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1997-06-03 第140回国会 参議院 大蔵委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年六月三日(火曜日)    午前十時五分開会     —————————————    委員異動  五月三十日     辞任         補欠選任      清水 澄子君     及川 一夫君  六月三日     辞任         補欠選任      金田 勝年君     依田 智治君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         松浦 孝治君     理 事                 石川  弘君                 河本 英典君                 荒木 清寛君                 鈴木 和美君                 久保  亘君     委 員                 阿部 正俊君                 上杉 光弘君                 岡  利定君                 片山虎之助君                 清水 達雄君                 楢崎 泰昌君                 依田 智治君                 岩瀬 良三君                 海野 義孝君                 白浜 一良君                 寺崎 昭久君                 益田 洋介君                 及川 一夫君                 千葉 景子君                 吉岡 吉典君                 山口 哲夫君    国務大臣        大 蔵 大 臣  三塚  博君    政府委員        大蔵政務次官   西田 吉宏君        大蔵大臣官房金        融検査部長    中川 隆進君        大蔵大臣官房総        務審議官     武藤 敏郎君        大蔵省理財局長  伏屋 和彦君        大蔵省銀行局長  山口 公生君        大蔵省銀行局保        険部長      福田  誠君        大蔵省国際金融        局長       榊原 英資君        国税庁課税部長  船橋 晴雄君    事務局側        常任委員会専門        員        小林 正二君    参考人        日本銀行総裁   松下 康雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○日本銀行法案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る五月三十日、清水澄子君が委員辞任され、その補欠として及川一夫君が選任されました。     —————————————
  3. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  日本銀行法案の審査のため、来る六月六日午後一時からの委員会参考人出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 御異議ないと認めます。  なお、その人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 日本銀行法案議題とし、前回に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 自由民主党の楢崎泰昌でございます。  先週に引き続きまして、同僚議員の詳細な御発言がございましたが、なるべくそれに重複しないように政府の方にこの日本銀行法趣旨並びに詳細について御質問を申し上げたいというぐあいに思います。  実はこの日本銀行法昭和十七年に制定をされ五十数年をけみしていますが、日本銀行の運用は、つらつらおもんみるに公定歩合改定等日銀専管事項であるというぐあいにされて、その独立性自主性についていろいろな配慮がなされてきたと思うんですけれども、今日ここに日本銀行法改正するということの意義並びにそれに対する評価、どのように考えてやったのかということを、簡単で結構ですが、まず冒頭に御説明を願いたいと思います。
  8. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 現行日銀法は、戦時中の昭和十七年に制定されたいわゆる片仮名法であります。時代にそぐわない規定も多いところでございます。グローバル化をいたしました世界金融資本市場を見据えながら、二十一世紀に向け我が国金融資本市場を自由かつ透明で信頼のできる市場とすることを目指した広範かつ抜本的な金融システム改革が進められておりますが、日本銀行につきましては、こうした情勢の変化を踏まえながら、二十一世紀我が国金融システムの中枢にふさわしい中央銀行改革する必要があるとの観点から取り組まさせていただいております。  その際、日本銀行国民金融市場の信認を得るために、中央銀行独立性政策運営透明性確保、すなわち開かれた独立性、その案現が不可欠なものであります。  現在、御提案申し上げております日本銀行法案はこうした趣旨に沿ったものであり、日本銀行が二十一世紀我が国金融システムの中核にふさわしい中央銀行改革をされて、開かれた独立性確保がなされるものと考えられておるところであります。
  9. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 今お話しになりましたように、確かに片仮名法であり、旧日本銀行法を見てみると、「国家経済カノ適切ナル発揮図ル」、あるいは「国家目的ノ達成ヲ使命トシテ運営セラル」というような古めかしい言葉がございまして、それは現実の世界としては適切に運用されてきたというぐあいに思っていますけれども、この際、大蔵大臣の御説明になったような趣旨のもとに本法の改正を行うというのは適切かつ時宜を得たもの、そしてビッグバンを遂行する政府にとって、日本国にとって適切な改正であるのではないかというぐあいに思います。  その中で、一つここでお伺いをしておきたいのは、先ほど独立性ということを大臣言われましたけれども法律には独立性と書いてないんですよね、自主性と書いてあるんですが、どういうぐあいにお考えでございますか。
  10. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今回の日本銀行法案の中での主要なポイントは日本銀行金融政策独立性ということでございますが、法律用語として独立性ということを書き込みました場合には、何からの独立だという相対関係からいろいろな御議論になります。実質的に何を意味していることかといいますと、それは政策委員会最高意思決定機関政策委員会が最終的には責任を持って最終決着判断するという意味でございますので、法律用語としては自主性という言葉にさせていただいておるわけでございます。  ただ、もろもろのいわゆる独立した形というものをとるという必要から、独立性確保のためのいろいろな措置はたくさん今回の改正でお願いしてございます。例えば、主務大臣の広範な業務命令権を廃止するとか、解任事由を限定するとか、それから日銀監理官制度を廃止するとか、立入検査権を廃止する、いわゆる独立性を尊重する種々の措置は講じてございますが、日本銀行金融政策は自主的に行われるということをここで担保しているということでございます。
  11. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 私は、日本銀行法法律制定のための議論の過程において独立性ということが非常に強調され過ぎて、独立性が後退したとか政府の干渉が多過ぎるとか、いろんな議論も行われていますが、今大蔵省が御説明になったように、独立性ということではあるけれどもそれは可能な限り尊重しようということで、法律上の文言としては自主性という言葉をお使いになったというのは私は極めて適切な判断であっただろうと思っています。  御苦労の存したところとして、改正法案の第四条で「政府との関係」ということが規定されています。ここでは、「日本銀行は、その行う通貨及び金融調節経済政策一環をなすものであることを踏まえ、それが政府経済政策基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」と。これは、私ども自民党の中でも、政調会の中で大いに議論をしたところでございます。  ここにございますように、政府経済政策一環をなすものであるということ、それからその他の条項で、常に政府日銀とが密接に連絡をするということ、そういうことをうたわれておりますが、これは実は微妙なところでございまして、おっしゃる独立性ないしは自主性と密接に連絡をするということとは一体どういう関係があるのかというようなことがこれから問題になってくるんだろうと思いますが、適切な運営を望みたいと思うんです。  そこで、ここで議題にされております日本銀行法案の第二条のところで、「日本銀行は、通貨及び金融調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。」というのが第二条でうたわれています。そこで一つまずひっかかるのは、「物価の安定」という言葉ですね。これは通貨の安定とは書かれていない。すなわち為替業務が除かれているということになってくるわけですが、これはどういうことを意味しているのでございましょうか。
  12. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) 中央銀行研究会報告書に沿って、現在の国際金融システムのもとでは政府が一元的に為替介入について責任を持つべきということで改正案ができているわけでございますけれども、これはその目的通貨の安定というふうにいたしますと、国内物価為替レート、その双方を金融政策目的にするということでございますけれども、現在の経済学の通説は金融政策という一つ政策手段で二つの政策目的を達成することはできないということでございますから、金融政策は専ら物価の安定という一つ目的に左右されるべきである、こういう議論でございますので、通貨の安定ということにいたしますと、為替の安定と物価の安定の間にコンフリクトが生ずる可能性があるということで、物価の安定ということに目的をし、為替介入については政府が一元的にこれを行うということにしたわけでございます。
  13. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 今、御説明を伺ってみますと、物価の安定、国内的な、それと通貨の安定は相反する要素があるんだ、ぶつかる要素があるんだと、確かにそのとおりでしょう。つい先日も国内金利がひょっとすれば上がるかもしれないと言っただけで円高が進んできたというような事象もございました。  しかしながら、物価の安定といっても、要するに国民経済発展のために資するためなんですから、そうなってくると物価の安定も為替の安定も、ともに大きな金融調整上の眼目であるわけです。日本銀行通貨の安定については何ら関心を寄せないということになるんでしょうか。日銀総裁、いかがでしょうか。
  14. 松下康雄

    参考人松下康雄君) その点につきましては、各国通貨当局あるいは中央銀行も広く関心を持っているところでございまして、私ども国際会議でよく話をするのでありますけれども、現在のところそういう海外主要国通貨当局考え方におきましては、それぞれの国において物価の安定を図ってそれを通じて持続的な経済安定成長を実現していくという政策目標を掲げて、その努力をみんなでそれぞれ進めていくことが、これを全体として見ますというと、世界経済の安定的な成長につながり、ひいて国際通貨の安定に役に立つというのが共通認識のように思われます。  私どもも短期的な為替レートの安定を直接の政策目的にするということではありませんけれども、本来の国内物価安定を目指す金融政策を適正にやっていくことが、そしてお互いの主要国がそういう政策を取り合うことが、ひいて為替レートの長い目で見ての安定につながってまいるというふうに考えております。
  15. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 今、日銀総裁がおっしゃったことは、要するに国内物価の安定に頑張っていれば通貨の安定にも通ずるんだという少し短絡した言い方かもしれませんけれども、そのように伺えるんですけれども、ただ非常に大きな流れとしては為替はどんどん変動していくわけですよ。今介入ということを言われました。一時的な介入は必要でしょうけれども、それをどこでやるかというのはまた問題はあると思いますけれども、そういう点からいうと、例えば諸外国の例を若干引かれましたけれども、諸外国ではどういうぐあいに為替レート管理政府がやっているのか、あるいは中央銀行がやっているのかというと、幾つかの例があるように思われますが、御説明願えませんか。
  16. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) それぞれの国がいろいろな制度を持っておりますけれども、まずアメリカでございますけれどもアメリカは三十四年のゴールド・リザーブ・アクトという法律によって財務省為替介入については、これは一元的に管理をしております。ただ介入資金については、場合によってフェデラルリザーブがその半分を負担するということがございますけれども介入権財務省に一義的にあるということでございます。  またドイツはブンデスバンク、中央銀行が一元的にこれを管理しているということでございます。  また先ほど労働党政権の成立てイギリスでも若干制度が変わっておりますけれども、どうも五月に発表された文書では、最終的にどういうことになるかというのは必ずしも明確ではございません。というのは、その文書によりますと政府がエクスチェンジ・レート・レジーム、為替システム、レジームを決定する責任を持つということ、それから中央銀行政府の要請があればエージェントとして為替介入をするということが明記された上で、中央銀行は独自の外貨準備を持ち、金融政策目的のために介入することができる、こう書いてあるわけでございますので、介入権が一元的に政府が持っているのか、あるいは場合によれば中央銀行が独自の判断介入できるのか、その辺についてどうもまだ制度的に明確なことはこの文書だけでは読み取れませんけれども、若干の変更イギリスでもあったということでございます。
  17. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 先ほど国金局長は、相反しているので別々のところに持っていったらいいだろうと、こういうようなお話がございましたけれども、実は世界各国で見てみると、一緒に持っている国もあるわけです。相反すると言うけれども金融政策としてはこれを調和させていかなきゃいかぬという要素を持っているわけです。  したがいまして、日本銀行にせずに大蔵省に、今回の改正為替レートについての介入権責任というものを大蔵省に持たせたということをもう一遍、なぜそういうぐあいに考えたのか、いろいろ判断に迷ったんだと私は思いますけれども、その理由をもう少し明らかにしてください。
  18. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) お答え申し上げます。  今、申し上げた金融政策目的というのが一つでございまして、それからもう一点、非常に実務的な観点でございますけれども、諸外国の体制を見ておりますと、アメリカ財務省が一元的に為替介入権を持っているということでございまして、私ども、やはり日本為替の安定ということを言う場合には、やはり円ドルレートというのが中心になるわけでございます。もちろん、円とマルク、円とフラン、円とポンドというようなこともありますけれども、基本的には円ドルレート中心になるということでございまして、アメリカでは財務省介入権を持っているということであれば、やはり大蔵省財務省の間で話し合いをするという方が実務的に有効であると、こういう判断も一方で働いたわけでございます。  それからもう一つは、やはり為替介入というようなものは、市場に対して当局メッセージを送るということでございますから、これは一元的に管理しなければやはりいろいろな混乱を招く可能性があるということでございますから、その三点、金融政策目的、一元的にこれを管理しなければならないということ、それから日米関係、その三点で為替介入については政府が一元的にこれを管理するということにしたわけでございます。
  19. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 おっしゃるように、日本銀行大蔵省と常に深い関係があって為替管理をしなきゃいかぬわけですけれども、両方の責任だよというのは、これはおっしゃるように、国民に対するメッセージがばらばらになる可能性がある、それはいかぬのだと。それからさらに、アメリカ財務省と交渉するのはやはり政府ではないかというようなところは説得力のある御説明のように承りました。  しかしながら、同時に、先ほどから申しているように、物価の安定あるいは経済政策という点からは、やはり日本銀行も深い関心を持ってこれに当たらなければいけない、また意見も述べなきゃいかぬという立場におありになるように私には思えます。政府と密接に連絡して金融政策を遂行するということでございますけれども物価の安定をそもそも一義的にしか考えないのだということでは、やはり日本銀行経済政策についての責任は果たせないというぐあいに思います。  確かに、ここには「物価の安定を図ること」として、為替のことを全然書いていませんけれども、大きな為替世界における為替うねりというものがあるわけですから、そのうねりをよく読み取ってやはり政策を遂行して金融調整をやっていただかなきゃいかぬということになろうかと思いますが、松下総裁の御意見はいかがでしょうか。
  20. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 為替介入についてでございますけれども、この点日本銀行は、現在大蔵大臣の代理人といたしまして為替市場における実際のオペレーションを担当いたしております。  その際に、もちろん介入の実務はいたしますが、またマーケットの中に常時身を置いている中央銀行としましてのその専門的な立場から介入のための判断材料を提供いたしますなど、それぞれの役割を果たしてきていると考えております。この点は、今後におきましても、私どもの専門的な知識なり判断なり、またこれは先ほど財務省との御連絡の話がありましたけれども、私どもの持っております海外中央銀行との連携なり意思疎通なりというものも活用をいたしまして、結果的には両者の意見が一体となって進められるような、そういう為替対策努力をしてまいりたいと考えております。
  21. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 いずれにしても、政府とよく御相談になってこの業務を遂行していただかなきゃならぬということになると思います。  先ほど申し上げましたように、政府経済政策一環としてあるということを踏まえですから、そういうような意味為替レートについても常に関心をお持ちいただいて、物価物価だけで世の中を過ごすのではなくて、為替レートあるいは対外政策ということも念頭に置かれて金融調整をやっていただきたいなというぐあいに思っております。  それで金融調整でございますけれども、実は金融調整の中の一番大きなものは、金利をどのように持っていくかということに中央銀行としてはなるかと思います。そこで、現在、公定歩合〇・五%というまれな低金利政策を遂行していっていただいているわけですけれども、〇・五%の公定歩合を一年数カ月の間、今持続しているわけですね。そのことについての判断、〇・五%まで公定歩合を持っていった判断、その辺について日本銀行にお伺いを申し上げます。
  22. 松下康雄

    参考人松下康雄君) ただいまの公定歩合決定平成七年に行われたものでございますけれども、当時の経済情勢を振り返ってみますというと、景気回復流れ足踏み状態でありまして、そうした中で、物価面ではデフレ懸念さえ持たれるという情勢でありました。  政策委員会におきまして、こういった情勢を子細に検討いたしました結果、物価の過度の下落が及ぼす悪影響を未然に防止をし、経済が自律的な回復基調に復することを金融面からさらに強力に支えていくことが適当であるという見解に達しまして、この公定歩合引き下げに踏み切ったわけでございます。  この公定歩合引き下げ措置も含めまして、私どもはこの間、思い切った金融緩和措置を進めてまいりましたが、そのねらいを一言で申しますならば、我が国経済バブル崩壊の後遺症でありますとか、また産業構造の再編といったいろいろの構造調整圧力直面をしております中で、インフレにもデフレにもしないで経済の持続的な発展の基盤を整えていこうと、そのために金融政策面からできる限りの努力を行ってまいろうということであります。こういった考え方は、今回の改正法案でも定められております物価の安定を通じて「国民経済の健全な発展に資する」という金融政策目的と軌を一にしたものであると考えております。
  23. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 確かに、物価の安定は結果としては保たれているように思います。〇・五%にするというのは史上まれな低金利政策でございまして、一体いつまで続くのかなというようなことを時々話題にもするんですけれども、〇・五%にすることの具体的な経済に対する刺激というのはどういうものなんでしょうか。  確かに、企業は低金利であれば、その分だけ何とか助かっていることは間違いないんでしょう。同時に、家計に響くという声も私どもの耳には多数入ってきています。それらについてどういう判断をなされたのか。それからさらに、今回はアカウンタビリティーということが問題になっていますけれども、どういう説明国民に対してなさってこられたんでしょうか。これは後でお伺いしますけれども政策委員会でどんな議論を行われたのかねというのもほとんど説明されていないように思いますけれども、それらの点をまとめてお答え願えますか。
  24. 松下康雄

    参考人松下康雄君) まず初めの、現在の低金利政策がそれでは具体的にどのような効果を経済に及ぼしているかという点でございますけれども、まず低金利政策企業経営に及ぼす影響について簡単に御説明を申し上げたいと思います。  それは、企業によりまして金融資産金融負債保有状況は異なっておりますけれども我が国企業部門を全体として見ますと、借入金が金融資産を大きく上回っておりますので、金利低下によって利払いコストが軽減され、金融収支改善に寄与することになります。景気回復局面に当たりますこれまでの三年間におきましては、企業経常利益は約五割方増加をいたしておりますけれども、その約半分は金融収支改善によるものであります。  特に、借り入れ依存度の高い中小企業におきましては、収益増加のかなりの部分が金利負担の軽減によってもたらされた形でございます。こういった企業収益改善は、投資採算の好転と相まちまして、企業設備投資の需要を喚起し、企業活動を活発化させるという方向で作用をいたしております。このように、低金利などの現在の金融緩和基調は、企業活動を元気づけまして経済を自律的な回復軌道にしっかり移行させていくという上では大切な役割を果たしているものであると認識をいたしております。  また、この点につきましての政策委員会におきます議論は、先ほど、当時のデフレ懸念直面をいたしました状況の中で議論の上この際思い切ってインフレでもないデフレでもない持続的な経済安定成長に役立つような政策に踏み切ろうという結論が出たわけでありますけれども、このような考え方につきましては、当時の現行制度のもとでございますので、当時の金利変更決定のときに私が記者会見をいたしまして、その考え方につきまして詳細を御説明し、さらにそれらの考え方はその後の日本銀行が出しておりますいろいろな月報、年報等刊行物の中でも繰り返し御説明をしてまいった次第でございます。
  25. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 今、御説明になりましたが、企業への影響として、九三年から九六年の三年間だと思いますけれども金利低下による影響企業に非常に大きく及んだんだというお話はそのとおりだと思いますよ。それは借金の金利が減ってくるわけですから、企業収益がふえてくるのは当たり前なんですね。それがどの程度決定的な意味を持っているか、そしてそれがどのように定量的に効いているかということであろうかというぐあいに私には思えるんです。  それからさらに、御説明になった中で、大企業には余り効いていないけれども中小企業には効いているよと、効いていないよなんておっしゃいませんでしたけれども企業には影響はそんなにない、それよりも中小企業の方が影響が大きかったんだよという御説明がございました。  私は、大企業の方は要するに金利ではなくて経済の自律調整的な要素が多かったのかなというようにも思えるんですけれども金利政策によって、過去三年間の事例があるわけですけれども、これが大きく企業収益あるいは企業活動経済活動になったというようなことについて、もう少し詳しく御説明願えませんでしょうか。できれば、非常に難しいと思いますけれども、定量的な話もできないでしょうか。
  26. 松下康雄

    参考人松下康雄君) これは一つの試算でございますけれども、御紹介を申し上げますと、先ほど私が申しましたこの三年間、九三年から九六年まででございますけれども、その期間の中で企業所得の増加率は、法人季報に基づいて計算をいたしますと全体として五一・二%の増加でございます。その中で、金利低下の直接的な寄与度と申しますか、これを試算いたしてみますというと、これが二五・二%効いているということになります。  この計算を大企業中小企業とこの二つに分けて計算をいたしますと、大企業におきましては経常利益の増加率は四七・一%でございますけれども、その中で金利低下の直接的な影響と認められる部分は九・七%でございます。一方、中小企業につきましては、経常利益の増加率は五五・二%でございますけれども、その中で金利低下の直接的な寄与度は四〇・一%に達している、そういう試算がございますので御紹介を申し上げます。
  27. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 やはり中小企業にはよく効いているんですね。大企業の方は金利政策だけではなくて、当然のことですけれども経済金利政策だけで動いているわけではありませんから、世界の環境の中で動いているわけですから、その環境も手伝ったんだと思いますが、金利政策がそれに大きく後押しされたということは私は間違いないというぐあいに思います。  しかし同時に、先ほど御答弁が漏れたと思いますけれども、家計ですね。実のことを言うと私の母親なんかも今、年老いて生活をしているわけですけれども、何がしかの財産を夫から譲り受けてそれで一生暮らせるかと思ったら、なかなか低金利政策でうまくいかないわねということでございます。そういうことで、家計に対する低金利政策というのは大変影響を与えているように思いますが、それについては日銀はどのようにお考えでございますか。
  28. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 御質問の低金利の継続が家計に及ぼす影響という点は実際相当の大きな影響でございまして、これは家計ごとにその影響の度合いが違うわけでございますけれども我が国の家計部門全体として見ますというと、預貯金の保有額がローンなどの借り入れの二倍近い規模でございますから、金利低下いたしますと家計のネット金利収入は当然に目減りするということになります。  また、その一方におきましてこれまでの、先ほど申しましたような金融緩和政策の浸透もございまして、景気自体は緩やかな回復を続けておりまして、そうしたもとで回復力の底がたさも増してきております。このように経済活動を活発化させてまいりますと、全体として見れば、それは家計部門に対しましても給与所得の増加とか雇用の回復という形では広いメリットが及んでまいるものでございます。  国民所得統計で見ますというと、金融緩和を開始いたしましてからの五年間、平成三年度から七年度までの間に、家計部門における預貯金等の金利収入は九兆円減少をいたしておりますが、その一方で住宅ローン等に対します金利支払いは五兆円減少いたしております。差し引きネットでは四兆円の金利収入の減でございます。  ただ一方、家計所得の八割以上を占めております給与所得を全体として見ますと、この同じ期間の中で約四十兆円増加をしているわけでございます。もちろんその中の金利政策の効果がどれだけかというのはおのずから別の問題でございますけれども、そういう全体としての状況でございます。もちろん、一口に家計と申しましてもいろいろの世帯がございまして、特に金利所得に多くを依存していらっしゃる家計につきましては、現在大変難しい状況にあるということは私どもも十分に認識をしているところでございます。  ただ、やはり私ども政策といたしましては、個々の家計が豊かになりますためにも、経済全体の足取りをまずしっかりさせることが大事であるという観点に立ちまして、マクロの経済立場からの適切な金融政策運営努力をしてまいりたいと思ってやっているところでございます。
  29. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 御説明がありましたように、家計といいましても実は一くくりの家計ではなくて、給与所得者もあるし、それからローンを持っている方もいる、そして全く収入のない人もいる。同時にそういう家庭には社会保障というものが出ているというような複雑な構造になっているというぐあいに思います。  御説明がありましたように、約四兆円がこの低金利政策で家計に打撃を与えている。住宅ローン等の金利の貸し出しが安くなっているということも計算に入れて、四兆円が家計に直撃を加えているということについて、一体どのように物事を考えるのか。これは日銀の方は金利政策という側面で考えているわけですが、大蔵省経済運営としては、こういうような事象に対してどういうふうに物事を考えているのか、御説明願います。
  30. 武藤敏郎

