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1997-02-20 第140回国会 参議院 大蔵委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年二月二十日(木曜日)    午前九時三十一分開会     —————————————    委員異動  二月十七日     辞任         補欠選任      千葉 景子君     小川 勝也君   出席者は左のとおり。     委員長         松浦 孝治君     理 事                 石川  弘君                 河本 英典君                 荒木 清寛君                 鈴木 和美君                 小島 慶三君     委 員                 阿部 正俊君                 上杉 光弘君                 片山虎之助君                 金田 勝年君                 清水 達雄君                 嶋崎  均君                 岩瀬 良三君                 海野 義孝君                 白浜 一良君                 寺崎 昭久君                 益田 洋介君                 志苫  裕君                 小川 勝也君                 吉岡 吉典君                 山口 哲夫君    国務大臣        大 蔵 大 臣  三塚  博君    政府委員        大蔵政務次官   西田 吉宏君        大蔵大臣官房総        務審議官     武藤 敏郎君        大蔵省主計局次        長        林  正和君        大蔵省主税局長  薄井 信明君        大蔵省関税局長  久保田勇夫君        大蔵省理財局長  伏屋 和彦君        大蔵省証券局長  長野 厖士君        大蔵省銀行局長  山口 公生君        大蔵省国際金融        局長       榊原 英資君        国税庁次長    堀田 隆夫君    事務局側        常任委員会専門        員        小林 正二君    説明員        経済企画庁調整        局財政金融課長  内村 広志君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○租税及び金融等に関する調査  (財政及び金融等基本施策に関する件)     —————————————
  2. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十七日、千葉景子君が委員を辞任され、その補欠として小川勝也君が選任されました。     —————————————
  3. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 租税及び金融等に関する調査を議題とし、財政及び金融等基本施策に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 河本英典

    河本英典君 おはようございます。自由民主党の河本でございます。  三塚大蔵大臣西田政務次官におかれましては、朝早くからお出かけくださいましてありがとうございます。また、大臣におかれましては、行財政改革のほか山積の諸問題、諸制度改革に取り組む橋本内閣の重要なポストで頑張っていただきますことにつきまして、まず御苦労さまと申し上げたいと思います。  大蔵大臣所信表明のうち、財政政策基本的な考え方につきまして幾つかの質問をさせていただきたいと思います。  私は、平成四年の選挙で上がってきましたが、選挙戦を通じましてよく言われましたことに、御注文いただいたわけでございますけれども、早く景気をよくしてくれということをよく言われたものでございます。そのときはもう既にバブルというのは終わっておりまして、景気については、そのときはまだ一時的なもの、一過性のもの、循環的なものというような認識が多分にあったわけでございますけれども、ここへ来まして景気というものは大変構造的なものだというようなことが認識されてきたように思うわけでございます。大変な変革期であるという認識が定着してきたことは間違いないわけでございます。  民需中心の自律的な回復ということで所信にも述べられておりますように、民間企業の地道な努力によりましてようやく長いトンネルの出口ぐらいは見えてきたような状況ではないかと思うわけでございます。私は、お役人をしていたわけでもございませんし、地方議員をしていたわけでもございません。どちらかといいますと、民間人立場議員に出させていただいておる者でございますけれども、その民間企業の大変な努力によりまして、少なくとも経営といいますか企業内の構造改革というのは、かなり進んできているのではないかと思うわけでございます。  しかし、これからは国のそういった意味構造改革、それから地方公共団体構造改革ということで、社会システム構造改革、今大変大きな課題になっておるところであるというふうに認識しております。そういう意味で、欧米に追いつけ追い越せというキャッチアップ体制からの脱皮ということがよく言われておるわけでございますけれども行財政構造改革に現在取り組んでいただいておるわけでございます。  大臣は、財政健全化が今や主要先進国共通課題であり、我が国においても二十一世紀の経済社会活力を維持するために現在の財政構造自体改革していくことが喫緊の課題であるというふうに述べられております。  確かに、我が国財政は危機的な状況にあり、先進国の中で最悪状況ということであります。財政健全化が現在主要先進国共通課題になっていることは、これまで各先進国財政共通要因課題によって悪化してきたものと思われます。その中で我が国が今や先進国最悪状況に陥っているのは、何か日本特有事情があるからなのでしょうかということを、まずお伺いしたいわけでございます。
  5. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 河本議員、前段御指摘のとおりの事情がございます。そこで、先進国一様に財政赤字の問題を深刻な政治課題として対応いたしておるわけでありますが、しからば我が国の特別な事由は何なのかという御指摘であります。  バブル経済崩壊の後、六年間にわたり累次の景気対策を進めさせていただきました。八十二兆円の巨額に及んだわけでございます。そういう中で累増する借金平成九年度現在で二百五十四兆、こういうことになります。国鉄改革ではございませんが、元利合計だけではなく利払いで首を絞められてにっちもさっちもいかなかったところに、国民的なサポートもこれあり、民営化、分割が成功したわけでございます。その規模が想像以上の財政規模でございますから、そういう中で私ども健全財政に向けての問題点がどこにあるかということで構造改革会議というものを設けながら点検をしているということでございます。  簡単に申し上げますれば、同一傾向先進国においても、現在低下傾向にある経済成長率我が国も例外ではございません。さらに、人口高齢化少子化ということにおける財政を取り巻く状況の大きな変化、そしてまた、社会保障分野における政府の役割の増大に伴う歳出の拡大、福祉国家社会保障国家ということを国是の一つに大きく掲げておるという点で本問題をどうクリアするかという点にございます。  以上、特殊事情一つ挙げさせていただきますと、バブル崩壊後の景気下支えのために、国民の声も受け、各党の御意見も受け、全力を尽くしてやった結果、下支えはできましたけれども膨大な赤字を抱えるという結果になりまして、借金地獄に陥ったということに尽きるのではないでしょうか。
  6. 河本英典

    河本英典君 そのお金を使って景気を刺激しようということが余り効果が上がらなかったということ、同時にそれは構造的な新しいステージに日本経済自体が進んでおったということも言えるわけでございますけれども日本特有事情というのが多く重なったことの結果であるというふうに認識するわけでございます。  そこで、諸外国が現在財政再建化に向けて、よその国、いろいろそれぞれ事情があるわけでございますけれども、どのような取り組みを行っているのでしょうか。この取り組みの中でまた日本が活用できるようないい方法といったらおかしいですけれども、よその例で何かいい方法というのは見出しておられるんでしょうか、その辺をお伺いしたいと思います。
  7. 林正和

    政府委員林正和君) 諸外国取り組み具体例ということでございますので、私から御説明させていただきますが、先生御案内のとおり、昨年の六月のリヨン・サミットのコミュニケにおきましても、信頼できる財政健全化計画、これが今後の投資、成長あるいは雇用の創出というものに必要だと、重要な戦略だというふうに位置づけられておりまして、諸外国でも積極的に財政赤字削減策に取り組んでおるところでございます。  幾つか例を申し上げますと、アメリカにおきましては、御案内のとおり財政収支均衡目標年次等をどうするかということで大統領と議会が対立しておりましたが、二〇〇二年度までに均衡を目指すということで一致をいたしました。さらに、昨年八月には六十年ぶりの大幅な制度改革とも言われます福祉改革法が成立いたしまして、二〇〇二年度までに五百四十億ドルの歳出削減が見込まれているという状況でございます。  また、ヨーロッパにおきましては、御案内のとおり通貨統合に参加するための条件といたしまして、債務残高GDP比六〇%以下、あと毎年度のフローの財政赤字、これをGDP比三%以下に抑えることが定められておりまして、各国ともそれぞれ努力をしているということでございます。  例えば、イギリスにおきましては、国、地方を通じたいわば政府部門のアウトソーシングといいますか、民間委託あるいは政府あり方見直しによる歳出削減を行っております。また、ドイツでは旧東独地域支援等のために悪化いたしました財政の建て直しにこれまで取り組んでおりまして、九六、九七年度と二年連続して対前年度マイナスの当初予算とするという努力をしているところでございます。  また、フランスでもいろいろ新聞紙上をにぎわしましたが、九五年度に付加価値税及び法人税の増税を行いまして、九六年度には大規模なストライキの中で社会保障費の抑制を図ると、あるいは社会保障債務返済税を導入すると、さらに九七年度には公務員の削減等により、実質マイナス予算としているところでございます。  こうして先進諸国、いろいろ努力をしておるわけでございますが、社会経済システム、これが異なりますので、こうした制度あるいは改革をそのまま我が国に当てはめるというわけにはまいらないと存じますが、ただ今後とも財政健全化を最優先課題としているこうした主要先進国における具体的取り組みあるいは手法、こうしたものも参考にしながら私どもとしても財政構造改革というものに取り組んでいきたいと存じております。
  8. 河本英典

    河本英典君 アメリカイギリスフランスの例を挙げていただいたわけでございますけれども、実は私、先般関西財界セミナーというのが京都でございまして、そこへ行ってきたところで、ニュージーランドの元の大蔵大臣が見えておりまして基調講演されたわけでございますけれども、英語の同時通訳で聞いておったので余りよくわからなかったんですけれどもポイントを言いますと、いろいろな改革を可及的速やかに一気呵成にやるんだという話を印象的に聞いたわけでございます。  日本ニュージーランドとは経済スケール、国のスケールも大分違いますので参考にならぬわけでございますけれども基本的にイギリスの流れをくんだ非常に民主主義といいますか、議会政治の進んだ国でありますので、その辺がうまくいったのか、いろんな要因はあると思いますけれども、とにかく何かうまくいったという話を聞いておるわけでございます。  その辺もいろいろ考えていただいて、日本が今問題を先送りといいますか、やらねばならないことがわかっていながらなかなかできなかったという部分も多くあるわけでございますので、ある程度速やかにスピードをつけてやるということが一つポイントではないかというふうに思うわけでございます。大変難しいことでございますけれども、よろしくお願いしたいというふうに思うわけでございます。  そんなことで、構造改革ということでやっていただいておるわけでございますけれども、特に冒頭申しました景気という局面から考えましても、経済構造改革の実践がやはり増収にもつながるわけでございますので、税収がふえるわけでございますので、大いに経済構造改革を進めていただくことでもっと稼げということで、一番おもしろいいい考えではないかというように思うわけでございますけれども政府としてこの経済構造改革景気回復基調に乗せるために具体的に、短期的じゃなしに構造改革という観点から政府として具体的にどのように取り組んでおられるのかということを、お聞かせ願いたいと思います。
  9. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 六つの改革の中における経済構造改革、国際的な競争の中で勝ち残り、成果を上げるというためにはいかにすべきかということでありますと、国際的レベル経営基本を変えていかなければならないだろうと。そのためには、あらゆる規制があるわけですが、安全のため、健康のための規制規制としても、なくてもいいものがあるという現代になりました。  その理由は、中小企業それから立場の弱い産業、これをサポートし前進をせしめるというのも行政、政治の役目かと、こういうことでやってまいったわけでございますが、世界的に見ましても、トップレベルの力を持つ国家になりました。自立をして経済活動を展開するようにしていきますことが、経済循環不況に対して乗り切れる実力を備えることになると。一時は痛みを伴うわけでございますが、これを乗り越えることによって自立した企業我が国の大勢を占めるということになりますと、持続的な経済成長が確実に見込めるであろうと、こういうことでございまして、経済全般にわたる改善、改革を取り進めるということになっておるわけでございます。  これらの問題については国会論議の中でいろいろと御提言をいただく、また御注意をいただく、また私どもから問題点を申し上げるということの中で国民生活安定向上のために、またこの国の名誉もしっかりとしたものに位置づけますためにもやり抜いていかなければならぬと思っておるところであります。財政構造改革は、実は経済構造改革とペアでございまして、公経済と私経済あり方を明確にしていくということにも通ずると存じます。
  10. 河本英典

    河本英典君 最後に言っていただいたように、財政改革経済改革は同時に行うものだということで、今橋本内閣は創造と変革ということで多くの改革を掲げられておるわけでございますけれども、本当にここへきて改革が必要だなということを痛感するものでございます。  先ほども、ちょっとお話しさせていただきました財界セミナーでの、私のもう一つ印象をついでに述べさせていただきますと、去年も実は参加させていただいたわけでございますけれども、去年はもう待ったなし、改革をせにゃいかぬということで、何か政治にその改革を押しつけるような言い方であったわけでございますけれども、ことし行って変わったのは、経済界みずからが変わらないかぬなと、変革をしなければいけないんだということで、相当考え方が変わってきたというふうな印象を受けたわけでございます。  都合の悪いことは政治がやれということが、日本の世の中の一つの風潮でございますけれども国民皆さん方にも政治がしっかりして改革をやってくるというわけでございますけれども、本当にやらなければいけないのはみんなでやらないかぬということでございますので、人の問題じゃなしに自分みずからの問題であるということが改革を行う上での一番重要なことではないかというふうに思うわけでございます。  さて、次に移らせていただきたいと思います。  政府は昨年十二月、二〇〇五年度までのできるだけ早期に国及び地方財政赤字の対GDP比を三%以内にするということ、国の一般会計において特例公債依存から脱却するとともに公債依存度の引き下げを図ることなどを財政健全化目標として閣議決定をされました。国全体の経済を考えた場合には、公的部門全体の赤字を考えることが重要でありまして、この点で国と地方財政赤字の対GDP比を指標とすることは適正なあり方だと考えます。  特に、これまで財政赤字が問題とされる場合、地方財政赤字はともすれば見逃されがちでありましたが、今後はこの目標をいかに達成していくかということが問題になるわけであります。そのためにはどのような方策をとっておられるのか、特に地方に対してはどのように働きかけて目標を達成すると考えられておるのかということを、お尋ねしたいと思います。
  11. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 国の財政運営地方財政運営地財計画をもってこれに当たるということもこれありまして、車の両輪でございます。  地域住民であり県民であると同時に国民であるという、こういう観点から日本地方自治の中におきましても地域のバランスのとれた国土開発社会資本充実、諸制度充実と両々相まって来ておるわけでございますが、国の財政の深刻な状態と同様、それぞれの地方自治体におきましても深刻な状態になってきておりますものですから、私どもまた政府といたしても、地方に対して財政健全化に向けてさらなる努力をしてほしいということで要請を申し上げ、両々相まって成果を上げようという態勢に入っております。
  12. 河本英典

