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1997-06-17 第140回国会 参議院 地方行政委員会暴力団員不当行為防止法及び風俗営業等に関する小委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年六月十七日(火曜日)    午後三時開会     ————————————— 平成九年一月二十三日地方行政委員長において本 小委員を左のとおり指名した。                 関根 則之君                 竹山  裕君                 小林  元君                 大渕 絹子君                 朝日 俊弘君                 有働 正治君                 西川  潔君                 田村 公平君 同日地方行政委員長は左の者を小委員長に指名し た。                 竹山  裕君     —————————————    小委員長異動  五月十六日竹山裕君は小委員長辞任した。  同日竹山裕君は委員辞任した。  五月二十二日地方行政委員長において真鍋賢二  君を小委員長に選任した。     —————————————    小委員異動  三月十四日     辞任          大渕 絹子君  三月十七日     補欠選任        大渕 絹子君  四月十四日     辞任          小林  元君     辞任          朝日 俊弘君  五月十四日     辞任          西川  潔君  五月十五日     補欠選任        西川  潔君  五月十六日     辞任          竹山  裕君  五月二十二日     補欠選任        真鍋 賢二君     補欠選任        小林  元君     補欠選任        朝日 俊弘君  六月四日     辞任          朝日 俊弘君  六月十三日     辞任          有働 正治君  六月十七日     補欠選任        朝日 俊弘君     補欠選任        有働 正治君     —————————————   出席者は左のとおり。     小委員長        真鍋 賢二君     小委員                 関根 則之君                 小林  元君                 大渕 絹子君                 朝日 俊弘君                 有働 正治君                 西川  潔君                 田村 公平君    政府委員        警察庁長官官房        総務審議官    金重 凱之君        警察庁生活安全        局長       泉  幸伸君    事務局側        常任委員会専門        員        佐藤  勝君    参考人        京都大学名誉教        授        国際日本文化研        究センター所長  河合 隼雄君        東京都立大学助        教授       宮台 真司君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○暴力団員による不当な行為防止等に関する法  律の運用及び風俗営業に関する制度及び運用等  の件  (風営適正化法施行状況と今後の課題につい  て)  (風俗営業健全化及び風俗環境浄化問題に  ついて)     —————————————
  2. 真鍋賢二

    ○小委員長真鍋賢二君) ただいまから地方行政委員会暴力団員不当行為防止法及び風俗営業等に関する小委員会開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  暴力団員による不当な行為防止等に関する法律運用及び風俗営業に関する制度及び運用等の件についての調査のうち、風俗営業健全化及び風俗環境浄化問題について、本日、参考人として、京都大学名誉教授国際日本文化研究センター所長河合隼雄君並びに東京都立大学助教授宮台真司君の出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 真鍋賢二

    ○小委員長真鍋賢二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 真鍋賢二

    ○小委員長真鍋賢二君) 暴力団員による不当な行為防止等に関する法律運用及び風俗営業に関する制度及び運用等の件について調査を行います。  本日は、風俗営業等規制及び業務適正化等に関する法律施行状況と今後の課題について政府から報告を聴取し、また風俗営業健全化及び風俗環境浄化問題について参考人方々から御意見を聴取し、それらに対する質疑を行います。  この際、参考人方々に小委員会を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ当小委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。また、開会時刻を変更したにもかかわらず御出席をいただき、重ねて厚く御礼申し上げます。忌憚のない御意見を伺いまして、今後の調査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  それでは、議事の進め方について申し上げます。  まず、政府から報告を聴取し、次いで宮台参考人河合参考人の順でお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、小委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、発言は着席のままで結構でございます。  まず、風俗営業等規制及び業務適正化等に関する法律施行状況と今後の課題について、警察庁から報告を聴取いたします。泉生活安全局長
  5. 泉幸伸

    政府委員泉幸伸君) 生活安全局長の泉でございます。  当小委員会委員の皆様には、風営適正化法施行事務を初め私どもの担当業務につきまして、平素から御理解、御支援を賜っておりますことに対し、この機会をおかりして厚く御礼申し上げます。  まず、風営適正化法施行状況でございます。最近における風営適正化法施行状況の概況について申し上げます。  風俗営業等規制及び業務適正化等に関する法律施行から十二年余りがたちましたが、この間、風営適正化法目的であるところの善良風俗清浄風俗環境保持及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため、必要な指導取り締まりを推進し一その業務適正化を促進してきたところであります。  この結果、各種風俗営業につきましてはそれぞれの規制がおおむね遵守され、また風俗関連営業についても、営業禁止地域の設定など各種規制の効果により営業所数が年々減少するなど、風俗環境浄化に前進が見られるところであります。  しかしながら、その一方で、無許可風俗営業少年の健全な育成を阻害する十八歳未満年少者使用事犯が依然として後を絶たないほか、パチンコ遊技機不正改造事犯パチンコプリペイドカード変造行使事犯が多発するなど、善良風俗等保持していく上で看過できない状況も見受けられるのであります。  このため、こうした風俗環境実態などを踏まえまして、引き続き風営適正化法趣旨目的に沿った法の適正かつ妥当な運用に努めるとともに、悪質な違反に対しましては厳正に対処していくこととしております。  次に、風俗営業所等営業所数について御説明申し上げます。お手元に基礎的な資料を配付させていただいておりますので、御参照いただければと思います。  まず、風俗営業営業所数でありますが、平成八年末現在の許可営業所数は十三万九千二百七十七軒で、昨年末現在と比べまして二千四百四十六軒、一・七%の減少となっており、風営適正化法施行された昭和六十年以降減少傾向が続いています。  風俗営業の中では、料飲関係営業営業所数は八万一千二百七十九軒であります。このうち、料理店カフェ等の二号営業、低照度喫茶店の五号営業及び区画飲食店の六号営業では昭和六十年以降減少傾向が続いておりますが、他方、ダンスホール等の四号営業は年々増加しているところであります。  パチンコ屋及びマージャン屋の七号営業営業所数は三万九千八百七十三軒となっています。このうちパチンコ屋については、一貫して増加が続いていたものが、昨年は前年末に比べて八十軒、率にして〇・四%とはいえ初めて減少に転じております。もっとも、パチンコ屋営業所における遊技機設置台数については前年末に比べて約十一万五千台増加して約四百八十六万八千台となっており、店舗大型化傾向が続いていることがうかがわれます。  また、ゲームセンターなどの八号営業営業所数は一万八千百二十五軒で、前年末に比べ七百六十八軒、四・一%減少しております。これを専業兼業別で見ますと、専業店が前年末に比べわずかながら増加しているのに対し、兼業店は七%減少しております。なお、ゲームセンター遊技機設置台数は、平成八年末現在で約一万三千台増加して約四十九万九千台となっており、ゲームセンター専業店化大型化傾向が進んでおります。  