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1997-04-04 第140回国会 参議院 内閣委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年四月四日(金曜日)    午前十時三十一分開会     —————————————    委員異動  四月一日     辞任         補欠選任      風間  昶君     大久保直彦君  四月二日     辞任         補欠選任      小山 峰男君     北澤 俊美君  四月三日     辞任         補欠選任      大久保直彦君     風間  昶君      菅野  壽君     瀬谷 英行君  四月四日     辞任         補欠選任      齋藤  勁君     萱野  茂君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鎌田 要人君     理 事                 板垣  正君                 鈴木 貞敏君                 鈴木 正孝君                 瀬谷 英行君     委 員                 海老原義彦君                 狩野  安君                 橋本 聖子君                 矢野 哲朗君                 依田 智治君                 風間  昶君                 永野 茂門君                 山崎  力君                 角田 義一君                 萱野  茂君                 笠井  亮君                 聴濤  弘君                 北澤 俊美君    国務大臣        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 梶山 静六君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)      稲垣 実男君    政府委員        内閣官房内閣内        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房内政審議室        長        田波 耕治君        北海道開発庁総        務監理官     松川 隆志君        北海道開発庁計        画監理官     八木 康夫君        文化庁次長    小野 元之君    事務局側        常任委員会専門        員        田中 久雄君    説明員        内閣総理大臣官        房参事官     渡辺 芳樹君        外務省総合外交        政策局国際社会        協力部人権難民        課長       貝谷 俊男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○アイヌ文化振興並びにアイヌ伝統等に関す  る知識普及及び啓発に関する法律案内閣提  出)     —————————————
  2. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二日、小山峰男君が委員辞任され、その補欠として北澤俊美君が選任されました。  また、昨三日、菅野壽君が委員辞任され、その補欠として瀬谷英行君が選任されました。  また、本日、齋藤勁君委員辞任され、その補欠として萱野茂君が選任されました。     —————————————
  3. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事瀬谷英行君を指名いたします。     —————————————
  5. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) アイヌ文化振興並びにアイヌ伝統等に関する知識普及及び啓発に関する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 橋本聖子

    橋本聖子君 自由民主党の橋本聖子でございます。  きょうは質問のお時間をいただきましてありがとうございます。質問に入ります前に、一言お礼をさせていただきたいと思います。  この新法制定に多大なる御尽力をいただきました北海道開発庁長官官房長官並びに関係省庁皆様地元北海道を代表いたしまして厚くお礼申し上げます。ありがとうございます。  質問に入らせていただきます。  アイヌ新法問題については、我が党といたしましてもアイヌ問題検討小委員会を設置し、諸先輩の先生方が責任を持って取り組んでこられました。また、平成六年十二月には、私の義理の兄にも当たります高橋辰夫議員座長とした与党プロジェクトチームから政府に対しまして懇談会の設置を強く働きかけ、その結果、官房長官のもとに有識者懇談会が設置され、約一年間にわたる検討の結果、昨年の四月に同懇談会より報告書が提出されました。  この有識者懇談会は、元最高裁判所判事であります伊藤先生座長に、民族学歴史学法律学等各界有識者によって構成されまして、今日におきまして望み得る最高権威を集めたものであり、この懇談会報告書は高く評価されるべきだというふうに思います。  今回、政府提案がなされた本法案はこの懇談会報告書を十分に尊重したものと思われますが、懇談会報告書趣旨はこの法案にどのように生かされておりますでしょうか、まず最初にお聞きしたいと思います。
  7. 稲垣実男

    国務大臣稲垣実男君) ウタリ対策あり方に関する有識者懇談会報告書は、法律学民族学歴史学等各界権威である方々に御議論をいただきまして、取りまとめていただいたものでございます。政府といたしましては、本法律案を取りまとめるに当たりましてこれを最大限に尊重したところでございます。  具体的には、新たな施策基本理念、新たな施策内容指定法人制度を活用した施策実施等懇談会報告書による提言について、可能な限り本法律案の中で具体化できたものと考えております。
  8. 橋本聖子

    橋本聖子君 北海道土人保護法並びに旭川市旧土人保護地処分法廃止に伴い、アイヌ文化振興並びにアイヌ伝統等に関する国民に対する知識普及及び啓発を図る上で重要なアイヌ新法制定に対しまして、重要性をより一層高めるものとして受けとめておりますが、アイヌ人々先住性への政府見解を改めてお伺いしたいと思います。
  9. 渡辺芳樹

    説明員渡辺芳樹君) お答えいたします。  有識者懇談会報告書におきまして、アイヌ人々が、中世末期以降の歴史の中で見ると、学問的に見ましても、当時のいわゆる和人との関係において北海道に先住していた旨、記述されているところでございます。  ただいま御指摘の点を含めまして、政府といたしましては、かねてよりこの有識者懇談会報告書内容を尊重する旨、述べさせていただいてきたところでございます。
  10. 橋本聖子

    橋本聖子君 アイヌ文化振興アイヌ伝統等に関する知識普及及び啓発を推進する施策といたしまして、総理基本方針を作成されるということになっております。この重要な基本方針をつくられる上で、やはり私の地元北海道意見をお聞きしていただきたいというふうに考えますが、そしてまた大変必要ではないかというふうに思います。その点につきましてお伺いしたいと思います。
  11. 渡辺芳樹

    説明員渡辺芳樹君) お答えいたします。  御指摘のとおり、この法律に基づく基本方針を定めます上では、地元北海道意見を聞くということが大変大切であると認識しております。  したがいまして、基本方針を定めます場合には、関係省庁と協議をするとともに、地元北海道意見を聞きながら十分検討の上、成案を得ていきたい、このように考えております。
  12. 橋本聖子

    橋本聖子君 ぜひよろしくお願いいたします。  次に、アイヌ文化振興等施策実施に当たりましてはアイヌ人々自発的意思を尊重することが重要でありまして、また必要であると思いますが、指定法人事業実施する場合におきましてもアイヌ方々意見または協力をいただきながら進めていくべきだと考えますが、その点についてもお伺いしたいと思います。
  13. 八木康夫

    政府委員八木康夫君) お答えいたします。  御指摘の点でございますが、私どもも本法による施策を進める上で大変重要なことであるというふうに考えております。  このため本法律案では、国及び地方公共団体アイヌ文化振興等を図るための施策実施するに当たりまして、アイヌ人々自発的意思を尊重するように配慮することとしておりまして、国の施策の中核的な部分を担う指定法人事業実施する場合も同様であると考えております。  また、指定法人アイヌ人々中心としました民間レベルの自主的な活動を支援するものでございます。指定法人事業を推進するに当たりましては、必要に応じてアイヌ方々意見を聞きまして、また協力を得ながら進めていくことになるものと考えております。
  14. 橋本聖子

    橋本聖子君 あわせましてぜひよろしくお願いいたします。  懇談会報告書でも記述されておりますように、アイヌ人々川筋等生活領域において狩猟や採集、そして漁労中心とした生業を営む中で独特の文化をはぐくんでまいりました。アイヌ文化は自然とのかかわり合いの深い文化でありまして、これは今地球全体におきましても、自然に帰る、共生という意味では、やはりアイヌ文化というものは取り戻していかなくてはいけないものだというふうに感じております。  このようなアイヌ文化を総合的に伝承振興し、また国民理解を深めていく上で、生活習慣をイメージさせるアイヌ公園等整備も大変重要ではないかなというふうに思います。北海道におきましては残念ながら、アイヌ文化はもちろんのことですけれども、多くの伝統文化を伝える空間が少ないのが現状でございます。次代を担う子供たち北海道歴史文化、また古きよきものの伝統文化伝承空間整備も含めまして前向きに考えていただきたいというふうに思いますが、この点につきましてお聞きしたいと思います。
  15. 八木康夫

    政府委員八木康夫君) お答えいたします。  御指摘のように、アイヌ文化は自然とのかかわり合いが特に深いものでございます。自然と共生するアイヌ人々の知恵を生かしました体験や交流の場あるいは工芸技術伝承場等伝統的生活空間として再生することは、アイヌ文化振興及びアイヌ伝統等に関する知識普及啓発を図る上で大きな意義を有するものと考えております。  このような伝統的生活空間の再生につきましては、ウタリ対策あり方に関する有識者懇談会報告書におきましても、「その整備及び管理に当たっては、地元の意向と取組みを重視し、尊重することが大切である。」と指摘されておりまして、当面は地元北海道におきまして基本構想等調査検討の行っていただくことになっているというふうに承知いたしております。
  16. 橋本聖子

    橋本聖子君 ありがとうございます。ぜひ前向きに御検討いただきますようによろしくお願いいたします。  最後になりますけれども稲垣長官にこれからの御決意をお聞きいたしたいと思います。
  17. 稲垣実男

    国務大臣稲垣実男君) いわゆるアイヌ新法でございますが、昭和六十三年に北海道土人保護法廃止とこれにかわる新法制定について地元北海道北海道ウタリ協会などから御要望を受けて以来、政府としても大きな課題と受けとめまして検討を重ねてきたところでございます。  御承知のとおり、平成七年三月には内閣官房長官私的懇談会としてウタリ対策あり方に関する有識者懇談会が設置されまして、各界権威先生方に幅広い角度から御議論をいただきまして、昨年四月、報告書を提出していただいたところでございます。政府といたしましては、この報告書趣旨を最大限尊重し、今般このような形で法律案として取りまとめさせていただいた次第でございます。  私といたしましては、本法律案の目的であるアイヌ人々民族としての誇りが尊重される社会実現に向けて、関係施策の推進に全力を尽くす所存でございます。皆様方の御理解と御協力を得まして、アイヌ方々の念願である本法律案の一日も早い成立が図られるように心からお願いを申し上げる次第であります。
  18. 橋本聖子

