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1997-03-27 第140回国会 参議院 内閣委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年三月二十七日(木曜日)    午後一時開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         鎌田 要人君     理 事                 板垣  正君                 鈴木 貞敏君                 鈴木 正孝君                 清水 澄子君     委 員                 海老原義彦君                 狩野  安君                 村上 正邦君                 矢野 哲朗君                 依田 智治君                 大久保直彦君                 永野 茂門君                 山崎  力君                 角田 義一君                 齋藤  勁君                 笠井  亮君                 聴濤  弘君    国務大臣        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 梶山 静六君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  武藤 嘉文君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  久間 章生君         ―――――        会計検査院長   疋田 周朗君         ―――――    政府委員        首席内閣参事官        兼内閣総理大臣        官房総務課長   太田 義武君        内閣参事官        兼内閣総理大臣        官房会計課長   吉井 一弥君        内閣官房内閣内        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房内政審議室        長        田波 耕治君        内閣審議官    及川 耕造君        内閣官房内閣外        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房外政審議室        長        平林  博君        内閣法制局第一        部長       秋山  收君        人事院総裁    弥富啓之助君        人事院事務総局        管理局長     尾木  雄君        人事院事務総局        任用局長     角野 敬明君        人事院事務総局        給与局長     武政 和夫君        人事院事務総局        職員局長     佐藤  信君        総務庁長官官房        長        河野  昭君        総務庁長官官房        審議官      大坪 正彦君        総務庁人事局長  菊池 光興君        総務庁行政監察        局長       土屋  勲君        防衛庁参事官   山崎隆一郎君        防衛庁防衛局長  秋山 昌廣君        防衛庁教育訓練        局長       粟  威之君        防衛庁人事局長  大越 康弘君        防衛庁経理局長  佐藤  謙君        防衛庁装備局長  鴇田 勝彦君        防衛施設庁長官  諸冨 増夫君        防衛施設庁総務        部長       伊藤 康成君        防衛施設庁施設        部長       首藤 新悟君        外務省条約局長  林   暘君    事務局側        事 務 総 長  黒澤 隆雄君        常任委員会専門        員        田中 久雄君    衆議院事務局側        事 務 総 長  谷  福丸君    裁判官弾劾裁判所事務局側        事 務 局 長  藤田 教稔君    裁判官訴追委員会事務局側        事 務 局 長  浜井 一夫君    国立国会図書館側        館     長  緒方信一郎君    説明員        法務省人権擁護        総務局長     坂井  靖君        外務省北米局審        議官       田中  均君        厚生省社会・援        護局地域福祉課        長        堀之内 敬君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○平成九年度一般会計予算内閣提出、衆議院送  付)、平成九年度特別会計予算内閣提出、衆  議院送付)、平成九年度政府関係機関予算(内  閣提出衆議院送付)について  (皇室費国会所管会計検査院所管内閣所  管及び総理府所管総理本府、日本学術会議、  国際平和協力本部宮内庁総務庁北方対策  本部を除く)、防衛本庁防衛施設庁)) ○地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別  措置に関する法律の一部を改正する法律案(内  閣提出衆議院送付) ○総務庁設置法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  昨三月二十六日、予算委員会から、三月二十七日午後の半日間、平成九年度総予算中、皇室費国会所管会計検査院所管内閣所管及び総理府所管のうち総理本府、日本学術会議国際平和協力本部宮内庁北方対策本部を除く総務庁防衛本庁防衛施設庁について審査委嘱がありましたので、御報告いたします。  この際、本件を議題とし、順次予算説明を聴取いたします。  予算説明につきましては、国会所管及び会計検査院所管以外は去る二月二十日の本委員会におきまして既にこれを聴取しておりますので、この際、国会所管及び会計検査院所管予算説明を聴取いたします。  まず、国会所管のうち衆議院関係予算説明を求めます。谷衆議院事務総長
  3. 谷福丸

    衆議院事務総長谷福丸君) 平成九年度衆議院関係歳出予算について御説明申し上げます。  平成九年度国会所管衆議院関係歳出予算要求額は六百九十四億四千九百万円余でありまして、これを前年度予算額と比較いたしますと九億二百万円余の増加となっております。  次に、その概略を御説明申し上げますと、第一は国会運営に必要な経費でありまして、六百五十億八千九百万円余を計上いたしております。  この経費は、議員関係の諸経費職員人件費並びに事務局及び法制局事務を処理するために必要な経費でありまして、前年度に比し三億三千二百万円余の増加となっておりますが、これは議員定数十一名減に伴う議員歳費等の当然減があるものの、インターネット構築議員会館議員室へのパソコン導入等情報化推進関係経費及び日本国憲法五十周年記念行事経費等増加によるものであります。  第二は、本院の施設整備に必要な経費といたしまして、四十三億五千三百万円余を計上いたしております。  この主なものは、第二別館の増築費平成十一年度完成を目途とする国会審議テレビ中継施設新築費情報機器導入に伴う電力施設等整備費及び本館等庁舎の諸整備に要する経費並びに国会周辺等整備に必要な土地購入費でございます。  第三は、国会予備金に必要な経費といたしまして、前年度同額の七百万円を計上いたしております。  以上、簡単でありますが、衆議院関係歳出予算概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほどお願いいたします。
  4. 鎌田要人

  5. 黒澤隆雄

    事務総長黒澤隆雄君) 平成九年度参議院関係歳出予算について御説明申し上げます。  平成九年度国会所管参議院関係歳出予算要求額は四百十四億五千百万円余でありまして、これを前年度予算額と比較いたしますと二十億七千六百万円余の増加となっております。  次に、その概略を御説明申し上げます。  第一は、国会運営に必要な経費でありまして、三百八十四億一千万円余を計上いたしております。  この経費は、議員関係の諸経費職員人件費並びに事務局及び法制局所掌事務を処理するために必要な経費でありまして、前年度に比し九億九千万円余の増加となっております。これは主として人件費増加によるもののほか、参議院五十周年記念関係経費及び麹町議員宿舎増築棟完成に伴う経費の計上並びに国会会議録フルテキストデータベースシステム構築経費増加によるものでございます。  第二は、参議院施設整備に必要な経費でありまして、三十億三千六百万円余を計上いたしております。これは情報通信関連施設整備費電子式投票装置整備費及び本館その他庁舎等施設整備に要する経費でありまして、前年度に比し十億八千六百万円余の増加となっております。  第三は、国会予備金に必要な経費でありまして、前年度同額の五百万円を計上いたしております。  以上、平成九年度参議院関係歳出予算概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  6. 鎌田要人

  7. 緒方信一郎

    国立国会図書館長緒方信一郎君) 平成九年度国立国会図書館関係歳出予算について御説明申し上げます。  平成九年度国会所管国立国会図書館関係歳出予算要求額は百七十八億八千七百万円余でありまして、これを前年度予算額と比較いたしますと十一億三千万円余の増額となっております。  次に、その概要を御説明申し上げます。  第一は、管理運営に必要な経費であります。  その総額は百三十六億五千九百万円余でありまして、これを前年度予算額と比較いたしますと一億五千六百万円余の増額となっておりますが、これは主として図書館業務情報システム化国会会議録フルテキストデータベース構築等国会サービス充実のための経費児童書図書館設立準備経費図書館資料収集のための経費等についての増額に伴うものであります。  第二は、科学技術関係資料購入に必要な経費でありまして、五億九千百万円余を計上いたしております。これを前年度予算額と比較いたしますと二千七百万円余の増額となっております。  第三は、施設整備に必要な経費でありまして、三十六億三千六百万円余を計上いたしております。これは本館改修に要する経費関西館の設計及び用地の取得に要する経費支部上野図書館庁舎改修経費等でありまして、前年度予算額と比較いたしますと九億四千六百万円余の増額となります。  以上、国立国会図書館関係歳出予算概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  8. 鎌田要人

  9. 藤田教稔

    裁判官弾劾裁判所参事藤田教稔君) 平成九年度裁判官弾劾裁判所関係歳出予算について御説明申し上げます。  平成九年度国会所管裁判官弾劾裁判所関係歳出予算要求額は一億二千七百一万円余でありまして、これを前年度予算額一億二千百九十万円余に比較いたしますと五百十万円余の増加となっております。  この要求額は、裁判官弾劾裁判所における裁判長職務雑費委員旅費及び事務局職員給与に関する経費、その他の事務処理費並びに裁判官弾劾法に基づく裁判官弾劾裁判に直接必要な旅費庁費でありまして、前年度に比し増加となっておりますのは職員給与関係経費等増加並びに裁判官弾劾制度五十周年記念行事経費によるものであります。  以上、簡単でありますが、裁判官弾劾裁判所関係歳出予算概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  10. 鎌田要人

  11. 浜井一夫

    裁判官訴追委員会参事浜井一夫君) 平成九年度裁判官訴追委員会関係歳出予算について御説明申し上げます。  平成九年度国会所管裁判官訴追委員会関係歳出予算要求額は一億四千三百二十六万円余でありまして、これを前年度予算額一億三千五百二万円余に比較いたしますと八百二十三万円余の増加となっております。  この要求額は、裁判官訴追委員会における委員長職務雑費及び事務局職員給与に関する経費並びに訴追事案審査に要する旅費その他の事務費でありまして、前年度に比し増加となっておりますのは、職員給与関係経費等増加並びに裁判官弾劾制度五十周年記念行事経費によるものであります。  以上、簡単でありますが、裁判官訴追委員会関係歳出予算概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほどをお願いいたします。
  12. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 以上で国会所管予算説明聴取は終わりました。  次に、会計検査院所管予算説明を求めます。疋田会計検査院長
  13. 疋田周朗

    会計検査院長疋田周朗君) 平成九年度会計検査院所管歳出予算について御説明いたします。  会計検査院平成九年度予定経費要求額は百六十一億二千五百八十三万七千円でありまして、これは日本国憲法第九十条及び会計検査院法規定に基づく本院の一般事務処理及び検査業務を行うために必要な経費であります。  今、要求額の主なものについて申し上げますと、第一に人件費として百三十五億一千四百八十八万五千円を計上いたしましたが、これは総額の八三・八%に当たっております。このうちには、会計検査充実を図るため、調査官三人、一般職員七人、計十人を増置する経費も含まれております。  第二に、旅費として八億三千四百三十九万八千円を計上いたしましたが、このうち主なものは、検査旅費が七億二千四百七十四万一千円、海外検査等外国旅費が三千九十九万七千円であります。  第三に、施設整備費として四億二千百六万三千円を計上いたしましたが、このうち主なものは、安中研修所工事検査実習施設関係工事費三億七十八万三千円、庁舎改修工事費一億五百七十二万七千円、宿舎改修工事費一千四百五十五万三千円であります。  第四に、その他の経費として十三億五千五百四十九万一千円を計上いたしましたが、このうちには、検査の円滑な実施を図るための会計検査活動費二億百四十九万八千円、会計検査充実強化のための経費七千六百三十一万円、検査業務効率化を図るための経費四億一千三百三十九万七千円、及び検査要員等充実強化のための研修研究体制整備経費二億八千九百八万九千円が含まれております。  ただいま申し上げました平成九年度予定経費要求額百六十一億二千五百八十三万七千円を前年度予算額百五十五億一千四百五十六万四千円に比較いたしますと、六億一千百二十七万三千円の増加となっております。  以上、簡単でありますが、本院の平成九年度予定経費要求額概要の御説明を終わります。  よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  14. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 以上で予算説明聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  15. 板垣正

    板垣正君 きょうは内閣委員会委嘱審査でございますが、この内閣委員会というのはある意味総務委員会と申しますか、国の基本にかかわる問題について取り上げてきているわけであります。加えまして、私、先般の予算委員会におきまして質疑の機会を与えられましたけれども、時間の制約もあり、取り残した問題がございます。これらの問題につきまして、官房長官、そして総務庁長官からこの基本的な考え方について政治家としての御見識をぜひ承りたい、こう思うわけであります。  まず第一に、行政改革を初めいわゆる六大改革、この改革をなし遂げなければならない。まさに国家の存亡をかけた大きな改革であります。この改革につきましては、予算委員会等を通じ橋本総理大臣も、言うなれば第三の開国だと。第一の開国明治維新であり、第二の開国がいわゆる戦後改革であり、そして今来ているのが第三の開国であると。しかも、この第三の開国は以前の開国よりももっと困難だと。  なぜならば、御承知のとおり、明治維新当時アジアはことごとく欧米列強によって侵略され、植民地化されました。その中で、我が国は危うく植民地化のぎりぎりのところでなし遂げられたのが史実に明らかな明治維新でありました。つまり、ここに大きな外圧があった。戦後改革も、これまた敗戦下占領軍の絶対権力のもとで断行された改革である。こういう意味合いにおいては、いわゆる外圧のもとで行われた、外圧があったからこそ可能であったとも言える。しかし、今回我々が当面しております改革には言うならば外圧はない、みずからの手で改革をなし遂げなければならない、そこに第一の困難性があるということであります。  もう一つは、この国はあの戦後の廃墟の中から今日の平和と繁栄を築き上げてきた。この面におきましては、今までの国家機構なりもろもろの面というものは極めて効率的に成果を上げてきた、これは評価できるわけであります。しかし、その成果を上げてきた制度がむしろ現時点においては阻害要因になってきている。ここで身を切るような改革をしなければならない、そこの困難性がある、こういうふうに言われていると思います。  こうした総理の見解を私は内閣の意思としても受けとめておりますが、この理解は正しいでしょうか、どうでしょうか。官房長官総務庁長官にお伺いします。
  16. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) 今お話のございました総理のお考え方は私は正しいと思っております。  何にしたって、今お話しのとおりで、外圧のない今の時代、しかも我々が財政再建行政改革に取り組まなきゃならぬと思っておりますのは、国の財政あるいは地方財政、それぞれ借金財政でございまして、いろいろと国鉄の過去の債務などを含めれば、この間大蔵省が発表いたしておりますように五百二十一兆というような大変膨大な公的債務を抱えてしまいました。  しかし一方、国民皆さんの預貯金は千二百兆あると言われているわけでございます。非常に国が貧乏になっちゃった、地方の自治体も貧乏になっちゃった。ところが、国民の方は案外豊かになってきたということではなかろうかと思います。だから、幾ら一人当たり計算すれば五百万そこそこの借金を抱えているんですよと言ってみても、お一人お一人は、いや、私はこれだけの預金があるんだ、これだけの貯金があるんだ、こういうことでございますから、なかなかこれ御理解がいただきにくいと思うんです。  そういう中で、しかし私どもとしてはまず財政再建をやらなきゃいけない。財政再建をやっていくとなると、これはもう国民皆さんにいろいろの行政サービスの面で今までよりもマイナスになるといいますか、御辛抱願わなきゃならない点が多々出てくる。そういうときに、国民皆さんにそれを果たして御理解していただけるかどうかというのは私は非常に難しいと思うんです。  しかし、それをやらなきゃいけない。そうなってくると、バブルが崩壊してからそれぞれ民間の企業はリストラをやってきたけれども、一方において行政面は果たしてリストラをやってきたのかどうかとなると、これはほとんどリストラをやっていないわけでございますから、そういう面ではどうしてもリストラをやっていかなきゃいけない。そうなると、幾ら今度は逆に行政組織の中でいろいろのあつれきが出たり、いろいろありましても、国民の御理解をいただいて財政再建をやっていくためには、その前提として思い切った行政リストラをやらなきゃならないんじゃないかという面で、私は行政改革というのはどうしてもやらなきゃいけないと思います。  それからいま一つは、残念ながらいろいろの不祥事件が、今ちょうど裁判にかかっておりますけれども岡光前次官の事件を初めいろいろ出てまいりました。今、行政に対する国民信頼感が非常に薄らいできている。しかし、行政というものは国民全体への奉仕ということなんでございますから、国民全体に奉仕しようとしているところと国民との間に全くの乖離があったのでは、行政というのは何なのかということになるわけでございますから、そういう面からいっても行政を思い切ってひとつ立て直しをしていかなきゃいけないんじゃなかろうかと思っております。  いろいろとございますけれども、やっぱり時代は変わってまいりました。高度情報化時代と言われるようになってきたわけでございますから、そういう時代に合った行政サービスをするように、例えばインターネットを利用するとか、いろいろこれから出てくると思うんです。そういう方向に思い切って改革をしていかなきゃいけないし、あるいは明治以来続いてきた今日の行政機構がいろいろな形で縦割り行政の弊害が出てきておるわけでございますから、思い切ってこの際ゼロから出発する新しい行政組織をつくって、そして二十一世紀の皆さんにはその行政組織の中で日本行政が行われるようにしていかなきゃいけないんじゃなかろうか。  こんなことを考えてまいりますと、大変難しい。なかなか国民の御理解を得にくいところではございますけれども、しかしこれをやらなかったら結果的に日本丸が沈没してしまうということを私ども国民に根気よくこれから訴えながら、国民の御理解を得てやっていかなきゃならぬ、こう考えておる次第でございます。
  17. 板垣正

    板垣正君 時間の関係もありますから、官房長官にはまたこの後でお答えいただきたいと思います。  今まさにお答えのとおり、第三の開国を何としてもやり遂げなければ日本が沈没してしまう。その大改革にしては割かし国民の関心といいますか、国民の、よし、やろう、こういう高まりが私は欠けていると思う。というのは、もう一歩踏み込みが足りないのじゃないのか。つまり、国をつくり直していくんだということは言うなれば戦後体制を抜本的に見直していく、こういうことであろうと思うんです。  私はこの戦後体制と言われるものに四つの指標があると思うんです。  第一は憲法であります。憲法が既に施行五十年と言われておりまするけれども憲法学者の話によると、この憲法世界で一番古い憲法だと。成文憲法では十五番目だそうですね。しかし、日本国憲法以前の十四の憲法はことごとく何回となく改正が行われておる。そうなりますと、成文憲法で一回も改正されていない世界で一番古い憲法が我が憲法である。そして、現実にこの憲法我が国のあらゆる面における改革なり政策の一つ制約になってきている、そういう面が否めない。  第二番目がいわゆる東京裁判史観であります。この問題については長くは言いませんけれども、これはまさに勝者の一方的な復讐裁判であった。国際法を無視した実態であることは、既に国際社会においても、また我が国内、民間においては言うなれば解明されておる問題であります。この問題について政府は極めて消極的な姿勢をとり続けてきておる。今問題の教科書問題における歴史認識等にもこの影響というものは極めて深刻なものがある。  第三番目は靖国問題であります。靖国神社は、単に憲法上の政教分離規定とかそういうことで左右される問題というよりは、まさに我が国歴史、伝統に根差した、維新以来国家のためにとうとい命をささげた方々の霊の追悼の場所として、慰霊の場所として、これは国みずからも全戦没者を祭る中心的な施設であると認めておるところであります。それに対する国の公的儀礼が尽くされていない。私はこういうことでは国の存立の基本というものが疑われると言ってもいい。  第四番目が外交姿勢であります。端的に言うならいわゆる謝罪外交。これは我々もいろいろな支援者等の話を聞きます。いろんな方から聞きますと、もう日本もいいかげんに謝罪外交をやめてくださいよ、何でいつまでも謝るんですか、そういう声が満ちていますよ。こういう中で、例えば靖国問題等も、国内問題であるにもかかわらず、ある意味の外交問題といいますか内政干渉的な形で、これが参拝すら行われない。こういう姿は健全な関係じゃありませんね。もう戦後五十年でありますから、歴史的事象の検証は大事であり、これは学者に任せるとしても、やはり未来志向の中で本当の健全な国際関係、特に近隣諸国との関係をつくっていかなきゃならない。  つまり、今申し上げました憲法の問題、東京裁判史観の問題、靖国神社の問題、外交姿勢の問題、言うなれば戦後体制の枠組みと言ってもいいこういう問題についてタブー視しないで積極的に論議を起こしていく。未来の中で論議を起こし、かついずれこれらの問題について改正点を得ていく、こういう姿勢というものが求められているのではないのか。この点について、官房長官総務庁長官の御見解を承ります。
  18. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 交代でといってこちらに振り向けられてしまいましたから、私が便宜お答えをいたしますが、大変基本的な広範な問題で、この問題を二人で答えますと閣内不一致などということになりまして大変でございますから、余り踏み込んだ話をすることは、特に今内閣のスポークスマンでありますから、避けたいと思います。  憲法は不磨の大典ではありません。それはだれしも承知おきのことであります。そして、特に私権の制限というか、これだけ高密度社会になると私権に対する考え方、公共に対する考え方、こういうものに対する截然とした思いが若干少ないという感じがいたします。しかし、この平和憲法というのが今日の日本を形づくってきたことだけは間違いのない事実であります。  憲法解釈にも幾つかの議論がございます。憲法を見直すという雰囲気のあることは当然でありますが、内閣憲法遵守の建前がありますから、この憲法に関してとかく申し上げる立場に私はありません。各党各会派が大いに国民全般的な議論をなしながら、次なる時代にどんな日本憲法を求めていくか。大変重要な問題であるというふうに考えますので、これを一政府に責任を着せてみてもそれは問題の解決になりません。ぜひともこれは全国民的な議論を、そしてそれに基づく結論が出されるべきものだと考えております。  それから二番目に、東京裁判の問題、確かに私も若かった時代でありますが、キーナン検事のあの論告を聞きながら歯ぎしりをし、あるいはインドのパレル判事の涙が下るような思い、そして今は亡くなった衆議院の議長であった清瀬さんが主任弁護士として大変な弁論を振るっていたことをあの当時私なりの若い思いを感慨を込めて振り返ったことが何遍もございます。  しかし、ただいま委員御指摘のように、勝者が敗者を裁いたのではないかということを、その是非を私は今ここで申し上げようとは思いません。しかし、我が国は国と国との関係では、サンフランシスコ条約第十一条により、極東軍事裁判所の裁判、事実である裁判全体を受諾いたしているわけでありますから、この問題に対して政府がとかく言うべき立場には残念ながらないわけであります。サンフランシスコ条約を締結したというその前提条件にこの問題の受諾があるということを御理解願いたいし、それは国民一人一人がむしろ忘れないであの当時のことを回想する勇気を持つか持たないかが大切なので、東京裁判がいいか悪いかという議論を今何人かの人だけでやってみても私は大した効果がないという気がいたします。  それから、靖国神社の参拝ですが、もちろん宗教上の規定、これは憲法上の規定もありますから、一宗教に偏ってはいけない、そういう一つの現実がございます。あるいは靖国神社の改組論もないわけではありません。私は毎朝毎晩あの前を通りながらこうべを垂れてお参りをしてまいっております。公式な参拝があるかないかということよりも、あの靖国の社に頭を下げる国民がたくさんいるという現実、これが大切でありまして、私は総理が公式参拝をするかしないかという問題で靖国神社という問題をとらえたくない。いわば国に対する忠誠の結果として亡くなられた方々にお参りをする、その国民的土壌があれば私は十分である、このように考えます。  謝罪外交と言われますが、それぞれ過去にはいろんな重荷をしょいながらやってきたわけでありますから、生まれ落ちた赤ん坊と同じく日本が胸を張って歩くというわけにはまいりません。五十年前、いやそれ以前からいろんな問題があったことを現実として私たちは見ながら、なおかつ国の自主性を発揮しながらやっていける外交を強めてまいる、進めてまいる、こういう決意があれば私は日本の立場は必ず理解される、こういう思いがいたしますので、御了解を願いたいと思います。
  19. 板垣正

    板垣正君 総務庁長官、いかがですか。
  20. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) 内閣の一員でございまして、閣内不一致と言われないように同じ考え方でございます。
  21. 板垣正

    板垣正君 これは問題提起ということで、ただ今の問題についてはまだまだこれは論議をしなきゃならないと思う。国会で論議を起こす、国民も論議を起こす、それが活力あるこの国を立て直していく避けて通れない道である、私はこう存ずる次第であります。  次に、今問題の沖縄、日米安保体制あるいは兵力削減等々の論議がまさにこれまた国の命運をかけた問題でありまして、これをいかに国会の場におきましても整々たる中でこの国の安定を図っていくか、活路を見出していくか大きな山場を迎えていると思いますが、私は一番大事なのはやっぱり情勢認識だと思う。こういう面で、防衛庁長官、何と申しましても二十一世紀にかけて大きな問題は中国の問題です。日中関係、これは私どもまさに歴史の反省を踏まえながらこの日中関係というものにどう対処していくか、これが最大の課題であろうと思うんです。  そこで、端的に伺いますが、ポスト鄧小平後の中国というものは極めて不安定な要素をはらんでおります。あれだけカリスマ性のある、まさに手腕家である鄧小平さんが亡くなった後、いわゆる集団指導体制のもとでむしろ改革・開放体制がいろんな矛盾を噴き出しつつある、活力ある発展とともに大変な矛盾を噴き出しつつある。こういう流れにおける中国の動きというものは予断を許さないものがあると思う。  そこで伺いたいのは、例えば今回発表されました中国の国防費、これは九年連続二けた台の言うなれば軍拡路線をひたすら歩んでおるという見方すら成り立つ。しかも、発表されました八百五億元、日本のお金にして約一兆二千億円と言われますけれども、これは表面的な国防費で、常識的にはあるいは軍事専門家は内実的にはこれの四倍ないし五倍というふうに中国の国防費、軍事関係費、軍事支出は見られるという、いろいろ具体的な分析もございます。そういうものについて防衛庁当局はどういうふうに見積もっておられるのか、まず伺います。
  22. 山崎隆一郎

    政府委員山崎隆一郎君) お答え申し上げます。  ただいま先生から御指摘ございましたのは、去る今月の二日、中国の全国人民代表大会におかれまして九七年度の国家予算案が報告されたわけですが、今ございましたように八百五億七千万元という国防費が認められまして、これは国家予算全体の八・九八、ほぼ九%の割合を占める。それから、対前年度比の国防費の伸び率は一五・四%ということになりまして、これも先生今御指摘のとおり九年連続で一〇%以上の伸びを示しているということでございます。  このような国防費の傾向を見る場合に、中国のインフレ率が高い水準であるということを考慮する必要もあるというふうに思いますが、かつ従来から中国側は国防費の内訳については公表していないということでございますので、その具体的な内容について確認することは困難でございます。ただ、中国が実際に軍事目的に支出している額は公表されている国防費の額にとどまらないということは、御指摘もございましたけれども、我々もそう見ております。  いずれにしましても、中国の軍事力の近代化というものは中国が経済建設を当面の最重要課題としていることなどから今後も漸進的に進むものと見ておりますが、核戦力や海軍、空軍力の近代化の推進、海洋における活動範囲の拡大、さらには台湾周辺での軍事演習による台湾海峡の緊張の高まりなど、これらの動向には注目していく必要がある、そのように考えております。
  23. 板垣正

    板垣正君 極めて一般的な報告ですね。例えば軍備増強の一つのあらわれとして、ロシアから新しい駆逐艦を二隻ですか、さらに四ないし八隻を追加しようとしておる。これはロシアの最新鋭ミサイル駆逐艦で、これは対空、対艦、対潜ミサイルを備えた駆逐艦です。さらに、バックファイアという核搭載可能の戦略爆撃機四機を購入したという情報もあります。この爆撃機は航続距離が二千二百キロであります。さらに、南アフリカからいわゆる戦闘ヘリ、これはアメリカのアパッチにも並ぶ高性能で、航続距離がタンクを入れますと千百キロ以上もある。優に台湾を攻撃し、台湾往復のできる、こういう新鋭のヘリコプターを取り入れる。あるいは独自に数種類の戦闘機の開発も行っておる。二十一世紀初頭には、二〇一〇年以降には航空母艦が導入される、あるいはそれにこの戦闘機が搭載される、こういう情報も続々と入りつつある。  しかも、今回の全人代大会におきまして、李鵬首相はその政府報告の中で、国防建設は経済建設と国家の長期安定にとり重要な保証であると。つまり、国防、経済、これを同等に扱うという、これも今までになかった具体的な表明をしておる。さらには、中国軍の精兵化と国防の増強、辺境地域や海洋の防衛を重視して領土の主権や海洋権益を守らなければならない、こういう方針を打ち出してきている。  アメリカの分析でも、東シナ海におけるシーレーン問題を重要視している。東シナ海、南シナ海、さらにはインド洋を経てペルシャ湾に至る我が国の大動脈でありますが、今我が国は石油の八割を中東に依存しておる。やがて中国も含めて石油輸入国、九割の油を中東に依存するような姿になるであろう。そういう中におけるこのシーレーンの問題というものは非常に重要視される。そういう中で、今申し上げたように海洋権益を守るんだと。しかも、この間初めて中国の三隻の駆逐艦がはるばる太平洋を越えてアメリカに行きましたね。さらにオーストラリアの方も回るという大航海をなし遂げられるんだと、こういう姿もまざまざと見せておる。  これは決して甘く考えてはならない情勢だと思うんです。何も敵対するとか、そういうことではありません。しかし、国の独立、平和、さらに日本の積極的な平和国家戦略、そういう面におきましてもこの現実は厳しく見なければならない。いや、もう危機はないんだとか、朝鮮がおさまればもういいんだとか、そんな甘い情勢分析ではこの国は取り返しのつかない危機に陥る。しかも、防衛の問題は五年先、十年先を厳しく分析しながら、最悪の事態を考慮に入れながらこれに備えなければならない。こういう面におきましては、沖縄の問題についても、沖縄県知事初め県民の心情というのは十分わかりながら、しかし国家の命運をかけた安保問題というようなものについては、これは何としてもきちっと解決しなければならない。  こういうことで、こうした軍事情勢について、防衛庁長官、こうした問題は積極的に国民理解を求める、こういう姿勢が必要だと思いますけれども、長官御自身の分析の御見解なり御信念をお伺いいたしたい。
  24. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 今、委員がおっしゃいました分析並びに現状認識は全くそのとおりでございます。したがいまして、私どもはその動向には注目しておりますし、これから先も注意深く見守っていく必要があると考えております。
  25. 板垣正

    板垣正君 終わります。ありがとうございました。
  26. 大久保直彦

    大久保直彦君 私は、梶山官房長官に専ら沖縄問題についていろいろお尋ねを申し上げたいと思いますけれども、沖縄問題に入ります前に、日ごろから非常に気になっております問題を一、二お尋ねをして、御所見を伺いたいと思います。  と申しますのは、政府の衆参両院におきます施政方針演説のなされ方でございますが、衆議院において四大臣の施政方針演説が終わりますと、大急ぎで廊下を渡って参議院にお見えになる。そして、参議院で衆議院でなされた施政方針演説と同じことをまたお述べになる。そのときは既にもうテレビで政府の演説の内容はすべてわかっておりますし、場合によってはもう夕刊に報道されております。そういう状況の中でこの政府演説を聞いておる私どもの気持ちは非常に複雑なものがございます。演説される方も非常に複雑な気持ちではないか、このように思いますけれども、この点について、官房長官、御意見、御所感がありましたらお答えいただきたいと思います。
  27. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) この問題に関して政府側が格別言うべき立場にはございませんが、国会において各党各会派で御議論をいただいて結論をお出し願いたい。と申しますのは、もう御承知のように、国会法七十条に「国務大臣及び政府委員が、議院の会議又は委員会において発言しようとするときは、議長又は委員長に通告しなければならない。」、この通告に対する許可をいただいて発言するわけでございますので、衆参同時にというやり方については、衆参で御議論をいただいて御決定をいただければ、私たちは、幸いだと言うとまたこれは失言になりますから申し上げませんが、その命に従ってやりたい、こう考えております。
  28. 大久保直彦