    政府委員(武藤敏郎君) ただいま御指摘がありましたとおり、この低金利状況のもとで金利生活者にとりましては大変利息収入の減少をもたらすということでございまして、この点はまことに国民の不満が強いということは我々も重々認識しておるところでございます。  ただ、日銀総裁からもるる御説明がありましたとおり、一方で景気の回復の足取りをしっかりさせるためには、やはり低金利政策をとって企業、家計の金利負担の軽減を通じまして景気回復に寄与する、それがひいては国民生活にも好ましい影響を及ぼすということでございます。  大蔵省としてどう考えるかという御質問でございますけれども公定歩合操作等の金融政策は言うまでもなく日本銀行の所管事項でございまして、日本銀行におかれましては、今総裁からお話のありましたとおり、景気の動向や金融市場状況など、内外の経済情勢を注視しつつ適切な対応がなされているものというふうに認識しております。
  31. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 ここに、日本銀行政策委員会平成八年の年次報告書を持ってまいりました。これを見ると、家計部門についての説明が加えられております。  この結果、家計所得全体の動きを見ると、利子収入は四兆円の減少となっているが、この間、給与所得は四十兆円を上回る増加をしているから、まあいいじゃないのと。いいじゃないのとは書いてありませんけれども、そういうトーンですね。  確かに、ミクロ的に見れば利子所得に多くを依存している家計にとって厳しい状況にあることは、日本銀行としても十分認識をしていると。まあ、言いわけか何かわかりませんけれども認識をしていると。しかし、金融政策はあくまでマクロ経済的な観点から、景気の自律的な回復を促すことを目的として運営をしており、もしそういうことが実現すれば、家計部門にも雇用や所得という観点から見てメリットが広く及ぶんじゃないかと。日本銀行としては、こういう考え方に立って景気回復を強化することに重点を置いて金融緩和政策を継続しているんだと、こういうぐあいに年次報告書に書いてございます。  これは、日本銀行のお立場からすると、ある程度無理からぬことだと思いますけれども日本国政府としてはどうなんでしょうか。こういうぐあいに金利政策が家計を直撃することを、いやしようがないんだよと、それは所得だから雇用関係で逐次いいところに影響が及ぶんだよということだけで済まされるんでしょうかということが、一つの問題点であろうというぐあいに私は思っています。  言うなれば、金利政策というものはそういうものであっていいんだろうか。一つは、政府の施策としてはマル老減税というのが行われています。それの是非についてはまたいろいろ議論のあるところでございます。それから、都市銀行では福祉金利と称して福祉預金を、これは量的には余り大きくなくてそんなに効果がないのかなというような感じがしますけれども、これは一昨年ですか、参議院が提案をして各銀行がこれに同調していただいたという経緯もございます。  そのようなことで、金利はもちろん市場金利に任せるべきであり、経済政策は大きな経済政策観点に立たなきゃいけないんだけれども、同時にこういうところを政府としてどのように物を考えていくのかということが重要であろうと思います。審議官は適切にやろうと思っていますという適切な言葉を使いましたけれども、本当に適切なのは一体どういうことなのかということが問われているんだというぐあいに思います。  私は、よくこういう低金利政策は異常なんでいつまでも長く続かないよと、御勘弁してちょうだいよということを申し上げるんですけれども、もう一年七カ月に及んで、まだまだ低金利政策、恐らく日銀のいろんな御説明をお伺いしますとまだ必要なんだろうというぐあいに思いますが、そういうものに対して、極めて異常な金利状態のときですから、どのようにこの問題を考えていくのかということを再度、今度は大蔵省としてじゃなくて、政府としてお伺いをしたいと思います。大蔵大臣、いかがでしょうか。
  32. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 大変御家庭の預貯金に対する金利の減少、政府としてもマクロ経済国民経済中小企業の振興を中心とした地域経済の活性化と、こういう観点で物を見てまいりました。そういう中で、日銀金利を所管する唯一の機関として、全体を見ておやりいただいておることに、大変御苦労であると私自身も思いますし、そういう中でもう少しの辛抱だなということであります。日本経済が持続的な安定成長に向けての諸施策を、政府も全体を見通しながらやっておることだけは間違いありません。徐々に浸透度が出てまいったなと、こう思います。これを安定基調に乗せることがこれからの最大の目標でございます。  そういう中で、特にお母さんの話を楢崎議員から言われました。これは、私のおふくろはおりませんけれども、お年寄りの各位からは、まさにこのことを、いつ上がるんでしょうかと聞かれるわけです。私からは、申しわけないがもう少し御辛抱くださいと。いつまでですかと、もう少し御辛抱くださいと、こう申し上げておるわけであります。政府として、それは申しわけないし心苦しいことではありますが、やはりここを乗り越えていくことによって、そちらに太陽がやっと雲間から顔を出してきておると見てよろしいんでしょうか。そういうことでありますから、ひたすら申しわけない、心苦しいということで、政策のよろしきを得て、安定的な基調がなるほどと実感として出るところまでまいりたいと、こう思っておりますので、御理解、御鞭撻をお願いします。
  33. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 確かに、そういう側面があると思うんですね。これは、どうすればいいんだろうか。なかなか難しい政策課題だろうと思います。我慢をしてくれと言うだけで済むのか、それとも特段の措置をやるのか。いずれにしても、マクロで見れば賃金、所得等々が別途ふえているわけですから、それの配分の問題になってくるように思うんですね。  貯蓄動向調査などを見てみますと、三十代、四十代、五十代、六十代と貯蓄はどういうぐあいになっているかというと、六十代が一番多いんですね。高年齢者ほど貯蓄が多い。後で生命保険の話もちょっと伺いたいと思っていますけれども、当然のことながら老後に備えての我が国民の貯蓄性向は非常に高いんですね。そういう中で、六十代の一番最後の人生を確保しようといった人たちが低金利政策で打撃を受けているということについての不満は国民に非常に強いというぐあいに思われますので、なお十分本件については御検討をお願いせにゃならぬというぐあいに思っています。  さて、話題をちょっと変えます。中央銀行研究会でも開かれた独立性というのをキーワードのように使っておられるようでございます。開かれたというのはどういう意味かというと、日銀政策決定過程、それについての説明というものが十分なされていなきゃいかぬのだろうというぐあいに思っているわけです。今の高年齢者の預金というものも十分な説明が、政府としてはやろうと思ってもなかなかできないからやらないのかもしれませんけれども、十分な議論がなされていないように思うんです。現在の法律のもとでは日銀政策委員会議論は非公開になっておりますので、多くの議論が外に出ていないように思います。  今度の政策委員会、この政策委員会日銀の最高の意思決定機関になるということですけれども、実際上政策委員会をどのように、この法律改正が行われたならば運営をしていくというぐあいに思っておられるか、日銀総裁にちょっと御説明願います。
  34. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 今回の改正法案におきましては、中央銀行独立性政策運営透明性を高めることを軸としました制度改革が提案をされております。  申すまでもなく、日銀国民やマーケットからの信認を得てまいります上では、日銀自身が国民に対して重大な責任を負っているということを自覚いたしまして、適切な政策業務運営に向けての不断の努力を重ねていくことが求められていると思いますので、この点、私どもといたしましても強く自覚をしてまいらなければならないと思っております。  また、この点で中央銀行独立性を尊重するということは、やはり中央銀行政府、議会との間の適切な関係というものを前提としながら、個々の政策判断につきましては中央銀行の中立的、専門的判断に任せていただくことによって政策運営独立性が尊重されるということでございますので、そういう点に関連をして、私ども政策委員会運営に当たりましては、これが十分な責任を持って検討と決定を行ってまいれるように必要な環境整備、例えば外部の人も含めての人材の確保でありますとか、資料その他の提供でございますとか、そういう点に努めてまいりますほか、定められた金融政策に関しましては、法の趣旨に沿って、金融政策委員会の議事要旨の速やかな公表などを通じましてこの政策運営の中身を広く国民一般に見ていただくということによって、国民やマーケットからの信認をより以上に高めてまいりますように努力をしてまいりたいと思っております。
  35. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 今、日銀総裁がおっしゃったようなことを実際上やらなきゃいかぬ、これからまた進めなきゃいかぬということであろうと思います。日銀総裁の言われたように、政府とすり合わせを十分にやらにゃいかぬということを言われました。私も質問の冒頭に、政府との関連を密接にしてもらいたいということを申し上げましたが、実は今までだって同じなんですね。  よく悪口を言われるのは、大蔵省日銀とが密室でこそこそ話をして、そして結論をつくって、さあどうですかといって日銀政策委員会に持っていくと。そうすると、失礼ながら総裁が提案してその趣旨説明をやれば、ああそうですねということで終わっちゃう。日銀の事務当局と大蔵の事務当局とがずっとすり合わせをやって出た結論については、おまえ、これだめじゃないかとか、なかなかそういう議論というのはやろうと思っても本当はできないわけですね。そのために世間様では、大変これも失礼な話ですけれども日銀政策委員会というのはスリーピングボードである、寝ているんだ、発言する者はほとんどいないんだというぐあいに言われているわけです。  また、私の身内の話をするとちょっとぐあい悪いですけれども、私の存じ寄りの者がやはり日銀政策委員を従来やらせていただきましたが、なかなかこの政策委員会では異議を挟む、質問ぐらいはするかもしれませんけれども、それ以上の議論は、要するに議論ですね、質問はあるけれども議論はないというようなスリーピングボード的な運営が従来なされていたというぐあいに考えられているんです。  今度、新法律が成立をいたしましたところで、自主性をというぐあいに先ほど仰せになりましたけれども、中立的な委員自主性をというぐあいに言われましたけれども、実は議案を提出する前には日銀当局と大蔵当局が十分なすり合わせをし、そしてすり合わせをすることは先ほど申し上げました日銀法の趣旨にありますように政府経済政策一環としてやるわけですから、当然すり合わせばやらなきゃいかぬわけですね。すり合わせをやって、これが政府との整合性のある政策でございますということでお出しになる。そうすると、前と変わらないと思いますが、いかがでしょうか。
  36. 松下康雄

    参考人松下康雄君) まず、政府との関係がどう変わっていくかという点でございますけれども、これは政府との間の日常いろいろなレベルで行っております情報なり意見なりの交換といいますものは、これはいろいろの政府関係の機関とその他の機関との間でどことも恒常的に行われているものだと思います。  ただ、今回の法律改正によりまして、そこのところの手続が一つ明らかになってまいったと思うわけでございます。すなわち、従来行内に一つ理事会というものがございまして、この役員集会において何か原案がもうでき上がって、それが政策委員会の承認を得るようにかかっていくのではなかろうかという感じがあるようでございますけれども、これらの点につきましては、役員集会は廃止をいたしまして、政策委員が名実ともに日銀のただ一つの意思決定機関ということで本来の業務を自主的に行っていただく準備が整うように思います。  それからもう一つは、政府との間でございますけれども金融政策変更その他を議論する政策委員会は開催日をあらかじめ定期的に決めておきまして、また政府の側におかれて必要があると認められた場合には、政府の側の委員がそこへ出席をされて意見を述べられる、あるいは議案の提案をされるということも可能であるわけでございます。また、そこの間には、後ほどお話が出るかと思いますが、議案の議決の延期の請求権といったような仕組みも入れまして、政府政策委員会との間の関係が透明なものになるように配慮されていると思います。  そして最後に、この政策委員会において行われましたいろいろの議論について、その議事の要旨はなるべく早い時期にこれを一般に公開することによりまして、政策委員会の中でどのような経緯、考え方のすり合わせがあってこういう結果の政策決定をされたかということが一般に周知されるようにしてまいる、この点が一番大きな変化であろうと思います。
  37. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 段々と御説明をいただきましたけれども、私は実は従来の政策委員会は議案に即したこと以外は、いわゆる雑談ですね、そういうものは余りなされていなかったように思いますけれども、私は自由な議論という点からいうと、もうすり合わせの終わっちゃった議論だけをやるんじゃなくて、もっと現在の状況では低金利政策はいつまで続けなきゃいけないのかねとか、そういう普通の議論政策委員会でやっていただきたいなと。そういう議論をすることによって開かれた政策委員会になってくるんじゃないか。議案が出てきて、量的調整はこういうぐあいにしようと思います、公定歩合はそんなに高くやられちゃいかぬですけれども、そのような議論だけをしているんじゃなくして、もっと全体の金融政策のあり方について広範な範囲で、しかも中立的な専門家、恐らく学者とか実務家も入るでしょうけれども、そういう人たちが入って議論するわけですから、オープンな自由な議論をやれる場として政策委員会運営していっていただけたらなと。そうでないとまたもやスリーピングボードになつちゃうというようなおそれがあるわけです。政策委員会の議長は互選だそうですから、必ずしも総裁がなるとは限らないのかもしれませんけれども、ぜひそういうようなお気持ちで運営をしていっていただきたいというぐあいに希望をさせていただきたいと思います。  それから、議事録の公開をしますよ、あるいは要旨の公表をしますよというんですけれども、これがまたくせ者でしてね。アメリカにその例があるよというんだけれども、あれは四十五日間ぐらいたってから要旨を公表するわけですね。私のお聞きするところでは、金融調節事項についての日銀政策委員会は月に二回程度になるだろうというぐあいに承っております。大体そのくらいでしょうか。そして、実はアメリカの場合には一カ月半ごとに政策委員会が開かれて、それに後追いするような形で、間に合うようにというのか間に合わないようにというのかよくわかりませんけれども、それで相当多くの日数を要した後に公表と、議事要旨を公表しているわけですね。日本の場合にはどういうぐあいに運営されるおつもりか、お伺いしたいと思います。
  38. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 政策委員会の議事要旨の公表、あるいは議事録の公表につきましては、そのこと自体を新しい政策委員会におきまして判断の上たしか決定するということでございますから、私どもとしましては現在は事務的に準備を進めてまいるということでありまして、ただいま御指摘がありましたような各国のいろいろな事例等も参照しながら検討を進めているところでございます。  ある程度、速やかに公表するということはもちろん必要なことだと思いますし、ただその議事の要旨というものの内容なりそのことがマーケットの方に及ぼしてまいります影響等をも考慮する必要もあるかもしれない、そういう点につきましては私どももよくそういう必要な角度からいろいろと検討をして、適切な内容のものを決めてまいるようにいたしたいと思っております。
  39. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 今、総裁が言われましたように、最後には適切な考慮をというぐあいに言われましたけれども、実はそれを法律に書かなかったのが問題はあるかもしれません、大臣。  ちょっと松下さんのお言葉で気になるのは、マーケットに及ぼす影響があるかもしれないと。マーケットに影響を及ぼすために政策委員会はやっておるわけですから及ぶのが当たり前で、できれば私は四十五日間アメリカで要旨の公表をおくらせているのは、いつごろからかまたどういう理由からかよくわかりませんけれども、私は開かれた独立性というのがスローガンであるならば、キーワードであるならば、やはり日銀政策委員会は終わったらもちろんのことながら総裁が、総裁というのか政策委員会の議長が代表して記者会見をなさるんでしょうけれども、それとほとんど時期を逸しないように要旨の公表をなすべきである。会議録の方はだれそれがどう言ったというような個人的な責任問題がついて回るので少しおくらせてもしようがないなというぐあいに思っていますけれども、要旨の方は全く速やかに発表なさるのが当然じゃないでしょうか。
  40. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 御指摘のように、要旨の公表は速やかなることを趣旨として準備をすべきものであると思っております。私どもも初めてのことでございますので、公開市場委員会での事例でありますとか、あるいは先般まで、今回廃止されましたけれどもイギリスにおいて行われておりました大蔵大臣中央銀行総裁との月例会議の議事録の公開とか、そういう経験の内容をよく踏まえまして、私どもとしても、これは繰り返しになりますが、最も適切な時期を選んで公表を申し上げたいと。  ただ、速やかに内容的にお話をするという点は、政策変更のような場合には当然変更の直後に議長が新聞記者会見をいたしまして、そこでまず口頭でとにかく早く内容について御説明を申し上げるということでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  41. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 速やかにということを何遍も繰り返して言っていただきましたので、少なくとも次の政策委員会が開かれるまでの間に公表されていなかったなんというんじゃ困っちゃうわけですね。アメリカの場合には一カ月半ごとにやる、日本の場合には月二回やるわけですから、それなりのことは考えて速やかにお願いを申し上げたいというぐあいに思います。ついでに、議事録はいつごろ発表なされるような御予定で進んでおりましょうか。
  42. 松下康雄

    参考人松下康雄君) この点につきましては、慎重に考えましてそして政策委員会で御議論をいただく必要があろうかと思います。と申しますのは、公平な御議論をしていただきます趣旨から、いろいろな日本の場合審議会等におきまして議事録の公開が行われていないというのが現実でございますけれども、私どもはこの法律の規定の趣旨に沿って、金融政策独立性に伴う説明責任という点から当然公開を行うべきものと考えておりますが、その点はどうも海外の事例を見ましても、アメリカは万事早いのですけれども五年後とか、ドイツに至っては慎重でございまして三十年後とか、いろいろな例がございますので、私どももよく検討いたしまして誤りないように決めてまいりたいと思います。
  43. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 五年後とか三十年後だとか、発表しても何の意味もないような感じがしますね。歴史家だとか財政学者だとか、それの自己満足のためにやっているような感じがします。いずれにしても、議事録、要旨ともによく慎重御検討の上、速やかにやっていただきたいということを要望しておきたいというぐあいに思います。  ところで、金融調節事項以外は公表はしないんですか。この法律はそれについて触れていないようですが、いかがですか。
  44. 松下康雄

    参考人松下康雄君) この点につきましては、金融制度調査会の答申の中におきまして、この議事要旨の公開のあり方でありますが、「信用秩序の維持に関する事項、国際金融に重大な影響を与える事項、私企業の秘密に関する事項等が審議されることから、公開に当たっては、その審議内容等に応じ、慎重な取扱いを要する場合があると考えられる。」というような指摘をいただいておりまして、私どもといたしましても慎重に検討していくべき問題であると考えております。  ただ、御指摘の点でございますけれども、やはり私ども日本銀行国民金融市場の一層の信認を得てまいりますためには、金融政策に限らず、業務内容についてもディスクロージャーを充実していくことが必要ではないかということであると考えます。その点につきましてはこれまでも努力をしてまいりましたつもりですが、今後とも民間金融機関のディスクロージャーの進みぐあい、海外中央銀行の実例なども参考にしながら、今の業務内容等の透明性が十分確保されるように引き続き努めてまいりたいと思います。
  45. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 日銀総裁の御答弁でそこまで言っていただいたので、さらに質問するつもりはありませんけれども、私も、法律に書いてないから何もしゃべらないんだよ、しゃべらなくてもいいんだよというんじゃなくて、やはり日本銀行というのは銀行の中の銀行ですから、それの運営について国民関心を持ち、ディスクロージャーという見地からも、今おっしゃるように新しい議長が選任をされたならば、議長が適宜御判断なさっておやりになっていただくということは重要なことではないかというぐあいに思っております。  さて、話題を少し変えますが、最近の第一勧銀の問題について、日銀考査がどうだったのかねというようなことが話題になりました。従来、日銀考査というのは日銀と銀行との間の私的契約によって考査が行われていたというぐあいに思いますが、今回、第四十四条で日銀考査が法律上定められたわけですね。この一項が加わることによってどういうぐあいに従来と変わってくるんでしょうか、御説明を願えませんか。
  46. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 日本銀行の行っております考査は、信用秩序の維持に資するという中央銀行目的達成のためのものでございます。ただ、日銀考査は行政権限の行使として行われるものではございませんために、これまでもあくまで相手先金融機関との間の任意の契約に基づいて行うことが適当であると考えられたものでございます。  しかしながら、この考査というものは、各金融機関と直接取引をしております日本銀行としましては、取引の相手方の内容を十分に承知をしている必要がございますし、また信用秩序の安定保持を一つ目的としております中央銀行といたしましては、そういう意味での金融システムの上でのリスクの所在とかリスクの排除の方法とかいうものにつきまして、それぞれの個別の金融機関の内部の調査をさせていただくことで把握をするということは重要なことであると思っております。  そういう点で、今回、考査に関します規定が法律上設けられますことで、それが日本銀行の本来の業務内容の一つであるということが明確化されるわけでありまして、考査の基本的性格が変わるというものではございませんけれども、私どもとしましては従来、従前以上に自信を持ちまして各金融機関との契約を進め考査を実行してまいれると思っております。
  47. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 確かに、今まで法律上規定がなかったので、この考査は一体何のためにあるのとか自信がなかった。自信はあったんだと思いますけれども、何となくうやむやな性格でやっておられたというぐあいに思いますね。それで、余分な仕事をやっているんじゃないのとか、いろいろな議論をされましたけれども、ここで日本銀行の任務の一つとして考査が法定されたということはそれなりに法律上の立場としてははっきりした立場になってきたというぐあいに私は思います。  そこで、これはもう一遍お伺いしますが、法律制定されたからといって何か変わるんですか変わらないんですか、どちらでしょうか。
  48. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 考査の性格あるいはやり方がこのことで変わるというわけではございません。ただ、法律制定されている正規の業務でございますから、その内容改善等につきましては私どもも従来以上に努力をしてまいりたいと思います。
  49. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 変わらないというぐあいに仰せになりましたが、これは主として何を目的とした考査でございましょうか、もう一度お伺いします。
  50. 松下康雄

    参考人松下康雄君) これは私どもが民間金融機関に対しまして資金供与を行う役割を持っておりますので、その相手先の金融機関の経営実態の把握を行うということが一つございます。もう一つは、決済システムの円滑かつ安定的な運用の確保を通じまして信用秩序の維持に資するという中央銀行役割を果たすために、もろもろのリスクの所在、内容等について理解を深めておくという意味があると思います。
  51. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 本件については、大蔵省検査と日銀考査とが一体どういうぐあいに違い、どういうような役割分担をし、重複をしているのかしていないのか等々について議論がされていますが、大蔵省はどのような御認識でございますか。
  52. 中川隆進

    政府委員(中川隆進君) お答えを申し上げます。  大蔵省検査と日銀考査の違いについてどういう認識をしているかという御指摘でございます。大蔵省の行っております民間金融機関に対します検査は、銀行法等のそれぞれの業法に基づいて免許を受けた金融機関等に対しましてやっているものでございますが、信用秩序の維持、預金者の保護などを図りますために、金融機関等を個々に監督、是正をするという立場から、金融機関の経営の健全性あるいは業務の適切性、あるいは通達、法令等の遵守状況などにつきまして幅広い観点から行っているというものでございます。  また、日銀の考査につきましては、今日銀から御説明があったとおりでございますが、信用秩序の維持等、目的といいましょうか、その考査、検査の内容で共通する部分はもちろんありますけれども、この制度趣旨目的、あるいは検査、考査の対象も違うわけでございます。そういうことで、制度上重複するものではないというふうに理解をしております。  いずれにいたしましても、考査、検査ともに連携をとりながら、時期等の調整をしながら、あるいは情報の交換をしながら現在やっているという、そういう状況でございます。
  53. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 第一勧銀の日銀考査について、先般総裁から御説明がありました。あれを聞いていて私はふと思うのですけれども日銀考査というのは相手銀行の経営実態を把握し、そしてリスクを把握するんだと、こういうぐあいに御説明があったわけですけれども、第一勧銀の小池事件、小甚ビルですか、に関連して、あれは日銀考査でわかるべきものであったのかどうだったのかということについて若干の疑問を持っているわけです。日銀考査というのは強制権はございません。その上に、総会屋とのつながりというのは実のことを言うと刑法上の問題で、今申された考査の趣旨と余り合わないわけで、一生懸命これからやりますというようなお話はございますけれども、さて限界を超えた対象ではなかったのかなと。  むしろ、大蔵省検査は当然のことながら検査の強制権限もあり、そしてまた調査回避的行為があったわけですから、当然検査の対象として十分ぎりぎりとやり罰則もかける可能性があると、罰金もかける可能性があるということでありますから、そういうものかというぐあいに思うんですけれども日銀考査の場合に、もし小甚ビルが総会屋との関連において貸されたものであるということを認識されたら、日本銀行はどうなさるんですかね。ちょっと総裁にお伺いしたいと思います。
  54. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私どもの考査は、ただいまも御指摘がございましたように、法令の規定に基づきます行政権の発動としての検査とは異なっておりますので、仮に非違を発見いたしましたときに、その対応につきましても法規に基づいて与えられている権限というものはないわけでございます。  したがいまして、これが例えばリスクを隠ぺいしているというような形の非違でありましたならば、それは当然私どもとしましてもリスクの所在の把握ということから内容の是正についての指導を行っていくということであると思いますが、この件のように、仮に法令違反ということでありますと、私どもとしましては、それを直接にこれに対する措置を講じるといいますよりは、やはり法令違反の件につきましての処分権限をお持ちの、この場合で申せば大蔵省であると思いますけれども、こういったところに御連絡をいたすということであると思います。
  55. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 今、御連絡をいたすというぐあいに総裁言われましたけれども、実は四十四条第三項には、大蔵省から要請があったときには資料を大蔵大臣に出すよという項目しか実はないんですね。進んで日銀がやれとは、法令違反のときはやれと書いてないんですが、それは社会的常識のもとで、当然そういう法令違反的なものを把握すれば日銀はそのことについて連絡をするというのは適切であるというぐあいに私も思います。  そこで、いずれにしても、日銀考査と大蔵省検査は実態上相当ダブるところがあるわけですよ、今リスクの問題に御言及になりましたけれどもね。銀行協会の方からは、銀行側の方からは重複はなるべくやめてちょうだいよと。実は、これは四十四条第二項に、取引先金融機関等の事務負担に配慮しろというぐあいに書いてあるわけですね。どういうぐあいに配慮なさるつもりですか。私は、重複を避けておやりになるということは必要最低条件のように思いますが、いかがでしょうか。
  56. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 一つには、先ほど大蔵省からお話がありましたように、例えば日程の調整等を行いまして、現実に考査、検査を受ける負担が、ある時期的に過重にならないように配慮するというようなことがあるかと思います。いま一つは、今御指摘がありましたように、調査の内容につきまして重複というもの、不必要な重複は排除すべきものという考え方で、私どもとしては内容の見直しを図っていくということでございます。
  57. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 実際上、大蔵省検査は二年に一遍とか三年に一遍とか四年に一遍ぐらいでしょう。それから、日銀考査の方もやっぱりそれくらいの周期でやっておられるので、時期的な重複を避けられることは当然やっていただかなきゃいかぬというぐあいに思いますけれども、検査の方法も似たり寄ったりでして、何か同じような検査を二つの機関が交互にやっているというような印象が非常に強いものですから、今後とも運用上、事務負担が軽減していただけるように、よく大蔵省と御検討を願いたいということを申し上げておきたいと思います。時間がだんだん終わりに近づいてきましたので、それぐらいにしておきたいと思います。  ちょっと総裁に嫌みなことを申し上げて大変失礼ですけれども、今度日本銀行法改正になるに際してやっぱりリストラは相当必要なんじゃないでしょうか。日本銀行については、今までも人件費の話だとか、あるいは定員の話だとかいろいろ出ていますね。それらについては、いろんな方がお聞きになっているので私はここでお聞きするつもりはありませんが、御覚悟はいかがですか。
  58. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 確かに日本銀行一つの経営体でございまして、効率的な業務運営が求められているということは当然のことであります。また、民間の営利企業と違いまして、競争によって、競争を通じてリストラを図らなければならないという事情は中央銀行にはございませんが、しかし、それだけに中央銀行自身が自分の努力によって効率的な中央銀行業務運営を図っていくということは非常に重要なことだと思いますし、それは現在では、まさにほかの主要国中央銀行もいろいろそういうお立場からの努力をそれぞれ行い始めているというのが現状でございます。  今後、私どもも、法律改正ができまして独立性についての従来以上の実質を与えていただき、その裏腹として説明責任が加重されるという状態になりますならば、それによって生ずる私どもの重い責任というものを踏まえて、できるだけ効率的な業務内容、それは機構、人員、その他経費、万般についてでございますけれども、それを実現していきますように格段の努力をしてまいりたいと思います。
  59. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 当然のことながら、業務運営については日銀政策委員会がある程度方向をお示しになる、それに従っていろいろ公表の義務もくっついていますからそういうことになるんだというぐあいに思います。  一つだけ、日本銀行の納付金に影響してくるわけですよね。日本銀行の納付金というのは、日本銀行は発行する権利を持っているのでそれの反映なんだというぐあいによく言われていますけれども日本銀行納付金についても、若干従来懇意的だったんではないかというような意見が出ています、少数の人かもしれませんけれども。  日本銀行の納付金を、過去の例をずっと調べてみますと、あるときには二兆円の納付金をやる、あるときには千億円だと、非常にばらつきが多いんですよね。これは、納付金について日本銀行はどのように対処されているんでしょうか。
  60. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 納付金の計算につきましては、現行の日銀法の三十九条第四項等に規定がございまして、その計算方式が定められているわけでございます。当該事業年度の収入から経費等を控除して得られる純益金から、さらに償却準備金等を控除して剰余金を算出いたしまして、これから法定積立金、別途積立金、配当金を控除した残額を全額国庫に納付するということでございますので、この点で懇意的な措置が可能な仕組みになっておりません。ただ、納付金の金額は現実に年によって非常に変動が大きゅうございます。その原因は、日本銀行の収益自体が長短金利の変動とか為替相場の変動によりまして、非常に変動が大きい構造になっていることをそのまま反映しているわけでございます。  例えば昨年中について見ますと、長期金利低下傾向から債券価格の上昇で債券取引関係の収益が増加をする、あるいは円安の傾向から対外関係の資産の評価額も非常に増加をするというような点から、日本銀行の収益は非常に増加をしたわけでございますけれども、それは金利なり為替レートが逆に動きますというと、非常にまた急速に減少するものでございます。そういう点がございますことも御理解をいただきたいと思います。
  61. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 日本銀行納付金について、しっかりした計算がなされていたように私も感じております。例えて言えば、平成八年度の日銀納付金というのは予算では四千七百四十億円だったのが実際の納付額が一兆七百四十六億円になるというように、松下総裁が言われるようにそのときそのときの経済情勢によって動く性質のものである。銀行の中の銀行ですから、それからいろんな金利の変動が集約化されてなされているんだということを認識いたしますが、どうも日本銀行の決算というのはだれもわからないんですね。よく見えない。どうもディスクロージャーができていないんだというぐあいに思いますね。  私は、日本銀行の納付金について一体どういうふうになっておるんだろうかと思って説明してくれと言うと、こういう事業概況というのが、これ半年決算でございますから、半年ごとに出ているんですね。これを見てもよくわからないんですよ。どうも東京証券市場第一部に出ている株式会社の概況説明とはまるきり違いますよね、これ。こんなことで国民説明したんだとは思わないでください。もっとまじめな説明をやってもらいたいというぐあいに思います。これ以外にも年次報告書は出していますよと。年次報告書はこれよりもっと少ない量しかございませんよ。要するに、これだけでは国民に国庫納付金あるいは発行券の反映によるところの利益を国庫に納めているんだということを十分に御説明になっているというぐあいに私にはどうも思えないんです。  詳しい論議は後日に譲ることとして、いずれにしても国庫納付金あるいは決算についてのディスクロージャー、そのあり方、説明の仕方等々をきちっと内部的にも御検討になり、あるいは大蔵省の方も御監督になっていただいて、国民に納得のいくような説明をしていただきたいと思いますが、銀行局長、いかがですか。
  62. 山口公生