    橋本聖子君 大変ありがとうございました。これで質問を終わらせていただきます。
  19. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 速記をとめて。    〔速記中止
  20. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 速記を起こしてください。
  21. 風間昶

    風間昶君 平成会風間です。  きょうは大事なこのアイヌ文化振興等に関する法律案審議ということで質問させていただきます。  まず、民族とは何かということであります。一般民族というのはいろんな定義があるようであります。定義がたくさんあってはいけないんですが、一般民族定義というのは、言語宗教それから文化等客観的要件と、もう一つ民族意識帰属意識といった主観的要件とから説明されておりますけれども政府のおっしゃっている民族とは一体何なんですか。内閣の方から答弁いただきたいと思います。
  22. 八木康夫

    政府委員八木康夫君) お答えいたします。  民族概念でございますが、一般的には独自の文化を持っていること等の客観的な観点と、人々の間に主体的な帰属意識があるという主観的な観点両面から説明されているところでございます。
  23. 風間昶

    風間昶君 そんなことは今私が言ったことですよ。何を言っているんですか、あなたは。答弁になっていないじゃないですか。
  24. 八木康夫

    政府委員八木康夫君) 同じことでございますが、一般的に申しますと、先ほど申しましたように、客観的観点主観的観点でございますが、特に最近におきましてはこの主体的な帰属意識というものが強調されているというふうに考えております。
  25. 風間昶

    風間昶君 それは定義じゃなくて概念説明ですよ。民族って一体何なんですかと伺っているんです。
  26. 八木康夫

    政府委員八木康夫君) 一般的な民族定義ということでございますが、ウタリ対策あり方に関する有識者懇談会におきましてこの点は触れられております。それによりますと、先ほど風間先生がおっしゃったことと同じような定義ということになりますが、「一般に、民族定義言語宗教文化等客観的基準と、民族意識帰属意識といった主観的基準両面から説明されるが、近年においては特に帰属意識が強調されてきており、その外延、境界を確定的かつ一律に定めることは困難である」というようなことでございます。
  27. 風間昶

    風間昶君 内閣内政審議室長内閣としてはどういうふうにとらえているんですか、民族とは。
  28. 田波耕治

    政府委員田波耕治君) 八木計画監理官から申し上げましたけれども、やはり報告書の中でも民族認識という点について触れてありますように、やはり独自の言語文化を持ち、さらには民族という帰属意識が流れていることということが一つの大きな要素であるというふうに考えております。
  29. 風間昶

    風間昶君 何とだらしないことか。大事なアイヌ法案審議に当たってそういう程度ですか。では、報告書概念政府は認めるんですか。
  30. 八木康夫

    政府委員八木康夫君) 我々としましても、権威ある報告書定義された民族定義、これが政府としての見解ということで御承知をいただきたいと思います。
  31. 風間昶

    風間昶君 極めてあいまいな概念の中で、実際にこの法案の中に「アイヌ人々民族としての誇り」というふうに二カ所使っているわけです。あいまいな概念でこの法律案の中に盛り込んでいるということは僕は問題だと思うんですよ。開発庁長官、ぜひお願いします。
  32. 稲垣実男

    国務大臣稲垣実男君) ただいま私どもは、アイヌ人々民族としての誇りを持てる社会、いわゆる尊重される社会を形成しようということであります。  アイヌということで申し上げますと、アイヌは日本語とは異なる言語系統アイヌ語を持っておる、また独自の風俗、習慣を初めとする固有のといいますか、そういった文化を有しておるのでございまして、人々の間にアイヌ民族としての帰属意識といいますか、我々はアイヌ民族だというような帰属意識が流れていることから、いわゆる独自の民族であると私ども考えておる次第であります。そういう観点に立っておるというふうに御理解いただきたいと思います。
  33. 風間昶

    風間昶君 今の開発庁長官のお言葉は、とにかく言葉も違う、しかも農耕文化ではなくて狩猟文化だ、文化も違うと。したがって、定義のことについてはおっしゃいませんでしたけれども、明らかに違うという観点から、独立した民族というふうにおっしゃったというふうに私は理解させてもらいます。  そこで、ではアイヌ民族というのは日本民族とどんな関係にあるのだろうかなと。発生学的にというか遺伝子的に同族なのかあるいは違うのか、これは私もまだ証明していませんけれども、感想で結構ですから答弁いただきたいと思います。
  34. 八木康夫

    政府委員八木康夫君) 遺伝子学的に、発生学的にということはこの場でちょっとお答えできませんが、アイヌ人々につきましても当然でございますが日本国民ということで、アイヌ以外の人々と全く同一の地位を有しているというふうに認識しているところでございます。
  35. 風間昶

    風間昶君 なるほど。日本国民には古来の日本民族、それから今お認めいただいたアイヌ民族、さらには帰化された諸民族がいらっしゃいますね。  先月末の北海道二風谷ダム訴訟の判決の中で、裁判長が「自然との共生という精神的文化を基礎に、地域と密着した先住少数民族であるアイヌ民族民族的・文化的・歴史的・宗教的諸価値を後世に残していく」というふうに述べていらっしゃるわけですけれども、そうすると、政府としては少数民族としてのアイヌ民族をどのように位置づけていらっしゃるのか、お伺いしたいんです。
  36. 八木康夫

    政府委員八木康夫君) お答えします。  有識者懇談会報告書にございますように、アイヌ人々は独自の言語文化を持っておりますし、また民族としての帰属意識が流れているということで、独自の民族であるというふうに考えております。
  37. 風間昶

    風間昶君 御自身考えをおっしゃってください。有識者懇談会の資料は私も読んでいます。
  38. 八木康夫

    政府委員八木康夫君) 有識者懇談会と同じように、政府といたしましても、アイヌ人々は独自の民族であるというふうに考えております。
  39. 風間昶

    風間昶君 そうしますと、国民国家における少数民族と今度は認めたのなら、少数民族対策としての位置づけはこの法案の中に盛り込まれているんですか。
  40. 八木康夫

    政府委員八木康夫君) お答えいたします。  アイヌ伝統あるいは文化でございますが、それがアイヌ人々民族としての誇りの源泉であるわけでございますが、しかし現在それが存立の危機にあるということで、国民にも十分に理解されていない状況にございます。  本法案でございますが、このような現状を踏まえまして、アイヌ文化振興並びにアイヌ伝統等に関する国民に対します知識普及啓発を図るための施策を推進することによりまして、アイヌ人々民族としての誇りが尊重される社会実現を図るとともに、我が国の多様な文化の発展に寄与しようというものでございます。
  41. 風間昶

    風間昶君 歴史的に北海道開拓を進める中で、狩猟から土地を与えて農業へという同化政策から、それじゃまずいんだということで、医療だとか生活扶助だとか教育を含めた保護政策北海道土人法制定されて今日まで続いてきているわけです。  その間、アイヌ民族にどのような苦難、苦痛を与えたのか全く総括がないままで、ただ法律の中で廃止するというふうにするんだったら、これは納得しないですよ。その辺はどうですか、総括は。
  42. 八木康夫

    政府委員八木康夫君) お答えいたします。  有識者懇談会報告書の中では、一つは、明治以降、北海道開拓を進める中で、いわゆる同化政策が進められまして、伝統的生活を支えてきた狩猟漁労が制限、禁止される等、アイヌ人々社会文化が受けた打撃は決定的なものとなり、法的にはひとしく日本国民でありながらも差別され、貧窮を余儀なくされたアイヌ人々は多数に上ったという指摘がございます。  また、そういう認識のもとに、当時の政府北海道土人保護法の施行などさまざまな対策を講じてまいりましたが、その後の展開を見ますと、いずれの施策アイヌ人々の窮状を改善するために十分な機能を果たしたとは言えなかったというふうに述べられておりまして、政府といたしましてもこうした指摘を重く受けとめているところでございます。  アイヌ人々のかかります今後の施策あり方につきましては、以上のような認識を踏まえまして、この報告書において提言され、また本法案にも掲げられておるとおりに、アイヌ人々民族としての誇りが尊重される社会実現に向けた新たな政策を展開していくことが必要ではないかというふうに考えているところでございます。
  43. 風間昶

    風間昶君 くだくだ説明しないで、きちっと総括として、概況説明じゃなくて総括していただきたいと思います。  さて、法案の第五条に、「内閣総理大臣は、アイヌ文化振興等を図るための施策に関する基本方針を定めなければならない。」というふうにきちっと書かれております。  先ほど開発庁長官アイヌ民族は独立した民族だというふうにおっしゃったわけですから、この基本方針の中に当然アイヌ民族我が国に居住する少数民族であるという明確な文言を入れるべきだと思うんですけれども、入るのか入らないのか。開発庁長官の判断で決められないというなら、総理大臣に聞いてでも答弁をいただきたいと思います。
  44. 田波耕治

    政府委員田波耕治君) 委員指摘のように、基本方針におきまして、法律に基づきまして文化振興等に関する基本的な事項文化振興を図るための施策に関する事項、あるいは伝統等に関する国民に対する知識普及等を定めるというのが基本方針の性格というふうに位置づけられておるところでございます。  この具体的な内容につきましては、今後、関係各省あるいは北海道あるいはそのほかの方々のいろいろな御意見を伺いながら、法案成立後、成案を得たいというふうに思っております。  先生の御質問は、結局その中に民族という言葉が入るのか入らないのかはっきりせよということだと思いますけれども、そういう意味で、基本方針はこれから法律成立してからのことでございますので、各関係意見を聞きながらやってまいりたいと思いますけれども民族という普遍的なもの自体を基本方針の中にどういう形で入れるかという点については大変難しい問題が含まれているのではないかと現段階では考えておるところでございます。
  45. 風間昶

