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1997-06-10 第140回国会 参議院 大蔵委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年六月十日(火曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  六月六日     辞任         補欠選任      林 久美子君     益田 洋介君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         松浦 孝治君     理 事                 石川  弘君                 河本 英典君                 荒木 清寛君                 鈴木 和美君                 久保  亘君     委 員                 阿部 正俊君                 上杉 光弘君                 岡  利定君                 片山虎之助君                 金田 勝年君                 清水 達雄君                 楢崎 泰昌君                 岩瀬 良三君                 海野 義孝君                 白浜 一良君                 寺崎 昭久君                 益田 洋介君                 及川 一夫君                 千葉 景子君                 吉岡 吉典君                 山口 哲夫君    国務大臣        内閣総理大臣   橋本龍太郎君        大 蔵 大 臣  三塚  博君    政府委員        経済企画庁調整        局長       土志田征一君        環境庁企画調整        局地球環境部長  浜中 裕徳君        法務省民事局長  濱崎 恭生君        外務省欧亜局長  浦部 和好君        外務省経済局長  野上 義二君        大蔵政務次官   西田 吉宏君        大蔵大臣官房金        融検査部長    中川 隆進君        大蔵大臣官房総        務審議官     武藤 敏郎君        大蔵省主計局次        長        林  正和君        大蔵省主税局長  薄井 信明君        大蔵省理財局長  伏屋 和彦君        大蔵省証券局長  長野 厖士君        大蔵省銀行局長  山口 公生君        大蔵省国際金融        局長       榊原 英資君        自治省財政局長  二橋 正弘君    事務局側        常任委員会専門        員        小林 正二君    説明員        農林水産省経済        局金融課長    白須 敏朗君    参考人        日本銀行総裁   松下 康雄君     —————————————   本日の会議に付した案件日本銀行法案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る六日、林久美子君が委員を辞任され、その補欠として益田洋介君が選任されました。     —————————————
  3. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 日本銀行法案を議題とし、前回に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 平成会寺崎でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  本日は、金融機関信用秩序維持のための業務あり方及びその最終責任所在などをテーマに質疑を行いたいと存じます。  最初に大蔵大臣にお尋ねいたしますが、今回の日本銀行法改正案は、第三十八条で信用秩序維持に資するための業務について規定しておりますけれども、これを素直に読みますと、大蔵大臣日本銀行特別融資、いわゆる日銀特融に関する発動提案権とでも言うんでしょうか、をお持ちになり、これに対して日銀拒否権拒否をする権利ないしは裁量権を有するようにも解釈できるわけでございます。  つまり、大蔵大臣日銀に対して要請することができる、日銀はこれを受けて行うことができるというのは、行わなくてもいいのかという疑問につながるわけでありますけれども、こういう規定をこのままにしておきますと、いわゆる最終貸し手責任貸し手機能というのでしょうか、この最後貸し手機能の実行について最終的な責任がどこにあるのかやや不明確のようにも思えます。  したがいまして、大臣にお尋ねしたいのは、信用秩序維持に係る最終責任はどこにあるとお考えなのか、あるいは日銀大蔵共管だとお考えなのか、ないしは責任を分担しているというようにお考えなのか、その辺をお尋ねいたします。
  5. 三塚博

    国務大臣三塚博君) お答え申し上げます。  秩序維持につきましては、中央銀行研究会報告書におきまして、「金融機関破綻処理等には行政的手法を要することから、最終的責任政府にあるが、日本銀行は「最後の貸手」として重要な役割を担う必要がある。」と申されております。「その際の日本銀行役割は、基本的には、信用秩序維持観点から、適切な流動性を供給していくこと」であると指摘をされております。こうした考え方から、信用秩序維持については政府日銀共管事項ではなく、基本的に政府責任とするものであります。他方日本銀行は、日銀特融等措置を通じ、政府の行う信用秩序に寄与するという重要な役割を担うものであります。  ただし、実際の破綻処理等におきましては、政府日銀が密接な連携をとりつつ対処いたしてきておるところでございます。
  6. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 最終的な責任政府にあるというお考えを示されて、その点は明らかなんですけれども日本銀行大蔵大臣から日銀特融要請を受けたとき、拒否権がある、ないしは百億の特融をしてくれということに対して独自の調査、判断から、いや二百億は必要ですとか、逆に五十億で済みますとか、そういうことを判断し、実行するお立場にあるとお考えかどうか、日銀にお尋ねします。
  7. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 今回の日銀法改正案におきまして、信用秩序維持のために特に必要と認められます業務につきましては、大蔵大臣から日本銀行への要請がなされました場合に、日本銀行政策委員会の議決を経た上で当該業務を行うことができるということにされているところでございます。  したがいまして、実際にこの条文のもとで大蔵大臣からの要請がなされました場合に、日銀政策委員会におきましては信用秩序維持に資するという日銀目的に照らし、また中央銀行資金性格を踏まえつつ、当該業務実施が適当かどうかをみずからの責任において判断していくということになるものと考えております。  そして、日本銀行といたしましては、こうした法律枠組みのもとで、これまでと同様に政府とも密接な連絡をとり、十分情報意見を交換しながら信用秩序維持に資するという中央銀行目的達成のために対応に誤りなきを期していくということは当然の要請であろうと考えております。
  8. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 大変丁寧な御説明なのでちょっとわかりづらかったんですけれども、今政策委員会は独自の責任判断すべき立場にあると、こう申されたわけでしょうか。ということは、裁量権は認めているという立場でしょうか。
  9. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 条文のそこの箇所の読み方におきましては、政策委員会がその他の政策委員会の権限とされております事案と同様に、判断の上で自分の責任決定をしていくということでございます。  ただ、それが実際にどのように運営されてまいりますかという点につきましては、先ほども申し上げましたように、信用秩序維持に資するという重要な、政府にとりましてもまた日銀にとりましても重要な目的達成のために、その段階におきまして適切な措置が速やかにとれるような、そういう努力をやってまいることが必要である、そのように私ども考えております。
  10. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 そうしますと、結果として大蔵大臣要請内容をそのまま受けることもあるけれども、その要請を読みかえて別の結論を出すということもあり得るというように考えていいんでしょうか。
  11. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 大蔵大臣の御要請があります前提としましては、当然に大蔵省日銀がそれぞれの持っております情報を交換し、また意見を交換してこういう信用秩序維持というような緊要な問題に対しまして、適切な対応をとるべく当然内容のすり合わせをするということは双方に要請をされているところであると思います。  私ども、これまでも特融におきましては常にそういう考え方大蔵省との協議のもとで適切に対応してまいったと思うのでございますけれども、今後におきましてもそのような措置をとってまいらなければならないと考えております。
  12. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 この日本銀行法改正案の第四条には、日銀は「常に政府連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」と書かれておりますから、そうした日銀特融を実行するに当たっても密なる連絡をとるものと私も思いますが、それならこの三十八条は、大蔵大臣要請があったときは必要な業務日銀は行わなければならないと書いた方が私はわかりやすいんではないか。行うことができると書きますと、かえって責任所在があいまいになったようなそんな印象を持ちます。御答弁は結構でございます。  ところで、大蔵省にお尋ねしますが、三十八条の第一項で、日銀に対する要請事項の中に「資金の貸付けその他」とございます。第二項は「特別の条件による資金の貸付けその他」とありますが、一項めと二項めの表現を変えたのはどういう理由でしょうか。
  13. 山口公生

    政府委員山口公生君) 「資金の貸付けその他の信用秩序維持のために必要と認められる業務」ということを三十八条一項に規定してございますが、貸し付けのほかに例えば出資劣後ローンなどの手段があるからでございます。  先生の御指摘は、二項めは「特別の条件による資金の貸付けその他の信用秩序の」ということで、その条項での「その他」というのは同じ意味でございます。「特別の条件」というものは、担保をとらないとか特別な利率でというようなことを想定しておるわけでございます。
  14. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 お尋ねしているのは、一項めと二項めの貸し付けというのは内容が違うんですかと、そういう意味です。
  15. 山口公生

    政府委員山口公生君) それは同じでございます。
  16. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 法文というのは相当丁寧に書くものだと昔から教わっておりますし、第一項めに「特別の条件による」と書いて第二項めにそれを省略されたというのであればまだ説明がつくわけでありますが、後から出てくる条項に「特別の条件による」というのは私は余り適切じゃないと思いますけれども、いかがでしょうか。
  17. 山口公生

    政府委員山口公生君) 第二項めに「特別の条件による」と書いてありますのは、いわゆる特融、特別な融資ということで、通常業務と異なるということをここではっきりさせるために書いたわけでございます。
  18. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 一項めと二項めの貸し付けというのは、資金貸し付けというのはそんなに違わない内容だと受けとめてよろしいですか。
  19. 山口公生

    政府委員山口公生君) 三十八条の一項めは、「資金の貸付けその他」ということで、広く通常業務を含めて業務性格として書いてございます。二項めは、いわゆる特融というものは、「特別の条件による」というところがいわゆる特融でございますので、二項めには、日本銀行がそれを受けて決定するのは特別な条件によるのかあるいは通常条件によるのかということも含めてお決めになると、こういう趣旨でございます。
  20. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 大蔵大臣にお尋ねしますが、三十八条に基づく要請を行う場合には、あらかじめ閣議決定とか了承が必要だとお考えなのか、あるいは三十八条の要請を行う際に一般的な基準があればお示し願いたいと思います。
  21. 山口公生

    政府委員山口公生君) 信用秩序維持大蔵大臣所管事項でございますので、閣議に諮ってということはございません。  それから、大蔵大臣特融要請するときはどういう基準なのかというお尋ねでございますが、これは金融機関業務または財産その他の状況に照らしまして信用秩序維持に重要な支障を生じるおそれがあると認めるときでございまして、また大蔵大臣信用秩序をめぐる情勢を総合的に判断しまして、出資融資等のうち信用秩序維持観点から最も望ましい手段を選択し日本銀行にそれを要請するものでございます。
  22. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 前段について大臣にもう一度お尋ねしますが、金融システム破綻につながりかねないそういう状況のもとで三十八条の要請をされるケースがあると思います。つまり、一歩間違ったりタイミングを失すると内閣の命運、日本経済破綻に追い込みかねない、そういう重大な問題を決心するので、確かに大蔵大臣専管事項ではございましょうけれども、やはり内閣としての合意形成といいましょうか了解というのが手続としても必要なのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  23. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 本件は大蔵大臣財政金融を担当するというふうに明記をされております。先ほど銀行局長が言われました基準に基づいて方向を、また最終決定を行うことになるわけでありますが、議院内閣制のもとにおける内閣あり方ということであれば、当然総理大臣にはその報告を申し上げ了承を得るというのが当然の内閣の閣僚の一人としての、特に重要な案件でございますからそういうことであろうと考えます。
  24. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 日銀総裁にお尋ねいたします。  第三十八条の規定には、大蔵大臣から要請があった場合には、「特別の条件による資金の貸付けその他の信用秩序維持のために必要と認められる業務を行うことができる。」と。この、その他の必要な業務というのはどういう内容を具体的に想定されるものと受けとめられておりますか。
  25. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 実例を申し上げますと、これまでの破綻処理の際にも実施をいたしましたような必要に応ずる出資機能というようなものも考えられると思います。その他の点につきましては、やはり問題が起こりました都度に具体的には詰めていくことになりますが、その選択の幅というものはこの条文によって基本的に与えられているというふうに思っております。
  26. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 山口局長にお尋ねしますが、先ほど、その他の業務というのは例えばということで劣後ローンということを挙げられたと思いますが、もう少し限定列挙的に挙げられませんですか。どういう方法考えられるのか。
  27. 山口公生

    政府委員山口公生君) ほかに出資等考えられると思います。これまでも出資劣後ローン信用秩序維持に寄与するために出しておられるところでございます。
  28. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 日銀総裁にお尋ねいたしますが、日銀金融政策に係る自主性独立性が高まること、あるいは日銀特融その他必要な業務発動するということになりますと、政府あるいは政治的な圧力もかかりやすいのかなというように推測するわけでありますけれども、まず金融政策に関して、通貨価値の安定と決済システムの安定が相反するようなケースが生じた場合、どちらを優先して考えるべきとお考えなのか。  例えば、後ほども触れますけれども債権回収銀行経営日銀がかかわるようになっております。例えば、そういう状況の中で、今公定歩合を上げないとインフレ圧力が強まるんではないかという事態が生じ、あるいは公定歩合を引き上げると銀行経営にマイナスの影響が出るというようなケースもないとは言えないと思います。そうした場合にどちらを優先されるのか、まずその辺の御見解をお尋ねしたいと思います。
  29. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 国内物価の安定といいますことと、それから決済システムの安定を通じました金融システムの安定ということとは、通貨通貨としての十分に機能を果たしてまいりますために両方とも不可欠な条件でございます。  私どもといたしましては、基本的に申し上げれば、この二つは対立をする、あるいは一方が優先されて他方が後回しにされるといった性格のものではないように考えているところでございます。  これまでの内外の経験を振り返ってみましても、やはり金融システムに動揺を来しますのは、物価景気が非常に大きく変動をしている場合でございます。金融システムは、その場合、景気物価状況を念頭に置きまして、インフレなき持続的成長を実現する目的のために実施をすべきものだと考えておりますが、そういった政策運営をいたしますことによって、全体として見れば、それが金融システムの安定にも資するというふうに考えるわけでございます。  それは基本的な場合でございますので、個別の金融機関経営を取り上げますればそこに問題が生ずることはあり得るわけでありますが、それが金融機関の間の円滑な資金決済に深刻な影響を与えるおそれがあるというような場合には、私どもとしましては、最後貸し手機能を発揮いたしまして、流動性を供給し、円滑な資金決済の確保を図るというような手法で対処してまいることになるわけでございます。  このように、中央銀行におきましては、金融政策によるマクロ的な金融経済環境の安定と同時に、最後貸し手として金融システムの安定に資するという役割が両方与えられておりまして、これらを通じまして、通貨が本来の機能を十分に発揮してまいりますように努力をしてまいりたいと思っております。
  30. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 先ほど、三十八条のその他の業務について日銀大蔵省にどういう内容を指しているのか、具体的にお伺いしたいわけでありますけれども、それに関連して大蔵省にお尋ねいたします。  昭和四十年の証券不況のときに山一証券や大井証券に対して日銀特融が行われました。これは現行日本銀行法二十五条に基づく特別融資ということで大変理解がしやすいわけでありますけれども、その後、平成六年の東京協和、安全の両信用組合を初め、その後のコスモ信用とか兵庫銀行などの経営破綻処理のためにとりました幾つかの方法というのは、私はこの二十五条の規定を少し逸脱しているんではないかというように考えております。  つまり、新金融安定化基金向け資金拠出、あるいは整理回収銀行向け出資というのは、本来は日銀要請するべき内容ではなくて、財政が、政府責任で行うべき問題ではないかというように考えております。奉加帳という言葉が聞かれますけれども、私はそうした奉加帳の筆頭に日銀が名前を連ねることは好ましいことではないと思います。公的資金処理すべきところを日銀肩がわりするというのは好ましい姿だとは私は思えません。  そこで、大蔵省にお尋ねしますけれども日銀資金による出資、それから資金拠出は二十五条の拡大解釈ではないかという見解、それから、したがって新しい改正法案にも持ち込むべきではないという見解に対してお考えをお尋ねしたいと思います。
  31. 山口公生

    政府委員山口公生君) 御存じのように、現行の二十五条による発動でございまして、現行の二十五条は、「日本銀行ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ信用制度保持育成ノ為必要ナル業務行フコトヲ得」というふうになっておりまして、まさに二十五条の趣旨にかんがみ、そういった融資あるいは出資拠出等をやっておるわけでございます。  確かに、先生がおっしゃるように、公的資金とのかかわりということがしばしば議論になるわけでございますが、日本銀行のこの特融に関しましては、基本的には信用秩序維持に資するということにつきましては現行法と今度の新しい法律と同じ考え方でございます。ただ、手続がちょっと逆転した形、要請するというのは逆転した形になっておりますし、政策委員会のそうした自主性を尊重するという形になっておりますが、基本的な考え方は同様でございまして、その信用秩序維持のために必要である措置はさまざまなものがあり得るだろうということで対処をこれまでもやっていただいておりますし、これからもそれをやっていただくことが我が国の信用制度維持に極めて寄与するものだと思うわけでございます。  政府公的資金による対応ということの御指摘がございましたが、これは実は先通常国会におきましてもさまざまな議論がございました。まず、ノンバンクに関しては、これはもう公的関与は避けたいというようなほぼコンセンサスができておりますけれども、その他につきましては、金融三法におきましてお認めいただきましたのは、信用組合破綻に関する部分でございまして、政府保証をつけ得るという形で関与をさせていただいて、その範囲で今お認めいただいておりまして、そういった枠組みの中で、当局としては適切に信用秩序維持あるいは預金者保護に対処してまいりたいと、こういうことでございます。
  32. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 今の日銀資金による出資、それから資金拠出は好ましくないというのはもう御存じのとおり、それをやること、また特融にしても長期化するということになれば、その資金は当然寝てしまい、日銀からの国庫納付金の減少につながるという関係にあるわけでございます。  もし、国庫納付金格好でその出資金相当分が入ってくれば、これは国の予算の一部となるわけでありますから、それの使途については国会議論をし審議し、承認を受けるという格好になると思います。にもかかわらず、今のような日銀出資ということになりますと、まさに日銀判断大蔵省判断だけで行えるということになりまして、私は正常じゃないし、その意味で、日銀資金による出資というのは国の財政肩がわりではないか、やめるべきではないかということを申し上げているわけでありますが、そういう視点について、おかしいですかね。
  33. 山口公生

    政府委員山口公生君) 日本銀行が、こうした貸し付けあるいは出資等機能を持っております。その機能最後貸し手としての役割からきているわけでございまして、この信用秩序維持のために日本銀行のそういった役割を十分に活用するということが最適な場合があるわけでございます。そうしたことを通じまして速やかなる対応を図っていくということも、現実、今日的な課題からしますと非常に大切な機能ではないかというふうに思うわけでございます。
  34. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 危機的な状態に対して速やかに対応するというお考えは理解できます。だからといって国会と無関係であっていいという問題ではないと思いますし、そういう私の主張を何割かでもお認めになるのであれば、この日銀出資だとか資金拠出については、事後的でもいいですから、その部分については国会承認事項とされてはいかがでしょうか。
  35. 山口公生

    政府委員山口公生君) 先生よくおわかりのように、破綻処理の場合、事前に余りそれが明らかになり、また時間がかかるということは対応が非常に不可能だということでございます。その事後的にいかがかというようなお話でございますが、今回の法律によりましても、日本銀行総裁国会への出席義務ということを規定させていただきまして、国会においてそうした問題につき種々の御議論をいただくという形にしておりまして、そうした形でのチェックをさせていただきたいと思っております。
  36. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 先ほど来、日本銀行資金による出資資金拠出にこだわって質問しておりますけれども、その理由というのは、法律解釈あるいは財政テクニックによって、本来日本銀行資金に頼るべきではない内容までも日銀に持ち込んではならないと、持ち込むとまさに日銀の本来の一番大事な貨幣価値の安定という機能が損なわれる心配があるんではないかということからでございます。  平成七年の三月の大蔵委員会で、私は平成七年度予算委嘱審査の質問をさせていただきました。そのとき、問題の一つとして取り上げたのは、建設国債を財源とする新技術事業団出資金が計上されているという問題でございます。出資金をふやして研究開発を助成するといっても、これは実質的に費消される内容であるわけで、私は財政法四条の公債を充てることには疑問があるという立場から質問をさせていただきました。  これに対して、当時の政府委員、きょうもおいでになっておりますが、基礎研究推進のために研究法人に対する出資金の活用を中心に勉強するために計上しました。また、その支出により資産が形成され、その資産から受益が長期にわたるということで公債発行が認められますという御答弁をちょうだいいたしました。  その後の経過で言いますと、四条国債発行対象経費のうち、その内容研究開発費である出資金は毎年一二、三%の伸びを示しております。平成九年は、十五事業団体に対して四千百二十七億円が当初予算として計上されているわけであります。  私は、平成七年のときの答弁には今でも無理があるのではないかと思っておりますし、これは建設国債の流用あるいは赤字国債化ではないかという疑念すら持っているわけであります。そういうようなことを念頭に置きながら先ほど来質問しているわけでありますけれども、似たケースがこの日銀資金による出資なんではないかと。本来は国庫に納付し財政として使ったり判断すべきお金を、日銀の財布の中にあるからといって国が関与しない、国会関与しないというのはおかしいんではないかと。内容は違いますけれども、四条国債を出資金に充ててそれで研究させるという論法、手法にちょっと似通っているものがあるのではないかということを感じているからでございます。  これは、問題の指摘にとどめておきたいと思いますけれども、ぜひ考えていただきたいと思っております。やっぱり出資金資金拠出というのは速やかに国が直接行うべきものに変えていくべきであろうと。御検討願いたいと思いますが、何かコメントございますか。
  37. 山口公生

    政府委員山口公生君) いろいろな形での破綻処理考え方というのは当然あり得るだろうと私ども思いますけれども日本銀行の今回の新しい法体系によりましても、三十八条の第二項で日本銀行政策委員会がその要請に応じるかどうかの意思決定をはっきりするわけでございまして、そのときに日本銀行自身として、例えば財務の健全性について問題がないのかということも恐らく判断材料の一つにされると思います。したがって、この件が政府あるいは大蔵大臣の一方的な意思で、まあ言葉は悪いですが、押しつけでやられるものではないということも御理解を賜ればと思うわけでございます。
  38. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 せっかく山口局長のコメントがございましたので、日銀総裁の御見解もお尋ねしたいと思います。
  39. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 信用秩序維持、それに関連をいたしまして金融機関破綻処理ということは中央銀行の重要な目的の中の一つでございます。  現行法のもとにおきましても、特融の形でそれを実行しているわけでございますけれども、御指摘がございましたような、その場合の国の負担との関係という点につきましては、私どもの現在の法律下での特融に関しましてかねがね四つの原則をつくっているということを申し上げておりますけれども、その中の一つは、日本銀行中央銀行としての財務の健全性を維持していくということでございます。  私どもといたしましては、拠出をいたします資金が将来的に回収のめどが立つということがそういう点におきましては大事な点であるという考えで対処をしてまいりました。今後におきましても、新法のもとにおきましてのこの三十八条業務判断してまいります際には、これまでの四つの原則の考え方というものを引き続き尊重していかなければならないと思っております。
  40. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 日本銀行特別融資あり方についてお尋ねしたいと思います。  これは大蔵省にお尋ねいたしますが、私は日銀特融というのは、金融機関が一時的な流動性不足に陥った場合に限って臨時的につなぎ融資、いわばブリッジローンとして提供されるべきではないかと考えております。それはそれとして、この考え方に沿って言えば、日銀特融というのはいつまでも続ければいいという性格ではなくて、やはり一定の期間を定めて対応するというのがとるべき態度ではないかと思うんですが、特融の期限について大蔵省のお考えをお尋ねしたいと思います。
  41. 山口公生

    政府委員山口公生君) 実は、今回御提案申し上げている法律には広い意味での特融というのは二つ、三十七条と三十八条とございまして、三十八条につきましては、先ほどから御説明申し上げておりますように、いろんな形態があるのでいろいろな手段を講じさせてもらいたいということを申し上げております。  そして三十七条の方は、例えばアメリカで起きたのでございますが、コンピューターが故障しまして一時的にパニックの状態に陥った、瞬時に決済機能がとまってしまいますので、それで融資を一時的にやるという場合があるわけです。これも特別な融資と言えようかと思うわけでございます。その場合には、先生指摘のように、いつまでもだらだら貸していいものではございません。といいますのは、その原因が解消しますとそこはまたもとに戻るわけでございます。したがいまして、三十七条での一時貸し付け的なものにつきましては、一定の期間を限度として担保を徴求することなく資金貸し付けが行われる、これは特別な条件でございますので、そのときには例えば一カ月とかいうような期限があってしかるべきだろうというふうに思うわけでございます。
  42. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 三十八条の場合、これはケース・バイ・ケースになるのかもしれませんが、いかがでしょうか。
  43. 山口公生

    政府委員山口公生君) 三十八条の場合ですと、例えばいろいろなこれまでの木津信組のケースでもございましたし、今度の阪和銀行でも融資があります。それは、預金者が払い戻しを受けるわけです。そのときに現金がございません。したがって、日本銀行が、現行法ですと二十五条で緊急に貸すわけでございます。そういった事態がおさまるまではある程度の残高がふえていくわけでございます。それが、スキームが決まりまして、例えば預金保険機構から損失の穴埋めが、お金が拠出されるということが決まりますと、そのお金が日本銀行の方に回収という形で戻されるわけでございます。  そのための期間というのはケース・バイ・ケースでございますけれども通常ケースはそれほど長い期間日本銀行が貸し続けるということはございませんけれども、スキームがなかなかまとまらない、例えば阪和銀行でようやくスキームがまとまりつつございますけれども、いろいろ問題があってまだ日本銀行が貸し続けておく必要があるということもしばしばあるわけでございます。これを一定期間にいたしますと、延長延長ということをやればいいですけれども、逆にそこで資金がショートしてしまう。そうすると、預金者が窓口へ行ってもお金がない、そうするとまたせっかくの破綻処理のための措置が混乱を来すということがございますので、もちろん節度を保ちながらのことでございますが、その辺は少し弾力的に、幅を持って考えていくべきなのかなというふうに思っております。
  44. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 第三十八条の方の融資につきましては、まさにおっしゃるような状況があり、その中で判断されるんだろうと思いますけれども、いつまでも続けるというのは特融性格になじまないと思いますし、さりとて弾力性を持たないというのも問題だと思っております。  それから、日銀特融を適用する場合のもう一つの条件として、回収の見込みがあるかないかということも大変大きなポイントだと思います。先ほど日銀総裁は、日銀出資は回収見込みのあるものに限るという趣旨の御発言だったと思いますけれども大蔵省にも同じ質問をさせていただきたいと思いますし、万一これは取りっぱぐれるような状態になったら具体的にどう処理されるんでしょうか。
  45. 山口公生

    政府委員山口公生君) 最終的には、先生指摘のように、これは日本銀行の方で御判断をされるということになりますが、今度の法律大蔵大臣要請する際にも、やはり日本銀行の財務の健全性ということについては配慮をしてしかるべきだろうとは思うわけでございます。もちろん、日本銀行にも準備金等の内部留保ということは財務上も認めてございますので、そうした万一の場合の対応はできる形にはしてございますけれども、本来的にそれを当てにして何かをやるというのは慎むべきことだろうというふうに思うわけでございます。
  46. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 それでは、この数年の金融機関破綻の際に構成された、いわゆる金融支援スキームの問題について若干質問をさせていただきます。  まず、日銀にお尋ねいたしますが、金融危機の対応策として、いわゆる金融支援スキームが策定されるに際し、日銀はどういう段階からこれに関与しておられるのか。と申しますのは、日本銀行法律によって信用秩序維持における一方の当事者という立場に立たされているわけでありますから、当然こういう支援スキームを策定するに当たっては関与するべきだという立場になっておると思います。例えば、整理回収銀行の経過について日銀はどのようにかかわってこられたのか、簡潔で結構でございますので御説明いただきたいと思います。
  47. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 御説明をいたします。  東京協和、安全信用組合破綻処理におきましては、処理方策の策定につきまして大蔵省との間で十分意見交換を行いました。その過程で日銀といたしましては、金融システムの安定維持のために受け皿である新銀行を設立することが必要でありまして、その際日本銀行が主導的に出資を行うことが不可欠な情勢にあるというふうに判断をいたしたわけでございます。これが東京共同銀行の設立のときの経緯でございます。  さらに、コスモ信用組合の東京共同銀行への事業譲渡につきましては、同信用組合に対する業務停止命令の発出の後、監督官庁であります東京都が中心となりまして、大蔵省日本銀行がこれに協力する形で検討、調整が行われました。そういった中で、東京共同銀行出資者であります日本銀行としましても、同行をコスモ信用組合の受け皿として活用することが適切であると判断をした次第でございます。  さらに、東京共同銀行の整理回収銀行への改組でございますが、これは平成七年十二月の金融制度調査会金融システム安定化委員会の答申にその方向が盛り込まれまして、八年六月に成立をいたしました改正預金保険法におきまして、法的な裏づけがなされたものでございます。これに関しましては、日銀は、本件について初めから大蔵省事務当局とともに検討いたしまして、さらに、今申し上げました金融システム安定化委員会のメンバーといたしまして、そういった方向の議論に参画をしてまいったところでございます。
  48. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 経過については了解いたしました。  今のお話の中にも出てまいりましたけれども、整理回収銀行については二百億の出資をなさっているわけでございます。最近の報道によりますと、日銀が整理回収銀行出資をしているということの関係で、今後整理回収銀行の支払い保証とか経営に対して責任を持つ立場になったんではないかというように見られているわけでございます。  そのことは、事態の推移の仕方によっては整理回収銀行経営を優先するのか、あるいは別の意味での金融政策を優先させるのかという、先ほど質問したようなどちらにウエートを置かれますかというような事態に陥らないとは限らないんではないかと。つまり、回収銀行経営を優先させるために、こういうことはないと思いますが金融政策を誤るということはないでしょうねという、そういう質問でございます。
  49. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 東京共同銀行の改組によります整理回収銀行への二百億の出資でございますけれども、この間の事情は東京協和、安全、この二つの信用組合処理を抜本的な解決として行いまして、金融システム全体の安定の確保を図るということが目的でございますから、その際に民間金融機関から理解、協力を得ますために、受け皿銀行となる新銀行の設立、それからこれに対して日本銀行が主導的に出資を行ってまいるということが選択の余地のない事情でございました。  このために、日銀法の二十五条によりまして整理回収銀行への出資を実行したものでありまして、この出資日銀目的であります信用秩序の保持、育成に資するものでございますが、私どもは整理回収銀行の主要な出資者ではございますけれども出資者としての責任はあくまでもこれは通常の株主と同様でございます。そういった観点で、この運用、運営につきましての指導は行いますけれども、それ以上の責任を持っているということではございません。  御質問の中の、今後整理回収銀行処理をさらに何らか進めるという必要が生じた場合に、そのことと金融政策の運営との間に矛盾が生じないかということでございますけれども、私ども判断といたしましては、整理回収銀行処理そのものは、民間金融機関と協力をしながら現在の方針に沿って今後ともその実行を行っていくという次元のものでございまして、これが何らかの形で私どもが行います金融政策上の判断影響を及ぼすといった筋合いのものではないと考えております。
  50. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 大蔵大臣にお伺いしたいと思います。今整理回収銀行経営日銀関与すべきかどうかということをテーマにしておるわけでありますけれども松下総裁のお話では、この整理回収銀行関与するのは選択の余地のない状況の中で関与するようになったんだというお話でございました。  私は、たまたまこの程度にとどまっていればまさにこれによって金融政策を誤らすようなことは生じないだろうと思いますけれども、本来から考えますと、中央銀行独立性という面から見て、こうした出資とか資金拠出というのは問題があるんではないかと思っておりますし、もし金融システムの安定のために新しい機構をつくる、その中で公的な資金の投入が不可欠であるという事態が生じたとしても、それは日銀ではなくて他の政府金融機関関与するべき、出資するべきではないかと思うんです。  もともと私は、金融機関破綻した場合の処理というのはペイオフするか、あるいは公的資金を投入する以外にないと思います。少なくとも理論的にはそうであろうと思っております。  そういう考えに基づけば、他の政府金融機関がこの整理回収銀行出資するという形態は、政府財政融資による関与という意味合いも出てくるわけで、責任所在もはっきりするんではないかと思うし、今の日銀出資というのは変えるべきじゃないかと。これはもう大蔵大臣の決意の問題ではないかと思っているんですが、いかがでしょうか。
  51. 三塚博