    河本英典君 財政構造改革を今後とも強力に推進していくためには、さらに具体的な歳出削減のための努力を続けていく必要があると思われます。この取り組み財政当局だけに任せるだけで済む問題ではなく、まさに各歳出分野ごと公的サービスなどの水準を吟味して、将来どの程度の規模政府を選択するかという国民的な課題であると思うわけであります。  このような観点からすれば、先般、政府与党財政構造改革会議において検討が始められたということは、まことにタイムリーなことで歓迎するべきことであると思います。そこでお尋ねしますが、この会議において、今後どのように検討を進めていかれようとしておるのでしょうか。
  13. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 御指摘のように、与党三党の代表者会議提言を受けまして財政構造改革会議というものが設置をされましたことは御案内のとおりであります。  実は本日午後から、本委員会が終わった後に相なりますけれども、第二回の会議が持たれることに相なりました。本日の会議は、財政健全化目標等について大蔵省から、我が国経済の将来展望等について経済企画庁から、それと我が国少子高齢化状況等について厚生省から、現況の置かれておる状態、将来展望を含めた説明を聞き、その後、フリーディスカッションで取り組もうということに相なりました。  自後、三月上旬、参議院予算委員会の合間を見まして、これはですから夕刻になろうと思うのでありますが、第三回会議あるいは第四回会議と、こういうことを行いながら、最終的には検討会議におきまして具体的な取り進め方について決定をしてまいりたいと、こういうスケジュールのもとで取り組んでおるということであります。
  14. 河本英典

    河本英典君 その会議で、これからかなりそうしてスケジュールを組んでいただいておるわけでありますけれども、具体的な方策として、例えば財政再建法の骨格の策定なども行われるのでしょうか。
  15. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 総理大臣からもたびたび答弁が行われておりますように、平成十年の予算編成は、二年度になりますけれども、今後の会議進め方の最大のポイントになります。聖域を設けず、全支出について点検をし、見直し、取り組めるような基準を明示いたしまして予算編成に対処したいと、こういうことであります。  私は、概算要求というのは我が国予算編成の中における極めて重要なことでございますものですから、これに間に合うように、会期末にでも財政再建法提出する。宣言文だけではなく、具体的な中身を持ったもので提示をし、国会提出をしていきたいと、私の意気込みを申し上げたところであります。総理大臣は、秋の臨時国会にぜひとも財政健全化法、仮称でありますが、提出をして御論議をいただきたいと、こういうことになっておるわけであります。  目指すところは同じでありまして、年末予算編成に向けて、腹を据えた構造改革の第二歩でありますが、名実ともに九年、十年をあわせますと確実な構造改革がこれによって前進をすると、また、内閣の責任で前進をせしめるものにつくり上げていきたいと、こういう決意でございます。
  16. 河本英典

    河本英典君 かなりもうスケジュールを具体的に進めていただいておるわけでございます。我々も、協力させていただく方向で頑張らないかぬというふうに思うわけでございます。  次に、税制についてお伺いしたいと思います。  我が国は、人生八十年という世界の最長寿の高齢化社会へ突入しようとしているところであります。同時に、少子化が急速に進んでおります。世界に例を見ない超高齢化社会を迎えようとしておりますが、老人の人口がふえ、勤労世代人口が減っていくために、現在の諸制度を前提とする限り、勤労世代負担はどうしても増大していく傾向にあるわけでございます。経済社会活力を、今後いかに維持していくかが大切な課題であると考えます。  こうした状況の中で、時代に即した税制に変えていかなければならないことは当然のことではありますが、一時的な不平等感逆進性ということでなかなかコンセンサスを得ることが難しくて、ほんの小さな税制改革さえなかなかできにくいというのが現状かもしれません。  しかし、国家にとって最も大きな損失活力の喪失であると思うわけでございます。やる気がなくなるということが一番いけないことでありますので、この辺は税制上の不平等感によってやる気がなくなるようなことが続くようでありますと非常に大きな損失であるということ。税率、特に国際化の進む中で諸外国税率よりもかけ離れて高い税率があるようでは、今言いましたやる気が起こらなくて活力が出ない、保てないということになるわけであります。  そういった意味で、中長期的に税制を考えるに当たってはぜひ、やる気活力を起こすような税制を導入するように考えていただきたいと思うわけでございます。  所信表明におきまして、四月からの消費税引き上げを含む税制改革意義大臣は述べておられるわけでございます。その意義とは、具体的に何であるかを確認させていただきたいと思います。
  17. 薄井信明

    政府委員薄井信明君) 本年四月から消費税率地方消費税の分を含めて五%になりますが、御指摘のように、これからの我が国少子高齢化ということを踏まえまして新しい税制はどうあるべきかということを平成六年の秋に御議論いただきました。  その過程で、まさに御指摘いただいたとおり、所得税個人住民税につきましては税率の高さについてはさわりませんでしたが、税率適用区分、ブラケットを広げることによりまして、一般の方であれば、所得税でいえば一〇%から二〇%の税率で済むようにしていくということが活力につながる、あるいは少子高齢化時代負担の仕方として適切であるということから所得税個人住民税のいわゆる減税を決めていただき、またそれに対応して広く負担を分かち合っていただくという意味消費税率引き上げ、それから地方消費税の創設ということを決めていただいたわけでございます。まさに平成六年秋の税制改革、これがこの四月から完成した形で動き出すということでございまして、その趣旨は御指摘のとおりでございます。  なお、今後のことを考えていきますと、さらに少子高齢化、先日発表になりました厚生省の統計によりますと進んでいくということでございます。これに対応した税制あり方、あわせてこれも御指摘のように諸外国との関係が近くなっております。ボーダーレス化の中でそういった税制との比較というものがされるわけです。この点も十分考えていかなければいけないと思っております。  なお、当然のことながらもう一つは、むだな歳出はこれは切らなければいけませんけれども、必要な行政サービスを賄うための税収総額というものはどうしても要るわけでございますので、その総額をどういう税金で賄っていくか、一つ一つの税目には一長一短ありますので、これをいかに組み合わせていくかということで、今後とも考えていかなければならないと思っております。
  18. 河本英典

    河本英典君 四月から消費税の税率が上げられるということで、消費税のことばかりがクローズアップされておるわけでございますけれども、ぜひとも総合的に考えていただかないとだめだと。特に、減税を先行しますと減税したことを忘れてしまいまして上がることばかり言うわけでございますけれども、私は消費税ということにつきましては、選挙で上がってくる者は大変敏感で嫌がるわけでございますけれども、これはやはり先ほど言いました直間比率の問題でございますけれども、大変よそより所得税とか法人税が高いということは、先ほど申しました経済活力にかかわる大変重要な問題であると思うわけでございます。  日本は確かにそういった意味で高い水準にあることは間違いないわけでございますし、ぜひとも活力をなくさないように、海外へ逃げていくことのないようなことを考えて税制というものを考えていただきたいなというふうに思うわけでございます。  同じく所信表明で、今後の税制に取り組んでいく際には、刻一刻と変化する我が国の社会や経済に即して絶えず改革が必要であるというふうに述べられております。現在、経済が急速にボーダーレス化している中、我が国企業活力を維持するためにも法人課税の引き下げということが非常に求められておるわけでございます。先ほどお答えいただいたわけでございますけれども税率は下がらなかったわけでございますけれども、今後の課題として、他方では財政は危機的な状況にあるわけでございますので財政構造改革は喫緊の課題になっており、財源を明らかにしない法人税課税というのは困難であるということはよくわかるわけでございます。  こうした状況の中で、今後法人税改革というのをどのように進めていくかということの考え方を、お尋ねしたいと思います。
  19. 薄井信明

    政府委員薄井信明君) 法人課税と申しますと、法人の所得に対して国の法人税とそれから地方の法人課税がございます。それを合わせまして世では法人課税と申しております。  この法人課税のあり方につきましては、税負担の公平ばかりでなく経済活動に対する中立性といったような基本観点が必要でございますし、あわせて我が国の産業構造の変化、これを踏まえていかなければいけない、そういう観点からの見直しが重要であるという認識を持っております。  一方で、それでは日本法人税がどういう位置づけにあるかということを整理してみますと、税率水準につきましては、確かに欧米諸外国に比べて高いという認識を私どもも持っておりますし政府税調でもそのような認識でおります。一方で、税率をかける先となる課税ベースにつきましては、一概にはこれ比較しにくい面はありますけれども、これも国際化とか時代の流れに合わせて考えていかなければならないと思っております。  そういう意味では、課税ベースの見直しというもの、適正化ということからアプローチをしていく際に、それによって財源が得られるとするならば、先ほど御指摘のように、現在の非常に厳しい財政事情の中でも税率の引き下げということがその財源によって可能であろうと思っておる次第でございます。  こうすることによって、法人課税の税収全体があるいは減らないかもしれませんけれども、個々の企業にとっては影響があるわけでございます。つまり、税の中立性が高まるわけですから、これによりまして日本企業なり産業の活力は発揮できる、あるいは課税ベースが広がっても税率が下がることによって新規産業の創設につながるということも考えられると思っております。  法人税の実質的な負担水準の問題も、これは私ども認識の中にはありますが、この点につきましては財政事情全体の中で考えなければならないわけでして、観念的に考えますと、赤字公債を発行して法人税の実質的減税というわけにいかないとすれば、その他の手法をどう考えていくか、これを分析していかなければならないと思っております。
  20. 河本英典

    河本英典君 後段でお話しされましたように、本当に活力ということをぜひとも考えていただきたい。私どもは関西でございますけれども、商売の言葉で、損をして得をとれという言葉がございます。法人税課税を下げるということは、一見損をするようでございますけれども活力を与えることでたくさんまた税収が返ってくるということで、その辺をよく考えることが非常に大事ではないかと。  どうも、お役所の考えでいきますと、まず取ることから入りますので、取ってしまうと後はばねがなくなりますので取れないということになります。損をして得をとれという考え方活力を期待するということが、これからの二十一世紀云々言われておりますけれども、私は一番大事なポイントではないかというふうに思います。なかなか難しいかもしれませんけれども、ぜひともよろしくお願いしたいと思います。  次に、財政投融資について少しお尋ねします。  財政投融資についての抜本的な見直しが求められておりますが、個々の財投関連事業の見直しも当然でありますが、全体の枠組みの見直しも行うべきではないかということ。我が国の金融市場に占める公的資金のウエートの高さについてどのように考えておられるのか、また財投の入り口である郵便貯金、簡易保険等、出口の財投機関の今後のあるべき姿についてどういうふうに考えておられるのかを、お聞きしたいと思います。
  21. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) お答え申し上げます。  財政投融資につきましては、財政政策の中で有償資金の活用が必要な分野とか、また適切な分野というもの、そういう分野があるわけでございまして、そういう分野に対応いたします基本的な役割とか必要性は私ども将来的にも残ると考えているわけでございますが、その受け持つ具体的役割につきましては、今委員が御指摘になられましたように、例えば全体の金融の中でどう占めるかとかそういうものも含めまして、社会経済情勢の変化等に応じまして変わっていくことは必要であると考えているわけでございます。  その意味では、この委員会でも大臣所信表明で述べられておりますように、財政投融資の改革を推進するとの基本方針のもとで、民業補完の観点をも踏まえまして、社会経済情勢等に応じまして対象の分野とか事業を見直しまして、資金の重点的、効率的な配分を図っていくことが必要であると考えているわけでございます。  今、言われました金融全体の中での話でございますが、一つは金融システム改革という話があるわけで、これは金融市場を活性化させるという方向でございます。そこの中で、財政投融資のいわゆる金融的手法によって行われているものでございますので金融市場の活性化そのものとは性格が異なるわけでございますが、しかしながら全体の中で、今委員が御指摘になられましたように、これからどういうぐあいに財政投融資の改革を進めていくかということで、まさに先般、資金運用審議会の懇談会が開かれまして広く専門家の意見を聞きまして、これから本格的な検討、研究を進めさせていただきたいと考えておるところでございます。
  22. 河本英典

    河本英典君 最後に、今ちょっと触れられました金融システム改革ということについて、お伺いしたいと思います。  欧米の金融市場はこの十年間に大きく変わりまして、我が国の金融市場はおくれをとったんではないかというふうに憂慮されております。二十一世紀の高齢化社会において我が国経済活力を保つためには一千二百兆円もの個人貯蓄を十分に活用できる場が不可欠とのお考えから、日本版ビッグバンとも言うべき金融分野における抜本的改革を決断されたことは高く評価されるものであります。しかし反面、この徹底した改革は不良債権処理等さまざまな苦痛を伴うものでありまして、これらの困難を乗り越えて二十一世紀にふさわしい我が国の金融市場を構築していくに当たっての大臣の御決意を、お伺いしたいと思います。
  23. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 金融システム改革、いわゆる日本版ビッグバンと言っております。グローバルな観点で国際性を持たせる、そして自由かつ公正な取引が行われ、預託者、預金者の利益にかなう、最終的には世界の基軸通貨である我が国の円が信用を倍加して世界経済の中で厳然たる地位を確保することができ得ますことが我が国の国威の発揚にもつながるということで取り組まさせていただくことに相なりました。今もお話ありましたとおり、金融関係五審議会、協議会をつくりまして、六月ごろをめどに基本的な報告を提出願いたいと、こう申し上げ精力的な審議が行われておるところでございます。  外為法改正案が提出をされ、御審議をいただくことにも相なります。フロントランナーということで、日本の円がいっどこでもこれが活用され、世界経済の潤滑油としての役割を果たしていただくようにということになりました。  保険もいよいよ開放、開国型になりました。昨年の十二月、困難な協議でございましたが、ともに痛みを分かち合いながら、サービスを提供するという商売の基本原点を踏まえてやらさせていただくということになりました。  いよいよ資本主義、自由主義経済下におけるこの世界経済の中で、特に経済国家としてこれからさらなる安定と成長を続けていかなければならないという大方の御要請の中でございますから、痛みの伴う金融改革、いろいろな問題が起きてくると思います。しかし、日本人の英知と日本人の努力によってこの困難もよい方向に転換できると私は信じます。そのためには政府として、また主管官庁としてそれらも視野の中に十二分に取り入れながら、かつ迅速果敢にこの金融システム大改革を断行し、二〇〇一年をまたずしても完成するようにしていきたいものだと思っておるところでございます。
  24. 河本英典