    風間昶君 最後の大変難しいということが結論だから、前のくだくだした説明は要らないんです。時間が少ないんだから頼みます。  いずれにしても、今まで政府少数民族に対する位置づけも十分な施策もないままに今回こういう形で法案をつくるということについては非常に私は問題があるというふうに思います。  今まで議論を十分なされてこられたんだと思うんだけれども、先ほども開発庁監理官説明するのは、幾ら同じだとは言っても、有識者懇談会説明を言っているにすぎない。行政の能力としての開発庁あり方が問われる問題ですから、ぜひ御自身のお考えを述べていただきたいと思います。  それでは次に、中曽根元総理が六十一年十一月四日、衆議院予算委員会で、少数民族はいない、我が国単一民族国家であるとの発言をして物議を醸したことは御承知のとおりだと思います。  日本人特有民族意識というか、これを今回のアイヌ民族の問題を通して変える必要があると思うんです。すなわち日本人単一民族国家観を改めて、少数民族を認める。民族問題はとにかく国政の基本中の基本なんです。それを今までなおざりにしてきたことが問題なんです。  我が国民族観についての内閣統一見解があってしかるべきだと私は思うんですけれども、これも法律案が通ってからやりますではおかしい話ですから、そういうことを議論した上でこの法律案を出してきたんだと思うんですけれども、いかがですか。
  46. 田波耕治

    政府委員田波耕治君) 当然、一般的な認識としては委員おっしゃるとおりだろうと思います。現にこの法律案の前提といたしまして、現在、我が国固有の少数民族としてアイヌ方々がおられるという認識政府として持っておるところでございます。
  47. 風間昶

    風間昶君 そこで、次の第六条ですが、総理基本方針を定めて、北海道が今度、関係相当する都道府県ですから北海道ですね、北海道基本計画を開発庁と文部省に報告をすることになっております。  文部省はこの報告を受けてどのような具体的施策を行うのか、簡単に御答弁いただきたいと思います。
  48. 小野元之

    政府委員(小野元之君) もちろん北海道において計画をお定めになってからのことでございますけれども、私ども文化庁といたしましては、従来から教育委員会が行っておりますアイヌの民俗文化財の伝承等のための事業への必要な援助等を行ってきているところでございます。  この法律をお認めいただきますと、新たに指定法人とお認めいただくことになるわけでございますけれども、私どもの立場としては、アイヌ語アイヌ伝統文化、こういったものの振興を図るために、例えばアイヌ語の指導者の育成、アイヌ語講座の開設等の援助を行ってまいりたい、あるいはアイヌの工芸品、あるいは芸能鑑賞会など、さまざまな形でのアイヌ伝統文化を支援するための施策を講じてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  49. 風間昶

    風間昶君 確かに今おっしゃった教育者や学者を含めた指導者の育成というのは大事ですけれども、もっと大事なのは、学校教育の中で子供たちに正しい知識を与えていくことの方が大事なんですよ。すなわち、内なる国際化と言うと大げさですけれども、そういう教育を私はやるべきだと思うんです。文部省としてはどう考えていますか。
  50. 小野元之

    政府委員(小野元之君) 学校教育の中でアイヌ方々についての認識を深めていく、あるいはアイヌ語等についての学習を取り入れるということについては、そのような強い要望があることも私ども承知をいたしております。  ただ、学校教育の中でどういうことをやるかということについては学校の設置者あるいは各学校の判断で行うことでございますけれども、私ども文化庁といたしましては、この法律をお認めいただきました場合に、アイヌ語の学習等についての副読本をつくるとかあるいはアイヌ文化等についての普及啓発資料等の作成を行いまして、側面から各学校でいろいろ取り組んでいただけるように支援をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  51. 風間昶

    風間昶君 今、文部省に伺ったけれども、また五条に戻りますが、要するに単に地域振興だとか地域文化にとどまらない問題なんですよ。つまり、総理大臣基本方針をつくるならば総理府に報告するのが筋なので、一般的な行政措置法と違うわけですから、総理が直接指揮をとってもおかしくない話だと私は思うんです。民族問題なんだから、開発庁だとか文部省だけの範疇では全然ないわけなんです。  総理大臣に直接報告する体制が六条に全然盛り込まれていない、このことについて内閣の御意見を伺いたいと思います。
  52. 田波耕治

    政府委員田波耕治君) 委員指摘のように、基本方針総理大臣が策定することになっております。すなわち、その趣旨というのは内閣総理大臣が総合調整の立場から策定をする、そういう考え方になっておりますけれども基本計画そのものはこの基本方針に即した具体的な施策の推進方策について定めるものでございますので、むしろそれぞれの施策に近い非常に密着した業務をしておりますところの北海道開発庁長官及び文部大臣に提出を求めるというふうに規定をしているのがこの考え方でございます。
  53. 風間昶

    風間昶君 そうすると、直接的ではないものの、間接的に開発庁長官あるいは文部大臣から総理には届くという体制はできているというふうに理解していいですか。
  54. 田波耕治

    政府委員田波耕治君) そこは基本方針そのものが総理大臣が総合調整の立場から策定するということでございますから、当然のことながら内閣一体としてそういう体制で臨んでいるというふうに御理解をいただいて結構でございます。
  55. 風間昶

    風間昶君 次に、七条で「指定等」、なぜ指定法人をつくらなければならないのか甚だ疑問でありまして、公益法人をつくるということは公共事業の二分の一折半でつくると同じ考え方に立っているとしか考えられないわけで、特殊法人だとか公益法人に対する批判が強い中で、天下り先の確保かななんて疑われても仕方がない。それなりの説得力ある説明国民は求めているし、それがなければ納得しないと思うんです。公益法人を設立する趣旨は一体何なのかというのが一点。  それから、何回も出てきていますように、有識者懇談会の中で、アイヌ文化振興・研究推進機構をつくるべきだという意見報告書の中にありますけれども指定法人というのはこれができるということなのかが二点目。本当に少数民族施策をやるつもりならば、私はやっぱり政府が直接実施、関与すべきだと思うんです、民族問題というのはそんな単純なものじゃないわけですから。いかがでしょうか、この二点について。
  56. 八木康夫

    政府委員八木康夫君) お答えします。  本法におきまして、国はアイヌ文化振興等を図るための施策を推進する立場でございます。しかしながら、その施策の推進に当たっては、民間レベルの自主的な活動を尊重しまして、これを適切に支援していく必要があると考えております。  このような観点から、国みずからが事業主体となって個々の事業実施するよりも、民間法人を指定し、当該法人を通じて事業実施する方がより適切であるというふうに判断した次第でございます。  そして、先ほどの研究推進機構はこの民間法人に該当いたします。
  57. 風間昶

    風間昶君 もう余り時間がないですから、予定の項目をちょっと飛ばして、萱野議員も原告の一人となって進めてきました北海道二風谷ダム訴訟の札幌地裁判決、三月の末に出たわけですけれども、その中で、建設省とは書いてないけれども、建設省だと思うんですが、建設省による事業認定そのものが違法であって、それに引き続く北海道土地収用委員会裁決も違法である、すなわち収用委員会がアイヌ民族宗教文化についてもっと慎重に考慮をすべきであったと指摘しています。  今後、北海道の開発事業の中で、事業による土地利用に当たってアイヌ民族の重要な聖地に入り込んで、その聖地を破壊するおそれがある場合も考えられる。そうすると、少なくともアイヌの代表を事前協議に参加させるべきだ、そのことを義務づける必要が私はあると思うんですが、いかがですか、長官。これは政治的判断が要ることないですから。
  58. 八木康夫

    政府委員八木康夫君) お答えします。  今回の判決でございますが、御指摘のように国の主張について十分な理解を得られなかったというふうに思っております。  二風谷ダムの事業を進めるに際しましては、地元方々意見も伺いながら、アイヌの遺跡の保存等アイヌ文化の保全や伝承に十分配慮して事業が進められてきたところでございますが、今後、開発事業実施に当たりましては、アイヌ文化振興観点も含めまして、地域の意見に十分配慮して臨みたいというふうに考えております。
  59. 稲垣実男

    国務大臣稲垣実男君) 今、委員の御指摘のとおり、これから公共事業等を推進するに当たりましては、やはりそこに何があるかということを十分見きわめて推進すべきであって、そのためには、今回このように法律もできることでありますので、この法律に盛り込まれておる趣旨を十分尊重して、文化伝統を守る、あるいは遺跡や環境等を十分尊重して取りかかるために委員指摘のような手法をもってしなきゃならぬ、かように感じている次第であります。
  60. 風間昶

    風間昶君 また内閣にお伺いしたいんですけれども、こだわるんですが、要するに国民国家におけるこの少数民族施策というのは国際的な関心事であるわけです、それはもう御案内のとおりだと思いますけれども。特に北海道は北方領土問題を抱えておりますから、これが返還された場合には、白系ロシアの民族に対する施策もまた講ずる必要も出てくるわけであります。  二十一世紀は人権の世紀、こう言われる中で、やっぱり政府少数民族施策についての基本方針をきちっとつくるべきだと思うんです、いつも泡食ってしりに火がついてからのこのこやり出すのではなくて。仮定の仮定ですから非常にあれですけれども、やっぱり日本が少数民族のことについて考えてこなかったツケが今ここに来ているんだと私は思うんです。考えていないということではないと私は理解しますけれども、もし考えていないというんだったら、もう本当に北方領土返還に真剣に取り組んでいるのかと私は言いたくなるわけであります。領土返還後のシナリオも含めて私は考えるべきだと思うんですが、最後政府少数民族施策基本方針について伺いたいと思います。
  61. 田波耕治

