会の要求によってつくられた資料もつぶさに見せていただきました。確かにありません。にもかかわらず、文部大臣として閣議でそういう御発言もなさらない、文部省として独自の取り組みもなさらないというのは、私としては大変残念に思うわけであります。  きょうは教科書問題が本論ではございませんので、いずれ機会を見てもう一度議論をさせていただきますが、私ども沖縄県民の心を心として受けとめていきますためには、単に平和だ平和だ、そういうことだけを唱えるのではなくて、平和のためには大変苦しい思いをする、物理的に血の出るようなこともあり得るんだ、そういう根っこのことを教えていただく。それによって初めて日本国民全体が平和のとうとさがわかり、そして今御負担をかけております沖縄県民方々の重荷を肩がわりしよう、そうした気持ちになっていただけるのではないかということを申し上げまして私の質問を終わり、関連質問を風間議員にお願いいたします。  ありがとうございました。(拍手)
  130. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 関連質疑を許します。風間昶君。
  131. 風間昶

    ○風間昶君 平成会の風間でございます。  引き続いて、この特措法の審議の前に、日米安保、それから我が国周辺の状況について若干お伺いしたいと思います。  先ほども日米安保条約五条、六条を読まれましたけれども、よく見ますと、安保条約というふうに言っていますが、日米相互協力が頭にくっついております。それで、六条では「アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍日本国において施設及び区域を使用することを許される。」となっておりますが、実際に沖縄に駐留しているのはほとんどが海兵隊でございます。沖縄人々というのは、素朴な疑問として、陸海空軍の中に海兵隊は入らないんではないかというふうに思っていらっしゃる方も相当いらっしゃるんです。  そこで、この海兵隊というのは条約上の陸海空の三軍に入るのかどうか伺いたいと思うんです。
  132. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 海兵隊はアメリカの軍の組織の上で米海軍省に属しておりまして、現行の米国家安全保障法というのもございますが、そこの第五〇二二号におきまして海兵隊は海軍省に所属する旨規定しております。そして、海兵隊は米海軍に属するものでありまして、海兵隊の現役人員は、我が国の領域にある間におきまして、合衆国軍隊の構成員として安保条約、地位協定の適用を受けることになるわけでございます。
  133. 風間昶

    ○風間昶君 去年の七月の防衛白書の六十八ページに「我が国周辺における軍事態勢」というふうに記述がありますけれども、ここでも陸軍、海軍、海兵隊、空軍と四軍にきちっと分けて記述しています。海軍の中に入るとなると何かおかしい感じがするんですけれども防衛庁、どうですか、海兵隊の軍隊としての性格。
  134. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) アメリカは専ら実務的には四軍と言っております。陸、海、空、海兵隊というような形で四軍と言って参謀その他そのようでございますけれども、組織上は海軍省に所属するということになっているようでございます。
  135. 風間昶

    ○風間昶君 じゃ英語の条文にマリンフォースは入っているんでしょうか。
  136. 林暘

    政府委員(林暘君) 今御指摘のとおり、第六条には陸軍、海軍、空軍と書いてございますけれども、英語を読みますと、アメリカの陸軍、海軍、空軍というのは固有名詞としてはアーミー、ネービー、エアフォースと言うわけでございますが、ここの第六条に書かれております今読み上げました陸軍、空軍、海軍というのは固有名詞ではございませんで、一般の普通名詞としてランド・エア・アンド・ネーバル・フォーシズと書いてございます。すなわち陸、空及び海の軍隊という意味でございまして、ここでは固有名詞としての陸軍、海軍、空軍ということを指しているわけでは必ずしもございません。
  137. 風間昶

    ○風間昶君 そうすると、一般に海兵隊とは言っても、アメリカ海軍沖縄にほとんど駐留しているというふうに言ってもいいんですか。
  138. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) もちろん海兵隊と言っていただいて結構だと思いますけれども、それが海軍に属しているということでございまして、海軍長官の下におるわけでございます。
  139. 風間昶

    ○風間昶君 そうすると、海兵隊という呼称そのものが、通常日本の中では米軍とはいっても海兵隊が非常に呼びならわされている。条約上は入っていないけれども含まれている。しかし、実際にマリンが、海兵隊は沖縄にいると。これはそもそもそのときに安保条約を改定すべきじゃなかったのかというふうに思うんですけれども外務大臣、その辺はどうですか。
  140. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 先ほど条約局長が申しましたように、英文で見ますと陸軍、海軍、空軍というところはイッツ・ランド・エア・アンド・ネーバル・フォーシズというふうになっています。したがいまして、地上あるいは航空そして海上の兵力、こういうことでございます。それが日本の正文では、先ほど来お話ございますように、陸海空となっておるわけでございますが、そういったことで条約上はアメリカのネーバルフォースでございます海兵隊が入ってくることは疑問の余地はないと考えるわけでございます。  ただ、実態的に、先ほど防衛庁長官からお話がございましたように、米軍のいろいろなオペレーションその他におきましては四軍ということでやっておることは事実でございますが、しかしその際もやはり行政組織的には海軍省に属し、そして海軍長官の指揮下といいましょうか、その管轄下に入る、そういうことでございますので、今実態的にもまた形式的にも条約を変更する必要性は認められないのではないかと考える次第でございます。
  141. 風間昶

    ○風間昶君 そうすると、解釈上の問題になっているわけですか、今の大臣の話だと。
  142. 林暘

    政府委員(林暘君) 先ほど御答弁申し上げ、外務大臣からも今御答弁申し上げましたように、陸と空と海における軍隊というものがここであらわされているわけでございます。軍隊というものを要素に分ければその三つの要素に分かれるわけでございまして、海兵隊というものもそういう意味においてはいずれかに属するわけでございます。海を進む場合には海の部分ですし、陸上に上がった場合には陸のフォースでございます。  そういう意味において、ここに書かれている陸軍、空軍、海軍という言い方の中で海兵隊が排除されているということは全くございませんので、そういう意味において条約を改正する必要はないというふうに考えております。
  143. 風間昶

    ○風間昶君 それじゃ次に、アジア太平洋情勢について先ほども総理からいろいろお話がありまして、アメリカのオルブライト国務長官あるいはプリアー太平洋軍司令官、キャンベル国防次官補代理、ゴア副大統領、さまざまな形で、地域紛争だけじゃなくて、新たな未来型脅威に対応するためアジアに展開する米軍の十万人体制は削減するつもりはないというような指摘があって、総理も、さっきおっしゃいませんでしたけれども、ゴア副大統領に対しては微妙なアジア情勢の中で日本政府として在日米軍の削減を求めないと。  その微妙なアジア情勢ということについて、総理はどのような機関からどういうルートで情報を得られたのか、まず教えていただきたいと思います。
  144. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 内閣の中にはさまざまな省庁があり、外交情報防衛情報、さらに内閣官房そのものが安全保障室、内調あるいは外政審議室、さまざまなものを持っております。そして、それぞれ随時私に知らせておかなければいけないと思われる資料を私が受けております。どこに何があるということについてはお答えを申し上げることは控えさせていただきたいと思います。
  145. 風間昶

    ○風間昶君 そうすると、総理が今おっしゃったさまざまな機関からの情報を御自身の頭の中で総合的に組み立て、判断して、情報をまた国民に向かって発信する、こういうことですか。
  146. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 問題によって、完成され、私が想像力を働かせる余地のない整理をされたものが届けられることがございます。また、クロスチェックができないが非常に重要と思われるということで届けられるものもございます。そうしたものの中に他のデータの中でクロスチェックをするべきものがあればクロスチェックをいたしますし、さらに私の方からチェックの調査を指示することもございます。さまざまなケースがございます。
  147. 風間昶

    ○風間昶君 そうすると、先般内閣強化へ情報局をつくるというふうに新聞に出ておりました。政府が内閣機能強化の一環として現在の組織体制を大幅に改めて情報局をつくるというふうに出ておりました。  今の総理のお答えですと、今までの情報のルートなり情勢分析なりに問題点があったからこういうことになってきたのかなと、国民の皆さん方もそういう思いもあるというふうに思うわけですけれども、それについてはどうですか。
  148. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 大変申しわけありませんが、それは何新聞ですか。
  149. 風間昶

    ○風間昶君 読売新聞です。そんなことを総理は知らないんですか。そういう情報総理のところに入っていないということですか。
  150. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 大変失礼をいたしました。  これはどちらかと申しますと、この報道が危機管理本部の問題として議論をしているという視点から今お尋ねをいただきましたなら、確かに我々は今内閣機能強化の中で危機管理という点から議論をいたしておる点がございます。その中で情報をどうすれば総合できるかということは確かに議論をしているテーマでありますが、内閣情報局と聞きまして、何となく第二次世界大戦中思い出しまして私びっくりいたしました。大変失礼をいたしました。
  151. 風間昶

    ○風間昶君 今、総理がおっしゃったように、私も本当に記事を見てびっくりした。僕は戦後生まれですけれども、父親から小さいときに教えてもらったおっかない軍隊の情報機関があって、福岡の陸軍病院に行ってそんな話をしたのを思い出したものですから、そのおかげで父親は外地には行かなかったのですけれども一体これは何なのかなということを思ったわけです。  それで、話をもとに戻しますけれども、そうしますと総理が今おっしゃった内閣のさまざまな調査室なり、あるいは防衛庁も今度情報本部をつくられて、外務省は外務省の方でも情報局がある。こういう今までの連係プレーがある意味では全部を網羅できなかったという問題点もあったのかなというふうに思われるんですが、この辺の関係はどうなっていくんですか、情報局の構想そのものと今まで問題になっていたこととの関連は。
  152. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) ですから、内閣情報局というその新聞記事をベースにしてお尋ねをいただきますと、大変恐縮ですが御期待に反する答えになる話なんです。  まさに私どもは今官邸機能の強化というものを非常に大きなテーマの一つとして特に行政改革会議で議論をいたしております。そして、官邸機能の強化の中には当然のことながら情報機能の強化というものがございます。そして、先ほど来申し上げてまいりましたように、官房そのものには外政審議室があり、内調があり、安全保障室があり、それぞれの役割に応じて専門性を持ちながら情報収集、分析し、それぞれはそれぞれとしてのクロスチェックを行いながら、必要な情報が私のところに届けられてまいります。  一方、防衛庁として三自衛隊の情報組織を一元化し本部をつくりましたのもこれはまさにミリタリー関係情報でありまして、普通これが私のところに届くという性格のものではございません。むしろその中でポイントとして知っておかなければいけないことが届けられる程度であります。  また、外務省がとっております外交情報、これも全部一日のものを集めましたら恐らく外務大臣もちょっととてもお読みになれないぐらいの量になるんではないかと思いますが、その中で必要なものは整理をされ、届けられてまいります。  ただその中で、先ほども申し上げましたように、クロスチェックを必要とするもの、あるいはさらに指示をし追加の情報をとってもらいたいもの、さまざまなものがございます。ですから、私ども情報機能強化ということは当然のことながらこれからも考えてまいりますが、それはまさに官邸、私の立場で今申し上げております部分は官邸の機能強化という中における情報機能強化という部分でありまして、これは収集、分析双方含みながらこれからも努力をしていく考え方でございます。
  153. 風間昶

    ○風間昶君 じゃ話をもとに戻しまして、アジア太平洋情勢について、昨年の中期防整備計画の改定の中でまさに日本海側に展開していた自衛隊の二個師団が旅団に格下げされた。これは一体どういう情勢あるいは情報分析による判断なのか。ただ単に防衛力の基盤整備の基本に乗っかって需要が少ないから減らしたというものじゃないと思うんですけれども、どうですか。
  154. 秋山昌廣

    政府委員(秋山昌廣君) まず、陸上自衛隊の部隊の再編成というのが一つの課題になっておりますけれども、これは一昨年に決定を見ました防衛大綱における情勢の見方を背景としているわけでございます。  我が国周辺地域軍事情勢というのをこの防衛大綱でどう見ているかということを簡単に申し上げますと、極東ロシアの軍事力の量的削減等の変化は見られるものの依然として大規模な軍事力が存在し、多数の国が軍事力の近代化を行っており、また朝鮮半島における緊張が継続するなど依然として不透明、不確実な要素が残されている。ただ、しかしながら同時に二国間対話の拡大、地域的安全保障への取り組み等地域の安定を図ろうとするさまざまな動きが見られるとともに、日米安保体制の存在は我が国の安全及び地域の平和と安定を図る上で引き続き重要な役割を果たしていくこととするという認識に立って、そしてこういった情勢あるいはその他の要素を考慮しながら陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊につきまして合理化、効率化、コンパクト化を図って効率的な防衛体制を確立する。その中で、陸上自衛隊につきましては全体として八個師団、それから六個旅団にする。そして、その中期防においては全体として四個師団を旅団にするうち二個について旅団に改編するということを出したわけでございます。  御質問の、なぜ旅団化の対象となっております師団が十二師団あるいは十三師団になっているのかという御質問考えますと、実は師団の改編、特にこれはある意味でコンパクト化といいますか縮小するわけでございますので、大変時間を必要とする。全体につきましても、十年以上かけて改編をしていきたいと考えているわけでございますが、そのときに幾つかの要素を考えて、優先順位といいますか、順番にやっていきたい。  二、三を御紹介いたしますと、一つは……
  155. 風間昶

    ○風間昶君 ちょっと待ってよ。日本海側に展開した……
  156. 秋山昌廣

    政府委員(秋山昌廣君) 日本海側といいますか、十二師団、十三師団のことでございますけれども、今これから申し上げる二、三の考慮すべき点を聞いていただければ理解していただけると思います。  一つは、前中期防で普通科連隊等を廃止したといったような師団につきまして、引き続きまた縮小するということは地元との関係で非常に難しいということで、そういう師団は少し後にずらしたい。それから、師団から旅団にいたしますときに、装備その他の近代化を同時に行うつもりでございます。そういう観点からいたしますと、最近近代化をした部隊につきましては、全体としては後に回したい。それから、他国に隣接したりあるいは重要海峡に面しているというところの師団につきましては、なるべく早く効率的な体制に変えたい。  そういったことを全体として考慮した結果、この中期防で十二師団及び十三師団につきまして師団から旅団にしたいということを考えているところでございます。
  157. 風間昶

    ○風間昶君 わけのわからぬ答弁をやらないでほしいんです。日本海側に展開していた二個師団を旅団に格下げされた情勢分析はどういうことで判断されたんですかと聞いているんですよ。全体の一般論を聞いているんじゃない。
  158. 秋山昌廣

    政府委員(秋山昌廣君) 陸上自衛隊につきましての部隊再編の背景につきまして、国際情勢の認識は冒頭申し上げたとおりでございます。  それから、師団を旅団にする場合の再編というのは、これはある意味かなりエネルギーを要することでございますので、今申し上げましたようにいろいろな要素を考慮し、つまり最近大きな部隊改編をやった師団は後ろに置きたい。それから、最近非常に金も投入して近代化を行った部隊につきましては、実は師団から旅団にする場合に近代化を伴うわけでございますので、地域バランスを考えて、最近近代化をやった師団につきましては後ろの方に回したい。それから、海峡に接しているところ、あるいはその隣接地域といったようなものを考慮いたしまして判断した結果、最初の五年間の中期防の期間に十二師団及び十三師団を対象にする。日本海側に面しているということを理由にしてやるものではございません。
  159. 風間昶

    ○風間昶君 だから、さっきからそれを聞いているんですよ。防衛庁長官お願いします。
  160. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 実は、今言いますように、師団をなくしたり、今度の場合は師団を旅団に改編するわけですけれどもかなりエネルギーが要るわけですね。そして、人間の配置転換その他をやっていく、また地元のある程度の了解もとらなきゃならない。  そういうようなことがございまして、前中期防のときに手がけたところはとにかく後回しにしよう、そしてまた海峡に面しているようなところも、これもやはり後回しにしよう、あるいはまた近代装備を最近入れたところは、せっかく入れてそれで体制をつくっているんだから後回しにしよう。そういう配慮の中で配置転換をやったときに、今十二師団、十二師団が対象になったということでございまして、決して十二、十三師団をねらい撃ちして、これは日本海に面しているところでここは手薄にしてもいいというようなことでやったんではない。  こういう席でこういうことを言うのはいいかどうかわかりませんけれども、実態からいうとそういうことでございます。
  161. 風間昶

    ○風間昶君 そうしますと、午前中、板垣委員外務大臣北朝鮮情勢を含めた認識をお伺いして、答弁があったわけですけれども北朝鮮など東アジア情勢というのは非常に不安定要素が強いというふうに思うんです。  そうすると、たまたま新潟を中心とする日本海側の方の自衛隊の装備が旅団に格下げになったということになると、国の安全を考えていく上で自衛隊が具体的にどういう対応ができるのかということを非常に私は危惧するものですから、ここの辺について再考する必要が、北朝鮮を含めた日本海側の不安定要因に対応していくための防衛のあり方というのは当然内部で議論されていると思いますけれども、ここを国民の目の前にきちっとわかるようにしてもらわないと、日本海側には原発もあり、あるいはさまざまな問題が相当ある中で国としてどうするのという疑問が出てくると思うんです。  そこにこたえていくようなことを防衛庁としても考えてもらわなきゃならないわけですよ。
  162. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 内部においても、特に昨今、北朝鮮といいますか、そういう具体的に名前を挙げるのもちょっとあれですけれども総理から、日本周辺で例えば難民が発生した場合あるいはまた沿岸の重要施設の警備をどうするのか、そういうことについてのいろいろ指示を受けております。防衛庁もその一環として、大量の避難民が発生したときにどうするかとか、そういうことについても内部ではいろいろと議論させていただいておりますけれども、その具体的ないろいろの中身につきましてこういう席で言うのは控えさせていただきたいと思います。  ただ、防衛庁としてもいろいろと、特に委員が今おっしゃられますようなことは念頭に置きながら検討していることだけは述べさせていただきたいと思います。
  163. 風間昶

    ○風間昶君 それでは次に、先ほどの総理兵力構成、在日米軍の話であります。  現時点では全然発言されていない、今その時期ではないというふうにおっしゃっておりますが、じゃ防衛庁長官、長官としては、国の安全を守る総指揮者として四万七千人の在日米軍が必要なんだ、沖縄海兵隊も必要というふうに思っていらっしゃいますか。
  164. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 私から答えるのは適当かどうかわかりませんけれども、昨年の十二月二日にいわゆる2プラス2でSACOの問題を通じての報告をしましたときに、米国防長官とも話をしたわけでございます。そういうようなときに、今までのいろんな積み重ねの中で現体制でいくということを議論して、そういうふうに両者で、外務大臣と私、向こうは国務長官と国防長官の四者で会合を持ちまして、この十万人体制でいくということを決めたわけでございます。  それからまだ三カ月しかたっていない現時点でこれが変わるなんということをこちらから持ち出すようなことはないということで、防衛庁としては、一貫して現時点ではそういうことは考えていないということを言ってきているところでございます。
  165. 風間昶

    ○風間昶君 これもまた新聞情報で恐縮ですけれども、キャンベル国防次官補代理が三月十四日の記者会見で、アジア米軍十万人体制は米国の一方的な決定ではないと指摘して、日本政府との緊密な協議の上の方針であるというふうに強調されていらっしゃる旨の新聞報道があります。  そうすると、これはいつ、どこで、だれと、どんな形で協議が行われたのか。外務大臣いかがですか。
  166. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 日米間ではいろいろな場で協議がされております。そういった中で、この地域のいろいろな情勢についての情勢分析についても話し合い、そしてまたそういった中でこの地域の平和を守り、またその地域の安定のために役割を果たしていくという意味において、現在の米軍のプレゼンスというものは非常に大切であるという認識は日米間で一致しているところでございます。  そういう場はどういう場かということでございますが、具体的には、先ほど防衛庁長官の御答弁にもございました昨年末の2プラス2もそうでございますし、あるいはまた昨年春の日米首脳会談もそういった認識の一致が見られた場であろうと思います。さらに、その前にもいろいろなレベルにおきまして間断なくいろいろな対話はしておるわけでございまして、そういった中でできた認識の一致、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  167. 風間昶