    河本英典君 御決意を聞かせていただきまして、あとはやるだけだということで、日本人の英知と勇気にかけたいということでございます。  そういったことはマクロ的な目で見ていただいておるわけでございますけれども、国際経済日本経済というか、マクロで見ていただいておるわけでございますけれども、先ほど申しましたように、それぞれの民間企業活力がその細胞でございます。その辺はマクロ的なことばかりで、森を見て木を見ず、木を見て森を見ずということがよく言われまして、まさしく消費税などは木を見て森を見ずかもしれませんけれども、それら改革につきましてはその逆でありまして、本当に活力ということが大事なことであるということを私はぜひとも申し上げたいなと。やる気を起こさないと国も企業もどうも立ち行かないということでございますので、ぜひともその視点も加えていただきたいなということをお願いしまして、終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  25. 海野義孝

    ○海野義孝君 平成会の海野でございます。  本日は、三塚蔵相を初め御多忙のところを早朝からお出ましいただきまして、大変ありがとうございます。  今、河本議員の方からほとんど網羅的にお話がありまして、私が言うことがなくなりましたので甚だ困っているわけでありますけれども、一応ふだん自分がやっている範囲内で御質問をさせていただこうと思います。  二壕蔵相は大変熱意のおありになる方でありまして、一御質問すれば三ぐらいお答えになるので大変、片道計算ならいいんですけれども、私は二十五分しかありませんので、私が五分で蔵相が二十分おやりになったんでは私の存在価値もなくなりますので、その点ひとつ、ふだんからも重々、衆議院の状況あるいはマスコミ等での蔵相のお話は承っておりますから、簡潔にお答えいただければと思います。
  26. 三塚博

    国務大臣三塚博君) はい、わかりました。
  27. 海野義孝

    ○海野義孝君 実は、昨年十二月に、二十五日ですか、政府平成九年度の予算案を御発表になりましたけれども、これには必ず政府経済見通しというのが同時に、前提としてですが、御発表になるわけであります。  近年は大変評判がとみに悪いと、天気予報よりも外れるということでありまして、これは決して私は政府を責めるわけじゃなくて、民間に私もいまして、近年はバブルの崩壊後はまことに経済予測は難しかったわけでございます。それほどバブル後の御苦労は政府当局におかれても大変だと思いますが、平成九年度につきましては名目成長率が三・一%で、実質成長率が一・九%、こういった数字をお出しになったわけでありますけれども、そうしたこの数字が、私は今衆議院で審議されております平成九年度の国家予算、これの前提となっておりますので、そういう意味からすると、この見通しが大きく上に外れれば大変幸せなことですが、大方の見方は下に外れるんではないかということが危惧されるわけであります。  そういうことで、私もうちょっと、この政府のお出しになっている経済見通しにつきまして、四半期ごとの数字をひとつ御提示いただきたい。これが平成九年度の、この四月から来年三月にかけての我が国景気のトレンドあるいはパターンを示すわけでありますので、四半期別の数字、名目でも実質でも結構ですけれども、御提示いただきたいと思います。
  28. 内村広志

    説明員(内村広志君) 来年度の日本経済につきましては、消費税率引き上げ等により、前半の景気の足取りは緩やかになるものと見込まれますが、経済構造改革の実施等と相まって、次第に民間需要を中心とした自律的回復が実現されるものと考えております。この結果、先生御承知のように、年度全体としての実質経済成長率は一・九%程度になるものと考えております。  今、四半期ごとの経済見通しを出すべきではないかということでございますが、現在のところ年度一本の経済見通しをつくって、四半期ごとのものはつくっておりません。それは、いろんな技術的な理由でどういうふうに四半期ごとの前提を置くかというのが非常に困難であるからということでございます。
  29. 海野義孝

    ○海野義孝君 今の御答弁では、ちょっと私が質問したことに意味がないわけでありまして、きちんとお答えしていただかないといけない。ということは、私がいました証券会社でもいわゆる総合研究所におきまして大体向こう二年ぐらいの四半期別の予測というのは絶えずやりまして、それを段階的に中期的予測というのを、日本経済なんかもやっておりますが、これは大体総合研究所はどこでもやっておりまして、要するに一・四半期過ぎればさらに一・四半期先ずらしながらやっていくわけでありまして、やはりそういったものを出していかないと、実際の企業なんかの経営に携わる場合、あるいはまた総合研究所みたいなそういった予測とかいろいろなものを、レポートを売り物にした場合に売れないわけですね。買ってくれるところがないということがあります。  政府のお立場では、そこまで新聞等で出すということはいささかかと思いますけれども、やはりこういった大変難しい時期でありますから、大蔵大臣所信の、この間十三日ここでお述べになったときにも、やはり民間の自律的な回復といったものをさらに順調に伸ばしていきたいと、そういったことに期待を持っていらっしゃると、こういう御答弁があったわけです。確かに一時的にはデフレ効果が出てくるわけですから、そういう意味では来年度の前半は景気がやはりやや後退するというか、伸びがダウンするということはわかりますけれども、しかしながらそれで済むのかという問題なんですね。  そういう意味もありまして、お立場上お答えできないならこっそり後で私に教えていただいても結構ですけれども、公表できないというならあれですが、私はやっぱりそういったものはお出しになるべきじゃないかと。つくってないといろんならこれは大変大問題でありまして、そういったことをやらないで、ガラガラポンで、えい、やあで見通しを出して、それに基づいて予算を組むというようなことは、少なくともこれから日本が六つの改革を掲げておやりになるというにしては、そのスタート時点においていささかいかがなものかなというふうに私は思うんですけれども、重ねて大蔵大臣でも結構ですけれども、お答えをいただきたい。
  30. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 海野議員のただいまの御提言、お聞きしておりましてごもっともだと思います。しかるべく私から経企庁に連絡をとらさせていただきます。  問題は、一・九達成するかしないかということでありますが、海野議員指摘されましたとおり、自律的な経済活動が展開されるであろうと。その前提は、規制緩和が進んできております。諸改革前進をする、また、せしめなければなりません。それと、先行減税を三カ年にわたりまして行いました結果、経済のベースがそれによって下支えができておるという事実も見逃してはならぬだろう。そういう意味で一・九は達成可能であるし、達成はできると、こう申し上げたところであります。  先般、ベルリンでG7蔵相会議がございました。冒頭IMFの見通し報告がなされました。日本経済二・五、私どもが一昨年報告をしたとおり確実な達成が行われた。私ども平成九年の経済成長は二・二と見ておりますと、こういうことでございました。  いろいろ見方によって異論があろうかと思いますが、IMFの専務理事がエコノミストでありますけれども、マクロ経済の発表の中で、本件が皆さんがいるところで発表をされたというところに権威があるのかなと、それを目標に、それを神頼みはいたしません、着実に行財政の積み上げの中で努力をしてまいりたいと思っております。
  31. 海野義孝

    ○海野義孝君 ありがとうございました。  実は、九二年度から九四年度にかけての三年間というのはまさに激動のときでありまして、このときは政府経済見通しも期中において大幅に下方修正なさったということがありました。このときは図らずもやはり不景気でしたから、予想以上に景気は落ち込みましたから、そのために補正予算で大幅な公債の発行をせざるを得なかった、こういう問題があったわけであります。  単純に経済予測が外れたことを私はとやかく言うということではなくて、政府のお出しになる経済予測というのは、いろいろ言われますけれども、やはり頼りにされるわけでありますから、それに基づいて予算を執行する。いわゆる予算の歳入についてはこれはあくまでも見通しであります。そのよすがとするのは一つ経済の予測であろうと思うんです。景気は去年より少しよくなるぞと、そうすると税の自然増収もふえるんじゃないかと、こういうことであります。  歳入は見込みでありますけれども歳出はほぼ決定です。そうすると、予測が狂えば歳入が狂ってくる、歳入が狂えば、執行する方の歳出は行け、進めでやっていますから、どこかの政府では、来年度は予算執行の途中で削減していくというような神わざみたいなことをおっしゃっている政府があるようですけれども、これは私はちょっと脇に落ちないんですが、それはそれとしまして、そういう意味でも、予算平成九年度は三%、しかしその中でいわゆる交付金とそれから国債費というのを除いた一般経費で見ればわずか一・五%という、大変厳しいと。全体では三%ですけれども、それが一・五%、大変厳しいということであります。  そういった中で、さっき大蔵大臣がおっしゃった実質で一・九%、名目で三%、これは名目でいいわけなんです、要は。実質というのは物の動きですから数量でカウントする部分としますれば、いわゆる名目というのはそれにインフレ率なりデフレーターを掛けたものでやるわけですから。予算というものは、現実に四月からもし消費税が上がれば、今まで百円プラス三円、百三円であったものが、百五円になるかあるいは百四・五円かもしらぬけれども、名目的には当然上がるわけですから、そのことは心配ないと思います。  ただ私は、余りこればかりもやっていられませんが、この三月で終わる平成八年度の政府の見通しというのは、まさにどんぴしゃりになりそうなんです。二・五%、全く修正されていないんです。されるんだったら去年の暮れの政府の九年度予算案をお出しになるときにされるのに、なかった。なぜ狂わなかったか。これはげたなんですよ、げた。げたが二・二%あるんですから、あとこの平成八年度が横ばいでいったって二・二なんですよ。  ところで、先ほどお答えいただいた経企庁の方、この九年度の政府の名目三・一、実質一・九%予測のげたの部分が幾らから始まっているか教えてください。
  32. 内村広志

    説明員(内村広志君) たまたま今手元に数字ございませんが、げたと申しますのは、先生御案内のように四半期別の動きを前提といたしまして、平均的な年度の平均的な成長率、それと最後の成長率の差でございます。残念ながらまだ八年度の国民所得速報は七−九月期までしかまだ出ておりませんので、一−三月期がどうなるかというふうなことが判明した際に、そのげたというものが計算されるものというふうに考えております。
  33. 海野義孝

    ○海野義孝君 ありがとうございました。  私が調べさせたある総合研究所では、この三月で終わる平成八年度の実質成長率が二・四、それに対して平成九年度政府がお出しになった一・九に対しては一・四、この前提となるげたは〇・五と、こういう数字なんです。そうしますと、かなり昨年の発射台とは違って相当低いところからスパートしますから、特に前半はデフレギャップが一段と拡大するということになりますれば、後半しり上がりに景気がよくなっていかないと一・九%ないしは名目の三・一%の成長達成は無理だと。  最後に、この問題で大蔵大臣にお聞きしたいのは、もしかしたら秋ごろに見通しが不幸にして狂って、つい一月にやりましたような二兆六千億の補正予算、あの中では残念ながら一兆三千億円の公債を出した、こういうような不幸がことしの秋ごろに再びやってこないかということについて、これはおまえそんなこと言ったって今からそんな先のこと言えるかと、当面の毎日毎日が大事だと、これはわかるんですが、その先も考えていただかないと、最近盛んに新聞でまさに散弾銃みたいに景気のいい話が次から次へと出ているという話が国民的な立場からいうと余り信用できないと、こういうことになるんです。そういう意味でちょっとその辺、そういった懸念はないかという点を教えていただきたいわけです。
  34. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 大変含蓄のある経済見通し、積み上げの御教授をいただきました。  見通しが狂わないかということでありますと、海野議員言われましたとおり、それはないと、こう言わざるを得ないわけで、目標に向かってありとあらゆる努力をしなければなりません。特に財政金融という財投の問題、改革改善の前に立っておりますけれども、その機能をフルに活用するということは、予算編成を経ずしてやり得ることでございますから、そのときは機動的に対応するということになろうかと思いますが、基本は三・一、実質一・九を目指しまして、月々の経済状況に重大な関心と分析を行いながら、経済財政運営に万全を期すことで御期待にこたえたいと思います。
  35. 海野義孝

    ○海野義孝君 どうも大変ありがとうございました。  では次に、金融制度改革の問題について、河本議員もさっきお触れになりましてそれなりの御答弁がありましたけれども、この問題につきましてあと十分少々の時間御質問させていただきます。  はっきりした日にちを覚えておりませんけれども、橋本総理が六つの改革を御発表になった。その中で教育の問題はことしに入ってからかと思うんですが、その六つの改革は、先ほどの私的公的というような面で財政構造、経済構造というお話、行革の問題、それからあとは金融システムの問題、あるいは社会保障の問題、社会制度とかそういった問題、全部で六つということですけれども。金融システムですね、たしか六つの中には金融制度改革とはなっていませんでしたね、金融システムですね。
  36. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 金融システムです。
  37. 海野義孝

    ○海野義孝君 そうですね。この六つの改革に対して去年の十一月に総理がお出しになった金融制度改革、いわゆる日本版ビッグバン、六つの改革よりもビッグバンの方がもっと大きな改革ということなんですか、言葉が悪いんですが。これはだれが言ったか利口な人が日本版ビッグバンと言ったんだけれどもイギリスが八六年にやったビッグバンは証券問題ですけれども日本のビッグバンは総称して金融、証券、保険ですから、もっと大きいという意味でビッグバンと言えばイギリスに対しては言えるかもしらぬけれども、六つの改革よりももっとでかいという意味なんですか、それともこれとの位置づけはどこになるんですか。その辺をまず大蔵大臣にお聞きしたいと思います。
  38. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 基本日本の金融システム改革でございます。その中核にありますのは市場改革でございます。そういうことの中で本件に取り組む、できるものから一つずつ前進をせしめると。前段申し上げましたとおり、六月に各審議会からまた協議会取りまとめの方向をいただきまして、やり得るものには全力を尽くしてやる、こういうことで取り進めさせていただく、こういうことであります。
  39. 海野義孝

    ○海野義孝君 ありがとうございました。  大蔵大臣が、十三日にここで所信をお述べになった中にこの問題もありまして、そのときにたしかフロントランナーという言葉を使われて、外為関係の業務のほぼ完全自由化ということについてお話しになりましたけれども、これは来年の四月から実施するという方向で本常会において法案化したいと、そういうようなことでよろしいんですか。
  40. 三塚博