次に、風俗関連営業についてであります。平成八年末現在の届け出数は、総数で一万二千四百六十軒、昨年末現在と比べまして百七十軒、一・三%の減少となっており、風営適正化法施行された昭和六十年以降減少傾向が続いております。このように風俗関連営業に対しては、風営適正化法による規制取り締まりが効果的に作用しているため、全体としては逐年減少傾向にあると考えていますが、今後とも引き続き規制取り締まりを的確に行ってまいりたいと考えております。  次に、深夜における酒類提供飲食店営業届け出状況についてであります。スナックなど酒類提供飲食店営業の昨年の届け出営業所数は、平成八年末現在で二十七万二千六百三十一軒となっておりますが、五年前と比べても〇・九%の減少と、近年ほぼ横ばいの状況にあります。  引き続きまして、風営適正化法違反事件等取り締まり状況について申し上げます。  昨年は、風営適正化法違反として二千三百六十件、二千八百六十七人を検挙しており、これは前年との比較では、件数では二十六件減少人員では七十二人増加しております。違反の態様の特徴としては、最も多いのが十八歳未満年少者使用違反であり、全体の約三分の一を占め、次いで無許可営業、二十歳未満の客への酒類等提供となっております。  最近の風営適正化法違反の事例を御紹介いたしますと、愛知県下の風俗関連営業等が集中し環境が悪化しておりました地域に対する集中的な取り締まりを行い、いわゆる個室マッサージ店など風俗関連号営業に係る風営適正化法違反事件を数多く検挙し、これが地域環境浄化機運の高揚につながり、昨年十月二十一日、愛知県全域で風俗関連号営業新規営業が禁止される条例施行されるなど総合的な環境浄化対策が推進されております。  また、昨年九月には、タイ人女性二十五人を雇用して無許可風俗営業を営み売春をさせていた暴力団関係者及び同店にタイ人女性を供給していたタイ人ブローカーなどを逮捕した事件がありますが、本年に入ってもこうした無許可風俗営業店などでの外国人女性に係る売春不法就労助長事犯が依然として発生しており、その検挙に努めているところであります。  今後とも、善良風俗等保持少年の健全な育成を阻害するこの種事犯取り締まりを推進していくこととしております。  次に、行政処分実施状況についてであります。  昨年中の風営適正化法に基づく行政処分件数は一千七百九十件でほぼ前年並みとなっています。うち、営業の取り消し、廃止及び停止処分は合計で四百二十一件、指示処分については一千三百六十九件となっており、指示処分行政処分全体の七六・五%を占めております。これら行政処分につきましてはその適正な運用に努めているところですが、特に指示処分については、違反の是正に向けた営業者の自主的、自発的な努力を促す風営適正化法において重要な役割を担っているとの趣旨を踏まえ、今後ともその適正かつ効果的な運用を図っていくこととしております。  以上、最近の風営適正化法施行状況について御報告申し上げましたが、昨年の当小委員会におきましてパチンコ営業に関する諸問題について御報告いたしましたので、その後の状況を踏まえ、パチンコ営業について簡単に御報告いたします。  まず、遊技機不正改造事犯についてであります。  営業者が自己の売り上げを上げるため、法令規制を超えて遊技機を不正に改造し、客に多額の金銭を使わせる遊技機不正改造事犯が依然後を絶たず、昨年も九十九件と過去二番目の検挙件数を記録しております。  警察では、これら遊技機不正改造事犯を極めて悪質な事犯であると考え、パチンコが適度に射幸性を満たすことのできる大衆娯楽であるため、今後とも不正改造事犯取り締まりを強化してまいりたいと考えております。  なお、これら事犯への対策として、警察庁では従来より、遊技機そのもの不正改造がなされにくい構造のものとするという対策メーカーに要請してきたところであり、メーカーもこれにこたえて、電子部品の改良や遊技機基板ケースの物理的な封止等対策をとるべく準備を進めております。警察としては、取り締まりとあわせてこのような業界団体への指導を徹底し、不正改造事犯根絶に努めてまいる所存です。  次に、パチンコプリペイドカード変造行使事犯について御説明いたします。  平成八年のパチンコプリペイドカード変造行使事犯は、事件数は八百七十事件検挙人員は一千八十九人となっております。もっとも、事犯のピークは昨年一、二月ごろであり、特にことしになってからは、一月から五月までの五カ月間で十五事件、三十二人と大幅に減少しております。  検挙人員の内訳を見ますと、平成八年中では、最も多いのは中国人で全体の四割強を占め、次いで日本人が四割弱、残る約二割がその他の外国人となっております。ただ、ことしに入ってからは、検挙人員の大半は日本人となっております。  警察庁としては、変造カード事犯を重大な問題と考え、都道府県警察に対する取り締まり強化を指示し、また業界団体に対する防犯指導等を徹底するとともに、カード会社に対し早急かつ効果的なセキュリティーの向上を強力に要請しているところであります。これを受けて、カード会社では技術面営業面での措置をとっており、これら諸対策により、現在では事件数被害ともに相当減少しているところです。もっとも、パチンコ店みずからが売り上げを上げるために行う店ぐるみ事犯は昨年末になってむしろ増加するなど依然として予断を許さない状況であると認識しており、警察としては、変造カード事犯根絶に向け、引き続き関係者と連携し対処していく所存であります。  引き続きまして、売春の誘引やテレホンクラブなどの広告、宣伝を目的としたビラチラシパンフレット等のいわゆるピンクビラアダルトビデオ通信販売等広告チラシ実態対策について御報告いたします。  近年、社会の享楽的な風潮と性を売り物とする行き過ぎた営利主義を反映して、公道や駅前広場等少年を含む多数の一般人が通行する場所においてピンクビラ貼付通行人への配布が見られ、住民からの苦情排除要望が寄せられております。  昨年二月に実施した調査によりますと、繁華街やJR主要駅周辺を中心に、公衆電話ボックス等に対するピンクビラ貼付が三十八都道府県で見られ、また通行人に対するピンクビラ配布も三十三都道府県で行われており、住民からの苦情排除要望警察にも寄せられております。  また、近年、アダルトビデオ通信販売等に関し、いかがわしい内容をあからさまにした広告用チラシ一般家庭に無差別頒布または郵送されており、お子さんのいる家庭女性中心取り締まり要望が強く寄せられております。  このようなピンクビラのはんらんやいかがわしい広告用チラシの無差別頒布清浄風俗環境を害し、少年にとって有害な環境をもたらすものであり、売春防止法、刑法のわいせつ物頒布罪軽犯罪法等関係法令を駆使した取り締まりを強化しております。また、取り締まりにあわせて、地域住民関係機関団体と一体となった街頭パトロールピンクビラ排除活動などの風俗環境浄化活動を推進するとともに、印刷業者に対しこの種チラシ印刷について自粛するよう要請し、あるいは一般家庭チラシ等頒布を拒否する内容のステッカーを作成配布するなどの対策を講じているところであります。  今後も悪質な業者取り締まりを強化するとともに、風俗環境浄化のための諸対策を推進していくこととしております。  次に、いわゆるテレクラ営業現状対策について御報告申し上げます。  最近のテレクラ営業増加には著しいものがあり、昨年末の時点で警察が把握した同営業営業所数は二千八百九十一となっており、過去五年間で三・二倍となっておりますが、特にツーショットダイヤルと言われる無店舗形態営業が大幅に増加し、全体の半数を占めるに至っております。  同営業は専ら異性間の会話機会提供するものでありますが、少なくとも男性客の側から見れば、何らかの性的行為目的としてこれを利用することが多いものと思われますし、電話という比較的手軽な通信媒体を使用しているだけに、少女抵抗感なく安易にこれを利用するという問題もあります。  なお、平成八年中、児童福祉法違反青少年保護育成条例違反等警察検挙した福祉犯罪被害少女のうち、テレクラ営業利用に係るものは一千四百七十五人で、過去五年間で三・一倍に増加しており、そのうち中学生高校生が七割を超える状況にあります。  このため、テレクラ営業に係る福祉犯罪はもとより、同営業に起因する各種法令違反に対する取り締まりを徹底するとともに、NTT等関係機関地域のボランティアや住民方々とも連携し、少年に有害なビラチラシ公衆電話ボックス等にはんらんしたり、テレクラ利用カード自動販売機少年の目に触れることがないよう、その撤去活動を初めとした有害環境浄化活動に取り組んでいるところであります。  また、現在、四十六の都道府県においてテレクラ営業規制する条例の制定を見ているところであり、既に幾つかの県におきましては同条例を適用して違反行為検挙行政処分も行っているところであります。今後とも、これら条例の的確な運用により、悪質な行為営業排除に努めてまいる所存であります。  最後に、風営適正化法の今後の課題でありますが、一般的に法律社会情勢の変化に的確に対応したものでなければならないことは言うまでもなく、このような観点から風営適正化法につきましても常に見直していく必要があろうと考えております。  特に昨今の国際化情報化の進展が進む中で、善良風俗少年健全育成に影響を及ぼす新たな形態営業に対する規制のあり方、また地方分権規制緩和の流れに即した既存の規制の見直しなどにつきまして法改正も視野に置きつつ、現在鋭意検討しているところでございます。  以上でございます。
  6. 真鍋賢二