    ○風間昶君 よくわかりました。  しかし、我が国の外交がアメリカと本当に対等にやっておられるのかという疑問をまだ国民の方々は持っていらっしゃる。日本での、先ほど来の総理及び防衛庁長官外務大臣の国会発言と同じく、やっぱりアメリカにきちんと口で物を申すことをやっていかなきゃならない。じゃ、それをいつ、どういう会談で、どう話したのか。それは確かに機密上の問題もこれありかもしれない。しかし、外交上の秘密と言われるけれども、そんなばかな話はないのであって、今では、密約外交をやったって、その日のうちに全世界にニュースが流れるわけです。  だから、そういうことを考えるならば、本当にオープンな外交でなければならない、私はそう思うわけです。それが新聞記事のリークでもって後から一国の宰相がコメントを述べるなんという、そんな話が逆さまでは、日本外交は僕はとても日本人としてまた恥ずかしい感じがするわけです。  記録がないというのはおかしい話なので、ちゃんと記録はとっていらっしゃるんですよね。
  168. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) まず基本的に、我が国は当然我が国の国益を踏まえて外交を展開しております。そしてまた、日米間で申しますと、米国も当然米国の国益を踏まえて対処しておられると思います。そして、話し合う中で両国の国益の合致するところ、それは日米安保体制もあり、またそのほかのいろいろな面での協力関係もあるんだというふうに私ども考えております。  それから、そういった日米間でのいろいろな対話が行われる。上は首脳間の会談から、それからまたそれぞれの担当閣僚あるいは事務方の対話もいろいろなレベルで行われております。そういったそれぞれの会合につきましては、その性格にもよりますけれども、会合の行われた後には、その会談を行った者自身による記者会見が行われることもございますし、場合によりましてはそのほかの者から記者ブリーフと言われるものが行われることもあるわけでございます。  そういった意味で、私どもは、そういった日米間あるいは他の国との関係でもそうでございますけれども、外交交渉あるいは国際的な対話につきましてもできる限り国民の皆様方にも明らかにし、そして御理解、御支持をちょうだいしながら外交を進めてまいりたい、こういうふうに心がけているところでございます。
  169. 風間昶

    ○風間昶君 言われているところの対米追随批判というその批判を押し返す形で、気持ちは均等、対等であっても情報の量及び中身からするとどうもそうなっていない印象が私はぬぐえないわけですけれども、ぜひそういう意味日本の主体性ある外交をやっていっていただきたい。これは、もちろん総理は常々そのように配慮しながら努めていらっしゃることと思います。  次に、先ほど来も演習場、射撃訓練場の移転問題の議論がありましたが、沖縄アジア太平洋戦略のキーストーンであることも事実で、一方においては沖縄に過度の負担を強いることができない現実もある。その米軍基地の移転に当たってはやっぱり条件があるはずなんですが、その条件というのは一体何なのか。移転をすることに当たっての条件です。
  170. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 移転に当たってのどれを指して言われたのか、本土での一〇四号線越えを五カ所の演習場でやることを指して言われたのか、あるいはまた普天間飛行場を沖縄県内に移設することを条件としたことについて言われたのか、ちょっとわからぬものですから。
  171. 風間昶

    ○風間昶君 今、射撃訓練という話をしました。
  172. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 射撃訓練ですか。射撃訓練については、基地を移転するわけじゃございませんで、演習を本土で行うということを決めたわけでございますので、まずそこのところはきちっと述べさせていただきたいと思います。  なお、これはキャンプ・ハンセンと同様に四、五キロメートル程度の射程を確保できる国内の演習場を探しましたところ、十カ所ほどございました。それで、現にキャンプ・ハンセンで実施しているおおむね大隊規模の訓練と同質同量の訓練を安全かつ確実に実施するという米側の要望を前提として、演習場の面積とか着弾地の規模、射撃陣地の規模、演習場へのアクセス、訓練部隊の受け入れ能力等を勘案しましたところ、この五演習場でなら可能だということでこの五つに絞らせていただいたわけでございます。
  173. 風間昶

    ○風間昶君 アメリカが演習場の移転に際して出された条件は一項目だけですか。
  174. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) いや、今言いましたように、四、五キロメートルの射程が要るということですね。そして、今キャンプ・ハンセンでやっているのと同程度の訓練が安全にしかも確実にできる、危険性がない、弾がちょっとそれても安全が確保できるとか、そういう意味での演習場の面積でございます。それと着弾地の規模、それから今度は射撃、撃つ方の陣地の規模、それから、とにかく山の奥というわけにもいきませんから、演習場まで行くアクセス、訓練部隊の受け入れ能力、こういったところを全体に勘案して決めたわけでございます。
  175. 風間昶

    ○風間昶君 そうすると、今聞いている限り、アメリカ側から出された条件に日本のどこが当たるのかということで、そういうふうにとらえていいんですか。
  176. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 現在沖縄で行っておる訓練をほかの地区でやるということになるわけでございますから、現在の訓練の中身を変えないでやろうということでございますから、当然やっている側の意向を聞いて、それに見合うようなところで国内でやれるところはどこかということを探しまして、この五演習場で請け負ってもらう、そういうふうに村山内閣当時に決めたということを伺っております。
  177. 風間昶

    ○風間昶君 そういう中にあって北海道の矢臼別が候補に挙がっているわけです。矢臼別は、ちょっと観点は違いますけれども沖縄から見てというか東アジア韓国から見て、沖縄よりもかなり遠いところにあって、防衛戦略上、幾ら射撃実弾訓練とはいっても非常に戦略的に考えづらい地勢の利というか地位にあるんじゃないかというふうに思う。むしろ、総理の地元である日本原演習場の方がずっとソウルに近い、私の目から見ると。  このことに関しては総理はどうですか。
  178. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 先ほどからたびたび言っていますように、基地として移すということじゃございません。だから、何かを想定してするんじゃなくて、訓練をどこでやるかでございますから、例えば日本国内で今いろいろホークの実験その他訓練ができない場合、アメリカ大陸まで行って訓練させてもらっているわけですね。  そういうようなことでございますから、沖縄から北海道に行きます場合でも、九州でもあるいは本土のほかの地区でも、しかも一年間のうち十日間行くだけでございますから、矢臼別を選んだときにソウルとの関係だってそんなことは全く考える必要はないわけでございます。基地の移転ではなくて訓練を年間に十日程度させていただくという気持ちでございますので、どうかその地元の方々にも御理解を賜れるように、委員からもよろしく御努力のほどをお願い申し上げます。
  179. 風間昶

    ○風間昶君 それは私は納得できない、反対の立場ですから。  北海道でその射撃訓練を十日間やるということになっていった場合に、対ロシアとのパワーバランスはどうなるのか。それから、北方海域で緊張緩和に今向かっているのに、射撃訓練をやるということになると逆行するわけです。また、北方領土問題に与える影響をどう考えていくのか。ここの辺はどうでしょうか。
  180. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) この問題は、ただいま防衛庁長官から御答弁があったとおりの性格のものでございまして、専ら沖縄の御負担を軽減するという国内的な理由、国内的な目的の一環として行われるものでございますし、期間的にも非常に限られたものでございます。ましてや、ロシアあるいはどこか特定の国に対抗する、あるいはそれを念頭に置いてというようなものではさらさらないということは明らかでございますので、このことがロシアその他の国との関係で何らかの好ましからざる影響を与えることはないと思います。そして、ロシア国民も懸念されることはないと思う次第でございます。  なお、外務省といたしましては、ロシア関係者にもそういったことは適当な機会をとらえまして伝えておるところでございます。
  181. 風間昶

    ○風間昶君 それは性質が違うといったって、現実に何百人かの海兵隊員が実弾射撃訓練で北海道矢臼別に来ると、ある意味ではロシアも含めてそれなりの今、別だと、そんなに考えられないと言ったけれども、そうじゃないんですよ、来れば。
  182. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) そうかな。
  183. 風間昶

    ○風間昶君 いえ、そうですよ。そうかなじゃないですよ、長官。長官、じゃどう思っていますか。
  184. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 余り、そう大げさに外交問題としてとらえてもらうこと自体が非常に困るわけでして、やっぱり沖縄方々が、今まで終戦後ずっとあそこで、キャンプ・ハンセンで実弾演習が行われておる。今度、一〇四号線越えを仮にやめたとしても、ほかの実弾演習はそこでやっておるわけでございますから、せめて一〇四号線だけでも本土の五カ所で分散してやってもらいたいという沖縄県民方々の気持ちをやはり酌んでいただきたい。  最近では、北海道の皆さん方もそういう気持ちになって、ほとんどの方がそういうふうに御理解を示していただいておるわけでございますから、どうかこういう場におられる先生としては、まず率先して沖縄の痛みを分かち合おうじゃないか、せめてできるならと。特に、矢臼別の場合は一万六千ヘクタールあるわけでございますから、国内における演習場としては最大の面積でございます。そういうところでできないとなれば、ほかの演習場でもできないという話になってしまいますので、こういう点についてはぜひ御理解をしていただきたいと思います。  もし、ほかの演習場でもやれないとなれば、引き続き沖縄でしなきゃならないことになるわけでございますから、やはり我々がSACOで決めました内容について、決めたことだけはぜひ御理解いただきながら、全国で分散実施、どこかにまとめて行くわけじゃないので、それも先ほど言ったように十日間、人数でも三百人でございます、そういった人たちが十日間だけ行く。しかも、総射撃日数としては、今までの自衛隊あるいは米軍と共同でやっておった、そういう射撃日数の枠内でやるということでございますので、この点については何とぞ御理解賜りますようにお願い申し上げたいと思います。
  185. 風間昶

    ○風間昶君 理解できない。  先日、三月二十八日の朝日新聞に、後藤田さんが「「朝鮮」後の海兵隊削減を検討せよ」というふうに、対北朝鮮を意識する論理で現実的な提案を行っているのも御存じだと思います。このことに対して外務大臣の御所感を、当然読んでいらっしゃると思いますけれども、お伺いしたいと思います。
  186. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 後藤田氏の御発言について、直接のコメントを申し上げるのはいかがかと存じますけれども日本政府の立場につきましては、もうきょうの委員会におきましても私もそのことで申し上げましたが、総理あるいは防衛庁長官からもたびたび御答弁ございましたように、少なくとも現在のこの情勢考える限り、今そういった海兵隊も含めまして、駐日米軍のプレゼンスのあり方を大きく変化するということを考える、あるいはそれを提起するような状況にはない、こう考えております。  それから、北朝鮮状況が大きく変化した場合にという前提を置くといたしましても、それは一体どの時点で、またどういう形でということを、今仮定としてもいろいろ一つの姿をつくり出しまして、それを前提にして海兵隊あるいは駐日米軍全体の変化をいろいろ考えるというには、いかにも時期が尚早であると思います。  それに、当然のことでございますが、在日米軍の構成あるいはそのプレゼンスのレベルをどうするかという問題は、朝鮮半島状況だけの関数ではございません。そのほかのいろいろな情勢その他を総合的に勘案しながら考える、将来の問題としてもそういう性格のものであろうかと考える次第でございます。
  187. 風間昶

    ○風間昶君 これは、また次の機会に議論したいと思います。  今回のこの特措法の提案理由についてちょっと一つ伺いたいんですけれども日本全土にあるこの駐留軍の軍用地を対象にしていますけれども、強制的に米軍に使用されている土地、本土に何ヘクタール、沖縄に何ヘクタールあるのか、まず教えてください。
  188. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 沖縄県に所在しております施設区域のうち、民公有地は全部で約一万五千七百ヘクタールございます。そのうち、ほとんどがいわゆる契約に応じていただいているわけでございますが、この駐留軍用地特措法に基づきまして現在手続を進めておりますのは、このうちの約三十五・六ヘクタールでございます。  一方、本土に所在しております施設区域の民公有地は全部で約七百八ヘクタールございますが、現在すべての所有者から円満に契約の同意をいただいておりますので、駐留軍用地特措法に基づき使用している土地はございません。
  189. 風間昶

    ○風間昶君 ということは、本土はいわば強制的に使用されている土地はゼロというふうに理解していいわけですね。  そうすると、この特措法というのは事実上沖縄だけに適用される法律、特別法であると。だけれども、この提案理由を見ますと、沖縄という文言は一カ所も入っていないんです。非常に現状を的確に説明しているとは言いがたい。  先日、内閣委員会でしたか、アイヌ文化振興法を審議した際、法律自体は全国的に適用される。兼務されている北海道開発庁長官もいらっしゃいますからあれですけれども、主な対象地域が北海道であるということは提案理由でも明らかになっているわけです。  今回、一〇〇%沖縄に適用されることはもう先ほどからの答弁でも明らかであります。なぜ提案理由の中で沖縄をわざと外しているのか、避けているのか教えてもらいたい。
  190. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) この法律は昭和二十七年にできましたが、その当時は沖縄は入っておりませんでしたので、本土で適用された法律でございます。本土のためにまずつくられた法律でございまして、昭和三十七年までの間に五十回適用されております。  しかしながら、その後は、本土におけるいわゆる民公有地をお持ちの方々が契約に全部応じていただいておりますから、現在はないわけでございます。現在は確かに今委員おっしゃるとおり、沖縄でございます。沖縄に五十七年から適用されております。  しかしながら、来年、再来年と契約期限が切れる方々本土でもおられます。そういった方々が来年、再来年のときにノーと言われればこの法律を適用するわけでございますので、この法律が沖縄だけのための法律だ、今度の改正も沖縄だけのための改正だというような、そういうように間違っておとりにならないようにどうかひとつぜひお願いしたいと思います。
  191. 風間昶

    ○風間昶君 間違っていないよ、何にもそれは。理論的にやれと言うんならやりますけれども、もう時間が余りないからあれだけれども。  私、もう一つわからないのは、特措法と憲法九十五条の関係です。  今回の法案はとにかく沖縄県における駐留軍用地の使用に伴う特別措置に関する法律だから、まさに長官もおっしゃるように、今回は沖縄だけ適用されると。ところが、憲法九十五条には「一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。」というふうにあります。この特措法の改正が住民投票なしに成立するという論理は、この条文からだけでは見出しにくいわけです。  だから、そういう意味で、先ほどは、沖縄特別法とは思わないでくれと言ったけれども、まさに沖縄ねらい撃ちの法律になっている。沖縄だけの特別法ではないというふうに現時点で政府が答弁するのは、本質をやっぱり隠すに等しい、私はそう思うんです。だから、今回の措置は沖縄だけに限定される差別性を有していることを率直にやっぱり認めるべきだと私は思うんです。
  192. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 御承知のとおり、この憲法九十五条というのは、地方公共団体の組織、運営等にかかわる問題についての法律をつくるときに適用される条文でございますが、今度の法律あるいはまた今まででき上がっておりました特措法につきましてもそういう法律でないということで、この法律をつくりました当時からそういうようなことになっていませんし、今回につきましても、そういうことはいわゆる憲法九十五条には抵触しないということで今御審議を願っているわけでございます。  最終的に、その法律が憲法のどの条文に違反するかしないかは、特に九十五条に違反するかどうかというのは、これは最終の議決をされる院においてお決めになることだとは伺っておりますけれども、我々は提案するに当たりまして、十分その辺を審理した上で、九十五条には何らこれは抵触するものではないということを決めた上で提案しておりますので、もし必要ならば法制局長官からお答え願いたいと思います。
  193. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) ただいま防衛庁長官からるる説明がございましたとおりで、私から特につけ加えて申し上げる点はないわけでございますが、要するに九十五条の地方特別法の意味いかんという、その理解に関係する問題であろうと思います。  それにつきましては、従来から政府といたしましては、特定の地方公共団体の組織、運営、または権限について特例を定める法律をいうという理解をしておりますので、それを前提といたしますと、今回の駐留軍特措法の一部改正法案はこれに当たらないと私どもとしては考えております。
  194. 風間昶

    ○風間昶君 ちょっとよくわからないのですけれども、そうすると、一つの地方公共団体にのみ適用される法律の制定なら住民投票は必要だけれども、今回は改正だからそういうことはないということですか。
  195. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) ただいま申し上げました特定の地方公共団体の組織、運営、または権限について特例を定めるかどうかといいますのは、例えばの話でございますが、沖縄県ならば沖縄県という地方公共団体、団体の組織、運営、または権限について特例を定めるかどうかという問題でございまして、特定の地域を適用対象とするかどうかという観点からの問題ではございません。
  196. 風間昶

