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1997-06-03 第140回国会 参議院 商工委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年六月三日(火曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  六月二日     辞任         補欠選任      加藤 修一君     水島  裕君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         木宮 和彦君     理事                 沓掛 哲男君                 吉村剛太郎君                 片上 公人君                 前川 忠夫君     委 員                 大木  浩君                 倉田 寛之君                 斎藤 文夫君                 中曽根弘文君                 林  芳正君                 平田 耕一君                 木庭健太郎君                 平田 健二君                 梶原 敬義君                 竹村 泰子君                 藁科 滿治君                 山下 芳生君    政府委員        公正取引委員会        委員長      根來 泰周君        公正取引委員会        事務総局経済取        引局長      塩田 薫範君        公正取引委員会        事務総局経済取        引局取引部長   山田 昭雄君        法務大臣官房審        議官       柳田 幸三君        大蔵大臣官房審        議官       尾原 榮夫君        国税庁課税部長  船橋 晴雄君        通商産業大臣官        房審議官     藤島 安之君        通商産業省通商        政策局次長    佐野 忠克君    事務局側        常任委員会専門        員        里田 武臣君    説明員        大蔵大臣官房審        議官       山本  晃君        大蔵大臣官房審        議官       中井  省君        労働省労政局労        政課長      村木 太郎君        労働省労働基準        局監督課長    青木  豊君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の一部を改正する法律案内閣提出、衆議院  送付) ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 木宮和彦

    委員長木宮和彦君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨二日、加藤修一君が委員を辞任され、その補欠として水島裕君が選任されました。     —————————————
  3. 木宮和彦

    委員長木宮和彦君) 私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 自民党の沓掛哲男であります。  今回提案されております独占禁止法の一部改正案について質問したいと思います。  昭和二十二年に独占禁止法は施行されましたが、その第九条で持ち株会社が禁じられたのは、戦前財閥中心株式所有民主主義を否定し戦争に至った反省からだったと思います。しかし、財閥解体されましたが、株の持ち合いと企業集団を特徴とする企業が主役の日本経済が形成され、新規参入をねらう企業経営者、外資などに閉塞感をもたらしております。  一方、急速な国際化バブル崩壊後の不況の中で、日本経済活性化国際競争力を強化していく上で柔軟な企業組織企業ネットワークの形成は極めて重要であり、その有力な選択肢として純粋持ち株会社解禁経済界等から強く望まれておりました。今、まさにその持ち株会社原則解禁がなされようとしているのですが、それが本当に国際競争力の強化や日本経済活性化の切り札なのか、産業金融等市場への影響は、親会社子会社従業員との関係は等多くの問題があります。これらについて、順次お尋ねいたします。  最初に、独禁法昭和二十二年に導入されました第九条で持ち株会社設立また持ち株会社への転化が禁止されておりますが、その理由について公取委の方から簡単に御説明願います。
  5. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) ただいま委員から御指摘のありましたように、この法律昭和二十二年に公布、施行されまして今日に至っているわけでございますけれども、当初は戦後の財閥解体という趣旨からこの持ち株会社禁止されたというふうに理解しております。  しかしながら、その後財閥解体されまして、今日的意義を申し上げますと、持ち株会社という制度の中にはやはり事業支配過度集中ということ、そういうおそれ、いわゆる独占禁止法第一条に違反するというか、それに抵触するような形態ではないかということで今日まで禁止されてきたのではないかと理解しております。
  6. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 今回の独禁法の一部改正により持ち株会社設立等禁止が一部を残して原則解禁されることになりますが、その経緯理由をお尋ねしたいと思います。  公正取引委員会は三年前までは持ち株会社解禁には反対であったと思います。一九九四年、平成六年五月三十日の日経ビジネスで、当時の小粥公取委員長は、持ち株会社は系列を強め、市場閉鎖性を助長するので、その解禁は考えられないと言っておられます。ところが、その一年半後の平成七年十二月二十七日の公取委独占禁止法第四章改正問題研究会中間報告書では、公正取引委員会により一定監視のための措置が講じられるようにしておけば、次のような持ち株会社類型については持ち株会社禁止制度目的に反しないと考えられるとされています。一言で言えば、持ち株会社原則禁止、一部解禁というところだと思います。  さて、今回審議に入りました独占禁止法の一部改正では、その第九条で、今まで「持株会社は、これを設立してはならない。」と一〇〇%禁止していたのを「事業支配力過度集中することとなる持株会社は、これを設立してはならない。」とし、「事業支配力過度集中することとは、」として三類型を示しておられます。この三類型以外は解禁されるわけですから、一言で言えば原則解禁、一部禁止というところだと思います。わずかこの三年間のうちに持ち株会社全面禁止から原則禁止、一部解禁へと、続いて原則解禁、一部禁止へと大きく転換しておられますが、その経緯、その理由についてお尋ねいたします。
  7. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 正直申しまして、この持ち株会社解禁ということについては公正取引委員会の中でも大きな迷いがあったと思います。先ほど申しましたように、戦後、連合国の示唆に基づきましてこの独占禁止法というのができまして、その中に第九条というのが定められたわけでございます。  第九条の立法趣旨は先ほど申し上げましたような財閥解体、その後はやはり事業支配過度集中のおそれということでこういう規定が今日まで存続してきたわけでございますけれども、その過度集中という中には過度集中にならない部分、要するに持ち株会社制度の中でも過度集中にならない部分があるんじゃないかという批判がありまして、今回そのならない部分を切り捨てたというのが実情でございます。  ある意味では、五十年間この第九条というのは独占禁止法象徴的意味があったわけでございますが、このごろの規制緩和の流れ、あるいは一般社会独占禁止法重要性ということについては十分御理解をいただいているような素地、そういうことを考えまして、私どももこの第九条を、全面解禁部分解禁かその議論は別としまして、解禁方向がよかろうということで今回の法案提出に踏み切ったわけでございます。  もちろん、その間に独禁法第四章の研究会の御意見もちょうだいいたしましたし、また与党で構成されておりますプロジェクトチームとかあるいは独禁法協議会でいろいろ御検討いただき、また御意見をちょうだいして今日に至ったわけでございます。  そういうふうな世の流れといいますか、そういうようなことでこういうふうになったわけでございまして、決して変節したというわけではございませんので、その辺御理解を賜りたいと思います。
  8. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 持ち株会社設立禁止されている第九条第五項の三類型について具体的にお尋ねいたします。  第一類型は「総合的事業規模相当数事業分野にわたって著しく大きいこと、」とありますが、これについて四つお尋ねします。  第一、総合的事業規模が著しく大きいとはどのような企業集団を想定しておられるのか。二番目、主要な事業分野としての例を挙げてください。三番目、その事業分野でそれぞれ大規模会社を有する趣旨だと思いますが、どのようなイメージでしょうか。四番目、相当数とはどの程度でしょうか。
  9. 塩田薫範

    政府委員塩田薫範君) お答えをいたします。  先生指摘の、改正法案の第九条第五項におきまして、三つ類型といいますか、禁止されるべきものとして三つ形態を挙げておりまして、第一番目が、今御指摘のありましたように、持ち株会社子会社、あるいはその持ち株会社株式所有により事業活動を支配している会社、これは、子会社ではなくて五〇%以下の持ち株比率であってもその事業活動を支配しているものも含むということで、持ち株会社グループと言っていいかと思いますけれども、その持ち株会社グループ総合的事業規模相当数事業分野にわたって著しく大きいということを規定しているわけでございます。  その法案をお認めいただきまして施行される際には、もう少し具体的にこの規定の解釈といいますか、公正取引委員会としての運用の考え方ということをガイドラインという形で示すということを考えておりますけれども、今、四点お尋ねがございました事項についても、我々の考えでいるところでは、ガイドラインの中に具体的に書き込もうということになろうかと思っております。  第一番目の、総合的事業規模が著しく大きいということでございますけれども、ここでは持ち株会社グループの総資産合計が十五兆円程度を超えるものということを想定しているといいますか、そういったことでガイドラインの中に書くということを現在考えております。  これは、六大企業集団の中で最小のものの金融会社を除いたメンバー企業の連結総資産合計額が二十一兆円でございますので、これを参考にいたしまして、こういった大きな企業グループのすべてが統括されるということではないにしても、幾つかの企業が外れたとしても、そういったものが一つ持ち株会社傘下に置かれた場合には問題にする、規制対象として考えるということで、そういった考え方によるものでございます。  次に、相当数事業分野にわたってというようなことで、主要な事業分野ということでありますけれども、第九条で問題としようとしておりますのは、国民経済全体に対する影響を見ようということでございますので、例えば一般土木建築工事業であるとか、石油製造業であるとか、鉄鋼業というようなくくり方を考えておりまして、さらに事業分野の中には規模が小さいものもございますので、そういったものは除くのが適当ではないかなというふうに考えております。  次に、大規模会社ということでございますが、冒頭申し上げましたいわゆる六大企業集団社長会メンバーとなっている程度の大規模会社を考えております。  これは、先ほど申し上げましたように、六大企業集団の中の一つ持ち株会社によってあらかた統括される、そういうような場合には問題にすべきであるということからのことでございます。  それから、相当数事業分野にわたってということでございますが、これにつきましてはおおむね五以上を考えております。  この事業分野相当数の数でございますけれども、この第一類型は、我が国経済全体に対する持ち株会社グループ影響を見るということでございますので、企業集団における主要企業事業分野広がり等を勘案する必要があるということから、おおむね五以上ということを考えているということでございます。
  10. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 今おっしゃった総合的事業規模というのは、現在六大企業集団と言われているものの一番小さいものの子会社を含んだものの二十一兆円とそれとの関連だというお話ですが、これについては、後ほどもうちょっと議論させていただきたいと思います。  では、次の第二類型については、持ち株会社及び子会社等の「資金に係る取引に起因する他の事業者に対する影響力が著しく大きいこと」とあります。そこで、子会社の中にどの程度規模金融会社があればこれに該当すると考えられるのでしょうか。
  11. 塩田薫範

    政府委員塩田薫範君) お答えをいたします。  第二番目の類型として、大規模金融会社傘下に置く持ち株会社を想定している規定といいますかグループでございますけれども、ここで考えています大規模金融会社につきましては、原則として都市銀行のような規模の大きい金融会社を考えております。  これは、戦前財閥におきまして巨大な金融会社企業集団の中核となっていたことにかんがみまして、そのような大きな影響を及ぼすのが都市銀行程度規模、これは銀行に限りませんけれども都市銀行程度規模を有する会社というふうに考えているからでございます。  この点につきましても、法案をお認めいただいた段階ガイドラインをつくる、その中に具体的に書き込むというようなことを現時点で考えております。
  12. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 昭和五十年代ぐらいにおいて、私は都市銀行というのは大変力があったんだというふうに思います。しかし、昭和六十年代に入ってからというものは、大企業銀行離れが急速に進んで、そして有力な銀行とされる都市銀行は、他業態のトヨタとかそういういろいろな大企業ですけれども、そういうふうに他業態の大企業に対する強い支配力がかなり薄れてきた。かつての昭和五十年代ごろまでのそういう都市銀行というものと、今では随分そういうものが違ってきているなというふうに思うんですが、その辺についてはいかがでしょうか。
  13. 塩田薫範

    政府委員塩田薫範君) 御指摘のように、最近、大企業銀行離れといいますか、間接金融から直接金融へのシフトというようなことが言われておりまして、現実にそういう動きがあるといいますか、それはそういうことだと思いますけれども金融会社融資等による影響力ということを現時点で考えてみた場合に、やはり持ち株会社のもとに大規模金融会社を擁し、かつ一般事業会社を同時に自分の傘下に置くということを想定いたしますと、やはり国民経済に大きな影響を及ぼすというふうに考えられますので、やはり金融業といいますか、企業銀行離れということを、そういう動きを無視するということではありませんけれども現時点でもやはりこのような形での事業支配力過度集中一つ形態としてとらえておくことが必要であるというふうに考えております。
  14. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 では、第三類型についてお尋ねします。  持ち株会社及びその子会社等が「相互関連性のある相当数事業分野においてそれぞれ有力な地位を占めていること」とあります。これについて、三つお尋ねします。  まず、相互関連性を有するとはどの程度を言うのか。また、事業間の関連性をどのような物差しで具体的にあらわすのか。次に、「相当数事業分野」の事業分野をどのような産業分類で定めるのか。また相番数とはどれぐらいか。それから次、それぞれ有力な地位を占めるとはどう具体的に定義するのか。この三点についてお尋ねいたします。
  15. 塩田薫範

    政府委員塩田薫範君) 第九条第五項の禁止されるべきものの第三類型として、持ち株会社グループに属する会社が「相互関連性のある相当数事業分野においてそれぞれ有力な地位を占めている」ということで規定をしようとしているわけでございますけれども、御質問の、事業分野相互関連するということはどういうふうに考えるのかということでございます。  これにつきましては、例えば製品の販売先あるいは原材料の仕入れ先あるいはサービスの提供先として密接な関係があるかどうか、そういったこと等を考慮して合理的に判断をするということにいたしたいというふうに考えております。  それから、相当数事業分野ということでありますが、おおむね五以上というふうに考えておりますが、ただこの第三類型につきましては、いろんな要素、関連性であるとかというようなことを総合的に勘案して禁止類型に該当するかどうかということを判断するべきものというふうに考えておりますので、特に産業規模が大きな分野については、五ということではなくて三分野でもこれに該当する場合があり得るというふうに考えております。  それから、主要な事業分野ということにつきましては、先ほど第一類型で申し上げたものと同じように、自動車及び同附属品製造業鉄鋼業、そういったようなくくり方をする、それから事業分野によっては規模が小さいものもございますので、そういったものを除くというようなことにしてはどうかということを考えております。  それから、有力な事業者といいますか、有力性ということでございますけれども、これにつきましては、事業分野における売上高等で見たシェアが一〇%以上、あるいはシェアの順位が三位以内というようなものを考えております。これは、それぞれの事業分野においてこれだけの地位を有するという企業幾つか集まるということで、市場閉鎖性、あるいは総合的事業能力の拡大が見られるというふうに考えるからでございます。  いずれにしても、これらの点は先ほど申し上げましたようにガイドラインの中に書き込むということを考えております。
  16. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 次は第九条六項で、持ち株会社及びその子会社の総資産が三千億円を超える場合は設立について届け出を求めることとし、また毎事業年度終了後に状況報告を求めることとしていますが、それはこれらの会社規模を拡大し、第九条で規制する事業支配力過度集中する持ち株会社になることをチェックするためのものなんでしょうか。
  17. 塩田薫範

    政府委員塩田薫範君) お答えいたします。  まさに先生指摘のとおりでございまして、今回、従前の持ち株会社全面禁止を改めまして、事業支配力過度集中することとなる持ち株会社以外は解禁をするということでございますので、持ち株会社一定範囲で許容されるということでございます。  ただ、そういった持ち株会社過度集中として禁止されるべきものに該当するかどうかということは私どもの方で把握をし、もしそれに該当するというものがあれば是正措置を講ずる必要がございますので、その意味一定規模以上の持ち株会社につきましては、新規設立された場合に、一定規模以上のものについてはその段階でその概要報告してもらう。それから、やはり同じように、一定規模以上の持ち株会社につきましては毎年その概要を御報告してもらう。それによって我々としてはどういった規模のものがあり、それから過度集中として問題があるかないかということについてのチェックをしたいというふうに考えております。
  18. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 持ち株会社として規制される企業グループ規模は、その総資産額が先ほど十五兆円程度とおっしゃられましたが、そういう十五兆円程度であることを考えると、この三千億円というのは低過ぎるんではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  19. 塩田薫範

    政府委員塩田薫範君) 先生指摘の第九条第六項あるいは七項で、その監視対象となるといいますか毎年報告をしていただく持ち株会社規模としては、三千億円を下回らない範囲内で政令で定めるということにしておりまして、現時点では私どもとしては三千億円ということで政令規定をしたい、してはどうかというふうに考えております。  この水準あるいはその持ち株会社グループ規模として報告対象とする、あるいは監視対象とするのにどう考えるかということでございますが、私ども今回、改正法案を国会に提出するに先立ちまして、一月末に与党独禁法協議会の場で私ども独禁法改正案考え方といいますか、骨子について御説明をいたしまして御検討をお願いしたわけであります。その際には、この届け出義務対象となる会社としては、現在、独禁法の第九条の二という規定がございますが、その規制対象範囲になっている大規模事業会社のレベルを勘案いたしまして、総資産が五千億円を超えるものということで私どもの案といいますか考え方をお諮りしたわけでありますが、協議会の場でいろいろと御議論ございまして、最終的にはこの届け出義務基準としては三千億円ということが適当ではないかということでございました。  これにつきましては、確かに三千億円がいいのか五千億円が適当なのかというところがございますけれども持ち株会社解禁といいますか、持ち株会社そのものについて、今回全面禁止から一定範囲で許容するということでございますので、そういうことから考えますと、報告対象としては第九条の二の規制対象となっている企業よりも少し広目にとるということで、三千億円ということでスタートするのが適当であるというふうに考えております。
  20. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 事業持ち株会社とその子会社グループで総資産額が三千億円以上のものは三百程度と伺っておりますが、そこから考えて、持ち株会社でも対象になるのは二百とか三百ぐらいにはなると思います。  さて、産業界にこのような大きな網をかぶせることになるのですから、過度チェックとならないよう持ち株会社等からの毎事業年度事業に関する報告書は簡便な、必要最小限度とするようにしてもらいたいと思います。段階を設けること、例えば一兆円以下あるいは五兆円以下として、その内容の詳細の程度を変えること、一兆円以下のものは簡単なメモでさっと出してもらう、五兆円ならかなりいろいろな数とか、そういうふうな内容の詳細の程度を変えるのも一考だと思いますが、いかがでしょうか。
  21. 塩田薫範

    政府委員塩田薫範君) 今回、私ども審議をお願いしているところで、三千億円ということで届け出義務対象にしたいということでございますが、仮に現在ある企業持ち株会社になった場合に、どの程度の数の会社がこの三千億円を超えるのかということですが、今先生指摘のように約三百社が、仮に持ち株会社になったとすればこれになるということであります。  ただ、この数字は上場している会社であって、金融業を除くということでございますので、細かい話で大変恐縮でございますけれども上場をしていない金融会社以外の規模が大きいものも多少はある、多少というかある程度はあると思いますし、それから金融業につきましてもそれぐらいの数があろうかと存じます。ただ、今申し上げましたように、上場企業であって、金融業を除くと約三百社ということが、仮に現在ある企業持ち株会社化した場合には、この対象になるということでございます。  それから、この第六項あるいは第七項で報告をしていただくという目的は、先生指摘のように、過度集中になる持ち株会社チェックする、把握するというためのものでございますので、そういった意味では、その目的なり趣旨に照らして必要最小限のものにするということは当然のことであろうかと思います。具体的にどんなふうにするかは、今御指摘いただいたように金額で切るのがいいかどうかという話はございますけれども、いずれにしましても、基本的には必要最小限ということでお願いをするような方向検討をいたしたいと思っております。
  22. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 それでは、先ほどちょっと申し上げましたが、第九条第五項の第一類型関連してお尋ねしたいんですけれども、現在六大企業集団と言われる三井、三菱、住友、芙蓉、三和、第一勧銀は子会社を多数に持つ事業持ち株会社形態だと思いますが、これらの企業グループの中で、第九条で言う「事業支配力過度集中する」に該当するものがあるのでしょうか。  これは六大企業集団のところで子会社を含んで見てみましても、三井三十五兆、三菱三十一兆、住友はさっきの二十一兆で一番小さいんですけれども、第一勧銀などは六十兆をもう超しているんです。こういう六大企業が、皆さんのおっしゃられるこの第九条の「事業支配力過度集中する」、他の企業に対してそういういろいろな影響を与えているというものがこの中であるんでしょうか。あるとすれば、これがそうだというふうな御説明をいただきたいと思います。
  23. 塩田薫範