    ○小委員長真鍋賢二君) 以上で報告の聴取は終わりました。  次に、風俗営業健全化及び風俗環境浄化問題について参考人方々から御意見を聴取いたします。  まず、宮台参考人にお願いいたします。
  7. 宮台真司

    参考人宮台真司君) 宮台でございます。本日はお招きにあずかりまして光栄でございます。  お手元資料が配付してあるかと思いますが、このうち十五分間の持ち時間で現状と書いてある部分を主にお話しさせていただきまして、残りの部分につきましては質疑の過程の中でお話ししていきたいというふうに思います。  マスコミで特に援助交際の問題が話題にされましたのはほぼ二年前、九五年ぐらいからであるというふうに考えられますが、特に昨年ないしことしに関しましては幾つかの調査が行われたりいたしまして、ほぼその規模や実態がわかってまいったところでございます。  昨年、九六年十月十六日に東京都の第二十二期青少年問題協議会が公表したデータによりますと、東京都かの中学、高校生に関する調査の結果、女子高校生のうち四%に援助交際経験があり、女子中学生のうち三・八%に援助交際経験があるというデータが明らかになりました。しかし、この調査は一部教室内で記入などをさせておりまして調査方法に若干の問題があり、実態よりもかなり少な目に出ていることが推測されます。恐らく、高校生全体でいえば、ほぼ十人に一人以上は援助交際経験があるものと思われます。  そのほか幾つかの調査がありますが、例えば渋谷を俳回している女子高校生百人に聞いた「流行観測アクロス」という雑誌が昨年の八月に公表したデータでございますけれども、百人のうち二十二人に援助交際経験があり、さらに三十人は機会があればやってみたいというふうに答えているという状況で、合わせると半数を超えるという実態です。したがって、今のデータ東京都かに関するものでございますけれども、それに関する限りでも、援助交際にかかわるさまざまな動きは、もちろん多数派であるとは言えませんが、無視し得る少数であるとも言えないような状況になっていることが確実であろうかと思われます。  援助交際がこれほど広がってきた背景というのが実は大変重要でありまして、それが目下援助交際がどのような形態で行われているのかということを理解するときの助けになります。昨年来、各自治体でテレクラ規制条例施行が始まっておりますが、もともとテレクラがこういう援助交際現象の引き金になったことはまず確かであろうかというふうに私は推察いたしております。  具体的に簡単に申しますけれども、例えば九三年、今から約四年前ですが、ブルセラショップ話題になりました。当時、ブルセラショップで自分の持ち物を売っていた女子高生かなり部分は、それ以前にテレクラあるいはツーショットダイヤルサクラのアルバイト、通称サクラというふうに呼ばれており、男性会話の相手をするべく業者から雇われている女性たちでありますが、これは実は中学生高校生から主婦まで非常に多様な女性たちが参加していたのであります。このうち女子高生たちのいわば性的な物事に関する敷居あるいは性的な事柄を商品化することに関する敷居が下がったのでありましょうか、かなり割合ブルセラショップに出てきたのであります。  ところが、九三年の夏以降、古物営業法違反での摘発等が報じられた結果、お店はかなり減りましたが、実は九四年になりますと、業者の多くあるいは新規業者デートクラブにくらがえするあるいは新規営業を始めるという形になりました。その結果、ブルセラショップで働いていた少女たちかなり割合デートクラブに流れました。ブルセラショップ持ち物を売る場所ですけれども、デートクラブは直接対面してコミュニケーションをするという場であることもありまして、九四年当時におきましても、私の調べた限りでは一割ないし二割ぐらいの少女売春に手を染めていたというふうに思われます。しかし、デートクラブで働いている女子高生たちの中では少数派であったということは間違いありません。  ところが、九四年の夏以降ですが、デートクラブをめぐる誘拐事件などをきっかけにした摘発が盛んに行われ、そのことがマスコミで大々的に報じられた結果、また様相が一変いたしました。まず、デートクラブの知名度が大変に上がりまして、それこそデートクラブに殺到する少女たちが大変にふえたという皮肉な結果が起こりました。  もう一つは、九四年の秋以降、デートクラブが急速に減少してまいります。潜りも含めますと、一時期は東京都内で恐らく四十軒近くはあったと言われております、公表されているだけでも三十軒ぐらいなんですが。現在、デートクラブはほぼ半減いたしております。  翌九五年にかけましてデートクラブが減っていくプロセスで、デートクラブ売春をしていたあるいは援助交際をしていた少女たち街頭に繰り出す、ストリートへですね、ストリートというのは、例えば具体的に申しますと渋谷の一〇九前でありますとかあるいは池袋のサンシャイン通りでありますとか、いろいろな場所で男の人に声をかけられるあるいは主に二人組で男の人に声をかけて援助交際を持ちかけるといった形態が極めて広がっております。象徴的な言い方をすれば、デートクラブは急速に減りましたが、渋谷とか新宿といった町全体がデートクラブとしての機能を果たすかのような様相を呈しているところでございます。  さらに、昨年以降、テレクラ条例や特に東京都に関しましては淫行処罰規定と呼ばれるものが青少年条例に盛り込まれるという話が広がったころから、さらに援助交際形態が変わってきました。それが資料にもありますように、長期契約化という現象と共有パパ化という現象であります。  具体的に淫行処罰規定で検挙された事例を各自治体に探してみますと、その大半、恐らく九割以上であると思われますけれども、家出あるいは深夜俳回等で補導された少女持ち物から男性の携帯電話や自宅の電話やポケベルの番号が見つかりまして、事情聴取の結果、援助交際ないし売春をしていたという供述が得られました。それで、芋づる式にたどっていって、二カ月ほど内偵をした後検挙するといった形が一般的でございますので、そのことがある程度知れ渡った結果ということでしょうか、基本的に家出少女風情あるいは警察に補導されるかもしれないような年格好の少女を相手にするよりも、むしろいかにもそういうことがありそうもなさそうな、つまりストリートを俳回するタイプではないような少女たちに急速に需要、ニーズが移っております。  例えば、具体的な例で申しますと、ストリートを俳回している子に対しては二万円とか二万五千円しか払わない男が、いい学校に通っていて学級委員をやっているような、はたから見ると何の問題もない少女たちに対しては五万円や六万円払うということが当たり前になってきております。つまり簡単に言えば、それは安全だからであるということに尽きます。  さらに、そういうのを見つけますと、お互いにかなり長期的な契約、契約というのは一つの比喩でございますけれども、繰り返し会うという形をとるのが一般的になりつつあります。それは少女の方からすれば、不特定の男を探すということが極めて危険である、危険を伴うということが自覚されつつあるということが一つございます。男性の方から見ても同じようなことが自覚されつつあるということがあります。  もう一つ、共有パパ化と言われる現象は、クラスの中のあるいはストリートの仲間の少女たちが三人あるいは五人といった規模で一人の金払いのいい中年の男性を共有する、これも比喩でございますけれども、そういう形態でございます。これも基本的には、第一には少女たちあるいは男性側から見た場合の安全性ですね、摘発される可能性を防ぐということからこういう形態が非常に広がっているということでございます。  もう一つ、大変興味深いのは、例えばこういう共有パパ化に見られますように、以前は少女売春というものは、たとえやっているといたしましても、友達同士でそのことを告白したりするということはめったになかったことなのでございますけれども、特に九三年のブルセラ、九四年のデートクラブ、そして九五年以降の援助交際マスコミで語られるようになった結果でありましょうか、友達同士でそういうことを話すことは心理的な抵抗感がなくなりました。その結果、私は同調圧力というふうに申し上げておりますが、英語で言いますとピアプレッシャー、同輩集団、仲間集団からの圧力というものが非常に重要な動機の要素になって援助交際に乗り出してきている少女たちかおります。  具体的に申しますと、自分の属している仲間グループの何人かが援助交際を始めることによって、例えば話題についていけないとか、消費水準についていけないというようなことが当人の意識において問題になりまして、それで同調行動をとる、つまり同調行動の結果として援助交際売春に乗り出すという形態が広がりつつあります。  売春の動機あるいは援助交際の動機ということを把握することはいろいろな有効な施策を立てる上で実は不可欠であると思われますので、そのことにつきまして最後にちょっとお話を申し上げたいというふうに思います。  お手元資料にございますように、私は動機を大きくは二つ、細かくは六つに分けて把握いたしております。  援助交際はなぜやるのか、売春はなぜやるのかというふうに聞かれますと、例えば警視庁等の調査にもありますように、多くの少女はお金のためというふうに答えますが、社会科学的には余り意味のある返答ではございません。なぜならば、売春援助交際は金銭の授受が対価として行われる振る舞いでありますから、中間的には必ずお金の授受が存在するのです。したがって、その動機をせんさくされたくない少女たちは、お金というふうに答えてしまえばそれで話が一件落着してしまいますので、そこでコミュニケーションが打ち切りになってしまいますと本当の動機がわからなくなってしまいます。  その先、つまりお金の向こう側が六つに分かれるということなんですが、お金が必要といいながらも実際にはそれが口実にすぎないというケースと、お金が実際に必要であるケースに分けることができます。  口実にすぎないケースはここにございますように、主に変身願望型、コミュニケーション願望型、心理的復讐型の三つに分けることができます。  変身願望型というのは、簡単に言えば、自分は単なる劣等生ではない、単なる勉強ができないだめな子ではない、あるいは自分は単なる優等生ではない、ださいいい子ではないというふうに思いたい少女たち援助交際に乗り出してきてあるいは売春に乗り出してきて、そこで出会った男にいろんなところを褒められたりあるいは自尊心をくすぐられるようなことを言われる、つまりそれが少女たちにとって重要なことになる。つまり、自分は単なるいい子ではない、あるいは単なる悪い子ではない、劣等生ではないということを確認するために乗り出してくるというケースがあります。  第二番目のコミュニケーション願望型というのは、これはわかりやすく言えば好奇心に近いものでございます。少女たちの周囲にいる大人たちが、親あるいは教員の立場ですね、いつも同じようなことを言う。勉強していれば安心したり、悪い遊びはしちゃいけないというようなことを言っていますが、実際にはマスコミあるいは口コミを通じて得られる情報によれば、世の中にはどうもいろんな人がいるらしいと。例えば、自分の周りにいる大人たちは売春はいけないことだというふうに皆言っているが、テレクラあるいはツーショットや伝言にかければ売春の勧誘だらけである。あるいは、今は東京に限りませんが、大都会のストリートで制服姿の女の子、少女が一時間もある場所に立っていれば、大体五人から十人の中年の男が声をかけてくる状況であります。自分の周囲にあるコミュニケーションとその実態とが余りに違うという感覚が問題になりまして、社会を知りたい、本当はどうなっているんだろうということで好奇心を持ってかけてくる形態、これがコミュニケーション願望型です。  心理的復讐型といいますのは、これは昔からあるパターンなんですが、厳し過ぎる親あるいは構ってくれない親あるいは彼氏に対する当てつけとして行われるものでありまして、売春援助交際が悪いものだと意識されているがゆえにあえてやる形態であります。  この三つが口実系というふうに申し上げたものであります。    〔小委員長退席、関根則之君着席〕  もう一つ、お金が実際に必要である場合があります。これもさらに三つに分けることができまして、一つは居場所代型、もう一つは気晴らし代型、そして純粋物欲型であります。  居場所代型と申しますのは、具体的に申しますと、先ほど申し上げたストリートあるいはクラブ、そういった場所に彼女たちの居場所がある、あるいはそれ以外にはないので、そのストリートにいるためのお金を稼ぐために援助交際売春を行う形態であります。  具体的にいいますと、クラブ代、カラオケボックス代、あるいはタクシー代、そして何よりもコスチューム代というふうに言っていいでしょうか、仲間と一緒にいるために必要なファッションを買うためのお金が必要です。大体三万、五万、十万とかかったりいたします。ところが、お小遣いが五千円、一万円だったりいたしますと、その差額を援助交際売春で埋めるという形態であります。この場合には売春援助交際は悪いというふうに意識されているケースが多いんですが、それよりも仲間と一緒にたまり場にいることの方が優先順位が高いので、そのためにあえて我慢してやるという形態であります。  気晴らし代型というのは、要するにむしゃくしゃ感やある種の心理的な空虚感を継続する衝動買いによって埋めようとする振る舞いでありまして、そのために必要な元手を稼ぐ、そういう形態でございます。  そして、最後に純粋物欲型と言われるものがあります。一般に援助交際というと、物欲や単なる消費欲求あるいはお金に対する執着に換言されがちでありますけれども、それは単なるこの一類型にすぎないということが大変重要でございます。この純粋物欲型も古くからのパターンといたしまして、例えば家が貧乏でお金しか頼るものがないというふうに刷り込まれてしまった形態、これは今もございますが、昨今目立っている形態はそれとは全く逆でございまして、そこそこお金持ちの家の子で純粋物欲型の子がふえている。  具体的に申しますと、例えば中間テストや期末テストの点が一点上がれば、それにつき一万円を上げるというふうに言うような親でありますとか、あるいは親子げんかで飛び出した娘に、三十分以内に帰ってきたら十万円上げるよというふうに電話でコミュニケーションするような親、以前はこういう親は例外的でございましたが、昨今では全く珍しい存在ではなくなってまいりました。そういうところで育ちました少女の中には、どんな問題を処理するにもお金が必要だというふうに刷り込まれまして、やはりお金お金と言うようになる場合がございます。  こういうふうに売春援助交際は当然お金をもらう振る舞いでありますけれども、その動機を見てみますと幾つかの形態がございます。  最後にいたしますけれども、私の感じるところを申しますと、この動機の部分をうまく手当てをしない限り、表向きうまくいっているかのように見える規制措置の裏側で、実際は売春援助交際はなくならないであろうというふうに思われます。  先ほど、ブルセラショップを畳みましたらデートクラブが出てくる、デートクラブを畳んだらストリートデートクラブのようになってしまうという話を申しましたが、似たような例は幾つもございます。  例えば、NTTの2Qのツーショットと言われるものが九一年の十月一日以降、契約の更新ができなくなりましたが、業者の多くは2Qのツーショットから2Qの伝言ダイヤルに業態を変えました。2Qのツーショットよりも2Qの伝言ダイヤルの方がさまざまな理由で売春に向いています。規制の結果、売春に向いているメディアが広がってしまいました。  その二年後、九三年十月一日以降、今度は2Qの伝言ダイヤルの契約の更新をNTTは拒否するようになりましたが、その結果、業者の多くは一般回線の伝言ダイヤルやツーショットに移行しまして、各地に自動販売機を設置するようになりました。  九三年十月一日以降、契約を打ち切るあるいは新規契約をしなくなったわけですけれども、契約期間が五カ月ですから、五カ月たつと基本的にはなくなってしまうという勘定にはなりますが、その一年間に大阪や京都府などでは、私の調べた範囲でのデータがあるんですけれども、自動販売機の設置数は二・五倍ないし三倍近くにまでふえておりまして、かえって環境が悪化しているわけです。特にこの一年間、テレクラ店舗数は物すごくふえましたが、これは要するにテレクラ規制条例施行をにらんだ駆け込みでございます。つまり、立地規制が行われるときに残る場所をたくさん確保しようという動機がかなりございまして、これは私がテレクラの経営者を取材した結果得られたデータでございます。  これらを考えますと、単に規制措置で対処しようというよりも、むしろ今も申し上げました動機の部分にうまく届くような行政的な施策あるいは教育上の施策と一体にならないと、具体的に少女たち援助交際売春に伴う危険から遠ざけられることはあり得ないのだろうというふうに思われます。  私の意見陳述は以上でございます。
  8. 関根則之

