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1997-06-11 第140回国会 参議院 逓信委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年六月十一日(水曜日)    午後一時一分開会     —————————————    委員異動  六月十一日     辞任         補欠選任      伊藤 基隆君     松前 達郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         渕上 貞雄君     理 事                 加藤 紀文君                 陣内 孝雄君                 足立 良平君                 三重野栄子君     委 員                 景山俊太郎君                 北岡 秀二君                 鈴木 栄治君                 畑   恵君                 保坂 三蔵君                 守住 有信君                 魚住裕一郎君                 鶴岡  洋君                 林  寛子君                 松前 達郎君                 上田耕一郎君                 山田 俊昭君                 水野 誠一君   事務局側        常任委員会専門        員        舘野 忠男君   参考人        社団法人電気通        信事業者協会副  岩崎 克己君        会長        大阪大学大学院        国際公共政策研  林  敏彦君        科教授        一橋大学経済研        究所教授     鈴村興太郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○電気通信事業法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○国際電信電話株式会社法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○日本電信電話株式会社法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 渕上貞雄

    委員長渕上貞雄君) ただいまから逓信委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、伊藤基隆君が委員を辞任され、その補欠として松前達郎君が選任されました。     —————————————
  3. 渕上貞雄

    委員長渕上貞雄君) 電気通信事業法の一部を改正する法律案国際電信電話株式会社法の一部を改正する法律案日本電信電話株式会社法の一部を改正する法律案の三案を一括して議題とし、参考人から意見を求めることといたします。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  皆様には、御多忙のところ当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本日は、忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審議参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。  つきましては、本日の議事の進め方でございますが、まず、岩崎参考人林参考人鈴村参考人の順にお一人二十分程度意見をお述べいただき、その後、各委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  なお、御意見及び御答弁とも着席のままで結構でございます。  それでは、まず岩崎参考人よりお願い申し上げます。岩崎参考人
  4. 岩崎克己

    参考人岩崎克己君) 電気通信事業者協会の副会長を務めさせていただいております東京通信ネットワーク社長岩崎でございます。このような発言の機会をいただき、大変ありがとうございました。  私からは、今回の電気通信事業法NTT法KDD法、これら三つ改正法案につきまして、電気通信事業者協会、この協会は実はNTTさんもKDDさんも入っておりまして、もちろんNTTさんと競争いたします新規通信事業者の会としてつくったわけでございますけれども、現在はNTTさんもKDDさんも会員として入っておりますが、その中で、NTTさんと競争をいたします新規通信事業者の代表としての立場でお話を申し上げたいと思います。  この法案三つ改正法案につきましては、基本的に賛成であり、速やかに実施に移していただきたいという趣旨意見を述べさせていただきたいと存じます。  まず初めに、僭越ながら、私が社長を務めております東京通信ネットワーク株式会社につきまして一言触れさせていただきます。  弊社は、昭和六十年の電気通信事業自由化に伴い設立をされました、いわゆる地域系新規通信事業者でございます。日本国内長距離通信サービスを行う長距離系会社とは異なって、地域お客様に対しまして中距離、近距離のサービス提供しております。  これまで、大口のお客様に対する高速専用線サービス提供を主体に事業を展開してまいりました。おかげさまで業績も伸びてまいりまして、関東圏高速デジタル回線数では、全体の一割程度のシェアを占めております。  また、電話交換サービスにつきましても、当初はNTTさんのネットワークとは接続をしないで、私ども自前回線でエンド・ツー・エンドのサービスを始めてまいりました。しかし、実際にお客様の軒先からオフィスまで光ファイバーで通信回線を一本一本構成していくというのには非常に時間もかかります、お金もかかります。非常に大変な苦労がございました。このため、平成三年にNTTさんのネットワークとの片端接続実現させていただきまして、弊社のTTNetの電話から関東圏内NTT電話への発信通話が可能となりました。NTT電話からの着信ができないいわゆる片方向の通話ということでございまして、現時点でもお客様には多少御迷惑をかけておりまして、全体の回線数も二万数千回線にとどまっているという状況でございます。NTTさんの回線数関東圏内では六千万回線ございます。したがいまして、そのうちの本当のわずかだということでございます。  このように、NTTさんの自然独占性が強いと言われております地域通信市場の中で、NTTさんに真っ向から立ち向かってサービスを行ってまいりました弊社といたしましても、今回の規制緩和の流れの中で作成されました改正法案によりまして公正な有効競争実現が図られ、そして日本通信事業活性化促進されるということは、日本産業経済発展につながるものと大いに期待をしているところでございます。  また、今回の法案は、相互接続ルール化等によりまして公正有効条件整備など、経団連から、実は私も経団連情報通信委員会のメンバーでございまして、その経団連からは、昨年一月に「今後の情報通信市場のあり方に関する見解」として公表をしております要望の趣旨にも基本的に沿ったものでございます。広く産業界経済界に受け入れられるものと考えておる次第でございます。  では続きまして、今回の各法改正案に対します私の具体的意見を申し述べさせていただきます。  まず、電気通信事業法改正案から申し上げます。  第一種通信事業の許可の基準となっております過剰設備防止条項などの撤廃につきましては、基本的には新規参入促進し、競争による市場活性化につながる点で望ましいことと考えておる次第でございます。  一方、地域通信市場におきまして競争が進まない原因となっておりますいわゆる加入者回線部分足回り回線でございますけれども、この構築に非常にコストと時間がかかっているわけでございます。  最近は、NTTさんの加入者線開放を利用したネットワーク構築のほかに、CATVとかワイヤレス、これは無線でございますけれども、そういったネットワークの活用が各社で検討されておりますが、私といたしましては、協調と競争をうまく調和させて、各社が独自にそれぞれインフラ整備するのに加えまして、各社が保有しております設備をいかに有効に活用していくかという観点も必要ではないかと考えております。  それから第二に、接続基本的ルール作成につきましては、昨年十二月に電気通信審議会から答申されました「接続基本的ルールの在り方について」を踏まえたものと承知をしておりますけれども審議会での答申作成進め方の点で、審議の途中で接続ルール案を公表されました。それに対して関係者からの意見を求められました。最終答申への意見反映を行っていただきました。こういうことでルール作成における透明性の確保に御配慮をいただいている点、大変画期的なものではないかと考えております。  それからまた、法案内容につきましても、接続ルールが、第一種通信事業者すべてについて適用される一般的なものと、それからNTTさんのような他事業者に不可欠な設備、これは指定電気通信設備と言っておりますけれども、こういった特定事業者に対する特別なものと二つに分けられております。この指定電気通信設備を設置いたします事業者に対する接続会計の整理、それから接続約款作成、こういったものの義務づけが行われることになりまして、これまであいまいでございました、我々通信事業者NTTさんのネットワーク接続する際にNTTさんにお払いをしていたアクセスチャージ算定根拠が透明、明確なものになったわけでございます。アクセスチャージの水準の適正化、あるいは接続円滑化が図られるものと期待をしております。  アクセスチャージにつきましては、接続を求める我々事業者にとりまして事業計画の主要な要素でございます。そういった意味で、指定電気通信設備を設置いたします事業者、これはNTTさんでございますけれども、これの料金とか約款に関しまして電気通信審議会での審議内容を公表していただき、また事業者からもヒアリングを行うといったような、これからも一層の透明化促進を図っていただくようにお願いをする次第でございます。  なお、本接続ルールにつきましては、競争促進利用者利益増進を図る観点から、一日でも早く繰り上げて適用、実施をしていただくよう要望いたします。  以上が電気通信事業法改正案に対する私の意見でございます。  続きまして、NTT法改正案でございますが、まずは長年にわたる懸案でございましたNTTの再編問題、これが基本的に決着しましたことは大歓迎でございます。しかしながら、世界通信業界は極めて急速に日進月歩で変化また進展をしております。日本が国際的におくれをとることのないように、再編成法案の成立、実施は一日でも早く速やかに行われる必要があると考えております。  我々といたしましては、NTTさんが長距離通信会社地域通信会社に分かれることによりまして、従来不明確でございました地域コスト明確化適正化が図られるものと期待をしております。一方、今回の法案では、東西の地域会社にはドミナント性が残ります。また、いずれもNTT持ち株会社が株式を一〇〇%保有するという特殊会社でございます。今回の再編成趣旨に沿いまして、公正有効な競争実現されるようぜひともそのための仕組みづくりを御検討いただくようお願いをする次第でございます。  それからまた、NTTさんに対しましては、引き続き持っておられる新しい技術や新しいサービス開発力、こういったものを期待したいと思います。そして、私どもとの対抗上開発されました技術情報、こういったものをNTTグループの中に囲い込まれるだけでなくて、私ども新規通信事業者の手にも入るように、また日本通信産業発展のためにも積極的な開示を要望いたす次第でございます。  次に、KDD法改正案につきまして申し上げたいと思います。  基本的には、KDDさんの保有する設備技術が活用される範囲が広がりますことは、日本通信産業活性化観点から望ましいことと考えております。KDDさんが国内通信に進出をされれば、経営基盤の一層の強化が図られる可能性が広がってくるわけでございます。その上で、蓄えられた力でもってこれまで以上に国際分野に積極的に出ていかれて、国内通信から国際通信までシームレスなサービス提供されることを期待しておる次第でございます。  以上、三法案につきまして、やや個人的な見解も交えまして申し上げさせていただきました。  最後に、今回の三つ法案を速やかに可決、成立させていただき、公正競争条件整備を図るという法律趣旨に沿った制度の運用を一日も早く実現していただくことを改めて切にお願い申し上げる次第でございます。と同時に、日本電気通信事業の一層の発展のためにいろいろと御支援をちょうだいしたいと思います。  以上で私の陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  5. 渕上貞雄