    国務大臣三塚博君) そのとおりでございますので、御提案を申し上げますので、格段の御審議をお願い申し上げます。
  41. 海野義孝

    ○海野義孝君 それは大変結構なことでありますけれども、現在でも懸念されております我が国のいわゆる金融の空洞化、この問題の加速剤になるんではないでしょうか。
  42. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 後で、榊原国際金融局長がおりますから深度を深めて御説明をさせますが、本件はイギリスのロンドン・ビッグバンも同じようにフロントランナーでスタートを切りました。いろいろ功罪がありますが、結果的にそのことがイギリス市場が活性化した前例にちなみ、国際国家日本が円というこの貨幣をオープンにしていくということからスタートを切った次第であります。
  43. 榊原英資

    政府委員(榊原英資君) 委員も御承知のように、海外でも、アメリカの場合には外為法というのはございませんでしたけれども、対外関係の規制の緩和、一番最初に六〇年代の後半から七〇年代の前半に行われ、国内の金融の規制の緩和が七〇年代から八〇年代に行われた。イギリスの場合には、一九七九年に外為法の完全な自由化が行われて、ビッグバンが八三年から八六年ということで、海外を見ましても大体外為法関係あるいは国際関係の自由化が先行して、それを国内的な金融の規制の緩和が追っかけるという形になってございます。  それから、御心配の空洞化につきましても、来年あたりから国内の金融の緩和が引き続き行われるということでございますから、空洞化が外為法改正によってさらに拡大するということになるとは思っておりません。
  44. 海野義孝

    ○海野義孝君 どうもありがとうございました。  大変明るい展望ということなので、そのようにいくことを願っておりますけれども、必ずしもそう簡単ではない。といいますのは、このところ立て続けに金融システムが不安視されるような報道が余りにも多いということでありますし、それから昨年の十一月の終わりでしたか、阪和銀行の破綻問題が起こった際に、一年ぶりですか、再びジャパン・プレミアムが上がり始めているという問題があります。  このところ、日本の長信銀行の業務についての先行きに対して大変警戒的なそういう報道がなされておりますし、ムーディーズの予測によりますと、レーティングを下げると、これは既に投資対象ではない、ジャンクボンドだというようなことまで言われているわけでありまして、こういうように、ビッグバンと打ち上げたのは大変結構であるし、フロントランナーも来年の四月と蔵相はおっしゃったけれども、もう既に今走り始めているはずでありますから、そうしていきますと、私はイギリスの場合でも確かに外為業務の自由化ということが先陣を切ったということはわかりますが、当時のイギリスと現在の我が国バブルの崩壊後の大変疲弊したこの金融業界、マーケット、こういった中でそういった金融制度改革を行っていくについては、証券につきましても大変厳しい問題があるわけであります。  そういった意味でも、預金者保護あるいは金融業界、機関、こういったものに対して破綻とかそういった問題、来年の四月からは早期是正システムを稼働すると、こういったことになってきますと、そういった中で本当に日本のまず国内の金融市場、証券市場、そういったものをしっかりと、守るとは言いませんけれども、守るというと何かかつての船団方式になりますけれども、それじゃなくてビッグバンの改革に向けては血を流すわけですから、少なくとも国内の市場に大きな悪影響を与えないようにするということをとることがまず一番大事なことじゃないかと、そのことを最後にお聞きしたいと思うんです。  その点では、具体的にその問題不良債権が一体幾らあるかがわからないと、したがっていろいろと処理をしていてもその先にまだ不安があるということがマーケットでは動揺の原因であるわけですから、そういう意味でも金融の破綻というような問題に対しては万全の対策を講じる。例えば、ペイオフシステムに移行するまでの期間においても、これからどれだけ不幸にしてそういったものが出てくるかもわからぬ。現在の預金率を上げて七倍にしたところで年間五千億、預金保険機構もあと三千億しか金がない、日銀から自己資本を引っ張り出してくるということだってそうそうできるものではないということを考えたときに、そういったものに対する万全の対策ということの方が私はまさにフロントランナーではないかと、このように思うんですけれども、その辺についての対策、それをはっきりとひとつ大蔵大臣にお答えいただいて、私の質問を終わります。
  45. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 金融機関の破綻及びその後、不良債権の解消という我が国金融界に課せられました最大の課題に向かってただいま取り組んでおることは御案内のとおりであります。  特に、昨年六月に金融三法が成立をいたしまして、金融機関経営の健全化確保の諸施策が整備をされたところでございます。二十一世紀を迎えるまでの間、預金者が保護される等の枠組みができましたことが、各金融機関においては、こうした制度を踏まえながら、現在不良債権の早期処理、それなりの成果が上がっておるわけでございます。経営の健全性確保に向けて最大限の努力をしております。ムーディーズその他報道が先行していろんなことが言われておることは承知をいたしておりますが、最大の関心と注意力を持って事務当局に分析を命じておるところであります。その報告を聴取いたしておるわけでございます。  そういうことで、海野議員指摘のとおり、万全の対策をもって臨めというこの御激励、御見識といった方がよろしいと思うんですが、この点はしかと踏まえながら、同様の気持ちで万全の対策を講じて、まず日本の金融体制が信認を回復する、こういうことで取り進めたいと思いますので、格段のまた御鞭撻をお願い申し上げます。
  46. 海野義孝

    ○海野義孝君 時間が過ぎていますけれども、一言おわびを。長野証券局長にもお越しいただいたんですが、時間が来ましたので、また次の機会にお教えいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。  ありがとうございました。
  47. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 平成会の荒木清寛でございます。  私は、まず財政再建の問題につきましてお尋ねをいたします。  ことしの三月末で国と地方借金が五百二十一兆円になると、大変な危機的な状況にあるわけです。政府も昨年の十二月十九日に「財政健全化目標について」という目標を設定されたわけです。  そこで、またきのうの報道によりますと、橋本総理大臣も増税なき財政再建を決意している、またそういうことを表明するというお話でありました。ただ、私に言わせますと、ことしは大増税元年でして、消費税アップ、社会保険料のアップ、また所得税減税の打ち切り等で九兆円の税負担増になっているわけでありまして、今さら何をという感じもするわけであります。しかし、それはそれとしましても大蔵大臣もこの財政再建は増税なしに行うという決意なのか。  具体的に言いますと、この十二月十九日に掲げました国及び地方財政健全化目標、また国の一般会計財政健全化目標というのがあるわけです。後者についていいますと、二〇〇五年までに赤字国債から脱却をすると。最終的には「公債残高が累増しない財政体質を構築する。」ということですから、赤字国債も建設国債もゼロにするという目標があるわけですが、この目標の達成を増税なしにするんだという、そういう決意がおありなのか、まずお聞きをいたします。
  48. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 行政改革の最大の基本は増税なき改革、こういうことで歴代内閣、心血を注いでやり来たったところでございます。  私どもは、先般の閣議決定においても行われましたとおり、財政健全化目標達成への方策の原則として一般歳出の伸び率の抑制が基本である、こう申しております。聖域なき歳出見直しということに通ずるところであります。構造改革のプロセスにおきましても、国民各位の選択による歳入歳出全般の見直しを進めていくことが当然でございまして、まずは財政の守備範囲の見直し、こういうことから手がけてまいりたい、こう思っております。
  49. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 今のお答えでは必ずしもはっきりしないんですが、一般歳出の伸び率の抑制というお話だったわけです。  ただし、政府からいただきました、一月二十四日ですか、この「中期的な財政事情に関する仮定計算例」というのがあるわけです。これによりますと、名目成長三・五%を前提としまして二〇〇五年までに赤字国債ゼロという話ですね。それで計算しているわけです。要するに、赤字国債を毎年一兆円ずつ削るという仮定ですね。  そうなりますと、一般歳出の抑制では済まないと思うんです。例えば、平成十年度ですと、四兆四百億円のギャップがあるわけですから、抑制じゃなくて削らなければこの目標は達成できないわけですね。大臣のおっしゃるように、そうじゃなくて抑制でいくんだということですと、増税もやはり考えないとこの目標は達成できないわけなんですが、私は増税じゃなくて歳出減という方向でこの目標を達成すべきだと思いますから、その点もう一回、要するに増税をしてこの目標を達成するのかしないのかということです。この決意をお伺いしたい。
  50. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 歳出カットが原則でございます。
  51. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 それで政府は、大臣も、九年度予算財政構造改革元年の予算案だということでたびたび御発表があるわけですが、しかし一方で、昨年の大蔵原案発表と同時に株価が大幅に安くなるというようなこともありました。  また、時事通信社の二月の世論調査によりましても、この予算案を国会審議の中で修正すべきだという方が五八・三%でありまして、政府予算案のままでいいという人は一二・二%、大きく上回っているわけです。ちなみに、何を見直せということでは消費税据え置きが五三・九%、公共事業の削減、配分の見直しが二五・六%と、これは一つの世論調査ですけれども。  ただ、いろんな論調、また国民の方の意見を聞いていますと、総理や大臣がおっしゃるように、この予算案をもって国民は十分な歳出削減をしたというふうには必ずしも見ていないわけです。むしろ批判的な意見の方が多いと思うんですが、こういう国民の見方に対して大臣はどう反論といいますか、お答えをされますか。その指摘は当たっていないということですか。
  52. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 世論調査でありますから、設問に答えて回答がなされ集計をするとさまざまな数字が出てくることは、委員も御案内のとおりでございます。  また私どもは、ただいま来申し上げておりますように五つの構造改革、教育改革で六つでございますが、直接関係をするでありましょう行財政改革経済システム、経済のベースを確かなものにする、金融システム改革経済の血液である金融体制を世界的にもまた国内的にも対応できる形をつくり上げていくということの中で取り組んでまいる、こういうことでございます。
  53. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 具体論で一つだけ大事な問題だと思う点をお聞きしますが、歳出削減努力という点で逆行しているという意味で、見直すべき大きなポイントが整備新幹線の新規着工決定の問題であると私は思います。これは私が思うだけではなくて、一般的にも余り評判がよくないわけです。余談ですけれども、関係地域でも、全国紙を見ますと一面ではばらまきだと言って批判しているわけです。もちろん地方版を見ると予算がついたといって喜んでいるわけで、矛盾していると思ったんですけれども。  それはそれとしまして、十二月二十五日の政府与党合意で、平成一二十年までにJR負担分を除いて一兆二千億程度の事業規模で整備していくという決定を見たわけです。私は、一番おかしいと思うのは、一方で国鉄清算事業団の負債の二十八兆円の処理というのは先送りになったわけです。その一方で、新たな財政負担を伴うこういう新規着工が決定されたという、この矛盾がやはり一番私は納得できないわけです。  民間の経済の論理でいきますと、こういう大きな大赤字の塊というのを処理しないで資金調達をしようとしたって、それはマーケットが許さないわけであります。そういう民間の経済の論理から見たら到底成立しないような決定をして歳出削減の第一歩を踏み出したんだと言われても、なかなか私は皆さん納得しないんではないかと。これで四月から消費税の増税を理解してくださいと言われましても、納得できないというのは私は当然の国民の疑問ではないかと思いますが、お答えいただけますか。
  54. 林正和

    政府委員林正和君) 平成九年度予算につきましては、先ほど大臣からも申されましたように、全体としての歳出規模を抑えるというほかに、医療保険制度改革を初めとする各種制度改革を織り込んでいるところでございまして、まさに財政構造改革元年という予算にふさわしいというふうに思っております。  今、新幹線のお話がございました。九年度予算はそういうことで構造改革元年予算にしよう、これを最優先の課題だというように位置づけて今申し上げましたように編成してまいったわけですが、他方、整備新幹線の整備というものにつきましては、我が国の高速交通体系の形成を通じて国土の均衡ある発展と地域の活性化に資するという事情もあることも、これは理解せざるを得ません。  こういう中で、平成九年度予算におきまして整備新幹線の取り扱いにつきましてはぎりぎりの判断を求められたところでございますが、我が国財政事情が極めて厳しい状況にあるということも十分に踏まえた上で、財政構造改革に沿ったものになるように、新たな財源に裏打ちされる範囲内での事業規模としつつ、先生御案内のとおり、収支採算性の見通し、あるいはJRの貸付量等の負担、並行在来線の経営分離についての地方公共団体の同意、あるいはJRの同意等の基本条件が整えられていることを確認した上で、その取り扱いを厳正に判断していくということとしたところでございます。その点は御理解を賜りたいと存じます。
  55. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 そう言われても理解できないんですね。  大臣、私言いましたように、借金の処理を先送りにしてこの着工を決めるというのはやっぱり順序が逆じゃないか、本末転倒しているんではないかと思いますけれども、その点いかがでしょうか。私も整備新幹線の有用性自体を否定しているわけではありませんけれども、もし本当に必要だというのであれば、何かを削って優先順位の見直しの中で着工するという性質のものだと思うんですが、まさか医療費を削って新幹線という話じゃないわけですからね。その点、いかがでございましょうか。
  56. 三塚博

    国務大臣三塚博君) この新幹線問題が、極めて象徴的に九年度予算編成の中で取り上げられましたことが、いかにもばらまきであると言われましたことは残念なことであります。次長から説明いたしたとおりの基本方針であります。  特に私から申し上げたいことは、要すれば基本は民間鉄道会社であるということであります。よって、最終の政府与党合意案作成に当たりまして小生からそのことを申し述べさせていただきました。財政当局の意見ということもさることながら、内閣の物の考え方、民間鉄道会社であるということでありますと収支採算性というのが前提になるであろう、そこをクリアするように御努力をいただきたいというのがこの趣旨であります。  言わんとするところは、民間鉄道でございますから、地域社会がまたそのブロックが、この鉄道を必要だということであれば第三セクターでスタートを切ることもあるでありましょうし、その鉄道事業を担当する会社に出資その他の参加の中で共同責任を負うということもあるでありましょうし、そういう形でいくということであれば、このことは清算事業団との案件と画然と分離されまして理解を得るものであり、政治としてそのことが極めて大事なことなのかなと思っております。  ちなみに、国鉄改革を担当させていただいた一人でありますが、当時を回顧して思いますことは、十年たちました、毎年国庫補助が、多いときは七千億円、大体平均六千億円出ておりました。これが民営化することによってなくなりました。総額六兆円ということでしょうか。そういう中で、次年度からは法人税、最初は千億程度でございましたが、ただいまの段階で合わせて一千五百億の法人税が納められておるということ等を考えますと、このことに稗益したこの政策は正しかったと。  しかし、残された二十八兆についてどうするかは、十年度に向けて最終決着を図るべくこのことに対応するという政府方針であります。
  57. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 十年度に向けて最終方針の決定ということですけれども、当初は昨年の末までに何とかという意気込みで政府もやっていらっしゃったわけです。借金の処理を先送りしてまた借り入れを起こすなんということはちょっと一般では、すぐ倒産ということになってしまうわけでして、やはり私は順番が逆ではなかったのかなと思います。  主計局次長さん、先ほど詳細にお話がありましたのでちょっと一点だけお聞きしますが、いわゆる九年度予算のうちの新規着工区間分百億円の件です。橋本総理も、これはもう厳密に、いろんな収支採算性等を厳正に勘案して判断するというお話をされているわけです。要するに、百億円ついたからといって赤字になるようなものは着工しないというお話だと思うんです。  そうなりますと、医療保険改革、おっしゃったように、ここは国の歳出削減して国民負担を求めるという一方で、この百億円についてはまだ着工するかしないかも決まっていないものに予算がついているという、そういうお話になるんじゃないでしょうか。これで、本当にもうぎりぎり切り詰めましたという政府の方針と一貫するんですか。
  58. 林正和