    政府委員塩田薫範君) お答えをいたします。  現在、いわゆる六大企業集団というものがございまして、それぞれかなりの規模を持っているわけでございます。今回御審議をお願いしております第九条第五項で禁止すべきものということの一つとして、冒頭先生が御指摘ございましたように、持ち株会社グループ規模が大きくてかつ相当数の主要な事業分野のそれぞれにおいてその別々の大規模会社を有するということ、そういう類型があるわけでありますけれども、私どもとしては、先ほど申し上げましたように、六大企業集団一つが、全社がそろってということでは仮にないにしても、大多数のメンバー企業一つ持ち株会社傘下になるということであれば、新しくお願いしております第九条の規定で、過度集中ということで問題にすべきであるというふうに考えております。  これは、繰り返しになって恐縮でございますけれども一つ企業グループメンバー企業の大宗が一つ持ち株会社傘下に置かれるということでございまして、それと現在の企業グループ相互持ち合いとかなんかで持ち合い比率は多少違いますけれども、いずれも、当然のことでありますけれども持ち株会社という定義、現行の独禁法第九条、あるいは現在審議していただいております新しい持ち株会社の定義のいずれにいたしましても、持ち株会社に該当しないということでございますので、現在あります企業グループがそのままの形で事業活動を行っているということであるとすれば改正後の第九条の問題にはならないというふうに考えております。
  24. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 この六大企業事業持ち株会社が今持ち株会社になったとすれば皆さんの定義に該当するというのは、それはわかります。だけれども、そうではなくて、持ち株会社であれ、あるいは個々の現在存する事業持ち株会社ですね、この六大企業であれ、その外部の経済主体その他に与える影響というのは私は同じだと思うんです。ですから、現時点でこの六つの事業持ち株会社がいわゆる他の自由な競争を阻害したりしていくほどの、そういう事業支配力過度集中しているものなのかどうかということをお尋ねしているので、現在のまま、現時点においてこの六つの事業持ち株会社がそういう他のいろいろの企業に対して非常に自由な競争を阻害したりなんなり、皆さんが独禁法の今度行われる一番目的を達成する、そういうものの阻害要因として現在なっているかどうかということなんですが、これは皆さんよりも通産省に聞いた方がいいかどうかわかりませんけれども、一応公取さんにお尋ねします。
  25. 塩田薫範

    政府委員塩田薫範君) 仮に、現在ございます六大企業集団と言われるものの一つ持ち株会社のもとで統括された場合に、多分御質問の趣旨は、その場合でも事業支配力過度集中として規制をしなくてもいいんではないか、もっとずっと大きくなったような場合に限って規制するだけで足りるんではないかというお話かなという気がいたします。  私どもとしては、現在あります六大企業集団、それぞれいろんな事業分野、主要な事業分野でそれぞれ有力な企業傘下にあるわけで、現時点では、お互いに株を持ち合ったりということはございますけれども、その結びつきはそうきつい話ではございませんし、それぞれの企業独自に動いているという面が強いと思います。したがって、今のような形と、持ち株会社のもとで五〇%超の株式保有比率で子会社になる、あるいはそこまで行かない場合でも、大多数の会社子会社になって、一部の企業子会社ではないけれどもかなりの高い株式所有比率のもとで持ち株会社のもとに置かれるということになるとすれば、個々の企業の行動等を考えますと、やはり事業支配力過度集中するものとして禁止をすべきものではないかというふうに考えております。
  26. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 この問題については、どこかで線を引かなければならないわけですから、今おっしゃったようないろいろの引き方もあると思いますが、経済というものは生き物でございますから、十年前、二十年前よりも現在がどうかなということに今後とも着目しながら、この点について、必要があらば見直すとか、そういうことも含めていろいろやっていただきたいというふうに思います。  まだいろいろ聞きたいことがありますから、これもう少し聞きたいんですけれども、次に移らせていただきます。  そこで、次はガイドラインについていろいろお尋ねしたいというふうに思います。  第九条五項で、同条第一項、第二項で禁止している事業支配力過度集中することとなる持ち株会社三つ類型規定しておりますが、今お尋ねしたようになかなかわかりにくいものです。法律だけでは書き切れないのだと思います。そこで、他の法律では、法律で書き切れないときは政令に委任してさらに詳しく規定するのですが、ここでは政令への委任はありません。多分、今後公取さんで先ほど来お話のありましたようにガイドラインをつくるのだと思います。国民の権利、義務、また我が国の経済政策に極めて重要な影響を持つ規定ですから、ガイドラインでなく、一番基本的なところは政令で決めるべきではないかなというふうに思うんですが、この辺についての公取さんの意見をお聞きしたいと思います。
  27. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 一般的に申しまして、いわゆる独占禁止法の条文というのはなかなか難しい条文でございまして、私ども、私どもというよりも、私も公正取引委員会に入って法律をいろいろ見ますけれども、なかなか解釈が難しいなというのが実感でございます。そうでございますから、一般事業者なり事業者団体の方が見られてもなかなか理解しがたいところがあろうかと思います。  どうしてだろうかということをつらつら考えますに、一般の刑法とか商法とか民法とかというのは非常に一般的に定着した言葉を使っているものですから、泥棒と言わなくても窃盗と言えば大体わかるわけでございますけれども、こういう経済用語というのはなかなか難しいところがあると思います。この経済用語をそれじゃ法律に置きかえる、あるいはさらに法律の延長であります政令に置きかえるということは、これもなかなか言葉としては難しいと思います。そういうことで、少し御批判があるかもわかりませんけれどもガイドラインということで、ここで国会で御質問になったことあるいは政府側が答弁したこと、そういうことをミックスしまして、もちろん法律を超えてガイドラインをつくるわけではございませんけれども法律範囲内でその内容を敷衍、演繹して、立法の趣旨から解釈あるいは事務の取扱要領まで演繹、敷衍してガイドラインで示すというのが親切ではないかというふうに思って、そういう方法でやりたいと思っております。  そこで、先取りするようでございますけれどもガイドライン内容につきましては、先ほど申しましたように国会の御意見あるいは我々の意見、そういうものを十分参酌しまして、もちろん法律を超えるわけでもなし、法律より縮小するわけでもなし、その法律とイコールのような書き方をぜひやっていきたいと思いますので、いろいろ御指導をいただきたい、こういうふうに存じております。
  28. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 今、委員長もおっしゃられましたように、この独禁法というのは、大変難解な法文のままで、それを解釈や運用でやるという場合は、私は当局の裁量の余地が大変大きくあり過ぎるのではないかというふうに思います。それは、公取さんは、我が国の経済の裁判所として検事と裁判官の権限を内閣から独立して執行されるわけですし、その上、ここでいろいろ議論しておりますけれども、本当は法律は国会で決めるということなんですが、実質上は皆様方が原案をつくられいろいろ出されるわけですから、法律をもつくられるということですから、皆様方がどうしても運用しやすいような、また解釈の幅のあるものになりがちというふうに思えてならないんです。  これは、必ずしも公取さんだけではなくて、中央官庁に共通的なところが今まではあったというふうに私は思います。できるだけ幅広く権限を所有して、そして多くの網をかぶせておいて、必要なときはそれを適用するというようなことがなされてきて、それが余りにも行き過ぎだということで規制緩和が盛んに叫ばれてきたんだと思いますが、私、今回の独禁法をずっと読んでも、このガイドラインによらなければ、国民もどこまでいいのか、どうしたらどうなるのかというのが非常にわかりにくいように思います。  ほかの省庁と違って、ここで法律を実際上は公取さんつくったら、つくられると言うと語弊があるんですけれども法律に大きくかかわられる、そして今度は何かを摘発するときは我が国経済の検事としてどんとやられる、そして裁判官としていろいろなものをやられる。普通ですと、法律をつくって、法律をつくれば執行するのはほかの司法、それから内閣等なんですけれども、実際犯人を捕まえるところと、公取さんの場合は何かそれを一体的に全部何もかも握っていると言うと語弊ですけれども、権限をお持ちのような気がするし、それを今現にここで実行されつつあるということなので、そういう点で、公取さんの方では、特に私は、解釈とか裁量の余地をできるだけ小さくしながら、国会で深く審議したものに基づいてぜひガイドラインをつくっていただきたいと思います。
  29. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 先ほども先走って申し上げましたけれどもガイドラインについては十分その内容をそしゃくしまして、わかりやすい、かつ平明で法律範囲内できちっとつくりたい、こういうふうに思っております。  もちろん、そのガイドラインの作成につきましても、これは当てはめという問題があるわけでございますから、私どもの仕事をなるべくオープンにいたしまして、そして御批判を仰ぐという方向で進めつつあるところでございます。  これは余計な話でございますが、合併の問題につきましてもいろいろ事前相談なんかがございますけれども、最近、事務の方の意見もございまして、事前相談の内容企業に差し支えない限りオープンにして皆様方の御批判を仰ぐという方向でやっておりますので、そこは御指摘のあるところを十分踏まえまして万遺漏のないようにやっていきたいと思いますので、今後ともひとつよろしく御指導をお願いしたい、こういうふうに思っております。
  30. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 先ほど来私が申し上げましたいろいろな問題を解決し、法の適正な運用を図る上でガイドラインの策定は極めて重要なものであります。国会での審議を踏まえて策定していただきたい。また秋に臨時国会があると思いますので、できればその機会にガイドラインについていろいろお尋ねもしたいと思います。  ガイドラインの策定については、今委員長さんからいろいろお話がございましたので、これについては私の希望を申し上げまして、次に移らせていただきたいと思います。  大蔵省来ておられますか。次は、連結納税制度と譲渡益課税等についてお尋ねしたいと思います。  持ち株会社設立または持ち株会社への転化を進めていく上で、税法の改正は極めて重要だと思います。企業は何にも増して利益を追求するのですから、持ち株会社にすることにより税法上不利益を受けるのでは二の足を踏んでしまいます。連結納税制度、それから分社化する場合の子会社の譲渡益課税についてぜひ検討していただきたい。  大蔵省としては、一時的に税収は減じることになるんですが、産業経済の発展により税は何倍にも返ってくるのですから、この辺はひとつ勇気を持ってお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  31. 尾原榮夫

    政府委員(尾原榮夫君) お答え申し上げます。  今回の独禁法改正解禁される持ち株会社は、いわゆる純粋持ち株会社と言われるものかと思います。一方、現在でも事業持ち株会社というのが広く認められておるところでございまして、一つ企業グループが既に形成されているところでございます。したがいまして、純粋持ち株会社解禁と連結納税制度が結びつけられて議論されることが多いわけでございますけれども、いささか次元の違う面もあるのではないのかなというふうに考えているところでございます。  それから、具体的な税制といたしまして二点ございました。  まず、連結納税制度について申し上げたいと思いますが、御承知のように、現行の法人課税は法人格に着目して個々の法人に課税する仕組みをとっているわけでございます。これに対して、いわゆる連結納税制度といいますのは、個々の法人ではなく企業集団一つの課税単位とする、いわば納税者と見るわけでございまして、その導入は単体課税でまいってきております地方税を含む我が国の法人税制の基本的考え方を異なることにするものであるというふうに認識しているわけでございます。  したがいまして、連結納税制度の導入の問題につきましては、企業経営の実態がどうなっているのか、つまりこの制度というのは本当に株主本位のか、つまりこの制度というのは本当に株主本位の経営がなされているというところに実体を置くものかと思うわけでございますが、そのような企業経営の実体がなされているのか、あるいは商法等の関連制度がどうなっていくのか。つまり、税といいますのは皆様から公正なものという認識が必要なわけでございまするから、やはりこのような諸制度なり実体がどうなっていくのかということは非常に重要な要素かと思っております。さらには、租税回避をどうやって防止できるんだろうかという問題が出てまいります。  また、最後になりますが、税収減の問題をどう考えるか、こういった問題があろかと思います。こういった諸点について慎重な検討が必要とされる研究課題であると認識しているところでございます。  それから、二点目の現物出資に係る譲渡益課税についてのお尋ねがございました。  現在、企業子会社設立する場合、現物出資資産に土地が含まれている場合には含み益の二割相当部分が課税の対象になっているというのが現在の制度でございます。それに対しまして、分社化なりを進めるときこれが支障になっているのではないかというお尋ねかと思いますが、これは一種の資産の含み益に課税されているわけでございまして、理論的には毎期の所得の概念に含まれ得るものかなと。したがって、税制としては、できる限り早い時点で、実現した利益と考えまして課税すべきではないかという考え方もあるわけでございます。  いずれにいたしましても、土地などの資産を出資いたしまして子会社設立する場合に生ずる譲渡益課税のあり方につきましては、先生が今おっしゃいましたような組織形態の変更の観点だけではなくて、今申し上げました、まさに課税ベースを含む法人税の見直しの中でもっと議論していかなければならない問題であろうというふうに考えているわけでございます。
  32. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 大蔵省さんとしては、現在の税を取ることが何といっても最大課題ですけれども、もう少し大きく目を開いて、大きく太らせてまた取るということをぜひ考えていただきたいと思います。  では、次に通産省お願いします。  通産省の企業法制研究会、これは局長の私的諮問機関だそうですけれども、その研究会から平成七年二月二十二日に研究会報告が出されております。  そこでは、我が国経済のダイナミズムの維持発展のためには柔軟な企業組織が必要であり、有力な選択肢として社内分社化、理想型として純粋持ち株会社を挙げておられます。最後の提言で、独禁法の第九条見直しの方向として、イ、純粋持ち株会社禁止する合理的根拠はなく、理論的には全面解禁すべきものと考えられる。ロ、全面解禁を行うとしても、五年程度の経過期間を設けて、事前届け出等により事業支配力過度集中について具体的な問題が生じる場合を除き全面解禁すればよいとしています。  極めて有意義な提案をしておられると思いますが、通産省として、今回の持ち株会社原則解禁産業政策上どのような効果があるか、もしデメリットもあるとすればそれも含めて教えていただきたいと思います。  また、禁止している三類型のような企業グループの発生の可能性をどのように考えておられますか、お尋ねいたします。
  33. 藤島安之

    政府委員(藤島安之君) 委員指摘企業法制研究会報告にもございますように、経済のグローバル化の進展、あるいはそれに伴う国際競争が大変激しいものとなっている。それに対しまして、我が国の企業がその環境変化に対応していくためには、その持ちます資本あるいは人材、そういった経営資源を最適に配分していくことが必要であります。実態的にも、我が国の企業は分社化を積極的に推進したり、あるいは逆に本社に統合するような、そういった企業組織の改革の動きが活発化しているというふうに考えておるわけでございます。  そうした中で、この企業法制研究会報告にございますように、純粋持ち株会社を提言され、今回の独禁法改正によりましてこれが認められますと、こうした経営資源の配分という企業選択の自由度が増すという意味で大変有益なものとなります。具体的には、機動的に新規事業が展開できるとかあるいは既存事業の効率化を進める、そういった意味で大変有意義だというふうに思うわけでございます。  私ども、今経済構造改革を推進しておるわけでございますけれども、そうした我が国全体の経済構造改革の推進の一助にこの純粋持ち株会社解禁がなるというふうに考えておるわけでございます。  全面解禁企業法制研究会では提言しておるわけでございますが、今回は、先ほど来の公正取引委員会説明にございますように三類型禁止されるわけでございます。これは、事業支配力過度集中を防止するという観点からの禁止でございます。実態的には、こうした形での結合はなかなか起きにくいものではないかというふうに考えております。  と申しますのは、国際競争が激化しておる中で、資金効率とかいろんなことを考えますとそう簡単にはこういうふうなものは起こらないと思っておりますし、仮にこういうものが禁止されたとしても、経済構造改革全体を進める上では問題にならない、そういうふうに考えております。
  34. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 経済的な影響について公正取引委員会にもお尋ねしたいと思ったんですが、時間の関係でこれは省略させていただきます。大変申しわけありません。  続いて、労働省にお尋ねしたいと思います。  純粋持ち株会社解禁により親子会社関係が増加すれば、これに伴って労使関係上の紛争も増加することが予測されますので、三点質問いたします。  まず、去る二月二十五日の与党独禁法協議会報告された連合、日経連、経団連の合意がありますが、そこで、「労働組合法などの改正の問題も含めて今後検討し必要な措置をとる」とあります。これらについて、労働省として何か具体的な考え方あるいは措置をとられる、そういうようなことがあれば教えていただきたいと思います。
  35. 村木太郎

    説明員(村木太郎君) 労働省といたしましては、委員指摘の本年二月二十五日の連合、日経連、経団連の労使合意や、あるいは今国会でのさまざまな御議論を踏まえて適切に対処してまいりたいと考えております。  具体的には、この持ち株会社解禁に伴います労働問題の検討につきましては、労使合意という経緯を踏まえまして、労使関係者の参集を求めて、そこで御検討をしていただくということが適切であるというふうに考えております。
  36. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 次に、現在、事業持ち株会社では、分社化で子会社をつくるとき転籍する労働者にとって使用者が親会社から子会社へとかわりますが、その際、労働者の同意等は必要なのですか。持ち株会社の場合も同様と思いますので、まず事業持ち株会社の現在の例、そして続いて持ち株会社の場合について教えてください。
  37. 青木豊

    説明員(青木豊君) 転籍につきましては、現在の判例、学説によりますと、もとの労働契約関係を終了させまして新たに労働契約関係を成立させるものというふうに解されておりまして、したがってその場合には労働者の同意が必要であるとされております。労働者の同意を得ないで転籍させるというのは解雇に相当するというふうに考えられているわけであります。  したがって、これは、現在、分社化が行われて転籍される場合についてでありますが、同時に持ち株会社解禁に伴って転籍をさせるという場合も同様ではないかというふうに考えております。
  38. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 では次、持ち株会社子会社従業員は、労使問題は子会社経営者と話し合うことになりますが、子会社経営者にも深くかかわることとなる持ち株会社とも必要に応じて交渉することができるんでしょうか。
  39. 村木太郎

    説明員(村木太郎君) この問題は、労働組合法の第七条の使用者の解釈の問題になるわけでございますが、労働委員会あるいは裁判所におきましては、この問題につきまして労働契約の当事者たる雇用主であることを使用者の基本としつつ、形式的には雇用主の地位にない場合であっても、労働者の労働条件に関して雇用主と同一視される程度に現実的かつ具体的に支配決定することができる地位にある場合も使用者となるとされておるところでございます。  したがいまして、このような場合には、その持ち株会社子会社の労働条件に関しまして団体交渉応諾義務を負うものと解される次第でございます。
  40. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 なかなかそれは親会社にとっては大変なことですし、その辺を明確にしていただかないと、労働省さんだけでいいのかどうか、また使用者側の意見もいろいろあるんだろうと思いますので、その辺は多くのいろいろな方の意見、これ判例ももちろんあるわけですけれども、判例といってもある一部のことを示しているので、一々裁判したりすればこれはまた大変ロスの多いところであり、我が国は余りそういうことがなかったことが経済発展の一つの要因でもあったと思いますので、その辺はひとつ関係省庁で的確な行政指導をしていただきたいというふうに思います。  そこで次、これはまた大蔵省ですが、附則第百十六条で金融持ち株会社は別枠で法律を策定するまで禁止されています。持ち株会社は、事業部門についてはもう既に事業持ち株会社ができるようになっていますから、製造会社等にとっての関心は、薄くはありませんけれども、今のところまあまあのようですが、金融業界にとっては昨今いろいろの問題が発生しており、それを超えて経営の健全化を図り、また国際化への対応等のためにも種々の利用方法があり、緊急性も高いと思います。  現在、大蔵省ではこの課題に取り組んでいると聞いておりますが、どのような状況でしょうか。
  41. 中井省