    ○小委員長代理(関根則之君) どうもありがとうございました。  次に、河合参考人にお願いいたします。
  9. 河合隼雄

    参考人河合隼雄君) きょうは、こういうところへお招きいただきまして、まことに光栄に思っております。  私の立場でございますが、先ほど宮台さんの方からは非常に全般的なお話をしていただいて私もいつも参考にさせていただいておりますが、私たち臨床心理士というのは、こういういろんな問題のある方に一人一人お会いして、その問題を長い間かかって解決していくようなことをしております。私はまたそういう人を指導しております。  最近、特に文部省の考えによりましてスクールカウンセラーというのができまして、中学校、高等学校にもスクールカウンセラーが行くようになりました。そうすると、今お話にあったような生徒も実は相談に来たりするんですね。そういうところから得た個々のケースからちょっとお話をさせていただきます。  その問題の背景ですが、宮台さんのおっしゃったのは非常に具体的に社会学的に見た分析でございますが、私のように心の方から見ますと、何といいましても根本問題として人間の思春期といいますか、青年期前期というのは非常に大変な時代でありまして、これは一遍できた家をつぶしてつくりかえるようなときですから、この時代に何らかの意味でむちゃくちゃなことをやっていない人はいないんじゃないかと私は思います。自分はやっていないと思う人はよく忘れている人が多いのでございまして、大体は何らかのことをやっているわけですね。それをどのような形でするかという問題がいつもあるわけです。  そこで、今の日本は経済的に非常に豊かになってきた、これは非常にありがたいことで、もちろんこのためにプラスのことはたくさんあるのでございますけれども、経済的な豊かさのためにいろんな問題が起こっている。その一つが、私は家族関係の稀薄化というふうに書いているんですが、これは普通に言われるように、父親が全然働かないとか、例えばお母さんがお酒ばかり飲んでいるというようなそういう目に見える親子関係の問題というよりは、先ほど宮台さんが言われたとおりでして、普通に見れば親子は何も余り問題がないように見えるんですね。  ところが、今例を出されたので割合よく知っているんですが、端的に言いますと、お金があるためにお金で解決するということができやすくなっているんですね。つまり、これをやれば一万円やるというようなことを今言われましたが、そういうこととか、あるいは自分がその子供に言ってけんかするんだったら家庭教師を雇ってきて家庭教師にやらせるとか、何か人間関係をお金で解決して、本当に親子が闘うということがなくなってきているんですね。  例えば、子供が何か買ってくれというときに、我々の親の場合はお金がなかったから買えないというところに迫力があるんですね、命がかかっていますから。ところが、今は買えないと思っていてもついつい買ってしまうというようなことが起こるので、人間が本当にぶつかり合って生きていくということがお金があるためにかえって希薄になっている。思春期の子供はぽんとぶつかりたいんです。ところがぶつかれない。そうすると、何か変わったことをやらねばならないと言っているうちに、非常に変わったことでもあるし、お金ももうかるというような仕事が出てくるものですから、宮台さんの言われたとおりで、思いのほかに援助交際の中に入っていく。  そして、そういう子供がカウンセラーのところへ来ましてどういうことを言うかというと、しばらく話をしているうちに、先生は何のために生きているんですかとか、全くもう本当に哲学的な問題になってくるんです。そういうことでカウンセラーに話をして、そして最後のあたりでだんだん出てくるのは、こんな話をどこにもできないと言うんですね。つまり親ともできない、先生ともできない、何か非常に根本的な問題を自分なりに考えて必死で言いたいところが全部ふさがっていく。そうすると、あとは仲間とつながる場合に、そういう仲間がそこでやけになって何かするとすると、それに入っていくより仕方がない、どこでも守られていないんです。  居場所がないということを言われたのは非常に象徴的で、この子たちは居場所を持っていないんです。家が居場所にならないんですね。家は食べるものがあるとか、寝るところがあるとか、そういう経済的にいうと確かに完全に居場所になっているんですが、自分の何とも言えぬ心をぶっつけてそこに生きているという意味の居場所になっていない。どうしてもお金のところへ出ていかざるを得ないというときに、我々だったらちょっと考えられないような売春の方に出ていくと。そういうことが一種のはやりのようになりますと、そちらの方へどんどん流れていくということになると思うんです。  それで、もう一つ忘れてならないのは、買春、援助交際の援助をする人、大人の方ですね、これはちょっと忘れる人が多いんですが。外国人と話し合っているとよく出てくるんですが、外国人から見ると非常に不思議に思うんですね。お金があって遊びたいんだったらもっと大人と遊べばいいじゃないか、どうして中学生なんかを選ぶのかということを率直に言ってくるわけですね。  これはどうも日本人が今まで遊ぶということを上手にやってこなかった。遊びというのは本当は非常にたくさんあるんですね。何も男女関係だけが遊びじゃなくて、それこそ吉本興業へ見に行ってもいいし、いろいろ楽しい遊びがあるんだけれども、遊びというとセックスと、こうなってしまう。そして、それが性ということだけじゃなくて、男と女が話をし合うとかいうふうなことじゃなくて、非常に単純に中学生に行ってしまうというところが日本人の一つの問題点ではないかと思うんです。私はこの点も実はもう少し考えていいことではないかというふうに思っております。  だから、本当に宮台さんがおっしゃったとおりでして、この援助交際の裏に動いているものは非常に深いものがあって、どうしても単に上辺の取り締まりだけではだめだということになるんです。そのときにうっかりすると、取り締まりをしても仕方がないというので取り締まりの方に力を入れないとか、あるいは先ほども申し上げましたが、実際に援助交際なんかしている子供たちと我々が会って深い話を聞くと、やっぱり同情したくなるところがあるんですね。そこまであなたのお父さんはあなたをほうっているのかとか、あなたのお母さんはそこまで金だけで解決しているのかというようなことを聞きますと、あなたがそういうことをやるのも無理ないわという気持ちがしてくるんですが、そこで下手な人は、だめだと言う方が甘くなってしまうんですね。これは私は絶対いけないと思うんです。気持ちはわかるけれども、やっていることは絶対に悪いというこれは両立させていかねばならない。  だから、いかにこの子供たちの状況が、宮台さんの言われたことも私は賛成なんですが、本当に今いろんな背景にあるとしても、やっぱりいけないことはいけないと言うことははっきりやっていただきたい。そして、その取り締まりをするときに、売春をしている側だけじゃなくてあっせんする側、それから特に買春をする人の方ですね、そちらの方に対する取り締まりということももっと考えられていいんじゃないかと思うんです。そういう点を非常に強化してほしい。  ただし、それが問題を解決しないという点は全く同じ考えで、そのためには青少年の心の問題ということをよほど考えねばならない。そういう人たちの心のケアをする方をどうするか。これは今随分できてきております。青少年相談センターとかあるいは青少年のためのセンターができてきておりますが、これはもっと強化していいんじゃないか。片方でぴっちり取り締まるということと、その人たちの心の問題を取り扱うということを車の両輪にして考えていただきたいということです。  そして、最後のところで関係性の回復ということに括弧をつけておりますのは、これは政策としてはあるいは対応の方法としてはなかなか何もできないことなんですが、日本人全体として考えねばならないのは、先ほども言いましたが、親子関係とかあるいは教師と生徒の関係とかそういうところの関係を、つまり簡単に言いますと、お金がある時代にどういう人間関係を持つかということをもっと考えてほしい。つまり、昔はお金がなかったからうまくいっていたことが多いんです。それで、家族が心を合わせてなんて言わなくても、金がないんですからもうみんな黙っていても一体になっているわけですが、今のようにお金がたくさん出てくると、ばらばらでも暮らせるんですね。  だから、簡単に言いますと、お金がたくさんあって物が豊かになった中でも、人間関係をどういうふうに持っていくのかということ、あるいは関係性ということをもう少し深く考えたら心と体の関係ですね、心と体をもう切り離していると。切り離しているから自分の体を売ったって構わないというふうなことが出てくるわけですが、切り離さずに心も体も関係して考えるというふうなことをもっとやっていかねばならない。これは思想といいますか考え方の問題なので、つまり政策的には何とも仕方がないことですが、ちょっとつけ加えて申し上げました。  以上でございます。
  10. 関根則之

    ○小委員長代理(関根則之君) どうもありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより政府報告並びに参考人に対する質疑を行います。  質疑は自由質疑方式といたしますので、質疑のある方は挙手をし、私の指名の後、御発言願います。  それでは、質疑のある方は挙手を願います。
  11. 田村公平

    田村公平君 田村公平と申します。河合宮台両先生、本当にきょうは貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。  今、両参考人のお話を伺っておりまして、私は高校三年生と現在一浪をしております娘二人がおりまして、大変身につまされる感じがしておるところでございます。ありがたいことに、いわゆる援助交際だとかルーズソックスの時代の真つただ中におりまして、まだ現在進行形ではありますけれども、そういう意味で事件、事故、その手のたぐいの事案に巻き込まれていないことに感謝しつつ、なおかつまだ不安感を持ちながら、何でこんな国になってしまったのかなという思いもあります。私は、こういうことは大都会、つまり池袋だとか渋谷だとかそういう繁華街、人の顔が見えない、恥を知らなくてもいい世界のことのように思っておりました。  実はごく最近、大変痛ましい殺人事件が高知県でございました。それも人口の多い県庁所在地じゃなくして、名前は須崎市という農村地帯に近いところです。ツーショットダイヤルで、大変歴史と伝統のある、幼稚園、小学校、中学校、高校、短大まで併設しておる地元なりの名門高校の三年の女子高生が殺されました。これは犯人は検挙されましたけれども、警察の発表によれば金銭上のトラブルで、それ以上警察は詳しいことは言いませんけれども、五百人を超える男性電話番号を持っておったと。しかも、非常に悲惨なことには、犯人の家は私も知っておるんですけれどもパン屋さんで、学校給食にパンを卸しておったところが、シャッターを閉めてしまったために田舎のことですから学校給食のパンすら手に入らない。直線距離で二百メーターも離れていないものですから、家族関係というか近所のつき合い、村社会のつき合いすら大変ぎすぎすしたと、これは加害者にとっても被害者にとっても地域住民にとっても大変重苦しい事件が起きたばかりでございます。  どうも都会の風潮がまさか自分の土佐の高知の、高知からもまだ田舎のところに、そういう恥だとか人間関係が比較的うまくいっているところにも起き始めた。マスコミの影響もあるかもしれませんけれども、そういうことについて両先生方から、どういうことなんだろうということをちょっと教えていただきたい。
  12. 宮台真司

    参考人宮台真司君) テレクラを初めツーショットや2Qのようなものを私は電話風俗と一括して呼ばせていただいておりますが、よくある誤解は、こういう電話風俗が都会的な現象であるという錯覚でございます。これは百八十度考え方が誤っております。  具体的な例で申します。人口三十万クラスの町でよく比較していただきたいんですが、東京近辺で申しますと藤沢、町田、大宮、柏といったような場所です。テレクラの立地軒数というのは大体五軒前後、まあ三軒から六、七軒といったところでございます。ところが、これが地方都市に参りますとけたが違ってまいります。昨今話題になったケースでいいますと、例えば青森とかは大体十五軒前後ございます。旭川が二十軒近くあるいは帯広なども二十軒近くあります。あるいは、昨年テレクラ規制条例をいち早くつくったことで知られる兵庫県加古川市も十六軒ほどございます。これらの町は全部人口三十万以下でございます。東京近辺でいいますと、人口二十万台の町にテレクラが二十軒あるということは全く考えられない現象であります。  これは何を意味しているかというと、レジュメあるいはお配りした資料の中に第四空間という言葉を用いさせていただいております。これは日本が都会であろうが都会でなかろうが見舞われている現象でありまして、要するに子供たちも大人たちも含めて、家や学校や地域やあるいは会社に居場所が消えていくということと絡んだことであります。  具体的に申しますと、例えば東京にはストリートがあります。つまり匿名に出会える場所があります。若い連中でいえば、具体的なストリートであったりクラブであったりします。こういう場所で出会う若者たちは自分の本名を必ずしも名乗りません。ニックネームだけでしか知り合っていないような連中もいます。そのことによって実は彼らは身軽になっているんですね。例えば地元では、劣等生であるとか優等生であるとかあるいは古くから知り合っている連中の中でいろいろなイメージを付加されてきているわけです。自分はそんな人間でいるのは嫌だと思っても逃れられないわけですが、そういうふうに自分の名前を知らない人と出会える場所に行けば楽になれるということがあります。  大都会にはそういう具体的なストリート、空間として名前をなくせる場所がありますが、地方に行くとそういう匿名になれる町というのはありません。ストリートというのはありません。おしゃれな若者がいる場所といっても、目抜き通り、マクドナルドにたまっている連中に限られているとか、大体そういうふうな規模であります。  そういう地方であればあるほど、実はテレクラを初めとする電話風俗に対する需要は高いんですね。これは子供たちだけではなくて、テレクラをめぐる売春の主な供給者、売り手は女子高生中学生であるよりもむしろOLや主婦であるわけです。こういう人間たちは大都会よりもむしろ地方都市のあるいは地方のテレクラに多く見られる、つまり人口の密集規模からいえば、人口当たりの参加者からいえば恐らくかなり多いであろうというふうに考えられるのです。  そういたしますと、まさにテレクラが地方的な現象であるということだといたしますと、ますます重要なことが見えてくるわけですね。つまり見かけと現実とは随分違う、まだ地域社会が残っているように見える、都会化していないように見えるけれども、子供たちあるいは主婦あるいは男のさまざまな内面的な動機はかつての村社会とは随分違ってしまっているわけです。具体的に言えば、情報にあおられたりしているわけです。しかし、周りにはある形を守ることを強制してくるような、期待してくるような共同体が残っているように見えるわけです。そうすると、裏で見えないところで何かをやるわけですね。そうすると捕捉できない、事件があったときにだけようやくわかるという形態であります。  したがって、以前のように盛り場で俳回している不良みたいな、そういう目に見えやすい人間たちに問題があるんだという考え方は恐らく改めなければいけないんだろうというふうに思います。
  13. 河合隼雄