    大久保直彦君 おっしゃったように、確かにこれは衆参両院のマターであろうかと思います。  ただ、御承知のように、IPUに参加しております百五十七カ国のうち両院制度をとっておるのが六十カ国近くございますが、二回も演説をやっている国は私の承知している限り一国もございません。アメリカは両院の合同会議を下院で開き、そこで大統領が一般教書の演説をやっておる。イギリスは女王がいわゆる貴族院で両方の議員を集めて演説をやっておる。我が国だけが、これは百年近い慣行だと言えばそれまででございますけれども、馬車に乗って登院していた時代ならいざ知らず、これだけ情報化社会の中で、今テレビで見た演説をまた我々が本会議でもっともらしい顔をして聞くというようなことは、これは早晩検討されなければならないのではないか。  冒頭申しましたように、これは両院の問題であろうかと思いますが、行政府におかれましても、行革を唱えていらっしゃるわけでございますから、やはりそれなりの御検討あってしかるべきかと存じますので、あえて申し上げておきたいと存じます。  さて、私ごとにわたって恐縮でございますが、私が昭和十八年に国民学校に入学いたしましたとき、私の担任の先生は金城先生と申しまして、沖縄出身の先生でございました。沖縄ではカナダスクという呼び方になろうかと思いますが、両親を大切にしなさい、目上の人を敬いなさい、年寄りを大切にしなさいと教わりましたことを今でも鮮明に覚えております。守礼之邦沖縄のストレートな教育であったかと思いますが、当時、日本は全体的にそういう雰囲気の中にあったかと思います。  いよいよ五月十四日まであと五十日を切る段階になりまして、今非常に大きな問題に直面をしております。こういうときに、政府におかれましては、この特措法の改正案を今国会に出されるということを御決定になりましたのか、総理が御決意をされましたのか、定かではありませんが、この問題の取り扱いについて今どういう状況にございますか、官房長官からお話を伺いたいと思います。
  29. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 冒頭に大久保委員が申されました沖縄守礼之邦、祖先を思う気持ちの極めて強い土地柄、私も沖縄を訪問するたびに祖霊に対する尊敬の念の強さ、これには頭の下がる思いがいたします。  私も古い人間で、田舎の人間でありますから、私自身も年に五遍や七遍は墓参りをすることによって自分の気持ちが落ちつきます。どんなことがあっても、事があるたびに祖先に報告をする。それが古いと言われれば古いのかもしれませんが、私はそれによって気持ちが洗われる思いがいたします。そういう日常をしているだけに、沖縄の方々が全般に今でもそういう気持ちをたくさん持っておられる、これには敬意を表しますし、行って考えますと、戦争でその祖霊の廟が、自分のうちよりも大切にしているこれが破壊され、喪失する、そういう問題に大きな痛みを感じているであろうと思います。  これは基地問題とかそういうものを離れて、沖縄の五十数年のいろんな痛み、思い、その中に祖霊に対する極めて高い尊敬心、こういうものに私たちは若干配慮が足りないのではないのかな、果たして政府に何ができるかという思いがあります。沖縄のそうした精神文化というか、祖霊に対する思いが、どちらかというと所得が低い割に若い方々の人口の定着を支えている土地柄であります。ですから、東京で勤めていても定年になると必ず沖縄へ帰るという習慣、そして大家族主義的な雰囲気があるという、この観点を抜きにして沖縄の話をするわけにはまいらない、このような思いも私はこの胸の中に重く受けとめております。  そして、今委員が特措法改正に踏み切ったのかと、私もそういう報道は承知をいたしておりますが、総理の口からは、今も昼飯を一緒に食べてまいったんですが、きょうは二時から沖縄の収用委員会の開催がある、ここで思い切った裁決が出ればいいがなとひとり言を総理は言っておりました。しかし、まだいろんな準備、万全の準備で、五月十五日以降、失権状態で軍用地を提供するわけにはまいらないという総理ないしは内閣全体の意思、これはかたいものがあります。  しかし、そこに至る道すがら、一昨日も総理と大田知事が話をされました。その中には、お互いの信頼関係は最後まで持ちつづけようという思いは双方にありますが、我々の考えでいる国益と大田知事の考えでいる県益、これはどこの都道府県でもそうでありますが、若干のずれは、地方自治と国のそれは違うようなところがあります。これはほかの県と違った国益と県益のはざまでお互いが今苦吟をしている。そして、最終的には日本全体のことを考える政府の代表として総理はみずからの決断をしなきゃならない。大田さんもみずからの個人的な心情ということよりも、沖縄県民多数の意思を総理にぶつけなきゃならない。そういうはざまにあってあの二時間の話が持たれたことを承知いたしております。  いろんな思いを込めて、この問題に責任を果たすのに私は勇敢でなければならないと思いますが、責任を果たすということは人間の感情をなくするということではございません。そういうものをお互いに感じ合いながらこの問題に対処してまいりたい、このように考えます。
  30. 大久保直彦

    大久保直彦君 ただいまの御答弁の中にもございましたように、特措法の問題はそういうことであるということを伺いました。ただ、私は沖縄問題の解決というのはもう一つ違った側面があっていいのではないかという思いを今いたしております。今、官房長官がいみじくもおっしゃったように、沖縄県民の心と申しますか痛み、これをどのように受けとめて、どのようにこれに対応していくかということが私は沖縄問題の解決の大きなかぎを持っているのではないか、このように思う次第でございます。  あの佐藤内閣の末期のときに、いわゆる核抜き本土並み、こう言って本土復帰を果たされました。あのときは核をつくらず、持たず、持ち込ませずという非核三原則を掲げながら、二十七年にわたって米軍に占領されておりました沖縄が日本に帰ってきたわけでございますが、そのときのあの感動を今私は再び思い起こしております。  これで我々も本土並みになるんだ、米軍の占領下からまた再び日本国民として平等な公平な対応を受けることができるんだというあの沖縄県民の人たちの興奮にも似た喜びの声を私は覚えておりますが、あれから二十五年経過いたしまして、果たしてその沖縄県民の方々のときめきのような期待感は今日どうなっておるのか。そのことに思いをいたし、そのことに対する対応がなされない限りこの沖縄問題の解決というのは非常に難しいのではないか、このように思います。  私は、沖縄問題の解決の大きなかぎは、沖縄県民のこの心といいますか痛みと申しますか、それをまずどう受けとめているのかということに思いをいたさねばならないのではないかと思いますが、その辺についての御所見がありましたら、もう少しくお述べをいただければと思います。
  31. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 若干私的なことにもわたりますが、私と二十違う兄貴がおりまして、その兄貴と商売をしながら実は占領下の沖縄に何遍か行っております。私よりははるかに兄の方が回数が多うございました。そして、ここでこんな話をしていいかどうかわかりませんが、私の兄はあの当時、沖縄は本当に日本に復帰していいのかしらという大変ショッキングな話を私に何遍かしております。  それは沖縄の置かれている本土復帰という願いと、もう一つは現実の経済やその他を見て、いわばタックスの低さやその他を見て、沖縄の県民の特異性は今の状態の方が生かせるのではないかという、私とは二十違う兄ですから、考え方は私よりは相当に経済的だったのかもしれませんが、そういう思いを語られたことがあります。  ですから、私は復帰前から何遍も実は行っておりました。最近はほとんど行っておりません。そして、昨年、思いを新たにして行ってまいりました。しかし、私がここ何年か本土から眺める沖縄、そして沖縄の方々が、五十数年前のあの沖縄戦、いや、もっと古くは琉球王朝の時代からのいろんな思い、そういう思いと、それからこの二十七年のいわば占領下の思い、そして復帰後二十五年になんなんとする今日までの思い、確かに感動にも似たあの復帰時の熱狂は冷めている。これでよかったのかという思いが率直に沖縄県民の間にあることは私は覆いがたい事実だというふうに考えております。  それは、私たちが本土というか中央政府から眺めて、このことをやってやれば沖縄は満足するであろう、沖縄はいいであろうと。確かに五兆円になんなんとする幾つかの投資もいたしましたけれども、それは本当に沖縄側に立った投資であったのかどうなのか。そういうものと、大田知事がよく私に言うのに、私は良好な日米関係は大切ですよ、日米安保条約は否定はいたしませんよ、しかしなぜ沖縄にこれだけの基地がという問いには、私はとうとう今日まで答えることができないでおります。その痛みは痛いほどわかりますし、そういうものにどうこれから報いていかなきゃならないか。  いわゆる島田懇談会という沖縄の基地所在市町村の振興を図るための懇談会をつくっていろんな御提言をちょうだいしましたが、ちょうど七カ月、きのうでその役目を終わって、昨晩一応の解散式をいたしました。それぞれ本土の方も沖縄の方も入ってやっていただいたんですが、こんなに思い切った仕事ができたのは初めてだと。口の悪いというか、沖縄タイムスや琉球新報の社長が入っているんですが、おれは会社で首になるなあって言いながらこれをやったんだぞ、しかし梶山、よくこれを受けとめていると、その点ではお互いの信頼のきずな、しかし今やっておることはおれはどんなことがあっても賛成しませんよと、こう言われました。しかし、賛成しなくても、梶山は日本政府としてやるべきことはやるんだろうけれども、それで友情はお互いになくしたくない、いや、友情だけではなく、これからの沖縄をどうするかという問題は今までの反省や後悔を込めて私たちはやっていかなきゃならない、このことだけはお互いに約束をし合おうではないかと。  私が今ここで百方言を費やしてみても、これから先のことを証明するわけにはまいりません。私は沖縄を死に場所と心得て政治活動に終始したい、こういう思いでいます。
  32. 大久保直彦

    大久保直彦君 沖縄の戦争がいかに大変であったかということは、四十五万県民のうちの三分の一がお亡くなりになった、また中学生、女学校の若い学徒があるいは鉄血勤皇隊と称され、または女性の学徒隊と称され、ひめゆりの塔の事件等々いろいろございます。そこに参加して生き残られた方々の手記がたくさんありますけれども、きょうは時間の関係で読んでいる暇もございません。  この二十五年間、二十七年間の占領下時代と全く変わらない姿が続いてきた。そして、あと二年もいたしますと、米軍に占領されていた年と全く同じ年月を数えるに至る。その間、米軍構成員による犯罪なども五千件を突破しておる。沖縄県民にしてみれば、日本に復帰してから何が変わったのか、何にも変わっていない、こういう一人一人の思いというものは私は筆舌に尽くしがたいものがあると思うんです。  既に官房長官も御自身でそういう思いに至っていると思いますが、今ここで沖縄の問題を大きく転換し解決するためには、沖縄に夢と希望とこれから将来へのビジョンが示されなければ、今まで沖縄県民のたどってきた歴史の上からはどんなことを申し上げてもとても納得することはできないんじゃないかという思いを私はいたしてなりません。  そこで、私はこの沖縄の将来を展望いたしまして、いわゆる沖縄を経済特区地域に指定をする、そういう思い切った政治的な決断を今するときではないか、このように思いますけれども、御所見はいかがでございますか。
  33. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) これはまだ政府として申し上げる段階にはなっておりません。ただ、私個人は前々からそういう思いを抱いておりました。そして、最近は非公式に閣僚の各位にもその思いを伝えております。  というのは、沖縄の長い歴史を考えてみますと、南西に開かれた海洋国家であったはずですし、その後もいわば海洋の島として生きてきた長い歴史がございます。こういうことを考えますと、今そこに道路をつくった、箱物をつくったということで沖縄の振興ができるはずはないと思います。  ここには地方自治のベテランもおいででありますが、確かに明治以来全国を画一的な政策、教育その他でやることによって日本の国力を増してきたという現実はございます。しかし、それが逆に衰微する力にもなって地方の特色を生かし切っていない。ですから、これからの地方というのはそれぞれの特性を生かした生き方をすることが地方自治の本旨であろうと思います。  そういう意味で沖縄というのを見ますと、沖縄というのは過去にいいお手本があります。私の兄が三十年前にあんなことを言ったのも、兄貴は兄貴らしくそういう過去の沖縄に思いをいたしていたのであって、日本の中に入ってしまって果たしていいのかなという、その兄貴の危惧が今日当たっているという気がいたします。その反省を込めて、私は私の親がわりであった兄にどうして報いるかということも反面ございます。そういう思いがあって、何冊かの書物をちょうだいしたり、いろんな御意見を聞いております。  その特区制度はどんなものができるか。よく一国二制度と言われますが、一国二制度があろうはずがございませんが、私は沖縄が伸びるためにどういう特別措置が必要か、どういうものをやればできるのか。そして、よく私も口に出して言う蓬莱経済圏、こういうものが一挙にできるとは思っておりません。  ですから、少なくとも沖縄と似て海洋的に栄えているハワイ、それはいわば沖縄とアメリカを結び、アメリカという背景を持って中国と話をする、そして中国という背景と台湾という問題、こういうのを見ますと、南西地域に開けた日本の先端の最高の場所があるはずだ。これに着目し、これを開くことが沖縄が自立をし本当の意味で発展をする大きなもとである、こういうことをぜひとも諸賢の力をかりてやってみたい。先ほど申しましたように、私は沖縄を死に場所と見つけたりという思いは実はそこにあるわけであります。何とかこの問題で皆さん方のお知恵を拝借しながらそういう体制をつくってまいりたいと心からお願いを申し上げます。
  34. 大久保直彦

    大久保直彦君 官房長官が沖縄担当大臣をお受けになったということは、それなりの相当の御決意の上でのことであろうとかねがね拝察いたしております。  私のいとこが沖縄に嫁いでおりまして、いろんな交流が頻繁にございます。これがすべてであるとは思いませんが、私たちの時代は急に目の前から基地がなくなるなどということは想像ができない現実である。しかし、私たちの子供や孫には私たちと同じ道を歩ませたくない、何とか沖縄が自立して発展できるようなことを私たちは親としてぜひ残せればこんな幸せなことはない、これが我々の祖先に対する御恩返しでもあると思います。  沖縄には、一緒になろうよというプロポーズの言葉に、一緒のお墓に入らないかという表現があるんだそうでございますけれども、やはり家族制度というものをたっとび、自分たちの子供や孫の将来を考えますと、官房長官も今おっしゃったように、これがすべてではないと思いますけれども、沖縄が経済特区として、梶山流で言うと蓬莱経済圏、こういう形で新しい道を見つけるべきである、こういうお考えであると。  今、具体的なタイムテーブルは明示できないまでも、死に場所と見つけたからには、沖縄担当大臣であらせられる限りこの任期中に何らかの萌芽が見られるであろう、このように期待をいたしたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  35. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 沖縄担当の大臣としてよりも、政治家あるいは梶山個人として死力を尽くしてまいります。これが終われば私はやめるという思いのものではありません。死力を尽くします。
  36. 大久保直彦

    大久保直彦君 余りこういう機会がないので、ちょっとまとめてお尋ねをしておきたいと思いますが、蓬莱経済圏なり沖縄経済特区という構想の中には、いわゆる法人税や関税の軽減の問題、または台湾や香港からのノービザ制度の問題、あるいは将来フリーポートに発展するためには窓口の一本化の問題等々も長官の胸の中では構想として持っておられる、こういうふうに理解をさせていただいてよろしゅうございますか。
  37. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 委員からはっきり法人税を、あるいはノービザをと、こう突きつけられて即答のできる環境にはございません。確かにいろんな思いが去来をしておりますが、これならば一本でいけるという成案は残念ながらまだありません。これは皆さんと力を合わせながら、これからの沖縄のさらなるこの十年、二十年を見据えてやっていくべき大問題だと思いますので、知恵を合わせてやってまいりたい、このように思います。
  38. 大久保直彦

    大久保直彦君 私があえてこの時期にこんな問題を持ち出しておりますのは、冒頭に御意見がございましたように、沖縄自体というか、我が国全体が今大きな一つの岐路に立たされておる。こういうときに、何よりも沖縄県民の理解と協力を得ることなしにはこの事態は突破できないのではないか、私はそんな思いがいたしてなりません。  であればこそ、確かに今事態そのものは十年、二十年という大変な歳月を要する事態であるかもしれませんけれども、私はあえてこの二十五年間の沖縄県民に対する我が国政治のすべてを一挙に解決するような、またその二十五年の空白の時間を一挙に埋めるような大英断があってしかるべきではないか、今こそが政治家の決断のときではないのかということを考えますと、今私どもに思い当たり、これならばというのは、官房長官も御発言のこの特区構想ではないか。  ずっと今まで沖縄というのは権力に対して非常にアレルギーを持っていまして、手をつないで一緒に行こうという横並びの世界なんですね。ずっと押しつけられたままやってきた二十五年のこの状況をもう大逆転して、沖縄の将来について与野党挙げて沖縄の県民の方々と一緒に沖縄の将来を考える、そういう展望が今ここに示されてよろしいのではないか、そんな思いがいたすものですから、大変しつこく伺っておりますけれども、あと数十日の間に私たちも何らかの決断をしなければならない、そういうことを考えますと、五年、十年という余り長期のビジョンに立った発想はこの際ちょっとなじまないのではないかなと思いますので、あえてもう一度お伺いをいたしておきたいと思います。
  39. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 時あたかも軍用地の期限が切れるというか、失権状態になる時期にこの話を申し上げることを私はむしろ逆に大変恐れております。というのは、こういうものが何か取引の材料にされるのではないかということを県民の方たちがお思いになれば何よりも困ることであります。ですから、失権状態をつくらないという総理の思想、それが終われば私は全力を挙げて各党で御協議を願い、そういうことができる体制をどうしてもつくり上げていきたい。  今多くを申し上げることは、この時期になぜ言わなきゃならないのかという私自身にも実は恥じらいというか、そういうものに対する懸念を持たざるを得ません。大久保委員のお気持ちは痛いほどわかりますが、私が死に場所と見つけたということだけでひとつ御了解を願いたいと思います。
  40. 大久保直彦

    大久保直彦君 時間も参りましたのでやめたいと思いますが、あえて蛇足になるかと思いますが、数カ月前に長官がこの構想を打ち上げられてから、今消えておるんですね。どうなったのかという懸念の声すら出てきております。私は長官が何もあめとむちみたいな発想に立っておられるとはゆめゆめ思っておりません。それよりも、やはりタイミングというものがあると思いますので、今このことすら大変な大仕事である、何らかのタイミングを見つけて勇猛果敢にそれに突き進まなければならないときが今なのではないかなと私は逆に思っておる次第でございます。  長官の一層の御努力を期待いたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  41. 永野茂門

    ○永野茂門君 それでは、本日の質問は防衛庁長官に集中をいたしたいと思います。  私は内閣委員になって満十一年に近くなっているわけでありますけれども、この間こういう委嘱審査などにおいて予算の細部について質問したことは一度もありません。ありませんが、最近の予算が少しずつ心配になってきまして、少し細かいこともお伺いしておかなきゃいけないな、こういうように二、三年前から感じてきておりましたので、本日は少し細かいことを、細部とは申し上げませんけれども、やや具体的なことについて数項目にわたってお伺いをしたいと思います。したがいまして、長官、それぞれのつかさ、つかさで答えるということをおやりになっても本日は結構ですと申し上げたいと思います。ただ、時々御感想だとか御決意だとか承ることになるかと思いますので、よろしくお願いいたします。  まず最初に、教育訓練についてでありますが、教育訓練が平時の自衛隊において中心的な課題である。もちろん災害派遣でありますとかあるいは国際貢献で出ていくとか、非常に大事な仕事がありますけれども、昔から百年兵を養うは一日の戦いに勝つためであるというようなこともありますように、教育訓練そのものが自衛隊の日常の極めて重大な事業であるということは言うまでもありません。  そこでまず、九年度予算における教育訓練費がどのくらいになっておるかということと、それからそれは前年度比何%の伸び率であるかということを承ります。
  42. 粟威之

    政府委員(粟威之君) 今御審議平成九年度予算でございますが、教育訓練関連経費はトータルで千三百五十七億円でございます。対前年度伸び率が一・五%増、こういうことになっております。
  43. 永野茂門

    ○永野茂門君 一・五%というのは平均よりちょっと下がっている、こういうことと認識いたします。  さてそこで、ほかのものに比べて伸び率が平均よりちょっと低いということはどういう影響をもたらすかということをチェックしたいと思いますが、この予算で訓練は十分に実施できる、所要の練度といいますか、戦うレベルは十分維持できる、そしてまた新しい兵器、装備等に対する訓練も十分できる、日米の共同訓練も十分できる、こういうように考えているかどうかについて、次の件について承りたいと思います。  その第一は、ホーク部隊、ペトリオット部隊、それから地対艦誘導弾部隊、これはレンジ射撃を主として米国で行うわけでありますが、これの参加中隊数はどういうような変遷であったか、できれば平成五年度から九年度予算で計画しているところまで、これを第一に承りたい。
  44. 粟威之

    政府委員(粟威之君) まず、ホーク部隊でございますが、これは平成五年度から平成九年度まで十七個中隊で変化はございません。  それから、ペトリオット部隊は平成五年度は十六個隊でございました。六年度は二十個隊、七年度は二十三個隊、八年度は二十四個隊、それから平成九年度も二十四個隊を予定しております。  それから、地対艦誘導弾部隊でございますが、これは平成五年度が二個連隊、六年度、七年度は三個連隊、それから八年度、九年度は四個連隊でございます。
  45. 永野茂門

    ○永野茂門君 編成の時期に応じてそれぞれ十分な訓練に派遣をしておる、こういうことですね。  その次は、陸上自衛隊特科部隊の長射程射撃訓練の参加中隊数と、それから海上自衛隊のP3Cの群訓練への参加機数の変遷を同じような年度でお願いいたします。
  46. 粟威之

    政府委員(粟威之君) 陸上自衛隊の特科部隊の長射程射撃訓練につきましては、五年度、六年度はそれぞれ二十三個隊、二十九個隊でございました。平成七年度におきましてこれが二個隊になりまして、八年度は八個隊、九年度は十七個隊に回復するように努力をしているところでございます。  それから、海上自衛隊のP3Cの群訓練につきましては、五年度、六年度は群訓練回数が年間四回でございました。七年度、八年度においてはこれが二回になりましたが、九年度予算においては各群一回分を回復して年間三回というふうに今努力をしているところでございます。
  47. 永野茂門

    ○永野茂門君 いずれも平成七年度に一度、訓練軽視というのは言い過ぎでありますけれども予算を削減した時期があって、今は回復中である、こういうように了解していいわけですね。
  48. 粟威之

    政府委員(粟威之君) 先ほど申し上げましたように、七年度に大変減少いたしましたが、九年度で回復するように努力をしているところでございます。
  49. 永野茂門

    ○永野茂門君 陸海空それぞれ特色があるわけでありますけれども、日米共同訓練はどういう規模あるいはどういうレベルで年何回ぐらいやるかということを同じ年度についてお願いします。
  50. 粟威之

    政府委員(粟威之君) 陸上自衛隊の日米共同訓練につきましては、日本側は連隊基幹と申しますか連隊を中心に、それからアメリカは大隊が中心で、年四回行っておるところでございます。  それから、海上自衛隊もいろいろな訓練がございますので規模は一概に申し上げられませんけれども、対潜特別訓練、それから掃海特別訓練等の実動訓練を年間約七回から八回程度行っております。  それから、航空自衛隊でございますが、これも年によって若干相違がございますが、年間四回から七回ぐらい、延べ数十機から数百機の規模で戦闘機戦闘訓練等の訓練を実施しているところでございます。  さらに、統合幕僚会議が中心になりまして日米共同統合実動演習というのをやっておりますが、これは六年度及び八年度に日米それぞれ人員約一万人程度の規模で共同訓練を実施しているところでございます。
  51. 永野茂門

    ○永野茂門君 一番最後に言われました統合訓練につきましては、隔年にやるという構想ですか。そうすると、九年度はないと。    〔委員長退席、理事板垣正君着席〕  訓練の中隊数でありますとかあるいは機数でありますとか回数、規模、レベル等は一時期若干のへこみがあったけれども今回復中である、多くのものはほとんど変わっていない、こういう結果でございますが、先ほど申し上げましたように、訓練というのは平時における最も重要な事業の一つでありますので、今後とも内容をますます充実するように継続して頑張っていただきたい、こう思います。  長官、御感想を承ります。
  52. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 確かに今厳しい予算状況でもございます。それと同時に、今までいわゆる駐留軍経費等について義務的経費がふえてまいりましたために、そういうことで訓練等がやや減ったりなんかしておったこともございましたが、それが平準化してまいりましたのを機に、今訓練等においても復活をしてきておるところでございます。  ただ、これから先、御承知のとおり聖域なきいわゆる財政構造改革ということで進めていきますときに、せっかく回復して練度を高めようとしている今日、これがまた後戻りすることのないように、やはり必要なものはきちっと確保するように努力しなければならないと思っているところでございますが、非常に今財政状況が厳しいということで聖域なき財政構造改革を目指していろいろと検討が行われるようになってきておりますので、そういう中でどういうふうになりますか予断を許さないところがございますが、気持ちとしては今申し上げたとおりでございます。
  53. 永野茂門

    ○永野茂門君 長官、今財政再建の問題で、聖域なき歳出削減といいますか、あるいはロングレンジの計画についてはばっさりやっていくというのが政府のやむを得ざる方針であるということを強調されました。    〔理事板垣正君退席、委員長着席〕  そこで次に、装備品の取得について若干今心配になることについてお伺いしたいと思いますけれども、こういう大原則が本年度といいますか昨年の終わりごろから財政再建の構想がだんだんと明らかになる中で始まっておるわけであります。原則が確立されつつあるわけでありますけれども、防衛装備品につきましては、この原則が確立する前から、例えば若干の国庫債務負担行為になっている重要装備品の甲類、陸上自衛隊でいえば甲類等に類するものが多いことになるはずでありますけれども、支払いを繰り延べるという方式がとられ始めておるわけであります。まず、九年度予算においてそういう繰り延べの主要な項目と金額は陸海空自衛隊それぞれどのくらいでありましたか承ります。
  54. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 平成九年度予算案におきましては、委員御指摘のように、総計で六百七億円の歳出化の繰り延べ措置を講じようとしているわけでございます。その内訳でございますが、陸海空で分けさせていただきますと、丸めた数字でございますが、陸上自衛隊で九十五億円、海上自衛隊三百五十七億円、航空自衛隊百十七億円、研究開発関連で技術研究本部で三十九億円となっております。
  55. 永野茂門

    ○永野茂門君 海空自衛隊の主要な品目を例として挙げてください。
  56. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 幾つかの例をお話しいたしますと、一つはASR、それからAGS、MSC、それぞれ救難艦、調査艦あるいは掃海母艦的なものでございます。
  57. 永野茂門

    ○永野茂門君 繰り延べになったものは最終的にはどういうように措置するわけですか。
  58. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 平成九年度の予算案におきましては、歳出化を一年間繰り延べさせていただいております。今後、十年度以降において、歳出化についてそれぞれの予算編成過程で議論、検討されることになると思います。
  59. 永野茂門

    ○永野茂門君 そこで、中期防の見直しということが俎上に上がっている。俎上に上がっているというのは言い過ぎかもしれませんけれども、少なくとも非常に強い話題に上がっているわけで、検討項目になっておるわけであります。中期防にわたってこういうような直接的な歳出削減の方法を仮に続けられるということになりますと、これを生産し補給する企業等におきましてはいろいろと難しい問題が生ずるのではないか、こう思うわけでありますが、そういう影響についてどういうように評価されますか承ります。
  60. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 御指摘でございますが、今回実施いたします歳出化の繰り延べにつきましては、既に予算上認められた装備の中間前金を対象とするものでございます。これ自身は装備の調達数量の減少につながるものではございません。しかしながら、所要の金利相当分は政府が負担いたしますが、企業にとりましては資金計画の修正の必要性が出てくる等の影響が生じるものと考えられます。  九年度予算における歳出化の繰り延べにつきましては、我が方といたしましては、九年度限りの緊急避難的な特殊異例な措置として関係企業の協力を仰いで実施に移そうとしているものでございます。当然のことながら、十年度以降の予算につきましては現段階では確たることを申し上げることはできません。
  61. 永野茂門

    ○永野茂門君 申し上げることはできませんというのは、現実のものになっていないからということでしょうけれども、私が承ったのは、いろいろな削減のために、目的のためにそういうようなことが適用された場合にはどういう影響がありますかと承ったわけでありまして、今見積もることが難しいならそれで結構です。  企業の方の資金運用計画もさることながら、ラインをどうするかとか、あるいは技術者の配置をどうするかとかということについても、やはり資金運用との関係でいろいろと問題が出てくるでありましょうし、それから続けられた場合に資材の手当て等もなかなか難しい状況が出てくるんじゃないかということを心配するものであります。そして、それは納入される装備品の問題にも影響を与える可能性がそのうちに出てくるんじゃないかと思います。  いずれにしろ、企業の方、私は企業の肩を持つわけではありませんけれども、最終的に国防の質がどういうようになるかというようなことを考えた場合に、今まで企業が一生懸命協力してきた状況と比較して、企業がこれを承知するからよろしいというような程度の考え方では私は難しいんじゃないか、まずいんじゃないかと思います。  奉仕しているとは言いません、ちゃんとした利益はとっているわけでありますけれども、とにかくそんなに多くの利益はとれない状況でいろんなものを犠牲にしながらやっておる企業でありますので、その辺についてもいろいろ配慮をして、こういうようなやり方が適用されることが少なくなるように御留意をお願いしたいということをこの第二問では申し上げておきたいと思います。  その次は、即応予備自衛官について承りたいと思います。即応予備自衛官は長年準備したものであり、来年度から準備が整ってようやく発足していくわけでありますが、この間の防衛庁の方の努力に対しては敬意を表したいと思います。  そこで、来年度の即応予備自衛官は何名ぐらいで、どの程度の経費を準備しておりますか。やや細部にわたってお願いします。
  62. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 九年度におきましては、即応予備自衛官の員数としては千三百七十三人を予定しております。実際の採用は年度末に七百人ということを念頭に置きまして、九年度の予算案における即応予備自衛官に関する経費につきましては、雇用企業給付金、招聘旅費、募集パンフレットあるいは個人被服等々で一億三千百万円を現在計上させていただいているところでございます。
  63. 永野茂門

    ○永野茂門君 そこで、この即応予備自衛官はどういうように使われるんですか、御説明願います。
  64. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 中期防衛力整備計画におきまして、この五年間で五個の師団を改編いたしまして、うち二個を旅団に改編する予定でございます。そして、その編成定数を十八万人から十七万二千人程度に削減していくわけでございますが、そのうち五千人程度を即応予備自衛官でということを考えているわけでございます。  これは即応予備自衛官をそれぞれ各師団なり旅団の中核部隊、コア部隊というものを一つつくりまして、そしてそれを例えば二割の常備自衛官で幹部その他管理部門を占め、残りを即応予備自衛官で編成いたしまして訓練等を行うわけでございますが、防衛出動等必要な場合に直ちに招集してその部隊に配属して、そして常備自衛官と行動をともにする、そういう構想で考えているところでございます。
  65. 永野茂門

    ○永野茂門君 年間の訓練はどの程度の訓練を行いますか。
  66. 粟威之

    政府委員(粟威之君) 年間三十日を考えております。
  67. 永野茂門

    ○永野茂門君 そこで、この即応予備自衛官を充足し訓練していくためにはいろんなことを考えなきゃいけませんが、特に即応予備自衛官にどういう人たちが応募してくれるか。そしてまた、それを抱えている企業にはいろいろと迷惑をかけるわけでありますが、これは国を守るためですし、あるいは広い意味の国の安全保障のために非常に重要なことであって、国民理解を得ること、そしてまた各企業の支持、理解を得てこの制度充実していくということが必要だと思いますけれども、それについて今までどういうような御努力をされたか、そしてその努力に対してどういう反応があったか、以上の二つのことをつけ加えてお聞きしたいと思います。
  68. 大越康弘