    説明員(中井省君) お答えいたします。  持ち株会社につきましては、利用者利便の向上や金融の効率化等に資すると期待されますところから、現在我々が進めております金融システム改革の中で重要な意義を有するものと考えております。  現在、金融システム改革に関する関係審議会におきまして、持ち株会社に関する事項を含めまして活発な議論を行っていただいているところでございまして、六月中旬には報告書を取りまとめるべく鋭意努力していただいているところでございます。  我々としましては、こうした関係審議会の御議論、さらには諸外国の制度を踏まえまして、具体的な法改正につきまして持ち株会社解禁時期をにらんでできるだけ速やかに準備を進めてまいる考えでございます。
  42. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 ぜひ速やかに制度をきちっとつくっていただいて、この持ち株会社が施行されるときにはぜひ金融持ち株会社の全貌もはっきりするようにお願いしたいと思います。  さて、次ですが、公取にとってはこの持ち株会社解禁と、もう一つは再販の問題が非常に重要だというふうにかねがね私は思っておりました。  そこで、委員長おいででございますので、再販の問題について一点お尋ねしたいと思います。  平成九年三月二十八日の閣議決定で、「再販適用除外が認められている著作物については、平成九年度末までにその範囲の限定・明確化を図る。」ことが決められておりますが、去る五月二十三日、公取委におきまして、再販問題を検討するための政府規制等と競争政策に関する研究会が開催され、書籍、雑誌の再販制度について審議されておりますが、新聞等についても研究会検討されるのか、今後の手順等についてお尋ねしたいと思います。
  43. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 御指摘のありましたように、再販問題、これは独占禁止法の適用除外ということに法律上はなっているわけでございます。その対象は、書籍、雑誌、新聞あるいは音楽用のテープ、CDというものが対象になっておりまして、これが再販売契約を許されているという現状にあるわけでございます。しかしながら、いろいろ御議論がありますように、こういうものについても再販契約を禁止するという方向検討すべきではないかという御意見もありますし、その範囲ももう少し考えたらどうかという御意見がございます。  そこで、私ども公正取引委員会としましては、これは閣議の決定もあるわけでございますけれども、そういう方向研究会を設けまして、いろいろ御検討を願っていたところでございます。その研究会の小委員会におきまして、先日、こういうものは競争法の建前からいって廃止すべきであるという一応の結論をいただいておるわけでございますが、その結論を出発点といたしまして、親委員会の研究会でさらに御検討をお願いしているところでございます。  スケジュールといたしまして、ことしの年末ぐらいまでに研究会で結論をいただきまして、来年の三月ごろまでには公正取引委員会としての意見を取りまとめたい、こういうふうに考えております。
  44. 沓掛哲男

    沓掛哲男君 わかりました。  このたびの持ち株会社原則解禁は、産業界にとって急速な国際化の大波、またバブル破裂による大波、少子・高齢化の大波等を乗り切るための極めて適切かつ有効な企業組織企業ネットワークヘの可能性を与えてくれるものです。事業支配力過度集中による組織内取引や組織間の株の持ち合いなど系列等と言われる問題は、これからの国際化時代の食うか食われるかの激烈な競争時代に余り私は大きなものにならない、影を潜めていくのではないかなというような気もいたします。  それよりも私が公取委等にお願いしたいのは、ダンピングとかカルテル等自由な競争を阻害する行為をいち早く発見して的確に措置していただくことであり、また弊害規制が各条いろいろございますが、その弊害規制の運用に万全を期していただきたいというふうに思います。  しかし、何はともあれ持ち株会社原則解禁に踏み切り、ようやく国際経済の競争の面でイコールフッティングになりましたことを心から喜び、質問を終えたいと思います。どうもありがとうございました。以上、終わります。
  45. 片上公人

    ○片上公人君 今回のこの改正案の契機となりました、先ほども話が出ていましたけれども公正取引委員会独禁法第四章改正問題研究会報告、これを見ますと、持ち株会社禁止制度は基本的には維持しつつ、過剰な規制については緩和する必要がある、こういう見地から、分社化やベンチャーキャピタルのための持ち株会社設立等に限っては認める、こういうものであったと思います。  そこで、こうした部分解禁は過剰規制を改めるという見地からのものであるということが示されているわけですが、本法案はそれよりも大幅な解禁となっている、むしろ原則解禁と言ってもいいような内容となっておると思います。その意味では、本法案は独禁政策の規制緩和というよりは産業政策的見地からの改正と言った方がいいのではないかと思われます。しかしながら、公正取引委員会は本法案も、この四章研で言っておりますように、過剰規制の緩和措置である、こういう姿勢をとられておるのか、その見解をまず伺いたいと思います。
  46. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 私ども公正取引委員会の仕事でございますが、これは私いつも申し上げておりますとおり、やはり独占禁止法第一条というものを正面から見据えまして、その第一条を具体的に運用していく、法律もそういう建前でお願いする、こういうことであろうかと思います。しかしながら、問題は法律でございますから、これは国会の御同意もいただかなければならないし、また各省の御同意もいただかなければならない。  そういう中で、やはり独占禁止法だけの問題ではなくて、産業政策という点もそれは当然加味される話だろうと思います。しかし、我々といたしましては、産業政策というようなことは言うなれば横目でにらみまして、実際は独占禁止法の精神を損なうことがないかどうかということを基本にいたしまして立案したものでございまして、今回お願いしておる法案もいろいろ紆余曲折はございましたが、また産業政策的な見地からの発言もございましたが、そういうことをのみ込みまして、それでもなおかつ独占禁止法第一条を体現するというか実現するという建前に立ってやっているわけでございますので、御理解賜りたいと思います。
  47. 片上公人

    ○片上公人君 通産省の方は、産業政策的見地からの改正、このように思っていらっしゃいますか。
  48. 藤島安之

    政府委員(藤島安之君) 今回の純粋持ち株会社解禁は、先ほど来御答弁がございますように、新規事業の展開あるいは既存事業の効率化のために企業の選択肢が広がるということで、大変有意義なものと考えているわけでございます。中期的に産業の空洞化の懸念があり、あるいは少子・高齢化がやってくる、そうした中で二十一世紀に日本の経済活力が失われるんではないか、そのためには今から経済構造改革を推進していく必要がある、そういうことで私どもは真剣に取り組んでいるわけでございますが、そうした経済構造改革に資するもの、こういうふうに考えておるわけでございます。したがいまして、そういう趣旨から見ますと、産業政策的な見地からの今回の独占禁止法改正というふうに私ども理解しておるわけでございます。  しかしながら、先ほどからも御答弁ございますように、三類型についての純粋持ち株会社禁止されるわけでございます。これは事業支配力過度集中を防止するという独占禁止法趣旨から出るものでございまして、そういう意味では、禁止される部分部分的に残る、こういうことになります。  手法的には、そういう意味では規制緩和、過剰の規制部分を緩和する、そういうふうに理解しております。
  49. 片上公人

    ○片上公人君 いずれにしましても、今お話がありましたように、このメガコンペティションと言われる今の国際競争の激化する中で、一方では規制緩和の要請があるし、一方では競争政策の必要性が指摘されておるわけでございますけれども、そういう中で、わかりにくいけれども、若干疑問が出るのは、独禁法規制緩和と通常の規制緩和とはどう違うのか、さらには独禁法産業政策とは今どんな関係にあるのかということをお伺いしたいし、また規制緩和の名目で他の経済的な規制と同じようにどんどん一律的に独禁法を次々に規制緩和していった場合は、むしろ自由競争の制限をもたらす場合もあるんではないかと思う。  例えば、今盛んに業界などが主張しております九条の二や十一条、さらには合併規制などの緩和や撤廃については、公正取引委員会はどう考えていらっしゃるのか。むしろ、これは自由競争の確保のため維持していく必要があると考えられるのか、ここを伺いたいと思います。また、通産省はどう考えておるか、以上二つお願いします。
  50. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 産業政策といいますか、それにはいろいろの規制があって、その規制の中で産業が発達してきたということも否めないところだと思います。現在、そういう政府規制といいますか、そういう外の枠組みが壊れてきている、あるいはその枠組みを壊しているという時代であろうかと思います。  しかし、枠組みが壊れますと、それでは各事業者企業が勝手に競争していいかということにならないわけでございまして、それにはやはり競争ルールというのがあるわけでございます。だから、その競争ルールの部分をこの独占禁止法なりが担い、またその部分監視役ということで公正取引委員会が置かれている、こういう理解をしているわけでございます。  ですから、自由競争になりましても、そういう競争ルールというのは厳然として置かなければならないし、また、その競争ルールの監視役として公正取引委員会が十分の活動をしなければならないものと思っております。そういう意味で、独占禁止法の、言うなれば規制といいますか制限というのは、一般に言われている経済規制とはやや色合いを異にしていると思います。  ですけれども、この独占禁止法の中にも、言うなれば一般規制と同じような色合いのものは当然あろうかと思います。そういうものはやはり枝葉を切り捨てて、本当の自由競争のルールということに変質、変形させていかないと、やはり独占禁止法本来の使命というのは果たせない、こういうふうに思うわけでございます。  そういうことで、独占禁止法の中のいろいろの、今挙げられました九条の問題とか十一条の問題とかという問題はなおかつ現代的意義を持っているわけでございます。それは、やはりスタートラインに立っておる者が走る前に勝負がついてしまうというような経済力を持っておれば、これはもう自由競争も何もないわけでございますから、そういう意味重要性を持っているんじゃないかと。したがいまして、少しは改善する余地はあると思いますけれども、従来どおりの考え方でその規定は置いていくつもりでございます。
  51. 藤島安之

    政府委員(藤島安之君) 最初に、現在の独禁法産業政策との関係についてお答え申し上げます。  私ども、先ほど申し上げましたように、経済構造改革を進めておるわけでございますが、高コスト構造の是正あるいは新規産業の創出、そういった分野におきます。そういう考え方では競争の促進ということが大変重要になってきておる、こういうふうに思うわけです。そうした意味で、私ども各種の規制緩和をいろんな分野でお願いして、市場メカニズムを導入いたしまして競争促進を図る、こういったことが私どもの政策の中心になってきておるわけでございます。そうしたことが独占禁止法の働く分野をふやしていく、そういった意味で、私どもいろんな政策を展開している、そういう状況にございます。  他方、独占禁止法規制緩和関係について、経済規制との関係についてのお尋ねがございましたが、委員長からも御答弁がございましたように、独占禁止法企業の自由かつ公正な競争を実現するための環境を整備する基本的なルール、こういうふうに理解しておるわけでございまして、その意味で、多くは競争制限的な効果を伴う他の経済的規制とは異なる性格を有しているというふうに考えております。  しかし一方で、独占禁止法といっても企業活動に一定の経済的制約を課しているということも事実だと思います。特に、持ち株会社規制等の企業結合に関する規制、これは弊害が生ずる前に予防的に全面的に規制をするというのがこれまでの考え方であったわけですが、今回解禁するということで、必要最小限であり合理的な範囲規制を行っていただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。  それから、第九条の二あるいは十一条のお話がございましたけれども、これにつきましても必要最小限規制であるべきだと、こういうふうに私ども考えておるわけでございます。  先月、五月の閣議決定で、経済構造の変革と創造のための行動計画、そういったものを閣議決定しておりますが、その中でも、合併あるいは株式保有等につきます届け出あるいは報告につきましても見直しを行う、こういうことが決められておるわけでございます。  したがいまして、独占禁止法の働く分野が拡大し、その運用は強化するとともに、規制につきましては必要最小限のものにしていく、そういうことが必要である、そういうふうに考えております。
  52. 片上公人

    ○片上公人君 ちょっと変な言い方になるかもしらぬけれども、唐突といいますか、一つお聞きしたいのは、財閥復活は悪いとかなんか言っておるけれども、これ何で悪いのか教えてほしい。  それから、独禁法目的一つであり、かつ九条による禁止類型の根拠となっておるところの事業支配力過度集中、これは何で悪いんでしょうか。ちょっと簡単に説明してください。
  53. 塩田薫範

    政府委員塩田薫範君) 今回御審議をお願いしております改正法案におきましては、持ち株会社を全面的な禁止から事業支配力過度集中することとなるものについての禁止ということに改正したいということでございますが、事業支配力過度集中したとしてどういう問題があるのかということでございますが、仮に持ち株会社全面禁止といいますか、全面禁止の逆で全面的に解禁をするということにいたした場合、つまり今回の改正法案では過度集中になるような場合は禁止をするということでありますけれども、それも規制を取っ払ってしまうということで考えた場合には、事業支配力過度集中というそういう持ち株会社グループ、当然出現するということが考えられるわけでありますが、そういった場合には、事業者市場へ自由に新規参入をする、あるいは取引先の選択あるいは取引条件の設定についての各事業者の自由で自主的な判断が制約される、あるいは価格であるとか品質であるとかサービスといったものを中心にした公正な競争を行うという、そういった公正な競争が妨げられるということが考えられまして、市場メカニズムの機能が妨げられるおそれが生ずるというふうに考えております。したがいまして、事業支配力過度集中することとなる持ち株会社は引き続き禁止をすることが必要であるというふうに考えております。  それから、戦前財閥がなぜ悪いのか、問題なのかということでございますけれども戦前財閥と言われるものは、持ち株会社を通じまして事業支配力過度集中するということで公正かつ自由な競争が阻害され、我が国経済社会に多大の被害といいますか、そういったことを与えた経緯があるというふうに承知しております。したがいまして、戦前にありましたような財閥財閥ということでどういうふうにイメージするかという問題がありますけれども戦前財閥のような企業グループの復活は防止する必要があるというふうに考えております。
  54. 片上公人

    ○片上公人君 そういう意味から、持ち株会社の是非の問題というのは、要は経営スタンスの問題ではないのかと、こう思う次第でございます。先ほど話がありました戦前財閥は、一握りの家族的な経営に基づいて経済、産業を私物化し、その私物化を通じて軍部と癒着した、産軍共同体を形成していった、こういうのが問題であったんだと思います。  それに対しまして、純粋に経営戦略の一環として企業グループを形成して、企業傘下に置いたり、または放出したりするという欧米式の持ち株会社方式というのは、むしろ巨大資本をバックに新規分野への進出を可能にしたり、停滞している既存産業への参入を実現する有力な手段となり得るんではないか。そうであるならば、それは産業活性化や競争の促進に資する面もあると言えると思いますが、これについて公取、通産の見解を伺いたい。
  55. 塩田薫範

    政府委員塩田薫範君) 先生指摘のように、戦前のいわゆる財閥というのは、単に企業グループになっていたということでなくて、そこに同族といいますか家族支配的な要素というのが入っていたということもあろうかと思います。したがって、現時点でそういった特定の家族が支配権を持つような大規模持ち株会社ができるといいますか、戦前財閥のようなものができるのかということに対する疑問というのはあると思いますし、現時点株式がかなり分散をしておる、それもかなり幅広く企業間での保有になっている、そういうことからすると、戦前のような家族支配的な要素を持ったものというのは、極めて巨大な戦前のような財閥という意味でのものが出てくるかということは、そこはなかなか想定しにくいということはそういうことだと思います。  それから、大規模持ち株会社の場合には、あるいは大規模会社と言ってもいいのかもしれませんけれども、そういった大企業新規分野への進出をする、そういうことで競争を促進する要素があるではないかということでございますが、確かにそういった面はあろうかと思います。したがいまして、私どもといたしましては、大規模会社等の新規分野への進出、そういった面での競争促進的な要素というのは当然ありますし、そのことは考えた上で、ただし事業支配力過度集中することとなるような持ち株会社まで解禁をするということには問題があろうというふうに考えております。  したがいまして、繰り返しになりますけれども持ち株会社を全面的に禁止し続けていくことは適当ではないというふうに考えますけれども全面解禁することもまた適当でないというふうに考えております。
  56. 藤島安之

    政府委員(藤島安之君) 委員指摘のとおり、企業がそれぞれの戦略に基づきまして組織形態を選択するというのは本来的に自由であるというものだと思います。純粋持ち株会社につきましても、欧米ではこういうことが認められておるわけでございます。そうした意味で、事業戦略等に対応した最適な組織形態を目指す、そういった上での選択の自由度が確保され新規事業を起こしていく、そういったことは大変重要なことだと考えておるわけでございます。  その上で、今回の改正は我が国の過去の歴史を踏まえまして、過度事業支配力集中が起こることのないよう最小限の規制を残す、そういった考え方に基づいたものでございます。我が国の独占禁止法趣旨に照らして適切なものである、こういうふうに考えておる次第でございます。
  57. 片上公人

    ○片上公人君 以上から、九条による禁止類型が必要であるとするならば、改正案のような十五兆円だとか業界のシェア何%とかいったそういう量的なものではなくして、持ち株保有の目的事業経営の方針やそれまでの経営実績あるいは姿勢などについての基準を設ける方が適切ではないか。  どういうことかというと、四章研が提示した一部解禁の四類型のようなものを、逆に原則解禁を前提とした禁止類型に置きかえる、そのようなものにした方がよかったのではないか、こういう思いもしますが、公取の見解を伺いたいと思います。
  58. 塩田薫範

    政府委員塩田薫範君) 四章研でいろいろと御議論いただいて報告書をいただいたわけでありますけれども、その報告書趣旨というのは、事業支配力過度集中を防止するという独禁法第一条の規定趣旨等を踏まえて、それに反しない範囲解禁をするというのが適当であるというのが趣旨であるというふうに理解しておりまして、具体的に問題とならない類型としては、小規模会社であるとかベンチャーキャピタルであるとかというようなことが挙げられていたというふうに理解をしているところでございます。  今回、御審議をお願いしております改正法案も、同様にこの報告書趣旨を踏まえて事業支配力過度集中することとなる持ち株会社は引き続き禁止をするということで、そのラインに沿っているものというふうに考えております。  事業支配力過度集中というのは、先ほど委員長からも御答弁申し上げましたように、それだけではなかなか明確にならないということで、できるだけ法律で明確化を図ろうということで、先ほど来お話が出ておりますように九条五項で三つ類型等の要件を規定しているわけでございます。ただ、九条第五項の規定だけ見てもなかなかわかりにくいというところもありますので、それを具体的に、できるだけ客観的な考え方といいますか解釈といいますか、そういったものを示そうということで、必要に応じて数値を入れるというふうなことで、先ほど先生指摘のように第一類型の場合には総合的事業規模として十五兆円程度とか、あるいは有力な事業者ということでシェア一〇%以上あるいはシェアが上位三位以内というふうなことを、具体的な数値も入れたところでガイドラインの中でお示しをしてはどうかということを考えているところでございます。  ただ、数値基準だけですべてを律するということはなかなか難しいところがございますので、規制趣旨に即して実質的な判断を行う必要がございますので、ガイドラインの策定に当たりましては、そういった判断の基準についてもで直るだけ具体的にしていきたいというふうに考えております。
  59. 片上公人

    ○片上公人君 持ち株会社の必要性の一つに国際的ハーモナイゼーションが挙げられておるわけですが、国際的というんだったら、欧米先進国だけじゃなくしてアジアの諸国の実態も考慮をすべきではないか。東アジア地域で広く見られる財閥あるいは企業グループは、当地で財閥あるいは企業グループであるがゆえの深刻な問題を起こしているのかどうか、ひとつ実態を教えてほしいと思います。  また、発展途上国につきましては競争力の強化という観点から財閥はやむを得ないけれども、同じアジアでも我が国は先進国だから財閥や巨大企業グループは有害だと、こう言っていらっしゃるのか。通産省は今日こうした企業グループの存在はどのように評価されておるのか、伺いたいと思います。
  60. 佐野忠克

    政府委員(佐野忠克君) 今、先生の御質問のアジア諸国における状況でございますが、私たちの知るところでは、韓国におきましては、ヒュンダイと申しますか現代とか、サムソン、三星等々のチェブルと言われる企業集団がございます。また、マレーシア、インドネシア、タイ等にはいわゆる華僑系を中心といたしました企業集団が存在する等、アジアにはいわゆる財閥的な企業企業グループが見受けられるのは全くそのとおりかと存じます。これらのアジア地域におきまして、それらの企業集団というか企業グループが、その資金力等を活用いたしまして諸外国からの技術導入を図る等、経済の発展に一定の役割を果たしているという認識を私たちは持っております。  なお、我が国の状況いかん云々の点につきましては、その後段の部分は私ではなく藤島審議官の方から答えさせていただきます。
  61. 藤島安之

    政府委員(藤島安之君) 我が国におきましてもいわゆる大規模企業集団、そういったものが存在いたしまして、いわゆる縦系列を形成するといったような大規模企業グループが存在するということは事実だと考えています。このうちの六大企業集団につきましては、我が国経済に占める割合というのはだんだん低下しております。また、そもそも緩い結合関係でございまして、集団内の取引比率も低下している状況にございます。それから、さらに六大企業集団、縦系列を問わず、経済のグローバル化や国際競争の激化の中で、集団内の非合理的な継続的な取引、そういったものは既に維持できなくなりつつあります。調達先の多様化やグループを超えた連携の動きも見られる、そういった状況にございます。したがいまして、現在の我が国のこうした企業グループが過去の財閥のように問題があるというふうには考えてはおりません。  しかし、これらの企業持ち株会社純粋持ち株会社形態を用いまして支配的な関係を拡大強化した場合に事業支配力過度集中を招く可能性が全くないと、そういったことは今の時点で言い切ることはできないかと思います。このような事態を将来発生することのない、そういうように未然に対処する、こういう考え方は今回の独占禁止法改正案で提案されているわけでございまして、これは非常に合理的な考え方である、こういうふうに考えておるところでございます。
  62. 片上公人