    国務大臣三塚博君) これは、ただいま来御論議いただいてまいりました特融あり方等、すべて我が国の信用秩序維持という大目標があるわけでございます。それぞれ答弁申し上げておりますとおり、それぞれの立場で最大限の努力をし、信用秩序の安定を期してまいりますことが、預金者に対しましても、また同時に我が国の金融システムの安定維持という基本に沿うものであると、こういうことであります。
  52. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 それでは、日銀に再びお尋ねいたしますけれども、現状において収益支援的な融資を行われているのかどうか、その残高、融資先等がありましたら御説明願いたいと思います。
  53. 松下康雄

    参考人松下康雄君) このコスモの処理方策に当たりまして、日本銀行は一定の収益支援効果というものを念頭に置きまして、旧東京共同銀行に対しての貸し出しを行ったのでございます。  ただ、こういった対応を行いましたのは、金融機関破綻処理のための制度的枠組みが整備をされていない中におきまして、経営破綻をしました両信用組合処理方針を早急に打ち出して、金融システム全体への悪影響を回避するためにほかにとり得る手段がないという状況の中で、やむを得ない緊急避難措置として踏み切ったものでございます。しかしながら、その後金融三法の成立によりまして、新しい破綻処理枠組み整備等が図られましたために、今後、日本銀行が同様の貸し出しを行うということは考えておりません。
  54. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 現状における整理は大体了解いたしましたけれども、これから本格的な金融ビッグバンが始まるということになりますと、その過程で、金融環境をめぐるいろんな問題が出てくるおそれもあると思います。  そうした場合に、どういうケースの場合に日銀特融発動するのか、その他の業務対応するのか、あるいは公的資金を使うのかというのは現状にとらわれずもう一回見直す必要があるんではないか、そんなふうに考えているんですが、大蔵省の御見解をお尋ねしたいと思います。
  55. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今回の日本銀行法の改正でも信用秩序維持に寄与するための日本銀行機能というものの活用を提案させていただいておりますけれども、さらに預金者保護信用秩序維持のために公的なかかわりとしての預金保険のあり方、そういったものについても十分に検討してまいらなければいけませんが、先国会金融三法をお認めいただいたばかりでございますし、そこで特別な措置をお認めいただきました。  私どもとしては、現時点においてはこの三法の仕組みを最大限活用して、預金者の皆様に不安を与えない、あるいは我が国の金融システムが国際的に問題にならないというために努力をしていきたいというふうに思っております。
  56. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 今後の問題にどう対処するかということの一つの例として、最近起こった問題を具体的に取り上げて質問させていただきます。大蔵省に質問いたしますが、それは日本債券信用銀行の再建問題でございます。  最近マスコミは、日債銀の関連ノンバンク三社、すなわちクラウン・リーシング、日本トータルファイナンス、日本信用ファイナンスサービスがこの四月一日に自己破産を申告したことに関連して、関係各金融機関の幹部は、その前日までに大蔵省からノンバンクの法的処理了承するように、そして日債銀支援のための増資等に応じるように非公式に要請されていた。したがって、この日、大蔵省の会議室で行われた日債銀リストラ計画を議題とする会議は表立った批判もなく終了したということが報じられているわけであります。  ただ、みんなが了解したのかということになりますと、これは一部の人の見方かもしれませんが、ある都銀の首脳は、奉加帳方式に反対すれば日債銀の破綻の引き金を引くことになる、とても拒む勇気はない、だけれども頭も下げないでブラフで押しつける大蔵は何様のつもりだと吐き捨てるように言ったというような記事も紹介されております。みんながみんなそうだとは申し上げません。ただ、そういう見方もされているということを大蔵省は肝に銘じなければいけないんではないかと私は申し上げているだけであります。  まず、日債銀がなぜ破綻したのか。原因とか経過。あるいは日債銀は今貸出残高とか不良債権はどの程度持っているのか、それについてお尋ねしたいと思います。大蔵省、お願いします。
  57. 山口公生

    政府委員山口公生君) 日債銀の経営は、バブル崩壊後の金融環境のもとでかなり努力を要する事態にあったことは事実でございますし、そのための経営改善努力もやっておったわけでございますが、その効果も出始めておったというふうに思いますが、ところがことしの年が明けまして株価が大分下がってきた。このときに三月末の株価によっては金融機関の中には決算状態が非常に困難なところが出てくるのではないかというマスコミのかなりの議論が出てまいりました。  そうしますと、マスコミはそこで銀行をランクづけしたわけでございます。そうしますと特定の銀行、そこに日債銀が含まれておったわけです。そこが経営的に危ないのではないかというような非常に急速なうわさの広まりといいましょうか、そういう事態に立ち至ったわけでございます。  日債銀は、御承知のように金融債という市場性の資金資金を調達しております。したがいまして、近所の主婦がいつも預金に来てくれるということじゃなくて、特別にそういった市場性の資金をとっているということですから、そういったうわさに非常に影響を受けやすかったわけです。したがいまして、ことしに入りましてから、二月、三月と月を追うごとに日債銀危機説ということが頻繁に言われ始めたわけです。そうすると、ますます日債銀としては将来に展望が開けなくなってくるという悪循環に陥る、そういう状態であったわけでございます。  日債銀といたしましても、この機会に思い切った措置をとらなければ、これまでの流れを変えることが難しいという判断をしたわけでございます。その後の状況はまた御説明したいと思いますが、貸付金残高は九兆八百五億円でございます。また公表されております不良債権、破綻、延滞、金利減免等及び経営支援先債権の合計額は一兆二千六百二十一億円でございました。これが三月期でございます。
  58. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 今、金融債のことにお触れになりましたけれども、米国の格付会社、ムーディーズ・インベスターズ・サービスがことしになって発表した日債銀の金融債の評価として大変低い評価をしており、極端に言いますとジャンクボンド並みであるというような言い方もあったように思いますが、これに対して大蔵省はどういうふうにごらんになっていますか。これは正しい格付、妥当な格付とお考えかどうか。
  59. 山口公生

    政府委員山口公生君) 御指摘の格付につきましては、民間調査会社の意見でございます。私ども当局がこれについてコメントするのは差し控えたいと思うわけでございますが、このときに日債銀の方はこの調査の格付についてかなりいろいろな意見を申したように伺っております。
  60. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 日債銀もクレーム、苦情を申し立てたのかもしれませんけれども、マスコミが報道するところによりますと、このムーディーズの評価が出たこともあって、日債銀の金融債では市場から資金が調達できないというような状況に陥り、つまり買い手がつかないような状態になって、それを肩がわりするために政府は急遽財投でワリシンとかリッシンを引き受けたというような報道もあるわけでございます。これは事実なのかどうか、お尋ねしたいと思います。
  61. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) お答え申し上げます。  資金運用部資金資金運用部資金法第七条におきまして、資金運用部の運用対象が法定されているわけでございますが、その中に国債等と並びまして金融債も運用対象として掲げられているところでございます。  資金運用部資金金融債への運用はこのような法の趣旨にのっとって行われているものでございますが、まず運用全体について申し上げますと、これは資金運用部資金全体の時々の原資の事情、それから資金運用部資金に対する資金需要とか、まさに資金繰り等を勘案して運用を行っているわけでございます。その中で、金融債の購入につきまして、具体的には各金融機関の貸出残高の割合等を基準といたしまして、いわば案分いたしまして購入しておりまして、特定の金融機関金融債には偏らないようにしているところでございます。  したがいまして、特定の金融機関の債券を購入するという意図でやっているものではございませんが、いずれにいたしましても資金運用部資金の運用につきましては、先ほど言いました資金法の趣旨にのっとりまして適正な運用に引き続き努めてまいりたいと考えております。
  62. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 政府が保有しているとおぼしき金融債の残高というのが二月二十七日の日経新聞に載っておりますけれども、大体こんなものなんでしょうか、どうでしょうか。
  63. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) 政府全体の話というのは私どもまだ、資金運用部のことは私どもの内部の資料でございますが、資金運用部資金のまさに金融債の保有高につきましては、衆議院の予算委員会の要求がございまして、私ども予算審議の用に供していただくために二月二十五日に政府から非公表の資料として予算委員会には提出させていただいたという経緯はございます。
  64. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 政府資金運用部で保有している金融債については、先ほど各銀行の貸出残高の割合をめどにして保有されているということでございますが、この二十七日の新聞によりますと、そのほかに自主運用している簡易保険と郵便貯金が幾ら幾ら持っておりますと、それから年金福祉事業団の数字も載っているわけでありますが、これは余り保有残高とは関係のない数字のように思います。これはどうなんでしょうか。
  65. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) 今、委員の言われました簡易保険の積立金は、これもやはり簡易生命保険の積立金の運用に関する法律がございまして、その規定に基づきまして郵政大臣が管理されまして運用されているわけでございまして、これは郵政省みずからの判断で運用されているものでございまして、私どもちょっと具体的にその数字、コメントをする立場にないので御理解いただきたいと思います。
  66. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 金額についてなかなかはっきりしたことも発表されないのだろうと思いますけれども資金運用部資金法というのがございまして、資金運用部の資金等については確実かつ有利な方法で運用するということがうたわれております。  先ほども、その意味で日債銀の金融債は大丈夫なんでしょうねということを山口局長にお尋ねし、はっきりしたお答えがないまま、日債銀も苦情を申し立てているようだということなんですけれども、この資金運用部で相当なお金で、日債銀の分が幾らかわかりませんが、買っているんだろうと思います。そういう意味じゃ本当に大丈夫なんでしょうねということをもう一度念を押しておきたいと思いますが、どうでしょうか。
  67. 山口公生

    政府委員山口公生君) 私の方から、個々の金融機関の個々の商品について判断を下すというのはちょっと差し控えさせていただきたいと思うのでございます。  ちょっと話は別になりますが、日債銀の再建策というものが四月一日に出されました。大幅な大胆なリストラと、それから先ほど奉加帳という御指摘がございましたけれども奉加帳というよりは少し違うんじゃないかと思いますのは、出資をお願いしましたのは株主、銀行あるいは金融債を出している銀行、それからこれまで劣後ローンを出していただいている生損保という関係者に日債銀がそれこそ日参して頭を下げてお願いされたということでございます。ようやくこの出資増資計画がまとまったように伺っておりまして、非常に世の中に御心配をおかけしていた案件でございますけれども、こういった関係者の理解がありましたので、ひとつその辺はクリアされたのかなということを申し上げたいと思います。
  68. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 念には念をという言い方になるかもしれませんが、日債銀の金融債を保有していることはこれは確実な運用方法の一つである、ムーディーズが格付をやっているのはおかしい、市場で買い手がつかないというのは全くのデマである、この日債銀の金融債を保有することが公共の利益になるんだという御主張だと確認してよろしいですか。
  69. 山口公生

    政府委員山口公生君) 私は、そこまで個々の銀行のまた個々の商品について申し上げているわけじゃございませんで、非常に御心配いただいておりました日債銀問題がそういう進展をしているという事実だけを申し述べさせていただきました。
  70. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 これに関連して、農林系統金融も大分ノンバンクに貸し込んでいるという報道がなされておりますけれども、農林系統金融のノンバンク三社に対する融資残高というのはいかほどでしょうか。
  71. 白須敏朗

    説明員(白須敏朗君) 御説明申し上げます。  日債銀系列のノンバンクのうち、系統金融機関が貸しておりますのはクラウン・リーシングに対するものでございますが、これが平成九年二月末現在におきます貸付残高は系統金融機関全体で約二千三百億円というふうに承知をいたしております。
  72. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 これをどうやって回収するかというのはこれからの問題であろうと思いますが、報道によりますと、損失は完全プロラタ方式で配分するんだというような報道もあるわけであります。今から予想するのは難しいのかもしれませんけれども、農林系統のかぶる損失というのはどれくらい見込まれているんでしょうか。
  73. 白須敏朗

    説明員(白須敏朗君) 損失見込み額ということでございますが、委員も御承知と思いますが、現在三社は破産法に基づきます破産手続が進行中だということでございます。  したがいまして、現段階におきましてはクラウン・リーシングの、系統はクラウン・リーシングでございますが、債権額あるいは資産内容等がまだ確定をいたしておりませんので、その損失見込み額自体につきましてただいまの段階で確たることを申し上げるということはできないというふうに考えておるわけでございますが、いずれにいたしましても、今後、破産債権の届け出といった破産法に基づきます手続が進行いたしておるわけでございまして、こういった中で関係当事者間の話し合いといったようなことも行われるのではないかというふうに考えております。  私どもとしては、今後の事態の推移を見守っていかざるを得ないのではないかというふうに考えている次第でございます。
  74. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 日銀にお尋ねしますが、日銀資金にかかわる部分で、この日債銀の方に資金を提供することになったのが、新金融安定化基金の中から八百億と伝えられておりますが、これはどういう理由に基づいての資金提供なんでしょうか。
  75. 松下康雄

    参考人松下康雄君) この新金融安定化基金につきましては、定款におきまして、「わが国金融システムの安定化及び内外からの信頼性確保に資することを目的」として、「金融機関の資本基盤の構築」のための事業を行うことというようになっております。日本銀行は、この基金に対しまして、第一勘定に一千億円の拠出を行っているわけでございますが、これは民間資金から成ります第二勘定とは区分経理されておりまして、金融機関破綻処理等に際して必要となります金融機関の資本的基盤の構築のための劣後ローンの実行等に用いられるということになっているわけでございます。  その具体的な資金の使途を決定しますには、新金融安定化基金が日本銀行に対しまして協議を行いまして、それに対する日銀の同意を要することになっております。そこで、私どもといたしましては、新金融安定化基金から八百億の資金を日債銀に拠出をするということにつきまして協議を受けた場合の方針を固めたのでございます。  私どもは、これが金融システム安定のために日銀資金の活用にかかる、よく申しております四原則に照らしても問題がないかどうかということを判断いたしました上で決定をするわけでございますが、本件につきましては、日債銀の経営再建策におきまして、同行が国内外の金融市場で果たしております重要な役割や、また我が国金融システムに対します内外からの信頼、信認確保の必要性を踏まえまして、民間金融機関からの出資では不足する資本につきまして、新金融安定化基金が優先株の引き受けを行うことが適当と判断をした次第でございます。  したがいまして、この新金融安定化基金によります日債銀の優先株の引き受けは、基金の趣旨目的に沿ったものでもございますし、また私どもの四原則に照らしても問題がないと考えた次第でございます。
  76. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 大蔵省にお尋ねしますが、この日債銀の再建策について今後どのように関与されるのかされないのか。日債銀の再建について、大蔵省関与をお尋ねしたいと思います。
  77. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今回の日債銀の再建につきましても、大蔵省日銀はともに思い切ったリストラということを前提にし、それを最大限支援をしてまいったところでございます。  この日債銀が、仮に大変重大な事態に陥りますと、これはひとり我が国の金激界だけのことではなくなります。国際的に金融不安を生み出してしまう。そうしますと、我が国の金融機関全体の評価が大幅に下がってしまいます。日本の金融機関は、ジャパン・プレミアムに長い間悩まされることになります。  それからまた、国内におきましても金融不安、これだけの大きな銀行でございますので、これが連鎖的な反応を引き起こす可能性もあるというようなことで、金融システム全体にもかかわる、預金者保護にも重大な懸念が生じるというようなことで、私どもとしてはやはり最大限の支援をしていくことが大事だろうと思ったわけでございます。  幸いにして、今回のプランは一応の形が整えられておりますので、今後とも大蔵省日銀ともに最大限の支援をしてまいると。ただし、それはあくまで思い切った自助努力というものが前提でございます。
  78. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 日銀特融の締めくくりの質問をさせていただきたいと思います。  日銀見解をお尋ねしたいわけでございますが、昨年の春、日銀はいわゆる特融等の発動に関する日本銀行考え方という原則をまとめられたと伺っております。それぞれの国の中央銀行はそれぞれの基準を持っておられるんだろうと思いますが、私は日本銀行の場合、少しヨーロッパとかアメリカと違うなと。独立性においてやや大蔵省関与が強いのかなというような印象を持っているわけでありますけれども、例えば英国のイングランド銀行のそうした特別融資に関する姿勢と日銀特別融資への対応を比べた場合、何がどういうふうに違うのか、その辺のことをお尋ねして質問を終わらせていただきたいと思います。
  79. 松下康雄

    参考人松下康雄君) お尋ねのイギリスの中央銀行、イングランド銀行が行っております最後貸し手としての機能発動する場合の原則についてでございますけれども、私どもが承知しておりますところでは、現在のジョージ総裁が対外的に明らかにしている項目が五つございます。  それはどういうことかと申しますと、第一には、イングランド銀行資金供与を行います前に商業ベースで解決策は何かないかと、あらゆる可能性を模索するということでございます。それから第二番目に、これは民間金融機関の株主に補助金を与えるようなものになってはならないということでございます。それから第三に、この支援は流動性の供与を目的とするものでありまして、通常の場合には支払い能力が欠けることが判明している先への資金供与は行わないということでございます。四番目に、イングランド銀行資金供与に当たって、リストラによる再建あるいは清算といった明確な出口と申しておりますが、こういう最終解決方策というものを探究した上でなければならないということ。第五の原則は、通常の場合資金供与の実行中にはこれは秘密にしておくべきであると。この五つだということでございます。  私ども考えますに、この考え方の基本は、表現あるいは細部の状態は違いましても、私どもで申しております四つの原則、つまりシステムのリスクが現実化するようなおそれがある場合、そして第二番目に日銀による資金供与が不可欠である場合、第三に関係者の責任の明確化が図られる場合、第四に日銀の財務の健全性に配慮するという四つの条件が満たされる場合に資金供与を行うという考え方と、大筋では一致しているところと理解をいたしております。  一番最後のこの対外公表のところでございますけれども、私どもも取引先との個別の契約関係や、金融市場参加者に無用な憶測を生じないかどうかといった点は配慮しながら慎重に取り扱いをやっておりますので、これらを含めまして大差はないと。非常に重要な点は、通常の場合に支払い能力が欠けていることが判明している先への資金供与は行わないという点であろうと思いますけれども、これは、我が国の中央銀行研究会におきましても日銀特融に関しまして同様の指摘が行われたところでございます。
  80. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 大蔵大臣、締めくくりの質問をさせていただきます。  今、イングランド銀行を例に最後貸し手機能あり方について総裁から違い等を御紹介いただきましたけれども、先ほども申し上げましたように、私は、迫りくるというかもう進行しつつあるビッグバンを前にして金融環境というのは大きく変わるんだろうし、その間にいろいろ問題も生じるかもしれないと思っております。  金融機関破綻処理するには、理論的にはペイオフ、公的資金の導入であるということを持論として先ほども御紹介させていただきましたけれども、まだまだ私はそういう意味金融システムの環境を整備するところがたくさんあるんじゃないかと思うし、とりわけ日銀特融あり方とそれから公的資金の投入についてもうちょっと突っ込んだ議論も体制整備も必要ではなかろうかと思いますし、これこそ政府・与党の大きな仕事ではないかと考えているわけでありますけれども、その辺の御見解をお尋ねしたいと思います。
  81. 三塚博

    国務大臣三塚博君) ただいま基本的な問題につきまして、委員から御質疑があり、答弁を申し上げてまいったところでございます。  本来、自由主義は自己責任であり、市場規律、市場原理に基づいて行われるもの、こういう大原則がございます。そういう中にありまして我が国は、二〇〇一年金融システム維持安定、その基本を公正、公平、国際化基準、こういうことで掲げ、大改革に突入をいたしておるところでございます。こういう中にありまして各金融機関においては、まさに抜本的な経営の合理化、効率化に向けて努力をし、特に不良債権の処理には全力で取り組んでおるところでございます。大蔵省としては、現時点では、昨年の通常国会で成立いたしました金融三法に基づいて整備された枠組みを最大限に活用することで、預金者保護を図りつつ金融システムの安定に万全を期していくということにいたしております。  前段も御答弁申し上げましたとおり、金融システムの安定ということを大前提に政府金融政策は行われていかなければならぬと考えております。そういう点で、最後貸し手である日本銀行と互いに相協力し合いながら現行の仕組みの中でできる限りの努力をしていくことが、我が国経済また国民生活の安定、我が国の世界における信認を得ることであるということで相努めさせていただいておるところでございまして、段々の御提言は御提言としてしっかりと受けとめてまいりますけれども、深い御理解を賜りたいものと存じます。
  82. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 ありがとうございました。終わります。
  83. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 まず、本案の前に大蔵大臣にお尋ねしますが、きょうの朝刊によりますと、「通産省は法人税を減税しても、経済刺激効果により結果的には税収の増加につながるとの試算をまとめた。」という記事がありました。従来より我々が主張していたことでもございます。記事には数字の試算もありますけれども、通産省に聞きますと、あくまでもこれは内部の検討の段階であってまだ数字については検証しなければいけないという話ですから、御紹介はしません。しかし、これに対しまして大蔵省は、「あまりに非現実的」というふうに一刀両断に切り捨てているわけですね。  私は、そうではなくて、発想の転換といいますか、減税をして経済を刺激して結果的には増収を図るという発想も大蔵省としては持つべきであるし、また検討すべきではないかと考えますが、大臣の御見解を伺います。
  84. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 試算の内容には荒木委員も言及をしない、こういうことでありますが、さらりと本朝の朝刊を拝見いたしました。まさに試算の内容はそういう意味で私も読む限りでは漠としたものでございますからコメントをするところまでは参りませんが、かねがね法人税減税という問題は、九年度税制改正においても大変な論議を呼んでおったことだけは間違いありません。  そこでも、財政出動イコール経済成長の押し上げ、よって自然増収をというパターンの論議も盛んに行われました。国会論戦の中でもそのことはしかと承っておるところでございますが、今日、六改革を進めておりますから、対内的な構造改革、内需主導の我が国経済運営、それに基づく経済成長を期してまいりたい、こういうことで御理解を求めておったところでございます。  そういう観点から申し上げますと、さっと見た感じでは、法人税減税を行った際に設備投資や対内直接投資が大きく増加すると、「法人税八兆円減税の場合 七年後に単年度増収」という見出しが躍っておりますが、私も経済の専門家ではございませんが、国会議員として税調その他論議の中でまいりました一つの考え方を申し上げさせていただきますと、このとおりになるのであればだれも苦労しないのではないだろうかと、このように言わさせていただきます。  やはり財政構造改革、税収をベースに運営が行われておるわけでございますから、構造改革後の最重要課題であります財源手当てをもせずに自然増収に任せて減税を行うということで大失敗をしたときの責任は、政治だけではなく国民の皆様にしわ寄せをすることにもなりかねません。そんな点を考えますと、これはこれとして発表されたことはそれでありますけれども財政当局、税務当局をお預かりする者とすれば、本件は同じ政府でありますから余り好ましいことではないのかなと、こう思っております。
  85. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 それでは法案に入りますが、提案理由にあります日銀独立性あるいは意思決定の透明性を高めることができるかどうかは、一つには政策委員会の今後の運営にかかると思います。  そこで、松下総裁にお尋ねしますが、昨年の報道によりますと、日銀金融政策などの最高意思決定機関とされている政策委員会とは別に、政府代表を除いた政策委員日銀幹部が参加をする裏の政策委員会と呼ばれている協議機関を設けてきたんだ、そこで大事なことを決定しているということでありますが、その真偽はどうなんでしょうか。
  86. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私どもは、金融政策上の主要の問題につきまして常に政策委員会の会合におきまして討議をし、また決定をいたすのでございまして、この政策委員会と別個に何らか一部だけにおきまして特別の政策関連の討議を行うとか決定を行うとかということはいたしておりません。政策決定のみならず、経済、金融関係の資料の御説明なりあるいは意見の交換というものは頻繁に行われているところでございますけれども、それは政策委員会の全員が出席をされて行うものでございます。
  87. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 そうであれば、なぜこの政策委員会がスリービングボードなどと呼ばれてきたのかという感じがするんですね。あるいは別の指摘にによりますと、通称円卓会議というんですか、いわゆる政策委員になっていない理事、総裁によるそういう役員集会が頻繁にあって、実質的な政策なんかはそこで決まって、それが政策委員会に出てきているんではないかというような話もあるんですが、そういう役員集会なんというのもやってないんですか。
  88. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 現在の日銀法におきましては、日銀の内部機構といたしまして、御指摘の役員集会を開催するということになっておりまして、この役員集会は日銀業務の執行について重要な事項を審議するために設けられている、これは定款の二十四条にそういう規定がございますが、そういうものでございます。  しかしながら、この役員集会は、現在も頻繁に行われておりますけれども、申しましたように、業務の執行に関する事項その他、役員集会として審議すべき事柄に限って審議を行い、決定を行うわけでございます。もちろん、政策委員会に対しましていろいろ御提案をする、事務当局からの御提案をいたすという際には、役員集会においてその議案に関しましての執行部としての考え方議論することはございますけれども、これをもちまして役員集会が何らかの決定に関する権限があるとか、あるいは実際上何か機能を果たしているということはございません。
  89. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 その業務の執行と政策の決定というのが、果たして判然と区別できているのかという感じがするんです。実際は金利政策ですとかあるいはマネーサプライですとか、そういうことも役員集会の中で議論してきたのではないでしょうか。
  90. 松下康雄