    政府委員林正和君) 委員も御案内のとおり、新線につきましては、先ほど申し上げましたように各種の基本条件、これらを見た上でその取り扱いを厳正に判断していくということでございますが、百億円につきましては、政府与党合意におきまして「別途確保の必要がない場合には、これを三線五区間の建設事業費に充当することができるものとする。」ということで、既に決まっております三線五区間の建設費に充てるというところでございます。  それと、あと医療保険のお話がございましたが、これもまた委員よく御案内のとおり、医療保険制度の抱えております構造的な問題、ほっておけば医療保険が破綻するという危機にある状況にかんがみまして医療保険制度についての改革を行おうとするものでありまして、その点は御理解をいただきたいと思います。
  59. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 次にといいますか、もう最後になりますが、消費税の問題についてお尋ねをいたします。  きょうの新聞の投書で六十四歳のサラリーマンの方が、消費者から徴収しながら国庫に入らない益税をどうするのか、益税が絶対残らない方法政府は示してもらいたいと。これはもう皆さん共通に思っていると思います。四月施行の改正によりまして簡易課税制度の改善、限界控除制度の廃止等は私も評価をいたしますけれども、免税点はほとんどそのままになっているわけです。そうなりますと、三%から五%の増税に従ってこの部分についての益税は拡大すると言わざるを得ない。この点も納得できない、国民が納得しないと思うんですが、百歩譲ってこの五%へのアップを容認するとしても、これは益税の根本的な解消というのがもう大前提だと思うんです。  なぜこういう不完全な形で残した、残したといいますか、抜本的に益税問題に取り組まなかったんですか。
  60. 薄井信明

    政府委員薄井信明君) ただいま御指摘いただきましたように、本年四月の消費税率引き上げに合わせまして、一番大きな益税、いわゆる益税と言われておりました限界控除制度を廃止することにいたしておりますし、簡易課税制度の是正もいたしておるわけでございまして、この点は御理解賜りたいと思っております。  もともと消費税の導入時にいわゆる中小事業者に対して特例を幾つか設けたということに、この問題の遠因といいますかポイントがあろうかと思いますが、この種の前段階税額控除という、付加価値税と申しますが、この種の税金に習熟していない我が日本におきましてこの制度を導入するに当たって、負担するのは消費者でございますが、事務負担を負うのは事業者でございます。特に中小零細の方々にこの新しい税金で事務負担が大きくかかってくるということについてどう配慮していくか、このバランスをどう考えるかということからいわゆる中小特例ができてきたわけでございます。  導入されてから丸八年ですか、たちまして、そういう意味では限界控除制度などはもう要らないだろうということから、今回大きく前進を見たわけでございますし、平成三年にもこの点についてはかなりの前進を見ているわけでございます。そういう意味で、長い目で見れば、今後とも委員指摘の点につきましては私ども望ましい方向に向けて前進をさせていくべきポイントだとは思っております。  ただ、最後の御指摘の免税点の点でございます。この点は、今三千万円という数字が決まっておりますが、平均従業員数二人から三人という方々の年間の売り上げ高に相当すると思っております。この方々にどれだけの事務負担を求めるかという問題については、やはり慎重に考えていくべきだと思っております。  なお、いわゆる益税ということの問題ですが、一方で中小零細の方々は仕入れにがかった税金の分を値段に乗っけられないのではないかという、転嫁がしにくいというポイントもございます。何を申し上げたいかといいますと、免税点三千万というものがあるからといって自動的にいわゆる益税が生じているわけではございませんで、ある人にとりましては仕入れにがかった税金を値段に乗せて売れないというケースもあるわけでございます。  したがいまして、私どもとしましては、仕入れにかかっている税金分を適正に転嫁できるように指導していくということを今力を入れてやっているわけでございまして、その結果として三千万円の免税点があっても、御指摘のようないわゆる益税という形で出ないようにすることが現状での最大の努力すべき目標だと思っているわけでございます。
  61. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 しかし、消費者は益税が生じているんではないかと思っていますし、税務当局の言うように事業者の方が皆さんそういう処理をするとは限らないわけであります。五%を転嫁をしたってこれは違法じゃないわけでありまして、そんな簡単に益税は解消しないというふうに思います。  終わります。
  62. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 社民党の鈴木和美でございます。  私も財政の健全化目標に絡む問題について若干質問したいと思っています。  荒木さんからも御質問がありましたが、昨日だか一昨日だったか忘れちゃったんですが、日経新聞に、これからの財政再建について橋本内閣は土光臨調の精神を踏まえて対応したいと。つまり、増税なき財政再建ということでしょうか。それはそれなりに非常に私は喜ばしいことだと思うんですが、そう考えてみると、ちょっと矛盾点が出て、さてこれからどうなるのかなという心配事が一つございます。  先般提示されました財政の中期展望に、十年度でも既に歳入と歳出の差額は四兆四百億円に達すると、こういう試算が出ています。今大臣歳出削減によってすべてを賄うということを答弁されたようでございますが、それならばそれだけでこの四兆四百億円というのは、これは帳消しになるんですか。そういうところにちょっと矛盾点を私は感ずるんですが、御答弁いただきたいと思います。
  63. 林正和

    政府委員林正和君) 委員もう既に御案内のとおり、先般予算委員会にお出しいたしました財政の中期展望は、中期的視点に立って今後の財政運営の御審議の御参考に供するということで、一定の仮定を置きまして試算をしておるものでございます。  今回お出ししましたのは、二〇〇五年度までのできるだけ早期に特例公債依存から脱却するという閣議決定を踏まえまして、毎年度一兆円ずつ均等に特例公債を減額すると仮定した場合に、歳入、歳出のギャップがどうなるかということを要調整額として示しておりまして、それによりますと十年度の要調整額は、三・五%成長するという場合には四兆円、一・七五%成長の場合には四兆五千億だと。これを歳出、歳入両面にわたる種々の施策の組み合わせにより解消すれば来年度特例公債を一兆円減額することが可能になって、二〇〇五年には特例公債がゼロになるという計算になりますということでございます。  じゃ、そのためにこの実現に向けてどうするかということですが、これも再三大臣からもお話がございますが、財政構造改革会議において財政再建法の骨格を含めた歳出改革と縮減の具体的方策について検討が開始されたところでございまして、今後この会議での議論あるいは国会での御議論というものを踏まえまして一社会保障、文教、公共事業、あらゆる歳出の全般的な歳出見直しを進めるとともに、タイミングとしては概算要求の段階から厳しく抑制をするということで、まずはさらなる歳出削減のために努力していきたいということが基本的な考え方だろうと思います。
  64. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 三塚大臣にお尋ねしたいんですが、今話が出ました、財政再建法というんですか健全法というんですか、名前がまだはっきりしていないと思うんですが、今中期展望で出したのは仮定計算だということですから、それはそれなりに理解はします。けれども、いつも問題になるのは、仮定計算だからといって展望を示したってそのままで、実行したことはないんですね、あくまでもただ展望だというだけで。それでは財政再建にはならぬわけです。  つまり、財政計画みたいな、再建計画というみたいなものをきちっと立てない限り、展望だけでは私はいかぬと思うんです。そういう意味で、これから行われるでありましょうその財政再建法というのか健全法というのか、そういう再建法の性格についてどういうふうに考えているのかと。  それから二つ目には、これから我々も議論に参加しますけれども、この再建法なるものに何を盛り込もうとするのかと。これは、議論は当然するんでしょうけれども、骨格みたいなものはあるはずですから、それをぜひお示しいただきたいと思うんです。  それから三つ目には、この提案の時期です、いつ出すんですかと。橋本総理は秋の臨時国会というような話もしておるんですけれども、これは大変悠長じゃないかなという気もするんでございまして、いつ提案されるのか。その辺の構想、考え方について、ぜひお聞かせいただきたいと思います。
  65. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 先般一月二十一日、第一回会議を行いまして、本日午後、第二回会議に入ります。  政府与党財政構造改革会議におきまして、その骨格を含めた歳出改革と縮減の具体的方策について検討が開始されるということになります。その後のスケジュールは、先ほど申し上げましたから割愛をさせていただきますが、検討会議を持ちまして、そこで、ただいま申し上げました具体的方策をどう構成するかということについて議論が行われます。  私とすれば、与党三党提唱になる真剣な会議でございますから、その会議に参加し、全体の意見を聞きながら、また求められれば取りまとめについてのアドバイスも申し上げますし、また時に財政構造改革かくあれという積極的な提案も会議の次第によりましては申し上げまして、つくります以上具体的なものでなければならないと思いますし、縮減の具体方策がそこに明示をされてこなければならぬと思っております。  二点目の具体的性格はいかんということでございますが、これは今申し上げましたとおり、会議の設立の経過からいたしまして、今後の議論の中で行うと。もう一つは、先ほども御審議をいただいておる諸外国取り組み方なども当然御披露申し上げながら御論議をいただきますし、具体的個別の歳出削減措置等が最終的には国民の合意を得なければならないわけでございますから、この改革会議におきまして国民各位の議論が盛んになることを望みますと同時に、歳出改革と縮減の具体的方策がその結果として仕上がるということであろうと思います。  国会提出時期につきましては、できるだけ早い時期にお諮りを申し上げたいと考えておりますが、今後あらゆる角度から十分御審議の上、個別の歳出削減措置を含めた実効ある改革方策を取りまとめていただく必要がありますことを考えますと、法案の提出時期は具体的に今確定議として申し上げることはでき得ませんけれども、担当大臣として申し上げますと通常国会中に、遅くも会期末には法律案が提出できるような会議であってほしいし、そういう意気込みでこの改革会議前進しますように努力をしてまいりたいと思っております。  いずれにいたしましても、今後さまざまな方策が、あらゆる経費について一切の聖域を設けることなくこの会議において議論され、財政構造改革について国民にとって目に見える具体的な道筋が示されることを期待いたしており、財政構造改革会議のメンバーである鈴木先生におかれましても、会議の場などにおきまして御意見、御提言をいただきますればと存じます。
  66. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 その場その場では私も意見は述べますけれども、一番今大切なことだと思うのは、中身のないアドバルーンというか、それだけが上がっておりますことを大変心配するんです。これは後ほどちょっと株価の問題も御質問しますけれども、今一番大切なことは、財政再建をこういうふうにするんだということを早く出すことが、これから株の問題も為替の問題もすべて影響することだと思うんです。そういう意味で、ぜひ省でも積極的に問題を提起するような姿勢をとっていただきたいということを、お願い申し上げておきたいと思います。  そこで、もう一つお尋ねしたいんですが、これから財政再建の目標を立てるということは十年度からということになりますね。
  67. 三塚博

    国務大臣三塚博君) はい。
  68. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 さて、九年度はどうなりましょうかということになるんですが、九年度はもう予算が決まるから仕方がないんだと、これでやらさせていただきたいというのか、九年度予算についても経費節減を図ったりそういうことを図っていきますということなのか、その点もはっきりしていただきたいと思うんです。  つまり、何を言いたいかというと減額補正というのがあるんですか、ないんですかというところを、どうも総理と大蔵大臣とニュアンスがちょっと違うような報道がずっとあるものですから、この点をはっきりさせていただきたいと思います。
  69. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 総理大臣と私の意見は致をいたしておるんです。精力を傾注し、国民各位の声をお聞き申し上げ予算編成に当たらさせていただいたわけであります。かねがね申し上げておりますとおり、ベストな予算である、こういうことで申し上げておるわけでございますから、減額補正ということについては大蔵大臣とすれば当然のことながら考えておらないと、こう申し上げさせていただきます。
  70. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 大蔵大臣として答弁するのはその答弁で当然だと思います。今予算を出しているのに今から減額するなんというと、それは口が裂けても言えないはずですよね。ただ、減額補正というよりは、九年度の予算についても各省庁に節減の執行について今から強調するということは必要だと思います。今それだけ述べておきたいと思います。  さて、そう考えますと、これからの予算編成の問題について、私はこのシーリング方式というものは、それなりにいろんな経過があって結果としてシーリング方式をとった、これはまあ認めます。けれども、シーリング方式をとったために、本当に必要なところに金を積めないで、事業として余りそう急ぐこともないようなところの執行が早くいっちゃうという、そういう矛盾点が出ているようにも思うんです。俗称ゼロベースというような予算編成の方式をとったらどうかというような意見などもあるんですが、これに対する省の考え方はいかがか、聞かせていただきたいと思います。
  71. 林正和