    委員長渕上貞雄君) 岩崎参考人どうもありがとうございました。  次に、林参考人お願いいたします。林参考人
  6. 林敏彦

    参考人林敏彦君) 大阪大学国際公共政策研究科というところで現在は研究科長をしております林と申します。  日ごろは大学現代公共政策という科目を講じております。一方で、電気通信審議会委員も務めさせていただいております。通信問題に関しましてはかねがね関心を持っている研究者の一人として、本日は私の考えの一端を申し述べさせていただき、議員先生方の御判断の用に供したいと存じます。  お手元に簡単なレジュメを配付してあるかと思いますので、おおむねそれに沿ったお話にさせていただきたいと思います。  初めに、電気通信産業の将来像とありますが、電気通信産業重要性等につきましては既に十分御案内のとおりだと思いますので、もう簡単にとどめさせていただきます。我が国では、ともすれば産業活性化日本経済効率化基盤としての電気通信産業あるいは新しいリーディングインダストリーといった観点が強調される感じがございますが、過日、EU、ヨーロッパを訪ねましたときには、そういったことと並んで新しい電気通信技術のもたらす文化的な、各国の文化に対する影響というものに大変注目しておいででございました。さらに、アメリカではゴア副大統領のGII構想が発表される以前に、いち早く反応を示されたのは議会であったと承知しております。  すなわち、新しい通信技術民主主義根幹にかかわる問題を提起する、国会議員議会活動にも大きな影響を与えかねない、情報のゲートウエーを握る者が政治を制する、そういうことになる可能性がある、したがって、この問題を早くから認識して考えておかなければ民主主義根幹にかかわる問題に発展しかねないといった報告が出されていることは御案内のとおりでございます。  このように、大きなインパクトを持とうとしている電気通信産業をどう健全な発展を促していくかということは極めてすぐれた政策課題であることは申すまでもございません。  電気通信産業というのは、つながって初めて仕事ができる、ネットワーク一つながりで仕事ができるという性質のテクノロジーでございます。そのため、ネットワークは互いに手を伸ばしてつながっていこうといたします。これは国を越えてつながってまいります、地域を越えてつながってまいります。そうしてつながったネットワークが地球を覆い尽くす形で幾つかの全地球的なネットワークとして相互競争していく、そういう時代がもうすぐそこまで来ております。  言うならば、国内問題で電気通信産業市場をどうコントロールするかとか、あるいはその枠組みをどう設定するかということは、あえて申せばコップの中の嵐でございまして、世界はもっと大きなうねりが動いている。その中で、我が国電気通信産業あるいは我が国電気通信事業者をどう位置づけていくかという観点がまずもって必要かと思います。  そのためには、世界の趨勢は競争ということでございます。一足飛びに電気通信産業の将来を私なりに予想いたしますと、私は技術のことは素人でありますから、どのような技術が生き残るか、これは私の予想の限りではございません。けれども、恐らく言えるであろうことは、電気通信サービス、従来ですと音声を運んでもらう、あるいは信号を運んでもらう、こういった通信サービスというものはこれまでは特別なサービスである、ある意味では国民生活に極めて重要な特別なサービスである。しかるがゆえにさまざまな規制も必要であろう、あるいは促進策も必要であろう、こういった考え方でございましたが、恐らくそれが普通のサービスになっていくのではないかと思います。  普通のサービスというのは、特別扱いをしない普通のサービスになっていくのではないだろうか。それはあたかも金融サービスというのが、これは特別なサービスであるから特別な仕掛けを持って、特別な保護を受けなければならないといった考え方が次第に崩れまして、これは競争的に提供される普通のサービスであるという考え方に変わってきているのと軌を一にしているかもしれません。  あるいは、戦後長らく米に対して私たちは特別な財であるとの感傷を持って対応してまいりましたが、これも昨今の動きを見ますと、一食料品である、普通の財であるというふうに考え方が変わりつつあるように思われます。  そういたしますと、電気通信サービスというものも、特別なという衣を脱ぎ捨てて、特別扱いを要しない普通のサービスになっていくのではなかろうかというふうな見通しが立ちます。その上で、どういうサービスがユーザーに受け入れられるかということをまさに競い合う、そういう時代になっているのだと思います。  そういった認識を踏まえまして、まずNTTの再編成問題についてどう考えるかという意見を申し上げさせていただきます。  分割視点につきましては、私はさまざまな採点ポイントがあろうかと思います。ここに挙げましたのはその一例でございますが、例えば通信に必要な技術的統一性を確保するという視点からは、恐らく、分かれていない一体的な事業として展開される方が好ましいのではないかと思われます。  企業資源を活用する、時にこれは分割により我が国通信産業企業資源が細かく分かれて、いわば力を失う、国際交渉力を失うといったふうな視点がありますが、仮に量が力であると考えるのであれば、確かに七兆円の企業に比べて四兆円、三兆円の企業はそれだけ企業資源が小さくなるということは言えるかもしれません。  次に、組織効率という観点から考えますと、これは大組織には特有の非効率性が宿ります。特に顧客サービスを旨とすべきサービス産業におきまして、これは致命傷となるべき欠陥だと考えます。その意味でいえば、組織が小さくなって内部の情報の風通しがよくなり、そしてお客様にきめの細かい、地域にきめの細かいサービスができるようになり、しかも最近はスピードの経済ということが言われます。即断即決、いち早くニーズに対応していくというスピード感覚あふれる経営といったことを考えますと、これは組織は小さい方がよろしいという採点になろうかと思います。  技術開発に関してでございますが、これは技術開発性質によって異なろうかと思います。確かに、ネットワークの基幹的な技術といったものは、大組織ネットワークの端々まで注意を行き渡らせるような組織の方がやりやすいかもしれませんが、他方で、そういったインフラ部分よりも、これから重要になってまいりますのはコンテンツの部分だと言われております。その中でどういうメッセージ、どういう内容、どういうプログラム、どういうサービス提供するのか、この部分技術開発につきましては、これは一人の天才が世界を制するといった技術開発競争が問題となります。その際には、大組織であるがゆえの有利さは、むしろ不利さに転じるとさえ思われます。したがいまして、技術開発は、基幹的な技術開発とそれからサービス的な技術開発では、それにふさわしい組織形態というのはおのずから異なるものと思われます。  顧客サービスにつきましては、できるだけ小さな組織の方がお客様に密着しているという意味では明らかに有利であろうかと思われます。  新規ビジネス、これも会社の中で知恵が生まれたとして、これが具体的な計画となって動いていくために、判こが十も二十も必要であるような大組織よりも、思いついた人がすぐ走れるといった、できるだけ小さな組織の方が能率がいいだろうというふうに思われます。  規制緩和も、独占的な大企業があるときよりも、競争的な環境のもとでの方が恐らく規制者の側でもやりやすいでありましょうし、また、そうできる環境が整うものと思われます。  今回、非常に大きなポイントの一つは、分割されます三つ会社のうちの長距離部門長距離会社特殊会社ではなくなりました。これは審議会答申におきましては持ち株会社制度は明示されていませんでしたが、そのかわりに現在特殊会社になっているNTT分割し、相互競争実現した暁には、長期的にはNTT特殊会社でない普通の会社にするといったふうな方向を見据えての答申になっております。現在のところは、それが東日本西日本、及び持ち株会社に関しては特殊会社の規定を残し、そして長距離会社に関しては普通の会社持ち株会社の傘下には入りますが、普通の会社というふうになっております。あえて申し上げれば、長距離会社社員に対しては収賄罪は成立しないが、東日本西日本会社社員に対しては収賄罪が成立する、こういう仕掛けになっております。このことの意義については、今後十分検討していくべきではなかろうかと思います。  個人的には、私はできるだけ早い段階で長距離会社はむしろ持ち株会社の枠を外れるようなことを考えてもよいのではないかというふうに思います力  以上、総合いたしまして、私は結論として、今回のNTT分割についてはやはりマイナス面よりもプラス面の方が大きい。特に、社長さんの数がふえるということを最も強調したいと思うのであります。  先般、私ども大学NTTの方が学生の採用の説明のために、会社説明のために見えていました。若い、リクルート担当社員であります。私は冗談に申し上げたんですが、NTT学生に売り込むときには、社長になりやすくなりましたと、こう言って売ってくださいと申し上げたんですが、NTT社員の方はまじめでして、社長なぞになかなかなれるものではございませんと、こういうお返事でした。なりやすくなったというよりも、頭がふえたというところが重要だと思います。違う考えを持つ人間がそれぞれの組織の長として会社を運営していくことができるようになった。ということは、違うやり方を別々の会社で試みることができる余地ができたと、ここのところが最大のポイントであろうと思います。その違うやり方の中には、国際的な提携等に関しましては違う相手と組むといったことも可能性としては出てくるという意味でございます。  持ち株会社のことについてどう考えるかということですが、これにつきましては、まず持ち株会社制度が浮上したことにつきましては、いわゆる政治的妥協の産物であるといった見方もあろうかと思います。審議会では、持ち株会社のことは軽く議論にはなりましたが、その当時は日本経済全体について持ち株会社制度実現性に関しては確固たる見通しはございませんでした。したがって、持ち株会社制度を真剣に検討したということはございませんでした。  しかしながら、その後の展開で、こういったことが可能になるということであり、さらに先鞭をつけるという意味では、私は新しい制度が発足するということについてはそれなりの意義を認めるものでございます。  ただ、問題は、この持ち株会社に対する思いが、恐らくNTTさんの側と、それからあえて言えば郵政省の側で違っているような気がいたします。NTTの側では、持ち株会社制度連結会計制度、あるいは一方の収益を他方赤字部門に移転することができるような附則条項、こういったものを通じて、組織は分かれても一体的な電気通信サービス提供が可能になる、あるいは従業員の待遇、福利厚生面においても均一性が確保できるのではないか、あるいは全国市内料金均一性といったこともそういった持ち株会社制度のもとでは可能になるのではないか、こういうふうに考えておられるのではないかと想像いたします。  しかしながら、他方、一たん別組織、別会社になってしまえば、年がたつにつれて、やはり別のカルチャーが育ち、別の物の考え方が育ち、企業のアイデンティティーを求めての動きが起こり、個性ある企業発展していくであろうといった見通しもあろうかと思います。私としましては、むしろこの後者の見方に期待したいと思うのであります。  最悪のケースというのは、形式上分割したかに見える企業同士が、いうところの持ち株会社を通じての調整を通じて、外国あるいは外から見たときに、あたかも一体であるかのごとき印象を与えるようなことがあれば、つまり実態的に競争が起こっていないという印象が生まれるならば、これは最悪の組み合わせになろうかと思われます。やはり、分割の理念にのっとってそこでは競争が起こるようにしていく。そして、このことは一片の法律だけでは実現し得ませんで、これからの政令、省令等を経て、具体的な事項を決めていく中で実現されていくものかと思います。  例えば、東日本株式会社が持っておられる顧客に対する情報、これを西日本株式会社は見ることができるのでありましょうか。あるいは、長距離通信会社は見ることができるのでありましょうか。こういったふうな具体的なことを詰めていって、できるだけ別組織として相互競争ができるよう図っていくことが必要かと思われます。  例えば、西日本株式会社、本社がどこに置かれるか定かではございませんが、仮に大阪の企業が東京に本店を移す、あるいは出張所を持つといったときに、地元とのつながりの深い東京進出企業に対して、西日本株式会社がある種の一体的なサービス提供するというふうなことは、法案では、郵政大臣の認可を得てそれをすることができると書いてありますので、これを積極的に活用するといったことを通じまして、実質上の競争が起こっていくということを期待したいものでございます。  そして、そういう自由度が拡大したということをもって、最もこの法律期待するところはNTTの職員の士気が大いに上がっていただきたいものだという点でございます。これは、長年にわたる論争に一応の決着がついて、しばらく安定的な環境のもとでビジネスを続けることができるといったことと、それから新しいことに乗り出すチャンスが生まれた、例えば長距離会社国際分野に進出できるといったことでございますね、ということを手がかりとして、NTTの職員の方々が大いにその意欲を発揮して、新しいビジネスに取り組んでいただくという環境をつくり上げることが最も重要であろうかと思われます。現在、言われているような東日本株式会社西日本株式会社の財政上の状態、どちらが有利だ不利だ、赤字になりやすいといったふうなことは、恐らくは、この企業の努力、努力へ向けての意思といったふうなことによって、かなりの部分、逆転可能な要素があるように思われます。  そういう意味で、これから分割された各NTT企業にとりましては、いかに新しいチャレンジに立ち向かっていくか、そういう社風をつくり上げることができるかということに日本通信産業全体の将来がかかっていると申し上げても過言ではないと思います。  次に、電気通信事業法の一部改正についてでございますが、これはNTTの再編成と別の事項ではございませんで、全部一体となっているというふうに私は理解しております。  もう時間に限りがございますので簡単にさせていただきますが、需給調整条項、マーケットに比べて設備が過剰とならないといった条項、これは経済学者はこぞってこの条項のあることを不満としてきたところでございます。今回これがまさに法案として条項から削除されるということは、大変喜ばしいことだというふうに思います。  それから、先ほど一番初めにネットワークはつながって仕事ができるのだということを申し上げました。つながらないネットワークというのは意味がございませんので、つながると。つながる場合には相互接続接続協定の明確化、これも今回初めて明確にされたわけでございますが、先ほど岩崎参考人の御意見の中にもございましたように、全く私としましても画期的な出来事として高く評価している次第でございます。  KDD法の一部改正についてでございますが、国内市場への参入、そして競争者として国内市場に参入していただくということを私としては期待しております。KDDには長年培ってきた国際通信に関する特別なノウハウの蓄積がございます。これを生かした個性あるプレーヤーとして、力強く競争に参入していただきたいと思うのでございます。  さらに、NTTに対しましては、法案公布後二年六カ月以内にこれを施行するとありますが、施行以前にも一部新たなビジネスへの参入を認めるというふうな附則がございますが、それと同じような形で、KDDにつきまして、KDDの国内分野への参入というのはNTT法の施行以前にも積極的に進めるべきものであろうというふうに考える次第でございます。  残された課題としましては、今回のこの三つ法案だけで我が国電気通信産業の枠組みがすべて決まるものではございません。レシプロシティーへの配慮、これはアメリカがこれをどう見るかというふうなことは極めて重要な関心事でございます。そういったことへの配慮を怠ってはなりません。あるいは将来的なネットワークはデジタル総合ネットワークというふうなものに進展していこうかと思いますが、その中には放送の位置づけというのが極めて重要になりますし、現実にその方向への研究が動いております。したがいまして、最終的には放送、通信、こういうものを包含した新しいメディア産業、これは信号を運ぶ人とその放送番組の内容、コンテンツをつくる人と、あるいはそれをコーディネートする人と、新しいいろんなビジネスの組み合わせが出てくるかと思いますが、その時代にふさわしい枠組みをつくっていく作業はこれから始まるのだというふうに思っております。  以上をもちまして、私の陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  7. 渕上貞雄