    参考人河合隼雄君) もう今おっしゃったことに尽きますが、情報社会といいますか、それと車があるというのはすごく大きいんですね。だから、電話とか通信を使ってしかも車を使うとなかなか目に見えないところでそういうことが可能になってきましたので、都会のことが田舎により入っていきやすい。そしてまた、一面からいいますと田舎の方が免疫性がないんです、都会の人は大分歴史を持っているわけですが。だから、田舎にそれが入っていった場合に、非常に大変なことが起こるということは言えると思います。
  14. 田村公平

    田村公平君 ありがとうございます。
  15. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 両参考人、きょうは大変御苦労さまでございます。特に河合先生は私の大先輩でもございますので、敬意を表してぜひお尋ねしたいと思うんです。  時間が足りなくて十分にお話しできなかった点があると思うんですが、思春期といいますか青年期、青年期前期という言葉の方がいいんじゃないかと思うんですけれども、その時期における教育も含めた社会環境というか社会的条件のあり方が、バックグラウンドとしてはかなり大きな問題としてあるんじゃないか。その辺で具体的に、きょうはどう取り締まるかという話の方が中心のようですけれども、バックグラウンドとしてもっとどういう物の考え方というか受けとめ方をしたらいいのかという点について、補足というか意見をぜひお聞かせいただきたいというのが一つ。  それから、宮台先生には、ちょっと逆説的な言い方になりますけれども、こういう経験をした人たちのその後はどうなっていくんだろうか。みんなたくましく育っているんだったらそれでいいんじゃないかという気もせぬでもないんですけれども、見事に立ち直ったりあるいは自分なりの生き方を見出していっているのか、それともかなり挫折体験のような形でその後のその人の生き方、暮らし方に何らかの後遺症が残ってくるのかどうか、その辺、フォローアップのことについて、まだ新しい現象なので十分つかんでいないかもしれませんけれども、もし御存じでしたらお聞かせいただければと思います。
  16. 河合隼雄

    参考人河合隼雄君) 青年期前期の問題ですが、先ほど申し上げましたように、この時期は何らかの意味で破壊的なことというのをある程度やらないと通り抜けていけないところがあるんですね。一番うまくいっているときはそれを親にぶつけたり教師にぶつけたりして、そしてぶつけながらそこを乗り越えていくということがあるわけです。  そのときに、今までであれば何らかのイデオロギーでぶつかるという方法ができたわけですね。ところが、今はそれが非常に難しくなっています。というのは、一つのイデオロギーで批判していくという方法が今までいろいろ行われたけれどもどうしてもうまくいっていない、それが今の若い人たちは知っているんですね。だから、私は今の若い人は本当に気の毒に思うんですけれども、戦う武器を持っていないわけですよ。ところが、片一方ではどんどん知識を吸収していかねばならない。そこで、よし、今はもう知識を吸収するときだと思いながらそちらに回った青年期の人はどんどん勉強なんかしていると思うんです。ところが、そういう青年は実は中年に来てから問題が起こるんですが、それはきょうはやめておきます。  若い人でそこですとんと、今言いましたように、中学生であるのに人生はどういう意味を持っているかということをふっと考え出した人は単純なイデオロギーで救われないんですね。それをぶつけるところがない、居場所がないというようなことで、そうすると自分の体を使って、要するにむちゃくちゃをやりたいというようなことの方に入っていくわけです。だから、そういう落ち込んだ人たちに会って話し合っていくというのは大変なことでして、我々はやっているんですけれども、本音を言ってもらうのに随分長い間かかるんです。この問題に対する一般の理解というのをもっと持っていただきたいと思います。今、青年が何かぱっと武器を持ってやって乗り越えていくという方法を失ってしまっているんです。そのことが私は非常に大きいと思っています。  それから、その後のことについて、これも我々は少数の例ですが知っているのは、その後何事もなかったかのように全く普通になる人もあります。ただし、全く普通に生きていて、それから十年後二十年後に物すごい後悔の念がやってきて自殺したくなったり、いわゆるデプレッションですね、完全な抑うつ症になったりするような方もあります。そういう人にも我々会っております。我々はこういう人を指導して、よくなったときに、よかったからこれからちゃんとやりなさい、しかしもし急に死にたくなったりしたら必ず我々に電話をかけるようにということを言っております。それは、ある程度の強さができたときに後悔することができるというのか、非常に深い深い反省が来て、自分は生きていても仕方がない、そういうふうに襲われる方もあります。いろいろだと思います。
  17. 宮台真司

    参考人宮台真司君) お答えいたします。  その後の援助交際女子高生ということでございます。援助交際話題になったのは二年ぐらい前からでございますけれども、実はそれ以前からも売春している女子高生を継続して取材してきております。大体九三年から四年ぐらいまででございますと、高校生のときに売春援助交際をしている子たちは、卒業いたしましても売春風俗関連の仕事やアルバイトから足を洗えないというケースが大変に目立ちました。ところが、特にこの二年ないし三年ぐらいでしょうか、援助交際をするあるいは売春をする女子高生の規模がかなり広がって以降、具体的にその中にいろいろな動機を持った子が含まれるようになってからは一概には大変言いにくくなりました。  ただ、その中で、私が最近よく目立つ現象だなと思いますのは、例えばお手元資料で申しますと、気晴らし代型とか居場所代型、心理的復讐型といった動機の女の子、少女たちの多くは売春の動機をそれほど継続して持つことが実は余りないんだということですね。  具体的に申しますと、例えば援助交際を始めて半年ぐらいの間は、女子高校生によっては月三十万とか六十万とか場合によっては九十万というふうに稼ぐ子たちもおります。もちろんそれの大半は消費に使っていくわけですが、しばらくそれをやっているうちに、本人たちの言い方で言うと気が済んだ感じになる。あるいは、そういうことをやっているうちに援助交際を通じてあるいはストリートでの出会いを通じて彼氏を見つけるわけですね。そうすると、彼氏の家で、彼女たちの言い方で言うとまったりということなんですが、のんびりリラックスしている方が楽になってくるわけです。そういたしますと、ストリートで遊び回るために必要なお金というのがそれほどかからなくなってきます。あるいは、両親に対する心理的な当てつけをしなけりゃいけないというふうな気持ち、むしゃくしゃ感といったようなものも減ってきます。  したがって、例えば月三十万、五十万、七十万というふうな稼ぎをしている売春女子高生がそれを一年以上続けたケースというのを私はほとんど知りません。大体一年たつかたたないかのうちにそれほどやらなくなります。  私は、最近よく、その後の売春女子高生はどうなるんですかということに関して、わかりやすい答えは、少なくとも売春の頻度は下がる、しかし売春から完全に足を洗うのかどうかについてはわからないということです。時間が短いのでちょっとそれしか答えようがないんですね。  ただ、この動機の中で一つ申しますと、コミュニケーション願望型というふうに言われるような子たちの中には、これは大変皮肉なんですが、援助交際売春で出会った男とのコミュニケーションで、一時的にかもしれませんがいやされている子というのがいるんですね。そこでようやく心理的なバランスをとって一受験勉強しているとかいう子も現にいるわけです。こういう子たちは売春の動機が消えるということはもしかすると難しいかもしれないという気がいたします。  例えば会社に入ります、あるいは家庭に入って主婦になったりいたしますね。いろんな意味でコミュニケーションのそごに出会うことというのがあります。そういうときに心理的なバランスをとるために不特定の男性と性交渉を持つという方法を、言えば習い性のようにして知ってしまうと抜けるのは難しいんじゃないかなという気がいたします。現にそういうケースを私自身が追跡している中でもかなり割合で見ることがあります。  ということで、ちょっと一概には言えませんが、その後というのは大体そういうふうになるというふうにお考えください。
  18. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 ありがとうございました。
  19. 大渕絹子

    大渕絹子君 大変衝撃的なお話をお聞きして、でもマスコミ等で取り上げられていることが本当なんだなという思いをしながら、今は女性の方の話題になっていますけれども、日本の男性というのはなぜこうこらえ性もなく非常に安易に若い女性たちに魔の手を伸ばしてしまうのかなという思いがします。    〔小委員長代理関根則之君退席、小委員長着席〕 また、買春ツアーなどと言われて、海外へ行って旅の恥はかき捨てて、外国で女性を買って、そして子供ができてもそれを放置してしまうようなことが今東南アジア諸国にも随分たくさんあるわけですね。  そういう中で日本の男性像というのが、ここには今男性ばかりいますが、本当に私、もう非常に情けないというか残念だなという思いをしているわけですけれども、買う方の男性像というのは一体どういうところにあるのか。特定のパターンといいますかモデルみたいなものがあるのかどうかというところが一点、あるいはそれは既婚者なのか未婚者なのかという点も含めて二人の参考人からお聞かせをいただきたい。  そして、この援助交際で若い女性たちが精神的に救われているというか自己満足を得ているというような部分もあるわけですけれども、これから先のこういう事例を減らしていくための処方せんなりがあったら、またお聞かせをいただきたいと思います。
  20. 宮台真司

    参考人宮台真司君) 買う側の男ですが、大きく二つに分けられると思っております。それは基本的には四十代以上の男性と、もう一つは四十より未満の、僕は今三十八ですけれども、大体僕らの世代ぐらいを筆頭にした以下の世代であります。  四十代以上の男性方々の特徴は、いわゆる女学生幻想みたいなものがございます。僕はよく言うんですけれども、つまり禁断の果実みたいなイメージでございましょうか。実際の女子高生というのは、東京都かでも高校三年生の四割近くが既に性体験があるんですけれども、団塊の世代ぐらいまでの方は純潔教育というのを大体受けております。つまり中学、高校の時代に文部省の純潔教育の通達というのが出ておりまして、そういう教育を受けてきたはずなんですね。そうすると、女子高生というのは性的であってはいけない存在であるというふうに教わってきまして、性的であってはいけないという象徴性を制服に託すということがあるんです。したがって、この人たちは制服を着た女子高生と性交渉を持つということにとりわけ記号的なというか象徴的な優越を覚えるという部分があるかというふうに思います。  もう一つは、この世代に特徴的なのは、特にデートクラブなんかを観察いたしますと目立つ現象でありますが、自分の娘とまともにコミュニケーションがとれない、言いかえれば親として見てもらえていないというときに、デートクラブで見つけた女子高生とある種の親子ごっこというのをさせてもらってそこで満足するという、私から見ると非常に理解しにくいんですけれども、そういうことが現にございます。これが上世代の特徴でありますね。  語弊がありますが、上の世代のことを私は団塊おやじというふうに、下の世代のことを新人類おやじというふうに言わせていただいております。  次に、下の世代の特徴は、要するに自分と同年代あるいは年の近い女性とコミュニケーションするのがはっきり言って敷居が高い、面倒くさい、あるいはうざったいというか何かうまくいかないんですね。わかりやすく言えば、コントロール感というのを持つことができないわけです。  例えば具体的に申しますと、消費ということに関しましても、どういう場所でどういう映画を見てどういうところで食事をしてということに関する情報もむしろ同世代の女性の方がたくさん持っているわけです。何かをしたらばかにされるかもしれないという防衛的な感情が強いのでしょう、そういう新人類おやじのうちのある割合は対象年齢を大規模に下げまして、中学生高校生を相手にすればコントロールできるだろうというふうに思うわけです、こういういわば成人とコミュニケーションできない部分を年端のいかない少女たちとのコミュニケーションで埋め合わせるというか、そういう形態がやはり新人類おやじには目立ちます。  もう一つは、新人類おやじに目立つのは、マスコミ等で例えば淫行処罰規定に関する違反容疑で摘発される場合に、特に三十代以下の男性がよくカメラやビデオで撮るということをやっていることに皆さん多分お気づきかもしれません。これは四十代以上の男性には余りないのでございますけれども、私は同世代として大変よくわかるのです。つまり、援助交際で会った女子高生との交渉をカメラやビデオに撮って、それを家で二度三度と楽しむあるいはそれをコレクションするというような形で楽しんでいる男性が珍しくないのです。  これは性あるいはセックスというものに関する感じ方がいわばメディアというのを抜きにしては考えられなくなってしまった、メディアの中では女子高生あるいはエッチな女子高生というのが盛んに喧伝されているわけですね。そうすると、そのメディア的な空間の中に自分自身も、いわばビデオに撮られるとかカメラに撮られるという形で投影するということで楽しむというような形式もこの新人類おやじ系には目立ちます。  ほぼ以上のような類型だと思います。
  21. 河合隼雄