    政府委員田波耕治君) 大変大きな問題だという認識ではございます。  ただ、委員がいみじくもおっしゃいましたように、やはりこの問題は仮定の仮定の問題でございまして、北方領土返還そのものがどうなるのか、あるいは返還された後にどのような方々我が国の住民になるのかということについて、政府のみならず全体として特定をするということは現段階では非常に難しいんだろうと思います。  さはさりながら、今回の新法に見られるところそのものでございますけれども政府としても、我が国固有の少数民族として、具体的に言えば、今回であればアイヌ方々がおられるという認識を持っておりまして、アイヌ方々民族としての誇りが尊重される社会実現できるように施策をやっていきたい、あわせてこの法案についてもぜひよろしくお願いをしたいということでございます。
  62. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 社民党の瀬谷であります。  私の北海道についての知識は、振り返ってみますと、私の両親が明治の生まれであります、今日もう亡くなっておりますけれども。父親がその兄弟と一緒に若いときに北海道に渡っているわけです。そして、父親だけが兄弟と別れて東京へ来て暮らしを立てるということになりました。  北海道に関する知識といいますと、中学生のころ不思議に思ったのは、我々は東京に住んでいて内地とか外地とかという言葉は余り使いませんが、北海道の親戚、いとこなどと話をする中で内地という言葉が非常に多く出てくるんです。内地とは何だろうと思いましたら、結局、内地と外地というふうに分かれてしまいますから、これは外地に対する内地か、北海道は一体どういうことなんだろう、こんなようなちょっと奇異の感を持ったんです。  それから、今日、北海道土人保護法とか旭川市旧土人保護地処分法とかいうものを廃止するという言葉が今回も出てまいりましたけれども土人保護法などという時代がかった名称が今日まで残っていたということ自体が私は大変不思議に思うんです。よもや今日そんな言葉法律用語として残っているはずはないと思っておりましたが、今日に至って土人保護法あるいは旭川の土人保護地処分法というものを廃止するというのが改めて出てくるということは驚きなんですね。  北海道開発庁というのは開発のためにいろんな仕事をしてきたのだろうと思うんですけれども考え方の方は余り開発されていないんじゃないか、こういう言葉が残っているということは、と思うんですよ。だから、なぜ今までこういう土人保護法などという言葉が残されてきて、そのままに放置されていたのかということを私は反省をする必要もあると思うし、その点について、官房長官もお見えになりましたから、官房長官見解なりあるいは開発庁長官見解なりをお伺いしたいと思います。
  63. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 私も相当に年はとっている方でございますが、瀬谷先生の方がはるかに古いことをお知りでございますから、私よりは若干前の代のことをよくお知りだと思います。残念ながら、私は瀬谷先生のように北海道にそう深いなじみがあったわけではありません。ですから、そういう感覚で物を見ることがどちらかというと瀬谷先生よりは少ないかもしれません。  昨年四月にウタリ対策あり方に関する有識者懇談会からの報告書をちょうだいいたしまして、数遍読ませていただきました。その中で、アイヌのいろんな過去の姿あるいは今の姿、それから将来に向かって何を残さなきゃならないか、そういうものを感じ取ったわけであります。そういう報告を受けて、この一年それぞれ関係省庁の間で話を詰めていただきました。いわゆる北海道開発庁開発庁という言葉は差別用語ではないんでしょうけれども、何かちょっとおくれたものを取り戻すという思いもあるのかもしれません。しかし、後なる者は先へという聖書の言葉にもありますから、後であった者が先へ進めるのではないか、そういう思いをしながら主務官庁として北海道開発庁に本法案を提出する役割を担っていただいたわけであります。  ですから、この法律成立させていただいて、今までの思いと装いを新たというか思いを新たにして、アイヌ文化振興等施策実施を通じて、いわゆる差別ではない、本当の意味でのアイヌ民族としての誇り、こういうものが尊重されるようなものに向けて努力が払われ、それが国民の間に定着をし、そういうものに誇りが持てるような施策の前進をこいねがうのみであります。
  64. 稲垣実男

    国務大臣稲垣実男君) 今、委員から御指摘のありましたとおりでございますが、従来、確かに開発庁ということになりますと開発施策中心でございました。以前は計画官のみでありましたが、この法案に対応するということでウタリ対策推進室として十二名の要員を新たにつくった次第でございます。  そういうことで、今回の法律につきましては、先ほど来御指摘がありますとおり、内閣官房長官私的懇談会としてウタリ対策あり方に関する有識者懇談会が設置されまして、いろいろな権威先生方から幅広い角度で御議論をいただき報告書を提出していただいたわけでございまして、この報告書趣旨を最大限尊重して今般このような法律案として取りまとめたわけでございます。  私といたしましては、法律案の目的でありますアイヌ人々民族としての誇りが尊重される社会実現に向けて関係施策の推進に全力を尽くす所存でございます。どうぞ一日も早く法律制定されまして、目的達成に向かって全力投球をいたしたい、こう思う次第であります。
  65. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 率直に言うと、今回こういったような新法が改めて俎上に上るということは遅きに過ぎたんじゃないかなという気もいたします。  私が北海道についての知識を得たのは、父親の兄弟とかそういう親戚の人との対話の中でいろんなことを聞いたわけです。  それで、今でも頭に残っているのは、中学時代、札幌のラーメンはおいしいよと言われたんです。ところが、東京に住んでおりまして、私はラーメンなるものがわからない。どんな食い物だろうと思ったんです。それで、両親に聞いてみました、ラーメンというのは何だと。そうしたら、知らないと言うんですね。東京ではそれにかわるべき言葉として、適当かどうかはわからないけれども、支那そばという言葉があったんです。じゃ一度その支那そばを食ってみたいと。食べてみたら、やけに鼻についちゃって余りうまくない。これが北海道じゃうまいのかなと、妙な疑問を持ったんですね。  それからもう一つ、親戚の者との対話の中でいささか異様な感じを持ったのは内地という言葉なんです。今はどうかわかりませんけれども北海道の人が本州のことを内地と言ったんですね。我々の認識だと、内地というのは外地と内地という区別ですから、北海道はどういうことなのかなと、こんな疑問を持ちました。  それから、教育の面について申し上げると、どうも小学校から中学に至る間において北海道についての知識というものは学校教育の中から余り受けられなかったような気がするんですね。北海道に対する認識がわからなかった。  そこで、距離的に観測をすると、上野発の夜行列車に乗って、当時は北海道へたどり着くのは翌日の夕方である。せいぜい札幌がいいところで、釧路から網走、稚内ともなりますと、そのまた翌朝になつちゃう。あさってでなきゃ着けないところであると。はるばる来たぜという歌の文句がぴったりするような遠いところだなという印象を持ったんですよ。そういうような距離感というものが、えらい遠いところだということであったと同時に、それだけ北海道に対する認識も学校教育の面では不十分だったんじゃないか、こういう危惧の念があるんですね。  だから、意識の開発ということが今日の教育の面でしっかり行われているのかどうか。それが行われていないと、せっかく新法ができても文字だけになって終わってしまったのではいけない。だから、そういう意識の開発ということを開発庁というのは本気になってやらなきゃいけないんじゃないか。今日までおくれてきた、また明治以前のちょんまげ時代にアイヌの人たちがどういう思いをしてどういう暮らしをしてきたかというようなことについても、我々はそういう教育を受けた記憶がございません。それはやはり大事なことじゃないかと思うんですね。  差別とかあるいはそういういろんな面での苦しみというものがあったんじゃないかということも今になってみれば想定をされますけれども、そのような事実というものは正確にわかっておりませんので、やはりそういうことがあったならば、過去においてはこういうことがあった、しかし今は違うといったようなことが教育の面で具体的に出てこなきゃいけないと思うんですね。その点、どうでしょうか。
  66. 稲垣実男

    国務大臣稲垣実男君) 先生の御指摘等は私どもも十分理解している次第でございますが、北海道が進めておりますウタリ対策を円滑に推進していくために、国におきましても北海道ウタリ対策関係省庁連絡会議を設置いたしまして、関係行政機関の緊密な連携を図り続けながらアイヌ人々の生活水準の向上に今日まで努めてきたところでございます。  これまで教育の振興、生活環境の整備、産業の振興あるいは就労の安定化等の諸施策を総合的に実施してまいったところでございまして、例えば昭和六十一年度から平成五年度の比較で見てまいりますと、生活保護率が六・〇九%から三・八八%に減少しております。また、高校への進学率が七八・四%から八七・四%に上昇するなど、アイヌ人々の経済状況や生活環境、教育等の状況も着実に向上してきておるところでございまして、私どもといたしましては引き続きその推進に努力していきたいと考えております。
  67. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 この報告書も非常に多岐にわたっております。せっかくまとめられたものであり、官房長官がこの問題についていろいろと御努力になったということはわかっております。  さて、じゃこのアイヌ研究推進のためにセンターやらあるいは基金やらというものが果たしてどんな形でもって使われるのか。北海道開発というよりも、アイヌ問題についての政府施策というものがどういう形で行われているのかということが報告だけではまだはっきりわかりませんので、その点についてもお伺いしたいと思います。具体的にどういう形で行われているのかということです。
  68. 八木康夫