    委員長渕上貞雄君) 林参考人、ありがとうございました。  次に、鈴村参考人お願い申し上げます。鈴村参考人
  8. 鈴村興太郎

    参考人鈴村興太郎君) 鈴村でございます。  私は、一橋大学経済研究所におきまして、現代経済研究部門というところに所属して公共経済学の担当をしております。私自身の研究関心について最初に少し申し上げることが、私の陳述の背景になるかと思います。  私の関心は主に経済政策の理論的な基礎、とりわけ社会的な意思決定の仕組みとか、あるいはまた経済政策が国民の経済厚生に対して一体どのように組み立てられるべきかということを分野とする厚生経済学を研究しております。その立場から、市場経済における競争規制の仕組みはどうあるべきか、また重要な政策的決定に際しての公共的な意思決定の機構、仕組みはどうあるべきかということを関心の対象としておる者でございます。  日本の問題に関しましても、この観点から日本産業政策、日本競争政策、それから日本の電気通信政策等々に関して長く関心を持ってきております。とりわけ一つの視点といたしましては、経済学者というのはしばしばドライな学者と見られがちでありまして、結果よければすべてよしという見方をするかに思われるわけですが、やはりどういう結果がどういう仕組みを経て、つまりどういう手続的な公平性を持ちつつ実現されるかということが重要であるということを強調しているものでございます。  さて、私の陳述のもう一つの前置きといたしまして、現在の日本情報通信産業を取り巻く三つの不確実性ということを申し上げておきたいと思います。この点から先、さきにお配りしてございます私のメモに大体沿ったシナリオでお話をしてまいります。  第一番目の不確実性というのは、通信技術発展の速度と方向に関する外生的な、つまり我々の持つシステムとはかかわりなく外から生まれてくる不確実性であります。過去数年間の経験からも明らかなように、通信技術発展は極めて急速かつ多様でありまして、その発展速度と発展方向を事前に正確に予測するということはだれにとってもほとんど不可能に近いというのが現実でございます。これが第一の不確実性の霧でございます。  第二の不確実性というのは、さかのぼりますと、第二臨調が提言したNTTの分離分割という機構改革をめぐりまして、NTT経営形態に関する政策措置が一九八五年改革に際しても、またNTT法附則第二条に基づく一九九〇年及び九五年の見直しによっても確定できずに、最大の統合通信事業者のあり方が十四年以上にもわたって宙に浮いたままにとどまってきたということでございます。これは通信事業の将来展望を深い霧に閉ざしてきたということは間違いないことであると考えております。  第三の不確実性と申しますのは、この産業における規制の権限を持ちます郵政省による規制が八五年改革以降この産業競争的に育成するという観点から産業政策的に行われてまいりまして、その規制の行われ方が極めて裁量的に行われてきた、その意味において、実はこの産業競争の仕組み、つまり競争のルールが透明性と公開性に欠ける点があったという点でございます。  先ほど申しました第一の不確実性というのは、これは我々の制度の問題というよりは技術の性格に根差しておりまして、その意味で外生的なものであります。この霧は、電気通信事業者が自己責任と利潤動機に基づく実験とたくましい競争を通じて試行錯誤的に解消することに期待するほかはないという性格のものでございます。これに対しまして第二、第三の不確実性は、政策措置の選択に政治的な決断がしばしば欠けて、また規制行政が不透明な仕組みで裁量的に執行されたという点に起因しておりまして、その意味で、情報通信をめぐる日本政治経済システムがみずから、つまり内部からつくり出したという意味で内生的な不確実性でございます。  この観点からいたしますと、電気通信三法の改正による今回の制度改革は、NTT経営形態に関する政治的意思決定によって第二の不確実性の霧を晴らすということ、及び事業法の改正によって規制行政と競争ルールを透明化し公開性と公平性を保障することによって第三の不確実性の霧を晴らすことということが大きな課題になるわけでございます。そしてまた、第一の不確実性の霧を晴らすためにダイナミックな競争が十分的確に機能できる条件を整備することもまた今回の機構改革の大きな意義でございます。  以上を前置きといたしまして、具体的に今回の機構改革の中身について論点を絞りつつ陳述申し上げます。  まず第一点といたしまして、事業法の改正案に関する私なりの見方を御説明申し上げたいと思います。  今回の事業法の改正案におきましては、しばしば不透明な参入規制の根拠となってきました過剰設備防止条項など、さまざまな問題を含んだ事業法の改善が行われております。このような改善に対しましては私は高く評価するものであります。  一方、従来の事業法のルールとしての不備及びその適用上の行政の不備と両面から、この電気通信事業において最も重要な競争のルールであるネットワーク相互接続がなかなか円滑に行われないということが従来の問題でありました。その点に関しましても、今回の事業法の改正案接続ルール整備するとともに、またその整備のプロセスで従来以上に透明性を改善するという努力が払われたことはやはり評価したいと思います。  ただし、私はこの機会にぜひつけ加えておきたいまだ残されている問題点があると考えております。  まず第一の参入許可条件に関して申し上げますと、確かに最大の問題でありました過剰設備防止条項は廃止になりましたが、依然として参入許可条件の中には「その事業計画が確実かつ合理的であること。」、また「その他その事業の開始が電気通信の健全な発達のために適切であること。」というものが維持されております。この二つの条項は先ほどの過剰設備防止条項と相並び従来の不透明な参入規制の根拠となっていたものでありまして、これが残されたことは、法の運用次第では、行政が不透明な介入を行うことによって競争が第一の不確実性の霧を晴らすように十分機能しない懸念が依然として残るということを申し上げておきたいわけであります。  もう少し敷衝いたしますと、最初の「事業計画が確実かつ合理的であること。」というのがなぜ問題かと申しますと、本来の競争市場におきましては、ある事業計画が確実かつ合理的であるかどうかということはその事業競争プロセスを生き抜けるかどうかという市場のテストによって事後的に検証されるものであります。しかるに、この確実かつ合理的な事業計画を求める規定と申しますのは、実際の競争が開始される以前に競争市場の判定を先取りする能力が規制機関に備わっているという想定に立っているものと考えざるを得ないからであります。  一方、接続に関するルール化に関しましても一つの懸念を表明しておきたいと思います。懸念と申しますのは次の点であります。  今回の事業法改善によりましても接続に関する裁定機能は規制機関である郵政省の管轄にとどめられておりますし、また接続に関する処分等も郵政省の管轄内の審議会に諮問するものと定められております。  私の観点から申しますと、実は接続にかかわっては二つの重要な機能が区別されるべきだと思われます。  第一の機能は、接続に関する政策立案の機能であります。これは今回の事業法改革にあらわれておりますように、接続ルール明確化透明化ということがそれに対応しております。一方の機能は、こうして法定されますルールが果たして遵守されているかどうかということを監視し、違反に対する処罰とまたルールをめぐって起こる事業者間の対立を裁定するという行政機能であります。この二つの機能がともに一つの規制機関の中にとどめられているということは、私は、本来競争のルールの設計とそのルールの監視ということは別物だという観点から、残された問題であると思っております。  私の考え方によりますと、現段階の電気通信事業における競争条件をまさに決定的に左右する接続に関するルールの決定は、規制機関である郵政省とは独立した第三者機関にゆだねられるべき性格のものであると思われます。この点に私は一つの懸念を持つということを申し上げておきたいと思います。  第二点に移ります。  改正NTT法におきましては、純粋持ち株会社となるNTT本社と東西に二分される地域会社に対して、従来のNTTが負っていたと同様なユニバーサルサービス提供義務を課しております。全国あまねく公平な電話サービス提供という役割が、従来のNTTと同じく新生NTTにも課されるということでございます。  この提供義務は国民生活に不可欠な電話の役務に限られてはおりますが、特殊会社とはいえども競争に公平に参加すべきNTTに対してのみユニバーサルサービス提供義務を課す根拠はそれほど明確なものではありません。なぜならば、電話サービス提供する事業が全体としてユニバーサルサービスの義務を負うという考え方もありまして、事実そのような考え方制度化しているのがアメリカにおけるユニバーサルサービス考え方でございます。  確かに現状で申しますと、NTTがとりわけ地域に関して非常に強い疑似独占性を持っている状況を背景とすると、ユニバーサルサービスが片務的にNTTに課されるというのはもっともに思われるかもしれません。さりながら、長期的に考えますと、この事業の将来にとって決定的なことは、まさに地域事業においてどれだけ競争が進展するかということであり、先ほど触れました接続ルールが機能するかどうかも、まさにこの競争の進展にどれだけ貢献できるかによって確かめられるべきものであります。  このように、競争の進展を期待するという観点から考えますと、このような片務的なユニバーサルサービスが今回のNTT法改正におきまして実は維持されたということも、将来に残る問題として検討されるべきであるというその留意事項を申し上げておきたいわけでございます。  同様に、特殊法人であることからKDDが事実上課されている国際通信のユニバーサルサービス提供義務に関しても、同じ観点からの再考の余地があるということを申し上げておきたいと思います。  念のために付言いたしますが、もちろんKDD法には明文としては国際通信のユニバーサルサービスの義務はありません。この義務を課しているのは、特殊法人というKDDのステータスであります。  時間が余りございませんので深くは触れられませんが、ユニバーサルサービスの代替的な仕組みといたしましては、例えばアメリカにおけるユニバーサルサービスファンドの仕組み等々、参考にすべき仕組みは既に機能しているわけでありまして、私たち日本の電気通信制度的な仕組みも、これはまだ未完の制度改革でありまして、将来の課題をはっきりと意識しておくべきであると思います。  第三の論点に移ります。  昨年三月に電気通信審議会答申いたしましたNTT改革案と今回の法改正とを比較してみますと、実はNTT経営形態のあり方のイメージは全く異なっております。  電気通信審議会答申が構想いたしましたNTTの分離分割案によりますと、地域分離された電話会社の間には、直接、間接の競争がイメージされておりますし、また長距離会社に対しましても、再編成後、直ちに地域市場への参入が可能とされております。さらにまた、東西二社の地域会社間にも相互に参入が可能であるというチャネルが開かれておりますし、将来、競争が進展すれば地域会社長距離、国際への参入もまた可能であるというイメージでございました。  これに対しまして、今回の法改正がイメージしております持ち株会社構想による分離は、地域会社間の直接はもとより間接的にも競争がどういう仕組みで起こるのかというイメージははっきりしていないということがございます。  二つの構想を比較して非常に大きな違いがあるということをまず踏まえた上で、それでは、今回の改正に対して私が一体どう賛否を表明するかということでございます。前置きで申しました第一、第二、第三の不確実性に戻って申しますと、私たちの制度が内生的につくり出した霧を晴らすことが今や最も重要な問題であると考えておりますので、その立場から、今回の改正を、いわば若干苦い思いを持ちながらも、ぜひ実現していただきたいという立場を選択するものでございます。第二の不確実性を晴らすという点を重視した一つの現実的な判断でございます。  以上申し上げた三点が基本的な意見でございまして、最後に三つほど、また将来に向けての御注意いただきたい点を述べて、私の意見陳述を閉じさせていただきます。  第一の点は、前置きで述べました第一の不確実性の霧にかかわっております。先ほど申しましたように、外生的な技術の将来が非常に不確実であるということは、これは制度の問題として制度の改革をすれば確実に解消できるというものではなくて、試行錯誤的に事業者間の競争がダイナミックに発展していくことによって、産業発展方向を競争を通じて発見することによって初めて晴らされるものであります。  そうであるだけに、今回の法改正によってつくられる仕組みが、競争がこの機能を十分果たせるようなものになることを保障することこそ重要でありまして、ルールが明文化されたとしても、そのルールを実際にどのように実践するかということは、一方において行政側の課題であるし、また他方においては競争に参加する事業者のまさに競争に対する取り組み方にかかわっております。  管理された競争、従来の規制がさまざまな業態別の介入を行っていわば競争に手錠をはめてきたような競争では、まさにこの不確実性の霧を晴らす競争実現され得ない、これが私の強調したいことであります。ダイナミックで自由な競争となることこそ、日本の電気通信の将来がこの法によって開かれるキーワードであります。  先ほどの林参考人が使われた言葉をちょっとモディファイして申しますと、電気通信産業は今や自然な規制産業という特殊な産業ではなくて、自由でダイナミックな競争によって不確実性の霧が晴らされていくような普通の産業になろうとしているわけでありまして、まさにこの普通の産業として競争が進行するように、行政側の規制もそれ自体また伸縮的で不断の進化を遂げていただきたいというふうに考えます。これが第一点でございます。  第二点は、実は今回の制度改革が動き出したきっかけは、重々御承知のように、橋本首相が昨年七月に郵政省側に対して与えた指示であると言われております。規制機関と被規制企業とが延々十四年間にわたって不毛な対立を続けていた状況におきまして、政治が指導力を発揮して道を開いたと言えばまさに平仄が合うわけではございますが、先ほど指摘したように、実は電気通信審議会最終答申とこの橋本首相の指示以降具体化し、今度制度化されます仕組みとは非常に違っておりますし、また電気通信審議会という我々の持っている公共的な意思決定の仕組みはこの最終決着においてはいわば活用されていないということが問題でございます。ただし、接続のルールのことにつきましては、電気通信審議会答申が十分な役割を果たしました。  しかしながら、最終的な決着をNTT経営形態について下すという点につきましては、私の申し上げた懸念が妥当すると思います。別の面から申しますと、今回の決着の方法には、手続には公共的意思決定の仕組みとして問題があると私は考えざるを得ないわけであります。国政の最高意思決定機関として、重要な懸案事項に関する意思決定を規制機関と被規制企業との協議にゆだねる手続というのは私には納得がいかない点が残るわけでありまして、今後、公開性、透明性、手続的な公平性を備えた公共的な意思決定の仕組みが構想されますことをこの際期待しておきたいと思います。  最後にもう一点だけ、ごく短くつけ加えさせていただきます。それは、普通の産業における自由な競争ということがイメージだと申しましたが、やはり規制機関が果たすべき機能が残ることも事実であります。それは、自由で公平な競争を維持促進するために透明で公正な競争ルールを確立して、ルールから逸脱する事業活動を的確、厳正に監視、矯正するという機能であります。この機能は、私は、接続のルールに関しては、二つに分けたまさに行政側がつかさどるべき機能であると考えております。この点に関し、ルールの監視とルールの厳正な執行を期待して、私の陳述を終えさせていただきます。  ありがとうございました。
  9. 渕上貞雄

    委員長渕上貞雄君) 鈴村参考人、ありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わりました。  これより質疑を行います。  なお、参考人の皆様に申し上げます。各委員の質疑時間が限られておりますので、恐れ入りますが、お答えはできるだけ簡潔にお願い申し上げます。  それでは、質疑のある方は順次御発言願います。
  10. 加藤紀文

    ○加藤紀文君 自由民主党の加藤紀文でございます。参考人先生方には貴重な御意見を聞かせていただきましてありがとうございます。  今回の三法案の改正というのは、言うまでもなく国民の利益の向上といいますか利便性の向上が第一にあり、それと同時に産業活性化という面もあるわけでありますが、そのために公正な競争条件の整備を図ろうというのが今回の目的であろうと思うわけであります。今までも当委員会で活発に質疑を行ってきたわけでありますが、NTTKDD関係者の方は常時出席され、その都度御意見を拝聴していたわけであります。今回、電気通信事業者協会の副会長である岩崎参考人出席いただいたわけでありますので、まず岩崎参考人にお伺いしたいと思うわけであります。  先ほどお話を聞いておりますと、独自のネットワークを形成されるのに大変御努力されたということにまず敬意を表するものでありますが、情報通信の基幹は何といってもネットワークであります。ネットワークを多く持っている事業者が強いということは実感されたのではなかろうかなと思うわけであります。今回の三法案に対して賛成の意見を表明しておられますが、これらの改正によって御社が期待される効果というのはどういうものがあるのか、まずお聞かせいただきたいと思います。
  11. 岩崎克己

    参考人岩崎克己君) ただいまの御質問にお答えいたします。  今回の三法案の改正によりまして、先ほどるる申し上げましたけれども、一つは規制緩和がかなり進んでいくということでございます。特に参入規制過剰設備防止条項、こういった規制緩和が進みまして、またもう一つは接続ルールが明確になったということで、ドミナントでありますNTTさんとのネットワーク活用が一層進むことができるわけでございます。特に私ども、先ほど来申し上げておりますように、地域網を受け持っておりましてそのネットワーク構築には非常に苦労してまいりました。そういった意味で、NTTさんの地域網との公正な接続ができることによりまして、私どもネットワークもまた有効に活用できるのではないか。それによりまして新たなサービスの展開が可能になるのではないかと思っております。  実は私ども、このNTTさんのネットワークのオープン化に対応いたしましてNTTさんの加入者回線をお借りして、来年の一月からNTTさんの回線をお借りした新しい電話事業を展開してまいりたい、このように考えております。それによりまして電話料金ももう少し安く、ユーザーの皆さん方に安く御利用いただけるような環境をつくってまいりたい、このように考えておりまして、今回の法案改正によりまして私ども通信事業が一層発展できるのではないかと非常に期待をしているところでございます。  以上でございます。
  12. 加藤紀文