    ○片上公人君 九条は適用上国内企業に限る、海外企業にはその適用がないものとされておるわけですが、そうしますと、概念上は外国持ち株会社傘下企業企業買収などによって我が国で次々に増加して、ついには禁止の上限を超えるような事態が生じても、それはもう改善することはできないということになるのかどうか伺いたいと思います。  また、もしそうなら改正案の九条の五項の脱法行為として、海外に持ち株会社をつくって国内企業を幾ら傘下に置いてもよいということになるかどうか、これを伺いたい。  こうした事態に対して第十条の規定はどの程度の効果があるのかについても伺いたいと思います。
  63. 塩田薫範

    政府委員塩田薫範君) 現在御審議をお願いしております改正法案の第九条第一項、第二項、これは事業支配力過度集中することとなる持ち株会社になることを禁止している規定でございますが、これは特に第一項の場合に、日本の国内の会社過度集中になる持ち株会社になることだけを禁止しているわけでありませんで、外国の会社が日本国内において過度集中になるような持ち株会社になることを禁止しているということでございます。  それから、第十条の関連のお話もございましたけれども、第十条は事業支配力過度集中を防止するという、そういう観点の規制ではございませんで、特定の市場において株式所有することによって競争の実質的制限になるような場合を規制するということでございまして、言ってみれば個別の市場で競争制限になるような株式の取得、保有、それを禁止しているものでございます。これにつきましても、当然国内の会社だけではなくて、外国の会社が国内の会社株式所有して、今申し上げましたように国内において競争の実質的制限を招くような場合には禁止されるということでございますので、そういった点で個別市場に対する外国会社の問題も当然十条によって対処し得るということになっております。  それから、外国の会社が国内の会社株式所有する場合について、国内の会社についても一定の場合に毎年株式所有報告を出していただくように、要するにチェックをするために出していただくようになっておりますけれども、外国の会社についても同じようにそれに準じて株式所有報告をしていただくというシステムになっておりますので、そういう意味でのチェックのシステムはあるということでございます。それに基づいて現在やっているところでございます。
  64. 片上公人

    ○片上公人君 今、企業間における国際的な競争が激化しておるわけで、特にブリティッシュテレコムによるアメリカMCIの買収交渉やAT&Tの提携に見られますように、情報や通信分野での国際的合従連衡が進んでおるわけでございます。NTTの分割問題も一つにはこのような国際進出の観点からのものであるとも言われておりますが、こういう国際化に伴う内外企業の競争激化とそれに伴う企業の買収、系列化が進んでいくと、外資規制の問題と並びまして、外国企業の取り扱いや寡占化の問題が今後競争政策上顕在化してくるのではないかと思います。  九条で禁止される持ち株会社類型には、本法案による三類型のほかに、特定分野企業グループ、通信分野のNTTとかアミューズメン十分野のソニーグループなどというそういう寡占、独占の禁止類型もこれは含めるべきではないか。こうした九条のような一般的、予防的規制はこれ以上必要でないと考えるのかどうか。独占、寡占につきましては、独占禁止法上、私的独占禁止三条や独占的状態の是正措置八条の四などがありますが、こうした国際化に伴う企業行動や産業構造の変化に対応して今後見直していく必要がないか。こうした時代の変化に対応して第十条規定などをどう活用していくのか、お伺いしたいと思います。
  65. 塩田薫範

    政府委員塩田薫範君) 御指摘のように、国際競争が激化する、内外企業間の競争が激しくなるということで、当然企業間の競争あるいは企業の買収であるとかあるいは系列化というようなことが進むということで寡占化が進む、特定の市場における寡占が進む、そういったような問題といいますか、懸念も当然あるわけであります。それに対して、今回お願いしている改正法案を含めて、独占禁止法で十分対応できるのかどうかという御指摘だと思いますけれども、先ほど申し上げましたように個別の特定の市場において、株式所有によってその競争が実質的に制限されるような場合については、独禁法の十条によりまして規制が可能でございますし、それから持ち株会社グループあるいは持ち株会社でなくてもいいんですけれども、例えば持ち株会社グループによって他の事業者を排除するということで私的独占といったような行為がある、あるいは高度寡占市場において、先生指摘の第八条の四という規定で独占的状態に関する措置という規定がございますが、そういった高い高度寡占の業種、分野におきまして一定の弊害が生じた場合には、これもまた是正措置が講じられるという規定がございます。したがいまして、内外の競争が激しくなり、それによって寡占が進むということがあったとしても、競争制限になるあるいはそれに近いような、私的独占というようなことが出てきたとすれば、それは現行の独禁法規定で対応できる、むしろそういった規定を十分活用していく必要があるというふうに考えているところでございます。
  66. 片上公人

    ○片上公人君 そういう中で、公正取引委員会監視が有効に機能するためには、本法案では廃止されることになっておる国際契約の届け出手続、いわゆる第六条というのは、私はむしろ今後必要なのではないかと思いますが、その点についての見解を。
  67. 山田昭雄

    政府委員(山田昭雄君) 六条の二項は国際契約の届け出をする現行法になっておりますが、その削除をこの法案で御審議をお願いしているわけでございます。  現行法の六条一項は、事業者がカルテルあるいは不公正な取引方法に該当する事項を内容とする国際契約等を締結する場合にはこれを締結することを禁止しているわけでございまして、この実効性を図る観点から、六条の二項におきまして違法な国際契約が締結されないよう監視することを目的といたしまして国際契約等の届け出制度を設けているわけでございます。  しかし、国際契約の届け出制度につきましては、違反行為の監視の必要性あるいは事業者の負担軽減等の観点から見直しを行った結果、主要先進国におきましてはこういった同様の届け出制はないこと、あるいはこの現行制度につきまして、今届け出範囲というのを逐次縮減してまいったわけでございますが、違法の疑いがあるということで指導した例も非常に少なくなってきておりまして必ずしも効率のよい情報収集手段と言えないことなど、届け出制を存続させる必要性が乏しくなってきておりまして、また他方におきまして、国際取引における違反行為の未然防止への対応及び違法な国際契約等が締結されないよう監視するための体制、これも公正取引委員会内部の組織としても整備されてきております。こういったことから考えまして届け出制度を廃止することといたしまして、この六条二項の規定を削除するということを現在お願いしているわけでございます。  しかし、この第一項の禁止規定というものはそのまま残るわけでございまして、我が国市場における競争に悪影響を及ぼすような国際的なカルテルとかあるいは不公正な取引方法を内容とする国際契約等が締結される場合におきましては、六条一項の規定に基づきまして厳正に対処することができるということでございます。そういうことでございます。
  68. 片上公人

    ○片上公人君 さらに、こうした企業活動の多国籍化や国際的競争の激化に伴う各国の競争政策のハーモナイゼーションを今後WTOやOECDでどう取り扱っていくのかについてもお伺いしたいと思います。  特に、アメリカなどで採用されているいわゆる域外適用条項の一般的導入も今後必要となってくるかどうか、このことについても伺いたいと思います。
  69. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 御承知のように、WTOあるいはOECDで競争政策が取り上げられまして、私ども委員会からも職員を派遣しましてそれぞれ意見を申し上げておるわけでございます。  この独占禁止法につきましては、各国それぞれ制度がございますし、またその制度のよって立つ産業基盤というのがそれぞれ違うわけでございますので、統一的な何といいますか、統一規約といいますか、そういうことはなかなかできにくいと思います。それぞれ各国の特殊事情等にかんがみましてそれぞれ独占禁止政策あるいは競争政策を運用しているところでございますが、経済がグローバル化している現在は、やはり独占禁止法の運用あるいは競争法の運用もグローバル化せざるを得ない状況でございます。そういうことでございますので、私どももそういう国際的な趨勢に十分注意しながら運用を図っていきたい、こう思っておるところでございます。  なお、さらに御質問のありました域外適用でございますが、これは域外適用という観念についてはいろいろ問題がございまして一概には申し上げかねますけれども、これは各国の主権との兼ね合いの問題がございます。これはそういう問題がございますので慎重に対処しなければならないと思いますが、ただ、その国で起こった要するに独占禁止法違反の件につきましては、これはその国が責任を持って対処するのが筋合いだろうと思うわけでございます。したがいまして、我が国で起こりました独占禁止法に抵触する事案については、我が国において厳正に対処すべき問題がまず第一であろう、こういうふうに考えております。
  70. 片上公人

    ○片上公人君 金融持ち株会社についてですけれども金融持ち株会社につきましては九条等によって一応の規制体系を示して、さらなる詳細の規制は大蔵省の金融制度調査会等で検討することになっておるようでございますが、しかし、金融持ち株会社といえども競争政策にかかわる部分独占禁止法によるべきではないかと思います。NTTはいろいろ曲折があったようでありますけれども、結局は独占禁止法規制に服することを前提に分割法案が提出されているわけでございます。金融業に限っては独占禁止法だけでなく別途規制措置が何ゆえ必要なのか、一つは伺いたいと思います。  また、金融制度調査会等では金融ビッグバンに関連して銀行、証券等金融業相互参入の調整、預金者、投資家の保護などの観点から制度調整を行うようでありますけれども持ち株会社趣旨は自由化による企業競争力の強化が目的であるはずで、決して競争制限的な規制がなされるべきではないと考えます。その点についても見解を伺いたいと思います。  また、そうした観点から制度改正に当たっては、事前の段階から、すなわち金融制度調査会等における検討段階から金融持ち株会社に関する部分はもちろんのこと、それ以外の全般的問題につきましても公正取引委員会意見を反映させる必要があると考えますけれども、その点についても見解を公正取引委員会及び大蔵省にお伺いしたいと思います。
  71. 塩田薫範

    政府委員塩田薫範君) 私の方から独禁法上あるいは独禁政策の観点から金融持ち株会社について今回の改正法案でどんなふうな手当てをしているかということについて答えさせていただきたいと思います。  金融持ち株会社といいますのは、金融会社子会社として持つ持ち株会社ということでございますが、この金融持ち株会社につきましても、一般持ち株会社といいますか、金融会社子会社にない持ち株会社と同様に事業支配力過度集中することとなるものについては禁止をするということで改正法案の九条の中で、明確には何にも書いてありませんけれども金融持ち株会社金融子会社を持たない持ち株会社も同様に規制をするといいますか、一定範囲で許容をするという点については全く同様の扱いをいたしております。  ただ、今回の改正法案一般持ち株会社と一点だけ異なった取り扱いをしておるところがございますが、それは施行日のところでございます。持ち株会社一般につきましては、改正法案をお認めいただいたところで公布後六カ月以内に政令で定める日をもって施行をするということを予定しておりますけれども金融持ち株会社につきましては、後で御説明あろうかと思いますけれども金融政策の観点から信用秩序維持あるいは預金者保護等の観点から、金融サイドでの金融持ち株会社に対する手当てというのが必要だということで、今回の改正法案の附則の中で、金融持ち株会社については今申し上げましたような趣旨を踏まえて別に法律に定める日まで禁止をするといいますか、別に法律で定める日をもって解禁をする、そういったことにしてあるわけでございます。  それから、金融持ち株会社あるいは金融業全体、今回いろいろ議論されておりますけれども、それと競争政策とのかかわり合いということでございますけれども、これは一般的なあれで恐縮でございますけれども、競争政策に関連するような政策といいますか法案を作成する場合には、常に私どもの方に事前にしかるべき時期に御相談をいただいて、そこで議論をさせていただく。もちろん、私ども独禁法改正法案を国会に提出するに先立ちまして各省に御相談いたしました。それと逆の、逆のというか同様のことが行われるわけでありまして、我々としては競争政策の観点からいろいろと協議をさせていただきたいというふうに考えております。
  72. 中井省

    説明員(中井省君) お答えいたします。  今、公取委員会の方から御説明ございましたけれども金融業を営む会社子会社とします持ち株会社につきましてはいろんな形態がございます。銀行持ち株会社、証券会社、保険会社等々ございますが、いずれにいたしましても預金者なり保険契約者、投資者の保護等のための規制、いわゆる金融政策上の規制が必要と、こういう観点から別途金融関係業法の整備を予定しております。そういう観点から、独禁法改正法案第百十六条におきまして、こういう金融政策上の観点の法整備と改正独占禁止法の施行を合わせる趣旨規定が設けられていると理解しているところでございます。  具体的には、先ほども申し上げましたけれども、各種の関係審議会におきまして現在鋭意御検討いただいておりまして、六月中旬に報告をいただいて、それを受けまして我々の方でできるだけ速やかに法的準備をさせていただいて、しかるべき機会に国会に提出させていただきたいと考えております。  現在、各種審議会で御審議いただいております中身につきましては、これはいわゆる業際規制と申しますか、各種銀行、証券、保険会社、それから銀行の中にもいろいろ長期信用銀行とか信託銀行、いろんな専門金融機関がございます。これの規制をできるだけ取り払って自由に競争していっていただこう、こういう精神で検討が進んでいる次第でございます。
  73. 片上公人

    ○片上公人君 金融持ち株会社はいわゆる金融ビッグバンの目玉の一つとして、金融業国際競争力の強化の観点からもその中核的な位置づけがなされているわけでございますけれども、実はこの金融ビッグバンによりまして金融自由化が進むと、最も有利になってくるのは新規に我が国に参入してくるであろう外資系の金融サービス企業ではないかと思うわけです。銀行の不良債権問題や証券会社による総会屋への不正利益供与、日産保険の経営破綻等、我が国の金融業の抱える体質的な欠陥はもう修復は不可能というような状態になっておると思います。  そうした中にあって、金融ビッグバンが実現すれば、もう逆に勝負はついたも同然ではないかと思います。国際競争を勝ち抜いた百戦錬磨のいわゆる外資系金融サービス業が我が国に大挙して押し寄せる、こう思うわけですが、そうした事態が予想される中で、金融持ち株会社を形式的に認めたとしてどのような実益があるのか、お伺いしたい。  むしろ金融持ち株会社は外国企業がこれを最も有効に利用するのではないかと思うわけですけれども、それでもよいのかどうか。我が国金融業が競争の結果、外資系金融業で占められるようなことになってもそれはそれでやむを得ぬと言うのか、この金融の空洞化の防止は日の丸企業であるか外資系企業であるかということは関係ないのかどうか、大蔵省にお伺いしたいと思います。
  74. 中井省

    説明員(中井省君) 今般の金融システム改革は、二十一世紀までに我が国の金融市場をニューヨーク、ロンドンと並ぶ国際金融市場として復権させることを目的としております。そのために、銀行、証券、保険分野の参入促進や商品規制の撤廃、緩和など、大幅な構造改革を推し進めようとするものでございます。  このような構造改革につきましては、まさに先生指摘ございましたように、関係金融機関につきましてはある意味ではさまざまな苦痛を伴うものであろうかと思います。しかしながら、まさに従来の行政から大きく転換いたしまして競争促進的な金融の社会にしていこうという目的でございます。ある意味では、それがまた消費者利便に資するというものでございますので、関係金融機関はかなりの努力が必要かと思われますけれども、日本の経済、金融のためには避けて通れない道だと考えている次第でございます。  しからば、その過程で持ち株会社はどうかと申しますと、現在のところ、例えばアメリカにおきましてはもう既に持ち株会社といいますのは、銀行持ち株会社についてはある程度規制がございます。当然のことながら、規制はございますけれども自由に設立てきるわけでございます。それから、ヨーロッパにつきましては、我々聞き及びますところでは、ある意味では余り規制がない。既に諸外国ではもうそういう制度ができているわけでございます。  現在の事態と申しますのは、日本の大手の金融機関が国際的に競争していく際に、ある意味では日本においては持ち株会社という制度がとれないがために手足が縛られている面がございます。その手足を少し自由にしようということでございます。諸外国の金融機関とイコールフッティングで競争をしていっていただこうという趣旨でございます。  なお、日本の金融機関の競争力についていろいろ御心配をかけておりますが、例えばある日本の証券会社に勤めておられた方がアメリカの有力なインベストメントバンカーの副会長になられて、いろいろ週刊誌等でありますが、三十何億円稼ぐというようなことで、そういう有能な方もいらっしゃるわけでございまして、ある意味では個人個人の努力というよりも何といいますか、東京の市場というのは、日本人が活躍する場が、いろいろ我々も反省しておりますが、ある意味では少し制限されているがために日本人の能力が十分に発揮できないような市場である。これからはその辺のところがまさに個人個人の能力が十分に発揮できるような世界になっていくということであろうかと思います。  それからなお、ビッグバン等でいろいろ御心配をおかけしておりますが、例えば諸外国を見ましても、いわゆるローカルの市場でリテールといいますか、小売、預金者を相手、それから中小企業の相手に貸し出しをやっているようなところはやはり伝統的なバンキングというのは非常に強うございまして、そこのところまでは、例えばロンドンで先端的なことをやっておりましても、地方においては伝統的な力が勝っているというような面もございます。  日本の金融機関の競争力の問題というのはまさに先端的なところでいろいろ出てこようかと思いますけれども、これはもう時代の流れでございますので、各金融機関にいろいろ御努力いただくしかないと考えている次第でございます。
  75. 片上公人

    ○片上公人君 連結納税制度の必要性とか企業情報のディスクロージャーあるいは会社と株主、債権者との関係のあり方などにつきましては今までもずっと多くの方面から指摘があるのでこれ以上つけ加えませんけれども一つだけ疑問とするのは、こうした問題は現行のいわゆる事業持ち株会社も同様であって、純粋持ち株会社に特有の問題ではないので慎重に扱うべきである、大蔵省、法務省はそういう姿勢で来たように思いますけれども持ち株会社解禁は必要としながらも、その実効性にかかわる大きな課題は持ち株会社に特有ではないから検討しないということになると、これは全くの御都合主義であると思います。結局、公正取引委員会の権限を弱めるために九条の改正に終わっただけということになりかねない。この際、大蔵、法務省当局にこうした課題に対する誠実かつ迅速な対応を求めたいと思います。  なお、本法案九条六、七項に盛り込まれておりますところの持ち株会社設立に伴う届け出、毎年の事業報告制度については以上のような点を把握し得る程度の適切かつ十分な内容のものである必要があると思いますけれども説明をお願いしたいと思います。特に持ち株会社のディスクロージャーをどのように担保するのか、届け出事業報告は競争政策上必要な範囲に限定され、株主や債権者保護に資する情報までは求めないということなのか、求めないということにこれがなるのかどうかということを伺いたいと思います。
  76. 山本晃

    説明員(山本晃君) 私の方からは、この純粋持ち株会社解禁に伴ういわゆる企業会計整備、ディスクロージャーの問題についてお答えをしたいと思います。  現在、企業会計審議会におきましては、会計基準の国際的な動向を踏まえて整備を図っておりまして、いわゆる連結財務諸表制度についても、従来の個別情報を中心としたディスクロージャーから連結情報を中心としたディスクロージャーへ転換すべく、今現在見直しを行っているところでございます。  現行の有価証券報告書等では、連結財務諸表のほか企業集団の概況やセグメント情報の開示等を求めているところでございますが、持ち株会社については、その業績は一般事業会社に比べまして傘下子会社の業績に左右されるということになるために、連結ベースの情報、特にセグメントと呼んでおりますが、事業の種類別、地域別の情報の重要性が一層高まるものというふうに考えられるところでございます。  企業会計審議会が二月七日に公表いたしました連結財務諸表の見直しに関する意見書案、これは通常公開草案と呼んでおりますが、この公開草案では、営業の状況や設備の状況等について連結ベースでセグメントごとに記載するというふうにされておりまして、近々この企業会計審議会として最終的な報告が行われる予定でございます。私どもといたしましても、この企業会計審議会の最終報告を受けまして、持ち株会社のディスクロージャーの充実につきまして、必要な措置を含めまして鋭意検討してまいる所存でございます。
  77. 柳田幸三

    政府委員(柳田幸三君) 持ち株会社と商法との関係についてお答え申し上げます。  持ち株会社は、商法上はいわゆる親会社に相当するということになるわけでございまして、商法の立場からは、持ち株会社解禁に伴いまして、当然に商法上の手当てが必要になるというふうには考えていないところでございますけれども、ただいま御指摘がございました会社と株主との関係を含めまして、持ち株会社の存在が株主あるいは債権者に実際にどのような影響を与えるのか、それから今後の持ち株会社の運営の実情がどのようなものになるのかといった点につきまして、商法の観点から重大な関心を払いつつ、今後必要に応じて適切に対応してまいりたいと考えているところでございます。
  78. 塩田薫範