    政府委員林正和君) 概算要求基準をつくってその中に各省が要求をおさめてくるというシーリング方式というのは、御案内のとおり非常に機械的、技術的に計算をしておりまして、その中で各省庁がまず歳出削減をしなければいけないという状況の中で各省の施策の優先順位を判断してくるというものでございまして、これは歳出削減、あるいは歳出の節減合理化、あるいは構造改革といった面につきましても、それなりに役に立ってきただろうと私どもも思っております。  こうした財政事情になりますと、概算要求の段階それからいわゆる査定段階という二段階でもって厳しく個々の歳出見直していくということが必要でございまして、今後とも概算要求基準につきましては、十年度をどうするかまだ全く考えておりませんけれども、重要な問題だろうと思っております。  あと、先生今御指摘のゼロベース予算ということでございますが、必ずしも十分御趣旨を踏まえているかどうかわかりませんが、各歳出についてゼロから出発して見直して必要なものを計上しろということであれば、私ども予算編成に当たっては従来から、増分だけではなくて根っこから優先順位を見直し、真に必要なものだけを計上するという基本的な態度で予算編成に当たってきているところでございます。ただ、昨今の財政事情でございますので、さらにそうした姿勢でもって今後の予算編成に当たっていくことが必要だろうというように存じております。
  72. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 なおまた構造改革会議のところでも議論させていただきたいと思います。  さて次に、株と円の問題でございますが、いろんなところから私もいろんな話を聞いておりますが、正式、正確にこの委員会で現状をぜひ知らせていただきたいと思うんです。その一つは株価の推移についてでございます。  平成元年の三万九千円に比べて最近はもうその半値ですね。一万八千円ぐらいを前後しているわけでございますが、これはどうしてそういうことになっているのかということと、これをどうやって直そうとするのかということについて端的にお答えをいただきたいと思います。
  73. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) 株式市場におきましては、同じ経済情勢、同じ社会情勢のもとにある株式につきまして、千円で買うのが有利であると判断なさる方と、千円で売った方が有利であると判断なさる方、まさに同じ状況の中で正反対の判断をなさる方が二者おられて成り立つ市場でございます。したがいまして、平成元年の三万八千円余り、あるいは現在の価格水準というものも市場の大勢の参加者のそういった、時に相反する御判断に基づいて形成される価格でございますから、政府立場でどの水準があらまほしきとか、こちらで望ましいということではないのではないかと考えております。  大切なことは、そういうもろもろの判断が市場でなされますときに、それぞれ売り手にせよ買い手にせよ、いろいろな状況を御判断になって売買をなさる、その御判断の材料としていろいろなことが言われておる。企業業績の見込みでありますとか景気の先行きでありますとか、あるいは経済の構造の問題でありますとか為替市場の動向でありますとか金利の動向でありますとか、もろもろの御判断をなさってそういった投資活動が行われておるわけでございますから、その中からそれぞれの立場の、政策を担当する立場も当然でございますし、また売り買いされておる企業そのものの経営者もその中に含まれると思いますけれども、市場で発せられるメッセージを受けとめて、どういうふうな対応をしていくかということが肝心な市場ではなかろうかと考えております。
  74. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 意見を述べる前にもう一つ聞いておきたいんですが、株式市場というのは、投資に当たって機関投資家と個人投資家とあるわけですね。でも最近この個人の投資家というのは年々、何というんでしょうか株離れというよりも見守るというか、そういう状態の中で個人投資家の比率が非常に下がっておりますね。これは、どうしてそんなに下がるのかというように理解をしておけ、ばいいんですか。
  75. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) 大変大事な問題でございますし、大変難しい御質問をちょうだいいたしました。  現実に、我が国においてよく言われますことは、個人の金融資産の選択の際に安全性とか流動性とかいうことを重視する傾向が強いと。片や市場におきましては、企業の配当政策がどうであるか、あるいは市場の大宗を占めておるものが企業間の持ち合いという形で、いわば配当を投資の唯一の動機とするよりは他のもろもろの経済的なメリットを求めた株式の保有が過半を占めておる。その中で個人というものがどう扱われておるかというようなことがあろうかと思いますけれども、それにいたしましても個人投資家が株式市場に参入することは、これからの高齢化社会の個人の資産運用という観点からも大事でございましょうし、市場の立場から申しますと市場参加者の厚みを増して株価形成が活性化するという面でも必要であろうかと思いますので、そうした施策に向けて検討を重ねてまいりたいと存じております。
  76. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 三塚大臣にもう一つお伺いしておきたいんですが、G7で為替問題についてのお話があったことが報告されました。なるほどとお聞きしたんですが、それであっても現在百二十四円とか百二十五円で低迷しているというのはどういうことだと理解されているか、お聞かせください。
  77. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 詳しくは我が省きっての国際エコノミストである榊原局長から申し上げさせていただきますが、G7の会議等でも適切な協調を行う、こういう申し合わせをいたしました。といいますことは、為替レートが安定しておりますということがマクロ経済の進展につながるだけではなく、その国の経済政策の安定的な持続的な成長政策にかなうものである、こういうことでございます。ファンダメンタルズとよく言われますが、経済の基礎的要件がそのまま為替レートに反映するというのが大方の一致した見解でありまして、ただいまの水準はそれなりのもの、こう受けとめておりますが、よろしいでございましょうか。
  78. 榊原英資

    政府委員(榊原英資君) まず、事実関係を申し上げさせていただきますと、十二月の末に百十五円九十八銭、一月に大きく円安に進みまして一月の末には百二十二円十三銭ということになっております。G7の直前に百二十四円七十五銭まで円安に振れておりますけれども、G7の為替についての合意を受けてその後為替レートは安定しております。この一週間ほどは大体百二十四円の前半で推移しておりまして、十一時半現在、きょうも百二十三円七十五銭ぐらいで、比較的為替相場がG7を受けて安定したというのが現状だというふうに思っております。  ただ、行き過ぎた円安は望ましくないという我々のポジションは変わりませんので、市場の動向を注視しながら必要とあらばG7諸国と協調して行動したい、そういうふうに思っております。
  79. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 最後ですが、今お聞きしてまいりましたのは、やはり景気の問題について大変国民が心配をしている、また景気回復を願っているということの底辺にある現象だと思うんです。ですから一番最初に質問したように、財政再建という問題に関して早く手を打たないと、新聞論調では日本売りというような記事も出ていますね。これは株価であろうと為替であろうと、今こういう状態では日本の国というのは一体どういうことになるのかというようなことにつながっていくわけでございますから、私どもも一生懸命頑張りますので、ぜひ大蔵大臣を初め省の皆さん、これからの景気対策についてのという意味でも財政再建の問題について真剣に取り組むようお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
  80. 小島慶三

    ○小島慶三君 きょうは大蔵大臣、次官、政府委員の方々、御苦労さまでございます。  私、最初にお伺いしたいのは、実は私の個人的なことになりますが、全国に三十三の小島塾というのがありまして、年初からずっと各地区を回っております。そこで非常に従来と違ったというかそういう印象を受けましたのは、日本の先行き、これは一体どうなるんだろうかと。先が見えないし、何をやろうとしても元気が出ないという大変情けない、しょんぼりした話ばかり出てくるわけであります。少し前のことになりますが、前の大蔵大臣の武村さんが中央公論にこのままでは日本は滅びるという論文を書かれました。私も大変それと似たような感じを今持っているわけでございます。  先ほど来、同僚の先生方からいろいろそういった点についてもお触れになったし、私の質問も似たようなことになって恐縮でございますが、こういう状況に対して大蔵大臣内閣のかなめである大蔵大臣のお考えあるいは御意見あるいはお覚悟、そういったものがいろいろおありになるのではないかと思いますが、恐縮ですがまずその点をお示しいただきたい。
  81. 三塚博

    国務大臣三塚博君) かねがね考えておりますことを、そのまま申し上げさせていただきます。  政治の果たす役割は、その国の伝統と文化を大事にする、歴史の検証を行いながらよきことは前進、悪きことは改めていかなければならない、こういうことに尽きると思います。戦後五十年、脱亜入欧から入欧入米という思想、キャッチアップがここまで到達をいたしました。バブルの最盛期の意識が残っておりますと、いかにも不況が深刻でというふうに思うのでありますが、多くの国民はこの厳しい中でも頑張っておられるわけでございます。そのことを助長することが政治に与えられた使命であると思います。  マスコミ的にキャッチフレーズが出ては消え消えては出るという昨今でございまして、我が国国民はキャッチフレーズに弱いのかなとすら感ずる昨今であります。真実はそう多くございません。その基本原理をしっかりと踏まえて頑張ることであれば、この国は安泰であると思います。政治的にいろいろな論争がありますが、国是はしっかりと保たれております。そして、民主主義の原点も、議員各位の御努力、これをサポートする国民各位の良識でこれまた議会民主主義基本はしっかりと守られておる国家であると思います。  経済の基礎的条件も力強いものがあると思っております。みんなでこれを頑張り抜いていくということであれば、私はこの国こそ二十一世紀、平和国家を標榜し、福祉国家、生きとし生けるもの幸せにこの世を過ごす、こういうことの大前提が満たされていく国家になるであろう、こう思っております。そのためには世代間の断絶をなくす、後世にツケを回すということだけは、現世代の私どもが辛抱しながら頑張り抜いていくことでなければなりません。そのためには、もちろんむだな経費は省け、歳出のカットに勇敢であれと言われること、またしかりであります。機構の見直しを大胆にやれというのもまたしかりでございます。こういうことで、国民各位の声に忠実に、その方向の確立のためにやり抜いていかなければならぬと思っております。
  82. 小島慶三

    ○小島慶三君 大変力強いお言葉、ありがとうございました。私どももその線に沿って、ひとつそういうことをみんなに伝えていきたいというふうに思っております。  ただ、そういうふうに危機感と将来に対する期待と両方持っておやりになるという場合に照らして考えてみますと、この間の補正予算は、私は橋本内閣のためにとらないというふうに思っております。ここでは詳しく申し上げませんが、そういう点を含めて、財政危機元年、財政再建元年ということでおやりになるということで平成九年の予算案が出ておるわけでありますが、これについても何かもう少し切り込みが足りないんじゃないかと私は思っております。  そういった意味で、なぜこういう前からの引き継ぎのような予算編成が行われるのかということでありますが、私は、一つには役人の財政支出についての感覚が麻痺しているんじゃないかという感じがしてならないわけであります。だから、まずこれを直さないと、後からこういうふうにして積み上げられましたということだけで予算が組まれるということになると再建も何もできないと。  そこで、真っ先にやるべきことは、決まった予算、その実行に当たっては全体のまた各個の予算の五%を一律カットする、こういうことが真っ先に行われるべきことではないかと、私は前からそういうふうな提案を国会でも何回か申し上げてきましたけれども、お取り上げになりませんでした。さっきの武村さんの論文にも五%カットというのが出てまいります。こういう点、いかがでございましょうか。少ししつこいんですけれども、お尋ねをしたい。
  83. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 小島議員の御提言、かねがね承っておりました。具体的にどうと申し上げさせていただくことは、財政構造改革会議もこれあり、控えさせていただきます。言わんとする趣旨は理解をするところでございます。
  84. 小島慶三

    ○小島慶三君 ありがとうございました。ぜひ再建会議の方で五%カット以上の案でもありましたら、ひとつやっていただきたいというふうに思います。  それからもう一つは、これは世間のいろんな取りざたが大蔵省にいろいろ厳しいということがありまして、大蔵省の人たちの気分がいささか意気阻喪しているんじゃないか、何かそんな感じがしてならない。予算の切り方でも、こういう財政危機の時期でありますから、もうちょっと蛮勇を振るって切るものは切るという必要があるのではないかと。  殊にそういったいろんな査定の中で、公共事業についてはこれはもう世間のだれが見ても甘いというふうに思われます。例えば土木事業の、いろんな建設事業の丸投げもある。それから、計画から執行の段階に至るまでいろんな段階で三%ずつ変なところに金が流れているというふうな取りざたもあります。取りざたですから本当かどうかはわかりません。しかし、そういうものが言われるというのはおかしい。例えば一億円の公共投資であれば実質は七千万でできるんだと、そういうことも言われている。  もっと具体的に言いますと、例えば私は一番財政で肝心なのは緑と水と土のバランスだというふうに思います。それにしては最近の山は、山林まさに荒れなんとすという状態である。水田も年々のあれでどんどん減っていきます。こういうことで日本の誇るべきこういった緑と水と土のバランスが維持できるのかどうかということは大変心配であります。  その上に、いろいろつくられる予算も、例えばダムにしても、これは十一のダムが今凍結され、ことし四つ追加されて、そういうものをもう一遍見直そうという話になっている。これは私、大変結構だと思う。むだなダムがつくられる、それから山が荒れれば土砂が流れ込んで有効水位が下がってしまいます。それから川にしても、どんどん直線化それから三面張りと、こういうことが行われて、これは本当に環境生態系というものに対しては大変なマイナスが生ずる。しかも、その三面張りしたダムあるいは川の岸をもう一遍はがす、そして環境のためにそういう仕事をやるということが言われる。それからダムの目的にしても、初めは発電、次は農耕、次は一般の用水、そして最後には観光の必要があるなんということでダムをつくろう、こういう話も行われる。とにかく一遍できたものは、つくられたものは、プロジェクトはこれはなかなかとまらないんですね。そういう点もやっぱりじっくり見ていく必要があるのではないかというふうに思っております。  それから海岸にしても、あれだけテトラポットをむやみに使う必要はないと思うんですけれども、生産が先にあってそれが各地区に割り当てられる、こういうことが行われる。それからトンネルにしても、これはこの間安曇野の小島塾から聞いた話になりますが、二千四百五十メートルのトンネル、松本トンネルをつくったと、費用は二百五十億である。ところが、翌日から通る車は一日三百台である。そういったものをなぜ認めるのか、非常に私は疑問に思っているわけであります。  だから、そういう点で切ろうと思えば幾らでも切れると、ちょっと言い過ぎかもしれませんが、かなり切れるのではないかというふうに思うのでございます。こういう点についても、ひとつ大蔵省は勇気を出して、そして査定の一々のあれに対してももっと僕は蛮勇を振るえというふうに申し上げたいのでございますが、いかがでございますか。
  85. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 御激励、感謝を申し上げます。  公共事業のコスト縮減の問題については、首相から公共事業担当大臣に向けて精力的にこれに担当するようにと、こういうことであります。大蔵省も、平成九年予算編成に当たりましては、制度全体を見直しながらコストの縮減についてもそれなりに査定をしたと思います。  そういう中で、数々の問題が常会において論戦に出ておるわけでございますが、今後ともコストの見直しということは基本的に大事なことでございますから、また政策の優劣の決定、緊急度ということになりますが、本件についても、今後国民の税金を使わさせていただくわけでございますから、有効、効率的な予算づけというのが大変大事なポイントになることは、そのとおりでございます。
  86. 小島慶三