    ○加藤紀文君 ありがとうございました。  公正な有効競争考えた場合に、やはり一番問題になるのが接続の公平なルールではなかろうかなと思うわけであり、それぞれ三人の先生方から接続に関していろいろお話がございました。  例えば、今の岩崎参考人の例をとらせていただければ、NTT加入者線開放を利用してTTNetさんが接続するとした場合には、私の考えでありますが、NTTの加入者線というのは別にNTTという一企業の資産ではなくて、まさに国民・利用者がそのコストを払い、今でも負担しているわけでありますから、TTNetさんがそれを利用するということは、ある意味ではNTTの過剰設備を使うわけでありますから、そのアクセスチャージというのはNTT利用者に還元すべきじゃないかなと思うわけでありますが、そうすることによってNTT利用者料金が安くなり、またTTNetさんも適正な、公平な料金になるのではなかろうか。それが両方なれば両方の利用料金が安くなるのではなかろうかなと思っておるわけでありますが、三人の先生方接続の公平なルールとはどういつだものか、どういつだお考えを持っておられるか、お聞かせいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  13. 林敏彦

    参考人林敏彦君) 私の考え方を申し述べさせていただきます。  確かに御指摘のとおりでございまして、国民の資産として築かれたNTTネットワークを有効に活用するということは最も重要なことであります。この方向に対しましてNTTの方でも御努力をいただきまして、従来よりも幅広く接続を希望する事業者のニーズに応じたポイント接続を認めるというふうなことを既に実行しておられますので、姿勢としては私はそれは高く評価しております。  問題は接続料金アクセスチャージ接続料でございます。この接続料の決め方の原理につきましては、これはアメリカでも現在論争のあるところでございます。簡単に申し上げますと、従来から抱えている設備の総コストを分担するようなやり方料金を、接続料を決めてほしいという考え方と、それから接続を新たに行うために設備投資が必要でございますが、その手続にかかるコストの分だけを接続料として徴収するというこの二通りの考え方がございます。経済学者としては、新たに追加に必要となる設備部分だけで接続を認めるのがよいのではないかというふうに考えますが、この点についてはまだ決着がついておりません。
  14. 鈴村興太郎

    参考人鈴村興太郎君) お答えいたします。  接続をめぐる公平なルールとは何かという御質問でございますが、経済学の観点から申しまして公平性という場合に、最初に私が申し上げたことに戻りますが、まずルール自体が手続として公平であるかということと、どういうふうな例えば料金、あるいはどういうふうな条件で接続するかという結果がそれとして公平であるかということは非常に違う観点だと考えております。  今回の法改正によりまして、前者、つまりルールの手続的な公平性は大いに増したというふうに私は考えております。と申しますのは、接続条件及び接続料の計算方法とその算定の根拠というものを透明に公開するということが義務づけられているということと、それから、とりわけエッセンシャルな設備の持ち主に対しては、つまり特別接続義務というものに言及しているわけですけれども、その接続を義務づけるという形でルールがはっきりとつくられたということであります。  一方の、じゃ実際の接続料金そのものがどう決められたら公平であるか、こちらの方につきましては、これは随分いろいろな議論があり得るところでございます。経済学的に申しましても一義的な結論はありませんで、これに関しては、アメリカにおきましても、イギリスにおきましてもさまざまな論争がございます。  私自身は、やはり公共的なその意味での法的独占時代を経て形成されたインフラストラクチャーであるアクセス部分ネットワークの利用は、できるだけ安い料金で、しかもコストに見合った形でシェアされるというのが適正であると考えております。  ただ、これにつきましての具体的な決め方ということにつきましては、一義的な回答というのはなかなかつくれない。今回の法改正で行われたことは、従来手続的にも不透明であった接続の手続に関する公平性が確立されたということであり、その点を私は評価しております。  以上であります。
  15. 岩崎克己

    参考人岩崎克己君) お答えいたします。  今、両先生から具体的な考え方についてお話がございましたけれども、私ども事業者といたしましてNTTの加入者線網に接続をする場合の問題点としては、一つはやはり接続料金の問題でございます。  先ほど加藤先生からお話がございましたような、NTTさんが長い間培ってこられた設備を私どもはそれを利用して安い料金で一般の方々にサービスをしょうというときに、接続料金が高いと、なかなかそれを利用してサービスをする場合にも私ども料金が安くなりません。そういった意味で、今、両先生からお話がございましたように、この問題につきましてはまだまだいろいろ課題がございます。  欧米で行われておりますような長期増分費用といったような方式でこのアクセスチャージを算定すべきだといった意見はございますが、ただ、これは日本設備その他に対してうまく適用できるかどうか、その辺の検討をこれからまだする必要があると考えております。そういった意味で、郵政省におかれましても、この長期増分費用コスト等の料金算定方式につきまして、時間をかけて、研究会を設けて、妥当なアクセスチャージにすべく今検討を進めておられるところでございます。  ただ、私どもにとりましては、早くこの算定方式を決めていただきまして、私どもネットワークアクセスチャージとして活用していきたい。少なくとも安い料金サービスを展開していくことによりまして、国民の皆様方に利益を生じさせることになるわけでございますので、そういった意味でそういった検討をぜひ進めていただきたくお願いをする次第でございます。  以上でございます。
  16. 加藤紀文

    ○加藤紀文君 またしつこいようでありますが、接続に関してもう一問お尋ねしたいと思います。  先ほど鈴村参考人の方からお話がありました接続のルール、そしてまたそのルールが果たして守られているかどうかという監視、またそれによってのトラブルといいますか紛争処理の問題、これを第三者機関にゆだねるべきではないかというお話があったわけでありますが、これも昨年、実は電通審の答申があったとき我々も結構議論したわけでありますが、その後、結論に至っていないわけであります。やはり、この第三者機関というのがどういう第三者機関にするかが大変難しい問題があり、またそのルールをつくったものが一番よくわかっているわけでありますから、それと離れた機関というのは果たしてどんな機関が考えられるのかなという気をいまだに持っておるわけであります。その点、鈴村参考人はどういつだ機関を想定されてのお話かお伺いさせていただくのと、また両参考人にも、そういった第三者機関が必要なのかどうか、あわせてお尋ねいたしたいと思います。
  17. 鈴村興太郎

    参考人鈴村興太郎君) お答えいたします。  私が第三者機関への切り分けということを考えております理由は、従来の接続をめぐる規制行政に三つの問題点があるのではないかと考えたことからでございます。まず、そのことを簡単に触れてお答えいたします。  第一番目の問題というのは、規制を行うという機能、例えば料金の改定の申請を出された際にそれを認可するかどうかということとか、参入を認めるかどうかとか、そういう規制でありますね、そういう規制を行うという機能とルールに関するレフェリー機能というのはそもそも別物であると考えております。もし、それが両方ともにある機関に、例えば規制機関にゆだねられますと、競争条件を整備するという課題と、それから競争を管理するための規制機能ということがいわば一つの機関の掌中にあるわけですから、本来は違う性格の機能を果たすために収集される情報が、例えばルールをつくるために必要とされる情報、それから接続に関する裁定を行うために必要として提出を求める情報規制の目的のために用いられるということが制度的には分離できないわけです。だから、こういう二つの機能はやはり本来別のものでありますから、それが同じ規制機関のもとにあることから派生する問題を懸念する、これが第一点であります。  第二点目は、これは従来のルールの不透明性にかかわるわけですけれども、ルールが規制機関の掌中で、外部から見ると不透明な形で使われるということになりますと、ルールがそもそもどのように運用されているかということが潜在的な、つまりこれからその産業に参入しようとしている事業者にとっては見えない、非常に不透明であるということになります。第三者機関に切り分けて、ルールが公開されてどういうふうにして適用されるかということが見えるような形の方が、ある具体的な産業に参入しようかしまいかと考えるポテンシャルな、潜在的な競争者にとっては仕組みとして公平である、これが第二点目であります。  それから第三点目は、規制というのは日常的な業務であります。ルールをつくるというのはもっと長期的に、その産業において競争に参加するかどうかということを決める人たちが、一体自分たちがどういうゲームをプレーすることになるかを判断するための制度的な仕組みでありますから、日常的な業務がこのルールの設計とかルールの運用に対して影響を及ぼすということはあってはならないわけでありますが、これが同じ機関のもとで行われるということになりますと、実は規制機関に対する競争者側の独立性ということを保つことが非常に難しくなる。私たちが考えていたのはその三つの点であります。  そういう点から、私たちは第三者機関として次のような構想を考えてみたわけです。  それは、例えば競争のルールにかかわるものは、これは電気通信産業は特殊な産業ではなく普通の産業になるというイメージを持つ立場からいいますと、ただ一つ電気通信産業だけではなくて、例えば銀行業とかあるいは証券業とか、さまざまな産業に共通のルールをつかさどる機関にゆだねられるべきであるというイメージであります。  もう少し踏み込んで申しますと、イメージとしては、公正取引委員会という機関が、日本におきましては競争のルールを設計し、それを運用する機関でございますから、この中に競争政策局、例えばそういうイメージを持ったといたしまして、その中で運用されるべきものではないかというふうに考えております。  私のイメージをはっきり申し上げますと、公正取引委員会という競争政策のルールをつかさどる機関がこの電気通信における接続ルールの問題をも取り扱うべきである、こういうイメージでございます。  もう一つだけちょっとつけ加えさせていただきます。  当然このようなことをやりますと、情報規制機関とルールをつかさどる機関の間でどのように交流されるかということが非常に重要であります。またもう一つは、新たな機能を例えば公正取引委員会につけ加えるといたしますと、これは明らかに公正取引委員会のスタッフの拡充とか、その意味での行政コストがふえます。私は、この点につきましては、そういう情報流通の仕組みをつくるというコストを支払い、さらに公正取引委員会の機構の拡大という行政コストの拡大をコストとして支払っても、日本経済システムの競争の仕組みがきちんと制度化され、透明化されるためには十分引き合う決定であると考えております。  以上、お答えといたします。
  18. 林敏彦

    参考人林敏彦君) 申し上げます。  私も鈴村参考人のお考えには賛同する点が多々あるわけでございますが、しかし現実的な解決策といたしまして、我が国の公正取引委員会、準司法機関と申しましょうか、公正取引委員会が置かれている現状を踏まえて考えるならば、鈴村参考人の御提言は直ちには実行することが難しいのではないか。そういう意味で現実性の観点から、理想は理想として郵政省の中に別の委員会、仕組みを設けまして、これを行うことはやむを得ないのではないかという考えでございます。  ただ、賛同する点といたしましては、このルールに関しましても複数の頭が判断するという仕掛けは必要かなという気がいたします。すなわち、アメリカの場合などですと規制に関しましては規制委員会がございますし、それからもちろん司法が絡んでまいります。日本よりもはるかに行政訴訟がやりやすうございまして、そして行政が負けることが日本よりもはるかに多いわけであります。その意味では、規制当局も判断いたしますが、司法も判断いたします。こういうふうな複数の道を開くということが肝要かと思っておりますので、あえて申し上げれば、この問題にかかわらず行政訴訟の仕組みをもっと簡便なものに変えていく、行政に不服がある際にはそこで別の判断を仰ぐことができるという道を確保することの方が私は早道かなと個人的には考える次第です。  以上です。
  19. 岩崎克己

    参考人岩崎克己君) お答えいたします。  私、両先生方のように難しい議論はよくわかりませんが、情報通信に関しましては技術の進歩が非常に激しいわけでございます。そういった意味で、こういった新しい技術の進歩等に対応してルールをつくっていく、あるいはルールの監視、裁定を行うといったような機能を二つのところでやるということは非常に行政機構として複雑肥大化する問題があるのではないかと思います。  欧米におきますようにそれぞれ第三者機関を設けてやっているところはございますけれども、それらの機構を見ますと非常に膨大な人員を抱えているといったようなこともございますし、現状の技術の激しい進歩の中でこういつたルールを策定し、監視あるいは裁定をしていくといったような機能は同一のところでやるべきではないのかなと、そういうふうに私は感じております。  以上でございます。
  20. 加藤紀文

    ○加藤紀文君 ありがとうございました。終わります。
  21. 足立良平

    ○足立良平君 平成会の足立てございます。  きょうは、三名の参考人の皆さん方に大変有益なお話をいただきまして、お礼を申し上げたいと思います。  それで、この情報通信の問題を考えますときに、いろんな理屈といいますか理論的な面があるんでしょうが、何といいましても実際に事業を行っておられる岩崎参考人の立場として、経験則的にでも結構でございますからちょっとお話をいただきたいと思いますのは、先ほども接続の問題というふうな提起をされております。  これは地域網というのは、先ほど岩崎参考人もおっしゃいましたけれども、今のNTTと同じように地域網を整備するというのは大変なコストがかかりますし、実際的には不経済的な問題であろうと思いますから、そういう面ではこの情報の関係を本当に活性化していこうとするなら、やはり私は接続の問題をどのように考えていくかということが一番のキーポイントなのではないのかというふうに実は思っております。  そういう立場で、お考えなり実態をお聞かせ願いたいと思いますのは、一応一九八五年に長距離関係が競争条件になって今は料金が相当下がってまいったわけでありますが、そういう面であるわけでございますけれども、しかし例えば諸外国と比較をいたしますと、比較条件が若干難しいんですが、まだまだ高いというふうに言われているわけであります。  そういう面で、この接続の問題がひょっとしたら相当絡んでいるのではないかというふうにも想定をいたしますので、そういう点につきましてもし経験的な面から何かございましたらひとつお教えをいただきたい、このように思います。
  22. 岩崎克己

    参考人岩崎克己君) お答えいたします。  接続問題に関しましては、長距離通信事業者NTTさんとの接続問題で非常に長い間いろいろと苦労してこられました。内容については御高承のとおりだと思いますけれども、やはりNTTさんのコストが余りよくわからない、少なくとも長距離地域とを結びつけるところの接続コストがよくわからないといったようなことで、いろいろ長い間論争があったわけでございます。  私どもも、このたびNTTさんの加入者線のオープン化に伴いまして、NTTさんの市内局で接続をすべく現在NTTさんと折衝を進めております。その中で私どもが非常に心配しておりますのは、NTTさんの接続コストが一体幾らになるのかということでございます。特に、今回の電気事業法の改正に伴いまして接続ルールが明確になりました。その中で、設備要件ごとにコストを一応算定するといったようなことが明確になっているわけでございますけれども、その設備要件ごとにコストをはじく算定方式、こういつたようなものがま、だまだよくわかりません。  特に市内網の場合、NTTさんが市内のお客様のための広告費であるとかあるいは研究開発費であるとか、そういったものが一体どのように含まれているのか、その辺のところを整理していくといったようなことが非常に重要ではないかと思っておりますけれども、そういったようなことがこれからよく詰めていかないといけない問題ではないかと思っております。  とりあえずは、NTTさんの地域系とそれから長距離系との事業がそれぞれ分離をされまして、分計会計ということで一応コストが明らかになっております。ただ、現状はNTTさん一社でございますので、その辺の分計が果たして明確に行われているかどうかということがやはり疑問に思われているようでございますが、そういったようなことが今度は長距離地域といったような会社に分離になりますと非常にはっきりしてまいりますので、その辺の接続コストが明らかになってまいりますと、私どもがこれから競争していく上では非常に公正有効な競争が可能になるのではないかと期待をしておるわけでございます。  お答えになったかどうか、ちょっと心配でございますけれども、とりあえずそういったことでお答えをしておきます。
  23. 足立良平