    参考人河合隼雄君) 性、セックスの問題というのは非常に難しい問題で、だれも本当はわからないんじゃないかなと思います。私もわからないんですが、学者ですからわからないことを平気でしゃべっているんですけれども、本当にわからない難しいことです。  今、日本の男性と言われましたが、性という問題でいろいろ問題を起こしたりいろんなことが起こっているのは別に日本だけじゃございません。世界じゅうこれはもう同じと言っていいと思います。ただ、例えば買春をするのにも団体でツアーを組むなんというところは日本人的でありまして、ですけれども何もほかの国が行っていないということはありません。そういうセックスの遊びに関心を持って金を払う人は、金さえあれば世界じゅうにあると言っていいわけですね。ただ、先ほども言いましたように、こういう思春期、つまり中学生高校生に向いてくるというあたりはちょっとほかとは違うんですが。  今、宮台さんが四十代あるいはそれ以上ということを言われましたが、これは人間にとって非常に難しいことなんです。中年のことを先ほどちょっと言いましたが、人間というのは大体四十代ぐらいである程度地位ができたり財産もできたりするわけです。そういうものができた後で、それを超えてあるいはそれよりも深くといいますか、人生の不思議さというんですか、秘密といいますか、そういうことを知ろうという場合に、もちろんいろんな世界があるんですが、セックスというのは非常に不可解な領域ですから、やはりそこに非常に関心が向かうということは出てくるわけですね。  そのときに、日本人の場合はそれをいわゆる男女の関係として本当に対等に話し合う、あるいは夫婦の間の会話としてそれを話し合うというような伝統を我々はまだ持っていないわけです。単純に家族の対話が大事なんて言いますけれども、私は日本で一番難しいのは夫婦の対話だろうと思います。こんな難しいことはないですね。うっかりしたら別れなければいけませんから、なるべくしないようにしたりしているわけですが、そういう男女という問題の難しさがこの背景にあるわけです。  そこへ、今言ったように昔と違って中年の男性たちが秘密に持っている金の量がふえてきたわけです。今までだったらそういう悪いことをしようと思っても金もなかったんですが、みんなお金はある。そして、片一方で今言われたようなことが起こって中学生高校生があらわれてくるとなると、これは非常に単純に結びつきやすいという現象が起こっているんではないかと思いますね。  しかし、これは本当に難しい問題で、男女とかセックスという問題はなかなか型どおりにいかない、悪いことをしているのを批判するのは非常に簡単ですが、深く考え出すとそこには人間として生きていく根本問題というのがずっとかかわっております。これから日本人は、異性の間のコミュニケーションといいますか、対話というか、そういうことをもっと豊かにしていかねばならないというようなことが言えると思うんですが、これもなかなか大変なことだと思っています。
  22. 宮台真司

    参考人宮台真司君) 河合先生のお話にちょっとだけ補足をさせていただきたいのですが、夫婦仲あるいは家族のコミュニケーションは何がよいのかということは実際非常に難しいんですね。よくわからない時代になっているんです。  それに関連してなんですが、少女たちを取材していて、援助交際をする少女に典型的な家族のイメージというのが私にはあります。それはどういうものかといいますと、夫婦仲が悪いのに口うるさい親というのが大変に目立ちます。つまり放任で厳しくないから好き勝手やっているという少女あるいは家庭が崩壊しているから好き勝手やっているという少女は以前よりも急速に減っておりまして、もちろん非行などで捕まってしまう少女にはそういう人たちが目立つと思うんですけれども、実際に援助交際をしているということになりますと、目立ちますのは今述べたような家族でございます。  これはなぜなのかということをいろいろつらつら考えてみますが、先ほど援助交際の動機の中に同調圧力、仲間に合わせるということがあると申しましたね。でも、人間は仲間に合わせているとき、本当は嫌なんだけれどもという否定的な感情があったりするわけですが、同調圧力に負ける子というのは、その否定的な感情を抑圧してそれに乗り出してくるということがあるわけです。  別の例でいいますと、先ほど、援助交際をやっているうちに、しばらくはやるけれども長続きしないケースがあると言いました。これはどういうことかというと、自分自身の中に否定的な感情、無理があるんだということにやっぱり気がついてくるわけです。具体的にいえば、お金が必要で必要でたまらないと思っていたころには、彼女たちの言葉で善うと、おやじの顔が福沢諭吉に見えるというんですね。だから、どんなおやじでも大丈夫。ところが、お金に対する需要が下がってくると、気持ち悪いものは徹底的に気持ち悪いんだというふうになってくるわけですね。つまり否定的な感情をモニターできるようになるわけです。  僕が昨今一番問題だと思うのは、これは大人も子供も本当はいろんな世代にまたがった問題だと思うんですが、自分自身の否定的な感情あるいは無理をしているということをモニターできないで生きている人が大変多い。もちろん子供たちにもたくさんいるわけです。本当はいじめたくないけれども、いじめないと自分もいじめられるからというふうにして否定的な感情を抑圧しながらいじめに加わるということがあります。援助交際も同等であります。  そういう子供たちに対して恐らく大人が言えることというのは、自分に正直に生きるのが一番だよというふうに言うことだと思うんですね。無理をするな、無理をしていいことがない。それで、河合先生がおっしゃったように、若いころに無理をすると、十年後か二十年後かわかりませんが、抑うつ症状があらわれたりするかもしれません。ところが、子供に無理をするなと言っているその親が夫婦仲が悪いのに形だけのコミュニケーションにこだわっているというようなことになりますと、おまえ、自分に正直に生きろよと言ったって親が正直に生きていないじゃないかということになってしまうわけですね。  そういうことを考えますと、例えば今までは、子供のためを考えて仲の悪い両親が形だけの家族を営むということがよしとされる風潮が随分あったと思うんです。世間的にそういうのをよしとする圧力というのはあったと思うんですが、これが今どんどん裏目に出てくる、そういう時代になりました。  具体的に申しますと、例えば私の教え子などを見ましても、夫婦仲が悪くなった場合には、経済力があるという前提がもちろんあるわけですが、むしろ別れてしまった方が子供にとったはいい影響がある場合というのがかなり存在するというふうに思われます。詳しい話はしませんけれども、いろんなケースを見るたびに、親があるいは大人が自分に正直に生きている姿を見せるというのが、子供が無理をしない生き方を身につけるやっぱり最大のポイントだろうなというふうに僕は思います。
  23. 大渕絹子

    大渕絹子君 ありがとうございました。
  24. 西川潔

    西川潔君 いろいろとお話をお伺いさせていただいたんですが、実はきょうのために娘にも、そしてまた大阪で若い人たちにもちょっとだけお話を伺ってきたんです。これは本にも載っておったんですけれども、喫茶店で話をするだけでは三千円から約五千円、カラオケについていって五千円から一万円、御飯を一緒に食べると五千円から約一万円、ホテルまで一緒に行くと、これが中学生から高校生になると三万円から五千円ぐらいまでというふうに、そしてだんだん年を重ねるごとに安くなっていくというようなデータも読ませていただきました。  僕は宮台先生が先ほどおっしゃった団塊おやじで、昭和二十一年の七月二日生まれなんですが、七月二日で五十一歳になるんです。僕は五人兄弟で、子供のころは五人の兄弟がみんな働いて、僕も十歳のころからずっと働いているわけです。親の笑顔を見るのがうれしかったんですけれども、今は子供の笑顔に気を使いながら、作り笑顔でも親は安心するというんですか、先生方のお話に出ているように本当にはれものに触るようなと、そういうことだけはしたくないなということで僕も三人の子供を育ててまいりました。  その娘にも、きょうこうして小委員会があることを話をすると、娘がこういうものをつくってくれたんです。大人側からの話をまず聞いてきてあげるということで、大人側からの話を若い女の子に娘が聞いてきてくれたんです。大人側は、お金を払えば若い女の子と簡単につき合ってもらえると、それから飲みに行ったりいろいろ散在をするよりも安くつくと、こういうふうに若い女の子側からは大人を見ているそうです。そして、うまくいけば若い子たちとエッチができるんだというようなことが子供たちから見ると見え見えだというふうに聞いてまいりました。  いろんなことをお伺いしたいなと思って自分もつくってきたんですけれども、お二人の先生のお話を聞いていると、かえってだんだんわからなくなってきました。河合先生から吉本の話も出たんですけれども、そういう意味では我々の世代が本当にしっかり頑張らなければいけないなというふうに思います。  ただ、自分は今五十一歳になろうとしている父親ですけれども、この援助交際をしている子供が我が子であった場合、それが発覚したときにはどういうふうに親として対処をすればいいのかというようなことを宮台先生に十二分にお伺いして、そして僕もいろんなところへ声をかけていただいて講演等々もございますので、ぜひお話をしてあげたいなというふうに思います。  そして、河合先生には、親の立場、学校の先生の立場、そして政治だとか行政だとかという立場の皆さん方がこの現状にどういうふうに対処していくのか、行政で新たにこういうことをすればこういうことがなくなるんだと、親の立場の皆さん方がもう大変悩み苦しんでおられるお話をたくさんお伺いしますので、ぜひお答えいただきたいと思います。
  25. 宮台真司