    政府委員山口公生君) 日本銀行の経理基準等につきましても、他の金融機関でも全く同じことでございますけれども、これから透明性観点からいろいろ高度化していく必要があると思います。その点、金融制度調査会の答申におきましても、「日本銀行の財務の透明性を高める観点から、経理基準の明確化を図っていくことが必要である。」というふうに御指摘をいただいておりますので、今委員の御指摘も踏まえまして、その明確化を図ってまいりたいというふうに考えております。
  63. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 きょうは大蔵大臣のお出かけをいただいておりますので、日本銀行法そのものではございませんけれども、最近の金融政策の中で、日産生命の破綻事件というのがありますが、それについてお伺いを申し上げたいというぐあいに思います。  日産生命の破綻の原因となったのは、新聞で見ますとバブルの最中に高利回りの生命保険を大量に販売したんだというぐあいに言われておりますけれども、実際の破綻の原因はどうだったんでしょうか、御説明ください。
  64. 福田誠

    政府委員(福田誠君) お答えいたします。  日産生命の破綻の原因でございますが、同社は昭和六十二年から平成二年ごろにかけまして高予定利率、例えば五・五%中心でございますが、その個人年金保険を他社と比較して非常に大量に販売いたしまして、短期間に業容を拡大いたしました結果、バブル崩壊後の市場金利低下等の影響を受けまして、運用利回りと予定利率との間に大幅な逆ざやが生じたことが一つでございます。  さらに、平成八年度に至りまして、同業他社はリスク資産を極力縮小する方向にございましたが、同社はそれに反しまして積極的に株式投資等を行いまして、それが期末の株価の低下と相まって大幅な含み損が発生し、事業継続を断念せざるを得なくなったということでございます。そういう意味では、今般の破綻は当社のかなり特異な要因によるものと考えております。
  65. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 私も、日産生命の資産が平成元年には三千億だった、しかし現在は二兆円になっている。すごい急成長をしているというぐあいに伺っております。  それで、その原因が、後でまたちょっとお伺いしますけれども、個人年金を銀行ローンと組んで売りまくったと。その上に、これはほかの社もないわけじゃないでしょうけれども、株式相場に失敗しちゃったというようなことが重なって、二千億円を上回る欠損金となって今出ているというぐあいに承っているわけです。  今お伺いしますと、実は五・五%の予定金利の時代にほかの社も五・五%で売っているわけですよ。日産生命だけが大量に売ったということですか。したがって、ほかの社は大きな資産の中で五・五%のような高利回りのものが多少あっても全体としては生命保険会社には余り関係がない、関係ないといったらあれですが、影響は少ないと、こういう御説明になるんでしょうか。
  66. 福田誠

    政府委員(福田誠君) ほぼ御指摘のとおりでございまして、確かにそのころは五・五%という利回りが特にそのときの金利水準からいって異常だったわけではございませんが、ただ、このような高利回り商品をどの程度売るか、それが会社の将来の損益にどの程度影響があるのか、将来の金利をどのように見通すか等々についてはやはり他社と違っておりまして、他社におきましてもこのような商品を販売しておりましたが、そのウエートははるかに小さかったということでございます。  そういうことで、他の生保会社につきましても昨今大変厳しい経営環境にございますが、人員や事業費の削減あるいは基金の増強とか営業面の強化など種々対応を行っておりまして、そのような経営改善の効果があらわれているということでございます。
  67. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 日産生命の特異性からして、他の生命保険会社に同じような問題が今直ちに生じるというぐあいにはないなということは理解をさせていただきました。  そこで、どれくらいの損害が生じているのか。新聞によれば四千億とも一二千億とも言われており、二千億はどうも超えるんじゃないかと言われているようでございます。実は保険業法の審議をこの大蔵委員会でもやっていただきましたが、そのときにも契約者保護基金というものについて多くの議論が行われたように思います。これは政府が保証するわけじゃなくて、民間生保団体が資金を出し合って契約者保険に資するということであるわけですが、これの上限は二千億というぐあいに定めているように聞いていますけれども、二千億以上の損害がもしあったら、これは一体どうするんですか。
  68. 福田誠

    政府委員(福田誠君) 御指摘のように、現在契約者保護基金の資金援助の上限が二千億円とされております。この二千億円でございますが、これは保険契約者保護基金が定めております業務規程の一項目として規定されているものでございます。  当該業務規程におきまして「資金援助の額の累計額は二千億円を超えないものとする。ただし、資金援助の額の累計が当該額に達し、又は超える場合、理事会は、その時点での経済金融環境、利用可能な資金の状況等を勘案し、本条に定める額の変更を行うことができることとする」という規定でございまして、現状の二千億円の限度額自体につきましては理事会の決議があれば変更することが可能でございます。仕組みとしてはそうなっております。  そして、御指摘のように二千億を超すのではないかという点でございますが、破綻時に当局として日産生命から報告を受けたところでは、二千億円前後の実質債務超過となっていたわけでございまして、現在大蔵省検査が実施されている中で、保険管理人が処理スキームの策定を行っているところでございます。  現段階で二千億円でございますが、先ほど申し上げました規定がございますので、仮に支援必要額が二千億円を超えるような場合には契約者保護基金の支援限度額の引き上げを要請することもあり得ると考えておりますが、いずれにしても当局といたしましては可能な限り契約者の保護が図られるように努力してまいりたいと存じます。
  69. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 これの処理は現在のところ、管財人みたいな形で生保協会が引き受けていると。それで今処理に当たっているけれども、新会社を設立しようと思ってもどこの会社も引き受けないということで、宙に浮かんでいるような感じに今なっているわけですね。  さらにその上に、二千億という金額の上に、もう一つぐあいが悪いことは、五・五%という高金利の商品が大量にあって、二兆円の半分とも言われていますが、そのような大量の五・五%の金融資産を引き継いで、これ実はなかなか変えられないわけですね。契約では五・五%、未来永劫にとは言わないけれども、保険契約が切れるまでの間は五・五%で回しますという契約をしちゃっているわけですから、もう大変なわけですね。  現在の予定利率は、各生命保険会社とも二・七五%ですか、そうすると開差が三%弱あると、そのような開差は運用利回りで埋められないと。これも新聞で拝見したところでは、これを引き継ぐと五・五%の運用利回りができないので、大体三百億ぐらいずつは黙っていても欠損が生ずるというんですね、五・五%で運営するということになると。五・五%で運営なんかできないわけですから、現在の金融情勢では。  そうなってくると、五・五%の契約をそのまま引き継ぐというのは無理なんじゃないですか。契約を改定するとか何か特別の措置をして、契約の条件を変更しなきゃいけないんじゃないですか。今手元にありませんけれども、契約変更ができるという条項がたしか保険業法にあったような気がしますけれども、いかがでしょうか。
  70. 福田誠

    政府委員(福田誠君) 御指摘のとおり、新保険業法の二百四十一条にそのような規定がございます。現在、大蔵省業務停止命令と業務、財産の管理命令を行っておりますが、これは保険業法の二百四十一条に基づくものでございますが、そのような命令が行われている場合でかつ当該保険会社の保険契約を全部移転する場合には、二百五十条という規定に基づきまして、保険契約の契約条項の変更ができるということになっております。  具体的な条件変更を行うかどうか、これはケース・バイ・ケースでございますが、御指摘のように、予定利率の引き下げもこのような場合に法令上排除されているわけではございません。
  71. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 日産生命保険は、名前が示すとおり日産・日立グループ、どっちが先なのかよくわかりませんけれども、日立・日産グループの一員であるというぐあいに言われていました。現実の経営は、日産、日立がどのようにかかわっていたんですか。役員が相当数出ているというぐあいに聞いておりますが、いかがでしょうか。
  72. 福田誠

    政府委員(福田誠君) お答えいたします。  まず役員でございますが、日産生命はグループ企業の日立製作所、日産自動車等からは経緯的に社外取締役を受け入れてきておりまして、現在ですと、全役員十八名中四名の取締役と三名の監査役が日立グループ企業の出身でございます。  それから、営業面ではもちろんこのグループ企業の顧客が大きなウエートを占めておりますほか、日産生命の営業上の資料には、日立・日産グループの会社であることが明記されておりますので、いわば日産生命の職員とか募集人にとって日産生命が日立・日産グループ企業の一員であるとの認識はあったものと考えられます。ただ、個別の保険の販売におきましてその点を強調していたかどうか、その辺の具体的な事実関係についてはよく承知はしておりません。
  73. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 今、言われたように、これは相互保険会社ですからね、いわゆる株主というのはないわけでして、そういう意味の資本系列はないように思いますけれども、いずれにしても日立、日産が日産生命の経営にある程度関与をしていたということ、それから販売に際して日産生命は日産・日立グループの一員であるということを表看板にして販売をされていたということ等々から考えると、どうも処理スキームをこれからどういうぐあいにお立てになるか、まだ御検討なさっている最中だというぐあいに思いますけれども、何らかの役割をやはりそのグループが果たすべき立場にあるのではないかなというぐあいに思いますが、いかがでしょうか。
  74. 福田誠

    政府委員(福田誠君) 今、御指摘のように、日産生命の処理スキームにつきましては、現在保険管理人に対しまして契約移転計画の策定を命じたところでございまして、その計画策定の過程で保険管理人とか日産生命が日立・日産グループ各社に対して各種の要請を行っているということは当局の方でも承知いたしております。  この日立・日産グループにつきましては、確かに株主としての通常のような責任はあるとは言いがたい面がございますが、他方で、先ほど申し上げたような人的な関係あるいは営業上の関係があることも否定できないわけでございますので、いずれにしましても保険管理人の方の判断ではございますが、保険契約の存続を図るために、関係者の理解と支援を得ながら、スキームができるだけよいものになるように当局としても支援したいと思っております。
  75. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 その点はこれからどういうぐあいにやるのか、日産生命の処理の仕方が社会的あるいは金融界にも大きな影響を与えると思いますので、十分検討していただきたいというぐあいに思います。  ただ、気になるのは日産生命が五・五%の個人年金をばっと売っちゃったと。これはただ売ったんじゃないんですね。ほかの保険会社は毎年年払いしているわけです。ところが、ことしになったらもう二・七五%でしか保険金を運用しませんよというので、二・七五%の保険金に変えているわけですね、年払いだと。ところが、日産生命がこのように傷が大きくなったのは、そうじゃなくて一時払いをしたからなんです。全期間の全契約を全部一時払いをした。それがどうしてできるかというと、銀行ローンなんですよ。銀行ローンをやらせておいて、そして一時払いをしたんです。それで急成長を遂げたというぐあいに聞いているんですね。  これは実は、ちょっと横道にそれるかもしれませんけれども、銀行窓販の問題が今保険業についてございますね。これとも十分関係があるのかなというようなことを考えています。要するに、銀行の影響力というものは保険業界に対しても大きな力を持っているわけですね。今銀行窓販、窓販については投信窓販、生保窓販、それから損保窓販というようないろんな議論がなされていますけれども、ぜひ慎重に御検討を願いたいというぐあいに思っています。  そこで、最後に大蔵大臣に、日産生命の処理について銀行局が一生懸命やっているようでございますけれども、ぜひこれを順調に処理スキームがうまく運営されるように頑張っていただきたいと思いますが、御所見をお願いします。
  76. 三塚博

    国務大臣三塚博君) できるだけの努力をしてまいりたいと思います。
  77. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 質問を終わります。
  78. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十分休憩      —————・—————    午後一時一分開会
  79. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、金田勝年君が委員辞任され、その補欠として依田智治君が選任されました。     —————————————
  80. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 休憩前に引き続き、日本銀行法案議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  81. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 平成会の岩瀬でございます。  委員の諸先生方が多方面から深められておりますので、できるだけダブらないような形でやらさせていただきたいと存じます。  初めに、金融関係が連日新聞等をにぎわしておりますので、この問題から二、三入らせていただきたいと存じます。楢崎先生が先ほどやっておられましたけれども、日産生命保険について、先生が多方面からやられましたので、その中の後の点について、少々お聞きしたいと思っておるところでございます。  一つは、この処理について、日立、日産、系列会社というふうなお話が先ほどありましたけれども、支援の話がなされておりましたけれども、これについてのその後の経過、新聞等では拒否された、こういうような話になっておるようでございますけれども、その後の経過についてお聞きになっていれば、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  82. 福田誠

    政府委員(福田誠君) お答えいたします。  日産生命の処理スキームにつきましては、たびたび申し上げているように、現在、保険管理人たる生命保険協会に契約移転計画の策定を命じているところでございます。現在、生命保険協会内においては、保護基金の発動を前提として救済スキームの検討を行っております。先ほど申し上げたように、日産生命は日立・日産グループに属していることは事実でございまして、この日立・日産グループ各社に対しまして保険管理人が折衝しているというふうに聞いております。  現在、このように関係者間で日々協議、検討中の段階でございますので、処理スキームの方向性を申し上げることは差し控えさせていただきますけれども、いずれにしましても早期の処理スキームが策定されるよう私ども努力してまいりたいと存じております。
  83. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 うまい方向で行くようにお願いしたいと思います。  その場合に、保険契約者、先ほどの部長のお話では減額の場合も契約上あるというようなことをちょっと申されておられたわけですけれども、保険契約者の契約したものについてはどういうような保護規定になっておるのか。また、一部では掛け続けなければ、保険のことですから当然ですけれども、無効になるというふうなことも言われておるわけですが、こういう異常な形の中でそういう形になっていくのか。保険契約を結んだ方の立場について、御説明をいただければと思います。
  84. 福田誠

    政府委員(福田誠君) 現在、処理スキームの策定中でございまして、問題は債務超過額、約二千億円と言われているその債務超過額についての取り扱い、そして引き継ぐべき契約が、今御指摘のように、いわば含み損を抱えておりますので、これをどのように処理していくかという、その辺が最大のポイントかと存じます。私ども行政としては、やはり日産生命の契約者にできるだけ被害が少ないように、できるだけ保護に重点を置いたスキームづくりを要請してまいりたいと存じております。  それから、やはり契約者間の公平性を図りながら保険契約者保護を図るためには、保険業法で定められた保険契約の全部移転、全部を移転することが重要かと思っております。したがいまして、今日産生命としては全部移転を目指す観点からしますと、保険料の払い込みを継続していただくよう契約者にお願いしているというふうに聞いております。  これは保険契約存続のためには不可欠な措置でございまして、保険料払い込みを続けていただければ契約は継続するとともに、現に保険事故が発生した場合には保険金が支払われるということになるわけでございます。他方、保険料の払い込みがなされなくなりますと、収支上保険金の支払いといった保障機能の発揮は困難とならざるを得ないのではないかというふうに考えております。
  85. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 そうしますと、保険契約者もある程度これは覚悟しなきゃならないというような今のお話かと思います。  話をちょっと変えて、日産生命についてもいろいろな検査が入っておったと思いますけれども、新聞等で見ますと、大蔵検査がなされて債務超過になっておったと、こういうようなことの記事が載っておったわけでございますけれども、これはいつの検査でそういうような時点のとらえ方、またそれはどのくらいの金額等でそういうことが、検査がなされたのか、そういう点についてお話しいただきたいと思います。
  86. 福田誠

    政府委員(福田誠君) お尋ねでございますが、私どもにおきましては、平成七年九月の検査を実施した段階で実質的な債務超過状態にあるという事実を把握したところでございます。その規模あるいは検査結果につきましては差し控えさせていただきますが、その時点で大幅な収支の悪化状態を把握したということでございます。
  87. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 それじゃ、もう一点だけお聞きしますけれども、収支が悪化したというようなことをつかんだ場合、通常の場合はどういう指導をとられるのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  88. 福田誠

    政府委員(福田誠君) 通常の場合も日産生命の場合も共通でございますが、当該生命保険会社の経営がもし不調であるという場合には、その原因をよく調べ、そしてそれに基づいて経営改善計画を実施していただくということが最も重要であると。また、日産生命の場合も、特に日産生命の経営が悪化した理由が一時期における高利回り商品の乱売あるいは経営改善計画の甘さにございましたので、特に平成七年九月の検査後におきましては、グループ企業からの基金の拠出とか営業支援、そして保険販売代理店の有効活用、さらに人員削減の強化、経費の削減を柱とする経営改善計画を策定方指導したわけでございます。
  89. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 今そういう途中のことでございますので、できるだけ保険契約者の資産が守られるようにひとつ御努力いただきたいと思っているわけです。  それから次に、第一勧銀事件。これまたいろいろな先生方がお話しになられておりますけれども、総体的なことは別にしまして大蔵検査、これは恐らく隠ぺい工作が行われたんではないか、こういうようなことが報道されておるわけでございますけれども、どういう点でそういうことが言えるのか、その点についてお願いしたいと思います。
  90. 中川隆進

    政府委員(中川隆進君) お答え申し上げます。  第一勧銀に対します検査の状況でございます。第一勧銀に対します大蔵省の検査は、直近では平成六年十月に実施をいたしているところでございます。その前は平成二年九月に実施をいたしております。  個別の金融機関に対します検査の内容につきましては、従来から詳細の御答弁は差し控えさせていただいておるところでございますし、また今の御質問は個別の取引についての検査の内容でございますので、かつまた御質問の点がただいままさに捜査当局による捜査の対象になっている点でございますので、詳細のコメントは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、いずれにいたしましても、この二回の検査は、いわゆる私どもが申し上げます総合検査ということでございまして、当該金融機関の経営内容全体、資産内容を初め、経営の状況すべてについて検査をするという総合検査でございます。特に資産内容というのは、昨今の状況でございますからまず問題になるわけでございますけれども、こうした大きな金融機関、特に上位都市銀行の場合におきましては当該銀行自身が発表しておりますけれども、百二十万件といったような非常に大変な件数の融資案件がございまして、その中で抽出をして検査するわけでございますが、今御指摘の点につきまして、検査官は一定の基準を示しまして抽出をいたします。  抽出だけでも、大きな銀行でございますから万の単位になるわけでございますが、一件一件見るわけでございますけれども、今の御質問の点に関しまして申し上げますと、第一勧銀みずからが頭取の記者会見、あるいは先日の参考人質疑で答弁されているわけでございますが、当局の過去二回の検査に際しまして、本件債務者に関連して、検査官に対し抽出・分類を回避した疑念があり、すなわち検査官に対しまして虚偽の報告をした疑念があり、現在調査中であるというふうに説明されているわけでございます。いずれにいたしましても、現在事実関係について調査を継続しているところでございます。
  91. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 事実そのとおりだろうと思うわけでございますけれども、額がかなり大きいわけですね。その場合、不良債権として大蔵省に認定していただかないと償却が進まないんじゃないかと思うんですけれども、時間があればまた後でお願いしたいと思いますが、有税償却、無税償却のいろんな点もあるんでしょうけれども、そういう償却、大きなものについての償却は銀行だけではできないんじゃないかということも聞いているんです。  また、今コンピューター時代であるので、入れたものが大体出てきちゃうんじゃないかと思うんです。それを削除してお見せしたというようなことなんだろうと思うんですけれども、それにしても最後は当局の方の認定をしていただかないとそれはできないんじゃないか、こういうふうに思うんですけれども、その点はどうなんでしょうか。
  92. 中川隆進

    政府委員(中川隆進君) 個別の事案についての償却の御質問でございます。  なかなか検査の立場からは申し上げるのに限界がございますけれども、今問題になっている件につきましては、銀行は有税の償却をしたというふうに私どもは承知をしておるわけでございますが、有税の償却引き当てにつきましては、銀行は企業会計原則等にのっとりまして銀行の自主的な判断によって行うということになっております。ただし、有税償却引き当てを行う場合におきましては、あらかじめ当局に提出をするということにはなっております。これは、期末にそういう、どの程度の償却が行われるのかというのは、行政といたしましてもあるいは検査部門といたしましてもその実態を把握しておく、次回の検査等の参考になるということでございまして、そういう報告は求めているということはございますけれども、いずれにいたしましても償却引き当てをどうするか、有税の場合には当該銀行が自主的な判断企業会計原則にのっとって行うというのが原則でございます。
  93. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 そうしますと、これは正規の検査に対してそういうことがなされたわけでございますので、法に触れるというようなことになってくるんだろうと思うんですけれども、あとの対応を大蔵省としてはどう考えられておられるのか。まだ今捜査中の段階かもしれませんけれども、その点は一般的にどういうことが考えられるのか、お伺いしたいと思います。
  94. 山口公生

    政府委員山口公生君) お答え申し上げます。  第一勧業銀行の今回の問題につきましては、公共性の高い免許業種である銀行が不適切な業務運営を行い、預金者等の信頼を著しく損ねたことは極めて残念であり、また大変遺憾なことだというふうに思います。既に、同行に対しまして引き続き事実関係について徹底的な調査を進めるように指示をしたところでございます。これは法令に基づく命令ではございませんが、まずは事実関係の解明というのが最初にやるべき一番大事な点かと思ってそういった指示を出しております。  大蔵省としましては、まずは本件についてのその事実関係の解明をし、またその報告を受け、捜査当局による捜査の状況をも踏まえながら法令による厳正な対処ということを考えてまいりたい。そこには例えば法二十六条による業務改善命令とか、いろんな諸措置法律に明定されておりますので、それに基づいた措置をとることになる可能性があるということでございます。
  95. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 大蔵大臣も総点検を指示したというようなことが言われておりますので、厳正にひとつお願い申し上げたいと存じます。  またその一方、三月期を超えましたので、銀行の決算状況、銀行にかかわらず各界の決算状況が新聞をにぎわしておりますけれども、銀行の決算状況は今どのようになっておりましょうか。わかる範囲で、まとめられている範囲で結構でございますけれども、まとめたものをちょっとお話しいただければと思うわけでございます。
  96. 山口公生