    ○足立良平君 これは林先生にお聞きをいたしたいと思います。  林先生の先ほどの陳述なり後の説明の中で、いわゆる接続料金に関して二つの理論がある。いわゆる原価を中心にしたものと、今岩崎参考人がおっしゃいましたような長期増分費用というんでしょうか、そういった両方の面があるのだというお話がございました。  現在のところは、多分総括原価といいますか、原価を中心にして接続料金というものが算出をされているのであろうというふうに想定をいたすわけでございますが、これは電気通信審議会答申書の中にもちょっと触れられていると思いますが、現在、接続料金日本の場合には三分で三円六十六銭、これは平成七年度でございますか、ということになっているようであります。例えば米国でありますと、これは一分でありますから大体二十銭から四十銭くらいというふうにされている、これは三分にいたしますと六十銭から一円強、日本に比べると約三分の一ないし四分の一くらいが米国の水準だろう。これは比べ方によって、あるいはまたそのときのレートによって相当変化いたしますから、厳密な意味でのいわゆる内外価格差というものはちょっと算定しにくいものだろうというふうに想定をいたしますが、相当日本は高くて、米国は相当低いということが言えるだろうと思います。  この原価方式をとっておりますと、原価に基づいてそれをやっていると、やはりどうしても高くなってこざるを得ないのかどうなのか、その辺、先生の今日までの研究等の中でどういうふうにお考えになっているか、お聞かせを願いたいと思います。
  24. 林敏彦

    参考人林敏彦君) お答えいたします。  先生御指摘のとおりでございまして、歴史的に行われました設備投資の額を基本にいたしまして、実際に支弁されたコスト、これを原価として計算し、一定の方式によって接続を希望する事業者にそのうちの幾ばくかを負担してもらうという方式になりますと、過去において行った投資のコストを全部新たな接続事業者に対していわばシェアしてもらうというやり方になります。  これに対しまして、長期増分費用というのは、その接続をなすために新たに追加に必要となるコスト、この部分だけを負担してもらえば接続していいですよということになります。当然、過去からの全体の原価を考えた方がコストは割高になります。  論争というのは、これはどちらがフェアかという論争と同時に、政策的にはどちらがより競争促進するかということが必要でございまして、私が先ほど長期増分費用の方が好ましいのではないかと申し上げたのは、その方が新規事業者の負担が軽くなりまして、ひいては国民全体の負担が軽くなる、競争促進される、そういう意味で私はその方がよろしいのではないかというふうにお答えしたところであります。  なお、この件につきまして、長期増分費用に関しましては郵政省内に研究会が設けられて現在検討を続けております。まだ予断を許しませんが、十分その特質を研究している途上であるというふうに私は聞いております。  以上でございます。
  25. 足立良平

    ○足立良平君 これは、岩崎参考人に再度お聞きをいたしたいと思いますのは、私は、今回の法改正なりこれからの情報化社会を考えていきますときに、いわゆる情報通信料金をいかに低く抑えていくかということがこれからの我が国情報化社会というものを発展させていくこれまたキーポイントになってくるのではないかというふうに思っているわけでございます。  そういう観点で、この料金の低廉化ということと、そして規制緩和をどのように進めていくのかということと大変密接な関連を持ってくるのではないだろうかというふうに思ったりいたすわけでございますが、実際に事業を行われている立場からいたしますと、そういう点については一体どのようにお考えになっているのか、お聞かせを願いたいと思います。
  26. 岩崎克己

    参考人岩崎克己君) お答えいたします。  規制緩和料金との関係でございますが、これは、規制緩和につきましては、私ども民間事業者としては規制はとにかくない方がいろいろな自由なダイナミックな事業展開ができるわけでございまして、ない方が望ましいと考えております。  ただ、先ほど来お話がございますように、非常に大きなドミナントなNTTさんとの接続をしながらこれから事業展開をしていかなければならないということになりますと、やはり一部の規制というものは必要になってまいります。  私たち自身もそういった規制を受けることはやむを得ないことだろうとは思っておりますが、ただ、かなり規制緩和は進んではおりますけれども、さらにもう一歩規制緩和を進めていただきたいというのが私どもの願いでございます。
  27. 足立良平

    ○足立良平君 それでは、鈴村参考人にお聞きをいたしたいと思います。  先ほどの陳述の中では、ある面においては規制というものについてはすべてなくした方がいいというお考えなのかなというふうにちょっとお聞きをいたしたんですが、私が間違っておれば御指摘を願いたいと思います。  といいますのは、今、岩崎参考人お話が少しございましたけれども、原則として自由競争というのは私は大切だと考えているんですが、率直に申し上げて、NTTというのはまさにこれは巨人でございますし、そしてNCCはまだまだ完全にNTTと対等にでき得る実力というのは本当にあり得るかどうかという観点からまいりますと、いわゆる公正な競争を行っていくための規制というのはある程度必要なのではないかという考え方を持っているわけでございまして、そういう面でこの規制というものに対する考え方というものを一体どのように考えればいいのかということにつきまして、先生の御見解をひとつお示し願いたいと思います。
  28. 鈴村興太郎

    参考人鈴村興太郎君) お答えいたします。  私が先ほど申しましたことが、規制を全廃せよというようなイメージをもって受け取られたとしたら残念で、私の舌足らずでございました。  当然、電気通信産業において、今後自由な競争に基づいて運営されるべき産業となっていく、こう申しましたけれども、その場合の自由な競争に公正な競争のルールが必要であるということは紛れもないことでございまして、最後に陳述の際に申し上げたことも、そういう公正な競争のルールをきちんとつくり上げ、それを実際に実行していくということに大きな規制の役割があるという心で申し上げたつもりでございます。  おっしゃいますように、その意味での規制が果たすべき役割というのは随分あると思っておりますし、それからもう一つつけ加えますと、過去の規制につきましても、実際のところ、規制の不透明性ということを陳述書の中で触れましたが、やはり規制が果たすべき役割があって果たしてきたと思っております。  まず一点は、産業においておっしゃるようにジャイアントでありまして、唯一の統合事業者でありまして、しかもそのような統合ネットワークは過去の公社時代に蓄積したものである、そういうNTTと、新規に部分的にしか参入していない事業者とに、いきなり全く規制のない競争をしろと言っても競争が始まらないことは自明であります。その意味で、競争が実際に自由に行われるような状態に至るまで過渡的な規制が必要だということであります。  第二点としては、接続を通じて部分的にしか参入していない、その意味競争相手に依存せざるを得ない事業者がそういう一方的な依存関係によっていわば不利な立場に置かれないように監視する趣旨規制であります。  だから、過去についても将来につきましても規制が役割を果たすべき事柄はあったし、あるというのがお答えでございます。  以上でございます。
  29. 足立良平

    ○足立良平君 引き続いて、これは鈴村先生にちょっとお考えをお聞きいたしたいと思います。  これは先生の本日いただきましたレジュメにも少し入っているわけでございますが、二つの点でお聞きをいたしたいと思いますのは一特にNTTとそれからKDD特殊会社ということで一応今回法案としては出されてきているわけであります。  それで、まず一つは、このNTTの東西の持ち株会社特殊会社というのは、これは政府が今約三分の二弱くらいの株式を保有いたしておりますし、そういういろんな問題からいって、特殊会社としての理由はある程度理解ができるわけでございますが、東西の地域会社特殊会社として法案としては今提出されておりますが、その特殊会社である理由が二つございます。一つは、いわゆるユニバーサルサービスの責務というものを持っているということが一つ、そして二つ目には、研究開発ということをそれぞれやらなければならないというのが二つ目の責務、そういう二つの責務で特殊会社にしなければならないというふうに説明がされております。  ちょっと、私はユニバーサルサービスということに関しては、先生のお話の中にも少し出てきているわけでありますが、ユニバーサルサービスをやらなければならないということが特殊会社でないとできないのかどうなのかということを考えてみますと、アメリカの地域会社というのは、特殊会社でなく純粋民間でユニバーサルサービスというものを現実に行っている。ただ、ユニバーサルサービスコストをだれが負担するかということが別の問題としてあるというふうに私は理解をいたしておりますし、日本の国内におきましても、例えば電気事業というのは純粋の民間企業でありますけれども、一方においては電力の供給義務というものが現実に課せられて、電気事業法の第十八条にございまして、そしてそこで行われている。だから、特殊会社でないとユニバーサルサービスというものは実施できないということは、若干論理としては飛躍しているのではないだろうかというふうに思っておるんですが、その点に関しまして、先生のお考えがあればちょっとお聞かせをお願いいたしたい、これは一点目でございます。  それから、林先生にお聞かせを願いたいと思いますが、同じような意味で、KDDの問題についてでございます。  KDDについても、今特殊会社としてこれから引き続いてやろうということで、KDD法がそのまま存続をさせる法律として提起をされております。  なぜ特殊会社にするかというと、世界的に対地数がその他のNCCではまだちょっとKDDに到達をしていないのではないかというふうに言われているわけでございます。これは、株式は政府は一切持っておりません、純粋の民間会社でございます、KDDは。そういう面で、KDD法にも何らその対地数の責務というのは、先生御指摘のように何も入っていないということも事実でございます。対地数につきましては、長距離、国際のNCCの状況からいたしますと、相当KDDに匹敵するくらいの対地数が今出てきているわけでございまして、そういう面で、完全に今競争の状態になってきているときに、一方で特殊会社として、例えば役員の認可であるとか、あるいはまた事業計画提出であるとか、あるいはその株式の発行であるとか、財産の処理であるとか、あらゆる制約条件を一方では課しているわけでありまして、そういう点について、いわゆる電気通信審議会考え、議論の中で、そういう特殊会社として、今条件として一体どうなるだろうかという点について、先生のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  30. 鈴村興太郎

    参考人鈴村興太郎君) お答えいたします。  御質問のポイントは、ユニバーサルサービス責務をNTTに課して特殊会社にするということの根拠がどこにあるかということだったと思います。  先ほどの陳述の中でも申しましたように、私はまず、電気通信産業全体としてユニバーサルサービスが保障されるということは、電話のエッセンシャリティーからその正当化が可能ではないかと思ってはおりますが、その責務をだれが負うかということと、それからその責務に伴うコストの負担をどうつくるかということは考え直す余地があるというふうに思っております。NTTをこの理由から特殊会社にする、それからまた若干関連して、KDD特殊会社にするということにはまだ根拠を十分に公共的に議論する余地があるというのが私の考え方であります。  まず第一番目に、責務があるという言い方をいたしますと、全国あまねく利用者を連結するということが一方的な負担であるかのイメージを与えます。しかし、電話というのはよく考えてみますと、だれでもつなげられる。私の家からだれにでも電話をかけられるし、だれからも電話がかかるというふうなことはむしろ大きなメリットになるわけでありますから、あまねく公平な供給をするということがいわば一方的な負担であるという考え方は私は必ずしもとらない。ただし、問題はその場合のコストが高いということになると、あえてコストを自分で支払わなければいけないということを前提とすれば、そういう供給を行う誘因が生まれない、これは問題であります。だとすると、ユニバーサルサービスコスト電気通信事業者がシェアをするという社会的な合意と、そのためのフェアなルールができれば、むしろこれは競争に対しても促進的に働く効果を持つわけであります。  再三強調しておりますように、これからの電気、通信産業における一番大きな決め手は、地域と言われるところでいかに競争が進展するかということであります。その点から考えましても、このユニバーサルサービス責務のあり方は再考の余地があるのではないかと思っております。  以上、お答えいたしました。
  31. 林敏彦

    参考人林敏彦君) 私のいただきました御質問はKDDに関してでございますが、現在、純粋民間会社であるにもかかわらず特殊会社とされていることについてどう考えるかという御趣旨だというふうに承りました。  端的に申し上げて、国際通信サービス分野におきまして、十分な競争が確保された段階でKDD法を廃止するという形で、特殊会社のステータスから外すのが適当ではないかというふうに考えます。確かに、特殊会社というのは一方ではさまざまな責務を負わせるのに便利な形態でございますし、政府が監視をする上で便利な形態でございます。それと引きかえに、特殊会社は多くの場合、公益事業特権といったふうなものを付与されます。十分な監視をしかれている特殊会社であることを担保といたしまして、逆に例えば道路の占用権でありますとか、海を使う権利でありますとか、さまざまな公共的な施設等を使う特権を付与されるというふうな仕掛けになっております。  しかし、今回の電気通信事業法におきまして、公益事業特権は、需給調整条項とは切り離して考えるという考え方法案の中に盛り込まれております。それと同じ趣旨から申しますと、私はその必要な公共施設を使うための特権に関しましては別の考え方が可能であろうというふうに思います。  したがいまして、現在、たしか正確ではございませんが、KDDの対地相手国は二百八十五だったというふうに記憶しておりますが、ほとんど全世界各国という意味でございます。これに対しまして、NCCの側ではたしかその半数ぐらいではなかったかと記憶しておりますが、これが十分な対地先が確保されるに至りました場合には、当然KDDは普通の会社になるべきであろうというふうに考えます。
  32. 足立良平