    参考人宮台真司君) 親の対処、どういう対処があり得るのかということなんですが、これも具体的な例から申しますと、援助交際売春等をしている少女の中で親にばれているケースというのは、以前は大変珍しかったんですが、今はそんなに珍しくはありません。例えば援助交際という場合には売春よりも枠が広くて、カラオケボックスに行くぐらいだと援助交際を認めている親がかなりいます。しかし、カラオケボックスでかなり割合で体にさわられたりはするわけですね。それについて子供は親には言わないんだろうけれども、そういうことを言う親が現にいるという状況です。  しかし、先ほど申しましたように、一方で口うるさい親もいます。門限六時とかいうふうに設定している親もたくさんいますが、しかし学校が三時に終わりまして、門限六時ですと、三時間で十分援助交際売春ができるのでほとんど抑止になっていないということがあるんですね。  私はマスコミに出るようになりましてから、女子高生中学生から随分手紙をもらうようになりましたが、そのときに目立つ話はこういうことです。つまり、説教しろと言っている人がいるけれども、説教されたって自分はやめないというふうに言う人が大変多いです。説教するぐらいだから気にしてくれているんだろうから、ばれないようにしてあげるのが親を大切にしていることだと思うからそこはちゃんとしょうと思う、つまり情報管理はちゃんとしょうと思うけれどもという言い方になるわけですね。けれども、じゃ何をしたらやめるのか。  例えば、僕自身は取材を通じて女子中高生にかなり会うわけです。そのときに話を聞くわけです。何でやっているのか、やるようになったのか、やってどう思うのかということをいろいろ話を聞きます。これは心理的なカウンセリングとよく似ています。しかし、大変おもしろいのは、話を大分聞きますと、あるいは何回かに分けて聞くと、話をしたことによって実はその売春の動機が消えるという子がかなりいるんですね。これはおもしろいことだなというふうに思います。つまりコミュニケーションに問題があるんだなということがよくわかるわけですね。そうすると、形にこだわるけれども口うるさいだけの親、夫婦仲は悪いというようなそういう家族のもとで、例えば説教をするということをやりましてもやっぱり無理がある。  僕はよく言うんですが、子供は説教ではなくて関係に学ぶんですよ。それまでまともな関係をつくっていないで、援助交際がばれたというのでいきなり烈火のごとく怒る親というのがいるとすると、それは不信を買うだけ、親は体面、自分自身の自尊心を保つためにだけ何か言っているだけで自分のことは全然考えてくれていないんだ、つまり説教の動機を親自身の体面に求めて理解するということになりがちなんですね。だから、説教は一般にいいか悪いかという問題ではなくて、やはり関係から学ぶんです。したがって、ちゃんとした関係をつくっていなかった親は説教をしても恐らくうまくいかない。そうでなければ、説教をすればうまくいくだろうというふうに思います。  しかし、残念ながら、日本の今の家族状況を見ますと、乱暴な言い方ですけれども、まともな親子関係を結んでいると言えるあるいは説教が有効であるような親子関係を結んでいる家族がどれだけあるのかということは大変心もとない部分があります。そこで、どうしても単に家族に期待するというだけではなくて、例えば行政的な施策、特に教育上の施策、学校内のカウンセラーであるとか、特に評価権のない人間に相談できるシステム、評価権というのは成績をつける、内申書をつけるという権限を握っていない人間に相談できるシステムを早急につくらないと、家族の中で疎外されている子供は結局救われないという可能性が高いと思います。
  26. 河合隼雄

    参考人河合隼雄君) 親子関係も簡単に言いますと、親が本当に自分の全部をさらけ出して子供と会えるかということです。今おっしゃったとおりで、そこに関係ができればもう絶対大丈夫です。  一つわかりやすい例を挙げますと、これは援助交際ではなくてもっと昔の話で、いわゆる不純異性交遊というので男の子がたくさんできて性関係があるような子供がありました。それを聞いた父親はたこ焼きをやいておられたんですね。その人が娘に、一晩つき合えと、お父さんが一晩何をしているか見に来いと言って、たこ焼きをやっておるところを陰から見させていたんです。そうすると、父親がたこ焼きを売るのにどれだけ愛想を言ったり、それから酔っぱらいにうまく言ったり、そしてそのときだってもうかるお金が三百円とか四百円とかそういうものでしょう。一生懸命にお父さんがたこ焼きをしてお金もうけをしているところを一晩娘に見せましたら、娘はそのときからもう変わってしまうんです。こうしておれは生きているんだという姿を見せようというその迫力が通じるんですね。  ついでに言っておきますけれども、この話を聞いて、よし、おれもやろうとまねをした人があるんですが、それは実は判事さんです。働いているところを見せようというので、今度自分が裁判をするから傍聴に来いというので子供を見に来させたら、子供は帰ってどう言ったかというと、弁護士と検事は格好がいい、お父さんは何もしていないじゃないかと。後ろに座っている人に小さい声であんたどう思うとかと言って、あんなに格好の悪い仕事をやってよくたくさん月給をもらっているなということで、それは全然役に立たなかったんです。  私はそのときに言ったんですが、何か人まねしてやろうと思うときにもうだめなんですよ。自分の持っているものをばんとどうぶつけるかということです。ただし、ある意味では簡単といえば非常に簡単なんですよ、お父さんでもお母さんでも、自分の持っているものをそのままにぱちっと子供にぶつかったら。これは教師でもそうです。そうしたら、これはもう絶対確かで何も心配要らない。  ところが、何度も言うようですが、お金があるということは自分をかけずに金をかけるんですね。つまり、息子を呼んできて一対一で何だおまえと言うぐらいだったら、なあ、金をやるからやるなよとかそういうふうな格好になって、どうしても自分をかけられない。だから、関係性と言われましたが、我々カウンセラーが会っていて、結局そればかりやっているみたいなものです。  子供が問題を起こして、お父さんが来られてお母さんが来られて、子供の目の前で夫婦げんかを華やかにやられて、もうそれで変わった子もいます。そのときは死に物狂いでけんかをされますから、そうするとその姿を見て子供は変わるわけですね。そういうときに、本当に我田引水みたいで、宮台さんが言ってくださったから申し上げますけれども、我々のようにひたすら話を聞く人間といいますか、本当に話を聞いていたら変わるんですから。本当に不思議なんです。言うだけ言ってしまったら自分がわかるんでしょうね。だから、じっくり話を聞いている人がいれば変わるということは非常に大事だと思います。  以上です。
  27. 有働正治

    有働正治君 生活安全局長が寂しそうですので、ちょっとお尋ねします。  先ほど局長さんも、今後の課題として、地方分権その他社会情勢、いろんな変化に応じていろいろ検討もしておられる、またそういう立場で対応したいとおっしゃられた点で、警察としても少し念頭に置いて御検討いただきたいという意味で問題提起としてやらせていただこうと思っているのは、実は住宅地に対するパチンコ店の出店問題が全国的にかなり問題になっているようで、私のところにも訴えがございましたので、あえてきょうはその問題についてちょっとお尋ねしたいと思いまして、実はここに写真を持ってまいりました。(写真を示す)  これは東京都練馬区の光が丘パークタウンという二十五階建ての住都公団の住宅棟なんです。二十五階で相当大きいんです。皆さん方は非常に住環境もいいということでここを購入されたら、ところが一階がパチンコ店になったと。住居を変更してその後になったということで、高いローンを払って全く生活の居をここに移したのにもかかわらず、その後大きな変化が起きて大変迷惑している、こういう問題がここで一つ起きています。  これは鎌倉市の深沢というところですけれども、ちょっと小さい写真であれですが、高層住宅があります。その手前に、現在はコイン洗車場なんですけれども、ここにパチンコ店を建設されるという予定になっていると。  下の写真は千葉市緑区のあすみが丘というところで、これは東急が開発いたしました高級住宅地で、四自治会二千五百世帯の方々がお住みです。開発されました東急さん自身もちょっとイメージが損じられたと苦慮しておられるようですけれども、後からここにパチンコ店ができ、これは前側にあるということです。  それから、これは大阪府堺市の泉北ニュータウンなんですけれども、全体が第一種低層住居専用地域として、文字どおり住宅地域がどっとあるわけです。ここに赤い印をつけたのが実は進出するパチンコ店で、その住居専用地域のわきにでんと構えたこういう計画があるということなんですね。  例えば、東京都江東区東陽二丁目のパチンコ店パーラー・メッセという出店問題、現地から私にぜひ見ていただけないかという住民方々がございました。これは昨年起こった問題なんですけれども、東陽二丁目の住民の三倍に相当する一万四千人の方々が、パチンコ店がここに進出しては困ると、かなり強い要望で運動も起こされた。と申しますのは、この地域というのは青少年育成センターづくりを目指す文教地区だと。二つの小学校、高校、図書館などが近くにありまして、建築基準法の高さ制限十メートル以内をもオーバーしてつくられたり、換金所がパチンコ店の敷地内に計画されていたり等々いろいろありまして、一万四千人の署名が集まるほど広がっていった、これは住民の三倍だと。  こういうふうにせっかく環境のいいあるいは住環境を考慮して住みついたところにパチンコ店が進出したということで、住民とのかかわりでかなり全国的に問題になっていると。こういう点あたりは警察としてどう把握しておられるのか、そこら辺を簡単にまず御説明いただけたらと。その上で、対策について一、二お尋ねしたいと思います。
  28. 泉幸伸

    政府委員泉幸伸君) もう既に御案内のとおりかと思いますが、風俗営業につきましての立地制限につきましては、良好な風俗環境を保全するためということで、主として住居が多数集合しており、住居以外の用途に供される土地が少ない地域につきましては新規営業所の設置は許可しないということで、そういう考え方のもとに、御案内のとおり風営法の四条及び施行令の六条に今申しましたような考え方を規定しております。この六条を受けまして、各都道府県条例において具体的な地域あるいはある特定の建物からの距離等についての規制が設けられておるということでございます。  その際におきましても、特に政令におきまして「風俗営業の種類、営業の態様その他の事情に応じて、」そのような規制の制限を条例で行うに当たりましては「良好な風俗環境を保全するため必要最小限度のものであること。」というふうに定められておりまして、これに従いまして各都道府県におきまして条例でもって具体的に定めておるということでございます。
  29. 有働正治

    有働正治君 そこで、こういう問題が地域住民との間でかなり生じているという認識はございませんでしょうか、その点だけ。そういう法令なりなんなりについては私も承知しているんですけれども。
  30. 泉幸伸

    政府委員泉幸伸君) 幾つかの地域におきまして、特にパチンコ店新規開店につきまして地域住民が反対されているというような状況があることは承知しております。
  31. 有働正治

    有働正治君 そこで、ちょっとお尋ねしたいんですけれども、この方々パチンコ店そのものを否定するとかそういう立場では毛頭ないんですね、問題は住宅地に対してパチンコ店が進出していることについてはいかがなものでしょうかと。それは静かに暮らしたいという状況、青少年への影響だとか、騒音だとか、交通問題だとか、あるいは町壊しとのかかわりとか、そういう点からいって住宅地に対してのパチンコ店建設については検討願いたい、こういう立場であることは明瞭のようです。  そこで、この方々がおっしゃっておられるには、一つは、確認申請が出たときには事前協議的にいろいろ条件が整備されてもう大体終わりでめどがついているということなので、確認申請の前に住民方々にこういう形で進出するという説明会等をきちっとやっていただくというのを義務づけて、そして住民の合意と納得の上で町づくりの上からいっても住環境の問題からいってもやるべきではないかと。  そういう点で、公安委員会許可要件に、住民への確認申請説明会と、一番地域の実情や状況を知っているのは市町村長さんですから、都道府県よりもう少しレベルを下に落としていただいて、そういう市町村長、自治体の同意を盛り込むような方向で法改正ができないだろうかというのが一点なんです。  それともう一つは、住居集合地域と周辺地域の保護規定を強化していただきたい。つまり、施行令六条一項のイで言うところの住居集合地域で、都道府県条例で機械的に用途地域で区切ることには問題が現実的に生じていると。つまり、準工業地域でもマンション等が建ち並んでいる地域は多いわけですし、団地の中に進出したりあるいは近隣に進出したり等々がありますので、そういう点からいって、改正として都道府県条例で定めるというだけでなくて、都道府県及び市町村の条例ということで市町村ということも考慮願いたい。  それから、施行令六条一項のイの中で、住居が多数集合しており住居以外の用途に供される土地が少ない地域及びその周辺の地域、あるいは住居集合地域及び当該施設の敷地の周囲おおむね百メートルの区域を限度とし、その区域内の地域について指定を行うとか、一定程度をしていただかないと文字どおり住居専用地域のわきに置かれると。こういう点で風営法改正等の上で御検討願いたいという要望が出されています。  この方々は全国連絡会というのをつくりまして、東京だけではありません、私の郷里の熊本だとか神奈川、静岡、群馬、岩手、千葉、大阪等々かなりの都府県にまたがっての情報を連絡しながらお互いに住環境を守りたいということなんで、先ほど泉生活安全局長さんも今後いろいろ検討するとおっしゃっているので、そういう課題の一つで念頭に置いていただけないだろうかということだけ。  それから、両参考人に一点だけ。こういう問題について何か御感想でもあればお聞かせ願えれば、簡単で結構ですから。
  32. 泉幸伸