    政府委員塩田薫範君) 改正法案の第九条第六項、七項の報告内容をどの程度にするのかということでございますが、先生指摘のように、この報告制度あるいは届け出制度持ち株会社の実態を私どもとして把握をする、事業支配力過度集中するかどうかということを監視するということを目的としたものでございますので、この報告なり届け出内容といたしましては、事業者の負担等も勘案しながら、制度目的に即して必要な範囲内にとどめたいというふうに考えております。
  79. 片上公人

    ○片上公人君 以上のように、この持ち株会社解禁されましても、実はこれを実際利用できるのは当初のもくろみと違いまして、外資系企業やいわゆる六大企業集団と言われる企業グループ、一部の新興勢力ではないかというようなことを思うわけでございますが、また専らこのリストラ、首切りの前段階の手段として使われるのではないか、こういう心配を指摘する人もおります。  さらに、持ち株会社は、実は遺産対策や事業承継の有力な手段として、中小企業の方はいろいろ心配されておりますけれども、逆に中小企業経営者が利用するのではないかということも言われておるわけでございますが、持ち株会社解禁に当たりましては中小企業への影響が懸念されておるわけですが、一方ではその経営者の節税に有利ではないか、こうも言われております。このように九条の解禁が今後どのような影響を与えるかというのは予想がつかないものでありまして、その時点になって慌てることのないように、今後関係当局はこの制度の運用に十分目配りをしていただきたいと思うわけでございます。  また、非常に今公取が注目されて、かつてないほど公取にライトが当たり、大きく言えば日本の運命を左右する、根來委員長のもと、どう動くかによって日本はつぶれるかどうかわからないところまで来ておる、そこまで言えるかもわかりませんが、そういう中で、例えば持ち株会社解禁に伴って総合的にこの事業能力が強化されてくると、下請にこのしわ寄せが容易に来やすいとか、あるいは企業の結合がどんどん進みやすくなるとか、こういうことに対して現在の体制で十分に対応できるのかどうか。人数の問題もあるし、人員のこともいろいろ言われておりますけれども、例えばあと何百人ぐらいおったら完璧にできるとか、いろんな要望もあると思いますけれども、私は人員の問題についても非常に、確保するものは確保しなかったら、せっかく法を改正していろんなことを審判するといいますか、そういう中にあってできなかったら何の意味もない、こう思いますので、そのことについてもお伺いしておきたいと思います。  もう一つは、今回の改正法案の中で何となくもう一つすっきりせぬなという理由は、先ほど言いましたようないろんな各省とのこの微妙なニュアンスの違いとか、またはこの法案自体がガイドラインに書かなかったら非常にわかりにくいとかいうようなことがあると思うんです。そのガイドラインがまだはっきりしていないというところにもあると思いますが、そのガイドライン、この原案をいつごろ示そうとされておるのか。  さらに、もう時間ですからまとめて言いますが、五年後の見直し、これは大事だと思いますが、五年後の見直しに対しまして、本当に各省庁よく連携とって、目配りしてうまくいくように慎重にやってもらいたい、このことをお願いして質問を終わります。
  80. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 幾つかの点について御質問がございましたので、まとめてお答えいたしますけれども、まず、この制度が国会で御承認いただいて実施に移されたときにどういうことになるであろうかということでございますが、五十年間この制度が眠っていたわけでございますので、私どももどういうふうになるのかという点について確たることを明言できないのを遺憾とするわけでございますけれども、私ども考え方といたしましては、この九条が先ほど来お話がありますようにオーバー規制といいますか、規制のし過ぎ、過剰規制というような話がございますので、その過剰の部分を切り捨てたというところでございます。  ですけれども、切り捨てて、それでは持ち株会社制度というのが円滑に動くかというと、先ほど来御指摘がありましたように、労使の問題とかあるいは税金の問題とか、会社法の問題とかいろいろあると思います。ですから、この制度が本当に動き出すためには、そういう制度が一列に並んで用意ドンで走れば一番いいわけでございますけれども、これがなかなか今の役所の制度として難しいわけでございまして、それぞれその模様眺めといいますか、一体公正取引委員会がどういう制度を考えるのかというふうにほかの役所だって見ていると思います。  ですから、私どもとしては、まず基本法である独占禁止法の九条を改正しまして、そして一つの線路をつくりましたら、ほかの役所がそれではこういう制度を活用するためにはこういう駅も必要ではないかとか、あるいはこういう汽車も走らさなきゃいけないとかということをお考えになると思うわけでございます。そういうことで、この五年間という一つの見直し期間をいただいたのはそういう点もあるわけでございまして、この五年間の間にこの制度が十分のものとされて、せっかく解禁になったわけでございますから、これが企業者も大いに利用され、また労働者も消費者もあるいは中小企業者もうまくその恩恵を受けるということになればこれにこしたことはないわけでございますから、そういう意味で五年間の猶予をいただいたということだろうと思います。  それから、ガイドラインの点でございますが、これはもう国会で議決になりましたら、これまでの御議論を踏まえまして早速ガイドラインの原案をつくりまして、いろいろの御批判をちょうだいしたいと思っております。  それから、公正取引委員会の人員の問題でございますが、これは今まで政府部内でもいろいろ御高配をいただき、また国会でも組織改正についてもいろいろ御高配をいただいていることには非常に感謝を申し上げているわけでございます。これは多々ますます弁ずるというと申しわけございませんが、人がふえればふえるほど結構なことでございます。しかし、そんなことを言っても、今の行政改革の時代に幾らでも人をくれと言うわけにはまいらぬと思います。  それで一つは、やはり法律をもう少し見直して、どういうところに必要なのかという重点的なところを策定するということが必要であろうと思います。独占禁止法が施行されて五十年になりますので、この機会に長期的課題でございますが、そういう点を十分見直したい、こういうふうに思っています。  それから、これは私を含めての話でございますが、一人一人やはり力をつけるしかないわけでございまして、その力をつけるというのは、いろいろおしかりはあると思いますけれども、力をつけてひとつこの難しい時代を乗り越えるしかないのじゃないか、こういうふうに思っております。検察庁あたりは職員が一万人、検察官は二千人を超えるという大世帯でありまして、その点、私どもは五百五十人という小世帯で、業務量も違いますけれども、そういう点で一人一人が二人三人の力を発揮するしかないのじゃないかということを考えております。  それには、やはり国会を初めとした方々からの御批判を十分に受けとめて、その御批判を踏まえて仕事をしていくことが必要だろうと思いますので、これまで以上にひとつ御叱正をいただければありがたい、こういうふうに思っております。
  81. 木宮和彦

    委員長木宮和彦君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時十五分まで休憩いたします。    午後零時十二分休憩      —————・—————    午後一時十七分開会
  82. 木宮和彦

    委員長木宮和彦君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  83. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 私は、小学校三年のときに我が国は終戦になりました。農村に生まれ育って、物心ついて終戦に至るまでは、大きくなったら兵隊さんになろう、戦争に行くというようにもう真実思い込んでおりました。少し世の中がわかってきまして、青年になって、過去を振り返って、どうして自分もそのときにそう思ったのか、そして日本はああいう無謀な大戦に突入をしていったのかというのをやっぱり感ずるようになりました。それがあるときにわかったのは、GHQ、ポツダム宣言のときから、戦勝国がやはり私と同じように、日本はどうしてああいう無謀な軍国主義に突入して、戦争に突入したのかというものを感じたと思うんです。  そこで、彼らが考えたのは、日本の社会、日本には本当の民主主義がなかった。経済にも民主主義がない。農村に行きますと、大土地所有者が支配をしておる。経済界は財閥が中心になって支配をしておる。教育は国家統制である。職場には労働組合がない。こういうような状態というのに恐らく気がつかれて、そこをやっぱり変えていくことが日本の民主主義を定着させると、そういうことだったと思います。それを、日本の当時の先輩たちはそうだということで受け入れただろうと思います。  そして、経過を経ながら独禁法もできて、そしてこの九条も持ち株会社はつくってはいけない、こういう形になってあらわれたと思うんですね。それが時を経過して、これは九条を全面解禁するということをこの改正法の中で言っているわけではありませんが、非常に幅が広くなりまして、総資産額十五兆円以下ならばやっていいよと、条件が幾つかついてこういうような今回の改正法になったわけであります。  これは社会や経済の世界というのは、日本がああいう軍国主義に、太平洋戦争に到達するまでというのは非常に長い期間かかってでき上がったわけですから、この独禁法というのもすぐ効果が、社会や経済に与える影響というのは出ない、あるいは三十年、五十年たったときに日本の社会や日本の経済に及ぼす影響というのは見えてくるんだろう、そういうことを私どもは今審議しているんだろうと考えております。  私は、これは与党プロジェクトチームの中でも本当に激しく議論をして今日に至っておりますから余り一々申し上げることはないと思うんですが、特に公取にもう一回お聞きをしたいのは、平成七年十二月ですか、公取の中の独禁法改正問題研究会の中では幾つかのパターンを、すなわち新規事業の創出や競争条件の整備に値する、あるいは分社化、ベンチャーキャピタル、金融持ち株会社となる場合など、この四つの類型についてはこれはいいんじゃないか、こういうような形で公取もずっと作業が進んでおったやに聞いておりますが、これが一たん、仄聞するところによりますと、自民党の関係部会の中で有力者の非常に厳しい発言があり公取も方向転換をしたということは恐らくはぼ間違いのない事実でございますが、この方向転換に至った公取の中の苦悩といいますか、そういう公取の方向転換はなぜ、どういうぐあいでやったのか、そのことを最初にお聞きしたいと思います。
  84. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 私は去年の八月に任命されましたので、それ以前のことについて直接経験した者ではないという前提で御説明いたしたいと思いますけれども、おっしゃるように平成七年十二月二十七日に独占禁止法第四章改正問題研究会から中間報告が出されております。この中間報告の中では、ただいま御指摘がありましたように、四つの類型については持ち株会社解禁していいのではないかという結論が出たわけであります。  そこで、公正取引委員会としては、この中間報告を前提にいたしまして立法を考えていろいろ各政党にも御説明したようでございますが、その途中でいろいろの御意見がありまして、そしてまた、その間に与党プロジェクトチームの中で本当に熱心に御協議いただき、ただ前通常国会ではその法案は提出に至らなかったということでございまして、今回また与党の中で独占禁止法協議会というのが置かれまして、ここでもなかなか熱心に御意見をちょうだいしたというようなことで、いろいろの御意見を聞いて今回の改正案をまとめたということでございます。  いろいろそれはいきさつはあるようでございますけれども、その間に政党の方に対していきさつを十分御説明できなかったという点もあったようでございますけれども、先ほども私申し上げましたように、私ども独占禁止法の第一条というのを金科玉条としてやるわけでございますけれども法案ということになりますと、内閣提出ということになりますと各省の御同意もいただかないといけない、また国会の御同意も当然いただくことになるわけでございます。そういうことからいたしまして、その第一条をどの程度変更しまして法案として提出できるかということに尽きるわけでございまして、いろいろ国会議員の先生あるいは各省の意見を聞いて、第一条を損なわない範囲内でこの改正法を考えたといういきさつでございます。  そういうようないきさつでございますので、若干その辺に紆余曲折はあったわけでございますが、現時点ではいろいろの御意見を聞いたところ、そして我々の金科玉条とする第一条の精神も十分酌み入れてこの法案を作成したといういきさつでございます。
  85. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 ありがとうございました。  これは公取委員長、日本の社会に相当戦後民主主義が定着をしてきたとは思うんですが、しかしまだこれでいいのかなということを日常生活やあるいはいろんな政治の場面においてもあるいは経済界の場面においても感ずることがあります。怖いなと思うときがあるんです。  例えばの話でありますが、例えば大きな自動車会社のメーカーへ行きますと、これはそこのメーカーの工場に行くときに違ったよその車で乗り込んだらもう守衛のところでたたかれるんですね、けんかせにゃ入れない。非常に系列化が進んでいるんです。その系列化というのはやはり系列内グループを最優先する。  例えば証券業界でいうと野村証券の今度の事件もそうなんですが、あれは二人の大田淵、田淵さんを何か取締役にもう一回返すためにいろいろやったとかやらぬとかいうそういうことが社内でまかり通るような雰囲気、何か社内に民主主義はあるのかなと。あるいは第一勧銀の問題しかりである。たくさんそういうことがあるんです。全日空の問題も恐らくそうなんでしょう。  そういうときに、なかなか普通の人たちはおかしいと思っても、おかしなことをやっている、あるいはおかしい取引をやっている、法律を犯していると思っても、上から言われたときはやっぱりこれはどうしようもなく言うことを聞くような、我が国は長いものに巻かれよ、ばからしい、傷つかぬようにしよう、こういう雰囲気が支配的で、今役所の中にもそういうのが非常に多いと思う。大蔵省の事件にしてもあるいは厚生省の事件にしても、それはもう本当にあらわれているごく一部だと思います。  果たして、言われるほど民主主義が定着をしているのかどうなのか、これは特に九条改正の精神にやっぱり関係することですから、お尋ねしたいと思います。
  86. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) いろいろの事象について私が申し上げる立場ではございませんけれども、九条の問題については戦後それ相当の役割を果たしてきたと思います。おっしゃるように、昭和二十二年に独占禁止法ができまして、そのとき持ち株会社というのは禁止されたのでございます。  もちろん、その当時はこのいわゆる純粋持ち株会社禁止され、あるいは事業持ち株会社というのも禁止されていたのでございますが、昭和二十四年に至りまして、外資を導入するとかあるいはちまたに出てきた株式を消化するということで原則的には事業持ち株会社解禁されたのでございますけれども、いわゆる純粋持ち株会社、これは九条の持ち株会社と言っていいと思いますけれども、これは今日までずっと禁止されてきたのでございます。  最初は財閥復活を禁止するという意図でつくられたと思いますけれども、その後、財閥の復活というよりも、むしろそういう事業者への過度集中のおそれということに重点が置かれて、これが今日まで存続してきたと思うのでありますけれども、最近、この独占禁止法の精神というのもちまたに行き渡ってまいりましたし、それから規制緩和という問題もございますし、あるいは独占禁止法の中の過剰規制ということも批判されておりますので、その過剰の部分をここで切り捨てたいというのがこの法案の主眼点でございます。その辺を御理解賜れば非常にありがたいと思います。
  87. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 私は、中小企業の意識ある人たちの話はよく聞くんです。だけれども、大概この法律については心から賛成しておりませんね。非常に怖がっております。そんなことが先々これどうなるかというので非常に怖がっている。したがって、幸いやる気のある、検察経験のある根來委員長には、ぜひ経済民主主義を貫くように御指導賜りたいと思います。  次に移ります。  四大財閥、過去の財閥、今で言う企業グループは大体総資産額二十兆を超えていると、こう言われておりますが、これは彼らがやることはできないということになっておりますが、例えば三菱なら三菱、三井なら三井のグループの中の一つの石油に関係するグループとかあるいは紙に関係するグループとかなんとか、そういうグループごとの、全体でやらないけれども、そのグループの中で許される範囲内でこの持ち株形態が進んでいく懸念がある。そうしますと、社長会なんかというのはそういう人たちが全部集まって社長会をつくっておりますから、そういう懸念というのは先々に考えられますが、これ事務局で結構ですが、どのように判断しますか。
  88. 塩田薫範

    政府委員塩田薫範君) 御質問は、いわゆる六大企業集団一つグループに属している企業、これが全体が一つ持ち株会社のもとにということではなくて、例えば事業分野ごとに幾つかの持ち株会社グループをそれぞれつくる、そういった場合にどういう問題が出てくるかということだと思います。  これは二つに分けて考えるといいますか、お答えをさせていただきたいと思います。  一つは、今回改正法案という形でお願いをしております持ち株会社禁止という観点からこれをどう考えるかということでございます。先生おっしゃったように、三つ類型の中で第一番目の類型、十五兆円ということをよく言われますけれども、総合的な事業規模が非常に大きくて、幾つかの事業分野にわたってそれぞれ有力な企業がある、大きな企業があるというようなパターンに該当するかどうかということでありますけれども、これにつきましては、事業規模全体、持ち株会社グループ全体として十五兆円を超えるとか、あるいは幾つかの事業分野でそれなりの大きな会社があるということを要件としておりますので、多分、一つ企業グループの中が幾つかの持ち株会社グループに分かれるということになるとすれば、十五兆円という総資産規模には達しないというふうに考えられるといいますか、多分そういうふうに想定してまず間違いないんじゃないだろうか。そういうことであるとすれば、第一類型には該当をしない、それぞれの持ち株会社は。  その上で、その一つ企業グループ幾つかの持ち株会社グループに分かれるということでありますから、幾つかの持ち株会社があって、それがまた一つ企業グループをなしているということをどう考えたらいいか。九条の観点からいいますと、この幾つかの持ち株会社グループが何らかの形で結びついているということでありますが、九条の持ち株会社の定義からいたしますと、これは全体としては持ち株会社ということにはならないということでございますので、第九条の観点からの規制というのは多分出てこないということだと思います。  それから、二番目の問題として、一つ企業グループの中の関連のある企業分野あるいは同じような事業分野会社一つ持ち株会社グループに入るということの場合には、今度は個別市場の問題としてどう考えるか、特定の市場で競争の実質的制限をもたらすような株式の保有関係があるかどうかということでございます。これは現在ございます独禁法の十条の規定の適用の問題ということになります。  これにつきましては、合併の場合どうなるかとか、あるいは株式を取得して、合併ではなくて、独立の法人格を持ったままでなおかつ企業同士で深い結合関係にあった場合、これは十条なり、合併の場合十五条でございますが、そういった点で個別分野での競争の実質的制限をもたらすことがあるかどうかという観点からチェックされるべき問題だろうというふうに思います。
  89. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 ちょっとニュアンスが違うことを聞いたのですけれども参考にさせていただきます。  次に、持ち株会社というのは子会社の株を五〇%以上持っているということですね。それはそれで持ち株会社が存在をし、その持ち株会社がなおその系列の株あるいは市場一般公開している株の支配権というのは、恐らく筆頭株主になるためには、公開されている株の二〇%も持ったら恐らく筆頭株主になりますわね。そういうこととか、あるいは一般の株を五〇%以下、持ち株会社でありながらそういう株も持つ、そして経営の支配権を行使していく、そういう場合について九条の二との絡みがあると思いますが、どういうように考えておられますか。
  90. 塩田薫範

    政府委員塩田薫範君) お答えをいたします。  先ほどちょっと御質問の趣旨を取り違えたようでございまして、恐縮でございます。  今の御質問でございますけれども持ち株会社がまずあると。その持ち株会社というのは、当然のことながら九条の定義にございますように、その子会社、五〇%を超えて株式を持っている会社、この子会社株式の総額がその会社の総資産の五〇%を超える場合ということが持ち株会社の定義であります。その定義に該当するということを置いた上で、子会社株式以外になおかつ五〇%未満の株、例えば先生おっしゃったように二〇%とか三〇%ぐらいの株式を持つ、場合によっては上場されているかもしれない、多数の株主がいるかもしれない、だけれども、筆頭株主であるというようなことで、そういうものも当然支配力が及ぶではないか、それを九条なり九条の二でどう考えるのかという御質問だと思います。  スタートが、ある持ち株会社があって、子会社のほかにそういう二〇%とか三〇%の株式を持っているそれ以外の会社があるという前提で考えますと、第九条の問題として考えるべき問題、つまり持ち株会社でございますので、九条で事業支配力過度集中に当たるかどうかということでございます。過度集中に当たるかどうかということを判断する際に、その持ち株会社グループの勢力といいますか、どういうところまでカウントするかということであります。持ち株会社本体と子会社をカウントすることは当然でございますが、九条の第五項の最初の方に書いてありますように、持ち株会社子会社と、それから持ち株会社が五〇%以下で株式を持っていて、持ち株会社株式所有により事業活動を支配している会社ということでございます。  したがって、五〇%未満の株式所有比率であって、なおかつ支配しているというふうに認められるのはどこまでかということでありますが、多分三〇%とかそんなことであれば、株主として二番目、三番目の株主であるということであった場合にはどうかということはありますけれども、筆頭株主であってそのぐらいの株式所有比率があるということであれば、ここに該当するんではないか。  したがって、過度集中に当たるかどうかということを判断する際には、自分と子会社とそれからそれ以外のここに言いましたような会社、これ全体として構成要件といいますか、要件に該当するかどうかを判断するということになると思います。  持ち株会社ということでございますので、九条の二の方は持ち株会社以外の会社を適用対象にするということでございますので、一たん持ち株会社であるということが明確であれば、九条だけで事業支配力の問題が判断される、持ち株会社でないとなれば九条ではなくて九条の二が適用になるかどうかということになると考えております。
  91. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 わかったようなわからないような……。  例えばNTTでいきましょうか。NTTは子会社をいっぱい持っておりますね。そうすると、三社に分割をすると言うんでしょう、長距離と地域と、そしてその下にドコモとか何とかというのがあるでしょう。まだいっぱいありますよね。そういう場合、五〇%は持たないけれども二〇パー持つとか三〇パー持つというような形態になるのか、その辺のことがありますね。  同時に、NTTの分割した持ち株会社が、どこか例えば非常に取引のある納入業者の市場公開している会社の株の筆頭株主になれるのか、なれないか、持ち株会社がね。そこの二つのところね。
  92. 塩田薫範