    ○風間昶君 時間もないのであれですが、先ほど総理もおっしゃった一昨年九月のあの忌まわしい少女レイプ事件があって、クリントン大統領も前駐日モンデール大使もさまざまな遺憾の意を表明して、あのときがやっぱり地位協定を改定する絶好のチャンスだったなと私は率直に思ったんです。  アメリカはたまたま好意的態度を払ってくれるということで運用上の決着をつけるとしましたけれども沖縄にとってみれば、海兵隊による犯罪がなくならない限り基地と共存できない、それがやっぱり偽ら、ざる私は沖縄の心だと思うんですね。また、大田知事の代理署名拒否のときでも、この五月十四日が来ることはわかっていた。だから、少なくとも混乱回避のチャンスは二回私はあったんだと思うんです。  そういう意味で、当時の村山前内閣から禅譲を受けた橋本総理も、当時の大臣ではあるものの、自民党総裁として自社さきがけ体制の中で責任があると思うんですけれども、時間ですので、責任については次に行いたいと思います。  これで終わります。
  197. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) これにて泉信也君の質疑は終了いたしました。(拍手)
  198. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 社会民主党・護憲連合、沖縄選出の照屋寛徳でございます。  総理並びに関係大臣におかれましては、私の質問の中で厳しい表現もありましょうが、決して私憤ではなく沖縄選出の国会議員としての興奮の余りでありますので、御寛容いただきたいと思います。  米軍用地収用特別措置法の改正案が衆議院を通過し、いよいよ参議院での審議始まりました。私は、具体的な質問に入ります前に、この法案は沖縄に対する差別立法であり、日本の民主主義を崩壊せしめ、現憲法下の土地収用法制を否定する法律であることを強く指摘するものであります。同時に、この法案が目指しているものはまさに平成の琉球処分であり、断じて認めることはできないというのが多くの県民の率直な気持ちであることを申し添えておきたいと思います。  さて、この法案の背景にある沖縄の基地問題を正しく理解するためには、五十二年前の沖縄戦にさかのぼる必要があります。  五十二年前の夏、沖縄では我が国で唯一の地上戦が展開されました。鉄の暴風ともありったけの地獄を集めたような戦争とも呼ばれる悲惨な沖縄戦であります。沖縄戦では二十万余のとうとい命が犠牲になりました。沖縄戦本土防衛、国体護持の捨て石であったと言われております。  実は、私の親族にも沖縄戦で亡くなった者がおります。私の妻の父親も戦死をし、いまだに遺骨の一かけらすら戻ってこないのであります。私自身はサイパン島のアメリカ軍捕虜収容所で生まれました。私と同じ昭和二十年生は、ごうや、がまの中あるいはお墓の中で生まれた者も多いのであります。戦後五十二年、沖縄戦における犠牲者の遺骨すら完全に収骨されていないのであります。  橋本総理沖縄戦の実相についてどのような御認識をお持ちか、お伺いをいたします。
  199. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、小学校二年で敗戦であり、自分の記憶として持っておりますものは、東京におけるB29の空襲、自分の家が焼けたことを含めての思い出だけであります。  そして、沖縄戦というものについて、我々、敗戦後、小学校から中学校に進んでいきますプロセスの中で、恐らく私ばかりではなくほとんどだれも授業として、あるいは知識として教えられたものは、その当時なかったと思います。    〔委員長退席、理事永田良雄君着席〕  そして、私自身が沖縄県に全く我々と違った歴史があることを知りましたのは、たしか昭和三十三年か四年か、たしか三十三年だったと思いますが、当時の早稲田大学の大浜信泉先生が私の父親のところに対馬丸遺族方々に添書をつけて送られたときでありました。たまたま私は、その方々をお迎えすることになり、その後、きょう見えた方々はという口調で父から対馬丸の悲劇を初めて聞きました。そして、全く違う歴史のあることをその時点で知りました。そして、国会にその父親の後を受けて立候補し当選をさせていただきましたときに、その対馬丸の問題がまだ残っていたことを知りました。  私自身が沖縄に参りましたのは、昭和四十年の八月が最初であります。そして、私自身の記憶に一番残っております鮮烈な思い出は、殊に摩文仁を中心としたあの一円の木々が、私の背丈までもようやく育つかどうかの高さまで皆砲弾によって打ち砕かれていたことでありました。それ以来、沖縄県を訪ねますたびに緑が濃くなり、その木々が大きくなっております。  そして、先ほど午前中、板垣さんの質問にありました金城さんの御案内をいただきまして、魂魄之塔、黎明之塔、島守之塔、ひめゆりの塔、健児の塔、たしかそれぐらいであったと思いますが、あの一円の戦跡を御案内いただきましたが、当時は気をつければまだ遺骨の残っておるときでありました。  それから数年後に、昭和五十年代に入っていたかもしれません、その沖縄戦のちょうど当時六歳未満であった方々で負傷されその傷跡を今も姿形にとどめておられる方々の代表が、戦傷病者戦没者遺族援護法、この中の給付の対象に自分たちもしてほしいという訴えを持ってこられました。我々の先輩方の中のどなたかが、六歳以上の言いかえれば学校に入ったお子さんまでは、例えば水をくんだとかいろいろな理由をつけて戦闘協力という名前でその負傷された方々を対象として救い上げておりましたが、六歳未満の方々が残っておりました。本土においてなかった話であります。  そして、何年ごろでありましたか忘れましたが、ちょうど国会で児童扶養手当法の改正法案が通過、成立をいたしました直後、お招きを受けて沖縄県に参りましたとき、国籍の違う御両親を持ったお子さん、そのお母さん方から児童扶養手当法の不備をなじられて私が答えられなくなったことがありました。我々は、全く気づかずに児童扶養手当法、母親と子供と双方に国籍要件を課しておりました。当時ベトナム戦争がなお続いておりまして、米軍兵士の戦死がありまして、結果として国籍の違うお母さんと子供さん、児童扶養手当を必要としながら受けられなかったわけであります。おわびをし、翌年国会修正をいたしました。  こうしたことを振り返りますと、我々の全く知らなかった沖縄戦の実情、想像はできませんけれども、その影響というものは絶するものがあろうと思います。
  200. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 あの悲惨な沖縄戦県民が学んだものは、何といっても平和のとうとさであります。よく沖縄の心が語られるわけでありますが、私は、沖縄の心は何よりも平和を希求する心である、このことをぜひ総理を初め防衛庁長官外務大臣には深く胸に刻んでいただきたいと思うのであります。  さて、現在、沖縄に存在する膨大な米軍基地は、その大部分が米軍沖縄占領後に米軍の一方的な軍事力によって接収をされたものであります。一九四五年六月二十三日、日本軍の組織的な戦闘行為が終了するや、住民を十数カ所の収容所に収容し、米軍はみずから軍事基地として必要な土地を好きなだけ囲い込んで基地建設を進めたのであります。一九四五年の時点で約百八十二平方キロメートルの土地が基地として囲い込まれたのであります。  戦後五十二年たちました。総理は、今私が申し上げた事実をお認めになるでしょうか。    〔理事永田良雄君退席、委員長着席〕
  201. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 前にもお答えを申し上げたことがあるように思いますが、私は総理になりましたとき、大田知事の「高等弁務官」を改めて読み、率直に申してあの記述に疑問を持ちました。そして、自分なりに調べてみてその記述の正しかったことを知りました。その記述の内容は、今、議員が述べられたのと同じ方向であったと思います。
  202. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 対日平和条約発効後の一九五二年十一月一日に米国民政府は布令九十一号契約権なるものを公布いたしました。同布令は、行政主席が土地賃貸借を締結する権限と職務を有し、土地所有者と行政主席が土地賃貸借契約を締結すれば自動的に米国政府に転貸されるというものでありました。ところが、当時の住民の怒りを買って契約できたのはわずか二%程度であり、契約による軍用地の取得は失敗に終わったのであります。  その後、布令百九号土地収用令を公布して、アメリカ軍は武装兵を動員していわゆる銃剣とブルドーザーによる暴力的でむごい形での土地収用をやりました。伊佐浜での例あるいはまた伊江村での例、旧真和志村の例がそれをよく物語っております。  対日平和条約発効後、復帰の時点まで、アメリカはさまざまな布令、布告を乱発して一応合法的な装いを凝らしながら、しかしながら強制的な土地接収を続けていった。この法律的な評価は別として、歴史的な事実については総理はどのようにお思いでしょうか。
  203. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私はその歴史を本当に知りませんでしたし、大田知事の本を読み、疑問を持ち、調べてみて、今述べられた方向であったということを知りました。ですから私は、決して議員が述べておられることを事実ではないというような言葉を用いるつもりはありません。そうしたことがいかに当時沖縄方々の胸に重苦しく怒りを燃やしたかということも自分なりにはわかるつもりであります。  その上で、そこまで過去にさかのぼって米軍の行動を云々すること、今となっては事実の問題として益がないという感じは率直にいたします。
  204. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 一部総理と見解を異にするわけでありますが、私は、あの敗戦から復帰に至るまでアメリカ軍が不法不当に土地を取り上げて膨大な米軍基地を形成していった、そのことはやはりきちんと防衛庁長官外務大臣も受けとめるべきであるというふうに考えております。  ところで、法務省、おいでになっておりますか。  法務省にお尋ねいたします。法律上、日本国民たる要件はどのように定められておりますか。
  205. 濱崎恭生

    政府委員(濱崎恭生君) 日本国民たる要件、すなわち日本国の国籍取得の要件につきましては、憲法の規定に基づいて国籍法で定められているところでございます。  我が国で初めて国籍法が制定されましたのは明治三十二年、いわゆる旧国籍法でございますが、戦後の昭和二十五年に新しい国籍法が制定され、昭和五十九年に重要な改正がされて現在に至っているわけで、これらの国籍法の規定に基づいて日本国籍の取得がされてきているわけであります。  その内容でございますが、国籍法上の国籍取得原因の中心は、出生、生まれたときに国籍を取得するわけでありますが、我が国では伝統的にいわゆる血統主義がとられておりまして、親の国籍を子供が継ぐということでございます。昭和五十九年の改正前までは、父が日本人であるときはその子供は日本国籍を取得する。五十九年改正後は、父または母が日本人であればその子供は日本国籍を取得するということになっております。  細かい点はともかくといたしまして、柱はそういうことでございます。
  206. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 それでは、沖縄の人、ウチナーンチュはいつから日本人になったんでしょうか。
  207. 濱崎恭生

    政府委員(濱崎恭生君) 私どもの祖先がいつから日本人になったのかといった問題を含めまして大変難しい問題でございますが、いずれにいたしましても、近代的な統一国家としての日本国、そしてその構成員である日本国民というものが確立されましたのは明治維新後ということなのではないだろうかと思うわけでございます。  そういった経過を経まして、先ほど申しましたように、明治三十二年に旧国籍法が制定されたわけでございますが、沖縄の住民の方々はその旧国籍法施行の前から一般に日本国籍を有するものとされていたというふうに承知しておりまして、そして以後そのことを前提にして、その時々の国籍法の規定に従って日本国籍の取得あるいは喪失がされてきたということであろうと考えております。
  208. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 国籍法の御答弁ございましたが、明治三十二年、ところがその国籍法施行前から、例えば明治三十一年の徴兵制が施行されますと、沖縄からも徴兵されたのであります。この一週間、法務省との間で、いつからウチナーンチュは日本人になったんだろうかということを議論しましたが、結論は出ませんでした。  ところで、一九四五年から一九七二年五月十五日の復帰までの間、沖縄の人たちは日本人としての権利主体として認められ、保護されてきたんでしょうか。法務省に伺います。
  209. 濱崎恭生