    政府委員山口公生君) ただいま私どもの手元には主要行についての決算のまとめのようなものは集まってきておりまして、それによりますと、主要行といいますと都銀、長信銀、信託銀行というふうに、いわゆる二十行というベースで申し上げたいと思うわけでございますが、業務純益が八年度は七年度に比べて若干落ちておりますけれども、四兆五千の確保ができております。経常利益がマイナスの千六百十七というふうになっておりまして、当期利益がマイナスの千四百六十四億円となっております。これは速報でございます。  そこで、大変私ども関心を持っております不良債権の状況について、この機会にお話を申し上げたいと思います。この二十行ベースで不良債権の額、破綻先、延滞、金利減免等というものの合計が、ちょうど一年前の八年の三月期で二十一兆八千六百八十億円ございました。今回九年の三月期では、速報でございますが、十六兆四千四百十億円でございます。  今、御紹介いたしましたように、不良債権の総額が約五兆円ほど減ってきているということは言えるわけでございます。また、かなりの引き当てというものも進んできておりますので、この二十行を見る限りにおいては、個々の銀行いろんな事情はあるでしょうけれども、全体として見ますとかなり不良債権問題の処理が進んできたなという印象を持っておる次第でございます。
  97. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 五兆円近くだろうと思うんですけれども、減ってきておると、順調な償却状況なんだろうというふうに思うわけでございます。これは、今主要二十行なんですけれども、地方銀行または信用金庫等もどういう傾向にあるのかどうか。これは、数字がないでしょうから今までの判断で結構ですけれども、一緒にお願いしたいと思います。
  98. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今、二十行だけについてデータがございましたので御紹介させていただきましたが、地方銀行あるいは信用金庫、信用組合等、それぞれ不良債権を減らす努力を一生懸命やっておりますので、恐らくはいい数字になるのではないかと期待しておりますけれども、ちょっと数字が集計されるにはまだ間がありますので、明らかになった時点でまた御紹介いたしたいと思います。  ただ、全体の問題と個々の銀行あるいは個々の信金、信組等の事情とはちょっと違うということが指摘されなければならない問題でございまして、どうしても全体がある程度よくなっていても個々の銀行によってはまだまだ重い荷物をしょって歩かなきゃいけないというところが幾つかある可能性もまだ残っているというふうに感じておる次第でございます。
  99. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 私も、なかなか厳しいよということを聞いたところもありましたので、今ちょっと質問させていただいたわけです。  主要二十行の範囲で結構でございますが、この範囲で有税償却と無税償却されている範囲というのはどのくらいの率でいっておりましょうか。額でも結構でございます。
  100. 山口公生

    政府委員山口公生君) 恐れ入りますが、まだそこまで細かく統計をとっておりませんので、明らかになりましたらまた御紹介させていただきたいと思います。
  101. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 それでもう一つお聞きしたいのは、例の小甚ビルディングの方へ貸した融資分ですけれども、七十五億円ほどが残って、これがとれない、こういうふうなことになっておるわけでございますけれども、これの償却はなされておるんでしょうか。また、なされているとすればいつの時点でなされておるのか、その点はいかがでございましょうか。
  102. 中川隆進

    政府委員(中川隆進君) お答えを申し上げます。  今、委員御指摘の償却についてでございますけれども、個別の取引の償却に関することでございますけれども、私ども承知しておりますのは、両方とも有税で償却をされているというふうに承知をいたしております。
  103. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 ちょっと今聞き取れなかったんですけれども、有税償却でなされておるというようなことでございますか。これは何年度で償却されておるということでございましょうか。
  104. 中川隆進

    政府委員(中川隆進君) お答えを申し上げます。  重ねて申し上げますけれども恐縮でございますけれども、個別の取引の償却に関することでございますので、本来、検査の立場からお答えするのを差し控えさせていただきますけれども、既に銀行みずからが発表をいたしておりますので、そういう観点でお答えを申し上げたいと存じます。  第一勧業銀行が発表しておりますところでは、(株)小甚ビルディングにつきましては七年三月期に二十六億四千万円の有税償却をいたしております。小池嘉矩氏につきましては九年三月に四十四億三千九百万円の有税間接償却を、両方とも有税間接償却でございますが、実施をしているというふうに承知をいたしております。
  105. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 ありがとうございました。  それでは、もう一つ別の方へ入りたいと思います。大和銀行事件がありまして、これはもう決着を見ておるわけですけれども、この影響がすごく大きかったという点も一つあるわけでございますけれどもアメリカで三億四千万ドルの罰金を払って、それから米国からの撤退、こういう二点で司法取引がなされたというふうになっておりますけれども、このうち三億四千万ドルの罰金というのはいつ払っておるのか、つかんでおりましょうか。また、その罰金の税法上の取り扱いはどうなっておるのか、この点についてお願いいたします。
  106. 山口公生

    政府委員山口公生君) お答え申し上げます。  八年三月期に罰金三百五十八億円を払っております。
  107. 舩橋晴雄

    政府委員(船橋晴雄君) 個別の事項につきましては、従来から国税庁として答弁を差し控えさせていただいておりますけれども、一般論として外国政府から科せられた罰金について税法上どういう取り扱いになるかということについてお答えさせていただきたいと思います。  これについては法人税法の三十八条第二項に規定がございまして、罰金及び科料並びに過料については損金の額に算入されないことになっておりますが、これには外国政府等に支払う罰金等は含まれないものと解されております。
  108. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 ありがとうございました。  そうすると、言うならば罰金ですから一つの罪を認めたという形になるわけでございまして、それが損金に算入されないというのは、税法上のいろんな解釈の問題があるんだろうと思うんですけれども、今までもそういう例があったのか、これが初めてなのか。そういう解釈を今回初めてとっているのか、そこら辺はいかがなんですか。
  109. 舩橋晴雄

    政府委員(船橋晴雄君) お答え申し上げます。  法人税法三十八条第二項の規定は今読み上げさせていただいたとおりでございますけれども、なぜ罰金等については外国政府等に科せられたものは含まないと解釈されているのかということについてお答え申し上げたいと思います。  法人税法において罰金等が損金不算入とされておりますのは、同じ国の中で一方で法人の違法行、為に対して制裁を科し、他方でその罰金等の損金算入を認めるということになりますと、その制裁の効果が減殺されることになるという点にあるわけでございます。外国政府等に科せられた罰金等について見れば、罰金等を科する主体と法人税を課する主体とが違っておりますので、こういった矛盾がないのではないか。  それから、外国の法制が非常に区々さまざまであることから、罰金等といってもその性格が必ずしも我が国の罰金等と同じであるとは限らないというような考え方から、画一的に損金不算入とすることには問題なしとしないというような考え方で私ども対応させていただいております。
  110. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 確かに、外国のいろんな法制上の違いでその性格もいろいろ違うかと思います。  ただ、こういう大和銀行事件のような形のものまで無税扱いだということになりますと、それが国内のいろいろな金融関係にも大きな影響を与えて社会的な影響も与えておる。こういうものまで無税の方に算入されるということになると、なかなか国民感情では割り切れないものがあるわけなんでございますけれども、こういう点について、国税当局の方もそれでいいというふうには決してお考えになっておらないと思いますけれども、今後ともひとつ御検討のほどをお願いしておきたいと思います。
  111. 舩橋晴雄

    政府委員(船橋晴雄君) 外国で罰金等を科された場合についての損金算入の問題につきましては、政府税調の法人課税小委員会におきまして検討が行われております。  この報告におきまして、我が国企業が今後海外活動を非常に拡大していくということから、「当然ながらその国の法令を遵守することが強く求められる。こうした諸点にかんがみれば、外国に支払う罰金等についても損金の額に算入しないことを検討する必要がある」としつつも、各国の法体系はさまざまであることから、「外国の罰金等を損金不算入とする場合には、その範囲を慎重に検討する必要がある。」というような御議論、報告が行われたというふうに聞いております。
  112. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 金融関係は以上で終わらせていただいて、日銀法の改正の方へ入らせていただきたいと存じます。  先ほど楢崎委員から非常に基本的な事柄等についていろいろお話がありました。極力ダブる点は省きまして質問させていただきたいというふうに思います。一つは、この法律ができた、その改正先ほど来意義等言われておりましたけれども、二十一世紀に向けて我が国世界の中で十分伍していける、そういうシステムの中の中央銀行、こういうようなふうに考えていいんじゃないかと思うわけでございます。そういう中で世界中央銀行制度の潮流と申しますか、行われている法制上の問題、そういうものにどこまで整合性がとれているんだという視点から質問させていただければと思うわけでございます。  端的に言うと、グローバルスタンダード、こういうことで言われておるわけでございます。各国ともそれぞれ真剣な取り組みをしておるわけでございまして、英国ではこの間労働党政権が誕生して、イングランド銀行の独立性強化とか金融監督機関の一元化等検討するようになったというようなことで、私どもと合わせて、日本と同様に各国とも取り組んでいるなというような感じを深くするわけでございます。  そういう中で一、二点質問させていただきますと、一つ金融制度調査会、この中でいろんな審議が行われたわけでございますけれども、過般私ども新聞等を見ましたところ、どうも金融制度調査会をやっている部屋、委員大蔵省幹部の皆さんがそこで議論されておられるんだろうと思うんですけれども、そういう部屋の配置が載ったことがあるわけでございますが、委員大蔵省の担当部局の皆さんとが同一テーブルでいろんな議論をされておったようでございます。  審議会または調査会といいますと、委員の皆さんの自由な発言というのを我々期待しているわけなんですけれども、いろいろ検討されておられたというふうなことも承りましたですけれども、現在どういう形で調査会の運営がなされておるのか、自由な発言がなかなかできないんじゃないかというふうに私ども思うわけですが、いかがでございましょうか。
  113. 山口公生

    政府委員山口公生君) 金融制度調査会の日銀改正委員会におきましてもそうでございますし、ほかの金制の委員会あるいは他の審議会でもおおむねそうでございますけれども委員の先生方と一部の事務局、各省庁の者が同一のテーブルに着いているというのが普通でございます。  それは、いろいろな御質問が多数出るわけでございます。例えば日銀法等で非常に出ましたのは、外国では一体どうなっているんだと、あるいは三十五年から四十年にかけての日銀改正のときにいろいろ御議論がありました、それは一体どういう議論があったのかとか、そういった事実関係をまずは聞かれまして、それに対して私どもが正確にお伝えし、その議論に供するということがしばしばでございます。それから、時には事務局はどうなんだということも聞かれることもございます。  ただ、委員の先生方はそれに影響を受けられるということは全くございませんで、また委員の中にはいろいろな反対の意見の方々もどんどん入っていただいておりますし、そこには非常に活発な御議論が座長を中心議論が闘わされるというのが通常でございまして、今回日銀法の関係の小委員会におきましても、いろいろマスコミの方々は何か審議自体が非常にねじ曲げられたのではないかというような記事をお書きになっておりましたけれども、私どもはそういう感じはいたしませんし、また日本銀行のお立場を代表されるオブザーバーもきちっと入っていただきましたし、それから中央銀行研究会、これは総理のもとの勉強会の委員でいらっしゃいました先生にもきっちり入っていただきましたし、各界幅広く学者の先生あるいはマスコミの代表の方あるいは金融界の方に入っていただきまして、非常にそこにかなり詰めた議論をしていただいたというふうに思っておるわけでございます。
  114. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 それともう一つ、これは大蔵大臣にお伺いした方がよろしいのかもしれませんけれども中央銀行研究会が総理大臣からの要請に基づいて行われてこの報告がなされた、それをもとに金融制度調査会の検討がなされた、こういうことでございます。  この日銀法の改正は、大蔵省権限ともかなり密接なものがあるわけなんで、そういう意味では大蔵省所管の金融制度調査会にかけることが適当だったのかどうか。私が先ほど申し上げました配列のことや何かのこともその一つになっておるわけでございますけれども、どこか第三者機関の方でこの検討がなされた方がよかったのではないかという思いを強くするわけですけれども、決して金融制度調査会でまずかったということじゃございませんが、そこでの議論ということになると、非常に大蔵省とのつながりが深い、こういう調査会ではなかったかと思うわけで、そういう点で別の分野での検討が必要だったんじゃないかと思うわけですが、この点いかがでございましょうか。
  115. 山口公生

    政府委員山口公生君) 大臣の御答弁の前にちょっと事実関係中心にお話しさせていただきたいと思います。  まず、この日本銀行法改正問題が与党を中心にお話が出た後に、総理大臣の御発案で総理大臣のもとに中央銀行研究会というのがつくられました。それは事務局も内閣の審議室の方でお務めいただいたわけでございますが、そこでも内閣の方での人選をしていただきまして、ある意味では大蔵省との関係からいうと第三者的な存在である中央銀行研究会というのが大筋をおまとめいただいたわけでございます。それは与党の方のお考えを受けながら、またあるべき姿というのをそこでかなり綿密な、濃密な御議論をいただきましてお決めいただいたわけでございます。  その後、政府の提案でいくということが決められましたので、政府の提案となりますと所管が大蔵大臣ということになります。そうした場合に、金融制度調査会というものにかけなければならない。なぜかといいますと、金融制度の重要事項は金融制度調査会にかけなさいというふうに法律でなっておりますので、それは金融制度調査会という大蔵大臣の諮問機関にお諮りするという手続をとらさせていただいたわけでございます。  したがって、そこにおきましては確かに非常に大蔵省との関係が一番問題になる法案を大蔵省がという御疑問はいろいろおありかもしれませんが、そこは私どもとしてはきちっと中央銀行研究会の御報告の線でもってよろしく御審議のほどお願いいたしますということで引き継いでいただいたという経緯がございます。
  116. 三塚博

    国務大臣三塚博君) ただいま銀行局長から答弁ありましたとおり、中銀研、中央銀行研究会、総理大臣がビッグバンの関連で銀行のあり方という高い見地から人選をされて御勉強をいただき、そこで答申をいただくということになったと承知いたしております。  金融制度調査会は、金融制度万般についての審議を行う法定の調査会でございます。本件については諮問機関でございますから、人選について広く選考をいたしまして、自由闊達なグローバルな、また今後の日本金融制度がどうあるべきかという点について学識、見識のある皆様に御委任を申し上げて行ってきたところでございます。そういう点で、法制上そのルールを守りながら取り進めるものでありますが、内容において御質疑趣旨を踏まえておると見てよろしいと思っております。御理解を得たいと思います。
  117. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 それじゃ次に移ります。一番大事な焦点になっております政策委員会の点についてお聞きいたしたいと存じます。  先ほど来も話が出ておりましたけれども日銀が何をやっているか、国民に見える状態が必要なんじゃないか。確かにそのとおりだろうというふうに思うわけでございます。そうなりますと、成功したとき、失敗したときも検証できるようにするというようなこともありましょうし、また責任問題、それに対する責任ということも大事になってくるわけでございますけれども、そういう意味政策委員会の動きというのが一番大事じゃないかというふうに思うわけでございまして、広く人材をということが一番大事な点ではないかと思うわけでございます。  そういう点につきまして、今までの政策委員会は官庁の次官をやられた方のOB、通産、農水とか大蔵次官をやられた方のOBが総裁とかまたは政策委員になっておられて、一面では役所の延長的な感覚があるわけでございますが、このたびはそれについて広く人材を求めるということになってきておるわけでございまして、もうそういうようなことはなくなるんだろうというふうに私ども思うわけでございますけれども、選考する側の大蔵省の方のお考え、殊に人材でございますので大臣のお考えが大事だろうと思うんで、お願い申し上げたいと思います。
  118. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 日銀政策委員のうち、いわゆる任命委員につきましては、省庁出身者あるいは民間出身者を問わずすぐれた経験と識見を有する者を選考してきたわけでございます。  今後、日銀政策委員会の審議委員につきましては、改正案におきまして従来の業界代表的な考え方を改めまして、広く経済または金融に関し高い識見を有する者、その他の学識経験のある者のうちから選任することといたしております。また改正案では、審議委員等の政策委員会メンバー全員について、御案内のとおり、両議院の同意を要すると、こういうことにさせていただいております。  ただいま岩瀬議員御指摘のように、今後の対応ということで御意見を賜りました。政府としては、国会の御同意を得て、金融政策運営について国民から負託を受けるにふさわしい人物を任命できますよう、できる限り広い範囲の人材に目を配りつつ、適切な人選に努めてまいりたいと考えております。
  119. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 今、的確な御答弁があったわけでございますけれども、その中でちょっと私も気になりますのは、官庁のOBの方がまずいということではございません、そればかりになってはいけないと、こういうことでございます。  それから、もう一つちょっと気になりますのは、業界だけじゃなくということ、どちらかというと業界を外すような感じもちょっと今受けとめられるわけですけれども、やはりこれは金融界のことでございますので、金融業界のしかるべき人という感じがなければいけないんだろう、その中心になければいけないんだろうというふうに思うわけでございます。その中心は、どちらかといえば金融界の人が中心でいろんな人の意見をということだろうと思うんですけれども、どうでしょうか。
  120. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 当然、金融界におきまして御苦労をいただき、また経営者として立派な成果を上げておるバンカーがたくさんおられることを私も承知をいたしております。そういう視点から、学識経験者という観点で選ばれてくる、当然国会の同意を得なければなりません。そういう広い視点で行ってまいるということでありますと、その結果としてそうなっていくのではないでしょうか。
  121. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 それから、「その他の学識経験のある者のうちから、」と、こういうふうに表現されておるわけでございますけれども、いろいろな人の声を聞きますと、消費者の代表とか中小企業の代表とか、金融とはすぐ結びつかない、こういうような方の代表の意見も反映されてはどうかというような意見もあるんですけれども、この点についてはどうお考えでしょうか。
  122. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今回の御提案申し上げております法律は、いわゆる広く学識経験者ということでございますので、どの特定の範囲、あるいは特定の形態、属性の方々ということに絞っておりませんので、広くその辺は選んでいただく、また国会の御同意をいただきたいというふうに思っておる次第でございます。
  123. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 これは、ちょっと日付が入っておらないんですけれども、ある新聞を見てみましたら、ちょっとそこのところを言いますと、「民間委員金融実務にうといことがあるとしても、日銀執行部は性急に非難してはなるまい。日銀のスタッフを民間委員に協力させ、欠けている点を補わせる度量が必要だと思う。」と、前後があるわけですけれども、こういうようなことが出ておるわけなんです。日銀の方でも今まで理事会が重視されたということで、どうしても専門家の方が先にと、話が早いというようなこともあるのかもしれませんけれども、そういう点があろうかと思います。日銀総裁のお考えをお願いします。
  124. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 改正法のもとにおきます日銀政策委員会は、金融政策決定等の最高の機関でございますから、私どもも本当にこの職務にふさわしい委員の御選考をお願いしたいことは当然でございますけれども、同時に、日銀の事務当局といたしましても、これらの任命をされました委員の皆様が十分にこの能力を御発揮していただけますように、例えばこの方々の補佐をするためのスタッフの選任でございますとか、この方々に利用していただきます資料の差し上げ方、御説明の仕方等々には十分工夫をいたしまして、金融経済の情報を広くごらんに入れました上で、この皆様方のそれぞれのお立場での御意見を承るように運営をさせていただきたい、そういうふうに思っております。
  125. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 それから役員、政策委員ですけれども、二十六条には役員の行為制限ということがあるわけでございます。私も、こういう大きなものじゃございませんけれども、それぞれの委員になっていただくことを経験したことがあるんですけれども、なかなかよい人はそれぞれ忙しかったり、活動が非常に忙しいというようなことがあって、なかなかなっていただけないんですね。この中で、一番影響があるかなと思いますのは、三項の報酬その他の職務、こういうものに従事することというようなことがあるわけでございまして、なかなかこれほかのところとの比較でいきますと、この政策委員の報酬というのはある程度の額になって、それ以上の忙しい、また立派な人は収入も得られている方もたくさんあるんだろうというふうに思うわけでございまして、このところについて何か御工夫をいただいて、立派な人がこの政策委員になっていただけるようにする必要があるんじゃないかというふうに思うわけでございますが、いかがでございましょうか。
  126. 松下康雄

    参考人松下康雄君) ただいまの兼業の禁止の点につきましては、御指摘のようにこの政策委員会に人材を得るという観点からいたしまして、「職務の適切な執行に支障がないと政策委員会において認めた場合には、兼業を認めるといった配慮も必要と思われる。」というのが金融制度調査会における答申の内容でございます。その御意見によりまして、この条文を解釈していくべきものであると思っております。現実には、この職務の執行上支障があるかないかという判断は、余り大ざっぱな基準で置きますのはなかなか難しかろうと思いますけれども、そういっただいま申し上げましたような考え方をもとにいたしまして、政策委員会においてこれならば十分この人材を得ながら、しかも兼職に伴う弊害を排除することができるというようなしっかりとした考え方をつくり上げるよう努力してまいりたいと思います。
  127. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 ぜひ多方面の方々の委員就任という点で、御努力いただければというふうに思うわけでございます。  次に、政府委員のことについてお伺いしたいと存じますけれども、十九条で「必要に応じ、金融調節事項を議事とする会議出席して意見を述べ、」と、こうあるわけですが、この金融調節事項を議事とする会議というのはどのくらいあるものでしょうか。また、今までの過去の例から見て、その比率というのはどの程度でしょうか。
  128. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 現行法のもとにおきましては、政策委員会の定例の開催日は週二回でございますけれども、その間に臨時の開催はもちろん可能でございます。その中で、金融政策の問題を議論する会議というものが特定をいたしておりませんので、必要に応じましてその開催されたときにはいつでも議論ができるという建前でございます。  今度の改正法におきましては、この点につきまして政策委員会の開会日そのものは任意でしばしば開会をすることは一向に差し支えございませんけれども、その中で、金融政策に関連する事項の議論をしていただく開会日というものをあらかじめおおむね決めておいた方がよろしいのではないかという御意見に基づいて、考えてまいることになります。それは、金融市場の方でも大体この日、この日の議論の中で金融政策問題が議論されるということをあらかじめ承知できた方が受けとめ方も円滑に行われるということでございます。おおむねの見当は、一月に二回程度ということで考えてまいることになります。
  129. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 私は、どういう点が金融政策事項なのかという細かい点までわかりませんけれども、その金融政策事項だということについてはっきりと分かれているところはあると思いますが、その区分がなかなかはっきりしない。金融政策事項だよ、金融調節事項だよ、ということを言われれば、そうだ、そうでなければというようなことがあるんじゃないかと思うんですが、その辺の基準というのはっけておくんでしょうか、どうでしょうか。
  130. 山口公生

    政府委員山口公生君) 実は、今回御提案を申し上げております法律によりまして、第十五条に第一項と第二項とを書き分けてございます。かなり細かくなりますので省略させていただきたいと思うのでございますが、十五条の第一項の一号から六号までの掲げたもの、ざっと眺めていただきますと、これが金融政策と言われる部分の会合でございます。二項からはそのほかの、例えば特融だとか国際金融の関連の業務だとか、あるいは重立った組織、定員、あるいは支店、そういったことが、いわゆる金融政策とはちょっと違う業務運営的なものが二項でございます。  この政策委員会を一項の政策委員会と二項の政策委員会に一応分けた形で開く、あるいは同時期に開いても構わないと思うのでございますが、ここまでは金融政策としての、つまり通貨調整のための政策委員会、これから以降は二項であります。その他の業務に関する政策委員会というふうに分けていただきますと、先ほど御指摘の政策委員会政府の方から出るべき会合というものがはっきりする。その中で必要に応じということで必要性を感じて出るというような仕組みにさせていただいております。
  131. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 それから、指名する職員なんですけれども、私はこれは「大蔵大臣又は経済企画庁長官は、必要に応じ、」と、こういうふうに書いてあるので、それぞれの大臣は忙しいときが多いわけなんで、それのかわりというようなこともあるならば、または連絡調整というふうなこともあるならば、せめて次官の皆さんかなというふうに思うわけでございますけれども、この指名する職員というのはどの程度の職員の方を考えておられるのでしょうか。
  132. 武藤敏郎

    政府委員(武藤敏郎君) 政府から出席する場合には、大蔵大臣または経企庁長官が必要に応じみずから出席し、またはその職員を出席させることができるということでございますが、大臣、政務次官は実際問題として公務、いろいろなスケジュールがございますのでそれとの関連がございますことと、もう一つ政府側から何を発言するかということにも関連してくるわけでございますけれども、さまざまな専門的な説明を行う必要がある場合も考えられるわけでございまして、そういう意味で、そのときに応じて最も適切な職員を出席させるというふうに考えられるわけでございます。  したがいまして、あらかじめ指定する職員というものを特定しておくということではなくて、そのときに応じて最も適切な職員を出席させる、そういうふうに考えております。
  133. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 この指名する職員なんですが、現行法では委員として、議決権はなかったわけですけれども出席しているわけでございますけれども自主性ということを重んじた場合には、連絡調整でその会議の傍聴に行くということならば別ですけれども自主性を重んずる会議政府の方が行く、そこまで出るということはどうも私も納得できない点があるんですけれども、これは金制調の議論ではどんな議論がなされておったのでしょうか。
  134. 武藤敏郎

    政府委員(武藤敏郎君) 日本銀行自主性というものをきっちりと決める一方、政府経済政策日本銀行金融政策との整合性というものをどうやって確保するかということがいろいろ議論されたわけでございますけれども金融制度調査会におきましては、「政府との連絡を密にし政策の整合性を確保するとともに、その過程の透明性を高める観点から、必要に応じ政府から政策委員会出席できることとすることが適当である。」というふうにされたわけでございます。  そこで、この法案におきましてはただいま申し上げましたような規定が設けられておるわけでございます。整合性を確保すると同時に、むしろこの委員会の場で政府出席者がきちっと発言をし、それがまた後刻公表されることによりまして政策調整の透明性が高まるということがポイントであろうかというふうに理解しております。
  135. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 そういう点が金制調の方の議論だというふうに理解していいですね。  そうしますと、前にこれは出ていたんですけれどもアメリカのグリーンスパンFRB議長が、政府からの出席独立性を非常に損なうものだというふうなことを強調されておった。また、体制は違うにしても、米国のそういう組織ではこういうものはなくなっておる、それはもうずっと前からなくなっておるんだというようなことを言われたように記憶しておるわけですけれども、そういう点についてはいかがでございましょうか。これについて、そういう自主性ということを考えた場合には、政府からの出席というものをなくするというような議論はなかったんでしょうか。
  136. 武藤敏郎