    参考人松下康雄君) ただいま申し述べましたような、政策委員会で審議をされる議案につきまして、執行部としてはこの議案をどう考えていくかという点については議論をいたしております。この点はございますが、この点は今度の改正法案におきまして、何か日銀の中に政策委員会とそのほかの理事会という二元的な機構があるという制度は改めるべきであるということから、役員集会の制度を廃止いたしまして、政策の決定及び業務遂行の基本的な方針につきまして、すべて政策委員会の場で決定するということになることになっております。
  91. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 しかし、理事という制度自体は残っているわけですね。そういう定款あるいは法律にはないにせよ、事実上のそういう役員集会というのも従前どおり今後もやっていくということにはならないんですか。
  92. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 役員、理事の政策委員会との関係が変わってまいりまして、任命を行いますときも政策委員会の発議に基づいて行内の役員の任命が行われるということでございますし、また行内の業務の運営につきましては、政策委員会決定した方針に基づいくその監督を受けながら行内の理事以下の役職員が業務の執行、運営に当たっていくというふうに変わるわけでございます。その点で、ただいまの御指摘の点は非常に明確になるというふうに考えております。
  93. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 形を変えたそういう役員集会のようなものが存続しないように私は要望いたします。  それで、大蔵大臣に、政策委員の選任、人選の基準につきまして随分議論されてきましたが、政府側代表者が二名参加できることでもありますから、政策委員につきましては省庁OBは排しまして、あくまでも民間から選ぶという一つの方針を持つべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  94. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 日本銀行政策委員のうちいわゆる任命委員については、省庁出身者、民間出身者を問わず、すぐれた経験と識見を有する者を選考しておると、従前申し上げております現実論を申し上げさせていただきます。  今後、日銀政策委員会の審議委員については、改正案において、従来の業界代表的な考え方は改め、広く経済または金融に関し高い識見を有する者、その他学識経験者のうちから選任をしており、また審議委員の選任に当たりましても両議院の同意を得る、こういうことにさせていただいたところであります。政府としては、国会の御同意を得て、金融政策の運営について国民から負託を受けるにふさわしい人物を任命できるよう、できる限り広い範囲の大事に目を配りつつ、適切な人選に努めてまいりたいと思います。  なお、省庁OBの人選については、候補となる人物の識見、人格等を総合的に判断しまして、官庁出身者、民間出身者を問わず、我が国の金融政策を的確に遂行し得る人物を選任してまいりますことが肝要であると考えておる次第であります。
  95. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 あえて省庁OBを私は入れる必要があるのかと思います。  最後に、総裁に、今回の目玉の一つであります政策委員会の議事録の公表、第二十条一項によりますと、要旨につきましては速やかに公表するというお話で、どのぐらいの期間かということもさんざん論じられましたが、ついに具体的なイメージがわいてこないわけです。もうきょうが最後の審議ですので、いろいろ外国の事例も今まで研究されたと思いますから、もう少し限定してこの程度というふうにおっしゃっていただけませんか。
  96. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 御指摘政策委員会の議事録、議事要旨の公表でございますが、まず議事要旨につきましては、早期の公表につきましていろいろと内部で検討してまいりましたが、現段階でまだ具体的な結論が出ているわけではございません。  どんな方向で検討しているかということを申し上げさせていただきたいと思いますが、議事要旨につきましては、私どもは市場の安定を損なわない範囲で速やかに公開することが適当であると考えているわけでございます。速やかな公開によりまして、政策運営の基本的な考え方に関しまして国民や市場の理解を得るように努めることが重要でございます。  ただ、その一方で、議事要旨の中にその後の会合におきます議論を先取りしたような内容が含まれたような場合には、それが市場に無用な憶測を招きまして相場形成を混乱させるというおそれがあることも他方で考慮する必要がございます。  こういう点がありますために、アメリカにおきましても公開市場委員会の議事要旨は会議が開催されました一カ月から一カ月半後に公表するといった工夫が行われているところでございます。また、今回イギリスの中央銀行におきましても金融政策に関する独立の委員会ができましたが、この中央銀行改革の現在の案におきましても、ただいま申し上げました点に配慮をしまして議事要旨は会合後六週間以内に発表するというふうにされているところでございます。  私どもとしましては、こういった海外の事例も参考にいたしながら検討を進めてまいりたいと考えております。
  97. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十一分休憩      —————・—————    午後一時開会
  98. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、日本銀行法案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  99. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 先日、資料要求をしたところ、わざわざ御丁寧に資料をいただきまして、御協力感謝申し上げます。  まず、ゴルフの会員権問題についてお尋ね申し上げたいと思います。いただいた資料によりますと、このゴルフの会員権というのは契約の仕方とか入会の仕方によって各ゴルフ場でまちまちな形態にあると思うんです。ですから一概に一つの基準でどうかということをお尋ねすることは無理だと思うんですが、二、三点この資料に基づいてお尋ね申し上げたいと思います。  これを見ますと、日本銀行何々支店で名前が入っているものと入ってないものとがございますね。例えば、青森カントリーとか伊香保カントリー、磯子カンツリー、松本カントリー、名古屋ゴルフ倶楽部、それから岡山カントリークラブ、玉造温泉カントリークラブ、門司ゴルフ倶楽部、長崎国際ゴルフ倶楽部、こういうところが日本銀行というのがないのでございますが、これはどういう経過でございましょうか。
  100. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 現在私どもが保有いたしておりますゴルフ会員権は、基本的にはすべて法人名義としておりますが、一部に個人名義のものもございます。これは、法人会員として入会するのが原則なのでございますけれども、当該ゴルフクラブに個人会員制度しかないものが幾つかございます。それから、法人会員制度はございましても、ちょうどそれを取得いたしました当時に法人会員権に限りがありまして取得できなかったというような事情によるものも入っております。
  101. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 そうしますと、ここに名前が挙がっている方々はそれぞれが支店長さんと理解してよろしゅうございますか。
  102. 松下康雄

    参考人松下康雄君) さようでございます。
  103. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 そうしますと、個人会員であれ法人会員であれ日本銀行のつまり所有のものであるということになりますと、個人名義になっているところは支店長がかわられますとそれぞれ名前も名義変更が行われる、行ってきた、そういう経過でございますか。
  104. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 原則として、この個人名義ゴルフ会員権は支店長がかわります都度名義書きかえを行ってまいってきております。
  105. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 後から意見は述べますが、そのほかに、箱根カントリー倶楽部、それから芦屋カンツリー倶楽部というところに澄田先輩や三重野先輩の名前がずっとこれ出ているんですが、この方はもう日本銀行をおやめになったんじゃないんでしょうか。それがまだこの名義になっているのはどういう理由ですか。
  106. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 御指摘の点につきましては、法人記名式のクラブでございまして、名義人が日本銀行を退職されるときに名義書きかえを行おうとしたのでございますが、実情は、たまたまそのときにかわるべき適当な者がいなかったというような事情から現在までそのままの名義になっているのでございます。  これは、当時、余り利用することが想定されない者の名義に書きかえましても書きかえ料がむだであるというようなことから、実際に利用できる者が出てまいりまして引き継げるようになるまでとりあえずもとの名義のままでよいのではないかというような考えでどうも名義を残したように聞いております。
  107. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 日本銀行には支店が幾つあるか、私勉強不足でございますが、各支店には必ずゴルフの会員権はあるのでございますか。
  108. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 支店は三十三ございますが、全支店が一つ、場合によっては二つ持っているようでございます。
  109. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 角度を変えまして、これだけの数を、先般私が質問したときに、ゴルフの会員権を持つことは金融機関としての情報交換であるとか業務上必要であるから会員権を持つんだ、こういうお答えがあったように思うんですが、これだけのゴルフの会員権を持つことは業務上本当に必要なのでございますか。
  110. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 会員権保有の目的につきましては、先般も申し上げましたように、各地の金融界、経済界の方々と業務上交流する機会が多いということから出ているものでございまして、私どもが今後とも適切な政策、業務運営を行ってまいります上で、やはりこの金融界、経済界等各界の方々と率直な意見交換をしていけますように環境整備を行ってまいる必要はあると考えております。  ただ、やはり社会通念に照らしてみました場合に、そういった意味の交流のあり方といいますものもこれは時代とともに変わっていくものであると思います。やはり私どもといたしましても、この点は絶えず見直しを要する点であると考えております。
  111. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 先ほど箱根カントリーのお話をしました。澄田さんとか三重野さんの名前が挙がっているのはなぜですかというお話をしましたところ、総裁からは、別に適当な者がいなかった、これにかわるような人がいなかったというお答えですね、名義書きかえをするに当たっては。そうしますと、今のお話とちょっと矛盾するんじゃないですか。つまり、地域の財界であるとかそういう関係者と情報交換をやるのに必要だとお答えになっているのに、ここのところは適当な者がいなかったと。何で適当な者がいないんですか。
  112. 松下康雄

    参考人松下康雄君) やはり、いろいろ格式その他実際の利用状況というようなことから申しまして、現役の役員の中でここにふさわしいと考えられる者が見当たらなかったということでございますけれども、今ちょっとお答えをいたしましたように、やはりこの地元交流ということは必要ではございますけれども、だからといってその間にむだが生ずるということは、これは現在のような情勢下で決して私どもも適切なこととは考えておりませんので、この点は是正を要する点のように考えております。
  113. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 別に追及する気持ちはございませんけれども、澄田さんとか三重野さんという大先輩がやめられたときに、それはそのときにかえれば一番いいわけなんでしょうけれども、実際は、かわる人がいないというよりは、たまたまこういう問題が出なかったからずっと流れていっただけなんじゃないですか。
  114. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 実はこの二万にもお尋ねをしたのでございますけれども、実際にこのコースは全くお使いになっていないようでございます。
  115. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 私は、現在与党でございますけれども、与党の立場から見ても、今、日銀法が改正されると、つまり独立性とか透明性とか中立性とかそういうことで信頼される日本銀行であってほしいという意味での改正が行われているわけであると思うんですよ。そのときに日本銀行たるものが、世間からいろいろ取りざたされるような、世間をにぎわしているようなことは、私は決していいことではないと思います。  この前も申し上げましたが、必要であれば必要なだけ堂々と胸を張ってやればいいんであって、何もこそこそやっていることはないと思うんですよ。けれども、現在の日本銀行性格やそして信頼度を高めるという意味から見ますと、第一にはっきりしていただきたいのは、やめた方のは、かわる人がいなければもうそれこそキャンセルしたらいいじゃないですか。そのぐらいのことをやらないと、世間様から見ると何か退職金と同じようにもらっているというような、そういう取りざたされるような面もあると思うんですね。  ですから、第一に私がお願い申し上げたいことは、やめられた方というのは誤解を生ずるから、何らかの適切な措置を直ちにとっていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  116. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 御指摘のように、社会との交流のあり方というものも時代に応じて変わってまいりますし、また何と申しましても、現在、日銀法の改正という制度の大改革の時期でございますから、私どももこれを機会に、世の中一般の通念に照らしまして、私どもとして改めるべき点は改めてまいらなければならないと思っております。  ただいま御指摘の、このOB名義のままとなっておりますような会員権につきましては、やはり当然処分すべきものとして見直すべきものであると考えております。
  117. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 今のはおいでにならない方の問題ですが、もう一つは各支店にこれだけのものを持っていることが本当に必要かどうかということも含めて、今総裁がお答えになった社会一般の常識から見てああもっともだと思われるような措置をとりたいというお話でございますので、これをもう一回見直して対処されることを望みたいと思いますが、いかがでございますか。
  118. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私どももこの日銀法改正の機会をとらえまして、社会一般の通念に照らして、この際、ゴルフ会員権の保有のあり方につきましても見直しを行っていく必要があると考えております。  したがいまして、私どもはこの新法の施行を目途にいたしまして、日本銀行が自主的に取り組んでまいるべき自己改革の一環として、処分すべきものは処分をするという方針に基づきまして、きちんとした見直しを行ってまいりたいと考えております。
  119. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 どうぞそれはお願い申し上げたいと思います。  これと絡んでもう一つ問題にせにやならぬのは、週刊ポストではございませんけれども日銀の支店長の官邸というか公邸というか社宅というか、それが一般の常識から見まして大変豪華で豪邸で、そんな必要があるのかというようなことがポストに書かれているんですが、この支店長宅について、総裁の認識をお聞かせいただきたいと思います。
  120. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私どもは、転勤の対象となる職員に対しまして社宅の使用を認めているわけでございますが、支店長につきましてもそのような意味から社宅の割り当てを行っております。  そこで、御指摘の支店長宅の広さ等でございますが、これは各支店の設立の時期等によっていろいろと差異がございます。相当古い時期に建てられましたものの中には、例としては新潟支店長宅、これは昭和二年でございます。それから福島支店長宅、これは昭和八年の建築でございますが、やはりその敷地の広さ、うちの広さなどは今日の標準に比べますと広い建物もあることは事実でございます。ただ、平均的に見ますというと、建物面積は二百平米程度でございます。  そこで、それでも社宅としては随分広いというお感じをあるいはお持ちかもしれませんが、支店長宅の場合には、地元のしかるべき方々との会合でありますとか、あるいは災害時などで緊急な対応を要するケースなどに備えまして、会議室とか作業スペースというようないわば公的な部分も含まれているわけでございます。  そういった公的な部分はおおむね平均で百平米程度ございますので、これを除きますと支店長宅の居住のスペースというものは大体百平米程度ということになっております。
  121. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 私もお伺いしたところ、こういう支店長宅は、今のゴルフの会員権と同じように、財界の集まりのときに使うとか、それから外国人が来たときに使うとか、それから災害が起きたときにどこか拠点がないと困るということで一般の宿舎よりは大きくなっているというようなお話を承りました。  けれども、それらをずっと分析してみると、一カ月に何回かあるのかと聞いたら、余り答えてくれないんですわ。先生御案内のとおり、御案内のとおりと言うから、御案内のとおりと言ったって私はわからないですよと言ったんです。外人は何回来るかといったら、年に何回ぐらいの話ですわね。それから、財界の人たちであってもそんなに回数はないようですね。災害というと福島の支店、災害のときには頑丈にしとかにやならぬと言ってあそこは建てたというんだけれども国会移転じゃないけれども、福島というのは一番災害が来ないと言って国で一生懸命宣伝しているのに、日銀はあそこは災害があると言うんですな。  だから、やはり言葉としては大変言いにくい面もあると思いますよ。言いにくい面はあると思うんだけれども、これも確かに住んでいるところは少なく外の方が広いということがありましょうね。だけれども国会議員と同じように十三万八千円、家賃を払っているんでしょう。家賃四百万のところ十三万八千円しか払っていないんですよ。そういうようなものが、社会的に見たときに、日銀というのは何となく特権階級みたいな特権意識みたいなものがあって、おれは偉いんだぞというようなことを見せているんじゃないかというような誤解を生ずると私は思うんですよ。  だから、今土地の問題はこうなっていますから、これを直ちに閉鎖してどこかにホテル住まいをしたらいいんじゃないかなということは言いませんけれども、何かここも一般常識から見て納得のいくような方策をとられることが一番いいと思うんですが、いかがなものですか。
  122. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私ども銀行が保有しております役宅も含めまして、いろいろ不動産があるわけでございますけれども、その中で例えば営業所を移転しました際に生じます跡地でありますとか、あるいはもう長年の間にリストラで人員を相当に減らしてまいってきておりますので、人員の減少等に伴います社宅の集約化などを行いまして発生をしました空き地などの遊休不動産につきましては、これまでも順次売却を進めてきたところでございます。  思いますに、私ども日本銀行経営体として効率的な業務運営が求められるということはこれは当然のことでございます。不動産の保有につきましても、やはり社会一般の情勢に照らしまして、誤解を招くことがないように運営をしていく必要があると考えております。  したがいまして、今御指摘の支店長の役宅を含めまして、不動産保有のあり方につきましては、日本銀行が今後進めてまいるべき自己改革の一環として新たな目できちんと見直したいと考えております。
  123. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 大蔵大臣に感想をちょっと願いたいと思うんですが、今総裁とやりとりしましたけれども大蔵省から見たときの日銀あり方について、今の問題についての感想をちょっとお聞かせいただければありがたいと思います。
  124. 三塚博

    国務大臣三塚博君) ただいま来の質疑の中で、総裁からは社会通念に基づいて対処をしてまいるということでございました。  まさに公的機関と言われるところは国民の財産の中で運営されるわけでございますから、社会通念、私流に言いますと社会の常識に合ったところで成形をされてまいるというのが大事なことであり、特に日本銀行銀行の中の銀行という極めて国民信頼度の高い、また期待度の高いところでありますだけに、役職員各位、総裁のただいまの言を大事にしながら取り組んでほしいものと期待をいたします。
  125. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 きょうの委員会でこの改正法案が通るということになれば、恐らく記者会見みたいなものが行われるんじゃないかと思いますけれども、そのときに総裁から、自己改革の問題について我々はこういうことを考えながらやっていきたいというようなことも胸を張って言われた方がいいと思うんです。そうでないとまた週刊誌が書きますよ。先手を打ってぴしっと言うところはぴしっとやった方がいいと思うんです。襟を正してどうぞ頑張っていただきたいと思います。  それでは、今度は大蔵省にお尋ね申し上げます。一番最初に、日銀の資本構成について伺っておきたいと思います。まず、現在の日銀の資本金とその株主構成について説明していただきたいと思います。
  126. 山口公生

    政府委員山口公生君) 現在の日本銀行の資本金は一億円でございます。そのうち国が五五%、民間が四五%、それぞれ出資しております。
  127. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 それに比較するわけではございませんけれども、諸外国の例はどんなぐあいになっていましょうか。
  128. 山口公生

    政府委員山口公生君) 一〇〇%国有銀行がイングランド銀行、フランス銀行、ドイツ連邦銀行でございます。一部民間出資のあるもので政府出資が五〇%以上のところ、これは日本と同じでございますが、スイス国立銀行日本銀行でございます。それから、政府と民間で五〇%ずつ、これはオーストリア国立銀行、ベルギー国立銀行でございます。全額民間出資銀行がイタリア銀行、アメリカの連邦準備制度でございます。
  129. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 ありがとうございました。  民間資本が半分弱を占めているわけですね、日銀は。同時に、日銀には株主総会というのがございませんね。配当制限も年間五分以下であると聞いています。このように強い規制を置いてまで民間資本を入れている点についてどのように理解したらいいのか教えていただきたいと思います。同時に、民間出資意味合いは何かということについて教えていただきたいと思います。
  130. 山口公生

    政府委員山口公生君) ただいま御説明申し上げましたように、日本銀行はその資本の四五%を民間からの出資によっておりますが、これは明治十五年に松方正義大蔵卿が日本銀行定款が日本銀行条例に沿っているということを確認の上、営業免状を下付したものでございます。それを受けて日銀が設立、開業されたという設立経緯に起因するものと考えられます。  ただし、日本銀行の行う業務の公共性、専門性にかんがみ、その意思決定は、学識経験者等の中から国会の御同意を得て選任される委員から成る政策委員会に専ら行わせる必要がありまして、その点、株主総会は置かれておりません。また、日本銀行の剰余金の大宗が通貨発行益に由来するという特性から、出資者に対する配当制限を設けさせていただいているところでございます。  民間の出資が入っている意味といいましょうかその理由は、専ら歴史的な経緯、つまり民間のそういった自主的な盛り上がりを受けて大蔵卿が免状を渡したという認可法人の形式をとったというときの経緯によるものが主たるものでございます。
  131. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 銀行局長のいつも聞いている答弁はなかなかよくわかるんですけれども、今の答弁はちょっと読んでいるからわからないんです。だから、山口局長の言葉でちょっとしゃべってもらうとわかるんですが。つまり株主総会はない、それから制限も設けている、そういうところに何で民間の資本が必要なのかということを聞いているんです。
  132. 山口公生

    政府委員山口公生君) まず、民間資本が入ったという経緯が、明治の時代におきまして民間のそういった認可法人の設立という行為があり、それを大蔵卿が認めて免状を下付した、こういう経緯があるからでございます。もし、これが政府の一つの機関だとか、あるいは特殊法人で政府が全部出資するという形を最初からとっておりますれば、恐らくこういった形にはならなかったものと思います。  ただ、先ほどおっしゃいましたように、もともとこの性格が、株主総会があってそこで意思決定が行われれば、こういう日本銀行の公的な役割というのが、株主の利益と国の政策、広い意味の国の政策ということとぶつかってしまうということがありますので、株主総会というものをやらないという形にしているわけでございます。  それから、配当にしましても、もうかったから国庫納付しないでみんな配当に重点的に回すということになりますと、これは国民の財産を使っておりますのでそれはやっぱり一定の限度が要る、こういう歴史的な経緯を公的な側面から次第に制約していった、こういう歴史だろうと思っております。
  133. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 歴史はよくわかりました。なるがゆえに、現在はどう考えたらいいんですか。歴史はこうだったと言うだけじゃなくて、現在はどういうふうにした方がいいというふうにお考えですか。
  134. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今、先生の御指摘の点は中央銀行研究会及び金融制度調査会でも大変難しい問題として取り上げられました。そこでの結論でございますが、資本構成に関しましては、種々の議論の結果、銀行業務を中心としているという面があるということ、つまり銀行銀行としての役割ということでございます。それと、金融政策独立性の確保の観点からいうと現在の位置づけで問題ないという結論を出されました。  したがって、今回の御提案申し上げております法案は、現行の資本構成等を変えずに御提案申し上げているわけでございます。
  135. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 そうしますと、同じ金融制度調査会、昭和三十五年に持たれてますよね。昭和三十五年の答申を見てみますと、むしろ「日本銀行は資本金額の定めのない特殊法人とする。」ということが三十五年の答申で出ているんじゃないんですか。  そうすると、今明治からのお話なんですけれども、三十五年にこういう現状認識についてそれぞれの方々から意見が述べられて結論としてこういうふうに私はなったんだと思っておるんですよ。ところが先般の調査会では、こういう三十五年の議論があったんだが無資本金制度を採用しなかったという理由が今述べられたものと一致するわけでしょう。だから、昭和三十五年の方の調査会での答申は引き続き検討していきましょうとなっていたのが、なぜ今回採用されなかったのかということにちょっと疑問を持つんです。
  136. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今、先生指摘のように、昭和三十五年の金制でも同じような問題が指摘されまして、結論的には「資本金額の定めのない特殊法人とする。」という結論が出されております。したがいまして、どうしてそれが変わるのか、考え方が変わったのかという御疑問が出てくるのは当然でございます。ただ、私どもがいろいろ考えますに、これは決め手のある議論ではないような気がします。何でなければならないということではないような気がします。  そうすると、今の制度とそれじゃ無資本化した特殊法人ということが絶対的にどちらでなければならないという問題は余り明確な形で答えが出ない、どちらがいいだろうかという議論は大いにあると思うんです。そのときに一つ今回いろいろ検討されましたことは、民間の出資者が今現におられます。現に十五万円の値段がついている、百円の出資証券で十五万円の値段がついている、そうした人たちの財産権といっていいのかそれはわかりません、市場で決まっている値段でございますから、そういったものの取り扱いをどうすればいいのかという問題が一つございます。  それから、金融政策独立性というときに、完全に特殊法人化していった方がいいのか、それとも民間が少し入っていた方がいいのかという議論がやっぱりまだ残っているというような議論もあります。ただ、特殊法人にするのは間違っているのかということではないと思います。それは今後この日本銀行の法的な性格あり方、これはまた時代とともにいろいろ変わってくるかもしれません。そういうことで引き続き検討をしようというような感じがコンセンサスとしてあったように思うわけでございます。  したがって、三十五年が間違っていて今度が正しいというような感じではないと思います。この日本銀行あり方というのは各国も、先ほど御紹介させていただきましたように、一〇〇%民間から一〇〇%国営まであるわけでございます。それぞれの歴史的な経緯とそれからその国の風土等を反映した考え方というのがあるわけでございますが、引き続きこの点は検討をしていくべき課題だというふうに思っておる次第でございます。
  137. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 経過、歴史、そういうものから見ると、そのときによかれと思ってやったことなんでしょう。しかし、どうも論理的には、何回も言うようですが、株主総会もないし、何ももうけてみんなで分けましょうということでもないんだし、だとすると民間資本を入れておくというメリットというか、何で入ってなきゃならぬのかなということがどうもすとんと落ちないんですけれどもね。  同時に、三十五年のこの議事録を見てみますと、大島委員、塩野谷委員、円城寺委員、稲葉委員、舟山委員 鈴木委員、この方々はみんな何も民間資本を入れておく必要はないんじゃないか、つまり無資本金制度が望ましいということを述べられているんじゃないですか。だから、でなければならないということはないかもしらぬけれども、よりベターな方向をこうやって識者の先生方が述べられているわけですから、別に私はこのとおりやっても支障はないんじゃないのかなというふうに今でも思っているんですけれども、いかがですか。
  138. 山口公生

    政府委員山口公生君) 確かに、いろいろな著名な学者の先生の御意見もございます。それから、先生もこちらの方がいいんではないかという御指摘、それも首肯できる部分がございますが、ただ今回の金制等での議論では、あえてそこまで今変える理由が、積極的な理由があるだろうかというような感じでございました。  それは、また繰り返しになりますが、日本銀行銀行銀行としてのどっちかといえば民間的な仕事もやっている、それから完全に無資本化あるいは特殊法人化したときに、何か政府に引き寄せられたような、ちょっと表現が悪いのでございますが、そんなイメージが出てこないかとか、そういった懸念もあるわけでございます。引き続きこの辺は検討事項だということで、今回はあえて変える必要はないという結論を出されたと思う次第でございます。
  139. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 私は、あと一問で終わります。今の問題に絡んで、私は三十五年のこれ持っているんですけれども、この議事録というか説明書というのはなかなかよくできてますね、これは。どの委員が何を言ったという名前入りで出ているわけです。だから、三十五年から何年も過ぎて私が後から見ても非常によく書かれておりますし、各先生方の意見もはっきりしているわけです。したがって、ぜひ今回の金融制度調査会の議事録というか説明書というか、そういうものをやっぱり名前入りで、三十五年と同じような説明書の配付というか作成というか、そういうことをぜひ心がけていただきたいと思います。  同時に、今の無資本金制度、これについてはこれからも私は大いに議論していく課題だと思いますので、この辺の勉強の心構えと、この説明書、三十五年と同じように出していただけますか。お答えいただきたいと思います。
  140. 山口公生

    政府委員山口公生君) 確かに、三十五年の金融制度調査会の答申は、非常にある意味では、今振り返って読んでみますとまさに審議そのものが目に映るような書き方になっているわけでございます。ただ、先般の金制との決定的な違いが一つございます。それは、三十五年の金融制度調査会の答申の前の段階では、あるいは答申でもそうでございますが、意見が完全に対立している部分がございます。したがって、反対意見もきっちり書かないと、微細に書いておかないとなかなか答申自体がまとまらないという事情があったのではないかと思います。現に答申自体がA案B案と両論併記になっておりました。したがって、だれがどう反対したかということも全部書いてございます。  ただ、今回の金融制度調査会は、いろいろ途中では議論がありました。それは、こういう意見はどうだろうか、いやそれはこうかなと。ただ、最後には全部意見の一致を見ております。それで一つの統一的な形で、中にこういう意見もあったという附帯的な意見もありますが、自分は絶対反対だというようなことを反対意見として述べたという部分は非常に少なかった、あるいはなかったかと思いますが、大分そこは事情が違うんだと思います。  そういったことがございましたので、今回につきましては相当委員先生方がお互いに意見をすり合わせ、相手の意見もよく聞き、理解した上で一つのまとまった姿を出していただきました。したがいまして、今回お示ししております日本銀行法案は、中央銀行研究会や金融制度調査会の御意見をほぼ忠実に反映させていただいておるわけでございます。そういった事情の違いがございます。  それから、無資本化の勉強ということにつきましては、法人格のあり方ということにつきましては、私どももこれは一つの宿題かなという感じで受けとめております。
  141. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 終わります。
  142. 千葉景子

    ○千葉景子君 きょうは、冒頭、ひとつちょっと確認の意味も含めて日銀にお尋ねをさせていただきたいと思います。  と申しますのは、最近、時折指摘をされておりますけれども、いわゆる二〇〇〇年問題というんでしょうか、コンピューターのプログラムというのは西暦を下二けたで処理している、そういうシステムになっているようでございます。そういう意味で、近々二〇〇〇年を迎えるという現在でございますけれども、二〇〇〇年を迎えたときに、下二けたで処理をしておりますので二〇〇〇年がまたもとへ戻って一九〇〇年という取り違えが起こる、こういうことが指摘をされております。これは多分金融関係のコンピューターでも同じような問題があるのだろうというふうに思います。もしこういうことになれば決済に支障が出たり、それから外国とのさまざまなシステムにおいても支障が出てくる、こういうことが懸念をされるのではないかというふうに私も感じます。  そこで、日銀ではこの問題について今早急な取り組みをされようとしているということが先般報道されておりました。この問題についての、日銀としての対応策についてお尋ねをしたいと思いますし、そしてその報道で見ますと、今後日銀考査の重点項目にもしていくというようなおつもりがあるというふうに報道されておりますけれども、この点も含めてこの二〇〇〇年問題についてどのようにお取り組みになるのか、ちょっと御説明をいただきたいと思います。
  143. 松下康雄

    参考人松下康雄君) ただいま御指摘のいわゆる二〇〇〇年問題は、コンピューターを利用しますすべての業種に共通する問題でございますし、また世界共通の問題でもございます。  その中で、御指摘のように、とりわけ金融業の場合には金利計算でありますとか、期日管理、あるいは日付に関する情報処理をどうやるかということが業務の中核をなしている業種、業界でございます。そこで、この二〇〇〇年問題の扱いがまずくなって問題が生じたといった場合の影響も非常に大きくなることが考えられるわけでございます。仮にある金融機関で二〇〇〇年問題につきまして混乱が発生しますというと、それが直ちに決済システムなどにおきます相互依存の関係を通じましてほかの金融機関や顧客等にまで波及をする可能性もあるわけでございます。  このために、日本銀行といたしましては、決済システムの混乱を回避して資金決済の円滑化を確保するという観点からしまして、市中金融機関に対しまして二〇〇〇年問題対応に関する注意喚起を行っていこうということを予定しております。具体的に申しますと、修正の必要なプログラムは何と何かということを洗い出すこと、それからシステム対応要員の確保、またこれをテストするテスト環境の確保の予定というような所要の準備を各企業その他が行っているかどうかというような点が注意を喚起していく上でのポイントになると考えております。  また、私どもの考査の場におきましても、ただいま御指摘がございましたが、ただいま申し上げましたようなポイントを調査いたしました上で、本件につきましてそれぞれの経営陣の認識を促してまいりたい、そういうふうに考えております。
  144. 千葉景子

    ○千葉景子君 日銀そのものは九九年初めまでに大体対応がとられるというようでございますけれども、どうなんでしょうか、本当にこれかなりの額が必要とされると思いますし、それから対応がおくれているところなどを考えますと、これはかなり急がなければいけない状況にあるのではないかというふうに思いますけれども、何とかうまく転換ができそうでございましょうか。
  145. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 日銀といたしましては、九九年のただいま御指摘の時点に準備を完了すべく計画を立てて現在この準備を進めているところでございます。また、関係の業界につきましてもそのように注意喚起をいたしてまいりますけれども、限られた時間でございますから、その点は十分理解を求めながらこの業務をやっていくということでございます。
  146. 千葉景子

    ○千葉景子君 ちょっと通告はさせていただきませんでしたけれども大蔵省の方も何かこの点についてございましたらお願いいたします。
  147. 山口公生

    政府委員山口公生君) 金融機関の準備でございますが、大手の銀行は既に準備を始めているところでございます。あと中小金融機関等については、これから私どももできるだけウォーニングをして、その対応におくれがないようにしていきたいというふうに思っております。
  148. 中川隆進