    政府委員(大越康弘君) 即応予備自衛官の制度につきましては、現在国会におきまして法律案あるいは予算案の両面から御論議をいただいておりますが、平成九年度におきましては即応予備自衛官を導入しますのは第四師団管内でございますので、その管内の関係者に対しまして現在前広にいろいろと説明を行っているところでございます。  とりあえずの反応として申し上げますと、現職の予備自衛官につきましては、訓練招集の際にいろいろと聞いておりますけれども制度ができればぜひ志願をしたいという積極的な意思を表示する者がいる反面、処遇の観点から志願に消極的だという者もおります。  それから、企業側の反応といたしましては、即応予備自衛官を雇用しております企業に支給することとしております雇用企業給付金、この五十一万円については魅力的であるといった意見や、あるいはシフト制の職場でありますので、交代要員を考慮すれば部署によっては雇用することが可能である、こういった肯定的な意見を出す企業もございますけれども、反面、訓練に招集される場合には業務に支障があるとか、あるいは交代の処置が困難であるといったような否定的な意見を出す企業もございます。  いずれにしましても、即応予備自衛官制度を円滑に運営していくに当たりましては関係者の理解と協力を得ることが不可欠でございますので、こういった観点から、防衛庁といたしましては今後積極的に広報活動を展開してまいりたい、このように考えている次第でございます。
  69. 永野茂門

    ○永野茂門君 即応予備というのは、平時の経常的に維持する戦力は抑えて、必要なときに即応的に戦力を充足するという極めて大事な制度だと思います。初めての制度であり、戦後五十年たってからこういう制度ができるわけでありますけれども、これを創設し、維持し、そしてちゃんと充実していかなければならないと思いますが、そういうことについて長官の御決意を承ります。
  70. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) これから先、若年者が減ってくるというようなことも頭に置かなければなりません。そういうときに、我が国の防衛を考えますと、いろいろと制度的にも考えなきゃならない。そういうときに皆さん方がいろいろと考えられまして、この即応予備自衛官制度を導入することによって、合理化、効率化、コンパクト化の一環としてこれを乗り切っていこうというふうにされたわけでございます。  私も就任して間もないときでございましたけれども、やはりこれが今から先の陸上自衛隊のあり方を考えるためには一番いいということで、これを今国会に出しまして、先般衆議院の方で法案を通していただいたわけでございます。間もなく参議院の方にかかると思いますので、よろしくお願い申し上げるわけでございますが、今言いましたように現在の時世に合った制度じゃないか、そういうふうに思っておりますので、ぜひこの制度を定着させることによって現在の厳しい状況を乗り切っていこうと思っております。  ただ、これを実行していくためには、各企業にも、またがって自衛官として勤務しておられました方々にも御理解を賜っていかなきゃならないわけでございますから、広報活動等にも十分に力を入れてまいりたいと思っております。
  71. 永野茂門

    ○永野茂門君 最後の質問といたしまして、いわゆる在沖海兵隊の県道越え射撃を本土の方に移転しようという構想でいろいろと今折衝、準備が進められておるわけでありますが、この準備が九年度の適当な時期に十分に間に合って完成するのであろうかどうかということ、そしてまた個々の地元の問題は別にいたしまして、全般としてそれぞれの地域に、演習場周辺の地域においては一般的にどういうような要請があるのでしょうか。それをお聞かせいただいて、私の質問の最後にいたします。
  72. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 当初、村山内閣のときにこういう決定をされまして、一時、大分反対その他の声もございましたけれども、沖縄の実情等からいって、一年間に十日ぐらいならばそれはやむを得ない、引き受けようじゃないかというような空気も出てまいりました。今、各地方公共団体その他にお願いをしておるところでございまして、当初と違い、かなり前向きに検討をしていただいておるところでございます。  したがいまして、平成九年度からはぜひ本土の五カ所で、五カ所といいますか、四カ所になるかもしれませんけれども、要するに三十五日間本土で、各地域では少なくとも十日以内ということでございますから、そういうことで実施すべく今一生懸命やっているところでございます。  なお、そのほかに、今までもそういう演習場等では騒音対策がおくれているじゃないかとかいろんな要望等がございました。それもこの機会に解決していきたいというふうに思って、いろんな出てまいります情報等については積極的に今対応しておるところでございます。
  73. 永野茂門

    ○永野茂門君 選挙のときも、政治家の中にいろいろ反対の、地域との関係でこれに迎合なさっていた方もいらっしゃいますけれども、非常に重要な問題でありますし、沖縄の負担を本土の方でも分担するというのは非常に重要なことでありますので、防衛庁の方々は力を結集してしっかりとお進めになることをお願いして、私の質問を終わります。
  74. 清水澄子

    ○清水澄子君 今回はアジア歴史資料センターについてお尋ねをいたしますが、本題に入る前にぜひ官房長官の御認識をお聞かせいただきたいと思うわけです。  実は先週、私は与党三党の訪韓団の一員といたしまして韓国を訪問し、新韓国党なり政府、与党のいろんな責任者の方、そして金泳三大統領にもお会いいたしました。その際に、日本政治家や高官の中に韓国の国民感情を逆なでする発言がしばしば行われる、そういう歴史認識について非常に問題があるという指摘をされました。  日本はアジアの中で唯一、近代において植民地支配や侵略戦争の歴史を持つ国であります。近隣諸国との過去の不幸な関係を克服していくために、これらの歴史の事実というのは正しく認識して、そしてアジアの人々との新たな信頼関係を築いていく必要があると思うわけですけれども官房長官日本の植民地支配や侵略戦争の歴史についてどのように認識をしておられるのか、またもう一つは近隣諸国との過去の不幸な関係をどのようにすれば克服できるとお考えになっているか、ぜひお聞かせいただきたいと思います。
  75. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 日本の近代史というか明治以来の歴史を顧みますと、確かにやむを得ない自衛のための戦いもあったし、幾つかの問題がありますが、第二次大戦の末期というか後半においてはそれぞれアジアの近隣諸国に大変御迷惑をかけるような事態が多発した、このことは率直に認めなければなりませんし、そういうものを正当に見据えながら日本の近隣外交というものを進めていかなければならない、このことは先ほど板垣委員の質問にもお答えしたとおりであります。
  76. 清水澄子

    ○清水澄子君 私は歴史の事実は事実としてしっかり認識するところに未来が創造できると思っております。  そこで第二の質問ですけれども平成六年八月三十一日の村山首相談話の中で、そういう観点からアジア歴史資料センターの設立の検討が約束されております。それから二年半たったわけでございますが、今日まだ具体化されておらないわけですけれども、橋本内閣においてはアジア歴史資料センターを具体化するためにどのように取り組まれていくのか、お尋ねしたいと思います。
  77. 平林博

    政府委員(平林博君) 先生に大変御心配をかけていること、じくじたるものがございますが、橋本内閣のもとにおきましては、一つはこのアジア歴史資料センターの設立が見られた場合に収集すべき資料、データ等のあり場所の検索、これは海外に行っても調査を行っておりますが、そういう準備作業を御予算をいただいてやっております。また、それと並行いたしまして、センターの設立につきましてその構想の具体化についていろいろと関係者とお話をしているということでございます。
  78. 清水澄子

    ○清水澄子君 このセンターの設立検討のための有識者会議では平成七年六月に提言がまとめられているわけですけれども、そこでは、この構想はアジア地域の人々と歴史認識をめぐる対話を深めていく、そして来るべき二十一世紀における日本世界との共生の基盤を構築する上で極めて重要な意義を有するものと考えるとあるわけですけれども、このアジア歴史資料センター設立の意義については橋本内閣においてもこの提言と全く同じであるかどうか、官房長官、お願いいたします。
  79. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 全く同じであります。
  80. 清水澄子

    ○清水澄子君 それで、さきの提言では、日本とアジア近隣諸国との間の近現代史に関する資料とか資料情報の収集と提供を挙げておるわけですけれども、これらについて内外の研究者の関心と期待は非常に大きいものがございます。現在までどの程度の資料の所在をつかんでおられるのか、お伺いしたいと思います。
  81. 平林博

    政府委員(平林博君) 今の御質問につきましては、専門家等にお願いいたしまして、先ほども申し上げましたように、センターが設立された場合に資料を整備する、その準備作業としてやっているわけでございます。いずれこの成果物を公表したいと思うのでございますが、現在までのところ、主要国における歴史資料としての公文書の収集システムを比較しながら、現在、日本を中心としたアジアの近現代史についての資料のありか、その所在地あるいは所在する資料の分野、その量あるいはどういうところに公刊資料があり、どういうところに私的な資料があるか、そういったことを含めまして専門家の方々に調査を依頼してやっていただいているところでございます。  先ほど申し上げましたように、少しずつ調査の結果が整理できてきておりますので、遠くない将来に整理ができ次第発表したいというふうに考えております。
  82. 清水澄子

    ○清水澄子君 しかし、アジア歴史資料センターについては現在までまだ所管官庁も決まっていないのではないでしょうか。政府はどこを所管庁にするお考えなのか、また今後このセンターをどの程度の規模とか、日本の中でどういう位置づけをされていかれるのか、そういうビジョンについてぜひ長官にお答えいただきたいと思います。
  83. 平林博

    政府委員(平林博君) 恐縮ですが、長官のお答えの前に事実関係だけ申し上げさせていただきたいと思います。  今、先生御指摘のように、所管省庁が現在はまだ決まっておりませんので、内閣の方で関係省庁と協議中ということでございますが、新しい年度の予算が成立した場合には、できるだけ早いタイミングで所管省庁と対応を考えていきたいというふうに考えております。  また、どういう規模、どういう種類のものを考えているかということにつきましては、幾つかのアイデアがあります。また、国立国会図書館等のお知恵も今おかりしておりますが、この点につきましては新しい年度になってからできる準備室、こういうところを中心に考えていきたいというふうに考えております。
  84. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 今、外政審議室長からお答えがありましたとおり、内閣において外政審議室が窓口になってこの調整を行っております。そういうことでございますので、予算が発足し次第この準備室を立ち上げ、さらに所管等を決めながら、規模その他に向けての確定作業を行ってまいりたい、このように考えます。
  85. 清水澄子

    ○清水澄子君 ぜひ国民にも政府姿勢がはっきりわかるように、それからアジアの人々にも日本政府がこういう作業を始めているのだということがわかるような、そういう姿をつくり出していただきたいことを要望しておきます。  次に、防衛予算について防衛庁長官にお伺いいたします。  橋本首相は、九八年度予算をマイナス予算としておるなど、財政構造改革五原則をさきの政府・与党の財政構造改革会議に示しております。SACO関連経費六十一億円を加えた九七年度防衛関係総額は四兆九千四百七十五億円になります。この方針でまいりますと、九八年度防衛関係費は対前年度伸び率二・一%を下回って減額をすることになるわけですけれども、防衛庁はこの方針で臨んでいくという御決意でございますか。
  86. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 財政構造改革会議においては、聖域を設けず、あらゆる経費を対象に議論が行われているところでありまして、防衛関係費につきましても、同会議において示された基本的な考え方に従って、今後、企画委員会において議論が行われるものと承知しております。  いずれにしましても、防衛関係費については財政構造改革会議において、防衛力整備については我が国の安全保障上の観点と経済財政事情等を勘案し、節度ある整備を行うことが必要との観点から基本考え方が示されているものでありまして、防衛庁としましても財政構造改革会議における議論を踏まえて真剣に検討してまいりたいと思います。
  87. 清水澄子

    ○清水澄子君 今の財政構造改革五原則によりますと、改革の達成時期は二〇〇三年として、そして昨年末に閣議決定した財政健全化目標年次二〇〇五年よりも二年早めておるわけです。こうなりますと、必然的に平成八年度から平成十二年度までの新中期防の二十五兆一千五百億円の見直しが必要になると思いますが、その点はそれを見直すという長官の御決意でございますか。
  88. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 現行中期防におきましては、三年後にはその時点における国際情勢、技術的水準の動向、経済財政事情等内外諸情勢を勘案し、この計画に定める所要経費総額の範囲内において必要に応じ見直しを行うということになっているわけでございますけれども、ただいま長官の方から答弁がありましたとおり、財政構造改革会議におきまして、聖域を設けず、あらゆる経費を対象に議論をするということでございまして、我々としてもその方針に従ってこれから真剣に検討してまいりたいと考えております。
  89. 清水澄子

    ○清水澄子君 新中期防においてF2対地支援戦闘機四十七機を整備することになっておりますね。これは一機の価格が百二十億六千二百万円であると思います。それを四十七機整備すると五千六百六十九億円に達すると思うわけですが、これは自衛隊の整備する航空機としては最も高価な戦闘機の一つだと思います。  ところで、平成九年度予算には八機の調達が出されているわけですけれども平成九年度に予算化しているのは、これは八千九百万円にすぎないわけですね。残り九百六十四億六百万円というのは結局ツケというんですか、後年度負担に回しているわけですが、九九%以上の予算を後年度負担に回す防衛予算の組み方といいますか、こういうことで本当に防衛予算の伸びを抑えられるのかどうか、その点、防衛庁長官はどのようにお考えでしょうか。
  90. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 確かにその辺の問題は防衛予算にはあるわけでございます。しかしながら、発注しましてもそれができ上がるのにはかなり期間がかかる。そして、発注したときには、契約にかかる経費等、前渡金といいますか、そういうようなことで、後年度に受け取ってからそのときに支払うというようなことになりますために従来からこういうふうになってきているんじゃないかと思いますが、委員が今おっしゃいましたように、後年度負担がずっと決まってきておりますだけに、当年度の予算を抑えろということになったときに非常に厳しいわけでございます。  私が就任しましてからも、今年度も、平成九年度の予算編成のときも、とにかくいろいろ検討しましたけれども、ぎりぎり六百七億円を繰り延べたという形でやりくりしたような関係でございまして、この辺につきましては大変厳しい状況にあるということについてもぜひこの際御理解しておいていただきたいと思うわけであります。  今、制度的な問題として、債務負担行為はとにかく五年で打ち切られるわけで、法律上も五年が限度でございます。そういう問題等もございまして、この辺をどうやって解決していくか、いろいろ知恵を出さなければならないなと思っております。
  91. 清水澄子

    ○清水澄子君 しかし、このF2対地支援戦闘機というのは昭和六十二年には一機五十一億円であったと思うんです。それが今百二十億円ですし、米ソ冷戦時代の戦闘機であるわけですね。ですから、こういう問題はやはり見直して削減の対象にしていくということが必要だと思うわけですけれども、防衛庁はこのF2対地支援戦闘機についてメーカーとの間に何機の製造請負契約をされているのでしょうか。
  92. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 支援戦闘機F2についての御質問でございますが、現用の支援戦闘機F1、それから高等練習機T2の減耗を補充いたしましてその近代化を図る等のために、平成八年度以降F2は百三十機取得することを計画しているところでございます。現行中期防におきましては、十二年度に支援戦闘機部隊一個飛行隊、それから十五年度に飛行教育部隊一個飛行隊の定数割れが見積もられるところから、これらの部隊を維持すること等のため四十七機を整備するものでございます。
  93. 清水澄子

    ○清水澄子君 その四十七機は契約済みなんですか。
  94. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 契約いたしましたのは平成八年度の予算で認められました十一機と、九年度の予算で今お願いしておりますのが八機でございまして、残りにつきましては平成十年度以降の予算で御審議をお願いする、こういうことになるわけでございます。
  95. 清水澄子

    ○清水澄子君 でしたら、そういう製造請負契約の面から見て、まだ発注されていないわけですから、やはりこの正面装備の見直しということをぜひ、予算削減の中でF2対地支援戦闘機を対象にすべきではないか、このように思いますが、防衛庁長官、いかがですか。
  96. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 一昨年に防衛大綱の見直しをいたしまして、その防衛大綱の別表で陸海空自衛隊の編成あるいは装備品の姿が出ておるわけでございますけれども、この防衛大綱におきまして、合理化、効率化、コンパクト化という考え方のもと、部隊編成あるいは装備品につきましてのいわゆるコンパクト化を図ろうと考えているところでございます。  戦闘機の数につきましても、旧防衛大綱の水準が三百五十機でございましたが、それを三百機に減らす、それから飛行隊も十個飛行隊から九個飛行隊に落とす、それを前提にした上でのF2の更新、近代化でございますので、なかなかこの全体の機数を落とすということは難しいわけでございますが、こういった問題も含めまして、中期防につきましては、財政構造改革会議あるいはその企画委員会の議論を踏まえて、我々としても中期防も含めました見直しについて真剣に検討してまいりたい、かように考えているところでございます。
  97. 清水澄子

    ○清水澄子君 長官、防衛庁は調達の見直しとか効率化という点についてぜひもう一度真剣に考慮いただきたいと思います。一言よろしくお願いします。
  98. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 御承知のとおり、自衛隊の持っております現在の飛行機がいわゆる退役していく、それにかわるものを埋めなきゃならない、そういうときに、やはり周りの近代化が進んでおりますとそれに対応した性能的にも劣らないものを確保しなければならない、そういう形でいろいろ研究されながら今言いましたF2等もその機種が決まってきたわけでございます。  確かに先般の委員会でもいろいろ議論がございましたけれども日本において非常につらいのは、とにかく我が国だけの戦闘機でございまして、大量につくって外国に売るということができないわけでございます。例えばアメリカみたいに量産して他国に売って開発経費を広く薄くとるところはいいわけでございますけれども、なかなかそういう形ができないものですから割高になっておるという事実は否めません。  しかし、そういう中でどうやって調達コストを低くしていくか。取得改革委員会その他もつくりまして、取得だけではなくてそれのライフサイクルコストも考えながらこれから先できるだけ経費の削減には努力していきたいと思いますけれども、やはり必要なものは必要として備えておかなければ、我が国の国防上の、とにかく安全を確保するという与えられた責務を全うするためにはどうしても必要なものについては取得していかざるを得ないという状況でございますので、どうかその辺についてもひとつ御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  99. 清水澄子

    ○清水澄子君 ぜひきょう提起したことはひとつ検討の対象に加えていただきたいと思います。  次に、沖縄米軍基地の公共性についてお伺いをしたいと思います。  三月十七日の本委員会におきまして、私は防衛施設庁長官に沖縄米軍基地の土地収用について、沖縄がどれほど差別的な扱いを受けているか、そのことへの、沖縄県民の納得しないというその心を十分酌み取らなきゃいけないということを何回か申し上げました。そのときに長官は、私有財産は正当な補償のもとに公共のために用いることができると憲法二十九条第三項を引用されまして答弁をされたわけです。  そこで、私は沖縄米軍基地の公共性について再度御意見を伺いたいと思います。時間を急いでくださいという事務局の要請ですから、長官、私がこれからお伺いすることについては余り説明は要りません。それが公共性があるかどうかということについて簡潔にお答えいただきたいと思います。  嘉手納基地はベトナム戦争のときにB52の北爆基地に使われておりました。それから、湾岸戦争のときには米海兵隊は沖縄の海兵隊基地から出撃をしておりました。他国を攻撃するための日本にある軍事基地が公共のためかどうか、それは公共性があるんだとおっしゃるならそのとおりお答えください。
  100. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 沖縄県民の方々に非常に多大な負担をおかけしていることは先生御指摘のとおりでございますが、在日米軍は日米安保条約に基づきまして我が国の安全に寄与し、並びに極東におきます国際の平和及び安全の維持に寄与するために我が国に駐留しているものでございます。このような目的を有する米軍の駐留は我が国の生存と安全の維持という国益を確保する上で重要であり、高度の公共性を有するというふうに考えておりまして、そういう趣旨で、憲法二十九条第三項の公共のためにこれを用いることに該当することは明らかではないかというふうに私は考えておるところでございます。  なお、昨年の八月二十八日に最高裁判所の判決がございます。これを参考までに御披露させていただきますと、「駐留軍の用に供することが適正かつ合理的であることを要件として、これを強制的に使用し、又は収用することは、条約上の義務を履行するために必要であり、かつ、その合理性も認められるのであって、私有財産を公共のために用いることにほかならないものというべきである。」という判決が出ておるということでございます。
  101. 清水澄子

    ○清水澄子君 ここに沖縄県の環境保健部が平成八年十二月に出した航空機騒音による健康影響に関する調査の中間報告というものがございます。これを見ますと、嘉手納町の低出生体重児、子供が正常な重さにならないわけですが、低出生体重児出生率というのが航空機騒音のない地区よりも高率であるという調査が報告をされております。  この調査に当たった県立中部病院の安次嶺副院長に電話をかけてこの報告の内容を聞きましたけれども、その副院長は、嘉手納町の低出生体重児の出生率は九%、全国一だということを言っておられます。この中で、千七百グラムとか千グラムとかいろんな報告がずっと出ているわけですけれども、これは嘉手納とそうじゃないところとを比較したときには、基地騒音のない地域では七%なんですね。わずか二%に見えるけれども、この数字というのは非常に大きな数字、統計の中で大きい数字だと言っております。  このように基地周辺住民に健康被害をもたらす基地は公共性があるでしょうか。市民の公共性と国家の公共性、それは市民は当然こういうことはあってしかるべきと、これはやむを得ないことというふうに断言できますか。お答えください。
  102. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 在日米軍基地を提供することがいわゆる国益にかなって、そのこと自体に対しまして公共性があるというふうに、憲法上の規定から見てそういう私有財産を公共のために用いることができるという憲法の趣旨を御説明したわけでございまして、ただいま先生の御指摘のような、周辺の住民の方々にいろんな意味で、基地が所在することによっていろんな形の障害なりそういうものが出ておることは私自身も十分承知しております。そういう障害を少しでも軽減するために私どもはいわゆる基地周辺の生活環境の整備に関する法律というものをつくっておりまして、それに基づきましてそういう騒音の軽減等についても予算の範囲内でできるだけの措置を講じておる、こういう事情でございますので、何とぞ御理解を賜りたいと考えております。
  103. 清水澄子

    ○清水澄子君 最後に、沖縄の女性団体が、戦後、基地があることによって米兵によって沖縄の女性がどのような犯罪の対象になったかということをずっと記録したものが送られてきているわけです。沖縄に基地があるがゆえに米兵による女性への性犯罪が五十年間絶えず、これを見ますと本当に私なんかも知らなかった部分が非常にたくさんあるわけですけれども、米兵による女性への性犯罪がずっと間断なく続いているわけですね。  その中で、処罰の方法が不明だとか迷宮入りだとか、九五年九月の米兵三人による女子小学生へのレイプ事件のみがあれだけ皆さんに騒がれたわけですけれども、ほかはほとんど知られていない。ベトナム戦争のときには、米兵相手のバーでは女性が一人でトイレに行くのは自殺行為だと言われるほど、米兵の女性への性犯罪が非常に激しかったことがこれでもわかりますし、それから七一年にも、これは復帰の直前ですが、四十一歳の女性が海兵隊二等兵にドライバーで殺されるというふうなことでも処罰のことが不明になっています。こういうような記録が綿々と続いているわけです。  このように、基地があるがゆえに絶えず女性は人権が脅かされている。性犯罪に脅かされている。こういうふうな基地の存在に、どうしてそれは公共性があるがゆえにということで答えられるのか。それが、沖縄の人たちがどうしても本土に対して、また政府のあり方に対して納得しないという、そういう意味で、先ほど大久保議員が、沖縄県民の心の痛みをどう受けとめるか、これがないと本当の沖縄問題の解決にならないということを主張されていたのを伺っていて、私も全く同感なんです。  ですから、私ども政治家一同としてどのようにこの沖縄問題を解決するかというときに、沖縄の人たちが本土の私たちとは違って日常的に基地の被害、自分の健康や生活やそして性犯罪に脅かされ続けている、この問題をどうするのかということを真剣に受けとめない限り、私はそういう法的な説明のみで沖縄の問題は解決できないと思いますけれども、長官、このことについてどうぞひとつ御決意をお述べいただきたいと思います。
  104. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 日米安保条約に基づきまして基地を提供している、またそういうような義務がありますし、また基地そのものは公共的な提供になっているわけでございます。  ただいま委員がおっしゃいましたように、基地があるといいますか、そこにそういうような基地機能を果たしておるために、それに付随して出てくるいろんな問題で沖縄の皆さん方が今まで迷惑をこうむってきたじゃないかというような問題は、これは確かにゆゆしき問題でございますから、これまでいろんなことがあったとしましても、これから先そういうことのないように、橋本内閣としても今全力を挙げてそういうことが起きないように、日米合同委員会を初めいろんなところでそういうことについて議論をして実行していこうとしておりますし、またそういうことがありました場合でも、またないように、治安上も十分取り締まりその他やっていかなきゃならないというふうに思っているわけでございます。  ただ、言えますことは、そういうような事件をどう取り締まっていくか、どうないようにしていくかということと、基地そのものの提供が公共性があるかないかの問題は別でございますので、確かに気持ちとしてはわかりますけれども、そこはやはり一応法的な問題としては区別して理解を賜りたいと思うわけでございます。
  105. 清水澄子

    ○清水澄子君 最後に、官房長官、公共性という場合に、市民は生存権を持っているという、そういう市民的、生存的公共性というものは政治の第 一の任務だと思います。それと先ほどからおっしゃる国家の公共性というものとどちらを優先されるのか。やはり国家のみを優先されたときにはそこにいる住民の人権は侵害されると思いますが、その点をどうぞ真剣に考えていただきたいと思いますので、長官のお考えをお示しください。
  106. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 一概にどの場合どうであるかということは申し上げられませんが、それぞれに重要な権利でありますし、その事態事態に向かって個人ないし社会ないし全体の問題として把握をされ判断をされるべき問題だというふうに考えます。
  107. 清水澄子

    ○清水澄子君 終わります。
  108. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  109. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 速記を起こして。
  110. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 昨日、予算委員会で質問させていただきましたが、持ち時間がもともと少ないものですから、残り時間も少なくなった中で、厚木基地のエネルギー問題並びに基地開放日における曲技飛行、デモンストレーションの問題について取り上げさせていただきました。このことを冒頭、確認の意味で、外務省お見えでございますので回答をお願い申し上げたいというふうに思います。  改めて申し上げるまでもないんですが、岡崎知事あるいは厚木基地周辺の市長さんと一緒にエネルギー問題とこの曲技飛行の問題について中止を申し入れさせていただきました。私も記憶がありますが、伺った際に諸富長官は、私も神奈川県民、川崎市民であり、皆さん方の要望については十分受けとめていますということで、とりわけこのデモフライトにつきましては中止に向け努力をしましょうと。あるいは外務省に行きましても、高村政務次官から、外務省としても努力をしますよということでした。  きのうの北米局長の答弁で、米軍の方は自粛をしていくということであったと思いますが、従来、自粛ということについては、地元の方、我々の方は受けとめたことがないものですから、自粛というのは大変ある意味では評価させていただくんですが、米側の方から自粛という言葉が出てきたということで受けとめてよろしいでしょうか。
  111. 田中均

    説明員田中均君) 委員御指摘のとおり、この問題につきましては私どもも真剣にいろいろ検討させていただいております。  昨日、御答弁申し上げましたのは、いわゆる曲技飛行ということにつきましては自粛をすると。自粛をするということは実際にやらないということであると思いますけれども、しかしながら一般の展示飛行につきましては引き続きやりたいというのが米側の考え方であるというふうに考えております。
  112. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 曲技飛行そのものを申し上げさせていただいているわけでございまして、自粛ということは大変前進であろうというふうに私は受けとめさせていただきたいと思います。  また、久間長官いらっしゃいますが、エネルギー問題はきょうはもう時間もないので、また別な機会にさせていただきたいと思います。  続きまして、いわゆる米海軍第七艦隊はハワイ以西からインド洋、そして喜望峰までという大変広範な地域が守備範囲でございますが、この第七艦隊の空母が当初ミッドウェー、そして今インディペンデンスということで、これが横須賀を母港として今日に至っております。防衛年鑑を見ますと、このインディペンデンスの除籍が一九九七年となっていますが、そういう理解でよろしいでしょうか。
  113. 田中均

    説明員田中均君) 私どもが承知しておりますところでは、米国の国防報告によりますと九八会計年度、すなわちことしの十月から明年の九月でございますが、その間に退役が予定されているということでございます。
  114. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 そういう予定の中で、次期空母についてある海軍情報誌では、キティーホークだ、あるいはコンステレーションだと、こういうような艦船名が出ているんですが、米側の方から具体的な艦船名というのは取り上げられているんでしょうか。
  115. 田中均

    説明員田中均君) 私ども、そういう報道があるというのは承知しておりますが、まだ米側からは正式に退役の後の艦船について決まったという通報は受けておりません。
  116. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 大変古い話ですけれども、ミッドウェーの母港化の問題で国会で相当長い期間やりとりされた際に、我が国として通常型空母であると受けとめて、それで地元に協力、理解を求めている、今日まで国会内でも認識しているというふうな経緯があるわけでございます。  キティーホークあるいはコンステレーションそのものも通常型空母であるというふうになっているんですが、それはともかくといたしまして、通常型空母、このことについて日米間で取り決められるという理解は今日まで至っているという受けとめ方でよろしいですか。
  117. 田中均