    政府委員(武藤敏郎君) アメリカのお話が今出されましたけれども、確かにアメリカのFRBにおきましては政府からの出席者はおりません。ただ、アメリカにおきましては、連邦制度の創設に当たりまして、一般的には各国通貨の発行権というのは政府に属するのが一般的なんでございますけれどもアメリカにおきましては憲法上通貨発行権が議会の権限というふうにされておるところでございます。これは非常に特殊な制度なのでございますけれども、議会の通貨発行権をFRBに権限委任する、そういう構成をとっておりまして、議会の監督のもとでFRBが通貨を発行し、それに関する政策を遂行するということでございます。そういうことで、ちょっと我が国の例といいますか、ほかの国の例となかなか単純に比べることが難しいのではないかなというふうに思っております。  一方、ドイツあるいはフランスそれから最近の欧州中央銀行におきましても、金融政策に関する意思決定を行う機関に政府からの出席法律上認められている。これは、ヨーロッパの例ではそういうことになっておるわけでございまして、この点に関しては、そういうドイツ、フランス、欧州中央銀行の例があるということでございます。政府からの出席者は、このドイツ、フランス、欧州中央銀行の場合にもそうなんでございますけれども、議決権は有さないという形になっておりまして、この点は今回の法案におきましても議決権は有さないということになっておりますので、いわゆる中央銀行独立性を阻害するといったようなおそれはないものというふうに考えております。
  137. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 それでは次に、議決延期請求権、これについてお伺いいたします。  先ほど楢崎委員からのお話がございましたけれども、これはできるだけ早く概要をお示しすることが必要なんじゃないか。もう先ほど来かなりやられましたので前段省略でまいりますけれども中央銀行のあり方というものをみんなが注視、注目しているわけなので、その注目している中央銀行でどういう意見があって、どうなってこういうことがあったんだということがやはり大事なことなんじゃないかというふうに私は思うわけでございますが、この要旨を示す時期を早くすべきだというふうに思うわけでございます。  また一方、会議録というのは、またこれちょっと性格が違うんだろうと思うわけで、これまで早くというふうには私は必ずしも思っておりませんけれども、といって先ほどお話があった三十年というようなお話ではとても話になりませんけれども、少なくとも要旨だけは、中央銀行の動きというのをみんな注目しているんだということでございますので、総裁が新聞やニュース関係には会議が終わった後発表するよということも一つ言えるわけなんですが、かつての例などを見させていただきますと、政策委員会があっていろいろ違った意見を述べられておったのも、何か記録によると全会一致的な総裁の発表がなされておったということで、そういう意見の違いというのもまた非常に大事なんじゃないかと思うわけです。そういう意味で、要旨というのはできるだけ早く発表すべきじゃないか、そう思うわけでございますが、総裁にお伺いします。
  138. 松下康雄

    参考人松下康雄君) ただいまの議事録等の公表につきましては、改正法案の二十条の一項の方に議事の概要を記載した書類につきまして「速やかに、委員会の定めるところにより、」作成するという規定の仕方でございます。議事録自体の方は「委員会が適当と認めて定める相当期間経過後に、」公表するということでございまして、概要の方はできるだけ速やかに作成をするようにという御趣旨でございますので、私どももそういう御趣旨を踏まえまして、ただどういう内容のものでどういうふうに作成をしたらよろしいかという大事な点につきまして諸外国での実例等も参照しながら検討を行いたいと思いますので、その検討に合わせまして適正な結論を出していくように考えてまいります。
  139. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 それからもう一つ先ほど来話にも出ました、政府から出席されます方、この者の発言はまた私は別だろうというふうに思うわけでございます。政府から出席された方の発言は、これは要旨などと一緒に発表される場合でもその発言内容を、一政府から指名された方の発言はこうだったということを別途明記すべきだというふうに思うわけですけれども、この点はいかがでございましょうか。
  140. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私どもの方におきましても現在検討いたしておりますが、議事要旨を公表していくということは政策委員会議論透明性確保するための仕組みでございますし、また政府代表が出席して意見を申し述べるという点も政府日本銀行政策委員会における金融政策、一般経済政策の整合性に関するやはり透明性をねらいとしての仕組みであると考えております。したがいまして、政府代表が出席をいたしまして意見を述べた場合には、その旨は議事要旨におきましても記載することが求められるというふうに考えております。
  141. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 それから、次が予算の関係でございます。  五十一条においては、日本銀行は、毎事業年度、経費に関する予算について事前に「大蔵大臣に提出して、その認可を受けなければならない。」というふうにあるわけですが、この点につきましての金制調の議論、また各国はどうなっておりましょうか。
  142. 山口公生

    政府委員山口公生君) 金制調でも、この予算の認可制度についてはかなり綿密な御議論があったように記憶しております。結局、日本銀行というものの存在と、広い意味の行政権の範囲というものとのかかわりの問題でのとらえ方でございます。  いずれにせよ、この日本銀行の営業活動等の資金源は何かといいますと、国民の財産とも言います通貨発行益だという前提に立ちますと、そこで何らかのやはりそういったチェックというものが必要ではないか。また、業務としてもその行政代行的な色彩を持った業務をやっているし、純粋に民間活動として、例えば株主の利益のために最大利益を上げてというような存在でもないということで、非常に難しい問題としてとらえられたわけでございますが、結局、結論としては認可制を維持するけれども、そこにはやはり金融政策独立性をまず尊重するという大前提がありますので、それを阻害してはならないということで、まず対象を限定しましょうと。それから、対象を仮に限定しても認可をしないということで圧力をかけるようなことがあってはならないということで、もし認可しない場合にはその理由を公表しましょうというようなセーフガードつきと申しましょうか、そういった形で予算認可の制度を置いたということでございます。今回お示ししている法案もそういった考え方の延長でお示しさせていただいておるわけでございます。  外国は、いろいろな国々の制度ですから一概に比較はできませんけれども、例えばイギリス通貨発行益からの支出は認めないというような制度をつくっております。フランスは政府の同意が要るという、これは非常に厳しいチェックになっております。そうでない、かなりフリーにしている国ももちろんあるわけでございまして、我が国としてどういうあり方が一番いいのかというのは必ずしも外国がこうだからというわけでもないわけで、やはりそこには国民の財産である通貨発行益を使う場合のチェックの仕方を、金融政策独立性との兼ね合いでぎりぎりどういう調和をさせるかというところで出された結論だというふうに理解しております。
  143. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 大蔵省大蔵省たるゆえんは予算査定にあるということが言えるわけで、予算を認可するというと、認可しない場合も理論上あり得るわけなんで、そうなりますと業務のかなりの部分がこれは大蔵省の承認、認可ですから承認じゃないんですけれども、それが必要になってくるんじゃないかというふうに思うわけでございます。  ただ、そういう中で、今局長は限定してということで言われたわけですけれども、政令で定めるという点を言われたんだろうと思うわけでございますが、この範囲はどの程度のことを考えておられるんでしょうか。
  144. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今、私が申し上げましたように、日本銀行金融取引で生じます例えば支払い割引料とか、国債の売却損等は認可対象の外にすべきだろうと思うわけでございます。そうしますと、政令の対象となるのは、例えば一般事務費とか給料とか、そういったたぐいのものが対象になろうかというふうに思っております。
  145. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 そうしますと、自主性との関連で随分やはりお考えになっておられるようですけれども、逆に申しますと事務費とか給料的なものはそれほどではないんじゃないかというふうに我々は思うわけでございます。  もし、そういうものだけであるとするならば、決算認定のときに見てもいいんじゃないかと。予算の性格はあくまでも事業費であるんじゃないかというふうに思うわけで、その事業費をいいんだ、悪いんだというところが予算の予算たるゆえんじゃないかと思うわけでございますけれども、今お話しの事務費、給料だけですとそれほどまでの必要性がないんじゃないかと、こういうふうに思うわけですが、いかがでございましょうか。
  146. 山口公生

    政府委員山口公生君) 通貨発行益で賄われているという意味ではどの経費も同じでございまして、私どもの考えでは、そうした事業全体にその網をかぶせてしまうと金融政策にいろいろな悪い影響があってはならないということで、むしろそれは外すということでございます。  確かに、給料とか一般事務費とかいう例を挙げさせていただきましたが、そういうのは小さいからいいじゃないかというお話がございますが、ただ、この日本銀行という組織がそういった通貨発行益から出ているということに関する事前のチェックというものが何らかの形であるとすれば、そういったものに対して限定的であるにせよあるべきではないかと。例えば、いろいろな御批判も出てきておりますし、日本銀行も非常にその点については今御努力をいただいておりますけれども、そういったものをより確実にやっていただく必要もあろうかというふうに考えておるわけでございます。
  147. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 まだあるんですけれども、できるだけ自主性を損なわない範囲でという点はもう非常に貴重な点だろうと思うわけでございますので、運用の点で余りきつくならないような形でひとつ進められる方がというふうに私は思うわけでございます。  それから、次に入りますけれども、五十六条の違法行為等の是正というところをごらんいただきたいと存じますけれども、これは前段があるわけですが、読みますと「定款に違反し、又は違反するおそれがあると認めるときは、」というふうな表現になっておるんですけれども、現実にそういうようなことが行われる可能性があるというふうにお考えで、この条文ができているんでしょうか。
  148. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今回の改正法案におきましては、日本銀行独立性確保に留意しながらその業務運営の適正を担保するために、政府の広範な業務命令権は廃止しまして、必要最小限のチェックとして法令、定款違反等の是正を求める仕組みを設けさせていただいたわけでございます。  今、御指摘の「法令若しくは定款に違反し、又は違反するおそれがあると認めるときは、」ということでございますが、例えば日本銀行またはその役職員の行為が法令や定款に定められた政策委員会運営業務の規定あるいは守秘義務や行為制限に係る規定等に違反している場合ということが、あってはならないと思いますが、そういうことがあった場合に対して是正を求めるということでございます。  今回、特に守秘義務等を日本銀行の役職員にかけたわけでございます。そういったことが恐らくないというふうに信じたいと思うんでございますけれども、万一そういった違法行為等がありました場合には、直ちにそれを是正していただく必要があるということでございます。
  149. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 いろんな説明と申しますか、金制調の答申などを見ますと、今までありました業務命令権だとかいろんな権限、または監理官制度があったのがなくなったからとかというふうな言い方の説明もあるんですけれども、それはちょっと話の筋が違ってきているというふうに思うわけでございますけれども、法に違反すればそれは別の法律が裁くわけでございまして、また守秘義務の点もこれは守秘義務として記載すればよいことであって、ここで違法行為等の是正という形で求める必要があるのかなという点で非常に疑問に感ずるわけでございます。  また、そういういろんな点があるならば、それは監査のときにできるわけでございまして、五十七条では、大蔵大臣の求めによる監査という、後のそういうことがないようにというような規定もあるわけでございますので、この規定がなぜ入ったのかちょっと私もよく理解できないわけなんですけれども、金制調のいろんな議論の過程の中でそういうのがあったんでしょうか、またどういう議論がなされたんでしょうか。
  150. 山口公生

    政府委員山口公生君) 現行法であります昭和十七年の法律では、大蔵大臣に一般監督権限初め立入調査権あるいは日銀監理官等のやや強権的とも思えるような権限が留保されておりました。そういったものについては、やはり日本銀行金融政策決定自主性を尊重する上から廃止すべきだということについては意見はすぐに一致いたしたわけでございますが、それでは必要最小限のものとして何があるのかというときに、法令または定款違反というものについてはだれかがチェックしなければだれもチェックできないということになるではないかというようなお話で、そこに限定してみたらどうかという御意見の一致を見たわけでございます。  他の法令で罰すればいいんではないかという御議論ももちろんあるかと思いますが、例えば刑法的な事犯がありますれば、例えば日銀に集まったお金を盗むとかあるいは横領するとかいうことがありますなら、当然それは他の刑法事犯として他の法律で罰することはできますが、例えば、この法律で規定している政策委員会にかけるべきものをかけないで何かが行われたとか、あるいは守秘義務というものが今までは規定されておりませんでしたが、今回されておりますが、それをそのままに放置したときには一体どうなるのかというようなことは、恐らくないとは思いますが、理論的にはあり得る話でございます。そういった形での、この法令あるいは他の法令に違反した場合、あるいはこの定款できっちりこういうふうにやるという定款に違反した場合、そういったものについてのやはり最小限のチェックを行うと。  その手段として、もちろん監査役の方がみずからそれを見つけ、みずからただすことはそれは当然大変正しいことで結構だと思いますが、もし大蔵大臣が報告等に基づいてその事実を見つけたとき、あるいはそれが露見して大蔵大臣が知るようになったときには、監査役にちょっと調べてもらいたいということで、直接自分が立ち入るということではない形で監査に依頼をするというシステムをつくったわけでございます。そうしたこれまでのやや強権的とも思える監督権限あるいは監査の権限、立入権限というものをこういった形で独立性に配慮した形にさせていただいたということでございます。
  151. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 ちょっとこの条文は、独立性を配慮するその余りなのかもしれませんけれども、なかなか理解できないところなんでございますけれども、こればかりやっていてもしようがありませんので、次に進ませていただきます。  次は、政府から受ける短期証券のことについてお聞きいたしたいと存じます。長期国債は財政法上受けることはできないというふうになっておるわけでございますけれども、短期証券について今どの程度の引き受けがなされているのか、現状はいかがでございましょうか。
  152. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 日本銀行が現在引き受けております政府短期証券の残高は二十数兆円でございます。
  153. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 突然で恐縮でございます。  なぜお聞きいたしましたかと申しますと、過日、代表質問を私させていただきましたが、そのとき、短期金融市場に関する研究会を大蔵と日銀の、たしか実務者というような表現で言われたと思いますが、協議している旨の総理大臣の答弁があったわけでございます。  大臣はそこまでのお話であったわけでございますが、この名称は何というのかを始め、この研究会の概要をもう少し詳しく教えていただきたいと存じます。
  154. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) お答えいたします。  今、委員が言われましたように、政府短期証券につきましては、財政法第七条におきまして、国会の議決を経た額の範囲内で、「国庫金の出納上必要があるときは、」、いわゆる資金繰り債でございまして、「大蔵省証券を発行し又は日本銀行から一時借入金をなすことができる。」という旨定められておりまして、これは総理及び大蔵大臣から御答弁させていただきましたように、現状では具体的な支障が生じているとは考えておりません。  しかしながら、この政府短期証券も含めまして、広く短期金融市場にかかわる諸問題、いろいろな御指摘もあるところでございますので、今委員が言われましたように、日銀大蔵省の実務者の間で広くこれは研究していただいているところでございます。
  155. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 もう少し詳しくお願いしたいんですけれども、例えばいっ開催しているとか開催日数だとか、またいつごろまでに検討しようだとか、参加者が実務者という、どの程度のレベルの方が参加して検討しているのか、もしわかればお願いします。
  156. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) お答えいたします。  まず、このメンバーでございますが、日本銀行は参事ほか課長クラスの方、また大蔵省も課長クラスのまさに実務がわかっておられる方々に参加していただいております。それで、今まで三月以来、月に一回ないし月に二回精力的にやっていただいておりまして、今委員が言われましたいつごろというめどはまだ現在立っておりませんが、先ほど言いましたように、政府短期証券を含めまして、短期金融市場の現状とか、FB、TBの現状等について検討をしていただいているところでございます。
  157. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 今、短期金融市場と、こう言われているものは、先ほど総裁は、引き受けは二十数兆円というふうなことを言われましたけれども、短期金融市場というのは今どの程度の動きを見せておるんでしょうか。
  158. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) 私、必ずしも詳しいわけではございませんが、私の知っている限りでお答えいたしますと、先ほど委員が言われました政府短期証券以外にいわゆる短期の国債というのがございます。TBというのがございます。これが存在しておりまして、現在、短期金融市場の中核商品となりつつございまして、例えば平成七年度末の残高では約十二兆円を超える規模になっております。
  159. 山口公生

    政府委員山口公生君) 短期金融市場のその他の数字をちょっと御紹介いたします。  大きくインターバンクとオープンとに分けて御理解いただきたいと思います。まず、インターバンク、銀行間取引の方でございますが、総計で九六年、四十七・八兆円でございます。うちコール市場が三十九・四兆円で、残りが手形市場で八・三兆円でございます。コールをまた二つに分けますと、有担コールが八・九兆円で、無担コールが三十・五兆です。手形の方を二つに分けますと、日銀オペ手形が六・六兆、プロパー手形が一・八兆で、総じて言いますと、インターバンク市場は無担コールが一番大きいということでございます。  それから、オープンマーケットの方で申し上げますと、今理財局長から申し上げましたTB市場が十二・九兆円でございますが、オープンマーケット全体はそれを含めまして六十八・六兆円ございます。したがって、インターバンクよりややオープンマーケットの方が大きいという姿でございます。うち一番ウエートが大きいのはCD市場でございまして三十二兆円、その次がTB市場が十二・九兆円、それから債券の現先が十一・九兆円、CPが十・八兆円、FBが〇・九兆円でございます。すべてを足しますと百十六・四兆円というのが今短期金融市場の大まかな粗筋でございます。  これを概括的に申し上げますと、七九年のCDの導入を皮切りに、今御紹介しました無担保コール、TB、CP等のさまざまな市場が創設されまして、品ぞろえの面での多様化が図られてきておりますほか、取引慣行の見直し等の市場改善措置も講じられておりまして、順調にその規模を拡大し、透明性、効率性も高くなってきております。  まだまだこれから厚みの問題等はございますけれども金利裁定も円滑に機能する市場成長してきているなという感じを持っておるわけでございます。
  160. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 短期金融市場、私もそんなにわかるわけではございませんけれども、私が思っていたよりもかなりの額が動かされておるというふうに思うわけでございます。  ただ、そういう中であるわけですけれども政府の短期証券、これは今どういうことになっておりましょうか。日銀引き受けというようなことになっているように聞いておるわけでございますけれども、これについてもそういうオープンマーケットの中で十分果たすべきじゃないかというふうに思うわけですが、いかがでございましょうか。
  161. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) お答えいたします。  政府の短期証券の発行は、現在あらかじめ一定の割引歩合を提示した上で市中公募を行い、応募がなかった額について日銀に引き受けていただくという方式を、定率による公募発行方式と言っておりますが、によっているところでございます。このこと自体、現状で、私どもといたしましては、先ほど言いました財政法の規定にも載っておることであり、具体的な支障が生じているとは考えておりませんが、今言われました短期金融市場との関係もございます。  それで、政府短期証券のあり方について、先ほどの実務者間で研究していただいているわけでございますが、特に政府短期証券につきましては、短期金融市場、さらに今申し上げておりますように国庫の制度、それから財政制度等の観点から、これは総合的に勘案していかなければならない問題でございまして、なかなか簡単には結論の出る問題ではございませんが、先ほど言いましたように、実務者間で精力的に研究を行っていただいているということでございます。
  162. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 今、局長の方から公募ということを言われましたが、しかしこれの利率が公定歩合から〇・一二五を引いたものを慣例の利率、どういう定めにしてあるんだかわかりませんけれども、慣例の利率にしているわけで、今公定歩合が〇・五で、それよりも低いものを公募してもこれは恐らく受け手がないんじゃないかというふうに思うわけでございます。これはそういう利率の点から公募とはいっても全部日銀引き受けになっている、こういう実態だろうと思うわけでございます。これをオープンマーケットの中でそのときの利率で行うというようなことにすべきではないかと思うわけでございます。特にそれをやっても支障がないように私は思うわけでございますけれども、いかがでございましょうか。
  163. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) お答えいたします。  今、委員が言われましたように、現在の政府短期証券の割引歩合は、日本銀行がまさに民間金融機関に対して貸し出しを行う場合に用いておられる金利である公定歩合を基礎にして、もう一つ、これは政府の信用力等を勘案して決定されているところでございます。これは考え方といたしましては、先ほどの引受方式、定率公募残額日銀引受方式と相まちまして、国庫資金の資金繰り資金というものは多額かつ迅速に調達する必要性が生じることがあるわけでございます。  また、日々の変動幅も大きいという性格を有していることにもかんがみまして、その資金調達を確実、効率的かつ有利に行うということで、現在こういう仕組みになっておるわけでございます。その点は、現在の仕組み自体に支障が生じているとは考えておりませんが、御理解をいただきたいと思います。
  164. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 私が申し上げているのは、政府の方で今ビッグバンだよということでいろいろなものの透明性またはオープン化、こういうものを進めておる中にあるわけですね。そういう中で、いつまでもこれは前からのルールがこうだからということではいけないんじゃないか。しかも、短期市場は育成していかなきゃならないというふうなこともあるわけなんで、いつまでもこれではいけないんじゃないか、そういう点で申し上げておるわけでございますけれども、いかがでしきりか。
  165. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) 政府短期証券の発行といわゆる短期金融市場の問題は、まさに政府短期証券は金融市場の中の一つでございますので、若干そこは見方が違うのではないかと思うわけでございます。  委員のおっしゃるような指摘は前からございまして、そういう議論があることも十分承知しております。したがって、先ほど申し上げました実務者間の研究では、この政府短期証券のあり方も含めまして、そして今言われたような広く短期の金融市場の育成という問題全般を含めて研究が行われているということで御理解いただきたいと思います。
  166. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 すぐ結論が出る問題ではないでしょうから、今のこういう流れの中でのあり方を十分御検討いただければというふうに思うわけでございます。  それから次は、日銀法の二十五条とよく言われておりますものについて、新しい法では二十五条じゃないようでございますけれども、今まで金融システムの維持というようなことで発動されてきたわけでございますけれども、いろいろなところで伝家の宝刀みたいな形で最終的な政府の切り札のような形で出るわけでございますけれども、これがどういうときにどういう形で出てくるのか、なかなか我々は読みにくいわけなんですけれども、現行法二十五条の発動の基準は何かあるんでございましょうか。
  167. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 日本銀行が信用秩序の維持に資しますために日銀法二十五条に基づく資金供与、これを通常特融と称しておりますが、この特融を行うに当たりましては関係者の責任の明確化や日本銀行の財務の健全性に配慮をしながら、システミックリスク、金融システム上のリスクを引き起こすおそれがあり、かつ日銀の資金供与が不可欠であるという場合に限って資金供与を行うことといたしているわけでございます。  実例を申し上げますと、現在、日本銀行では阪和銀行の処理方策が実行されますまでの間の預金払い戻し資金に関する阪和銀行向け貸し出し、それから兵庫銀行の処理方策の一環として設立されましたみどり銀行に対します劣後ローン、それから整理回収銀行向けの出資、それから新金融安定化基金、住専関連でございますが、これに対する資金拠出、この四つの案件につきまして二十五条の資金供与を実施いたしておりまして、その金額の合計は五月末で四千六百五十億円でございます。  日銀は、これまでそのほかにコスモ信用組合、木津信用組合、それから兵庫銀行の処理に際しましても現在の阪和銀行向けと同様の預金払い戻し資金等の貸し出しを実施いたしましたが、これらはそれぞれの処理方策が実行されました時点で全額返済を受けております。
  168. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 今、詳細にお話しいただきましたが、何か発動するときの基準というようなものがあるんでしょうか。
  169. 松下康雄

    参考人松下康雄君) ちょっと省略をして申し上げましたけれども、特融に当たりましての基準でございますけれども、まずこの措置を行わなければ我が国金融システム自体に混乱を巻き起こすリスクがあるという場合でありまして、かつ日本銀行が資金供与をいたしませんというと、ほか、に十分な資金の供与を受けることができない、そういう場合につきまして、またもう一つの条件としましては、そういう事態の関係者の責任の明確化でありますとか、またその融資を行いましたことが今度は日本銀行自体の財務の健全性を損なうようなことがないというような、この二つの点に配慮をいたしまして、特融が必要な場合、それに応じてきているわけでございます。
  170. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 それからもう一つは、今のは発動の基準だろうと思うわけでございますが、運用面での基準というようなものはあるんでしょうか。例えば利率だとか償還条件だとか、こういうものについてはいかがでございましょうか。
  171. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 日銀特融を行い得るという場合にはもう通常正常な担保が得られない、無担保の融資という場合が多うございますが、無担保の融資の場合には現状の公定歩合に〇・二五%上乗せした金利ということで融資を実行いたしております。
  172. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 そうしますと、先ほどは四千六百五十億、今出ているよというようなお話であったわけでございますけれども、これは流れを見ますと、例えばある時期に残高がぐっと減っているというような月があるわけですけれども、そういうときはそういう返還がなされたというふうに考えてよろしいんでしょうか。
  173. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 実例を申し上げますと、木津信用組合の関連でほぼ九千億円の特融を実施いたしました。この分はその後、木津の処理計画ができ上がりましたときに預金保険機構から資金援助が入りまして、この援助の金額によりまして私どもは弁済を受けたわけでございます。そのように相当大きな金額の単位で出ることもございますし、また弁済を受けることもございます。
  174. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 これにつきましては、新法では三十八条でございましょうか、に規定されておるわけでございますが、二十五条、現行法のときにはそういう規定がなかったように思うわけですが、今度のこの信用秩序の維持のための業務については大蔵大臣が要請することができるというような規定になっておりまして、これは日本銀行独自ではできない、要請されたものに対してのみ行うと、こういうふうに解釈されるんでしょうか。
  175. 山口公生