    政府委員(中川隆進君) 金融検査におきましても問題意識を十分持っておりまして、既にヒアリング、検査でチェックしますのは今後でございますけれども、これまでにも既に主として大きな金融機関からどういう対応をとっているのか、あるいは今後どういう予定かというのを事前にいろいろ聞いて勉強しているという状況でございます。
  149. 千葉景子

    ○千葉景子君 ぜひ、混乱のないように対処していただきたいというふうに思っているところでございます。  さて、法案の関係に移らせていただきたいと思いますが、前回まで私もいわゆる今回の大きな理念でもございます日銀政策運営独立性、それといわゆる行政としてのかかわり方、あるいは日銀の公共性から見たさまざまなチェックのあり方、こういうことについて逐条的にお尋ねをしてきたところでございます。前回、政策委員会の議決延期請求という問題点についてお聞きをいたしましたので、きょうは多少その続きのような形になりますけれども、何点か確認をさせていただき、あるいはまた今後の運用の点などについてもお考えがあったらお聞かせをいただき、質問とさせていただきたいというふうに思っております。  そこで、まず役員の任命の件でございますけれども、これも今回は大蔵大臣の任命という形がとられております。人事権というのはやはりその使い方というんでしょうか、それによっては日銀独立性あるいは政策運営独立性を縛るあるいは制約を課すということにもなりかねません。やっぱり人を握っているということは大変大きな権限でございますので、そういう意味で、私はすべて大蔵大臣の任命ということにすることが本当に適切なのかどうかと、そういう点について多少疑問を持っているところでございます。とりわけ、今回は理事あるいは参与という制度がまた明確にされておりますけれども、これについても大臣任命という形がとられているわけでございます。  率直に言いまして、例えば参与のような職務、これは日銀政策運営に当たってさまざまな分野から金融運営に当たっての意見を聴取して政策運営に生かしていくと、こういうことがその主な職務であろうかというふうに思うんです。そういう意味では、この参与などを見ると、これは政策委員会が非常に独立した権限を持っているわけですし、そこが政策運営責任を負うという今回の骨格でもございますので、この政策委員会が自分たちの政策運営をどうしていくかということに当たってさまざまな方から適切にその時期時期に応じて意見を伺うということの方が機能的であり、あるいはこの本来の趣旨に沿うのではないだろうか、そんなことも私は考えるところでもございます。  大蔵省としてはこの点についていかがなものでしょうか。この理由ですね、大臣任命となっている理由などについて御説明をいただきたいと思います。
  150. 山口公生

    政府委員山口公生君) 日本銀行政府との関係あるいは位置関係ということについてしばしば御説明申し上げましたが、人事権、これを政府がしっかり持つ、しかし実際の運営、意思決定自主性を極力尊重する、独立性を尊重するというのが基本だと思うのでございます。そういう点から大蔵大臣任命とさせていただいておりますが、理事とか参与になりますと、今先生が御指摘になったように、余りにもそれが強いと独立性をそぐのではないかという点にかんがみまして、任命に当たりましては政策委員会の推薦に基づきという形をとらせていただいております。  したがって、そうなりますと政策委員会がほぼ自主的にかなりその人選の決定権があると言っても過言ではない状況になるわけで、そういった点でバランスをとっているというふうに御理解いただけるんじゃないかと思うわけでございます。  それから、参与につきまして、さまざまな人からいろいろな機会にいろいろ聞く方がいいではないかと、確かにそういう御意見があると思います。ただ、参与の役割として日本銀行業務についてのアドバイザーでございますから、急に聞かせてくれというよりは、ある一定の人数を指名しておきまして、これも政策委員会の推薦に基づきでございますが、それでいつも関心を持っていただくという方が現実的ではないかなという感じがするわけでございます。
  151. 千葉景子

    ○千葉景子君 今お話をお聞きいたしますと、政策委員会の推薦に基づいて任命をするということですから、その政策委員会の意向が最大限尊重されるんだというお話でございました。  だとすれば、そこにお任せするということでも何ら不都合はない。やっぱり、その人事権をしっかり政府が握っておくと、先ほど局長おっしゃいましたけれども、その辺はやはり離してしまうと心配だというものがあらわれているような、そんな感じがいたします。ともかくといたしましても、今のお話にもありましたように、そうなると任命に当たってはできるだけ政策委員会が推薦した者を尊重するということになろうかというふうに思いますし、そうしていただかなければいけないわけですけれども、この任命に当たっての運用上の留意点といいましょうか、実際にはどういう運用をされるおつもりなのか、その点について確認をしておきたいと思います。
  152. 山口公生

    政府委員山口公生君) 御指摘のとおり、当然政策委員会の推薦に基づきますので、政策委員会の方でこの重要な職務に最適任の人ということを選んでいただければ、それを尊重して任命するということは当然のことだと思います。
  153. 千葉景子

    ○千葉景子君 それでは、次に予算の点についてお聞かせをいただきたいと思います。  これも、私も既に指摘はさせていただいておりますけれども、人事と財政を握るというのはやはり組織としては大変重要な、その組織を管理、支配をする重要なポイントであろうというふうに思うんです。  予算については、今回の法案では政策運営に支障がない項目といいましょうか、その独立性を阻害しないような、そういう意味での限定がなされているとはいいましても、やはり全体の財政関与するということは大変大きな権限であろうというふうに思います。認可については、実際にはどういう点についてチェックを働かせるというか、どういう観点を見てこの認可というのをされるということになるんでしょうか。実際の運用などに当たってのポイントについて御説明をいただければと思います。
  154. 山口公生

    政府委員山口公生君) 御指摘のとおり、この認可制度は残させていただきましたが、セーフガードつきでございまして、対象も限定する、また認可しないときは公表するという形をとらせていただいておりますが、具体的にどういうケースのときにどういうことをチェックするのかということはその場その場で決めていくべき話だと思います。  例えば、一つは政策委員会できちっと決められた給与とか、そういったルール、それに適合させて、どうも合わないとか、おかしいとかいうふうな、仮にそういったことがありますと御指摘申し上げると。それから、世間の常識からいっていかがかなというときはいろいろ議論をさせていただくというようなことがあるのではないかと思うわけでございますけれども、具体的に何がよくて何がいけないというのは、これは予算の査定と同じでございまして、そのときの要求が出てきて、そのときの要求がリーズナブルなものであるのであれば、それは予算においても十分に考慮し、認めておるわけでございます。そういったものと何ら変わりないというふうに思うわけでございます。
  155. 千葉景子

    ○千葉景子君 今おっしゃっておられますけれども、やはり金融政策の運営に当たっては、それが継続性を持ち、あるいは年度ごとに極端な違いが出てくるというものではないだろうというふうに思います。そういう意味では、この運用に当たっては、やはり今おっしゃっておられるように、政策委員会がきちっと提案をされたそういうものをできるだけ尊重する。確かに、極端に水増しのようなことがあったとか、そういうことは別といたしまして、やはり独自性、自主性というものを生かして、本当に財政のバックを持って自主的な運営ができるということをぜひ担保していただきたいというふうに思うんです。  今お話しのように、そういうチェックであるとすれば、先ほどゴルフ場の問題などもございましたけれども、わかりやすい予算、これをできるだけ日銀の方にも心がけていただいて、むしろ国会などを通じて一般の国民の目あるいは大臣がおっしゃるような一般の常識、そういうもののチェックを効かせるということも私は一つの適切な手法ではないだろうかというふうに思ってまいりました。  なかなかそうはいかないという部分があるのかもしれませんけれども大蔵大臣の認可ではございますけれども、そういう意味で国民にもわかりやすい、そして一般の常識から見てもなるほどというふうに思えるような、そういうアカウンタビリティーと申しましょうか、そういうものにもぜひ、心がけていただきたいというふうに思います。  それでは次に、これも大きく考えれば公共的な機関であるし、それから認可された法人であるということから見ると、違法行為などがあってはならないわけですね。そういう意味で、違法行為の是正というのが、これも大蔵省の権限ということになっております。ただ、やはりこれも安易に運用されますと、何でも目を光らせておいて自由な活動を制約する、束縛する、何となく萎縮させるということにもなりかねません。  ここで、違法行為の是正の際に、違法行為のおそれがあるような際にと、「おそれ」という言葉がこの法案では使われているんですけれども、これは一体どういう意味で受けとめておられるでしょうか。これは余りにも拡大をいたしますと、どんな行為でも「おそれ」ということでチェックをするということにもなりかねないような感じがいたしますが、その点についてはいかがでしょうか。
  156. 山口公生

    政府委員山口公生君) 違法行為等の是正につきましては、五十六条に「法令若しくは定款に違反し、文は違反するおそれがあると認めるとき」というふうに、これは通例こういうふうな書き方をやっているといえばそのとおりでございますけれども、違反している場合は現実にそういったことが起きていると、あるいはおそれがあるというときはどうもそういった動きがあるということで、具体的に例えば守秘義務の場合にどういう場合がおそれがあるということになるかというと、その辺についてはそのときになってみないとわからないわけでございますけれども、あるいは例えば役員の政治活動の禁止がございますですね。そういったものも、はっきりと政治活動を役員がやったという証拠がある場合はもうおそれどころじゃなくて違反したということになりますが、そういった動きがどうも見られる、あるいはそういったうわさが出ているとか、そういったときはおそれがあるというふうに解釈して御注意申し上げるというようなこともあるのではないかという感じがいたしますけれども、具体的にどういうケースかというのはケース・バイ・ケース判断するしかないだろうなというふうに思います。  ただ、先生指摘のように、これを拡大解釈して、何でもあれをやってはいけない、これをやってはいけないということを言うための規定ではないということは十分に心得ておくべきことだと思います。
  157. 千葉景子

    ○千葉景子君 次に、これもまたケース・バイ・ケースというお話になってしまうのかもしれませんけれども大蔵大臣要請によって報告や資料の提出ということが、これも法律に明記をされております。これもどういう場合といいましょうか、実際にはどういう運用がなされるのか。これはしょっちゅう報告をせいとか、あるいは事細かに資料も出させる、そしてそれによって何かいつも縛られているような形になるというような運用になりますと、これも形の上では決して介入ではないんだということであっても、そういう暗黙のおもしになっていくということにもなりかねないわけで、この運用に当たって、あるいはどういうこれの運用を考えておられるのか、その点についてお願いします。
  158. 山口公生

    政府委員山口公生君) 第五十八条で「報告等」ということに関しまして、「大蔵大臣は、日本銀行業務の執行の状況に照らし必要があると認めるときは、日本銀行に対し報告又は資料の提出を求めることができる。」となっておりますが、大きく言って二つぐらいのケース考えておくべきかなと思うわけでございます。  一つは、先ほどお触れになりました違法行為等の是正の求め、あるいは監査の求めの前提としての違法行為等の実態把握を行うとき、これはやはり資料をとってからでないと、単なる風聞あるいはうわさだけで監査を請求するというわけにいきませんので、そういったことが一つ。余りあってはならないことでございますが、そういうケースが一つあるかと。  もう一つは、日本銀行は非常にマーケットに近い立場でいらっしゃいます。それで、金融制度の企画立案等を行う際に、日本銀行の日々の業務から得られる情報、あるいは日本銀行の知識、経験、そういったものを非常に参考にさせていただくことが多うございます。そういった場合に、日銀から資料を提出してほしい、あるいは報告してほしいということを求めることもある。つまり、大蔵大臣の行政上、特に金融の制度の関連で日本銀行にいろいろ聞きたいと、資料を欲しいという場合もございますので、そういった場合もこれでお願いするということになろうかと思います。
  159. 千葉景子

    ○千葉景子君 今お話をお聞きいたしますと、違法行為とかそういうものをチェックする前提にと、これはわかるところだと思います。それから、マーケットに近いことによるいろいろな日銀の蓄積した知識やノウハウ、これもいわば政府の大きな経済政策とかそういうものに生かすべく資料なりを提供してもらうということになろうかというふうに思います。個々の政策運営に一つ一つ介入する、あるいは口を出すというような形でこの規定が使われるような結果にならないように、ぜひ注意をしておいていただきたいというふうに思っております。  次に、考査の問題についてお尋ねをしたいと思うんですけれども、これも既にこの委員会でもいろいろな御議論がございました。これは今回特に法に明記されたということの意義というのはどういうところにあるんだろうか。これまでおやりになってきた実態と、これからまたいろいろな意味で考査の実を上げていただくということはあるんですけれども、ここで法にきちっと明記をされたということについてどんな意義があるんだろうか。日銀としてはそれをどう受けとめておられるか、そして大蔵省としてもこれを明記したことの意味というのをどう認識をされていらっしゃるのか、それぞれお尋ねしたいと思います。
  160. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 考査は、私ども日本銀行が民間金融機関に対しまして資金供与を行う際に、相手先金融機関経営実態の把握というそういう役割のほかに、決済システムの円滑かつ安定的な運行の確保を通じまして信用秩序維持に資するという中央銀行役割を果たしてまいりますために行う業務でございます。  今回の法改正におきまして、考査が法定されるということは、日銀がこれまで契約に基づいて行ってきております考査に関する根拠規定法律上設けることによりまして日銀業務内容の明確化に資するものでありまして、私どもといたしましては非常に意義深い改正であると評価をしているところでございます。  そこで、今後の考査の具体的なあり方にどういうふうにこれを反映させていけばよろしいかという点でございまして、これは現在検討を進めているところでございますが、金融機関の資産内容を適正に把握するということのほか、やはり金融機関が抱えておりますマーケットリスクとか、そのほかの各種のリスクの管理体制をチェックするというようなことによりましてリスクが顕現化することを事前に防止する、そういうことにより一層重点を置いていくことが必要になるであろうと考えております。  私どもとしましては、新しい日銀法の趣旨を踏まえまして、私どもに課せられたこの使命を達成してまいりますために適切な考査を行っていくようにさらに努めてまいりたいと思っております。
  161. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今、総裁がお述べになりましたことに一点だけつけ加えさせていただきますと、四十四条の第二項、「日本銀行は、考査を行う場合には、当該考査に伴う取引先金融機関等の事務負担に配慮しなければならない。」というふうになっておりまして、そのこともあわせて日本銀行で配慮していただきたい点として明記してございます。
  162. 千葉景子

    ○千葉景子君 そういう日銀が配慮すべき点も含めて、考査の重要性というものも法に明記されることによって認識をしていただきたいというふうに思います。  ただ、これは実際には日銀の考査とそれから行政による検査などは目的もそれからその制度、システムも全く違うわけですね。ただ、大きく考えれば、やはり金融秩序維持、あるいは公平で公正なそして開かれた市場というものを担保するという意味では大きな共通点、大目標はあるわけです。  そういう意味で、その考査と検査体制と、一緒ではないけれどもそこを相互に有機的に生かしていくということがやっぱり求められるだろうというふうに思いますが、その点についてはどんな形で、あるいはどういう運用の仕方によって生かしていこうということになるのか、その点について御説明をお願いします。
  163. 中川隆進

    政府委員(中川隆進君) お答え申し上げます。  今、委員指摘のとおり、検査と考査は目的性格は当然違うわけでございますけれども、共通する部分も多いわけでございます。そういう意味で、今の御指摘のとおりでございまして、検査と考査の間でお互いに協力し合える部分というのは多いわけでございます。  例えば、従来から検査と考査につきましては、受け入れる金融機関の負担ということも考えまして時期の調整をする、あるいは検査、考査の結果につきまして情報の交換をしお互いの検査、考査に資するように活用する、そういう努力をしているわけでございます。また、例えば資産査定の方法大蔵省の検査と日本銀行の考査で方法が違ってはまたいけないわけでございます。そういう調整をする。そういう関係で、検査、考査につきましては、特に共通する部分につきましてはよく調整をして円滑に行ってきていると、そういう努力をしているところでございます。
  164. 千葉景子

    ○千葉景子君 私もその点については、それぞれの特色というかそれは生かさなければいけないだろうというふうに思います。  日銀の考査というのは、契約に基づいて相手方の信頼を得てやるということにもなりますので、強制的に行うというものではない。しかし、今おっしゃったような、査定に当たっての基準とかそういう面では、共通化することによって先ほどありましたように事務長をできるだけ軽減化するとか、あるいは負担をなくしていくというようなことにも寄与するのではないかというふうに思いますので、そういう意味で、それぞれの独自性というのは大事にしていただきながらも、そういう有機的な関係というものをぜひ検討していただきたいものだというふうに思います。  さて、特融の関係についても多少お尋ねをさせていただこうかと思いましたが、これは午前の質疑寺崎委員の方からもいろいろ御質疑がございました。私も共通な問題意識がございますので、この点については時間の関係もあり譲らせていただきたいというふうに思っているところです。  さて、これまで幾つかの問題点を指摘させていただいてまいりましたが、私は、全体としてこの今回の日銀法を見ましたときに、金融政策に関する責任所在というんでしょうか、どうもそこがいま一つすっきり明確になっていないような感じがいたします。やはり、これからは金融政策については日銀がアカウンタビリティーを十分にしていただいて、そして市場や国民に対して自覚を持って責任を負っていく、こういう覚悟を持っていただく必要があるだろうし、それから大蔵財政当局は、日銀関与はするけれども、しかし、いざ金融政策に対してどういう責任をとってもらえるのかというと、なかなかそこはどうなるんだろうなという感じがするわけです。確かに、経済政策全体に内閣としてあるいは当局として国会などに責任を負うと言ってしまえばそれまでですけれども。  そういう意味では、日銀がそういう意味でのはっきりした自覚と責任を負う、そして大蔵財政当局はでき得る限り日銀政策運営に任せていく、こういう仕切りというんでしょうか、それぞれの認識というのをしっかり持っておいていただく必要があるように思いますけれども、その点について、日銀大蔵省の方それぞれにお伺いをしておきたいと思います。
  165. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 御指摘のように、今回の法改正によりまして日本銀行金融政策決定、運営上の独立性が高まるということは、私どもが国民に対してこれまで以上に重大な責任を負うということでございまして、私どもとしましても、この点、十分に自覚をして金融政策の運営に当たってまいりたいと考えております。  金融政策の運営に当たりましては、金融経済情勢に関しますマクロ、ミクロの両面からの情報を十分に収集しますとともに、経済の理論面、また実計画からの研究も深めることによりまして、私どもでき得る限り的確な情勢判断に努め、政策判断に誤りなきを期してまいる所存でございます。こういったことの政策判断のための基礎データあるいは情報、その際の物の考え方、また政策決定の過程等につきましては、国会に対する御説明や議事要旨の公表その他を通じまして明らかにし、もって国民に対するアカウンタビリティーを十分に果たしていく考えでございます。  こういう点に全力を尽くすことによりまして、新法にふさわしい新しい時代の中央銀行の責務を十分に果たしてまいる決意でございます。
  166. 山口公生

    政府委員山口公生君) 法案に沿いましていろいろな仕組みを御質疑いただきまして、私どもとしましては必要最小限のチェックに限らせていただいているという御説明を申し上げておりますが、要は運用をどうするかということに尽きるんではないかと思うわけでございます。  したがいまして、今の御質問に対する答えといたしましては、法の第三条の「日本銀行通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。」と、この基本的な考え方をいかに現実の運用で守っていくかということだろうと思うわけでございます。したがいまして、仕組みとしてもそれが乱用されるものであってはならないし、こういった精神がいつも生かされた形での法の運用ということに努めていかなければならないというふうに思っております。
  167. 千葉景子

    ○千葉景子君 今後とも、その点について私どももしっかりとまた運用などについてチェックをさせていただくようにしてまいりたいというふうに思っております。  さて、この機会に、最後にお尋ねしたいと思っておりますが、日銀の新しい出発ということになっていくわけでございますけれども、この間の日本の金融市場の状況などを見ていますと、改めてそれぞれの金融機関あり方、そして本当に適切な監査体制というんでしょうか、そういうものが問われているような気がいたします。  まずは、金融機関どもみずから襟を正すといいましょうか、自己改革に努めてもらう、そして透明な開かれた市場に適応できるような体制整備をしてもらうということが必要じゃないかというふうに思います。そういう意味で、最近盛んにコーポレートガバナンス、これをきちっと確立をすべきという話が出ておりますけれども、そういう中でも今後、監査役のあり方、あるいは社外取締役の採用とか、あるいは公認会計士のチェックのあり方、こういうものも大変重要なポイントになってくるのではないかというふうに思います。  大蔵省の方でも、公認会計士審査会が「会計士監査の充実に向けての提言」というものを出されたというようにもお聞きしておりますし、こういう点についてぜひ積極的な、企業が自己改革をするためのいろいろな手だてというようなことについてもぜひ検討を加えていってほしいというふうに思います。それから、行政による監督のあり方ということを考えたときには、盛んに最近もこのところの第一勧銀の問題などをとらまえて結局はお互いに癒着があったんではないか、見過ごしたり、あるいは見過ごされたり、そういう関係にあったのではないかというようなことすら指摘をされるような状況でございます。  だとすれば、これは私の一提案でもございますけれども、こういう監督に当たる人については何か特別な資格といいましょうか、そういう専門資格のようなものを設定して、そして日常的に、そしてそれによって蓄積されたノウハウを持って監督に当たるような、そういう仕組みも考えてみたらどうだろうか、こんなことも思うわけです。これら一連の今後の新しい金融市場に対応するためのさまざまな問題点、今指摘したような点につきましてお考えをお聞きして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  168. 山口公生

    政府委員山口公生君) これからの新しい金融行政ということが何を目指すべきかということに尽きるかと思いますが、やはり市場経済がどんどん進みます。金融機関におきましても、そういったマーケットに評価されるような金融機関になっていかなければならない。そのためにはディスクロージャーを十分に行い、また公認会計士等の外部の監査をきっちり受ける、内部でも監査役の役割を充実していくというようなことで、だれの目にも立派に映る金融機関になっていく必要があると思うわけでございます。  行政の役割としても、これからは透明性を持ちながら、なるべくルール化されたやり方でそれを実現していくというやり方、例えば早期是正措置等はその試みだと思っておりますが、そういった方向にシフトしていく必要があると思います。  なお、行政として担っている人材の問題でございますけれども金融監督の専門官というのを設け、養成していくということが大変有効なことだと思いますけれども、果たして、例えば今国税専門官というのが七百六十七名おりますけれども金融関係でこういった専門家が育てられれば一番いいんでございますけれども、そういった特別な職種というのを設けることができるのかどうか。ただ、金融のことしかわからないという人でもまただめというジレンマもございまして、こういった点は今研修等で対応しておりますけれども、今後の課題として取り組ませていただきたいというふうに思っておるところでございます。
  169. 千葉景子

    ○千葉景子君 ありがとうございました。
  170. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 最後の質問だということですが、まだお伺いしたいことがたくさんあります。時間の関係で最初に物価の安定を図るということが掲げられておりますけれども、この物価の安定というのは一般物価だけを指すのか、資産価格を含めた物価の安定ということなのかということを日銀総裁にお伺いしておきたいと思います。  というのは、あのバブルにおける資産インフレという苦い経験を我々は持っており、そしてこの問題については、例えばこの間も参考人に来ていただきました田尻嗣夫さんの本では、あのバブル期の資産インフレというのは、「空前の資産インフレを政策的にもたらした大失策として日本銀行の歴史に大きな汚点を残すことになった。」と、こういう厳しい指摘をされているほどであります。  そういう失敗の厳しい反省に立って、一般物価のみならず、資産価格を含めて物価の安定を図ると、こういうふうにお考えになっているのかどうなのか、まずお伺いします。
  171. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 金融政策の運営に当たりまして、私ども物価の安定ということを目標にいたしているわけでございますが、それはどうしてかという点につきましては、企業や家計が今後の消費、貯蓄、投資といったようないろいろの決定をいたします際に、将来、物価がどんどん上がっていくとか、あるいは逆にどんどん下がっていくとかというような考慮をする必要なしに将来の決定ができるということが円滑な経済運営のために非常に重要なことだからでございます。  そういう点で、物価の安定が確保されれば、経済が自分自身の力を十分に発揮できるということになるのでありまして、そこがやはり中央銀行としての政策目標の意義であると理解をいたしております。  一方で、地価、株価というような資産価格について見ますというと、これは物の価格でありますけれども、やはりその決定の要因の中には、先行きの経済成長ですとか、企業収益の見通しなどを織り込みながら、しかも非常に大きく変動してまいるものでございますので、この安定の方を直接にこの金融政策の目標として運営をいたしますと、状況によりましてはかえって一般の物価とか、あるいは景気とかに好ましくない影響を与える可能性もございます。  そういう意味におきましては、資産価格はいわゆる一般物価の安定と同じような意味では金融政策の本来目標の中には含めることが適当でないように思いますが、ただ資産価格の動き自体は経済の先行きに関します非常に有益な情報でございますし、市場における経済の見方を端的に反映する面がございますから、しかもその動き自体が経済の実態に影響を及ぼしてまいります。そういう点からまいりますと、私どもが経済の変動を示唆する貴重な材料の一つとして資産価格に注目をするというのは非常に重要なことでございます。  これは、私どもとしましての過去のバブル期の政策の反映も含めまして、資産価格の動向などに十分の注意を払いながら、インフレなき持続的成長を目標としまして適切な政策運営を図ってまいりたいと考えております。
  172. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 資産価格にも注目するということはおっしゃいましたけれども、資産インフレを回避しなければならないということには触れられなかったように思います。それを含めてのことかどうか、これは時間の関係もありますからここで終わりますけれども、やはりあのバブルの発生のような資産インフレ、さっき言いましたような日銀史上に一大汚点を残したと言われるようなことが起こらないようにしていただきたいということを要望して、次の質問に入ります。  これは、大蔵省にお伺いします。日銀法第一条第二項では、日銀目的について、「資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序維持に資すること」とあります。これはどう解釈するかということですが、日銀目的資金決済機構の維持ということであり、その目的達成することによって結果として信用秩序維持を確保していく、こういう趣旨であるのかどうなのか、そうとってよろしいでしょうか。
  173. 山口公生

    政府委員山口公生君) この目的規定は、日本銀行が組織論的に何のためにつくられ、何をやるための組織かということで書かれております。したがいまして、資金決済の円滑な確保を図って、もって信用秩序維持に資すると、これが目的でございます。
  174. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 目的はその文章にそう書いてあるとおりですけれども、その目的達成する方法としては、結果として信用秩序維持に資するということになるのかどうなのかということが私のお伺いしたい点だったんですけれども、それじゃちょっとお答え願えますか。
  175. 山口公生

    政府委員山口公生君) 結果としてそうなるということではなくて、資することが目的、つまり設立の目的の一つだということでございます。
  176. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 そうすると、その前に書いてあるところじゃなくて、こっちが目的だということになるわけですか。——わかりました。その目的はよくわかりました。  ところで、三十八条第二項、特融のところの条文ですけれども、第三十八条では大蔵大臣信用秩序維持のために必要と認められる業務日銀要請し、これを受け日銀信用秩序維持のために必要と認められる業務を行う、こういうふうに述べられております。これはこの信用秩序維持という目的を受けた規定だと思います。  その際、それじゃ現実に行われていることとの関係でお伺いいたしますけれども、実際に行われている日銀特融というのは、金融秩序維持と掲げられてはおりますが、しかしその中には乱脈経営によって破綻の危機に直面した金融機関を救済しようとするものが多かったことは、これはあなた方がどう説明なされようとほぼそろって指摘されているところであります。  そうしますと、信用秩序維持のための業務というふうに規定はされていますけれども、これは今後そういうふうに厳格に変わっていくというふうに考えていいのか、大体これまで行ったようなことを今後も日銀特融としてやることになるのか、これは大蔵省にもう一度お伺いしておきます。
  177. 山口公生

    政府委員山口公生君) これまでやってまいりました日本銀行の例えば二十五条の特融でございますが、これは何も乱脈経営を行った破綻金融機関を救済するためではございませんで、預金者の保護、信用秩序維持に資するための措置でございます。したがいまして、今回の三十八条でもって信用秩序維持のため必要な措置というのを信用秩序維持に資するための一つの手段として掲げさせていただいているということでございます。
  178. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 乱脈経営か否かということになるとまた論議になりますから、経営破綻したあるいは破綻直前、これを救済するということであったことは間違いないと思います。きょう午前の答弁でも、松下総裁は破綻した経営への融資を行うと、その結果信用秩序維持を図るんだということで、前段では破綻した銀行への融資ということをおっしゃっていたわけですね。  だから、そうなると、私は日銀特融というのが掲げている信用秩序維持ですか、これはどういうことかというと、破綻しかかった銀行日銀特融でつぶさないことが信用秩序維持だというふうにお考えになっているのかどうなのか。私にはそういうふうに響く答弁でありました。いかがですか。    〔委員長退席、理事石川弘君着席〕
  179. 松下康雄