    ○小島慶三君 余りこの問題にかかわると、あとの時間がなくなりますので簡単にいたしますけれども、公共事業での一番の問題は、さっきの松本トンネルのように効率が果たしてうまく保たれているのか。それからもう一つは、環境に対してマイナスになっている面がないのかどうか。それから三つ目は、これは何としても大きな問題だろうと思うんですが、民間投資に連動しなくなっているということがあるのではないか、そういった点をひとつ御検討いただきたいというふうに思っております。  それから、私ども民主党と今統一会派を組んでやっているわけでありますが、民主党の方からいろいろ御相談に上がっていると思いますが、さっきの五%問題は別にしましても、一つ一つ、例えば公共事業あるいは社会福祉、あるいは例えば私はODAなんかも、もうこういう段階になりますと日本が一番だなんて威張っている必要もないと思うんですけれども、そういった面についていろいろ御相談申し上げて、できれば三兆ぐらいのカットをお願いしたいというふうに言っているようでありますが、これもひとつどうぞよろしくお願いをいたします。  それから、これは最後になりますけれども、私は、今の財政構造というものから見ますと、例えばこれは国債費とそれから地方交付税で大体四〇%をとってしまいます。それから、公共事業と社会保障費、福祉、それで三四%をとってしまいます。そうしますと、これは二六%しか残らない。この二六%で防衛もあるいは文教もあるいは通産関係、農林関係、そういったものを、この残りの二六%でやらなきゃならないという大変窮屈な話になるわけであります。  そこで、私が申し上げたいのは、新しいフィスカルポリシーといいますか、そういったものをこの際お考えになる必要があるのではないか。財政再建とか当面の問題もありますけれども、再建を通じてそういうことができるかもしれませんが、ある一つの新しい理念を持ってこの財政構造を見直すという必要があるのではないかというふうに思っております。  これは昔話になりますけれども、戦争中、大変古い話ですけれども外国の本が入らなくなりました。それで、潜水艦で外国の本を持ってきてもらったんですけれども、その中にケインズの「一般理論」がありました。それからビバリッジのビバリッジ・プラン、社会福祉プランがありました。それで、そういうものを今から思い出しますと、石原さんという後で次官になった方がケインズの「一般理論」を翻訳されました。日本で最初の翻訳でした。立派な翻訳でした。私がビバリッジの方を担当いたしまして、社会福祉プランを翻訳いたしました。それから、ケインズとビバリッジが財政の主役になって、何と五十年間延々と続いてきたなという感触を私は持っております。  だから、そういう点につきましても、やはりいつまでもケインズでもビバリッジでもないと。既に彼らが死んで五十年たつわけであります。だから、そういう点で財政再建をいろいろお考えになるときに、この新しいフィスカルプランというのをお考えいただきたいというふうにお願いをいたします。余りにも今の財政では硬直的でなかなか修正のしようがないと思うんですけれども、よろしくどうぞ。大蔵大臣でも、大蔵省の方でも結構です。
  87. 林正和

    政府委員林正和君) 大変広範なお尋ねでございました。  実は、いわゆる景気対策としての公共事業のお話もあったかと存じますが、これまで我が国では景気対策として大幅な公共事業の追加を御案内のとおりやってきたわけでございますが、財政審の報告などにもございますように、欧米諸国におきましては、不況期におきましても規制緩和などを通じて市場機能を活用していくということが中長期的に見た経済活力維持あるいは発展にとって必要ではないかというような議論が支配的でありまして、またそのような政策を行っているというように承知しております。私どもも、我が国財政の現状というものを見ますと、これまでのように過度に財政に頼ったような経済運営というのは見直しに努めていく必要があろうと思っております。  あと財政予算全体の硬直性あるいは社会保障、公共事業についてお話がございました。社会保障につきましては、少子高齢化という中でこれから社会保障制度をどうすれば維持できるか、いろいろ構造的な問題もございます。そんなことで、九年度予算におきましても医療保険改革につきまして御提案を申し上げているところでございます。  いずれにいたしましても、財政構造改革会議等を通じまして社会保障、公共事業あるいは文教、すべての歳出にわたって構造的な見直しを今後御議論されていく、こういうものも踏まえて、私ども事務当局といたしましても、しっかり対応していきたいと思っております。
  88. 小島慶三

    ○小島慶三君 ありがとうございました。大変生意気なことを申し上げて恐縮でございました。  終わります。
  89. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 私は、消費税問題あるいは法人税問題など税制の根本問題について質問したかったんですが、わずかの時間でそこへ言及する余裕がありませんので、きょうは益税問題を中心に二、三お伺いしたいと思います。  先ほども益税問題についての論議があり、答弁の中で主税局長は転嫁の問題にも触れられました。私がきょう特に取り上げたいのは、転嫁の心配のある中小業者の益税という問題よりも、より重点を置いて我々がまず取り上げるべきは、損税の心配など全くない大企業の益税の問題だという点であります。  その論議に入る前に、転嫁の実情についてまずお伺いします。
  90. 薄井信明

    政府委員薄井信明君) 消費税の税金の性格上、物の値段の中に入り込みますので、いわゆる益税と言われるものがどの程度あるかということはなかなかこれは把握が難しい問題ではありますが……
  91. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 定義ではなくて数字だけでいいです。
  92. 薄井信明

    政府委員薄井信明君) 非常に難しい問題でございますが、通産省等々を含めてフォローできるものはフォローを特に導入時にさせていただいておりまして、私どもの把握している限りにおきましては製造業等についてはかなり転嫁は進んでいる、行われているというふうに見ておりますが、中小零細あるいはサービス関係の事業等についてはその程度がやや落ちているかなというふうに認識しております。
  93. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 通産省からいただいた資料によると、大体小売業は七〇%台、サービス業は六〇%台というのがこれまでも続いております。十八日の日経新聞には税率引き上げ後のアンケート調査が載っておりますが、「「増税分は転嫁」六四%」という見出しで、やはり六〇%台が転嫁。そうすると、それ以外の問題は損税というように言われるもの、あるいは人によっては事業税の一種と言われる負担にならざるを得ないという問題があります。この問題をどう解決するか。益税の存在それ自体はこれはよろしくないと思いますので、どう解決するか。この問題について大いに論議しなきゃならないんですが、きょうはその問題はさておきます。  そして、損税の心配のない大企業の場合の益税の問題です。その一つが、課税売上高割合が九五%以上の場合、仕入れ税額控除を課税売上高割合一〇〇%の場合と同じように全額控除する、こういう制度になっている。この制度によれば、大企業は非常に大きい益税を生むことになる。たとえ五%分が丸々五%であれ三%であれ一%であれ、小企業にはこれは大した額にならないけれども、大企業の場合はかなり大きい額になるわけでありまして、こういう制度がそのまま残っていていいのかどうなのか、この点についてまずお伺いします。
  94. 薄井信明

    政府委員薄井信明君) 今、委員指摘の点は、消費税の本質的な性格上、課税売り上げに対応する仕入れを控除する、これが基本原則であるわけですが、売り上げ全体のうちに占める課税売り上げが九五%を超えていれば、これはその分類をしなくても仕入れにがかった税金はすべて引いて結構ですという制度に現在なっているということについての御指摘でございました。  これは、大企業中小企業を問わず適用されているものでございまして、確かに取引高が大きいところほど金額的な面では御指摘のとおり大きくなるかと思いますが、この制度の導入の趣旨は、そこの九五%を超えているような課税売上割合のものまで詳細に一対一対応をさせることが事務を取り扱っている事業者の事務負担の問題で適当かどうかという判断から導入しているものでございまして、この種の制度をとっているヨーロッパにおいても見受けられるものでありまして、現状におきましてはこの九五%ルールを維持することが全体のこの税金の運営上適切であると考えております。
  95. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 今もお話がありましたが、この制度は、本来事務負担への配慮を理由にして取り入れられたものであり、事務処理能力の弱い小企業に適用されるなら私はそれなりに理由がある制度だと思います。ところが、それを事務処理能力は十分ある大企業にも適用すると、その結果、今も認められた矛盾が出てくるわけです。これは、巨額の売上高がある大企業にとっては大変な益税になるわけです。例えば、NTTの場合に例をとれば、年商売上高六兆円、これは課税仕入れ率が幾らになっているか、私はその数字はわかりませんけれども、六兆円といえば仮に三%がそうだったとしても十八億、五%なら三十億という計算上の数字は出てくることになるわけですね。  こういう制度というのは、やはり矛盾がある制度でまずいということで、これはヨーロッパにそういう例があるというお話でしたが、同時にこれはやはりまずい制度だ、弊害があるということで、例えばイギリスなんかは一九八七年に廃止していると、こういう制度になっているわけです。  私は、日本でもこの制度を直ちに全廃せよということは言いませんけれども、しかし検討して少なくとも事務処理能力の弱い中小事業者に限定するとかという措置をとる、そういう研究の余地があると思いますが、大蔵大臣にこれはお伺いしたいと思います。
  96. 薄井信明

    政府委員薄井信明君) 先に事務的なところを御答弁申し上げますが、全体の売り上げの中で、大企業の場合、中小企業の場合を含めてでございますが、金融取引とか不動産取引というのが大体どこの企業でも含まれるわけでございまして、これが非課税売り上げに当たるケースが多いと思います。  この金融取引とか不動産取引について仕入れは何があるかということを考えてみますと、課税仕入れというのはほとんどないのではないかと思いますので、そういう意味では九五%ルールは、御指摘のとおり事務負担の問題もさることながら、企業の普通の活動の中で課税取引が九五%程度、残りが仮にそれ以下のものとして非課税取引があっても、それに伴う課税仕入れ分というものはほとんどないと考えられますので、その面からもこの制度説明できると思っております。  なお、イギリスのケースございますが、イギリスイギリスで例えばゼロ税率だとか、私どもには考えられないような大胆な甘い制度をとっていたり、この辺については各国がそれぞれ沿革なり歴史を持って制度をつくっているということを御理解賜りたいと思います。
  97. 三塚博

    国務大臣三塚博君) いずれにいたしましても、この消費税、論争を呼んで導入をされ、四月一日から改めて二%アップということで国の税制の根幹に相なっておるところでございます。より一層よいものにしていく努力を今後とも続けてまいります。
  98. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 大臣、今そういう答弁でしたから、大臣の答弁に沿った検討をお願いしたいんですけれども、主税局長の答弁によると、これは根拠があるということでどうもこのままいきたいというニュアンスに私にはとれました。それはやはり、専門家は既にこの制度を改めるべきだということで大いに論議が開始されている、これは当然御存じだと思いますけれども。  マスコミで問題になる益税と言えば、転嫁ができないで困っている中小事業者の損税と言われる部分が大きく取り上げられておって、これまで余り議論にならなかったからこういう問題が焦点に据わってこなかったわけですけれども、私は、こういう身銭を切って税金を払わせるということが問題になるなら、こういう制度こそより大きい問題になるべきだと思うんです。  そういう点で、大臣、主税局長のニュアンスとちょっと大臣は違うと思いますけれども検討はなさるというふうに期待してよろしいですか。
  99. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 余り違わぬのだと思うんです。先ほど申し上げましたように、さらに一層よいものにしてまいりますために努力を惜しみません。
  100. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 それでは、検討が行われるというふうにとって次に進みます。  二つ目の問題は、消費税の運用益の問題です。これはこれまでも問題になってきていますが、納税額が四百万円以上の事業者は年四回納付ということになっております。低金利時代とはいえ、大企業の場合はこの運用益、これもばかにならない。大企業の益税の一つですね。二回納入だったのを四回に改正はされましたが、海外には毎月一回、十二回というところもあります。こういうものも益税の問題がこれだけ厳しく問題になっているときには検討なさる用意があるかどうか。これは簡単な問題だから、大臣で時間を節約したいんですがね。
  101. 薄井信明

    政府委員薄井信明君) 納付のタイミングの問題につきましては、私どもも導入当初のシステムでは少な過ぎるということで、平成三年の改正で今御指摘の中間申告三回、年四回というものを取り入れましたが、今度平成九年、ことしの四月からはこの適用範囲を広げるというのか、年税額が今まで五百万であったものを四百万に下げますので、一層この点は御指摘の方向で進んでいるということを事実関係として申し上げたいと思います。  それからもう一つは、運用益という点では否定はいたしませんが、一方で物を仕入れて売る、あるいは仕入れて物をつくったりサービスにして販売するわけですが、仕入れにがかった分は先払いをしているという面もあるわけでして、単に運用益だけでは議論できない。あるいは日本の商慣習として売り掛け取引といいますか、現金は入ってこないけれども売ったことになりますので、その結果金利負担を負っているケースもありますので、そういうことを考えますと、現状、現在の制度はそれなりに定着していると考えております。
  102. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 この問題はそういう点でその方向で検討があるということですから、大臣には答弁求めないで、それを確認させてもらいます。  最後に、大臣一つ宿題的提案を私は行いたいと思います。  それは、大蔵改革課題一つとして、組合所属による差別をなくす問題であります。全国税労働組合、全税関労働組合が長年主張し続け、今訴訟にもなっている給与、昇進などさまざまな問題での差別問題を解決することが重要な大蔵省改革一つとして、私は取り上げられるべきだと思っております。  大蔵省にしろ国税庁や関税局にしろ、その職員が強い使命感に燃えて働ける職場にするためには、そういう職場の中に組合所属による差別というふうなものがあってはならないと私は思います。そういうことになると、これは本当に職場が一つになって大蔵省の仕事を達成できないと思います。  そういうことであるにもかかわらず、今第一組合、全国税、全税関に所属している組合員はどんなに立派に働いても給与、昇進で大変な差別を受けている、こう私どもは繰り返し訴えを受け、善処方への努力を求められております。こういう風潮ができれば、当局の言うことを無難にこなしておけば順調に給与も上がり昇進もする、そういう状態になって、いや応なしに無気力にならざるを得ない。近年、大蔵省幹部が腐敗事件で国民の厳しい糾弾を受けている。私はこういうことと直接つなぐことはいたしませんが、あながち無関係ではないと、こういうふうに考えております。  私はその点で、国税庁が全国税組合員全員を個別管理して差別する、そういう会議をやったという国税庁の文書も今では明らかになっていることも知っております。こういう事実は率直に認めて改める努力が必要だと思います。また、関税当局についても、二十二年に及ぶ裁判が続いている。こういうものも裁判による決着というようなことでなく労使で自主的に解決して正常化を図る、こういうことが必要になっていると私は思います。  大蔵大臣に私が提起したいのは、もちろん大蔵省当局の言い分もあると思います。にもかかわらず、こういう二つの組合の意見を直接大臣自身もお聞きになって、そしてこういう問題を立派に解決する、そのことによって、いろいろ政治立場の違いはあっても、国税庁もまた関税局も、さらに大蔵省全体が使命感に燃えてやろうということをつくるために、これはやっぱり大蔵大臣の仕事としてぜひ努力していただきたい。  細かな答弁は要りませんが、決意だけお伺いしたいと思います。
  103. 堀田隆夫