    政府委員八木康夫君) ただいま稲垣長官から回答いたしましたように、これは特にウタリの人を対象としましては昭和四十九年から進めておりまして、これまで四次にわたる計画をもって進めてきております。  その内容でございますが、文部省関係ではウタリの進学率を上げるための奨励費の補助、あるいはアイヌ関係文化の保存といいますか、そういったこともやってきておりますし、それから厚生省所管では冠婚葬祭などで使われる生活館の運営費の補助、あるいは農林水産省関係ではウタリ地区の農林漁業の対策事業、あるいは通産省関係ではウタリの中小企業の振興、それから労働省関係では特に就職の促進、それから建設省関係では住宅の建設に低利の融資をしていると、このような具体的な施策を四十九年以来これまでやってきておりまして、先ほど長官から申しましたような成果も上がっているというふうに考えております。
  69. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 国連で先住民族定義等についていろいろと取りざたされているということも聞いておりますけれども、事をアイヌに限定いたしますと、我々から見れば先に住んでいる人が先住民族なんですね、難しいことを言わなくたって。だから、そういう問題の定義を工夫する必要も、考える必要もないと思うんです。明らかにアイヌ北海道の人にとっては先輩なんですね。その文化とか伝統とかいうのは大事に尊重されなければならないだろうという気がいたします。  その点についてこの新法が具体的な役割を果たし得るのかどうか。果たし得なければならないと思うのでありますけれども、その点は私ども門外漢にはよくわかりません。これは萱野先生等の御意見を聞かせていただきたいというふうに思っているのでありますが、お役所としての開発庁では、今日までこういうことが行われました、これからもこうしますというようなことが自信を持って言えるのか。それから、アイヌ問題について改めて政府としての考え方というものを、官房長官がせっかくお見えになっておりますから、今後の対策についてどういうふうに今考えておるのか、それらの点についてもぜひお聞かせをいただきたいと思います。
  70. 八木康夫

    政府委員八木康夫君) お答えいたします。  今回この法律を提出した趣旨でございますが、アイヌの人たちの心の源泉となっておりますアイヌ文化なり伝統が存立の危機にあると。例えば伝承者が減少しておりますし、さらに国民理解が十分でないということを踏まえまして、このアイヌ文化なり伝統振興国民への普及啓発施策を通じまして、アイヌ人々民族としての誇りが尊重される社会実現しようということでございます。  そして、具体的にどういうことをやるかという御指摘でございますが、この推進機構、国で指定しました民法法人がその具体的な業務を行うわけでございます。具体的にはアイヌに関する総合的かつ実践的な研究を推進しようということが一点でございますし、さらにアイヌ語を含むアイヌ文化振興をこれから進めていこうということでございます。さらには、アイヌの人たちの文化なり伝統についてこれから国民への普及あるいは啓発を進めていこうというふうに考えております。
  71. 田波耕治

    政府委員田波耕治君) 今後のアイヌ施策をどういうふうに進めていくかということでございますが、委員指摘のように、この問題は非常に長い経緯を持っております。その長い経緯の結果、先ほど来申し上げておりますけれども、昨年の四月にウタリ対策あり方に関する有識者懇談会から報告書の提出を受けました。  その内容を極力この法案に盛り込んでおるわけでございますので、何よりもこの法案に基づいたいろいろな施策を具体的に積極的に進めることによりまして、アイヌ人々民族としての誇りが尊重される社会実現に向けまして着実に前進していくよう政府としても努力をしたいというふうに考えております。
  72. 萱野茂

    萱野茂君 私が国会へ来るときに、かつての社会党が弱い者の声を国会へということで私を連れてきてくれました。そして、名前が変わって社民党、そして今、私は民主党に所属しているわけでありますけれども、まずそのことに、かつての社会党の先生方に心から感謝を申し上げたい、そんなふうに考えているわけであります。  最初に、アイヌ語アイヌという言葉について皆さんに知っておいてほしいなと思います。  アイヌ社会では、アイヌという言葉は本当に行いのいいアイヌにだけアイヌと言います。丈夫な体を持ちながら働きもしないで生活に困るようなアイヌには、アイヌと言わずにウェンペ、悪いやつというふうに言ったわけであります。それが、いつの間にやらアイヌという言葉が悪口にすりかえられました。そして、アイヌ自身も自分をアイヌと言うことを恥ずかしいと思いました。そして、あたりからもアイヌという言葉を使うことにためらいを感じる、そういうことがありました。が、私が国会へ出してもらっていろんなことで事あるごとにアイヌという言葉を皆さんに知ってもらうようになってから、アイヌたちも元気が出てきて、このごろはおれはアイヌだと言うアイヌがふえてきたことをとてもうれしく思っているものであります。  次に、北海道の昔の言い方はどういう言い方をしていたかというと、アイヌモシリと言いました。アイヌというのは人間、モというのは静か、シリというのは大地、つまりアイヌの静かな大地というふうに誓えて、そこで平和に暮らしていたわけであります。山でも川でも岬でも、どんな小さいくぼ地や台地に至るまで、全部がアイヌ語でつけられていたわけであります。  そのアイヌ語の地名の数でありますが、今から百四十年昔に三重県三雲町出身の松浦武四郎という方が北海道へ行ってアイヌから聞き書きをした地名、それを北見地方の丸瀬布町の秋葉實さんという方が精査したところ、八千カ所ありました。それで、私は自分の生まれて育った二風谷へ持ってきてみると、武四郎が書き残した数は十四カ所しかありません。大正十五年生まれの私が二風谷の地名を調査してみると七十二カ所ありました。ということは、武四郎が書き残した地名の四倍から五倍くらいあったんではないでしょうか。となれば、北海道アイヌ語の地名は四万カ所前後あったものと推定できるわけであります。  皆さん北海道へ行くと、ペツとナイ、登別、幌別、芦別、然別、そして稚内、院内、何々内というふうに、ペツとナイが六百カ所あります。ペツとは川という意味、ナイは沢という意味であります。東北六県に二百八十カ所あります。そういうわけで、地名から見ると東北六県と北海道にはアイヌ語を地名に刻印するぐらい長い間アイヌがいたことのあかしであろうと思っております。  次に、私が生まれて育った沙流川のことを申し上げます。  沙流川という川は総延長百二キロあります。春四月から五月、アカハラという大型の魚が来ます。それをとって食べる。そして六月、七月、八月、アイヌ語ではサキペ、夏の食べ物というマスをとって食べます。そして九月、十月、十一月、十二月まではアイヌ語でシエペ、主食というサケをとって食べるわけであります。そういうことで、サケが遡上するとまりまでがアイヌの村であったわけであります。それほどサケとアイヌ関係は大事なものであったわけであります。  平成七年十二月二十六日の北海道新聞に、一秋にとれたサケの数五千二百四十五万六千二百三十六匹。そのうちにアイヌがとれた数、これは本当に驚くほど少ないのであります。私がこれを言い続けたのでこのごろ少しふえたようであります。数年前までは登別アイヌが五匹でした。左手の指の数だけであります。そして、札幌アイヌが二十匹でした。それだけがようやくとらせてもらった数、驚くような少ない数であります。せめてアイヌ民族にかつての主食ぐらい自由にとらせて、お祭りあるいは必要な分はとらせる法律はできないものだろうか、私はそんなことを考えているわけであります。  今までパスポートを必要とする旅を二十二回私はしました。行く先々で先住民族と称せられる人に会いましたが、侵略した人とされた人との間にみんな条約があります。アイヌ民族にはそれがありませんでした。そして、主食を奪われた民族に会ったことはありません。シカを主食、あるいは鯨を主食、サケを主食、そういう人たちはみんなその主食だけは保障されていたのであります。  ところが、昭和五、六年のことです。私の父親がサケを密漁したといって、目の前で逮捕されて連れていかれました。父親が夜こっそりとってきて、子供たちに食べさせるとき何と言うかというと、もし知らない人が来て、おまえ、ゆうべ魚食ったか、お父さん魚とってきたか、そういうことを聞いても絶対言ってはいけませんよと口どめされながら魚を食べさせられたわけであります。それを考えると、本当に少年時代から、このサケとアイヌとのかかわりというのは小さいものではなかったというふうに考えております。  次に、明治政府によってアイヌ語が禁じられてしまいました。アイヌ語をしゃべる子供は利口な子供ではない、日本語をしゃべる子供こそ利口だぞというふうに言われて、なるべくアイヌ語をしゃべらないようにされてきたわけであります。私の場合、幸いおばあさんと育ったのでアイヌ語をすっかり知っているわけであります。  それで、昭和二十七、八年ごろにちょっと戻りますが、村内で神主もできる、坊さんもできる、そういうアイヌが本当に少なくなったとき、こういうことがありました。私の父を含めて三人の仲よしのアイヌがお酒を飲んで上機嫌になるとこう言うんです。おれたち三人のうち先に死ねた者が最も幸せだ、後に残った二人の者がアイヌ風の墓標をつくり、アイヌ風のお葬式の道具をつくってお葬式をしてもらえるんだと。先に死にたいというのは、単に自分たちの言葉で自分たちのお葬式の仕方で引導渡しをしてもらいたいばかりに先に死にたいものだと思うわけであります。その意味は、残った二人にアイヌ風の引導渡しから葬式のすべてをしてもらいたいばかりに先に死ぬことを願い、先に死んでいく者をうらやみ、長生きをする自分をはかなむということを私は目の当たりに見てきたわけであります。  人類にとって、民族にとって言葉こそは民族のあかし、そのように私は考えて、何とかアイヌ語を博物館入りさせるのではなくて、本当に生きた言葉として次の世代へというふうに考えているわけであります。  日本人が移住してからは、サケもとるな、木も切るな、シカもとるな、そんなことで生活する権利のすべてを私たちの先祖は私を含めて奪われたわけであります。  ここで、シカの話にちょっと触れておきますけれども、千歳と苫小牧の間に美々というところがあります。そこに苫小牧市に指定された史跡があります。そこでは、明治十二年にこの場所に官営のシカ肉缶詰工場をつくって、一年に六万五千頭のシカをとって、皮は加工し、肉は肉で缶詰にして海外へ輸出したという記録があるわけであります。それほどいるシカにもかかわらず、またたくさんいるサケをもアイヌはとってはならぬと言われてきたわけであります。  私が講演のたびごとにしゃべったことは、後から来た人でも頭数が多ければそれが民主主義かと。私は、先住民族アイヌにとっては民主主義というものは数の暴力にしか見えない、そのように考えてきました。しかし、きょうからその言い方を考えたいと思います。  日本の国会、衆参合わせて七百五十人、その中でたった一人のアイヌの議員。北海道の五万人、多く数えても五万人のアイヌの願いを聞いてくださって、きょうアイヌ民族に関する新しい法律制定されるということは、日本の民主主義は生きている、私は心からその点感謝したいと思っているものであります。私の話をお聞きくださっておられる先生方、そして国民の皆さん、皆さんが悪いのではなく、皆さんの先祖が犯した過ちを是正するもしないも皆さんの手にゆだねられているんだということをぜひ御認識願いたい、そのように考えているわけであります。  というわけで、数百年前、和人の人たちと蝦夷地で遭遇した私たちアイヌ民族の祖先はそのころまだ狩猟漁労をなりわいとして生活し、そしてまだ文字を持っておりませんでした。これまで申し上げたように、やがて和人は多数者となり、文字を持たないアイヌに過酷な条件を押しつけてきました。支配とべつ視を持ち込まれ、アイヌの生活は悲惨をきわめ、人間として耐えがたい屈辱に満ちたものでありました。それが、今こうして九十九年前に制定された北海道土人保護法がようやく廃止され、そして新たな立法措置がなされようとしているわけであります。アイヌと和人の歴史的和解として数百年の歴史を超えた第一歩となるのかと考えるとき、言葉には言い尽くせぬ感慨深いものがあるわけであります。  とはいえ、今私の心のすべてが満たされているわけではありません。私の多くの同胞、ウタリにとっても同じ思いであると思います。もちろん、私も歴史のすべてが一夜にして書きかえられるものではないということも十分承知しておりますが、しかし例えば先住性について、過日、橋本総理も記者団に話されたように、アイヌ民族先住性歴史の事実なのであり、仮に法律上なじまないとしても社会的にはこれを認め合う、また行政行為としてもこれを認め合うことが大切なのではないでしょうか。  そこで、この機会に官房長官北海道開発庁長官アイヌ民族にまつわる基本的な御認識について伺っておきます。  まず、北海道開発計画についてでありますが、私は平成六年十一月のこの内閣委員会開発庁に対して次の質問をしたことがあります。すなわち、北海道開発庁は昭和二十五年の開発庁設置以来これまで五回の開発計画をつくってきました。その計画をここに私は持ってきておりますが、この計画には一度も北海道の先住民族であるアイヌ民族のことが触れられていないのであります。このことはまさに政府アイヌの尊厳無視の象徴であると申しました。  今、開発庁は本年の秋をめどに平成十年度からスタートする第六期の計画を策定中と伺っております。稲垣開発庁長官、ぜひこれを機会に、これまでの計画を書き改められるおつもりがおありかどうか。アイヌと和人の歴史アイヌ文化の存在を正しく示すことがアイヌ新法を束ねる主務省庁としての姿勢と考えますが、長官の御認識を伺っておきます。  続けて、官房長官には、一昨年のウタリ対策あり方に関する有識者懇談会の設置以来、政府にとって初めてとも言える大変難しい課題について御検討をいただきました。昨年四月の報告はその歴史認識を含め画期的なものであり、法案制定にこぎつけていただいたことに改めてお礼を申し上げておきますが、まず内なる国際問題とも言えるアイヌ民族の問題にここまで手をつけられ、法案制定の運びに至ったきょうの感想につきまして長官に率直に伺っておきたいと思います。  また、先住性についてでありますが、過日、総理アイヌ先住性歴史の事実と述べられましたが、梶山官房長官の御認識もこのようなことと受けとめてよろしいのかどうか、そしてこの総理認識内閣認識考えてよろしいのか、まず伺っておきたいと思います。
  73. 稲垣実男