    政府委員泉幸伸君) 今、風適法の改正につきまして具体的な方向をお示しになって検討しろという御指摘でございます。この委員会におきましてそういう御指摘があったということは、当然ながら十分に念頭に置きます。  ただ、今後の検討の中で、風適法は一定の業種につきまして公安委員会警察規制の権限を与えていただいておる法律でございます。その規制をどこまで厳しくするのかという全体の中でそういう権限は、果たして一つのある特定の業種について警察あるいは公安委員会がどこまで厳しく規制するのか、それは風適法の全体の目的であります善良風俗環境保持という観点から考えられるべき、またその他の法益との均衡の中で考えられていくべき問題だろうと思っております。また、市町村に条例をおろすことが事務の配分の関係で可能なのかどうかということもいろいろ問題はあろうかと思います。  ただ、冒頭申しましたように、当小委員会でその旨の御指摘があったということは当然念頭に置いて必要な検討はしてまいります。
  33. 宮台真司

    参考人宮台真司君) では、立地規制という問題に関してテレクラ絡みのことをちょっとだけお話しさせていただきます。  テレクラ条例は自治体によってまちまちなんですけれども、テレクラが立地できにくい方向に規制されていることは恐らく御存じのとおりだと思うんです。ところが、特に地方都市ではそうなんですが、テレクラ電話風俗絡みの犯罪が起きやすいです。  そのときに、特に地方でありますと世間体がありますので訴え出ることが難しく、その場合、実はテレクラのフロントがかなり大きな役割を果たしてきました。つまりフロントで要注意客をチェックいたしまして、女性につなぐときに、この客とは会わないようにというふうなやり方をしたりしていたところもございます。  ところが、テレクラがお店として立地できなくなりますと、ツーショットダイヤルや伝言ダイヤルやコンピューター、インターネットに移行していきます。そういたしますと、要するに女性ないし少女たちに情報を伝える役割を果たしていた場所が消えてしまいます。テレクラ立地に関しては住民運動等がございまして、住宅地に立地するのは嫌だというのはこれは当然のことだと思いますが、その結果、テレクラがどこにも立地できなくなってしまうことは実はテレクラをめぐるコミュニケーションの安全ということから考えると逆に危険でございます。  私がよく申し上げているのは、テレクラの早取り制と言われる不特定の人間をランダムにつなぐやり方をやめるあるいはコンピューターに自動的に回線をつながせるやり方をやめて、すべてフロントを通して回線をつないだ記録を全部つけさせるといったような透明化するやり方の方が恐らくよいだろうというふうに思います。  したがって、テレクラ条例に関しましては、住民運動等がありましてお店がなくなる方向、これはややもすれば不透明化する方向に行きやすいので、何をすればどうなるのかというシミュレーションをきちんとやった上でテレクラ規制をやっていただいた方が恐らくいいだろうというふうに僕は思っております。
  34. 小林元

    小林元君 両先生、きょうは本当に御苦労さまでございます。  学校の方でいろいろ問題といいますか、中退とか不登校とかそういう自分に向けたマイナスの行動というんですか、それから援助交際とかいじめというのは外向けというんですか、行動型と言っていいのかわかりませんけれども、そういうものはいろんな原因、背景があるわけです。学校サイドから見ますと、私の経験では事なかれ主義の管理型学校に非常に問題が多いというふうに今までは見ていたんですが、ただ援助交際の場合、そういう受けとめ方がいいのかどうか、何か類似性といいますか、その辺の問題とはまた全く別の問題かどうか、ちょっとひとつお伺いしたい。  それから、各県で条例をつくっておりますけれども、こういう規制というのは河合参考人は必要だというようなお話がありましたけれども、両参考人並びに警察庁の立場から、現在各県で制定されているこの条例の有効性というか効用、そういうものについてどのように受けとめておられるか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  35. 河合隼雄

    参考人河合隼雄君) 学校の管理の問題です。確かに管理体制の厳しいところで問題が起こりやすいということが言われておったんですけれども、宮台さんから恐らく今答えが出てくると思うんですが、ちょっともうそういうことでは言い切れないぐらい広い問題になってしまった感じがいたします。  要するに、学校のそういうあり方等と無関係に非常に広くいろんな問題が起こってきている。むしろ今は、先ほども言いましたが、管理をするよりはゆっくり話を聞いて話し合いをすることによってじっくり解決するという方向に向かっておりまして、これは私は随分成功してきているというふうに思っております。それはスクールカウンセラーがやっておるわけですが、ただ問題は、スクールカウンセラーの数が非常に少ないということですね。そういうことをできる者も少ないですし、これがちょっとこれからのネックになるんではないかというふうに思います。  私は条例の方はちょっとわかりませんので、余りちゃんとしたお答えができないと思います。宮台さんにお願いしたいと思います。
  36. 宮台真司

    参考人宮台真司君) 管理教育ということよりももう少し包括的な概念ですけれども、今の多くの学校にはクラスがありますね。つまり、朝からお昼ないし夕方まで一つの同じクラスの中で同じ人間と一緒に暮らすという日本では戦前からずっととられてきた学校のあり方でありますが、これがいじめ、万引き、援助交際、いろいろな非行現象に関してマイナスに機能しているという状況が目立ってきています。  それはどういうことかと申しますと、まずクラスが以前のような仲間意識の範囲であることがもう全く難しくなっておりまして、要するにクラスは無関係な人間の集まりという状況であります。これは日本全国同じであります。小学校から大学までそうです。無関係の人間と一緒にいることによるストレスが大変高まっていまして、であるがゆえにいじめも大変起こりやすいし、さらに自分の周りにいる少数の仲間への同調圧力も大変働きやすくなっております。私は、その根本的な施策として学校におけるクラス制度というのを見直さないと、恐らく学校内ストレスあるいは学校の友達間で働く同調圧力を低減することはできないんじゃないかというふうに一つ思っております。  あと、スクールカウンセラーにつきましては、河合先生のおっしゃったように、とにかくもっと数をふやしていただきたい。これは先進国、G7の国々ではどこでもやっていることでありまして、日本は余りにもこの辺の動きが遅いので、私としては大変にいら立つということであります。  それと、条例絡みのことに関して言いますと、例えば東京都でテレクラ規制条例が都議会に上程されていますけれども、東京都の方は各自治体のものをにらみながらなかなかおもしろい規定をつくっております。従来の他の自治体を見ますと、公共機関から五百メートル圏内には立地させないというふうにいたしますと、実は住宅地に立地してもいいんだみたいな妙な形になっているところもございます。東京都の場合には、第一種、第二種の低層住居専用地域には立地できなくさせております。逆に、一部盛り場には残り得るような形にしています。  テレクラの立地ということに関して言えば、テレクラは新宿歌舞伎町のようないかにも風俗産業ないしその関連業種が集まっている場所に立地するのが私はよいと思っています。そこに立地するのは自然ですが、そこから追い出して国道沿いとか住宅地の外れに立地するのは逆にいかにも不自然で、パチンコの立地と同じように問題の多い施策なので、私はこの辺は考えてやっていただきたいなと常々思っております。
  37. 泉幸伸

    政府委員泉幸伸君) きょう御議論になっております援助交際と言われる少女売春につきましては、従前から少女の相手方となる大人に大きな責任があるという基本的な立場で対処してまいってきております。その意味では、相手方となる大人を処罰するいわゆる淫行防止条項を含む青少年保護育成条例というのは、先ほど有効かという御下問でありましたので、非常に有効だと思っております。  それから、その誘因となることが多いテレクラにつきまして一定の規制を設けるということも、特にテレクラ条例において、未成年者の関与、未成年者に対する影響を少なくするための規制を行うということがほとんどの都道府県で行われております。この点、警察の立場から考えますと、私どもとしては非常に有効な条項であろうというふうに考えております。
  38. 河合隼雄

    参考人河合隼雄君) 今、宮台さんが言われましたクラスの問題ですが、ちょっと一言申し上げたいのは、やはりそのとおりなんです。そこに気がついて、クラスの人たちの人間関係というのをよくするために非常に努力している先生方もおられます。私は現場の先生と非常に親しいのでそういう例をたくさん知っているんですが、現場の先生がそういう点に非常に関心を持って全体の人間関係を考えながら経営しておられるようなところはやはり問題が少ないと思いますし、そういう先生方の工夫しておられることを私は何かもっと全国の先生方に知っていただくようなこともやってみたいなというふうに思っております。  以上です。
  39. 関根則之

    関根則之君 それじゃ、一言。  宮台参考人にお尋ねしますけれども、今援助交際という言葉を使っていますね。どうしてずばり売春なんだよということを言わないんだろうか。それは概念として、ちょっとお茶飲むのが入るから援助交際という言葉でくくるんであって、しかしただお茶飲むために金を払っているばか者はおらぬはずなんで、必ずそれは結びつく、そこを前提としているわけですからね。だから大変なことなんだよ、売春に結びつくことなんだよという形に、いけないことはいけないんだと、そういう物の考え方をしちゃった方がいいんじゃないか。  何か優しく優しく、チャンスをつくって関係をつけて抱きとめてやってと、そういう感じばかりが非常に強いようなんだけれども、もちろんそういう面も必要だと思いますが、もう一方で、きちっと言うことは言う。どうも警察なんかは、大したことないんだよというような感じで援助交際なんて言っているんじゃないかと思うんですよ。これは少女売春だときちっと決めつけた方がいいんじゃないかと思うんですが、宮台参考人、いかがですか、感じとして。
  40. 宮台真司

    参考人宮台真司君) 援助交際という言葉にはいろんな用法があるので、多分今お尋ねの件は、売春援助交際と呼ぶ呼び方に関するものだというふうに受けとめましてお答えいたします。  実は少女たちの間では売春、ウリというふうに言うのが一般的でありまして、援助交際という言葉は使われません。テレクラで男を勧誘する、伝言ダイヤルで男を勧誘する、あるいは男が街頭少女を勧誘するときに、つまり勧誘用語として援助交際という言葉は使われます。これは簡単に言えば、日本に伝統的なえんきょく表現であります。  つまり、少女から見ればおやじさんたち、男たちに罪悪感を抱かせないような表現でありますし、男たちから言わせれば、勧誘の場面でいえば少女たちに罪悪感を抱かせないための表現ということでありまして、当人たちは売春であるということは重々承知であります。したがって、少女たちの間で援助交際という言葉は使われることはむしろまれであります。ウリ、売春というふうな言葉をはっきり使っておりますので、その辺、若干マスコミの報じ方に誤解があるようです。
  41. 泉幸伸

    政府委員泉幸伸君) 警察におきましても、先ほど申しましたように、いわゆる援助交際と言われる、売春と言っておりますが、正確に内部で用いるときには淫行させる行為あるいは少女相手のみだらな性行為という形で分類し、また内部の指示もそのような形でやっております。
  42. 真鍋賢二

    ○小委員長真鍋賢二君) 以上をもちまして、政府及び参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の御両名には、長時間にわたりまして御出席をいただき、貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。小委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時一分散会