    政府委員(濱崎恭生君) 私どもがお答えできるのは国籍を有していたかどうかということだけでございまして、その点に限らせていただきますが、御指摘の、平和条約の発効によって沖縄が合衆国の施政権下に置かれました後においても、戦前から日本国籍を有しておりました沖縄方々は引き続き日本国籍を有するものと考えられてまいりましたし、そのように考えているところであります。
  210. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 私たち沖縄県民復帰に求めたのは平和憲法でありました。ところが、復帰によっても米軍が不法不当に接収した基地は返還されませんでした。現在よく言われます、わずか国土面積〇・六%の沖縄に在日米軍の専用施設七五%が集中しているのであります。  施設庁長官にお伺いいたしますが、復帰後今日まで、本土の基地はどれだけ返還され、沖縄の基地はどの程度返還されたんでしょうか。簡潔に数字でお答えください。
  211. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) お答えします。  昭和四十七年五月十五日現在、本土では九十八施設、一万九千六百三十ヘクタールでございました。それが、平成九年一月一日現在、五十三施設、七千九百ヘクタールでございます。その間、減少分は約一万一千ヘクタールでございます。  それから、沖縄におきましては、同じく昭和四十七年五月十五日現在、八十三施設、二万七千八百五十ヘクタールございました。それが、平成九年一月現在、三十七施設、約二万三千五百ヘクタール。減少分は約四千三百ヘクタールでございます。  率にいたしますと、本土で約六〇%、沖縄で約一六%、いずれも面積比でございます。
  212. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 今答弁がありましたように、復帰後二十五年がたちましたが、本土では在日米軍基地が約六〇%返還されたのに、沖縄ではわずか一六%しか返還されていないのであります。  ところで、沖縄では先祖伝来の集落、心のふるさとが字単位で全部あるいはそのほとんどが基地の中、金網の中に消えたのがたくさんあるのでありますが、施設庁はその数字を掌握しておられるでしょうか。
  213. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) いわゆる米軍が土地を接収いたしまして基地を整備していった過程で、そういうふうに集落が消滅したことはあるということは私も聞いておりますが、実際の数は、その詳細といいますか、米軍の施政権下のことでもございまして、承知しておりません。
  214. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 私は、それは防衛施設庁の怠慢だと思いますよ。施政権が返還されて二十五年がたっているわけであります。私が知り得る限りでは約七十の字、集落が金網の中に消えておるのであります。その人たちは、心のふるさとに一日も早く戻りたいという強い願いを持っておる。まさに戦後五十二年、これでは戦争難民、基地難民として過ごしておるというのが私は実態だと。こういう基地沖縄の現状、ここからやっぱり私は沖縄の基地問題解決は出発をしなければならない、こういうふうに思っておりまして、ただいまの施設庁長官の答弁は極めて遺憾であります。  ところで、本件改正法案について質問をさせていただきたいと思います。  憲法二十九条で財産権の保障というのがうたわれておるわけでありますが、この憲法で言う財産権たる、特に土地所有権の場合、坪数の多い少ないで権利の性質や保護法益は違うのでしょうか。
  215. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) それは違わないと思います。
  216. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 政府は、約三万二千名の軍用地主のうち約二万九千人が契約に応じている、約三千人の契約拒否地主のうち百十三人が在来地主で、その他のいわゆる一坪地主の所有する面積はわずかだと説明をいたしております。一坪地主を座布団地主だとかハンカチ地主だとかやゆする者もおります。  所有面積が小さいというだけで憲法上保障されている財産権は無視していいんでしょうか。
  217. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) それはどんなに小さくても同じでございます。
  218. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 しからば、防衛庁長官、憲法で保障する財産権の保障と、その財産権を制限する現行法上の仕組み、制度はどうなっているんでしょうか。
  219. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 現行法と言われるのが今回の改正法を指して言われるならば、それにつきまして申し述べますならば、全く同じに扱っているわけでございまして、大きい面積の方も小さい面積の方も同じでございます。  今度の暫定使用の制度をつくりましたのは、ともかく日本国が義務として日米安保条約を結んでいるアメリカに対して施設区域を提供しなければならない、その施設区域については特措法で適用されておりますけれども、その裁決がいろんな事情でおくれてきている、その間どうするかということでこのような制度を設けたわけでございまして、その制度をつくるに当たっても、十分憲法上の検討を行った上で、憲法には反しないということで提案させていただいたわけでございます。
  220. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 今度の改正法案をめぐって政府が地方紙その他に広報をした宣伝の文書あるいはこれまでの議論を通して、あたかも反戦地主や一坪反戦地主の所有する面積は小さいんじゃないかというふうなことをよく言われるわけであります。私は、反戦地主や一坪反戦地主の存在がそんなに目ざわりであれば、土地を返せばいいじゃないか、返したらどうか、こういうふうに問いたいと思いますし、数字だけを問題にするのであれば、先ほど申し上げましたように、沖縄は国土面積はわずか〇・六%でありますから、沖縄県民は国土面積に、人口に見合うようなパーセントの基地なら喜んで引き受けるでしょう。どう思いますか、防衛庁長官
  221. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 防衛施設庁あるいはまた防衛庁が広報等でPRしているのに対する御指摘かもしれませんけれども、私どもが申し上げておりますのは、あたかも大多数の人が反対しておって、それを法律で一方的に何か取り上げるみたいなそういう印象を与えることはおかしいということで、大多数の人が、三万二千人のうち二万九千人の方が御同意をいただいて、残りの三千人の方々にやむを得ず特措法に基づく手続をしておる、しかもそのうちの本当に在来の地主の方は百十三人であるという事実を述べているわけでありまして、法的な権限その他は全く同じであることに変わりはございませんから、法律の内容としての手続等は面積の多寡あるいは賛成、反対のそういう人数のパーセンテージ、これによって軽んずるようなことはいたしていないつもりでございます。
  222. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 一坪地主というのは、利殖や投機目的で土地を所有しているのではないんです。平和への高い志を持った人たちであります。  沖縄では、反戦という言葉は特定のイデオロギーの持ち主だけの言葉ではありません。現に一坪地主の中には、ひめゆり学徒の引率者で琉球大学の教授でありました仲宗根改善先生、あるいは生き残りのひめゆり学徒の皆さん、学者やマスコミ人や議会人、たくさん含まれておるのであります。  先ほど午前中の質問でしたでしょうか、防衛庁長官から、利用形態としては考えられないという答弁がありました。私は大変驚きました。そういうふうにおっしゃるのであれば、それほど一坪地主の皆さんの返還後の利用形態を長官が心配するのであれば、直ちに返したらどうですか。ちゃんと有効に利用いたします。
  223. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 御承知のとおり、我が国は米軍に対して施設区域の提供をしなければならないわけでございます。そういうことで、嘉手納飛行場の真ん中あるいは普天間飛行場の真ん中、そういうところにある、そういう共有地主の方々が持っておられる土地を今返せと言われても、片一方では提供しなければならないそういう義務を国が負っておるわけでございますから、それだからこそこのような法律を出させていただいているわけでございますから、そういう必要がなくなったときには直ちにそれは返すことになろうかと思います。  ただ、私が午前中の委員会の中で言ったのが少し過ぎたれば、またおわびさせていただきますけれども、あのような形の、とにかく数千人からに上る方が一筆の土地にたくさん共有している状態が、今はコントロールがきくかもしれません、反戦地主会ということで。ところが、その人たちが手放そうとしても、反戦地主会の人にしか売ってはならないという内部の規約もあるようでございます。そういうことを考えますと、この人たちの孫子の代まで遺産相続で移っていったときに、いざこれが土地区画整理事業だなんだと民間で事業をやろうとしたときには大変なことになってしまう。  そういうことを考えますと、土地の利用についてこのような形でやるのが、反戦というのは私どもある意味ではわかります、その気持ちは。しかしながら、土地を利用した形での抗議行動とも言うべきこういう行動がいいのだろうかということを率直に思ったとおり言わせていただいたわけでございますので、もしそういうのがかんにさわったらお許し願いたいと思います。
  224. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 土地利用形態云々というのは、まさに長官の小さな親切大きなお世話であります。そんな心配は要りません。そう思うならば返してください。  ところで、今度の法改正の提案理由を読みますと、法改正の理由は、要するに日米安全保障条約に基づく義務を的確に履行するために暫定使用を認める必要がある、こういうふうに言っているだけであります。  現行土地収用法は、憲法二十九条二項、同九十二条を受けて、行政権の一方的な使用認定によっては権原の取得を認めず、必ず中立公正な独立行政機関である各地方の実情に通じた収用委員会での慎重な公開審理と裁決を義務づけております。これによって、国民の財産権保護と公共の利益との調整を図っておるのであります。  ところが、今回の法改正では、県収用委員会の裁決を経ることなく内閣総理大臣の使用認定、防衛施設局長の裁決申請のみによって権原の取得が可能となってきます。つまり、行政機関の一方的認定だけで財産権が制限される制度になる、こうではありませんか。
  225. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 確かに、その申請に係る手続と、それから先のいわゆる手続について本裁決を待って使用できるような従来の使用権と比べますと、暫定使用権と言っていいのかわかりませんけれども、この暫定使用の制度はそういう点では十分でないかもしれません。  しかしながら、それはいずれ本裁決があるという前提に立ちまして、それまでの間権原がなくなってしまう、空白になる、その部分を埋めようという制度でございますから、全体のバランスを考えましたときには決して憲法には違反しないんだと、そういうことの判断のもとに出させていただいているわけでございますので、そういう使用手続の問題あるいは憲法の問題、もし何かございましたら法制局長官の方から答えてもらいたいと思います。
  226. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 それでは、抽象的な憲法論争じゃなくして具体的に聞きます。  今、改正法案十五条一項一号、これによりますと、県収用委の却下裁決があった場合でも国が建設大臣に審査請求を行ったときはその棄却裁決の日まで暫定使用を認める、こういう内容になっていますね。
  227. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) そのとおりでございます。
  228. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 そうすると、十五条一項一号では、建設大臣が審査請求を棄却または却下しない限りそのまま暫定使用が継続をする、こういうふうに理解して結構ですか。
  229. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 現在の特措法、またはそれを適用しております土地収用法におきましても、その一連の手続は収用委員会が裁決を却下した場合でもいわゆる建設大臣に審査請求できることになっており、その審査請求が続いている間は一連の手続は続いているわけでございますから、その続いている手続がすべて完了したときに暫定使用の制度についても使用権をその間、いわゆる手続が完了するまでの間は与えようとするわけでございますから、それはそのとおりでございます。
  230. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 仮に棄却や却下の意向を有する建設大臣がいたとしても、その建設大臣は総理大臣によって直ちに罷免されるんじゃありませんか。これが憲法六十八条二項の規定じゃないでしょうか。
  231. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 御承知のとおり、収用委員会が却下をする場合は申請が法律に違反しているという場合で却下をしなければならないことになっているわけでございまして、違反しない場合には却下じゃなくて裁決をしなければならないわけですね。今収用委員先生方は法的知識、経済的な知識、そういう知識を持ち、しかも公平に判断される方々を県の方で選んで決めておられるわけでございますから、そういう先生方が違法でもないのに違法だと称して却下されるようなケースはまずないと思うんです。だから、私はこういうケースは非常にないということをたびたび言っているわけでございます。  しかしながら、そうはいいましても却下という制度が土地収用法上ある以上は、そのあった場合どうするか。手続が完了しない、建設大臣まで上がっていってそこでまた再審査をされるようなそういう制度がある以上は、それを前提として法律はつくらなければなりませんから、そういう意味でその完璧を期すために十五条の項目も入れているわけでございますので、どうかその点、却下がたびたびあるようなことをお考えになった上でのそういうことについては大変失礼に当たろうかと思いますので、どうか御理解賜りたいと思います。
  232. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 何が失礼なんですか。法案改正は却下裁決もあり得るという前提で改正法案をまとめているんじゃありませんか。しかもその場合に、建設大臣に審査請求をしてその結論が出るまでは暫定使用できるんでしょう、改正法では。  そうすると、例えば収用委員会が三年ないし五年の使用裁決をした、これで国の方で建設大臣に審査請求をした、あるいは却下の場合でも結構ですよ、その建設大臣が五年でも十年でも放置しておったら五年も十年も暫定使用できるんじゃありませんか。
  233. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 今、委員が収用委員会が三年ないしは何年かの裁決をしたとおっしゃいましたが、裁決をしてしまえばこれはもうそこから始まるわけでございますから、建設大臣に審査請求をしょうがしまいがもう暫定使用の制度は始まるから構わないわけでございます。問題は却下をした場合でございまして、却下をした場合にのみ、その却下の内容が違法である、不当であるということで審査請求をした場合に、手続が完了しないからこういう制度をつくったわけでございます。  そして、先ほど総理大臣が任命する建設大臣だからと言われましたけれども、審査請求を却下する場合というのは違法な場合でございますから、これこれの理由で違法であると収用委員会が出されましたときに、よっぽどのことがない限り、建設大臣としてもその中身は違法だということが明らかになればそれをいわゆる再審査ということにはならないわけでございまして、棄却なりなんなりはすると思います。そうじゃなくて、違法だという判断したその中身がおかしいということになりましたならば、審査請求の制度があるわけでございますから、それに基づいて建設大臣は判断する。土地収用法の法律上、判断する間はまだ審査手続は完了していないわけですから、そういうような手続が完了しない間はやはり暫定使用を認めてもらわなきゃ困るということで出しているわけでございます。
  234. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 ところで、十五条の七項ですけれども、私どもはこの緊急使用の件についても政府は検討すべきであることをずっと言い続けてまいりました。私は、そのことについては、現在でも防衛庁並びに防衛施設庁の行政の怠慢であったというふうに思っております。  ところで、十五条七項ですが、この改正によると、もう土地収用法上の緊急使用の制度は不要になってまいりますね。
  235. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 暫定使用をする場合に緊急使用というのは必要ないわけでございますから、その辺の条文整理を、正確にちょっと手元にございませんけれども、十五条の七項でしているんだと思います。  もし詳しく必要でしたら、総務部長の方から答弁させます。
  236. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 ところで、象のおりの知花さんの土地については、現在、不法占拠の状態にあるというふうに私自身は理解をしております。政府は、正当な使用権原を有しているというふうに思っておるんでしょうか。
  237. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 正当な使用権原は有しておりません。
  238. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 この知花さんの土地について、昨年四月一日でしたでしょうか、官房長官談話を発表して、適法でないが直ちに違法とは言えない、こういう見解を発表しました。  今回の法改正では、違法状態を解消するために知花さんの土地の件についても附則で定めておりますね。法律的な見解は変わったんでしょうか。
  239. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) あのような状態がそのまま続いていることについては直ちに違法ではないという当時の官房長官の談話が発表されました。今でもその解釈については変わっておりません。しかしながら、法的に不安定な状態であることには間違いないわけでございますし、権原がないことについても間違いないわけでございます。  しかも、収用委員会へ今のほかの十二施設一緒に申請を出しておる関係上、今回のこの法律によって、十二施設と同様にこの知花さんの土地についてもこの法律が施行された後は暫定使用制度になじませていただこうということでそれを取り入れたわけでございます。
  240. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 沖縄では、陸上だけじゃなくして、広大な制限水域、制限空域がございます。極めて危険であり、漁業活動の制限、都市開発の障害、離島空港の整備などに支障を及ぼしております。この制限水域や空域の撤廃、縮小を大田知事は強く政府に求めておりますが、その実態と知事の御要請、県民思いについてどういうふうに対処されるか、簡潔にお答えいただきたいと思います。
  241. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 現在、沖縄周辺には、米軍の訓練等のために水域が二十九カ所、空域が二十カ所設けられております。水域の面積は合計約五万五千平方キロメートルでございます。空域につきましては、緯度、経度及び高度で設定されておりまして、これを単純な計算で申し上げることは困難でございます。  なお、これらの水域及び空域の数については多くは重複しておるところでございます。いずれも米軍の訓練等のために現在提供されております空域、水域でございまして、当面返還は非常に難しいというふうに考えているところでございます。
  242. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 私はあえて総理の御見解は求めませんけれども、この制限水域、空域の問題についても、これは県民生活との深いかかわりがありますので、ぜひ総理としてお取り組み方をお願い申し上げたいというふうに思っております。  さて、一坪地主やあるいは反戦地主のことが話題になっておりますが、実は総理、この特措法改正を契機に従来契約に応じておった、特に嘉手納旧飛行場権利獲得期成会の皆さん方が契約を拒否する、こういう態度に転じたわけであります。この人たちが持っている土地というのは、もう嘉手納の滑走路全部ぐらいの大きな面積なんです。  だから私は、この人たちの権利回復、司法の場では実現しませんでしたけれども、ぜひ沖縄の戦後処理問題として、国家総動員体制のもとでとられた土地でありますから、地主がお元気なうちに政府としても期成会からの意見聴取やあるいは再調査をやられて、政治の力で期待にこたえていただきたいと思いますが、総理の御所見をお願いいたします。
  243. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 大変申しわけありませんが、議員から今御指摘を受けるまで私はそうした状況の報告を受けておりませんでした。改めて事務方から話は聞いてみたいと思います。  しかし同時に、私は県民方々にそれでは足りないという声があることを存じておりますけれども、昨年まとめましたSACOの最終報告、日米両政府が一生懸命に少しでも沖縄の皆さんにこたえようとしてまとめましたもの、これすら実行できない状態が続いておって次のステップに入れるかと言われれば、私はその自信はございません。その上で、議員の今御指摘のケースは後ほど事務方から聞いてみたいと思います。
  244. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 総理、その期成会の人たちは土地を返してほしいということじゃなくして、権利の確認、回復を求めておるものですので。
  245. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 聞いてみます。
  246. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 ひとつよろしくお願いをいたします。  それでは次に、総理と小沢一郎氏との会談でいわゆる三項目の合意事項がございましたけれども、全部聞くいとまがございません。一点だけお聞かせいただきたいと思いますが、合意事項三項との関係で、特に現行特措法の抜本的な改正もお約束になったのかどうか、簡潔にお聞かせいただきたいと思います。
  247. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 先ほど議員からも御指摘のありました知花さんのケースが国会で議論になりましたとき、すなわち昨年の段階でありますけれども、私は駐留軍用地の使用権原、この取得に関する事務というのは、本来、我が国の生存と安全を確保する上で極めて重要であり、かつ高度の公共性を有する米軍の活動の基盤にかかわるもの、さらに我が国が日米安保条約上負う義務の履行に関するものであることから、本来、国が執行責任を負うべき性格のものであると考えていますという御答弁を申し上げました。そして、その考え方は私は今も変わっておりません。  その上で、そのあり方につきましては現在地方分権推進委員会に私は作業をお願いしている立場であり、第一次勧告の中に調整中と定められている案件でありますので、この御意見なども見ながら幅広く検討していきたいと考えております。また、小沢党首との会談にもそのようなことを申し上げました。
  248. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 最後に、総理並びに沖縄開発庁長官に、平成九年四月十日に沖縄振興策に関する与党合意、八項目の合意が成立をしたようでございます。今後の沖縄振興策に対する取り組みの決意を総理にお伺いいたしたいと思います。
  249. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) もう長くしゃべるつもりはありません。沖縄政策協議会、これには知事も入っていただいております。そして、官房長官のもとに沖縄米軍基地所在市町村に関する懇談会、いわゆる島田懇から御意見をちょうだいをいたしました。今御指摘になりました合意は、こうした政府の取り組みを踏まえて幅広い観点から沖縄の振興策に取り組め、そのような趣旨のものと受けとめておりますし、当然ながら政府は全力を上げてこれからも沖縄の振興策に取り組んでいきたい、そのように考えております。
  250. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) これにて照屋君の質疑は終了いたしました。(拍手)
  251. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 民主党・新緑風会の齋藤勤でございます。  衆議院から参議院にこの法案が送付されまして、先週金曜日、本会議で趣旨説明があり、私はその段階での我が党、我が会派の見解について述べさせていただきました。改めてそのことについて要約をさせていただきまして、申し上げさせていただきまして、以下、順次質問に入らせていただきたいと思います。  我が党は、日米安保条約、このことを円滑に運用すべき責任、これを履行していくということについて、沖縄が現在でも日本における在日米軍基地の七五%も負わされているという、こういう状況の打開という両側面から、今回の特措法の一部改正に対して、賛否、大変真剣な議論を重ねてまいりました。生まれたばかりの政党でございます。  しかしながら、我が政党として、責任ある政党というそういう立場の中で、私どもは独自に沖縄米軍基地問題の打開のための五項目を提言させていただきまして、政府また与党に申し上げさせていただきました。これに対しまして、先般自民党から、沖縄県民方々思いを踏まえ、在沖米軍を初め在日米軍兵力構成、そしてレベルについて対米協議を政府に進めさせていくと、こういう約束をいただいたところであります。そのほか我が党の要求をほぼ満たす内容であろうという判断をし、このことにより、在沖米軍兵力レベルに関する日米協議を開始する足がかりを得たというふうな認識をさせていただきました。  二つ目には、この在日米軍の土地使用に関してですが、やはりこの法的空白状態ということについては、そのまま土地使用を認めるということについては立法府としてはとるべき態度ではないんではないかというそういう認識で、このこと等によりまして基本的には賛成することにしました。  しかしながら、本来、使用期間内に収用手続を完了するということは、政府のこれはもう当然のことながら責任であり、そして我が党では、現行法での緊急使用の申し立てを行うべきということで訴えてまいりました。こういった経過をたどれば、政府の失策ということでの特措法の改正という形で、沖縄方々にとって納得できない形で事態を解決しようとする姿勢につきましては、残念ながら本末転倒と指摘をせざるを得ません。その上、政府提出の特措法の一部改正案が、収用委員会が却下裁決をしても、ただいまの議論もございましたけれども防衛施設庁が審査請求すればいつでも暫定使用が許される、このことは実態的には恒久使用となってしまう、そんなおそれをはらんでいるわけでありまして、最小限の法改正とは言えないんではないかというふうに思います。  こうした問題点を重視をいたしまして、日米安保条約を維持する上で支障となる法的空白状態をつくり出さず、なおかつ沖縄県民米軍基地固定化の不安を少しでも払拭をしてもらいたい、そういう意味で私どもは政府案を五年間の時限立法に修正をしようと、これは衆議院では残念ながら少数、否決をされましたけれども、本院でも賛同を得たいということで今用意をさせていただいているところでございます。  さて、その上で、まず外務大臣防衛庁長官総理になるんでしょうか、今後いわゆる兵力構成協議に入っていくというこういうことになっておりますが、これは今どういうふうな手だて、具体的に兵力構成について協議に入っていくのか、どういうお考えでございましょうか。
  252. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 政府は繰り返し御答弁申し上げておりますけれども、現時点において、我が国の安全を守り、またその地域の平和、安定を守っていくという観点から申しまして、在日米軍兵力構成を含めた軍事態勢について具体的な変化を求めるような協議を提起するような状況にはない、こう思っております。  しかしながら、中長期的にどうかと申しますと、これは安保共同宣言にも明確にうたわれておりますように、それはこの地域国際情勢等々をよく見まして、それに最も適切に対応していくためにはどのような防衛政策がいいのか、どのような軍事態勢、これは兵力構成あるいはレベルも含めてでございますが、そういうものがいいのかということは、これは協議していこうということになっております。しかし、いずれにいたしましても、今、現時点においてそういうことを提起できるような状況にはないということでございます。  ただ、誤解のないように申し上げておきますが、具体的な変化を求められるような状況にはないけれども、しかし、一般的に国際情勢がどうであろうかとか、そういったことについては当然のこととしてこれまでもやってまいりましたし、これからも常時話し合いはしていくと。それを行う場は、これも本日の委員会でも御答弁申し上げておりますけれども、いろんな場がございます。上は首脳会談から、閣僚レベルのいろいろな2プラス2等、それからSCCであるとかSDCであるとか、いろいろな仕組みがあるのは委員御承知のとおりでございます。
  253. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 ただいまの答弁ですと、昨年四月の日米安保共同宣言では「引き続き緊密に協議する。」、この前が「米軍兵力構成を含む軍事態勢について引き続き緊密に協議する。」ということになっているんですね。情勢の話じゃないんですね。情勢の話ではなくて、米軍兵力構成を含む軍事態勢について引き続き協議するということですから、ここに向けても協議してきたわけですから、どうもそこら辺の認識がちょっと私どもと違うんですけれども
  254. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 引き続き協議するでございますが、その前の方に、国際情勢その他にどういうふうに対応していくのが最も適切であるかというくだりがあるんだと思います。そういうことで、先ほど私が申し上げましたような意味でございます。一般的に申しますと、一般的な国際情勢がどうであるか、その中で安全保障をいかに考えるべきかということは、これまでもいろいろ話をしてきたということでございます、そういうことはやっていくと。  しかしながら、具体的に委員があるいは求められておられるかもしれないと推測いたします、この兵力構成を変えろ、あるいはそのレベルを下げると、そういったことを協議するということはやはり安全保障環境も含めた国際情勢に大きな変化があると、そういう事態を踏まえて、またそういうタイミングを踏まえて行われるものでございまして、現時点ではそういう状況にはないということを申し上げた次第でございます。  それから、現在の我が国における駐留米軍四万七千の水準を含めてアジア太平洋地域における十万人の体制が今日の国際情勢等にかんがみ適正であるということは、昨年末、十二月の二日に行われました2プラス2の場におきまして確認したばかりでございます。さらにその前は、四月の首脳会談におきましても両首脳の間でも確認されているわけでございますので、それが短期間のうちにくるくる変わると、あるいは検討し直すということではないというのを御理解いただけると思います。  安保共同宣言でうたっておりますこの協議も、短期的なまた表面的な情勢変化に一々対応しようと、それで体制を変えようということではなくて、やはり長期的な趨勢というものをしっかり見定めまして、それに対応するにはいかなる軍事態勢あるいは防衛政策が適正かということで話し合っていくものでございます。
  255. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 問題は、過去、現状、将来だというふうに確かに思いますね、それは。  今回、私ども民主党が五項目提言の中に加えて出させていただきましたのは、今すぐこうしろということではなくて、具体的課題にのせて、例えば沖縄の第三海兵師団について、この地上部隊について対象として日米の中でそのレールに乗せて協議をする俎上にのせることは可能ではないかということについて提起をさせていただいているんですね。  このことにつきましては、過日の衆議院のやはり同特別委員会で、玄葉委員ですか、質疑がございまして、外務大臣からるる御答弁がございました。私は、その答弁の中で非常に気になりますのは、今の御答弁もそうなんですが、「駐留米軍が、あるいは場合によってはそれに応援に来る米軍も含めて役割を果たしていくということでございますから、それを因数分解して海兵隊がどうか、さらに海兵隊の中を細かく因数分解してこの部隊がどうだということを余りやるのは、失礼な言い方かもしれませんけれども、必ずしも適切ではない」と、こういう答弁をされております。  それから、いわゆるこの第三海兵師団につきましては、即応後方配備ということで私どもは具体的に提起をさせていただいています。このことにつきましては、「米軍の運用の細部にわたるまで一々やるということは、日米同盟といいましょうか、そういったあり方からしましても、また、軍の運用の実態というものからいいましても、それは限界があるのではないか」と、こういう実は外務大臣の答弁があるんです。  これから日米協議をしていこう、日米で兵力構成の協議をしていこうと、こういうときに、それは、外務大臣、トップレベルの協議ではこういった協議は出ないかもわかりませんが、例えば事務レベルではそういったことについては率直に胸襟を開いてやっていかない限り、情勢認識、それからあとは兵力削減とか兵力構成なんというのは議論にならないんじゃないですか、いかがでしょうか。
  256. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 観点を変えてまず御答弁させていただきますけれども日本自体の安全が脅かされた、そういった状態でどうするかという場合には、当然のこととして、これは日米共同対処ということがあるわけでございます。そういった際には一体どういうふうに米軍が役割を果たしていくんだろうか、あるいは米軍と自衛隊の間で共同行動をするんであろうかと、そういったことは当然その専門家の間で共同研究も行われましょうし、現実に行われており、また共同訓練も行われておるんだと思います。そういった意味で、いろいろな面につきましてそれぞれのレベルにおいて必要な協議は行ってまいります。  しかし、今、大きく現在の国際情勢の中で、我が国の安全を守り、あるいは極東地域の平和を守っていくという役割を担って日本に駐留している米軍の全体としてのレベルあるいはその構成というもの、これにつきましては、余り細かく、「因数分解して」という表現を私はいたしましたけれども、やりますとかえって本来の目的との整合性といいましょうか、目的との関連での協議に資さない面が出てくるんじゃないかという点を申し上げた次第でございます。
  257. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 海兵隊の削減問題というのは、この沖縄問題以前からもありましたけれども、最近とみに、この特措法改正に伴いまして、来日する米政府の高官からいろいろ報道されています。これはうがつた見方をすれば、ちょうど今アメリカの方も四年に一度の国防計画といいましょうか、こういうことについて見直しをしていこうということで、これは定期的な見直しでことしの十一月にまとまると。大体、案は来月、五月中ということで、いろいろこれから議会にもかけて十一月ということで、一方で米軍そのものが、今の大統領が均衡予算ということで、その中に非常に軍事費を削減してきているという中で、日本に対して、海兵隊の削減論はいろいろ出ているようだけれどもそれは困るということで、全体的な国際情勢に対する、安全保障に対する見解に対してのそういう御意見もあろうかと思います。もう一つベースとして、例えば日本としては多額な国防費に対する支出、思いやり予算も含めて出ているわけでございますが、これはそういう意味での予算上の措置に対する、日本に対する何か牽制球ではないか、削減論に対してそんな気がする次第でございます。  また、この間の国会の論議を聞いていまして、総理のきょうの御発言で、削減についての考え方を今米側の方に示す段階ではないということについて、今あることで精いっぱいですという話がございました。率直なところそうなのかもわからないんですが、海兵隊削減、それから兵力構成ということについては中長期的な問題であります。  この沖縄問題でいえば、これも総理の御答弁をまた引用させていただいて恐縮ですけれども、我が党の菅代表に特別委員会の冒頭の方で総理が答弁したわけですが、基地ということ、米軍の占領下においてお話を大半の方がなさいますと。中略をさせていただきますけれども、  世間から言われる以上に長い沖縄県における基  地収用の歴史というものが存在をし、そしてそ  れが復帰の後において、まさに本土の我々が、  第一次振計、第二次振計、第三次振計といった  ような沖縄の開発面等で出てくる御意見に一生  懸命にこたえていたつもりが、基本的な基地の  問題というものに対する、こたえる努力を全く  怠ってきた。この点は本当におわびをする以外  にないし、我々自身がみずからの努力不足を恥  じる。という実は答弁がございます。  何も政府がやらないということを私は言っているわけじゃないんですね。中長期的に協議をしましようというのはベースがあるんじゃないですかと、日米共同宣言の協議をする四月の段階でどうも兵力構成についてぎりぎり詰めてきた嫌いかないと。先ほどの玄葉委員の答弁に対しても、運用面だとかそういうことについては入っちゃいけないんではないか、どうも日本側の対応として私は憶している部分があって大変気になるわけです。そういうことならば、この「本当におわびをする以外にないし、」ということで、基地をやはり縮小するということについての政府の姿勢というのはなかなか感じられてこない、そういう実は受けとめ方をせざるを得ないんですが、いかがでしょうか、総理
  258. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、今お話を伺いながら、ある意味では大変残念な感じ、同時に今引用されました答弁については私自身が本当に思ったことをそのとおり申し上げた、そう思います。  その上で、ある意味では、米軍のあるいは米政府の関係者が繰り返し繰り返し、確かに今新政権ができてから新政権の要人たちが各国を動いております。日本に参りましたとき、日本のマスコミの諸君がこの問題を聞きますから彼らは答えます、全員が。ですから、彼らが本当にそれを強調したかったかどうかは別の問題だと、これがまず第一点であります。  それから、昨年の春から現在に至る間、私どもは確かにアジア地域に対する米軍の十万人の展開というものを是認し、そのうちにおける日本の四万七千人体制というものをも是認してまいりました。これに対して、ややもするとヨーロッパ正面に比してという御意見がございます。ヨーロッパ正面には、御承知のように、NATOが存在をいたします。そして、ヨーロッパ自身が地域防衛の仕組みを厳然として持っております。  そして、今そのNATOが拡大するかどうかでロシアとの間に問題を生じておりますが、これは旧東欧諸国がNATOに入りたい、これはロシアにとっては国境線までNATOのエリアが広がるということでありますから大変微妙な問題でありましょう。しかし、ヨーロッパ正面においてはそれだけの地域防衛の仕組みができ上がっております。残念ながら、このアジア太平洋地域においてそうした地域防衛の仕組みはでき上がっておりません。ARFのような信頼醸成措置の中にすら加わってきてはくれない国もございます。そして、我々はその中において日米安全保障条約というものを基盤にこの国の安全保障体制を組み立てております。  もっと正確に申しますなら、我が国が講和条約を単独講和という道を選んでスタートいたしますとき、私どもの先輩がこの道を選択してくれました。そして、国論を二分するような騒ぎがありまして、昭和三十五年の安保改定以来、現在の体制で我々は国の安全を維持しております。そして、この周辺、決して安定しているという状況ではない中で我々がこの体制を維持する、それに対し合意を与えている、これは事実でありますから、それは対外的な交渉姿勢の問題ではなく、事実認識をした上でそれが必要と我々は判断をいたしております。
  259. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 私は日本防衛白書を年々見ておりますが、この中に、「我が国の安全保障と防衛努力の必要性」、「平和や安全は、ただこれを願い求めるだけでは得られない。」と。実はだれもが同じだと思うんですが、「国の安全を確保する手段のうち、外交分野での努力が極めて重要である。」、こううたっているわけですね。今そういう状況じゃないというのは一つあると思うのですが、それをつくり出す努力というのが極めて大切だと思います。  それから私は、大変生意気な言い方で恐縮なんですが、外務大臣、先日私自身が二回目の本会議質問させていたださましたら、そんなにたくさんの質問をしたつもりはないんですけれども総理が冒頭答弁されたら総理と同じですと。私の方は質問時間は短いんですけれども、答弁者は余りそんなことを気になさらなくていいわけでございます。総理の答弁というのは最高責任者ですからこれは大変、ほかの方に重みがないということじゃないんですが、もうお話しになったらこれは全部総理がすべてなわけです。  いわゆる外交というのは、多元外交でいろいろございますよ。アメリカから日本に来る人たちもいろんなことを言ってくる。報道に出てくるなんというのは承知の上でしゃべっているわけですね。ですから、いろんなチャンネルを使って外交努力をしていく、そのことを外務省でやっているわけですから、外務省、外務大臣総理以上にこういうこともありますよというのを答弁して、むしろ総理からおまえはしゃべり過ぎだというぐらいでなきやおかしいと思うんです。私は本当に残念に思いまして、きょうここで総理から池田外務大臣にきつく注意をしてくれなんという生意気な、不遜な言い方をしませんが、率直な実は私の感想でございます。  例えば、また新聞記事で恐縮ですけれども、クルーラック米海兵隊司令官会見で、「在日海兵隊を長期維持」という実は見出しがきのうの日経に出ています。その前に、この方のお父さんが昨年アメリカで六十の新聞に載って、海兵隊の削減論を提起をしているんですね。息子は息子、おれはおれだということでやっているんですが、全体的にはやっぱりみずからの海兵隊の、陸海空の三軍、海兵隊は四軍だというふうに言われていますが、こういう組織防衛、軍隊の人というのは非常に実は意識が強いというふうに思うんですね。これは軍人レベルのもちろん話だと思うんですが。  もう一つは、これは翻って外交レベルですが、ゴア副大統領も来る、あるいはギングリッチさんなどもいろいろ発言をする。これは議会の方も対応していかなきゃならないと思うんですが、そういうさまざまな多様なチャンネルがあって最終的に総理の発言がある、こういうふうに私は思うんです。異存はないと思うんですけれども、そこら辺、外務大臣、いかがですか。
  260. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 御指摘のとおりだと思います。私も時には総理におまえしゃべり過ぎだとおしかりを受けることもございますが、先ほど御指摘のありました点について私の至らないところがあったらおわびを申し上げます。  その上で、私どもも、委員御指摘のように、安全保障の問題についてはそれぞれの国で、そしてそれぞれの立場において自分の責任を果たすという観点から真剣に考えておるんだと思います。そういったいろいろ協議をする中でそれぞれの国において最善の安全保障の体制を、また協力して安全保障をやっていこうという日米のような間柄の国においては協議をする中で最善のものを求めていくという努力を続けていかなくちゃいけない、こう思います。  そういった中で、外交努力が大切だという先ほどの御指摘はそのとおりに考えております。
  261. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 私どもの党の持ち時間の後半は本岡委員でございますので最後にさせていただきますが、私は神奈川県に住んでおりまして、沖縄の比ではないんですが、沖縄に次ぐ第二の基地県と言われています。  この間の基地の重圧というのは、厚木、横須賀、実はもうさまざまでございます。言ってみればリスクとベネフィット、利益と逆なことがあるわけですから。日本の国費で在日米軍基地に対する支出というのは大変な金額であって、これはアメリカ自身も同盟国の中でナンバーワンということで評価をされております。鶴見にあります貯油施設なんというのは五百七十万バレルということで米軍では第二位ということでございまして、大変な実は施設がございます。第七艦隊が六カ月問使用できるという貯油施設についてもあるということや、それから先ほど来出ていますが、米軍のあることによりましての残念ながら起きるさまざまな事件、事故があるわけでございます。  これはまた時間がありましたら地位協定等の問題についてきちっとやりたいというふうに思いますが、私は事故の危険あるいは生命のリスク、生活圏のリスク、このことが沖縄のどうしても解決してほしいということであり、これは沖縄の問題だけでなく、すべて日本全体のやはりある意味では共通した問題であるということについてぜひともさらに御認識をいただきまして、この兵力削減につきましては急にできる問題ではないと十二分にわかっていますが、日々やはりこれについては積極的に提起をして議論をするというところにしか私は成案が出てこないということを強く訴えさせていただきまして、私自身の質問を終わらせていただきます。(拍手)
  262. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 関連質疑を許します。本岡昭次君。
  263. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 私は、関連質問として、主として沖縄米軍基地の整理、縮小について質問をいたします。  ことしの五月十五日に沖縄本土復帰から二十五周年を迎えます。先ほど照屋委員質問の中にもありましたけれども、この四半世紀に本土米軍基地はその六〇%近くが返還をされましたが、沖縄ではわずか一五%が返還されたにすぎません。国土面積のわずか〇・六%に相当するこの狭い沖縄県に日本米軍専用基地の七五%が集中しているのはどう考えてみても偏っております。このことは歴代自民党政権の責任に帰するところが大きいと私は思います。  昨年十二月に日米特別行動委員会、SACOの最終報告が出されました。その中で、沖縄米軍基地について普天間飛行場を初めとして相当の規模の返還が打ち出されました。この報告どおりの基地返還が全部実現したとしても、沖縄の基地集中度は数%しか縮小されたことにならず、依然として日本全体の約七〇%の基地が沖縄に存在するという異常な状態は続くのであります。このような米軍基地の集中状況の改善を求める沖縄県民の願いはまことに切実であると私は思っています。  そこで、総理にお伺いします。まさか橋本総理はこのSACO最終報告をもって沖縄米軍基地の整理、縮小はもうこれで終わりだと考えておられないと思いますが、この際、橋本総理の決意のほどをお聞かせください。
  264. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 午前中以来、たびたび同様の御質問に一生懸命お答えをしてまいりました。そして、その上で改めて私はもう一度申し上げたいんですが、SACOで今回日米両政府が一生懸命作業をし、合意をいたしましたものすら実行できないとすれば、到底その後に続く議論には進んでいかないということも事実であることだけは御理解をいただきたいと存じます。  当然のことながら、我が国の安全保障の上で、基地の整理、統合、縮小というものができる条件になれば、それをしていくことは当然のことであると思います。
  265. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 だから、総理の答弁として、SACOの最終報告のことすらどうなるかわからないということの上での答弁じゃなくて、おしやっている一日も早くそれは実現し、そしてという私は言葉が欲しいと思います。
  266. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 謹んで言い直します。一日も早くこのSACOの報告が全部実現をするようにぜひ御協力をいただきたい、その上で次のステップにも入ってまいりましょう。
  267. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 いや、どう協力していけばいいのか、私は賛成ですから、どうぞやってください。  そこで、この基地の整理、縮小問題は日米安保条約の地位協定で言えば施設及び区域の返還ということであります。日米地位協定二条三項には「合衆国軍隊が使用する施設及び区域は、この協定の目的のため必要でなくなったときは、いつでも、日本国に返還しなければならない。」と書いてあります。さらに、「合衆国は、施設及び区域の必要性を前記の返還を目的としてたえず検討する」と、返還について米国の立場が明記されております。この協定の目的の必要性というのは政府はどのように解釈しておりますか。
  268. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 委員御承知のように、安保条約六条の規定に基づきまして、合衆国軍隊日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全に寄与するとの目的を達成するため施設区域を使用することが許されているという規定がございますが、合衆国軍隊が個々に使用する施設区域の必要性とは、このような安保条約の目的を達成するための運用上その他の所要を言うものであるというふうに解釈しております。
  269. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 どうもようわかりませんけれども、また改めて会議録を精査して質問させていただきます。  つまり、この二条三項は、米軍日本にある個々の基地の必要性について返還を目的として不断に検討する義務を負い、一方日本政府は、米軍にその必要性の再検討を絶えず要請して、当該の施設及び区域の返還を要請する権利を有していると私は考えるのであります。  しかしながら、米国は、本当に個々の区域及び施設についてその必要性を返還を目的として果たして不断に検討をしているのでありましょうか。また、日本政府も基地となっている区域及び施設状況地位協定上の必要性という観点から絶えず吟味をしてきたのかどうか、ここのところを我々は検証せなければならぬと思うんですが、いかがですか。
  270. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 先ほど政府委員からの答弁は、基地を提供するそちらの方の関係について条約六条に基づいて御答弁を申したと思いますが、今委員の御指摘はむしろ地位協定二条三項でございますね。それは、御指摘のとおり、先ほど答弁のございました六条に基づいて提供された施設が必要がなくなったときにはそれを返還しなくちゃいけない、そして絶えずそれを米側としてもチェックしなくちゃいけないということを規定しておりますので、米側でもそのようにこれまで対応してまいりました。  ただ、それが十分であるか不十分であるか、いろいろお立場によって見方が違ってくるかと存じますけれども、今日の議論でもいろいろ出ておりますように、昭和四十七年、沖縄復帰の時点から、本土におきましては大体その当時ございました基地の六〇%相当が面積においては返還されました。そして沖縄におきましても、それは本土との関係でバランスを失しているというおしかりはございますけれども、約二八%相当、面積にして四千三百ヘクタール相当は返還されたわけでございまして、そのようにこの二条三項は現実に動いているわけでございます。  それからまた、地位協定に基づく合同委員会という場がございますが、ああいう場におきまして日米間で絶えず協議しておりまして、そのときは、例えば地元からのいろいろな返還の御要望があった土地なんかにつきましては合同委員会で取り上げて、どうだろうかと、これは米軍の運用上返せないかというようなこともいろいろ協議してきた、こういうことでございます。
  271. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 私は、残念ながら、米国も日本政府も地位協定第二条三項というものを重要視して、そして絶えず基地のあり方を検討し返還するという目的に向かって努力してきたというふうにはなかなか思えないのであります。  そしてまた、むしろ歴代自民党政府は、冷戦構造からずっとこちらにいろいろ変化はありましたけれども、国際政治の立場に立脚して、日米安保体制の堅持の必要性から沖縄の基地問題をいろいろと論議し、御説明をされます。しかしながら、この地位協定二条三項に基づいて、基地の返還を目的として、今沖縄にたくさんある個々の基地の合理的な運用や維持のあり方を常に検討するということを本当にやってきたのかというと、やはり結論としては怠ってきたのではないかと言わざるを得ないのであります。その結果、先ほど照屋委員の方からいろいろ議論がありましたけれども、自治体や住民の要求を犠牲にしてきたという結果に私はなっていたと思います。  したがって、地位協定というものがありながら、ここに依拠してさまざまな議論をしてこなかった我々にも責任があると思いますけれども、やはり私は政府に厳しい反省を求めなければならぬと思うのでありますが、橋本総理の御所見を伺いたいと思います。
  272. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 先ほど来自民党政権自民党政権と大変声高にお唱えいただきました。現在も連立政権であります。そして、幾つかの連立政権が続いて今日も連立政権が続いております。そのすべての政権を通じまして責任を感じます。
  273. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 何かようわからぬですね。
  274. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) いや、自民党政権だけじゃないです。前の内閣も、その前の内閣も責任があるということを申し上げました。
  275. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 いや、だから私も反省していると言っているじゃありませんか。だから、そういう何か居直ったような答弁じゃなくて、率直に橋本総理のお考えをお述べになったらいかがですか。私の申し上げることが、それほど総理の気にさわるようなことばかり言ってますか。私は国会議員として連帯責任を負わなければならぬという立場で議論を申し上げているんですよ。失礼やないですか。
  276. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 失礼ならばおわびを申し上げます。その上で、内閣の責任と言われましたから、自民党政権だけではございませんと申し上げました。それがいけないと言われれば取り消します。  ただ、私は本当に、この国会ほどあるいは昨年の知花さんの問題の前後ほど、こうした問題が論議をされ、しかも衆参両院に特別委員会をつくり、各党からこれだけの時間をかけての論議を集中させていただいたというのは返還協定のころから後私は本当に知らないんです。  そして、その間いろんなことがございました。そして先ほど来申し上げてきたように、さまざまな問題に、あるいは第一次振計、第二次振計、第三次振計と私は歴代の政権はそれなりに県の御要望に沿って一生懸命に県政の振興をしてきたつもりだったと思っております。  しかし、その間に、いつの間にか非常に目に見える建物であるとか道路であるとかいうものにお互い目が行ってしまった。そして基地の問題というものを本気でこれほど議論をし、そして返還に向けての努力を両院もバックアップをしていただき、日米両政府もこのSACOの中ほど論議をこれほど真剣にやってきたことはないと私は思っております。そして、今それがなお続いております。  ですから、自民党政権だけではないと申し上げて、それが失礼だったのなら私は本当におわびをいたします。しかし、これほど真剣な議論が本当に国会で、しかもこれだけ継続して、両院に特別委員会までつくって沖縄の問題を集中して議論をしてきたのは、返還協定以来、これほど熱心な御論議というものはなかったんじゃないでしょうか。私はそんな思いがありましたから、あるいは議員に礼を失したかもしれません。それならおわびを申し上げます。
  277. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 いや、別に総理に謝ってもらおうと思って質問したわけじゃありません。えらい申しわけございません。恐縮でございます。  それで、議論というのは解決するために議論するのでありますから、言いっ放しの議論というのはまずいと思う。そこで、私はNATO軍の地位協定をいろいろ勉強してきました。これは、もちろんNATO軍の展開と在日米軍の展開は違います。しかし、NATO軍の地位協定というものはやっぱりあります。  そこにドイツ固有のボン補足協定というのがありまして、そこの四十八条で土地の提供問題が書かれてあります。ちょうど日米地位協定の二条三項に相当する部分。それを見ますと、「一定期間ごとの軍の土地需要計画書による申告」というものが規定されておるんです。提供された施設区域を一定期間どういうふうに使用しますという申告書を出すんです、計画として。さらに、「使用する土地の数・規模を必要最小限に限定するための、軍隊による土地需要の常時点検義務」というふうなものまでが条文化されているんですね、日米地位協定の二条三項のように漠然としたことではなくて。  そこで、日米地位協定にも今言いましたボン補足協定四十八条のような規定を、日米地位協定の二条三項をもっと意味のあるものにしていくために改正するというんですか、そういうふうに改めていくということも私たちは議論しなければならぬじゃないですかと私は思うんです。いかがでしょうか。それは何も責任、私たちで議論せにゃいかぬじゃないかと言っているんですよ。
  278. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今、委員御指摘のとおり、ボン補足協定の四十八条にはかなり詳細な規定がございます。しかしながら、我が方の地位協定も二条三項、今漠然としたとおっしゃいましたが、そこに規定しているところは、「合衆国軍隊が使用する施設及び区域は、この協定の目的のため必要でなくなったときは、いつでも、日本国に返還しなければならない。合衆国は、施設及び区域の必要性を前記の返還を目的としてたえず検討することに同意する。」と規定してあるんでございます。これは、漠然というより明確に努力をしなくちゃいかぬということを、しかも極めて広く規定しているわけでございますので、この規定を生かしていくことによって、委員の今おっしゃるような道が開けてくるんだと思います。  そして、先ほど御答弁申し上げましたように、これまでも合同委員会でやってまいりました。そして、何よりも昨年やりましたSACOというのが、これは合同委員会の下部組織で、この時点で目的に照らして返還できるものはあるんじゃないかということを日米間で集中的にぎりぎり協議をいたしました。そして、現在沖縄にございます基地の面積で申しますと二一%を、いろいろな工夫をしながらでございますが、返還できるじゃないかということを最終報告で出したわけでございますので、これをまず実施していくと。先ほど総理の御答弁にもございましたが、まず実施していくと。  それで終わりではないということでございますので、この二条三項を生かしていくことで今後も努力してまいりたいと思います。
  279. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 外務大臣、私も、二条三項を生かすためにこのボン補足協定四十八条というのは参考になるでしょう、検討に値するでしようということを申し上げているんです。でなければ、今お読みになりましたけれども、目的とか必要性とかといっても、そこへどのようにして到達するのかという手順が全然ない。「たえず」という言葉が書いてあるだけで。それに比べてボンの補足協定の方は事細かく書いてあるから、私はやっぱりこういうことを参考にすべきでないかと申し上げている。  そこで、最後に、総理質問いたします。  総理は、来週訪米されて、クリントン大統領と日米首脳会談を行われると聞いております。今回初めてだとおっしゃいました、こんな議論をきちっとやってきたのが、予算委員会を通して。ぜひともこの議論を踏まえていただいて、できれば今私が言いました地位協定二条三項が生かされて、そして沖縄基地の返還に向けた具体的な成果が何か得られるということを強く期待するんです。  そして、具体的なものとして私は二点申し上げます。その一つは、今後さらに沖縄の基地整理を協議検討していくために、SACOにかわる新しい組織を日米合同委員会とは別に設置するという提案をひとつしていただきたい。それから、いま一つは、NATOのボン補足協定四十八条の規定を日米地位協定に加えるための協議を始めようという提案をしていただきたい。  私ら素人ですから、こういうことがよくできるかどうかわからぬけれども、しかし、せっかくの日米首脳会談にお臨みになる総理に対して、先ほどから沖縄の心ということも随分出た、総理もおっしゃった。こういうことを踏まえて、私が言いました二点をぜひとも議論の素材にひとつ提供していただければ非常に幸いだと思います。  以上です。
  280. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) なるほど、実はボン補足協定四十八条の規定というのは、私、今初めて目を通していたのがそれです。恐ろしく細かく入っています。それだけに、逆に応用動作がきくかなと。いや、これ正直に私、本当にここまで細かいと逆に応用動作がきくかなという感じを一瞬持ちました。むしろ今外務大臣と我々が議論していかなきゃならない問題だと言っておられましたが、私は、本当に議論していただくべき問題だと思いますけれども、二条三項ぐらい、ある意味では解釈によっていろんなものが拾える方が実行上は楽なんじゃないかな、使いやすいんじゃないかなという感じが内心、今しています。ただ、これを読んでみますと、非常に精微に決めている。逆に、だからそこに入っていないものは全くだめだということになりはしないかな、これが率直な一つの問題点です。  それから、SACOの最終報告の後の合同委員会と別に何か組織をつくれと。これは大変申しわけありません、既に日米安全保障協議委員会、SCC、そしてその下部にあります日米高級事務レベル協議、SSC、両方とも既にこれでやろうということをSACOの最終報告の中で決めてきました。ですから、その仕組みは既にできております。それを踏まえて、さまざまなテーマが今予測をされることですけれども、私は、その沖縄県の問題に引き続いて、真剣にアメリカ側としても取り組んでもらわなければならないということを含めて、日米間の安保問題の意見交換もさせていただきたい、そのように思っております。
  281. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) これにて齋藤君の質疑は終了いたしました。(拍手)
  282. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 私は、日本共産党を代表して、米軍用地特措法改悪案について質問をいたします。  今回の法案が憲法に背反すること、あるいはまた特措法のいわば元法である土地収用法、この最も重要な柱である収用委員会制度、これを事実上形骸化する、骨抜きにする、こういう重大な問題を持つ法案であることが既に衆議院の審議によっても浮き彫りにされてきました。このもとで、沖縄県民はもとより、こんな改悪は許せないという声は日々高まっています。沖縄でも、地元の琉球新報の世論調査では、今回の法案に賛成だというのはわずか五%にすぎない。  総理は本会議での答弁でも、今回の法案というのは暫定使用を求めるものであり、最小限の措置であるということを繰り返し答弁されてきました。  では、その暫定使用の期間というのは一体いつからいつまでということなんでしょうか。
  283. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 暫定使用というのは、今度の期限が切れました後に継続しているものにつきまして、収用委員会で明け渡し裁決が行われます。そして、それに対して、その期限が来るわけでございますから、それまでの間に、本裁決で期間が始まるまでの間を暫定使用として使わせてもらいたい。要するに、使用権原が切れないようにしたいということでございますから、その期限が本裁決でどこであるかによって決まりますから、一年とか六カ月とか三カ月とか、そういう期間を言うわけにはまいりませんけれども、それまでの間の暫定使用ということで設定しているわけでございます。
  284. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 つまり、今強制使用をされている土地の使用期限が切れる。しかし、今継続使用を求めているけれども、まだ明け渡し裁決、使用権原が確保されていない。その間をつなぐ。これは期間はわからない、いつからいつまでは。これが今言われている暫定使用というものであります。  つまり、強制使用と強制使用の間をつないでいく、そういう仕掛けを今回の法案でつくるというところに最大の眼目がある。私たち、これは大改悪だと思いますけれども。強制使用と強制使用をつなぐわけですから、これは事実上、強制使用永久化法案だと言っても差し支えないものだというふうに私は思います。  きょう、パネルをつくってきました。(図表掲示)一つのパターンというのは、裁決申請は既にしてある。しかし、使用裁決、明け渡し裁決がおりるまでに使用期限が切れてしまったという場合に、担保を提供して、そして次の使用権原を取得するまで暫定使用をしていくと、これが一つのやり方、本文十五条一項ですね。  もう一つが、裁決を申請しました、しかし収用委員会で却下の裁決がありましたと。そこで、当然不服審査請求を防衛施設局の方はやる、これによって暫定使用ができると。先ほど来の答弁を伺っていますと、この不服審査請求が却下されるというのは、これはレアケースの中のまたレアケースで、むしろ使用裁決があるということを前提にして今回の法案というのが組み立てられている。したがって、不服審査請求、この段階でももちろん暫定使用は可能だし、そして却下裁決の取り消し、そして再審理ですね、やり直し、使用裁決ということで強制使用につないでいくと。  いずれにしろ、要するに強制使用と強制使用、この間をつなぐために、収用委員会の裁決はまだなくとも、あるいは使用期限が切れておったとしても、あるいはまた却下の裁決があったとしても、暫定使用ということでつないでいくというのが今度の法案の仕組みになっている。これは間違いないですね。
  285. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 基本的には、今、委員御指摘のそういう仕組みで間違いございません。  ただ、その見方を、強制使用から強制使用までのものをさらに暫定使用で強制していくんだと、そういうような表現になりますと、非常に何か強制使用をやるための法律みたいに見えますけれども、そうじゃございませんで、本裁決があるまでの間に使用権原がなくなってしまう、そうなったときに国としては安保条約上に基づく義務がある、片一方に対しては使用権原がなくなる、そういう板挟みに政府というよりも国が置かれる、それでいいのか、それを乗り切るためにはどうすればいいのかということで、必要最小限の措置として今回の法律によって今まさに言われたそこの間を埋めさせていただくということでございます。
  286. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 長官、それは全然違いますよ。  だって、特措法をかけるというのは強制使用するためでしょう。強制使用以外の何物でもないじゃないですか。使ってほしくないと。だから特措法でやるわけですよ。まさに強制使用なんです。  そして、暫定使用の中身は何かというと、いわゆる本裁決があっての強制使用と違うのは期限が決まっていないということだけですよ。いつ取得できるかわからないから期限が決まっていない。衆議院でだって、使用権原としての中身はいわゆる通常の強制使用と何ら変わりないと。まさに強制使用、暫定強制使用で、そして強制使用というのがこの法律の仕組みだということは、これはもう疑いないじゃないですか。そうでなかったら特措法なんか必要ない。つまり、暫定使用暫定使用と言うけれども、ちっとも暫定じゃない。暫定というのは、広辞苑を見ましたら、一時的にとか、しばらくですよ。しばらく使って、もう使うのをやめますというなら、これはわかりますよ。しばらく、使ってこれからもっと使いますというんだから、もっと使うためのしばらくなんですよ、これ。こんなものはしばらくとは言わない、暫定使用とは言わない。まさに強制使用と強制使用をつなぐ橋を無理やりつくるというのが今度の法案の中身だと私は言わ、ざるを得ない。  結局、沖縄に二十一世紀に向かって米軍基地を居座り続けさせるということになるわけですよ。これが、憲法第二十九条が侵してはならないとしている財産権を侵し、あるいは憲法三十一条が定めている適正手続、これとどうして相入れるのか、私は疑問を持たざるを得ない。憲法第二十九条一項が「財産権は、これを侵してはならない。」というふうに定めていますけれども、国など公権力による侵害から国民の財産権を保障しているというところにこの立法趣旨があることは、一九六一年十一月九日の東京地裁確定判決あるいは注解日本国憲法、どれを見たってこれはもう疑いのないところであります。もちろん同時に、同条二項、三項で、公共の福祉のために適正な補償のもとでこれを制限することができると、これもそのとおりであります。そして、この憲法二十九条一項、二項、三項全体の要請にこたえたのが、私は今の新土地収用法といいますか、現在の土地収用法だと思います。  それ以前の旧土地収用法の時代にはどうだったかといいますと、これ新訂土地収用法、新コンメンタールでどう書いてあるかといいますと、「比較的簡易な手続で事業の認定が行なわれるにもかかわらず、その事実上の効果たるや絶大で、しばしば収用を実質的に決定的たらしめる」と。つまり、使用認定、事業認定は比較的簡単にやられるけれども、一たん使用認定、事業認定をしてしまえば、収用そのものがほぼ決定的になると。したがって、非常に官憲的、一方的であるということであります。  そこで、新しい土地収用法では、中立公正で、独立してその職権を行使する収用委員会、こういう制度をつくったということであります。  そこで、まず建設省に伺いますけれども、新土地収用法、現在の土地収用法では、公共の福祉に適合するかどうか、この判断というのは、あくまでも国だけが、あるいは使用認定、事業認定をやる側がやるのであって、収用委員会にはその機能は全くないと、こういう解釈をしているんでしょうか。
  287. 小鷲茂