    国務大臣稲垣実男君) ただいま先生が切々と今日までのアイヌの思いを述べられました言葉を聞きまして、私も大変感動にむせびまして、ただいま胸が大変熱い思いをいたしておるのでございます。アイヌ文化の継承に長年にわたり今日まで取り組まれました先生の御努力に、またその熱烈な情熱に感動をいたしまして、心から敬意を表する次第でございます。  私としてもアイヌ方々の念願である本法律案の一日も早い成立を願っている次第でございますので、関係施策の推進にこれからも全力を傾注する所存であります。  新たな北海道総合開発計画の策定に当たりましては、現行の第五期計画がちょうど平成九年度で終了することからいたしまして、北海道開発審議会に新しい計画案の策定について諮問を行いまして、現在、審議会におきまして調査審議を進めているところでございます。  審議会では、去る三月二十七日に新計画案の骨格を決定いたしたところでございます。この中では、アイヌ文化等の伝統文化振興に関する施策などを展開しておりますし、北海道国民の多様な自己実現や交流の場とすることを目標の一つとして掲げております。  今後、具体的な内容検討を進めてまいりたいと思う次第でございまして、先ほどから先生の念願しておられる施策が大きく展開できるよう私たちも全力を挙げて努力いたすことをお誓い申し上げる次第です。
  74. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) まずもって、総理の御発言である先住性について、全く私も同感でございますし、また内閣認識も同じであります。  昨年の懇談会の答申を見て以来、萱野委員からもいろんな御意見をちょうだいをいたしました。あるいは遅きに失したかもしれません。しかし、それは過去のことでございます。これから全力を挙げてアイヌ文化の向上、維持のために努力をしてまいりたい、このように考えております。
  75. 萱野茂

    萱野茂君 最後に、関係閣僚を初め政府の皆さんに対しまして、今後ともアイヌ民族の生活の向上とアイヌ文化の一層の発展に特段の御支援をお願いしたいと思います。  この歴史の一ページをつづります極めて大切な本委員会において私に質問の機会をお与えくださった委員長初め先輩の先生方に心から感謝を申し上げ、私の質問を終わります。  ありがとうございました。(拍手)
  76. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 私たち日本共産党は、アイヌ人々は日本における少数民族と言うべき存在であるという立場を以前からとっておりまして、アイヌに対して少数民族としての諸権利、これを与えるべきであるという立場を以前からとっておりました。そういう観点からいきまして、今回の法律アイヌ文化の促進という側面に限定はされておりますけれども、そのアイヌ文化振興を進め、そして差別的法律である北海道土人保護法などという全く時代おくれのこういう法律廃止する、そして新法をつくっていくという方向を定めたものとして積極的に評価するものであるということをまず最初に申し述べておきたいと思います。  その上に立ってのことでありますけれども、先ほども指摘がありましたが、約百年にわたって、この全く名前そのものからいっても、北海道土人保護法とか旭川市旧土人保護地処分法とか、こういったものが百年間にわたって我が国に存在してきたということについての政府の怠慢、怠慢というか誤り、これがここに深くあると私は思います。この点について、こういう状態が百年間も続いた問題の根本的な政府認識、反省、これをまず官房長官にお聞きしたいと思います。  現在、官房長官自身がどう考えておられるかということは別でありまして、この間の日本の政府の態度というものはどういうものかということを私はお聞きしたいというふうに思います。
  77. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 先ほど萱野委員からも御指摘があったように、支配と差別が続いたという御指摘、これは覆いがたい事実でございますから、そのとおりに私は認めなければならないと思います。そして、どこの国々においても、地球上で起きる民族の移動と申しますか先住者に対して後発者、そういう場合において絶えずこういうことが繰り返されてきたという歴史的な事実も私たちは直視をしなければならないわけであります。  今ようやく世界各地でこういう先住の方々と後住というか後で参られた方々との間の、和解と言っていいのかどうかわかりませんが、そういう意味での今回のこの法律は必ずしも十分ではないかもしれませんが、いわば文化の交流を通じて社会的な立場を向上していく、そういうことの大きな第一歩というか、今までの試行錯誤の中からようやく法体系を整えていく段階になったわけでありまして、過去を戻すことはできませんが、これから先においてそういう時代が完成することをお互いに望んでいかなければならない、このように考えます。
  78. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 明治政府以来のアイヌに対する政策には、アイヌのことがよく理解できなかった等々ということではなくて、アイヌを同化する、同化してしまうというところに根本問題があったと思うんです。  しかも、それを徹底的に、強制的に、先ほどもお話がいろいろございました、私もそれほどの知識を持っているものじゃございません、したがっておっしゃるとおりのことを私自身理解しながら申すわけでありますけれども、徹底的に同化をする、同化をしてしまってアイヌ問題を解決するというのが明治政府以来とった態度だったと私は思うんです。  アイヌ文化のことがよく理解できなかったとか等々という問題ではなくて、そこに日本政府が明治以来とってきたアイヌに対する大きな誤りの政策があった、私はそのように判断をしているのでありますが、いかがお考えでしょうか。
  79. 八木康夫