    政府委員塩田薫範君) 今の例でございますと、大きな子会社を二つか三つ持っていると。したがって、当然親会社の方は持ち株会社に該当すると。その会社がそれ以外の子会社子会社と言うと問題ですから、五〇%以下の株式所有比率で関係会社を持つことができるかどうか、持ったときに九条の適用はどうなるかということでございますが、そういったものを持った場合に事業支配力過度集中することになるかどうかというのは、今の事例で言いますと、子会社の地域会社と長距離会社だけでなくて、それ以外の五〇%未満の会社も含めて、全体として事業者への過度集中になるかどうかということを判断するということになると思います。  それから、新たに別な会社、別な業種の会社株式を取得することができるかどうかというのは、これは株式を取得したことによって五〇%超取得するか、五〇%未満で支配力を持つかどうか、ここは余り関係がないというか、その差は出てこないと思いますけれども過度集中になるかどうかという判断をした上で、過度集中になるとすればそういう株式は持つちゃいけない、仮に持ったとすれば、それは株式を処分して子会社あるいは関係会社でなくなる、そういう措置が必要になるというふうに考えております。
  93. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 時間がほぼ参りました。  私が言いたいのは、やっぱり持ち株会社というのは、通産省はえらいさっきいいことを言いよったけれども、これは後ろにおって、ウ匠のウ飼いみたいなもので、これは資本力でやっている。労使問題だって、当該の労使で話をしたって後ろにおるこのウ飼いの親分と新たに話をしなきゃこれは通じないような状況。  だから、今の答弁聞いておりましても、非常に範囲がやっぱり扱いによってはどうでもなると。直接仕事をしないものが後ろにおって株で経営を支配していく、あるいは経済社会を牛耳っていくというようなやり方は余り好ましくないと私は思うので、だから、そこのところは公取がしっかりやはり絶えず報告書を見ながら、社会に悪い影響を及ぼしていないか、経済社会に悪い影響を及ぼしておるじゃないか、そういう監視をしながら、見直しの期間もあるから、私はしっかりこれから運用は誤りないようにやっていただきたいと思うんです。いかがでしょうか。
  94. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 御指摘のとおりでございまして、私自身若干懐疑主義者であるし、悲観主義者でございますので、先生の御懸念というのは非常によくわかるわけでございます。  ですから、この独占禁止法を若干改正いたしましても、その向こうにバラ色の世界があるかどうかということについては、それは私自身も自信がないわけでございます。しかし、バラ色の社会にしないといかぬというと、何がいかぬのかというと、私どもがやはり既存の法律を十分駆使して、そして監視を十分にするということ以外にまず私どもの職分としてはないんじゃないか、こういうふうに思っているわけでございます。  また、十分駆使できるかどうか、そういう手段があるかどうかということについて問題があれば、また再びここで立法をお願いして、その監視手段を補完していただくということに相なろうかと思いますし、その期間的な問題として五年間という見直し期間というのですか、それをお願いしているわけでございますので、この五年間の間でどういう不都合が起こるのか、あるいは起こらないのか、それを十分私どもも洞察し、また今までの法律を駆使して監視体制を十分行っていきたい、こういうふうに思っております。
  95. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 終わります。
  96. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 きょう、討論の最初ですから、総論みたいな話があって、できればそれぞれの担当の省庁の方からお聞きをしたいと思うんですが、その前に、私は今度の独占禁止法改正の論議がこれまでの商工委員会にかかっていた案件とはちょっと違った性格を持っているものですから、印象みたいな話になって大変恐縮なんですが、私の感じを一言だけ最初に申し上げておきたいんです。  本会議で趣旨説明をした所管大臣に質問がなかったというのは、私はまだ浅い経験ですが、初めてなんですね。総理大臣あるいは大蔵大臣や労働大臣、法務大臣、通産大臣には質問がありましたが、趣旨説明した官房長官には質問がなかったんです。というくらい実はこの法律は、今度の改正というのはさまざまな省庁にまたがる影響を持つ。つまり、独占禁止法本体そのものはもちろん公正取引委員会の所管の法律であり、これに基づいて公正取引委員会というのは動いているんですけれども、これによって影響する部分というのはかなり幅広くいろんな省庁にまたがる。これが私は今度の問題の一番の実はキーになるんじゃないか。  実は、私どもは当初、これは特別委員会を設置してもらうか、あるいは連合審査をやってもらわないと困るんじゃないかという議論があったんですが、今はこれはもう既に衆議院も商工委員会でやり、参議院の方も商工委員会でやっていますから、この後の議論もさまざまな関係をする省庁の皆さん方にいろいろとお聞きをしたいと思うんですが、私は、この独禁法改正については基本的には支持をしている立場なんです。ただ、さまざまなまだ解明してもらわなきゃならない、あるいはここはこうしてもらわないと心配だよという部分がありますので、それらについてこの後いろいろとお聞きをしたいと思います。  まず総論的な話を申し上げて、最初に公正取引委員会の方から現在の独占禁止法の評価について二、三お伺いをしたいと思います。  今度の独占禁止法改正というのは、特に九条の改正については昭和二十九年の改正以来大幅な改正ということに私はなるんじゃないかというふうに思います。二十八年改正のときに、いわゆる事業持ち株会社が事実上解禁をされるということがあったわけですが、その後、公正取引委員会のスタンスとしては、むしろまだ九条についてはそのまま堅持をしていくというスタンスをごく最近まで私はとっていたような気がするんです。それが、ここ一年半、二年ぐらいの間に急激にそのスタンスを変えてきた。これは一体何なんだろうか。つまり、九条に対するきちっとした評価あるいは独占禁止法に対するきちっとした評価が公正取引委員会全体としてされたんだろうかという実は疑念があるわけです。これについては後ほどお聞きをしたいと思うんです。  私は、これは非常にうがった見方ですからおしかりがあったらおしかりを受けても結構なんですが、いわゆる日米経済構造協議の中で、アメリカからはいわゆる独占禁止法の特に公正取引委員会の機能をきちっと強化してほしい。規制緩和をやることによってさまざまな弊害が起きる可能性がある。したがって、いわゆる公正取引委員会の強化がうたわれました。  昨年、この法律が機能強化とあわせて出たわけです。さまざまな議論があった結果、結果的には本体の改正の方は先送りをされて機能強化だけが先行した。これは一部マスコミでは、何だ結果的には公正取引委員会の機能強化だけが先食いをされちゃったという言い方がされたし、あるいは非常にうがった言い方かもしれませんが、公正取引委員会は機能強化と差しかえで九条問題について妥協したんじゃないかという声があるんですね。  私は、戦後の独占禁止法制の中でこの九条の問題というのは非常に大きな問題ですから、この辺に対する現在の公正取引委員会のきちっとした評価を聞いた上で、この後の改正問題についての御意見を伺いたいと思います。
  97. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 委員には、昨年いろいろこの改正法案を提出するにつきまして御検討いただいた際に、その有力メンバーとしていろいろお世話になりました。そういうことで、私がいろいろここで御説明するよりもその内容についてはよく御存じでありまして、そういうことについて私が説明するのは非常に僭越かと思いますけれども、私どもは、そういう役所のというような私心なく仕事をしてきた、こういうふうに思うわけでございます。  ただ、九条の問題につきましては、先ほど来お話がありますように、五十年間禁止されてきたのでございまして、その禁止してきたというのは、やはり戦後のいろいろの事情あるいは昭和四十年代のいろいろの話、そういうことで九条というのは非常に有用な規定であろうということで評価してきたわけでございますけれども、最近、規制緩和という話で、いろいろの規制が取っ払われているときに、独占禁止法というのを見直した場合に、端的に言いますと九条の規定の仕方が大きく網をかけ過ぎておる、そういう評価になってきたのではないかというふうに思います。  ですから、そう大きく網をかけて縛ることはないんじゃないか。だから、先ほど来御説明しておりますように、事業支配過度集中に当たらないような部分については、これはオープンにした方がいいんじゃないかという御意見がありまして、こういう改正に至ったんだと、こういうふうに理解しております。  そこで、どの程度大きく網をかけておるかということが一つ議論になろうと思いますけれども、その議論は千差万別、立場によっても違います。そういうことで、私どももどこに座標を置くかということについて非常に苦労したというか、悩んだところだと思うわけでございます。そういう悩みがありまして、そして一方ではああいうプロジェクトチームで、あるいは協議会でいろいろ御意見をちょうだいして、いろいろの御意見を拝聴した上でここに座標を置いたということであろうと思うのであります。  ですから、これからもこの九条の有用性というのはやはり変わらないだろうと思うわけであります。先ほども御質問がありましたように、九条を基本にして私どもも誠実に厳重に仕事をしていかねばならない、こういうふうに考えております。
  98. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 そこで、これまでの議論の中で、さまざまな人たちから必ず出る言葉は、国際的なハーモナイゼーションという言葉が出てくるんです。確かに、現在の日本の九条のような純粋持ち株会社禁止をしているのは日本と韓国だけだというふうに言われています。  そこで、戦後の日本の経済を考えまして、根來委員長からも今お話がありましたように、さまざまな規制緩和は私はすべきだと思います。しかし、もちろん全面的に何でもいいというふうに私は言っているのではないんですが、経済的な規制、特に経済の足を引っ張っているような、あるいはこれからの経済の発展の妨げになるような規制については改めるべきだというふうに思います。  そこで、問題なのは、なぜ日本では純粋持ち株会社禁止をしていながらこれだけの経済成長が達成できたんだろうか。外国にはありませんでした。このことについてどんな評価をきちっと下すべきなのか。  今、新しい経済、いわゆる経済構造改革をしていきましょうという流れの中で、確かに網をかけ過ぎた、一律禁止をしていた持ち株会社解禁しましょうという話が、独占禁止法を運用されてきた、あるいはそれに基づいて仕事をされてきた公正取引委員会からではなくて、むしろ外からこのことについて指摘をされて公正取引委員会動き出す。私は、公正取引委員会が時代がおくれていたのか、ずれていたのかというふうに見ざるを得なくなってしまうんです。  このことについて、先ほど最初に申し上げたいわゆる九条に対するこれまでの評価と、それから九条の持っていた意味、こういうものをきちっとした議論をしておきませんと、この後の議論であるいわゆる解禁をする部分禁止をする部分の線引きの問題、これらの問題にまで私はぐらつきが出てくる心配があるんですね。  この点についてまずお聞きをしたいんです。
  99. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 戦後、こういう規制といいますか、そういう持ち株会社禁止の法制のもとで経済が発展してきたということも事実であろうと思います。これは、ある意味ではいろいろ御苦労をされて、そういう経済発展の今日に至っていると思うのでありますけれども、私どもも、仕事をするというのは何を見ながら仕事をするかという基本問題になるわけでございますが、先ほど来繰り返し申し上げておりますように、一つはやはり独占禁止法の一条というのをいつも正面から見据えてやらなければいけない、こういうふうに思っております。ですから、今回の場合も、一条に触れるかどうか、一条を踏み出していないかどうかということをいつも気を使ってやっているわけでございます。  それかといって、今の国際的な環境といいますか、選択肢といいますか、そういう御議論がございますけれども、それを全く見ないでやるというわけにもいかないと思うんですね。ですから、その一条の規定を正面から見据えつつ、またそういう経済環境等を横目でにらみつつ、それの妥協というとまた語弊がございますけれども、調整の上でこの法案を考えてきた、こういうことになるわけでございまして、私どもは決して国際的な競争力を整合性を保つために九条を改正するとか、そういうことを主体に考えたことでないということはひとつ御理解いただきたいと思うわけでございます。  そういう面でいいますと、これもこういう改正をすればさらに国際競争力が増加して、日本の企業も仕事をしやすくなるという見地で、あるいはそういう要望は横からあるかもわかりませんが、そういうことを主体にしたわけではないということをぜひ御理解いただきたいと思います。
  100. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 私も、一部の学者というか、評論家と言った方がいいんでしょうか、日本経済これ以上強くしてどうするんだという論を張る評論家の方もおられますが、今、大変日本の経済は疲弊をしていまして、新しいあれに変えていこうということですから、そういう意味での選択肢といいますか、一つの材料としてこれを使うということを私は頭から否定をするわけではありません。  そこで、今現在いわゆる事業持ち株会社というのが認められているわけです。ただし、株式を取得することによって、そういうことを主たる事業としてその会社を支配するということを禁止をしているわけですね。事業持ち株会社はもう既に認められていてかなり活用されておられるわけです。何千何万という会社がこれを活用しているわけですよ。これはよくて、純粋持ち株会社は一体なぜいけなかったのか。  大変古い話を思い出していただくようで、恐らく公正取引委員会としてはきちっとした検証はされておると思いますので、経済的な視点からこのことに対する違いみたいなものをずばりと言っていただけませんか。
  101. 塩田薫範

    政府委員塩田薫範君) なかなか難しいお話だと思うんですが、まず純粋持ち株会社という言葉、それから事業持ち株会社という言葉が使われておりますけれども、この概念自体かなり幅があるというものではないかなという気がいたします。  一般的に純粋持ち株会社という言葉が使われておりますのは、現行の独占禁止法九条で禁止されている持ち株会社のこと、つまり株式所有して他の会社事業活動を支配することを主たる事業とする会社を言うと。したがって、主たる事業とするということですから、株式所有で他の会社を支配すること以外に、例えば製造業であるとか販売業をやっていてもこれは純粋持ち株会社の概念に入るはずなんですが、どうも純粋持ち株会社という言葉を使った途端に子会社だけを持っている、あるいは支配会社だけを持っている会社のような感じになりがちであるというのが一つと、それからもう一つ、今度は事業持ち株会社というのは、これは九条の規定には該当しない会社で、つまり持ち株会社ではない。ただし、そうはいっても、例えば株をたくさん持っている。たくさん持っている株式の中身はどうかというと、子会社であるとか支配力が及ぶような持ち株比率を持っている株式もあれば、非常にごく少数比率の株式をたくさん持っている、よく持ち株会社じゃなくて株持ち会社というふうなことを言う人もいますけれども、そういうものまで入っていると。そうすると、純粋持ち株会社事業持ち株会社とは果たしてどこでどういうふうに接するのか、オーバーラップするところがあるのかないのかという話になりますので、かなり連続性のあるものの中で途中で切るという、そういう概念じゃないかなという感じがします。  したがって、純粋持ち株会社事業持ち株会社とはどこがどのように違うかというのは非常に申し上げるのは難しいということで、かなり極端なケース、つまり片方では非常に純粋、純粋に近いというと変ですけれども子会社株式を持っている、それがほとんどの事業であるというような形を想定し、片一方の事業持ち株会社の方は、子会社といいますか、五〇%超の株式を持っているのもあるかもしれない、大多数は少数の株式比率、しかし株式の金額としては大きい、たくさん持っているというのを考えますと、やはり持ち株会社の方は事業支配力、自分の意欲で他の会社をコントロールする力が非常に強い、それがどの程度及ぶかというそこが非常に大きな影響力があると。他方、余りたくさんの株式比率は持っていないけれども、たくさんの会社の株をたくさん持っているというような場合あるいは一〇%、一五%ぐらい、支配力が及ぶかどうかぐらいのかすかすのところ、かすかすと言ったらあれですけれども、その辺のところの株式をたくさん持っているという場合にどの程度その影響力が及ぶのか。これは相手の会社上場会社であるかどうか、あるいはその株主構成がどんなふうになっているのかというようなことで影響力の度合いというのは当然違います。  したがって、先生御承知のように九条も九条の二も、いずれも事業支配力過度集中することを防止するという第一条の中に書いてある規定、これに源があるといいますか関連の深い規定でございます。それぞれの規制方式として、従来は第九条で持ち株会社は全部禁止持ち株会社でないものについては五十二年の法律改正で九条の二という現在の規定が入りまして、そこで持ち株会社ではないけれどもたくさん株を持っている、これもやっぱり影響力が非常に大きくなる場合もあるだろうからということで、現在のような一つのルールといいますか規制の方式が入ったということでございます。したがって、事業支配力が及ぶ程度株式をどのぐらい持っているかとか、それが主たる事業であるとかいうことによってかなり差が出てくるように思います。  ただ、いずれにしましても、持ち株会社という形態でなくても、やはり非常に大規模会社がたくさんの株式を保有するということについては何らかのチェックといいますか規制が必要だろうということで、現在の九条の二が置かれているということであろうというふうに考えております。
  102. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 そんな難しい質問を私したつもりじゃないので、もう少し簡単に言ってください。長くすると余計わからなくなってくる。  そこで、今度の改正の意義と必要性についてちょっとお聞きをしたいんですが、最初に通産省の方にお聞きをしたいんです。  確かに、今度の改正の大きな背景に経済構造改革やあるいは規制緩和という大きな流れが一つにはあるということは私も承知をしているつもりなんですが、経済構造改革という大きな流れの中で、九条のいわゆる純粋持ち株会社解禁がどれだけの役割を果たすというふうに通産省は考えておられるのか、その辺がちょっとわかりにくいんですね、はっきり申し上げて。  実は通産省から説明の資料をいつもいただくんですが、非常にわかりにくいんです。わかりにくいというのは、今公取さんの方にお伺いをした事業持ち株会社は認められているわけですから、私の言い方で勘弁してくださいね、純粋持ち株会社解禁をされないと困るというか、解禁をされないとこれからの経済の構造を変えていくためには困るんだ、これは不可欠なんだという説得性のあるあれがないんです、通産省の方から出てこない。  私、この間いただいた資料、これはヒアリングのときにいただいたんですが、一つには多国籍化に対応した効率的企業組織の実現と円滑な人事・労務管理の実現、二番目に国際的法制度とのハーモナイゼーション、三番目に組織・人事面での摩擦を回避した企業統合とあるんですね。どれを見ても今のままでもできるんです、純粋持ち株会社をつくらなくたって。この辺がちょっとよくわからないんですね。藤島審議官の方からわかりやすく、短くぜひお聞かせをいただきたいと思います。
  103. 藤島安之