    政府委員(小鷲茂君) 土地収用委員会の判断項目についてのおただしでございますが、現在の土地収用法の体系の中では、事業認定がまずありまして、これに基づきまして収用裁決があるということになっております。  おただしは、収用委員会が公益性の判断をするのかしないのかということだと思いますが、全くそういうことがないわけではないと思います。いわゆる事業認定を前提として収用裁決がなされるわけでございますので、前提としての行政処分について誤りがあれば、それについては後続の行政処分が続かないと、こういう関係になろうかと思いますので、先行処分たる事業の認定に重大かつ明確な瑕疵がある、つまり事業認定が無効であるような場合につきましては、無効であるかどうかという点についての判断が可能であると考えております。
  288. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 公共の福祉を判断することが収用委員会の機能として全く排除されているわけではないという答弁だったと思いますが、私、当然だと思うんです。  土地収用法では、収用委員会委員を選ぶ際の基準についてどう規定しているかといいますと、第五十二条第三項で「公共の福祉に関し公正な判断をすることができる者」、こういうふうに規定されています。公共の福祉について公正な判断をすることができる者を収用委員として選ぶんだと。したがって、当然収用委員会は、それがもちろんすべてじゃないですよ、補償や期間やこういうことも決めるけれども、そういう判断もするということですね。
  289. 小鷲茂