    政府委員八木康夫君) お答えいたします。  懇談会報告書におきましても、北海道開拓を進める中でいわゆる同化政策が進められまして、「アイヌ人々社会文化が受けた打撃は決定的なものとなった。」という記述がなされているところでございます。  そういうことを踏まえまして、一方、新たな今回の施策につきましては、「アイヌ人々の置かれている現状を踏まえ、これからの我が国あり方を志向して、少数者の尊厳を尊重し差別のない多様で豊かな文化をもつ活力ある社会を目指すものとして考えるべきであろう。」という提言がなされておりまして、御審議いただいている本法におきましても、このような懇談会趣旨を踏まえ、アイヌ人々誇りの源泉でありますアイヌ伝統及びアイヌ文化が置かれている現状にかんがみまして所要の立法措置をとるということでございます。
  80. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 わかりました。わかりましたというのは、説明がわかりましたという意味でございます。  次に、私はさらに質問を続けたいんですが、これは基本問題ですので、ぜひ官房長官にお聞きしたいと思います。  それは、今回のこの法律の中に二カ所にわたって「アイヌ人々民族としての誇り」という言葉が出てまいります。このことは今回の法律制定に当たって国としてアイヌ少数民族として認めるということを意味するものだと私は理解いたしますが、それで結構でしょうか。官房長官にお願いします。
  81. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) そのとおりであります。
  82. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 そのとおりだというふうに官房長官がおっしゃったこと、これは非常に重要な発言であったと私は思います。  といいますのは、これをめぐって一体どれだけ長い間いろいろな議論が行われ、いろいろな論争が行われ、いろいろな争いもあったということの経過を見ますと、ちょっと道を外れますけれども、この問題が数年前問題になったときでも、国連で日本の代表がごちゃごちゃいろんなわけのわからないことを言ったのがつい数年前のことでございました。今ここでそのとおりだというふうにおっしゃったこと、外交の言葉で言えばテークノートというんですか、非常に留意をしたいというふうに思います。  その上で、さらに残された時間で御質問したいのは、そういう少数民族としてであるならば、単に文化だけじゃないと私は思うんです、保障していかなければならないいろんな諸権利というのは。文化の保障だけが少数民族の権利の保障ではないと思うんです。それがまた一挙にいくとかいかないとか、そういうことは別といたしまして、やはりもっと視野を広める必要があると私は思うんです。  その点について言えばたくさんのことがいろいろありますけれども、今度の法律では特に文化のことに限定されているんです。これは数年前から起こったことでありますけれども、例えばアイヌ問題中央審議会というようなものを国のレベルでつくってほしいと、一言で言いますとアイヌの政治参加の問題です。  文化の保障だけじゃなくて、アイヌが政治的に参加する、そういう権利、その道を開いてほしいということからアイヌ問題中央審議会というようなものもつくってほしいという要望がウタリ協会その他からも出たと思いますが、こういった問題について今後どのように取り組んでいく御方針でおられるか、お聞きしたいと思います。
  83. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 先ほどの前提条件でありますが、同じ国民であり、そして長い間同化政策がとられてきたこと、これ自身を過去の政策に向かって今とやかく言って戻るものでもない。そういうことがありますから、そのことを素直に認識いたしまして、それで果たしてよかったのかどうか。  私は、少数の方々というよりアイヌの、言葉が当たるかどうかわかりませんが、名誉の回復というか名誉の存在を認め、なおかつ文化振興をしていく、この文化振興をするということは独自性を当然認めたわけでありますから、その独自性の中から同じ国民としての生活をする権利、こういうものを求めることは当然でありまして、これに対して特別の方法を与えることがいいのかどうなのか、これをひっくるめてこれから開発庁中心にしてもろもろの施策がとられていくもの、このように期待をいたしております。
  84. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 それからもう一つ、やはり今後の問題として私ぜひ検討をすべき必要があろうというふうに思う問題があると思うんですが、これはアイヌの自治といいますか、ごく平たく申しますとアイヌの合議制の会議というようなものをアイヌが密集して住んでいる地域につくるべきである、そういう考え方であります。  例えば、アイヌの人口の比率が五%を超えている市町村が北海道庁の調査では十一町村あるんですね。このうち、えりも町は一七・四%、それから日高支庁の平取町は二二・九%というように、アイヌが占めている比率が非常に高い市町村がございます。そういう地域というのが北海道にはたくさんございます。  さらに調べてみましたらば、現在、埼玉県の大宮市では全人口の一・八%しか農業人口がいないんです。それからまた、千葉県の市川市では〇・九六%なんです。だけれども、農民の公選制による農業委員会というのが存在するわけですね。  ですから、こういったことを考えれば、アイヌが持っている独特の問題をアイヌが密集している地域でいろいろ解決していく場合に、こういったものを適用しながら、そういう農業委員会のようなものを準用しながら、アイヌが自主的にいろんな問題に参加をして、単なる文化だけではない、その地域に密着したいろいろな問題を解決していくという、そんな方向がとられて不思議ではないのではないか。ですから、先ほど言いましたアイヌ問題中央審議会の問題とは別に、地方の問題として、アイヌ問題委員会とでもいいますか、そういったものを各密集したところにつくっていってはどうかというふうに私は思います。  同時にもう一言だけつけ加えますと、私も北海道に調査に行きまして、アイヌ係という札が立っている市町村というのはないんですね。それほど不便な状態になっているというような状態でありまして、これは私の一つの提案でありますけれども、どのようにお考えか、基本的なお考えをお聞かせいただければと思います。
  85. 八木康夫

    政府委員八木康夫君) お答えになるかどうかわかりませんが、本法におきましては、アイヌ文化振興なりを通じましてアイヌ人々民族としての誇りが尊重される社会実現を図るわけでございますが、そのほかアイヌ人々関係する問題につきましては、その内容に応じまして所管省庁において適切に対処していただいているし、今後もいただいていくというふうに考えております。
  86. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 最後にもう一問だけ質問して、私の質問を終わりたいと思います。  それは個別問題なんですけれども、私これを読んで何としても理解がいかないんですが、第七条に、アイヌ文化振興を図る事業をやっていく、そういうことをやる団体に法人格を与えて、それを全国を通じてただ一つに限るというふうに書いてある。そしてさらに、何かその法人に対していろんな調査をやることができると、立ち入りとまで書いてあったかどうか、今ちょっと赤線が引いていないのでわかりませんが、財産から何から何をしたか等々、ずっと全部いろんなものを出せというふうに書いてある。非常に調査権が及ぶ、そういうことが書かれています。  しかも、私が非常に驚くのは、アイヌ文化振興を図るための法人を一つに限るという、これは一体どういう発想なのかと。私はこの法律を積極的なものとして評価していると最初に申し上げました。基本はそうなんですけれども、こんなふうになりますと、アイヌ文化振興というものを国か何かで管理していってしまう、そんなような危険性というものを私はこの文章を読む限り感じるんですが、この点についての明確な態度を説明していただきたいと思います。
  87. 八木康夫

    政府委員八木康夫君) まず、指定法人を全国で一つに限定するということでございます。  指定法人アイヌ文化振興あるいはアイヌ伝統等普及啓発を行うものでありまして、その業務の性質上、全国的な見地から統一的、専門的かつ機動的に行う必要があるという考え方から、全国を通じて一に限って指定するものでございます。したがいまして、指定法人が全国で一に限られたことによってアイヌ人々の活動が制限されることはないと考えております。  また、指定法人につきましていろいろ改善命令とか罰則、指定の取り消し等の規定が置かれております。これはアイヌの自主性を制約するものじゃないかという御趣旨だと思いますが、これは指定法人の適正な事業実施を担保するための必要最低限の規制であるというふうに考えております。  そもそも指定法人アイヌ人々中心に取り組まれている自主的な活動を支援していくためにアイヌ文化振興等に関する事業実施するものでございまして、指定法人制度を定めることによりましてアイヌ人々の自主性が制約されるようなものではないというふうに認識しております。
  88. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 どんなことがあっても、アイヌ文化の自主的な発展ということに寄与するようなものでなければならない、決してそれを制限したり管理したりするものであってはならないということを申し上げて、時間が来ましたので終わります。
  89. 北澤俊美