    政府委員山口公生君) 御指摘のとおり、現行法の二十五条は、ちょっと読ませていただきますと、「日本銀行主務大臣ノ認可ヲ受ケ信用制度ノ保持育成ノ為必要ナル業務ヲ行フコトヲ得」というふうになっております。したがいまして、日本銀行大蔵大臣の認可を受けてこの業務をやるという形になっています。  今回の三十八条をごらんいただきますと、大蔵大臣は、信用秩序云々に重大なおそれがあるときは「業務を行うことを要請することができる。」というふうに、御指摘のとおり変えております。これは、信用秩序の維持の最終責任者はだれかというところから来るわけでございまして、それはやっぱり大蔵大臣であるべきだという考え方があります。したがいまして、基本的には大蔵大臣日本銀行に要請をして、じゃ日本銀行はそれを拒否はできないのかというと、第二項でもって、ちょっと読ませていただきますと、「前項の規定による大蔵大臣の要請があったときは、」云々、「その他の信用秩序の維持のために必要と認められる業務を行うことができる。」とありますから、日本銀行政策委員会に諮りまして、それを受けるか受けないか、どういうふうにやるかということを決めるという姿にさせていただいたわけでございます。  ただ、それでは日本銀行から何もその点についての意見が言えないのかというと、それは実際問題、例えば日本銀行が考査等でいろいろごらんになっていていろんな問題が生じた、そのときには、大蔵大臣の方にかくかくしかじかの事情であるというような情報をいただきますれば、大蔵大臣としてはしかるべきそれは対応をするというのが現実的な対応の一つになろうかと思うわけでございます。
  176. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 ちょっと時間の読み違いがありまして、時間が来てしまったようでございます。できるだけ国民にわかるような形で、ひとつ奥の手を使っていただければというふうに思うわけでございます。  いろいろ多方面にわたりまして、ありがとうございました。質問を終わります。
  177. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 前回、私は、昨年六月に与党三党のプロジェクトチームがまとめた「新しい金融行政・金融政策の構築に向けて」と題する報告書で指摘した事項に沿って、その内容がきちんと政府提出の改正法案に盛り込まれているかどうかを伺いました。前回は八つの検討項目のうち、目的規定、独立性の強化、透明性確保政策委員会改革などを中心にお尋ねしてまいりましたので、きょうはその残りの点について引き続き伺いたいと思います。  まず第一に、今ちょうど岩瀬先生の御質問にありました日銀特融の問題についてはっきりさせていただきたいと思います。なぜかと申し上げますと、八つのポイントのうちの五つ目の論点として、日銀考査と並んで日銀特融についてもこれを明確にするとされていますが、改正法案では現行日銀法二十五条に基づいて行われる日銀特融の仕組みと何がどう違うのか大蔵省に尋ねます。  同時にまた、これまで日銀は特融に際して、今総裁から御説明がございましたが、四原則を打ち出しているわけでございますが、改正法のもとではこの原則はどうなるのか、変わるのか変わらないのか、その点について日銀からお伺いいたします。
  178. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今回の法改正におきましても、このいわゆる日銀法二十五条の部分はかなり大幅な改正をさせていただいたわけでございますが、現行法上、いわゆる日銀特融は日本銀行大蔵大臣の認可を受けて行っておりますが、改正日本銀行法案におきましては、大蔵大臣の要請に応じて日本銀行政策委員会が議決を行い、実行されることといたしております。  なお、その一つ前の三十七条では、コンピューター故障等の一時的な資金不足が生じた場合についての日本銀行の一時的な無担保貸し付けということも現実に起こり得るということで書かせていただいておるわけでございます。法改正としては、そういう形で形式的にもがらりと変えたということでございます。
  179. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私どもでは、これまで特融を行います場合には、まず第一に、それが放置しておけば金融システムの混乱を引き起こすリスクを持つものであるかどうかという点、またその際に、その対策として日本銀行が資金供与を行うことが不可欠であるかどうかという点、その点を考慮いたしまして、さらに関係者の責任というものがあればこれを明確化する、また資金供与によりまして日本銀行の財務の健全性を損なわない、この四つの条件を私どもが特融を行います場合の条件として考えてまいったところでございます。  こういった対応の考え方は今回の新しい日銀法のもとでも全く同様でございまして、三十八条の融資を行うかどうかという判断をいたします場合には、このいわゆる四原則の考え方に基づきまして、これに照らして対応をしてまいる考えでございます。
  180. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 総裁にもう一度お尋ねしますけれども、私の調べでは、四つの原則の中でリスクが顕在化するおそれがあること、これはよくわかりますが、その次の日本銀行の、今総裁は供与という言葉をお使いになりましたが、私のところでは関与という言葉になっておるんですが、そこのところはどちらが本当ですか。
  181. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私どもは資金供与と申しておりますが、関与ということでも、一般的にはそういうことでございます。
  182. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 そうすると、今の問題は、大蔵省には新しい金融システムというか近代化というか、コンピューターが入ってくるから、非常に故障があったときというのは、今まではどっちかというとないですな、それを今度は入れ込んだところが特徴的なものだと、そういうふうに理解したいと思うんです。  それから、今局長と総裁がおっしゃった中では、新しく改正したけれども、精神的には余り変わっていませんよと、もうずっと流れは同じでございますと、そう理解してよろしゅうございますか。
  183. 山口公生

    政府委員山口公生君) 先生御指摘のとおりだと思います。
  184. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 それでは、その次の問題をお尋ねします。  次の六つ目の論点として、国際金融に関して、経済金融の国際化が進む中で、中央銀行業務にもこうした国際化に必要な対応が取り入れられる仕組みになっていることが重要だと思いますが、今回の改正法案ではどのような工夫をなさっているのか、大蔵省にお尋ねいたします。
  185. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) お答えいたします。  金融の国際化はこのところ急速に進展してきておりますけれども各国中央銀行の国際取引もそれに応じて増加しているところでございます。現在の日銀法がつくられました昭和十七年にはこうした事態は想定されていなかったわけでございますから、こうした中央銀行間の国際化に対応する規定を今回の新法の四十一条及び四十二条で整備を図ったところでございます。  具体的には、新法の第四十一条は、日本銀行独自の判断で行うべき業務として、外国中央銀行等による円資産の適当な運用に資する業務を弾力的に行い得るよう、広く枠取りをしたところでございます。例えば日本の国債の取引というようなことがその一つの例でございます。四十二条は、国際金融支援等の外国中央銀行との間の日常的な協力を超える業務について、大蔵大臣の要請または承認に基づき、BIS、国際決済銀行のブリッジローンの参加等、数々の取引形態で対応できるようにするということでございまして、例えばメキシコ危機等のときBISを通じてブリッジローンを日銀がやったわけでございますけれども、そういうことに関して、これは大蔵大臣から要請をするという形になっておりますけれども、そういうタイプの中央銀行協力については新法の四十二条で規定したところでございます。
  186. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 本件については、私は、国際化の時代でございますし、大変金融事情というのは複雑化しているものですから、国際的にそごのないようにやはりきちっとしておいた方がいいと思います。そういう意味では今の局長の答弁で理解いたしました。  次に、七つ目の問題でございますが、これは確認の意味ですが、政府との関係についてでございます。改正法で日本銀行は、「常に政府連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」とされております。政府日銀のこうした意思疎通は重要だと思いますが、政府としても為替政策など、金融政策と密接に関連ある問題については日銀と十分な意思疎通を行うと考えてよいのですか。また、金融政策に関しましては、十分な意思疎通を行うとしても、なお最終的な意思決定とその責任日銀にあるということで理解してよろしゅうございますか。
  187. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) まず、為替政策についての政府日本銀行意思疎通ということについてお答えいたします。  為替介入については政府が一元的に責任を持つということではございますけれども日銀事務当局大蔵省事務当局為替に関して非常に緊密な連携を現在も保っておりますし、今後ともこれを維持していくつもりでございます。これはもうほとんど毎日、私の下の課長が日銀の下の課長と話をするというような状況になっておりまして、このような緊密な関係、特に日本銀行市場に対して非常に広範な知識を持っているということにかんがみ、極めて重要なことだと思っております。  今後とも、こうした緊密な関係は維持されていくというふうに理解しております。
  188. 山口公生

    政府委員山口公生君) 先生の後段の御質問でございますが、金融政策に関して十分な意思疎通を行うとともに、その最終的な意思決定日銀でいいのかという御確認の御質問でございます。改正法案におきましては、日本銀行金融政策につきまして、日本銀行は常に政府連絡を密にし、十分な意思疎通を図ることが求められるとともに、政策の整合性確保のために政策委員会への政府出席等の措置が講じ得ることとされておりますけれども日本銀行金融政策に関する最終的な判断日本銀行が行うこととしております。
  189. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 それはよくわかりました。  後ほどまた質問したいと思うんですが、政策委員会運営の問題と日常の情報交換というか話し合いというか、それはどういう運営でなされるんですか。例えば、国際金融の問題に絡んでの為替の問題ですね、今お話しのように、それぞれ課長のところでいろいろ情報交換をやっていると言うけれども、それは日銀から来てもらうんですか、大蔵省から出ていくんですか、電話ですかというような具体的な問題。これはこれなりにわからぬではないんですよ、為替は。けれども、片方に金融政策公定歩合の問題だというようなことになりますと、いろんな話し合いというのはやられるわけなんでしょう。その日常の業務政策委員会との議論のあり方、運営のあり方、これはどういうふうに進んでいくんですか。
  190. 山口公生

    政府委員山口公生君) ちょっと担当が、金利に関しては私の方からお答えするのはあれかもしれませんが、例えば日本銀行の職員あるいは役員と私どもが日々、経済をどう見るのかという点についてはよく意見調整をやっているつもりでございます。ときどき、例えば国会開会中はなかなかその時間がとれないということもありますけれども、極力、そういったときは外しながらも意見交換をやるということはやっております。  ただ、今御指摘の、具体的に公定歩合がどうとかという話はもちろん日銀の所管事項でございますので、そういうことはやりませんけれども経済分析的に、景気がどうなっているのだろうか、この指標はどういうふうに見ているのかとかいうようなことは常時私どもも貴重な情報として受けとめますし、例えば税収の動向がどうだろうかという話は私どもの方からもお話をしておるというようなことでございます。  そうした関係というものは、ひとり大蔵省日銀との関係だけではなくて、必要なところについて必要な意見交換というのは常時政策遂行上必要なものとしてやっているわけでございます。そういった日々の情報交換というのは、各レベルにおいて常時これからも同じように進めるべきだと思うわけでございます。今回の法改正におきまして、名実ともに政策委員会がワンボードとしてそこで審議委員の方、あるいは総裁、副総裁でお決めになるわけですから、その場で今度政府として正式な意見として言うということも逆にまた必要になってくるということだろうと思うわけでございます。そういった仕組みも設けさせていただいたと。  それがあるから、じゃ一切下の方は話を、意見交換を、あるいは情報交換をしちやいけないということではない。それは今までどおり大いにやらせていただいて、我が国の安定的な発展成長というものにやはり気心を合わせていくということが必要だと思っております。
  191. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 なぜ、私がそれをお聞きしたかというと、情報交換とか意見調整とか分析とか批評とか、それはそれなりにわからぬではないんですわ、それは。けれども、それを何のためにやっているのかということになれば、帰着するところは一つなんでしょう。いろんな経済分析をやっても、今の金利状態はどうだとか、市場経済はどうだとかということになると、その帰着するところは一つにしか私はならないと思うんですよ。  そういうふうに私は考えるものですから、二十九条の、これは日本銀行の役職員について前回も私は質問申し上げましたが、守秘義務のところです。二十九条について、「日本銀行の役員及び職員は、その職務上知ることができた秘密を漏らし、又は盗用してはならない。」とありますね。これは退職者にも適用するとともに、六十三条で罰則を定めているわけです。このように守秘義務を非常に厳格にしたという理由は一体何かというものと今の問題とは相関関係に私はあると思うんです。  そこで、大蔵省日銀の幹部発言が、幹部ですよ、ここは。幹部発言が市場で取りざたされることが多いが、私は、日銀の情報管理やマスコミの対応の仕方についてもちょっと甘さがあったんじゃないのかなと実は思っているんです。ということだとすると、確かに余りぺらぺらしゃべつちゃいかぬよということが一つと、今度は事務方段階で情報交換をやっているというところで漏れる話というのは、これは大変私は重要なことを意味していると思うんです。  したがって、もう一度この守秘義務の問題をこれだけ強めた理由と、日銀及び大蔵省の幹部のマスコミの対応ということについてどういうことになっているのか、お聞きしたいと思います。
  192. 松下康雄

    参考人松下康雄君) ただいまの守秘義務とそれから経済金融問題に関します意見交換、情報交換でございますけれども、私どもは、守秘義務が認められました元来の意味は、日本銀行中央銀行としまして例えば一般の市中銀行やあるいはひいてその取引先等の機密に関する事項をも知り得る立場にございます。一番大きな例は、そういった状態で知り得ることができました機密に属する事項については厳格な守秘義務をもって対応すべきものであると考えております。  ただ、他方、政府部内におきますところの情報・意見交換と申しますものは、これは通常の場合には一方だけが承知をしていることでありましても、それは政府日本銀行とが共通の目的でありますところの適切な経済政策金融政策の調整を図るという目的を果たしますためには両方が同じように情報を分かち持つことが大変有益なことでございますから、これは奨励すべきことではございましても禁止すべきものではないと考えます。  そのような点につきましては、初めて守秘義務の規定が入りますので、あるいは日銀の内部におきましてもはっきりその境界が理解できないということでも困りますので、そういう点につきましては先生の前回及び今回の御指摘も踏まえまして私ども内部で検討してまいりたいと存じております。  それから、ただいま御指摘がありました日銀の幹部発言の取り上げられ方の問題でございますけれども、私どもは通常、国会の答弁あるいは記者会見、講演などいろいろな機会をとらえまして、経済金融情勢判断でありますとか、金融政策運営の基本的な考え方などにつきまして、できる限り丁寧に説明をいたしまして国会や国民の御理解を得るように努力しているところでございます。  ただ、一般に金融市場と申しますものは、日ごろそういった種々な情報とか材料を織り込みながら相場をつくっていくという場でございますので、私どももそういった発言をいたしますときには極力注意をいたしまして市場の動向などに関する具体的なコメントはいたさないというように気をつけているつもりなのでございますけれども、情報の速度が大変早くなりまして、正直申しまして、最近では何か申しましたことの中でその中の一行分だけがひとり歩きをして市場に伝わるというようなこともないことはございません。こういった場合には、私どもは、私どもの意図と違った情報が流れたということがわかりますればできるだけ早くそれを訂正するように努力もいたしておりますけれども、その点今後とも厳正な情報管理に努めてまいりまして、その上で私どもの真意が誤解なく伝わるように努力をしてまいりたいと思います。
  193. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 わかっていて質問しているつもりなんですが、心配なことは、前回も申し上げましたように、その服務規定と守秘義務とそれから日常のコミュニケーションというのは当然私も必要だと思います。その辺のところをかみ合わせて、万遺漏のないような対応を考えていただきたいというふうに思います。  次の問題に移ります。八つの問題の最後のところでございますが、身分・規律のあり方について、改正案では給与等の支給基準や服務に関する準則について規定を設けております。給与の問題は一番最後に話させていただきますが、服務準則についてであります。日銀は、天下りについてどのようなルールをつくるつもりなのか、もうしないというのか、この辺を明らかにしてもらいたいと思うんです。  それから大蔵省には、先ほど議論がありましたが、政策委員となる人材を幅広く求めていくという立場に立つと兼職制限を厳しくしてはいかがなものかという先ほどの答弁がございました。それもわからぬではないのでございますが、それなら余りきつい文章にしなきゃいいわけですね。私は、兼職制限というのは原則的に兼職制限であるべきだと思うんです、私は。原則的にですよ。それが、何か先ほどの答弁では、その原則が崩れちゃって、まあ仕方がないんだとか、それは見識のある人を呼ぶのにはしようがないんだとかというような答弁があったようでございますが、この点は大蔵省にも、大蔵大臣が任命権を持つわけですからきっちり答えていただきたいと思います。まず、日銀の天下り問題についてお尋ねします。
  194. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 日本銀行の役職員の民間への再就職についてでございますが、これまでも個人の識見、能力を期待して金融機関等が人材を求めてこられたという場合に限りまして、世間からいたずらに批判を招くことがないような慎重な対応を行ってきたところでございます。  新法におきましては、政策委員会が再就職制限も含めまして服務の準則を定めることとされておりますが、私どもとしましては、これはこれまで以上に役職員の再就職につきまして慎重な対応が求められたものであると認識をいたしております。日本銀行といたしましては、そういった立法の趣旨を踏まえまして、再就職に関します内部ルールを制定すべく具体的に検討をいたしてまいります。
  195. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 公正な職務執行等に支障のない範囲で政策委員会により適切に兼職制限を解除する道を開いており、政府としても広い範囲から適切な人材をお迎えできるものと期待をいたしておるところであります。
  196. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 総裁の今の考え方、それはそれなりに天下り問題についてはわかりますけれども、私は、この服務規定との関係で問題にしなきゃならぬと思っているのは、国家公務員は営利企業への再就職に際しては人事院の承認を受ける必要がありますね。日銀の天下りには規制がないのが現状だと思うんです。日銀の考査権限の強化を図るのであれば、公正、中立の観点からも天下りの規制のあり方が問われると思うんですね。そういう意味で、私はしっかりした考え方をこれからつくってもらいたいと思うんです。  大蔵省じゃないんですけれども、笑い話で恐縮なんですが、二十年前、私は専売局に勤めておったんですが、専売局の一番偉い人が言うのには、大蔵省から天下りするときの第一番はどこかというと日銀と言うんですよ。天下りの一番。二番はどこといったら東証じゃないかと言うんです。三番はどこだといったら専売局だと言うんです。何だうちは、専売局は三番目かというような、笑い話かもしれませんけれども、かつてはそういう序列みたいなものがあったんですね。ないというのはおかしい、あったんです。今は全然違いますよ。違うけれども、そういう体質、風習というのがまだ残っているということも頭の片隅には私はあるんじゃないかと思うんです。  したがって、こういう世の中でございますので、月給が高ければ高いでいいんですよ、後は天下りしなきゃいいんだから。それだけの価値があるんだから。月給を高くもらってまた渡り鳥やるから問題になるんであって、そういう点を十分考慮してこれからも対応していただきたい。これは、答弁要りません。  それから、今度は三十一条の問題についてお尋ねをしたいと思います。三十一条では給与等の支給の基準に関する条文を置いておりますね。そこで、日銀にお尋ねいたしますけれども、現在の役員の給与は幾らなんですか。それはどのような考え方で決めてきたんですか。また、改正法案ではそれがどのように変わるんですか。日銀からお聞かせいただきたいと思います。
  197. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 現在の日本銀行の役員報酬は、年収ベースで申し上げますと、総裁五千百三十三万円、副総裁三千七百十四万円、理事二千七百十九万円、監事千七百九十八万円でございます。  日本銀行の役員報酬に関しましては、昭和三十四年の金融制度調査会実態調査小委員会報告におきまして、「総裁其の他の幹部責任者については責任遂行と民間からの人材招致等の事情を配慮して、その給与に改訂を加える必要がある。」とされていたところでございます。こういった提言を踏まえまして、日本銀行の役員給与につきましては、市中銀行の役員報酬を参考にしながら、あわせて職務の公共性にも十分配慮して、総合的に判断した上で大蔵大臣の認可を得て決定をしてまいっております。  改正法案におきましては、役員の給与の支給基準は「特別職の職員の給与に関する法律の適用を受ける国家公務員の給与」「その他の事情を勘案して定められなければならない。」とされております。私どもといたしましては、現時点におきましてまだ具体的な方針を固めているわけではございませんけれども、今回の日銀改正趣旨を十分に踏まえまして、今後、役員の給与に関する基準を作成しまして、これは公表してまいりたい、そう考えております。
  198. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 大蔵大臣にお尋ねしますけれども、今総裁から役員の給与のお話をいただきましたけれども大蔵大臣というか三塚さんというか、感想はいかがですか、この給与に関して。高いんですか、安いんですか。
  199. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 視点がいろいろあろうと思います。その視点は別としまして、この日本銀行法観点から申し上げますと、大銀行並みの水準では高過ぎるのではないかとの御議論、また御批判がありますことはよく承知をいたしております。  改正案におきましても、日銀の役職員の給与等の支給の基準は、国民の理解を得られるルールを定めるとの趣旨で、社会一般の情勢に適合するよう政策委員会において定め、公表されるということになっております。こうした趣旨を踏まえまして、今後政策委員会において、国民さらにはその代表である国会より批判を受けることのない適切な給与等の支給基準が策定され、公表されるというふうに期待をいたしておるところでございます。
  200. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 雑な言葉で恐縮ですが、銀行と名がつく中で日本銀行というのは一番偉いんですか。
  201. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 市中銀行とは性格を異にいたしておりまして、中央銀行でございますので、収益目標ということでなしに、全国的な金融調節通貨調節を行います点で特色がございますけれども、これはどちらが偉いかという比較はできないことではなかろうかと考えております。
  202. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 私は嫌みで聞いているわけではないんですよ。なぜかというと、日本銀行の今度は職員の方ですね、職員の方の給与という問題もこれまた問題にしなきゃならぬのですよ。けれども先ほど申し上げましたように、立派な仕事をしているんであれば、それはそれなりに給与が高くたっていいんですよ、それは。だからもっと自信と確信を持って日銀は言ってもらいたいんですよ。原則ですよ。だけど、三権の長と比べて総裁の方がちょっと上だというのは、どう考えてもね。私はそんなふうな感じがするんですよ。  そこで、もう一回お尋ねしますけれども、この役職員の給与を決めるに当たって「社会一般の情勢に適合したものとなるよう」にという原則が書かれていますね。これはどういうふうに理解し、これからどういうふうに対応なさっていくのか、総裁にお尋ねします。
  203. 松下康雄

    参考人松下康雄君) ちょっとそのお答えの前に、職員の方の給与の決め方が若干役員の方の給与の決め方と違っているところがございますので、それを簡単に御説明を申し上げます。  職員の給与は、金融機関として業務の相当部分が同質である都銀を参考にして決めているものでございます。そういう考え方は、昭和三十四年の金融制度調査会、同じく実態調査小委員会報告に、日銀職員の給与水準については「少くとも市中大銀行並みの水準にすることは適当」であると  いう御指摘を受けたものでございます。  ただ、この「社会一般の情勢に適合したものとなるよう」定めるということになりますというと、それは、職員の場合、例えば一般の労働市場におきます競合関係や今の職員が従事しておりますのと同質の仕事の社会的な価値などのいろいろな要素につきまして、より広く社会一般の情勢を考慮して比準すべき対象をよく考えて決定をするという必要があると思っております。  なお、職員の場合にはその九割は労働組合に加入をいたしておりまして、民間企業同様そういう考え方に基づきまして労使交渉によりまして給与を決定する建前でございますので、あわせて申し述べておきます。
  204. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 そっちの方は後から聞こうと思ったんですが、私が聞いているところはちょっと返事がないんですけれども。  総裁の給与が三権の長よりもちょっと高いというような話というのは、これは出てますね現実に。それから、日銀というのは、きょうは何もやる必要はないかもしらぬけれども、ここに額がありますね、これみんな百万円ですわ。日銀の総裁のやつは一千万でしょう。海外も含めゴルフ会員権が四十一個もあるわけでしょう。何であるんですかというと、情報の交換だというような御説明があるんですけれども、ちょっと日銀そのものが、金融機関全体がリストラをやっているというようなときに、そういう現状であっていいのかという批判というのは、私は当然起こると思うんです。  それはなぜかというと、住専問題が起きて、各金融機関、山口局長のお話を聞けば、どの銀行も今リストラを一生懸命やっていますよというお話なんです。だからそういう批判が出るのは、私は必然性があると思うんですね。だからそれはぜひ心して対応していただきたいと思います。  今そういう批判にこたえるという意味では二つに分けて、役員と職員と分けて考えにゃいかぬと思うんですね。役員の場合には、やはり全体の、国会その他三権を見ながら、これから十分な対応を検討してもらいたいと、私はこういうふうに思います。それから職員の方は、今三十四年の問題が出ましたから、原則的には総裁と、労働組合があるでしょう、日銀には。だから、労働組合とよく相談なさるのが一番いいんですよ。  私は、日銀の職員というのは準公務員的なものを持っていると思うんですね。だから、社会一般の常識というか情勢に応じて決めなきゃならぬということであれば、どこの会社であっても決めるときには大体四つぐらいの原則があるんです。一つは、その会社の職務内容というものの世間様からの位置づけがあるんだというのが一つ大きな問題ですね。それからもう一つは、全体の民間の給与はどうなっているんだろうか。民間ですよ、これは。それからもう一つは、公務員の給与はどうなっているんだろうかと。そしてその次に、改めて同種の金融界の状態はどうなっているんだろうかと。そういう総合勘案の中から決めるのが、私は一般情勢に適合した決め方だと思うんです。  だから、三十一条ですか、それで恐らくお話し合いがこれから行われるんだと思いますよ、労働組合がありますから。だから、十分その点を留意しながら対応していただきたいと思いますが、お考えはいかがでございましょうか。
  205. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 前段の御指摘がございました、日銀自体がリストラの努力をもっとすべきではないかという点につきましては、私どももこれまでも実際、人員の合理化でありますとか効率化の努力を続けてまいりましたけれども、やはりこういう法律改正のような機会にさらに改めて諸般の機構その他を見直しまして、より効率の高い、より経費の節減のできるリストラの努力をやっていかなければならないというふうに考えております。  それから、今の給与決定の基準に関しまして考え方の御指摘がございましたけれども、ただいまの広く社会一般の情勢に適合するようにという点の考え方につきましては、ごもっともな御指摘をいただいているというふうに考えております。私どもとしましても、銀行の給与は恐らく比準を行う上に必要でございましょうけれども、やはり広く社会の情勢に適合するようないろいろのほかの要素も取り入れまして、適正な判断をいたしていかなければいけないと思っております。  また、役員の給与のあり方につきましても、御指摘のございました点を踏まえまして、私どもこれからの全体の見直しを行ってまいるつもりでございます。
  206. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 終わります。
  207. 久保亘