    説明員田中均君) 先ほどお答え申し上げましたように、次期空母についてはまだ米側で決まったという話は受けておらないということでございます。恐縮でございますけれども、私どものいろんな情報から見て在来型以外のものだというような情報も受けていないというのが現在の状況でございます。
  118. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 確かに最近は米側そのものも新型建造というのはないんですね。全体に縮小しているというふうに私も受けとめていますが、通常型空母であるということについて地元との協議あるいは国会での質疑もそういう確認になっておるということについて、改めてこの機会に申し上げさせていただきたいというふうに思います。  次の質問に入らせていただきます。  我が民主党は両代表になっておりますが、きのう両代表名でいわゆる駐留軍用地特措法の緊急使用申し立てにつきまして提起させていただきまして、きのうの時点での梶山官房長官、久間防衛庁長官考え方について受けとめさせていただきました。  きょうは沖縄におきます第三回の公開審理があるということでありますが、まだこの公開審理は終わっていませんか、この時間は。
  119. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 公開審理はきょう午後二時から午後五時までの予定で、今行われている最中でございます。
  120. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 きのう、私はこのことに入る前に、沖縄の持つ歴史的な意味と今日的な状況、そして振興策、あるいは軍縮の中での日本の安全保障の考え方について外務大臣あるいは両長官とも意見交換させていただきました。  先ほど沖縄をめぐる議論でもるるございましたけれども、質問者の考え方、気持ちというのは私自身もおおむね変わりません。それに対しまして梶山官房長官がいろいろ御発言になった中で、とりわけ気がついたといいましょうか、きのうも発言されていましたけれども、死に場所という大変厳しい言葉を選んで発言されていました。きょうもそういう御答弁があったわけでありますが、官房長官であるにもかかわらず一政治家として沖縄問題について真剣に取り組んでいくという決意でありまして、その総合的な方向につきましてはぜひ御努力いただきたいと思うわけであります。  しかし、緊急使用の申し立てをすることにつきましては、やはり長い歴史の中で沖縄と本土との関係についてはつらい気持ちがずっと歴史的にあったわけでありまして、可能な限り現行法体系、法制度の中で政府、本土側がどんな段階であってもぎりぎり努力をしていくべきだということで、民主党として昨日の段階で、まだぎりぎり努力する時間はあるということで申し入れをさせていただきました。  しかし、これも刻一刻たてば不可能になっていくわけでありまして、あえてきょう申し入れさせていただきますが、緊急使用の申し立てばすぐすべきだというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  121. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) これまで予算委員会等でもたびたび申し上げてまいりましたが、粛々と収用委員会が審理をなさっておるときに、あなたの審理は間に合わぬから緊急使用をお願いするというわけにはいかぬ、そういうこともありましてできなかったわけでございます。またきょうも粛々と審理が行われておるわけでございます。  この後の審理がどういうふうになりますか、非常に危惧しながら見守っておるわけでございますけれども、そういう状況の中でこれまで緊急使用の申し入れができなかった。これから先、裁決を一日も早く、今からでも遅くないからもらいたいという心境でございますだけに、ぎりぎりまで本裁決をいただきたい、そういう気持ちでございます。  ところで、本裁決がでは間に合わないということになったときに緊急使用が間に合うかとなると、これも今まで言っていますように、この法的手続というのがいわゆる普通の状況で考えられますならばスムーズにいきますから、これで間に合わなかったら緊急使用でということで、すぐそこで認めてもらって、はい、直ちに六カ月ということになればいいわけでございますけれども、その許可をもらっても相手が受け取りを拒絶する、突っ返すというようなことになりますと手続が要るわけでございます。まして、緊急使用の場合でも、どんなに急ぎましても一週間ぐらい日にちはかかるわけでございます。何日かかるかということを聞いたらいいじゃないかという議論も一部にございましたけれども、そういうことを聞くことすら独立の機関である収用委員会に対しては一種圧力がましいことになるということで、それもできません。  そういうような状況の中で推移してまいりまして、今本裁決を非常に熱いまなざしで見守っているというのが現在の状況でございますから、緊急使用は現実問題として非常に難しいということをぜひ理解していただきたいわけでございます。法的には確かにそういう制度がございます。しかしながら、それをやったら五月十五日以降の無権原な状態を乗り切れるかとなると、私は現実問題として難しいというような気がするわけでございます。どうかひとつその辺の苦しい状況についてもぜひ御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  122. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 時間的制約というのが厳しいということは認識しています。楚辺の場合も四十二百かかった。きのう長官からも、今回は三千名を超す、楚辺の方は一名だったと。しかし、これは人数が多いからその分審査日数がかかるわけではないのではないか。ですから、もう今ぎりぎり、本当は遅いかもわからない。ぎりぎりであるという認識は私も持っております。  それから、今沖縄の収用委員会に事前にどれだけ日数がかかるんだろうかというそんな打診もできないというふうにおっしゃっていましたけれども、たまたまきょうの読売新聞でございますが、「「緊急使用」申し立ての場合期限内判断困難 収用委が国に伝達」という見出しがございまして、こういうことをされていたんだなということが報道されております。  これは県側の方も知っていたのかどうかと思うんですが、「沖縄県収用委員会が、現行法に基づく六カ月間の「緊急使用」の申し立てがあっても、五月十四日の沖縄米軍用地の強制使用期限切れまでに緊急使用の適否を判断することは困難との見通しを国側に伝えていたことが、二十六日明らかになった」ということで、「収用委関係者によると、二月十二日、三月十日に行われた県収用委と国(那覇防衛施設局)との非公開協議」で、国側の打診に対して、県収用委員会会長代理が二点にわたりまして手続的に難しいという見解を示したということであります。  今、久間防衛庁長官は収用委員会とやりとりをしていないと言われましたが、これだとやりとりをしているということになるわけなんですね。このことの整合性はどうなんだということをあえて申し上げるつもりはないんですが、事実問題はどうなんだということと、先に言わせていただければ、こういうことがあっても政府は申請をしていく、そういう姿勢が大切なんだということを私はあえて言いたいんですが、両方お答えいただきたいと思います。
  123. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 報道の細部は私ども承知しておりませんが、従来、収用委員会と私どもは、起業者として事前に意見の陳述といいますか、そういう運営に当たって収用委員会側からいろいろ御相談があることはございます。しかしながら、今の緊急使用等について私どもの方から委員会の先生方にいろんな形で御相談とかそういうことはないと信じております。  あと、私どもとしては昨年緊急使用申し立てをした前例がございます。楚辺通信所の場合に四十三日かかって結果的には却下された。その間いろいろ現地立入申請等が行われまして、そういう間で非常に手間暇がかかったと。今回も仮に収用委員会に緊急使用申し立てをいたしますとそういうことは当然予想されるのではないかなというふうに私どもは考えておりますが、そういう点について収用委員会と打ち合わせたとか相談したとか、そういうことはないと信じております。
  124. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 これはもう名前も出ているんですよ。そうすると、これはむしろ沖縄の那覇防衛施設局が単独でやって防衛施設庁長官に伝えていない、あくまでも沖縄サイドの問題だと、あるいは幽霊だと、全く架空の記事であったということになるんですけれども。  長官、きょうの朝刊はごらんになりませんでしたか、この新聞記事。
  125. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) ちょっと私けさのその新聞はまだ残念ながら見ておりませんが、先ほど来申し上げておりますように、収用委員会から事前にそういう起業者なりあるいは地主さん方と個別にいろんな事前の折衝があることは私ども承知しておりまして、そういう内容については当然私の方も報告を受けておりますが、先ほど来先生御指摘のような点について事細かにどういう点についてお話をしたとかそういうことは、私は報道されているようなことが事実かどうか、これについてはコメントする立場にもございませんし、局長からもそういう正式の報告を受けたわけでございません。
  126. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 このページがほとんど特措法論議になっている中で、大変重要な記事ですね。そうなると、これはいわゆる役所の行政機構の中で問題じゃないですか、諸冨長官。  それから、仮に万々一譲ったとして、先ほど来スケジュールの問題とかあったわけですから、少なくともこういうことがあっても政府として努力をしていく。というのは、一日前か二日前ならもっと時間があるわけですから。むしろこういうことを打診して、これに政府の方が従ったと。従ったというふうなことでしか判断できなくなつちゃうんですね。
  127. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 先ほどから申し上げておりますように、とにかく委員会で粛々と本裁決をするための審理が進んでおりまして、そのときに、それをやめて緊急使用の審理を先にしてください、どうもこの調子でいったら危ないからしてくださいというようなお願いをする立場にはないわけなんです。  緊急使用の審理に入りますと、収用委員会の先生方は本裁決の審理をおやめになって緊急使用を先に審理されるわけです。ところが、収用委員の先生方は弁護士の先生その他、それでなくても審理に集まって日数をとっていただくのにかなり無理をしていただいておるわけでございます。それをずっと粛々とやってきていただいておるわけですから、本裁決をとにかく三月いっぱいに出していただければという気持ちであるわけでございますから、緊急使用の話を持ち出すよりもそっちの方でお願いをしたいというぐらいの気持ちなわけです、これまで。  だから、緊急使用についてはおくびにも出さずに、本裁決をお願いしたいという気持ちで見守ってきたと。ただ単に見守るんじゃなくて、まあよろしくお願いしますというような願望もあったわけで、一部新聞では圧力をかけているじゃないかと言われますけれども、そうじゃなくて、そのときもそういう気持ちは、起業者として願望はありましたけれども、そういうことでやってきておるわけでございますから、どうかひとつその辺について、今までとってこなかったのがそういうような気持ちの上でとれなかったんだということを御理解していただきたいと思うわけです。
  128. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 この報道については問題であるということを指摘させていただきまして、また別な機会にひとつぜひ回答をいただきたい。  緊急使用を申し立てると使用権原取得の本来の審理が行われなくなるということについては、現行法の枠内において残された可能性をみずからつぶしていくということになりますし、法的な空白を生じさせない努力を政府がすることは当然であるということを私はこの機会にお話ししておきたいと思います。  以上で終わります。
  129. 笠井亮

    ○笠井亮君 私はきょうは官房長官にいろいろ伺いたかったんですけれども、お時間の関係があるということなので、質問の順序を変えまして、端的に二問だけ伺うようにしたいと思います。  一つは、いわゆるアジア女性基金の問題でございますが、昨年五月に当委員会の同じ予算委嘱審査の場で私がこの問題を取り上げて伺いましたときに、官房長官から、予期した以上の募金の成果が上がっていないという御発言がありました。今のようなやり方ではますます行き詰まらざるを得ないんじゃないかということをそのとき私は申し上げたわけですが、それから約一年弱がたちまして、募金は平成七、八年度合わせて四億七千万円、そしてこれまでに一時金を支給したのがフィリピン十一名、韓国七名と。他方、予算措置として補助金は毎年五億円近くつぎ込んでいる、そういう実態だと思うんです。  償い金を被害者に渡すことで解決しようということであれば、少なくても数万人の規模の方々に支給をしなければいけないと思うんですけれども、二年間募金に取り組んで、こういう申し上げたような実態、額で支給が十八名というこの現状を見ただけでも、これはなかなか大変なのかなというふうに思うわけであります。  しかも、政府は何とか実績をつくられようということで、ことし一月に韓国在住の被害者の方々へ支給されるという形で強行された。被害者の方を強引に説得して、相手国の政府も知らないうちにほとんど唐突な形だったということも伺っているんですけれども、御承知のようにこの事実を知った韓国の世論が沸騰して、韓国の政府自身も一時金支給に反対を表明したり、従来の態度を変えて個人補償の実行を日本政府に求めるということがありました。既に昨年七月、韓国の国会議員のうち九〇%以上が国民基金に反対する、国家による賠償を求めるという署名を行ったりしています。  韓国だけじゃなくて、昨年十二月に届けられた台湾の議員による要望書によりますと、基金ではなくて立法による解決をしてほしいということで、台湾立法院の百六十四名の議員のうち百五十五名が署名をしているということも聞いておるわけであります。  ことし二月に韓国から来日した被害者の方々、いろいろお話をされておりました。女性基金が行った支給のやり方というのは韓国国民全体への侮辱だとか、あるいは欲しいのはお金じゃなくてきちっとした名誉だということで口々に訴えられていたわけです。あくまで責任をはっきりさせないという態度が各国で、結局日本政府は金で済ませようとするのかという怒りを呼んでいることになっているんじゃないかと思うんです。  そこで、官房長官、なかなか進んでいない、いろんな声が出ることについて憂慮されていると思うんですけれども、この現状をどう見られているか。そして、この際やっぱり国家的行為の責任を明らかにした上で補償に取り組むべきじゃないか、そういう決断をすべきじゃないかというふうに思うんですが、そのことについてひとつ伺いたいと思います。
  130. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) いわゆるサンフランシスコ条約に基づく一つ国家間の権利義務、そういうものが整理をされております。さりとて、今まで行われたいろんなことに対して我が国全体としてこの問題を受けとめようという熱意、これは否定するものじゃないし、むしろ助長してまいりたい。結果として今まで大変苦労をいたしておりますが、誠心誠意行うことによって問題の解決に資してまいりたい、このように考えます。
  131. 笠井亮

    ○笠井亮君 政府はこれまでみずから事実を明らかにすることを避け続けてきたと私は思うんですけれども、しかし幾ら証拠を隠しても歴史の事実は隠せないということはあると思います。  それから、サンフランシスコ条約のことを言われましたが、国際法上は決着しているということを繰り返し言われているわけですけれども国家的な行為として行ったことへの責任、あれこれ議論すると時間がかかるのでここではやりませんが、その責任は消えるものじゃないというふうに私は思います。  本当に償いをしようとする気があれば、他国との協定や国内法の整備で補償ができるんじゃないか。それをせずに誠実に対応とか反省とおわびと言っていても、本当にやる気があるのかということが出てくるのは避けられないというふうに私は思います。政府が補償に踏み切る意思を表明することが本当の解決の道になるということを一言申し上げておきたいと思います。  それから、官房長官がいらっしゃるうちにもう一問だけ伺いたいんですが、中期防の見直しの問題で先ほど来議論がありました。十八日の財政構造改革会議の中で五原則と基本的な考え方というのが明らかにされて、総理も決意を述べられた。問題は何を削るかだと思うんです。  国民の立場でむだと浪費を削っていけば国民の犠牲なしに財政再建できるという立場で私は聞きたいんですけれども総理はこの間の答弁で公共事業とか中期防についてもともかく財政の上からは聖域ではないということで見直すということを述べられましたし、今回の基本方針でも「縮減(又は期間の延長を)検討する。」ということで求めているというふうに思います。  そこで、官房長官に伺いたいんですが、昨年十二月の財政審の特別部会の最終報告で、防衛関係費のうち定数削減の着実な実施というのを大きなかなめの一つに挙げて具申しているというのがあると思うんです。先ほどの正面装備はもちろんなんですけれども、定数の問題もさらに切り込んで削っていくことも含めて対象にして見直しをされるということで考えていらっしゃるのかどうか、その点一点だけ伺っておきたいと思います。
  132. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 財政構造改革会議において聖域なく削減をしてまいる、目的に向かって二〇〇〇三年までにこの第一の目標を到達したい、その中には当然定数も人件費もその他の問題も含まれていると理解をしてもらって結構だと思います。
  133. 笠井亮

    ○笠井亮君 官房長官、また別の機会に伺いますので、きょうは結構です。  まさに今そういう御答弁をいただいたので、その続きとして防衛庁長官に伺いたいんですけれども、現行の陸上自衛隊は定数十八万人、約十八万人に対して実員が約十五万人ということで、欠員三万人を抱えているという現状だと私は理解しております。今、防衛庁設置法改正による新体制への移行によって編成定数は十六万に減るけれども、常備自衛官の実員の減というのは十年間で約五千人ということにすぎないんじゃないかと思うんです。その一方で一万五千人の即応予備部隊を編成しようとされている。そうしますと、実員は十四万五千に減らしていく方向に行って、そして一方で一万五千の即応予備自衛官をふやすと、結局、陸自の実動人員というのはむしろふえるということになるんじゃないか。前に衛藤元長官もそういうことを言われたと私は記憶しているんですけれども、そういうことをやっていて、官房長官が今言われました定数の問題、これも対象にして聖域なくやるんだということで着実な実員の削減が進めていけるのかどうか、その点についていかがなものでございましょうか。
  134. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 先日も、予算委員会だったと思いますけれども、御党の委員からそういう発言がございましたが、あくまで定数は定数で比較していただかないと、定数を削減してもたまたまその実数が低いから即応予備自衛官でかえって強化じゃないか、ふやしているんじゃないかというような話をされたわけでございますけれども、そうじゃございませんで、やはり十八万人から十六万人に下げていくという流れの中で、そのカバーをどうするかということで、即応予備自衛官をそこに採用することによって経費的にも削減しながらやっていこうということでやっておるわけでございますから、どうかひとつ定数は定数で見ていただきたいということをお願いしたいわけでございます。
  135. 笠井亮

    ○笠井亮君 欠員が三万人あって実員が十五万という中で、結局、実数がどうなるかということも大事な問題だと思うんです。  財政審の報告を読んでおりますと、報告の流れの中で欧米各国のことも書いてありまして、数万人から十数万人の規模での人員の削減を行っているというふうなことがございます。あえてその定員についても、そして自衛隊の実員についてもやる必要があるという記述がございまして、その点では中期防程度でなく、まさにヨーロッパを参考にしながらそういう規模での見直しをするのが財政サイドの審議会の考えであるというふうに私は読み取ったんです。だから、そういうことも含めて、今内閣挙げてと言われているわけですから、大いに見直しの作業を進めていただきたいと思います。  それとあわせて、この問題で私一言だけ申し上げる形にしたいんですが、先ほどありましたけれども、新中期防の二年目に当たることしの予算というのがSACOの関連経費を含めて二・一%増という高い伸びになっていて、しかも正面装備のツケ払いの一部を九八年度以降に先送りすることによって見かけの伸びを圧縮する操作がやられているというふうに思うんですけれども、それを考慮すると実質増は三・四%と。そういうやり方を続けていくとどうなるかということを真剣に考える必要があると思います。  そういう膨大な額の後年度負担があって、それにもかかわらずそのやり方を続けていくとなりますと、そして毎年正面装備を新規にやるということになると、軍事費が膨大に膨らんで、まさに財政審でも言っていますけれども、二重の意味での硬直化を生み出す要因になってくるということもあわせて、先ほど議論があったので繰り返しませんが、これは本当に真剣にやる必要があるということを申し上げたいと思います。  その上で、中期防のうち在日米軍の駐留経費の部分について伺いたいと思うんです。  まず、九六年度の在日米軍の駐留経費は、日本側の負担分、米国側の負担分合わせて総額幾らになっているか、うち日本側の負担分はどれぐらいでしょうか。
  136. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 在日米軍の経費というふうに今御質問お伺いいたしましたが、私ども平成八年度で防衛施設庁として計上しております分は全部で四千六百三十一億円でございます。
  137. 笠井亮

    ○笠井亮君 そうですがね。在日米軍の駐留経費日本側負担分と米国側負担分、総額日本側の負担分ですよ。
  138. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 駐留経費意味がちょっといろいろございまして、今私が申し上げましたものは……
  139. 田中均

    説明員田中均君) 私ども今ここに有しています資料では在日米軍の駐留関連予算ということで四千八百三十四億円ということでございます。それに加えて提供普通財産借上試算というのがございます。それの合計は六千三百八十九億円ということでございます。
  140. 笠井亮

    ○笠井亮君 時間がないので、それぐらいの数字はすぐ出してくださいね。  約百億ドルになっていて、今合計額を言われましたが、換算レートを九十七円として全体が九千七百億円で、ただいま後半で言われたものですけれども日本側の負担額が六千三百八十九億円ということになると思うんです。今言われました六六%、七割近くが日本側の負担になっていて、米議会の資料では七六%という数字も、これはとり方がいろいろあるんだと思いますが、あると思います。  軍事費全体の中で一貫して伸びているのが特徴だというふうに私は思っているんですが、ではそのうち安保条約に基づく日米地位協定上の義務でない負担、いわゆる思いやり予算と言われている額は九六年度当初予算、それから九七年度の予算案でそれぞれ幾らになっているでしょうか。
  141. 首藤新悟

    政府委員(首藤新悟君) 私どもいわゆる提供施設整備と申しておるものでございますが、平成八年度予算で約九百七十億円、平成九年度予算案で約九百五十億円というふうになってございます。
  142. 笠井亮

    ○笠井亮君 要するに地位協定上の義務でないものというのはもっとありますよね。九六年度で二千七百三十五億円、それから平成九年度で二千七百三十七億円というふうになっているじゃないですか。
  143. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 申しわけございません。御質問の趣旨がようやくはっきりいたしました。失礼いたしました。  私ども防衛施設庁提供分で、今思いやりとおっしゃっておりましたが、いわゆる施設整備として平成八年度に米軍に対する提供施設整備としては約九百七十億でございました。それから、労務費の負担として約千四百億、それから光熱水料費の負担として約三百十億、それに訓練移転費の負担が約四億ございまして、これを全部合計いたしますと二千七百億程度でございます。
  144. 笠井亮

    ○笠井亮君 私ちゃんと地位協定上の義務がないということを言ったわけですから、全部そこにあるわけです。七八年にこれがいわゆる思いやり予算として始まってから四十四倍ということで、そういう形で着実にふえていると思うんです。  もともとこれはいわゆるということで思いやり予算と言われています。最初は米国の財政赤字などを理由にして思いやりの精神で負担を始めた経費だと言われましたけれども、今や我が国財政が主要先進国中最悪と言える危機的状況であるということが財政審の報告でも言われていて、公債依存度が米国は八%ぐらいなのに日本は二八%にもなっていると。その借金大国日本がざらに借金してまで思いやり予算をふやし続ける理由が成り立つのかというのが非常に率直な疑問としてあると思うんです。  中期防で先ほど自衛隊について見直す、なかなか大変だけれどもとおっしゃいました。そういう苦労をされて見直すというならば、この在日米軍駐留経費も当然見直すべきだというふうに思うんですけれども、長官、いかがですか、この点について。
  145. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 我が国の防衛は日米安全保障体制とそれから適切なる我が国の自衛力の整備によって成り立っているわけでございまして、我が国の自衛力の整備につきましては、基盤的防衛力整備という考え方で必要最小限度の防衛力整備をしているところでございます。他方で、日米安保体制に基づく一つの大きな要素が在日米軍の駐留でございまして、それに対する我が国としての適切な負担というものは今後とも続けていくべきものと考えております。
  146. 笠井亮

    ○笠井亮君 秋山さん、そうおっしゃると思いました。やっぱり発言されると、日米安保条約の信頼性の向上のためという側面があるんだということを言われるわけですけれども日本の思いやり予算と言われるものはアメリカの側からも同盟国の中で最も気前がいいと。これはもう皆さんも御存じのことだと思います。そういうふうに言われているもので、世界的に見ても突出していると思うんです。  それで、朝鮮半島情勢が今しきりにいろいろなことで問題になって言われます。安保条約の必要性ということもそういうことで御議論があると思うんです。では、そういう点で伺いたいんですが、朝鮮半島情勢で最も矢面であるというか当事者の韓国ですけれども、在韓米軍は今どれぐらいおりますか、それからそれに対する韓国政府による直接の援助の経費はどれぐらいですか。
  147. 田中均

    説明員田中均君) これは昨年十一月現在の米国防省の発表でございますけれども平成八年六月三十日現在の在韓米軍の兵員総数は三万六千七百二十四名でございます。それから、韓国の在韓米軍に対する直接支援、これは在韓米軍駐留経費に対する分担金という形でございますけれども、韓国の国防白書によれば、一九九六年度で三・三億ドルという数字が盛られております。
  148. 笠井亮

    ○笠井亮君 そうすると、日本と比べると十何分の一だと思うんですよ、韓国の場合は、韓国が負担している直接経費の援助額というのは。今、日米の財政状況が変わってきているというわけでありますから、安保のためだからということで、義務だからとか信頼性ということで従来どおりふやしていっていいのかということは、率直にこれは考えていく必要があるんじゃないかというように思います。  さらに伺いたいと思うんですが、こういう思いやり予算の運用上のむだがないのかということなんですね。これはいろいろ指摘されています。こんなことまでやるのかとよく新聞にも出たりしておりますが、ここで一点私伺いたいのは在日米軍の水光熱費です。新協定によりますと、この日本側負担についてこうありました。「合衆国軍隊又は合衆国軍隊の公認調達機関が適当な証明書を付して日本国で公用のため調達する」ということで、条件つきになっていると思うわけであります。  私調べてみたんですが、例えば沖縄の嘉手納基地の場合、電気料はどうなっているか。嘉手納基地に変電所が二つある。では、電気メーターはどうなっているかというと、基地全体で二つだというんです。それを沖縄電力が検針をして米軍が立ち会う。それで請求書が来る。それから、水道料ですけれども、使われているメーターは嘉手納基地全体で一個だと。県の企業局と沖縄市の二者が検針をして、米軍が立ち会って請求書が出てくるということでありますが、一方で新協定で公用のために限定と言いながら、実態は米軍の家族住宅、あの中にある私用部分も含めて検針をして日本側が負担していることにならないのかどうか。  防衛施設庁に伺いたいんですけれども、検針の結果、その来た請求書なり文書を精査して、それに対してお金を出すということだと思うんですが、どう精査して公用、私用をチェックして区別するのか。こういうのはどういう実態になっていますか。
  149. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) お答えします。  先生御指摘のように、私ども先熱水料費の負担に当たりましては、在日米軍の方からそれぞれの施設・区域ごとに調達した電気、水道等の数量及び支払い金額、それからそれに合衆国軍隊または合衆国軍隊の公認調達機関が公用のために調達したことを証明する証明書が添付されてまいります。それを受けまして、当該品目の料金または代金等が供給業者にきちっと支払われたという領収書等を確認いたします。その上で、私ども審査確認した上で負担額を確定する、こういう手続になっておるところでございます。  なお、現在、在日米軍を維持する上で必要な経費ということで合衆国軍隊の方で公用調達したという旨の証明といいますか、そういうことが添付されてまいりました金額については私ども特別協定に基づいて負担をしておるというのが実情でございます。
  150. 笠井亮

    ○笠井亮君 そうすると、やっぱり公用、私用の議論があります。家族住宅の分も区別できないということですね、そういう現状になっている。しかも、米側が決めた艦船が交代をするとか基地機能が強化されたり変わったりする中で、人員、家族もふえたり新たな住宅建設があるということで水光熱費負担分もふえてくるというふうになると思うんですよ。これは僕は余りにいいかげんだと思うんです。米軍の基地機能を維持する上で家族も必要だからそれも負担するんだというふうになりますと、これはなかなか通らないと思うんです。  では、自衛隊はどうか。自衛隊の機能を維持するために家族もいると、家族の住宅も公用でひっくるめて防衛庁が出しているかというと、そうじゃなくて、自衛隊の家族の皆さんにはそれぞれ検針メーターがあって払っているはずなんですよ。  だから、少なくとも自衛隊の隊舎並みにきちっとチェックできるようにしないと、そして区別すべきだというふうに私は思うんです。細かい話と言われると、そうじゃないんです。一方では、沖縄の県議会でも、きのうは消費税の転嫁分を公共料金にやるかどうかで否決するような決議も上がったということがあるわけで、やっぱりそういうところも含めて見直しをするということがないとなかなか国民的納得は得られないんじゃないかというふうに思うんですけれども、これは防衛庁長官に伺いたいと思います。
  151. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 嘉手納飛行場の区域内において行われるものは全部公用だというふうに考えておりまして、そのために施設も提供しているわけでございます。そこのところについては、メーターを個人個人とかそういうふうに幾つも分けてすることは必要ないんじゃないか、そういうことで一本のメーターだというふうに理解しております。だから、嘉手納飛行場の中における施設については公用だというふうに理解しているわけですけれども。  なお、先ほど自衛隊との区別を言われましたけれども、自衛隊は公務員として勤務しているわけでございますから、その家族その他の者は、今アメリカの例を挙げられましたけれども、自衛隊でもこの基地の中のこの場所に住めという形で嘉手納飛行場みたいなところで、そういうふうな場合には別かもしれませんけれども、そういうふうなことになっていないわけでございまして、あくまで私生活と公的な勤務というのは区別しておるわけでございますから、だから私的なものについては私的な形で支払っているのは当然だと思います。
  152. 笠井亮

    ○笠井亮君 今のはなかなか苦しい答弁だと思うんです。この問題はだれが見たっておかしいんだから、これは率直に検討して、どういうふうにしたらそこが公用と区別できるか、新協定に基づいてできるか、研究していただきたいと思います。  一方では財政再建のためということで国民には消費税増税を初めとして負担が来るということが大問題になっている中で、他方では借金してまで米軍には思いやりで地位協定上の義務がなくてもそれは出していくと。  アメリカはもう二〇〇二年までに財政赤字をゼロにするわけでしょう。日本はこの財政赤字をどうするかという問題になっているわけですから、そういう点では国の進路とのかかわりでも重大な問題として具体的に検討をいただきたいというふうに思いますし、そういう点では、日米地位協定上の義務のない思いやり予算については削除すべきだ、そこまで踏み込むべきだということを強く求めておきたいと思います。  それでは、次の質問に移ります。  五・一五メモについて幾つか関連しながら伺いたいと思うんですけれども、二十五日に公表されましたいわゆる五・一五メモの関連文書のうち提供施設・区域の使用条件の部分が公表されたというふうに私は理解しておりまして、さらに数カ月以内の公表に向けて米側と調整中の文書が幾つかあるということを伺っております。  ということで最初に伺いたいのは、あの日に公表された部分と公表に向けて米側と調整中の文書というのがずっとありました。それをひっくるめると、いわゆる五・一五メモ、日米合同委員会の復帰に当たっての文書のすべてなのか、それ以外にはないのかということなんですけれども、どうでしょうか。
  153. 田中均

    説明員田中均君) いわゆる五・一五メモというふうに言われておりますけれども、私どもといたしまして五・一五メモということで公表をいたしました、あるいはこれから公表することを考えていますのは、まさに昭和四十七年五月十五日の日米合同委員会でサインをされ、そこで合意された文書ということでございます。  三月二十五日に公表いたしました文書というのは、昭和四十七年五月十五日の日米合同委員会の議事録そのもの、それから同日付の沖縄施設・区域に関する合同委員会の覚書、これが一件でございます。それから、施設分科委員会の覚書、これは施設・区域の提供に関する使用条件等が書かれている八十七件ということでございます。それから、訓練水域及び……
  154. 笠井亮

    ○笠井亮君 細かいのはいいです。さっき言った質問に答えてください。
  155. 田中均

    説明員田中均君) 以上のような文書を三月二十五日に公表いたしました。これから残り十件の文書につきましても公表をすべく今作業を行っているということでございます。
  156. 笠井亮

    ○笠井亮君 要するに、それですべてなのかということです。
  157. 田中均

    説明員田中均君) それですべてでございます。
  158. 笠井亮

    ○笠井亮君 それ以外にないんですね。
  159. 田中均

    説明員田中均君) ございません。
  160. 笠井亮

    ○笠井亮君 沖縄の大田知事があれを見られたときに、施設の利用や条件などのほかにメモの合意の前提条件になる日米安保条約に基づき云々という冒頭部分があるんじゃないのか、それが重要だというふうなことを言われたと思うんですけれども、そういうものがあるんですか。それとも、それがもうその中に含まれているんですか。
  161. 田中均

    説明員田中均君) それは沖縄県の方にも御説明を申し上げましたが、そういうものはございません。ここで申し上げたところの覚書がすべてでございます。
  162. 笠井亮

    ○笠井亮君 わかりました。  施設庁長官に伺いたいんですが、これは新聞報道なので事実かどうかも含めてなんですが、二十一日に諸富長官を初め何人かの方々が総理に報告したという記事を見ました。メモの公表には、本土の基地に関して日米間で取り決めた内容と照らし合わせる必要があるために、作業全体には数カ月かかるというふうに報告されたという記事を読んだんです、それが事実かどうかということはあるんですが。  そういうことになりますと、沖縄の基地には本土の基地とは明らかに異なる、つまり差別的と言うとそういう言い方になるかもしれませんし、区別された、あるいはそういう異なる取り決めがあるということなのか。  それから、そうだとすればその照合作業を、合意を結んだとき以来二十五年間もあったわけで、それを施設庁内あるいは外務省内でやらないでおいて、この時点になって改めて始めたから数カ月かかるというのは余りに怠慢だと思うんです。だから、引き延ばすつもりなのかなというふうな印象を持ったんですけれども、その問題について事実と、もしそうであればどういうことを意味しておっしゃったのか伺いたいんです。
  163. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 新聞記事に先生の御質問のような趣旨がございますが、私自身がこういうことを言ったこともございませんし、全く事実と違うのではないかと思っております。  この昭和四十七年五月十五日のいわゆる五・一五メモのうち私ども防衛施設庁として所管しておるといいますか、施設・区域の提供に関する部分につきましては先日全部お出ししたところでございます。時間がかかる云々というのは、実は英文のものがございまして、外務省からいただいておりますが、きちっとした訳文、そういうものは一切ございません。そういう形で訳に手間取るとか、そういうことで相当時間がかかったということは申し上げておきたいと思います。
  164. 笠井亮

    ○笠井亮君 今まで仮訳もなかったというのは非常にお粗末な話なんで、ではそういう発言はなかったということで確認させてもらいます。  それから、官房長官がいらっしゃらないので伺えないんですが、官房長官は二十一日、これは記者会見ですので事実だと思うんですが、原則全面公開だと思うけれども、全部といっても沖縄とほとんど関連のないものもあるし、外交上の機密案件あるいは基地の運用上の機密案件については公開すると意味がなくなるというふうに述べられました。そして、外交や作戦運用上の機密部分は非公開とする考えをあの公開直前に当たってあえて言われたのかなと思ったんです。  これまで五・一五メモと言われるものの中にはどういうものがあるかということについて、沖縄返還時に日米合同委員会が沖縄米軍基地の使用条件を取り決めた合意文書だというふうにされてきました。そういうものだと思って大体理解されてきたと思うんですけれども官房長官のおっしゃったことを読んでみると、それ以上の機密案件あるいは沖縄と関連のない問題も含まれているということなのかということを率直に疑問に思ったんです。これは五・一五メモの基本的性格にかかわる問題じゃないかと思うので、そこのところを外務省に確認したいと思います。
  165. 田中均