    ○足立良平君 ありがとうございました。  最近の数値を見ますと、大体KDD世界で二百三十三カ所くらい、IDCが百九十三カ所くらいということで、ここ一、二年の間に急激にその差はもう埋まってきているというふうに私どもは理解をいたしておりますが、最後に林先生にもう一点だけお聞かせを願いたいと思います。  これは、林先生のどちらかで講演されたパンフレットもちょっと拝見いたしたりして、大変興味深く読ませていただいたわけでございますが、情報通信のこれからの一番のもう一つの課題は研究開発だというふうに先生は御指摘になっております。そしてその中で、日本のいわゆる研究開発というものについては、例えばアメリカ等に比べると少し劣っているのではないかというふうなお話もあったようにちょっと読ませていただいているわけでございます。  そういう面で、これからの日本のこういう研究開発等につきまして、どうなければならないのかということも含めまして、特に、基盤的研究は持ち株会社、そして応用的研究はそれぞれの地域会社あるいは長距離会社というふうに今回の法案としてはなっているわけでありまして、そういう関連も含めて先生の見解をひとつお聞かせを願いたいと思います。
  33. 林敏彦

    参考人林敏彦君) 結論的に申せば、研究開発に関しても大いに競争が起こるべきだと考えております。  現在我が国では、研究開発に関しましてはNTTにはその責務がNTT法に定められております。NCCには責務は定められておりませんし、現実に研究開発は見るべきものを行っておりません。このことは、放送におきましても、NHKが技術開発を担当し、民放はほとんど技術開発をやっていないのと平仄をなしております。しかしこのことは、御案内のように、ただいまのようにNTTが三社に分割されました場合に、NTTの持っている研究のやり方というのがそこに分散される、これは結構なことだと思いますが、同時に、新しい技術開発というのはほかのNCCの方々にもおやりいただきたいというふうに思います。  そして、それは研究開発やり方におきまして日本流のやり方が唯一絶対ではございません。日本というのは、NTTが研究開発をやり、いわゆるNTT傘下のファミリー企業が一体となって技術開発をやってまいりました。アメリカにおきましては、かつて製造部門を持っておりましたAT&Tが社内的に技術開発をやってまいりました。しかし、ヨーロッパにおきまして通信技術開発しているのは、通信事業者ではなくて機器のメーカーでございます。メーカーが提案するものを事業者はメニューの中から選んでネットワークを構成するというやり方をしております。すなわち、技術開発やり方につきましてもいろいろなパターンがあるわけでございまして、NTTしかできないというものではございません。  開発内容につきましても、NTTにとって得手不得手というものがございます。したがいまして、最初に申し上げましたように、さまざまな技術に関しても大いに各社競争し合っていいものを導入していく、これが結局のところ最も重要ではないかと考えます。
  34. 足立良平

    ○足立良平君 どうもありがとうございました。
  35. 三重野栄子

    三重野栄子君 社会民主党・護憲連合の三重野栄子と申します。きょうは、三人の参考人の皆様、貴重な御意見を私ども法案審議に当たりましていただきましたことを厚く御礼申し上げます。  私がいただいている時間は十五分でございますので、それぞれの先生方に一つずつお答えをお願いしたいというふうに思いまして、そして四分を超えないところでちょっと広げていただきたいと思います。  お尋ねいたしたいことは、まず岩崎参考人でございますが、今もちょっと技術の問題が出てまいりましたが、先ほどの御意見の中で、技術開発をしたものをもっと通信産業へ積極的に開示をしてもらいたいという中で、特にNTTに対しての御要望があったと思います。今までどういうことをもっと知りたかったかとか、あるいは今後どういうものを要望するかという視点に立って、その技術的な問題、NTTに要望されているというか期待をされているといいましょうか、そういう点でお聞かせいただければというふうに思います。  それから、林参考人には、電気通信産業の将来像として、高度情報社会の選択ということで、先ほど経済面、生活、文化、政治と四点にわたってお話しいただいたと思いますが、大変お時間が短かったものですから、そのうちの文化と政治につきまして少し膨らませていただきたいというふうに思います。  それから、鈴村参考人につきましては、昨年、九六年の八月に「ビジネスレビュー」に発表されておるところで、「日本型モデルの再考」という問題で、「現代日本における市場の失敗 政府と市場」というテーマで論文をお出しになっているのを読ませていただきました。それに直接はかかわらないわけでございましょうが、電気通信事業法の改正によって過剰設備防止条項の廃止など、第一種電気通信産業に対する参入規制が緩和されております。電気通信市場における今後の参入及び退出の規制のあり方について御意見をいただければ幸いに思います。  それぞれの参考人の皆様、よろしくお願い申し上げます。
  36. 岩崎克己

    参考人岩崎克己君) ただいまの御質問にお答えいたします。  先ほど来いろいろお話が出ておりますように、NTTさんの現在持っております技術力、技術開発力というのは、日本の国家としても非常に重要な資源でございます。特に、電電公社以来培ってこられました技術というものは、我々NCCにはとても及びもつかないし、それからまたメーカーでありますNTTファミリーさんにとっても、どちらかといいますとNTTさんのリードで技術開発が進められてきたということで、NTTさんの技術のニーズといったものに基づいて開発をされておる現況でございまして、NTTさんの技術開発というのは日本としても非常に重要なものではないかと考えております。  そういった意味で、NTTさんが新しいサービス、新しい技術をどんどん開発をしておられます。そういったようなものを御自分でどんどんお使いになられて、それをビジネスに展開をされるというのは非常に結構なことだとは思いますけれども日本にとって考えた場合、NTTさんだけでなくてNCCにとってもそういった技術を開示されまして、NCCもそれを活用していく、それによりまして日本情報通信産業発展をしていくといったような仕組みになるのではないかと思っておりまして、NTTさんにはそういった技術開発をされたものの開示につきまして私ども日ごろからお願いをしているところでございます。  特に、昨今、光ファイバーを使いましたネットワーク構築がかなり進んでおります。その中で、光ファイバーをもっと有効に使うためのパッシブ・ダブル・スターといったような技術であるとか、それからインターネットなどに活用されております非常に高速、広帯域の交換機の開発など、いわゆるATM交換機としてNTTさんが中心となって開発をされております。こういつたものは世界的に見ましても非常にすぐれた技術でございまして、日本技術として使うだけでなくて、世界的にもこういったようなものをどんどん使っていくような形にすることによりまして、日本情報通信産業世界発展できる一つのきっかけになるのではないかと思っております。  そういった意味で、NTTさんの技術開発、いろいろ新しいものを、非常に優秀な技術者をたくさん抱えておられまして、私ども非常にうらやましく思っておるわけでございますけれども、ぜひそういった力を活用されまして、基礎研究と応用研究という二つの部門に分かれましたけれども、ぜひ一緒になって日本情報通信産業発展のために開発を進められ、またそれをどんどん民間にも開示をしていただいて、民間でも使っていただけるような仕組みをぜひつくっていただきたい、そのように考えておる次第でございます。  以上でございます。
  37. 林敏彦

    参考人林敏彦君) 大変大きな御質問をいただきまして、これを四、五分のうちにまとめるということは私の手に余りますが、例えば、現在の電気通信というのは電気信号に還元できる信号を送達する、これは時間と場所を超えてできるようになりました。そして、それがますます便利になれば我々の生活も便利になると予想されております。大学へ行かなくても大学の学位が取れるようになるでしょうし、あるいはいながらにしてショッピングができる、夜中でもいつでも役所に提出する書類は手続ができるといったふうなことで利便性が高まります。  そういたしますと、一つは、情報と思想という問題を私はふだんから気にしております。情報をやりとりする、加工するということと思想として何か新しい考えを熟成していくということのバランスが崩れるのではないか。それから、情報のやりとりによって我々の生活が便利になると申しましても、人間の五感のうち現在送達できる情報はたかだか見る情報、聞く情報、視覚、聴覚でありまして、そのほかの味覚、嗅覚、触覚というのはまだ技術が進んでも伝送できません。  そうなりますと、せいぜいのところ我々の感覚のうちの部分的な部分がいびつに肥大していくという危険性をはらんでいるわけでありまして、しかもそれが猛烈なスピードで起こっています。そうしますと、ジェットコースターに乗るのを楽しいと思う人もいましょうが、私のように恐怖感を覚える人間もおります。社会の進歩の激しさに乗ってビジネスをして楽しいという人たちも若い人たちの中には出てくるでしょうが、そういうスピードの速い社会には暮らせないという人たちも出てくるかと思います。すなわち、スピード感覚の差によって社会への適合性に大きな差が出てくるのではないか。これは社会的な問題になろうかと思います。これは単に、老齢人口と若年といったことにかえて、スピード感覚の差というふうなものになろうかと思います。  それから、視覚、聴覚情報では、例えば都市は要らなくなるかもしれませんが、味覚、触覚あるいは嗅覚情報では、つまり人間の肉体的な生身の触れ合いといった情報は電気信号では送達できませんので、都市のあり方にも再考を迫ると思われます。利便性を求めた機能的な都市というのは、情報通信ネットワークを中心に世界的にバーチャルな都市として展開をしていくでしょうが、一方で、人間の生身の触れ合いを求めた触覚的な都市といいますか、こういうふうなものもできてくるのかな、でなければ人間社会がいびつになるのではないかという気がいたします。  政治に関しては、情報というのは政治の命であろうかと思います。例えば、既にインターネット、ホームページをお開きになっている議員さんがいらっしゃると新聞に報じられておりましたが、こういつたことが日常化いたしますと、世論のあるところを瞬時にして把握する、そしてそれを政治的な力、情報として議会活動に生かしていくといったようなことをそういう技術にたけた人たちがひょっとすると、選挙で選ばれた、比例、ウエートを逸脱した力を持つことがあるかもしれません。口幅つたい言い方ですが、もし私が議員でありますなら、今一生懸命そういう勉強をしているだろうと思います。  時間がありませんのでその程度にとどめておきますが、かなり大変なことが起こりますので、私も含め勉強していかなければならないと思っております。  以上です。
  38. 鈴村興太郎

    参考人鈴村興太郎君) お答え申し上げます。  今後の参入退出規制のあり方をどう考えるかというのが御質問でございました。  まず私は、今後は業態別の箱庭的な競争の管理は意味を次第に失っていくのではないかと、もうその意味では業態別の垣根というものを維持する根拠は失われつつあるというふうに考えております。  今回の改正の中でも、例えば地域会社による移動体通信とかケーブルTV事業への参入は目的外の業務として排除されているわけでありますが、地域における競争の将来を考えますと、こういった業態別の垣根をつくるということは、かえって競争阻害的に働くおそれなしとしないというふうに考えております。  もう一点、どうしても公益事業特権という話が出てまいりまして、これが例えば第一種と第二種の区別とか、あるいは参入退出規制の最終的な根拠として議論されるわけでありますけれども、これは考え方でありまして、例えば公益事業特権に対しては、その特権を得る資格があるかどうかという資格審査だけでよいわけで、そうだとすると、別に裁量的な参入、とりわけ退出ということを規制によって行うべき根拠はここから生まれないのではないかというふうに考えております。  それから、退出の際に、それでは公益事業特権を得て実際に設置した設備をどうするかといったぐいの話があるいは出るかもしれません。考え方でありますけれども、これにつきましては、例えばそういうフランチャイズを利用して、自分なら事業がうまくできるという人が参入できるような余地が開けていれば、それはまたそれで新しい競争の足がかりにもなるわけでありますし、極端なことを言えばNTT設備も、巨大なNTTに取ってかわって、そのフランチャイズを利用しながら自分ならもっとうまくできるという競争者があらわれてくれたら、むしろ日本にとっては非常に結構なことでありますから、その意味競争促進的な参入退出規制であってほしいと、またそうなるべきだし、そうなる必然性もあるのではないかというのが私のお答えでございます。
  39. 三重野栄子

    三重野栄子君 どうもありがとうございました。  もう一点、ちょっと岩崎参考人に伺いたいのでございますが、開示をしていただきたいという御要望でございますが、NTTはいやだめだということなんです。そういうことを進める方法というのは何かお考えでしょうか。
  40. 岩崎克己

    参考人岩崎克己君) お答えいたします。  これは常日ごろからNTTさんに要望をするということでずっときていたわけでございますが、技術開発というものは必ずパテントであるとかそういったような権利が伴うものでございます。ですから、どうしてもこれは話し合いで開示をいただくということが必要ではないかと思っておりますが、NTTさん自身にとってみても、NTTさんだけの独自の技術でなくて、日本情報産業発展のために有効な技術であれば当然それを開示して、日本通信産業発展のために資するといったような役割をお持ちだろうと思います。そういったような考え方でぜひ開示をしていただきたいと思っております。  特に、世界の中で日本技術というものがソフト面で非常におくれている。特に世界の標準化になかなかなり得ないといったような問題もございますので、NTTさんだけの力でなくて私どもも一緒になって、世界のスタンダードとなるようなそういった仕組みをつくっていく必要があるんではないかと思っておりまして、そういうような形でNTTさんにこれからもお願いをしてまいりたい、そのように考えております。  なお、技術開発につきましては、かなり先導的な技術開発の役割というものは、これは国に分担をしていただく必要もあろうかと思っております。  そういった意味で、科学技術基本法も成立をされまして、そういったものを中心に今科学技術の振興が叫ばれておられますので、ぜひNTTさんも一緒になって、国も一緒になって、私どもNCCも力を合わせて、日本の科学技術の振興に力を合わせていきたい、そのように考えております。
  41. 三重野栄子