    参考人松下康雄君) ただいまのお話でございますけれども、私どもは乱脈経営によって金融機関破綻をいたす、あるいは破綻をしようとしております際に、これを救済する目的での融資というものを行うつもりは全くございません。破綻をいたしました金融機関は、それぞれの処理方針にのっとりまして処理されていくものでございます。  ただ、その際におきまして、改正前の預金保険法のそのままの適用ということでございませんで、預金者に関しましてはその預金を保護するという見地から、ある場合には受け皿金融機関を設けまして、その中に破綻金融機関の中の優良資産の部分とか預金の払い戻しの業務とかというものを承継させてこれを実行させる、そういったいろいろの方法を講じまして預金者保護とそれから破綻金融機関処理とを行ってきたわけでございます。この点は、従来の特融の場合もまた今後の三十八条適用の場合も内容に変わりはございません。
  180. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 具体的に日債銀の問題でお伺いします。  午前の論議の中で銀行局長は、例えば日債銀というものがどうなるかということは、国内の問題としてもいかに重要であるかということと同時に、国際的にも金融秩序にとって大変な出来事であり、日本の金融システムに対する信頼という点でも大変な問題だ、だからああいう措置をとったんだという説明がありました。やはり大きい影響を与える日債銀、ほっておけばこれは破綻しかねない危機的な局面、日債銀再建という言葉をお使いになりましたから、再建を図らなくちゃならない。その再建の際に日銀特融が供与されたと、こういうことですね。やはり、中には処理して破綻させてしまう銀行もあるでしょうけれども、しかし、例えば大きい銀行、日債銀というふうなものはこれはそうなったら大変だから再建をするんだと、こういうことだと思います。  こういうのはやはり今まずいということが国際的にも問題になってきたことではないかと思います。六日ですか、参考人意見の中でも、大きい銀行はっぷさない、いわゆるツービッグ・ツーフェールの考え方はおくれた考えであり、アメリカでもコンチネンタル・イリノイ銀行では採用されたが、今ではそうした考え方は放棄されているということです。我が国においてもそうした考えはとらないということを私ははっきりすべきだと思います。  信用秩序維持というあいまいな表現で、やろうと思うことは何でもできる、こういうことでは私はまずいじゃないかと思います。大蔵大臣、いかがでしょうか。
  181. 山口公生

    政府委員山口公生君) あくまで現在の一番大切な点は信用の維持金融システムに不安を起こさないということだろうと思うわけでございます。それは預金者保護でもありますし、またさらに大切なことは我が国の貴重な社会的な財産とも言える金融システムに対する信頼感、これを壊さないということでございます。基本的には各金融機関の自助努力ということがベースになりますけれども政府としてもあらゆる手段を使ってそういった国の貴重な共有財産である信用システムを壊さないように努めるということは、それは最も今求められているところであろうと思うわけでございます。  日債銀について申されましたけれども、これは債務超過状態ではありませんで、各金融機関等の協力も仰ぎながら新しい日債銀の前進のために基盤を強化したわけでございます。破綻の問題とはちょっと違った問題だというふうに受けとめるのが至当だというふうに思うわけでございます。  各国ともに、いろいろな大きな銀行破綻問題というのは、非常に悩みつつ処理をいたしております。現実に大きな銀行破綻まで行かなくても非常に危なくなってきたときどうするかという問題は、今フランスでも一つ大きな問題を抱えておると聞いておりますし、アメリカでもコンチネンタル・イリノイの事件がありましたがへ今はそういった大きいところでは問題になっておりませんので、そういったことが余り議論されておらないと思うのでございますが、これはひとりその銀行だけの問題ではなく、国全体のシステムの問題というふうにとらえるべきではないかというふうに思うわけでございます。
  182. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 六日の参考人意見陳述の中で、銀行の要望ということで、不良債権処理という面からも、またビッグバンに備えるという面からも、日銀特融に対する非常に強い要望が出されておりました。それだけに、私はこの問題については明確な基準をはっきり確立しなくちゃならないと思います。    〔理事石川弘君退席、委員長着席〕  私は、特融を全面否定するものではありません。しかし、日銀特融というのはそもそもどういう性格のものなのか、最後貸し手機能というものはどういうものなのか、これは多くの学者等も指摘しておりますけれども、あくまで一時的な流動性不足に陥った場合に限っての融資であるということが定説だと、こういうふうにされております。日銀特融もそうした限定的な目的においてのみ実行されるべきもの、いわば緊急避難的な性格を持ったものだと。  しかるに、そういう定説に反して日本の特融というのは、出資だとか劣後ローンだとか、こういうふうなものが行われているのは、こういう趣旨に反するものだという指摘が行われております。そして特融だけならまだしも、出資とか劣後ローンというのは、現行日銀法においては明確な法律的根拠がないじゃないかと、こういうことが指摘されてもおりました。  今度の法案では、そこが午前の論議でありましたように、第三十八条二項では、特融と「その他の信用秩序維持のために必要と認められる業務」ということで、「その他」のところは出資劣後ローンが入るんだということで、専門家がこれは本来の最後貸し手機能にも照らしても逸脱するものだと指摘していた部分法律的な根拠を与える、こういう形になっているわけです。私はこれはやはり今、この間の参考人の要求にもある業界からの何とか日銀特融をという要望とをあわせて考えるときにやはり問題が残る、こういうふうに言わざるを得ません。まさにこういう点は限度あるいは条件をきちっとすべきだというときに、こういう三十八条二項の、午前も答弁がありましたような形で法案をまとめるということは、やはり日銀特融を今後大いに広めて運用したいということに沿うものととっていいでしょうか。
  183. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今後、金融市場が大変グローバル化し、さらにデリバティブに代表されるような金融商品が登場する中で信用不安のあり方ということにつきましては、現時点ではなかなか想像できないものがあろうかと思います。したがいまして、信用秩序維持に資するための業務をある程度包括的な形で規定させていただいておりますが、ただ、そうした措置発動に当たりましては、大蔵大臣要請をいたしますが、最終的には日本銀行政策委員会の議決により実施されるところでございまして、日本銀行の講じる措置が真に必要なものかどうか、十分確認するための手続は用意されているというふうに考えているところでございます。
  184. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 日銀の関係者に聞きますと、そういうところは日銀がやらなくてもいいようにしてほしいけれども、そういう措置大蔵省でとられないから我々はやむを得ないんだということを日銀の関係者からは聞くんです。総裁はどういうふうにおっしゃるか知りませんけれども、私の知っている人々はそういうふうに言います。これは午前の論議でもこういうところを特融という方策でやることと、そうでないものとを区別してきちっとする必要がある、そうなれば日銀も救われますと、こういうお話なんです。私はそういうことも考えていただきたいと思います。  もう時間が来まして、質問時間がなくなりました。いろいろな問題を聞きたかったわけですけれども、残念ですが触れられません。最後に一点だけ、大臣にお伺いしたいと思います。このごろ盛んに叫ばれるアカウンタビリティー、なかなかわかりにくい言葉であります。私はこういう横文字は余り使わない方がいいと思いますけれども、その論議はさておきまして、この問題で一般的に説明責任ということが言われておりますが、単なるこれは説明責任というふうなものではなく、不作為の責任を含めた結果責任が問われることも含めたものなんだと。説明すればいい、あるいは国会へ出て答弁すればいいというふうなものではなく、それは責任が問われるものなんだということを国際的な経験も含めて強調する向きがあります。  私は、何回かの論議を通じて、やはり日銀が戦後行ってきたこと、特に最近の鋭い批判を受けている問題等について、本当に深い責任を持って見詰め直して今後の日銀の運営に当たらなければ、新しい法律によって変わるどころか、国民の批判を受け続けることになるだろうと思います。しかも結果責任も問われる、そういうことが強調されているわけです。私は大蔵省についても同じことが言えると思います。大蔵省にこの問題の最後の質問として、一言お答え願いたいと思います。
  185. 三塚博

    国務大臣三塚博君) まさに説明責任、片仮名文字のアカウンタビリティー、私も片仮名文字は余り好きじゃありません。やっぱり日本語を大事にしたいと思っておる一人であります。そういう意味で、吉岡議員の言われる結果責任を伴うものと、当然のことであります。  そういう中で、おのずから公的使命を担いながら全力を尽くすわけでございますから、何がベストかということを真剣に追求をしながら、そこで決定をされていくべきものであろうと思います。結果は、そして責任を持って待つということであればよろしいのかなと思っております。  本法案の趣旨も、総裁からまた山日銀行局長から答弁されておりますけれども、その時点をしっかりと踏まえながら、特に日銀の開かれた独立性自主性、イコールでございますが、そういう中で、政府としても大蔵省としても、特融に象徴されますように、まさに緊急輸血の必要があるというときに全力を尽くす、元も子もなくなるようなことをしてはおれないと、そういう意味で、抜本的な治療や手術は当該金融機関を初めとした関係者の努力が必要不可欠であると。まさに信用維持がいかに重要なのかということは責任を持って説明をしなければなりませんし、同時にそのことは結果責任を全うするということでありますので、両々相まちまして、責任をなすり合うということは毫末もないと私は信じて疑いません。
  186. 山口哲夫

    山口哲夫君 まず、予算の認可権について質問いたします。  先ほど千葉議員からも触れられておりましたけれども金融制度調査会で三つの議論があったと聞いております。一つは届け出、二つ目は国会承認、三つ目は蔵相承認、そう言われておりますけれども、その結果、金融政策影響を与えない人件費、一般事務費などの予算について大蔵大臣に提出して認可を受けることになったわけでありますけれども、なぜ国会承認でなくて大蔵大臣の認可なのか、その点についてお答えいただきたいと思います。
  187. 山口公生

    政府委員山口公生君) 御指摘のとおり、いろいろなケース議論していただきました。  その結果、日本銀行業務の遂行上、機動的に経費予算の変更等を行い得る制度とすることが適当であろうということが大蔵大臣の認可ということを維持した理由でございます。ただし、その場合も先ほどから申し上げておりますようなセーフガードつきの限定されたものでございます。
  188. 山口哲夫

    山口哲夫君 NHKは、これは公共性を持った認可法人ですね。日銀も大変な公共性を持った認可法人。同じ公共性を持った認可法人なんですが、NHKは国会承認を得て予算決定、どうして国会承認ではまずいんでしょうか。何か金融制度調査会の中で、日銀側が国会承認だけはやめてくれと大変強調されたそうです。国会承認でまずいことがあるんでしょうか。
  189. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 金融制度調査会には日銀からも代表者が参加しておりましたけれども、私自身はそういう発言があったというふうに聞いてはおりません。
  190. 山口哲夫

    山口哲夫君 ある新聞に議事の概要がずっと出ておりました。その中に、日銀側からそういう国会承認だけはやめてくれという発言があったと書いてあったんです。国会承認、本当にまずいんですか。
  191. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私どもは、何か特定の仕組みをしていただきたいというような発言を行ったことはないというように聞いております。私ども金融制度調査会に対して申し述べましたことは、予算の公的チェックは、それが必要であるとしても、中央銀行の経理の自主性をそれが阻害をし、またひいて中央銀行金融政策独立性に悪影響を与えるおそれがあってはならないので、公的チェックのあり方は、できる限り中央銀行独立性や運営の自主性に配慮したものとしていただきたいということを申し述べたというふうに私は理解をいたしております。  したがいまして、現在の改正案におきますこの点の条文は、私どもが当時そうやって申し述べました点を十分に御配慮をいただいているところであると考えております。
  192. 山口哲夫

    山口哲夫君 よく理解できないんですけれども独立性国会承認なら何か阻害することがあるんですか。
  193. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私の承知しておりますところでは、独立性ということにつきまして御要望をいたしましたけれども、それを国会承認あるいは大蔵大臣認可というものと絡めた議論をしたようには聞いておりませんのです。
  194. 山口哲夫

    山口哲夫君 総裁に聞いているんです。総裁御自身は、国会承認をされれば日銀予算について何か独立性を失うことがあるとお考えなんでしょうか。
  195. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 現在のこの法案におきまして、大蔵大臣認可ということでございますので、それに対して私は何か問題があるようにはその点考えておりませんのですが、仮にこれが国会での御審議を得るといたしましたときに、実際にいろいろ予算の実務上機動的に対応をする必要がありますときにそれがどうなるかという点は理論的には問題かと思います。ただ、それは現在の法案の中にはそういうふうになっておりませんので、特段問題視いたしておりません。
  196. 山口哲夫

    山口哲夫君 失礼な言葉かもしれませんけれども、先ほどの銀行局長の機動性を持たせるためにということとあわせて、私はちょっと論弁にとれるんです。予備費を組んでおけば何でもないことですし、どうしても必要があれば補正予算を出しても、補正でこういう了承を得たい、出しても結構だと思うんです。  何で固執するかといえば、日本銀行は利益を得ればすべて納付金として国庫に納入するわけですね。ですからこれは国民の財産ですよね、そういう意味では、それだけ入れていただくわけですから。ですから、日本銀行が本当に国民が納得できるような経営をしているかどうかということについても、私は国民として知る権利があると思うんです。そういう意味でやっぱり国会承認を得るのが私は一番よろしかろうと、そういうふうに思って申し上げているわけであります。しかし、これ以上議論しても結論が出るわけじゃないと思いますので、これでやめます。  次に、公定歩合の引き上げの問題について質問いたします。これまでの論議で、バブル発生の責任問題について随分多く議論が出されております。私は、バブル発生の責任というのは、やっぱり内需拡大政策をとり続けてきた大蔵省にもあると思いますし、日銀にも、資産価格が過度に高勝したというときにはどこかにやっぱりおかしいことが起こっているんではないかといって注意を払って、直ちに手を打っていく必要があったんではないだろうかと。そういう意味からいくと、一九八六年輩時、副総裁だった三重野さん、前総裁ですけれども、彼を中心にしてプロパーの日銀理事たちの中に資産インフレ警戒論が大変強かったと、こういうふうに言われております。  しかし、御案内のとおり、日銀は八七年の二月に引き下げた公定歩合二・五%を、八九年五月の末に三・二五%に引き上げるまで約二年間にわたって据え置いてきたわけであります。公定歩合の引き上げを先延ばししたことによって、私はバブルが加速していったと思っております。どうしてこういう引き延ばしをしたんでしょうか、その理由をお聞かせください。
  197. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 当時の金融政策についてでございますけれども、この二・五%の低金利が八九年まで据え置かれた当時でありますが、景気の回復は次第に強まっておりましたが、物価は安定を維持しておりました。また、その当時の国の全体の経済政策の運営におきましては、大幅な経常黒字の是正、あるいは円高の回避ということが非常に優先的な課題とされていた時期でございます。そういった中で、金融政策運営のとるべき措置としてはぎりぎりの選択を迫られた結果がこの二年有余の据え置きであったというふうに理解をいたしております。  もちろん、この当時、地価の高騰を初め株価につきましても問題が起こっておりましたから、やはり日銀といたしましては、当時、八六年から政府金融機関に対して節度ある融資態度を要請するというようなことを行っておりましたし、金融緩和の副作用につきましても注意を喚起いたしておりましたけれども、実際にこの資産価格の大きな変動がどのような意味を持ち得るのかという点についての洞察は必ずしも十分でなかったということも否めない点であると思っております。  したがいまして、私どもの得ました教訓は、為替政策、為替相場あるいは対外不均衡の是正ということを過度に金融政策の目標として置くことが適切でない場合がある、金融政策はあくまでインフレなき持続成長を目標としていくべきであるということ、それから資産価格やマネーサプライの動向などにつきましては十分留意をして、早目早目の対応をとることなどでございます。
  198. 山口哲夫

    山口哲夫君 少なくとも日銀の総裁を初めとして理事に至るまで、金融政策については大変な専門家ばかりがそろっていたと思うんですね。その専門家の皆さんが資産インフレの警戒論を持っていた。当然、私はそのときに公定歩合の引き上げというのは行われるべきだったろうと思うんですけれども、しかしそれが実際には行われなかったというのは、今ちょっと触れておりましたけれども、恐らく当時の政府の内需拡大、それから貿易黒字を解消しなきゃならない、そういうような財政政策が日銀のそういう金融政策に対して大きな枠をはめていたんでないだろうか、そういうふうに実は思われてならないわけであります。そういう点では、私はやっぱり日銀責任というのは大きかったというふうに思います。  そこで、これは百年史でも反省されているんですけれども、今結果責任のお話が出ておりましたけれども、結局は結果的に日本経済を混乱させて国民生活にも重大な影響を与えた、そういう中で日銀が何一つ責任をとらない。私は、百年史でもって反省しただけでは済まない問題だったと思うんですけれども、こういう場合、当然私は当時の総裁の責任というのはあったと思うんです。大蔵大臣のおっしゃっていた結果責任ということを重要視して考えれば、これだけ国の経済を混乱させたという点からいけば、金融政策に誤りがあったということで何らかの責任をとるべきではなかったかと思うんですけれども、こういう場合における責任のとり方についてどうお考えでしょうか。
  199. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 初めに一言だけ申し上げますけれども、当時は政府中央銀行との間での問題と申しますよりも、今の円高対策あるいは貿易黒字の増大対策というようなものが非常に望まれていたのは、産業界全体を通じてそういう空気でございましたから、それらも一つの情勢判断の中に反映をしたかと思っております。  それから、金融政策の評価なり責任の点につきましてですが、その点で難しい点があると私が思いますのは、金融政策と経済活動との因果関係というのは大変複雑でありますことと、政策の効果が浸透してまいりますのには通常相当の時間がかかるということでございます。このために、諸外国におきましても金融政策の評価なりが行われますけれども、そのあり方の一つとして、金融政策運営の透明性をできるだけ高めていく、政策運営あり方を事後的に検証をし改善させていくというような方法がとられているということでございます。  こういった点につきましては、今回の改正法案におきましては、政策委員会の議事要旨の公表でありますとか、国会への報告によりましてこの政策運営の透明性を高めて、その透明性が高まったことによって政策運営あり方が事後的に検証され、どういう点を改善すべきであったかということが明らかになるというふうに考えているわけでございます。そういう透明性を高めることによりまして政策に対する批判が強まるわけでありますけれども、甘んじてその批判をいただきながら責任を持って政策を遂行し、改善を図っていくという点が私ども金融当局としてのなすべきことではなかろうかと思っております。
  200. 山口哲夫

    山口哲夫君 こういう場合に、大体今総裁がおっしゃったように、誤りは誤りとして今後の政策に生かしていかなければいけないという、そういう方向を役人の中でもとりがちなんですけれども、私は目に見える形で責任というものはきちんととらなければ、これはなかなか納得してもらえないと思います。そういう点では、このような非常に大きな問題に発展した、しかも結果的にこれは確かにそのときの決断の誤りであったということになれば、結果責任としてはこれはやっぱり総裁がみずから責任をとるとか、そういうくらいのことをやらない限り、なかなか国民からの信頼というものを私は得られないんではないだろうか、そのくらいの決意を持ってやっていただかなければいけないんではないかな、私はそういうふうに思います。  次に、法律の見直しの問題についてお尋ねをいたします。先日、参考人の陳述で、早稲田大学商学部の立脇教授がこう言っていました。新たな日銀法が施行されてから五年後に、日銀が法の目的に沿ってきちんとやられたか、問題点はなかったかなどについて、しかるべき機関で再検討と調査を行い、大蔵委員会報告させるべきだと述べられておりました。  大臣にお尋ねいたしますけれども、私は大変これは有意義な御示唆だったと受けとめております。本来なら見直し条項を盛ってもいい、それほどのやっぱり重要な法案ではなかったかなというふうに思います。しかし、残念ながらそれは載っておりません。  それで、大変多くの問題がこれまでの質疑の中で出されてまいりました。一つ一つこれは問題のあることだと思いますし、そういう問題がどのように思考されていったのか、そういう点についても一つ一つ検証をしておく必要があるんではないだろうかと。そう考えたときに、見直し条項はありませんけれども、五年間やった結果、どういうところに問題があったのか、どういう反省をしなければならないのか、よりよい日本銀行法にしていくためにはこういう点を検討していく必要があるんではないだろうかと、そういうことについて、しかるべき機関でいろいろと議論をして、問題点を出していただいて、そして大蔵委員会報告していただいて、そういう点を十分に委員会で議論をしていただくと。そういうきっかけをつくっていただいてもよろしいんではないだろうかと、そういうふうに思うんですけれども、いかがなものでしょうか。
  201. 山口公生

    政府委員山口公生君) 大臣の御答弁の前にちょっと法案に触れさせていただきたいと思うわけでございますが、今回は日本銀行法の抜本的な改正でございます。その中におきまして、業務報告書の国会提出の回数をふやす、あるいは日銀総裁等の国会への出席義務規定を設けました。こういうことで、日銀金融政策業務、財産のあり方等につきまして、国会での充実した御議論が可能になるように手当てしてございます。  したがいまして、国会においてこの改正法案がどういうふうに施行されているか、運用されているかということについては十分に御議論をいただけるものというふうに考えております。
  202. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 銀行局長のお話に尽きるかと思いますが、中銀研、さらに金制において行われました議論を踏まえ、同時に相並行しまして与党三党が真剣な論議を一年弱詰めてまいったところであります。その中で法案を提出させていただきまして、御審議を賜っております。  段々の御審議の中で、独立性の問題、政府日銀の問題、また金融システムの中における日銀あり方等々が指摘をされたわけでございまして、それを踏まえながら、今後日本銀行は、第一条、第二条に盛られておる基本を踏まえてお取り組みをいただくものと信じます。よって、改正法施行の一定期間経過後に法律の見直しを行うべし、その規定を設けろということについては必要はないと、こう申し上げさせていただきます。
  203. 山口哲夫

    山口哲夫君 私は、規定を置いてくださいとは言ってないんです。もうこの原案が通ればそういう条項はありませんから。  ただ、今局長もおっしゃったけれども、やっぱりこれだけ重要な法案だけに、客観的に見てこういうような問題もあったんではないだろうかということを、それなりの機関で議論をしていただいて、それを大蔵委員会に提起していただいて十分に議論をする、そういう余地はやっぱり残していただきたいと、そういうきっかけをぜひ大蔵省としてもつくっていただきたいんだと、こういうことをお願いしているわけです。
  204. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 本件は、大蔵委員会におきまして極めて御熱心に御審議を賜りました。数々の御指摘も賜りました。それを大事にしながら、今後の運営に万全を期していくということで、御期待と御信頼におこたえをすることができるのではないかと申し上げさせていただきます。
  205. 山口哲夫

    山口哲夫君 銀行局長、先ほど申されたように、ぜひいろいろと今後十分議論ができるような、そういう体制をとっていただくようにお願いをしておきたいと思います。  総理大臣もお見えになりましたので、時間は余っておりますけれども、これが最後の一般質問だと思います。  そこで、総裁に一つ申し上げておきたいと思います。先日の参考人意見で、先ほどもちょっと出ました、東京国際大学の田尻教授、大変示唆に富んだ御意見をいただきました。これは、こういうことです。ドイツが第二次世界大戦の前に軍備拡大のために大変な通貨膨張を行ってきたと。そのときに中央銀行は、これ以上ドイツが通貨膨張させては大変なことになる、これだけはやめなければいけないということで、全理事が署名をして、そしてヒトラーに対して建白書を出した。当時、独裁者のヒトラーに対して建白書を出すということは、まさにこれは血判状でもあると。なぜそういうことができたかと言えば、国民に対して中央銀行が大変な使命感を持っていたからであると。そういうことを考えたときに、日本の日本銀行においてもこういう使命感を持っていたならば、恐らく二つの大きなインフレは起こさないで済んだであろうと、こういうことで締めくくっておられました。  私は、それほど国民生活の安定、経済の発展のために日銀の果たす役割には大変に大きいものがあると思うんです。どうかひとつ、新しい銀行法が通るでしょう。それで、私は、総裁を中心にして役職員が一丸となって、こういう大きな使命感を持って、日本銀行法目的である物価の安定を図り、国民経済の発展のためにぜひひとつ頑張っていただきたい、そういうことを心から期待をして質問を終わりますけれども、御決意があればお述べいただければ幸いであります。
  206. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 今回、日本銀行法の改正が行われて、私どもの政策の独立性、透明性が高められるということが今まで以上にできるようになりますれば、それは私どもにとって望外の喜びでございますと同時に、その責任の重さというのを心から痛感をいたしております。  過去のいろいろの局面におきますいろいろな反省も将来の施策に生かしまして、私どもとしては新法にふさわしい立派な中央銀行を築くために、全力を挙げて努力をいたしてまいらなければならないと思っております。
  207. 山口哲夫

    山口哲夫君 終わります。
  208. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) これより、内閣総理大臣に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  209. 片山虎之助

    片山虎之助君 総理、どうも御苦労さまでございます。  まず、その呼び名から質問させていただきたいと思うんですが、総理、日銀の正式な呼び名はニホン銀行なんでしょうか、ニッポン銀行なんでしょうか。
  210. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) ニホンかニッポンかという国名自体についてもよくその議論がございました。  たしか、太政官布告の時代にニッポン国というのが正式名称であるというものが出されたことがあると記憶をいたしております。ニッポン銀行ではないでしょうか。
  211. 片山虎之助

    片山虎之助君 実はちょっと前のこの委員会でそれが大分問題になりまして、阿部委員指摘して、それで日銀総裁日銀発行券をよく見ましたら、裏に「NIPPON」と書いてあるんです、ローマ字で。うその名前を出すわけありませんからどうもニッポンだろうと、こうなったんですが、実は、本会議で総理はニホン銀行と言われたということで、ここでちょっと議論になったものですからね、わかりました。ニッポン銀行ということであります。  そこで、この日本銀行、先ほども質問がありましたが、一九八〇年代から今日に至るバブルの形成と崩壊ということが我が国経済に大変な混乱やいまだに傷跡を残しているわけでありまして、そのバブルの問題に日銀が大変責任があるではないかと。大蔵省もありますよ、もちろんあるけれども考えてみますと、この新日銀法も金融監督庁も、みんなバブルからきているんですね、バブルから。このバブルで住専問題が起き、金融機関の不祥事が起き、いろんなことが起きた。大蔵省ではきちっとできないではないか、だから大蔵省から少なくとも監督や検査を抜き出せと。あるいは、もっと日銀独立性を与えてきちっと金融政策をやらせようと、こういうことから生まれたと思うんです。  今も御質問ありましたが、私も、このバブルの形成と崩壊を通じて日銀がアクセルとブレーキを踏み間違えたんじゃないかと。締めなきゃいかぬときに緩め、緩めなきゃいかぬときに締めたような疑いが、いろんな事情がありますよ、国際的な事情、いろいろ事情があるけれども、そういうことがどうしても、公定歩合一つをとっても通貨供給量をとってもぬぐい切れない。この辺について総理は、バブルと日銀と言うとちょっとあれなんですけれども、どういう御所見をお持ちでしょうか。
  212. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 確かに、公定歩合その他金融政策日銀政策委員会専管事項として位置づけられておるものでありますし、その独立性というものは当然ながら今日施行されております日銀法においても確保されているものであります。  そして私は、日銀がそのときそのとき必要と思われる施策をとる努力をしてこられたということは申し上げるべきであると思います。そして、そのバブルの形成から崩壊に至るプロセスにおける金融政策についてさまざまな御議論があること、私も承知をいたしております。  しかし、その時期、あるときは運輸大臣として、また大蔵大臣として内閣におりました。あるいは衆議院の一員として国会の審議に参画しておりました者として、その責任のすべてが日銀にあるといった議論は、私はとるべきではないと考えております。内外の経済情勢とそれに対する判断において、確かに我々は、今まで経験をしたことのないプロセスの中でさまざまな政策選択を行ってまいりました。その中において、現在になれば振り返ってみて注意すべき点が幾つかあったということは、金融政策以外の部分においても私どもがみずからを責めなければならない問題点を持っておると思います。  そうした意味におきまして、さまざまな御批判はありますが、新たに生まれるであろう新しい日銀が、そうした過去の経験を十分に踏まえられた上で行動していかれることを私は信じております。
  213. 片山虎之助

    片山虎之助君 まさに総理の言われたとおりで、この法律による新日銀が、中央銀行としてのきちっとした主体性を持ってしっかりした金融政策をとっていただくことが私は必要だと思います。  そこで、この中央銀行日銀政府国会の関係というのが割にわかったようでわからないので、とにかく独立独立と、開かれた独立性ということなんでしょうが、余り独立性を認めるとひもの切れたたこになってしまうんですね。国民や国会に対して責任を持たぬでもいい、自分で考えていく、独立独行みたいなね。それじゃ困る。しかし、今までのように、大蔵省か何か知りませんが、太いひもがあって自由に空を飛べないようなことでもまた困る、中央銀行として機能が発揮できないわけですから。  そこで、ひもの太さが大変私は問題だと思う。今回は適度のひもの太さにしたんでしょう、と思いますよ。私は、基本的に中央銀行は、国民の代表である国会に、行政権のある内閣の統括のもとにあっても、国権の最高機関である国会の大きなコントロール、ひもの中にあるのが正しいと、こう思いますが、総理、いかがでしょうか。
  214. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、大蔵省にかわりまして立法府が金融の元締めである日銀のはしの上げおろしまでを監督されるということであるなら、それは行き過ぎたことだと思います。  その上で、日本銀行といえども、我が国の制度のもとにおいて、立法府及び行政府の広義の監督のもとにあるその機関であることは私は当然のことだと思います。
  215. 片山虎之助

    片山虎之助君 まさに総理、私の言う意味は、そんなはしの上げおろしじゃありません。広義の、コントロールと言ってはいけませんが、とにかく国会とつながって、国会への報告、あるいは了承、その中で中央銀行としての役割を果たすのがベターだと、こういう考えでございます。  そこで、今回の日銀法は、開かれた独立性を目指してと、こういうことでございますが、この独立性という言葉が、内閣法制局の審査の過程で、独立性という言葉は、これは法令用語じゃないんだと、話し言葉だと、で自主性に直せと。いや、私は独立性が法令用語でないなどと思いませんけれども、我が冠たる内閣法制局は独自の理論というのがありますからそれはそれで結構でございます。自主性ということになって法律規定されている。  そこで、私は、なるほど独立性自主性は言葉は違うし、中身も私は違うと思いますし、中をずっと見ますと、やはり独立性より自主性に近いようなことが決まっていると思いますよ。ただ、それはそれでやむを得ないと思いますが、あとは運用だと思います。  そこで一つ。幾つか言いますけれども、一つは経済政策と金融政策は整合性を持てと、こういう話なんです。私は、一国の経済にとって物価の安定、あるいは通貨価値まで含みまして通貨価値の安定というのは経済政策の基礎だと思いますよ。だから、整合すべきはむしろ経済政策を負う政府の方で、物価の安定で日銀のおやりになることの方が先行するというのか基礎になるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  216. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これは必ずしも私、議員と意見を一つにいたしません。  と申しますのは、その公定歩合の操作などの金融政策あるいは物価の安定のための努力というもの、これはいずれもやはり国民経済の健全な発展というものを目的として行われる行為であります。  そうなりますと、これは政府の経済政策との間に、追求する目標に優劣が、あるいは先着順があるものではございません。そうなりますと、私は、むしろ国民経済の健全な発展というものを考えるとするならば、両者のまさに整合性が確保されるということはどちらかを優先しなければならないという性格のものではないと思うんです。むしろ、その金融政策が先行される場合もありましょう。他の政策手段をもって行動する、それを金融政策が裏打ちされることもありましょう。  いずれが先行するかが目的ではなく、国民経済の安定と発展に資するという目的が同一であれば、優劣の問題としてこれを取り上げることはいかがなものでしょうか。私はそう思います。
  217. 片山虎之助