    政府委員(小鷲茂君) 収用委員会の機能につきましてはいろいろございますが、おただしの点に関連して言いますると、収用委員会は裁決申請があったときに裁決申請を処理するということでございます。処理をするということを具体的に申し上げますると、申請が法律に違反している場合には却下をいたしますが、法律に違反していない場合には、権利取得裁決または明け渡し裁決をしなければならないということでございます。  その際に、公益性があるかどうかということを結論を導く前提条件として判断するかどうかというおただしであろうかと思いますが、おただしのように、収用委員会委員の要件といたしましては、法律には、御指摘になりましたように、「公共の福祉に関し公正な判断をすることができる者のうちから」選ぶという表現がございますけれども、これは必ずしも公共の福祉に適合しているかどうかということを即判断するということではないものと考えております。
  290. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 きょう私、建設省がこの新しい土地収用法、これが施行された際に出した通達を持ってきましたよ。何と書いてあるかと。これがそうですがね。  官憲的、一方的だった旧土地収用法の審査体制を改め、中立公正で、独立してその職権を行使する収用委員会制度を設けたのは、新土地収用法の運用は、同委員会の機能、運営のいかんにあると。つまり、官憲的、一方的じゃない、そして民主的な手続に基づいてやるためには収用委員会の運営、機能というのが決定的だと、この運営のいかんにあるんだということを通達で述べています。  そして、その上で、何で法律で収用委員会委員を「公共の福祉に関し公正な判断をすることができる者」というふうに規定したのかについて、「委員会は「公共の利益の増進と私有財産との調整を図る」という公共福祉目的を実現」するためだからと、こういうふうに明確に述べているんです。収用委員会が公共の福祉について、これはもちろんすべてじゃないですよ、一定の判断をするというのは当たり前の話じゃないですか。
  291. 小鷲茂

    政府委員(小鷲茂君) 先ほど申し上げましたように、土地収用委員会は法律上、収用の申請があったときにはこれに対して裁決をしなければならないわけでございます。裁決の際にどういう事柄を判断するかということでございますが、法律上明らかにされておりますのは、権利の制限につきましての期間でありますと、例えば収用か使用かという態様につきまして必要な判断をするわけでございますが、そのほかに、仮に使用または収用が必要となった場合に、憲法上の趣旨に従いまして適切な補償をしなければならないわけでございますので、憲法上の必要に従った適正な補償額を決めるということも大きな役目でございます。  御指摘のような、当該事業が公共の福祉に適合しているものかどうかということにつきましては、まず第一義的に事業認定においてその判断がなされるというふうに考えております。したがいまして、この先行処分たる事業認定が違法な場合、違法でかつ無効であるような場合には、それに続く後行の処分ができませんので、その限りにおいて先行処分について判断できると、このように考えております。
  292. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 遠回しな言い方をしたけれども、第一義的には事業の認定のときにやると。しかし、その事業認定が適法なものかどうかということも含めて収用委員会ではやるということだから、ですから、ある公共の福祉についての判断は収用委員会でやるのは当然だということに結局結論としてなるじゃないですか。ならなきやおかしいんですよ。  先ほど、憲法二十九条の財産権の保障というのはだれから財産権を守るのか、国など公権力の侵害から国民の財産を保障している、ここにその立法趣旨があるんだということを言いましたし、これは防衛庁長官も今もうなずいておられました。  そうしますと、国が侵害するおそれありと、公権力が侵害するおそれありというのが前提になっているんですよ。そして、そこから国民の財産権守りますというときに、それを判断するのが国だったとすれば、これは一人相撲になるじゃないですか。公権力による侵害があるのかどうか、果たして本当に公共の利益の方が上なのかどうか。これ判断するのが国だったら、国が事業認定やって国が判断すると。どうやってこれ憲法二十九条第一項の立法趣旨を生かすことができるんですか。おかしいじゃないですか。
  293. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 先ほどから二十九条一項、一項とおっしゃられますけれども、二十九条の三項で、公共の福祉目的があります。
  294. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 公共の福祉の話をしているんだから、さっきから。
  295. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) だから、それとの調整をいろいろと法律で規定しているわけでございまして、収用委員会が適正な補償というのをそこで裁決で出すわけでございまして、今度の暫定措置法におきましても最終的にはそういう収用委員会の裁決によって、担保は提供いたしますけれども、最終的には収用委員会の裁決によって額は確定することになるわけでございますから、そういう意味では憲法の二十九条の一項、二項、三項のそれぞれに違反するものではないというふうに解しておるわけでございます。
  296. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 今いみじくも防衛庁長官がおっしゃったように、収用委員会の裁決があるまでなんですよ。あるまででしょう。しかし、暫定使用だって強制使用になることは間違いない。しかも、それが三日で終わるのか、三カ月になるのか、あるいは三年かかるのか、期間だってわからない。しかし、この問強制使用するわけでしょう、本裁決はないんですから。あるのは防衛施設局が裁決の申請をしているだけです。あるいはそれに対して不服審査請求しているだけです。担保の提供しているだけです。収用委員会の判断なんかとこにもないじゃないですか、暫定使用については。暫定使用について収用委員会の判断は何もない。収用委員会の判断があるのは、本裁決しかないんだから。だから、今おっしゃったことがむしろかえって私は、憲法二十九条一項、二項、三項、あるいは憲法三十一条、これに適合しないものだということを間接におっしゃったと一緒ですよ、今の長官の答弁というのは。  私、次の問題に移りますけれども――いや、法制局長官の答弁なんかいいですよ、いい。聞いちゃいないんだから。何やつているんだ。委員長、おかしいよ。質問者が聞いてもいないのに何で出てくるんだよ。
  297. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) 先ほどからの御議論の組み立てを聞いておりますと、自分の土俵で相撲をとっておられるわけでございますが、憲法二十九条第三項……
  298. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 何言ってるんだよ、おかしいよ。何が自分の勝手な土俵だよ。何言ってるんだよ、だめだよ、これ。言い過ぎだよ。何言ってるんだよ。いつから政治家になつだんだよ、法制局長官は。だめだよ、委員長、だめだよ。(発言する者多し)
  299. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 御静粛に願います。
  300. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) 憲法二十九条第三項は、公共のために正当な補償のもとで用いることができるという二つの要件を定めております。公共のためかどうかというのは、この収用手続の上では、特に特措法では、内閣総理大臣の使用あるいは収用の認定という過程でございます。それに対しまして、正当な補償の審査は収用委員会の本来の機能だと、このように分類されておりまして、衆議院の議論以来二重構造、二重の補償という言葉で議論されるわけですが、これは決して二重の補償ではございませんで、二つの機能の役割分担であるという事柄が正鵠を得た説明であろうと思います。  したがいまして、収用委員会の本来の責務と申しますのは、内閣総理大臣の公共のためにという公共性の存在の認定を踏まえまして、正当な補償はいかなるものであるべきかということを丁重な手続で審査、判断するということが本来の責務でございまして、特に使用裁決につきましては使用の期間及び使用の対価、それが本来の判断対象でございます。
  301. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 先ほど来の私の議論を全然聞いていないんですよ。建設省の通達だって土地収用法だって全部書いてあるじゃないか。あなたこそ自分の土俵で独特の法理論を振り回しているだけだよ、そんなものは。  それで、法制局長官と長々と議論してもしようがないから次の議論に移りますけれども、先ほども少し議論になっていました、いわゆる一坪反戦地主あるいは未契約地主ですね。政府広報なんかを見ましても、未契約地主が三千七十八人、多くは一坪反戦地主だと。政府広報によると「全体の〇・〇〇一%に過ぎません。」ということで、さも大したことないんだと。しかし、先ほど長官も答弁になったように、座布団地主であろうと一坪であろうと財産権には変わりない。だから、これを侵して構わないんだという理屈は成り立たないんだということは、これは長官もそのとおりだとお述べになりました。  しかし、今回の法案というのは、決してこの三千七十八人、今未契約地主の人、この方だけに向けられたものじゃないですよね。これは十五条一項によりますと、所有者もしくは関係人との合意により使用されている土地等で云々、第五条により認定があったものという規定があります。これはどういうことを想定された規定でしょうか。
  302. 伊藤康成

    政府委員(伊藤康成君) 法案の第十五条の第一項でございますが、そのところに……
  303. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 一項全部じゃないよ。
  304. 伊藤康成