    三重野栄子君 どうもありがとうございました。終わります。
  42. 松前達郎

    松前達郎君 民緑の松前でございます。  きょうも参考人の方々、大変お忙しい中ありがとうございました。  時間が余りありませんので簡単に御意見を伺いたいと思います。岩崎参考人にまずお伺いしたいのは、ただいまの同僚議員も申しましたように、研究開発並びに技術開発の問題です。これはNTT技術を開示してもらいたいと、こうおっしゃったわけなんですね。まさに技術というのは一つの資産でもありますし、国際競争の中における技術開発というのも重要な役割を持っていると思います。  しかし、競争という観点から見ますと、やはりNCCの立場でも技術開発あるいは研究開発をある程度やっていただかないと、すべてNTT依存型になってしまうんじゃないか、こういう感じもするわけでございます。そういう面でNCCの立場としてどういうふうなお考えを持っておられるのか、これを岩崎参考人にお伺いしたい。  それから、その次は林参考人にお伺いするんですが、先ほどインターネットという例で、この通信内容としては視覚と聴覚というふうにおっしゃいましたね。まさにそのとおりなんです。人間が持っているその他の感覚についてはそこでは伝達できない、こういう面があると思うんです。これは大変な問題なので、あるいは偏った人間ができ上がってくる、そういうことも考えられる。こういうことで私は林参考人と全く意見が同じなんです。  そこで、これと関係はないんですが、国際的な視野からNTT関連三法案に関して一体どういうふうにお考えなのか。恐らくこれは国外からの参入というものも今後考えられてまいりますね。そういう面も含めて、今後の予測をどういうふうに持っておられるのか、これをひとつお伺いしたいわけであります。  それから、鈴村参考人には、「情報通信制度改革と産業政策」という記事を拝見いたしたんですが、その中に、競争を管理してきた郵政省の産業政策的規制行政を整理・清算をすること、そしてまた競争環境透明性・公開性・手続の公平性を高める、こういうふうにお述べになっておられるわけですが、具体的にその規制緩和の問題として考えておられることが具体的にございましたら、その御意見をお伺いいたしたい。  この三点でございます。よろしくお願いします。
  43. 岩崎克己

    参考人岩崎克己君) それではお答えいたします。  技術開発につきましては、NTTさんだけではだめでございまして、NCCもみずから開発に取り組んでいるところでございます。  ただ、御案内のように、私ども非常にまだ非力でございまして、余り力がございません。そういった意味で、メーカーさんあるいは先ほど申し上げました国の研究機関、こういったものともタイアップをして今開発に努めているところでございますが、NTTさんの技術というのは御案内のようにいわゆる大艦巨砲型でございまして、そういった技術がこれからの情報通信の中でどの程度生かされるのか、むしろ日本情報通信技術が少しおくれをとっているという一つの理由には、そういった大艦巨砲型でなくてもうちょっと小回りのきく、それからソフトでいろんなものをカバーしていく、こういったような技術も必要ではないかということで、この辺はやはりアメリカあるいはヨーロッパ等の技術がかなり進んでおります。  そういった意味で、NTTさんの技術に頼るだけでなくて、ヨーロッパあるいはアメリカのそういった技術も勉強いたしまして、そういったものを導入してNTTさんと対抗していく、こういったようなことも私ども考えております。  そういうことでございまして、私どもも非力ではございますが、一生懸命やっているということを御承知おきいただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  44. 林敏彦

    参考人林敏彦君) 偏った人間が育つのではないかということにつきましては、私は必ずしもそうは思いませんが、しかしそれを是正するようなことを考えておかなければ、例えば教育の本質といったようなことをよく考えておかなければ、問題が起こりかねないというふうには思っております。  なお、国際的視野から今回のNTTの再編についてどう思うかということでございます。  これは、新聞紙上にもよく取りざたされておりましたように、端的にNTT長距離部門が海外進出できるようになります。現在のところは主として東南アジア、中国といったところへの進出をお考えのようでございますが、仮にアメリカ本土に向かって進出を考えようとした場合に、FCC、アメリカの規制当局はいわゆるレシプロシティーという原則を使うと言っております。  すなわち、アメリカが競争状態になっているということを前提といたしまして、同様な競争状態が実現していない国からの参入はこれを認めないという姿勢をとるというふうに取りざたされております。もしそうでありますときには、NTTさんにとって強力な敵といいますか、交渉相手は、郵政省のみならずアメリカのFCCとなる可能性がございます。  その際、幾らNTT持ち株会社による分離によって競争実現したと言い張っても、FCCがそうと認めない場合にはこれはアメリカには上陸できないといったふうな判断を招く懸念がございます。そういう意味では、世界が注目しているところであろうかというふうに思います。  外からの参入に関しましては、いわゆる外資の問題がございまして、これは今回の法案とは一応別個の法案としてその外資規制の撤廃、NTTKDDを除いてということですが、外資規制の撤廃の方向へ向けて審議がなされているものと承知しておりまして、そのような方向が整えば、外資の進入というのは十分あるし、あってほしいというふうに思っております。  以上でございます。
  45. 鈴村興太郎

    参考人鈴村興太郎君) お答えいたします。  まず、従来の規制と比較した際に、今回の法案の中にあらわれている接続ルール透明化明確化ということはこれは大幅な前進であるということを私は申し上げまして、またそのとおり今も考えております。  一点の懸念と申しましたのは、その機能の分離ということでありますが、これは繰り返しません。ただ、別の面で参入退出規制に関しましては、これは先ほど少し三重野議員に対してお答えしたことに関連いたしますけれども、依然として残された条項の中には非常に裁量的な適用の余地を残す条項がある、これは懸念が残ります。  私はその点に関しましては、やはり参入退出規制は今後資格審査型に転換すべきであろうと。その意味では、やはりルールを明確化して、そのルールに適合すればそれ以上の干渉はしないということがむしろ非常に競争を利用する規制の仕組みになるはずだというふうに考えております。  それから、繰り返しますけれども、これは別に規制を全部やめてしまえというようなことではなくて、むしろ規制自体が競争活用型になっていくことが最大のポイントではなかろうかと、こういう意味でございます。  それから、料金規制につきましても、やはり一番望ましいことは、事業者側が自分のインセンティブ、自分の誘因から利用者にとって望ましいような料金に移行する、こういうことでありますから、それを可能にするような規制は何かということを考えるべきであります。その意味では、従来のような料金の決め方がよいかどうかはまた別問題でありまして、その点でも規制の仕組みの競争適合的な改革の余地はあると考えております。  最後にもう一点つけ加えますけれども、実は競争のルールとそれからそのルールをどうやって実現するかということに関しましては、現在WTOで国際的なハーモナイゼーションということが大きな問題になりつつあります。次のラウンドでは恐らくそのうちの一つになるだろうというふうに考えられているわけでありまして、そうでなくても国内のルールのあり方に関する国際的なモニタリングと、それから、比較してこの国の制度は国際的な競争の場においてはアンフェアだといったぐいの問題は必ず今後一層強調されてくるようになると思います。  我々が持っている競争の、そして規制の仕組みがそういう意味で国際的な監視にたえ得るフェアなものになるかどうかというのは非常に重要で、そのためには事業者もさりながら、やっぱり規制側にも伸縮的ないわば進化をお願いしたいと、こういう趣旨で先ほど申しました。  以上でございます。
  46. 松前達郎

    松前達郎君 どうもありがとうございました。
  47. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 日本共産党の上田でございます。どうもきょうは貴重なお話をありがとうございました。  林参考人にまず三点お伺いしたいんですが、簡潔に。  第一点は、今回の再編は昨年二月の電通審答申、これ事実上否認されて首相のツルの一声で郵政省とNTTの談合で決まったものなので、じゃ電通審というのは一体いかなる役割を持っていたのかという深刻な問題が出されていると思いますので、その問題。  第二点は、参考人は、今度の分割について幾つかの点でプラス・マイナス、メリット・デメリットを挙げられました。新しい目玉になった国際的な進出については技術的統一性企業資源の点でどうもデメリットという評価のようだったんですが、富士通の山本会長も、世界の潮流はもはや分離分割にはないと、市内・市外、国内・国際といった細分化された事業領域を統合して一体的サービス提供するのがATTを初めとするグローバルキャリアの新しい方向だとして、今度の方向は逆行だという見解を言われているんですけれども、新しい目玉の国際進出に対して今回の再編はどうなんだろうかというのが第二点。  第三点は、私ども質問でも一番疑問を持って聞いておりますのは、国際進出に膨大な投資が要りますね。きのうも一兆円とか二兆円とかいう数字も出てきたんですけれども、その原資を一体どこから出すのか。電通審で軽く議論になっただけという持ち株会社、それから連結納税制度なんかを通じて、国民の共同の資産である内部留保の取り崩しとか、基本料金電話料金などの値上げ、これが原資になり、また宮津社長は十五万人のリストラを十五万人以下と新たに言うなり、そういうNTT職員のリストラとか、そういうところに負担がかかるのではないかということを懸念しているのですけれども。以上三点。
  48. 林敏彦

    参考人林敏彦君) 御質問ありがとうございます。  満足にお答えできるかどうかわかりませんが、まず電気通信審議会はこけにされたのではないか、談合でもって実態が動いてしまったということの御指摘のようでございますが、私の考え方は、審議会というのはこれは立法機関ではございませんで、行政機関の長でありますところの大臣に対する答申を行う、政策的助言を行う機関でございます。もしも審議会が行った答申がそのまま法律になってしまうようであれば、これは議会の軽視ということに逆になってしまうわけでございますから、私はそういう意味審議会の言ったことが一〇〇%生かされなかったからといって審議会が役割を果たさなかったとは決して思わないわけでございます。  二つ目に、分割というのは世界の潮流に逆行しているのではないか、世界はむしろ統合の方向へ動いているのではないか。これは、昨今のコンサートとかグローバル・ワンとか、いろいろな統合の方向を見ておりますとそういう印象もお持ちになると思いますし、アメリカでもATTが一たん分割されましたが、再び地域会社を買収するといった動きに出ております。  しかしながら、一たん分割分離されて競争を経験した後に異なる組み合わせで統合するというパターンと、一度も分割競争を経験しないまま一体的な経営を続けるということとの間には私は雲泥の差があるというふうに考えます。したがいまして、やはり異なる頭でもって異なる戦略をもって互いに競争し、国際的に手を結び、競争し、そういう中から将来の方向として異なる長距離、それから市内の連携のあり方が出てくるということは十分考えられますが、私は、その前にまず国内で競争の素地をつくり練習をしておかないことには、世界の合理性を追求する中で生まれてくる連携のパターンにとても太刀打ちできるものではないという気がいたします。  したがいまして、私は必ずしも逆行するとは思いませんで、むしろ逆に、それではNTTを現在の組織のままとどめておいてそういった世界の合従連衡の強力な競争に勝てると思いますかということが私の方からむしろ質問をしてみたいと思う点でございます。  三番目。国際進出には膨大な投資が必要になってくる、これをどこから賄うのか。これはユーザーの、あるいは過去における国民の負担の中からこれがなされるのであれば本末転倒であろうというふうな御指摘の趣旨かと思います。  私は、これはすぐれて企業の意思決定でございますし、その原資はもちろん内部留保も使うかもしれませんし、それから借り入れ、起債、さまざまなファイナンスの方法を組み合わせて、ビジネスとして採算がとれるという判断のもとに民間株式会社が行うはずでございますので、私としてはそれを信頼する、あるいは株主として国民がそれを監視していくということが筋であろうかと思います。  以上です。
  49. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 時間が大分なくなりましたが、鈴村参考人には一点だけお伺いします。  お話をお聞きしますと、三つの不確実性のうち二つ目だけは政治決定でなくなったけれども、第一と第三の不確実性と霧はどうも晴れていないようで、特に第三の国内の公正な競争というのが第一の国際的なダイナミックで自由な競争のためにも決定的条件のようにお伺いしました。  国内の問題で一つお伺いしたいのは、鈴村参考人は、公取の情報通信分野競争政策研究会の会員でもいらっしゃるので、東と西のNTTの九九%の独占、ボトルネック独占、この問題について東京大学の三輪芳朗教授が、東西の地域会社相互参入する場合、両者の全株式を保有する持ち株会社は、これは独禁法第十条に抵触する可能性があると、そういうことを指摘されているんですね。ドコモについても公取は出資比率を下げろということを指導したんですけれども、こういう再編の結果、東と西の競争あるんだけれども九九%それを持っている際、独禁法第十条に抵触する可能性があるのかどうか、この点をお伺いします。
  50. 鈴村興太郎

    参考人鈴村興太郎君) お答え申し上げます。  かなり今回の再編成やり方というのは超法規的なところがあると感じております。例えば持ち株会社という方式自体が、これは現在審議進行中ということで、少なくともこの案が実際に検討される時点では持ち株会社方式で実際に再編するということが実行できるかどうか自体も条件つきであります。その意味では独禁法自身の改正をいわば先取りをしている形で構想されております。  それから、今おっしゃいました点ですけれども、分離分割を仮にその前提のもとでやったとしても、その地域会社特殊会社になります。ですから、この特殊会社に対して現在の独占禁止法がそのまま適用されるかどうかということも、これはまた公正取引委員会の方で検討を要することであろうと私は考えます。  ですから、現行の法のもとでそれが違法であるかどうかということについてイエスとかノーとかいうことを残念ながら私は今お答えはできません。  ただし、いずれにせよ私のポイントは、東西分離をしたら、それでその地域競争条件がそれだけ以前よりも改善されるかどうかという保障は現状では全くない。どこにその決め手があるかというと、やっぱり接続がこれだけ透明化、公平化されたわけだから、それを通じていかに東西の地域独占を突き崩すだけの競争が起こってくるか、これが一番重要なことであり、競争政策の観点からも一番重要なことは、現在のパーセンテージを問題にして直ちにそれをさらに分割するかどうかとかいうようなことを言うよりは、競争促進して、市場の競争地域独占をいわば社会のために手懐けるということをどうやって保障するかであるというふうに考えております。  競争政策というのは、しばしば市場シェアが何%だったらどういうような措置をとるとか非常にスタティックに考えられがちでありますけれども競争はダイナミックなプロセスでありまして、それをいかに活用しながら独占の弊害をなくしていくかがキーである、競争政策もまたそのように運用されなければいけないというふうに考えております。
  51. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 どうもありがとうございました。
  52. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 参考人先生方、きょうは御苦労さまでございます。  三人の先生にそれぞれ質問をしたいんですが、私に与えられている時間は十分でございますので、岩崎参考人に限って二、三質問させていただきます。  先生の資料をいろいろ調べさせていただいたら、たまたま日経産業新聞、平成八年十二月九日の新聞のインタビューでいろいろとこのNTT分割案に対する発言をなさっておられます。そのインタビューの中で、「同じ資本系列の企業間でヤードスティック(客観的尺度による間接競争競争が働くはずがない。」、「ゆくゆくは資本分断を実現しなければいけないと考えている」、こう述べておられます。  今回の分割が郵政省とNTTの妥協の産物である以上、将来的にも資本分断などあり得ず、したがって東西の地域会社間に有効競争など生まれるはずがないと私は思いますが、この点についての岩崎参考人の御見解、御感想をお伺いいたします。
  53. 岩崎克己