    政府委員(藤島安之君) 純粋持ち株会社解禁の必要性、経済構造改革を進める上での必要性につきましては委員もう御承知の上だと思いますので省略させていただきまして、持ち株会社がどういう形で必要であるかという、今委員が三点申し上げられましたので、わかりやすく言うのもなかなか難しいんですけれども三つに絞って申し上げたいと思います。  第一は分社化ということでございます。これは分社化をしますと経営責任が明確化して経営の効率化が図られる、そういう意味で各企業は分社化を相当進めております。例えば主要企業の一社当たりの子会社の数を見ますと、昭和六十年は十二・三社、平成六年になりますと三十七・一社ということで三倍にふえているわけでございます。これは事業持ち株会社のもとでやっておるわけでございますが、これがふえてきますとどこかでつつかえるわけでございます。  そういったことを考えますと、純粋持ち株会社解禁が必要になってくるという連続性の話も申し上げましたが、どこかでつつかえないでそれをそのまま行かせてほしい、こういうのがございます。特にベンチャー企業をコーポレートベンチャーといいますが、分社化して新規事業を振興するためには必要だ、こういうことが一つでございます。  それから第二番目は、国際的法制度とのハーモナイゼーションということで、海外の持ち株会社形態をとっている外国企業が国内で事業展開をしている場合に、やはり本社と同様日本では持ち株会社形態をさせてほしいという希望が出ているわけでございます。  それから第三番目に、合併をする場合に、これは直ちに合併すればいいわけでございますが、それぞれもとの企業には別の風土、人事いろいろなものがあるわけでございます。持ち株会社で経営を統合しながらだんだん時間がたって最後に合併していく、そういうためにはやはり持ち株会社がいいんじゃないか、こういうふうに希望が産業界から寄せられているわけでございます。  どの程度進むかというのはこれからのものでございますけれども、直ちにどんどんできていくというものではなくて、そうしたものも全体の我が国の経済構造改革であらゆる改革を進めている中で一つの重要な意義のあるものだ、こういうふうに考えております。
  104. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 事前に通告をしてある順序をちょっと変えさせていただきますが、続いて通産省の方にお伺いをしますが、実はいろんな方からたくさんいろんな話をお聞きした中で、行政改革委員会の規制緩和委員会の今座長をやっておられる宮内さん、ヒアリングをした際に、規制緩和というのは必ずそれを実行すれば勝つ者と負ける者がいると。中には冷水にほうり込まれて肺炎を起こすやつがいる、しょうがないんだという言い方なんですよね。例えば規制をするのならば規制をする側、つまり規制をしている側ですな、例えば公正取引委員会なら公正取引委員会がなぜ必要なのかということを明示しなきゃいけない。今度の場合にその明示がなかったというのが宮内さんの言い分なんですね、私どもがお聞きをしたときに。  そういう議論を聞いていまして、確かに世の中を変えるためにさまざまな仕組みを変えるときには、全くそのリアクションなしにというわけにいきませんね、それはわかるんです。しかし、その場合には何々のためにどれだけの例えば効果があるとか、これが具体的な数値で示せなければ、何かそれを明らかにする責任もやっぱりあると思うんです、緩和をする側に。  今、私は非常に腹が立っていますのは、行政改革委員会とか規制緩和委員会、これは全部が全部悪いとは言いたくはないんですが、自分たちは緩和を政府に対して求める側であって、その結果責任は負わないと言っているんですよ、はっきり言いますと。これは非常に私心配なんです、正直に申し上げますと。今、規制緩和の問題で、特に関係が一番深いと思いますのはやっぱり通産省だと思うんです、経済という視点から見ますと。特に今度のこの改正が、先ほどから言っていますようにこれからの経済にどんなプラスに作用していくのか。  といいますのは、私はいろんな方からお聞きした中で、例えば鉄鋼産業の方、自動車産業、電機の方、従来いわゆる日本経済を引っ張ってきた大手の経営者の皆さん方からいろいろとヒアリングをしました。すぐ使うというところはほとんどないんです。むしろ、新しい産業の中には一部使ってみたいというところもおありになるようです。としますと、使うところは非常に限定されてくるんですね。だからやらなくていいと言っているんじゃないんですよ。効果のほどを一体どんなふうにお考えになっているか。  先ほど、例えば通産省の方からもそういうお話がありましたし、あるいは四章研の中でも指摘していますよ。私は、例えばベンチャーキャピタルだとかあるいは純粋分社化だとか、極めて小規模のものはこれは影響ないですから、いいんじゃないかと、私は当初からそう思っているわけです。  そういう問題について、そんな小さい規模解禁をやったって大した効果はありませんから、そういう意味でこれだけの改正をやった場合にどういう効果が出てくるのか。これは、非常に抽象的な言い方で申しわけないんですが、大事なところなのでもう一度お答えをいただきたいと思います。
  105. 藤島安之

    政府委員(藤島安之君) 持ち株会社解禁の必要性については御理解いただいているという前提で、その場合に一体どの程度持ち株会社が出てくるのか、こういうお尋ねでございますが、昨年の四月に上場企業を中心に主要二千六百四十五社にアンケートをさせていただきました。  その中で、独禁法持ち株会社解禁された場合に、これを採用したいと答えた企業あるいは条件によっては採用したいと答えました企業が六・四%、約三十社でございます。検討中が三一・三%、関心はあるが検討していないという企業が五〇・九%、採用しないと答えた企業が九一九%でございます。したがいまして、持ち株会社解禁されました場合に、大手企業の中で採用されるとしても、このサンプルを当面検討していかれるということになるんだと思います。そのほか予備軍もございますのでふえるか、あるいはいろんな問題があって断念するか、そういうことがあるわけです。この三十社をどう評価するかと、こういうことだろうかと思います。  私どもとしては、こうしたことでも経済構造改革の中でいろんな選択肢がふえていくんだと、そういうことを示す意味でも非常に意義が高い、こういうふうに思っておりまして、さらにもう少し利用しやすいように企業組織関連制度の諸改革にも取り組んでいきたい、そういうふうに考えております。
  106. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 そこで、公正取引委員会の方にお伺いをしたいんですが、今通産省の方からもお話がありましたように、今度の改正はそれなりに私は意義があるんだろうというふうに思っているんですが、それにしてはちょっとふらふらし過ぎたんじゃないのという感じがするんですよね。  一つは、一昨年の十二月の末でしたかね、四章問題研究会報告が出たのは。実際に委員会の議論というのは、たしか十一月ごろから始めて二カ月ぐらいの間ですよね。その間に確かに六回ほど会合が開かれたという報告が出ていますから、専門家の方ですからそれなりの議論をされたんだと思うんです。その報告が出て、その後、公正取引委員会の事務局として改正についての議論がされて、昨年の一月段階与党に対してこういう考え方でどうだろうかという打診があって、その打診によってまたさまざまな意見が出ましたね。その結果、また内容が少し変わって、最終的に、昨年は結果的に継続をせざるを得ない、機能強化だけが先行するという形になりました。昨年暮れからことしに入りまして、また新しい動きがあって今度の改正案が出てきたと、こういうことだと思うんです。  私は、これだけ重要な問題が、ある時期は部分解禁であって、今は部分禁止というふうに、表現が適切がどうかは別にしまして、私たちはそう見るんですけれども、そういうふうに変わってきているんですね。これだけ大事な問題が非常に短い期間の中で、法案の中身の精査をした結果ではなくて、別な要素でこれが変わってきたというふうに受け取らざるを得ないんです。この辺が、先ほど沓掛先生あるいは梶原先生の質問にもお答えがありましたけれども、正直に申し上げて公正取引委員会がちょっとふらふらし過ぎという心配があります。私は、これからの規制緩和の流れの中で、公正取引委員会というのはきちっとしたやっぱりスタンス表示を持っていてほしいというふうに思っているものですから、ぜひこの種の問題で余り振れてほしくない。  ですから、この後、多分いずれ議論になると思うんですが、ガイドラインをつくるといっても、一部の私どもの仲間の議員からも、いや、公正取引委員会に余り裁量権を持たせちゃだめだよという声が出てくるんですよ。そういうことであってはいけないと私は思うんです。信頼がされていれば、公正取引委員会に任せておけば大丈夫だということになるんですね。こういう議論があるということをまず一つは承知をしておいてほしい。  そこで、先ほど根來委員長の方から一条との関係についていろいろお話がありました。私も、この独占禁止法の第一条というのは非常にいい文章だと思うんですね。後段の方で、特に雇用の問題あるいは国民の実所得あるいは国民経済の視点とか、さまざまな問題をきちっと踏まえながら全体を運用されているということについて、私は非常に大事なことなんだと思うんです。それで、今度の九条問題について、さまざまな解説がされても、なおかつ多くの学者の中に賛成論、もちろんあります。と同時に、また反対論も現実に存在をしているわけです。もちろん、薬ですから、時としては薬は扱い方によっては毒にもなるんですけれども。  こういう今の状況について、私は考えてみますと、求めている側がどうも、先ほどの藤島審議官の話の揚げ足をとるわけじゃありませんけれども、経済というのを議論する場合には、必ず経営者の立場が優先するんですね。それから影響を受ける例えば消費者であるとか、あるいはそこの企業に働いている、雇用されている人たち、そういう人たちのことは後ろに置いておいて、まず経営者の皆さんも言います。会社がつぶれちゃおしまいでしょう、産業が消えてはおしまいでしょうと。ここから始まるんですね。私は、独占禁止法というのは、もちろん自由競争をきちっとして担保するという役割があると同時に、こういうやっぱり企業の独走等についてもきちっとチェックをしてもらうという役割があるような気がするんです。こういう視点で、今度の改正の意義みたいなものについて、委員長の見解があればお聞きしたいと思います。
  107. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) この法案の提出に至るまでの間に紆余曲折があったということは正直に認めざるを得ないわけでございますが、先ほど来るる説明いたしましたように、これは二心あってやったわけではございませんので、いろいろ御意見を聞いていろいろ考えてやってきたわけでございますので、その辺は御了承いただきたいと思うわけでございます。  それで問題は、私どもは先ほど来申し上げてきましたように、第一条ということを中心に考えてきたものですから、この解禁が行われた場合にどういうような効果があるかということは、二の次と言うとまたおしかりを受けるかわかりませんけれども、付随的に考えてきたわけでございます。しかしながら、私どもは、大ぶろしきを広げるわけではございませんけれども、こういう解禁をするに当たりましていろいろ御注文がございます。例えば中小企業に対してはどういう対策をするかとか、消費者はどうかとか、労働者はどうかとか、これは先ほどの第一条の一番最後の目的に掲げておりますけれども、そういう問題をどうするのかという疑問を呈せられておるわけでございます。  そこで、私どもの職掌の範囲内でそういうことはどういう点ができるんであろうかということを考えるのでございますが、具体的にこの条文を使ってこういうことをするということは、今ここで明言できるほどの資料はないのでありますけれども、いずれにせよ、第九条を解禁した以上は、それはやはり私どもも後は野となれ山となれというわけにはまいりませんので、それは今後きちっと把握しまして、この五年間のうちに何か問題があるかどうか、それを十分に調査研究してみたい。そして、そこに問題がありますれば、次のときにいろいろまた法律改正していただく、あるいは新規立法をお願いするということを考えなければ、今の段階で、それでは労働者の問題をどうするかとか、消費者の問題をどうするか、あるいは一般中小企業はどうするかということについて、今直ちにこの私ども法律を使ってどうするということを明言できるほどの資料はございません。  ただ、繰り返すようでございますが、この法律が施行になりました場合に、よく世の中の動きを見まして、そしてまた、この商工委員会のお知恵もかりまして、また立法的な措置もお願いしたい、こういうふうに思っている次第であります。
  108. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 そこで、具体的な本論に入りたいんですが、きょうは時間がありませんので総論的なことだけちょっとお聞きをしておきます。  一つは、最初に申し上げたように、この九条の改正によって与える影響というのはさまざまな分野に及ぶわけですが、四章研究会の設置をされたときに、この一年数カ月の間さまざまな問題が議論されましたが、一体公正取引委員会としてはどんな問題意識を持って四章問題研究会の方に検討を依頼したのか。例えば商法ですとか証券取引法だとかあるいは労働組合法、税制にももちろん影響してきますですね。そういうさまざまな法律上の影響についてもきちっと検討を依頼されたのかどうか。  それから、四章問題研究会のメンバーを見まして、学者の方が十三名おられますね。これはさまざまな分野の専門家だろうと思います。マスコミの方が四名おられる。それから、経済界の方が四名おられます。それから、主婦連の代表の方が一名おられます。合計二十二名なんです。今雇用の話が出ましたけれども、労働界から一人も入っていないんです。全くそのことは頭の中になかったのかどうか。そういう意味で、この後の議論にもかかわりますので、ちょっとだけお聞きをしておきたいと思います。
  109. 塩田薫範

    政府委員塩田薫範君) 二年前に四章問題の研究会持ち株会社の問題、今引き続き合併等の手続について検討をお願いしておりますけれども、まず最初に持ち株会社の問題をこの四章研で御審議をお願いしたところでございます。  この四章研での持ち株会社検討を始めましたのは、もう御承知のとおりに平成七年の三月に規制緩和推進計画の中で、事業支配力過度集中等の趣旨を踏まえ、その検討を開始するというか検討を行うということが行われまして、その平成七年三月以来、我々関係方面からのヒアリング等をした上で、先生指摘のように平成七年の秋に四章研を設置して御審議をお願いしたところでございます。  その中で、関連の問題についてどの程度その議論をしたのかということでございますけれども、この四章研におきましては、主として競争政策の観点から、持ち株会社禁止制度についてどうあるべきかという観点から御審議をいただきまして、繰り返しになりますけれども事業支配力過度集中を防止するという一条の目的に反しない範囲内でこれを解禁するのが適当であるというような趣旨お答えをいただいたところでございます。  関連法制については、この四章研の報告書の中で、もう先生十分御承知のところだと思いますけれども、「一定範囲持株会社を認める場合には、独占禁止法だけでなく他の法制に内在していた問題が明確になり、その見直しを必要とするものがでてくることが予想される。」というふうに指摘をした上で、「これらの問題については、現行法制下において認められている会社の親子関係においても議論されている問題であり、今般の持株会社禁止制度の見直しに伴って新たに生ずる問題というわけではないが、今後どのような措置が必要とされるかについて、関係各方面において早急に検討が深められていくべき事項であると考えられる。」という趣旨の文章が四章研の報告書の中に記載をされているところでございます。  そういう意味で、競争政策の観点から持ち株会社禁止制度のあり方、持ち株会社に対する規制のあり方を中心に御指針をいただいたということでございます。
  110. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 公正取引委員会として設置をした研究会ですから、余り他方面の法律にまで口を突っ込んでというわけにはいかなかったという事情はわかりますけれども、私は何となく問題意識が希薄だったんじゃないかという、これは私の印象ですから、申し上げておきます。  そこで、きょうは大蔵省とそれから労働省からも来ていただいていますので、細かい議論は次回にさせていただきますが、一つは税制の関連について、これは特にこの改正を求めていた経済界の圧倒的な大多数の声として連結納税制度とセットでなければ使い勝手が悪いという声はずっと聞いてきたんです。たまたま今、逓信委員会の方でNTT三法、略してNTT三法が議論されておりますが、このNTTの分離・分割議論の経過の中で私ども聞いておりましたのは、一つはやっぱり連結納税制度というものを認めてほしい、それから、いわゆる資産譲渡益課税の問題について何とかこれは認めてほしいという話がございました。  資産譲渡益課税の問題については、これは特例措置として今度のNTT法の中に含めて処理をされるという話ですが、連結納税制度の問題について、いずれにしてもこのNTTの問題については二年後ですか、具体的な新会社移行といいますか、分社化されるのは恐らく二年後だというふうに聞いておりますけれども、その間にこの連結納税制度の問題については結論を出すのか、あるいは全く別の問題として大蔵省としては考えておられるのか。先ほど通産省の方からも企業の調査をやっていただいて、すぐ使いたいとかあるいは検討しているとか、いや使う意思はありませんという答えも、この連結納税制度とのかかわりで考えておられる企業も非常に多いと思うんですよ。この辺について大蔵省としてはどんなふうにとらえておられるのか。もっと細かい話はまた場合によっては次回にさせていただきますが、この辺についてまず一つはお聞きをしたい。  続けて労働省にお聞きをしたいと思いますが、昨年これが流れた最大の原因は労働関係法制の問題だというふうに私たちは考えているんですが、昨年の十二月に労働省の専門家会議の報告が出ました。それをベースにしてことしの二月でしたか、連合と経団連、日経連との間の合意が成立をして今回の法案提出ということに至ったという経過も実は承知をしていますが、私、あの専門家会議の内容をずっといろんな文章を丁寧に読んできたつもりなんですけれども、時々労働省の方にお聞きをしますと、専門家会議の報告をテープレコーダーでしゃべっているようにお聞きをするんですよね。それから、じゃどうするんですかといいますと、これも仕方がないと言ってしまえば仕方がないんでしょう、法案提出の際に与党で確認した内容あるいは労使関係法制については労使の合意事項、この範囲を一切出ていないんです。労働省には人格がないのかと聞きたくなるんです。きょうはそれだけ労働省にお聞きをして、細かい内容は次回にいたしたいと存じます。
  111. 尾原榮夫

    政府委員(尾原榮夫君) 連結納税制度についてお尋ねをいただきました。  まず、NTTのお話でございますが、NTTは、御承知のように、国策により分割されると。それで、東も西もあまねく電話と申しましょうか、国民に義務的にあまねくサービスを提供しなければならないということがございます。他方、西の方は構造的に赤字要因を抱えている。しかし、値上げというのは考えられるわけもございません。それで、三年間に限りまして、東から西へ負担金を入れることができるという制度がNTT法上できたわけでございます。それを受けまして、税法上も損金算入をするということを認めたのが今回の措置でございまして、これは連結とは関係のない制度である、NTTの特殊性に着目した制度であると考えておるわけでございます。  それで、連結納税制度についてどう考えるかということでございますが、実は一昨年、政府の税制調査会におきまして、法人課税について幅広く勉強いたします小委員会を設けました。その中でも連結についてはいろんな角度から取り上げられたわけでございます。そこで、基本的に申し上げますと、いわゆる連結納税制度といいますのは、企業集団一つの課税単位とするものでございまして、集団を一つの納税者として課税する制度でございまするから、現行の仕組み、つまり法人格に着目して個々の法人に課税する仕組みを基本的に変えることになるわけでございます。それで、日本は赤字法人が多いと言われておりますから、このような税制が入った場合には当然税負担が減少するということになってくるだろうと思います。  それで、税制上の立場からこの問題をどのように考えているかということでございまするけれども、まずこの連結納税制度というのは、やはり株主本位のグループ経営が行われているというところで一つの存在根拠があるのかなというふうにも考えられます。そういたしますと、果たして日本の場合、よく従業員管理型企業と言われますけれども、その辺の実態を一体どう考えていくのかということがあるように思われます。  それから、現実の会社経営、これから変わっていくかもしれませんけれども、単体重視の決算が行われているように思われます。つまり、親会社の決算がよくなるように子会社資産を売却したりする、実はこれは連結的思想とは反対の考え方なんであろうと思います。そのような実態をどう考えるんだろうかという問題があるように思います。  さらに、我が国の法人税と申しますのは商法の確定決算をベースに所得を計算する仕組みになっているわけでございますが、まさにこの大もととなりますような商法なりがこれからどうなっていくのか。今は連結という思想はまだ入っていないように思われるわけでございます。  さらに、租税回避の問題が非常に大きくなってくるんだろうと思います。これはたくさん例はありますが、一言だけ申し上げますると、今アメリカは国内にも移転価格税制というのがございます。つまり、国内、国外を問わず関連企業に安い値段で売ったり、系列でございますからいかようにでもできるわけですね、そういうことにならないような仕組みを持っておられる。ところが、アメリカの法制の場合でございますると、実は立証責任が納税者側にあるわけでございます。その値段が正しい価格かどうかというのを税務署が立証するのではなくて、納税者側がおかしいぞといったらやらない仕組みになっている。そういうことを果たしてどう考えていくんだろうか。  さらには、法技術的な問題がございます。これは地方税一つとっても、二重課税の租税条約で法人住民税、これは法人住民税がどうなるかというのも非常に大きな問題になってくるわけでございまして、さらには税収減が予想されますけれども、それは一体どのように確保していくのか。  こういうような問題がございまして、以上のような諸点につきまして広範に検討をしていかなければならない、そういう意味で研究課題であると認識しているところでございます。
  112. 木宮和彦

    委員長木宮和彦君) 時間がもう来ておりますので、なるべく短く簡潔にお願いします。
  113. 村木太郎

    説明員(村木太郎君) はい、わかりました。  この持ち株会社解禁に伴う労使問題につきましては、委員指摘のように、昨年の十二月に持ち株会社解禁に伴う労使関係専門家会議の報告が出されております。それから、ことしの二月二十五日に、連合と経団連、日経連で合意が成り立ちまして、その中で、検討期間を二年を目途として労働組合法などの改正の問題も含めて今後検討して必要な措置をとるということで、いわば労使の合意が成立しているわけでございます。  したがいまして、労働省といたしましては、こうした労使の合意、それから国会でのさまざまな御論議、これを踏まえまして適切な措置をとってまいりたいというふうに考えております。
  114. 山下芳生