    政府委員(伊藤康成君) はい。駐留軍の用に供するため所有者もしくは関係人との合意によって使用されている土地で第五条の規定により認定があったものという規定がございます。この部分につきましては、従来いわゆる契約等で使っておりました土地につきまして契約の更新ができない、そういうような場合におきまして特措法第五条の規定による認定があった土地等を指しているものでございます。
  305. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 それじゃほとんど法律を読んだだけだけれども、要するに今は契約地主、未契約地主じゃないと。しかし、将来わからないわけですね、これは。今契約されているお子さんがその後を継がれて、もう米軍基地として貸すのは嫌だという方も当然これは出てくることがあり得ます。したがって、今は貸しているけれども、もしかすれば嫌だと、もう契約しませんよというケースが出てくると。もしそういうケースが出てきた場合には、こういう人たちもこの特措法を適用して、そして暫定使用すると。これが私が今読み上げた十五条の条文の解釈ですね。
  306. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 将来出てくるというよりも、とにかく現在使用状態が続いているというところに着目をして今回制度をつくっておりますから、委員が今言われるような状況の中で、かつ引き続きそれを総理大臣が使用認定して対象とした土地であって、なおかつ収用委員会に対して防衛施設局長が裁決の申請をお願いしますということで出したそういう人たちの土地に対する本裁決が来るまでに期限が来る場合、その場合にこの法律を適用しようというふうにしているわけでございますから、非常に限定された場面を想定しての話であるということはおわかりいただけると思います。
  307. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 もちろん、そういうケースだと思います、もちろんそういうケース。しかし、それは今地主が、十人がそういうふうになるのか百人がなるのか千人がなるのかわからぬわけですから、あるいはだれがそういうふうになるかわからぬわけですから、つまり事実上これは全地主に対する対象に、だって全地主が対象になることだってこれは論理的にはあり得るわけですよ。それはそうですよね。  ですから、私、決してこれは今の一坪反戦地主と言われるような反戦地主に対してだけ向けられたものではないと。そういう点では全地主に対する、これ断ったら特措法かけますよということになるわけですからね。そういうことにならないですか。
  308. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 先ほど却下の場合も言いましたけれども、却下は非常にあり得ないようなことであるけれども論理的にはあり得るから、そこについても制度上設けさせてもらいましたというのとちょうど同じといいますか裏腹でございまして、論理的には今委員おっしゃったように全部が対象になりますよというようなことになります。  しかしながら、先ほどから言っていますように、圧倒的な二万九千人の人が賛成していただいて契約していただいていて、反対しておられる方が百十数名、それにプラス一坪反戦地主の方が約二千九百人おられるということでございまして、そういう実態から、今賛成していただいている二万九千人も全部論理的になるからこれはひっくるめての話だと、そういうふうに言われますのはなかなかちょっと、現実のあり得べき姿を想定しながら、やはりその中で憲法に違反しないかどうか。確かに、バランス上いってこれだけの限定効果ならば、担保だけを出しておいて、しかも申請までの手続はこれだけでいいかどうか、そういうことを総合判断した上でこれなら憲法に違反しない、そういうふうに判断して出させていただいているわけでございますから、その辺はひとつそのままお認めをいただきたいと思うわけでございます。
  309. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 私、法律、法案をそのまま読んでお伺いしたんです。  もう時間がなくなってまいりましたので、総理にお伺いしたいんですけれども、盛んに安保条約上の義務だ、義務を果たさなきゃいかぬということをおっしゃるわけですけれどもアメリカに一たん基地として提供すれば当然いつまでも提供し続けなければならないというふうな規定は、これは安保条約上も地位協定上ももちろんありません。  それどころか、地位協定の二条二項では、一たん日米合同委員会で提供を決めた基地についても、その返還についていずれか一方の要請があるときは再検討しなければならない。つまり、日本側があの基地について返還してほしいと言えば、アメリカが返還に応じるかどうかともかくとして、少なくとも再検討、協議に応じる責任はアメリカの側には地位協定上明白にあるわけです。  よく、今不法占拠状態が生まれてはならない、そうなると混乱するという議論が同時にあわせて行われるわけですけれども、しかし不法占拠状態をなくすのは特措法を改悪することじゃない。不法占拠状態が生まれそうになったら返せばいいんですよ。そして、返してくださいということを日米交渉として、総理、今度二十四日に訪米されるわけですけれども、やはり当然私、そういう交渉を総理がやられるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
  310. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 大変残念でありますが、考え方を真っ向から異にいたします。  そして、私は条約上の責任、義務というものを我々は果たしていかなければならず、日米安全保障条約によって守られる我が国の安全保障というのは、この国を守るということ以上に私は地域の安定の上にも非常に大きな役割を果たしていると考えておりまして、今、議員が御提起になりましたような論点を米大統領との間で議論をいたす考え方はございません。
  311. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 私も、総理とは全く考えを異にします。  ただ、私、お考えいただきたいのは、沖縄というのは戦後五十二年間、既に半世紀以上にわたって軍用地として使用されてきた。今後十年だ、あるいは二十年だということになれば、法学上だって九十九年というのは、これは象徴的な数字ですけれども、永代使用で憲法違反だと、こういうのが通説になっている。  私は、この長期の期間だけ見たって憲法違反状態になるということを指摘して、質問を終わりたいと思います。
  312. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) これにて筆坂君の質疑は終了いたしました。(拍手)
  313. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 総理大臣にまずお伺いいたします。  一九九五年九月に沖縄で米兵による少女強姦事件が発生し、基地の問題の実態が明らかにされております。これが世界に向かって発信された一つの事件の大きなうねりとなって、その後一年半が経過しております。  私は今回の特措法の改正でこの一連の問題は一つの節目を迎えたと思っております。この間、九五年の十月の事件に対する抗議県民大会から始まり、知事の代理署名拒否、その職務執行命令訴訟、そして象のおりでの不法占拠、歴史的な県民投票、さらにSACOの最終報告等といろいろなことがありました。とどのつまり、少女の事件を契機とした沖縄の基地の削減要求に対し、政府は、大田知事を初めとする沖縄県民に対し、予想されたことよりもはるかに厳しい特措法改正という答えで対処されました。この事実は際立って県民の心の中に深く刻印されるものと思います。  そこで、お伺いいたしますけれども総理は今でも沖縄県知事との間に信頼関係が保たれているとお思いでしょうか、お尋ねします。
  314. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今まで何回かお目にかかりまして、意見の合いましたこと、合いませんでしたこと、さまざまございました。殊に直近、三月二十五日にお目にかかりましたときには二時間余り議論をさせていただきましたが、五・一五メモをお渡ししたこと等、評価をいただいたこともありますけれども、評価のいただけないことも幾つもありました。その上で、知事は、その会談を終わりました後、信頼関係は残っていると外の方々におっしゃったと聞いて私は大変喜んでおりました。  そして、私自身は、今後ともに、率直に知事さんとお話のできる状況の中で、残っておりますさまざまな問題について取り組んでまいりたいと考えておりますし、その限りにおいて私は知事さんも同様な気持ちを持っていてくださることを願っております。
  315. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 大田知事がそれこそ苦渋の選択として、あの県民投票の直後、代理署名を応諾されました。その最大の理由が、どうしても特別立法だけは避けたいという心情からであると私は思っております。今回の法改正はどこから見ても実質的な特別立法という指摘が各方面からなされております。  さきの衆議院特別委員会での大田知事の参考人招致に対し、もう言うだけのことは政府に申し上げてきたとして出席をいたしませんでした。さきの朝日新聞等の沖縄県の世論調査を見てみますと、知事の姿勢は圧倒的に県民の支持を得ております。  そのことについて総理はどういうふうなお気持ちを持っておられるのか。
  316. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 本日、時々率直に物を言い過ぎてしかられておりますので、これもあるいはおしかりを受けるかもしれません。  議員が今みずからの口に乗せられましたように、もし大田知事が、政府に言うだけのことを言っているのだから国会の参考人招致に出てもしようがないと言われたのが事実であるとすれば、私はそれは大変残念なことだと思います。  確かに、私は大田知事と随分長い議論の時間をちょうだいしてきました。就任以来、何回かその機会がございました。そして、私は知事の気持ち、この問題につきましても伺ってきたつもりであります。しかし、国会において知事の御意見を述べられるということは、私にお話しになることとは別次元のことと思います。ですから、もし議員が述べられたとおりの言葉を知事が言われたとすれば、私はそこは知事のために惜しみます。  同時に、一点つけ加えさせていただきたいんですが、私たちも、本当に収用委員会の裁決によってこの事態が処理され、特別な法改正等を最初から求めていたのではないことは、議員もよく御理解をいただいているはずであります。そして、収用委員会の裁決に期待するということを、議員に対しましてもまた参議院の予算委員会におきましても、この同じ席から私は何遍も繰り返しました。その収用委員会が次回の日程を決めていただけないという状況になり、政府として、そうした事態の中で決心いたしまして、いろいろ御不満が出ることは覚悟をいたしました上で、この特措法の国会上程、御審議をお願いしている次第であります。
  317. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 沖縄の軍用地を強制使用するために今の特措法の改正、これが私どもは、戦後五十二年虐げられてきた沖縄県民の立場からするとどうしても理解できない。さらに二十一世紀までこの強制使用に基づいて我々県民が基地から大きな重圧を加えられる。この法改正について県民を代表して言うならば、本当にけしからぬ話であるというふうなことを私は思っているわけでございます。  この法案の問題については、いわゆる暫定使用は、権利取得裁決の申請及び明け渡し裁決の申し立てをして、あらかじめ担保を提供しさえずれば、防衛施設局長は当該使用期間の末日の翌日から明け渡し裁決において定められる明け渡しの期限までの間引き続き土地を使用できるとし、さらに却下の裁決があったときは、建設大臣に審査請求することによって当該審査請求に対し却下または棄却の裁決があった日までも使用することができるとしている。  このことは、政府が一たん正当な使用権原を喪失した後も政府の意思一つでいつまでも当該土地を使用し続けることができることを意味する。それはまさに暫定使用という名の永久使用法ではないのか、政府が望みさえずれば何でもできるということはまさに専制政治そのものではないかという見解がございます。  その点について、長官、どうお考えですか。
  318. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 委員が今言われましたように、永久にということではなくて、あくまで裁決の一連の手続が終わるまでの間は今までと同じ状態で使わせていただきたい、そういうことを今度の法律によってさせていただく。そういうふうに非常に限られた効果を付与する、そういう法案でございますから、永久にこれを使い続けるための法案だというふうな位置づけだけはぜひやめていただきたいと思うわけでございます。  今言いましたように、今まで続けて使用していた状態を本裁決が終わるまで、あるいは却下が出ましてもその手続がすべて完了するまでの間使わせていただきたいということで、それは未来永劫に向かってぐるぐる、先ほどパネルを出していろいろ言われた委員もいらっしゃいましたけれども、そういうことじゃございませんで、あくまで暫定的な使用ということでございますので、よろしくお願い申し上げます。
  319. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 暫定暫定と言われても実態は永久使用じゃないですか。そのことを申し上げているんですよ。
  320. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) この法律が通りまして、この後また収用委員会がいつ裁決されるか知りませんけれども、収用委員会は必ず裁決されるわけでございます。その権限等については全然手を触れていないわけでございますから、収用委員会が未来永劫に裁決をしないなんというような発想は失礼に当たると思います。  恐らく、収用委員会皆さん方自分たちの必要最小限のことをやられて、いずれの日か裁決されると思います。それまでの間に無権原状態にならないようにということでやっているわけでございますから、未来永劫にというふうな、そんないつまで裁決があるかわからぬようなそういう御指摘というのは、私は収用委員会に対して大変失礼に当たるのじゃないかという感じがいたします。
  321. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 実質的な特別立法だという指摘に対し、政府は最小限の改正だという見解を今示しておりますけれども、私はその認識に相当な開きがあると思っております。私の目から見れば、今回の改正によって政府はほとんど完璧に米軍用地の確保をすることができるようになったと思われます。  このことについてどう思われますか。具体的に政府が米軍用地を確保できない事例が想定できるのかどうか、それをお示しいただきたいと思います。
  322. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 米軍施設としてこれは提供しなければならない、そういうふうに国が判定しました場合はその使用認定をすることができるわけですし、またしなければならないわけですね。それに基づいて一連の手続が始まっていくわけでございます。  それに対して、もし裁判の場所でこれをとにかく覆そうと思うならば、国がそういう判定をしたこと自体が間違っている、これは困るという形で訴訟を起こすことだってできるわけでございます。そういう点では国民にちゃんと裁判上の権利も与えられているわけでございますから、そういう一連の中でこの問題を見ていただきたい。  限定された効果を与えるということと、今そういうふうに無権原になるという状態、そしてそれまでの手続の問題、あるいはそれに対する損失の補償問題、これらを全部総合的に判断して、この法律であるならば、今委員の指摘されるような、日本国憲法に反するようなことではないという判断のもとに提案させていただいておるわけでございますので、どうかそういうことを総合的に見た上でこの法律の趣旨を理解していただきたいと思います。
  323. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 あと一問に答えていないような感じがするんですけれども、要するに政府が米軍用地を確保できない事例が想定できるのかどうか、その辺について御見解を承りたい。
  324. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 理論的にはあると思います。
  325. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 今回の改正によれば、県の収用委員会が却下の裁決を下した場合でも、建設大臣に不服申し立てをするだけで継続的に土地を使用することができるようになっております。問題は建設大臣の判断ですが、まず建設大臣が地主の側に立って収用委員会の却下裁決を支持することは考えられないと思います。第二に、いつまでも決定を下さない場合には事実上暫定使用の名目で申請している使用期間以上の使用が可能になるということではないかと思います。  これは地主側に余りにも不利益な制度ではないか。事実上、一坪反戦地主会が一九九二年の強制使用に対し建設大臣に審査請求をしたが、五年を経過した今日でもまだ審査は放置されているとのことであります。  建設大臣への不服審査は全く形骸化しているのではないか。また、その反戦地主会からの審査請求はどのようになっているか、お伺いいたします。
  326. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 不服申し立てが地主側から出されておって、それに対する説明につきましては建設省の方から御説明があろうかと思いますが、その前に、却下の裁決をしなければならない、しかもそれは法律にこの手続が違反している場合だというふうに限定されておるわけでございます。  そういう場合に限って収用委員会は却下をするわけでございますから、非常に例がない。そのときの却下の理由が違法だということにもしなりまして不服申し立てをした場合は、建設大臣が認可する場合にもかなり収用委員会の判定に縛られますし、それを覆すためには建設大臣の方も非常に明らかな理由がなければそれをひっくり返すこともまたできぬわけでございますから、そういう場合に、建設大臣がこれをずっと握りつぶしたまま長く置いておくなんということはまず考えられないわけでございます。  建設省の方に今上がっている、それがなぜおくれているかというのは、たくさんの方々が出しておられるわけで、国の方から不服申し立てをする場合、審査請求をする場合は防衛施設局長がただ一人でございますから、今みたいに件数が多くてというようなことで長く置いておくことはできないので、それを同列に並べて建設大臣の裁決が非常におくれるという前提に立って議論されるのは、みんなに誤った予断を与えることになるんじゃないかと思います。
  327. 小鷲茂

    政府委員(小鷲茂君) 御質問にございましたように、平成四年二月二十一日付で沖縄県の収用委員会が行いました使用裁決につきましては、百二十名という多数に上る方々の審査請求がなされております。これまでこういう審査請求がなされたという経験がなかったわけでございますが、この平成四年度のものに限ってこういう状況になっておるわけでございます。  この方々がそれぞれ行政不服審査法に基づく口頭による意見の陳述を求めたり、いろいろな審査手続の御要求があったりなどいたしまして、実は今日までまだ結論が出ていないという状況になっておりますけれども、ただいま御議論になっております却下裁決についての審査請求につきましては、これもただいま防衛庁長官からお話のありましたように、当事者が一人でございますし、しかもその審査請求の内容についての判断事項もおのずと限定をされてまいります。今回のような、今回といいますのは現在係属中の百二十名の方々の裁決審査のことでございますが、同じようなことにはならないものと、またなってはならないものと考えております。
  328. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 それはいつごろ結論を出す予定ですか。
  329. 小鷲茂