    参考人岩崎克己君) お答えいたします。  マスコミの取材に応じてインタビューした内容でございまして、若干内容的に間違いもございます。  私、そこで申し上げましたのは、東西の二社間の競争につきましては、先ほどお話ございましたヤードスティックであるとかあるいはプライスキャップ制であるとか、やはりインセンティブ規制のようなものがあることによってある程度競争社会は実現できるだろう、このように考えております。ただ、二社だけでございますとどうしても、長い間同根で培ってきた方々の会社でございます、競争が本当に働くかどうか、その辺のところが疑問でございまして、その辺の間接競争あるいはプライスキャップといったようなインセンティブ規制やり方がこれから非常に重要な課題ではないかと思っております。  これは郵政省の方でそういったような仕組みをお考えいただかない限りそういった競争は進まないのではないか、そんなふうに考えております。
  54. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 このマスコミのインタビューの記事、僕はきょう質問する気になったのは、極めて威勢のいい先生のインタビューを見まして、これはまた私と意気同感するところがあるから。ぽんぽんと今回の法案に対するクレームなどが出るかと思って期待して以後また質問するわけですから。  このインタビューの中身は先生がお考えになっているのと大分違うんですか。これちょっと改めたいんです。これに基づいて私は質問したいので、これが全然違うとおっしゃるとちょっと困るんですが。
  55. 岩崎克己

    参考人岩崎克己君) お答えいたします。  申しわけございません。その内容の中で部分的に違っているところを申し上げますと、そのヤードスティック競争、間接競争など働くはずがないというところが実はちょっと間違っておりまして、間接競争というのは、これはやっぱり競争として競争原理がある程度は働くわけでございます。ただ、直接競争ではないわけでございます。  実は私も電力会社の出身でございまして、電力会社も九つの地域独占の会社でございまして、その間でいわゆるヤードスティックによる競争を現実にしているわけでございます。ただ、電力会社の場合は完全に資本が分かれております。それから、歴史的にもそれぞれの会社の背景が違います。そういった意味で、同じ電気事業をやってはおりますけれども、お互いに競争しながら電気事業を進めているというようなことでございます。  今申し上げましたNTTの東西の分割は、まだこれから二つに分かれるだけでございまして、電力会社のような歴史的にきちんと分かれた会社ではないわけでございます。恐らく同じNTT社員として同じかまの飯を食べた仲間が二つに分かれただけだというようなことで、果たして本当の競争が働くのかどうか、その辺の仕組みをきちっとこれからつくっていかないと本当の競争にならないのではないか、そういった意味合いでございますので、ぜひ御理解いただきたいと思います。
  56. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 いささか後退している訂正的な御答弁であれなんですが。  また、同じここの中で参考人は、企業競争し、「コストを下げる努力をすれば企業間で料金格差が生じるのは当然」で、「料金が高ければ顧客から批判され、経営努力で引き下げようとする。その相乗作用が消費者にメリットを生む。」、こういうような趣旨のことを述べておられるわけでありますが、私は、分割後も全国一律料金を維持しようとするNTTはみずから有効競争の働かないことを宣言したようなものだと理解しております。  そこでお尋ねをいたしますが、もし参考人NTT分割再編の責任者だったとしたら、どのような形で分割再編すれば有効競争が働き消費者がメリットを得られるのか、忌憚のない私案のようなものがあったら御提示いただきたい。  という質問をしたのは、今回の決着は理想的な形への中途段階にすぎないとまでインタビューで答えられていますから、理想的形態のNTT再編はいかなるものであるか、御意見を伺いたいと思います。
  57. 岩崎克己

    参考人岩崎克己君) お答えいたします。  少し激しい新聞記事でございまして多少誤解があるかと思いますけれども、私が申し上げましたのは、とりあえずNTTさんが東西に分割をされまして、料金につきましては同一料金サービスをしたい、こういつたことを申されておるわけでございます。確かに、先ほど来お話ございましたように、電話料金というものはユニバーサル料金でございまして、やはり一般の方々がそれを使っていろいろな形で生活にもあるいはその他のものにも御利用いただいているわけでございまして、それが大きな値上げとかあるいは料金が変わるといったようなことになるといろいろとこれは国民生活にも影響が出てくるわけでございます。  そういった意味で、暫定的な料金の調整をされるということはよく理解できるわけでございますが、この二つの会社がそれぞれ競争し合ってこれから会社経営していくとすれば、当然そこに経営努力の差が出て、料金的にも差が出てくる、あるいはサービス内容も変わってくる、こういった事態が出てくるのは当然かと思います。それに対しましては、やはり経営者の努力の問題でございまして、それに対してきちんとした形で持ち株会社経営の監視を行うといったようなことである程度解決は可能ではないのか、こういうふうに思っておる次第でございます。  なかなか私、再編成をした場合に経営の当事者としてどうしたらいいかという考え方は余り明確なものは持ってはおりませんけれども、そういったような形で、とにかく自由競争の中からいろいろな国民に対する料金の低廉化であるとか新しいサービスの展開であるとかそういったようなものが生まれてくるわけでございまして、やはり最終的にはそれぞれの会社が独立して競い合っていく、こういつたような仕組みが絶対必要ではないか、そのように考えておりまして、今回の東西の二つの分割はとりあえずの中間段階の形ではないだろうか。最終的には、持ち株会社というものからもう離れて完全な民間会社になってやっていかなければいけない問題だろうと思っております。  特に、ユニバーサルサービスの話が出ておりますけれども、こういったものも、ユニバーサルファンドといったような形で一般の新しい新規通信事業者にもそういったユニバーサルサービスというものを課していく、こういったような仕組みがこれからは必要になってくるんではないだろうか。そういった意味での中途段階のものではないかということを申し上げた次第でございます。  御理解いただきたいと思います。
  58. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 時間が来ました。終わります。
  59. 水野誠一

    ○水野誠一君 新党さきがけの水野でございます。きょうはありがとうございました。  私は常々、NTT分割問題については、今世界のメガキャリアのメガコンペティションが渦巻いている中で果たして分離分割という手法が正しいのかどうかということに大変疑問を持っていたわけでありますが、先ほど林先生がお話の中で、そのままNTTが分離分割せずにいる姿と、一度分割をしてそこからまた新たな再編が起きていく、因数分解をしたものをまた再集合させていくということとはもう全然違うというお話を伺いまして、全くそのとおりだと。ともかくコップの中の嵐ではなくて、あるいはコップの中の競争ではなくて、もっと大きな外海のメガコンペティションの中で日本通信のあり方というものを再構築していく、こういう時期に来ているということをつくづくと感じました。  そこで、やっぱり一番私は関心がありますのが、接続ルール、それから接続料金の問題ということであります。  実は、昨日のこの逓信委員会でも総括原価主義と長期増分費用主義の問題ということで郵政省に質問をしたんですが、なかなかそのお答えが、お役人のお答えというのはわかったようなわからないようなところがありまして、どうも余り明快なお答えというのはいただけなかった。ただ、今もお話の中で、この方式はまだ決まっていないというようなことではあるんですが、実際法案を見ますと、この第三十八条の二第三項の中では、「接続料が能率的な経営の下における適正な原価を算定するものとして郵政省令で定める方法により算定された原価に照らし公正妥当なものであること。」ということになっておりまして、これは要は総括原価主義に基づくものだということであるわけです。  確かに、林先生も先ほどお話しになりましたが、研究会を今持って長期増分費用モデル解析等々について研究をしているということで、恐らく平成十二年度の見直しのときまでにそういう議論が深まっていくのかなというふうに思うわけであります。  そこで、またしつこくちょっとその点について御意見を伺いたいということでございますが、まず岩崎参考人の方には、先ほど料金決定の問題も含めて非常に今回の議論の中で透明性が確保されてきたというところで評価をされているわけでありますが、私は岩崎参考人のお立場からいくと、この長期増分費用方式という方式を、御自身のお考えでも結構なんですが、どう評価されているのかということをお話しいただければと思います。  それから、林参考人には、この電気通信審議会の中でのいろいろ議論があったと思うんですが、日本独自の事情からして、この長期増分費用方式をどういうふうにごらんになるか。これはアメリカあるいは英国では今その採用が検討されているということでありますが、日本の実情から見てどうなのかという点にお答えをいただければと思います。  それから、鈴村参考人には、先ほども加藤委員からの御質問もあったんですが、第三者機関の問題。これは私も去年、この逓信委員会で第三者機関というものが必要じゃないかというようなことを質問させていただいた覚えがあるんですが、これは金融監督庁と大蔵省の関係みたいなもので、本来はやはりルールづくりと規制というのは、規制官庁というのは分けた方がいいんじゃないかというふうに私自身は思っているんですが、その第三者機関の何か具体的なイメージ、それはどんなものなのか。その点についてそれぞれお答えをいただければと思います。
  60. 岩崎克己

    参考人岩崎克己君) お答えいたします。  今御質問ございました接続料金の問題でございますが、現状は日本の場合は総括原価方式でやっております。それに対して、アメリカの方は既にもう長期増分コストというような形で接続料金の算定が行われようとしております。  具体的に先ほど足立先生からもお話しございましたように、アメリカの接続料金アクセスチャージは非常に安い、日本よりも約三分の一ぐらいの金額がもう既に提示をされております。ただ、これはFCCと州政府との間で現在係争中でございまして、この数字がそのまま適用されるというものではないようでございますし、若干アメリカと日本では仕組みが違いますので、これがそのまま私どもの方に通用するかどうかはちょっと疑問ではございますけれども、少なくとも長期増分ということになれば、料金的には、接続料金としてはかなり安くなるのではないかなという期待を私どもは持っております。  そういった意味で、現在郵政省の研究会でもいろいろと勉強しておられまして、私どももその研究会に対しまして意見を申し述べたいということで、現在、アメリカの通信コンサルタントなどと一緒になりまして勉強しているところでございます。そういったような形で、早くこの長期増分コストの適用が図られるようにお願いをしてまいりたいと思っておりますが、ただ、この考え方をなるべく早く適用してNTTさんとの接続問題を解決してまいりたい、なるべく早くこれを適用していきたいと、そんなふうに考えている次第でございます。
  61. 林敏彦

    参考人林敏彦君) お答えいたします。  日本に特有の事情を勘案して長期増分費用方式をどう考えるかという御下問だったというふうに考えます。  我が国では、すべての公益事業につきまして総括原価方式がしかれております。したがいまして、日本特有の事情というのは、立法技術上、電気通信産業だけ別のルールを導入するということが、官僚の感覚あるいは立法技術法律相互関係からいってどの程度やりやすいかという問題ではないかと私は考えます。経済学的な分析からいいますと、長期増分費用方式に分があるように思います。しかし、実際に制度を動かしていく場合には、そういった立法の歴史上の問題もあり、一気にはいかないのかなと、ややもどかしさを覚えております。  これがイギリス、アメリカの場合ですと、料金算定の方式にいたしましても、総括原価はとっくに捨てられておりまして、むしろプライスキャップ方式、ヤードスティック方式、そのほかさまざまな料金規制やり方が試みられておりまして、そういった中で長期増分費用というのも受け入れられやすいかと思うのでありますけれども、残念ながら、日本は現在すべての公益事業に対して総括原価方式であり、これがややネックになっているのか。  ただし、今回の事業法の中でもいわゆる需給調整条項、過剰設備条項が他の公益事業に先駆けて電気通信法の改正の中で削除されましたから、同様な動きを期待したいというふうに思っております。
  62. 鈴村興太郎

    参考人鈴村興太郎君) お答えいたします。  先ほど既に御質問に答えて若干御説明申し上げたように、私自身の持っておりますイメージは、やはり競争のルールに関する事柄は競争政策のルールとその運営にかかわっている公正取引委員会の機構の中に位置づけるのが適切であるというふうに考えております。ただし、先ほど上田議員の御質問の中で、私が公取の研究会の一員であると、それは事実でありますけれども、触れられましたが、これは別に公取の見解でも全くなく、事実、公取自身はそんなことは真っ平というふうに考えている節があります。  ただ、これはやっぱり制度に関する大きなデザインを今とるべきところでありまして、通信というのは一つの例ではあるけれども競争のルールの透明化と、そこでルールに関する違反が起こったときにそれをどうやって矯正していくかということは、ひとり通信のみならず金融、証券を初め、さまざまな共通の問題を日本のさまざまな産業は今抱えているわけです。それをできるだけ制度の整合性を保ち、しかもこういう制度を運営していくということは、それ自体非常に深い知識と経験が必要なわけですから、経験を蓄積していく場所にそれを位置づけるのが適切だと。そういうことからいうと、私は公正取引委員会の中に競争政策局というのを置いて、その中に幾つか対象となる産業ごとにその担当を置くのが適切ではないかというふうに考えているわけであります。  先ほど申しましたように、これは行政コストがその限りにおいて増加するわけですけれども考えてみますと、さまざまな今規制当局が持っている権限に従って各省庁の中で対応する作業をしているわけですから、それをトランスファーして共有できるものは共用費用としてここに集中できるわけですから、その限りにおいては節約もあり得るし、もっと大きな事柄は産業特殊性というものに引きずられない判断ができるはずだ。このことは何といっても第三者機関を設置することの一番大きなメリットであるというふうに考えます。  公正取引委員会をその受け手としてイメージする理由は、冒頭に申しましたように、あくまで競争政策の担当をしている公的機関が公正取引委員会であるからだということでございます。  以上です。
  63. 水野誠一

    ○水野誠一君 結構です。
  64. 渕上貞雄

    委員長渕上貞雄君) 他に御発言もなければ、参考人に対する質疑はこれをもちまして終了いたします。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  参考人の方々におかれましては、長時間にわたり貴重な御意見をお聞かせくださいまして、まことにありがとうございました。本委員会を代表し、厚く御礼申し上げます。  明日は午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十分散会