    片山虎之助君 これは私、いろんな議論があると思いますが、今それぞれの政策は、協調するよりも目的を目指して分担して突き進んでいって、その間にチェック・アンド・バランスをとっていくという方がいいんだという説もあるんですよ。私はそんな難しいことはわかりませんが、そういう意味で、この法律に言う整合性については日銀考え方を十分に尊重していただきたいというのをまず申し上げておきたいと思います。  それから、政策委員会が今度は生まれ変わる。スリーピングボードという悪名高い政策委員会が今度生まれ変わる。ところがどうも、今までは政府の代表と、業界の代表と言ったら言葉が悪いですが、そういう人から成っておったと、今度はそうじゃないんだと、こうなっております。大蔵大臣、経企庁長官は必要に応じて自分が出てもいいし、代理を出してもいいし、意見は述べる、議案の提案権がある、場合によっては物を決めるのを延期させる延期請求権ですか、これを持つと。これは、私も不勉強でよく知りませんが、世界でこの延期請求権があるのはドイツのブンデスバンクだけだと。しかも、一遍もそれを実際に実行したことはない、もう今度やめよう、こういうことになっていると。  そういう廃れかかっているものを今回の新日銀法で何で入れなきゃいかぬのかなと、私はこういうふうに思います。それから、政府代表が毎回出るのなら今までと変わりないわけですね。私は、そういう意味で、これまた運用上日銀自主性独立性を最大限尊重していただきたいと思いますが、総理いかがでしょうか。
  218. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、今議員が述べられましたような御議論があることは承知をいたしております。その上で申し上げたいのは、例えば欧州中央銀行、そしてドイツあるいはフランス等におきましても、金融政策に関する意思決定機関に対して政府からの出席あるいは議案提案権というものが認められております。しかし、その政府からの出席者が議決権を有しない以上は、中央銀行金融政策における独立性を侵しているとはどなたもこれを批判なさいません。  そして、今ドイツの例を引かれましたが、ドイツの連邦銀行に対して政府が持っております権限は議決の延期権です。延期権そのものであります。今回提案をしております仕組みというものは、政府が議決の延期を求めました場合にその採否を政策委員会判断される。ドイツのやり方とはおのずから違っておりまして、私は、その中央銀行政策委員会に対して政府を代表する人間が出席をすることが中立性を侵すということではないと思うんです。もしこれが議決権を持っておりましたら確かに問題はあるという御批判はあるかもしれません。しかし、現にそうした仕組みは存在をしており、これをもって中立を侵すものという批判はないと私は承知をいたしております。
  219. 片山虎之助

    片山虎之助君 いや、私は中立を侵すとは言っていないんですよ。中立を侵すとは思いません。思いませんが、運用なんですね。無言の圧力というのがありますから。なるほどドイツとは違いますよ、請求権なんだから。延期権そのものじゃありませんから違いますけれども、私はこういうのは伝家の宝刀か何かにしていただいて抜かない方がいいと思いますね。規定しなくても私は個人的にはいいと思うんだけれども、まあそれはいろんな議論があるんでしょう。ぜひ運用上、中立性を侵さない最大限の配慮をお願いいたしたい、こういうように思います。  それから、今までと変わって今回は一般的な監督権は残りました。あるいは違法行為に対する是正だとか報告を何だとか、こういうものは残りましたが、広範な監督権というのはこれはおやめになった。私は大変いいことだと思うんですが、先ほども議論がありましたが、例えば予算について、金融政策に関係のない予算については認可するんだと。こういうのはどこで仕切るのか。政令でお決めになるそうですけれども、そういうことまでやらずに、政策委員会で決めさせておいて、場合によっては国会報告してもらうとか、会計検査院の検査にかけるとか、あるいはNHK方式はお嫌いのようですけれども、そういうお話が今ありましたが、日銀の方が。あるいは国会承認なんかという手があるんではないだろうか。認可権というのがどうももう一つという気がしますので、ぜひこれまた運用上御配慮を賜りたい、こういうふうに思います。  御所見があったら、簡単にお願いいたします。
  220. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これは、中央銀行研究会の中でも御議論をいただきましたものの一つですが、金融制度調査会答申において、やはり日本銀行の経費というものが通貨発行益から賄われている。そうした公的な性格考えるとその経費を公的にチェックする仕組みが必要ということから、改正案におきまして、十分なセーフガードを我々としては設けたつもりでありますが、その上で政府における予算認可という仕組みを考えました。独立性を侵すようなおそれはないと信じておりますけれども、その運用は十分気をつけていかなければならないものと思います。
  221. 片山虎之助

    片山虎之助君 それからまた気になるのは、政府短期証券の引き受けあるいは日銀特融について、とにかくおまえ頼むぞと言われたら短期証券の方は引き受けなきゃいかぬのですね。特融の方はできると書いてあるから私はきようにもできるんだろうと思うんだけれども日銀政府に言われたときに。しかし、それはできるというだけでできませんよね、事実上。そういうことが私はある意味では日銀の中立性、主体性、独立性を場合によっては侵すことになるんではなかろうかと。  一国の金融のあれから見ましても、政府短期証券をどんどん、これは資金繰りもあれだから限度があるといえば限度があるんだけれども、それを引き受けろと。こういうのもいいんだろうかと。あるいは、特融をこれもとにかく言うだけ出せというのがいいんだろうかと。日銀にとってみれば回収の見込みのないのは心配てしょうがないと私は思うので、その辺も、これまた全部運用の問題でしょうがありません。しょうがありませんが、運用上適切な配慮をお願いいたしたいと思います。  これは、大蔵大臣いかがでございましょうか。それじゃ総理済みません、そういう質問でございます。
  222. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 実は、特に政府短期証券の日銀引き受けの問題について衆議院でも私から御答弁をいたしましたので、申し上げさせていただきたいと思います。  そのとき私が申し上げましたのは、財政法第七条などによって許容されているものであって現状具体的な支障が生じているとは考えておりませんが、政府短期証券のあり方というものは、短期金融市場あるいは国庫制度、財政制度のあり方などの観点から総合的に考えていくべき問題としてとらえておりますということ、なおその短期金融市場の諸問題、これの中に当然政府短期証券も含めておるわけでありますが、につきまして日銀大蔵省の間で今研究を行ってもらっております。  衆議院でも同様のことを私からお答えをいたしましたので、決して大蔵大臣の縄張りを侵すつもりはありませんけれども、お答えをさせていただきます。  それから、特融の問題は大蔵大臣からお答えをいただきます。
  223. 片山虎之助

    片山虎之助君 簡潔にお願いします。
  224. 三塚博

    国務大臣三塚博君) いわゆる日銀特融を定める日本銀行法案第三十八条の規定は、大蔵大臣からの要請に応じて日本銀行政策委員会の議決により必要な業務実施されることを規定いたしております。日本銀行大蔵大臣要請拒否することも可能であるという法文になっております。  ただし、政府日本銀行は日ごろより密接な連絡を図っております。実際には、信用秩序維持のため真に必要な措置政府からの要請及び日銀政策委員会の議決を経て日本銀行により実施されるものと理解をいたしておるところであります。
  225. 片山虎之助

    片山虎之助君 為替市場の介入権を、一元的にということもないんですが、政府が持っている。私はそれも一つの正しいやり方だと思うんですが、例えばドイツが、先ほど言いましたブンデスバンクがそれを持ち、今度はイギリスも、イングランド銀行ですか、そういうものにそういうことを移そうかと、こういう議論もあるそうでございまして、恐らく将来の課題になると思います。政府が集まっていろんなそういう介入の問題や国際協調でやるんだから日銀じゃだめだと、こういう議論も当然あると思いますけれども、将来の課題として検討する余地はありましょうか。
  226. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) この為替の介入につきましては、現在の国際金融システムのもとではという前提をつけながら、政府が一元的に責任を持つべきであるという中央銀行研究会の報告書に沿い、政府責任を負いながら日本銀行現行どおりその事務を取り扱うという形にいたしております。これは、まさにG7に代表されますような仕組みというものが国際的に定着をいたしております。  そして、私自身G7に何回か出てみまして、これは大蔵大臣とともに各国の中央銀行総裁が集われるわけでありますから、一堂に会した中で政府同士が相当程度の議論をしながら協調の方法を決めていく。そのためには実は政府同士の連携というものが非常に密でなければなりません。また同時に、為替の介入というものは当局が市場に送るシグナルの役割をするわけであります。また、危機管理の側面も有しております。  そうしたことを考えますと、私は現時点において政府責任を持つ体制を変更するということは国際的にむしろ問題を残すのではないか、そのような感じを持っております。
  227. 片山虎之助

    片山虎之助君 そこで問題は、今度の新日銀が生きるか死ぬか、効用を発揮し得るかどうかは私はやっぱり人事だと思いますね。  総裁、副総裁の大事なんですが、今よく言われるように、日銀プロパーと大蔵省のたすきがけ人事、どこかの銀行にもありましたね、たすきがけというのは。いい場合も悪い場合もありますが、ぜひ広く人材を求めていただきたい。少なくとも、世間から見てたすきがけだなと思われるようなことはやめていただきたいと思いますことが一つ。今回、副総裁が二人になるんですね。これから国会も大変になりましょうから副総裁の仕事はふえるわけですよ、国際会議は多いし。そういう意味で、二人にされて分担をどうされるのかということが、ちょっと皆さんも気になっていると思いますけれども、任命権者としての総理のお考えがあれば、お聞かせいただきたい。
  228. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これは必ずしも新たにこの法律案が通過、成立をし、その時点における機構図をもとに現総裁以下と御議論をしておる種類の問題ではございません。それを前提にいたしまして、私は大きく考えて二とおりの考え方があると思います。  一つは、日本銀行という組織体の、例えば総務、労務、人事といった部門をお一人が持たれ、金融に関連する部門をお一人が持たれるという分け方、これも一つの考え方でありましょう。もう一つは、国際金融部分と国内を分離して副総裁が担当されるというやり方もありましょう。  私は、逆にこれはこれからの日銀が新しい体制をつくることが国会のお許しを得てスタートをする段階において、その機構図の中で最善を追求されるべきものだと思います。そして、むしろ私は政府が副総裁二人の役割をあらかじめ想定してこれに臨むといった姿はとりたくありません。
  229. 片山虎之助

    片山虎之助君 そこで、政策委員会の審議委員六人の人選でございますが、特に新日銀に変わるわけですから、最初の審議委員の選考は慎重に納得のできる選考にぜひしていただきたい、そのためには官邸主導というのか、政治主導でぜひやっていただきたい。  役所のOBが全部悪いと言いません、私も役所におりましたので。悪いとは言いませんけれども、まあそこはよくお考えをいただきたいと思いますし、できれば国際性豊かな方、あるいは技術革新、通信事業の技術革新はどんどん進んでいますから、デリバティブやなんかいろんなことでその関係ありますから、そういう意味でそういう方も選考の枠の中に入れていただくことがベターだと思いますが、いかがでしょうか。
  230. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 確かに御指摘のように、新たな金融商品が次々と開発されていくこの状況の中で、そうした問題が理解できる能力を必要とするという御指摘はそのとおりだと私は思います。そうしたことをも踏まえながら、私は出身が官庁であろうが民間であろうがあるいは学界であろうが、要はこれにふさわしい方をいかにして選び得るか今から頭を悩ましておりまして、その出身のいかんを理由に排除するつもりも選任するつもりもございません。
  231. 片山虎之助

    片山虎之助君 もう時間がなくなりましたので、日銀総裁最後に一問御質問させていただきたい。  日銀のリストラの話が盛んに出ております。私は、これから日銀がひとり立ちして責任を持っていろんなことをやるためには、日銀自身に高い倫理性と絶えざる自己革新の必要があると思いますね。そういう意味では、今給与の問題だとか交際費の問題だとか、ゴルフ会員券の問題だとか、いろいろ出ていますよ。あるいは社宅を初め不動産の問題だとか、それから定数、組織の問題だとか、私はそういうことについて民間もどんどんやっているんですから、ぜひ日銀も世間がびっくりするような思い切ったリストラをおやりいただきたい。  それからもう一つ、日銀日銀マンに対するイメージというのが、総裁、決してよくないんですよ。密室、雲の上、エリート、特権階級、大蔵省には弱い、政治音痴だと。必ずしも正しくありませんよ。もっとしかし国民から親しまれる日銀、国民から愛される日銀、信頼される日銀日銀マンにぜひなってもらいたい。そうでなきゃこれから責任ある中央銀行としての役割を果たせないと思いますよ。  以上、二点について御答弁お願いします。
  232. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 改正法が成立をいたしまして、私どもが新しく開かれた独立性のもとでの中央銀行業務を推進いたそうとしますというと、やはり私はそれに伴って国民のまた市場の信認を確保するという努力が自分でどうしても必要であると思います。  それは、いわゆる自己革新の努力でございますけれども、その内容としましてはいろいろあろうと思いますが、ただいま御指摘がございましたような、例えば組織運営面におきましての支店事務所のあり方とか、あるいはゴルフ会員権を初め、資産保有のあり方等を含めましての新しい目での見直しということを進めてまいる必要があると思います。これによりまして、活力のある組織を持った中央銀行づくりに励みたいと思っております。  第二点の、国民から親しまれるようにする、これは私は大変大事なことで、かつ私どもが本当に工夫をし、努力をする必要があるところであると思います。現在、私どもいろいろやりたいと思っておりますのは、例えば日銀役割金融政策をわかりやすく解説しましたパンフレット等の作成のほかに、本店の一般見学でありますとか、貨幣博物館を皆さんにもつと見ていただくとか、また最近ではインターネットを活用した情報提供に努力をしておりまして、これは大変、今ホームページのアクセス件数が十一月に始めましてから今日までで百万件を突破するというほど国民の皆さんからアクセスを受けております。  私どもは、こういった点で本当に惜しみない努力を進めてまいりたいと思います。
  233. 片山虎之助

    片山虎之助君 終わります。
  234. 白浜一良

    ○白浜一良君 総理、大変御多忙のところ御苦労さまでございます。  本題に入る前に、二件ほどちょっと、せっかく総理がお見えでございますので、確認したいことがあるわけでございます。  一つは、本国会が終わりましたら六月二十日からデンバー・サミットがございまして、総理が御出席されるわけですが、今回からロシアが正式メンバーとして入ってくるわけでございます。本来は西側の経済先進国がそういう政治的な団結と国際的な経済問題を協調しようということで始まったわけでございますが、そういう意味ではロシアの加入というのは少し意味が変わってくるのかな、こういう感じがしているわけでございます。  総理御自身といたしまして、いわゆるロシアが参加するということの意味合いをどのようにお考えかということと、それからそういう前提としてどういう御姿勢で、今回のデンバー・サミットに総理御自身としてどういう方針でというか、どういう基本的なお考えでと申しますか、臨もうとされているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  235. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) この数年、実はサミットにロシアを正式のメンバーとして受け入れるかどうかというのは参加国間の非常に大きな議論の対象になっておりました。そして、その中で初め、例えば私が初めて大蔵大臣として総理のお供をしてまいりましたヒューストンのサミットのころ、このころにはヨーロッパ勢が当時のソ連を参加させることに非常に熱心で、他の国々は消極的という図式がございました。それが、ソ連の崩壊、ロシアの誕生のころから大きく変化をし始め、むしろ経済以外のテーマを話し合う場面がふえるにつれて、ロシアの正式参加を求めるという意見は強くなりました。  そして、日本は北方領土の問題を抱え、その領土問題が解決されない限りにおいて完全な平和というものをロシアとの間につくり上げることができない、そうした特異な立場を一つの論拠としながら議論をこの中で続けてまいりました。  本年、ちょうどヘルシンキにおける米ロ首脳会談の直前にクリントン大統領から御相談の電話をいただきましたとき、私は二つの条件を付して、ロシアを受け入れることに同意をいたしました。  一つは、ロシアとの間に我々は解決すべき領土の問題を持っており、これを加速させるためにも、アメリカからもロシアに対して日本との間の平和を完全なものにするために領土問題の解決を急ぐよう、プレッシャーをかけるという言い方はちょっと不穏当だと思います、働きかけをしてもらいたい。  もう一点は、そうは言いながら、例えば国際経済の問題の中におきましても、幾つかの分野の問題はロシア自身が場合によっては対象になる、あるいはロシアが入ることによって議論の変質する可能性のある分野が存在をする、従来の七カ国の議論の時間というものはきちんととってもらわなければ困る。これが私のつけた条件の二つでありました。  それで、アメリカとして、この点については日本との間の領土問題の早期解決に対する協力とともに、アメリカとしてもロシアが入っていては議論のできない問題があるということで従来の七カ国の枠組みを残した時間帯というものをきちんととっていく、そういうことを確認をしてくれましたので、了解をした次第です。  その上で、私もこの機会を利して、少しでもエリツィンさんとの間にむしろ北方領土の問題というものを東京会談から前に進めるきっかけを少しでも欲しいという思いはございます。そして、それは紆余曲折をたどるでありましょうが、完全なやはり両国の平和関係というものをつくるためには必要なことだと思います。  同時に、例えばチェルノブイリの原子力発電所の事故の後をどうしていくのかといった問題一つをとりましても、これは日本も含めて各国が協力しなければうまくいかない問題があるわけでありますし、また、テロあるいは麻薬、環境、さまざまな分野でロシアにも入ってもらうことによって、より国際的な枠組みのしっかりするテーマが存在をすることも事実でありますから、こうした分野における協力体制はしっかりとした枠組みにつくり上げていきたい、そのように考えております。
  236. 白浜一良

    ○白浜一良君 今、総理がみずからおっしゃいましたように、ロシアが入る意義というのは、北方領土の問題、解決されていない問題があると、それを加速する意味からもということで御発言されましたけれども、そういう意味で申し上げましたら、今回、一堂に会されて二国間、多国間のさまざまな協議をされると思いますが、特にロシアとの関係におきましては、将来的にこの領土問題を解決するためにも日ロの定期的な首脳会談といいますか、そういうことも方向性として御提示されるおつもりはあるかないか、御発言をいただきたいと思います。
  237. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 実は、本日、ネムツォフ第一副首相からエリツィン大統領の親書を受け取りました。その中には、定期的な会合を持つこととともに、年内の訪ロを希望するという内容が含まれておりました。  これは、私自身がデンバー・サミットの際、日ロ両国間の首脳会談を行うまでに十分検討してお返事をするということが一点。それと同時に、必ずしもモスクワと東京にこだわらずに、例えば、エリツィンさんが極東方面に出張してくることがあるでしょうと。その週末を利用して、そこで気軽に落ち合うといったことを考えることはできないんですか。デンバーまでにエリツィンさんにそういうことも考えておいてくださいという伝言を、私はネムツォフ第一副首相にお渡しをいたしました。  いわゆる定期化というものがいいのか。私はそれは決して悪いことではないと思いますけれども、余りに形式に流れるばかりでも必ずしも効果がないと思います。それよりも、いろいろな機会をつかまえて、身構えて会うのではない、本当に肩ひじを張らない感じで議論のできる場をできるだけつくりたいと、そんな思いもありまして、きょうそのような提案を逆にネムツォフ第一副首相を通じてエリツィンさんに対して託したところでございます。
  238. 白浜一良

    ○白浜一良君 私も、その形式にこだわる必要はないと思いますが、随分長らく凍結状態にこの問題もあるわけで、今回のデンバー・サミットでそういう突破口を切られた方がいいと私も個人的にそう思っておりますし、定期というのがどうかということ、定義はございますが、定期的にというと継続してという意味でございますから、東京とモスクワにかかわるあらゆる機会で協議されたらいいという意味で私も申し上げたわけでございます。  それで、今総理もお話しございましたが、訪ロのお話があるということでございますが、今後のこの日程というのはそう簡単に総理も決めるわけにはいかないと思いますが、もし可能性があるとしたら、時期的にいつごろになるんでしょうか。
  239. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) ちょうどペルー事件が終わりました後、ペルーを訪問いたしますにも、国会のお許しをいただいて週末を利して私は現地に参りました。  少なくとも、今後、デンバー・サミットがあり、日欧の首脳会合があり、北欧との首脳会合があり、さらに幾つかの外交日程としてAPECもあれば、いろいろな会合が既に設定をされております。  国会のお許しをいただけるかどうかも実はそのときの状況いかんであろうと思いますが、まさにきょうネムツォフ第一副首相からその親書を受け取り、これから日程の検討に、可能性があるとすればいつなのかと、そうしたことで入ろうとしておりまして、今確たることをお答えする、そこまでの検討をいたしておりません。
  240. 白浜一良

    ○白浜一良君 言えないと。
  241. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 言えないんじゃなくて、本当にそこまで……
  242. 白浜一良

    ○白浜一良君 これから検討すると、こういうことだということでございます。それ以上、私も言いません。  もう一点、本題に入る前に確認したいんですが、実は、この第一勧銀の不祥事件というのが、随分検察当局も入りまして引き続いて捜査がなされているわけでございますが、この点に関連いたしまして、宝くじございますね、宝くじ。残念ながらこれを引き受けている銀行は第一勧銀しかないわけですね。  それで、確かにこれもいろいろノウハウが要ると、たくさん発券所が要りますし、(「設備投資が要るんだよ、設備投資」と呼ぶ者あり)、設備投資、それは私わかりますが、宝くじを引き受ける銀行が一行しかないと。資本主義の日本の世の中で、競争原理がないということは果たしていかがなものかと。確かに設備投資も要るし、それなりのノウハウを蓄積するためには随分投資しなきゃならないと。だから、今でも宝くじは入札で決めていると。でも、いわゆるこの金額を比較すると問題にならないと。  そういう状態であるということは私はよく承知していますよ。しかし、たった一つの銀行に、そういう貴重な地方公共団体の財源になっている宝くじが一行に集中しているという問題は、方向性として、今すぐという意味じゃございません。いいのか悪いのかということになれば、私はいかがなものかというふうに個人的に考えるわけでございますが、総理、この点につきましてお考えをお教えいただきたいと思います。
  243. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 実は、私も同様の疑問を持ちまして、ちょっと調べさせてみまして、びっくりしましたのが、昭和四十一年度以降、第一勧銀以外の受託申請が全然出ていないということでありました。そして、現時点において、議員が言われますように、他の金融機関の中でその責任を負おうというだけの状況はなかなかないようでございます。  そして、特にその地方団体の貴重な財源になる宝くじの発行を滞らせることができないということから、当面は現行のままいかざるを得ないようでありますけれども、やはり受託業務の厳正な執行を確保するということはこれは当然のことですけれども、今後の課題として、本当に一行独占がいいのかどうか。むしろ、発売あるいは受託のシステムについて、関係者でもう少しこれは研究してもらう必要がある。これは私自身、同様な感じを持っております。  ですから、当面のお答えをしろと言われますと、この一行しか現実にございませんと申し上げざるを得ませんが、やはりこれは問題があり、研究してもらうべきもの、そのように考えておるということは申し上げさせていただきます。
  244. 白浜一良

    ○白浜一良君 今、総理がおっしゃったように、私は非常に大事だと思うんですね、競争原理があるということは。それは、それだけのノウハウの蓄積というのは貴重なものなのでしょうけれども、だからといって、今他行が実施するとなると非常にコストがかかるということは当然あるとは思うんですが、むしろ健全なそういう競争原理のもとでそういう入札が行われるという実態をつくるためには、当局が先導してでも何行かに啓蒙的にやらせてみるという、そういう方向性を私はとられるべきだと、このように思うわけでございます。総理はそれ以上言えないかもわかりませんが、答弁ございましたら。
  245. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、国が宝くじの運営主体であれば、発行主体であれば、私は議員の御議論を真っ向から否定するつもりはありません。しかし、これが地方自治体の財源になり、地方自治体として努力をしておられる分野に対して、みすみす非常にコストがかかり損をする可能性がありますけれどもやってくださいと、そこまでは私はやっぱりお願いができないと思います。  ただ、現実にこういう状況をそういつまでも、だからこれしかないんですと言っていられるかどうかというのは私自身が問題があるもの、そう考えておることは事実でありますが、現実にそれだけのまたリスクを冒し、他の銀行にみずからの発売しようとする宝くじのすべてをゆだねようという地方自治体も現時点においては見つからないというのが実態ではないでしょうか。
  246. 白浜一良

    ○白浜一良君 これは、もうこの辺でやめますけれども、そんなのは入札しても一行しかないですよね。だからやっぱりそれは育てるというふうな何か誘導政策的なことをやらないと、これはほっといたら絶対、総理も好ましくない、どっちかというと好ましくないという御認識を持っていらっしゃるわけで、だけれども好ましくない状態が私は続くんじゃないかと、そう危惧するから重ねて御質問申し上げたわけでございます。  このぐらいにいたしまして、本論に入りたいわけでございますが、片山先生からいろいろお話もございましたので、重複した話はやめたいと思います。  総理、一つ恐縮なんですけれども、非常に具体的なことを伺いますが、今回の日銀法の改正、いろんな前進している内容もあるわけでございますが、私どもから見ればなかなか不十分だという、そういう観点でこの法案に対応しているわけでございますが、ちょうどバブルの時期に総理は大蔵大臣をされておりました。八九年に日銀公定歩合を上げようとされたときに、総理が白紙撤回させるんだというような、そういう報道が当時されておりました。これは非常に日銀金融当局のお考えとそれから政府のお考えは、それは必ずしも一緒じゃないでしょう。だけれども、現実的に八九年にはそういう問題があったわけです。  そういうことが今回の法改正によりまして、何か是正されるような点がございますか。
  247. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これは大変失礼ですが、事実を聞いていただいた上で御判断をいただいた方がいいと思います。  そのころの新聞等を調べていただきますと、その日、月例経済報告が行われる日でありました。そして、その日の朝の新聞に、日銀公定歩合をこれこれ引き上げというニュースが出ておりました。そしてそれから数日後に、次年度予算編成のための経済見通しをつくるという日取りの設定が決まっておりました。その時点における公定歩合の引き上げの報道でありますから、月例経済報告の席上、私は日銀総裁にその内容をただしました。白紙です、考えておりません、どうしましょうかなというお返事ですから、白紙ですねと確認をし、白紙ですとおっしゃいましたので、白紙だと言っているよということを外で聞かれたときに申しました。  それが、白紙撤回を求めたと伝えられましたことは、私自身の不徳のいたすところでありますが、全く大蔵大臣として朝刊を見て知らない日銀の政策が出ておりまして、日銀総裁にお尋ねをしたことがいけないのだと言われれば、こうしたことはこれからもあり得ることだと思います。私は、月例経済報告の朝、既に日銀が方針を決めておられ、たのであれば、その方針を御説明いただけばよかったわけでありますし、白紙ということでありますから、外に白紙ということを日銀総裁に確認したと申しました。そして、それは月例経済報告のその朝であり、たしか数日後に次年度予算編成のベースとなります政府経済見通しをまとめるその最後の作業を行っていた時期であるということを御理解いただきたいと思います。  その上で、今回の日銀法、そうした意味で同じようなケースが起こらないという保証は私はできません、今私が申し上げたのと同じようなケースが。しかし、従来持っておりましたさまざまな政府の権限が政府から離れ、日銀独立性が高まっていることは議員もお認めいただけることだと存じておりまして、日銀がより独自に行動し自立して行動され、それが国のためになることを望んでおります。
  248. 白浜一良

    ○白浜一良君 わかりました。  それから、先ほど為替介入のお話が指摘をされておりましたが、外為特会の内容が非常にいわゆる公表が適切にされていないという、為替介入の問題は先ほど議論されましたのでそれはそれといたしまして、その為替介入の結果がいわゆる外為特会に会計実態として出ているわけでございますが、その辺の会計報告が非常に不明確だというこういう多くの御指摘があるわけでございますが、この点、是正される方向はございますか。
  249. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、その場合、恐らく御議論をなさる方はアメリカを例にとって議論をされるのではないかと思います。確かにアメリカにおいては、ドルの基軸通貨としての国際取引に幅広く流通しているという事情があり、介入額そのものを公表するという形をとっておりますが、実はこれは大変主要国では例外的な措置であります。  むしろ日本、これはヨーロッパでもそうでありますけれども通貨の安定というものがインフレなき経済の持続的成長のために極めて重要だ、そういう視点からきめ細かな介入を行ってきたという長い経緯がございます。その中には、単独介入もございましたし委託介入もございましたし、本当の意味での協調介入もそのときそのときにさまざまな手段をとってこれが行われてまいりました。  そして、そうした場合、私自身が大蔵大臣だったときに考えましたことも、どうすればその介入効果が少しでも減らないか、減殺されることがないかということでありましたから、事柄の性質上極めて微妙な操作を必要とした部分であります。私は、やはり投機筋を利することにもなるような介入額などまで公表する、これはやはり日本としては差し控えざるを得ない事象であろうと考えておりますが、為替介入に対してのさまざまな既に計数を公表しておりますし、これからもできるだけこうした点での努力はいたしますが、それには限界がある。そして、手のうちをやはり見せたのでは投機筋と戦いながら通貨の安定を図ることには限界が生ずる。この点はぜひ御理解をいただきたいと思います。
  250. 白浜一良