    北澤俊美君 さまざまな角度から質疑がありまして、約百年にわたって旧土人法という名称が我が国法律の中に存在してきたということについて内閣に対する質疑がありましたが、私は議会の立場でこれを許してきた我々自身もこの時点で大きな反省をしなければならぬというふうに思います。我が国は議院内閣制でありますから、内閣の責任、そしてまた議会の責任というものについてここでお互いに共通の認識を持った上で、この法律が冒頭に掲げられておりますような趣旨に基づいて新たな我が国の出発点になってほしい、こういうふうに強く感ずる次第であります。  あわせて、知識の浅い私が萱野議員の切々たる論陣に感動をいたしますと同時に、これから二、三質問をいたします。この法律は多分全党派の御賛同の中で成立するというふうに思いますが、この後基本方針をつくり、そして基本計画をつくっていくわけでありますから、どうかこの委員会の質疑を十分に成果のあるものにしていただきたい、まずこんなふうに思います。  先ほども内閣内政審議室長から御答弁がありましたが、改めて内閣のスポークスマンとしての官房長官にお伺いをするわけでありますが、アイヌ人々先住性とか民族性、文化の特色、こういったようなことがきちんとこの懇談会報告書の中に位置づけられております。それに先立ちまして、中曽根総理が単一民族発言をされて批判もされたわけでありますが、この法律成立させるに当たって、その前提として我が国民族構成についての基本的な考え方をお伺いをいたしたいと思います。
  90. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 歴史的な事実としては、先住された民族が幾つかあるはずであります。私はそれを深く承知しませんが、しかし日本という国はいわば海洋国家というか島国でございますから、大変閉鎖的な長い歴史がございます。その意味では、多民族国家を形成するほどの民族感覚というか、そういうものを持っていなかったという過去の長い経緯がございます。  しかし、幾つかの民族方々が、後発的に日本に来られた方もあるし、先住の方もあるわけですが、それを今排除するという気持ちは全くないというか、近代化が遂げられて国際化の中で異民族といえども完全に日本の中では同一の権利を保有し得るという立場は私は厳然と今でき上がりつつある、このように考えます。
  91. 北澤俊美

    北澤俊美君 私たち人類の歴史を見れば、間違いなく征服と、そして被征服者に対するべつ視の歴史であったわけでありまして、共生という概念が誕生したのはほんのわずかの年月であります。そういう中において、全体構成からすれば非常に少数のアイヌの人たちに対して改めて共生概念を持った法律成立するということは、日本人共生に対する精神の発露である、世界的にも高く評価されるべきである、またそういうものをつくっていかなきゃならぬ、私はこういうふうに思うわけであります。  しかし、我々は過去の歴史の中で、民族に対する、あるいはまた民族文化に対する間違いを随分と繰り返してきているはずであります。そういう意味においては、担当官庁は相当しっかりしてもらわなくちゃいかぬと思うんです。  例えばインダス文明というのは、アーリア民族が入ってきて、そして未開の野蛮な先住民を征服してその上にあのインダス文明ができた、こういうふうに言われていたのが、ほんの数十年前の一九二一年だったかに偶然の発掘の中で、紀元前二千三百年ぐらいのときに先住民族が築いた遺跡が発見されて、インダス文明に対する認識はがらっと変わったわけであります。  私たちは、先住民がつくった文化歴史、そういうものについて、本当に今の歴史認識が正しいのか、間違っているんではないのかという考えを常に持ち続けなければ、あらゆる民族共生していくということの基本的な姿勢に間違いを生ずるんだろう、そんなふうに考えるわけであります。  これからちょっとお聞きしますが、先住民とそれに対する権利という問題になってきますと、これはまた国家を形成する上で非常にややこしい話になってくるわけであります。  今、国連でこの問題が議論されております。国連の場へ自決権であるとか従来の権利に対する補償だとかいう問題を投げかけて、我が国としてきちんとした方針を出しておらないように私は思うのであります。この懇談会報告書の中にも書いてありますが、「我が国からの分離・独立等政治的地位の決定にかかわる自決権や、北海道の土地、資源等の返還、補償等にかかわる自決権という問題を、」「施策の展開の基礎に置くことはできない」と、こういうふうに括弧書きでだけは書いてあるんですね。  日本政府としてこういう問題に対する基本的な認識をここではっきりしておかないと、せっかくいい法律がスタートするに当たってまた問題を先送りした形になる、私はこんなふうに思うのでありますが、官房長官並びに北海道開発庁長官、それから外務省の御意見を聞かせてください。
  92. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 世界的なその定義が確立をしていないことは委員承知のとおりでありますが、先住性は当然認められているし、またこれは厳然たる事実であります。しかし、それにさかのぼって先住権というものが発生するのかどうなのかということになりますと、国家の形成や民族の形成その他に大きな影響というか、さかのぼるということの大変難しさがございます。この問題に問題としての投げかけは若干かいま見ることができますが、この問題を処理できるほどまだ私たちの練度はありません。  それから、先ほど言われましたように、先住者と後住者というか後発者との間の、それはどこの国の世界でも征服があった、同化があった、そういう流れがございます。今この文化問題を取り上げておりますが、日本という国は世界でも珍しいいわゆる混合文化を形成し、前から来た文化と後から来た文化をうまく折衷調和のできる民族性を持っているわけでありますから、このことに関して、アイヌ文化振興と、いわば後なる文化というものの調和は完全にできる国民性を持っている、これは私は珍しい国民性だと思うんです。長い歴史がこの日本という島国に堆積をした文化だと、私はこう言っているんですが、古いものと現在のものとが同居することができる文化論というか、そういうものを形成いたしておりますので、この文化振興というものを通じて私はさらなる進展ができるもの、こういうように理解をいたしております。
  93. 稲垣実男

    国務大臣稲垣実男君) いわゆる先住権をめぐる問題につきましては、政治的、経済的自決権等とも関連をしております。また、国際的にもさまざまな議論がただいま行われている状況にありますので、私どもといたしましては慎重にこれを検討する必要があるものと考えております。
  94. 貝谷俊男

    説明員(貝谷俊男君) 国連での議論についてでございますけれども、一九九五年の第五十一回人権委員会におきまして、この人権委員会のもとに先住民族の権利に関する国連宣言案というものを検討するための作業部会が設置されております。  現在までに、一九九五年の十一月、さらに九六年の十月と二回会合が開かれて審議が行われておりますけれども、各国から種々の意見が出されておりまして、議論が収れんするには至っていないという状況でございます。
  95. 北澤俊美

    北澤俊美君 私の考え方として、この問題をはっきりさせないで新たなスタートをすべきではないと私は思っております。そのためには、この懇談会の中でもかなりのボリュームの論議があったはずでありますから、そういうものをしっかりとらえて、アイヌ方々の十分なるコンセンサスを得る中で私はスタートすべきだというふうに思います。  間違いなくアイヌと我々和人との関係は、おおよそ千二、三百年にわたって支配とべつ視の歴史であったんです。それを尾てい骨を引きずるようにしてきたのがこの百年であったはずであります。今は全く新しい意味でこうなっている。  私は歴史のうんちくを傾けるつもりはありませんけれども、世界の歴史の中でいささか野蛮であっても歴史に名を残してきた征服者や国家の形成者というのは、間違いなく被征服者に対して同化の、先ほど同化という言葉を非常に批判されましたけれども、あの当時でありますから、許した、施策を行った人だけが残された。  聖徳太子が何で偉いかと言えば、十七条の憲法、確かに立派なことでありますけれども、彼は間違いなく敗れた方々に対して人間が平等であるという基本理念を持ったからでありますし、アレキサンダーがなぜあれだけ成功したかと言えば、それもまさにそうであります。中国の歴史を見たってすべてそうであります。  大きな歴史の流れの中で、私たちはこの百年間で近代国家としてとってきた施策をここで大きく転換するわけでありますから、私はこの基本方針基本計画を立てるに当たって特段の意を持って進めていただきたいということを希望申し上げて、質問を終わらせていただきます。
  96. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。——別に御意見もないようですから、直ちに採決に入ります。  アイヌ文化振興並びにアイヌ伝統等に関する知識普及及び啓発に関する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  97. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  萱野茂君から発言を求められておりますので、これを許します。萱野君。
  98. 萱野茂

    萱野茂君 私は、ただいま可決されましたアイヌ文化振興並びにアイヌ伝統等に関する知識普及及び啓発に関する法律案に対し、自由民主党、平成会社会民主党・護憲連合、民主党・新緑風会、日本共産党、太陽の各会派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     アイヌ文化振興並びにアイヌ伝統等に関する知識普及及び啓発に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、アイヌ人々が置かれてきた歴史的、社会的事情にかんがみ、アイヌ文化振興等に関し、より一層国民理解を得るため、次の事項について適切な措置を講ずべきである。  一、アイヌ人々民族としての誇りが尊重される社会実現に資するため、アイヌ文化振興等施策の推進に当たっては、アイヌ人々の自主性を尊重し、その意向が十分反映されるよう努めること。  一、アイヌ人々民族としての誇りの尊重と我が国の多様な生活文化の発展を図るため、アイヌ文化振興に対しては、今後とも一層の支援措置を講ずること。  一、アイヌ人々の人権の擁護と啓発に関しては、「人種差別撤廃条約」の批准、「人権教育のための国連一〇年」等の趣旨を尊重し、所要の施策を講ずるよう努めること。  一、アイヌ人々の「先住性」は、歴史的事実であり、この事実も含め、アイヌ伝統等に関する知識普及及び啓発の推進に努めること。  一、現在、行われている北海道ウタリ福祉対策に対する支援の充実に、今後とも一層努めること。   右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同を心からお願い申し上げます。
  99. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) ただいま萱野君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  100. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 全会一致と認めます。よって、萱野君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、稲垣北海道開発庁長官から発言を求められておりますので、この際、これを許します。稲垣北海道開発庁長官
  101. 稲垣実男

    国務大臣稲垣実男君) アイヌ文化振興並びにアイヌ伝統等に関する知識普及及び啓発に関する法律案につきましては、本委員会におかれまして熱心な御討議をいただき、ただいま全会一致をもって可決されましたことを深く感謝申し上げます。  今後、審議中における委員各位の御高見やただいま議決になりました附帯決議の趣旨を十分に尊重してまいる所存でございます。  ここに、委員長初め委員各位の御指導、御協力に対しまして深く感謝の意を表し、ごあいさつといたします。  どうもありがとうございました。
  102. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  103. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十六分散会