    説明員田中均君) 先ほど申し上げましたように、沖縄との関連での施設提供にかかわる五月十五日の合意というのはすべて公表いたしました。これから数カ月かけて作業をしていきます先ほど申し上げた十件の合意といいますものの中には、例えば周波数の記述であるとか保安上の問題とか、あるいはプライバシーにかかわる問題等について公表にふさわしくないものがあるかもしれない。そこについては十分吟味をいたしまして、米側とも調整をし関係省庁とも調整をいたしました上で、全面公開という基本的な原則の中で作業をしていくということでございます。
  166. 笠井亮

    ○笠井亮君 今回明らかになったものだけでも、北部訓練場などはアメリカ統治下の沖縄返還前と同様に米側が必要とあれば自由に使用できる権利がはっきり書かれていたり、嘉手納弾薬庫などの貯蔵の弾薬の種類に条件をつけないという問題を初めとして既に問題点も指摘されていますが、基地使用権の重大な問題の一端が明らかになったと思うんです。  未公開部分ということでまだ数カ月かかるということなんですけれども、一体何があるのか、それから本土との関係でどうなっているのかということを含めて、県民や国民の不安は募ると思うんです。翻訳上の問題とか、照らし合わせたり、向こうと協議と言うんですけれども、なぜそんなにかかるのか。速やかに公表せよということを私は申し上げたいと思うわけでございます。  関連しまして、私ここで伺いたいことがあります。ちょっとまた角度が違うんですが、沖縄返還協定のための佐藤・ニクソン共同声明というのがございました。その中で日本の防衛について、第六項で「総理大臣は、復帰後は沖縄の局地防衛の責務は日本自体の防衛のための努力の一環として徐徐にこれを負うとの日本政府の意図を明らかにした。」ということが書かれておりますが、徐々に日本側が沖縄の局地防衛の責務を担うようになるまでの間、沖縄の局地防衛権というのはアメリカが持っていたというふうに理解していいんでしょうか。
  167. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 自衛隊が当然のことながら国の安全を保つために直接侵略及び間接侵略に対して我が国を防衛するということを主たる任務にしておるわけでございますので、沖縄が日本に復帰するということになれば、これが我が国の自衛の範囲に入ってくることは当然でございまして、沖縄の復帰に伴って自衛隊が米軍から沖縄の防衛の任務を引き継ぐということになったわけでございます。  それで、質問に対してちょっと詳しく説明させていただきますけれども、まず沖縄局地防衛責務の引き受けに関する取り決めというのが四十六年六月二十九日に締結されてございます。その規定によりまして、昭和四十八年七月一日までにこの沖縄地域の防衛任務を引き受けるということになったわけでございます。  実際問題として、四十八年一月一日以降、自衛隊が対領空侵犯措置なんかを開始いたしました。また、レーダーサイトにつきましても、これは七月一日までに逐次米軍から自衛隊に移管され、それ以降要撃機に対する緊急発進指令、要撃機管制等も自衛隊が行っているところでございます。この対領空侵犯措置という我が国の防衛に絡む活動につきましては、これは沖縄の復帰時のタイムスケジュールがございまして、若干そういうずれがあったということはございます。
  168. 笠井亮

    ○笠井亮君 いわゆる久保・カーチス協定と言われているものでありますが、それによりますと、日本国による引き受けの時期ということで、日本国による防衛任務の引き受けは沖縄復帰日後一九七三年七月一日以前の実施可能な最も早い日までに完了するというふうに書いてあると思うんですけれども、これはいつ完了したんですか。そして、完了したとする根拠はどういうところにありますか。
  169. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) ただいま申し上げましたように、四十八年の一月一日以降、自衛隊がこの対領空侵犯措置を開始したところでございます。そして、レーダーサイトにつきましては七月一日までに。したがいまして、今の久保・カーチス会談のときの取り決めに書いてある七月一日までに完了すべきというその七月一日までに逐次米軍から自衛隊に移管され、これ以降は要撃機に対する緊急発進指令、要撃機管制等も自衛隊が行ったというところでございます。
  170. 笠井亮

    ○笠井亮君 そうすると、もうその七月一日までに完了したということで理解していいわけですね。
  171. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) ただいま答弁したとおりでございます。
  172. 笠井亮

    ○笠井亮君 あと、この五・一五メモの問題に関連しまして伺いたいことがあるんですけれども、現在の使用条件の問題です。あのときにこういう中身でやられたということが出たと思うんですけれども、今県民が知りたいのは、二十五年たって今どうなっているのかということであります。昨日の予算委員会でも外務大臣が答弁されて、九六年三月二十八日の日米合同委員会の合意で、これまで原則非公開だったのを今後は公開を原則にするということで、過去の合意もできるだけ公開ということになったので、ほかのものについても公開の方向で検討したいという御答弁がありました。  ということは、七二年以降の使用条件の変更分もこれから公開をしていくということでいいわけですね。
  173. 田中均

    説明員田中均君) 昨年の十二月にSACOの最終報告というものを出しました。そこでも盛られておりますけれども、合同委員会の合意というのは基本的にできるだけ公表をしていくということで検討していこうということでございます。ですから、原則的に申しまして、そういう形で過去のものについてもできるだけ公表ができるように作業をしていくというふうに御理解いただきたいと思います。
  174. 笠井亮

    ○笠井亮君 これは大事な問題なので、変更したものもきちっとやらないと今の現状がわからない。  時間になりましたので、最後に防衛庁長官に一言だけ伺いたいと思います。  総理も外務大臣も、そして官房長官防衛庁長官も繰り返し沖縄県民の理解を得てと、この間言われております。そういう点でいきますと、沖縄の基地が何のためにどのように使われてきたか、そして使われているのかということについて、文字どおりすべて明らかになることが政府の言われてきたことから見てもどうしても大事なことになっているという点ではやっぱり全面公開だし、それは数カ月じゃなくて一刻も早く、そして今どうなっているかをきちっとわかるようにするべきだと思います。そういう点での決意と御努力についての一言を伺いたいと思います。
  175. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 施設・区域の提供に係る問題につきましては、もう今度のもので全部公開をされたというふうに理解しております。それ以外の問題について私の所管に係るものはほとんどないんじゃないかと思っておりますので、とにかく国の安全上の問題とかいろんなことでどういう問題があるのかわかりませんけれども、できるだけ公開するように努力しなきゃならないというふうに思っております。  少なくとも私の所管する防衛庁、防衛施設庁関係している施設・区域の問題については今度の公開で全部じゃないか、そういうふうに理解しております。
  176. 笠井亮

    ○笠井亮君 終わります。
  177. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 他に御発言もなければ、これをもって平成九年度総予算中、皇室費国会所管会計検査院所管内閣所管及び総理府所管のうち総理本府、日本学術会議国際平和協力本部宮内庁北方対策本部を除く総務庁防衛本庁防衛施設庁についての委嘱審査は終了いたしました。  なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  178. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  179. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  180. 鈴木貞敏

    鈴木貞敏君 自由民主党の鈴木貞敏でございます。  きょうは地対財特法の一部改正について、非常に短時間でございますけれども総務庁に数点お伺いしたいと思います。  実は、きょう質問に立つについて、私、青春時代、戦時中でございますが、この同和問題というものに初めて目を開かれた島崎藤村の「破戒」というのを読み直してみました、どういう筋だったのかなと。もうおぼろげながらにしか覚えていないので読み直してみまして、日本社会の歴史的発展過程の中で、この同和問題という身分階層的な差別というものに、一人の小学校教諭の瀬川丑松ですか、丑松さんが本当に苦悩に苦悩を重ねたことがあの小説でうたいとげられておるわけでございます。改めてこの同和問題の歴史の今までの長さ、その間、我々の諸先輩がいろいろ努力されたそういう汗の結晶、そしてまたこれからの同和問題に対する我々一人一人の国民の取り組みの重要さ、まさに人権にかかわる問題として理解するわけでございます。  また最近、「招かれざる客」なんというのを数日前の衛星テレビでやっていました。妻子を失った黒人と白人の二十四歳の若い女性の結婚をめぐっての両親なりあるいはそれをめぐる人たちのいろいろの考え方、そして最後は二人の愛情というもので結婚に結ばれると、こういうふうな筋です。  大変違った問題でございますけれども、さきに男女共同参画審議会設置法案というものがこの委員会にかかりまして通過したということで、何か非常に人権づいているというふうな感じでございます。そういう中で、この同和問題というものの歴史的な重さ、そういうものを感ずるわけでございますが、残念ながらまだ完全にこの問題がすべて解決したわけじゃない。  そういう意味で、まず最初に武藤総務庁長官にお伺いしたいわけでございますが、今までのこういった同和問題に対する非常に真摯ないろいろの取り組みに対する評価、そしてまた、平成五年でございますか、同和問題の現状認識に対するいろいろの調査なんかも出ているわけでございますが、そういうものを踏まえまして、現状認識はどうお持ちなのか、この点についてひとつまずお伺いしたいと思います。総務庁長官、お願いいたします。
  181. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) 細かいことは事務当局から答弁をさせますが、どう認識しているかということでございますけれども、今お話しのとおりで、新憲法下で基本的人権というものは一番重要な問題となっております。それと非常にかかわる問題、今いろいろ例をお挙げになりましたけれども、同じ社会の中で同じ日本人でそういう差別があっていいのかどうか、こういう点については非常に私は問題があると思います。だから、一日も早くこういうものはなくさなきゃいけないということで、政府としても二十八年間、たしか三回この法律をつくりましてやってきたと思うんです。しかし、またこういう法律をお願いしなきゃいけないということは、残念ながらまだそういう問題が残っているということであります。  ただ、私は、今度法律を提出させていただく立場から申し上げますと、いわゆるハードの面では割合地域の格差というのはなくなってきたんじゃないだろうかと。しかし、今たまたまアメリカの結婚の問題のお話がありましたけれども、結婚の問題であるとか、就職するときの問題であるとか、いろいろソフト的な面が今なお何となく社会の中に残っているという感じでございまして、これをぜひ取り除いていきたいというのが現在の私の考え方でございます。
  182. 大坪正彦

    政府委員(大坪正彦君) 大臣の方から基本的な考え、お話がありましたので、ちょっと最近の動きを事務的に御説明させていただきたいと思います。  先生お話しされましたように、同和問題はかなり古い問題でございますが、政府の取り組みといたしましては、大臣が言われましたように、昭和四十四年からの三回にわたります特別措置法、これで進んできているわけでございます。  先ほど先と言われましたように、平成五年度におきまして、それまでのそういう取り組みについてその効果というものを測定しようということで、かなり大規模な調査をいたしました。その結果を地対協においてもいろいろ審議していただきまして、一定の評価を出していただいたわけでございます。  地対協の意見具申におきましては、これまでのそういう取り組みとしまして、生活環境的な物的な面での基盤整備はかなり進んで、それに伴うさまざまな格差というものは解消してきているという評価をしながら、また一方、ソフトの面につきましてはおくれている課題もある、これからの取り組みをせざるを得ない課題もあるという指摘をいただいているわけでございます。  具体的には、差別意識の解消の問題、それから人権侵害によります被害の救済の問題、それから教育、就労、産業等の面での格差の是正、それから差別意識を生む新たな要因を克服するための施策の適正化、こういった具体的な課題を御提言いただいている状況でございます。  この提言を昨年の五月にいただいたわけでございますが、政府といたしましては、それを具体的に検討の上、昨年の七月、閣議決定をいたしたという流れがございます。その閣議決定に即して今さまざまな施策をとっているところでございまして、今御審議いただいております法案もその一環のものでございます。
  183. 鈴木貞敏

    鈴木貞敏君 いろいろ御説明、ありがとうございました。  私は、この同和問題は、その本質から見まして、この特別の措置というか、そういうものをこれからもずっと続けていくものじゃない。長官の言われたように、こんなものは当然とうの昔に一般対策的なものに吸収されてしかるべきだったのが、何回か五年、五年、五年と刻んで今まで続いてきている。そして、ようやく、今後五年の経過措置の上、四十五事業のうち十五事業を残して、あとはもう一般対策に移行すると。ある意味で、この同和問題については非常に大きな転換期に来た、こう認識していいんじゃなかろうかと私は思っているわけでございます。  そういうことを踏まえまして、いろいろ御説明があったわけでございますが、行政の措置としても、同和地区を限定して、限定というかそれを前提として、そこでいろいろの対策を講じていく、それがむしろ逆差別なんという言葉もあるわけでございますが、そういうことで、一般地域との間にいろいろかえって何か格差をし、それがまた差別的な意識を増幅させる、そういう一つの面もあるんじゃないかというふうなことも指摘されておるわけでございます。  そういうことで、今回のこの五年経過措置の後、平成十四年でございますか、その期限が来るわけでございますが、地域改善対策財政特別法というのはもうこの五年が終わったら、全部そういう特別な、三分の二の補助とかいろいろのことがあるわけでございますが、そういうものはもう一般対策に全部移行していくんだ、今回が最後である、こういう認識でよろしゅうございましょうか。
  184. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) そのとおりでございます。ぜひこれを最後にしたいと思っております。
  185. 鈴木貞敏

    鈴木貞敏君 そういうことで、ひとつこの五年の間、さらにいろいろやらなくちゃいかぬ、最後の努力というふうなステップに至ったという認識を固める次第でございます。  そういう意味で、ちょっと細かいことになりますけれども、先ほど来この特別事業としても物的なあるいは非物的ないろいろの指定事業があるという御説明でございました。物的な対策というのはある程度向上した、しかし残念ながらソフトの面、非物質的な面についてはまだおくれが見える、こういう御説明もあったわけでございます。  この今回の法律の中で、昨年の七月二十六日、閣議決定があったわけでございますが、この七月二十六日を一つのステップとして、その期日を中心として、いわゆる継続して事業が行われているものはこの五年間またやりますよということですが、しかしそれ以外に、事業が行われていない、いろいろの事情でまだ事業に着手していない、しかし国の費用をそこに投入することが決定したというような事案については特別の温かい措置が必要じゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  186. 大坪正彦

    政府委員(大坪正彦君) 先生今言われましたとおりでございまして、七月二十六日時点で一応の期限を設けております。  この七月二十六日と申しますのは、先ほど言いました閣議決定をした日でございまして、その時一点におきまして継続的に事業が進んでいるもの、こういうものにつきましては経過的に五年間延長しようという考えでございますが、その着手済みの考え方につきましては、実は今回の法案はちょっと幅の広い考え方を入れております。と申しますのは、やはり最終の立法であるというような観点から、その当時におきまして、通常の工事以外に、国として地域改善対策事業でやるということを認定しているようなものまで広げて救おうというような観点を持ったわけでございます。  具体的には、法律の中におきまして、七月二十六日までに補助金の交付決定をしてやるようなもの、あるいは住宅地区改良事業、小集落地区等改良事業等でございますが、これは政令事項になりますけれども、事業計画の認可あるいは承認というものを七月二十六日までに進めていたようなもの、こういうものにつきましては、実際の工事が七月二十六日以降にずれ込んでも今度の法案の対象にしようという考え方を持ち込んで今御提案しているものでございます。
  187. 鈴木貞敏

    鈴木貞敏君 意見具申というのを読ませてもらいましたが、非常に詳細にわたって各般にいろいろ意見を具申しているわけでございます。  その中で地域改善対策の適正化という問題についていろいろ指摘しておるわけでございますが、私、非常に重要だと思いましたのは、行政の主体性の確立というような言葉を使っているわけですね。それから、同和関係者の自立向上ということ、そしてまたえせ同和行為が非常に横行しておる、横行といいますか相変わらず後を絶たないというふうな問題、それからまた同和問題については何というか禁句があったり、それからそれに近寄らない方がいい、避けた方がいいというふうな意識が非常に強いというような面が適正化の問題として一つ指摘されておるわけでございます。  そういう中で、今後五年間の経過措置を講ずるに当たりまして、その適正化という問題について御説明願いたいと思います。
  188. 大坪正彦

    政府委員(大坪正彦君) ただいま先と言われました適正化の問題というのは、実は同和対策事業を進めていくうちに周辺部分として出てきた大きい問題というふうに認識をしているわけでございます。そういうような意味合いにおきまして、先生が言われたような問題につきましての意識を持って進めてきているわけでございますが、意見具申の中では具体的な問題点ということで列挙しているものがございます。  それをちょっと御紹介させていただきますと、行政職員研修の体系的な実施、個人給付的事業における返還金の償還率の向上等の適正化、著しく均衡を失した低家賃の是正、民間運動団体に対する地方公共団体の補助金等の支出の適正化、公的施設管理運営の適正化、教育の中立性の確保、こういうような問題がございます。  それから、国税の課税の問題も触れておりまして、国税の課税につきましては、国家行政の根幹にかかわる問題であり、その公正を疑われることのないよう、より一層の主体性を持って引き続き適正公平な課税の確保に努力するとともに、地方税の減免措置についてもその一層の適正化に今後とも取り組むよう、地方公共団体……
  189. 鈴木貞敏

    鈴木貞敏君 結構です、時間がありませんから。
  190. 大坪正彦

    政府委員(大坪正彦君) そういうような指摘がありまして、今後そういう方向で地方公共団体とともに進めていくつもりでございます。
  191. 鈴木貞敏

    鈴木貞敏君 もう時間が参りました。一日も早い解決に向かって、総務庁長官以下皆さんの御努力、決意を最後に聞きたかったんですが、もう持ち時間が来ましたのでこれで終わりますけれども、ひとつ御健闘、御活躍を心からお祈りして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  192. 山崎力

    山崎力君 まず最初に、二十八年間にわたってこの問題が実施されてきているわけでございますが、この地域改善対策のためにどの程度のお金が今まで投入されてきたのかということをお伺いしたいと思います。  それで、今の鈴木先生の話の中で、ハード面はまあまあうまくいっているだろう、ソフトの面がまだいろいろ問題があるので、しかしそれも今回で最後にしたい、こういう話でしたが、その辺のことを含めてお伺いしたいと思います。
  193. 大坪正彦

    政府委員(大坪正彦君) 今までどのぐらいの経費を投入してきたかということでございますが、平成五年度に行いました実態調査でその辺も、各県、市町村の状況を調べてございます。結果としましては、県のレベルでは昭和四十四年以降平成五年度までで三兆五千六百億円、市町村では十兆三千二百億円となっております。さらに、国の方では三兆六千九百億円。この辺、補助金等の重複部分がございますので、その辺を差し引きしまして、実質的な支出額としましては、国、地方公共団体合わせて十三兆円を超えているものというふうに考えております。    〔委員長退席、理事板垣正君着席〕  そういうような経費を投入しながら、今までハード面あるいはソフトの面でも事業を進めてきているわけでございますが、先生今ソフト面を中心にというお話がありましたので、ソフト面で今どんな状況にあるかというのを先ほどの平成五年度の実態調査の状況の中でちょっと御紹介させていただきます。  まず、教育の面に関しましては、同和関係生徒の高等学校等への進学率が向上してきておりまして、ここ数年九割を超えておりますが、全国平均と比べるとまだ数ポイントの差が見られます。  それから、就労の面では、若年層を中心に安定化する傾向ありますけれども、全国平均と比較すると不安定な就労形態の比率がやや多くなっております。  産業の面では、同和関係の農業経営世帯につきましては小規模農家が多くて、農業従事者が高齢化してきております。また、事業経営世帯では小規模な個人経営が多い状況にございます。  それから、意識の面で、結婚をケースとして聞いたわけでございますが、自分の子供の結婚相手が同和地区の人とわかった場合に、同和地区外の住民の親の態度を見てみますと、子供の意志を尊重する、親が口出しすべきことではないというふうに答えられた方が、前回、六十年調査でもやっているんですが、六十年調査と比較しまして一〇ポイントほどふえて四割強になっておるわけでございます。次いで、親としては反対するが子供の意志が強ければ仕方がないとする方も約四割になっております。ところが一方、家族や親戚の反対があれば結婚させない、あるいは絶対に結婚させないというふうに答えられた方が一割以上やはりおられるという状況でございまして、依然として意識の面では根強いものがあるというところはこの辺から来ているわけでございます。    〔理事板垣正君退席、委員長着席〕
  194. 山崎力

    山崎力君 その辺が一番難しいこの問題のポイントだろうと思います。それが今後の施策で解消されるかどうか、これはまさにある意味では個々人の意識の問題で、そこまで行政が、リードすることはできるけれども深く入っていくことができないという、これは近代国家のジレンマの部分もあるわけでございます。その辺についてこれからどういうふうな形でいくかというのは、御苦労が多いことだと思うんですが、さはさりながら今度のいろいろな問題の解決の中で周辺部分ということでの問題指摘があったことも事実でございます。  端的に申せば、これはこれからの問題とするのは非常に難しいんですけれども、膨大なお金がその地域に投入されることによって、その他の地域、この問題がないところとの格差がどうなのかという点がおざなりになってきたのではないかなという問題意識を私は持っております。地域がはっきりしている、そこのところでの、その周辺とのトラブルというものがあった、それを物的な形でハードを整備してきた、それはそれで非常に効果を上げてきた。ところが、その周辺地域との逆差別というような発言が先ほどもございましたが、そういった問題が出てきて、それを何とか解消しようとして今までやってきたと思うんです。  それはそれで結構なんですが、ちょっとこの際、最後の時点ですのであえて政府サイドの考え方をお聞きしたいんですが、同和地区のない都道府県がございます。これは想像がつくわけでございますが、いただいた資料によりますれば、七年度の補助交付額がゼロと言っていいようなところがございます。これは東北六県及び北海道、それから富山、石川、沖縄、こういったところでございます。  これはある意味においては非常に幸運なところでございまして、そういった問題がない。私もそこの地の出身でございまして、この問題というものを受け取ることは非常に難しい。そしてなおかつ、東京に住んでおりましても、東京は地区指定がないということもありまして、よほど注意しなければその辺のところは見えてこない。これはある意味では非常に幸運だったわけでございますけれども、今までのそういった流れから見て、その地域の人たちは幸運だったからそういうふうなことに対しての格差というものは見えてこなかったんですけれども、地域的に見た場合、北陸を除くと、宮城、福島というところは若干豊かになっておりますが、逆に言えばそういったところの部分が同和の対策地域とのそういうハードの面での差が出てきているんじゃないかというのは、この今までの投入金額から見てある程度想定がつくわけでございます。  そういったことに対しての、国全体としてのそういった付随的な、周辺の周辺問題と言ってもいいかもしれませんが、その辺について今まで政府として何らかの対策ないし発想があったのかどうかということをお伺いしたいと思います。
  195. 大坪正彦

    政府委員(大坪正彦君) 先生の今の御指摘は私どもの今までのアプローチと逆の観点からの御質問でございまして、ちょっと御説明しにくい点があるわけでございますが、そもそもこういう特別対策を今までなぜやってきたかというふうな御説明の方がよろしいんじゃないかというふうに思うんです。  昭和四十四年からこういう特別対策をやってきたわけでございますが、そのときの考え方と申しますのは、昭和四十年に同対審という審議会から答申をいただいているわけでございます。実は当時の状況といたしまして、いわゆる一般的な対策そのものからも当時の地区は対象にしてもらえていなかったというような状況のもとで、そういう例えば物的な面での格差というものが心理的な差別にも影響しているという悪循環があるというような見方が当時されていたわけでございます。そういう悪循環を断つためには、まずそういう生活環境の改善というものに力点を置いてやることが悪循環を断ち切る一つの方法ではないかということにおいて特別対策がとられてきたという状況でございます。  そういうことが進みまして、しばらく前から先生が言われたような逆差別的な見方をされる部分も出始めましたので、そういう特別対策ではなくて、スタートの原点であります一般的な対策に戻るべきではないかというような流れがだんだん強まってきておりまして、今回の扱いとしましてはその原則でいこうというところに今来ている状況にございます。
  196. 山崎力

    山崎力君 その辺の流れは無理のないことだと思って、特段の問題があるというふうな指摘は私は避けたいと思っております。  ただ、こういったものが特にハードの面で一応終了したんだと。今、継続の、着手済みの定義の問題がございましたけれども、一応今回のもので済ませる、もう新規のものはしないと。それで、ソフトの面をやって、この次にはもうこれを延長したくないというのが政府の方針である、こういう御説明でございます。  それはそれで非常に結構なことなんですが、逆の立場からのアプローチとおっしゃいましたけれども政府であるならば、この一つ成果が出た時点において、その地域と全く関係のない地域の都道府県間、実際にはそれだけのお金が対策のために投じられた部分と投じられなかった部分との差がどの程度出ているのか出ていないのかというくらいの点検はやはりしていただかないと、国全体の問題からすればちょっと問題ではなかろうか。それがいい悪いという、だから先にやったといいますか、前に進んで金を投じたのがよくないというふうな意味ではないんです。その結果、終わったときにはこういう状態でしたと。それを判断して、もし仮にそこに差があるならば、これは一般的な事業として差のある都道府県に対してそれなりの措置をとっていくということも、この時期といいますか、ちょうどこういった切りかえどきには必要なことではないか。  そういう調査を、集落その他何でも結構でございます、いろんなあれがあると思うんですが、そういったことを政府側としてはやるべきではなかろうかと私は思っておりますので、その辺の考え方をお伺いして、あとは鈴木先生がいろいろお聞きなさったことと重なりますので割愛させていただいて、その辺のところを総務庁長官からお伺いして、私の質問を終えさせていただきたいと思います。
  197. 大坪正彦

    政府委員(大坪正彦君) 先生から地区あるいは地区外との比較というお話がございましたので、先ほどの平成五年に行いました実態調査の中で出てきております数字をちょっと御紹介させていただきます。  ハードの面におきまして、例えば住宅につきまして、一世帯当たりの平均畳数あるいは世帯員一人当たりの平均畳数、こういうものをちょっと調べているわけでございますが、一世帯当たりの平均畳数で見ますと三十一・三畳になっております。全国的な数字としまして平成五年に住宅統計調査がされているわけですが、ここにおきましては三十一・五畳ということで、ほとんど同じ数字でございます。これは一世帯当たりの畳数でございます。それから、世帯員一人当たりの平均畳数で見ますと、十・一畳が地区の関係でございますが、全国的には十・四畳でございます。例えば住宅ですとこういうようなことで、ほとんど差が見られないという状況になっております。  それから、道路につきまして申し上げますと、住宅と道路の接道状況、家の前にどのぐらいの広さの道路があるかという接道状況でございますが、幅員四メートル以上の道路で比較した場合、五七・五%で、全国平均とほとんど差がない、こういう数字も出たわけでございます。
  198. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) 今いろいろとございましたが、私は率直に言って、今の御質問のとおり、この日本の社会でそういういわゆる差別的なものが全くなくなっているという状態が一番望ましいと思います。今まではなかなか、政府がこれだけやってきてもいろいろのそういう問題で差別的なものが残ってきたというのはまことに残念でございますけれども、また今一面からいけば逆差別的なところも、一般事業と比べれば特別事業の方は補助率が高いんですから、当然何らかの形でプラスになる、プラスというか一般のところより以上のものもところによっては私はあったんじゃなかろうかと思います。そういうものがなくなって、日本の地域社会どこも全部同じような形になり、また日本人はみんな同じような考え方、同じような立場でおつき合いができるような、そんな社会にするのが一番望ましいわけでございますから、ぜひ今後のこの五年間で何とかそういう社会になるように私ども政府としては全力を振るって努力をしていかなきゃいかぬと、こう思っております。
  199. 山崎力

    山崎力君 そのように御努力願いたいと思いますが、私の質問の趣旨が最後ちょっと伝わったかどうか疑問なんですけれども、要するに今までの施策はそれとして、ハードの面でこれだけのお金が地域的に、その地区が多いところは当然のことであるわけですけれども、投入されてそれはそれなりのあれになったと。それが一応そろったという時点で、今そういう地区が多かったところと全くそういうところがなかったところと、単に全国平均といっても違ってくるわけでございますので、そういったところの成果政府としてさらって、そこのところがこれからの、ある意味では国土開発といいますか、国土整備、都市整備一つの目安といいますか、どうやっていったらいいかという基礎データをこの際この問題と絡めてというか、この問題を踏まえた上でのデータをそろえていただいて改めて検討していただきたいということでございますので、その辺のところをよろしくお願い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
  200. 清水澄子

    ○清水澄子君 地対財特法の改正に当たりまして、ここで確認をしておきたいと思うわけです。  部落差別を解消するために、一九六九年の同和対策事業特別措置法を制定して以来さまざまな特別措置が推進されてまいりまして、ようやく部落の人たちの生活環境の改善やまた格差是正の面で一定の成果があったと思います。しかし、今そちらの方からもどういうふうな差別の実態があるかという事例が述べられましたように、部落差別は必ずしも完全になくなっていない、これが私は現実だと思います。  したがいまして、昨年十二月に人権擁護施策推進法が成立いたしましたが、この法の制定に当たりましては、地域改善対策協議会が「同和問題の早期解決に向けた今後の方策の基本的な在り方について」という意見具申をしておりますが、この中で差別意識の解消に向けた教育及び啓発の推進と人権侵害の救済制度充実強化を求めているわけでございます。  そこで、私は総務庁長官にお願いしたいんですけれども、これまでも総務庁はこの被差別部落の人たちの生活向上と安定のために最も力を注いでこられてきた省庁だと思っております。私は、日本から完全に部落差別をなくしていくためには、総務庁はこれまでの実績といいますか成果を生かしながら、より一層の取り組みを強化していただきたいと思うわけです。  そこで、改めて総務庁長官の御決意を伺いたいと思います。
  201. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) 先ほど来申し上げておりますように、とにかく憲法に保障されておる基本的人権という面からまいりますと、私はこういうような問題が依然として残ってきた社会というのは大変不幸なことだと思っております。  そういう面で従来からも総務庁は努力してきたつもりでございますけれども、今お話しのように、また先ほどもお答え申し上げているように、どちらかというとハードの面は逆に言うと逆差別的によくなった面もあると思うんです。よくなり過ぎてしまったというところもあると思うんです。しかし、ソフトの面からいきますと、お互いの人間の社会の中でいろいろの問題が今なお残っているということは事実でございます。人権擁護推進審議会という形で、法務省の方で今度は審議会をおつくりいただくようでございますけれども、私どもといたしましても、そこの審議会はそこの審議会といたしまして、私ども当然側面的に、あくまで人権が本当に擁護されるという立場に立って、それが言葉どおりになるように努力をしてまいりたいと思っております。
  202. 清水澄子

    ○清水澄子君 ところで、今回の改正案では、特別措置の延長の対象となる物的事業に関して、昨年七月二十六日の閣議決定までに着手済みのものとされているわけですけれども、いろんな事業に一律に線を引くということは現実にそぐわないところが出てきていると思います。この点に関しましては、長官からは衆議院内閣委員会において柔軟に対応する旨御答弁いただいておりますので、ぜひそういう実態に即した温かい御配慮をお願いしておきたいと思います。よろしくお願いいたします。
  203. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) 衆議院でお答えしたとおり、できるだけ、しかし法律でございますので余り柔軟過ぎるというわけにはまいりませんけれども、実態を調べたときに余りにも気の毒だというようなところはやっぱり救済をしていかなきゃならないと私は考えております。
  204. 清水澄子