    ○白浜一良君 別に手口まで公表しろとは言っていないわけで、時間がないのでこれ以上議論はやめますが、たくさんのお金が投入されているわけだから、そのときという意味じゃないんですよ、一定期間後でいいんですが、こういうものは国民の信頼をベースにしないと成り立たないわけで、そのためには一定程度の、時期はずらして、別に手口を出せと言っているんじゃないんですから、結果的でいいんですよ、こういう実態だったということを国民に知らせる必要がある、公開する必要がある、そういう意味で私申し上げたわけで、これはいずれまた議論をしたいと思います。  もう時間がございませんので、ちょっと最後に。総理、野村証券と第一勧業銀行が総会屋に本当にもう食い散らされて、これが本当に最も信用を第一とする銀行でありまた証券会社かなという実態が国民の前に暴露されているわけですが、私、二つ、ちょっとこれだけ答えてほしいんです。本当にわからないことなんです。一つは、大蔵省が検査に入っているんです。虚偽の報告とかなんとか言っていますが、なぜ専門的な大蔵省が検査に入ってその程度の実態を暴露できなかったのかということが一つ。もう一つは、もし虚偽の報告をされたのならば、それは当然処分すべきだ、それが私は健全なあり方だと思うんです。  今、銀行法の六十三条ですか、虚偽の報告で云々というふうにも言われておりますが、そういう適用も含めて総理の所感を、もっとも直接の所管じゃないかもわかりませんが、私の素朴ななぜ検査でわからないのかということと、それが虚偽の報告であればきちっと処分すべきだという意見に対して、お考え最後にいただきたいと思います。
  251. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これは大蔵大臣と本来相談をした上でお答えをすべきことかもしれません。しかし、とっさですので私自身の感じでお答えをお許しいただきます。  私は、恐らく大蔵省の検査の諸君、これは一生懸命に検査をしてくれていると思います。しかし、最初から一つの企業が心を一つにして検査を免れるために虚偽の報告をつくり上げた場合、これをなかなか発見することに困難があるであろうということはそれなりに想像がつきます。  しかし、事後に報告を受けまして、証券取引等監視委員会、随分長い間、問題視し追い続けた中から、野村がついにこの公表に踏み切ったということも実態として事実のようでありまして、そうした地道な努力がもっと早く実ってくれればという気持ちがないわけではありません。しかし同時に、そこまで努力をしてきた諸君には私は礼を言いたいと思います。  それから、当然のことながら、法を犯した、これが罰せられることは当然でありまして、中身が確認され次第、私は処分がきちんと行われるものと、そう信じております。
  252. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 総理、御苦労さまでございます。  私は、今回の日銀法改正は、バブル経済の発生と崩壊を踏まえた金融行政及び金融政策の見直しがその出発点となっていると思っています。  そこで、まず初めに、今後の我が国における金融機関経営のチェックのあり方に関して伺いたいと思います。政府がこれまで進めてきた考え方は、金融機関のディスクロージャーを徹底する一方、早期是正措置などのルールの明確化により、自己責任原則の徹底と市場規律の十分な発揮を基軸とする透明性の高い行政ということだったと思います。そうした考え方のもとでは、しばしば検査や考査に伴う金融機関の負担を軽減させよという意見が聞かれてまいりました。  ところが、最近、野村証券や第一勧業銀行などの事件を目の前にすると、当委員会でもいろんな議論がございましたが、ディスクロージャーといった金融機関への信頼を基礎とするだけの運営では問題がある、むしろ今度は金融機関に対する検査、考査をもっと厳格にすべきだ、こういう意見もありました。  同時に、私は、最も重要なことは、何といっても原則は金融機関の自己責任だと思っています。同時に、金融機関で問題が生じたときに、社会的な影響の大きさも踏まえますと、これもまた大事なことだと思うのでありますが、こうした金融不祥事を踏まえた上で、今後の金融機関経営のチェックのあり方について総理のお考えを聞いておきたいと思います。
  253. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今議員、さまざまな角度からお触れをいただいたわけでありますが、例えばメキシコの金融危機をきっかけに国際的にも早期是正措置の導入というものは大きな問題となり、各国がこうした場合に早急に対応し得る仕組みとしてこうしたものを検討いたしております。  また、我が国におきましても、私自身が大変恥ずかしい思いをし、皆様におしかりをいただきました証券・金融不祥事を振り返ってみましたとき、当時の通達行政というものの限界に逢着をし、その通達というものを特に証券については洗い直しながら、自主規制に移すべきもの、証券業協会あるいは取引所にこれを移しかえ、法文化すべきものは法文に取り入れるといった対応を今日までも行ってまいりました。その上で、今回のような事件が発生をいたしましたことを私自身何とも情けない思いでこれを見ております。  そして、そういった意味では、まさに議員が御指摘になりましたような自己責任原則の徹底あるいは市場規律の十分な発揮ということをこれまで以上に強く求めなければなりませんし、同時に、今日まである意味で我々は、金融機関における、また金融機関において勤務する人々の善意というものを信じ、恥を知る心というものを信じた上で法体系をつくってまいりましたものが、刑事罰をもってしても恥を知らざる人間には効果なしという結論になるような状況がもし生まれましたなら、それに相応した量刑というものをも考えなければならないという今情けない時代に我々は入りつつあるように思えて仕方がありません。  科料とか刑事罰ではないものとは異なり、金額のいかんを問わず刑事罰を問うというものが本来なら恥として受けとめられる日本という国であったはずであり、社会であったはずでありますが、それだけでは痛みを感じないというものであるならば痛みを感じるだけの量刑を求める、そうした法律改正をも含めて国会に御審議をお願いしなければならなくなるかもしれないことを大変悲しい思いで今毎日を見守っております。
  254. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 ありがとうございます。  もう一つの問題は、日銀自身にかかわる問題でございますが、日銀独立性を確固たるものとするためには、法制度の運用に加えて、さらに、先ほど御意見もございましたが、日銀自身が自己改革を進めることが必要だと思っています。その点、先般参考人からも、日銀独立性をかち取るとの責任感と気概を持って臨まなければ国民の信頼は得られず日銀は支持されない、こういう意見の開陳がございました。  こうした信頼の高い中央銀行を得るためには、だれでもない日銀自身が、国会審議で指摘された点も含め、政策、業務、組織運営の面で自己改革を強力に私は進めていくべきだと思います。それが自主性発揮の第一歩だと思います。  そういう考え方について、総理の所見を伺いたいと思います。
  255. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、今議員が述べられましたように、日銀自身、働かれる役職員全員が日銀というものの立場を十分に理解される、その上で行動していただくことを心から願っております。  大変これは日銀総裁を横に置いて失礼な言い方でありますが、国会で私は総裁の給与が問題になったと聞きました。私は、給与は、それだけの働きをしていただければどなたが幾らお取りになろうと、これは第三者がつべこべ言う話ではないと思っております。  しかし、大変私が子供にからかわれましたのが、退職されました総裁の額を掲揚される、千数百万円という価格を聞きました。たしか衆参両院永年勤続表彰を受けられて額が掲げられる、支払われる金額は五十万円であります。パパの絵は五十万円で日銀総裁の絵はそんなにするの、値打ちにそんなに差があるのと子供にさんざん私はからかわれました。願わくばそういう質問を子供から浴びないで済むように、日銀の皆さんが努力をしてくださることを願います。
  256. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 もう一つお伺いしますが、きょう私は総裁からゴルフの会員権問題であるとか、それから給与の問題はこの前もお話を申し上げましたが、そして支店長宅というか、ああいう問題について日銀自身がもう少し、社会的な情勢というか社会的な適合というか社会的な批判というか、そういうものにきちっとこたえてもらわないと新しい日銀法ができ上がってもこれは何の意味もないですよ、日銀が本当に信頼性を高めるのにはそういう点も十分総裁考えてほしいということを述べました。総裁からは大変御丁重な御返事がございました。襟を正してこれからやっていきますというお話をいただきました。  私は、そのときに与党として私は質問しているんですよということを総裁に申し上げました。今政治は大変曲がり角に来て、私は国民の目がどこを向いているかということを考えたときに、こういう問題で次々と世間を騒がすようなことはいかがなものかという意味で総裁に申し上げたところでございます。  この問題について、総理の御見解があれば聞かせていただきたいと思います。
  257. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、余り他人の財産や家庭をのぞき込むような話は好きではありません。要は、どういう給与を取っておられようが、どういう官舎か社宅か住んでおられようが、それだけの仕事を自分はしていると国民の前で胸を張れるような仕事をしていただけば、何ら私は申し上げることはありません。もし省みて恥ずるところがあるなら、むしろそれにふさわしいような働きをしていただきたい、そのように思います。
  258. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 ちょっと私の質問の意味と違うようですが、私は給与の問題を今話をしているわけじゃないんです。日銀が本当に業務を遂行するのに、三十三の支店にあれほどのゴルフの会員権を持つ必要があるのか、それからおやめになった方の名義がまだ残っている、これはどんなものだろうか、また支店長宅というか、あれだけの膨大な豪邸が何で必要なんだろうか、それが本当に必要であるというのであれば私も総理と同じように堂々と述べればいい、けれども社会一般から見たときにいかがなものかということを申し上げて、総裁から先ほどの返事をいただいたということでございます。いかがですか。
  259. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 余り私そこまで申し上げたくなかったものですから、漠然たるお答えを申し上げたことでありますが、私はそれだけの社宅が必要な理由があればその社宅をお使いになればいいと思いますし、胸を張ってその理由説明していただけばいいと思うんです。ゴルフの会員権は、正直私はどれだけ持っておられるのか存じませんし、恐らく日本銀行としての仕事をするのにそれだけのゴルフ会員権が必要であるという理路整然とした御説明がいただけるものだろうと存じます。しかし、もしそれがいただけないものでありますならば、世間に胸を張って説明できるようにしていただきたい。すべてに対して私は同じような思いであります。
  260. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 もう一つ御質問申し上げますが、総理はこの国会の施政方針演説で、金融危機が国際的に連動することも考えられるため緊密な国際協力体制を確立していく、こういうことを述べられたと思います。こうした国際金融面での協力では中央銀行が果たす役割も少なくないと思いますが、今回の法改正案ではこうした点を十分に踏まえていると認識なさっていますか、見解をお尋ねします。
  261. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私が知る限りにおきましても、各国の中央銀行総裁が集まられ、議論をされ、それなりの方向づけをしていかれる、そうした機会は近年ますますふえていると承知をいたしております。そして、今既に国際金融の世界におきまして、大きな立場からその全体を監視し方向づけをしていく上で中央銀行役割は極めて大きくなってまいりました。  私自身ちょうど大蔵大臣を辞任いたしますときが、その直前にバンコクにおけるG7の議長を終えてその上で辞任をいたしたわけでありますけれども、当時はソ連が崩壊するかどうかという最後の局面でありまして、ソ連の保有する金を担保とした金担保融資は果たして成立するかというのが極めて大事なときでありました。当時、既に日銀総裁は七カ国の中央銀行総裁の中の一つの議論を代表する立場でこの時期に対処していただいたことを今も覚えております。  この法改正はそれだけの自立性を中央銀行に与える、すなわち日本銀行に与えるものであり、私は国際的な活躍の場は一層広がり、その責任にこたえていただけるものと信じております。
  262. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 最後ですが、答弁は要りません。総理とこうやってお話しするのは恐らくこの国会できょうが私は最後だと思うんです。  先般の金融監督庁設置の委員会で、私は三塚大蔵大臣にお願いを申し上げました。と申しますのは、今度の金融監督庁というのは大蔵銀行局から行きますね。その行ったときに、実際の検査のやり方というのは四人とか五人がチームを組んで一週間出かけていきますね。そしてその翌週戻ってくるんです。この繰り返しです。その繰り返しということは一年の中で半分ですね、女房子供、家庭から離れるんですよ。これは大変なことだと私は思うんですよ。だから、そのときに一つの問題は、何か大蔵金融監督庁との間に人事交流をするのはけしからぬという意見があるんです。それはそれなりの論理があるかもしれませんけれども、今一週間交代で勤務しているような職員が人事交流のないままそっちに移ってくれといったら私はだれも行かないと思うよと言ったんです、大変だということで。だから、そういう意味で、新しく採用される人は別かもしれませんけれども、そういう問題も十分考えながら私は対処してもらいたいということを大臣にお願いしました。  もう一つの問題は、体制の問題として、地方の財務局と農政局を使うことに対していろんな意見があります。けれども、今これだけの行財政改革をやるときに、金融監督庁をつくってそれが全部行けば、また新しい総務関係の人員を吸収しなきゃならぬ、つくらなきゃならぬ。これはまさに行革のこの厳しいときにそれだけの余裕はないはずなんですね。それは国家公務員の定員にしても総枠は外しましょうと言っているような段階なんですから、当面地方機関を使うことはまことに合理的だと私は思うんです。それは与党三党でも大変な議論の中で結論を得たものだと私は思うんです。  ですから、そういう点をぜひ頭の中に入れておいてもらいまして、人情ある大蔵省、今大蔵省はたたかれっ放しなものですから、もう顔を上げて歩けないぐらいの話なんですよ。けれども、私は、そういう意味からすると、今の問題についてぜひお考えをいただいて、自信を持って私は業務に専念していただきたいということを願っているものですから、ぜひ頭の中に入れていただきたいと思います。  以上で質問を終わります。
  263. 久保亘

    ○久保亘君 私は、総理とこういう形でお話をするのは随分久しぶりのことです。  最初に、先ほど金融機関の不祥事に関してお尋ねがございまして、総理の方からモラルの問題を中心にお答えがございました。私も全く同じような考え方を持っています。ただ一つ、検査する側、考査する側が今おくれている面はないのか。それは、コンピュータースペシャリストの時代に、例えば大蔵省、今は大蔵省金融にかかわる部局がこれに十分対応できるだけのスペシャリストの配置やその役割を整えているのかどうかということについてかねてから疑問を持っておる一人であります。これらの点について、もしお考えがありましたら、お答えをいただきたいと思います。
  264. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、今議員が御指摘になりました点は、非常に問題のある場所として我々自体が認識している場所、まずそうお答えを申し上げたいと存じます。  今日まで金融監督検査というものが大蔵省の中に位置づけられ、そして、行政官庁としての人事のローテーションで人材が異動をしていく中でそれだけのスペシャリストを育て切れていたのかといえば、私は必ずしもそれに自信を持ってそうであったとお答えをする自信はありません。しかし、特にアメリカを中心としてデリバティブ等が動き始めましてから、新たな金融商品が次々と開発をされ、それが現実の市場で動いております。  私は、今回金融監督庁というものをつくらせていただきたいと国会にお願いをしております、その一つのポイントは、先ほど鈴木委員から違った角度からの問題を提起され、これも私は大事にこれから考えなければならないことだと思いますけれども金融監督庁という組織の中において新たに開発される金融商品に対抗し得るだけの検査能力を有する人材を養成できるのではないか。また、養成しなければならない。これは、場合によりましては、人事院に現在あります給与表以外の給与表をおつくりを願わなければならないかもしれません。そうした可能性までを含めて考えました上で、専門家を育て、新たに出てくる金融商品に対して対抗し得るだけの検査能力を持つ集団をここに固定したい、そのような思いがございます。  先ほど、大蔵省だけでは私はないと思いますが、省庁間の移転を云々する意見がある、しかし、それは職員の生活というものも考えてという御指摘がありました。その御指摘は私は大事にいたしますけれども、同時に、専門家の養成を必要とする部門において、その専門性というものにこたえ得るだけの人材を何とか育て上げなければならないという問題意識もぜひ御理解を賜りたいと思うのであります。  そうした考え方でおりますだけに、今の議員の御指摘の点につきましては、我々自身も同様の問題意識を持ち、その上で金融監督庁というものをもってそのスペシャリストたる人材を養成し、悪に戦い得る、それだけのものに仕上げていきたいと、そのように考えております。
  265. 久保亘

    ○久保亘君 大変積極的なお考えを聞かせていただきました。  私は、現在の検査や考査の責任が今日の不祥事に対して決して軽いものではない、こう思っておりますが、将来を考えてまいります場合には、今申し上げましたようなことを、また総理がお答えになりましたようなことをできるだけ速やかに積極的に取り組んでいくことが重要であろうと、こう考えております。  きょうは、日銀法についての最終的な総理への御質問の時間をいただいたのでありますが、最初に、中央銀行研究会並びに金融制度調査会の答申の趣旨は今回の法改正によって十分に生かされたという御判断かどうか、お答えいただきたい。
  266. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、特に中銀研の答申、これを受けまして具体化をしたものがこの法律案であり、自信を持ってこの答申を受けて御審議を願うにふさわしい内容になったと、そのように考えております。
  267. 久保亘

    ○久保亘君 でありますならば、中央銀行研究会の答申を貫いております開かれた独立性というものを今度の法律を通して、また後ほど各論的なことも少し申し上げたいと思いますが、この開かれた独立性という意味をどのように理解したらよいのか。特に独立という意味政府からの独立と解するのか。また、この独立性を求めているのは日銀そのものなのか、日銀政策委員会なのか、これらの点はいかがでしょうか。
  268. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、強いてそのような分類の仕方をするとするならば、金融政策独立性の保持という言い方が一番正確な言い方になるのではないかと思います。  そして、本院におきましても、本日も御論議のあったところでありますが、日本銀行金融政策というものにつきましては、さまざまな角度から今日までも論議の対象となってまいりました。そして、今日、低金利時代で多少方向が違っているとはいいながら、従来は、ややもするとインフレ的な経済運営を求める圧力、こうしたものが一方に存在をし、最終的にそれが日銀決定を変えるのではないかという懸念をしばしばマーケットに持たれはしないか、その懸念というものを我々は常に持ち続けたわけであります。  言いかえれば、その守るべき独立性というものは、私は、日本銀行という看板でも政策委員会という人間の集団でもなく、その金融政策というものの独立性を保持すること、これが最大の問題点ではなかろうかと思います。
  269. 久保亘

    ○久保亘君 金融政策独立性を持つということであれば、その金融政策決定する権限を法律によって日銀政策委員会が持つことになるわけでありますから、日銀政策委員会は理解としては独立行政委員会の一つと、こういう理解に立つことが可能でしょうか。
  270. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これは、実は他の場所でもございました御議論の一つでありますが、政策委員会を例えば三条機関として行政委員会化し、その下に業務執行機能をつけるといった形態はどうかという御論議がございました。  しかし、私どもはそれは現実になじまないやり方だと思います。そして、むしろ我々が提案しております現在の総裁、副総裁、そして政策委員会、そしてその大事については国会の御承認をいただいて決する、そうした仕組みがより望ましい形だと考えてまいりました。  三条委員会としてこれを位置づけました場合、独立性という形は一方で堅持をされます。しかし、これはちょっと例示で挙げるのは申しわけないかもしれませんけれども、例えば公正取引委員会が独立した機能を持ち、その分野において非常に強い力を持ちながら、例えば予算要求あるいは定員要求はそれぞれの力だけで問題を解決することができず、所轄官庁を経由して財政当局にあるいは総務庁に要求を行い決定をされる。こういう仕組みが果たして、金融政策のかなめを握ってもらわなければならない、全責任の旗を振ってもらわなければならない組織になじむものなのかどうか。  行政組織論的に考えましても、私は実は、行政委員会が頂上に位し、その下に実行機関としての日本銀行が存在するという形は望ましい姿ではない。また、その場合に、国際的な対応を一体総裁の機能として行うのか、政策委員会というグループの機能として対応するのか、こうした点にも問題を現実に生じてくるわけでありまして、私はそのような仕組みより現在御審議をいただいております仕組みの方が現実によりょくワークするものだと、そのように胸を張って申し上げたいと思います。
  271. 久保亘

    ○久保亘君 独立性法律によって確保をいたしました場合に、金融政策決定しこれを執行したのは日銀であるが、このことによって生じた結果をだれが責任を負うか、これはこの委員会でも議論が何回かございました。そこのところは、どのように理解したらよろしいですか。
  272. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 実は私は、今の御質問は衆参を通じまして初めて遭遇するケースでございます。そして、今回の日本銀行法案、これでは政府の広範な業務命令権を廃止いたしました。また、役員の解任事由としてこれを限定いたし、そうした措置を講ずることによって、我が国の政治体制の枠組みの中において、公定歩合の操作など日本銀行の行う金融政策独立性というものを最大限尊重した仕組みといたしております。  ということは、これを裏返して考えますならば、日本銀行の行う金融政策というものにつきまして、その決定に関して透明性の確保を図りますと同時に説明義務を課しているわけでありますから、政策委員会の議事録あるいは議事要旨の公表など、あるいは国会に対する報告書の提出、さらに、本日もお見えでありますけれども、総裁の国会説明のための出席などを通じまして、おのずからその責任所在というものは明確化するのではないでしょうか。私は、この政策委員会の議事要旨等の公表とともに、国会への報告書というものが、これをごらんいただくことによりまして、その責任所在をおのずから明らかにするようなものであってほしい、むしろそう願っております。
  273. 久保亘

    ○久保亘君 今お答えをいただきましたことをずっと通じて考えてまいりますと、開かれた独立性を新法によって保証される、こういうことになります場合に、この開かれた独立性に対する担保といいますか、これもいろいろあると思いますが、法律や中銀研、金制調の答申などを通じて考えてまいりますと、私なりに非常にわかりやすい担保は三つぐらいはあるなと思っている。一つは、政策委員会の人選です。二番目には、やはり政策委員会の議事録の公開。それから三つ目が国会への出席義務、こういうことかなと思っております。  いろいろな事情はあったのでしょうけれども、この新法は、一般には余りそういう扱いはございませんのですが、九カ月後、来年の四月一日から発効することになっております。金融政策決定の独立した権限を与えようということで、そのために人事も会議もいろいろなことを相当大きく変更した法律を九カ月後に発効するということで、その間は旧法によるというのはいかにもわかりにくいことであります。  今度は、一つの出来事としては、現在政策委員五人のうち地銀代表、都銀代表の二人が欠員となっております。その一人を業界代表として旧法によって任命しようとされているのであります。これも非常に不思議なことであります。しかし一方、また考えてみると、任期の残っておられる三名の政策委員はどういう方かといいますと、総裁が大蔵次官経験者ですね。商工業代表は、これは通産事務次官の経験者です。それから、農業代表は農水事務次官経験者です。残っております三人は全部事務次官の、つまり政府をかつて代表した人が三名、現在この政策委員会におられて、それで新たに任命をされます方を加えても四人のうち三人はそのまま来年の三月末までこの政策委員会を運営されるわけであります。それでよいのであろうかなということが一つであります。  それから、時間がありませんので私の方から一方的に申し上げます。もう一つは、せっかく金制調の答申の中にも、国民に対して政策、金融通貨に関する調節の意思決定内容とその過程を国民に対して明らかにするよう日銀は努めなければならないということが書いてあるのでありますが、そのことはやはり、よほどの理由がない限り議事録は、これが古典的文書となるまで放置されず速やかに公開されることが答申の趣旨であると私は思っております。それが開かれた独立性を担保する二番目の問題です。  三番目は、国会に対して出席する義務を負うのでありますから、議院または委員会、こう書いてあります。そうなりますと、受け入れる側の議会がどういう場で日銀報告説明を受け入れるのか、これは国会が決める問題でございます。しかし、そのような内容を含む法律を御提案になる以上、政府の側としてもこれは国会に独立した金融委員会が設置されることが望ましいということをお考えになって出されたものではないだろうかと、私は思っております。  これらの三つの開かれた独立性を担保するものについては、中銀研や金政調の答申にこたえる上でも、また国民の期待にこたえる上でもそのようなことが実現されなければならないと思っておりますが、お考えをお聞きしたいと思います。
  274. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 順番をひっくり返してお答えをして恐縮でありますけれども、私は、これは日銀の諸君がどう考えておるかは存じませんが、むしろ大蔵委員会が従来から積み重ねてこられた御議論というものを前提に考えます限り、これは院が御決定になることではありますけれども、当然ながら私は、大蔵委員会日銀報告を受け、あるいは出席を求めてその報告内容をただすという役割を背負っていただけるものであろうと漠然と考えておりました。それだけに、今議員から御指摘を受け、特別の委員会というそうしたお考えも確かにそれはあり得る。しかも、それは常設のものか特別委員会になさるのか、これは院の御選択で決せられるべきことでありますけれども、何となく私はやはり、従来から御議論をいただいてきた経緯を踏まえれば、衆参ともに大蔵委員会が受けとめていただけるのだろうなと思っておりましたので、ほかのケースというものを実は想定しておりませんでした。  また、確かに政策委員の、ただ私、このごろ松下さんの顔を見ても、大蔵省のときの顔よりもさくら銀行の方の顔が実は出てきまして、合併当日に私、御祝儀で預金をとられて、それっきりまだ解約させてもらえていないものですから、この人はさくらの方の顔にしか実は見えないのですけれども。  確かに、御指摘をいただきましたように、ややもすると従来日銀政策委員としてそれぞれの分野から選任をされました方が行政の経験者に偏っていたという事実を私は決して否定いたしません。その上で、九カ月後の施行といいましても、やはり私は、政策委員が空席のままということは望ましいことではない、適切な方が見つかればできるだけ早く国会においても御承認をいただき、その任に当たっていただくことができればと願っております。  同時に、その九カ月間はかかり過ぎだとおっしゃるんですが、これからその仕事をしていかなければならない、施行日までにやらなければならない事務というものを調べてまいりますと、相当に膨大なものがございます。むしろ、これだけのものをきちんと間違いなく改正に伴う準備作業を完了させる、これには相当な時間がかかることは御理解をいただきたいと存じますし、殊に中央銀行を新たな姿でスタートをさせようというときにミスがあったのでは、これは申しわけが立ちません。それだけの準備の時間はぜひちょうだいをいたしたい、そのように思います。  その上で、私は新たな日本銀行という姿になりましたとき、従来は、ある場合大蔵省にボールをパスし、日銀が矢面に立たないで済んだ部分でありまして、みずからの責任において事を決し、その事由を説明し、国民の納得を得る責任が生ずることは否定をいたしません。  古典か新刊かというお話がありましたけれども、このごろ本屋に置いてある新刊の時期もどんどん短くなっておりまして、古典化するまでの期間も縮んでおりますから、そんなに私は長いこと報告がなされないで済むと思っておるわけではありません。しかし、その上で、私は概要と先ほどから言わせていただいておりますのは、政策委員会で今後御議論になるその中にはさまざまなものがあるでありましょう。先ほど白浜議員との間で論議のありました例えば介入の手法みたいなもの、タイミング等、やはり後から市場があのときとわかることはやむを得ないとしても、警戒信号を発するような議事録は直後に公開ということは私は余りよいことばかりではないと思います。それだけに、政策委員会の議事の概要というものは必ずきちんと報告をされる。全文が公開されますには多少、あえて古典とは申しませんが、新刊書が書店の店頭から消えますぐらいの時間はちょうだいをさせていただく場合があるのではないかと、そのように思います。
  275. 久保亘