    ○山下芳生君 これまで、我が国の独占禁止法持ち株会社禁止してきたのはなぜか。  公正取引委員会独禁法第四章改正問題研究会が一昨年の十二月二十七日に出した中間報告の中に、これまで禁止してきた三つ理由がまとめられてありました。第一は、財閥の復活の防止などの沿革的理由、第二は、それ自体が経済力集中の手段となりやすいという持ち株会社の性格から、第三が、市場の開放性、透明性の確保という三点です。  私は、この三点はおおむね賛成でありますが、この報告書を出された時点では、やはりこの三点について今日的な検証をされて、結論として、今日においてもその枠組みを基本的に維持することは重要である、つまり持ち株会社禁止という枠組みを維持することが重要だという結論をお述べになっておりました。ところが、その後、私に言わせれば理由なき全面転換というふうに思うんですが、そういうことになって今日の法案が出されてきた。  そこで、もう一回改めて、この報告書で述べられている持ち株会社禁止してきたこれまでの三つ理由について公取委員長がどのように御認識なのか、少し聞きたいと思うんです。  まず、一つ一つちょっと聞きたいと思うんですが、第一の理由であります沿革的理由、過去の財閥の再現を防止するためだと、これについて今日的な意義づけ、どうお考えでしょうか。
  115. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 戦争が終わりまして、連合軍が参りまして、そして日本の経済あるいは労働、すべての各般にわたって検討された中に財閥解体というのがございました。その財閥解体というのは、おっしゃるように今の大企業とは違いますけれども、大きな経済勢力を持ちまして、それといわゆる軍閥とが結びつきまして今次の戦争を引き起こしたという認識で財閥解体が進められたのでございますけれども、その一環といたしまして、独占禁止法の中にこの持ち株会社禁止、これは先ほども申しましたように事業持ち株会社禁止されたというようないきさつでございます。
  116. 山下芳生

    ○山下芳生君 委員長が今おっしゃったとおり、私もそういう時点では財閥解体持ち株会社禁止というのは平和、反ファシズムという点でも非常に意義のあった措置だというふうに思うんですね。同時に、当時、戦前財閥というのはいわば社会的権力として政治的、経済的、社会的な支配力を持っておった。ですから、その解体持ち株会社禁止というのは、労働者や消費者、中小企業などの勤労市民の自由と平等を主な内容とする現代市民社会の形成にとっても決定的な意義を持っていたというふうに私は理解しております。  これは、単に過去の問題ではない、私は今そう理解しているんです。  今日の情勢というものを改めて見ましても、例えば平和と戦争をめぐる状況も私なりに理解しておりますのは、この間、国会の状況を自民党の幹事長代理が翼賛的な状況を心配されて、戦前の大政翼賛会のようにならないようにと若い議員に対して警鐘を発せられましたけれども、そういう状況のもとに今、日米共同作戦がもう一つの別のガイドラインの見直しという形で進められようとしている。あるいは憲法九条、平和条項に対する攻撃もかつてない規模でやられようとしている。  それから、企業社会をめぐっても戦前財閥とは違うとおっしゃいましたけれども、例えば衆議院の議論の中でも、戦前財閥のウエートがどのぐらいか、また今日の六大企業集団のウエートがどのぐらいかということを公取の局長が数字を挙げて述べておられますけれども戦前の場合ですと、四財閥全部の産業昭和十二年のウエートが一〇・四%、それが昭和二十一年時点で二四・五%。払込資本金のシェア、ウエートということでお答えになっています。  それに対して、平成四年、現在の六大企業集団の実態調査によりますと、金融業を除く六大企業集団メンバー企業の総資産は一二・五二%、五〇%を超える子会社を含めると一六・五六%。ですから、戦前財閥の全産業に占めるウエートと比べて決して今のウエートが極端に低いということではない、かなり接近している、近くなっているということも数字上ではあるわけでありますし、またそれぞれの大企業が今多国籍化して海外にどんどん進出していっている。  私はそういう状況を踏まえて、戦前のようなああいう軍国主義の経済的基礎となった財閥の復活、財閥そのものの復活とは同族の支配ということではないでしょうが、しかし今日的にもそういう状況を再現させないように、経済の民主化という点で果たす九条の意義というのはますます重要になっているというふうに私は理解しているわけです。委員長自身、戦前の意義について今日的に問うたときにそういうこともおっしゃいましたので、私はその点でも非常に大事だというふうに思っております。  二つ目の理由に挙げられております「持株会社の性格」、中間報告でははっきりこう書いてあります。「持株会社は、その機能が他の会社事業活動の支配そのものであり、それ自体が経済力集中の手段となりやすいところから、独占禁止法はそのような手段を利用すること自体を禁止した。」、これは持ち株会社の性格だと思うんですが、この点は今日いかがでしょうか。
  117. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) これは持ち株会社の定義そのものからくる性格でございます。ですから、持ち株会社イコールではありませんけれども、そういう性格を内在しているということについては、これは否定するものではありません。
  118. 山下芳生

    ○山下芳生君 私は、持ち株会社の本質というのは、最小限の出資によって最大限の支配を獲得することが可能であるという点にあるというふうに思います。  これは学界でもそういう論というのは述べられておりまして、持ち株会社による支配の基本形態というのは持ち株会社たる親会社Aが子会社Bの発行済み株式の五〇%超を保有してこれを支配する形態である。また、その発展形態は、さらに子会社Bが孫会社Cの五〇%超の株式を保有してこれを支配する形態である。同様な手法で親会社Aが複数の子会社B1、B2を持つことによって横に支配を拡大し、それぞれの子会社がまた同じような状況でピラミッド的に企業集団が形成される。論理的に言えば無限大の、現実的には最大限の支配が蓄積される、私はこれが持ち株会社の本質だと思っておるわけです。  こういう点は、これは持ち株会社規模にかかわらず、私は本質的な性格だというふうに理解しておるんですが、この点いかがでしょうか。
  119. 塩田薫範

    政府委員塩田薫範君) 持ち株会社の性格としてそういうものが内在しているというのは今委員長から御答弁したところでございますが、持ち株会社子会社あるいはその下の孫会社以下との資本関係がどうなるかということについては、一番資本を節約しようということになれば、先生おっしゃるように五〇%ちょっととかいうことでやっていくということだと思います。  ただ、主要国にある持ち株会社全部を見たわけじゃありませんけれども、アメリカの場合ですと、比較的持ち株会社の下にある子会社というのは一〇〇%出資という形が多いように承知をしております。ヨーロッパの場合はそうでないケースが多いように思います。したがって、持ち株会社であるから当然に五〇%そこそこのということでは必ずしもないように思います。ただ、五〇%そこそこであれ一〇〇%であれ、支配力がそういうあれになるということはおっしゃるようなことだと思います。
  120. 山下芳生

    ○山下芳生君 論理的にそれは可能だということはお認めになったと思います。  それから第三の理由ですが、「市場の開放性・透明性の確保」、ここで中間報告は「我が国では企業による株式所有が広くみられ、海外から、株式持合い等が参入障壁・投資障壁として指摘されているという状況にある。」、これは今日の時点でいかがでしょうか。
  121. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) そういう見方もあり得るわけでございまして、昭和四十年から五十年にかけてはそういう厳しい状況でありまして、そのときには独占禁止法改正をお願いしたという事情にあります。  しかし、お言葉を返すようでございますけれども、昨今の新聞報道を見ておりますと、やや系列というのは、系列が悪いかあるいは株式の持ち合いが悪いかというのはこれは別の観点から論すべき話だと思いますけれども、系列とか株式の持ち合いというのは相当崩れてきているという状況にあると思います。
  122. 山下芳生

    ○山下芳生君 私は、海外から見た日本の市場のありようというものに非常に厳しい目が注がれているというふうに思っております。これはもうるる議論されたところですが、昨今の野村、第一勧銀の問題あるいは大手ゼネコンによる談合組織が存在していたのではないかとされる問題等、やはり外国から見て日本はルールなき資本主義だという批判が依然として強まっている、そういう点でこの持ち株会社解禁がそういう状況にさらに透明性、開放性の確保に逆行するような懸念が出されているということもあるのではないかと理解しているわけです。  いずれにしても、公取の中間報告が言っていたその三つ理由、この報告のときにはこういうことも勘案して、今日においてもその枠組みを基本的に維持することが重要だと言っていたにもかかわらず、なぜ今度の法案では持ち株会社原則解禁に切りかわるのか、改めてその理由をお聞きしたいと思います。
  123. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 原則部分かという議論はともかくといたしまして、あくまでも、先ほど来御説明いたしておりますように、第一条の精神を踏まえまして、そして第九条というのは、規制という言葉が悪いといたしました場合に制限という言葉を使うとして、過剰制限という批判がございます。その過剰な部分を切り捨てるという作業をしてこの改正案をお願いしているわけでございまして、あくまでも事業支配過度集中を招くような持ち株会社というのは禁止しているというのが基本でございます。
  124. 山下芳生

    ○山下芳生君 私は、本質的に持ち株会社というのは事業支配力過度集中となるというふうに、本質的にそう理解しておりまして、これはやはり全面禁止しなければそのおそれを排除できないというふうに考えています。  しかし、今回、今委員長説明によりますと、過剰規制になっている場合を除く、つまり事業支配力過度集中にならない持ち株会社もあるんではないか、そこについては解禁するというお考えなんですが、そうなりますと、やはりどういう場合に事業支配力過度集中とみなすのか、その定義が私はこの法案のまさに命だというふうに思うわけです。そこのところがはっきりしなければ、事業支配力過度集中のおそれを明確に排除できないと思うからであります。  ところが、その定義、判断の基準をどこに置くのか、過度集中になる場合とならない場合はどこで区分けをするのかということについてですが、法案では第九条五項で三つ類型と二つの要件を定めているということでありますが、これはもう議論がるるあったように非常に抽象的でわかりにくい。  先ほどの質疑でも、事業規模が著しく大きいというのはどの程度かといえば十五兆円、相当数事業分野というのはどの程度かといえば五事業分野程度市場に占める有力な地位というのはどの程度かといえばシェア一〇%あるいは上位三位以内ということを考えている、ガイドラインに書くつもりだということなんですが、これは非常に法案の命にもかかわるような判断基準をなぜガイドラインで決めるのか。なぜ法律でなく、ガイドラインで決めるんでしょうか。
  125. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 私が申しましたように、元来、独占禁止法というのはなかなか抽象的な規定が多いわけでございます。抽象的な規定がどうして多いかということを考えてみますと、やはり経済ということと密接に関連している法律であるから経済的用語を使っていると。例えば一定取引分野というのはそれではどういうことかというと、これは私、公正取引委員会委員長を拝命してこういうことを言うとしかられるかもわかりませんけれども、もう一つよくわからない点がございます。  そういうようなことでございまして、なかなか法律として経済用語をそのまま持ってくるということが極めて難しい。だから、従来からガイドラインというようなものでその中を具体的にわかりやすくかみ砕いてお示ししているということであろうかと思います。もちろん、その内容法律を超えるものでもないし、法律を縮小するものでもなく、イコールということでお示ししているものと理解しております。
  126. 山下芳生

    ○山下芳生君 わかりにくい用語を使うことを避けるということですが、しかし、これは判断基準ですから、わかりにくい用語ではあっても読んだ者がきちっとわかるように、表現のわかりやすさはともかく、例えば数的な基準というものを示す必要はあるんじゃないかと思うんです。先ほどの幾つかのやりとりで出てきた数字もきちっと数字としてガイドラインに盛り込もうというわけですから、それをなぜ法律に盛り込まないのか。  例えば同じ経済的な基準でも、大規模会社株式保有総額を制限する九条の二は、資本三百五十億円、純資産一千四百億円を超える会社ということで、今度の法改正の中で改正して数字を盛り込んでおりますね。あるいはまた、金融会社株式保有を規制する十一条についても五%という数字が入っております。  ですから、数字を入れることはこの独禁法の条文の中でも可能である。にもかかわらず、今度の法改正のまさに九条、第一条の精神は生かすというその生かすための一番大事な物差しになぜその数字を入れないのでしょうか。
  127. 塩田薫範

    政府委員塩田薫範君) お答えをいたします。  事業支配力過度集中となるものを禁止するということにした場合に、禁止の具体的な内容をどのように法律上表現するかということであろうかと思います。  持ち株会社について一定の場合禁止するということでありますけれども、この持ち株会社あるいはその傘下に置かれる子会社あるいはその関連会社というのはいろんな事業分野にわたるわけでありまして、そういったものを取り出して過度集中になるかどうかということを判断する場合に、計数をぴたりと当てはめて十五兆円、五分野ということだけで必ずいけるのかという、それが適当かどうかという話はあろうかと思います。したがって、ここに書いてありますような「総合的事業規模相当数事業分野にわたって著しく大きいこと」、これは何度も御説明いたしておりますように、現在ございます六大企業集団、そういったものを念頭に置きながらこういう規定を書いたということでございまして、これの具体的な内容については解釈としてガイドラインという形で明らかにしたいということでございます。  それから、今先生の御質問の中で、九条の二の規定の中で、今回大規模事業会社対象となる資本金の額あるいは純資産額を改定しておるわけでありますが、これは当初の法律、五十二年につくりましたときには資本金百億円、純資産が三百億円だったと思います。それは何年か前に政令で改定をいたしておりますので、今回法律改正をする際に、九条の二の対象となる会社の線引きということでございます。  したがって、今回のあれでいうと、パラレルに考えていいのかどうかわかりませんけれども、九条の対象とする持ち株会社とは何か、第三項におきまして総資産の中に占める子会社株式の額が五〇%を超えるものというふうに言っておりますので、それは今ございます「株式所有することにより、国内の会社事業活動を支配することを主たる事業とする会社」というような、今回の改正案よりも少し幅があるような書き方、それがいいかどうかという議論はあると思いますけれども、九条の対象になる会社というのは、今言いましたように第三項で数値を入れて書いたということでございます。
  128. 山下芳生

    ○山下芳生君 よくわからないですね。政令で書けばいいじゃないか、九条の二についても政令でまず改正をして、今回それに合わせるということなんですから。なぜ政令で書かないのですか。
  129. 塩田薫範

    政府委員塩田薫範君) ここはあくまでも事業支配力過度集中ということを、そのメンバー企業あるいはそれぞれの企業が具体的にどういう事業分野にわたっているかとか、どのぐらいの広がりがあるかとか、それから事業分野相互間にどのような関連性があるかというようなことを総合的に判断をする必要がありますことから、やはり私どもとしては、法律規定ぶりとしては、現在提案しておりますような第五項の規定ぶりというのが適当ではないかというふうに考えております。
  130. 山下芳生

    ○山下芳生君 極めて大事な問題にもかかわらず、そういうふうに法律でも政令でもなくてガイドラインにゆだねるというのは大問題だと私は思うんです。しかも、提案されている法案では、ガイドラインに基づいて三類型に合致したとしても、それだけで事業支配力過度集中とみなすわけではないと。  その後二つの要件が入っておりますね。すなわち「国民経済に大きな影響を及ぼし、公正かつ自由な競争の促進の妨げとなることとする」と。これはガイドラインで何か決めるんですか。
  131. 塩田薫範

    政府委員塩田薫範君) その三つの要件のうち、二番目、三番目の要件、今先生おっしゃったように国民経済に大きな影響を及ぼす、これをガイドラインの中でもう少し具体的に書くべきかどうか、これは具体的にどうするかという方向はまだ持っておりません。  それから、三番目の公正かつ自由な競争の促進の妨げになる、これはどういう意味なのかということを説明する必要があるのかどうか、その点も含めてこれからの検討だと思います。
  132. 山下芳生

    ○山下芳生君 つまり、一番大事な問題が法律でも書かれない、政令でも書かれない、ガイドラインで書くと言いながらどんなふうに書くかまだ検討中だと言うんですから、これは本当に重大だと思うんです。  そこで、聞きますけれども、単純な疑問なんですが、もしこれから皆さんが整備されるガイドライン基準に合わなかったら、これは処罰されるんでしょうか。
  133. 塩田薫範

    政府委員塩田薫範君) 私どもがこれからつくりたいと考えておるという御説明をしておるガイドラインというのは、あくまでも主としてこの第九条第五項の定義のところ、禁止されるものの定義の規定の私どもとしての解釈、運用の考え方でございます。  これは公取だけではなくて、各官庁が所管法令を執行するに際しましてはそれぞれの法令をどう解釈するか、これは明らかにこういうガイドラインという形でつくるか、あるいは内々のあれで持っているかということは別としまして、それぞれの法律をどう解釈して運用するか。たまたま私どもの場合は、独禁法のほかの分野につきましてもガイドラインであるとか運用基準というようなことで、我々の解釈の具体的な内容なりあるいはこれまでの事例等を踏まえて、こういう場合、問題になり得るというようなことを書いておりますけれども、これはあくまでも我々がこの法律を運用する際の、我々としてはこういうふうに考えて運用しますよ、したがって、多分相手の民間企業サイドにとっては公取はこういう解釈でやっているんだなということはある程度予測できる、そういう意味はあると思いますけれども、これは法令ではありませんので、仮に司法の場で議論されるということになりましたらば、これは法令ではありませんから、参考にはしていただけるかもしれませんけれども、やはり基本となるのは九条の規定ということに戻るんだろうと思います。  で、処罰の話についてですが、五項に事業支配力過度集中となった持ち株会社について処罰されるかということでありますけれども過度集中となると判断した持ち株会社については、過度集中の状態を是正するために例えば子会社と親会社を切り離しなさい、株式処分をしなさいということで、九条の規定に違反しないような状態にすることを求める、是正措置を行政処分として求めるわけであります。  その行政処分をしまして、それに違反した場合に初めて罰則の適用が出てくる、こういうことでございます。
  134. 山下芳生

    ○山下芳生君 ですから、公取が調査して過度集中だと判断した場合の排除の勧告や審決、それを出して従わなかった場合に、これは法律では懲役を含む罰則を適用できるということになっておりますが、その際の判断の基準がやっぱりガイドラインになるわけでしょう、過度集中かどうかという。  そうなりますと、これはやはりおかしなことになるんじゃないのかと。処罰を受ける基準法律ではなくてガイドラインになるということになれば、私はこれは罪刑法定主義に反することにもなるんじゃないか、そう思うんですけれども、いかがですか。
  135. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) これは法律の九条の第五項という規定がありまして、その規定に違反しておるかどうかということでございます。第九条の五項の解釈あるいは立法趣旨、そういうのはガイドラインに示されているわけであります。  だから、ガイドラインというのはあくまでも言葉どおりガイドラインでございまして、これに違反したからそれで処罰されるということじゃなくて、それが一つのメルクマールというかそういうことで、排除命令なりあるいは排除命令に従わないときに処罰されるということになりますけれども、それはまた司法の場で違う目で裁判官が見るわけで、そのときはガイドラインがそれは五つと言っているけれども、五つは多過ぎるとか少な過ぎるとか、十五兆円というのはおかしいというのはまた裁判の場で決まるわけです。裁判の場で決まるというのは九条の五項の解釈、裁判官が解釈されるわけでございます。
  136. 山下芳生

    ○山下芳生君 今からどういう基準をつくるのかということで、今法案の審査をやっているときに、それがどういうことをやってはならないのか、やってもいいのかということが法律ではわからない、裁判になったら裁判官が判断するということでは、これは私、それでいいんだろうかということを率直に思います。  そういうことになりますと、逆に公取の主張は、経済力の過度集中にならないものについてのみ解禁するんだとお言いになりますが、事実上、そのラインを公取として確信を持って引けないじゃないか。そうやって排除勧告し、従わなかったら処罰の対象としょうとしたときに、それを裁判所にゆだねるということでそういうことができるんだろうか。私は、市場の番人である公取がその使命を果たせないことになるんじゃないかという懸念を抱きます。  そんな法案を公取みずからつくろうというのはいかがなものかというふうに思うんですが、時間が参りましたので、引き続きましてまたこの点についてはやりたいと思います。何か一言あったらどうぞ。
  137. 塩田薫範

    政府委員塩田薫範君) 違反するかどうかということで我々が排除勧告をする、あるいは公取の審判でやはりクロになるということで審決を出す、これは行政処分でございます。したがって、行政処分については当然司法の場で争う機会が与えられているわけでございますから、そこで確定しないのはおかしいということはなくて、やはり行政処分に対して当然争う場がある、司法の場でですね。その場合には法令がその根拠になるということで、特段九条だけじゃなくて、独禁法全体がその立場にあると思いますし、ほかの法令も同様ではないかなという感じがしております。
  138. 木宮和彦

    委員長木宮和彦君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。     —————————————
  139. 木宮和彦

    委員長木宮和彦君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  140. 木宮和彦

    委員長木宮和彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  141. 木宮和彦

    委員長木宮和彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時八分散会      —————・—————