    ○久保亘君 けさ、楢崎委員の御質問に答弁をされる中で大蔵大臣から、開かれた独立性を目指して今度の日銀法の改正が行われるというお答えがあったと思います。それから銀行局長は、独立という言葉を使えば何からの独立だということを問われることになる、だから独立という言葉は使わない、こういう御説明がありました。  私どもは、今度の日銀法の改正は、日銀政策決定業務運営に当たっての透明性独立性をどのようにして確保するかということで行われる改正でありますから、これはまさに日銀改革であり、そして何から独立するのか、何を透明にするのかということが明らかにされなければ、その改正は、法律の条文は変わっても実際には日銀そのものは変わらないということになるのではないか。  だから、銀行局長が問われることになると言われたそのことを私は問いたいと思うんです。この独立性透明性というものを今度の改正によって確保しようとするなら、何からの独立か、何を透明にするのか、これをはっきり説明してください。
  208. 山口公生

    政府委員山口公生君) 私が、けさほど申し上げました自主性独立性言葉の問題については、正しく申し上げれば、法律用語として日銀独立性という言葉をここに書き込むということはいろいろそういった議論になるので、自主性という言葉にいたしましたというのが正確な表現でございます。しかし、具体的にその条文から離れて、今回の法改正目的独立性確保透明性確保と二つの大きな目標だということには何ら変わるものではありません。  そうしますと、先生のおっしゃる、じゃ、だれからの独立かというのは当然問題になるわけでございます。それは、政府からの独立という意味を持たせる方もいらっしゃいます。あるいは議論の中で、ちょっと御紹介しますと、研究会や金融制度調査会でも、いや政治からという意見すらございました。人によっていろいろとその独立性というものについて、何からのということについてのイメージがそれぞれ違います。  私どもが結論として得ましたのは、政策委員会というのが金融政策についての最高責任機関であり、これが他に影響を受けずにみずからが判断責任が持てるようにするということだろうと思うわけでございます。では、政府からの独立さえあればいいのか、じゃ、特定の何か団体あるいは特定の勢力とのつながりがあっても構わないということにならないわけでございます。  したがいまして、繰り返しになりますが、そうした、何からの独立ということを突き詰めて議論することも大切かもしれませんが、最終的には政策委員会にお任せするという形をとると。しかし、任せられた方の政策委員会の方は、きちんと説明をして国民の皆様に理解を得る努力をしなきゃいけないというアカウンタビリティーという概念が出てくるわけです。そうしますと、そこには透明性確保されなければならないということになるわけでございます。  そういった御説明で十分かどうかやや不安な点もございますけれども、そういう趣旨でございます。
  209. 久保亘

    ○久保亘君 あなたの方からなかなか言いにくい問題だと思うけれども、私はお聞きしたいことが二つあります。一つは、日銀大蔵大臣の認可法人です。認可法人は、認可した側にどういう役割がありますか。
  210. 山口公生

    政府委員山口公生君) 大蔵大臣の認可を受けた法人でございますので、広い意味の行政というもののジャンルに位置づけられるとすれば、それは主務大臣大蔵大臣になるという関係に立つと思います。
  211. 久保亘

    ○久保亘君 大蔵大臣にお尋ねしますが、金融政策決定とその執行は、行政か、行政でないか。
  212. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 広い意味で申し上げますと、金融政策は行政と。財政と金融という問題がいつも論議される場合は、まさに行政的な観点国際金融システムの場面における観点、また全体の経済運営についての観点、こういう点がございますし、内政面における金融システムの維持、安定という観点からいいますとこれも広い意味の行政、こういう仕分けになるのかなと。まさに日銀が認可法人として誕生した原点を踏まえると、その基本は崩れないのではないのかな、こんなふうに思います。
  213. 久保亘

    ○久保亘君 金融政策決定とその執行が行政に属するということは、余り異論のないところだろうと思います。そうなりますと、行政というのは憲法六十五条によって内閣に行政権が属しておりますから、完全にこれを独立して日銀に移譲するということはできないのではないか、私はこう思っております。  そうすると、日銀独立性というのは何かということになると、これは政策決定に関する運営の上で、また日銀業務運営の上で介入をできるだけなくしてもらいたいということが日銀独立性を求めることだと思うんです。そこのところは正確にしておかないと、私は誤りを犯すのではないかと考えております。  それから、透明性というのは、これは紛れもなく金融政策決定にかかわる運営の内容を国民に対して明らかにするということが大事なのであって、これは日銀総裁、あなたは総裁に就任されてから今日まで、日銀運営に関する不透明性というものについてどういうことをお感じになっておりますか。あわせて、日銀独立ということについてあなたのお考えもお聞きしておきたいと思います。
  214. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 日銀独立性は、恐らくいろいろな面からの議論ができるところであろうと思いますけれども、私どもが現在考えておりますところは、金融政策決定、これは今度の法律通貨金融調節という言葉で表現をされておりますけれども、この決定をいたそうといたします場合に、他の例えば政府機関その他から何らかの指示を受けてこれに従わなければならないということがない状態、また一たん決定をいたしましたことを何か他の機関がそれは取り消すといって取り消されるということのない状態、非常に平易に申しますとそういうことではなかろうかと。  元来、金融政策と申しますものは、その効果が発現するまでに時間がかかるものでございますし、いわゆる中長期的な効果をねらいながら運営をしてまいるものだと存じますが、そういった意味で、短期的ないろいろの例えば利害関係といったようなものからの影響を受けない状態で決定をしていくということが基本なのではないかと思っております。  それから、なおそこに、内容的には専門的なやり方で市場を通じながら政策を実施してまいりますからある程度の専門性と、また中立性というようなものも必要であろうと思いますけれども、それらを総合して私ども独立という言葉で理解をいたしたい。決して独善とかそういった意味ではないというふうに思っております。  なお、この際の透明性でございますけれども、やはり金融政策決定いたします際に非常に大事なことは、これは行政の権限で行います事柄ではございませんで、市場の信頼を得ながら、市場に、中央銀行のやることであるからそういったものとして受けとめていこうというそういう反応をいただきながら展開をしてまいるべきものだと思います。そのためには、これはどういう理由でどういう手続を踏んでどういう議論の上でこういう政策ができたかということをやはり広く国民に明らかにしてまいるということによって、国民から、また内外の市場からの信頼を受けることができる、それが私ども透明性として大切なことだと思っております。
  215. 久保亘

    ○久保亘君 私がさっき申しましたように、行政権を内閣から日銀という法人が全面的に移譲されるということはできない、私はこう思っておりますが、内閣は政府として金融政策決定に関しては責任を持つべきものだと思っております。しかし、日銀は内閣の決めてまいります金融政策に関して、日銀立場で実際に行うべき任務について他の干渉をできるだけ防いでそして日銀の持っている役割というものを十分に果たせるようにしていくということで、その両者の関係というものを整理していかなければならないのではないかなと今思っているところであります。  その介入の最たるものは何かといいますと、これは法律改革の手段でありますから、それであくまでもこの法律を駆使して運営をする人がどう決められるかということが重要であります。それから、会議運営に関して、特定のところにある種の権限を持たせているということが問題であります。  この後の方から言いますと、権限を持たせているのは、政府から出される議決権のない政策委員が、議決延期請求権という余り聞きなれない権限をこの法律によって持たされようといたしております。これは、私は日銀金融政策決定に当たっての一つ介入の手段にならないかということで非常に危惧いたしておりますが、総裁いかがですか。
  216. 松下康雄

    参考人松下康雄君) いわゆる議決延期請求権でございますけれども海外の事例を見ますというと、例えばヨーロッパの一部の国には、政府の代表がこの政策委員会出席をいたしましてこの議決延期請求権を行使いたしますと、それがそのまま実行されまして、当然にその効果として議決が延期されるという仕組みのところもございます。  そういった仕組みの場合には、今御指摘がございましたように、政府の意思によって直接に政策委員会の行うべき決定変更されるということでございますけれども、今度の改正法の中に入っております議決延期請求権は、文字どおり議決の延期を請求する議案を政策委員会に出すということでございまして、この議案につきまして政策委員会の内部で議論いたしまして、決定政策委員会がその責任で行うということでございます。  そういった点から見ますというと、これは政府の考えでおります経済政策等の考え方政策委員会議論されております金融政策との間の調整をいわば公開の席上で行うことによりまして、両者の整合性を図る過程の透明性確保しようというものであるように考える次第でございます。
  217. 久保亘

    ○久保亘君 議決権のない審議委員というんですか、そういう人たちがいて、そして発言権を持ち会議の中でいろいろと意見を言うと。そして、この人たちにはほかの人たちには特記されていない議決延期請求権という一つの武器を持っているということは、これは私は実際には、金制調の館会長も言っておられるように、これが行使されることは実際はないだろう、こういうことだと思うんです。そんなものならこんなものはやめておけばいいんです。  そして、これが行使されるということになれば、それじゃ政策委員の皆さんが、政府をバックに出ている人たちの請求権行使を拒否するということは相当な力が要りますね。そういうことを考えれば、これはやはり金融政策決定のための運営に当たっての一つの圧力であり介入にならないかということを私は心配をするわけです。必ずしも諸外国中央銀行に関する諸法律の中にこれが全部あるわけではありませんですね。今御説明があったとおりです。ですから、これは検討されてよい問題かなという気がいたしております。  次に、大事にかかわっての問題でありますが、内閣の任命、大蔵大臣の任命、それから国会の承認、いろいろな類型がございますが、役員の候補者をリストアップするのはだれがどこでやるようになるんでしょうか。これは法律のわかる方でやってください。
  218. 山口公生

    政府委員山口公生君) 二十三条で「総裁及び副総裁は、両議院の同意を得て、内閣が任命する。」とございますが、この場合は内閣で人選をいたします。審議委員につきましても、「経済又は金融に関して高い識見を有する者その他の学識経験のある者のうちから、両議院の同意を得て、内閣が任命する。」と、この場合も内閣が人選をいたして任命をいたします。監事も同様に内閣でございます。理事及び参与につきましては、「委員会の推薦に基づいて、大蔵大臣が任命する。」とございますので、政策委員会の推薦が最初の人選ということになろうかというふうに思うわけでございます。
  219. 久保亘

    ○久保亘君 最後のところはわかりましたよ。理事の場合は政策委員会が推薦した者を大蔵大臣が任命する、こういうことなんですね。それで、あとの者は内閣が任命するんですというのは、これは書いてあるからわかるんです。内閣といいましても広いですから、どこでその候補者を決められるのか。  あわせてもう一つ説明してください。業界代表と学識経験者というのは、先ほどもちょっと御質問ございましたが、どこが違いますか。業界代表と学識経験者という選考基準はどこが違うんですか。
  220. 山口公生

    政府委員山口公生君) 内閣の人事担当課、人事課がやることになります。ただ、その際には政府の中で大蔵省日本銀行意見を聞かれることもあると思います。  それから、業界代表と学識経験者との違いということでございますが、現在の法律は、今ちょっと開くのは時間がかかりますから記憶で申し上げますと、都銀の代表一名、地銀の代表一名、それから農業の代表、商工業の代表というようになっておりまして、それが限られた業態の経験者からということでございますので、業界代表的に映っているということでございます。今回、学識経験者と申しますのは広く範囲を広げまして、そういった特定の業態の中での学識経験ということではなくて、その範囲を広げたということでございます。
  221. 久保亘

    ○久保亘君 そうすると、学識経験者が今度は六名選ばれるんですね。そうすると、この六名の選考をやりますときには何らかの分野ごとの基準とかそういうものを持っておやりになるんですか。学識経験者というとどういう人たちを言うのかなと、よくこれ理解できぬところもありますけれども、業界の代表というのは学識経験者には入らないと考えていいですか。
  222. 山口公生

    政府委員山口公生君) 「審議委員は、経済又は金融に関して高い識見を有する者その他の学識経験のある者のうちから、」と、二十三条の二項でございますが、なっておりますように、経済または金融に関して高い識見を有する方というのをまずは考えるわけでございます。ただ、それに限らず学識経験というふうに広げてございまして、選考の段階でそれでは経済あるいは金融界から何名というような決め方ではございません。広くそこは広がりを持たせた母集団から選ぶということでございます。  ただ、選ばれた方が例えば銀行の元頭取であられたというときに、それが業界代表だというふうに言われれば、それは選んだ結果そうなってしまったということでございまして、選ぶ段階では金融に関してあるいは経済に関して高い識見があったからだというふうに選ぶわけでございますので、その点については、特定業界を定めてその小さい母集団から選ぶのとは大分違うのではないかなというふうに考えておるわけでございます。
  223. 久保亘

    ○久保亘君 人事権が完全に内閣の側にあるということになれば、日銀運営にかかわっては、日銀のいわゆる必要だと考えている独立性というものにもかなり難しさが出てくるのかなという気がしますが、この点は今後実際にこのことを執行される中で相当考えていかなければならない問題であろうと思っております。  また、これらの審議委員の方については両院の同意事項となっておりますから、国会も責任を負うことになりますので、これらの問題が独立性の問題にとって非常に重要なことであろうと考えます。  それから、この大事にかかわって今度の改正一つの重要な問題となっているのは、総裁、副総裁、審議委員、つまり政策委員会を構成する人については、これは国会の承認人事となったということであります。もちろん政策委員については従来も承認人事でございましたけれども、総裁以下全部そうなっているということでありますが、せっかくこういう改正を行うのに、現にその任務にある者についてはこれを承認を得たものとしてみなしの扱いにするということをなぜおやりになるんでしょうか。私は、この法の効力を発する機会に現にその任にある人たちも両院の同意を得られればいいことじゃないかと思いますが、それはなぜできなかったんですか。
  224. 山口公生

    政府委員山口公生君) 御指摘のとおり、改正案におきましては総裁、副総裁につきまして国民意見が反映されますようその任命に両院の同意を要することとさせていただいておりますが、現在の総裁、副総裁につきましては、これは一定の範囲で身分の保障を付した上で任命をさせていただいておりますこと、それから法改正に伴う混乱を避けながら新体制へ円滑に移行させたいという気持ちもあるということから、経過措置を設けさせていただきまして、それぞれの任期の残任期間に限りまして現任の総裁、副総裁の身分の継続をお認めいただきたいというふうに思っている次第でございます。
  225. 久保亘

    ○久保亘君 それでは、副総裁が複数になることになっておりますが、当然新たに任命される副総裁は同意人事として国会の承認を得ることになるだろうと思っておりますが、日銀副総裁が二人おりますうちの一方は国会の同意を得た方で、一方は同意を得ていない、こういうことになりました場合に、これはどちらが上位になりますか。
  226. 山口公生

    政府委員山口公生君) 改正日銀法、御提案申し上げている法案におきましては、総裁の定めるところにより総裁を補佐して日本銀行業務を掌理する者というふうにされておりますので、法律上両者は上下の関係に立たないという前提でございます。
  227. 久保亘

    ○久保亘君 通常、法人、企業の場合には順位が決まっているんじゃありませんか。そうしてなかった場合に、代行措置をとらせる場合にはその時点で考えるということですか。
  228. 山口公生

    政府委員山口公生君) 副総裁の職務は、ただいま申し上げましたように総裁を補佐するものでございますことから、二名の副総裁の職務及び権限につきましては、総裁がその職務を適正かつ効率的に行えますよう総裁みずからが定めるというふうにしております。したがって、総裁に決めていただくということでございます。
  229. 久保亘

    ○久保亘君 なぜ、この改正の機会に二人にしなければならなかったんですか。現に二人いるものを一人にしてという改正案なら少しわかりやすいけれども、審議委員もふえる、学識経験者ということに変えて人数がふえるわけです。それで副総裁もふえる。何か理事でもいなくなるのかと思ったら、理事もそんなに少なくならないんですね。これはどういう理由で副総裁が複数になるんですか。
  230. 山口公生

    政府委員山口公生君) 背景については日銀総裁の方から補足していただくことになろうかと思いますが、現在、国際会議等が大変多くなっております。それで、毎回総裁あるいは今一人おります副総裁が出れればいいのでございますけれども、大変多忙な中、また国内業務も重要でございますし、その中での国際的な広がりにどう対応するかということで、どうしても高い位の人という者が国際会議では重要でございますので、副総裁を一人ふやしていただけないかという御提案でございます。その分理事は一人減らす、こういう形にしてございます。
  231. 松下康雄

    参考人松下康雄君) ただいま銀行局長からお話がございましたけれども、やはり中央銀行の仕事が近年、政策業務の両面にわたりまして大変に国際的になっております。私どもも、例えば国際決済銀行等では理事でございますから、八月と十月以外は毎月理事会があるということでございますけれども、なかなか現在の私と一名の副総裁ではこの理事会に毎回出席をするという余裕がございませんし、そのほかいろいろの国際会議でやはり同じレベルの人が集まりますので、理事であれば総裁、副総裁が集まる会議には正規のメンバーとして出られない、正規の活動ができないというのが現状でございます。  こういう点がございましたので、私どもも何とかその点についての手当てをしていただきたいというふうに思っておりましたが、今回、この副総裁の二名制につきましては、この点で今後の国際関係の、外国金融通貨当局との連携、協力関係の強化という面で大変適切な措置をいただいたというふうに受けとめているところでございます。
  232. 久保亘

    ○久保亘君 今言われた銀行局長日銀総裁のお話は理解できないことではありません。確かに、今金融政策にかかわる問題、財政も含めて国際化が非常な勢いで進んでおりますから、そういう意味で大変多忙になっていることはわかります。しかし、この日銀法の改正に際してうまく乗せたという感じがしないでもありません。今後の日銀の仕事ぶりを注目させていただきましょう。  それから、この日銀法の改正がもし成立したとしますならば、松下さん、今、日銀総裁としてあなたがお考えになる範囲で、日銀独立性透明性は必要な分を十分に確保できるという確信をお持ちですか。
  233. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 日銀法の改正をいかにすべきかという点は、本当に昭和三十年代にさかのぼりまして、長い期間にわたって国内でも議論が重ねられたところでございます。  また、最近はヨーロッパの統一中央銀行の設立に伴いまして、欧州各国中央銀行をできるだけ一つの基準でそろえるべく中央銀行法の改正各国で行われておりますけれども、その中におきましても、やはり独立性透明性というものを軸とした新しい中央銀行のあり方が一般に採用されてまいっております。  ちょうどそういう時期に、私どものこの日銀法の改正の検討の時期がちょうど合いましたために、その海外のいろいろな事例につきましても私どもも参考にさせていただいておりましたが、今回おまとめをいただいたこの改正案では、いろいろの点におきまして、これまでの我が国の行政上のいろいろな法人のあり方についての約束事は、それを取り入れながら、残しながら、それの運用に当たりまして中央銀行金融政策独立性透明性確保されるように非常に工夫をよくしていただいていると思います。  私どもは、この法案が成立いたしましたならば、国際会議に出まして各国中央銀行の総裁に、君たちと我々とは今肩を並べる制度の持ち主になったということを申したいと思っております。
  234. 久保亘

    ○久保亘君 衆議院でこの法案が採決されました後、附帯決議がつけられておりますが、その中で注目すべきことは、透明性確保のために、政策委員会の議事の要約について、要求があれば可及的速やかにこれを公表すべきであるといった意味のことがございました。これは日銀総裁としてはそのようなことに十分こたえられるとお考えでしょうか。  本来ならば、議事録の公開が私は透明性の上で最も重要なことだと考えておりますが、これはまたいずれ論議をするときがあると思います。今は要旨ということになっておりますが、それは可及的速やかにというのは少なくともその委員会、審議会が行われたらそんなに間を置かず、今国会の議事録なんかは翌日には出てまいります、そういう時代でございますから、速やかに提出されると、公表されるというふうに理解してよろしゅうございますか。
  235. 松下康雄

    参考人松下康雄君) これは二通りのつくりでございまして、最初の、今御指摘ございました「議事要旨の可及的速やかな公表」ということで附帯決議をいただいているわけでございますけれども、私どもも実はこれまでに前例のないことでございますので、その内容をどういうふうにしたらよいか、どういうふうに準備をしてそしてそれを公表する手続をとればよいかという点を詰めてまいらなければなりませんし、その場合には各国の実例なぞも参考にいたしまして、文字どおりこれが可及的速やかに公表されるためには、どのような手続をとればいつごろの公表が可能かということを決めてまいりたいと考えております。
  236. 久保亘

    ○久保亘君 今度のこの改正案が成立をいたしますと、私は、日銀として、国会を通じて国民に対して日銀考え方業務運営の内容などについても公表する義務は従来にも増してこれは大きくなるものと考えております。だから、国会もそのようなことを日銀に対して求めなければならないものと考えております。  したがって、今慎重なお答えでございましたけれども独立性透明性確保を目指してこのような改正を行うことについて、日銀が提案されたわけではありませんけれども、あなたも御出席になって、そしてこの法の成立を見届けられるわけでありますから、その目的にこたえられるように日銀としても全力を挙げていただきたいと思いますし、政府としても改正趣旨に沿って努力されるように強く期待をいたしたいと思います。  終わります。
  237. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 前回の答弁を振り返りながら質問をさせていただきます。  私は前回、現行日銀法、戦争中につくられたこの日銀法を戦後五十年運用する間に障害、矛盾はなかったかという問題を提起しました。これに対しては日銀総裁からも大蔵省からも、戦後の部分的な改正と実際運用面においては現実的に対応したので日銀独立性は担保され、金融政策日銀責任において決定されてきたと。したがって、実際運用面では障害、矛盾はなかったと、こういう答弁であったと思います。     〔委員長退席、理事石川弘君着席〕  そして、今改正するのは、そういう実際運用面において障害があったから、矛盾があったからということよりは、国際化時代という情勢の変化に対応して、現実に実際運用されている法律を条文の上でもきちっと明示することによって日本金融システムに対する信用を高めようと、いわばビッグバンの条件整備をするためである、こういうのが今回の改正のいわば目的だと、こういう答弁だったと思います。  そこで、私はこの答弁で本当に国民がああこれでいいなと思うかどうかと考えますと、私はがっかりするんじゃないかという気がするんです。というのは、これだと日銀余り変わらないな、実際運用面では何も変化が起こらないんだな、これまでの日銀の続きになるんだなということにしかならないというふうに思うからであります。大蔵大臣、これまでの日銀と変わらないんだということでよろしいかどうか。
  238. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 大変比喩的な視点をとられておるのかなと思います。ストレートな論議の中で、委員もよくおわかりのことだと思います。開かれた独立性そして透明性、これは政策決定のプロセスを明確にする、ディスクロージャーの問題、ただいま久保委員からも御指摘をいただきました。そういうことで、国民とともに歩むという、そういう決定方式が確立をされてくる。また、そういうことであれば、委員各位は何物にもとらわれず、物価安定、何が必要なのかと、こういうことになるでありましょうと思います。  また、独立性は数々大蔵大臣として行使できる権限がございました。それをほとんど廃止をして、まさにオープンな形で所期の目的を達成すべきであると、こういうことであろうと思いますから、今後、期して待つものがあるのではないでしょうかと思います。皆さんが大改正の後の日銀運営でございますから、法改正の原点をしっかりと踏まえてやられるものと期待をいたしております。
  239. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 私、この前も今度もいきなりこういうことから質問しますのは、この前の答弁を聞きまして、新聞というのは当たっていることを書く場合も、当たっていないことを書く場合もあるけれども、日経新聞社が出した「どうなる金融ビッグバン」という本が書いていることは、これは当たっているかなという感じを持ちながら答弁を聞いたからです。どういうことが書いてあるかというと、   日銀改正の動きが急浮上したのは九六年春。住専処理に伴う公的資金投入に対する批判が高まる最中、政治の責任を棚上げにする狙いで、連立与党が国民の目をそこから少しでも逸らそうと持ち出したのが日銀改正だ。 と、こう書いてあるんですね。そして、この本によると、その作戦は図に当たったとも書いているんですよ。  それで、何ら現行日銀法に障害、矛盾を感じなく実際運用はやったというのなら、変える必要はないんですよ、その運用上から見れば。    〔理事石川弘君退席、委員長着席〕そういう答弁だと、私は日経新聞が書いているとおりだなと思わざるを得なかった。そうじゃない、これまで運用上もいろいろ考えなきゃならない日銀法の法律上のいろいろな問題点があるから、そういうことも含めて全部改めていこうということだと言われれば、それはこっちの新聞、少々見当外れであったなということにもなるけれども、あなた方の前回の答弁はこの本の予測を証明してくれたと、こう言わざるを得ないというのが私の受けた印象であります。国民の目をそらす作戦が図に当たったということなのかどうなのか、再度大蔵大臣に。
  240. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 鋭い視点で吉岡委員、いつも御質問をいただきますが、同時に比喩的な激励をされましたり、またその書、今御指摘をいただきましたが、私読んでおりません。けれども、図に当たったと言われれば、まさに御理解を得てこれがスタートをし、開かれた独立性透明性で進めれば、まさにこの国、国民のために立派な、今までも立派でしたけれども、一生懸命にやってきたことは私は評価をいたしておるわけでありますが、さらなる国民の期待と信頼にこたえてやり得るものであると、こう思います。
  241. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 私は、日銀は変わらなくちゃならないと思うんです。それは、戦後の金融政策はすべて成功であったなどと言えない多くの問題があるからです。最近の例でいえば、バブルの発生、崩壊、住専問題等々、もういろいろな問題があると思うわけです。  こういう問題が起きているときにこの日銀法がなぜ改正されるのか。これは、今後日銀が変わるのか変わらないのか、こういうのを見届ける上で、私は戦後の日銀がとってきた金融政策のいろいろな問題を日銀が今どう判断なさっているかということを見ることが、今後の日銀を見る上での一つ判断材料になると思います。  そういう点で日銀総裁にお伺いいたします。戦後を振り返りながら、私は幾つかの時期に関して、時間の関係でごく限られた事例でしかお伺いできませんけれども、まず日銀が、いわゆる高度成長の時期ですね、この時期にとった金融政策、高度成長期において旺盛な資金需要を求める大企業に対し、都市銀行を中心とする大銀行が積極的な貸し出しを行った。これは御存じのとおりですね。これはオーバーローン、預金をはるかに上回る資金が大企業に貸し出しされたと。そして、銀行の不足する資金を日銀が供給する、無制限に供給してそれを支えてきた、こういうことは否定できない事実だと思います。日銀は大企業の高度成長に必要な資金を量的に支えるだけでなく、いわゆる人為的低金利政策をとって、大企業向け貸し出し金利を実勢よりも低く維持し、金利負担の軽減を図った。そのためにそのもとになる預金金利は低位にくぎづけするとともに、中小企業に対する貸し出しについては実質的に高い金利をとった。すなわち、零細な国民の預貯金や中小企業の犠牲のもとに大企業の資本蓄積を優先させる、こういう金融政策がとられたと私は思います。  この高度成長の時期の日銀金融政策については、すべて問題なく正しかったと判断なさっているかどうか、まずお伺いします。
  242. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 今の御指摘の高度成長の時期と申しますと、戦後の混乱から復興が一段落をいたしまして、その後我が国が一種の発展途上国として離陸を始めようというそういう時代でございますから、そのときに我が国が抱えておりました金融の問題、経済の問題がその後の高度成長期後のそれとは非常に大きく違っていることは、それはもう事実でございます。  ただ、その中におきましても、非常に高度成長を続けました間に、我が国の場合は総じてかなり良好な物価安定を保ってまいったのでございまして、その点ではその時代の経済運営金融政策運営というのは、他の先進諸国に比してまさるとも劣らないものがあったと存じます。  その後におきまして、いろいろと経済の変動がございました。その時点にはまた新たな金融問題が発生いたしましたし、私どももその時点の政策について、いろいろと今後の改善を図る参考にしなければならないということはございますけれども、その戦後の時期につきましては、総じてそういう点、高成長と安定物価の組み合わせという点は評価すべきであったと思います。
  243. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 その次の時期、経済が低成長期に入ってからのことですが、時間がありませんから、端的にお伺いいたします。過剰流動性による狂乱物価と言われる時期の金融政策については、これは日銀の大失敗の一つという多くの指摘がありますが、この時期の問題についてはどのように判断なさっていますか。
  244. 松下康雄