    ○久保亘君 どうもありがとうございました。
  276. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 総理の指示、提唱で今、日本版ビッグバンの大合唱という状況で、本屋へ行きますと日本版ビッグバンの本があふれかえっております。  日本版ビッグバンによって日本の金融市場をロンドン、ニューヨークと並ぶ市場として育成しようという大目標ですが、しかし、今出ている本を読んでみますと、必ずしもその見通しを明るく描いているものばかりではありません。  例えば、日本の金融市場そのものは活性化するかもしれないが、しかし、結果としてはアメリカ資本が優位に立ち、日本の銀行で残るのは上位六行ぐらいだと。これは日経ビジネスが最近号で書いていたことであります。元大銀行幹部の書かれた本を読んでいましたら、日本版のビッグバンとは、聞こえはいいが金融再編のことでしかなく、余分な銀行は消滅するのであると、こういうふうに書かれておりました。  こういうのは、いろいろたくさん本が出ているわけですから、あるのは当たり前ではあると思います。総理は、この指示、提唱者としてどういう見通し、展望をお持ちになっているのか、まずお伺いします。
  277. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今、委員からビッグバンという言葉をお使いいただきまして御質問いただきましたが、お調べいただきますと、私は自分でビッグバンという言葉を使った答弁あるいはお話をしたことはないと思います。私にとりましては、これはあくまでも金融システムの改革でありまして、その金融システム改革という言葉を使いながら今もお答えをさせていただきたいと存じます。  議員が指摘をされましたように、金融システム改革に私は痛みを伴う部分がないと申し上げたこともまたございません。当然ながら、今まで保護されてきたその保護をなくしていこうというわけでありますから競争は当然起こるわけであります。護送船団方式と言われてきたやり方は変えようということでありますから、当然足の早い者遅い者、それぞれが出てまいります。あるいは、非常に特徴を持つ、特技を持つ経営とそうでない経営、ここにも差異を生じましょう。しかし、では今までと同じ金融システムを今後抱え続けたとき、我が国の金融というのは一体どんな姿になるのか、私はこれをぜひ国民に一緒にお考えおきいただきたいと思うのであります。  既に外為法の改正は国会を通過、成立をさせていただきました。外為法改正だけが行われ、システムが動かないといたしました場合、これはまさに国民の財産であります千二百兆というお金が外国の資金調達を求める人々の調達の場として日本の市場が使われるだけでありまして、それが生きて日本のこれからのために使われるという状況ではなくなります。  私は、システム改革に伴う痛みは、当然のことながら自己責任原則という一言をとりましてもその重みはあるわけでありますので、真剣に受けとめつつも、この変革を行わなければ、殊に今後ヨーロッパに新たに生まれようとしているユーロという新しい基軸通貨がドルに対してそれ相応の強さを持つ状況にまでなりましたとき、円というものがまさにローカルカレンシーとして扱われる状態になる。私はそのような状況は耐えられませんし、アジア太平洋地域に基軸となり得るだけの安定した通貨をつくっておく責任は我々にある、そのように信じております。
  278. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 いろいろな見通し、総理自身もお認めになっているわけですけれども、言葉はビッグバンであるか金融改革であるかは別としまして、一番の問題は準備のないままにこれに突入していることだということをある大学の教授は指摘しております。その準備の中で、つまり前提条件が整わないままのビッグバンと、とりわけその利用者保護という点が欠けているという指摘を私は重要だと思って読みました。「従来の金融行政と同じようにビッグバンでも大きく抜け落ちているのが、利用者の立場である。」、こうも書いております。「規定や機構それに慣例が整っていないわが国で、ビッグバンを安全機構なしに推し進めていくと、利用者の犠牲が多発し、わが国金融・証券市場への利用者の参加はおろか逃避すら生じかねない」と、こういうふうに書かれておりました。  私は、これまでの論議をずっと、この一環としての日銀法の問題を含めまして、やはりここで指摘されているように、準備が整っていないままのビッグバンの大合唱だという感じがしてなりません。総理はこの点、どのようにお考えですか。
  279. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 実は、私は金融システム改革を言い出しましたとき、金融界から余りに反発も何も反応がないものですから、実はびっくりしたんです。そして、ある意味では恐る恐る外為法改正のスタートを切りました。それでも、実は余り反応が、少なくとも私にはございませんでした。むしろ、日米の金融協議を行っておりますときの方が、その反応ははるかに顕著であったと思います。最近になりまして、相当いろいろな意味での反応が出てくるようになりました。  ですから、当初これを言い出しましたとき、私が信用がなくて、まさか本当にやらないだろうと思われたのか、あるいはできっこないと思われたのか、金融界のトップの方々は皆もう非常にすぐれた方ばかりでありますから、その意味するものを御理解いただけなかったとは思えませんので、単なる政治家の夢ぐらいに受け取られたのかな、だとすれば残念なことだなと。  しかし、本当にその意味で国民の資産というもののより安全な、あるいは御自身でリスクを承知した上でハイリスク・ハイリターンをねらわれるさまざまな選択肢はあると思います。その資産運用の場を提供すると同時に、我が国の資本を必要とする人々がより資本を調達しやすい市場をつくろうとすれば、私は従来の金融システムは思い切って変えていかなければならない、そう考えておりまして、議員からの御指摘は、私は問題意識として真剣に拝聴いたした上で、これを推し進めていかなければならないと考えております。
  280. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 私、たくさんの本を読み、またいろいろな議論の中で一つ考えさせられることがありました。それは、ロンドン、ニューヨークと並ぶ金融市場であるということ、そして私が気になったことというのは、香港、シンガポールの追い上げ、これをこのままにしたら大変になるという部分が特別なんですね。  日本の金融市場が大いに活性化すること、また日本の金融市場が世界の信用を受けると、このことは私は何も悪いことではない、大いに結構なことであり、日本の金融市場がその結果世界で大きい役割を果たすようになることも、これはまあ何も問題にする必要はないことですけれども、しかし、シンガポール、香港の追い上げを気にして、これは大変だということになる。この大蔵省がつくられた表を読んでみても、取引高というのがロンドン、ニューヨーク、東京、シンガポール、香港というふうに書かれているわけですね。そうすると、シンガポールそれから香港の追い上げで、日本で今度は追い上げを許しちゃならないと言われる側はどういう気になってこれを受け取っているだろうかと。  私が読んだ本には、何もそういうことを書いたものはありませんから、何かあるということを私は言うわけではありませんけれども、しかし、戦前からの日本の歴史との関係で、ある時期読んだのでは、日本は経済面では大東亜共栄圏をなし遂げつつあるなんというふうなこともあったことなどを考えると、シンガポール、香港の追い上げということが言われるのは、相手からはどういうふうに映るだろうかなということを考えました。同時にあわせて、我々はなぜ世界の三大金融センターでなきゃならないのかということも考えると、そのために日本では競争力を強めなくちゃならない。その競争力を強めるためにはリストラだということ。  そのリストラの結果は、私は今ロンドンやアメリカでも問題になっているような貧富の差を拡大するという結果にならなければいいし、また競争力を強めるためだということで今論議になっているさまざまな減税措置、免税措置、手数料をどうしろというふうなことが日本の税収の空洞化にもつながるようなことになっても大変だし、やはり日本の金融市場が、今問題になっている野村証券問題とか第一勧銀問題のようなもので信頼を失っているのをきちっとただして、その結果信頼を確保することは私は大いに結構なことだと思います。  しかし、競争力を強めるためにといって、本当に日本の金融市場への世界の不信の原因がどこにあるかを十分見きわめないで、リストラさえやれば、あるいは規制緩和さえやれば金融市場が活性化するというふうなことになってもならないと思いました。そういう感想を持ちましたので、総理はどのようにお考えになるのか、お答え願いたいと思います。
  281. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 確かに、議員も御指摘になりましたように、野村証券の問題あるいは第一勧銀の問題がこの時期に起こりましたことは、この金融システム改革というものに対して一面非常な打撃を与えつつあります。しかし、一面では一層金融システム改革を積極的に進めなければ、我が国の金融システムに対する信頼が取り戻せないという強い危機感を私どもに呼び起こしてもおります。その意味では、この問題はどちらから議論をすることもできましょう。私は、逆に積極的にこれをとらえ、この事件をただしていく中でシステム改革の必要性というものを世に問いたいと、そのような思いでおります。  また、委員から、シンガポールあるいは香港という市場の追い上げを気にしてという御指摘をいただきました。そうした心理が全くなかったと私は申し上げるつもりはありませんけれども、むしろそれよりも私の頭にありましたのは、ユーロという通貨が今ヨーロッパに生まれようとしている。最近の状況ではなかなか厳しい、これが現実になろうとすると厳しい問題を呼んでおりますけれども、やがて必ず誕生はするでありましょう。そして、恐らくヨーロッパ諸国は、つくり上げた以上ドルに対応し得るだけの国際的な基軸通貨としての役割を担えるだけのものにこれを育てていこうとするであろうと思います。  その場合に、アジア太平洋地域にこれに対抗し得るものを全く持たないままに、すべての国の通貨というものがローカルカレンシーという扱いになった場合、それで果たしてアジア太平洋地域の経済的な安定というものは保てるでしょうか。私は非常に問題があると思っております。  そして、アジア太平洋地域には新興市場が今育ちつつあることも御指摘のとおりでありますが、その国の通貨がそれだけのまた評価を得て、ある程度国際的にその価値を認められております通貨というものはそうございません。その中心はやはり円であります。となれば、円はそれだけの国際的な責任を引き受ける覚悟をやはり必要とするのではないでしょうか。私にはそのような思いがございます。
  282. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 時間ですから、これで終わります。
  283. 山口哲夫

    山口哲夫君 戦時中につくられた日本銀行法が五十五年ぶりに全面改正をされる、新しい日本銀行法になる、こういうことで私は大変期待を持っておりました。しかし、残念ながら一番大切な独立性、透明性について、例えば政府の議決延期請求権の問題が入ってきたり、それからまた予算国会承認が得られない、あるいは日本銀行法の見直し条項も入らなかった。いろんな意味で何かもう一歩踏み込んでほしかったという、そういう感がするわけであります。  今日までの長い議論の中で、そういう独立性自主性、透明性ということに関連して大きな問題になってきたのは、政府日本銀行金融政策に対する介入の問題、それからもう一つは人事の問題でなかったかなというふうに思います。  そこで、この政府の介入問題については、先ほども白浜議員から取り上げられておりました。実は私もこの問題について触れたかったわけですけれども、先ほど触れられて総理の方から答弁がありましたので、総理の答弁をそのまま信用して受け取っておきたいと思います。  ただ、そういう問題がどうして取り上げられているかといえば、やはりいろいろ過去にも同じような例があったからだと思います。例えば、九二年二月二十七日の竹下派の総会で金丸副総裁が、日銀総裁の首を切ってでも公定歩合を下げるべきだという、そんな発言をしたということが伝えられておりました。これは有名な話であります。その中で、総理というのはオールマイティーなんだから何でもできるというようなことを言っておりました。こういう発言というのは金融政策に対する露骨な介入であろうと。こういうようなことが時々報道されるから、日銀金融政策に対して政府は介入しているんではないかという疑問が持たれるわけであります。  そうした中で、先ほどの総理のお答えは、日銀が独立して行動をとることを願っているというような答弁でございました。それをそのまま受けとめますと、問題になるこの公定歩合に対しては、少なくとも大蔵大臣という立場にある方は私見は述べるべきではないだろうと、そういうふうに解釈いたしますけれども、よろしゅうございますでしょうか。
  284. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 議員がどういう方のどの発言を想定して言われたのかわかりませんが、私自身、大蔵大臣また現在の総理という立場におきましても、為替水準、金利の問題を聞かれましたとき、できるだけ為替水準について具体的に物を言わないように、同時に金融政策日銀の専管ということを繰り返し続けております。  多分、この職にあるほとんどの方々はそういう立場を持たれた上で、そのときの為替の状況等に応じて、当然のことながら日銀当局とも目立たないように意見の交換をした上で、観測的にあるいは市場に影響を与えるために何らかの発言をする場合というのは私はあり得ると思っております。ですから、そうした行動までを禁じるものでは私はないと思いますが、基本的にしゃべりまくる種類の話でないことは確かです。
  285. 山口哲夫

    山口哲夫君 今後、そういう問題についてとかく誤解を招くようなことのないように、大蔵省としてもぜひそういう毅然たる態度をもって臨んでいただきたい。そのことを要望しておきたいと思います。  もう一つ問題になりますのは、人事、天下り問題がこれまでも随分出されております。それで、日銀独立性、透明性を確保するためには、日銀の役員に大蔵省の幹部とかまた大蔵省のOBの方を極力つけるべきではないというように私は思います。  総理はこの間、行財政改革・税制特別委員会で、金融監督庁設置法の審議のときに、長官大事についてこんな発言をされておりました。監督庁の長官を官だとか民だとかという判断基準を持つこと自体がおかしい、むしろ人物本位でいかなければならない、こういうふうにおっしゃいました。恐らくそのことは日銀総裁あるいは副総裁等についても同じような考え方でおられるだろうと思うわけですが、そうでしょうか。
  286. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 少なくとも私は、松下総裁を余人をもってかえがたい方だと思っております。副総裁までいきますと、正直私それほど十分に存じ上げている方ばかりではありません。  その上で私は、大蔵省は全部悪い、あるいはどこどこは全部悪いというのは、本当に人材が欲しい場合には時に邪魔になることがあるとしみじみ思います。ですから、民間であろうと官界であろうと、学問の世界からであろうと、本当にいい方があれば、本当にその方にお願いができればそれが一番望ましいこと、私は本当にそう思っております。
  287. 山口哲夫

    山口哲夫君 要するに、人物本位であるというお考えだと思うんですけれども、私は一理はあると思うんですよ。しかし、そんなにきれいごとで済まされるんだろうかという疑問も持つわけですね。  例えば、総裁人事を見ておりますと、松下総裁の前は三重野さんで民間、その前は澄田さんで大蔵出身、その前は前川さんで民間、その前は森永さんでこれは大蔵出身である。先ほどおっしゃったように、一代ごとに官民たすきがけになっているわけですね。こういう人事そのものが人物本位でやったというふうには私はとられないと思うんですね。やっぱりそこには何らかの別な問題がどうしても潜んでいるんではないだろうかと思わざるを得ないです。だから、総理は大変きれいごとをおっしゃるけれども、そういう誤解を招くような人事はやらない方が私はいいだろうと思うんです。  そして、もう一つは、政策決定の中で、先ほど久保議員の方からも発言がございましたけれども、政策を決定する当時の理事会ですか、そういうような人たちの中にも不思議に官出身の方が、もうそこが指定ポストのようにして各省庁から入ってくる。その中で決定されたようなことがどうも我々の立場から見るとすっきりしない。やっぱり問題があるんではないだろうか。結局は、大蔵省意見というものがそういう人事を通して政策決定の中に生きているんだなというふうにどうしても解釈されるわけですね。  ですから、そういうことを考えたら、せっかく独立性、透明性を求めたこの法律をつくるわけですから、大事についても、そういう誤解を招くことのないような形で人事政策というのは私はやっぱり考えるべきだと思うんです。そういうことで国民はなるほど今度は真剣にそういうことを考えてもらっているなということになるんではないかなと思うんです。  どうかひとつ、そういう日銀の総裁を初めとする役員の大事に対して誤解を招くような、できるだけ大蔵省官僚並びにOBはっけない方がいい、そういうふうに私は思いますので、その点に対する考え方をもう一度お聞きしたいと思います。
  288. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、一つの実例をもって議員にもともにお考えをいただきたいと思います。  私は、国鉄を民営化し分割するときの運輸大臣として、新たに発足いたします各社の人事を決めなければならない責任者でありました。そして、当時、社長に何とかして民間人をと必死で産業界の中を駆けめぐりました。この中には当時を御承知の方もおられます。そして、結果として残念ながら社長に一人も民間人は得られませんでした。なぜなら、我々が欲しい方は、それぞれの産業、それぞれの企業においてやはり有能であり、それなりの処遇を受けておる方々であり、同時にその企業が自分の企業の将来をかけている人材だったからです。そして、その人たちに魅力を持って来ていただくためには、新生JRの社長の給与というものはその方々がその時点で得ていた年収に比べて残念ながら相当程度下回るものでありました。結果としてJR各社は運輸省のOB及び国鉄の中から選んだ人物によって構成せざるを得ませんでした。そして、少なくとも会長だけは外部から得たい、本当にようやくこれだけは私は希望を達しました。  同時に、このときもう一つ考えましたのは、いわゆる現場出身者から役員をつくりたいということと同時に、他の業界から人材をもらってきて将来の社長候補、会長候補として役員の中で育てたいということでありました。割愛をしてくれた社も幾つかございました。しかし、その相当部分が約束の年月を経由しました後、JRから出身の社に戻ってしまいました。将来の保障その他において残念ながらそれだけの差があったことは事実でありました。  人材を外部から得るというのにはそれだけの苦しみがあるものであります。その当時も運輸官僚の天下り先をふやしたというような御批判を、また国鉄の中から社長を選んだという御批判を私に浴びせられた方々がありましたが、民間からどれだけ人材を得たいと苦しんだかを御承知の方々からはそのような批判はありませんでした。  あえて改めて私は、大蔵省出身者も他の省庁出身者も民間の金融機関出身者も民間の企業の経営者であろうと、最適の人物を得られる条件の中で得ていきたい、そう信じておりますことを申し上げたいと思います。
  289. 山口哲夫

    山口哲夫君 国鉄の民営化の場合と私は全然これは対象が違うと思います。国鉄改革で民営化するということは、その企業の前途というのは大変に厳しいということはだれでも知っておった問題であります。そういうときに民間から人材を得るということはそれは容易ではないと思います。  しかし、日銀の場合はそうではありません。今申し上げたように、歴代を見てもちゃんと民間人が入っているじゃないですか。そういうことを考えたら今総理のおっしゃったようなことは当たらない、そういうふうに私は思いますので、どうかひとつこの機会にそういう誤解を招くような人事をしないようにして独立性を保っていただきたいということをお願いして、ちょうど時間ですので終わります。
  290. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 以上で内閣総理大臣に対する質疑は終了いたしました。  橋本内閣総理大臣、御退席されて結構でございます。  他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  本案の修正について千葉景子君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。千葉景子君。
  291. 千葉景子

    ○千葉景子君 私は、日本銀行法案に対する修正案について、その趣旨を御説明いたします。  このたび政府から提案されました日本銀行法案は、戦時立法として昭和十七年に制定された現行日銀法を五十五年ぶりに抜本改正しようとするものであり、これまでの審議でも明らかなように、当然のことではありますが、現代の金融システムに合わせた大きな前進とは言えると思います。  しかしながら、EU統合に向けて各国の中央銀行独立性の強化等の制度改革を進めているなどの金融市場を取り巻くグローバルな環境変化、またそれに対応して進められている金融システム改革等を考えたときに、改正案日銀政策運営独立性と透明性という要請に照らし、またグローバルスタンダードの観点から見ても不十分な点を多く残していると言わざるを得ません。参考人の御意見などからもそれが明らかになったところではないでしょうか。  民主党は、日銀独立性と国民に対するアカウンタビリティーの徹底を図り、国際金融市場にも適切に対応し得ることを目指し、修正案をまとめさせていただきました。  修正の主な内容は、政府代表の議決延期請求権、大蔵大臣報告、資料提出要求権等を削除し日銀独立性を高めるとともに、予算大蔵大臣認可を公表と国会承認に改めて、独立性と同時にアカウンタビリティーを確立することとしております。さらには、新生日銀の発足にあわせて総裁等役員を新たに任命することとしております。  なお、国際情勢の変化あるいは今後の運用を通しての問題点の明確化などを考慮し、五年後の見直しを盛り込んでおります。  政府案をより前進させるものとして提出した次第でございますので、各党各会派の御賛同を賜りますよう、よろしくお願いをいたします。
  292. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) これより原案並びに修正案について討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  293. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 ただいま議題となりました日本銀行法案に対し、私は平成会を代表して、これに残念ながら反対の立場から討論を行います。  今日、世界の金融市場は、その競争が急速に激化しております。今ほど日本の諸制度を改革し、世界に通ずる透明性の高いグローバルスタンダードとすることが求められるときはありません。  今回、政府が戦時下の国家総動員体制のもとにつくられた旧日銀法を改正しようとするのは、むしろ遅きに失した感がありますが、一定の前進であることは認めるところであります。  しかし、日本の金融制度は日本銀行だけを個別に議論するだけでは解決いたしません。日銀を含む金融改革が全体の根本的な行政改革の流れの中で位置づけられ、また世界において評価されるものでなければならないということであります。  大和銀行事件に対する国際的な批判、ジャパン・プレミアムに見られるように、グローバルスタンダードは、護送船団、談合による業者行政であった大蔵省日銀の行政体質を厳しく批判しております。公正、透明なルールで市場を運営し、参加者の自己責任を問い得る行政への転換が求められております。さらに、金融財政の明確な分離の必要性はバブルの教訓からも言うまでもありません。  こうした基本的な考え方を前提に、以下、政府提出の日銀法案に反対する理由を述べます。  まず第一に、日本銀行財政当局からの独立性の確保と金融政策決定の透明性の向上という目標に対して、本法案で想定されている枠組みでは全く不十分であります。  政府案では、日本銀行は依然として大蔵省の監督下にあります。物価の安定を目指す金利政策の決定は、大蔵大臣と対等の立場として法的に明確化された組織で議論される、その独立性と透明性の確保が大前提であります。  加えて、信用秩序維持のもとに、違法行為等の是正や、大蔵大臣または企画庁長官の指名する職員の議決延期請求権等、自主性の尊重がなされていないことであります。  第二に、政府提案の金融監督庁設置法案は、金融行政組織の改革に逆行するからであります。  現在の大蔵省の検査・監督機能大蔵省から分離しても何ら進展がないことであります。わざわざ新しい監督庁をつくらずに、既にある日本銀行の考査機能を発展させ、これを検査機能として活用することも可能であります。大蔵省の焼け太りである金融監督庁の設置は行政改革の流れに全く逆行するものであります。日本銀行の憲法上の位置づけについて議論を深め、財政当局から独立し、直接議会に対して責任を負う可能性を追求すべきであります。  最後に、法の背後にある日本銀行の体質があります。  これまで役員集会で重要な事項を実質的に決定し、各省庁からの天下りによって占められた政策委員会を実質的な議論のないスリーピングボード化してきたことや、バブル時代の金融政策に象徴されるように、大蔵省の内需拡大の圧力に追随する政策運営を行い、最終的な政策決定責任についてはあいまいにしてきた現実があります。  日銀法の改正とは、本来このような日銀の主体性の欠如と無責任な体制に対する挑戦でなければならないと思うのであります。今回提案された日銀法はこうした点が改善されていないことを指摘しなければなりません。  以上、本法案に反対する主な理由を述べました。  なお、民主党・新緑風会提出の修正案については、政府案を前提としていること等、見解を異にするため賛成いたしかねることを申し添えて、私の討論を終わります。
  294. 河本英典

    ○河本英典君 私は、自由民主党並びに社会民主党・護憲連合を代表して、政府提案の日本銀行法案に対して賛成、民主党・新緑風会提出の修正案に対して反対の討論を行います。  現行日本銀行法は、昭和十七年に制定された戦時立法であり、「国家経済総力ノ適切ナル発揮」のためを目的、運営理念としており、また独立性の担保が明確でないなど、時代にそぐわないものとなっておりました。さらに、現在の日本銀行金融政策決定過程については、何が議論され、どのようにして政策が選択されたのか、国民一般はもちろんのこと、マーケットの金融専門家にとってもわかりにくいとの批判があったことも事実であります。  このような状況にかんがみるとき、また来るべき金融制度改革を見据えた二十一世紀の新しい金融システムの構築のために、今回我が国の中央銀行である日本銀行法が全面改正されることはまさに時宜を得たものと考えます。  以下、政府原案に対する賛成の理由を申し上げます。  第一に、目的を今日的規定に整理したことであります。すなわち日本銀行は、我が国の中央銀行として銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うほか、金融機関の間で行われる資金決済の円滑を図り、もって信用秩序維持に資することを目的とすることとし、また通貨及び金融調節の理念等について明確化していることであります。  第二に、日銀の法的な独立性を担保するため、大蔵大臣の広範な業務命令権、立入検査権、日銀監理官制度等を廃止し、予算の認可権についても大蔵大臣が認可しない場合にはその理由を公表する等のセーフガードを設けたことであります。  第三に、役員集会の廃止、政策委員会の議決事項の拡充及びその組織の見直しを行うこと等により、名実ともに政策委員会日銀の最高意思決定機関であることを明確にしたことであります。また政策委員会の議事要旨、議事録の公開を行うとともに、業務及び財産の状況について説明を求められた場合には、総裁等は国会に出席しなければならないと規定するなど、透明性の確保にも配慮したことであります。  第四に、政府の経済政策と日銀金融政策が整合性を確保する観点から、政府の議案提案権、議決延期請求権等を規定したことであります。  その他、総裁、副総裁等の任命に両議院の同意を要するとともに、また役職員に守秘義務等を定め、給与等の支給の基準及び服務に関する準則を作成し、公表しなければならないこととするなどの適切な措置がとられていることであります。  なお、民主党・新緑風会の修正案については、政府の議決延期請求権等を削除する等、その内容について私ども見解を異にするため、反対であります。  以上、政府提案の日本銀行法案に賛成することを表明し、私の討論を終わります。
  295. 千葉景子

    ○千葉景子君 私は、政府提出の日本銀行法案に反対し、さきに提案させていただきました修正案に従って修正すべきであるとの立場から討論を行うものであります。  このたびの日本銀行法案は、昨年の住専問題を初めとする金融機関の不良債権問題、大和銀行事件などの金融不祥事が相次いだことを契機に、金融行政、金融政策あり方をめぐる議論が活発化し、金融システムの根幹にかかわる中央銀行あり方についても見直しが必要との機運が高まったことから、五十五年ぶりの抜本改正となったものであります。  その目指す方向は、日本銀行通貨金融の調節等業務運営における独立性金融政策決定過程、運営の透明性の確保、すなわち法案作成の基礎となった中央銀行研究会の報告にも記されております開かれた独立性の確立てありますが、政府原案は、EUの通貨統合等のため中央銀行制度改革を進める先進諸外国に比較して、十分な内容を備えた案であるとは言いがたいものであります。  特に、ドイツのブンデスバンクでは政府による議決延期権が廃止の方向にあるにもかかわらず、我が国で政府代表による議決延期請求権を新たに導入することには何ら合理性が認められず、大蔵大臣による予算認可、報告・資料提出要求権などの規定とともに、政府財政当局による金融政策への介入の余地を残すものであり、日本銀行独立性確保のためには、このような規定を削除することが不可欠であります。  また、原案は日本銀行の総裁等、現役員の任期について附則により新法施行後も継続することとしておりますが、私ども日本銀行が新たに生まれ変わることに伴い、新役員を選任し、体制を一新すべきであると考えます。  そこで、先はどのような修正案を提出させていただいた次第でございます。  最後に、中央銀行制度の改革は、現在行財政改革・税制等に関する特別委員会で審議されております金融監督庁設置法案等による大蔵省改革とあわせて、我が国金融行政、金融政策を見直す際に極めて重要な問題となるものであり、今国会において日本銀行法の改正が実現したとしても、それですべてが終わりではなく、今後も常にそのあり方を検討、議論していくことが必要不可欠であることを指摘し、私の討論を終わります。
  296. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 私は、日本共産党を代表して、日本銀行法案に反対の討論を行います。  現行日本銀行法は、日銀が大東亜戦争遂行に役立ち、大東亜共栄圏全体の金融の中心機構となることを目的として制定されたものであり、本来終戦直後、遅くとも憲法制定時に廃止すべきものでありました。  ところが、政府は、戦後も政策委員会の設置など一部の改正はありましたが、基本的にこの現行日銀法を温存し、政府日銀、大銀行が一体になって大企業本位、大銀行優遇の金融政策を進めてきました。  狂乱物価はその結果の一つです。さらに、バブルとその崩壊は、日本経済に取り返しのつかない傷跡を残しています。日銀金融政策の誤りの責任は重大です。しかも今、野村証券や第一勧銀スキャンダルをめぐって、大蔵省責任とともに日銀の考査能力が大きく問われています。  重要なことは、現行法を全面修正する新日銀法案が、これらの金融政策の失敗についての責任の自覚と真剣な総括に立って、これまでの金融政策の問題点をただそうとするのではなく、ビッグバンを中心とする金融改革の一環として進められようとしていることであります。  委員会の参考人意見陳述によっても、ビッグバンによる金融機関経営危機に対する日銀特融への強い期待が表明されましたが、本法案はこの期待にこたえるように形態、対象、条件、限度など、その基準もないまま行ってきた日銀特融を継続するものとなっています。  これまでの日銀の最大の問題は、民間大銀行との癒着による大銀行寄りの金融政策を推し進めたことであります。日銀が国民のための日銀役割を果たすためには、大銀行からの独立こそ必要でありますが、本法案にはその最も重要な問題についての是正策が欠落しています。  我が党は、衆議院で本法案に賛成の態度をとりましたが、以上のような諸点から見てこの態度は誤りであったこと、したがって参議院では反対の態度をとることを本日明らかにしました。  以上の理由で、本法案に反対の態度をとるものであります。また、民主党案についても反対とします。  以上をもって、私の討論を終わります。
  297. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより、日本銀行法案について採決に入ります。  まず、千葉君提出の修正案の採決を行います。  本修正案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  298. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 少数と認めます。よって、千葉君提出の修正案は否決されました。  次に、原案全部の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  299. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、鈴木君から発言を求められておりますので、これを許します。鈴木君。
  300. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 私は、ただいま可決されました日本銀行法案に対し、自由民主党及び社会民主党・護憲連合の共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     日本銀行法案に対する附帯決議(案)   政府及び日本銀行は、次の事項について、十  分配慮すべきである。  一 日本銀行の法人格の在り方については、日   本銀行が重要な金融政策実施する機関であ   ることを踏まえ、民間出資者の位置付け、法   的性格の変更に伴う諸コスト、金融政策に係   る日本銀行独立性への影響等を総合的に勘   案しつつ、さらに検討を行うこと。  一 日本銀行予算認可、違法行為の是正措置、   資料の徴求、業務報告書の国会への提出等に   ついては、日本銀行業務運営の自主性に配   慮しつつ、適正な運用に努めること。  一 政府の経済政策と日本銀行金融政策の整   合性の確保に努めるとともに、日本銀行総   裁・副総裁は、国会への出席義務が課される   本法の施行日以前においても、誠意をもって   金融政策考え方等につき国会に対して十分   説明するよう努めること。  一 役員集会の廃止、議決に付すべき内容・参   考資料等の事前送付、独自スタッフの配置等   により政策委員会の活性化を図るとともに、   政策委員会の議事要旨の速やかな公表等を行   い、金融政策決定過程の透明性を最大限確   保すること。  一 日本銀行の給与水準については、一般民間   企業、国家公務員、民間金融機関等の給与水   準を総合的に勘案し、国民の理解が得られる   適正なものとなるよう努めるとともに、機構   の見直し、支店・事務所の統廃合、保有資産   の整理、人員配置の適正化等を含む抜本的な   リストラ計画を早急に作成し、合わせて経費   予算、給与水準、日銀納付金等の透明性の確   保に努めること。  一 日本銀行の役職員の再就職制限について   は、国家公務員の再就職制限等も参考にしつ   つ、国民の理解が得られるよう適切なルール   を作成すること。   右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  301. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) ただいま鈴木君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  302. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 多数と認めます。よって、鈴木君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、三塚大蔵大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。三塚大蔵大臣
  303. 三塚博

    国務大臣三塚博君) ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても御趣旨を踏まえまして配意してまいりたいと存じます。
  304. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  305. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十九分散会      —————・—————