    ○清水澄子君 ありがとうございます。  法務省にお伺いをしたいわけですけれども、このたび設置されます人権擁護推進審議会の委員の構成でございますけれども、やはりこういう差別の問題というのは実際に差別されている人たちの実態に触れている人たちが委員に選ばれないと机上の空論になりがちなんです。ですから、この審議会の委員、これは人権問題に精通した学識経験者並びにNGO団体、そういう人々を委員にぜひ選んでいただきたい。そして、実際に人権問題に取り組んでいる市民グループの人たちともいろんな意見交換をしながら、もう少し市民的な、民主的な、開かれた審議会の運営をしながらそこに透明性も確保していく、こういう形で運営もお願いしたいと思いますが、そういう委員の選任に対する考え方について法務省はどのようにその問題を意識していらっしゃいますか。
  205. 坂井靖

    説明員(坂井靖君) お答えいたします。  この審議会の委員につきましては、「学識経験のある者のうちから、法務大臣が任命する。」とされておりますけれども、この審議会の設置の趣旨、それから目的に照らしまして、人権に関してさまざまな角度から公平公正な審議が行われるような体制とする必要があると考えております。したがいまして、審議会委員の人選に当たりましてはこの点に十分配慮したいというふうに考えております。  また、本法律案の御審議をいただきました衆議院及び参議院の法務委員会におきまして、「人権問題に精通した学識経験者を選任するよう配慮すること。」、このような附帯決議がなされたことも踏まえまして、広い学識経験と専門知識を有する者を選任すべきである、このように考えております。
  206. 清水澄子

    ○清水澄子君 次に、梶山官房長官にお尋ねいたします。  部落差別解消に大きくかかわって、昨年五月の地域改善対策協議会の意見具申でも積極的な推進が求められてきました人権教育のための国連十年に関してでございます。これは一九九四年に人権教育のための国連十年が始まりまして、日本も早速、日本の人権文化を高めていくという趣旨において推進本部ができたことは私は大変意義があると思っております。  しかし、これにはもっともっと国民各層が、もっと全体が参加していく、そして国民自身もその推進の主体になっていくという運営が必要だと思うんです。昨年十二月に国内行動計画の中間まとめというのが出されているわけですけれども、どうもその中間まとめというのが、私たちが読んでそうだと胸に響いてくるような内容がないわけです。今、国内行動計画を早急に確定させるということになっているわけですけれども、この策定の進捗状況と今後の日程はどうなっておるのでしょうか。
  207. 田波耕治

    政府委員(田波耕治君) お答え申し上げます。  人権教育のための国連十年推進本部におきまして、現在、行動計画の取りまとめをやっております。委員御指摘のように、中間まとめが昨年の十二月にできたところでございます。これにつきましては、現在、地方公共団体であるとかあるいは民間関係団体にも送付をいたしまして、この三月末をめどに御意見を求めておるところでございます。かなりいろいろな御意見をいただいております。これを私どもの方でまとめまして、そういう御意見を参考にしながら関係省庁の間で現在検討を行っておるところでございまして、国内行動計画の成案の策定に向けまして一生懸命努力をしてまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  208. 清水澄子

    ○清水澄子君 私たち自身も含めて、いつも私はこういうところで発言していますけれども、観念的には人権という問題を言えるんですけれども、実際、本当の意味で私たちは自分の意識というのをいつも問い直さないと意外と観念論になるおそれがあると思うんです。この中間まとめの記述を見ていましても、非常に気にかかるといいますか、そういう記述がいろんな面であるわけです。  例えば、日本では等質性が高い反面、異質なものを排除しようとする不寛容性の傾向が根強く残存していると記述されているわけです。それは確かに外国人とかそういう人たちへの、異文化といいますか、異質なものを排除する排外的な一つの大きな欠点が私は日本にはあると思っています。  しかし、それらを今度は部落差別に当てはめたとき、もともと同和地区という異質なものが初めから存在したのではなくて、これはあえて異質なものとされてきたいわれのない差別が歴史的に、社会的につくり出されてきた。そういう結果、それを異質なものとして排除していくということが私たちの社会の中にある。ですから、差別をなくすというときに、自分は異質と思っていない、または異質と思っているというものが、なぜそういう問題が出たかという差別のもっと具体的な実態を述べながらどのように人権を尊重していくかということを取り上げないと、表現の中に幾つもの疑問が出てまいります。  また、そういう中で、例えば個々人の権利意識の高揚によって各人の人権相互間の対特等が高まっているといった記述もあるわけですけれども、ではそれを今度女性差別に当てはめたときに、そもそも女性は自分たちのいろんなことで人権という意識は今まで余りなかったと思います。そういう意識、人権という視点で女性は余り物を考えられなかった時代があったと思います。しかし、人間の権利とか尊厳という意識はだんだん今いろんな人たちの中に意識されるようになってきたわけですね。そうすると、それは女性が権利意識に目覚めたから男性の人権と対立するんじゃなくて、それは人間全体の人権を尊重するという方向に行くのであって、こういう表現というのはちょっと理解できない。そういう表現があちこちにあります。  ですから、人権という問題は、実際に差別に苦しんでいる、また差別の実態をそこに書いて、そしてそれに対してみんなが考えるような問題提起をしていくことの方が大切で、この国内行動計画というのはみんなが、それぞれが意識を問い直していくような内容にすべきだと思います。その点で、今申し上げたような項目のところは一度点検し直していただくということはできませんでしょうか。
  209. 田波耕治

    政府委員(田波耕治君) 委員御指摘のように、この中間まとめにおきましては、異質なものを排除しようとする不寛容性の傾向が社会にまだ根強く残存しておる、この点について、近年著しく国際化、ボーダーレス化も進展をしているという状況のもとでは、広く国民の間に多元的文化、多様性を容認する共生の心を醸成する必要があるというようなコンテクストの中でそういう文言が使われているのは事実でございます。  それから、後段の点についても御指摘のとおりでございますけれども、その後の方で、「重要課題への対応」という項目を大きく立てておりまして、その中で、まず第一に女性の問題、それから第二に子供の問題ということで、かなり具体的な記述に心がけているつもりでございます。  それから、前段については、もとよりそもそも異質だというような認識で書いてあるものではございませんけれども、御指摘の点につきましては、どこまで具体的に個別項目について書き切れるかということはいろいろな問題があると思います。今の点も含めまして、できるだけわかりやすく誤解を生まないような表現になるように、既に関係団体等からも御意見をいただいておりますので、これから関係省庁間で十分検討してまいりたいと思っております。
  210. 清水澄子

    ○清水澄子君 文部省のところに出ているのも非常に抽象的なんですね。例えば、「学校教育においては、日本国憲法及び教育基本法の精神にのらとり、人権教育が推進されている。」と。こうなれば、もう何もこんなところでそんなことを書かなくていいんです。むしろ、学校現場でなぜいじめが起きるのか、こういう問題が起きているのはなぜだろうかということをみんなで考えながら、それぞれの立場でその問題をみんなで解決していくためにみんなが自分たちの生き方を変えていったり知恵を出し合っていくというような内容にしていくことが私は行動計画じゃないのかなと思うんです。ですから、こんなふうに、日本国憲法があってその精神にのっとって人権教育が推進されているなんて書いてあるんじゃ何にも心に響いてこない、そういうことを私は申し上げています。学校現場にいっぱいいろんな差別があります。  そしてまた、例えば識字に関する問題でも、日本には非識字者はおりませんという前提にいつも立って文部省はお話しになっています。法律上はないんですが、現実にはあるんです。そしてまた、不登校とかいろんな問題が新たに起きていますし、在日外国人もおりますし、戦争時代に学校に行けなかった人もいます。ですから、今改めて夜間学校で勉強したいという人もいるわけですね。ですから、そういう現実をちゃんと、私たちはこういう人たちの人権を尊重しよう、差別をなくしていこうという実態をもっとあらわした方がいいのではないか。私たちの社会の中で自分は何ができるかということをもっと各人が考えていけるような行動計画にしていっていただきたいと私は思うわけです。  そういう意味で、この行動計画策定に当たっては、市民とかNGO団体とか、特に人権侵害、差別の被害を受けてその差別をなくすために努力している人たちと一緒につくっていく、そういう姿勢が私は必要だと思いますが、その点はぜひ取り上げていただきたいと思います。いかがですか。
  211. 田波耕治

    政府委員(田波耕治君) 先ほどもちょっと申し上げましたように、十二月にこの中間取りまとめを行いました後、民間団体等を含めまして広く御意見を現在伺っておるところでございます。委員のおっしゃることは非常に重要な点だと思います。  また、この人権教育のための国連十年の取り組みというのは幅広い分野にわたるものでございますから、今後、関係団体等から出された意見を十分に参考にいたしまして、関係省庁間で検討し、国内行動計画を策定してまいりたい、こういうふうに考えております。
  212. 清水澄子

    ○清水澄子君 それから、ぜひ訂正していただきたいのは、中間まとめの「重要課題への対応」という中で、外国人を「その他」の中にはうり込んであるわけですね。しかし、日本では在日韓国・朝鮮人の人権問題というのは大変大きな社会問題にもなっているわけですから、やはり「その他」で一括してくくるんじゃなくて、重要課題として個別に項目を立てて具体的な施策を盛り込んでいくべきだと思いますが、いかがですか。
  213. 田波耕治

    政府委員(田波耕治君) 御指摘のように、「重要課題への対応」という項目におきまして、女性、子供等々ということを個別に取り上げて、最後に「その他」ということで外国人の人権問題を取り上げております。その中で、外国人に対する人権問題を解決するための外国人のための人権相談体制充実、さらには外国人に対する差別意識解消のための啓発活動について言及をしているところでございます。  御指摘の在日韓国人等の方々の人権問題は大変重要な課題でございまして、中間まとめの「外国人」の項ではその問題への対応も含めて記述していると私どもは考えておるところでございますが、外国人の人権問題を御指摘のように「その他」という項目ではなく、個別の項目として取りまとめるという委員の御意見につきましては、関係団体からも同じような趣旨の意見をいただいているところでございますので、今後、関係省庁間で検討してまいりたいというふうに思っております。
  214. 清水澄子

    ○清水澄子君 人権教育は何かだれかに教えてやるというんじゃなくて、一番最初はやっぱり教育者とか警察官とか公務員がもっと毎日多くの住民と接触しながら行政の中で自分自身がどういう人権意識を持つかということが最も必要な時代だと私は思います。ですから、人権教育の重要な対象は公務員にまず本業の意味の人権教育をしていくということを私はぜひ具体化していただきたいんです。  もう時間がありませんので、最後に私は官房長官一つ提案をしますけれども、この地対協の意見具申の中でも、基本認識の項で、まずは足元とも言うべき国内においての同和問題など日本社会に存在する具体的な差別問題や人権問題を一日も早く解決するように努力することが国際的な責務であろうということを指摘しております。  そういうことを基本に据えながら、ちょうど来年、一九九八年は世界人権宣言五十周年でございます。ですから、私は、日本は率先して人権教育推進のための世界会議日本で開くような、そういう積極的な姿勢をひとつぜひ御検討いただけたらと思いますが、官房長官、いかがでございますか。御決意をお願いいたします。
  215. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 私の一番弱い分野を今耳を傾けながら聞いていたわけであります。  大変不幸なことか幸いなことかわかりませんが、私の生まれた、あるいは育ってなおかつ今生活をしている茨城というのは、その意味では同和マイノリティー、そういう問題の極めて少ないところであります。ですから、少年期、青年期あるいは壮年の前半までそういう意識が全くありませんでした。あることで私が発言したことが大変なとらえ方をされて、私なりに愕然とした覚えがございます。それ以来、逆にむしろ私の目はそういうものを意識して発言したりするようになって、逆に差別というものが心の中に入ってしまったという感じすらいたします。  私が大変尊敬をしている小森龍邦さんにその問題を話しましたら、梶山さん、一番マイノリティー問題に関心が深いというか理解ができたんじゃありませんか、私たちはある社会から入っただけにそれだけのものがあるということを言われました。しかし、大変大切な問題だということは私もよく理解をいたしております。これからもいろんな方々の御意見を聞いて勉強し、その推進に努めてまいりたい、このように考えます。
  216. 清水澄子

    ○清水澄子君 終わります。
  217. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 重なる部分もあるんですけれども、それらにつきましてなるべく重複にならないように幾つか質問をさせていただきたいというふうに思います。  まず最初に、武藤総務庁長官基本的な部落問題解決に向けたお考えを、これはもう一、二御発言もいただいておりますが、伺いたいというふうに思います。  前置きといたしまして、今も清水委員から引用されましたけれども、私も昨年五月十七日の地対協の意見具申を読ませていただきまして、これまでの経緯と現状と将来に向けて、それぞれの関係者の方々の総力がまとめられたというふうに受けとめさせていただいています。  その中でとりわけ私が冒頭申し上げたい点は、この意見具申の中で、「同和問題に関する基本認識」において「我が国固有の人権問題である同和問題は、憲法が保障する基本的人権の侵害に係る深刻かつ重大な問題である。」ということが一つと、そしてただいま申し上げられましたけれども、「国際社会における我が国の果たすべき役割からすれば、まずは足元とも言うべき国内において、同和問題など様々な人権問題を一日も早く解決するよう努力することは、国際的な責務である。」、こう指摘をされております。そしてまた、引き続きまして、同和問題は過去の問題ではなくて、「解決に向けた今後の取組みを人権にかかわるあらゆる問題の解決につなげていくという、広がりをもった現実の課題である。」ということを強調されております。  まさに人権の尊重が平和の基礎であるということが世界の共通認識になりつつあるという指摘のとおり、二十一世紀は人権の世紀であるということも私は言えるのではないかというふうに思います。  そこで、こうした意見具申の中での表現、提起、そして認識を踏まえまして、同和問題の早期解決に向けた政治の責任というのも私たちは果たしていかなければならないわけでありまして、そういうような引用も含めて提起させていただきましたけれども、部落問題解決に向けた総務庁長官としての基本的な考え方についてお伺いしたいと思います。
  218. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) 今いろいろと御指摘いただいたとおりでございまして、昨年五月に出されました御意見というのはよくできていると私は思っております。  基本的な考え方ということでございますが、これはもう先ほどから申し上げておりますとおりで、憲法に保障されておる基本的人権、それに関してこの問題というのは非常に重要な問題でございます。ぜひともすべての日本人の基本的人権がきちんと保障される、そういう社会をとにかく日本につくっていかなきゃいけない。となれば、ハードの面では地域的には大分よくなってきておりますけれども、残念ながら今なおソフトの面で人間社会のおつき合いの中でそういう問題がいろいろ指摘されておる以上、これが一日も早く解消されるように努力をしていかなきゃいけないのは当然でございます。そのために地対協の意見具申の中にございますようないろいろの施策をこの五年間精力的に進めていきたい、こう考えております。
  219. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 昭和四十四年、この同対法が制定をされまして、以来二十八年でございましょうか、たちます。三たびにわたります特別法が制定をされまして、約四半世紀ということになるんですが、これまで同和地区、同和関係者の方々に対象を限定いたしました同和対策が実施をされて今日に至ってきております。そういう意味で、この同和問題の現状をどのように認識をされているのか伺いたいというふうに思います。
  220. 大坪正彦

    政府委員(大坪正彦君) 先と言われましたその現状につきまして、平成五年度の同和地区の実態調査に即した格好で御説明させていただきたいというふうに思いますけれども、総じてのお話は大臣からもありましたように、物的な面についてはかなり進んできている、地区と周辺地域の格差は見られないというようなところがあるわけでございます。  例えば住宅につきましては、一人当たりの平均畳数や世帯員一人当たりの畳数では全国平均との差はほとんど見られない。また、道路につきましては、道路改修率につきましては、同和地区所在市町村全体の道路改修率を一七ポイント上回っております。また、住宅と道路の接道状況につきましても、幅員四メートル以上の道路との接道率は五七・五%で、全国平均とほとんど差が見られない状況にございます。  昨年五月の地対協の意見具申におきまして、そういう意味におきまして物的な基盤整備はおおむね完了したというような指摘がされている状況にございます。  また一方、調査結果の中では、同和地区の教育、就労、産業、意識などのソフトの面についても触れているわけでございますが、まず教育の面につきましては、高等学校への進学率はここ数年九割を超えておりますけれども、全国平均と比べるとなおまだ数ポイントの差が見られます。また、同和関係者の最終学歴につきましては、短大、大学等の高等教育修了者の比率は、二十歳代、三十歳代では四十歳以上に比べてかなり高くなっておりますけれども、全国平均との差はまだ大きい状況にございます。  就労の面では、若年齢層を中心に安定化の傾向にありますけれども、全国平均と比較しますと不安定な就労形態の比率がやや高くなっております。  産業の面では、同和関係の農業経営世帯は小規模農家が多く、農業従事者が高齢化してきておりますし、また事業経営世帯では小規模な個人経営が多い状況にございます。  意識の面では、自分の子供の結婚相手が同和地区の人とわかった場合の同和地区外の住民の親の態度を見ますと、子供の意志を尊重する、親が口出しすべきことではないとする方の比率は六十年調査と比較しまして約一〇ポイント増加しております。また、親としては反対するが子供の意志が強ければ仕方がないとする方も四割になっておりますが、一方、家族や親戚の反対があれば結婚させない、絶対に結婚させないとする方を合わせますと依然一割以上の状況にあるわけでございます。  そういうことを踏まえまして、昨年五月の地対協意見具申におきましては、「高等学校や大学への進学率にみられるような教育の問題、これと密接に関連する不安定就労の問題、産業面の問題など、較差がなお存在している分野がみられる。差別意識は着実に解消へ向けて進んでいるものの結婚問題を中心に依然として根深く存在している。」との指摘がなされているところでございます。
  221. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 地対協の意見具申で、いわゆるこれからの同和問題の解決に向けた今後の課題というのが幾つか出されております。ただいま高等学校、大学への進学率に見られる教育の問題、不安定就労の問題等々が述べられましたけれども、この具申の中でさらに適正化対策という、先ほど鈴木委員からも御質問があってお答えになったんですが、今後の課題として掲げられている適正化対策にどのように取り組んでいかれるのか、お伺いしたいと思います。
  222. 大坪正彦

    政府委員(大坪正彦君) 適正化の問題でございます。平成五年度の実態調査の結果を踏まえての意見具申のことでございますが、適正化の観点につきましては、改善された点も見られますけれども、不十分な面も見られるという状況のもとで、意見具申におきましては今後の重点施策の一つとしてこの適正化対策を掲げているところでございます。  政府といたしましては、この意見具申を踏まえまして、昨年七月、閣議決定をしたわけでございます。  具体的に申しますと、行政の主体性の確立、同和関係者の自立向上、えせ同和行為の排除、同和問題についての自由な意見交換のできる環境づくりに引き続き取り組むものとするとともに、具体的な問題点につきまして引き続き厳しく是正するために行政職員研修の体系的な実施、個人給付的事業におきます返還金の償還率の向上等の適正化、著しく均衡を失した低家賃の是正、民間運動団体に対する地方公共団体の補助金等の支出の適正化、公的施設管理運営の適正化、教育の中立性の確保について引き続き関係機関を指導する。また、国税の課税につきましては、国家行政の根幹にかかわる問題であり、その公正を疑われることのないよう、より一層の主体性を持って引き続き適正公平な課税の確保に努力するとともに、地方税の減免措置についても、その一層の適正化に今後とも取り組むよう、地方公共団体に対して指導、助言を行うというような内容で閣議決定がされているところでございます。  政府といたしましては、この閣議決定に基づきまして通達などによりまして関係機関に対する指導に努めまして、地域改善対策の適正化に一層努めてまいりたいというふうに思っている次第でございます。
  223. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 これまでの同和行政の推進、とりわけ現状までのさまざまな施策について御説明いただきましたが、言ってみれば生活環境整備事業の推進ということで、同和地区の生活環境というのは確かに大きく改善されてきているというふうに思います。これは国あるいは地方公共団体、そして地区の方々、住民やさまざまな運動団体の方が差別撤廃に向けて努力してきたという成果が私はあるんではないかというふうに思います。  その上に立って、この意見具申でも指摘されていますように、今後とも成果を損なうことのないように差別解消に向けて施策を推進していこうということで、そういった意味から、今回の一部改正案で事業内容が縮小されたことで今後の同和行政を推進していく国の責任や姿勢がより後退をするということがあってはならないというふうに思います。そういう観点から、部落差別問題の早期解決に向けまして、国は地方自治体と十分連絡をとって、運動団体あるいは関係者と意思の疎通を図って行政の責任を果たしていくということで、政府の決意をお尋ねさせていただきたいというふうに思います。
  224. 大坪正彦

    政府委員(大坪正彦君) 今後の同和対策の推進についての基本考え方ということになろうかというふうに思いますけれども、この点につきましては、昨年五月の意見具申におきまして、現状の評価、分析を踏まえた上で、今後の進め方ということについて四点提言があるわけでございます。  一つは、差別意識の解消という観点におきまして、教育、啓発の推進の問題でございます。それから二番目は、人権侵害によります被害の救済の対応の充実強化の問題でございます。それから三番目が、地域改善対策特定事業の一般対策への円滑な移行という点でございます。四番目が、先ほど御質問のありました施策の適正化という観点でございます。  この四点の提言があったわけでございまして、政府といたしましてはこの四点の考え方に即して進めていきたいというふうに思っている次第でございます。
  225. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 時間があと一、二分だと思いますので、意見を申し上げさせていただきまして、終わりたいと思います。  ただいま御答弁いただきました。いずれにしましても、先ほどの答弁の中にもありましたように、就労差別あるいは結婚問題を中心として問題は依然として根深く存在をしております。かつて地域改善対策室が全国実態調査を行いまして、この同和問題に係る意識調査の結果、依然として今申しました厳しい差別意識があるわけでございまして、こういった実態を厳しく分析をしていく、そういう意味での今後の施策を考えていかなきゃならないということは私は当然のことだというふうに思います。そういうことで、これからもぜひとも差別のないということの中での積極的な推進施策を求めさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  226. 笠井亮

    ○笠井亮君 これまで質疑を伺ってまいりまして、今日、十年前に最後の特別法だというふうに位置づけられたこの特別法がその使命を果たしたと言える段階に来ているんじゃないかというふうに思うんです。そして、現実に和歌山県の吉備町のように基本的な同和事業の完結を宣言している自治体や終結を目前にしているところも少なくないと思います。  期限切れ後は、もし現行法の期限内に着手し継続している事業や本当に必要な事業があれば、特別法によるのじゃなくて一般行政の中でやるべきだというふうに思うんですけれども、なぜそういう措置をとられないのか、これを率直に伺いたいと思います。
  227. 大坪正彦

    政府委員(大坪正彦君) 先生の今の御指摘の点は、実は地対協におきましても過去の意見具申で触れているところでございます。特別対策というものは永続的に講じられるべき性格のものではなくて、事業の迅速な実施によってできる限り早期に目的を達成し一般対策へ移行することが肝要というような点が地対協でも指摘されているところでございますが、今回なぜまた五年の延長法案を御提案するかということにつきましては、今回の期限切れを迎えまして、昨年五月、地対協から意見具申が具体的にあったわけでございます。  その五月の意見具申におきましては、この特別対策というものは基本的にはこの期限切れをもって一般対策化すべきであるというような提言とともに、ただし一部の事業につきましては一定の工夫をしないと一般対策への円滑な移行ができない、一般対策への円滑な移行のために一定の工夫をしろというような御提言もまたあったわけでございます。  そういうことで、一部の事業あるいは一定の工夫というものをどうするかということで個々の事業について五月以降検討を加えまして、具体的な措置というものを七月の閣議決定に盛り込んだわけでございます。そういう中で、経過措置的あるいは激変緩和的な措置、こういうものにつきましては、それで法的措置が必要というものにつきまして、それに限って今回御提案しているものでございまして、基本的には一般対策化の考え方に即して行っているものでございます。
  228. 笠井亮

    ○笠井亮君 その最後のところを伺いたかったので、最初の方のお答えは先ほど来あったと思います。  昨年三月の地対協の報告書の中でも、先ほど来ありましたように物的な基盤整備はおおむね完了したということがございますが、現行法の対象になる自治体が千百二十五で四千六百三地区あるというふうに私は承知しているんですけれども、では物的事業が残るのは何自治体、何地区になるわけですか。
  229. 大坪正彦

    政府委員(大坪正彦君) 今回御提案しております法律で、物的事業につきましては五事業の物的事業に絞り込んでいるわけでございます。具体的には住宅地区改良事業、小集落地区等改良事業、道路事業、街路事業、公共下水道整備事業、この五つの事業でございますが、この事業が対象となりますのは、今の見込みといたしましては百八市町村の百六十一地区になろうかというふうに考えております。
  230. 笠井亮

    ○笠井亮君 では、その他は物的基盤の整備が完了したというふうに考えていいわけですね。
  231. 大坪正彦

    政府委員(大坪正彦君) 完了したかどうかというのは、それぞれの地区によっていろいろ状況があろうと思いまして一律に言えないと思いますが、必要なものにつきましては一般対策の一般的な補助事業によって対応するということになるわけでございます。
  232. 笠井亮

    ○笠井亮君 要するに、特別事業としてはもうやる必要がないから終わったということで、だから残っているのをやるんだということになるわけですね。うなずいていらっしゃいますから。  それで、地対協の報告書は、従来の対策を漫然と継続していたのでは同和問題の解決に至ることは困難であると、そこまで言っていると思うんです。そして、これまでの特別対策についてはおおむねその目的を達成できる状況になった、現行法の期限である平成九年三月末をもって終了することというふうにしていると思います。残された課題については、その解決のための工夫は一般対策に加えつつ対応するとの基本姿勢に立つべきだというふうに私は読み取って理解をしているわけであります。  総務庁、先ほどお話がありましたが、法的措置を含めてだということなんですけれども特別法によらずに一般行政の中で必要な措置をとることだってできるじゃないかというふうに普通考えたらなると思うんですけれども、どうなんでしょうか。
  233. 大坪正彦

    政府委員(大坪正彦君) 一般対策化を進めるということになりますと、先生のような確かに一気にというお考えもあろうかと思います。ただ、実際に事業を執行するという観点でいろいろ地対協では意見具申をいただいたわけでございますが、一般対策への円滑な移行という観点では、やはり物的な面での継続事業あるいはその他のものにつきまして激変緩和的な措置が必要なものというのはどうしてもあるというふうに認識している次第でございます。
  234. 笠井亮

    ○笠井亮君 現行法が五年間延長された、九二年三月二十七日だったと思うんですけれども参議院内閣委員会総務庁の当時の小山官房審議官が、物的事業を中心とするものについては成立させていただきたいこの法律の期間中に完結させたい、残っているものほどいろんな事情の難しいものが残っている可能性がある、だから数字だけの割り算をすればそんな五年間もかからないかもしれません、こういう事情も勘案して五年の期間を置いてございますから、物的面を中心にこの機会に完結したいと、そこまで言われたわけなんですよ。  それで、着手済みの事業とか激変緩和というようなことで経過措置が必要と言われますが、そういうことは五年前にも当然想定されていたことだというふうに思うんですけれども、そうじゃないんですか。
  235. 大坪正彦

    政府委員(大坪正彦君) 五年の経過をどう見るかということで、私も十分な情報があるわけではございませんが、ただ前回の改正のときにはこういうような継続事業に限るとか、あるいは激変緩和的なものに限るというようなことでなくて、ある意味で新規の事業も認めるという大きい流れのもとに五年間で処理をしたいというようなことで進めてきたわけでございますが、現実、実際に一般対策への円滑な移行という観点でもう一回見直しをしたときに、こういうような措置が必要というふうに判断しているところでございます。
  236. 笠井亮

    ○笠井亮君 いずれにしても、当然想定されていたことでありまして、そういうことは確認しておきたいと思うんです。  もう一つ、ハードよりもソフト中心に移行したということがあったんですけれども、これも今の段階になったからそういうことが言えるということではないんじゃないかと私は思うんです。  八七年のそもそものときに、三月二十四日ですか、衆議院の内閣委員会で熊代地域改善対策室長が当時答弁されまして、法失効後に物的事業等が残された場合には一般対策として事業を実施していくと。等というのは非物的、要するにソフトも含むということになると思うんです。  それから、三月二十六日の参議院内閣委員会で同じく熊代室長が、その当時でもソフト面についても非常に改善されたと意見具申が指摘をされているということで、一般法で積極的に対処することが差別解消にむしろ適当だという旨の答弁を既に八七年にされているわけですね。だから、ハードよりソフト中心に移行したというふうなことで必ずしも話がいくんじゃないのではないかと思うんですけれども、そこはいかがなんですか。
  237. 大坪正彦

    政府委員(大坪正彦君) 繰り返しの御説明になるわけでございますが、今回改めて期限後の状況をどうするかということにつきまして地対協にいろいろ検討していただいた結果、先ほど申しましたようなある程度の工夫をした方が一般対策への円滑な移行ができるという考え方をいただいたわけでございまして、その方向で今進めている状況にあるわけでございます。
  238. 笠井亮

    ○笠井亮君 そうやっていると、私は率直にエンドレスになりかねないということを危惧するんです。現行法制定の八七年の三月二十四日、これも衆議院内閣委員会で熊代さんが一般地域との格差も相当以上是正という、昨年だから八六年だと思うんですけれども、昨年の意見具申でも指摘をいただいていると。一般対策と不均衡を生じるようでは国民的合意は得がたい、かつ同和問題解決にとっても望ましくないと考えているというふうな御答弁があったんですね。  当時の山下総務庁長官が、今後またやらなければならぬ事業があるならば、それは一般対策として継続してやることも可能であるというふうに言われて、そして九二年には五年の延長、そしてまた今度いろいろ勘案されたけれども延長ということになると、これは本当にどこまでいくのかというのが率直にあると思うんです。  残事業について先ほどもありましたけれども、これも理解できない問題があるんです。現行法がスタートした八七年から五年間に実施を予定していた物的事業量というのが六千四百四十二億円としていて、その後いろんな経過がありました。結局、物的事業が減らないでふえていくという実態があるんじゃないかと思うんです。  この五年間だけで見ても、残事業が減るどころか、逆にふえて、そして三千八百二十九億円から四千四百四十三億円に膨れ上がっているという実態を私は資料をいただいて見たんですけれども、事業を水増ししているのかという批判が出るのも当然じゃないかというふうに思うんです。結局そういうふうにエンドレスになっていって、しかもそういうふうに膨れ上がっているということについて、総務庁としてはどういうふうに御説明になりますか。
  239. 大坪正彦

    政府委員(大坪正彦君) 今回の法案は、先生も御承知だと思いますが、先ほど言いましたように物的事業につきましては継続事業に限定し、なおかつその対象も五事業に限定しているという状況であるわけでございます。  したがいまして、継続事業に限定しておりますので、今やっております事業が終われば逐次その事業そのものがなくなるわけでございまして、新規の箇所づけのものはやらないわけでございますので、五年を待たないでもそれぞれの事業が終わればその時点で終了するというのが今回の法案の仕組みでございます。法案上も実はこの物的事業を総称いたしまして経過措置対象事業というふうに、法律の中でも経過措置ですよというようなことを明記しているのが今回の法案でございます。
  240. 笠井亮

    ○笠井亮君 対象事業の数を減らしたというふうに言われても、私さっき申し上げた残事業だといって額を次から次へと膨らませていかれると、これはいつまでたっても一般行政に移行ができないんじゃないかということも率直にあると思うんです。  そこで、長官に伺いたいんですけれども、衆議院の議論の中でも我が党の木島議員が質問して、それに大坪政府委員がお答えになって、一般対策への安定的移行のために必要だという考えで今回提案しているんだということもありました。そして、私が今申し上げたような状況も非常に危惧としてあるわけですけれども、今度の五年延長をするということで、先ほども御質問があって、ぜひこれを最後にしたいというお答えがありましたが、それ以上の延長はないのか。そして、では物的事業はどうなのか、それからソフト面についても五年間でできるということで、もう本当にこれを最後にするという決意で、そして実際にそうするんだ、この五年間で終結させるんだというふうに思っていらっしゃるのかどうか、そこのところをずばり伺いたいんです。
  241. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) 先ほど申し上げたとおりでございまして、この五年間、今度こそこれで最後の法律にしたい、こう考えております。
  242. 笠井亮