    政府委員(堀田隆夫君) 国税の大事についての御指摘がございましたけれども、私ども人事は適材を適所に配置いたしまして、的確な行政運営を行うことを基本にいたしまして、職員個々の能力、適性等を総合的に勘案して公平に行ってきているところでございます。  したがいまして、ただいま御指摘のございましたような、職員団体加入の有無ですとか、あるいは職員団体のどの団体に所属しているかというようなことによって、そのいかんによって人事上の差別を行うというようなことは考えてございませんし、現に行っていないということでございます。
  104. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 そんな答弁では納得しない。大臣に一言言ってもらえばいい。大蔵省当局の意見はあるだろうがと私はわざわざ言ってあるんだよ。
  105. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 今、次長からの答弁もありましたが、あり得べからざることであります。思想、信条の自由というので憲法に保障されておりますから、そういう点で、ただいまの御開陳は体しておきます。
  106. 山口哲夫

    山口哲夫君 質問通告している問題のほかに、今吉岡議員がたまたま取り上げておりますので、私の方からもこの問題についてちょっと触れさせていただきたいと思います。  私も、細かな点までこれは聞いております。私の聞いた範囲では、これは明らかに不利益処分だろうなというふうに私は判断いたしました。次長は、こういう席ですからそれは当然、人事のことですから公平にやっておりますと、そう言わざるを得ないと思いますけれども、しかしこういう問題は、もう少し細かくきちっと調べる必要があるだろうと思っております。民間ですと、これはもう完全に不当労働行為ですね。今、事例として挙げていることが事実だとすれば完全に不当労働行為です。  私の記憶によりますと、たしか三菱電機だったと思いますけれども、組合幹部をしている人をたしか鎌倉から仙台に配置転換していますね。これが裁判ざたになりまして、たしか東京高裁でもこれは不当労働行為だという判決が出ておりました。それからもう一つ、私の記憶ではたしか東亜ペイントだったと思いますけれども、これはやはり組合幹部を配置転換したわけです。そうしましたら、これは最高裁まで行きまして、最高裁では不純、不当な動機を持って行う行為は不当労働行為であるという、そういう判例も出ていますね。ですから、不純な動機、要するに組合つぶしのような考え方でやる配置転換というのはこれは不当労働行為だと、こう出ております。  ですから、これは公務員だって同じだと思いますよ。たまたま公務員の場合には、労働委員会に提訴できませんので人事院に不利益処分として提訴するんでしょうけれども、こういう問題というのは、やっぱり私は、公務員が打って一丸となって仕事をしようと思うときに、上に立つ人が職場の中に差別をつくるような行為はこれは一番慎むべきことだと思うんです。  そういう点で、ぜひ今後こういうことのないように、もしあるとすればすぐ解消してほしいし、今後ないように、大臣が真剣にこういう問題について中立的な立場でよく調べて御指示をしていただきたいと、私からもそういうことを申し上げておきたいと思います。  もし、御決意があればお答えをいただきたいと思います。
  107. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 承りました。
  108. 山口哲夫

    山口哲夫君 それでは通告の質問をいたします。  消費税は、これは九月三十日までにいろいろな立場からの議論をした上で税率を上げるか下げるか決定するべきであるという、そういう法律だったと思います。それが残念ながら閣議だけで決定されたということについては、私はこれは違法だと思っておりますので、この点については遺憾の意を表しておきたいと思います。  そういう立場に立って、三%の税率で凍結をしようとすれば約五兆円の財源が必要だと思います。そのためにはやっぱり租税特別措置法の改正を真剣にやるべきでなかったんだろうかと思います。そういう点で、租税特別措置法に関係してきょうは一つだけ、引当金の問題について質問をしておきたいと思います。  昨年の二月二十二日のちょうどこの大蔵委員会で私から、退職給与引当金というのは実態から見ると大変甘過ぎるんではないだろうか、だからこれは累積限度を四〇%から二〇%くらいに改めたらどうかという質問をいたしました。それについて薄井主税局長がこう答弁しております。  現在の制度の趣旨は、在籍年数が各職員どのぐらいかということから、現在価値に逆算したときにまあ四割ではないかということで、昭和五十五年以降、実情に合わせてそうしております。したがって、こういう実態が変わってくるならば手当ての必要があろうと思います。 こんな答弁をされているわけです。  実際に変わってきていると思うんですね。これはたしか政府税調に出す内部資料だったと思いますけれども、昭和三十三年に平均在職年数九年が昭和五十三年には十二年に延びております。そこで累積限度額を五〇%から四〇%に改正したんですけれども平成六年度は十二年から十四年に延びているわけです。現在、定年延長というのが随分行われておりますから、そういう点では恐らく十五年から十六年くらいになっているんではないだろうか、そういうふうに思われます。  そうなりますと、これは計算上からいっても三〇%に改めるのが局長のおっしゃる答弁からいっても当然でないかと思うんですけれども、いかがなものですか。
  109. 薄井信明

    政府委員薄井信明君) 引当金についての御質問でございまして、私どもいわゆる租税特別措置というふうにこれを分類はしておりませんが、つまり引当金はその存在理由についてはあるというふうに考えておりますが、これが実情に合っていない状況であれば、これを直していくのが適切であると考えておりまして、去年のこの席での答弁でもその線に沿って御答弁申し上げました。  その後といいますか、そのころからですけれども法人税について税率が高過ぎるという議論が多くなされておりまして、私どももそれはそうかなと思っているわけですが、一方でその課税ベース、これは国際的に見て適当かどうか、これを十分勉強しないと税率論だけではいけないと思っておりまして、昨年から一年かけて政府税制調査会で論議をしてもらっております。その過程で、短く申し上げますが課税ベースについて全般的に見直す中で財源が出てくるならば税率を下げると、こういった法人税の改正の方向というものが出てきているかと思うんですが、その過程で、私といたしましても各引当金につきましても見直すべきものは見直していったらいいと思っております。  ただし、一つだけ取り上げて、あるいは引当金だけ取り上げてこれを改正してしまうことが適当なのかどうか。つまり課税ベースと税率で法人の負担全体が決まってまいりますので、そういう意味では世の御議論は必ずしも引当金だけでやるのは適当でないということが強い状況にございます。  私といたしましては、課税ベース全般についてなお引き続き検討させていただいて、今後の税制改正の中で税率引き下げに結びつくような形でできるならば対応できればいいなと思っております。
  110. 山口哲夫

    山口哲夫君 この引当金の問題は課税ベース全体の中で考えるという問題と違うと思うんです。そういう政策的なものではないんで、実際に計算をしていけばやっぱり当然これは下げざるを得ないという、そういう単純な問題だというふうに思うんですよ。  それで、既に大蔵省では、これは日経新聞ですけれども、暮れの予算編成のときに、退職給与引当金について、今申し上げたように三〇%に下げる内容を、これ経済界に示していますね。ですから、大蔵省自身がもう既に下げるという腹を決めていたと思うんですよ。そういうことから申しますと、これは実際には現実の決められている四〇%の積算根拠が変わっちゃったわけですから、これは局長の言うように、当然三〇%に下げるべきだと思いますよ、私は。
  111. 薄井信明

    政府委員薄井信明君) 法人税制のみならず、税制のいろいろなレベルを決めるにつきましては、実態を見、またその中からどの時期にこれに対応していくかということを総合的に判断していくべきものだと思います。  したがって、一つだけ取り上げて退職給与引当金の今の率が適当かどうかという議論を詰めることもできますが、しかしそれを現実に税制改正に反映していくについては、絶対的にこうでなければならないという水準でないと私も思いますので、総合的にという意味もどこまで総合的かという問題ありますけれども、課税ベースの本格的な議論の中で検討すべきであるという主張を、私もそのとおりだなと思いまして、今後の改正の一つのテーマとして考えてまいりたいと思っております。
  112. 山口哲夫

    山口哲夫君 私は、今たまたま引当金の問題の退職給与引当金をお話ししましたけれども、このほかにまだ引当金の問題で貸倒引当金の問題もありますし、賞与引当金の問題もあるわけです。そういう引当金制度そのものを見直さなければならないというのはもう税制調査会から何度も答申が出ているわけです。  それで、これはもう古い昭和六十一年十二月の税制調査会の答申の中にも、退職給与引当金については廃止を含めて見直しを進めるようにということも出ているわけですから、これは政府の税調がそういう方針を出し、しかも主税局長は、これは情勢の変化があれば、その数字の変化もあれば当然そういうことは考えなきゃならないというふうに答えていることからいえば、これは全体の問題と絡め合わせないでも、その引当金制度改革というのはせざるを得ないんじゃないですか。
  113. 薄井信明

    政府委員薄井信明君) 昨年も申し上げましたが、この引当金制度といいますか、そもそもその退職給与というものが日本において存在し、例えばアメリカにおいてはこのようなものがないと、こういった中で退職給与制度全体に与える影響などもども指摘を受けております。  そういった中で、純粋に税制に絞り、しかも法人税に絞り、引当金に絞っていけば、御指摘のような考え方も出てくるかと思いますが、現実には労使の関係あるいは法人課税負担全体の問題ということに密接に関係しているわけでございますから、御指摘のような貸倒引当金との関係も含めて、引当金全体の中のことも含め、私どもはあるべき方向について今後とも探求してまいりたいと思っております。
  114. 山口哲夫

    山口哲夫君 退職給与引当金の利用状況を調べてみましたら、資本金の階級別の利用状況を見ますと、これは資本金百億円以上の階級が五九・三%の利用です。一億円以上というふうにしますと約九〇%です。ですから、非常に大きい企業がもう主としてこれを使っているという、そういうことが出ています。  それからもう一つ、この利用法人数、これを調べてみますと、百億円以上の資本金の階級は八三・三%の法人が利用している。一億円未満ですとわずかに四・一%という非常に少ない利用率です。もうこうなると、非常に大企業だけが主として使っているようなこういう引当金制度、これがやっぱり答申の中にもはっきりと書かれているわけですね、偏りがある、利用者に偏りがあるんではないかという。そういうことから見ても、本来これはやっぱり税調が言うように廃止をまず中心にして考えていくべきことだと思うんですけれども、どうですか。
  115. 薄井信明

    政府委員薄井信明君) 社内に退職給与引当金として積み立てている比率からすると、もう御指摘のとおりでございますが、中小の企業におかれては退職金をやはりお払いになるわけで、そのためには社外に積み立てると。そのときには、社外に積み立てることをもって退職給与引当金とは別の仕組みで損金経理されるという形になっているわけでございます。  したがいまして、その退職給与引当金を大企業だけが持っているということと、税金計算上どういう影響があるかということは直には言えないと思っております。ただ、税調の答申を御引用いただきましたけれども、実情に合った方向に持っていくというのは当然の方向だと思います。
  116. 山口哲夫

    山口哲夫君 今のような実態ですから、結局は企業は内部留保をしているんではないかとさえ言われるわけですね。  それで、貸倒引当金ですけれども、これも税調の方からはやっぱり改善が求められているわけです。法定繰入率に対して貸倒実績率というのは非常に低いわけです。例えば卸・小売業なんていうのは千分の十に対して千分の五しか使っていない。金融・保険業でも三に対して三分の一の一しか使っていない。全体的に半分以下ですね、使っているのは。そうなりますと、これは一体何のための貸倒引当金制度なのかな。これも本当に内部留保というような形で言われても仕方がないんじゃないだろうかと。  ですから、こういうようなものは全般的に実情に合わないということからいえば、当然これはもう税調の言っているように根本的に改める時期に来ているというふうに思うんですけれども、いかがですか。
  117. 薄井信明

    政府委員薄井信明君) 貸倒引当金の実績の流れを見ますと、確かにそういう数字が出てくるのではございますが、ここ数年といいますか、バブルの崩壊の過程でむしろ貸し倒れの比率が急にふえてきている面がありまして、私の感覚ではむしろその実績率と法定率の開差というのは、こういう概算率である以上やむを得ない面はあるとは思うんですが、一方で、こういう貸し借りの関係あるいは貸し倒れの関係が、事態が変わってきた。そういう中で、今までどおりの貸倒引当金制度でいいのかなという問題意識の方を持っておりまして、そういう意味で言いますと、実績のみで貸し倒れの積み立てを認めるということも一つ考え方かなと思います。  ただし、引当金制度そのものをなくすつもりはありませんし、なくしてはいけないと思っております。
  118. 山口哲夫

    山口哲夫君 最後に大臣にお伺いしたいと思うんですけれども、この引当金制度改革問題というのはもう長年の問題ですね。しかも税調からきちっと指摘されているし、今議論しておるように大変矛盾した点もあるわけです。法定率と比べて実績率というのは、今局長おっしゃっているけれども、実際に調べてみたらやっぱりこのぐらい低いんじゃないかと思いますよ、私は。それから、賞与引当金などもこれはもう改めるべきだということを税調からはっきり言われているわけですよ。今これから財政再建をやろうとするときに、こういう矛盾した税制を残しておくということは許されるべきことでないと思うんです。  ですから、まずこういうところに手をつけて、私どもは不公平税制と呼んでいますけれども、不公平な税制をきちっと改めることをやらない限り、これは国の財政再建そのものがなかなか思うように進まないだろうと思うんです。大臣、いかがでしょうか。
  119. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 段々の御論議を承っておりました。政府税調の意見は大事にしなければいけません。その方向でよく見てまいります。
  120. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 本件に対する質疑はこの程度とし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十二分散会