    参考人松下康雄君) いわゆる狂乱物価と言われた時代におきましても、それは我が国経済の高度成長に伴いまして、社会資本の水準や、それから福祉の水準を短期間に非常に急速に上げるべきだという国民的な強い需要が一方でございました。  また、それが他方におきましては、石油ショック等とも絡みまして、いろいろの物資のボトルネックを生じ得ましたことによって、非常にインフレが加速された面もございます。そういった点におきまして、私ども金融政策につきまして万全と申すことはできませんけれども、ただ、第一次石油ショックの時期の私どもの経験を活用いたしまして、例えば第二次石油ショックにつきましては、世界各国に先んじてこのショックに基づくインフレを吸収することができたというふうに、やはり政策的な問題というものをその改善の資料にしながら、その後政策が進められたと理解をしております。
  245. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 私は、あの狂乱物価の時期の日銀金融政策、さまざまな批判もある問題は、万全でなかったという程度の認識では、これは問題が残ると言わざるを得ません。  次の問題で、バブルの時期の問題です。これについては、もう衆議院以来、この日銀法関連でたくさんの論議が行われ、総裁も数多くの答弁をなさっております。日銀の総裁、副総裁の答弁を読むと、これいろいろな経過、いろいろな要因を並べて考えられていますが、結論的に言うと、当時の経過の中で別の選択肢があっただろうかと。それ以外選択がなかったんじゃないかという判断であるようにしか受け取れない。私にはそういう受け取り、見方しかできないわけです。私は、バブルの原因をここで分析してくださいとは申しませんけれども、あのバブルは狂乱物価以上に日銀の、もちろん日銀だけとは言いません、大蔵省金融行政の問題も絡んでのことではありますが、日銀に関して言えば日銀の重大な失敗だったと、こういうふうに指摘されているわけですが、そういうふうにはお考えにならないですか。失敗でなかったということですか。
  246. 松下康雄

    参考人松下康雄君) バブルの発生からその崩壊に関しましての時期の金融政策につきましては、現在の目からこれを見ますと、その当時の非常に物価水準そのものは安定をしている中で、資産価格が非常な上昇をしていた。しかしながら、他方でマネーサプライもまた増加をしていた。そういう現象に対しまして、より適切な判断を行うべきではなかったかという反省はございます。  また、しかしその後におきましての落ち込みが長く続いております原因の一つは、この当時のバブルの発生に対する対策についての問題から生じたという点はあろうと思います。ただ、それは金融政策だけが担うべき批判と申しますよりは、バブルの発生自体はもっと複雑で大きないろいろの現象が絡まって、全世界で同時多発的に発生をしたと言っても言い過ぎでないような現象であった面もございます。そういった点も含めまして、私ども今後の金融政策運営に対しましての反省の材料、改善を行っていくべき材料であるというふうに受けとめているところでございます。
  247. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 私は、今の答弁もやっぱり国民は納得できないと思います。バブルの崩壊がもたらした実態がどんな深刻なものかというのは、金融危機だけでなく、国民の中にもいまだ深刻な傷跡として残っておるわけですね。それがなぜ起こったかというのをあなた方がいろいろ分析なさる、教訓を引き出されるのはいいわけですけれども、結論として日銀が重大な責任を負うものだということ抜きに、あれこれいろんな要素がある、適切でなかった、あるいは金融政策だけの要因でないということをおっしゃったのでは、これは私は国民は納得できないと思う。そういう認識で今後の金融政策をとられると、やっぱり日銀は変わらないかなという気にしかならなくなります。  これは大蔵省にも言いたいことで、国際金融局長おられますか、おられないところになっちゃって悪いな。いや、実は本を読んでいましたらこのバブルの責任についての国際金融局長言葉も引用されている本があって、国際金融局長にも本当におっしゃったかどうか聞きたかったんですが、おられないところで読み上げるのは悪いけれども、まあちょっと言わせてもらうと、こう書いてあるんです。  これは「大蔵エリート 誇りと愚行」というちょっと衝撃的な題名の本ですが、これに、「歯に衣着せないことで知られる大蔵官僚の榊原英資は、バブルが発生したのは「国民全員の責任」だと語っている。」と、こう書いてあるわけです。そうするとバブルはだれの責任でもないんだと、ちょうどあの戦争の一億総ざんげと同じように、国民みんなだと。私は、榊原さんがいないところになつちゃったんで、名答弁を期待していたんだけれども、いないところでやろうというわけじゃありません。ちょうどおられなくなつちゃったんですが、これは本当なら、どういうところをここだけ使われたのか知りませんよ。だけれども、やっぱりあるんじゃないかと。日銀の答弁を聞きながら、これも何となくはっきりしない。一体あれだけのバブルとバブルの崩壊での深刻な事態が盗まれているときに、だれもこの責任はどこにあるかということをはっきりさせられないでは、またこれはバブルの危険が起こると言わざるを得ないと思うんです。  衆議院でも行革特の答弁では、別の閣僚はかなりはっきりと日本金融政策中心とする政策の失敗があったと、こういうふうに言っているんですよ。だけれども、ここへ来るとどうもはっきりしない。榊原さんはすかっと言ったかもしれないけれども、一億総ざんげでこれを済まそうというところからは、私は国民が、ああこれで今後は大丈夫だなということは生まれてこないと、こういうふうに考えざるを得ないんです。時間が来ちゃってあれですが、まず大蔵大臣、もう一度、これは政治の責任も含めてないのかどうなのか。
  248. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 世の中というのは、振り返ってみますとあのときこうすればいい、ああすればよかったという反省というものはどなたもお持ちであります。  そういう意味で、今時点から見れば金融、財政、諸状況を見て及ばぬところが、また先手を打つことができ得なかったのかどうかというそれぞれが反省を持っていると思います。そういう点で私個人のことを言えば、まさに政治家の一人として残念だったな、今後の指標として頑張らなければならぬと、こう思っております。
  249. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 いろいろな反省、教訓ということは引き出してもらわなくちゃいかぬわけですけれども、当事者である大蔵省日銀は、まずそこに責任があるんだと、これを出発点にしていろいろ研究もし今後の教訓も引き出してもらわないと、いろいろ並べられるとまるであのバブルの発生と崩壊が自然現象であったというふうにおっしゃりたいのかなという気にさえなるようなものなんですね。  それは、やっぱり政府責任でもあり日銀責任でもあり大蔵の責任でもある、そこを踏まえた上でのいろいろな作業でなくちゃならないと私は思うんです。日銀総裁、もう一度お答え願います。
  250. 松下康雄

    参考人松下康雄君) この日銀法の改正は、五十六年ぶりの画期的な大きな改正でございます。私どもは、この改正が行われました場合には、その趣旨をよく肝に銘じまして、なおまた、これまでのいろいろな私どもの仕事に対する、またいろいろの反省の材料も思いを新たにいたしまして、この新しい法律にふさわしい立派な中央銀行運営していくべく全力を挙げてまいりたいと思っております。
  251. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 時間が来ましたので、終わります。
  252. 山口哲夫

    山口哲夫君 前回は日銀の役員問題について質問いたしましたが、一つだけ質問を残しておりましたので、まずそれから入りたいと思います。  日銀の役員には参与が含まれておりますけれども、その参与の役割と位置づけについて簡単に説明していただきたいと思いますし、また今何人いらっしゃるのか。
  253. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 現行法におきまして、参与は日本銀行業務に関する重要事項について総裁の諮問に応じてまたは総裁に対して意見を述べることができるとされておりまして、私どもでは定期的に参与会を月に一回程度開催をいたしまして、各界からの貴重な御意見を賜っているところでございます。  現在の参与は、学界、金融界、産業界から十名の方にお願いをいたしております。なお、東京だけでなくて関西及び中京地区からもお願いをいたしております。
  254. 山口哲夫

    山口哲夫君 お聞きしますと、参与というのはアドバイザー的な機関というふうに聞くことができるわけですけれども、今回の改正では審議委員経済金融に大変高い識見を持ったプロの方々が入ってくる、こういうふうに聞いておりますけれども、そうすれば特別参与を置く必要はなくなるのではないんでしょうか。
  255. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 現在お願いをいたしております参与の方々は、各界の代表者、殊に業界団体を主宰なさるような、そういう各界の代表者にお願いをいたしておりまして、恐らく政策委員をお願いするという方々とは別ではなかろうかと、年齢的に申し上げましても別ではなかろうかと思っております。  新法におきましては、やはりこういった参与の基本的性格は変わりませんけれども政策委員会日銀最高意思決定機関となることを踏まえまして、参与は総裁ではなく政策委員会の諮問に応じ、つまり政策委員会の顧問的な役割をお願いすることになるわけでございます。
  256. 山口哲夫

    山口哲夫君 審議委員を今回新しく役員として迎えることになるわけですね。しかも、今申し上げたように大変プロの方々がいらっしゃるわけですから、そういう点では大変ダブる点があるのではないかなと思いまして、私はこの際、参与というものはなくした方がいいんではないだろうか、そんなふうに考えております。役員の問題はこの程度で終わらせていただきます。  次に、けさ楢崎先生の方から御質問もありました、日銀のリストラの問題について触れてみたいと思います。今回の法改正によりまして日銀独立性法律的に担保されたということは、私は大変意義深いことだと思っております。それだけに、日銀御自身としてもやはり自覚と責任というものが大変要求されるのではないかと思います。そこで、まずこれまでとってきた経営の合理化等について、簡単に説明をしていただきたいと思います。
  257. 松下康雄

    参考人松下康雄君) それでは簡単に申し上げますが、日本銀行の組織についてまず申し上げますと、現在の日本銀行には局・室が十六ございます。これはやはり常に仕事の見直しを行いまして、効率化、合理化等の見地から、戦後の時期から見ますというと、機構の簡素化に努力をしてきたのでございまして、一九五一年には二十四ありました局・室を現在十六まで減らしております。  また、人員につきましては、一九九五年末の日銀の人員は六千三十四人でございますけれども、これもピーク時には約九千人ほど在籍をいたしておりましたものを、人員削減の計画を重ねましてここまで減少をさせてまいったのでございます。
  258. 山口哲夫

    山口哲夫君 それなりに大変合理化について努力をされていることは私なりに認めますけれども、ただ十六も局があるというのはちょっと多過ぎやしないだろうかという印象がございます。  例えば、窓口規制がなくなったのに、毎月銀行にヒアリングの調査というものが本当に必要なのかどうなのか。そういう立場から見ますと、営業局と考査局は合併した方がいいのではないかという声もありますし、それから調査統計局と金融研究所も、これも大変密接な関連もあるだけに合併した方がいいのではないか、そういう意見も随分出ているようでありまして、そういう局の合併等について、縮小する考えはないでしょうか。
  259. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 現在のこの局・室をつくりましたときの考え方は、極力機構を簡素化いたしまして、そしてその中で現行日銀法で定められました仕事を迅速かつ的確に遂行していくためにはどういう組織がふさわしいかということを検討いたした結果でございますけれども、ただこれは、政策業務運営をめぐる環境は常に変化をしてまいりますものでございます。また、いろいろ機械化等の活用というようなことも一方では考えられるわけでございますから、日本銀行といたしましてもこういう環境の変化に弾力的に対応しながら効率を高める努力は続けてまいる必要があると思っておりますので、私どももこの見直し、情勢の変化に応ずる見直しを進めながら、さらなる効率化の道を探るという考えでやってまいりたいと思います。
  260. 山口哲夫

    山口哲夫君 機構というものはできるだけ簡素化していった方がよろしかろうと思いますので、今後も御努力をひとつしていただきたいと思います。  それで、支店が三十三もあるんですが、また事務所も国内には十二、海外には六つあるというふうに聞いておりますけれども金融制度調査会のことしの二月六日に出された答申の中にこう書いてあります。「日本銀行の支店・事務所については、交通や情報通信の進歩に伴い、効率的配置の観点から、その見直しを行っていくことが望ましい。」と、こう書いてあります。一部民間銀行を代理店として業務を行うこともできるかと思いますが、そういう点に対する合理化についてはどうお考えでしょうか。
  261. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私どもの仕事は、中央銀行といたしまして、発券業務を初め各金融機関との預金、貸し金の取引、また国庫、国際業務など多大な現場を抱えた機関でございます。そういう点から、現場機能を全国各地に効率的に展開をいたしますために三十三の支店を持ち、また十二の事務所を配置いたしているわけでございまして、それらを設立いたしましたときにはそれぞれの地域の金融経済環境でありますとか、地理的条件、あるいは各地域での金融機関との取引上の必要とか調査活動の必要性などを勘案してつくってまいったものでございます。  これも申すまでもなく、支店等を取り巻く金融経済環境等は時代とともに変遷するものでございますから、私どもといたしましては、これからもそういった変化を注意深く見守りながら、支店網の適切な配置やバランスはどうあるべきかということについて検討を重ねてまいるつもりでございます。
  262. 山口哲夫

    山口哲夫君 答申がそこまで書かれたということは、その必要性があると考えてのことだろうと思います。今総裁のお話がございましたように、ひとつ十分検討していただきたいと思います。  さて今度は、先ほど鈴木先生から大変詳しく触れられた役員、職員の給与問題でございます。大体私が聞きたいと思ったことはほとんど聞いていただきましたので、一部基本的な考え方についてちょっと観点を変えて聞いてみたいと思います。  日銀法の三十一条の「日本銀行は、その役員及び職員の報酬、給与及び退職手当の支給の基準を社会一般の情勢に適合したものとなるよう」定める、この「社会一般の情勢に適合したもの」というのはどういうふうに解釈したらよろしいんでしょうか。
  263. 松下康雄

    参考人松下康雄君) これは、役員及び職員の俸給に関しまして、これまでは金融制度調査会の昭和三十四年の指摘に応じまして、同種類の金融機関と比準をして考えるという意味で、例えば大都市銀行でありますとかそういうグループとのバランスを考えながら決めてきたわけでございますけれども、ここに「社会一般の情勢に適合した」という条件をいただきますというと、そういう比準の内容につきましても、それらを含めてさらに適切なよるべきデータというものを考えてまいることが必要であろうと思っております。  労働市場におきますところのある職種の評価でありますとか、例えばそういったものでございますけれども、一般的に、より広い観点からも適切な給与の水準のあり方を考える材料を得ていきたいと。その上で基準をつくりまして、これを公表しまして世間の方々の御納得を得るようにしたい、そういうことでございます。
  264. 山口哲夫

    山口哲夫君 今お答えがありましたように、民間の銀行、同種銀行といいますか、そういうものも視野に入れるというお考えが非常に強くあるわけですね。私は、この解釈はちょっと違うんでないかなと思うんです。  例えば、法律でこういうのがあるんですね。地方公務員法の地方公務員の給与の規定の仕方がこう書いてあるんです。地方公務員法二十四条の三項ですけれども、地方公務員の「職員の給与は、生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない。」と。同じ自治体の公務員ですね、それから国家公務員とか、そういうものを視野に入れているわけですね。そういうものとの関連の中で賃金を決めていかなければならない。  ですから、同種類の場合には、恐らく法律で書く場合にはそういうふうに具体的に書いてくるのではないかと。例えば同種類の銀行等、そういうものも基準の一つとして考えなければならないとか、そういうふうに私は法律的には書くべきだろうと思うんです。ですから、ここでは同種類の民間銀行を対象にせいという考え方というのは余りないと思うんです、ここでは。  むしろ「社会一般」というのは、例えば社会全体が大変景気が悪くなって民間も公務員も賃金が大変低くなっている、そういうときにはそういうことを配慮して賃金を決めるべきだし、ほかの方が非常にいい景気で賃金が高くなっているときにはそういうことも考えながらということであって、同種の銀行ということを頭に入れて考えると  いうのは果たしてどうかなと思うんです。それは、どうでしょうか。
  265. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 先ほど大都市銀行との比準について申し上げましたのは、昭和三十四年の金融制度調査会の指摘の話として申し上げたわけでございます。  これに対しまして、「社会一般の情勢に適合」というのは、これから私ども内容的に詰めを行いまして新しい政策委員会決定にまつわけでございますけれども考え方としましては、今申しましたような、同じ種類の仕事はほかの企業におきましても存在するわけでございますので、その間の競合というかバランスというか、そういったものは全般的には比較の対象とする必要がございますけれども、一般の狭い意味での大都銀というようなことにこだわらないで考えてまいりたいということを申したわけでございます。
  266. 山口哲夫

    山口哲夫君 なぜそういうことを申し上げるかといえば、三十一条の二項でわざわざ「給与等の支給の基準のうち役員に係るものは、特別職の職員の給与に関する法律の適用を受ける国家公務員の給与及び退職手当その他の事情を勘案して定められなければならない。」と、ここにあえて国家公務員の特別職というものを法律にきちっと書いたということは、これは民間銀行を頭に入れて考えるよりはこっちの国家公務員の特別職のことをちゃんと頭に入れて給与は考えなさいよということだと思うんですが、どうでしょうか。
  267. 松下康雄

    参考人松下康雄君) ちょっと私は今職員の方のことを申し上げておりましたが、役員の方につきましては、御指摘のように「特別職の職員の給与に関する法律の適用を受ける国家公務員の給与」「その他の事情を勘案して」と、ややそこのところで幅広くはとっておりますけれども、その一部の中には御指摘のように特別職の公務員給与が比準の対象にして含まれております。
  268. 山口哲夫

    山口哲夫君 「その他」の中に民間の銀行等も含まれるという解釈もあるでしょうけれども、ここであえて国家公務員の特別職ということをきちっと書いたということは、そこは重点にして考えなければいけないんだという、そういう私は思想だと思うんですね。私はそういうふうに解釈をいたします。政策委員会の中で十分その辺は御論議いただきたいものだと思います。  そこで、先ほども御指摘がありましたけれども日銀総裁の年収は五千百三十三万円。総理大臣等、三権の長は四千万円。一千万円以上違うんですが、これはよく一般に言われている三権の長より高いということは一体どうなんだろうか。何か特別の理由がございますでしょうか。
  269. 松下康雄

    参考人松下康雄君) これは、たびたび申し上げますけれども昭和三十四年の金融制度調査会におきまして、都銀上位行とのバランスを考えてどいう指摘に基づいて案をつくりまして、大蔵大臣の認可をいただいて定められた、そこからずっと同じ考えで来ているものであったろうと思っております。
  270. 山口哲夫

    山口哲夫君 そうしますと、今度新しく法律がつくられて、恐らく報酬のことについて書かれたのは初めてですよね、今度の法律で。ですから、ここから、来年の四月一日からは完全に役員の報酬についてはこういう法律の解釈でいかなければいけないと思うんですね。そういうことを考えたときに、私は、三権の長より高いというのは一般の国民から見ればちょっとどうかなという感じがしてならないわけですけれども、そういうことも含めて今後検討されますでしょうか。
  271. 松下康雄

    参考人松下康雄君) そういうことも含めまして、社会一般の情勢に適合するように鋭意検討いたしまして、大蔵大臣に届け出るとともに公表をいたすということになります。
  272. 山口哲夫

    山口哲夫君 その次に、副総裁の年収が三千七百十四万円と聞いております。これは、国務大臣が四千五百三十万円、国会議員が二千七百万円ですから、副総裁の報酬というのはちょうど国務大臣と国会議員の中間にあるんだなと思って見ておりました。それから、理事の年収が二千七百十九万円ですから、ちょうど国会議員並み。それより高いのが政策委員で三千三百六十二万円、これも国会議員より相当高いわけですけれども、こういう問題についても今申し上げた総裁の報酬とあわせて今後十分ひとつ検討をしていただかなければ困るんではないかなと思いますけれども、いかがなものでしょうか。
  273. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 先ほど申し上げましたような考え方で総裁の給与を決めますというと、副総裁、理事等は当然それとのバランスを考慮いたしまして決定をされていきますので、考え方からいえば共通の考え方で決まっていくものと思っております。
  274. 山口哲夫

    山口哲夫君 最後に、職員の賃金の問題についても聞いておきたいと思います。  今度の法律では、賃金についても基準を大蔵大臣に届け出るということになっているものですから、一応現状についても知っておく必要があろうと思ってお尋ねをいたしました。そうしましたら、大変偉い方を初め四人も来られましてるる説明をいただいて、こちらの方が実はびっくりしたんですけれども、私は高いとか低いとかということを申し上げる気持ちはさらさらありません。これは、総裁と労働組合との団体交渉で決められることでしょうからあえて申し上げませんけれども、しかし、今後基準を決めるということになりますと、今の私が伺った内容だけではちょっと理解できかねる点がございました。基準はこういうものですというふうに書いたものが何にもない。要するに、勤務評定をきちっとやって一人ずつを評価して決めているんですということであって、年齢とかそういうものは一切関係がないということだけでございました。  それじゃ、高いのか安いのかわかりませんというふうに申し上げましたら、持ってこられたのが一年間の人件費を国家公務員の一年間の人件費と比較をして持ってこられました。これにはちょっと私もびっくりいたしましたけれども、国家公務員が十兆六千二百三十五億円ですか、それに対して日銀は六百四十億ですということで、これでは一体一人頭どのくらいになるか全然わからないわけですね。ただ、六十一年度を一〇〇としますと、国家公務員よりはずっと引き上げ率は低いですよという数字は示してある。  ところが、よく見たら、ここ十年くらいの間の人員の削減というのは、公務員よりも倍くらい削減しているわけですね。ですから、人員数がぐっと低いわけですから、これはそんなに人件費が上がらないのは当たり前だというふうに見たんですけれども、全然そういう内容についてはお示しをいただけなかったので論議することもできないわけです。  これは、今後基準を届け出るということになりますと、今のこういった漠然とした基準ではなくして、我々もある程度理解できるようなきちんとしたものを出す予定にはなるんでしょうか、そこをお聞きしておきたいと思います。
  275. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 現在のところの私どもの職員給与の決め方につきましては、事務の方から御説明を申し上げたようでございますけれども、そういったことで国家公務員の場合のような、俸給表によって何カ月たてば昇格、昇給があるというようなそういう決め方でございませんので、なかなか御指摘のような数字の比較が困難でございます。組合との交渉はどういうふうにやっているのかということを聞きますと、やはり給与総額のベア率で交渉が行われるというのが基本のようでございますけれども、そういうふうなところを見ましても、俸給表に基づく給与決定という考え方がないようでございます。  今後の新しい給与の考え方をとってまいりますれば、やはりその総体のファンドの率というものが当然判断の手がかりになるわけでございますけれども、恐らくそのほかに、何らかの形で平均をとりまして、日本銀行の平均はどれだけ、それを同種の例えば民間銀行と比較すればどうかということが判断できるような何らかのものはやはり必要があると思います。
  276. 山口哲夫

    山口哲夫君 終わります。
  277. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時七分散会      —————・—————