    ○笠井亮君 最後の法律にするということで私は受けとめたいと思います。  そこで、我が党の木島議員が質問でも紹介をしました吉備町の例なんですけれども、同和問題について取り組みをしているということを私も若干触れたいと思うんです。  もう既に長官は御存じだと思いますが、吉備町では一昨年十一月にドーン計画ということでその完結町民集会を開いた。まさに夜明けの計画ということでありますが、この計画に基づいて十年間かけてつくり上げてきた生活条件の環境整備などの基本的な事業が完結したということで開いた集会だったということであります。  今、町のこれまでの取り組みが全国的にも注目もされ、各地からたくさんの方々が視察に見えているということでありますが、この町は計画当初から差別される部落民は存在しない町を目指して、同和地区の人だけが特別に優遇されているというふうに一般住民が思う間は差別はなくならない、同和地区の人もすべての町民もみんな同じように法のもとでちゃんとした福祉施策を受けているというように町民全体が実感できるようなことなんだという考え方に立って、地域住民との徹底した粘り強い話し合いを重ねて、納得と合意を得て一体となって施策を推進してきたということだと思うんですけれども、その努力の結果、同和地区という境界はなくなったというふうに言われております。あそこの井上助役が、今日、同和対策事業を漫然といつまでもやっていくのは大変な間違いだというふうに言われているわけであります。  これは長官に伺いたいんですけれども、既にそのことも御承知だと思いますが、こうした同和問題解決のための取り組みと努力についてどういうふうに感じていらっしゃるか。それはそれとして大事というふうに思っていらっしゃるのは当然だと思うんですが、その点と、また吉備町を初めとして町民はぜひそういう点ではそういうところの視察もお願いしたい、長官にも来ていただきたいという要望もあるんですけれども、ぜひその点も検討をお願いしたいと思うんですが、あわせてお答えがいただければと思います。
  243. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) 大変すばらしいことだと思います。  ただ、問題は、ここはそういう形で宣言を出しておやりいただいたわけでございますけれども、よくわかりませんが、全国のそういう同和地区のありましたところで、もうそれがなくなっているところがほかにも私はあるだろうと思うのでございます。ここはたまたまこういう宣言をお出しになったので有名になったわけでございましょうけれども、私そこだけ行ってほかの終わっているところは行かなかったというと、おれの方は宣言していなかったから来てくれなかったのか、こう言われてもいけませんので、これは宣言されるされないにかかわらず、先ほど来申し上げているように、本当にそういう地域社会がすべてそういうことを全くお互いに感じなくて済むような社会になれば大変結構なことなのでございますから、私はこの町は大変すばらしいことだと敬意を表する次第でございますが、視察に行けというのは、やはりここだけ行くというわけにはなかなかまいらないと思っております。
  244. 笠井亮

    ○笠井亮君 私もそこだけ行っていただきたいということじゃないんです。そういうところも含めて、こういう実態について、そして取り組みについてぜひ見ていただきたいと。うなずいていらっしゃいますから、そういうことでぜひ御検討をお願いしたいと思います。  私は、今日、特別法によって事業を行うことの使命は終えたという段階に来ている中で、再延長による事業の継続というのはむしろ逆に部落の固定化につながり、逆に同和問題の解決を困難にするということをやっぱり率直に見ていく必要があるんじゃないかと思うんです。このことは地対協の報告書も指摘しているとおりだというふうに思うんです。同和事業で本当に継続が必要な課題は、一般事業へスムーズに移行できるような措置を保障しつつ解決していく時期だという点で、まさにそういう方向こそ国民的融合を促進する道だというふうに思っております。  最後になりますが、具体的問題で若干伺いたいんですけれども、隣保館の不適正な使用についてお聞きしたいと思います。  我が党の吉川議員が、五年前でしたか、大阪府下の現地調査を行いまして、それに基づいて、例えば高槻、吹田、富田林、松原、和泉、西成など、そういうところに所在する隣保館を解放会館と称して特定の団体が事実上独占的に、しかも毎日あるいは恒常的に使っている問題を質問いたしました。  総務庁の方からいただいた同和地区の実態把握調査によると、公的施設の団体の恒常的使用の施設数ということで、つまり同一の団体によるほとんど毎日あるいは恒常的に使用されているところが、八七年は七百五施設あったのが九二年には九百七というふうにふえていると。それが一番新しい資料だというふうに伺っているんですが、特定の団体による恒常的使用が増加傾向にあるのかなというふうに思うんですけれども、これは厚生省ですか、これはどういうことなのか伺いたいと思うんです。
  245. 堀之内敬

    説明員(堀之内敬君) 厚生省の地域福祉課長でございます。  隣保館についてでございますが、平成五年度同和地区実態把握等調査の結果によりますと、ただいま御指摘ございましたように三分類ございまして、公益法人、民間運動団体及びその他の民間団体による恒常的な施設の使用のある隣保館が、ウエートでいいますと六十二年度が二四%、平成四年度は三四%と増加しております。一方で、平成四年度の恒常的使用団体数の内訳で見ますと、その他の民間団体が七〇%を占めておるというところでございまして、このような増加につきまして一概に申し上げることはちょっと差し控えさせていただきたいと思います。  しかしながら、隣保館につきましては、市町村が設置する公の施設でございまして、地域住民のコミュニティーセンターとして中立公正に運営されるということが基本となります。厚生省といたしましては、これまでも特定の運動団体に独占的に利用されているなどの批判が生じないよう、隣保館の設置目的に沿って中立公正な運営の確保が図られるよう指導してきたところでございます。今後とも中立公正な運営が確保されるよう、全国主管課長会議などの機会を通じまして、これは設置者が市町村でございますので、地方公共団体、県庁を通じてになりますが、十分指導に努めてまいりたいと考えております。
  246. 笠井亮

    ○笠井亮君 そのことで総務庁に伺いたいんですが、九二年の参議院内閣委員会の中で当時の岩崎総務庁長官がその問題についてもきちっと、懸命に取り組んでいかなきゃいけないというふうに言われたと思いますし、今厚生省も指導の徹底を図るということは言われたと思うんですが、増加傾向で不適正な使用が一部にあるということについては、本気になってこれに取り組んでいって、行政の中立公正という立場からも徹底した指導で改善を図るべきだというふうに思うんです。  総務庁としての立場ではどうかについて最後に伺って、終わりたいと思います。
  247. 大坪正彦

    政府委員(大坪正彦君) ただいまの点につきましては、厚生省とも連絡をとりながらでございますけれども地方公共団体への指導につきまして徹底を図ってまいりたいというふうに考えております。
  248. 笠井亮

    ○笠井亮君 終わります。
  249. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  250. 笠井亮

    ○笠井亮君 私は、日本共産党を代表して、反対の討論を行います。  昨年三月の地域改善対策協議会総括部会の報告書は、実態調査から見て生活環境の改善を初めとする物的な基盤整備はおおむね完了した、このように結論づけています。また、基本的な同和事業の完結を宣言している吉備町や、終結を目前にしている自治体も少なくありません。今日、特別法はその使命を果たしたと言えます。  本法案は特別法の再延長による特別事業の継続をさらに五年間行うもので、部落の固定化につながり、逆に同和問題の解決を困難にするものです。九二年に延長した際、法律の期間に完結すると言いながら、この五年間でその残事業は減るどころか逆にふえ、三千二百六十七億円が四千四百四十三億円に膨れ上がりました。今の政府姿勢ではエンドレスになりかねません。  これ以上の延長をやめ、着手し継続している事業など真に継続が必要な課題は一般行政の中にスムーズに移行すべきです。一般行政によってこそ同和地区住民の自立を助長し、国民的融合が図れる歴史的段階になっています。  今、同和事業終結への市町村の努力、住民の声にこたえ、不公正な同和行政を正していく道は、国が法的措置による特別対策の終結をすることです。  そのことを指摘し、反対討論を終わります。
  251. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  252. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  253. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  254. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 総務庁設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  255. 海老原義彦

    海老原義彦君 自民党の海老原義彦でございます。  総務庁設置法の一部を改正する法律案について若干の御質問をしたいと思います。  この改正案は基本的には公務員制度審議会を廃止するということが中心でございます。公務員制度審議会は昭和四十年にILO八十七号条約の批准に伴う種々の問題、特に公務における労働基本権の問題について調査審議するということで設置されたものでございまして、それ以来三十何年たっておりますけれども、実際にこの審議会が活躍したのは最初の八年間であるというふうに承っております。休眠してから二十何年たっておる、こういうような状況でございまして、これは常識的に考えて、何で今までもっていたんだろう、廃止するのが当たり前じゃないかとも思うのでありますけれども、一方、これを存続してきた理由といたしましては、たとえ休眠しておってもいつでも再開できるのだ、そのことが公務における労働関係の安定に資するところが非常に大きいのであるというような説明もしばしば伺ったところでございます。  さて、今回廃止するに当たって、公務における労働関係が不安定になるとか、そういった心配はないのであろうか、老婆心ながらまず第一問としてこれを伺いたいと思います。
  256. 菊池光興

    政府委員(菊池光興君) 御質問がございましたとおり、公務員制度審議会は昭和四十八年の九月に第一二次答申を出して以来開催されておりません。この第三次答申にはいろいろなことが盛り込まれたわけでございますけれども政府といたしましては誠実にこれに対応してまいりましたし、運用上処理できるもの、法改正が必要なもの、中には残念ながら現在まだなおかつ公務員問題連絡会議におきまして検討しているものもございます。  では、なぜ実際活動してなかったものを今まで残しておいたのか、こういう御指摘でございますが、この公制審の設置の経緯というようなことから、あるいはその果たした役割というようなことから、これについてなかなか手がつけられなかったというようなこと、つけないでいるということ、実際休眠状態であっても存在していること自体に意味がある、こういうような御判断もあったかと思います。  ただ、今回なぜ廃止ということで法案の御審議をお願いしているかといいますと、平成七年九月に「審議会等の透明化、見直し等について」という閣議決定がなされまして、この閣議決定を受けまして慎重に検討した結果、廃止することとしたものでございます。  これが現在の公務員の労働関係に悪影響を及ぼすというようなことはないか、こういうようなお尋ねもございました。決してそういうことがあってはならぬと。また、諸先輩の大変な御尽力によりまして、政府当局と職員団体の間の関係というものも相互の努力、相互理解の深まりという中で大変安定したものになってきている、こういうふうに理解しております。  そういう意味で言いますと、公務部門における労使関係というものも基本的には成熟をしてきているんじゃないか、こういうふうに私ども考えておりまして、そういう状況の中で、今回、公務員制度審議会を廃止するということが直ちに労使関係の悪化につながるというようなおそれはない、こういうふうに判断したところでございます。
  257. 海老原義彦

    海老原義彦君 公務における労使関係も成熟して安定しておる、だから今さら労働基本権問題について調査審議するというような機関がなくともやっていけるじゃないかという御趣旨で、私も全くそのとおりだろうと思います。  そこで、今度はこの審議会を廃止いたしまして、同じような名前の調査会をつくるということでございますけれども、この調査会の方は一体どういう趣旨で設置され、どういうことを審議するのか。これは行政改革プログラムにも載っておることで、それを精力的に実施していくためにこういった検討組織をつくるんだということかと理解いたしますが、いかがでございましょうか。
  258. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) 今御指摘のとおりで、行革プログラムにも載せさせていただきました。やっぱり時代が変わってまいりまして、高齢化社会を迎えて、この間うちもいわゆる公務員の定年延長、特に事務次官の定年延長の問題、きょう人事院総裁も来ていらっしゃいますが、そんなような話題も多少出ております。せっかく六十歳の定年があるのに途中でやめていくというのはおかしいんじゃないか、特に天下りというのがそれによって起きているんじゃないかとか、いろいろ御指摘をいただいている点がございます。  一方においては、残念ながら不祥事が相次ぎまして、非常に公務員に対する信頼がなくなってきたことも事実だろうと思います。あるいはまた、縦割り行政の欠陥という観点からいって、もう少し人事交流を積極的に行うべきではないか、特に人事院からは官民の交流まで御指摘をいただいているわけでございまして、それやこれやを考えまして、幅広い観点から長期的な視野に立って総合的に行政の人事管理システムというものをいかなるものにしていくべきかということをいろいろと御議論いただき、方向を見出していただければと、こういう形で公務員制度調査会をぜひ今度設置をさせていただきたいとお願いしているわけであります。
  259. 海老原義彦

    海老原義彦君 今のお話で伺いましたとおり、今度の調査会では、行政改革プログラムに沿いまして、具体的にはいろいろな問題があると思うんですが、今長期的視野に立ってというお話もございましたけれども、このスケジュールはどういうふうになっておるのか。いつごろ設置して、とりあえず基本的な問題についてはいつまでに審議を終える、さらにその先ほどうだ、それから具体的な細目はどんなことを諮問するのか、これらについてちょっとお教えいただきたいと思います。
  260. 菊池光興

    政府委員(菊池光興君) 新年度予算が成立されまして、できるだけ早く準備態勢を整えて調査会を発足させたい、こういうふうに思っております。ただ、人選の問題だとか何か、まだこれから決めなければならないことが当然ございますから、所要の準備期間は必要だと思います。設置期間は五年という時限で設置するということを考えております。  それで、今後のスケジュールということでございますけれども、先ほど海老原委員がお触れになりました行革プログラムの中に、実は平成十年度中に基本的な方向について意見を取りまとめるということを言っております。五年間の中で、初めの二年ぐらいのところで基本的な方向について意見を出していただく、それでその後、具体的な実施のための手順でありますとか、それからさらに基本的な方向以外のところで残された課題というようなことについての調査審議をお願いしたい、こういうふうに考えております。  具体的な項目としてどんなものが考えられるかと。今、総務庁長官が述べられたところでございますが、若干敷衍して申し上げますと、公務の活性化を目指す人事管理というのはどういうような形であるか、こういうようなことで、より能力だとか実績だとかというものを反映した人事管理への転換というようなもの、それから行政の高度化、複雑化というような行政の中身の変化がございますし、特に若い人たちの就労意識というようなものが変わってきております。民間におきます雇用慣行というようなものも変わっておりますので、そういう中で公務というものも当然同じような波をこうむるわけでございますので、今後どうするのかとか、高齢化の進展に対応した人事管理、それから幹部職員をどういうような形で今後やっていくのかというようなこと、それから今、長官も申し述べましたように、縦割り行政の弊害でありますとか、公務に対する信頼の回復のための信頼の保持というようなことをどういうふうにやっていくか、非常に多様なものが含まれると思います。
  261. 海老原義彦

    海老原義彦君 公務の活性化に向けて多様な検討をするんだと。今考えられているものをざっとお述べいただきました。  さて、人事院でも、昨年八月の人事院勧告に際しての報告にも述べられておりますように、こういった今後の人事管理のあり方についていろいろと検討なさっておられると思いますので、その検討状況についてお話しいただきたいと思います。
  262. 弥富啓之助

    政府委員弥富啓之助君) お答えを申し上げます。  今言われましたように、人事院は昨年の勧告におきまして、変化します社会経済情勢を踏まえまして、新しい時代の公務員人事管理システムの構築を目指しまして、現行の人事管理につきまして全般的な見直しを行い、制度、運用の両面にわたる改革に取り組むことを表明させていただきまして、その後、鋭意検討を進めているところでございます。  全般的見直しにつきましては、公務員の人事管理の基本にかかわるものが非常に多いわけでございまして、広く各界の意見を踏まえて対処していくことが適当であると考えまして、昨年十一月に有識者による研究会というものを発足させました。国民の期待にこたえ得る新たな時代の公務員の人事管理を念頭に置きながら、人材の確保育成、あるいは職員の登用、在職期間の長期化などなどにつきまして、大体本年十二月を目途といたしまして検討をお願いしているところでございます。
  263. 海老原義彦

    海老原義彦君 人事院と総務庁、いずれも中央人事行政機関でありますが、それぞれの使命は違うわけでございます。人事院は公務における労働基本権の制約に対する代償措置という意味を背負いながら、人事行政について公正の確保等を使命としているわけでございますし、また総務庁人事局は管理者としての立場で、各行政機関が行う職員についての人事管理の総合調整を行うということで、それぞれ立場は異なるわけでございます。  しかし、新しい人事管理のシステムを確立しようということにおいて、立場の違いはあっても、同じ方向を目指すということなんだろうと私は理解いたしております。いわば車の両輪のようなもので、両者が調和しながらこういった研究を進められていく、そしてそれを実施に移していくということが非常に肝要なことかと思いますので、双方ともいい調査研究を行われますことを期待いたしまして、質問を終わります。
  264. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 平成会の鈴木正孝でございます。  今の設置法の改正案につきましては海老原委員の質問と大分重複いたしますので、その辺は少しはしょりながらやらせていただきたいというふうに思います。  初めに、平成七年九月の「審議会等の透明化、見直し等について」という閣議決定、その結果、総務庁では公務員制度審議会を廃止するということであったようでございますが、四十年の設置以降、四十八年の答申以来、事実上の休眠状態であったというようなことであったわけです。  公務員制度そのものにつきましては、行政運営の上でまことに重要なものということでありまして、単に機能していなかったから廃止ということで済むような問題ではなかったのではないかなと思いますが、このたび、今のお話にもありましたように、平成九年度から政令に基づく公務員制度調査会という形で再スタートするというようなお話のように思います。  その際、根拠を法律から政令に下げるということでございますけれども、事柄の性質上、大変大事な調査会だろうと私も思いますので、実質的に支障のないように、委員の任命、あるいは答申等が出されましたときにこれが十分に尊重されないといけないわけでございます。その辺の要望を兼ねまして、今までのここに至った経緯と今後の段取り等につきまして、簡単で結構ですから御答弁いただきたいと思います。
  265. 菊池光興

    政府委員(菊池光興君) 繰り返しませんが、平成七年九月の「審議会等の透明化、見直し等について」という閣議決定がございます。その中で、「過去五年以上委員が任命されていない審議会等及び設置後十年以上経過した審議会等については、平成七年度中に所管省庁で必要性を再検討した上で、その結果を明らかにし、所要の措置を講ずる。」とございまして、七年度中に検討し、今回こういう形で御審議をお願いしているところでございます。  それからなお、今回設置する調査会が、従来、法律であったにもかかわらず今度は政令じゃないか、格が落ちるんじゃないか、あるいはその答申等が出た場合にそれを尊重しないということになりはしないか、こういう御指摘がございました。  現在、私が承知している限りにおきましては、法律で設置いたします審議会というのは、例えば国会同意人事でありますとか、国会議員が審議会の構成メンバーに入っておられる審議会等というような形で、ごく限定されたものになっております。  今回つくります公務員制度調査会は国家公務員に関する部分でございまして、従来の公務員制度審議会は、国家公務員のみならず地方公務員、あるいは設立当初は三公社というようなものまで含んでおりましたので、総務庁設置法の中ではなかなか読み切れなかった。今回の公務員制度調査会につきましては、私ども人事局が国家公務員制度を所管しておりますけれども国家公務員制度に関する調査会でございますので、設置法で完全に読み切れるということで、この調査会につきましては政令で設置するということで、国家行政組織法の体系に沿った形で設置させていただいているものでございます。  答申につきましては、当然これは尊重してまいりたい、まいるべきものと考えております。
  266. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 それでは次に、三月六日に昨年の人事院勧告に基づいて人事院自身が国会内閣に意見書の提出をされたわけでございます。官民の人事交流ということで出されたわけでございますが、公務員にとって大変いい経験になるだろうと思いますし、最終的にはすばらしい人材を育成するということになろうかと思うわけでございまして、人事院自身どのような認識、理由で官民交流の意見の申し出を行ったのか、総裁、御説明を願います。
  267. 弥富啓之助

    政府委員弥富啓之助君) お答えを申し上げます。  官民の人事交流、これはただいま総務庁長官の方からもお話をいただきましたが、異なる組織間におきます人事交流というのは組織の活性化と相互発展の重要な契機となるのではないかというふうに思っております。  とかく行政官といいますのは、機動的、柔軟な対応や効率性の配慮が足りない、あるいは既成の行政の枠にとらわれた発想に陥りやすいというようないろいろな御批判もあります。官民の人事交流を行いまして、公務とは異なる組織原理に基づいて運営をされております民間部門の効率的、機動的な対応、あるいはより徹底をいたしましたコスト意識等を公務に取り入れることによりまして、公務の能率的な運営上重要な意味を持つものであるというふうに考えております。その趣旨で、官民の人事交流は柔軟で幅広い視野を持った人材の育成に有効であるということで、一層の拡大が求められているところであろうと我々は考えておるところでございます。  このため、人事院といたしましては、官民交流が円滑に行えますよう、交流手続の透明化を図るなど、まず公務の公正性の確保にも十分配慮をしなければならないわけでございまして、官民交流システムの整備につきまして検討を続けてまいったところでございます。  今般、職員の身分や処遇等の取り扱いや交流の手続につきまして成案が得られましたので、委員今お述べになりました三月六日でございますが、国会及び内閣に対して意見の申し出を行ったところでございます。
  268. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 今お話しのように、私も大変メリットが大きくて積極的に進めていくべきテーマだというふうに思っておりますが、総務庁長官、この点につきまして基本的な御所見をお聞かせいただきたいのでございます。
  269. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) 今、人事院総裁からもお話がありましたように、やはり公務員の皆様方にもっと幅広い視野に立った考え方を持っていただくというようなことも必要だと思います。  ちょうど今私ども行革会議をやっておりますが、あのスタッフは大体半々、半分が役所から、半分は民間から、こういう形でお願いをしておりまして、なかなかいいチームワークでやっておられるようでございます。そういう点を考えますと、民間の方が行政に参加していただくというのも大変いいことではないかと私は思っております。  ただ、そうは言うものの、これは考え方としては非常にいいのでございますけれども、実際に行うとなると、例えば年金であるとか保険であるとかいろいろ仕組みがありまして、それじゃ一体公務員の方がそういう間はどういうことになるのか、逆に民間の方が役所へ来ていただいた間はどういうことになるのか、その辺は詰めていかなければならない問題でございまして、そうすると私どもの役所だけでなかなか決めるわけにはいかない問題になってまいります。  それからもう一つは、たしか特別職が、特別公務員というのですか、防衛庁の職員は一般職ではございませんが、この方は一体どうするのかというような問題も私はあるのではなかろうかと思っております。  それやこれやいろいろのことがございますけれども考え方としてはいい方向だと思いますので、その辺のところをできるだけ解決し、できるだけ早い機会にそれが実現できれば結構だと私は思っております。
  270. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 長官、今の行革会議事務局の官民のメンバーの方々の仕事の取り組み等を直接ごらんになって大変積極的に評価をされているということで、大変心強く感ずるわけでございます。  人事院も意見の申し出に当たりまして、癒着の防止だとか不祥事の対策等につきましてそれなりの対策担保措置というものを考えられたと思うのでございますけれども、その辺の具体的な内容というのはどんなぐあいになっておりますでしょうか。
  271. 角野敬明

    政府委員(角野敬明君) 事務的な問題でもございますので、私の方から御説明させていただきます。  御指摘のように、官民交流の実施に当たりましては、いやしくも官民癒着等の批判が生じないようにする必要があろうかと思っておりまして、公務の公正性の確保に十分配慮した仕組みとするべくいろいろ検討を進めてまいりました。  一、二御紹介させていただきますと、まず交流に伴います職員等の身分の取り扱いでございますが、国から民間企業へ派遣する国の職員につきましては中立的な機関でございます人事院の職員とした上で派遣し、また民間から公務へ受け入れる者につきましては民間企業の従業員の身分を持ってはならないとする、そういうふうな形で整理をいたしておるところでございます。  また、実際に交流中の服務の関係でございますけれども民間に派遣する場合、引き続き公務員の身分を持たせることにしておりますし、また民間から公務に受け入れる者につきましては公務員の身分を持っていただく、こういうことでございますから、公務員の身分に伴います一般的な服務義務は当然かかるわけでございます。  そのほか、今回の官民交流に当たって必要な措置といたしまして、特に民間に派遣する職員につきましては派遣前に在職していた省庁に対する許可の申請等の業務に従事してはならないというふうな服務義務を課し、さらに受け入れる職員につきましては公務部門で職務を遂行するに当たりまして交流元企業等の利益誘導を目的とするような行為をしてはならないなど、新しい服務義務を課したいと思っております。  さらに、交流の手続につきまして、透明性、公開性を確保した手続により実施したいと思っておりまして、いろいろ考えてございますけれども、例えば官民交流の実施状況を毎年人事院が国会及び内閣に報告する、そういうふうな形で適切な実施が確保できるようにいろいろ検討したところでございます。
  272. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 いろんな配慮をされてこれから進めていこうと、そういうことで大変結構だろうと思っております。  実際、その対象になる方が処遇上不利益になるというようなことがあってはいけないと思いますので、その中で退職手当だとかその辺に影響が出ないように、派遣期間の通算措置等もぜひ図っていただきたいというふうに思います。  退職手当法そのものを所管するのは総務庁ということでもございますので、そちらの方の対処方法と、それから昨年の九月十日の内閣委員会で、私は、意見が出たときにぜひ積極的に法的措置を速やかにとられて進めたらいかがかというようなお話もしたわけでございますけれども、立法化に向けました今後のスケジュール、それをあわせましてちょっと御質問いたしたいと思います。
  273. 菊池光興

    政府委員(菊池光興君) 人事院からの意見のお申し出、ただいま総裁からも、あるいは任用局長からもお話がございました。これについて総務庁長官としても積極的に対応していこう、こういう考えを述べられたところでございます。私どもといたしましても、この人事院の意見の申し出を受けまして、官民の人事交流が円滑に、しかもなおかつ癒着というようなことでせっかくの制度が後々あらぬそしりを受けたりすることのないよう、万全な制度整備を図ってまいりたいと思っております。もとより人事院からの意見の申し出の中にも随分配慮された部分でございます。  それで一つ、退職手当の問題がございます。現在の法律、退職手当法によりますと、地方公共団体への辞職出向、これは退職して出向いたします。それから、国際機関への派遣等により現実に国の業務に従事していない期間があっても、その期間中に従事した業務が地方公共団体の公務であるとか、あるいは我が国が加盟している国際機関の業務であるとか、非常に公務との密接な関連性があるというようなものにつきましては、その全期間を通算するということで制度がございます。  その反面、その期間中に従事する業務が公務との密接な関連性が薄い、こういうようなものの場合には必ずしも一〇〇%というのじゃなくて、その期間の二分の一を通算して退職手当を控除計算する、こういうような仕組みになっております。  今回の官民交流は、まさに政府といいますか各任命権者の人材養成というような観点から職員民間企業に行かせて民間の業務に従事させよう、こういうことでございますけれども、従来、国家公務員がその身分を有しながら民間企業に行って、民間の事業活動に従事して民間から給料をもらうというような制度は今までございませんでした。また、それをどういうふうな形で公務との関連性において評価するかというような問題がございます。他との関連も出てまいると思いますので、その部分については鋭意適切な検討を進めてまいりたいと思います。  それから、今後のスケジュールについてのお尋ねがございましたけれども、ただいま総務庁長官からも申し上げましたとおり、例えば年金とか健康保険あるいは労災というようなものをどういうような形で仕組むのかという、労働省だとか厚生省だとかそれぞれ関係する省庁がございます。今回の人事院からの意見のお申し出については、そこのところは必ずしもぴしっと制度的なものまで申し出をいただいていませんので、そこの部分についても関係省庁と鋭意詰めてまいりたい、こういうふうに思っております。
  274. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 大変あちらこちら調整するところが多かろうと思いますけれども、せっかくの新しい試みということで、双方向ということでの新しいシステムということでもありますので、ぜひ早く、できればことしの夏くらいまでにぜひ出していただいて、一生懸命やっていただきたいと重ねて要望いたしまして、質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  275. 清水澄子

    ○清水澄子君 総務庁長官にお尋ねをいたします。  さきの動燃東海事業所の再処理工場爆発事故は、国際原子力機関、IAEAの国際評価尺度でもレベル3という重大な異常事象と暫定評価されております。これは国内最悪の事故でありまして、一昨年十二月の高速増殖炉「もんじゅ」の事故に引き続く重大な事故であると思います。このように事故が続く動燃のあり方について、これは構造的な問題があるのではないかということが盛んに言われているわけですけれども、私自身も非常に強い疑問を持っております。  そこで、総務庁としまして、緊急に動燃に対する行政監察を実施するお考えはないでしょうか、総務庁長官の御決意を期待して質問いたします。
  276. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) 私どもも動燃のあり方というのはまことにけしからぬことだと思っております。  私どもは原子力発電というものが将来日本の国にとって大切だと思いますけれども、こういうような事故が相次ぎますと、国民の皆様方が非常に危険だという意識をお持ちになってしまいまして、原子力発電を推進できないというようなことにもなってまいります。本当にこのような事故が起きてはいけないと思っておるわけでございます。  それでは、動燃をすぐ今監察したらどうかというお話でございますけれども、第一義的にはやっぱり科学技術庁が監督官庁でございますから、しっかりひとつやらなければいけないと思います。  ただ、今行政改革の一環として与党間でもいろいろ特殊法人についての見直しをやっていただいておりますが、私どもの方といたしましても、特殊法人に対していろいろ御批判がございますので、動燃を含めて特殊法人について、平成九年度、来年度から、この四月以降、特殊法人について必要なのかどうかということも含めてそれぞれ行政監察をやらせていただこうと思っておりますので、動燃もその対象には当然含めて考えていきたいと思います。
  277. 清水澄子

    ○清水澄子君 ぜひ実行をお願いいたします。    〔委員長退席、理事板垣正君着席〕  次に、三月二十四日付の東京新聞なんですけれども平成三年、一九九一年の十二月に財団法人日本船舶振興会の会長に対して、総務庁の総務事務次官名で、「設立の形式から特殊法人とされているが、総務庁としては、実質上、民法上の財団法人として取り扱うこととする。」という文書が出されているわけですね。総務庁としてなぜこういう文書を出すに至ったのか、その経緯をぜひお話しいただきたいと思います。
  278. 河野昭

    政府委員(河野昭君) ただいま先生から御指摘いただいた文書がどのような経緯で作成されたのか、先般、当時の関係者から聴取いたしました。  その結果でございますが、当時、振興会事務局からの要請は二点ございました。  一点は、確かに振興会は特殊法人でありますが、同時にいわゆる民法法人である、したがって一般特殊法人と違って民間法人的な性格が非常に強いということを確認してほしいというのが一点でございます。  それからもう一点は、今のこととかかわるわけでございますが、総務庁が作成しております特殊法人の一覧表の中に従来は日本船舶振興会のみ記載しておったわけですが、これを民法法人であることを明確にするためにその名称の前に(財)という記載を入れてほしいということであったということでございます。  そこで、当時、この時期になぜこのような要請がなされたかという背景事情でございますが、これは必ずしも明らかでない点もありますが、いわゆる貿易収支インバランス、黒字減らし対策という中で政府調達対象機関として特殊法人も含めるという動きがございました。この中で、同じ特殊法人といいましても、ガットの政府調達協定対象機関あるいは準政府機関というような特殊法人の一区分けが行われたわけでございます。    〔理事板垣正君退席、委員長着席〕  そういう際に、振興会といたしましては、いわゆる公的性格の強い特殊法人と同一に扱われるのは不本意である、したがって民間法人的性格を強調したい、そのために総務庁に確認を求めたという背景があったと推察されます。
  279. 清水澄子