    政府委員(小鷲茂君) まだ手続も若干残っておりますので、可及的速やかに審査手続を進めまして迅速に結論を得るようにしたいと思っております。
  330. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 反戦地主と一坪反戦地主は数の上において三千七十八名で地主全体の九・四%であり、その所有する土地の面積は約三十六ヘクタールで軍用地面積全体の〇・二%にすぎないので、これらの地主が沖縄の心を代表するものではないという過小評価キャンペーンが国会内外で今繰り広げられております。いわば三千人の反戦地主は、冷戦の終結によって本来の存在意義を失った日米安保条約の再定義のための人身御供にされているわけであります。  しかし、私はあえて力説する。反戦地主の立場は、平和を求める沖縄の心そのものである。その何よりの証拠は、最近の朝日新聞の沖縄県内の世論調査によっても明らかであります。すなわち、去る五日、六日の二日間にわたって行われた世論調査によれば、特別措置法改正案に反対する者が六一%で、賛成は一五%にすぎない。国会における八割、九割が改正案に賛成という翼賛状況と比べて、何という落差の大きさがあるだろうと慨嘆せざるを得ないのであります。沖縄県内と国会の中ではまさに賛否の比率が逆転しているのであります。ここでもまた沖縄県民の願いは切り捨てられようとしているわけであります。  このような状況に対して総理はどのように御見解をお持ちですか。
  331. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、率直に申し上げて大変残念であります。それには二つの残念さがあります。  一つは、収用委員会が裁決を下してくださっておればこの事態はございませんでした。収用委員会が裁決を下してくださっておれば状況は全く変わっておったでありましょう。なぜ次の日取りを決めていただけなかったのか、非常に残念であります。同時に、この内閣がスタートをいたしまして以来今日まで、前内閣から引き継ぎましたこの沖縄の問題というものに全力を挙げて取り組んできたつもりであります。  そして、まさに今、委員がたびたび引用しておられるその世論調査の中で、私ども努力というものはほとんど評価をしていただけていないという数字も拝見いたしました。私は、沖縄の皆さんに、力足らずかもしれませんが努力をしてきた日米両政府関係者の善意だけは信じていただきたい、心からそう願っております。
  332. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 終わります。
  333. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) これにて島袋君の質疑は終了いたしました。
  334. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 椎名でございます。  今回の問題は、一方では日米安保を確保しなければいけないという非常に重要な一面、しかしそれにしても沖縄に今までかけてきたまた今でもおかけしている大変に多大の負担、この二つの間で非常に難しい選択をしなければいけないという問題かと思っております。衆議院、それからきょうの参議院の審議などを聞いておりましても、沖縄の今までの大変な御苦労というのは幾分わかっておるつもりでおりましたけれども、さらにひしひしと感じているところであります。  しかしながら、そういう沖縄問題の過去、現在あるいは将来にわたっても、その重みということを踏まえた上で、しかしやはりそのもとである日米安保の重さというものについてはっきりした認識を持っていなければいけないと思うわけです。  今度、この特措法が審議の結果成立する。とりあえず当面は日米安保の運用ということが最低限維持されることになると思います。しかし、これからの将来に向かって、これを本当に確固とした日本のためあるいはアジア太平洋地域の安定のために役立つものにさらにきっちりとした骨組みを入れていかなきゃいかぬという問題が一方にあり、そしてまた沖縄に対しては負担の軽減、沖縄の振興というようなことも、これも一年、二年の予算をただっければ終わりというものでもない。大変に大きな問題を抱えながら進まなければいけないということであろうと思います。  基地のさらに縮小、それから沖縄の振興については、あしたまた時間をいただきますのでその際に譲りまして、きょうは安保の問題について基本的な政府の認識をもう一度明らかにしていただきたいというふうに考えるわけであります。  基本論になりますが、軍事力というものはもともとは自国の安全を守るためである。したがって、ほかの国から武力侵攻などがあった場合それを排除するというのは、これが目的であるというのは、これは第一義的な目的ですが、現在の世界あるいは区域を限ってアジア太平洋地域というものを見ますと、単に侵攻があったらそれを打ち返すというだけでなしに、軍事的な手段を持った威嚇であるとかあるいは脅威を防止する抑止の機能というのが非常に大事になってきたと私は思っております。そのためには地域のバランスというものを常に確保していかなきゃいかぬということだと思うんです。  実は、もう亡くなりましたけれどもアメリカの未来学者で戦略家であったハーマン・カーンがよく言っていたんですが、国防というのは保険のようなものだと、使わないで済めばそれにこしたことはないけれども、保険はかけておかなきゃいかぬということを言うけれども、この例えは余り適切ではないということを言いました。  というのは、例えば地震の場合に、保険が出るか出ないかという話は既に家がつぶれてしまった後の話でありまして、その過程において柱に押しつぶされて命を失うというようなことがあるかもしれない。国防というものあるいは安全保障というものの本質というのはそもそも耐震構造であるということを言いましたが、私は、侵略に対する排除というようなこととそれからこの抑止機能というものはまさにその保険と耐震構造というような関係になっていると考えておりますが、どうお考えになるか、お聞かせをいただきたい。
  335. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員の今おっしゃいましたこと、まことに示唆に富んだ御意見というふうに拝聴しておりました。  もとより、いろいろな安全保障の備えは、もし万一いわゆる有事という事態になりました場合には国民の生命あるいは財産を守るために機能しなくちゃいけないわけでございますけれども、それと同時に、そういうことの起こらない状況におきましてもそういった備えがきちんとあるということがむしろ事を起こすのを防いでいると。そういう意味におきまして、いわゆる抑止力と申しましょうか抑止効果というものが非常に大切だと存じます。  とりわけ、かつてのように国策を実現するために実力を、安易とは申しませんけれども、実力を行使することが珍しくなかったという時代ならともかくとしまして、現代におきましてはどの国もみずからの国策を実現するために武力を使うと、こういうことは言っていないわけでございます。いわゆる不戦条約以来の、そして今日の国連憲章に至るまでの流れもございますし、そしてそういった中で、当然のこととして私どもは、そういったいわゆる抑止効果、抑止力という側面がますます重要性を増してきていると、こういうふうに考えます。そういった意味で、耐震構造といった御意見、非常に示唆に富んだものと考える次第でございます。
  336. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 今の再確認した日米安保というのは、まさに私はそういう意味だろうと思うんですね、基本的には。一種の同盟関係であります。同盟関係の抑止力等の信頼性というのはどこにあるかといえば、両国のあるいは三つあったら三つですが、それを総合的、有機的に結びつけた総合的な能力とでもいうようなものが同盟の強さになる、それ自体が抑止力を非常に信頼性のあるものにする、こういう関係だと思うんです。  したがって、兵力のレベルとか構造とかというのを問題にする場合に、同盟に属している国、両方を総合的に考えなきゃいかぬというのが常識であろうと実は思うんですが、どうも最近の議論を見ておりますと、というような視点でなしに、沖縄の重みということからよくわかるんですが、これに引きずられた議論というのがあって、かえって元も子もないような話になりはしないかというのが非常に心配であります。  それからもう一つ気になりますのは、衆議院の特別委員会を通ったときの附帯決議を拝見しているわけですが、さらに基地の縮小とかいろんなことが書いてありますが、すべてアメリカ側は何か減らせないかという話が多いんですね。それから、これは三番目でしょうか、「アジア情勢の安定のための外交努力を行うとともに、米軍兵力構成を含む軍事態勢について、継続的に米国政府と協議する」と書いてあるんです。何か外交というものがうまくあれば、こっちの方はなくてもいいようなニュアンスがどうもある。こういうことじゃないだろうと思うんです。  例のナイ・レポートを書いたジョセフ・ナイが言いましたが、安全保障というのは空気中の酸素みたいなものだと。いざというときに酸素がなくなったら大変だというようなことを考えながら、自然現象の空気には酸素が含まれておりますけれども、安全保障というのは常に酸素の補給をしておかなきゃいかぬ、外交というのもこの酸素の補給があった上に成り立つ部分が非常に私は大きいと思うんですね、そこのところを忘れちゃいけない。  今度、与党の方々韓国に行かれたときに、たしか海兵隊を減らすという話があるけれども、それをやられちゃ困るというような話が出てきた。これは酸素がなくなるんじゃないかというおそれだと思うんですね。  それから、これはまだ余りはっきりはいたしませんが、先週、中国の外務省のスポークスマンが、何かアメリカアジアにおけるプレゼンスはもう反対だというようなことを言い始めた。これに対するアジア諸国の反応というのはやはりおそれというようなものである。  こういうことで、我々が日米安保関係をここに確固として持っていること自体が重要な外交の一部であるという認識を私は持っておりますが、どうもそこあたりが非常に認識が希薄なような気がいたしますけれども、いかがでしょうか。
  337. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は大変いい点を御指摘いただいたと思います。なぜなら、衆議院で御答弁を申し上げてまいりましたときにも、日米安保条約の持つ意義、それは我々の安全を守ってもらっている、同時に、米軍アジア太平洋地域におけるプレゼンスを確保するという意味で公共財という言葉を使い、また地域に対する貢献とも言える、私はそう考えているということをしばしば申し上げてまいりました。  私は、今の御指摘を非常にありがたく拝聴していた次第です。
  338. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 そういうことを踏まえてみると、海兵隊というのはあんなに要らないんじゃないかというような話、それからたとえ要るにしてもどこかよそに移せないかというような話がありますね。さっき言いましたように、同盟双方の総合的な力ということが実際は大事なんであって、こっちのことは何もなしで向こうだけのことを言うというのはどうも少しおかしいところがあるんじゃないかという気がするんです。極端なことを言うと、なるべくなら減らしてしまえと、こう言うからには、じゃ自分の方はどうするかという話をしなきゃいけない。これに巻き込まれるのは嫌だと思ったらその話はどうも手がかじかむから、そこでどこかよそへ移せないかという話になる。  それは何か同盟国をピザかそば屋の出前みたいに扱っているんじゃないかという気がするんですね、電話かけたら来てくれるはずだと。これは極端な話が有事駐留とかいう話だろうと思うんですが、向こうだって誇りのある国だろうと思うんですね、我々が誇りを持っているのと同時に。こういうようなことはよくよく考えて、かえってそういうことによって同盟関係を弱くして、そして日米安保が持っている抑止力の信頼性をなくしてしまうということになりはしないかというのが私の心配であります。政府だけに言うのじゃなしに各党にもこういうことは申し上げたい。  その点、出前扱いよりは、昔私の父が言いました番犬の方がずっといいんですね。番犬はいざというときにほえてくれる、あるいは賊が入ってきたときに主人のためにかみつくとかということのためには、しかるべきえさも与え、それからたまにはブラシぐらいして、やっぱりきちっとした愛情を持ってこそ番犬というのは役に立つ。出前というのは今忙しいとか、あるいは今出ました出ましたと言って、そば屋のあさってとかいう話があるけれども、これは当てにならないんです。ただし、こっちが番犬だと言うなら向こうに番犬だと言われても怒らないというのが私は非常に健全な同盟関係だろうと思うんです。役に立たないのと、ただ愛情だけで結ばれたというような話じゃない、これは本当に真剣な話ですから。  そういう意味で、間違いないようにしたいということだけを私はきょう申し上げたかったわけでありまして、これについての御感想を承って、私の質問を終わります。
  339. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、本当にきょうはよき問題を提起していただいたと思います。恐らく委員の中には議員のお考えに賛否両論があろうと思います。その上で私どもは、条約関係というものが、まさに有事駐留あるいは各国への分散というようなことを我々が言い出し、相手側の信頼を傷つけることのマイナスを考え続けてまいりました。そして、アジア太平洋地域がこれを必要とするなら、それは我々からそれぞれの国に言うべきことではない、少なくとも条約による同盟関係を持つ以上そのような思いを持ってまいりました。  残念ながら、一方で、我々は確かに長い間、余りに思いをはせることなしに沖縄県に非常に多くの米軍基地が集中しております。そして、今の一〇四号線越えや岩国への一部航空機の移転と同様に少しでもその負担を縮小する努力は、私は国全体としては払うべきだと思います。そして、そういう思いの中でSACOの最終報告もまとめてまいりました。  そうした中で、本当に県の皆さんに申しわけないという思い、反対の気持ちがあることを覚悟して今回この特措法の改正の御審議をいただいておるわけでありますけれども、我々はこれからも外交努力をしていかなきゃなりませんし、沖縄県自身の振興のための協力、当然のことながら惜します努力をしていかなければなりませんけれども、同時に、この日本という国の安全というものを考え続けなければなりません。そうした中における我々自身の責任、改めて考えるためのよき御示唆をいただいたと思います。
  340. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 終わります。
  341. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) これにて椎名君の質疑は終了いたしました。(拍手)
  342. 北澤俊美

    ○北澤俊美君 最後になりましたが、北澤俊美でございます。  まず第一に、総理にお伺いいたします。  先ごろアイヌ文化の振興の法案が通りまして、我が国が多数民族であるという法律による裏づけみたいなものがはっきりしたわけでございます。改めてお伺いしますが、沖縄は固有の文化を持っておるわけでありますけれども、これを日本の国の中の固有の民族というふうにお思いになりますか。
  343. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 実は先日、記者団にアイヌ民族の先住性について聞かれまして、私は先住性を認めると答えましたところ、歴代の総理大臣の中で初めて先住性を認めたというので多少物議を醸しました。  ただ、私は、本当にその民族、今言われるような意味でどういう定義が学問的に一番ふさわしいのかわかりません。しかし、全く独自の言葉というのは私は一つの大きな要素だと思います。そして、宗教とかあるいは固有の文化、いろんなものがこの中にはあると思います。その場合、我々は歴史の上でかつて琉球王朝というものが存在をしていたことを存じております。そして、薩摩藩に攻められ、非常に複雑な立場をとり続けた時代があったことを承知しております。そして、琉球処分という言葉に象徴された明治政府建国以来の歴史というものも存じております。  そして、戦後の歴史、これは当然のことでありますけれども、むしろ古い時代における言語学的なかかわり、完全な同じ言葉から分化したというようなことが言われている中で、学問的にはいろいろな見方はあろうと思いますが、少なくとも私は他の民族だというとらえ方をしたくないという思いがいたします。
  344. 北澤俊美

    ○北澤俊美君 ここで民族の論議をするつもりはないのでありまして、総理の見解をお聞きして、私は沖縄の心を、ずっと衆議院の審議を聞いても、きょうの審議でも盛んに皆さん言っておられる。私は、沖縄の心を正しく理解するためには沖縄の歴史の中にそのかぎを見出すべきだと、こういうふうに思っておるのであります。  固有の民族かどうかということは、過去の歴史の中で幾つか指摘をされながら、沖縄の処分、そしてまた圧政、そういうものが行われたわけであります。我々日本沖縄にしてきたことは大きく分けますと二つ、近代国家としてスタートした明治政府がやったことについては、もう御案内のように、琉球王朝を、先ほど総理も言われましたように、薩摩藩の支配の中から廃藩置県によって併合していったわけでありますけれども、ほぼ旧来の法制を温存しながら、そのことによって三十年おくれたというふうに言われておるんですね。  このことを、時間がありませんから細かくは申し上げませんけれども、いずれにしても明治政府は沖縄が嫌がるのに土地を強制的に取り上げ、そこに軍を置き、さらにはまた強制的に取り上げて演習場をつくった、このことを沖縄は覚えておるわけであります。戦後同じことを今度は米軍がやり、それを日本が引き継いでおるわけであります。  しかも、これは大田知事が政治家になる前、学者の時代に大変に研究をされた中で明らかにされたことであります。一九四一年に太平洋戦争が始まったんですが、もうその半年後にコロンビア大学に沖縄研究チームというのをつくって沖縄の処分についても研究されておるんですね。それは日本から切り離す、細かいこと言うとびっくりするようなことを研究しているんです。その結果としてマッカーサー元帥が、沖縄人は日本人ではない、沖縄人々日本から切り離されても長年にわたる日本の圧政から解放されたとしてむしろ喜ぶだろうということを公に言っておるわけです。  それを裏づけるものとしては、一九四五年に太平洋司令官ニミッツ元帥が軍政府の布告第一号として北緯三十度以南の南西諸島を日本から切り離すと、こういう布告を出したわけであります。これは何に基づくかというと、先ほどの研究をもとにして、これは大田知事が米国へ渡ってこの証言を見出してきたわけでありますけれども、アチソン国務長官は議会証言で、アメリカが北緯三十度を分離の境界線としたのはそこが日本民族と琉球民族の境目と考えたからであるというふうに証言しておるんです。  したがって、我々は沖縄の同胞は異民族ではない、こういうふうに総理思いたいとおっしゃるし、これは文化そのものからするといろいろ意見があろうかというふうに思いますが、アメリカは少なくともそういうふうに見た上で沖縄の処分をしてきた。そういう沖縄の歴史というものを私たちはまず見なければいけない。  沖縄出身の歴史家で東恩納寛惇教授はこういうことを言っておるんですね。人間の歴史はここに弱き者の生きるための苦しみを沖縄の渉外史に発見し、文明の名において深き反省を要求されねばならないであろうと、こういうふうに言っておるんです。これはけだし名言で、今このときにもこの教授の言葉はそのまま通用するというふうに思うのであります。私はこの感想も総理に求めようと思ったんですが、もう時間がありません。  そこで、私たちは今度のこの審議を通じて何を一番大切にしなきゃならぬかということは、沖縄の人たちの犠牲に対する思いを我々はできるだけ共有しなきゃならぬわけでありますけれども政治がやらなきゃならぬことは、この後の沖縄の振興策をどれほど我々が真剣になって実現していくかということだと私は思うのであります。  そこで、これは官房長官にお聞きをいたしますが、沖縄政策協議会は昨年十月に発足をして、八十八あった事業を三十四に絞って十のプロジェクトで今やっておられる。その中には、現在目玉のように言われております一国二制度、そういうものもあるようでありますけれども、私は総体的に、例えばフリー・トレード・ゾーンの全島化あるいはノービザ、こういうものもみんな総論では賛成を言っておるけれども、フリーゾーンでは大蔵省が反対しているとか、ノービザでは法務省が反対しているとかということを報道で盛んに言っている。  しかし、官房長官はそのぐらいの思い切ったことをやらなかったらだめだというふうに積極的に発言されておられるわけでありますけれども、こういうことをきちんとまとめていくということを沖縄の人たちに改めて官房長官の口から御答弁をいただきたいというふうに思うわけであります。
  345. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 公式に内閣の場でこういうお話を申し上げたことはございません。ただ、私なりに考えをいたし、沖縄担当という職務を総理から仰せつかって、沖縄をどう思うかということと沖縄に対する振興というのにどういう手段があるかを考えてみますと、私は必ずしも一国二制度とは言いたくはないんですが、長い過去の経済圏、南西に開かれた南シナ海を中心とする経済交流の状態考えれば、今日ほどアジア経済が大きく伸びている時代はない。  これを考えれば、一国であっても、シンガポールあるいは中国の各地、あるいは香港、そして台湾、そういう国々ないしは地域がどんな制度とどんな税制のもとに今日的な発展を遂げているかどうか、それに対して沖縄はどういうマイナスがあるのか、沖縄の利点は何なのかということを考えれば、それぞれの長所を全部取り入れるということではなくて、これならば沖縄は振興ができるであろう、いや、自立するということよりも日本経済のこれからの私は起爆剤になり得るものということを特にこのアジアの時代に向けて考えなければならない。そういうことを思えば、若干中長期的なことかもしれませんが、そういうものに思いをいたしていることは間違いがございません。  そして、沖縄政策協議会、それから今沖縄が立ち上げたこれからの規制緩和、沖縄がそういうものをまとめておいでを願うならば、私たちは積極的に取り組むことが何よりも大切なことだと、こういう思いを抱いてこれからもやってまいりたい、このように思います。
  346. 北澤俊美

    ○北澤俊美君 先月末、私も党首の羽田先生と御一緒沖縄へ行って、知事初め名護市長、皆さんと会ってきました。いろんな人と行き合いする中で、総じて私の感じでいいますと、沖縄は基地の問題についてはある程度あきらめてはいるけれども許してはいないという感情が読み取れたような気がするんです。今、官房長官の御答弁を沖縄方々が聞けば振興策に対する期待感は高まるというふうに私は思います。ぜひそういう姿勢でお願いをしたい。  大蔵大臣にお聞きする前に、内閣審議官にちょっと先に聞きますが、十プロジェクトのうちのまとめた三十四の事業がいつごろ結論を出して、そしてラウンドで結構でありますから、どのぐらいな予算規模になるのか教えてください。
  347. 及川耕造

    政府委員(及川耕造君) お答えを申し上げます。  政策協議会はこれまでに四回開かれておりまして、またそのもとに置かれましたプロジェクトチームを二回から四回、大変積極的に作業を進めているところでございます。  御指摘のいつできるかということでございますけれども、既に事業が立ち上がっているものもございますし、また跡地利用のように大変時間のかかるものもございますので、それぞれ区々であろうかと思っております。ただ、なるべく早く具体的な政策に結びつけるよう、現在調査費等を配分いたしましてその具体化に努める、こういう段階であろうかと存じます。
  348. 北澤俊美

    ○北澤俊美君 金額は。
  349. 及川耕造

    政府委員(及川耕造君) 金額につきましては、大変意欲的なプロジェクトが並んでおりますので相当な額になろうかと思いますけれども、現在調査中でございますので御了承いただきたいと思います。
  350. 北澤俊美

    ○北澤俊美君 私は沖縄の人の気持ちを代弁するなんという大それた気持ちはございませんけれども沖縄の人たちは、この法律がこの審議の中で成立すると政府はまたトーンダウンするんではないかという気持ちはどこかに必ず持っているはずであります。そういう気持ちを沖縄の人たちに抱かせることはまずいんで、できれば私は今の答弁である程度の目鼻のついた答弁をしていただきたかった。お役人でありますからあそこいらが限界かと思います。  そこで、大蔵大臣にお聞きをいたしますが、今のことをもう少しもし突っ込んで御答弁をいただければ、いつぐらいまでには結論を出すよと、二、三どうしてもだめなものはあるというようなことをここで御答弁いただけるかと。  それから、昨年、今調査をしておるものについて特別振興対策調整費という五十億の予算を計上したわけであります。これはもうシーリングとかなんとかそういうものには一切こだわらないでぽんと出したわけであります。したがって、ここで調査したものが実際の事業になったときに、これが事業化されるときに我が国の財政運営がどんなふうになって、また予算の仕組みをどういうふうにするか、これは大きな改革の波の中に入っちゃうかもしれませんけれども、今の時点で言えるとすれば、シーリングの枠の外へ置いて当然やるべきだと私は思うのであります。これは立ち上がりの性格からしてシーリングの枠の外であるべきだと理論的にも思うわけでありますけれども、その辺のことについて大蔵大臣の御見解をお聞きいたしたいと思います。
  351. 三塚博

    国務大臣(三塚博君) ただいま官房長官沖縄に対する率直な心情を申されました。総理大臣からもたびたびの会議において答弁をされておることも拝聴いたしております。心情は全く一〇〇%共有であります。  そういう中で、ただいまの質問、いつごろまでということでありますが、御案内のように、調整費五十億円、八年度補正予算、本件についてはただいま沖縄振興のための各般の施策を内閣を中心に強力に推進をいたしておるところでありまして、いつごろかと言われますと、年末の決定で、一月に成立をいたした予算であります。若干時間がまだたっておりませんから、それぞれの調査が行われておりますけれども、わずか除いてほとんど今調査中と、調整費として何をどう進めるかということの鋭意検討に入り、実行に向けての作業に入っておると承知をいたしておるところでございます。具体的な事業にそれが相なる突破口でありますことは御案内のとおりでございます。  特に、予算上特別の配慮あるべきということでございます。沖縄の振興策については、現在行われております沖縄政策協議会における検討の結果や、先般の沖縄米軍基地所在市町村懇談会の提言を踏まえまして、財政事情にも配慮して適切に対処しますことは、閣僚の一員、また予算担当の閣僚として当然のことだと思っております。
  352. 北澤俊美

    ○北澤俊美君 大変な決意をお聞きして、私は二十分というのはこんなに短いとは思わなかったんですが、しかし大変ありがたいといいますか意欲的な御答弁をいただいて満足しております。  しかし、これが日本政治の悪いところでありまして、内閣がかわったり大臣がかわったりするとトーンダウンするという危険性があります。外国からもよく指摘されることであります。橋本内閣に野党の立場から長続きしてほしいなんて言うことはできませんけれども、どうかひとつそういう意味ではきちんと政府の責任においてやっていただきたい。  私は総理と同じ世代でありまして、昭和三十五年でしたか、沖縄から来ていた同級生に連れられて一緒沖縄へ行ったのが私の沖縄の原体験であります。そのときに、日中たびたび断水がありました。しかし、彼が案内してくれた米軍の将校の家は芝生に水をまいておりました。それが沖縄の現実でありました。  また、もう一人の友人は、父親はもう今は県庁のお役人からリタイアされましたけれども、当時の父親はごうの中から一番最初に白旗を上げて手を上げて米軍に投降した。民間人でありますけれども、当時とすれば大変な非難の的であった。しかし、父親の思いは、それをすることによってこの中にいる人たちが全部救われるという思いであったんですけれども、それはなかなか理解されない。子供である私の友人もそのことにいたく心を痛めて、大学を卒業して社会人になっても親子のきずなはなかなかもとへ戻らなかった。しかし、家庭を築いて子供をつくってようやく父親の深い思いに気づいて、大変父親に済まなかったと言ったということを私は本人から聞きました。  沖縄の人たちの気持ちは私たちのはかり知れないところで深い傷を負っているというふうに思います。最後にこのことを申し上げて、政府の懸命な御努力を期待して、私の質問を終わらせていただきます。
  353. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) これにて北澤君の質疑は終了いたしました。(拍手)明日は午前九時三十分に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時三分散会      ―――――・―――――