    ○清水澄子君 それでは、この財団法人日本船舶振興会会長に出した文書というのは総務庁設置法のどの条文に基づいているんですか。この文書を出した根拠というのは何なんでしょうか。
  280. 河野昭

    政府委員(河野昭君) これは一般的な根拠でございますが、総務庁設置法で特殊法人の定義をいたしております。その特殊法人の定義設置法の解釈の一環ということで行ったわけでございます。
  281. 清水澄子

    ○清水澄子君 解釈ですか。どうもその辺は非常に何か不明朗な背景があるように感じます。民法上の財団法人になれば、他の公益法人同様、事業所得に対しては非課税、それから収益事業には軽減税率が適用されるという税制上の優遇措置が受けられるわけです。ですから、そういうものとこれは関係があるのではないかと思います。  総務庁設置法第四条第十三号では、監察に関連して特殊法人の業務及び国の委任または補助にかかわる業務の実施状況に関して必要な調査を行うとなっています。財団法人日本船舶振興会会長に出した文書は、総務庁がみずからの業務を否定したことになるんではないでしょうか。そういう意味でも、私はこのような総務庁姿勢というのは総務庁行政監察業務への信頼性を失わせるものだと思います。私は総務庁はこの文書を取り消すべきだと思いますけれども、その点いかがですか。
  282. 河野昭

    政府委員(河野昭君) 実は、総務庁の特殊法人に対する権限といいますのは、いわゆる特殊法人に対する審査権限と監察権限でございます。先生はそれを放棄したとおっしゃるわけでございますが、実際、総務庁の権限には何ら変更はないわけでございまして、現実に最近に至りましても、昨年十二月に「特殊法人に関する調査結果報告書-財務内容の公開・子会社等を中心として-」という監察に基づく勧告を行っておりますが、もちろんこの際にも振興会はほかの特殊法人と同様対象とされておりますし、その結果は現在国会に特殊法人の財務諸表等の作成及び公開等々、いわゆる特殊法人の財務ディスクロージャー法として提出させていただいておりますが、この法案の中でも振興会は他の特殊法人と同様な扱いをしております。  また、行政管理、特殊法人の審査関係でございますが、一昨年、平成七年の二月に「特殊法人の整理合理化について」という閣議決定をしておりますが、この閣議決定の中でも、船舶振興会については他の特殊法人と同様、合理化策を盛り込んでおりまして、総務庁は従来からいわゆる特殊法人としての管理について、船舶振興会を他の特殊法人と区分しているということはございません。
  283. 清水澄子

    ○清水澄子君 それでは、こういうふうな異例の見解文書というのはいろいろあるわけですね。今後もあるし、これまでもいろいろあったということになりますね。これはただ一つの例じゃないんですね。
  284. 河野昭

    政府委員(河野昭君) いろいろな文書というのがどういう文書かわかりませんが、この種の文書は私が承知している限りはこれだけでございます。
  285. 清水澄子

    ○清水澄子君 では、総務庁はこの機会に日本船舶振興会に対して行政監察を行って、その結果をぜひ国会に報告していただきたいと思います。
  286. 河野昭

    政府委員(河野昭君) これは監察局の話でございますが、必要に応じて監察を実施することはあるという答弁にさせていただきます。
  287. 清水澄子

    ○清水澄子君 総務庁長官、こういう問題についてやはりいろんな疑念が生じます。今の時間の中のやりとりでは私も十分その背景を納得することはできないんですけれども、こういう文書がわざわざ出されるということについて、今後こういうことについては厳重に処理していただきたいと思います。
  288. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) 正直、私もその事実関係を承知いたしておりませんでしたので、この間から調べて報告をもらっておるわけでございますが、私としてはできるだけこのような文書は撤回をするという方向でやれればやりたい、こういう考え方で今いろいろ事務当局と話をしておるところでございます。  そういう考え方でございますから、今後はこのような文書を、少なくとも誤解を招くような文書は役所としては出すべきではないし、私は出す気持ちはありません。
  289. 清水澄子

    ○清水澄子君 力強い御決意をどうもありがとうございました。  次に、公務員制度調査会ですけれども、先ほどからこの調査会の設置目的についていろいろお話しになっているわけですが、この目的には総合性の確保等を目指した公務員の人事管理システムを構築するということが基本にあると思うんです。これは公務員の人事制度全般を見直すものなのかどうか、お尋ねいたします。
  290. 菊池光興

    政府委員(菊池光興君) 全般をどの程度とお考えかでございますけれども国家公務員に関する人事管理システム全般を見直すということで御審議をお願いしたいな、こう考えております。
  291. 清水澄子

    ○清水澄子君 そうすると、総務庁はこの公務員制度調査会にどのような役割を期待していらっしゃるんでしょうか。
  292. 菊池光興

    政府委員(菊池光興君) 公務員制度調査会には、ただいま申し上げましたように、私どもといたしましては、国家公務員の人事管理システムのあり方全般について幅広い観点からの調査審議をお願いしたい、こう考えておるわけでございます。  具体的に申しますと、国家公務員法が昭和二十二年に制定されてからことしてもってちょうど五十年に相なります。この間の社会経済情勢の変化というのは大変大きなものがございます。こういうような過去五十年間を踏まえまして、さらに我が国の中で重要な機能を果たしていかなければならない行政、これを支える公務員のあり方というようなものについて、二十一世紀を見据えつつ長期的かつ総合的な視点で調査審議をお願いしたいと考えております。  いずれにしても、行政国民に奉仕するという観点、それとまた職員がその中で働きやすく、意欲を持って働けるような行政でなければならない。そういうような公務員制度というものをつくり上げていくためにはどういうことをやればいいかというようなことについての御審議をお願いしたい、こういうふうに考えております。
  293. 清水澄子

    ○清水澄子君 そういう公務員制度調査会の委員の構成なんですけれども、それはどういう構成を考えていらっしゃるんでしょうか。ただ幅広い考え方の人というのでは、これは公務員にとれば非常にさまざまなこれからのことが論議されるんだと思います。ここに出ている「今後の公務員の人事管理の基本方向と制度・運用上の課題」というのは物すごい広範なものですね。ですから、そういうものを審議するときに委員には公務員の労働組合の代表も加えておくということは私は当然だと思うんですが、その点はどのようにお考えになっていますか。
  294. 菊池光興

    政府委員(菊池光興君) 委員の人選、これは最終的には総務庁長官あるいは総理のお考えというところでございますけれども事務的に私どもが考えておるところをちょっと申し上げますと、やはり公務員について現行の人事管理システムのあり方を幅広い見地から御検討いただくということで、その委員につきましては、国民に奉仕する行政、それから公務員のあり方について検討していただくわけでございますので、公務員制度に関して専門的な見識をお持ちの方々であるとか、ある意味で言いますと国民行政に対する見方というようなものを的確な形でもって意見を述べていただける高い見識をお持ちの方々、こういうような方にお願いすることになると存じます。
  295. 清水澄子

    ○清水澄子君 それは公務員制度のあり方という中にすべて含まれるのかもしれませんけれども、やはり公務員の労働基本権の問題がここでは非常に大きな柱の一つになると思います。ですから、そういう意味では公務における近代的な労使関係といいますか労働関係のあり方や、それから国際労働基準にどう近づくのか、達成するのか、そういう面もこの調査会の中では当然審議されていくものだと思います。  そういう意味で、先ほどもお話が出ていたんですけれども、この法律は見ただけでは全然わからないです、何するのか。ですから、それだけの大きな改革法律事項に加えないというやり方、行革という名のもとにそれをやっていくということは、一体この公務員の基本的人権とか労働権という面からどうなんだろうというふうに思います。  そういう意味で、私はこれは国会の立法審査権を軽視しているのではないかと思うんですけれども、これらが国民の目に、また公務員の皆さんたちに、自分たちの今後のあり方、権利が透明度を持ってわかるような、そういうこれからの方法を考えていくべきだと思いますが、総務庁長官、最後にひとつぜひ御見解を伺いたいと思います。
  296. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) 公務員制度調査会につきましていろいろ御意見をいただきましたが、まだこれから、この予算を成立させていただいた後発足するということでございますので、まだ今のところ白紙の状態でございますけれども、今の御意見を踏まえながら、特に情報公開ということが私は大切だろうと思っております。審議会とか調査会とか、政府機関がいろいろございますけれども、今までそこで何が議論されているのか国民からさっぱりわからないというのは決していいことじゃないと思いますので、例えばこういう公務員制度調査会をこれから発足していく場合には、何かあるかもしれませんけれども特別のものを除いてできるだけディスクローズしていくという形で対処していきたいと思っております。
  297. 清水澄子

    ○清水澄子君 終わります。
  298. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 公務員制度調査会を設置していくという総務庁設置法の一部を改正する法律案審査資料を見ておりまして、実は昨日の新聞の話になりますけれども、これは岡光前次官、起訴事実を認めるということで、初公判の大きな記事を見たときに、大切なこの調査会の役割というのはまたあるのかなというふうなことを思いました。  何回か前のこの内閣委員会で、私はこのことに関しまして、いわゆる市民感情、国民感情として、岡光氏はボーナスをもらうんだろうか、支給されるんだろうか、あるいは退職手当はどうなるんだろうか、こういうことをいろいろやりとりさせていただきました。  法律、そして当然のことながら働く人たちの権利というのはあるわけで、なかなか侵すことはできないわけでございますが、当時ボーナスが支給されるというようなことが報道されたもので、そういった意味でのブーイングが非常に出たというふうに私は記憶をしております。  まず、岡光氏に関して把握しているかどうかなんですが、ボーナスあるいは退職手当は支給されたのかどうか、わかりますか。
  299. 菊池光興

    政府委員(菊池光興君) ちょっと厚生省の事務当局がおりませんので。  退職手当につきましては支給は停止されております。期末手当は昨年の暮れの臨時国会でも大変御議論がございました。十二月十日というのが期末手当の支給日であって、ちょうど臨時国会が開催中でございまして、それは出すのかと、こういうことでございました。出さざるを得ないということで出して、大変御議論があったことは事実でございます。退職手当につきましては支給しておりません。
  300. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 退職手当が支給されていない、停止をされているということになると、当時の議論で、退職手当を現行法では停止できないという答弁だったと思いますね、やりとりですと。根拠法令か何かがあるのかどうか、現行法の中で。
  301. 菊池光興

    政府委員(菊池光興君) 現在の国家公務員退職手当法におきまして、公務員が退職後であっても在職中の行為に関連しまして起訴されるということになりますと、起訴の時点で支給を停止することになりまして、それで確定判決として禁錮以上の刑に処せられるということになりますと、現行法で不支給ということになっております。  あの時点ではまだ起訴されておりませんでしたので、退職した場合に退職手当を受けることができる状態になった、こういうことで、じゃ払うのかと、こういうような御議論があったわけでございますが、当時、厚生大臣は、いましばらく様子を見るということで、払わないと、こういうことをおっしゃったわけでございます。
  302. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 いわゆる退職手当法、あの時点は起訴されていないということで、ですから大臣の意向ということですけれども、言ってみればある意味では保護されているということがこの現行法の中にあるというふうに思います。  いずれにしましても、岡光氏に対しましては、ボーナス、退職手当の問題の基本的な考え方として、懲戒免職処分を受けないで退職したという場合の厚生省の対応についての批判、非難があるわけでありまして、そういった意味ではこのことについてこれからも的確に、まずこういったことがないような対応をぜひお願いしたいということを求めさせていただきたいと思います。  そこで、そのときに双方私はあろうと思います。不祥事が起きた、すぐ何かペナルティーをということはなかなか難しいと思うんですが、私の記憶ではそのときに検討するというような当時のやりとりであったと思うんですが、ここら辺、現行法の検討に着手されているならばそれの検討状況について伺いたいと思います。
  303. 菊池光興

    政府委員(菊池光興君) 二つお答えさせていただきたいと思います。  昨年の不祥事を契機に、ただいま齋藤委員御指摘のとおり、事務次官等会議申し合わせにおきまして各省庁が倫理規程を設定いたしました。その中に、懲戒処分に付することが相当だと考えられるような事由があると思料される職員から辞職の申し出があった場合には、辞職の承認を留保し、事実関係を十分把握した上で厳正に対処するということにいたしております。そういうことで、各省庁の倫理規程もそういうことで運用していくということを決めましたし、それから人事院の方からも職員局長名で、一月十六日でございましたか、そういうことで各省庁に対して辞職の承認処分について留保する、それから場合によっては官房付というような措置もあるぞ、こういうようなことでの文書も出ているところでございます。  そういうことで、これらのことを考えますと、今後は、昨年のようなことで、疑惑のある職員に対して直ちに辞職の承認を行って結果的に退職手当を支払わなければならないというような状況に立ち至るということはないものと、こう考えております。  ただ、それでも仮に退職手当が支払われるような場合があって、まだ起訴もされていない、こういうような状況のときにどうするかということでございます。ここのところにつきましては、私ども事務当局に対しましても総務庁長官から大変厳しい御指摘がございましたし、事務次官等会議におきましても、不祥事に係る職員の身分、退職手当等の取り扱いについては、国民の公務に対する信頼の確保、それともう一つは個々の職員の権利の尊重、この点を踏まえて早急に法的措置を含めた検討をする、こういうようなことで申し合わせをいたしました。それに基づきまして現在検討いたしております。  具体的には、退職手当あるいは期末手当というものを一定の場合に支給を停止するとか直ちに払わないでも済むような形、ただ法制的に非常に難しい部分がございます。いろいろな議論もございますので、その辺のところにつきましては十分議論を詰めた上でやっていかなければならないと思いますけれども、いずれにしましてもできるだけ早くに結論を得たい、こういうふうに考えておるところでございます。
  304. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 ただいま答弁いただきました改正については、仄聞するところによると、この国会中にも改正案を提案したいというようなことも伺っておりますが、そういうような考え方でよろしいでしょうか。
  305. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) 今、人事局長から答弁いたしましたように、なかなか法律だけを議論しておりますといろいろと難しい点はございますけれども、やっぱりこれは国民感情というのがあるわけでございますから、少なくともこの国会中にどんな形でも、とにかく法律的に整合性は保たなきゃいけませんけれども、いずれかの形で退職手当法あるいは給与法の改正案を出すよう努力するように指示をいたしておりまして、私としては何とかこの国会に間に合わせたい、こう思っております。
  306. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 これはぜひ努力をしていただきたいと思います。  私自身もやはり国民感情、市民感情というのを優先しなきゃならないと思います。ただ同時に、不祥事ということがあっても働く人の人権侵害になってはならないということで、配慮するということでございますので、大変難しい作業かもわかりませんが、ぜひ御努力をお願いしたいと思います。  次に、人事院総裁がお見えでございますけれども、大多数の公務員の方々は国、地方を問わず一生懸命頑張っているわけでございます。そういう中で、昨年八月に給与勧告、いわゆる人事院勧告があったわけでございまして、これは完全実施をしているわけですが、長い歴史の中には完全実施をされない時期、時期といいましょうか年もあったということであります。弥富さんは以前のことは経緯では御存じかもわかりませんが、これからのことになろうかと思いますけれども、完全実施をされないということについては、人事院として勧告する立場にあればこれはやはり問題であるというふうに考えられるのが自然だと私は思うんですが、そういうような問いかけに対して、総裁、いかがでございましょうか。
  307. 弥富啓之助

    政府委員弥富啓之助君) 御承知のとおりに、人事院の給与勧告と申しますのは公務員の労働基本制約に対する代償措置という機能を有しておるわけでございます。国公法に定められました情勢適応の原則に基づいて官民給与の均衡を図るという趣旨のものでございまして、官民の給与を精査の上、必要な給与の改善を勧告してまいっているところでございます。  御承知のとおり、現在、民間では春季賃金改定交渉が行われている最中でございまして、その結果等についていろいろと注目しているところでございますが、我々といたしましては、これに適切に対処をしてまいる所存であるということをお答えさせていただきたいと存じます。
  308. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 私自身は、ことしとか、そういう具体的な年の話をしていないんですけれども、あり方の問題として、人事院が官民較差を生じたということで勧告をした、それが実施をされなくなるということについては本来の制度上からいって問題であるという、そのする側の立場にとってどうでしょうかというお尋ねをさせていただいたわけでございまして、なかなか難しいお答えかもわかりません、生々しい問題もあるので。  それで、時間もなくなりましたので、先ほど鈴木正孝委員からいろいろございました、例の官民交流の申し出のことでございます。中身については省略をいたします。これにあわせて、研究業務に従事する一般職の任期を定めた採用等に関する法律の制定についての申し出もございます。これは公務員制度調査会と別ですね。申し出の方は速やかにというふうになっていますが、これはどういうふうなテンポで総務庁の方はされる予定ですか。
  309. 菊池光興

    政府委員(菊池光興君) 三月二日、二つの意見の申し出をちょうだいいたしました。先ほど申し上げましたように、一つは官民交流、もう一つは研究公務員の任期制、ともに大事な課題だと思っております。鋭意検討をいたしております。  ただ、研究公務員の任期制採用の方が比較的労災とかそういうような関連諸制度というものがないというようなことで、鋭意そちらの方を早目にと考えております。
  310. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 言ってみれば、簡単に法律についての結論が出るという、時間が物すごく早くなるだろうということだと思います。  私自身もいろいろな制度をきちんとした中での処遇問題について官民交流を積極的に行うべきだということで、とりわけ政策決定に関するポスト、これはいろいろな諸外国の比較がございます。例えば議院内閣制である我が国とアメリカの比較は一概にできませんが、アメリカというのは国防長官であり財務長官であるも民間人であり、また民間に行くということで、非常に動きのあるダイナミックな政策決定ということで、私は有効な制度が定着しているというふうに思います。  我が国も、この憲法下で大臣は民間人から登用できるとなっていますが、なかなかこれが余り登用されていない現実にありますし、あるいは大使も私は民間大使というのが積極的にあってもいいんではないかということで、できることはやっぱりやっていくと。  何か全部完結しないとこの制度は発足しないというのじゃなくて、これからの公務員制度調査会もそうですが、二年やって三年とか五年ということじゃなくて、もう合意した点、これはいいだろうということについては逐次実施をしていくというふうに私としては求めさせていただきたいんですが、長官、最後に言いかがでしょうか。
  311. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) それはもう当然のことでございまして、制度的なものがいろいろと整合性を保つようになって、それがいいということになればできるだけ早く実施をしていくというのは当然だと思っております。
  312. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 今審議しております総務庁設置法の改正の問題についてですけれども、本案の中心は公務員制度審議会を廃止して総務庁に公務員制度調査会を政令設置するというところにあると思うんです。  本論の審議会の廃止の問題に入る前に伺っておきたいことがあるんです。  新たに設置するという調査会についてなんですが、ここでは国家公務員及び地方公務員の労働基本権の問題については取り扱うのですか、扱わないのですか。先ほども人事管理システム全体を扱うんだと。何となく目的がはっきりしない感じを受けましたが、労働基本権の問題はどのようにして扱うんでしょうか。
  313. 菊池光興

    政府委員(菊池光興君) 人事管理システムを幅広く検討していくわけでございます。その中で何をやる、何をやらないというようなことを決めているわけではございません。具体的な審議事項につきましては、調査会の調査審議の過程で決まってくるもの、こういうふうに考えております。その中には、労働関係というようなものは初めから排除される、決してこういうようなことではないと思います。
  314. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 そのお答えは私は非常に重大だと思うんですね。といいますのは、公務員制度審議会というのが一体何のためにつくられたのかというこの原点が非常にあいまいになってくる、そういう答弁ですと。  これは釈迦に説法で私が説明するまでもないと思いますけれども、公務員制度審議会というのは例のILO八十七号、これでできたものですね。これはどんな条約でしたでしょうか。
  315. 菊池光興

    政府委員(菊池光興君) ILO八十七号条約は結社の自由及び団結権の保護に関する条約、こういうことでございます。
  316. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 まさにそこに原点があるんですね。この条約を批准するに当たって、それをきっかけにしてこの審議会というのができた。日本は言うまでもなく公務員労働者に労働ストライキ権、これがございません。そのために人事院があり、またその他の問題、その他のいろいろな労働争議、こういったものをきちっと調停していくために、どうしてもILO条約に加盟する以上はしかるべき何かそういう措置をとらなきゃならぬということから、使用者、労働者、公益代表の三者から構成される審議会というものが設けられたわけです。  ですから、これを廃止してしまって何か人事管理システム一般をやるんだといいますと、もともとの出発点のところ、労働者にとって非常に重要なもともとのところが全部ひっくり返されてしまう、そういうふうに思うんですね。そういうふうに思いませんか。
  317. 菊池光興

    政府委員(菊池光興君) ちょっと御指摘の趣旨を私もしかしたら取り違えているかもしれませんが、公制審、公務員制度審議会は昭和四十八年まで三回にわたって答申を出されたわけでございますけれども、四十八年の九月三日、この最後の第三次答申というのが基本になろうかと思います。この答申は全会一致でなされたわけでございまして、これの取り扱いにつきましては政府部内で大変議論をいたしました。その過程におきましては職員団体の皆さん方の御意見も十分聞いて対応してきているところでございます。  公務員制度審議会の答申の中に盛り込まれたことというのは、例えば運用によって処理すべき事項であるとか、具体案の作成に努力すべき事項、あるいは現在なお引き続いて検討している事項もございますけれども、例えば具体的に法律をつくったものだけにつきましても、職員団体等に対する法人格の付与に関する法律でありますとか、あるいは管理職等の範囲を明らかにするための国家公務員法及び地方公務員法の一部を改正する法律というのが昭和五十三年にできております。  公制審が仮になくなったとしても、このような形で既に国会の御承認をいただき成立をさせていただいている制度というのは決して覆るものではない、こういうふうに考えておりますので、公制審がなくなったから今までのものがなくなってしまう、こういうことでは決してないと思います。
  318. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 では、一つの仮定ですけれども、ある官庁で何かのいわば争議が起こった場合に、それはどこへ持っていくことができますか。今までのようなこの三者協議の中へ持っていくことができますか。
  319. 菊池光興

    政府委員(菊池光興君) 公制審は今まで争議について議論をするというようなものではなくて、中労委とか公労委とかというような裁定機関ではなかったわけでございますので、公制審がなくなったからといって、一般職非現業の公務員に対して争議権というのは現行法制上認められていないものでございますので、争議行為があるというようなことは私ども予定していないところでございます。
  320. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 そういう答弁だと私は思いました。  しかし、その根本的な原理で、このスト権がない中で起こるさまざまな問題を調整していこうというところに、審議会の制度というものがILOに入るに当たって設けられたという、根本的な精神としてあるわけですから、個々の問題についての処理の仕方は中労委に持っていくのどこへ持っていくのといろんなことがあるかもしれないけれども、今言ったような基本的な考え方でもってつくられたものなんですから、それを廃止するということは公務員の一般の職員にとっては非常に重大な問題になってくると私は思うんです。  次に私、角度を変えてちょっと御質問します。  この制度ができてから何年もたつけれども、もう二十年ですか、実際上仕事をしていないということで、あってもなくてもいいようなものだという、ちょっと言葉は余りよろしくありませんが、そういった意味のことも出ました。  ところが、二十数年前の七三年なんですけれども、第三次、この審議会の最終答申で三つの課題を指摘しているんですね、今後の問題として。それは、消防職員の団結権の問題、それから争議行為に対する刑罰規定の再検討、それから非現業職員についての交渉不調の場合における調整等の方法についてというこの三つの問題を今後この審議会は検討していく必要があるという課題をみずから課しているんです。これはどうなったんでしょうか。
  321. 菊池光興

    政府委員(菊池光興君) 政府において引き続き検討すべき事項ということで、消防職員の団結権に係る問題、それから非現業職員について交渉不調の場合における調整等の方法、それから労働法規に関連する刑罰規定の再検討、この三つがございます。  この問題につきましては、いろいろな経緯がございましたけれども、公務員問題連絡会議ということで政府において検討をしておるところでございます。そういう場の検討も経た上で、消防職員の団結権につきましては、先般、平成七年だったと存じますけれども、消防組織法の一部改正が行われまして、各消防本部に消防職員委員会、こういうものができて、消防職員の団結権、団結権そのものではございませんけれども、消防職員の意向というようなものが十分反映されるような形になってきたということで、消防行政当局と自治労との間で十分議論が行われて、そういう円満な形での解決を見ている、こういうところでございます。  それから、交渉不調の場合における調整の方法でありますとか、あるいは労働法規における刑罰規定の再検討の問題これにつきましては、例えば労働基本制約の代償機構としての人事院制度というものをどういうふうに見るのか、それから他の刑罰規定、労働関係のみにとどまらず刑罰規定というようなものとの関連において労働法制上の刑罰規定というものをどう評価するかというようなところで大変幅広いものがございまして、今まだ誠意を持って各省庁と検討しておるところでございますけれども、いまだに結論は得るに至っていない、こういう状況でございます。
  322. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 会議を開かないんだから結論は出ないと思うんですね。だから、そういうのはちょっとおかしいと思うんですね。そういうことをみずから三十年前に課しておいて、それでやらないというんでは。だから、もう休眠状態だからなくしてもいいじゃないかという変な論理になっていくので、実際上課題を持っていて、それでやらないで二十年たったと。具体的に言っても二つの問題があるというのはやはり納得ができかねる問題です。  そういう過去の問題だけじゃなくて、今官公庁の労組あるいは公務員の方々にとっていろんな新しい問題というのが次から次にたくさん起こっている。最近の新しい問題ですけれども、例えば国立病院の看護婦さんに十六時間の連続勤務をさせるというような問題が厚生省の側から、私の言葉で言えば押しつけられる、提起されている。これは大変な問題ですね。  それで、ちょっと人事院にお聞きしたいんですけれども、現在の勤務時間法とそれに基づく人事院規則で、連続する勤務時間の上限が十六時間になっていますが、それは看護婦さんなんかも想定したものですか。
  323. 佐藤信

    政府委員佐藤信君) 平成六年に勤務時間法を新たに制定いたしたわけでございますけれども、それ以前は時間数についての特段の上限の設定というのはございませんでした。したがって、理屈の上ではいわば青天井であったわけでございますが、新たに勤務時間法という形で給与法から分離独立させて法律を制定いたしました際に、当時行われておりました交代制勤務の実態というようなものを踏まえて、十六時間というのをもって新たな上限というふうにさせていただいたわけでございます。  当時、実際に行われておりましたのは、看護婦さんについては三交代でございましたから、そういうものが出てくるということを特に予定いたしたということではございませんけれども、実際に出てくるとしても、それ自体が法律なり人事院規則に反するというふうなものではないわけでございます。  あえて申し上げれば、今回の問題につきましては、厚生省当局がそういった法制度の中の一つの運用の問題として、看護婦さんの職務の実情なり看護婦さんにとってのメリットなりあるいは患者さんについてのメリットというふうなものも踏まえた上で、選択肢の一つとして、先ほど来申し上げておりますように、一つのいわば運用の中のあり方として検討し、一部実施に移っているというふうに聞いているところでございます。
  324. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 十六時間という問題は、実際の歴史的経過でいいますと、あの場合は船員の場合にのみだったんですよ。看護婦さんなんか全然想定されていなかった。もうそれは非常にはっきりしているんですね。今もし民間の病院で十六時間連続看護婦さんに仕事させてごらんなさい、これはストライキが起こりますよ。  そういう場合に、人事院にお聞きしたいんだが、そんなことが厚生省から持ち込まれてきていて、理屈はいろんなことをおっしゃるが、持ち込まれてきて、これが問題になるのは当たり前なんです。それをどうやって処理するんですか。そして、この公務員制度審議会というのはなくしてしまって、人事管理システム一般の何かようわからぬ抽象的な機関にしてしまうんだというようなことだったら、人事院としてはこんな問題が起こった場合に、こんな問題というのは看護婦さんの今の問題ですが、一体どこへどう持っていくんですか。
  325. 佐藤信

    政府委員佐藤信君) 職員団体と当局との問題、関係につきましては、相互信頼によりまして、相互信頼ということに基盤を置いて成熟した労使関係を樹立するということが大事であるというふうに考えておりますので、交渉等に関して生じた問題というのはまずは当事者双方の自助努力によって解決するということが望ましいのではないかというふうに思っております。  ただ、当事者間でなかなか解決の糸口が見つからないというような事情がある場合に、職員団体からそれらについて苦情というふうな形の申し出があれば、私どもの方で公平局なりで当事者間の話し合いが進展されるようにいろいろ言い分をお聞きするというふうなことはあるわけでございます。
  326. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 もう一つ、角度を変えて質問をいたします。  だんだん公務員の労働者の権限が狭められ狭められていってしまう感じなんですが、公務員制度審議会の場合には三分の一が政府代表、三分の一が労働者代表、三分の一が有識者というんですか公益者というんですか、そういうふうに決まっていたんですね。先ほどの御答弁だと、今度は総理ないしは長官が任命するんですね。  そうしたら、労働者の代表といったら一体どうやってこの委員会に入ることができるんですか。まさにILO条約の八十七号の精神に基づいて、これがきっかけになってつくられたという審議会、この精神からも、廃止するということはもう本当にそこから外れることであり、労働者が一体どういう形で、今でも三分の一は入って自分の意見が述べられる制度をなぜつぶさなきゃいけないのか、何で総理あるいは長官の任命によってしまうのか、どういう理由なんですか。
  327. 菊池光興

    政府委員(菊池光興君) 公務員制度審議会は昭和四十年に設置されましたけれども、先ほども申し上げましたように、ILO八十七号条約批准案件の国会におきます御審議の過程で懸案となりました国家公務員、地方公務員等の、等というのはこれは当時の三公社でございますけれども、労働関係基本に関する事項について調査審議するためと、こういうことでございます。国家公務員のみならず地方公務員も所管するということで、あるいは三公社も所管するということを法律でわざわざ置いたと、こういうような経緯でございます。  三者構成にしたというのは、労働関係ということで、使用者としての国を代表する者、それから使用される者としての職員を代表する労働職員団体の代表という形、それと、あと中立公平な形での有識者というものが三者構成という形で出たわけです。まさに問題は国家公務員、地方公務員、公務関係の労働関係、要するに使用者と労働者との間の関係をどう規律していくかということでございますので、当然そこの部分については当事者でございます、使用者でございます国なり地方公共団体の代表が入りましたし、働く人たちの代表でございます職員団体の職員の代表というのが入ったんだと思います。  今回申し上げております公務員制度調査会というのは、何も議論をするのは国家公務員とかあるいは地方公務員の労働関係基本に関する、労使間の規律をどう置くべきかということだけを議論するわけじゃございませんで、まさに国民に対して奉仕する行政のあり方、あるいはそれを支える公務員のあり方というものを広い見地で御議論をいただくためでございますので、必ずしも三者構成にする必要はないんではないか、こういうふうに私どもは考えております。
  328. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 だからおかしいんですよ。労働者の問題だけを審議するわけじゃないんだからと言って、簡単にそうおっしゃるところにこの問題の本質が今出たような感じが私はいたします。  結社の自由及び団結権の保護に関する条約、ILO条約、これを契機としてつくられた制度であり、また日本での公務員労働者のスト権がないという問題の代償措置として人事院があり、また今言ったような制度もあるというのが現実なんであって、だんだんこの権限が狭められ、あるいは廃止されてしまうという、この根本のところが廃止されてしまうというようなことは国民にとってもあるいは公務員労働者にとっても極めて重大なことであるということを申し上げて、私の質問を終わります。
  329. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  総務庁設置法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  330. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  331. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時二十四分散会